僕はみんなの希望に (ガンマン八号)
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番外編
IF 学園都市のスパイダーマン


 お久しぶりです。大学生になった途端、スランプに陥ってしまいました。今回は続きではなく、感を取り戻すために書き上げたものです。

 続きを楽しみにしていた方には申し訳ないです。もう少しお待ちください。


 

 オーケー、それじゃあもう一度だけ説明するね!

 

 僕は縄正 望。

 どこにでもいる普通の男子高校生。16歳。

 放射能の実験を施された蜘蛛に噛まれてから、この二ヶ月間、僕はこの世でたった一人のスパイダーマン!

 

 日本及び世界各国の科学サイドに影響を与えると言われている学園都市で高度な科学技術を学ぶために、今年から一人移り住んできたのさ。

 

 検査を受けるときは、年甲斐もなくワクワクしたね。自分にも何か超能力があるんじゃないかって、期待してたんだ。

 まぁ、結果はレベル0。予想通りで実につまらないね。

 こういうのをお約束って言うのかな?

 

 でも普通に高校で一番の成績を維持できてるし、変わってるけど、やさしい友達も何人かできた。まさに順風満帆な学生生活がスタートしてたんだ。

 

 そんなある日、いつもと変わらない学園都市にある原子核物理学について研究している研究所に見学に行った日、脱走した実験体の蜘蛛に噛まれたんだ。

 その日から僕の人生は大きく変わった。

 とある力に目覚めた。

 最初はまったくわからなかったけど、明らかに僕の体に変化が起きていた。

 そう、例えるなら蜘蛛を人間サイズにしたかのような身体能力と五感を得たんだ。

 

 かの有名なアメリカ合衆国出身の元プロボクサー、元WBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンモハメド・アリは「蝶のように舞い、蜂のように刺す!」というパフォーマンスを披露していたが、僕はそんな蝶や蜂を捕食する蜘蛛へと変化したんだ。

 

 もしかして僕、モハメド・アリより強くなっちゃった?

 優越感に浸っていたい気分だけど、いいかな?

 あー、いや、やめよう。ボクシングファンに匙を投げられる。そうなったらタオルを投げてくれる人を待たないといけなくなるし。

 

 おっと、話が逸れちゃったね。

 超能力とはまた違う力を得た僕は、昔事故で亡くなった叔父さんの言葉を思い出したんだ。

 

『大いなる力には、大いなる責任が伴う』

 

 この学園都市は8割が学生であり、同じ日本国内とは思えないほど物騒な犯罪や事件が多い。さすが超能力と最新科学が集結している都市だけあるって感じだ。

 もし力を得た僕が何もしないで、取り返しのつかない事があったら、僕はきっと後悔する。

 

 その時僕は決めたんだ。僕はこの力を人助けのために使おうって。

 

 それから僕は試行錯誤を繰り返し、蜘蛛糸をとばすウェブ・シューターと正体を隠すためにスーツを作った。我ながら中々カッコいいデザインのスーツがつくれたものだ!

 スーツにAIとかつけられると便利だよなぁ、とは思ったけど、貧乏学生には到底できそうにないや。ゴミ箱漁ってたら、風紀委員に見つかって、こっ酷く叱られたしね。やめないけど。

 

 そしてスパイダーマンになってから僕は、学園都市を跳び回り、世のため人のために戦うヒーローになったのさ。

 

 

 コンビニを襲う強盗を捕まえたり、カツアゲにあっていた生徒を助けたり、火事が起きている建物から取り残された人たちを助け出したり、道に迷っているおばあさんの道案内をしたりと大活躍!

 

 そんな生活をしていたら僕はあっという間に学園都市の人気者さ!

 テレビのニュースやバラエティ番組、新聞やラジオは僕の話題で大盛り上がり!

 新たなレベル5説、不法侵入者説、実験生物説、宇宙人説と色々飛び交ってるね。どれもかすってないのが残念だけど。

 

 

 若者ばかりのおかげか、スパイダーマンはすんなりと受け入れられた。みんな僕に声援を送ってくれたり、写真を撮ってたり、サインをねだられる時もあるね。

 女の子からキャーキャー言われるなんて、思いもしなかったよ。

 

 それに毎日僕を捕まえようと警備員や風紀委員が血眼になって追いかけ回してきたり、事件現場で犯罪者が銃や火炎瓶をぶつけてきたり、最近じゃレベル5の一人に電撃を放たれたりとファンからの熱ーい賛辞やプレゼントを贈られたりしてる。

 いやー、人気者って大変だね。

 

 

 

 そういえば、最近はよく不幸話をしてくる友人を助けてばかりだね。不良に絡まれた女の子を助けようとして自分が絡まれたり、溺れてる子猫を助けようとして自分が溺れてたり、ついこの間は強盗の人質にされてたっけ?

 3日に1回は助けてるもんだから、この姿でもすっかり仲良くなっちゃったよ。

 

 話の内容や行動から見て、彼も僕と同じ。とても優しくて、そしてお人好しなんだよね。力はないのに、誰かが困っていたらほっとけない。考えるより先に体が動いちゃう。

 

 で、結果貧乏くじを引かされる羽目になるんだよね。助けようとしても、自分はロクな目にあわない。正直、少し前の自分を見ているようだ。だからかな、ほっとけない。

 

 ほら、僕とそっくり。道理で気が合うわけだ。でも靴紐は解けないようにする努力はしてもらいたいね。

 

 

 今のところは順調に事が進んでくれてる。でもきっとこの先、僕の想像なんか決してつかないような苦労や困難が待ち受けているだろう。

 

 その時僕がどうするかはわからない。でも、絶対に諦めない僕でありたい!

 

 何故なら僕はたった一人のスパイダーマン!

 学園都市の悪党どもと戦えるのは、僕だけだからね!




 友人曰く、これを作品にしろと言ってきますが、学園都市から出ていかれたらどうしようもないと思うのは私だけでしょうか。
 いや、書きたいんですけどね私も。誰かいないかなー。


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本編
序章


連載したいですとか言っていましたが、連載します。
しかし受験生なので投稿頻度は限りなく遅いです!ごめんね!










 前世の記憶が蘇った。

 いや、正確には蘇ったのだろう、というべきものかもしれない。その僕だったかもしれない人は普通の家庭に生まれ、普通の学生生活を過ごし、普通のサラリーマンになり、結婚はしなかったがたまの休日を友達と遊び、普通に寿命を迎え、最後を遂げた。ありふれた人間の一人だった。

 

 そんな普通の僕でも、小さい時から憧れているものがあった。それは『ヒーロー』だ。悪を懲らしめ、弱き人々のために戦う誇りある戦士。全ての人たちの憧れの存在だ。

 僕はそんなヒーローが大好きだった。仮面ライダー、スーパー戦隊、メタルヒーロー、ウルトラマン、MARVELなど………。

 そんなヒーローたちみたいになりたくて、なるべく正しい行動をしてきた。間違っていることを間違っていると言える人間になりたかった。

 

 でも、僕はヒーローたちのように強くなかった。所詮、僕は守ってもらう人間なのだ。とても弱くて、何もできなかった。気がつけば僕は、僕の目指していた人間とはまるで無縁の世界にいた。

 

 目の前で困っている人を助けられない。

 恥ずかしい。

 こんなことになんの得がある。

 人を助けられる力なんてないじゃないか。

 

 見ろよ、周りの人間を。他人にはとことん無関心じゃないか。助けてどうする?自分に恩を感じてくれるとでも思ってるのか?

