わたしの賢者さま (ジャックオニール)
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冒険 ファンタルジニア
冒険の始まり


俺の名は矢内 孝太郎。

会社の盆休みを利用して一人旅にでている。前々から予約していた温泉ホテル、ネットの評価も星4.5、夕食はバイキング、ローストビーフが楽しみだ。

と思っていた。

 

勇者「はじめまして、賢者さま。わたしは一国の勇者、わたしと一緒にファンタルジニアに来て下さい。」

 

コイツと出会うまでは…

ワケがわからない。秋葉原でもこんな勇者のコスプレしたヤツいないぞ。なんで持ってる武器が斧なんだ?しかも、賢者って俺のことか?

少しスコールを飲んで落ち着こう。

俺は昔から人によく声をかけられる。観光の外国人に道を聞かれたり、魚釣りの最中に釣り人に釣果を聞かれたり、後、変な生き物に、「僕と契約して魔法少女になってよ!」って言われたり。流石に最後の奴は無視したが。……だって俺は男だし。こんな事は初めてだ。どうしようか?

 

勇者「賢者さまー?ぼーっとしてどうかしましたか?」

 

お前のせいだ確実に。よし!スコール飲んで落ち着こう。しかし、このままでは埒が明かないな。

 

矢内「あー多分、人違いだ。そっちの方向に交番があると思うからそっちに行って尋ねなさい。お嬢ちゃん。」

勇者「人違いではありません!あなたが賢者さまです。これが証拠です。見てください。」

 

そう言って、何か(自称)勇者は自分の持ち物を漁りだした。

 

少しして(自称)勇者は一枚の写真と何か、小さい紙を取り出した。

 

驚愕した。なんでコイツが俺の会社の名刺を持ってやがる。写真には俺が写っている…。後ろの背景は何処だ。また埒か明かねぇ。

 

矢内「何だコレは!!何処でこれを手に入れた!!」

 

しまった!つい町中で大声を出してしまった。人が集まって来た!!一人どこかに電話をかけようとしてやがる!ヤバい!超ヤバい!!

 

勇者「何処って言われましても、神様がこれを持って賢者さまを探すようにって。」

 

OK、埒が明かねぇ。このまま此処にいても通報されて警察の世話になるだけだ。直ぐに予約していたホテルに向かおう。そこでゆっくり話を聞こう。

 

矢内「勇者様。此処じゃ人目に付くので場所を変えて話を聞きましょう。」

勇者「そんな、勇者さま、だなんて//わたしの事はそのまま勇者、ってお呼び下さい。」

 

何をテレてる。バカかコイツは。取りあえず俺はタクシーを呼び(自称)勇者を連れ予約していた温泉ホテルに向かった。

 

 

 

タクシーで走る事15分、ホテルに着き二人分の宿泊費を払う事になってしまった。ガッデム!帰りにソープランドに行く金がなくなった。

 

勇者「凄い所ですねぇ。賢者さまー。」

「お客様、貴重品は此方でお預かり致します。」

勇者「では、わたしの手斧を預かっててください。」

「畏まりました。お預かり致します。チェックアウトの時にフロントにお越しください。お部屋は801号になります。この後6時より夕食のバイキングが御座います。混雑すると思われますのでお早めに11階のレストランにお越しください。」

 

ちょ、斧って預かるのかよ。このホテルマン凄いな。普通、斧なんて持ってきたら通報するぞ。流石はグンマー。考えてもしょうがない。今は5時半だから、荷物を部屋に置いて楽しみにしていた夕食のバイキングにしよう。

 

矢内「勇者、取りあえず食事にしよう。話はその時に聞こう。」

勇者「はい。賢者さま。」

 

 

 

 

ホテル11階

 

「いらっしゃいませ。お二人様ですね。此方のお席になります。」

勇者「高い所ですねぇ賢者さま。山が凄くちっちゃく見えますねぇ。」

 

相変わらずここの従業員は勇者のコスプレした変なガキを見てもスルーだ。ちゃんとお客様として扱ってくれる。ありがたい。流石はネット評価4.5だ。

 

勇者「賢者さまー?凄い量の食べ物が並んでいますねぇ。これ全部食べて良いのですかぁ?」

矢内「あぁ。何だ、バイキングは初めてか?でも少し待てよ、今からメインのローストビーフを切り分けにシェフが来てくれるからな。」

「お客様、ローストビーフのソースは7種類御座いますがいかが致しましょうか?」

 

聞かれても7種類もあると良く分からないので俺と勇者はシェフにお任せした。では、早速ローストビーフを一口、ウマい。言葉が出ねぇ。

 

勇者「凄く美味しいです。こんなに美味しい食べ物生まれて初めてです。」

矢内「確かにウマいがそれは言い過ぎじゃないか?普段何食っているんだ?」

勇者「そうですねぇ。一人の時は大ムカデの脚とかセミとかですね。」

 

クソったれェ。聞くんじゃ無かった。せっかくの料理が不味くなる。話題を変えよう。

 

矢内「ところでお前、何歳なんだ。」

勇者「14歳です。」

 

マジか!今の中二にしては背が低すぎる!胸もねぇ!有り得ない!中二なのに胸がねぇ!!多分、普段セミとか食ってるぐらいだから親からろくに食事も出されてないのだろう。コイツの境遇は不憫だがもうあまり関わらない様にしよう。これ以上面倒はご免だ。

そして、食事も終わり温泉に浸かった後、俺たちはホテルの部屋に戻った。

 

勇者「それでは賢者さま、今日はもう夜も遅いですので明日、わたしとファンタルジニアに行きましょう!」

矢内「あー、その事だが…いろいろと準備が要るからな。一週間後というのはどうだ?」

勇者「そうですか…分かりました。では一週間後にお会いしましょう。」

 

バカめ!俺は観光でここに来ただけだからもう会うことは無い!さらばだ、(自称)勇者よ。さてと、俺は地元に帰るとするか。会社に土産でも買って行こう。

 

 

 

 

それから一週間後

 

 

 

矢内「ヤベェ。休みボケで寝過ごした。」

チャンチャチャ チャチャチャチャ チャンチャチャ チャチャチャチャ チャチャチャチャ チャチャチャン チャチャチャチャチャン まずは背筋の運動ー!

 

朝のラジオ体操が始まってやがる。

 

勇者「いっち、に、さっん、し。」

 

よし、遅刻したのがバレないように紛れ込もう。

 

勇者「ごう、ろっく、しっち、はっち。」

 

よし、誰にもバレてない!

 

勇者「いっち、に、さっん、し。」

勇者「ごう、ろっく、しっち、はっち。」

 

このままいけば遅刻扱いにならなくてすむ。今日の星占い1位だっただけのことはある!

 

社長「おはようございます。」オハヨウゴザイマス。

 

よし、朝礼も終わった。このままシレっと仕事に入れば遅刻では無い!

 

勇者「賢者さま!」

矢内「」

 

何で居る!

 

勇者「今日が約束の日です。さぁ、わたしと共にファンタルジニアに行きましょう!」

 

諦めろ、ということか…

 

矢内「あー、分かった、分かった。ファンタージェンでもバイストンウェルでもネバーランドでも何処にでも行ってやるよ。クソったれ!」

勇者「賢者さま、ファンタルジニアです。」

社長「矢内。お前、遅刻して来てどこに行くつもりやねん!」

 

バレてた!クソッ

 

矢内「社長、実は、ファンタルジニアに出張に行くことに成りまして…それで出張費用の方を5万円ほどですね…」

社長「お前、なに言ってんねん。その子ずっとお前の事待ってたんや。無断欠勤にしといたるからとっとと連れていけや!」

矢内「いやいや、無断欠勤は無いでしょう!あっ有休残ってたんでそれ使いますわ。5日ぐらい。」

社長「なにいってんねん!3日や。3日後、取引先と打ち合わせやから、それまでに帰って来い!」

 

勇者「良かったですねぇ。賢者さま。」

 

良いことあるか!

 

矢内「お前、どうやってここに来た。俺と会った所からここの工場だとかなりの距離があるぞ。」

勇者「それはですね。あれからわたし、一度ファンタルジニアに帰ってから神様に賢者さまのいる所にゲートを広げて貰ったのです。」

 

ウワァ!化け物だぁ!

 

勇者「あっ、ゲートからモンスターが出てきてしまいました。」

矢内「出てきてしまいました。じゃねーよ!どうしてくれるんだよ!」

 

焼却炉の方からでけェカマキリが歩いてる。あれってRPGだと結構終盤ぐらいの敵だろ。

 

社長「矢内。あれ何とかして来たら、遅刻して来た事不問にしてやるわ。」

 

何言い出しやがる。このハゲ!

 

社長「あっ、行く前にコレにサインしていけ。」

 

何だコレ。

 

矢内「社長!コレ生命保険じゃないですか!しかも受け取り社長になってるし!」

社長「早く行けや!」

 

このハゲめ!

 

勇者「行きましょう!賢者さま。」

 

元々お前のせいだろ!

 

矢内「社長!取りあえずフォークリフト使いますわ!」ブロロロロロロ

社長「リフト壊したら弁償しろよー!」

矢内「ハゲー」ブロロロロロロ

 

よし、聞こえないように言ってやったぜ。

 

社長「お前、3ヵ月減給な!」

 

クソッたれ!!聞こえていやがった。

 

 

 

 

焼却炉前

 

 

 

勇者「この大カマキリは腕のカマがやっかいなんです。」

 

見たらバカでも分かる。空に飛ばれたりしたらキツいな。よし、先手必勝!

 

矢内「フォークリフトの爪でおもっいきり刺してやる!」

 

 

 

ブロロロロロロ!

 

 

 

 

 

 

 

ブロロロロロロ!

 

 

 

 

 

 

 

ガタン!

 

 

 

クソッ溝にタイヤがハマった!

 

勇者「あれ?動かなくなりましたねぇ。」

 

カマキリがジワジワと此方に近づいて来る!

 

 

羽を広げて飛んで来た!

 

 

 

 

 

 

シャキン!

大きなカマが降り降ろされる!!

 

 

 

 

 

 

 

ヤバい!!やられる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキーン!

勇者「大丈夫ですか!賢者さま!」

 

助かったのか?イヤ、勇者が斧でカマを受け止めただけにすぎない。

勇者のホビットの様な体ではやられるのは時間の問題だ。何とかしないと!

 

!!!!コレだ!!!!よし!

 

矢内「勇者!!伏せろ!!」

 

 

 

 

バシャー!!俺は近くにあったラッカーシンナーを大カマキリにぶっかけた。

 

 

キシャー!やった!虫けらがのたうち回っているぜ。

 

矢内「勇者!!トドメだ!」

勇者「はい!賢者さま!ター!」

 

 

勇者の斧が虫けらの頭を叩き割った!

 

矢内「ザマァ見ろ!虫けらの分際で俺たちに勝とうなんて思うからだ!ハハハ!」

勇者「賢者さまー?さっきは何で大カマキリが苦しみ出したのですか?」

「あっ、矢内さん。近くにラッカーシンナー見ませんでした?」

矢内「いや、見てないよ。無かったら発注しとくけど。」

「大丈夫です。おかしいなぁ。こっちに半端があったと思ったのになぁ。」

 

勇者「無事にモンスター倒せて良かったですねぇ。」

 

元々お前が悪いのだが自覚していないのだろう。

 

勇者「では、気を取り直してファンタルジニアに行きましょう!」

矢内「おぃ!ファンタルジニアって入り口どこにあるんだ。」

勇者「ここですよ。賢者さま。」

 

勇者の指さす方向はやはり焼却炉だった。

 

 

俺はこの時思った。星占いは当てにならないと。

 

 

 

 

第1話

冒険の始まり

END



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オークの混血児 1

矢内「オェー!オェー!」ゼィゼィハァハァ

矢内「ゲート通るのってこんなに酔うのかよ!先に言えよ!」

勇者「オェー!」ゼィゼィハァハァ

矢内「ってお前もかよ!」

勇者「違います。わたしのはもらいゲロです。」

矢内「うるせー!オェー!」ゼィゼィハァハァ

 

俺たちは会社に現れた大カマキリを倒した後、食料などを準備してファンタルジニアにやってきた。

ダメだ!まだ気持ち悪い。少しスコールを飲んで気持ちをリフレッシュしよう。

 

矢内「所で、お前は何で俺をファンタルジニアに連れてきたんだ?」

勇者「え?」

矢内「え?じゃねーよ!」

勇者「それでは、賢者さま。王様の所に行きましょう!」

矢内「いや、質問に答えろよ。」

 

しかし、辺り一面木に囲まれるな。森の中なのか?迷ったら大変だな。勇者は道を知っているのだろうか。

 

矢内「勇者よ。ここは何処だ?」

勇者「ファンタルジニアです。」

矢内「ファンタルジニアの何処だって聞いているんだ!」

勇者「森です。」

 

見たら分かるわ。聞いた俺がバカだった。

 

矢内「道、分かってるんだろうな?」

勇者「歩いていたらいつか何処かに着くと思います。」

 

マジかコイツ!適当に歩いていやがったのか。それで森の中を右や左に曲がっていたらそりゃ迷うわ。

 

矢内「勇者、取りあえず真っ直ぐに進むぞ。さっきから同じ所をずっと歩いてるぞ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

暫く歩いていると原っぱに出て来た。真ん中に花がいっぱい咲いている。花の所に誰か居る。子供だな。

 

矢内「おーい」

 

子供は此方を振り向いた。尖った耳に豚の鼻、その瞬間、俺は異世界に来た事を改めて実感した。

 

豚鼻の少女「に、人間!」

勇者「初めてまして、わたしは一国の勇者です。此方は賢者さまです。」

豚鼻の少女「ゆ、ゆ、勇者に賢者?た、た、た、助けて!殺さないで!」

 

何だ?脅えてやがる。こっちは道を教えて欲しいだけなのに。仕方ない。ここは一つリラックスさせてやるとするか。

 

矢内「物まねやりまーす!まずは木村拓哉!」

矢内「ちょ、まてよ!」

豚鼻の少女「????????」

矢内「続きまして、宮川大輔。」

矢内「道を聞きたいだけやのにそんな脅えたら、アカーーン!」

豚鼻の少女「」ビク

勇者「何してるのですか?賢者さまー?」

矢内「続きまして、」

豚鼻の少女「あの、あなた達は私をイジメに来たのじゃないのですか?」

 

クソッ!次こそは爆笑させてやる自信があったのに…

 

勇者「そんな酷いことするわけ無いじゃないですか!」

勇者「お前は誰かにイジメられたりしているのですか?」

豚鼻の少女「わたしはお父さんがオークでお母さんが人間なんです。」

矢内「混血児ってやつか。」

豚鼻の少女「だから、人間にもオークにも嫌われていて……」

 

何か複雑な事情だな。

 

矢内「人間にもって言ったな。このあたりに村とかがあるのか?」

豚鼻の少女「あっ、はい。ここから西に少し行ったら人間の町があります。」

勇者「教えてくれてありがとうございます。良かったらお名前、教えて下さい。わたし達だけ自己紹介したのは不公平です。」

豚鼻の少女「わたしの名前はポーキーです。」

矢内「そっか、ポーキー。ありがとうな。お蔭で今日は野宿しなくて済みそうだ。」

コン、コン、ガン!

 

いてぇ!石飛んで来やがった!アッチからか?

 

矢内「なにしやがる!!」ヤベッ!ヒトニアタッタ!ニゲロ!

矢内「勇者!あのクソガキ共の頭を斧でかち割ってやれ!」

勇者「はい。賢者さま!」ウワァ!コッチニキタ!ニゲロ-!

 

俺達はクソガキ共の追っかけているうちに町にたどり着いた。

 

勇者「捕まえました!」

 

よし!ナイスだ勇者!このクソガキ共に大人の恐ろしさを見せてやる!!

 

勇者「なんで石なんか投げてきたのですか?」

子供 A「ごめんなさい。他に人が居るなんて思わなかったから…」

子供 B「だっていつもこの時間帯はアイツしかいねーからさぁ。」

勇者「ポーキーに当たったらどうするつもりですか!!」

子供 B「別に良いじゃん!アイツ人間じゃねぇし。」

子供 C「そうだ!よそ者が口出ししてんじゃねぇよ!」

子供のリーダー「おいお前ら、どうしたんだ?」

子供 B「あっ、キール、良いところに!」

 

キールと呼ばれた偉そうなガキが近づいて来た。きっとガキ共のリーダーなんだろう。

 

キール「あんたら見ない顔だな。コイツラが何かしたのか?」

勇者「原っぱでポーキーとお話していたらこの子たちの投げた石が賢者さまに当たったのです!」

キール「お前ら!下らねー事しやがって!この人達に謝れ!」

子供 ABC「ごめんなさい…」

 

勇者とキールとかいうガキの所為で俺がコイツ等に大人の恐ろしさ見せる機会がなくなってしまった。

 

矢内「それはもういい。それより俺達は今日、泊まる所を探しているんだが、何処か知らないか?」

キール「あんたら、旅の人か?まさか人攫いじゃねぇだろうなぁ?」

人攫いだと?なんか面倒な事が起きそうな予感がする…

 

勇者「今のお話、詳しく教えて下さい!」

キール「あんた等、一体何者なんだ?」

勇者「あっ、自己紹介が遅れました。わたしは一国の勇者、そちらは賢者さまです。」

子供ABC「ゆ、勇者〜〜!」

キール「本当に勇者なのか?俺の親父は町長なんだ!是非会ってくれ!」

 

嫌な予感が当たりそうだ。

 

矢内「いや、俺達は町長なんかより泊まる所をだな…」

キール「何言ってんだよ!あんた賢者なんだろ!すげー頭いい奴なんだろ?」

 

このキールとかいうガキ、なかなか分かっているじゃねぇか。

 

キール「親父の悩み聞いてくれよ!賢者様だろ?賢いんだろ?」

矢内「ハハハ!俺は賢者さまだからなぁ!賢いからなぁ!悩みなんて一発解決さぁ!ハハハハハハ!」

子供ABC『この人チョロいなぁ。』

勇者「キール、賢者さまが悩みを聞いてくれて良かったですねぇ。」

 

俺達はキールの案内で町長の家に向かった。

 

町長「これはこれは勇者様に賢者様、よくお出でなさった。」

勇者「町長さん、こんにちは。」

矢内「町長さん、俺達は泊まる所を探しているんだが。」

町長「キールから話を聞いています。町に一つ空き家が有りますのでそこをお使い下さい。火をおこす薪など必要な物は後でキール達に持って行かせます。」

矢内「いろいろと心遣いありがとうございます。それでは…失礼します。」

町長「あぁ、お待ちください賢者様!実は今、我々の町でですね子供達が攫われる事件が有りまして…」

 

クソッ!やはり話聞かなきゃいけないか。

 

町長「それで子供達を攫った犯人を探して欲しいのです。」

矢内「何か犯人に心当たりは無いのですか?」

町長「最近、東の原っぱにオークが目撃されています。もしかすると」

勇者「ポーキーがそんな酷いことするわけありません!寧ろこの町の子供達のほうが酷…」

矢内「勇者、少し黙ってくれ。」

勇者「だって賢者さま、」

矢内「少し黙れ!」

矢内「町長、勇者が失礼しました。犯人は明日我々で調査します。今日は、宿のほうに戻ります。」

町長「賢者様、よろしくお願いします。」

矢内「それでは失礼します。勇者!行くぞ!」

 

町長の家を出て提供してくれた空き家に入った。小綺麗に片付いている。頻繁に手入れをしているのだろう。

 

勇者「賢者さま!さっきは何でポーキーの味方しなかったのですか!」

矢内「勇者、お前は一体ポーキーの何を知っているんだ?さっき会ったばかりだろう?」

勇者「ポーキーは大人しい子です。」

矢内「そうだな。でもこの町の人達はそれすらも知らないのだ。」

勇者「だからって子供達がポーキーに石を投げつけていい理由なんてありません!」

矢内「そうだな。でもな、人は自分と少し違うってだけで怖い物なんだ。だから大勢でその違う物を叩く。虐める。」

矢内「少し人より太っていたり、肌の色が黒かったり、禿げていたり、種族が違ったり、チンコの皮が被っていたりしても、心は通じ合えるはずなんだ。」

勇者「そうですね…わたし、明日ポーキーの所に行って来ます。」

矢内「何しに行くのだ?」

勇者「もちろん、お友だちになりに行きます。」

矢内「お前、ポーキーに同情して言ってるのか?」

勇者「違います!わたしが仲良くしたいから行くのです!」

矢内「いい子だ。町で犯人探しは俺がするから行って来い!」

勇者「賢者さま、ありがとうございます。あっ、あとわたしは賢者さまが皮っ被りでも絶対酷いことはしないので安心して下さい。」

 

俺はズル剥けだ。クソが!

ガチャ、丁度ドアが開きキールが町長の使いで薪などの必需品を持って来てくれた。

 

キール「賢者様、必需品持って来ました!」

矢内「キールか。ありがとう。その辺に置いてくれ。」

 

キールは必需品を置いてもまだ帰ろうとしない。

 

矢内「キール?まだ用事が有るのか?」

キール「勇者、明日俺も一緒に連れて行ってくれ!俺はこの町の子供達のリーダーなんだ。だから…」

矢内「お前の言いたい事は分かるがそれじゃあダメだ!」

キール「なんでだよ!アイツ等だって俺の言うことなら絶対聞くはずなんだ!」

矢内「それでは意味が無いんだ。確かにお前は反省しているのかも知れない。」

キール「かもじゃないよ!この皮っ被り!」

矢内「ズル剥けだ!ぶっ飛ばすぞ!話がそれた。お前が言うと子供達は言う事を聞くだろう。お前の前ではな。」

キール「………」

矢内「だがそれだと、お前の居ない所で他の子供達はポーキーをイジメるんじゃないか?」

キール「もういい。俺は一人でもアイツに会いに行く。」

 

バタン。キールはトボトボと帰って行った。

 

勇者「賢者さま、キールはせっかくポーキーがみんなと仲良く出来るようにと思って言ったのになんであんな風に言ったのですか?」

矢内「あぁ、多分だがキール自身はポーキーをイジメたりしていない。」

勇者「なんでそうだと言えるのですか?」

矢内「そうだな。キールは石をぶつけられた話をした時、下らねえ事って言ったよな。」

勇者「そうですね…。言ってましたね。」

矢内「キールはそういうイジメ行為自体下らねえと思っていたんだ。」

勇者「じゃあなんで今まで、何もしなかったのですか?」

矢内「アイツもどうしたらいいか分からなかったんだと思う。町長の息子って立場もある。それに大人達からもオークには近づくな、とか言われてたのだろうしな。」

勇者「でも、それじゃあ」

矢内「大丈夫だ。お前、明日ポーキーと友達になるんだろ?それにキールの奴も一人でも会いに行くって言ってたじゃないか。」

勇者「そ、そうですよね!安心しました。」グー

矢内「ハハハ!なんだ、勇者。安心したら腹がへったのか?話し込んだから飯の時間が少し遅くなってしまったな。」

矢内「もう少し待てるか?今から作ってやるからな。」

勇者「はい!賢者さま!」

 

よし。飯を作るとするか。まずはあらかじめ買って来た、チャッカマンで薪に火を付けて、キールが持って来た必需品に中に鍋とフライパンに包丁に水に野菜があるな。米はお湯で温めるやつがあるから鍋に入れて、あと、俺が買って来た食材でうーん、焼きそばでいいか。肉はないが野菜を炒め塩コショウを振りかけソバを入れ鳥ガラスープの元に醤油で味付けて、最後に半熟の目玉焼きを上にのせる。ご飯はもう出来てるな。

 

矢内「よし、出来たぞ!」

勇者「これはなんて食べ物ですか?」

矢内「あぁ、矢内流醤油焼きそばだ。」

勇者「こんな速い時間でお料理が出来るのですね!魔法みたいです。」

矢内「さぁ、早く食べよう。冷めてしまう。」イタダキマス!

 

そういえば、誰かに飯作ったのって初めてだな。口に合うといいんだが……

 

勇者「美味しい!凄く美味しいです!」パクパク

 

良かった。本当に良かった。作って良かった。誰かに美味しいって言われるのって本当にいい気持ちだなぁ。

 

勇者「あれ?賢者さま食べないのですか?」

矢内「あぁ、今から食う所さ。」モグモグ

 

一瞬だが、勇者が食べている姿を見て、いろんな事に巻き込まれているのを忘れてファンタルジニアに来て良かったって思った。

 

 

そして、ファンタルジニアに来てからの長い1日が終わった。



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オークの混血児 2

勇者「では、賢者さま。行ってきます。」

矢内「勇者、昼には帰って来いよ。」

 

わたしは町を出て昨日ポーキーと出会った原っぱに駆け足で向かいました。

原っぱにたどり着いたけど誰も居ませんね。このまま、この先の森を直進しましょう。直進すると森は迷わないって賢者さまも言ってましたし、大丈夫です。

 

しばらく歩くと小屋を見つけました。女の人が出て来ましたね。ちょっと聞いてみましょう。

 

勇者「すみません。ちょっといいですか?」

「あなたどこから来たの?町の子?」

勇者「町から来たのですがわたしは町の子ではありません。わたしは一国の勇者です。」

「勇者が何しに来たの!!」

 

なんか怒っています。わたし、何もしていないのに…

 

???「お母さん、大声出してどうしたの?」ガチャ

「ポーキー!出て来ちゃダメ!」

勇者「あっ、ポーキー!見つけました!」

ポーキー「あっ、勇者だ。どうしたの?町にはたどり着いたの?」

「え、え、どういうこと?知り合い?とりあえず上がっていく?」

 

この人はポーキーのお母さんだったのですね。わたしは森を歩いている内にポーキーのお家にたどり着いた訳です。わたしはポーキーのお母さんに言われるままに小屋にお邪魔することにしました。

 

「で、家の子にどのような用事でしょうか?」

勇者「ポーキーと遊びに来ました。」

「はぃ?」

勇者「だから遊びに来ました!」

 

何でか分からないですけど、ポーキーのお母さん、固まってしまいました。

 

ポーキー「勇者、賢者様は今日は一緒じゃないの?」

勇者「賢者さまは今、人攫いの犯人を探しています。」

ポーキー「そうなんだ。で、勇者は私と遊びに来たって何して遊ぶの?」

勇者「ポーキーがいつもしている遊びにしましょう。」

ポーキー「じゃあ、一緒に折り紙しようよ!」

勇者「折り紙ですか?わたしは初めてするのでぜひ教えて下さい。」

 

それから、わたしはポーキーに教わりながら折り紙をしました。

 

勇者「ポーキーは凄いですねぇ。」

 

一枚の紙からカマキリ、セミ、お花に鳥とポーキーが折るといろんな物になります。

 

勇者「まるで魔法みたいです。あっ魔法って言ったら賢者さまも凄い速さでわたしが見たことも無いお料理を作り上げたのですよ!あれもきっと魔法です!」

ポーキー「魔法のお料理かぁ。私も食べてみたいなぁ。」

勇者「じゃあ、わたしと一緒に町で待っている賢者さまの所に行きましょう!」

ポーキー「ダメだよ…私が一緒に町になんか行ったら勇者も石投げられたりするよ。だから…」

勇者「ポーキーは優しいですねぇ。わたし達には賢者さまが付いてます。そんな事には絶対なりません!絶対にわたし達を守ってくれます!」

ポーキー「分かったよ…お母さんに聞いてくる。」

「もうすぐ、お昼よ。お父さんも帰って来るのにどこに行くの?」

 

ガチャ、玄関のドアが開き誰か入って来ました。

 

オーク「今帰ったぞ!」

ポーキー「お父さん、おかえりー。」

オーク「ポーキー、どこかに行くのか?今は駄目だぞ。」

「あなたお帰りなさい。村で何かあったのですか?」

オーク「あぁ、東の村でまた子供が攫われた。これで3人目になる。」

勇者「えっ、村でも子供が攫われたのですか?」

オーク「誰だ!」

ポーキー「勇者だよ。お父さん。」

オーク「勇者だと!!此処に何しに来た!!」

 

この人はポーキーのお父さんでしょうか?何故かわたしを見た途端に怒り出しました。

 

「あなた、この子なんですけど、ただポーキーと遊びに来ただけみたいで…」

オーク「遊びに?人間の勇者がか?何故だ?」

「それが、わたしにも訳が分からなくて…でもポーキーがあまりに楽しそうなので、ほっといても良いのかなって。」

ポーキー「お父さん、勇者は悪い人じゃ無いよ!それで今から一緒に賢者様の所に行くんだ。」

オーク「ダメだ!今、村でまた人攫いが出たって大騒ぎなんだ!」

勇者「今、賢者さまが人攫いの情報を探しています。だからきっと村の子供達も助けてくれますよ。」

オーク「村の子供達はオークだ!人間じゃ無い!人間が助けるのは人間だけだ!」

勇者「賢者さまはオークの子供も人間の子供も絶対に助けてくれます!」

ポーキー「お父さん、わたしもそう思うな…賢者様、わたしにありがとうって言ってくれたもん。」

オーク「そんな事信用出来るか!!どうしてもって言うならその賢者様とやらを連れて来い!!」

勇者「分かりました。じゃあ、ポーキー一緒に行きましょう!」

ポーキー「うん、お父さん行ってくるね。」

 

わたし達はポーキーのお家を出て賢者さまが待っている町の空き家に急ぎました。

 

オーク「ポーキー!お前は行かなくていい!おい!待たんか!」

「行っちゃいましたね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ昼だな。勇者が帰って頃だな。

ガチャ、ドアが開いた。

 

キール「賢者、親父から差し入れ持って来たぞ。」

矢内「バケットか、キール、ありがとう。そろそろ勇者が帰って来る頃だ。お前も一緒に飯食べてけ。」

キール「良いのか?一人増えたら大変じゃ無いのか?」

 

ガチャ!またドアが開いた。

今後こそ勇者だな。

 

勇者「賢者さま!今戻りました。」

矢内「あぁ。ってポーキーも一緒か、今から昼飯作る所だからキールと一緒に待っててくれ。」

ポーキー「お邪魔します。賢者様。」

矢内「すぐに出来るからな。ポーキーもおとなしく待ってろよ。昼飯、食べるだろ?」

ポーキー「えっ、私突然来たのに良いんですか?」

矢内「勇者が友達を連れて来たんだ。ちゃんとおもてなししないとな。」

ポーキー「私が勇者の友達?」

矢内「さっきまで勇者と遊んでいたんだろ?友達じゃ無いなんて言ったら勇者が泣くぞ。」

矢内「まったくキールといい、ポーキーといい、ファンタルジニアのガキ共は遠慮がちなヤツばかりだな。よし、出来たぞ!」

ポーキー「えっ、もう?いつの間に作ったの?」

勇者「今日のご飯は何ですか?賢者さま。」

矢内「あぁ、ワカメのスープ、中華風餡掛けオムレツ、町長からの差し入れのバケットを使ったスモーブロだな。」

矢内「スモーブロのトッピングは左からツナのカレー風味、細かくした野菜炒め、缶詰めの焼き鳥、そして、缶詰めの黄桃だな。」

ポーキー「凄い、こんな短時間で、勇者の言ってた通り魔法みたい!」

キール「すげぇ!見たこと無い料理ばかりだ!」

ポーキー「に、人間の子供!」

キール「何だよ。お前も子供じゃ無いか。勇者と賢者から聞いてるぞ。お前、ポーキーって言うんだろ?俺はキール。よろしくな!」

ポーキー「うん…よろしく…」

勇者「さぁさぁ、ポーキーもキールも喋ってないで早く食べましょう!」

矢内「おい勇者、作ったのは俺だぞ。俺が席に着くまで待てないのかよ。」

矢内「よし、待たせたな、じゃあ食べようか。黄桃のスモーブロは一応デザートだから最後に食べるようにな。」イタダキマス!

 

よし、じゃあ食うか。ん?何だ?ずっとこっちを見てるな。まあ、気にせずにスープを飲むか。

おっ、やっとコイツ等スープを飲み出したな。またこっちを見てやがる。あぁ、そう言うことか。

 

矢内「お前ら、食べ方なんて細かい事は考えずに好きに食えば良いぞ。」

 

やっぱりそうか。やっと食い始めだしたな。さて、子供達の口に合うと良いのだが…。

 

キール「俺が持って来たパンがこんなご馳走に成るなんて、すげぇな!」

ポーキー「卵がフワフワで。それから上にかかっているのが凄く美味しい。」

 

どうやら口に合ったようだ。良かった!

 

勇者「これ、甘くて美味しいですねぇ。」

矢内「それはデザート代わりだから最後に食えって言っただろうが。」

 

ご馳走様でした。よし、食器を片づけるか。

 

ポーキー「あっそうだ、賢者様、私のお父さんが家に来てくれって言ってたよ。」

矢内「ん、ポーキーの家はここから近いのか?」

ポーキー「ここからだと原っぱに出て東に少し行った所にあるの。」

キール「そんな所に住んでいるか?町から離れていたら不便だろ。」

ポーキー「家から少し東に行くと村があるから。」

矢内「そうか。じゃあ少し行ってみるか。村にも行くから少し遅くなる。勇者、ポーキー達とおとなしくしていろよ。」

勇者「分かりました、賢者さま。じゃあ、キール、ポーキー遊びに行きましょう!」

キール、ポーキー「えっ、今」

勇者「早く行きましょう!そうだ、キール、わたし達はこの町初めてなのでいろいろ案内して下さい。」

矢内「おい、ちょっ待てよ!」バタン、タッタッタッタッ

 

マジかアイツ、ポーキーとキール連れて行きやがった!何考えていやがる。ていうか分かりました、って言っただろうが。クソが!!

もう考えるのがアホらしいからポーキーの家にまず行くとするか。俺はあらかじめ持って来ていたスコールを飲んで原っぱの方に向かう事にした。

 

 

 

俺はポーキーに聞いた通りに原っぱから東に向かい歩いていた。ん、小屋が見えてきた、これがポーキーの家だな。おっ!ちょうど女の人が出てきたな。

 

矢内「すみません。少し良いですか?」

「はい。えっと、どちら様ですか?」

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

 

よし、昨日の夜考えた名乗りセリフもこの格好いいポーズもバッチリだ!

 

「…………………。(何?今のポーズ…。この人少し頭おかしいのかしら?)」

 

固まっている。フフフ、まぁ無理も無いか。パーフェクトに決まったからな。きっと俺のかっこよさにシビれているのだろう。ん、また誰か来たな。オークか。きっとポーキーの父親だろう。

 

オーク「人間がここに何しに来た!帰れ!」

「あなた、この人が例の賢者みたいなの。」ヒソヒソ

オーク「本当か?絶対怪しい奴だぞ。」ヒソヒソ

矢内「あんた達がポーキーの両親か。まずは勇者が世話になった礼をしたい。つまらない物ですがこちらをどうぞ。」

オーク「お前は礼につまらない物を渡すのか?」

矢内「そう言うことじゃあ無くてだなぁ。お近づきの印としてだなぁ。」

「お近づき?ね、この人、訳分からないでしょう。」ヒソヒソ

オーク「あぁ、なんか厄介だな。あまり相手にしたくないからさっさと追っ払らおう。」ヒソヒソ

 

何だと!ファンタルジニアにはお歳暮とかの習慣は無いのか?って言うかお前らの話は丸聞こえだ!クソが!

 

矢内「ああああもう、簡単に言うとだなぁ勇者が世話になったお礼にこの果物の缶詰めを良かったら家族で食べてくれって事だ!」

オーク「コレが果物だと!鉄の塊じゃ無いか!バカにするな!」

「そうよ!あなたはっきり言って怪しいわよ!」

矢内「もう、じゃあ缶詰め一つ開けるからよく見とけ!ポーキーもコレを昼に食ってるんだ!」

「ポーキーに鉄の塊を食べさせたのですか!」

矢内「食ったのは缶詰めの中身だ!黙って見てろ!」パカッ

オーク「中身ってどういう事だ!」

矢内「蓋が開いたから皿を出してくれ。」

 

俺はポーキーの母親から皿を受け取り黄桃の缶詰めの中身を取り出した。

 

「ま、魔法だわ。鉄の塊から果物が出てきた!」ガタガタ

オーク「魔法だと!お前、本当に賢者なのか?」

矢内「あぁ、初めからみんなが大好き賢者様だって言ってるじゃないか。さぁ食べて見てくれ。この黄桃の缶詰めは俺のお気に入りなんだ。」

 

俺はそう言ってポーキーの両親に食べるように進めた。

 

オーク「そこまで言うんだ。食べてみるか。ポーキーもコレを食べたみたいだしな。おい、フォークを取ってくれ。」

「どうぞ、本当に食べるのですか?もし毒でも入っていたら…」

 

この女何処まで俺を疑う気だ。ポーキーがいじめられるのは実はお前の人をすぐ疑う性根からなんじゃ無いのか。

 

オーク「何だコレ!メチャクチャ甘い!こんな旨い果物初めてだ!お前、何の魔法を使った!」パクパク

 

コイツは美味くても文句を言うのか。コイツらのDNAから何でポーキーのような素直な子供が出来るのだ?生命は不思議だ。

 

「そんなに甘くて美味しいのですか?わたしも一口頂きますね。」パク

「甘い!メチャクチャ甘い!初めて食べた味です。」パクパク

矢内「桃だからなぁ。そりゃ甘いだろう。」

「も、も、桃ですって!」

オーク「何、桃だと!貴族でも食べたこと無い程の高級品だぞ。本当か?」

「桃は長寿の実として扱われ値段が高騰して私達貴族はもちろん王様ですらなかなか食べられない果物を簡単に人に渡すなんて信じられないわ。」

オーク「今、何でお前さり気なく自分の事を貴族なんて言ったんだ?」

「だって言うのはタダだから、それに余所の土地の人だから嘘付いても分からないかなぁって。」

 

貴族が小屋に住むか!もう少しバレない嘘を付けこの女!バカじゃ無いのか?やっぱりコイツが原因でポーキーがいじめられるのだろう。

 

矢内「どうやら気に入って貰えたようだな。じゃあ、いろいろ聞きたい事があるが少し時間いいか?」

オーク「分かった。仕事をしながらでいいなら何でも聞いてくれ。後いろいろ疑って悪かった。」

矢内「まぁ疑うのも無理も無い。じゃあ今、この辺り騒がせてる人攫いについて聞きたい。」

オーク「賢者様は俺を疑っているのか?」

矢内「いや、あんたに子供達を攫うメリットが何も無いからな。それは無い。」

オーク「そうか。あんたは他の人間とは違うのだな。実は東のオークの村でも子供が攫われている。もう今日で3人目になる。」

矢内「やっぱりそうか。ちなみに攫われた子供は女か?」

オーク「いや、男の子が二人に女の子が一人だ。」

 

どうやら犯人は小さい子に悪戯目的のロリコンでは無いらしい。町では男の子が一人に女の子が一だったからな。

矢内「攫われた子供達の親に犯人から金銭などの要求が有るのか?」

オーク「そう言うことは聞いた事が無い。」

矢内「このあたりで人目に付かない場所は何処か有るか?」

オーク「うーん、そうだな。ここから少し西の原っぱから南に大分行った所に洞窟があるが。最近魔物がいるって事で誰も近づかないが…でもその魔物が犯人では無いだろう。ソイツは洞窟から動く事が無い大人しいヤツだからな。」

矢内「そうか。とりあえず洞窟から調べてみるか。いろいろ聞けて助かった。」

オーク「助かったか。つくづく変わった人間だな。」

「賢者様、高価な物をありがとうございます。」

 

現金な女だ。何でコイツはこんなクソ女と結婚したんだ?俺は結婚する相手はちゃんと選ぶようにしないとな。

 

オーク「所でポーキーはどうした?」

 

あっ忘れてた!

 

矢内「あぁ、今は勇者と一緒だ。」

オーク「そうか。それなら安心だ。」

「そうですね。娘と友達になってくれた子ですもんね。大丈夫ですよ。」

 

その勇者が勝手にポーキーと町に出掛けたから問題なんだが黙っておこう。さてと情報は少し得る事が出来たので勇者と合流して南の洞窟に行くとするか。

 

 

 

 

 

 

わたし達はキールに町を案内して貰いましたが特に何も無かったので原っぱに行くことにしました。ん?誰か居ますね。子供達です。行ってみましょう。

 

子供B「そろそろあのオークがくる時間だな。」

子供C「今日こそここを俺達の遊び場にするんだ。」

子供A「ねぇ、こんな事もうやめようよ。」

子供B「お前、ビビってるのか?」

子供A「そうじゃないけど…」

子供C「あーあ、キールも一緒にしてくれたらここはすぐに俺達の遊び場に成るのにな。」

キール「お前ら何しているんだ。」

子供ABC「あっ、キール!」

キール「ちょうど良かった。お前らに紹介する。新しい仲間のポーキーだ。」

ポーキー「あの子達、わたしをいじめる子達だ。怖いよ、勇者。」ヒソヒソ

勇者「大丈夫ですよ。キールが何とかしてくれます。わたしも付いてます。」

子供C「ソイツいつもここにいるオークじゃないか!」

子供B「キール、何で一緒にいるんだよ!」

キール「友達になったからに決まってるだろう。」

子供C「いつも大人達が言ってたじゃないか!オークに近づくなって。」

キール「じゃあ、お前らは大人達が死ねって言ったら死ぬのか!」

子供ABC「生きる!!」

子供A「でもキール、本当に友達になったの?」

キール「あぁ、一緒に賢者が作った昼飯も食ったしな。」

子供B「でもさぁ、オークだよ。種類が違うのに友達になれる訳ないよ!」

キール「種類が違う事なんて些細なことだ!賢者なんて大人の癖に今だにチンコの皮被ってる可哀想な奴なんだぞ!」

子供A「賢者様…かわいそう。それに比べたら種族なんて些細な事に思えてきたよ。ポーキーって言ったね。いままでゴメンナサイ。」

子供B「俺も謝るよ。石とか投げたりしてゴメン。」

子供C「いやいやいやいや、それで謝るのはおかしいだろ!キール!お前らオークなんかと仲良くしやがって大人達に言いつけてやるからな!」タッタッタッタッ

勇者「一人行っちゃいましたね。」

キール「ほっとけよ。」

ポーキー「でも良いのかなぁ…あの子が大人達に話したらキール達が怒られるよ。」

キール「何で友達と遊ぶのに怒らないといけないんだ!ポーキー、二度とつまらない事は気にするなよ。」

ポーキー「うん、ありがとうキール…」

子供AB「ポーキー、今まで本当にゴメンナサイ。」

勇者「お前達、もう二度とポーキーをイジメたりしないですか?」

子供A「もう絶対しないよ!こうして話してるとただのおとなしい女の子だもん。そんな子をいじめるなんてカッコ悪いだけだよ。」

子供B「あぁ、種族の違いなんて賢者様の皮っ被りに比べたらたいしたこと無いもんな。俺も絶対しないよ。」

勇者「そうですか。良かったですねぇ。ポーキー。」

 

ウワッ、タスケテ。オイ、オトナシクシロ!

 

勇者「ん?あっちの方で声がしますね。行ってみましょう。」

子供C「離せよ!助けて!誰か!」

人攫い「大人しくしろ!こっちにこい!」

勇者「あっ、誰ですか?あなたは!」

キール「どうした?勇者ー!」

人攫い「ちっ、人に見つかった。逃げるか、こい!」タッタッタッタッ

勇者「行っちゃいました。」

キール「ました、じゃねぇよ。さっきの奴が人攫いだよ!」

ポーキー「あっちは洞窟がある方角だよ!」

キール「お前達はポーキーを家まで送ってから賢者を探せ!」

子供AB「分かったよ。ポーキー、行こう。」

ポーキー「うん…。でもキールはどうするの?」

キール「決まってるだろう!アイツを追いかける!」

ポーキー「えっ?でも危ないよ…」

勇者「わたしも一緒に行きます。心配しなくても大丈夫です。ポーキー達は早く賢者さまの所に行って下さい!」

子供A「さぁ、ポーキー、早く!」

ポーキー「うん…。」



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オークの混血児 3

はぁ、勇者のバカを探しに町に戻るか。ん、誰か来るな。あれは町の子供達だな。ポーキーも一緒だ。どういう事だ。勇者と一緒じゃ無かったのか?

 

子供A「あっ、賢者様いた!」

矢内「どうした?お前ら。」

子供B「大変なんだよ!俺達の仲間が人攫いに攫われたんだよ!それで」

矢内「ちょっと落ち着いて順序よく話せ。まず何でポーキーがお前らと一緒に居る?勇者の奴はどうした?」

子供A「えっと、僕達は原っぱの方で遊んでたんだ。そしたらキール達に会ってポーキーを新しい仲間だって紹介されたんだ。」

子供B「そう、俺達始めは驚いたけどこうして話してみるとキールの言う通り種族が違うだけで俺達と変わりは無いって事が分かって俺達はポーキーに今までの事を謝ったんだ。」

矢内「それはお前らキールに言われたから謝ったのか?」

ポーキー「賢者様、わたしは」

矢内「ポーキー、これは大事な事だ。お前は優しい子だからコイツらを許してるかもしれないが、言われて謝るのと心から謝るのは全然違うんだ。」

子供A「言われたからとかじゃ無いよ!これからポーキーと仲良くしたいから謝ったんだよ!」

子供B「そうだ!この皮っ被り!種族が違う事よりお前の方が差別される存在じゃないか!」

 

このガキ!顔以外全て痣が出来るまでぶん殴ってやろうか!

 

ポーキー「わたしと仲良くしたいって言ってくれて本当に嬉しい!これも賢者様のおかげだね。ありがとう。」

 

殴るタイミングを失った。クソッ!

 

矢内「まぁ、お前達は心から反省している事は分かった。事の続きを聞かせてくれ。」

子供A「僕達三人だったけど一人の子は納得してくれなくて大人達に僕達がポーキーと仲良くする事を言いつけるって言って行っちゃったんだ。」

子供B「アイツが一人になった所を人攫いに狙われて洞窟の方に連れて行かれたんだ。」

ポーキー「それでキールは人攫いを追いかけるって言って勇者と一緒に洞窟の方に行ったんだ。」

矢内「分かった。お前達は町の大人達に知らせてくれ。俺は勇者達を追いかける!」

子供AB「分かったよ。賢者様気をつけてね。」タッタッタッタッ

ポーキー「賢者様、わたしも勇者の所に連れて行って。お願いします。」

矢内「ダメだ!洞窟には魔物が居るって聞いた。危険だ。」

ポーキー「でも、勇者やキールが危ない目にあってるかも知れないのにわたしだけお家に居るのはやだよ。」

 

これは言っても聞きそうにないな。

 

矢内「分かった。そこまで言うのなら連れて行ってやる。何があっても自己責任だぞ。」

ポーキー「うん。ありがとう賢者様。」

矢内「さぁ、急ごう。」

ポーキー「勇者達、大丈夫かなぁ…攫われた子達無事だといいんだけど。」

矢内「ポーキー、そういうネガティブな気持ちになっちゃいけない。足取りが重くなる。そうだ!子供達を無事に助けたらみんなでパーティーをしよう!」

ポーキー「パーティー?パーティーって何をするの?」

矢内「パーティーは楽しいぞ。みんなで飯食ってわいわい騒いで、とにかく楽しい!」

ポーキー「ご飯ならお昼に4人でたべたけどアレもパーティーなの?」

矢内「違う違う、もっとそうだなぁ、町の子供達とオークの村の子供達みんな呼んで仲良くやるお祭りみたいな感じだ。楽しみだろう?」

ポーキー「そうなんだ、でもわたしみんなと仲良くなれるのかなぁ…」

矢内「なれるさ。心配しなくても大丈夫、ポーキーは今日だけで勇者やキール達と友達になれたんだ。そうだろ?」

ポーキー「うん…そうかな?」

矢内「そうさ、さぁ早く俺達も人攫いを追わないと子供達がどこかに遠くに連れて行かれたらパーティー所じゃ無くなるからな。」

ポーキー「分かったよ。洞窟はこっちだよ。」

 

そうして俺は少し元気を取り戻したポーキーと共に勇者を追って洞窟の方に向かった。やっぱり子供は元気なのが一番だ。上手く行くとポーキーはもうイジメられたりしないだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

キールと一緒に人攫いを追うと洞窟の前までたどり着きました。ん、洞窟の前に誰か居ますね。オークの子供ですね。こっちにやってきました。

 

オークの子供「お前達!攫った俺の仲間を返せ!」

キール「何言ってるんだ!お前こそここに居るってことはあの人攫いの仲間だろう!」

オークの子供「何だと!俺は今この洞窟を見つけ出したんだ。お前達こそ何でここに居るんだ。」

勇者「わたし達はキールの友達を連れて行く人攫いを追いかけて此処に着いたのです。」

オークの子供「こっちに人攫いが来たのか?俺はそっちの方向から来たんだが見なかったぞ。」

キール「じゃあ、この洞窟に入って行ったんだよ。行こうぜ。お前も来いよ。」

勇者「お前も友達を助ける為に来たのですよね。わたし達と一緒に行きましょう!」

オークの子供「何言ってるんだ。お前達は人間で俺はオークだぞ。」

勇者「えっ、それが何か関係あるのですか?」

キール「下らねえこと気にしてるんじゃねぇよ。仲間を助けようとする思いは一緒じゃないか。俺はキール、町の子供達のリーダーだ。よろしくな。」

オークの子供「俺はエースだ。一応、村の子供達のリーダーやってる。」

勇者「エースですね。わたしは一国の勇者です。では一緒に子供達を助けに行きましょう!」

エース「分かった。お前達、変わってるよな。ん、向こうから誰か来るぞ。」

勇者「あっ、賢者さま!賢者さまが来ました!」

キール「ホントだ。アイツ何でポーキーも連れて来たんだ!」

エース「賢者って誰だ?」

勇者「今こっちに来てる方が賢者さまです。隣に居るがポーキーです。」

キール「賢者は大人の癖に未だにチンコの皮が被っているかわいそうな奴なんだ。それに比べたら種族が違う事なんて下らない事だろ?」

エース「ハハハ、確かにそうだな。それを聞いたら町の人間といがみ合っているのが下らないな。アイツが賢者か。」

マテ、ユウシャ、カッテニイクナ!ボケー!

 

 

 

 

 

 

やっと洞窟にたどり着いたな。勇者達が中に入ろうとしている。中には魔物が居るって話だ。急いで止めないと!

 

矢内「待て、勇者!勝手に行くな!ボケー!」

勇者「あっ、賢者さま〜!ポーキー!」ブンブン

 

おっ、こっちに気がついたみたいだ。勇者が手を振っている。一人知らない奴がいるな。オークのガキか?

 

キール「オイ、皮っ被り!何でポーキーを連れて来たんだ!ポーキーは女の子だぞ!」

矢内「黙れーーー!!」ボカ!

 

先手必勝で頭を殴ってやったぜ。大人を舐めるからだ。

 

キール「いって〜!クソッ!殴ることないだろ!」

エース「なぁ、キール。コイツが本当に賢者なのか。賢そうには見えないぞ。」ヒソヒソ

矢内「所でお前は何物だ?人攫いから逃げて来たのか?」

勇者「エースは村の友達を助ける為にここまで来たのです。わたし達と一緒に子供達を助ける仲間ですよ。」

矢内「そうか、おい!エースコックの豚!キールのように殴られたくなかったらあまり俺に無礼な口の聞き方はしないことだな!」

エース「なんだコイツ。いきなり何でそんな言われ方されなきゃならないんだ!この皮っ被りめ!」

勇者「エース、ダメですよ。賢者さまはチンコの皮が被っていても凄い人なんですからそんな言い方してはいけません。」

 

ボカ!ボカ!ボカ!

 

勇者「痛いです。」

エース「クソッ本当に殴ってきやがった!」

キール「俺は今何も言ってないだろ!」

ポーキー「賢者様、もう止めて。みんな悪気がある訳じゃないよ。賢者様が居なくて少し心細かったから悪態をついただけだと思うな。」

矢内「そうかそうか、俺が居なくて寂しかったのか。やっぱり俺が居ないと何にも出来ないガキ共だからな、お前達は。ハハハハハハ!」

キール「そうそう、やっぱり賢者様だよな!(相変わらずおだてに弱い)」

矢内「そうだろう!そうだろう!ハハハハハハ!」

勇者「では、気を取り直して、洞窟の中に入って行きましょう!」

エース「大丈夫かよ。不安だ。」

矢内「何か言ったか?エースコックの豚!」

エース「いや、よく見ると賢者様は格好いいなぁって。」

矢内「お前なかなか分かっているじゃないか!ハハハハハハ!」

エース キール「チョロいな。この人。」

 

洞窟の中に入った。携帯電話のライトを照らしながら奥に進む。

 

矢内「洞窟の中は魔物が居るって話だ。お前ら、気を付けて行けよ。」

勇者「賢者さま、魔物ってあれですか?」

 

勇者が指を指す方向には狼が一匹いた。今にも襲いかかって来そうだ。

 

矢内「よし、エースコックの豚を生贄にあの魔物に差し出してここは通して貰おう。」

エース「何言い出すんだ、コイツ。ふざけるな!」

ポーキー「あっ!待って、あれ前に雨宿りにここに来た時に折り紙で作ったやつだ。魔物じゃないよ。」

キール「あれが折り紙?まるで生きてるみたいだ。」

矢内「ハハハ、なんだお前ら、こんな紙切れにビビってたのか、情けない奴らだ。ハハハハハハ!」

エース「お前が一番ビビっていたじゃないか!」

勇者「この折り紙を作ったって事はポーキーはここの洞窟に入った事があるのですね。奥はどうなっているか分かるのですか?」

ポーキー「この先はしばらく行くと行き止まりで何もないよ。」

 

行き止まりか、そこに子供達が捕まっているな。多分、人攫いも居るだろう。

 

矢内「なぁ、ポーキー。折り紙で今何か作れるか?」

ポーキー「うん、折り紙はいつも持っているから何でも出来るよ。」

矢内「じゃあ、洞窟を塞ぐぐらいのデッカいドラゴンなんか出来るか?」

キール「何言ってるんだ。出来る訳ないだろ、バカじゃねぇの!」

ポーキー「少し時間かかるけど出来るよ。」

矢内「今から作ってくれるか?」

ポーキー「分かった。でもこんなの何か役に立つの?」

矢内「あぁ、ポーキーが作っている間に俺達は先に行こうか。あとキール、次俺の事バカにしたら承知しないぞ!」

エース「人の事は散々言うのに…」ヒソヒソ

キール「勇者は何でこんなのと一緒にいるんだろう?」ヒソヒソ

矢内「まあいい、相手は一人とは限らない。気をつけて行くぞ。忍び足で。」

勇者「分かりました賢者さま!」

矢内「声が大きい、ボケー!」ガン

勇者「頭叩かないでください、痛いです…」

 

洞窟に入って結構たつな。そろそろ行き止まりに差し掛かる。気を引き締めて行かないとな。少し明るくなってきた。この先に居るな。

 

矢内「よし、この先に人攫いは居る。あそこの岩に隠れて様子を見るぞ。」

 

明かりの方を見るとロープで縛られた人間の子供が三人、オークの子供が三人、数はさっき攫われた奴合わせてとあっている。口元も喋れないようにされてる。相手は一人か。

 

キール「アイツが人攫いだ。仲間が捕まっている。」

矢内「待て、今飛び出すな。俺達がアイツの気を引きつける。お前とエースで隙を見て子供達のロープを外すんだ。出来るな?」

エース「分かった。賢者も気をつけろよ。」

キール「危険じゃねぇのか?」

矢内「危険だから大人の俺がやるんだ。もしかしたらそのまま勝てるかもしれないしな。」

エース「もしかしたらとか言うなよ。不安になるじゃないか。」

矢内「よし、今か…」

勇者「あなたですね!子供達に酷いことをするのは!」

 

何勝手に出て行ってやがる!作戦立ててる途中だろうが!

 

人攫い「誰だ!お前達はさっきのガキ共だな。わざわざ来るとはバカな奴らめ!お前達も捕まえてくれるわ!」

勇者「わたしは勇者です!あなた様な人には負けません!」

人攫い「おいガキ!その斧でどうする気だ?こっちには人質が居るのだぞ?」

 

コイツ、子供達にナイフを突き付けてやがる。あのナイフをなんとかしないと。

 

矢内「なぁ、あんたいいナイフ持っているな。ちょっと見せてくれよ。」

人攫い「おっ、お前見る目あるな。ちょっとだけなら見せてやるよ。」

 

コイツ、バカだ!自分の武器を敵に渡すなんて!

 

矢内「おおう、これはよく研いでいるいいナイフだ。」ポーイ

人攫い「あっちに投げるな!それ1つしか持ってないのだぞ!返せよ!」

勇者「はいどうぞ。お返しします。」

 

何拾って来てるんだコイツ。返してるんじゃねぇよ!

 

矢内「いやぁ、スマン、スマン。ウッカリ手が滑ってよく見れなかった。もう一度見せてくれないか?」

人攫い「しょうがないな。もう一度だけだぞ。」

エース「アイツ、またナイフ渡してるぞ。」ヒソヒソ

キール「また捨てられるだけなのにバカだよな。」ヒソヒソ

矢内「すまんな。こいつは素材も素晴らしい!本当にいい物だ。」ポーイ

人攫い「何でそっちに投げるのだよ!一本しか持ってないって言ってるだろうが!取って来いよ!」

勇者「ちょっと待って下さいね。」タッタッタッ

 

何でまた取りに行くんだ。せっかくのチャンスを無駄にしやがって。

 

勇者「あっ、ポーキー、そのあたりにナイフ落ちていませんでした?」

ポーキー「さっき飛んできたこれ?勇者のもの?」

勇者「いえ、人攫いの物を賢者さまが投げたのです。返せって言われたので取りに来たのです。」

ポーキー(返したらダメだよね、そうだ!)

ポーキー「そうなんだ。ちょっと待って、うーん、出来た!はい。これを渡して。」

勇者「ありがとうございます。今から返して来ます。」タッタッタッタッ

勇者「お待たせしました。お返しします。」

 

だから返すな!

 

矢内「なぁ、スマンがもう一度だけで良いから見せてくれないか?」

人攫い「お前またあっちに投げるつもりだろうが!二度と渡すか!」

キール「やっぱり3度目はなかったか。」

ポーキー「キール、エース、これでみんなのロープを切ってあげて。」ヒソヒソ

エース「これ、アイツのナイフじゃないか。どうして?」ヒソヒソ

ポーキー「人攫いが今持っているのは折り紙で作った偽物なの。」ヒソヒソ

人攫い「お前ら!何ヒソヒソ喋ってやがる!この俺をバカにしやがって!このナイフで切り刻んでやるから覚悟しろ!見ろ!このナイフ捌き!」シュシュシュシュ

キール「アイツもしかして、今得意げに折り紙振り回しているの?バカ過ぎる。」ヒソヒソ

矢内「クソッ、俺がアイツを引きつける!お前達は下がれ!」

矢内「ポーキー良くやった。後、キールにエース、バレるから絶対笑うなよ。堪えろ。俺も我慢してるんだwww」ヒソヒソ

エース「いやいや、絶対無理だろ。アイツ、バカ過ぎるだろwww」ヒソヒソ

人攫い「何がそんなに可笑しい!お前から切り刻んでやる!」

 

向かってきやがった!折り紙のナイフを持ってww当たっても痛いも無いが精一杯よけるか。

 

矢内「オワ!危ねぇ!」

人攫い「良く今の一撃がかわせたな、だが、ちゅぎはどうかな?」シュシュシュシュ

 

カッコつけながら噛みやがったww折り紙を振り回しながら。クソッ、笑いを堪えろww

 

エース「今のうちだ。みんなを助けるぞ!キール。」

キール「クスクス、分かった、行こう。」

エース「笑ったらダメだろ。ww」タッタッタッ

キール「いや、無理だろ。あそこで噛むかww」タッタッタッタッ

 

よし、キール達がやっと捕まっているガキ共を助けに行った。さて、このバカな人攫いをどうしようか。

 

人攫い「テメエ、よそ見しているじゃねぇ!」シュ

勇者「賢者さま、大丈夫ですか?」

 

しまった!顔に当たってしまった。ナイフが偽物だってばれるがもういいや。ヤケクソだ。

 

矢内「俺の顔が、俺の顔が、…………

切れてナーイ!」

人攫い「どういうことだ、オイ!俺のナイフで切れないなんて。」

 

良かった。ばれてナーイ。このまま騙し続けていける。

 

矢内「俺は賢者様だぞ!そんなチンケなナイフが効く訳無いだろ。今だ勇者!そいつを斧でかち割ってやれ!」

勇者「はい、賢者さま。いきますよ!エーイ!」ブン

人攫い「そんな大振りの攻撃が当たるか!」ヒョイ

人攫い「オイ、ガキ!こっちには人質が居るのだぞ!お前は動くな。」

矢内「人質だと。お前、後ろ振り返ってよく見て見ろマヌケ。」

人攫い「後ろだと、あっいつの間にかガキ共を縛っていたロープが解かれている!」

キール「仲間は返して貰ったぜ、バーカ!」

人攫い「貴様、どうやってロープを解いた。ガキには解けないぐらいキツく縛っていたのに!」

エース「お前のナイフでロープを切ったからな。」

人攫い「何でお前らが俺のナイフを持っている?」

ポーキー「まだ気付かないの?おじさんが持っているの私が折り紙で作った偽物だよ。」

人攫い「俺はまだ27歳だ!おじさんじゃねぇ!お前ら俺のナイフで全員切り刻んでやる!」シュシュシュシュ

 

まだ気付いてないwwwwwもうだめだ!笑いを堪えることが出来ねぇwwww

 

キール「アイツ、まだ折り紙振り回しているwwwww」

エース「wwwwあれ、もうわざとやってるだろうwwww」

勇者「あの人、本当にお馬鹿さんですねぇwwwww」

人攫い「クソー!!何が可笑しいお前ら!」

矢内「お前の持っているナイフ良く調べて見ろwwww」

 

ダメだ腹痛え。

 

人攫い「何、なんじゃこりゃあ!」

 

やっと気付いたwww

 

矢内「もう観念しろ。おとなしく捕まれ。」

人攫い「チクショー!」ダッダッダッダッ

 

逃げたか。

 

エース「なんで逃がした!」

キール「なんで捕まえないんだよ!」

矢内「まぁ少し待てって、アイツは馬鹿だから直ぐ捕まえれる。」ウワードラゴンダー!タスケテクレ-!

矢内「ほらな。」

 

矢内「よし、行くぞお前等!」

 

入り口の方に戻ると腰を抜かしている人攫いとデカいドラゴンが居た。

 

人攫い「た、た、た、助けてくれー!」

 

さて、このバカな奴をもう少し驚かしてやるとするか。

 

矢内(低い声で)「我の名はダース ヤナイ ドラゴン!愚かな人間め、我が住処に何しに来た!」

人攫い「ああああああ………」

勇者「賢者さま、何を言っているのですか?」

エース「直ぐに調子に乗るよな。コイツ。」ヒソヒソ

キール「あぁ。どうしようもない大人だな。」ヒソヒソ

矢内「よし、今の内にさっきガキ共を縛っていたロープでアイツを捕らえろ!」

キール「あぁ、そうか。俺がやるよ。」

 

キールの奴がロープで人攫いを縛っていく。亀甲縛りで。どこで覚えた。

 

キール「いつも親父が縛られているのを見ているからな。大体は分かるよ。」

人攫い「…………。」

 

コイツ、気絶している。

 

矢内「ハハハハハハ!俺の力を思い知ったか!!これにて一件落着!」

エース「ほとんどポーキーのおかげでお前何もしてないだろ。」

矢内「ふっ甘いな。メープルシロップのように考えが甘いぞ、エースコックの豚。俺の華麗な知略で勝利したんだ。」

勇者「流石、賢者さまです!」

ポーキー「これでみんな攫われたりしなくなるね。良かった。」

矢内「ハハハ!そうだろう、そうだろう。ハハハハハハ!」

キール「エース、もうそういうことにしようぜ。」

エース「あぁ、仲間が助けれた事だしもうそれでいいや。」

勇者「では、人攫いは捕まえましたので町長さんの所に行きましょう!」

矢内「いや、待て勇者。」

勇者「どうしてですか?賢者さま。」

矢内「キールにエース、捕まっていた子供達に町と村の人達全員を原っぱに集めるように言ってくれ。」

キール「分かったよ。」

ポーキー「私はどうしたらいいの?」

矢内「ポーキーは俺達と一緒に原っぱに来てもらう。エースとキールも一緒だ。」

エース「俺達も町や村に伝えに行った方がいいだろ。何で原っぱなんかに行くんだ?」

矢内「お前等はみんなを救った英雄じゃないか。原っぱでみんなが集まるのを待っていたらいいんだ。さあ、洞窟を出るぞ。」



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オークの混血児 4

縛り上げた人攫いを運びながらだったので原っぱにたどり着いた時には町の住民とオークの村の住民がみんな集まっていた。まだ気絶している人攫いを起こすとしよう。

 

矢内「よし勇者、コイツにこのラッカーシンナーを股間にぶっかけてやれ。」

勇者「はい、分かりました!」バシャ

人攫い「………ん、お前、何をかけて、あああぁ、熱い!痛い!痛い!あああぁ!」

矢内「みんな集まって貰ったのは他でもない!今、ここら一帯を脅かす人攫いを俺達が捕らえた!」ザワザワ、ザワザワ

町長「賢者様、子供達を助けて頂きありがとうございます。しかし、何故そちらのオーク達は捕らえないのですか?」ドウイウコトダー!ボケー

キール「親父!俺の友達になんて事を言うんだ!」

勇者「そうですよ!ポーキーとエースはわたし達と一緒に人攫いを捕まえた友達なんですよ。」

オークの村長「村の子供達を攫ったのは人間だろうが!ふざけるな!」フザケルナ-!ニンゲンシネー!

エース「待ってくれ村長!人攫いは確かに人間だけどコイツ等は仲間を助ける為に一緒に戦ったんだ!」

町長「キール!何故オークなんかを庇う!賢者様、これはどういうことか説明して頂けますか?」チャントセツメイシロー フザケルナ-!オークドモヲトラエロー!!

村長「おい、人間!賢者とか言ったな!俺達を此処に呼んだ理由を説明しろ!事と次第によってはお前等を八つ裂きにするぞ!」ソウダ!セツメイシロー!ヤツザキニシロー!

 

ヤバい!俺が思った以上にコイツラ仲が悪い。

 

矢内「黙れーーー!」シーン……

矢内「そもそもお前等が種族が違うからと言ってお互いいがみ合っていたからこんなバカな奴に子供達が攫われたりしたんだ。」バシャ

人攫い「あああぁ!また俺の股間に何かかけやがって、あああぁ!痛ぇーあああぁ!」

 

そのままチンコを火傷しろ。

 

矢内「俺達は人間のキールにオークのエース、そしてオークと人間のクソ女の混血児のポーキーの活躍で事件を解決したんだ!」ザワザワ、ザワザワ。

矢内「それをだ。オークだから捕まえろだと!ドMの町長!俺の仲間を捕まえようとするならコイツと同じ目に遭わすぞ!」バシャ

町長「まだ私は何も……あああぁ!熱!熱!あああぁ!あっでも気持ちいぃ♪」

 

コイツ、真性のドMだ。

 

キール「親父に何するんだ!」

矢内「いや、でも気持ち良さそうにしてるぞ。」

町長「あぁ♪この痛さ、いい♪」ゴロゴロ

村長「おい賢者、その液体を股間にかけると地面を転げ回る程に気持ち良いのか?」

 

変な所に食い付いて来やがった。気持ち良いわけ無いだろ!下手したら一生涯チンコが使い物にならんわ!

 

エース「村長!駄目だ!あれはキールの親父が変態なだけなんだ!絶対駄目だ!」

勇者「分かりました。じゃあかけますね。」バシャ

村長「おぉ、これが………あああぁ!熱、熱い!あああぁ!痛い、痛い、痛い、痛い!」ゴロゴロ

 

なんだコレ。町と村の代表が股間を抑えて転げ回っている。地獄絵図だ。

 

村長「あっでも、痛いのが良い♪」ゴロゴロ

 

コイツもドMだ。どうしようか、この状況。勢いで誤魔化そう。

 

矢内「見ろ!今、お前達の代表2人が分かり合えた瞬間だ!これを記念して明日の昼、お互いをもっと知る為ここでパーティーを行おうと思う。皆また明日に集まって欲しい!」ザワザワ、ザワザワ。パーティーダッテ?ナニヲスルンダロウ?

町長「そんな事より賢者様、さっきの液体をもう一度かけて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

村長「あっちの人攫いは二回もかけて貰っているのに不公平だ!私達にももう一度かけてくれ!この通りだ、頼む。」

 

このドM共、何を言い出す!もう無視して明日の段取りを考えよう。

 

矢内「では、今日は解散!みんな明日は楽しみにしていてくれ。」

 

みんなとりあえずは揉めることなく帰って行った。

 

 

 

 

取り合えず借りている空き家に戻ってきた。

勢いでパーティーなんて言ったがどうしようか。

 

勇者「賢者様、明日は楽しみですねぇ。」

 

料理ぐらいしか思いつかない。ビュッフェ式の料理にするか。

ガチャ、ドアが開いて誰か入って来た。町の子供達か。

 

キール「賢者、パーティーって何をするんだ?」

子供A「僕達も何か手伝わせてよ。」

矢内「おーキール達か。そうだな、手伝ってくれるか。」

 

ガチャ、またドアが開いた。今度は誰だ?

 

ポーキー「賢者様、約束通りパーティーするんだね。」

エース「賢者は口先だけだからな、俺達も手伝いに来てやったんだ。」

矢内「何か引っかかる言い方だがまぁ手伝ってくれるのはありがたい。」

矢内「キール、昼に持って来てくれたバケットは明日の朝に大量に持ってこれるか?」

キール「町の人達に今からお願いしたら多分作れると思う。」

矢内「そうか、じゃあお願い出来るか?後、大きな皿もたくさん用意してくれ。」

エース「俺は何をしたらいい?」

矢内「そうだな、料理を置く大きいテーブルがたくさんいるな。」

エース「分かった。村の仲間を集めて運んどく。任しておけよ。」

矢内「頼むぞ。」

ポーキー「ねぇ、私は何か手伝える事無い?」

矢内「うーん、そうだな。じゃあ勇者と一緒にパーティー会場になる原っぱをみんなが来てくれるように折り紙で飾り付けしてくれるか?」

ポーキー「うん!私がんばるよ!」ガチャ、タッタッタッタッ

矢内「勇者、何している。友達のポーキーを手伝ってやれ。」

勇者「はい!賢者さま、行って来ます。」ガチャ、タッタッタッタッ

キール「じゃあ俺達もいくか!」ガチャ、タッタッタッタッ

 

みんな行ったか。子供達が一致団結しているんだ。大人達も意地を張っている場合じゃなくなるよな。俺も気合を入れるか。

 

 

 

次の日

 

 

 

勇者「賢者さま、おはようございます。」

矢内「勇者、後36時間ぐらい寝かせてくれ。」

キール「賢者、何言っているんだよ。さっさと起きろよ!」

矢内「あー、キールかぁ…すまんが後12時間ぐらい寝たら起きるから。」

ポーキー「12時間も寝たらパーティーの時間終わってしまうよ〜。」

エース「コイツ、本当に駄目な大人だな。いい加減起きろよ!」

勇者「賢者さま〜。みんなもう来てるのですから起きましょうよ〜。」

矢内「あああああ!分かった、分かった!起きるから、起きるから!」

エース「やっと起きたか、駄目人間め!」

矢内「さっきから黙って聞いていたら俺の事悪く言いやがって、それよりお前達、どうして此処に?」

キール「どうしてじゃねぇよ!お前が町の人達にバケットを作ってくれって言ったから持って来たんだろうが!まだ寝ぼけているのか!」

矢内「いや、ずっと起きているぞ。」

エース「バレバレのウソを吐くなよ!さっきまで寝てただろ!」

矢内「そんな事よりもバケットを持って来てくれたか。よし!これでパーティー用の料理が作れる。みんな手伝ってくれ。」

ポーキー「私、お料理なんて作ったこと無いよ。大丈夫かな?」

矢内「簡単な事だから大丈夫さ。じゃあキールとエースはバケットをこれぐらいにスライスしてくれ。ポーキーと勇者は俺が作った具材をスライスしたバケットにこんな感じに盛り付けしてくれ。」

キール「この量全部か?めちゃくちゃあるぞ。」

矢内「あぁ、時間が無いからスピーディーに頼む。」

エース「時間が無いのはお前がダラダラ寝てたからじゃねぇか!」

矢内「口を動かす前に手を動かしくれ。よし、一品できた。これをバケットの上に盛り付けてくれ。後10種類以上は作るから。」

勇者「そんなにですか?」

矢内「あぁ、たくさんの人が来るんだ。いろんな種類がある方が楽しめるだろ?よし、これで2品目だ。更にペースを上げるから急げよ。」

勇者「はい、賢者さま!わたし達も頑張りましょう。」

 

そうして俺達はパーティー用の料理を作っていった。

 

 

 

料理もなんとか作り終えてパーティー開場である原っぱにやってきた。

何だかんだで町の子供達と村の子供達みんなが手伝ってくれたのでそれなりに形にはなった。町長と村長がこっちにやってきたな。

 

町長「賢者様、わざわざこのようなパーティーを開いて頂きありがとうございます。それで、此方はうちの町で作っている焼酎でございます。此方をパーティーでお使い下さい。」

村長「いや、そちらよりもうちの村で採れたブルーベリーの果実酒をパーティーではお使い下さい。」

矢内「ありがたい。せっかく持って来てくれたんだ。パーティーの乾杯では両方用意する。」

村長「いや、それでは困る!我々はどっちの酒が優れているか勝負していますので、そして勝った方が昨日かけて頂いた液体を股間に浴びることになっています。」

 

勝手に俺を巻き込んでくだらない勝負をするな!子供達のドリンクはそうだな、俺がいつも飲んでいるやつにするか。今日は特別だし。そうこうしている内にみんなぞろぞろと集まって来た。乾杯が無いとパーティーは始まらない。急がないと。

 

矢内「町長に村長、すまないがみんなに乾杯用のドリンクを注いでくれ。子供達にはアルコールのないコレを注いでくれ。」

町長「しかし賢者様、我々の勝負はどうすれば…」

 

そんな事知るか。

 

村長「この白い液体は初めて見る物だな。どういう飲み物なのでしょうか?」

矢内「それはな。俺の住んでいる世界の飲み物でな、スコールと言って乾杯って意味を持ったジュースだ。この世で一番旨い飲み物だ。」

町長「この素晴らしい料理だけでなくその様な物を我々の為に用意して頂けるなんて。」

矢内「パーティーなんだ。気にするな。みんな集まって来たんだ。先ずは乾杯にしよう。」

町長 村長「賢者様、それではお願いします。」

 

はぃぃぃぃい!俺が乾杯の音頭をとるのか?しまった!考えてなかった。こういうスピーチ的な事は得意ではないからな。みんな俺に注目している。仕方ない、腹をくくろう。

 

矢内「みんな!今日は良く来てくれた!今、子供達が人攫いに攫われる事件は皆の協力で俺達が無事に解決した!しかし!普段からお互いにちゃんと交流があればこんなことには成らなかった!」ザワザワ、ザワザワ。

矢内「この料理は子供達がみんなで協力して作った物だ!子供達に出来たんだ!大人達もこれからはお互い協力していける筈だ!」

 

俺はグラスを手に持ち高々と上げた。オークも人間も同じようにグラスを手に持ち高々と上げた。オーク達のグラスは町の焼酎を人間達のグラスは村の果実酒が注がれている。ちなみに俺のグラスに注がれているのはやはりスコールだ。

 

矢内「これからは2つの町と村の交流していくことを祈って!スコール!」スコール!

 

そしてパーティーは始まった。

 

町長「賢者様、今日は本当にありがとうございます。」

村長「素晴らしいスピーチでした。では、こちらの果実酒を一杯どうぞ。」

町長「いや、こちらの焼酎を先にどうぞ。」

矢内「分かった、分かった。順番にいただくからグラスを両方貰うぞ。俺はみんなを見てくる。」

 

さてと、勇者やポーキー達は何処だ?ちょっと探して回るか。

 

ポーキーの父親「賢者様!おかげで娘にも友達が出来た。ありがとう。」

矢内「たまたまだ。元々優しい子だから俺達に会わなくてもきっと友達も出来ていたさ。」

ポーキーの母親「賢者様、昨日貴族の私の事クソ女って言ったでしょう!何で昔のあだ名知っているのよ!もう!」

 

コイツまだ自分の事貴族とか言っているのか?ってかみんなお前の事をクソ女だって思っていたんだな。

 

矢内「お前が喋るとポーキーがイジメられるからもう喋るな!」

ポーキーの母親「何それー♪ヒッドーイ♪焼酎もう一杯貰いに行こうっと。」

ポーキーの父親「あぁ、まだ飲むのか。全く。」

矢内「まぁなんだ。せっかく機会だ。楽しんでいたらいいさ。」ケンジャサマー!ケンジャー!

矢内「おっ、子供達が呼んでいるな。そろそろ行かせてもらうよ。」ケンジャサマー!コッチデスヨー

ポーキーの父親「あぁ、俺も賢者様の作った料理をもう少しいただきに行こうかな。最後にもう一度お礼を言わせてくれ。本当にありがとう。」

 

みんな心のそこから楽しんでいるな。いろんな所で笑い声が聞こえる。

 

オークの女性「賢者様〜!家の子供を助けてくれてありがとう〜!料理も最高よ〜!」

人間の男性「賢者様〜!素敵なパーティーを開いてくれてありがとう〜!」

人間の女性「この料理の作り方教えて〜!」

 

本当に楽しそうだ。子供達はこっちだな。行くか。

 

キール「賢者!探したぞ。みんな待っていたんだぞ。」

子供A「賢者様、みんなを助けてくれてありがとう。」

エース「賢者、この料理スゲー旨いな!いろんな種類があるから全然飽きない!」

勇者「エースは食いしん坊さんですねぇ。」ハハハハハハ!

子供B「エースじゃないけど本当に美味しいよな。」

オークの女の子「私はこのシュワッてした飲み物が一番好きだな。」

矢内「それは俺の住んでいる世界で一番旨い飲み物だからな。」

人間の女の子「そうなんだ。でも私はこの青いジャムのかかったバケットが一番おいしかったよ。」

矢内「青いジャム?俺は作っていないぞ。」

ポーキー「あっそれは私が賢者様に内緒で作ったやつだ。」

オークの男の子「あっ俺もそれ食べた!ブルーベリーだろ?」

矢内「ブルーベリーのジャムか。考えてたなポーキー。これは美味いな。いい味だ。」

ポーキー「えへへ、そうかな?」

勇者「賢者さま、実はわたしも賢者さまに内緒で作ったやつがあるのですよ。」

矢内「へー、そうか。見せてくれるか?」

勇者「分かりました。持って来ますね。」タッタッタッタッ

 

わざわざ取りに行ったのか。ん?あのガキは一番口の悪かった奴じゃないか。なんであんな所に独りで居るんだ?行って見るか。

 

子供C「…………。」

矢内「どうした?お前、そんな所に独りでいて。みんなの所に行かないのか?」

子供C「……賢者様。俺はアイツを一番イジメていたんだ。それにアイツと仲良くしようとしたキール達を大人達にいいつけようとして、今更、どの面下げて行ったら良いのだよ。無理だよ。」

矢内「意地張ってバカな奴だな。ちゃんと謝れば良いだけだろ?せっかくのパーティーなんだ。独りでいても面白く無いだろ?行って来い。」

子供C「……でも」

矢内「でもじゃねぇ!謝りに行くぞ。俺も一緒行くから腹くくれ!」

子供C「分かったよ。分かったから引っ張らないでくれよ!」

 

そして俺は独りでいた子供をキール達の所に連れて行った。

 

キール「あっお前今までどこに居たんだ?お前待ちだったんだぞ!」

子供C「あっ…。」

矢内「ほら。お前が後少し勇気を出したらいいだけのことなんだ。」

子供C「………ポーキー。」

ポーキー「ん?何?」

子供C「今まで酷いことしてゴメン。許して貰えないかも知れないけど謝りに来たんだ。じゃあ俺は行くよ。」

ポーキー「待って!君まだ何もお料理食べて無いよね。私遠くから見てたから知ってるよ。これ良かったら食べて。私の家で作ったブルーベリージャムのスモーブロだよ。賢者様も美味しいって言ってくれたんだ。」

子供C「どうして俺なんかに優しくしてくれるんだ!お前の事イジメていたのに……それにお前と仲良くしようとするキール達の事まで悪く言って…」

ポーキー「うん…。でも、独りでずっと居るのは辛いことだよ。私はもう気にしていないから。」

キール「ポーキーが気にしていないって言っているだ。お前も気にするな!」

子供C「………でも俺、キール達にも……。」

キール「だから気にするなって言ってるだろ!」

エース「お前だな。人攫いの奴に最後に攫われた奴は。」

子供C「うん…。」

エース「攫われた奴らから聞いた。お前、捕まっていてもずっと人攫いに抵抗して居たんだってな。」

子供C「俺はアイツの悪口言っていただけで何も出来なかったよ。勇者達がお前なんか直ぐにやっつけるぞって言っただけで……。」

エース「悪い奴に捕まっていた状態でそんな事なかなか出来やしない。他の捕まっていた奴らにお前の行動が勇気を与えてくれたんだ。きっと助けが来てくれるってな。」

キール「そうなのか?お前なかなかやるじゃねぇか!」

子供C「でも、結局勇者や賢者様を頼っていただけで……。」

エース「いや、それでもこの町と村の子供達のリーダーとして礼を言わせてくれ。仲間達を勇気付けてくれて、ありがとう。」

子供C「俺の方こそ助けてくれてありがとう。そして、キール、ポーキー本当にゴメン!」ポロポロ

矢内「今日、少しの勇気を出して良かったな。みんな許してくれたんだ。これからは種族とか気にせず仲良くしろよ。」ポン

 

俺は口の悪かったガキの肩に軽く手を置いた。

 

子供C「賢者様も本当にありがとう。」ポロポロ

矢内「気にするな…。それよりせっかくのパーティーなんだ。もう泣くな。精一杯楽しめ。」

子供C「分かった。賢者様本当にありがとう。」

キール「おいエース!さっきお前がみんなのリーダーだなんて言ってたな!」

エース「あぁ、事実だからな。実力的にも。」

キール「ふざけるな!リーダーは俺だ!」

 

一件落着と思ったらコイツ等くだらない争いをし出したぞ。

 

ポーキー「せっかくみんな仲良くなったのにどうして争うの?やめようよ。」

オークの女の子「ほっといても大丈夫だよ。」

人間の女の子「そうね、しょせん男なんてシャボン玉よ。私達は向こうに行きましょう。」

オークの女の子「そうね、向こうのお花畑の所に行きましょうか。でも、ここのお花畑不思議よね、冬でもお花が枯れているところ見たこと無いよね。」

ポーキー「これね、実はこのお花、私が折り紙で作った偽物なんだよ。」

人間の女の子「ウソッ?これ全部?凄い数だよ!」

オークの女の子「これ全部偽物なの?ぱっと見分からないよ!凄いね。」

ポーキー「私、今まで独りでここで遊んでいたから毎日作っていたら凄い数になって……。」

人間の女の子「じゃあ今度は本物のお花畑にしていこうよ!」

オークの女の子「いや、待って!それよりこの原っぱと私達の村と町を繋げる花壇の道を作ろうよ!」

ポーキー「そんな事出来るのかな?」

子供A「出来るよ!面白そうだから僕達も手伝わせてよ!」

オークの男の子「花壇を作るレンガとか運ぶんだ。男の手も必要だろ?」

人間の女の子「あんた達、盗み聞きしてたの?男って本当にいやらしいわね。」

子供B「手伝ってやるって言ってるのにそんな言い方無いだろ!」

子供C「俺も手伝わせて貰っていいかな?」

オークの女の子「いいよ!人攫いに捕まっていた時、君には凄く勇気を貰ったからね。大歓迎だよ!」

ポーキー「うん!一緒に頑張ろう!」

子供C「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。」

人間の女の子「まあいいわ。でもポーキー、男って頭の中はエロい事しか考えてないからあんまり信用ちゃダメよ。」

子供B「お前、一体何なんだよ!」

人間の女の子「でもさっきあなた私のスカートの中しゃがんで覗いたでしょ。」

子供B「覗くか!!被害妄想もいい加減にしろ!!」ハハハハハハ

ポーキー「あれ?キールとエースは?」

子供A「まだあっちで言い争いしてるよ。」

オークの女の子「本当にバカね…。でもあんなにムキになるエースって初めて見るなぁ。」

子供A「キールもだよ。普段は皆のことを気にかけているからかなぁ。二人は似た者どうしなのかもね。」

 

ポーキー、本当に良かったな。たくさんの友達に囲まれて。

 

人攫い「なぁ、昨日から放置しやがって、いい加減ロープ解いてくれよ〜。」

 

コイツ、昨日からずっとここにいたのか?

 

人攫い「昨日から何も食べて無いんだよ!俺にもそのご馳走一口くれよぅ。」ポロポロ

 

大の大人が腹空かして泣いていやがるwwww

 

勇者「賢者さま〜!持って来ましたよ〜!」タッタッタッタッ

矢内「おっ来たな勇者。どんなものを作ったか見せてくれ。」

勇者「見て下さい!これです。」

 

何だと!何でバケットの上に蝉が乗っていやがる!

 

矢内「おい勇者…。何で蝉が乗っている?」

勇者「賢者さま、これはヒグラシとツクツクボウシですよ。」

 

うるせー!蝉の種類なんて聞いているか!

 

勇者「わたしの自信作なんですが誰も食べてくれないのですよ…。パリパリして美味しいのに…。」ウワー、コンナノダレガタベルノダヨ。オマエタベロヨ。イヤダヨー

 

誰が好き好んで虫を喰うか!子供達がドン引きしてる…。どうすんだ、これ。

 

人攫い「おっご馳走を持って来てくれたのか?一口くれよぅ。一口でいいんだ。くれよぅ!」ポロポロ、ポロポロ

 

そうか、こいつが居た!

 

矢内「よし!誰かキールとエースを呼んで来てくれ。」

子供A「分かったよ。すぐ呼んで来るよ。」タッタッタッタッ

勇者「賢者さま〜。わたしの作ったやつ食べて下さいよ〜。」

矢内「まぁ、キール達も直ぐ来るから、」

 

キールにエースは何をしている?早く来てくれ。俺が蝉を食わされる。

キール「賢者、何か用事か?」タッタッタッタッ

エース「俺達はどっちがリーダーにふさわしいか決めている所なんだ。おっ!さっきの料理まだ残っているのか?一つ貰いっと。」パク

勇者「それわたしの自信作なんですよ。」

キール「へー、どれどれ。……なんだよこれ!」

エース「何も見ないで食ったから分からないけどなんかサクサクして結構いけるぞ。お前も食ってみろよ。」

キール「お前!よく見ろよ!それ虫が乗っているんだぞ!人が食うもんじゃねぇよ!」

エース「またまた、そんなわけないじゃ………ぁぁぁぁぁぁぁ!なんだよこれ!誰だ!こんな悪質なイタズラは!食ってしまったじゃねぇか!」

 

よし、一つ減ったな。

 

勇者「え〜。わたしの自信作で美味しいのに……」パク、サクサク

子供B「うわー、勇者の奴あれ普通に食べてるよ…。」

矢内「キールにエースよ。そこに俺達が昨日捕まえた人攫いが腹を空かしている。この勇者の作った料理をより多くたべさせた方がリーダーになると言うのはどうかな?面白い試みだと思うのだが。」

キール「面白そうだな。やるか。」

エース「よし、おいお前!昨日から何も食べて無いんだってな。しょうがないから俺達が食わしてやるよ。」

人攫い「お前たち、なんて良い奴らなんだ。」ボロボロ。

 

また泣いていやがる。これから虫を食わされるのにバカな奴だ。

 

キール「よし、まずは俺からだ。口開けろ。」

人攫い「なんだよこれ?なんかサクサクしているな。」

エース「よし、食ったな。もう一つだ。食え。」

人攫い「なぁ、これバケットの上に乗っているのはなんだ?」サクサク

矢内「ああ、それか。それは蝉だ。」

人攫い「……え?」

勇者「正確にはヒグラシとツクツクボウシですよ。」

人攫い「せ、蝉?虫じゃないか!なんて物を食わせるだよ!」ジタバタ、ジタバタ

エース「賢者、何でばらすんだ!暴れだしたじゃないか!」

矢内「バカだな。嫌がるコイツに食わせるから面白いんじゃないか。コイツへの罰になるし。」

キール「それもそうだな。次は俺が食わせる番だ。口を開けろ!」

人攫い「止めてくれ、反省してるから!止めてくれよぅ!」ポロポロ。

 

また泣いていやがるwwww。面白れえ。

 

矢内「ハハハハハハ!良い見せ物だ!ハハハハハハ!」

勇者「わたしの自信作だったのに……。」

町長「賢者様、此方に居ましたか。実はファンタルジニア城の兵士の方が人攫いを引き取りに来たのですが。」

矢内「ハハハ、コイツをか?」

人攫い「もう許してくれよぅ。虫を食わせないでくれよぅ。」ポロポロ

エース「口を開けろ!食え!」

キール「よし、次は俺の番だ。食え!口を開けろよ。」

兵士「お前たち!何をしている!止めるんだ!」

キール「なんでだよ!元はと言えばコイツが俺達の仲間を攫ったからだろ!」

兵士「我が国ではそのような拷問行為は認められていない!止めろ!」

矢内「まあまあ、子供のした事だ。そう怒るなよ。」

エース「お前がやらせたくせに…。」

兵士「酷い事を……。もう泣かなくても大丈夫だ。」

人攫い「ありがとう。ありがとう。」ポロポロ

 

これから城の牢屋に入れられるのに感謝していやがるwwww。本当にバカな奴だ。

 

矢内「なぁ、コイツを連れて行くと聞いたがここから城は近いのか?」

兵士「はい、町を北に道なりに行くと城下町に着きますので直ぐですね。ところで、あなたは一体?」

矢内「俺か?」

勇者「この方は賢者さまです。人攫いを捕まえたのも賢者さまのお力なんですよ。」

兵士「おお!そうでしたか。」

矢内「まあな。俺は偉大な賢者様だからな。こんな奴は相手にも成らなかったな。ハハハハハハ!」

キール「直ぐに調子に乗る…。」

兵士「我々が調査に来る前に事件を解決して下さるとは本当にかたじけない。」

矢内「そういえば勇者よ。お前、王様に会いに行くって言ってたよな。この兵士に付いて行ったら良いのじゃないか?」

兵士「我が国は王様ではなくて皇帝陛下なのですが。」

勇者「え?そうなのですか?」

兵士「まあ、似たような物ですから気にしないで下さい。私が城下町まで案内致します。」

矢内「城までは案内してくれないのか?」

兵士「はい、一度私はこの人攫いを城に連れて行き事務処理をしますのでお城に案内致しますのは明日に成ります。それでよろしいでしょうか?」

勇者「分かりました。城下町にはわたしの友達のさっちんが居ますから大丈夫です。」

勇者「あれ?賢者さまの方から何か音楽が聞こえてきますよ?」pipipipipipipipipipi

 

ん?俺の携帯からか?なんで電波が入るのだよ。まあいい、とるか。Pi

 

矢内「あーもしもし?矢内です。」

社長『お前、溝にフォークリフトのタイヤはめたまま何日もどこに行ってんねん!』

 

取るんじゃなかった。クソ!

 

矢内「あー社長、今、出張でファンタルジニアです。」

社長『そんなん良いから早く戻って来い!明日、取引先の常務が打ち合わせに来るからその書類作らなあかんねん。』

矢内「いや、しかし、」

社長「急いで戻って来いよ!」ガチャ

 

返事をする前に切られてしまった。しかしどうやって帰ればいいんだ。勇者に聞くか。

 

矢内「なぁ勇者よ、俺は今から元の世界に戻らないと行けなくなった。ゲートを開いてくれ。」

勇者「分かりました。神様にゲートを開いてくれるようにお願いします。」

矢内「ああ、頼む。」

勇者「ゲートが開きました。賢者さま、わたしは先に城下町に行ってます。」

矢内「ああ、達者でな。」

 

ゲートを通るともう会うことも無いだろう。お前は友達のさっちんとやらと皇帝の所に行くといい。

 

キール「賢者、行ってしまうのか?」

矢内「ああ、キール世話になったな。」

エース「賢者、少し待ってくれ。みんなを直ぐに呼ぶから!」タッタッタッタッ

町長「賢者様、いろいろとありがとうございました。お元気で。」マッテ、ケンジャサマー

 

あっちから子供達が走って来る。エースの奴が呼んだのか。

 

ポーキー「賢者様まだ行かないで!私、まだ賢者様にお礼言ってないよ!待って!待ってよ!」タッタッタッタッ

 

ポーキーか。アイツ、初めて会った時は聞こえないぐらい小さな声だったのに……

 

ポーキー「ハァハァ、私、賢者様のおかげでみんなと友達になれたよ。本当にありがとう。私、賢者様のこと絶対忘れないよ…。」ポロポロ、

 

ポーキー、泣いているのか。

 

子供C「俺達、賢者様が来てくれなかったらこうしてオークの子達と仲良く成ることなんてなかった。本当にありがとう。」

子供A「賢者様、みんなを助けてくれてありがとう。」

エース「俺達、絶対お前の事忘れないからな。」

矢内「ああ、お前たち元気でな!ポーキーももう泣くな!またいつかパーティーをしような。」

キール「絶対だぞ!約束だからな。」

 

ゲートを通って会社に戻るか。

賢者様、か。

貴重な体験が出来たな。こうして俺の冒険は幕を閉じた。

やっぱり焼却炉に出口のゲートが繋がっていた。ん?熱っ!誰だ!ゴミに火を付けた奴!ヤバい!服に火がついた!熱い!助けてくれ、誰か!

 

社長「おう、矢内戻って来たか。」

矢内「熱っ!熱っ!社長!見てないで服についた火を消して下さいよ。」ゴロゴロ

 

俺は地面を転がりながら火を消していると社長が何か持って来た。水か?いや違う!

 

社長「ハハハ!矢内これで火を消してやるわ。ハハハハハハ!それ!」バシャー

 

危ない!あれラッカーシンナーだ。

 

社長「クソ!避けやがった!」

 

俺は転がりながらやっと体についた火を消す事が出来た。殺す気か!この禿!

 

社長「まあ、冗談はこれぐらいにして早速明日の書類を作ってくれ。」

矢内「冗談でもやって良い事と悪い事が有るでしょう!!」

社長「お前、これぐらいで怒ってたら関西では生きていけんぞ。」

矢内「はぁ、もう良いですわ。それで明日の書類はどこからすれば良いですか?」

社長「いちからや。頼むぞ!」

 

俺の徹夜が確定した。クソったれ!

