ウマ娘プリティーJWC (ディア)
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ウマ娘プリティーJWC
世界最強ウマ娘を決める国際GⅠレースJAPANWORLDCUP──JWC。
無敗の三冠ウマ娘を初め、凱旋門賞ウマ娘、ドバイワールドカップウマ娘など豪華な面子が揃った。
「ぐっ、また胃をやってしまったか?」
しかしそれを開催する準備をする最中で、胃を痛めるウマ娘がいた。そのウマ娘は史上初の無敗の三冠ウマ娘となったシンボリルドルフ。彼女はこのレースに出てくるウマ娘達のあまりにも非常識なレースを見ていて、胃を痛めていた。
「ギンシャリでも頭を抱えるのに……どうしてこうも問題児ばかり集まる?」
ギンシャリというのはシンボリルドルフと同じく無敗で三冠ウマ娘となったギンシャリボーイのことであり歴史的名ウマ娘の一人のことだ。このギンシャリボーイはグラスワンダーとマルゼンスキーを足して二で割ったかのような性格で非常に大人しい優等生で知られている。しかしつい最近、寿司が好き過ぎて自ら寿司を握るようになり部屋に酢の臭いが充満するようになっただけでなく、スシウォークなる必殺技を手に入れ問題児の仲間入りとなった。
「バンチョーの馬鹿も問題だ……あいつはレースでなくても問題を起こすからな」
バンチョー、チョクセンバンチョーのことだ。バンチョーはギンシャリとは気性も成績も真逆、ゴールドシップの問題児ぶりを数十倍濃厚にしたウマ娘で度々暴走しそれまでクラシック等大レースとは無縁だった。しかしある日を境にレースを勝ち、それから着実に賞金を稼ぎ、前走の毎日王冠ではギンシャリをスシウォークを出させるまで追い詰め、成長した。
しかしそれまでの環境が災いしたのかライバルのギンシャリとは仲が非常に悪く、その仲の悪さはゴールドシップとトーセンジョーダン以上に悪い。出会ったら殴りあいは珍しいことではなく、何をしでかすかわからない。しかしその潜在能力はギンシャリすらも凌ぐことは違いない。
「いや日本のウマ娘はまだマシか……」
海外から招待されたウマ娘はそれ以上に混沌としており、見た目がまともでも性格がまともではないのは当たり前で、見た目も性格もまともではないウマ娘のようなナニカまで出てくる始末だ。
「胃薬を買ってこなければ……」
しかしこれだけは言える。JWCに出走する各ウマ娘はそれぞれレース中に何かしら行動を起こして、シンボリルドルフの胃薬の瓶を消すほど混沌に包まれることになる。
そして誰もいなくなった生徒会室に侵入してくるウマ娘がいた。
「JWCの出走をこうしてと……これでよし」
そのウマ娘、いやウマ娘の着ぐるみはJWCのレース出走登録をし、その当日を迎えた。
【1番 ギンシャリボーイ。日本。無敗で皐月賞、日本ダービー、菊花賞の三冠を制した歴史的名ウマ娘。必殺のスシウォークで世界制覇を狙います】
栗毛のウマ娘、ギンシャリボーイが大歓声を包まれ登場する。無敗で三冠を制しただけあってか入場も慣れていた。
【2番 ピンクフェロモン。フランス。フランスβグループの三冠を制したフランスが誇る当代最強ウマ娘。赤いガーターベルトを装着し、得意のフェロモン攻撃でウマ娘達を誘惑します】
お色気担当、ピンクフェロモン。凱旋門賞こそ敗れるが一時は先頭に躍り出て他のウマ娘達を寄せ付けなかったが悪い癖が出てしまいジラフに負けてしまった。
【3番 チョクセンバンチョー。日本。ハンドル形リボンが特徴の暴れウマ娘。ハマった時の末脚はギンシャリボーイすらも凌ぎます。元暴走族総長ソリカワの教えがここで役立つのか?】
