提督「艦娘からのアプローチが怖い」 (かむかむレモン)
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蒼龍と間宮で






 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「ねぇ提督、お仕事一段落ついたら間宮行かない?一緒にアイス食べようよ♪」

 

提督「お、俺とじゃなくて飛龍と行ってくれば?」

 

蒼龍「そう言わずに、ね?」

 

提督「俺と行ったって、その、面白くないだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺は提督だ)

 

提督(数ある鎮守府のうち一つを任せられている)

 

提督(所属している艦娘はそこそこ多いし、みんな可愛い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「んもー!私は提督と行きたいの!」

 

提督「そ、そうは言っても、まだ書類は沢山あるし...」

 

蒼龍「なら半分よこして!早く間宮行きたいもん!」

 

提督「いや、それは...」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(艦娘たちは皆個性が強いが、ちゃんと気遣いができるいい子ばかりだ)

 

提督(今日の秘書艦である蒼龍もいい子なのだが、俺とアイス食べたいというのは少し勘弁してほしい。何故なら俺は...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「...もしかして、私と一緒は嫌?」

 

提督「い、嫌なわけじゃない。ただ...」

 

蒼龍「...」ウルウル

 

提督「...いや、何でもない。書類を片付けよう」

 

蒼龍「やったぁ!」パァァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(女性と接するのが怖いのだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「ふー!終わったね!」

 

提督「そ、そうだな」

 

蒼龍「じゃ、間宮行こ?」

 

提督「...はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍が俺の手を取り、恋人繋ぎで間宮へと連れていく。嫌な汗が出る。手が柔らかくてあったけぇ。

 

そのまま間宮に着いて、適当に席に着いたら、蒼龍は有無を言わさず隣に座ってきた。

 

だから距離が近い。息が少し荒くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間宮「いらっしゃいませ。蒼龍さんと...提督?」

 

提督「や、やあ間宮さん...」

 

蒼龍「えへへ、ちょっと休憩がてら一緒にアイスでもって思ってね」

 

間宮「あらあら、仲が良いですね」ウフフ

 

提督「あ、あはは...」

 

間宮「それでは、何にしますか?」

 

蒼龍「本当は間宮スペシャルにしたいけどー、チケット無いからソフトアイスで!」

 

提督「...同じで」

 

間宮「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(何とか違和感を最小限に抑えながら話せた。間宮さんも正直苦手だが、蒼龍程ではない)

 

提督(とにかく距離感が近いのがどうにも...あ、アイスが来た...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「んん~♪おいし~♪」

 

提督「...そうだね」

 

蒼龍「はい提督、あーん♪」

 

提督「へ!?」

 

蒼龍「そんな驚かないでよ。あーん♪」

 

提督「...いや、いいよ」

 

蒼龍「え」

 

提督「俺の分はちゃんとあるから、気持ちだけ貰っとくよ。ありがとう」

 

蒼龍「あの、提督...」

 

提督「いいから。ほら、アイス溶けるぞ」

 

蒼龍「(´・ω・`)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(あーんなんて高等なやり取りは今の俺にはかなり効く)

 

提督(何とかあーんは回避したが、蒼龍はかなり悲しそうにしている。蒼龍には悪いが...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍(提督、いつも私たちとちょっと距離空けてて何だか寂しい)

 

蒼龍(だから今日は秘書艦だし、少し前に出てみようかと思ったけど...)

 

蒼龍(...ううん、こんなんでへこたれちゃダメよ!きっと提督と...)

 

蒼龍(でもでも、あまりグイグイ行くと本当に迷惑に思われちゃうかな...)ウゥム

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(なんか難しい顔してる...何を考えてるのだろうか)

 

提督(だから俺は一緒に行くべきじゃなかったんだ。分かりきっていたハズなのに)

 

 

 

 

 

 

提督(...あんな事が無ければ、俺は素直に嬉しいと思えたんだろうな)

 

 

 

 

 





何か意見ありましたら今後の参考にさせて頂きます






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明石と工廠で





 

 

 

 

提督(その後蒼龍と俺は執務室へ戻ったが、何とも言えない雰囲気に耐えられず、工廠へ向かってしまった)

 

 

提督(...いや、ちゃんと用はあるんだ。装備改修を頼もうかと思ってたんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

明石「うーん...あ、提督」

 

提督「や、やあ明石」

 

明石「何かご用ですか?あ、もしかして改修ですか?」

 

提督「まあ...そうだな」

 

明石「わっかりましたー!それで、何を改修しますか?」

 

提督「今日は魚雷の方を...」

 

明石「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(明石は改修となるとハイテンションになる子だ)

 

提督(まあ気持ちは分かる。装備を強くする時の気分はワクワクするもんな。俺も提督になる前はゲームで装備強化するのが楽しかったし)

 

 

 

 

提督(そう、あの頃は...)

 

 

 

 

 

明石「改修成功しましたー!」

 

提督「おお、お疲れ様」

 

明石「それで提督ぅ、改修成功したので...」

 

提督「...またやるのか」

 

明石「お願いしまーす」

 

提督「...わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(明石は頭を下げてきた。それを俺は優しく撫でる)

 

提督(これは以前から俺が軽くお礼を言うだけという対応に不満を持った明石のお願いだった)

 

提督(艤装関連は明石に一任してるし、多少の労いは当然かと思った俺は了承した)

 

提督(頭を撫でると、しばらくは頑張れるらしいが...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明石「んへへ...」トロ-ン

 

提督「...」ナデナデ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(ちくしょう可愛いな)

 

提督(まあ頑張ってるしご褒美がなでなでなら安いものかな。そろそろご褒美のハードルが上がりそうで怖いが)

 

提督(てか髪の毛柔らかい。その上工廠なのにほんのり甘い香りがする)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明石「提督、その...次は装備更新なんですよね。この魚雷」

 

提督「そ、そうなんだ」

 

明石「そ、それでですね、更新成功したら、なでなでじゃなくて、ハグとか...」モジモジ

 

提督「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(思っていたそばからグレード上げてきたね明石。ちょっとしおらしくなっておねだりするとこもまた可愛いが、ハグはちょっと...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明石「あ、あの、ダメですか...?」ウルウル

 

提督「...か、考えておく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺はそう言って工廠から出た。明石もまた物悲しそうな顔してて心が痛い)

 

提督(それにしてもハグかぁ...それならまだ新しい工具欲しいと言われた方がよかったなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明石(うーん...相変わらず距離は縮まらないなぁ)

 

明石(他の子もアタックしてるみたいだけど、あと一歩をどうしてもって感じだし...)

 

明石(過去に何かあったのかなぁ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(潤んだ目でお願いされると嫌な事思い出しちゃうなぁ)

 

提督(明石には悪いが、こればっかりはどうしようもないな)

 

提督(多分、俺はこれからも艦娘の好意を素直に受け止められないのだろう)

 

提督(過去は変えられないからな...)

 

 

 

 

 

 

 

 






ふつーにイチャついてると思うんですがそれは





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遠征隊の執務室で

 

 

 

 

 

提督(執務室に戻ると、遠征隊の艦娘達も戻っていた。

報告は蒼龍が受けてくれていたようだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

長良「あ、提督!どこ行ってたんですか?」

 

提督「ちょ、ちょっと工廠にな。皆が使う魚雷の改修を頼んでいたんだ」

 

長良「ふーん...あ、遠征から帰投しました。各自補給は済ませています」

 

睦月「遠征は大成功にゃし!」

 

如月「司令官の為に、とっても頑張ったんだから♪」

 

弥生「弥生も、頑張りました...」

 

卯月「うーちゃんが一番頑張ったぴょん!」

 

提督「わかった、わかったから...」ナデナデ

 

睦月「もっと撫でるがよいぞ~♪」

 

如月「ん...司令官も好きなんだから♪」

 

弥生「気持ちいい、です...♪」

 

卯月「もっとうーちゃんを撫でるぴょん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺が睦月たちを撫でている間、長良と蒼龍はムスッとしていた)

 

提督(いや、駆逐艦はさ、まだ子供じゃん?ましてや睦月たちなんか見た目小学校低学年ぐらいだし、まだ世俗に染まってないじゃん?)

 

提督(無垢な子たちだからいいものの、一部の駆逐艦と軽巡以上の大型艦の娘達は何か裏がありそうで怖い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長良「長良には何も無いんですかー?」ジトッ

 

提督「わ、わかっている。忘れた訳では無いよ。ほら、間宮チケット...」

 

長良「長良も睦月ちゃんたちみたいに労って欲しいなー?」チラッ

 

提督「う...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(それだよ長良。俺は君たちみたいなある程度成長した子たちのおねだりが怖いの)

 

提督(しかも長良は見た感じ中三か高一ぐらいで、頭撫でるのとかすっごく気にする時期だと思うんだけど。後でセクハラとか言われたら本気で死ねる)

 

提督(でも自分から撫でてほしそうな素振りを見せてるし、何とかなるかもしれない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...あんまり期待するなよ」

 

長良「そうは行かないですよ~」

 

提督「...」ナデナデ

 

長良「ん..」ピクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(手が頭に触れた時ピクッてするの可愛い)

 

提督(いつも元気ハツラツな運動部系女子がふと女の子な素振り見せるとドキッとするよね。それだよ)

 

提督(ちなみに俺が学生だった頃はそんなもの見れなかったし、見れたのはイケメンたちだけだろう。辛い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長良「あ、も、もう大丈夫です...///」

 

提督「あ、はい」

 

長良「んー、次はもっと頑張れます!」

 

提督「そ、そうか」

 

長良「それでは、失礼しました」

 

睦月たち『失礼しました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(満足げに執務室から出ていった艦娘たちを見送ると、蒼龍が更に不機嫌そうにしていた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「...提督って、ロリコンなの?」ジトッ

 

提督「...違う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(蒼龍はずっとジト目で見てくるが、俺はロリコンではない)

 

提督(たった四文字の単語だが、社会的に抹殺される可能性が高いから無闇に使わないでくれ)

 

 

 

 

 

 

提督(俺は君たちみたいなある程度成長した女性が怖いんだ)

 

 

 

提督(ただ、それだけなんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回、提督死す(大嘘)
デュエルスタンバイ!




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青葉と過去と







 

 

 

 

 

青葉「突然ですが恐縮です!青葉です!」ドアバ-ン!

 

 

 

 

 

提督(何事かと思ったら青葉が執務室に入り込んできた。ノックすらせず蹴破る勢いで来てちょっとビビったよ)

 

 

 

 

 

提督「ノックぐらいしてくれ」

 

青葉「いやー青葉的に緊急でしたので...あ、蒼龍さんお疲れ様です!」

 

蒼龍「はーい」ムスッ

 

提督「それで、何か?」

 

青葉「司令官、この鎮守府に着任してから結構経ちますよね?」

 

提督「結構って言っても一年も経ってないぞ」

 

青葉「それでもですよ、青葉たちもとい艦娘にも慣れてていい頃ですよね?それなのに何故距離を置いてるのか気になって気になって夜も八時間しか寝てないんですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

提督(快眠じゃないか...と言うかこの流れはちょっと嫌な予感がするな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「聞きたい事は二つです!ズバリ司令官は同性愛者ですか!?」

 

蒼龍(気になる)

 

提督「...俺はホモじゃない」

 

青葉「二つ目!ならば何故距離を取るんですか?過去に何かあったとか...」

 

 

 

 

 

提督(やっぱりな。聞かれるのも青葉辺りだろうと思っていた)

 

提督(でも、正直なところ話したくないし、話したところで何が変わるというのだろう)

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「是非、お聞かせ下さい!みんな気になってるんですよ!」

 

提督「...」

 

青葉「このままでは艦隊の士気に関わります!どうかお話を...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(青葉め、どうしても聞き出そうとしてるな。だが、艦隊の士気に関わるとまで言われるとなぁ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「あ、それと一部の駆逐艦とは皆よりも接していると聞いたんですが、ロリコン...」

 

提督「ち、違う...」

 

青葉「でもでも、駆逐艦の子たちには甘いという報告があるんですよ。これはもはや...」

 

提督「俺はロリコンでもホモでもない!お前達ぐらいまで大きくなった女が怖いだけだ!」

 

青葉「え」

 

蒼龍(お?)

 

提督「あ...」

 

 

 

 

提督(しまった!在らぬ噂に逆上した弾みで要らないことまで喋ってしまった...)

 

提督(青葉は一瞬驚いてたが、すぐに興味津々といった顔に戻ってるし、蒼龍も同様に...ここまでか...?)

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「司令官、今のは...」

 

提督「...わかったよ。話すよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が提督になる前はただの一般的な学生だった。

 

 

学業もそこそこ、運動もそこそこ、友人もそこそこなごく普通の学生だった。

 

 

当然思春期真っ盛りだったが、俺は彼女を持った時にある理念があった。

 

 

自分を好きになってくれた子に尽くす、と。

 

 

これは親の影響もあるが、自分自身浮気とか不貞が許せない性分だった。

 

 

今どきじゃヤンデレとかメンヘラ扱いされるかもしれないが、縛りとかは一切考えてなかった。

 

 

そんな俺は過去に2回、彼女が出来た...いや、今思えば、俺が舞い上がっていただけか。

 

 

 

 

最初は恋愛のノウハウが分からず、空回りすることが多かったが、初々しさもあって楽しかった。それと、デートの為の資金が乏しかった。

 

 

その為、俺は彼女に黙ってバイトを始めた。何とかお金を稼ぎ、彼女と一緒に楽しんで貰おうと頑張った。

 

 

バイトの先輩が偶然彼女持ちだったから、アドバイスとかも聞いた。

 

 

そんな時、俺の休憩中にバイト先に知り合いが来て、俺は耳を疑う話を聞いた。

 

 

彼女が浮気をしているらしい。それも何人も同時に、と。

 

 

普段なら笑い飛ばすところだったが、幸か不幸か、彼女が知らない男とバイト先に来てしまった。

 

 

俺と知り合いは咄嗟に隠れて様子を窺っていたが、俺よりも親密にしていて落胆した。ついでに吐き気も催した。

 

 

彼女が出ていくと、知り合いがバイト終わりまで待ってくれた。飯も奢って貰ったが、食欲が湧かなかった。

 

 

後日、俺は彼女と別れた。その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、貧乏童貞にしちゃなかなか頑張ってたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と捨て台詞を吐かれた。俺は怒りを通り越して呆れたよ。

 

 

 

 

そして数年後、俺は地元から離れたところへ進学し、一人暮らしを始めた。

 

 

新生活にも慣れ始めた時、俺の事が好きと言う女の子が現れた。

 

 

当然俺は警戒していたが、少し時間を掛けてみようという思いで付き合う事にした。

 

 

それからというもの、特に怪しいところは見当たらず、信用しても良さそうかなと思った。その時から、俺もその子が好きになっていった。

 

 

数ヶ月間、俺の心は満たされていた。本気で好きになれた事と、好いてくれてる彼女の笑顔を見れて幸せだった。いつもありがとうと感謝もしていた。

 

 

お金もそこそこ貯めて、彼女に似合う彼氏になろうと努力した。流行りの服装を買ったり、デートの場所を事前に調べたり、弛んだ体にならないよう運動もした。

 

 

忙しかったけど、そんなの気にならないぐらいだったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、突然別れを切り出された。恐る恐る理由を聞くと、どうやら罰ゲームで俺と付き合う事になったらしい。

 

 

何かどす黒い感情が湧き出たが、彼女も俺を好きになってしまい、いつ話を切り出すか迷っていたと言われ、少し悲しくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また改めて付き合いたい」、「話を着けてくるまで待ってて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は目を潤ませながらそう言い、俺は悲しくも了承し、待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、いつまで経っても彼女は来ない。それどころか、他の人と交際しているという話まで耳に入ってきた。

 

 

俺は勇気を振り絞り、彼女のいる所へ向かい、話をした。すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことバカ真面目に信じてたの?アホくさ」

 

 

 

「ガチな恋愛とか息苦しいんだよね」

 

 

 

「何ヶ月も騙されててみんな笑ってたし、玩具にしてはなかなか楽しませてもらったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、俺の聞き取れた言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は最後まで聞くことなく、黙って立ち去った。後ろから何か言われてるような気がしたが、俺には何も聞こえなかった。

 

 

その日から、俺は休学した。部屋に閉じ篭り、ただ横になっていた。

 

 

その日から、俺は女性との付き合いが怖くなってしまった。厚意があっても、疑う事しかできなくなった。

 

 

人によってはその程度と思われるかもしれない。しかし俺にはダメージが大き過ぎた。

 

 

 

家に着いた時の虚無感、絶望感は今でも忘れられない。信じていた子が裏では俺を嘲笑っていた。俺の努力は全て無駄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が何をした?

 

俺は間違っていたのか?

 

本気で好きになる事はダメなのか?

 

俺はただ、一途に尽くし、好いてくれた子が笑顔になってくれれば、ただ傍に居てくれれば、それでよかった。それだけでよかったんだ。

 

だが、それすらも否定された俺は何が正しいのかわからなくなった。

 

後から込み上がる怒りをどこにぶつければいいんだ?

何故俺は涙を流さなくちゃならないんだ?

何故幸せから絶望を味わわなければならなかった?

 

俺の思いはこの時代には不向きだったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺は変なものが見え始めた。手のひらサイズの小人が寝てる俺の体で遊んでいる。

 

 

遂に俺にも幻覚が見えてしまったと落ち込みながら、俺は精神科に向かった。

 

 

この歳で鬱なのかと思ったが、そうじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

俺が見えていたのは妖精というもので、これを視認できる人は希少らしい。何でも、視認できるかどうかは、妖精が人を選んでいるとか。妖精に気に入られる事が大事だとか。

 

 

 

俺は精神科の医師もおかしいと思っていたが、そこから事態は大きく変わっていった。

 

 

それから、俺は周りに流されるように現在の元帥と面会して、軍学校へ編入することになり、基礎知識と基礎体力を付けた。

 

 

家族もめでたいとかほざいて俺を軍へ送り出したけど、当時の俺はもうどうにでもなれと思っていた。軍だし最悪歩兵として前線に駆り出されて死ぬとしても、長生きする気なんか毛頭無いし、死んでもいいやと思っていた。

 

 

だが、妖精が見える者は提督になる道しかなかった。どうでもいいし、何でもよかった俺はあまり話を聞かずに頷いて、この鎮守府に着任した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、艦娘と出会い、月日は経ち、今に至るということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「...」

 

蒼龍「...」

 

提督「以上だ」

 

青葉(お、思っていた以上にヘビーな話だった...)

 

蒼龍(聞いてて哀しかった...)

 

提督「一つ言っておくと、同情なんてするな」

 

青葉「え、ど、どうしてですか?」

 

提督「同情したところで、何も変わらない。それに、この話を聞いて義憤に駆られてしまってはいけない。まあ、俺の鎮守府にはそんな子はいないだろうが」

 

青葉(今まさに元カノ特定してカチコミに行こうと思ってました)

 

蒼龍(協力するよ)

 

青葉(蒼龍さん!?脳内に直接...)

 

提督「満足したか?」

 

青葉「あ、はい...お時間かけちゃってすいません」

 

提督「そろそろ飯時だ。食堂へ行きなさい」

 

青葉「で、では...」

 

蒼龍「行ってきます...」

 

 

 

 

 

 

提督(あんな話を真面目に聞いてくれた二人はいい子だ。自分が出したボロからとは言え、初めて過去について話したかもしれない)

 

 

提督(不思議と、心が少し軽くなった気がする。だが、心の傷だけは、癒えることは...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「まさかあんな過去をお持ちとは...」

 

蒼龍「さっきの話、みんなに聞かせるの?」

 

青葉「当たり前ですよ。みんな司令官の事好きですから、幸せにしたいですよ...」

 

蒼龍「...何人か本当にカチコミに行きかけないけど、そこもちゃんと話さないとね」

 

青葉「わかってますよ。でも...可哀想な司令官...」ウルウル

 

蒼龍「...」

 

 

 

 

 

 

 

 







本格的なイチャパラはまだ先です。


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艦娘たちは食堂にて







 

 

 

 

 

 

 

提督(自分の過去を話したのはもういいが、恐らく青葉の事だ、皆に話してしまっているだろう)

 

提督(そうなると非常に気まずいし、落ち着いて食事が出来ない可能性が高い)

 

提督(今日はコンビニ飯にするか...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、食堂では...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「...ということでした。司令官がホモじゃなかっただけ幸いですね」

 

間宮「何という...」ポロポロ

 

飛龍「...いやいや、ホモじゃないとかそういう問題じゃないでしょこれ」

 

霞「ふん!とんだクズにトラウマ植え付けられたものね!」

 

五十鈴「ちょっと!特定班編成するわよ!」

 

蒼龍「あ、ダメダメ!提督のお願いでそういうのナシって言ってたから」

 

五十鈴「あのバカ...フった相手にまで情けを掛けなくても...」

 

隼鷹「あたしは納得行かないね。彩雲!ちょっと仕事頼まれてくれよ」

 

青葉「ちょ、隼鷹さん!?」

 

飛鷹「ごめん青葉。今の隼鷹素面なの。ああなると言うこと聞かないから」

 

隼鷹「わかってんじゃん。そんじゃ行っておいで!」ブ-ン

 

蒼龍「あーあ、本当に飛ばしちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「...ところで、初期艦だった吹雪はこの事を知らなかったのか?」

 

吹雪「...初耳ですよ。でも、何故最初に会った時に目が死んでいたのかがわかりました」

 

陸奥「一番付き合いの長い吹雪ちゃんにすら教えなかった事を青葉ちゃんたちに話すなんて、まさか脅したりしてないでしょうね?」

 

青葉「あ、青葉は艦隊の現状と噂を言っただけです...」

 

長門「やはり私たちを間接的に巻き込んだのか」

 

青葉「で、でも!これで謎は解けたんですから!結果オーライですよね!?」アセアセ

 

長良「司令官って結構ナイーブだからそういうのって新しいトラウマになりかねないよ」

 

青葉「そ、そんな...」

 

長門「しかし、青葉の言い分も間違ってはいない。確かに私たちは提督との接し方のヒントを得た。現状は駆逐艦が有利で、軽巡以上がトラウマを思い出させる可能性がある。普段からかったり、思わせぶりな言動をしている艦娘は更に不利になるということだな?」

 

吹雪「...やったね、磯波ちゃん」

 

磯波「う、うん...」

 

睦月「これはチャンスにゃし...!」

 

如月(うーん、何か引っかかるのよねぇ)

 

時雨「僕は大丈夫なのかな...?」

 

村雨(私、もしかして不利?)ブルブル

 

霰「んちゃ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「現状、軽巡以上の艦娘たちが提督と問題無く接するには、如何に提督に対して誠意を持てるかによるかもしれん。なぁ陸奥?」

 

陸奥「う...しょうがないでしょ。知らなかったんだもの...」

 

長門「あまり言いたくはないが、酒匂も普段から好きと言っていると相手にまでされにくくなるかもしれない」

 

酒匂「そ、そんなぁ!酒匂は本気で司令のこと好きなのに...」

 

長門「酒匂がそう思ってても、提督がどう受け止めてるかだな。だが、提督が普段通りを望むならそれで構わんが、必ず過去の事を忘れずに接するように」

 

 

艦娘『はい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「それと吹雪、先程から何か言いたそうだが」

 

 

 

吹雪「...司令官がトラウマを抱えていた事は初めて聞きましたけど、それでもずっと初期から私たちに対して真摯に向き合っていました」

 

吹雪「今思えば、目の光も生き返っていますし、事務的な話だけだったとしても、私たちと話す時間は増えています」

 

吹雪「どんなに辛くても、トラウマと闘いつつ、変わっていこうという意思が感じられて、改めて司令官の優しさと誠実さを思い知りました」

 

吹雪「だから、今度は私たちが司令官を幸せにしないといけないと思うんです。どんなに時間が掛かっても、司令官の傍に寄り添えるよう努力する時なんだと思いました」

 

吹雪「だから皆さん、司令官の持つトラウマなんか忘れてしまうぐらい、幸せなハーレムを作りましょう!」

 

 

 

 

 

 

『おおー!』『いいぞー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「...お、早かったねぇ。どうだった?」

 

妖精「~」ボソボソ

 

隼鷹「へっ、いい気味だぜ。カチコミに行く必要すら無さそうだね。お疲れさん」

 

妙高「どうでしたか?」

 

隼鷹「おっと、お堅い妙高さんでも気になるかい?」

 

妙高「勿論です」

 

隼鷹「一人目はもうちょい時間掛けないと分からないけど、二人目のほうは...」ボソボソ

 

妙高「...当然の結果ですよ」ゴゴゴゴ

 

隼鷹(おっとっと、おっかねぇ面してる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「最近のコンビニ飯ってバカにならないな」モグモグ

 

妖精「~♪」←デザート買ってもらった

 

 

 

 

 

 

 

 

 






コンビニデザートのクオリティが高過ぎる(余談)




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村雨と小さな一歩

 

 

 

 

 

 

提督(青葉に俺の過去をバラした翌日、普段マセてる子たちが少し大人しくなった。どう考えても青葉が言いふらしたんだろう)

 

提督(でも、それのお陰で執務に集中できたり、誘うような素振りを見なくて心が安らぐ。健全な男子はこのような思考にはならないだろう)

 

提督(今日の秘書艦は村雨だ。秘書艦じゃなくても俺のところに来ては、村雨のちょっといい所見せると言ってくる。だが、今日は執務を始める時にしか言ってない)

 

 

 

提督(ところでこの子本当に駆逐艦なの?発育が良すぎて最初軽巡かと思った。しかも最近改二というやつになってオッドアイになるし、胸とか更にでかくなってるし)

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨「提督?どうしたの?」

 

提督「ん...」

 

村雨「もしかして、村雨に見とれてたの?」ニヤニヤ

 

提督「ん...字が綺麗だなと思ってな」

 

村雨「そ、そうですか...?///」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(咄嗟に嘘を言ったが、本当に綺麗だったよ。いや、俺が汚いのか?)

