RE.チート転生から始める異世界生活 (灰鳥)
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異世界生活一日目、水色の飴とピンクの鞭とピエロ

映画公開記念で書き始めます、不定期ですこれは



ふと…思う、何故俺は生きているのか…。

やりたい事も特にない、なぜ俺は生きているのか。

何故こんな俺が生き、生きたい他の人が死ぬのか。

この世には平等なんて言葉はない。

 

俺は…今日、自殺をした。

 

死んだはずだ…俺は…、なのに何故ベッドで寝ている。周りの景色も明らかに病院ではない。

?「お客様お目覚めになられましたか?」

女の子の声が聞こえた…優しげな声だった。

?「やっとお目覚めになったのね、お客様」

さっきとは違う冷たい声音の声が聞こえた。

異変に気づいたのは今だった…どう考えても俺のいた世界じゃない。

そして、二人の女の子の足音が段々近づいてくる。

視界がハッキリしてきて…見えたのは。

?「お客様?分かりますか?」

?「お客様、早くお目覚めになってください」

瓜二つ…その表現が正しい美少女ふたりだった。違う部分と言ったらら、瞳の色と髪の色、あとは…胸部の膨らみだろうか…。

何とか声を出して聞く。

「ここは…?」

すると冷たい声音の女の子が…

?「ここはロズワール様のお屋敷でこの辺りを治める方のお家でございますお客様」

まさか…これは…!。

 

異世界…転生!?

 

 

 

 

 

ラム「お客様の話は信ぴょう性に欠けますね」

ツバキ「何を言ってんのか俺でも理解出来てないからな」

レム「お客様、あまり無理をなされない方が…」

ツバキ「大丈夫…気遣いありがとう」

ラム「今日いきなり森で倒れてた人に異世界から来たという話を信じろというのが無理な話」

ツバキ「だろうな…」

レム「お客様…失礼ですが…お名前は?」

ツバキ「ツバキだ、神薙ツバキ」

レム「分かりましたお客様、改めツバキくん」

ラム「かしこまりましたお客様、改めツキ」

ツバキ「ちょっとまて、姉の方おかしかったぞ人の名前を改変するな」

ラム「ツバと言った方がよかったでしょうかお客様、改めツバ」

ツバキ「ツキでいいです…」

なんだこのピンク髪初対面の奴にここまで踏み込めるのか…。

可愛いけども、というか…双子揃って可愛いなおい。

ツバキ「はぁ…これからどうしようかね…」

レム「姉様姉様、ツバキくんが途方に暮れています。」

ラム「そうね…無様なツキにはラムが救いの手を差し伸べて上げるわ」

レム「さすが姉様です」

ツバキ「君は…いちいち罵倒入れなきゃ死ぬのか…」

レム「そこが姉様のいいところです」

ツバキ「ぶれないな…この子」

 

?「おーきたようだーねぇー…」

ツバキ「何だこの腹立つ声のテンポ…ぐはぁっ!」

ラムのチョップが腹部に炸裂した。

ツバキ「俺一応病み上がりなんですけど!?」

ラム「ロズワール様を侮辱した罰よ、甘んじて受けなさい」

ツバキ「ろずわーる?」

ロズワール「いかにも…私がこの屋敷の主、ロズワールだ」

なんだコイツ…、ピエロメイクに喋り方…。深く考えてはいけないな。

ツバキ「はぁ…色々とわかんないけども、とりあえず助けてくれてありがとう」

ロズワール「いやいや、私は居住の許可を出しただけだーよ、助けたのはそこの二人」

ツバキ「あ、そうなのか…」

水色髪の妹は分かる、ピンク髪の子が俺を…助けた?

ラム「失礼ね、ただの叔母心よ」

ツバキ「人の思考を勝手に読み取らないでくれます!?」

ロズワール「それじゃ私はこれで失礼するーよ」

ラム「どこかお出かけですか?」

ロズワール「あー、ちょっと王都までーね」

レム「分かりました、いってらっしゃいませ」

ロズワール「屋敷を頼んだーよ」

ラム「お任せ下さい」

 

 

ツバキ「俺の荷物とかってあったりする?」

考えてみれば…色々と持って飛び降りた気がする…。

死と同時に転生したのなら、持ち物も転送されていそうな気がしていた。

レム「近くに落ちていた見覚えのないものならこれですが…」

そう言ってレムが取り出したのはやはり俺の出かける時の持ち物一式だった。

ツバキ「あーよかった…、これないと辛い…」

レム「あと…これが」

そういってレムが取り出したのは鞘に収まった剣だった。

ツバキ「これ俺の?」

ラム「倒れていても手から離さず持っていたのよ、大切なものではないの?」

ツバキ「いや…見覚えがない」

レム「一応持っておいてはどうですか?」

ツバキ「…そうだな、一応持っておこう」

そういって俺は鞘から剣を抜いた。

ツバキ「…これは」

声には出ていないがレムもラムも驚いているのだろう。

真っ黒で白色の筋が不規則に通った刀身、刃の部分だけ金色で柄には装飾が全くなく、まるで刀身と刃だけ移植したような感じだった。

ツバキ「…これを見てどう思う?」

ラム「簡単に言うわ、寄越しなさい」

ツバキ「やだよ!?」

レム「ツバキくん…レムも欲しいです」

ツバキ「上目遣いプラス甘えた声お願いしないで!、グラッグラッに揺らぐから!」

 

ツバキ「とにかく!この剣はあげません!」

ラム「ちっ!」

ツバキ「女の子が舌打ちなんてするもんじゃない…」

レム「まぁ、護身用に持っておいた方がツバキくんにとってはいいかもしれないですね」

ラム「レム、この男に襲われたら真っ先にラムに言いなさい、責任もって灰にするわ」

ツバキ「襲うってどっち!?剣!?それともあれ?」

ラム「両方よ、いやらしい」

ツバキ「返答しただけで!?」

レム「レムはいつだって姉様の味方です!」

ツバキ「つまりレムは俺がやると!?」

ラム「当たり前でしょう、汚らわしい」

ツバキ「いい加減に罵倒いれんのやめろ!」

レム「そこが姉様のいいところです」

ツバキ「この子ほんとにぶれんな!?」

 

ラム「ツバキ、いえ…ツキ」

ツバキ「合ってる!なんで直した!?」

レムは今仕事で外している。

ラム「ツキ、黄色と白色の虎に見覚えある?」

ツバキ「虎?」

黄色と白色って、なんか随分派手な虎だな。

ラム「そうよ、虎について何か知ってることは?」

ツバキ「いや、聞いた事もない」

ラム「そう…ちょっと歩ける?」

ツバキ「別に普通に」

ラム「そう…だったら着替えて、見て欲しいものがあるから」

ツバキ「いいけど…、とりあえず外出てくれるか?」

ラム「分かっているわよ、汚らわしい」

ツバキ「今の罵倒いる!?」

姉様辛辣スギィ!!。

 

今の俺の服装は黒パーカーの下に藍のTシャツ、黒布地の長ズボンと全体的に色が濃い服装だ。

ラム「黒…好きなのね」

ツバキ「ん?あぁ、そうだな。嫌いではないかな」

ラム「そんなことはどうでもいいわ、着いてきて」

ツバキ「自分で聞いといてどうでもいい!?」

俺は姉様になんかしました!?

 

ラムに案内されたのは地下にある牢屋のような部屋。

ラム「見てみなさい」

俺は暗くてよく見えないが目を凝らして牢屋の奥を凝視した。

ツバキ「……何かいるか?」

ラム「…よく見なさい」

ツバキ「…白色の小さいなんかそんなのが見える」

ラム「入って見る?」

ツバキ「危ないやつ?」

ラム「さぁ…」

ツバキ「命に関わるんですけどぉ!?」

ラム「いいから行きなさい」

ツバキ「…はいはい、行きますよっと」

死にたくはないが…いくしかない。

ラム「今開けるから」

ツバキ「ふーっ…よし行こう!」

意を決して俺は牢屋に入り、白色の何かへ近づく。

すると…

?「ガゥゥっ…ガァっ!!!」

ツバキ「っ!やっべ!」

白色の何かが飛びついてきた。しかも顔に。

ツバキ「姉様ヘルプ!」

するとラムは呆れたように

ラム「よく見なさい」

言われた通りに俺はよく見たそこには…

?「クゥーン…オォン!」

嬉しそうに俺の顔に頬ずりをする白い物体

小さいが分かった、これは。

ツバキ「狼!?」

 

ラム「あら、ツバキには懐くのね」

ツバキ「どういう!?」

ラムの説明はこうだ、倒れた俺を守るようにその白色と黄色の毛並みの子狼が近づいたラムとレムを威嚇していたらしい。何とか俺を回収したものの、子狼が暴れるので地下牢に置いたらしい。

ツバキ「ほー…お前、俺を守ったのか?」

白狼「ワン!」

ツバキ「あれ?なんか犬みたいに泣くな…、まぁありがとう」

すると白狼は俺の手から器用に登り、肩の上に座った。

それを見たラムが。

ラム「定位置、という感じね」

ツバキ「俺もそんな感じするわ」

ラム「まぁ、いいわ。ツキがいる以上、その狼は襲ってこないでしょう」

ツバキ「まぁ、多分な」

ラム「なら、ツキ」

ツバキ「なんだ?」

 

ラム「屋敷で執事として働きなさい」

 

ツバキ「ごめん、色々と唐突すぎるので説明プリーズ」

ラム「簡単に言うわ。ツキ、あなたをタダでここに置く気はないということ」

ツバキ「ここに置く代わりに働けと…そういう事か?」

ラム「そういう事よ」

ツバキ「…分かった、働かせて貰おうか」

ラム「給料は一応出すから、せいぜい頑張りなさい」

ツバキ「…!」

ラム「なに?」

ツバキ「いや、姉様に励まされるとは思ってなかった」

ラム「今のが励ましに思えるなら、ツキの頭はお花畑のようね」

ツバキ「…っ!分かってたよ!ちゃんと!」

ラム「ハッ!」

ツバキ「心にくる笑い方しないで貰えます!?」

 

俺は知らなかった…とある少女達の過去を。

レム「……姉様…」

レム「…っ!」

 

ラム「それじゃ早速勉強の時間よ」

ツバキ「はい!?」

なんか無理やり俺の部屋に連れてこられた挙句こんな事を言われているので超パニックでございます!。

ラム「ツキの話がホントなら文字わかんないでしょう」

ツバキ「あ、そういえば…」

ラム「今日中に必要な文字は全て覚えさせるから覚悟しなさい」

ツバキ「その手に持ったハンマーは!?」

ラム「寝たら叩き起す用よ」

ツバキ「俺死ぬよ!?」

ラム「まずここからやって行くわよ」

ツバキ「話聞けよ!」

 

 

 

 

ツバキ「…死ぬかと思った、勉強で生死の境をさまよった…」

ラム「でも一度も寝なかったじゃない」

ツバキ「姉様しょっちゅう寝てなかったー?」

ラム「…私はもう寝るわ」

ツバキ「おいコラ!逃げんな!」

ラムは駆け足で出ていった。

ツバキ「全く…」

あの人は俺をいじることに関しては天才的だなと思いました。

ツバキ「そういえば姉様は食ってたけど、俺なんも食ってねえ…」

レム「ツバキくん、起きてますか?」

ツバキ「ん?レムか、起きてるぞ入って」

レム「失礼しますツバキくん、実は…」

レムが言い終わる前に。

白狼「ワン!」

ツバキ「白狼?」

白狼が飛びついてきて俺の膝の上で丸まった。

白狼「クゥーン…」

ツバキ「どうして白狼がレムと一緒に?」

レム「実は…」

レムの言うには地下牢の様子を見に来た時に白狼が涙目で俺に会わせろと訴えかけて来たらしい。それで渋々連れてきたと…。

ツバキ「なんだお前可愛いなおい」

白狼「ワン!」

レム「ではツバキくん、明日から仕事ですので早めにお休みになってください」

ツバキ「おぉ、分かった。レムも早めに寝ろよ」

レム「ではツバキくん、おやすみなさい」

ツバキ「おー、おやすみ」

 

こうして、俺の異世界生活一日目が終了した。

今日から一日の出来事をこの日記に記して行こうと思う。

飽きたらやめる、でも可能な限り続けていきたいと思っている。

俺はこれから不安な事もあるけれど、未来を見て生きていきたい。

自殺してこの世界に来たけれど、前のような事は絶対にしない。

ラムが聞いたら軟弱者とでも言われるだろうか…。

レムが聞いたら…なんて言うのだろう。

今日はラムと話す事が多かったから明日はレムとも少し話してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最初のやつは短くしたかった…という願いは見事に潰えたのでした。
後書き終わり


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異世界生活二日目、天然王様候補と大精霊と魔法訓練

長くしたくない


ツバキ「ふがぁっ!?」

朝腹部に激痛が走った…神薙ツバキ二日目にして最悪の寝起きである。

ツバキ「あの…ラムさん?」

ラム「何?」

ツバキ「朝一番から腹部に1発入れるのはやめてくれない!?」

ラム「ツキがいくら揺すったりしても起きないから仕方なくよ」

ツバキ「だとしても他にやりようはないんですかね…」

ラム「ないわ」

ツバキ「言い切っちゃったよ!」

ラム「つべこべ言わずにとっとと準備なさい」

ツバキ「分かったよ!準備するよ!」

 

白狼「ワン!」

ラム「白狼はどうするの?」

ツバキ「どうするって…どうしよう?」

レム「確かに…困りましたね」

ツバキ「流石に仕事中も俺の肩の上に乗られると特に料理の時に毛が落ちるなんて事も有り得るのだから余計に困る」

ツバキ「ふーむ…同じ動物を買ってる人だったらいいんだけどそんな人なんて」

するとラムとレムが「あ」と何か思いついたように呟いた

ツバキ「どしたよ二人揃って」

レム「ツバキくんちょっと来てください」

ツバキ「え?マジでいるの!?」

ラム「いいから来なさい」

ラムが無造作にツバキの耳を引っ張る。

ツバキ「行くから!耳を離せぇ!」

ツバキ(女子の力じゃねえよ…これ)

レム「これから会うのはこの国の王選に出るお方ですから失礼のないようにお願いします」

ツバキ「そんな偉い人に白狼押し付けて大丈夫なん?」

ラム「大丈夫よ、あの人は優しいから」

ツバキ「心配だ…」

白狼「ワン!」

ツバキ「お前は気楽でいいなぁ…」

白狼はさっきからツバキの左右の肩を行ったり来たりして遊んでいる。

ラム「良かったわね白狼、暇を潰せる道具が出来て」

ツバキ「シンプルに傷つくんですけども…」

レム「着きました、ここです」

ツバキ「なんか…もっと豪勢な部屋かと思ってた」

ラム「一応扱いは客人よ」

ツバキが泊まっている部屋と同じ扉がそこにはあった。

ツバキ「なるほど…俺は客人な訳か、ホッとした」

ラム「思い上がるのも大概にしなさい、ツキはロズワール様の犬よ」

ツバキ「心のライフがゼロになりかける…から」

レム「エミリア様、朝早くから申し訳ありません。少しよろしいでしょうか?」

エミリア「あ、レム?ちょっと待ってね…」

ガチャ…と扉が開けられた。

そこには銀髪でレムとラムに負けず劣らずの美少女がいた。

ラム「エミリア様、少しお願いが」

エミリア「その前に、その子は?」

レム「今日からここで働く事になった、ツバキ君です」

ツバキ「よろしく…」

エミリア「うん、よろしくね」

 

エミリア「それで、お願いって?」

ツバキ「実は…こいつを預かって欲しいんだ」

そう言ってツバキは腕を前に出して、白狼がそこで器用に座る。

エミリア「この子…精霊よね?」

ツバキ「精霊?」

エミリア「パック?聞いてる?」

ツバキ「パック?」

パック「聞いてるよ、うんその子は精霊だね」

ツバキ「は……猫が…」

パック「猫とは失礼な、ボクの名前はパックだよ」

ツバキは絶句した、当然である。猫が喋って宙に浮いてるのを驚かないはずがない。

レム「エミリア様、どうかお願いできませんか?」

エミリア「全然、いいよ。ね、パック?」

パック「話し相手が増えるのはボクも嬉しいからね、もちろんさ」

エミリア「よーし、おいでー」

ツバキ「ほら、白狼。大丈夫だ」

白狼「クゥーン…」

白狼は寂しそうにエミリアの腕の中へと収まった。

ツバキ「じゃあ、行ってくるからいい子にしてろよ?」

最後まで白狼は寂しそうにしていた。

 

ツバキ「それで、まずは何からやるんでしょうか?」

ラム「そうね、まずは猿でも出来る事」

ツバキ「あ、なんか予想がついた」

ラム「ラムとレムの荷物持ちよ」

ツバキ「んなことだろうと思ったよ!」

レム「分かってたなら話は早いです、いきましょう」

ツバキ「マジか…これから先がもう既に思いやられる」

ラム「ほら、早く行かないと朝市が閉まってしまうわ」

ツバキ「はいはい…」

 

ツバキ「予想してたけども…結構大変ですな…」

ツバキの手には食材がぎっしり入った袋が片手に三つずつあった。

ラム「我慢しなさい、朝市が終わるまでの辛抱よ」

ツバキ「気遣い?」

ラム「いいえ、命令よ」

ツバキ「でーすーよーねー…」

レム「とっ…これで最後です、ツバキくん」

ツバキ「よし今すぐに台車に乗せようそうしよう」

最後の力を振り絞り、台車に荷物を載せた…やっと終わったそう思ったツバキだったが…。

ツバキ「あの…お二人?なんで台車の上に乗ってるんですかね?」

ラム「か弱い女の子2人をわざわざあんな遠いところまで歩かせる気かしら?」

ツバキ「か弱い女の子は寝起きに腹に一発入れたりしねえよ!?」

ラム「早く行きなさい、食材が腐ってしまう」

ツバキ「なんでこの双子は容姿はそっくりなのに性格は真逆なんだ?」

ラム「一人一人個性があるのが私達の魅力よ」

レム「流石姉様です」

ツバキ「極端なんだよ!」

 

ツバキ「ふぐぐぐ……なんで降りて歩くだけなのにテコでも動かないみたいにくつろいでんだラムぅ!」

ラムは持参した紅茶を優雅に飲んでいた。

ラム「レムも飲む?」

レム「いただきます、姉様」

ツバキ「話を聞けよ!」

ラム「ほら、急ぎなさい」

ツバキ「ぐぬぬぬ…見てろよ…」

バチッ…と電気が走るような音がした。それと同時にツバキの台車の押すスピードが上がったが、ツバキは気づいておらずラムとレムだけが気づいていた。

ツバキ「どした?急に黙って」

レム「ツバキくん、今なにかしました?」

ツバキ「…そう言えば急に軽くなった気がするな」

ラム「…ツキ、自分の手を見なさい」

ツバキ「手?手に何が…って!?」

手には、電気が走っていた。不思議な事に痛みは感じない、むしろ心地よく感じる。

レム「雷属性魔力…でしょうか?」

ツバキ「魔力…これが!?」

ラム「話は後でするから今は急ぎなさい」

ツバキ「なんか軽いから行ける!」

ツバキはスルスルと進んで行った。

レム「姉様…これは」

ラム「ええ…これは」

双子姉妹が何かに気づいたのをツバキはまだ知らない。

 

ツバキ「だァァァァァ!!!!着いたぁ!あれ?手の光が…消えてる?」

ラム「魔力が目覚め始めたばかりだからすぐ消えるのよ、調子に乗らない事ね」

ツバキ「肝に銘じておく、んで次は?」

レム「屋敷内の清掃です」

ツバキ「じゃ、終わらせよう早く!」

ラム「何を急いでいるの?」

ツバキ「こんな広い屋敷ダラダラやってたらもっと時間かかるわ!」

ラム「理解は早いようね…少しだけ見直したわ」

ツバキ「会って二日目で見直されるって…嬉しいけどさ」

ラム「レムはいつも通りやって構わないわ、私がツキの面倒を見るから」

レム「姉様、宜しかったのですか?」

ラム「構わないわ、レムはレムの仕事に集中しなさい」

レム「分かりました、姉様」

そう言ってレムは屋敷の奥に消えていった。

 

ラム「基本的に屋敷の清掃はレムとラムで担当していたわ、ツキにはその2割をやってもらうわ」

ツバキ「構わないけど、ラムは何割?」

ラム「ラムは3割よ」

ツバキ「そこ、双子で仲良く4割じゃねえの?」

ラム「ラムは掃除が得意だけど、レムはもっと得意よ」

ツバキ「レムにあんま無理させるなよ?倒れるぞいくらなんでも」

ラム「ツキに言われるまでもないわ」

ツバキ「それで?どこを掃除すれば…」

ラム「ツキは屋敷の南方の1階から3階までの掃除を全てやりなさい」

ツバキ「こんだけ広い屋敷だから2割でもその量は当然か…分かった、任せて」

ラム「あとで確認に行くからダメならやり直しよ」

ツバキ「掃除具はどこに?」

ラム「1階突き当たりよ」

ツバキ「サンキュ、分かったよ」

ラム「……やっぱり気の所為…なのかしら」

去り際に聞こえたラムの呟きはツバキの耳には聞こえてはいなかった。

 

ツバキ「はーっ…何とか終わりそう…だけど、きっついなぁ…」

あれから数時間、ツバキは掃除をし続け担当された分の4分の3を終えた。

ツバキ「ふーっ…」

レム「ツバキくん?」

ツバキ「レム?」

ツバキが後ろを向くと、片手にモップを持ったレムの姿があった。

ツバキ「よっと…どうした?」

ツバキは梯子から降り、レムに近寄る。

レム「見掛けたので声を掛けただけです、あとお昼休憩は一応あるのでやり過ぎないでください」

ツバキ「そうか、分かった。あとすこしで終わるから心配すんな」

レム「…掃除、得意なんですね」

ツバキ「綺麗好きってだけだよ、前は1人で暮らしてたし」

レム「…そうなんですか」

ツバキ「よし!こんなもんかな…、それじゃ休憩させてもらうよ」

レム「1時間後にまた来てください」

ツバキ「分かった、んじゃな」

 

ツバキ「…ここかな、落ち着く場所は…」

ツバキは庭の木陰の下に座り込んだ。すると…。

ラム「ご飯も持たずにどこへ行くかと思えば…」

ツバキ「ラム…あ、ご飯!」

ラム「これは要らないのね?」

ラムの手には2つのおにぎり。

ツバキ「いります!いります!すいませんでしたぁ!」

ラム「光栄に思いなさい、ラムの手料理を食べれるのだから」

ツバキ「ありがとうございます!!」

ラム「…ふん…」

ラムはツバキの座っている木の裏側に座りこんだ。

ツバキ「…これ美味しいよ、ありがとう」

ラム「当たり前よ、ラムが作ったのだから」

ツバキ「まぁ…とにかくありがとう。飢えながら仕事はごめんこうむりたいから」

ラム「……そう…ね」

ツバキ「今一瞬飢えさせながら仕事させようとか考えただろ!?」

ラム「ラムの思考を読むなんて汚らわしい…」

ツバキ「じゃあせめて読み取らせない努力をして!?」

ラム「ラムが何をどう思おうがラムの勝手でしょう?」

ツバキ「ぐっ…何も言い返せない」

ラム「ほら、早く食べなさい。仕事が待ってるわよ」

ツバキ「あれ?レムは1時間後って…」

ラム「ツバキに1時間も休みを与えるなんて勿体ないわ」

ツバキ「俺に人権はないのか…、過労で死ぬぞ」

ラム「いいから来なさい!」

そう言ってラムはツバキの服の首の後ろを引っ張っていった。

ツバキ「だから引っ張んなって!いたたたた!!!!」

 

レム「姉様……どうして…?」

レム「……っ……」

ツバキは知らない、燃え上がっていく憎しみの炎を。

 

ラム「ないわ」

ツバキ「はぁっ!?」

ラム「だから、仕事がないのよ」

ツバキ「なんで引っ張ったん!?」

ラム「発散よ」

ツバキ「もうなんか…色々酷い…」

ラム「ロズワール様がしばらく王都に出掛けて留守にしているから…」

ツバキ「どうするんで?」

ラム「……ツキ、魔法訓練よ」

ツバキ「………」

 

ツバキ「はぁっ!?」

 

ツバキ「俺に魔力なんてある?」

ラム「ないことは絶対にないわ」

ツバキ「信じるけどさ、なして急に?」

ラム「やることがないからよ」

ツバキ「包み隠せよ、せめて」

ラム「それじゃ、そこに座って」

言われるがままにツバキは庭の芝生の上に腰を下ろした。

ラム「イメージしなさい、ツキ。ツキの魔力は光、でも雷系統のものよ」

ツバキ「光…雷」

ラム「手から雷を放出する…そういうイメージで手を空にあげなさい」

ツバキ「分かった」

ツバキ(イメージ…電流が、心臓…血管を伝って手から)

その時、ツバキの黒い瞳が紅に染まった。ツバキの周囲に赤いオーラが立ちこめる。

ラム「……今よ」

ツバキ「放つ!」

バリバリバリっ!!!!!ゴォォォォ!!!!!!。

周囲にものすごい轟音が鳴り響いた。

空高く舞い上がった紅の雷は雲を裂きはるか上空で雷爆発を起こし消えた。

ツバキ「がっ…ぐぅ…!?」

ツバキは膝から崩れ落ちた。瞳は黒に戻っていた。周囲に赤いオーラもない。

ラム「…!ツキ!」

ツバキ「手が…」

ツバキの手には外傷は見られないが煙が出ていて震えていた。

ラムが珍しく心配そうに駆け寄ってきた。

ラム「…初めてなんだから少しは不安がるかと思ったけど…まさか臆せず全力で撃つなんて馬鹿ね」

ツバキ「罵倒はいいから…何とかならん?」

ツバキが苦しんでいると…。

エミリア「ラムー!」

パック「大きな音がしたけど…」

白狼「…!ワン!」

エミリアとパックと白狼が走ってきていた。

パック「さっきのは君が?」

ツバキ「あ、あぁ…」

パック「まず君は加減を覚えることから始めた方がいいね」

ツバキ「善処します…」

エミリア「パック…この手何とかならない?」

パック「ボクはこの手のことに関しては力になれないよ」

白狼「クゥーン…」

白狼が傷ついた腕を舐める。すると…煙が消えて、痛みもなくなった。

ツバキ「お前…こんなことも出来たのか…」

白狼「ワン!」

ツバキ「サンキュ…おかげですっかり良くなった」

ラム「白狼の器用さに救われたわね、ツキ」

ツバキ「ラムに言われるとなんかあれだが…とにかくありがとう」

白狼「ワン!」

エミリア「すごーい!傷が治ってる!」

ツバキ「レム?どうした?」

レムが木陰から睨みつけていた。

レム「いえ…気にしないでください」

ツバキ「…そうか」

ラム「……仕事…出来るわね?」

ツバキ「おう、出来るむしろ調子がいいくらいだ」

ラム「なら来なさい、夕飯の支度をするわよ」

ツバキ「任せろ!料理は得意だ!」

ラム「…期待しないでおくわ」

ツバキ「しろよ!なんでしないの!?」

 

ラム「気に食わない…死になさい」

ツバキ「なんで俺がラムさんより料理上手いってだけでそんな辛辣なんですか!?」

結果的にレムが1番上手いのはツバキは察していた…、ラムが料理下手だとはツバキ自身思っていなかったが。

ラム「ハッ!」

ツバキ「心が折れそう…」

異世界生活二日目にして神薙ツバキ、三度心が折れそうになる。

ツバキ「というか…メイドってもっと心優しいんじゃないの?」

ラム「私達が優しくなるのはVIPだけよ」

ツバキ「お前今最低な事いってる自覚ある?」

ラム「最高なことを言っている自覚ならあるわ」

ツバキ「…オーケー、露骨すぎる依怙贔屓どうもありがとう…」

ラム「ほら早く立ちなさい、食事を並べるわよ」

ツバキ「へいへい…人使いの荒い先輩だな…」

 

ツバキ「…あの…誰?」

ツバキの目の前の席には金髪を長く伸ばした幼女がいた。

ツバキ「ラムさん?なんか幼女が屋敷に迷い込んでるんだけど」

幼女「失礼なやつかしら!!」

ツバキ「…ここの人って喋り方が個性的すぎねぇ?」

ツバキ(主にロズワールとか…)

ラム「そのお方はベアトリス様よ、この屋敷の禁書庫の管理をしているわ」

ツバキ「あー…なるほど司書的な?」

ベアトリス「その認識であってるのかしら」

ツバキ「一応確認、これでこの屋敷の住人は全員?」

ラム「まだあと一人しばらく外しているけど」

ツバキ「これ以上個性的なメンツが増えるのか…」

 

ツバキ「ごっそさん…湯沸してくる」

ラム「さっき教えた通りよ、魔石の操作は…」

ツバキ「わってる、ちゃんと頭に入ってる。温度もな」

パック「早速こき使ってるね、ラム」

ラム「大精霊様、まだ足りないレベルです。もっとしごいていかないと…」

エミリア「あ、あんまり無理させちゃダメだよ!、倒れちゃうから!」

ベアトリス「いっそ倒れるくらい働いてもらった方が楽かしら」

レム「そうですね、ベアトリス様」

ツバキ「お前ら何おっそろしいこと計画してんだ!!!」

パック「聞こえてたんだ」

ツバキ「わざと聞こえるように言ってるでしょう!?」

パック「あー、バレた?」

ツバキ「あったりまえだ!」

ラム「早く湯を沸かしてきなさい」

ツバキ「行くわ!言われんでも!」

 

ツバキ「さて…と、魔力解放」

場所は、ロズワール邸の風呂場の地下部分、湯沸かし専用の部屋である。炉に木をを入れる容量で自発光している魔石が敷き詰められているツバキの手に電流が走る、今度は目は赤くなってはいなかった。

それを影から睨みつけている影にツバキは気づいていない。

ツバキ「魔石よ、我の意志に応えよ…、マナコントロール…」

ツバキの言葉に応えるように魔石が輝きを放ち、やがて消える…。

だが、先ほどと違い確かな熱さがあった。

ツバキ「…良かった、出来た」

ラム「様子を見に来たら…サボりかしら?」

ツバキ「勤務二日目でサボるってどんな奴だよ…、終わったから休んでただけだよ」

ラム「そう…ではエミリア様に伝えてくるわ」

ツバキ「俺は?どうすれば?」

ラム「お風呂の順番はエミリア様とベアトリス様が最優先よ、私達はそのあと」

ツバキ「自室で待機でいいのか?」

ラム「察知して自分で来なさい」

ツバキ「んな無茶な…」

ラム「冗談よ、レムが呼びに行くわ」

ツバキ「分かった、んじゃ戻るわ」

ラム「…ツキ」

ツバキ「ん?どうした?」

ラム「…いえ…なんでもないわ」

ツバキ「…そうか、んじゃな」

ツバキは知らない、声を掛け損ねたラムの疑うような表情に。

 

ツバキ「エミリア?」

エミリア「あ、いた!」

白狼「ワン!」

自室へのトビラの前にエミリアと白狼がいて、こちらを見るや声をかけてきた。白狼がツバキの胸に飛び込んできた。

ツバキ「っと…白狼か」

エミリア「夜はさすがに預かるのが難しくて…大丈夫?」

ツバキ「まぁ、一日中面倒見るってのもあれだし大丈夫」

エミリア「そ、良かった。ところでお風呂は?」

ツバキ「あ、そうそう。沸かしてるから入ってきてどうぞ」

パック「覗いたら殺すから」

ツバキ「覗かねえよ、というかパックは男じゃねえの?」

パック「親だから問題ないんだよ」

ツバキ「そうですか…、ん?今なんかおかしな事が…」

パック「それじゃ、リア行くよ!」

エミリア「あ、待って!パック!」

ツバキ「あの人は…あれで王戦候補なのか…」

白狼「だね…」

ツバキ「ん?」

ツバキは下のあたりから声が聞こえた気がしていた、というより聞こえた。

ツバキは胸に抱いた白狼を見る。

白狼「なに?そんなまじまじと見て」

ツバキ「喋ったァァァ!!!!????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼロ風次回予告のコーナー
ラム「ツキ、ツキ如きがなぜラムより料理が上手いのかしら?」
ツキ「知らないよ、作者に聞けば?」
ラム「作者…この紙は…」
原作設定にそったby作者
ビリッ…
ツバキ「原作通り…だそうですよ?」
ラム「今更原作に沿ったところでズレにズレまくっているのに…」
ツバキ「原作改変のタグでも付けるべきか?」
ラム「そこは感想で聞くべきでしょう」
ツバキ「だな、それじゃ感想にてよろしくです」
ラム「それで?次回は?」
ツバキ「次回は遅くなる可能性大らしいな、一応候補タイトルが…」
異世界生活三日目、犬は喋らないとかいう非常識
ツバキ「なんだこのふざけたタイトル…」
ラム「ほらはやくしめましょう」
ツバキ「分かった、それじゃまた次回で」


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異世界生活三日目、力をどう使うか

スラスラ書けた割に時間がかかってしもた!
許してくれや!
唐突の関西弁


現在、時刻は22時を回った。

ロズワール邸に仕える三人の使用人達は、その中の一人神薙ツバキの部屋に集まっていた。理由は簡単、三人の中央に身を丸めて寝ているツバキ付きの精霊、白狼である。当の本人は知ったこっちゃないのか熟睡中だがツバキ本人は違った。

ツバキ「白狼、お前メスだったのか…」

ラム「メスの精霊…始めてみるわね、個体数が少ないわけではないけれどそれでもオスの個体よりは少ないはずよ」

ツバキ「ほー…そうなのか」

ラム「わざわざラムに聞いておいてその気のない返事は何かしら、死になさい」

ツバキ「なんで!?」

ラム「うっとおしい…死になさい」

ツバキ「あんた言いたいだけだろ!」

ラム「ハッ!」

ツバキ「…とにかく」

俺は一呼吸おいて、話を始める。

ツバキ「喋るって事はだ…どういう事だ?」

ラム「話し始めておいてそれは何?死になさい」

ツバキ「この短時間で3回も死ねって言われた!?」

ラム「とりあえず、精霊の中でも喋れるのは最上位精霊だけのはずよ」

ツバキ「つまり?」

レム「白狼ちゃんは…最上位精霊に位置するもの」

ラム「そういう事になるわね…」

ツバキ「……」

ラム「ツキ?」

ツバキ「悪い、少し外に出てくる」

 

ツバキ「……俺は一体なんなんだ…」

死にたいと思って自殺して、助かってしまったと思ったら異世界で。

魔力なるものが宿って、自分に懐いた精霊がこの世界の最上位精霊…。

ツバキ「…どうしちまったんだろ、俺は」

死にたいと思った気持ちはそう簡単に曲げられるものじゃない。今でも、もしかしたら心の中でそう思ってるのかもしれない。死にたい…でも。

ツバキ「今の俺は…」

生きたい…そう思う気持ちが強くなっていた。

ツバキ「……くそっ…」

もどかしい…そう感じるのが自然だ。死にたいのに生きたい…どっちつかずの半端者。

ラム「急に外に出るって言ったから何かと思えば…」

ツバキ「ラム…」

ラム「どうしたのよ、急に」

ツバキ「いや…なんでもない、明日も早いだろ?早めに寝るよ」

ラム「…そうね、ツキのくせにラムに隠し事は生意気だけどまぁいいわ」

ツバキ「バレてたか…」

ラム「話したくないなら強制はしないわ」

ツバキ「まだ…話したくはない。でも…いつか話す」

ラム「ツキ、あなたはもうロズワール邸の使用人よ。何か悩みがあるなら無理せず相談しなさい」

ツバキ「ありがとう、ラム助かる。でもほんとに大丈夫だから」

ラム「…そう」

ツバキ「じゃ、おやすみ」

そう…少なくとも会って二日しか経っていないラムやレムに話すことじゃない。

ラム「ええ、おやすみ」

ラムはどこか納得しない顔つきをしていたが俺を止めることはしなかった。

 

 

翌朝

 

レム「ツバキくん、ツバキくん」

先日の朝の出来事が俺の脳裏にフラッシュバックした。

ツバキ「…はっ!」

瞬時に横に転がりベッドの下に落ちる。

レム「ツバキくん?」

ツバキ「ラムさんお願いします!腹に1発ぶっこむのは勘弁してください!お願いします!」

レム「安心してください、ツバキくん。姉様ならまだお休み中です。」

ツバキ「レム?」

俺はここに来て状況を把握した。どうやら今日起こしに来たのはレムだったらしく、ラムはまだ寝ているようだ。

レム「起きたのでしたら早く支度をして下さい」

ツバキ「分かった…、ラムは?」

レム「レムは朝食の仕込みがあるので起こしてきてください」

ツバキ「…分かった、すぐ行くよ」

俺は支度をして、ラムの部屋に向かった。

何故わかっているかと言うと、この屋敷にきて魔力を使い始めたのは昨日だが俺なりに最大限努力をしている。その結果誰も気づかないほどの微弱な電流を広範囲に流すことで索敵が可能になった。人の見分け方に関しては電流の跳ね返り方が微妙に違うのでそこで見分けられた。

 

白狼「ねぇ!」

やはり、狼が喋るというのは慣れない。

ツバキ「相変わらず慣れないな…、なんだ?」.

白狼「あのレムって子、何か気づかない?」

ツバキ「別にいつもと変わんなかったぞ?」

白狼「…ツバキ、気をつけて。あの子は普通じゃないよ」

ツバキ「どういう事だ?」

白狼「分からない、でも嫌な予感はするんだよ。私の長い人生観がそう言ってるんだ」

ツバキ「…分かった、一応気をつけとく」

こいつの話を丸々信じる気はないが、レムはたまに雰囲気がおかしい時がある。俺を見てなにか仇のように睨んだりするのはなぜかは分からない、でも…そのうち殺されるのではないかと不安になるレベルだ。

白狼「私はまだ戦えない。だからツバキがなんとかして」

ツバキ「剣は…常備しとくか」

白狼「そうね、護身用に」

ツバキ「っと、着いたな」

コンコンっ…

ツバキ「ラム?、俺だけど…」

ガチャっ…

ラム「何かしら…」

扉から出てきたのはピンクのネグリジェを着たラムだった。

見るからに眠そうで…機嫌が悪そう。

ツバキ「何かじゃなくて、朝ですよってこと」

ラム「ツキに起こされるなんて、忌々しい…」

ツバキ「俺お前になんかした!?」

ラム「ラムの快適な睡眠を邪魔した事よ」

ツバキ「早めに仕事終わらせて眠ればいいだろ…」

ラム「うるさい。死になさい」

ツバキ「眠いからか知らないけどいつも以上に辛辣だな…」

と言っても、まだ三日いっしょにすごしただけだが…。

ツバキ「とりあえず早く着替えて朝食作るぞ」

ラム「わかっているわ、行くからツキはもう行ってもいいわよ」

ツバキ「ん…じゃ、先行くわ」

 

ラム「………」

ラムにとってツバキを拾ったのは偶然と気まぐれと当人の言っていたように叔母心に過ぎなかった。だが、ツバキから時折出てくる禍々しい気配、それは過去にレムとラム達を絶望へ追いやった。ツバキ本人が無自覚なのか…それとも隠しているのか。だが、ロズワールがそれに気づかないはずはない、気づいていれば真っ先に殺したはずだ。つまり、現時点で常に出ているわけではないという事になる。であれば、答えは一つ。

ラム「様子見…するしかなさそうね」

そう…現時点でロズワールが居ない上に、彼が普通ではないのは白狼がついているという事実。白狼がいる限り恐らくツバキには手出しできない。そして、もう1つ問題が有る。レムだ、ラム自身もツバキに多少疑いの視線をむけているのだが、レムのそれは殺意に近い、下手に手を出してツバキの中のそれを目覚めさせてしまえば恐らく終わりだ。レムに関しても様子を見なければならない。

ラム「今日1日で結論を出させてもらうわよ…ツバキ」

ラムはそう決意して部屋を出た。

 

ツバキ「どしたよ?そんな険しい顔して」

朝食の仕込みがほぼ終わった段階で部屋に来たラムは険しい顔をしていた。

ラム「ツキに起こされたのが気に食わないのよ」

ツバキ「まだ言う!?」

ラム「いつまででも言ってやるわよ」

ツバキ「お願いだからやめて?寝起きで機嫌悪いのは分かるけどもさ」

ラム「それで?どこまで終わっているのかしら」

ツバキ「遅れてきた奴の言葉じゃねえな…ほぼ終わってる、あとはエミリアと幼女なんだっけ?」

ラム「ベアトリス様よ」

ツバキ「ベアトリス様をレムが起こしに行ってる」

白狼「へぇ…ツバキって料理出来るんだ…」

ツバキ「意外なのかよ」

白狼「なんかいかにも家事出来ませんって感じだった」

ツバキ「失礼だな…人を見た目で判断すんな」

白狼「はいはい、ごめんなさい」

ツバキ「謝意がねえ…まぁいいけども」

ラム「ツキ、今日は洗濯物を干すわよ」

ツバキ「洗濯物か…なんかもうめっちゃ多そう」

ラム「朝食を出したら昨日と同じように掃除をしてそのあと洗濯物よ」

ツバキ「分かった、あのベランダか?」

そう言って俺は屋敷の中でも一際目立つ大きなベランダを指さす。

ラム「そうよ、そこでいいわ」

ツバキ「リョーかい」

エミリア「おはよー!」

ツバキ「それじゃ、俺は並べるから」

ラム「ええ…」

ツバキ「どした?なんか元気ないぞ?」

ラム「ツキに心配される程落ちぶれてはいないわ」

ツバキ「人が心配してやってんのに…全く」

ラム「ほら早く並べなさい」

ツバキ「ラムさんも手伝ってくれません!?」

 

エミリア「んー…やっぱり2人の料理は美味しいね」

レム「お褒めに預かり光栄です、エミリア様」

ラム「そうですね、約1名が使い物になりませんので私達だけで頑張りました」

ツバキ「人の努力を亡きものにしようとしないでくれます!?ラムさん毒舌吐きながら俺の料理に口出ししてただけじゃね!?」

エミリア「え?ツバキが作ったの?」

ツバキ「ん…全体の2割くらいかな」

パック「割となんでもできるんだね」

ベアトリス「器用貧乏…と言う奴かしら」

ツバキ「合ってるから反論できねえ!」

 

エミリア「ご馳走様でした!よーし、今日も頑張るぞー!」

パック「リア、休憩もちゃんとしなきゃだよ?」

エミリア「分かってるよー、それじゃあいってきまーす!」

レム「行ってらっしゃいませ、エミリア様」

 

ベアトリス「今日は掃除はいいから、1人にしてくれるかしら」

ラム「かしこまりました、ベアトリス様」

ツバキ「引きこもりめ…」

ゴンっ!

ベアトリスが手にした本をツバキの脳天にぶん投げてクリーンヒットした音である。

ツバキ「スミマセンデシタ…」

ベアトリス「失礼極まりない奴かしら」

ラム「ではベアトリス様、ごゆっくり」

ベアトリス「ふんっ…」

バタンっ…

ツバキ「愛想のないやつだな…」

ラム「そうね、もう少し柔らかくなって欲しいものだわ」

ツバキ「俺はお前にこそもっと柔らかくなって欲しいわ」

ラム「ツバキがラムより料理が下手になったら考えておいてあげるわ」

ツバキ「何故下降していく!?自分が上手くなれよ…」

ラム「嫌よ、めんどくさいもの」

ツバキ「お前は住み込みメイドというものを考え直せ」

ラム「ロズワール様に忠を尽くし、仕事に対し一切の妥協をしない」

ツバキ「上手くなんのがめんどくさいって言ってる時点で妥協しまくりだわ!」

 

さて…掃除も終わり、洗濯も終わった。

案の定暇になりました。

ラム「魔法訓練よ」

ツバキ「だな…することねえし」

と言うよりはレムの仕事のスピードが早すぎるのである。

昨日と同じように、庭に連れてこられた俺はそこでパックに会った。

パック「やぁ、ツバキ今日は僕が先生だ」

ツバキ「お手柔らかに」

パック「それじゃ、早速話をしようか」

 

パック「昨日の君の魔力放出から見て君の魔力量と戦闘センスは大したものだ、誇っていい」

ツバキ「はぁ…それで?」

パック「いずれ僕やロズワールをも超えるだろう、だからこそ君に聞きたい」

ツバキ「なんだ?」

 

パック「君はその力をどう使いたい?」

 

ツバキ「どう…使うか」

パック「君がもし、誰かを傷つけるというならば僕はこの場で君を殺す」

ツバキ「……!」

感じたのは恐怖、目の前にいる小さな猫精霊に俺は恐怖していた。

ツバキ「…俺は…」

 

ツバキ「この力を…守るために使う」

 

パック「誰をだい?僕をかい?、それともラムをかい?」

ツバキ「全部だ」

パック「と言うと?」

ツバキ「みんなを守ることは出来ないかもしれない、でもこの両手で救えるものは必ず救う、命を掛けても…」

パック「そこは訂正する必要があるよ、いくら守るためでも自分が死ぬのはだめ、そこは絶対に直して」

ツバキ「分かった…」

パック「それじゃ、僕はラムと少し話してくるね」

ツバキ「あれ?教えてくれるんじゃないの?」

パック「リアを1人する訳にはいかないからね」

ツバキ「そうか…とりあえずありがとうな」

パック「いい?守るのは大事、でもそれよりも自分が生きる事を優先すること、いいね?」

ツバキ「分かってる…」

パック「ならいい、それじゃあね」

 

ラム「大精霊様、わざわざ来て頂いて申し訳ありません」

パック「いいのいいの、僕も気になってたから」

ラム「それで…どうでしょうか」

パック「聞いたとおり、感じた通り、彼には確かに魔女の強欲が宿っている、でも彼はそれに呑まれていない」

ラム「それは…今限りということでしょうか?」

パック「それはこの先の戦い次第だね、激しい戦い程彼の中に眠る魔女の力を目覚めさせる可能性が高い」

ラム「そう…ですか」

パック「確かに彼から出ているのは同じ魔女教のそれだ、でも君らの故郷を、家族を奪ったものとはまた別物だよ」

ラム「だったら…ラムはツバキを信じてもいいと?」

パック「彼ほど真っ直ぐで純粋な人間はそうはいない、だから安心していいよ」

ラム「そう…ですか、分かりました」

 

レム「違う…姉様は、大精霊様は甘い…」

漲る殺意と復讐心はツバキに確実に迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼロ風次回予告のコーナー
エミリア「今回は私!エミリアと」
パック「僕、パックがお送りするよ」
エミリア「それにしてもツバキの料理ほんとに美味しかった!また作ってくれるかな?」
パック「使用人だし、また作ってくれるよきっとね」
エミリア「私!将来は料理ができる男の人と結婚する!」
パック「うん、それも条件のひとつだね」
エミリア「条件?」
パック「うんうん、なんでもない」
エミリア「それじゃ、次回は!」
四日目、イノチノヤリトリ
パック「タイトルから物々しいね」
エミリア「ツバキ、大丈夫かなぁ?」
パック「大丈夫だよ、きっと」
エミリア「そうだね!それじゃ次回!」


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異世界生活3.5日目、イノチノヤリトリ

バトル描写むずくね?



パック「お待たせ、ツバキそれじゃあパック先生の魔法講座の始まりだよ!」

ツバキ「ノリノリだな…よろしくだけど」

パック「と言ってもすぐに終わるんだけどね、ツバキの剣は持ち主のマナの属性を反映して属性持ちの剣になる、ツバキは雷だから雷属性の剣ってことになるんだ」

ツバキ「ほー…」

パック「それじゃ剣を抜いてみて」

ツバキ「分かった」

俺はゆっくりと剣を抜き、左手で握る。

パック「基本はイメージで昨日と一緒、違うのは手を伝うイメージ。手を伝ってマナが剣に行き届くイメージでね」

ツバキ「…分かった」

俺はマナを解放し、全身に行き通らせた…。

俺の体の周囲でバチッ…バチッ…バチッ…と音がしてるのがわかった。

パック「よし…次はそれを剣に」

ツバキ「フーっ…よし」

俺は慎重にマナを剣に行き届かせた。

すると俺の黒い剣は赤色の筋が通り、刃の周辺には真紅の雷が音を立ててまとわりついていた。

ツバキ「できた…」

パック「流石ツバキだ、とても人間とは思えないね」

ツバキ「褒めてんのか?」

パック「半分くらいかな…」

ツバキ「さいでっか…」

パック「じゃあ、剣のマナをキープしたままオドからマナを解放して全身に行き通らせて終了だよ」

ツバキ「多少、思いっきりやっても?」

パック「程々にね…」

ラム「壊すから空でやってちょうだい」

ツバキ「分かった…」

ツバキ「スーッ…ハーっ…」

俺は深呼吸をし、マナを最大限解放した。

ツバキ「はぁぁぁぁっ!!!!!!」

周囲には衝撃波が走り、雷の嵐が吹き荒れる。

俺自身も赤い雷が体表周辺に走り、目は赤くなっていた。

鳥は逃げさり魔獣は釘付けに。

パック「これは…たまげたね」

ラム「……っ…」

パック「大丈夫、彼は信じるに値するよ」

ラム「そうですね大精霊様、たしかにこの強さは信頼に値します」

ツバキ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

ツバキ「くっそ…少しやりすぎた」

肩で息をする程ではないが少しだけ疲れてしまった。

パック「やっぱり制御が苦手みたいだね」

ツバキ「かもな…」

ラム「ツバキ、夕飯の支度はラムがやるから気分転換にエミリア様を迎えに行ってちょうだい」

ツバキ「え?なんで、というか出来…失礼しましたお任せします」

ラムの強烈な殺意に俺は縮こまった。

ラム「ほらさっさと行きなさい、じゃなきゃ夜ツバキが寝るまで毒舌を吐き続けるわよ」

ツバキ「なんだそれ逆に寝れねえ!」

ラム「吐き続かれたい?」

ラムさんの小悪魔的要素に俺は…

ツバキ「いってきまぁぁぁぁす!!!!」

俺は猛ダッシュで駆け出した。

パック「仲いいね君たち」

ラム「こき使ってるだけですよ」

パック「でもこき使ってるだけなのにあそこまで気にするのは何でかな?」

ラム「こき使ってるだけですから…」

白狼「あれ?ツバキは?」

パック「あぁ…それならさっき向こうに猛ダッシュでリアを迎えに行ったよ」

白狼「私をおいてくんじゃないわよぉぉぉぉぉ!!!!!」

白狼は小さな体からは想像もできないスピードでツバキを追いかけた。

ラム「そう言えば…レム、どこに行ったのかしら」

パック「僕は見てないよ」

ラム「…いえ、まさか」

パック「どうしたの?」

ラム「いえなんでもありません…」

この時のラムの予感は当たっていた、この後に起きる事を知っているのは当の首謀者レムひとりなのだから。

 

ツバキ「あれ…こんなとこ通る?」

あの後しばらく進んでいるのだがどこかで道を間違えたのか変なところへ出てきてしまっていた。どう見ても村へと通じているとは思えない森の中の道を進んできたのだがやはり違ったようだ。

白狼「ちょっと?迷った?」

ツバキ「分かんねえ…けど多分迷った」

白狼「探知で人を探せない?」

ツバキ「ん…やってみる」

俺は探知を開始した、すると周辺に人が1人いる事が分かった。

ツバキ「こっちに人がいるからその人に森から抜ける方法を聞いてみよう」

白狼「ラムって子に殺されないといいわね…」

ツバキ「はっ!?」

そう…考えてみればエミリアを迎えに行けず勝手に迷って遅れたとなれば慈悲なんかない全力オーガパンチが飛んでくる。

ツバキ「うぉぉぉ…帰りたくねぇ…」

白狼「はーい、行くわよ」

ツバキ「随分と楽しそうですねぇ!?」

 

ツバキ「さっき探知した時は…ここのはずだけどなぁ…」

白狼「移動したのかしら…でもそれほど時間は経ってないし」

ツバキ「はてさて…どうしたもんかな」

白狼「もう一度探知を仕掛けてみれば?」

ツバキ「そうするか…」

探知をすると先程よりも強い気配が猛スピードでこちらへ向かってくるのを感じそれはあっという間に俺の目視できる範囲内に来た。

白狼「ツバキ!」

明らかな敵意を持って迫ってくる人影に俺は戦闘態勢に入った。

人影が見えると思ったらそこから鉄球が飛んできた。

ツバキ「っ…いきなりかよ!」

俺は剣に魔力を集中させ、鉄球を弾く。

すると鉄球はまるでなにかに引っ張られるように人影の元へ戻って行った。

ツバキ「……っ!なんで…お前が」

白狼「私の予感は正しかった…やっぱり彼女は…」

 

ツバキ「なんでだ…なんでだレム!」

俺は岩の上から俺を見下ろしている青髪メイドにそういった。

 

レム「………」

レムは何も言わずに再び鉄球を飛ばしてくる。

ツバキ「っ…らぁぁ!!!」

俺はそれを力任せに剣で弾く。

ギィーンと腕に振動が響いて俺は顔を顰める。

レム「理由くらい自分で分かってるんじゃないですか?」

鉄球を繰り出しながらレムは俺に話しかける。

ツバキ「はぁ?」

レム「白々しい!とぼけないでください!」

一際鋭くレムが鉄球を繰り出し、剣で受け止め俺は吹っ飛ばされた。

ツバキ「…はぁっ…はぁっ…」

レム「殺す気でやってください、いつまで芝居を続ける気ですか死にたいんですか?」

ツバキ「出来れば生きたいかな…。あ、でもラムに殺され…」

言い終わる前にレムが鉄球を繰り出してきた。

ツバキ「……っ!、くそっ!」

ギリギリ肌を掠めたがなんとか避けた。

レム「……このまま大人しく殺されてくれればレムとしては都合がいいです、ですからそのままでも構いません」

ツバキ「……そうかよ…」

ツバキ(あー…くそ、しんどい。さすがに本気出さないと一発でも当たれば致命傷だからな…、最悪…殺すしか)

 

ラムにとってレムはたった一人の妹だから。

 

ツバキ「……っ!」

ツバキ(何考えてんだ、自分より他人を優先するなんて。いい、どうせ一度亡くした命だ、ここで死んだ所で…)

ツバキ「とはいえ…そう簡単に死ぬ気は…」

俺は全身に魔力を半分程集中させる。

ツバキ「…ねぇよ!」

黄色い雷が体にまとわりつく。

ツバキ「……行くぜ」

俺はほぼ瞬間移動に等しい速度でレムの背後に回り込んだ、それでもレムは反応し鉄球をこちらへ繰り出した。

ツバキ「しぃっ!」

ツバキ「ぐっ…らぁっ!」

体にほとんどダイレクトで当たったが勢いが足りなかったため多少痛いレベルで済んだ。当たった勢いで回転しレムへ迫る。レムは鉄球を盾にして俺の攻撃を防いだ。鋼同士がぶつかり火花が散る。互いに弾けたが…。

ツバキ「ここだ!」

レム「っ!」

レムが はその場で武器を取り直すことを選んだが俺はそのまま地面に突き刺し、レムに迫る。左手に魔力を集中させるとバリバリっ…と延々音を立てながら黄色い雷から青い雷へと変わる。

レム「なっ…」

ツバキ「はぁぁぁぁっ!!!!!!」

平手で迫る俺の中にラムのあの言葉がフラッシュバックした。

 

ラムにとってレムはたった一人の妹だから。

 

俺はその一撃をレムに当てることが出来ず、レムの頭部の左側の虚空を切った。

レムはその隙を逃さず俺に今度こそ、渾身の力を込めた鉄球を猛スピードで繰り出し俺は背中からそれをモロに食らい最後にバキバキと骨が折れる音を聴きながら俺は意識を失った。

 

ツバキ「…………っ…」

生きてる…その感触が不思議だった、あの状況生きていたとしてもレムがトドメを刺したはずだ。警戒しながらも俺は瞼を開けた。

ラム「………!ツキ…起きたのね…」

ツバキ「ラム?」

俺の目の前には見慣れた無表情のピンク髪メイドがいた。

ここで俺は自分の後頭部の感触に気づいた、柔らかい感触…これは。

ツバキ「もしかしなくても…膝枕?」

ラム「それ以外何があるというの」

落ち着け、相手はラムだ。きっとなにかあるに違いない。

ラム「死にかけのツキを硬い地面に放置する程ラムは鬼じゃないわ」

ツバキ「優しいのな…」

ラム「ラムが優しいのはいつもの事でしょう?」

ツバキ「……ソウデス…がぁぁぁ!?」

傷を負った腹部に容赦なくラムの拳が炸裂する。

ラム「…間が気に入らなかったわ」

ツバキ「理由説明どうも…お前は怪我人だろうがなんだろうがいつも容赦がない…すみませんでした」

ラム「エミリア様を放置しておいてよくその態度が出来るわね」

ツバキ「あ……」

ラム「全く、泣きそうな顔で帰ってきたわよ」

ツバキ「パックに殺される」

ラム「今回に関しては大精霊様も大目に見るそうよ」

ツバキ「そうか…良かった」

ラム「傷は治したから明後日から働いて貰うわよ」

ツバキ「ブラック!」

ラム「むしろ一日休みを貰えるだけ有難いと思いなさい」

ツバキ「ここに居ると休暇の重みが実感出来るな…」

ラム「そう、だからこそ日々の仕事に全力で取り組みなさい」

ツバキ「そうだな…(お前にだけは言われたくねぇ!)」

ラム「ラムは日々の仕事に全力で取り組んでいるわ、失礼ね」

ツバキ「心を読むな!あと嘘つけ!」

思わず体を上げると背中とか体の色んな所から激痛が走った。

ツバキ「あ…れ、こんな…酷い怪我したっけ」

ラム「マナ慣れをしていないのに無闇に力を出すからよ、次回以降は心配ないけど今回は我慢しなさい」

ツバキ「そいえば…白狼どこいった?」

ラム「ツキの応急処置だけして、屋敷に戻ったわ。あの状態で力を出して疲れていたようだったから」

ツバキ「あいつ、心配してるだろうな」

ラム「どうせ死なないわよと言っていたわ」

ツバキ「あいつほんとに俺の精霊なんだよね!?」

ラム「そうじゃないなら何になるの」

ツバキ「ペット?」

ラム「殺されればいいのに」

ツバキ「ひっど…というか、もう既にころされかけてんだよなぁ…」

ラム「なにより…今後これ以上の無茶は慎むこと?いいわね?」

ツバキ「いやでも今回に関しては…いえなんでもございません大人しくしてますさせてください」

ラム「……ラムも…多少の心配はしたのだから責任を持ちなさい」

ツバキ「……!そっか…心配されてんのかぁ」

ラム「なんで泣くのよ、らしくないわね」

ツバキ「へ?泣いてる?誰が?」

ラム「ツキの目から見てラムは泣いてる?」

ツバキ「泣いてないけども」

ラム「だったら泣いてるのは?」

ツバキ「俺?なん…でだ?」

ラム「ラムが知ってたら聞かない」

ツバキ「ですよね…あれ?なんで止まらない?」

不意にラムが俺を抱き寄せた。

ラム「昔ね…レムが泣き止まない時はこうして泣き止ませたの、だからツキに効果があると思って」

ツバキ「それで俺に効果があるとは限らんだろうに…まだ止まんねえし」

ラム「なら…止まるまでこうしてて上げる。ラムはいつだって正しいってことをツキに解らせるために」

ツバキ「そうかよ…なら遠慮なく」

そうさせてくれたラムの身体はとても暖かった。

 

 

ラム「…レム」

レム「姉様…」

ラム「見たでしょう?この泣き虫は私達と何も変わらない、こんな奴が私たちを殺せるなら私たちふたりはあの時死んでいたわ」

レム「………」

ラム「レム…あの時の事はあなたのせいではないわ、ラムは角なしだけれどそれで妹の命ひとつ救えたなら本望よ」

レム「はい…そうですね」

ラム「分かればいいのよ…それにしても」

レム「…はい」

ラム「憎たらしい程健やかな寝顔ね」

レム「はい…そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼロ風次回予告のコーナー
諸事情によりメンバーを変更してお送りします。
ツバキ「えっと…諸事情って?」
ロズワール「ほんとならわたしじゃあなくレムが出る予定だったのだけれどねぇ…、本編であんな感じだからって事で私が出張ってきたってことなのだーよぉ」
ツバキ「それでロズワール出てきたのか…」
ロズワール「今回はTwitterとやらで、質問が来ていたらしいねぇ?」
ツバキ「議題があるってこれか?なになに?…スバル出さないとキツくないですか…か痛いところをついてくるな…」
ロズワール「おやおや?きついのかい?」
ツバキ「中の人召喚!」
中の人「どうも中の人です、あのね正直エミリアの立ち位置が定まらないのでスバルを登場させようかと思います、ですが…原作とは真反対にそこそこ強い系にして行こうと思ってます。力としてはあれです
闇の力を使いこなす的なやつにしていこうと思います。それでもスバル登場カモンという方はコメントにて駄目という人もコメントにてお知らせください」
ツバキ「なげえ…というか次回予告で毎回登場させるって選択肢は?」
中の人「それもありですね、選択肢としてはそれもコメントにてお知らせください」
ツバキ「選択肢としてはこんな感じかな?」

1.上記のようなそこそこ強いスバルを登場させる
2.スバルを登場させない
3.次回予告のレギュラー的な立ち位置で登場させる

ツバキ「面倒臭いと思うから番号だけでもいいのでよろしくです」
ロズワール「それでぇは次回」
異世界生活四日目、水色メイドと和解
ツバキ「まじで気まずい…どうしよ」
ロズワール「それじゃ私は仕事に戻るーね」
中の人「くっそぉ!フリーダムゥ!」
ツバキ「それ途中から主人公剥奪された虚しいやつや!」
では次回!