リーゼントを伸ばしに伸ばした黒髪のウマ娘チョクセンバンチョー。斜行は当たり前、蛇行して走るといういっそ清々しさを感じさせるそのスタイルに人々はロマンを与える。しかしロマンは与えても勝利を与えるわけではない。
【4番 ハリウッドリムジン。アメリカ。ケンタッキーダービーを制したアメリカ最強刺客。非常に珍しいリムジン種。胴体が非常に長くスタミナ切れの心配はありません】
座高がやたら高い国籍アメリカのウマ娘が入場。自由を象徴するアメリカ国なだけあり、フリーダムであった。
【5番 バーニングビーフ。スペイン。角が生えた非常に珍しいタイプのウマ娘。強いフィジカルの持ち主で一度暴れたら手がつけられません。モウモウと鳴きます。なおトレーナーは豊かな胸毛の持ち主です】
何故ウマ娘なのに角があるとかモウモウと鳴くのかと色々突っ込みどころがあるがとりあえず最後の情報はいらないだろう。
【6番 サバンナストライプ。ケニア。ヨーロッパのGⅠレースで好成績を残しているシマウマタイプのウマ娘】
白黒のウマ娘が入場すると違った意味で騒然とする。バーニングビーフが異端だった為に戸惑う声が大多数を占めていたからであった。
【7番 ジラフ。イギリス。凱旋門賞を初め数々の世界のGⅠレースを制覇している世界のエース。身体のあらゆる部品が非常に長いウマ娘。近くではペンキの臭いが充満しているもよう】
身長2mどころか3mを超えるだけでなく謎の角まで生やしたウマ娘もどきが入場し騒然とする。こんなウマ娘は世の中に存在しないだろう。というか名前の時点でジラフ(キリン)と言っているし。
【8番 ハリボテエレジー。未勝利のウマ娘であるにも関わらずこのレースに何故出走出来るのかは謎に包まれています】
最後に入場してきたのは段ボールで出来たウマ娘。どこからどう見ても学園祭の作り物にしか見えない。
【JWCスタート! まず飛び出したのは一番人気ギンシャリボーイ、続いて暴走族総長の走りチョクセンバンチョー、風を切り裂くリーゼント。お色気ムンムンピンクフェロモン。そしてその誘惑に負けたバーニングビーフ、これはウマ娘なのか? 非常に珍しいリムジン種ハリウッドリムジン。サバンナストライプ、これはシマウマ。やや首が長いハイネック種ジラフ、最後方にハリボテエレジーから空き箱を擦る音が聞こえます】
【っと、バーニングビーフが怒った! ピンクフェロモンに突撃! ピンクフェロモン飛んでったーっ!】
バーニングビーフがピンクフェロモンに体当たりしてピンクフェロモンを場外に飛ばす。そして標的をチョクセンバンチョーに移したところで第三コーナーに移る。
【さあ混戦模様のJWC。各ウマ娘第三コーナーを──】
観客達から「曲がれぇぇぇぇぇぇっ!」と絶叫する声が場内に響き、ルドルフがまた胃薬を飲む。そしてトウカイテイオーがそれを真似して栄養剤を飲む。こちらもカオスだった。
【おっとハリボテエレジー転倒! ここでハリボテ壊れたっ! コーナーには勝てない!】
ハリボテが壊れ、中の人が出てくる。その中の人は黄色タイツと仮面を被っており、正体はわからずじまいだった。ルドルフはその正体に気付いて再び胃薬を飲む。
【大けやきをぬけて各ウマ娘最終コーナーを曲がっていきます。先頭はギンシャリボーイ、その真後ろにバーニングビーフ、うちからハリウッドリムジンが上がっていきます】
【おっとバーニングビーフが大きく外に膨らんだ! バーニングビーフは観客席のオグリキャップに突っ込んでいく!】
「私か!?」
いくら笠松の英雄と言われたオグリキャップといえども腹が膨れた状態では逃げられないし、何よりもオグリキャップの脚質が逃げではなく差しだ。バーニングビーフの豪脚に敵う術なく飛んで行った。
【っと、止まった……何かを物色しています……これは!?】