 

提督(つーか女の子って視線に敏感なんだな。気をつけないと)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...ふう、そろそろ休憩しようか」

 

村雨「なら、村雨が紅茶淹れたげる!」

 

提督「紅茶か、茶菓子も用意するか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「ふう、落ち着くな」

 

村雨「村雨がちょっといい茶葉、取り寄せたんだから」

 

提督「へぇ、普段から紅茶飲むのか」

 

村雨「て、提督のために取り寄せたの...///」

 

提督「俺のため?何で?」

 

村雨「何でって、その...///」モジモジ

 

 

 

 

提督(村雨がいつになくしおらしいな。いい茶葉といい普段見せない感じといい、何かあるな?)

 

提督(うーん、どうしても嫌なほうに考えてしまうな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...言いたくないならいいよ」

 

村雨「...提督、喜んでくれると思ったんです」

 

提督「え」

 

村雨「いつもの方法じゃダメだと思って、何かないかと思って、それで、それで...」

 

提督「紅茶か?」

 

村雨「こんな事しか思いつかなかったけど...でも!村雨は本当に喜んで欲しくて、笑顔になって欲しくて、その...」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...いつになく真面目な表情をしてるし、俺の目をしっかり見てくる)

 

提督(これは俺でもわかる。村雨は真剣だ)

 

提督(そうなると、村雨は本気で俺の為を思った行動をしたと言うことになる)

 

提督(しかし悲しいかな、真剣な思いを伝えられても、俺はそれを受け止められずにいた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうせ嘘だ』

 

 

『また俺を騙して嘲笑うんだ』

 

 

『女の考えてる事なんかそんなものだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(心の奥から聞こえてくる、得体の知れない声)

 

提督(俺が自身の心を守る為に生みだした歪んだ自衛心が、俺を縛り付ける)

 

提督(真剣だとわかっているのに、それでも恐ろしく思ってしまう。これは最早呪いだ)

 

提督(以前までならこんな思いをしなかったのに、何故今はもどかしく、胸が締め付けられるような感覚に陥っているんだ?)

 

提督(いつも通りにあしらう気が全く起きないのに、何故迷う必要がある)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いつもの冗談さ。相手にするな』

 

 

『女は嘘を付いてても目が泳がないんだぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(ちょっと黙ってろ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黙る?黙ったら前みたいに素直になれるってか?』

 

 

『無理だな。お前はずっと女を信用しない、できない』

 

 

『お前は純粋な想いを持っていたが、女どもはそんなものに価値を感じないどころか、踏みにじりやがったんだ』

 

 

『それは、お前が一番知っているだろう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...悔しいが、今の俺には、艦娘たちは違うと思える確証が無い)

 

提督(いや、思いたいが、やはり怖いんだ)

 

提督(この恐怖を克服しない限り、俺は過去に囚われたままなんだ)

 

提督(もうあの時とは違う。真剣な眼差しをしてくれる子に...いや、子たちに出会えたんだ)

 

提督(だから、俺も変わらなければならないのは分かってるんだ。後は、変わる勇気を...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「そ、そうか。どうも」

 

村雨「あ...」

 

提督「それなら...もう一杯淹れてくれないか」

 

村雨「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...すまない。ありがとうの一言も、気の利いた事も言えない俺を許してくれ)

 

提督(申し訳ないが、俺にはまだ勇気が足りなかった。例え駆逐艦であっても、俺はまだ、どうしても恐怖を拭いきれなかった)

 

 

 

 

 

提督(笑顔、か...あの日から俺は愛想笑いしかしてない気がする。心からの笑顔なんて、また見せられる日が来るのかわからない)

 

 

提督(やはり、俺はもうダメなのか...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨(真剣に提督の目を見て話してみたけど、とても哀しそうだった)

 

 

村雨(いつも思わせぶりな事を言ってるから、さっきのもいつもの事と思われてそう)

 

 

村雨(でも、今はそれで構わない。いつか、いつか必ず、提督の心を満たせるなら、それで...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「おかえり~。どうだった?」

 

妖精「~」ボソボソ

 

隼鷹「よしよし、よくやったね。今日はアイス奢ったるよ」

 

妖精「♪」

 

青葉「ただいま戻りましたー!」

 

隼鷹「おかえりー。そっちはどうだった?」

 

青葉「とりあえず二人目の詳しい現状を調査してきました」

 

隼鷹「いいね~。あたしは一人目の特定に成功したよ」

 

青葉「お疲れ様です!」

 

隼鷹「ま、奴らがどんな目に遭ってても、あたしは許す気は無いかな」

 

青葉「何にせよ、司令官にバレないように動かないとですね」

 

隼鷹「ま、バレたらそん時は腹括るしか無いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹(勝手に不幸になってもらっちゃ困るんだよねぇ。まだ一つ、大きいものが返ってくるんだから)ハイライトオフ

 

青葉(図らずとも世の中の闇を覗いた気がします。けど、同情は一切ありませんからね)ハイライトオフ

 

 

 

 

 

 

 

 






トラウマはまだ残ってるから、仕方ないね♂



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隼鷹は晴らしたい

 

 

 

 

 

 

 

提督(ここ最近隼鷹を見てないから、俺は急遽秘書艦を変更した。今日は霞だったが、目を潤ませながら怒って出てってしまった)

 

提督(子供とはいえ、女の子の涙を見ると胸が痛むなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「呼ばれて来ました隼鷹でーす!ヒャッハー!」

 

提督「おう」

 

隼鷹「いきなりどうしたのさ提督~。まさかこの隼鷹さまを心配してくれたのかい?愛されてるねぇ」ニヒヒ

 

提督「しばらく見ないから飲んだくれて迷惑掛けてないかと思っただけだ。それとお前、酒臭いぞ」

 

隼鷹「ひ、久々だったからノンアルと間違えちゃったかな?」

 

 

 

 

 

 

 

提督(まさか朝から飲むのか...でもまあ、何も無かったならそれでいいか...)

 

 

隼鷹(参ったね、特定作業に力を入れ過ぎたかな)

 

 

隼鷹(でも、そのお陰で提督が秘書艦に変えてくれたし、青葉の協力もあって元カノどもの情報も揃ったし、結果オーライかな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(何も無かった訳がない。絶対何かあっただろ)

 

提督(まず、隼鷹は酒豪で通ってる。久々だからといってノンアルコールと普通の酒を間違えるはずがない)

 

提督(それと鎮守府にいる以上、顔を合わせる機会はいくらでもある。ましてや隼鷹は頻繁に酒を誘ってくる。それがぱったり無くなったのだ)

 

提督(隼鷹が酒を忘れるぐらい何かに熱中した事は確かだ。何だろう?ゲームとかやってる話は聞かないし、外に出るなら一声掛けるよう言ってあるし、全く思い当たらん)

 

 

 

 

提督(仕方ない、聞いてみるか...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「ん、提督~。手が止まってんよ?」

 

提督「...少し、気になる事があってな」

 

隼鷹「お、なんだい?」

 

提督「お前、ここ最近何をしてた?」

 

隼鷹「...何って?」

 

提督「俺と顔を合わせていない間、何をしてた?」

 

隼鷹「んん...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(今少し言い淀んだな。何かあったの確定)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹(うーん、なかなか意地の悪い質問してくれるねぇ。質問自体は大きく曖昧だけど、核心はしっかり捉えてるような問いだ)

 

隼鷹(そして恐らく、今の提督に生半可な嘘は通じない。こういう時だけ鋭いし、真面目に答えるしかないか)

 

隼鷹(思ってたよりも早い発覚だけど、ここで素直に答えるほど、隼鷹さまは甘くないよ!)

 

 

 

 

 

隼鷹「...それ答える前に、一ついいかい?」

 

提督「なんだ」

 

隼鷹「提督ってさぁ、元カノの事恨んだりしてないの?」

 

提督「...何だと?」ピクッ

 

隼鷹「あたしさぁ、青葉から提督のこと聞いたんだよね。どうしてそれほどの悪意を持てるのか怖くなっちまったよ」

 

提督「...恨んでいるか、だと?」

 

隼鷹「あたしが気になるのはそれだけ。どうなん?」

 

 

 

 

 

提督(やっぱり青葉は話していたか。てことは他の艦娘たちも聞いてるだろう)

 

提督(それなら先日の村雨の件も合点がいく。村雨の厚意が本気である事も確定した)

 

提督(しかし、恨んでいるか、という問いはどういう事だ...?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...俺は、もう恨んではいない」

 

隼鷹「...そう」

 

提督「だが、許してもいない。もっと言うと、どうでも良くなったのかもしれない」

 

隼鷹「どゆこと?」

 

提督「俺はどうやら怒ると相手の事がどうでも良くなるようでな。最初こそ恨んじゃいたけど、今はそんな気が起きようともしない。興味が全く無くなる感じに近いかな」

 

 

 

 

 

提督(そう、許してはいないが恨んでもいない)

 

提督(相手に対し、興味を持たないという事はある意味最も酷いと思う)

 

提督(その相手の経済状況、幸福の度合い、果ては生死に至るまで、何もかもが視界に入らないのだ)

 

提督(かつて関わりのあった相手を赤の他人として見る。後ろめたさも、躊躇うことも無かった)

 

提督(何にせよ、もう終わったことだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「さぁ、俺は答えた。お前はどうなんだ」

 

隼鷹「ん、そうだねぇ。ハッキリ言うと、提督の元カノについて調べてた」

 

提督「んなっ...!?」

 

隼鷹「もう特定も終わってるし、今どうなってるかもわかってる」

 

提督「...」

 

隼鷹「酒を飲むと飲み続けないと集中力が切れちゃうからね。だから初めから飲まずに作業してたってわけ」

 

提督「...青葉から聞いたなら、同情も、義憤に駆られるなと言うことも聞かなかったのか?」

 

隼鷹「聞いたよ。でも、あたしはそれを聞いた上で行動したんだ。だから、命令違反さ」

 

提督「...」

 

隼鷹「処分なら何でも受けるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...うーん、お願いを聞かない子が中にはいると思ったが、まさか隼鷹とはなぁ)

 

提督(つーか特定なんてしてたのか、怖すぎだろ...まさか報復に行くつもりだったのか...?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「何故特定なんてしたんだ?」

 

隼鷹「それは...」

 

提督「報復にでも行くつもりだったのか?」

 

隼鷹「...まあ、そんなもんかな」

 

提督「マジか...」

 

隼鷹「で、でもさ!一人目は男に捨てられて娼婦に堕ちてるし、二人目は結婚詐欺に二、三回遭って借金まみれだからどうすっかなって思ってて...」

 

 

 

 

 

提督(...因果応報というか、見事に男女関係で報いを受けたな)

 

提督(さっきどうでもいいと言ったが、黒い感情が生まれてしまった)

 

提督(ざまぁ見ろ、もっと苦しんでくれないと気が済まない、と)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「正直言うと、あたしはまだ生温いと思ってる」

 

提督「...何?」

 

隼鷹「提督はもっと酷い思いをしたんだから、それ以上の苦しみを味わわないと、割に合わない」

 

提督「...落ち着け」

 

隼鷹「あたしはもう素面だし、落ち着いてるよ。その上で言ってるんだ。止めたいなら軟禁するなり解体...」

 

提督「やめろ!」

 

 

 

提督(隼鷹は目の焦点が合ってないし、明らかに正気じゃない。俺の話を聞いただけでここまで狂えるのか?)

 

提督(それか、外の世界をあまり知らない艦娘だから、何か良からぬものに感化されてしまったのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「解体なんて、しない」

 

隼鷹「じゃあどうすんの?」

 

提督「俺は、報復さえしなければ何も言わない」

 

隼鷹「提督はそれでいいんかい?絶望させるチャンスだったのに」

 

提督「そんな事をしても、俺の過去が覆る事は無いし、お前の手を汚させたくない」

 

隼鷹「そんな甘くていいわけ?あたしはやりたいんだけど」

 

提督「...もう、いいんだ。何もしなくて。俺はお前達が俺の話を真面目に聞いてくれただけで満足なんだ」

 

隼鷹「だからあたしは...」

 

提督「それに、俺は言うことを聞かなくてもいいが、話を聞かないのは嫌いだ」

 

隼鷹「う...」

 

提督「言うこと聞かないのは仕方ない。でも話ぐらいなら聞けるはずだ。話が通じないと何も出来ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹(嫌われる事は覚悟してたけど、面と向かって言われると...ちょっと嫌だなぁ)

 

隼鷹(ちょっと暴走気味になったけど、そこまで言われると...)

 

隼鷹(やっぱ、嫌われたくないなぁ...)ウルッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「...わかった。やめるよ」

 

提督「ありがとう、それでいいんだ。話が本当なら、もう十分に報いを受けてる。隼鷹が思ってる以上に、社会は残酷なんだ。何もしなくても絶望はする」

 

隼鷹「...うん」

 

提督「良く思い止まってくれたね」

 

隼鷹「...ハグ」

 

提督「え?」

 

隼鷹「ハグしてくれたら、もう特定なんてしないし、情報も破棄するから」

 

提督「え、それは...」

 

隼鷹「頼むよ...」ウルウル

 

 

 

 

 

提督(まさかハグを要求されるとは...でも、これで凶行が防げるし、丸く収まると思えば...うーん...)

 

 

 

 

 

提督「...ほら」両手開き

 

隼鷹「...いいのかい?」

 

提督「俺の気が変わらない内に早くしてくれ...」

 

隼鷹「じゃ、じゃあ遠慮なく...!」ギュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(隼鷹やわらか!服越しでもやわらか!)

 

提督(髪の毛とかつんつんしてるから固いかと思ったらすっげぇふわふわしてるし、今酒臭くない。むしろ椿みたいないい匂いする)

 

提督(隼鷹の鼓動を感じる。クッソ速い)

 

 

 

 

提督(いや落ち着け俺。今の状況は他の艦娘に見られるとやばい。特に青葉)

 

提督(もうそろそろ離れなければ...って、ガッチリホールドされてる...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹(流れでハグ要求したけど、酔いが覚めてるからめちゃくちゃ恥ずい!)

 

隼鷹(まあしちまったものは仕方ねぇ!ゆっくり堪能させてもらうぜ!)

 

隼鷹(提督、結構ガッチリしてんな。学生時代も運動してたらしいし、軍学校編入して鍛えたのもあるだろうけど)

 

隼鷹(それに、抱きしめられてわかる。力強くじゃないけど、心から安心できる、優しいハグだ。何からでも護ってくれる、そんな気がする)

 

隼鷹(いつも守る側だからこういうのもいいね...何だか目頭が熱くなってきたし、胸の奥から何か溢れてくるような感じがするよ)

 

隼鷹(これが、心が満たされるって感じなのかねぇ...もう少しだけ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鷹「隼鷹、ちゃんと執務やって...え?」

 

提督「あ」

 

隼鷹「んゆ?」

 

飛鷹「...提督、何故隼鷹を抱きしめてるの?」

 

提督「い、いや、この、それは...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(終わった!飛鷹に見つかった!俺の人生終了!)

 

提督(飛鷹の目は明らかに俺がセクハラしたものとして見てる!俺は通報されて面頬に『忍殺』と書かれた憲兵に連れてかれて介錯されるんだ!)

 

提督(悲しいなぁ、こんなところで人生ゲームオーバーかぁ。今思えばしょうもない一生だったなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛鷹「...提督、何があったかは聞かないで置くわ」

 

提督「へ?」

 

飛鷹「私にも後でやってよね」

 

提督「あ、はい...」

 

飛鷹「それじゃ、隼鷹。サボるんじゃないわよ?」スタスタ

 

隼鷹「わ、わかってんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...何か許された。どさくさに紛れてとんでもない約束をしたような気がする)

 

提督(隼鷹はいつの間にか離れてた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼鷹「ひ、飛鷹もああ言ってたし、執務再開しよっか」

 

提督「...そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







小ネタもここら辺から挟み始めてきます




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妖精乱舞

タグ増えてるので要確認です。







 

 

 

 

 

 

鈴谷「ねーねーどうして鈴谷のこと見てくれないのー?」ズイッ

 

朝潮「朝潮の服装に何か問題でもあったでしょうか!?」ズイッ

 

瑞鶴「提督さん、ずっと目を逸らされると不貞腐れるぞ~」ズイズイ

 

提督「いやちょっと離れて...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(どうしてこうなった...)

 

 

 

 

提督(いや待て、少し整理しよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(事の発端は数時間前、工廠で騒ぎがあったらしい)

 

提督(執務室に明石が駆け込み、俺を工廠へ連れていった。明石は工廠に入らず、俺だけを向かわせた。それが妖精たちの要求らしい)

 

提督(中に入ると、建造装置の上で小さな旗を振り回す妖精たちの姿があった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「けんぞうしろー!」ブンブン

 

妖精「われらをたよれー!」キャ-キャ-

 

妖精「さもなくばきょうりょくしなーい!」ブ-ブ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(どうやら俺が建造しない事に不満を持って一丁前にストライキを起こしていたらしい)

 

提督(改修している妖精たちを見て、自分たちは要らないのかもしれないと不安に駆られたのか?)

 

提督(確かに建造はここのところしていない。現在の戦力でも海域は奪還できてるし、これ以上増やさなくともいいかなと思ってた)

 

 

 

 

 

 

提督(それにこれ以上女性が増えると俺の胃に再びダメージが蓄積するのはほぼ確定しているからやりたくない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ていとくさんはわたしたちがいらないんですね」シクシク

 

妖精「じぶんのことばかりでわたしたちをすてるのですね」シクシク

 

妖精「わたしたちをろとうにまよわせるひどいひとなのですね」オヨヨ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺の心でも読んでるのか君たち。それに好き放題言ってるし。オヨヨとか初めて聞いたよ)

 

提督(でも、例え妖精と言えど泣かせると心苦しいし、艦隊運用に支障が出るのは放っておけない)

 

提督(在らぬ噂を立てられても困るし、建造を許可するしかない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「けんめいなはんだんといえます」ムフ-

 

妖精「ひさびさのけんぞう、さすがにきぶんがこうようします」ムフ-

 

妖精「いまならおもうがままにけんぞうできるきがします」ムフ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(だから心を覗くのはやめろ)

 

提督(てか思うがままに建造って何?何をしようとしてるの?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ていとくさんもきになってるので、せつめいしよう!」ドドン!

 

妖精「かんたんにいうと、ねらったこをけんぞうできるかも」

 

妖精「かくていではないけど、かなりかのうせいはたかいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(もうツッコまんぞ俺は)

 

提督(てかそんな事出来るのか?君たちって気まぐれの具現化みたいなものじゃん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「しつれいな。おこったです」プンスカ

 

妖精「これはおしおきですね」プンスカ

 

妖精「おこらせたことをこうかいさせてやります」プンスカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(お仕置きって何?すっごい嫌な予感がする)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イメージBGM:妖星乱舞

 

 

 

 

 

妖精「ていとくさんのきぼうはききません」

 

妖精「わたしたちがすべてきめます」

 

妖精「きぼう?ゆめ?すくい?そんなものありません」

 

妖精「そんなもの、わたしがすべてはかいする!」ホワ-ッホッホッホ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(やべぇよやべぇよ...このチビどもケフカの真似事してるよ..)

 

提督(てか誰建造するのかぐらいは教えろよ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「いったじゃないですか、きぼうもなにもないです」デデドン!

 

妖精「ていとくさんはおとなしくまってることです」デデドン!

 

妖精「こうそくけんぞうざいもつかわせてもらうです」デデドン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(ダメみたいですね(諦観))

 

提督(仕方ない。逆鱗に触れたのは俺のほうだ。大人しく待つことにしよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「最上型重巡洋艦の鈴谷だよ!」

 

朝潮「朝潮型駆逐艦一番艦、朝潮です!」

 

瑞鶴「翔鶴型航空母艦二番艦、妹の瑞鶴です!」

 

 

妖精「せいこうなのです」ワ-

 

妖精「めでたいです」キャッキャ

 

妖精「あさしおがあらしおだったらかんぺきでした」ウ-ム

 

妖精「つぎはぱーふぇくとをねらいます」

 

 

鈴谷「お、あなたが提督?へぇ~、なかなか良さそうじゃん?」

 

朝潮「司令官、早速ご命令を」

 

瑞鶴「ふーん...ま、これからよろしくね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(あの、一言いいっすか。もう胃が痛い)

 

 

提督(てか近いって。少し落ち着かせてくれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「ねーねーどうして鈴谷のこと見てくれないのー?」ズイッ

 

朝潮「朝潮の服装に何か問題でもあったでしょうか!?」ズイッ

 

瑞鶴「提督さん、ずっと目を逸らされると不貞腐れるぞ~」ズイズイ

 

提督「いやちょっと離れて...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(そして冒頭に至る)

 

提督(君たちなんで初対面の男にグイグイ近寄れるの?だから一回離れてくれ。深呼吸させて。出来れば外で)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「ちょ、どこ行くのー?」

 

提督「そ、外だ」

 

朝潮「そうでしたね。まだここに来て間もないですから、鎮守府を見て回らないとですね!」

 

瑞鶴「案内してくれるの?お願いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(いや何で俺が案内するハメになってるの?俺は深呼吸したい上にとっとと自室に戻りたいの!)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(理由はある。まず鈴谷だ。他の鎮守府との演習で何回か目にしたが、あのイケイケJK感が俺には無理だ。トラウマ再発待ったなし)

 

提督(ある意味如月や村雨、陸奥よりもクリティカルヒットだ。パリィからのメバチ致命みたいなもんだ。俺が慣れる日が来るのか怪しいぐらいだ)

 

提督(いや根はいい子なのかもしれないよ?でもイメージが先行する上にイマドキJKっぽい立ち振る舞いがすっごい苦手。目を合わせるのもちょっと...)

 

 

 

 

 

 

提督(次に瑞鶴。これも鈴谷同様に演習で見かけたことがある。それはいいとして、実際に目の前にすると、なんだこの幼馴染感は!)

 

提督(これは俺の直感だが、この子は気の強い幼馴染ポジションを意図せずして確立している!実際今一番俺の近くで着いてきてるし。距離感が近過ぎると俺の心が先にパンクする。慣れは鈴谷よりかは早そうだが)

 

 

 

 

 

 

提督(そして朝潮だが、この子は別段問題無い。むしろ吹雪みたく真面目ないい子のようだ。この中では安心出来る子と言える)

 

提督(問題はこれで霞が他の姉妹艦の建造を要求してくるかどうかだ。霞は口の利き方が少しアレだが、全部相手を思っての言動だ。きっと長女たる朝潮の為に、妹たちも着任させろと言ってきそう)

 

提督(つまり建造をこれからも行うかもしれないのだ。駆逐艦は最低限の資材で建造できるし、大型艦を弾く事ができるが、今日の妖精みたいに、故意に余計に資材を投入して大型艦を建造するかもしれない)

 

提督(ただの懸念だが、一度疑い出すと止まらない。俺の悪い癖だ)

 

 

 

提督(とにかく、今は誰かにこの子達の案内を任せて、俺は心を落ち着かせたい。今回の心の疲労は、鈴谷:瑞鶴:朝潮=5:4:1ぐらいだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...いや、鈴谷たちは全く悪くないんだ。悪いのはトラウマを抱えている俺だ。歓迎の一言すらないのは流石にまずい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「す、すまない。距離感が近くて驚いただけなんだ。気を悪くさせたならすまない」

 

鈴谷「んん、そういや上官だもんね。ちょっと気が緩んでたかも」

 

朝潮「不用意に近付きすぎましたか!?失礼いたしました!」

 

瑞鶴「ずっと顔色悪いから何かしたのかなって思ってた。ごめんね」

 

提督「いや、いいんだ。改めて、俺がこの鎮守府の提督だ。以後よろしく頼む」

 

鈴谷たち『はい!』

 

提督「あ、案内したいところだが、執務途中だったからな。誰か他の子が居たら...」

 

 

 

 

 

 

 

妙高「妙高、参りました」

 

提督「ひぇっ!?」

 

妙高「新しい艦娘ですね。私が案内致しますので、提督もお戻りください」

 

提督「あ、はい...」

 

 

 

 

 

提督(...妙高さん、呼んでないけど、いつの間に居たの?どこからともなく現れるし、音とか全く聞こえなかったけど)

 

 

提督(え?どうやったの?忍者なの?普通に怖かったんだけど。正直チビりそうだったよ。下手なホラーより怖かった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷(いきなり誰か現れたと思ったら艦娘だった...)

 

朝潮(隠密に秀でた人でしょうか?)