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異世界生活四日目、和解

とにかく…お気に入り60件ありがとうございまァァァス!!!!
まさか…気づいたらこんな伸びてるのは…今後とも!よろしくお願いします!


ツバキ「………」

昨日…あれからの記憶がない、ここは…恐らく屋敷だろうか。俺はゆっくりと瞼を開けた。

ラム「やっと起きたのね…」

朝一番に聞いた他人の声が大層不機嫌そうだった…、もうその時点でだれかは想像できた。

ツバキ「どれぐらい寝てた?」

ラム「10時間ほどよ、全くいくら休暇とはいえ規則正しく生活しなさい」

ツバキ「昨日死にかけた人にそれは鬼畜じゃないですかね…」

ラム「生きてるからいいじゃない」

ツバキ「結果論…」

ラム「ラムは結果しか見ないわ、ツキが生きているなら働かせたいぐらいよ」

ツバキ「生きてる=働かせるのはおかしいからな?」

ラム「ツキ、そんなに働きたいのかしら?」

ツバキ「いえもう何も言いません、だからお願いします今日だけ休ませて」

ラム「土下座しなさい」

ツバキ「なんで!?」

ラム「冗談よ、ベアトリス様から安静を預かっているから今日1日ラムが看病するわ」

ツバキ「マジ?ラムつきっきり?」

ラム「…不服かしら?」

ツバキ「いや不服どころかむしろ嬉しいんだけどさ、仕事は?」

ラム「今日からエミリア様は王都へしばらく出かけると預かっているから仕事の量は減っているわ」

ツバキ「レムが全部やってんのか…」

ラム「レムが言い出したのよ…、ラムは反対したわ」

ツバキ「…ご飯運びに来る時だけでいいから、レムを手伝ってやれ」

ラム「…ツキ本人がそう言うなら、そうするわ」

ツバキ「にしても…今屋敷にはベアトリスと俺らしかいないわけか…」

ラム「…警戒はしときなさい」

ツバキ「なんで?」

ラム「馬鹿なの?ロズワール様もいない、エミリア様もいないがら空きのロズワール邸を襲う輩が居ないとも限らないわ」

ツバキ「そういう事かよ…、よしちょっと待ってな」

俺は屋敷付近の索敵を開始した。

ツバキ「…少し、魔獣が慌ただしいな」

ラム「…どういう風に」

ツバキ「わからん…俺そこまで魔獣に詳しいわけじゃないからな」

ラム「気にしすぎよ、結界は正常に作動しているわ」

ツバキ「なら…いいけど」

ラム「というより…普通に魔法を使うわね、働かせ…」

ツバキ「ごめんなさい安静にしてます」

ラム「何かあっても来れないから死ぬ気で我慢しなさい」

ツバキ「だろうな…、分かった昼まで耐える」

ラム「それじゃラムは仕事に行くわ」

ツバキ「おう」

 

ツバキ「落ち着かん…、働かないと落ち着かん」

昔から俺個人安静というものが嫌いだった、風邪を引いても漫画を読んだりして風邪が悪化したりもしていたが…とにかく安静が嫌いだった。

ツバキ「そいや…俺何持ってるっけ…」

ふと思い出した、ベッドの下の脇に置いてある俺の荷物。ここに来てからずっとあそこに放置しっぱなしだった。

ツバキ「整理しときますか…」

 

色々と…出てきた、スマホやら音楽プレーヤーやら手帳やら残金少ない財布やら、とにかく色々出てきて少しびっくりした。中でも一番驚いたのは…。

ツバキ「このネックレスまさかあるとはな…」

いつだったかノリで買った、パチモンのシルバーの指輪のついたネックレス、とうに無くしたと思っていたがまさかあるとは。

とりあえず整理をした、向こうの世界の地図なんかはハッキリ言って必要ないので捨てる…、これぐらいしか捨てる物はない…と思いたい。携帯ぶっちゃけいるか?と思ったけどさすがに取っておく、まぁ…ネットなんかないけども。

ツバキ「…寝るか」

本当に整理をしたら疲れて眠くなってきた、相当体が消耗していたらしい。

ツバキ「…レム」

不思議な話だ、俺自身昨日殺されかけたのにあまり気にしていないのはあまりにも不思議だった。それよりも…

ツバキ「顔合わせたらどんな顔して会えばいいんだろ…」

さすがに昨日の敵は今日の友と言える程俺は器用な性格ではない、レムはまだ俺を殺す気があるかもしれないし、殺す気はもうなくてすごく申し訳なく思っているのかもしれない。

ツバキ「会ったら…考えるか」

俺はそう思い、また深い眠りについた…。

 

ラム「ツキ…起きなさい、ツキ」

ツバキ「…!ラム…か、何用で?」

ラム「ご飯はどうするの」

ツバキ「いただきます…」

ラム「分かったわ、持ってくるから待ってなさい」

ツバキ「分かった、少し顔洗ってくる」

ラム「ご飯を持ってくるまでに戻ってこないならラムが食べるわ」

ツバキ「よくもまぁ…そんな堂々と言えますなぁ」

 

バシャッ…バシャッ…

ツバキ「はぁー…」

それにしてもレムは何故俺を殺そうとしたのだろうか、あの時の口振りから察するに俺がすでに分かっているような事を言っていた。もちろん俺に心当たりなんてない、だからこそ謎なのだ。だからって無闇に聞けばレムを傷つける可能性もあるし殺意をまた芽生えさせてしまうかもしれない。

ツバキ「…ラムに聞いてみるか…」

レムの事を1番に分かっているラムならば何故レムが俺を殺そうとしたのか知っているのではないか。

ツバキ「…戻るか」

オレはそういい自室へと戻った。

 

部屋の扉が視界に入ると扉の前に人が立っていた。

ツバキ「ラムか…?」

後ろ姿はラムだが髪色が水色だった、つまり…

ツバキ「レム…」

レム「…!」

レムは俺の発した声に反応して、ささっと走っていってしまった。

ツバキ「…話に来たのか?」

疑問に思いながらも俺は自室のトビラを開けた。

 

ラム「どうしたの…、何かあったの?」

ツバキ「不機嫌そうな声音で心配されると複雑だな…」

ラム「心配じゃないわ単なる興味よ」

ツバキ「さいでっか…、というかマジで食ってんのな」

ラムは食べ始めだろうか、よりによって肉料理を食べ切りやがった。

ラム「ラムは自分に素直なのよ」

ツバキ「自分で言うな、めっちゃ腹立つわ」

ラム「そういえば扉の前にレムがいなかったかしら?」

ツバキ「いたよ、声掛けようとしら逃げられちまったけど」

ラム「きっとツバキがおぞましいのね、可哀想に」

ツバキ「ラムにそう思われてんのになんも感じねぇ俺が一番可哀想だよ」

ラム「ハッ!」

ツバキ「どぎついのどうも…」

ラム「食べながら話すわ、ツキには知る権利がある」

ツバキ「なんの話?」

ラム「ラムとレムに昔何があったのかという話」

ツバキ「…それ聞いていいのか、俺が」

ラム「レムが行為に及んだ以上、ツキには知る権利がある、さっきも言ったでしょう」

ツバキ「…分かった、聞くよ」

 

聞いていて気持ちのいい話では決してなかった。

ラムとレムはいわゆるこの世界で言う鬼という種族らしい。鬼と言うがレムとラムに角はない、角は鬼族が本気を出した時に出る魔力の源でもある。昔、レムとラムがまだ幼い頃魔女教大罪司教とその教徒がレムとラムが当時住んでいた村を襲い、レムとラムを除く村人全員を殺し、レムの目の前でラムの角を切り落とされたそうだ。

その後2人はロズワールに拾われここでずっと住み込み使用人として働き続けているらしい。レムがおれを襲った理由はどうやら俺は魔力を高めると魔女教の魔力が僅かながら出てきているらしい、当然俺に心当たりはない。それでもレムはこれ以上何も失わないために俺を早めに排除しようと戦いを挑んできた、結果はレムの勝ちだがトドメを刺そうとする直前ラムによって命を救われたが俺はラムが来なければ本当にレムに殺されていた。殺されかけたその事実は消えない、でもその事実になんらこだわりを持っていない自分がいるのも確かだ。

ラム「と…こんなところよ」

ツバキ「……そうか、そんなことが…ならレムがやった事は正しい事なのかもな…」

ラム「…そうね、そうかもしれないわ。でも…ラムは違うと思う」

ツバキ「なんで?」

ラム「ツキ、あなたはラムたちを殺す?」

ツバキ「殺さねえよ」

ラム「それが答えよ」

ツバキ「意味わからん…」

ラム「そうね、ツキの低能では分からないでしょうね」

ツバキ「さらっと人の事馬鹿にするのやめてもらえる?」

低能…グサッときた。

ラム「ハッ!」

ツバキ「絶対怪我人に対する態度じゃないよねそれ」

ラム「こんな元気な怪我人ラムは見たことないわ」

ツバキ「仰る通りでございます」

ラム「どうするの、真面目にこのまま休んでいるツキを放っておくのはラムが個人的に気に食わないのだけれど」

ツバキ「お前の私情が入ってるのはこの際目をつぶるとしてだ、そうだな午後から働くか」

ラム「それじゃ、ラムは紅茶を嗜んでくるから洗濯物をお願いするわ」

ツバキ「…サボることを公然と口にするな」

ラム「午前中サボった罰よ、喜んで受けなさい」

ツバキ「罰を喜ぶほど俺あれじゃないからね?」

聞かずにラムはささっと出ていった。

ツバキ「なんと言おうが結局やる時点で俺は社畜なんだろうか…」

俺はいそいそと着替え始めベランダへと向かった。

 

レム「なんの音でしょう…、ベランダからでしょうか」

レムはベランダからする物音を不思議に思った、ラムは先程紅茶を嗜むと言って台所にいるはずで、ベアトリスは禁書庫にいる。他にツバキが部屋で休んでいるがレムは今あまり彼の事は考えたくなかった。

レムはそーっとベランダを覗き込むするとそこにはここに来て間もないにも関わらず慣れた手つきで洗濯物を入れ替えるツバキの姿が見え、レムは思わず顔を顰める。

レム「どうして…ツバキくんが」

ラム「ラムが頼んだのよ」

右手にポット、左手に3つのコップを持ったラムがいつの間にかレムの隣に立っていた。

レム「姉様!?」

ラム「レム、ツバキはずっと悩んでいたわ」

レムは驚いた、ツバキが悩んでいた事にも驚いたがラムがツバキをそのままツバキと呼んだことにも驚いた。

レム「何故ツバキくんが悩むんですか…」

ラム「馬鹿な事よ、なんて顔して会えばいいんだろうって」

レム「へ?」

ラム「そのままよ、ツバキはレムが自分を殺そうとした事なんてもう気にしもしてないのよ、それよりも明日どうやって話しかけようかそういう事で悩んでいたわ」

レム「姉様は…私たちの事話したんじゃないんですか?」

ラム「そうね、話した事を今更後悔しているわ」

レム「姉様はどうして平気なんですか…、ツバキくんは」

ラム「どう考えてもあのアホで馬鹿で容量無しのポンコツツバキが私達を殺せるわけないでしょう」

レム「……」

ラム「レム、あなた1人があの事で責任を感じる必要はないわ。全ての元凶は魔女教であって、レムでもツバキでもましてやラムでもない」

レム「違うんです…、レムが言ってるのは」

ラム「それも含めて…よ、悪いのは魔女教、ツバキもレムも悪くないの、いい?」

レム「……」

ラムは微笑みをレムに返すと洗濯物の入れ替えが終わった様子のツバキの元へ歩いていった。

ラム「ツキ、ラムを待たせるなんていい度胸ね」

ツバキ「え!?俺なんか約束したっけ!?」

ラム「ラムがさっき心の中で決めたわ」

ツバキ「子供か!いや子供でもっとマシなこと言うわ!」

ラム「それで?紅茶はいるの?」

ツバキ「いるけども…」

そんなふたりの不毛なやり取りを見てレムは。

レム「確かに…考えすぎだったのかもしれませんね」

ラムがレムの方を向き、手招きをした。それを見たツバキもレムに笑顔で向き。

ツバキ「レム」

泣きそうになるのを堪えながらレムはこれまでツバキには見せた事がなかった心からの笑顔で応じた。

 

ツバキ「あぁぁぁぁぁ!!!!!!」

白狼「待てぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

ツバキ「待て言われて待つやつがいるかぁ!」

白狼「いいからとまれぇ!無理して魔力使ったせいであの後だるさと倦怠感やばかったんだからぁ!!」

ツバキ「だるさと倦怠感は一緒じゃ…」

白狼「殺す!こいつは殺さないとダメだぁ!!!」

ツバキ「ちょぉ!?なんか混じってる!なんか混じってる!」

白狼「逃げんなァァァ!!!」

ツバキ「レム!ラム!助けて!殺される!いや食われる!」

ラム「レム私達は夕食の準備をしましょうか」

レム「はい、分かりました。ツバキくんはまだ怪我人ですから優しく栄養たっぷりのを作ります」

ツバキ「すごくありがたいんだけどその優しさ今ちょうだい!?」

白狼「覚悟しろォォォ!!」

ツバキ「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

ベアトリス「うるっさいかしらァァァァァ!!!!!」

白狼、ツバキ「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ツバキ「そういや…ベアトリスもいたわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レムはね、可愛いよねいいね?洗脳


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異世界生活五日目、村クエ周回

ほんとにご好評いただき有り難き幸せでござる。
前回次回予告のコーナー忘れてました、すみません。
今回は予告します、多分ツバキとレムとラムが出ます。
それではどうぞ。


レム「ツバキくん、朝です起きてください」

ツバキ「ん…分かった」

俺は結構朝はすんなり起きれる方だとは思うが目の前のレムは自分からかなり朝早く起きれるのでほんとにすごいと思う。

ツバキ「レムってすげえな、なんで毎朝こんなに早く起きれるのかねぇ」

レム「レムは日課になってますから、なんともありません」

ツバキ「そういや…ラムまだ起きてねえ?」

レム「姉様は基本毎日お寝坊ですので」

ツバキ「それダメだろ」

レム「そこが姉様の素敵なところです」

ツバキ「何をどう解釈したってダメな所だからね?」

レム「そう言えば今日は姉様とツバキくんと3人で村へ行くので早めやることを終わらせましょう」

ツバキ「村?村ってこの辺にあるの?」

レム「はい、ロズワール様が治めるロズワール領内に村がひとつあるのでそこの様子を見に行きます」

ツバキ「そうか…、じゃあとっとと機嫌斜めなラム叩き起して行くか」

レム「そうですね、そうしましょう」

 

レム「ツバキ君、前からおもっていたのですが…少し猫背ですか?」

ツバキ「…やっぱりそう思う?」

レム「かなりはっきり見て取れるので…」

ツバキ「癖かもな…治した方がいいかな?」

レム「いえ、その方がツバキ君らしくて素敵です」

ツバキ「褒めてる?」

レム「はい、すごく褒めてます」

ツバキ「そうか…ならいいけど」

レム「ツバキくん」

ツバキ「どした?」

レム「ふふっ…なんでもありません」

ツバキ「なんだよそれ」

こうしてレムと自然に会話出来ているのが俺はすごく嬉しかった。

 

コンっ…コンっ

ツバキ「ラム?起きて…」

バタッ…

ツバキ「あがぁっ!?」

ドアをノックした瞬間に扉がものすごい勢いで開けられ、俺は顔面を強打した…犯人は言わずもがなである。

ラム「あら、ツキなにをのたうち回ってるの気持ち悪い」

ツバキ「確信犯が…、朝っぱらから辛辣だな」

ラム「ラムはいつだって優しいわ、なにを言っているのツバキ」

ツバキ「今の行為に俺は優しさなんて微塵も感じなかったけど!?」

ラム「あら?この間ツキを泣き止ませたのは誰かしら?」

ツバキ「卑怯だ…」

ラム「ラムに弱みを握られたのが運の尽きよ」

ツバキ「お前、ほんとにメイドか…」

レム「そこが姉様の素敵なところです」

ツバキ「致命的な欠点でもあるがな…」

 

ラム「あいかわらず憎たらしい程に手際がいいわねツキ」

ツバキ「褒めてんの?」

現在、3人で厨房に立ち自分達の分の朝食とベアトリスの分の朝食を作っているところだ。

ラム「調子に乗るんじゃないわ、死になさい」

ツバキ「なんでそっから即刻死刑宣告になるの!?」

ラム「ツキ、なんでも自分の主観で価値観を決めるのは良くないわ、ラムの価値観はラムの主観よ」

ツバキ「前半と後半で話が矛盾してますよー」

ラム「…頓死しろ」

ツバキ「怖ぇよ!」

レム「ツバキくん、手が止まっています」

ツバキ「あ、悪い」

ラム「ツキ、なにをぼーっとしているの」

ツバキ「あんたが言うな」

 

ベアトリス「お前、まだ居たのかしら」

ツバキ「なに?出ていって欲しいと?」

ベアトリス「…お前が来てからあの精霊がしょっちゅうベティーの所へ来るのよ」

ツバキ「白狼が…、あいついねえと思ったらベアトリスのとこ行ってたのか」

ラム「ベアトリス様、お言葉ですがツキが来てからラムとレムの仕事の能率は上がっています。そして何よりラムが楽を出来ています」

ベアトリス「今、聞き逃せないセリフがあったかしら」

ツバキ「最後の方絶対皮肉だろ」

ラム「ハッ!」

ツバキ「これこれ、お食事中ですよー」

ベアトリス「そう言えばお前のとこの精霊、変化能力があるみたいなのよ」

ツバキ「え?なにそれ?」

レム「1部の精霊は姿を変えて本来の力を発揮するタイプもいるんです」

ツバキ「ほー…でも昨日の時点でまだ変わってなかったような…」

ベアトリス「昨日は変化していなかっただけの話なのよ」

ラム「自由自在に変化出来る精霊もいれば変化したまま戻れない精霊もいるのよ、精霊と契約しているならそれくらい覚えておいて損は無いわ」

ツバキ「了解…、ご馳走様でした(珍しくラムが親切だったな)」

ラム「今のを親切と捉えるなんてツキは幸せね」

ツバキ「だから心読まないでくれます!?」

レム「ツバキくん、先に掃除を始めて貰って構いませんレム達もすぐに行きます」

ツバキ「分かった、…洗い物してから行く」

レム「ありがとうございます、ツバキくん」

ツバキ「んじゃな」

 

ツバキ「はー…相変わらず広いな」

なんとか掃除、洗濯含めて午前中に終わりそうなのは広いのと大変なのは変わらない訳で。

ツバキ「村か…どんなとこなんだろうな」

どんな用事があって村に行くかは分からないがこの世界に来てから引きこもりとピエロと天然王様候補と猫妖精と狼精霊と毒舌メイドと優しさ溢れるメイドに囲まれて来たもんだからいい加減に普通の人に会いたい。

ツバキ「よし…掃除終わりっと…」

ラム「ツキ」

ツバキ「ラム?掃除は?」

ラム「終わったわ、レムが洗濯物を干している間に荷物を積み込むわよ」

ツバキ「げ、荷物あんのか」

どうせ今回もいつだかと同じように俺が引くんだろうが…前回と違いマナを使えるのは有難い。

ラム「ツキ、行くわよ」

ツバキ「へいへい…」

 

ツバキ「うへぇ…多い」

目の前には山と積まれた袋があった、どうやらこれを持っていくつもりらしい。

ラム「この辺りでは売っていないものを王都で私達が買って村に売りに行くのよ」

ツバキ「あー…そういうことか、納得した」

ラム「それじゃ荷物を運び込むわよ、ツキ」

ツバキ「ラム、お前は?」

ラム「働くツバキを眺めながら紅茶を嗜むわ」

ツバキ「さいでっか…」

ツバキ(毎度の事ながらなんでラムが姉なんだ…レムが普通姉だろ)

ラム「…ツキ、手が止まってるわよ」

ツバキ「そっくりそのまま返す」

 

レム「ツバキくん、すみません。任せてしまって」

ツバキ「いや、いいよ。悪いのはあそこで紅茶飲んでるお宅の姉様だから」

ラム「ツキ、まるでラムが悪いかのように言うのは心外ね」

ツバキ「いやお前がわりーよ」

レム「それでは…ツバキくん、引っ張るのお願い出来ますか?」

ツバキ「はいはい、まかせろ」

俺は二輪車を引っ張り、村への道を辿った。道中、ラムの紅茶をすする音がイラついてしょうがなかったが心の中に留めておいた。

 

しばらく進むと村のような物が見えてきた。

ツバキ「レムあれが?」

レム「はい、ツバキくん」

ツバキ「ほー…」

ラム「ほら、あとひと踏ん張りよ。頑張りなさい」

ツバキ「ほんっとに今日は一段と辛辣で理不尽だな!」

ほんとに今日のラムは言ってることがめちゃくちゃである。

レム「そこも姉様の素敵なところです」

ツバキ「レム、ポジティブだなぁ…」

 

村へ近づくと村長と思わしき、老人が付き人数人を連れて歩いてきていた。

村長「これはこれは…使用人様方わざわざ遠いところご苦労様です」

レム「いえ、これも私たちの仕事のひとつですので」

村長「ところで、そこの青年はどなたでしょうかね?」

ラム「近頃、入りました奴隷でございます」

ツバキ「違います、使用人のツバキです」

村長「ほっほっ、そうですか…わざわざ疲れたでしょう?ゆっくりしていってください」

レム「でしたらお言葉に甘えさせて頂きます」

ツバキ「いいのか?」

ラム「わざわざ言ってくださっているのだから断ったら悪いでしょう」

ツバキ「そうか…」

ふと、後ろに嫌な気配を感じた

ツバキ「…!なんだ…」

レム「レムも感じました」

ラム「ラムもよ」

ツバキ「先に行ってろ、見てくる」

レム「気をつけてください、何がいるかは分かりません」

ラム「何かあったら空に魔法を打ち上げて知らせなさい」

ツバキ「分かった」

 

レム達が先に村へ入っていったのを確認して、俺は索敵を開始した。

気の所為だったのか、はたまた村へ紛れたのか、それとも村の住人だったのか、じっくりと索敵したがそれらしい人影は感知できなかった。

ツバキ「これ以上は時間の無駄か…」

俺は村人にラム達がどこにいるかを聞き、向かった。

ラム達は村長の家にお邪魔していた。

ラム「あら…早かったのね」

レム「どうだったんですか?」

ツバキ「なんもない、怪しいものすら人影もな」

村長「どうかなされましたか?」

ツバキ「話した方が…いいか?」

村長「無論他の者に口外はしません故」

ラム「ツキ…いいわよ、話して」

俺達は先程の怪しい気配について村長に説明をした。

村長「そう言えば…最近子供達が妙な話をしていましたな」

レム「どんな話なんですか?」

村長「知らない子が村に居ると言う子が何人かいて、夕暮れになると知らない間にどこかへ行って次の日の昼過ぎになるとまた居ると」

ツバキ「知らない子供?…そんな気配じゃなかった気がするが」

村長「今日も先程までいたそうですがあなた方が来ていなくなってしまったそうです」

ラム「ラム達が来てから…」

レム「村長さん、一応気をつけておいてください」

村長「はい、承知致しました」

ラム「では、私達はこれで」

村長「はい、わざわざありがとうございます」

ツバキ「それでは…また」

 

村への帰路の途中

レム「姉様、魔獣達が少し騒がしいようです」

ツバキ「なんかなぁ…ちょい前ぐらいからか?」

ラム「この間ツキも似たような事を言っていたわね」

ツバキ「もっぺん索敵してみるか…」

俺は索敵を開始した、その直後すぐ近くに殺意の気配がした。

ツバキ「っ!…伏せろ!」

俺はレムとラムの体をその場に伏せさせその場にしゃがんだ、俺達の上で斬撃が飛び台車の上の部分が切れる。しゃがんでいる俺達の上に黒マントが飛び上がる、ナイフを振り下ろす。

ラム「ツキ!」

ツバキ「分かってる!」

俺はそれを剣で受け止め弾き返す。

レム「ツバキくん!」

ツバキ「!」

俺は横にずれそこにレムが電光石火で拳を腹部にたたき込む。

レム「はぁぁ!!!」

黒マントは木に叩きつけられたがまだ向かってくる。

ツバキ「手出し無用!」

俺は飛び出し、黒マントのナイフを剣で受け止めがら空きの腹部に電撃の一撃を叩き込んだ。黒マントは呻きながら倒れ伏した。

ラム「殺したの?」

ツバキ「なわけねぇだろ、電撃で気絶させただけだよ」

ラム「なら起こしなさい、聞きたい事があるから」

ツバキ「分かった」

俺は雷で加速した拳を黒マントの腹部に叩き込む。

黒マントは意識を取り戻したのを確認して俺は首に剣を突きつける。

ツバキ「死にたくねぇなら聞かれた事応えろ」

黒マントは頷かない。

ラム「誰の差し金か答えなさい、さもなくばここで…」

すると黒マントは不意にへっ…と笑った。黒マントの体内で急速に膨れ上がる何かを感知した俺はラムとレムを抱え後方へと飛び上がる。

すると黒マントの体は破裂し、周囲には血はもちろん臓物や異物が散らばった。

ツバキ「自爆か…、くそ」

レム「魔女教…」

ラム「いえ、違うわレム、魔女教ならばもっと大人数で来るはずよ」

ツバキ「どちらにしても最悪だ、ラムの予想が当たっちまった」

レム「これだけで済めばいいのですが…」

ラム「そう上手くはいかないでしょうね」

ツバキ「警戒はしとくか」

レム「屋敷に戻りましょう姉様、ツバキくん」

ラム「そうね、戻りましょう」

 

その後晩飯を作り終え全員が風呂に入り終え、3人で話していた。

ツバキ「特に…変わった様子はなしか、相変わらず魔獣達が騒がしいが…」

ラム「そうね…、村の子供も関係性はないようには思えないわ」

レム「ツバキくん、明日レムと姉様でもう一度村へ行きます。ツバキくんはここに残って屋敷を」

ツバキ「分かった、任せろ。気をつけてな」

レム「はい」

ラム「今日はもう寝ましょう」

ツバキ「それじゃ…おやすみ」

 

 

ツバキ「…白狼、いたのかよ」

白狼「そりゃぁ…あんたの精霊だし」

ツバキ「お前は?どう思う?」

白狼「怪しいとは思う、近々何か起きそう」

ツバキ「俺もだ、とりあえずお前も警戒はしとけよ」

白狼「分かってるわ、それじゃもう寝るわおやすみ」

ツバキ「おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼロ風次回予告のコーナー
レム「今回初登場です!レムです!よろしくお願いします!」
ツバキ「おおなんかレム元気だ」
ラム「前回があれだったからきっとそうね」
ツバキ「中の人が痛恨の次回予告忘れるというねあれね」
中の人「私も疲れました」
ラム「サラッと入って来ないで、あとラムはいつになったらツキより料理が出来るように設定改変してくれるのかしら?」
ツバキ「あんたが努力せえや」
レム「姉様は料理が苦手ですから仕方がないです」
中の人「話がそれてるんですけど?早く次回予告して疲れる」
ツバキ「お前もう包み隠さねえな」
レム「では次回は」
魔獣使いの少女
中の人「テストぉぉぉ!!!!」
ツバキ「今の通りだ、次回遅れるかも」
レム「ではまた次回お会いしましょう」
ラム「ツキの腕を切り落とせばラムの方が…」
ツバキ「何怖いこと考えてんだ!」


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異世界生活六日目、たとえこの手が血濡れても

連続投稿です、はい。
次回の投稿はバンドリになると思うのでね期待しないで待っててちょ



ツバキ「……起きたのか俺は」

レムが起こしに来る前に起きるという事は相当早い時間帯かと思う。

ツバキ「着替えるか…、とりあえず」

そうして俺はいつも通り用意された使用人服に着替えて適当に腰掛けた。

ツバキ「何も異常はなしか…、でも変わらず魔獣達が変だな」

確かに普段バラけている魔獣達が一斉に集まっているのは変だが俺の考えている事はそうではなかった。昨日のあの襲撃の時、殺そうと思えば殺せた。殺さなければ下手をすればやられていたかもしれない。でも殺せなかった、自分を汚すのが嫌だから?怖いから?それとも…俺自身の甘さか…はたまたその全部か。でも、覚悟はしているああいう連中とやり合うのは今回が最後ではないだろう、これから先何度もあるかもしれない。だからこそ、俺は甘さを捨てなければならない。

それは…決して簡単な事ではない。

コンコン…

ツバキ「どうぞ」

レム「ツバキくん、今日はもうお目覚めに?」

ツバキ「なんか早く起きちまってな」

レム「そうですか、あまり早く起き過ぎても体に毒ですから明日はしっかりと寝てくださいね」

ツバキ「はい、分かりました…。ラムは?」

レム「まだお休みです」

ラム「ついさっき起きたわ」

ツバキ「なんだ今日全員早いな」

ラム「むしろ、ぐっすり寝れているのはそこの犬ぐらいよ」

ツバキ「狼なんですけどね。そこ別にどうでもいいか」

そう未だに俺の肩で器用にぐっすりと寝ている白狼は起きる気配はない。

ツバキ「忘れてたけど姿を変えるってなんだ?」

昨日、ベアトリスが言っていた変化は未だ見られない。

ラム「ただ単に姿を変えていないだけでしょう?気にすることないわ」

レム「いずれ見れるでしょうし大丈夫ですよ」

ツバキ「まぁ…そうか、それじゃ今日も一日頑張りますか」

レム「はい、ツバキくん」

 

その後、色々全て終わらせたレムとラムは村へ向かう準備をしていた。

ツバキ「俺は行かなくていいのか?」

レム「はい、ツバキくんには屋敷を守って貰わないと」

ツバキ「いや、荷物とか」

レム「持ってくれる心持ちは女の子として素直に嬉しいです、でもちょっと様子を見てくるだけなので今回は大丈夫です」

ツバキ「そうか、とりあえず気をつけてな」

レム「ツバキくんもしっかり留守番お願いします」

ツバキ「あぁ、任せろ」

ラム「レム?準備は出来たの?」

レム「すみません、姉様。たった今終わりました」

ラム「そう、なら行きましょう」

ツバキ「んじゃ、ほんとに気をつけてな」

ラム「ツキに心配されるほどのことではないわ」

ツバキ「そうか、でもなんかあったら合図しろ」

レム「分かりました、ツバキくん。では行ってきます」

ツバキ「おう、行ってらっしゃい」

 

村へ向かう道中

レム「姉様、今の所魔獣達が特段不思議な動きをしているようではないです」

ラム「そう…でも油断は禁物よ、とりあえず村に来る謎の子供を見つけるわよ」

レム「はい、姉様」

 

屋敷では

ベアトリス「あの双子メイドはどこへ行ったのかしら?」

ツバキ「村へ行ったよ、なんでも気づいたらいる不思議な子供がいたらしくそれを探しに」

ベアトリス「いいのかしら?」

ツバキ「何が?」

ベアトリス「あの双子は2人でいるとやたら無茶をやらかすのよ」

ツバキ「あの二人ならそうそう負けねえだろ、合図出せって言ってあるし、万が一の事があればすぐに…」

ベアトリス「お前に、人が殺せるのかしら?」

ツバキ「………」

ベアトリス「図星なのね」

ツバキ「誰も殺さず勝つ、なんて力がある程自分は強くない事は俺が1番分かってる。でもいざとなると手が震える」

ベアトリス「典型的なのね。でもいずれはお前も手を汚さなければならない」

ツバキ「あぁ、分かってる」

ベアトリス「お前のその優しい性格は時に仇となるのよ、じゃなきゃ守りたいモノも守れないそのためには…」

ツバキ「甘さを捨てる…だよな?」

ベアトリス「その通りなのよ」

ツバキ「……」

ベアトリス「それがお前にとってどれだけ難しいかはベティーには関係ない、でもこれだけは言えるかしら」

 

ベアトリス「自分の都合を通して他人を守れると思ったら大間違いなのよ」

 

ツバキ「…っ!」

ベアトリス「ベティーが言えるのはここまでかしら、あとは自分で答えを見つけるのよ」

ツバキ「あ、待て。ベアトリス」

ベアトリス「何かしら?」

ツバキ「俺がどっちしても行くとして、屋敷に結界を張って守れるか?」

ベアトリス「可能なのよ」

ツバキ「そうか、んじゃ頼むわ」

ベアトリス「中途半端な覚悟で行くなら辞めておくのよ」

ツバキ「中途半端?、だからなんだ、殺せようが殺せまいがやる事は変わらない。俺はあいつらを守るだけだ」

ベアトリス「そう…、お前は馬鹿なのかしら」

ツバキ「あぁ、そうかもな」

ベアトリス「全く、好きにするのよ」

ツバキ「あぁ、させてもらう」

 

ラムとレムはその頃

村長「おや?昨日の今日で何事ですかな?」

ラム「実は昨日、我々が村から屋敷へ戻る道中襲撃を受けましたので注意喚起を」

村長「さようでございましたか、今の所だれが危害を加えられたいう情報はありませんが我々からも皆に伝えておきます」

ラム「もう1つ、昨日言っていた不思議な子供は今?」

村長「あ、先程居るという報告を貰いました、会いますか?」

レム「ええ、出来れば」

村長「分かりました、ではこちらへ」

 

レム達が村へ行くと何やら只事ではない騒ぎが起きていた。

村人「村長様!大変です!」

村長「何事か」

村人「子供達が森に迷い込んでしまったようなのです!」

村長「なに!?」

ラム「っ!?」

レム「子供の数は何人ですか?」

子供「あの…なんかあの子と一緒に3人ぐらい森に入って行っちゃった…」

村長「あの子とは…例の?」

子供「うん…」

ラム「分かりました、ラムたちにお任せ下さい」

村長「いけません!、今森は大変危険な状態です、御2方にもしもの事が有ればロズワール様に…」

レム「村の子供たちに何かあればレム達もロズワール様に示しがつきません」

村長「…っ!ですが!」

ラム「レム、行くわよ」

レム「はい、姉様」

そういい、ラムとレムは森へと向かった。

2人はツバキに合図を出すのをあまりの事態に忘れてしまっていた。

 

 

 

森へと向かったレムとラムは早速魔獣達と相対していた。

レム「姉様!子供達の場所は!」

ラム「もう少しよ、堪えてレム!」

ラムは千里眼を使って森じゅうを探しているが広すぎてなかなか見つからない。だが、護衛をしているレムの体力も無限ではない、現時点で余裕はあるが徐々に減り始めている。

その後数分してラムが子供達の居場所を見つけた。

ラム「見つけたわ、北東よ!。急がないと匂いを辿って魔獣達が」

レム「急ぎましょう、子供達が」

この時、ラムは2つの事実を確認した。

まずは例の不思議な子供がいない事、もうひとつは距離は離れているが確実に近づいている魔獣達がいることを。

レムとラムはツバキへの合図を忘れたまま子供達の元へ向かった。

 

この時点で、不運な事が2つある。

1つ目はレムとラムがツバキへの合図を忘れたまま子供達の元へ向かった事。2つ目はツバキが索敵をしていない事だった。

 

レム「いた!姉様!」

周囲には魔獣達の気配はない、だが迅速に済ませなければならない。

とにかくまずは子供達を安心させることが先だった。

レムとラムの姿に気づいた子供達はホッと安堵するかのように目から涙を流した。震え切った子供達をレムとラムが優しく抱き締めた。

ラム「怖かったわね…、もう大丈夫よ」

だが問題はここから、どうやって森の外へこの子供達を運びながら脱出するか。子供の数は3人、1人一人づつおぶっても1人余るため速度を合わせて進まなければならない。事態は最悪の方向へと進みつつあった。追い討ちをかけるかのように、レムとラムのいる方へ向かって来る魔獣達の群れ。

レム「姉様、子供達をレムが守ります」

ラム「今はそれしかないわね、行くわよレム」

魔獣達が姿を現した瞬間、レムとラムの同時攻撃で周囲には轟音が鳴り響いた。そしてその轟音によってようやく気づいた男がいた。

 

ツバキ「…っ!今のは!」

突如鳴り響いたわずかな音に気づいた俺はすぐに索敵を開始した。

音の方向を索敵するとレムとラムが既に大多数の魔獣達にかこまれていた。その後ろには村の子供たち、迷い込んでしまったようだ。

ツバキ「アホか、俺は…なんで気づかなかった!」

自分の無能さに舌打ちしつつも俺は屋敷を飛び出し、雷魔力を使い速度を上げて森へと向かった。

 

やはり森へ入ると予想通り魔獣達が襲いかかってくる。

ツバキ「邪魔だ…どけぇ!!」

俺はできるだけ早く到着するために、魔獣達の足を切り落としたり目を切ったり即座に戦闘不能に陥る傷をおわせる、追ってこないようにするためにはこれが1番早かった。

ツバキ「くっそ、キリがないな…。早く行かなきゃなのに…くっそ!」

斬りながら進んでいるが、やはり数が多すぎる。1人では切り抜けるのに余分に時間がかかってしまう。あともう1きづいたことがある、魔獣達には時間はかかるが再生能力がある、だから時間が経つと復活し結局数が減らない。

ツバキ「…くそ、まずい!」

そう思った時、視界の端から白い魔獣達と同じ大きさ位の狼が俺の前に割って入り周囲の魔獣達を蹴散らした。この純白の白い毛並み、見覚えがあった。大きさは全く違うが確かに間違いなく。

ツバキ「白狼?お前、白狼か!」

ベアトリスが言っていた、白狼の姿の変化はこれだったらしい。

白狼「なんで私を置いて行くのよ」

ツバキ「とりあえずその話はあとな、今は」

白狼「状況は知ってる、急ぐから乗って」

ツバキ「分かった、飛ばせ!」

俺は気合を込め、白狼の背中に跨った。

白狼「了解!」

 

レム「はぁっ…はぁっ…」

ラム「はあっ…はあっ…」

分かってはいた、予想通り魔獣達の全滅より早く自分たちの体力、魔力共にそこを突きそうだ。恐らくラムに関してはあと数発魔法をはなてば魔力切れを起こすだろう。レムに関してもそう遠くはなかった。

ラム「一か八か…、走るわよ!」

ラムが1人をおんぶし、レムが2人を抱え走り出す…が魔獣達に囲まれて進めそうになかった。

レム「そんな…」

ラム「レム、あなただけでも逃げて…」

レム「出来ません!姉様を置いてなんて!」

会話の時間すら待ってくれず奥に一際大型の魔獣が現れた。

レム「ここまで…ですか」

ラム「……ツキ」

 

ラム「ツキ…助けて…」

レム「…ツバキくん、助けてください」

死の間際漏れたラムとレムの本音、それを確かに聞いているのはと子供達そしてもう1人。

 

「雷月、月華の一線」

ラムとレムの周囲の魔獣達が横向きに真っ二つに切れる。だが後列の魔獣2匹が再び襲いかかってくる。

人影がラムとレムの前に立ち塞がり、魔獣達がその人影に向けて襲いくる。だが気づけば魔獣達の首と胴体がきっちり分かたれていた。

魔獣達が若干怯むが、すぐに威嚇を開始した。先程と違いすぐに襲いかかっては来なかった。やはり仲間達が尽くやられ、警戒はしているようだ。

「よぉ、お前らの相手は俺だ」

レム「そんな…どうして」

ラム「……なぜ…」

人影は振り返りいつも通りの優しげな表情を見せた。

ツバキ「悪いな、遅くなって…あとは俺がやる」

 

レム「そんな、どうやってここが…」

ラム「…合図は出してないはずよ」

ツバキ「どっかから俺に助けを求める声がしたんでな…」

ラム「真面目に答えなさい」

ツバキ「いきなり轟音がしたから何事かと思って来てみればこんな感じだよ」

レム「でも…どうして」

ツバキ「どういうこと?」

レム「レム達はつい1週間前に会ったばかりなんですよ、なのに…なぜ命を掛けてまで助けようとするんですか?」

ツバキ「何言ってんだ、俺はお前らに命拾われてんだ助けるのは当然だろ」

レム「ツバキくん…」

白狼「時間は掛けてられないわよ、早めに終わらせないと」

ツバキ「白狼、先に子供たちを村へ届けろ、俺はレムとラムを連れてあとから戻る」

白狼「大丈夫なの?」

ツバキ「心配すんな、レムとラムをここまでやったんだ…。容赦しねぇ」

白狼「そう…子供たちは任せて」

白狼は子供達を促すと背中に乗せて村へと向かった。

ツバキ「レム、ラム、動けるか?」

レム「いえ…まだ…」

ツバキ「分かった、しばらくそこでじっとしてろ」

俺は剣を一際でかい魔獣に向ける。

ツバキ「来いよ…、デカブツ」

すると一斉に俺目がけて魔獣達が襲いかかってきた。俺の姿が周りから見えなくなる位の密度で。

ツバキ「はぁっ!!」

俺は周囲に魔力の衝撃波を放ち蹴散らす、そして魔力を高め無双を開始した。

ツバキ「…やっぱりな、首と胴体を切れば完全に絶命するみたいだな」

その根拠は未だピクリともしない、最初に斬り伏せた2匹だ。斬っている時に感じた一際硬い管のようなもの恐らくそれを切れば完全に絶命する。管は硬いが今は剣の性能に感謝しかなかった。

しばらく切り続けていると大分数がバラけてきていた。魔獣の多くは逃げ出し、残っているのはデカブツとその他数匹。

ツバキ「はぁっ…後は…お前だけか」

俺は剣を納刀し構える。魔獣も腰を低くして構える。

合図はなかったが俺も魔獣も同時に飛びだし、間合いに入った。

まず、魔獣の両前足攻撃を躱し、噛みつきを上に飛び躱す。そのあと軽く足をついて鞘から思いっきり引き抜く勢いで首を切ったが皮膚が固く浅い、だが効いてはいた。少しだけ怯んだがそれだけで十分だった、剣に魔力を込め先ほどより威力を15倍くらいあげて放った斬撃は雷の筋を残して首どころか地面に斬撃の形のヒビが入った。その他数匹はそれ見て逃げ出した。

レム「ツバキくん!」

レムが目に涙を溜めて駆け寄ってくる、何故かこんな時でも不機嫌そうな顔のラムはとりあえず置いておいて。

ツバキ「レム…ラム…」

レムはツバキの胸に飛び込んだ。

レム「どうして…無茶し過ぎです!」

ツバキ「悪かったと思ってるよ…、でもこれで恩人救えたなら安いもんだよ」

レム「それは…レムだってツバキくんを殺そうとしました!なのに…なんで」

ツバキ「レムがもしもあの時本気で殺すつもりなら夜に寝込みでも襲って殺せば良かった、そうしなかったのがその答えだ」

レム「ツバキくん…」

ラム「ツキ、歩ける?」

ツバキ「あぁ、一応な」

白狼「戻ったわよ…ってこれは派手にやったわね」

ツバキ「ナイスタイミング、乗せてくれ」

白狼「分かってるわよ、ほら」

俺達は白狼の背中に跨り無事に森を脱出した。

そうして、俺は気づいたら眠ってしまっていた。

 

 

 

レム、ツバキが寝静まった頃。

ツバキの部屋。

がちゃ…

ラム「………」

ラムはコソコソしながらツバキが寝ているベッドに近づき、適当に椅子を見つけ、腰を下ろした。そうして…ツバキに身を寄せる。

華奢なその手でツバキの頬に触れる。するとツバキはなにやら安心したような表情をした。それがラムにとってはとても愛らしかった。

ラム「何なのかしら…、ラムのこの気持ちは」

ラムは自分でも不思議に思っていた、以前レムにやられて眠っていた時はこのような感情は抱かなかった。だからこそ、この感情が不思議でしょうがない。もう一度ツバキの顔を見る、この抑えきれない気持ちはなんだろうラムは考えるが一向に答えが出ない。このままずっと顔を見ていたい…ラムは自分が知らず知らずのうちに思っている気持ちに気づいた。

ラム「……まさかラムが…そんな事…」

このままここに居ては自分が何をするのか分からなくなったラムはツバキの部屋をあとにしようとする。だが気持ちがそれを許さない。

ラムは多少恥じらいながら近距離でツバキの顔を見つめた。

ラム「……キス…」

自分でも無意識に出た誰でも知っているその言葉、だがさすがにいきなりキスをするのは気が引けた。だから少し妥協して額にキスをした、気持ちに任せてキスをしたのでキスマークが着いていたらと少し焦ったが口紅を取っておいて良かったと心の底から安堵した。

ラム「もう…寝ましょう」

 

 

 

 

 

 

自分の気持ちに素直になれない女の子は1人の男の子に恋をしました。

 

自分の気持ちに素直な女の子は1人の男の子に恋をしました。

 

鈍感な男の子は自分が好かれていることに未だ気づきません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼロ風次回予告のコーナー
ラム「今回、ラムひとりなの?」
はいその通りです。
ラム「ツキやレムは…」
寝てます。
ラム「……はぁ…」
ところで先程までどちらへ?
ラム「少し…野暮用よ」
なんか顔赤いですけど大丈夫ですか?
ラム「き、気にしないでちょうだい、とにかく次回は」
第1章最終話
異世界生活7日目、タイトル未定
ラム「次回予告なのにタイトル未定ってどういう事?」
さてなんのことやらまた次回



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異世界生活7日目、守るべき者達

これ書いてる時に丁度、アクセス数5000、お気に入り77件行きました。
……ありがとおぉぉぉぉぉうござぁぁぁぁいます!!!!!
まさか高校生の自己満作品がここまで好評とは感謝感激雨霰です!
今後とも灰鳥をよろしくお願い申します!


ツバキ「ん…朝か」

恐らく…今日はベアトリスも部屋から出てきていない。

それに昨日は俺たち3人ともにボロボロだったので仕事はない…と思いたい。

ツバキ「起きるか…」

起きようとした時ふと違和感、横に感触…なんだろう。

ツバキ「……レム?」

これ違うよね?2人で夜を過ごしましたとかそういう流れちゃうよね?

