アカメが斬る~魔眼を持つ男~ (千態万様)
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魔眼が視る
帝国のとある監獄にあった、始皇帝が作ったとされ『帝具』の一つ。《五視万能スペクテッド》。
それを、獄長から貰ったことから動き出した。
帝国から送られてくる罪人たちの罪状がどれだけふざけた内容だったのか思い出すだけ可笑しくなる。
同じ処刑人であったザンクという男は、首が好きなだけ切れるならそれで良いと言っていたが、同じ異常者としてもこれはおかしいと自分は思った。
監獄に送られてきて人間が殆どが無罪の人になってきたが、それでも毎日斬首の刑が執り行われてきた。
獄長は強面で、罪人に対し冷酷なまでに非情になりきれるが、無罪の人間に対し真摯であった。
あの冷酷無比であった獄長でも、日に日にやつれていくくらい今の帝国は狂い始めてきた。
そして、自分が……この現状が可笑しい。
上に異を唱えるべきだと言うが、それは無意味だと一蹴された。
意見など通らないほどに、狂い始めた。
だから、決めた。
獄長の《帝具》をくれと。
それで、正してくると。
ただの処刑人だが、間違いくらいは正せる。
己の使命は、罪人の首を斬ることだと。
きっと自分は生まれ落ちたその日から、ネジが外れた人間としてやることが決まっていたのだ。
獄長は躊躇うが、意を決して《帝具》を渡してくれた。
親友のザンクや、監獄の看守仲間たち再会することを誓い。
自分は帝都にへと向かった。
※
帝都に来たは良いが、やはり腐敗に満ちていた。
秩序があるようで無秩序で、規律もないようなものである。
自分の行動は早かったと思う。
裏通りを歩けば簡単に《罪人》が蔓延っていた。
年端もいかない少女が犯され、血にまみれ、他の女も泣きながら犯され続けられている。
声が表に届かない考え抜かれた犯行。
しかし、まだ太陽が登っているというのになんと堂々としたものか。
自分は既に獄長から授かった《帝具》の《
五視による特殊な効果により、罪人たちの首を瞬時に斬首していく。
たとえ罪人といえど、苦しみを与えてはいけない。
処刑人として当たり前の事。
せめて罪を知ってから執行したかったが、無罪の人を救うには急ぐしかなかった。
「え……」
犯されていて少女がそれに気付くまでには既に、女たちを犯していた者たちは亡骸となっていた。
勿論、彼らを罪を〝視て〟から斬首した。
もしかしたら、やむ得なく犯していたのかもしれない。やりたくないけどやらないといけない理由があったかもしれないのだ。
それを視てから判断した。
この犯されていた少女も。
「……私の名前はガン……ガンと申します。
「わ……たしの名前を……」
「存じております。そしてすでに貴女の罪状も
「…………えっ?」
「この男たちを詐欺で騙し、家族を売り払い、宮廷に住まう大臣に関わる方々に情報を売っていたのですね。そしてそれがバレ、詐欺仲間であったここの女性たちが復讐を兼ねて
自らの名前を告げ、少女かと思った人物が実は成人女性であったことも
「しかし報復としては成就されたでしょう。罪の可否は裁判所で裁かれないといけないというのに、私の独断で斬首させていただきました。彼らの怨嗟の声は私が請け負いましょう……。そして、私の目の前にいる貴女やそこにいる女性たちもそう……詐欺を犯した《罪人》に、なりますね」
ゾワリ、と。
今まで強姦されていた少女然とした女、ナタリに悪寒が襲うが、ガンは、
「うん……貴女は先程までは反省し、二度と罪を犯さないことを心より願っていたのに、今では随分、
ナタリは確信した。
心を読まれていると。
「嘘は私の前では無駄と知りなさい。そして、私は貴女の未来まで
それを言われ、ナタリは彼の背後にいる女たちを見た。
自分と同じく女の尊厳を奪われ、見下され、肉欲によって骨の髄まで犯された仲間に、
「……詐欺の罪で死罪になることもありますが、罰は下されたようです。後のことは責任放棄しましょう。なに……
帝具・五視万能スペクテッドの性能は十全に理解した。
理解し過ぎた。
これは、自分に合いすぎなくらいだと。
ガンは己の眼孔に嵌めた帝具をコツンコツンと鳴らしながら、粛清を開始したのだった。
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