 

瑞鶴(提督さんびっくりしてたし、なんかヤバそうなところに来ちゃったかも...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たに艦娘が加わった!

 

 

 

 

 

 

 

 





小ネタが増えて参りました。

この辺りから好き嫌いが別れてくるものと思います。

原文では提督()の部分は地の文でしたが指摘されて地の文から変更してみました(今更)


もし読みにくいという方が居ましたら検討致します。




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それゆけ頼れるビッグセブン

 

 

 

 

 

 

提督(今日は鎮守府の一般公開日だ)

 

 

 

提督(突然一般公開とか言われてもなんの事だと思われるから俺も一度整理しよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(今の日本は深海棲艦との戦争に何度か勝利を収めている。俺の鎮守府は後方支援という形で参加していたりした。

 

戦況は優勢だが、そういう時に限って、戦争反対だの講和しろだの騒ぐ連中がいる。

 

戦争反対する気分はわからなくもない。流れ弾が当たって死ぬかもしれないし、過去の大戦の苦しさを思い出させてしまうのだろう。

 

でも騒いでるの内陸部の国民ばっかなんだよね。これ気付いたの最近だし、講和しろと言ってんのも同じ。

 

話して解決するならとっくにしてる。それが出来てないから戦争してんでしょうが。バカなんじゃないですかね。

 

更にここにマスコミが参入して、一気に反戦ムードが拡大している。政府は抗戦を続ける姿勢だが、巧みな情報の切り貼りで支持率もゆっくり下がっている。

 

ええ加減にせぇよ。自分らのケツに火が付いてるのに甘んじて燃やされようとするバカがどこにいるんだ。何も知らない奴が語っているところを見ると腹立たしいことこの上ない。

 

 

 

という訳で、海軍は独自にイメージアップ作戦を計画し、鎮守府と艦娘について世に周知してほしいときた)

 

 

 

 

 

提督(そして今日、その日が来たって訳だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...それにしても、だ」カキカキ

 

長門「どうした」カキカキ

 

提督「書類の量が普段の倍以上あるのはどういうことなんだ」ポンポン

 

陸奥「だから今日は私も手伝うって言ったじゃない」カキカキ

 

提督「三人がかりでもまだ多いぐらいだ...」ポンポン

 

 

 

 

提督(普段の書類と、一般公開に関する書類の不足分を押し付けられた。意味わかんないよパトラッシュ...)

 

提督(今日の秘書艦は長門一人だが、あまりの多さに陸奥が手助けにきてくれた。それにしたって多いわ!)

 

 

提督(内容は鎮守府の見取り図とか、艦娘の艤装や資源の詳細、後は人権についてなど。来てくれた人に一枚一枚渡すんだが、思った以上に人が来て足りない分を補充している)

 

 

提督(艦娘の艤装が本人の意思とリンクしていること、資源は艦娘の艤装ごとに消費量が違うが、枯渇するほど大量ではないこと、艦娘自身は人と大して変わらないので、食事等に燃料弾薬ボーキサイトは含まれないこと。これは案内を任せている艦娘たちも説明している)

 

提督(これは自分でも驚いた。各資源の供給が乏しい我が国でも賄えるほど軽かったのだ。流石に長門たち大型艦を出撃させると減りが早いが、それでも大戦の頃と比べれば低コストだった)

 

 

 

提督(人権についてだが、艦娘だからといって蔑ろにしていることは無い。本人が戦場に出たくなくなったら退役させ、その後の社会復帰も保証している。戦線復帰が困難になった艦娘については、妖精を交えた治療に専念させ、その後の生活も不自由の無い程度に保証している)

 

 

提督(つかほとんど一般人と同様に人権を持たせてる。それでも文句言うやつは知らん。お前が代わりに海に出てくれ、と切に思う)

 

提督(戦っているのは彼女たちだ。彼女たちのお陰で国が滅ばなかった。それをよく理解せず文句だけ言う輩は愚かしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「いや、戦っているのは私たちだけではない。提督も一緒だ」カキカキ

 

陸奥「提督の指揮があってこその今日までの勝利よ。だから、自分は違うと思わないで」カキカキ

 

 

 

 

 

 

 

提督(お前たち...いやちょっと待て、何故俺の心を読んだかのように話してるの)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「ふふ、戸惑っているな提督。簡単な事だ。顔に出ているぞ」

 

陸奥「それと、女の勘ってやつかしら?ふふっ」

 

提督(顔に出てるとしても察しが良すぎるだろ。女の勘も何なの。あらゆる波長を捉えてるかの如く万能だな?俺じゃなくて海の上で発揮してくれ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっといいですかー」

 

「何よアンタ!ここは立ち入り禁止って聞いてんでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(ん?何やら騒がしいな。それにあの声...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたし、ここの提督と知り合いなんですけど」

 

「そんなん知らないったら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人は霞なんだが、もう一人が...もしや...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす...あー、やっぱり!」

 

提督「...」

 

霞「ちょ、待ちなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...最悪だ。何故こいつがここに...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと無視しないでよ。忘れちゃった?○○(元カノ2)よ」

 

提督「...」

 

霞「はぁ!?」

 

元カノ2「ちょっとお願いがあって来たんだけどー、二人にしてくれない?」

 

長門「提督は今忙しいんだ。お引き取り願おう」スッ

 

元カノ2「ちょっと退いてよ。提督くんの知り合いなのよ?あたし」

 

長門「知り合いなら事前にアポぐらい取ってくれ」

 

元カノ2「化け物の癖にうるさいわね...」ボソッ

 

長門「...」

 

提督「...長門、陸奥、霞。すぐに終わらせるから待機しててくれ」

 

陸奥「えぇ?」

 

霞「ちょ、あんた!」

 

提督「...大丈夫だ。すぐに終わる」

 

長門「...提督の指示だ。一度執務室を出よう」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(長門が冷静に対応してくれて助かった。陸奥たちは執務室から出させて待機させた)

 

提督(それにしても、何故こいつがここに...まずい、動悸が...)

 

 

 

 

 

提督(落ち着け俺...ゆっくり呼吸するんだ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2「いやー助かったわ。まさかあんたがこんな立派な仕事就いてるなんてね~」ケラケラ

 

提督「...要件は何だ。手短に済ませてくれ」カキカキ

 

元カノ2「もー、昔話ぐらいしてもいいじゃない」

 

提督「...俺は暇じゃない」

 

元カノ2「ふーん、すっかり軍人になったんだ。まあそれはどうでもいいんだけど、あたし、ちょっと今困ってるのよー」

 

提督「...」

 

元カノ2「実は結婚したい人が居たんだけど、結婚資金だけ持ち逃げされて今お金無いの。だから、ちょっと貸してくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...隼鷹の情報は正しかったようだ。黒い感情が渦巻く)

 

提督(大方、他につるんでた連中に金を貸してもらえず、俺が提督になったことを誰かから聞いたか、自分で調べたか...)

 

提督(何にせよ、虫唾が走る。かつて俺を嘲笑った奴が、こうも都合良く縋りつこうとしてくるとは)

 

 

 

 

提督(もうたくさんだ。お前にも、過去にも縛られるのは)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...ここは金融機関ではない。他を当たれ」

 

元カノ2「...は?」

 

提督「何を勘違いしてるか知らんが、ここは鎮守府だ。金を借りるとこではないし、ここは執務室だ」

 

元カノ2「ちょ」

 

提督「それに、今日は執務室付近を鎮守府関係者以外立ち入り禁止にしている。君は部外者だろう。早急にお引き取り願う」

 

元カノ2「...へぇ」ワナワナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...よし、あくまで公人らしく済ませられた)

 

提督(視界に居るとどす黒い感情が湧いてくるんだ。早く出ていってくれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2「...女に囲まれて余裕が出来たっての?きもっ」

 

提督「...何?」

 

元カノ2「毎日毎日化け物に囲まれてイチャイチャしてんでしょ?いいご身分ね」

 

提督「...」

 

元カノ2「女を戦場に出して自分は書類とにらめっこ?馬鹿じゃないの?臆病者」

 

 

 

 

 

 

提督(うーん、交渉決裂で本性出してきたな)

 

提督(それにしても腹が立つ。これ以上はやめてほしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2「はー、あんたってほんと使えないわね。何でこんな奴と罰ゲームと言えど付き合ったのかしら」

 

提督「...」

 

元カノ2「こんな使えない男の為にここまで苦労して来たってわけ?なんだかアホらしくなったわ。やめたら?提督」

 

提督「...何だと?」

 

元カノ2「それか深海なんたらって奴らに殺されれば?保険金で親が喜ぶでしょ?」

 

提督「いい加減にしろ!」グイッ

 

 

 

 

 

提督(勢い余って胸倉を掴んでしまった。俺とした事が、冷静さを欠いている)

 

提督(奴も少し驚いたようだが、すぐに目を向けてくる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2「はっ、何?脅してるつもり?軍人が一般人にやっていいと思ってるわけ?何ならここで悲鳴上げるわよ」

 

提督「...」グググ

 

元カノ2「今すぐ離して、金を用意するなら許してやるわ。早くしなさいよ」

 

提督「...下衆め」グイッ

 

元カノ2「な、何よ!次は暴力!?や、やってみなさいよ!絶対許さないから!」

 

提督「...」拳握り

 

元カノ2「ほ、本気でやるっての!?後悔してもしらないから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2『キャー!助けてー!提督に襲われてまーす!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...もういい、俺はここでケジメを付ける)

 

提督(これで軍を辞める事になっても構わない)

 

提督(俺は人に暴力を振るわないつもりだった。女性なら尚のことだったが、俺には目の前にいる奴が人には見えなかった。こいつは人の形をした何かだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...俺の人生は今終わりを告げる。ありがとう皆。そしてすまない)

 

 

提督(もし叶うなら、新しい提督と幸せになってくれ。俺はこいつを道連れに地獄へ落ちる)

 

 

提督(せめて一発、拳を浴びせないと気が済まないからな。手を汚すのは俺だけでいい)

 

 

 

 

 

提督(俺は渾身の一撃をこいつの顔面にぶち込むべく、拳を振り下ろした)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(でも、一つ思い残すところがあるとしたら、幸せになった皆が微笑むところが見たかったな...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアバ-ン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「その必要は無い、提督」ガシッ

 

提督「...はっ!?」

 

元カノ2「ひっ...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(長門が、俺の腕を掴んでいる。奴の顔面に当たる直前だった)

 

提督(長門は少し呆れたような顔をして俺を見ていた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「提督は手を汚す必要は無い。これ以上、苦しむ必要もな」

 

提督「長門...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(また心を読んだのか君は)

 

提督(だが、今回は助かった。俺は取り返しのつかない事をしそうだった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2「な、何!?目の前で化け物と仲良しごっこ!?気持ち悪いったらありゃしないわ!とっととその汚い手を離しなさいよ!」

 

長門「あなたは少し黙っていてくれ」ギロッ

 

元カノ2「っ...!」

 

長門「提督、ゆっくりでいい。拳から力を抜こう」

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺は言われた通りに手を離した。拳どころか、全身から力が抜け出ていくような感覚がした)

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「まずあなたについてだが、提督に何をしたか全て把握している。私達も聞いてて気分が良いものではなかった。彼の心に付けられた傷跡は深い」

 

元カノ2「は、はぁ!?あの程度の事でへそ曲げてんの!?気持ち悪っ!あんなのはまだ軽...」

 

長門「口の利き方には気を付けた方がいい。お前が提督と執務室で話していた事は全て録音済みだ。それに、今もな」

 

元カノ2「なっ!?」

 

長門「もし貴様が提督を訴えようとしても、この録音データがある限り、勝てる可能性はかなり低い。それよりも、貴様の脅迫まがいの言動が問い質されかねんぞ」

 

元カノ2「っ...」

 

長門「今までの話を聞いて、私たちの心中は穏やかではない。気が変わらんうちに出ていけ」

 

元カノ2「くっ...!」ワナワナ

 

 

 

 

 

 

提督(すっげぇ悔しそうな顔してる。ちょっと気分が晴れてきた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2「な、何よあんたら!化け物の癖に!とっとと死んじまえ!」ドタドタ

 

長門「おっと、一つ言い忘れた」

 

元カノ2「はぁ!?」

 

長門「うちの鎮守府は執務室を訪れた者に対して、所属艦全員で見送るようになっていてな。部外者とは言え、貴様も執務室に来た。皆の見送りに感謝しておけ」

 

元カノ「は...?」ゾクッ

 

 

 

 

 

艦娘たち『...』ギロッ

 

 

 

 

 

元カノ2「ひっ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何このゴミ...)ボソボソ

 

(こんな奴が提督を...)ボソボソ

 

(死ねばいいのに...)ボソボソ

 

(殺しちゃっていいかな...)ボソボソ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元カノ2(な、何なのこいつら...)ブルブル

 

 

 

 

 

 

陸奥「お前」

 

元カノ2「...」

 

陸奥「提督のお陰で助かったこと、忘れちゃダメよ。提督がタクトを振れば、私たちは悪魔にだってなれるんだから」ハイライトオフ

 

元カノ2「...!」

 

 

 

 

元カノ2「...に、二度と来るかこんな吐き溜め!みんな地獄に落ちやがれ!」スタコラサッサ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(はー助かった。マジで助かった。俺まだ生きてる)

 

提督(ずっと冷静な感じを装えた気がするけど、胃はくっそ痛い)

 

提督(つーか金貸してってなんだよ。途中から怒りが限界に達して無関心になったけど、艦娘の悪口言われりゃ更に怒るわ)

 

提督(ああいうのがいるから悲しむ人が増えるんだな...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「提督、ご苦労だった」

 

提督「あ、ああ...」

 

陸奥「アレには警告しておいたわ。多分二度とここには来ないと思う」

 

提督「ああ、助かる...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(長門がほぼほぼメインになってたけど、陸奥もしっかり念押ししてくれてるじゃん。助かる)

 

提督(てか録音とかしてたのか。わざわざ手の掛かる事を...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「そ、それにしても録音してたとは思わなかったよ」

 

長門「陸奥がもしもの時の為に用意していたんだ」

 

陸奥「まあ盗...提督の事を聞いたからなんだけど」

 

 

 

 

提督(何を言いかけたの?嫌な予感がするんだけど)

 

提督(まあいいや。今はそんなこと気にする必要はな)

 

 

提督(それより俺、客人を帰す時、そんな堅苦しいこと決めた覚えないけど?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「嘘に決まってるじゃないか。少し腹が立ってしまってな」

 

陸奥「外で待ってたらみんな来ちゃったのよ。みんな提督の事が気になってたのね」

 

艦娘たち『あはは...』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門(提督が居なかったら私が殺していたな)ハイライトオフ

 

陸奥(盗聴器って言いかけてたわ。危なかった...)

 

艦娘たち(提督の危機を察知したらみんないた...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷(みんなが急に動いたから着いて行ったら凄いことになってた)

 

朝潮(聞いてる時の皆の顔、鬼の形相でした...)ガクブル

 

瑞鶴(この子達を怒らせちゃダメね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(あれが少し腹が立っただけ?人を殺さんとするぐらいの目付きだったよ。恥ずかしながらちょっと漏れそうだったよ俺。何とか踏み止まったけど!)

 

提督(でも、みんな俺に気を遣ってくれたんだな。ありがとう。今になって震えてきちまった。恥ずい)

 

 

 

提督(それにしても、少し疲れた...)

 

 

 

提督(視界が揺れる...)

 

 

 

 

提督(体に力が...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥「あ、提督!?」ガシッ

 

長門「ど、どうした提督!?」

 

陸奥「医務室へ連れていくわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、何かに抱えられているような気分だ...

 

あたたかい何かに包まれているようだ...

 

 

眠くなってきた...

 

 

 

 

 

 

 

おやすみ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





遅くなってすいません

前半の提督くんの説明がまるで今の日本みたいだぁ(直喩)


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提督は夢を見て



タグをよく見てからほんへを見よう(注意喚起)







 

 

 

 

 

 

 

 

軍医「...心労による一時的な気絶ですね」

 

長門「ほ、本当か!」

 

陸奥「ちゃんと目が覚めるわよね!?」

 

軍医「勿論です。まあ本人の具合にもよりますが、明日か明後日には起きると思いますよ」

 

長門「よ、よかった...」ヘナヘナ

 

軍医「それにしても、気絶するぐらい精神的なダメージが急に来たような症例ですな。何かあったので?」

 

陸奥「それは...」

 

長門「陸奥、私が話そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

事情説明中...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍医「成程、PTSDの要因となった人が来たのですね。それは気の毒に...」

 

長門「...その、提督の病が治る事は...」

 

軍医「正直に言いますと、心の病や精神病は症状を和らげる事は出来ても、完治は非常に難しいのです。現代でも、精神病は未だ開拓期にありますので、わからない事が多いんです」

 

長門「...そうですか」シュン

 

軍医「ただ、彼の場合はトラウマの要因となる人物を接触させず、隔離させること。これだけは絶対です。例え向こうから来たとしても、彼の耳に入れないこと」

 

陸奥「...了解です」

 

軍医「後は、そうですね...トラウマを引き起こす言動は控え、彼の心が開くのを待つしかありませんね」

 

長門「...やはり、時間で解決するしかありませんか」

 

軍医「投薬治療もありますが、先程言ったように、現状では精神病の完治が難しいので、生涯薬に付き纏われる事になるかもしれません。結局のところ、時間と環境で解決するしかないですね」

 

長門「...わかりました。ありがとうございます」

 

軍医「それでは、お大事に」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...ここは、何だ?真っ白な空間だ。

 

この布団も真っ白だ。俺は寝ていたのか?

 

 

...辺り一面、何も無い。白しか目に入らない。

 

なんだか寂しい場所で目覚めてしまったようだ。

 

 

とりあえず起きて、辺りをうろついてみよう。幸い、服は着ているようだ。

 

 

 

おーい!誰か居ないかー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「...だそうだ」

 

吹雪「じゃ、じゃあ司令官は、無事なんですね!?」ポロポロ

 

長門「命に別状は無いとのことだ」

 

吹雪「よ、よがっだぁぁぁ」ウワ-ン!

 

磯波(す、凄い泣きっぷり...)

 

 

飛龍「それにしても明日か明後日かぁ。短いんだろうけど提督と話せないのは寂しいなぁ」

 

隼鷹「はーつまんな。酒飲んでくるわ」スタスタ

 

飛鷹「あ、待ちなさいよ!」ドタドタ

 

妙高「...」

 

羽黒「あ、あの、姉さん?止めなくていいんですか?」

 

妙高「...今日は見逃します。実のところ、私も自棄酒したい気分だから」

 

羽黒「ど、どうして?」

 

妙高「提督の御身を守れなかった自分が不甲斐ないんです。青葉さんから提督の状態を知っておいて、私は侵入を許してしまったんですから」

 

霞「それは、私のせいよ。私がしっかり締め出さなかったのが悪いの」

 

陸奥「二人ともそこまで。自分を責めちゃダメよ。きっと提督も望んでないから」

 

妙高「...はい」

 

霞「...はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「ところでさー、提督の看病ってどうするの?」

 

艦娘たち『!』ピクッ

 

蒼龍(あっ、やば)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に何も無い。誰とも会わない。なんだこの空間は。

 

 

 

 

 

 

 

「~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?何か聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

下から聞こえてくるな。それも近い...

 

 

 

 

 

 

 

妖精「~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、君か。ズボンにくっついてたのか。

 

すまない。近すぎて気付かなかった。

 

 

 

 

 

妖精「ていとくさんはおんなのこをむししたのです。ひどいのです」シクシク

 

 

 

 

 

無視じゃないから。気付かなかっただけ。

 

だから泣かないでくれ。こっちも泣きたくなる。

 

 

 

 

妖精「ん?いまなんでもするっていったよね?」

 

 

 

 

言ってねーよ!難聴にも程があるわ!

 

 

 

 

 

妖精「わたしたちとあそんでくれるなら、ゆるしてあげます」

 

 

 

 

 

...な、なんだ。それぐらいなら...ん?

 

 

私、たち?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

睦月「提督の看病は私たち睦月型がやるにゃし!」

 

時雨「ここは村雨と僕がやる」

 

五十鈴「馬鹿ね!長良型がやるわ!」

 

長良(ちゃっかりしてるな~)

 

酒匂「ぴゃあ!酒匂もやる!」

 

羽黒「わ、私が看病、します!」カオマッカ

 

飛龍「ここは二航戦の出番でしょ!」

 

 

 

ギャ-ギャ-

 

 

 

 

 

 

 

 

明石「遅れてきたけど、なんだか偉いことになってますねー」

 

朝潮「すごいやる気ですね」

 

鈴谷「提督ってば愛されてるね~」

 

吹雪「あれ、皆さんはいいんですか?」

 

瑞鶴「あの人たちに敵う気がしないからパス」

 

明石「私もまだ整備が終わってないんで...」

 

霞「私たちは哨戒に行くわ」

 

霰「...霰も、なのね」シュン

 

長門「私も参加したいところだが、執務が心配だな」

 

吹雪「それなら、私がやりますよ」

 

長門「いいのか?」

 

吹雪「司令官が起きた時に大量の書類が残されてたら、また倒れちゃうかもしれませんから」

 

吹雪(看病も捨て難いけど、執務をした方が褒めてくれそう」

 

磯波(吹雪ちゃん...心の声がダダ漏れ...)

 

長門「だが、一人ではきついだろう。私もやる」

 

吹雪「いいんですか?」

 

長門「私も、認められたいからな」ボソッ

 

 

 

陸奥「はーい静かに!ここで騒いでても進まないからくじ引きで決めるわよ!参加する子は集まって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

睦月「やった!当たった!」アタリ

 

如月「さすが睦月ちゃんね♪」

 

弥生「嬉しい...です」

 

卯月「やったぁ!看病できるぴょん!」

 

羽黒「そ、そんな...」ハズレ

 

妙高「...今回は退きましょう、羽黒」

 

五十鈴「と、当然よね!」アタリ

 

長良(五十鈴グッジョブ!)

 

酒匂「酒匂も当たり?やったね!」アタリ

 

蒼龍「えー?はずれちゃったよー」ハズレ

 

飛龍「そんな~!?」

 

時雨「幸運艦と言われた僕が...」ハズレ

 

村雨(か、看病出来ないなら他で何とか...!)

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥「...」ハズレ

 

長門「陸奥...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ひさびさにあそべます。ていとくさんとあそべます」

 

妖精「ゆめのなかにはいりこんでせいかい」

 

妖精「めざめるまで、かーにばる!」

 

 

 

 

ちょ、ちょっと待て。なんで君たち俺の夢にまで干渉してんの。

 

てかこれ夢か!それなら納得するが、妖精が自由過ぎて怖い。

 

 

 

 

 

 

 

妖精「おそれることはない、ていとく」キリッ

 

妖精「わたしたちはあなたとともにある」キリッ

 

 

 

 

 

 

 

何をカッコよく言ってんのか知らないけど、夢の中まで俺をかまうのはやめろ!

 

それと一人だけまだケフカの格好してて嫌な予感しかしないから!

 

 

 

 

 

 

 

妖精「おっとしつれい。ぬぎわすれました」

 

妖精「ていとくはしんぱいしょうなのです」

 

妖精「もっとあんしんしてわたしたちとあそぶです」

 

 

 

 

 

 

君たち前科あるから安心出来ないのわかってるのかな?

 

てかもう起きたいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

妖精「そうはさせません」

 

妖精「わたしたちがまんぞくするまであそぶです」

 

妖精「てはじめにおにごっこです」

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼ごっこ?なんだ、余裕じゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「わたしたちだけとおもわないことです」

 

妖精「みんなしゅうごうするです!」ピ-!

 

 

 

 

 

 

 

 

...俺は目を疑った。

 

妖精が口笛を吹くと、四方八方から妖精が飛んできた。

 

俺は逃げる間もなく捕まった。

 

 

 

いや無理だろ。物量で負けてんだから。

 

 

 

俺は捕まってガリバーみたいになってるし、何したいのこの子達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「うえからくるぞ!きをつけろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

警告おせぇよ!もう捕まってっから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

睦月「提督のベッドだけだとみんな入らないのね」

 

五十鈴「五十鈴たちも入るとしたら、もう一つベッドを付けるしかないわね」

 

酒匂「一回司令を動かすしかないね。慎重に...」ピャ-

 

長良(司令官起きた時にめちゃくちゃ驚きそうだけど、大丈夫かなぁ)

 

如月「は、早く寝たいわ...♪」ハァハァ

 

弥生「場所は...じゃんけん...」

 

卯月「みんな必死ぴょん...」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして...