自分のピンチに助けに来てくれる?

 

 そんなわけがない。正しい人間が損をする。現実にヒーローなんていないのさ。

 

 そんな捻くれた心ばかりが育っていった。

 

『人間の本質は、悪である』

 

 その言葉に疑いを持たなくなった。そんな言葉を信じる自分が嫌になった。考えれば考えるほど、自分への嫌悪感が内側から滲み出てくる。

 

 だから、だからかな。

 

 もし、人生に次があれば、ヒーローになりたい。

 全ての人たちに、希望を与えられるような。

 僕が一番大好きだった、あのヒーローに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ?そんなにボーッとして。考え事か?」

 

 そんな彼の深い思考も、声をかけられることで現実へと引き戻されたのであった。昼食を終えた後庭に座り込み、木陰から太陽を眺めていたら、気がつけば空はすっかりオレンジ色に染まり、5時のチャイムとカラスの鳴き声が響いていた。

 

「ううん、考え事ってほどじゃないよ。心配しないで父さん」

 

 後ろを振り返れば、自分を心配そうな表情で見つめる父がそこにいた。いつもの黒ぶちの眼鏡をかけ、ボサボサの髪の毛、目の下のクマが目立つ。側から見れば不審者に見えなくもないだろう。

 

 しかしよく見ると、父は童顔だ。今も自分が平気だと知ると、安心したような表情で笑う。子供と変わらない、無邪気な笑顔だ。

 

「そうか。ならいいんだけどね。それにしてもこんな長い時間空を見上げているなんて、退屈にならないのかい?」

「そんなことないよ。結構好きなんだ、特に何もせず、空や景色を見ながらボーッとしてるのが」

「はははっ、相変わらず年に似合わない趣味だな。一体誰に似たのやら………」

 

 やれやれといった表情で、父はリビングの隅にある写真立てを眺める。そこに写っているのは父さんと今よりもっと幼い頃の少年、そして若い綺麗な女性だ。

 若い綺麗な女性が幼い僕を笑顔いっぱいでぶん回し、それを怖がり泣きじゃくっている少年、それを必死に止めようと慌てている父の姿を写している。

 

「母さんも、好きだったの?ボーッとしてるのが」

「………そうだね。普段はガキ大将以上にわんぱくだけど、時たまにボーッとすることがあったよ」

 

 「まぁ、その時は大抵『フライドチキン食べたい』とか食事のことばかり言っていたけどね」と、父は嬉しそうに語る。少年は少し驚いていた。元気真っ盛りだった時期の僕以上に活発な母にそんな一面があるとは知らなかった。

 

「なんというか、ちょっと意外だね」

「そうか?母さんは食いしん坊なのは知っているだろう?ボーッとしながらよだれ垂らしてたのもいい証拠だ」

「それでもだよ。動きを止めていること自体が珍しいから」

「それもそうだな。でもな、ずっと動き続けるなんて母さんでも無理なことだぞ?車だってずっと走り続けることなんてできない。一度立ち止まって、ガソリンを補給しないと」

「なるほど、つまり母さんはエネルギー補給のサインを送っていたのか」

「そういうこと」

 

 なるほど、たしかに普段元気いっぱいの母も食事前はいつもおとなしく座り込んでいた。もしくは凄い勢いで食事を作り上げていた。その時、母が何人にも見えたのは気のせいだろう。

ちなみに父にも同じ光景が見えたらしい。

 

「それでも、危険地帯をノーブレーキで突っ込むのだけはやめてほしかったな」

「それこそ無理な話だ。残念ながら母さんにはブレーキが搭載されていなくてね。代わりにアクセル二つつけて爆走しちゃうから」

 

 今から3年前、少年の母は死んだ。少年と父の目の前で、だ。

その日はいつもと変わらないたわいもない日常が繰り広げられていた。日曜の昼、家族みんなでデパートに向かう途中だった。父は車道の方を歩き、少年は母と手を繋いで歩いていた。上機嫌な母は鼻歌を歌いながら歩いており、少年はそれが恥ずかしくて母から手を離そうと試みた。ガッチリと掴まれていたが、なんとか抵抗を続け振りほどくことができた。母はショックを受けた顔をしていた。

 

 しかしその行為が仇になってしまった。

 

 建設途中のビルから鉄骨が一つ落ちてきたのだ。その下には自分と同い年くらいの少女がいた。

 そして気がついた時は、母が下敷きになっていた。わけがわからなかった。少年はさっきまで母と繋いでいた手を眺め、変わり果てた母を見た。あたりの人間の騒ぎ立てる声、父が鉄骨を押し上げようと必死になっている。先程みた少女も自分と同じように茫然としていた。体のどこにもケガはなかった。

 

『あの時、手を離していなければ』

 

 そして少年は泣いた。

 泣いて、泣いて、泣いて。泣き喚いた。

 

 もしあの時手を離していなければ、母を止められたかもしれない。止めることなどできなくても、わずかに時間がズレていれば母は潰されずに済んだかもしれない。

 

 母を殺したのは自分だ。自分のせいで母は死んだのだ。少年はそう父に泣き続けてた。しかし父は、少年を優しく諭した。

 

『いいかい。母さんは自分の命をかけてあの少女を助けたんだ。昔から人一倍正義感が強かったからね。ヒーローになりたいといつも言っていたよ』

『ひー……ろー?』

『そう、ヒーローだ。たしかに世間一般のヒーローたちに比べたらちっぽけなことかもしれない。でもね、人の命を救うことに大小はないんだよ。だから、そんなことを言うのはやめなさい。母さんを悲しませることになるよ』

 

 父自身が一番辛いはずなのに。一番悲しいはずなのに。必死に笑顔を取り繕っている父を見るのはとても苦しかった。

あれから月日は流れたが、この傷が癒えることはないだろう。

 

「おーい、またボーッとしてるぞ。どうした?幽体離脱の実験でもしてるのか?」

「そんな実験するわけないでしょ………。別に、そろそろお腹が空いてきただけだよ」

「おっ、また母さんそっくりの癖だ。流石によだれは出さないみたいだけどな」

 

 父は窓を開けるとリビングに入り、キッチンへと向かっていった。少年は沈もうとする太陽をじっと見つめる。

 やはりあの時の後悔は消えない。自分に何か力が、『個性』があったらあの惨劇を変えることができたんじゃないのか。

 