 

 

 

 

 

その後、パーティーをした原っぱは町の人間の子供達と村の子供達が矢内の事を忘れないように『賢者の皮っ被り公園』と名前が付けられ子供達に愛される事になるのであった。

 

 

 

第2話

オークの混血児

END



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冒険の仲間達 1

次の日

 

 

睡い……。昨日、俺は取引先の常務が来るので徹夜で書類を作っていた。こんな時はライムが入った愛のスコールブルーソーダーだ。俺の疲れを癒やしてくれる。

 

社長「矢内、もう直ぐ常務来るぞ。ちゃんと書類出来てるんか?」

矢内「なんとか出来ました。」

 

そうしていると一台の車が此方に来た。

 

社長「あの車やな。めんどくさいけどお出迎えに行くぞ。」

 

俺と社長はそうして駐車場まで迎えに行った。あとめんどくさいとか言うなよ。

 

ブロロロロ、ガチャ、

 

 

勇者「賢者さま!」

矢内「」

 

なんでお前が出てくる!

 

常務「矢内ちゃ〜ん、久し振り〜♪やっぱりこの子知り合いか〜。」

社長「矢内、お前どういうことや。」

常務「いや〜、うちの会社から出る前にいきなりこの子現れていろいろ話聞いたら矢内ちゃんの名刺持ってたから此処に連れて来たのよ〜。」

 

余所の会社に迷惑かけるな!クソったれ!

 

矢内「常務、うちの身内が迷惑かけてスミマセンでした。」

常務「良いのよ〜。今日の書類とは別に矢内ちゃん所にやって欲しい仕事もあるし〜。」

社長「常務、立ち話もあれですのでクーラーの効いた会議室でお話を伺います。」

常務「あら〜。今日は暑いから助かるわ〜。」

社長「では、此方へ。」

勇者「賢者さま、実は」

矢内「勇者よ、今は仕事中だから少し待ってろ。打ち合わせが終わったら話を聞く。」

社長「矢内!早くしろ!その子も事務所の中に入れろ!外にいたら熱中症になるやろ!」

矢内「社長、スミマセン。勇者、中で大人しくしろよ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

俺は、常務をクーラーの効いた会議室に案内して次の仕事の打ち合わせを始めた。

 

常務「矢内ちゃ〜ん、書類ありがとね♪」

矢内「いえ、それで常務、次の仕事って言うのは?」

常務「それなんだけど、ゼクス商会って所からの依頼なんだけどね〜。この資料見てくれるかしら。」

 

ゼクス商会?初めて聞く所だ。えっと何々、スターゲート新築設置工事?映画会社からの仕事か!

 

矢内「社長!この仕事引き受けましょう!俺、スターゲートのファンなんです!」

社長「お前、何言ってねん!まだ仕事の内容聞いてへんやろ!アホか!」

 

アホはお前だ、ハゲ!あのスターゲートだぞ。映画のスタッフロールに名前が載るんだぞ!無理してでも受けるだろ!

 

常務「いや〜矢内ちゃんが乗り気で良かったわ〜。納期は無いけど任せたからね〜。」

矢内「はい!喜んで!」

 

そうして常務は帰って行った。

 

社長「はい、喜んで!っとちゃうわ。居酒屋か!何勝手に仕事引き受けてんねん!」

矢内「でも社長、この見積もり見てください。1つ作って六千万の仕事ですよ。全部で十機作ることになるから全部で六億ですよ!」

社長「ちょっと資料見せてみろ。…………こんな簡単な鉄の輪っか作るだけか!よし、直ぐに下請けに作らせる!金額は黙っとけよ。ハリウッド様々やなぁ。ハハハ!ランボルギーニでも買うかな?」

 

凄い仕事だ。こんな簡単な仕事で六億!そしてハリウッド映画のスタッフロールに俺の名前が載る!こうしてはいられない。俺も今からサインの練習をしないと。

 

勇者「あの、賢者さま。」

 

あぁ、居たのか。あまりの事で忘れていた。

 

勇者「賢者さま。実は今日、皇帝陛下の所に行くのですがさっちんに一緒に行くのを断られてしまいまして……。」

矢内「で、何しに来たのだ。」

勇者「さっちんにわたし達と一緒に来てもらうように説得して欲しいのです。」

 

わたし達だと!勝手に俺をメンバーに入れるな!せめて休みの日に来い。後、昨日感傷に浸っていた時間を返せ!

 

勇者「では賢者さま、さっちんのお家に行きましょう!」

 

クソっ、諦めろってことか。ダメ元で社長に言っておくか。

 

矢内「社長、ちょっとファンタルジニアまで行ってきますわ。帰りは直帰しますので。」

社長「おぅ、行ってこい。行ってこい。」

 

ランボルギーニのカタログ見ながら返事している…。買う気満々だな。

 

勇者「賢者さま、早く行きましょう。」

矢内「勇者よ、少し買い出しをしてから行こう。」

 

町で買い出しをしてから会社に戻ってきた。

 

勇者「賢者さま、早く行きましょう。こっちです。」

 

こっち?焼却炉じゃないのか?あれはマンホールだな。今日はあれがゲートか?あっ、野良猫がゲートに落ちて消えた。

 

勇者「早く行きましょう。ゲートが閉まってします。」

 

そして俺はまたファンタルジニアに行く事になった。

 

 

 

 

俺と勇者はマンホールのゲートを通りさっちんとやらの家に着いた。気持ち悪い、酔った。寝不足のせいもあって今にも吐きそうだ。

 

さっちん「ちょっと何?この猫、どこから入って来たの?あっち行ってよ!」

勇者「さっちん!」

さっちん「あら?ゆうりん、また来たの?それよりこの猫追い出してくれるかしら?私、猫苦手なのよ。それにその人は誰かしら?」

矢内「俺か?俺はみんなが大好き賢者さ、オェーーー。オェーー!」ビチャビチャ

さっちん「ちょ!ちょっと!」

矢内「オェーーー!オェーーー」ビチャビチャビチャ

さっちん「何いきなり部屋のベットの上でゲロ吐くのよ!この人なんなの!有り得ないわ!」

勇者「この方が賢者さまですよ!さぁさっちんも一緒にお城へ行きましょう!」

さっちん「さっきも言ったけど嫌よ。だって動くのめんどくさいわ。ああ、その猫早く追い出して!部屋でオシッコしないで。」

矢内「こんだけ汚れたら猫が小便しても一緒だろう。ハハハ!」

さっちん「何を笑っているの?一番部屋を汚したあなたが言わないで!いい加減にしてよ!もうみんな部屋から出て行って!!お母さん!この人達を早く追い出して!!」

さっちんの母親「貴女も一緒に出て行きなさい!!」

勇者「あっ、さっちんのお母さん、こんにちは!」

さっちんの母親「あら?ゆうりん、こんにちは。いつも遊びに来てくれてありがとうね。」

さっちんの母親「サチ!貴女、毎日部屋に引きこもっているくせにこんなにも部屋を汚して!!」

サチ「汚したのはこの男で………。」

サチの母親「こんな訳の分からない男を連れ込んで、おまけにろくに面倒も見ない癖に勝手に猫なんて飼って!!」

サチ「あの、この猫はさっき勝手に部屋に出て来て……」

サチの母親「言い訳ばっかりね。もう出て行きなさい。これ以上穀潰しを家には置けないわ。ゆうりん、この子を連れて行ってくれるかしら。」

勇者「あ、はい。分かりました…。」

 

バタン、そして俺達はこのサチとか言う奴の家を叩き出された。

 

サチ「そんな、家に結界が貼られている……。家に入れないわ……。」

矢内「ハハハ!災難だったなぁ。」

サチ「あなたのせいじゃない!」

勇者「では、気を取り直してお城に行きましょう!」

 

そして俺達はファンタルジニアの城に向かった。

 

矢内「所で皇帝陛下ってどんな人なんだ?」

勇者「えっ?」

 

お前、知らないのかよ!

 

サチ「昔見た事あるけど凄く醜い顔した男よ。思い出しただけで吐き気がするわ…。」

 

失礼な事を言う奴だな。それにその服ゴスロリってやつか、動きにくいだろ。

 

矢内「えっと、お前…。」

サチ「サチよ。三神サチ。」

 

異世界なのに名前が和風なんだな。

 

矢内「そうか。サチよ、その服動きにくくないか?」

サチ「あなたこそその薄汚れた服でお城に行くつもりかしら?」

 

この女、口が悪いな…。

 

矢内「勇者よ、この女はいったい何の役に立つんだ?役に立たないのだったら風俗店に売り飛ばそうぜ!」

勇者「さっちんは変わった凄い魔法が使えるのです。役に立たないなんて言ったら失礼ですよ。」

サチ「あら?ゆうりん、前にも言ったけど私のは魔法じゃ無くて黒魔術よ。」

 

一気に胡散臭くなったぞ、この女。

 

サチ「あなたこそ、さっきから私に失礼な事ばかり言うけど、賢者ですって?一体何か出来るのかしら?」

矢内「ハハハハハハ!」

 

笑って誤魔化そう。そうこうしている内に城が見えて来た。何か思ったよりも小さいな…。

 

矢内「ほら、城が見えて来たぞ!」

サチ「誤魔化したわね。この男…。」

勇者「賢者さまは、子供達が攫われる事件を解決したんですよ。」

サチ「そうなの?どうせまぐれよ。」

 

あぁ、まぐれだ!痛い所を付くな。おっ!城の前に居る兵士はこの前パーティーで会った人だ。こっちに気づいて近づいて来たぞ。

 

兵士「これはこれは勇者様に賢者様、良く来て下さいました。」

勇者「兵士さん、こんにちは!」

兵士「皇帝陛下がお待ちです。どうぞ!お入り下さい。」

 

皇帝陛下か、どんな奴だ?はした金で『魔王を倒して来い』とか言ってきたら安全靴で蹴り飛ばしてやろう。不安に思いながら俺達は城の中に案内された。



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冒険の仲間達 2

兵士「こちらです。お進み下さい。」

 

何か城の中も質素だな。

 

矢内「そう言えば、俺が捕まえた人攫いはどうなったんだ?」

兵士「今は、牢屋に居ますが反省していますのでそのうち釈放されると思います。」

矢内「反省なんて猿でも出来るから簡単に出したら駄目だぞ。どうせああいう奴はまた別の所で同じ事を繰り返すだけだ。」

兵士「では賢者様、後で彼と面会をされてはどうでしょうか?」

矢内「そうだな。後で案内してくれ。奴にはいろいろ聞きたい事があったからな。」

兵士「この扉の先に皇帝陛下がお待ちです。賢者様、くれぐれも失礼の無い用にお願いします。」

 

何故俺だけに言うんだ。隣の胡散臭い女に言え!

 

矢内「おいサチ!お前、絶対に失礼な事言うなよ。」

サチ「人の家でゲロを吐くあなただけには言われたくないわ。」

矢内「過ぎた事をグチグチ言うな!!」

サチ「そのせいで私は家を追い出されたのよ。その事に対しての謝罪の1つもしないなんてあなたは反省すらできない猿以下ね。」

矢内「なんだと!テメェ!」

勇者「賢者さまもさっちんもケンカは止めて下さい!」

矢内「勇者、こんな黒魔術とか胡散臭い引きこもりの口の悪い奴とは友達は止めとけ。お前も根暗になるぞ。」

サチ「私の黒魔術を胡散臭いとか言うなんて、あなたこそ、口先だけで賢者とは程遠い屑人間ね。」

勇者「二人ともいい加減にして下さい!この先に皇帝陛下が居るのですからもうケンカしないで下さい!もう扉を開けますよ。」

 

バカの勇者に説教されてしまった。少し熱く成りすぎてしまった。こんな時はこの愛のスコールブルーソーダを飲んで落ち着こう。

 

矢内「サチ、少し言い過ぎた。」

サチ「…………。」

 

この女!俺が謝ってやったのに無視しやがった!なんて奴だ!

 

サチ「………。あなたが私に言った事、大体は合っていたわ…。後、少し考え事をしていただけで無視した訳ではないわ。」

矢内「そ、そうか。」

勇者「では扉を開けますよ。」

 

勇者の奴が扉を開けた。皇帝陛下か、少しかしこまった方がいいかな。ヤバい、緊張してきた。

 

サチ「………、凄い面白い顔よ。もしかして緊張しているのかしら?」

矢内「だだだだだ大丈夫だぁ〜。」

 

謁見の間に入った。

 

皇帝陛下「勇者よ。良く我が城に来てくれた!」

 

皇帝がこっちに近づいて来た。気持ち悪い顔だな。来るな!

 

矢内「サチ、疑って悪かった。予想以上にキモイ奴だった。」ヒソヒソ

サチ「しっ、聞こえたらめんどくさいから黙って。」ヒソヒソ

勇者「えーい!」ブン!

 

勇者の奴がいきなり斧で皇帝を攻撃しやがった!

 

皇帝陛下「いきなり何をするか!」ヒョイ

サチ「ちょっと!ゆうりん!」

勇者「あっよけられました。賢者さま、さっちん!化け物です。戦いましょう!」

矢内「気持ちは分かるがそいつが皇帝だ。落ち着け。」

サチ「そうよゆうりん、最初に吐く程気持ち悪い顔をしてるって説明したわ。」

勇者「先手必勝です。ター!」ブン!ブン!

 

駄目だ。聞こえていない。

 

皇帝陛下「助けてくれ!キサラギ!」

勇者「次こそ当てます。ター!」ブーン!

 

勇者の大振りの一撃が皇帝を直撃する。

 

 

ガキーン!何者かが勇者の一撃を防いだ。

 

「いきなり皇帝陛下に刃を向けるとは何事か!」

皇帝陛下「おぉ、キサラギ!良く我を助けてくれた!」

キサラギ「皇帝陛下、ご無事で何よりです。お怪我はごさいませんか?」

皇帝陛下「あぁ、大丈夫だ。しかし、勇者よ何故我を攻撃してきた!」

勇者「あの人化け物を庇いましたよ。」

キサラギ「化け物ではない!我が国の皇帝陛下だ!」

 

あの戦士めっちゃキレてる…。

 

矢内「まぁ、勇者ジョークってやつだ。ハハハハハハ!もし初めに俺に近づいて来たら安全靴でチンコを蹴り飛ばした所だからなぁ。ハハハハハハ!」

 

笑って誤魔化そう。

 

サチ(何さり気なく蹴り飛ばすとか言っているのかしら?この男は…)

キサラギ「冗談でそなた達は人を攻撃するのか!武器は無闇に人を傷つける物ではない!」

 

こいつ頭固いな…。

 

勇者「皇帝陛下さんごめんなさい…。」

皇帝陛下「まぁ良い。ジョークだったのだろう。キサラギもそう怒るな。このキサラギはこの国一の戦士でな。我の身辺警護や兵士達の訓練をしてる者だ。」

キサラギ「私の名はキサラギ、城の兵士達や町の住人達からは戦士長と呼ばれている。そこの男、くれぐれも皇帝陛下に失礼な事を言うでないぞ!」

 

だから何故俺だけに言うんだ!クソ!

 

皇帝陛下「キサラギはああ言っているがそんなにかしこまらなくても良いぞ。それでは本題に入ろう。」

 

皇帝陛下「今、この世界のどこかに魔王という者が居るらしい!そこで各国からそれぞれの勇者達が討伐に出ている!」

 

これははした金と安物の剣しか貰えないパターンのやつだ。マズいぞ。なんとかしなくては。

 

皇帝陛下「そこで、我が国は勇者に魔王がどの様な者か調査をしてもらいたい!」

矢内「調査ですか?討伐では無くて?」

皇帝陛下「あぁ、調査だ。もし、魔王がムチムチ美女だったら我の妃にしたい!」

 

コイツは一体何を言っている?そこに座っているだけのお前にまおゆうの用な展開に成るわけ無いだろ!コイツ、絶対に童貞だ。女に夢を見過ぎてる。

 

矢内「童貞陛下、陛下は鏡でご自分の姿を見た事が有りますか?」

皇帝陛下「何?」

矢内「仮に魔王がムチムチのエロい女だったとしたら陛下の用なキモイ奴とは死んでも結婚したくは無いと思いますが?基本的に女はイケメンにしか近寄らないクソ共です。よって陛下は死ぬまで童貞でしょう。間違いありません!」

サチ「賢者さん、お願いだから口を慎んで…。」

皇帝陛下「かしこまらなくても良いぞって言ったがさっきからなんだ!無礼者め、名を名乗れ!」

矢内「やれやれ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

 

決まった!痺れる程に決まった!

 

サチ「それ、カッコイイと思っているのかしら?」

キサラギ「そなたが噂の賢者殿…。(先ほどの発言と言い今のポーズといい、少し頭がおかしい人のようだ。)」

皇帝陛下「そうであったか。そなたが噂の賢者であったか。子供達を救ってくれたようで礼を言う。所で、その隣の美人の娘は誰だ?我の妃になりたい者か?」

サチ「冗談はその醜い顔だけにしてもらいたいわね、童貞陛下。」

皇帝陛下「無礼者!名を名乗れ!そして我の妻になれ!」

サチ「………」バチン!

 

いきなり童貞陛下に平手打ちしやがった、コイツ!

 

サチ「私は黒魔術士の三神サチ、次にふざけた事を言うとぶん殴るわよ。」

皇帝陛下「もう我を叩いているではないか!キサラギ、なんとかしてくれ!」

キサラギ「今のは陛下に非があります。それにしても勇者、賢者、魔法使い?の3人か……。武器で戦うのが勇者だけとはな。そうだな、一人我が国の戦士を同行させよう。陛下、よろしいでしょうか?」

皇帝陛下「あぁ、構わん。こんな無礼者達に誰が同行させようというのか?キサラギよ。」

キサラギ「勇者達と年の近いと思うエリカを同行させようと思います。それでは私はエリカを連れて来ます。」

 

そう言って戦士長は謁見の間を出て行った。

 

矢内「童貞陛下、我々は魔王の調査に行くにあたっての軍資金を頂いたいのですが……。」

 

行かないとは言えない感じなので資金ぐらい取れるだけ取ってやろう。

 

皇帝陛下「散々我に無礼をはたらいておいて更に金を寄越せだと!ふざけるのもいい加減にしろ!」

矢内「勇者よ。やはりコイツは皇帝陛下の名を語った化け物のようだ。斧で頭をかち割ってあげなさい。」

勇者「はい、分かりました!化け物!覚悟して下さい!」

 

あの戦士長が居ない今がチャンスだ!コイツを脅してふんだくってやろう。

 

皇帝陛下「待て!待たぬか!この国の金は国民の為に使う物だ。我一人の判断でお前達に渡す訳にはいかん。キサラギや他の者達と相談するから少し待て!」

矢内「少しってどれくらいだ?」

皇帝陛下「そういえばお前達、牢屋に居る人攫いと面会したいと言っていたな。」

矢内「会えるのか?あのバカに。」

皇帝陛下「ああ、構わん。その間に軍資金などの事は決めておこう。しかし、あの者に何の用事があるのだ?」

矢内「人攫いなんて単独ではできないからな。他に仲間がいたらまた子供達が攫われるかもしれない。俺と勇者はあの町の子供達とオーク達の村の子供達とは友達だからな。そんなことにはならない為にもアイツからいろいろ聞きだそうと思うんだ。」

サチ「け、け、賢者さんがまともな事を言ってる!」

 

失礼な奴だな……。

 

勇者「賢者さま?また子供達が攫われたりするのですか?」

矢内「そういう事にならない為にもアイツから話を聞き出すのだ。お前も友達になったポーキーやキール達が攫われたりしたら嫌だろ?」

勇者「そんなの絶対嫌です…。」

皇帝陛下「ウム、分かった。そういう事なら我が国の兵士達に毎日あの町とオーク達の村の警備にあたって貰う様にしよう。」

矢内「そうして貰えると子供達は安心だが良いのか?」

皇帝陛下「構わん!民は国のかけがえのない財産だ。」

 

コイツ、不細工なのに良いこと言うなぁ。

 

矢内「じゃあ、俺達は一度牢屋の方に行ってくる。」

 

そう言って俺達は扉の入口に居た兵士に牢屋まで案内して貰う事にした。

 

兵士「賢者様、あまり皇帝陛下に失礼な事を言わない様にって言いましたよね?次は無礼な事は控えて下さい。お願いします。」

 

童貞陛下に攻撃したこいつらに言えよ!クソッタレ!

 

俺達は城の兵士に案内されて人攫いが居る牢屋までやってきた。

 

矢内「おい!お前に聞きたい事がある!」

人攫い「お前は俺に酷い事をした奴!」

矢内「お前が子供達を攫ったりしたから牢屋にいるんだろが!反省しやがれ!おら!」バシャ

 

俺はあらかじめ持ってきてたラッカーシンナーを奴の顔にかけてやった。

 

人攫い「何をするんだよ!ああああ!目に入った!ああああ!」

 

目に入って悶絶してやがるwwwザマァミロ!

 

兵士「賢者様!なんて酷い事をするのですか!」

矢内「コイツ、全然反省してないだろ!そのまま失明してしまえ!」

サチ「まるでチンピラね…。これじゃどっちが犯罪者か分からないわ…。」

兵士「我が国では拷問は禁じられています!賢者様!お止め下さい!」

人攫い「目がー!目がー!」

兵士「おい、この水で目を洗うんだ!」

人攫い「すまねえ。優しい兵士さん。この国の人達はみんないい人たちだ。」

 

こいつ俺への当て付けか?

 

兵士「実は賢者様がお前に聞きたい事があるみたいなんだ。話してくれるか?」

矢内「お前の仲間は何処だ!言えー!」

人攫い「うわ!まぶしい!」

 

俺はこっちに来る前に買って置いた懐中電灯で人攫いを顔に思いっきり光を当てた。この刑事ドラマのような展開、一度やってみたかった。

 

兵士「今言ったばかりですよね!止めて下さい!賢者様の荷物は暫くこっちで預かります!」

 

俺の買って来た荷物が全て取られてしまった。

 

矢内「で、仲間は何処に居る。」

人攫い「そんなの居ない。俺一人でやったことだ…。」

矢内「嘘をつくな!お前のようなバカが人攫いなんて単独で出来る訳無いだろ!」ガン!

 

俺は腹が立ったので奴の居る牢屋の鉄格子を思いっきり蹴ってやった。

 

人攫い「ヒィ!何するんだよ!」

兵士「賢者様、次やると隣の牢屋に入ってもらいます。」

矢内「直接攻撃してないだろ!こいつがちゃんとしゃべらないからだな…。」

兵士「賢者様!」

 

ヤベェこの兵士、目がマジだ。

 

矢内「分かったよ!普通に聞けば良いのだろ!」

勇者「お前は子供達を攫ってどうするつもりだったのですか?」

 

勇者が質問をすると人攫いのやつがぽつりぽつりと話しだした。

人攫い「俺は砂漠の国の青空市場で買い物をしてたら神様の使いの方に子供をたくさん連れて来たらいっぱいお金をくれるって言われたんだ。」

 

さわやかな青空の下で人身売買をするな!

 

矢内「勇者よ、お前の所の神様は最低な奴だな。俺を巻き込んだり子供達を奴隷にしたり俺を巻き込んだり。」

勇者「ゼクス様はそんな酷い事しません!」

 

ゼクス?どこかで聞いた事ある名前だな…。

 

人攫い「ゼクス?俺が聞いた神様の名前はビーナスだぞ。」

矢内「そいつは神の名を語ったクソ野郎だな。」

人攫い(お前が言うなよ……。)

兵士(ビーナスとやらもあなたに言われたく無いでしょうに……。)

サチ「クズの賢者さんが言うことではないのですが……。」

勇者「さっちん、賢者さまになんて事を言うのですか!」

サチ「ゆうりん、私一人じゃなくてここに居る人みんな思っていることよ。」

矢内「まぁ、俺の事は置いといて砂漠の国か…。此処から遠いのか?」

人攫い「(怒らなかった)分からない…。頼まれるなり返事をする間もなくいきなりあの洞窟に出てきたから…。この国がどの辺りかも分かってないんだ。信じてくれ。」

 

いきなり出てきた?いつも俺がこの世界に来るゲートみたいなやつか?いろいろとこの世界はややこしい事が多そうだな…。

もう帰りたくなってきた。

 

矢内「お前はただ巻き込まれただけのようだな。分からないことが増えただけだったがまあいい。一度皇帝陛下のもとに戻るか…。」

兵士「もうよろしいのでしょうか?賢者様。」

矢内「ああ、後は皇帝陛下にいろいろこの世界について聞こうと思う。」

兵士「では賢者様の荷物はお返しします。いつもこんなに持ち歩いているのですか?」

矢内「ああ、食料とか調理道具とかいろいろだ。前回持ってきてない物が結構あったから苦労したんだ。」

兵士「そうですか。しかし凄い量ですね。」

勇者「あっそうだ、人攫いさん、牢屋から出ることになっても子供達を攫ったりしないでくださいね。」

人攫い「絶対しない!俺はもし出ることになったらお世話になったこの国の人達の為にずっと頑張ろうと思うんだ。」

矢内「勇者、何しているんだ?行くぞ!」

勇者「あっはい。今行きます賢者さま。」

 

そして俺達は牢屋を後にした。



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冒険の仲間達 3

俺達は再び皇帝陛下の所に戻った。げっ!あの戦士長も居るな。ここはおだてて金を巻き上げる作戦でいこう。

 

皇帝陛下「戻って来たな。お前達。何か情報は掴めたのか?」

勇者「気持ち悪い顔ですねぇ。」

矢内「コラ!勇者よ、皇帝陛下に失礼じゃないか。」

サチ「さっきまで賢者さんが一番失礼な事を言っていたのに何を今更言っているのかしら…。」

矢内「いいか、これはあの童貞陛下をおだてて金をむしり取る作戦だ。お前達、童貞を褒め称えるんだ。」ヒソヒソ

サチ「無理よ、良いところがないもの。」ヒソヒソ

皇帝陛下「何をヒソヒソ話しておる、軍資金なら僅かではあるが用意している。」

 

どういう風の吹き回しだ?

 

皇帝陛下「しかし賢者よ、気になっていたがその荷物の量はなんだ。旅に出るのに不便だろう。この異次元袋を与えよう。これで旅もコンパクトに出来よう。」

矢内「なんだ?異次元袋って。」

皇帝陛下「なんだ、そんな事も知らんのか。この袋は手に持てる物は何でも無限に入れる事が出来て袋の中の物は全く重みを感じないと言う旅には欠かせない物だ。」

 

ドラクエでパーティーの一番下欄の袋か!命名士の所に行ってこの袋の名前をマンコに変えて『ヤナイはひのきのぼうをマンコの中に入れた』って出来る奴か!

 

矢内「おい、童貞!お前こんな良い物をくれるか!ハハハ!今度福原のソープランドに連れて行ってやるよ!ハハハハハハ!それでお前も童貞卒業だ!ハハハハハハ!」

皇帝陛下「ま、まあ喜んでくれて何よりだ…。(これ誰でも持っているんだが…)」

勇者「あの、賢者さま。その袋、わたしも持っていますよ…。」

矢内「は?」

 

こいつ今何て言った?持っているだと?俺は前回も今回もクソ暑い中両手に食材やらシンナーの入った缶やら持って歩いていたんだぞ。

 

矢内「最初に言えよー!俺はクソ重い荷物を持って運んでいたんだぞ!何で言わなかった!」

勇者「えっと、賢者さまは力持ちだなぁって。」

 

死ね!一輪車にひかれて死ね!クソ!

 

キサラギ「あー賢者殿?そろそろよろしいか?」

矢内「なんだ?」

キサラギ「そなた達だけでは心許ないと思うので我が国の者を一人同行させようと思う。」

 

頼むからマトモな奴が来てくれ!バカの勇者と胡散臭い黒魔術士じゃ精神的に疲れる。

 

キサラギ「では紹介する。エリカ入って来なさい。」

エリカ「戦士長ー、何ー?」

 

戦士長に呼ばれて一人の女が入って来た。

 

皇帝陛下「おー、エリカよ。良く来てくれた!」

エリカ「お前、相変わらず気持ち悪い顔だなぁ。」

キサラギ「コレ、エリカ!口を慎め!」

皇帝陛下「キサラギよ別に構わん。エリカよ、来てもらったのは他でもない!そこに居る勇者達と一緒に魔王の調査に向かってもらいたい!」

エリカ「えっ何で?お前が行けよー。お前普段何にもしてないじゃん。」

 

この女言動が酷いな。多分何も考えていない。

 

キサラギ「陛下、申し訳ございません!自分の教育が行き届いていないばかりに……。」

皇帝陛下「あー構わん。人には得意不得意がある。こんなだがエリカは剣の腕は良いのだろう。」

キサラギ「それは自分が保証します。」

 

童貞陛下って顔のわりに器がデカいな。もし俺が下っ端の奴にあんな事言われたら即死刑にしてるぞ。

 

キサラギ「エリカよ、勇者達と調査に行くのは年の近いお前が適任なんだ。行ってくれるな?」

エリカ「分かった。行って来るよ。戦士長ー、勇者ってあのちんちくりん?」

キサラギ「失礼な事を言うな。そうだ。その隣の男性が賢者殿でもう一人の女の子が黒魔術士のサチ殿だ。仲良くするんだぞ!」

エリカ「分かったー。挨拶してくる。」

 

そう言ってエリカとか言う女はこっちに近づいて来た。

 

エリカ「お前が勇者?」

勇者「あっはい。」

エリカ「そっちが賢者にサチだな!」

サチ「え、ええ。」

エリカ「あたし、エリカ。お前らと一緒に旅に行くからよろしくな!」

勇者「あっはい。よろしくお願いします。」

矢内「戦士長!チェンジだ!他にいないのか?」

エリカ「勇者ー、よろしくなー!賢者、お前失礼だな!戦士長ー、こいつ斬っていいー?」

キサラギ「コラ!止めんか!賢者殿、少しよろしいでしょうか?こちらへ。」

矢内「なんだ?」

キサラギ「実はエリカの事ですが…剣の腕は自分には劣りますが一流です。しかしそれ以外の事は……。この旅でエリカにはいろいろな事を体験出来たらと思いまして、同世代の女の子もいることだしエリカを連れて行ってもらえたらと……。」

矢内「断る!!チェンジだ!」

 

勇者も大概だがコイツは酷過ぎる。キッパリと断った方がいい。

 

キサラギ「知的で聡明な賢者殿ならばエリカもいろいろと得るものは多いと思われます。」

 

この戦士長なかなか分かっているじゃないか。

 

キサラギ「賢者殿だけが頼りです!どうかエリカを連れて行って下さい!お願いします!」

矢内「ハハハ!戦士長、この知的で聡明な賢者様に任せておけ!ハハハハハハ!エリカって言ったな。これからはこの賢者様に任せておけ!ハハハハハハ!」

エリカ「なんだか良く分からないけどよろしくな!賢者ー!」

キサラギ(おだてに弱いと言う噂は本当だったようだ……。)

皇帝陛下「今日はもうすぐ日が暮れるので城の客間で1日過ごすがよい。明日から魔王の調査に出てもらおう。誰か!勇者達を客間に案内してやってくれ。」

兵士「それではこちらになります。」

 

そして俺達は先ほどの兵士の案内で客間に向かった。

兵士「こちらが客間でございます。たいしたおもてなしはできませんが今日はこちらでお休み下さい。」

勇者「兵士さん、ありがとうございます。」

 

俺達は客間の中に入った。ん?中に何か居る。一つ目の黄色い頭に手足と羽が付いている。

 

矢内「あれ、魔物だよなぁ。」

サチ「ええ、アーリマンね…。」

 

俺はドラクエ派だ、畜生!初めはスライムとか出て来いよ!そいつも終盤の敵じゃないか!

 

矢内「よし、仕方ない戦うぞ!」

勇者「はい!賢者さま。いきますよ、えーい!」ブン

 

ガキーン! 勇者の一撃が何者かに受け止められた。

 

エリカ「お前ら!アリマ君に何をするんだ!アリマ君はあたしの友達だぞ!」

勇者「ごめんなさい…。」

矢内「いきなり魔物がいたらそうなるだろ!先に言っとけ!」

エリカ「アリマ君はあたしの友達でお前らの旅に一緒に来てくれるんだぞ!次酷い事したら許さないからな!」

矢内「あー、分かった分かった。」

勇者「アリマ君ですね。わたしは一国の勇者です。よろしくお願いします。」

アリマ君「キー、キー!(よろしくね。)」

矢内「それで何でコイツはここに居るんだ?」

アリマ君「キー、キー、キー。(一緒に旅に出るからみんなに挨拶しようと思って…。)」

 

何言ってるか分からねーよ!

 

矢内「おい、エリカ!コイツ何を言ってるか分かるか?」

エリカ「んー、分からない。」

 

コイツ、パネェ!想像以上にヤバい!何言ってるか分からねー奴と友達って!何考えて生きているんだ?バカか!

 

サチ「エ、エ、エ、エリカさん?あ、あ、あなたはど、ど、どうして此処に?」

矢内「お前、何テンパっているんだ?」

サチ「は、初めて外に出て会う人よ。き、き、緊張するのは当たり前じゃない!」

矢内「俺や童貞陛下には思いっ切りキツい事言っていたよな、お前。」

サチ「………。」

 

無視かよ!そういえばこの女、引きこもりだったな。

 

矢内「エリカよ、サチも気にしていたがお前は何しに来たのだ?」

エリカ「あっ!そうだった!お前らに晩御飯持って来たんだ。せっかくだから一緒に食べよう!」

矢内「そうか!ありがたい!」

エリカ「はい!お前ら二個ずつだぞ。アリマ君も、一緒に食べよう!」

アリマ君「キー。」

 

そう言ってエリカはコッペパンを二つずつ手渡した。晩飯がこれだけか?絶対足りないだろ!

 

勇者「エリカにゃん、わざわざありがとうございます。」

エリカ「エリカにゃん?何それー?」

勇者「あだ名です。せっかく一緒に来てくれるので今考えてました。」

エリカ「ふーん。まぁいいや!仲良くしような。勇者!」

 

バカ同士すぐに打ち解けたようだ。

 

サチ「エ、エ、エリカさん?晩御飯はこれだけなのですか?」

エリカ「そうだよ。お城のみんなも同じだよ。」

 

は?兵士も全員これだけか?

 

サチ「ふざけているのかしら?仕方ないわね。私の黒魔術を使いましょう…。」

 

何?黒魔術だと!何をするつもりだ。

 

サチ「…………。はあああああ!」

 

何だ?いきなりサチの前にドアが出て来た!なにが起きるんだ?俺の知っている黒魔術と全然違う。

 

サチ「………。」ガン!ガン!

 

 

ガチャ。サチが先ほど現れたドアを開けると2食分の料理が出て来た!

 

サチ「賢者さん、散々私の事胡散臭いって言ったわよね。これが私の黒魔術、『ドア、ガン!』よ。驚いたかしら?はい、こっちはゆうりんの分よ。」

勇者「さっちん、ありがとうございます。」

エリカ「すげー!サチすげー!」

矢内「確かにすげぇ、この料理はどういう仕組みで出て来るんだ?」

サチ「仕方ないわね。説明するわ。これは私が召喚したドアを蹴り飛ばすと何処からともなくお母さんが料理を持って来てくれる黒魔術よ。」

 

確かにすげぇ。引きこもりの発想がすげぇ!自分達の分だけしかないのがすげぇ!

 

矢内「で、俺の分は?」

サチ「仕方ないわね。もう一度やるわ。ただし、ドアを蹴るは賢者さんよ。それで賢者さんの親しい人が料理を持って来てくれるわ」

矢内「ああ、分かった。」

サチ「…………。はああああ!」

 

ドアが出て来た!これを蹴れば良いのだな。ガン!

 

ガチャ。俺はドアを開けたが料理がない!

 

矢内「サチ!何も無いぞ!」

サチ「そんなはずないわ。あれ?紙ね。何か書いてあるわね…。えっと、冷蔵庫にお好み焼きが入っています。母よりwwwwwww」

矢内「ちくしょうーーー!」

 

この女!何笑っていやがる!!見てろ!このコッペパンをアレンジしてギャフンと言わせてやる!!

 

エリカ「賢者、なんかお前可哀想だな。」

サチ「大丈夫よwww冷蔵庫にwwwお好み焼きが入っているからwwwそれを賢者さんはwww食べwwwwもうダメwwwお腹痛いwwww」

矢内「笑うな!クソっ!ところでエリカ、城の兵士達もパン二つだけなんだな?」

エリカ「うん、いつもそうだよ。」

矢内「兵士達はもう食べ終わっているのか?」

エリカ「まだ、でもみんなもう少ししたら食堂に集まって食べると思うよ。」

矢内「まだなんだな?よし、エリカ。みんなが食堂に入る前に止めてまだ食べるなって言ってくれ。」

エリカ「えっ何でー?みんなお腹空いてるじゃん?」

矢内「いいから早く行ってくれ!」

エリカ「分かった。行ってくる。行こう、アリマ君!」

アリマ君「キー!」

矢内「いや、一人で行け!!アリマ君は俺を食堂に連れて行ってくれ。」

アリマ君「キー、キー!(こっちだよ。)」

 

俺はアリマ君の案内で食堂に向かった。この魔物、絶対エリカより賢いと思う。

 

勇者「さっちん、賢者さま達行っちゃいました。わたし達も行きましょう。」

サチ「ゆうりん、私達はちゃんとしたご飯があるから食べましょう。」

勇者「さっちん、みんなで食べた方が絶対おいしいですよ。行きましょうよ。」

サチ「分かったわ。あの賢者さんが何しでかすか分からないしね。めんどくさいけど行きましょうか。」

勇者「賢者さまー!待って下さーい!」

矢内「何だ?お前達も来るのか?自分の分があるだろ?」

勇者「だってみんなで食べた方がご飯は美味しいです。」

 

こいつらはちゃんとしたご飯があるから兵士達にひんしゅくかうから来て欲しくなかったが……。

 

アリマ君「キー!キー!(この奥が食堂だよ。)」

 

そして俺達は食堂にたどり着いた。兵士達はまだ来ていないな。よし、やるか。引きこもりめ!自分だけまともな物を食おうとした事を後悔させてやる!

前回、火をおこすのに苦労したからな。カセットコンロを3つ持って来た。異次元袋便利だな。物を運ぶのが凄く楽だ。

 

一つ目のコンロで鍋にお湯を沸かしてまずはスープだな。その間に買って来た食材で………よし、決めた。キャベツを千切りにして炒める。そして、塩、胡椒、カレーパウダーで味付けする。

 

矢内「アリマ君!エリカは何処だ?探して連れて来てくれ!城の兵士達も一緒にな!」

アリマ君「キー!(分かったよ。呼んで来るよ。)」

 

まさかあの魔物が一番まともな奴だったなんてな。

 

サチ「ゆうりん、賢者さんは一体何をしているのかしら?」

勇者「あれは、きっと魔法の料理です。」

矢内「お前達、そこに立たれると邪魔だから隅で体育座りしてろ。」

サチ「そっちのテーブルに行くわ…。」

アリマ君「キー、キー!(みんな連れて来たよ!)」

兵士「あれ?賢者様達、どうして此処に?」

矢内「エリカ、全員で何人居る?」

エリカ「えーと、1、2、たくさん!」

 

たくさんって何だ!ちゃんと数えろ!

 

兵士「今日、此処で食事をとるのは12人になります。」

矢内「あの人攫いは?」

兵士「後で、自分が食事を運ぶ事になっています。」

矢内「今日だけ特別にここで食わしてやる事できるか?頼む…。」

兵士「戦士長に確認して連れて来ます。」

矢内「すまんな。無理を言って…。」

 

俺達を入れて16だな。よし、3つ目のカセットコンロでソーセージを焼く。その間に鍋のお湯が沸いてきたので、鶏ガラスープの元に醤油を少々、ワカメを入れて、溶き卵をさっと入れて火を止めお玉でかき混ぜる。後は、ツナ缶を開けて細かくして、油を切ってオニオンスライスとマヨネーズで和える。完成だ!スープを入れる器は、あった。これでバッチリだ!

 

矢内「みんな!食事の時間を待たしてすまないな。最後にみんなのパンを真ん中を少しこんな感じに割って俺の所に並んで持って来てくれ!」ナンダ、ナンダ?トリアエズナラボウ!

 

俺は一つのパンにはカレーキャベツを真ん中の切目に入れその上にソーセージを乗せ、もう一つのパンにはツナマヨをそして、卵スープを兵士達に配っていった。

 

サチ「賢者さん、こっちもお願い…。」

矢内「お前、横入りしてんじゃねえよ!それに、自分の飯あるだろ、それ食ってろ!」

 

兵士達がサチを白い目で見ている。当たり前だ。

 

矢内「よし、これで全員に渡ったな。」

サチ「私とゆうりんはまだよ…。」

矢内「それ食ってろって言っただろ!」

兵士「賢者様、戦士長の許可が出ましたので連れて来ました。しかし、これはいったい?」

矢内「城を守るお前達がこんなパン二つだけだといざってときに力が出ないだろ!だから今日はお前達の食事をアレンジした。」

兵士「しかし、我々がこんな贅沢をしては民に示しがつかないと戦士長の教えでして。」

矢内「やはりな。じゃあ、その戦士長を連れて来い!ぶっ飛ばしてやる!」

キサラギ「誰をぶっ飛ばすと?賢者殿?そしてどういうことか説明して頂けますかな?」

 

なんて凄いプレッシャーだ!怯むな。この国の為だ。

 

矢内「来たな。諸悪の原因。座れ。」

キサラギ「自分は国の為にこの命を捧げている。それを」

矢内「いいから座れー!」

矢内「エリカが俺達に持って来たパンはお前のだな!後、二人は誰の分だ!」

キサラギ「………。」

兵士「そんな、戦士長!では自分のパンをお食べ下さい。」

 

城の兵士達がみんな戦士長にパンを渡そうとしている。やはり人望のある奴だったな。だからこそ分からせないと。

 

人攫い「いや、俺は囚人だから1日なくてもいい。賢者、俺のを戦士長に渡してくれ!」

矢内「お前達はそれを食えばいいんだ。でもな、戦士長の飯が無い訳じゃないぞ。で、戦士長よ。自分のパンを俺達に渡したのはお前と童貞陛下と後は誰だ!もう言えよ。」

キサラギ「………余りだ。」

矢内「何?」

 

いきなり戦士長が立ち上がり兵士達に頭を下げた。

 

キサラギ「皆、済まない!」ナンダ?ナンデセンシチョウガアヤマルンダ? ザワザワ ザワザワ

キサラギ「実は昨日パンが二つ余った分を自分と陛下で食べてしまった!」

 

いや、俺はそれ知らないし、そこを責めていないし。

 

キサラギ「そして今日も余っていたのを食べようとしてしまった。賢者殿達が来なかったら自分は同じ過ちをしていただろう。それを自分は賢者殿達に渡してなかった事にしようとした。自分はどんな罰でも受け入れる!しかし陛下だけは許して欲しい!自分がそそのかしたのだ。」

 

そう言って戦士長は兵士達に頭を下げた。どんだけ真面目な奴なんだ。

 

兵士「誰もそんな事で怒っていませんよ、戦士長。」ナンダ、ソンナコトカ。ハハハハハハ!

 

いや、違うんだが……。俺が言いたいのは、そうじゃないんだ。

待てよ。戦士長の奴どんな罰でも受け入れるって言ったな。これでいこう。

 

矢内「そうだな、戦士長と皇帝陛下には罰を与えないとな。」

キサラギ「罰なら自分一人で受ける!だから」

矢内「ダメだ。お前と皇帝陛下は俺のスペシャリテを味わって貰う!」

エリカ「おい、賢者!戦士長に何するつもりだよ!止めろよ!あたしが許さないぞ!」

矢内「エリカ、落ち着け。スペシャリテって言うのはな得意料理の事だ。お前もたまには戦士長に良い物を食べて欲しいだろ?」

エリカ「あたし達に作ってくれた奴より美味しい奴?」

矢内「そうだ。味は保証できる。お前も自分のを先に食べろ。」

エリカ「分かった!賢者、戦士長に美味しい奴作ってくれよ。」

矢内「って訳だ、戦士長。今から童貞陛下を呼んで来てくれ。お前達が戻るまでにスペシャリテを完成させる。」

キサラギ「しかし、自分だけ特別な物を食べるなんて…。」

矢内「まだ、俺の言いたい事が分からないのか。お前達はみんなのトップなんだ。たまには贅沢しないと下の奴らが遠慮するんだよ。」

キサラギ「たまには贅沢か……。皇帝陛下を呼んで来る。賢者殿。スペシャリテ、期待している。」

 

戦士長は皇帝陛下を呼びに食堂を出た。

 

矢内「俺は戦士長と童貞陛下の料理を作る!遅くなって済まないがみんなは先に食べててくれ。」

 

兵士達が食事を始めた。

 

「肉なんて城で出るなんて初めてだ!」

「スープうめぇ!」

エリカ「あたし、こんなご馳走初めてだよ!アリマ君、美味しい?」

アリマ君「キー!キー!(エリカちゃん、とっても美味しいね。)」

兵士「賢者様、我々の為にありがとうございます!」

矢内「堅い!食うときぐらい楽しくしろよ。」

人攫い「俺にまで……。ありがとう…。ありがとう…。」ポロポロ

矢内「お前、牢から出る事になったら子供達にちゃんと謝れよ。」

 

よし、早くスペシャリテ作るか。

 

勇者「やっぱりみんなで食べた方がご飯は美味しいですねぇ。」

サチ「ゆうりん、やっぱりあれ、食べてみたいわ。」

矢内「戦士長は別メニューだからソーセージ、二つ余るのか。勇者!サチ!お前達のパン持って来い!」

勇者「はい、賢者さま。」

 

俺は勇者とサチにもパンに具を挟んでやった。

 

勇者「賢者さま、この前のスモーブロとはまた違うのですね。これもとっても美味しいです!」

サチ「うん、18点ね…。なかなかいけるわね…。」

 

何が18点だ!クソっ!覚えてろ!

そうしている間に俺はスペシャリテを完成させた。おっ!戦士長が戻って来たか。タイミングもバッチリだな。

 

皇帝陛下「皆の者!我は皆に隠れてつまみ食いをしてしまった!本当に済まない!」

矢内「童貞!そんな事誰も聞いていない。料理が冷める、さっさと座れ!」

キサラギ「陛下、賢者殿の言う通り座りましょう。」

皇帝陛下「しかし賢者よ、これはいったいどういう料理なのか?キサラギは知っているか?」

キサラギ「いえ、自分も初めて見ます。賢者殿、この料理はどういう物か教えて頂きたい。」

矢内「これか?これは俺のスペシャリテ、矢内流黄金玉子チャーハンだ!スープはみんなと同じ物だが食ってみてくれ。」オー、イイニオイダ!ウマソー!

 

兵士達の歓喜の声が聞こえる。

 

キサラギ「黄金のように輝いている。頂くとしよう。」

皇帝陛下「我も頂くとしよう。」

 

童貞と戦士長がチャーハンを口の中に入れた。調子こいてスペシャリテとか言ってしまったから嘘でも美味いって言ってくれ!

 

キサラギ「賢者殿、これは米だな。それに鮭の身を細かくしたものが入っている。素晴らしい!」

皇帝陛下「スープもいい!賢者よ、鮭も卵も米も我が国では手に入らない物だ。本当に凄いご馳走だな。」コメダッテヨ!スゲー!オレモクッテミテー!

矢内「口にあってなによりだ。みんな!戦士長達に作った料理食ってみたいか!」

兵士「我々も食べられるのでしょうか?賢者様。」

矢内「ああ、今じゃ無いがな!」

兵士「それはどういうことでしょうか?」

矢内「俺達は明日から魔王の調査に行く!そして無事に帰って来たら国民全員集めてパーティーをしよう!その時はもっと凄いご馳走を用意してやる!酒もだ!」オー!ケンジャサマ!

キサラギ「凄い…。この短期間で兵士達の心を掴むとは…。」

矢内「では、みんな食べ終わった者から自分の職務に戻ってくれ!」

 

兵士達は皆、俺に敬礼して食堂を出て行った。

 

矢内「勇者達も食べ終わったらさっきの部屋に戻って休んでくれ!俺は童貞陛下と戦士長に話がある。」

勇者「分かりました。さっちん、戻りましょう。」

サチ「分かったわ…。」

エリカ「勇者、あたしも行く。おいで、アリマ君!」

アリマ君「キー!」

 

そして食堂には俺と童貞陛下と戦士長の3人になった。

 

矢内「二人とも、食べ終わったら話がある。時間を貰えるか?」

皇帝陛下「我は構わん。」

キサラギ「自分も大丈夫です。」

 

 

 

 

 

皇帝陛下「賢者よ、我はこんなに楽しい食事は初めてだった。感謝する。」

キサラギ「賢者殿、『たまにの贅沢…』今日は勉強になりました。」

矢内「贅沢はまだだぞ。飲もう。」

 

そして俺はブルーベリーの果実酒を取り出した。

 

キサラギ「け、賢者殿!これはお酒ではありませんか!!」

矢内「オークの村での貰い物だ。気にせず飲もう。」

キサラギ「すみません。自分はお酒は苦手でして……」

矢内「じゃあ、これだな。」

 

俺は戦士長にはスコールをついだ。

 

皇帝陛下「我はお酒を貰おう。」

 

チン! 俺達は乾杯をした。たまにはこういう飲みも悪くない。

 

矢内「始めに言っておく。俺はこの世界の人間では無い。」

皇帝陛下「この世界?賢者よ、何を言っておる。」

矢内「ああ、勇者の奴に連れられてこのファンタルジニアに来た。賢者って言ってるのもアイツが勝手に思い込んでるだけだ。」

皇帝陛下「賢者って言うのは嘘なのか?しかし何故、我らにその事を話す?」

矢内「それは今日1日で知ったが陛下と戦士長ができた人間だからかな。」

キサラギ「いえ、自分は出来た人間では無い。今日、賢者殿に思い知らされた。」

矢内「だから俺は賢者なんて大層な者じゃ無い。」

皇帝陛下「まあ、いいじゃないか賢者で。お前は我に媚びを売る用な輩よりよっぽど信用出来る。」

矢内「そう言ってもらえると助かる。まずこの世界の事を教えて欲しい。」

皇帝陛下「そうだな、我が知っている限りではあるが我がファンタルジニアの国の他にまだたくさんの国がある。」

矢内「皇帝陛下よ、砂漠の国はここから遠いのか?」

皇帝陛下「ここからだと北にある国を一つ越えてそこからさらに西だ。」

矢内「そうか、まず始めに俺達はそこを目指そうと思う。」

キサラギ「砂漠の国に何かあるのでしょうか?」

矢内「あの人攫いだが、砂漠の国で神の使いに会って一瞬でこの国に来たと言って居たのでな。」

キサラギ「神が何故その様な事を?」

矢内「神でも良い奴もいたら悪い奴もいるって事だろう。まずはその神の使いを探そうと思う。」

キサラギ「この短期間でいろいろ考えていたとは…。感服しました。」

 

俺は二杯目のブルーベリーの果実酒をついだ。夜はまだ長い。

 

 

 

 

 

 

私たちは食事をした後、客間に戻りました。

 

勇者「やっぱりみんなで食べるご飯は美味しかったですねぇ。」

サチ「ええ、久し振りに楽しい食事だったわ。」

エリカ「なー、お前らいつもあんなに美味しい料理食べてるの?」

勇者「賢者さまと会ってからですね。賢者さまの作ってくれるお料理はいつも美味しいです!」

エリカ「あれだけの人数分をすぐに作ったのはすげーよな!」

サチ「私の見たこと無い道具で火を付けていたわ…。」

エリカ「これから楽しみだなー。」

勇者「わたしもみんなで冒険するの楽しみです。」

サチ「でも、外は危険よ。魔物もいるわ。家が一番よ…。」

アリマ君「キー!キー!(魔物が出たら僕が戦うから平気だよ!)」

サチ「………噛んだりしないかしら。この魔物……。」

エリカ「そんな事しないよ。アリマ君はとっても良い子だよ!それに凄く強いんだぞ!魔物なんて平気だよ!」

勇者「さっちん、エリカにゃん、アリマ君もこれからよろしくお願いします。」

エリカ「うん!サチもよろしくな!」

サチ「え、ええ。よよよろしくお願いしします。」

アリマ君「キー!キー!(よろしくね。二人とも。)」

サチ「アアアリマ君もよよろしくね。(私、一度も行くとは言ってないのだけど……。)」

勇者「あっ!みんなでこれ飲みませんか?」

サチ「あら?何かしら?」

勇者「オークの村長さんに頂いた果実酒っていう飲み物です。この前のパーティーの時にわたしが飲もうとしたら賢者さまに止められてしまったのです。」

サチ「きっとそれは賢者さんが独り占めしようしたのよ。賢者さんがいない内にみんなで飲みましょう。(お酒よね…少しくらいなら大丈夫よ…多分。)」

エリカ「賢者、悪い奴だなー!あたし達だけで飲もう!アリマ君も飲もう!」

アリマ君「キー!キー!(ダメだよ!それお酒だよ!)」

勇者「アリマ君も賛成の様ですね。」

エリカ「あたし食堂でグラス取ってくるよ!」

 

エリカにゃんがグラスを取りに行ってくれました。これから楽しいことがいっぱいある良いですねぇ。

 

 

 

 

 

俺は皇帝陛下と戦士長にこの世界の事をいろいろ聞いた。

 

矢内「後、一つ聞いていいか?」

キサラギ「何でしょうか?」

矢内「昼に魔王の調査って言ったよな。何故勇者にさせるのだ?」

皇帝陛下「その事か。実はこの国は我が十年ぐらい前にクーデターを起こした国でな。人材も民もまだ少ない状態だ。」

キサラギ「そこに勇者と名乗る少女の噂を聞いて我が国の兵士が声をかけた所、引き受けてくれた。」

 

アイツ、多分訳も分からず返事したな。

 

皇帝陛下「勇者とはいえまだ幼いので仲間を連れて城に来るようにと言ったのだが……。まさか本当に仲間を連れて来るとは思わなかった。」

矢内「それで俺が巻き込まれているんだぞ!まさか本当に来るってどういうことだ!」

皇帝陛下「いや、それはすまん。」

キサラギ「賢者殿、自分達も出来るだけの協力します。」

 

ガチャ。食堂に誰か入ってきた。

 

エリカ「あれ?戦士長まだ居たの?」

キサラギ「エリカ、どうしたこんな時間に。」

エリカ「えっと、勇者が持ってた飲み物をみんなで飲むのにグラスを取りに来たんだよ。」

キサラギ「そうか、ほどほどにして早く寝るのだぞ。」

エリカ「分かったー。」

矢内「エリカ、俺の荷物をついでに持って行ってくれ。俺達はもう少し話す事があるから。」

エリカ「これを持っていったらいいの?分かったー。賢者達も早く寝ろよー。」

 

行ったか。あいつら仲良くやっているみたいだな。

 

皇帝陛下「まあ、なんだ。そういうことなので、旅に出てほとぼり冷めたら帰って来たら良い。魔王とやらも他の者が見つけているかもしれないしな。」

 

そんなので良いのか?元々やる気ないとはいえ、それで良いのか?

 

キサラギ「賢者殿、エリカの事くれぐれもよろしくお願いします!」

 

戦士長が深々と頭を下げた。

 

矢内「ああ、分かった。任せてくれ!おっと、もうこんな時間か。皇帝陛下、最後に一つ約束してくれ。」

皇帝陛下「なんだ?」

矢内「兵士達の食事はもう少し改善してやってくれ。あれではやはり体が持たない。俺達が帰って来た時に国が他の国に滅ぼされたってなったら洒落にならん。」

皇帝陛下「ああ、分かった。少しずつだが改善していこう。」

矢内「そうしてくれると助かる。それでは俺は客間で休むとするか。二人とも長々とすまなかった。」

 

俺はそうして食堂を出た。

 

キサラギ「面白い男ですね…。賢者殿は。」

皇帝陛下「ああ、そうだな。」

 

 

 

 

 

それから少ししてエリカにゃんが帰って来ました。

 

エリカ「みんなー。取って来たよー。」

勇者「エリカにゃん、ありがとうございます。ではみんなの分をつぎますね。」

サチ「エリカさん、それ賢者さんの荷物よね。ちょっと見せて欲しいのですが…。」

エリカ「分かったー。はいこれ。」

 

さっちんがエリカにゃんから荷物を受け取ると中をあさりだしました。

 

勇者「さっちん、何してるのですか?」

サチ「えっと、これとこれとこれね。ゆうりん、これ何かわかるかしら?」

勇者「それは缶詰めっていって蓋を開けるといろいろな食べ物が入っています。」

サチ「そう、では片っ端から開けていきましょう。」

 

そしてわたし達は缶詰めを開けていきました。中にはお魚や果物になんとお肉もありました。

 

サチ「とりあえずこれぐらいでいいかしら?足りなかったらまた開けていきましょう。」

エリカ「うわー!凄いなぁ。」

サチ「それでは景気づけに乾杯をしましょうか。ゆうりん、乾杯の音頭をお願いするわ。」

勇者「えっ何をするのですか?」

サチ「乾杯の前に何か一言いうのよ。」

勇者「あっ!賢者さまがこの前のパーティーでやってたことですね。」

 

上手くできるか分かりませんがやってみましょう。

 

勇者「えっと、明日からのわたし達の冒険の無事を祈って!スコール!」

 

チン!わたし達は乾杯をして果実酒を飲み始めました。

 

サチ「ウフフ、なかなか美味しいお酒ね。何杯でもいけそうね。ウフフフフ。」

勇者「本当に美味しいですねぇ。このお魚の味が濃厚でこの果実酒にぴったりです。」

エリカ「この飲み物苦いよぅ。でもこの缶詰めは美味しいなぁ。」

アリマ君「キー!キー!キー!(ダメだよ!お酒は大人になってからだよ!賢者様に怒られるよぅ。)」

勇者「アリマ君のグラスあんまり減ってないですねぇ。遠慮しなくてもいいのですよ。ウフフフフ。」

サチ「アリマ君、私がついであげるから今入っているグラス飲み干しなさい。ウフフフフ。」

エリカ「アハハハハ!アリマ君もグイッといきなよ!アハハハハ!」

アリマ君「キー!キー!(もういいや、僕は知らない!)」

サチ「アリマ君、良い飲みっぷりね。ウフフフフ。」

 

この果実酒を飲むとフワフワしてとっても楽しいです。みんなも楽しく笑っています。あっわたしももう一杯飲みましょう。ウフフフフ。とっても楽しいです。

 

 

 

 

さて、勇者達の所に戻るか。ん?笑い声が聞こえるな。

 

矢内「お前達、まだ起きて居たのか?」

勇者「あっ賢者さま〜。賢者さまも飲みましょう〜!」

エリカ「アハハハハ!賢者がたくさん居る〜!アハハハハ!」

サチ「(やばいわね…。寝たふりをしましょう。)zzzz」

 

こ、こいつら酒飲んでいやがる!しかも缶詰めも勝手に開けやがって!

 

矢内「お前ら!何勝手に酒飲んでいやがる!」

エリカ「賢者〜!怒るなよ〜。お前が果実酒ってやつを独り占めするからだぞ〜。」

勇者「賢者さま〜。もう一本ないですか〜。もっと飲みたいです〜。」

矢内「黙れーーー!!!!!!!」ガン!ガン!

 

俺はバカ2人の頭に拳骨をくらわした。

 

勇者「痛いです。叩かなくても良いじゃないですか。」

エリカ「痛!賢者、暴力は良くないっていつも戦士長が言ってるのだぞ!」

アリマ君「キー!キー!(だから、怒られるって言ったじゃないか。)」

矢内「おい、一つ目!お前も共犯だな。」

アリマ君「キー!キー!(ち、違うよ!僕は止めようとしたよ。)」

矢内「言い訳するなーー!!」ガン!

アリマ君「キー…。(ごめんなさい…。)」

矢内「まぁ、お前達3人?は拳骨一発で許してやる。おい!サチ!」

勇者「さっちん、もう寝ています。」

エリカ「サチ寝るの早いなー。さっきまで一番飲んでいたのに。」

アリマ君「キー…。(寝たふりしてる…。)」

矢内「まあ、寝ているなら仕方ないな。罰として一週間食事抜きにするか。」

サチ「賢者さん!それは理不尽よ!私はみんなを止めたのよ!食事抜きなんてあんまりだわ!」

矢内「やっぱり起きてるじゃねぇか!死ねーーー!!」ガン!

サチ「叩いたわね!」

矢内「黙れ!」ガン!

サチ「二回も叩いた!お母さんにも叩かれたこと無いのに!」

 

黙れ!寝たふりしてるんじゃねぇ!

 

矢内「エリカ、俺の荷物を漁って勝手に缶詰めを開けた奴は誰だ。正直に言え。」

エリカ「サチだよ。足りなかったらもっと開けて食べようって言ってた。」

サチ「ちょっと、エリカさん!」

矢内「勇者よ。俺が果実酒を独り占めしているって言ったのは誰だ。」

勇者「さっちんです。賢者さまがいない間に飲もうって言ってました。」

サチ「ゆうりん、みんなで飲んだよね!」

矢内「サチ、やっぱりお前が主犯じゃねぇか!お前、3日間食事抜きな!よし、もうみんな寝ろ。」

サチ「そんな、酷い!私、叩かれぞんじゃないのよ!」

 

酷いはお前だ!

 

 

 

 

 

次の日の朝、俺達は皇帝の居る玉座まで向かった。

 

皇帝陛下「おお、皆朝早くから呼び出して済まないな!」

エリカ「お前大声出すなよ!頭痛いのだよー。」

勇者「なんか気持ち悪いです〜。」

 

昨日果実酒を3本も開けるからだ!俺の飲む分が無くなっただろうが!

 

皇帝陛下「それでは、魔王の調査に向かう為の軍資金と通行証を渡そう。」

矢内「通行証?」

皇帝陛下「ああ、これを持っていると余所の国に入るのに通行料がかからなくなる。」

矢内「そうか、ありがたく頂くとしよう。」

皇帝陛下「最後にこれだけは言っておく!絶対無理するでないぞ!死ぬでないぞ!」

勇者「頭痛いから大声出さないで下さい〜。」

 

良い事言ってもこいつ等の所為で台無しだな…。

 

矢内「童貞!世話になったな!」

皇帝陛下「賢者!必ず帰ってこいよ!」

矢内「ああ、分かってる!俺達が帰って来たらパーティーをするのだからな!楽しみに待ってろ!じゃあ、行くぞ!」

勇者「皇帝陛下さん、さようなら。」

矢内「サチの奴が居ないな。何処にいる?」

勇者「さっちんならまだ寝てますよ。」

 

俺達はふざけたサチを叩き起こして城を出た。戦士長が兵士達を整列させている。

 

キサラギ「賢者殿達の旅の無事を祈って!全員!敬礼!」

 

兵士達が俺達に敬礼している。なんか恥ずかしいから止めてくれ!

 

矢内「戦士長、世話になった!」

エリカ「戦士長ー!行って来るー!」

キサラギ「エリカ!ちゃんと手紙を書くのだぞ!食事の前は手を洗うのだぞ!早寝早起きをするのだぞ!アリマ君も怪我に気をつけてな。」

エリカ「分かったー!」

アリマ君「キー!」

 

お父さんか、お前は!

 

矢内「よし、そろそろ行くか!」

勇者「はい!賢者さま!」

 

俺達の冒険はここからだ!

 

 

 

第3話

冒険の仲間達

END



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鬼の屋敷 1

ソープランド

 

 

「では、お風呂に行きましょうねー。」

 

俺は今、日頃のストレスを解消するため高級ソープランドにいる。一発抜いて風呂に向かう所だ。

 

 

勇者「あっ賢者さま〜。一緒に冒険の旅に行きましょう!」プカプカ

矢内「」

 

何勝手に風呂に浸かっている!今は帰れ!

 

「この子、何処から入って来たのかしら?」

 

ファンタルジニアからだ…。

 

 

 

 

俺はこのバカが来た所為で早々にソープランドを出る事になった。6万円も払ったのに…。

 

矢内「少し小腹が空いたな。勇者、何か食べてから行こう。」

勇者「はい。賢者さま。」

 

そして、俺達は明石焼きを食べることにした。

 

矢内「そうだ。サチやエリカ達の分も買って行こう。」

勇者「賢者さま、わたしの分もお願いします。」

 

お前は店で食っただろうが!

 

 

 

サチ達の分もできたみたいしそろそろファンタルジニアに行くか。

 

勇者「それにしてもたくさん人が居ますねぇ。」

矢内「ああ、神戸の繁華街だからな。」

???「おー矢内じゃないかー!ハッハーwww。」

矢内「その頭にくる笑い声は畑中か。」

勇者「賢者さま、この人は誰ですか?」

矢内「ああ、こいつの名は畑中。平日の昼間から仕事もしないでプラプラしている屑野郎だ。」

勇者「屑野郎さんこんにちは。わたしは一国の勇者です。」

畑中「ハッハーwww勇者って、ハッハーwww!」

勇者「賢者さま、この人何がそんなにおかしいのでしょうか?わたし、自己紹介しただけですのに…。」

畑中「あー、ゴメンゴメン。勇者ちゃん、これクセになってな。よろしくな。ハッハーwww!ところで賢者って矢内の事?」

勇者「はい!賢者さまです!」

畑中「ハッハーwwwハッハーwww矢内、お前!高卒のクセに賢者様って!ハッハーwwwハッハーwwwハハハハッハーwww!矢内が賢者って!ハッハーwww!ハッハー、腹痛ぇ!ハハハハーwwwwwwww!」

 

自分でも分かっていたが改めてコイツに言われたのは腹立つな。

 

矢内「勇者、俺の異次元袋のこっち側を持ってくれるか?」

勇者「分かりました。こうですか?」

矢内「よし、1、2の3で行くぞ!1、2の、3!」

畑中「ちょ、お前!何するねん!おい!コラ!」

矢内「矢内は畑中を袋の中にいれた。」

畑中「袋の中にいれたとちゃうわ!」

 

出てきやがった。クソ!

 

矢内「まあ、冗談はこれぐらいにして、そろそろ行こうか。畑中、時間があったら連絡する。」

畑中「おう!またな。ハッハーwww」

勇者「屑野郎さん、さようなら!」

畑中「ハッハーwww!」

 

そして俺達は畑中と分かれた後、向こうで待ってるサチ達の所に向かった。

 

 

 

 

 

俺達はゲートを通ってサチ達と合流した。ここはファンタルジニアの城から北に離れた小さな村の空き家だ。村長に貸してもらっているらしい。

 

サチ「あら?ゆうりん、遅かったわね。何かあったの?」

勇者「さっちん、ただいま!実は明石焼きって食べ物を買ってました。みんなで食べましょう!」

矢内「金を出したのは俺だろうが。まったく。」

勇者「みんなの分を配りますね。それではいただきます!」

サチ「初めて見る食べ物ね…。どう食べるのかしら?」

エリカ「このスープあっさりして美味しいなぁ。」

 

ダシをいきなり飲み干しやがった。

 

勇者「エリカにゃんはお馬鹿さんですねぇ。」

エリカ「なんだとー!」

勇者「これはおダシって言ってこの明石焼きをつけて食べるのですよ。」

 

お前一度店でエリカと同じことしたくせに…。

 

サチ「これをつけて食べるのね…。で、ゆうりんはどうしてその事を知っているのかしら?」

勇者「そ、そんな事は良いじゃないですか!早く食べましょう!冷めてしまいますよ。」

サチ「まぁいいわ…。(絶対先に食べて来たよね…。)」

エリカ「おダシ全部飲んじゃったよ…。」

アリマ君「キー!(僕のおダシを一緒につけて食べよう。)」

エリカ「アリマ君、ありがとう!」

勇者「アリマ君とエリカにゃんは何時も仲良しですねぇ。」

矢内「みんな食べ終わったら村長にこの空き家を貸してもらったお礼を言いに行くぞ。」

勇者「はい!賢者さま。」

 

俺達は村長の家にやってきた。やたらデカい家だな。

 

勇者「村長さん、こんにちは!」

村長「おお勇者様!これは皆さんお揃いで。此方へお上がり下さい。」

 

俺達は村長の家の中に案内された。中はたくさんの人がいる。嫌な予感がする。面倒が起きる前に退散するとするか。

 

村長「実は勇者様にお願いがございまして………。」

勇者「分かりました。」

 

まだ何も言ってないだろ!引き受けてるんじゃねぇよ!

 

サチ「ゆうりん、まだ村長さんは何も言ってないわ…。」

エリカ「お願いって何?」

村長「この先の山に最近、鬼達の住む屋敷が出来まして今週も我々の村の娘を一人生け贄に出さなくてはいけないのです。」

サチ「今週も?一体何人生け贄に出したのかしら?」

村長「今週で4人目になります。そして今週は私の娘が生け贄に選ばれまして…。お願いです!私の娘を助けて下さい!」

勇者「分かりまし」サチ「駄目よ、ゆうりん。村長さん、あなたは自分の娘さえ助かったらそれで良いのかしら?他の娘さん達の時は何もしなかったの?」

村長「そんな事は……。お礼なら何でもします。だからお願いします!私の娘を助けて下さい!」

エリカ「サチ、助けてあげようよ。」

サチ「駄目よ…。この村長さんむしが良すぎるわ。こんだけ大きな屋敷に住んでいるのに自分の娘の時だけ助けを求めるなんて。」

矢内「サチ!ちょっとこっちに来い!」

 

俺はサチを連れて一度部屋を出た。

 

サチ「賢者さんまでこの依頼を引き受けるつもりかしら?あの人を助けてもどうせ感謝なんてしないわよ。」

矢内「いいか。お礼はいくらでもするって言ったんだ。それに俺達はあの鬼の居る山を通らないといけない。だから先に前金を貰って村長の娘を鬼に差し出している間に山を抜けるんだ。」

サチ「依頼を受けるふりをして村長の娘を差し出すって事ね。分かったわ。それでいきましょう…。」

 

俺達は村長の居る部屋に戻った。

 

サチ「ゆうりん、エリカさん…。私がどうかしていたわ。村長さん、あなたの依頼を受けるわ。」

村長「おお!ありがとうございます。」

サチ「でも、私達は命を懸ける事になるから前金はいただくわ。それが最低条件よ。」

村長「そんな!人の命よりお金が大事なのですか!」

サチ「私達の命より自分のお金が大事って事ね…。この話はなかった事にさせてもらうわね。」

 

こいつ味方に付けたら頼もしいな。

 

村長「分かりました。前金を払います!だから私の娘を助けて下さい!」

サチ「初めからそう言えば良いのよ。」

矢内「とりあえず村長の娘を連れて来てくれ。」

 

村人に連れられて村長の娘が部屋に入って来た。

 

村長の娘「なによ!なんであたしが生け贄なんかにならなきゃならないのよ!別の娘にしなさいよ!」

 

こいつが村長の娘か。ぶん殴りてぇ!

 

村長の娘「それに今あたしはダイエット中なのよ!生け贄ならそこのデブの女にしなさいよ!」

 

ん?デブの女?よく見ると良い身体してるな。顔も悪くない。ヤバい!チンコ立ってきた!

 

矢内「おい!黙れブス!」

村長の娘「何ですって!このあたしの何処がブスだっていうの!顔もスタイルも地位も全部この村一番なのよ!」

矢内「オラッー!」バキ!

 

俺は頭にきたので村長の娘のブスの顔面を思いっきりぶん殴ってやった。

 

サチ「ちょっと!賢者さん!気持ちは分かるけど殴っちゃ駄目でしょ!」

村長「貴様ー!私の娘に何てことを!何者だ!」

矢内「やれやれ仕方ない。俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ。」

 

すげぇ決まった!

 

村人全員(村長の娘をいきなり殴って何を言っているんだ、この男は…。それに何だ?あのポーズ…。)

エリカ「あたしもアリマ君も別にお前の事そこまで好きじゃないぞ。」

アリマ君「キー!キー!(あれ、決めゼリフのつもりみたいだからそんな事言っちゃダメだよ。)」

村長「貴様!ふざけているのか!」

矢内「ふざけているのはお前の方だー!こんなブスを鬼達の所に連れて行ってみろ!鬼達が怒ってこんな村一瞬で滅ぼされて仕舞うぞ!それでいいのかーー!」

村長「私の娘は美人だ!その顔を殴っておいてなんて」矢内「黙れーー!俺はこっちのムチムチの娘の方が好みだー!」

村人全員(お前の好みは知らねーよ…。もう帰りたい…。)

勇者「あの人、おっぱい大きいですねぇ。ソープランドって所のお姉さんと同じ位有りますねぇ。」

エリカ「ソープランドって何?」

勇者「お金を払って女の人とお風呂入る所です。」

サチ「賢者さん…。この前の薄汚れた服じゃないと思っていたらそんな所に行っていたのね…。」

矢内「悪いか!悪いかーーー!」

ムチムチの娘「あの、私が生け贄になります!だから村長も賢者様もケンカしないで下さい。」

村長「そうか、そうか!すまないな。」

矢内「あなたは絶対俺達が守りますので大丈夫です!鬼など一捻りですよ。」

ムチムチの娘「お願いします。賢者様。」

矢内「それでは俺達は鬼の所に行くするか。」

勇者「はい!賢者さま。」

村長の娘「そこのお前!あたしを殴ってただですむと」矢内「死ね!このクソ女が!」バキ!

 

俺はこの鬱陶しい村長の娘の顔面にパンチを一発、腹に蹴りを三発かましてやった。

 

サチ「それでは村長さん、前金をいただくわ。」

村長「私の娘を殴っておいて前金だと!ふざけるな!」

サチ「あの、村長さん?先に言っておくけど私達のリーダーの賢者さんはキチガイよ。キチガイって分かるかしら?頭のおかしい人の事よ。だから大人しく前金を渡した方が身のためよ?」

矢内「やっぱりこいつ前金を払うつもりないみたいだからこの家に火を着けようぜ。よし、アリマ君。このラッカーシンナーを空から全体にかけてくれ!村人のみんなもこの家燃やすのを手伝ってくれ!」

アリマ君「キー!」

サチ「今の聞いたかしら?早くしないと取り返しのつかない事になるわ。」

村長「払う!今すぐ払うから止めてくれ!」

 

俺達は村長の好意で報酬の前金をいただき家を出た。

 

ムチムチの娘「いきなり村長の娘を殴るなんて凄いですね。見ていてスッキリしました。」

 

俺はお前の身体でスッキリしてぇな。勃起が収まらねえ。

 

勇者「賢者さま、さっきからあの人のおっぱいばっかり見てますねぇ。」

エリカ「なんで賢者の股間膨らんでいるんだ?」

サチ「エリカさん、それは気にしないで下さい。でもあなた、生け贄なんかに立候補して良かったのかしら?命の保証なんて無いのよ。」

ムチムチの娘「はい…。確かに怖いけど…」

矢内「大丈夫ですよ!こんなエロい身体鬼どもの好きにはさせませんよ!ハハハハハハ!」

サチ「堂々と最低な事を言い出したわね…。所で賢者さん?自信があるようだけど…何か作戦はあるのかしら?」

矢内「ああ!この酒を使う!そのために勇者!エリカ!お前達に今から呪文を教えるぞ!」

勇者「じゅ、呪文ですか〜〜!!」

エリカ「でも、あたし達魔力ないから使えないよ。」

矢内「大丈夫だ。これは『コール』って呪文でな。魔力なんて無くても使えるんだ。」

ムチムチの娘「賢者様、その呪文私も使えるの?」

矢内「あ、ああ。使えるさ。」

勇者「賢者さま!是非わたし達にその『コール』って呪文を教えて下さい!」

 

そして俺達はしばらく『コール』の練習をして鬼の屋敷に向かった。



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鬼の屋敷 2

俺達は村長の娘のかわりに生け贄になったムチムチの娘の案内で鬼の屋敷にたどり着いた。ああケツもいいな。たまらん!

 

矢内「よし!行くぞ。」

???「誰じゃ!」

 

マズい!心構えが出来てないのに鬼が出て来た!

 

勇者「わたしは一国の勇者です!」

???「わしはこの屋敷の主、酒呑童子じゃあ!お主達よう来たのう。上がっていけ!ガハハハハ!」

勇者「酒呑童子さんですか。長い名前ですねぇ。じゃあシュテちゃんですね。」

酒呑童子「おお!何かノリが良くていいのう!ガハハハハ!前から来てる娘達とは大違いじゃあ!ガハハハハ!」

サチ「何か思っていた感じと違うわね。」ヒソヒソ

ムチムチ娘「なんか良い人?そうだね。」ヒソヒソ

酒呑童子「お主達何をしておる!早よう入ってこんか!」

矢内「ああ、すまないな。実はこれを持ってきた。一緒に飲もう!」

酒呑童子「おお!それは酒か、ガハハハハ!お主、気が利くのう!ガハハハハ!摘みを用意せにゃならんのう!ガハハハハ!」

 

思った以上にフランクだな。

 

エリカ「なぁ、シュテちゃん。お前悪い奴か?」

酒呑童子「ガハハハハ!この娘っ子ハッキリ物を言うのう!ガハハハハ!悪いのはわし等を島から追い出した奴らじゃあ!わし等はちょっとボスの酒を飲んだだけじゃのに…。」

エリカ「なんだよ、ソイツ賢者みたいな奴だな!あたしと勇者がちょっと摘み食いしただけでいつもすげぇ怒るんだよ。」

酒呑童子「そうか、お主達もこの世の理不尽と戦っているのか。今日は共に飲もうぞ!ガハハハハ!」

 

何がこの世の理不尽だ!自業自得だろうが!摘み食いするからだろうが!

 

ムチムチの娘「でも、シュテちゃん達住んでいる所追い出されてかわいそうだね。」

酒呑童子「おお、お主!村の娘っ子か!めんこいのう!今まで来た娘っ子達とは大違いじゃあ!」

矢内「そうだろう!そうだろう!エロい身体してるだろう!ハハハハハハ!」

酒呑童子「本当じゃのう!ガハハハハ!」

矢内「俺なんか今日1日チンコ立ちっぱなしだぞ!ハハハハハハ!」

酒呑童子「わしも立ってきおったわい!ガハハハハ!」

 

そして俺達は酒呑童子に屋敷の中に案内された。

 

勇者「賢者さまとシュテちゃん、すっかり仲良しですねぇ。」

エリカ「なぁ、何で2人共股間膨らんでいるんだ?」

サチ「エリカさん…。それはもう気にしないで…。」

酒呑童子「ガハハハハ!食い物を持ってきたぞ!」

 

サツマイモを生で持って来やがった。

 

酒呑童子「甘くて結構いけるぞ!食え!」

矢内「食え!じゃねぇよ!生じゃねぇか!」

酒呑童子「なんじゃあ、お主以外みんな食っておるぞ!何を言っとるのじゃあ。」

勇者「固いですねぇ…。」

サチ「固いわね…。」

エリカ「固い…。」

アリマ君「キー…。」

 

な、バカの勇者とエリカはともかくサチまで食ってやがる!

 

矢内「これは生で食べる物じゃねぇんだ!俺がこれで何か作ってやるから貸してくれ!サチ!俺の袋から適当に缶詰めを出してくれ!」

サチ「分かったわ…。」

矢内「勇者!シュテちゃんに酒をついでやれ。」

勇者「分かりました。シュテちゃん、どうぞ。」

酒呑童子「おう、すまんのう。」

 

酒呑童子に酒がつがれた。今だ!

 

矢内「お前ら、行くぞ。シュテちゃんの!ちょっとイイとこ見てみたい!」

酒呑童子「おっ、なんじゃ?」

勇者「大きく三回!」パン パン パン

エリカ「小さく三回!」パン パン パン

ムチムチの娘「おまけに三回!」パン パン パン

矢内「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

勇者「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」

エリカ「Fuwafuwa♪」

酒呑童子「なんじゃ?どうすればいいんじゃ?」

サチ「そのお酒を一気飲みするのよ。」

酒呑童子「そうか、すまんのう。」グビグビ

酒呑童子「かぁーー!飲んだぞ!」

勇者「ご馳走様が聞こえない♪」

エリカ「聞こえないからもう一杯♪」

 

すかさずムチムチの娘が酒呑童子に酒をついだ。

 

矢内「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」

勇者「Fuwafuwa♪」

エリカ「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」

ムチムチの娘「Fuwafuwa♪」

 

酒呑童子がもう一度酒を一気飲みした。

 

酒呑童子「かぁーー!ご馳走様じゃあ!!ガハハハハ!こんな楽しい酒は初めてじゃあ!!ガハハハハ!お主達も飲め!ガハハハハ!」

勇者「ではわたし達もいただきましょう!」

矢内「お前等は未成年だろ!!駄目だ!」

酒呑童子「賢者殿よ!今日は無礼講じゃあ!いいから飲めー!ガハハハハ!」

矢内「まあ、いいか。飲むぞ!シュテちゃんも適当に缶詰めを摘まんでくれ。」

酒呑童子「おお、すまんのう!ガハハハハ!」

 

そして楽しい宴が始まった。

しかし、焼酎ロックだと俺はともかく少しきついな。このスコールで割るか。焼酎2のスコール8でいいだろう。

 

矢内「よし、お前達の分だ。いいか、少しずつ飲めよ。」

勇者「賢者さま、ありがとうございます。」

矢内「俺はこれを調理してるからな。」

エリカ「これ、飲みやすくて美味しいな!賢者、おかわりー!」

 

少しずつ飲めって言っただろ!このバカは。

 

矢内「アリマ君、ちゃんとアイツの面倒みないと駄目だろ!何やってるんだ!」

アリマ君「キー…。」

 

よし、このイモは天ぷらにしよう。野菜も天ぷらにするか。カセットコンロに火をつけて後は揚げるだけだ。

 

酒呑童子「なんじゃあ、賢者殿は全然飲んどらんのう。」

 

今は調理中だ。少し待てよ。

 

勇者「そういう時は『コール』の呪文です!賢者さまの!ちょっとイイとこ見てみたい!」

エリカ「大きく三回!」パン パン パン

ムチムチの娘「小さく三回!」パン パン パン

勇者「おまけに三回!」パン パン パン

エリカ「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」

ムチムチの娘「Fuwafuwa♪」

矢内「おい、俺は今調理中だから…」

酒呑童子「賢者殿、早よう飲まんか!」

サチ「しらけるわね…。早く飲みなさい。」

矢内「クソっ、見てろ!俺の飲みっぷりを!!」

勇者「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

サチ「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」

酒呑童子「Fuwafuwa♪」

 

俺はグラスの焼酎を飲み干した。アリマ君がすかさず俺のグラスに焼酎をついだ。クソっ、ロックかよ。スコール8で割れよ!

サチ「ご馳走様が聞こえない♪」

ムチムチの娘「聞ーこえないからもう一杯♪」

 

仕方ない、俺の力を見せてやる。

 

勇者「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

エリカ「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

 

俺は一気に焼酎を飲み干した。

 

矢内「ご馳走様だ!クソったれ!」

酒呑童子「ガハハハハ!流石、賢者殿じゃあ!ガハハハハ!」

矢内「よし、天ぷらが出来たぞ。」

酒呑童子「おお!!初めて見るぞ。これは何じゃあ?ガハハハハ!」

勇者「魔法のお料理です!」

エリカ「すげー!賢者すげー!」

矢内「塩をかけて冷めない内に食おう!」

サチ「賢者さん、早くいただきたいのだけど何か外が騒がしくないかしら?」

 

ん?何か外で話し声が聞こえるな。ちょっと見てくるか。

俺達は屋敷の外に出た。あれは村長の所のブスが村人を率いて来ている。

 

村長の娘「さぁ、あんた達!あたしを殴った男とついでに鬼もやっつけるわよ!逆らったらあんた達年貢を十倍にするからね!」

 

あのブスは何様のつもりだ?

 

サチ「せっかく上手くいっていたのに面倒なのが来たわね…。賢者さんが殴ったりしたから仕返しに来たのね…。」

 

そうこうしている間に村人達が屋敷の前までやってきた。

 

酒呑童子「何じゃあ!お主達は?」

村長の娘「あんたが鬼の親玉ね!そこの男と一緒にやっつけ」矢内「死ね!このブスが!」バキ!

 

俺は村長の娘を思いっきりぶん殴った!

 

村長の娘「またあたしのかわいい顔を殴った!あんた鬼の手先なのね!」

矢内「オラオラオラオラオラオラオラオラー!」バキ!バキ!バキ!バキ!バキ!バキ!

 

俺のパンチで村長の娘をボコボコにした。気絶したか…トドメをさすか。

 

村人全員(あの人すげぇな。容赦なく殴るから見ててスッキリする。)

酒呑童子「賢者殿、いくらブスでも殴るのはいかんぞ!」

矢内「いや、シュテちゃんよ。コイツは俺やシュテちゃんに喧嘩売って来たのだぞ!関係ない村人達も巻き込んでだ。だからコイツはラッカーシンナーをかけて火を着けて殺そう。村人のみんなも手伝ってくれ!」

村人A「え?何を言ってるのじゃ?この人?」

サチ「賢者さん…ここは山だから火は良くないわ…。なので大きな穴を掘って生き埋めにしましょう。これ以上コイツを生かしておくと面倒だわ…。」

村人B「確かに村長に泣きついて年貢を十倍なんかにされたら厄介じゃ。皆、穴を掘ろう!」オー!

 

やっぱりこのブス相当嫌われていたのだな。

 

酒呑童子「お主達、わしの屋敷の前を掘るのは止めんか!このブスは屋敷の牢屋に入れておくから殺生はいかんぞ!」

勇者「そうだ!皆さんも一緒にお酒を飲みましょう!」

酒呑童子「おお!それは良い考えじゃあ!ガハハハハ!お主達も一緒に飲もうぞ!ガハハハハ!」

村人A「なんか妙なことになったのう。」

村人B「相手は鬼じゃ。気をつけんといかんのう。」

村人C「じゃが、あの賢者様よりまともな方じゃ。」

エリカ「お前らゆっくりしていけ!」

酒呑童子「お主の屋敷じゃないじゃろう!ガハハハハ!さぁ中で飲もうぞ!ガハハハハ!そうじゃ!客人の娘達も呼んで飲もう!ガハハハハ!」

 

そして俺達はまた屋敷の中に入った。

 

酒呑童子「ガハハハハ!楽しいのう!ガハハハハ!」

村人A「あの、酒呑童子様!村の娘達は無事なんじゃろうか?」

酒呑童子「先週ぐらいから来ている娘っ子達か?客間にいるぞ!呼んできてやる。」

 

酒呑童子が村の娘達を連れてきた。

 

酒呑童子「連れてきたぞ!ガハハハハ!さぁ飲もうぞ!」

村人B「おお!無事じゃったか!良かった!」

村娘A「みんなも捕まったの?」

酒呑童子「所で娘っ子達よ。前から気になっておったがお主らはいったい何をしに来たじゃあ?」

村娘B「え?何って、私達はあなた達の生け贄になって…」

酒呑童子「いや、わし等は生け贄なんか求めてないぞ?」

村娘A「え?」

酒呑童子「なんじゃ、お主達わし等を何じゃと思っとる。ガハハハハ!まあ、細かい事はさておき楽しく飲もうぞ!ガハハハハ!」

 

結論から言うと村人達の勘違いだった。

 

矢内「人の数が増えたからもっと天ぷらを揚げないとな。勇者、俺の袋の中の缶詰め全部開けてくれ!」

勇者「あ、はい。賢者さま。皆さん賢者さまのお料理が出来るまでこちらを摘まんで下さい。」

村人達「おお!鉄の塊から食い物が出てきおった…。まるで魔法じゃあ!」

サチ「初めはみんな驚くわよね…。」

矢内「よし!天ぷらが出来たぞ。この塩を少しかけて食べてくれ!」

村娘A「すごい!初めて見る食べ物だわ…。」

エリカ「魔法のお料理だよ!」

酒呑童子「ガハハハハ!遠慮せずに食え!」

 

みんなが天ぷらを摘まみだした。口に合うと良いのだが。

 

酒呑童子「おお!芋がサクサクじゃあ!!」

ムチムチの娘「本当に美味しいねぇ。」

勇者「賢者さまが作ったお料理ですよ。美味しいのは当然です!」

村娘B「お野菜サクサク〜美味しい〜!」

 

どうやら口にあったようだ。みんないい感じで酔っているな。

 

勇者「楽しいですねぇ〜!」フラフラ

エリカ「アハハハハ!楽しいなぁ!」フラフラ

アリマ君「キー!キー!」フラフラ

 

アイツ等フラフラじゃねえか。もう飲まさない方がいいな。

 

矢内「おい、サチ。大丈夫か?」

サチ「大丈夫よ。今は楽しくやってるけどいつ仲間が来るか分からないもの…。」

???「酒呑童子様!食料の調達から只今戻りました!」

 

マズい!仲間が戻って来た。

 

酒呑童子「おお!茨木童子に星熊童子に虎熊童子に熊童子とあと一名!お前達も飲め!ガハハハハ!」

かね童子「あと一名ってなんですか!かね童子です!」

星熊童子「しかし、人間の客人が多い…。」

熊童子「また酒飲んでる、この人…。」

茨木童子「酒呑童子様、空腹でのお酒は早くに酔ってしまいます。直ぐに何かお作りしましょう。」

酒呑童子「ああ、それなら賢者殿が作ってくれた天ぷらというのを食っておる。お主達も食え!ガハハハハ!」

茨木童子「これが天ぷら…。初めて見る食べ物だ…。」

かね童子「おい人間共!我等の屋敷で何していやがる!」

エリカ「みんなで楽しくやってるんだよ〜。お前もこの天ぷら食べてみろよ〜。サクサクで美味しいぞ〜。ほら。」

かね童子「人間の作った物など食えるか!」バシ!

 

かね童子とかいう鬼がエリカが差し出した天ぷらを払いのけた。

 

エリカ「何するんだよ!」

アリマ君「おい、お前!エリカちゃんに何をするんだ!ちょっと表出ろよ、ぶっ飛ばすぞ!」フラフラ

かね童子「この俺様をぶっ飛ばすだと!口の聞き方に気をつけろ!小僧が!」

アリマ君「オラー!」バキ!

 

アリマ君の奴、拳一発で鬼を気絶させやがった!って言うか今喋ったよな。

 

アリマ君「雑魚が!弱い癖に粋がるな!」フラフラ

酒呑童子「ガハハハハ!かね童子よええーwwww!ガハハハハ!一撃でダウンってwwww!」

ムチムチの娘「あの子、めっちゃ強いね。」

酒呑童子「かね童子が弱すぎるだけじゃあ!ガハハハハ!そうじゃ!かね童子が気絶している間にサプライズであのブスがいる牢屋に入れておこう。ガハハハハ!虎熊童子、かね童子を牢屋にぶち込んでおけ!ガハハハハ!」

虎熊童子「そうですね、こんな小僧に喧嘩を売って返り討ちに合うなど我が一族の恥さらし。当然の配慮でしょう。」

 

かね童子が牢屋に連れていかれた。

 

酒呑童子「皆!それでは気を取り直して飲み直すぞ!賢者殿、乾杯の音頭を取ってくれ!」

 

お前がやれよ!

 

矢内「仕方ない、まあいろいろあったが鬼の者達を村の者達の初めての交流を記念して!スコール!」スコール!

 

楽しい宴会が再開された。

矢内「また人が増えたからまた料理を作らないといけないな。俺はしばらく抜けるがみんなは適当にやっててくれ。」

茨木童子「賢者殿、自分も手伝います。」

酒呑童子「茨木童子よ、待たんか。一杯飲んでから行け!」

勇者「えっと、茨木童子だからイバちゃんですね。イバちゃんの!ちょっとイイとこ見てみたい!」

酒呑童子「大きく三回!」パン パン パン!

エリカ「小さく三回!」パン パン パン!

ムチムチの娘「おまけに三回!」パン パン パン!

勇者「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

茨木童子「一体どうすれば良いのでしょうか?」

矢内「グラスに入った酒を一気飲みするんだ。」

エリカ「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

 

茨木童子がグラスの酒を飲み干した。すかさずグラスに酒がつがれた。これがコールの恐ろしい所だ。

 

勇者「ごちそうさまが聞こえない♪」

エリカ「聞こえないからもう一杯♪」

ムチムチの娘「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

矢内「もう一回だ。飲み干したらごちそうさまと言うんだ。永遠に続いてアイツのように潰されるぞ。」

 

俺は別の所でコールで潰された鬼を指差した。やったのはサチとアリマ君か。

 

茨木童子「あれは熊童子!そんな、酒呑童子様の次に酒が強いのに…。」

 

酒呑童子「パーリラ♪パリラ♪パーリラ♪」Fuwafuwa♪

 

茨木童子が酒を飲み干した。

 

茨木童子「ごちそうさまです。それでは賢者殿、お手伝いをさせていただきます。」

矢内「ああ、すまんな。」

勇者「イバちゃん、賢者さまの所に行きましたけどお料理出来るのでしょうか?」

酒呑童子「何を言っておる、茨木童子は料理の達人じゃ。熊童子は酒を作れるし星熊童子は野菜作りの達人、虎熊童子は剣術が得意なんじゃあ。わし等はみんなで協力して暮らしておる。」

ムチムチの娘「そうなんだ。みんな凄いね。所でシュテちゃんは何の達人なの?」

酒呑童子「わしか?わしは酒を飲む達人じゃあガハハハハ!」ハハハハハハ!

矢内「お前達、苦労しているのだな…。」

茨木童子「はい…。でも前に居た所よりは毎日楽しくやっていますよ。それよりこの天ぷらの作り方を教えてもらってもいいでしょうか?」

矢内「ああ、分かった。酔い冷ましに何か汁物が欲しいな。」

茨木童子「それでは、自分がマタギ汁を作りましょう。」

矢内「ああ、頼む。」

虎熊童子「酒呑童子様!只今戻りました!」

酒呑童子「おお!戻ったか!お主も飲め!ガハハハハ!」

虎熊童子「では自分もいただきます。その前に。」

 

虎熊童子がエリカの所に向かった。

 

虎熊童子「先程は身内の無礼をお許し下さい。」

エリカ「いいよ。それより天ぷら食べなよ。サクサクして美味しいよ。」

虎熊童子「かたじけない。なんと器の大きな御方だ。」

 

いや、そいつは何も考えてない…。バカなだけだ。

 

星熊童子「俺が取ってきたイモがたくさんの人に食ってくれるのは嬉しいな。」

村人A「このイモはこの山で採れるですか?」

星熊童子「ああ、でも採るだけではすぐになくなってしまうので今はより多く採れるように栽培していく所なのだ。」

村人B「イモを作るという事じゃろうか?」

村人C「それは凄い事じゃのう。是非ともわし等も手伝わせて下され。」

星熊童子「なんと!手伝ってくれるというのか!かたじけない!今日はなんて素晴らしい日だ。」

 

村人達も鬼達と上手くやってるようだ。

 

村娘A「では、私達が景気付けに一つ演奏しまーす。」

 

プーブブブ、プーブブブ、プププープ、プププープ、ブプーププ!