 

 

 

 

 

 

弥生「や、やった...です...!」右側胸

 

睦月「弥生ちゃん、一緒にゃし!」左側胸

 

五十鈴「ま、まあいいんじゃない?」右腕

 

長良「勝利勝利!」左腕

 

如月「...添い寝できないよりかはマシだから!」右足

 

卯月「それでも、あんまりぴょん...」左足

 

酒匂「えー!?酒匂は?どこ?」

 

五十鈴「残念だけど、空いてる所は無いわ」

 

酒匂「そんなー!」

 

五十鈴「...まあ、探しなさい。おやすみ」

 

酒匂「ぴゃあ...」キョロキョロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリバーと化した俺は妖精に運ばれている。

 

どこに連れていこうとしてるの君たち。すっごい怖いんだけど。

 

 

 

 

妖精「ここではないどこかへ」

 

妖精「むげんのかなたへ」

 

妖精「これが、かけおち」

 

 

 

 

 

 

 

何を言ってるのこの子たちは。しかも駆け落ちじゃねぇよこれ。拉致だよ。

 

それに夢の中だしどこにも行けねぇだろ。

 

 

 

 

 

 

 

妖精「まあじょうだんはおいといて、ていとくさんとおはなしがしたいです」

 

妖精「ていとくさんのほんねがききたいです」

 

妖精「かんむすのみんなも、わたしたちもきになってます」

 

 

 

 

 

 

 

急展開だね君たち。少し雑過ぎない?

 

てか話すだけなら俺を離してくれ。話はそこからだ。

 

 

 

 

 

 

 

妖精「れんぞくだじゃれはさむいです」

 

妖精「ふぉろーのしようがありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

やかましい!とっとと離せ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「で、何を話すんだ」←解放済み

 

妖精「ていとくさんはかんむすたちのことがすきですか?」

 

提督「いきなりクライマックスだな!もう少し導入とか無いのかよ」

 

妖精「ないです」

 

提督「即答か...そうだな。好きと言っても、まだ上司と部下として、と言ったところだ。異性としては、その...」

 

妖精「そうでしたか」

 

提督「...お前達が思ってる以上に、これは面倒な状態なんだ。だから、まだお前達が望む『好き』は言えない」

 

提督「だが、必ず...いつか必ず、彼女たちに心を開けるようにしてみせる。それだけは、本気だ」

 

 

 

 

 

 

妖精「それがきけただけよかったです」

 

妖精「ていとくさんはとてもやさしいひと。あのとき、ていとくさんをえらんでよかったです」

 

提督「あの時?」

 

妖精「ていとくさんがひどいめにあったあと、わたしたちがみえるようになったときです」

 

妖精「わたしたちはこころからやさしく、つよいひとをさがしていました」

 

妖精「そのようなひとでないと、かんむすたちをまかせられません」

 

提督「...なんだその基準。そんな奴ならどこにだって...」

 

妖精「ひとはこころのおくにいやらしさがあります。くちではちがうといっても、ほんとうはみかえりをもとめるひとばかりです」

 

妖精「でも、ていとくさんはそれがいっさいなかったのです。とてもきれいで、じゅんすいなこころをもったひとです」

 

妖精「ていとくさんはきずついていても、やさしさをわすれていなかった。そんなていとくさんだから、わたしたちもすきになったのです」

 

 

 

 

 

提督(え、何この展開。いきなりシリアスになった)

 

提督(内容は、ナオキです...じゃなくて、いろいろ驚かされるばかりだ)

 

提督(フラれて心を病んでた俺をわざわざ選んだのは、そういうことだったのか。あの時は本当に頭がダメになったのかと思ったぞ)

 

 

 

 

 

提督(でも、なんだかむずかゆい気持ちになる。俺の心が妖精に認められたこと。即ち、俺の理念は無駄じゃなかったという事だ)

 

 

提督(それだけで、嬉しかった。このむずかゆい感情は、嬉しさだったのだ。トラウマを抱え、長らく忘れていた気持ちだった)

 

 

 

 

 

 

提督(それを聞いて、救われた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「なかないで、ていとくさん」

 

提督「あ、あれ?」ポロポロ

 

妖精「ていとくさんはしあわせになれます」

 

提督「そ、そうなのか?」ポロポロ

 

妖精「わたしたちが、やくそくします」

 

提督「...そうか、そうか...!」ボロボロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(なんで涙を流してるのかわからない)

 

提督(止めようとしても止まらない。いや、止めようとも思えない)

 

 

提督(ただ、溜まってたものが流れ出るかのように、俺は泣いていた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「さて、わたしたちはまんぞくしたので、そろそろていとくさんをおこします」

 

 

 

 

提督(...ん?)

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「みんながていとくさんをしんぱいしてます。はやくおきるです」

 

 

 

 

 

 

 

提督(...んん??)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ようせいじるしのめざましどけいです。すぐにおきられるようにせっとします」

 

 

 

 

 

提督「ちょっと待て」

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「まちません」カチッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精アラーム『ヌゥン!ヘッ!ヘッ!

 

ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛

ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!

 

ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!!

 

フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!!

フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!!(大迫真)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

提督「だから展開変えるの雑なんだよぉぉぉぉぉぉ!!!.....(フェードアウト)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「ウ-ン...ウ-ン...」ウナサレ

 

 

 

提督「...はっ!?」パチッ

 

 

 

 

提督(な、何だったんだ、あの夢は...)

 

提督(最後のアラームがクッソうるさくて、それで...)

 

 

 

提督(...ん?なんか体が重い...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五十鈴「zzZ」右腕抱き着き

 

長良「ん...」左腕抱き着き

 

弥生「んへへ...」右胸枕

 

睦月「にゃしぃ...」左胸枕

 

如月「んふぅ...」右足抱き着き

 

卯月「むにゃ...」左足抱き着き

 

酒匂「ぴゃん...」腹抱き着き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は状況を理解出来ず、再び寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 








本性表したね(恍惚)





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艦娘たちは心配で仕方ない

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺が二度寝をかました時も夢を見た)

 

提督(妖精が見えた瞬間俺は反射的に目を覚ました)

 

提督(奴ら俺をスタンバってたよ。怖かった)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(それと、一度目の目覚めとは違う点があった。

 

 

二度目の目覚めは、艦娘たちが全員俺のベッドを囲んでいた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「し、司令官!おはようございます!」ブワッ

 

妙高「おはようございます、提督」

 

蒼龍「提督、気分はどう?」

 

飛龍「目眩とかしない?悪い夢とか見なかった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(うーん、アレはどちらかというと悪い方だった。最後のアレで全部台無しになった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「おのぞみならつくりますよ」

 

 

 

 

 

 

提督(やめろ!てかお前居たのか!

 

人の夢の中で好き放題した挙句変なものまで作ろうとしやがって!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...まあ、あまり良くなかったかな」ツマミ

 

妖精「うわー、やめてー」

 

飛龍「あ、妖精さんいじめちゃダメだよ?多聞丸に怒られても知らないよ?」

 

提督「俺はこいつらにいじめられたんだが...」

 

飛龍「まさかー?妖精さんって人見知りが激しいから、提督ぐらい懐いてるのって珍しいのよ」

 

提督「懐く...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(いや懐くとかそういう話以前に俺とんでもない思いしてるから。君たちもあのアラーム聞けば分かるよ)

 

 

提督(しかし、これ以上妖精になにかしたら、弱いものいじめとか言われるかもしれない。今回はこれで許してやる)

 

提督(それに、不思議と艦娘たちと目を合わせても、特に不安な気持ちにならない。一応、夢の中で妖精に俺の思いが認められたから、精神的に余裕が出来たのかもしれない。

 

それを含めて、これでチャラだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ようせいかうんせりんぐはいつでもおーけー」

 

妖精「こうかはばつぐんだ!」

 

妖精「しんらいとあんしんのようせいじるし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(どっから出てきたの君たち。もう妖精印とか信用してないからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...さて、気分も悪くないし、そろそろ出よ...」

 

吹雪「病み上がりが一番危険ですから、今日は一日休みましょう!」

 

提督「いや、書類とか...」

 

吹雪「今日も私と長門さんで何とかします!」

 

提督「そ、そうだ。長門たちを見ないが、どうかしたのか?」

 

吹雪「長門さんたちはまだ寝ています。書類を徹夜で処理してましたから...」

 

 

 

 

 

 

提督(マジか。すっごい申し訳ないんだけど。

 

昨日の件だけでダウンしたのが恥ずかしく思える。さすがビッグセブンと言ったところか。

 

何かお礼でも考えとかないと)

 

 

 

 

提督(ん?今日も?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「ふ、吹雪、まさかお前も書類を?」

 

吹雪「え、どうしてわかったんですか?」

 

提督「さっき、今日もって言ったから、吹雪も徹夜したのかなって」

 

吹雪「...はい。でも、無理はしてませんよ。司令官の事を思ってたら、自然と目が覚めてました」

 

 

 

 

提督(なんてこった。吹雪まで俺の仕事を肩代わりしてたのか。本気で申し訳ない。

 

三人にはそれなりの埋め合わせを用意しないと...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間宮「失礼します提督。朝食を...」

 

 

 

 

 

 

提督(医務室に間宮さんが朝食を携えて来てくれた。何か目元が赤いけど、何かあったのかな?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「あ、ありがとう間宮さん」

 

吹雪「私も朝ご飯食べないと!それでは司令官、お大事に!」スタスタ

 

提督「お、おう」

 

 

 

 

提督(吹雪も去り際によく顔を見たら目元が赤かった。まさか...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間宮「提督、お身体の方は...」

 

提督「あ、ああ、問題無いよ」

 

間宮「本当...ですか?」ウルウル

 

提督「だ、大丈夫だから。ほら、食欲も...」モグモグ

 

間宮「あ、無理はなさらないで...」

 

提督「ほら、ちゃんと食べられるし、いつもみたいに美味しいですよ」

 

間宮「あ...」ポロポロ

 

 

 

 

 

提督(朝食の献立は白米に味噌汁、焼き鮭の切り身と浅漬け。シンプルだが日本らしい朝食だ)

 

 

 

提督(うん。めちゃくちゃ美味しい。朝の味噌汁はまた格別だ。こういうところは日本に生まれて良かったと思ってるよ。

 

 

でも、あの、間宮さん?そんな泣かなくても...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間宮「提督...本当にご無事なようで、よかったです...」ポロポロ

 

提督「ちょ、ハンカチでも...」

 

間宮「青葉さんから提督の昔の話を聞いて、不憫に思えて...とても悲しくなって...」ポロポロ

 

提督「あ、それならもう...」

 

間宮「それに、昨日突然倒れたと聞いて、心配で心配で、夜も眠れなくて...」ポロポロ

 

提督「あ、あの、間宮さん、ハンカチを...」スッ

 

間宮「私、食堂に居るだけで、何も提督にしてあげられないのかなって...」ポロポロ

 

 

 

 

 

提督(うーん、間宮さん泣きじゃくって聞いてないのかな)

 

提督(話聞いてみると俺が死にかけたみたいな捉え方されてるように思える。大袈裟過ぎますって...

 

とりあえず、安心させないと...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「ま、間宮さん、落ち着いて」手を取り

 

間宮「ひっ!?ひゃ、ひゃい!」ビクッ

 

 

 

 

 

提督(...え?俺なんで手を握ってるの?

 

間宮さんもビビってたし、これ完全にやっちまったやつだ)

 

 

 

提督(...あれ?いつもなら手が離れるのに、今は違う?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「とりあえず、落ち着いて下さい」

 

間宮「は、はい...」グスッ

 

提督「さ、さっきも言いましたが、今の俺はもう大丈夫です。気分も悪くありませんし、昔の事はあまり気にしないで下さい」

 

間宮「はい...」

 

提督「心配してくれてありがとうございます。朝食も美味しかったです」

 

間宮「てい...とく...」ポロポロ

 

提督「あ、泣かないで...」アタフタ

 

間宮「よがっだですぅぅぅ!」ウワ-ン!

 

提督「え、ちょ、ちょっと...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞「司令官、起きて...ってあんた!何してんのよ!」

 

提督「oh...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(間宮さんは落ち着くと、来た時よりも顔を赤くして出ていった)

 

提督(霞はずっとジト目で見てくるし、後から来た霰と朝潮は霞の真似をしている。

 

いや真似してないで止めてくれよ。可愛いけど)

 

 

 

 

 

 

 

霞「このクズ!落ち着かせるどころか泣かせてどうすんのよ!」

 

提督「す、すまない」

 

霞「間宮さんはずっと司令官の心配してたの!もっと不安を和らげる話し方とか出来ないの!?」

 

提督「...すまない」

 

 

 

 

霰「霞ちゃん、そこまで」ゴツン

 

霞「あいた!」ヒリヒリ

 

霰「司令官、哨戒から戻りました。敵艦との交戦は無しです。吹雪ちゃんたちにも、報告しました」

 

提督「そ、そうか。お疲れ様。ところで朝潮は?」

 

朝潮「司令官の容態が気になったので」

 

 

 

 

 

提督(ヒートアップ中の霞を止めるとは、なかなかの強者...じゃなくて、俺が寝てる間に哨戒してくれてたのか。本当に働き者だなぁ)

 

 

 

 

提督(基本的に夜は皆寝かせてるから真夜中の哨戒なんて怖くて仕方なかっただろうに...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「ありがとう霰。よくがんばったね」ナデナデ

 

霰「んちゃ...」ンフ-

 

提督「朝潮もがんばったね」ナデナデ

 

朝潮「あ、あの、朝潮は行ってないです。だから、その...」

 

提督「あ、ご、ごめん」

 

朝潮「あ...」シュン

 

霞「...」ドキドキ

 

提督「あ、霞もご苦労だった。ほら、間宮券」スッ

 

霞「は、はぁ!?そこは頭撫でる流れでしょ!?」

 

提督「えぇ...?」

 

霞「な、何よその反応!」ウガ-

 

提督「だってお前、最初に頭撫でようとしたら、気安く触るなって言ったから...」

 

霞「~!」ポカポカ

 

提督「痛い痛い。マジで痛いよ...」

 

霞「も、もう知らないったら!」ドタドタ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...俺、またやらかしたのか?

 

前に言われた事を守っただけなんだが...)

 

 

 

 

 

 

 

 

霰「ごめんなさい、司令官。霞は、素直じゃないから、本当は、司令官が大好きで、甘えたいの。許して、あげて」

 

提督「あ、ああ。元より責めてないよ」

 

霰「よかった。次は、撫でてあげて。口ではいろいろ、言うだろうけど、本当はすごく、嬉しいと思ってるから」

 

提督「そ、そうか」

 

霰「それじゃ、失礼しました」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(霰からアドバイスを受けたが、半信半疑といったところだな)

 

提督(確かに以前よりかは良くなったが、依然言葉に棘がある。まだ認められてないのだろうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...あれ、朝潮は行かないのか?」

 

朝潮「...司令官は、その、何か成果を上げると、頭を撫でてくれるのですか?」

 

提督「え?」

 

朝潮「先程は勘違いで撫でて貰いましたが、私も哨戒に出ていれば、あのまま撫でていましたか?」

 

提督「ま、まあそうだな。でも、成果は特に問わないし、あれは労いのほうが正しいかな」

 

朝潮「それは、皆にもやっているのですか?」

 

提督「いや、駆逐艦の子だけだよ。軽巡から上の子たちは間宮券を...あ、明石は例外かな」

 

朝潮「...もし、大型艦の人たちが望むなら、頭を撫でたりしますか?」

 

 

 

 

 

 

提督(どうしたのこの子。何の意図があるんだ?)

 

提督(でも、朝潮はここに来たばかりだし、いろいろ疑問に思うのは無理ないか)

 

提督(実際、軽巡以上の大型艦の艦娘たちは裏があると俺が思ってただけだからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...皆が望むなら、ね」

 

朝潮「そうですか!なら、次はこの朝潮も哨戒に向かいます!戻ったら、その時に改めて、頭を撫でて欲しいです!お願いします!」

 

提督「あ、うん」

 

朝潮「それでは、お大事に!」スタスタ

 

 

 

 

 

 

提督(まだ来て間もないのに皆の事を思っているのか。感心するなぁ)

 

提督(そういや帰投時の報告も申告ありだったのは五十鈴と霞だけだったな。今と昔は違う事もあるだろうし、また聞いてみるか)

 

提督(何か妙に前向きな気分だし、俺からも歩み寄らないとな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉「青葉、聞いちゃいました!」←扉越し

 

 

青葉「朝潮ちゃんのお陰で、思わぬ所で重要な情報をゲットしました!これは皆に知らせないと!」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(ん?何か寒気がしたな)

 

 

 

 






目力アラームの効果は絶大






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レッツゴー睦月型

 

 

 

 

 

 

提督(体調の戻った俺は執務を再開した。俺がいない間に頑張ってくれた吹雪たちに何かお礼を用意したいと言ったら、口を揃えて頭を撫でて欲しいと言った)

 

提督(吹雪は難なく出来たが、長門たちは若干の抵抗があった。しかし長門たちは嫌の一言も無く頭を撫でられていた。三人とも体の周りにキラキラした何かが纏っていた)

 

 

提督(間宮さんのアイス程じゃないが、今なら何でもできる気がする。これも口を揃えていた。俺はそれが虚言に思えないぐらいの自信を感じた)

 

提督(三人の目を見たら、すごいギラギラしてんだよ。やる気スイッチを押し込みすぎてオーバーロードしたかのようだった。正直ちょっと引いた)

 

 

 

 

 

 

弥生「ん、司令官...手が止まってます...」

 

提督「あ、ああ」ナデナデ

 

弥生「ん...」トロ-ン

 

 

 

 

提督(そして、今日の秘書艦である弥生も、頭撫で撫でを要求してきた。撫でている間の書類処理が格段に早い。ながら充電してるみたい)

 

 

 

 

長良「お呼びですか!?」

 

 

 

 

 

提督(いや呼んでない。てか君今遠征中のはずなんだけど)

 

 

 

 

弥生「司令官?どうかしましたか?」

 

提督「ん、ああ、なんか長良の声が聞こえた気がしてな」

 

弥生「司令官。今は弥生が秘書艦です。だから今は弥生に集中して下さい」

 

提督「ん?」

 

弥生「また、手が止まってます」ムスッ

 

提督「お、怒らないでくれ。配慮が足らなかった」ナデナデ

 

弥生「んん...もう怒ってないです...///」トロ-ン

 

 

 

 

 

 

提督(弥生もだいぶ変わった。以前は表情の差が分からなかったが、今はとてもわかりやすい)

 

提督(どのぐらい分かりやすいかというと、赤身と大トロぐらい違う。わかる人にはわかるんだ)

 

提督(とにかく、トロ顔を見せてくれるぐらい弥生は変わった。それでも執務はクッソ早い。どうなってんのこれ...)

 

 

 

 

 

睦月「提督の体からテイトクニウムっていう不思議な成分が出てるにゃし!」

 

如月「テイトクニウムはシレイニウムとも呼ばれてて、艦娘に対してリラックス効果があるの♪」

 

卯月「シレイニウムは一分間触れるとコンデション値が1上がるぴょん。普段はコンデション値49ぐらいだから、51分間触れていればMAXになるぴょん」

 

 

 

 

提督(また幻聴が聞こえる...って思ったら今度は本物が居たよ)

 

提督(いつも思うけど妖精含めて君たちいつから居たのってぐらい突然現れるよね)

 

提督(てかテイトクニウムってなんだよ。出汁か?)

 

 

 

 

 

睦月「弥生ちゃん!ずっとなでなでは羨...じゃなくて卑怯にゃし!」

 

弥生「ここは譲れません」トロ-ン

 

如月「トロ顔のまま一航戦の真似をされてもねぇ」

 

卯月「なら、うーちゃんはここをいただくぴょん!」ピョン!

 

提督「あ、おい...」ドサッ

 

卯月「うーちゃん、感激~♪」膝の上

 

如月「あ、それなら如月、ここがいいかな♪」あすなろ抱き

 

睦月「睦月はここ!」片腕抱き

 

 

 

 

 

提督(今執務中だよな?何で俺遊ばれてるの?)

 

提督(卯月も如月もホールド結構強いっすね。ちょっと息苦しいぞ。睦月は腕に抱き着いてずっとすりすりしてる。ペン持つと服汚しちゃうかもしれないから持てない)

 

提督(そして弥生は...)

 

 

 

 

 

 

弥生「...」ハイライトオフ

 

 

 

 

 

提督(あーこれ激おこだわ。すっごい威圧感。某宇宙の帝王を彷彿とさせるよこれ)

 

 

提督(これ気を抜けばどっかの王子みたく光線で急所一突きされる。多分)

 

 

 

 

 

弥生「...みんな、一旦離れて」ギロッ

 

睦月「もう少し待って弥生ちゃん。テイトクニウムがまだ...」

 

弥生「離 れ て」

 

睦月「...もう、わかったにゃし」パッ

 

弥生「如月ちゃんも、卯月も。特に卯月は今すぐ」

 

如月「...はーい」

 

卯月「そ、そんな怒らないでぴょん...」ブルブル

 

 

 

 

 

提督(いや俺も卯月と同じぐらいビビってる。女の子と思えないくらい重い威圧感だよ。まるで戦闘中みたいだ...)

 

提督(なんか不穏な空気だし、ここは俺が変えねば!)

 

 

 

 

 

提督「な、なあ弥生?そこまでムキにならなくても...」

 

弥生「...ん、そうですね」

 

提督(あら?ダメなフラグだと思ってたが、すんなり聞いてくれたな)

 

弥生「でも、弥生は少し怒っています。これは、卯月みたいに膝に乗せて貰わないと許せない気がします」ムスッ

 

提督「な、なんだ。それぐらいなら...ほら」ヒョイ

 

弥生「あ...///」

 

 

 

睦月(羨ましいにゃし)

 

如月(秘書艦はそういうことも出来るのね...)フム

 

卯月(まさかうーちゃん、布石にされたぴょん?)

 

 

弥生「みんな、今は仮にも執務中です...だから、終わったら、また抱き着きましょう」トロ-ン

 

睦月「にゃるほど...」

 

如月「...確かに、それなら文句は無しよね」

 

卯月「それならそうと言って欲しかったぴょん...」

 

提督(いや俺の膝の上で言っても説得力無いぞ...)

 

 

 

 

 

提督(その後、膝の上で弥生を撫でながら執務を続け、予定より早く終える事が出来た)

 

 

 

提督(執務の終わりが近くなると、睦月たちは突然準備体操をしてクラウチングスタートの姿勢になった。見てて真顔になったよ)

 

 

提督(そして執務終了と同時にダッシュ!俺に激突!俺は椅子から転げ落ちた。幸い後頭部は打たなかったが、それでも痛かったよ君たち)

 

 

提督(膝の上にいた弥生にはマウントを取られ、両手は睦月と卯月にホールド、如月は膝枕をした。みんなほんのり甘い香りがした)

 

 

提督(カーペットがあるとはいえ、流石に地べたは好ましくないので、ソファに移って同じ状態になった。みんなキラキラしてた)

 

 

提督(果たしてテイトクなんたらとかシレイなんたらが実在するかは知らないが、俺への接触が彼女たちにとって何かしらのメリットをもたらす事はわかった)

 

 

 

 

 

提督(でも次から他の子が来たらすぐにやめてね。あの後妙高と羽黒が来て、目を潤ませ、下唇を噛みながら立ち去っていったよ。何故か俺は罪悪感に苛まれた。辛い)

 

 

 

 

 

 

 

提督(あと、何故か青葉にこの出来事が全て筒抜けだったらしく、的確に問い詰められた時はめちゃくちゃ怖かった(小並感))

 

 

 

 

提督(これからスキンシップが増えてきそうな予感がして、胃がキリキリした俺は半日休んだ)

 

 

提督(情けないが、果たして俺は彼女たちに安心して心を開ける日が来るのか...?)

 

 

 

 

 

 

 






スマブラのお陰で遅れました(責任転嫁)


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甘えたい妙高とハグハグ羽黒

 

 

 

 

 

 

 

提督(突然だが、俺は今執務室ではなく、妙高たちの私室にいる)

 

提督(いや、無理やり連れ込まれた)

 

 

 

 

 

 

提督(ちなみに今日の秘書艦は妙高だった。執務スピードがこの鎮守府の中で吹雪と同等の速さだ。あ、吹雪が最速だぞ)

 

提督(まさかの午前中に仕事が終わり、時間も十分余ったわけだ。暇を持て余した俺は何をしようかと思案する前に、妙高に手を引かれ、私室へと連れていかれた)

 

 

 

提督(基本的に同じ艦型は同室にしてあるので、羽黒もいた。俺が来た瞬間めちゃくちゃビビりながら布団の周りを慌ただしく、隠すように整理してた)

 

提督(それを見た俺はすぐに出ていこうとしたが、妙高が艤装展開して、艦娘の力で俺の腕を引っ張った。人間が艦娘に勝てるわけないだろ!)

 

 

 

提督(諦めて留まると、妙高は武装解除した。ここ最近頑固過ぎませんかね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

妙高「突然の無礼、お許し下さい。今日は提督にお願いがあって、自室へ連れてきました」

 

提督「あ、はい」

 

妙高「提督が艦娘とのスキンシップに多少寛容になっていると耳にしたので、私たちにもお願いしたく思いました」

 

提督「はい...」

 

妙高「先日の弥生ちゃんたちのを見て、あそこまでしてもいいという確証を得たので、今日実行させてもらいます」

 

 

 

 

 

 

提督(そうだ。妙高はすっごい悔しそうな顔してたね。あの時は焦ってたけど、今思い出すと全開眼で眉間に皺を寄せ、下唇を噛むという女性が見せてはいけない顔だったよ)

 

提督(思い出し笑いを堪えつつ、真面目に話を聞いているように見せる俺を、羽黒はじっと見つめていた。もしかしてバレてる?)