 現代、人口の8割以上が『個性』と呼ばれる超常現象を起こす人間で溢れかえっている。残りの2割はそんな力を一切持たない『無個性』と呼ばれる人間だ。

 少年の家族もその2割だ。父と母、そして少年もまた個性を持たず生まれてきた人間だった。

 

 やはりヒーローには力がいるのだ。力のない人間には人を救うことに限界がきてしまう。

 

 そんな夢を見ながら、しかしそんな無駄な考えを捨てようと少年は努める。父の後を追い、リビングに入ろうとした瞬間、あるものに目が止まる。

 

「なんだ?蜘蛛か?」

 

 それは体長約3cmくらいの真っ黒、いや青黒い蜘蛛だ。しかしお尻の部分には複雑の赤模様が描かれている。

 

「珍しい柄の蜘蛛だな。図鑑でも見たことないや」

 

 少年は好奇心からその蜘蛛を手に乗せて観察してみる。やはり知らない蜘蛛だ。少年はよく図鑑を読み込む趣味があるが、日本にこの種類が果たしていただろうか。

 

 父にこの蜘蛛の種類を聞こうと向かおうとした時、蜘蛛は少年の右手の甲の部分に噛み付いた。

 

「いった!」

 

 痛みからの反射で、少年は右手を勢いよく振り回した。蜘蛛はその勢いで地面に落下し、草むらに紛れながらどこかに消えてしまった。

 

「いった〜。まさか噛むなんて。毒とか入っていないよな。にしてもあの蜘蛛、何処かで見たような………」

 

 噛まれた跡は少し赤く腫れている程度だ。毒にやられるのは嫌なので、父に報告しようとリビングに入り、キッチンへと向かう。

 

「父さーん、実は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、一人の臆病な少年が、人々の希望へとなるための物語。

それの始まりに過ぎないのだ………。




とりあえずの序章、プロローグです。
模試に向かっている電車内で何してるんだろう。

そうです、私です。(バカとも呼ぶ)


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序章2

全然進んでねぇ………。まさか導入でここまで持ってくことになるとは。

短く、面白くまとめる力が欲しいです。


「どこだ!?その蜘蛛は一体どこに!?」

 

 先程の蜘蛛のことを伝えると父はとても慌ただしく少年を問い詰める。今まで見たことないような父の剣幕に思わずたじろいでしまう。しかしそんなことを考えてる余裕がないためか、少年の肩を掴み、揺らし続ける。その力は大人の本気であった。

 

「お、落ち着いてよ父さん。痛い、痛いから!」

「!!っすまん、痛かったか?しかしこれは大事な質問なんだ。その蜘蛛はどこに行った?」

「庭だと思う。でもさっき草むらに紛れこんでたから見つかるかどうか」

「草むらだな!わかった、父さんは今からその蜘蛛を探すから手伝ってくれ!」

「わ、わかった」

 

 あの日以来かもしれない父の慌てように少年は戸惑いながらも庭に向かい、蜘蛛を探し始める。しかし、草むらに隠れた小さな生き物を探し出すのは至難なことだ。

 

「そんなに慌てるなんて、あの蜘蛛は何?図鑑でも見たことないような種類だったけど」

「あれはね、父さんの研究室で取り扱っている蜘蛛なんだ」

「父さんの研究室で?てこと、新種かなにか?」

「詳しくは言えないが、ある実験を施した蜘蛛の生き残った1匹なんだ。父さんが責任の下で観察していたのだが、まさか逃げ出すなんて。一体どうやって………」

 

 少年の父は科学者だ。この個性あふれる現代、全ての人間がその個性を正しいことに使うとは限らない。その力を利用し、悪事を働くものもいる。

 

 ヒーローの対になる存在、『ヴィラン』。

 

 父は個性こそ持っていないが、科学者としては一流と言っても過言ではない。そして母と同様、強い正義感の持ち主だ。

 だから父はヒーローや市民のために役立つアイテムや製品を日々研究し、開発に勤めているのである。

 

「あっ、父さん!これ!この蜘蛛だよ!」

「なにっ!見つけたか!?」

「うん、見つかったけど………」

 

 少年は草むらの中から先程の蜘蛛を見つけることはできた。しかし見つけた蜘蛛は仰向けになり、脚を短く閉じてしまっている。動く様子はない。

 

「死んでしまったか。くそっ、やはり外の環境に慣れてない状態では無理があったか………!」

 

 父は蜘蛛を大切に布に包み、保護をする。しかしその表情はとても悔しいと言わんばかりに歪んでいる。少年は父を心配そうに見つめることしかできない。

 

「父さん、その蜘蛛って、そんなに大事なものなの?」

「………あぁ。もしかしたらこの蜘蛛は世界を変える力を秘めていたかもしれないんだ。それが希望なのか、それとも絶望なのか。今となっては永遠にわからなくなってしまったからね」

 

 父はとても寂しそうに笑う。

 あぁ、まただ。父はどんなに悲しいことや苦しいことがあっても、少年の前では決してそれを見せようとはしない。笑って誤魔化そうとするのだ。それが少年にはとても痛ましく見えて、思わず胸の前で拳を握りしめる。

 

 そして、ふと自分の拳に目が入った。少年は自分の手が、その蜘蛛に噛まれたことを思い出したのだ。

 父のこの慌てぶりを見る限り、おそらく野生で生息している蜘蛛ではない。もしかしたら自然ではないような危険な毒を有してるかもしれない。すぐに毒の有無の確認をしなければならないだろう。

 

「父さん、ショックを受けているところ申し訳ないけど聞いてほしいことがあるんだ」

「あぁ、すまん。お腹空いたよな。今用意するから」

「いや違うよ。たしかにお腹は空いてるけど今じゃなくてもいいよ。その蜘蛛のことなんだけど、実は噛まれて」

「噛まれた!?どこをだ!?」

 

 先程と同じ形相で慌てる父が蘇ってしまった。少年は蜘蛛に噛まれた箇所を見せる。噛まれた箇所は赤く腫れているが、虫に刺された時と見分けはつかない。

 

「大丈夫か!?どこか具合の悪いところは?体に違和感はないかのか!?」

「だ、大丈夫だよ。具合が悪いことはない。違和感は………どうだろう?そういえば、なんか体が妙に暑いというか。なんて言ったらいいのかわからないけど、何かが変わったように感じる、のかな?」

 

 少年は体の変化について説明することができないでいるが、何か異変が起きていることはなぜか理解していた。それは少年の体からの本能が訴えかけているのか、はたまた。

 少年が自分の体について考えてる間、父は電話でどこかに連絡していた。

 

「………あぁ、そうだ。至急実験用の部屋を用意してくれ!こちらもすぐに向かう!」

 

 連絡を終えた父は家の中に戻るとバタバタと何か準備をしていた。職場に着ていく白衣を身に纏い、カバンに書類やら何かわからないような機器を入れていた。

 

 と、その時。

 

 少年は急なめまいを感じた。

 

(あ、あれ?急に気分が………)

 

 めまいのあまりにふらついてしまい、ついには膝から倒れ込んでしまう。少年の異変に気付いたのか父は急いでこちらに走ってきて、少年に呼びかける。

 

 しかしその声も少年にはよく聞こえない。意識は朦朧とし、体が急激に暑くなってきたのを感じる。頭痛や吐き気も凄まじい。今までに何度か風邪やインフルエンザにかかったことはあるが、そんなものたちとは比較にならないほどだ。

 景色が歪む。声が聞こえない、いや何か別のものが聞こえる。体の節々が燃えるように暑く、鋭い痛みが走る。

 

(あぁ、まずい。も、う………い………………しき、が………)

 

 だんだんと下がってくるまぶたがまるで鋼鉄でもつけられたかのように重い。少年は父の言葉に何も反応ができないまま、意識を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………真っ白な天井だ。病院なのかな?)