やめてよ?まじでラムに殺されるからね?あれ?この子なんでいつものメイド服じゃないの?なんでネグリジェ着てるの?。

…と俺が目を半開きにしてパニクってると。

ロズワール「おーきたようだーねぇ」

ツバキ「そのセリフ聞くの丁度一週間ぶりだな」

ロズワール「私が不在の間よく屋敷を守り抜いてくれたーね?」

ツバキ「いいって命拾ってもらったんだし」

ロズワール「そうかーね?ところでこれはどういう状況かな?」

ツバキ「え?待って?レムだけじゃない?」

ロズワールが視線を俺の腹ぐらいに向ける。

ツバキ「…なんでラムが…」

見ると心地よさそうな寝顔で椅子に座りながら俺には体を預けているラムの姿があった。

ツバキ「なんで?二人ともどうしたん?」

ロズワール「鬼族は激しい戦闘のあとは非常によく眠るからーね、簡単には起きなーいよ」

ツバキ「俺動いても大丈夫?」

ロズワール「大丈夫だーよ、それと今日は本邸からメイドの応援を呼んであるからーね、2人にも起きたら今日は休みだと伝えてくれーて?」

ツバキ「分かった、なんか悪いな」

ロズワール「これで貸しはなしだーよ」

ツバキ「ふっ…そうだな」

ロズワール「わたしは自室にいるからなにかあったら言いたまえ」

ツバキ「分かった、ありがと」

ロズワールは片手を振り部屋をあとにした。

俺は着替え、ラムをベッドのレムの隣に移し毛布をかけ俺は椅子に腰掛けた。

ツバキ「よい…しょと」

俺は適当にカバンの中を漁り何かないかと探すと…。

ツバキ「君と私と妹…こんなん買ったか?」

マジで記憶が曖昧…と言うよりここに来てから色々と濃すぎてやばい。読んだことは…ないはずと言うより分厚い…読み切れるか微妙だ。軽くビッ〇マッ〇位の厚さがある。まぁ…暇なので読むが。

 

 

ベアトリス「お前…本を読むのね」

ツバキ「人並みにな、というかノックしろよ。びっくりしただろ」

ベアトリス「それよりもベティーはお前の部屋のベッドで双子メイドが寝ている方がびっくりなのよ」

ツバキ「そりゃまあ気づいたらな、その目やめろ」

ベアトリス「足を見せるのよ、ヒビが入っていたかしら」

ツバキ「ん?そうなのか…、そうだわ」

俺は確認すると確かにヒビが入っていたかなりデカめの。

ベアトリス「よくそれで歩き回ったのよ」

ツバキ「治せるのか?」

ベアトリス「ベティーを舐めない事ね、御茶の子さいさいなのかしら」

ツバキ「じゃ、よろしく」

ベアトリスはかがみ、手をかざす。

ベアトリス「お前の覚悟はそれなのかしら?」

ツバキ「さあな…まずあれに関しては不可思議な点が幾つかあるしまだ油断は出来ないけどな」

ベアトリス「不可思議な点?なにかしら?」

ツバキ「後でロズワールにも話すけどまずは不思議な子供、結局分からずじまいだったからな」

ベアトリス「恐らくそれは魔獣使いなのよ」

ツバキ「魔獣使い?」

ベアトリス「その名の通り魔獣を操るのよ、意のままに…洗脳に近いかしら」

ツバキ「なるほどな…子供だぞ?でも」

ベアトリス「世の中にはどうしようもないクズがいるのよ、幼い子供を連れ去って洗脳を教えこみ、自分の命令通り動かすなんてわけないのかしら」

ツバキ「また来るか…?」

ベアトリス「今回に限ったは興味本位に子供の独断で来た気がするのよ、だからしばらくは来ないかしら。それにお前がこの森の半分以上の魔獣を殺したからなのよ」

ツバキ「俺そんなやったか…」

ベアトリス「次は何かしら?」

ツバキ「もうひとつは…あの黒マントだ」

ベアトリス「屋敷を彷徨いていたやつかしら?それなら恐らくあの子供の仲間なのよ」

ツバキ「なるほど連れ戻しに来た的な?」

ベアトリス「子供を迎えに来た親に近いかしら」

ツバキ「どの世界に刃物ぶん回して襲ってくる親がいんだよ」

ベアトリス「居ないことはないんじゃないかしら?」

ツバキ「いて欲しくねえよ」

ベアトリス「もし双子の姉がお前と結婚でもすればお前にそうなるかもしれないかもなのよ」

ツバキ「ないだろ、…ないよな?」

ベアトリス「突っ込むところが違うのかしら、はい…終わったのよ」

ツバキ「サンキュ…よし」

足の完治を確認し、俺は扉を開ける。

ベアトリス「礼は要らないのよ」

ツバキ「借りは返す主義だからムリだ」

ベアトリス「この借りはでかいのよ」

ツバキ「精一杯働かせて頂きマース」

ベアトリスは部屋をあとにした。

 

 

ツバキ「…にしても…よく寝るな」

あれだけ喋っておいたけど未だに心地いい寝息をたてながら仲良く眠る2人を見て俺はそう呟いた。にしても…この2人。

ツバキ「改めて見るとめちゃくちゃ可愛いな」

姉妹で胸囲の差はあれど二人ともめちゃくちゃ可愛い。

胸囲の差とかいったらマジでラムに粉にされるから俺の胸にとどめておくが、よく俺理性保てるなと。元々女性に興味が無い訳では無いが、そういう事に関しては無関心だったのを覚えている。

ツバキ「………」

もし俺がまともに生きていて、この世界に来て二人と出会ったら俺は惚れていただろうか?ふとそんなことを思う。だがそれを知るのは不可能だ、そんな事は自分の空想でしかない。知る事は出来ないけど知ろうとすることが出来る、俺は多分2人が好きだ。だからこそ失いたくはないし、守りたい。

ツバキ「もう…失うのは嫌だな…」

守れなかった辛さ、守れなかった弱さ、守れなかった無力さ、死にたくなる程味わった、だからもう…二度と味わいたくはない。俺は2人の手を握る。

ツバキ「お前らは俺が守る、絶対に…」

絶望に負けるのは…もうゴメンだ。

 

レム「……ここは…は!」

昨日…何故かツバキの部屋へ行ってそのまま気持ちのままベッドへ潜り込んだ事を思い出したレムは隣を振り返る。

レム「…姉様?」

隣には心地いい寝息をたて眠っているラムがいた。

レム「ここは…ツバキ君の部屋、なのになんで…姉様が…」

レムは落ち着いて周囲の状況を確認する、昨日ベッドに潜り込んだ時点でツバキは寝ていた、ラムもいなかった。だが今ベッドにはツバキではなくいなかったはずのラムが寝ていて、ツバキはベッドにはいなかった。ふと見ると…ベッドの横の椅子に顔を俯かせて腰掛けるツバキが見えた、よく見ると一定のリズムで体が上下している。寝ているようだった。

レム「…大丈夫ですよね?」

レムは隣のツバキの手に触れる、すると手にしていた本がゴトンと音を立てて落ちる。

レム「あっ!」

ツバキ「ん……レム?」

レム「す、すみません!起こしてしまいましたか?」

ツバキ「いや…こっちこそ起きちゃったか…」

レム「い、いえ…姉様はまだ寝ています」

ツバキ「そうか…レム?」

レム「はい?」

ツバキ「なんか顔真っ赤だけど大丈夫?」

レム「え?」

レムは自分の顔を左手で触る、熱い…熱があるという熱さではないもっと違う何か。

ツバキ「おーい…もしもしー?」

ツバキはぼーっとしたレムの前で手を左右に振る。

レム「はっはい!!」

ツバキ「大丈夫か?まだ寝てた方がいいぞ?」

レム「そ、そうですね!じゃあお言葉に甘えさせて頂きます」

そうしてレムは物凄い勢いで布団に潜った。

これが赤面を隠すためだとはツバキは知るはずもなかった。

 

 

ラム「……レム?」

時刻は昼近く、ラムは目を覚ました。

ラム「確か…昨日は」

ツバキの顔を1度見に来て、部屋に戻りかけてまたツバキの部屋へ戻り椅子に腰掛けて眠ってしまっていたはず…。

ラム「ここは…」

ツバキ「俺の部屋、ラムここで寝てたんだよ」

ラム「ツキ…」

ラムは椅子に腰掛け、珍しく眼鏡を掛けているツバキを目にした。

ラム「どうしてラムはベッドに…まさか…」

ツバキ「アホか、んな訳ないだろ」

ラム「確証は?」

ツバキ「しないから、女の子を座ったまま寝かせる程俺は最低じゃないからな」

ラム「……っ!」

ツバキ「何驚いてんの…」

ラム「いえ…別になんでもないわ」

ツバキ「どうする?起きる?」

ラム「起きるわ、様子を見る限り本邸から応援が来ているようだし着替えてくるわ」

ツバキ「そ、戻ってくんの?」

ラム「ツキがレムを犯さないとは限らないから」

ツバキ「失礼な」

ラム「はっ!…」

ツバキ「鼻で笑いやがった…」

 

ラム「レムは無事でしょうね?」

ツバキ「マジでやめろ」

ラム「油断は禁物よ」

ツバキ「ったく…というか結局そのメイド服なんだな」

ラム「これが1番しっくりくるのよ、ツキもいずれ分かるわ」

ツバキ「そんなもんかね」

ラム「そんなものよ、ツキ…眼鏡かけるのね」

ツバキ「ん?あぁ…本読む時は基本コレだ、目が痛くなるからな」

ラム「ツキ…本を読めるのね」

ツバキ「舐めてんのか…」

ラム「ええ、もちろん」

ツバキ「言葉で伝えるのは悪い事ではないけど時と場合によるぞー?」

ラム「ツキ、詳しい事をロズワール様には報告した?」

ラムは俺が座っていたソファの少し開けた隣に腰掛けた。

ツバキ「まだだよ、ベアトリスには一応話した」

ラム「そう…子供の人数はやはり一人いなかった、いなかったのが…」

ツバキ「不思議な子供…ベアトリスの見解は魔獣使いか…」

ラム「魔獣使い…その可能性は無くはないわね」

ツバキ「そういえばやけに統率が取れてたな、あの魔獣…」

ラム「ウルガルムよ、基本は群れで行動するけれどあそこまで統率が取れているのは魔獣使いの仕業と見て間違いないでしょう」

ツバキ「そうか…あとは、黒マントの奴か…」

ラム「あの時襲って来たのは傀儡ね、かなり高度だわ」

ツバキ「傀儡?なんだそれ?」

ラム「人間の死体に魔力を宿して自分の意のままに操れる…傀儡魔術、ルグニカの指定禁忌魔術よ」

ツバキ「人の死体を…」

ラム「自爆させるのも可能、だからあれはおそらくそれね」

ツバキ「そうか…結局の所、根本的な原因は何もかいけつしてない…か」

ラム「ツキはよくやったわ、何よりラムとレムの命を助けてくれたもの」

ツバキ「あぁ…」

ラム「ツキ、もう少しこっちへ来なさい」

ツバキ「ん?…っておわ!?」

ラムが俺の頭を無理やり引っ張り自分の膝の上に載せる。

ツバキ「やるならやるで普通に行くのになんでそんな無理やり…」

ラム「ねぇ…ツキ」

ツバキ「なんだよ?」

ラム「昔話をしていいかしら?」

ツバキ「唐突だな…どうぞ」

ラム「昔昔、ある所に青鬼と赤鬼がいました。人間たちは鬼を怖がりますが、赤鬼は彼らと仲良くなりたいようす。そこで赤鬼と仲の良い青鬼は、自分が暴れて嫌われものになることで、赤鬼を人間の味方として活躍させることに。赤鬼は人間たちと仲良くなった一方で、青鬼は居場所がなくなり旅に出ます。赤鬼は青鬼を思って涙を流しました。」

ツバキ「それで?」

ラム「ツキ、あなたはこの話を聞いて赤鬼と青鬼どちらが愚かだと思う?」

ツバキ「…難しいな、青鬼は自らを悪として、赤鬼は自分でやったじゃないにしろそれで人々と仲良くなる事ができた。でもその代わり青鬼と赤鬼は離れ離れになってしまった…、二択だな…」

ラム「聞かせてちょうだい?」

ツバキ「人々の仲良くするのを取るか、それとも今までずっと一緒にいた青鬼を取るか…。要するに未来をとるか、過去をとるか」

ラム「そうね…珍しい答えだわ、ツキはどちらを選ぶの」

ツバキ「俺は…どっちも選ばないかな」

ラム「は?」

ツバキ「まぁ聞け、人々と仲良くするのを諦めて2人寂しく生きていっても後悔する。人々と仲良くする方を選んでも青鬼を思ってその悲しみを背負って生きていかなければならない」

ラム「……」

ツバキ「どちらにしても苦しむなら俺は3つ目の選択肢を見つける、それが駄目なら4つ目、5つ目と俺は絶対に後悔しない選択肢を探し続ける」

ポタ…ポタ…

ツバキ「ラム?」

ツバキの顔に水滴が垂れる、それは無表情のラムの瞳から流れる涙だった。

ラム「馬鹿な答えだわ…ツキ」

ツバキ「だろうな、自分でもどうかと思うよ」

ラム「…うっ…」

ツバキ「ラム…?」

ラム「なんでもない…から、心配しないで…」

そこにはいつもの冷静で毒舌で辛辣で理不尽なラムはいなかった、そこには過去を背負う悲しみの涙を流しているラムがいた。

ツバキ「なんでもないわけないだろ…」

俺はラムを抱き締めた、ラムはいっしゅん戸惑うがやがて胸に顔を押し付けた。

ラム「お願い…少し…こうさせて」

ツバキ「分かってるよ、俺だってラムにこうさせて貰ったしな」

ラム「そういえば…そうだったわね…」

ツバキ「お前とレムに何があったかはまだ聞かねえよ、でもな…ぶっちゃけそんなのどうでもいい、お前らが青鬼だろうが赤鬼だろうが俺のやる事は変わらない」

ラム「…なに?」

ツバキ「ほっとけないんだよ…なんか、お前らが。自分でもよく分かんないけど」

ラム「ツキらしいわね…」

ツバキ「ちょっと馬鹿にしてない?」

ラム「ちょっとじゃないわ、かなりよ」

ツバキ「あっそ…、多分な俺はお前ら2人が好きなんだと思う」

ラム「それは…告白かしら?」

ツバキ「いや…まだ俺がお前らを本当に好きかは分からない、ただ放っておけない。それだけで好きかはわかんないからな」

 

ツバキ「だから、俺がお前らをちゃんと好きになれたらその時はちゃんと告白する」

 

ラム「そう…頑張りなさい、ラムに相応しい男になるにはハードルは高いわよ?」

ツバキ「頑張るよ、俺だって振られるのはやだからな」

 

俺は…もう失わせない、俺の目の前から二度と失わせない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リゼロ風第1章振り返りのコーナー
ツバキ「という訳で!第1章ここまで第1章です!」
ラム「随分長い第1章ね、作者は何を考えているのかしら」
レム「長い分ツバキ君と一緒に居られる時間が長いのでレムは嬉しいです!」
ツバキ「ありがと、レム」
ラム「…ツキ、今回は議題があるそうよ」
ツバキ「議題?なになに?」
レム「えっと…スバルどうなったの?」
ごふぁっ!!!
ツバキ「作者が血を吐いて倒れた!?」
ラム「ダメね、調子に乗って投票を募集したらまさかの1票しかなくて判断しかねた馬鹿ね」
がはぁっ!
レム「大丈夫です!最近はアクセス数も増えてきています、感想は増えていませんが…」
ごフゥ!!
ツバキ「やめて!作者のライフはもうゼロ!」
ラム「それで?どうするのよ?」
ツバキ「とりあえず…もうちょい期間とる?」
レム「それしかないのでは…」
ツバキ「それしかないか…」
今後の予定だ…受け取れ…がはっ!
ツバキ「あんのかよ…なになに?」
第二章、二部構成
一部、女の意地、レム編推定8話
二部、女の意地、ラム編推定8話
ツバキ「時間稼ぎにしちゃ随分と長いな…」
ラム「全部で16話、恐らく2月頃に全て終わるわね」
レム「かなり先延ばしにしますね…」
ツバキ「しょうがないだろ…」
ラム「それで今回はここまでね」
ツバキ「待て待て待て!今回一応第1章の振り返りじゃ…」
ラム「そんなものはないわ」
ツバキ「はぁ!?」
レム「次回はレムが主役です!ぜひ読んでくださいね!」
ツバキ「待って!」
ラム「では…また次回で」
ツバキ「終わるの!?」


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序章 後編 人を外れる領域
子供だからといって侮ってはいけない


おそくなりもうした


レム「ツバキくん、ツバキくん…起きてください、ツバキくん」

ツバキ「レム…頼むから、あと5分でいい…」

レム「ダメです、ツバキくんはお寝坊さんですから。もう一度寝てしまうと起きませんから」

ツバキ「う…確かにそうだけど…しゃーない、起きるか…」

レム「レムは台所へ行きますので、姉様を起こしてきてくれますか?」

ツバキ「うーい、りょうかーい…」

レム「ではツバキくん、また」

ツバキ「おう、またな」

 

ツバキ「あれから、もう3ヶ月か…」

ラムの部屋への道を辿りながら俺はふとそんな事を思った。

俺がこの世界に召喚されてから3ヶ月が経過した。

最初の1週間だけでなく、それからもいろんなことがあった。

エミリアが正式に王戦立候補を表明して忙しくなったり、エミリアの騎士代理で俺が行く話が出てたり、村の子供のペトラという娘がロズワール邸で働く事になったりと色々とあった…。長くて、でも何故か過ぎてしまえばあっという間に感じて…レムやラム達との距離もだいぶ詰まってきたし、この世界でやっていけてると思う。

これからしばらくは王戦に関する具体的な動きはまだ無いものの、しばらくするととても忙しくなったり、俺とラムとレムとエミリアで王都まで行って式典とやらに参加しなければならないらしい、先の事を見据えると、まだまだこれからだ…という感じだ。

 

ラムの部屋へ行くとちょうどラムが部屋から出てくるところであった。

ツバキ「今日は早いんだな、いつもだったらあと30分ぐらい遅いのに」

ラム「ラムをいつまでも同じに思わない事ね、ラムは日々学んでいるのよ」

ツバキ「じゃあせめて、料理上手くなってくれません?」

ラム「蒸かし芋なら任せなさい、ラムは得意よ」

ツバキ「だろうね、だってそれ3ヶ月前も言ってたよね?」

ラム「そういう無駄な記憶力だけは褒めてあげるわ」

ツバキ「無駄って言ってる時点で褒める気ゼロなんだよな」

ラム「ラムが仮にツバキを褒めるなんてそんなおぞましい事があれば世界が滅ぶわ」

ツバキ「滅ぼさせねぇよ!そんなことで世界滅んでたまるか!」

3ヶ月たったが、ラムの言うことの理不尽さは日に日に増している気がする。うーん…俺ほんとにこの人の事好きか?。いや諦めるのはやいぞ!、ラムさんは心優しいし普通の女の子と一緒で寂しがりなんだ。

ツバキ「はぁ…仮にも俺、ラムに告白したのになんでかなぁ…」

ラム「あれがラム個人へのだったら…ラムは考えたかもしれないわね」

ツバキ「いや…だって…ね?、あれだよ…2人をほっとけないからあの場でああいう事を言ったのであってね?」

ラム「今のでラムがツバキに振り向くのはラムが死んだ後に先延ばしされたわ」

ツバキ「ちょっとー?おかしいよ!?」

ラム「何もおかしくないわ、ラムの公平なる寛大な価値観で決めたのよ」

ツバキ「公平なる寛大な価値観で決められたのが全部俺にとって不都合でラムにとって好都合なわけですが…不正を…」

ラム「ツバキ、あなたは今日レムの手伝いなしで買い物に行きなさい」

ツバキ「分かりました、これ以上言わないので許してください!」

ラム「靴を舐めなさい、それで許すわ」

ツバキ「そこまでしねえよ!」

ラム「冗談よ、許すわ」

ツバキ「さいでっか、それじゃ厨房で朝食で作るとしますかね…」

 

レム「流石ツバキくんです、手捌きが素晴らしいです」

ツバキ「レムありがと、今日は…買うものどれくらいあったりする?」

レム「そうですね、今日はしばらく行っていなかったので多いと思いますよ」

ツバキ「そうか、分かった」

ラム「足でまといになるなら竜車を使いなさい」

ツバキ「毎回思うんだけど、なんで移動の時俺が引かなきゃなの?なんで竜車じゃないの?」

ラム「決まっているじゃない、ツキが苦しんでいる所を見るためよ」

ツバキ「ドS…」

レム「レムはいつだって姉様の味方です!」

ツバキ「それ今言うととんでもない事になるからやめて!」

レムは姉様大好きフリスキーだからね、しょうがないよね、可愛いもんね。

ツバキ「よーし、終わった!」

朝食を作り終え少し疲れた様子のエミリアを心配しつつ、俺はレムを乗せた二輪車を引っ張り、王都への道を辿った。

 

レム「ツバキくん、怪我の様子はもういいんですか?」

ツバキ「さすがにもう平気、レムは?」

レム「ベアトリス様が定期的に見てくださったおかげで完治しました」

ツバキ「なんだかんだ優しいよな…ベアトリス」

レム「そうですね、ベアトリス様もツバキくんが来てから少しだけ変わったように感じます」

ツバキ「俺が来てからって言うよりは、白狼が来てからって言う感じだけどな…」

レム「そうでしょうか?」

ツバキ「実際多分屋敷のメンバーで話した時間が1番少ないのはベアトリスだぞ、俺は」

レム「確かに、扉渡りを頻繁に諦めているツバキくんは話した時間は少ないかもしれませんね」

ツバキ「ちょっとー?さらっと人をディスらないで?」

だってしょうがないじゃん!向こうはこっちが苦労しているのを楽しみながら優雅に紅茶飲んでるんだよ!?

レム「安心してください、レムはツバキくんの味方です!」

ツバキ「そう…よかった」

 

レム「何か、騒がしいですね…」

ツバキ「人が集まってるな…何事だ?」

王都の市場へついで買い物で回っているとなにやら騒がしい喧騒が聞こえてきた、怒鳴り合う喧騒は激しさを増していた。

レム「あれは…」

ツバキ「子供…じゃないか?」

レム「子供が…山賊に…」

見た感じ、ナイフを持った子供が山賊3人と相対していた。

レム「ツバキくん…あれは…」

ツバキ「あの子は…」

ナイフを持った子供のすぐ後ろにはぐったりとした様子の子供がいた。頭から血を流して倒れていた。出血量は大したことなさそうだが…酷すぎる。事態は良くならず、悪化していった。山賊が容赦なく3人がかりで子供に襲いかかる。これ以上は見ていられなかった。

ツバキ「レム、子供を頼む!」

レム「はい!」

レムが子供二人を庇うように立ち、その前に俺が立ちふざかって山賊達が止まる。

山賊「なんだァ!てめえ!邪魔なんだよォ!」

ツバキ「大の大人が子供一人相手に武器持って3人がかりで襲うとは…」

山賊「そいつを殺せば大金が入るんだ!どけ!」

ツバキ「断る!」

山賊「ならてめえごと!」

山賊の1人が手斧を俺に振りかざす、俺は左手に魔力を集中させ、斧を指で受け止める。

山賊「は?」

ツバキ「砕け散れ!」

俺は指で斧の刃を粉々にし、山賊の腹に雷の一撃を打ち込んだ。山賊は痺れながら倒れた。

山賊「なに!?」

ツバキ「寝てろ、賊」

雷の高速移動は普通の人間の反射の限界を超え、残りの山賊は気づいた時には既に地に倒れ伏していた。

ツバキ「…大丈夫か?」

ナイフをもった子供は呆気に取られた様子でこちらを見ている。

ツバキ「とりあえず…子どもがこんなもん持つんじゃない」

俺はそういい、子供の手からナイフを取る。手のひらに雷のエネルギーを集中させるとナイフは粉になって風に流れた。

子供「れ、礼は言わないからな!」

ツバキ「そんなのは後でいいし、とりあえずあの小さな子を治さないと…」

子供「なら…ついてこい」

ツバキ「…分かった、レム」

レム「分かりました、レムも同行します」

ツバキ「よし…」

俺は心声で白狼に語りかけた。

ツバキ[白狼…聞こえるか…」

白狼[聞こえるわよ、なに?]

ツバキ[ちょっと面倒な事になった、帰るの遅くなりそうってラムに伝えてくれ]

白狼[私は行った方がいい?]

ツバキ[いや、いい。そのまま待機しててくれ]

白狼[了解、必要になったら声掛けて]

ツバキ「よし、いくか」

子供「こっちだ」

 

 

ツバキ「な…なんだこれ…」

目の前にはロズワール邸と同じかそれ以上の大きさの屋敷が3個ほど立ち並んでいた。

なにやら執事のような人達が子供を出迎えた。

執事「フェルト様、おかえりなさいませ」

執事「そちらの人達は…」

フェルト「私を助けてくれた、例の奴らからな。小さな子供を手当してやってくれ。それと男と女を丁重にもてなせ」

レム「フェルト…まさか…」

ツバキ「レム?」

レム「彼女は…エミリア様と同じく王戦に出るお方です…」

ツバキ「な…」

フェルト「自己紹介が遅れたな、私はフェルトだ。よろしくな」

彼女と出会いが今後、俺とレムをとんでもない事に巻き込まれることになることを俺達はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告コーナー
ラインハルト「今回は僕、ラインハルトと」
ツバキ「ツバキでお送りします…」
ラインハルト「どうしたんだい?浮かない顔をして…」
ツバキ「なんで未登場キャラを次回予告で出すんだよ…」
ラインハルト「次回出るからじゃ?」
ツバキ「そういう事か…さて次回は?」
剣聖、ラインハルト・ヴァン・アストレア
ツバキ「まんまだな…」


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剣聖の敗北と死屍累々

今後はリゼロと俺ガイルに集中する


子供だからといって甘く見ては行けないとはよく言ったものだ。

まさか…ね?王戦候補が子供とは誰も思わないじゃん?だからしょうがないよね、うん。

とまぁ…そんな具合に屋敷に招かれたわけなんですけど、使用人の数がえぐい、オレが少ないのに慣れたのかそれともここが多いだけなのか、それともロズワールの洗脳なのか分からないが…とにかく多い。

何故だろう、3人であの屋敷を持っている自分が誇らしくなってきた。

レム「…ツバキくん?」

レムが怪訝そうな顔で俺の顔をのぞき込む。

ツバキ「…ん?」

レム「行きますよ?ぼーっとしてると置いていかれてしまいます」

ツバキ「悪い、行こっか」

レム「はい」

 

その後、客室に招かれしばらく繕いでいるとフェルトからお呼び出しがかかった。

有無も言わせずフェルトの待つ部屋へと連れていかれた。

フェルト「よ、待ってたぜ」

ツバキ「…っ!…」

レム「…剣聖…様?」

俺の目の前にはフェルトとその隣にもう1人。

圧倒的な闘気と覇気、恐らくレムも感じているだろう。刀がカタカタ音を出して震える、俺の額には冷や汗が滲み出ていた。無意識に俺の手は剣へと向かっていた。

ラインハルト「そんなに警戒しなくても何もしないよ」

ツバキ「…そうか…」

こいつは…抑えきれていない、自分の強さを。

レベルが違う…それは断言できた。

レム「それで…私達になんの用で…」

フェルト「さっき私を襲ったヤツら、何か知ってるか?」

ツバキ「雰囲気的には山賊っぽかったけど…なんか、違う気がした」

ラインハルト「と言うと?」

ツバキ「ただの山賊にしちゃ、魔力が多すぎる…ってとこぐらいか…」

ラインハルト「正解だ、彼らはなんだと思う?」

レム「もしかして…反国勢力の…」

フェルト「そう…その通りなんだ」

ラインハルト「この国でも屈指のでかさを誇る反国勢力、撃剣だ」

ツバキ「…撃剣…で?なんでそいつらの話を俺らにする?」

ラインハルト「単刀直入に言う、王戦へのアピールとして彼らを討伐する。それには僕らだけでは不可能だ、君やそこのメイドのような実力者の協力が必要だ」

ツバキ「なるほど…同盟というわけか」

ラインハルト「そう捉えてもらって構わないよ」

ツバキ「分かった、ちょっと待っててくれ」

 

ツバキ[白狼…白狼…]

白狼[はいはい、何かしら?]

ツバキ[屋敷にロズワールいるか?]

白狼[私の目の前にいるわよ?]

ツバキ[繋いでくれないか?]

白狼[分かった]

ロズワール[何かーね?ツバキくん]

ツバキ[ロズワールか、実はな…]

 

ツバキ説明中

 

ツバキ[てわけなんだけど…いいか?」

ロズワール[構わなーいよ、剣聖は嘘は言わなーいからねぇ]

ツバキ[そうかとりあえずサンキュ、じゃな]

ロズワール[気をつけるんだーよ、かなり危険だーよ]

ツバキ[分かった]

 

ツバキ「よし…受けよう、その同盟」

ラインハルト「感謝するよ、雷剣のツバキ」

ツバキ「ん?なにそれ?」

レム「ツバキくん、知らないんですか?」

ツバキ「え?」

レム「ツバキくんが度々森の魔獣達を減らしているおかげで今や王都でツバキくんを知らない人はほとんど居ないんですから」

ツバキ「え?俺そんなに影響与えてたの?」

フェルト「そりゃいきなり魔獣達の襲撃事件が半分以下になったら調べもするだろ」

にしてももう少し2つ名何とかならなかったんですかね…。

 

ラインハルト「ツバキ、君に少し気をつけて貰いたい事がある」

ツバキ「なんだよ?」

ラインハルト「魔剣、スカーレットブロッサム。これを持った男に出会ったら迷わず全力で挑むんだ」

ツバキ「強いのか?」

ラインハルト「正確には…強くなる…だ」

ツバキ「なんだそれ?どういう…」

ラインハルト「言葉通りだよ、あの剣は相手の戦闘力が高い程学習し、強くなる」

ツバキ「待て…、剣を使っているのは人間だろ?なんでそれで剣が学習するなんてことになる?」

ラインハルト「魔剣、スカーレットブロッサムは使い手の心を破壊し意のままに死ぬまで操り続ける」

ツバキ「それは…穏やかじゃないな」

ラインハルト「その剣は全体的に赤みがかかっているから色を見て見分ける事ができるかな」

ツバキ「その剣、今誰が?」

ラインハルト「恐らく撃剣の第一戦闘隊長のニゾウが持っている」

ツバキ「ニゾウ?変わった名前だな…」

ラインハルト「ニゾウは元々名の知れた剣豪だったが、スカーレットブロッサムを手にしてからは一転して撃剣の思うままに動く殺人鬼になった」

ツバキ「なんでスカーレットブロッサムじゃなくて撃剣の思うままなんだ?」

ラインハルト「スカーレットブロッサムを作ったのは撃剣の初代だ、その設計図にはいわゆる精神操作を可能とする手順が書かれていたそうだ」

ツバキ「…そうか、とりあえずこれからどうするんだ?」

ラインハルト「動きがあるまで君たちはここにいてくれ、僕ら聖騎士団で見回りを行うから」

ツバキ「分かった、待ってるわ」

ラインハルト「改めて言う、今回は本当にありがとう」

ツバキ「気にすんな、ほらはよ行ってこい」

ラインハルト「あぁ」

 

ツバキ「とりあえず、待てとよ」

レム「そうですか…、何か悪い気がします」

ツバキ「だなぁ…なんか何もしてない感じがする」

レム「レム、やっぱり…」

ツバキ「やめとけ、ラインハルト達を信じよう」

レム「はい…」

ツバキ「ほれ、ここ座れ」

そういい、俺は自分が座っているベッドの横をポンポンと叩く。

レム「では…失礼します」

多少赤面しながらもレムは俺の隣へ超至近距離で座った、呼吸音が聞こえるほど近くにいるので女の子の匂いと言うやつだろうが…俺の理性を揺さぶる。

ツバキ「近くない?」

レム「す、すいません…迷惑でしたか…?」

そんな泣きそうな顔して言わないでもらえない…、なんか余計に罪悪感が…。

ツバキ「いや…そんなこと…ないぞ」

レム「そうですか…よかったです」

ツバキ「ふあぁぁぁ…眠い」

レム「…ツバキくん」

ツバキ「ん?どうし…うぉ!?」

いつだったかラムにやられた強制膝枕、レムにもされるとは…いやぁラムより早いし怖い。だが寝心地でプラス100。

レム「ツバキくん、寝てください」

ツバキ「えっと…なんででしょうか…」

レム「いつも姉様ばかりツバキくんの膝枕をしてしまってレムは全然出来ないのでたまにはレムがやりたかったんですよ?」

ツバキ「あー…まぁ、たしかにラムが良くしてくれて…レムにはあんまだったかな…」

レム「ツバキくんは先程一度屋敷に戻って買い出し物を届けてからもう一度戻ってきてもらいましたから、疲れたでしょう?」

ツバキ「うん…まぁ…少し眠い」

レム「でしたら…眠って…あら?」

ツバキ「スーッ…スーッ」

レム「フフっ…おやすみなさいツバキくん」

 

 

街のはずれ

騎士「ここです、我らの隊のものが最後に目撃された地点です」

ラインハルト「そうか…、辺りを調べてくれないか?」

騎士「はっ!」

そして…次の瞬間

動き出した騎士達が体を真っ二つにされた。

ラインハルトは事前に察知し斬撃を受け止めた、だが剣聖の剣をもってしても完全に無効化することは出来ず周囲の民家が崩れ落ちる。

?「おや?誰か生き残ったみたいだな…、なるほど…これは大物だな…」

ラインハルト「その剣…君が…」

?「この体の持ち主を知っているならやめておけ、今は俺が支配している」

ラインハルト「我が友…フルクライトを返せ…」

?「残念だが俺を殺せばこいつも死ぬ、剣聖様よ?ちょっと遊んでくれねえ?俺は退屈してんだよどいつもこいつも簡単に死にやがって…」

ラインハルト「黙れ…その体から離れろ!」

?「なら力ずくでどうぞ、出来るなら…だけどな」

ラインハルト「覚悟!」

 

 

ツバキ「…ん」

レム「ツバキくん!ツバキくん!」

ツバキ「…レム?…どした?」

レム「剣聖様が見回りに行ったきり戻っていません!」

ツバキ「…なに?」

レム「もうあれから14時間程経過しているんです!」

ツバキ「ちょっと待て…索敵する」

10時の方向に捜索隊、その近くに明らかに異質な何か…。

ツバキ「まずい…捜索隊がやばい!」

俺は剣をとり走り出した。

レム「ツバキくん!レムも!」

ツバキ「無理するなよ!やばいからな!」

レム「はい!」

 

レム「捜索隊がいない…どこに?」

ツバキ「レム、左から回って探せ。何かあったら合図しろ」

レム「はい、ツバキくんも気をつけて!」

ツバキ「ラインハルト…生きてろよ…」

 

レム「あれは!」

死屍累々、そういう光景だった。首を裂かれ、肉をえぐられ、血泡が溢れ出たその光景は凄惨だった、人がここまで出来るのかという感じだった。恐らく誰も生きていないだろう。

レム「こんなこと…誰が…」

言った瞬間、レムの背後に迫る…血塗れの狂人。

レム「あなたが!」

レムは構える…だが遅い。首には既に刃が突き立てられ、切られるそう思った時だった。

ツバキ「雷電…紫電!」

紫色の雷を纏った無数の魔力弾が狂人に迫る。

ツバキ「レムに当てるなよ!」

狂人は飛んで下がり魔力弾を全て切った。

レム「ツバキくん!」

ツバキ「ぐっ!…」

レムを抱え、一度下がる。

レムを離し、巻き込まないように下がらせる。

ツバキ「お前…なんだ…?」

目の前にいるものは人間なのか、もっと言えば人なのかそう疑うのが自然なくらい殺気が人間離れしていた。

「あ?てめぇ雷剣か?今日は強いのにたくさん出会うねぇ」

血塗れで顔が確認できないが恐らく男だ、大柄で血で隠れてほとんど見えないが模様は今朝の山賊と同じだった。撃剣の仲間なのだろう。

ツバキ「まさか…てめぇ魔剣に…」

「この体はいいねぇ、強いのと連戦してもまだ動けるからな」

ツバキ「ラインハルト…やったのかよ?」

「あぁ?最後までこいつを取り戻そうとして無残にちりも残さずぶっ殺したよ」

ツバキ「てんめぇ……」

バチッ…バチッ…

「なんだ?てめぇ、何もんだよ?」

ツバキ「……」

「そうだ、これあいつの剣だろ?これで信じてもらえ…」

ツバキ「その剣に触れんな…」

「あぁ?」

ツバキ「誰の許可得てその剣に触ってんだぁぁ!!!」

ツバキ「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

全力で…こいつを殺す、それしか今は考えられなかった。

髪は青く染まり、周りには黄色ではなく青色の電気が走る。

目が青く染まり剣の筋と刀身が青くなる。

ツバキ「行くぞ…覚悟しろ、粉すら残さねえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さすがに今回はなし


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殺気の怪物

皆様言いたいことは分かります!遅れてすみません!本当にたくさんの方をお待たせしました!チャチャッと仕上げたので誤字脱字あるかもしれませんがとりあえずどうぞ!


レム「ツバキくん!駄目です!その形態はまだ…」

ツバキ「悪いな、レム…でも、こいつ相手じゃここまでしないと通用しない…」

前のレムとラムを助けた時になったのは自分でつけたネーミングで雷双、壱式。身体強化、雷魔力を剣に宿し攻撃力を上げる、そして雷魔力を使った機動性の向上、これが効果だ。だが今回なったのは雷双、二式、これは壱式の4倍の強化、機動性だけでなくタフさも増す何よりもまず攻撃力と機動性を更に上げることができる形態。

だがデメリットもある、第一にタイムリミット、白狼のサポート制御がないため恐らく長く見積って10分が限度、戦闘が激しければ8分が限度である。さらに身体的な疲労と魔力消費が激しいため、1度なってもう一度なるには無理しなければ30分ほどクールタイムが必要だ。

そして仮に限度の時間を超えても二式は継続するが魔力消費が激しくなり、疲労も溜まる、解除するためには必ず自分でしなければならない。限度を超えた状態で解除すれば疲労が一気に来るためその場で意識を失うか強烈な痛みが全身を巡る。

1ヶ月前の魔獣狩りで突然変異個体に追い詰められた時にこれを使った時はサポート制御無しで30分使った結果三日間目覚めず眠ってしまっていた。今も、白狼の制御なしでは成長したにせよ12分が限度、ハッキリ言ってそれ以内にこいつを倒せる気がしない。だから多少オーバーするのを覚悟してこの形態をつかっている。

レム「…ツバキくん!」

ツバキ「レム!離れてろ!」

ニゾウ「さぁさぁ!楽しもうや!」

ツバキ「っ!?」

気づいた時には目の前に刃、だが二式ならこのタイミングでも…

ツバキ「躱せるんだよ!」

横にずれ袖の布1枚切れるだけのギリギリで躱し、雷の剣をお見舞いする。

ツバキ「雷双二式!雷激斬波!」

雷双二式の火力とスピードで振った剣からでた斬撃はゼロ距離でニゾウに迫る。

ニゾウ「おっと…!」

一瞬当たったと思ったがバク転で後ろに下がられて躱された。

ツバキ「今の避けるかよ…」

はっきり言っていまのは当たって欲しかった、今のが当たらないとなると単発で出せる技に限りがある。技を連続で出して行くしかない。

ニゾウ「ハハっ!あんたいいねえ…最高だよ!」

ツバキ「野郎…舐めやがって…雷撃弾、轟雷魔弾!」

左手から無数の魔弾を出現させ、ニゾウを追尾させる。

ニゾウ「…ちっ!…うっとおしい!」

ツバキ「そっちは囮だよ…本命は…」

ニゾウ「あ?」

ニゾウが魔弾に気を取られている間に俺は連続技の魔力を溜めていた。

ツバキ「雷双二式…十二ノ閃!」

十二ノ閃、対象に向かって雷双二式の加速で12回斬りかかる技。その間…わずか3秒。

ニゾウ「………」

ツバキ「終わりだ!」

最後の一太刀に魔力をより多く込める。

ツバキ「雷双二式…雷撃の閃!」

周囲にカミナリが落ちたような轟音が鳴り響く。

衝撃波も建物を吹き飛ばすほどの強さのものが飛んだ。

ツバキ「……なに…」

手応えはあった…確かに最後の雷撃の閃は当たったはずだ、いや当たっている…腹部には傷がついてるはずだ…なのに何故…この男は…笑っている?

ニゾウ「お前さん惜しかったなぁ…もうちょいだったんだけどよォ?」

ツバキ「お前は…人間か?冗談じゃねえぜ…これじゃあまるでバケモンじゃねえか…」

間違いない、切られてから数秒しか経っていないのにも関わらず傷が…再生している。

ニゾウ「ホイ!」

ツバキ「がっ…!?」

魔剣が俺の大腿部に突き刺さる、ソレを瞬時に引き抜かれ強烈な痛みが走る、最悪な事にここで12分経った。疲労感が増してくる。

ニゾウ「おらおら!行くぞー?」

ツバキ「ちっ!…くそ…」

何とかついて行く…が片足が大腿部の傷が動く度に痛む…。

その痛みによる硬直が動きにズレを生じさせついて行くことが出来ない。

斬りあっていてもこちらが不利なのは明確…こいつに勝てるイメージが湧かない…。

ツバキ「ぐぁっ!?うわぁぁぁ!!「:

空中に蹴り上げられ、剣を受け止めようとして地面に叩きつけられる。

ニゾウ「楽しかったぜ…終わりだ兄ちゃん?」

ツバキ「…しまった…」

ニゾウが空中加速と魔力加速を利用してこちらに猛スピードで落下してくる。

バァァアン!!!と周囲にはさっき以上の衝撃と音が広がった。

ツバキ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…ここか…弱点…」

俺の剣はニゾウの剣を持つ手に突き刺さっていた。

ニゾウ「てめぇ…この短時間で見破りやがったのか…」

ツバキ「はぁっ…はぁっ…」

俺の腹にも魔剣が突き刺さっている、最悪刺し違える覚悟だったがとりあえず当たっていた。

ニゾウ「だが残念だが、俺は不死身だ…倒せねえよ、だが首をやられちゃ再生が遅くなる…今回は引き上げることにするよ」

ツバキ「く…逃がすか…」

ニゾウ「いや、やっぱココで殺しとくか…」

ズバァつ!!

ツバキ「がっ…!?」

俺は真正面から魔剣に斬られた。

ニゾウ「楽しかったぜ?あんちゃん」

 

 

レム「ツバキくん…無事ですか!?ツバキく…」

衝撃波から逃れるために遠くにいたレムが静かになったと思ってそこに戻って見つけてしまった。

レム「ツバキ…君?嘘…ですよね?」

目を閉じ、その場に血だらけで倒れ付した、大切な人。レムは膝を着いた。

レム「嫌…嫌…」

 

レム「いやぁぁぁぁぁァァァァァァァ!!!!!!!!!」

その悲鳴は…周辺に響き渡った。

 

ラム「…っ!レム?」

ロズワールの命令で応援に駆けつけたラムがかろうじて聞こえるレムの悲鳴を聞いた。

ラムは急いでそこに向かうと、散乱した瓦礫と血肉に囲まれて腐敗臭もする中にレムと心の中で思い続けていた想い人の悲惨な姿を認識し、いっしゅん錯乱した。…が即座に冷静になり最悪の事態になっていないことを祈りつつ駆け寄った。

ラム「レム!レム!」

レム「姉…様…」

ラム「しっかりしなさい!」

レム「姉様…ツバキくんはどうしたんですか?…なんで起きないんですか?」

錯乱しきっているレムをラムは涙を堪えながら優しく抱きしめた。

ラム「落ち着きなさい…レム」

ラムはツバキの胸へ手を伸ばす、今にも消えそうな鼓動を感じ直ぐに行動に移した。

ラム「ツバキはまだ生きてる…、ツバキを生かさなきゃ…レム、協力して?」

レム「はい…!」

正気を取り戻したレムは力強くうなづいた。

レム「姉様もしかすると追加の捜索隊が来ているかもしれません、確か医療魔導師もいたはずです!探してください!」

ラム「分かったわ…」

確かに確認できた、そう遠くない位置にもうすぐそこまで来ている。

ラム「レム!呼んできて!」

レム「はい!」

ラムは想い人の手を力強くに握りこう呟いた。

 

ラム「死なせない…絶対に、ラムにふさわしい男になるんでしょう?、それより先に死ぬなんて絶対に許さない…!」

妹の前では見せられない涙をツバキの顔にこぼすここで奇跡が起きて目覚めてくれたらどれほど良かったか…だが現実はそう甘くはない。

刻刻とツバキのタイムリミットは迫っている。

 

レム「こちらです!」

レムが捜索隊の医療班を連れて来た。

ラム「瀕死よ、急いで!」

捜索隊「これは…酷い」

ラム「話すなら早く!」

捜索隊「分かっています!全員でやるぞ!」

捜索隊の医療班6人がかりでツバキの治療をしている徐々に…徐々に傷が塞がり、心拍も先ほどよりハッキリしてきた。

30分ほど経って医療班が安堵の表情を見せる。

ラム「どうなの?」

捜索隊「傷も塞がりました、心拍も回復しています、呼吸も安定しています、山場は乗り越えました、ですがまだ油断は出来ません」

捜索隊「この後屋敷に戻った後、身体のダメージをとれば数時間で目覚めます」

ラム「そうですか…」

レム「ツバキくん…」

捜索隊「お二人共屋敷にいらしてください、お部屋をご用意します」

ラム「あなたは休みなさい、ラムがツバキを見てるから」

レム「でも…」

ラム「あなたもボロボロでしょう?安心して何かあったらすぐに言うわ」

レム「分かりました…ではお言葉に甘えさせていただきます」

 

ラム「これは…剣聖の剣」

血に埋もれても輝きを放つその剣をラムは見つけた。

捜索隊「ラム様!」

ラム「っ…分かったわ」

剣を鞘に収め、屋敷へと向かった。

 

その夜

 

ギィィ…バタん

眠るツバキの部屋にラムは来ていた。

と言っても元々つきっきりになるつもりだったので風呂やら夕食やらを済ませて来ている。

眠るツバキに表情の変化はない、ただ術式の音だけが流れる空間。

誰もいない、ツバキと自分しかいない。だからこそ…ラムの弱さは出てくる。何故かツバキのそばに座ると泣きたくなった。理由は分からないそもそも泣きたくなる事なんて早々ないのだが何故か泣きたくなった。1人というのは悪いものだ、自分を抑えられなくなる。

ラムは眠るツバキに縋り付くように泣いた、泣き叫んだ。

近くの部屋には人がいないのが幸いで誰にも気づかれないのが良かった。それ後より一層ラムの涙のストッパーを緩めた、どれだけ泣いただろう…2時間程泣いたら疲れて眠ってしまっていた。

 

だが…泣いていたのはラムだけではない、レムも同じだ。

むしろレムの方が泣いていた、一緒にいたのに助けることが出来なかった。わかっている自分ではかないっこないことぐらい分かっている、それが悔しくてたまらない、受け入れてしまっている自分が悔しくてたまらない。自分の無力さを痛感したレムも泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今回は誠に申し訳ございません、プレステ4…ではなくてバイトで遅れてしまいました。
次回は恐らく年明けです、クリスマスの番外編を作りたいのですが時期外れに出すのが自分的にはどうかと思うので感想等で希望するかお書き下さい、期待通りのものが作れるかどうかは分かりませんが今後とも頑張らさせて頂きますので来年もよろしくお願いします。


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覚悟

年明けに上げるとか言ってたのはどこの誰でしょうね、書かずに配信ばっかしてたのはどこの誰でしょうね、冴えカノ全巻買って読みふけってたのはどこの誰でしょうね、ps4で遊び呆けてたのは誰でしょうね、勉強終わらせた癖に寝まくってたのはどこの誰でしょうね、冬休み1回も友達と遊ばなかった悲しいやつはどこの誰でしょうね…全部俺ですけど。
という訳でだいぶ遅くなりました、まぁ三個掛け持ちはきついっすね、とりあえず早めにひとつでも終わらせたいな。なんてこと思ってますよ、終わらせれるか?なんかあと先考えずに書いてるからめっちゃ長編になりそう、特にこれ。あ、あと東方を一旦完結にしてバンドリか俺ガイルの新小説を始める可能性が微レ存。
バンドリはラブコメにして、俺ガイルはとにかく…なんて言えばいいのか分かりませんけど分類的にはアンチヘイトでいいと思います。多分自分で書いててもうーん…って思うようなやつをかくつもりです。
あ、ほんへどうぞ。



ツバキ「っ……眩し…」

目を覚ますとそこは俺がフェルトに与えられた部屋だった、カーテンの隙間から入り込むアサヒが眩しくて思わず眉間にしわを寄せる。

だが…ということは

ツバキ「生きてる…生きてた…」

あの状況、あの怪我でよく生きてたな…と自分でも感心しかけたがそんな事を言っている場合じゃない。

ツバキ「ニゾウ…」

思わず握った拳に力が入り過ぎ、少し血が出る。

ツバキ「くそ…」

あの様子だとニゾウは全力に近いが全てをだしきったわけではなさそうだった、にも関わらず俺は未だ殺すことに躊躇した…、それがたまらなく悔しかった。

ツバキ「……?」

ふと…違和感、以前感じたことのある隣の重みと腹に何かが持たれている感覚…なんだろうもうなんか色々察した。見るとやはり隣にはレムがベッドの隣の椅子にはラムが座っていた。

ツバキ「すげぇデジャブったな…」

俺は考えた末、前回と同じような行動に出た。

 

ツバキ「フェルトさん、居る?」

俺はレム達を以前とおなじようにした後、着替えてフェルトを探していた。

俺はその辺にいた使用人に声を掛け、フェルトの居場所を聞き出し向かった。

ツバキ「俺だ、入るぞ」

フェルト「おま…寝てろよ!」

ツバキ「うるせえ、もう平気だそれよりも話したい事がある」

フェルト「なんだよ」

ツバキ「まず1つ目、ラインハルトは恐らくまだ生きてる」

フェルト「それに至る根拠は?」

ツバキ「確かにニゾウは強い、それは俺が一番よくわかってるでもあれだけの闘気を持ってるにしてはニゾウには疲労が見られなかった、傷を治すにしても疲労も蓄積しない…なんてことは無いはずだ。実際奴は俺との戦いで確かに疲弊していた」

フェルト「つまりラインハルトは生きているということか?」

ツバキ「生きてる…それとこれはあくまで推測でしかないんだが」

 

ツバキ「もしかしてラインハルトはニゾウと闘ったわけじゃないんじゃないか?」

 

フェルト「どういう事だ?」

ツバキ「要するにあの場にニゾウ以外にもう1人の魔剣使いが居たんじゃないかって事」

フェルト「本気か?それ」

ツバキ「行ったろ?飽くまで推測でしかないって、でもこれ辻褄がちゃんと合ってる」

フェルト「まぁ…確かにな」

ツバキ「それに…ラインハルトがニゾウにやられるとは思えない」

フェルト「…それはおまえが実際に感じたことだな?」

ツバキ「あぁ…だが…ニゾウはあいつは楽しかったぜと言ってた、嘘をついてた?」

フェルト「その2人の魔剣使いはグルということか?」

ツバキ「それは一番可能性が高いが問題は」

フェルト「魔剣が二本あるということか…」

ツバキ「1番最悪なのは量産されててあれが大量にあるってことだ」

フェルト「……至急調査をさせるか?」

ツバキ「やめとけ、無駄な犠牲が増えるだけだ」

フェルト「だったらどうする?大人しく奴らが魔剣を作ったこっちに来るのを待つか?」

ツバキ「ここらから先は希望的観測でしかないが…聞くか?」

フェルト「話せ」

ツバキ「ラインハルトはわざとやられたんじゃないかと思うんだけど…」

フェルト「なに?」

ツバキ「俺には情報が全くなかったから知らなかったが、ラインハルトは魔剣について詳しいようだった、だったら量産の件についても気づいてはいたんじゃないか?」

フェルト「まさか、それを止めるためにわざと捕まってそこまで行ったと?」

ツバキ「真に受けるなよ、あくまで可能性の話だ。だが俺以上にラインハルトを信頼してるのはほかでもフェルト、お前のはずだ」

フェルト「……」

ツバキ「お前がもし、ラインハルトを助けたいと思うなら俺は力を貸す」

フェルト「だがお前はまだ…」

ツバキ「大丈夫だよ、もう」

フェルト「でかい借りを作ることになるな…」

ツバキ「同盟なんてそんなもんだろ?」

フェルト「ふっ…そうだな、いいだろうここにいる兵士、150人の指揮をお前に任せる」

ツバキ「助かる」

フェルト「でもお前、指揮やれるのか?」

ツバキ「あ…」

フェルト「おい…」

「それなら心配いりませんよ」

「無能なツキに変わってラム達が指揮をとります」

ツバキ「すいませんね無能で」

フェルト「任せていいのか?」

ツバキ「おう、任せていいぞ」

フェルト「そうか…じゃあ準備をしてくれ、こちらでも終わったら知らせる」

 

どうも皆さん、先程いい感じに終えたのにも関わらず激怒の表情のピンク髪のメイドに胸ぐら掴まれてちょっと上げられているどうもツバキです。

ラム「そ、れ、で?」

ツバキ「はい…」

ラム「なんで、昨日まで瀕死だった奴がホイホイ歩き回ってるのかしら?」

ツバキ「返す言葉もありません…」

ラム「何ちょっといい感じにカッコつけてるのかしら?」

ツバキ「もうホントすいませんでした…」

ラム「朝起きていなかったからまさか…と思ったじゃないの」

ツバキ「ごめんなさい…反省します」

ラム「ホントだったらこの後2時間ほど縄に括りつけて逆さ吊りしたい所だけど…」

ツバキ(この人さっき自分で昨日まで瀕死だった奴がホイホイ歩き回ってんじゃないとか言っておきながら縄に括りつけて逆さ吊りって言った!?)

レム「あいにくとその時間がないのですから仕方ありません」

ツバキ(仕方ありません!?ちょっとまって!?レムもやる気だったの!?)

ラム「ツキ、怪我は?」

ツバキ「さっき医療魔道士に見てもらったら全力出してもいいけどそのあとは筋肉痛が酷くなるって」

ラム「そう、ならなんの問題はないわね」

ツバキ「あ、はい」

 

ラム「全員準備出来たわ、あとはツキ待ちよ」

レム「行きましょう、ツバキくん」

ツバキ「…分かった、行こう」

 

俺は集められた精鋭150人を一通り見渡した。

ツバキ「全員いいか!これから行くのは撃剣の本拠だ!生きて帰れる保証はない!それでも!俺と共に、ラインハルトを助けるためにきてくれるか!?」

「もちろんです!」

ツバキ「行くぞ!」

こうして150人の精鋭を引き連れ俺達は撃剣の本拠へ向かった。

 

ツバキ「……」

ラム「どうしたの、ツキ。さっきまであんなに気合い張ってたじゃない」

ツバキ「いや、違う別に怖気ついたとかじゃないんだ。ただ…」

レム「ただ?」

ツバキ「ニゾウにどうやって勝つか…それを考えてた」

レム「…ツバキくん、これはあくまでレムが個人的に感じた事なのであまり確信はないんですが…」

ツバキ「なに?」

レム「あの時、ツバキ君が形態変化をした際に膨れ上がり続けていた魔力がまるで何かにぶつかったかのように突然止まったんです、それをツバキ君は気づいてましたか?」

ツバキ「いや…全然」

レム「恐らく…ツバキ君の魔力量に何らかの力で過剰な抑制が掛かってるんです」

ツバキ「もしかして…」

レム「何か心当たりがあるんですか?」

ツバキ「この剣だ…多分だけど」

レム「その剣…ですか、その線も無くはないですけど」

ツバキ「いや、間違いない。多分、この剣には段階的にリミッターがあるんだ」

レム「りみったー?」

ツバキ「要するに俺の魔力量の膨張を止める壁があるってこと」

レム「その剣については確かに…まだ分からないことだらけですけど…」

ラム「ならツキ、これを渡しておくわ」

そう言ってラムが差し出したのは、見違えるはずもないラインハルトが持っていた剣だ。

ツバキ「これって…ラインハルトの」

ラム「もし、その制御リミッターとやらが解けなかったらこれを使いなさい」

ツバキ「分かった、サンキュ」

「あと三十分で現着です、如何なさいますか?」

ラム「事前に決めた通り、ラム達3人と精鋭10人が裏から回り込んで剣聖の捜索、または量産化されている魔剣の破壊のために別行動を取ります、残りの140人で基地正面に大多数の敵を引き付けてください」

「わかりました、では私ここまでです。ご武運を」

ラム「そちらも気をつけて」

「はっ!」

騎手「回り込みます、少し荒れますが我慢してください」

 

しばらくして轟音と共に激しい戦闘音が反対側から聞こえ出した。

レム「始まりましたね…急いで!」

「わかりました!」

 

ツバキ「止まれ!」

ガガガガガガ!!!!

ラム「どうしたの!?…あれは」

ツバキ「全員下がれ!」

 

ニゾウ「なんだ…お前生きてたのか」

ツバキ「ご無沙汰だったな」

ニゾウ「はっ!懲りずに今度はてめぇから来たってわけか」

ツバキ「ラム、俺がこいつを抑える、お前らは早く中へ」

ニゾウ「行かせねえよ?中にはよ」

ツバキ「だと思ったよ…だから…!」

ニゾウ(こいつこの前と雰囲気が…!)

俺は瞬時に雷双二式を発動させ急接近する。

ツバキ「ちょっと埋まってろ」

雷の加速の超高速かかと落としをニゾウの肩に食らわせ地面に足だけだして埋まらせる。

ラム「要らない心配だったわね」

ツバキ「長くはこうならないぞ、行け!」

レム「無事でいてくださいね!ツバキくん!」

ツバキ「あぁ…」

 

ニゾウ「だぁっ!」

ツバキ「さて…反撃開始と行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あけおめことよろ!!!!

次回予告のコーナー
ニゾウ「なんで俺が次回予告なんか」
ツバキ「こっちのセリフだわ、キャスティングおかしいだろ」
だって原作でも松岡さん出てるじゃないですか、次回予告。
ツバキ「そりゃそうだけどな?」
あ、俺明日テストだからはよ終わらせてね。
ニゾウ「なんだそりゃ…」
ツバキ「えーはい、ということで次回は」
剣と雷の舞
ツバキ「さー、次回はいつなんだろうな…」




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紅の雷

さぁ、遅くなりすぎてすみません。
アクセス数に甘んじて怠けてました。
アクセス数、9000突破!誠に誠にありがとうぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!ございます!
ではちゃっちゃと仕上げますよ!