おならでハレルヤを演奏しだした!汚い音色だ…。イエスが助走つけて殴って来そうだ。

 

酒呑童子「ガハハハハ!なかなか良い余興じゃあ!」

熊童子「ガハ!何じゃ、この臭いは!クセー!」

村娘B「誰よ!最後すかしっぺしたの!」

サチ「酷い臭いね…。食べ物を外に出して宴会の仕切り直しね。」

 

そしてみんなで食べ物を外に出した。まあ、外で飲む酒も悪くない。

 

茨木童子「マタギ汁が出来ました。」

 

茨木童子の作ったマタギ汁をみんなに配っていった。野菜がたっぷり入ってうまそうだな。

 

酒呑童子「おお!この味じゃ!」

サチ「なかなか美味しいわね…。25点ね。」

勇者「美味しいですねぇ。」

村娘A「野菜がいっぱい入っている。」

矢内「ああ、いい味だ。」

茨木童子「皆さんのお口にあって良かったです。」

酒呑童子「ガハハハハ!腹も膨れてきたな。ガハハハハ!」

虎熊童子「そうですね。それでは少し余興を行いましょう。エリカ殿、無礼を承知でお願いがあります。」

エリカ「え、何?」

虎熊童子「エリカ殿は剣術を扱う武人と見受けられる。もしよろしかったら一度お手合わせしていただきたい。」

エリカ「分かった。あたし結構強いよ!」

虎熊童子「かたじけない!それではそちらの真剣ではなくこちらの模擬刀をどうぞ。」

エリカ「あたしの分は持ってるからいいよ。」

星熊童子「では、俺が審判をしよう。」

虎熊童子「すまんな。ではエリカ殿、いざ尋常に!」

エリカ「勝負だー!」

 

何勝手に戦っていやがるあのバカは!鬼相手に勝てる訳無いだろ!

 

矢内「おい!誰か止めろ!」

勇者「賢者さま、大丈夫ですよ。エリカにゃんはとっても強いのですよ。」

サチ「そうね、模擬戦でもゆうりん2勝8敗だものね。」

勇者「そうなんですよ。わたしが攻撃しても全然エリカにゃんに当たらないのですよ。」

 

虎熊童子「なかなか素早い攻撃だ。」カン!カン!

エリカ「お前、強いなぁ。まだまだいくぞー!」カン!カン!

 

エリカの素早い攻撃が虎熊童子を圧倒している。

 

酒呑童子「あの娘っ子なかなかやりおるのう。ガハハハハ!」

茨木童子「あの虎熊童子が押されている…。」

 

虎熊童子「クッ!このままでは…。」ブン!

 

虎熊童子の大振りな攻撃が繰り出される。エリカもそれを受け流す。

 

エリカ「お前、勇者と攻撃が似てるなぁ。動きが雑だよ!」

 

アリマ君「キー!キー!(エリカちゃん頑張れー!)」

村人A「あの戦士様凄いのう。鬼相手に圧倒しておるわい。」

ムチムチの娘「どっちも頑張れー!」

熊童子「虎熊童子!負けるなー!」

 

二人の戦いでみんなのボルテージがマックスだ。エリカ、このまま勝負を決めてしまえ!

 

虎熊童子「これほどの強者と出会ったのは初めてだ。奥の手を使わせてもらう。」

エリカ「雰囲気が変わった。マズいな。距離をとろう。」

虎熊童子「無駄だ!我が剣技くらうがよい、斬撃砲!」ビュン!

エリカ「飛び技だ、危ない!」

 

エリカが寸前の所でかわす。しかしそこに虎熊童子が詰め寄っている。

 

虎熊童子「もらった!」ブン!

エリカ「まだだよ。」カン!

 

エリカもかろうじで虎熊童子の攻撃を受け止め体勢を立て直す。

 

サチ「一進一退の攻防ね…。私達まともに鬼達と戦っていたら確実に負けていたわね…。」

矢内「ああ、シュテちゃん達がフランクな連中で本当に助かったな。」

勇者「エリカにゃんは絶対勝ちます!だってまだあの技を出していません!」

 

エリカ「今のは危なかったなぁ。でも、今度はこっちの番だよ!」

 

エリカが虎熊童子に突っ込んでいく。

 

虎熊童子「真っ直ぐ突っ込んで来たか。しかし、次で決める。もう一度くらえ!斬撃砲!」ビュン!

エリカ「当たらないよ!」

 

エリカが攻撃をかわすが虎熊童子がかわした先にいる。

 

虎熊童子「今度こそもらった!」

エリカ「甘いよ。いくぞ、連撃乱舞だ!」シュ!シュ!シュ!シュ!シュ!シュ!シュ!

 

エリカの素早い突きのラッシュだ。決まった…。

 

虎熊童子「クッ防ぎきれない。グワー!」

星熊童子「勝負あり!勝者エリカ!」

 

村人A「凄い戦いじゃったのう。」

酒呑童子「二人とも天晴れじゃあ!ガハハハハ!」

 

みんな二人の健闘を称え拍手が鳴り響く。

 

虎熊童子「参った…。本当に強い。」

エリカ「今回はたまたま勝てただけだよ。それに戦士長はもっと強いよ。あたしとアリマ君が二人がかりでも歯が立たないんだよ。」

虎熊童子「なんと、世界は広いのだな…。自分ももっと修行をしないとな。」

エリカ「またいつか勝負しようよ。あたしももっと強くなるように頑張るよ。」

虎熊童子「ええ、次は勝てるように精進します。」

エリカ「約束だよ。」

 

勇者「あの、賢者さま…。ちょっとウンコしたくなったのですが…。」

 

いい場面なのに水をさすな!

 

茨木童子「厠は屋敷入って奥に有ります。」

勇者「ごめんなさい!ちょっと行ってきます。」タッタッタッタッ

 

 

矢内「なぁ、シュテちゃんよ。この宴会の最後に俺と勝負しようぜ。」

酒呑童子「賢者殿よ。腕っ節でお主がわしと勝負になるとは思わんが…。」

サチ「賢者さん…。アルコールが回って頭がおかしくなったのかしら?」

アリマ君「キー!キー!(駄目だよ!勝てる訳無いよ!)」

矢内「まあまあ、勝負にもいろいろあるだろ。コレで勝負をしようって話だ。」ドン!

 

俺は焼酎をシュテちゃんの前に差し出した。

 

矢内「簡単に言うとどっちが酒が強いか勝負しようって事だ。みんなも盛り上がるぞ!」

酒呑童子「ガハハハハ!賢者殿は本当に面白い男じゃあ!ガハハハハ!気に入った!この勝負受けるぞぉ!ガハハハハ!」

矢内「よし!決まりだ。先にごちそうさまを言うと負けだからな!みんな!最高の『コール』を頼むぞ!」オー!

 

俺と酒呑童子の大将戦、『エンドレスコールデスマッチ』この宴会の最大イベントだ。

 

村人A「怖れながらわしが始めの音頭をとらしていただきますじゃ。お二人の!ちょっとイイとこ見てみたい!」

全員「大きく三回!」パン!パン!パン!

全員「小さく三回!」パン!パン!パン!

全員「オマケに三回!」パン!パン!パン!

全員「パーリラ!パリラ!パーリラ!」Fuwafuwa!

全員「パーリラ!パリラ!パーリラ!」Fuwafuwa!

 

俺と酒呑童子は一杯目を軽く飲み干した。すかさずもう一杯つがれる。

 

全員「ごちそうさまが聞こえない!聞こえないからもう一杯!」

全員「パーリラ!パリラ!パーリラ!」Fuwafuwa!

全員「パーリラ!パリラ!パーリラ!」Fuwafuwa!

 

みんなのボルテージも再びマックスだ。

 

勇者「あの…、賢者さま…。」

矢内「おう、勇者!戻ってきたか!」

勇者「ちょっと来てもらいたいのですが…。」

矢内「後にしろ、今勝負中だ。」

酒呑童子「賢者殿!もう降参か?ガハハハハ!わしはまだまだイケるぞ!」

矢内「何を言ってんだ!まだ始まったばかりだろうが!これからだ!」

酒呑童子「ガハハハハ!流石賢者殿じゃあ!そうでなくては。」

 

まだ5杯目だ!まだまだイケるぞ!

矢内「シュテちゃんよ!酒が減ってないぞ!降参か?」フラフラ

酒呑童子「ガハハハハ!何を言っとる!お主こそフラフラじゃあないか!」フラフラ

 

まだまだ俺達に酒は容赦なくつがれる。

 

勇者「あの…、賢者さま…。実は…」

サチ「ゆうりん、二人の邪魔しちゃダメよ…。」

熊童子「酒呑童子様!勝負を中断して下さい!」

酒呑童子「何を言っておる!これからじゃろうが!」フラフラ

矢内「ハハハ!そうだ!まだ始まったばかりだろうが!」フラフラ

村娘A「賢者様も中断して下さい!」

矢内「何を言っているんだ!グラスが開いたぞ!次だ!」フラフラ

酒呑童子「ガハハハハ!流石賢者殿じゃ!わしのグラスも開いたぞ!」フラフラ

茨木童子「酒呑童子様!賢者殿!屋敷が燃えています!勝負どころではありません!中断して下さい!」

酒呑童子「ガハハハハ!茨木童子よ!お主も冗談を言うのだのう!」フラフラ

矢内「俺が勝ったらお前達は立場がないからなぁ!上手い事言って引き分けにするつもりだな!ハハハハハハ!」フラフラ

ムチムチの娘「二人とも中断して!本当に屋敷が燃えているのよ!」

酒呑童子「何じゃと?」

矢内「本当か?」

 

俺と酒呑童子は屋敷の方を振り返った。

ゴオオオオオ!

何で屋敷に火が着いてる!俺も茨木童子も火を消してから外に出たはずなのに…。

 

勇者「賢者さま…。ごめんなさい…。実はウンコした後にわたしは賢者さまの真似して天ぷらを作ろうとしてお鍋に火を着けたのですが…お鍋の液体をひっくり返してしまいまして…。」

矢内「お前、油ひっくり返して引火させたのか!何でもっと早く言わなかった!」

 

酔いが一気に覚めた。

 

勇者「賢者さま…わたしの話を聞いてくれなかったじゃないですか…。」

サチ「今はそんな事言っている場合ではないわ。早く火を消さないと危険だわ!」

星熊童子「私達の屋敷が…。なんて事に…。」

酒呑童子「皆!屋敷を破壊して山に火が回らないようにするんじゃ!」

熊童子「しかし、酒呑童子様…。」

酒呑童子「屋敷はまた作ったらいい!このまま山まで火が着くと皆の命が危険じゃ!やれ!」

 

バーン!屋敷の中から凄い音が鳴り何かが出て来た!

 

 

かね童子「酒呑童子様!目が覚めたら牢屋に入れられてるは牢屋を出ると屋敷の中は燃えているは…どうなっているのですか!」

酒呑童子「おお!かね童子!今まで何をしとったんじゃあ?」

 

お前が牢屋に閉じ込めたんだろうが…。

 

村長の娘「もう少しで牢屋の中であたし達、焼け死ぬ所だったのよ!」

 

かね童子におんぶされながらブスが喚いている。

 

村娘B「そのまま死んだら良かったのに…。」ボソ

村長の娘「誰よ!今言ったの!かね童子!今言った奴をやっつけなさいよ!」

かね童子「どうでもいいがいい加減俺様の背中から降りろ!」

村長の娘「嫌よ!あたしはか弱いのよ!だから村まであたしをおんぶして行きなさい!」

サチ「ピーチクパーチクうるさい女ね…。だから穴を掘って埋めようって言ったのに…。」

村長の娘「何ですって!このあたしに向かって舐めた事言って只で済むと思ってるの!」

星熊童子「やかましい奴だな…。」

熊童子「かね童子!何でこんな奴を助けた!答えろ!」

かね童子「いや、あの…俺様と同じ牢屋に閉じ込められていたので…。それで…。」

虎熊童子「かね童子!そこをどけ!この女は叩き切る!存在が不愉快だ!」

 

この少しの間でここまで嫌われる奴も珍しい…。そうこうしているうちに屋敷は全焼した。幸い山には火はまわらなかった。

 

勇者「あの…。ごめんなさい…。」

酒呑童子「屋敷はまたかね童子に作らすから気にするでない!みんなが無事で何よりじゃわい!ガハハハハ!」

ムチムチの娘「でもシュテちゃん達、住む所無くなってかわいそうだよ…。そうだ!私達の村で一緒に住もうよ!」

酒呑童子「心遣い嬉しいぞ、めんこい娘っ子よ。」

村長の娘「冗談じゃないわよ!このデブ!鬼なんかと一緒に住むなんて頭おかしいの!かね童子!何か言い返しなさいよ!」

かね童子「いや、俺様も鬼だし…。」

サチ「もう我慢の限界ね。コイツは私の黒魔術で黙らせるわ…。」

 

そう言ってサチはかね童子におんぶされてるブスの口に手を当てた。

 

サチ「私の黒魔術、『お口チャック』よ…。これで暫くはコイツの不愉快な声を聞かなくてすむわ…。」

 

また俺の知ってる黒魔術と違う。

 

村長の娘「ンー!ンー!ンー!」

村娘A「いい気味ね。」

村娘B「調子に乗ってるからよ!ザマアミロ!」

村人A「もう夜が開けそうじゃ。一度村に帰ろうかのう。鬼の皆さんも一緒に来て下され。」

 

そうして俺達はみんなで村に戻る事にした。

 

 



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鬼の屋敷 3

山を下り村にたどり着いた。雀が鳴いている。

 

村人B「賢者様、わし等は一度それぞれの家に戻ります。」

村人A「賢者様!今日はありがとうございますじゃ!」

矢内「おう、みんなゆっくり休んでくれ!では俺達は村長の家に行くか。」

勇者「はい、賢者さま!」

 

そして俺達は娘達と鬼達を連れて村長の家に入った。

 

矢内「村長ー!村の娘達を無事連れて帰ったぞ!」

村長「おお!私の娘は無事なの………。何故鬼がここに?」

かね童子「静かにしろ。コイツやっと寝ておとなしくなったんだ。」

村長の娘「zzzzz………」

村長「無事なのか?娘は…」

矢内「無事だ。それでは約束の報酬をいただこうか。」

村長「鬼を連れて来て何を言っている!」

矢内「お前、言ったよな!娘を助けたら何でも報酬を払うってな!もう少しでお前の娘は屋敷で焼け死ぬ所を助けたのだぞ。」

かね童子「助けたのは俺様だけど…。」

村長「そんな事言った覚えは…。」

矢内「しらを切ろうっていうのか。こっちは証拠が有るのだぞ!」

 

そう言って俺はあらかじめボイスレコーダーで録音していた村長の声を再生した。

 

村長『お礼なら何でもします。だからお願いします!私の娘を助けて下さい!』

矢内「ほら見ろ。言ってるじゃねえか!じゃあ報酬としてお前の地位とこの屋敷を寄越せ!」

村長「そんな要求聞ける訳ないだろうが!用心棒の先生!出て来て下さい!」

用心棒「何だ村長、朝から騒々しい。」

村長「先生!この賢者とか名乗る不届き者と鬼達を始末して下さい。」

 

用心棒だと!こいつ元から報酬など払う気はなかったって事だな。

 

村長の娘「ふぁあぁ。何?人が気持ちよく寝てたのにうるさいわね。」

村長「おお!我が娘よ!無事で何よりだ!」

村長の娘「えっ、オヤジ?ここあたしの家なの?かね童子、どういう事?説明してよ!」

用心棒「そこの鬼!お嬢様から離れろ!」

かね童子「あいつもそう言ってるしいい加減俺様の背中から離れろ!」

村長の娘「嫌よ!」

村娘A「あいつ…、かね童子から離れないね…。」

村娘B「かね童子もかわいそうに…。」

ムチムチの娘「きっとあの子、かね童子の事が大好きなのね。」

酒呑童子「かね童子はブスの面倒を見る達人じゃのう。」

茨木童子「かね童子、良かったな!お前も達人になれて。」

村長の娘「あんた達、好き勝手言ってるんじゃないわよ!」

かね童子「じゃあ、背中から降りろよ…。」

 

かね童子…。いきなりアリマ君に殴られたり目が覚めたら牢屋に入れられてたり、ブスを押し付けられたりいろいろかわいそうな奴だな…。

 

村長「先生!賢者達を始末してくれたら娘を差し上げます!あいつらを退治して下さい!」

用心棒「村長、今の話は本当ですか?」

村長「ああ、本当だ!早く賢者をやっつけろ!」

 

こいつ…。保身の為に自分の娘を差し出すのか。

 

用心棒「賢者!まずはお前から殺してやる!そしてお嬢様は俺の物だ!」

酒呑童子「お主、趣味が悪いのう。」

矢内「こんなガリガリのブスのどこがいいんだ?こっちのムチムチの娘の方がエロい身体して良いに決まっているだろうが。」

酒呑童子「そうじゃのう。やはり賢者殿とは気が合うのう。またチンコが立ってきたわい!ガハハハハ!」

矢内「俺もまた立ってきた。ハハハハハハ!」

酒呑童子「賢者殿のイチモツもなかなか立派じゃのう。ガハハハハ!」

矢内「そうだろう!そうだろう!ハハハハハハ!お前もなかなか立派じゃないか!ハハハハハハ!」

サチ「あなた達…、最低ね…。」

用心棒「俺を無視しているのじゃねえぞ!貴様らー!」

 

用心棒が刀を抜いて突っ込んできた。しかし勇者が斧で刀を弾き飛ばした。

 

勇者「お前ですね!村のおっちゃん達が一生懸命作った作物を奪い取っている酷い人は!」

用心棒「なんて力だ…。刀を弾き飛ばすなんて。」

 

勇者の奴気合い入っているなぁ。よし、先にこの用心棒を倒すか。

 

矢内「勇者よ、俺達が貰う屋敷を傷つけてはいけないから外に出よう。」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「おい!わかったかクソやろう!表に出ろ!俺達がぶっ飛ばしたやる!」

用心棒「貴様、絶対に殺してやる!」

 

そうしてみんな一度屋敷の外に出ることになった。

 

矢内「そうだ、娘さん。」

ムチムチの娘「えっ、私?」

矢内「ああ、あの用心棒を倒したら、一発ヤラしてくれ。頼む。」

 

俺は渾身の土下座をした。

 

村娘全員(何最低な事を言い出すんだ、この人!)

 

酒呑童子「いかんぞ!その娘はわしの嫁に来てもらう予定じゃあ!」

村娘全員(この鬼も何を言い出すの?)

ムチムチの娘「えっと、ごめんなさい!」

 

俺と酒呑童子のチンコは一気にしぼんだ。

 

サチ「そらそうでしょう。さあ外に出て村長と用心棒をぶっ飛ばすわよ…」

俺達はみんな村長の屋敷を出た。あーやる気出ねえなぁ。

 

勇者「あの人はわたしが相手をします!みんなが一生懸命作ったものを奪い取る人なんて許せません!」

星熊童子「勇者よ、こいつは俺がやる!作った作物を奪われてきた村人達の無念を晴らしてやる!」

 

村人達がみんな集まって来た。

 

虎熊童子「村人達を脅す為に武器を扱う者など武人の風上にも置けん!自分が成敗してくれる!」

村人全員「山に住んでる鬼達がわし等の為に怒っておられる!」

村人A「山の鬼達はみんな良い方達じゃ。」

エリカ「お前、悪い奴なんだな!あたしがやっつけてやる!」

アリマ君「キー!キー!(エリカちゃんは休んでいて。僕が相手だ!)」

サチ「新しい黒魔術の実験台にちょうど良いわね…。弱そうだし、私が相手するわ。」

 

みんなあの用心棒を倒す気満々だ。俺もテンションが上がってきた。

 

酒呑童子「わしがめんこい娘っ子に振られたのはみんなお主の所為じゃ!許さんぞ!」

矢内「俺があのムチムチの娘とセックスできなかったのも全部お前の所為だ!生まれてきた事を後悔させてやる、簡単に死ねると思うなよ!」

村人全員(賢者様と酒呑童子様はただの八つ当たりだ!)

 

村長(マズい!今の内に逃げるか…。)

矢内「熊童子!村長を捕まえておけ!絶対逃がすな!」

熊童子「分かった!任せておけ!」

茨木童子「村長さん、賢者殿を敵に回したのはマズかったですね。覚悟を決めて下さい。」

村長「クソっ!先生!絶対に全員仕留めて下さい!」

 

この数に勝てる訳ないだろうが。俺達に勝ちたかったら魔王でも連れて来い!

ん?かね童子とブスが何か話し込んでいるな。

 

村長の娘「かね童子、あんたは戦ってくれないの?」

かね童子「しかし、俺様達が勝ったらお前は村にいられなくなるぞ。良いのか?」

村長の娘「あたし、あんな奴と絶対に結婚したくない!どうせあたしはみんなに嫌われてるし…村を出て行ってもいい…。」ポロポロ

かね童子「泣いているのか。お前、村を出て行きたくないのだろ!」

村長の娘「でも…。あたしに優しくしてくれたのは、かね童子だけだもの。他のみんなはあたしも村から出て行けって思っている…。」ポロポロ

かね童子「分かった!俺様が戦って勝ったらお前は村に居れるようにみんなに頼んでやるからもう泣くな!」

村長の娘「泣いてなんか無いわよ!あんた絶対勝ちなさいよ!」

かね童子「任せておけ!」

かね童子、悪いがお前達のやり取りはここに居るみんな見ている。

 

星熊童子「賢者様、ここはかね童子に華を持たせてやってはいただけないでしょうか?」ヒソヒソ

矢内「面白いものが見れたし、もちろんそのつもりだ。俺に続け、みんな分かったな。かね童子に譲るんだぞ。」ヒソヒソ

 

用心棒「お前達!誰から戦うのだ!早くしろ!」

矢内「よし!俺が」

勇者「いえ、賢者さま。わたしが」

サチ「ダメよ!ゆうりん。私が」

エリカ「待ってよ!あたしが」

アリマ君「キー!(僕が)」

酒呑童子「待たんか!ここはわしが」

虎熊童子「いえ、自分が」

星熊童子「いやいや、ここは俺が」

茨木童子「私が」

熊童子「いえいえ、ここは俺が」

矢内「俺が」

勇者「わたしが」

村人A「わしが」

アリマ君「キー!(僕が)」

エリカ「あたしが」

村娘A「私が」

熊童子「俺が」

サチ「私が」

虎熊童子「自分が」

酒呑童子「わしが」

ムチムチの娘「私が」

茨木童子「私が」

村人B「わしが」

星熊童子「俺が」

村人C「わしが」

勇者「わたしが」

矢内「俺が」

酒呑童子「わしが」

サチ「私が」

エリカ「あたしが」

熊童子「俺が」

村人A「わしが」

村娘A「私が」

酒呑童子「わしが」

虎熊童子「自分が」

矢内「俺が」

村娘B「私が」

サチ「私が」

茨木童子「私が」

勇者「わたしが」

エリカ「あたしが」

アリマ君「キー」

ムチムチの娘「私が」

矢内「俺が」

 

村長の娘「かね童子、早くしないと他の誰かがあいつたおしちゃうわ!」

かね童子「分かった!行ってくる!」

 

かね童子「みんな!スマン!ここは俺様に、」

全員「どうぞ、どうぞ。」

 

こうしてかね童子が戦うことになった。

 

用心棒「お前が相手か!お嬢様をたぶらかす悪鬼め!覚悟しろ!」

村長の娘「かね童子、絶対勝ちなさい!」

用心棒「お嬢様、何故その鬼に肩入れするのですか!?」

村長の娘「あたしはお前なんかと結婚なんか絶対嫌よ!」

用心棒「俺は今までお嬢様の為にどれだけ尽くしてきたと思っているのかお分かりですか!?」

村長の娘「そんなのどうでも良いわよ!お前は所詮自分がいい思いしたいだけでしょうが!それに命がけで炎の中からあたしを助けてくれたかね童子の方がよっぽど素敵よ!」

用心棒「クソォォォォ!今までお嬢様のわがままに我慢していたのに!」

かね童子「あー、もう良いか?」

用心棒「お前さえいなければー!」ジャキン!

 

用心棒が刀を抜いてかね童子に突っ込んできた。

 

かね童子「人間のお前が俺様に勝てる訳ないだろう…。」バキ!

 

かね童子のカウンターのパンチ一発で用心棒は倒れた。

 

勇者「弱っちい人ですねぇ。」

村長「そんな先生が…一撃で倒れた…。」

矢内「さて、お前の用心棒もやっつけたしこの屋敷とお前の地位はいただこう。」

村長「そんな…。娘よ!なんとかしてくれ!あいつらの仲間だろう?」

村長の娘「オヤジ…。」

村長「私のおかげで今まで不自由なく暮らせたのだぞ!早く助けんか!」

村長の娘「自分が助かりたいだけであたしを差し出しといて今度は助けろですって!この村から出ていけ!そして二度と顔も見たくない!」

村長「貴様!それが親に対して言う言葉か!」

矢内「村長、このままその用心棒を連れて村を出て行け…。出て行かないとお前達はそこの肥溜めに沈めて一生そこで暮らす事になるが…どうする?」

 

俺は村の共有の汲み取り式の便所を指差した。

 

サチ「だから始めに言ったわよね。私達のリーダーの賢者さんはキチガイだって。今直ぐ出て行かないと本当に肥溜めで暮らす事になるわよ…。良いのかしら?」

 

村長「そんなことが許されると」

矢内「村のみんな!村長はこれから肥溜めで生活する事になった!みんなの糞と小便を食って生きていく事になる。連れて行ってくれ!」

村人全員「よし!賢者様の言う通りにしよう!」オー!

村長「分かった!すまなかった!出て行くから許してくれ!」

 

そうして村長は気絶している用心棒を連れて村を出て行った。

酒呑童子「しかし、賢者殿よ。村長を追い出してしまってはいったい誰が村を治めるのじゃ?」

ムチムチの娘「じゃあ、シュテちゃんが治めると良いんじゃない?」

村人A「おお!そうじゃ!それが良いのう!」

サチ「そうね…。確かにシュテちゃんは欲が無さそうよね…。」

熊童子「確かに酒さえ飲ましていたら酒呑童子様は皆に何もしないとおもうが、本当に皆はそれで良いのか?俺達は鬼だぞ?一緒の村で暮らすのはどうかと思うが…。」

村人B「何を今更、わし等は星熊童子様と一緒にイモを作っていく約束をしたんじゃ。村で一緒に暮らした方が好都合じゃ。それとも、お主達はわし等に酷い事をするつもりなのか?」

虎熊童子「そんなつもりは無いが…。」

勇者「じゃあ、良いじゃないですか。」

茨木童子「始めから住んでる皆を差し置いていきなり来た酒呑童子様が村を治めると言うのは…。ちょっと、厚かましいというか…」

村娘A、B「イバちゃん、一緒に村で暮らそうよ!そしていろいろ料理教えてよ!」

酒呑童子「しかしのう…。」

矢内「なあ、酒呑童子よ。俺からも頼む。お前が村長をやってくれないか?」

 

酒呑童子は1日酒を酌み交わしたから分かるが欲もないし信用出来る。部下の鬼も良い奴らだ。

 

酒呑童子「分かった!賢者殿、頭を上げてくれ!ガハハハハ!皆!今日からワシが村長をするぞ!よろしく頼む!そして毎日宴会じゃあ!ガハハハハ!」

 

それじゃ駄目だろう…。人選をミスったか。

 

茨木童子「賢者殿、我々が村人たちをちゃんと支えていきますので…。」

矢内「ああ、スマン…。」

 

村長の娘「あんた!賢者って言ったわよね!あたしは村を出て行くから家は鬼達が勝手に使って良いって言っといて。」

矢内「ああ…。」

 

ブスは村を出て行った…。

 

酒呑童子「かね童子ーーーーー!!!!!!何をしておるんじゃあーーーーーー!!!!さっさとブスを追わんかーーーーーー!!!!」

 

声がデケェ。鼓膜が破けそうだ。

 

かね童子「酒呑童子様、良いのですか?あの娘を村に置いても…。」

酒呑童子「ブスの面倒見るのはお前の仕事じゃろうがーー!!!!!!行けーーーー!」

ムチムチの娘「早く追ってあげて!」

星熊童子「はよう行かんか!」

かね童子「みんな!すみません!行って来ます!」

 

かね童子がブスを連れ戻しに行った。酒呑童子、部下思いだな…。

 

村娘A、B「ロマンスね…。」

 

 

 

 

矢内「一件落着だな。しかし、俺達はまた山を登ることになるのか…。」

酒呑童子「わざわざ山を登らなくてもそこの道を通ると良いじゃろう。」

矢内「それがだな、大きな岩が邪魔で通れないから山を登って迂回しないと行けないんだ。」

酒呑童子「ガハハハハ!そんな事か!わしがその岩を破壊してやるわい!茨木童子、熊童子!手を貸せ!」

 

そう言って酒呑童子達が道を塞いでいる岩を拳で破壊した。

 

サチ「本当に戦うことにならなくて良かったわ…。」

矢内「ああ…。」

勇者「これで道を通ることが出来ますね。シュテちゃん達!本当にありがとうございます!」

酒呑童子「ガハハハハ!気にするな!」

矢内「本当に助かった!ありがとう!」

酒呑童子「賢者殿、わし等はお主達のことが本当に気に入った。わし等は何時でもお主達が困った時は力を貸すぞ!」

矢内「ああ、またいつか酒を飲み交わそう!」

酒呑童子「そうじゃのう!まだ賢者殿との決着はついておらんからのう!ガハハハハ!」

矢内「そうだな!次は絶対決着をつけよう!約束だ。」

酒呑童子「ガハハハハ!賢者殿は本当に面白い男じゃあ!次会えるのが楽しみじゃわい!」

矢内「そうだ!シュテちゃんよ。村が落ち着いたらファンタルジニアの国の傘下に入ったら良い。童帝や戦士長は俺が信頼出来る人物だ。きっと村の発展に力を貸してくれる。」

酒呑童子「賢者殿がそこまで言う人物なら一度会いに行くがわし等は気に入った者にしか協力はしないぞ。」

矢内「ああ、それで構わん。童帝はキモイ顔だが俺なんかよりも出来た人間だ。きっと気に入るさ。」

サチ「賢者さん、名残惜しいけどそろそろ行きましょう。」

矢内「そうだな!行くか!」

勇者「はい!賢者さま!」

矢内「みんな!世話になった!」

エリカ「みんな!元気でな〜!」

 

そうして俺達は次の冒険に向かった。

 

矢内「あっ!俺は明日から会社があるから一度帰るぞ!」

サチ「はぁ?」

エリカ「会社って何?」

勇者「会社っていうのは賢者さまが所属している訳の分からない組織です。」

矢内「その訳の分からない組織から俺が給料を貰っているからお前達は飯を食えてるんだ!いいからゲートを開けろ!」

勇者「……分かりました。明日また迎えに行きます……。」

矢内「明日じゃねぇ!会社の休みの日にしろ!」

 

そうして俺は元の世界に帰った。

 

 

 

第4話

鬼の屋敷

END




登場人物紹介


勇者………14才♀
矢内をファンタルジニアに呼んだ張本人、人の話をあまり聞かない。


サチ………15才♀
勇者の友達、厚かましい性格の元引きこもり。黒魔術でパーティーをサポートする。


エリカ………17才♀
細剣を使いこなすファンタルジニア城の戦士。城を訪れた勇者達と旅に出ることになった。基本的に何も考えていない。


アリマ君………12才♂
強い!賢い!喋れない!三拍子揃ったアーリマンの子供。エリカとは大の仲良し。


畑中………34才♂
矢内が信頼出来る友人、仕事もしないで親の金で毎日パチスロをしている。


戦士長キサラギ………38才♂
ファンタルジニア城最強の戦士。エリカの事は自分の娘のように面倒を見ている。


酒呑童子………28才♂
鬼達のボス、三度の飯より酒が好き。矢内とは女の趣味が同じ。


矢内 孝太郎………34才♂
主人公、スコールは炭酸が抜けても旨い!



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国境を越えて
北の国から勇者さま 1


今日は困ったことがあるのでさっちんと一緒に賢者さまのいる会社って所に来ました。

 

サチ「ここに賢者さんはいつも働いているのね…。みんな薄汚い格好をしているわね…。」

勇者「きっと、このドアの向こうに賢者さまは居ます。」

 

わたしは勢いよくドアを開けました。

 

勇者「賢者さまー!」

矢内「死ね!コラー!」ドカッ!バキ!ドカッ!

???「止めてくれー!」

社長「矢内!お前相手先の社長に何してるねん!止めんか!」

サチ「」

勇者「」

 

賢者さまが知らない人を蹴り続けています…。とにかく止めないと!

 

勇者「賢者さま!」

矢内「勇者!良いところに来た!斧を貸せ!こいつの頭を叩き割ってやる!」

社長「お前!何言い出すねん!!相手先の社長や言うてるやろ!」

相手先の社長「私にこんな事をしてただで済むと」矢内「黙れーーー!!俺はお前が死ぬまで蹴り飛ばすを止めない!!」ドカッ!バキ!

社長「矢内!!安全靴で蹴るの止めんか!お前達、矢内を止めろ!」

サチ「賢者さんがここまで怒ることなんて…。あの人一体何をしたのかしら?」

勇者「賢者さま!何があったか知りませんが止めて下さい!」

矢内「何があったかだと!コイツはスコールをくだらないガキの飲み物だと抜かしやがって!ブラックコーヒー飲んでる奴がそんなに偉いのか!死ね!」ドカ!バキ!

サチ「」

勇者「」

社長「」

相手先の社長「そ、そんな事で…私がどれだけ偉いか分かっているか…」

矢内「お前の何が偉いんだ!お前の会社を立ち上げたのはお前の親父だろうが!親の七光りのお前が調子こいてるんじゃねぇ!カスが!」ドカッ!

社長「お前ら!もう矢内の奴をどこかに連れて行け!」

 

社長さんの許可が出ましたのでファンタルジニアに行きましょう。

 

勇者「でも賢者さま、まだ怒っています…。」

サチ「ゆうりん、大丈夫よ。私に考えがあるから。」

 

さっちんは頼りになります。

 

サチ「賢者さん、実はファンタルジニアにスコールを馬鹿にする酷い奴が居るのだけど…。」

矢内「何!!!!どこのどいつだ!案内しろ!ぶっ飛ばしてやる!」

サチ「さあゆうりん、ゲートを開けて。」

勇者「分かりました。では行きましょう!」

矢内「命拾いしたな!オラ!」ドカッ!

 

相手先の社長「くそ…。肋が折れてる…。二度とお前の会社と取引するか…。」

 

 

 

俺達はゲートを通ってファンタルジニアに来た。どこのどいつだ!ぶっ飛ばしてやる!

 

サチ「あいつよ…。賢者さん、ぶっ飛ばして…。」

矢内「」

 

なんだ!あれは!俺はサチが指を指した方向を見た。馬鹿デカいタコがいる。

 

サチ「あのクラーケンよ…。」

勇者「賢者さま、あいつが邪魔で橋が通れないのです…。」

矢内「とりあえず………退却だ!」

勇者「えっ?」

矢内「えっ?じゃねぇ!逃げるんだよ!」

 

俺達は全速力で橋の麓まで逃げた。麓の先にはエリカ達が待っていた。

 

エリカ「あっ!みんな帰って来た!賢者、お前汚い格好だなぁ。」

 

黙れ、これは会社の作業服だ。

 

矢内「お前ら、どういう事だ!ちゃんと説明しろよ!」

勇者「橋の上に大きな魔物が居ます。」

 

見たら分かるわ!

 

エリカ「すげぇデカいんだよ!」

 

見たら分かるわ!

 

アリマ君「キー!キー!キー!」

 

分からねえよ…。

 

サチ「これからこの大橋を渡って国境を越えて北の国に行くのだけど人が通ろうとするとあのクラーケンが出て来て行くてを阻むのよ…。毎日居ないのだからたまには知恵を出して役に立ちなさいってことよ…。」

 

なんて物の言い方だ、この女!今日のコイツの飯は死なない程度の下剤を混ぜてやろう。

 

矢内「橋を渡ろうとすると現れるのか…。相手は海の魔物だ。船も駄目だな…。」

エリカ「あっ!分かった!端を渡らないで真ん中を渡ればいいんだよ!見てろよ!」

 

そう言ってエリカは橋を渡って行った。そんな一休さんみたいなトンチが通用するか、馬鹿が!

 

エリカ「ウワー!」ボチャーン!

 

エリカはクラーケンの足に捕まり海に投げ飛ばされた。

 

勇者「エリカにゃんはお馬鹿さんですねぇ…。」

矢内「通ろうとするとああやって海に落とされるんだな…。」

勇者「橋の上に魔物が現れるので橋の下を捕まりながら行きましょう!見てて下さい!」

 

海に居る魔物だから丸見えだろうが…。

 

勇者「あっ!そんな…海から現れるなんて!ウワー!」ボチャーン!

 

勇者もクラーケンに捕まり海に投げ飛ばされた。そらそうだ…。

 

サチ「賢者さん…。私の苦労が少しでも分かったかしら?」

矢内「ああ、なんかすまんな…。」

 

俺が悪い訳では無いが一応、謝った。

 

勇者「賢者さま!なんで助けてくれなかったのですか…。」

エリカ「そうだー!あたし達びしょ濡れになったじゃないか!」

 

知るか!

 

サチ「仕方がないわね…。私の黒魔術で撃退しましょう…。」

 

黒魔術だと!また怪しい変な術か…。

 

サチ「橋を少し行った所に真っ二つになった女性の死体を使いましょう。」

 

クラーケンに殺されたのか…。酷いな…。上半身と下半身が綺麗に切られている…。

 

サチ「行くわよ…。『カーズ マリオネット』!」

 

うわっ!死体の上半身が動き始めた!

 

サチ「これは対象者一人を意のままに操る事が出来る黒魔術よ…。みんな、コイツをクラーケンにけしかけるから相手が怯んだ隙に橋を渡るわよ。」

矢内「死者を冒涜するな!」

勇者「さっちん…死んじゃった人が可哀想です…。」

サチ「こんな所で死ぬ奴が悪いのよ!それにもう二つとも魂がないからきっと成仏してるわよ。」

矢内「二つ?下半身は違う人なのか?」

サチ「ええ、そんな事はどうでも良いわ…。さぁ行くわよ!」

 

お前一回呪われろ!サチが死体をクラーケンにけしかけた。

 

クラーケン「キシャアアア!」

 

クラーケンが死体を捕まえて海に投げる。

 

サチ「フフフ、無駄よ。」

 

死体は空を飛びながら戻って再びクラーケンに突っ込んで行く。また捕まった。

 

サチ「あっ死体が食べられてしまったわ…。失敗ね…。撤退よ…。」

 

俺達はまた橋の麓まで戻ってきた。

 

矢内「何が黒魔術だ!全然駄目じゃねぇか!」

サチ「『カーズ マリオネット』!」

矢内「おわっ!体が浮いてる!何をした!」

サチ「喰らいなさい!」

矢内「おわー!」ボチャーン!

 

俺は海に飛ばされた。

 

矢内「クソッ!何しやがる…。びしょ濡れじゃねぇか…。」

 

クソったれ…あいつはあまり怒らせない方がいいな。

 

矢内「あいつ…デカいけどタコだよな。………よし、アリマ君!ちょっと協力してくれ!」

アリマ君「キー!」

矢内「いいか?俺があのタコの注意を引きつける。その隙に空からこの真水を上からあのタコにぶっかけてくれ。」

アリマ君「キー!(分かったよ。)」

 

タコは真水につけると死ぬ。2リットルのペットボトルの水しかないが殺せなくても水をかぶったら慌てて海に逃げ出すだろう。

 

矢内「その前に…」

 

俺は異次元袋から釣り竿を取り出してタコを釣り上げた。

 

矢内「小さいな…。まあいいだろう。」

サチ「そんな小さいタコが何の役に立つのかしら?」

矢内「まあ見てろよ。よし!行くぞ!」

 

俺達は再びクラーケンにやってきた。

 

矢内「お前のガキは預かった!返して欲しかったらその橋をどけ!」

「キシャアアアー!」

 

よしクラーケンが俺の方に向かってきた。よしアリマ君……

 

エリカ「アリマ君、ちょっとのど乾いたからそのお水頂戴。」ゴクゴク

勇者「エリカにゃん、わたしもください!」ゴクゴク

矢内「」

 

あの馬鹿共!切り札の水を飲んでいやがる!クラーケンの足が!しまった!

 

矢内「おわー!」ボチャーン!

 

俺はクラーケンに投げ飛ばされて海に落ちた。

 

サチ「賢者さんは一体何をしているのよ!みんな、撤退よ!」

 

再度橋の麓まで戻ってきた。

 

作戦は失敗した…。

 

エリカ「賢者!全然駄目じゃん!」

 

お前達の所為だ!

 

サチ「雲行きが怪しくなってきたわ…。一度もどりましょうか…。」

 

ん?こりゃ一雨きそうだな。雨か…。

 

矢内「いや待て、雨が本降りなるのを待ってから橋を渡るぞ。」

エリカ「デカいのがいるよ。賢者、馬鹿なのか?」

矢内「馬鹿はお前だーー!」ガン!

 

俺は頭に来たのでエリカに拳骨を喰らわした。

 

矢内「いいか!タコは真水に弱い!だから大雨が降ると海から出てこないはずだ。だからその隙に橋を渡りきる。」

サチ「それでアリマ君に水を渡していたのね…。それをゆうりんとエリカさんが飲んで作戦は失敗したのね…。」

矢内「そうだ、アリマ君。これからはちゃんとアイツの面倒を見ないと駄目だぞ。」

アリマ君「キー…。」

サチ「これじゃどっちが飼い主か分からないわね…。」

 

おっそうこうしている内に降ってきたな。

 

勇者「賢者さま、雨が降って来ましたよ。」

矢内「よし!みんな、橋を渡りきるぞ!」

勇者「はい、賢者さま!」

 

俺達は駆け足で橋を渡った。

 

サチ「クラーケンがいないわね…。」

勇者「賢者さまの言うとおり魔物が居ません。」

エリカ「本当だ!賢者すげぇな!」

矢内「このまま一気に渡りきるぞ!」

勇者「はい、賢者さま!」

 

橋をなんとか渡りきった。

 

サチ「看板が立ってあるわね…。えっと、この先500メートルにノートルランド城下町…私達、国境を越えたのね…。」

エリカ「城下町かぁ。早く行こう!」

アリマ君「キー!」

矢内「そうだな!服びしょ濡れだしさっさと行ってまずは宿をとろう。早く着替えないと風邪をひいてしまう。」

勇者「わたし、今まで風邪なんてひいた事ありませんよ。」

エリカ「あたしも無いぞ!賢者が軟弱なんだよ。」

 

それはお前達が馬鹿だからだ。



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北の国から勇者さま 2

城下町にたどり着いた。雨もすっかりあがって夕日が見える。

 

エリカ「そんなに大きくない街だなぁ。」

サチ「これだと宿も直ぐに見つかるわね…。早く行って着替えましょう。」

矢内「おっ、あれだな。」

 

早速宿を見つけた俺達は部屋を二つ取って濡れた服を着替える事にした。

 

矢内「俺は着替え終わったら少し出かけるからお前達は隣の部屋でゆっくりしていてくれ。」

勇者「あっ、はい、賢者さま。」

 

さて、一人になれた事だし街をいろいろ見て回るとしよう。この通行証のおかげで通行料はかからず宿代まで格安になったから何か買い物をするのも良いかもしれないな。

 

 

 

勇者「賢者さま、行っちゃいましたねぇ…。」

エリカ「なぁ、あたし達も街を見て回ろうよ!」

サチ「そうね。暗くなる前に行きましょうか。」

 

わたし達も街をいろいろ見て回る事にしました。そして、広場に出るといいにおいがしてきました。

 

サチ「あら?いいにおいがするわね…。」

エリカ「あっちからだ!」

勇者「そういえばわたし達、今日何も食べていませんね…。」

エリカ「昨日で賢者のくれた缶詰無くなったもんなぁ…。」

アリマ君「キー…。」

サチ「そうね…。賢者さんが居ない時の食事はいつも悲惨よね…。」

勇者「さっちん、エリカにゃん、行ってみましょう!」

 

わたし達は美味しそうなにおいのする方へ行って見ました。女の人が何かしてます。

 

???「あら?いらっしゃい。ごめんなさい、お店まだなのよ…。」

サチ「お店?」

???「ポーラ!客か?」

 

今度は大きな男の人が出てきました。

 

ポーラ「ええ、可愛らしいお客さんが3人よ♪タイショウ。」

勇者「アリマ君も居るから4人です。」

アリマ君「キー!」

タイショウ「そうか、そうか!直ぐに準備するから少し待って欲しいタイ。」

 

そう言ってタイショウさんはイスとテーブルを用意してくれました。

 

ポーラ「はい、お水どうぞ♪」コト

勇者「ありがとうございます。」

サチ「あ、あの、こ、ここはど、ど、ど、どういうお店なのかしら?」

エリカ「サチ?どうしたんだ?」

サチ「この街で初めて会う人よ、き、緊張するじゃない…。」

ポーラ「ラーメン屋さんよ。タイショウがこの国の勇者に選ばれちゃったからこの屋台で今日から世界中を回る事になっちゃったのよ。」

エリカ「ラーメン?何それ?」

アリマ君「キー?」

勇者「わたしも知りません…。さっちんは知っていますか?」

サチ「いえ、私も知らないわ…って聞く所はそこじゃ無いでしょ!あなた達勇者一行なの?」

タイショウ「そうタイ!明日から橋を渡ってファンタルジニアの城を目指すタイ!そこでラーメンを販売するんじゃあ。」

エリカ「お城に行くの?じゃあ戦士長によろしく言っといて。」

ポーラ「あなた達…この国の人じゃあ無いよね…。」

サチ「ええ、私達はファンタルジニアの城から来た勇者一行よ…。」

勇者「はい!わたしは一国の勇者です。」

ポーラ「あら、そうなの?ラーメンが出来るまで冒険のお話してほしいな♪」

エリカ「うん、いいよ!」

 

わたし達はポーラさんに今までの冒険のお話をしました。

 

ポーラ「フフフ。あなた達、とっても仲良しなのね♪それに賢者様、とっても優しい人なのね♪」

エリカ「賢者は優しくなんか無いぞ。直ぐ怒るんだぞ。」

ポーラ「フフフ。でもいつもあなた達の為に魔法のお料理?作ってくれるのでしょ?」

勇者「はい!毎回違うお料理なんですよ。」

ポーラ「そう、毎回違うお料理を作るってとっても大変なのよ。あなた達の事を心から思っていないと出来ないことよ。」

タイショウ「ラーメン4丁あがったタイ!」

ポーラ「ちょっとゴメンね♪ハーイ♪今行きます♪」

 

ポーラさんはわたし達にラーメンを持って来てくれました。

 

ポーラ「タイショウのラーメンも心からお客さんの事を思って作るから賢者様の魔法のお料理に負けないくらい美味しいわよ♪さあ、麺が伸びないうちに食べて♪」

エリカ「凄いこれ、お肉も入ってるよ!」

アリマ君「キー!キー!(とっても美味しそうだね)」

サチ「真っ白のスープに麺が入った料理なのね…。」

勇者「では、食べましょう!」イタダキマス!

ポーラ「フフ、召し上がれ♪」

 

わたし達は夢中でラーメンを食べました。スープはとっても濃厚で麺と絡んで凄く美味しいです。お肉も茹で卵も入っていています。どんぶり一杯にすべてが詰まったご馳走です。

 

勇者「スッゴく美味しかったです!」

サチ「とっても美味しかったわ…。ごちそうさま。」

エリカ「後で賢者に教えてやろうよ。すげぇ美味かったって。それで今度作って貰うんだ!」

勇者「あっ!それいいですね!」

サチ「いいアイデアだわ。」

ポーラ「フフフ、あなた達、賢者様の事が本当に大好きなのね♪」

タイショウ「ポーラ!せっかくファンタルジニアの勇者一行が来たのだから今日は店は閉めるタイ!いろいろと話がしたいタイ!」

アリマ君「キー!」

ポーラ「あら?君、どんぶり片付けくれたの?お利口さんね♪」

アリマ君「キー!」

 

ラーメンを食べ終わったわたし達はタイショウさんも交えてお話をする事にしました。

 

 

 

さて、この世界を一人で行動するのはポーキーの家に行った時以来だな。ここから先は森だな。ん?森の前に人が居る。座りこんで何しているんだ?勇者達と同じ年頃の女の子だな。あの持っているのは肉か?一人でバーベキューか?

 

矢内「お前、一人こんな所で何しているんだ?」

???「わたしは…お前じゃない…。わたしは…シンディ…。あなたは…誰…?」

矢内「俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

 

今の俺のかっこよさにまた一人ファンが出来てしまった。俺も罪な男だ。

 

シンディ「あなたとは…今初めて会った……。だから…好きかどうかは…分からない…。」

矢内「そ、そうか…。で、こんな所で何しているんだ?」

シンディ「ラーメンっていう食べ物に入れる肉を焼くところ…。でも…、火が着かない…。」

矢内「ラーメンだと!食えるのか?」

 

まさかこの世界でラーメンが食えると思わなかった。楽しみだ。

 

シンディ「わたしは…火の魔法は苦手…。だから…練習の意味も込めて勇者タイショウから肉を焼く役割をかってでた…。でも…出来ない…。火が着かない…。」

 

雨上がりでは地面が湿気て火は着かないよな。そうだ、チャーシューだよな。あれを試す良い機会だ。

 

矢内「よし!俺が手伝ってやる。」

シンディ「ホント?」

矢内「ああ!これを使う。」

 

俺は異次元袋からシンナーが入っていた空の一斗缶を取り出して下の一面を切り取った。そして水洗いをして水分を拭き取った。

 

シンディ「何をするの?」

矢内「これでチャーシューを燻製にするんだ。」

シンディ「燻製?タイショウの作り方と…違う…。」

矢内「焼き方は一つじゃないって事だ。まあ見てな。」

 

俺は一斗缶の上の方に棒を通して肉を吊した。乾燥した木のチップに火を付けて一斗缶の中に入れた。

 

矢内「ん?これじゃ、チャーシューの脂が落ちた時に木のチップが燃えてしまうな。少し改良しようか。」

 

俺は一斗缶の下を少し切り、切り取った間から煙が入るように改良した。

 

矢内「これで完璧だ、元々火は通っていたから後は一時間ぐらい待つだけだ。」

シンディ「何で?煙しか出てない…。これじゃ焼けない…。」

矢内「この煙でチャーシューを焼くんだ。煙の味がして凄く美味しくなるんだ。」

シンディ「煙の味?分からない…。」

矢内「出来たら少しだけ食べて見るといい。絶対美味いぞ!」

シンディ「分かった…。そうする…。」

 

 

 

 

 

わたし達はそれからタイショウさん達とお話をしました。タイショウさん達にはもう一人シンディという魔法使いの女の子が居るらしいのです。わたしと同じ年の子だって言ってました。

 

タイショウ「それにしてもシンディの奴はまだ戻ってこんタイ。」

エリカ「なぁタイショウ、シンディってどんな奴だ?」

タイショウ「ああ、あまり喋らない奴タイ。」

ポーラ「そうなの…。私達と旅に出るのあまりよく思って居ないのかなぁ…。私はシンディちゃんと仲良くなりたいのだけど…。」

勇者「そんな事無いですよ、きっと。一緒に冒険していくと仲良くなれますよ!」

アリマ君「キー!」

勇者「アリマ君もそう言ってます。」

サチ「あら?こっちに女の子が近づいて来るわ…。あの子がシンディって子じゃないかしら?」

ポーラ「あら、本当。シンディちゃんだわ。一緒にいる男の人は誰かしら?」

エリカ「あっ!賢者だ!」

タイショウ「おお!シンディの奴が戻ってきおった!隣に居るのがお主達の仲間の賢者殿か。」

 

シンディって子、何で賢者さまと一緒に居るのでしょうか?

 

シンディ「タイショウ…。遅くなった…。でも…とても美味しいチャーシューが出来た…。」

ポーラ「シンディちゃん、遅いから心配したのよ…。」

タイショウ「まあ、戻って来て何よりタイ!」

シンディ「タイショウ…ポーラ…チャーシューの味を見て欲しい…。」

 

戻って来たシンディって子はタイショウさんとポーラさんにお肉を差し出しました。

 

ポーラ「シンディちゃん、凄く美味しいわ♪」

タイショウ「ワシの作るチャーシューとは違う!こうばしくて美味いタイ!どうやって作ったんじゃ?」

シンディ「実は…矢内 孝太郎と一緒に作った…。」

矢内「あんたがタイショウにポーラか。実はそのチャーシューは燻製にしたんだ。湿気で火が着きにくくてな。」

勇者「賢者さま!なんでその女と一緒に居たのですか?」

矢内「お前ら部屋に居たのじゃ無いのか?まあいいや、それより今日はラーメンが食えるんだ!喜べ!」

エリカ「あー、もうみんな食べたよ。」

アリマ君「キー!キー!(とっても美味しかったよ!)」

 

クソー!先に食ってるんじゃねぇよ…。お前らに教えてやろうとテンション上がってたのに…。

 

シンディ「タイショウ…このチャーシューで矢内 孝太郎にラーメン…作って欲しい…。」

タイショウ「任せるタイ!賢者殿、少し待っててくれ。」

矢内「ああ、すまんな。」

 

 

 

 

 

ポーラ「はい、どうぞ♪」コト

矢内「ああ、わるいな。」

 

ポーラが水を持って来てくれた。

 

勇者「賢者さま、あの子と何をしていたのですか?」

矢内「ああ、ラーメンのチャーシュー、肉を作っていたんだ。シンディは大人しいが素直な奴だ。お前ら年が近いから仲良くしろよ。」

エリカ「分かった!」

アリマ君「キー!」

 

そうこうしている内にラーメンが出来た。ポーラが持って来てくれた。シンディも一緒にやって来た。

 

ポーラ「賢者様、お待たせしました♪」コト

矢内「ああ、すまんな。おお!スープは豚骨か!チャーシューが7枚も入っている!旨そうだ!」

勇者「あー!賢者さまのだけ七枚もお肉が入っています!」

サチ「私達のラーメンは二枚しか入っていなかったわ…。どういう事かしら?」

シンディ「矢内 孝太郎は特別…。いっぱい食べて欲しい…。」

エリカ「賢者だけズルいぞ!」

アリマ君「キー!キー!」

 

意地汚い奴らだ。

 

サチ「『カーズ マリオネット!』」

 

クソッ!動けない!

 

サチ「さぁ、今のうちに賢者さんのどんぶりからお肉を一枚ずつ頂くわよ!これでみんな三枚ずつよ。」

エリカ「よし、もーらい!」

アリマ君「キー!」

勇者「賢者さま、いただきます!」

 

こいつら、俺のチャーシュー取りやがった!

 

矢内「やっと動ける…。さぁ、食うか!」

 

まずは麺からいただくか。

 

勇者「賢者さま、美味しいですか?」

矢内「まだ食ってねぇよ!」

エリカ「美味いだろう?」

矢内「まだ食ってねぇよ!」

 

麺をすすった。

 

シンディ「矢内 孝太郎…。美味しい?」

矢内「ああ、美味い、最高だ!」

勇者「賢者さま!何でその女には答えるのですか!」

シンディ「私は…矢内 孝太郎が食べてから聞いた…。あなたは食べる前に聞いた…。それだけ…。」

勇者「むぅ!」

 

何を突っかかってるんだ。燻製のチャーシューもスープにあう。本当に美味い!

 

矢内「あー美味かった!ご馳走さま!」

ポーラ「お水のおかわり入れましょうか?」

矢内「俺の食後の飲み物はスコールなんだ。」

ポーラ「そうですか…。」

 

なんかすまんな…。しかしこれだけは譲れないんだ。

 

???「タイショウ殿!こんな所に…探しましたぞ!」

 

誰か来た。

タイショウ「お主は城の兵士じゃな。」

兵士「明日は国境を越えるので早くお休みいただかないと。」

タイショウ「しかし、わし等は今ファンタルジニアの勇者達と話をしている所タイ。」

ポーラ「そうですわ。今、賢者様も来た所ですのに…。」

シンディ「城に帰れ…。」

兵士「シンディ!帰れは無いだろう!帰れは!一応、幼なじみだよな!」

ポーラ「あの、用が無ければ帰ってくれますか?」

兵士「用が無ければじゃないでしょう!ポーラさん!」

ポーラ「どうして私の名前知っているのかしら…。怖いわ…。」

兵士「怖いわ…。じゃないでしょう!そこのシンディと一緒にあなた達と旅に出る事になったカインですよ!」

タイショウ「お主は結構タイ…。」

カイン「結構じゃありませんよ!」

タイショウ「冗談タイ!」

シンディ「夜になった…。大声で喚かれると近所迷惑…。」

カイン「あなた達のせいでしょう!宿で待機するように言ったじゃないですか…。どれだけ探したと思っているのですか?」

タイショウ「ハハハ!お主の頭はバリかたタイ。」

シンディ「むしろ…ハリガネ…。」

ポーラ「いいえ、コナオトシですわ。」

カイン「人の頭を替え玉で表現しないで下さい!」

 

この兵士、かね童子と似た扱いだな…。

 

矢内「なかなかいいパーティーじゃないか。」

カイン「あなた達は一体?」

シンディ「この人は矢内 孝太郎…。賢者様…。後、仲間のA、B、Cそれとペット…。」

勇者「A、B、Cじゃありません!わたしは一国の勇者です!」

シンディ「私はあなた達の名前は知らない…。一国の勇者…。あなたは覚えた…。後の2人も名前…教えて欲しい…。」

サチ「そういえば私達、自己紹介していなかったわね…。私は三神 サチ…黒魔術師よ。サチでいいわ。」

エリカ「あたしはエリカ!ファンタルジニアの戦士なんだ。そして、アリマ君はあたしの友達なんだよ。」

アリマ君「キー!キー!(よろしくね!)」

シンディ「そう…。私は…シンディ…。ノートルランドの魔法使い…。氷の魔法が得意…。チャーシューを担当している…。」

ポーラ「あっ!そういえば私達、自己紹介していなかったわね。改めて、私はポーラ♪この国の僧侶をしていたの♪今はタイショウと一緒にこのラーメン屋さんをしているわ♪接客を担当しているの、よろしくね♪」

 

とても明るく優しそうな人だな。

 

タイショウ「わしはタイショウ!ラーメン屋の店主をしているタイ。ポーラは今までも店を手伝ってもらってたタイ。シンディとは一昨日に城から紹介されたタイ。」

矢内「3人ともよろしくな。」

カイン「俺を忘れないで下さいよ!俺はカイン。この国の戦士だ。魔王討伐の為この旅に参加した。」

アリマ君「キー!(よろしくね。)」

カイン「ま、魔物!街に入ってくるとは!おのれ!俺が叩き切ってやる!」ジャキン!

 

カインが剣を取り出すがエリカに軽く弾き飛ばされた。

 

エリカ「アリマ君はあたしの友達なんだよ!何するんだ!」

矢内「そうだぞ!アリマ君は俺達の仲間で一番役に立つんだ!」

カイン「しかし…魔物は本来、魔王の手下で悪の手先なのですよ!今倒して置かないと大変な事になります!」

矢内「アリマ君?お前、魔王の手先なのか?」

アリマ君「キー!キー!(違うよ。)」フルフル

矢内「違うって言ってるだろうが!嘘つくな!」ドカッ!

 

俺はカインの腹を安全靴で蹴り飛ばした。つま先に鉄の入っている安全靴は凶器になるからな。こういう自分の考えを押し付ける奴は一度痛い目に遭えばいい。

 

カイン「ぐわっ!アバラが折れてる…。ポーラさん、回復魔法をお願いします。」

タイショウ「キック一発で大袈裟な奴タイ…。」

ポーラ「アリマ君はとっても良い子よ。それをいきなり攻撃しようとした罰ですわ!神様もお怒りよ。」

シンディ「矢内 孝太郎…。アイツを…後三発ほど…蹴り飛ばして欲しい…。」

カイン「みんな俺に酷い…。」

エリカ「お前、弱いからもう旅に出るの止めておけよ…。普段戦わない賢者なんかに負けてたら誰にも勝てないぞ。」

カイン「俺は剣術を城で習ったんだ。」

エリカ「さっきので分かったけどお前の太刀、遅いから誰でも見切れるよ。」

カイン「そんな…。二年も訓練したのに…。」

エリカ「何が二年もだよ!武器は簡単に抜いていいものじゃ無いんだぞ!」

矢内「エリカ、それぐらいにしてやれ。一度宿に戻ろう。カイン、いきなり蹴り飛ばして悪かったな。でも、アリマ君は俺達の仲間だ。悪い奴じゃ無い。分かってくれ。」

 

 

 

 

俺達は宿に戻った。俺は男同士で暫く話をする事にした。

 

カイン「賢者様達はこれからどちらに向かう予定ですか?」

矢内「俺達は明日から砂漠の国に向かう予定だ。ファンタルジニアの国の近くの町でちょっとした事件があってな。その事件の黒幕が居るらしい。まずはそいつを捜す。」

タイショウ「わし等は商売をしながら南に向かって行くタイ。南の港町から船に乗って北西に行くタイ。上手く行くと砂漠の国でまた会えるかもしれんタイ。」

矢内「そのルートで砂漠の国にはどれくらいで着くのだ?」

タイショウ「商売をしながらじゃからのう…。だいたい3ヶ月くらいになるタイ。」

矢内「そうか…。では3ヶ月後に砂漠の国でまた会おう。その時にお互い情報交換をしないか?」

カイン「我々は魔王討伐の為に旅に出るのです!そんなのんびりしていると!」

矢内「ところで…まず、魔王討伐って言ってるけど具体的にお前たちは魔王にどんな被害を受けたんだ?」

タイショウ「それはわしも気になっていたタイ。」

カイン「いや…魔王ですよ!魔物ですよ!我々人間に被害が出るに決まっているじゃないですか!」

矢内「人間じゃない他の種類はみんな敵なのか?」

カイン「当たり前でしょう!魔物ですよ!」

タイショウ「アリマ君は良い奴タイ!」

矢内「カイン、お前自身は魔物に何かされたのか?」

カイン「いえ…。俺は何も…しかし…」

矢内「俺はファンタルジニアの国を旅して来た。初めにオークと人間の混血児の女の子と友達になった。別の村では鬼の頭と村人達と一緒に酒を飲んだ。アリマ君だって食事の前に食器並べてくれたりエリカの面倒見たりとても良い奴だ。」

カイン「そんな事…凶悪な鬼やオークと友達になっただなんて、信じられません。」

矢内「その魔王だってどんな奴か分からないのに討伐したらお前はただの侵略者だぞ。」

カイン「しかし!」

タイショウ「魔王は今はどうでも良いとして賢者殿よ、そのファンタルジニアで会った鬼やオークはわし等のラーメン食ってくれるかのう?」

 

オークが豚肉食うのか?まあいいや。

 

矢内「ああ、是非作ってやって欲しい!俺や勇者の友人だって言ったらみんな警戒しないだろう。」

タイショウ「そうか!今から楽しみタイ!」

カイン「何を言ってるのですか!タイショウ殿!我々の目的は商売じゃありませんよ!」

タイショウ「お主、嫌なら城に帰ってくれるかのう?ハッキリ言って商売手伝わないなら迷惑タイ!」

矢内「いや、タイショウ。カインは連れて行ってやってくれ。カインよ、ファンタルジニアの国に行って鬼やオークが本当に悪い奴らかどうかその目で一度会ってこい。」

タイショウ「賢者殿がそう言うなら…。これからはラーメンのどんぶりを洗うなら連れて行ってやっていいタイ。」

カイン「分かりました。皿洗いでも何でもします。」

矢内「なぁカインよ、少し聞いていいか?」

カイン「なんでしょうか。」

矢内「まず勇者ってのはどうやって選ばれるんだ?」

カイン「神様の天啓を受けた者が勇者となります。」

タイショウ「わしも店でラーメンを作っている時にいきなり天啓を受けたタイ。身体がいきなり光りだして店の客もポーラもびっくりしていたタイ。」

矢内「そうか…。この世界には神様って何人居るんだ?」

カイン「各国に一人は居るとしか言えません…。」

矢内「お前達の国の神様はどんな奴だ?」

カイン「食の神ノーマ様です。」

 

食の神か…。それでタイショウが選ばれたんだな。魂のこもった美味いラーメンだったもんな。

 

矢内「ビーナスって奴はどこの国の神だ?」

カイン「他の国の事までは…。すみません…。」

矢内「地道に国を回って行くしかないか…。」

カイン「そのビーナスって神様に何かあるのですか?」

矢内「ああ、ちょっとな…。いずれ見つけてぶっ飛ばす予定だ。」

タイショウ「ハハハハハ!賢者殿は面白い男タイ!」

カイン「神様に喧嘩を売るつもりですかあなたは!」

矢内「喧嘩を売られたのはこっちだ。」

カイン「しかし!」

矢内「じゃあ、お前は相手が神様だったら自分の家族、友人が訳も分からず酷い目にあっても笑って許して居られるか?」

カイン「それは…。」

矢内「神様も良い奴もいたら自分勝手な糞もいる。人間も同じだ。カインよ、神様は正しいとか人間以外の種族は悪い奴とかいう固定観念は捨てる事だ。でないと何時か痛い目を見る事になる。俺自身が学んだ事だ。」

タイショウ「そうタイ。自分の目で確かめる事が大事タイ。賢者殿は良い事を言うタイ。」

カイン「そうですか…。」

 

カインはまだどこか納得していないようだ…。クソ真面目な性格なんだろう。旅でいろいろ学んで行けばいいさ。

 

矢内「まあ、堅い話はもうなしにして明日の門出を祝って酒でも飲もう。」

 

俺はタイショウ達に頂き物の焼酎を振る舞った。

 

 

 

 

一方その頃

 

 

賢者さまはタイショウさん達とお話があるみたいなのでわたし達はポーラさん達とお話をする事にしました。

 

サチ「賢者さんの荷物からいろいろくすねて来たわ…。ポーラさん達も一緒にいかがかしら?」

 

さっちんはそう言ってスコールを取り出しました。

 

ポーラ「あら?いいの?シンディちゃん、せっかくだからお呼ばれしましょうか。」

シンディ「それ…。矢内 孝太郎が飲んでた…。飲んでみたい…。」

サチ「決まりね…。お酒じゃないけど乾杯しましょうか。」

エリカ「いいな!」

アリマ君「キー!」

シンディ「その前に…この飲み物について教えて欲しい…」

勇者「フフン、お前はそんな事も知らないのですね!この飲み物はスコールって言って賢者さまの住む世界で『乾杯』って意味をもつとっても美味しい飲み物なんです。」

シンディ「そう…。矢内 孝太郎が飲んでた飲み物…。早く飲みたい…。」

エリカ「でも賢者、勝手に持ち出したら怒るよな。」

サチ「前回はお酒を飲んで大声で騒いだからバレたのよ。今回は大丈夫よ。」

 

さっちんが言うなら大丈夫なのでしょう。

 

勇者「では、乾杯しましょう!スコール!」

ポーラ「フフ♪乾杯♪」

勇者「ポーラさん、ダメですよ。ちゃんとスコールって言わないと!」

ポーラ「フフフ♪ゴメンナサイ♪はい、スコール♪」チン!

サチ「では、黄桃の缶詰めを開けるわね。」

勇者「さっちん…これ…4つしか入ってないやつですよ。」

サチ「大丈夫よ。3缶あるから一人2つずつよ。」

 

さっちんが缶詰めを開けました。

 

ポーラ「凄い!鉄の塊から果物が出てきた!」

シンディ「凄い魔法…。初めて見た…。」

エリカ「初めはみんな驚くよなぁ。」

勇者「さぁ、食べましょう!」

ポーラ「桃なんて高級品、初めて食べるわ!」

シンディ「甘い…。とても美味しい…。」

エリカ「この汁が甘くて美味しいだよな。」ペロペロ

勇者「そうですねぇ。」ペロペロ

サチ「二人とも、お行儀が悪いわよ。」

 

この皿に残った汁を舐めるのが良いのにさっちんはいったい何を言ってるのでしょうか?

 

サチ「ご免なさい…。お行儀の悪い仲間で…。」

ポーラ「えっ?」ペロペロ

シンディ「何…?」ペロペロ

サチ「………なんでもないわ…。」

ポーラ「所で…あなた達は今後、どっちに向かう予定なの?」

サチ「ここから更に西の砂漠の国よ。」

ポーラ「西にはエルフの森があるわ…。危険よ。」

シンディ「エルフは人を見ると見境なく攻撃してくる…。とても危険…。」

サチ「エルフ…。賢者さんが余計な事を言わなきゃ良いけど…不安ね。」

勇者「さっちん、心配なんて入りませんよ。エルフの人達ともきっと仲良くなれますよ。」

シンディ「そんな事ない…。エルフは…近づかない方がいい…。危険…。」

勇者「それはお前が仲良くしようとしないだけです。わたし達は大丈夫です!」

シンディ「そう…。じゃあ、忠告を聞かない一国の勇者は一回エルフの矢で蜂の巣になればいい…。」

勇者「お前こそ!一度、鬼の拳骨を喰らったらいいのです!」

シンディ「………なんで?」

勇者「お前がわたしが蜂の巣になったらいいとかいうです!」

シンディ「それは…あなたが忠告を聞かないから…。それに何もしていない私が暴力を受けるは理不尽…。」

勇者「なんですか!」

シンディ「なに。」

サチ「ゆうりん、落ち着いて!」

エリカ「ケンカするなよ、賢者も仲良くしろって言ってただろ!」

ポーラ「シンディちゃんも落ち着いて!」

 

こいつは賢者さまが優しくしてくれるからっていい気になってます。

 

勇者「わたし達はエルフの人達と絶対仲良くなってみせます!」

シンディ「……無理よ。絶対…。」

サチ「ゆうりん、私達を巻き込まないで…。」

勇者「さっちん、大丈夫です!わたし達にはこいつと違って賢者さまがついてます!」

シンディ「もし…、出来なかったら矢内 孝太郎は私達の仲間になってもらう…。代わりにカインをやる…。」

勇者「そんなのダメです!」

シンディ「あなたが言い出した事…。もし出来たらいつでもラーメンをタダで振る舞う…。」

ポーラ「シンディちゃん!勝手な事言っちゃダメよ!」

シンディ「ポーラ…。大丈夫、どうせ無理だから…」

勇者「言いましたね!わたしが勝ったら『生意気言ってご免なさい。勇者さま!』って言ってもらいましょう。」

シンディ「分かった…。どうせ私が勝つからそれまで矢内 孝太郎と最後の旅をすればいい…。」

エリカ「アリマ君、賢者呼んで来て。」

アリマ君「キー!」

 

 

 

 

アリマ君「キー!(連れてきたよ!)」

矢内「何があった!」

ポーラ「賢者様、タイショウ、お話の途中で連れて来てご免なさい…。実はシンディちゃんと勇者ちゃんが…。」

矢内「シンディが?丁度良い、シンディに用があるんだ。」

シンディ「矢内 孝太郎…何?」

勇者「賢者さま!なんでそんな奴に用があるのですか!」

シンディ「矢内 孝太郎は私に用がある…。一国の勇者は黙って欲しい…。」

 

なんでこんなに仲が悪いんだ。

 

シンディ「それで、矢内 孝太郎…用って何?」

矢内「ああ、シンディにちょっと前に燻製をした道具をやろうと思ってな。」

シンディ「くれるの?嬉しい。」

矢内「後、もう一つこいつだ。」

 

俺はチャッカマンを取り出した。

 

矢内「火の魔法が苦手って言ってたよな。これはボタン一つで簡単に火が付く道具だ。火の魔法に馴れるまでこれを使うといい。」

シンディ「凄い…。魔法の火の杖…。こんな凄いもの…もらって良いの?」

矢内「ああ、俺の住む世界では簡単に手に入る物だからな。」

シンディ「ありがとう…。大事にする…。」

ポーラ「良かったわね♪シンディちゃん♪」

勇者「賢者さまはアイツにだけ優しいです!」

サチ「まぁ、良いじゃない。もう夜も遅いから早く部屋で寝ましょう。(私が賢者さんの荷物をくすねたのがバレる前に部屋に戻らないと…)」

ポーラ「あっ、そうだ♪賢者様、美味しい果物をご馳走になりました。桃なんて高級品初めて食べましたわ♪」

シンディ「とても美味しかった…。」

サチ「くすねてきたのだから言っちゃダメでしょーー!!」

矢内「そうか…。お前、また俺の荷物から捕ったのか。」

サチ「け、賢者さん!捕ったなんて人聞きが悪いわ。みんなの交流の為にちょっと借りただけよ!それにシンディ達も食べてみたいって言っていたわよ。」

シンディ「スコールって飲み物…。とても美味しかった…。」

 

コイツ、スコールもパクったのか!

 

矢内「サチ、言い訳はそれだけか?お前の明日の朝食は抜きだからな。」

サチ「………酷い、あんまりよ!」

 

少しは反省しろ!

 

 

次の日

 

 

タイショウ達は早々に宿を出ていき俺達も出発する準備をしている最中だ。

 

矢内「よし、俺達もそろそろ行こうか。」

勇者「はい、賢者さま!」

 

何か忘れている気がする…。

 

エリカ「なぁ、賢者。今度ラーメン作ってくれよ。」

矢内「作れるか!」

サチ「はぁ?料理が出来ない賢者さんなんて、ただの中二病のキチガイじゃない!」

 

なんて言い草だ!

 

勇者「賢者さま、作れないのですか?」

矢内「いいか?ラーメンはそんな簡単なものじゃない。職人が魂を込めて作っている。勇者、タイショウのラーメンを食べてどう思った?」

勇者「どんぶりの中にいろいろ詰まったご馳走でした。」

矢内「そう、どんぶりの中はファンタジーだ!仮に俺が即席で作ってもおまえ達はガッカリするだけだろう。」

サチ「そう…タイショウ達にまた会わないと食べられないのね…。残念だわ。」

 

ラーメンじゃない…。何か忘れている気がする…。なんだ。思い出せん…。

 

矢内「昨日、3ヶ月後に砂漠の国でタイショウ達と会う約束をしている。心配しなくてもまた食えるさ。俺もまた食えるのが楽しみだ。」

エリカ「そうかぁ。でも、アイツ等大丈夫かなぁ。あの橋でっかいタコが居るからなぁ。」

 

そうだ!クラーケンだ!タイショウ達に言うの忘れていた!

 

サチ「そうね…。あの人達強そうではないから全滅してるかもしれないわ…。」

勇者「わたしはアイツに『生意気言ってご免なさい!勇者様』って言わせないといけないのです!全滅なんてそんなの絶対ダメです!早く助けに行きましょう!」

サチ「フフ。素直に心配だって言えば良いのに。」

矢内「よし!急いで橋まで戻るぞ!」

エリカ「分かった!アリマ君行こう!」

アリマ君「キー!」

勇者「早く行きましょう!」

 

そして俺達は急いで昨日渡った橋まで戻る事にした。戻るとタイショウ達の前にクラーケンが立ち塞がっている!

 

勇者「賢者さま!タイショウさん達が戦っています!」

矢内「急ぐぞ!」

 

あんなのと戦って勝てる訳ない。止めないと…。

 

タイショウ「デッカいタコタイ。」

クラーケン「キシャャァァァアアーーーー!!」

ポーラ「あらあら♪向かって来たわ。」

シンディ「ポーラ…。下がって…。コイツは凍らせる…。喰らえ、アイスワールド。」

 

シンディの氷の魔法でクラーケンを凍りつかせるがダメだ。相手がデカすぎてあまりきいてない。

 

クラーケン「キシャャァァァ!!」

 

クラーケンがポーラに突っ込んでいく。

 

ポーラ「あまりオイタが過ぎるとお仕置きしないといけないわ♪マジカルモーニングスター!」グルグルグルグル

 

ポーラが魔法でモーニングスターを出してハンマー投げの要領で回転し始めた。

 

ポーラ「アアアアアアアアアアーーーーー!!!!!!」ブーン!

 

ポーラの投げたモーニングスターがクラーケンの顔面にクリーンヒットした。

 

ポーラ「フフフ♪まだよ♪バイントチェーン!」

 

ポーラの投げたモーニングスターがクラーケンを縛り付ける。

 

タイショウ「ポーラ、シンディ!良くやった!後は任せるタイ!」

 

タイショウが取り出した鉈包丁でクラーケンの足を切り刻んでいく。見る見るうちにクラーケンの足は細切れになった。

 

エリカ「タイショウ達すげー強いな…。」

勇者「そうですねぇ…。」

 

クラーケンは簡単にタイショウ達にやっつけられた。

 

タイショウ「デカいだけでたいしたことなかったタイ。」

ポーラ「本当ね♪」

シンディ「あっ、矢内 孝太郎達…。」

 

タイショウ達が俺達が来たのに気がつきこっちに来た。

 

タイショウ「賢者殿!わざわざ見送りに来てくれてすまんタイ!」

矢内「あー、実はさっきのクラーケンの事を言うの忘れていてな…。戻って来たんだが…。」

ポーラ「さっきのタコね♪」

矢内「ああ…。まさか倒す思っていなかった…。」

エリカ「お前らすげー強いな!」

アリマ君「キー!」

サチ「ゆうりん、どうやら心配はいらなかったようね。」

勇者「わ、わたしは心配なんてしていませんよ!コイツにわたしが勝った時に謝ってもらう時に死んでしまっていたら困るだけだから来ただけです!」

 

いちいちシンディに突っかかるな。

 

シンディ「そう…。来てくれた礼は言っておく…。でも勝つのは私…。」

勇者「きぃぃ!来て損しました!賢者さま!さっちん!エリカにゃん!もう行きましょう!」

ポーラ「あらあら♪」

サチ「全く…。素直じゃないんだから…。」

タイショウ「ポーラ!シンディ!わしらもそろそろ行こうタイ!」

ポーラ「そうね♪」

シンディ「分かった…。でも少し待って…。」

 

シンディが俺の所に近づいて来た。

 

シンディ「矢内 孝太郎…。また会える?」

矢内「ああ!次は砂漠の国で3ヶ月後に会おう!」

シンディ「分かった…。会えるのを楽しみにしてる…。次会える時までに一人でチャーシューを作れるように頑張る…。」

矢内「ああ!楽しみにしてる。またな!」

勇者「賢者さま!そんな奴相手にしないでわたし達も行きましょう!」

シンディ「一国の勇者…。」

勇者「なんですか!」

シンディ「また会えるのを楽しみにしてる…。」

勇者「……はい。お前も気をつけて旅をするのですよ。」

シンディ「分かった…。タイショウ達が待ってるからもう行く…。」

 

シンディがタイショウ達の所に戻って行った。

 

エリカ「また会おうなー!」

アリマ君「キー!」

ポーラ「みんな、またね♪」

タイショウ「賢者殿!3ヶ月後にまた会おうタイ!」

矢内「ああ!またな!ファンタルジニアの城のみんなによろしく言ってくれ!」

 

タイショウ達は橋を渡ってファンタルジニアの国に向かって行った。

 

カイン「俺を置いて行かないでくれー!」

エリカ「お前、何してるの?」

カイン「クラーケンに投げ飛ばされて海に落ちて今戻って来たのですよ。」

 

良い場面なのにコイツの所為で台無しだ。

 

矢内「早く行けよ!」

カイン「スミマセン!では皆さん!お元気で!」オイテイカナイデクダサーイ!

 

カインも橋を渡って行った…。

 

サチ「賢者さん…。私達、なんかカッコ悪いわね…。」

矢内「ああ…。何してんだかな…。」

サチ「小さいタコを釣って人質にして…。」

矢内「言うな!お前だって死体をけしかけて何してんだよ!」

サチ「…言わないで。フフフ。」

矢内「ハハハ!」

サチ「本当バカみたいね。フフフ。」

勇者「それを言ったらエリカにゃんなんか普通に橋渡ろうとして投げ飛ばされてました。」

エリカ「お前だって投げ飛ばされてただろ!」

矢内「本当バカみたいだよな!ハハハハハハ!」

 

俺達は昨日の事を振り返りバカみたいに笑った。

 

矢内「そろそろ俺達も行こうか。」

サチ「そうね…。」

エリカ「うん!行こう!」

アリマ君「キー!」

勇者「はい!わたし達も行きましょう!」

 

タイショウ、ポーラ、シンディ、また会えるのを楽しみしつつ俺達は次の冒険に向かうのだった。

 

 

 

第5話

北の国から勇者さま

END

 



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奇跡も魔法もあるのです!

誰が初めに言ったか知らないがシルバーウィークだ。俺は休みの日をダラダラとパチスロ打っている。

しかし出ないな…。もう600回転はハマっている…。下皿が飲まれそうだ…。

 

勇者「あっ!賢者さま、居ました!」

 

勇者の奴がきやがった。ここは十八才未満はおことわりだ。帰れ。

 

勇者「賢者さま…、実は…。」

矢内「下皿が飲まれたら行くからちょっと待ってろ。」

勇者「じゃあわたしもお手伝いしますね。」

 

そう言って俺のコインを取って打ち出した。

 

矢内「おっこれは熱い演出だ。もらったな。」ティロ フィナーレ!

 

よし!やっと当たった。ビック ボーナスだ。これでラッシュが入ったら取り返せる。

 

勇者「あの…。賢者さま…。」

矢内「今は良いところだ。後にしろ。」ワケガワカラナイヨ。

 

お前が話しかけるからラッシュ入らなかったじゃないか!

 

勇者「賢者さま…。わたしの台…、壊れちゃいました…。反対に回ってます…。」マドカ キミハカミニナルツモリカイ?

 

こ、コイツ、ロングフリーズ引きやがった!

 

 

一時間後

 

 

サチ「ここね…。ゆうりん達は。それにしても酷い煙草の匂いね。」

 

勇者の奴が順調に出している…。アルティメットバトルが終わりそうにないな…。俺も追加投資をしてやっと当たった。次こそラッシュを引く!

 

サチ「いつまで待っても来ないから来てみたらあなた達は何を遊んでいるのかしら?」

勇者「あっ、さっちん!」

サチ「あっ、じゃないわ!ゆうりん!賢者さんを連れて早く行くわよ!」

勇者「賢者さま、さっちんが来ました!そろそろ行きましょう!」

 

よし、金シャッターが閉まった!マギカラッシュだ!

 

矢内「おー、サチか。今マギカラッシュを引いた所なんだ!」カナラズアナタヲマモッテミセル! オメデトウ!

サチ「ラッシュじゃないわよ!このキチガイ!それギャンブルでしょ!」

矢内「いいかサチ、良く聞け。このパチスロ魔法少女まどか☆マギカはな、演出の熱さのバランス、ロングフリーズを引いた時の一撃の強さ、大当たりのハマりもそんなにキツくない、そして!原作をちゃんと重視したこの穢れシステム!さらに!アニメのタイアップは大体原作を無視した台の作りでファンを怒らせることが多く客も直ぐにとぶ!しかしこの魔法少女まどか☆マギカは原作ファンを納得させた演出の作りになっている今世紀最高の台だ!これ以上の台は今後、作られることない!今、この台は中古で買うと50万円もするんだ。」

サチ「何を熱くなっているのかしら…。この中二病は…。」

矢内「サチ、お前も打ってみたら面白さが分かる。勇者にコインを一箱もらって打ってみろ。」

サチ「…分かったわ。」

 

そう言ってサチは勇者にコインを一箱もらった。

 

サチ「ちょっと、そこの角生えてる人、私はゆうりんの隣りで打ちたいからもう一つ隣りに行ってもらえるかしら?」

 

何を言い出すこの女!変わってもらえる訳ないだろ!急いで俺はサチを止めに行った。

 

矢内「サチ、止めんか!いいか、台にはそれぞれ設定ってのが有ってな。そっちを打ちたいから変わってくれってのはダメなんだ!」

サチ「そうなの…。残念ね…。仕方ないからもう一つ隣りで打つわ…。」

矢内「あんた、うちの連れが迷惑をかけたな。」

角の生えた男「いえ…。」

 

俺は角の生えた男に詫びにコーヒーを奢る為にコーヒーワゴンサービスを呼んだ。

 

さあ、気を取り直して打ち始めるか。このラッシュ中に上乗せ特化ゾーン『ワルプルギスの夜』に入ることが爆発の鍵だ。この特化ゾーン『ワルプルギスの夜』の演出もまどか☆マギカの人気の秘訣だ。

 

サチ「あら?すぐに大当たりを引いたわね…。」

 

サチの奴、早くも大当たりを引いたようだ。

 

矢内「プチボーナスか。残念だったな。」

サチ「…まぁ良いわ。……何か出てきたわ。」ネラッテネ!

角の生えた男「逆押しで黒い奴を狙うんですよ。」

 

隣りの奴がサチに説明している。まあそう簡単に揃わないが…。それにしても何で角生えてるるんだ?ファンタルジニアじゃあるまいし…。きっとなんかのコスプレしている痛い奴なんだろう。

 

サチ「そう…、あら?揃ったわ。」オメデトウ!

 

サチの奴もアルティメットバトルを引きやがった!

 

矢内「俺も気合い入れてやるか…。おっ!俺も熱い演出来た!」ティロ フィナーレ! +100

 

よし、大きな上乗せが来た。そして俺達はラッシュを消化していった。

 

 

3時間後

 

 

 

俺達は順調に出玉を出している。勇者とサチはもう五千枚は出している。俺も今、二千枚にさしかかった所でワルプルギスの夜に入った。

 

勇者「賢者さま、お腹すきました…。」

矢内「そうだな…。よし、ラッシュが終わったら止めて美味い物でも食いに行くか。」

サチ「あら?賢者さん、何を言っているのかしら?」

 

なんだと!一番食い意地のはったサチが何を言い出すんだ。

 

サチ「今、失礼な事を思ったわね…。まぁ良いわ。このまどか☆マギカの台は私の黒魔術で全て最高設定に変えたのよ。途中で止めるなんてダメよ。」

 

確かにサチが来てから高設定要素の弱チェリーがよく出てくるが…。

 

角の生えた男「あの…多分、このシマ全部設定6ですよ。俺の台、プチボーナス中にキュウベエ出て来ました。」

勇者「賢者さま、わたしの台もさっき出て来ました。」

 

マジでか…。コイツの黒魔術…初めて役に立ったな。

 

矢内「しかし、今、夜の8時だ。どう考えても閉店までにラッシュを消化しきれるかも微妙だから、ラッシュが終わったら帰ろう。」

サチ「もうそんな時間なのね…。分かったわ…。」

 

そしてそれから2時間かけて俺達はラッシュを消化しきってスロットを止めた。

 

矢内「そろそろ飯食いに行くか。」

勇者「あっ賢者さま、見て下さい。屑野郎さんの似顔絵がいっぱいあります!」

矢内「勇者よ…。確かに似てるがそれはジャグラーのピエロだ…。」

サチ「屑野郎?」

勇者「はい、賢者さまのお友達です。」

矢内「畑中か…。そうだな。あいつも呼ぶか。いる所は分かっている。」

サチ「賢者さん、少し待ってもらえるかしら。」

 

そう言ってサチは角の生えた男の所に行った。

 

サチ「私達、今から食事に行くのだけどもし良かったら貴方も一緒にどうかしら?」

角の生えた男「えっ?えっと…。」

 

そうだな。黒魔術とはいえやってることはゴト行為だからな…。口止めの意味を込めて連れて行くほうが良いな。

 

矢内「そうだな。連れが世話になった礼をしたい。あんたも行こうぜ!」

角の生えた男「いや、あの…。」

 

優柔不断な奴だな。無理やり連れて行くか。

 

矢内「よし!決まりだな。」

角の生えた男「まだ行くとは…。」

矢内「うるせー!!行くぞー!」

 

そして俺達は畑中のいるミリオンゴッドのシマに向かった。

 

矢内「ヨゥ、畑中!飯食いに行くぞ!」

畑中「おー、ハッハーwww矢内!お前の周りはハロウィンか!ハッハーwww1ヶ月以上早いじゃねぇか!ハッハーwww」

勇者「屑野郎さん、こんばんは!」

畑中「勇者ちゃん!久し振り!ハッハーwww。」

矢内「よし!じゃあ行こうか。」

畑中「矢内、実はこの台設定良さげなんだ!だから…。」

サチ「その台は今私の黒魔術で設定を1に変えたから打ち続けるだけ無駄よ。」

畑中「ハッハーwwwこの子は何を言い出すんだよ!ハッハー。」

矢内「畑中よ…。飯食いながら話すがソイツの言っている事はマジだ。」

角の生えた男「本当です。俺達の打っていた台急に設定6になりました。」

畑中「ハッハーwww。じゃあお前ら!大勝ちしたんか!ハッハーwwwじゃあ矢内の奢りで焼き肉食いに行こうか!ハッハーwww。」

 

俺達は畑中を連れて急いで焼き肉屋に行く事になった。

 

 

 

「いらっしゃいませー!何名様でしょうか?」

矢内「5人だけど。行けますか?」

「大丈夫です。ご案内します。五名様ハイリマース!」イラッシャイマセー!

 

俺が行きつけの隠れた名店だがすんなり入れて良かった。

 

サチ「なかなかキレイな所ね…。」

角を生えた男「こんな高そうな所…。大丈夫ですか?」

畑中「ハッハー。良い、良い!気にするな。矢内の金だ!ハッハーwww!」

 

お前が言うな!

 

矢内「そう言えば、あんた名前は?」

角の生えた男「………魔王。」

畑中「ハッハーwww!お前!魔王って!ハッハーwww!勇者ちゃんが居るからってベタ過ぎるわ!ハッハーwww。」

魔王「いや、冗談ではなくて…。」

勇者「魔王さんですね。わたしは一国の勇者です。よろしくお願いします。」

サチ「私はサチよ…。今日はありがとう。」

畑中「ハッハーwww。まあええわ。俺は畑中。今日は矢内の奢りだからな!遠慮せずに高い肉から食えよ!ハッハーwww。」

魔王「こういうみんなでフランクに食事するのは初めてで…よろしくお願いします。後、貴方のお名前も教えていただけますか?」

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

畑中「矢内…。一度も同窓会に誘われてない嫌われ者のお前が何を言ってんだ?みんなが大好き賢者ってwww!馬鹿かお前は。ハッハーwww!」

 

しまった。ファンタルジニアじゃなかった。それより同窓会だと?今まであったのか?

 

矢内「畑中よ…。今の暴言の事は水に流す。次の同窓会はいつなんだ?教えろ…。」

畑中「矢内、お前が中学の卒業式に学校に放火とかするからみんなに嫌われ誘われないんだ。」

矢内「それは俺じゃねぇ!良いから教えろ!」

畑中「ハッハーwww!教えてどうするんだ?呼ばれてないのに来るんか?」

矢内「行くか!同窓会の会場にちょっと火を付けるだけだ!そして逃げ惑うクソ共を見ながら酒を飲むんだ。きっと美味い酒になる。」

畑中「ハッハーwww!そんな事するからお前は嫌われてるだろ!ハッハーwww!相変わらずだな!ハッハーwww!」

サチ「それより嫌われ者の賢者さん、早く注文をしましょう。お腹が空いたわ…。」

畑中「ハッハーwww!さっちゃんなかなか言うじゃねぇか!ハッハーwww!」

 

もういい!俺は店員さんを呼んだ。

 

「ご注文をどうぞ。」

畑中「とりあえず生!」

矢内「俺は、焼酎をロックで…。」

「芋と麦がありますが…。」

矢内「芋は黒霧島か…。芋で…嫌、待てよ。黒霧島をボトルでくれ!」

勇者「わたしも賢者さまと同じので!」

矢内「お前は未成年だろ!ダメだ!勇者とサチはスコールで。魔王、お前はどうする?」

魔王「あっ、えっと…。お酒はあまり強くなくて…。」

矢内「じゃあ、あれが良いな。スコールハイを一つ。」

畑中「矢内、メニューに無いだろ!スコールハイって何だよ!」

「生一つにスコール二つにスコールハイですね。黒霧島のグラスはお一つでよろしいですか?」

矢内「ああ、後、生センマイ一つにタン塩二つ、後はツラミを二人前頼む。」

「ご注文以上でよろしいですか?それでは失礼します。」

 

メインの肉はドリンクが来てからでいいか。

 

「ドリンクお待たせしました!」

 

来た!

 

畑中「特上ロースに特上ハラミ、特上カルビを五人前、石焼きビビンバと…」

サチ「この三角バラと花咲ハラミもいただくわ。」

 

コイツ等!高い肉ばかり注文しやがって!まあ、俺達3人で三万枚出したからな。五十万はあるから…まあ良いか。

 

矢内「お前ら勝手に注文しやがって…。ワカメスープとキャベツ盛りに焼き野菜もお願いします。」

「かしこまりました。それでは失礼します。」

 

矢内「飲み物が来たし乾杯しようか。畑中、乾杯の音頭とってくれ。」

サチ「なんで賢者さんがしないのかしら?」

矢内「まあ、適材適所ってやつだ。畑中頼む。」

畑中「任せろ!えー本日は矢内一行がパチスロで合計三万枚を出すという快挙を成し遂げた記念を祝して!」

勇者「スコール!」スコール!

畑中「勇者ちゃん!最後の決め、取らないでくれるかなぁ。」ハハハハハハ!

 

人間、誰にでも特技はあるもんだ。これからはファンタルジニアでパーティーの時はこいつに乾杯の音頭をとらせよう。

 

「お待たせしました!」

 

肉が来たな…。この量…凄いな…。

 

畑中「ハッハーwww!さぁ食うか!」

サチ「いただきましょうか。」

勇者「食べましょう!」

矢内「そうだな。ジャンジャン焼いていけ!魔王、お前も遠慮せずに食えよ。」

魔王「えっ?あの…。」

矢内「アイツ等を見ろ…。遠慮なんかしたら一口も食えないぞ。」

 

畑中と勇者とサチが凄い勢いで肉を食ってる…。

 

サチ「賢者さん!早く焼いて!」

 

お前は少し遠慮しろ!

 

 

 

 

 

勇者「美味しいですねぇ。」

サチ「なかなか美味しいわね。」

畑中「良いか。この世で一番美味いのは人(矢内)の金で食う肉だ。」

矢内「少しトイレ行ってくる…。」

 

賢者さまは席を離れました。

 

サチ「畑中、賢者さんが居ないから聞くけど…賢者さんが嫌われ者だって言ってけど理由が知りたいわ…。」

魔王「矢内さんは良い人ですよ。俺もなんでか知りたいです。」

勇者「賢者さまが嫌われ者なんてそんなの絶対おかしいです!」

畑中「ああ、その事な。アイツは目上の人とか仲間内のリーダー相手にもはっきりと物を言うんだ…。」

サチ「ああ…。そうね…。」

畑中「…心あたり有るんだな…。」

サチ「ええ…。皇帝陛下にお前は顔が醜いから一生童帝だって言ってたわ…。」

畑中「ハッハーwww!アイツは変わらんな…。」

勇者「でも、賢者さま、その日の夜、皇帝陛下さんと仲良くお酒を飲んで居ましたよ。」

畑中「皇帝陛下、器デカいな。ハッハー。」

魔王「物をハッキリ言うだけで嫌われてるなんて…。」

畑中「アイツは例えば学生の時なんかは気に入らない教師やクラスのグループのリーダーとかにケンカ売ったりするからな…。男女関係なくな。」

サチ「ああ…。」

畑中「また、心あたりが?」

サチ「生け贄になる予定の村長の娘をぶん殴ってたわ…。」

畑中「かー!アイツは何をやってんだ!」

畑中「話を戻す。まあ、矢内はそういう人と敵対するから敵をメチャクチャ増やすんだ。」

サチ「………そいつ等は賢者さんと違って群れなきゃ何も出来ない連中だったのね。」

畑中「人間なんてそんなもんだ。後、矢内は自分が気にいった奴だったら仮にソイツが嫌われ者でも関係なく交友する。そういう所も力の有る連中からしたら面白くなかったんだろうな。」

勇者「そんなの…。」

畑中「矢内が帰って来るからこの話はもう終わりだ。勇者ちゃん、さっちゃん、あんな奴だけど矢内の事これからもよろしくな。」

サチ「ええ。」

勇者「賢者さまはわたしとずっと一緒です!」

畑中「ハッハーwww。さぁ気を取り直して食おう!そしてそろそろ追加注文しよう!」

サチ「そうね…。」

魔王「畑中さん。最後に…」

畑中「もうその話は止めよう…。矢内が帰って来る。」

魔王「畑中さんは矢内さんとどうして友人なんですか?」

畑中「…。アイツは面白い、それだけだ!ハッハーwww。」

 

あっ、賢者さまが帰って来ました。

 

 

 

矢内「よーし、戻ったぞ。お前ら何をしんみりしてんだ?」

畑中「ハッハーwww!お前がちんたらトイレに行ってたからみんな待っててやってたんだ。ありがたく思え!」

サチ「そうよ。待っててあげたのだから泣きながら土下座して感謝しなさい。」

 

黙れ!気にして損した。

 

矢内「まあ、いい。気を取り直して食おう!」

勇者「はい、賢者さま。」

サチ「追加注文をしましょう。」

畑中「よし、高いやつをいっぱい頼もう。」

魔王「えっ?まだ食べるのですか?」

 

そして俺達はしばらく食べ続けた。

 

矢内「魔王!お前酒が全然減ってないぞ!」

畑中「ハッハーwww!金を出すのは矢内だから遠慮するなよ!」

サチ「そうよ。私達ですら三杯目なのに…。まだ一杯目じゃない。」

勇者「そうですよ!グイッといっちゃって下さい!ハハハ!」

 

こいつ等!酒の減りが早いと思ったら俺のボトルを勝手に飲んでいやがる!