 

 少年が目を覚ますとそこは見たこともない知らない場所だった。天井だけでなく部屋全体が白一色で構成されている。右手には点滴がついており、なにやら複雑そうな機械も置いてある。

 その時、左手に布団とは違う温もりを感じた。顔を動かすと父が自分の手をしっかりと両手で握りしめていた。

 

「大丈夫か?」

 

 父の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃに歪んでいた。自分のことをよほど心配してくれていたのだと少年は察した。

 愛する妻を失い、一人息子が謎の症状で倒れたのだ。こうなるのも無理はないだろう。

 

「大丈夫だよ、父さん。今はもう何ともない。至って健康状態さ」

「本当か?無理しなくていいんだぞ?」

「平気だって。なんならロッキーのテーマを流して欲しいくらいさ。今ならどんな相手でも一発KOできる自信があるよ」

 

 少年は父を少しでも安心させようと起き上がり、シャドーボクシングの真似事をしながら笑顔でこたえる。少年の気遣いに気付いたのか、父は涙を拭いて、やっと笑顔を浮かべる。

 

「どうやらやっと目を覚ましたみたいですね、勉博士」

「あぁ、急に連絡してすまなかったな」

「いえいえ、緊急事態なんですから。やぁ、望くん。僕のこと、覚えているかな?」

「えっと、石澤さんですか?たしか父の片腕の方だと………」

「そうそう。さすが博士の息子さん。博士に負けず劣らずの記憶力ですね」

 

 入ってきたのは父と同じ白衣を着た若い男性、石澤。父の、(つとむ)のプロジェクトに参加している研究員の一人。勉が最も信頼する部下であり、片腕とも言える人だ。

 彼を見た瞬間、少年………縄正(なわまさ) (のぞむ)はここがどこなのか理解した。

 父が所属している研究所、『ナノホープ』。おそらくその中の一つの部屋なのだろう。ナノホープはヒーローたちの役に立つアイテムや武器の研究を日々行っている場所だ。研究員は皆、個性を持たないか微々たる個性しか持っていない。

 

 しかし、彼ら一人一人の正義感はヒーローにも劣ることはない。望も小さい時に何度かこの研究所にお邪魔させてもらったことがある。

 

「さてと、それでは検査の結果をお伝えします。望くんは4歳の時に個性検査を診断。診断の結果、『無個性』とのことでした。しかし博士や明さんが無個性なので、これはなにも珍しいことではない結果でした」

 

 (めい)………望は自分の母の姿を思い出す。その名にふさわしい明るい人だった。自分が無個性だということを馬鹿にされようと、母は笑顔で笑い飛ばしていた。

 ただし自分と父をバカにした場合は般若の如く怒り出すひとでもあった。その時のことを思い出し、望はクスリと微笑む。

 

「しかし今回の結果、10歳の望くんの足の小指の関節を検査したところ………関節の節が一つになっていました。間違いありません!望くんは何かしらの"個性"を身につけたのです!」

「「ええええええええええ!!」」

「いや、望くんはともかく何で博士までびっくりしているんですか。さっき検査結果一緒に見たでしょう?」

「いや、それでもびっくりするに決まっているだろう!?無個性な人間が個性を得るだなんて前代未聞なことだぞ!」

 

 自身に個性が目覚めたと言われた望であるが、驚きはしたもののいまいち実感が持てない。火が出せるようになった気もしないし、念力が使えるわけでもなさそうだ。

 

(そういえば、やけに体が軽いように感じるな。感覚もいつもよりよく働いているというか………)

 

 もう何ともないため、ベッドから降りる望。自分の手を握ったり、開いたりを繰り返す。

 

「どうだ望?何かわからないか?」

「うーん、そうだね。体が軽くなったように感じるけど」

「体が軽く、か。身体能力を強化する個性ですかな?」

 

 身体能力と言われてもピンとこず、適当に手足をブラブラさせる。しかしいつもと変わりはない。そんな気持ちで軽くジャンプをしたら………気がついたら天井が顔のすぐそこまで迫っていた。

 

「うわっ!?」

 

 望は思わず手を顔の前にだし、目を瞑った。両手が天井に触れた感触が伝わり、そして。

 その感触はいつまで経っても消えなかった。

 

 おそるおそる目を開けてみると、両手は天井にくっついたままだ。まるで天井が床にでもなってしまったかのようだ。

 顔を上へと向ける、いや下に向けていると言うべきか。父と石澤は口を開け、ポカーンと望を見つめている。

 

「な、なぁ石澤くん。この部屋の天井って、高さ何mあったっけ?」

「5mはありますよ博士!しかも天井にぶら下がったまま!これは普通の人間では不可能です!間違いなく個性が発現しています!」

 

 父と石澤が望を見て騒いで慌てている中………望は不思議と落ち着いていた。いや、冷静な思考を巡らせることはできるほど頭は冴えているが、心はその反比例するかのごとく燃え上がっていた。

 

「父さん、石澤さん。二人がヒートアップしてどうするの?二人の話が終わるまで僕は反重力を楽しんでればいいの?」

「あっ、いや。そうだね。父さんたちが熱くなって話しても仕方ないことだよな」

「にしても、随分と落ち着いてるね望くん。そこは博士とは真逆なんだね」

「いえいえ、僕も興奮してますよ?ただそれが一周まわって、ある意味冷静な思考をできているだけです」

 

 望は自分の体の変化の正体に気付いた。これは以前(・・)の自分しか知らないものだ。あの蜘蛛に噛まれてからこうなった。これは偶然の産物なのかはわからない。

 

「父さん、あの蜘蛛に噛まれたことに関係してると思う?」

「100パーセント関係してると言っても過言ではないな。にしても、まさか個性を目覚めさせるなんて………ある意味、あの蜘蛛が死んだことは良かったことかもしれないな」

「そうですね。この事が世間一般に知られれば多くの人たちの奪い合いになるところだったでしょう」

「いずれにせよ、この力について詳しく知る必要があるな。石澤くん、個性の実験準備をしてくれ。まずは身体能力を測るとしよう」

「わかりました」

 

 石澤は駆け足で部屋から出て行く。先程二人が言ったことは間違いない。『この力』は使いようでは大きな被害を生むことになるだろう。望は自分だった者の、聞いたある言葉を思い出す。