ニゾウ「なんだってんだ?本気出してなかったってのかよ?」

ツバキ「違うさ、思いの違いだよ」

ニゾウ「あぁ?」

ツバキ「俺はまだ人を殺したことがない…だから自分でも気づかない内にセーブしていたんだ、でも…お前にはその容赦は要らない」

ニゾウ「どうするつもりだ?」

ツバキ「不死身だろうがなんだろうが、手加減しない、全力で叩き潰す」

ニゾウ「たかが覚悟決めたぐらいで…いい気になってんじゃねえぞ!」

ツバキ「…っ上等」

ニゾウは恐らく今まで一番早い速度で接近してきた、恐らくこれがニゾウの本気。あれだけ挑発したのだから本気で来るのは当然、だから俺は動揺しなかった。

ニゾウが魔剣を振り回す…が怒りに任せていても速さは数段上、その上魔力の攻撃を容赦なく使ってくる。避けるだけ…というわけではなかったが攻撃のペースは完全に向こうが握っていた。だから…恐らく。

ツバキ「リミッター解除が不可欠か…」

ニゾウの鋭さはどんどん増している、今は捉えきれているが恐らくそう経たない内に捉えきれなくなるだろう。捉えきれていても体が追いついていないのだから、これいじょう鋭くなれば俺に勝ち目はない。

なら増す前にケリをつける…と言いたいところだが生憎と現段階でその余裕はない。

リミッター…それはひとまず置いといて俺の魔力の膨張を剣が遮った理由はなんだろうか、人間の限界値かまたは剣が拒んだ…。前者の場合はもう完全にオワタ状態だからとりあえず剣が拒んだとして、なぜ拒んだか…。もし、この剣に意思があるという可能性は無くはない、なぜならここは俺のいた世界とは常識が全く異なる、そのような武器があってもおかしくはない。意思があるとして剣は何を望むだろうか、剣は俺に何を求めているのだろうか。俺自身が強くなる事か…それとも…。

ツバキ「ひとまず…やれる所までやるしかないか」

まずは自分の限界を図る、その上で考えるしか無かった。

俺は距離をとって魔力を最大限高める。リミッターギリギリの暴発寸前まで。しんどいが限界まで攻めてみるしかない、そう思ってもやはり思うように上がらない、レムに言われて初めて自覚した。剣による妨げ。ここまで徹底的に抑えられるとは。

ツバキ(お前は一体何を望んでる?教えてくれ…)

俺は心の中でそう語りかけた、が当然のように何も返ってはこない。

ニゾウ「おらおら!どうしたぁ!?」

ツバキ「なぁ…お前はその剣をどう思ってる?」

ニゾウ「あぁ?んなもん決まってんだろ?道具だよ俺が成り上がるためのよ」

ただ、興味本位で聞いたこの質問。だが確かに今、剣が反応した。

すると俺に剣の感情という物が流れ込んできた。流れ込んできたのは怒り、目の前の男のあの言動に対する怒り。

つまり…答えは出た。

 

ツバキ「剣よ、俺とお前は対等だ、だから!俺に力を貸してくれ!」

その瞬間、剣から膨大な量の魔力が流れ込んできた。

 

ニゾウ「なっ!?」

身体中から湧き上がる力、剣から湧き出る無限とも思える魔力。

そして、体の周囲を囲む紅の雷。

ツバキ「紅雷、発動」

自然とその名前が出た、剣が教えてくれた。

この状態は紅雷(ベニイカズチ)、剣が出来ること、出来ないこと、そして制限される事を教えてくる。

紅雷は雷双の数十倍の力を出せる代わりに身体中を紅の雷魔力が巡るため、この剣なしでは制御が効かず暴走する、だから剣は俺にリミッターを掛けていた。紅雷は雷本来の特性を最大限に引き出す発揮する事が出来る。出来る事はすべて剣が教えてくれた、あとは…俺次第だ。

ツバキ「はぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

身体中から湧き上がる魔力を最大限解放し、ニゾウと真っ向から対峙する。

ツバキ「待たせたな…これで五分だ」

ニゾウ「ふっ…ははっ…あっはは!!!」

ツバキ「出せよ、お前も本気を」

ニゾウ「なんだ…気づいてやがったのかよ」

ツバキ「お前が本気を出すなら俺は全力でお前を叩き潰す」

ニゾウ「言ってくれるなぁ?ガキ…」

ツバキ「っ…上等だよ」

一瞬にして格段に凄みが増した、紅雷を発動した状態でギリギリこっちの方が上か…だがこちらには幸いまだ上がある。それに紅雷状態で使える技も増えているし。

ニゾウ「行くぜ」

ツバキ「…来い」

そう言うと両者タイミングを合わせた訳ではないが同時に飛び出した。

ツバキ「紅雷、瞬雷!」

通常の雷加速とは違い、決めた方向に真っ直ぐ雷の速度で接近する。

虚をつかれた、ニゾウは一瞬驚くが直ぐに体勢を立て直して俺に剣を振り下ろす。

ニゾウ「それが?」

ニゾウの剣が俺に触れる直前。

ツバキ「紅雷、雷影!」

剣は俺をすり抜けて雷を斬っただけだった。

実際は雷の虚像をそこに置いて、俺がニゾウの後ろに移動しただけだけど。

ニゾウ「なっ!?」

ツバキ「とりあえず…吹っ飛べ!」

俺は左足に紅の雷魔力を集中させ、超高速回し蹴りをする。

ニゾウ「ぐぁっ!?」

ツバキ「っらぁ!!」

左足を振り切り、ニゾウが壁を突き抜けて吹っ飛ぶ。

ニゾウ「てめぇ…」

ツバキ「ワンダウンだ」

 

ツバキ(さて…向こうはどうなってんのか…)

ニゾウ「調子に…乗ってんじゃねえぞぉぉぉ!!!!」

ツバキ「っ!他のこと考えてる場合じゃないな」

 

ラム「これは…」

レム「恐らくこれですね…」

私達二人は表と裏の争いに乗じてアジト内部へ乗り込み、その辺の小兵を脅し、量産されている事を聞き出し居場所を聞き出しここにいる。

急ぎ、見つけた。

何やら長方形のガラスの容器に紫色の怪しげな液体が入っておりその液体に赤い剣が沈められている。

見てくれでも分かる、恐らくこれが量産されている魔剣だと。

ラム「レム、やるわよ」

レム「はい、姉様」

そして、ラムによる豪風とレムによる鉄球でそこには怪しげな魔力が立ち込めるだけになった。

ラム「これで終わりね、ツキの元へ急ぎましょう」

レム「…っ!姉様!」

ラム「!」

暗がりの廊下から確かに聞こえるコツコツと聞こえる足音、それはゆっくりとゆっくりとこちらに近づいている。

ラムとレムは身構え戦闘態勢をとる。

そうして出てきたのは、意外な人物だった。

ラインハルト「おや…何故ここに君たちが?」

レム「ラインハルト様?」

ラム「こちらのセリフです、何故あなたが?」

ラインハルト「やられた振りをしてここに忍び込んだんだ、これを破壊するためにと言っても君たちが果たしてくれたが」

レム「となると…ツバキくんの見解が正しかったという事になりますね」

ラインハルト「用は済んだ、戻…伏せて!」

レムとラムとラインハルトは間一髪斬撃を回避した。

ラインハルトはしゃがみながら当の犯人を睨みつける。

ラインハルト「フルクライト…いや、君はもはやフルクライトではないな」

暗がりから出てきた男は邪悪な笑みを浮かべ、ラインハルトに語りかける。

「おいおい、連れねーな。昔みたいに呼んでくれよ」

ラインハルト「その口調で喋るな、下郎」

「手厳しいねぇ、そういうとこ昔から嫌いだった」

ラインハルト「僕もだよ、撃剣に行くと知った時は気が狂ったのではないかと心配したがそんなことはないようで」

「まぁ…今じゃそいつも俺らの遊び道具だけどな」

明らかに先程とは口調が違う、別人だった。

ラインハルト「フルクライト…その邪悪な魂、友として僕があるべき所へ導く!」

フルクライト「やれるもんならな」

そしてラインハルトは剣を抜き、もう一人の魔剣使いとの戦闘を開始した。だが、極一般的な兵士が使っている剣を奪ったので実力では買っていても勝敗は明白だった。

 

ツバキ「この気配…ラインハルトか!?」

戦闘している時でもかなり感じる手練の気配、それはラインハルトにほかならなかった。そして自分がラインハルトの剣を持っている事に気づく。

ツバキ(最速で終わらせて届けないと…!よし!)

ツバキ「はァァァァァァァ!!!!!!!」

紅雷状態の暴走許容限界ギリギリまで魔力を上げる。

ツバキ「こっちも事情がある、終わりにするぞ!」

ニゾウ「あぁ!?」

ツバキ「紅雷、魔弾雷撃!」

一発の強力な魔弾を右手からニゾウに向けて放つ。だがこれは恐らく避けられるだろう。だが別の目的がこれにはある。

ニゾウ「こんなもんで俺を倒せると…思うなぁ!」

ツバキ「思ってないから安心しろ」

ニゾウ「なっ!?」

ツバキ「…紅雷、瞬身…飛雷神!」

ニゾウが避けた直後の魔弾と俺が入れ替わるように瞬間移動する。つまり虚をつきニゾウの背後をとった。

ニゾウ「しまっ…」

ツバキ「紅雷、雷の千!」

紅雷のスピードと威力で千回斬りつける、それを10秒で済ます、再生するというなら再生しきれないくらい切り刻んで消せばいい。

ツバキ「紅雷、焔!」

剣にまとっていた赤い雷が今度は赤い炎へと変わる。

ツバキ「燃え消えろ…紅雷、豪風焔!」

周囲一帯が一瞬で火の嵐に包まれた。

そして、ニゾウはあとかたもなく消え去った、魔力も感じない。

ツバキ「よし…、急がないと」

時間はない、俺は急いでその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




描き始めそもそも16日だったのに
描き終わり(2019/01/19 10:27:28)
時間かかりすぎだな…
というわけで次は多分俺ガイルssだ!


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紅雷、雷鳳火焔刺突

今回でこの章の戦闘シーンを終わらせにかかります。

とある事情でリゼロ以外の小説を全て消去させて頂きました、皆様には突然のことで驚かせてしまって申し訳有りません、事情はなろう小説にオリジナル小説を投稿し始めたことです、今後はハーメルンとなろうの二刀流で行こうと思うので何卒今後とも灰鳥をよろしくです。

今回から書き方を大分変えます。


「まずいな…早く剣を届けないと…」

範囲索敵で周りの状況を確かめるとラインハルトとラムとレム、そして恐らくもう1人の魔剣使いが交戦している、表の抗争はある程度収束しこちらの勝利であった、あとは…。

「あれだけか…急げっ…」

紅雷の全力加速で猛スピードで交戦しているところまで壁をぶち破りながら突っ切った。

 

「っ!なんだ!?」

分厚い壁の奥からドォンっ!ドォンっ!とどんどんこちらへ近づいてくる音が聞こえていた。

ラインハルトは察知してその場から離れるがフルクライトは来いと言わんばかりにその場に仁王立ちし迫り来る気配を受け止めるつもりだった。

「この魔力…まさか…!」

ラムとレムはこちらへ突入する直前に気づいたようだ、そしてラインハルトも。

 

ドゴォォォォン!!!!!

「くっ…」

突撃した何かはそのままの勢いでフルクライトに突撃しフルクライトを壁に叩きつけた。

煙が晴れ、それが姿を現す。

 

バチッ…バチチッ…バチッ…

 

そこには…臨戦態勢で紅き雷に包まれたツバキがいた。

 

「ツバキくん!」

「ツキ」

レムはほっと安堵した様にラムはいつもと変わらず無表情に彼の名を呼んだ。

「レム、ラム良かった…無事だったか」

「ツキ、裏の敵は」

「倒してきた、それと…ラインハルト!」

俺はラインハルトにラインハルトの剣を投げた、それをキャッチしたラインハルトの凄みが先ほどよりぐっと増した。

「ありがとうツバキ、助かった」

「いや、それより…」

瓦礫の中から出てきたフルクライトは黒いオーラを身にまとっていた。そしてその魔力は…

「こいつ…ニゾウの比じゃねぇ」

俺はすかさずラムとレムの前に立った。

「ツキ…」

「ラム、あいつが少し予想以上だ。2人の力を借りるかもしれない…行けるか?」

「誰に言ってるのかしら?」

「もちろんです!ツバキくん!任せてください!」

「分かった、合図するから合図まで待ってろよ…。ラインハルト!」

「あぁ!」

 

「やってくれんじゃねえか…ニゾウ如きを倒したぐらいで調子こきやがって…」

「はっ…よく言うぜ、その調子こいてる奴にムキになってる奴がよ」

「てめぇ…」

「来るぞ…ラインハルト」

「あぁ…」

「来い」

フルクライトがそう言った瞬間、周囲に俺とラインハルトの魔力の嵐が巻き起こった。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

そして…最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「紅雷…瞬身、飛雷神!」

俺は先に無数に飛ばした魔力弾に次々と飛雷神をし、フルクライトの攻撃を躱す…が躱しきれずなん撃かはもらうが…。

「紅雷、焔…豪炎焔!」

フルクライトの剣を受け止めた剣を持った左手の逆…右手に込められた渾身の豪炎焔をフルクライトの腹に叩き込む。フルクライトは吹っ飛ぶ直前に俺にゼロ距離で魔力攻撃をしていてそれをモロにくらって上着が飛ぶ。

「くっそ…ラインハルト!合わせるから突っ込め!」

「分かった」

ラインハルトが先行しやや遅れて俺が突っ込む。

そしてラインハルトに近づきマーキングをする。

「ラインハルト、お前は攻撃する事だけを考えろ!フルクライトの攻撃は俺が何とかする!」

「任せる!」

「紅雷、来空包囲雷弾!」

フルクライトを囲うようにして魔弾が空中で止まる。

「なんだ!?」

「よそ見禁物!」

「見てねえとでも思ってたのかよォ!?」

通常ではありえないタイミングでラインハルトの攻撃をフルクライトは躱しそしてラインハルトを斬ろうとするその瞬間。

「紅雷…転身、飛雷神!」

ラインハルトが雷と共にフルクライトの眼前から消え、同時に後ろから血が吹き出す。

「なんだと…」

「紅雷、転身、飛雷神。瞬身とは違って自分ではなく他人を移動出来る」

「ふざけんな…もういい、テメェら全員コロシテヤルゥゥ!!!!!」

そしてもはや正気を失ったフルクライトが向かってくる。

恐らくこれ以上の力の上昇はないと…俺もラインハルトも確信した。

「よし…決める、ラインハルト!決めるぞ!」

「今までに僕らが与えたダメージは通ってるはずだ…怪我は治ってもダメージはあるつまり…」

「次の大技で決める…レム!ラム!」

「はい!」

「えぇ!」

「行くぞ、終わらせる!」

 

「ゼンブ!ゼンブ!コワシテコワシテコワシテェェェェ!!!!」

その奇声と共に周囲には豪風が吹き、瓦礫が飛ぶ。

「っ…うるせえよ、もう眠ってろいい加減にこれで終わらせる!」

「ツキ、いいわよ!」

「よし!ラインハルト、30秒だけ頼む!」

「了解した!」

そしてラインハルトが時間稼ぎの為にフルクライトに向かっていく…。

「紅雷…焔…火焔雷鳳」

そう唱えると剣を持っていない右手に凄まじい雷の魔力と焔の魔力が宿る。

「まだ…まだだ…」

これぐらいでは確実とは言えない…予想より10秒ほどオーバーして魔力が溜まった。

「ツバキ…まだか!」

「充分だ…紅雷、瞬身…飛雷神!」

ラインハルトと俺の位置が反対になる、そして…。

「ラム!レム!今だ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ラムの風とレムの鎖がフルクライトの動きを止める。

 

「行ってください!ツバキくん!」

「…っ…あぁ!」

 

「紅雷…雷鳳火焔刺突!」

ラムの風の中に飛び込み俺は右手に凄まじい魔力の短剣を顕現させた。紅い雷と紅い火焔が混ざり合いそれはフルクライトの胸に突き刺さった。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「再生させようとしても…無駄だ」

この技は食らったもの体内の細胞なら全てに至るまでを破壊する…、たとえ不死でも細胞を尽く…全て破壊すれば。

「終わりだァァ!!!!」

そして…赤い光となってフルクライトは消滅した。

(ありがとう…)

「っ!誰だ!」

後から声が聞こえた気がしたが誰もいない…。

「ツバキくん!」

レムが胸に飛び込んできた。

後ろに転びそうになるのを堪えて俺は受け止めた、レムは嗚咽を零しながら震えていた。

「良かった…っ良かった…本当に…っ良かった…」

俺はそんなレムの頭を撫で抱き寄せた。

レムは決壊し俺の胸の中で泣き叫んだ。

「ツキ…誰かいたの?」

「いや…気の所為か…」

いや、気の所為ではない…恐らくさっき聞こえたのは。

 

きっとアレに残っていたフルクライトとという人間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなりました、今後の投稿ペースにつきましてなろう2本やってその後ハーメルン1本となります、いややっぱ違いますどっちとも出来たら出すスタイルで行きます。


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我が家が一番

まぁ今回この章のエピローグ的なので短めです。


「………またか」

そう…いつだかと言うか昨日というか…。

「スー…スー…」

「スー…スー…」

俺の左隣で熟睡決め込んでいるレムと仰向けになっている俺の手を握っていて座ったまま眠っているラム。この世界に来て多分レムは3度目、ラムは4度目だ多分…。とりあえず3度目も同じように対応しようとした時…体に違和感が…。

起き上がろうと左手を支えに起き上がろうとした時に全く起き上がれなかった…というより、左手の感覚がない。

まさかと思い…左手を確認するがありはした、レムを起こさぬように右手で起き上がり、ラムを右手1本でベッドに移し寝かせる。

何故だか知らないがそれだけの事なのに息が上がっていた。

俺はさっきまでラムが座っていた椅子に腰を下ろした。

「くそ…しんどい」

原因は分かっている、恐らくは紅雷の反動。

途中から制限時間のことをすっかり忘れてノンストップで使い続けた上にニゾウ、フルクライトと強敵と2連戦したのだこれぐらいの反動があって当然かもしれない。体の節々か痛い。

袖をめくって左手を確認する、恐らく治癒術式が埋め込められているのだろう、緑色に鈍く光る紋章が掌にあった。

「着替えて…とりあえずここに居るか」

今はもう全て解決した上にこの体であちこち動き回るのはさすがに気が引けるというかめんどくさい。

「2人とも…当分は起きないだろうしな」

 

「…寝るか」

 

そうして俺は2人にブランケットを掛け、自分は椅子で眠りについた。

 

 

 

「ツキ…ツキ、起きなさい」

「…ラム?」

多分朝方に起きて二度寝して昼に起きたのかすっかり日は昇り、何考えてるかわかんないラムの顔を日が照らしていた。その白い肌と太陽のコントラストなるものはそれはそれは美しきものでした。

「どうしたの?起きて早々ラムの顔をじっと見て」

「え…あいや」

「ラムが可愛いのは分かるけれど」

「とことんお前って傲慢だな…俺に対して」

「それはそうと腕を見せなさい」

「あ…腕?あ…」

眠っていて忘れていたがそう言えば左手動かないんでした。

「出せと言われても動かないんですけど…」

「ちっ…しょうがないツキね」

「今割とガチなトーンの舌打ちしなかった?」

「うるさいわよ」

「スミマセンデシタ」

そうしてどう見ても機嫌悪そうに見えるラムはそれに似合わず、優しく俺の手を取って机にのせ治癒術式の解除を始めた。

「というか…この術式やったのって…」

「ラムよ」

「どうりで…なんか丁寧というか」

「レムは屋敷への帰還の準備をしているわ、ツキも準備しなさい」

「あ、あぁ…」

「腕、動く?」

「っ…よし、動いた」

「そう、なら良かった」

「さてっと…準備しますか」

「といってもツキ、剣くらいしかないでしょう?」

「いや、ラインハルトとフェルトのとこに挨拶でもしとこうかと」

「それならいいわ、ラムとレムが済ませたし2人は王都中心の城へと報告へ行ったからここにはいないわ」

「そうか…ま、その内また会えるか」

「えぇ…その時に、ね」

「さってと…それじゃラム」

俺は立ち上がりラムの方を向いて…。

 

「帰ろう、ラム」

「えぇ、そうね帰りましょう…ツバキ」

ラムは俺の手を取って立ち上がり今まで見た笑顔の中でも飛びっきりの笑顔を俺に向けた。

 

「あれ…今、ツバキって…」

「なにかおかしい?」

「っ…いや、ありがと、やっとまともに呼ばれた気がした」

「ほら、行くわよ?」

「はいはい…と」

 

「レム」

「ツバキくん!」

忙しそうにしていたレムが荷物を置いて駆け寄ってきた

「もう…平気ですか?」

「あぁ…ありがとう、もう大丈夫」

「よかった…」

「手伝うよ、というかこんなにあったけな?」

「それはフェルト様からの御礼の品々よ」

「多すぎ…だろ」

山のようにつまれた金とかその辺の金になりそうなのが積まれていた、ほんま汚い大人やでロズワール。

「王選のための資金も不足していたのでロズワール様が交渉してくださいました」

「なるほど…それでこの大量の」

「ではツキ、準備は?」

「俺はいいけど流石に今は引っ張れないから」

「分かったわ地竜を連れてくるから少し待ちなさい」

 

そうして俺達が乗っている竜車の後ろに金品がつまれた竜車を走らせ屋敷への道を歩んだ、送迎もフェルト一派の差し金だ。

まぁ…俺は疲れすぎてまた寝てしまうんだけど。

 

「スー…スー…」

「レム、ツキは…」

「寝ています…さっきまで寝ていたのに…」

「きっと疲れたのね…」

「はい、あの時…ツバキくんは少なからず姉様やレムを巻き込まないように戦っていました…」

「そうね…とりあえず…」

 

そうしてラムはツバキの左頬にレムは右頬に…。

「お疲れ様でした、ツバキくん」

「お疲れ様、ツキ」

甘くて優しい労いのキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました!次の章はようやくスバルが屋敷にやってきますよ!


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バンガイヘン!
バンガイヘン!記念回第一回目、レムりんは甘えたいそうですよ


皆様お待たせしました、レム回です。
時系列はツバキとラムがくっつく前です。
ではどぞー。

あとこの調子で伸びると記念回また作らなきゃ行けないので狂喜乱舞しております誠にありがとうございます。


「うーん…風邪だな」

「すみません…姉様ご不在のこんな時に…」

「いいから、大人しく寝てて」

 

なんか朝起きて厨房に行ったらレムが倒れてて大慌てでベアトリス呼ぼうとしたけど、扉渡りがキツすぎて時間が惜しいからとりあえずレムの部屋で寝かせて。目を覚ましたからおでこに失礼したら完全に熱出てて咳とくしゃみが酷くて頭痛もするらしく、これ完全に風邪だなと。

まぁ原因は心当たりある、昨日だったけな…レムが村へ向かった帰りに雨に濡れて帰ってきたからな…。きっとそれが原因だろうな。

ちなみにラムは今ロズワールの助手として本邸の会議に出席しているためご不在です。

これから一応本邸まで猛スピードで行って応援だけ呼んでこようかと思っていた所だ。

 

「とりあえず、熱がひどいから…冷やすもん持ってくるから。あと…こんだけ熱があると薬がいるな…」

「薬…ですか」

「あーくそ…しゃーない、レム」

「はい…なんですか?」

「出来るだけ早くラムを連れて戻ってくる、助手に関しては本邸の人に変わってもらうように言っとくから」

「は…い」

「ハーク」

「はいはーい、ってレムちゃん大丈夫?」

「ハーク、レムを見ててくれ俺はラムを連れて戻ってくる」

「分かったわ」

「飛来神、定!」

 

俺は自分が立っているここに飛来神の魔法陣を置いた。

これでラムを連れてきさえすれば、一瞬でテレポート可能だ。

 

「頼む、レム少し待っててくれ」

「はい…待ってます」

「ごめん、ハーク頼むぞ」

「いいから行っといで」

 

俺は窓から飛び降り、雷双天を発動させる。

 

「雷双天、烈雷光!」

 

俺は魔力を最大限に加速に使って飛ばした。

距離にしておよそ500キロほど離れているが、10分程度で何とか着いた。

 

「ラムラム…あ、いた!」

 

俺は直ぐにラムを感知しその場へ向かう。

 

「ラム!」

「ツバキ?なんでここに…」

「レムが熱出して倒れた、今からでも助手変わってもらえるか?」

「レムが…」

「そういう事なら、ラム、行きたまえ」

「ありがとうございます、ロズワール様」

「ラム、手を」

俺はラムの手を握り、唱える。

「飛来神!」

 

瞬時に移動し、レムの部屋に来た。

 

「はぁ…はぁ…超距離転移はやっぱりきついな」

「レム、大丈夫?」

「姉…様、すみません…」

「いいのよ、レムはいつも頑張ってくれているものこんな時ぐらい休んで?いいわね?それにしても…薬をもらってこないと」

「薬はあるのか?」

「ここまで酷い熱だと王都まで行かないと…ないわね」

「分かった、ハーク」

「分かったわ、ラムちゃん。乗せるから支度しなさい」

「ツバキ、レムを見てて、30分程したらすぐに戻るわ」

「分かった、頼むぞ」

「任せて」

 

そうしてラムは王都へと向かっていった、位置はハークと繋がっているので常に把握している。心配はないだろう。

 

「朝御飯…まだだったよな?」

「はい…そう言えば」

「お粥作ってみるけど食べる?」

「おかゆ…?なんですか?それは?」

「風邪引いた時って喉が痛かったりして普通の食事はあんまり食べたくなくなるだろ?」

「はい…確かにそうですが…」

「だから栄養も取れてなおかつ食べやすいものを食べた方がいいって事、そんでそれがお粥」

「それは…ツバキ君の国のご飯ですか?」

「まぁ、俺の国では風邪ひいた時はこれ食べてたな」

「でしたらぜひ食べたいです」

「よし、んじゃちょいまち」

 

にしたって、お粥の作り方知っといてよかったわ。

この世界は風邪引いた時は薬を飲んで安静だけらしいからな、俺が新たな文化を持ち込むみたいで少し誇らしい。

やったね!。

 

 

「お待たせー、てあれ?」

「ツバキ、静かになさい」

「ラムさん早いっすね…」

「行く途中に薬の行商人を見かけたからその場で買って戻ってきたのよ」

 

お粥を作り終え、レムの部屋へ行くとラムがいた。あとレムが寝ていた、どうしようせっかく作ったのに…ラムにあげるか。

 

「まだ寝始めたばっか?」

「えぇ、それは?」

「あぁ、レムの朝食にどうかってな。俺がいた国じゃ風邪引いた時はみんなこれ食ってた」

「レムはしばらく寝かせて置いて、あと小腹が空いたからそれはラムが頂くわ」

「おう…後半の私欲に関しては触れないでおく」

 

だからつつみ隠せよ、黒さ。

 

 

「ん…」

「起きた…?」

 

ずっと寝ていたレムが声を発したので、起きたと思い俺は読んでいた本を閉じる。そしてレムの方を見ると瞼をうっすら開けていた。

 

「おはよ」

「ツバキくん?」

「うん、ツバキ。お腹、空いてる?」

「はい…少し」

「よし、お粥作ってくるから待ってて」

「あっ!あの!」

「あー、大丈夫。朝作ったやつはそこで寝てるラムの胃袋の中」

 

そう、ラムさん。さっきからずっと向かいのソファで寝てるんですよ。あの…妹が風邪で寝込んでるのに自由過ぎない?手伝って?。

というかこの人爆睡してんじゃねえか、そう言えば丸一夜掛けて向こうまで行ったって話だったか。そりゃ眠くもなるか…仕方ない。

俺はラムを抱き、部屋をあとにする。

 

「レム、ちょっとラム運んでくるから少し待ってて」

「はい、待ってます」

 

うん、朝と違って受け答えもハッキリしてるし、薬の効果ありと思っていいかな?。

とりあえず…ラム寝かしてからお粥作って、レムのとこ持ってこう。

 

 

「あ、ツバキくん」

「お待たせ、熱いから気をつけて」

 

ラムをてけとーに寝かせて…、待ってこれまたラムにご飯作らなきゃなんじゃ!?。何回厨房行けばいいんですか俺はぁ!?。

 

「ツバキくん?」

「…いや…すこし憂鬱に浸ってただけだから大丈夫」

「憂鬱に浸るとは…?」

「大丈夫、気にしないで」

「は、はぁ…」

「っ美味しいです」

「そっか、良かった」

 

良かった、この世界の人にも別に風邪じゃなくても食べたくなるお粥の美味しさが分かるか…。

いやまじで普通に昼飯として食ってたからな俺は。

 

「ツバキくんの故郷はどんな所だったんですか?」

「俺の故郷か…一概には言えないが良いところだぞ」

「そうですか、では次の質問です」

 

えなにこれ質問コーナー!?。

 

「ツバキくんはどうしてあんなに焦ってたんですか?」

「焦ってた…まさか聞こえてた?」

「はい、意識はあったので」

「あぁ…その、不安だったというか…」

「不安…ですか?」

 

そう不謹慎かもしれないがあの時一瞬レムが死ぬ…いなくなると、考えただけで心が落ち着かなくなった。

 

「レムがいなくなったらどうしよう…とか考えただけですっげえ不安になるし、寂しくなった」

「…」

「だから、本当にいなくなるのは絶対嫌だった。だからまぁ…あせったのかなぁ?」

「…」

 

焦った?いや違うか?というか…俺今とんでもない事言わなかった?。あれ今の…解釈によるけど告白じゃない?今日は月が綺麗ですね的なあれじゃない?。

あれ?なんかレムさん顔真っ赤ですよ?。おちけつおちけつ!。

 

「レム…その今のは…」

「ツバキくん」

「はい!?」

 

レムが俺の手を握る、そこには温かみの他に優しさを感じれた。

だが…帰ってきた言葉は俺のメンタルのパーセンテージを更に上げてきた。

 

「言質…取りましたからね?」

「ふぁ!?」

 

いつものレムなら何も無かったように流してくれると思っていた時期が俺にもあったよ、男はつらいよベイベー。

 

「お願いだから今のラムには言わないでくれ!あれだから!今後一生のネタにされる!」

「なにが、かしら?」

「ふァァァ!??」

 

フラグ建築からブレイクまでノータイム!?。俺1級建築士じゃねえよ!?。振り返るとそこには笑いを堪えたラムの姿がいた。

もうダメだ…。

 

 

そしてその後レムに慰めてもらった翌日。

 

 

 

「アホなのかしら…」

「大丈夫です、ツバキくん今度はレムが看病しますから!」

 

綺麗に俺にも風邪が移った、あとその日の昼食にレムが見よう見まねで作ったお粥が出てきた。俺が作ったやつよりも美味かった。

 

少し凹んだ。

 

 

 

 

 

 

 




皆さんドリフェスいかがでしたでしょうか?
僕は大成功でしたよ、ええはい。
我が推しである、モカのピックアップ引けた瞬間は転がり回ってコップのお茶が零れましたからな(ガチ)。
それと次の記念回は四月中を予定しています。
感想にてネタ募集をしています、その中から僕が選んだものを3つアンケートで多数決で決めます。ネタ募集は3月いっぱい、4月末に記念回を作りたいと思っておりますゆえ。何卒皆様のアイデア、ネタ、お待ちしております。


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レムと結ばれた異世界生活

すみません、失踪してました。ずっとなろうのプロット考えてました。没数が三桁超えたぐらいから顔から生気が消失していたとうちの妹が言っておりました。


「ママとどうやって出会ったか?」

「うん、気になったの」

 

今いるここはロズワール邸の東棟に当たる子供部屋だ、ここで俺は自分の娘であるミリムと遊んであげていた。その綺麗な瞳と髪は俺の嫁を思い出させ、その黒い髪色は俺そのものだ。子は親に似るとはよく言ったものだ。

 

「そうだなぁ…パパとママが初めて会ったのはあそこの森なんだよ」

「あそこの森って怖い魔獣がいっぱいいるんじゃないの?」

「パパはとある事情でその森でぶっ倒れてたんだよ」

「大丈夫だったの!?」

「あぁ、ママが助けてくれた」

「良かったぁ…」

「それでまぁ、ロズワー…ロズおじさんにお願いしてここで住まわせてもらう事にしたんだ」

「それでお仕事してたの?」

「おん、ラムとママと一緒にな」

「おばさん、仕事してたの?」

「…ミリムよ、絶対にラムの前でそれを言うなよ。俺が怒られるからな」

「えー、なんでー?」

「ミリムに妹が出来て、その妹に子供が出来れば分かるよ」

「パパ、妹が欲しい!」

「うーん、パパ頑張ってるんだけどな…」

「双子!」

「ママとおばさ…ラムに憧れる気持ちは分かるがいい子にしてれば双子来てくれるかもな」

「誰がおばさんよ」

「ファッ!?」

 

すみません、うちの子供はどうやらナチュラルに人を抉る才能があるようです。あとこの子被害にあうの大抵の場合俺がラムなんですけどなんとかして欲しい!。

 

「オーケー、とりあえず弁解をさせてください。お願いだから頭握らないで!ミリムの前ではアカンて!」

「ミリム、ラムは少しパパと話があるから少し待ってて」

「うん、分かった」

「ミリムぅぅ!!出来ればもう少し粘っ…」

「行くわよ」

「あぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

その後ラムのアイアンクローが炸裂しまくってクリティカル決まったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、大丈夫?」

「うん…ありがと」

「それで、その後どうしたの?」

「まだ聞くのか…」

「だって気になるんだもん!」

「…しゃーない」

 

しょうがないよ、自分の子供は可愛いんだもん。しょうがないよね。

可愛いは正義、ハッキリわかんだね。

 

「それでまぁ…俺とママ、少し喧嘩しちまってな?」

「ママとパパが!?」

「おん、でもまぁお…ラムが助けてくれて仲直り出来たぞ」

「おばさん、優しかったんだ…」

「ラムはいつもちょっとキツイけど、本当はすごく優しいからな…」

「分かった!これがツンデレってやつなんだね!」

「ミリムお前それ絶対ラムの前で言うなよォ!?」

「それでさ、パパってなんでママの事好きになったの?」

「なんで…か、なんでだろうなぁ…気づいたら好きになってた」

「何それ?」

 

今思えば、好きになった瞬間が分からない。気づけば好きになっていた、気づけば目で追っていた、気づけば隣にいてくれたから。

だから多分、言えるとすれば…。

 

「一目惚れかなぁ…あったとして」

「一目惚れ…?」

「おう、一目惚れ」

「へぇー」

「ほれ、もう遅いからママに怒られるからはよ寝とけ」

「はーい、おやすみー」

「おう、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパを好きになった理由?」

「うん!」

 

娘が出来た時からいつかその質問をされるであろうと思っていたがまさか4歳というこの早い段階で飛んでくるとはレムは思っていなかった。まぁ当の旦那様が一目惚れと言ったことをレムは知らないんだけど。

 

「そうですね…優しいところとか」

「他には!?」

「うーん…私はそれくらいかもしれませんね」

「ちなみにパパは一目惚れだって!」

「え…そうだったんですか」

 

そう、結婚して5年になるがこの話を聞いたのはレムは実は初めてだった気がする。

 

「あ、そうだ!ミリムね!妹が欲しい!双子の!」

「そうですね、ミリムがいい子にしてれば来てくれるかもしれませんね…」

「うん!ミリムね!おばさんみたいなお姉ちゃんになるんだ!」

「そうですか、それは良かった。それよりもほら…もう寝る時間ですよ?」

「うん!おやすみなさい!ママ」

「はい、おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

「…起きた?」

「いえ、寝ています」

 

時刻は夜深く、ミリムは俺とレムの間で気持ちよさそうに寝ていた。

今俺たちはベッドの上で川の字で寝ている。

 

「そっか…ふぅー…」

「随分疲れが溜まっていますね」

「いやまぁ今日ちょっと野暮用で王都まで行ったんだけどな?」

 

時間は今日の昼近くに遡る。

 

 

 

「そうか、お前さんの娘ももう4歳か」

「おう、あんがと」

 

ここは王都のとある市場の酒場、と言っても昼から酒を飲む事はオレの嫁さんから固く禁じられているので飲んでいるのは普通の麦茶だけど相席している知り合いの獣人リカードはもうさっきからハンパない勢いで飲んでるけど全然酔わないな…。

 

「4歳となると…もう言葉はだいぶ話せるんちゃうか?」

「まぁな、もうだいぶ意思疎通できるし何より可愛い」

「すっかり親バカっちゅうやつやな」

「うるせえわ」

 

あの天使の親バカなら喜んで引き受けるわ、あとあの女神の愛妻家なら俺しかいねぇ。

 

「そういや、お前んとこの王女様と兄ちゃんはどないしたん?」

「あぁ…あの二人なら結婚したぞ?」

「ホンマかいな!?」

「声がでけぇよ…」

「いやー!めでたいやっちゃこれは!」

 

いやまぁ、あの二人って俺らより先に結婚すると思ってたけどな。まぁかたや俺やヴィルヘルムさんやユリウスやラインハルトが認める鈍感ヘタレ、そしてかたやもはや恋愛という概念を疑う超天然お姫様。

そりゃ、時間かかるわ。まぁ…見事結ばれたけどな。

 

「それにしても、リカードは変わんねぇよな…」

「そういうお前さんは老けたんちゃうか」

「馬鹿野郎、俺まだ26だぞ」

「まだそんな若いんか…」

「結婚したのが20だからな、そりゃ普通の人よりは早いだろ」

「そういや、お前さんが結婚した時あの姉ちゃんは反対しなかったんやなぁ…」

「あー、そういえばな…」

「なんや、なんかあるんか?」

「1日、ロズワール邸の仕事を1人でやらされた、それが試験だって」

「…大変やったんやな」

「ホントだよ」

 

 

 

「おや、珍しい組み合わせだな」

「ユリウスか…」

「あからさまに嫌そうな顔をするな君は」

「おおー、ユリウスやないか」

「久しぶりだな、リカード、それにツバキ」

「なんで近衛騎士団のお前がここに?」

「アナスタシア様に頼まれてここの市場の偵察に」

「今度はここに進出するのか?」

「そのつもりだと聞いているが?」

「王国の経済牛耳るつもりかよ…」

「アナスタシア様は経済を担当しているのだから問題ないだろう?」

「そりゃ問題ないだろうけどな?」

 

ふと、俺は思い出した。危ねぇ、忘れる所だった。

 

「あー、スバルとエミリア様の挙式やるっつったら来るか?」

「もちろんやないかい!、あのちびっこ達も行きたがるで!」

「私も…恐らくアナスタシア様が行くだろう、同席しない訳にはいかない」

「そうかよ、とりあえずお前らは来ると…」

「クルシュ様のところへ招待状はだすのか?」

「出すよ、というか基本的にエミリア様が今色んなところに出しまくってる」

「そうか、楽しいものになりそうだな」

「その頃にはお前さんの新しい娘でも産まれてそうやな」

「さてどうかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っていう話だったんだよ、ほんとにあの二人相手すんの疲れるんだよ」

「それは…まぁ」

「さて…俺らも部屋戻るか」

「はい、そうしましょうか」

 

そうして俺とレムは隣の部屋へと移り、ベッドに横になる。

こうなると…ね。

レムってミリムとかラムの前だといつものレムなんだけど、こう…俺と二人っきりになると凄くこう…甘えてくるというか。

いやまぁ…こっちも嬉しいには嬉しんだけどな。

今だってレムはベッドに横になった瞬間にギュッと抱きついてくるわけだし。

 

「ツバキくん…」

「どした?」

「その…少し話があるんですが」

「ミリムが妹が欲しいって言ってた?」

「…ツバキくんは…どう思いますか?」

「…作る?」

「いや…そのちょっと…心の…」

「冗談、レムがいい時でいいよ」

「いいんですか?」

「まだ俺達の時間は始まったばっかだ、これからきっと…何十年とレムとラムと…この屋敷のみんなと一緒に時間を過ごすんだから」

「ツバキくん…」

「だからまぁ…焦る必要はないぞ?」

「そうですね…でも」

「でも?」

「レムは…今…したいです」

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから二年後

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて微笑ましい光景なんだ…」

「全く同感だ…」

 

現在、目の前の光景を説明すると庭のベンチに俺とスバルが座っていてそんで向こうの木の下でレムがミリムを抱いていてラムが俺達の一年前に産まれた双子の姉のリムを抱いていて、その双子の妹のルムはエミリア様に抱かれている。

単刀直入に言う、生きててよかった。

 

「幸せだ、本当に…」

「あぁ、色々あったけど過ぎてしまえば…だな」

「あれを守るのは俺らの仕事だ」

「そうだな…」

 

本当に色んなことがあった、辛いこと悲しいこと色んなことが。

でも俺らはここにいる、ここで幸せでいれている。

 

「さて、俺らも行くか…」

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レムは幸せか?」

「もちろんです、ツバキくんの隣にいれて傍にいれて」

 

「レムは世界で一番幸せな女の子です!」

 

 

 




長い間待たせてしまい申し訳ありません。
なろうの方のプロットを3桁を越えそうなレベルでボツにしていたので申し訳ありません。
今後はきちんと報告を入れますのでどうかお許しください。
リゼロ本編の方はもうしばらくお待ちください。


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記念回 RE.レムから始める現代生活

最終章入る前に記念回やっとくわ

あと、たまにキツい感想残してく人いますけどどこをどうすればとかここがダメとか言ってくれないと分かんないので具体的にダメな部分を分かりやすく述べてください。



「ツバキくん、ツバキくん」

「…う…今、何時ぃ?」

「もう起きなければ遅刻してしまう時間です」

「マジか…」

なんか暑くなってきた5月の中頃、慣れ親しんだ幼馴染…というかもうそんなレベルではない関係となった彼女の声で目が覚めた。

彼女の名はレム、高校生にして一人で暮らしていけるほどの生活力と俺を日々癒してくれる包容力を併せ持つ俺の女神だ。

彼さえいれば生きていけるとか抜かすドラマのヒロインいるけど気持ちが分かるようになってきた今日この頃。

「うん…おはよ、レム」

「はい、おはようございます、ツバキくん」

目をはっきり開くとそこには寝間着姿のレムがいた、そうだったね、君昨日ここで寝たもんね。「付き合ってるんですし一緒に寝てもいいですか?」って言って答えを聞かずに顔真っ赤にして入ってそのままだもんね。

ご飯は基本的には2人で作る、いやホントならもう1人の同居人がいるんだけどその人料理苦手な上、早く起こして怒らせると主に俺に被害が来るから嫌なんだよ、だからまぁもう1人の人はレムが起こしに行くとして俺が基本的に先に作り始めるのが朝のリズムだ。

「さて…俺が朝ご飯作るから、レムは早めにラム起こしてきて」

「はい、分かりました、今日はなんにしますか?」

「うーん…サンドイッチだな、手軽だし」

「分かりました」

サンドイッチを侮ることなかれ、挟むものによってはなんでも栄養が取れる万能ランチだ、ちなみに呼び方ってウィッチ?イッチ?。

「はてさて…やりますか」

俺は着替えて洗面所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様、ほいこれ」

「ツキに姉様と呼ばれる筋合いはないわ、死になさい」

「朝っぱらから辛辣!まぁいつもの事だけどもう少し柔らかくならない?」

「諦めなさい」

「自分で言うな改善して!?」

「大丈夫です!ツバキくんはいつだってレムの英雄です!」

「レムさんそれはもはやどういうフォロー!?」

あさっぱらから騒がしくしてしまってご近所さま申し訳ありません、いつもの事ながらこの辛辣姉様のお口はもうすこしやわらかくなったりしないものだろうか、うん無理だな諦めよう。(諦めんなよ!どうしてそこでやめ(ry)修造感)

姉様と呼んでいるこのお方の名前はラム、レムの双子の姉に当たる。レムは右目を前髪で隠しているのと反対に左目を前髪で隠している、瞳の色と髪色もレムは水色だがラムはピンクに近い色をしている。

まぁ何よりの違いはその性格なんだけど。

あと妹の方がスペック断然上だとかは決して触れてはいけないぞいいな?、そして最大のタブーは胸囲の差だ、そんなこと言った暁にはおそらくあなたの顔面に拳か包丁が飛んでくるであろう、またはふかし芋。

「おー、今日もやってるなー」

「イラつくから毎朝それ言うのやめろぉ!」

「ツバキ、おはよう」

曲がり角に差し掛かった時に横から聞こえてきた声に俺は不機嫌な声を返す。だがその直後に聞こえてきた唯一この時間に適した言葉に俺の心は少し浄化された。いやほんと少しだけだけど。

目つきの悪い顔、逆だった髪、そしておかしな肩幅…。

「なんか今お前に酷評されてる気がするんだが気の所為だよな」

「気の所為だろ」

そしておかしな肩幅、そう彼の名は菜月昴。俺の唯一の男の親友である。ちなみに男子が寄り付いて来ない理由は俺がレムと付き合い始めてからレムに悪い虫がつかないようにとラムが徹底的に男払いをしている事をレム以外の全員が知っている。

そして、そのスバルにはアンマッチすぎる容姿端麗でガラスのような瞳と透き通った銀髪、彼女の名はエミリア。

もはや学校公認のカップルと言っても過言ではないほど仲がいいのにも関わらず男の方はポンコツ、女の方は恋愛知識(プラス性知識)皆無のため、未だに進展なし!。

まぁこの現状が半年続いてるからいい加減なんとかして欲しい、こっちが余計な心配をする必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラム、これ今日の弁当」

「サンドイッチね、ツキらしい料理だわ」

「褒めてんの?貶してんの?」

「両方よ」

「それ結局どっち!?」

お昼休み、学園ハーレムラブコメ…ハーレムいらないかこれ、学園ラブコメにありがちな屋上でのご飯タイム、クラスが同じなレムと隣のクラスになってしまって毎回少し不機嫌なラムを引き連れ向かうとやはり穴場のここは空いていたのだ。

「それと、ツキとレムに言っておくことがあるわ」

「何?」

「ラムは今日、叔父様のお屋敷の手伝いに行かなければならないから夜ご飯はいいわ」

「そうか、分かった」

叔父様、というのを読者目線で超簡単に言うとロズワール。

この世界で言うと、親のいない俺達の資金援助を全面的に行ってくれている恩人のような人だ。

「姉様、明日には戻られるのですか?」

「いえ、明日でもおそらく無理でしょう、土曜…日曜には戻るわ」

「分かりました、レムは待っています」

「ツキに何かされたら言いなさい、ラムが○○○するわ」

「いまなんとおっしゃいました!?」

すみません、この小説で○○○とか○○○○とか○○○○とか言わないでもらっていいですか?タグとかまたなんか言われるじゃん。

というかそろそろタグ整理しようと思うんだけどみんなはどう思う?(唐突に読者に意見を求めていくスタイル)。

「はぁ…とにかく…ラムは今日から明日の夜まで家には戻らないから、留守をお願いね」

あのすいませんなんであなたが呆れてるんですかね、呆れたいのこっちなんですけど!眠過ぎてもう寝たいのこっちなんですけど(じゃあ寝ろというツッコミはなしでお願いします)。

「分かった、そっちも良くやれよ」

「ツキに言われるまでもないわ」

「心配してるのにもうちょい柔らかい返しはないんですかそうですか」

「大丈夫です!ツバキくんがどんなに可哀想でもレムはツバキくんの味方です!」

「それはもはや励ましているの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、皆にとおう…このトーンやだななんか恥ずいやめよ。

読者…いや間違えた、紳士淑女、老若男女に問わず、好きな人と二人っきりになった時、人はどうなるだろうか。

緊張したり、赤面したりするだろう、ではそれが既に付き合っていたり既成事実が出来ていたりしていたらどうなるだろう。

 

答えはこうなる。

「ツバキくん…」

「お、おぉう?」

現在の時刻は夜の10時、学校を終え、夕食を食べ終え、風呂に入り、課題をやり終えふとん、適当にベッドに入って目を閉じずにボーッとしていると風呂上がりのレムが布団に入りこんできた、いや今までも何回かれむが布団に潜り込んでくることはあったよ?でも付き合ってからはレムはラムに気を使ってあんまイチャイチャして来なくなったけど、なんでこんな狙い澄ましたかのようなタイミング…さてはグルかァァァァ!!!!。

あの別れ際の姉様の謎の「ハッ!」はそういう事かよちくしょうめぇぇぇぇ!!!!。

風呂上がりの女の子の新鮮なシャンプーの匂いだとか濡れた髪だとか、うなじから垂れる水分だとかが俺の理性を削りに来る。

うぉぉぉ!!!耐えろぉぉ!!耐えろ俺ぇ!。

布団の中に入ったレムを必然的に抱き締める形になってしまった訳だが、これはこちらがやったことではなく、テンション上がりまくってるレムがやってきた事だとここに明言しておく。

決して俺から誘った訳では無いので感想欄で誠死ねみたくツバキ死ねとか書くのはおやめ下さいませ。

「レム…あのだな?」

「…なんですか?」

「俺達まだ高校生だよな?」

「はい」

「だから…その…ある程度弁え…」

俺がその言葉を言い切る前に言わせまいとレムが唇を合わせる。

10秒、20秒、それなりに長い時間唇を合わせて、それでレムがやっと離したと思えば…。

「好きです…ツバキくん」

「…その…俺もだ」

それだけ聞いて満足したのか、レムはベットに潜り俺にぎゅっとしがみついて俺の胸に顔を埋めた。

 

 




なんか3万アクセス行ってましたありがとー!。
…ていうかまた記念回やんなきゃじゃないこれ!?。


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第一章 死ねない理由
新たな異世界者、前編


スミマセンデシタスミマセンデシタスミマセンデシタ
イチャイチャさせます。


「ねぇ、ラム?」

「どうしたの?ツバキ」

「最近さ、甘え過ぎじゃない?」

そう、あれから5ヶ月経ってラムとレムとの距離感はもはや恋人みたいに近くなった。ちなみにレムさんは村に行っています。

現在の状況を説明致しますとソファに座ってボーッとしていた時に突然ラムが現れ膝枕を要求され断れず2時間…と言った具合です、あとさっきまで寝ててついさっき起きたのにまた寝ようとしてますこの人。

「そうかしら?ならもっと罵倒が必要かしら?」

「いやそれもできれば辞めて欲しいような欲しくないような…」

「ツバキ…とうとうそっちの趣味に…」

「目覚めないから、というか気になってたけどロズワールは?」

「王都にいるわ、エミリア様と同じタイミングで屋敷を出たでしょう?目的地は違うようだけど」

「そうか…エミリア様大丈夫か?」

「その為にツバキは自動結界貼ったんでしょう?」

「あぁ…あれ自動結界って言うのか…パックに言われるがままだったから」

「もし万が一があればツバキの自動結界が作動してツバキが気づくはずだから安心なさい」

「結界が作動した時は…」

「全速力で王都へ向かう事…そして」

「エミリア様を連れて…俺も無事戻ってくる事…だよな?」

「分かってるならいいわ…」

言い当てられたのが若干ムッとなったのかラムが少し視線を逸らしたので俺は膝に乗ったラムの髪を優しく撫でた、ラムが一瞬固まったが直ぐにリラックスしやがて眠ってしまった。

 

「ただいま戻りました…って姉様?」

「レム、しーっ…寝てるから起こしたら怒られる、俺が」

「隣、いいですか?」

「どうぞどうぞ」

そうしてレムは隣に座り、俺の肩にちょこんと頭を乗せる。やっぱり女の子なのかシャンプーの匂いやら俗に言う女の子の匂いがした。

「どうだった?しばらく行ってないからか不安がるとかは?」

「いえ、むしろ皆さん温かく迎えてくださいました」

「そうか…」

「強いて言えば…また」

「魔獣だろ…気づいてる」

「気づいてたんですか?」

「あぁ…一応な、嫌な予感がずっとしてた」

「それでこの間…急に森に」

「全く持って意味なかったけどな…」

「え…どういう事ですか?」

「どうなってんのか分からないが…魔獣の数が増え続けてる、交尾の頻度が異常だついでに成長速度も」

「でも…そこまで多くなれば共食いをするのでは…」

「それもない…からだ、一応この近辺の被害を調べたらベアトリスとロズワールとエミリアが結界張ってるロズワール領はいいとして他の結界が甘いとこは数で破られて家畜が殺されたり人が殺されたりしてる…だけならまだよかった」

「だけ…とは?」

「黒マントを着た招待不明の奴ら複数が同時に現れて金品をかっさらった…と言えば通じるか?」

「黒マント…まさか」

「魔女教なら魔獣を使う事しないというか出来ないはずだ、それはロズワールから聞いた、魔女が作った魔獣だが魔女教はそれを制御できる権限はない」

「だったら…まさか」

「ロズワール領の結界を破るための準備…そして俺達への報復」

「……」

「俺が来る前にも魔獣を使った同系統の犯罪は起きてた、でも俺が来てから魔獣を狩り始めてそれは極端に減った…」

「それに対する…報復だと?」

「俺はそう睨んでる…少し前に突然変異個体に遭遇した事があったよな?」

「はい…確かに」

「俺が見て実際に狩って知った事が正しければそれが増えて全体の四割を占めてる」

「それは…不味いのでは」

「あぁ…不味い、だから今度王都へ行ってラインハルトから騎士団へ問題の解決を頼んでくる、俺達はここの防衛だ」

「兄様…」

「ん?」

気づいた時にはレムが俺を抱き締めていた、ラムが起きるかと思ったらまだ寝ていた。

「レム?」

「…兄様は凄いです…自分で考えて出来ることをさがしてそれがいつも正しい…独りでなんでも出来てしまう」

「そんな事ないぞ、今回だってラインハルトやロズワールの力を借りて…」

「でもそれは全て兄様が始めたことです、兄様が動かなければ気づかなければ…きっとみんな…」

「それは違う…違うぞレム」

「え?」

「俺だって間違える、5ヶ月前のそれがそれだ、俺は見誤った…その結果あそこまで無茶しなきゃいけなかった…」

「そんな事…」

「でもな、俺がニゾウやフルクライトに勝てたのはレムのおかげだ、レムが剣のストッパーに気づいてくれたからだ…」

「ツバキくん…」

「だからレムも、自分にもっと自信を持っていいんだぞ?」

「兄様…」

「いいかレム!」

「は、はい!?」

「お前は可愛い!綺麗!」

「へ!?」

あ、これちょっとテンションミスったかなとも思ったがここまできて引き返せるかよ。だって目の前のレムさん顔真っ赤でしどろもどろですもん。可愛すぎかよ。

「お前はもっと自分に自信を持て!胸だってラムより…ぐぉあぁぁぁぁ!!!!?????」

その直後後ろから黒いオーラムンムン出してるラムが俺を羽交い締めにした、その直後は…niceboatという事で。

 

「スミマセンデシタスミマセンデシタスミマセンデシタ…」

「……もういいわ許してあげる」

「スミマセンデシタスミマセンデシタスミマセンデシタ…」

「レム…ラムはそんなに怖かったかしら?」

「レムはそんな事ないと思いますけど…」

「スミマセンデシタスミマセンデシタスミマセンデシタ…」

「いい加減に…戻ってきなさい!」

ゴン!

「ここどこ!?俺誰!?」

「姉様!逆効果です!」

「ならもう1発…」

「嘘嘘嘘嘘!!!!!やめてください!」

 

一方その頃エミリアは

「だれ…だ?」

「下がりなさい、下郎」

少年は運命の人に出会った、その少年の名は…

 

 

ナツキスバル

 

 

 

 

 




次回!5ヶ月経って成長したツバキをご覧あれ


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新たな異世界者後編、結びの時

テンポよく行きますよ、今回でツバキとスバルの初顔合わせです。
そして…ヒロイン確定回です。
2時間で死ぬ気が書き上げたものです、誤字が多発している恐れがあります


その出会いのきっかけは突然訪れた。

 

「っ!」

ふと、なにか嫌な感じがした…恐らくこれは…。

「どうしたの?」

俺と隣り合わせで紅茶を嗜んでいるラムが俺の表情を伺いながらそう聞いてくる。

「自動結界が作動したらどんな感じで分かる?」

「それは…ツバキ自身が一番わかってるはずよ」

「っ…白狼!」

俺は白狼に呼び掛け、ここに呼び出す。

「何?どうしたの?」

「エミリア様に掛けておいた自動結界が作動した、ここから今エミリア様がいる所までどれくらいだ?」

「全力で飛ばせば5分程だけど…」

「結界がじりじり減らされてる感覚がある…長くはもたないか…」

「行くのね?」

いつの間にか俺の前に向き合って立っていたラムがそう聞いてくる。

「あぁ、行ってくる屋敷を頼む」

ラムは俺の手を両手で握り…言う。

「絶対に…戻ってきなさい!」

「当たり前だ、ラムを残して死なねえよ。…っ行くぞ!白狼!」

「レム、ツバキが出かけるからラム達もあとから行くわ、準備して出発よ」

「分かりました!」

 

「乗って!」

「っおう!」

俺は白狼の背中に乗り全速力で王都へ向かった。

 

 

 

突然手に違和感が…まさか。

「どうしたの?」

「結界が壊された…早すぎる…急げ!」

普通の使い手なら壊すことすら不可能…多分レムでさえ不可能なレベルの結界を張ったはずだ…それをたった10分足らずで…。

「間に合えよ…っ急げ!」

 

 

 

「近づいてきた!あそこだっ…?この気配…どこかで」

「どうしたの?」

「白狼、ここで待て…ここから先は俺一人でいい」

「いいのね?」

「問題ない、むしろ俺達の味方が来ている」

「え?」

「飛雷神弾!」

俺は小さな雷の弾をエミリア様のいる付近に飛ばし…。

「飛雷神…転身!」

その雷の弾の位置に転移した。上空から見下ろすと…そこには。

「っ?…ラインハルト?」

そこには5ヶ月前に命がけの共同戦線をした王国最強の剣聖と何者かが戦っていた。

 

 

雷双天!