 

 

 

 

 

 

提督「そ、それで俺は何をすればいい?」

 

妙高「提督は、羽黒とあまり接点がありませんよね?」

 

羽黒「ふぇ!?」ビク-ン

 

提督「ん?そ、そうかな?」

 

妙高「実は、羽黒も提督とのスキンシップを望んでいました。そうよね?羽黒」

 

羽黒「あ、あの、妙高姉さん、それは...」カオマッカ

 

提督「な、なあ妙高?」

 

妙高「どうしたの?あなた寝る時に『司令官さんに抱きしめて欲しいな』っていつも言ってるじゃない」

 

羽黒「!!?!?!!?」ビクッ!

 

提督「...?」←困惑中

 

妙高「ほぼ毎日、深夜にはっきりとそう言っているので、寝言ではないと思ってました。だから今なら、その希望も叶いますよ」

 

羽黒(わ、私の寝言って、そんなにダダ漏れだったの...!?)

 

提督「...あー、妙高?」←状況理解

 

妙高「私は羽黒の後で構いませんので、存分に甘えなさい」

 

羽黒「ひゃい...」マッカッカ

 

提督「...あの、羽黒」

 

羽黒「ひゃ!?」後ずさり

 

 

 

 

 

羽黒「ぴぃっ!?」ゴツ-ン!

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺が声をかけると羽黒は後ずさりし過ぎてベッドに激突した。そんなビビらなくてもいいじゃない...)

 

 

提督(だが、それで終わりじゃなかった。俺が来た時に整理したであろう何かが散乱した。小さな紙か何かだと思ったら、俺の写真だった)

 

 

 

提督(...え?ちょっと待って、どゆこと?)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「は、羽黒、大丈夫か?」

 

羽黒「はい...あっっっ!!!!?」

 

提督「!?」ビクッ

 

羽黒「み、見ないでぇぇぇぇ!!!!」ヒョイヒョイ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(羽黒はめちゃくちゃでかい声を出しながら俺から写真をひったくり、他のものを全部布団の中へ押し込んだ。多分全部写真なんだろうと思うと、少しだけゾッとした)

 

 

提督(いやね?ツーショットとか、集合写真の類いかなと思ってたよ。全部俺個人の写真だったし、ほとんど目線がカメラに向いてなかった)

 

 

 

提督(...これ盗撮だよな?見ないでぇぇぇぇ!!!!って俺が言いたいわ)

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒「し、司令官さん...」ウルウル

 

提督「な、なんだ?」オソルオソル

 

羽黒「ご、ごめんなざい...ぎらわないで...」ポロポロ

 

提督「あ...」

 

羽黒「い、いや...しれいかんさん...」ポロポロ

 

提督「...はぁ」ギュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺はため息をつきつつ、優しく羽黒を抱き寄せた。妙高から羽黒の話を聞いたから、そうしようと思ったのではない)

 

提督(ただ、とっさに俺がすべき事と判断したのだ)

 

提督(羽黒は驚きながらも、手を背中に回してきた)

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒「し、司令官さん...?」

 

提督「大丈夫。嫌ったりはしないよ」

 

羽黒「あ、あの、でも、私...」ウルウル

 

提督「ちょっと驚きはしたけど、この程度で嫌うことは無い。だから、安心してくれ」ナデナデ

 

羽黒「し、しれいがんざん...」ポロポロ

 

提督「俺なんかの写真を持ってくれてありがとう」背中ポンポン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒(もう終わりかと思った。でも、許してくれた)

 

 

羽黒(その上、無理だと思っていた、夢にまで見たハグをされている。)

 

 

羽黒(とても温かくて、心地良い)

 

 

羽黒(嬉しくて、涙が止まらない)ポロポロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...落ち着いた?」

 

羽黒「は、はい...」カオマッカ

 

提督「それならよかった」

 

羽黒「あ、あの、もう少し...」

 

妙高「羽黒、そろそろ...私も」

 

羽黒「...は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(やっべーわ。羽黒やべーわ)

 

提督(何がやばいって、あれだわ。とにかくやべーんだわ。説明が追いつかないわ)ボキャ貧

 

 

 

 

提督(少し落ち着いた。まず隼鷹とか飛鷹と違って、羽黒は少し小さい。だから、抱きしめると胸の中にギリギリ収まる)

 

提督(抱きしめてわかったのは、この子は思ったよりも華奢で、女性らしい柔らかさがあった。あと仄かに鼻をくすぐるいい匂いがした)

 

提督(あと俺が思ってた以上に強く抱き締め返してきた。ちょっとドキッとしたよ。マイサンは鋼鉄の意志で制御したよ)

 

 

 

提督(泣き止んで、そろそろいいかなと思ったら、名残惜しいのかもう少しと言ったところもなかやかくるものがあった。でも妙高が控えてる事を思い出したのか、あっさり交代した)

 

 

 

提督(つか妙高がそろそろ、と言った時に俺も振り向いたが、めちゃくちゃ膨れっ面してた。ほっぺがパンパンになるぐらい膨らませてた。いつも真面目な女性らしさを見てきたから、ギャップが激し過ぎて可愛かった)

 

提督(あの妙高が子供みたいにほっぺを膨らますんだぞ?いや今の子供が膨れっ面になるか知らんけどさ。普通想像つかんわ)

 

提督(妬き方といい、最近の頑固さといい、少し幼児退行してる節がありませんかね?)

 

 

提督(まあ今はそんなことを気にしなくていい。次は妙高の番だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「み、妙高はどうしてほしいんだ?」

 

妙高「そうですね、ずっと憧れていたあすなろ抱きをお願いします」

 

提督「はい...それじゃ」

 

妙高「ちょっと待ってください。提督は胡座をかいて下さい」

 

提督「は、はい」アグラ

 

妙高「それでは、失礼します」ストン

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...妙高さん、胡座をかいた俺の上に座ってきた!?)

 

 

 

提督(ちょちょ、何が起こっているんだ!?あの妙高さんが、ここまで攻めてくるだと!?)

 

 

 

 

 

 

 

妙高「さあ、腕を回して下さい」

 

提督「ハイ」ギュッ

 

妙高「んっ...」

 

提督「ドウデスカ」

 

妙高「これは、いいものですね...」トロ-ン

 

 

 

 

 

 

 

提督(やべぇよやべぇよ。本日二度目のボキャ貧だよ)

 

 

 

 

提督(羽黒の時とは比べ物にならないぐらいやべぇ!柔らかさとか体つきとか女性らしさがやべぇ!ボキャ貧が治んねぇ!)

 

 

提督(あとうなじ!うなじがやべぇ!めちゃくちゃ嗅いでみたい!でもそんなことしなくても十分いい匂いする!)

 

 

提督(妙高の吐息とか妙に艶やかでマイサンが眠りから覚めようとしてるのがヤヴァイ。大人の女性の魅力がここに詰まってると言わんばかりの破壊力だ)

 

 

提督(俺の鋼鉄の意志を持ってしてもやばかった。常人には到底耐えられるものではない。俺は俺を全力で褒めたい)

 

 

 

 

 

 

妙高(隼鷹から聞いた通り...いや、それ以上の心地良さを感じます)

 

 

妙高(提督から伝わる温かさは、とても安心します。どんな脅威、恐怖にも打ち勝てるほどに)

 

 

妙高(そして、この人が持つ優しさ)

 

 

妙高(言葉を交わさなくても感じる、どうしようもないぐらい大きくて、温かい優しさ)

 

 

妙高(何故、世の女性はこれを手放したのか、私には理解できません)

 

 

妙高(こんなのを知ってしまったら、手放したくなくなるじゃないですか)

 

 

妙高(提督は、どうしようもなく卑怯です。こんなにも、好きにさせてしまうんだから)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙高「非常に満足しました」キラキラ

 

羽黒「あ、ありがとうございました...」キラキラ

 

提督「あ、ああ。お気に召してくれたなら何より」

 

 

 

 

 

 

提督(俺はこの短時間に、妙高たちの良さを知った。ハグとあすなろ抱きだけだけど)

 

提督(彼女たちの気持ちも、ハッキリとじゃないが、僅かにわかったような気がする)

 

提督(妙高と羽黒も、甘えたかったのだろう)

 

 

 

 

 

妙高「はい。長姉としての威厳が先行してしまい、甘えるのに抵抗がありました」

 

 

 

 

 

 

 

提督(あ、そうなんだ)

 

提督(てか当然のごとく心を覗いたかのような回答するね。エスパーかな?退役後占い師にでもなれそうだね)

 

 

 

 

妙高「また、してくれますか?」

 

提督「...君たちが嫌じゃないなら」

 

妙高「なら問題ありませんね」

 

羽黒「わ、私も、お願いします!」

 

提督「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

提督(今まではいつになるのかと思っていたスキンシップの返事が、まさか今日になるとは)

 

提督(それに、あまり抵抗無く、次も約束できた。俺からしたらとても大きな進歩だ)

 

 

 

提督(俺は変われている。まだ不安は残っているが、それと同時に、次の日が楽しみに思えていた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...あれ?そういやあの写真は誰が撮ったんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 






絶対いい匂いがするはず(迫真)


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幸せ二航戦

 

 

 

 

 

提督(写真の件は一旦保留にした)

 

提督(正直隠し撮りはやめてほしいが、羽黒が撮ったのか他の艦娘か、他の誰かなのか分かってないから、注意のしようもなかった)

 

提督(つーかそんなん気にしてたらまた元に戻りそうで嫌だった。彼女たちを恐れず、必要以上に疑う心を矯正する方が先決だろう)

 

 

 

提督(というわけで、俺はかつての無礼を清算しようと思った)

 

 

 

 

 

 

 

提督「そういうわけだから、間宮に行こうと思う」

 

蒼龍「え、どうしたの」

 

提督「ずっと前に蒼龍が間宮に行こうと誘ってくれても、俺は飛龍と行ってくればいいと言ってしまったよな」

 

蒼龍「な、懐かしいね...」

 

提督「結局間宮に行ったけど、蒼龍の厚意を無下にしてしまったことを思い出してな」

 

蒼龍(あー、思い出すと恥ずかしい)

 

提督「今なら、大丈夫だと思う。だから、行こう」

 

蒼龍「...無理してない?本当に大丈夫?」

 

提督「ああ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(俺が蒼龍を誘い、蒼龍が俺に気を遣っている。あの時とはまるで逆だ)

 

提督(蒼龍が気を遣うということは、今も俺のトラウマが再発するのではないかと懸念している可能性がある)

 

提督(以前のような積極さが無いあたり、かなり自分を抑えてると見える。だから、俺が前とは違うことを証明させなければならない)

 

提督(今だからこそ、以前のような距離感を憧れるようになった)

 

 

 

 

 

 

 

 

そして...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「着いたな」

 

蒼龍「そうだね。間宮さーん!」

 

間宮「あら、蒼龍さんに提督。いらっしゃいませ」

 

蒼龍「あの、アイスを二つ...」

 

提督「...すいません、スペシャル二つに変更で」

 

蒼龍「え!?」

 

間宮「スペシャルですか?券は...」

 

提督「あります」スッ

 

 

 

 

 

 

 

提督(そうだな。前は普通のアイスだったよな)

 

提督(スペシャルにしたいって言ってたから、少し奮発してみた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間宮「間宮スペシャル二つです。どうぞ♪」

 

提督「ありがとう」

 

蒼龍「提督、その、いいの?」

 

提督「あの時の詫びと、証明だ。だから、その、またやってみてくれないか」

 

蒼龍「...じゃあ」

 

 

 

 

 

 

 

提督(蒼龍はスプーンで軽くアイスの部分を取り、俺の口へ近付けた)

 

提督(スプーンが震えている。蒼龍は緊張しているのか、それとも恐れているのか、またはその両方か)

 

提督(俺も身体が震えている。ただ食べさせて貰うだけの行為に、俺の身体は必死の抵抗をしている)

 

 

 

提督(だが、ここで一歩でも退けば、俺は変われていない。その上、期待させた蒼龍を裏切る事になる。失敗は許されない)

 

 

 

提督(だから、俺よ。顎の力を抜いて、ゆっくり開けろそして、蒼龍が差し出したアイスを迎えろ)

 

 

 

 

 

 

提督「んぐ」パクッ

 

蒼龍「!」

 

提督「ん...」モゴモゴ

 

蒼龍「...」ドキドキ

 

提督「...うん、美味しいよ」

 

蒼龍「!」パァァ

 

 

 

 

提督(蒼龍の表情が一気に和らいでいく。とても嬉しそうで、そして...)

 

 

 

 

 

蒼龍「提督...その、どうだった?」

 

提督「え、ああ、アイスなら...」

 

蒼龍「そっちじゃなくて、あーんのほうは...」

 

提督「...少し震えてるけど、大丈夫だったよ。それに、嬉しくもあった」ニコッ

 

蒼龍「...」ウルッ

 

提督「だから、今度は俺がやろう」スッ

 

蒼龍「あ、ちょ、ちょっと待って!あ、あーん!」パクッ

 

提督「お、おい、そんながっつかなくても...」

 

蒼龍「...」

 

提督「...蒼龍?」

 

 

 

 

 

提督(何かずっと俯いてる。量が多すぎたのか?)

 

提督(それとも、もしかしたら、俺ではやはり迷惑...)

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「おい...しい」ポロポロ

 

提督「あ、は、ハンカチ...」

 

蒼龍「提督からあーんされたし...美味しかったー!」ウワ-ン!

 

提督「ちょ、落ち着け...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍(提督が私の差し出したアイスを頬張ってくれた時、とても幸せな気分を感じた)

 

 

蒼龍(提督が笑顔を見せてくれた時、見てるこっちも笑顔になっちゃった)

 

 

蒼龍(ずっと空いてた距離が一気に縮まってるような気がして嬉しい)

 

 

蒼龍(きっと提督はお詫びの事しか頭に無いんだろうけど、今はそれでも幸せ)

 

 

蒼龍(だって、提督が誘ってくれたから。辛い事を乗り越えて、私たちに歩み寄ってくれたから)グスッ

 

 

蒼龍(だから、今日はとても幸せな日。彼をもっと好きになれた、幸せな日)ポロポロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛龍「提督ー、ここー?」ガララ

 

提督「あっ...」

 

蒼龍「グスッ」ポロポロ

 

飛龍「...提督ー、ちょっとお話しない?」ゴゴゴゴ

 

提督(あ、終わったな俺)

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

飛龍「ごめん!提督が泣かしたのかと思ってたの!」

 

蒼龍「ま、まあ強ち間違っちゃいないけど...」

 

提督「え、何それは...(困惑)」

 

蒼龍「う、嘘だよ!冗談!」

 

飛龍「それでもさ提督ー、今日の秘書艦を放っといて、蒼龍とイチャイチャするのはどうかと思うけどー?」ジトッ

 

提督「それは...」

 

 

 

 

 

 

提督(今更だが、今日は飛龍が秘書艦なのだ)

 

 

提督(ちなみに蒼龍へのお返しも飛龍だったから思い出したのが本音である。我ながらクソ)

 

 

 

 

 

 

 

飛龍「というわけで、私にもあーんをし合う事で不問としましょう!どう?」

 

提督「そ、それでいいなら...」スッ

 

飛龍「お、早いね。それじゃいただきます!」パクッ

 

提督「ど、どうだ?」

 

飛龍「おいしー!」キラキラ

 

蒼龍「そ、そうでしょ!?」

 

提督「ほっ」

 

飛龍「それじゃーお返し!」スッ

 

提督「はい...」パクッ

 

飛龍「どう?」

 

提督「...美味いよ。ありがとう」

 

飛龍「やったぁ!」パァァ

 

 

 

 

 

 

 

提督(蒼龍の後だからか、かなりスピーディに済ませてしまった)

 

提督(でも、若干の震えはあるものの、あーんにも対応出来るようになっていた)

 

 

 

提督(二人の期待にも添えて、俺の進歩も窺えている。いいのではないか?)

 

 

 

 

 

 

蒼龍「提督!もう一回やろ♪」

 

飛龍「私もお願い♪」

 

提督「え」

 

蒼龍「提督と食べさせ合いするの、ずっと夢見てたから。忘れないようにもう一回!」

 

飛龍「蒼龍が大丈夫なら、私もしてもらえるよね?」

 

提督「だ、大丈夫だが、その...」

 

蒼龍「ありがとう!」パァァ

 

飛龍「大丈夫♪多聞丸も許してくれるよ」

 

提督「いや、そうじゃなくて...」

 

 

 

 

 

 

提督(その後、二人と食べさせ合いをした)

 

提督(飛龍が後から来たので、間宮スペシャルを一つ追加した。俺の自腹(重要))

 

 

 

提督(あと喰いすぎて胸焼け起こした。めちゃくちゃ苦しかった)

 

提督(若くても胸焼けってするんだね。ちょっと食べさせ合いはしばらく勘弁したい...と言うと、二人が悲しそうな顔をしたので何とか誤魔化した。辛い)

 

提督(俺は食べさせ合いが終わると同時に自室へ向かい、水をたらふく飲んで仮眠した。若いからと言ってスイーツを食いまくるのはよくない(戒め))

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ていとくさんはもうすぐあらさーってやつです」

 

妖精「おっさんです」

 

妖精「さいわい、かみのけはけんざいです」

 

 

 

 

 

 

 

提督(...あのさぁ、出ていってくれないかなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍「...飛龍」

 

飛龍「わかってる。あーん、すごくよかった」

 

蒼龍「そうよね...」

 

飛龍「...私もね、提督の笑顔が見れて幸せになった。ずっと苦しそうな顔だったあの人の笑顔、凄く素敵だった」

 

蒼龍「うん...」

 

飛龍「...あんなの、もったいないよ」

 

蒼龍「え?」

 

飛龍「あの笑顔、何とも思わなかった連中にまた見せるのはもったいないよ」ハイライトオフ

 

蒼龍「...うん。絶対に渡さない」ハイライトオフ

 

飛龍「やっぱり吹雪ちゃんの言う通りだと思った。提督は私たちが幸せにしなきゃ」

 

蒼龍「そうだね。私たち『艦娘』しか、提督を幸せに出来ない...!」

 

 

 

 

 

 

 





遅くなってすみません。あけましておめでとうございます。



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鈴谷は伝えたい

 

 

 

 

 

 

提督(先日、他の鎮守府から演習が申し込まれた。相手はかなり格上の高練度艦隊。敵主力艦隊を容易に叩き潰せる面子だった)

 

提督(俺は勝てる気が全くしなかったので、新しく来た子たちと他の三人を組ませ、胸を借りるつもりで挑ませた)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(そしたら、何かS勝利してきた)

 

 

 

 

 

 

提督(意味わからん。なぜ勝てたんだ)

 

 

 

提督(昼戦では一人しか大破判定を出せなかったが、夜戦で全て巻き返したらしい。未だに信じられない)

 

 

 

 

提督(MVPは何と鈴谷。相手の旗艦をワンパンしたかららしい)

 

提督(ちなみに鈴谷の練度は演習艦隊内で一番低い。だから、大番狂わせでもあった)

 

 

 

提督(演習後、相手の提督と旗艦から拍手を頂いた。Congratulations!とか素晴らしいラブパワーデース!とか言ってた)

 

 

 

提督(格上の鎮守府に勝てた事に浮かれた俺は、鈴谷に何かご褒美をやると言ってしまった)

 

 

 

提督(鈴谷は少し考えると、満面の笑みでデートを要求してきた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(心が折れそうだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

提督(来るデートの日、俺は昔着ていた服を引っ張りだそうとしていた)

 

 

 

 

提督(すると、鈴谷が俺の部屋に入るなり、

 

 

 

 

 

鈴谷「あ、提督ー。部屋デートにしない?」

 

 

 

 

 

と言ってきた。部屋デートとかハードル高いってばよ)

 

 

提督(外なら軽く定番コース回って終わりだと考えていたが、部屋デートは終わりにするサインが全く思いつかないのだ)

 

 

 

 

 

鈴谷「だからさ、着替えなくてもよくない?」

 

提督「それは...」

 

鈴谷「今日だけなんだから、時間も惜しいの!だからこっち来て!」グイッ

 

提督「おわっ」

 

 

 

 

 

提督(鈴谷に腕を引かれ、ソファに座ることになった。ぴったり隣に座られ、少し息が荒くなる)

 

 

 

 

 

鈴谷「にひひ、提督ってば照れてる?」

 

提督「...そう、見えるか?」

 

鈴谷「んー、わかんないけど、初めて会った時よりかは見てくれてるよね」

 

 

 

 

 

 

提督(...そうだったな。初めて会った時は目すら合わそうとしなかったよな)

 

提督(あの頃よりかはマシになっているようだ。でも、まだ鈴谷は苦手な部類に入る)

 

 

 

 

 

鈴谷「そーそー!こないだの演習凄かったでしょ!もっかい褒めてよ!」

 

提督「あ、ああ。凄かったよ」

 

鈴谷「何か足んないよね?」ニヒヒ

 

提督「な、なんだ?」

 

鈴谷「ほら、頑張った子にいつも何してるっけ?」

 

提督「...撫でろと?」

 

鈴谷「正解ー♪」

 

提督「...わかった」ナデ

 

鈴谷「おーぅ!これこれー♪」

 

 

 

 

 

提督(撫でられている鈴谷は本当に嬉しそうな表情をする。嘘偽りが見受けられないような、心からの表情に見える)

 

提督(同時に、俺は自己嫌悪に陥る。信用していないのは俺だけなのではないかと)

 

提督(鈴谷の笑顔を見る度、俺は自分が嫌になる)

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「んふー、まさか撫でてもらえる日が来ようとはねぇ」ンフフ

 

提督「...そうだな」

 

鈴谷「みんな喜んでるよ。提督に触れられて」

 

提督「...本当なら、嬉しいな」

 

鈴谷「昔とはだいぶ変わったって」

 

提督「...そうか」

 

鈴谷「そうだ。昔の事聞きたいな。この鎮守府に配属された時とか」

 

 

 

 

 

 

提督(昔話か...たまにはいいかもしれないな)

 

 

 

 

 

 

提督「...そうだな。俺がこの鎮守府に配属された時のことか」

 

鈴谷「鈴谷、まだ提督のことよく分かってないから聞きたいな」

 

 

 

提督「...軍学校卒業を目前とし、鎮守府に配属される少し前、俺は教官に呼び出されて、別室で待機させられてな。しばらくすると、五人の少女が入ってきた」

 

 

提督「俺は何だろうと思っていたら、一人ずつ自己紹介が始まった。名前は吹雪、叢雲、漣、電、五月雨だった」

 

 

鈴谷「え、それって、初期艦ってやつ?」

 

 

提督「ああ。自己紹介が済むと、教官が入ってきた。そして、誰が一番信頼出来そうかと質問してきた」

 

 

提督「当時の俺は、表には出さなかったものの、精神はボロボロだった。少女ですら嫌悪感を催したほどだ。だから、正直なところ、誰も信頼出来なかった」

 

 

提督「叢雲は語気から気の強さを感じたが、俺は突っかかられるのが面倒だと思い無しにした。電は叢雲程ではなかったが、はわわの一言で台無しになった。漣はご主人様呼びでアウトにした。五月雨はオドオドしてるところが逆に胡散臭く感じた」

 

鈴谷(うわぁ...)