 

「大いなる力には、大いなる責任が伴う………」

「うん?何か言ったか望?」

 

 目を瞑り、かつての自分が憧れた『彼』を思い浮かべる。消えかかっていたはずなのに、今はなぜか鮮明に姿が見える。

 人々のために、正義のために、希望になるために戦い続けていたヒーローを。

 

 地面に向かいもう一度ジャンプする。感覚がつかめたのか、体が本能として自然に覚えたのか。今度は危なげもなく、綺麗に一回転しながら着地をする。

 

「父さん、僕はヒーローになりたい」

 

 自分の父親を真っ直ぐに見据えて思いを伝える。父は驚きはしない。黙って息子の言葉に耳を傾ける。

 

「この力を手にした時、ある姿が浮かんできたんだ。それは富や名声を求める姿じゃない。人々の希望の象徴なんだ」

 

 ヒーローとは簡単なものではない。常に危険が側にあり、常に人々のために戦わなければならない。死ぬ可能性だって十分だ。

 

 しかし、そんなの百も承知だ。もう逃げるつもりはない。目を背けはしない。望にはこの世界で得た希望があるのだから。

 

僕は、母さんのようなヒーローになりたい!

 

 己の命を懸けてまで人を救おうとした母は、誰がなんと言おうと紛う事なきヒーローなのだ。

 息子の覚悟を聞いた父は、自分の妻を思い浮かべる。彼女の目にそっくりだと、嬉しくなる。

 

「今日から個性の詳細を調査し、使いこなす訓練をするぞ。ついてこれるか?」

「当然!言ったでしょ?今ならロッキーも一発KOできる自信があるってさ!」

 

 「ロッキーをKOしたらダメだろう………」と父は苦笑いして突っ込む。少年は笑顔で誤魔化した。

 

 




次から一気に月日は流れ、入学試験に移りたいと思います。
あぁ、次はいつになるのやら………。


ヴェノムの映画観に行きてぇ。


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入学試験

入学試験。うっ、頭が………!

今の成績維持すれば大丈夫なんですが、それでも安心できないのが恐ろしい。











 

 早朝、午前5時。太陽はまだ顔を出したばかりで空は綺麗な赤色で染めている。

 町のはずれにある森の中、一人の男が宙を駆けていた。この森の木々は皆とても高さがあり、平均して8mはある。さらに複雑に入り組んだ地形のせいもあり、滅多に人が来ることはない。

 

 駆ける。木々を登るのではなく走り抜け、他の木へと飛び跳ね、ジャンプで届かない場所へは手首から糸を放つ(・・・・・・・・)

 

 空を飛ぶことはできないが、それはなんて爽快感。今までに感じたことのないスピード。肌に当たる風が、音が、衝撃が。それら全てが彼のスピードの速さを物語っている。

 

「よっと。うん、今日も体は健康体。『これ』の調子も良し」

 

 一本の枝に飛び移り、両手首に巻かれている装置を眺める。一見リストバンドにも見えるが、手のひらにはスイッチがつけられ、手首には発射機が取り付けられている。

 すると、ポケットからバイブ音が鳴る。携帯を取り出すと、『父』と表示されていた。

 

「おっと、父さんから電話だ。もしもし?こちら親愛なる息子より」

『もしもし、こちら親愛なる父親からだ。どうだ?体もシューターも平気か?』

「どちらも元気百倍!濡れない限りはパンチにキックとご開帳さ!」

『防水機能がついてるから新しい顔を持っていく必要はないぞ?』

「なーに?じゃあ迎えに来てくれないの?」

『いいのか?自分の顔でできた車で迎えに来て?』

「あぁ………。やっぱやめとく。想像しただけで気持ち悪いや」

 

 糸でゆっくりと地上まで降りていき、手頃な高さで糸を千切り着地する。父との会話を笑顔で楽しむ。

 

 スラリと伸びた背丈。体つきもかなりのレベルで鍛え上げられ、力を入れずともわかる筋肉。顔つきも幼いものから年相応の大人へと近づいている。

 

 縄正 望、15歳。この5年間、己の個性の把握、肉体の鍛錬、知識の吸収と自分にできることを全てやり尽くしたと言っても過言ではない。辛い思い出もたくさんある。しかし、それらを全て耐え抜き、今日という日を迎えることができた。

 

『いよいよ今日が本番か。なんか緊張してきたな………』

「なんで受ける本人より父さんが緊張してるの?以心伝心でもしちゃってるわけ?」

『息子の将来が決まる日だ、緊張するに決まっている。それより、望の方はどうなんだ?そんな軽い口ぶりからして緊張感を感じられないのだが?』

「してるよ。だからジョーク混じえて緊張誤魔化してるんだ。でなきゃ手の震えが止まらなくて、今にも携帯落っことしちゃいそう」

 

 あの日、ヒーローになると決めた時から今日に向けて日々の努力を重ねてきた。

 

『雄英高校ヒーロー科一般入試実技試験』

 

 雄英高校………そこはプロに必須の資格取得を目的とする養成校。そもそもヒーロー活動をするには正式にプロとしての資格取得が義務づけられている。

 しかしそれは当然だろう。人助けとはそれほど難しく、大変なものなのだ。

 

 全国同科中最も人気で最も難しく、その倍率は例年300を超える超名門校。

 

(倍率300とか、一体何人の人間が試験に来るんだ?昔の自分が受けた大学ですら3.2倍だったのに)

 

 望は筆記試験に関しては全く心配していなかった。父から教わり続けた勉強の成果は発揮され、自己採点で9割を超えていた。

 

「まっ、ここで焦っていても仕方ないか。とりあえず家に戻って、シャワーでも浴びるよ」

『そうか、僕も念のためにシューターの最終メンテナンスを行うとするよ。朝ごはんは何がいい?』

 

 望は少し悩む素ぶりを見せて、笑顔で答える。

 

「卵入りおじや、梅干し、バナナ。あと炭酸抜きコーラ」

『ここで縁起担がずにエネルギーの効率摂取を選ぶあたり、さすが僕の息子だね………』

「縁起担いで合格できるなら、この世に浪人生は必要ないからね」

 

 家に向かう途中、少しでも緊張を紛らわせるために望は今まで解いてきた数学や物理学の問題を頭の中で求めることで誤魔化し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

(うわぁ、頭ガンガンするくらいの騒音なんだけど………彼もヒーローなのかな?そういえば、ヒーローについて僕、そんなに詳しくないよな。これ終わったら、調べてみようっと)

 

 雄英高校の受験会場には多くの受験生が集まっていた。現在、受験内容の説明を受けているのだが、とにかくうるさいとしか感じなかった。

 

(こういう時は鋭い感覚が仇になるんだよな。でもちゃんと聞いておかないと)

 

 プレゼント・マイクからの説明をまとめると以下のようになる。

 

 10分間の模擬市街地演習を行う。各自指定の演習会場に向かう必要があり、持ち込みは自由。

 

 演習場には三種・多数の仮想敵を配置してあり、攻略難易度によってポイントが異なる。仮想敵を行動不能にし、ポイントを競う。

 

(三種、ねぇ。プリントにはあともう一体いるみたいだけど、わざと説明していないのかな?)