 

矢内「すみません!ボトルもう一本にホルモン盛り合わせ二人前、あとは…」

畑中「生ジョッキで3つ特上カルビ三人前、豚トロ四人前、シャトーブリアン5つ…。」

サチ「特上ロース六人前、ご飯を二つ1つは特盛で後はスコール二つ…、魔王も早く注文しなさい。」

魔王「…じゃあマッコリを一つに、冷麺を一つで。」

矢内「……キャベツ盛り一つ、以上で。」

「かしこまりました。ごゆっくり。」

矢内「魔王、俺、飲んだこと無いけどマッコリって美味いのか?」

魔王「実は俺も初めて飲むのです。せっかく焼き肉屋に来たので頼んでみようと…。今日は誘って頂いてありがとうございます。」

矢内「ああ、今日のパチンコ屋での事は黙っててくれよ。」

魔王「分かってます…。犯罪ですからね…。アレ…。」

畑中「矢内、アレって?」

矢内「ああ、サチの奴がゴトでまどか☆マギカの台を全部設定6に変えやがったんだ…。」

サチ「賢者さん、人聞きが悪いわね。私の黒魔術よ。」

 

犯罪には変わりない、同じだ!

 

畑中「……マジでか!俺も6打ちたかった!呼べよ!そん時に!」

 

お前、ゴットしか打たねえだろ!

 

矢内「そうだ畑中、お前の家デカいから今日俺達を泊めてくれ。」

畑中「おう、良いぞ。お前達の事いろいろ聞きたいしな。魔王も来るだろ?てか来い!」

魔王「いえ、流石に帰ります。今日はとても楽しかったです。」

矢内「そうか…。」

 

そして楽しい食事は終わって俺達は魔王と別れて畑中の家に向かった。ちなみに食事代は八万三千円もかかった…。

 

矢内「相変わらずデカい家だな…。」

畑中「おう、弟達も出て行ったからな…。余計にデカく感じるんだ…。まぁ上がれ。」

勇者「お邪魔します。」

サチ「凄い家ね…。」

畑中「勇者ちゃん達、そっち風呂があるから入ってきな。」

勇者「ありがとうございます。さっちん行きましょう!」

サチ「そうね…。畑中、覗いたらぶっ飛ばすわよ。」

矢内「覗かんし、早く行け!まったくアイツは…急に済まんな。ところで弟達は何しているんだ?」

畑中「3つ下が医者でその下が会社を立ち上げて一番下が海外で働いてる。」

矢内「みんなお前を反面教師にして頑張ったんだな…。」

畑中「黙れ…。」

矢内「まあ、せっかくだしもう少し飲もうか。」

畑中「そうだな。矢内あの子達、本当にお前を慕っているんだな。」

矢内「そうか?」

畑中「お前の事、嫌われ者って言った時なんでだってあの子達怒ってたぞ。」

矢内「そうか。フフ、俺はこういう人間だからあまり人には好かれないからな。」

畑中「ハッハーwww!お前、分かってたんなら直せよ!」

矢内「俺は群れるのは嫌なんだよ!」

畑中「そんなだからお前は…。高校の最後の方なんか俺ぐらいしか話す奴居なかっただろ!」

矢内「ああ…。ん?後、一人居た、話す奴。山田だ。」

畑中「ハッハーwww!山田さんか!ハッハーwww。口ゲンカしてただけだろ!」

矢内「ああ、でもアイツだけは普通に俺に接していた…。他の奴等は俺と話す時は遠慮してたからな…。」

畑中「山田さんか…。もう結婚して子供ぐらい居るんだろうな…。」

矢内「山田のような女が結婚出来る訳無いだろうが…。山田だぞ?それにお前、同窓会行ってるから山田に会ってるんじゃないのか?」

畑中「仕事もしてない俺が行っても惨めになるだけだろ!行くわけ無いだろ馬鹿かお前は!」

矢内「ハハハ!確かにな!ハハハハハハ!お前も相変わらずで良かった!」

畑中「かー!矢内、お前って奴は…ハッハーwww。」

 

俺達は昔話で盛り上がりながら酒を交わした。

 

サチ「あら?二人共楽しそうね。」

勇者「賢者さま、わたし達もいただきますね。」

畑中「ハッハーwww!勇者ちゃん達もほどほどに飲むんだぞ!」

矢内「おい、畑中!アイツ等にあまり酒を飲ますな!」

 

俺達は朝まで酒を飲み明かした…。そして夜が明けた。

 

畑中「矢内!起きろ!パチンコ屋に並びに行くぞ!」

矢内「別に並ばなくてもいいだろ!」

畑中「何言ってんだ!今日こそミリオンゴッドの設定6を打つんだ!早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞー!」

 

毎日毎日飽きないな…。

 

勇者「賢者さま!早く行きましょう!」

サチ「何をちんたらしているのかしら?早く行きましょう。」

 

そして俺達はパチンコ屋に向かった。

 

矢内「俺は向こうのバラエティーコーナーで『極お父さん』を打つから何かあったら呼べよ。」

サチ「ええ、分かったわ…。」

畑中「ハッハーwww!俺達はゴッドを打ちに行くか!」

 

そして俺は畑中達と別れてバラエティーコーナーで打ち始めた。

 

魔王「矢内さん、おはようございます!昨日はありがとうございました!」

矢内「おう、魔王!お前も暇なんだな!」

魔王「隣、失礼します。」

 

そして魔王は俺の隣台の餓狼伝説を打ち始めた。

 

矢内「これは熱い!バトルチャンスに入った!」

魔王「矢内さん、朝から好調ですね。なんか向こうが騒がしいですね…。なんかあったのでしょうか?」

 

魔王が指差した方はゴッドのシマだ。………嫌な予感がする……。

 

矢内「ちょっと見てくる…。それ打ってて良いぞ。」

 

 

 

畑中「ハッハーwww!ゴッドインゴッドだ!」

勇者「あっ、わたしも揃いました。」

サチ「私は三回目よ。私の黒魔術で当たる確率を変えたわ…。百回に一回はゴッドが当たるわ…。」

 

アイツ等、ゴッドを引きまくっている!また黒魔術とか言うゴト行為だ。マズい!流石に店員が近づいて来てる。他人の振りをしよう。

 

店員「すみませんがお客様、身分証をお持ちでしょうか?」

サチ「無いわ…。ちなみに年齢は19よ。」

 

アイツ、息を吐くように嘘をつくよな。

 

勇者「さっちん!嘘はダメですよ。」

店員「じゃあ、お嬢ちゃんは年確認出来る物持ってるかな?」

勇者「はい!わたしのマイカードです。」

店員「………、あのね、18才未満の人はパチスロしちゃダメなの!」

勇者「えっ?そうなのですか?」

店員「隣の子も出て行ってもらえるかな?」

サチ「分かったわ…。」

 

当たり前だが勇者達が店員に追い出された…。アイツのゴト行為がバレたら警察に捕まるから畑中に連絡を入れて俺も出るか…。

 

 

 

矢内「勇者、お前何か店員に見せていたよな?」

勇者「はい!マイカードです。このカードで自分の名前や職業とか分かる物です。みんな生まれた時から持ってますよ。」

サチ「経歴とかもその都度自動で書き換えられる物よ。」

矢内「ちょっと見せてくれ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

俺は勇者からマイカードを見せてもらった。………なんだと!!

 

矢内「お前、名前が勇者なのか!」

勇者「わたし…初めに自己紹介ちゃんとしましたよ…。」

 

名前、一国の勇者……年齢14才……コイツ、勇者でも何でもねぇ!ファンタルジニアの童帝や戦士長はコイツが勇者だって信じてるぞ!どうするんだ!世界中を騙した詐欺だぞ!

 

サチ「賢者さん…。もしかして知らなかったのかしら?勇者だから『ゆうりん』よ。」

矢内「は?勇者…お前、神から天啓を受けたんじゃないのか?」

勇者「何ですか?それ?」

サチ「天啓?何を言ってるのかしら?」

矢内「お前らの世界では神から天啓を受けた者が勇者になるのだろうが。」

勇者「わたしは生まれた時から勇者です。」

サチ「何かしらその中二病設定?」

矢内「俺はノートルランドでカインやタイショウに聞いた情報なんだ!中二病じゃあねぇよ!」

 

少しスコールを飲んで落ち着こう。

 

矢内「それはそうとエリカの馬鹿はどうした?」

勇者「あっ!」

サチ「忘れてたわ…。どうしましょう…。」

矢内「ハァ…お前ら…何しに来たんだ?」

勇者「実はわたし達の立ち寄った村でゴブリンって方達が村人達に迷惑をかけているのです。」

 

俺への迷惑は考えないのだな…。

 

勇者「賢者さま、早く行きましょう!エリカにゃん達が待ってます!」

サチ「待って。エリカさん達に何か買って行きましょう!1日待たして手ぶらはマズいわ。」

勇者「そうですね。お土産を買って行きましょう。」

 

そうして俺達はゲートを通ってエリカの所に向かった。

 

 

 

 

 

エリカ「お前ら!遅かったなぁ。」

サチ「エリカさん、ごめんなさい。賢者さんがグズグズしてて遅れてしまったわ…。」

 

俺の所為にしやがった!

 

勇者「エリカにゃん、これお土産です!」

エリカ「何?」

勇者「N屋のメープルパンです。凄く美味しくて有名なパンなんです。アリマ君はこっちの小倉抹茶パンです。」

エリカ「ありがとう!勇者は良い奴だな!」

アリマ君「キー!」

エリカ「アリマ君、半分あげるよ。」

アリマ君「キー!」

 

エリカ達はもらったパンを半分こしてる。

 

サチ「ゆうりん、やっぱり二人共、半分こにしたでしょ。」

勇者「さっちんの言うとおり二種類にして良かったです。」

 

本当に仲がいいな。

 

サチ「ところで、エリカさん。その村の依頼なんだけど…。」

エリカ「ああ、あたしがもうやっつけたよ。」

サチ「引き受けたの?」

エリカ「だって村の人達困っていたから…。」

矢内「お前、タダで引き受けたのか?」

エリカ「お礼に晩ご飯ご馳走してくれた。ハンバーグだった!あたし、ハンバーグ大好きだから嬉しかった。」

サチ「エリカさん…村人たちに利用されたのね…。だから戻ってくるまで待ってって言ったのに…。」

矢内「………。サチ、もういい…。」

エリカ「なぁ、賢者。お前何してるの?」

矢内「………。」

エリカ「なんでその大きい缶を開けてるんだ?その中身、お水が入っているんだ。何に使うの?」

矢内「サチ、勇者…エリカから離れていろ…。」

勇者「はい、賢者さま。」

サチ「分かったわ…。(あれシンナーって奴よね…。静かに怒っているわ…。)」

エリカ「えっ、何?」

矢内「ティロ フィナーレー!!!!」バシャ!!

 

俺は一斗缶満タンに入ったラッカーシンナーをエリカにぶっかけた。

 

エリカ「賢者!何するんだ……あああああ!痛い!熱い!痛い!あああああ!」

矢内「この馬鹿が!ほいほいと引き受けて村人たちに利用されてるんじゃねぇよ!」

アリマ君「キー!キー!(何するんだよ!酷いよ!)」

矢内「お前もだ一つ目!いつも言ってるだろうが!アイツの面倒ちゃんと見とけって!くらえ!ティロ フィナーレー!!!!」バシャ!!

 

俺は一つ目にもラッカーシンナーをぶっかけた。

 

アリマ君「あああああ!」

 

糞が!スコールを飲んで少し落ち着こう。

 

エリカ「あああああ!」

勇者「エリカにゃん!このままでは火傷してしまいます。服を脱いで下さい!」

エリカ「あああああ!痛いよぅ!」

アリマ君「あああああ!」

エリカ「あああああ!」

サチ「賢者さん、流石にやり過ぎよ…。」

勇者「アリマ君、お水で目を洗って下さい!」

アリマ君「キー…。」

エリカ「賢者!酷いぞ!お前、後から来ただけの癖に!」

矢内「……もう依頼は無いようだから俺は帰るぞ…。」

エリカ「帰れ帰れ!」

アリマ君「キー!(帰れ!)」

 

こいつ等!もう一撃俺のティロ フィナーレ!!を喰らわせてやろうか。

 

勇者「賢者さま、ゲートを開けました!」

矢内「すまんな…。じゃあ帰る。なんか疲れた…。」

サチ「賢者さん、なんかごめんなさい…。」

エリカ「帰れ!ベーだ!戦士長に言いつけてやる!」

アリマ君「ベー!」

 

俺はあっかんべぇをするエリカと一つ目を無視して元の世界に戻った。

 

 

 

 

 

あれ?どこだ?ここは。元の世界じゃあない!

 

???「賢者様!お久し……いや、今は初めましてでしたね…。」

矢内「誰だ!」

???「私ですか?私はみんなが愛するゼクス様です。」

 

こいつ、俺の決めゼリフをパクりやがった!ゼクスだと?

 

矢内「お前かー!勇者の奴を使って俺を巻き込んだのはー!死ねー!」バキ!

 

先手必勝でぶん殴った。

 

ゼクス「痛い…。いきなり殴ることないじゃないですか!」

矢内「うるせー俺を巻き込みやがって!こんな所に連れ出しやがって何の用だ!」

ゼクス「実は賢者様に報告があって呼びました。」

矢内「なんだ?」

ゼクス「賢者様の会社に依頼で作って貰っていたスターゲートが完成しました。」

矢内「ああ、映画のセットのか?」

ゼクス「違います。こっちの世界と繋げるゲートです。今、賢者様の会社とファンタルジニアの城と私の所3カ所にセットが完了しました。」

矢内「お前、騙したのか!俺はハリウッドのスタッフロールに名前が出ると思って一生懸命サインの練習をしていたんだぞ!」

ゼクス「それはすみません謝ります。これからはこのセットしたゲート同士で行き来出来ます。あなた達の世界で例えると『ドコでもドア』の用な物ですね。」

矢内「ああ、『天狗の抜け穴』のような物か…。」

ゼクス「…なんでキテレツ大百科で例え直したのですか…。」

矢内「それは凄いな…。しかし、どうやって使うんだ?」

ゼクス「このゲートストーンをお渡しします。このセットしたゲートにはそれぞれ対応した色があります。深緑がファンタルジニア城、モスグリーンがここ、黄緑が賢者様の会社に繋がります。」

矢内「全部緑じゃあねぇか!分かりにくいわ。」

ゼクス「賢者様、緑は目に良いのです!」

矢内「知ってるわ!で、使い方を教えろよ!」

 

イラッとくるな…。

 

ゼクス「使い方は簡単ですよ。ゲートに対応した色の面を上にして念じればゲートが開きます。」

 

俺はゲートストーンを受け取った。十面体のサイコロになってる。3面は色が付いてる。全部緑だ。

 

ゼクス「これから旅先でゲートを置いて欲しい所を言っていただけたら設置していきます。」

矢内「そうか。ありがたい貰っておく。」

ゼクス「賢者様、最後に勇者達の事、お願いします。」

矢内「一つ聞いて良いか?」

ゼクス「何でしょうか?」

 

俺は勇者について聞くことにした。

 

矢内「勇者についてだ。」

ゼクス「私でお答え出来る範囲内でお答えします。」

矢内「なんでアイツなんだ?ただの子供じゃあないか。」

ゼクス「それはですね…。あっ時間ですね。それではさようなら。」

 

ヒュン!俺は元の世界に戻された…。アイツ、なんかいろいろ隠して居るな…。俺を選んだのもなんか理由があるのか。まあいい。今日はもう帰って寝るか…。

 

 

 

その後、俺はこのシルバーウィークを結局だらだら過ごしただけだった。

 

 

 

 

第6話

奇跡も魔法もあるのです!

END



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シンデレラハネムーン 1

わたし達は今、勇者の兜を持っているという王様のお城に向かっています。その王様は面白い事が大好きな人で王様を笑わせたらご褒美が貰えるそうなのです。

 

勇者「着きました。このお城です。」

サチ「ゆうりん、お城に行く前に先に宿を取りましょう。」

エリカ「お腹も空いてきたしなぁ…。」

アリマ君「キー…。」

勇者「わたしは賢者さまを呼んで来ますのでさっちん達は宿屋に行ってて下さい。」

サチ「分かったわ…。みんなお腹が空いているから早くね。それから向こうで寄り道をしないようにね。」

勇者「分かりました。行って来ます!」

 

わたしはゲートを開いて賢者さまの所に行きました。

 

 

 

俺は勇者に連れられてゲートを通ってサチ達が待っている宿屋に着いた。勇者の兜を貰うのに王様を笑わせたらいいらしい。こういうドラクエ的な展開を俺は待っていた!

 

矢内「お前ら、待たせたな。」

エリカ「賢者!今日は早かったなぁ。」

サチ「賢者さん、ご飯はまだかしら?」

 

いきなりそれか…。

 

サチ「………。ハァァァァ!」ポン!

 

何も無い所からお釜が出てきた!

 

サチ「ご飯は炊けたわ…。おかずを早く作って貰えるかしら?」

矢内「ちょっと待ってろ!」

 

俺は自分の荷物を漁った。しまった!油を切らしている。缶詰めもあんみつしかねぇ…。仕方ない…。勢いで誤魔化そう!

 

矢内「今日のご飯は!卵!かけ!ご飯!TKG!」

サチ「ハァア!?」

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

勇者「なんか賢者さま、ノリノリですねぇ。」

エリカ「何これ?」

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!さぁご一緒にー!」TKG!

エリカ「TKG!」TKG!

アリマ君「キー!キー!キー!」TKG!

勇者「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

サチ「黒魔術、筋力増加法…全開…。」

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

矢内「TKG!」TKG!

サチ「エン…ト…トライ…。」

矢内「ヒィィーーハ!」

サチ「スマッシュ!」バチン!

矢内「オワー!」ガシャーン!

勇者「賢者さまー!」

 

サチの放ったビンタで俺は二階の窓から外に吹っ飛ばされた。

 

矢内「イテェ…。なんて威力だ…。クソッ!」

サチ「私の黒魔術は無敵よ。」

 

 

 

矢内「クソッ!酷い目に遭った…。」

ガツガツ

サチ「もう一度喰らいたいのかしら?」ガツガツ

 

俺達は卵かけご飯をがっついている。

 

サチ「だいたい料理の出来ない賢者さんなんて虫けら以下の存在じゃない!」ガツガツ

 

そこまで言う事無いだろ。

 

勇者「たまにはこういうのも良いですよ。」サクサク

エリカ「あっ勇者!お前だけ何食べてるんだよ!」ガツガツ

勇者「エリカにゃんはいやしんぼさんですねぇ。しょうがないので特別に一つ分けてあげます。」

 

そういって勇者はエリカの茶碗に何か置いた。

 

エリカ「何するんだよ。あたしの茶碗の上に虫を置くなよ!」

勇者「クマゼミです。羽がサクサクしておいしいですよ。」

 

やっぱりセミだった。

 

矢内「何も無い所から釜が出てきたがあれはなんだ?」ガツガツ

サチ「はぁ、いちいち説明しないといけないのかしら?あれは私の黒魔術、『お釜でポン!』よ。」ガツガツ

 

だから何だそれは…。

 

サチ「これは瞬時に4大精霊、土のノームにお釜を作らせ、風のシルフに世界中の金持ちの家からお米をバレない程度に捕って来させて、水のウンディーネがお釜に水を入れて火のサラマンダーがお釜に火をつけてお米を炊き上げる黒魔術よ。あっ卵もう一ついただくわ。」ガツガツ

 

ただの米泥棒じゃねえか。それにしてもこいつ等よく食うな…。

 

矢内「よし、腹も膨れたし、そろそろ行くか。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

そして、俺達は王様の居る城に向かった。今回はまあ直ぐに片が付くだろう。

城にたどり着いた。俺達の前に何人も人が並んでいる。こいつ等も褒美目当てで来た連中か。

 

サチ「私達の番はこの次の次ね…。」

矢内「ああ…。」

勇者「賢者さま、なんか落ち着いていますねぇ。」

サチ「何か秘策が有るのかしら?」

矢内「ああ、任せろ。」

 

少し時間がたった。

 

「中にお入り下さい。」

 

城の兵士に案内された。俺達の前に居た人が芸を初めた。

 

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!ご一緒にー!」

「B K B!」

矢内「B K B!」

勇者「B K B!」

矢内「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!ヒィィーーハァ!」

エリカ「さっき賢者がやってたやつだ。」

「どーもー!今日もアクセル全開で頑張って行こうと思います!バイクだけにね。」ブン!ブン!

矢内「ブン!ブン!」

 

 

 

 

 

しばらくネタが続いた。

 

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!」

「B K B!ヒィィーーハァ!どうもありがとうございました!」

 

ネタが終わった…。

 

王様「ハハハハハハ、面白かった褒美を授けよう!」

「じゃあ、川崎のバイクNinjaで。」

 

勇者の兜じゃなくて良かった。

 

王様「では、次の者。芸を見せよ!」

 

俺達の番だ。俺は王様の前に出た。

 

王様「どうした、早く芸を見せよ!」

矢内「しかしながら王様、わたくしには王様を笑わせることは出来ません。」

王様「何?!」

矢内「ですが!わたくしを連れて来たこの者達なら王様を笑わせることが出来るでしょう。」

 

もう一息だ。

 

矢内「どうか彼女達に勇者の兜をお与え下さい。世界を平和にし人々を笑顔に導くこの勇者一行こそ王様をそして全ての人が心から笑わせることが出来るでしょう!」

 

決まった!パーフェクトに決まった!

 

王様「はぁん?お前は何を言っている馬鹿か!儂は芸をして笑わせたらと言っているのだ!そんな愚民共の笑顔などどうでもいいわ!儂は儂さえ楽しければそれでいい!平和など関係無いわ!芸をしないなら去れー!次に下らない事を抜かすと死刑にするぞー!消え失せろー!」

 

何だと!パノン方式が通用しないだと!予想外だ。こんな事になるなんて…。

 

矢内「出直そう…。」

 

俺達は城を出て宿に戻った。

 

エリカ「賢者!何やってるんだよ!」

矢内「ああ、すまん…。王様があんなクズだと思わなかった…。」

サチ「ちゃんと芸をして笑わせないといけないのね…。」

矢内「そうだな…。俺の物まねを披露するしかないな…。」

勇者「賢者さまは何でも出来るのですねぇ。」

サチ「見せて貰えるかしら?」

 

マジか?仕方ない、披露するか。

 

矢内「では、取って置きをやる。ミュージックスタート!」

 

矢内「いーつでも♪ふーたりは♪シンデレラ ハネムーン♪」

エリカ「何これ?」

アリマ君「キー?」

矢内「時計に♪おーわれる♪シンデレラ ハネムーン♪」

エリカ「何でアゴを突き出して歌っているだ?」

サチ「元ネタが分からないわ…。」

勇者「賢者さま、こうですか?シンデレラ♪ ハネムーン♪」

矢内「おっ上手いな!そうだ、そんな感じだ。もっとアゴを突き出すんだ!シンデレラ ハネムーン♪」

サチ「実物を見たら似てるか分かるわ…。黒魔術、『パーソン エンター』。」

矢内「日暮れに♪はーじまる♪」

勇者「シンデレラ ハネムーン♪」

矢内「夜明けに♪わーかれる♪」

勇者「シンデレラ ハネムーン♪」

「……それ、私の真似したコロッケの真似よね。」

 

俺は後ろを振り返った。

 

「止めてくれるかな?」

 

げっ!本人が居る。どういう事だ?

 

サチ「元ネタが分からないから私の黒魔術で本人を呼んだわ…。」

矢内「余計な事をするな!怒られるだろ!」

勇者「シンデレラ ハネムーン♪」

「今、止めろって言ったよね。それにアゴ突き出してないから!次やったら許さないから!」ヒュン

 

光の中に消えて行った…。

 

サチ「帰ったようね。」

勇者「あの人、怒ってましたね…。」

サチ「当然よ。二人共、殴られなかっただけありがたく思うのよ。」

矢内「これだけじゃあ無いぞ。レパートリーはまだまだあるんだ。」

サチ「いえ、もう結構よ。賢者さんはあてにならないわね…。助っ人を呼びましょう。」

エリカ「助っ人?」

サチ「ええ、そういえばエリカさん達はまだ会ってなかったわね…。」

勇者「誰ですか?」

サチ「今から私の黒魔術で召喚するからみんな黙って居ててね。」

エリカ「分かった!どんな奴だろうなぁ。」

アリマ君「キー!(楽しみだね。)」

サチ「あまり期待しない方が良いわよ。『パーソン エンター。』」

 

何か光の渦が出てきた!何をするつもりなんだ?

 

サチ「えー、コホン。かー、矢内!お前って奴は…。ハッハーwww」

 

何だ今のは?

 

エリカ「うわっ!光の中から誰か出てきた!」

アリマ君「キー!キー!(エリカちゃん気を付けて!)」

畑中「ハッハーwww!矢内!ここは何処だよ!俺はゴッド打ってたはずだぞ!」

 

誰か出てきたと思ったら寄りによってコイツか…。期待して損した。

 

勇者「屑野郎さん、こんばんは!」

畑中「おぅ!勇者ちゃん!」

エリカ「誰?」

サチ「そうね。エリカさん達は初めてだったわね…。紹介するわ。そいつの名は畑中…。毎日、プラプラしている屑野郎よ…。」

勇者「屑野郎さんは賢者さまのお友達なのですよ。」

エリカ「そうなんだ。あたしエリカ!よろしくな屑野郎!」

アリマ君「キー!キー!(屑野郎、よろしく!)」

 

初対面で失礼だろ…。まぁ畑中だから良いが…。

 

畑中「ハッハーwww!魔物じゃねえか!矢内、コイツも仲間か?」

矢内「ああ、アーリマンのアリマ君だ。この中じゃ一番優秀な奴だ。」

畑中「ハッハーwww!まあいいや、よろしくな!」

アリマ君「キー!」

サチ「挨拶も済んだ所で用件を言うわ。実はこの国の王様を笑わせて勇者の兜を手に入れないといけないの…。それであなたのそのおかしな顔で王様を笑わせて欲しいのよ…。」

 

酷い言い草だな…。まぁ相手が畑中だから良いが…。

 

矢内「サチ、何でいきなり畑中が出てきた?」

サチ「賢者さん…。いちいち説明するのは面倒なのよ…。今のは、私の黒魔術、『パーソン エンター。』光の渦を出して物まねをした相手を召喚する黒魔術よ。」

矢内「さっきのは畑中の真似か…。お前、物まね下手くそだな…。」

サチ「黙りなさい…。あなたも人の事言えないじゃない…。」

 

大きなお世話だ!

 

畑中「なんかドラクエみたいな展開だな…。なら、パノン方式で楽勝じゃねえか!」

矢内「さっきそれをやって失敗したんだ。次失敗したら俺達は死刑になる。」

畑中「かー!お前って奴は…。勝手に俺を巻き込むな!」

矢内「別に良いだろ!お前が死んでも誰も困らないから。」

畑中「お前一人で死ねよ!」

エリカ「アイツ、面白いなぁ…。」

サチ「やはり賢者さんと息がぴったりね…。」

 

コンコン!誰か来たのか?こんな時間に誰なんだ?

 

???「失礼します。」

勇者「誰ですか?」

大臣「私はこの国の大臣です。こちらはこの国の兵士長です。実はあなた方にお願いがあります!」

エリカ「お願いって何?」

大臣「国王のこの馬鹿げた行為を止めていただきたいのです!」

矢内「どういう事だ?」

大臣「分かりました、説明します。今、このお触れのために国民は重い税金を払わされています。」

兵士長「そして、王様やその娘は国民のことなどお構いなしに贅沢三昧…。自分は王女に虫けらのような扱いを受けています…。」

矢内「何で俺達に言うんだ?お前達がクーデターでも起こせば良いだろ。」

大臣「それがあの王が神のご加護を受けているのです…。凡人の我々には手が出せないのです。」

矢内「って事はここの国王は勇者なのか?」

サチ「出たわね…。その中二病設定…。」

畑中「かー!矢内、お前もう三十才過ぎてるのに中二病って!ハッハーwww!」

 

黙れ!真面目な話だ。

 

兵士長「はい、勇者になります…。なので国王に逆らう事は神への反逆になるのです…。」

大臣「国民はその事を知っているので誰も逆らえないのです…。」

矢内「で、なんで俺達に頼むんだ?俺達余所者だったら後でどうなっても良いって事か?」

大臣「それは…相手が勇者だと神も手は出せないからです…。」

畑中「そうか!じゃあ大丈夫だ。」

 

大丈夫じゃねえ!そいつは勇者でもなんでもねえ…。

 

矢内「いや、しかしだな…」

兵士長「我々はあなたの演説で感動してここに来ました!この国を変えるのはあなたしか居ないと!」

 

コイツ、なかなか分かっているじゃねぇか。

 

大臣「お願いします、賢者様!我々を救っていただけるのは賢者様達おいて他におりません!どうかこの国を救って下さい!賢者様!」

矢内「ハハハ!そうだろう!そうだろう!この賢者様に任せておけば全て解決だ!ハハハハハハ!」

大臣「ありがとうございます!」

兵士長「我々も出来る限りは協力させていただきます!それでは、今日の所は我々は失礼します!」

 

大臣達は部屋を出て行った…。

 

サチ「で?賢者さん?どうするつもりかしら?」

畑中「かー!矢内、お前は煽てられたら直ぐに調子に乗る…。悪い癖だぞ…!」

矢内「まぁ、俺の物まねで大丈夫だろう…。」

勇者「シンデレラ ハネムーン♪」

矢内「シンデレラ ハネムーン♪」

サチ「ハァ…。ため息しか出ないわ…。」

畑中「お前の下手くそな物まねでいける訳ないだろ!」

エリカ「なぁ賢者…。王様は悪い奴なんだから普通にやっつけたらいいじゃん。」

矢内「エリカ、王様から褒美を根こそぎ頂いてからやっつけるんだ!」

畑中「そうだぞ!ただやっつけたらタダ働きだからな!ハッハーwww!そういう事で今からネタを作るぞ、矢内!」

 

俺と畑中は一晩中ネタ合わせをした。

そして、夜が明けた。

 



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シンデレラハネムーン 2

2日後

 

 

 

俺達は前日に大臣達と打ち合わせをした後、次の日に城に向かった。

 

矢内「褒美に釣られた糞共がいっぱい居やがるな…。」

畑中「お前が言うなよ!ハッハーwww!」

サチ「私達の番まで少し時間がかかりそうね…。」

勇者「待っている間退屈ですねぇ…。」

エリカ「そうだなぁ…。」

矢内「お前達、飴ちゃんやるからおとなしくしていろ。」

勇者「ありがとうございます!」

エリカ「やった!ありがとう!」

サチ「……スコールキャンディ…。」

畑中「ハッハーwww!お前、飴ちゃんまでスコールって…。ハッハーwww!」

 

そうこうしている内に俺達の番が近づいてきた。

 

「ゲッツ!」

 

芸を終わった奴が出てきた。お前は褒美をゲッツ出来てないだろ…。そろそろか…。

 

「次の方お入り下さい。」

 

俺達は王の間に入った。この次か…。緊張してきた…。

 

矢内「つつつ次が、おおお俺達の番だな!」

畑中「ううう打ち合わせどうり、い行くぞ!わわわ分かってるな!矢内!」

勇者「だだだ大丈夫ですよ!」

サチ「はぁ、不安だわ…。」

 

王様「面白く無い!出直せ!次の者!儂に芸を見せよ!」

 

俺達の番が来た!

 

王様「またお前達か…。少しでもつまらなかったら死刑にしてやるからな!では芸を始めよ!」

 

矢内「どーもー!矢内でーす!」

畑中「畑中でーす!二人合わせて!」

矢内「そんな事よりですねー!最近、」

畑中「二人合わせてって言ってるのだからコンビ名を名の鳴らないとダメだろうが!」

勇者「シンデレラ ハネムーン♪」

 

勇者よ…。邪魔するな!

 

矢内「って言う訳で二人でこれから漫才をやっていく訳ですが。」

畑中「かー!お前って奴は、本当マイペースだな!」

矢内「まあまあ、最近困った事が有りましてですね。」

畑中「困った事?三十才過ぎても中二病が治らない事?」

矢内「そうそう、収まれ!俺の右腕!って違う!」

畑中「矢内…いいカウンセラー知ってるから大丈夫だ。安心しろ。」

矢内「違う!ノリ突っ込みを普通に返すな!俺が困ってるのは訪問販売だよ!」

畑中「訪問販売?」

矢内「そう、訪問販売の追い払い方だよ!」

畑中「分かった。俺が訪問販売の役をするからお前がここで上手く追い払えるかここのみんなに見て貰おう!ピンポーン!ゴメン下さーい!」

矢内「お前…、何しているの?」

畑中「今からコントに入る流れだろうがー!馬鹿か!」

矢内「まあ、それは置いといて。この前、訪問販売の女が来たのですよ!あなたは神を信じますか?って。」

畑中「聖書の?ああ、宗教勧誘の奴な!」

矢内「ええ、せっかくのシルバーウィークの連休の時に来やがって腹がたったので言ってやったんだよ!」

畑中「おお!なんて言ったんだ?」

矢内「神のゼクスの野郎は昨日会ってぶん殴ってやった!って。」

畑中「矢内…いいカウンセラー紹介するからその中二病…少しずつ治していこうな。」

矢内「中二病じゃねえ!急に優しくするな!まあ、言ってやったんだよ!そしたらその女、どうしたと思う?頭のおかしい奴だって警察呼んだんだよ!それから事情聴取だよ!」

畑中「ハッハーwww!お前馬鹿だろ!」

矢内「それでな!次の日も来たんだよ。今度は保険の勧誘だよ。」

畑中「保険の勧誘か。備えあれば憂いなしっていうからね。」

矢内「まあ、俺もそう思って今度は話を聞く事にしたんだよ。」

畑中「お前にしては珍しい。」

 

サチ「やっぱりこの二人息がぴったりね…。凄いわ…。」

大臣「これはいけるかもしれない。」

王様「こんな奴の芸で笑う訳にはww…」

 

いける!もう少しだ!

矢内「その、保険の訪問販売の女がまたムチムチのいい身体してたのですよ。」

畑中「あー…。」

矢内「その保険の訪問販売の女が最近、身体に異常は無いですか?って聞くから言ってやったんだよ。」

畑中「もう言わなくいい…。お前が悪い…。」

矢内「最後まで聞けよ!チンコの膨らみが収まらないから何とかしてくれって頼んで押し倒して挿入しようとしたんだよ。そしたら、警察呼ばれたんだよ!」

畑中「当たり前だ!馬鹿か!もう良いわ!」

二人「ありがとうございました!」

 

俺達の漫才は終わった…。

 

エリカ「なぁ…王様を笑わせたら良いんだよな。あたしがやるよ!アリマ君、行こう。」

アリマ君「キー!」

 

エリカ達が王様に近づいて行った…。何をするんだ?

 

エリカ「よし!コチョコチョだ!」コチョコチョコチョコチョ

アリマ君「キー!」コチョコチョコチョコチョ

王様「ウワハハハ!止めんか!ウワハハハ!」

大臣「それまで!勇者一行、シンデレラ ハネムーンズに褒美を与えよう!」

勇者「やりました!」

 

コチョコチョは芸じゃねえだろ!納得いかねぇ…。

 

大臣「それでは、褒美を与えよう!何でもいうが良い!」

王様「待て!大臣!儂は芸で笑っていない!」

矢内「じゃあ、褒美として王様の地位と財産を全て頂こう。」

王様「そんな事通る訳が」大臣「よし、分かった!そなた達に王様の地位と財産全てを授けてよう!」

王様「大臣!お前は馬鹿か!」

矢内「よし!この城の物を全て頂くぞ!俺は会社からフォークリフトを取ってくる。金めの物をかき集めてくれ!」

畑中「ハッハーwww!任せろ!」

サチ「分かったわ…。」

王様「おい!兵士長!奴等をたたき切れ!何をしている!早くしろ!」

兵士長「もう王でも無い者の命令は聞く必要は無い!」

王様「貴様ー!儂に逆らうのかー!」

サチ「無一文のただの人には黙って貰いましょうか。黒魔術『お口チャック』よ。」

王様「ンー!ンー!ンー!」

畑中「なんだ今の?ハッハーwww!」

 

俺はその胡散臭い黒魔術見慣れてるからな…。さて、会社にフォークリフトを取りに行くか。

そして、俺はゲートストーンを使って会社に戻った。

 

 

 

俺は再びフォークリフトに木のパレットを乗せて戻って来た。

 

矢内「よし、この上に金めの物を乗せてくれ!」

勇者「はい、賢者さま!」

 

金銀財宝が持って来たパレットに収まりきれない…。どんだけ国民から奪ってきたんだ、この糞野郎は!

一度、会社に財宝を置いてパレットをまた持って来るか。

 

矢内「また会社にパレットを取って来るから金めの物を集めててくれ!」

サチ「分かったわ…。みんな、この城の物を根こそぎ頂いていくわよ。」

アリマ君「キー!」

矢内「そうだ、兵士長!これを飲んでこの国の王女に散々やられた仕返しをしてやれ!」

兵士長「賢者様、この薬はいったい?」

矢内「ああ、バイアグラだ。簡単にいうと精力剤だ。その薬の力で王女を肉便器にしてやれ!」

兵士長「賢者様…。この薬…。部下達の分もお願いします。私だけではなく部下達も復讐したいはずです!」

矢内「ハハハ!なかなか分かってるじゃねえか!有るだけ渡しておく。好きに使ってくれ!」

兵士長「賢者様!ありがとうございます!では自分は兵を集めて来るので失礼します。」

 

普段、真面目な奴が羽目を外すと手が着けられないからな…。

 

大臣「賢者様…。これは流石にやり過ぎでは…。」

矢内「こういう奴等は徹底的にやらないとダメだ。それに次の国王はお前だから財産全て頂いたら好きにして良いぞ。」

大臣「………。そうですな…。この国は1からやり直さないといけないのかもしれませんな…。では私はこの事を国民に話して来ます。」

 

そして、俺は一度財産を置きに会社に戻って再び城に戻って来た。

 

矢内「よし、根こそぎ財産を奪い取るんだ!」

エリカ「賢者ー!このレイピア貰っていい?」

矢内「ああ、良いぞ!欲しい物は全部頂け!」

畑中「それにしてもすげぇな…。俺達が悪党みてえじゃねえか!ハッハーwww!」

矢内「畑中!馬鹿かお前は!ドラクエだって勇者一行は城から宝箱やタンスの中漁ってるじゃねえか!同じだ!」

サチ「ゆうりん、エリカさん、自分たちの欲しい物は懐に入れておくのよ。」

矢内「鉄は会社でスクラップに出すから全部かき集めてくれ!」

アリマ君「キー!」

 

俺達は手際良く城の物を奪い取っていった。

 

王様「貴様ー!賢者とか言ったな!許さんぞ!」

 

あっフォークリフトの前に出てくるな!ブレーキをかけないと!ガン!グシャ!

 

 

 

 

フォークリフトの爪に王様が刺さってしまった…。

 

畑中「矢内ー!お前!何しているんだよ!殺人じゃねえか!」

矢内「矢内はレベルが上がった!」

畑中「冗談言ってる場合か!お前が上がるのは刑期だけだ!」

矢内「こいつはこの国の勇者だから後で王様に『勇者よ。死んでしまうとは情けない』ってセリフと共に生き返るから大丈夫だ!気にするな!」

畑中「そいつが王様だろうが!」

矢内「じゃあ、教会だ。教会で生き返る!」

サチ「賢者さん、また中二病を患わして…。」

矢内「まあ、多分生き返るだろう…。後でゼクスに確認しておこう…。」

 

俺はフォークリフトについた王様の血を拭き取って作業に戻った。

 

矢内「よし、こんな所か。」

勇者「勇者の兜も見つけました。」

エリカ「それにしても凄い量だなぁ。」

サチ「ええ、こんなにこの国の人から奪い取ってたのね…。」

矢内「国民の皆に返してやろう。」

勇者「そうですね…。それが良いです。」

 

俺達は城を出て城下町まで向かった。広場に大臣がこっちに気がつき近づいて来た。

 

大臣「おや?皆さん、どういたしました?」

勇者「王様の財産を国民の皆さんに返しに来ました。」

大臣「あー…。王様が失脚した事を聞いた国民はみんな国を出て行きまして…。一足遅かったですね…。」

サチ「そう…。」

大臣「財産は気にせず皆さんで使って下さい。私は畑を耕しながら1からやり直します。」

矢内「畑を1からか…。大変だろう。よし、後で農業の達人を呼んで協力して貰おう。」

大臣「そんな、お気遣いなく…。」

矢内「人の好意は素直に受け取るべきだぞ。気にするな。」

大臣「あ、ありがとうございます。」

矢内「じゃあ一度会社に戻ろうか。フォークリフトを返さないといけないからな。」

勇者「はい、賢者さま!」

 

そして俺はゲートストーンを使ってみんなで会社に戻った。

俺達はフォークリフトを返してゲートストーンを使って一度ファタルジニア城に戻ることにした。

 

勇者「賢者さま?どうしてファタルジニア城に戻るのですか?」

矢内「ああ、今までの旅について童帝陛下に報告をかねてな。何日かはゆっくりしよう。俺も少し用事があるからお前達と別行動になる。」

サチ「そう…。じゃあ、しばらくはゆっくりさせていただくわ。」

エリカ「お城かぁ。戦士長元気かな?早く会いたいな。」

アリマ君「キー!」

矢内「よし!みんな、ゲートを通るぞ!」

畑中「矢内ー。気をつけろよー!」

矢内「お前も来るんだよ!」

畑中「ハッハーwww!俺を巻き込むな!」

 

俺達はゲートを通りファタルジニア城に戻った。

 



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シンデレラハネムーン 3

ファタルジニア城に帰って来た。

 

矢内「ひさびさに戻ったけど、相変わらずショボい城だな!」

サチ「賢者さん…口を慎んで…。戦士長に聞こえたら殺されるわよ。」

畑中「ハッハーwww!勇者一行のお通りだぞ!ハッハーwww!」

皇帝陛下「誰だ!我の城にいきなり入って来た輩は!」

 

童帝陛下が出てきた。って俺の会社で作ったスターゲート謁見の間に有るのかよ…。

 

矢内「よう!童帝陛下!」

皇帝陛下「賢者達か!どうやって此処に来たんだ?」

矢内「ああ、それはこいつとゼクスの力だ。」

 

俺は会社で作ったスターゲートについて説明した。

 

皇帝陛下「おお、これでいろいろな所に行けるのか。凄い物だな…。」

キサラギ「何事か!陛下!何者が城に侵入したと聞きましたがご無事ですか?」

皇帝陛下「キサラギか。今、賢者達が戻って来た所でな。これから旅の話を聞く所だったのだ。」

矢内「戦士長!しばらくだな!」

勇者「皇帝陛下さん、戦士長さん。お久しぶりです。」

キサラギ「おお、勇者殿に賢者殿!エリカは?エリカは無事ですか?」

エリカ「戦士長!ただいま!」

アリマ君「キー!」

キサラギ「エリカー!無事だったか!怪我とかしてないか?みんなとは上手くやっているか?」

 

お前はお父さんか!

 

皇帝陛下「これキサラギ、少しは落ち着かんか。みんな良く戻って来てくれた!我は嬉しく思うぞ!」

畑中「ハッハーwww!矢内、あいつキモい顔だな!俺より不細工な奴初めて見たぞ!ハッハーwww!」

エリカ「お前も不細工だけどあいつはもっと気持ち悪いもんなぁ!」

畑中「ハッハーwww!さりげなく俺をディスるなよ!ハッハーwww!」

アリマ君「キー!キー!(失礼だよ!2人共。)」

矢内「アリマ君、そんな事言っても童帝がキモい顔に生まれて来たのが悪いんだろうが!」

サチ「賢者さん…。お願いだから口を慎んで…。」

皇帝陛下「賢者よ…。我に対する無礼はもう良いがそこの笑っている不男は誰だ?」

矢内「ああ、こいつか?」

サチ「そいつの名は畑中…。毎日仕事もせずにプラプラしている屑野郎よ、童帝陛下。」

 

お前も口を慎め。

 

勇者「屑野郎さんは賢者さまのお友達なんです!」

皇帝陛下「そうか…。それでこんなにも無礼なのだな…。」

キサラギ「類は友を呼ぶって事ですね…。」

矢内「失礼だな…。」

畑中「ハッハーwww!矢内!お前が言うなよ!ハッハーwww!」

皇帝陛下「賢者よ、わざわざ戻って来たって事は我に用が有るのだろう?」

矢内「ああ、実はな、北のノートルランドの勇者一行と会ってな…。」

キサラギ「北の国の勇者一行…。」

矢内「ああ、ファタルジニア城に向かっている。ラーメン屋を営んでいる気さくな良い奴等だから快く迎え入れて貰いたいんだ。」

畑中「ハッハーwww!ラーメン屋の勇者って、お前は何を言ってるんだ?」

勇者「屑野郎さん、本当ですよ。勇者のタイショウさんと僧侶のポーラさんと生意気なシンディの3人です。」

皇帝陛下「迎え入れるのは構わんがそれだけを言う為にお前達は戻って来たのか?」

矢内「話は最後まで聞けよ、そんな事だからお前は童帝なんだよ。それでだな、お前達はどうせ毎日ろくな物食ってないだろうからこの金で国民全員にラーメンを食わせてやれって話だ。」

キサラギ「賢者殿、気持ちは嬉しいがそんな大金いったいどこで手に入れたのだ?」

矢内「勇者の兜を持ってた王様からの褒美で貰った金のごく一部だ。気にせずに使え。」

サチ「そうね…。せっかくタイショウ達が来るのだからラーメンを食べないとあなた達は人生の九割は損をする事になるわよ。だからそのお金は遠慮無くいただきなさい。」

畑中「ハッハーwww!食いしん坊のさっちゃんがそこまで言うんだから相当美味いんだな!俺も食って見てえな!」

勇者「そうですよ!食いしん坊のさっちんが認める美味しさなんですよ!絶対食べるべきです!」

エリカ「そうだよ!食い意地の張ったサチが認める美味しさだよ戦士長!絶対食べないと駄目だよ!」

アリマ君「キー!キー!(さっちゃん、替え玉三回もおかわりしてたもんね。)」

サチ「みんな…人聞きの悪い事言わないで貰えるかしら。」

矢内「お前、替え玉三回もおかわりして何を言ってるんだ?認めろよ。」

サチ「えっ?け、賢者さん…なんで?私達が食べてた時居なかったよね…?」

矢内「今、アリマ君が言ってただろうが!替え玉三回頼んでいたって。」

サチ「は?アリマ君は喋れないでしょ?」

矢内「サチの食い意地は置いといてだ。そういう事だからこの金で国民達に是非ともタイショウ達のラーメンを食べさせてやってくれ!」

皇帝陛下「そうか、分かった。お前達がそこまで言うんだ、この金はありがたく使わせて貰おう!」

キサラギ「賢者殿、本当にかたじけない!実はたいした事ではございませんが自分も賢者殿達に報告が有りまして…。」

 

何の報告なんだ?

 

キサラギ「実は、前に賢者殿達が訪れた村の鬼達が城に来てな…。我が国の傘下に入る事になった。」

勇者「シュテちゃん達ですね。」

キサラギ「シュテちゃん?ああ、酒呑童子の事か?なかなか強かったな。」

サチ「戦士長、シュテちゃん達と戦ったのかしら?」

キサラギ「ああ、3人まとめて相手にしたから少し苦戦したがな。」

矢内「なんで戦ったんだ?良い奴等だのに…。」

キサラギ「ああ、鬼達の1人が自分の事をエリカから聞いていたみたいでな…。腕試しをしたいと言ってその流れで…。」

 

マジでか!どんだけ強いんだ、この戦士長は…お前が魔王を倒しに行けよ…。

 

キサラギ「しかし、あの者達はとても良い連中でな。村で採れた野菜などを持って来てくれて兵達の食事も改善されている。」

矢内「そうか。俺の方からも後で礼を言っておく。」

エリカ「あっ!そうだ戦士長!あたしも戦士長に伝えたい事が有るんだ!」

キサラギ「おお、エリカよ。どうした?」

エリカ「この前、賢者のヤツがあたしとアリマ君にシンナーっていうやつを思いっきりかけてきて身体中に火傷しそうになったんだよ!」

キサラギ「賢者殿…どういう事か説明して貰おうか?」

 

コイツ、チクりやがった!

 

矢内「あっ!そうだ!これから直ぐに行く所が有ったんだ!俺は失礼するぞ!」

 

俺は命が惜しいのでゲートストーンを使ってゼクスの所に急いで逃げ出した。

 

勇者「賢者さま…。行っちゃいましたね…。」

キサラギ「ファタルジニアの兵達よ!逃げ出した賢者を探し出してひっとらえろ!絶対に探し出せー!」

皇帝陛下「キサラギよ…。落ち着かんか…。勇者達よ…。そなた達の旅の話を聞かせてくれるか?」

勇者「あっ、はい。分かりました。」

 

 

 

 

 

俺はゼクスの下に逃げ込んだ。

 

ゼクス「賢者様、久し振りです!」

矢内「ゼクス…。実は聞きたい事があって来たんだ。」

ゼクス「何でも聞いて下さい。」

 

お前…前回の質問答えずに強制送還したくせに…。

 

矢内「ああ、勇者って死んだら神のご加護とかで生き返ったりするんだろ?」

ゼクス「賢者様…相変わらず中二病全開ですねー。死んだら終わりに決まっているじゃないですかー。」

 

腹立つな…。コイツ…。

 

ゼクス「お笑い好きの王様の件ですよね。」

矢内「知ってたのかよ!」

ゼクス「いつもあなた達の様子は見てますからね。」

矢内「なぁ、俺はあの国の神に天罰でも喰らうのか?」

ゼクス「賢者様…。もしかしてビビってます?」

 

いちいちおちょくってきやがる。

 

ゼクス「まぁ、気になるのでしたら直接本人に聞いてみましょう。」

 

ゼクスは何か取り出した物をいじくっている。

 

ゼクス「賢者様、その神、どうやら直ぐにこっちに来るそうです。」

矢内「は?こっちにだと?その神とお前は仲が良いのか?」

ゼクス「会うのは初めてです。あっ来ました。あの方です!」

???「お前だな?俺を呼び出したのは!」

 

デカい。2メートルはあるぞ!肌が青い…。本当に神か?

 

ゼクス「ロキ様!お呼び出してすみません!この中二病の人間がロキ様に聞きたい事があるみたいでして…。」

 

誰が中二病だ!

 

ロキ「おお!お前は知っているぞ!俺が天啓を授けた勇者を殺した男だな!」

 

マズい…。

 

ロキ「あいつ機械の爪に刺さってたもんなぁ!ハハハハハハ!思い出しただけで面白い!ハハハハハハ!」

矢内「あの…。俺は何か天罰か何か受けるのですか?」

ロキ「ああ、そうだな…。その事は不問にしてやるからこれから面白い事をするときは俺も呼べ。」

矢内「はぁ?」

ロキ「気になってな、お前がこの世界に来てからの行動を色々と調べさせて貰ったんだ。オークや人間とパーティーしたり鬼達と飲み会したり面白そうじゃないか!次から俺も誘えよ!」

 

コイツ…。本当に神か?

 

ゼクス「ロキ様…。神が好き勝手に地上に降りては…。」

ロキ「じゃあ俺、神様止めるわ!お前の客人としてここに居るわ。」

矢内「勝手に止めたらダメだろ。学生バイトの感覚で止めるなよ!」

 

何考えてるんだ?この世界の連中はこんないい加減な奴等を信じているのか…。

 

ロキ「お前、相手が神でも遠慮が無いな!やっぱり面白いわお前!そうだ!お前とあの不男に俺の力を与えている。お前は魔物の言葉が分かるようになってるはずだ。」

矢内「それでさっきアリマ君の言葉が分かったのか…。ありがたい、結構良い力だ。」

矢内「ゼクス、もう一つ用事がある。酒呑童子達の村とさっき俺が殺した王様の国にゲートをつけてくれ。」

ゼクス「そうくると思ってもう設置は終わっています。直ぐにでも移動は可能です。ちなみに鬼の村がエメラルドグリーン、お笑いの城が若草色です。」

 

ゲートストーンは半分緑色に染まった。

 

矢内「これじゃ分からねーだろうが!ぶん殴るぞ!」

ゼクス「賢者様!緑色は目に優しいのです!」

 

腹立つなぁコイツ…。前にも聞いたわ!もう分からなくなるからマジックでどこに行くか書いておこう。

 

矢内「じゃあ、俺は鬼の村に行くから。じゃあな。」

ロキ「俺も連れて行け!」

 

俺はロキを連れてゲートストーンを使って鬼の村に向かう事にした。

 

ロキ「向こうで酒飲もうぜ!」

矢内「遊びに行くんじゃねえよ!」

 

 

 

 

 

俺はゲートストーンを使って鬼の村にたどり着いた。

 

「賢者様でねえべか!」

 

村人達が俺に気がつき近寄って来た。

 

矢内「よう!しばらくだな!」

「いやぁ、良く来てくれたのう。酒呑童子様を呼んで来ますじゃ。」

 

村人達が酒呑童子を呼びに行った。

 

ロキ「早く飲み会しようぜ!」

矢内「だから遊びに来たんじゃないんだよ!」

酒呑童子「ガハハハハ!賢者殿ー!久しいのう!会いたかったぞ!」

 

酒呑童子がこっちに来た。相変わらず声がデカい…。

 

矢内「シュテちゃん!しばらくだな!」

酒呑童子「賢者殿もこの村を訪れるとは、今日は客人が多い日だ!」

矢内「ん?他に客が来ているのか?」

酒呑童子「北の国の勇者一行が来て居てのう。」

矢内「まさか!タイショウ達か?」

酒呑童子「賢者殿の知り合いか?」

矢内「ああ!北の国で出会ってな。どこに居るんだ?」

酒呑童子「村の中央じゃ。」

矢内「そうか。せっかくだから、後で会っていこう。あっ所で少し協力して欲しい事が有るんだ。」

酒呑童子「ガハハハハ!賢者殿!水くさいぞ!何でも言ってくれ!わし等はいつでも賢者殿の力になるぞ!」

矢内「ああ、すまん…。実はある国の勇者(王様)を手違いで殺してしまってな…。それでその国の人達がほとんど出て行ってしまって…その国の大臣が1人きりになってしまったんだ。」

ロキ「アイツが死ぬ所、本当に面白かったよな!」

 

話がややこしくなるから喋るな!

 

酒呑童子「賢者殿…。その者は一体何者じゃ?なんか禍々しい気を感じるのじゃが…」

ロキ「俺か?俺は邪神ロキ様だ!まあ、コイツが俺が天啓を与えた勇者を殺したから元神様だ!」

矢内「邪神!?」

酒呑童子「何じゃと!?」

ロキ「言ってなかったか?まあ良い。それより早く飲み会しようぜ!」

酒呑童子「そうじゃのう!賢者殿も来たし宴会じゃあー!」

矢内「後にしろよ!話の続きだ。その大臣がな、1から畑を耕してやり直すと言うんで手を貸してやって欲しいんだ。居ただろ?農業の達人。」

酒呑童子「そんな事か、星熊童子に言っておく。それより宴会じゃあー!賢者殿!あの時の決着を付けるぞ!ガハハハハ!」

ロキ「ハハハハハハ!お前、酒呑童子って言ったか?面白いな!気に入ったぞ!」

酒呑童子「ガハハハハ!それは何よりじゃあ!北の国から来た勇者一行も誘うぞ!今日は楽しい宴会じゃあ!」

 

やっぱりこうなったか…。

 

矢内「先にタイショウ達に会って来る。」

 

俺は村の広場に向かった。タイショウ達がラーメンの仕込みをしている。シンディが俺に気がつきこっちに来た。

 

シンディ「矢内 孝太郎…。こんなに早く会えて嬉しい…。凄く嬉しい…。」

矢内「シンディ!元気だったか?」

シンディ「うん…。元気…。」

 

タイショウとポーラもこっちに気がついた。

 

ポーラ「あら♪賢者様?お一人?」

タイショウ「賢者殿?どうして此処に居るのじゃ?わし等とは反対方向に行ったはずタイ。」

矢内「ああ、この村に用事があって戻って来たんだ。その辺の事はまあ後で説明する。せっかくだからこの金でこの村のみんなにラーメンを振る舞って欲しいんだが、いいか?」

タイショウ「け、賢者殿!こんな大金いったいどこで手に入れたのじゃ?」

矢内「ああ、ある国で王様から勇者の兜をいただいたついでに貰ったんだ。これで足りるか?」

 

いまいちこの世界の金の価値が分からないがまあ足るだろう…。

 

ポーラ「凄い大金…。この3分の1で大丈夫よ♪」

矢内「そうか…。じゃあ頼む!この村に俺達は世話になったんだ。みんなに美味いラーメンを提供してくれ!」

シンディ「矢内 孝太郎…。この村の人達…お金持ってなかった…私達…困っていた。でも…矢内 孝太郎のお金でみんなにラーメンを作ってあげられる…。本当に良かった…。」

ポーラ「あら?シンディちゃん♪いつもおとなしいのに今日はおしゃべりね♪」

タイショウ「そうじゃのう。やはり賢者殿が居るからじゃのう。」

矢内「タイショウ!俺は村のみんなを呼んで来るからラーメンを作って待って居てくれ!」

タイショウ「賢者殿!任せるタイ!」

ポーラ「フフフ♪今日は賢者様のおかげで大忙しね♪」

 

こんなに早くタイショウ達のラーメンが食えるとは…楽しみだ!俺は駆け足でシュテちゃん達を広場に集めた。

 

 

 

 

一方その頃ファタルジニア城では……

 

 

皇帝陛下「ほう、それが勇者の兜か…。」

 

わたし達は皇帝陛下さん達に今までの旅のお話をしました。

 

皇帝陛下「勇者よ。その兜を一度装備してみてくれるか?」

勇者「分かりました。被ってみます。」

 

わたしは皇帝陛下さんの言われた通りに勇者の兜を被ってみることにしました。

 

ズドン!!勇者の兜を被った瞬間に頭が重たくなってしまいました。頭が重くて地面についてしまいました…。

 

サチ「ゆうりん?どうしたの?凄い格好よ。」

勇者「さっちん…。頭が重いです…。」

エリカ「何してるんだ?勇者。」

勇者「エリカにゃん、頭が重くて動けません。兜を取って下さい!」

エリカ「何遊んでるんだよ。ほら、取ったよ。」

 

エリカにゃんが兜を取ると頭は軽くなり動けるようになりました。

 

勇者「エリカにゃん、ありがとうございます。」

エリカ「ちょっとあたしも被ってみようっと。」ズドン!!

 

エリカにゃんが兜を被って頭を地面にこすりつけています…。

 

エリカ「あああああー!頭が重いよ〜!」

畑中「ハッハーww馬鹿だコイツ!勇者ちゃんが被れなかった勇者の兜だのにお前が被れる訳無いだろ!ハッハーwww!」

勇者「エリカにゃんはお馬鹿さんですねぇ。」

サチ「はぁ…。」

エリカ「頭が重いよ〜。」

キサラギ「エリカ!すぐに取ってやる!そしてエリカを酷い目にあわせたこの兜は叩き切ってやる!」

 

エリカにゃんは戦士長さんに兜を取ってもらいました。

 

エリカ「酷い目にあったよ…。」

アリマ君「キー。(エリカちゃん、大丈夫?)」

皇帝陛下「何だ、勇者に装備できないのか…。」

キサラギ「エリカを酷い目にあわせたこんな物は叩き切ってしまいましょう!」

サチ「戦士長…。落ち着いて、今のはエリカさんがお馬鹿なだけよ。それに他の勇者が被れるかもしれないから兜は私達が預かるわ。」

皇帝陛下「そうだな…。それにしても賢者はまだ帰ってこんのか。」

勇者「じゃあ、わたし達が賢者さまを連れて来ますね。」

キサラギ「勇者よ、自分も連れて行ってくれ。陛下、少し私用で城を離れます。」

皇帝陛下「分かった。皆、気をつけろよ。」

 

わたし達はゲートを開いて賢者さまの居る所に向かいました。

 

サチ「あら?此処って、シュテちゃん達の村よね?」

勇者「あっそうです!賢者さま、ここに用事が有るのでしょうか?」

キサラギ「これがゲート…。一瞬で酒呑童子達の村に着くとは…。」

エリカ「なんか村のみんなが広場の方に集まっているよ。」

勇者「行ってみましょう!」

 

わたし達は広場の方に行ってみました。屋台にみんな群がっています。

 

エリカ「あれはタイショウ達の屋台だよ!」

アリマ君「キー!キー!(賢者様居たよ!)」

サチ「そういう事だったのね…。みんな、賢者さんの用事は私達に内緒でタイショウ達のラーメンを食べてシュテちゃん達とお酒を飲む事だったのよ…。戦士長…賢者さんを後ろから叩き切ってもらえるかしら?」

畑中「それよりさっちゃん、さっきの兜を貸してくれ。」

サチ「何をするつもりかしら?」

畑中「矢内がラーメンを食う瞬間にこれを被せる。すると矢内は頭からラーメンを被る。その方が面白い!」

キサラギ「畑中殿…。我々では兜を被せる前に賢者殿に気付かれてしまうのでは…。」

畑中「上から被せるんだ。アリマ君だったか?空からこの兜を被せるんだ、出来るか?」

アリマ君「キー!」

勇者「屑野郎さん!賢者さまに何てことをするつもりなんですか!」

畑中「勇者ちゃんいいか?これは俺達の世界ではドッキリって言ってな。親しい者同士でやるお遊びなんだよ。」

勇者「分かりました。遊びなんですね。賢者さま、喜んでくれると良いですねぇ。」

畑中「よし、作戦開始だ!アリマ君、頼むぞ!」

アリマ君「キー!」

 

キサラギ「サチ殿、そんな酷い遊び本当に有るのか?」ヒソヒソ

サチ「無いわ…。畑中が口から出任せで言ったのよ…。」ヒソヒソ

 

 

 

 

村人達が広場に集まって来た。ラーメンもそろそろ出来る頃か。俺はロキと酒呑童子の横に座った。

 

タイショウ「まずはラーメン三丁あがったタイ!」

ポーラ「ハーイ♪」

シンディ「これは矢内 孝太郎の分…。」

ポーラ「あらあら♪賢者様のだけチャーシューいっぱいね♪持っていくわね♪」

 

ラーメンがきた!

 

ポーラ「はい♪まずは三人前お待たせ♪これは賢者様の分ね♪」コト

矢内「みんな!俺達は先に食うが順番にラーメンがあがるからな。待って居てくれ!」

ロキ「美味そう!早く食おうぜ!」

酒呑童子「賢者殿、皆の分が来るまで待たないといかんぞ!」

矢内「待っていると麺が伸びる。それに順番にラーメンは配られてる。大丈夫だ!食おう!」

 

 

 

畑中「よし!矢内がラーメンを食うぞ!アリマ君、今だ!矢内に勇者の兜を被せろ!」

アリマ君「キー!」

 

それではいただき…

ズドン!!何かが俺の頭に被せられた。頭が重い…。バシャ!俺は重みで頭からラーメンの丼に突っ込んだ。

 

矢内「熱っ何だ?ゴボゴボ…」

 

誰だ!何をした!

 

ロキ「ハハハ!お前!何で頭から丼に突っ込んだ?ハハハハハハ!」

酒呑童子「ガハハハハ!賢者殿は面白い男じゃあ!いくら美味そうだからって頭から突っ込んだらいかんぞ!ガハハハハ!」

矢内「ゴボゴボゴボゴボ…。(笑ってないで助けろ!)」

 

畑中「ハッハーwww!上手くいった!ザマァミロ!ハッハーwww!」

 

その頭に来る笑い声は畑中か!

 

サチ「フフフ、私達を出し抜いて一人でラーメンを食べようとした罰よ。しばらくそうしていると良いわ。」

エリカ「サチ、あたし達もラーメン食べようよ!」

サチ「ええ!もちろんよ。」

勇者「賢者さま、凄い格好ですねぇ。」

キサラギ「ククッwww凄い格好だ!しばらくそうして居るが良い、矢内殿!」

 

あいつら!俺に何をした!戦士長もグルか!クソ!

 

酒呑童子「おお!やはりお主達も来たのか!戦士長殿も一緒とは!お主達も北の勇者一行からラーメンを貰ってこい!そして宴会をしようぞ!ガハハハハ!」

勇者「シュテちゃん、こんばんは。また会えて嬉しいです。」

サチ「相変わらずね…。」

勇者「タイショウさん達、こんばんは!」

サチ「ラーメンをいただきに来たわ。」

アリマ君「キー!」

ポーラ「あら♪やっぱり来たのね♪」

タイショウ「ファンタルジニアの勇者達!来てくれて嬉しいタイ!直ぐ出来るから待ってるタイ!」

エリカ「戦士長!タイショウ達のラーメンはスッゴく美味しいんだよ!」

キサラギ「そうか。しかし、他の兵はまだ勤務をしているのに自分だけ食事をする訳には…。」

畑中「ハッハーwww!かてぇこと言うなよ!黙っていたら良いんだよ!矢内は俺達に黙って食おうとしたんだぞ!」

キサラギ「自分をそなた達と一緒にしてくれるな!」

畑中「ハッハーwww!たまには気を抜くのも大事だぞ!長のお前が部下達にたまに隙を見せとかないと下の者達は息苦しくなるだろ!」

キサラギ「ハハハ!矢内殿といいそなたといい自分には無い考えを持っているのだな。本当に面白い男達だ。」

エリカ「戦士長、常に隙だらけのコイツの言う事聞いたら駄目だよ。」

畑中「ハッハーwww!俺は良いんだよ!隙だらけで!」

タイショウ「ラーメンあがったタイ!」

ポーラ「みんな、お待たせ♪あら?初めて会う人も居るわね♪」

畑中「ハッハーwww!美人にラーメン運んで来てくれるなんて最高だな!」

ポーラ「あら♪お上手ね♪」

畑中「ハッハーwww!俺は矢内と違って素直だから本心しか言えないんだ。」

シンディ「不細工…。矢内 孝太郎を知っているの?」

畑中「かー!初対面でいきなり不細工って、ハッハーwww!」

ポーラ「シンディちゃん!いきなり失礼よ…。そう言うことは思っていても口に出したら駄目よ。」

エリカ「本当の事だから気にするな!」

畑中「ハッハーwww!お前が答えるなよ!」

シンディ「それより…矢内 孝太郎とは…どういう関係?」

畑中「矢内か?まあ、腐れ縁だな!」

シンディ「そう…。」

勇者「さぁみんな、賢者さまの所で食べましょう!」

シンディ「ラーメンは…皆に届いたから…私達も行く…。」

勇者「お前は別に来なくて良いです!」

シンディ「一国の勇者…。あなたのラーメンは…お金貰って無いから返して…。」

サチ「ゆうりん、会っていきなり喧嘩しないの!」

ポーラ「シンディちゃんも意地悪言っちゃ駄目よ。」

シンディ「先に言ったのは…一国の勇者…。私は…悪くない…。」

勇者「ムキー!なんですか!」

シンディ「……なに?」

 

勇者「賢者さまー!」

矢内「ゴボゴボゴボゴボ……。」

酒呑童子「おお!勇者の娘っこ達もラーメン貰って来たのか!ガハハハハ!それでは宴会を始めるぞ!」

 

誰か助けろよ!死んでしまう!

 

ポーラ「あら?賢者様は丼に頭を突っ込んで何をしているのかしら?」

畑中「あれは矢内の家に代々伝わるラーメンに対する儀式なんだ。三十分ぐらいああするんだ。だからほっとこう。」

ポーラ「あら?そうなの?この前はやってなかったような…。」

 

キサラギ「畑中殿…。よくそんな嘘が思い付くものだな…」ボソ

 

酒呑童子「そうか。賢者殿は儀式の最中だったのか。乾杯の音頭を頼もうと思ったのに…」

サチ「あら?シュテちゃん、それならうってつけの人物が居るわ。畑中、お願い出来るかしら?」

畑中「ハッハーwww!任せとけ!」

酒呑童子「誰じゃ?お主は?」

勇者「屑野郎さんは賢者さまのお友達なんです。」

ロキ「この不男も面白い男なんだ!俺が保証する!」

酒呑童子「ガハハハハ!そうじゃったか!では、乾杯の音頭を頼む!」

畑中「よっしゃ!皆!今日は北の国の勇者一行が俺達の為に最高のラーメンを作ってくれた!その北の勇者一行に感謝を込めての宴会を開く!皆!グラスを持ってくれ!!それでは!」

勇者「スコール!」スコール!

 

俺を無視して楽しい宴会が始まった!

 

茨木童子「皆さん!我々の作った料理も召し上がって下さい!北の国の勇者様達も召し上がって下さい!」

ポーラ「あら♪嬉しいわ♪タイショウも呼んで来るわね♪」

エリカ「戦士長、イバちゃんの作った料理も凄く美味しいんだよ!一緒に食べよう!」

アリマ君「キー!(僕、取って来るよ!)」

キサラギ「フフ、矢内殿達と出会ってからいろいろな事が起こる。本当に面白い男だ…。」

熊童子「酒呑童子様!せっかくですので新しく芋で作った焼酎を皆に振る舞いましょう!」

酒呑童子「おお!完成したのか?よし!皆に振る舞うんじゃあ!」

熊童子「まずは北の国の勇者様、どうぞ。」

タイショウ「ハハハ!いただくタイ!」

ロキ「俺もくれ!」

畑中「いつもはビールだが俺も貰おう!」

 

 

シンディ「矢内 孝太郎…。その兜は…似合わない…。」スポ

 

シンディが兜を外してくれたおかげで助かった。

 

 

 

 

畑中「美味い料理に美味い酒。気の合う仲間との食事は俺達の最高のプライスレスになるのだった。」

矢内「お前が締めるな!」

 

 

 

第7話

シンデレラハネムーン

END



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蹴鞠の勇者さま 1

一度ファンタルジニア城から戻ってから3日後、俺達はゲートを通って冒険を再開した。

 

大臣「賢者様、いろいろとありがとうございました。」

矢内「気にするな。このゲートがあるからたまに顔を出すようにするよ。星熊童子もいろいろ助かった。」

星熊童子「いえ、俺も良い経験が出来ました。それに俺達はいつでも賢者様の力になりますよ。」

矢内「すまんな。ではそろそろ行くか。」

勇者「はい。賢者さま。」

 

俺達は大臣達に見送られて出発した。

しばらく歩くと真っ赤なモミジが茂っている。美しい景色を見ながらスコールを一口。今日のスコールは長野産巨峰だ。

 

サチ「そろそろ村につく頃よ。」

エリカ「早く行こう!」

矢内「そうだな…。村に着いたら宿をとって食事にしよう。昨日、良い太刀魚が取れたからな。」

 

村にたどり着いた。そして、そうそうと宿に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

矢内「じゃあ俺は食事の準備をするからお前らは一時間ぐらい外に行ってろ。」

勇者「分かりました。行って来ます。」

 

わたし達は賢者さまに言われたとおりに外に行く事にしました。

 

サチ「それにしてもこんなショボい村ではあまり暇つぶしは出来ないわね…。」

エリカ「広場の方に行ってみようよ!誰か居るかもしれないよ。」

勇者「そうですね。行ってみましょう。」

 

わたし達はとりあえず広場の方に行ってみました。あっ!何か飛んで来ました!

 

エリカ「危ない!」パシ!

 

エリカにゃんが球のような物を手で受け止めました。

 

???「そち、手を使うのは違反でおじゃる!」

 

なんだか顔が色白い奇妙な格好の人が出て来ました。

 

サチ「違反?この球が私達にぶつかりそうになった事を先に謝ってもらえるかしら?」

???「麻呂に対してなんたる無礼な!麻呂は遥か東の国の神アマテラス様から天啓を受けた勇者でおじゃるぞ!」

サチ「………また中二病設定ね…。流行っているのかしら?」

 

賢者さまも前に似たような事を言ってました。

 

エリカ「お前も勇者なんだ。とりあえずこれ返すよ。」

 

エリカにゃんが飛んで来た球を変な人に返しました。なんか嬉しそうにしてます。

 

???「おお、かたじけないでおじゃる。この鞠は麻呂の唯一の友でおじゃる。」

 

変な人ですね…。

 

エリカ「お前、ここで何してたの?」

???「麻呂は賢者という者が近々この村に現れると聞いてここで蹴鞠をして待っていたでおじゃる。」

 

賢者さまのお友達でしょうか?

 

勇者「賢者さまを探しているのですか。それならわたし達と一緒に宿に行きましょう。そろそろご飯が出来る頃ですし。」

???「そち達が賢者の所に案内してくれるのか?かたじけないでおじゃる!」

エリカ「早く宿に戻ろう!」

 

そして、わたし達はこの賢者さまのお友達の変な人を連れて宿に戻る事にしました。

 

サチ「ちょっと、ゆうりん!こんな変な人を連れて行く気なの?」

勇者「さっちん、この人はきっと賢者さまのお友達です。屑野郎さんも変な人だから大丈夫です。」

エリカ「サチ、大丈夫だよ。変な奴はだいたい賢者の友達だから!屑野郎も変な奴だもんな。」

サチ「………私はこの件は関わらないことにするわ…。」

???「奇天烈な服の女、歩くのが遅いでおじゃるよ。」

サチ「おかしな格好の貴方が言わないでもらえるかしら?」

 

 

 

 

 

 

矢内「よし、そろそろ太刀魚も焼き上がる頃だ。アリマ君、皿を並べてくれ。」

アリマ君「キー!」

 

アリマ君ぐらいだもんな…。手伝ってくれるのは…。アイツ等だったらすぐつまみ食いするからなぁ…。ガチャ!扉が開いた。勇者達が帰ってきたか。

 

勇者「賢者さま!賢者さまのお友達を連れて来ました!」

 

友達?俺は勇者達の方を振り返った。

 

矢内「………誰だ、その平安貴族は…。」

 

俺には平安貴族の格好をした友達は居ない!どこでどう間違うと俺の友達になる!

 

エリカ「賢者の友達だろ?だいたい変な奴は賢者の友達じゃないか…。違うの?」

 

こいつ等、訳も分からず連れて来やがった…。変な奴って畑中の事か?失礼だろうが…。

 

サチ「はぁ…。やっぱり、知らない人じゃない…。」

矢内「サチ、お前あの馬鹿共を止めろよ…。はぁ、そこの着物を来たお前、いったい何者だ?」

???「そちが噂の賢者でおじゃるな。麻呂は勇者ヒコマロ!そちが持つ勇者の兜は麻呂がいただくでおじゃる。それは天啓を受けたこの真の勇者である麻呂にこそふさわしい!」

勇者「ヒコマロって名前だったのですね…。」

 

名前も知らない奴を連れて来たのか…。

 

矢内「あー、ヒコマロって言ったか。これから俺達は食事の時間だから食事をしながらお前の話は聞いてやる。とりあえずお前も席につけ。」

サチ「お米は私の黒魔術で炊けているわ。所で賢者さん?アイツも一緒に食べるのかしら?」

矢内「お前らが飯時に連れて来たんだろうが。アイツだけ食わさない訳に行かないだろ。」

 

そういうことで俺達はヒコマロも加えて食事にする事になった。

 

矢内「では、飯にしようか。」

勇者「賢者さま、今日は豪華ですねぇ。」

矢内「ああ。昨日、良い太刀魚が手に入ったからな。太刀魚の刺身に塩焼き。そして太刀魚とキムチの炒めものだ。骨が細かいからな。気を付けて食えよ。」

サチ「凄いわね…。一種類の魚で色々出来るのね…。」

矢内「では食おうか。」イタダキマス!

 

ヒコマロ「そち達…これは?」

矢内「ヒコマロ、遠慮せずに食え。早くしないと大皿の料理が無くなるぞ。」

 

いただきますと同時に一気に大皿の炒めものが減っていく…。

ヒコマロも炒めものに箸を進める。

口に合うと良いのだが…。

 

勇者「辛いです…。」

エリカ「辛いよー!」

 

キムチは甘口だから余り辛くないはずだが…。

 

ヒコマロ「いと うまし!」パクパク

 

どうやら気に入ったようだ。

 

サチ「ちょうど良い辛さね。美味しいわ。」

勇者「辛いけどもう一口いただきます。」パク

エリカ「あたしも!」パク

サチ「あら?二人共、後は私が全部いただくから別に無理しなくて良いわよ。」

勇者「でも、もう一口。」

エリカ「辛いけど、お箸が止まらない。」パクパク

勇者「お魚と一緒に食べると美味しいです!お箸が止まりません!」パクパク

ヒコマロ「いと うまし!いと うまし!」パクパク

サチ「みんな!これは味覚を狂わせる魔法よ!後は私に任せてお箸を置きなさい!危険よ!」パクパク

アリマ君「キー!キー!(独り占めしようしてもそうはいかないよ!)」パクパク

 

客が居るのに意地汚い奴らだ…。

 

 

そして食事を終えて俺達は少しくつろぎながらヒコマロの話を聞くことにした。

 

矢内「どうして勇者の兜が欲しいんだ?」

ヒコマロ「麻呂は遥か東の島国の勇者でおじゃる。旅の先々で麻呂が勇者だと言っても誰も信じてもらえなかったでおじゃる…。それどころか怪しい者として扱われ道中の村や町では少しも歓迎されなかったでおじゃる…。」

 

その成りだもんな…。無理もない…。

 

ヒコマロ「だから、勇者の兜を身に付いていたら麻呂も人々から歓迎されるはずでおじゃる…。」

サチ「で、あなたは人々からちやほやされたいから勇者の兜が欲しいのかしら?」

ヒコマロ「麻呂は…確かに勇者として魔王の討伐を命じられたでおじゃるが…麻呂はこの蹴鞠を皆に広めたいでおじゃる。」

勇者「どういうことですか?」

ヒコマロ「この蹴鞠は子供も大人も関係なくいろんな種族が楽しめる遊戯でおじゃる。だから、この蹴鞠を通して麻呂は世界を平和に導きたいでおじゃる!」

 

悪い奴じゃ無さそうだ。

 

サチ「その遊びを広めて世界中の人達と仲良くしていきたいって事かしら?」

ヒコマロ「そうでおじゃる奇天烈な服を着た女!これが広まればきっと魔王だって仲良くなれるでおじゃる!」

サチ「この服はゴスロリってファッションよ!次言ったらぶっ飛ばすわよ!」

矢内「奇天烈な服を着た女、落ち着けよ。」

サチ「汚い格好の賢者さんが言わないで!」

矢内「これは会社の作業着だ!俺がこの作業着を着て会社で働いているからお前等は飯が食えるのだろうが!奇天烈女が!」

サチ「エン…ト…トライ…スマッシュ!」バチン!!

 

ガッシャーン!俺は宿屋の二階の窓から吹っ飛ばされた。

 

ヒコマロ「いと恐ろしき、奇天烈女…。」

サチ「スマッシュ!」バチン!!

 

ガッシャーン!今度はヒコマロが宿屋の二階から吹っ飛ばされた。

 

サチ「分かったかしら?私の黒魔術は無敵よ。無礼者はこうなる運命よ。」

エリカ「サチ…すげぇ…。」

 

 

矢内「クソッ!手加減ぐらいしろよ!また宿屋の修理代払わないといけないだろうが…。」

ヒコマロ「そち、大丈夫でおじゃるか?」

矢内「ああ…。二回目だからな。お前こそ大丈夫か?」

ヒコマロ「麻呂は勇者でおじゃる。痛く無いでおじゃるよ。」

 

やせ我慢するな。二階から落ちたんだぞ。

 

矢内「ヒコマロよ。お前、勇者の兜が欲しいんだよな?」

ヒコマロ「くれるでおじゃるか?」

矢内「せっかくだからこの勇者の兜を賭けて俺達と勝負しようぜ!勝負の方法はお前が決めて良いぞ。」

ヒコマロ「じゃあ、蹴鞠で勝負をつけるでおじゃる。」

矢内「………。良いだろう。アイツ等を呼んで来る。」

ヒコマロ「麻呂は先に村の広場で待っているでおじゃるよ!そち達も急いで来るでおじゃるよ。」

 

アイツ、嬉しそうにして行ったな…。よっぽど誰かと蹴鞠がしたかったんだな…。

俺は宿屋に戻り勇者達を呼びに行った。

 

矢内「お前達、今からヒコマロと勇者の兜を賭けて勝負する事になったから村の広場に行くぞ。」

サチ「はぁ!?私達が勝負するメリット無いじゃない!」

勇者「分かりました。行きましょう!」

エリカ「勝負って何をするの?」

矢内「蹴鞠だ!」

サチ「はぁ!?賢者さん、バカなの?相手の得意な事で勝負受けるって!」

矢内「サチ、お前が言いたい事は分かる。しかし、この勇者の兜、持っていて他の勇者とかに絡まれたら面倒だろ。だから僕達は頃合いの良いところで負けてアイツに兜を押し付けるんだ。」

サチ「………分かったわよ。私、あまりアイツと絡みたくないのだけど…。」

矢内「決まりだな。行くぞ!」

 

そして俺達はヒコマロと勇者の兜を賭けて蹴鞠で勝負する事にした。

 

 

広場に着くとヒコマロがうずうずしながら待っていた。

 

ヒコマロ「おお!そち達、待ちわびたでおじゃるよ!」

矢内「ああ、すまんな。」

 

ヒコマロは嬉しそうだ。

 

勇者「賢者さま、蹴鞠ってどういう遊びなんですか?」

矢内「そうだな…。初めは俺とヒコマロでやるから少ししたらお前等も混ざるといい。」

勇者「分かりました。」

矢内「ヒコマロ、待たせたな!じゃあ始めるか!」

ヒコマロ「分かったでおじゃる!麻呂から行くでおじゃるよ。」ポーン

矢内「上手く上げたな。」ポーン

 

俺とヒコマロで蹴鞠が始まった。俺達のラリーがしばらく続いた。

 

矢内「こんな感じでこの鞠を蹴って相手にパスをするんだ。」ポーン

勇者「こうですか?」ポーン

ヒコマロ「そうでおじゃる。こんな感じでおじゃる。」ポーン

エリカ「よーし、あたしもやってみよう。」ポーン

矢内「おわ、遠くに行った、間に合うか?」ポーン

ヒコマロ「なかなかやるでおじゃる…」ポーン

勇者「それ!」ポーン

エリカ「行くぞー!」ポーン

矢内「それ!」ポーン

 

外でボール遊びをするのも子供の時やった以来だな…。

 

ヒコマロ「奇天烈な服の女、行ったでおじゃる!」ポーン

サチ「奇天烈って言うなって言ったでしょ!!」バシ!

 

サチは強烈なシュート放った。

ヒコマロの顔面に鞠がクリティカルヒットした!ヒコマロは吹っ飛ばされて倒れた。

アイツ、ヒコマロと相性悪いな…。

 

勇者「ヒコマロ!大丈夫ですか?」

 

しばらくしてヒコマロがヨロヨロと立ち上がった。

 

ヒコマロ「………蹴鞠は友達、痛く無いでおじゃる…。続けるでおじゃるよ。」グスッ

 

泣いてるじゃねぇか!何が友達だ、翼君か、お前は!

 

サチ「………ねぇ、これはどうなったら勝ちなのかしら?」

矢内「………。」

ヒコマロ「………。」

 

考えてなかった…。

 

サチ「はぁ、考えてなかったのね…。」

矢内「そうだな…。1対1でやる競技にしようか。」

ヒコマロ「分かったでおじゃる。」

 

そして俺達は話し合ってサッカーとテニスを融合した競技に決まった。

 

サチ「では、公平なジャッジをする審判が必要ね…。今から呼び出すわ。『パーソン エンター』」

 

光の渦が出てきた。

 

ヒコマロ「な、何事でおじゃるか?」

サチ「黙ってて!今から召喚するから。」

サチ「かー!矢内、お前って奴は…。ハッハーww」

 

渦の中から畑中が出てきた。

相変わらず似てない物まねだな…。

 

矢内「現れたな、来生ヘアー。」

畑中「誰が来生ヘアーだ!俺を巻き込むの止めろよ!」

サチ「来たわね…。畑中、今からそこのヒコマロと勇者の兜を賭けて競技蹴鞠ってのをする事になったから審判をお願いするわ。」

 

俺は畑中にルールを説明した。

 

畑中「サッカーとテニスを融合した競技か。ところで矢内、そこの平安貴族は何者なんだよ。」

矢内「ああ、勇者のヒコマロだ。」

畑中「ハッハーww!お前、こんな変な奴が勇者って、ハッハーww!馬鹿も休み休みに言えよ!ハッハーww!腹痛えー!」

ヒコマロ「奇天烈な服の女!そちは陰陽師なのか?その麻呂を笑う無礼な式紙は何者でおじゃる!」

サチ「………」バチン!

 

サチがヒコマロに強烈なビンタを放った!

 

サチ「陰陽師?私はサチ、黒魔術師よ。そして、この男の名は畑中、毎日仕事もせずに暇を持て余している屑野郎よ。ちなみに次に私の事を奇天烈って言ったら殺すわよ。」

ヒコマロ「麻呂は勇者でおじゃるぞ…。」

サチ「黙りなさい!後、賢者さんが余所の国の勇者を1人殺しているから1人も2人も同じよ。」

ヒコマロ「いと恐ろしき…。」

畑中「かー!さっちゃん、そうカリカリするなよ。」

矢内「そうだぞ!奇天烈女、落ち着けよ。ヒコマロは悪い奴じゃないだろ…。」

サチ「エン…ト…トライ…スマッシュ!」バチン!

 

サチの強烈なビンタで俺は5、6メートル吹っ飛ばされた。

 

サチ「良いかしら?私の事を悪く言う奴はみんなこうなる運命よ…。」

畑中「ビンタ一発であんなに吹っ飛ぶなんて…さっちゃん、何したんだ?」

サチ「今のは私の魔力を右手に送り込んで攻撃する一撃必殺の黒魔術よ。手加減してるからあの程度だけど本気でやったら大抵の奴は殺せるわ。」

ヒコマロ「いと恐ろしき…。」ブルブル

 

 

 

 

矢内「よし、じゃあ準備をしよう!」

 

俺達が競技蹴鞠の準備でネットになる網を村から借りて簡単に地面に書いたコートの真ん中に立てた。

そうこうしていると俺達が気になったのか村人達が集まって来た。

 

畑中「それでは!矢内vsヒコマロ 勇者の兜争奪戦、競技蹴鞠を始める!」ワー!

 

村人達の歓声が響きわたる!こんなショボい村だから娯楽がないのだろう…。

畑中が村人にルールを説明している。簡単に言うとテニスの要領で点を取り、先に五点取ったら勝ちだ。これから面倒な説明はあいつにさせよう。

 

畑中「では、試合開始!先行、ヒコマロのサーブ!」ワー!

ヒコマロ「いくでおじゃる!」ポーン

 

返しやすい球を蹴ってきたな。始めはヒコマロに合わせて隙をついてスマッシュを決めてやろう。ポーン

俺とヒコマロのラリーが続く。そろそろ先制点を頂くか。

 

矢内「よし、もらった!」バシ!

ヒコマロ「クッ!」

 

俺のシュートがコートの右端に見事に決まった。先ずは一点目だ!

 

畑中「矢内!先制!」ワー!

勇者「賢者さま!凄いです!」

 

俺の先制点でギャラリーが盛り上がる!

 

ヒコマロ「次はそうはいかぬでおじゃるよ!」

畑中「ヒコマロ サーブ!」

ヒコマロ「」バシ!

 

チッ、今度は左端を狙ってきたか。

 

矢内「クッ!間に合え!」ポン!

 

ワントラップして相手コートに返す。ちなみに自分のコートに毬が着かなければトラップはOKだ。

 

ヒコマロ「いとおかし…」バシ!

 

次は右端を狙ってきた!

 

矢内「クソ!」ポーン!

 

なんとか返せたがまたヒコマロのチャンスボールだ。今度はきっと左端を狙ってくるな。

 

ヒコマロ「頂くでおじゃる!」バシ!

矢内「甘いな。読みどおりだ!」バシ!

 

読みどおりの球を俺はそのまま左に返して二点目も頂いた!

 

畑中「2vs0 矢内リード!」ワー!

ヒコマロ「麻呂は負けぬ!」バシ!

 

しばらく俺とヒコマロの勝負が続く。

一進一退の攻防だ。

 

畑中「ヒコマロの得点!2vs1 矢内リード!」ワー!

 

流石、といったところか。直ぐに一点を返されてしまった。

2vs1のまま俺とヒコマロのラリーが続いた。

 

勇者「賢者さま、頑張って下さい!」

エリカ「二人ともスゲーな!」

 

ヒコマロ「クッ!」ポーン

 

ヒコマロのミスキックで俺のチャンスボールだ。ここは確実に頂く!

 

矢内「ヒコマロ!喰らえ!これが俺の必殺!」

ヒコマロ「まずいでおじゃる!」

 

ヒコマロは後ろに下がった。かかった!

 

矢内「ドライブシュートだー!」チョン

 

俺はヒコマロサイドのネット前にボールを落として確実に一点決めた。

 

畑中「矢内の得点!3vs1、矢内リード!」

サチ「やり方がセコい…。」

アリマ君「キー。(セコい。)」

矢内「セコくない!これも作戦だ!」

畑中「何がドライブシュートだ!セコい奴だな。お前が翼君になれるか!」

矢内「黙れ、来生ヘアー!」

 

何故俺が責められる!

 

ヒコマロ「そち、まれに見る好敵手、名を名乗るでおじゃる!」

矢内「………矢内 孝太郎だ。」

ヒコマロ「矢内 孝太郎、ここからは麻呂の奥の手を使わしてもらうでおじゃる!覚悟するでおじゃる。秘術『ヒコマロコール』」パチン!

 

ヒコマロが右手を上げて指を鳴らした!

何が起こるんだ?

 

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

ヒコマロ「麻呂のサーブからでおじゃるな。」ポーン!

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

何だ?何処からともなく声が聞こえる。ポーン!

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

ヒコマロ「麻呂は勝つ!」バシ!

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

矢内「クッ、しまった!」

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

畑中「ヒコマロの得点!3vs2で矢内リード!」

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

さっきから何だ?力が入らない。

 

畑中「矢内のサーブ!」

カツノハヒコマロ!マケルノヤナイ!

 

クソ!何なんだ!この耳障りな声は!ポーン!

 

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

声がでかくなってきた!力が入らない。何なんだこれは!ポーン!

 

矢内「クソ!」ポーン!

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

声がだんだんでかくなる!

俺は周りを見渡した。

村人が全員ヒコマロを応援している!声は更にでかくなっている!まるで世界中がヒコマロを応援している様だ!

 

ヒコマロ「矢内 孝太郎、余所見は禁物でおじゃる!」バシ!

矢内「しまった!」

畑中「ヒコマロの得点!3vs3で同点!矢内のサーブ!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

矢内「クソ!」ポーン!

 

しまった!ネットにかかってしまった!

 

畑中「矢内のサーブミス!4vs3でヒコマロのリード!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

 

まずい…。何とかしなくては…。

 

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

勇者「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

エリカ「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

勇者「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

エリカ「勝つのはヒコマロ!負けるの矢内!」

矢内「ん?……………タイム。」

畑中「タイム!どうした?矢内。便所か?」

 

俺は勇者達の所に近づいた。

 

勇者「勝つのはヒコマロ!」

エリカ「負けるの矢内!」

サチ「勝つのはヒコマロ…」ボソ

アリマ君「キー!キー!(負けるの矢内!)」

矢内「お前らまでヒコマロを応援しているじゃねぇ!!」

勇者「すみません…。みんなが楽しそうなのでつい…。」

矢内「クソ!試合再開だ!」

 

ん?なんか身体が軽くなってきた。

 

畑中「試合再開!矢内のサーブから!」

矢内「いくぞ!」バシ!

ヒコマロ「いとおかし!」ポーン

 

俺とヒコマロの一進一退の攻防が続く。

ヒコマロの蹴った毬が中央のネット前に高く上がった。

ここで決める!

 

矢内「悪いが勝たしてもらう!喰らえ!俺のジャンピングボレーシュート!」バシ!

ヒコマロ「グワッ!」バチン!

畑中「ああーとっ!ヒコマロ君!吹き飛ばされたー!!」

 

俺のジャンピングボレーシュートがヒコマロの顔面に直撃してしまった。

 

畑中「矢内の得点!4vs4!」

矢内「ヒコマロ!すまん、大丈夫か?」

ヒコマロ「蹴鞠は友達、痛くないでおじゃる…。」グス

 

涙目じゃねぇか!やせ我慢するな。翼君かお前は!

 

矢内「ヒコマロ!追い付いたぞ!」

ヒコマロ「勝つのは麻呂でおじゃる!」

 

泣いても笑ってもこれで最後だ。

 

畑中「ヒコマロのサーブから!」

ヒコマロ「いくでおじゃる!」ポーン

矢内「悪いが勝たしてもらう!」ポーン

 

俺とヒコマロの一進一退の攻防が続く。ギャラリーの村人達がヒートアップしている。しかし、勝つのは俺だ!

 

勇者「賢者さまー!頑張って下さい!」

「ヒコマロー!がんばれー!」

サチ「賢者さん…。わざと負けるのじゃなかったの?何を熱くなっているのかしら?」

 

俺とヒコマロの一進一退の攻防が続くなか何処からともなく一人の女がこちらにやって来た。

 

「山賊に襲われて、助けて下さい!」

ヒコマロ「まことでおじゃるか?」

 

ヒコマロの動きが止まった!今だ!

 

矢内「もらった!」バシ!