俺がそう心の中で呟くと蒼い雷の帯が俺の体にまとわりつき、目と髪が黄色になり皮膚に雷の筋が入る。

そしてラインハルトが戦っている付近に向かって剣を突き刺そうと下へ突撃した。

 

「ラインハルト!後ろに下がれ!」

「ツバキ!?」

動揺しながらも後ろに下がったラインハルトを確認した俺は敵を視認し攻撃を放った。

「雷双天…ライジングスターブレイク!」

俺自身は剣を振っただけだが斬撃はその先の物体を消滅させた。

敵は辛うじて交わしたが腕を掠めたので左腕は使い物にはならないだろう。

「何故…君が」

「さっき、エミリア様の自動結界が作動したろ?あれ俺の」

「まさか…あれを合図にここまでこの短時間で?」

「簡単じゃなかったぞすげえ疲れた」

「全く…君はありえないな」

「褒め言葉として受け取っとく…」

「それはそうと奴は…」

「腕をやられて逃げた…と思う、掠めはしたからな」

「そうか…」

「というかお前こそなんでここに?」

「フェルト様が狙われたので全力でお守りしただけだよ」

「そういう事か…エミリア様は?」

「ここを少し進んで左曲がった突き当たりの路地のガレキの上でスバルを見ているよ」

「スバル?誰だそれ?」

「私が来るまでエミリア様とフェルト様を守り抜いたそうだ、魔力もなく剣もなく…」

「魔力がない?なんだそりゃ…」

「どことなく…我々とは違う気がした」

「まぁ…いいや、それより敵はなんだった?」

「そうだ…確か、あれは恐らく腸狩りだ」

「あれが…そうか、エミリア様を狙ったのはそれが…」

「恐らく…だ、それよりそこにいるのは君の彼女かい?」

「は?って…ラム?」

俺が後ろを振り返ると瓦礫にもたれているラムの姿があった。

「どうやら無事に終わったようね…」

「どうしてここにっ…ていうのは野暮か。あぁ、終わった、レムは?」

「エミリア様とお客様一名を無事確保したから先に屋敷に戻っているわ、ツバキの狼精霊にも手伝ってもらって」

「そうか…エミリア様は怪我とか…」

「問題なく…むしろお客様の方が酷かったわ」

「治療に関しては後でベアトリスにパンケーキ焼けばそれで解決だ、さて…俺らも戻るか」

「ではツバキ、5ヶ月前のあの件は本当にありがとう」

「気にすんな…じゃな」

「では…」

そうして…ラムと共に屋敷へと戻って行った。

 

 

 

 

「ロズワール様…帰ってたのか」

「おーや…久しぶりだーねぇツバキくん?」

「ロズワール様、お帰りなさいませ」

「済まない、私が留守の間に」

「いえ、何も問題なく済みました」

「そうか…でだ…ツバキくん、君はあのお客をどう見る?」

「っ…どうとは?」

「君は警戒しているのかい?」

「一応…だけど」

「私もそれが正しいと思うがね、派手な動きは慎んでくれたまえ」

「分かってる…、大丈夫だ」

「ツバキ…」

「ラム、レム、くれぐれもお客様から目を離さないように」

「はい、承知しました」

「おやすみなさいませ、ロズワール様」

「そうだ…ツーバキくん」

「ん?」

「もう、君にラムの事任せてもいいかい?」

「は?」

「/////!!!???」

俺も少しは赤面したがラムはなんか…誰って感じだ。

「つまり…あれか?ラムの魔力の事か?」

「そうだ、何かと最近私も留守が多いからね、頻繁には出来ない…だがラムには常に万全な状態で勤務を全うして欲しい、それを考慮すれば君の方が適任だと思うがね」

「はぁ…ラムは?」

「っ…ラムは…構わない…わ」

「ラム…!?」

「そうか…ではツバキくん頼むよ」

「お、おう…」

 

「なぁ…ラム」

「…なに?」

「ご機嫌斜めなとこ悪いんだけど…割と本気の話していい?」

「…」

「ラム?」

「聞いてるから…大丈夫よ」

「なんで…一緒に寝るなんて急に?」

「気まぐれよ、少し寂しい時もあるのよ」

俺には分かる、これはラムさんの嘘だ、照れ隠し…とは少し違う…。

今、俺とラムは互いにベッドの端に座って窓から覗かせる夜空を眺めていた。

「じゃ…次、ほんとに本気の質問」

「……」

「ラムは…俺の事…どう思ってる?」

「…女に先に言わせる気?」

するとラムは顔を逸らして下を向く…だが徐々に距離を詰めて俺と肩が触れ合う距離まで来ていた、今までだったらこんな事あってもまぁ…ラムだしだったのだが…今は夜で…静かでラムの体温とか息遣いとか赤面してる顔とか…色々な要素があって…。

「悪い…」

「ツバキは…どう思ってるの?」

「俺…か」

「聞かせて…それを聞かなきゃラムは絶対に言わないわ」

ずるいなぁ…この人は、でも…だからなんだと思う、いつだってこの人は俺の隣にいた。気づけばそばにいて憎まれ口でもなんでも俺に関わってくれていた。

「俺は…ここに来た時最初は長くはいないと思ってた、俺は…っ」

自殺して気づいたらここにいた…なんで言えるわけが…っ。

「ツバキ、大丈夫よ。ラムは…受け入れるし誰にも言わないわ」

ラムが俺の手を力強く握るその手の温かさは俺に今まで勇気と力を与えてくれた。

「俺は…自殺したんだよ…で、気づいたらここにいた…」

「…俺は…生きてて良かったとは思わなかった…むしろ死にたかった…ラムにされるまでは…っ」

あの時…ラムの俺を気遣う一言が俺を…救ってくれた。

「ツバキ…」

「ラムからしたらなんでもない事なのかもしれない…でも…俺はそれまで優しさを知らなかった…だからっ…あの時ラムがしてくれたから俺は生きる勇気をラムに貰った、心を貰ったんだ…」

「今の俺があるのはあの時助けてくれたからというだけじゃない、その後も…ラムは俺を救ってくれた…ずっと心の闇の中で生きてた俺を…救ってくれた」

俺はいつの間にか…泣いていた、心の中でずっと伝えたかった事…ラムにどうしても言いたかった事…それらは考えずとも口から言葉として流れ出た。

「ツバキ…ツバキの答えを聞かせて」

気づけばラムは俺と鼻が触れ合うほど近距離にいた。息遣いが今までより濃く感じられる。両手はラムが握りしめて…離さない。

「俺は…ラムが好きだ、友人として…仲間として…じゃない…俺はラムを異性として…そして恋人として…好きだ」

それを聞いたラムは明確な反応は示さなかったが…ラムの瞳は揺れていた。

「ラムは…角無しの鬼よ」

「それが?」

「ラムは…あの時…里のみんなを守れなかったっ!」

「…」

「自分の妹だけを守ってっ!他のみんなには目もくれずっ…」

「…」

ラムは自分の中に長年溜め込んだ思いを俺に話してくれた。

「自分だけ助かって…そのくせ鬼である証の角も奪われて…ラムは…幸せになる権利なんてっ…とうの昔に!」

「それは違う…違うぞラム」

「なにもっ…違わない」

「違う、それだけは明確に否定する、たとえそれでラムに嫌われても否定する」

「っ…」

「だって…俺に以前話した時ラムは…皆を救えなかった事を悔やんでた…」

「……」

「あの時のラムは…泣いてた、その涙は決して嘘なんかじゃないだろ?」

「…」

「今のラムの言ってる事の真意は…ラムが自分を許せてないんじゃないのか?」

「…!」

俺はラムを抱きしめ…言葉をつづける。

「みんなを救いたかった…それは正しい…でも自分が犠牲になれば良かったなんて思うな、そんな事俺が許さない…」

「…」

「俺は…ラム、君に生きてて欲しい、君に笑ってて欲しい」

そうして俺はもう一度ラムの顔を見つめる、そのガラスのような瞳に涙を垂らしてこちらを見つめるラムの目は今にも溶けてしまいそうで…。だから俺は…。

「俺は…ラム、君に幸せでいて欲しい」

この言葉をずっと…ずっと言える日を待っていた。

「ツバキっ…」

「ラム、今度は君の答えを聞かせて」

「そう…ね」

そうしてラムは俺の意表を着くようにキスをした…。

 

5…10…15…20…それだけの時間なのに長く感じた。

 

「ツバキ…、ラムはツバキが好きよ…心の底から…愛してる」

 

そうして…俺とラムは…もう一度キスをした。

 

 

 

 

 

 

それは悲しい過去を背負った悲しい女の子がようやく手にした…幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか最終回っぽいですけど全然終わりませんからね!
これからですよ!これからですの!


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空白の5ヶ月 回想編 義妹として

5ヶ月…その間のレム、ラム、ツバキの3人の関係の変化について書いていきます。
序章の後編の最後から1ヶ月経った所からスタートです。



「レム、ラムを見なかった?」

「姉様…ですか?でしたらまだお部屋かと…」

「全く…しゃーない、ちょっと行ってくる」

「あ、はいお気をつけて」

「毎回思うんだけどラム起こすだけでお気をつけてっておかしいと思うんだよなぁ…」

「あはは…」

「何はともあれ覚悟を決めて行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃいませ」

そうしてツバキはラムの部屋へと向かっていった。

 

「……」

レムは最近のツバキとラムの関係の変化に気づいている屋敷で唯一の人だった。

あの一件以降、ラムのツバキに対する距離感がぐっと近くなった。ツバキの方は無意識なのだろうがそれでも以前と比べて明らかに近くなっている、何よりあのラムが他人に甘える所をレム自身初めて見たからだ。その甘えている人物はロズワールではなく4ヶ月半前にこの屋敷に来たばかりのツバキだ。甘えると言ってもそこまでではなく疲れている時にラムはツバキに膝枕を要求したり隣に座ってツバキの肩に頭を乗せて寝る…といった事でそれは以前からレムもしていた。でもレムに要求する時と明らかに違うのはその表情、レムの知る限りラムが男性にそういう事をされているのを見た事がないし、それに加えて表情もレムが見たことないくらい赤面している時もある。

もちろんレムもツバキに対する距離感は近くなった、でも好意の正体が異性としてなのかそれともそれとは別の特別な何かなのかは自分でも分からない。レムは少し前にツバキに聞いた事がある。

 

「ツバキくん」

「どした?」

「ツバキくんはレムの事をどう思っていますか?」

「んー…大切な存在、守りたいって思える存在…かな?」

「では聞きます、ツバキくん」

「今日どうしたの?レム」

「姉様の事をツバキくんはどう思っていますか?」

「ラムか?ラムは…一緒かな、失いたくないし、悲しませたくない」

「そう…ですか…」

「どうしたの?今日は」

「いえ、なんでもありません気にしないでください膝枕してください」

「さらっと要求するね、いいけども」

 

…といった具合でレムの事を、ラムの事を異性としてどう思っているかは明言してくれなかった。

逆に前にラムに同じ事を聞いたことがある。

 

「姉様」

「何かしら?レム」

「姉様はツバキくんの事をどう思っていますか?」

「そう…ね、奴隷…いえ召使い…いえ」

「聞こえたぞおい!」

「どうしたの、どれ…ツバキ」

「今お前素で間違えたろ!」

 

と言った具合でいつもの調子ではぐらかされてしまった上に本人登場でそれどころではなくなってしまった。

ツバキ含め、ラムとレム、3人の問題点それは…。

 

「恋愛に疎い…だね」

「やはり…そうですか、大精霊様」

ここはロズワール邸のキッチン、件のツバキとラムは村へ物資を届けに行って不在である。そしてレムの目の前にいる猫の大精霊、パックはチーズをかじりながらレムの相談事を聞いていた。

「ツバキに関しては生粋の鈍感で恋愛どころか異性とはあまり会話した事なかったんだよ、じゃないとあそこまで鈍感にならない」

「では、レム達は…」

「レムとラムは小さい時からロズワール邸で働いてたからツバキ以外の近しい年齢の異性と触れ合う機会がなかったでしょ?」

「はい…確かにそうですが…」

「そうだ…ハーク」

「どーしたの?」

声がしたのはレムの耳元、気付けばレムの肩に白狼、もといハークが乗っていた。

「ハークって…白狼ちゃんの事でしたか…」

「そ、ツバキの奴がいつまでも白狼じゃ可哀想って」

「ところで話は聞いていたね?君ならツバキが2人どう思ってるかは知ってるんじゃないかな?」

「どうって…そこのメイドが聞いた通りよ、あいつはあんまり隠し事とかしないし」

「うーん…やっぱりそうか」

「あの…姉様はツバキの事を本当はどうおもってるんでしょうか?」

「うん…きっと好きだろうね」

「その好きとは…」

「恐らく異性として…だろうね、ラムにとって今やツバキはロズワールよりも大きな存在だ」

「そう…ですか」

「レム、君に一つ忠告をしよう」

「なんですか?」

「自分の気持ちに正直である事、自分の心を間違えない事この2つを忘れないでくれ」

 

自室に戻ったレムは考えた、妹としてラムを応援する気持ちもある、だが…ツバキと関係が薄れるのは嫌だ。

 

自分はツバキとラムの傍に居られればそれでいい…。

 

不思議とその結論に戸惑いや迷いはなかった。

 

2人の幸せの先に自分もいて一緒に笑っていられればそれで構わない…と。

 

 

「兄様」

「それって…俺?」

「はい、今日からツバキくんの事は兄様と呼ぶことにしました」

「それはまた…なんで?」

「何となくです、レムが自分で決めました」

「そ、そう…」

「そうです、兄様」

「これは…強力だな…」

レムみたいに容姿端麗で可愛い女の子に兄様と呼ばれるとか俺みたいなやつでも理性が飛びそうになる。

「何がですか?」

「いや、なんでもない」

「?」

この子は多分俺が心の中で理性と死闘を繰り広げている事なんて知らないだろうな…。

「兄様、もう遅いですしレムは寝ます」

「そうか…、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 

 

不思議と後悔はなかった、自分でも悔いのない選択をすると思っていた。

 

でも本当はできる気はしなかった。

 

だから、安心していた。

 

自分はこれからあの二人を見守っていく。

 

あの二人を支えていく。

 

あの二人と共に歩むと決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から第一章本格スタートです


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目つきの悪くて肩周りのおかしい人

書き始め…なう(2019/02/23 22:28:57)
書き終わり…なう(2019/02/26 01:16:00)
あぁ…5000文字超えれたぁ、久々に超えれたぁよかった…なんか最近長めに書けないのが続いてたのでホントに良かった。


朝起きて…隣を確認するとラムが寝ていた。

オーケー整理しろ、昨日何があったか…ラムと気持ちを伝え合って、俺の記憶が正しければあんな事やそんな事はしていないはずそうに違いない、ほんとに普通に魔力供給しただけのはず!。

確認するとラムは服を着ていたつまりあんな事やそんな事はない、ただ抱きついてくれていて離れ難いだけ…。

とにかく起こさないようにラムからゆっくりと離れベッドから起き上がる…事は出来ず。

「…んっ」

「あ…」

起きてしまいました、ガチ寝起きのラムを見たのは今回が初めてなんですが…可愛い…尊い。んっ…とか艶めかしい声を出さんといて俺の理性と本能が死闘を繰り広げるから!。

「ツバキ…」

「おはよう…よく眠れた?」

ラムはベッドから目だけ動かしてこっちを見ていた。互いに微妙な空気が流れる。

「…着替えてくるわ、お客様もそろそろお目覚めになるだろうし」

「そうだな…そうしようか…」

「…ツバキ」

「何?」

「その…昨日の事だけれど…」

「っ…やっぱり俺の認識が違ってるっていうか…供給ってやっぱり恥ずかしかったり…?」

「そうではないの…その少し前」

「あ…」

恐らくだけどラムが言っているのは昨日のアレ(気持ちを伝え合ってキスしたあれであって別に深い意味ではない)ということで…いいのだろうか?。

「その…凄く、嬉しかった」

「あ、あぁ…」

「ツバキ…」

「何?」

「ちょっと貸して…」

「何を…っ!?」

不意にラムが俺の胸に顔を埋めた。

「どうした?ラム…」

「ラムの…ツバキ…大切な人」

泣いているのか言葉が途切れ途切れだがちゃんと意味は伝わった。

「あぁ、俺はお前のツバキだ、俺もお前を大切な人だと思ってるぞ?」

「ツバキ…」

「どうした?」

「ラムの傍をずっと離れないって約束してくれる?」

「あぁ…約束する、ラムの傍は俺専用の特等席だからな…誰にも譲らんさ」

「…嬉しい…よかった」

ラムが俺の胸に顔を埋めて嗚咽を零し始めた。

 

きっとラムは怖いのだろう…、一度大切なものを失う絶望と失望を知っているラムだからこそきっと人一倍大切なものを失う事が怖いと思っているのだろう。

 

だから俺は強く胸に刻む…。

 

ラムの傍を離れない、ラムの隣に居続ける。

 

ラムを支え続ける…。

 

…ラムを幸せにする。

 

そうして俺とラムは昨日の夜ぶりのキスを交わした。

 

 

「エミリア様、色々とお客様が目覚める前に聞いておきたい事があるけどいいか?」

「あ、うん。大丈夫、バッチリよ」

「何がどうバッチリなのかは分からないけどまぁ聞くとこ聞いていきますね」

「スリーサイズは僕とリアの秘密だよ?」

「聞かねえよ!聞いたらお前かラムかレムに何かしらの拷問受けて仕舞いにはやられるだろ!」

お客様、もといスバルとかいう奴が目覚めないのでエミリア様に出会った経緯とか色々な事を聞いておきたいと思ったのでラムに許可を取って聞きに来ました。というかエミリア様に逢いに行くと言っただけで足を踏まれるのは冤罪なのではないだろうか。俺はもはやラム一筋だと言うのに。レムは妹枠として尊みが深い、ラムもそこは深く頷いてくれました。

「それで…話が逸れたんですけどどんな人だった?そのスバルとか言う人」

「えっと…ね、凄く…変わってる…かな?」

それあんたが言うかと言おうと思ったがパックが言うなと小さな目ながら見事な威圧感を放ってアイコンタクトで語りかけて来たので心に留めておく。

「そ、それで他には?」

「…凄く優しくてね、私を助けてくれたりして…」

その後30分程スバルについて語ったエミリア様の内容は俺としては驚愕せざるを得なかった。いや、エミリア様がそのスバルとか言う奴の事で30分も語れるのは一抹の可能性を見せたけど。

俺が着眼したのはそこではなくスバルが持っていた物品の話だ、ツルツルした白くて輝く袋で薄くて丈夫だけど魔術のようなものは一切なくてその中には見たことのない食べ物が入っていた。

そしてそのスバルはそれを納豆の入ったサンドイッチと言った…。

俺の知る限りこの世界に納豆はない、それにエミリア様の情報から察するに恐らく袋はビニール袋だろう。俺の中でひとつの可能性が出てきた。

 

もしや…そのスバルとか言うやつは俺と同じ…。

 

「何か引っかかる事でもあったのかい?」

「ロズワールか」

とりあえずラムが怖かったのでエミリア様に礼を言ってその場を去った後、ベランダで黄昏ていると後ろから来たロズワールに紅茶を差し出された。

「君がそこまで思い悩んでいるのを見たのは4ヶ月前以来だからーね」

「お前知ってたな?どこで仕入れたその情報!」

「我らが屋敷が誇る猫情報網さ」

「焼いて食ってやろうかあの野郎…っ」

あのネコはほんとになんでも知ってやがんな…腹立つ。

「冗談は置いておいてエミリア様から聞いたお客様の事かい?」

「そうだ、ロズワール…これから言うことは俺とお前だけにしといてくれベアトリスにも言うな、パックにもだ」

「それは何故だい?」

「ベアトリスはともかくとしてパックはエミリア様に何かあるようであればあのお客様を殺すからな…出来れば生かしておきたい」

「ほう…君があのお客様を生かしておきたいと思う理由はなんだい?」

「そのお客様と俺の共通点を探りたい」

「どういう事だい?それは」

「あのお客様はもしかしたら俺と同じかもしれないという事だ」

「同じ…という事は?」

「俺と同じで遠くの国から何かの弾みでこちらに飛ばされた可能性がある」

「つまり君はあのスバルくんとキミがここに飛ばされた訳を知りたいと?」

「あぁ…、このまま何も知らないままのうのうの過ごすつもりはないからな」

「分かった、私もできる限り協力しよう」

「助かる…」

 

「兄様」

「レムか、どした?」

そんで、その後廊下を歩いていると知らぬ間に後ろにいたレムに声をかけられた。

「お客様が目覚めたのでその報告に来たんですけど兄様も会ってみませんか?」

「あー…分かった、あとで行ってみる、今どこに?」

「姉様と2人で屋敷の仕事を学んでいます」

「2人で?」

「はい、2人でです」

「ごめんちょっとさっきの後でってのなしで今から行ってくる」

「はい、いってらっしゃいませ」

「ちょい聞きたいんだけどそのスバル?だっけそいつってどんな感じ?」

「そう…ですね」

 

「目つきが悪くて肩周りがおかしかったです」

「ごめん、それだとちょっとよく分からない」

 

「ラム?」

「ツバキ…どうしたの?」

俺はダッシュでラムを探し出そうと走り出して数分で見つける事が出来た。

「いや…ラムがスバルと一緒にいるとかレムから聞いて様子を見に…な」

「……嫉妬?」

「……っ言ってる意味が分かりませんなぁ?」

「大丈夫よ、ラムがバルスに魅力を感じる事なんてありえないもの」

「バルスって…目潰し…じゃなくて滅びのあれじゃねえか浮かばれねぇなそいつ」

「ほら、来たわよ」

「へーあれがそう…ね」

一目見て思った、レムのあれは的確だった。

 

その…目つきの悪くて肩周りのおかしい人は俺とラムに猫背で歩み寄ってきた。

「えっと…ラム?そちらの俺と同じ位の歳の人は?」

「ラムの夫よ」

「夫!?」

「おま…そういう事サラリと言う!?」

「しかも当人否定しないのか…」

「ほら、自己紹介ぐらいしなさい」

「えっと、ツバキだ。よろしく」

「おう、俺はナツキスバル、スバルでいいぜ」

「よろしく、バル…スバル」

「ラムの方で覚えないでお願いします!」

「それよりバルス、担当分は終わらせたのね?」

「おう、バッチリだぜ!」

「なんて言っているの?」

「終わらせたって言ってる」

「そう、見てみましょうか」

「言葉の壁ぇ!」

とはいえ…何となくこいつの事分かってきた気がする。

恐らくこいつは…馬鹿だ。俺は最初から異世界転移に気づいて言語的には気を使って話すようにしたけどこいつの場合…向こう(現代)の言語そのままの上俺の知らない流行りの言語とやらを使ってるから余計ラムには伝わらんよな。待てよ…こいつは俺と同じ世界の同じ時間軸から来たんだよな…こいつは、一体俺が転移してから向こうでどれくらい経ってからこっちの世界に来たんだ?。

 

「駄目だな」

「駄目ね、やり直しね」

「なしてぇ!?」

馬鹿で仕事そこそこ出来るならまだしも出来ないのはマジ救いようがないなこいつ…。

「ホコリがついているわ、目視で判断するのではなく手触りで判断するのよ」

「それ事前に言ってくんない!?」

「わざとよ、言わせないで」

「そうだぞ、言わせんな」

「ゲスい!この二人揃うと強力すぎる!色んな意味で!」

やっかましいなこいつ…。

「ま、とりあえずやり直しは確定だから頑張れ」

「ツバキ、紅茶を淹れてきてくれる?」

「はいはい、ただいまー」

と…俺が部屋から出ようとした時部屋の扉が向こうから開けられた。

「あ、レムが持ってきました」

「ちょっとぉ!?人が働いてる後ろで優雅にティータイム始めないでくれない!?」

「ツバキ、ホコリが被るといけないから結界を張ってくれる?」

「ほいっと…さて久々の3人のティータイムと行きますか」

「はい、兄様」

「バルス、少し静かになさい」

「あの意見あるんだけどここじゃなくてもいいよね!?別に隣空き部屋だしそこでもいいよね!?」

ま、後で少しいや…エミリア様風に言うとすごーくエミリア様に怒られたけど、プンスカプンしてるエミリア様も可愛いなと心の中で思ってるのがラムにバレてその後一息つこうと飲んだ紅茶に砂糖大量に混ぜられたのはここだけの話。なお、プンスカプンしてるエミリア様可愛いなおいというのは俺とパックとスバルで同意に至った。

 

 

「なんかいつにも増して騒がしい一日だったな…」

「割りといつも騒がしいのよ、この屋敷は」

「それにしてもベアトリスが外に出てくるなんて珍しいな、いつもは年齢不相応のひきこもりっぷりを披露してるのに」

「吹っ飛ばすのよ」

「マジですんません」

現在夜で一通りの業務を終え風にあたりに行こうとしてベランダに行ったらベアトリスがいた。それとベアトリス、台座乗ってるの可愛いなおい。

「それで?そのスバルとか言うやつは使えそうなのかしら?」

「いんや…全然、レムがあんな目するの初めて見た」

そう…仕事が出来ないスバルを見ているレムの目が…なんて言うか虫を見る目というか…とにかく怖い。ちなみにラムもそれと同じくらい罵倒を繰り返してて経験者の俺でもドンマイだと思う。経験者は語る。

「ベティーはもういいのよ、部屋にもどって寝るかしら」

「明日の朝食は?」

「久しぶりにあそこで食べるかしら、暇つぶしに」

「珍しいな、お前も気になったりしてるのか?」

「ぶっ飛ばすのよ」

「ごめん、それだとスバルを朝ぶっ飛ばすみたいになる」

「お前をなのよ」

「ごめん夜にそんな騒ぎ起こしたらお前じゃなくてラムに殺される」

「あの娘がお前を殺すことなんてありえないかしら」

「それは分かってるよ、冗談だおやすみ」

「明日の朝はベティーの好物、それで許すかしら」

「へいへい、かしこまりましたよっと」

そうしてベアトリスは部屋へと…いや禁書庫へと戻っていった。

 

「おかえりなさい」

「ごめんそれもう1回言って」

やばい、ラムのおかえりなさい凄くやばい。(語彙力…ですかねぇ)

「嫌よ、割りと勇気出したのよ」

「ていうかなして俺の部屋?」

「今日から一緒に寝るわ、ずっと」

「へ?」

ちょっと待って!?この人あれ?こんな人だっけ!?こんな大胆な人だった記憶は少なくとも俺の中にはないぞ!?。

「何?嫌なの?」

「嫌なんてとんでもないむしろ嬉しい…ただ」

「段階を踏むなんてそんな事、ラム達には必要ないでしょう?」

「相変わらず俺の心を読むのがお上手ですね…」

「ラムはね、この半年…半年よね?」

「半年でいいだろ…」

まぁ正確には8ヶ月くらいなんだけど、これぐらいは誤差だ誤差だ。

「ラムはこの半年ずっと我慢してきたのよ」

「待って…ちょっと聞いていいか?」

「何?」

「ラムって…俺の事いつから好きだった?」

「さぁ…いつからかしら?」

「をい…」

「ねぇ、ツバキ」

「なんだよ?」

「いつからだと思う?ラムがツバキを好きなったのは?」

「いや、分からないから聞いてるのであってね?」

「ツバキ、いつか答えて…その時待ってるから…ずっと」

「あ、あぁ…」

やっぱりラムには敵わないなぁ…、だってさ。

 

こんな惚れるよう雰囲気と言動で俺の背中に寄り添って抱きしめてくれてる。

 

こんなの…。

 

もっと好きになっちゃうだろ…っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イチャイ茶番。
ネタ多めにしたんですけどどうですかね?やっぱりスバル出すとネタが多めになる。まぁ最初と最後はおもっくそ妄想垂れ流したんですけど。


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気づけない殺意と明確な殺意

とりあえず短めですが上げておきます、明日にはだせるかも…。
あと他の人のリゼロ小説読んでる時に自分のがおすすめ出てきた時発狂しました。



「…?」

「スーッ…スーッ…」

「スーッ…スーッ…」

「何故ラムはともかくレムまで一緒に寝てる?」

皆様、弁解をさせてください。

俺は一夫多妻だのなんだのそういう事をする気は一切合切ありません!そしてこの状況は俺知らない!こんなの知らないよ!?。待ってこのままじゃ俺クズ野郎の烙印押されてしまうのでは?朝っぱらからラムさんの肩パン腹パン両方食らっちまうのでは!?。

並び順は右からレム、俺、ラム…知らん知らん!俺知らんよー?俺違うぞ!?。

どちらを先に起こすべきか…、レムを起こす…起きて早々テンパる、姉様起きる、腹パン肩パン。

ラムを起こす…起きて早々機嫌悪い、事情説明、成功すれば肩パン腹パン回避、失敗すれば、肩パン腹パン。

どちらにしても…腹パン肩パンのリスクは避けられない。

決めた…俺は。

 

「ラム…起きて…」

「っ…ん」

毎度の如くこの人が起きる度に俺の理性は吹っ飛びそうになるんですけど…。

「ツバキ…」

「あー…えっととりあえず落ち着いて心を鎮めて俺の後ろを見てくれない?」

「何…?…っ!?」

「落ち着いて話を聞いて!とりあえず…その拳を下ろして…」

「っ…どういう事?」

「知らないよ…だって、朝起きたらここにいたんだから」

「メイド服…来たのはついさっき…確かなようね」

「にしたって…よく寝てんな」

メイド服という事は来たのは少なくとも1時間以内のはずだ、何故こんなにもぐっすり眠っているのだろう。というかラムが怖い。

「レム、起きなさい」

「レム、起きろー」

「ん…あれ…あ!?」

「おう、起きた起きた」

「レム、バルスを起こしてきてくれる?」

「あれ…レム」

「おーい?レム?」

「しっかりしなさい、顔を洗ってきたら?」

「そうします」

そう言ってレムは俺の部屋から出ていった。

 

「レムが眠そうにしてるなんて珍しいな…」

「確かにラム達よりも早く起きて働いているし疲れるのは当然だとは思うけれど、何か変ね」

「俺は今までなかった気がするけどな…ラムは?」

「同じね、ここに来たばかりは慣れてなかったけど今ではそんなことないはずよ」

「…レムにも少し休んでもらいたいな」

「ツバキ…そうね」

「近々ロズワール様に直談判するか…、その時の屋敷の仕事はみんなで協力しよう」

「楽しそうね、ツバキ」

「そうか?」

「今じゃなくて、最近の話よ」

「うーん…まぁたしかに楽しいし、何より…」

「ん…」

俺は座っているラムを抱き締めた、相変わらずラムからは温もりといい匂いがする。ラムも俺を抱きしめ返す。

「ラムがそばに居てくれるからなにより幸せだ」

「…ツバキからするのは珍しいわね?」

「やめて俺のヘタレに触れないで…」

やめてほんとにたまに飛び出すこの俺のメンタルにダメージ与えるやつ。

 

 

「レム」

「あ、はい。なんでしょう兄様?」

現在時刻は多分10時、というかこの世界の時間の概念俺の世界と一緒なんだよな、しかも標準時子午線東京基準で時差も日本だし。もしかしてこの世界も宇宙とかあって他の国もあって地球も丸かったりするのだろうか…、確かに月みたいなのもあるし太陽もある。

「なんか大丈夫か?最近」

「え?変でしょうか?」

「今朝は眠そうにしてたし、眠れなかったとか…」

「いえ…そんな事は、大丈夫です」

「何かあったら言ってよ?一応、兄様だし」

「ふふ…そうですね」

「なんか恥ずかしいから笑うのやめてね?」

 

そして俺は気づかずにその場を去ってしまった、最後に聞こえた気がしたレムの声に気づかずに…。

 

「レムが…やらなきゃ」

 

彼女が今朝眠そうにしていたのは考えていたからだ、あの者が抱く憎しいもの。それは恐らく自分達…ラムやツバキの幸せに害なすものだと。

 

そうして少女はかつて抱いたものと同じものを抱く。

それに気づくものはいなかった…。

 

 

 

「ロズワール」

「どうしたんだい?君から話しかけてくるなんて珍しい」

「いや…少しな」

「話してみたまえ」

「そうだな、レムに休暇を与えてやりたいんだが…いいか?」

「ほほう…それはまたどうして?」

「いや、今朝眠そうにしててなそれでだ」

「それだけかい?それなら君やラムだって」

「俺とラムの眠そうとレムの眠そうを同一基準で考えんな、レムが眠そうは本気の本気だ、疲労困憊だよ」

「そうか…確かに休暇を定期的に与えるべきかもしれないな…」

「どういう風の吹き回しだ?」

「聞くかい?」

「一応な」

「実はだね…王国労働基準法が改正されてしまってそれを実施しているかを確認しに毎月王都から調査員が…」

「もういい、そういう上司の耳の痛い話はとりあえずいいわ」

「それに今は君のおかげで本邸から簡単に応援を呼べる」

「あの定置飛来神はロズワールがやったじゃねえかよ」

何の話かと言うと、ロズワールが本邸に置いてある魔法の書物をいちいち取りに行くのが面倒臭い…という要望を受け、俺がしょっちゅう超高速で本邸まで行って、飛来神を置いて俺が超高速で俺がロズワール邸まで戻ってロズワールを転移させる。

というのが通常だったのだが、ロズワールが魔法陣を長期間維持させる方式を開発したためそれに合わせて俺の飛来神を調整した結果4ヶ月経った今も魔法陣は消えずに残り続けている、ロズワールも俺さえいればいつでも本邸に行けるようになった。逆に向こう側には魔法陣があるので魔法陣に合図をして俺がそれに対応すれば本邸からも応援が呼べる…といった具合なのだ。なお現在ロズワール邸側の魔法陣は鋭意開発中だ。

「休暇に関して詳細が決まって、本邸と連絡をとってから来たまえ。そうすれば休暇は取れるだろう。君とラムもつい最近までは魔獣狩りで疲労が溜まっているだろう?」

「まぁ…な、俺に関しては逆にな」

魔獣達の動きが静まるどころか激しくなっているのはロズワールは気づいているだろう、本当に嫌な予感しかしない。

「君は…原因はなんだと思う?」

「それが分かったら苦労しねぇよ」

「私は…スバルくんがそうだと見ている」

「なに?」

予想外だ、なぜ…スバルが?。

「詳しく聞かせろ」

「なに、大した事ではない。彼が来てからだろう?」

「…確かに…だが」

「確かに憶測だ、だから気にしなくていい」

「分かった…それじゃまた追って連絡する」

「ではまた今日も頼むよ」

「西側でいいのか?」

「魔獣達が溜まってきてしまっているからね、頼むよ」

「分かった、任せろ」

 

ロズワールの言葉は真実だ、そう気づいた時には既に遅い事をツバキはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投票に関しましては10日で締め切りますご了承ください


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悪意の始まり

とある日の俺。
よーし、今日も書くかぁ…。そう言えば今リゼロのアクセスとか色々どうなってんだろ?。結果、アクセス数13000突破!お気に入り144!感想6件!しおり50!。
もうね、転がりましたよええはい…。
改めまして!ほんとに誠に!ありがとうございます!割とマジで最近アクセスとか目を背けたくなってたから見てなかったけど見てよかった!。今現在ここまででわかる通りモチベが湧き上がっております故さぁ…イチャイ茶番とか書きまくる…とは行かないんです、まぁ多少はイチャイチャさせますけど今後のストーリーは原作も多少織り交ぜてオリジナル3割、原作2割、イチャイチャ5割という具合になります。今後ともRe:異世界チート転生から始める異世界生活、略して
…すいませんいいの無いんで感想で教えてください。
ちなみに俺はRe:チートというものが浮かびました、ではラムとツバキのイチャイチャをお楽しみください。(もはや開き直ってイチャイチャを書きます)


「……ラム」

「スーッ…スーッ…」

そう…俺の目の前には天使かと思わざるを得ない白い綺麗な肌とカーテンから漏れる朝日が絶妙なコントラスト醸し出しもはや天使というか女神かと思うほどの顔つきで健やかに眠っている俺の嫁(だってこの人が俺の事ハッキリと夫って言っちゃったからいいよね?)ロズワール邸の鞭一点、ピンクメイドのラムであらせられます。

ちなみにラムは今俺の隣で俺の腕枕を堪能しながら健やかに寝息を立てて眠っています。

 

天使かな?

大事な事なのでもう1回。

 

天使かな?

 

「…」

「んぅ…っ」

俺は日差しが眩しいのか、少し顔を俯かせたラムの日除けになればと日差しを手でガードするという名目で髪を優しく撫でた。相変わらずロズワール邸の特注シャンプーは素晴らしい迄に髪をサラサラにしてくれるな…。ナイス仕事。

「…可愛いな、ラム」

「褒めても何も出ないわよ」

「起きてたんかい…」

急に目を開けてそんな事を言ったラムに少し苦笑いしつつ髪を撫でたら顔を赤くしてさらに俯いてしまった…、天使かよ!。というかめっちゃ恥ずかしいじゃん、起きてないと思って言ったのに…。

「今、レムが起きたわ」

「さすが千里眼、じゃ着替えてくるか?」

「そうするわ、それじゃあ後で」

「そうそう、ベアトリスは今日はこっちで食べるとさ」

「そう…珍しいわね」

「スバルが気になってんじゃねえか?」

「きっとそうね、ベアトリス様もよく分からないお方ね」

「そうだな…それじゃな」

「ツバキ」

「ん?」

ラムが不意に抱きついてきてキスをしてきた…。

ほんとにこの人積極的にスキンシップしてくるなぁ…なんか俺の中で初めてラムとレムが重なってきた。

いや、最近のラムの積極性はレム以上だけどさ。

「するならするって言ってくれ…心臓に悪い」

「あら?お嫌い?」

「むしろ大歓迎だけど…心の準備があるんだよ、男には」

「だらしないわね」

「ほっとけ」

こうして何気ない会話をしている時でもラムは本当にゼロ距離というか俺の隣に座って頭をちょこんと俺の肩に乗せているからなんと言うか…照れるというか…。

「顔、赤くなってるわよ」

「いいからはよ、着替えてこい」

「分かったわ、それじゃあまた後で」

そうして俺の部屋からラムは出ていった。

なんか最近本当に二人きりの時のラムが無防備で理性が吹っ飛びそうになるし、考えてることモロバレだし、お互いに共依存じゃないか?とも思うが深くは考えない。

 

だって俺達は幸せだから、今も…そして、これからも。

 

「兄様」

「どうした?」

「スバルくんを起こしてくるのでここ任せてもいいですか?」

「おう、任せろ」

…と俺が返事混じりに敬礼で返すと。

「はい、ではお願いします」

…とレムも敬礼で返して思わず2人で笑ってしまった。

なんか最近レムと会話するのが少なくなってきて気がするんだよなぁ、個人的にだけど前からほとんど一緒に居たから少し減るだけで敏感になる。病気じゃね?。

「ツーバキくん」

「この間延びした癇に障る呼び方…ロズワールか」

「その理解の仕方には目を瞑るとして仕事だ」

「…なんだ?」

「屋敷の周りをうろついている輩がいる、頼めるかい?」

「傀儡か?」

「いや、人間だ」

「捕らえるか?」

「数は15人、1人でも捕らえればそれでいい、隊長クラスのような人ならできればそれを捕らえて欲しい」

「分かった、ラムとレムに伝えておいてくれ」

「頼んだよ」

「ロズワール」

「なんだい?」

「最近の奴らの動きをお前はどう見る?」

「まだなんとも言えない、だから君に頼む」

「分かった…出来る限りのことはする」

 

そうして俺は剣をとり屋敷を出て、周りを索敵をした、こっちの様子を伺っている集団が真正面およそ350m先に。数はロズワールが言っていたように15人。中にはすこし飛び抜けてレベルが高い魔力を持っている奴が1人。恐らくそれが隊長クラスだろう。

お誂え向きに迎え撃つ気マンマンのようだ。

「上等…」

俺は悠々と森へと歩いていった。

 

 

「止まれ!」

「っ…」

少し開けた所に出た瞬間、周りに15人の武装集団が集まってきた、顔は鉄仮面で隠し、黒マントに身を包んだ輩…恐らく近辺を襲い荒らしている輩と見て間違いないだろう。

「死にたくなければ大人しく来てもらうぞ」

「人質か?」

「分かっているなら話は早い、この数相手だ来てもらうぞ」

「なら残念だったな、お前らは不正解だ」

「何?」

「人質にする奴を…選ばなかった事さ!」

「っ貴様!」

俺が剣を抜いた瞬間、周りの敵がナイフや剣や槍やらを出して戦闘態勢をとる。

「もういい、殺せ!」

「うぉぉぉぉ!!!!」

「甘い…」

まず最初に3人が来る、まず一人目のナイフを刃ごと剣で腕を切り落とす、そして返しの振りで首筋を切りつける。1人目はプシュー…という音を立てながら腕と首と口から血を吹き出しその場に崩れ落ちた。

続く二人目、魔力を使って猛烈に加速させた拳を胸に叩き込む、そのまま体を手で貫き、掴んで飛び出た心臓を握り潰す。

そして、3人目前の2人が一瞬でやられたのを見て止まっている所を首を切り裂いて首と胴体が離れ、切れた切り口から噴水のように血が吹き出る。

後列の部隊がその場で一瞬止まる。

「行ったろ?不正解だって」

「貴様…」

「雷双天…到天蒼牙」

俺が雷双天を発動させると俺の周りに青き雷が走り、青きオーラを身に纏う。

そして到天蒼牙、剣を一振りすると目の前にいた1人の両手両足首が切れ血が大量に吹き出る。この技は目にも止まらぬ速度で切りつけてその上自己再生魔法に対しても高度なものでない限り無効化出来て再生は効かない技だ。

「なっ…」

「止まってていいのか?」

「しまっ…」

「終わりだ…」

その瞬間、隊長クラスの周りの奴らは胴体と首がおさらばしてその場に倒れ伏した。

「お前は生かして捕らえろと俺の上司から命令されてんだ…怪我したくなかったら…」

「うぉぉぉぉ!!!!」

「聞かねえか…管斬り!」

俺がそう言って居合の構えを取ってすれ違いざまに斬る。

すると敵の腕、足がブランと…ぶら下がる。

「な…何をした?」

「神経系を切った、喋れればいいんだからな抑える必要はない」

「悪魔め…」

「どっちがだよ」

 

「終わったかい?」

「あぁ…これで充分か?」

「済まないね、君にこういう事を頼まなければならない現状だからね今は」

「いいさ、これも仕事だ。それに俺がやらなきゃラムやレムがやるかもしれない、なら俺がやる」

そう…あの二人が手を汚す必要はない、いや…汚させない。

「ありがとう、では仕事にもどってくれ」

「朝食は?終わってた?」

「あ…あぁ」

「…?そうか」

「後は任せたまえ、では」

「おう」

 

屋敷へ着くと事態を聞いていたレムが出迎えてくれた。

「兄様!」

「レム」

レムが抱きついてきて一瞬ラムの姿を確認したがいなかったので一安心…いや千里眼あるから見られてるかもっていうか俺常に監視されてない?もしかして?。

「良かった…怪我は?」

「大丈夫、ありがと。ただ血が少しついたから洗って置く、ついでに洗濯もしておくから」

「はい、ありがとうございます。兄様が無事戻って良かったです」

「うん、ラムは?」

「姉様でしたら先程から兄様を探して屋敷内を徘徊しておりますが…」

「ラム気づいてる?」

「恐らく…」

「あっちゃ…まぁ、仕方ないか行ってくる」

「はい、行ってらっしゃいませ」

 

「ラム…」

「……っ!」

ラムが俺見るやいなやダッシュでこちらへ駆け寄り抱きついてきた。

「ごめん…一言言おうと思ったんだけど…急で」

「怪我は?」

「ない」

「言うことは?」

「勝手に行ってごめんなさい?」

「違う」

「…心配かけてごめんなさい」

「よろしい」

「ほんとに…ごめん」

「心配…したのよ」

「……」

ラムの体は震えていた、それは恐らく恐怖。

俺を失う事への恐怖、それは俺には分からないけど俺がラムを失う恐怖よりもずっと強い…。

 

守らなきゃな…ラムを…みんなを。

 

 

 

 

 

 




アンケートやれるってマ?

思ったんですけどRE.異世界チート転生から始める異世界生活…異世界2つもいらなくね?

よってタイトル変えます。
新タイトル…バン!

RE.チート転生から始める異世界生活!

これからもよろしくお願いします

m(_ _)m!!


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FIRSTEND

間に合いませんでした。
それとここまで一日周期でしたが今日は前回の続きから行きます。


すっごい唐突なんですけどFate/kaleid liner プリズマ ☆イリヤ!最高。あとワンダーステラ普通にいい曲だよね。
以上6時間かけて一気見したアホの感想でした。


「っ…」

不意に心臓に痛みが走る…俺は思わずその場に座り込んだ。

「ツバキ!」

「いや…大丈夫だ」

痛みは持続する訳でもなく一瞬しか来なかったがその痛みは絶大だった。何かに心臓を掴まれるような…そんな痛みが。ラムが心配そうに駆け寄ってきた。

「どうしたの?どこが…」

「いや…少し痛かっただけだ、心配するな」

「そう…良かった」

「ふぅ…よし、掃除終わりっと」

今は朝食を終え、掃除をしていたところだ。今日はレムが洗濯当番をしているのでレムは今頃せっせと洗濯物を取り込んでいるだろう。

スバル?あぁ…知らね、エミリア様といちゃついてんじゃねえの?。

ほんとにあの二人仲いいからとっととくっつけよ。いや無理か、よくドラマにいるよな結婚を認めたくない父親、やたら彼氏を否定する父親。まぁ…全部あのパパキャットの事だけど。

「どうする?ラム、レムを手伝いに行くか?」

「そうね、そうしましょう」

「紅茶でも持って行ってやろうか…一通り終わってるし少し休憩いれよう」

「そうね、バルスはそう言えばどこに行ったのかしら?」

「そこの窓から下40度を見てみろ」

そう、実はというとさっき言ったアレはちゃんと見てから言ったので窓から見れば本当にイチャついてやがる、パックさんやっちゃってください。なに?お前らも大概?やかましいわ。

「…腹立たしい」

「いや俺らも大概だと思う」

「そうかしら…」

自覚なしと来ましたよこの子、あーでも確かに人前ではイチャついてないな、人前では。見えない所でイチャつきまくってるからな俺ら。

そういやロズワールに魔導書持ってくるように頼まれてたんだった。

うーん…ハークに任せるか、とりあえず。

(ハーク)

応答がない…あれ?確かに俺の中に入ってると思ったんだけど。

今度はハークを呼び寄せる。

「ハーク」

応答がない、いつもなら秒感覚で来るハークがどこにもいない。

パックならば知っているのだろうか…、それとも禁書庫内にいた場合は届かないのだろうか。

「どうしたの?」

「いや…ハークが応答しないからさ」

「禁書庫にいるのでしょう?大丈夫よ」

「そうだな…、さて…紅茶よし」

「行きましょうか…」

「あぁ」

 

ロズワールの言っていた魔獣、そして今朝の心臓の痛み、そしてハークの失踪…俺の中で嫌な予感が増してきていた。

 

 

 

「兄様と…姉様?」

「当たり、こっち見てないのによく分かったな」

「匂いで分かります、あと紅茶の匂いが兄様の淹れる紅茶そのものです」

「そのニュアンスだと俺の紅茶から独特の匂いするみたいだな…」

「あ、いえわずかな違いですけど大きな違いです」

「どっち!?」

何だか最近レムにも弄ばれてる気がするんだけど…。

「確かに…そんな匂いがするかもしれないわね」

「ラムまで!?」

それに便乗しないはずのラムさん…うん、ここまでテンプレ。

「とりあえず…飲んでみて、美味しいかもしれないし」

「決して兄様の紅茶の匂いが嫌という訳でもないんです、独特なんです」

「飲んでみてくださる!?」

「分かったわよ、飲むわよ」

「姉様、そうですね」

そうして2人は俺の淹れた紅茶をすする、うん…映える。

美少女2人が並んで自分の作った紅茶飲んでる…うん、幸せ。

ちょっとラムさん?飲みながらこちらの思考を読み取ったかの如くジト目で睨んでくるのはやめてくださいごめんなさい。

「えーと…どうですか?」

「普通に美味しいです、兄様」

「素直に美味しいって言ってくれない?」

「普通に美味しいわ、ツバキ」

「素直に美味しいって言って?」

双子だからってそこまで合わせなくてもいいからね?あとレムは最近マジで俺に対する優しさが軒並み減ってない?。いやラムはあれだよ、甘えさせたり甘やかしたりさせてるからいいんだよ(意味不明)。

なんか最近はラムだけじゃなくレムからも鞭が飛んできてる気がするなぁ…。反対にラムの鞭が減ってきてる…ダメだ!レムは優しいからいいの!双子でも中身が入れ替わっても俺には分かっちゃうの!。レムの見た目で中身がラムだったら色々とあれなの!。

俺はさっきから何考えてんだアホか…。

「兄様、顔が変です」

「ツバキ、いつにも増して目つきが悪いわ」

あぁ…懐かしいなぁ(現実逃避)ここに来たばかりの時はこれが当たり前だったなぁ…。

「うん、お願いだからもうやめてね?泣くよ?俺泣くよ?」

「泣いたら慰めるので問題ありません」

「泣いたら慰めるから問題ないわ」

「どっちにしろやめないってこと!?」

「冗談よ、それよりツバキも紅茶を飲みなさい」

「え…姉様」

「しーっ…」

「…はい」

「二人とも…どうかした?」

うーん…なんか前のふたりがこちらを無表情で見つめてる、いや違うな無表情に見せかけてる。レムは笑いを堪えてる?なにを!?、ラムは…この人ほんとに無表情だわ。

とりあえず俺は冷める前にグビっと紅茶を飲み干した。

「甘ァァァァァ!!!???」

舌に刺すような甘さが走った。

見ると器の中の角砂糖が半分程無くなっていた、犯人は…ピンクの人だろう。

 

 

「兄様、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないよ、死ぬかと思ったよ」

あの後、お口直しにレムの淹れた紅茶を飲んで現在魔獣狩りの時刻を待っている。

「申し訳有りません、姉様の言うことですから」

「うん、レムは悪くない」

悪いのは最近俺とふたりの時と外にいる時で人格が変わるピンクの人だ、今日はお仕置きで頭撫でまくって抱き締めて寝てやる。

…と双方共にご褒美としか思えないお仕置きを考えているとレムが紅茶のポットを置いて立ち上がった。

「どこかお出かけ?」

「えぇ、少し…夕食時には戻ります」

「うん、じゃ」

 

 

兄様と姉様…あの幸せな3人での時間、それを感じさせてくれるこの場所(屋敷)。兄様にばかり重荷を背負わせる訳にはいかない…。姉様にばかり我慢をさせる訳にはいかない…。

 

そのために私が出来ること…。

 

「もう…兄様と姉様が苦しまなくていいように…っ」

 

そうして少女は武器を持って屋敷を出た、向かう先は…匂いで辿る先にいる1人の少年。

 

 

 

「ぐぁぁぁ!!??」

「…………」

飛び散る血、そして少年…ナツキスバルは無様にその場にのたうち回る。

「なんで…どうして…!」

「……答える義務は…ありませんっ!」

モーニングスター、それを一振する度に少年の腕が、足が、体が、欠損する。

今や、右腕は見るも無残な姿になり両足は膝から下がなく、ただ血を垂れ流すだけ。

少年は勘違いしていた、呪いにしか目が向いていなかった…。

あくまで自分が頼らざるを得なかったそれは、この世界の誰もが忌み嫌うとのであると、それを憎む人など大勢いることを。

「レムの…いえ、兄様と姉様が悲しまないように…スバルくんには死んでもらいます」

「ふざ…けんな」

「さよなら」

そうして、二度振り下ろされた鉄球は一発目で少年の体を潰し、2発目で頭を粉々に打ち砕いた。

少女は返り血を無数に浴び、事前に用意していた換えのメイド服に着替えその場を後にする。

 

これでいい、ロズワール様やエミリア様には魔獣に襲われたと思わせればそれでいい。これで…終わりだ。

 

「レム…」

彼女は知らない、彼女以外にそれを知っている人物がいる事を。

そう、カンナギツバキ。魔獣狩りの帰りにこの現場に遭遇した彼はレムのそれを止めずずっと見ていた。ただ傍観していた、もしかすれば無実かもしれない、具体的な証拠は何一つない。それでも少年はただ傍観していた。その時点で彼に彼女に何故あんな事をしたかを問おうとする権利はない。

 

 

「おかえりなさい」

「ただいま…」

レムのあれを黙って見ていた自分がなんなのかを風呂場でずっと考えていた…少し沈んだ精神状態のままここに来ている。

「何か…あった?」

「………」

そう、ラムに見抜けないはずはない。

「言えない?」

「………」

そう言ってラムは俺黙って抱き締め、頭を撫でた。

風呂上がりのシャンプーの匂いよりも彼女の温かさに俺の心が浄化されていく、心の煙が晴れていく実感が感じられた。

「大丈夫…大丈夫よ」

そうして俺は彼女に身を預けた。

 

 

 

目の前に黒い影がいる、その影は自分の頬に触れて顔を近づける、眼前でただ「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」と呪いのように呟いているそれは自分にとって忌み嫌うものだ。

そして俺は意識を失う…そしてまた始める。

 

 

 

ゼロから始める異世界生活を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、死に戻りですね。
あの場面でツバキが止めなかったのはレムと同じ気持ちがツバキにもあったから、レムのあの危機はなんであろうと排除する心がツバキにも少なからずあるんです。それはそうとアンケート期限は3月10日までです、皆様お早めに。いや…ね、わりと接戦なので結果が楽しみです、では書いてる途中にめっちゃ揺れて震えて眠る中の人からでした。


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記憶の違和感

さぁ書くぞーやるぞー
それと記念回はレムりんは甘えたいに決まりましたので次回かはたまた次次回にやります。
ではどぞー。


「……ん」

日差しが目に当たって目覚めるいつもの朝。

隣にはラムがいて、今も息が当たる程近い位置で眠っている。

本当に可愛い、嫁にしたい。いやする、絶対。

「朝…か、随分嫌な夢見てた気がすんな」

「あら?ラムが隣に居るのに?」

「起きてたなら言って?ね?びっくりするから」

本当になんか不意打ちが上手くて可愛いじゃねえわ、もうなんかラムの可愛さでなんでも許せるダメ男になってないか?俺。実際そうだけどね。

「それで、嫌な夢ってなんだったの?」

「うーん…忘れちった、なんか朝起きたら変な気分だったからさ」

「大丈夫?心なしか顔が変よ」

「それはいつも」

「その反応、いつものツバキね」

「そりゃどうも」

うーん、朝のこのやり取りもなんか安心するな…。もうこの距離感でも動揺しなくなった。する時はするけど。

「とりあえず起きたら?レムくるよ?」

「レムが来たら不味いことであるの?」

「レムが顔真っ赤でなんも聞いてないのになんですか兄様!って聞いてくるから」

「…レムったら」

「まぁそこがレムのいい所でもあるし」

「…そうね」

「ちょっとムッとしたろ今」

「なんで分かるのよ…気に食わない」

「ラムには敵わないけど俺もそこそこ分かるようになったって事じゃね?」

そう、ラムに勝てる気はサラサラない。これから先負け続ける自信がある。

「そういや早く準備しなきゃな、お客様いるし」

「そうね、そうしましょうか」

そうして俺達はベッドから起き上がり、あれやこれやと支度をして部屋を出た。

 

そしてその後エミリア様の所へ来た…いや違うか、行こうとしたら向こうが来ていた。

ここは厨房のはずなんですけどね、エミリア様。

まぁ…多分というかほぼ確実にお腹すいたんだろうな。

「どうした?朝食はまだですよ、ていうか今日早いな」

「あ、うん。えっと…スバルが…ね?ほら、困惑するといけないから」

「なるほど…道理で既にいつもの可愛らしいそれに着替えてる訳だ」

「え?どういう事?」

「ん?あー…」

「おっとツバキそこまでだよ」

「分かってますぜパックの旦那」

俺とパックのニヤニヤなやり取りを不思議そうに見ているエミリア様を置いていかないように話題を振る。

「エミリア様、それで見てきたんです?そのスバルとか言うお客様」

「あ、うん。すっごく元気そうだったよ?」

「そうか、それは良かった。ところでそのスバルって人どんな感じの人?」

待て…あれ?俺この質問前にエミリア様にしなかったか?。

「あ、うん。バッチリよ、なんでも聞いて」

バッチリ…この受け答えもどっかで…。

そう思った時、突如頭に耐え難い頭痛が走った、それはほんの一瞬だったが思わず俺はしゃがみ込んだ。

そして声が聞こえた。

 

『君はまだ知るべきではない』

 

「なに…が」

「ツバキ!?」

「あぁ…いや、大丈夫。すこし目眩がしただけだ」

「そっか…、良かった」

「それで改めて聞くけど、そのスバルって人はどんな人?」

「うん、あのね。すっごく変わってるの、性格とか言葉とかあと…会った時の服装も」

「本人聞いたら泣くだろうな…」

「えっ?どうして?」

「嬉しくてですよ」

「そうなの?」

「そうだよ、リア」

なんか知らんがスバルがそっち思考になってるがエミリア様の純粋さを守る為の尊い犠牲となれ、顔も知らぬスバルとやら。というか変わってるとかあんたが言うかと言い返そうとしたらパックが遠隔で氷魔法で後ろの髪少し凍らせやがった。めっちゃ冷たい。

「えっと…それでね」

んでまぁ…その後のエミリア様はまぁ楽しそうにそのスバルとやらについて語ってくれましたよ、そりゃまぁ無自覚に好きな人の事を話す時にみたくね。

それで、エミリア様の口から出てきた情報は俺の疑念を確信へと変えた。

恐らくスバルは俺と同じ世界から来た男だ、ただ服装とあとからエミリア様が持ってきてくれた持ち物の中のものから察するに、俺より時系列は後のようだった。

俺がこちらに来たのが2017年の9月で8ヶ月ここにいた。

一方のスバルは2015年だった、過去にしても未来にしても8ヶ月の辻褄が合わない、つまり完全に関係なく過去から来ている。

それと俺とは少し違うのかもしれない、スバルには俺と違い戦闘能力はないそうだ。基本的に何も使えずに腸狩りからどうやってエミリア様を守ったのかは面倒臭いので省くがエミリア様曰く、気合いだったそうだ。パックもそう言っていたので信じ難いが恐らくそうなんだろう。

ただ話を聞いていても終始感じる違和感、記憶の違和感。

 

この話を初めて聞いている気がしない、過去に一度聞いている気がする。

 

だがそれはありえない。

 

俺の中でなにか嫌な予感がしていた。

 

 

 

「レム?」

「兄様?」

「なんでレムがここに、スバルは?」

「姉様と2人で掃除をしてもらっています、今は西棟です」

「2人でか?」

「はい、2人でです」

俺の中のブザーがけたたましく鳴り響いた、急げ神薙ツバキ!。

「レム、少し行ってくる」

「あ、はい。お気をつけ…もう行っちゃいました…」

 

「なんだツバキじゃない」

「ラムさん何故ここに?」

「ツバキこそ何故ここにいるの、朝食の後片付けは済んだの?」

「あ、それはバッチリ終わったからやる事探してた」

「それならもうないわよ」

「いやそれないでしょ、西棟だそ?広いし2人で終わらせるには時間が…」

「バルスに全て任せてきたわ、掃除の仕方を知っていたもの」

「ほー…そうか」

「少し覗いてみる?紅茶を飲みながら」

「そんなラムみたいに辺に煽ったりはしずに普通に見る」

「紅茶、要らないの?」

「いります…」

「よろしい」

掌で転がされてんなぁ、俺。将来尻に敷かれるんだろうなぁ…、いえむしろドンと来い。

 

「あの…」

「あ、バレてるわよツバキ」

「バレてるぞ、レム」

「バレてます、兄様」

「お前ら3人ともバレてんだよ!隠す気ねえだろ、窓からひょこっと顔だしてたのに今じゃ堂々と机と椅子出して紅茶嗜んでんじゃねぇか!ていうかレムはいつ来た!?」

「つい今しがたです、スバル君が高い所の本棚整理の途中で体勢を崩して落ちそうになっている所をずっと見ていました」

「助けてくれない!?」

「ツバキがずっと支えていたわよ、ギリギリで物理的に絶対倒れる角度の所で電磁波で止めていたわ」

「さっすがーラム、なんでもお見通しだな」

「じゃねえんだよ!そんな地味で残酷な嫌がらせしなくていいんだよ!」

 

 

 

今日は…やはり、どこかおかしい気がする。

なにか…違う、いや違わない。同じだ。いつと…?