 

「質問よろしいでしょうか!」

 

 望が疑問を抱いていると、一人の眼鏡をかけた男子生徒が挙手をし、立ち上がる。 

 

「プリントには四種の敵が記載されております! 誤載であれば最高峰たる雄英において恥ずべき痴態! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです! ついでにそこの縮毛の君、先程からボソボソと気が散る!!  物見遊山のつもりなら即刻、ここから去りたまえ!」

 

「す、すみません……」

 

 眼鏡の男子生徒に叱られ、緑毛の男子生徒は縮こまってしまっている。いつもの望なら緑毛の彼に励ましの言葉を送るが、それをするとあの眼鏡の男子生徒はこちらにも絡んでくるだろうと判断した。

 

(彼は真面目くんだな。一度自分の信じたことはきちんとした正論でないとテコでも曲げようとはしない。僕のジョークが全然通じないタイプだ。本当ならフォロー入れてあげたいところだけど………ごめんよ緑毛の少年)

 

「OK OK 、ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P! ソイツは各会場に一体いるお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやったことあるか!?あれのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体!所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!」

 

「ありがとうございます!失礼致しました!」

 

 プレゼント・マイクは嬉嬉として質問に答え、メガネ男子は礼を言って着席した。

 望は先程の最後の敵について考える。

 

(ギミック………そんな単純なものじゃないはずだ。わざわざ他の三体とわけて説明したくらいだ。必ずなにかの意味がある。警戒しておくかな)

 

「俺からは以上だ! 最後にリスナーへ、我が校の校訓をプレゼントしよう! かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った。"真の英雄とは人生の不幸を乗り越えて行く者"と!」

 

Plus Ultra!更に向こうへ!

 

 

 

「それでは皆、良い受難を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 望は自分の指定された会場へと向かう。そこに広がっているのは、街そのものだ。あまりの広さと規模の大きさに驚愕してしまう。

 

「これが演習用だなんて………信じられないな。超立体プログラムシステムでも使われてないよね?」

 

「君は一体何だ?妨害目的で受験しているのか?」

 

 騒がしい方を見ると、先程の眼鏡の男子生徒がまた緑毛の男子生徒を注意していた。周りはそれを笑って見ていた。

 

「あいつ校門前でコケそうになってたやつだよな」

「注意されて萎縮しちゃった奴」

「少なくとも一人はライバル減ったんじゃね?」

 

 その姿を眺めていると、望は僅かながら苛立ちを感じた。だからだろう、その緑毛の生徒のところに向かい、背中を優しく叩く。

 

「ほらほら。緊張しているからって、下を向いてちゃいけないよ?それに君は彼女にお礼を言いに行きたかっただけなんだろう?転びそうなところを助けてもらったからね」

 

 緑毛の少年は驚いた表情で望を見る。望はいつも通りの笑顔だ。

 

「う、うん。大丈夫。ありがとう……」

「お礼を言われるようなことはしてないよ。まだ緊張してるなら一緒に円周率でも復唱する?結構緊張紛れるもんだよ」

「えっ?いや、それは遠慮しておこうかな………」

「そう?そりゃ残念」

 

 これ以上は人に時間を割いていられない望はスタートの準備をする。ウェブ・シューターに異常なし。

 自分が糸を出せないため、父に提案して改良を積み重ねて作られたシューター。

 

 聴覚に全ての集中力を使うため、目を閉じて余分な情報を消していく。その集中力のおかげだろう。

 

『ハイスタートー!』

 

 スタートの声、唯一瞬間的に対応できたのは望だけだった。まずは街中へと鍛えてきた脚力を利用し、走り抜ける。

 すると、壁をぶち破って出てきた要項に乗っていた1Pの敵に遭遇する。

 

『標的捕捉‼︎ブッ殺ス‼︎』

「うわぁ、随分と物騒なことを言うクリボーだね!」

 

 望は瞬時に敵の右手に自身のシューターから発射した糸をくっつける。それを引っ張ると敵は右向きへとバランスを崩し、望は糸を巻き戻し、一気に近づき、そのスピードに乗せてパンチを浴びせる。

 

「そこまで硬さを感じないな。まぁ、脆いと書いてあったし。顔を砕いて動かなくなったからこれで1Pかな」

 

 望は次の敵に向けて走り出そうとした時、体から警告が来る。全身がビリビリと来るこの感覚。今回は特に背中から。

 

「よっと!」

 

 後ろに向かってジャンプをした瞬間、望のいた位置にパンチが振り下ろされる。『蜘蛛の(スパイダー・)第六感(センス)』が発動してくれたことにより、攻撃を瞬時にかわすことができたのだ。

 敵が振り向く前に、敵の両側の地面に糸を吐きだす。くっついた瞬間、思いっきり引っ張り、その勢いで敵を踏みつけ破壊する。その威力は地面にめり込んでしまうほどだ。

 

「やっぱりクリボーは、踏みつけるのに限るよね」

 

 そして望の目の前に今度は3Pの敵が現れる。しかも一体ではなく、10体一斉に。

 こちらに向かって、銃を乱射する。望は体を一回転させてかわし、壁に避難する。

 

「ちょっと!ファイアパックン10体は無理があるって!ったく、ならこの甲羅どうぞ!」

 

 壁からジャンプをして離れると、さっき倒した敵の残骸に糸をくっつける。それを利用し、ハンマー投げのように敵全体に横投げでぶつける。凄まじい音と衝撃で、建物の一部が損壊するが、それにより見事全滅に成功する。

 

「これで32Pか。敵がそんなに現れなくなったのも、他の受験生が頑張ってるからか」

 

 街のあちこちから爆音が鳴り響き、光が飛び交う。こんな人間たちがありふれているのだから、この世界は恐ろしいと改めて思った。

 

「さてと、ならこっちもステージ移動しようかな!できれば隠しステージだとありがたいけど!」

 

 糸を利用し、壁に貼り付けながら宙を移動する。地面には敵の残骸がゴロゴロと転がっていた。

 その時、急に聞こえだす悲鳴。下を見ると他の生徒たちが顔を青くして我先へと逃げて行ってるではないか。

 

不思議に思った望だが、その意味をすぐに理解した。目の前から歩いてくる、超巨大な敵の姿を見てしまったから。

 

「あれのどこがドッスン!?ドッスンなら上下移動以外しないでよ!8面の巨大クッパじゃないか!」

 

 壁につかまった状態で、あの敵をどうしようかとあたりを見回した時、見つけてしまった。

 一人の女の子が倒れているのを。

 あの敵がその女の子に向かって歩いているのを。

 

 

 『あの時』のことを思い出した。

 

 

「そこのクッパ!!ピーチ姫を狙うのはやめなさい!!」

 

 望はすぐに動き、シューターから『ネット・ウェブ』を足に向けて発射しまくり、敵の動きを抑える。それだけではなく、糸を繋ぎ、自身の力で踏ん張ることで、敵を足止めする。

 が、その敵の力の強さに驚愕してしまう。

 

(強い!力が半端じゃない!)