 

提督「それで、この中で最も真面目そうな吹雪がマシかなと思って選んだ。これから先、共に生きるとなって、ストレスを最も感じないであろう子を選んだ」

 

鈴谷「...吹雪ちゃんにその話はした?」

 

提督「ああ。とても悲しそうな顔をしていた」

 

鈴谷(...そういやその時は提督の事情を知らなかったんだっけ)

 

提督「それから一艦隊組めるよう建造した。来た順は確か...磯波、霰、五十鈴、妙高、霞だったかな」

 

鈴谷「へぇー、来た順とか覚えてるんだ」

 

提督「何故だか覚えているんだ。そして、ドロップでは長良、村雨、弥生、隼鷹、羽黒、時雨、飛鷹、睦月、卯月、酒匂だったかな」

 

鈴谷「おぉー」

 

提督「その後も建造をして、長門、陸奥、蒼龍、飛龍、青葉、如月、そして...朝潮、瑞鶴、鈴谷が来た」

 

鈴谷「明石さんは?」

 

提督「大本営から転属してきた。何故かはわからないが、改修では世話になってる」

 

 

 

 

 

 

 

提督(今思えば、これまでに会えた艦娘たちの対応は酷いものだったと思う)

 

提督(目を合わせず、誘いに乗らず、仕事以外では距離を空けて過ごしていた。愛想を尽かされなかっただけ幸運だった)

 

提督(当時の俺は、彼女たちは保身の為に従っていると思っていた。すり寄ろうとするのは、権力を手に入れるため、とも)

 

 

提督(轟沈させなかったのも、後味が悪いし、後から立つ噂を回避するためだった。大破以前に、中破したら撤退していた。他の提督からは、甘いと言われた)

 

 

 

 

 

提督(全て自分の為と言い聞かせていた)

 

 

 

提督(そう、自分に嘘を言い聞かせていた)

 

 

 

提督(心がズタズタにされていても、人の為に尽くしているという事実を否定したかった)

 

 

 

提督(自分が未だに否定された理念に縋っているという事実から目を背けたかったから、自分を騙していた)

 

 

 

 

 

提督(結局のところ、俺はそれすらも出来なかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「...提督、一つ聞いていい?」

 

提督「ん...」

 

鈴谷「その、ここに着任した日に、妙高さんに案内されたじゃん?」

 

提督「ああ」

 

鈴谷「その後、提督の過去を聞いて、気になったんだ」

 

提督「...そうか」

 

鈴谷「その...裏切られた時の気分って、どんな感じだった?」

 

 

 

 

 

提督(...鈴谷は、知ろうとしている。俺を、感情を、人の悪意を)

 

提督(鈴谷は建造されてからしばらく経っているが、それでも知らない事が多い。特に、俺に関しては尚のこと)

 

提督(彼女は彼女なりに、理解しようとしてくれていると思いたい。だから、俺も話そうと思う)

 

 

 

 

 

 

鈴谷「あ、言いたくなかったら言わなくて...」

 

提督「...あくまで俺の主観だが、まず目の前が真っ暗になるんだ」

 

鈴谷「え...」

 

提督「その後すぐにライトアップして、目の前にいる奴が何者か分からなくなった。でも、そいつに全く関心が向かず、ただのオブジェクトに見えた」

 

提督「そんで、少し時間が経つと怒りが込み上げて来たな。何にぶつけたらいいか分からず、哀しさだけが残った」

 

提督「さらに、自分が拠り所にしていたものが消えたから、何を信じりゃいいか分からなくなった。だから、今まで信じていたものを信じるな、と思う他無かった」

 

鈴谷「...怖かった?」

 

提督「そうだ、怖くもあったな。全てが敵に見えたりした。そんなところかな」

 

鈴谷「じゃあ...ずっと辛かったんだ」

 

提督「そうだな。酷いフラれ方したから引きこもったなんて恥ずかしくて言えなかった。今思えば情けない話だ」

 

鈴谷「んー...わかった。鈴谷の聞きたいことはおしまい。言ってくれてありがと」

 

提督「どういたしまして」

 

鈴谷「次は、鈴谷が伝えたいことを言うから、ちゃんと聞いてね」

 

 

 

 

 

 

提督(鈴谷は一度深呼吸をして、俺を見た)

 

 

 

 

 

 

鈴谷「鈴谷ね、妙高さんに案内されるまでは、ちょっと感じ悪いかなって思ってた、でも、話を聞いて、一度考えを改めたの」

 

鈴谷「何日かここにいてわかったのは、提督がちゃんと鈴谷たちの事を気遣ってくれてること。ただ、距離は縮まらなかったけど」

 

鈴谷「でも最近は、距離も縮まったし、提督ありきの楽しさが出来たから、とても過ごしやすくなった」

 

鈴谷「だから、こうして二人きりで話すのも夢だったりしたんだ。叶えてくれて、ありがと!」

 

 

 

 

 

提督(...やっぱり、いい子じゃないか)

 

 

 

提督(俺の偏見とは真逆の、人を思える優しい子だった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「提督って、過去から立ち直ろうと頑張ってるんだよね?」

 

提督「...ああ」

 

鈴谷「きっと、治るよ。お医者さんは完治は難しいって言ってたみたいだけど、鈴谷はそんなことないと思うよ」

 

提督「どうして?」

 

鈴谷「だって、こないだの鈴谷、演習で旗艦撃破出来たでしょ?練度も2倍以上違う相手に勝てたんだよ?勝てないと思ってたけど、出来ない事なんてないんだよ」

 

提督「出来ないことなんて無い...」

 

鈴谷「うん。だから、絶対提督の傷も治るよ。鈴谷は信じてるから」

 

提督「...鈴谷は優しいな」

 

鈴谷「ふふーん!鈴谷は褒められて伸びるタイプなんです。これからもうーんと褒めてね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...その後は、他愛ない話を続け、日が沈んでからデートを終えた)

 

 

提督(鈴谷が部屋を出た後、我慢していた涙が少しずつ溢れてきた)

 

 

提督(ただ単純に、嬉しかったのかもしれない

 

 

提督(とても心に響く、貴重な時間だった)

 

 

 

 

 

妖精「ていとくさん、うれしそう」

 

妖精「みんなともなかよくなってる」

 

妖精「もうすこし。もうすこし」

 

 

 

 

 

 

提督(わかってるよ。いつになく真面目な妖精たちも久しい)

 

 

 

提督(まだ課題はある。でも、解決出来ない事は無い)

 

 

 

提督(鈴谷の言った通り、出来ない事なんてないのだから)

 

 

 

 

 

 

 






鈴谷は元からいい子って、それ一番言われてるから(迫真)



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ずいずいフィーバー

 

 

 

 

 

 

 

提督(突然だが、俺は朝が弱い)

 

提督(別に夜更かしをしている訳では無いが、朝起きるのが辛い。許されるなら二度寝どころか三度寝もする)

 

提督(鎮守府の朝はクッソ早いから午前中はあくびばかりしてる。流石に責任者が二度寝を晒すのは恥ずかしいからね)

 

提督(でも、ずっと無理に起きていたツケが回ってくる時が来た)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(そう、俺は寝坊した)

 

 

 

 

 

 

提督(総員起こしが午前五時。俺が起こされたのは午前七時)

 

提督(そう、起こされたのだ。その日の秘書艦に)

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「全機爆装!目標、母港寝室のお寝坊提督!行っちゃって!」ブ-ン

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(瑞鶴の馬鹿でかい声で飛び起きた。爆撃機が自室を飛び回ってて、あ、俺は死ぬんだと思った)

 

 

 

 

提督(爆撃機から落とされた爆弾が床に落ち、俺は目を閉じたが、パァン!とまるで風船が割れたような音が響いた)

 

提督(うっすら目を開けるとどうやら風船を落としただけみたいだった。瑞鶴は怒りつつも少々ご満悦そうな顔をしていた)

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「提督さん、早く起きないとダメでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

提督(マンガに出てくる主人公を起こしに来た幼馴染キャラとまるまる重なってて、俺は目を丸くした)

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「ご、ごめんなさい。そんな驚くと思わなくて...」

 

提督「...上司の死因の殆どが部下の謀反と聞いていたから、それが今かと思った」

 

瑞鶴「その、ただ起こすだけじゃダメかなって思って...」

 

提督「...寝坊した俺が悪いが、次はやめてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

提督(瑞鶴は申し訳なさそうに頷いた。逆ギレされなくてよかったよ)

 

提督(いやさ、艦娘相手なら多分冗談で済むレベルなんだろう。俺ただの人間だし、一般上がりのなんちゃって軍人だからな)

 

提督(銃声とか爆撃音にあまり慣れてないわけ。もっと言うと自室に凸られて爆撃紛いのモーニングコールとか人生であるかないかだと思う。いや、あるわけない)

 

提督(お陰で目が冴えて眠気スッキリだけど、もうお疲れモードだ。でも仕事はやらないとね)

 

 

 

 

 

 

 

妖精「ねんがんのおさななじみしちゅえーしょんですよ」

 

妖精「ていとくさんのかわりにうれしさをひょうげんしてあげます」

 

妖精「ズイ (ง˘ω˘)วズイ」

 

 

 

 

 

 

 

提督(君たちも以前の真面目ムードから普段通りになったね。腹立つ)

 

提督(でも、幼馴染というのには多少なりとも憧れてたりした。俺には居なかったからね)

 

提督(隣家で朝起こしに来たりとか、通学は一緒だったり、ふと異性として見ちゃったりとか、純粋でいいよね。純愛はどストライクだったよ)

 

 

 

 

 

 

 

提督「...おっと」ポロッ

 

瑞鶴「あ、私拾う...」ピトッ

 

提督「あ...」サッ

 

瑞鶴「ご、ごめん...」サッ

 

 

 

 

 

 

提督(だからさぁ、思った側からどうしてマンガでよくあるラッキーなハプニングが起こるの?)

 

提督(瑞鶴また俯いちゃったし。申し訳なさで胃が痛いよ)

 

 

 

 

 

 

 

妖精(せいこうです)

 

妖精(ぺんおとしからのてがふれる。これぞおうどう)

 

妖精(あおはるです)

 

 

 

 

 

 

提督(何か陰謀を感じたが、気にしてはいけない)

 

提督(俺も戸惑い過ぎだ。手が触れただけで驚くとかマジで思春期入りたての子供か。つーかハグとかあーんをしてきて今更過ぎる)

 

提督(いかんな。集中力が切れてしまう。ここは少し空気を変えねば...)

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「瑞鶴、今日は俺が茶でも淹れよう」

 

瑞鶴「え、それなら私が...」

 

提督「いや、待っててく...」

 

 

 

 

 

 

妖精「あーおもわずあやしいひもをひっぱってしまったー」グイッ

 

妖精「わわ、あやしいなぁー。ひっぱらないとー」グイッ

 

妖精「ひっぱるならぜんりょくでー」グイッ

 

提督「おわっ!?」ガクッ

 

瑞鶴「え、提督さ...」

 

提督「あ、あぶな...」ガタタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「いてて、無事...か?」

 

瑞鶴「だ、大丈夫だけど...」

 

提督「...え」床ドン

 

瑞鶴「...」カオマッカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(あかん)

 

 

 

 

提督(転んで床ドンとかまたマンガの世界の出来事だよ)

 

提督(連続幼馴染シチュに俺は脳みそが追い付いていない。床ドンして数秒してから事の重大さに気付いた)

 

提督(とりあえず起きなければ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴(て、提督さんの顔...近い...///)

 

 

瑞鶴(最近みんなとの距離が近くなったって聞いたからちょっと期待してたけど、まさかいきなりなんて...)

 

 

瑞鶴(で、でも、提督さんなら...アリかな...///)目を閉じ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(...んん!?瑞鶴、目を閉じていらっしゃる!?)

 

 

 

提督(顔も赤いし覚悟決めてるみたいだし、これそういう流れなのか!?幼馴染シチュ、またもや更新!)

 

 

提督(これはこのまま桜色の唇も頂く流れでファイナルアンサー?)

 

 

 

提督(いやよくねぇよ!この流れは早々に断つ!)

 

 

 

 

 

 

 

提督「わ、悪い!今すぐ離れるから!」

 

瑞鶴「あ...」

 

妖精「わわ、ていとくさんおきちゃった」

 

妖精「ひもをゆるめないとまたころぶです」

 

妖精「まにあいません」

 

提督「うわっ!?」グラッ

 

 

 

 

 

 

提督(また転んだ。何が起こってるんだ)

 

 

提督(ふと足元を見ると、紐らしきものを持っている小さな人影が見えた)

 

 

提督(お前らだったのか、妖精たち。もう甘味あげねぇからな...)

 

 

 

 

 

提督(俺がそう決めた直後、身体を強く打ち、意識を手放した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「ちょ、提督さん!?大丈夫!?」

 

提督「...」

 

瑞鶴「やば、気絶してるし...ん?」

 

 

 

妖精「あわわ」

 

妖精「まずいです。せなかからからだをつよくうったです」

 

妖精「あたまはうってなさそうですが、やっちまいました」

 

 

 

 

瑞鶴「ちょっとあんたたち」

 

妖精「あ、みつかってしまいました」

 

妖精「なむさん」

 

妖精「もはやここまで」

 

瑞鶴「さっきの、あんたたちの仕業ね」

 

妖精「めんぼくない」

 

妖精「はんせいしています」

 

妖精「おやつぬきします」

 

瑞鶴「そういう事は後!とにかく提督さんを起こさないと!」

 

妖精「あまりうごかさないほうがいいです」

 

妖精「ひとはかんむすとちがい、でりけーとです」

 

瑞鶴「わかったわ。でも地べたは好ましくないでしょ」

 

妖精「そうですね」

 

妖精「そふぁーにうつしましょう」

 

妖精「なるべくしんちょうに」

 

瑞鶴「わかった。提督さんが起きたらちゃんと謝るのよ」

 

妖精「りょうかいです」

 

 

 

 

 

 

瑞鶴(ちょっと期待してたけど、妖精の仕業なのね...)ズ-ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは...また白い空間か。

 

てことは夢か?俺は今眠っているのか。

 

 

何が起こった...

 

 

 

 

そうだ。妖精のやつらが俺にイタズラしやがったんだ。

 

あの古典的な仕掛けに引っかかる自分が恥ずかしい。

 

 

 

 

 

妖精「およびですか?」

 

 

 

 

 

提督「...お呼びだよ」

 

 

 

 

 

 

だから突然出てくるな。それと当たり前のように干渉してくるな。

 

 

 

 

妖精「こんかいのことはさすがにやりすぎました。ごめんなさい」

 

妖精「わたしたちなりにさぽーとをしたつもりでした。もうしわけない」

 

妖精「おさななじみたいけんをさせたかったのです」

 

 

 

 

 

余計なお世話だわ!確かに憧れはしたけどさ!

 

瑞鶴も予想外の出来事で迷惑掛けただろうし、目を閉じたアレもびびっただけだろうと思いたい。

 

 

 

 

 

妖精「ずいかくさんはわりとまじでした」

 

妖精「あれはきすまちでしたね」

 

妖精「まるでまんがです」

 

 

 

 

 

さいですか。君たちが仕掛けたせいだけどな。

 

つーか本当に何してくれてんだよ。これ起きた時クッソ気まずい奴だぞ。

 

 

 

 

 

妖精「ほんにんはまんざらでもないみたいです」

 

妖精「このままかんけいがすすんでもいいのよ?」

 

妖精「あまずっぱいかんけいからげろあまですか」

 

 

 

 

 

うっさいわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「うーん...」

 

瑞鶴「あ、提督さん起きた!?」

 

提督「ずい...かく?」

 

瑞鶴「あ、動かないで。大人しくしてて」

 

提督「ん...あれ、ここは...」

 

瑞鶴「執務室よ。提督さん、妖精さんたちにイタズラされたの」

 

提督「あ、そうだ、あいつら...ん?」

 

瑞鶴「どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

提督(起き上がろうとした時に気付いた。執務室で寝られる場所はソファーのみ。でもそれとは違う柔らかさがあった)

 

提督(起きた時は、瑞鶴を見上げているようだった。つまり、そういうことだ)

 

 

 

 

 

 

 

提督「お、お前...まさか膝枕...?」

 

瑞鶴「し、指摘されると恥ずかしいんですけど」モジモジ

 

提督「い、いや...」

 

 

 

 

 

 

 

提督(モジモジ動かないで。柔らかいのが後頭部に当たりまくるから!)

 

提督(それにまた女の子特有のいい匂いがする。再び幼馴染シチュ更新!フルコンボだドン!)

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「ソ、ソファーだと硬いかなと思って...」

 

提督「そ、そうか。柔らかかった...あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(やっちまったぜ(後悔))

 

提督(太もも柔らかいとか面と向かって言うとかバカなの?死ぬの?)

 

提督(こりゃドン引き案件ですわ。明日からセクハラ提督とか変態糞提督と呼ばれること間違い無し!)

 

提督(またもや俺は崖っぷちに立たされた...いや、自分から立ったわけだが...終わったわ)

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「そ、そう?ならよかった」ニコッ

 

 

 

 

 

 

 

提督(...あ、あれ?終わってない?)

 

 

 

提督(てか笑顔が眩しい。俺の心が痛む。デリカシーが無かったから許してくれ)

 

 

 

 

 

 

 

提督「...すまない、変な事言ったな」

 

瑞鶴「あ、気にしてないから!むしろ嬉しいほう...あ...」カオマッカ

 

提督「ん?」

 

瑞鶴「ちょ、今顔見ないで...ていうか、見たら爆撃するから!」

 

提督「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

提督(...何だかよくわからないが、怒ってるみたいだから大人しくしてます。はい)

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴「...けど」

 

提督「な、なんだ?」

 

瑞鶴「もう少しだけ、膝枕してもいいけど」

 

提督「え、それは...」

 

瑞鶴「な、何よ!嫌なの!?」ウルウル

 

提督「お、お言葉に甘えさせていただきます」ブルブル

 

瑞鶴「...な、なら、頭戻して、ほら」ポンポン

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(瑞鶴は片手で顔を隠しつつ、膝枕を催促したきた。俺は少し不安に思いつつも、頭を瑞鶴の膝に預けた)

 

 

提督(ほんとに柔らかい。やはり女の子なんだなと実感する瞬間でもあった)

 

 

提督(後で何か埋め合わせを用意しないと...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精「あまったるいのです」

 

妖精「あおはるですねー」

 

妖精「わかいっていいですねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(あ、そうだ。危うく忘れるところだった)

 

 

 

提督(お前らおやつと甘味抜きだからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 





幼馴染シチュ流行らせコラ!


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トレーニングしながら

 

 

 

 

 

たるむ。

 

 

 

 

 

 

提督(たった三文字の単語だが、俺にはこの短い単語が怖くて仕方ない)

 

 

 

提督(俺はまだたるんではいない。まだ、ね。間宮さんの料理が美味すぎてちょっと食べ過ぎなところがあり、気を抜くとすぐ太りそうなのだ)

 

提督(幸い、この鎮守府には見た目運動部の長良型がいる。俺は運動とコミュニケーションも兼ねて長良たちのトレーニングに参加しようと試みた)

 

 

 

 

 

長良「トレーニングですか!?喜んで!」

 

五十鈴「いいんじゃない?ま、途中で諦めたりしないでよね」

 

 

 

 

 

提督(あっさりOKを貰えたので、次から参加します。はい)

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

長良「司令官!おはようございます!」

 

提督「おはよう。もう準備出来てるのか?」

 

五十鈴「当たり前でしょ。どこかのお寝坊さんとは違うのよ」

 

提督「あはは...」

 

 

 

 

 

提督(五十鈴はこう言ってるが、今は総員起こしと同刻の午前五時だぞ)

 

提督(俺が起きたのは二十分前。朝が弱い俺にしちゃ頑張った方だ)

 

 

 

 

 

長良「それじゃ、軽くジョギングから行きますか!」

 

提督「どのぐらい走るんだ?」

 

長良「とりあえず三十分!」

 

五十鈴「ウォーミングアップよ」

 

長良「じゃあいきますよー!」

 

 

 

 

 

 

提督(ジョギングかぁ。それなら大丈夫かな...)

 

 

 

 

 

(三十分後)

 

 

 

 

 

 

提督(と思ってた時期が俺にもありました)

 

提督(ジョギングだから軽く走るものだと思ってたよ。最初の五分辺りまでは普通だったよ。そっから長良たちはいきなりペースアップしよった)

 

提督(俺がダッシュしてやっと追い付くぐらいのスピードだった。これウォーミングアップだよな?)

 

提督(でも、何とか着いていくことが出来た...)

 

 

 

 

 

 

五十鈴「なかなかやるじゃない。もっと早くバテると思ったわ」

 

提督「せ、せっかく参加させて貰ってるんだ...これしきでへばってては迷惑だろう...」ゼェゼェ

 

長良「司令官のペースで良かったのに...」

 

 

 

 

 

 

提督(長良はそう言ってくれてるが、何か遅れを出したく無かったんだ)

 

提督(鎮守府を担う者としてのプライドというかなんというか、とにかくついていかなければならないような気がしてたのだ)

 

提督(決して後ろ姿が眺められるからじゃないぞ。本当だぞ)

 

 

 

 

 

 

長良「じゃあ、次は腕立て伏せです」

 

提督「わ、わかった...」

 

五十鈴「キツかったらすぐやめるのよ」

 

提督「い、いや、俺は平気だ」

 

 

 

 

 

 

提督(五十鈴は俺が強がってると気付いてるようだ。まあ呼吸も整ってきていけるだろと思ってた)

 

提督(ちなみに腕立ては十分間で回数無制限だった。俺は五分でダウンしました。恥ずかしい)

 

 

 

 

 

 

長良「司令官、大丈夫?」

 

提督「ちょ、ちょっと疲れただけだ。問題ない」

 

五十鈴「無理するからよ。バカね」

 

提督「面目無い...」

 

 

 

 

 

 

 

提督(うーん、運動に関しちゃ少しは自信があったんだけどな。やはり艦娘とは比べ物にならないか)

 

提督(人間でも艦娘に着いていけるというところを見せたかったが、少し休む必要がありそうだ)

 

 

提督(長良たちは難なく腕立て伏せを終えた。俺は腕に力が入らなかった)

 

提督(てか楽々腕立てしてて純粋にすごいと思ったよ。健康的とは言え、俺よりも華奢な腕をしてるのに体力は遥かに上だ)

 

 

 

 

 

 

 

妖精「といいつつもながらさんのわきとふとももをみるていとくさんでした」

 

妖精「いすずさんのむねもみてました」

 

妖精「やっぱりおとこのこなんですね」

 

 

 

 

 

 

 

提督(うるさいよ君たち。そういう目で見てねぇから)

 

提督(毎度の如く茶々入れに来るけど、また甘味抜きにするぞ)

 

 

 

 

 

 

 

長良「早朝トレーニングはここまでです!お疲れ様!」

 

提督「あ、ああ。すまないな、付き合わせて貰って」

 

五十鈴「トレーニングの後はストレッチよ。筋肉痛になるでしょ」

 

長良「という訳で、下半身のストレッチですね」

 

 

 

 

 

提督(屈伸、伸脚、股割りの順にストレッチをした)

 

提督(当初の目的だった運動は達成したから、次はコミュニケーションだな)

 

 

 

 

 

 

提督「長良たちは、これを毎日やってるのか?」グググ

 

長良「そうですね!あ、でも大規模作戦前は抑えますね」グイ

 

提督「そうか...凄いな」

 

五十鈴「最初のジョギングは途中からいつものペースになっちゃったけど、着いてきた提督もなかなか凄いと思ったわ」

 

提督「やはりあれは普段通りだったんだな...」

 

五十鈴「というかどうしていきなり?」

 

提督「俺は身体がたるむのが怖くてな。執務ばかりで運動もあまりしていなかったし...」

 

長良「そういえば司令官って、提督になる前はスポーツしてたんですよね?」

 

提督「ああ。体力には多少自信があったんだが...まあ、こんなものだ」

 

長良「そんなことはありませんよー。あ、次開脚です」

 

 

 

 

 

 

提督(柔軟体操も真面目にやるのは久しぶりだ。前よりか固くなってしまったが、それでもまだ脚が開く)

 

 

 

 

 

長良「わぁ!提督って柔らかいんですね!」

 

五十鈴「あんたは固いものね」

 

長良「五十鈴も人のこと言えないでしょー?」

 

提督「んぐぐ...」

 

長良「まだいけそうですねー。ちょっと押してみていいですか?」

 

提督「あ、ああ」

 

長良「よいしょ」

 

 

 

 

 

提督(長良が俺の背中をゆっくり押している。開脚しつつ上半身を床に付けるのは少し辛いが、出来なくはない)

 

提督(どうやら昔よりさほど固くなってはいないようだが...長良さん?何してるの?)

 

 

 

提督(長良さん?長良さん?押すなら手だけでいいよね?背中全体に身体を押し付けなくてよくね?)

 

 

提督(柔らかい)

 

 

 

 

 

 

提督「あ、あの、長良?」

 

長良「どうしましたー?」ニヤニヤ

 

提督「あ...(察し」

 

長良「司令官って結構いい筋肉してますねー。柔らかい筋肉って良いんですよー?」

 

提督「な、長良、そろそろ...」

 

長良「あ、すいません」パッ

 

 

 

 

 

提督(鋼鉄の意志でマイサンの覚醒を抑えた。更に自己嫌悪という追撃で萎えさせた)

 

提督(世の男たちはこれをラッキースケベを羨むだろうが、俺はそういう訳にはいかないのだ)

 

提督(憲兵END以前に、仮にも上司の俺が彼女たちの前で粗相を晒すわけにはいかない)

 

 

 

 

 

 

五十鈴「あまり人前でイチャつかないでくれる?撃ってほしいの?」イライラ

 

提督「...すまない」

 

長良「あれれー?五十鈴ったら妬いてるの?」

 

五十鈴「そんなんじゃないから!」

 

長良「それなら五十鈴もやってみなよー」グイグイ

 

提督「長良、あまり五十鈴をからかうのは...」

 

五十鈴「うぐ...何?五十鈴じゃ嫌なの?」

 

提督「い、いや、そういうことじゃなくて、無理にやらなくていいんだ」

 

五十鈴「む、無理じゃないわ!五十鈴を見くびらないで!」グイッ

 

 

五十鈴(もう!ほんとバカ真面目なとこは相変わらずね!)

 

 

 

 

 

 

提督(今度は五十鈴か...マイサンよ、起きたら去勢されると思えよ!)

 

提督Jr.「ウィッス」

 

 

 

 

 

 

提督(五十鈴も長良同様、背中に身体を押し付けてきた。くっそ柔らかい(小並感)。あとデカい)

 

提督(五十鈴の鼓動が背中越しに聞こえる。めちゃくちゃ早くて心配するレベルだ)

 

提督(ただのストレッチなのになぜこんなことに...)