ヒコマロ「あっ!」

畑中「矢内の得点!ゲームセット!5vs4で矢内の勝利!」

 

勝った!

 

「ふざけるな-!女!お前が邪魔するからヒコマロが負けただろうが!」

「いい試合の邪魔しやがってー!死ねー!」

「何が山賊だ!勝手に襲われてろ-!」

 

試合を邪魔したせいか村人達が女に罵声を浴びせる!

 

ヒコマロ「そち達、麻呂は東の島国から来た勇者でおじゃる!麻呂は今からこの者を襲った山賊を退治して来るでおじゃる!」

 

ヒコマロは女に襲われてた場所を聞いて一目散に向かって行った。

 

勇者「賢者さま!行きましょう!」

矢内「いや、待て!勇者、お前はサチと畑中と一緒に村に残れ!」

勇者「どうしてですか?」

矢内「いいか?もし全員で行って山賊と入れ違いになって村が襲われる可能性がある。だからお前はサチと畑中とで村を守るんだ!」

勇者「分かりました…。」

矢内「よし、いい子だ。エリカ!アリマ君!俺達はヒコマロを助けに行くぞ!ついてこい!」

エリカ「分かった!」

アリマ君「キー!」

矢内「その前にサチ、ちょっとこい…」

サチ「何かしら?」

矢内「あの女、見張っていろ。なにか怪しい。」

サチ「あの女村人の格好ではないよね…。分かったわ。」

矢内「では、行って来る!畑中、後は頼むぞ!」

 

村は畑中達に任せて俺はエリカとアリマ君を連れてヒコマロを追って行った。



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蹴鞠の勇者さま 2

俺達はヒコマロを追って山をかけ登って行った。この先か!

 

ヒコマロ「麻呂は東の島国から来た勇者、ヒコマロ!オナゴを襲う山賊どもめ!麻呂が成敗するでおじゃる!」

「何を訳の分からん事を!俺達が返り討ちにしてやる!」ジャキン!

 

山賊達が剣を抜いた。ヒコマロが蹴り技で次々に撃退していく。が、多数に無勢だ。急がないと!

 

「つ、強い!せっかく俺達は国の悪政から自由になったのに負けてたまるか!」

 

マズイ!ヒコマロがやられる!大声を出してこっちに気を向かせるか。

 

矢内「ヒコマロ-!助けに来たぞ-!」

「クソっ!今度は何者だ!」

 

やっとヒコマロの元にたどり着いた。

 

矢内「何者?ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

ヒコマロ「………いと おかし。」

 

助けに来てやったのに馬鹿にしているのか、お前は!

 

「賢者様?」

「本当に賢者様?俺達の国の王を倒した、あの賢者様?」

「おお!やはり賢者様だ!私です!あの国で兵士長をしていた!」

矢内「あっ!お前達か!あの時みんな国を逃げ出していてびっくりしたんだぞ!あの国、大臣一人になったんだぞ!」

ヒコマロ「矢内 孝太郎、知り合いでおじゃるか?」

矢内「ああ、勇者の兜をいただいた国の兵士達だ。悪い奴らじゃない。お前達も剣を納めてくれ。ヒコマロは俺達の友人なんだ。」

「分かりました。」

 

元兵士達は剣を納めていった。

 

ヒコマロ「あのオナゴはそち達を山賊と言ってたでおじゃる。」

「あのオナゴ?もしかしてついさっき逃げた元王女の事か?」

矢内「あの女、あの国の王女だったのか…。お前達、あの時殺さなかったんだな。」

「ええ、あの時は強姦はしましたが流石に殺すほどではと思いまして…。連れて行ったのです。」

矢内「それで隙をつかれて逃げられたのか…。」

「はい、我々がキノコ鍋を食べた時に…みんな体の調子が悪くなって、その隙に逃げられました…。」

エリカ「このキノコ?」

「あっ、それです。」

エリカ「へー、これ食べれるんだ。」パク

 

馬鹿!生で食うな!

 

ヒコマロ「それは毒キノコでおじゃる!食べてはいけないでおじゃる!」

エリカ「えっ?飲み込んじゃったよ。ハハハハハハ!なんか楽しいな!ハハハハハハ!ハハハハハハ!」

ヒコマロ「ワライタケでおじゃる…。」

 

この馬鹿、戦闘は役にたつと思って連れて来たのに…。

 

エリカ「アリマ君も食べなよ、美味しいよ。ハハハハハハ!」

 

馬鹿がアリマ君の口の中にワライタケを押し込んだ。

 

アリマ君「キー!キー!キー!」

矢内「どうするんだよ…。この状況…。」

ヒコマロ「一時間近くはこのままでおじゃる…。」

エリカ「賢者!賢者も食べなよ!」

アリマ君「キー!キー!」

 

コイツら、俺にもワライタケを生で食わそうとしている!やめろ!

 

「賢者様、彼女達はしばらく木に縛りつけて置きましょう。」

矢内「ああ、すまん。そうしてくれ…。」

 

 

 

 

一方その頃………

 

 

わたし達は山賊に襲われたっていう人からお話を聞く事にしました。

 

「まずは紅茶をいただけるかしら?」

サチ「態度がでかい女ね…。」

「早くしてもらえるかしら?すっとろい連中ね。」

サチ「ゆうりん、畑中、この女は崖から突き落として初めから居なかった事にしましょう。」

畑中「かー!さっちゃん、落ち着けよ。紅茶だな、これで良いだろ。午後の紅茶だ。」

 

屑野郎さんが女の人にペットボトルっていう入れ物に入った紅茶を差しだしました。

 

「本当に品の無い愚民ね。」ゴク

 

女の人が紅茶を一口飲みました。

 

サチ「話を聞かせてもらえるかしら?」

「その前に、モジャモジャの髪の醜男。こちらに来なさい。」

畑中「なんだ?」

「入れ直しなさい。」バシャ!

畑中「何するんだ!びしょびしょじゃねぇか。」

 

どうやら気に入らなかったみたいです。

 

サチ「あなたは一体何様のつもりなのかしら?」

「…そこの小さい娘。」

勇者「わたしですか?」

「あなたの武器を貸してもらえるかしら?」

勇者「どうぞ。」

 

わたしは女の人に言われるまま手斧を渡しました。そして、いきなり女の人がさっちんに襲いかかりました。

 

サチ「いきなり何をするの!」

「ちっ、避けたわね。王女であるこの私(わたくし)に対して数々の暴言を許せない!私自ら死刑にして差し上げますわ!死になさい!」ブン

 

女の人がさっちんに対して斧を振り回しています。

 

サチ「とりあえず逃げるわよ!」

 

 

 

 

 

それから小一時間後

 

俺たちはエリカの馬鹿がワライタケの毒が抜けるのを待ち村へと戻る事にした。

 

矢内「お前達も一緒に来てくれ。」

「分かりました賢者様。しかし、我々の事を山賊扱いするとは…。」

ヒコマロ「あのオナゴ…。麻呂を騙すとはいと 許しまじ。」

矢内「まあ、相手は調子こいてる王族の女だ。サチの奴に見張らせているし大丈夫だろう。」

「賢者様、油断は禁物です。王女は我々より強い武人です。武器を持つと我々では刃が立ちません。」

ヒコマロ「先ほど麻呂が相手したがそち達が弱いだけでおじゃる。そち達に囲まれても麻呂は負ける気はしなかったでおじゃるよ。」

「なんと…我々は本気で迫ったというのに手を抜かれていたとは…。」

矢内「どうせ痩せ我慢だろう。」

エリカ「賢者、ヒコマロは強いぞ!さっき戦ってるのを見たけど全然本気じゃなかったよ。」

矢内「まあ、ヒコマロの強さは分かった。とりあえず村へ急ぐぞ。」

エリカ「アリマ君、早く行こう!」

アリマ君「キー!」

 

お前らがワライタケを食ったから村へ戻るのが遅くなったのだろうが。しかし、ワライタケか。いいアイテムが手に入ったな。

 

俺達は急いで村に戻って来た。

 

「フフフ、貴方達は皆殺しよ!フフフフフ。まずは態度が大きい貴方からよ。」

 

元王女が手斧を振り回しながらサチを追いかけている!他の奴は無事か?

 

勇者「賢者さま!」

矢内「勇者!無事だったか?一体何があった?」

勇者「それが…。あの人がわたしの手斧を貸して欲しいと言われて渡したらいきなりさっちんを襲いかかって…。」

 

簡単に自分の武器を渡すな!

 

矢内「畑中!」

畑中「矢内!遅いぞ、何をしていた!」

矢内「何がどうなっている!?」

畑中「さっちゃんの言動が原因であの女が暴れ出した!止めにかかった村人が何人か怪我している!」

矢内「そうか…。よし、お前ら!あの女を叩き切れ!」

「賢者様!王女は武器を持ってます!我々では太刀打ちできません。」

 

情けない元兵士達だ。そんな事だからあんなクソ女に虫けらのような扱いを受けるんだ。

 

「フフフ。死になさい。」

 

まずい、サチが殺られる!なんとかしなくては…。

 

矢内「こっちだ!クソ女!」ヒュン

俺は落ちてる石を拾って元王女に投げつけた。よし、顔面に当たった。顔をおさえてる。動きが止まった。

 

矢内「よし、全員で四方八方から石を投げつけろ!」

「分かりました!」

 

俺の号令で元兵士達が元王女に石を投げつけだした。その隙にサチが間一髪で助かった。

 

サチ「賢者さん、助かったわ…。まさか、ゆうりんが手斧を渡すとは思わなくて…」

畑中「さっちゃん、今回はさっちゃんにも非があるぞ。」

矢内「サチ、畑中、今は誰が悪いかはいい。あいつを倒すのが先だ。サチ、俺が囮になるから黒魔術であいつの動きを止めるんだ。」

サチ「分かったわ。少し時間がかかるわよ。」

矢内「畑中、お前は勇者とエリカ達と一緒に村人達を避難させてくれ。」

エリカ「賢者、あたしは戦えるぞ!」

矢内「お前とアリマ君は毒キノコ食って本調子じゃないだろ!」

エリカ「でもアイツ、斧を持ってるから危険だよ。」

矢内「危険だから大人の俺が囮になるんだ。作戦は立ててある。畑中、コイツ等を頼む!」

畑中「ハッハー!任せろ!仮にお前が死んでも次回からは『わたしの畑中さま』になるから、お前は安心して死んでいいからな!」

 

黙れ、お前が主役に成れるか!

 

 

元兵士達が懸命に元王女に石を投げているが全て手斧で受け流されている。

 

矢内「お前達!ちゃんと相手が嫌がる足元や顔面を狙え!」

「しかし賢者様!投げつける石がもうありません!」

 

役に立たない連中だ。よく今まで生きてこれたな…。

 

矢内「サチ、まだか!」

サチ「賢者さん、アイツに追いかけられてたから息があがって…。もう少し待ってもらえるかしら。」

 

ちっ、俺が戦うしかないか…。ワンパターンだが、これを使うか。俺は異次元袋から一斗缶に入ったラッカーシンナーを取り出した。

 

「フフフ、もうおしまいのようね。そこの指揮官の貴方、名を名乗りなさい。厄介な貴方から殺してあげるわ。」

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

 

決まった!

 

サチ「相変わらずダサいわね…。」ボソ

「お前が賢者!お前のせいで!父上は殺され、わたくしはこの虫けら共に恥ずかしめを受け!」

矢内「黙れ、クソ女!生きてるだけでもそこの兵士達に感謝しろ!」

「わたくしに向かってなんて言い種!許さない!許さない!」

 

元王女のクソ女が俺に向かって突っ込んで来た。先ずはこいつを喰らえ!

 

矢内「喰らえ!ティロッ フィナーレ-!!」

 

俺は一斗缶のラッカーシンナーを元王女に向かってぶっかけた。

 

「フフフ。そんなのは当たらないわ。」

 

ちっ、ミスった。突っ込んで来たと思わせバックステップで距離をとられラッカーシンナーは避けられてしまった。

 

矢内「クソ!」ブン!

 

俺は空の一斗缶を投げつけた。その間に異次元袋の中から鉄パイプを取り出した。

 

「フフフ。無駄よ。」ブン!

 

一斗缶は斧で一刀両断された。

 

矢内「まだだ!」ブン!

 

すかさず鉄パイプで殴りかかった。

 

「無駄なのが分からないのかしら?」ガキン!

 

斧で受け止められた。不味いな…。

 

「フフフ。どうやら戦いは素人のようね。父上の敵、死になさい!」

 

元王女が手斧を振りかざした!ますい、殺られる!その時、何かが元王女をめがけて飛んできた!

 

ヒコマロ「矢内 孝太郎!助太刀するでおじゃる!」

 

ヒコマロが蹴った蹴鞠が元王女の手斧を直撃した。手斧は元王女の手元を離れ飛んでいった。

 

矢内「ヒコマロか!今まで何処にいたんだ!?」

ヒコマロ「麻呂はその者に傷つけられた者達を秘術で怪我を治していたでおじゃる。」

矢内「そうか、来てくれて助かった!」

ヒコマロ「そち、何ゆえ麻呂を騙し、罪なき村人を傷つけた!」

「王女であるこのわたくしは何をしても許されるのよ。愚民が傷つけようが殺そうがわたくしの自由でしてよ!オーホホホ!」

 

クズの娘はクズって事か…。

 

ヒコマロ「いと 許すまし。おなご!その腐った心をこの勇者ヒコマロが成敗するでおじゃる!」

「武器が欲しいわね。貸しなさい!」

元王女が近くいた兵士から剣を奪い取った。

 

ヒコマロ「秘術、蹴鞠弾!」

 

ヒコマロが手から光の鞠を出し蹴鞠の要領で元王女めがけて鞠を蹴った。

 

「くっ!」ガキン!

 

しかし、元王女も光の鞠を剣で受け流す。ヒコマロが放つ光の鞠がどんどん元王女をめがけて飛んでくる。

 

「軌道は読めましたわ!賢者に味方する者は全員死になさい!」

 

元王女が鞠を受け流しながらヒコマロに近づいている。

 

サチ「お待たせ、賢者さん。ヒコマロ。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

「か、体が動かない!」

 

勝負あったな。

 

矢内「サチ!ナイスだ、よし、みんなでこのクソ女を縛りあげるぞ!」

 

そして、俺達は元王女を縄で動けないように縛りあげた。

 

勇者「賢者さまー!大丈夫ですかー!」

 

勇者達が俺達のもとに駆けつけて来た。

 

畑中「矢内!死んでなかったのか!」

エリカ「みんな無事で良かったよ!」

矢内「ああ、心配かけたな。」

サチ「賢者さん、この女はどうするのかしら?」

ヒコマロ「そち達、いくら悪さをしたとはいえ相手はおなご。乱暴はいけないでおじゃるよ。」

「おのれ、王女であるこのわたくしにこのような仕打ちを…。」

矢内「あのなぁ、いいか?まずお前の国はもう無いんだよ。だからお前は王女でも何でも無いんだよ!」

「わたくしに対してこのような事、神々が黙ってる訳無いわ!」

サチ「まだ自分が特別な人間だと思っているのね…。滑稽だわ。」

矢内「そうだ!俺はコイツの言う神を連れて来る。お前ら、今度こそこの女をちゃんと見張っいろよ。勇者、エリカ!お前らこの女が何を言っても縄を解くなよ!」

エリカ「えっ何で?」

 

何でじゃねぇよ!

 

畑中「そうだ!勇者ちゃん、エリカちゃん、向こうでヒコマロに競技蹴鞠を教えてもらいなよ!」

 

馬鹿二人を向こうに追いやる作戦か、考えたな。

 

勇者「そうですね。ヒコマロ!わたし達に教えてください!」

エリカ「面白そうだな!ヒコマロ!教えてよ!」

ヒコマロ「分かったでおじゃる!」

 

ヒコマロは嬉しそうに馬鹿二人を向こうに連れて行った。

そして、俺はゲートストーンを使ってロキのもとに向かった。

 

矢内「待たせたな、クソ女!お前の言う元、お前の国の神様のロキだ。」

ロキ「矢内、お前また俺を差し置いてまた楽しい事をしてるな。」

「神様!王女であるわたくしにこのような仕打ちをするこの者達に裁きを!」

ロキ「何だ?この女は何者だ?」

矢内「ああ、お前が勇者にした王様の娘だ。」

ロキ「ああ!アイツが死ぬ所面白かったよな。ハハハハハ!何回思い出しても面白い!で、この女は何で縛ってあるんだ?」

矢内「いろいろあってコイツが俺達を殺そうとしたので縛りつけたんだ。」

サチ「だいぶ省略したわね…。」

畑中「矢内、気になっていたけどそいつは誰だよ?前の村にもいたよな。」

ロキ「ああ、言ってなかったな。俺様は邪神ロキ様だ。」

サチ「じゃ、邪神!?」

畑中「かー!矢内、お前って奴は…。そんな変な奴連れて来るなよ!ハッハー!」

矢内「何で連れて来たってこのクソ女が神様がどうとか言うからだなぁ。」

サチ「いやいや、神様って!そんな自由に現れていいものなの?賢者さん…また中二病を患わせてるだけじゃ無いの?」

 

失礼な奴だな。

 

畑中「矢内、お前はもういい年なんだから現実をしっかりと見ていかないとダメだぞ!そんなだから三十過ぎても今だに独身なんだぞ!」

 

仕事すらしてないお前だけには説教されたくはない!

 

ロキ「矢内!お前の仲間は本当に面白いな!ハハハ!所でこの女だけどな。」

「神様!助けてください!この者達に罰をお与えください!」

ロキ「面白い事を思い付いた。ちょうど縛ってあるから足元にも縄を着けてそこの崖から落とそう!お前の世界でいうバンジージャンプってのをこいつでやろう!」

「何で…。王女であるこのわたくしが!」

ロキ「黙れー!俺様は面白い奴の味方だ!つまらない奴は死ねー!お前の親も死に際以外本当につまらない奴だったな。まあいい。お前も最後ぐらい俺様を笑わせろよ!」

矢内「面白そうだな。それじゃあ、準備をしよう!」

 

そして、俺達は元王女を連れて村の外れの崖まで移動した。

 

矢内「残念だったなぁ!元お前の国の神様に助けてもらえなくて!ハハハハハハ!」

「わたくしが何故こんな目に…。」

サチ「まだそんな事を言ってるのかしら?貴女が私達に戦いを仕掛けて負けたのでしょ?当然の処置だと思うけどね。」

ロキ「さぁ、始めようぜ!」

 

俺達は縛られた元王女のクソ女の足元に縄をくくりつけた。

 

「何をするの!誰か!助けて!」

サチ「貴女のような人を助けにくる人は誰もいないわ。今までの言動を悔い改める事ね。」

矢内「そういう事だ。まぁ、俺達が飽きるまで崖から突き落とし続けてやるから安心しろ。」

「そんな…。誰か!誰か!」ジタバタ

 

俺達の話を聞いて元王女が暴れだした。

 

矢内「ジタバタするな、これを飲んだらスッキリするぞ。」

「ん、ゴホッゴホッ!苦い!何よこれは!」

矢内「それはワライタケをコトコト煮込んで作った煮汁だ。ほら、幻覚作用が出てきて楽しくなってきただろう?」

「な!何を、フフフフフ。フフフ、何か分からないけど愉快ですわ。フフフフフフ。」

 

効果は絶大だ!

 

矢内「よし!いいか?1、2の3で崖から飛び込んだぞ!」

「フフフフフフ。」

矢内「それ、1、2の3!」

「フフフフフフ。」ピョーン!

 

元王女は崖から飛び降りた。

 

矢内「ハハハハハハ!面白れぇ!」

ロキ「ハハハハハハ!笑いながら飛んで行ったぞ!ハハハハハハ!」

サチ「フフフ。可笑しいわね。フフフフフフ。」

畑中「なぁ、矢内…。あの女の足元につけた縄を何処にくくったんだ?」

矢内「あっ…。しまった…。」

 

何処にもくくりつけてなかった…。

 

「フフフフフフ。ハハハハハハ!」グシャ!

 

元王女は遥か下の地面に叩きつけられた。よし、なかった事にしよう!

 

ロキ「ハハハ!面白れぇ!グシャ!っていってる!ハハハハハハ!笑いながら死んだぞ!ハハハ!腹痛ぇ!」

畑中「コイツ、本当に神様なのか?」

サチ「まぁ、何だっていいわ。面白い余興が見れたから。」

矢内「よし、村に戻るか!」

 

 

 

勇者「あっ賢者さま!何処に行ってたのですか?」

矢内「ああ、ちょっとな。」

エリカ「あれ?縛っていた奴がいないぞ。何処に行ったんだ?」

矢内「エリカ、お前まだワライタケの毒で幻覚を見ていたのか?そんな奴は初めからいないぞ。」

勇者「あれ?そういえば女の人が居ませんねぇ。何処に行ったのですか?」

矢内「そんな奴は初めからいない!!」

 

俺は大声で逆ギレして誤魔化した。

 

勇者「気のせいだったのですかねぇ。」

エリカ「うーん、まぁいいや。きっと初めからいなかったんだよ。」

 

バカで良かった。

 

矢内「それはそうと、ヒコマロはどうしたんだ?」

勇者「それが…初めはわたし達と蹴鞠をしていたのですが、村の子供達がヒコマロと蹴鞠をしています。」

エリカ「ヒコマロ、凄い楽しそうにしてるからあたしらは抜けてきたんだ。」

矢内「そうか。ヒコマロの所に案内してくれ。」

アリマ君「キー!(こっちだよ!)」

 

村の広場にヒコマロはいた。子供達に蹴鞠を教えている。

 

矢内「ヒコマロ!」

ヒコマロ「おお!そち達でおじゃるか。今、麻呂はワッパ達に蹴鞠を教えている所でおじゃる。」

矢内「サチ、あれを。」

サチ「分かったわ。」

 

俺はサチから勇者の兜を受け取った。

 

矢内「ヒコマロ、受け取れ!」

ヒコマロ「これは勇者の兜!どうして麻呂に?」

矢内「もし装備出来たらお前にやるよ!」

ヒコマロ「しかし、これはそち達が苦労して手にいれた物…。どうして…。」

矢内「お前は俺達の友人だからさ。」

勇者「そうです。ヒコマロはわたし達の友達です。」

サチ「そうね。私達を助けてくれたしね。」

ヒコマロ「友…。蹴鞠以外に初めて出来たでおじゃる!」

矢内「いいから被ってみろよ。」

ヒコマロ「矢内 孝太郎…。分かったでおじゃる!」

 

ヒコマロが勇者の兜を被った。ズドン!しかし、ヒコマロの頭が地面を擦り付けた。

 

ヒコマロ「いと 重し…。」

矢内「ヒコマロも駄目だったか…。」

 

俺は勇者の兜をヒコマロから外した。

 

ヒコマロ「麻呂は勇者ではないのでおじゃるか…。」

矢内「いや、気にしなくていい。実は俺達も駄目だった、それにノートルランドの勇者も駄目だったんだよ。」

畑中「ヒコマロって言ったか。そんな物を被れなくてもお前は立派な勇者だと思うぞ。現に村の人々や別に助けなくてもいい矢内まで助けたじゃないか。」

サチ「そうね…。」

ヒコマロ「麻呂が立派でおじゃるか?」

矢内「ああ。立派な勇者だ。」pipipipipi♪

勇者「賢者さま、ズボンから何か鳴ってますよ。」

 

俺の携帯が鳴っている。すかさず携帯に出た。

 

矢内「もしもし?」

社長『矢内!お前、今何処に居るねん!』

 

ハゲからだ。出るんじゃなかった…。

 

矢内「あー、社長…。今、出張でファンタルジニアです。」

 

正確にはファンタルジニアじゃないがいいだろう…。

 

社長『お前、何を言ってんねん!用事あるからさっさと帰ってこい!』ガチャ!

 

一方的に電話を切られた。

 

矢内「そういう事でお前ら、俺は会社に帰るから。」

畑中「矢内、俺も戻るぞ!」

ロキ「俺も行く、キャバクラって所に連れて行け!」

矢内「何でだよ!」

勇者「賢者さま、また明日迎えに行きます。」

矢内「明日じゃねぇ!会社の休みの日にしろ!ヒコマロ、あわただしくなったがまたな!」

ヒコマロ「矢内 孝太郎、またいつか麻呂と蹴鞠をするでおじゃる!」

矢内「ああ!またな!」

 

そうして俺はゲートストーンを使って会社に戻った。

 

ロキ「よし、キャバクラ行こうぜ!」

矢内「遊びに来たんじゃないんだよ!畑中!そいつ連れて行ってくれ!」

畑中「ああ。」

 

畑中はロキを連れて街に向かった。

そして、俺は会社の事務所に向かった。

 

矢内「社長、今、戻りました!これ、出張の請求書です。」

社長「おー、矢内!帰ってきたか!」ビリビリ

 

請求書はすかさず破り捨てられた。

 

社長「いいか。見ろ、この車!買ったんや。ランボルギーニやぞ!」

矢内「はぁ?」

社長「何が、はぁ?や!他の頑張ってる従業員にはベンツ買ってやったんや!凄いやろ!」

矢内「イヤイヤ、社長!そんな車買う金何処にあるんですか!会社の金で無駄使いしたら駄目でしょうが!」

社長「まぁ、矢内。話を聞け、この前の仕事で6億入ったやろ、それにプラスな。なんかしらんけど会社の倉庫の奥で凄い数の金銀財宝が出てきてな。それを全部換金したんや。」

矢内「ちょ!ちょっと!社長!その財宝、この前俺が倉庫の奥に隠してたやつじゃないですか!」

社長「ああ、そうか。」

矢内「そうか、と違いますよ!」

社長「いいか、矢内。よく聞け、お前の手柄は俺の物、俺のミスはお前の責任、それが会社のルールや!」

 

ふざけるな、ハゲ!

 

社長「まぁ、お前の車もちゃんとしといたぞ安心せい。」

矢内「ポルシェですか?フェラーリですか?」

社長「何を言ってんねん。ちゃんと痛車にしといてやったぞ。感謝しろよ!」

矢内「はぁ!?」

 

新車を買ったばかりなのに何してくれるんだ!俺は急いで駐車場まで走った。

 

 

 

駐車場に着くと俺の車はじゃりんこチエのイラストで埋め尽くされていた。

 

矢内「あああああぁ!」

社長「矢内!気に入ったようでなによりや!」

矢内「…しゃ、社長…。何でよりによってこれなんですか?」

 

俺はかすれた声で社長に聞いた。

 

社長「何でって、大阪やったらじゃりんこチエやろ!これ500万したからな、大事にしろよ!」

 

雨が降ってもまた明日ーってやかましいわ!チクショウ!俺の財宝…。

 

 

 

 

 

 

 

第8話

蹴鞠の勇者さま

E N D




矢内が会社に戻ったその頃



「ううぅ…、だ、だれか…。」

崖の遥か下で元王女が倒れている。まだかすかに息をしている。そこに何者かが近づいてきた。

「フフフ、女。助かりたいか?」
「ううぅ…。た、たす…け…て…。」
「妾に忠誠を誓うか?」
「たす…けて…。」
「まぁよい。先に傷を直してやろう。」
「体が動く!傷が直った!どなたか知りませんがありがとうございます!」
「礼はよい。所で女、お前は例の賢者にやられたのじゃな。」
「はい…。」
「賢者を恨んでおるか?」
「はい…。父の敵です。」
「ならば妾に忠誠を誓うがよい!さすれば、お前に神の力を授けよう!」
「神の力?貴女はいったい?」
「妾は神、ビーナスである!あの忌々しき異世界から来た賢者を倒すためにどうじゃ?妾のしもべにならぬか?」
「わたくしは、あの賢者に全てを奪われました。あの男を倒すためなら何だって致します!どうか、わたくしに力をお与えください!」
「フフフ。よき返事じゃ。妾についてくるのじゃ。」
「はい。ビーナス様。」

そして、ビーナスは元王女を連れゲートの中に消えて行った。


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いざ進め!砂漠の国
力の目覚め 魔法の力 1


ヒコマロと村で別れて3日後、俺は休日を利用して朝早くから釣りに出かけている。

 

矢内「よし、キタ!」

 

俺の竿が大きくしなる!これはデカイ!大物だ!ヤバイ、竿が折れそうだ!

 

バジャーン!!

 

勇者「け、賢者さま!泳いでいたら何かに引っ掛かって…。」

矢内「」

 

俺に休日は無いのか…。

 

勇者「賢者さま、お迎えに来ました!」

 

久しぶりに大物がかかったと思ったらお前か!チクショウ!

 

矢内「いいか、勇者。俺は今、今日お前達が食う魚を釣っているんだ。」

勇者「じゃあ、わたしもお手伝いします。お料理は出来ませんが泳いだりするのは得意なのですよ。」バシャン!

 

そう言って勇者は再び海を泳いで行った。

 

矢内「このあたりは勇者の馬鹿が暴れたからもうダメだな。少し移動して再開するか。」

 

そして、俺は少しポイントを移動して釣りを再開した。

 

矢内「よし、いきなりかかった!」

 

これは良形のメバルだ!この後、立て続けに三匹のメバルをゲットできた!

 

勇者「賢者さまー!お魚取れましたよー!」

 

勇者の奴が戻って来た。

 

勇者「見てください!二匹も取れました。お腹が大きく膨らむお魚です!」

矢内「…勇者よ、海に返して来なさい。」

勇者「えっ?」

矢内「これは草フグって言って毒魚だ。食べられない。」

勇者「あっ!でもエリカにゃんなら食べてくれるかもしれません。」

 

お前はエリカに恨みでもあるのか。アイツは前回、毒キノコ食ってるんだ。止めてやれ!少しスコールを飲んで落ち着こう。

 

矢内「よし、まあ良いだろう。サチとエリカ達が待ってるんだろう。そろそろ行くか。勇者、それ海に返しておけよ。」

 

俺達は勇者が開いたゲートを通りまた冒険に出かけた。

 

 

 

サチ「あら?ゆうりん、ビショビショじゃない。中二病のキチガイに何かされたの?」

 

何故来てそうそうに文句を言われないといけないんだ。

 

勇者「さっちん、おかずのお魚を取ってました。」

エリカ「また魚かー。お肉の方が良いなぁ。賢者、ハンバーグがいい!」

矢内「そうか、エリカは魚が嫌なんだな。そうか、そうか。じゃあ、今日のおかず無しでいいな。」

エリカ「嫌じゃないぞ。食べるよ!あっ!村が見えてきた。賢者、あたしのおかず取ったら戦士長に言いつけるからな。」

 

メバルは4匹しか釣れなかったからな。このままじゃあまずいな。

 

村にたどり着いた。寂れた村だ。宿屋に入っても誰も居ない…。

変だな…。何者かの気配はするのだが…。

 

勇者「誰も居ませんねぇ…。」

矢内「仕方ない、勝手に部屋を使わしてもらうか。」

サチ「賢者さん、少し外を探索してくるわ。」

矢内「ああ、少し様子が変だ…。何か気配はするが人が居ない。」

サチ「賢者さんも気づいていたのね。」

エリカ「サチは心配性だなぁ。みんなきっとお昼寝してんだよ。」

 

そんな訳あるか!

 

勇者「ちょうどごはんの時間なのでみんなお家に居るのですよ。」

 

そんな訳あるか!

 

サチ「はぁ…。行ってくるわ。」

矢内「アリマ君、サチについて行け。嫌な予感がする。」

アリマ君「キー!」

エリカ「あたしも行く!」

勇者「わたしも行きます!」

矢内「お前らはここで待ってろ!たまには飯の準備を手伝え!」

 

サチとアリマ君に村の探索を任せて俺はトラブルメーカーの馬鹿二人を見ることにした。

 

気にしても仕方ない、飯の準備をするか。このメバルはやはり煮付けだな。後は味噌汁を作ろう。たまには和風でいくか。よし、後一品は卵焼きにしよう。今日の献立は完成だ。

 

勇者「賢者さま!」バン!

 

勇者の奴が勢いよくドアを開けた。

 

矢内「なんだ?」

勇者「賢者さま!お化けです!」

矢内「お化けだぁ?」

勇者「はい、わたしとエリカにゃんが部屋に入ると出てきました!いっぱいいます!」

矢内「隣の部屋だな。ちょっと見てくる。お前は、メバルの入った鍋を見ててくれ。」

 

俺はメバルの入った鍋の火を弱火にして隣の部屋に向かった。

 

勇者「あっ、わたしの取ったお魚をいっしょに入れて置きましょう。」

俺は隣の部屋に入った。

 

エリカ「け、賢者!あれ!」

矢内「マジか…。」

 

エリカが窓に指を指した。見ると窓の外にたくさんの幽霊がこっちを見ている。

 

矢内「めっちゃ居るな…。」

エリカ「あいつら空飛んでる…。スゲーな!」

 

驚くとこはそこじゃねぇ!

 

「う~ら~め~し~や~。」

 

壁をすり抜けて入ってきた!

 

エリカ「裏?裏は飯屋じゃなかったよ。お前ら、お腹空いてるの?」

「…。」

 

幽霊達が呆れてる…。

 

勇者「賢者さま。どうしましょう。あっちの部屋にもいっぱい入って来ました。」

 

勇者の奴がこっちの部屋に入ってきた。隣の部屋にも幽霊がきたのか!あれを試して見るか。

 

矢内「とりあえず除霊する!」

 

何もしないよりましだ!やるか!

 

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

 

俺は自分のケツを叩きながら精一杯叫んだ!

 

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

 

「…。」

「…。」

「…。」

 

幽霊達の動き止まった!もしかして、効いているのか?

 

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

「…。」

「…。何あれ?」

「…。ワロタ…。」

「…。幽チューブに配信しよう。」

「…。バカがいる…。」

 

幽霊達が集まってきた!襲ってこない、確実に効いている!このまま一網打尽に除霊してやる!いくぞ!

 

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

勇者「幽霊達の動きが止まっています!ずっとこっちを見ています。」

矢内「よし、効いている証拠だ!このまま決める!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

「…。ずっとやってる…。」

「…。おもしろい…。」

 

 

 

 

その頃、サチはアリマ君を連れて村を探索していた。

 

サチ「誰も居ないわね…。」

アリマ君「キー…。」

 

サチは家のドアを片っ端から開けていくが誰も居ない…。

 

サチ「アリマ君、空から誰か居ないか見渡してもらえるかしら?」

アリマ君「キー!」

 

アリマ君が空高く飛ぶが何か見えない壁にぶつかって落ちてきた。

 

アリマ君「キー…。」

サチ「アリマ君、大丈夫?」

アリマ君「キー!キー!」

サチ「言葉が分からないわね。アリマ君、字は書けるかしら?」

アリマ君「キー!」コクン

サチ「じゃあ、この紙に今起きた事を説明できるかしら?」

アリマ君「キー。」コクン

 

アリマ君がうなずいて字を書き始めた。

 

サチ「えっと、空を飛んだら見えない壁にぶつかった?もしかして…。一度村を出てみましょう。」

 

サチとアリマ君は村を出ようとしたが見えない壁があり出る事が出来なかった。

 

サチ「やっぱり、思ったとおりだわ。」

???「この村に一度入ると二度と出られないよ。」

サチ「誰!」

 

サチは後ろを振り返り声の主を確認した。

 

???「う~ら~め~し~や~。って、あー!貴方、もしかしてサチ?」

サチ「えっ?もしかして…。お静?」

お静「やっぱりサチだ!久しぶりだね。あたいが死んだ時ぐらいぶりだね!」

サチ「お静?どうしてここに?」

お静「あたいが死んじゃってから浮遊霊としてフラフラしていたんだけど、ある日突風が来て飛ばされたらここに来たんだよ。あたいも出るに出れなくて困っているの。それより、サチは何で居るの?」

サチ「私は、旅の途中でこの村に入ったのよ。」

お静「旅?サチはソフトボールはもうやってないの?あんだけ凄いピッチャーだったのに。」

サチ「ええ。」

お静「え~。もったいないよぅ!あたいとサチでバッテリー組んでた時は敵無しだったのにー。」

サチ「私が調子に乗って魔球なんて投げたせいで…。お静が…。」

お静「あー。まさかあの球であたいがぶっ飛んで死んじゃうとは夢にも思わなかったよ。」ケラケラ

 

幽霊はケラケラ笑っている。

 

サチ「私の事、恨んでいないの?」

お静「何で?」

サチ「だって、私のせいで貴女、死んじゃったのよ。」

お静「う~ん。まぁ死んじゃった事は気にしてもしょうがないよ。サチも一度死んじゃったら分かるよ。」

サチ(貴女を殺してしまった事が原因で引きこもりになったのに…。それに死んじゃったら駄目じゃない…。)

お静「でもね、幽霊になっても楽しい事はあるんだよ。例えばこれ、幽チューブ動画!」

 

幽霊は何か小さい機械を取り出した。

 

サチ「何かしら、それ?」

お静「これはみんなが登録した動画を見ることが出来るの。それに自分でも面白い動画を撮る事が出来るんだよ。あたいのオススメはこれ!『生きてる奴の体を乗っ取ってやった!』シリーズかな。」

サチ「乗っ取られた人はたまったもんじゃないわね…。」

お静「それが面白いんだよ。サチなら他人に遠慮なんてしないから人気幽チューバーになれそうなんだけど…。あっ!新しい動画だ!えっと、『頭のおかしい賢者って奴!』プッ!ハハハ!何してるんだろ!ハハハ!」

サチ「賢者?もしかして…。ちょっとお静、それ見せてくれる?」

お静「いいよ。もしかして幽チューバーになってくれるの?」

 

サチは幽霊のお静から小さな機械を受け取りアリマ君と動画を見た。

 

『ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!』パン!パン!

 

アリマ君「キー…。(やっぱり賢者様だ…。)」

サチ「お静…。もしかして…これって世界中の幽霊が見れるの?」

お静「そうだよ。」

 

矢内は世界中に恥をさらした事になる。

 

サチ「はぁ~。お静…。ごめんなさい。一度、宿に戻るわ…。」

お静「せっかくだからあたいもついて行くよ。」

 

サチとアリマ君は浮かない表情で宿に戻った。

 

 

 







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力の目覚め 魔法の力 2

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!パン!パン!

「…。」

「…。」

「…。」

「…。」

 

幽霊達の動きが止まっている。一気に決める!

 

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

「…。」

「…。」

「…、あいつらは、勇者一行か?よし、ネクロマンサー様にれん…ら…ぎゃー!」ブシュン!

 

一匹成仏した。この調子で…。バーン!後ろのドアが勢いよく開いた!幽霊の親玉の登場か?

 

サチ「賢者さん!!何してるの!!」

矢内「おお、サチか。何って、除霊に決まっているだろ。お前も手伝え。」

サチ「汚い尻を閉まって!貴方の奇行が世界中に流されているのよ!」

エリカ「サチもやろう!」

サチ「やらないわよ!」

勇者「さっちんも一緒にやりましょう!ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!」パン!パン!

サチ「はぁ~。もういい…。疲れたわ…。」

矢内「サチ、疲れてる場合じゃないぞ。一気に畳み掛けるんだ!」

サチ「止めなさいって言ってるでしょ!これ以上恥を晒さないで!どうやら強制的に止めさせるしかないようね。エン…ト…トライ…スマッシュ!!」バチン!

 

サチの強烈なビンタが俺に放たれた!

 

矢内「ビックリするほどユートピア!ビックリするほど…。ぐわ!」ガッシャーン!

 

俺は二階の窓から地面に叩きつけられた!

 

勇者「賢者さまー!」

 

 

 

クソ!酷い目にあった。スコールを飲んで気持ちを静めて飯の準備に取り掛かろう。

 

矢内「よし、そろそろメバルもいい頃合いだろう。」

 

俺はメバルの鍋をカセットコンロから退けて卵焼きを全員分作った。味噌汁もちょうどできたな。

 

勇者「賢者さま、わたしがお魚をみんなにお配りします!」

矢内「そうか、勇者は偉いな!俺に暴力を振るった胡散臭い黒魔術とか使うサチとかいう女の分は無しでいいからな。」

勇者「はい、分かりました!」

サチ「ちょ、ちょっとゆうりん!分かりましたじゃないでしょ!」

矢内「いいか?サチ、メバルは4匹しか釣れなかったんだ。誰かが我慢しないといけないんだ、分かるな?」

サチ「だったら賢者さんが我慢したらいいじゃない!」

矢内「俺が釣ってきたんだぞ!!よし、みんな席に着け!食べよう!」イタダキマス!

 

俺は喚くサチを無視して食事にする事にした。

 

エリカ「サチ、あたしの魚、小さい方をあげるよ。」

アリマ君「キー。(僕のも小さい方をあげるよ。)」

勇者「あっ、それ…。」

サチ「エリカさん、アリマ君、ありがとう。どこかの三十路を過ぎても中二病が治らないキチガイとは大違いね。」

 

ん?小さい魚?

 

勇者「あっ!凄いです。お魚の身がぴろーんって取れました!柔らかくてとっても美味しいです!賢者さま!わたしが食べたお魚で一番美味しいです!」

エリカ「スゲー、身がぴろーんって取れた!」

矢内「そうか!そんなに気に入ってもらえて何よりだ!」

 

メバルはあまりスーパーとかには売ってない高級魚だからな。

 

勇者「しあわせです~。」

エリカ「勇者、大袈裟だなぁ。」

アリマ君「キー。」

サチ「何だか舌がピリピリするわね…。」

 

ん?俺はサチの方を見た。

 

矢内「サチ!お前、何食ってるんだ!」

サチ「何って、エリカさんとアリマ君に貰ったお魚よ。」

矢内「それ食うな!!」

サチ「ふざけないで!私が貰ったお魚よ!」

矢内「違う!それは毒魚だ!食べたらダメな奴なんだよ!下手したら死ぬんだ!吐き出せ!」

サチ「えっ?嘘?ほとんど食べたわよ…。そういえば、からだが、しびれて…。」バタ!

 

サチは倒れた…。

 

矢内「勇ーーーーー者ーーーーー!!!!!!!!!お前!!俺は捨てろって言ったよな!!」

勇者「えっと、あの…。」

矢内「言ったよな!!」

勇者「ごめんなさい…。」

矢内「ゴメンですんだら警察も裁判もいらないんだよ!!」

サチ「賢者さん…。大丈夫よ、身体中の痺れが引いてきたわ…。ゆうりんをあまり責めないで…。」

 

どうやら最悪の事態にはならなかったようだ。

 

お静「ねぇ、あたいのごはんは?」

矢内「」

 

何処から来たんだ?この幽霊?

 

サチ「あら、ごめんなさい。みんなに紹介するのを忘れていたわ…。私の友達のお静よ。」

勇者「さっちんのお友達ですか。こんばんは!わたしは一国の勇者です。よろしくお願いします。」

お静「うらめしや~。よろしくね。」

エリカ「あたし、エリカ!よろしくな!」

お静「うらめしや~。よろしく!」

矢内「おい、お前は俺達に何の恨みがあるんだ?」

お静「えっ?別に無いよ。」

矢内「お前、うらめしや~って言ってるだろ!」

お静「ああ、これ?幽霊どうしの挨拶だよ。」

矢内「あのなぁ、『うらめしや~』ってのはな、相手を恨んで使う言葉なんだよ。」

お静「えっ、嘘?みんな普通に挨拶に使っているよ。」

 

俺の言葉を聞いて周りにいた幽霊達がざわざわしはじめした。

 

「…嘘?」

「…知ってた?」

「…挨拶じゃなかったのか?」

「…初めて聞いた。」

 

お前ら全員知らずにうらめしや~って言ってたのかよ!

 

お静「じゃあさぁ、なんて挨拶したらいいの?」

矢内「普通にこんばんはとかでいいだろうが。」

お静「そうなんだ。じゃあ、こ~ん~ば~ん~わ~。」ヒュードロドロドロ

 

うらめしや~見たいににこんばんはって言うな!周りに出た火の玉はなんだよ!

 

「…こ~ん~ば~ん~わ~。」

「…こ~ん~ば~ん~わ~。」

「…こ~ん~ば~ん~わ~。」

「…こ~ん~ば~ん~わ~。」

「…こ~ん~ば~ん~わ~。」

「…こ~ん~ば~ん~わ~。」

 

うるせー!何なんだよ、コイツらは!

 

サチ「それはそうと賢者さん。私たち、この廃墟に閉じ込められたみたいなのよ。」

矢内「なんだと?どう言うことだ?」

お静「ここからは出られないよ。」

矢内「何でだ!」

お静「あたいも知らないよ。」

矢内「お前達は何か知ってるのか?」

「…。」

「…。」

「…。」

 

だんまりかよ。情報が何もないとはな。

 

サチ「仕方ないわね。私の黒魔術で原因を探すしかないわね。」

 

そう言ってサチは何か準備をし出した。

 

サチ「準備は出来たわ。みんな、少しの間協力してくれるかしら?」

勇者「分かりました。」

エリカ「うん、分かった。」

矢内「協力って何をするんだ?」

サチ「みんな、私の持っているコインに指を置いて貰える?」

勇者「こうですか?」

矢内「それ、こっくりさんだろ。」

サチ「違うわ。妖弧のコンちゃんと通信していろいろ情報を仕入れる黒魔術『フォクシーくん』よ。」

矢内「だから、こっくりさんだろ!」

サチ「…。さぁ始めるわよ。みんな、指をコインの上に置いて。」

 

都合が悪くなると無視するのを止めろよ!俺達はサチの言う通りコインの上に指を置いた。

 

サチ「フォクシーくん、フォクシーくん、私達の声が聞こえたら魔方陣から返事を下さい。」

 

サチの言葉の後、俺達が指で押さえているコインが動きだし、『はい』と書かれた所に移動した。鳥居の絵が魔方陣に変わっただけで全くこっくりさんと同じだ。

 

サチ「フォクシーくん、フォクシーくん、私達の質問にお答え下さい。」

 

俺達が指で押さえてるコインが『はい』と書かれた所に移動した。

 

サチ「先ずはこの廃墟から出られない原因を教えて下さい。」

 

コインが勝手に動きだした。

 

『ね く ろ ま ん さ ー が け っ か い を は っ て る』

 

サチ「フォクシーくん、ありがとうございます。」

 

俺達が押さえてるコインが魔方陣の絵の所に戻った。

 

サチ「フォクシーくん、フォクシーくん、結界を解くにはどうすればいいのですか?」

 

『む ら は ず れ の ぼ ち に い る ね く ろ ま ん さ ー を た お す こ と』

 

サチ「フォクシーくん、ありがとうございます。」

 

コインが魔方陣の絵に戻った。

 

勇者「さっちん、わたしが質問しても答えてくれるのですか?」

サチ「ええ、大丈夫よ。」

エリカ「よし、あたしが質問する!フォクシーくん、フォクシーくん、あたし達の明日のごはんはなんですか?」

 

下らない事を聞くな!明日の飯の事なら俺に聞いたらいいだろうが!ちなみに明日の晩飯は矢内流五目焼きそばとワカメスープだ。

指で押さえてるコインが独りでに動きだした。ちゃんと合ってるかどうか楽しみだな。

 

『あ ぶ ら あ げ が い い な !』

 

矢内「お前のリクエストじゃねぇか!!」

 

舐めてるのか。ちゃんとやれ!

 

矢内「インチキだろ!これ!」

 

指で押さえてるコインが独りでに動きだし『いいえ』の所に止まった。

 

矢内「サチ、おまえが動かしてるだろ!」

サチ「賢者さん、口を慎んで。コンちゃんに呪われるわよ。」

勇者「フォクシーくん、フォクシーくん、明日は晴れますか?」

 

『ゆ う が た か ら に わ か あ め』

 

だから下らない事を聞くな!

 

矢内「お前ら、どうでもいい事を聞くな!フォクシーくん、フォクシーくん、砂漠の国へは後、どれぐらいかかりますか?」

 

コインが動かない…。

 

サチ「賢者さん、インチキとか言うからコンちゃんに嫌われたわね。フォクシーくん、フォクシーくん、砂漠の国はまだ遠いのですか?」

 

『こ の さ き の え る ふ が す む ま よ い の も り を ぬ け る と さ ば く の く に は す ぐ ち か く』

 

サチ「どうやらそのネクロマンサーってのを倒さないといけないみたいね。フォクシーくん、フォクシーくん、ありがとうございました。私達の質問は以上です。ではお帰りください。」

 

コインが動きだし『いいえ』に止まった。

 

サチ「おかしいわね。フォクシーくん、フォクシーくん、お帰りください。」

 

またまた『いいえ』に止まった。これはまずいぞ!

 

矢内「フォクシーくん、フォクシーくん、500円あげるから帰ってください!」

 

コインが動きだした。

 

『さ き に お か ね』

 

がめつい奴だ。

 

矢内「アリマ君、俺のズボンのポケットから財布を取ってくれ。」

アリマ君「キー。」

 

アリマ君が俺の財布からお金を取り出した。ちょ、それは一万円札だ。待て!

 

『あ り が と う』

 

アリマ君が持っていた一万円札が一瞬で消えた!

 

矢内「フォクシーくん、フォクシーくん、お釣りの9500円を返して下さい!」

 

『いいえ』に止まった。ふざけるな、返せ!

 

『か え る』

 

それ以降、コインは動かなくなった。

 

矢内「フォクシーくん、フォクシーくん、お釣りを返して下さい!」

サチ「みんな、もう指を離していいわよ。」

矢内「フォクシーくん!フォクシーくん!お釣りを返して下さい!」

サチ「…賢者さん、コンちゃんはもう帰ったわよ。」

矢内「フォクシーくん!フォクシーくん!俺の金を返せ!」

サチ「………ゆうりん、エリカさん、アリマ君、賢者さんは無視してネクロマンサーの所に行きましょうか。」

勇者「分かりました。行きましょう!」

 

俺の金を返せチクショウ!給料日前で金欠なのに…。



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力の目覚め 魔法の力 3

矢内「あれ?あいつらは何処に行ったんだ?」

お静「サチ達なら出て行ったよ。村はずれの墓地に行った。」

 

ネクロマンサーってのがいるって言ってたな。

 

矢内「ネクロマンサーってのはどんな奴だ?」

お静「あたいは知らない…。」

「…ネクロマンサー恐い。」

「…ネクロマンサーに私達支配されてる、逆らえない。」

 

どうやら、お静以外の幽霊達は知っているみたいだ。

 

矢内「お前ら、ネクロマンサーについて教えてくれ!」

「…ネクロマンサー、墓地で悪霊やゾンビを操る。」

「…ネクロマンサー、悪霊に守られている。人間には攻撃できない。」

「…悪霊、魔法でしか倒せない。」

お静「なんだ、魔法があれば勝てるんだね。」

矢内「残念ながら、俺達のパーティーじゃ誰も使えない…。」

お静「嘘だね、賢者のおっちゃんは魔法使えると思うよ。あたいでも使えるよ。こんな感じで。」ヒュードロドロドロ

 

お静の周りに火の玉が出てきた。

 

矢内「俺に使える?お前はどうやってその火の玉出しているんだ?」

お静「えっと、この火の玉を空中に出す時はお腹に力を入れて、ふんって出すの。ちょうどウンコを出す感じでやったら出来るよ。後は想像力が大事だね。」

 

本当か?取りあえず手のひらから炎を出すイメージでやってみるか。腹に力を入れてウンコを出す感じだな。

 

矢内「試してみるか。ふん!」ブリブリ!

 

勢い余ってウンコを漏らしてしまった。

 

お静「本当にウンコを出したら駄目だよ。今のだと、手のひらからウンコを出す感じでやるといいよ。」

矢内「そ、そうか。手のひらからウンコを出す感じだな。よし、やってみる!ふん!」ゴォォォォ!

 

出た!本当に手のひらから炎が出た!ドラクエだとベギラマだな。ってことは少し前に幽霊が一匹成仏させたのは、俺がたまたま魔力を使ったからか。

 

お静「やったね!あたいの言った通り魔法使えたね。」

矢内「ああ、コツは分かった!お静って言ったな。感謝する。こうしてはいられない。俺は勇者達を助太刀に行く。」

お静「あたいも行くよ。」

 

俺はお静を連れて、ネクロマンサーがいる村はずれの墓地に向かった。魔法か、本当に賢者になった気分だ!

 

 

 

 

 

サチ「さぁ、急いでネクロマンサーってのを倒すわよ。」

 

さっちんが気合い入っています。

 

エリカ「あっ!あの墓地じゃない?」

サチ「しっ!エリカさん、静かに!相手に気付かれないように慎重に行きましょう。」

 

わたし達は隠れながら墓地の中に入りました。奥に誰かいます。

 

サチ「アイツがネクロマンサーね。作戦を言うわ。いいかしら?エリカさんとアリマ君はアイツを左右から挟み撃ちに…」

勇者「あなたがみんなをここに閉じ込めたネクロマンサーですね!」

サチ「ちょ!ちょっと!作戦を建ててる最中でしょ!」

ネクロマンサー「ふふふ、お前達がここに来ることは分かっていたわ!飛んで火にいる夏の虫とはこのことよ!」

勇者「わたしは虫ではありません!一国の勇者です!」

エリカ「今は秋だよ。お前、季節も分からないの?」

ネクロマンサー「…。お前達はことわざも知らんのか!バカな奴らめ。先ずは小手調べだ、行け!ゾンビども!」

 

土の中から人の形をした化け物が出てきました!こっちに向かって来ます!

 

サチ「ゆうりん!エリカさん!まとまって戦うわよ!」

エリカ「分かった!サチは下がってて!あたしと勇者でやっつけるよ!」

勇者「分かりました!行きますよ-!」

 

わたしとエリカにゃんで土から出てきた化け物を倒して行きました。

 

エリカ「ター!」バシュ!バシュ!バシュ!

 

エリカにゃんは剣で化け物を次々と倒していきます。わたしも負けてはいられません!

 

勇者「えーい!」ブン!グシャ!ブン!グシャ!

ネクロマンサー「お、おのれー!まだだ!出でよ!スケルトン!」

 

今度は剣を持った骸骨の化け物が出てきました!

 

勇者「何度来てもおんなじです!」

エリカ「勇者!油断しちゃダメだ!連携して一匹ずつ倒していこう!」

勇者「エリカにゃん、分かりました!」

 

サチ「ネクロマンサーがゆうりんとエリカさんに集中している今がチャンスね。アリマ君、召喚した化け物に戦わせているってことはアイツ自身は強くないわ。そこでアリマ君、空からアイツの後ろに回り込んでぶん殴ってくれる?前にかね童子をやったみたいに思いっきり。」

アリマ君「キー!(分かったよ!)」

 

ネクロマンサー「ハハハ!スケルトン!その剣で奴らを切り刻め!」

エリカ「剣術なら負けないよ!」キン!キン!

勇者「いただきです!」ブン!グシャ!

 

わたし達の連携で骸骨の化け物を次々倒していきました。

 

ネクロマンサー「こうなったら!スケルトン!グール!ゾンビども!一気に行け!」

 

また化け物が出てきました!切りがありません!

 

アリマ君「キー!キー!(僕がやっつけてやる!)」

サチ「上手く行ったわ!私達の勝ちね。」

 

アリマ君がいつの間にかネクロマンサーの後ろに回り込んでいました。

 

アリマ君「キー!(もらったよ!)」

ネクロマンサー「ゴスロリの女!お前の作戦はお見通しだ!ファントム!一つ目の魔物を捕らえよ!」

アリマ君「キ、キー…。(動けない…。)」

エリカ「アリマ君!」タッタッタッタッ

ネクロマンサー「馬鹿め!向かって来るとは。ファントム!ついでにアイツも捕らえよ!」

エリカ「うわ!なんだこいつら?切れない!捕まった!クソー、動けない!」

勇者「エリカにゃん!」

ネクロマンサー「ハハハ!勇者一行もこれで終わりだな!行け!そこのゴスロリの女が指揮官だ!アイツを先に殺せ!」

勇者「そんな事、絶対させません!」

 

 

 

 

俺はお静を連れて墓地までたどり着いた。

 

矢内「中が騒がしい。お静、誰にも気付かれないように様子を見て来てくれ。」

お静「分かったよ。行ってくる。」

 

今の内に作戦を建てるか…。先ずは、ネクロマンサーの後ろに回り込んで悪霊を除霊しないとダメか。除霊と言えば光りだな。よし、ホタルのようなイメージだな。なんとかなりそうだ。そうこうしている内にお静が帰ってきた。

 

お静「賢者のおっちゃーん!」

矢内「大声出すな!どうだった?」

お静「大変なんだよ!サチが化け物達に狙われてて、エリカさんとアリマ君が悪霊に捕まってた。」

矢内「勇者の奴は!どうした!」

お静「サチを守りながら戦ってるよ。」

矢内「ピンチだな…。ネクロマンサーはどの辺りにいる?奴の後ろに回りこむ。案内してくれ。」

お静「こっちだよ!賢者のおっちゃん。」

 

俺はお静の案内でネクロマンサーの背後に回り込んだ。勇者、サチ、俺が行くまでもう少し待ってろ!エリカ、アリマ君、俺が絶対助け出してやるからな!

 

 

 

 

勇者「くっ!数が多すぎます。」ブン!グシャ!ブン!グシャ!

サチ「エン…ト…トライ…スマッシュ!」バチン!

 

わたし達が化け物を倒しても次々と出てきます。

 

ネクロマンサー「ハハハ!これでお仕舞いだ!お前達が死んだら肉体は私の配下にしてやるから安心するがよい!ハーハハハハハ!」

 

サチ「ゆうりん、声を立てないで聞いてくれる?」

勇者「なんですか?」

サチ「今、賢者さんがこっちに来ているわ。」

勇者「えっ!賢者さまが!」

サチ「しっ!声を出さないで。さっき、お静が様子を伺っていたの。直ぐ戻って行ったけど。何か作戦があるみたいだから二手に別れて敵の注意を此方に集中させましょう。」

勇者「でも…さっちん…。」

サチ「私なら大丈夫よ。」

勇者「分かりました。でも、わたしが出来るだけ多くの敵を引き付けます。」

 

わたし達はさっちんの作戦通りに二手に分かれ敵を引き付けました。

 

勇者「皆さん!こっちですよ!わたしが恐いのですか?全員でかかってきてもいいのですよー!」

ネクロマンサー「かかれ!」

 

化け物達がみんな一斉にわたしの所にかかってきました!

 

サチ「フフフ、全員ゆうりんの所に向かわせて、いったい誰があなたを守るのかしら?それ!」ビュン!

 

さっちんが落ちている石をネクロマンサーに投げつけました!石はものすごいスピードでネクロマンサーの顔に当たりました!

 

ネクロマンサー「ぐわ!私の顔によくも!」

サチ「ご免なさい、デッドボールのようね。もう一球行くわよ!それ!」ビュン!

ネクロマンサー「ぐわ!またしても私の顔に!血が!全員で指揮官の女を殺せ!その女は肉片一つも残すな!」

サチ「あら?さっきから何を勘違いしているのかしら?指揮官は私じゃないわよ。」

 

その時、ネクロマンサーの後ろから光りが差し込みました!

 

『ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!』ピカー!

 

「…ギャー!」ブシュン!ブシュン!ブシュン!

 

『ビックリするほどユートピア!ビックリするほどユートピア!』ピカー!

 

「…ギャー!」ブシュン!ブシュン!

エリカ「あっ!動ける!」

アリマ君「キー!(助かったよ!)」

『エリカ!アリマ君!お前らは勇者とサチの援護だ!』

エリカ「分かった!」

アリマ君「キー!(任せて!)」

ネクロマンサー「ファントムが、ぜ、全滅した…。な、何者だ!」

 

 

 

 

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

 

俺の完璧なポーズが決まった!

 

お静「ダッセー!賢者のおっちゃんダッセー!」

勇者「賢者様!」

サチ「形勢逆転のようね。」

ネクロマンサー「おのれー!かかれー!皆殺しにしろ!」

サチ「ゆうりん、エリカさん、アリマ君!私達は残ったザコを倒すわよ!」

エリカ「よし!行くぞー!連撃乱舞だ!」シュ!シュ!シュ!シュ!

勇者「さっちん、後はわたしに任せてください!えーい!」ブン!グシャ!ブン!グシャ!

アリマ君「キー!」バキ!ボカ!

 

悪いがここからはずっと俺のターンだ!ネクロマンサー、瞬殺させてもらうぞ!

 

矢内「先ずは喰らえ!ティロ フィナーレー!」

 

俺は一斗缶に入ったラッカーシンナーをすべてネクロマンサーにぶっかけた!

 

ネクロマンサー「なんだ?ギャー!アツッ!目に入って!染みて痛い!痛い!痛い!アツッ!痛い!」ジタバタ!ジタバタ!

 

ラッカーシンナーを全身に浴びて苦しんでいる。まだだ!これで決める!

 

矢内「必殺!ヤナイフレイム!」ゴォォォォォォォ!!!

 

俺は両手を広げて前に出し手のひらから炎を出した。ラッカーシンナーを全身に浴びたネクロマンサーには効果は絶大だ!

 

ネクロマンサー「こんな…、こんな…、この…私が…敗…れ…るとは…。」ガク!

 

ネクロマンサーをやっつけた!

 

エリカ「賢者!助かったよ!」

勇者「賢者さま!今のはもしかして魔法ですか?」

矢内「ああ!俺の魔法の力だ!」

勇者「スゴいです!」

サチ「それはそうとこの辺りなんだか臭いわね。何かしら?」

矢内「ああ、それはちょっと前に俺が魔法の練習で力が入り過ぎでウンコ漏らしたからな!パンツにウンコがびっしり付いているんだ?」

サチ「ちょ、ちょっと、いい年して何やってるの!」

エリカ「賢者!お前、臭いから近づくなよ!」

アリマ君「キー!キー!(もうゲートで帰れ!)」

矢内「お前ら!助けてもらってその言いぐさは無いだろ!お前らだって三十過ぎるとウンコの一つや二つ漏らす時がくるんだ!」

お静「そんなのは賢者のおっちゃんぐらいだよ…。」

サチ「はぁ…。やっぱり賢者さんはどこか締まりがないわね…。」

 

サチ「まぁ、いいわ。先を急ぎましょうか。」

 

俺達は自分たちの荷物を取りに宿にもどった。幽霊達が俺達を待っていた。

 

「…ネクロマンサー、倒してくれてありがとう。」

矢内「ああ、お前達はもう自由だ!」

「…ありがとう。」

「…ありがとう。」

「…ありがとう。」

 

良かったな。安心して成仏するといい。

 

矢内「それじゃあそろそろ行こうか。」

勇者「はい、賢者さま。」

サチ「ちょっと待って!」

矢内「なんだ?」

 

サチはお静の所に向かった。

 

サチ「お静、久しぶりに会えて嬉しかった。そして、あなたを殺してしまった事ごめんなさい。」

お静「いいよ。あたいが死んじゃったせいでサチに気をつかわせてごめんね。あたいはもうしばらくプラプラしたら成仏するからここでお別れだね。」

サチ「お静…。そんな…。嫌よ!」

お静「あたいが居なくてもサチなら大丈夫だよ!だって、今は素敵な仲間がいるじゃない。」

サチ「でも…。」

お静「じゃあ、あたいが生まれ変わったらまた友達になってよ!」

サチ「分かったわ!必ずまた友達になってね。」

お静「ほら、みんな待ってるよ!」

サチ「…分かったわ。お静、さようなら…。」

 

サチが俺達の所に戻ってきた。

 

サチ「みんな、お待たせ…。」

矢内「もう、いいのか?」

サチ「ええ…。」

お静「みんなー!さよーならー!サチの事よろしくねー!」

勇者「はい!さっちんはずっとわたしのお友達です!」

矢内「行くか…。」

 

俺達は廃村を出て次の冒険に向かった。

 

「…。」

「…。」

「…。」

 

幽霊が俺達の後ろについてきている。

 

矢内「なんだ、お前ら。もう自由だぞ。何処にでも行けるんだぞ!」

「…。」

「…。」

「…。じゃあ、憑いていく…。」

矢内「憑いていくじゃねぇ!ついてくるな!」

「…。えー。」

矢内「えー、じゃねぇよ!」

 

 

 

 

 

 

第9話

力の目覚め 魔法の力

E N D



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エルフの森の山田さん 1

わたし達は今、迷いの森に来ています。ここを通ると砂漠の国まで直ぐなのですが何度森に入っても同じ所に戻って来てしまうのです。

 

勇者「また、戻って来てしまいました…。」

サチ「何度入っても同じ所に出るわね。」

エリカ「あっ、そうだ!あたし、しばらく会ってないけどエルフに友達がいるんだった。アリマ君、この手紙をあたしの友達に渡して来てよ。」

アリマ君「キー!」

サチ「エルフと友達?エルフは人間嫌いで有名なのに?エリカさん、きっとその人エルフじゃないわよ。」

エリカ「エルフだよ。自分で言ってたよ。エルフだって。」

勇者「エリカにゃん、その人、どんな人ですか?」

エリカ「気さくで楽しい奴だよ!」

サチ「はぁ…。エルフが気さくな訳ないじゃない…。エリカさんは騙されてるのね。ゆうりん、賢者さんを呼んで来てくれるかしら?」

勇者「あっ、はい。賢者さまを呼んで来ます。」

 

わたしはさっちんに言われた通りにゲートを開いて賢者さまを呼びに行きました。

 

 

 

俺は勇者の奴に連れられて、ゲートを通って迷いの森にやって来た。聞くと勇者の開くゲートは俺が居るところと自分が居るところしか繋がらないらしい。迷惑な話だ。後でゼクスの野郎はぶん殴っておこう。

 

サチ「来たわね、賢者さん。」

矢内「サチか、どうやらお手上げのようだな。」

サチ「そうね。」

エリカ「賢者!あたし、エルフの友達が居るんだよ。そいつもう少しで来るから道案内してもらおうよ。」

矢内「エルフの友達?」

エリカ「うん、そうだよ。気さくな奴だから大丈夫だよ。」

矢内「…。」

サチ「エリカさん、きっと騙されてるのよ。」

矢内「ああ、そうみたいだな。」

 

俺達が話込んでいると森の中から一人の青年が出てきた。耳はピンと尖っていて金髪の色白い男だ。

 

???「チョリーース!」

エリカ「久しぶり!ライアン!」

ライアン「エリカ!良く来たッス!」

 

こんなチャラいエルフがいるか!

 

エリカ「ライアン、元気だったか?」

ライアン「自分は元気ッス!エリカはお城の戦士になったって聞いたけど何でここにいるッスか?」

エリカ「今、あたしは勇者達と砂漠の国を目指して冒険しているんだ。仲間の勇者とサチ、そして変な所から来てる賢者。」

ライアン「変な所?もしかして異世界?今、自分達も異世界から来た人間の客人がいるッス。」

エリカ「へぇ~。どんな奴?」

ライアン「肌が少し褐色で変わった女の人ッス。」

エリカ「変な奴だったらきっと賢者の友達だよ。」

 

お前は俺をなんだと思っている!

 

勇者「賢者さま、あの人本当にエルフなんでしょうか?」

サチ「見た目はエルフだけど…。」

矢内「まぁ、アイツは放っておこう。この森が迷いの森か…。」

勇者「賢者さま、この森に入っても元の所に戻って来てしまうのです…。」

矢内「いいか、森があるから迷うんだ!だから全て燃やしてしまえばいいだけだ!準備にかかるぞ!」

サチ「さすがにその発想は無かったわ…。」

矢内「勇者、お前は木に登ってラッカーシンナーを木全体にかけるんだ。」

勇者「分かりました。わたし木登りは得意です。」

矢内「サチは森の前の草にシンナーをばらまけ!」

サチ「分かったわ。」

 

勇者とサチは段取り良く作業を進めた。

 

矢内「それくらいでいいだろう。勇者、サチ、森から離れてろよ。」

勇者「分かりました。」

 

矢内「いくぞ、必殺!ヤナイ…フレイム!」ゴォォォォ!

 

俺の魔法で森が勢い良く燃えている。森の入口の木や草にシンナーがかかっているから効果はバツグンだ!

 

矢内「これでしばらくしたら森は無くなるな。」

 

ヒュン!何かが俺の頬をかすめた。血がででいる…。

 

勇者「賢者さま!」

「動くな!」ヒュン!

 

勇者の足下に矢が刺さった。いつの間にか囲まれてる!

 

サチ「不味いわ。本物のエルフよ!」

 

エルフ達が弓を構えて俺達を囲んでいる!

 

「貴様!我々が住む森に火をつけるとは!名を名乗れ!」

矢内「俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

???「お前…もしかして…矢内か?何が賢者様だ!自分勝手にこの者達が住む森に火をつけるとは恥をしれ!この屑が!」

 

 

 

 

誰だ?褐色の肌にセミロングの黒髪の女、それに賢者様である俺に対してありえない暴言…。

 

矢内「あー!お前、もしかして!山田か?」

山田「やはり矢内か、異世界から来た賢者がこの森にやって来ると聞いて来てみたらよりによってお前か!」

矢内「やっぱり山田かぁ!ハハハ!最後に会ったのは成人式の時だから15年振りぐらいか!久しぶりだなぁ!」

勇者「賢者さま?その人、賢者さまのお友達ですか?」

矢内「ああ、山田だ。」

山田「私はこんな屑と友達になった覚えはない!」

矢内「所で山田、何でこの世界にいるんだ?」

山田「ああ、私は群馬県の観光地で仕事をしていたのだがな。水をくむ途中に井戸から落ちたらこの世界だった。」

勇者「あっ、わたしが初めて賢者さまに会った時に開いたゲートが井戸でした。もしかしてそこに落ちてしまったのでしょうか?」

 

お前が原因か!

 

矢内「山田、何でお前だけがドラクエみたいな展開なんだよ!俺なんか最初は会社の焼却炉から来てるんだぞ!帰りは焼却炉のゴミに火がついていて火だるまになって死にかけたんだぞ!」

山田「お前はそのまま死ねば良かったんだ!お前らのせいで私は巻き込まれたんだ!」

 

俺達が言い合いをしている間に森につけた火がエルフ達に消火された。

 

「なんとか森が焼けずにすんだ。では、森に火をつけたそこの人間達を縛り上げよ!」

 

俺達はエルフに捕らえられた。

 

「所で、客人よ。そこの男とは知り合いなのか?」

勇者「山田さんは賢者さまのお友達です。」

「何?客人、お前がこの男達を呼んだのか!やはり人間は悪だ。客人も引っ捕らえよ!」

 

山田もエルフに捕らえられた。

 

山田「違う!私は関係ない!」

 

俺達はエルフに捕まり迷いの森の中に連れて行かれた。この迷いの森はどうやら正しい道を通らないと元の入り口にもどされるらしい。

 

山田「私は無関係だ!この縄を解いてくれ!」

「静かにしろ!」

矢内「山田、ちょっとは落ち着けよ。」

山田「お前のせいでこうなったんだろうが!」

勇者「賢者さま、わたしたちはどこに連れて行かれるのでしょうか?」

矢内「まあ、成るようになるだろう。」

サチ「そうね。」

山田「お前達のせいで私まで…。」

「客人、お前が呼んだ者が我等の森に火をつけたからだろうが。着いたぞ。」

 

俺達はエルフ達に連れて来られて、森の内部に入った。中はちょっとした町になっている。そのまま俺達は一番大きな屋敷に入れられた。

 

「国王様、森に火をつけようとした人間達を捕らえて来ました。どうやら少し前から来てる客人の仲間のようです。」

国王「なんと、だからわしは人間などを町に入れるのは反対だったんだ!よし!地下の牢獄にぶちこんで置け!」

「ハッ!直ちに!その者達を連れて行け!」

山田「私は関係ない!無実だ!矢内だけを処刑にしたらいいんだ!」

「客人、見苦しいぞ!連れて行け!」

「ハッ!」

 

俺達は地下の牢獄に入れられた。

 

山田「矢内!どうしてくれる!お前のせいで!」

矢内「だから落ち着けよ。」

 

俺達を牢屋に入れたエルフは安心したのか牢屋に鍵をかけて戻っていった。

 

矢内「見張りはいないな…。よし、脱出するか、サチ、頼む。」

サチ「分かったわ。」

山田「おい、どうするつもりだ?」

矢内「ああ、牢屋の外から他の誰かに開けてもらえば出れるだろ。」

山田「はぁ?誰がいるんだ!」

矢内「だから、今から呼び出すんだよ!」

サチ「いくわよ。『パーソン エンター』。」

 

俺達が入っている牢屋の前に光の渦が現れた。

 

山田「何か出てきた!何をしたんだ!」

サチ「黙ってて。今から召喚するから。かー!矢内、お前って奴は、ハッハーww!」

山田「なんだ、今のは…。」

 

光の渦から畑中が出てきた。俺達がいる牢屋側に…。牢屋の外に出てこないと意味がないだろ。

 

畑中「矢内!また俺を巻き込みやがって!」

矢内「この、役立たずの!ブター!」バキ!

 

俺は畑中を思いっきり殴った。

 

畑中「いきなり何しやがる!今日という今日は許さねえ!ぶっ飛ばしてやる!」バキ!

 

殴り返された。

 

矢内「ぐわっ!」

畑中「クソッ。ゴッド打ってる最中だったのに…。」

サチ「また、お金を無くすだけなのに。懲りないわね…。」

畑中「いい感じに高確モードに入った所だったんだよ。」

勇者「屑野郎さんは相変わらずですねぇ。」

畑中「よぅ、勇者ちゃん!」

勇者「屑野郎さん、こんにちは!」

山田「お前は…。ひょっとして…畑中か?何がどうなっている?誰か説明してくれ。」

畑中「ん?もしかして、山田さん?ハッハーww」

山田「何が可笑しい!」

畑中「ハッハーww」

山田「誰か説明しろ!」

矢内「いいか?お前ら。三十過ぎても結婚すらできない女はちょっとしたことでイライラするようになるんだ。お前らも気を付けないと山田みたいになるからな。」

勇者「はい、気を付けます。」

山田「矢内!お前のせいでイライラしてるだろうが!」

 

喧しい奴だ。そんなだからいつまでたっても独り身なんだ。

 

畑中「何がどうなっているんだ?」

 

サチが畑中に今までの経緯を説明した。

 

畑中「ハッハーww!矢内、お前が全て悪いじゃねぇか。こりゃ死刑だな。次の主役は自動的に俺になるから安心して死ね。」

 

コイツ、結構この世界楽しんでいるよな…。

 

サチ「畑中のせいで脱出に失敗したから次の案を考えないといけないわね。」

矢内「ああ、畑中が来たから全て畑中に罪を押し付けて俺達は出してもらおう。」

畑中「いきなり呼んでおいてふざけるなよ。」

サチ「畑中、貴方が牢屋の内側に出てきたから私達は出られないのよ。だから貴方が悪いのよ。」

勇者「屑野郎さん、謝ってください!」

畑中「ごめんなって、何でだよ!もとは矢内が森に火をつけるからだろうが!」

山田「畑中、こいつらはいつもこんな感じか?」

畑中「まぁな。所で山田さんは何でこっちの世界にいるんだ?」

山田「ああ、私は井戸で水を汲む途中に滑って落ちてしまってな。気がついたらこの迷いの森だった…。」

畑中「ハッハーww!ちょ、井戸って!ハッハーww!何でドラクエ6みたいな展開なんだよ!ハッハーww!」

山田「笑うな!何が可笑しい!」

勇者「どんくさいですねぇ。」

山田「矢内の娘、もとはお前のせいだろ!」

矢内「山田。お前な、勇者の奴がゲートを広げたままだったから井戸から落ちても死ななかったんだぞ。勇者の奴にお礼の一つぐらい言えよ。」

山田「お前達のせいで牢屋に入れられたのだろうが!」

サチ「どんくさい山田、静かに!足音が聞こえるわ。誰か近づいて来るわ。」

山田「ゴスロリ女、何故私だけに言う。それに私の事を悪く言うな。」

サチ「今のところ貴女に良いところは何一つないわ。黙ってて。」

 

俺達が話込んでいるとコツコツと何者かの足音が聞こえてきた。足音が大きくなるにつれて話声が聞こえる。

 

「いいか?お前達、この奥の牢屋に凶悪な人間を捕らえている。しっかり見張りを頼むぞ。」

「ヴィ。」

「なんだその返事は!」

「ちょ、牢屋の見張りなんてマジ萎えなんですけど。」

「これからウチラ、イベサーあるのにショッキングピーポーマックスだわ。」

「なんだその喋り方は!いいからしっかり見張りをしとけよ!」

「ヴィ。」

 

どうやら見張りが来たらしい。見張りのエルフ達が俺達の牢屋に近づいて来た。

 

「あれ?ライアンが連れて来た人間の客人もいるじゃん。」

「ウケるww。」

「なんか、聞いてた数より多くね。ウケるww。」

山田「おい!私は無実だ!出してくれ!悪いのは矢内だ!」

「客人、ちょー必死wwウケる。」

 

なんかノリが軽いな。バカそうだしいけるかもしれない。

 

矢内「ちょ!俺と勇者の奴がショボパンなんですけど!マジべぇわ!ここから出られないとマジでべぇわ!」

サチ「ちょ、ちょっと賢者さん?何を訳の分からない事を言ってるの?」

「えっ、マジ?」ガチャ

 

牢屋が開いた。上手くいった!

 

「ちょ、ショボパンとかマジ?」

「便所そっちなんですけど。」

矢内「勇者、出るぞ。」

勇者「えっ?は、はい。」

山田「は?お前達だけか?」

矢内「とりあえずだ。勇者、俺がエルフ達の注意をひくからお前は隙を見て町に来ているはずのエリカと合流してみんなを助け出すんだ。いいな?」

勇者「はい。分かりました!」

 

俺と勇者は牢屋を出る事が出来た。

 

「ねぇ、何でウチラの言葉分かるの?」

矢内「ああ、それは俺がみんなが大好き賢者様だからだ。」

「何それ、ちょーウケるww」

「賢者って、スゲェ奴じゃん!ウケるww」

「そうだ、せっかくだからウチラのイベサー見ていってよ。」

矢内「マジ?ビョウで行くわ!アゲポヨなんだけど!」

「賢者様、名前は?」

矢内「矢内 孝太郎だ。」

「じゃあ、ヤナピッピ。ウチラのイベサー案内するわ。」

矢内「勇者、今のうちだ。」

勇者「は、はい。行って来ます。」

 

勇者が上手く町に抜け出せた。後は俺がエルフを引き付けるだけだ。

 

「ヤナピッピ、便所が先じゃね?」

矢内「ショボパンよりイベサーが先じゃね?最悪漏らせば良くね?」

「ウケるww」

「良い年した大人が漏らすとか、マジウケるww」

矢内「イベサーカチコミっしょ!」

「あっ!鍵開けっぱだし!」

「ウケるww」

 

上手くエルフを牢屋の外に誘導することが出来た。しかし、何か聞いていたエルフの情報と違うな…。

 

 



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エルフの森の山田さん 2

なんとかわたしだけ町に逃げ出す事が出来ました。早くエリカにゃんと合流してみんなを助け出さないと!

 

ライアン「とりあえず、自分が町を案内するッス!」

エリカ「みんな何処に行ったんだろう?アリマ君、分かる?」

アリマ君「キー…。」フルフル

ライアン「町は大きくないから直ぐに見つかるッス!」

 

あっ!エリカにゃんが居ました!エルフの人と一緒に居ます。

 

勇者「エリカにゃん!」

エリカ「あっ!勇者!何処に行ってたんだよ!探したんだぞ!」

勇者「エリカにゃん、みんなが牢屋に入れられたんです!一緒に来てください!」

ライアン「牢屋に?いったい何をしたんッスか?」

勇者「分かりません。さっちんと山田さんと屑野郎さんを助けて下さい!」

エリカ「賢者は?」

勇者「賢者さまが他のエルフの人達の注意を引いています。今の内にみんなを助けないと…。」

ライアン「分かったッス!国王の屋敷の地下ッスね!自分、国王の近衛兵だから顔パスッス!」

勇者「あっ、ありがとうございます。えっと…。」

ライアン「自分、ライアンって言うッス!よろしくッス!」

勇者「わたしは一国の勇者です。よろしくお願いします。」

エリカ「行こう!」

アリマ君「キー!」

 

わたしは無事にエリカにゃん達と合流出来てみんなを助けに行きました。

 

ライアン「警備が誰も居ないッスね。」

エリカ「勇者、みんなは?」

勇者「こっちです!」

 

間に合いました。みんな無事です。

 

勇者「皆さん、助けに来ました!」

山田「矢内の娘!」

畑中「早く出してくれ!」

ライアン「今開けるから、静かにするッス!」

山田「おお!ライアン、よく来てくれた!」

ライアン「カギを開けたッス!静かに脱出するッス。」

 

ライアンさんがカギを開けてくれてみんな出ることが出来ました。

 

サチ「所で…。牢屋から出ることが出来たけど…見張りが居るんじゃないかしら?」

エリカ「この屋敷の中には誰も居なかったよ。」

勇者「賢者さまが見張りの人と何処かに行ってます。」

サチ「…。嫌な予感がするわ。」

畑中「矢内を探すか…。」

アリマ君「キー…。」

山田「矢内など放っておけば良いだろう。」

エリカ「何言ってるんだよ。もうすぐ御飯の時間だよ。賢者が居ないと美味しい御飯食べれないじゃんか。」

サチ「そうよ。早く探しましょう。」

エリカ「ライアン、賢者を探すの手伝ってよ。」

ライアン「分かったッス。イベサーのみんなにも声をかけてみんなで探すッス!」

山田「別に探さなくていいだろ!早くここから出るのが先だろうが!」

畑中「…。山田さん、いいから矢内を先に探そう…。」

山田「はぁ?お前まで何を言ってる!アイツのせいで私達は牢屋に入れられたんだぞ!」

畑中「山田さん、あの子らの前で余り矢内の事を悪く言うな…。頼むから空気読んでくれ。」

山田「…。あー、分かった分かった。さっき見張りで来たエルフ達と共に行ったのなら矢内は今、町の外れの広場に居る筈だ。まずはそこから探すぞ。」

勇者「…。山田さん、ありがとうございます。」

山田「矢内の娘、礼は矢内を見つけてからでいい。」

 

わたし達は賢者さまを探しに町の広場に向かいました。でも、山田さんは何でわたしの事を矢内の娘って言うのでしょうか?

 

町外れの広場にたどり着きました。広場には人だかりが出来ています。なにやら歌声が聞こえてきます。

 

「最後に一度だけ~と♪唇噛み締めて~♪」

「握りしめた手のひ~ら♪燃えるように熱い♪」

「ひとつの季節だけには~とまっていられない~♪」

「風を見つけたおと~こは~♪夢を追いかけてく♪」

 

歌っているのは賢者さまです。ダンスもいつもよりキレがあります。

 

サチ「賢者さんは何をやってるの…。」

山田「何でこの曲なんだ…。」

畑中「『ごめんよ涙』は矢内のカラオケの十八番だ…。」

 

矢内「傷ついて♪愛しあ~い♪優しさに気がついたよー♪」

矢内「つらいと~き♪君のまなざしを~♪僕はしんじてる~♪」

 

勇者「賢者さま、わたしもご一緒します。」

山田「矢内の娘、この曲は私達が子供の頃の曲だぞ。」

勇者「この曲は賢者さまがいつも夜中に大きな鏡の前で練習しているのをわたしは見てました。振り付けもバッチリですよ。」

畑中「ハッハーww!夜中に練習って!」

サチ「隠れて練習している所を見られいるってwwカッコ悪いわね。」

 

矢内「その涙~ごめんよ♪想い出になるけ~ど~♪」

勇者「い~つまでも~♪い~つまでも~♪忘れはし~な~い~♪」

矢内「さよならもごめんよ♪抱きしめていたいけ~ど~♪引き留めず~♪行かせてくれ~♪」

矢内 勇者「胸の夕陽が赤いから♪」

 

「チビッ子、やるじゃん!ウケる。」

「ウチラも負けてられないっしょ!」

 

サチ「エルフ達もダンスに加わりだしたわ…。何なの?これ…。」

畑中「教師びんびん物語かよ!ハッハー!」

山田「矢内がやると本当にダサいな…。」

エリカ「楽しそうだな。あたしも加わろう!アリマ君、行こう!」

アリマ君「キー!」

ライアン「自分も行くッス!」

 

矢内「はじめて会った頃は~♪子供のようだった~♪」

矢内「夏も遠い砂は~ま♪無邪気にふれあった♪」

矢内「あのとき純な気持ちで♪呼びあった名前が~♪」

矢内「今でも僕の心に~♪消えてはいないのさ♪」

 

山田「矢内が若いエルフ達を統率している…。何なんだ、これ…。」

 

矢内「美しい~♪昨日ほ~ど♪人は縛られやす~いよ~♪」

矢内「だけどい~ま♪それぞれのあした~♪二人い~きてみよう~♪」

 

サチ「ぷっ!賢者さんだけが足が上がっていない。」

畑中「かー!矢内の奴、三十路越えてるのに…。恥ずかしくないのか…。」

 

矢内「その涙 ごめんよ♪わがままをゆるし~て♪」

矢内「は~なれても~♪」

勇者「は~なれても~♪」

矢内 勇者「見つめてい~るよ~♪」

勇者「さよならも♪ごめんよ♪」

矢内「さみしさも分かるけ~ど♪ふ~り向かず行かせてくれ♪」

矢内 勇者「胸の夕陽が赤いから♪」

 

畑中「凄いな…矢内と勇者ちゃん…息ぴったりだな…。」

山田「親子だから息は合うのだろ。」

畑中「ハッハー。そんな訳ないだろう。住んでる世界が違うのに。」

山田「いや、親子だ。間違いない!」

サチ「違うわ。…でも、そう言えばゆうりんの親の話は聞いた事がないわね。」

 

矢内 勇者「Ah い~つまでも♪い~つまでも~♪忘れはし~な~い~♪」

矢内「さよならも」

勇者「ごめんよ♪」

矢内「抱きしめていたいけ~ど♪ふ~り向かず行かせてくれ~♪」

矢内 勇者「胸の夕陽が赤いから♪」

 

サチ「後ろで踊っているエルフ達も息ぴったりね。」

畑中「教師びんびん物語のオープニングそのままだな。」

 

タッタッタッタ、タッタッタッタッ、タッタッタッタン!

 

バッチリ決まりました!

 

「ヤナピッピ!」

「ヤナピッピ!」

「ヤナピッピ!」

「ヤナピッピ!」

 

エルフの人達の歓声が鳴り止みません!さすがは賢者さまです!

 

「お前らー!何をしているー!」

矢内「何してるって一曲歌っただけだろ。」

「お前ら!コイツらを何かってに牢屋から出してるんだ!」

「うちら、見張ってくれって言われたけど出すなって言われてないんですけど。」

「都合悪くなると大声で怒鳴るとかお前、マジでテンサゲだわ。」

「私はお前達の上官だぞ!お前って何だ!」

 

後から来たエルフの人と賢者さま達が何やら言い合いしています。

 

矢内「なぁ、スコール飲んでちょっとは落ち着けよ。」

 

賢者さまが後から来たエルフの人にスコールを差しだしました。

 

「何だこれ?私にくれるのか?飲み物か?はじめて見る…。」

矢内「それはな、スコールと言って俺達の世界で乾杯って意味をもつこの世で一番美味い飲み物なんだ。良いから飲んでみろ、気持ちがスッキリしてイライラしなくなるぞ。」

「よし、ありかだくいただこう。うん、美味いな!お前、人間なのに良い奴だな。よし、お前達、もうこの町を自由に行動して構わないぞ。」

矢内「そうか!話せば分かる奴で良かったよ!勇者、みんなはどうした?」

勇者「あっ、はい、みんなそこにいます。」

矢内「おう!お前ら!」

山田「矢内!お前はいったい何をやってるのだ!」

矢内「いやー、イベサーのみんながよーせっかくだから一曲歌ってくれって言うからよ。」

畑中「かー!矢内、お前って奴は…。ハッハーww」

サチ「結局、賢者さんは遊んでいただけじゃない。」

矢内「まぁ、結果的にこの町で自由に行動できるようになったんだ。そろそろ宿をとって飯にしよう。」

サチ「はぁ、分かったわ。所で今日の献立は何かしら?」

山田「そんなのんびりしている場合か!国王を敵にまわしているんだぞ!」

矢内「今日の献立か…。そうだな、たまには豪華にいくか。ここで料理する。エリカ、お前はエルフ達みんなを呼んでやれ。今夜はパーティーだ。」

エリカ「分かった。」

ライアン「自分がみんなを呼んでくるッス!」

矢内「ああ、頼むぞ!勇者、サチ、お前らは俺の袋からスコールをありったけ出してくれ。畑中、料理を手伝ってくれ!」

畑中「料理って何をするんだ?」

矢内「ああ、みんなで摘まめる揚げ物にする。」

畑中「よし、任せろ!揚げ物は得意だ。矢内、お前は別の物を作れ。」

矢内「分かった。そうだな…。みんなで摘まめるスモーブローにするか。」

山田「矢内!私を無視するな!そんな事している場合じゃない!」

矢内「山田、さっき来たエルフも自由に行動していいって言ってただろうが。頭かてぇ奴だな。お前の頭はオリハルコンか!」

山田「いや、さっきのエルフはバカなだけだ。国王だと誤魔化せない!」

矢内「まぁ、任せておけ。」

山田「どうなっても私は知らんぞ!」

 

 

 

 

さぁ!気合い入れるか!俺達は張り切って料理に取りかかった。エルフ達が広場に集まって来た。結構な数が居るな…。さっきのイベサーのエルフ達が俺の所に近づいてきた。

 

「ヤナピッピ何してるの?」

矢内「ああ、パーティーの準備だ。今日は楽しんでってくれ。」

「ヤナピッピ、マジ、神対応。」

「ヤナピッピ、うちらも手伝うし。」

矢内「すまんな。助かる。そうだな、じゃあ盛り付けを頼む。」

「ヴィ。」

 

よし、こっちは何とかなりそうだ。畑中の方は串揚げか。なかなかやるな。

 

畑中「矢内!そっちはどうだ!」

矢内「順調だ!エルフ達が手伝ってくれている。」

 

そうこうしている内にエルフ達が集まって来た。

 

エリカ「賢者!みんな来たよ!」

ライアン「自分達も手伝うッス!」

矢内「料理を置くテーブルをたくさん用意してくれ。後、畑中の所を手伝ってやってくれ!」

山田「矢内、凄い人数だぞ!」

矢内「山田、突っ立ってないでお前も何か手伝え!馬鹿のエリカでも手伝ってるんだぞ!」

山田「貴様、言ったな!料理ぐらいで偉そうにするな!私にだってお前以上の料理ぐらいできるわ!」

矢内「ほぅ、じゃあ勝負するか?どっちの料理が美味いか。」

山田「良いだろう。私の手際を見せてやる!ライアン!畑中などの手伝いは良いからこっちを手伝ってくれ!」

ライアン「分かったッス!」

 

よし、これで3品は出来るな。じゃあ、俺はもう1品パスタを作るか。

よし、完成だ。

 

矢内「勇者、サチ、みんなにスコールをついでやってくれ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

集まったエルフのみんなにスコールが配られた。今日はアルコールは無いのでこれで勘弁してくれ。

 

矢内「畑中、乾杯の音頭を頼む。」

畑中「お前がやれよ!」

サチ「畑中、早くして。お腹すいてるのよ。」

畑中「あー!分かったよ!やればいいんだろ!」

矢内「早くしろ。」

畑中「うるさいわ!」

 

こういった面倒な事は畑中にやらせるに限る。

 

畑中「えーと。今日はわざわざ集まってくれてありがとう!ささやかだけど皆で摘まめる簡単な料理を用意した。みんな!今日は楽しんでいって欲しい!今日の俺達の出逢いに!」

勇者「スコール!」スコール!

 

楽しい宴会が始まった。俺の作ったスモーブローにナスとベーコンのアラビアータ、畑中の作った串揚げに唐揚げ。そして、山田が作った…。スープか?色がついていない…。一口飲んで見るか。

………。

 

矢内「味がしない…。」

山田「どうだ、矢内。私の作ったコンソメスープは?」

矢内「ただのお湯じゃねえか!!」

山田「バカ言え!ちゃんとコンソメスープのもとを奮発して半欠片入れたぞ!」

矢内「バカ野郎!!これだけの量で半欠片で味がつく訳ないだろうが!」

 

「このスープ味がしないんだけど…。」

ライアン「このスープは客人が作ったッス!」

「ただのお湯だし、ウケる。」

 

ほらみろ。不評じゃねえか。

 

矢内「あー。みんな!スープは作り直すからこっちに戻してくれ!」

山田「なっ!矢内!何を!」

矢内「もうスープは俺が作り直すからお前はあっち行ってろ。」

山田「何が不満だ!」

矢内「あっち行け、シッシッ!」

勇者「山田さーん!こっちですよー!」

矢内「ほら、さっさと行け!邪魔だ!」

山田「くそっ!覚えてろ!今日はたまたまエルフ達の口に合わなかっただけだからな!」

 

一生涯、俺が山田に料理の腕で負ける事は無いだろう。パスタで使ったトマトピューレを入れてミネストローネにしよう。野菜を煮込んで塩コショウとコンソメのもとで味を整えて後は待つだけだ。

その間、俺も料理を摘まみながらみんなの様子を見て見るか。

 

「ヤナピッピ!これ、メチャウマなんだけど!」

「ヤナピッピ、マジ神だわ!」

 

さっき一緒に踊ったイベサーのみんなか。

 

「人間、今日は感謝する!」

「お前、良い奴だったんだな!」

「こんな楽しい食事は始めてだ!」

 

俺達を捕まえたエルフの兵士達か。喜んでくれて何よりだ。

 

勇者「賢者さまー!」

矢内「おう!今行く!」

 

俺は勇者達の所に向かった。

 

矢内「お前ら、楽しんでるか?」

ライアン「賢者様、スゲーッス!全部美味いッス!」

エリカ「賢者の魔法の料理だよ、ライアン。美味いのは当たり前だよ!」

アリマ君「キー!」

畑中「ハッハー!魔法って!」

サチ「畑中、あなた達の世界じゃ当たり前の物かも知れないけど始めて見る人にとっては魔法に見える物なのよ。賢者さん、今日の料理は42点ね。」

 

何が42点だ!