「止まってくれないかな!?ほら、僕が任天堂より実はセガの方が好きだってことは謝るからさ!」

 

 望も全力で踏ん張るが、敵の力も相当なものであり、徐々に糸は千切れ出し、望の意志をことごとく無視するかのように歩き始めようとしている。

 

「くっ!ふんぬぅ………!そこの女の子!早く逃げるんだ!!」

 

 望が呼びかけるも女の子は返事をしなければ、逃げようともしない。空を見上げていた。そこに怯えはなく、むしろ驚愕と言うべきか。

 

 一体どうしたのかと望も敵の上を見てみると。

 その少女が驚いている理由が明らかになる。

 

スマッシュ‼︎

 

 

 この巨大な敵を殴りつける、あの緑毛の少年。敵は殴られたところから粉々になり、破壊されていく。

 

(うっそ!?あの敵をたった一撃で!!どんな個性だ!!)

 

 望が呆然としばらく眺めていると、その少年はそのまま真下に落下していく。着地しようというそぶりを見せない。というより、落下していた。

 

「おぉ落ちっ!!落ちるぅ!!」

「!っあれはまずい!!」

 

 望は急いで糸を発射し、真上へと駆け上がっていく。落下する少年の体を左手で受け止め、そのまま壁を降りていく。

 

「ナイスキャッチ、と。大丈夫?その右手重症みたいだけど、って動いちゃダメだよ!」

 

 望が体を支えるが、少年は歩き続けようとしている。その顔は涙でぐしゃぐしゃだ。それでも、望を押しのけて一人で歩こうとする。

 

「ありがとう………でも、せめて…!!1Pでも………!!」

 

 

 

 

『終了ー!!』

 

 しかしそんな少年の覚悟を裏切るかのように、試験は終了の時間を迎えてしまった。少年はショックで力が入らないのか、そのまま倒れようとする。

 

「おっと!」

 

 望はすぐに少年の体を支え、横に寝かせる。右腕は変な方向に折れてしまっている。出血も酷い。

 

「ごめんね、僕にはこれしかしてあげられないけど」

 

 望は糸を大量にだすと、少年の右腕に優しく巻きつけ、固定する。簡単な応急処置だ。

 

「蜘蛛の糸には止血効果があるんだ。本格的な治療はリカバリーガールにでもしてもらって」

 

 望はその場から離れようとする。しかし後ろを振り向き、放心している少年が気にかかり、思ったことを告げた。

 

「今の君にこんなことを言っても皮肉にしか聞こえないと思う。でもこれは、僕の本心だ。敵に立ち向かった君は、ここにいる誰よりもヒーローだったよ」

 

 それだけ伝えると、望は今度こそその場から離れていく。

 慰めに言ったわけではない。あの少年の姿に、望はたしかに彼を尊敬し、そして憧れを感じた。彼の姿にヒーローが見えたのだ。

 

 しかしそれ以上に後悔を感じずにはいられない。歩きながら今回の結果にため息を吐く。

 

(32Pか。これがどう転ぶかは、任天堂………じゃなくて、審査員たちに任せるとするか)

 

 とりあえず、今日の試験の結果のありのままを父に伝えるため、今日の出来事の整理を始めた。

 

 





スパイダーマンの糸で駆け抜ける描写。いざ文字に起こそうとすると難しいですね。

なんか想像してるのとは全く違うようになってしまった。
精進せねば………!


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雄英高校へ

ふぁっ!?

お気に入り1500件超え!?
UA15000超え!?
日間ランキング最高3位!?

私が模試やらを受けている間に何があった!!


プレッシャー………。(これほどの評価、本当にありがとうございます。時間を見つけて、なんとか投稿できるように頑張ります。)

あと低評価(0〜5)を付ける場合は何か一言お願いします。何か直せる部分がわかるかもしれないので。



「フッ!」

 

全速力で駆け抜ける。その速さは常人ではわずかに認識することはできても、捉えることは到底不可能に近いものだ。

 

目の前に壁が迫る。しかし望にそんなことは何の関係もない。ウェブから糸を発射。体を捻りながら自身を壁に引き寄せ、足裏を壁にくっつける。

望に壁という概念はもはや無いに等しい。四方八方、あらゆる面が自分の地面である。壁が迫ると、壁を地面にし、さらに加速。無我夢中で走り続ける。

 

「ハッ!」

 

走るだけでは足りず、体を倒し、前方へ1回転、2回転、3回転………と繰り返す。その動きは体操選手のように滑らかで、そして美しい。

回転を終えたその瞬間、下半身で踏ん張りをつけ、勢いよく飛び上がる。この部屋の高さは20mはある。人間はおろか、鹿などの動物でも上までは届かない。

 

望はそんな高さをもろともしない。各方面へ飛び移り、時には糸での移動をこなす。動きに時折、パンチやキックも交じえ、空想の敵との戦いを想定したトレーニングも入れ込んでいる。とにかく動く。動き続ける。

 

「………いや、気持ちは理解するよ。僕も気がかりで足踏みが止まらないからね。もう足踏みのし過ぎでふくらはぎがシックスパックになりそうだからね。でもさ、望。そんな激しい運動続けてもう2時間が経過してること知ってる?」

「知らん!」

「もはやいつものジョークすら出なくなったか………」

 

望の全身からは大量の汗が吹き出し、動き回るたびに雨のようにあちこちに飛び散る。体力にも限界が見え始め、肩の上下運動が目立ち、息切れを起こしている。

 

それなのになぜ、望は休憩を取らずに動き続けているのか?

自分を鍛えるため?たしかにそれもある。2割といったところだ。しかし本当の理由ではない。

ではなぜか?

 

理由は明白、今日で入学試験から1週間が経過したからである。今日か明日には『試験結果』が通知されるから。

 

とどのつまり、望は緊張を紛らわせているのだ。

緊張に限らず、なにか気を紛らわせたいときはとにかくいそがしくすればいい。そういった結論から、望は入試試験のその日からこの運動量をこなしていた。

 

1日目から食事と会話の量が日頃と比例して少なくなり、2日目からは胃腸を壊し始め、3日目からは寝ても1時間後には起きてしまうようになっていた。

5日目からは表情が完全に死滅し、6日目からは目のハイライトが消え去り、そして本日7日目にはジョークすら消えた。今の望は心を持たないただの暴走機関だ。先週までの面影を微塵も残してはいない。

 

勉も最初は息子の合否にひどく緊張していたが、今は息子のイカれた運動量にある意味緊張していた。私の愛する息子はどこに行ってしまったのだろう、と。

 

「博士!望くん!ついに届きましたよ!」

「なに!?ほんと、って望!?」

 