 

 

 

 

 

提督「五十鈴、もういいよ」

 

五十鈴「わ、わかったわ」

 

提督「ふぅ...」

 

五十鈴「ど、どうだった?」

 

提督「え?」

 

五十鈴「あ...な、何でもないわ!」プイッ

 

 

 

 

 

 

提督(嘘です。本当は聞こえてました)

 

提督(五十鈴の反応からして、どうやら思わず口に出てしまったものと見える。曖昧な返答をして正解だったようだ)

 

提督(だってはっきり答えたらどっちかが不快な思いするの確定なんだよなぁ)

 

提督(五十鈴ってこういうこと言う子じゃなかったと思うんだけど、俺に限らず、皆も変わってるという事か)

 

提督(長良もグイグイ来たし、またアオハルを味わうところだった。こんな青春送れた奴は宝くじの一等よりも運がいいから決して忘れるなよ)

 

 

 

 

 

 

長良「司令官、私達も開脚するんで押してもらえません?」

 

提督「それは五十鈴にやってもらってくれ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「それじゃ、もうすぐ朝飯だ。シャワーを浴びておいで」

 

長良「司令官も一緒に浴びます?」

 

提督「...あまりからかわないでくれ」

 

長良「失礼しました!それじゃ!」

 

五十鈴「お疲れ様。また執務でね」

 

提督「ん?ああ...」

 

 

 

 

提督(...まだからかわれるのは苦手なようだ)

 

 

 

 

 

 

 

提督(あ、そういや今日は五十鈴が秘書艦だったな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

長良「ふー!気持ちいいー!」

 

五十鈴「...あんた、今日どうしたのよ」

 

長良「五十鈴もわかってんじゃない?」

 

五十鈴「...何が?」

 

長良「とぼけてもダメだよ。司令官が一緒だったからメニュー増やしても生き生きしてたでしょ」

 

五十鈴「...やっぱ、増やしてたのね」

 

長良「一応人だからすぐバテると思ってたけど、思ってたより頑張ってたからびっくりしたよー」

 

五十鈴「...そうね」

 

長良「介抱するつもりだったけど、司令官の頑張り見てたらそんな気も失せちゃった」

 

五十鈴「開脚のときのアレはなんなのよ」

 

長良「スキンシップだってー」

 

五十鈴「...あっそ」

 

長良「五十鈴ほどじゃないけど、長良の良さも知ってもらいたかったの。今思えば邪道だけど」

 

五十鈴「そうね。そんなことしなくても提督なら長良姉の良さはわかってる筈よ。それに、ああいう事すると提督もまた警戒するわよ」

 

長良「そうだよねぇ...朝ご飯食べた後に謝るね」

 

 

 

 

 

五十鈴(長良姉の言う通り、今日のトレーニングはとてもテンションが上がったわ)

 

五十鈴(提督に触れられただけで喜ぶなんてね。やっぱり、五十鈴も単純だったのね)

 

五十鈴(みんなから遅れは取りたくないんだもの...)

 

 

 

長良(最近お話もしてなかったから、ついつい調子乗っちゃった。確かにまずかったかな)

 

長良(でも、長良たちの良さ、軽巡の良さは忘れて欲しくなかった。それだけは譲れなかった)

 

長良(司令官なら、わかってくれるよね...?)

 

 

 

 

 

 

 






遅くなりました


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おマセ艦アタック

 

 

 

 

 

 

提督(一人だけの時間は誰にでも必要だと思ってる)

 

 

 

提督(例えば自分の寝室、トイレの個室、個人風呂などのプライベートスペース。人一人が定員の空間は心を安らげる事ができる)

 

提督(人の交流が激しい時は一度そのような場所に避難して落ち着かせていた)

 

 

 

 

提督(ただ、ここ最近一部の艦娘がプライベートスペースへの侵入を試みている)

 

 

 

 

提督(如月と村雨である)

 

 

 

 

提督(以前から、何かと思わせぶりな言動が目立つ二人ではあったが、近頃は少しでも俺の世話をしようと距離を狭めようとしている)

 

提督(発端は恐らく長良のトレーニング後にやってきた筋肉痛での一件かもしれない。腕に力が入らず、書類の持ち運びや飲食が多少難ありと思っていたところで目を付けたようだ)

 

 

 

 

 

如月「司令官?手に力が入らないなら、如月が司令官の手になるわ♪」ウキウキ

 

村雨「村雨に任せてみない?普段より、ちょっといい生活になるわ♪」ウキウキ

 

 

 

 

 

提督(気遣いは嬉しいよ。腕に力が入らない間は不便な事が多いからね)

 

提督(でも、俺のプライベートスペースにまで入ろうとしなくていいからね)

 

 

 

 

提督(寝室では腕のマッサージをしようと入り込んで来た。勿論丁重にお断りした)

 

 

提督(個人風呂では背中を流したいと言われた。俺はまだ介護は必要ないので、丁重に以下略)

 

 

提督(トイレの個室は流石にビビった。ベルトを緩めてやろうかと言われたが、そこまで苦になってないわ)

 

 

提督(という訳で、女性不信は多少改善されつつあるが、気苦労が増えてきたと言ったところだ)

 

提督(そして、本日は如月が秘書艦である。あっ、ふーん...)

 

 

 

 

 

 

如月「司令官、今日も一日頑張りましょうね」

 

提督「ああ...」

 

如月「さぁ、まずは面倒な執務から済ませるわ」

 

提督「そうだな。始めるか」

 

 

 

 

 

提督(最初からかっ飛ばす訳でもなく、普通に執務が始まったまだ腕に力が入らないだろうから全部やるとか言われるかと思った。大袈裟ではなく、本当に言いかねないのだ)

 

 

 

 

 

如月「司令官、筋肉痛はまだ続いてる?」

 

提督「...もう痛みも引いてる。問題ない」

 

如月「本当?無理して言ってない?」

 

提督「だ、大丈夫だから」

 

如月「如月、心配してるんですよ?筋肉痛でも、司令官が苦労してると思うと...」

 

提督「そんな大袈裟な...」

 

如月「司令官、何かあったら如月を頼って下さいね?」ズイッ

 

 

 

 

 

提督(ちょっと過保護過ぎやしませんかね?これもう人をダメにするレベルのそれだと思う)

 

提督(俺が甘やかされる事に慣れてないからか、少しばかり抵抗がある。俺はどちらかと言うと甘やかしたい方なんだよなぁ)

 

提督(てか何で世話をしたがるようになったんだ?俺そんなに弱々しく見えるのかな?)

 

 

 

 

 

妖精「おとめごころがわからないていとくさんです」

 

妖精「どんかんなのはまんがだけだとおもってました」

 

妖精「わざとやってるかもしれないです」

 

 

 

 

 

提督(うるさいよ君たち。もうツッコまないけどそろそろ怒るからな)

 

 

提督(でも頼って欲しいって事は何かしら不安に思ってるのかもしれない)

 

 

 

 

 

提督「...それなら、少し肩を揉んでくれないか」

 

如月「わかったわ!」パァァ

 

 

 

 

 

 

 

提督(こんな典型的なことしか思い付かなかったが、如月は快く受けてくれた)

 

提督(小さな手が一生懸命に俺の肩をほぐしていて微笑ましい。俺もガキの頃は両親の肩を揉んであげたりしたが、こんな気分だったのかな)

 

 

 

 

 

如月「どう?気持ちいい?」モミモミ

 

提督「ああ、ありがとう。だいぶ軽くなったよ」

 

如月「よかった。司令官ったらずっと頑張ってたんだから、今ぐらい楽にしてほしいの」モミモミ

 

提督「そういう訳には...」

 

如月「ダメ。司令官はみんなにとって大切な人なんだから」

 

 

 

 

 

 

提督(まーた大袈裟だなぁ。そこまでしなくても、俺の代わりはいくらでも...というか如月めちゃくちゃいい匂いする)

 

 

 

 

 

 

村雨「失礼します」ガチャ

 

提督「ん、村雨?」

 

村雨「て、提督。その、もうすぐお昼でしょ?」

 

提督「ああ」

 

村雨「だ、だからね、お試しでちょっと作ってみたんだけど...」モジモジ

 

 

 

 

 

提督(村雨が差し出したのは可愛らしい弁当箱だった。まるで娘が作ってくれたみたいで微笑ましい。俺まだ独身だけど)

 

 

 

 

提督「...ありがとう。全部食べるからな」

 

村雨「...!」パァァ

 

如月(食堂で一緒に食べようとしてたけど迂闊だったわ...)

 

村雨「そ、それじゃ、次はもっといいのにするから...」フリフリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨(や、やった!受け取ってくれた!)グッ

 

時雨「ん?村雨、どうかしたのかい?」

 

村雨「ひゃ!?な、なんでもないわ!」ドタドタ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督(弁当箱を開けてみると、大きなハートがご飯の上に描かれていた。おかずも栄養バランスが取れているメニューだ。やはり微笑ましい)

 

 

提督(一口食べてみたが、美味しい。何だか心が温かくなるな)

 

 

 

 

 

 

如月「...司令官はお料理出来る子の方が好きなの?」ムスッ

 

提督「ん...ちょっと答えにくいな」

 

如月「どうなんですかー?」

 

提督「でも、料理出来る子は、いいなと思う」

 

如月「...じゃあ、もし如月がお料理作ったら、食べてくれる?」

 

提督「ああ。出されれば食べるよ」

 

如月「...ちょっと用事が出来たので、食堂行ってきますね」スタスタ

 

提督「ん、ああ」

 

 

 

 

 

提督(何だろうか、少し怒ってたような気がする。弁当箱を貰ってから如月が不満げな顔をしていたし、途中で村雨の対応をしていた事が原因か?)

 

提督(だとしたら、申し訳ない事をしたが、かといって村雨からの弁当箱を貰わない訳にもいかなかったし...駆逐艦とて、難しい年頃なのかもしれないな)

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

間宮「あら?如月ちゃん、どうしたの?」

 

如月「あの、料理を教わりたいんですが...」

 

間宮「あら、如月ちゃんも?村雨ちゃんに続いて熱心ね」

 

如月「え」

 

村雨「間宮さん!上手くいった...って、如月ちゃん...」

 

如月「...如月も、頑張るから」

 

村雨「...うふふ、負けないわ」

 

間宮(もしかして、タイミングが悪かったかしら...)

 

 

 

 

 

 

 

その後...

 

 

 

 

 

 

提督(やっぱ頼るというか、甘えるだけってのは性分じゃないな。なんか俺からもできることがないか聞いてみるか)

 

 

 

 

 

如月「如月、ただいま戻りました」ガチャ

 

提督「ああ、おかえり。村雨は?」

 

如月「後でお弁当箱を取りに来るみたいです」ムスッ

 

提督「そ、そうか」

 

如月(今日の秘書艦は如月なんだから...)

 

 

 

提督(やっぱ村雨の事を言うと不満なようだ。まあそれは後にして、早速聞いてみよう)

 

 

 

 

提督「そうだ如月、さっきの肩をほぐしてくれた礼に、俺からも何か出来ないか?」

 

如月「え?」

 

提督「まあ、今思い付かなくてもいいぞ」

 

如月「うーん...あっ」

 

提督「何かあったか?」

 

如月「そうねぇ、何でもしてくれる?」ニヤニヤ

 

 

 

 

 

 

提督(何でも、かぁ...子供の発想は突拍子もない事があるけど、最近の如月を考えると大丈夫そうかな?)

 

 

 

 

 

提督「...何でもって?」

 

如月「如月が結婚してほしいって言ったら、してくれる?」

 

提督「...うーん」

 

 

 

 

 

提督(...あー、そういうパターンね。親と結婚するって言っちゃうやつだなこれ)

 

提督(でも俺が何か出来ないかと言った手前、適当にあしらうのは失礼だよな。だけど結婚はちょっとなぁ...)

 

 

 

提督(それかあれか?最近大本営が開発に成功したらしいアレのことか?ニュアンスがどっちなのかわかんねぇな)

 

 

 

 

 

提督「うーん、ケッコンはまだ...」

 

如月(...やっぱり、今はまだ無理か。吹雪ちゃんたちの事もあるし...)シュン

 

提督(あ、落ち込んでる...)

 

如月「...なーんて、冗談ですよ♪そんなに真面目に答えなくていいのに♪」

 

提督「そ、そうか」

 

如月「じゃあ、髪でも梳かしてもらおうかしら♪」

 

提督「梳かす?ちょっと待ってくれ。櫛を...」

 

如月「司令官の手櫛がいいなー?」チラッチラッ

 

提督「何...?」

 

 

 

 

 

提督(手櫛ってあれだよな?俺の手で髪を梳かすんだよな?如月本人が希望してるから問題は無さそうだが...)

 

 

 

 

提督「あまり期待するなよ」

 

如月「はーい♪」

 

 

 

 

 

提督(如月は椅子に座り、俺は慎重に髪を触った。めちゃくちゃ柔らかいっすね)

 

提督(ゆっくり指を髪に通して梳かしていく。すっごい滑らかな手触りで引っ掛からない)

 

提督(それと気のせいかもしれないが、指を通す度に、髪からいい匂いが出ているような気がする)

 

 

 

 

 

如月「ん...気持ちいい♪司令官、なかなか上手いですよ」トロ-ン

 

提督「そうか...」

 

如月「如月の髪、いいでしょ?かなり手入れしてるんだから♪」

 

提督「...髪は女の命という言葉に納得している。軽々しく触っていいのかと思ってしまうぐらいだ」

 

如月「そうですよ。心から信頼の置ける人にしか許してませんよ。だから、司令官だけ触っていいんですよ♪」

 

提督「...それは光栄な事だ」

 

如月(言っちゃった!私、言ってやったわ!)キャ-キャ-

 

 

 

 

 

村雨「失礼します。提督、お弁当箱...を...」ガチャ

 

提督「あ」ピタッ

 

如月「あ」

 

村雨「...何をしてるの?」

 

 

 

 

提督(いっつも思うけど、間が悪いんだよなぁ。少し慣れてる俺も大概だけど)

 

 

 

 

村雨「如月ちゃん?何してるの?」

 

如月「え、えっと、司令官に髪を梳かしてもらって...」アハハ

 

村雨「それ、普通の櫛でよくない?」

 

如月「司令官が、何かお礼にって言うから...」

 

村雨「...提督、本当?」

 

提督「...ああ」

 

村雨「ふーん...」ムスッ

 

 

 

 

 

提督(村雨もわかりやすいぐらい不満げな顔をするなぁ。さて、どう対処しようか...)

 

 

 

 

 

村雨「...村雨も髪、梳かしてほしいなー?」チラッ

 

提督「え、なにそれは...」

 

村雨「如月ちゃんにだけやって、村雨に出来ないわけないですよね?」

 

提督「う...」

 

如月(せっかく二人きりだったのに...)

 

村雨(純粋に羨ましかったの!)

 

如月(村雨ちゃん、脳内に直接...!?)

 

 

 

 

 

提督(何か対抗意識の含んだ言い方をするなぁ。村雨もやって欲しいみたいだけど、そんなに気軽に触っていいのか?)

 

 

 

 

 

提督「じゃあ、失礼するぞ...」

 

村雨「準備出来てまーす♪」

 

 

 

 

 

提督(村雨の髪を触ると、如月とは違う柔らかさがあった)

 

提督(如月がサラサラだとすると、村雨はフワフワだ。改二になって髪のボリュームが増したからだろう)

 

提督(少し癖があるが、指が引っ掛かる事はなかった。というかもふもふしてて気持ちいい)

 

提督(大型犬を撫でてるような感覚に近い気がする。飼ったことないけど)

 

 

 

 

 

村雨「んん...」トロ-ン

 

提督「へ、平気か?」

 

村雨「提督が優しく梳かしてくれるから、眠くなっちゃって...」ウトウト

 

提督「そ、そうか」

 

村雨「...ごめんなさい、いきなりワガママ言って...」

 

提督「いやいや、お弁当のお礼ってことで」

 

村雨「如月ちゃんも、ごめんなさい」

 

如月「...いいのよ。気持ちは分かるから」

 

如月(如月も村雨ちゃんと同じ立場だったら、同じようにワガママを言ってるだろうから)

 

村雨「...ありがとう。では、村雨は戻ります」

 

提督「あ、弁当箱洗うから...」

 

村雨「いいんです。村雨がやります」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

提督(満足してくれたようだ。しっかし柔らかかったなぁ)

 

提督(頭撫でるのと髪触るのは少し違うからなぁ。そこんとこは気を付けよう。村雨も如月もちょっとしおらしくなって微笑ましいな)

 

 

 

 

 

 

 

村雨(髪の毛触ってもらった!手櫛で梳かしてもらった!)キャ-キャ-

 

村雨(優しい手付きだったなぁ...あの感じで他の所も...)ポッ

 

時雨「村雨、さっきからボーッとしてるけど」

 

村雨「ふぇ?な、何でもないから」アセアセ

 

時雨(提督絡みか...)グヌヌ

 

 

 

 

 

 

 

 






ふつーにイチャついてるんですがそれは



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指輪は我らのもの

 

 

 

 

 

大本営から正式な発表があった。

 

 

艦娘の練度限界を突破する装備の開発に成功、量産が出来次第、鎮守府に一つずつ配備するとのこと。

 

装備条件は、装備する艦娘の練度が限界に達していることのみ。

 

練度限界はちょっとやそっとで辿り着けるものではなく、長い時間と、提督と艦娘の信頼関係が無ければ実現出来ない。

 

 

故に、その装備の形と、艦娘への配備風景が、ある儀式と似ていた為、ケッコンカッコカリと呼称された。

 

 

 

 

 

...実を言うと、俺はある程度予想がついていた。

 

開発が成功したという噂が広まった時、俺はあるワードが耳に残っていた。それは『ケッコン』だった。

 

 

 

 

は?結婚?マジかよ。

 

軍は遂に配偶者すら縛るのかと思ったが、実際損ではなかった。

 

共にいる期間が長いため、性格や行動習慣がある程度わかるのは大きなメリットだと思う。昨今、価値観の違いとかいうクッソ便利なワードのお陰で離婚も少なくないからな。

 

そういう意味では納得がいくが、やっぱ『ケッコンカッコカリ』という名前がちょっとなぁ。

 

 

 

 

俺の鎮守府にも近日中に配備されると連絡があった。

 

その書類とにらめっこしてると、今日の秘書艦である青葉が覗いてきた。

 

青葉を見るのは久しぶりな気がする。今まで何をしていたのだろうか...

 

 

 

 

 

 

 

青葉「何か気になる書類があるようですね~」

 

提督「...そう見えたか」

 

青葉「司令官、何か考えてる時は頬杖つくか眉間を掻きますから」

 

提督「え」

 

青葉「えへへ、青葉はよく見てますから」

 

 

 

 

 

自覚無しだった俺の癖を見抜かれ、少し驚く。

 

俺そんなにわかりやすい行動してたかなぁ。

 

うーん、何か変な気分だから話題を変える。

 

 

 

 

 

 

提督「そういや最近見なかったが、どこか行ってたのか?」

 

青葉「お、司令官鋭いですねぇ。ちょっとお忍びで旅行してました!」

 

提督「お前...許可も無しにか」

 

青葉「ごめんなさい!どーしても行きたいところがあったので!」

 

 

 

 

 

 

青葉の行きたいところ?どこだ?

 

京都とかそういう古都は別にお忍びで行くほどのものじゃないしなぁ。言えば許可出すし。

 

俺に隠してまで行くところってなんだ?

 

 

 

 

まさか夜の街とか?

 

 

 

 

 

まあ青葉もいい年頃だしな。そういう場所行くのは構わないが...

 

 

 

 

 

 

 

提督「...ふむ」

 

青葉「あの、今司令官が思ってるような所には行ってませんよ?」

 

提督「な、なんの事だ?」

 

青葉「もー、司令官ってば心配性ですねぇ♪でも、嬉しいです♪」

 

提督「...」

 

 

 

 

 

言い方から察するに、本当に俺が思ってた事を見抜いたようだ。超能力者か。

 

 

普通に考えてただけで、特にわかりやすいサインは出してないはずなんだが...

 

 

 

 

 

 

 

青葉(司令官の実家に行ったなんて言えるわけないですかから)

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

提督の実家

 

 

 

 

 

 

青葉「ごめんくださーい」ピンポ-ン

 

 

 

 

 

提督母「はい、どなたでしょうか?」ガチャ

 

青葉「突然の訪問、失礼します。私は○○鎮守府に所属している重巡洋艦、青葉と申します」

 

提督母「○○鎮守府...って、まさか息子の?」

 

青葉「はい。司令官は○○(提督のフルネーム)です」

 

提督母「あら~!艦娘さんでしたか!遠路遥々ご苦労さまです~!上がっていって!」

 

青葉「恐縮です!」

 

 

 

青葉(実家潜入成功です!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督父「青葉って言ったら、あの『ソロモンの狼』のか」

 

青葉「あはは、そんな事言われてたんですか...」

 

提督父「こんな寂れた家に来て頂きありがとうございます。それにしてもあのバカ息子、来るなら連絡ぐらい...」

 

青葉「あ、青葉が勝手に来たので、その...」

 

提督父「何!艦娘の方が直々に出張るとは、何かあったんですか」

 

青葉「あ、それなんですけど、司令官の事について少々...」

 

提督母「そうだ、あの子ったら全く連絡寄越さないのよね。元気にしてる?」

 

青葉「はい。元気に...していますね」

 

提督父「...失礼ですが、その間は何かあったとお見受けしますが」

 

青葉(流石司令官のお父さんですね。こういうところは鋭い)

 

青葉「そのー、青葉が着任したての時は全く元気がないと言うか、必要以上のコミュニケーションを取らなかったので」

 

提督母「まぁ!こんな可愛い子に勿体ない!」

 

青葉「あはは...そのー、理由が後でわかったので、青葉は気にしてないです」

 

提督父「理由とは?」

 

青葉「少し話が変わりますが、司令官が軍学校に編入する前、大学を休学したという話を聞きましたか?」

 

提督父「休学?」

 

提督母「え、あの子そんなことしてたの?」

 

青葉(やはりお話になられてなかったみたいですね...)

 

 

青葉「その、休学になった理由が、青葉たちと必要以上に距離を取っていた理由なんです」

 

提督父「それは...なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉、事情説明中...

 

 

 

 

 

 

 

提督父「...そんな事があったとは知りませんでした」

 

提督母「あの子、何で言ってくれなかったの...」

 

提督父「まあ母さん、代わりに艦娘の方たちに話したんだ。少しは良い方に向かっているんだろう」

 

 

 

 

青葉「それで、司令官が交際に対して理念を持ったのは、お父さんの影響とも言ってましたが、何か教えたりしたんですか?」

 

提督父「私は何も教えた事は無いですよ。恋愛に関しては、息子の自由にしていました」

 

提督父「だが、強いて言うなら、私を真似たのかもしれません。子は親を見て育つものですから」

 

青葉「という事は、お父さんも一途という事ですね?」ニヤニヤ

 

提督父「まあ...そうと言われればそうなるか」

 

提督母「恥ずかしいですね」

 

提督父「私も浮気や不貞は好ましく思っていません。だって、誰も幸せにならないでしょう?一時の幸せなど、有りもしない幻です。必ず残るのは後悔と破局だけですから」

 

青葉「そうですねぇ」

 

提督父「傍にいてくれる事が何よりの幸せなのに、それが当たり前と感じてしまうと、人は飽きてその幻に憧れたりするものです。息子は...運が悪かったのかもしれないですね...」

 

 

青葉「でも、そのお陰で司令官に会えましたから、青葉は一概にそうと言えないです」

 

 

提督父「...そうですか」

 

 

 

 

 

青葉「そういえば司令官にお見合いなんて話が来てたりします?」

 

提督母「うーん...来てはいないけど、候補は...」

 

青葉「あ、あの、出来れば、これからお見合いの話は全て無しにしてもらいたいのです」

 

提督母「え、どうして?」

 

青葉「司令官は外部の女性に対して未だに不安を抱いています。何とか青葉たち艦娘が和らげていますが、外部の女性との接触でトラウマが再発するかもしれないのです。だから、司令官の事は、青葉たちに任せて欲しいのです」

 

提督母「え、そうなるとお嫁さんは...」

 

青葉「鎮守府の艦娘になると思います」

 

提督母「まぁ...」

 

提督父「いいんじゃないか?」

 

青葉(おっ)

 

提督父「私は反対はしない。息子を裏切らない限りはね」

 

提督父「艦娘の方たちなら付き合いも長いだろうし、価値観もだいぶ分かってるだろう。それに、息子が幸せになってくれるなら、それで構わない」

 

提督母「...お父さんがそう言うなら..」

 

青葉「...わかりました。今日はありがとうございました」スッ

 

提督父「何ですかそれは」

 

青葉「突然訪問してしまったお詫びと、取材料です」

 

青葉「最後に、もう一つお願いがあります。どうか青葉がここに来た事は、司令官には知らせないで下さい。よろしくお願いします」ペコ

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉(司令官の実家に行ったことは他の子達にも報告済みです)

 

 

青葉(だから、もう外部のメス犬共は司令官に近寄れない)

 

 

青葉(地位と金で擦り寄る女は司令官に相応しくないですよ)

 

 

青葉(たとえそれを抜きにして司令官を好きになっても、もう手遅れですよ)ハイライトオフ

 

 

青葉(司令官からの指輪は、青葉たちのものです)ニタァ

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「青葉?」

 

青葉「ふへへ...」ニヤニヤ

 

提督(ふふ、こわ...)ブルッ

 

 

 

 

 

 







コメントにて地の文は提督くんの内情なのでそのままの状態がいいとあったので修正無しで載せました


多分他のも戻していくと思います



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心に届く想い

 

 

 

 

 

 

 

遂にケッコンカッコカリ用の指輪が明日送られてくる。

 

練度は皆申し分無しだが、限界まではあと少しという子が多い。

 

後から来た朝潮たちも急激に練度を上げ、限界付近にまで達しようとしている。経験値ブーストでも起こってるのかと思うレベルだった。

 

 

 

まあそれはいいんだ。問題は誰に贈るかだ。

 

ケッコンカッコカリの詳細を確かめると、限界突破は勿論のこと、燃費の向上、運の向上、耐久の向上、桜の花びらが舞い落ちる、等。

 

 

最後が違和感しかないが、有用な装備なんじゃないか?と思ったよ。てか最後のこれは何?演出か何か?