そしてバーニングビーフはオグリキャップの落とした食料を食べ始めた。
【オヤツターイム! 道草が旨いっ!】
バーニングビーフの弱点、それは大食漢でありバーニングビーフが先頭に立っても勝てない理由の5割が途中で観客から食料を奪いオヤツタイムに移ってしまうことだ。そのせいでジラフに何度も負けてしまったことが多数あり、今回はそのパターンであった。
【っとそんなことはどうでもいい! 最終コーナー、先頭はギンシャリボーイが落ちた代わりにハリウッドリムジン、二番手にサバンナストライプ。今日もトレーナーのサンコンが呪文を唱えている】
ルドルフが立ち上がりサンコンの呪文を止めようとするが、胃を痛めすぎて腹を抱えその場に座った。
「グルーヴ、頼む」
「え? ちょ……」
ルドルフが倒れ、代わりに胃薬と面倒事を押し付けられたエアグルーヴが戸惑いサンコンの方へ向くとそこにはスイープトウショウが魔法封じの呪文を唱える姿があった。
【サンコンの呪文が魔法使いのウマ娘に止められました。ここでギンシャリボーイとチョクセンバンチョーは少し遅れてしまったか】
観客の多くがギンシャリボーイに賭けている為か、ギンシャリが遅れたことに対して悲鳴が上がった。
【さあゴールまで後400、ハリウッドリムジン。盛んに雨乞いサバンナストライプ。少々遅れてチョクセンバンチョー、ギンシャリボーイ、ジラフと続いています】
【逃げるリムジンと続いてバンチョーとジラフ上がってきた! ぐんぐんと上がってきた! ここでバンチョー、ロケットカウルを取り出し全力疾走、我が物顔で蛇行運転していく! 負けじとジラフが首を振り子の如く揺らしてスピードアップ! サバンナストライプはまだ雨乞い! リムジンもボディを伸ばして必死に抵抗! 届くか逃げ切るか!?】
チョクセンバンチョーがどこからともなくロケットカウルを取り出したことにヒシアマゾンが大笑い。
ジラフが首を揺らしたことに真顔で解説するリギルのトレーナーおハナとそれを傾聴する一部を除いたリギルのメンバー。
ハリウッドリムジンの胴体が伸びていくことにドン引きのダイワスカーレットとウオッカ。
サバンナストライプの雨乞いを防ぐスイープトウショウ。
吹っ飛ばされたピンクフェロモンのフェロモンにやられ、顔を紅潮させながらふらふらと歩くトウカイテイオー。
腹を痛めたバーニングビーフと共に病院行きになったシンボリルドルフとオグリキャップ。その付き添いにエアグルーヴとスペシャルウィーク。
そしてハリボテエレジーの中の人を捕まえようとサイレンススズカとバンブーメモリーが必死に追いかけていた。
そんな混沌とした状況の中、ウマ娘が大外からやって来た。
【おっと大外から日本、ギンシャリボーイ、ギンシャリボーイが翔んできた! ギンシャリ、立った! シャリが立った! こちらを見ている、ウマ娘が笑った! ギンシャリボォォォイ! トレーナーマツオカも笑ったぁっ!】
日本が誇る歴史的名ウマ娘ギンシャリボーイが必殺のスシウォークを出し他のウマ娘達をあっさりと抜かしそのままゴールイン。
【アナゴ、カンパチ、カニサラダ、ウニ昆布。確定しました。一着ギンシャリボーイ。二着チョクセンバンチョーです。なおピンクフェロモンとハリボテエレジーは競走中止、バーニングビーフは失格となります】
JWC勝者はギンシャリボーイとなり、最初のJWCの幕は閉じた。
後書きらしい後書き
どうでもいいけどエネイブルが凱旋門賞を連覇して本当に歴史的名馬になってしまった……一年前になろうで予言したことが当たってしまった。
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