エミリア様の話、そしてあのスバルの顔を初めて見た気がしない。

以前に見ている気がしてならない。

なにか嫌な予感がする、それは今日始まる時からずっとしていた。

なにか嫌なものがこの屋敷に入り込んでいる、俺たちの身近にいる。

 

「もう何も…失ってたまるか…っ」

 

そう決意し、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アンケートのご協力ありがとうございました、皆様のご投票感謝します。
記念回に関してはなるべく早く上げますのでお許しください。
それではシーユーネクストタイム!


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誤算

次の記念回の内容を随時募集しております、感想にてお寄せください。


「…ん」

「あら、おはよう」

 

朝起きたらラムの顔がすぐ近くにあった、おけ?。うん別に不思議とかそういうもんでもないんだけどさ、実際。でもね、こうして顔が間近にあるとどうしても…ね?。

 

「さて…と、そろそろ起きよう」

「そうね、…?」

「どうしたよ?」

 

ふとラムが俺の顔を再度じっと見つめる、そりゃもうゼロ距離で。

 

「何か…悩んでいる事があるの?」

「なんで分かるんですかねぇ…」

 

何この人エスパーかなんか!?、本当に読まれたくない事ばっか読んでくるよねこの人…、俺の健気な努力を踏みにじる所だけはほんと最悪…。

 

「バルスの事?レムの事?」

「両方…かな」

 

レムは恐らくこのまま放っておけばスバルを殺すだろう、それにスバルを前にした時に一瞬見せるあの時と同じ殺気に俺は気づいた。

もしあの場に俺がいなければきっと殺していただろう、それに…。

俺は自分の胸を抑える、まだ鈍い痛みがする気がする。

記憶のデジャブを感じた時に感じる激しい胸というか、心臓の痛み。

何かに掴まれたような、そんな痛みがした。まだこれが人為的な物とはきまった訳では無いけれど、それはまるでいつでもお前の命を奪えるとでも言いたげな感じだ。

ここまで、全部俺の想像でしかない。でも…思い過ごしなら割り切れるはずだ、なのにどうしてこんな…嫌な予感がするんだろう。

 

「ツバキ…」

「っ…、ごめん、ラム」

 

ラムがその場で俺を抱き締めた、それはまるで怖がっている子供をあやすかのような…。

 

「大丈夫、ラムがついてる」

「あぁ…ありがとう、ラムがいれば安心だ」

 

本当に…この人は、離れ難い。

 

だから…失わせない、絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レム、おはよう」

「はい、おはようございます。兄様」

「さて…と、今日も頑張りますかね…」

「そう言えば兄様」

「なんでしょうレムさん」

「先程、大精霊様がお呼びでしたよ」

「え?パックが?」

 

パックが俺に用事なんて珍しいな、今まで1度もそんな事なかった気がするが…。

 

「分かった、朝食の時に聞くよ。今日は何作ろう?」

「分かりました…、そうですね…今日は」

「おはようございまぁす!」

 

そう…レムさんとゆっくり何作ろう?何作ろう?となろうとしていた時に丁度、明るくこの朝には辛い声が厨房に響き渡った。声の主は言わずもがなである。

 

「うるせぇ…朝から元気だな、お前」

「馬鹿野郎、執事たるもの朝からシャキッとしてないとダメだろ?」

「スバルくん、寝癖が立っていますし、着こなしは悪いしでそれでは執事として恥ずかしいです。兄様といい勝負です」

「レムさんいい事言うって思った俺の気持ちカムバック」

「朝から何をしているの」

「メンタルリセット」

「は?」

「ごめんなさいふざけました」

 

あのすいません、ラムからたまに出る俺に対するガチの蔑みが心に来るんですけどどうすればいいですか!?。

 

「ほら、さっさと作るわよ」

「兄様、早く作りましょう」

「おら、はやくしろよ」

「レムやラムはともかくとしてスバルに言われんの腹立つな…」

「差別!」

「差別じゃねえ、分別だ」

「ゴミか!ひでぇな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はてさてサーティワン、すみません全然面白くないですね。(はてさてさーてて入力して予測変換でこれ出てきたから面白そうだからそのままにしたなんて口が裂けても言えないという作者の事情)。

今この場には、パック、ベアトリス、スバル、そして俺の四人が禁書庫に来ている。それの理由はパックに来いと言われたからだがベアトリスはともかくとしてなぜスバルがいるのか検討がつかなかった。

 

「それで?俺を呼んだ理由は?」

「単刀直入に言うぜ、ツバキ」

「ちょっと待てお前なのか?」

「あぁ…お願いがあるのは俺だ」

「…続けろ、やるかは内容による」

「助かる、それでだ。今日1日、俺を守って欲しい」

「…どういう事だ?」

「そいつには呪いがかかっているのよ、かなり高度な」

「解呪は?」

「そもそも呪いはかけた当人にしか解呪する事ができないのよ、それもこれ程の高度な呪いとなるとベティーでもにーちゃでも難しいかしら」

「だから、呪いを無理やり破るって事か?というかそもそもその呪いの効果は?」

「呪いの効果はかけられた当人を数日の内に死なせる呪いだ、だがこれは簡単に破れる、だけど万が一の事もある。だからツバキ、キミに協力を頼みたいんだ、僕はリアについていなきゃいけないしね」

「そういう事か…ベアトリスは禁書庫から離れられないし、事実動けるのは俺という事か…」

 

なるほど…嫌な予感の正体はこれって訳か。

 

「いいだろう、やってやる」

「助かるぜ、お前がいれば百人力だ」

「スバル、手を出せ」

「手?こうか?」

「じっとしてろよ?」

 

俺は以前エミリア様にやったように、自動結界をスバルにかけた。一応最大限強くしておいた。話を聞く限り今日1日乗り切れば良さそうなのでな。

 

「いっつ…何を?」

「お前、腸狩りとやり合った時。エミリア様から何か結界みたいなの出てなかったか?」

「あー、あの黄色い…」

「それを更に強くしたやつをお前にかけた、それが起動すれば俺が気づくから安心しろ」

「おー、サンキュー!」

 

笑顔を見せるスバルに俺は半ば呆れた、最悪今日死ぬかもしれんのに能天気なもんだな…。ていうか俺からしたら重圧やばいんですけど…。

 

「俺は戻る、お前自身も気をつけろよ」

「おう、サンキュー、じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで全て解決だ、とにかく今日1日乗り切れば俺の懸念も消える。

 

「あとはレムが落ち着いてくれれば…な」

 

そう、スバル関連での問題はあと一つ、レムだ。まだ今日仕掛ける事はないだろう。レムは恐らく俺の自動結界をスバルを見た瞬間に見破って仕掛けることを躊躇うはずだ。そして今日を乗り切れば命の危機の可能性はかなり減る。呪いという避けがたい危機を超えればレムを説得してあとは終わりだ。

 

 

 

 

そう…この時は思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツバキ」

「ラム?どした…いやほんとにどした?」

 

なんか会って早々、ラムが手近な部屋のソファへ俺を座らせその俺の太ももを枕にしてラムは横になった、ご丁寧にタオルケットご持参ですかそうですか。なんなら自分の部屋で寝ればいいのにこれだから可愛いんだよな…。もっとやってくれてもええよ?。むしろバッチコイ。

 

「悩みが晴れた?」

「すみません、なんの予兆もなしに俺の心の内を読むのをほんとにやめてくれないでしょうか?」

 

なに?貴様エスパーか!?と危うく言いそうになった、このネタは知らない人にやるとドン引きされるのでよいこのみんなは、やめようね!。

 

「今朝は怖い顔をしていたのに今は何かスッキリした顔をしているから…」

「…隠し事とか出来なさそう、やだ怖いこの人…」

 

将来結婚するとして、隠し事とか隠してるお小遣いとかすぐバレそう。やばい、俺完全に尻に敷かれる系じゃない!?やばない!?。

 

「レムの事?」

「…」

「それはまだなのね…それなら、バルスの事?」

「…」

「それなのね…」

「すみません、平然と表情から読んで会話するのをやめてくれないですかね」

「だってわかりやすいから」

「えぇ…」

 

ルグニカの王様方、心のプライバシーの法案作成をよろしくお願いします。あと夫婦間のお小遣い制の義務付け法案もお願いします。

もはやラムには俺の心など筒抜けなのだと今更ながら知りました。

 

結局、ラムはそのまま眠ってしまった。なんか最近よく寝るなこの人…気の所為?気の所為じゃない?。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄様」

「すいませんいつから居ました!?」

「今来たばかりです、隣いいですか?」

 

レムさんひょっとして幻のシックスマンのご経験とかおありですか?。そうじゃなくても霧〇れの忍びのご経験とか…。やめようかこの話。

 

「どうぞ…」

「はい、では失礼します」

 

そう言うと、レムは俺の隣に座って俺の方にちょこんと小さな頭を乗せた。

 

「兄様はスバルくんをどう思っていますか?」

「やっぱりか…最近レムが変だと思ってたら…」

「気づいてたんですか?」

「あんなけ殺気出してたら俺でも気づくよ?ラムもとっくに気づいてる」

「そう…ですか、姉様も」

「安心しろ、レム。それにあいつが魔女教ならとっくにロズワールが気づいて潰してる」

「…」

「だから、大丈夫…」

 

そう言って俺はレムの頭を撫でる、レムは顔を肩に埋めて嗚咽を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…その日の24時。俺はいつもなら寝る時間だがラムに言って俺は今、ベランダに来ていた。

 

「もうすぐか…」

 

もうすぐ今日が終わる、あと数十秒。それが終われば懸念は消える。

レムもスバルと距離を詰めることが出来るだろう。

 

だから頼む…何も起こるな。

 

そして…その時が来た。

 

カチャ…カチャ…カチャ。

 

終わった、今日が。

 

「ふぅ…」

 

そう…俺が心の底から安堵したその時。

 

「がっ…!?」

 

前と同じように、心臓を握りされるような痛みが胸に走る。だが前のとは痛みが比ではない。いや…これは恐らく本当に何らかの方法で心臓が握りつぶされている。

 

「がふっ…!ゴホッ…!」

 

大量の血を吐いて俺は地面に倒れた、そして薄れゆく視界の中で俺は見た。紫色のオーラを発する黒い毛並み、そして真夜中でもよく見える赤い瞳をもった子犬。俺は何故か分かってしまった。

 

「なる…ほどな…妨害…した…俺を…殺すってか…!」

 

完全に誤算だった、楽観的すぎた。

 

だが時既に遅し、俺は最後に…。

 

「ラム…ごめん…」

 

誰にも聞こえない、愛する人への謝罪を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい…という訳でツバキくんが死んでしまいました、安心してください、ここからアニメ展開ですので。


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RE.Die

今回はツバキ君が死亡している為、この作品のメインヒロイン。ラム視点でお送りします。あ、時々スバル視点もあります。



「……ん」

 

何故かいつもより早く目が覚めてしまった、その理由は直ぐに分かった。

 

「ツバキ…?」

 

そう、ツバキがいない。昨日、少し出てくるから先に寝ててと言われて、多少ごねた後眠くなったのでそのまま眠ってしまった。寝る直前で千里眼で確認した時はツバキは屋敷の廊下を歩いていた。もしかしてレムの部屋?そうだとしたら…腹パンね。

 

「……え?」

 

千里眼でレムの部屋を見る、だがそこにはレムが寝ているだけだった。

 

「ツバキ…どこに…?」

 

なぜだか分からない…、でもどうしようもなく不安になった。彼がどこにいるか分からない、それだけで頭が混乱している。

 

「ダメね…」

 

本当に自分は彼なしでは生きていけなくなっているのだ…、かつての自分と今の自分を重ねて少し情けなくも感じるが、悪い気はしない。

だって、かつては過去に縛られて幸せに生きる事に拒絶感を抱いていた。

その過去の鎖は彼は多少強引ながらも引きちぎり手を引いてくれた。

自分に対してここまで真剣になって向き合ってくれてそれと同時に愛してくれる人は多分世界中探し回っても彼だけだろう。いや彼以外ありえない。

 

「ツバキ…」

 

彼に会いたい…、会って話をしたい。いつもの様にどうでもいい会話で笑い合いたい。

私は着替えて、屋敷の中を探した。まずはレムの部屋へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様?」

「レム…起きていたのね」

 

見るとそこには着替え途中のレムの姿があった、相変わらず我が妹ながら、スタイルがいい。…少しはその胸部の膨らみを分けて欲しいと思ったのは自分の心に留めておこう。

 

「どうしたのですか?今朝は随分とお早い…」

「そうね、それは後で説明するわ。それよりツバキを見なかった?」

「兄様?見ていませんが…」

「そう…」

「居ないんですか?」

「えぇ…昨日の夜から、ロズワール様はあんな夜遅くに魔獣狩りに行かせることなんてないだろうから…」

「姉様、千里眼は…」

「屋敷の中をくまなく探すとなると時間もかかるし体力の消耗も激しいから人力で探した方が早いし、楽ね」

「分かりました、では手分けして探しましょう」

 

そうしてレムは手早く着替え、手分けしてツバキを探し出した。

ふと…思った、何故自分はここまで焦っているのだろう。ツバキが自分の前からいなくなる訳が無い、そう確信しているのに何故か胸の内のモヤモヤしたものが消えない。何故か無性に拒絶したくなるものが近づいている予感がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様…どうでしたか?」

「居ないわね…」

「そうですか…、ロズワール様が何か知っているといいのですが…」

「ロズワール様が起床されるまでは2人でとにかく探しましょう、今の時期に森へ探しに出るのは危険だわ」

「分かりました、ではもう一度探しましょう」

 

あれから屋敷を見回ったが、ツバキの姿どころか魔力の痕跡さえ見つからなかった。ツバキ程の使い手が魔力をつかえば必ず魔力の痕跡が残るはずなのに…。自分の中で彼の死というものがよぎった気がした。そんなことあるはずがない、だって彼は約束してくれたから。

 

『約束する、ラムの傍は俺専用の特等席だからな…誰にも譲らん』

 

そうして奮起し、私はもう一度探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っこの匂い」

 

不意に嫌な匂いがした、自分の嫌いな匂い。なにか鉄の匂い…。その匂いは3人で色々な思い出を作ったベランダからしていた。

 

私は気を引き締めて、そこへと歩き始めた。

 

周りは少し薄暗くこれから明るくなるという時間だ、いつもならとっくに朝食の支度を始めている頃だろう。

そしてベランダが視界に入る、そこに少し血が飛んでいるのが見えた。

 

そして…歩みを進めた先で見つけてしまった。

 

「…?」

 

そこに居たのは手も足も出ない顔も無事、だが胸部は人の所業とは思えないほどぐちゃぐちゃになっていた。彼から少し離れたところに小さな…いや、小さく握りつぶされた肉塊が見える。不思議とそれがなんかのかは分かってしまった。

 

「……」

 

ゆっくりとそこに歩み寄る。自分でも薄々分かっている嫌な予感を押しつぶす。続々押し寄せる喪失感を希望的観測で全て退ける。

 

だが…自分のそんな抵抗虚しく、現実はやってきた。

 

歩み寄り、体を仰向けにさせる。そして顔が見える。

 

「嫌…」

 

そして…そこにいたのは。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

将来を添い遂げようとそう誓い合ったはずの…彼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぁ」

「スバル!起きて!スバル!」

「エミリアたん?」

 

朝起きるとそこには今までの記憶(死に戻りした記憶)にない一日のはじまり方…。つまりこれは…。

 

「乗り越えた…」

「スバル?どうかしたの?」

「いや…なんでもないよ、エミリアたん。それより一体どうし…」

 

「いやぁぁぁぁぁァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「今のは…!?」

「スバル…ちょっと来て」

 

そうして連れて行かれたのは、ロズワール邸俺的キツイ人ランキング最下位のツバキの部屋。方向から察するに先程の叫び声はここからなのだろう。そしてまた…。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

扉の前に立ったその瞬間に聞こえた叫び声に俺は一瞬身じろぐも、扉を開ける。そこにはこの屋敷の住人が9人いた。正確には…8人。

なぜならそのうちの一人であるツバキは。

 

「なんで…」

 

「兄様ぁ…どうして…」

 

俺は目の前の状況を理解しきれないでいた、何故あいつが死んでいる…。

 

「なんで…ツバキが死んでるんだよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死因は…心臓を直接握りつぶされたその瞬間の即死だーねぇ、恐らく呪いだ」

「呪い…?」

 

何故だ、呪いを受けていたのは俺のはずなのに…何故関係の無いあいつが…。

 

俺は改めてその場を見る。

レムはツバキの亡骸に縋り付き、ラムは憔悴し切ってとても今は話せる状態ではないだろう。

 

「ロズワール、お前はどう思う?」

「さぁね、可能性が多すぎる」

「…分かったよ、それならその中で1番お前がありそうなのはなんだ?」

「そんなの…決まってるじゃないですか!」

「っ!」

 

俺の顔の頬を鉄球の棘が掠める、いつの間にかレムの手には鉄球が握られていた。一度目の死の記憶が頭の中に蘇り吐きそうになったがギリギリでこらえる。鉄球は部屋の扉を破壊し木片が散らばる。

 

「やめてレム!スバルは…っ」

 

エミリアたんが俺の前に出る、まずい…今のレムは。

 

「どいて下さい…エミリア様」

「どいてくれ、エミリアたん」

「スバル!?」

 

そうして俺はレムと相対する。奇しくもここに来てから一度目の死と同じ状況だ。

 

「その匂いを撒き散らして…兄様や姉様に近づいて何をしていたんですか?」

「匂い…?何の話を…」

「とぼけないでください!」

「スバルくん、私も君が知っている事を聞きたいんだ」

「待つのよ、ロズワール」

 

そう言うとベアトリスが俺とロズワールの間に立つ。

 

「こいつはベティー契約主、ならそいつが望まない限り話させる訳にはいかないかしら」

「ベアトリス…」

「ほほう…禁書庫から出た君がこの私に挑みかかると?」

 

「そんな事はどうでもいい!」

 

悲愴に満ちた声が響き渡る。その声の主は先程まで憔悴し切っていたラムだった。

 

「バルス、何か知っているなら話なさい」

「……」

「バルス!」

 

この状況で話したとして俺の死ぬ未来は変わらない…なら。

 

「スバル!」

「っ…」

「…待ちなさい!」

 

「許さない…絶対に殺してやるぅぅゥ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

俺は走った、状況が良くならない事なんて分かってる。むしろラムの自分に対する殺意を掻き立てることぐらい。

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

ふと気づくと崖のすぐ近くまで来ていた、ここまで追い詰めてにげられなくするため…か。

 

「おいお前」

「ベアトリス!?お前…ロズワールは?」

「そんなものべティーにかかれば御茶の子さいさいなのよ」

「そうか…っ」

 

風の刃が周囲の木々を切り倒す、そしてそこに激怒の暴風を纏ったラムが姿を現した。

 

「見つけた…、もう絶対に逃がさない…!」

「っ…なぁベア子」

「その名で呼ぶなと何度言えば分かるかしら?」

「俺が、ラムと話したいって言ったら、どうする?」

「……無駄なのよ。姉妹の姉は、もうお前の言葉に耳を傾けるだけの余裕がないのよ。なにを言っても聞かないし、信じないかしら」

「何を…ゴチャゴチャと…っ!」

「うぉっ…!?」

 

ラムがこちらへ刃を飛ばす、咄嗟に伏せていなければおそらく首が飛んでいた…。恐らく話す事は叶わない、あの時怨嗟の声を上げたラムがその後どんな様子だったかはベアトリスの様子を見れば分かる。

機会を逸し、心を結ぶチャンスは失われた。そして一度、手の中をすり抜けてしまったそれが戻ってくることなど、二度とあり得ない。

 二人の間に開いてしまった溝は、それほど深く大きいものなのだ。

 

あぁ…もういいか、ここまで何度も繰り返してきた。でも何もここで過ごすことを考えなくてもいいじゃないか、ここじゃなくてもいい。

どこか違う場所で普通に過ごせればそれで…。

 

『兄様…どうして』

『いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』

 

屋敷を離れ、全てを忘れ、どこか遠いところへ逃げる。生きていけるかはわからないが、あれだけ苦労して拾った命だ。大事に、大事にしよう。

 

…心の中で捨てたものが疼く。

 

彼女達の悲しみをなかったものにしていいのか…?。

 

「違ぇだろ…そうじゃねえだろ」

 

あの怨嗟と慟哭を亡きものにして自分だけのうのうと生きていく勇気が俺にあるのか?。

 

「おいおい…何考えてんだ俺は…」

 

馬鹿馬鹿しい…、メリットデメリットの話じゃない。こちらにメリットなどひとつもない。

 

「折角拾った命だろ、大事にしなきゃ…」

 

あの場所での幸せな時間を無かったことにしていいのか?

 

「うるせぇ…」

 

あの女の子達の悲しみを無かったことにしていいのか?

 

「……」

 

エミリアを守ると誓った…それさえも無かったことにするのか?

 

「黙れ…俺が拾った命だ…だから…!」

 

俺は立ち上がり、決断する。

 

「使い方は俺が決める!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下がるのよ、お前は…」

「いや、いい…」

「お前は何をいっ…っ!」

 

そうして俺はラムと相対する、その顔が憎しみに染まるのを見て痛々しく思う。…俺はやはり彼女を捨て置けないのだ。

 

「いい度胸ね、観念したということかしら」

「いいや…ちげぇよ、覚悟を決めたんだ」

「何を…」

 

そうして出た次の俺の行動は頭を深深と下げるというものだった。

 

「悪かった…、俺がヘタレしたせいで…」

 

そう…元はと言えば、自分が知ろうとしなかったからだ。一周目の時にレムに殺された時、レムには俺を殺す動機があった。その訳を知ろうとしなかった。レムの行動と呪いは別関係、冷静に考えれば普通に分かるものなのに俺はそれを拒絶し思い込みで判断した。その結果…彼女達の一番大切なものを奪うという最悪の結果を招いた。

俺は知るべきだったのだ、あの時点で犠牲になるかもしれなかったあの男が彼女達にとってどれだけ救いでどれだけ大切だったかを。

 

「今更…そんなことをされた所で!」

 

「もう…ツバキは帰ってこない!いつもみたいに寄り添ってくれない!バルスに何が分かるの!?ラムがツバキを見つけた時どんな気持ちだったかバルスに分かる!?」

「分かんねぇよ…俺は知ろうとしなかったから…」

「…最後にもう一度聞くわ、ツバキの事で知っている事があるならすべて話しなさい」

「……」

「知っているのね、それでも話すつもりはない…そういう事ね」

「俺は分かんねぇから…でもだからわかんない事ばっかだから…、知っていこうと思ったよ」

 

そんな俺の決意表明をラムは怒鳴り散らす。

 

「何度言わせるの…っ、そんな事を聞いているんじゃない!。そんな事をしてツバキが帰ってくる?レムがまたいつもの様に笑う?違うでしょ!?」

「……」

「レムの心はもう、死んでしまったの! もう、取り返しがつかないの! 今さらなにかがわかったところで、あなたになにができるっていうの!?」

「なにかができる、なんてかっちょいいことは言えねぇ。なにもできなかった結果がこの様だかんな。説得力なんてゼロなのは俺が一番わかってる」

 

決意を決めた今でも分かる、これから俺のすることは本当に馬鹿馬鹿しい、らしくない。どう誤魔化してもそれは変わらない。でも俺はもう二度と…彼女達が悲しむのを見たくない。

 

「お前に…ラムとレムと…ツバキの何が分かるって言うのよ!」

「分からねぇ、知ろうとしなかったからな…」

 

「でもお前らだって知らねぇだろ…」

 

これは俺の決意だ、何度だってやり直す。そう…決めた。

 

「俺がお前らを大好きだってことをよ!」

 

ラムは目を見開いて硬直した、そこから殺意…そして行動へと移す。

だが遅い…俺はベアトリスの制止を振り切り、崖から飛び下りた。

 

「…っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして少年はまた…死んだ。

 

「お客様…大丈夫ですか?」

「お客様」

「あぁ…大丈夫だ」

 

そしてまた始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




5000文字超えたわ、二つに分ければ良かったかな…、


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赤目の子犬

皆さん、遅くなってしまいすみませんでした。


「っ…はぁ…」

「ツバキ?」

 

悪夢でも見てたみたいだ…体がだるい、胸が痛む。これまでにない倦怠感が起きた瞬間俺を襲った…が、それはすぐに消え去りいつもの体調に戻った。

 

「どうしたの?随分うなされていたようだけど?」

「いや、大丈夫。行くか…」

「そうね、行きましょう」

「ってラム?着替えたって事は1度部屋に戻った?」

 

見るとラムはネグリジェではなくいつものメイド服だった、改めて思ったけどうちのメイド服露出度高いよな…。客人とか来た時そういう目で見られないか少し心配でもある。

 

「えぇ、なかなかツバキが起きないものだから一度着替えてきたわ」

「てことは…寝坊か」

「えぇ、そうね」

「ひとつ言わせてくれ」

「何かしら?」

「誠に申し訳ございません!」

 

それはそれは、俺の人生史上渾身のdogezaでした。

 

「いいわよ、かなりうなされていたし起こす気になれなかっただけよ」

「そうか…よし、急いで準備します!」

 

そうして俺は急いで準備をし、部屋を出た。あ、もちろん着替える時はラムは部屋から出てましたよええもちろん!。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、ラムはお客様の部屋へ行ってくるわ」

「分かった、それじゃ俺は朝食の準備を進めとくよ」

 

そうして俺は厨房へと向かうとそこには既に先客がいた。

 

「どうした?エミリア様?」

「え!?あ…うーん…」

「あちゃーバレちゃったー…」

「何しようとしてたか正直に答えてくれれば怒ったりしないから」

「えっと…パックがね?少しお酒が飲みたいって…」

「朝っぱらから娘を酒のパシリに使ってんじゃねえよ…」

「違う違う、マナ酒だよマナ酒」

「なんだ、そうならそうと言え…ってダメだろ!マナ酒でもダメだわ!」

「く…騙せないか…レムはこれで行けたのになー」

「レムを騙してんじゃねぇぇ!」

 

そうして俺はゲスの極み猫のパックの頭をグリグリする、レムをからかうの楽しいのは分かるけどそれは俺専用だァァァ!!!。(アタマおかしい)。

 

「あ~痛い痛い」

「嘘つけこの石頭、こっちが痛てぇ」

「えっとごめんねツバキ…」

「いいよ、エミリア様は悪くないです…悪いのは!」

 

グリグリしてる力を少し強める。

 

「痛い!ホントに痛い!」

「このゲスの極み猫だから」

「えっとパックも許して上げて、ね?」

「分かった、それでエミリア様」

「え、うん何?」

「その…お客様のスバルでしたっけ?どういう人でした?」

「あれ?ツバキにスバルの名前言ったっけ…」

「言ってないはずだよー?」

「あれ?そうだっけか…」

 

あれ?確かこの名前ちょっと前に聞いた気が…。

 

『その辺にしておくのが身のためだよ』

 

今の…声は、エミリア様の声でもなければパックの声でもない。

俺の心に直接語りかけてきた…?、エミリア様とパックの様子を見るに2人には聞こえていない…?。

 

「どうしたんだい?ツバキ、ぼーっとして」

「え?あ…いやなんでもない」

 

ただ、ひとつ分かった事がある。あの声を聞いた瞬間に感じた今朝の悪夢のそれと全く同じ倦怠感。

どうにも引っかかる…、何か起きようとしている…?。

 

「兄様ー?ここにいらしたんですか?」

「レムか…どうした?」

「あ、いえお客様が兄様を呼べとあまりに申すものですから…」

「俺を?」

「はい、あの時助けてくれた事にお礼を言いたいと…」

「あの時…あぁ、腸狩りの時か…」

 

あれ…あの時俺はそいつに会ってない気がするんだが…。

 

「分かった、行くよ」

「朝食の準備はレムが引き継ぎます、あとはお任せ下さい」

「分かった、ゴメンなレム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

「ノックくらいしろよ!」

 

俺はそいつの姿を見た瞬間、頭の中で整理が着いた。恐らくこいつと会うのは初めてじゃない。何故か初めて会った気がしない、それはおそらく向こうもだ、だが俺にはアイツなんて見覚えもない。だが恐らくあいつは俺を知っている。

 

「つかぬ事を聞くが…」

「ん?なんだよ?」

「何度も同じ日を経験する感覚って分かるか?」

「…なんの事だ?」

(まさか…ツバキは記憶があるってのか!?)

「とぼけんな、俺はお前に会ったことも無い。お礼を言いたいとか言ってたらしいがお前はどうして助けたのが俺だとわかった?」

「……」

「吐け、さもなくば…」

 

俺は腰に据えた剣の柄に手を置く、こいつがこの後何をするかでこいつの存命が決まる。

 

(この言動から察するに恐らくツバキのやつは記憶が何度も重なっている間隔を味わってる、だから俺の今日これまでの言動と行動に違和感を覚えた…。でもこいつに正直に言って俺が無事でいられる保証はどこにもない…でも…)

 

「お前も…なのか?」

「何?お前も同じか…」

「一応聞くぞ?今日は何回目だ?」

「感覚的には…3回目だ」

「そうか、俺もそうだ…」

「これは一体なんだ…なんなんだ?」

「恐らく呪いだ」

「呪い…?それは確か…二回目の時の…」

 

こいつと話していると記憶が次々に浮かび上がってきた、一応あの声と倦怠感の感覚が来るかと警戒したがこいつには別に問題ないようだ。

 

「俺には呪いが2つかかってる、まずひとつは詳しく言えないが…簡単に言えば巻き戻す呪い。2つ目は…死に追いやる呪いだ…」

「死に追いやる…呪い…?」

 

その時頭の中にものすごい頭痛が走った。

 

「ぐ…あぁっ!?」

「おい…どした!?」

 

頭の中に流れ込んでくるイメージは俺が血を吐いてベランダに倒れている様、そして俺の見つめる視線の先には怪しげなオーラを放つ赤目で黒毛の子犬がいた。

 

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

「なんだ、何があった!?」

「お前…赤目の黒い子犬に心当たりは…?」

「赤目?ただの黒い犬なら心当たりあるが…」

「それをどこで見た!?」

「えっと…確か、この部屋の窓の外からこっちを見てた」

「クソっ!」

 

俺は窓を開け、そこから見えるところ全てを索敵する…。だが見つからない。

 

「何を探してんだ…?」

「お前、一回目はなんだった?」

「俺は…レムに殺されて…」

「ビンゴだ」

「え?」

「それとお前の縛りは俺に対して大丈夫らしいぞ」

「どうしてそう言いきれる…」

「俺が大丈夫だからだ、試しにやってみろ」

「分かった…」

 

「俺は死に戻りして…」

 

「どうだ?」

「大丈夫なのか…」

「どうやら俺とお前は似たような境遇らしいな」

「お前も…向こうから来たのか?」

「そうだ、だが今はその話をしている場合じゃない」

「何を…」

「情報交換だ、一回目お前が目覚めてから死ぬまでをまず話せ」

「分かった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった、それで二回目にいったと」

「それでだ、こっからが重要だ」

「死んだのは俺だろう…それはさっき思い出した」

「あぁ、だから2回を通して分かったのは下手をすりゃ俺達だけじゃなくて屋敷の誰かが犠牲になる…」

「そのためには恐らく根源であろう黒犬を殺すしかない…」

「…そういうことになるな」

「分かった、よし…」

「どうする気だ…?」

「今日の午後3時から森周辺へ行くぞ」

「は?どうして…」

「黒犬を探す、見つけれなくても痕跡を見つければ上々だ」

「まじか…」

「やらなきゃ誰かが死ぬ、なら俺達でやるしかない」

「分かった…やるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺とスバルは午後3時にラム達には村へ行くと伝え、森周辺を探し始めた。

 

「あの小さな形態の時は電磁波探知に引っかかんねぇな…」

「小さなって…子犬で終わりじゃねえのか?」

「ただの子犬が誰彼構わず呪い殺せるほどの高度な呪いを扱える訳ないだろ、おそらく何らかの形態変化を備えてる」

「でっかくなるってことか?」

「さぁな…もしかしたら羽でも生えるんじゃねえの?」

「それはなんかアレだな…」

「………」

「おい、どした?急に黙り込んで」

「…結界が」

「は?」

「結界が破られてる、ここから出たんだ…」

 

見るとそこには結界がそこだけ齧り取られたような穴が出来ていた。

 

「出たって…じゃあ森の外って事か!?」

「いや、魔獣は陽の光を嫌う。だから日中は森の中にいるはずだ…」

「そうか…じゃあ森の中にいるのは変わらないって事か」

「あぁ…そうだ、だか…ら」

「おい、どした…!」

 

俺が見ていたのは森の奥深く暗い奥深く、そこに赤く光る2つの目。そらは跳ね、こちらに気づいていなかったが気配を察したのかこちらへ気づいた。その瞬間、電磁波探知で索敵していた俺は気づいたがスバルは気づく事が出来なかった。

 

目の前の木から魔獣が飛び出す様を。

 

「スバル!」

「へ?あ!」

 

俺はスバルを引っ張り後方へ飛んで回避する、そしてスバルを離し飛んできた魔獣へ剣を突き刺し絶命させる。再び森の奥を見ると赤目は消えていた。気の所為ではない、確かにそこにいた…だが逃げた。

と言うよりこのままではまずいこの結界の穴に気づいた周囲の魔獣達が一斉にこちらへ向かっている。とりあえず結界の外へ出たが破られては村や屋敷へ被害が出る…。

 

「ハーク!」

「なになにー?ってこれは…!」

「スバルを連れて屋敷へ!スバルはエミリア様とレムとラムにこの状況を伝えろ!」

「お前は…どうすんだ!?」

「俺はとにかく数を減らす!結界が破れるにはまだ時間がある…時間稼ぎは俺がやる!」

「…分かった、頼むぞ」

「あぁ…任せろ」

「それじゃ、しっかり捕まって!」

 

スバルはハークに跨り、屋敷へと向かった。

 

「さて…」

俺は結界の中に入り、とりあえず穴を俺の魔力で応急処置として塞ぐ。そして索敵で迫り来る魔獣の位置を確認する。

 

「よし…」

 

「雷双天!」

 

俺の体を蒼き雷のオーラが覆う、蒼き雷が体表を走り皮膚には青く光る筋ができる。剣を抜くとそこから雷が飛び出し、周囲の草木を吹き飛ばす。

 

「やるか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




1時間書きあげた俺を褒めて


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元凶

皆さんもしかして元凶とか予想ついてたりします?


「はぁぁぁぁ!!!!」

 

俺の気合いの叫びと振るった剣から放たれる大きな雷の斬撃は周囲の魔獣を切り刻んだ。

 

「っくそ…どこだ、あの犬は…っ!」

 

必ずどこかにいるはずだ…必ず、あの犬が…。

そう考える暇もなく、目の前に何度も立ち塞がる魔獣。

 

「しっつこいんだよ…邪魔だァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだかよ!」

「もう見えた!行って!」

「お前は!?」

「私は村の方へ行くわ!」

「分かった!」

 

そうしてスバルはダッシュで屋敷へと転がり込んだ。

 

「バルス…今までどこに?」

「何をそんなに慌てているのですか、キモイです」

「スバル?どうしたの?」

 

「よかった…3人共いたか…」

「何よ?」

「大変なんだよ!聞いてくれ!」

 

そうしてスバルは事情を話した、ツバキとは違って全ての内情を言える訳では無いが、森の魔獣達が一斉に結界を破ろうとしていること…そしてツバキが単身、リーダー格の魔獣を殺すために森へ入ったという事。それを聞いたラムとレムは目にも止まらぬスピードで飛び出した。

 

「スバル、結界が破れていた場所まで案内して」

「けど…ラム達は…」

「大丈夫よ、あぁ見えて冷静に考えれる子よ?ラムは」

「そうか…分かった、案内するから急ごう」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツバキside

 

(ツバキ!聞こえる?)

「っ!?」

 

俺は突然聞こえたハークの声に驚いてザザザザっと滑りながら止まった。

 

「なんだ…どうした?」

(村の子供の2人がいないらしいわ!多分結界が破れてた箇所が他にも…)

「そうか、分かった。探してみる」

(お願い、村の住民は安全圏まで避難させるわ)

「頼む」

 

「……見つけた」

 

俺は森全体を電磁波でスキャンし魔獣以外の全ての気配を察知する。

ここから少し遠いが、少し木々が開けた場所の小さな洞穴内か…。

なるほど、あそこなら少しは大丈夫そうだが急ぐに越したことはない。

 

「急ぐか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界の穴を探して全力疾走していたラムとレムが見つけたのは村の人達が移動している集団だった。

 

「あれは…村の人達?」

「どうしてこんな所に…あれは…」

 

そしてそこには特徴的な白い毛並みの狼がいた。

 

「あんた達遅い!」

「ハークちゃんがどうして村の人たちを…」

「あいつに言われたのよ、それよりあんた達はどうすんのよ?」

「森へ行くわ、ツバキを放っておけない」

「まったく、いい奥さんだこと…」

「村の人達は任せるわ」

「お願いします、ハークちゃん」

「あいつは森へと迷い込んだ村の子供を助けに行ってる、位置は少し遠いけど…」

「えぇ…見えたわ、子供もツバキも」

「ならいいわ、急ぎなさい。少し嫌な予感がするから」

「それは…ラムも同感よ」

 

「姉様!ありました!ここです!」

「でかしたわ、レム」

 

そうしてラムとレムは森へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、エミリアたんここだ」

「うん、任せて」

 

そしてエミリアが結界の穴に手をかざすと見る見るうちに穴が塞がり、完全に塞がって魔獣が思いっきりぶつかる。

 

「よし、そう簡単には破れないから安心して」

「これ、向こうからは…」

「あ、それは大丈夫。ツバキは出入り出来るから、ラムとレムもね」

「なんだ…良かった」

「それじゃスバルも来て、村の人達の所へ行かないと」

「おう、そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた…」

「おにいさァァァん!!!」

「よしよし…もう大丈夫だかんな」

 

洞穴へ行くと端っこの方に子供二人が居た、本当に良かった、無事で。少し変な匂いもする…か?。

 

「こわ…かったよぉ…」

「よしよし、もう大丈夫だ」

「…うん」

 

にしても…結界の穴はさっきの探知した限りじゃどっかで引っかかって止まってもいいくらいのサイズだったのになんでここまで来れたんだ…。

 

「あのね、もう1人いたの…」

「何?」

「僕達をここへ連れてきてくれた子が外に出ちゃって…」

「その子…どんな子だった?」

「ちょっと前に村に来てた子だったよ」

「っ…まずい!」

 

俺は瞬時に2人を抱え、洞穴の外へ出る。

その直後、洞穴が崩壊した。

 

「悪い、少しだけここでじっとしててくれ」

「うん…大丈夫?」

「おう、心配すんな」

 

そして俺は子供達を岩の後ろへ退避させる。

 

「隠れてないで…出てきたらどうだ?」

「へぇー…気づいてたんだ?」

 

森の暗がりの中から姿を現したそれは、子供のようだっただが…肩に乗っている赤目の子犬には見覚えがあった。

 

「ちぇ…あなたが邪魔しなければ実験成功だったのに…」

「実験?」

「そうそ!私ね!人を潰したらどうなるのかっていう実験をしてたの!」

「…」

「それでね、ここに来るまでに大人の人はいっぱい潰したんだけど私の同じくらいの子供の子を潰したらどうなるのかなぁ!」

 

イカれてる…、いや恐らくこいつにとって人の命とはその程度のものなんだろう。人間の成長には幼い時にどんな経験をしたかによるらしいが…恐らくこいつは…。

 

「…もういい黙れ」

「なーにー?お兄さんは少し黙っててくれると助か…」

 

その子供が言い切る前に俺は剣をそいつ目がけて投げる。

だが剣は子犬によって防がれた。子犬の口には剣がくわえられていた。そして子犬はその体からは想像もできないほどの速度で剣を投げてきた…がそれを俺はなんとか掴む。

 

「あっぶなーい、串刺しになる所だったよー」

「…何なんだ、その犬は…」

「この子?あー、私が作ったの!」

「作った…ねぇ、君の名前は?」

「メイリィ!」

「なるほど…悪いがメイリィ、お前はここで…!?」

 

剣を構え直し、臨戦態勢を取ろうと魔力を入れたその瞬間、俺の身体は麻痺したかのようにピクリとも動かなくなった。

 

「やったー!」

「なんだ…これ」

「ねぇねぇ!さっき洞穴に入った時にね!特殊な見えない毒煙を散布させてたの!」

「なる…ほどな…」

 

なるほど魔力でどうにもならないのは魔法ではないからか…、にしても本当にまずい…。なんとかさっきの子供の方を見ると子供たちも動けなくなっているようだった。

 

「さーて!お兄さんには…いっぱい遊んで貰わないとね!」

 

子供の肩に乗った子犬が不気味に吠えると、周囲に魔獣達が集まってきた。

 

「ぐ…おぉぉぉ!!!!!」

 

俺は強引にある程度麻痺を解除し、なんとか立ち上がる。

 

「おー!すごいすごい!」

「遊んでやがるな…」

 

「それじゃ、始めよっか!」

「あぁ…」

 

俺は覚悟を決め、麻痺で震える全身に鞭打ち、体に魔力を流す。

体から出血し、ブチッと何かがちぎれる音がする。

 

「やっちゃえー!!」

「来い…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今のは!」

 

レムとともに見つけた子供の方向へ向かっている道中、千里眼はしばらく使えないが方向は覚えているので問題ない。その方向で何かが爆発したような音がした。

 

「ツバキ…」

 

森へ入ってから、彼の魔力を探知できていない。これだけの魔獣がいて、ごちゃごちゃになってしまっているのだ。

 

「急がないと…」

 

彼がそこらの魔獣に負ける事などあるはずがないが…近頃の魔獣達の様子はどこかおかしかった。

 

「お願い…間に合って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「レムは子供達を!ラムはツバキを探すわ!」

「…分かりました、どうかお気をつけて…」

「わかっているわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこへ行くと嫌な光景と嫌なものが見えた。

 

ボロボロになった彼が抱き上げられ、幼い少女…のような何かに唇を合わせられている。周囲には無数の倒れふした魔獣の死体の腐敗臭でひどい匂いだった。

彼の意識はなく、恐らく酷く衰弱しているだろう。

自分の中で沸き立つ黒い何かに感情を支配される。

握り拳から血が垂れる。

 

「離れなさい…」

 

「あなたー?誰ー?」

 

「ラムの大切な人から…離れなさい!」

 

黒き風の刃が、周囲の木々と岩と魔獣の死体を切り刻む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すみません、投稿が遅れ気味になってしまっております。
なろうの方で本気で小説を書いておりますゆえ、こちらで投稿する際はなろうがスランプなんだと心の中で蔑んで頂けると嬉しいです。
あとついに星10評価を頂きました、ありがとございます!

今後は不定期更新になりますがどうかよろしくお願いします。


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守護者の目覚め

遅くなりました、本編再開でございます。


声が聞こえた。

耳に直接という訳では無いが、聞こえた。

やがてその声ははっきりと聞こえ始めた。

 

君はどうしたい?

 

俺が…どうしたいか。

俺はラムを守りたい、いやラムだけじゃないレムを…屋敷のみんなを守りたい。

 

だが今の君では守るどころか君が死ぬだろう

 

…だからなんだ、俺はそれでも守りたいんだ。

 

君に一言言わせてもらう、君は優しすぎる、何かを守るのには向いていない。

 

…そうかよ。

 

やりたいものと向いているものが違う時、人はどうすればいいと思う?。正しい事は誰にも分からない、生き方の正解を知りたくてだれもが戦ってる、君だけじゃない、君が大切だと思っているその人も。

 

……。

 

だがそれでも君が何かを守りたいと思い、人の為にあろうとするのなら、1つアドバイスをしよう。

 

…なんだ。

 

出し惜しみするな、全力で守り通せ。だが君が死んでは意味が無い、君が死んでは彼女を守る人など居ないことを忘れるな。

 

今まで俺は…ラムとレムが幸せで生きていればそれでいいと思っていた。でも違った、自分勝手な願いなのは分かっている、俺はあの二人の幸せの先に居たい。だから…死ぬつもりも死なせるつもりも毛頭ない。

 

行くんだね?

 

あぁ…。

 

まぁ、せいぜい頑張りたまえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…」

「あはは、所詮角無しの鬼なんてこんなものよね」

その小さな少女は狂気じみた笑みを浮かべながらゆっくりとラムに迫っていた。

「く…」

「もう自分でやるのもめんどくさーい、やっちゃえ」

そのあまりにも軽すぎる号令に周囲の魔獣が一斉に、迫る。

彼女は目を瞑り覚悟をした、死ぬ覚悟を。

だがその瞑る寸前、彼女の耳には確かに聞こえていたのだ。

とても静かだが…図りきれない怒りを感じさせる雷の音を。

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

彼女を囲うように赤い雷の柱が出現し、魔獣を消滅させる。

魔獣達は怯み、その場に威嚇の体勢をとる。

小さな少女は、心底うっとおしそうな顔をしていた。

そして彼女を庇うように、前に立ちそれらと対峙している少年。

「…調子乗りすぎだろ、誰に手出ししてんだ」

「なんで…傷が…」

「もう容赦しねぇ、覚悟しろよ」

「へー、あんなにやられてまだそんな事が言えるんだ…」

「…解」

その瞬間、少年は赤い雷と青い雷を体に纏い、空は暗がりに染まった。

「空が…」

「ツバキ…?」

「紅蒼幻鬼」

だがそれよりも驚くべき変化は、彼の前頭部にある、折れた黒き角だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様!」

「…っレム?」

彼女の妹であるレムは子供達を無事送り届けてここへと戻ってきて、負傷したラムに驚いたが、1番の驚きは彼に角が生えている事だった。

「姉様…あれは?」

「分からないわ、ラムが来た時は生きているかすら怪しい状態だったのに急に…」

「それに…あんな角レムは見た事が…」

「今はそれより、事態の収拾を図るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん…なの、こんなの…聞いてない」

「言ってないしな」

ツバキは圧倒的な魔力を放ちながら、魔獣達に歩み寄る。

(もって…10分か、この力がなんなのかは分からないが暴走はしないみたいだ、解いた時どうなるかまで知らんが…)

ツバキは剣を握りしめる、手からは蒼と紅の雷が絶えず出ている。

そしてそれは…剣へと移り、その剣は黒刀の片手直剣から、蒼紅の二振りの剣へと変貌する。剣の大きさは、元の黒刀より少し小さくなった、右手に持つ剣は蒼い刀身を持ち、振れば蒼い軌跡ができる。左手に持つ剣は紅の刀身を持ち、振れば紅の軌跡が出来る。

両手の剣を改めて握り締めて、魔獣たちへと剣先を向ける。

「これから、本当の痛みって奴を教えてやるよ…」

いつもの優しい少年の面影は今はどこにもない、そこに居るのは愛するものを守る為に容赦を捨てた、本物の守護者だ。

彼は剣を振り上げ、少し溜めて一気に振り下ろす。

生じた雷の斬撃は魔獣達を分断するだけでなく、背後にあった巨大な岩山を崩壊させ、魔獣たちを生き埋めにした。

「な…なんなの、あなた…」

「ロズワール邸に使える使用人、ツバキだ」

 

「さて、覚悟しろよ」

今度は剣先は魔獣たちへと向いていなかった、その剣先は斬るべきものをきちんと指していた。それはそびえ立つ崩壊した岩山の上に立つ、歪な何か。

「なに…これ」

「自分で制御できる力を見誤ったんだよ、生き物の進化なんて誰にも止めることは出来ない」

「…」

「だからこんな化け物が生まれる…」

それはやがて形を為し、現界する。

生き埋めとなった魔獣たちの邪悪な魔力を吸収した赤目の子犬が、どんどん大きくなる。首元からうにょうにょと皮膚が肥大し、いつしかそれは2つの新たな顔を作りだした。

それはまるで…神話に出てくる地獄の番犬のような三つ首の魔獣だった。

「ハーク、ラム達を森から退避させろ」

「いいのね?」

「森から出ればひとまずは安全だからな、ここだけじゃこいつとやり合うには狭すぎる」

「分かったわ」

無事に帰れるかとは…ハークは聞かなかった、信じているから彼はきっと戻ってくると。

だから、ハークは駆け出した。

そして彼は、今一度眼前に聳えるそれに対して殺意を向ける。

その怪物はいつの間にか主であった少女の肉体を喰らい力をさらに増大させていた。

つまり、魔術的にあれを止めることは不可能になった。

つまり方法はただ一つ。

「力づくで止めるしかないか…」

1歩…踏み込む、次の瞬間地面に小さなクレーターが出来た、2歩目の跳躍でさらに深く。飛んだツバキは一気に詰め寄り、三つ首の怪物へと迫る。

「雷鬼…蒼天紅蓮斬、三日月!」

一振り袈裟斬りに振る、怪物は三つ首を遺憾無く発揮し、防御する。が、しかし無意味とばかりに二つほど首が飛ぶ。だがその首は意思があるかのように攻撃直後のツバキを吹き飛ばした。

「ぐ…ぬぁ…」

地面に吹き飛ばされたツバキは踏ん張りその勢いで着地し、瞬時に迫る。迫る頃には首は元の位置に戻っていた、それだけではない中央の首から放たれた闇の光線は避けたはいいものの当たった部分の草が灰となって消えた。

それを三つ首で縦横無尽に撃ち放つ。

草木が灰となり、周囲の魔獣たちも巻き込んで辺り一帯が更地になった。

それらをかいくぐり、怪物の背後に立ったツバキは中央の首に上から双剣を突き刺した。そしてそこから自分の魔力を放ち、中央の首を破裂させ暴発させる。突き刺した彼も無傷とはいかず、左目に流れ弾をもらい、その左目の黒い部分は白く濁った、だがそれでもその白く濁った目は瞬時に黒くなり視界を取り戻す。

ヤケになった怪物は三つ首の牙を光らせ接近戦を仕掛けてくる。剣二本と首三個、数的不利だが彼には無意味だった。

瞬時に2つの首を蹴り落とし、最後の首を切り落とす。

大きく怯んだ怪物は呻き声をあげながら猛烈な勢いで再生していく。

(…時間が無い、再生しきる前に決める!)

双剣を地面に突き刺し、平手を怪物へとかざす。

怪物の立っている地面に紋章ができて、その紋章から天に昇る程の蒼と紅の柱が出た。柱の中で怪物は徐々に体の一部が欠落しやがて完全に消える。

「蒼紅の御柱!」

柱の後には何も残らず、怪物は消滅し周りの魔獣は続々と倒れ、腐った匂いが周囲を埋め尽くす。

 

「…解」

ツバキから溢れんばかりの魔力が消え、全て内側へと戻っていく。

そして、彼の手に鬼の一族の紋章が刻まれた。そして彼は自身の魔力を使い果たし、その場に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんなのに力を与えてよかったの?

