女神による創造物の人生 (雪谷)
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HLの一夜城

今更ながら血界戦線にはまりました。

これは完全なる俺得または趣味でできた捏造過多の二次創作となりますのでご了承ください。基本気まぐれ更新のためエタる可能性大。
原作との差異は笑って見逃していただけると幸いです。
とくにタグやあらすじにあるようにレオナルド少年の捏造がひどいです。チート化してますのでご注意ください。
では、駄文への寛容な心と突然ぶっこまれるご都合主義に耐性があり、なおかつお許しいただける方のみ本編へお進みください。

※なお作者はネット上でもコミュ障のためお取り扱いには細心の注意をお願いいたします。


 その日ライブラの事務所でスティーブンは一つの書類に悩まされていた。三徹しているため表情は死んでいるが他の書類はすべて捌き終わっている。

 

 

「三日前からずっと悩んでませんか。何か問題でもあったんっすか?」

 

 

 レオナルドは三日間聞くのを我慢しておとなしく待機していたのだが、ついに我慢ができなくなり半死半生の状態のスティーブンに質問した。同じソファーに座っていたザップはぎょっとして慌ててレオナルドの口を押えようとしたが、予想に反して番頭から冷気が漂ってくることはなく死にそうな声が返ってくるだけだった。

 

 

「ちょっとどうしたんすか番頭……そんなに厄介な案件なんて最近ありました?」

 

「はぁ~……この際お前たちでもいい。完全にお手上げ状態なんだ、なにか心当たりはないか?」

 

「「え?」」

 

「最近できたビルなんだが、オープンする前日その場所はただの空き地だった。だが翌日一夜にして約800mのビルが出来上がっていた。ここまではまだHLでは許容範囲内なんだが、これを見てくれ」

 

 

 疲れ切った様子のスティーブンは珍しく書類媒体そのものをレオナルドとザップに見えるように掲げて見せた。

 

 

ーーー

title:報告書

 

 お疲れ様です。先日頼まれた秘密結社アテナについて簡単に報告します。

 

 調査の結果1F~30Fまでは真っ白の営業をしているビルです。

 全部で65Fまである事までは分かりましたがそのほかの階は人の出入りが確認できたのがB1Fだけで、それも正面玄関からではなく敷地内にある立体駐車場のなかの隠し扉からでした。その扉も工程通り道を進みキーワードを正確に発音できたものしか入られないように細工がされています。

 存在希釈を試みましたが何らかの術が施されているらしく、実害はありませんが侵入は不可能でした。

 

 

1Fロビー

2F休憩所

3F~20Fショッピングモール

21Fレストラン街

22Fホテルロビー

23F~30F客室

 

 以上です。

 引き続き調査を進めます。

 

チェイン・皇

ーーー

 

 

 おそらくメールをそのままコピーしたであろうA4用紙を片手に二人してのぞき込むと、そこには最近できたばかりの人気のビルについてだった。一度顔を見合わせると二人は各々体験したことを話し始めた。

 

 

「ここのレストラン街行きましたけどいろんな国のレストランが入ってて、メニューに料金がのってないようなところからファーストフード店までより取り見取りでどこも美味しいんですよね」

 

「陰毛頭のくせにこのビルに入れたのかよ!?」

 

「陰毛頭言うな!全く、ここ特に入るための審査とかありませんよ。友人と一緒に行ってきました」

 

「はあ?俺なんか入ろうとしたら人型アンドロイドに入場拒否されたんだぞ」

 

「もしかしたら悪意があったりあちらに迷惑を被りそうな客だと入られないように、術式か何かがはりめぐらされているのかもしれないな」

 

 

 スティーブンの見解にザップが騒いで抗議するが既に思考の中に意識を移した彼には届かなかった。そのような術式が本当に使用されているとするならば、おそらく調査をこれ以上続けても何も収穫はないだろう。しかしここまで何も出てこないのも気持ち悪い。どうにかビルの全貌だけでも情報を得られないかと考えながらザップをげんこつで床に沈めた。

 

 そんな中レオナルドはスマホで誰かに連絡をっとていて、何回かやり取りをし終えると涙目で床に這いつくばるザップにこう言い放った。

 

 

「すみませんザップさん、あなたが入場拒否されたのは僕のせいだったみたいです」

 

「「は?」」

 

 

 滅多に思考が交差しない二人がそろってレオナルドに詰め寄った。実はずっとPCでプロスフェアーをしていたクラウスも興味をひかれたようで、ゲームを中断して聞く体制に入っている。