 

畑中「42点って!ハッハーww!低いじゃねえか!ハッハーww」

サチ「50点満点中、42点よ。」

山田「悔しいが、確かに美味いな。」

矢内「山田、屑の畑中ですら料理が出来るのに…。お前ときたら…。」

畑中「ハッハーww!ただのお湯をだしてコンソメスープだもんな!ハッハーww」

山田「何が可笑しい!」

矢内「そうだ!山田、今日お前は何も役に立っていないからせめて余興でみんなの前で一曲歌え!」

山田「はぁ?何故私がそんな事を!」

矢内「ああ、そうか。料理の腕で俺に負け歌も音痴だとお前、俺に勝てる物がないもんな。済まなかったな!忘れてくれ。適当に俺の料理を楽しんでくれ!」

山田「待て!聞き捨てならんな。私がお前に勝てる物がないだと?良いだろう。矢内!私が一曲披露してやる。私の美声を聞くがよい!」

矢内「みんな!山田が今日の為に一曲歌ってくれるから注目してくれ!」

 

エルフ達が一斉に山田の方を向いた。

 

山田「なっ!貴様!」

「客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!」

矢内「ほら、どうした?みんなお前に期待してるぞ?」

勇者「山田さん、お願いします!」

 

勇者がさっき使っていたマイクを山田に差し出した。

 

矢内「山田、どうした?美声を聞かせてくれるのじゃないのか?」

山田「クッ!少し待ってろ!」

 

山田が自分の携帯を取りだし曲を選択しだした。

 

畑中「なあ矢内、山田さんってあんな人だったのか?」

矢内「ああ、山田の煽り耐性は0だ。」

畑中「ハッハー!」

矢内「まぁ、それだけじゃないがアイツも変わっていなくて良かったよ。」

サチ「美人だのになんか色々と残念な人なのね…。」

畑中「美人だのになんか勿体ないな…。」

 

俺達が話し込んでいると山田の準備が終わったみたいだ。

 

山田「よし、準備ができたぞ。」

「客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!」

 

山田の携帯からイントロが流れだした。

 

山田「さく~ら♪さく~ら♪いつまで待っても来ぬひとと~♪死んだ人とは同じこと~♪」

山田「さく~ら♪さく~ら♪は~な吹雪♪燃えて、燃やした肌より し~ろい~花~♪」

山田「浴びてわたしは 夜桜お~し~ち~♪」

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪弥生のは~なよ~♪」

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪はなふ~ぶ~き~♪」

 

勇者「山田さん、お歌上手ですねぇ。」

畑中「演歌ww」

サチ「こぶしがきいてるわね…。」

 

そうこうしている内に曲も終盤に入った。

 

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪さよなら あ~ん~た~♪」

山田「さ~くら~♪さ~くら~♪はなふ~ぶ~き~♪」

 

「客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!客人!」

 

エルフ達が全員山田を絶賛している。

気に入らないな。山田だぞ。

 

山田「どうだ、矢内!私の美声に恐れ入ったか!」

矢内「山田…。今は10月でもうすぐハロウィンだ。季節を考えろ。」

山田「この大歓声に対しての負け惜しみか?」

矢内「言ったな?次は俺の番だ!見とけ!」

 

サチ「いい年してつまらない事でムキになって…本当に残念な大人達ね…。」

 

 

 

矢内「よし!みんな!俺が取って置きのマジックを見せてやる!」

「ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

 

よし、みんなが俺に注目している。

 

山田「なっ!マジックだと!」

エリカ「なぁ、マジックって何?」

畑中「手品の事だ。」

勇者「賢者さまは何でもできるのですねぇ。」

 

さて、準備に入るか。

 

矢内「チャラララララーン♪チャラララララーララー♪」

 

畑中「ハッハーww!自分でメロディー歌いだしたww!」

 

矢内「今宵のよ~るに♪たの~しい~ひとと~きを~♪」

 

山田「勝手に変な歌詞をつけ始めた…。三十才過ぎているのに恥ずかしくないのか…。」

 

矢内「さて!今から、この種も仕掛けもない横縞のハンカチが合図と共に模様が変わります。エン…ト…トライ…。」

 

俺は目にも止まらぬ速さでハンカチの向きを変えた。

 

矢内「はい!ナント!先程の横縞のハンカチが縦じまに大変身!」

エリカ「スゲー!」

勇者「模様が変わりました!」

「スゴイ!何をしたんだ?模様が変わった!」

「ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

サチ「ハンカチの向きを変えただけじゃない…。エリカさんやゆうりんはともかく、エルフの人達もみんな騙されてる…。何これ?」

山田「ここのエルフ達はみんな頭が悪いんだ…。」

 

ボルテージは最高潮だ!

 

「貴様らー!何を騒いでいる!」

 

誰だ!俺は声のする方を振り向いた。

 

山田「不味い、国王だ…。」

国王「わしの食事をいつまでも持ってこないと思っていたら貴様ら、何をやってるか!」

矢内「みんなで楽しくやってるんだよ。お前、いい年した大人が自分の飯ぐらい自分で作れよ。」

国王「なっ!貴様ら!どうやって牢屋から出てきた!」

矢内「どうやってって普通に鍵を開けてもらって出たんだよ。別に入れって言われたけど出るなって言われてないからいいだろ、なぁ、みんな。」

「そうだー!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

「確かにそうだ。賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!」

山田「エルフの民を掌握している…。」

サチ「弱者を味方につけるのは賢者さんの基本スタイルよ…。いつもの事だわ。」

国王「貴様らー!人間は悪だ!騙されるな!引っ捕らえろ!」

勇者「わたし達は悪い人じゃありません!」

「そうだー!チビッコー!」

矢内「よし!こんな奴は無視してパーティーの再開だ!マジックの続きをやるぞ!」

「ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!ヤナピッピ!」

「賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!」

矢内「はい!さて、先程の模様の変わったハンカチを元の横縞に戻したいと思います。エン…ト…トライ…。」

 

俺は再度、目にも止まらぬ速さでハンカチの向きを変えた。

 

矢内「はい!ハンカチの模様が元通り!」オー!

勇者「スゴイです!」

国王「…。ハンカチの向きを変えただけだろう。何がマジックだ!ワシでもできるわ!」

矢内「何カリカリしているだよ。スコール飲んで落ち着けよ。」

国王「悪党の差し出した飲物など飲めるか!」バシ!

 

俺の差し出したスコールが地面に叩き落とされた。

 

勇者「あわわわわ…大変です!」

エリカ「なんて事をするんだよ。賢者、すげぇ怒るぞ!」

サチ「今のは不味いわね…。みんな、巻き添えをくらわないように口を慎むのよ!特に山田、お願いね。」

山田「何故に私だけに言う…。」

矢内「…。勇者、斧を貸してくれ。」

勇者「は、はい。」

 

俺は斧を受け取った。

 

矢内「これより取って置きの切断マジックを行う!このマジックは国王が協力してくれる!」

国王「なっ!」

矢内「この転がっている樽の中に入れ!」

国王「何をする!」

 

俺は国王を樽の中に押し込んで頭だけ出して出られない様にした。

 

矢内「それでは皆さん!この種も仕掛けもないこの国王の入った樽を斧で一刀両断すると国王の首と体が2つに分かれるマジックをやります!」オー!タノシミダ!

国王「おい、仕掛けがあるのだろ?教えてくれ。」

矢内「ありません。死ね。」ボソ…

国王「なっ!わしを殺す気か!止めろ!助けてくれ!誰か!」

 

山田「国王の様子がおかしい…。」

サチ「賢者さん…。そんなマジック本当にできるのかしら?」

畑中「ハッハーww矢内にそんなマジックできる訳ないだろ!」

サチ「ああ、ここであの国王を殺すつもりなのね…。」

山田「お前達!何言ってる!」

 

山田達が話しこんでいる間に俺は斧を大きく振りかざした。

 

矢内「では!いきます!」

山田「矢内-!止めんか-!お前達!矢内を全力で止めろ!」

 

俺は山田達に取り押さえられ、マジックは中止になった。

 

国王「はぁはぁ、客人よ。助かった。」

山田「いえ、私こそ長い間もてなしていただいて感謝しています。皆のもの!中途半端になってしまったがパーティはこれでお開きにさせてもらう!」

 

山田の一声でエルフのみんなはそれぞれの家に帰って行った。国王も山田に言いくるめられて自分の屋敷に戻った。

 

矢内「俺達も片付けをして宿にもどるか。」

勇者「はい!賢者さま!」

山田「待たんか、矢内。」

矢内「何だ、俺はなにもしてないお前と違って忙しいんだ。」

山田「お前、国王を殺そうとしたな?」

矢内「ああ、それがどうした?」

山田「なっ!お前!国王だぞ!国の代表がいきなり死んだら残された民はどうなる!お前の下らない理由で…。」

サチ「山田、それ以上はダメよ!」

矢内「山田、後で話がある。俺達が泊まる宿に来てくれ…。」

ライアン「泊まる所は自分が用意しているッス。」

矢内「ライアン、気が利くな。助かる。」

ライアン「こっちッス。自分達の町は宿屋が無いので自分の家で我慢して欲しいッス。」

山田「待て、ライアン。私はライアンの家で世話になっている。こいつらも家に入れるのか?」

ライアン「えっ、そうッスよ。」

山田「あ、悪夢だ。」

 

俺達はライアンの家に案内された。

 

ライアン「ここッス。」

矢内「けっこういい家に住んでるな。」

勇者「おじゃまします。」

ライアン「狭いけどみんなくつろいでほしいッス。」

山田「矢内、お前達男共は一階だ、私達は2階で寝る。」

矢内「あー、分かった分かった。」

 

山田達、女共は2階に上がっていった。

 

矢内「ライアン、すまないな。急に押しかけて。」

ライアン「今日のパーティ、みんな喜んでいたッス。だから気にしないでほしいッス。」

畑中「矢内、俺はベッドを使うからお前は床で寝ろ。」

 

お前も床で寝ろよ。

 

ライアン「所で賢者様達はこれからどうするんッスか?」

矢内「ああ、俺達は明日から砂漠の国に向かう。」

畑中「頑張れよ、矢内。」

矢内「お前も来るんだよ!」

畑中「カー!俺を巻き込むな!」

ライアン「砂漠の国…。だったら自分が森の外まで案内するッス。」

矢内「何から何まですまないな。」

ライアン「客人からも教えてもらっているけど賢者様達の世界の事を色々教えてほしいッス。」

矢内「山田から?」

ライアン「そうッス。客人は凄く博識で自分達に色々な事を教えてくれるッス。客人の世界では嵐とか関ジャニ∞とかキスマイフットが大人気みたいッス。」

畑中「ハッハー!ジャニーズ!」

矢内「ああ、山田はジャニオタだからな。後、一昔前だと光ゲンジにTOKIOだな。重要な事だから覚えておくといい。」

ライアン「分かったッス。」

畑中「お前もジャニオタかよ!」

矢内「明日は早い、そろそろ寝よう。畑中、お前も床だ。ベッドは家主のライアンのだ。」

 

俺達は早々に寝ることにした。そして夜があけた。

 



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エルフの森の山田さん 3

朝がきた。

ピピピピピピ!6時半の携帯のアラームが鳴り響く。7時まで二度寝しよう。

 

勇者「賢者さま、起きてください。」

矢内「ううーん…。」

エリカ「賢者ー!起きろー!」

アリマ君「キー(任せて!)」ドス!

矢内「ぐはっ!」

 

アリマ君のボディブローで目が覚めた。

 

矢内「クソッ…。優しく起こせよ…。サチはどうした?」

勇者「さっちんはまだ寝てます…。」

矢内「1つ目、サチにもボディブローをかましてやれ。」

エリカ「サチは直ぐに起きるよ。勇者、お願い。」

勇者「さっちーん!もうすぐご飯ですよ~!」

 

サチが直ぐ様2階から降りてきた。意地汚い奴だ。

 

サチ「賢者さん、まだかしら?」

矢内「起きていきなりそれか。寝癖を直してちょっと待ってろ!」

 

フライパンに火をとうしてホットケーキを人数分作った。

 

矢内「出来たぞ。」

勇者「美味しそうです。」

矢内「ライアンも食べてくれ。」

ライアン「えっ?いいんッスか?」

矢内「ああ。世話になっているからな。これぐらいの事はしないとバチが当たる。食べてくれ。」

畑中「遠慮するな。」

 

お前が言うな。

 

矢内「それはそうと山田はどうした?」

勇者「山田さんは鏡の前で何かしていました。」

矢内「ああ、三十過ぎの年増だからな。するだけ無駄の化粧に時間がかかっているのだろう。じゃあ、先に食うか。」

山田「矢内、口を慎め。お前も三十過ぎだろうが。」

 

山田が降りてきたのでみんな揃って軽めの朝食をとった。

 

山田「そうだ矢内、これから国王の所に挨拶に行く。お前達もついてこい。」

矢内「アイツは色々と信用できないからお前一人で行けよ。」

山田「何を言い出すのだお前は、お前達は散々迷惑かけているだろ!いいからこい。」

ライアン「自分もついて行くッス!」

 

こうして俺達は山田の言う通りに国王のもとに向かった。

 

山田「国王陛下、これより私はこの矢内 孝太郎と共に砂漠の国に向かいます。今までおもてなしていただき誠にありがとうございました。」

国王「客人よ、旅立たれるのか?もう少しここに居ても良いのだぞ。」

山田「いえ、私もいつまでもやっかいになるわけにはいきません。」

国王「しかし、もう少し居ても…。」

矢内「おい、なんか山田がここに居ないと都合が悪いのか?」

国王「無礼者め!わしに対してなんて口の聞き方だ!」

矢内「話を誤魔化すなよ。」

山田「矢内!口を慎め!」

矢内「山田、黙っててくれ。なあ、国王様よ。俺はなんで山田がここに居ないと都合が悪いのかを聞いているんだよ。質問に答えろよ。」

国王「貴様!何者だ!名を名乗れ!」

矢内「俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ。」

勇者「わたしは一国の勇者です!」

エリカ「あたしはエリカ!よろしくな!」

国王「お前達には聞いてないわ!貴様が賢者か、わしに対しての数々の無礼、ただですむと、」

矢内「俺はお前の問いに答えたんだ。今度はお前が俺の質問に答えろよ。」

山田「矢内、止めろ!国王陛下、我々はこれで失礼します!」

国王「賢者とか言ったな。貴様、このまま帰れると思っているのか?」

矢内「ああ、何も問題ないな。エルフは人間を見ると見境なしに攻撃してくる種族と聞いていた。しかし、実際はこの国のエルフの人達はみんな気さくでいい連中だ。」

国王「貴様等など、わしの一声でどうにでもなるわ!」

矢内「わしの一声ってか?そうやって知識も知恵のないエルフの人達を操っていたのか?」

ライアン「えっ?そうなんッスか?」

矢内「ああ、ライアン。今からみんなに教えてやれ。国王がみんなを都合の良いように利用しているとな。」

国王「ま、待て!分かった!お前達の事は不問にする!良いからとっとと砂漠の国にでも行くがよい!」

矢内「そんな事じゃなくて俺の質問に答えろよ!誤魔化すな!」

畑中「矢内!もう良いだろ!」

サチ「そうよ、賢者さん。」

山田「国王陛下、我々は失礼します!」

矢内「待て、俺の話は終わっていない!放せ!」

山田「矢内、行くぞ!お前達、矢内を取り押さえろ!」

 

俺は山田達に取り押さえられ国王の屋敷をあとにした。

 

サチ「賢者さん、どうしたのよ。」

畑中「矢内お前、いまだに偉い奴に逆らったらカッコいいって思っているのか?中二病の悪い癖だぞ。」

矢内「違うわ!」

山田「変わらんな、お前は。」

矢内「だからそうじゃなくてだな…。」

 

俺達が話し混んでいると何人かのエルフが話しかけてきた。

 

「あの…。賢者様…。」

矢内「なんだ?」

「あの…助けて下さい。実は昨日から私達の娘が行方不明なのです…。」

山田「何!」

矢内「詳しく話してくれ!」

「はい…。実は、少し前から若い娘が行方不明になることがありまして…。」

矢内「まさか?何者かに拐われたのか?少し前からと言ったな?」

「はい…。国王様にもお願いしているのですが…。賢者様達ならもしかして何か知っているかもと思いまして…。」

山田「良いだろう。」

「私達の娘を探してもらえるのですか?」

山田「ああ。」

矢内「待て山田!」

山田「なんだ。」

矢内「勝手に返事をするな!」

山田「エルフの娘が拐われたのだぞ!」

矢内「分かっている。でも情報が無さすぎる。このままじゃどうしようもない。」

「そ…そんな…。」

矢内「探さないとは言ってない。俺達はこれから砂漠の国に行く。そこでエルフが居ないか探してやる。見つかる可能性は低いがやれるだけの事はやるから希望を捨てるな。」

「はい…。」

矢内「俺達の国、ファンタルジニアの皇帝にも探してもらえるように話しておく。」

「お願いします、賢者様。」

 

エルフ達は俺達に会釈をして立ち去った。

 

矢内「直ぐに出発しよう。」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「ライアン、外への案内を頼む。」

ライアン「分かったッス!」

 

俺達はライアンの案内で森の外に出た。

 

矢内「ライアン、無事に外に出れた。助かった。」

ライアン「礼にはおよばないッス!またいつでも来て欲しいッス!」

矢内「ああ!」

エリカ「ライアン、ありがとう!」

アリマ君「キー!」

ライアン「エリカもアリマ君も久しぶりに会えて嬉しかったッス!」

矢内「ライアン、俺は国王に目をつけられているから森に戻れ。後、国王は絶対信用するなよ。」

ライアン「分かったッス!」

 

ライアンは森に戻って行った。

 

矢内「一度ファンタルジニアの城に帰るぞ。」

山田「何を悠長な事を言ってる。」

勇者「賢者さま、何でですか?」

矢内「この先は砂漠だ。色々と準備がいる。急ぐぞ。」

 

俺はゲートストーンを使いファンタルジニアの城に戻った。

 

 

 

 

 

 

矢内「よう、童帝!賢者様のご帰還だぞ!」

皇帝陛下「うわっ!いきなり我の前に出てくるな!で、何の用だ。」

 

謁見の間にゲートを置くからだろ。

 

エリカ「よう、童帝!」

皇帝陛下「お前は我の国の戦士だよな。矢内は無礼なのは今に始まった事じゃないがお前は駄目だろ!」

エリカ「なんだよ、いいじゃんか。」

キサラギ「陛下、何事ですか?」

皇帝陛下「ああ、矢内達が帰って来た。」

エリカ「あっ!戦士長!あたし達はそこの童帝に用事があって来たんだよ。」

キサラギ「おお!エリカ!無事に戻って来てなによりだ!怪我はないか?みんなとは仲良くしているか?」

矢内「相変わらずだな戦士長。」

キサラギ「矢内殿か、戻って来たって事は旅先で何かあったのですか?」

矢内「ああ、エルフの森でちょっとな。」

皇帝陛下「エルフの森…。矢内よ、どうせお前が余計な事を言ってエルフに弓で射たれて戻って来たのだろう。」

サチ「だいたい合ってる…。」

畑中「矢内お前、遂に賢者って呼ばれなくなったな。」

皇帝陛下「こんな無礼な男は矢内でいい。賢者など厚かましいわ。」

 

矢内は俺の名字であって悪口ではない。

 

サチ「賢者さん、そろそろ本題に入らないと。」

矢内「ああ、そうだった。頼みってのは2つほどあってな、まずは俺が以前捕まえた人拐いがいただろ。アイツを少し貸してくれ。」

キサラギ「ああ、あの者か。」

皇帝陛下「あの者は今は我が国の戦士としてオークの村と隣の町の警備にあたっている。」

矢内「いやいや、何を言ってるんだ。アイツは駄目だろ!そんな事だからお前はいつまでも童帝なんだよ。」

エリカ「そうだぞ、童帝!」

キサラギ「彼は真面目に警備をしています。後、矢内殿。陛下に対して口を慎んでいただきたい。それに酒天童子の村の鬼一人も一緒です。」

勇者「鬼ですか?」

矢内「大丈夫かよ…。」

皇帝陛下「嘘だと思うなら一度行ってみるといい。」

矢内「ああ、そうだな。村の子供達にも久しぶりに会いたいしな。」

皇帝陛下「後はなんだ?」

 

エルフの森での出来事を説明した。

 

皇帝陛下「なんと…。」

キサラギ「人拐いが…。」

矢内「ああ…。だから、町の警備の強化をして欲しいのと、もしここら一帯でエルフ見つけたら保護をして欲しいんだ、頼む。」

 

俺は童帝に頭を下げた。

 

皇帝陛下「分かった。矢内よ、頭を上げんか。出来る限り協力をする。同盟国になったノートルランドにも親書を送っておく。」

矢内「本当か?いつもすまない。」

 

俺は再度頭を下げた。その時、一人の兵士が慌てて謁見の間に入ってきた。

 

「陛下!大変です!実は怪しい男がオークの村の近くの原っぱに現れて…。」

キサラギ「落ち着かんか、何があった?」

「はっ!その男ですが妙な球を持った奇妙な格好をしていて、自分の事を勇者だと言い出しまして…。今は新兵達が対応しています。」

勇者「妙な球?」

エリカ「奇妙な格好?」

サチ「賢者さん、もしかして…。」

矢内「ああ…。多分、ヒコマロだ。」

キサラギ「矢内殿、知っているのか?」

矢内「ああ…。多分、東の島国から来た勇者ヒコマロだ。」

勇者「ヒコマロはわたし達の友達です。」

矢内「原っぱだったな。直ぐに案内してくれ。」

「はい、ここからですと走って20分ぐらいで着きます。」

矢内「すまん、童帝、戦士長。ちょっと行ってくる。」

皇帝陛下「ああ、戻って来ていきなりですまないな。」

矢内「気にするな。直ぐに戻る。」

畑中「矢内、気を付けろよ!」

矢内「お前も来るんだよ!」

 

俺達は直ぐに原っぱまで走って行った。

 

キサラギ「矢内殿は相変わらずですね。本当に面白い男だ。」

皇帝陛下「ああ、アイツが現れてからいい意味で色々と忙しくなった。」

 

 

 

 

 

俺達は急いで原っぱにたどり着いた。何者かが大声を上げている。声が聞こえる方に向かった。

 

「だから磨呂は勇者でおじゃる!」

「嘘つけ!そんな奇妙な格好の勇者がいるか!」

「そうやって子供達に近づいて拐って行くのだろう!他の奴は誤魔化せても俺様は騙されんぞ!」

「何!子供達を?貴様!ビーナスって神の使いか!」

「違うでおじゃる!磨呂は東の島国で神の天啓を受けたれっきとした勇者でおじゃる!磨呂はここの童達に蹴鞠を教えに来たでおじゃる!」

 

ヒコマロと言い争いをしているのはあの時の人拐いとあれは…かね童子か?何でいるんだ?その後ろには子供達がいる。

 

「何か変な球を持ち出した!」

「みんな、下がるんだ!」

「ええい!この俺様が退治してやる!」

「俺も加勢するぞ!」

「僕達に何かしたら賢者様が黙っていないぞ!」

「そうだそうだ!」

ヒコマロ「賢者?そち達、もしかして矢内 孝太郎の知り合いでおじゃるか?磨呂は矢内 孝太郎達の友でおじゃる。」

「賢者の友達?俺は賢者に酷い目にあった!縛られた状態で蝉を食わされた!」

「俺様なんていきなり1つ目の魔物に殴られて牢屋に入れられて屋敷に火をつけられて死にそうになった!」

 

こいつら!自分の行いを棚に上げて!なんて言いぐさだ!

 

矢内「お前ら!自分の事を棚に上げて何を言ってやがる!」

「あっ!お前は!」

「賢者様だ!」

矢内「まず、お前は元々はこの村の子供達を拐おうとした張本人だろ!かね童子!お前は俺達にケンカを売ってアリマ君にぶん殴られだだけだろうが!」

「け、賢者!何でいるんだ!」

矢内「用事で戻って来たんだよ!アリマ君、コイツらをぶん殴れ!」

エリカ「何でアリマ君に言うんだよ。」

アリマ君「キー!(お前がやれよ。)」

勇者「ヒコマロ!久しぶりです!」

ヒコマロ「おお!童(わらべ)勇者に矢内 孝太郎!また会えて嬉しいでおじゃる!」

矢内「ヒコマロ、すまんな。子供達には俺が説明する。」

ヒコマロ「かたじけないでおじゃる…。」

 

俺は子供達にヒコマロを紹介した。

 

「本当に勇者なんだ。」

ヒコマロ「磨呂の事を信じてくれたでおじゃるか?」

「賢者様の友達なの?」

「蹴鞠ってどういう遊びなの?」

 

子供達がヒコマロに質問責めをしている。

 

矢内「さて、お前ら。覚悟はいいか?」

「俺達は子供達を守ろうとしただけで…。悪気は無かったんだ。」

矢内「言い訳はそれだけか?俺の悪口を言った罪は重い。死刑だ。」

「賢者様!ジークのおじさんは悪くないよ!」

矢内「ジーク?」

ジーク「俺の名前ジークフリードだ。」

矢内「ハハハ!お前、バカの癖にそんな格好いい名前なんだな。」

ジーク「笑うな!ちくしょう!」

かね童子「ジークお前、人拐いだったのか?」

ジーク「ビーナスって神に操られたんだよ…。」

矢内「かね童子、お前は何でここにいるんだよ。」

かね童子「ああ、俺様は酒天童子様の命でこの国の兵士になったんだ。」

 

弱い奴が兵士で大丈夫かよ…。

 

畑中「矢内ー!」ゼイゼイハアハア

山田「矢内…。ゆっくり走らんか…。」ゼイゼイハアハア

矢内「お前ら、情けねえな。」

エリカ「何で息切れしているだよ。ちょっと走っただけじゃん。」

山田「お前らと…一緒にするな…」ゼイゼイハアハア

ジーク「誰だ、この二人は?」

勇者「山田さんと屑野郎さんは賢者様のお友達です。」

ジーク「なんだ、屑か。」

かね童子「類は友を呼ぶと言うからな。」

山田「誰が屑だ、矢内と一緒にするな。矢内、誰だコイツ等は?」

矢内「ああ、雑魚だ。」

ジーク「誰が雑魚だ!」

畑中「ハッハーww!」

かね童子「笑うな、ちくしょう!」

矢内「えっと、冗談はこれぐらいにしてジークだったか。今日はお前に用があるんだ。」

ジーク「なんだよ。」

矢内「お前、砂漠の国から来たんだよな。」

ジーク「正確には砂漠の国の先の港町だから砂漠の国については分からないぞ。」

矢内「はぁ?なんだよ、何も知らないのかよ役立たずめ!もういい、どっか行けよ!」

ジーク「いきなり来てなんだよ!ちくしょう!」

矢内「砂漠の国までの道のりとか聞きたかったけど知らないならしょうがないな…。お前ら、しっかり警備を頼むぞ!」

ジーク「毎日ちゃんとやってるよ。」

矢内「今まで以上にだ。エルフの森でも人拐いがあるんだ。」

かね童子「凶暴な種族のエルフまでも…。」

山田「凶暴などではない。皆、気さくで気のいい連中だ。」

ジーク「気さくでって…。そんな訳ないだろ。」

矢内「ああ、実際会ったらいい連中だったぞ。拐われているエルフは若い娘だ。童帝からも話があると思うが今まで以上に警備をしっかり頼むぞ!」

かね童子「若い娘…。」

ジーク「かね童子、お前は可愛い嫁さんがいるから気を付けろよ!」

矢内「かね童子、お前嫁さんなんかいるのかよ。」

 

俺達が話しこんでいると村の方から懐かしい顔ぶれの子供達がこっちに走ってやって来た。

 

「賢者ー!」

「賢者様ー!」

 

勇者「あっ!キールにエースにポーキーです!」

ポーキー「勇者!帰って来たの?」

勇者「賢者さまと一緒に帰って来ました。」

キール「怪しい奴が来たって聞いたけど何処にいるんだ?」

エース「ジーク、かね童子、怪しい奴が来たら俺達に言わないと駄目だろ。お前ら弱いんだから。」

ジーク「弱くねえよ!」

畑中「ハッハーww!子供までに弱いとか言われるってwwハッハー!」

かね童子「笑うな、ちくしょう!」

ジーク「笑うな、じゃあお前は強いのかよ!」

畑中「平和主義者の俺が戦いなんてするわけないだろ。ハッハー!」

かね童子「ちくしょう、腹立つ。」

キール「なぁ、あんたらは誰だ?」

勇者「山田さんと屑野郎さんは賢者さまのお友達です。」

キール「なんだ、賢者の友達だったらただの屑か。」

エース「類は友を呼ぶっていうからな。」

山田「友達などではない!ただの腐れ縁だ!」

ポーキー「もしかして、賢者様と同じ世界から来たの?」

山田「ああ、私がこっちの世界に来たのは事故だがな。」

畑中「俺は毎回強制的に連れてこられるがな。ハッハー!」

ポーキー「ねぇ、お姉ちゃん達の世界の事を教えてよ。」

畑中「ああ、良いぞ。まずはミリオンゴットっていうのがあってな…。」

山田「子供にギャンブルの話をするな、馬鹿者!」

ポーキー「お姉ちゃん、なんか怒鳴ってばっかりだね。」

矢内「ああ、山田は独身で三十路過ぎの悲しい女だからな。些細な事でイライラするんだ。気にしちゃ駄目だぞ。」

山田「お前達がイライラさせるのだろうが!」

キール「姉ちゃん、賢者は大人の癖にいまだにチンコの皮が被った可哀想な奴だから寛容な心で許してやれよ。」

エース「そうだぞ、姉ちゃん。」

矢内「お前ら、俺はズル剥けだ!いい加減にしろ!」

山田「クククっww!や、矢内、つまらない見栄を張るなww。可哀想な奴ww。」

畑中「ハッハーww!図体大人でチンコは子供ってかハッハーww!腹痛えー!ハッハーww!」

かね童子「散々偉そうにしていて、チンコの皮が被っているって!ハハハ!」

ジーク「腹痛えー!」

 

全員が俺を馬鹿にしている。

 

矢内「笑うな、ちくしょう!畑中、そう言えばサチの奴はどうした?」

畑中「ハッハーww!」

矢内「ティロ フィナーレー!!」バシャン

 

俺は頭に来たので畑中にラッカーシンナーを一斗缶まるまるぶっかけた。

 

畑中「矢内!おま!ああああ!全身痛えー!ああああ!」

 

畑中が悶え苦しんでいる。ざまあみろ!

 

エリカ「あれ、スゲー痛いんだよな…。」

アリマ君「キー…。(あれは酷かった…)」

矢内「畑中!サチの奴はどうした!」

畑中「ああああ!」

 

畑中はまだ悶え苦しんでいる。

 

山田「ああ、あの娘は走るのが面倒臭いって言ってたぞ。」

矢内「舐めてるのかアイツは…。アイツの飯は無しにしよう。」

 

俺達の前にいきなりドアが現れた!何が起こった?

 

ジーク「なんだ、あのドアは!」

 

ドアが開く…。何か来る!

 

矢内「かね童子!ジーク!子供達をしっかり守れよ!」

かね童子「分かってる!」

山田「矢内、来るぞ!」

勇者「あっ。あれは…。」

 

ドアから誰かが出てきた。

 

サチ「賢者さん、私は走るのは面倒臭いと言ったけど来ないとは言っていないわ。」

 

お前かよ!

 

エリカ「やっぱりサチだ。」

サチ「お待たせ、黒魔術で来させてもらったわ。」

矢内「なんだ今のは?」

サチ「今のは私の黒魔術、『ドワープ』よ。」

 

だから何なんだよ、それは!

 

サチ「いいわ、説明すれば良いのでしょ。この黒魔術、『ドワープ』は私が召喚したドアを開けると一瞬で仲間の所にワープできる黒魔術よ。」

畑中「どこでもドアかよ!ハッハーww」

矢内「あーもういい、俺は童帝に報告してくる。勇者、折角だから子供達と遊んでいるといい。」

勇者「はい、分かりました。」

サチ「そんなことより賢者さん、そろそろお昼の時間なのだけど…。」

矢内「…。」

 

お前は飯の事しか頭にないのか。

 

矢内「じゃあ、行ってくる。」

サチ「ちょっと、賢者さん!お昼は?お腹すいているのだけど!」

 

 

 

次は砂漠に入る、今までのようにはいかないだろう。拐われたエルフ達、砂漠の国にいるであろうビーナスって神の使い、気をつけない事がたくさんある。準備は念入りにしないと駄目だろう…。

 

サチ「ちょっと、賢者さん!お昼なのだけど!」

 

うるせー!

 

 

 

 

第10話

エルフの森の山田さん

E N D



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砂漠の国へ進む道 1

ファンタルジニアの城に戻ってから2日後、俺達は砂漠の国を目指している。

 

矢内「山田、元の世界に帰れたのにわざわざ俺達についてこなくてよかったのだぞ。」

山田「何を言う。エルフの者達には世話になった恩がある。拐われたエルフの民を見つけるまではこっちにいる。」

勇者「山田さんもしばらくはご一緒なのですね。」

山田「ああ、矢内の娘。しばらく世話になる。」

勇者「あの…。山田さん、わたしの名前は一国の勇者です。」

山田「そうか、矢内の娘。」

エリカ「賢者ー!お腹すいたー!」

アリマ君「キー!」

矢内「飴ちゃんやるから大人しくしろ。」

エリカ「あたしブドウにしよう。」

アリマ君「キー!」

サチ「またスコールキャンディ…。」

畑中「何処で売ってるんだよ、ハッハーww」

勇者「賢者さま、二ついただきます。山田さんもどうぞ。」

山田「私はいい。」

勇者「えっ。」

山田「そんな顔をするな。私は自分で作ってきたべっこう飴がある。矢内の娘、気遣いは無用だ。」

畑中「ハッハーww!べっこう飴ww!」

サチ「貧乏くさいわね…。」

山田「馬鹿にするな、私は小さい頃からいつもおやつはべっこう飴を作って食べている。」

矢内「お前ら、山田の家は貧乏なんだ。あまり馬鹿にするなよ。」

畑中「いやいや、飴ちゃんぐらい買うだろ、貧乏でも。」

矢内「あのなあ、山田は昔、遊びに来た彼氏に昼飯にコオロギを素揚げして出すぐらい食うものに困っていたのだぞ。」

山田「なっ!何故お前がそれを知っている!」

矢内「高校の時にお前の元彼に相談されて泣きつかれたんだよ!それをお前の取り巻きのくそ女共が俺が別れさせたような言いかたしやがって!」

畑中「ハッハー!彼氏にコオロギ食わすってww!」

サチ「そんなのお昼ご飯に出されたら一瞬で恋も覚めるわね。」

山田「馬鹿者、コオロギは私の家では貴重な食材だ!」

エリカ「やっぱり賢者の友達は変な奴ばっかりだなぁ。」

矢内「まぁ山田の貧乏話は置いといてだ、お前ら水分補給はしっかり取るんだぞ。」

 

俺達は砂漠の道なき道を突き進む。

11月だというのに暑いな…。スコールを一口飲み、砂漠を歩いて行く。

 

「グルルルル…。」

 

ん?何の音だ?

 

「グルルルル…。」

勇者「賢者さま、何か聞こえてきます。」

矢内「サチが腹を空かせているだけだ。気にせず行くぞ!」

サチ「賢者さん違うわよ、人聞き悪い事を言わないで。」

「グルルルル…。」

 

後ろから聞こえる。

 

「グルルルル…。グルルルル…。」

 

声が近づいている。

 

山田「なんだ?」

矢内「後ろに何かいるな。嫌な予感がする。」

 

俺達は後ろを振り返った。

 

畑中「ああああああ!魔物がー!」

山田「ああああああ!来るな!食うなら矢内だけにしてくれ!」

矢内「に、逃げるぞ!」

 

俺達は全速力で逃げた。魔物が追ってくる。デカイみみずのような魔物だ。ファイナルファンタジーとかで出てくるサンドワームって奴だ。

 

「グルルルル…。キシャアアア!」

 

サンドワームの一匹が俺達を食おうと襲いかかる!俺は間一髪でサンドワームの突進を避けた。

俺達はサンドワームに囲まれてしまった。

 

エリカ「囲まれたよ。」

勇者「賢者さま…。」

矢内「不味いな…。」

 

俺達は互いを背中合わせにして足を止めた。するとサンドワーム達は砂漠の中に潜っていった。

 

サチ「潜られたわね…。」

畑中「ハッハーww!助かったぜ!」

山田「矢内!あんなのが居るなんて聞いていないぞ!」

矢内「俺に文句言うなよ。お前が勝手に着いてきたんだろうが。」

山田「ひどい目にあった。まぁいい、先に進むぞ。」

勇者「はい。」

 

山田と勇者達が歩きだすとまたサンドワームが砂漠から出てきて襲いかかって来た。

 

山田「ああああああ!まただぁ!」

矢内「クソっ!逃げるぞ!」

 

俺達は再度、全速力で逃げ出した!が、またしてもサンドワームに回りこまれる。

 

矢内「来るぞ!構えろ!」

エリカ「分かった!」

サチ「賢者さん、待って!みんな、足音を立てないで!じっとするのよ。」

勇者「えっ?」

サチ「説明は後でするわ。みんな、じっとしていて!」

 

俺達はサチの言われた通りに足音を立てずにじっとした。するとサンドワーム達は再度、砂漠の中に潜っていった。

 

勇者「また潜って行きました。」

矢内「そうか!」

サチ「ええ。」

エリカ「えっ?どういうこと?」

サチ「アイツ等は私達の足音に反応して襲ってくるのよ。」

畑中「そうか、じっとしていたら襲われないって事か!」

山田「よくこの状況でそれに気がついたな。」

サチ「ええ。貴女が再び歩き始めた時にまたあの魔物が現れたので確信したわ。」

矢内「しかし、このままじっとしていたら俺達が暑さで干からびてしまう。」

サチ「一匹ならなんとかなるけど…。」

勇者「三匹います…。」

 

三匹か…。俺も一匹ならなんとかなりそうだが…。

 

矢内「よし、アイツ等をやっつけるぞ!」

山田「やっつけるって、どうするのだ?」

矢内「ああ、作戦を言う。まずは俺と畑中と山田でそれぞれ三方向に走ってアイツらを分断させる。勇者、エリカ、サチ、アリマ君で2手に分かれてサンドワームを倒す。」

畑中「俺達を囮にするのか!」

矢内「ああ。」

山田「ああ、じゃない!何故私達が囮にならなければならん!」

矢内「ああ、危険な事だから大人である俺達がやるのだ。サチ、戦い方は任せる。先に山田と畑中を助けるんだ。一匹なら俺にでも倒せると思う。」

サチ「分かったわ。」

矢内「よし、作戦開始だ!」

畑中「矢内、ふざけるな!」

山田「そうだ!私はまだ死にたくない!」

矢内「腹をくくれ!このままじっとしていて暑さで干からびて死にたいのか!」

山田「分かった!やればいいのだろ!その代わり私を1番に助けろよ!」

サチ「分かったわよ。品がないわね…。」

矢内「よし、三秒後に走るぞ。」

畑中「待て、矢内。1、2の3か1、2、3か、どっちだ。」

矢内「1、2、3、go!で行く。」

畑中「1、2、3、go!だな。」

矢内「行くぞ!」

山田「1!」

矢内「2!」

畑中「3!」

矢内、山田、畑中「go!」

 

俺達は三方向に分かれて走り出した。

 

「キシャアアア!」

 

作戦どうりサンドワームが一匹ずつ分かれて襲いかかった!

 

山田「ああああああ!く、来るな!」

「キシャアアア!」

 

サンドワームの一匹が山田に襲いかかる!

 

サチ「残念ね、あなたは食事をすることなく私達に倒される運命よ。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

 

サチの黒魔術でサンドワームの動きが止まった!

 

サチ「エリカさん、今よ!」

エリカ「分かった!キサラギ流、居合い一刀両断!」

「キシャアアア!」

 

エリカの高速の一振りでサンドワームを真っ二つにした。

 

畑中「ああああああ!追い付かれる!ちくしょう!矢内、俺が死んだら呪ってやるからな!」

「キシャアアア!」

 

サンドワームの一匹が畑中に襲いかかる!

 

勇者「アリマ君、もっと上に上がって下さい!」

アリマ君「キー!」

 

アリマ君が勇者の奴の両腕を掴んで空高く上がっている。

 

「キシャアアア!」

 

サンドワームは勇者に気づかずに畑中に襲いかかっている。

 

勇者「アリマ君、放して下さい!ここからあの化け物の頭を狙います!」

アリマ君「キー!」

勇者「いきますよー!えーい!」グシャ!

「キシャアアア!」

 

遥か上空から落下しながら勇者が手斧でサンドワームの頭を叩き潰した!

 

勇者「やりました!」スタ!

 

勇者が見事サンドワームを倒し綺麗に着地した。畑中の上に。

 

畑中「俺を踏み台にするなよ…。」

勇者「ご、ごめんなさい…。」

 

山田「た、助かった…。」

畑中「ハッハーww!助かったぜ!」

 

よし、後は俺だけだ。サンドワームが俺を追ってきている。残念だがここからはずっと俺のターンだ。

 

矢内「こっちだ!」

「キシャアアア!」

畑中「矢内ー!俺達は助かったから後は安心して死ねー!そしたら次は俺が主人公だ!ハッハーww!」

矢内「うるせー!」

「キシャアアア!」

 

サンドワームが俺に襲いかかる!

 

矢内「そんだけ動くと喉が乾くだろう?こいつは俺からのプレゼントだ!喰らえ!『ティロ フィナーレー!』」バシャ!

「キシャアアア!キシャアアア!」

 

サンドワームの口の中にラッカーシンナーをぶちまけた。サンドワームは口の中を低温火傷してのたうち回っている。

 

矢内「こいつで止めだ!必殺!ヤナイフレイム!」ゴオオォォォォォ!!

 

俺の魔法でサンドワームは火だるまになった。黒煙を上げながらのたうち回っていたが少しして動かなくなった。俺達の完全勝利だ!

 

勇者「賢者さま!」

矢内「勇者、良くやったな!」

勇者「はい、賢者さま!」

サチ「みんな無事でなによりだわ。」

アリマ君「キー!」

矢内「よし、先に進むぞ!」

畑中「待て!矢内、さっきのは何だよ!何で両手から火が出てきた!」

矢内「俺の魔法だよ。」

畑中「は?魔法?」

矢内「そうだよ。」

畑中「矢内、お前…。魔法に自分の名前ってww!ハッハー!必殺!ヤナイフレイム!ってww!ハッハーww!ダセー!名前のセンスww!ハッハー!腹痛えー!ハッハーww!」

矢内「新種の昆虫とかが発見された時だって発見者の名前が入っているだろ、何が可笑しい!」

畑中「ハッハーwwお前、魔法と昆虫を一緒にするなよww!ハッハー!腹痛えーww!」

 

一生懸命考えたんだぞ!山田が俺が燃やしたサンドワームの所で何かしている。

 

山田「や、矢内ww。この辺りをもう少し焼いてくれ、その、ククww必殺!ヤナイフレイム!でww。」

矢内「馬鹿にするな!」

山田「良いから焼いてくれ、その魔法のヤナイフレイムでww。」

矢内「焼いたらいいのだろ!必殺!ヤナイフレイム!」ゴオオォォォォォ!!

畑中「ハッハーww」

 

俺はもう一度、サンドワームの体に火をつけた。

 

山田「ククッwwヤナイフレイムはもういいぞ。丁度いい焼き加減だ。」

矢内「山田、何をしているんだ?」

山田「みみずの肉を切り分けている。」

サチ「まさか、それを食べるつもりなのかしら…。」

山田「みみずの肉は一般的に食する物だぞ。私達の世界のハンバーグレストランでは皆、みみずの肉を使っている。」

勇者「山田さんはいろんな事を知っているのですねぇ。」

 

そんな訳あるか!全国のファミレス店に土下座して謝れ!

 

畑中「矢内…。山田さんって知れば知るほど残念だな…。」

矢内「お前、知らなかったのか?」

畑中「ああ…。本当に残念だ。」

矢内「山田、そんなの泥臭くて食える訳ないだろ…。」

山田「何を言う。お前達もファミレスで食べてるだろう?」

畑中「食うわけ無いだろ、ハッハーww」

矢内「そんなのは都市伝説だ。大体みみずを食用にする位なら普通に牛肉を使う方がコストは安いんだ。店とかでみみずなんか使わない。さっさとそれを捨てて行くぞ。」

山田「聞き捨てならんな。みみずはただで手に入るのだぞ。さっき、味見をしたが普通のみみずより断然に美味かった。泥臭さが全く無いんだ。」

矢内「普通の人はみみずなんか食わない。さっさと捨てろ!」

山田「私は小さい頃から食べていたんだよ!」

矢内「お前だけだよ!」

サチ「いい年した大人が下らない事で言い争わないで。山田もそれを捨てて、そんなもの食べる人はどの世界にもいないわ。さぁ早く行きましょう!」

矢内「ああ…。そうだな。」

山田「待て!お前達、一度、味見をしてみろ。味は私が保証する。矢内の娘、お前からも言ってやれ。」

勇者「賢者さま、美味しかったですよ。食べてみて下さい。」

矢内「絶対に断る!行くぞ、日が暮れると厄介だ。」

 

俺達は喚く山田を相手にするのは止めて砂漠を歩き始めた。ってか勇者よ。何でも口に入れるのは止めろ。

 

 

 

 

日が暮れてきた。昼間の暑さとは打って変わって冷えてきた。今日はここまでにして明日に備えるか。

 

矢内「今日はここでテントをはって明日に備えよう。」

サチ「そうね。この辺りに結界をはっておくわ。」

畑中「結界?」

サチ「ええ、寝ている間に魔物とかに襲われないようにするのよ。黒魔術『ダークネスフィールド ディ タライ』」

畑中「なんだそりゃ?」

サチ「口で説明するより見た方が早いわ。今、テントを張る準備をしている賢者さんと山田を侵入者と見なして今から攻撃するわ。」

 

俺は山田に手伝ってもらいながらテントを張っている。

 

矢内「山田、そっちを抑えてくれ。」

山田「矢内、もっと簡単なテントは無かったのか?」

矢内「簡易の奴は小さいんだ。大きい奴の方がいい。」

山田「矢内、そっちは止まった…」ガン!

矢内「山田、何を倒れて…」ガン!

 

痛!何か頭上に落ちてきた!

 

山田「いきなり頭上にタライが落ちてきた。」ガン!

矢内「はぁ?」ガン!

 

まただ!痛え!しかもけっこう大きいタライだ。

 

山田「ま、まただ…。」

矢内「痛え…。何なんだよ!」

勇者「賢者さま、大丈夫ですか?」

矢内「勇者、気をつけろ。頭上からタライが落ちてくる。」

 

何が起こっている?

 

畑中「さっちゃん、あんなタライじゃ侵入者は防げないぞ。」

サチ「変ね。威力は抑えているけど大体は一発で気絶する位の魔力なのに…。」

畑中「じゃあ何で矢内達は平気なんだ?」

サチ「あの二人、魔力が強いのかしら?最大威力でやるわ。」

 

クソっ!何処から攻撃してきてるんだ?

 

山田「矢内、あの娘と畑中が怪しい。」

矢内「サチか?」

山田「ああ、あの娘、何か魔法陣を書いていただろ?」

矢内「ああ、そう言えば結界を張るって言ってたな。アイツ、俺達を実験台にしているな。」

山田「捕まえるぞ。」ガン!

矢内「ああ!」ガン!

 

また、俺達の頭上にタライが落ちてきた!かなり大きいタライだ。めちゃくちゃ痛え!

 

矢内「サチ!お前の仕業か!クソっ!痛え!」ガン!

畑中「さっちゃん、バレたぞ。」

サチ「不味いわね…。魔力が尽きるまでタライを落とし続けて気絶させるしかないわね。」

山田「貴様!私に何の恨みが…。」ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!

 

山田にタライが容赦なく落ちてきた。山田は耐えきれず気絶した。

 

矢内「山田!」ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!

 

俺の頭上にも大量のタライが落ちてきた。俺は力尽きた。

 

サチ「危なかったわね…。まさかバレるとは思わなかったわ。畑中、賢者さん達が目を覚ましたら何事も無かった様に振る舞うのよ。」

畑中「素直に謝れよ。」

サチ「駄目よ。そんなことしたら私の夕食が無しになってしまうわ。」

畑中「自業自得じゃねぇか!ハッハーww!」

 

 

 

 

少しして、俺は目を覚ました。

 

勇者「賢者さま、大丈夫ですか?」

矢内「ああ、酷い目にあった。もうすっかり夜になっているな。砂漠の夜は冷えるからすぐに火をおこすぞ。」

エリカ「分かった。」

アリマ君「キー!」

 

旅も慣れてきたせいか、たき火をつけるのも早い。

 

矢内「直ぐに飯にするから火にあたって体を暖めてるんだぞ。」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「畑中、少し手伝ってくれ。」

畑中「おう、何をすればいい?」

矢内「六人分のヒレカツを揚げてくれ。」

畑中「ハッハーww!任せろ!」

矢内「それはそうと畑中、サチの奴はどうした?」

畑中「ああ、山田さんに説教されてる。」

矢内「そうか、アイツにはいい薬になるだろう。よし、いい感じに仕上がった。できたぞ。畑中、ここに揚げたヒレカツを乗せてくれ。」

畑中「トルコライスか!」

矢内「ああ、明日も砂漠を歩くからスタミナをつけないといけないからな。」

 

ワンプレートにオムライス、紫蘇のパスタ、揚げ物、サラダが乗った矢内流トルコライスだ。

 

矢内「出来たぞ!勇者、山田を呼んでくれ。」

勇者「はい!山田さん、ご飯ですよー!」

山田「分かった。直ぐに行く。」

サチ「ご飯の時間ね。直ぐに行くわ。」

山田「待て!まだ話は終わっていない!座れ!」

サチ「散々謝ったじゃない…。もう良いでしょ…。」

山田「そういう態度が良くない。座れ!」

矢内「山田、もうそれぐらいで良いだろ。こっちに来い。折角の飯が冷めてしまう、みんな待っているんだ。」

山田「分かった。」

サチ「流石は賢者さん、助かったわ。」

 

みんなが集まった。

 

勇者「賢者さま、今日は凄いですねぇ。」

矢内「ああ、今日は矢内流トルコライスだ。」

エリカ「凄い、早く食べようよ!」

アリマ君「キー!」

サチ「あの、賢者さん?私の分は?」

矢内「さぁ、食べよう!」イタダキマス!

サチ「賢者さん?ちょっと、無視しないで!私の分は?」

矢内「ああ、今日と明日はお前の分は無いからな。」

サチ「え?そんな…。」

畑中「さっちゃん、ちゃんと謝らないからだぞ。ハッハーww!」

 

サチが絶望した顔をしている。

 

サチ「仕方ないわね。魔力が尽き欠けているけどあれをやるしかないわね。ハァァァァァ!」

 

サチが黒魔術でドアを出した。お前の考えはお見通しだ。俺はサチより先にドアを蹴りあげた。

 

サチ「あっ!賢者さん!最後の魔力でドアを出したのに!」

矢内「お前の考えはお見通しだ。少しは反省しろ!」

サチ「そんな…。あんまりよ…。」

 

勇者「美味しいですねぇ。」

エリカ「アリマ君、美味しいね。」

アリマ君「キー!」

畑中「この1つ目の魔物、何でも食うんだな。スプーンとかも器用に使っているな。」

矢内「ああ、アリマ君は優秀だぞ。頭も良いし力もあるし、ペットのエリカの面倒もちゃんと見てるしな。」

畑中「立場逆になってるじゃねぇか。」

矢内「しょうがないだろ。事実だから。」

山田「けっこう量があるな…。」

勇者「そうですね。」

サチ「残すのなら私が変わりに食べてあげるわ。」

山田「ゴスロリ娘、少しは反省しろ。それともまだ説教が足りないのか?」

サチ「お説教は懲り懲りよ…。」

 

サチの奴が俺達の食うトルコライスをガン見してくる。食いづらい。

 

エリカ「サチ、あたしのサラダだけならあげるけど…。」

矢内「エリカ、嫌いな野菜を残すな。」

エリカ「嫌いじゃないけど、サチが可哀想じゃんか。」

サチ「エリカさんは何処かの中二病の気違いと違って優しいわね。」

矢内「山田、サチの奴が反省してないから食事が終わったらまた説教してやってくれ。」

山田「ああ…。」

畑中「かー!さっちゃん、ちゃんと謝らないからだぞ。少しは反省しろよ。」

サチ「あっ!私は畑中に黒魔術の説明をするために仕方なくしたのよ。私は悪くないわ。だから畑中、そのご飯は私がいただくわ。」

 

この女は反省するって事をしないのか。

 

勇者「さっちん、必死ですねぇ…。」

山田「あー!鬱陶しい!私の食料を分けてやるから喚くな!これを食ってろ!」

 

山田はさっき倒したみみずの肉を差し出した。

 

サチ「ちょっと、これって…。」

勇者「さっちん、良かったですねぇ。」

サチ「良くないわよ!これって、さっきのみみずじゃない!」

山田「そうだ。ありがたく食え。」

矢内「ハハハ!良かったなぁ、サチ。残さず食えよ。」

サチ「そんな…。あんまりよ。酷すぎる…。これじゃ何のためにこんな面倒臭い旅をしているのか分からないわ…。」

 

それ食って反省しろ!

 

サチ「これを食べるの?」

矢内「早くたべろよ。」

 

サチが恐る恐るみみずを口に入れる。

 

サチ「………。あら?意外といけるわね。」

 

マジかよ…。

 

山田「味は私が保証すると言っただろ。」

 

食の事でお前に保証されても信用できるか。

 

サチ「うん、なかなか美味しいわね。」

エリカ「えー。」

サチ「あら?エリカさん、嘘だと思うなら食べてみる?そのご飯と交換しても良いわよ。」

エリカ「あたしはこっちがいい。」

サチ「しょうがないわね。ゆうりん?」

勇者「わたしはさっき食べたのでこっちがいいです。」

サチ「畑中、良かったら…。」

矢内「いい加減にしろ!それを食わして貰えるだけ山田に感謝しろ!」

山田「口に合わないならしょうがないな。回収しよう。返せ。」

サチ「食べるわよ。一度もらった物は私の物よ!食べれば良いのでしょ!」

矢内「だったら文句を言うな!食べたらテントに入って直ぐに寝るぞ。明日も砂漠を歩くんだ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

食事を終え、俺達はテントの中に入り、明日に備えて早々と寝る事にした。

 

畑中「さっちゃん!」

サチ「何かしら?畑中、貴方もお説教をするつもりかしら?」

畑中「ちゃんと矢内達に謝るんだ。」

サチ「分かったわ…。明日に謝るわ…。」

畑中「明日じゃ駄目だ。」

サチ「でも…。賢者さん、凄く怒ってるわ。」

畑中「矢内には、俺からも言っておくからちゃんと二人に謝るんだ。」

サチ「分かったわ…。山田には今から謝る…。賢者さんには明日に謝る…。」

畑中「それでいいか。絶対に謝るんだぞ。」

サチ「分かったわ…。」

 

それぞれテントの中に入り、明日に備えて眠りについた。

 

 

 

 

「た、助けてくれー!」

 

ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!大きなタライが落ちた音と共に夜があけた。



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砂漠の国へ進む道 2

畑中「矢内、何の音だ?」

矢内「気をつけろ、外で音がした。一度出るぞ。」

 

俺と畑中は恐る恐るテントの外に出た。

 

勇者「賢者さま、おはようございます。」

エリカ「賢者、おはよう!」

アリマ君「キー!」

 

こいつら…。あんなデカイ音がしたのに呑気だな。

 

サチ「賢者さん…。昨日はごめんなさい…。」

矢内「サチ、それはもういい。それより、気をつけろ。何か危険が近づいている、デカイ音がした。」

サチ「ああ、それね。昨日、張った結界にそこに倒れている連中がかかったのよ。どうやら昨日、私達が倒したみみずに遭遇してこっちに逃げてきたのよ。」

矢内「昨日のサンドワームか。大丈夫なのか?」

サチ「ええ。みみずは結界にかかって気絶しているわ。今、山田が解体している。」

矢内「そうか。取りあえずこの四人を俺達が寝ていたテントに運ぼう。畑中、手伝ってくれ。」

畑中「おう!所で誰だ、この連中?」

矢内「さぁ。格好からして何処かの国から来た勇者の一行だろう。」

畑中「あー。初めてまともな格好の勇者一行を見たな。」

矢内「ああ、俺もだ。ラーメン屋に平安貴族に調子こいた王様だったもんなぁ。」

サチ「賢者さん、早く運びましょう。」

 

俺達は取りあえず勇者、戦士、僧侶、魔法使いであろう格好をした四人をテントの中に運んだ。

 

「あれ?ここは?」

 

勇者の格好をした男が目を覚ました。

 

矢内「大丈夫か?いきなり倒れていたからびっくりしたぞ。」

「みんなは、俺の仲間は無事か?」

矢内「ああ、まだ目を覚ましていないが無事だ。」

「すまない。おい、みんな!起きろ!」

 

勇者の格好をした男が仲間を揺さぶって起こす。

 

「あ、あれ?アレス?ここは?」

アレス「ああ、リリー。この人達が俺達を助けてくれたんだ。」

 

アレスと呼ばれた勇者の格好の男がリリーという魔法使いの格好の女に答える。

 

「ううーん。」

「こ、ここは?」

 

戦士の男と僧侶の格好をした女が目を覚ました。ドラクエ3の典型的なパーティだ。俺達と大違いだ。

 

アレス「改めて助けてくれてわりぃな。俺の名はアレス。この先の砂漠の国の神様から天啓を受けた勇者だ。幼なじみの魔法使いリリーと砂漠の国の教会から派遣された僧侶のマナ、後は砂漠の城の戦士のガリアスだ。」

矢内「これはこれは。勇者様でありましたか。勇者様御一行とは知らずにこんな所で申し訳ございません。」

 

砂漠の国の勇者。俺が探している神、ビーナスに所縁のあるかもしれないな。探りを入れる為に偽名を使おう。

 

リリー「所であなた方は?」

矢内「ああ、自己紹介が遅れて申し訳ない。俺は遥か彼方遠い国、ジャポネリアから来た貴族、ヤナウィス ヴィ ブリタニア。隣に居るのは友人のハタティウスと女中のサチコだ。」

サチ「はぁ?」

矢内「話を合わせろ。」ヒソヒソ

 

俺は小声で畑中とサチに話を合わせるよう言った。

 

畑中(ヤナウィス ヴィ ブリタニアって両方名字じゃねぇか!)

ガリアス「女中、主に対して口の聞き方がなっていないな。」

サチ「こいつ…。」

矢内「ハハハ!ガリアス殿、女中と言っても俺にとっては友人のような存在だ。言葉使いも自由にさせている。」

リリー「貴族様なのに砕けた方なのね。」

矢内「ハハハ!貴族って言っても俺は道楽貴族の四男棒だ。畏まらなくて構わない。砕けた方がお互い話をしやすいからな。」

畑中(貧乏旗本の三男棒みたいに言うなよ…。暴れん坊将軍かよ…。)

サチ(よく、堂々とぺらぺら嘘がつけるわね…。)

アレス「そうか。ヤナウィス、俺の事も勇者様なんかじゃなくてアレスでいいぜ!」

矢内「そうか、アレス。所でアレス達は何処に向かっているんだ?」

アレス「ああ、俺達は国王の勅命を受けてな、魔王を倒す前に異世界から来た賢者とかいうペテン師野郎をやっつけに行く所なんだ。」

畑中「異世界から来た…。(矢内の事か。)」

サチ「賢者…。(賢者さん、今度は何をしでかしたのかしら…。)」

ガリアス「ああ、その賢者は国を1つ滅ぼし、勇者の兜を奪い取りエルフを拐って余所の国の貴族に売り飛ばしているって話だ。」

サチ「エルフ?どういうことかしら?」

ガリアス「女中、私はヤナウィス卿と同じ貴族だ。口の聞き方に気をつけろ!」

矢内「ガリアス殿、では同じ貴族の俺から質問させてくれ、我々はエルフは人間には凶暴な種族と聞いているが捕まえて貴族に売り飛ばすなんて事が出来るのか?」

ガリアス「エルフの国は同盟国でな、私は陛下から聞いた情報だ。」

マナ「異世界から来た賢者は勇者の兜を奪うために国を滅ぼした男ですわ。エルフを捕まえる事ぐらい訳ないと思われますわ。」

 

エルフの国王、俺に罪を擦り付けたか。エルフの国王と砂漠の国が繋がっているか。やっかいだな。もう少し情報が欲しいな。

 

矢内「マナって言ったか?」

マナ「はい?」

矢内「賢者って男は国を滅ぼしたって言うのは本当の事なのか?」

マナ「え、ええ。教会に神様からのお告げが有りまして…。」

矢内「神様?名前は分かるか?」

マナ「私達の国はビーナス様の使者クロノス様のご加護があります。そこのアレスはクロノス様から天啓を受けた勇者ですわ。」

矢内「そうか。」

 

ビンゴだ。ビーナスの使者、ついに見つけた。後は砂漠の国に入るだけだ。

 

リリー「ねぇ。あんた、さっきから色々根掘り葉掘り聞いてくるけど、どうしてなの?」

ガリアス「貴様!平民の癖にヤナウィス卿に何て口の聞き方だ!」

矢内「ガリアス殿、俺は構わないと言った筈だが?」

ガリアス「しかし…。こういう事はちゃんとしないと貴族としての示しが…。」

矢内「貴方の国では知らないけど俺の国では貴族だからって別に偉い訳じゃないんだ。話が反れたな。リリーだったか。質問に答えるよ。」

リリー「ええ、同じ貴族なのに国が違うだけで全然違うのね。」

矢内「俺達は砂漠の国に行く所でな。俺達の一行はそこのサチコを含めて女性もいる。だから賢者なんて危険人物もし出会った時に対策を立てときたいだけだ。」

ガリアス「ヤナウィス卿はどうして砂漠の国へ?」

矢内「なーに、貴族の道楽ってやつですよ。ハハハ!」

アレス「ハハハ!貴族なのに面白い奴だな!よし、俺達が砂漠の国まで案内してやるよ!」

畑中「ハッハーww!ありがてえ!」

矢内「しかし、良いのか?一度引き返すことになるが…。」

アレス「ハハハ!構わないさ!俺達が一緒だと通行料がいらないからな。」

矢内「何から何まですまないな。サチコよ、外にいる者達に出発の準備をするように言ってくれ。」

サチ「分かったわ。ヤナウィス卿。」

 

サチがテントから出て行った。

 

 

 

 

勇者「あっ!さっちんが出て来ました。」

サチ「みんな、ちょっと良いかしら?」

山田「なんだ?」

エリカ「なにー?」

 

さっちんがお話あるみたいなのでみんな集まりました。

 

サチ「これから、砂漠の国に出発するわ。今、テントの中にいる四人組が案内してくれる。」

山田「そうか、それは助かる。」

サチ「でもその四人組、勇者一行なのだけど砂漠の国の王様から命じられて賢者さんの抹殺するつもりなのよ。」

山田「ゴスロリ娘よ。話が矛盾しているぞ。」

サチ「賢者さん達は自分達を異国の貴族という設定にして振る舞っているわ。」

山田「要するに矢内と畑中は嘘をついて奴等から情報を聞き出したのだな。」

サチ「ええ、その流れで向こうの勇者に気に入られて砂漠の国まで案内してくれることになったのよ。」

山田「所で矢内はどういう偽名を使っている?それを聞いておかないと彼奴を呼ぶときに困る。」

サチ「ええ、ヤナウィス ヴィ ブリタニアよ。」

山田「なんだ…。その中二病全快のネーミングセンスは。しかも、両方名字…。彼奴は馬鹿なのか?」

サチ「それはおいといて、だからみんな、絶対に賢者って名前は口にしたら駄目よ。」

勇者「分かりました。賢者さまー!準備が」

サチ「黒魔術『お口チャック!』」

勇者「んー!んー!」

サチ「ゆうりん、今言ったばっかりよね。後、エリカさん、あなたは砂漠の国につくまで一言も喋らないでね。」

エリカ「えっ、なんでー!それより賢者達を呼んで早く行こうよ。」

サチ「いい、エリカさん?あの勇者一行の四人組がいる間は賢者って名前は口にしたらいけないの。あなた、うっかり口に出すでしょ?だからしばらく喋らないでね。分かった?」

エリカ「分かった。」

サチ「アリマ君、ちゃんとエリカさんの面倒を見るのよ。」

アリマ君「キー!」

山田「お前、苦労しているのだな…。」

サチ「ええ、でも毎日楽しくやっているわ。それに今回はあなたと畑中もいるから少しは楽させてもらっているわ。」

山田「そうか。」

サチ「ええ、私はそろそろヤナウィス卿を呼んでくるわ。」

山田「ヤナウィス卿?彼奴に敬語を使わないといけないのか?」

サチ「ええ、私達はヤナウィス卿の女中という設定よ。」

山田「なんたる屈辱だ。私達は彼奴から離れて後ろから歩こう。あの二人がうっかり口を滑らせても離れていたら聞こえないかもしれないからな。」

サチ「ええ。」

 

 

 

しばらく、砂漠の国の勇者一行と話込んでいるとサチが戻ってきた。

 

サチ「けん…。じゃなった、ヤナウィス卿。準備ができたわ。」

矢内「そうか、すまないな。皆にだけ準備をさせて。」

アレス「それじゃあ、砂漠の国までは俺達が案内するぜ!」

畑中「ハッハーww!すまないな。」

 

俺達は砂漠の国へ向かい歩き始めた。

 

矢内「所で、砂漠の国に着くまで、あとどれぐらいかかるんだ?」

アレス「ああ、半日程だ。それにしてもヤナウィス、お前の仲間はハタティウス以外みんな女なんだな。」

矢内「ああ。だから苦労することも多いんだ。」

リリー「そう言えば、私達が探している賢者一行も確か仲間は女ばっかりよね。」

 

リリーって女、俺達を疑っているかもしれないな。話題を変えよう。

 

矢内「そう言えば、リリーはアレスとは幼なじみなんだよな。」

リリー「ええ、そうよ。」

矢内「恋人同士なのか?」

アレス「そ、そんなんじゃねぇよ!」

リリー「そ、そうよ!アレスに付いて旅に出てくれる人が誰もいなかったから仕方なく私が付いて行く事にしたのよ!へ、変な事を言わないでよ!」

畑中「仕方なくって、あの二人も旅に付いて行ってくれてるじゃねぇか!ハッハーww!」

アレス「ああ、あの二人は俺達が砂漠の国の城に着いてから王様の命令で付いて来たんだ。」

リリー「あの二人、自分達が身分が高いからって私達に対してすっごい偉そうにするのよ。」

アレス「そう言うなよ。旅に付いて来てくれるだけ感謝しねえと…。」

リリー「だってあの二人、昨日魔物が出てきた時に私達を置いて真っ先に逃げようとしたじゃない!それなのにあの偉そうな態度、冗談じゃないわよ。」

畑中「それより魔物に襲われた?」

アレス「ああ、サンドワームだ。」

 

ああ、今朝山田が解体していた奴だな。所で山田達は…。あのガリアスとかいう貴族の戦士に絡まれてる。少し行くか。

 

矢内「リリー、ご立腹の様だから俺が代わりにあのガリアスって奴を懲らしめてやろうか?」

リリー「えっ?何をするつもりなの?」

矢内「今、1番舐めた口を聞いてはいけない俺の仲間に絡んでいるからちょっと脅しをかける。」

リリー「あの褐色の肌の美人の人?」

矢内「美人ではないがそうだ。止めないと大変な事になるからちょっと行ってくる。」

 

そう言って俺は山田達がいる後方に行った。

 

 

 

ガリアス「お前達も全員ヤナウィス卿の女中か?」

サチ「え、ええ。」

マナ「まぁ、こんな小さな子も女中ですのね。同情致しますわ。」

山田「…。お前の同情などは不要だ。皆、先は長いから水分補給はしっかりするのだぞ。」

勇者「はい。」

エリカ「分かった。」

 

マナ「この教会から派遣されたこのわたくしに対して…。お前だなんて…。なんて無礼な女…。」

 

男の人が山田さんに近づいて来ました。

 

ガリアス「お前、なかなかの美人だな。どうだ?ヤナウィス卿の女中など止めて俺の妾にしてやろうか?」

山田「お前は口の聞き方を知らないみたいだな。年上の者には敬語を使え。」

ガリアス「なっ!貴様!私は砂漠の国の王様からの恩恵を受けている由緒正しい貴族だぞ!」

山田「それがどうした!貴様はそんな肩書きがないと女一人も口説けないのか小僧!」

ガリアス「貴様ー!」

 

大変です。男の人が剣を抜こうとしています。

 

山田「ほう?今度はそのナマクラ刀で脅すつもりか?つくづく話の仕方を知らないガキだな。失せろ!」

ガリアス「もう許さん!叩き切ってやる!」

 

男の人が剣を抜いてしまいました!

 

矢内「ガリアス殿、その剣を抜いたって事は俺達と戦うって事でいいのだな?」

ガリアス「ヤナウィス卿、この無礼な女を切り捨てるだけです。」

矢内「エリカ、ソイツの剣を弾き飛ばせ。」

エリカ「分かった!」ガキーン!

ガリアス「ぐわっ!剣が!」

 

賢者さまの一声でエリカにゃんの剣が男の人の剣を弾き飛ばしました。

 

ガリアス「くっ!剣が飛ばされて…。」

矢内「待てよ。ガリアス殿。」

ガリアス「ヤナウィス卿!貴方は女中にどういう教育をしているのだ!」

矢内「黙れ。先程のやり取りは始めから見ている。どう見てもお前に非があったがな。」

ガリアス「私は貴族だ。それなのに…。」

矢内「貴族の肩書きがないと何もできない糞餓鬼が、次に俺の仲間に偉そうにしてみろ。俺の魔法で焼き殺すぞ!」

 

賢者さまの右の手のひらから火の玉が出ました。

 

ガリアス「ひ、ひぃぃ!すまなかった!許してくれ!」

矢内「謝る相手は俺じゃないだろ!」

ガリアス「ひぃぃ!許してくれ!」

山田「もういい。行け!」

ガリアス「ひぃぃ!」

 

男の人は前にいる仲間のお二人の所に行きました。

 

マナ「そんな…。呪文も無しで魔法を使った…。ありえない…。」

矢内「マナだったか?」

マナ「ひッ!わ、わたくしは何も…。アレス、助けてー!」

 

女の人も何故か走って前に行ってしまいました…。

 

 

 

 

矢内「山田、怒るなよ。アイツ、泣きそうになってたじゃねぇか。」

山田「最後はお前の仕業だろ。私は正論を言ったまでだ。」

サチ「所であの男、あれで許すつもりなのかしら?」

矢内「それは砂漠の国に入るまで我慢しろよ。ここで揉め事を起こしたくないからな。」

サチ「仕方ないわね…。」

矢内「そうだ、勇者にエリカ、サチからも聞いていると思うが俺は偽名を使っているからくれぐれも俺の事を賢者って呼ぶなよ。」

勇者「分かりました。けん…。」

サチ「黒魔術『お口チャック!』」

勇者「ん!んー!」

サチ「もう、言ってるそばから!」

エリカ「なー、けん…。」

サチ「黒魔術『お口チャック!』」

エリカ「んー!んー!」

矢内「サチ、苦労かけてすまんな。今日は晩飯のおかず、みんなより1つ多く作ってやる。」

サチ「ありがたいわ。あっ、ヤナウィス卿、魔法使いの女がこっちにくるわ。」

 

リリーが嬉しそうにこっちに来た。

 

リリー「ヤナウィス!凄かったわ!アイツらビクビク怯えてるのよ!可笑しいったらありゃしない!スカッとしたわ。」

矢内「ちょっとは気が晴れたか?」

リリー「ガリアスなんかボロボロ泣いてるのよ!マナは何かブツブツ言ってるし。もう最高の気分よ!」

山田「感心しないな。お前は仮にも仲間であろう。」

リリー「あっ!美人のおねぇさん!あのガリアスに口で言い負かせるなんて滅茶苦茶カッコ良かったわ!」

山田「私は正論を言ったまでだ。」

矢内「お前、美人って言われて否定しないのだな。身の程を知れよ。」

山田「黙れヤナウィス!」

リリー「カッコいいー!ヤナウィスに対しても一言ビシッと黙れ!って!美人だから余計にカッコ良く聞こえるわー!」

山田「そ、そうか?」

矢内「それより、リリー。まだ砂漠の国には着かないのか?」

リリー「後、2、30分位よ。」

矢内「そうか。リリー、後、少しだけど水分補給はちゃんとしているのか?」

リリー「お水ならハタティウスが私とアレスに変わった水筒ごともらったわ!透明でこんな軽い水筒、初めて見るわ!」

 

畑中の奴、ペットボトルごと渡したのか。興奮気味のリリーを相手にしながら砂漠を歩き続けた。

 

アレス「ヤナウィスー!着いたぞー!」

 

ここが砂漠の国か…。国に入る関所もでけぇ。ファンタルジニアの国と大違いだ。アレスが通行証を関所にいる門番に見せている。

 

アレス「ヤナウィス達は俺の友人なんだ。一緒に通してくれ。」

「はっ!勇者アレス様!」

矢内「よし、みんな!早く通るんだ。」

 

俺達は怪しまれる前に関所を駆け抜けた。

 

畑中「長かったな!」

矢内「ああ、やっとだ!」

 

いろんな事があった。たくさんの人に出会った。危険な目にもあった。そして、ようやくたどり着いた!砂漠の国の城下町に入った。

 

矢内「アレス、ありがとう。世話になった!」

アレス「気にするなよ、ヤナウィス!困った時はお互い様だぜ。またな。」

矢内「ああ!」

 

さて、ここからが大変だ。まずは情報収集だな。手探りでいくしかないか。

 

エリカ「賢者ー!何してるんだよー!早く行こうよー!」

リリー「えっ?」

アレス「えっ?」

ガリアス「何?賢者だと?」

マナ「賢者?まさか?」

 

あの馬鹿!

 

エリカ「賢者ー!早くー!あたしお腹すいたよー!」

サチ「このおバカー!あれだけ賢者って言うなって言ったでしょー!」

リリー「そんな…。ヤナウィス…。私達を騙していたの?」

 

不味いバレた!どうする?

 

 

 

第11話

砂漠の道に続く道

E N D



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砂漠の国
愛の戦士 スコールマン 1


アレス「まさか?お前、俺達を騙したのか?」

矢内「違うな、間違っているぞアレス。俺達が騙したのではない。お前たちが勝手に騙されたのだ。」

サチ「子供でももう少しましな屁理屈を言うわよ…。」

アレス「クソー!テメエ、とんだペテン師野郎じゃねぇか!俺達を騙しやがって!」

矢内「俺達が悪いのではなく騙されたお前達が悪いのだ。」

リリー「酷い…。全部嘘だったの?」

矢内「遠くから来たって事は本当だ。」

畑中「ハッハーww!そこだけじゃねぇか!本当の事は!」

ガリアス「なっ!貴様!貴族ではなかったのか!平民がよくも馴れ馴れしくしてくれたな!」

山田「平民と言うより矢内は愚民だな。」

矢内「黙れ、貧乏人!」

エリカ「アイツら、何を怒ってるんだろう?」

 

お前が俺の存在をばらしたからこうなったんだよ。

 

矢内「まあいい。こんな奴等はほっといて今日の宿を探すか。」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「あっ、そうだ。サチ、今日の晩飯はエリカと1つ目からおかずを1つ取っていいぞ。」

サチ「ええ、そうさせてもらうわ。」

アリマ君「キー!キー!(何で!僕は関係ないよ!)」

矢内「いいか、1つ目。エリカの飼い主はお前だろ。連帯責任だ。」

アリマ君「キー…(あんまりだ、僕はバレないように空高く飛んでいたのに…。)」

マナ「ま、魔物が!」

エリカ「アリマ君はあたしの友達だぞ。魔物とか言うなよ!」

矢内「エリカ、そんな奴等相手にするな。さあ、行くか!」

アレス「行かせる訳ないだろ!」

 

やはり、戦わないといけないか…。

 

マナ「貴方達を見過ごす訳にはいきませんわ!」

アレス「ペテン師野郎!覚悟しろ!」

リリー「そうよ!人を騙すような奴は許せないわよ!」

矢内「アレス、どうしても戦うのか?」

アレス「なんだ、怖じ気づいたのかペテン師野郎!」

矢内「お前とリリーはいい奴だ。出来たら戦いたくない。」

アレス「な、何を言って…。」

マナ「アレス、賢者の口車に乗ってはいけません。賢者を倒し勇者の兜を手に入れるのです。」

アレス「そうだ、勇者の兜だ!お前を倒して手に入れてやるぜ!」

矢内「勇者の兜?ああ、あれな!この前、会社で鉄屑をスクラップに出す時に一緒に出した。」

勇者「えっ?」

サチ「はぁ?」

エリカ「えっ?」

山田「はぁ?捨てたのか?そんな大事な物を?」

畑中「ハッハーww!お前、捨てるなよww!」

リリー「えっ?今、なんて言ったの?」

マナ「捨てた?」

矢内「違うな、間違っているぞ!捨てたのではない!二束三文で売ったのだ!」

サチ「賢者さん…、馬鹿なの?」

アレス「お前!何考えているんだよ!そんな大事な物を!頭おかしいのか!」

マナ「なんということでしょう。そんな…。」

矢内「もういいか?じゃあ俺達は行くからな。」

アレス「だから行かせるか!お前、俺達を舐めてるだろ!」

 

アレス「みんな、戦うぞ!」

矢内「仕方ない。お前達、来るぞ!」

勇者「はい!」

エリカ「勇者、駄目だ。」

矢内「エリカ、どうした?」

エリカ「アイツらスゲー弱いから本気で戦ったら駄目だよ。」

アレス「馬鹿にするな!」

リリー「そうよ!こっちは魔法だって使えるのよ!」

ガリアス「アレス、私はこの事を国王に報告してくる。後は任せる。」

サチ「あら?貴族のお坊ちゃん。散々偉そうな態度をとっておいて逃げるのかしら?」

ガリアス「何?」

山田「どうせ貴族や王様とかの後ろ楯がないと何も出来ない小僧だ。相手にするな。」

ガリアス「私を侮辱するのか!貴様ら!絶対に許さん!」

 

ガリアスが剣を抜いた。

 

サチ「賢者さん、アイツは私にやらせてもらえるかしら。」

矢内「いや、俺がやる。アイツは徹底的に痛めつけないと駄目だからな。」

山田「待て、私にやらせろ。あの小僧は口の聞き方から叩き直してやる。」

エリカ「駄目だよ!アイツが1番弱いから戦ったら駄目だよ!」

ガリアス「貴様らー!この貴族の私を馬鹿にするなー!」

山田「馬鹿にしているのではない。大体貴族だからといっても他の国々ではなんの意味もない。それが分からないお前は世間知らずの大馬鹿者なだけだ。後、年上の者には敬語を使え。」

ガリアス「殺す!女、顔が良いからって図に乗るな!」

 

ガリアスが山田に向かって突進してきた。

 

山田「矢内、ゴスロリ娘、残念だったな。アイツは私の相手だ。」

サチ「賢者さん、山田は大丈夫なのかしら?」

矢内「馬鹿言うな。山田は合気道の達人だ。本気で怒らせたらエリカより強いぞ。」

畑中「矢内、そのわりには山田さんを怒らせてるじゃねぇか。」

矢内「俺は本気で怒らせる一歩手前でおちょくってるだけだ。」

 

ガリアスが山田に斬りかかる!

 

勇者「山田さんに何をするのですか、たー!」ガキン!

ガリアス「ぐわっ!」

 

勇者がガリアスの剣を手斧で受け止めガリアスごと吹き飛ばす!

 

勇者「山田さん、大丈夫ですか?」

山田「ああ、あんな小僧は私一人で大丈夫だったがな。しかし矢内の娘、心遣いは感謝する。」

 

そう言うと山田は吹き飛ばされて倒れたガリアスの腕を取り関節技を仕掛ける。

 

ガリアス「ぎゃぁぁ!痛い!放せ!」

山田「小僧、口の聞き方が分かっていないようだな。」

 

山田が掴んだガリアスの腕に力を入れる。ガリアスの腕がミシミシいっている。

 

ガリアス「ぎゃぁぁぁぁ!放せ!放してください!」

山田「まあ、良いだろう。ふん!」ゴキ!

ガリアス「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

山田「小僧、お前のお望みどうり放してやったぞ。ただし、離したのはお前の腕の関節だがな。」

ガリアス「ぎゃぁぁぁぁ!何故…私が…こんな目に…。」

マナ「そんな…。ガリアスが…。」

アレス「ガリアスがやられた!リリー、行くぞ!」

リリー「分かってる!風を司る聖霊…」

サチ「あら?そんな長ったらしい呪文をいちいち唱えていると隙だらけよ。黒魔術『お口チャック。』」

 

サチがリリーに近づき黒魔術を放つ。

 

リリー「ん!んー!」

サチ「大人しくしてなさい。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

リリー「んー!んー!(体が動けない!何よこれ?)」

マナ「なに今の?また呪文を唱えないで魔法を…。」

アレス「リリー!女!リリーに何をした!」

サチ「少し大人しくしてもらっただけよ。害はないわ。安心しなさい。」

アレス「リリー!この女を倒して直ぐに魔法を解いてやるからな。」

 

アレスが剣を抜きサチに斬りかかる。しかし、エリカがアレスの剣をレイピアで受け止めてアレスの剣を弾き飛ばす。

 

エリカ「サチ、大丈夫か?」

サチ「ええ。助かったわ。」

アレス「剣が!」

矢内「アレス、もう止めよう。」

アレス「まだだ!俺の真の力を見せてやる!この不思議なメダルを使ってな!」

 

アレスが小さな袋を取り出した!

 

アレス「集めたメダル10枚全部使ってやるぜ!召喚!メダルガチャ!」

 

アレスが叫ぶと巨大なガチャガチャが出てきた!何が起きるんだ?

 

アレス「俺はこのガチャガチャに不思議なメダルを1枚使う度に様々なアイテムを得て強くなる。それを今回は10枚も使う。お前達など直ぐにやっつけてやるぜ!」

勇者「賢者さま、あの人、何かするつもりです。」

矢内「ああ。みんな、気を抜くなよ!」

畑中「ハッハーww!大丈夫だ、何も起きないから。アレス!その袋の中よく見てみろ!」

アレス「何?あっ!」

畑中「ハッハーww!お前のメダルは砂漠を歩いてる時にパチスロのメダルにすり替えておいたんだよ!ハッハーww!お前がちょっと前に嬉しそうに説明してくれてたからな!ハッハーww!」

 

何!?畑中が役にたっただと?

 

アレス「返せよ!俺のメダル!一生懸命他人の家のタンスから集めたんだぞ!」

矢内「アレス…。お前…。ただのこそ泥じゃねぇか!」

アレス「ペテン師野郎のお前が言うな!返せよ俺のメダル!」

畑中「ハッハーww!返してやる、それ!取ってこい!」ポーイ

 

畑中が小さな袋を関所の外に遠投した。

 

サチ「貴方も関所の外に行ってらっしゃい。はぁぁぁぁ!」

リリー「んー!(体が浮いた!助けてー!)」

 

サチの黒魔術でリリーは関所の外に飛ばされた!

 

アレス「リリー!今、助けるぞ!お前ら!覚えてろ!」

 

アレスはリリーを助けるために関所の外に飛び出して行った。

 

マナ「そんな…。一瞬で…。アレス!そんな平民なんか助けないでよ!わたくしを一人にしないで!」

矢内「後は…。お前だけだな。覚悟しろよ。」

マナ「神に忠誠を誓ったわたくしに何かしてみなさい!貴方達に神の裁きを受ける事になりますわ!」

矢内「ほう?神の裁きだと?」

マナ「そうです!貴方達の行動に神々はお怒りの筈です!」

矢内「そうかそうか。じゃあ神々が俺達にお怒りかどうか直接聞いてみるか?」

マナ「へ?直接?」

矢内「いくぞ!ヤナウィス ヴィ ブリタニアが命じる!」

畑中「コードギアスかよww!三十過ぎの大人がやるなよww!ハッハーww!ダッセー!」

山田「いちいちダサいポーズをとるな。三十過ぎのいい年した大人が恥ずかしくないのか…。」

マナ「な、な、何をするのですか!」

矢内「開け!神々のゲートよ!」ギュイーン!

 

俺は自分の魔力で無理矢理ゼクスがいる神々の世界にゲートを開いた。

 

矢内「よし!上手くいった。」

マナ「あわわわわ…。そんな…。転位移動魔法を一瞬で…。あり得ない…。貴方は一体何者ですか!まさか魔王なのでは?」

矢内「魔王?馬鹿言え!俺は、みんなが大好き賢者様だ!来い!」

マナ「いやー!放してー!」

俺はマナの腕を掴みゼクスがいるゲートに向かった。

 

矢内「畑中!先に宿を探しておいてくれ!ちょっと行ってくる!」

 

俺はマナとゲートの中に入りゼクスのもとにたどり着いた。

 

ロキ「よう、矢内!」

矢内「おう、しばらくだな!」

マナ「ここは?いったい?」

ロキ「誰だ?その女?」

ゼクス「賢者様!無理矢理ゲートを開けないで下さい!それに勝手に知らない人を連れて来たら駄目ですよ!」

矢内「いやあ、まさか魔法でゲートを開けれるとはなぁ。」

ロキ「矢内、ちょうどいい。四人居るし麻雀しようぜ。」

矢内「遊びに来たんじゃねえよ!」

ロキ「なんだよ。せっかくお前の世界にある色々な遊び道具を買って来たのに。」

マナ「この人達はいったい?」

矢内「ああ、お前らの世界の神様のゼクスにロキだ。」

マナ「へ?神様?」

ゼクス「所で賢者様、なんでその人を連れて来たのですか?」

矢内「ああ、この女が俺達の行動にお前らがお怒りになってるとか言い出したから本当かどうか確かめる為に連れて来たんだよ。」

ゼクス「はぁ。」

矢内「で、どうなんだ?お前ら、俺達に怒ってるのか?」

マナ(なんでさっきから神様にため口なのかしら?)

ゼクス「別に怒ってませんですけど…。」

ロキ「矢内、そんな事よりそこの女も入れてこの人生ゲームやろうぜ。」

矢内「だから遊びに来たんじゃねえよ!俺は直ぐに戻らないといけないんだよ。」

ロキ「お前たまには遊びに付き合えよ!そうだ、あの醜男を呼べよ。アイツは毎日暇だろう。」

ゼクス「ロキ様!勝手にこっちに人を連れて来ようとしないで下さい!」

ロキ「良いじゃねぇか。堅いこと言ってるんじゃねぇよ。」

矢内「畑中も今は砂漠の国に居るから今は駄目だ。問題が解決したら遊んでやるよ。それまでその女を置いていくから三人だったら色々遊べるだろ。じゃあ俺は行くからな!」

マナ「えっ?置いていく?」

ゼクス「賢者様、砂漠の国にはゲートの設置は出来てます。」

矢内「ああ、助かる。」

ゼクス「次からはちゃんとゲートストーンを使って来て下さい。新しく設置したゲートストーンの色はエルフの森前がうぐいす色で砂漠の国が翡翠色です。」

矢内「また緑だろ!いい加減にしろ!分かりやすい赤や青にしろ!」

ゼクス「賢者様、緑色は目に良いのです。」

 

3回目だろ、そのやりとり。

 

矢内「じゃあ、俺は戻るからな。」

 

俺はゲートストーンを使った。

 

ロキ「矢内、さっさと終わらせてまた来いよ~!」

矢内「おう!あっゼクス!頼んでいたあれどうなった?」

ゼクス「バッチリ出来ましたよ!愛の戦士 スコールマン変身スーツです。」

矢内「おお!すげぇ!」

ゼクス「変身の仕方は簡単です。賢者様が魔力を開放してスコールを一口飲みラブ イン スコール!と叫ぶと変身出来ますよ。」

矢内「ゼクス、すまないな!行ってくる!」

 

俺は開いたゲートを通り砂漠の国に戻った。

 

マナ「そんな…。本当に置いて行かれた…。わたくしはどうしたら…。」

ロキ「女、取りあえずこの人生ゲームからしようぜ!ゼクス、お前銀行役と平行でやれよ。」

 

 

 

 

勇者「あっ賢者さま!」

矢内「おう!戻ったぞ。」

畑中「矢内、あの女はどうした?」

矢内「ああ、ロキの遊び相手に置いてきた。」

畑中「ハッハーww!置いてきたってww!あの女が1番災難だな。」

エリカ「賢者ー!そんなことよりお腹空いたよ!」

矢内「ああ、飯にするか。所で宿は取れたのか?」

サチ「賢者さん、それが…。この辺りは宿はなかったのよ。それでこの先の貧民街に空き家が有ったからそこを使わせてもらっているわ。」

矢内「いや、俺はお尋ね者になってるから好都合だ。そこでこれからどうするかを決めよう。」

山田「そうだな。」

 

俺達は直ぐ様城下町の外れの貧民街に足を運んだ。

 

「あら?そこのお兄さん?パフパフしていかない?」

山田「娼婦か…。悪いが我々は急いでいるのでな。」

矢内「待て山田!いくらだ?」

「あら?お兄さんしていくの?」

矢内「ああ。いくらだ?」

「お兄さん、旅のひと?じゃあ、サービスでVIPコース金貨三枚で良いわよ。」

山田「馬鹿者!矢内!そんな事をしている場合か!」

矢内「いいか?山田、パフパフはかつて伝説の勇者達が追い求めてきたロマンだ!俺はしていくぞ!」

山田「矢内、まずお前は勇者では無いだろ。何がロマンだ。諦めろ、行くぞ!」

矢内「馬鹿野郎!かつての勇者ロトもローレシアの王子様も英雄メルビンもレイドック城の王子もグランバニア王も天空の勇者達も受けてきた一大イベントなんだぞ!それに滅ぼされユグノアの王子様なんかは世界中でパフパフを受けたのだぞ!畑中、お前も行くよな!」

畑中「矢内、ここで金貨三枚も出して騙される位なら俺達の世界で激安ソープでも行ってるほうがましだぞ。」

 

どいつもこいつもロマンの無い奴だ。

 

サチ「賢者さん、どうしても行きたいなら明日、一人で行ったら良いじゃない。早く空き家に行きましょう。みんなお腹空いてるのよ。」

矢内「あー!分かったよ!明日にするよ!娘さん、コイツらがうるさいので明日していくよ。所で何時からやってるんだ?」

「うーん、お昼頃からかな?」

矢内「分かった!昼前には行くよ。」

畑中「かー!矢内、お前って奴は…。どんだけパフパフを受けたいんだよ。ハッハーww!」

 

そう言って俺は凄十を一気飲みして貧民街の奥の空き家に向かった。

 

山田「精力剤を飲むほどの事か、情けない。」

矢内「馬鹿野郎!勇者が受けた一大イベントだぞ!気合いを入れないでどうするか!」

サチ「はぁ…貴方は勇者じゃなくて賢者じゃない…。」

貧民街の奥の空き家にたどり着いた。ここなら人目につくことが無いだろう。

 

矢内「俺は飯の準備に取りかかる。」

サチ「分かったわ。」

 

野菜をふんだんに使ったシチューにしよう。たまには野菜を食べさせないとな。後は…。そうだ、シチューができる前にあれを作ろう。

 

勇者「賢者さま。」

矢内「勇者、もう少しで出来るから待ってろ。」

勇者「あの、沢山の人達が来てます。」

矢内「まさか、城の兵士とかか?」

勇者「違います。でも、どうしたら…。ちょっと来て下さい。」

矢内「ああ、分かった。」

 

俺はシチューを炊いていた火を弱火にして使っている小屋を出た。沢山の人がこっちの様子を伺っている。子供も沢山いる。みんな痩せこけてみすぼらしい格好だ。

 

サチ「賢者さん、どうやら貧民街の人達だわ。」

エリカ「みんな、こっちを見てるよ。どうしよう?」

 

俺達が様子を伺っていると一人の女の子が近づいて来た。

 

「あなたたち誰?」

矢内「俺達は旅の途中でな。宿がこの近くに無かったのでこの空き家を勝手に使わせてもらっているんだ。」

「何してるの?」

矢内「食事の準備をしてた所だ。」

「ご飯?きょうはご飯の日じゃないよ?」

エリカ「ご飯の日?」

「うん、わたしたちは明日がご飯の日なんだよ。」

サチ「どういう事かしら?」

 

毎日食べられないのか?