慌ただしくドアを乱暴に開けて入ってきた石澤が持ってきたのは、『雄英高等学校』と書かれている封筒だった。それは間違いなく試験結果の通知。

勉が封筒を確認しようとする前に、天井にぶら下がっていた望が糸で封筒を奪い取る。手に取った瞬間、すぐに封筒を破ると中から小さな機械が出てくる。

 

「おっと!」

 

地面に落ちてしまわないようにしっかりとシューターから糸を発射し、キャッチする。するとその機械からスクリーンが飛び出してきた。

 

『私が投影された!!』

「えぇっ!?オールマイト」

 

そのスクリーンに映し出されたのはなんと、人気ナンバーワンヒーローの『オールマイト』だった。ヒーローというものを詳しく知るために望は世界にいるヒーローたちを調べ続けてきた。オールマイトを望は当然知っており、その人間性にとても好意を持てる。尊敬するヒーローの一人だ。

 

『おや?なにやら髪の毛が不自然な方向へ向いているみたいだが?』

「あ、あぁすみません。天井にぶら下がってたものでして。すぐにおります」

 

オールマイトに指摘され、少し頭が冷静になった望は地面へと降りる。勉と石澤は突然のオールマイトの登場に驚きを隠せずにいるが、遠くから成り行きを見守る。

 

「し、しかしなぜオールマイトが雄英高校の合格通知の発表を?」

『それについては他でもない、雄英に勤めることになったからだ』

「………それは、今年史上最高のサプライズですね。合格者に対しては」

 

オールマイトが見てる前では、せめて笑顔でいようとなんとか気持ちを明るくしようとする。しかし、それがまるでできない。胸の中は今まで以上の心音が脈打っている。その一発一発が爆発でもしてるかのようだ。

笑ってみせているが、おそらくその顔はとてもぎこちないものになっていることだろう。いつものジョークがまったく飛び出さないのが良い証拠だ。

 

『さて縄正 望くん。君は筆記に関しては文句なしだ。しかし実技の得点は32P。わずかだが合格には届かない』

「っ………!そう、ですよね」

 

オールマイトからの残酷な一言で望の顔は一気に歪む。今までの努力が、父と石澤さんのバックアップが、全てが無駄に終わってしまうこのへの悔しさが溢れ出る。

涙は流すまいとしていたが、どれだけこらえようとしても目から溢れ出す。せめてオールマイトには見られないように顔を伏せるのが精一杯だった。

 

『それだけならね!』

 

しかしオールマイトの一言に望はピクリと反応する。目は涙で滲んではいるが、顔をあげ、しっかりと画面を見つめている。

 

『先の入試!!見ていたのは敵Pのみにあらず!!人救け(正しいこと)した人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!』

「人救け………あっ!?」

 

その時、入試でのあの出来事を思い出す。敵に襲われそうになった茶髪の女の子を助けるために時間をかせいだこと、その敵を倒し、落下してい少年を救い、応急処置を施したこと。

 

『あの少女が襲われそうになった時、君は真っ先に彼女の救出へと向かった!!さらにみど………ゴホンッ、負傷し動けなくなった少年への適切な救助、ならびに応急処置!!きれい事!?上等さ!!命を賭してきれい事実践するお仕事だ!!』

 

あの時、自分が咄嗟に動けたのは母の姿が浮かんだからだ。己の命を賭して少女を助けた誇り高い自分の母を。

あの時動かなかったら、自分は絶対に後悔した。ヒーローになる資格なんてないと思った。いや、母に顔向けできる息子になれるわけがないとさえ思った。

 

救助活動P(レスキューポイント)!!しかも審査制!!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!!縄正 望50P、合計82Pだ!!』

 

その想いが、情熱が、母の行動が、『彼ら(ヒーロー)』にも届いていたのだ。

 

『来いよ縄正少年!雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!!』

「っ!………はいっ!」

 

そして映像は終わり、スクリーンが消える。望の体が震える。涙が溢れでる。しかしそれは悲しみの涙ではない。身体中から、喜びが湧き上がっているのだ。

 

「やっっっっっったああああああああ!!!」

「やった!!やったぞ望!!合格じゃないか!!」

「さすが望くん!ついに努力が実ったんですね!」

 

歓喜に沸きあがり、3人はお互いに走り寄り、抱き合い喜びを分かち合う。そして3人でハイタッチをする、のだったが。

 

さてここで、望の筋力、今回は腕力について説明しよう。

 

望は現在15歳。身長176cm、体重72kgとかなりガタイの良い方だ。

さらに普通の人間とは違い、蜘蛛の腕力を手にしているのだ。当然その力は凄まじく、大型トラックも簡単に引きずってしまう。なので普段はその力をセーブする必要がある。そのことを理解している望はまず最初に力の制御について覚えたのだ。

 

しかし今の状況はどうだろうか。長年の夢だったヒーローになるための最高の舞台である雄英高校に合格したのだ。その喜びは今までのもの全てと比較にならない。完全に興奮状態だ。

そんな状態でハイタッチをすれば一体どうなってしまうだろう。

 

答えは至って簡単。

 

「「ぎゃあああああああああ!?」」

 

「あ、あはははは、はは………やっちゃった」

 

一応補足しておくと、二人の命に別状はなかったとだけ伝えておこう。

 

 

 

 

****

 

 

 

春。気温は暖かく過ごしやすいものになり、桜の花が満開になるこの季節。望は新しい制服を着込み、玄関に立つ。

鏡の前で制服を着込みの確認をする。最後にネクタイをキッチリと締める。

父である勉はその様子を誇らしく思えた。自分の息子がヒーローとしての第一歩を踏み出したことへ敬意を持って送りだそうとした。

頭や足に包帯を巻き、松葉杖をついてさえいなければ完璧な父親の姿だっただろうが。

 

「ついにこの日が来たんだな」

「うん、それじゃ行ってくるよ父さん。石澤さんによろしく伝えておいてね」

「あぁ、任せろ。この松葉杖ついた足できちんと伝えに言っておいてあげるよ」

「うっ、ごめんて………」

「ハハハッ、冗談だよ冗談。ほら、初日から遅刻するぞ」

「たくっ。じゃあ、いってきます」

「いってこい、望」

 

玄関のドアを開けると、まるで望を歓迎するかのように輝かしい太陽が目の前に広がっていた。望は新たなスタートの一歩をしっかりと踏みしめたのだ。

 

 

 

どこかで聞き覚えのある、実に男らしい豪快な笑い方をする女性の笑い声が聞こえてきた気がした。

 

 

 




今回も導入のような形となってしまいました。スパイダーマンとしての活躍を期待されていた方、申し訳ありません。

今週からAO入試に向けての本格的な準備が始まるため、投稿はさらに遅くなってしまいますが、ご了承ください。もちろん、時間を見つけて少しずつ書き上げていこうと思います。

最後にあらためて、これほど多くの皆さんにご評価を頂けたこと、大変嬉しく思っています。本当にありがとうございます。

これからもこの作品をよろしくお願い致します。


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