 

 レオナルドは三人の視線にたじろぎながらもメールの相手について話し始めた。

 

 

「実は紐育の大崩壊直後にHL入りした幼馴染がいまして、友人とはそいつの事なんですけど……これ言っていいのかなあ?」

 

 

 肝心なところで言いよどむレオナルドに三人は首を傾げた。何故なら彼は情報の管理には厳しい。元々記者としてHLに来ているのでそういったことの取捨選択はお手の物だったのだが、彼の中でこの件については判断がつかないようだった。

 しかし崩壊直後の魔境と言って差し支えない、今以上の混乱を極めていたHLに外から来た一般人の人類種がいたとは驚くべきことだ。

 

 

「俺としては皆さんに話しても問題ないと思うんですが、幼馴染が良くないかもなんでここに呼んでもいいっすか?」

 

 

 たぶん場所把握されてると思うんで、とこともなげに一大事を言ってのけたレオナルドは自分がかなり重大な発言をしたことに気付いているのかいないのか、ぶつぶつ独り言を言っていたが、それもスティーブンに両肩を掴まれたことで止まった。

 

 様子のおかしいスティーブンに理由を聞こうにも俯いたまま反応がない。状況を確認するためザップとクラウスの顔を伺うが冷や汗を流して硬直したままこちらも無反応。いつの間にか壁に控えていたギルベルトに困り顔を向け、やっと声が事務所に響いた。

 

 

「私共ライブラは秘密結社ですからねえ、その隠れ家であるこの事務所が部外者であるレオナルドさんのご友人に知られているということは、ご友人の危機であると同時に億単位の金が動く情報の漏洩でもあるのですよ」

 

「解ってます。でもあいつに見つけられないものなんて俺は知らないっす」

 

「いいだろう、今すぐ来られるのかね?」

 

「クラーウス」

 

 

 あと五分できますよ、とレオナルドは虚空を見ながら答えた。

 

 その言葉にギルベルトはもてなすための準備に下がり、クラウスはPCで何回かメッセージのやり取りをするとその電源を落とした。ザップに至ってはまだ床に沈んでいたがスティーブンに言われてソファーにうなだれているし、スティーブンは先ほどのA4用紙をシュレッダーにかけるために立ち上がった。




ご読了ありがとうございます。


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至高の魔術師、召喚

 あと三十秒で、レオナルドのいう五分になろうとしていた。

 

 

「本当にくんのかぁ?おめーの幼馴染とやらはよう」

 

「彼は時間に厳しい人です。普段は待ち合わせの十分前には表れるまるでジャパニーズのような男ですよ」

 

「あと十秒、か」

 

 

 時計を見てスティーブンがつぶやいた。しかしレオナルドが外に迎えに行くそぶりはないし、ドアの前のエレベーターを使われた形跡もない。本当に来るのかと苛々し始めているのはだれの目から見ても明白だが、レオナルドはきょろきょろと落ち着きなくあたりを見回すのみ。

 今更珍しいものなどないだろうにと声をかけようとしたザップは己の目を疑う光景を目の当たりにした。

 

 ドアといつも座っているソファーのあいだに光の線が現れ、何らかの魔法陣をほんの一秒で書き上げるとそこから光の粒が沸き上がり人の形を作り上げるのに二秒。その一瞬後にはすでに彼はそこに立っていた。

 たった三秒の出来事だ。

 

 約束の五秒前の出来事だった。

 

 

「……本当に来やがった」

 

「まさか魔術師とはな、しかしどうやってここを……?」

 

 

 ライブラのメンバーを置き去りに、仲睦まじく会話する二人はふわふわと花でも飛んでいるのではないかというくらいには穏やかだ。しかし他の面々は今しがた直面した人外並みの魔術に、体を動かすことはおろか声さえ出すことも出来ずにいた。

 

 そんな中スティーブンが絞り出すようにレオナルドへ声をかけた。

 

 

「少年、そろそろいいかい?」

 

「あっそうでした、ごめんなさい。紹介します、僕の幼馴染のオスカー・ランドルフです」

 

「ご紹介にあずかりました、オスカー・ランドルフと申します。レオナルドとは赤ん坊からの付き合いで仲良くさせていただいております。そうですね、魔術師とでも呼んでいただければ幸いです」

 

 

 印象に残りずらい良くも悪くも普通の顔立ちをした穏やかそうな表情をする彼は、その外面とは正反対の獰猛な光をその目に宿して言い放った。

 