 

一度彼のような人間に力を与えて見たかったんだよ

 

守る為なら手段を選ばない、下手をすればこの世界を破滅させる可能性だって…

 

それなら心配はいらない、彼がいる限りあの世界が破滅することは無いよ

 

あんたってホント性格悪いわね…

 

いずれ彼がこちらへ来る、その時はそう遠くないはずさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後のは今思い描いてる予定通りにこの物語が完結したら回収する伏線みたいなものです。


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力の代償と別れ

なんかどんどんどう終わらせるべきかわかんなくなってきたぞー?
やっぱつ令和


「ここは…屋敷…?」

ツバキは身体を半分だけ起こし、昨日のここに至るまでの経緯を思い出す。

あの後戦闘が終わり、反動でツバキは倒れた。その倒れる寸前にラムが千里眼で異変に気づいて駆けつけ、屋敷まで運んだのが真実だが、ツバキは記憶が飛んでいてあまり思い出せていない。

やがて、記憶が鮮明になり視界も安定してくる。ここでツバキは自分のある異変に気づく。

それは手のひらにある紋章、赤い血のような色をしている紋章だった。手で擦っても取れるような気配はない。

また呪いとかだったら面倒な事に…とツバキが考えを巡らせていると。

ガシャァーン!と皿が割れる音がした、音のした方は部屋の扉の前。

そこにいたのは…

「ツバキ…?」

「…ラム?」

呆然とした表情で立ち尽くしているラムだった。

「ツバキ…!」

ラムがツバキのベッドへ駆け寄り、ツバキに思いっきり抱きつく。

少し強めに抱き締められたので少しだけ痛かったが、許容範囲だ。

そうしてラムは泣く訳では無いが、震えていた。ただツバキの胸の中で震えて嗚咽を零していた。

それに応えるようにツバキはラムの頭を優しく撫で、安心させる。

「おかえり…なさい…」

「おう、ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「に、2週間!?」

「マジだぞ、というかラムとレムは何してんの」

その後、ツバキは部屋に来たスバルといつから居たのか定かではないレムが様子を見に来てくれた。

なお、スバルが指した状況は、ツバキの右太ももをレムが左太ももをラムが占領し、寝ている現状に対する言及であったことを明言しておく。

「寝てる」

「いやそれは分かるんだよ、一応病人の奴に容赦なく枕させるってどうかとだな…」

「ま、いいよ、眠そうだし二人共な」

「本邸から来てるらしいから大丈夫っぽいけどな」

「邪魔するかしら」

「邪魔すんねやったら帰ってー」

「は?」

「分かった、俺が悪かった」

「通じる訳ねえだろ」

「何を言っているかしら、バカ二人」

「俺を巻き込むなぁ!?」

「それよりお前の体の様子を見に来たのよ」

そういうとベアトリスはツバキに向かって手をかざし、一言。

「解」

そう言い放った、その瞬間ツバキの右腕は垂れ下がり左目の視界が失われる。

「…おい…何した?」

「それがお前の今の本当の状態なのよ」

「なるほど…タダでは通さないって訳か」

「今すぐ治すことは不可能、でも数週間もすれば元に戻るかしら」

「今みたいにか?」

「擬似的に神経回路を復活させているのよ、そうじゃない時はテコでも動かないかしら」

「待て、そもそもなんでお前はそうなったんだ?」

「ゲートを広げたんだよ、無理矢理な」

「ゲートを…広げた?」

「なるほど…そういう事かしら」

「ゲートってのは知ってるよな?俺達の魔力の供給口、ゲートの大きさはその使い手によって様々だ」

「例えば、お前のゲートはこの屋敷どころか村の人間を合わせても一番小さいかしら」

「いや今の情報いらねぇだろ!?」

「そんで、ゲートを広げることは不可能なんだよ、お前みたいに無理矢理やろうとして壊してしまうからな」

「だからさっきから俺をディスんのやめてくんない!?」

「でも…いない訳では無いのよ、そんなことが出来る人間が」

「お前の知ってるラインハルト、恐らくあいつもやる必要が無いだけで出来る。ロズワールも同じだ」

「じゃあ…なんでやんないんだ?」

「単純明快、こうなるからだよ」

ツバキはそう言って自分の右腕と左目を指さす。

「こいつの場合は運が良かっただけなのよ、下手をすれば死んでいてもおかしくは無かったかしら」

「ベアトリス、例え話で聞くんだが…」

「お前には無理な話なのよ」

「無理だな、絶対、世界がひっくり返っても」

「そこまで言う!?」

「実際やんなよ、死ぬぞお前は」

「そんじゃ、俺はエミリアたんの所へ行ってきますかねー」

「べティーも戻るかしら、ほい」

そういうとベアトリスの手の平から緑色の光が出てそれが俺の右腕と左目の神経回路を復活させ視界が戻る。

「サンキュ」

「それじゃ、ベティーは部屋へ戻るかしら」

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

「…ん」

「おぉ…二人同時に起きるって何気に初めて見たな」

「ツバキ…?」

「兄様…?」

二人揃って動きのタイミングも動作も一緒、キョロキョロと辺りを見回している。レムとラムはベッドの上に座り、ツバキはベッドに腰掛けている。

「兄様…大丈夫ですか?」

「うん、ありがと、大丈夫」

「そうですか…、良かったです」

「とりあえず…お二人共、昨日から風呂入ってないでしょ」

「あ…」

「あ…」

「とりあえず、風呂はいってきてくださいな」

レムとラムの2人は何故か赤くなりながら部屋をあとにした。

 

ツバキには…少し疑問があった、今回こうなる事を知っていながらあえて何も言わず黙っていた男がいること。何故その男がそうしたが疑問だった、そうすることによってその男にメリットなどないはずだからだ。その男は決して自分に対してデメリットのでかい手段は取らない、だから気になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るぞ…」

「分かっていたさ、入りたまえ」

ラムとレムを部屋から出したすぐ後にツバキはロズワールの部屋へと来ていた、ロズワールも要件を察していたようで潔く扉を開けてくれた。…いや違う、ロズワールは今この場で自分に対してツバキが敵意を向けることがない事を確信している、実際その通りだから何も言えない。

「さて…どこから話すべきかーね」

そうしてロズワールは紅茶を二つ淹れながら話し始めた。

「まず、君に最初に依頼した族 賊長を捕らえる指示を出したのを覚えているかーね?」

「あぁ、覚えてる」

「その賊長を尋問してたらとても興味深い事を言い出したのでーね」

この時点で、ロズワールは知っていながら動かなかった事が露呈している、それでもなお態度を変えないロズワールにツバキは若干の嫌悪感を抱いた。

「半人半鬼、奴らはその存在を見つけるために動いていたのだーよ」

「半人半鬼…?」

「人間と鬼の中間の存在、それを生贄にし自分たちの古き長を蘇らせようとしていたようだ」

「…それがなんで屋敷に?」

「君だよ」

「は?」

「君は昨今の戦闘で鬼の力が目覚めたんだーよ、それをどういう方法でかは知らないが事前に知っていた連中の現在の長は確かな証拠を得る為に下っ端の部隊を送り込んだんだーよ」

「…お前は、俺をどうするつもりだ?」

「どう…とは?」

「そんなあからさまに敵に狙われるような奴を、屋敷に置いとくお前とは思ってないからな…」

「いいのかい?」

「あぁ…どうせお前の事だし話はつけてあるんだろ?」

「…君にこんな事を頼みたくはなーいがね…」

「よせよ…」

「……」

「ラムとレムを頼む…」

「分かった、一人の雇い主として君の願いをしかと聞き届けたーよ」

「それと、この話をするべき奴がもう1人いるが話してもいいか?」

「スバルくんかーね?」

「そうだな…そこが無難か」

「では、支度をしたまえ、明日には出よう」

「あぁ」

 

ロズワールの部屋を出て、スバルのいるであろうエミリア様の部屋へ向かうツバキの足取りは重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るぞー」

「え?ツバキ?」

「なんだよ、どうした?」

「悪いんだが、スバルと話がしたいからエミリア様、少しスバル借りていいか?」

「え、うん、全然大丈夫」

「大丈夫なの!?」

「え?」

「はい、ちょっと来い」

 

「それで…話ってのは?」

「いや…実はな」

そうして俺は事情を話した、今回の元凶とも言える存在が狙っていた存在が俺であった事、そのためしばらく屋敷から離れること。

「そうか…寂しくなるな」

「いつ戻れるかは分からんが…必ず戻ってくる」

「ラムは…絶対一緒に行くって言うと思うぞ、多分レムも」

「あいつらと一緒じゃだめなんだよ、それこそ屋敷を離れる意味が無い」

レムやラムが長年の苦しみの末やっと見つけた居場所から俺のために離れる事なんてしなくていい、だから俺が…。

「分かった、2人のことは任せろ」

表情から俺の決意を察したのか、スバルは納得したような返事を返した。

「頼む…」

「おう、任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日のまだ日も開けぬ深夜。

心地よい寝息をたてて眠るラムの髪をツバキは名残惜しそうに撫でて、隣に眠るレムの頭を撫でて、一度…二度…三度決意し離れようとしたが、体が言う事を効かない。

「…はぁ…」

自分の心に鞭打ち、立ち上がり、その場を離れる。

扉を開けて部屋を出る直前、消え入りそうな声で呟いた。

「さよならだ…レム、ラム」

彼は覚悟していたのだ、最悪もう会えないかもしれない事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう…いいのかい?」

「あぁ、今までありがとうな」

「では、無事にいつか再開でーきる事を願うよ」

「そうだな…」

そうして彼は地竜にのって目的地へと歩き出した、その背中は…震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




突然ですが次の章で一応最終章になります、何故って言うのはもうこの辺で終わっとかないとキリがないからです。
あとなろうも進めたいですし、はい。
というわけでもうしばらくお付き合いください、お願いします。
ではまたいつか


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終章
二年


今気づいた事、第一章長ぇ!。
当初の予定が8話とかいうぶっちゃけしていい?。
なんかもう、グダグダすぎて草も生えない。
なんかプリズマイリヤと五等分の花嫁がいい勝負してるし、東方projectはそもそも知らん人が多いんかな。



「…姉様?」

「………」

「…姉様?」

「……っ、レム?」

「どうなされたんですか?ボーッとして」

「いえ、大丈夫よ。レム、掃除は終わった?」

「はい!スバルくんのお手伝いもあり、カンペキに!」

「そう…、なら次は庭の手入れに入って頂戴、ラムは少し休むわ」

「分かりました」

レムは庭へと走っていく、その先でスバルと合流しスバルが重そうに持っているものをレムが軽々と持ってスバルがおののいているいつもの光景がそこにはある。いつもの…と言ってもこの2年でだが。

「もう…2年になるのね」

その二年前はラムにとってかけがえのない、いつもが突然消えてしまった日でもある。

ラムは胸に下げたシルバーのリングのネックレスを握りしめる、それは彼が直接自分にくれた訳では無いが、彼がいなくなった時部屋に唯一残っていた彼の私物だった。

「ツバキ…」

時はもう既に、2年の月日が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぜー、ベアトリ…ふごぉ!?」

「大きな声を出すんじゃないかしら、そろそろ学習するのよ」

「おまえもそろそろ慣れろよ、俺と関わる以上大きな声には慣れるべきだぜ?」

「お前が勝手に関わってくるからかしら!」

「はいはい…」

いつも通り、非常に高い声…いや非常に大きな声で怒髪天を衝く勢いで烈火のごとく怒声を飛ばす金髪ロリツインテール精霊、ベアトリス。彼女のいる禁書庫に彼女の嫌いな入り方トップスリーに入る入り方で堂々と入ってくる少年、ナツキスバル。

「それで、一体何の用なのよ」

「いや実はだな、新作マヨネーズの試作品が出来たから試しに…」

「エルミー…」

「おぉい!ちょちょちょ!!!!」

「ふん!」

「心臓に悪いんだよ…ったく」

スバルはとりあえずその辺の壁にもたれ、話を続ける。

「レムとラムの事だよ」

「あれから…少しは落ち着いたかしら?」

「あぁ、ほんとに少しだけどな」

二年前、カンナギツバキが突然屋敷から消えたあの日、ラムとレムは一時期精神が著しく崩壊するまでに病んでいた。いや、今もまだ…レムは取り繕ってはいるが時々部屋の前を通りがかると夜な夜なたまに泣いている声が聞こえてきたり、ラムに至っては探しに隣の山まで向かうほど普段の冷静さを失う程だった、今では落ち着いたが時々、自分を心の中で責めているような顔をする事がある。

「時間が解決してくれる、そんな甘いものでは無いのよ」

「だーからなんだよな、エミリアたんも頑張ってはくれてるんだが…」

「まぁ…そのうち帰ってくるかしら」

「そうだよな、お前ハーク居ないと寂し…」

「エルミーニャ!」

「どぼぉ!?」

今度こそスバルはドアごと禁書庫から追い出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃーに浮かない顔してんの?」

「おぉぉわぁぁ!!??」

突如、顔を覗かせてくる猫耳美少女にツバキは飛び退いた。彼女の名はフェリス、ツバキが今お世話になっている人の側近だ。にゃんと言うとうり、彼女は可愛げな猫耳をつけ…生やした美少女だ。

なお、性格が可愛げあるかどうかは個人の感想ということでひとつ。

「もー、さっきからずっと呼んでるのになんの反応もしないじゃん」

「だとしても肩を叩くとかない?こんないきなり出てきてびっくりしない人はいないと思うぞ俺」

「クルシュ様だったら、ビックリしずにびっくりさせようとする前に気づくからね」

「あの人と俺とじゃスペックが違うだろ!?」

「ほんと、にぶちんで鈍感だよねーツバキきゅん」

「はいはい…」

 

「ツバキ殿」

「ヴィル爺!」

「ヴィルヘルムさん」

颯爽と窓から姿を現したのは、剣鬼、ヴィルヘルムヴァンアストレア。先代の剣聖であり、ラインハルトの実の祖父に当たる人だ、ツバキが尊敬して止まない人でもある。年齢的に言えば引退していてもおかしくないのだが、ツバキは剣の勝負でまだ一度もこの人に勝てていない。

「ツバキ殿、先日の件でクルシュ様がご報告を聞きたいとお呼びでございます」

「あー…、分かりました、すぐ行きます」

「そーだ、暇だしフェリちゃんも行こっと、ヴィル爺もほらー!」

「フェリス、クルシュ様が呼んだのはツバキ殿であって我々では…」

「いいですよ、ヴィルヘルムさん」

「ツバキ殿…」

「あの人と2人だと緊張しますから…お願いします」

「…承知致しました、同席致しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「卿と会うのは、久方ぶりだな」

「最近は遠方まで行ってますから、ちょくちょく顔を出そうとは思ってるんですけど」

この人は、クルシュカルステン。ツバキが現在、お世話になっている人だ、そして王戦候補者の1人でもある。

「いや、構わない。だが無理はするな」

「お気遣い光栄です、クルシュさん」

「大分言葉遣いも様になってきたよねー」

「うるせーよ…」

「あ、戻った」

「座らないか?」

「そうですね、立ち話もなんですし」

するとクルシュはツバキが座った向かい側の椅子に腰を下ろした、ヴィルヘルムとフェリスもそれぞれ座っていた空気が変わる。

「それで、アジトで何を見た?」

「聞いた通りですよ、クルシュ様の知ってる事が真実です」

「じゃあ…」

「死んでたよ、物の見事に全員」

先日、ツバキは二年前に屋敷に魔獣を仕向けて、ロズワール領を崩壊を目論んだ組織のアジトを突き止めた。突き止めた経緯はこの二年間ひたすらに情報を集めた成果とクルシュの情報脈のおかげと言える。

そして、そのアジトに潜入した俺が見たのはアジトのボス含めた全員が尽く殺されていた現状だった。

死体の状況から分かったのは起こったのは一週間前後、殺され方は様々で四肢をズタズタに引き裂かれた者もいれば、心臓だけ抜き取られていたり、血液を抜かれていたりしていた。

「そうか…、目星は?」

「それについてはフェリちゃんから、手口とか痕跡とか付近を徹底的に調べあげた結果、死体の中に変なのがあったんです」

「変なの?」

「体はどこも傷ついてにゃい、呪術にもかかった痕跡もなかった。にも関わらず死んでいた変な人が。それを調べたから…これが」

フェリスがどこから持ち出したのか、白い布袋を持ち出し、それの中身をテーブルの上に放った。それは見たところ黒い本だった、だが…本のカバーにある紋章に俺は見覚えがあった。

「福音…か」

「ということは…件の事件は魔女教徒の」

「そうだな、こと今回の虐殺については…だが」

「今回の…とは?」

「今までにアイツらがやってきたのは、きっと俺を探しての虐殺だ、恐らく…それで弾みで魔女教徒を殺してしまった、ていうのが1番妥当な通案ですかね…」

「…ヴィルヘルム、何か気になることは?」

「はい…、少し」

「なんです?」

「例えば、連中の計画書なるものを魔女教徒が見ればそれを利用しようとするのではと…」

「なるほど…その線もあるか」

「とにかく現状出せる対策案としては、アジトの位置は王都からそれほど離れていませんでしたし、王都の警備隊に伝える…ですかね?」

「そうだな、ツバキ、フェリス、各地に使者として回ってくれるか?」

「了解です!フェリス様」

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、フェリちゃんはラインハルトに伝えてくるから、そっちはリカード達に伝えてきてねー」

「こいつ…近場を早速とりやがった」

「こういうの早い者勝ちにゃんだよー」

「はぁ…、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔女教徒?」

「おう、この近辺でな」

「そうか、そんならわしも皆に言うとくわ」

「頼む、ユリウスは?」

「あー、ええでわしから言うとく」

「悪いなリカード」

「ええ、気にすんなや」

「さてと…それじゃ俺は帰って久しぶりにゆっくりと休みますかね」

「お前さん…まだ帰っとらんのか?」

「何がだ?」

「お前さんの事を待っとる子がおるんやろ?」

「…ラムとレムか」

「そろそろ帰ったほうがええんとちゃうか?話に聞いた限りやとお前さんが追っとった奴らはみんな死んどったんやろ?」

「あぁ…でも、まだ終わったわけじゃない」

「そないな時やから、お前さんが帰って守ってやった方がええんとちゃうか?」

「…頭ではわかってんだよ、でも…なんか思うんだよ。俺が居ない方が2人にとっていいんじゃないかって」

「そないなこと…」

「あるさ、それは…俺が1番よく分かってる」

俺が消えた日、ロズワールから聞いた話ではレムとラムはそれぞれ冷静ではなくなり、1ヶ月職務復帰出来なかったという。

二年経った今でもレムは夜な夜な泣き、ラムは隠しているが拭いきれない悲しみがある。

俺がいると、2人は弱くなってしまう。

でも…俺はあの二人に戦って欲しくない、でも強く居て欲しい。

自分の中で勝手に葛藤している自分が馬鹿みたいでしょうがない、いつもならスパッと真っ直ぐに決められたのに今はもう…。

「お前さん、難儀な性格しとるなぁ」

「うっせ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

夜、自分のベッドの中に入って考える。

なんて自分は醜いんだろう、この世界に来る前現実に耐えられなくなって自殺した俺から俺は何も成長しちゃいない。

いや、むしろ弱くなった、どんなに魔力があってもどんなに力があっても、自分で選択する勇気がない。

誰かに選択を委ねて、それを理由に行動する、何も変わっちゃいない。

「俺の…本当にやりたいこと」

天井を見上げてかんがえる、自分のやりたいこと、義務感から来るものではなく本当に心の底からやりたいと思うこと。

俺は…ラムを、レムをみんなを守らなくちゃならない、だから…っ。

「いや…そうか」

守らなくちゃいけない、ならない、その言葉に義務感があったんだ。

違うんだ、守らなくちゃならないじゃない、守りたいから。

「…帰る…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…」

業務を終え、いつもの様にベッドに入る。

彼の居ない部屋は妙に広く感じるし、妙に寂しく感じる、本当に…彼無しで生きていけないぐらい…。

でも、きっとそれが弱さ、彼にしか見せられない弱さ。あの時から弱くならずに強くなると誓った、レムに誇れる姉になると誓った。

でも彼はそれを望まなかった、彼は私に1人の女の子としていて欲しいとそう言った。

「ツバキ…」

早く帰って…と、言おうとしたが睡魔によってそれは阻まれた。

 

 

 

 

 

 

 



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根拠の無い賭け

最近リゼロのこれに関してモチベがガンガンなんで描きまくるかもしれない。
それとツバキ視点で行くのでシクヨロ


「ツバキ殿、荷造りをしてどちらへ?」

「里帰りですよ」

あれから一週間経った明朝、何人かの使用人の人に手伝ってもらってクルシュ様から貰ったこの二年での働きに関するメイザースへの報奨を詰め込んでいた。理由は単純、一度屋敷へ戻るためだ。

会って早々拳が飛んでくる可能性もあるが、それだけの事を俺はしてしまった。

一度屋敷へ戻るのはまぁ…リカードの事とかこないだの夜に考えた事とかが半分でもう半分は警戒のためだ。

王都に駐在する、カルステン家、アストレア家、ホーシン商会は王都に駐在しているため安全だが、王都から離れたウリオール森林方面にあるメイザース領は未だに騎士の配備が、困難な状況となっているためだ。そのため一時的にという形で俺が一度屋敷へ戻る手筈となった、この事を知っているのは屋敷では恐らくロズワール一人だろう。

「里帰り…ですか」

「そうです、里帰りですよ」

「ツバキ殿」

「…なんです?」

「相談があれば聞きますぞ」

「…少しいいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怒った嫁を落ち着かせるにはどうすればいいですか教えてくださいお願いします!」

「わー…にゃんて見事な土下座」

「ツバキ殿、顔を上げてください」

どうも皆さん、朝っぱらからベランダで土下座しているカンナギツバキです。それもそのはず俺は尊敬して止まないヴィルヘルムさんに嫁の諭し方を教えてもらうのだから、ですよねしょうがないよね。

「にしてもにゃんでそんな急に?」

「馬鹿野郎!2年も帰ってないんだぞ!?あのラムがそれで突然帰ってきたら拳一つどころか百裂拳くらってそのままあの世だ!」

「自分の好きな人をにゃんだと思ってんの」

「リアル鬼嫁」

「間違っちゃいにゃいけど、間違ってるよねそれ」

「ツバキ殿、とにかくまずは会ったその瞬間にとにかく相手の顔を見て相手の感情を把握致しましょう、まずはそこからです」

「相手の感情…」

俺は思い浮かべたラムの表情から感情を読み取る、怒ってる顔…真顔、呆れてる顔…真顔、蔑んでる顔…真顔+「ハッ!」。

「無理だぁ!?」

「なんかビミョーな違いとかにゃいの?」

「違いか…まぁ、あるっちゃあるか」

…まぁ、構って欲しい時って、ラムは結構辛辣だけど構ってもらえれば上機嫌になるんだよな、そのまま寝るとかざらだし。レムもそうだけど。なんか、割とハッキリしてるよなラムとレムって。

「そうです、常に一緒にいたあなた方だからこそ気づける違いがあるのです」

多分きっとフィーリング的な何かなんだと思う、分かりはするし、共感もできる。でも大分参考になった、流石はヴィルヘルムさんだ。

「ありがとうございました、ヴィルヘルムさん、今度ヴィルヘルムさんの奥さんの話も聞かせてください」

「はい、是非」

「ほーら、ツバキきゅん?龍車の人が呼んで…」

 

『伝令!伝令!伝令!ツバキ殿!ヴィルヘルム殿!フェリス殿!誰でもいい誰か居ないかー!』

 

「っ…なんだ?」

「おーい、こっちだよー」

「御三方、ここにいらしましたか!」

「何があった」

「偵察班からたった今入った情報です!遥か南西の方角に魔女教徒多数!恐らく怠惰の1団だと思われます!大罪司教、ペテルギウスロマネ・コンティの姿も確認できました!」

「大罪司教…?」

「魔女教徒のいわゆる教祖というものです、中でも怠惰は数多くの虐殺を繰り返す許しがたき一団です」

「具体的な場所とかは?」

 

「現在、ウリオール大森林を北西へ向かって進行中であります!」

 

「ウリオール…大森林に?」

「ツバキきゅん?」

「その情報は確かか?」

「はい、偵察班から入った情報ですので確実かと」

「ウリオール大森林を北西進むと何があるの?」

「それは…」

「屋敷だ、ラムとレムもエミリア様もスバルもベアトリスもみんなそこにいる…」

考えたその瞬間に、俺は動き出していた。

「フェリス!後から増援を連れてメイザース領へ来い!」

「うん、分かったツバキきゅんは?」

「一足先に向かう、ヴィルヘルムさんはラインハルトに王都の警戒をさせるように促して!」

「承知致しました」

「ハーク!」

「分かってるわよ!乗って!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心に決めた。

 

正しいかどうかなんて分からない、そんな事は誰にもわからない。

 

だからもう、あれこれ考えるのはもうやめる。

 

自分の本当に心からしたいことをする。

 

もう…逃げない、もう…失わない。

 

だから俺は命をかけて…。

 

二人を救う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何かしら」

「あれは…」

ふと、森の方から嫌な気配がしてベアトリスは気配を探る。

それを察してその場にいたラムは急いでレムとエミリアとスバルを呼びに禁書庫から飛び出した。

ラムはいっぱいいっぱいで気づいていないが、ベアトリスはもうひとつの強大な気配を感じ取っていた。

「…はぁ」

ふと、ため息をつく。

ラムが暗闇からツバキに手を差し伸べられたように自分にもそういう人が居ないのかとふと考える。

ふと、あの小生意気な狼精霊の顔が浮かんだ。

まさか…と、鵜呑みにしベアトリスは手にした本のページを開く。

そこには…新たな文字が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バルス!バルスは!」

「いるよ!ここに!お前が引きづってんの俺!分かる!?」

「急いでここから避難するわ、レムは竜車の準備を進めてる」

「そうか…っておいおい何する気だ!?」

「有事よ、レムの方まで放り投げる」

「えっ!ちょっとまっ…」

「はぁぁぁぁ!!!!」

スバルが空いた窓から飛び出し、ちょっと後に何かが気に引っかかったような音がする。

「…っ、っ!」

ラムはその窓から飛び、スバルを無理やり木から引っ張り出して引きづる。

「お前!ちょっ…タンマ!投げたい…というか!…引きづりたいだけだろ!」

「だったら、もう少し早く走りなさい!」

「今日ちょっと辛辣すぎません!?」

「姉様!こっちです!」

「スバルー!」

向こう側の竜車の荷台に乗るエミリアと竜車の前席に乗るレムがラムの方を見て声を張る。

「レム!準備は!」

「完了しています!このまま王都へ…」

そしてレムが駆りだそうとした瞬間…竜車を引くはずの竜の首が飛んだ。

事態を察知したレムとラムはエミリアとスバルを竜車の外へ放り投げ、自分たちも飛び出す。

そしてさっきまで乗っていた荷台が吹っ飛んで見えないところまで飛ばされる。

「っ…レム」

「はい、姉様」

レムとラムが二人を庇うように前に出る、そしてスバルはエミリアを庇うように2人の後ろへ。

「スバル…」

「エミリアたん、大丈夫…」

 

「見つけましたよ…半魔のハーフエルフ!」

酷く聞くだけで嫌な声がそこに響きわたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は魔女教大罪司教、ペテルギウスロマネ・コンティ…デス!」

「…」

奇怪、目の前のそれを人と認識する事を躊躇うのはそのもののもはや人ではないような口調と、その出で立ちだろう。

髪は濃い緑色で肌は血色もなく真っ白、そして目は充血しているほど見開き、魔女教徒の目印である福音を抱えている。

「恐らく…大罪司教ね」

「大罪…司教」

「バルス、合図したらあれを使いなさいその隙に逃げるわよ」

「分かった…」

「半魔ぁ…!半魔ぁ…!」

「…バルス」

「半魔ァァァァァ!!!!」

「今よ!」

 

「シャァァマァク!!!!!」

夥しい黒煙が辺り一体を覆った。

「…っ!なんです!?」

大罪司教は黒煙に包まれ何も見えなくなる、そして4人はその場から全速力で走って離れる。

次に煙が晴れた時その場には大罪司教一人しかいないはずだった。

 

「こっちだぜ、司教様ァ!」

そこにはスバルと大罪司教の姿しかなく、気づけばスバルは竜に跨り走っていた。

「なにを…あなたは…時間稼ぎのつもりですか!?怠惰…それは勤勉とは程遠いのデス!」

不気味に浮いた体は、空中で体育座りをしているように見えるがスバルの目からは黒い腕に乗っているように見えていた。

「見えざる手って奴か…おら!こっちだ司教様!」

「逃さないのデス!」

何度か黒い強大な手が伸びて竜ごとかっさらいそうになるが、竜がそれを尽く回避する。

「最高だぜ!パトラッシュ!」

そのスバルの、懇親の激励に竜はスピードを上げることで応える。

 

「頼むぞ、ラム…出来るだけ遠くへ」

 

時刻は少し遡る、黒煙の中でスバルはラムとこんな会話をしていた。

「時間稼ぎ?バルスが?」

「そうだよ、このまま固まってたらきっと逃げきれない」

「…無茶はしないこと、バルスが死んだ後誰がエミリア様を慰めると?」

「俺以外そんな事出来るやつはパックぐらいだよ…、大丈夫!策はある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

策…と呼べるものでは無い、基本的には賭けだ。

ただほんの少しだけ可能性のある賭け。

だが…妙に自信があった、なぜかあいつが来ている気がする、多分もうずっと近くに。

「っ…行き止まりか…」

目の前には崖、そしてかつて自分が一度終わったことのある場所。

あの時とはもう違う、無策なわけじゃない。

まだ…手はある。

(頼む、これで気づいてくれ)

近くにいるならこれを見て来てくれるはずだ、多分あいつはもう…。

「もう逃がさないのデス!」

これをミスれば、終わり。

「さーて…大勝負といくか」

「なにを…あなたは…まさかここに誘い出すためにここまで…」

「まさか…そんな頭良くねーよ」

「なにを…!」

「それでは…マスクを持ってればマスクをしとけ!持ってねえやつはハンカチだ!」

「な…まさかまた…」

 

「シャァァマァク!!!!!」

 

先ほどより規模は小さいがそれでも大罪司教を一瞬怯ませるには充分だった。

「パトラッシュ!」

竜が吠えて、匂いを辿って黒煙の中の大罪司教に向けて体当たりを仕掛ける。

「はがぁっ!?」

体当たりは当たり、大罪司教が苦痛に呻く声を上げる。

「われ奇襲に成功せり!」

「あなたはあなたはあなたは…あなたはぁ!!!」

「っ…しま」

煙の上から大罪司教が飛び出し、こちらへ向けて黒い手を放つ。

パトラッシュのフォローも間に合わない、完全に詰みだ。

 

「来い…」

 

スバルの確信のない呼び声に応えるものがひとりいた。

「はぁぁぁぁ!!!!」

蒼い雷が大罪司教の肩を貫いて、それを発したと思われる輩が蹴りで大罪司教をぶっ飛ばす。

「がァァァァァ!!!!????」

「遅せぇよ…」

「急いで来たわ、ボケ」

そこには二年ぶりに見る、親友の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんかTwitterにmemorySNOWのあれがあったんだけど見てたら普通に二時間経ってた、動画時間1分ぐらいなのになおかしーなー。


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最強最弱の2人

ついにウチにレムさんがいらっしゃった、フィギュアをAmazonで買ったけどええなぁ。
次はもっと高いのを買おう、うん。そしてえっちぃのも



「それにしても…なんだってタイミングのいい」

「俺はお前らよりちょい早く魔女教に気づいてたからな、応援も呼んでおいた、ラム達は?」

応援と言っても、フェリス達はもうしばらくかかるだろうが…、とにかくまずは身内の安全確認が最優先だ。

ここに来る途中で村には結界を貼っておいたから大罪司教クラスでもない限り簡単には破れない。

「分かんねぇ、遠くへ逃げたとは思うが…」

「ハーク」

「うん…ちょっと待って」

「お、お前も久しぶりだな」

「そうね…、うん、見つけた」

「どこだ?」

「…場所は問題ないわ、まだそう遠くはない…けど」

「そういや…ペテルギウスは!?」

「やられたわね、いつの間に変わり身なんか」

「そこに倒れてんのはペテルギウスの形をした偽物って訳か…」

「それで、ペテルギウスは今どこに?」

「あの子達を追ってるわ、どうやら囮に引っかかったのはこっちだったようね」

「急ぐぞ、スバル、ハークに乗れ」

「了解、頼むぜハーク!」

「振り落とされないでよ!」

「行くぞ」最愛の娘を守れるならそれも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エミリア様、急いで」

「でもっ…スバルがっ…」

「バルスなら問題ありません、さぁこっちへ」

「姉様!あれを!」

「あれは…っ!走って!」

「見つけましたよォォォ!!!半魔のハーフエルフゥゥ!!!」

森の上空には不気味に浮きながら追いかけてくる、大罪司教の姿があった。

「リア、僕が少しだけ時間を稼ごうか?」

「ダメよ!今のパックが魔法を使ったら消えちゃう…!」

「最愛の娘を守れるならそれも…」

「ダメ!」

「みたいだよ、ラム」

「…レム、走りながら後方へ魔法で牽制するわよ、少しでも時間を稼げれば…」

「わかりました…、アル・ヒューマ!」

「ウル・フーラ!」

巨大な氷塊が飛んで、それが風の刃と接触し無数に砕け、尖った氷片が大罪司教へと降り注ぐ。

だがなぜか氷片は全て大罪司教の寸前で何かに当たるように砕けた。

「…面倒だね、あれは」

「っ…レム、とにかく攻撃し続けるわ、応援はきっともう来てる!」

「っはい!」

「わ、私も!」

「でも…このままじゃ…おっと、あれは?」

「パック?」

「ううん、なんでもないよ、リア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ今の!?すげえ風の…」

「ラムだ…あいつ、大罪司教相手に魔法を連発させて…」

「まずいのか?」

「あいつにはレムと違って角がない、魔力が切れれば角から補給することが不可能だ」

「切れたら…どうなる?」

「鬼族にとって、魔力は命だそれがなくなれば衰弱して動けなくなる…」

「…!」

「俺がついてれば…クソ!」

「今そんなこと言ってもしょうがねえだろ…、とにかく何とか早くつく方法を考えないと…」

「…スバル、15秒間目も開けずに呼吸もしずに入れることって出来るか?」

「出来るっちゃできるけど…なんで?」

「転移を使って向こうまで飛ぶ」

「だって…お前マーキングしないと出来ないんじゃ…」

そういうスバルに俺は胸元から内側に稲妻のような光の見えるシルバーのネックレスを見せた、すると心当たりがあるような反応をスバルが見せる。

「それ…ラムがずっと付けてた…」

「そうか…じゃあやっぱり、今もつけてるか」

「もしかして…ラムにも同じ」

「あぁ、ラム自身には知らせてないけどな」

「おまえ…すげぇな」

「ごちゃごちゃ言ってる暇はねぇぞ、手を出せ」

「おう」

「ハーク!」

「はいはーい」

「スバルについてろ、そんで絶対死なすな」

「了解…」

「よし…」

 

「覚悟しろよ…司教様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様!」

「大…丈夫よ」

「ラム、君が大丈夫でもこの状況は大丈夫とは言えないね…」

「崖…行き止まり」

「…エミリア様、レムの後ろへ」

「無茶よ…レム、あなたも…もうほとんど」

言っているエミリアももう既に肩で息をするほど体力と魔力を消耗しているが、やはり1番危険な状態なのはラムだった。

だが総じて全員が崖際に追い詰められている事に変わりはない。

「こうなれば…一かバチか、レム、ラムが風で全員を受け止めるわ」

「ですが…姉様は…」

「レム」

「…分かりました」

「エミリア様、三で飛びます」

「うん…分かった」

「何をしようと…無駄なのデス!」

見えはしない何かが迫ってくる気配がする、ラムはギリギリまでタイミングを図った。

「一…二…三!」

三で3人は一斉に飛び降りた、ラムが残存する魔力のほとんどを使ってレムとエミリアをそして自分を浮かせて安定させる。

だが…何かが風邪を切り裂き、3人は急落下した。

「終わり…デス!」

「……」

ラムは内心諦め目を瞑る、レムもエミリアも落ちながら分かってはいた。

助からない…そう思っていた。

「「終わらせねぇぇぇぇぇ!!!!!!!」」

そう…思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!ハーク!」

「見えてる!スバル、私があんたに付けばそう簡単には死なない、でも限度はあるからね!」

「いいか、見る限り、ラム達は崖際に追いやられてる。多分…ラムは風で3人を浮かすつもりだ…でも多分魔力は保てないし、恐らく大罪司教に阻止される」

「どうすんだよ!」

「飛び降りた時になんとかキャッチして乗り切る、スバル、お前は地上でエミリア様を、俺はラムとレムを何とかする!」

「了解!」

「ハーク!あと任せた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「終わらせねぇぇぇぇぇ!!!!!!!」」

俺は空を蹴って猛スピードでラムとレムの方へ向かう、2人が落ちている間へと行き、落ちながら大罪司教へ一撃を放つ。

「轟雷…赤火砲!!!!」

腕の周りに魔法陣が現れ、掌に魔力が集中される。

「なっ!?」

「吹き飛べ…イカレ司教が!」

放たれた雷弾は見えざる手を貫き、ペテルギウスへと命中した。

そしてラムと左手にレムを右手に抱え、俺は地上へと落下する。

「スバル!」

「…お!?おぉっ!?」

見るとスバルの方は無事成功したようだ、エミリア様は泣きながらスバルに泣きついている。

「スバル!スバルゥ…」

「おん…そんな目で見んなよ、こっちは大丈夫だ」

 

「ラム、レム」

「……っ」

「……ここ…は」

ラムとレムはゆっくりと目を開け同時に俺を抱き締めた。

「っと…」

「兄様…兄様ぁ…!」

「何年…待ったと…思ってるのよ…!」

「ごめん、出来るだけ早く戻ってきたかったんだけど想定以上に長引いて…でも、これで終わりだ」

俺は上空から降りてくる大罪司教へ殺意を向けた、ラムとレムをここまでしたことへの怒りの殺意を。

「だから…これが終わったら、また3人で屋敷で暮らそう」

「兄様…」

「それとレム、もう俺とラムに気を使わなくていい、兄様はなし、ツバキくんだ」

「ツバキ…くん…?」

「それでいいよな?ラム」

「っ…えぇ!、もちろん」

「よし、スバル!、ハーク!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺ら3人であれを仕留める、いいな?」

「仕留めるったって俺にゃ囮ぐらいしか出来ねぇぞ?」

「アンタにはあの手が見えるんでしょ?見えざる手って奴が」

「でもよ、俺が見えて俺が指示出すじゃ効率的に追いつかなくないか?」

「私があんたが見てる視界と、ツバキの見てる視界を繋ぐ、意識共有の一環ね」

「スバル、俺の動きは早い、なるべく広範囲を捉えてくれ」

「了解…、よしやるか」

「何をごちゃごちゃと…言っているのデス!敵を目前にしてそれは勤勉とは程遠いのです!」

「勤勉勤勉やかましいんだよ、こちとら日々の業務には誠心誠意全力で取り組んでるわ」

「いや嘘つけよ…」

「そこは合わせてくんねぇ!?」

「馬鹿な事言ってないで、ほら…来るわよ」

「用意はいいか?」

「おう、どんと預けろ」

「意識共有、開始…」

瞬間、俺の視界に黒い手が目前に迫るのが見えた。それを手に雷を纏わせて弾く。

「なっ!何故あなたが見えているのですか!全く、一切!皆目理解出来ないのです!」

「スバル、もうちょい下がれ、見えざる手は思ったより多い」

「それでも本物よりは少ないはずだよ」

「パック…」

「本物のサテラはもっと伸ばせていたからね、僕は覚えてる」

「あの手には普通の物理攻撃は効くのか?」

「認識さえ出来れば一撃与えれば消えるほど脆いからね、所詮は与えられた権能だよ」

「分かった、スバル、下がってろ」

「この感覚…思ったより気持ち悪いな、早めに頼むぜ」

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紅蒼幻鬼!」

ツバキの左側に紅というよりピンクに近い色のオーラが出て、右側には蒼というより水色に近い色のオーラが出ていた。両手を開いて、握るとその両手にはそれぞれの色の双剣が握られていた。

「何を…あなたはあなたはあなたはあなたぁ!!」

「俺はお前と初対面のはずだが…なんかしたっけな」

迫り来る見えざる手を回転しながら切り刻み、前進する。

「馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!!寵愛を受けし私の権能があなたのような勤勉とは程遠いニンゲンニィィィィィィ!!!!!」

「…っ、こいつ…」

「うそでしょ…」

見ているハークも動揺するほどの悪がそこには顕現していた。

大罪司教は先程より倍の数の手を伸ばしこちらへと迫る…。

「っ…!」

後ろへ飛んで距離を取る、だがその手は俺の足を掴んで投げ飛ばし、俺は崖へと叩きつけられる。

「ぐぁ…くそ…!」

「終わりなのデス!」

「…仕方ない」

 

 

 

 

その瞬間に、周囲の魔力の状況が一変した。先程まで魔女教徒の影響で荒れ狂っていた空気中の魔力が静まり返り、白い光を放って集まり始める。

大罪司教の攻撃を躱したツバキは跳躍しその光へと手を伸ばす。

その光にツバキの手が触れた瞬間、周囲は光に包まれ、ペテルギウスが悶えて苦しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が言っている、これ以上は行けないと。

度重なる無茶の影響でおれの体はボロボロだ。

でも…あとほんの少しだけ、もってくれ。

「覚悟しろよ…司教様よぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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神薙 椿の過去

色々あって手をつけてませんでしたが再開します


「フェリス、さっき来た怪我人の治療は?」

「もうとっくに終わってるよー」

「嘘だろ?かなりの数いたしフェリス一人じゃ魔力が…」

「嘘…ツバキきゅん知らないの?」

「何が?」

「はぁ…よし、ちょうどいいし、教えてあげる、そこ座って」

「お、おう…」

急にそんなことを呆れ気味に言われ若干理不尽を感じながらも俺は言われた通りフェリスのとなりに座る。

「はい、じゃあ…目閉じて、集中して」

「え?なんで?」

「はいはい、いいから」

それでまぁ、言われた通り目を閉じて集中する。

「イメージして、感じるでしょ?空気中のマナの流れとか」

「……あ」

そうして勝手にイメージを膨らませると、手のひらに魔力が集まってきた。淡い小さな光が掌で弱々しく輝いている。

「基本的に、この魔力は空気中を辿ってここに流れ着いたからこういうもので、実際はもっと強いんだけど…」

「これって…元はどこから?」

「もとは自然、植物とかが主な源」

「ほー…」

「でも、やりすぎは禁物だよ?」

「え、なんで?」

「魔力を取り込みすぎると許容量を超えて、暴発しちゃうから」

「お、おう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…あれ?」

「意識共有が途絶えた…いえ、途絶えざるをえなかった」

「おい、あいつは一体何を…」

「ここ数日、どこか焦ってたのは知ってた…何でかは知らないけど」

「焦ってた…?」

「それが何なのかは私が聞いても教えてくれなかった、ラムも多分知らない」

「…まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた…一体何を…っ」

「大した事じゃないさ」

俺の纏っていた雷は先程の赤と青と雷から一変して黒い雷へと変わった。そしてその黒い雷がかすった木の葉が白い灰と化す。

「全てを消し去る黒い雷…そんなとこだよ」

「何を…あなたは一体何を…!!!」

「はぁぁぁ!!!!」

大罪司教が反応して見えざる手による防御行動に移るよりも早く、俺の振り下ろした手刀が大罪司教の腕を切り落とす、切り落とされた腕は白い灰と化し、踏み潰すと塵すら残らずその場で消えた。

「あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁ!!!!!!!」

「滅剣…ライジング・リジェクト」

俺がそう唱えると、手のひらに自分の身の丈以上もあるような大剣が姿を現した。

その剣が現した瞬間に、体のどこか分からないが何かが壊れる音がした。

骨が軋む、瞳から血が垂れる。今にも意識を失って卒倒しそうだ。

でも、俺は今こうして立っている。

大罪司教の見えざる手が牙を向いて、自分の腹を貫く感覚が分かる、だが…それでも倒れない自分に不思議と違和感はなかった。

腹を貫かれてなお、手を振り上げている俺に対して大罪司教は少なからず恐怖していた。

まず、一太刀、大剣を振り下ろす。

腹を貫いていた手が真っ二つに切れて消滅し、大罪司教の体が真っ二つに切れる。この剣は自分に対して敵対的であるものに対してのみ有効であるため周囲の岩や地面には衝撃の痕跡はない。そしてこの剣に切られたものは魔力的な治癒魔法は一切受けつけない。大罪司教の意識は切り離された左半身へと移っているようだった。

もう一度、剣を振り上げる、これで恐らく殺しきれるだろう。

剣を振り上げた瞬間に先ほどと同様の感覚が痛みを伴って襲ってきた。痛みはあるのに、不思議と苦しくはなかった。

もはや感覚神経すら麻痺しているのかそれとも…。

考えきる前に大剣を大罪司教の左半身へと振り下ろした。直撃の瞬間、光に包まれた大罪司教は声にならない断末魔の叫び声をあげた後、消滅した。

 

力を抜くと身体中が壊れる音がして、少し遅れてから全身の耐え難い激痛に襲われて俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますとそこには自分がいた、容姿は恐らく小学生程だったが、確実に確信した。

いま目の前に立っているこいつは、過去の…向こうの俺だと。

 

「君は、自分が何者か、覚えてる?」

ふと、その俺と言いきっていいのか分からないがそれが俺に対してそう、問うた。

「あぁ、俺はロズワー…」

「この世界ではなくて、君の本来の世界の事をだよ」

脳裏に思考を巡らせる、そこで違和感が生じた。

目の前にいるのが小学生、それが幼い自分なのは分かっている。にも関わらず、俺には小学生時代の記憶がなかった。それどころか高校も、中学の記憶も。覚えているのは基本的な作法や、マナーやルールだけで他には何も覚えていなかった。あとは…自分がこの世界に来る直前の死ぬ間際の映像、迫り来る地面に目を瞑ったあの記憶。

「お前は…一体何を知っている?」

「全部だよ、君の身に起きた事全部」

 

「見てくるといいよ、君ののここに至るまでの事を」

目の前のそいつがそう言い放った瞬間、自分でも視界が真っ暗になり、自分が落下していく感覚に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

再び目を覚ますとそこにはこちらへ、笑いながら両手を振っている家族と思える4人がいた。恐らく夫婦とその息子と娘だろう。息子の方が一回り大きく、娘は父親らしき人物に抱かれていた。

 

懐かしいものを見ている気がした、自分にはその人が誰かは分からない。でも俺はあの人を知っている、あの場にいる全員を知っている。

そこへ歩み寄ろうとした時、すり抜けるように小さな子供がそこへ走り寄った。そこには、先程見た小学生の時の自分とそっくりな子供。

走りよって抱かれた子供は、母親に抱かれてこちらを向きながら離れていく。

 

…思わず、手を伸ばした。

まだ自分の中であれが自分で周りにいるのが家族なのかなんて分かりもしない。でも何故か、離れて欲しくなくて…置いて言って欲しくなくて。

そうやって、手を伸ばしたその時に再び視界が真っ暗になり、落下していく感覚に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

再び目を覚ますと、そこはとある一軒家の前だった。家の表札の表記は『神薙』、その表札を見た瞬間に色々な記憶が飛んできた。幼少期の思い出、父親の名前、母親の名前、妹の名前、兄の名前。

扉に手をかけると鍵は空いていた、ガチャりと扉を開けて中にはいる。カレンダーの日付を見ると、今の俺の年齢から換算して俺は中学生程の年齢になっているはずだ。時間的に、誰かが家にいてもおかしくは…。

 

「ぎゃああああ!!!!」

「っ…!」

 

家の奥から、悲鳴に近い叫び声がした女の人の叫び声が。声のした方へ行くと、そこには喉をかっさばかれた大人の女性の姿があった。地面には大量の血が流れ、その血が俺の立っている場所にも来ているほど出欠が酷かった、おそらくもう即死している。

血まみれになった顔からなので曖昧だが、俺の記憶が正しければこの女性は俺の…母親だ。

辺りを見渡すと部屋の隅で震えている小さな女の子と呆然と立ち尽くす中学生程の年齢の男の子がいた。そして、「くっくっくっ…」と、笑みを零しながら、血塗れの包丁を手に持ち、無残な姿となった女性を見下ろしている若い男がそこにいた。

若い男は、もう生きていない母親の傍らに座り、包丁を何度も狂ったように振りかざした、何度も、何度も。

振りかざす度に、血があたりに散らばり、振りかざす度に、女性は人の形ではなくなっていた。

 

しばらく刺し続けて疲れたのか男が立ち上がる、もはやただの肉塊と成り果てた女性を眺めてから視線を移して、何やら時計の方を凝視している。

時刻は20時45分、ふと、家の扉の開く音がした。

すると、中学生程の男の子に抱かれた女の子が小声で「お父さん…」と呟いた。

すると、男は全速力で扉へと向かって行った。

そしてその数秒後、叫び声とともにバタンと倒れる音がした。先程女性に向けて包丁を振り下ろしていた時と同じような音がやがてし始める。

男の子と女の子が音のする方へ向かって行って、俺もそこについて行くとそこには、再び狂ったように男性の顔に包丁を何度も何度も振りかざす男がそこにいた。

しばらく、女の子と男の子はそれを眺めていた。俺も目の前の光景をただ、黙って見ていた。

受け入れたくなかった、最初にあいつはいった。

 

「見てくるといいよ、君のここに至るまでの事を」

 

そして、先程の女性が母親で、今、襲われているのが父親、そしていつこっちに襲いかかってきても小さな女の子だけは守れるようにしている男の子が恐らく俺。

そして、父親と母親を殺したこの男は兄。

つまり、今見ているこれが俺の過去…?。

そう思考していると、小さな女の子が動いた。無表情で、何かを探してタンスの中へと手を伸ばす。男は未だに狂ったように包丁を抜いたり刺したりを繰り返している。それを他所目に、女の子はタンスの奥からなかなか重そうなタバコの灰皿を取り出した。そして先程の母親と同じように顔も分からなくなるほど刺された父親に馬乗りになっている男の背後へと灰皿を持って行き、思いっきり男の後頭部へとぶつけた。

その瞬間に、再び視界が真っ暗になり、落下していく感覚に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 




長すぎるので二つに分けます、あと遅れた詳細は活動報告にのせますので何卒…。


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カンナギツバキと神薙椿

「ここは…」

あれからしばらくして、視界が明るくなって目を覚ますとそこはとあるマンションの一室のようだった。見たところ、そこそこしそうなオシャレなマンションの一室だった。

「お兄ちゃーん」

ふと、背後から呼ばれる声がした。俺が後ろへ振り向くとそこには可愛らしいショートポニーの中学生くらいの女の子がいた。

「お兄ちゃーん?」

「あ、あぁ…俺?」

「他に誰がいるの?」

先程までの回想であれば、自分は他人から認識されずその場にいてただ、その光景を見させられるというものであったが、今回はどうやら違うようだ。

つまり、カンナギツバキに神薙椿に還れということ。

「ここ、ハンコ押したいんだけどどこ?」

「あ、ハンコか?ハンコは…」

ここで、ふと違和感が生じた。どうやら知らず知らずの内に記憶がもどりはじめているようだ、その証拠にここの家のハンコの場所などカンナギツバキは知っているはずがない。

つまりこれは神薙椿の記憶だ。

「ほれ、ここに」

「あー、ありがと」

そう言うと、その子は何やら書類の下の方にあるハンコの欄にしっかりと押した。その書類を上から見ていくと『退部届』と書いてあるのに気づいた。

「退部届…」

「うん、バレー部やめよっかなって」

「え!?」

確か、こいつは小学校1年生からずっとバレーをしていて、県で最優秀選手にも選ばれる位強かったはずだ。そこのカウンターにも昨年、1年生ながら中学の県最優秀選手に選ばれた表彰状を持って笑う姿がある。

「どうしたよ?」

「あー、違うの」

「え?」

「中学のバレー部じゃなくて、クラブチームに入りたいの」

「あー、そっち」

そうして、ハンコありがとうと言い残して妹は部屋へと戻った。

 

待て…。

 

ここまで記憶が戻ってんのに…どうしてあいつの名前が思い出せないんだ…?。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ただいまぁ」

「おー、おかえり」

ここでの暮らしになってから丸1週間、体に染み付いた生活ルーティンだったのかすぐ慣れた。夜遅くまで練習をして、疲れて帰ってくる妹を労うのも含めて。

「お兄ちゃーん!お茶ー!」

「はいはい、少々お待ちー」

…と、辛い練習から帰還した妹はなんだか若干テンション高めだ。部活に入っていた時より、明るくなっている。なかなか楽しそうなのが兄としては嬉しいところだ。

「来月大会らしいけど、応援来れる?」

「おー、もうか」

「クラブチームだから、大会は多いんだって」

「ま、そんなもんか」

「応援、来てくれる?」

「お前…恥ずかしくないの?」

「え、何が?」

「いや…」

年頃のお娘と言うのは、なんか親がついてきたり身内がいたりするとなんか怒るとか照れるとか恥ずかしいとか聞いた事があるがどうなのだろうか。というかそもそも、俺は兄なのだけど、学生なのだけど。

「それにさ、こないだ差し入れで持っていったお兄ちゃんお手製のなんだっけ…あの…レモンの」

「レモンのはちみつ漬け?」

「そう、それ!すっごく美味しかったってみんな言ってたよ!」

レモンのはちみつ漬け、知ってる人は知っていると思うが、スライスしたレモンをはちみつ漬けにして一晩冷蔵庫で放置する、するとあら不思議、その辺に売ってる栄養食品よかよっぽどいい栄養とエネルギーが取れるではありませんか。

いやまぁ、はちみつレモン舐めてた。

「ほらほら、ご飯が冷めるぞ」

「うん、いただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、その幸せは突然崩れた。

 

 

夏明けのある日

「ただいま…」

「おかえり…っ!」

今日はクラブチームの練習が休みだと聞いていたので、いつより早めに夕飯の支度をして待っていた。

でも…そこにやってきたのは体の各所から血を流している妹の姿だった。ここまで来て力尽きるかのように、倒れそうになった妹を何とか受け止める。応答を得ようとするが、答えない。

とにかく急いで119番を押して、五分ほどで救急車が到着し、そのまま同乗し病院へと向かった。今の俺たちの引き取り手である、養父と養母にも連絡を入れて、あって欲しくはない形で家族が揃った。

 

基本的には外傷だけだったため、包帯を巻いたり消毒をしたりする処置を終えて、少し入院して経過を見て考えようと医師は言った。

養父と養母はギリギリまで一緒にいてくれたが、本当に忙しい身分のため、やむなく仕事場である東京へと戻った。

 

結局のところ、その日のうちに妹が目覚めることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

妹が目覚めて、でも…俺から何があったとは言えなかった。

何故なら、警察が来るのが分かっていたからただでさえ息苦しい警察の聞き取りを受けているのにその後にまで同じ事を俺に話させるのは酷だと思ったから。

だから、警察に自分で聞いた、何があったのかと。

 

端的に言うと、いじめがあったそうだ。

 

俺は怒りのあまり、その場に来た担任教師の胸ぐらを掴んで壁に叩きつけた。なぜ気づけなかったと聞くと、教師は気づいてはいたが、状況が悪化する可能性を考慮して何もしなかった。何もしなかった結果が今の現状じゃないのかと聞くと、教師は押し黙った。

話は、いじめていた生徒へと向けられた。いじめていたグループの中心は、妹が以前所属していたバレー部の同級生と先輩だった。いじめた理由はあまりにも身勝手なものだった。

妹はどうやら辞めることを誰にも言っていなかったらしく、それで急に辞めるなんてという事で先輩含め、同級生は靴を隠したり、日常的に暴力を加えていたらしい。暴力で怪我をしても妹はバレーで出来た傷だからと俺には本当のことを話してくれなかった。そして、常日頃からのいじめは、妹がクラブチームの県大会でMVPをとって東海地方選抜に入った事でエスカレートした。そして、ついでのようにいじめられていた妹の親友は、どうやらいじめられる理由はふたつあると言っていた、ひとつは先程の理由で、妹がやめたせいで弱くなって勝てなくなったからという理由だったそうだ。俺は思わず、いじめたリーダー格の女子生徒を1発殴った。女子生徒の親含め、教師、医師、その場にいた誰もが俺の行為に正当性があると判断していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、病室で座りながら寝ていた深夜3時。

 

ピピピピっ!!!!ピピピピっ!!!!。

嫌な音で目が覚めた。

見ると、妹の心拍が下がっていた。すぐさまナースコールをして、看護師を呼ぶ。見た目に何も変化はない、でも…徐々に触れている体温が冷たくなる感覚に悪寒がした。

一旦病室の外へと連れ出された俺は、再び養父と養母に連絡した。

 

養父と養母がここへ着いた時には、妹の顔に白い布が敷かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

死因は、日頃から受けたいじめの影響で肋骨がもろくなっていたらしい。その脆くなった肋骨が、今日受けた暴行で壊れ、骨が運悪く大動脈を貫通した。体内で大量出血を起こし、死んだ。

 

その後、いじめた女子生徒のグループ全員を相手取り、裁判を起こして勝利し、全員を少年院へと送った。そして多額の賠償金を受け取った。それに加えて、学校、病院に対しても同様に裁判を起こして勝利した。

 

ただでも…どうしたって。

どれだけ人を陥れても、妹は帰ってこない。

あの笑顔は戻ってこない。

 

 

 

 

 

 

机の上に置いてある表彰状を持ち、ニッコリと笑っている妹の姿を見て。

 

俺は、泣くことすら出来なかった。

ただ…何もしずに、何も出来なかった自分を憎んだ。

理不尽に屈した自分を憎んだ。

助けられなかった病院を憎んだ。

いじめを防げなかった学校を憎んだ。

いじめた女子生徒のグループを憎んだ。

教師を憎んだ。

憎んだ。憎んだ。憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ憎んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

気づくと、俺は俺を見ていた。俺は俺の後ろに立っていた。

前に立っている俺が下を見下ろす、その行動でここが高い場所なのが分かった。俺は骨箱を抱いて、前へと歩みを進める。俺はそれを止めれなかった。なぜなら分かっているから、止めてどう言えばいい?、希望を持って生きろ?、妹が悲しむ?、悲しむ妹などどこにいる?、希望などどこにある?。そうだ、今の俺には俺に対して、俺の未来に対して希望を見出すことが出来ない。

そうして、俺は飛び降りた。やがて、ぐしゃっと嫌な音がした。

 

俺は歩みを進めて下を見下ろす、するとそこには…何も…なかった。

 

「次はお前だ」

後ろから声がして振り返るも遅い…。

俺は空中に投げ出され、やがて意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




間に合ったァァァァ!!!