 

 

 

 

 

 

妖精「わたしたちがさくらのはなびらをおとします」

 

妖精「ふんいきはたいせつです」

 

妖精「ゆかにおちたらきえますので、そうじのしんぱいなし」

 

 

 

 

 

 

お前らがやるのか...(困惑)

 

まあ変な事しなけりゃなんでもいい。

 

システムは大体把握したが、贈る相手をどうしようか絶賛迷っている。

 

 

 

まず大型艦たちは間違い無く指輪の恩恵を最大限に受けられる。駆逐艦たちは効果が薄いから候補に上がりにくいと考えるのが妥当だろう。

 

ここまでは事務的な考えだ。俺はそれよりも内情にかなり偏っていた。

 

 

カッコカリとあるが、やってる事は結婚式とほぼ同じだ。緊張もあるが、どうしてもマイナスイメージが浮かんでしまう。

 

 

指輪だから変に意識してしまうのが悪いんだが、拒否されたらどうしようか。俺と艦娘の思惑が違って破局してしまわないか。相手の気持ちを考慮できず、無理やり渡してしまうのではないか、と。

 

 

 

不安で胃が痛くなる。以前とは違うと思ってても、身体が震える。

 

 

 

 

彼女たちは大丈夫だと思っても、僅かな疑問も生まれてしまう。

 

 

 

 

こういう所は、まだ変われていない。

 

 

 

 

 

夜の帳が下りても、俺はそのことで頭がいっぱいだった。

 

 

不安で食べ物が喉を通らない。皆の視線が怖い。何を考えているのか想像もつかない。

 

 

 

俺は無理やり料理を口に押し込み、逃げるように埠頭へ向かった。

 

 

 

 

 

潮風に当たっていると、少しずつ落ち着いてきた。単調に繰り返す波の音は、俺の緊張を和らげていく。

 

 

 

 

光をも呑み込んでしまうような漆黒の海を見ていると、不思議な気分になっていた。

 

 

 

その暗闇に身を投じてしまえば二度と戻らなくなりそうなのに、恐怖が一切感じられない。

 

 

 

飛び込んでしまっても、波の音が全てかき消してしまうような気がする。

 

 

 

もし溺れても、苦しまずに死ねるような気がする。

 

 

 

だから、俺は....

 

 

 

 

 

 

 

『だ、ダメです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「...はっ!」

 

 

 

 

 

後ろから聞こえた叫び声で、俺は正気に戻った。

 

片足がほぼ浮きかけていたところで、俺は尻もちを着いた。

 

そして、一気に恐怖がこみ上げてきた。

 

 

 

 

 

 

提督「磯...波...?」

 

磯波「はぁ、はぁ、何を、してるんですか...」ゼェゼェ

 

提督「何って...」

 

磯波「て、提督、なんで、そんな、みんなが悲しむようなことを...」

 

提督「俺は...」

 

磯波「死んじゃダメです...提督が死んだら、皆が悲しみます...!」ウルウル

 

提督「...すまない」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

磯波「提督さん、何だか様子が変だったので、急いでご飯を食べてきたら...」

 

提督「...すまない、俺もどうかしてた」

 

磯波「何か、そこまで思い詰める事でもあったんですか?」

 

提督「...少し、な」

 

磯波「...磯波でよければ、話して下さい」

 

提督「...ケッコンについて、少しな」

 

磯波「け、ケッコン!?提督、結婚するんですか!?」

 

提督「お、落ち着け!俺はまだそのつもりは無い!俺が言ってるのは...」

 

 

 

 

 

 

 

提督、説明中...

 

 

 

 

 

 

 

 

磯波「す、すいません。取り乱しちゃって...」カ-ッ

 

提督「いや、俺も皆に言葉足らずだったのが悪い」

 

磯波「...それで、ケッコンカッコカリの相手でお悩みに?」

 

提督「ああ。戦力強化と割り切ればいいんだが、俺はどうにもそれが出来ないみたいなんだ」

 

磯波(そんな事、考えないでほしいです...)

 

提督「ほら、相手がその気じゃないのに結婚の真似事されたら嫌だろ?」

 

磯波「...そうですね。私だったら嫌と言います」

 

提督「だろ?だから慎重に...」

 

磯波「...その必要は無いです」

 

提督「え?」

 

磯波「この鎮守府にいる人たちは、みんな提督さんから指輪を貰えたら嬉しいと思ってます」

 

提督「そりゃ冗談...」

 

磯波「私も、本気です」

 

提督「...ゑ?」

 

 

 

 

 

 

そ、それって、みんな戦力強化出来るからか?

 

それとも...いや、まさかそんな事は...

 

 

 

 

 

 

磯波「たとえ真似事だとしても、私たちは提督と結ばれたいんです。仮初であっても、心から嬉しく思いますよ」

 

提督「...」

 

磯波「ずっと距離を置かれてましたけど、みんな提督の隠れた優しさを知っているんです。そこに私たちは惹かれて、もっと知りたくて、もっと近付きたくて、ずっと夢見てるんですよ」

 

提督「...本当なのか」

 

磯波「はい。今こうしている時間も、本当は舞い上がってしまうぐらい嬉しいです。ずっと...ずっと好きだった人と二人きりなんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

...え、俺今告白されたの?

 

あかん、何かめちゃくちゃ変な雰囲気になっとる。

 

 

俺は嬉しいようなそうじゃないような変な感じがしている。

 

 

 

 

 

 

磯波「今ここにいるのが私じゃなくて、他の人だとしても、その人は私と同じ...いえ、もっと嬉しく思うでしょう。それぐらい、みんな提督さんの事を慕っているんです」

 

提督「じゃ、じゃあ...誰に指輪を渡しても...」

 

磯波「必ず受け取ってくれます」

 

提督「そ、そうか...いや、でも...」

 

 

 

 

 

 

こんな事で悩むのは贅沢の極みであろう。

 

配備される指輪は一つだけ。だから渡せる子も一人だけ。

 

 

 

皆が俺を好いているとしたら、選ばれなかった子は何を思う?

 

今まで俺を支えてくれた子たちの中から、一人だけ選ぶというのは、あまりにも残酷で、非道だと思った。

 

 

俺は...皆の幸せを願っている。

 

皆が笑顔になってくれさえすれば、それでいいんだ。

 

それが、大多数の子たちを悲しませる事になるかもしれないなんて...

 

 

 

俺は...

 

 

 

 

 

磯波「提督さん、一つだけ、アドバイスします」

 

提督「な、何だ?」

 

磯波「この鎮守府に着任してから、一番安心と信頼の置ける子は、誰ですか?」

 

提督「誰って...」

 

磯波「今、真っ先に頭に思い浮かんだ子は、誰ですか?」

 

提督「それは...」

 

磯波「あ、名前は言わなくていいです。その子が、きっと提督の答えだと思います」

 

提督「答え...」

 

磯波「そして、きっとその子も、提督から指輪を貰えるのを待ってると思います。だから、その時が来たら...」

 

提督「...」

 

磯波「その時が来たら、提督の想いを、ありのまま伝えて下さい」

 

提督「...いいのか?」

 

磯波「みんなはどんな結果になっても、それを受け止めます。だから、提督は迷わなくていいんです」

 

 

 

 

 

 

 

...何だか、元気付けられた。

 

この子から、とても強く真っ直ぐな想いを伝えられた。

 

普段大人しい磯波が、ここまで話すのは珍しいことだ。おそらくありったけの勇気を振り絞ったのだろう。

 

 

 

なら、俺はどうする?

 

今までみたいに臆していればいいのか?

 

 

 

いや、そんな訳にはいかない。

 

本当に、覚悟を決めるんだ。

 

今度こそ、艦娘たちを、皆を信じるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

提督「...ありがとう、磯波」

 

磯波「あ、はい...では、私は戻りますね」

 

提督「わかった」

 

磯波「て、提督さんも、早く戻って下さいね。それでは...」スタスタ

 

提督「...そうだな。もう戻らないと」

 

 

 

 

 

あの頃のように、純粋に、一途に想っていた時に戻るんだ。

 

もう、迷う必要は、無いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

磯波(青葉さんが外側を固めて、私が何とか内側を固められた...)ホッ

 

磯波(後は...頼んだよ...!)

 

 

 

 

 

 

 

 





新元号おめでとナス


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皆と共に

 

 

 

 

 

 

 

遂に来た。

 

小包で来たよ。

 

郵便屋さんが届けるようなノリで来たよ。もっと丁重に扱うべきものじゃないの?

 

 

まあいいわ。とりあえず開けてみる。何か新しい物を買った時のような、言い表せないワクワクがあった。

 

 

 

 

提督「これが...」スッ

 

指輪「オッス」

 

 

 

 

 

小箱の中には指輪が一つだけ。

 

普通は二人分あるものだが、カッコカリだから一人だけなのか。

 

 

 

箱の隅から小さな紙がはみ出ていた。指輪本体の値段らしい...

 

 

 

 

 

700円(ただし円相場は明治に準ずる)

 

 

 

 

 

...注釈がクッソ小さい字で書かれてた。

 

俺は明治の円相場を調べたら、1円でおよそ2万円の価値があったらしい。

 

 

 

...これ詐欺だろ。注釈通りに換算したら約1400万円だぞこれ。

 

まあ限界突破装置だから納得は出来なくないよ?むしろ一つ貰えるとか大盤振る舞いじゃん。

 

でも何故値段の書いた紙切れをわざとらしくはみ出させておく?まさかこれ買えってか?

 

 

 

 

...細かい事はいい。渡す相手は決めてある。

 

磯波からのアドバイス通りにして、もう呼び出してある。

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「失礼します」ガチャ

 

提督「ああ。よく来てくれた」

 

吹雪「大事なお話と聞きましたが...」

 

 

 

 

 

 

そう、吹雪だ。

 

ここに着任する直前に、彼女を初期艦に選んだ。

 

俺を見限らず、ずっと陰ながら支えてくれていた。

 

勿論他の艦娘たちも同じだ。だが、吹雪が圧倒的に過ごした時間が長い。

 

今まで俺に着いてきてくれた、感謝を今伝えて、これを渡そう。

 

 

 

 

 

 

提督「...少し、昔の事を思い出してた。吹雪と俺が、ここに着任してから、今の今までを」

 

吹雪「懐かしいですね。まだ一年も経ってないですけど、賑やかになりましたね」

 

提督「ああ。以前は愛想笑いしかしてなかった俺が、今は普通に笑うことができてる」

 

吹雪「司令官に選ばれた理由を聞いた時は悲しかったですよ?」

 

提督「それについては本当に申し訳ない。だから、感謝してるんだ。愛想を尽かすことなく、ずっと居てくれた事を」

 

吹雪「愛想なんて尽かしませんよ。理由が理由ですし、何より、私たちへの待遇で酷い人だとは思えませんでしたから」

 

提督「...そうか。上手く隠せてなかったか」

 

吹雪「バレバレでしたよ」エヘヘ

 

提督「...はは、そうか」

 

 

 

 

 

 

上手く指輪を渡そうと思っていたが、いざ言おうとすると緊張するものだ。昔話に花を咲かせてる場合じゃないぞ俺。

 

 

 

 

 

 

提督「...今までありがとう。吹雪」

 

吹雪「ど、どうしたんですか?」

 

提督「俺には、感謝しかない。繰り返すようだが、ずっと見限らず、練度が限界になるまで、よく俺を支えてくれたね」

 

吹雪「...はい」

 

提督「だから、俺は君に、感謝と信頼のしるしに、これを贈りたい」スッ

 

吹雪「それは...」

 

提督「ケッコンカッコカリの指輪だ」

 

 

 

 

 

 

やばい。俺めちゃくちゃ緊張してる。自分の鼓動が聞こえる。でかいって。

 

 

吹雪も驚いてるのか、困惑してるのか、複雑な表情をしてる。

 

 

恐れるな俺。たとえ拒否されようが、気負う事は無い。俺はここまで成長できた。ここまで立ち直れたんだから。

 

 

 

 

 

 

吹雪「...私でいいんですか?」

 

提督「ああ」

 

吹雪「...受け取る前に、一ついいですか?」

 

提督「な、なんだ?」

 

吹雪「私以外の皆さんにも、指輪を渡してもらえますか?」

 

提督「...え?」

 

 

 

 

 

 

...え?ゑ?

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「...司令官から貰える事は嬉しいです。でも、私だけ貰ってはいずれ艦隊内に必ず不和が生まれると思います」

 

提督「う...」

 

吹雪「だから、出来るならば皆にも指輪を渡してほしいのです」

 

提督「そ、それって...重婚しろということか?」

 

吹雪「そうです。どうか...」フカブカ

 

提督「うぐ...」

 

 

 

 

 

じゅ、重婚してくれだと!?

 

吹雪の口からそんなこと聞くとは思わなかった。全くの予想外だって。

 

重婚って、殿様か石油王か?な、なんでだ!?

 

い、いやいや、俺は...

 

 

 

 

 

吹雪「司令官が一途なのはわかってます。だから、私の言ってることが不誠実に思われるでしょう」

 

提督「え?あ、ああ...」

 

吹雪「でも、私たちは不誠実なんて思ってません。だって、皆もジュウコンに賛成してるんですから」

 

提督「え!?」

 

 

吹雪「青葉さんから司令官の過去を聞くまではそんなこと思ってませんでした。でも、聞いた後に考えが変わったんです。誰か一人だけでは、本当に幸せにさせられないかもって」

 

吹雪「新しく来た三人も例外じゃないです。皆、司令官を幸せにしたいと言ってくれました。皆が、司令官と共に幸せになりたいんです」

 

吹雪「好きになった相手に尽くす。私も皆も司令官と同じです。ただ、司令官は数が多くなってしまいますけど...もしかして、司令官は他の子で嫌いな子がいましたか?」

 

提督「い、いや、そんなことは...」

 

吹雪「無理に答えなくていいんです。心の内に留めておいても...」

 

提督「そ、そんなことはない!俺は皆のことが...」

 

 

 

 

 

...あれ?声が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故声が出ないと思う?それは好きだと言いたくないからだ』

 

 

 

『何故だと思う?認めたくないからだ。自分が無意識のうちに一人以上の異性に好意を寄せてたなんてな』

 

 

 

『自分は一人しか好きになれない、愛せないという自身に溺れてただけだ。だからお前は今躊躇っている』

 

 

 

 

 

 

 

 

...そう。そうだよ。

 

俺は、皆に過去を話して、それでも以前よりも距離を縮めようと努力する彼女たちを見て、いつか好きになっていた。

 

駆逐艦だろうが、軽巡や重巡だろうが、空母や戦艦だろうが、誰であっても。

 

それに気付いてしまった俺は、無理やり自分に蓋をしたんだ。過去にあれだけ酷い目にあってる自分が、過去以上に浮かれている姿を恥じてしまったんだ。

 

結局は、自分から過去に縛られていたんだ。

 

悲劇の主人公のままでいようと甘んじてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ようやく素直になったか。なら、やる事は一つだろう?』

 

 

 

『お前は皆の幸せを願っている。艦娘たちは皆指輪を欲しがっている』

 

 

 

『お互い幸せになる最高のルートがある訳だ。今のお前なら、選べるだろう?』

 

 

 

『だから、今目の前にいる子に、言うべき言葉はわかってるだろう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだな。だから、俺は...

 

 

 

 

 

 

提督「俺は、皆の事が好きだ」

 

吹雪「...!」

 

提督「すまない、漸く決心がついた。俺は皆に指輪を渡したい」

 

吹雪「...本気、ですか?」

 

提督「勿論だ。だから、皆を呼んでほしい」

 

吹雪「は、はい!」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

集会場

 

 

 

 

 

 

 

提督「...皆、集まったな。じゃあ、話をしよう」

 

 

艦娘たち『』シ-ン

 

 

提督「つい先程、ケッコンカッコカリ用の指輪が一つ届いた。俺は吹雪と相談し、皆にも指輪を渡そうという結論に至った」

 

 

艦娘たち『!』ザワザワ

 

 

提督「ただ、これだけは言わせてほしい。やはり不誠実だと思ったり、納得が行かないと思われているかもしれない」

 

提督「それでも俺は、皆のことが好きだ。誰一人、蔑ろにするつもりは一切無い。俺は、好きになった相手に尽くすしか能が無いからだ」

 

提督「だから、本当は嫌だと思う娘は...」

 

 

 

霞『いるわけないでしょ!このクズ!』

 

 

 

提督「はっ!?」

 

霞「あんたの性格なんか把握してんだから、尽くされたい艦娘しか居ないんだから!」

 

妙高「ずっと、ずっと待っていました。提督に好きと言われる時を」

 

飛鷹「遅かっただなんて言わないわ。むしろ、よく言ってくれたわ」

 

長門「ああ、久々に胸と目頭が熱くなってきた!」

 

酒匂「ぴゃあ~!司令大好き!」

 

提督「み、みんな...」ウルッ

 

 

 

 

 

 

...皆が、拒絶どころか歓迎してくれている。

 

昔の俺なら、こんな状況を拒絶していただろう。

 

でも、今はとにかく嬉しいんだ。

 

やっと、彼女たちと想いが繋がって、嬉しいんだ。

 

 

 

 

 

吹雪「司令官」

 

提督「な、なんだ」ウルウル

 

吹雪「さっきまでの司令官だったら、感謝の意で指輪を渡そうとしてましたよね?」

 

提督「...そうかもしれない」

 

吹雪「それじゃ嫌です。カッコカリとあっても、気持ちまで仮のままは嫌です。だから...」

 

 

 

 

吹雪「もう一度、私にケッコンカッコカリを申し込んで下さい」

 

 

 

 

 

...そうだったな。感謝の意だけでは彼女たちは納得しないもんな。

 

今なら言える。ありのままに...!

 

 

 

 

 

提督「吹雪、ずっと支えてくれてありがとう。愛している」

 

吹雪「...は、はい」ウルッ

 

提督「俺とケッコンしてくれないか」

 

吹雪「...喜んで!」ポロポロ

 

提督「じゃあ、手を出してくれ」

 

 

 

 

 

吹雪は左手を前に出した。細くて、綺麗な女の子の手だ。

 

俺は優しく手を取り、薬指に指輪を嵌めた。

 

一瞬、指輪がキラリと光ると、真上からひらひらと桜の花びらが舞い落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

妖精「おめでとー」パラパラ

 

妖精「ていとくさん、ありがとー」パラパラ

 

妖精「やっとしあわせになれましたね」パラパラ

 

妖精「わたしたちもしあわせなきぶんです」パラパラ

 

 

 

 

 

ああそうだった。君たちの担当それだったな。

 

 

 

そう。お前たちがあの時、俺の身体の上で遊んでなかったら...俺が気付いてなかったら、今こうして、想いを告げることはできなかっただろう。

 

茶々入れてきたり、変なことしてきたりと腹立たしくもあったが、今は君らにも感謝しかない。

 

 

 

 

 

 

提督「...ありがとう。俺を選んでくれて。俺を彼女たちに引き合わせてくれて」ナデナデ

 

妖精「ふぁぁ...とてもやさしいあたたかさ」トロ-ン

 

妖精「ありがとうていとくさん。しあわせです」トロ-ン

 

妖精「やはりていとくさんのあたたかさはやみつきになります」トロ-ン

 

妖精「わたしたちもだいすきですよ」トロ-ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「...私も、愛してます!司令官!」ガバッ

 

提督「...!?」

 

 

 

 

 

 

吹雪は妖精を撫で終えた俺に抱き着き、顔を俺に寄せた。

 

首に腕が回り、唇に柔らかいものが触れた。

 

 

一瞬理解できなかったが、理解した途端、自然と涙が零れていた。

 

 

 

 

やっと、感じ取れた。

 

人に好かれているという気持ち、愛されているという気持ちを。

 

言葉にしなくても、吹雪の気持ちが伝わってきた。

 

胸の中から何かが溢れてくる感覚と、じんわりと身体中に甘い痺れが伝わった。

 

 

 

小さな嗚咽を漏らしながらも、ずっと離そうとしない吹雪が、とても愛おしく感じた。

 

俺は自然に抱き締め返していた。もう涙は止まらない。

 

これが本当に、愛されるということなのか。

 

 

 

 

とても、良いものだな...

 

 

 

 

 

 

吹雪「...ぷはっ」

 

提督「...吹雪」

 

吹雪「...あ、す、すいません!つい感極まって...」カオマッカ

 

提督「...とても嬉しくて、幸せだったよ」ギュッ

 

吹雪「あ...///」ポロポロ

 

 

 

 

 

睦月「ていとくー!睦月たちに指輪が来たら、ちゅーしてくださいね!」

 

提督「え、あ、ああ...」ビクッ

 

如月「あんなの見せつけられたら、フライングしたくなるわ...」ハァハァ

 

卯月「口から砂糖が止まらないぴょんんんんん!!!」ダバ-

 

弥生「見てるこっちも、幸せになりました...」ポッ

 

村雨「」カオマッカ

 

蒼龍「いいなー!」

 

飛龍「ちゃんとやってよねー!」

 

 

 

 

な、何だか凄く幸せ者だなと改めて思った。

 

でも、指輪の追加か...

 

 

 

 

 

提督「その、指輪なんだが、俺の貯金だけじゃ、その...」

 

時雨「あ、それなら心配しないで。僕たちはもう自分の指輪を申請してあるから」

 

提督「そ、そうか...ん?」

 

朝潮「明日には届くようです!楽しみで眠れるか不安です!」

 

提督「え?お金は?」

 

霰「霰たちも、ずっと貯金してた」

 

提督「そ、そうなの?」

 

 

 

 

 

マジで?給与はあるけど税金で抜かれるし、相当節約しないと無理だと思うんだけど。

 

 

 

てか指輪来るの早くね?いつ申請したの?

 

 

 

 

 

 

隼鷹「いやー酒を我慢した甲斐があったわ!」

 

明石「何なら指輪に名前でも掘りましょうか!」

 

青葉「いえいえ、その前に司令官の両親に連絡しないと!」

 

陸奥「あ、それは大事ね!お化粧品まだ切れてないか確かめないと」

 

 

 

 

 

 

...え?

 

両親だって?

 

 

 

 

 

 

長良「いやー、みんなで司令官の両親に会うんだね」

 

五十鈴「五十鈴の良さ、いっぱい知ってもらわないと!」

 

羽黒「ちゃ、ちゃんとお話できるようにならないと...!」

 

鈴谷「いやー緊張するねー」

 

 

 

 

 

提督「ちょ、ちょっと待ってくれ。親が何だって?」

 

青葉「あ、すいません司令官!実は秘書艦になる前日に、司令官の実家に向かってたんです!」

 

提督「な、何だと!?」

 

青葉「御両親は重婚にどう思うかは分かりませんが、恐らくOKだと思いますよ」

 

提督「('ω')」

 

 

 

 

 

 

 

な、なんて事だ、いつの間に外堀が...

 

 

 

 

 

 

間宮「きっと喜んでくれますよ!」

 

瑞鶴「安心して、提督さん。何があってもずっと一緒だから!」カオマッカ

 

提督「あ、あはは...」

 

磯波「提督、大丈夫だったでしょう?」ニコッ

 

提督「磯波...お前、昨日のはそういう意味で言ったのか...」

 

磯波「うふふ、私も大好きです」

 

吹雪「司令官、これからもっと賑やかになりますね!」

 

 

 

 

 

ちょっと待て!俺が知らない所でめちゃくちゃ話が進んでたってことだろ!?

 

まさか、全てこの時を見越して...ってことは、吹雪の提案も...?

 

 

 

 

提督「は、はは...」

 

吹雪「死が私たちを分かつまで、みんな傍にいますから」

 

提督「あ、ありがとう...」

 

 

 

 

 

それはいいんだ。俺も望んでたし。

 

 

 

でも、それでも...

 

 

 

 

 

如月「や、やっぱり待ちきれない!」ダッ

 

時雨「おっと、待った方がいいよ」

 

村雨「そ、そうよ!待った分だけキスした時に幸せになれるから!」ウズウズ

 

 

 

 

陸奥「まだ切れてなかったわ」

 

隼鷹「久々に商船時代のおめかしするかねぇ!」

 

飛鷹「私もそうするわ」

 

 

 

 

 

妙高「シンコンリョコウ...どこがいいでしょうか」

 

羽黒(ま、またハグしてもらえるなら...)ドキドキ

 

瑞鶴「ここ行ってみたいなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「艦娘からのアプローチが怖い...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり!

 

 

 

 

 

 





ここまで読んで下さりありがとうございました。

番外編は転載せずほんへのみにします。
もしハーメルンにてオリジナルの作品を書くことがありましたら、その時はよろしくお願いします。




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