 それは分かりやすい拒絶であり、挑発でもあった。

 

 

「オスカー?どうしたんだ、わかりやすく猫かぶりして気持ち悪い」

 

「いや、だってさ魔術師なんて初対面ぐらい外面よくしとかないと辛気臭いって」

 

「解ってるならもっと努力しろよ」

 

「もうこれが精一杯」

 

 

 あきれたようにレオナルドはそんなもん止めちまえ、と吐き捨てた。

 

 その瞬間、穏やかな雰囲気をまとい、しかし印象に残らないようなHLとはかけ離れた不自然さを持っていた青年は霞になって消え、再び現れたそこには無表情の美しい人がただ立っていた。その時にはもう最初の課を置忘れてしまっていることに、ライブラのメンバーが気づくことはなかった。

 彼は不機嫌そうにレオナルドを見やると一言要件は?と低く囁くような小さな声で言った。

 

 

「いや、変わりすぎだろ!」

 

「僕としてはやっといつものオスカーに戻って安心なんですが……」

 

「少年」

 

 

 ここまで話が脱線し続けて、彼をここに呼んだ目的を達成できなくなっては困る。スティーブンはレオナルドに声をかけると無言で目的の達成を促した。

 

 

「さっきの話の続きなんすけど、まずオスカーあのビルの事教えていいよね」

 

「問題ない」

 

「よし、単刀直入にいいますと彼は例のビルの最高責任者です」

 

 

 ということはレオナルドは秘密結社のリーダーをメールでこの場に文字通り召喚して見せたのだ。

 

 各々理解に少々時間がかかったが一番最初に復活したのはやはりというべきかスティーブンだった。彼は頭が痛いとでもいうかのように米神を抑えると嫌なものでも見るかのようにオスカーを見やって口を開いた。

 

 

「彼が秘密結社アテナのリーダーということか?」

 

 

 その問いにレオナルドが答えることはなく、目線をオスカーに向けると彼は頷いて話し始めた。三年前にこの地に足を踏み入れてからの出来事を。

 

 

「魔術師の卵を保護していたらなぜか師匠になってて、いつの間にか秘密結社のリーダーになってた」

 

 

 超端的に。

 

 言葉も出ないとはこのことかとついには頭を抱えてしまったスティーブンと、こいつ何言ってんだと小さくつぶやいたザップ、クラウスは騙されているのではないか?と心配し始める始末で収拾がつかなくなり始めたころ、勢いよくドアをあけ放ち金髪の美女が事務所に入ってきた。

 

 

「あら?お取込み中だった~?」

 

「いや、丁度良かったよK.K。彼なんだが……」

 

「やだ~ルーク君のお父さんじゃな~い!どうしてこんなところに?」

 

「呼び出されて」

 

「あんた何やったのよ?怒らないから言って御覧なさ~い、お姉さんが通訳してあげるわ」

 

「俺は英語圏出身なんだが……」

 

「あんたの言い回しじゃ伝わんないことなんて山ほどあんのよぉ!」

 

 

 テンポよく進む会話に全員で目を丸くしていると聞き捨てならない固有名詞があったことにザップは気が付いた。

 

 

「こいつこのなりで子持ち!?」

 

「保護者なだけで血のつながりはない」

 

「よく許可が下りたものだ」

 

「今年で一二歳の男の子でとてもいい子なんすよ。こいつにはもったいない出来た子です」

 

 

 レオナルドの言葉にK.Kは確かにとうなずく。気配りができて誰ともすぐに仲良くなれるし愛想もいい。可愛らしい顔立ちも相まって、スクールのアイドル的存在までなっている彼は今年卒業してミドルスクールに進学したはずだ。

 その入学式では新入生代表として挨拶を任されるほどだから頭もいい。もうパーフェクト。

 

 

「わかった」

 

『え?』

 

「オスカー・ランドルフ、秘密結社アテナのリーダーで例のビルの最高責任者であり至高の魔術師であることはわかった。証拠はこの場に現れて見せたあの魔術で十分だ。問題は彼がもうそろそろ人間の範疇に収まらなくなるくらいの魔術師だってことだ」

 

「あんたマジで?」

 

「まあ、人外じみてる自覚はある」

 

「そこで」

 

 

 また脱線しそうになったところでスティーブンが抜け目なく鋭い接続詞を挟む。まだ話は終わってないと、その目は雄弁に語っていた。

 

 

「魔術師殿、我々ライブラと同盟を組まないか」




ご読了ありがとうございます。


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