 

「すみません!ほら、こっちに来なさい!」

 

女の人が近づいて子供を連れ戻す。

 

矢内「待ってくれ!みんなの事を詳しく聞かせてくれ!」

 

俺達は集まって来ている人達に話を聞いた。聞くとここの貧民街の人達は貴族達の為に毎日ろくな食べ物も与えられずに大人子供関係なしに働かされているということだ。そこに俺が作ろうとしているシチューの匂いにつられて来たのか。

 

矢内「こんな事あってたまるか…。」

勇者「賢者さま…。」

矢内「勇者、サチ、エリカ、アリマ君、今日の飯は遅くなるがいいか?」

畑中「矢内、お前?この人数だぞ!まさか?」

矢内「ああ、そのまさかだ。」

山田「矢内、気持ちは分かるが止めておけ。根本的な解決にならない。」

矢内「分かってるよ!でも見捨てるなんて出来るか!食材ならまたゲートを通って俺達の世界で買えばいい。はした金でみんな助かるんだ!」

畑中「かー、矢内、お前って奴は…。分かったよ、お前は言い出したら聞かねえからな。勇者ちゃん達もいいか?」

サチ「分かったわ。賢者さん、袋の中の缶詰め全部開けるわよ。」

矢内「ああ、頼む。」

山田「矢内、分かってるのか?今日だけじゃないんだぞ!」

矢内「ああ、明日も明後日もだ分かってる。それに俺がこの国でするべき事が決まった。」

サチ「私は賢者さんに従うわ。」

勇者「賢者さま、わたし達は何をしたらいいですか?」

矢内「まずはここの人達をお腹いっぱいにしてやろう。」

エリカ「分かった!お腹空いてると力でないもんな。」

矢内「みんな!一列に並んでくれ!ご飯の時間だ!」

 

俺の一言で貧民街の人達がざわつきだした。すると先程の女の子が近づいて来た。

 

「ご飯?」

矢内「ああ、みんなのご飯だ!」

畑中「矢内!出来たシチューを持ってきたぞ!」

矢内「畑中、気が利くな!ほら、出来立てのシチューだ。冷めないうちに食べるんだ。」

 

俺は発泡スチロールのお椀にシチューを入れて女の子に手渡した。

 

「食べていいの?」

矢内「ああ、食べるんだ。」

 

女の子がシチューを一口食べた。

 

「お、おいしい…。ありがとう…。」

 

泣きながら女の子がお礼を言った。

 

矢内「俺は急いでシチューを作る。後は任せる。みんなに配ってやってくれ!」

山田「皆!腹が減っている者は並べ!」

 

先程のやりとりを見た人達が一斉に並びだした。

 

山田「お前達!押さなくていい!ちゃんと全員分を用意する!」

勇者「食べて下さい。」

「ありがとう…。ありがとう…。」

エリカ「いっぱい食べなよ。」

「ありがとうございます…。」

 

辛かったんだな…。みんなが泣きながら食べている…。多目に作って良かった。

 

畑中「矢内、全員分行き渡ったぞ!」

矢内「ああ…。みんな、美味いか?」

「おいしい…。ありがとう…。」

矢内「じゃあ、明日も食べたいか?」

「えっ?」

 

俺の一言で人びとが動揺している。構わず俺は話を続ける。

 

矢内「明日もみんなのご飯を用意する!だから俺達がここに居る事は誰にも内緒にしてくれるか?」

「はい!」

「誰にも言いません!」

「約束します!」

 

上手くいった。ここだと誰かがリークしない限り見つからないはずだ。

 

「あの…。よろしければ貴方のお名前を教えて頂けますか?」

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

サチ「毎回それを言うのね…。」

畑中「ハッハーww!」

「賢者様!ありがとうございます!」

「賢者様!ありがとう!」

「けんじゃさま!ありがとう!」

 

人びとは皆、俺に礼を言って帰って行った。

皆が帰った後、俺達は遅めの夕食をとりながら今後の事を話し合う。

 

矢内「俺は明日の朝から一度帰って食材を買ってくる。」

山田「お尋ね者は矢内だけだから私達は城に行き情報を集めよう。」

矢内「山田、気を付けろよ。」

山田「お前と違って権力者に喧嘩を売るバカではない。」

矢内「お前ら、明日は山田と一緒に行動するんだぞ。」

エリカ「分かった!山田、よろしくな!」

勇者「山田さん、よろしくお願いします。」

畑中「山田さん、気を付けろよ!」

山田「お前も来い。何を言い出す。」

矢内「じゃあ、今日はもう寝て明日の夜にまた集まろう。」

山田「矢内、昼間は空くはずだろう。」

矢内「どうしても行かないといけないところがある。だから帰りは夜になる。」

畑中「矢内、まだ諦めてなかったのかよ!ハッハーww!」

矢内「馬鹿野郎!パフパフは勇者のロマンだ!」

畑中「ハッハーww!お前は勇者じゃなくて賢者じゃねえか!ハッハーww!」

山田「はぁ…。情けない男だ…。」

 

そうして俺達は明日に備えて各々眠りについた。そして、夜が明けた。



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愛の戦士 スコールマン 2

わたし達は朝から砂漠の国のお城に向かっています。賢者さまとは別行動ですが今日は山田さんが一緒です。

 

サチ「お城に近づいていくにつれ豪華な家が増えるわね。」

勇者「おっきいお家がいっぱいですねぇ。」

山田「貴族の家だな。昨日の民達を好き勝手に扱き使って建てたのだろう。」

畑中「矢内が見たらここら一帯に火をつけて燃やしているな。」

エリカ「貴族の奴等、こんなデッカイ家が建てれるのになんでみんなにご飯を食べさせてあげないんだよ!」

山田「気持ちは分かるがおかしい事ではない。」

勇者「どうしてですか!そんなのおかしいです!」

エリカ「そうだよ!」

山田「ここに住む貴族達は弱い者の気持ちが分からないのだ。そして、働かされている貧民街の者が一人二人死のうが替わりを入れたらいいとでも思っているのだろう。」

勇者「そんなの…。酷すぎます!」

畑中「人を好き勝手に支配する連中はそれが当たり前に思っているんだ。でも、もう大丈夫だ。」

エリカ「大丈夫な訳ないじゃんか!」

畑中「今、この国には矢内がいる。アイツが貧民街の人達を見捨てはしない。そうだろ?」

勇者「そうです!賢者さまがいます!」

山田「矢内の娘、おしゃべりはそれまでだ。城が近づいて来たから賢者って名は出すなよ。」

サチ「でも、どうやって城に入るつもりなの?誰でもなんて入れないわよ。」

畑中「まあ、任せておけ。」

 

お城にたどり着きました。ファンタルジニアのお城と違ってとっても大きいです。入口の前に門番の人達がこちらに近づいて来ました。

 

「お前達、勝手に城に近づくな!」

畑中「俺達は今、世間を騒がせている異世界から来た賢者を倒す為に同盟国のエルフの国から派遣された使者の者だ。国王に賢者を倒す策を伝授したいので閲覧したい。」

「エルフの国から?少し待っていろ。確認をとる。」

 

そう言って門番の人の一人がお城に入って行きました。

しばらくすると門番の人が戻って来ました。

 

「入れ。国王様直々にお会いになられる。くれぐれも粗相のないようにしろ。」

畑中「よし!入ろう。」

山田「よくぺらぺら嘘がつけるな。」

畑中「俺を褒めても何も出ないぞ。」

サチ「誰も褒めていないわ。呆れているのよ。」

畑中「ハッハーww!」

勇者「むー!」

畑中「勇者ちゃん、そう怒るな。嘘も方便って奴だ。」

エリカ「嘘をつくのは良くないって戦士長がいつも言ってるぞ!」

畑中「ハッハーww!いいんだよ、俺は別に出来た人間じゃないからいいんだよ。」

山田「まぁいい。入るぞ。」

 

わたし達はお城の兵士さんに案内されて王さまの居る謁見の間に来ました。なんだかここの兵士さん達もみんな痩せています。

 

サチ「ここの兵士達もろくに食べれていないようね。」

エリカ「兵士なのにそんなんじゃ体が持たないよ。」

「この扉の奥に国王様は居られる。」

勇者「ありがとうございます。」

山田「では、行こう。」

 

扉を開けて中に入りました。玉座に座っている華やかな服装の人が王さまのようです。隣には全身を鎧兜で隠した人が居ます。

 

畑中「アイツだけ贅沢三昧なんだな。」

山田「矢内ではないがここまで露骨に分かりやすいとさすがに腹立つな。」

畑中「俺が話をする。みんなは黙っていてくれ。」

サチ「分かったわ。」

 

屑野郎さんが王さまに一歩近づきました。

 

畑中「この度は我々の為にお時間を頂き実に感謝致します国王陛下。」

国王「うむ。所でエルフの国から派遣されたと聞いたが…。貴公はエルフではなく人間だな?」

畑中「はい、エルフの国王は賢明な方なので私めのような人間の使者も小飼にしておられるのでございます。」

国王「ほぅ。所で貴公は本当に賢者の弱点を知っているのだな?」

畑中「ええ、例の賢者が今まで旅をしてきた町の住民から仕入れて来た情報があります。」

国王「ほぅ?どんな情報だ?」

畑中「しかしながら、我々も命懸けで仕入れてきた情報です。流石にタダでという訳には…。」

国王「何が望みだ?」

畑中「先ずは我々はエルフの国で拐われた娘達の情報を教えていたたぎたいのですが…。後は情報提供資金を頂きたいですね。大体、金貨を1500枚ほどで構いません。」

国王「がめつい男だな。」

畑中「頂けないなら仕方がありません。1つだけサービスでお教え致しましょう。賢者は空間転移魔法を使います。なので国王陛下は何時でも命を狙われている状態です。」

国王「ほう、空間転移魔法。本当か、ガリアス?」

 

王さまの隣にいる人が兜を取りました。

 

山田「あ、アイツは!」

ガリアス「賢者の仲間の言うことです。空間転移魔法の事は本当でしょう。」

国王「そうか。まあコイツ等を捕らえたら賢者も手出しは出来まい。」

畑中「しまった!始めからバレていたのか!」

国王「そこの男、なかなか上手いハッタリだったが残念だったな。皆の者!出合え!出合え!異世界から来た忌々しき賢者の仲間を引っ捕らえろ!」

 

王さまの一声でたくさんの兵士さんに囲まれてしまいました。

 

ガリアス「かかれ!全員で引っ捕らえろ!」

勇者「なんで…。わたし達は何も悪い事はしてません!」

エリカ「そうだ!あたし達は何もしてないぞ!」

サチ「ゆうりん、エリカさん、この人達に何を言っても無駄よ。偉大なる国王陛下?少し教えてもらってもいいかしら?」

ガリアス「陛下、あの女は妙な魔法を使います。口を聞いてはいけません。」

山田「ならば私の問いに答えて貰おう。お前達が拐ったエルフの娘達は何処だ。どうせ助かりはしない。答えて貰えるか?」

国王「エルフの娘?ああ、エルフの国王から買ったのだよ。幼い娘はビーナス様に捧げ、若い娘はワシが頂く為にな!」

山田「なっ!そうか、分かった。矢内の娘、先ずは全力でここを脱け出し矢内と合流するぞ!」

勇者「はい!山田さん!」

ガリアス「武器を下ろせ!お前達の仲間の男が死んでもいいのか!」

畑中「済まん!捕まった。」

 

あのガリアスって人が屑野郎さんの喉元に剣を突き付けています。

 

山田「殺りたきゃ殺れ!」

ガリアス「何?いいのか!私は本気だぞ!」

畑中「ハッハーww!人質を取る相手を間違えたな!ハッハーww!残念だったな、勇者ちゃん!気にせずに行け!」

ガリアス「黙れ!貴様!何故笑っていられる!」

畑中「ハッハーww!俺の命にこだわっている間に勇者ちゃん達は逃げ出せるんだ!こんな面白い事はない!勇者ちゃん!みんな!ここは逃げるんだ!」

山田「畑中、済まん!お前達!逃げるぞ!」

勇者「ダメです!そんなの絶対にダメです!」

畑中「行け!矢内の奴がいつもやってる事だ。危険な事は俺達、大人の仕事だ!」

山田「矢内の娘、畑中の心意気を無駄にするな。」

サチ「山田、悪いけど畑中を見捨てる事は出来ないわ…。」

勇者「わたしは…。降参します…。」

畑中「勇者ちゃん、俺の事はいい!行けよ!」

勇者「嫌です!屑野郎さんが殺されたら賢者さまが悲しみます!わたしもそんな事になったら悲しいです!」

サチ「そうね畑中、危険な事と死ぬ事は意味が違うわ。私も降参するわ。」

エリカ「しょうがないな。弱い奴を助けるのは戦士の勤めだって戦士長がいつも言ってるもんな!あたしも降参する。」

山田「仕方ない、私も降参する。畑中を放せ。」

ガリアス「よし、全員を縛り上げろ!」

 

わたし達はみんな捕まってしまいました。

 

国王「よし、全員縛り上げたな。誰か、大臣を呼べ!」

「ハッ!」

畑中「すまない、俺の為に…。」

山田「城に行くと言った私にも非がある。お前のせいではない。」

サチ「いいかしら?牢屋に入れられたら私の黒魔術で脱出するわよ。」

ガリアス「おい!その女の口を塞げ!その女は奇妙な魔法を使う。」

「ハッ!」

 

さっちんの口に布を巻き付けられました。

 

ガリアス「何かしようとしていたが残念だったなぁ、女!」

サチ「んー!(しまった!)」

「国王陛下、大臣を連れて来ました!」

国王「大臣よ!わざわざすまないな。」

大臣「国王陛下、この騒ぎはいったい何があったのですか?」

国王「異世界から来た賢者の仲間を引っ捕らえた。今すぐに城下町の中央広場に連れて行き公開処刑にしろ!」

山田「なっ!」

エリカ「あたし達何も悪い事はしてないぞ!」

大臣「陛下、この者達が何かしたのですか?まだ何もしてないのに公開処刑は流石に…。ましてや他国の勇者を処刑などにしますと戦争になるかも知れません。」

国王「貴様、誰のお陰で今の地位に居ると思っている。」

大臣「しかし!戦争になれば傷つくのは力無き民達です!ここは陛下の寛大な心でせめて国外追放にして頂けないでしょうか?」

国王「貴様、ワシの言うことが聞けないのか!民だと?税金もろくに払えない者などはどうでもいい!それよりもお前の正体を晒してやろうか?そうなるとお前も処刑になるぞ?」

大臣「それだけは!」

国王「だったら言うこと聞け!」

大臣「ハッ!」

 

わたし達は今来た大臣さんに連れて行かれる所です。

 

大臣「異国の勇者達よ、すまない…。」

山田「すまないと思うなら私の腰に下げている袋を開けて貰えるか?最後に水を飲ませてくれ。」

大臣「それぐらいの事なら。」

 

大臣さんが山田さんの異次元袋を開けた瞬間、アリマ君が飛び出しました!

 

アリマ君「キー!」

大臣「うわっ!」

「魔物が!」

 

アリマ君が勢いよく飛び出したのでお城の兵士さん達が慌ててパニック状態です。

 

山田「1つ目の小僧!今の状況を急いで矢内に伝えろ!」

アリマ君「キー!」

 

アリマ君がお城の窓から飛んでいきました。

 

国王「なんだ!魔物を引き連れていたのか!ええい!大臣よ!コイツらを今すぐに処刑にしろ!」

大臣「しかし、陛下。中央広場で処刑にした方が効果的です。そうする事で陛下に逆らう愚か者を減らすことができます。」

国王「そ、そうか。では連れて行け!」

大臣「ハッ!」

ガリアス「大臣殿、私も同行します。」

 

大臣さんに連れられてお城の外に出ました。

 

ガリアス「褐色の女、お前は私が直々に処刑してやる。覚悟するんだな。」

山田「くっ…。」

 

 

 

 

 

一方その頃…

 

俺は朝に食材の買い出しを終えて例の店に足を運ぶ。人が少ない。それもそうか、昼間からぷらぷらしている方がおかしいよな。

 

「あら?お兄さんやっぱり来たのね。パフパフしていく?」

矢内「ああ、その為に足を運んだんだ!当然だ!」

 

俺は客引きに金貨を3枚渡して、路地裏の建物に入った。

 

「お兄さん、この番号札を持って中で待っていてね。」

 

2番か…。先客がいるのか。俺は扉を開けて中に入った。

 

アレス「あっ!テメェはペテン師野郎!」

矢内「…。」

 

昼間から性欲を持て余した暇人は誰だって思ったらお前か!

 

矢内「アレス、こんな所で何をしている。リリーはどうした?」

アレス「今、2手に別れてテメェを捜していたんだよ!」

矢内「嘘つけ!上手い事を言ってリリーを撒いて来たんだろ!」

アレス「う…。じゃ、じゃあ、テメェは何でこんな所に来てるんだよ?」

矢内「何で?決まっているだろう!パフパフを受けに来た!」

アレス「堂々と言うなよ。」

矢内「バカ野郎!金貨を3枚も払っているんだぞ!」

アレス「金貨を3枚だと!VIPコースじゃねえか!俺なんか銀貨20枚の1番安いコースなのに…でも、残念だったな!テメェはパフパフを受ける前に俺に倒される運命だ!観念しろ!」

矢内「ちっ!こっちは丸腰だ。待てアレス!話し合おう!」

アレス「問答無用!覚悟!」

 

アレスが俺に剣を振りかざそうとしたその時、扉が開いた!

 

「1番のお客様!準備が出来ました!」

矢内「行ってこいよ。」

アレス「ちっ、仕方ない、テメェ、これが終わったら叩き切ってやるから覚悟しろ!」

 

アレスは奥に案内された。

 

「2番のお客様も準備出来ましたのでどうぞ!お客様はVIPコースですね。こちらのお部屋になります。」

 

俺は案内されて極上のひとときを体験した。

 

 

 

店から出るとアレスが座り込んでいる。どうやら酷く落ち込んでいるようだ。

 

アレス「ちくしょう…。金返せよ…。」

矢内「どうした?アレス。」

アレス「ちくしょう…。聞いてくれよ、部屋に案内されると凄い年増の女が出てきてよう。そこからその女が長々としゃべり続けて、60分たって時間になったんだよ…。ちくしょう、俺はまだ何もしてもらってねぇのに…。」

 

風俗で金をけちるからそういう目に会うんだ。

 

アレス「テメェはどうだったんだよ。」

矢内「最高の120分間だったぞ。4発は抜いたな。」

アレス「ど、どんなサービスだったんだよ!教えてくれよ!」

矢内「ああ、良いぜ。」

 

俺はアレスに一連の流れを説明した。

 

アレス「ああああああ!何だよそれ!ち⚪こを挟んでパフパフって!ちくしょうー!絶対に気持ちいいに決まっているだろうがー!」

矢内「風俗では金をケチらない事だ。いい勉強になったな。」

アレス「ちくしょう…。なけなしの金を全て使ったのに…。こんな事ってあるか!」

 

なんか可哀想になってきた。

 

矢内「アレス、昼飯奢ってやるから気を落とすな。行くぞ。」

アレス「すまねえ…。」

 

俺は落ち込んでいるアレスを連れて市場の方に向かった。

 

 

アレスを連れて市場に来た。何処かに食堂みたいな所はないのだろうか?

 

???「あっ、アレス!何処に行ってたのよ!」

アレス「り、リリーか、あーあれだよ!あれ!」

リリー「あれって何よ!」

矢内「風俗だ!」

アレス「ちょ!お前!何を言い出すんだよ!冗談だ!」

リリー「何でこのペテン師の賢者と一緒にいるのよ!」

アレス「だから、あれだよ!あれ!」

リリー「ちゃんと言いなさいよ!」

矢内「俺が風俗に行ったら先に待合室にいたんだよ。」

リリー「はぁ?」

アレス「ば、馬鹿!正直に答えるな!」

リリー「…。アレス、私が必死で賢者を捜していたのに、何をしているの!」

矢内「あー、アレスは何もしないまま金だけ取られて風俗を出たんだ。」

リリー「アレス…。」

アレス「違う!そう、こうしてペテン師野郎の賢者を見つけたんだ!なっ!」

リリー「何が、なっ!よ!で、今度は何処に遊びに行くつもりだったの?」

矢内「さっき行った風俗でアレスの奴が1文無しになって余りに可哀想だから飯でも奢ってやろうとこの辺まで来たんだよ。」

アレス「ペテン師野郎、お前もう喋るなよ!」

リリー「アレス、そのお金。あんただけのじゃないでしょ!今日の食事代とかどうするの!」

アレス「いや…あの、そのだな…。」

 

今のうちに退散しよう。一度キレた女は面倒だ。

 

矢内「アレス、なんか込み合っているからまた今度な。」

 

俺はアレスを置いて一目散に逃げ出した。

 

アレス「ちょ!待て!お前のせいでこんな事になってるのだろうが!」

リリー「アレス、何処に行くの!」

アレス「リリー!落ち着け!ペテン師野郎が逃げる!追いかけないと!」

リリー「アレス、今はペテン師の賢者よりあんたの事を言ってるのよ!」

アレス「アイツはペテン師だから今の話なんて嘘に決まっているだろ!なっ!」

リリー「じゃあ、お金は?」

アレス「えっと、それは…。どっかの家のタンスから…。」

リリー「ふざけないで!!」

 

 

 

俺はアレス達を振り切り俺達が寝泊まりしている空き家に戻ってきた。

 

矢内「さてと、みんなの飯の用意をするか!この貧民街みんなの分だからな。」

 

俺が飯の段取りをしようとしたらアリマ君が飛んできた。

 

アリマ君「キー!キー!(たいへんなんだよ!)」

矢内「アリマ君か、ああ、今日も飯の段取りが大変だぞ!」

アリマ君「キー!(だから大変なんだよ!)」

矢内「ああ、みんなの分だからな。俺達の飯もしばらくはショボくなるが我慢しろよ。」

アリマ君「キー!キー!(ご飯の事じゃないよ!)」

矢内「何だよ、まあいいや。今から米を炊くから手伝ってくれ。」

アリマ君「キー!キー!(ご飯はいいから話を聞いてよ!)」

矢内「なんだ?お前、飯いらないのか?」

アリマ君「キー!(ご飯は食べるよ!)」

矢内「じゃあ何だよ、飯の時間までお前ちゃんとエリカの面倒見とけよ。」

アリマ君「キー!キー!キー!(だからエリカちゃん達がお城で捕まって大変なんだよ!)」

矢内「それを先に言えよ!」

アリマ君「キー!(だったら話を聞けよ、中二病)」

矢内「誰が中二病だ!早く状況を説明しろ!」

 

アリマ君から今までのいきさつを聞いた。

 

矢内「畑中がいて捕まったのか。アイツなら上手く乗り切ると思ったのだがな…。」

アリマ君「キー?(畑中が?)」

矢内「ああ、畑中は誰よりも口が達者だからアイツが一人捕まっても相手を上手く言いくるめられると思ったんだが…。」

アリマ君「キー!(畑中を助ける為にみんな捕まったんだよ!)」

矢内「アイツ等の優しさが裏目に出たな。」

アリマ君「キー!キー!(そんな言い方ないよ!)」

矢内「これは畑中を信用しなかったアイツ等のミスだ。まぁ、過ぎたことを言っても仕方ない。中央広場だったな。勇者達を助けに行くぞ!全速力だ。変身!ラブ イン スコール!」

 

俺は体全身でウンコをするイメージで魔力を開放してスコールを一口飲み愛の戦士スコールマンに変身した。

 

アリマ君「…(なにこれ?)」

矢内「ハハハハハハ!愛の戦士!スコールマン!ただいま参上!」

 

体が軽い!力がみなぎる!今ならどんな敵にも勝てる!

 

アリマ君「キー!(速い!)」

矢内「早くしろ、1つ目!」

アリマ君「キー…。(中二病って凄い…。)」

 

中央広場にたどり着いた。まだ処刑は始まっていないらしい。少し遅れてアリマ君が飛んできた。

 

アリマ君「キー…(速いよ…。)」

矢内「お前、もっと速く飛べないのかよ。」

アリマ君「キー…(無茶言うなよ…。)」

矢内「所でこれ、どうやって変身を解くんだ?教えてくれ。」

アリマ君「…。(僕が知るか…。)」

 

全速力で走ったから水でも飲むか。

 

アリマ君「キー。(あっ、変身が解けた。)」

矢内「おお!戻ったぞ!」

 

俺達が話し込んでいると勇者達が兵士達に引っ張られてきた。両手は鎖で縛られている。

 

アリマ君「キー!(エリカちゃん!)」

矢内「待て!行くな!」

アリマ君「キー!(だって!)」

矢内「作戦を建てるぞ。」

 

勇者達が広場の真ん中に並ばされた。興味本意で街の人々が集まってきた。兵士の中に一人ローブを着た男がいる。その隣に居るのはアレスと旅をしてたガリアスだ。ローブを着た男が一声をあげた。

 

大臣「えー、本日はお日柄もよく…。」

ガリアス「大臣殿、早く処刑を進めて下さい。」

大臣「いや、しかしだな…。こう言うことは挨拶からちゃんとしないと…。」

ガリアス「急いで下さい!」

大臣「えー本日は、晴天なり!」

ガリアス「そんなのはいいです!」

大臣「皆の者!この者達は今、巷で有名な賢者の仲間達である!」

 

俺、有名人なんだ。サインの練習しないといけないな。

 

大臣「その賢者の仲間達を我々が捕らえて国の危機を救ったのである!どうやって捕らえたかと言うと…。」

 

こいつ、ちょいちょい話を脱線させるな。

 

ガリアス「大臣殿!早く処刑を執行させてください!」

大臣「おお!そうだったな!この者達は処刑をするかどうかを集まった皆にアンケートを取ろう!よし、お前達!皆に聞いてまわるのだ!」

「ハッ!」

 

兵士達に命令して集まってきた人々にアンケートを取り出した。こいつ、わざと処刑を長引かせようとしてるな。

 

矢内「1つ目、お前はこれを持って勇者達の後ろに回れ。」

アリマ君「キー。(これは?)」

矢内「それは充電式電動工具ディスクグラインダだ。俺が暴れて隙を作るからこれでみんなを縛っている鎖を切れ。」

アリマ君「キー。」

矢内「よし、作戦開始だ。」

 

俺はアリマ君が勇者達の後ろ側に行ったのを確認してまた愛の戦士スコールマンに変身した。



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愛の戦士 スコールマン 3

わたし達は大臣さん達に連れられて大きな広場に来ました。両手は鎖で縛られています。

 

ガリアス「よし、ここに張り付けろ!」

「ハッ!」

 

両足も打ち付けられた木に縛られてました…。さっちんは口も塞がれています。

 

ガリアス「大臣殿、準備が出来ました。」

大臣「ああ、分かった。えー、本日はお日柄もよく…。」

ガリアス「大臣殿、早く処刑を進めて下さい。」

大臣「いや、しかしだな…。こう言うことは挨拶からちゃんとしないと…。」

ガリアス「急いで下さい!」

大臣「えー本日は、晴天なり!」

ガリアス「そんなのはいいです!」

大臣「皆の者!この者達は今、巷で有名な賢者の仲間達である!」

 

大臣さんのお話が始まりました。わたし達はこのまま処刑になっちゃうのでしょうか?

 

大臣「その賢者の仲間達を我々が捕らえて国の危機を救ったのである!どうやって捕らえたかと言うと…。」

 

山田「あの男、よく話が脱線するな…。」

 

ガリアス「大臣殿!早く処刑を執行させてください!」

大臣「おお!そうだったな!この者達は処刑をするかどうかを集まった皆にアンケートを取ろう!よし、お前達!皆に聞いてまわるのだ!」

「ハッ!」

 

大臣さんの一言で兵士さん達がなにか周りに集まってきた人達に聞いています。

 

山田「何をしているのだ?」

畑中「ああ、なにか時間を稼いでいる感じだな。」

 

兵士さん達が集まってきた人達の所から大臣さんの所に戻って来ました。

 

大臣「ふむ、そうか。分かった。皆!この者達の処分だが!処刑すると流れた血を掃除をさせられるのは面倒だと言うことなので処刑は無しにする!」

山田「は?」

畑中「助かるのか?」

ガリアス「大臣殿!いい加減にしてください!処刑は決定事項です!」

大臣「しかしだな、掃除をするとなると大量の水を使わないといけない。我が国では水は貴重なので、使わないに越したことはないだろう。」

ガリアス「もう私が執り行います!これより私自ら異世界から来た賢者の仲間の処刑を行う!いいか!よく聞け!異世界から来た賢者は我が国に災いをもたらす大悪党だ!もし、かくまっている者がいたらこの者達と同じように処刑する!見つけ次第、我々に報告しろ!異世界から来た賢者とそれを招き入れた勇者と名乗るアレスとその仲間のリリーこの3人は我が国を脅かす重罪人だ!有力な情報を提供したものには褒美を授ける。」

山田「貴族の小僧、お前は仲間を殺すのか!」

ガリアス「口の聞き方に気をつけろ!」バキ!

 

山田さんがガリアスって人に殴られました。

 

勇者「山田さん!」

山田「ククッ。矢内の娘、案ずるな。こんな男の拳など痛くはない。」

ガリアス「何がおかしい!」

山田「つくづくお前は情けない男だな、動けない相手や立場の弱い者にしか偉そうに出来ない。処刑だと?面白い!殺りたきゃ私から殺れ!」

勇者「山田さん…。」

ガリアス「女、勝手に順番を決めるな。お前は最後だ!そこの勇者と名乗るチビからだ!」

畑中「勇者ちゃん!待て!俺からにしろ!お前、勇者を殺していいと思っているのか!」

ガリアス「勇者などいくらでも変わりを作ればいいだけだ。これより、処刑を開始する!」

 

ガリアスって人がわたしに剣を振りかざしました。

 

???「待ちたまえ!」

ガリアス「誰だ!」

???「ハハハハハハ!君達の蛮行、例え世界の神が許してもこの私が許さない!正義の名のもとに成敗する!」

ガリアス「何者だ!」

スコールマン「ハハハハハハ!良い子の味方、スーパーヒーロー、愛の戦士 スコールマン!ただいま参上!」

畑中「ハッハーww!」

山田「この状況で何をふざけているんだ矢内は…。」

ガリアス「たった一人で何ができる!かかれ!賢者の味方をする者は全て敵だ!」

スコールマン「こい!私が成敗しよう!」

 

ヒーローがわたし達を助けに来てくれました!何処からともなく音楽が流れてきました。

 

山田「なんだ、この音楽は?」

畑中「矢内は何を考えている?」

サチ(この二人が居るといちいちツッコミを入れなくていいから楽ね。)

 

スコールマン「宮崎県から や~あて~きた~♪」

畑中「お前が歌うんかい!」

スコールマン「みやこのじょうの~♪せ~いぎの使者さ~♪」

ガリアス「何をしている!やっつけてしまえ!」

「ハッ!」

 

兵士さん達がスコールマンに襲いかかってきましたがスコールマンが兵士さん達を次々とやっつけていきます。

 

スコールマン「疲れた体をリフレッシュ♪あなたのハートをリフレッシュ♪」

畑中「なんだ、この歌は?」

山田「自分で作詞作曲したのか?恥ずかしい奴だ。」

スコールマン「た~しゃの飲み物メーカー認め~ない~♪」

ガリアス「何!兵士が次々とやられているだと?」

スコールマン「絶対無敵のスーパーヒーロー♪愛のせ~んし♪スコールマ~ン♪」

 

スコールマン、とっても強いです!

 

アリマ君「キー。(今のうちだ。)」

エリカ「アリマ君!」

アリマ君「キー!(助けに来たよ!)」ヴィィィィン!

 

アリマ君が助けに来てくれました。手に持ってる機械でエリカにゃんの繋がれている鎖を切ろうとしています。

 

アリマ君「キー…。(なかなか切れない。)」

エリカ「あ、アリマ君、熱、火花が跳んで熱い!」

 

火花がエリカにゃんに直撃して熱そうです。

 

サチ「んー!んー!(アリマ君、こっちよ!気づいて!)」

アリマ君「キー。(1つ切れた。)」ヴィィィィィン!

畑中「1つ目、さっちゃんの口かせを先に取るんだ!」

アリマ君「キー。」

 

アリマ君がさっちんの口を塞いでる布を取りました。

 

サチ「アリマ君、助かったわ。みんな今から脱出するわよ。」

山田「何をするつもりだ?」

サチ「簡単よ。鎖を引きちぎれる怪力の持ち主を呼べばいいのよ。黒魔術、『パーソン エンター』」

 

さっちんの黒魔術でわたし達の前に光の渦が出てきました。

 

サチ「ガハハハハ!今日はみんなで楽しい宴会じゃあ!酒じゃあ!」

 

光の渦から誰か出てきました。

 

酒呑童子「おお?何処じゃ?ワシは屋敷で酒を飲んでいたのに?」

畑中「ああやって俺は呼び出されるんだな…。」

勇者「あっ!シュテちゃん!」

酒呑童子「おお!勇者の娘っこ!久しいのう!」

サチ「シュテちゃん、早速で悪いのだけど私達を縛っている鎖を引きちぎって欲しいのだけど…。」

酒呑童子「ガハハハハ!そんな事か!任せておけい!ワシの力で一発じゃあ!」

 

シュテちゃんがわたし達を縛っている鎖を次々に引きちぎってくれました。

 

畑中「ハッハーww!助かったぜ!」

サチ「シュテちゃん、助かったわ。ありがとう。」

酒呑童子「ガハハハハ!気にするな!所で彼処で戦っている変な格好の奴はお主達の仲間か?」

山田「私達にあんな三十過ぎで恥ずかしい格好をした中二病の仲間はいない。」

酒呑童子「まるで賢者殿のようじゃのう!」

勇者「あれはスーパーヒーロー、愛の戦士 スコールマンです。わたし達を助けに来てくれたのですよ!」

サチ「そうね、助けに来てくれたスコールマンにここは任せて脱出しましょう。」

 

 

 

 

よし、あらかた片付いたな。

 

ガリアス「何をしている!相手は一人だぞ!」

大臣「このままでは全滅だ。撤退!撤退だ!」

ガリアス「大臣殿!なりません!まだ処刑も始まってもないのに!」

大臣「ではガリアス殿、そなたがあの者を倒されよ!」

ガリアス「くっ。て、撤退する!」

 

街の人々が俺に歓声を上げている。

 

スコールマン「この世の悪は正義のヒーロー!愛の戦士 スコールマンが成敗する!明日の平和にラブ イン スコール!ではさらばだ!」

 

よし、俺も撤退だ。ヒーローは正体を表してはいけないからな。

 

サチ「何あの決め台詞…。」

畑中「ハッハーww!ダセェww!」

山田「どこまでも恥ずかしい奴だ…。」

アリマ君「キー…。(何考えてるのだろう…。)」

酒呑童子「ワシ等も帰るかのう…。」

 

 

 

俺は誰にも見つからないように変身を解いて俺達が使っている空き家に戻ってきた。勇者達も無事に戻って来ている。

 

矢内「おっ!もう戻ってきたのか?お前ら。」

勇者「あっ!賢者さま!」

エリカ「賢者!あたし達お城で捕まって大変だったんだぞ!」

酒呑童子「おお賢者殿!久しいのう!」

 

ヒーローは正体を表してはいけないからな。何も知らないふりをしよう。

 

矢内「あれ?シュテちゃんか?なぁ、どうなっているんだ?」

サチ「白々しい…。」

畑中「あいつ、バレていないと思っているのか…。」

山田「矢内、ふざけているのかお前は。」

矢内「山田、畑中。表に出ろ。」

山田「ああ、いいだろう。私もお前に言うことは腐るほどある。」

 

俺は山田と畑中を連れて空き家の外に出た。

 

山田「矢内、私達が処刑になろうとしてたのにふざけた事をするな!」

畑中「何がスコールマンだ、いい年して恥ずかしくないのか。」

矢内「黙れー!!一生懸命考えたんだぞー!」

山田「何を逆ギレしている。それになんだあの歌は?」

矢内「スコールマン 愛のテーマだ。ちゃんと作詞作曲したんだよ!レコーディングもしてちゃんとCDにしたんだよ!タワーレコードで販売するんだよ!」

畑中「売れる訳ないだろ!ハッハーww!」

山田「頭おかしいのか、それになんなんだあの全身タイツは。」

矢内「ゼクスの奴に作らせたんだよ!滅茶苦茶格好いいだろ。」

山田「はぁ…。もういい、お前と話しているとこっちまで頭がおかしくなる。」

畑中「矢内あの全身タイツ、いちいち着替えるのか?」

矢内「全身タイツ?違うな、間違っているぞ!スコールマン変身スーツだ。着替えるんじゃない、変身するんだよ。」

畑中「…。」

山田「…。」

 

なんだその目は?さては俺がヒーローに変身できて羨ましいのだな?

 

畑中「矢内…。仮面ライダーやウルトラマンの真似をするのは小学生低学年までだぞ。」

山田「三十過ぎのおっさんがやってて恥ずかしくないのか。」

矢内「響さんだって三十過ぎで仮面ライダーになっただろうが。それに俺はナイスミドルだ!」

山田「何がナイスミドルだ。まずお前と響さんではルックスが全然違う。もういいから早く食事の準備をしろ、貧民街の人々が帰って来るぞ。」

 

俺達が言い合いしていると貧民街の人々が仕事から帰ってきた。

 

矢内「まずい、みんな帰ってきた。」

「けんじゃさま?なにしてるの?」

 

昨日の女の子だ。続いて次々とみんなが帰ってきた。

 

矢内「ああ、今日は色々と忙しかったからな。ご飯はもう少し待ってもらえるか?」

「うん。」

矢内「いい子だ。ご飯ができたらこの女子力0の残念な山田が呼びにいくからな。」

「わかった。」

 

貧民街の人々がそれぞれの家に帰っていった。

 

山田「矢内、誰が女子力0だ。」

矢内「お前以外に誰がいる。俺は米を炊くからお前は空き家の隅で三角座りして待っていろ。」

 

俺は山田を追っ払い食事の準備を始めた。人数が多いからおにぎりと味噌汁にしよう。

 

畑中「矢内、手伝おうか?」

矢内「いや、いい。米を炊いている間はすることが無いからな。ご飯が炊けてからおにぎり握るの手伝ってくれ。」

畑中「今からだと40分後だな。その時みんなを呼ぶよ。」

矢内「ああ、頼む。」

 

そろそろ米が炊けたな。1つは昨日作っておいた味付けしたワカメ、ひじき、白ごまで和えた特製ふりかけをまんべんなく混ぜる。もう1つは焼き鮭の身をほぐしてまんべんなく混ぜる。後はこれを握るだけだ。味噌汁の具は豆腐とワカメだ。

 

矢内「よし、完成だ。」

勇者「賢者さま、今日のご飯はなんですか?」

矢内「ここの人々の分もだからな。おにぎりと味噌汁だ。サチ、量が少ないとか文句は言うなよ。」

サチ「人聞き悪いことを言わないで。それくらいの空気は読むわよ。」

勇者「わたし、皆さんを呼んできます。さっちん、行きましょう。」

サチ「良いわよ。行きましょう。」

山田「矢内の娘、私も行こう。」

 

そう言うと勇者はサチと山田を連れて貧民街の人々を呼びに行った。

 

エリカ「賢者、これ混ぜご飯?」

矢内「いや、今からこんな感じで三角の形に握って完成だ。」

エリカ「面白そう!」

矢内「よし、そうだな。教えてやるから一緒にやるか?」

エリカ「分かった!アリマ君、一緒にやろう!」

アリマ君「キー!」

矢内「手を水で少し濡らして米が手に引っ付かないようにして軽くフワッと握るんだ。」

エリカ「こう?」

矢内「ああ、もう少し力を抜いた方がいいな。」

エリカ「こう?」

矢内「ああ、いい感じだ。みんなの分だからな。ペースを上げるぞ。」

エリカ「分かった!」

 

俺達は黙々とおにぎりを握る。

 

エリカ「賢者ってすげぇよな。」

矢内「なんだ?改まって。」

 

そういえば、エリカと一対一で話をするのは初めてだな。

 

エリカ「だって、賢者はいつも弱い奴の為に色々と考えているじゃんか。」

矢内「…。」

エリカ「今も、困っている人達を助けている。勇者は誰とでも仲良くなれるし、サチは凄い魔法を使えるし賢い。あたしだけだ、何もできないのは…。」

矢内「何を言ってるんだ、お前はいつもみんなの前に出て魔物と戦っているじゃないか。」

エリカ「戦っているのはみんな一緒だよ。それにいつも賢者やサチがどう戦えばいいかを考えてくれてるからだよ。だから、あたし…。このままみんなの役に立たないのに一緒に居ても良いのかなぁ…。」

 

エリカなりにこの旅で色々と考えていたんだな。

 

矢内「いいかエリカ、人は出来る事と出来ない事があるんだ。俺やサチは剣が使えない。だからお前が前で魔物と戦ってくれてるからいつも俺達が作戦が立てられる。そうやって人は力を合わせてたくさんの事が出来るようになるんだ。」

エリカ「でもさ、あたしは戦う以外に何も出来ないよ。分からない事だらけだよ。」

矢内「分からない事があれば分かるようになればいい。今みたいにおにぎりの作り方を教わればいい。少しずつでいいから色んな事を覚えたらいい。」

エリカ「そっか…。でもやっぱ賢者はすげぇよな。」

矢内「エリカ、手が止まっているぞ。まだ3つ目じゃないか。」

エリカ「3つ?2個の次はたくさんだよ。」

矢内「…。数の数え方から覚えていこうか。」

 

また、俺達は黙々とおにぎりを握りだした。しばらくすると勇者達が人々を連れて戻ってきた。

 

勇者「賢者さま、みんな来ました。」

サチ「あら?エリカさん、何をしてるの?」

エリカ「賢者の手伝いをしてるんだ、おにぎりを握っているんだよ。今、20個目だよ。」

サチ「エ、エリカさん、数を数えれたの?」

山田「ゴスロリ娘、相手がバカでも流石にそれは失礼だ。」

サチ「いや、だって今までは2つ以上の数が分からなかったのよ。」

エリカ「賢者が教えてくれたんだよ!これで23個だ。」

矢内「教えるの大変だったんだぞ…。何しろ2の次はたくさんだったからな。」

勇者「賢者さま、わたしもお手伝いします。」

矢内「じゃあ、二種類のおにぎりを1つずつに分けてみんなに配ってやってくれ。」

勇者「はい、賢者さま。」

サチ「畑中がいないわね。」

矢内「奥でシュテちゃんの相手をしている呼んできてくれ。」

サチ「分かったわ。」

矢内「山田、何をボーッとしている。みんなにできた味噌汁をついでやれ。お前と違ってここの人達は無理矢理働かされて疲れているんだ。これだから女子力0の女は…。」

山田「30過ぎで中二病が直らないお前が私を罵るな。お椀を出せ、私が華麗についでやろう。」

 

味噌汁をつぐのに華麗もくそもないだろうが。残念な女だ。

俺達は貧民街の人々におにぎりと味噌汁を配り続けた。

 

畑中「矢内、手伝えなくて悪いな。」

矢内「まぁ、いいさ。」

酒呑童子「賢者殿!いったい何をしとるんじゃあ?」

矢内「シュテちゃん、せっかく来てくれたのに相手出来なくてすまない。ここの人達の飯を作っていたんだよ。」

酒呑童子「飯を?いったいどういうことじゃあ?」

 

貧民街の人達がシュテちゃんを見て怯えてる。そこに一人の女の子が近づいて来た。

 

「おじさん、だれ?けんじゃさまのお友だち?」

「だ、駄目よ!鬼に近づいちゃ!」

 

女の子が周りの大人に連れ戻される。

 

酒呑童子「ガハハハハハ!何じゃあ!ワシの名は酒呑童子!賢者殿とは良き友人じゃあ!怯えんでもいいわい!ガハハハハハ!そうじゃ!賢者殿!この者達に酒を振る舞ってやろう!今日は楽しい宴会じゃあ!ガハハハハハ!」

矢内「酒なんてねえよ!今日は我慢してくれ!」

酒呑童子「何じゃあ、残念じゃのう。」

 

俺の友達と聞いて安心したのか子供達がシュテちゃんに近づいて来た。質問攻めを受けている。

 

矢内「よし、みんなに行き渡ったな。」

山田「ああ、これだけの数だと流石に疲れたな…。」

矢内「味噌汁ついだだけで何を言ってる。俺はシュテちゃんをゲートで送って行くからお前達は先に食べていて良いぞ。シュテちゃん、送って行くよ。」

酒呑童子「賢者殿、すまんのう。皆の衆!次は楽しい宴会をしようぞ!では、さらばじゃ!」

「鬼のおじさん!バイバイ!」

 

俺はゲートストーンを使ってシュテちゃんの村にたどり着いた。

 

矢内「シュテちゃん、今日はアイツ等を助けてくれてありがとう。」

酒呑童子「賢者殿、今更水くさいぞ!礼など不要じゃあ!」

矢内「ああ、でも言いたかったんだ。改めてありがとうな。」

酒呑童子「ガハハ!気にするな!所で、賢者殿。あの者達の事じゃが?」

矢内「ああ。」

 

俺は砂漠の国での出来事を洗いざらい説明した。

 

酒呑童子「なんじゃと?あの者達は…。食うものもままならぬと言うことか!」

矢内「ああ、国の根本から変えないとどうにもならない。」

酒呑童子「どうにかならぬのか?」

矢内「まぁ、どうにかするさ。作戦は立ててある。」

酒呑童子「賢者殿、ワシ等に手伝えることがあったら言ってくれ。」

矢内「そうだな、じゃあ皇帝陛下に伝言を頼めるか?」

酒呑童子「賢者殿!お主はあの者達の為に戦うのじゃろう!」

矢内「ああ。」

酒呑童子「じゃったら!」

矢内「いや、駄目だ。」

酒呑童子「賢者殿!ワシ等に遠慮なぞするな!頼ってくれ!」

矢内「遠慮なんかしてない。シュテちゃん達にも戦わせたらファンタルジニアと砂漠の国の戦争になってしまう。」

酒呑童子「ならせめてワシだけでも…。」

矢内「いや、シュテちゃんは目立つ。俺は短期決戦で城に潜り込んで国王とその一部の配下だけを倒すつもりだ。」

酒呑童子「賢者殿、ワシは…。」

矢内「シュテちゃん、俺はみんなが大好き賢者様だぞ。少しは友人である俺を信用してくれよ。」

酒呑童子「ガハハ!賢者殿、分かった皇帝陛下の伝言引き受けたぞ!言ってくれ!」

矢内「ああ、『砂漠の国の王をやっつけてくる。万が一俺が負けたら貧民街の人々を国に引きとってくれ!』って伝えてくれ。」

酒呑童子「何を言い出すのじゃ!」

矢内「やるからには勝つつもりだがな…。相手は神様がバックにいる。」

酒呑童子「賢者殿、必ずや勝つのじゃ!ワシとの飲み勝負もあるからのう!」

矢内「ああ!」

 

シュテちゃんと別れて俺はゲートストーンを使って砂漠の国に戻った。俺は本当に良い友人をもった。

 

 

勇者「あっ、賢者さま。」

 

再び空き家に戻ってきた。

 

矢内「みんな居るか?」

サチ「ええ、居るわよ。改まって何かしら?」

矢内「明後日、この国の王をやっつけにいく。」

畑中「矢内、何を言い出すんだ!クーデターだぞ!分かっているのか!」

矢内「ああ。最悪は俺一人でもやるつもりだ。で、お前達はどうする?」

サチ「いちいち聞く理由があるのかしら?最初に言ったわよ。賢者さんに従うって。」

矢内「今回戦うのは魔物とかじゃなく同じ人間だ。人を殺すことになるかも知れない…。だから、覚悟がいる。」

エリカ「分かった。」

勇者「分かりました。」

矢内「お前達、分かってないだろ!下手したら死ぬかも知れないのだぞ!分かってるのか!」

エリカ「えっ?なんで?あたしはこの国の兵士なんかに負けないよ!」

矢内「お前達が相手を殺すこともあるんだぞ!」

エリカ「ならないよ。だって賢者が相手を殺すことにならないようにいつも作戦を考えてくれるじゃん。」

アリマ君「キー!」

矢内「いや、作戦どうりにいくとは…。」

勇者「わたしは何があったとしても賢者さまと一緒です!」

矢内「お前達…。何も考えてないだろ。」

サチ「賢者さん、ゆうりんやエリカさんが物事を考える訳ないじゃない。」

山田「矢内、お前が何を言ってもこいつ等はお前と共に行動する。いいから作戦を教えろ。」

矢内「山田、お前は別に元の世界に戻れるのだから命を危険にさらす必要ないだろ。」

山田「矢内、エルフの娘達が城に捕まっている。すぐにでも助けなければいけない。幼い子供は神の生け贄にされる。それにあの貴族の小僧に殴られた借りもあるからな。」

矢内「分かった。相手は武器を持っているから無理はするなよ。」

山田「お前が私の心配をするな。気持ち悪い。」

畑中「矢内、気を付けろよ!」

矢内「ああ。」

サチ「賢者さん、明日は自由行動よね。私達はちょっとスケットを探してくるわ。」

矢内「スケット?シュテちゃん達やファンタルジニアの連中は駄目だぞ。他の国の人間だと戦争になるからな。」

勇者「違います。虎のおっちゃんです。」

矢内「はぁ?誰だよ。」

エリカ「ここの人達に聞いたんだよ。その人がみんなに食べ物を持ってきてくれたり貴族の男達に襲われそうになった時に助けてくれたり、砂漠の国のヒーローなんだって!」

矢内「ヒーロー?ヒーローは愛の戦士スコールマンじゃないか。」

サチ「…。はぁ…。」

矢内「サチ!無視するなよ!何だよその溜め息は!」

サチ「呆れているのよ。」

 

 

 

決戦は明後日だ。今回は絶対に失敗はできない!ここの人達の明日の為に絶対に勝つ!

 

 

 

 

第12話

愛の戦士 スコールマン

END




    スコールマン 愛のテーマ

    作詞/作曲 矢内 孝太郎


  宮崎県から  やって来た

  都城の    正義の使者だ

  乾いた心をリフレッシュ

  あなたのハートをリフレッシュ

  他社の飲み物メーカー  認めない

  絶対無敵の正義のヒーロー

  愛の戦士   スコールマン




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決戦前日 1

決戦前日…

 

酒呑童子「皇帝殿ー!おるかー!」

「酒呑童子殿!いったいどうしました?陛下は城の中です。」

 

酒呑童子「そうか!早く通してくれ!ワシは賢者殿から伝言を預かっておるんじゃー!」

「賢者様から?分かりました!直ぐにお通しします!」

 

酒呑童子は矢内の伝言を伝えるべくあのあと直ぐにファンタルジニア城に出向いていた。城の戦士に案内され謁見の間にたどり着いた。

 

「この奥に陛下が居ます。」

酒呑童子「皇帝殿ー!」バン!

 

酒呑童子は勢いよく扉を開ける。

 

皇帝陛下「おお!酒呑童子よ、よく来てくれた!」

キサラギ「珍しいな。そなたが一人で来るとは。」

酒呑童子「悠長な事を言ってる場合じゃないぞ!ワシは賢者殿からお主達に伝言を預かって来たんじゃあ!」

 

酒呑童子は矢内達が砂漠の国で起こった出来事を洗いざらい説明した。

 

キサラギ「矢内殿は、砂漠の国の王を倒すつもりなのか…。」

酒呑童子「そうなんじゃ!ワシは…賢者殿の力になりたいんじゃが…。」

皇帝陛下「そうか…。酒呑童子よ、よく知らせてくれた。礼を言う。」

酒呑童子「礼など不要じゃ!それより賢者殿は…。」

キサラギ「こんな事になるとは…。」

皇帝陛下「心配は要らん!」

キサラギ「陛下?」

酒呑童子「皇帝殿?」

皇帝陛下「お前達、戦いは矢内に任せろ、我らがするべき事をすれば良いだけだ!」

酒呑童子「するべき事じゃと?」

皇帝陛下「矢内が勝った後にする事と言えばなんだ?」

酒呑童子「宴…。宴会じゃ!」

皇帝陛下「我らが先に準備をしないとじゃな。」

キサラギ「陛下、お言葉ですが…。」

皇帝陛下「なんだ?キサラギ、お前は矢内を信じていないのか?」

キサラギ「矢内殿は万が一負けた時の為に我々に伝言をなされたのでは…。」

皇帝陛下「矢内は絶対に勝つ。我は矢内を信じておる!」

酒呑童子「そうじゃ!賢者殿は絶対に負けん!じゃからワシは宴会の準備を進めるぞ!」

皇帝陛下「酒呑童子よ。頼むぞ!我も国の者や兵達に声をかけて砂漠の国に向かう!」

 

???「ハハハハハハ!この俺達を差し置いてお前達、面白そうな事を企んでいるな!」

キサラギ「何者だ!陛下!お気をつけ下さい!」

 

謁見の間にあるゲートが急に光だし何者かが出てきた!

 

ロキ「矢内の奴、また俺達に黙って面白そうな事を企んでいるな!」

マナ「私達も勿論パーティーに参加致しますわ!」

皇帝陛下「誰だ?そなた達は?」

キサラギ「あっ!そなたは!」

ロキ「おお!お前は酒呑童子の村で会ったな!しばらくだな、あの時の宴会は楽しかったよな!」

皇帝陛下「宴会?どう言うことだ?」

キサラギ「いえ、あの…。それは…。まあ、その様な事はさておき、ロキ様、どうしてここに?」

ロキ「ああ、お前達に協力してやろうと思ってな!」

マナ「そうですわ。神様であるロキ様がお力をお貸しするのです。有りがたく思いなさい。」

酒呑童子「ロキ様、そのおなごはいったい何者じゃ?」

ロキ「ああ、知らん!矢内が勝手に連れて来た。この女、なかなか面白いから俺のしもべにした。」

キサラギ「その女性は僧侶のようですが…。どう言うことなのか?」

マナ「神は面白い者の味方ですわ。貴方の様な生真面目そうな男には教えはしませんわ!」

皇帝陛下「これ、そう言わずに教えてはくれぬか?」

マナ「貴方は顔が醜悪で面白いから特別に教えて差し上げましょう。」

皇帝陛下「顔が醜悪…。」

マナ「良いかしら?わたくしは砂漠の国の教会で僧侶をしていましたの。それで砂漠の国の勇者の仲間になったのですが…。勇者の兜を手に入れるために賢者の仲間に戦いを挑んで負けてしまって…一人取り残されたわたくしは賢者にロキ様のもとに連れて来られて今に至りますわ。今はロキ様のしもべとして行動を共にしていますのよ。」

キサラギ「砂漠の国の勇者…。そなた以外の者はどうなったのだ?」

マナ「…。」

キサラギ(無視された…。)

皇帝陛下「そなたの仲間はどうなったのだ?教えてくれぬか?」

マナ「プッ。面白い顔ww!」

キサラギ「陛下を愚弄するな!」

マナ「つまらない男…。口を聞く気にもなりませんわ。」

キサラギ(腹立つ…。)

皇帝陛下「そなたの仲間の行方は知らぬのか?」

マナ「見れば見るほど面白い顔ですわ。良いでしょう。お答えいたしますわ。」

マナ「わたくしは神の世界で砂漠の国の様子を見ていましたから何でも知っていますわ。まずは、戦士のガリアスは国王と一緒に居ますわ。この男は金持ちの貴族の息子で自分の権力を得る事しか考えていないとるに足らないつまらない男ですの。勇者のアレス達も死刑にして手柄を自分の物にしようとしている屑ですわ。」

酒呑童子「その勇者達はどうなったのじゃ?賢者殿達と敵対してるのか?」

マナ「ああ、アレスね。プッww!あっ失礼いたしましたわ。少し思い出し笑いをしてしまって…。」

キサラギ「その勇者アレスはどうなったのだ?」

マナ「…。」

キサラギ(また無視された…。なぜ自分だけ…。)

皇帝陛下「で、他の仲間は?」

マナ「後、魔法使いのリリーと勇者アレスは一緒に行動してますわ。それで勇者のアレスなんだけどwwアイツ、なけなしのお金を全て使って町外れの娼婦を買いに行ったのだけどwwガチガチに緊張してね、何もしないままお金だけ取られてリリーに説教されていたのよww。ね、可笑しいでしょ?」

ロキ「アイツ、出てきたとき座り込んで泣きそうになってたもんな!ハハハ、あれは傑作だったよな!」

皇帝陛下(人の不幸を笑っている…。本当に神様なのかこの男は?)

マナ「フフフ。アイツ、出てきて言った一言が『ちくしょう…。金返せよ…。』って呟いていたのよ!半泣きでww可笑しいったらありゃしないわww。」

ロキ「『金返せよ…。』ってダハハハハハ!面白れー!今は何をしてんだそいつは?」

マナ「今日はリリーと一緒に国の兵士達に追いかけられて貧民街に逃げ込んでいましたわ!」

酒呑童子「貧民街じゃと?賢者殿が居る所じゃな。」

キサラギ「その勇者は矢内殿と敵対しているのではないのか?」

ロキ「ああ、たぶん大丈夫だ。そのアレスって奴、アホだからたぶん矢内に言いくるめられる。」

マナ「それよりパーティーの準備ですわ!鬼の貴方と不細工は町の人達を集めて砂漠の国に向かいますわよ!」

酒呑童子「しかしのう…。砂漠の国じゃと距離があるのう。」

ロキ「ハハハ!だからこのゲートを使うから砂漠の国は一瞬だ。」

皇帝陛下「おお!何とありがたい!キサラギ!留守は任せる!」

キサラギ「えっ?陛下?」

マナ「そうですわね。堅物のつまらない男は留守番にするのが一番ですわ。」

キサラギ(何故、自分だけ…。腹立つ…。)

 

こうしてロキ達の力を借りファンタルジニアの一同は砂漠の国に向かうのであった。

 

 

 

 

一方その頃…。

 

矢内「俺は町に出掛けてくる。」

山田「何処へ行くつもりだ?」

畑中「ハッハーww!また風俗か?」

矢内「違うわ!城に入るために必要な物を手に入れてくる。」

山田「必要な物?」

矢内「ああ。後で作戦を決める時のお楽しみだ。」

畑中「矢内、気を付けろよ!」

矢内「ああ、所でアイツ等はどうした?」

山田「スケットを探す為にあのゴスロリ娘が奥で何かしている。」

矢内「ああ、例のコックリさんで探しだすつもりか。」

 

奥からサチが出てきた。

 

サチ「賢者さん、私の黒魔術『フォクシーくん』よ。」

矢内「一緒だろうが…。まあいい。サチ、お前達は面が割れてるからあまり彷徨くなよ。」

サチ「分かっているわ。」

 

 

町の至る所に兵士がいる。俺達を探しているのだろう。なるべくしたっぱの弱そうな兵士に話しかけるか。俺が近づくと向こうからは話かけてきた。

 

「あんた、見慣れない顔だな。何処から来た?」

矢内「世界中を旅しているので何処からと言われましても…。答えにくいですね。話すと長くなりますので…。それよりこの国は兵隊さんばかりで物騒ですな。何かあったのですか?」

「ええ、前日に捕らえた異世界から来た賢者の仲間達が公開処刑の時に逃げ出されまして…。こうやって捜索をしているのであります。」

 

よし、俺の面は割れていない!何とかなりそうだ。

 

矢内「異世界の賢者?そう言えば…。」

「何か知っているのか?」

矢内「いや、もしかしたら…。」

「何でもいい!教えてくれ!今日中に捕まえないと我々が処刑されてしまう!」

矢内「ここじゃあ人目がつきますのであちらの方でお話しましょう。」

「わ、分かった!」

 

よし、上手く一人だけ貧民街に誘き出せた!貧民街の奥に入っていった。今はみんな働かされに行ってるから人はいない。ここら辺でいいだろう。

 

「おい、何処まで行くつもりだ?貧民街に入ってしまっている。」

矢内「ああ、ここら辺で良いだろう。その異世界の賢者ってのは俺だ。」

「なっ!」

 

兵士が剣を構えようとする。

 

矢内「まあ、落ち着けよ。お前、兵士でもかなりしたっぱだろ。」

「それがどうした!」

矢内「大声を出すなよ。そんなしたっぱのお前に良い話があるんだ。その剣を抜くのは話を聞いてからでも良いだろ?」

「話?」

矢内「ああ、お前は絶対に損はしないから。単刀直入に言う。俺は明日、国王や貴族を倒しにいく。だからお前は国を裏切れ。」

「なっ!何を言い出す!そんな事出来るわけ無いだろ!」

矢内「いいか?よく聞いて考えろ。まずお前の着ている鎧一式を金貨15枚で売ってくれ。」

「金貨15枚だと?そんな大金!本当か?」

 

やはり、金貨10枚で俺達の世界で30万円位の価値だから末端の兵士なら絶対に乗ってくると思った。

 

「しかし、自分には家族が居るから…。」

矢内「その辺も大丈夫だ。もし、お前が裏切ってくれたら仮に俺達が負けたとしても他国に亡命出来る手配は出来ている。もちろん、家族も一緒にだ。」

「しかし…。」

矢内「嫌なら嫌で良いけどな。俺が勝っても負けても金貨15枚だぞ。俺が勝てばお前は国を救った英雄の仲間、俺が負けても今より断然に待遇の良い国に行ける。俺に味方した方が絶対に良いだろ?他の末端の兵士にも声をかけるけど金貨15枚も貰えるのはお前だけだぞ?きっとな。」

「分かった!確かに今のままだと自分も食べる物も食べられない状態だからな。自分はあんたにかけるよ。」

 

上手くいった!

 

矢内「1つ教えてくれ。お前と同じように末端の兵士は後、どれくらいはいるんだ?」

「数は分かりませんが一部の貴族出身の兵士以外はだいたいはみんな似たり寄ったりです。今日、外で捜索している者はみんな自分と同じ末端の兵士です。」

矢内「そうか。約束の金貨だ。受け取ってくれ。」

「ありがとうございます。鎧一式をお渡しします。」

矢内「お前は今日一日ここに隠れているといい。ここだとまず見つからないだろうから。」

「そうですね。まさか、貧民街の奥に異世界の賢者が居るって思わないですものね。これには気づきませんでしたよ。」

 

続けて兵士に声をかけていくか。二人組か。一人は子供位の背丈だ。向こうからは近づいて来た、好都合だ。

 

「あんた、ここで何をしている?」

矢内「ああ、旅の途中でな。それよりもここは兵隊ばかりで物騒だな。」

「そりゃそうさ。今、この国は異世界から来た賢者って悪党が現れてな。そいつの捜索をしているのさ。」

矢内「異世界の賢者?」

「ああ、国王の勅命で今日中に捕まえないと俺達が死刑にされちまうんだ。息子も今年に兵士になったので一緒に死刑にされちまう。」

矢内「ああ…。酷い話だな。」

「おっちゃん、国王の悪口なんかを言ったら余所の国の人でも死刑になっちゃうから気を付けないとダメだよ。」

 

そんな簡単に人を殺すのか。絶対に許してはいけない。

 

矢内「…。」

「なんだ?急に黙って。」

矢内「ああ、異世界の賢者だったか…。なんか昨日怪しい奴を見たような…。」

「本当か?何処でだ?」

矢内「たしか…あっちだったかな?近くまで案内するよ。」

「おっちゃん、連れてってくれ。」

矢内「ああ、たぶんこっちだ。」

 

よし、かかった!他の兵士に見つからないように親子の兵士を貧民街の中に誘導した。

 

「おっちゃん、ここは貧民街じゃないか!」

矢内「ああ、ここなら人目につかないからな。」

「どう言うことだ?」

矢内「ああ、俺がその偉大なる賢者様だからな。」

「何!?」

「おっちゃんが…賢者?」

「なぁ…。俺達はあんたの冗談に付き合ってる暇は無いんだよ。」

「そうだよ。」

矢内「証拠を見せてやるよ。」

 

俺は魔法で手のひらに火の玉をだした。

 

「うわっ!魔法だ!」

「まさか…。本当に賢者?」

矢内「ああ、そうだ。」

 

兵士の親子がすかさず武器を構えようとする。

 

矢内「まぁ、落ち着けよ。お前達に相談がある。単刀直入に言う。俺は国王をやっつける。国を裏切って俺達に協力しろ。」

「何?そんな事、出来る訳ないだろ!」

矢内「お前達、俺を捕まえたら褒美は貰えるのか?」

「褒美?俺達はただ捕まえろとしか…。」

矢内「タダ働きか。よくやるな。」

「やらなきゃ俺達が殺されちゃうじゃんか!しょうがないだろ!」

矢内「俺に協力したら一人金貨15枚ずつやるぞ。」

「金貨15枚!本当かよ!」

 

子供の方が食い付いてきた。

 

「馬鹿野郎!俺達が国を裏切ったら母ちゃんはどうなる!」

矢内「ああ、お前達の母ちゃんは砂漠の国から避難させるから問題ない。」

「避難?国を抜けるには関所を通らないといけないじゃないか!どうするんだよ!」

矢内「小僧よく見ておけ。こうするんだ。空間転移魔法だ。」

 

ゲートストーンを使って誤魔化しただけだ。魔法でも何でもない。

 

「父ちゃん、これなら大丈夫だよ!」

「確かにこれなら…。しかし…。他の兵士の同胞と戦うのは…。」

矢内「誰が戦えって言った。お前達が着ている鎧一式を金貨15枚で売って欲しいだけだ。」

「しかし…。俺達が味方してもしあんたが負けてしまったら貴族の兵士や国王に俺達家族は処刑にされてしまう…。」

矢内「ああ、俺が負けてもお前達の亡命先は用意している。勝ったらお前達は英雄の仲間だ。」

「鎧を渡すだけで金貨15枚も…。」

「父ちゃん、協力しようよ!」

「しかし…。」

矢内「まだ迷う事があるのか?今のままだとお前達は死ぬまで理不尽に虐げられて生きていくだけだぞ。」

「…。分かった。協力する!」

矢内「ほら、金貨だ。」

「本物だ…。こんな大金…。」

「でも、子供の俺の鎧なんか要るのか?誰も着れないんじゃないのか?」

矢内「いや、むしろお前の鎧が一番欲しかったんだ。」

 

よし、後二つだ。俺が貧民街の外に出ると4、5人の荒くれ者の兵士が待ち構えていた。

 

「よう!お前が賢者だな?」

 

不味いバレてる!

 

矢内「賢者?俺がそんな偉い奴に見えるのか?人違いだよ。」

「誤魔化そうとしてもそうは行かんぞ。俺達はさっきの親子とのやり取りを見ていたんだよ。」

矢内「…。俺を捕まえるのか?」

「ここじゃ目立つ。奥に入っていけ。」

 

俺は言われた通りに貧民街の奥に入っていった。

 

「よし、誰か貴族の兵士が来ないように見張っておけ。」

「分かった。」

矢内「何のつもりだ?見張りなんか立てて。」

「お前、本当に国王や貴族を倒すつもりなのか?」

矢内「…。」

 

どう答える?下手したら殺される…。

 

「殺されたくなかったら答えろよ、言い方を変える。お前側に就いたら国王や貴族に一泡吹かす事が出来るのか?」

矢内「…。どういうつもりだ?」

「俺達は金なんかいらねえ。あの国王や貴族共を倒せるなら命なんて惜しくねえ。勝てる見込みがあるなら一緒に戦いたい。」

矢内「駄目だ。」

「何!俺達はお前が交渉していた奴等より戦える!命なんて惜しくねえ!」

矢内「命が惜しくないだと?ふざけるな。戦争なんてしたら泣くのは弱い奴等だ。勝っても負けても弱い奴等が泣かない為に俺は作戦を立てているんだ。」

「でも、もう俺達はアイツ等の言いなりになるのはウンザリだ。お願いだ、手伝わせてくれ!」

矢内「分かった。お前達も覚悟を決めて来たんだろう。」

「じゃあ!」

矢内「ああ、協力してもらう。まずは鎧一式が後二ついる。貸してくれ。」

「ああ!」

矢内「それから、中に素通りできるように城の門番を仲間に引き入れたい。」

「それなら大丈夫だ。俺が明日、門番の日だから。」

矢内「よし、それならばっちりだ。中に入れたら後は国王を捕まえるだけだからな。」

「それだけ?他には?」

矢内「貴族の兵士、ガリアスだったか。勇者アレスと一緒にいた。」

「今までも待遇が悪かったがアイツが隊長になってから更に酷くなってな。少しでも気に入らない事があったらすぐに市民や貧民を処刑にしやがる。」

矢内「アイツは雑魚だ。ビックリするぐらい弱い。どうせ国王の勅命だとか言って誰も逆らえないようにしていたのだろう。」

「えっ?アイツ、弱いの?」

矢内「ああ、勇者一向と戦う時に一番始めに倒した。瞬殺だったな。」

「嘘?でも、アイツの周りに用心棒が居るぞ。」

矢内「まあ、貴族なんて国王の後ろ楯が無くなったらすぐに逃げ出すさ。取りあえず貴族共は放って置けばいい。こういうのは戦う数が少ない方が成功するんだよ。」

「そういうものなのか?」

矢内「まあ、夜になったら作戦会議も兼ねてお前達の家族も連れて貧民街に来てくれ。」

「家族も?」

矢内「そうだ。お前達の家族もちゃんと守らないとダメだろ?」

「家族も助けてくれるのか?」

矢内「何を言ってるんだ?当たり前だろうが…。」

「そこまでしてくれるのか…。荒くれ者の俺達に…。賢者様!俺達は今後何があろうとあんたに生涯忠誠を誓います。」

矢内「そう言うのは止めてくれ。夜に必ず来いよ!」

「はい!賢者様!」

 

荒くれ者の兵士達は俺に敬礼して勤務に戻っていった。そうだ時間もあるし一度自分の世界に戻って食材を揃えておこう。



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決戦前日 2

わたし達はこの国のヒーローである虎のおっちゃんを捜しています。さっちんの黒魔術で調べた所、どうやらヒーローは教会の方に居てるみたいです。あそこに人が居ますから聞いて見ましょう。

 

サチ「兵士が至る所にいるわね…。みんな見つからないようにしてね。」

エリカ「分かった。」

サチ「あら?ゆうりんは?」

エリカ「あっ!あそこの兵士と居る!」

サチ「ちょっと!」

 

勇者「あの…。わたし達は虎のおっちゃんを捜しているのですが、どこにいるか知っていますか?」

「虎のおっちゃん?ああ!お嬢ちゃんも虎のおっちゃんに助けてもらったんだな。でもな、虎のおっちゃんが何処に居るかなんて誰にも知らないのさ。何せ虎のおっちゃんは砂漠の国の伝説のヒーローだからな。」

勇者「そうですか…。」

サチ「ちょっと!ゆうりん!こっち来なさい!」

 

わたしは直ぐ様さっちんに連れて行かれました。

 

「お嬢ちゃん達!俺はいいが貴族出身の兵士には近づくなよ!」

サチ「?貴方、賢者一向の捜索をしているのでしょ?良いのかしら?私達を行かせて。」

「ああ、夜になったら分かるさ。またな!」

サチ「???まあいいわ…。」

 

私達は教会に向かいました。

 

勇者「虎のおっちゃんの居場所、誰も知らないのでしょうか?」

サチ「ちょっと!ダメでしょ!勝手な事をしちゃ!」

勇者「でも賢者様は町の事は地元の人に聞くのが一番だっていつも言っていました。」

サチ「だからって兵士に聞いたらダメでしょ!私達一度捕まってるのよ!」

勇者「ご免なさい…。」

サチ「まあ、何でか分からないけど大事に至らなくて良かったわ。あの人、わざと逃がしてくれたみたいだし…。所でエリカさんは?」

勇者「あっ…。あそこです。」

 

エリカにゃんが兵士の人に話しかけようとしています。

 

エリカ「なぁ、虎のおっちゃん何処に居るか知ってる?」

「あっ!お前は賢者の一味!」

サチ「ちょっと!さっき見つからないようにって言ったばかりでしょ!」

「引っ捕らえてやる!覚悟しろ!」

エリカ「えっ?なんで?」

サチ「エリカさん!早く逃げて!」

エリカ「えっ?分かった!」

 

兵士の人がエリカにゃんを追いかけてきました!

 

アリマ君「キー!」ボカ!

「ぐわっ!」

 

アリマ君が兵士の人を殴って気絶させました。エリカにゃんがその隙にこっちにきました。

 

サチ「アリマ君、ありがとう。助かったわ。」

アリマ君「キー!」

サチ「みんな、もう戻りましょう…。」

勇者「えっ?」

エリカ「なんで?今、捜しだしたばっかりじゃんか。」

サチ「あなたたちが好き勝手に動くから捜索出来ないのよ!帰るわよ!」

 

わたし達は虎のおっちゃんは見つける事が出来ないまま帰ることになりました。

 

 

 

その頃…。

 

リリー「なんで、私達が兵士に追われるのよ…。」

アレス「まだ追ってくる…。」

 

二人は重罪人の扱いを受けて兵士に追われている。

 

アレス「リリー、貧民街に逃げ込もう。あそこなら道が入り組んでいるから直ぐには見つからない。」

リリー「待って!前に大臣が居る!なんで居るのよ!」

 

何故か貧民街から出てきた大臣に鉢合わせた。

 

大臣「そのまま貧民街の奥に行け。夜明けになったら国を抜けるんだ。」

リリー「えっ?」

大臣「返事をせずにそのまま走るんだ。いいな、こんな事で死んではならぬ。」

アレス「リリー、言う通りにするぞ。」

リリー「え、ええ。」

 

アレスとリリーは貧民街の奥に駆け抜けた。

 

「何処に逃げた!?」

大臣「お前達、何があった?」

「あっ、大臣殿!勇者アレスを追っていましてこの辺りに逃げたはずですが…。」

大臣「勇者…。それより異世界の賢者が関所の方に現れたと報告があった。そなたたちも直ぐ様向かわれよ!」

「しかし…。勇者アレスは重罪人、ここで逃しては…。」

大臣「今は賢者を捕らえるのが最重要事項だ。直ぐに向かわれよ!」

「ハッ!失礼しました!直ぐ様、賢者を捕らえに向かいます。」

大臣「頼むぞ!」

 

兵士達は関所の方に走り去った。

 

アレス「助かったのか?」

リリー「なんで私達を助けたのかな?」

 

大臣は隠れているアレス達の方に近づき一言呟いた。

 

大臣「明け方に関所の見張りを退かしておく。その間に国を抜けられよ。異世界の賢者にも会うことがあれば伝えてくれ。私にはこれぐらいの事しか出来なくてすまない。勇者達よ、許してくれ…。」

 

大臣は立ち去った。

 

リリー「ど、どう言うこと?」

アレス「取りあえず、奥に隠れよう。腹減ったな…。」

リリー「それはつまらないことにお金を使ったあんたのせいじゃない…。」

 

食材を買いに戻っていたので貧民街に着いたのは夜になった。みんなの元に急いで戻る。

 

「あっ!けんじゃさま!どこに行ってたの?」

 

貧民街の女の子が笑顔で声をかけてきた。始めに出会った時より大分元気になった。

 

矢内「買い出しに行っててな。直ぐにご飯の時間にしよう。」

「今日は虎のおっちゃんがご飯を持ってきてくれたから大丈夫だよ。けんじゃさま!いつもありがとう!」

矢内「そ、そうか。その虎のおっちゃんは何処に居るんだ?」

「ん?知らない。みんなのおうちにパンが置いてくれてたからきっと虎のおっちゃんが持ってきてくれたんだよ。」

 

虎のおっちゃんか。何者なんだ?勇者達と合流しよう。俺はみんなが居る奥の空き家に向かった。

 

矢内「みんな、遅くなった!」

山田「矢内、客が大勢来ている。どういうつもりだ?全員兵士だ。隣の空き家に居る。」

 

大勢?どう言うことだ?

 

「賢者様!戻られたか!あれから俺達が同じ境遇の者に声をかけて回ったんだ。俺達28名賢者様に忠誠を誓います!」

矢内「俺達は仲間だ。そう言うのは止めろと言っただろうが…。」

畑中「矢内、コイツ等全員仲間に引き入れたのか?」

勇者「凄いです!」

エリカ「すげぇ!」

矢内「畑中、お湯を沸かしてくれ。沢山だ。飯にしよう。」

畑中「ああ。お湯を沸かすって、まさかカップラーメンじゃないだろうな?」

矢内「すまん。今日はカップラーメンで我慢してくれ。」

サチ「賢者さん、今日は買い出しにも行ったわよね?どう言うことかしら?」

矢内「いいか?明日、俺達が勝ったら次の日は国民みんなでパーティーだろうが。だから今日は食材をケチりたいんだよ。」

山田「矢内、前哨戦だ。肉を焼こう。」

サチ「山田、貴女産まれて初めて良いこと言ったわね。決戦前よ!お肉にしましょう!」

矢内「話を聞いてたか?食材はケチりたいんだよ。これだから女子力0の女は…」

山田「これがある。」

畑中「まさか…。」

 

山田がサンドワームの肉を取り出した。

 

山田「誰か!網を持ってきてくれ!」

「は、はい!」

 

兵士の一人が金網を取りに行った。俺はミミズなんか食わんぞ!

 

畑中「矢内、今日はカップラーメンだけで我慢しよう…。」

矢内「ああ…。」

 

お湯が沸いてカップラーメンに注ぐ。今のうちに作戦を決めよう。

 

矢内「みんな、聞いてくれ。明日の作戦を立てる。」

 

みんなが俺に注目する。

 

矢内「明日、まずは俺達が城に侵入する。」

山田「侵入する?」

矢内「ああ。ここに居る兵士の鎧を着てバレないように中に入る。」

畑中「門番はどうする?」

「あっ、俺が明日は門番だから素通り出来ます。」

矢内「中にはすんなり入れる手配になっている。」

山田「この中に牢屋番の者は居るか?」

「牢屋番は位の高い貴族の兵士です。我々は近付けません。」

山田「そうか。牢屋番を倒さないとエルフの娘達を助ける事が出来ないのだな。」

矢内「勇者、明日は山田と一緒に行動しろ。」

勇者「分かりました。山田さんとご一緒なのですね。嬉しいです。」

矢内「後、一人お前達の中で一緒に行ってくれ。」

「じゃあ、俺が行く。」

矢内「ああ、すまんな。戦わすはめになってしまった。」

「俺達はあんたにかけている。戦えて光栄だ。」

山田「頼もしいな、よろしく頼む。」

勇者「よろしくお願いします。」

「俺も美人と共に行動出来て嬉しいぜ。あっ、お嬢ちゃん!虎のおっちゃんには会えたか?」

サチ「貴方、あの時の…。夜になったら分かるってそう言うことだったのね。」

「やっぱり会えなかったんだな。」

勇者「はい…。」

エリカ「こんだけ味方が居るなら虎のおっちゃんは居なくても大丈夫だよ!」

サチ「そうね。私の苦労は何だったのかしら…。」

矢内「何を言ってる。明日も苦労してもらうぞ。サチとエリカは俺と一緒に国王を倒しに行く。」

サチ「ええ。」

エリカ「分かった!」

矢内「俺達に鎧を渡す者はここで待機だ。貧民街のみんなを守って欲しい。」

「分かりました。」

矢内「残りの者は臨機応変に動いてくれ!」

「ハッ!」

矢内「それでは作戦会議は終了だ。お前達の家族も呼んでこい!飯にしよう!」

勇者「はい、賢者さま。」

矢内「カップラーメンをみんなに配ってくれ。」

エリカ「分かった!」

「なんだこれは?」

矢内「ああ、これにお湯を入れて3分待ったら出来上がりだ。こんな感じだ。」

 

俺は出来たカップラーメンを見せて食べて見せた。

 

「おお!なんだこれは!待つだけで出来るなんて!魔法だ!」

 

人々が皆、歓声をあげる。

 

サチ「初めは絶対に驚くわよね…。」

アリマ君「キー。」

山田「これぐらいで良いだろう。肉が焼けたぞ。」

勇者「わたし、皆さんにお配りします。」

 

ミミズの肉が配られていく。肉が焼けた香ばしい匂いに釣られて貧民街の人達も集まってきた。

 

エリカ「みんなも食べなよ。」

 

エリカが貧民街の人達にも肉を配る。何の肉かは黙っていよう。

 

「ちょ!俺達の取り分が無くなるだろ!貧民街の奴等にあげるなよ!」

「なんだよ!兵士のお前達は毎日なんか食べれてるだろうが!帰れよ!兵士なんか来るな!賢者様達はお前達なんかには引き渡さないぞ!」

「何だと!俺達は賢者様に忠誠を誓ったんだ!俺達が先に食うんだ!」

山田「肉はたくさんある!ケンカするな!それにお前達、貧民街の人達も同じ砂漠の国の人間だ!それを差別するような発言は関心せんな。それではお前達が嫌いな貴族共と同じだぞ!」

「う…。悪かったよ…。俺達だって肉なんて初めて食べるんで興奮してたんだよ。お前達、悪かったな。」

「俺達もてっきりあんた等が賢者様達を捕まえに来たと思って…。すまなかった。」

エリカ「もう、良いじゃん。みんなで食べようよ。」

勇者「そうです!ご飯はみんなで食べるのが一番美味しいのですよ!」

 

みんなで取り囲んで食事が始まった。兵士の連中も貧民街の人々も楽しそうだ。

 

山田「ゴスロリ娘、肉を焼くのを代わってくれ。」

サチ「?分かったわ。」

 

山田が近付いてきた。

 

山田「矢内、そのままの状態で聞いてくれ。あの二人がこっちの様子を伺っている。」

矢内「あの二人?」

山田「ああ、勇者のアレスと魔法使いのリリーだ。」

矢内「そうか。山田、お前からカップラーメンを渡してやってくれるか?俺が渡すと意地をはって受け取らないかも知れないからな。頼む。」

山田「良いのか?お前に敵対してるのだぞ?」

矢内「ああ、アイツ等は良い奴だ。俺がそうしたいんだ。頼む。」

山田「フッ…。良いだろう。後で寝首を刈られても知らんぞ?」

矢内「そうなったらその時だ。頼む。」

 

 

 

アレス「アイツ等、なんか食ってる…。」

リリー「お腹空いたね…。」

アレス「兵士も居るな…。」

リリー「ねぇ、アレス。賢者って本当に悪い奴なのかなぁ。」

アレス「なに言ってるんだよ…。アイツは俺達を騙したんだぞ。」

リリー「でも、貧民街の人達も兵士達も楽しそう…。」

山田「なら、お前達も一緒に楽しめば良い。矢内には内緒で持ってきた。食べろ。」

リリー「あっ…。美人のお姉さん…。いつから?」

山田「お前達が後ろで見ていた時から気づいていた。」

アレス「なんでだよ!俺達は敵だろうが!なんで…。」

山田「少なくとも私はお前達が敵だとは思っていない。その様子だとろくに食事も出来ていないのだろう。」

リリー「でも…。」

勇者「早く食べないと麺が伸びて美味しくなくなりますよ。良かったらこのお肉も焼きたてなので食べてください。」

アレス「なんで…。俺達にやさしくするんだよ…。ちくしょう…。」

勇者「だってあなた達がいたからわたし達は砂漠の国にたどり着けました。だから困った時はお互い様です。」

山田「そう言うことだ。気にせずに食え。」

リリー「ありがとう…。食べよう、アレス…。」

アレス「ああ…。すまねえ…。」

 

お二人は涙を流しながらカップラーメンを食べ始めました。

 

アレス「うめぇ…。ちくしょう…。」

リリー「おいしい…。」

アレス「ちくしょう…。なんで…。」ポロポロ

リリー「わだじだち…なにもわるいことしでないのに…。」ポロポロ

山田「辛かったな。訳も分からず犯罪者に仕立て上げられて…。今は精一杯泣けばいい。矢内の娘、行くぞ。」

勇者「はい。」

 

わたしは山田さんとみんなの居る所に戻る事にしました。

色んな事を知っていてカッコよくてとても優しい山田さんがわたしは大好きです。

 

リリー「お姉さん…。ありがとう…。」ポロポロ

アレス「すまねえ…。この恩はいつか絶対に返す…。」ポロポロ

 

 

 

矢内「畑中、少しいいか?」

畑中「なんだ、改まって。」

 

人に見付からないようにみんなが居る所から少し離れて話をすることにした。

 

畑中「誰かに聞かれたら不味いのか?」

矢内「ああ、みんなの士気を下げてしまうからな。お前に頼みがある。」

畑中「だからなんだ?」

矢内「ああ、先にこれを渡しておく。」

 

俺はゲートストーンを畑中に渡した。

 

畑中「…。どういうつもりだ。」

矢内「ああ、今回勝てる見込みは正直五分五分だと思う。戦いが長引いたらまず勝てない。」

畑中「それで?」

矢内「最悪の場合、それでここにいる人達や勇者達を連れてファンタルジニアの城に逃げて欲しい。童帝には話をつけてある。お前にしか頼めない…。」

畑中「勇者ちゃん達がお前を見捨てて逃げると思っているのか。」

矢内「だからアイツ等位お前なら上手く言いくるめられるだろ。」

畑中「かー。矢内、お前って奴は…。俺を悪者にするつもりかよ。」

矢内「頼む。」

畑中「俺に頭を下げるな。それで?他に俺がやることがあるのだろ?言えよ。」

矢内「ああ。」

畑中「どうせ、貧民街の人達をここから出さない様にしろって事か?」

矢内「よく分かったな。」

畑中「まぁ、長い付き合いだからな。分かった、これは預かっておく。だから、必ずこれを取りに戻ってこい!いいな?」

矢内「ああ、分かった。」

 

 

 

 

 

準備は出来た。後は神にでも祈るか…神様ってゼクスとロキじゃねえか。無駄なお祈りなんかせずに明日の為に早く寝よう。

 

第13話

決戦前日

END

 



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砂漠の国の大決戦 1

ここから色々なパートに別れてややこしくなりそうなのでたくさんに分けます。文字数も少ないです。そして長いです…。



夜が明けた…。

 

矢内「よし、行くぞ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

兵士の鎧兜を着て砂漠の城に向かう。動きにくい…。なかが蒸れて暑苦しい…。

 

矢内「よくこんなの着てられるな。」

「兜まできっちり被っているからですよ。慣れたらそうでもないですよ。」

サチ「そんなものかしら?」

山田「中に入るまでの辛抱だ。さっさと行くぞ。」

エリカ「アリマ君は?」

矢内「俺の異次元袋の中だ。いつでも出れるように待機している。」

 

そうこうしている内に砂漠の城にたどり着けた。そのまま中に入る。門番も俺達の味方だから素通りだ。

 

「賢者様、ご武運を。」

矢内「ああ、任せておけ。明日はパーティーだ。派手に楽しもうぜ。」

「ハッ!」

 

兵士が俺に敬礼して門を開けてくれた。

 

勇者「賢者さま、明日はパーティーなのですね。」

エリカ「楽しみだな!」

矢内「ああ、その為に今日は絶対に勝とう。」

サチ「そうね。」

山田「お喋りはそれまでだ。行くぞ。」

矢内「そうだな。」

 

中に入ると兵士達が並ばされている。俺達も同じように並ぶ。上の階から誰か降りてきた。ガリアスと大臣だ。

 

ガリアス「お前達!国王陛下のお言葉だ!心して聞け!」

 

くそ弱い雑魚が何を偉そうにしている。上からまた誰か降りてきた。派手な服に指には宝石がちりばめた指輪をたくさんしている。

 

国王「異世界の賢者、及び裏切り者の勇者アレスは見つかったのか!貴様等!昨日1日何をしていた!さっさと探しに行け、役立たず共が!」

「ハッ!」

 

ほとんどの兵士達が城の外に出ていった。残った兵士は俺達を除くと10人位だ。俺達以外は全員貴族の出身の奴等だな。

 

ガリアス「貴様等!何をしている!とっとと行かんか!」

 

もう良いだろう。この鎧兜も暑苦しいし脱いでしまおう。

 

矢内「お前達、もうこれ脱いで良いぞ。おい、貴族の糞餓鬼。前に俺は次に俺の仲間に偉そうにしたら魔法で焼き殺すと言ったよな!覚悟はいいな!」

国王「なんだ?ガリアス、貴様部下の躾が出来ていないようだな。」

ガリアス「へ、陛下。申し訳ありません。貴様、この国の兵士ではないな。何者だ!」

 

俺達は鎧兜を脱ぎ捨てた。

 

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

山田「ダサいポーズを決めてダサい台詞を吐くな。三十路過ぎの男が恥ずかしいと思わないのか。」

国王「賢者だと!我が神に逆らう愚か者め!ソイツ等を絶対に捕らえろ!抵抗したら殺しても構わん!殺れ!」

ガリアス「誰か!先程出ていった兵を呼び戻せ!俺は陛下を安全な場所にお連れする!」

「ハッ!」

 

兵士の一人が外に出ていった。ここからは短期決戦だ。

 

山田「矢内、私達は牢に向かう。あの小僧は私が躾をする。残して置けよ。」

矢内「だったら急いで行くのだな。でないと俺達が先にやっつけてしまうぞ?」

山田「口の減らない男だ、相変わらずだな。矢内の娘、行くぞ!」

勇者「は、はい!賢者さま、行ってきます!」

「賢者様、ご武運を!」

矢内「ああ、しっかり頼むぞ!」

「はい!」

 

山田達は作戦どうり牢に居るであろうエルフ達を助けに行った。

 

「何人か逃げたぞ!」

「放っておけ!先に賢者を倒すぞ!」

サチ「賢者さん、囲まれたわよ。」

矢内「強行突破だ。サチ、エリカ着いてこい!行くぞ!必殺!『ヤナイフレイム!』」ゴォォォォォ!

 

俺は前方に炎の魔法を出した。

 

「うわっ!魔法だ!」

「不味い!」

 

前方の兵士達が驚いて尻餅をついた。今のうちに階段をかけ上がる。

 

矢内「行くぞ!一気にかけ上がる!」

サチ「ええ!」

エリカ「…。」

 

階段を上がった所でエリカが立ち止まった。

 

サチ「エリカさん!止まらないで!」

エリカ「賢者!サチ!ここの兵士達はあたしが食い止めるよ!」

矢内「馬鹿野郎!何を言い出す!」

エリカ「賢者!あたしはこんな奴等に負けないよ!だから行って!賢者達が作戦を立てられるようにあたしが前に出て戦うんだ!」

サチ「分かったわ…。賢者さん、行きましょう!エリカさん、明日のパーティー精一杯楽しみましょう!だから、死なないで…。」

エリカ「分かった!あたしはファンタルジニアの戦士 エリカ!お前達の相手はあたしがしてやる!何処からでもかかってこい!」

矢内「…エリカ、すまない。1つ目、早くなってしまったが出番だ。エリカを守ってくれ。」

 

俺は異次元袋を開けてアリマ君を外に出した。

 

アリマ君「キー!(任せてよ!)」

エリカ「アリマ君!」

「またあの魔物だ!」

「かかれー!賢者の仲間は全員倒せ!」

 

兵士達がエリカに襲いかかる!

 

エリカ「行くぞぉ!」

アリマ君「キー!」

 

サチ「賢者さん、行くわよ!」

矢内「ああ!」

 

俺とサチは階段を昇りきり2階に上がった。

 



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砂漠の国の大決戦 2

その頃、貧民街では畑中が人々を集めていた。

 

畑中「みんな!聞いてくれ!」

「なんだ?」

「こんなところに集めて?」

「早く仕事に行かないと駄目なのに…」

アレス「アイツはペテン師野郎の仲間の奴だ。何をする気だ?」

リリー「アレス、国から逃げ出さなくて良かったの?」

アレス「俺は美人の姉さんに借りを返すまでは国を出ねぇ。」

 

周りがざわついている。構わず畑中が話を続ける。

 

畑中「今!俺の友人である矢内 孝太郎がこの国の為に立ち上がった!そう、お前達が言う賢者様がだ!」

「賢者様が?」

「いったい何を?」

畑中「お前達はそれでいいのか!お前達の国を矢内達だけに任せて良いのか!今こそ!お前達が立ち上がる時じゃないのか!」

「そうだ!」

「そうだ!」

リリー「あいつ…。何を?」

アレス「何を考えているんだ…あのペテン師野郎は国と戦っているのか?」

畑中「お前達の賢者様、矢内 孝太郎と共に戦おう!今こそ!お前達を食い物にしてきた貴族達を倒し自由を手にする時だ!」

「お、俺は戦うぞ!」

「俺もだ!」

「あたしもたたかう!」

「俺達を飢えから助けてくれた賢者様を今度は俺達が助けるんだ!」

「そうだ!」

アレス「なんだこれは!」

リリー「あっ!アイツ、こっちを見ている。」

畑中「アレス!リリー!頼む!みんなに力を貸してくれ!」

アレス「何を言い出すんだ!お前達は何をしてるか分かっているのか!」

畑中「アレス!人々の為に前に出て戦うのが勇者だろうが!違うか!」

 

畑中は小さな袋を投げつけた。

 

リリー「あっ!これ、不思議なメダルだ!」

アレス「これがあれば…俺は勇者だ。王様じゃなく人々の為に戦うんだ。よし!お前の口車に乗ってやる!この勇者アレスが力を貸してやるぜ!」

畑中「よし!俺達には砂漠の国の勇者、アレスがついている!俺達は勇者アレスの軍だ!」

「オー!」

「勇者アレスと共に戦うぞ!」

「オー!」

 

人々が一丸となり戦いに赴く。

 

リリー「スゴイ…。アイツ、何者なの?」

 

アレス「よし、みんなの武器がいるな。召喚メダルガチャ!」

 

巨大なガチャガチャ出てきた。

 

「なんだ?何が起きるんだ?」

アレス「早速3枚使うぜ!」

 

アレスがメダルを入れてガチャガチャをする。ガチャガチャから大きな箱が2つと豪華で小さな箱が1つ出てきた。

 

アレス「やったぜ!1つはスーパーレアだ!ノーマルの箱から開けるぜ!」

 

アレスが箱を開けると大量の棍棒とひのきのぼうが入っていた。

 

「武器が出てきた!」

アレス「よし、みんなに配れ!ではスーパーレアの箱を開けるぜ。」

 

中にはちりとりが1つ入っていた。

 

畑中「ハッハーww!ちりとりww!大ハズレじゃねえかww!」

アレス「笑うな!」

リリー「あっ、説明書が入っている。えっと、少しの魔力で乗ると空が飛べる魔法のちりとりだって!私が使うわね!」

 

リリーは魔法のちりとりを手に入れた。

 

リリー「早速試してみよう。あっ、浮いた!スゴイ!ホントに飛んでる!」

 

畑中「普通、魔法使いの空飛ぶ道具ってホウキなのにちりとりで飛ぶってww」

アレス「もう良いだろ!笑うな!みんな!武器を持ったな!行くぞ!俺達の手で国を変えるんだ!」

畑中「アレスに続けー!」

「待ってくれ!俺達は戦うとして女子供を残していくのは…。」

???「ガハハハハ!それならワシ等に任せておけ!」

アレス「だ、誰だ!」

「あっ!鬼のおじさんだ!」

畑中「酒呑童子か!ハッハーww!すまねえな!来てくれて!」

酒呑童子「ここの守りはワシと虎熊童子に任せてお主達は賢者殿を助けに行けい!」

畑中「ハッハーww!ありがてえ!みんな行くぞ!アレスの軍、出陣だ!」

酒呑童子「皆の衆!賢者殿を援護して必ず死ぬことなく戻って来るのじゃ!それが終わったら楽しい宴会じゃあ!ガハハハハ!」

虎熊童子「酒呑童子様、お待ちください。皆、腹が減っては戦は出来ぬ。茨木童子様から蒸かし芋を預かって来ている。一人1つ持って行ってくれ。」

畑中「ハッハーww!何から何まですまねえな!」

虎熊童子「いえ、自分達はいつでもあなた達の力になります。畑中殿、先程の演説、見事でした。流石は賢者様のご友人であられる。」

アレス「ペテン師野郎はあんな味方までいるのか…。」

リリー「スゴイ…。」

畑中「アレス!リリー!呆けている場合じゃねえぞ!この国の歴史が変わる瞬間だ!気合いを入れろ!」

リリー「歴史が…変わる?」

畑中「そうだ!お前達は未来永劫語り継がれる英雄になるんだ!」

アレス「俺達が…英雄?よし、みんな行くぞ!この戦い、絶対に勝つぞ!」

「オー!」

アレス「俺達に続けー!」

「オー!」

畑中「勇者アレスに続けー!この国の未来を勝ち取るんだ!」

「オー!」

 

畑中はアレス達を言いくるめて貧民街を出て行った!

 

虎熊童子「スゴイ男だ…。言葉だけで他国の勇者を操り軍隊を作りあげた…。」

酒呑童子「ガハハハハ!流石は賢者殿が背中を預ける男じゃ!本当に面白い男じゃあ!」

 

 



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砂漠の国の大決戦 3

2階にかけ上がると大広間になっている。三階に上がる階段が奥にある。階段から3人降りてきた。体格の良い強そうな兵士だ。

 

「コイツらがガリアス様に逆らう連中か!」

「女も居るぜ!あの女、俺の物にする!お前ら手を出すなよ!」

「うるせえ!早い者勝ちだ!」

 

いきなり一人、俺達に突進していた。

 

サチ「人間の屑が相手だと手加減しなくて良いから助かるわ。行くわよ。エン…ト…トライ…スマッシュ!」バチン!

「グワー!」グシャ!

 

突っ込んできた男がサチのビンタを喰らって物凄い勢いで壁にめり込んだ。

 

サチ「次はあなたね。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

「なんだ?体が勝手に動く!」

「おい!何をする!止めろ!」

「違う!体が勝手に動くんだ!」

 

サチの黒魔術で二人が同時打ちを始めた。

 

サチ「賢者さん、今がチャンスよ。上の階へ行って!」

矢内「ああ!」

 

俺が上の階へ向かおうとしたとき下の階から2人の兵士が上がって来た。

 

矢内「何?まさか?」

サチ「嘘…。下から来たって事は…。」

 

驚く俺達を無視して兵士が大声を上げる。

 

「伝令!貧民街で反乱が起きました!奴等は勇者アレスの軍と名乗り貴族達を倒してこちらに向かっております!」

「反乱だぁ?兵士は何をしている!逆らう奴は殺してしまえ!この様にな!」

 

サチが操っていた男が剣を貫かれて殺された!

 

サチ「まさか…。味方を簡単に殺すなんて…。」

「女!貴様は絶対に殺す!」

サチ「く、来る。」

「お待ちください!ただいまアレスの軍は味方を次々と増やしており貴族の家は全て破壊して今度は教会を襲う所です!その後はこちらの援護に向かいます!」

 

ん?こちらの援護に向かう?