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闇の中で

「ぐっ…あぁぁぁぁ!!!!」

「ツバキ!」

「兄様!」

大罪司教は倒れ、全て終わった、そう思っていた。

だが、ツバキの身体から黒い瘴気が現れツバキを包んでいた。

近寄ろうとするも、一定の距離以上近づこうとすると黒い瘴気が自分達に牙を剥く、黒い瘴気が触れたメイド服の布の一部が白い灰になって消えていた。布だけではない、ツバキの周囲の地面の小石も岩も何もかも全て灰とかしていた。

「逃げ…ろ!ラム!レム!」

「ツバキ…?」

「兄様…?」

現状何が起きているのかは分からない、でも…増していく悪寒と、ツバキのただならぬ様子に徐々にだが現状を推測しつつあった。

「兄様…でも」

「俺は…いい、村の…人達を」

「…」

決断を迫られている。ツバキを助けるためにこの場に留まるか、そうすれば魔女教の残党によって、村の人達の多くが犠牲となるだらう。

もうひとつは村の人達を助けるためにツバキを置いてここから去るか、このツバキの瘴気が出続けるのであれば魔女教はツバキに危害を加えれる可能性はまずない。だが…鬼として気がかりなのは自分で歯止めが効かないということ、つまりツバキの今の状態は魔力の暴走段階なのではないかということ。

「ツバキ…」

「姉様!ダメです!」

「いや…大丈夫」

ツバキの顔に触れようと近づいた瞬間にレムが止めるが、ツバキが瘴気を必死で抑えてようやくツバキの頭部が見えた。そこに居たのは瞳は赤く染まり、自慢の黒髪は白く染まっていた、それに加えて肌もどこか青白い。

「ラム…ダメだ…!」

「っ…姉様!」

抑えが効かなくなってきたのか、瘴気が再び牙を剥く。だがそれは

私の目前で止まった、ツバキが最後の力を振り絞るかのように必死で抑え込んでいる。

「急げ…早く!」

「…姉様!」

レムが呆然とする私の手を引きスバル達が逃げた方角へと引き連れて行く。

後ろを振り返ると、そこには瘴気があるだけで、ツバキの姿は見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと黒い空間の中だった、そこには何も無くただ黒い空間が見えるだけ。だがその先に確かな人影が見えた、黒い影が。

『なんで止めた』

影がそう語りかけた。

「そりゃ…言うまでもない…ことだろ」

『お前が邪魔しなけりゃ、お前の希望は潰えたはずだ』

「自分から…希望を潰す…馬鹿が…どこにいる」

『俺はお前が希望を持つのが許せない』

「…」

『同じはずだ、お前の方がよっぽど愚かなはずだ』

「…」

『全てを忘れ、のうのうと幸せに生きる希望は苦しみから逃れることを選んだお前ではなく、永遠に苦しみに囚われる事を選んだ俺のはずだ』

そうか…目の前の影は、俺なんだ。全てを失い、それでも苦しみ、足掻き、もがき続けた…その抜け殻だ。

『お前のようなやつが、何故そこで希望を見ている』

「素敵な恋心…じゃあダメだわな」

何を言っても、向こうが正しい。当然だ、正当性は向こうにある、悲しみから逃げた俺より、悲しみに囚われたあいつの方がずっと強いはずだ。

『お前のくだらない心情に興味はない』

「そうかよ…」

『だがそうか…、お前はあの女が好きなのか』

「なに…?」

『どうやら、勘違いをしていたようだ』

目の前の影が不気味に顔を歪めるように嗤う、その顔を真正面から見据えていると悪寒が走った。

「どういう意味だ…」

『お前の希望と言うやつは、俺を追い出すための策なのではなかった…、つまりお前の希望はあの女の存在そのもの』

「…やめろ…」

『目的が出来た、俺はお前の姿であの女を殺してやる』

「やめろ…!」

『ついでだ、双子の妹もハーフエルフもスバルとかいうガキも村の人間も全員…』

「やめろぉぉぉぉ!!!!」

俺は目の前の影に殴りかかろうとする、だが後ろに十字架が現れ、手足に杭が打ち付けられて激しい痛みが走る。

魔力の使用権が向こうにあるせいで、自動治癒も使えない。

『そこで見ていろ、お前の希望が全て惨めに無惨に消えていく様を』

「待ちやが…」

その瞬間に腹に剣が突き刺さる、その剣は痛みはあるものの体内が損傷している形跡は確認できなかった。だがその代わりに体が全く動かなくなった。もがくことすら出来なくなっていた。

『待てって…言ってんだろうが!』

だが、影は暗闇に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!」

「おい!急に止まんなよ!」

「ど、どうしたの?ハークちゃん」

「ごめん、ちょっと先行って」

「ちょっ…おい!」

 

「あのバカ…っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロズワール領の村周辺にて

フェリス、ヴィルヘルム、クルシュの率いる村民救出隊は無事にロズワール領の全村民を保護する事に成功していた。

 

「偵察隊からの報告を」

「はっ!、森の中央にて激しい戦闘音が聞こえたとの事、黒い雷が走っていた模様ですので…」

「ツバキ殿…でしょうな」

「黒い…?」

「もしかして…」

「何か心当たりがあるのか、フェリス?」

「それは…」

 

「臨界、ゲートを広げて強制的にマナの出力を上げる荒業です」

「おー、お前さんらは無事やったんかいな」

酷く落ち着き払った声と、荒々しい声がしてその方向を見ると数百名の兵を引連れた獣人と騎士がそこにはいた。

 

「にゃんで、ユリウスとリカードがここにいんの…?」

「魔女教絡みとの事で、選挙前に潰れられては面白くないと、アナスタシア様より」

「相変わらず嫌味の効いた発言だ事…」

「とにかく、助力には感謝する」

「それで、その臨界とは」

ヴィルヘルムがそう尋ねると、フェリスは神妙な顔つきで話し始めた。

 

臨界、先にユリウスが言ったように魔力を放出する際に必ず通過するゲート、それを広げることによって魔力の出力を上げるという荒業。もちろん、限られた人間にしか扱えない。魔力を特段多く持っているような人間でないと使うことは出来ない。ツバキに関しては魔力量に関する問題はないため、以前から問題なく使っている。

ここまで聞くとデメリットなどないように聞こえるがデメリットはある、人によっては実際デメリットの方が少なかったり多かったりする場合がある。

 

「フェリス、それでそのデメリットとというのは?」

「あんまりいい話じゃないけど…聞く?」

「いい、話せ」

「クルシュ様がそう言うんだったら…」

 

デメリット、まず第一に臨界を発動している間は魔力消費が大きい、ツバキの場合は通常の戦闘時のおよそ五倍、魔力全開の状態で使ったとしても5分がリミット。第二に肉体的損傷、臨界を発動すると身体中を通常時とは比べ物にならないほどの圧力で魔力が駆け巡るため人間の肉体では耐えきれずに、筋肉を激しく損傷したり、体のどこかしらに後遺症が残る場合もある。前例が少ないためあまり確かなことは言えないが、とある男は下半身が動かなくなっていたという、またとある男は臨界をといた瞬間に四肢が破裂し即死したという。

そして、第三のデメリットとして、負の侵食というものがある。

ゲートとは一般的には魔力を制御するためのものだが、心理的には感情を制御するものでもある、特に負の面の感情。ゲートとは常に開いているものでは無いと思われがちだが実際は違う、魔力を使用していない時は必ず閉じているものである。そしてゲートを開く時、魔力に混じって、負の感情が流れていく時がある。一流であればあるほど負の感情が流れ込む量は少なくなるが、特段優れていないものが一気に解放すると負の感情に支配されるというものがある。そして臨界時はその負の感情は当然いつもより多く流れるが、一定より多く負の感情が流れると負の奥底にある何か、もう1人の自分を目覚めさせてしまう場合がある。それは負の化身、自分の負の感情の象徴とも言える存在。負の化身を制御するものはゲートだが臨界発動時はいつもより制御が甘くなるため、人格を簡単に乗っ取られてしまい最終的には負の化身が表の人格に成り代わることもあるという。

 

「と…こんな具合なんですけど」

「確かにいい話ではない、だがフェリスは何がそこまで気掛かりだ?」

「よく聞いてください、最後の負の化身に支配された人間は残虐性を持った悪人に成り果て愛していた人でさえ平気で殺してしまうんです…、それと…負の感情に支配された人間の特徴として魔女教ともまた違う暗い魔力を扱うそうなんです」

「黒い雷…まさか」

「つまり、君はこう言いたい訳か。ツバキの臨界が二次的被害をもたらす可能性があると」

「うん、十分にあると思う」

「だが、こちらも村人達を残党から守らなくてはならない…さてどうす」

 

「緊急です!緊急です!」

ユリウスが、落ち着いて現状把握をしようとした所で、酷く損傷して兵士がそこへ転がり込んできた。

 

「どうした!何があった!」

クルシュがそう尋ねると、兵士は答えた。

「突然、森の中央付近が黒い瘴気のようなものが放出されました!ツバキ殿が戦っていた場所の付近です!」

「カンナギツバキの姿は?」

「確認できません、ですが黒い瘴気が出る直前に苦しんでいたツバキ殿を見た者が」

「その者をここへ通せ」

「は、はい!」

 

兵士がそう言うと、しっかりとした足取りで歩いてきた2人を連れてきた。メイド服に身を包んだ2人は、少し顔を伏せていた。

 

「初対面…ではないな、1度会った」

「存じ上げております、クルシュ様」

ピンク色の髪のメイドが顔を上げてそう答えた。

するとクルシュは。

「半分に別れろ、一方はカンナギツバキの元へ!そしてもう一方は村の人間達を避難させよ!」

「…なにを」

「3人で話がしたい、フェリス、お前はカンナギツバキの元へと向かえ」

「りょうかーい、フェリちゃんにお任せあれ」

「私も同行しよう、何があるか分からない」

向かおうとするフェリス達をラムとレムが険しい顔で見る。恐らく心の内で思っているはずだ、彼らは彼を殺すのではないかと。

「そんな怖い顔しなくても、殺さないから安心して」

「…」

その目と声に嘘は感じられなかった、口調は落款的でも声のトーンはどこか硬かった。彼女と、その騎士だけが彼に起きた事の重大さを分かっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…知りたい事を聞こう」

「どういう意味ですか?」

「カンナギツバキがこの2年、どこで何をしていたか」

「…っ!」

「知っているのですね…」

「彼は私の元で騎士として仕事に従事していた、メイザースの勧めで雇ってくれと、ロズワールのお墨付きでな」

知らなかった、ロズワール様はツバキの失踪については知らないと行っていた。確かに、あれだけ気に入っていたツバキが突然いなくなったにしてはまるで全て知っていたかのような対応だった。

「彼はこの2年、影からロズワール領を守っていた」

「影…から?」

レムがそう尋ねるとクルシュは話を続けた。

「彼は…ツバキは、2年前のロズワール領襲撃事件の黒幕を追っていた、この2年で3度、連中はロズワール領を狙って総力を持って襲撃へと向かったが情報収集に常に奔走していたツバキの尽力によって3度とも多少の犠牲はあれど全ての敵はロズワール領の人民達に勘づかれる事無く掃討する事ができた」

「待ってください、何故レム達に気づかれてはならないのですか?」

「戦力にならない…そう思っていると?」

「失礼ながらそう思わざるを得ません」

そう、私は目の前の女性に敵意を向けた。赤の他人にまるで自分達を戦わせたくないような扱いを受けていたことに少なからず怒りを覚えていた。

「私が言い出したのではない、ツバキがそう言った。特に君達2人を戦わせたくないと」

「私達を…?」

「…分かりました、行くわよ、レム」

「姉様…?」

「馬鹿ツバキは、私たちのツバキよ。他の誰のものでもない、誰にも奪わせない、ツバキ自身にも。それに私達も守られるだけじゃ…もう」

ラムの、その最後の一言は決意が現れていた。何もしずにただ待っていた自分の2年と違って、ツバキは常にラムやレムの事を考えて動いていた。結局、自分はツバキが居ないとダメなのだ。それに対して今までは複雑な心境だったが、彼の危険にこれだけの人が動いていた。それに…結局ラムは言えていないのだ、言葉では口にしていても心の底では常に負い目を感じて心から言えなかった事を…。

 

「そうか、嘘はついていない…か」

「失礼します、クルシュ様」

「では…また」

 

そう言って、後にしていくレムとラムを後ろから見つめるクルシュがこんな事を呟いていた。

「カンナギツバキ、君の運命は彼女達には変えられない、でも…その手助けなら…あるいは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無様だな」

「…誰だ」

「命を投げ出してまで逃げたと思えばこんな所で何も出来ずに屍に成り果てるとか…」

「黙れ…」

「なんの為に逃げたんだお前は」

「黙れ…お前に俺の何が分かる!」

「お前のような半端者には用はない…だが、万全を期して貴様の大切なものを奪うために貴様はここで潰す」

「っ…な」

意識が薄まる…。そして頭の中からあらゆるものが抜け落ちて行く感覚がする。

「どうやらお前の体は一人しか受けつけないようだ、だからお前には一生覚めない夢に苛まれてもらう」

「やめ…ろ」

記憶が…あらゆるものが消えていく。これは…誰だ?目の前にいるこいつは…誰だ?。

「意識隔絶、データ置き換え…施行」

「が…」

頭が焼けるように暑い、未知の力…俺の知らない力が行使されてあらゆるものが失われていく…。

 

そして視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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忘却の狭間で

夢を見ていた。

 

「…何をしているの、ツバキ?」

突然声をかけられたことに驚いて目を覚ます、

「あ…、ここは…どこ?」

「見ての通り、屋敷の廊下よ」

「なるほど、ここどこ?」

「どうやら頭までイカれてしまったようね」

「あのすいません呆れるのは分かるんですけどその叩けば治るだろみたいに行使する気満々なグーパンチを収めてくださ…いたぁっ!?」

グーパンチ…ではなく頭頂部に鬼の全力チョップが飛んできた。いやもう普通にどこぞの海賊王に俺がなるさんが主人公の漫画並みのたんこぶ出来てる気がする。いやそれの半分くらいの大きさかなやっぱ。

「起きるどころか、その場でのたうち回るとか正気を疑うどころかもはや狂気さえ感じるわね」

「いや犯人ラムだから、のたうち回らせたのラムだから」

「ハッ!」

 

何か…大切な事を忘れている気がする。

 

「それで?なぜこんな所で寝転がっていたのかしら?」

「いやそれが俺にもさっぱ…いやほんとよ!?だからそんな蔑むみたいな目で見んな!」

「はぁ…まぁいいわ、それより掃除は終わったの?」

「あ、うん。それはバッチリ」

「そう、レムに昼食を作って待たせているから早く行くわよ」

「合点!」

 

あれ…俺は、いったい…?。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しく感じる、自分の体の感触に神薙椿は酔いしれた。

「くっくっ…やっと…」

 

「ふははっ!やっと堕ちたか…」

「誰が堕ちたって?」

「あ?なんだ…てめぇか」

そこには暗い森林の中で一際目を引く白い狼精霊と、白髪に染まり、眼球は赤く染り、そして…神薙椿に支配されたカンナギツバキの姿があった。

「一応、私の主なんだけどアンタの中にいる奴」

「そーかよ、でも残念こいつはもう戻ってこねえよ」

「何をしたの…っ!」

「さあな!」

 

凄まじい雷撃がこだまする、だが主を失った精霊には限界があった。

魔力供給原が無ければ、戦いが続く限り魔力は消費され続ける。

どんなにいい戦いをしても、カンナギツバキという主が居ない以上、一精霊でしかない精霊に、神薙椿は倒せない。

 

「一精霊でしかないお前に、俺は救えない」

「違う…、あんたじゃない、あんたは…あいつじゃない…!」

「いいや、俺さ。それはお前が1番分かっていることだろう?」

「…そうね」

ボロボロの体になりながらも精霊は前を向く、その体にもはや戦闘を継続出来る魔力は残っていない。今や姿を伴う事さえ難しい、このままでは契約上魔力が切れれば霊体となって主の肉体に宿る、つまり…神薙椿の中に閉じ込められてしまうことになる。

 

 

…分かっていた事だった、全て。

いつかこうなってしまうと、自分が背負わせた苦しみはきっと自分でも分からないぐらい彼の心に深い影を落とした。この世界に来てどんなに幸せな日々を過ごしていても、彼の心には常にその影が付きまとった。彼の苦しみは今の自分では消せない、でも…。

 

その時、頭の中にひとつの答えを見いだした。

博打に近い賭けだ、彼が完全に堕ちてしまっているのならこれは恐らくもう成功しないし彼は二度と戻ってくることは無い。そして…彼の一番大切なものを彼自身の手で奪う事になる。

私が失敗すれば…全て終わる。

 

 

『お前はやる時はやるやつだよ』

 

 

そうだよね…。

信じるよ…。

 

「…集え、精霊達よ」

「あ?」

 

精霊がそう唱えると、森中から黄色い光が集い、神薙椿を中心に魔法陣を描き始める。当然阻止しようと動くが、カンナギツバキの体は動かない。

 

「体が…」

「そりゃ、みんなあいつの精霊だしあいつじゃないアンタの命令は聞かないよ」

「そうかよ…なら、全部」

「残念…手遅れ」

 

魔法陣が完成し、光を放つ。すると…膨大な魔力で出来た雷の柱が完成した。

 

「磔刑の雷樹…ブラステッドツリー!」

「ぐ…てめぇ、自分ごと…」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さよなら…お兄ちゃん、今行くよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

「どうしたの?」

「いや、誰かに呼ばれた気がしたんだが…気のせいか?」

「大丈夫ですか?頭が悪いのですか?」

「それ心配するふりしてめっちゃ馬鹿にしてるよねレムさん」

「はぁ…いいから早く食べなさい」

 

本当に気の所為なのだろうか…。

さっき…一瞬聞こえた…。

 

『お兄ちゃん!』

 

あれは…一体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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名前

どうも、最近プリコネの運がヤバい灰鳥です。あとすっごい裏話なんですけど、灰鳥(はいとり)じゃなくて灰鳥(あすか)です。なんかこう読むらしいです。Simejiなんでネタかもしんないですけど。
あとあなたの番です見てる人、西野七瀬もとい、黒島ちゃん可愛い、異論は認めん。


森に、雷の柱が出現した。

その雷の柱は、周囲一帯の草木を薙ぎ倒す程の強風と、天まで届くほどの雷の衝撃がロズワール領全域へと響いた。

 

「…レム!」

「アル・ヒューマ!」

千里眼で状況を把握したラムが、レムに指示を出し瞬時に判断したレムが厚く、硬い氷の壁を作る。衝撃を受けた氷の壁は、ひび割れて辺りに飛び散った。

「今のは…ツバキくん?」

「いえ…今のはツバキでは無いわ、別の…もっと違う何か」

そう、ツバキはこのように辺りに多大なる被害を及ぼすような魔法は絶対に使わない。

「だとしたら…」

嫌な予感が頭をよぎった。

先ほどの精霊騎士が言っていた、暴走…それが起こっているとしてもし精霊騎士が最悪の手段をとるとしたら。

「急ぐわよ」

「はい!」

冷や汗が滲む、もう…一刻の猶予もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員無事か?」

「こっちはなんとか…ユリウスは?」

「こっちも問題ない、結界を張ってなんとか防ぎ切った形だ」

数秒前、とてつもない雷の衝撃がユリウスとフェリス達を襲った。比較的衝撃の中心地に近かった事もあり衝撃の度合いは凄まじかったがそこは王国近衛騎士団だ。

「見て、ユリウス、柱が消えてる…」

「あの柱が出来る直前、あの場所で精霊らしき何かと何者かが争っている気配を感じた。傍目で見れば柱はツバキが出したものに感じるかもしれないが、あれは恐らく精霊が出したものだ」

「とにかく…行ってみよう、近づいてこの目で見なきゃ何も分からない」

「そうだな…っ!」

ユリウスが…いや、その場にいる全員が、近づいてくる異質な気配を感じた。

「総員警戒!」

一歩、また一歩それが近づいてくる。

だが…その中にある何かをユリウスは感じ取った。

「アル…」

「ユリウス…?」

フェリスが突然魔法を放とうとしたユリウスに問掛ける。そのフェリスにユリウスが下がれと視線で訴えかける。

「…」

そこ数秒して、次の瞬間だった。

黒い狂気に満ちた巨大な雷撃がユリウス目がけて飛来した。

「クラリスタ!」

精霊の力を借りた魔力攻撃でそれを打ち消そうと真っ向から剣を振る。そしてそれはユリウスの攻撃によって虚空へと消えた。

 

そして…それは、姿を現した。

「なるほど、今のを受け切るとは…よっぽどの使い手ようだ」

「ツバキ…きゅん?」

「いいや…違う」

「あぁ、そうさ…違う」

「フェリス、下がれ…周囲から魔獣達が集まって来ている」

「ユリウスは?」

「アイツを止める…残りの者は魔獣への対処に当たれ」

「…勝算は…あるの?」

「…」

その沈黙が答えだった。

でも…この場においての最適解は恐らくそれだった。

 

「へぇ…一人でやるつもりか」

「不満か?」

「いいや…そっちの方が都合がいい」

 

「置いてきた事を後悔させるぐらい、ズタボロに引き裂いて返してやるよ!」

「ならば…私が勝って、我が友を返してもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…」

「朝起きて早々、頭を抱えて…どうしたというの?」

「いやちょっと…耳鳴りが」

「ただでさえ使えないツバキが体調不良になってしまえば困るわ、今日は休んで…」

「やんわりと罵倒するのやめてね、にしても…ひっどいな」

先程からキーンという耳鳴りが止まない上に、何か変な声が聞こえるという幻聴も付いている。耳鳴りもするし、頭も痛い。

あ…やばい、意識が飛ぶ。

「ちょっと…横になりなさい」

「悪い…助かる」

「とりあえず、今日はいいわ、レムとふたりで回すからゆっくりしてなさい」

「…悪いな」

 

 

 

『~~~~~!!!』

誰かが、俺を呼んでいる。

 

『~~~~~!!!』

誰だ…お前は。

 

『~~~~~!!!』

教えてくれ、おまえは一体…

 

『お兄ちゃん!』

 

 

 

「…っ、夢か」

耳鳴りは止んでいた。

 

 

 

惜しかった、あとちよっとだった…。あと一歩、踏み出す勇気がなかった。出来てあと一回が限度…でも二回は行ける。

タイミングを図らなければならない、あいつがこっちに気を回すことがなく、他の事に気を向けていればきっと行けるはずだ。

 

「絶対…諦めない」

 

絶対…助ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに近づく、すると不思議な事にそれの存在を感知することが出来た。感じる何かは、自分が知っているものと何ら変わりないというのに、纏っている気配は全くの別物だ。分かってはいる、ここまで来れば。

先程から激しい戦闘音が聞こえてくる、恐らくもう既に戦いが始まっているのだ。戦っているのは、恐らくツバキとあの騎士だろう。

 

最初はだいぶ気の抜けたおかしな人だと思った、でもそれは違ってここぞって時は頼りになってどうでもいい事で笑いあえて、昔に帰ったみたいにレムと3人で笑い合えた。あれ以来、自分もレムも笑わなくなった、自分とレムの心にある深い傷をツバキは拙く下手だったけど治してくれた。

気づけば惹かれていた、常に考えるようになった。

 

いつだって…隣にいた、居ないことなんて考えられないくらい居てくれた。だから、それだけで充分だ。私はツバキの隣に居たい。

だから今度は私が助ける…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は最初、彼のことを認めていなかった。姉に寄り付く不届き者で自覚のない匂いを振りまいて…。

でもそれは全部自分の感覚だった、自分の空想だった。そして私は過ちをおかした、許されないと思った。あんなに優しい人なのに、自分は傷つけてしまった。

でも、彼はそれを笑って許してくれた。それからもずっと自分は助けられてばかりで…。

でも、今彼はいなくて…誰かがやらなければ彼は消えてしまうかもしれない。

今度は、私がツバキくんを助ける。いつか、そういった気がする。

だから、私が彼を助ける。

もうあの時とは違う、全てを失うのは1度で充分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは」

あの後、またしても症状が悪化し意識を失ったツバキは寝ていた。だがそこはベッドではなく辺り一面、白い空間だった。

そして、自分は何かに頭を乗せている感覚も同時にあった。

 

「やっと起きた」

 

左側より、声が聞こえた。横を向いて寝ていたので正確には上の方からだが。顔を起こし、頭上を見上げる。

するとそこには可憐な少女が居た、白いカッターシャツに黒いスカート、パッと見中学校のセーラー服だろうか。年齢も顔つきから見て相応だろうし。

 

「ほんとに苦労させてくれるよね」

「何の話を…」

「まぁいっか、それより早くやる事やらないと…」

 

「というかまずお前は…」

誰だ、そう聞こうとした時、俺の中の何かが目覚めた。

 

「誰…だ」

頭の中に流れ込んでくる数々の目の前の少女との記憶と思い出。

 

「だ…れ…だ」

頭が爆発しそうだ、膨大な記憶、語り尽くせないほどに大きかった、目の前の少女の存在。

そしてそれを死なせてしまった自分。

何も気づけなかった自分。

 

そうして頭は混乱し、意識を再び手放そうとしたその時目の前の少女の手が優しく包み込んだ。

「落ち着いて…お願い、もう少しだから」

 

視界がグラついて目前にいる少女があの少女なのかは定かではないが、俺は不思議な安心感に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうだった?」

「体調はこの上なく悪い…」

すこぶる快調なようで良かった、やっている最中は彼の為とはいえめちゃくちゃ辛かった。

とにかくこれで第一関門通過、向こうの精霊騎士が随分と奮闘しているようだ。戦闘が続く限りこの精神干渉はバレることは無いだろう。

とはいえ、時間が無いのは事実、事を急がなければならない。

「今見たものを君は信じる?」

「君とか言うな…玲奈」

 

思い出した、彼女の…妹の名を。

 

「正解、やっと言ってくれた」

 

そんでもう1つ。

 

「相変わらずどっか抜けてんな…、ハーク?」

「…何のこと?」

 

目の前の少女は…露骨に目を逸らした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうやぁぁぁん!!!!!!


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最後のさよなら

「な、なんの事だか分かりませんなー…」

「はぁ…それで、なんでお前がハークになってた?」

「うぅ…そうです、私がハークです…」

「素直で実によろしい」

さて、のっけから知的な雰囲気を醸し出していたが1分と持たなかった目の前の少女は俺の妹の玲奈だ。

「いや、だって…エキドナさんがやれって言うから…」

「エキドナ…?どっかで…」

あれ…ほんとにどこだったか、確かいつぞやベアトリスの書庫でラムと一緒に古い文献を漁っていた時に出てきたような…。

「ちょうどよく来たみたい、おーい!」

「もうちょいで思い出せそう…ちょっと待って」

 

「もういいよ、そこまでしなくて。僕は気にしないから」

 

声のした方へ振り向くとそこには黒い服装に身を包み、少し狂気じみたものを感じる黒い瞳、その狂気さを押し上げるように白く染った腰まで伸びる長髪。

身に纏う雰囲気は恐らく魔女教のそれだ。

そしてそれを確信した瞬間、ようやく思い出した。

 

「強欲の魔女、エキドナ。それが僕の名さ」

「やっぱりか…」

 

その声はニゾウと対峙したあの時に流れ込んできた声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アル・ヒューマ!」

勢いよく地面から突き出た氷はそこにいた人間を突き飛ばし、崖の壁へと激突させる。

「…っ、レム!」

攻撃を決めた直後の一瞬の硬直、その隙にツバキはレムに迫ろうとする。レムを突き飛ばし、ラムがその刃に掛かろうとした時。

「はぁぁぁ!!!」

火花を散らしながら接近するもうひとつの刃がその刃を受け止めた。

「ちっ…しつこい」

「今だ!」

「ウル・フーラ!」

ツバキの腹にラムが一点集中の火力を叩き込む。ズザザザ!と音を立てて敵が下がる。

「姉様、すみません…」

「いいえ、無事?」

「はい、ですが…」

「全く消耗している気配がないな、このままでは…」

そもそもの問題として、今のツバキは魔力が無限と言ってもいい。森中の草木から魔力を吸い取っているため実際無限だ。それにこちらの動きを読めているかのような動き、これに関しては死角や意識外からの攻撃や囮、誘導によって何とかなっているが恐らく慣れてしまうだろう。

「ひとつ…手がある」

「それは、なんですか?」

「私には人の意識に自分の意識を転送することが出来る、それを応用して奴の意識に侵入して強引にツバキを取り戻す」

「そんなことが…」

「だが、恐らく私では弾き返されてしまう、五感の共有ならまだしも完全に意識に侵入するとなると、これは比較的その者に近いものでしか実行できない、ならば…」

「私達が行きます、それしかないんですよね?」

「あぁ、だが…」

 

「時間稼ぎなら僕も手を貸そうか?」

 

「大精霊様?」

ふわふわと空中に浮いている猫精霊がそこにはいた。

「やぁ、レム、ラム、久しぶり、時間稼ぎなら僕に任せて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「単刀直入に聞く、外は今どうなってる?」

俺は重々しく口を開いた、もし記憶が正しくてあいつが今表に出ているのなら、ユリウスやラム達と戦闘になっている可能性が高い。そして、ひとつ言えるのはあいつは俺より強い。

力の差はないにしても心の持ち方が違う、人を殺すことに躊躇いのないあいつは俺より数段強いはずだ。

「…外では今、ユリウスという精霊騎士と君も知っている双子のメイドが君に応戦しているようだよ」

「ユリウス…あいつか」

記憶にある、会った回数はそれほどないが苦手と言える人物と1人だ。まぁそのユリウスの主は俺はもっと苦手だ。あの何もかも見透かされている感じがダメだ。

「俺は出れるのか?また」

「こちらから一方的に外部へ行使するだけでは不可能だね、外部から来るにしても戦闘中にその余裕があるかどうか…」

「…っん!?」

突然背後に無数の嫌な気配が走った、そして何か尖ったものがこちらへと猛スピードで迫る気配。

「…お兄ちゃん伏せて!」

俺はしゃがみその上を玲奈の回し蹴りと何かが交錯する。

「…っ!っぐぉ!」

俺は回転しながら蹴りを食らわせ、飛来したものを弾き返す。

「力が使える…?」

そう、今のは明らかに魔力行使をしていた。縛られていたはずの魔力がまた使えるようになっている。

「当然、ここは君の精神世界だ。君の思うままに戦うことが出来る」

「どれくらい持ちこたえれば?」

「10分、いけるかい?」

俺は二つの剣を出現させ両手に握る、玲奈は片手に一本、剣を持って目の前にいる無数の黒い影たちの前に立つ。

 

「「余裕」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!!!」

剣を地面に突き刺し、そこにありったけの魔力を流し込む。すると辺りの敵が全員雷によって消滅した。その剣を抜き、さらに迫り来る集団に向けて雷の斬撃を一振、その一振は目前の敵全てを薙ぎ払った。だがさらにその奥の空間から影たちは絶えることなく次々と出てくる。

状況は今のところは拮抗状態を保っているが向こうの勢いが増すか、こちらの勢いが消えるかどちらかがあれば拮抗状態は一瞬で崩れるだろう。

「お兄ちゃん!飛んで!」

玲奈の指示通りに俺は空中へと飛び上がった、玲奈の手のひらに強力な魔力が握られ玲奈はそれを地上へとはなった。

それはドーム型の爆発を起こし出現していた影達を全て消滅させた。

「やったか…?」

「ううん…多分一時的なものだと思う、多分またすぐに…」

「あぁ、湧いてくるだろうね」

「お前は何してんだよ…」

「外はようやく動き始めたようだ、と言ってもまだ油断ならないが…」

「…!、お兄ちゃん!」

「なっ…」

気づくと俺の体からは光が見え始めていた、チラチラと俺自身が薄れて行く感覚がある。

「どうやら…奴が気づいて君を引き戻したようだ」

「エキドナさん!どうしたら…」

「どうすることも出来ない、ここはあくまで彼と奴の精神世界だ。僕もには干渉できない」

「…玲奈」

「お兄ちゃん…」

「エキドナ、多分これで最後なんだろ?」

「あぁ、君は恐らくもうここには来れない。外が直接ここに来ることは無い、恐らく君がいた所にしか入り込めない」

「玲奈、今から大事な事を伝える…よく聞いてくれ」

「うん…」

俺は玲奈に歩みよる、その肩は震えていてやけに弱々しくこれからもう会えないのにあからさまに不安を煽る。

「父さんが言ってた、過去はいくら振り返ってもしょうがない。どんなに後悔してもどんなに傷ついてもどんなに辛くても未来にそれは関係ない。でも…もしどうしても、過去に耐えられなくなった時は」

「笑え…でしょ?」

「…正解だ」

過去にあったことは覆せない、救えなかった過去は覆せない。

覆せるのはその先の未来だけだ、その先にある未来だけが自分の手で変えることが出来るものなんだ。

過去は許されるものじゃない、過去に犯したことは未来でも消えない。

犯した罪は消えない、ずっと…残り続ける。でも、俺達にはもう未来しかない、過去は覆せない。だったら未来を覆すしかない。

 

俺があいつを倒す、自分勝手なエゴの塊で、希望しか見てない未来が過去の幻影を打ち払う。

 

「さよならだ、玲奈」

「うん…お兄ちゃん」

最後に、手を握ろうとした瞬間に俺の意識は深く落ちた。

 

「良かったのかい?」

「いいの…、どの道私は消えなきゃ行けない、だから…」

 

そう言って玲奈は再び出現した影に1人で立ち向かう。

「終わったらまたお茶会呼んで」

「分かった、君だけは特別待遇にしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隙ができたらレムが氷で抑えます、その隙に入り込めば」

「了解した、隙は私が作ろう」

「僕が抑えるからレムは侵入に集中してくれていいよー」

「ありがとうございます、大精霊様」

「…行くわよ」

ラムは目前の敵に鋭い視線を送る、その視線に答えるかのように相手の魔力が勢いを増す。だがその表情は怒っていた。

「クソが…うっと惜しい…」

「おかしい…」

「どうしましたか?」

「既に扉が開けられている…、誰かが入った形跡なのか…」

「どちらにしても手間が省けるのは確かよ、急ぐのよ」

そうしてまずユリウスが突貫した、後方からパックの氷による援護、その的確かつ協力な氷の援護はどこか集中力のない椿を追い込んでいく。

「くそ…」

「今だ!」

「任せて!」

パックが氷で椿の四肢を封じて身動きを封じ、ユリウスが精霊魔法で身体中を数秒間麻痺させる。

「レム!」

「はい!」

そうしてレムとラムは接近し封じられた椿の手に触れる。

「てめえら何を…」

「ツバキ君を…返してもらいます!」

「ツバキを返しなさい、それはラムのよ」

「行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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地獄で待ってろ 前編

一応次回最終回です
あと1周年でした、ありがとございます


「っ…」

目が覚めると、そこはもう屋敷のベッドではなかった。

以前のように黒い空間、そこにはもう1人の俺がいた。

でも、今表に出ているはずのあいつが何故ここにいるのか分からなかった。

「やっと起きたか…」

「…お前は」

「安心しろ、あいつとは違うからよ」

あいつ…とは、恐らく奴のことを指すのだろう。

「…お前は、誰だ」

「俺か?俺はなぁ…、なんて言えばいいのか。そうだな、お前でもなくあいつでもない、残りモンだ」

「残りモン?」

「あぁ、お前でもあいつでもない。まぁ多分少しだけあいつよりなんだろうが、俺は」

目の前のそいつは、酷く楽観的な態度で会話を進めていた。だがそれだけに俺はどこか昔の俺とそいつを重ねていた。

「はぁ…」

「というか、ここは?」

「安心しろ、直にお前は迎えが来る。それまでに話しておきたくてな」

「話?」

「お前に頼みがある、あいつを止めてくれ。もうあいつは自分じゃ止まれない、感情制御のリミッターが外れて自分じゃ止まりたいのに止まれない、自分の中の更にその奥の闇に飲まれちまってる」

「その奥の…闇?」

闇、俺にとってあいつがそうであるように、あいつにとっても闇があるということだろうか。

「人の深層心理の本来現れるはずのない闇、それにあいつは飲まれてしまった。自分以上の深い闇に」

「…」

「あいつは言っていた、変わっていくお前を見て俺達は消えるべきだと俺達はこれからあいつにとって不必要だと、過去の記憶とともに俺達は消えるべきだと」

「ちょっとまて…じゃあ、俺の記憶が消えていったのは…!」

「あぁ、飲まれる前のあいつがお前の為に消した」

「あいつが…」

「だから、頼む。あいつを止めてくれ」

「…もし、俺が止めたらお前らはどうなる?」

「消える、今更記憶を消すなんてのは無理な話だが消えるのは訳ない」

「お前は、それでもいいのか?」

「あぁ、最後に妹の顔を見れたんだ、もう未練なんてないさ」

「…でも」

「いいんだ、それに俺は…」

 

「ツバキ!」

「ツバキくん!」

 

俺は後ろから声がして振り返る、そこにはラムとレムが居た。

一旦二人から視線を外し、向き直る。

「行ってこい、お前が守りたいこの先の未来のために」

「分かった…」

「これ、持ってけ」

そう言って手渡されたのはひとつの青いリボン。

「これ…玲奈の」

「お前が持ってるべきだ」

「それじゃ、行ってくる」

「あぁ、行ってこい」

そしてそいつが最後に見せた笑顔は、昔の俺にそっくりだった。

 

「…これで最後よ、次無茶したら許さない」

「分かってる、ありがとう」

「本当に…分かってるんですか?」

「あぁ、もう負けない…誰にも自分にも」

甘えは敵、甘えは捨て置け、そう…玲奈と母親が言っていた。人にとって甘えとは結構足を引っ張ったりするものだ。他人は甘やかしても苦労はそんなにしないが自分を甘やかせば自分に返ってくる。

「行くわよ、ツバキ」

「行きましょう、ツバキくん」

「あぁ、行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…ぎっ、ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「っ…やったか!」

「…ツバキ、お願い」

「戻ってきて…」

「なん…だとっ…、てめぇらごときに!」

『誤算だったな…、見くびりすぎなんだよ、うちのメイド達を甘く見たお前の失態だ』

もがき苦しむあいつはもう今にも体から離れそうだ。

「くそ…くそ、このまま終わると思うなよ!絶対いつか必ずお前を…!」

『もういい、もう休め』

「うるせぇ!俺は…俺は!俺は…!」

『先に地獄で待ってろ』

「ぐ、…クソッタレがァァァ!!!!」

そうして俺の体から黒い瘴気のようなものが吹き出し、どこかへ飛んで行った。

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…うぉわ!?」

入れ替わり直後の疲労感に苛まれるのも束の間、されるがままになにかに突撃されそのまま押し倒された。

「ツバキくん!ツバキくん!」

「レ、レレ、レム!?」

見ると目に涙をいっぱい溜めたレムがそこにいた、いたっていうかめっちゃその…なんだ、色々押し付けてるから後ろで隠れて見えないけどラムの視線が怖い。

「ツバキくん?本当に…ツバキくんなんですね?」

「お、おう…そうだけど」

「良かった…本当に、よかったっ…!」

とりあえずこの状況なんとかしよう、うん。レムが離れてくれないと俺がラムに殺される。目線で。

「ツバキ…」

ラムに呼ばれ、そちらを見る。その表情は無表情でただ俺の右手を愛しいように握ってその手を自分の頬に当てる。

そして熱を感じて満足したのかしてないのか…。

「おかえりなさい」

「あぁ、ただいま」

 

 

 

「どうやら無事に戻ってこれたようだね、ツバキ」

「お陰様でな…っと」

ユリウスはこちらへ歩みよる途中でフッと倒れそうになった。それを俺はなんとか支え、肩を貸す。

「申し訳ない」

「気にすんな借りは返すだけだ」

「終わったー?ってユリウス!?」

盛りの奥の方からフェリスが顔を出した、どうやら静まった様子を見て出てきたようだった。

「悪い、フェリス、あと頼めるか?」

「あ、良かった!みんな無事…無事?」

「無事だよ、エミリア様」

別の方向からは心配になって戻ってきたと思われるスバルとエミリアの姿もあった。

「スバルー!早くー!」

「ほらスバル、急がないと」

「飛んでる奴には分かんないだろうけど、30分全速力で走ったら人は疲れるんですよパックさん!?」

「なんか1人だけ元気だな」

「そうね、相変わらずね」

「はい、相変わらずです」

その光景を見て俺たち3人は思わず笑ったのだ。

 

 

 

「とりあえず、屋敷に戻ろう」

その俺の意見に誰も反対するものはいなかった、丁度戻ってきたロズワールも賛同してくれてユリウス達は明日の朝に王都へ立ち、それまでは応急処置を屋敷で行うことになった。

 

 

「結局、ものの見事に全員寝たな」

時刻は夜の十時、いつもよりだいぶ早いが皆もう眠りについている。

ラムとレムも先程までは応急処置に当たっていたものの、全員終わらせて入浴を済ませたらそのままソファで寝てしまっていた。

おれは2人にそっとブランケットを掛け、起こさないようにしてそのままにしておく。

「さて…と」

 

俺はあの崖へと向かった。

理由は簡単、最後の決着を付けるために。

性懲りも無く、地獄の崖から戻ってきた往生際の悪いやつを地獄に叩き落とすために。

そのためには、自分も共に落ちる覚悟で。

 

「何度も嘘ついてゴメンな…ラム、レム」

 

「でも…これで最後だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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地獄で待ってろ 後編

皆さん一応今回で終わりです、序盤はもしかしたら大幅に帰るかもしれないししないかも知れません。
あとはエピローグ的なのでラム、レム、ツバキの3人旅の様子を書けたらと思います。


時間は少し溯る。

 

 

 

「戻ったのかしら」

「なんだよ、後ろから脅かそうと思ったのに…」

「何年この屋敷に務めてるのかしら?」

「3年くらいかな」

「あってるかしら」

「え、合ってんの?」

「自分の言ったことにもうちょっと責任持ったらどうなのかしら!」

「いやいや、それこそ何年ここに来てると思ってんだよ」

「はぁ…もういいのよ」

そうやって、いつもの流れをしたあと。空気が変わる。

 

「それで何の用なのよ」

「その前に…ちょっといいか?…おい、盗み聞きか?」

「なんだ、バレていたのかーね」

「ロズワール…」

「はぁ…まぁいいか、どうせお前の力を借りなきゃなんだしな」

「それは…どういうことだね?」

「単刀直入に言う、俺の中の…つまり、外に出た俺はまだ死んでない」

「詳しく聞こうか」

「あれは要するに一種の幽体離脱みたいなもんだ、でもあいつはもうこっちには入れない。でも…また別の肉体に移ることはできる、時間は掛かるが」

「それは…その肉体が死んでいても可能なのかしら?」

「可能だ、状態によって掛かる時間は違うが」

「ならば、的を絞るのは難しいだろう少なくとも魔女教は全員死んでいるし死体もまだ全て見つかっていない」

「いや、的は得てる」

「確信を聞こうか」

「簡単だよ、俺だからさ」

「なるほど、実に簡単で確実な意見だ」

「それで、行くのかしら?」

「あぁ」

「1人で…かい?」

「あぁ」

「そうか…」

「だから頼みがある、聞いてくれ」

 

「もし俺が明日の夜明けまでに戻らなかったら、この世界から俺の記憶ごと完全に消してくれ」

 

「勝手なのは知ってる、でも…これは俺のケジメだ」

「分かった、ではそちらの気配を遮断するように屋敷に結界も貼っておく」

「ただいいのかい?存在が消えるということは君の…」

「いいんだ、戻ってこれない可能性の方が高いわけじゃないからな」

「分かったかしら、それで了承するかしら」

「助かる、サンキューな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くか」

俺は森へと入った、夜は魔獣がいるはずだが今日は1匹も出くわさない。まるで何かを警戒して怯えているかのように。

森が…震えていた。

 

 

 

「…っ」

そうして迷わず崖へと向かった、そこには正気が塊となってそこにあった。

「しぶといんだよ、二つの意味でな…」

俺は右手に剣を握る、だんだん形になっていくそれに既視感を覚え、溜息をつく。

そうしてそれが襲いかかってきた。

「コロシテヤルゥゥゥァァァォァ!!!!!」

「やかましいんだよ…地獄で待ってろって言ったろうがァァ!!!」

ペテルギウスだったものは変化し、完全に俺の形になった。

衝撃波が交錯し、火花を散らす。

今の俺に状態変化して強くなるなんてものは無い、全て合わせてこの状態が最強だ。

だが、向こうもペテルギウスの闇の魔力を吸収しプラス元々自分が持っていた魔力を足したから足し算式で厄介な事には変わりない。

だから、決めた。

「全力で潰す」

俺はやつの首根っこを掴んで地面に全力で叩きつける、そしてそこに魔力を流してやつをしびれさせそのまま投げ飛ばす。

投げつけられ土煙に覆われていた場所から黒い手が猛スピードで伸びていた。

「見えざる手か…!」

後ろに飛んで少し時間を稼いで、手に剣を生成し、その剣で見えざる手を全てきりおとす。だがその見えざる手に隠れて接近する奴に俺は蹴り飛ばされた。

その蹴りで肋が何本か逝った気がした、身体強化は施してあるし並大抵の攻撃ならアザがつく程度で済むはずだが。どうやらただの蹴りでさえこの威力らしい。

「厳しいな…くそ…!」

再生した見えざる手と共に奴が迫る、木々を薙ぎ倒しながら迫る奴の攻撃を躱したり受け流したりするのが精一杯だ。

このままでは勝てない…、そう思った時だった。

ふと、それが目に止まった。それは腕に巻いた玲奈のリボンだ、それには本来あるはずのない熱さがあった。

『負けるな!お兄ちゃん!』

背中を押された気がした、その結果運良く当たりそうだった奴の攻撃が外れる。俺はそのリボンを握りしめて、力を込める。

するとそのリボンは俺の体にスっと透き通っていった。

確かな熱が体に巡るのを感じた、その熱は俺の本来持つ魔力を書き換え新たな力を与えた。

見えざる手がトドメを刺そうと畳み掛ける。

「燃え上がれ…!」

俺の体内から発した熱が見えざる手を溶かし、奴の左腕の二の腕から先を焦がす。

熱を収め、その拳に、脚に再び宿す。

まず右のアッパーで中に浮かせ、かかと落としで地面に叩きつけてかかとから炎を放出する。

「…っ!」

見えざる手が包み込むように俺の周りを囲んだ。だが、拳の炎でそれらを跳ね飛ばす。

「これが…玲奈がお前に伝えたかった事だ」

きっと伝わっているはずだ、この攻撃を通して玲奈の…俺達の思いが。

だから…もう、終わらせてやる。

「炎剣、アポカリブス」

左手に炎の剣を出現させ、それで奴の胸を突き刺す。

するとその炎は無抵抗の奴の体を焼き、やがて灰になって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷へ戻ると、そこにはロズワールと…もう1人。

「ラム…?」

「ツバキ…!」

こちらが歩み寄るより先にラムが疲労で倒れそうになった俺を抱き留める。自分の体をよく見ると脚は震えていて手も震えていて、限界以上に消耗していた。

「おい…、ロズワール」

「私が言ったのではないのだぁよ、ラムが自分から気づいて自分で私を問い詰めたのだぁよ」

「…そうか」

俺は抱いてくれているラムの頭を撫で、するとラムは俺の胸に顔を埋めて肩を震わして泣いた。

今思えば、レムが一目散に来た時もラムは至って冷静だった。いや、そう見えていただけなのかもしれない。

そうだ、ラムはもともと感情を表に出すタイプではなかった。

ラムは、元々こういう女の子なのだ。

「ロズワール、しばらくラムとレムと俺の3人は屋敷を留守にしてもいいか?」

「また突然だァね、やりたい事でも見つかったのかい?」

「いや、これから見つけに行く」

「自分探しの旅かい?」

「まぁ、そんなとこだな」

「そうだァね、今までの3人の貢献を含めて…1ヶ月の休養期間を与えよう」

「だってさ、どうする?行くか?」

そしてか細い、でも確かに聞こえる声でラムは言った。

 

「えぇ…どこへでも」

「よし、行くか」

 

 

 

 

 

 

 



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番外編 終わったから今できる話

「おい…」

「はい?」

「はいじゃねえよ、なんだこれ?」

「何って…なんだろ?」

「質問に質問で返すな!ていうかほんとになんだ!終わったろもう!」

「そうだね、君の痛々しい冒険の日々は終わった…」

「書いたのはお前だろうが!」

「でも終わった今だからこそ!話せる話もあるではないかと!」

「はあ?」

「だいして、終わったからいろいろぶっちゃけ用トーク」

 

というわけで始まりました、作者がどうしてもやりたかったファンディスク的なやつでございます。

 

「という訳で、色々とぶっちゃけるコーナーです、早速参りましょう」

「ぶっちゃけるって何を?」

「いや君は知ってるでしょ」

「まぁ、多少は?」

「というわけなんで早速1つ目」

 

更新頻度の著しい低下

 

「まぁ、これはね…」

「なんか理由でもあんの?まぁ知ってるけど」

「いやまぁ、とりあえず気まぐれで時分の小説見返してみたのよ?そしたらね?恥ずかしさで死にたくなった」

「おう…」

「そんでもってやばいってなって、他の人のラノベとか読んで勉強しようって」

「うん…」

「例えば冴え〇ノとか〇好きとか最近だったら〇さまけとかをバイトとかしながら買ってたから予定カツカツだったのもある」

「まだあんの?」

「まぁ自分に自信がなくなった、他の人はこんなに面白いの書いてんのに自分はとかハーメルン内でも憧れの人とかいるからこういう書き方できるようになりたいとか、でも学生という身分上時間は限られてくるし…」

「まぁそりゃね」

「という、葛藤に夏休み始まる前から終わった直後くらいまで悩まされていたというわけです」

「なるほど…そういう理由があったわけね、ていうかさひとつ気になったんだけど…」

「何?」

「なんでさ、カメラマンとカメアシがラムとレムでディレクターがスバルでプロデューサーがエミリア様で監督がロズワールなの?」

「みんなやりたいって言うから」

「あーはいはい」

「レム達に気にせず、のんびりとやってくださいツバキくん」

「あ、うん」

「ということで2つ目」

 

序盤の酷さ

 

「次行こうか…」

「まぁ、まずなんで台本形式なんだろうな?」

「ぐほぉ!?」

「ストーリーめちゃくちゃだし今もそうだけど」

「やめろォ!」

「ま、でも初めて書いたにしちゃいい方?」

「知らん!ていうかネタ尽きてきたから次でラスト!」

「ご都合…」

 

読者への感謝

 

「えーこの度は、こんなクソつまんない小説を読んで頂きありがとうございます」

「ここまで続けれたのも皆様のおかげであります、本当にありがとうございました」

「またなんか詰まったら日常回作るかもしれませんのでその時はよろしくお願いします」

 

「では皆さん!ありがとうございました!」

 




という訳でここから本編です
ひとつです、アンケートですが作業を早めにしたい為現在トップのラムafterstoryに決まりました。
それと、なろうのプロットの方がようやくまともなのが出来たので1話が上がったら報告させていただきます。
ではまた、いつか。
ハーメルンもちょいちょい上げます、


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エピローグova ラムafterstory

 

ここは王都。

その中心部にある、王国の騎士達が互いの剣をぶつけ合う闘技場。

 

「それで…戦績は?」

「10戦で5勝5敗、OK…行くぜ!」

「あぁ…来い!」

「ここに!ユリウス・ユークリウス対カンナギ・ツバキの第11私闘を始める!」

 

 

 

場面は進んで、少し離れた王都内のロズワール邸支部。

「くっそぉぉぉぉが!!!」

「今回は私の勝ちだな、ツバキ」

結果として、負けた。いいとこまでは行ったけど普通に負けた。

自力の戦いだとどっこいどっこいだけど、剣技はまだまだだな俺は。

「だがやはり、君は型を持つよりは我流を貫いた方がいい」

「勝者の的確なアドバイスありがとう…」

くっそこいつめっちゃ勝ち誇ってやがる腹立つな…!。

「まぁ、兄ちゃんの詰めが甘かった言うことやな。途中まで兄ちゃん有利やったのに」

「あー…ん?」

そうやってたわいのない会話をしているとあっという間に時間は過ぎていき。

「それでは私とリカードは別任務に当たる、それではまたしばらく」

「俺もまたちょっと本邸とロズワール邸のどっちかに戻らなきゃいけないらしいからな…」

「おう、そいじゃな、兄ちゃん」

「おう、待たな」

 

さて…それじゃ行くか、迎えに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから…4年の月日が経った。

俺は23歳、この世界に来た時は17歳だった事を考えるとなんだか凄いことな気がして過ぎていくのはあっという間だなとしみじみ思う。

あの後は、色々な事があった。エミリア様が王選で負けたけど、クルシュ様の指名で副大臣を担う事になったり、ベアトリスが禁書庫が出てスバルと契約したり、王選が終わった直後からロズワールがめっきり姿を現さなかったとか、他にも山ほどあった。ちなみに言うと、何故かあの一件の後各地で魔女教徒が死亡しているのが相次いで発見された。フェリスによると教徒は全員、怠惰の者だったためこれで恐らく怠惰の軍団は全て消え去ったらしい。

 

けどまぁ、色々あったのは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、王都の郊外にある丘。

ここは、先代の剣聖と剣鬼がかつて剣を交えた場所とされている。周りの草原には花が咲いていて現在の季節が春であることを感じさせてくれる。

取り残された瓦礫の壁にもたれて空を眺める、雲ひとつない晴れやかな空だった。

すると、足に何かが抱きつく感触がした。そちらへ視線を向けると幼い少女がこちらを見上げる。抱っこしろと言わんばかりに両手をこちらへ向けている、抱き上げて正面を見るとメイド服姿のラムがいた。

「なんかますます良く似合うようになってきたな、ラム」

「そうかしら?」

本人はあっけらかんとしてるが、絶対自分でも思ってる。自尊心の塊だからな、ラムって実際。歳を重ねるにつれて大人っぽさとか、それこそ未発達だったm…いでで!?。

「あら?なにか失礼なことを思われたのかしら?」

「ちょっと待ってなんでレナが…いてて!!」

抱っこしているレナが物凄い勢いで顔を抓ってくる、2歳児でしょなんでこんな攻撃的なの誰の遺伝なの…あっ…(察し)。

「全く誰に似たのかしら…」

「誰だろうな…ほんとに」

まぁ、でもほんとにこの数年でラムとレムは見違えるように大人っぽくなった。今はいないけどレムは今頃支部に戻って夕飯の支度をしているのだろうか。

「ほらそれより、早く行くわよ?」

「あぁ、そうだな」

そう、今日はみんなで集まる日だ。エミリア様が久々にオフが取れた(スバルが無理やり取った)という事でみんなで集まれる機会!という事でみんなで集まるらしい。

ラムから差し出された手を取り歩き出す。

 

懐かしいな…この背中。

最初、ラムに手を引かれて掃除へ連れていかれたあの時の事を思い出した。

 

「どうしたの?」

ラムがこちらを振り返り、首を傾げる。

「少し、昔を思い出してただけだよ」

 

再び歩み出す、きっとその先には希望がある。

途中で絶望があってもゴールにはきっとそれを覆すほどの希望が待っている。

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

 

 




今までありがとうございました、この作品は色々と序盤が酷いことに定評がある作品ですので次のfateでは最初からちゃんと作りこんでやりたいと思っておりますので。
一年弱付き合って頂きました、本当にありがとうございました。
気分が向いたらまたなにか作るかもしれないのでよろしくお願いします。

ではまた。


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めっちゃ重要なお知らせ

 

お知らせです

 

本来ならば、fateの二次創作を投稿する予定でしたが自分のリゼロ序盤のあまりの酷さを痛感しました。

 

よって、リメイクします。

 

直接修正する訳ではありません、主人公は今まで通り神薙椿です。

ですが、ストーリーの大幅修正、台本制になっている序盤を変えたり主人公の設定を改変したりと全く別作品になります。

それと、今回はヒロインはレムです。

レムがヒロインですので、そこの所はよろしくお願いします。

 

それとバンドリの方ですが、しばらく更新停止します。

理由は現在アルファポリスにてオリジナル小説を書いているためです、ダスカという名前でやっておりますので良かったら探してやってください、

 

しばらくはハーメルン、アルファポリス、ハーメルン、アルファポリスの順番でやっていきますのでよろしくおねがいします。

 

ということで、この辺で、自分はこれから修学旅行に行ってきます、

 

 

最後に文字数稼ぎするので気にしないでください。

 

 

 

 

(´•̥ω•̥`)<スイマセン!!(´•̥ω•̥`)<スイマセン!!(´•̥ω•̥`)<スイマセン!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!スン↓マセーン↑(゚∀゚)!!!(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー台本制ダスカ(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェーうん(・3・)アルぇー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー嬉しい(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー(・3・)アルェー

 

 



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リメイク、出しました!

 

投稿報告でございます、こちらの小説を楽しみにしていた皆様に対してです。

このたび新しくリゼロのリメイクを上げました。URLはこちら。

 

https://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_view&nid=209702

 

ぜひ気が向いたらご覧下さい、感想等はモチベにつながりますのでよろしくです。

 

ではまた。

 

あ、アルファポリスもよろしくね!

 

 

 

 

 

恒例の文字数稼ぎです。

 

(✌՞ةڼ✌)└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」└(՞ةڼ◔)」



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