 

「ガリアスの屋敷は無事か?」

「特にアイツの屋敷は徹底的に破壊しました!金目の物も全て奪いました!」

サチ「賢者さん、まさか?」

矢内「ああ、アレスにそんな事出来る訳ねえ。アレスは上手いこと畑中に担がれたんだな…。アイツ、街の人を巻き込みやがった…。」

「全て奪った?俺の雇い料は払えるのか?アイツは。」

「さぁ?で、そんなことより我々はどちらの援護に向かったら良いでしょうか賢者様?」

サチ「ええ、アイツが邪魔で賢者さんが上に上がれないから私の援護をお願いするわ。」

矢内「お前達、下から来たよな?エリカはどうした?」

「ハッ!エリカ様は下で戦っております。貴族の兵士もほぼ倒されている状態でもうじき方がつきそうです。」

矢内「そうか…。よかった…。」

「貴様等!まさか賢者の味方か?」

矢内「今頃気づいたのか。で、お前達はどうする?どうせその刺された男も死んでいないのだろ?」

「くそっ。バレていたのか。」

矢内「お前達、ガリアスにいくらで雇われた?」

「(多目に言っておくか。)金貨5枚だ!」

矢内「お前達、ガリアスを裏切れ。俺だったら3倍の15枚をやるぞ?」

「本当か?」

「よし!乗った!(本当は金貨2枚だけど…こっちに付いた方が特だ!)」

「よし!あんたに味方するぜ!(今の流れだとどうせこの国は負けるだろうしな!金貨15枚、ラッキー!)」

矢内「よし!上の階へ行こう!」

「オー!」

サチ「また味方が増えた…。」

矢内「そうだ、畑中から何か伝言があるだろ?」

「え、ええ。お前が死んだら次は俺が主役になるから安心して死ねと…。」

矢内「ハハハ!ますます死ぬ訳には行かなくなったな!」

 

仲間を増やして3階にかけ上がって行った!

 

 

 

 

 

畑中「矢内への伝令はそろそろ着いた頃だな。次は教会だ!」

「オー!」

 

アレスの軍は次々に国民を味方につけていき何百人もの大人数になっていた。

 

リリー「どんどん人が増える…。」

アレス「ああ…。」

畑中「アレス!ボーっとするな!指揮官のお前が号令をあげなくてどうする!」

アレス「ああ、そうだった。みんな!次は高い税金を払わすだけ払わして何も助けてくれなかった教会を攻めるぞ!」

「オー!勇者アレスに続けー!」

「教会の連中も許すなー!」

 

アレスが先陣をきって教会のドアを開ける。すると教会の司祭達が我先にと出てきた。

 

「助けてくれ!殺される!」

アレス「なんだ?」

リリー「どういうこと?」

「おお!そなたは勇者アレス!助けてくれ!我らが神の使徒マナが見知らぬ男を連れて来て乱心してしまった。助けてくれ!マナに殺される!」

リリー「マナ?アイツ、生きていたんだ…。」

 

奥からロキと返り血を浴びたマナが血塗れのフレイルを振り回しながら出てきた。

 

マナ「あら?アホのアレスじゃありませんこと?」

アレス「誰がアホだ!」

リリー「マナ!あんた今まで何処にいたのよ!それに血塗れになって何をしているのよ!」

マナ「わたくしは今まで神の国であなた達の事を見ていました。そこのアホのアレスが娼婦に金を騙し取られた事も知っています。」

ロキ「お前、出てきて泣きそうになってたもんな!ダハハハハ!」

アレス「止めろよ!」

畑中「ハッハーww!アレス!お前もパフパフ行ってたのかよ!ハッハーww!」

アレス「笑うな!ちくしょう!」

マナ「フフフ、いつ思い出しても本当に可笑しいですわ。出てきて一言『ちくしょう…金返せよ…。』ってww!」

ロキ「ダハハハハ!金返せって!お前が悪いんだろうが!ダハハハハ!」

畑中「ハッハーww!どうせ安いコース選んだんだろ!ハッハーww!」

アレス「ちくしょう!笑うな!全財産だったんだぞ!」

畑中「ハッハーww!パフパフで全財産使うって!どんだけアホなんだよ!ハッハーww!」

アレス「俺の事は良いだろ!お前達は何をしているだよ!」

マナ「そうですね。わたくしのアイデアでこの駄々っ広い教会を取り壊して巨大カジノにするのですが、ここにいる下らない連中がわめき散らすので処刑にするところですのよ。」

リリー「何を言ってるの?コイツ、アホなの?」

アレス「教会をカジノに?頭おかしいのか?」

「あれだけ神の教えに殉じていたマナがおかしくなってしまった。」

マナ「わたくしの神、ロキ様は面白い者の味方です!下らない連中は全員処刑ですわ。」

畑中「ハッハーww!この女、バカじゃねえのか?」

ロキ「なっ!この女面白いだろ!」

畑中「ハッハーww!お前の影響じゃねえか!」

アレス「こんなのと一緒に旅をする所だったのか…。」

リリー「本当に途中でどっかに行ってくれて良かったわ…。」

マナ「所で、あなた達は何をしにここへ来たのですの?」

アレス「ああ、国民を虐げてたお前達教会の連中を倒すためだ!」

「何?」

 

アレスに助けを求めに来た司祭達が困惑の表情を見せる。

 

「勇者よ!そなたは何を言ってるか分かっているのか!」

「そうですぞ!我らが神に対する反逆行為ですぞ!」

リリー「そのあなた達の神様ってはいったい何をしてくれたのよ!その日一日食べる物もない人達からお金をむしりとっていただけじゃない!」

「貴様!ただの平民が神を愚弄するのか!」

リリー「ただの平民がですって!ふざけないで!困っている人達に対して何もしてこなかった人間が偉そうにしないでよ!」

アレス「俺達に神様なんて必要ねえ!虐げられた人々の恨みだ!覚悟しろ!」

マナ「フフフ。あなた達、なかなか面白い事を言いますわね。」

「おお、マナよ。あの者達を…。」

 

グシャ!マナがフレイルを振り回し司祭の頭をかち割った。

 

「マ、マナ!何を…。」グシャ!

 

マナが次々を司祭達の頭をかち割っていく。

 

マナ「コイツで最後ですわね。」グシャ!

アレス「お、おい!」

マナ「良いでしょう。アレス、リリーあなた達に力を貸しましょう。神は面白い者の味方です。下らない事を抜かす司祭達はわたくしが全て処刑にしました!さあ!皆さん!ここにある食糧を全て運び出すのです!」

「オー!」

 

後続でやって来た市民達が奥から食糧を運び出す。

 

「教会の連中、こんなにも食糧を隠し持っていた!」

「なんて奴等だ!」

マナ「あなた達!その食糧は明日の祝勝パーティーで使います!丁重に運ぶのです!」

「はい!」

マナ「残りの者達はアホのアレスと共に城を攻めましょう!」

「オー!」

畑中「アレス!なんかいろいろあって拍子抜けしたが最後だ!城を攻める号令を上げるんだ!」

アレス「そ、そうだった!よし!みんな!最後だ!城を攻め、俺達を虐げた国王を倒すんだ!俺達に続けー!」

「オー!アホのアレスに続けー!」

 

アレスの号令と共に皆城を目指して突き進む!

 

畑中「よし!行けー!」

ロキ「待て、ブ男!」

畑中「おう、ロキか。すまねえな助けてくれて。矢内に変わって礼を言うよ。」

ロキ「早速俺が与えた力を上手く使っているな。」

畑中「なんだ?お前の力って?」

ロキ「ああ、俺がお前に与えた力ってのはお前の魂の叫びで人々の心を突き動かす。」

畑中「は?」

ロキ「お前がこの国の人間達を動かしているんだよ!あのアホのアレス達に人が動く訳ないだろ!」

畑中「マジか?ハッハーww!無敵じゃねえか!」

ロキ「ああ、自分勝手な使い方したらお前、反動で死ぬから気を付けろよ!」

畑中「ハッハーww!死ぬって!」

ロキ「忠告したからな。」

畑中「え?マジ?」

 



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砂漠の国の大決戦 4

「この扉の奥が牢屋になります。」

山田「そうか。中の兵士に見付からないように行くぞ。」

勇者「分かりました。」

「俺が前に行きます。」

山田「そう言えばお前、名前を聞いていなかったな。」

「…。と、」

勇者「と?」

「トンヌラです。あー!だから言いたくなかったんだよ!」

山田「トンヌラか。私達と共に来てくれて感謝する。」

トンヌラ「あんた…。俺の名前を聞いて笑わないのだな。」

山田「笑うものか。お前の親がつけてくれた名だ。もっと誇りを持て!良い名ではないか。」

勇者「トンヌラさんですね。わたしは一国の勇者です。一緒に来てくれてありがとうございます。」

トンヌラ「ああ、お嬢ちゃん!よろしくな!」

 

わたし達は扉を開けて中に入っていきました。狭い通路を歩いて牢屋に出てきました。エルフの女の人達が中に入れられています。小さい子もいます。

 

トンヌラ「見張りが二人いますね…。」

山田「ああ、隙をついて一人ずつ倒して行くか。どちらかが動くまでじっとまって…」

勇者「あなた達!どうしてエルフの人達を閉じ込めるのですか!出してあげてください!」

トンヌラ「お嬢ちゃん!勝手に出て行っちゃ駄目だろうがー!」

「なっ!なんだ貴様ら!どうやって入って来た!何者だ!」

勇者「わたしは一国の勇者です!エルフの人達を出してあげてください!」

「勇者?まさか?異世界の賢者の仲間?何故ここに?」

山田「矢内の娘、お前のお陰で正面から戦う羽目になった。」

勇者「わたしのお陰ですか?」

トンヌラ「褒めてるんじゃねえ!」

山田「まあいい。私はエルフの民を助けに来た。武器を置いて立ち去ればお前達は助けてやってもいい。」

「武器を置いてだと?笑わせるな!エルフの女で楽しもうと思っていたがこれはラッキーだぜ!お尋ね者のお前達を国王に差し出したら俺達は大出世だ!」

山田「残念だ。トンヌラ、右側の奴は任せる。」

 

山田さんが素早く左側の兵士の人の腕を押さえ込みました。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!腕が!」

山田「ふん!」ゴキ!

「ぎゃぁぁぁぁ!」

山田「右腕の関節を外させてもらった。武器を持たれたら面倒なのでな。」

「この女!」

トンヌラ「甘い!」ガキーン!

 

剣を抜いた兵士の人をトンヌラさんが受け流して兵士の人を押さえつけました。

 

トンヌラ「賢者様の言った通りだ。貴族の連中は大したことない!」

山田「剣を握れないようにソイツの腕の関節も外させてもらおう。」ゴキ!

「ぎゃぁぁぁぁ!腕がー!」

山田「よし、この二人は空いてる牢屋に閉じ込めておけ。」

勇者「分かりました。」

トンヌラ「あ、ああ…。(美人なのにおっかねぇ…。)」

 

兵士の人達を牢屋に入れてエルフの人達を無事に助けることができました。

 

「あ、ありがとうございます!」

「助けてくれてマジ感謝!」

「おねぇちゃん達、ありがとう!」

山田「礼はいい。私はエルフの民達に恩がある。これぐらいの事は当然だ。」

「あれ?ライアン所にいる客人じゃね?ウケるww。」

「あっ!本当だ!」

「ウケるww。」

山田「…。イベサーのエルフか…。まあいい。お前達、砂漠を歩かされて辛い思いをさせてしまったな…。」

「はぁ?ウチ等は砂漠なんて歩いてねぇし!客人、マジウケるww!」

「王様に連れられて地下を歩いて来たんだよ!」

山田「地下を?どういうことだ?」

「ウチ等、なんも知らねえし!マジでウケるww!」

山田「…。お前は黙ってくれ。」

「ジワるww」

「地下を歩いて来たらここについていきなり牢屋に入れられたの。凄く怖かった…。おかあさんの所に帰りたい…。」

トンヌラ「どうやら隠し通路があるみたいですね。この二人に聞いてみましょう。」

山田「ああ。」

勇者「あっ!なんかここ出っぱっています!押してみましょう!」

 

わたしが壁の出っぱりを押すと通路が出てきました。

 

山田「これだ!矢内の娘、よくやった!皆!森に帰るぞ!」

 

 

 

 

わたし達は牢屋で見つけた隠し通路を通っています。助け出したエルフの人達と一緒です。

 

勇者「暗い所ですねぇ。」

トンヌラ「みんなはぐれないようにまとまって動きましょう。」

山田「皆、何が出て来るか分からない。気を付けろよ。」

勇者「あっ!わたし、賢者さまからいただいた頭につける灯りがありました。これを使いましょう。」

山田「簡易の懐中電灯か。」

 

わたしは賢者さまからいただいた灯りをつけました。

 

トンヌラ「なんだそれは!いきなり灯りがついた!」

「チビッ子頭光ってるし、ウケるww。」

勇者「えっ?」

「まぶしっ!こっち見んなし!」

山田「LEDライトか。これなら遠くまで見渡せるな。」

勇者「そうですね。では、気を取り直して行きましょう。」

 

隠し通路を進んで行くと行き止まりです。あっ!壁にまた出っ張りがあります。

 

勇者「また、出っ張りがあります。」

山田「待て、壁の奥から声が聞こえる。少し聞き耳をたてて様子を見てからにしよう。」

 

山田さんの言うとおりに壁に聞き耳をたてました。

 

「聞け!エルフの民達よ!今、異世界から来た賢者が砂漠の国を滅ぼそうとしている!このままでは全ての国は賢者に滅ぼされる!そして!今!砂漠の国の王から我らの民を誘拐した犯人は賢者だとの情報を得た!我らが民を誘拐し他国を滅ぼそうとする賢者を倒す為に皆、出陣せよ!」

「賢者様が?」

「はぁ?ヤナピッピがそんな事絶対にしねえし!」

「お前達はあの賢者に騙されているんだ!わしの言うことは絶対だ!」

「えっ?ヤナピッピが?」

「そうなのか?」

ライアン「みんな!賢者様はそんな事はしないッス!今、賢者様達は拐われた人達を探す為に色々な国に頼みに行ってるッス!」

「貴様!わしの言うことが聞けないのか!」

ライアン「聞けないッス!賢者様は国王の言うことは絶対に聞くなって言ってたッス!」

「貴様ー!コイツを引っ捕らえろ!」

ライアン「放すッス!みんな、客人や賢者様を信じるッス!客人は必ず拐われた人を助けるって約束してくれたッス!」

「暴れるな!大人しくしろ!」

 

何やら壁の向こうでもめています。

 

山田「矢内の娘。急いで壁の出っ張りを押して向こうに出るぞ!ライアンが危ない!」

勇者「は、はい!」

 

わたしは壁の出っ張りを押して隠し通路を開けました。なんと、エルフの国の王さまの所に繋がっていました。

 

山田「国王よ、お前が砂漠の国の王に売り飛ばしたエルフの民は無事に連れて戻ってきたぞ。ライアンを解放しろ!」

「なっ!貴様等は!」

ライアン「客人が帰って来てくれたッス!無事で良かったッス!」

山田「ライアン、よく私達を最後まで信じてくれた。感謝する。」

「えっ?壁が開いた?」

「あっ!帰ってこれた!おかあさーん!どこー!」

「ここ、国王の屋敷だし!ウケるww!」

「あっ!みんな帰ってきた!」

山田「皆!拐われた人達は私達が解放した!全てはエルフの王と砂漠の国の国王が拐った者を生け贄にする為に仕組んだ事だ!」

「女!わしに対する恩を仇で返すのか!何を証拠にわしを愚弄するか!」

山田「この期に及んでまだしらを切るつもりか?ならばここにいる者に聞けばいい!」

「コイツ、ウチ等を騙していたの?マジありえねえし!」

「王は我らを騙していたのか?」

「はぁ?コイツ、マジでねえわ!みんなでコイツをポコパンしようぜ!」

「禿げ同ー!」

 

真相を知ったエルフの人達が王さまをボコボコにしています。

 

「いたっ!止めんか!た、助けてくれ!わしは王だぞ!」

「はぁ?知らねえし!お前みたいな奴、ポコパンするに決まってるし!」

「禿げ同ー!」

「貴様ら!止めろ!止めてくれ!きゃ、客人よ!助けてくれ!頼む!」

山田「止めるんだ、イベサーチームのエルフ達。」

ライアン「客人!どうして止めるッスか!コイツのせいでみんな辛い思いをしたのに…。」

山田「私は止めろと言ったが許すとは一言も言っていない。誰か!国王を縛り上げ牢に放り込め!たとえ何を言っても絶対に出すなよ!」

「ハッ!客人殿の仰せの通りに!」

「貴様等、ただですむと思うなよ…。」

山田「黙れ、砂漠の国を救ったら次は私利私欲の為に人々を利用していたお前の番だ。逃げられると思うなよ。」

「ッ…人間の女め。国王のワシに対して…」

山田「何が王だ。お前に人々の上にたつ資格はない。連れて行ってくれ。」

「ハッ!客人殿。」

 

エルフの王さまは縛り上げられ牢屋に放り込められました。

 

「客人殿ありがとうございます!」

山田「私は世話になった恩を返したまでだ。礼はいい。」

トンヌラ「この通路がエルフの国に繋がっていたとは…。」

勇者「みんな、助け出せて良かったですねぇ。」

山田「いや、まだだ。助け出せたのは最近連れて行かれた者だけだ。しかし、王は捕らえたから今後エルフの娘が拐われる事は無いだろう。」

「ありがとうございます!」

山田「礼は不要だ。私はあなた達に恩がある。それを返したまでだ。」

トンヌラ「あんたといい賢者様といい、すげえよな。」

山田「何がだ?」

トンヌラ「人を助けるのに恩をきせる訳でもなく当たり前の事の様に振る舞うなんて普通は出来ないぜ。あんたや賢者様のような方が王さまだと誰も辛い思いをしなくてすむのにな。」

山田「フッ…。矢内が王さまなんかになったら毎日祭りで国がメチャクチャになってしまうぞ?」

勇者「毎日お祭り楽しそうですねぇ。」

山田「毎日楽しいだけでは国のリーダーは勤まらない。矢内達はまだ戦っているはずだ。そろそろ私達は戻るか。」

ライアン「客人!自分も一緒に行くッス!」

トンヌラ「遊びじゃないんだぞ!戦いだぞ!」

ライアン「だから自分が客人を守るッスから大丈夫ッス!」

山田「ライアン、心遣いはありがたいが…余所の国の事だ。」

ライアン「自分達は仲間を連れ去られた恨みもあるッス!」

「だったらウチ等もソウルメイトのヤナピッピを助けに行くしょ!ウチ等の仲間を連れ去った奴等はみんなポコパンするっしょ!」

「禿げ同ー!」

山田「いや、気持ちは分かるが…。」

 

山田さんが困っているとエルフの兵士の人が言いました。

 

「客人殿、ご迷惑をかけるかも知れないが彼等だけでも連れて行ってはいただけないでしょうか?共に行きたいみんな同じです。誰もがあなたの力になりたいのです。」

山田「あー、分かった、共に来てくれ。言っても聞きそうにないからな。」

トンヌラ「大丈夫かよ?コイツ等、強そうには見えないが…。」

ライアン「自分達は誇り高きエルフの戦士ッス!お前なんかよりは強いッス!客人は自分が守るからお前は家に帰っていいッスよ!」

トンヌラ「何だと!そんなチャラチャラしたお前が俺より強いだと!」

山田「トンヌラ、止めぬか。ライアン、トンヌラは見た目は荒くれものだが義に厚い男だ。それに私達を助けてくれている。そう邪険に扱うな。」

トンヌラ「分かった、争うのはコイツではなくて砂漠の国の王達だからな。」

ライアン「客人が言うなら少しは信用するッス。でも、もし客人に何かしようとしたら自分がやっつけてやるッスよ!」

トンヌラ「…。(コイツ、この美人の姉さんに惚れているんだな。)ああ、分かった分かった。俺は賢者様に忠誠を誓っている。だから仲間の勇者のお嬢ちゃんと美人の姉さんは命に代えても守りぬくつもりだ。」

ライアン「まあ、いいッス。」

「まあウチ等みんなで今からテンアゲマックスでかち混むっしょ!」

勇者「皆さん、よろしくお願いします。」

山田「すまない!イベサーチームの者達、私と共に来てくれ!砂漠の国の民を助ける為に力を貸してくれ!」

「アゲポヨー!」

 

賢者さま、さっちん、エリカにゃん、わたしが今から助けに行きます!待っていてください!

 



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砂漠の国の大決戦 5

階段を上がり3階に出た。4階に上がる階段の前に誰かいる。

 

「フフフ、我が神に逆らう異世界の賢者よ。お前達は我がゴーレムの餌食にしてくれる。いでよ!我がしもべ達よ!」

 

何も無いところから木でできたゴーレムと石でできたゴーレムが出てきた。

 

「行け!ゴーレムよ!全員の息の根を止めろ!」

 

ズシン!ズシン!と石のゴーレムがこっちに向かってくる。

 

サチ「賢者さん、ここは私に任せて先に行ってもらえるかしら?」

矢内「サチ、お前まで何を言い出す!」

サチ「賢者さん、大将首を譲ってあげるわ。それにここでまた足止めをくらうと国王に逃げられるかもしれない。だから先に行って、頭数ではこちらが有利だから大丈夫よ。」

「賢者様、行ってください。サチ様は我々がお守りします。」

矢内「しかしだな…。」

「賢者、こっちは任せろよ!」

矢内「さっきまで敵だった奴に言われても信用できるか!」

「何を!?だいたい俺達はガリアスにつくよりお前に味方した方が得だしな。今更寝返るか!」

サチ「あら?あなた、さっき下の階で私を自分の物にするとか言ってなかったかしら?」

「ああ、だからそれはちゃんとデートとか誘ってだな…。順序を踏まえて物にするんだよ。」

 

純粋な中学生か!ややこしい物の言い方をするな!

 

サチ「根は悪い奴ではないようね。まあ良いわ。あなた達、あの石のゴーレムを引き連れてもらえるかしら?」

「よし、任せろ!俺の活躍を見せてやるぜ!」

サチ「賢者さん、今のうちよ。」

矢内「分かった!先に行く!」

「賢者を逃がすな!行け!ウッドゴーレム!」

矢内「マヌケな女め。木でできた木偶人形を俺に差し向けるとはな。サチ!俺からの手土産だ、喰らえ、必殺!『ヤナイフレイム!』」

 

俺の魔法で木のゴーレムを焼き尽くす。

 

「そんな…私のゴーレムが…。」

サチ「賢者さん、カッコつけているところ残念だけどそれも私の作戦よ。」

矢内「ちっ、口の減らない奴だ。」

サチ「誉め言葉としてとっておくわ。みんな、ゴーレムを倒しあの女を生け捕りにするわよ。」

「ハッ!」

「よし、ねえちゃん!任せとけ!」

 

俺はこの階の敵はサチに任せて上に向かった。

 

 

 

サチ「賢者さんは無事に行ったみたいね。」

「おのれ、女!貴様も我が神に逆らうのか!」

サチ「他人から採取するだけの神様なんてこの世には不必要よ。」

「何!なんて罰当たりな!女、我が神ビーナス様の天罰が下るぞ!」

サチ「天罰?あなた達の神なんてどうせ何もできないししないでしょ。ほら?天罰を下すならしてみなさいよ!」

「ゴーレム!あの女を先に殺せ!」

 

石のゴーレムがサチに向かってくる。

 

サチ「そんな木偶人形に頼らないで神様とやらに頼ったらいいじゃない。天罰を与えてくれるのじゃなかったのかしら?まあ、神様って名を語った屑の間違いだと思うけど。」

「貴様ー!我が神を侮辱するなー!」

 

ゴーレムがスピードを上げてサチに突進してくる。

 

サチ「ゴーレムを私に向かわせたら誰があなたを守るのかしら?みんな、今よ!一斉にアイツを捕らえるのよ!」

「よし!任せろ!」

 

伝令に来た兵士たちとガリアスの用心棒だった男たちがゴーレム使いの女に襲いかかる!

 

「そう来たか。召喚!ゴーレム!」

 

今度は土でできたゴーレムが4体出てきた。土のゴーレムが兵士達を攻撃する。

 

「ぐわっ!」

「くそっ!」

サチ「みんな、一回退いて!黒魔術『カーズ マリオネット!』」

 

サチの黒魔術で向かってくる石のゴーレムを操り土のゴーレムを全て粉砕した。

 

サチ「これだけの重さだと長くは操れないわね…。」

「ゴーレム!何をしている!相手は向こうだ!」

「サチ様!また来ます!」

サチ「分かってるわ。」

「くそぅ…あんなの勝てる訳ねえよ!」

サチ「そんな立派な筋肉があるのにもう降参するのかしら?」

「じゃあ、どうするんだよ!」

サチ「簡単よ。この城から出ていってもらうのよ。あそこのテラスから。作戦を言うわ。」

 

サチが兵士達に作戦を伝える。

 

「よくそんなにポンポンと策が思い付きますね。」

「俺達、ねぇちゃんとマジで戦っていたら殺されていたな…。寝返って本当に良かったぜ。」

「ああ、最初に突っ込んで行った奴は頭から壁にめり込んで死んだもんな…。」

「えっ?あれ、サチ様が?」

サチ「おしゃべりはそれまでよ。来るわよ。作戦開始よ。」

「あの女を殺せば後は雑魚だ!行け!ゴーレム!」

 

再びゴーレムがサチに突進してくる。

 

サチ「キャー!助けてー!」

 

サチがテラスの方に向かって走り出す。

 

「あのねぇちゃん、すげえ演技ヘタクソだな…。」

「ええ…。」

 

サチがテラスの方に走っていく。

 

サチ「あっ!行き止まり!そんな…。」

「ハハハ!殺れ、ゴーレム!」

 

ゴーレムがサチにパンチを繰り出す。

 

サチ「なーんてね。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

 

サチの黒魔術でゴーレムの動きを止める。

 

サチ「今よ!みんなでゴーレムを外に突き落とすのよ!」

「よし!押せー!」

「それー!」

 

全員で動きの止まったゴーレムを押してテラスから外に落とした。

 

「やったぞ!」

サチ「みんな、ご苦労様。さて、後はあなただけよ。」

「くそぅ…。まだだ!召喚!」

「まだ出てくるのかよ。」

 

藁でできたゴーレムが召喚された。

 

「なんだあれ?」

「あれだったら剣で簡単に切れますね…。」

サチ「どうやら相手は魔力切れのようね。」

「藁のゴーレムを甘く見るなよ。行け!奴等を蹴散らしてしまえ!」

 

藁のゴーレムが信じられないスピードで向かってくる。

 

「速い!ぐはっ!」

「なっ!ぐえっ!」

 

藁のゴーレムが一瞬で兵士達を殴り倒した。

 

サチ「は?何、今の?」

「いってぇ…。」

「藁だから喰らっても死ぬことはないですね。凄く痛いけど…。」

「このゴーレムは私の切り札だ!覚悟するがいい!藁助!アイツ等を倒せ!」

サチ「来るわ!は、速い!」

 

藁のゴーレムが再び向かってくる。

 

「ぐわっ!」

「うわっ!」

「がはっ!」

 

藁のゴーレムの攻撃で兵士達がみんな倒された。

 

「ハハハ!藁助、よくやったぞ!」

 

ゴーレム使いの女が藁のゴーレムに抱きついて喜んでいる。

 

サチ「まずいわね…。賢者さんを先に行かせたのが裏目に出たわ。」

「形勢逆転ね。」

サチ「なんなのよ…。あれ…。」

「フフフ、どうだ私の藁助は。」

サチ「スピードもパワーも段違いね…。」

「フフフ、そうでしょう!藁助は小さい時から一緒に暮らしてきた最高のパートナーよ!」

サチ「だったら何故最初から出さなかったのかしら?」

「藁助は私のパートナーよ。なるべく危険な事をさせたくないの。」

サチ「まるでエリカさんとアリマ君のようね。戦うのが私で良かったわ。」

「どういう事よ?」

サチ「私ならゆうりんやエリカさん、賢者さんと違ってそんな事で手を抜いたりしないからね。最大パワーで行くわ!」

「お前に何ができる!」

サチ「エン…。」

「藁助!」

 

藁のゴーレムがサチに突進してくる。

 

サチ「ト…トライ…。」

 

藁のゴーレムがサチの目の前に来ている!そのまま拳を繰り出す!

 

サチ「スマッシュ!!」バチン!

 

サチの魔力を帯びたビンタが藁のゴーレムにヒットする!

ゴーレムは回転しながら吹き飛び壁にめり込んだ!

 

サチ「後はあなただけね。」

「藁助!藁助!」

 

女が藁のゴーレムに近寄りめり込んだ壁から引っ張り出そうとしている。

 

「藁助!しっかり!死なないで!私を独りぼっちにしないで!」

サチ「無駄よ。あなたではめり込んだ壁から引っ張り出すことは出来ないわ。」

「うるさい!藁助は私が助けるの!」

サチ「あなたでは無理よ。」

「うるさい!藁助をこんな目にして!許さない!」

 

女がサチに殴りかかろうとする。

 

サチ「スマッシュ!」バチン!

 

サチが女に強烈なビンタをする。女はめり込んだ藁のゴーレムの近くに倒れ込んだ。

 

サチ「私の黒魔術は無敵よ。何処の誰にも負けないわ。」

「うぅぅ…。藁助…。」

 

 

 

 

 

 

4階にたどり着いた。奥に玉座が見える。ここが終着点だな。国王と大臣とガリアスがいる。

 

国王「まさか、ここまで来るとは…。」

矢内「お前達の人望の無さのお陰で楽にこれたがな。覚悟しろよ!」

ガリアス「賢者!いたずらに我が国に喧嘩を売る悪党め!貴様は何をしているか分かってるのか!」

矢内「肩書きだけで何もできない屑が偉そうに国を語るな!」

ガリアス「貴様ー!貴族であるこの俺を侮辱するなー!」

矢内「なんだ、貴族ってのはそんなに偉いのか?弱い立場の人達を踏みにじり、無能の王に媚びるだけの男が人を舐めるのもいい加減にしろよ。」

国王「待て、わしが無能だと?貴様、それが王に対する物の言い方か!」

矢内「ああ、お前は無能だ。お前が贅沢をしたいが為に人々はその日一日何も食うことが出来ず飢え苦しんでいる。」

国王「クククッ!屑の貧民共などわしの為に生きていたら良いだけだ!この国の王はわしだ。わしが絶対だ!」

矢内「お前が着ている服や宝石の為にみんな辛い思いをさせてきたのか!お前達は絶対に許さない!」

国王「貴様ー!わしがどれだけ偉いと思っている!何様のつもりだ!」

矢内「何様だと?俺はみんなが大好き賢者様だ!お前がそんなに偉いのだったら無理矢理働かされている貧民街のみんなが泣きながら食うシチューの味が分かるはずだよな!それが分からないお前達は人間の屑だ!明日を生きる資格はない!今日!ここで死ね!」

国王「このわしによくも~!大臣!ここでこの男を必ずしも殺せ!わしはガリアスと下で騒ぐ愚民共を皆殺しにするために応援を呼んでくる!」

大臣「王よ!いけません!下の者達は我が国の人々です!」

国王「わしに逆らう奴は皆殺しだ!わしが戻るまでにお前が賢者を殺し、下の愚民共を黙らす事ができたら考えてやる!ガリアス!ついてこい!」

ガリアス「ハッ!陛下!」

 

国王とガリアスは奥の部屋に入って行った。

 

矢内「待て!」

大臣「賢者殿…。ここから先は通せない。悪い様にはしない。そなた達は我が国から引き上げられよ!」

矢内「何が悪い様にはしないだ!腰巾着がどけ!必殺!『ヤナイフレイム!』」

 

俺の魔法で大臣が火だるまになるが微動だにしない。何故避けようとしなかったんだ?

気にしている暇はない。早く国王を倒しに行かないと逃げられてしまう!大臣の横を通り抜ける。

 

大臣「賢者殿…。この先は行かせないと言ったはずだ。」

矢内「何?!しまった!」

 

急に腕を捕まれ力任せに投げ飛ばされ壁に激突した。

 

矢内「イテテ…。なんて力だ…。」

大臣「賢者殿…。民を助けてくれたそなたとは出来たら戦いたくない。退いてはくれないか?この姿では手加減は出来ない。」

矢内「なんだ…その姿は…。まさか…。」

 

大臣の姿は先程とうって変わって虎の顔をした獣人の姿だ。

 

矢内「お前が…勇者達が探していた虎のおっちゃんか?道理で見つからなかった訳だ。何が伝説のヒーローだ。国王と組んで人々を苦しませていたのだからな。」

大臣「ヒーロー?何を言ってる?」

矢内「お前が国の人々に食べ物を与えたり貴族に襲われそうになった女子供を助けたりしていたのだろ?」

大臣「それは…。貴族達があまりにも非道な振舞いをした時だけで…。」

矢内「そうか…。良くできたシステムだな。国民から採取するだけ採取してお前がたまにそうやって少しの希望を撒き散らす。そうやって生かす殺さずで国民を苦しませる。とんだ悪党じゃないか!」

大臣「しかし、私は国王を裏切れない…。せめて民が死なない為にこうするしかなかったんだ。」

矢内「こうするしかないだと?」

大臣「賢者殿よ。この先に行きたかったら私を倒すことだ…。」

矢内「ああ…。そうさせてもらう。急いでいるので最初から全開でいく。俺もお前と同じく変身させてもらおう。行くぞ!ラブ イン スコール!」

 

俺は魔力を全開にして愛の戦士 スコールマンに変身した。

 

大臣「あの時の…やはり賢者殿であったか。しかし、私はこれが普段の姿なのだがな…。いや、語るのはもうよそう。賢者殿、ここを通りたければくるがよい!」

矢内「ハハハ!悪党め!この愛の戦士 スコールマンが相手をしよう!」

 



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砂漠の国の大決戦 6

山田「案外エルフの森と砂漠の国は近かったのだな。」

トンヌラ「この地下道を通れば30分もかからなかったですね。」

勇者「わたし達が暑い思いをして歩いたのは何だったんでしょうか…。」

 

わたし達は急いでお城に戻ってきました。通路を抜けて大広間にたどり着きました。

エリカにゃんが兵士の人達と戦っています!無事で本当に良かったです。早く助けにいかないと!

 

勇者「エリカにゃん!大丈夫ですか!」

ライアン「エリカ!助けに来たッス!」

エリカ「あっ!勇者!ライアン!コイツらメチャクチャ弱いからあたしは大丈夫だよ!」

アリマ君「キー!」

「さっき逃げた奴等が戻ってきた。」

「こっちは女一人と魔物一人に大苦戦しているのに…。」

 

外が騒がしくなってきました。誰かがこっちに向かって来ているのでしょうか?

 

「援軍だ!」

「やっときたか!」

「お前達もこの数には勝てまい!」

 

お城の門が開き沢山の人達がなだれ込んで来ました!

 

アレス「行けー!後は国王を倒すだけだー!」

リリー「みんなー!後少しよ!」

「オー!」

畑中「ハッハーww!貴族の兵士を全員捉えるんだ!行けー!」

「オー!」

 

なだれ込んで来た人達の中に屑野郎さんがいます!

 

畑中「ハッハーww!勇者ちゃん!助けに来たぞ!」

山田「畑中!なんだ、この騒ぎは!」

畑中「山田さんか!そっちは上手く行ったみたいだな!」

山田「ああ!無事エルフの娘達は助け出せた。」

畑中「よし、ここは俺達に任せて勇者ちゃん達は先に進むんだ!」

勇者「は、はい!」

エリカ「よし、上に行ってサチと賢者を助けに行こう!」

山田「畑中、ここは任せる。」

畑中「ハッハーww!山田さん、矢内を頼む!」

山田「ああ、分かった!」

リリー「あっ!お姉さん!無事で良かった!」

山田「二人とも、私達に力を貸してくれて感謝する。」

アレス「ああ!姉さんには一宿一飯の恩があるしな!ここは俺達に任せてくれよ!」

山田「よし、我々は矢内の援護をするために上に上がる!誉れあるエルフの戦士達!私と共に来てくれ!」

ライアン「みんなー!客人に続くッスよ!」

「テンアゲマックスで行くっしょ!」

「マジ卍ー!」

 

私達は兵士の人達は屑野郎さんに任せて上にいる賢者さまとさっちんを助けに行きました。

 

畑中「よし、勇者ちゃん達は行ったな…。」

「待て!俺達は降参する!命だけは助けてくれ!」

リリー「駄目よ。あんた達の為にどれだけ国の人達が辛い思いをしてきたと思っているのよ!」

「違う!悪いのは国王とガリアスだ!」

アレス「てめえ等!都合が悪くなると人のせいか!お前達に虐げられてきた人達の無念を思いしれ!」

畑中「よし、コイツらを縛り上げろ!」

「はい!」

 

わたし達は下の兵士さん達は屑野郎さんにお任せして上に向かっています。

 

ライアン「まだ階段があるッス。」

トンヌラ「国王の玉座は4階だ。」

勇者「あっ!誰かが壁にめり込んでいます。」

トンヌラ「こいつはガリアスの用心棒の男だ…。死んでる…。」

 

ドーン!上で何かが壊れる大きな音がしました。賢者さまとさっちんが心配です。

 

山田「先を急ぐぞ。」

勇者「は、はい!」

 

階段を上がり3階に着きました。さっちんがいました。

 

勇者「さっちん!」

サチ「あら?みんな、早かったわね。」

エリカ「サチ、大丈夫だったか?」

サチ「ええ、私は大丈夫よ。魔力は尽きかけているけど。それよりも私に協力してくれたみんなが気絶しているから介抱してもらえるかしら?」

トンヌラ「ああ、って!この二人はガリアスの用心棒の奴じゃないか!」

サチ「ああ、そうね。でもこの二人は賢者さんがお金で買収したから今は私達の仲間よ。」

山田「金で簡単に寝返ったのか。」

サチ「ええ、話してみると根は悪い奴ではなかったわ。」

ライアン「分かったッス!ここの人達の手当ては自分達に任せるッス!」

山田「そうか。ここはライアンに任せて私達は上に行くぞ。」

勇者「はい、ライアンさんお願いします。」

エリカ「待って!」

 

壁が崩れて何かが出てきました!

 

「藁助!大丈夫?無理しないで。」

サチ「まさか?フルパワーで放った黒魔術を喰らって立ち上がるなんて…。」

「何あれ?ボロボロじゃね?ウケるww!」

山田「なんだ?あの藁人形は?」

サチ「みんな!油断しないで!アイツ1体にみんながやられたのよ!」

山田「所詮は藁人形だ。エルフの戦士達よ。火矢だ。全員藁人形に向けて一斉掃射!」

「アゲポヨ~!」

 

エルフの人達が山田さんの指示でボロボロになった藁のお人形に火矢を放とうとしています。

 

「止めてー!藁助を殺さないでー!」

 

わたしと同じくらいの年の女の子が藁でできたお人形さんの前に庇うように立ち塞がりました。

 

サチ「みんな、遠慮は無用よ。射って!今倒さないと後が厄介よ。」

山田「射て!」

 

エルフの人達が放った火矢が女の子と藁のお人形さんに襲いかかります。

 

エリカ「ソイツを倒したらダメだよ!」

 

エリカにゃんがお二人の前に出てレイピアで火矢を全て弾き飛ばしました。

 

サチ「エリカさん!何をしてるのよ!弱っている今ソイツを倒さないと!」

エリカ「ダメだよ!この子はあたしと同じだ。その藁のでかい奴はこの子の大事な友達なんだよ!」

サチ「敵なのよ!分かるでしょ!」

エリカ「でも…。悪い奴じゃないよ。悪い奴だったら友達の為に盾になったりしないよ。お前ら、大丈夫か?」

「な、なんで…。」

エリカ「なんで?だって大事な友達が酷い目にあったら嫌じゃん!」

 

エリカにゃんは笑顔で女の子に答えました。

 

「敵なのに…。どうして…。」

エリカ「だったらあたしと友達になろうよ!そうしたら敵じゃなくなるじゃん。お前、名前は?」

「アリサ…。」

エリカ「そっちのデカイ奴は?」

アリサ「藁助…。」

エリカ「そっか!アリサと藁助だな!あたしはエリカ!それでこっちのアリマ君はあたしの一番の友達なんだよ、よろしくな!」

アリマ君「キー!」

山田「この娘はキサラギ殿の娘に任せて我々は上に行こう。」

サチ「ちょっと!山田まで!敵だった奴をほったらかしにしていいの?」

山田「そこに気絶している男二人も外で寝返った兵士達も元は敵だったじゃないか。今更だな。」

サチ「確かにそうだけど…。」

山田「なんだ?お前、頭はキレるのに柔軟性が無いのだな。矢内と共に行動しているのに。」

サチ「何も考えないエリカさんの行動なんて読める訳ないじゃない。」

エリカ「難しい事はサチが考えてくれるから大丈夫だよ!あたしや勇者は何も考えてなくても!」

勇者「そうですね。さっちんならその子達の事も考えてくれますよ。」

サチ「ちょっと!結局私に丸投げじゃない!呆れて何も言えないわ。」

エリカ「良いじゃん!今度、あたしのご飯のおかずを1つあげるから。」

勇者「さっちん、わたしも今度晩御飯のおかずを1つあげますのでお願いします。」

サチ「ちょっと二人とも!私をなんだと思っているのよ!」

エリカ「えっ?サチは食いしん坊じゃんか。」

山田「ハハハ!おしゃべりはそれまでだ。矢内が待っている。先を急ぐぞ。矢内の娘、トンヌラ。行こうか。」

勇者「はい!行きましょう!」

トンヌラ「あ、ああ。」

サチ「私も行くわ。」

山田「お前は、ライアン達とここに居る者達の介抱してからだ。畑中が来るまでここの指示を頼む。」

サチ「分かったわ。私も魔力が余り残っていないから今は戦力にならないものね。山田、賢者さんを、私達のリーダーをお願いするわ。」

山田「ああ。任せておけ!」

勇者「さっちん!行ってきます!」

 

わたしと山田さんとトンヌラさんで上にいる賢者さまのもとに向かいました。

4階にたどり着きました。あっ!あれは愛の戦士スコールマンです!誰かと戦っています。賢者さまはどこでしょうか?

 

「援軍が来たか。」

スコールマン「君達、悪の根元である国王は奥の扉にいる。ここは私に任せて行くがよい!」

「何人足りともここは通さない!王は私が守り通す!」

勇者「あれは…。もしかして…。虎のおっちゃんでは…。」

山田「先を急ぐぞ。我々は目的は国王を倒す事だ。」

トンヌラ「まさか…。虎のおっちゃんがどうして国王を…。」

スコールマン「この国の未来は君達にかかっている!国王が援軍を呼ぶ前に行くんだ!」

山田「ここはアイツに任せて行くぞ。」

勇者「でも、ここに居るはずの賢者が何処にもいません…。」

スコールマン「彼なら道中で負傷したので私が代わりにやって来た。行きたまえ!勝利はもう目の前だ!」

「行かせない!誰もこの先には行かせない!」

スコールマン「君の相手はこの愛の戦士 スコールマンだ!彼女達の邪魔はさせない!」

山田「今のうちだ!突っ切るぞ!」

勇者「は、はい!」

トンヌラ「あれ…。賢者様…だよな…。」

山田「トンヌラ!ボーっとするな!」

トンヌラ「あ、ああ…。」

 

わたし達はスコールマンのおかげで玉座の奥の扉にたどり着くことができました。

 

「ま、待て!」

スコールマン「君の相手はこの私だと言ったはずだ。よそ見をするとは余裕だな。私の必殺技を受けてもらおうか。これが私のデンマークバックブリーカーだ!」

 

スコールマンが虎のおっちゃんのせなかに頭つけてを持ち上げて体を弓のようにしならせています。わたしが見たことない凄い技です!

 

山田「ただのアルゼンチンバックブリーカーじゃないか…。」

 

 



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砂漠の国の大決戦 7

サチ「ゆうりん達は行ったようね。」

エリカ「藁助、ボロボロだな。石とか刺さっているけど大丈夫か?」

アリサ「藁があったら元に戻るけど…。この刺さっている大きな石を抜かないと…」

アリマ君「キー!(僕が抜くよ!)」

 

アリマ君が藁助に刺さっている石を引き抜いた。

 

アリマ君「キー!」

エリカ「後は藁がいるんだな。下にいるみんなに聞いてみよう。」

アリサ「なんで…。助けてくれるの?」

エリカ「えっ?友達が困っていたら助けるのは当たり前じゃんか!」

サチ「はぁ。エリカさん、本当に何も考えていないのね…。賢者さんにどう説明しようかしら。」

ライアン「みんなが目を覚ましたッスよ!」

「イテテテ…。」

「助けてくれてスミマセン…。」

 

サチは目を覚ました仲間の所に近づいた。

 

サチ「良かったわ。みんな大事に至らなくて。」

「サチ様、とんだ失態をしてしまってスミマセン…。」

「あのゴーレムは?倒せたのか?」

サチ「ええ。一度倒せたのは倒せたのだけど…。」

エリカ「サチ、藁助を直すの手伝ってよ。藁が沢山いるんだよ。」

「直す?何を言ってるんだ?」

エリカ「あっ!お前ら目を覚ましたんだ。心配したんだぞ!」

「エリカ様、我々はそのゴーレムにやられたのですよ。それを直したら…。」

エリカ「あたし、友達になったから大丈夫だよ。悪い奴じゃないよ。」

「そうか、よし!藁が沢山いるんだな。町に行って取ってこようぜ!」

サチ「ちょっと!あなた達まで、何を言い出すのよ!」

「だってこんな強い奴が仲間になったら頼もしいじゃないか!俺等も元を言えばねぇちゃん達の敵だったしな。」

サチ「確かにそうだけど…。直してまた襲いかかってきたらどうするのよ。」

「そんときはねぇちゃんに作戦を立ててもらうさ。」

エリカ「そうだよ。何かあったらサチが考えてくれるよ。」

サチ「何よ…。結局は面倒な事は全部私に丸投げじゃないのよ!」

「よし!そうと決まったら藁を取りにみんなで行くぞ!エルフの姉ちゃん達も来てくれ!あのゴーレムをみんなで直そう!」

「あれ直すって!ウケるww!テンアゲマックスでうちらが最強にしてやるし!」

ライアン「自分は残るッス。」

 

サチとエリカとライアンを残してみんなで藁を取りに下に降りて行った。

 

アリサ「なんで…。みんなそこまでしてくれるの?」

サチ「何も考えていないからよ。ただ、あなた達が困っているから助けたいだけじゃないかしら?」

アリサ「分からない…。私達、この国の人でもないのに…。なんで…。」

サチ「この私が訳が分からないのにあなたに分かる訳ないじゃない。で、あなたはこのあとどうするの?まだ戦うのつもり?」

アリサ「もう、できたら戦いたくない…。みんな、藁助を助けてくれる為に藁を取りに行ってくれてる…。でも…。」

サチ「でも?何よ。」

アリサ「ビーナス様が…。賢者達を倒せって…。」

サチ「ビーナスなんて関係ない!あなたがどうしたいか聞いてるのよ!」

アリサ「私…。初めて友達になってくれる子と仲良くなりたい…。そんな子達と戦いたくない!」

サチ「初めからそう言えばいいのよ。賢者さんや国の人達にはあなた達がこの国に居ても良いように私からちゃんと話しておくわ。エリカさん、それで良い?」

エリカ「うん!ありがとうサチ!」

アリサ「良いの?」

サチ「ええ、大事な友達の頼みを無視する事は出来ないしね。それより、色々聞きたい事があるけどいいかしら?」

アリサ「何?」

サチ「そのビーナスの事よ。」

アリサ「私で分かる事なら…。」

 

アリサが話をしようとした時、いきなり目の前に光の渦が現れ何者かが現れた。

 

???「敵もろくに倒せず、更に妾の敵に寝返るとはのう。」

アリサ「ビ、ビーナス様!」

ビーナス「妾が授けた力でゴーレムを出さずにまだそんなのを捨てずに使っていたか。」

アリサ「藁助は私の友達です。」

ビーナス「そんな美しくない藁人形を妾は捨てろと言っておる!」

エリカ「ちょっと!お前!藁助はアリサの友達なんだぞ!悪く言うな!」

アリサ「駄目、お願い…。ビーナス様に逆らったら…。殺されちゃう…。」

エリカ「なんでだよアリサ!悔しくないのか!お前の友達が悪く言われてるんだぞ!」

ビーナス「神である妾に対する言葉使いがなっていないな。死ね!」

 

ビーナスが放つ光の波動がエリカを直撃する!

 

エリカ「うわー!」

ビーナス「妾の波動は精気を吸い取る。そのまま息絶えるがよいわ無礼者。お次はお前だ!妾の前から消えよ!」

 

ビーナスが放つ炎の魔法が藁助に直撃する!藁助の体に火がつき燃え上がる。

 

アリサ「藁助ー!イヤー!」

サチ「これが神様…。」

ライアン「酷すぎるッス…。」

ビーナス「フフフ。これで醜き者が消えたな。」

アリマ君「キー!(よくもエリカちゃんを!)」

ビーナス「魔物か。醜き者が妾に近づくな、死ね!」

 

ビーナスの放った光の波動がアリマ君にも直撃する。

 

アリマ君「キ、キー…。」

サチ「エリカさんにアリマ君まで一撃でやられるなんて…。」

ビーナス「さて、邪魔な醜き者は消えた。娘、妾はお前に用がある。」

 

エリカとアリマ君は倒れた…。

 

ライアン「サチ、自分がエリカ達を回復させるから話を引き延ばして欲しいッス。」

サチ「分かったわ…。」

 

ライアンがサチに小声で話しかける。

 

サチ「で、私に話って何かしら?」

ビーナス「先程からの戦い見ていたが、知略とその魔力、実に見事であった。」

サチ「神様に褒められるとは光栄ですわ。」

ビーナス「先程のアホと違い妾に対する口の聞き方をわきまえているな。」

サチ「ええ。」

ビーナス「この国はもう必要ないので滅ぼすのだが、その前に妾の配下にしてやろう。娘よ、ありがたく思え。」

サチ「ビーナス様、その前に1つ教えていただけますか?何故、異世界の賢者にこだわるのでしょうか?この国の王にも賢者抹殺の指示をなされていたので気になりまして…。」

ビーナス「知りたいか?」

サチ「はい…。」

ビーナス「ならば、妾に忠誠を誓う証として1つ目の魔物とそこのアホの女、そして、妾を裏切った女を殺せ。さすれば教えてやっても良いぞ?」

 

サチは周りを見渡した。エリカとアリマ君は一命を取り留めている。藁助についた火は消されている。

 

サチ「ライアン、みんなを助けてくれてありがとう。急いで下へ避難して。」

ライアン「わ、分かったッス!」

ビーナス「娘、なんのつもりだ?妾はソイツ等を殺せと言っておる!」

サチ「そうね。私の答えはこれよ!エン…ト…トライ…スマッシュ!」

 

サチは魔力を振り絞り渾身のビンタをビーナスに放つ!が、しかしサチの攻撃はビーナスの顔をすり抜け空を切った。

 

ビーナス「娘よ、妾が生身で来ると思ったか?神に逆らうとは愚か者め。この国と共に滅ぶがよい。」

サチ「私の友達を悪く言う愚か者、確かにあなたが支配するこの国は滅ぶわ。でもそれは私達の賢者様の力で新しくお前の様な屑に支配される事のない新しい国に生まれ変わるのよ!」

ビーナス「フフフ、その様な死に体で妾にその様な口をきくとは。この国にはもう神の加護はない。妾が手を降さなくても野生の魔物に襲われて滅ぶ。外を見てみろ?サンドワームがこの国に人間を全て食い尽くすであろう!」

 

再び光の渦が現れてビーナスはその中に入り消えた。

 

ライアン「助かった…ッスか?」

サチ「ライアン、エリカさんは?」

ライアン「エリカとアリマ君は大丈夫ッス!しばらくしたら目を覚ますと思うッス!でも…。」

アリサ「藁助…。藁助…。」

 

アリサが燃えて無惨な姿になって倒れている藁助に抱きついて泣いている。

 

ライアン「あのゴーレム、このままじゃ死んじゃうッス…。」

アリサ「藁助…。いや…。独りぼっちはもうやだよぅ…。」

サチ「ねぇ。」

アリサ「藁助…。」

サチ「ねぇ!」

アリサ「藁助…。いやだよぅ…。」グス

サチ「いつまで泣いてるの!」

アリサ「だって!藁助が…。」

サチ「みんながあなたの為に藁を取りに行ってるのでしょ!」

アリサ「でも…。藁助の命を繋ぎ止める魔力がもうないし…。」

サチ「で、あなたはそうやって諦めてピーピー泣いているだけなの?」

アリサ「だって…。」

サチ「だって…。じゃないわよ!あなたの大事な友達でしょ!命が尽きるまで魔力を送り続ける事ぐらい出来ないの!」

アリサ「…。」

サチ「もういいわ。そこでピーピー泣いていなさい。ライアン、このゴーレムに魔力を送るから手伝って。」

ライアン「分かったッス。でも、サチは魔力が尽きかけているんじゃ…。」

サチ「ええ、このままこのゴーレムを見殺しにしたら倒されたエリカさんやアリマ君に申し訳が立たないわ。命を削ってでもやるわよ。」

 

サチはライアンと倒れた藁助に手をあてて魔力を送り込む。

 

アリサ「わ、私も…。」

 

アリサも藁助に手をあてて魔力を送り込む。

 

サチ「あら?あなたはそこで泣いていたらいいのよ。」

アリサ「いやだ…。私が藁助を助けるの…。命が尽きるまでやるの!私が助けるの!」

サチ「アリサだったわね。良く言ったわ、でも大丈夫よ。下から足音が聞こえるでしょ?もうすぐみんなが来るわ。」

アリサ「うん。ありがとう、藁助の為に。」

サチ「お礼なら私じゃなくてエリカさんに言いなさい。」

 

下の階からぞろぞろと人が上がってきた。中には畑中にアレスもいる。

 

畑中「さっちゃん!無事だったか!良かったぜ!」

サチ「畑中?あなたも来たのね。」

畑中「ああ、矢内は上か?」

サチ「ええ。それより畑中、頼みがあるのだけど…。」

畑中「なんだ?」

サチ「ええ、このゴーレムを直すのに大量の藁がいるのだけど…。」

畑中「藁なんてこの国では見たことねえけど…。」

アレス「よし!この不思議なメダルを使って出してやるぜ!召喚、メダルガチャ!」

 

アレスが巨大なガチャガチャを召喚した。メダルを入れてガチャガチャを回す。すると、豪華な装飾がなされた巨大な箱が出てきた。

 

アレス「凄いのが出た!ウルトラレアの箱なんて初めてだぜ!」

 

アレスが箱を開ける。中には虹色に輝く藁が大量に入っている。

 

サチ「何これ?虹色に光っている…。それにこの藁、一本一本に魔力が宿っているわ。アリサ!これならそのゴーレム、凄くパワーアップするわよ!」

アリサ「凄い!これは伝説の聖なる藁だわ!藁助が直せるよ!でも…。こんな凄い物、貰っても良いのかな?」

畑中「使え使え!気にするな!元は他人の家のタンスの中からくすねたメダルだからな。」

アレス「何でお前が言うのだよ!俺がそれを持っていても意味無いから良いよ。使えよ。」

アリサ「ありがとう!藁助、私が直してあげるからもう少し待っててね。」

 

アリサが藁助の修理に取りかかった。少しして先程、外に出ていったエルフ達が戻ってきた。

 

「べぇって!ちょ!外マジでべぇし!」

「大変です!この国の関所の方角からサンドワームの大軍がこっちに向かっています!」

サチ「あのビーナスが言ってた事…。本当だったのね…。」

畑中「まだ町の中に入って来ていないのだな。みんな城の地下に避難するんだ!俺は町の人達を城に誘導する!」

アレス「頼む!俺はサンドワームを町に入れないように関所の外で食い止めに行く!」

サチ「は?食い止める?あなた一人で?バカな事しないで!無謀よ!」

アレス「俺は勇者だ…。逃げる訳にはいかない。リリー、そのペテン師野郎の仲間と町の人達を誘導してくれ。」

リリー「アレス!ちょっと!無茶よ!」

 

アレスは単身、城を出て関所に走って行った。

 

畑中「町の人達を城に誘導する。兵士のみんな、手伝ってくれ!」

「は、はい!」

サチ「私は賢者さん達と合流するわ。まだ戦える人達は着いてきてもらえるかしら?」

「わ、分かりました。」

 

畑中も兵士を連れて城から出ていった。

 

畑中「城だ!みんな急いで城の中に入るんだ!」

「畑中様、国民に倒され気絶している貴族達はどういたしましょうか?」

畑中「担いで城に入れろ!」

「よろしいのでしょうか?」

畑中「ああ!かまわない!」

 

畑中が兵士達に手際よく指示を出して人々を城に誘導していく。

 

畑中「この辺りは任せる。俺は貧民街に向かう!」

「ハッ!お任せください!」

 

畑中は走って貧民街に向かう。しかし、サンドワームの一匹が関所を通り抜けて貧民街に進んでいる。

 

畑中「ま、まずい!」

 

しかし、サンドワームは貧民街の入り口の前で何者かに真っ二つに切り捨てられた。

 

畑中「なんだ?まあいいや、早く行かないと。」

虎熊童子「おお!畑中殿!」

畑中「そうか、お前達が居たんだな。助かったぜ!」

虎熊童子「畑中殿、この魔物はいったい…。」

畑中「ああ、この国にサンドワームの大軍が押し寄せている。みんなを城の中に避難させてくれ。」

虎熊童子「先程の魔物ぐらいなら自分一人で退治できますよ。」

畑中「ここの人達を守りながらか?絶対犠牲を出さずにか?」

虎熊童子「それは…。」

畑中「サンドワームの大軍は国を目指して来ている。だから今の内に戦えない人達を避難させるんだ。」

 

酒呑童子が奥から出てきた。

 

酒呑童子「虎熊童子よ!言う通りにせんか!わしらの仕事はここの者達を守る事じゃあ!」

虎熊童子「ハッ!分かりました!しかし、畑中殿。何故にここの者達為にそこまで?」

畑中「矢内だったらみんなを見捨てる事はしない。それだけだ。」

酒呑童子「ガハハハハ!そうじゃのう!お主、まるで賢者殿の様じゃのう!」

畑中「まぁ、俺が1番矢内と付き合いが長いからな。アイツの考えは分かるさ。非情になれないアイツの甘さもな。」

酒呑童子「ガハハハハ!それで賢者殿はお主に背中を預けられると言う訳じゃな!ここの者達はわしらが城に誘導するから任せておけい!で、その後の指示をもらえるかのう。」

畑中「ああ!その後は関所に向かってくれ!アレスが一人でサンドワームを食い止めようとしている。助けてやってくれ頼む!」

酒呑童子「任せておけい!皆の衆!ここは危険じゃ!城に行くぞぉ!」

 

酒呑童子達が貧民街の人達を城に避難させる。

 

畑中「よし、次は教会だ。ロキ達が居るはずだ。」

 

 

 

畑中「くそ!矢内の奴め…。今日1日走りっぱなしじゃねえか…。俺はインドア派なのに…。」ゼーゼー、ハアハア

 

畑中が息を切らして愚痴りながら教会を走っている。なんとかたどり着き教会の扉を開ける。

 

畑中「ロキ!居る…」ガン!

 

扉を開けた瞬間、畑中の頭上に大きなタライが落ちてきた!

 

畑中「痛っ!何なんだ!」

マナ「フフフフフ。引っ掛かりましたわ!」

ロキ「ダハハハハ!上手くいったな!」

畑中「真面目に心配して来たのに下らない嫌がらせするなよ!」

マナ「フフフ。」

ロキ「醜男、国民を避難させてご苦労だな。」

畑中「お前、状況知っていたのかよ!」

ロキ「一応は神様だぞ、知らない訳無いだろ。ここの教会は結界を張ったから大丈夫だ。心配するな。」

マナ「ロキ様は何でもお見通しですわ。貴方がこっちに向かっているの知りわたくしがタライを仕掛けたのですのよ。」

畑中「お前の仕業かよアホ女!」

ロキ「まあ落ち着けよ。援軍を呼んでるからあのミミズは大丈夫だ。」

畑中「援軍?」

???「確か…畑中と言ったな?矢内達は上手くやっている様だな。外から来る魔物は我に任せるがよい。」

畑中「我に?誰だ?」

 

畑中は声が聞こえた方へ振り向いた。

 

畑中「ど、童帝!お前まで来たのか!」

「陛下に無礼だぞ!」

童帝陛下「構わん!矢内やこの男が無礼なのは今に始まった事では無い!」

畑中「兵士も連れて来たのか!」

童帝陛下「ああ、あの程度の魔物は我一人でも問題ないが新兵の訓練もかねて連れて来た。」

ジーク「よう!」

かね童子「俺様も居るぜ!」

畑中「新兵ってお前らか!まあ、来てくれて助かるぜ!ありがとうな!」

エース「俺達も居るぜ!」

 

見るとファンタルジニアの町の子供達も来ている。

 

ジーク「お前達!勝手についてきたらダメだろうが!」

キール「お前ら弱いから俺達が助けに来てやったんだろうが。」

童帝陛下「お前達!子供達を連れて来たのか!」

かね童子「いや…それは…何でついて来るんだよ…。」

ポーキー「だから怒られるから駄目だって言ったのに…。」

畑中「あー、子供達は俺に任せてくれ。みんなはサンドワームを食い止めてくれ。」

童帝陛下「すまん。ファンタルジニアの戦士達よ!この国を襲う魔物を倒し人々の日常を取り戻すのだ!我に続け!」

「オー!陛下に続けー!」

「新兵のお前達は陛下の警護に回れ!」

かね童子「行くぜ!」

ジーク「子供達を頼むぞ!」

畑中「おう!任せておけ!」

 

童帝陛下が兵士を連れて出陣した。

 

キール「よし!俺達も行くぜ!」

畑中「邪魔になるから行くな!」

エース「弱っちいジークやかね童子が行っているんだ!心配じゃないか!」

「そうだよ!」

畑中「あんなデカイ魔物だぞ!お前らが近づいたら餌になるだけだ!」

 

畑中が教会の窓から見えるサンドワームを指差した。

 

「あんなのと戦うの?」

「だったら尚更ジークとかね童子が心配じゃないか!」

畑中「大丈夫だ!凄く強い砂漠の国の勇者様もあのサンドワームの群れと戦っているんだ!」

「砂漠の国の勇者?」

畑中「ああ!だからお前達は戦って腹を空かせたみんなに旨い飯を作ってやろう!」

ポーキー「うん。」

 

畑中は子供達を言いくるめて教会に残る事にした。



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砂漠の国の大決戦 8

矢内「どうだ!潔く降参したまえ!」

大臣「私が倒れる訳にはいかぬ。」

 

俺のデンマークバッグブリーカーが虎の大臣を締め上げる。

 

矢内「いい加減降参したまえ。このままだと背骨がへし折れてしまうぞ!」

大臣「私が倒れると王は独りになってしまう…。」

 

何故この男はそこまであの王に忠誠を誓える?分からない…。

 

矢内「下の階から足音が聞こえるだろう?皆、他の兵士達はもう降伏している。」

 

下の階からたくさんの人々が押し寄せてきた。後ろにサチもいる。

 

「あれは!虎のおっちゃん?」

「俺達を助けに来てくれてたんだ!」

「でも、あの緑の奴にやられている。」

「今まで俺達を助けてくれた虎のおっちゃんを今度は俺達が助けるんだ!」

 

何?上がってきた人々が俺に向かってひのきのぼうで殴りかかってきた!

 

矢内「痛!止めろ!敵はあっちだ!」

「虎のおっちゃんをはなせ!」

 

技が解けてしまった。虎の大臣が体勢を立て直す。

その隙に人々にボコボコにされる。

 

サチ「あっ…賢者さん…。ボコボコにされてる。」

「よし!こいつを倒したら後は国王だけだ!」

矢内「止めろ!俺は敵じゃない!」

サチ「はぁ…。そんな格好してるからよ…。仕方ないわね。魔力がもう殆どないけど私の黒魔術でみんなを止めるしかないわね。『ダークネスフィールド ディ タライ!』」

 

助かった…。人々の頭上にタライが次々に落ちてきて気絶していく。

ダメージを負いすぎたのか、俺の変身が解けてしまった。

 

サチ「賢者さん、大変よ!町にサンドワームの大軍が押し寄せて来てるわ!」

矢内「何?」

大臣「この国は神のご加護で魔物は近づけないはずだが…。どうして?」

サチ「今は詳しい事は省くけどその神様が利用価値の無くなったこの国を見捨てたのよ。」

矢内「虎、一時休戦だ。みんなを助けに行かないと。」

大臣「先に王に報告をさせてくれ。」

サチ「分かったわ。畑中が兵士達を引き連れて国民のみんなを避難させているから被害は少ないと思うし。」

矢内「あのデカイミミズが大軍で来てるのだぞ!戦う奴が居ないと!」

サチ「賢者さん、それはアレスが一人で食い止めているわ。」

大臣「なんと、勇者は国から逃げずに戦っているのか?この国の為に…。」

矢内「なんで止めなかった!先に奥の部屋に行って勇者と合流する。その後、直ぐにアレスを助けに行く。」

サチ「賢者さん、魔力も尽きて立っているのもやっとの状態でしょ?なんでそこまでアレス達を助けようとするの?」

矢内「アイツを見捨てたくねえ。魔力がなければ命を燃やすだけだ。」

大臣「賢者殿…。私も勇者を助けに行くのを手伝わせてくれ。」

矢内「ああ!砂漠の国の伝説のヒーローがいたら百人力だ!頼む。」

 

俺達は勇者と合流する為に奥の部屋に向かった。

 

 

 

 

この先の扉に王様が居るのですね。何やら中から男の人の悲鳴が聞こえてきました。

 

トンヌラ「今のは国王の声だ!」

山田「扉を開けるぞ!」

勇者「は、はい!」

 

わたしは勢い良く扉を開けました。

 

ガリアス「ちっ!もう来たのか!くらえ!」ヒュン!

 

ガリアスって人がこっちに何か投げてきました!

 

トンヌラ「お嬢ちゃん!危ない!」グサ!

 

トンヌラさんがわたしを庇ってガリアスって人が投げたナイフがお腹に刺さっています。

 

勇者「トンヌラさん!」

トンヌラ「お嬢ちゃん…。無事で…良かった…。」

山田「トンヌラ!しっかりするんだ!」

ガリアス「ちっ。勇者のガキを庇ったか。まあ、今の内に逃げるか。この国はもう終わりだな…。」

山田「待て小僧。逃がすと思っているのか?」

ガリアス「先程俺が斬った国王を差し出す。それでお前達は満足だろう。」

勇者「なんで…。あなたは王様を斬ったりしたのですか…。」

ガリアス「もうこんな無能の王には用はない。だからこいつが身につけていた宝石類をいただく為に斬ったまでの事。他国に亡命するにも金はいるからな。」

勇者「酷い…。酷すぎます!」

山田「お前は本当に自分の事しか頭に無いのだな。今までお前の為に辛いめにあった者達の恨みを晴らすため尚更ここで逃がす訳にはいかないな。」

ガリアス「権力のないカスの事などどうなろうと知った事ではない!」ヒュン!ヒュン!

 

ガリアスさんがたくさんのナイフをわたし達に投げてきました!

 

トンヌラ「くっ…。美人の姉さん、お嬢ちゃん!グハッ…。」グサ!グサ!グサ!グサ!

山田「トンヌラ!」

トンヌラ「ねえ…さん…、おじょ…ちゃん…。ぶじか…。」

勇者「トンヌラさん!どうして…。」

トンヌラ「ぶじ…だな…。よか…た…。」ガク!

山田「トンヌラ!くっ…。勝利を目前にして…。こんな事に…。」

ガリアス「ちっ!また邪魔されたか。しかし次は邪魔は入らない!」

勇者「えーい!」ブン!

 

この人のせいでトンヌラさんが…。許せません!この人は絶対許せません!わたしは精一杯、斧を振りかざしました。

 

ガリアス「くっ!このガキ!」

勇者「やー!」ブン!グシャ!

ガリアス「ぐっ!ぎゃああああ!俺の腕が!このガキ!よくも!」

 

左腕を切り落としました!この人を許す訳にはいきません!次で止めです!

 

勇者「あなたのせいで、トンヌラさんが!トンヌラさんがー!」

ガリアス「止めろ!そんな末端の兵士がどうなろうとお前にはどうでもいい事だろ!止めろ!」

山田「矢内の娘、もういい…。」

 

山田さんがわたしが振りかざした手を持ち止めに入りました。

 

勇者「山田さん、止めないでください!この人のせいでトンヌラさんが!トンヌラさんが!」

山田「矢内の娘…。こんな男の為にお前が人殺しの業を背負う事はない。」

勇者「で、でも…。」

 

扉が開き誰か入って来ました。

 

矢内「勇者、無事だったか?」

勇者「け、賢者さま~!トンヌラさんが…。わたし達を庇って…。うわ~ん!」

矢内「トンヌラ?」

山田「私達と行動を共にした兵士だ…。」

矢内「そうか…。」

 

賢者さまが倒れたトンヌラさんの体を抱き抱えました。

 

トンヌラ「け…けんじゃさま…。」

矢内「トンヌラ、すまない…。俺達の為に…。」

トンヌラ「ちゅうせいを…ちかった…あん…たらの…た…めに…しねる…んだ…。くいは…ない…。」ガク…

勇者「トンヌラさん!」

山田「くっ…。」

矢内「バカ野郎…。」

サチ「賢者さん、その人を下に連れて行くわ…。」

勇者「さっちん…。トンヌラさんは…。わたし達の為に…」グス…

サチ「エルフなら回復魔法が使える。今ならその人をもしかすると助ける事ができるかもしれないわ。」

勇者「さっちん…。トンヌラさん、助かるのですか?」

サチ「こんだけナイフが刺されたら助かる可能性は低いわ…。グスグスしていたら本当に死んでしまうわ。急いで運ぶわよ、ゆうりん手伝って!」

勇者「はい!」

矢内「サチ、頼む。俺達の友人を助けてくれ!」

サチ「分かったわ。」

 

わたしはさっちんと一緒にトンヌラさんを運んで下に降りました。

さっちんはいつもわたしを助けてくれる最高の友達です。

 

 

 

大臣「賢者殿、申し訳無い…。」

矢内「謝罪などいい…。お互いの用事をすませてアレスを助けに行くぞ。これ以上犠牲者を出したくない…。」

 

俺達は辺りを見回した。国王が倒れて血溜まりになっている。トンヌラを刺した張本人のガリアスがいない。

 

山田「矢内、どうするつもりだ?」

矢内「ああ、ガリアスに止めを刺す。アイツはどうしても許せない。何処に逃げたんだ!」

山田「あそこだ。あの壁、隠し通路になっている。またどこかの国に繋がっているのかもしれない。」

矢内「ちっ!アイツを追う時間もあまりない…。この隠し通路は二度と使えないようにしよう。」

山田「ああ、釈然とはしないが仕方ない。どうせあの傷だ、長くはもたないだろう。」

 

俺と山田は2度と隠し通路が使えないように仕掛けを壊した。これでこの隠し通路は開かない。大臣が倒れた国王を抱き抱えている。

 

大臣「王!国王陛下!」

国王「あれ?おまえ…なんか…でかくなったな…。」

大臣「な、なにを言っておりますか?」

国王「あれ?どこだ…ここは…。」

大臣「あなたの部屋ではございませんか。」

国王「ウソ言え…。おやじの…へや…じゃ…ないか…。」

大臣「陛下?」

国王「おれ…ながいあいだ…ゆ…めをみてた…。」

大臣「夢?」

国王「おれが…おうい…けいしょう…して…から…みんな…を…くる…しめて…」

大臣「まさか…。つかぬことをお伺いします。今のお歳は?」

国王「じゅう…なな…らいねん…おう…い…けい…しょう…じゃ…な…いか…。」

大臣「そんな…。」

国王「なぁ…。おれ…は…いい…おう…さ…まに…なれ…る…かな…。」

矢内「ああ、きっとなれるさ。今は休め…。」

大臣「賢者殿?」

国王「だれ…だ…?ま…あいい…や…。そ…うか…すこ…し…やす…む…。」ガク…

 

国王は力尽き息絶えた。

 

大臣「国王陛下!そんな…。」

矢内「虎、今の国王の年はいくつだ?」

大臣「27歳になります…。」

矢内「10年も操られていたのか…。」

大臣「いったい誰が何のために!」

矢内「お前達の言う神様だ…。自分の都合の良いように利用するためだろう。」

山田「そんな自分勝手な神様が居てたまるか!」

矢内「ああ、そんな奴を許すつもりはない。いずれは倒すつもりだ。それよりアレスが心配だ、虎、俺達は先に行く。国王を手厚く葬ってやってくれ。」

大臣「賢者殿、すまぬ…。」

 

俺と山田は大臣を一人残して下に降りていった。

 

 

 

 

その頃、アレスは関所前でサンドワームの群れの相手をしている。

 

アレス「来い!この勇者アレスがいる限り国には一歩も入れさせないぞ!」

 

サンドワームの群れがアレスに襲いかかる。アレスが一匹のサンドワームに斬りかかるが横からサンドワームの体当たりをまともに喰らう。

 

アレス「ぐわっ!まだだ…。俺が生きている限り関所は通さない。」

 

アレスは再度サンドワームに斬りかかる。しかし、再びサンドワームの体当たりを喰らい倒される。

 

アレス「くそっ!まだだ…。」

 

アレスが気力を振り絞り立ち上がるがそこへサンドワームの一匹が大きな口を開けてアレスを食おうと襲いかかる。

 

リリー「風を司る精霊シルフよ、数多の敵をなぎ倒すため我に大いなる力を!『ウイングショットカッター!』」

 

魔法のちり取りに乗って飛んできたリリーの放った風の魔法が目の前のサンドワームに襲いかかる!

 

アレス「今だ!」

 

アレスが魔法を喰らい怯んだサンドワームに斬りかかる!

 

「キシャアアア!」

 

サンドワームを一匹倒した。

 

リリー「アレス!」

アレス「リリー!なんで来た!みんなと避難しろよ!」

リリー「嫌よ!アレスは戦っているじゃない!」

アレス「俺は、勇者だ。」

 

二人が言い合っている隙にサンドワームの一匹がリリーに襲いかかる!

 

アレス「っ!!」

「キシャアアア!!」

アレス「リリー!危ねえ!」

 

アレスがリリーを庇いサンドワームに右肩を噛まれた!

 

リリー「アレス!」

アレス「くそっ…。まだだ…。」

リリー「なんで…。そこまで…。」

アレス「人々の為に戦うのが勇者だ。みんな避難するまでは倒れねえ。リリー、お前も避難するんだ。」

リリー「アレス…。」

アレス「来い!化け物共!俺は…まだ倒れてはいないぞ!」

 

アレスはふらつきながらも虚勢をはりサンドワームに立ち向かう。

が、サンドワームの体当たりを喰らいアレスは倒される。

数匹のサンドワームはアレスに興味を無くしたのか関所を越えて町に入っていく。

 

リリー「ああ…。町に魔物が…。」

アレス「待て…。行くな!俺と戦え!」

「キシャアアア!」

 

一匹、巨大なサンドワームがアレス達を丸のみしようと大きな口を開けて襲いかかる!

 

リリー「ああああ…。」

アレス「くそう…。体が動かねえ…。リリー、逃げろ…。」

 

絶体絶命のアレス達を助ける為に一人の男が二人の前に現れた。

 

???「砂漠の国の勇者達よ。よくぞここまで町を守り抜いた。後は我に任せておくがよい。」

アレス「だ…だれだ…。」

皇帝陛下「勇者アレスよ。矢内から報告は受けている。我が国の戦士達を連れて貴公達を助けに来た。我はファンタルジニア帝国の皇帝だ。」

リリー「皇帝?」

皇帝陛下「民の避難は完了した。後はあの魔物を討伐するだけだ。我がファンタルジニアの勇敢なる戦士達よ!我が友!矢内 孝太郎の道を邪魔する魔物達を殲滅する!皆!我に続け!」

 

皇帝陛下が先陣をきって魔物に突進する!皇帝陛下がサンドワームを次々と倒して行く。

 

「陛下!クソ!皆!陛下に続けー!手柄を独り占めされるぞ!」

「急げ!日頃の鍛練の成果を出すのだ!行けー!」

 

ファンタルジニアの戦士達も皇帝陛下に負けじとサンドワームを次々倒して行く!

 

リリー「凄い…。戦士の一人一人が一騎当千の豪傑のようだわ…。」

ジーク「二人とも大丈夫か?」

リリー「ええ…あんた達は行かないの?」

かね童子「俺様達はお前達を守るのが仕事だ。今更行ってもあの魔物は全滅してるしな。」

アレス「ちくしょう…。俺は…今日1日何も出来なかった…。あのペテン師野郎の足を引っ張っただけだった…。」

リリー「アレス…。」

 

少しの時間でサンドワームは全滅し、皇帝陛下がアレスの元に戻ってきた。

 

皇帝陛下「これで魔物達の驚異は去った。皆!矢内達を迎えに城に向かう!」

アレス「ま、まってくれ!なんで俺達を助けた!俺達はペテン師野郎の敵なんだぞ!」

皇帝陛下「貴公達は矢内 孝太郎の友であると聞いている。我が友、矢内達がここにいたら命懸けで貴公達を助けていただろう。」

 

皇帝陛下は戦士達を連れて城の方に歩いていった。

 

リリー「私達、知らなかっただけでずっと賢者に助けて貰ってばっかりだったんだね…。昨日の夜ご飯もきっと賢者が美人のお姉さんに渡して私達にくれたんだよ…。」

アレス「何が勇者だ…。何が人々の為に戦うだよ…。ペテン師野郎の手のひらに踊らされていただけじゃないか…。ちくしょう…。」

リリー「アレス…。私達も戻ろう?」

アレス「…。」

ジーク「掴まれ。その状態じゃまともに歩けないだろう。」

アレス「すまねえ…。一般の戦士が簡単に倒せたサンドワームを俺は…一匹もろくに倒せなかった…。」

かね童子「ああ…。あの人達が異常に強いんだ。たぶん、ファンタルジニアがマジで戦争なんかしたら全部の国を滅ぼす位の戦力だ…。」

ジーク「ああ…。だから気にするな。」

アレス「すまねえ…。」

 

アレスは力尽き気絶した。ジークとかね童子はアレスを連れて城に戻っていった。



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砂漠の国の大決戦 9

俺と山田は階段を降りて3階に戻ってきた。

 

勇者「げんじゃざま~!トンヌラざんが~!」ポロポロ

 

勇者が俺に泣きついてきた。まさか…。

 

矢内「サチ!」

サチ「…。」

 

サチが黙って首をふる。

 

矢内「そんな…。」

サチ「賢者さん…。私達が3階に降りた時にはもう…。」

矢内「回復魔法はかけたのか?」

サチ「いえ…。」

矢内「やれよ!簡単に諦めるな!」

ライアン「賢者様、死んだ者に回復魔法をかけても効果はないッス…。」

矢内「良いからやれよ!やれ!」

山田「矢内!おちつけ!ライアン…傷は治せるのか?」

ライアン「傷は治せるけど…。生き返る事は無いッス…。」

山田「やってくれるか?ここままではトンヌラが浮かばれない…。綺麗な形で逝かせてやりたい。」

ライアン「分かったッス…。」

 

トンヌラについていたナイフの刺さった傷が治っていく。

 

勇者「うう…。トンヌラさん…。」

矢内「くそっ…。」

サチ「…。」

山田「矢内…。悔やんでも死んだ者は生き返らない…。」

矢内「…。」

山田「矢内!お前が仕掛けた戦争だろうが!いつまでそうしている!まだ我々はアレスを助けに行かないと行けないだろうが!」

矢内「ああ…。行かないとな…。勇者、お前達はトンヌラを弔ってやってくれ…。」

勇者「賢者さま…。何処に行くのですかぁ。トンヌラさんが…。」ポロポロ

矢内「俺はアレスを助けに行く…。」

サチ「賢者さん…。立っているのもやっとでしょ?」

矢内「それでも行かないと駄目だ…。サチ、山田、後を頼む…。」

???「矢内!その必要は無いぞ!魔物は全滅させたからな!」

矢内「誰だ!?」

 

俺は声のした方に振り向いた。

 

ロキ「矢内!俺が援軍を呼んだからもう片付いている。安心しろ!」

矢内「って!何でいる!それより援軍ってどういうことだ?」

ロキ「何でいるだと?決まっているだろ?明日のパーティに参加する為だろうが!いつも言っているだろ!面白い事は俺達を誘えと。」

マナ「モチロンわたくしも参加いたしますわ!」

矢内「…。っで?援軍っていうのは?」

皇帝陛下「矢内、我らファンタルジニアの戦士達が街を襲ってくる魔物は全て退治した。」

矢内「ど、童帝!お前、なんで…伝言を送ったはずだろうが!」

「賢者様、陛下に無礼な発言は…。」

皇帝陛下「かまわぬ!」

矢内「街に魔物が向かったって事は…。貧民街にいた女や子供達は…。」

酒呑童子「賢者殿!それならワシ等が皆を城に避難させたから大丈夫じゃあ!」

虎熊童子「街に入られた魔物は自分が退治したのでご安心を。」

矢内「シュテちゃん!それに虎熊童子!お前等!ちゃんと伝言をつたえろよ!」

酒呑童子「いやー、ワシ等は明日のパーティの準備の為にこっちに来たらたまたま魔物が襲って来てのう。」

皇帝陛下「たまたま、パーティの準備の為に来たら街に魔物が襲って来たから我は退治しただけなんだがなぁ。」

矢内「たまたまってなんだよ!ったく。そうだ、アレスは?」

ジーク「賢者、俺達が連れて来た。ボロボロの状態だが大丈夫だ。」

かね童子「今は力を使い果たして眠っている。早く手当てをしてやってくれ。」

矢内「そうか…。」

畑中「ハッハーww!矢内!お前の思う道理に行かなくて残念だったな!」

矢内「その頭にくる笑いかたは畑中か!」

畑中「矢内、何でも抱え込むのは中二病の悪い癖だぞ。何が最悪の場合は人々を連れてファンタルジニアに逃げろ、だ。もっと仲間を頼れ、これは返すぞ。」

 

畑中がゲートストーンを投げつけてきた。ひのきのぼうでだいぶ痛みつけられたせいかキャッチ出来ず床に落としてしまった。

 

矢内「すまんな。」

 

ゲートストーンを拾いあげた。

 

畑中「で、国王は倒したのか?」

矢内「あ、ああ。しかし、トンヌラが俺達の為に犠牲になってしまった…。」

勇者「トンヌラさんが…わたしのせいで…トンヌラさんが…」ポロポロ

マナ「プッ可笑しな名前です事。」

山田「貴様!」

 

俺は山田がマナに掴みかかる所を制止させマナの顔面を思いっきりぶん殴った。

 

山田「おい、矢内…。」

矢内「もういっぺん言ってみろ。」

マナ「神の使いであるわたくしにたいして何を…」

 

俺はマナの顔面をもう一度ぶん殴った。

 

マナ「2度も殴った!このわたくしを!2度も!」

矢内「もういっぺん言ってみろ。」

 

俺はマナの顔面を思いっきりぶん殴った。マナは地べたに倒れこんだ。

 

マナ「女性の顔を殴るなんて!」

矢内「黙れ!!」

 

俺は倒れこんだマナを馬乗りにして徹底的に殴り付ける。

 

マナ「わたくしは思った事を…」

矢内「命をかけて戦って散った俺達の友人に対して言う言葉か!」

 

周りの人間が俺を止めに入るが構わずマナを殴り続ける。

 

畑中「矢内!落ち着け!」

サチ「賢者さん!もう良いでしょ!」

皇帝陛下「矢内!もう止めんか!」

矢内「放せ!止めるな!」

 

俺は周りの人間に押さえつけられた。顔がボコボコに腫れて倒れこんだマナが何か言おうとしている。

 

マナ「うぅ…。」

山田「女、まだ我々の友を愚弄するなら今度は押さえつけられた矢内に代わり私が相手をしてやる。」

畑中「山田さんも落ち着けよ。」

マナ「うぅ…。いぎ、か…える…。」

山田「何?まだ殴られ足りないのか?」

マナ「生き返る!わたくしの魔法で生き返れるから!」

山田「死んだ者が生き返るか!下らない冗談を言うな!」

 

今度は山田がマナに馬乗りなり容赦なく殴りかかる!

 

ライアン「客人!落ち着くッス!」

「ちょ、客人マジでカムチャッカファイヤーだし、ウケるww!」

ライアン「みんな、あの人これ以上殴られたら死んでしまうから客人を止めるッス!」

山田「ライアン!放せ!止めるな!こんな女は死ねばいい!」

サチ「山田!貴女まで殴りかかってどうするのよ!あんな女、殴る価値なんて無いわ。落ち着いて。」

 

山田は援軍で来たエルフの連中に押さえつけられた。

 

マナ「いぎがえる、いぎがえるがら!」

山田「まだ言うか!」

畑中「山田さん!落ち着け!」

勇者「トンヌラさん、本当に生き返るのですか?」グス…

 

勇者が泣きながらマナに問いただす。

 

マナ「ええ、わたくしにかかれば仮死状態の者を生き返らせる事など動作もない事ですわ。それなのにこのわたくしに対してこの仕打ち、あんまりですわ。」

畑中「このアホ女にそんな力があるのかよ…。」

矢内「トンヌラが生き返る?」

マナ「ええ、問題ありませんわ。」

矢内「直ぐにやってくれ!」

勇者「お願いします。トンヌラさんを…生き返らせて下さい。」

マナ「そうですわね。わたくしを殴ったそこの女、とりあえず土下座してもらえるかしら?」

 

マナが山田を指さして言い放った。

 

山田「どうやらまだ殴られ足りないみたいだな。」

 

またマナは山田に殴られた。

 

マナ「ごめんなざい!わだぐじがわるがっだでず!もうなぐらないで…。」

サチ「これ以上殴られたくなかったらさっさとしなさい!」

マナ「貴女!このわたくしに対してなんて物の言い方ですの!」

サチ「…。」バチン!

 

サチが思いっきりビンタを放つ。サチはビンタを喰らって倒れたマナの胸ぐらを掴み一言言い放つ。

 

サチ「殺すわよ…。」

マナ「ひぃぃぃ…。」

ロキ「ダハハハハ!もういいからさっさと生き返らせろ!」

マナ「ロキ様、分かりましたわ。直ぐに生き返らせますわ。」

ロキ「お前、顔がボコボコに腫れて!ダハハハハ!面白れえ!」

マナ「ロキ様に喜んで頂けて光栄ですわ。殴られたかいがあったってものですわ。」

 

マナが眠っているトンヌラの前に座り込んだ。

 

 

 

アレス「うう…。ここは?」

ジーク「おっ?気が付いたか?」

アレス「ここは?」

リリー「アレス、良かった…。お城の中よ。」

アレス「俺を運んでくれたのか?すまねえ…。」

かね童子「気にするな。お前は良くやったよ。」

アレス「何も出来てねえよ…。俺がもっと強かったら…。」

リリー「アレス…。」

アレス「リリー、所で今はどういう状況なんだ?」

リリー「あのペテン師の賢者達と行動していた兵士の男が死んじゃってマナが生き返る魔法を使うところよ。」

アレス「マナが?所でなんでアイツは顔がボコボコに腫れているんだ?」

ジーク「ああ、あの女があの兵士の名前をバカにして賢者に殴られてた。」

かね童子「賢者が周りに取り押さえられた後、賢者の仲間の褐色の肌の女にボコボコにされてた。」

リリー「ねえ、賢者って本当に悪い奴なの?」

サチ「あら?貴方達、無事だったのね。良かったわ。」

アレス「ペテン師野郎の仲間の女…。」

サチ「それだけ口が聞けたら大丈夫ね。」

リリー「ひとつ、聞いていい?」

サチ「何かしら?」

リリー「あのペテン師の賢者って本当に他国を滅ぼした悪党なの?」

サチ「確かに勇者の兜を持っていた王さまをフォークリフトって機械で轢き殺したわね。自分勝手に権力を振る舞っている人達にとったら賢者さんは悪党なのかもね。後は自分達の目で確かめる事ね。」

リリー「…。」

アレス「自分の目で確かめる、か…。」

リリー「あっ。マナが復活の魔法をかけるみたいよ。」

アレス「あいつにそんな魔法が使えるのか?」

サチ「使えなかったら今度は殴られるぐらいじゃすまないわね。」

アレス「アイツが死んだら良かったのにな。」

リリー「ええ。本当よね。」

 

マナが寝ているトンヌラ前で復活の魔法を唱えようとする。

 

トンヌラ「…。」

マナ「…。」

トンヌラ「…。」

 

マナが立ち上がりトンヌラから離れる。

 

矢内「何処に行く。」

マナ「…。」

山田「何か言え。」

マナ「この男、死んでいませんわ。」

矢内「何?」

マナ「ええ、瀕死の状態で回復魔法をかけたのが効いて一命をとりとめていますわ。」

サチ「私達が運んだ時はすでに心臓は止まっていたわ…。」

マナ「簡単に諦めずに回復魔法をかけたのが幸いしたのでしょう。直に目を覚ますと思いますわ。」

勇者「トンヌラさん…。死んでいないのですか?」

マナ「ええ。それにしても面白い名前ですこと。」

矢内「まだ殴られ足りないか!!」

 

俺はマナの顔面を思いっきりぶん殴った!殴られたマナはトンヌラの上に倒れこんだ。

 

トンヌラ「ぐわ!何だ!」

マナ「あら?目を覚ましましたわね。」

トンヌラ「顔がぐちゃぐちゃに腫れて…。ば、化け物ー!」バタ!

 

目を覚ましたトンヌラはボコボコに腫れたマナの顔を見てまた気絶した。

 

矢内「…。トンヌラは大丈夫そうだな。本当に良かった…。」

畑中「矢内、この国の人達を城の外に集めている。行け。」

矢内「はあ?演説とかはお前がしろよ得意だろ。」

畑中「ハッハーww!お前が仕掛けた戦いだろうが!最後はお前が締めろ!」

矢内「あー、分かったよ!やればいいんだろ!やれば!」

 

俺はしぶしぶながら演説をすることにした。

 

矢内「アレス、立てるか?」

アレス「何だよ…。」

矢内「外にいるみんなに演説をする。一緒に来てくれ。」

アレス「ペテン師野郎、また俺をみんなの笑い者にするつもりかよ。」

矢内「違う。」

アレス「俺は…。国に襲ってきたサンドワームと戦って一匹も倒せなかったんだよ!あの男の口車に乗せられて英雄きどりしていただけで…。」

矢内「アレス、お前が先頭に立ったから国のみんなが協力してお前が先に一人で関所でサンドワームと戦ったから誰も死なずにすんだ。」

アレス「だからって何だよ…。これ以上俺を惨めにさせるな。」

矢内「アレス、勇者ってなんだ?」

アレス「何だよ…。」

矢内「俺が知っている物語に出てくる勇者って奴はな、真っ先に大事な人々の為に戦い最後まで諦めない奴の事だ。そんな勇者のお前が居たからこの戦いに勝つことができた。」

アレス「でも、俺は…。弱い…。」

矢内「だったらこれから強くなればいいだけだ。みんなはお前を待っている。行こう。」

アレス「…。」

矢内「これから先、色んな所で活躍したらこういう演説する機会が増えるから場数は今のうちに踏んだ方がいいぞ。」

アレス「分かったよ。」

 

俺はアレスを連れて城の外に向かったが階段を踏み外し下に転げ落ちた。

 

アレス「おい、大丈夫か!」

矢内「大丈夫じゃねえよ。魔力も尽きて歩くのもやっとなんだよ。本当は立っているのもしんどいんだよ。」

 

俺はふらつきながら立ち上がりアレスと城の外に出た。

外に出ると人々の歓声が響き渡る。

 

矢内「こういう事は得意じゃないんだがな。」

「賢者様ー!勇者アレスー!」

 

人々の歓声が止まらない。俺は精一杯大きな声をあげる。

 

矢内「みんな!聞いてくれ!みんなを今まで苦しめてきた国王とそれに従う貴族達はここにいる英雄、勇者アレスと共に何とか打ち倒す事が出来た!」

アレス「お、おい。」

 

アレスが俺に何か言おうとするが構わず演説を続ける。

 

矢内「この勝利は!俺達だけではなくみんなが共に戦ってくれたから得た勝利だ!」

 

国民みんながざわつきだすが構わず続ける。

 

矢内「今、この国は新しく生まれ変わる!そう!これからはお前達一人一人がこの国を作っていくんだ!そして明日はこの国の開国記念日として中央広場にてパーティーを行う!みんな絶対来てくれ!」

「賢者様!賢者様!賢者様!賢者様!」

 

人々の歓声が鳴りやまない。

 

アレス「凄い…。」

矢内「アレス、俺の後に続け。」

 

俺はアレスに一言呟いた。そして、右手拳を高々と上げて叫ぶ!

 

矢内「この国の明日は!」

アレス「この国の明日は!」

「この国の明日は!」

矢内「この手で作り上げる!」

アレス「この手で作り上げる!」

「この手で作り上げる!」

「賢者様バンザーイ!勇者アレスバンザーイ!」

「賢者様バンザーイ!勇者アレスバンザーイ!」

矢内「さあ!明日はパーティだ!今日は解散だ!明日は派手に盛り上がろうぜ!」

「オー!賢者様バンザーイ!勇者アレスバンザーイ!」

矢内「アレス、城に入るぞ。」

アレス「…。」

矢内「ん?どうした?」

アレス「俺は英雄なんかじゃねえ…。」

矢内「なんだ、まだそんな事を言っているのか。」

アレス「そんな事じゃねえよ、俺は…。」

矢内「いいんだよ今回は俺達が英雄で。俺だってたいした事はしてないからな。」

アレス「なんだよそれ。」

矢内「なんだ?俺はお前が言うペテン師野郎だからな。人々を騙すくらい訳ないさ。」

アレス「そんな事、みんなを騙して良いわけないだろ。」

矢内「嘘も方便ってやつだ。城に入るぞ。」

アレス「おい!待てよ。」

矢内「早くしろよ。」

 

人々の歓声が鳴りやまないまま、俺達は城の中に戻った。

 

城の中に戻るとみんなが俺達を待っていた。

 

勇者「賢者さま!」

サチ「賢者さん、お疲れ様。」

矢内「おう、これでとりあえずは解決だな。」

皇帝陛下「矢内よ、我等は1度国に戻る。」

酒呑童子「賢者殿、明日は宴じゃあ!ワシも村の衆を連れてまた来るぞぉ!」

矢内「わざわざ俺達の為に助けてくれてすまない。」

 

俺は助けに来てくれた友人達に頭を下げた。

 

皇帝陛下「矢内、頭を上げんか。明日はパーティーだから我も国の者達を連れて朝から参る。色々と準備があるだろうからな。手伝う事があったら何でも言ってくれ。」

酒呑童子「賢者殿!明日、共に酒が飲めるのが楽しみじゃあ!ガハハハハ!」

矢内「ああ!俺も楽しみだ。」

ロキ「矢内!1度コイツらを連れて戻る!また明日な!」

矢内「ああ!すまない、今回は本当に助かった。」

ロキ「ダハハハハ!堅苦しい事を言ってるんじゃねえぞ!明日のパーティーの為だ!」

 

ロキは童帝達を連れて開いたゲートの中に消えて行った。

 

エリカ「ウーン…。あ、あれ?」

サチ「エリカさん?良かった、気がついたのね。」

 

倒れていたエリカとアリマ君が目を覚ました。

 

矢内「エリカ!大丈夫か!」

エリカ「あれ?賢者?あたし…。」

矢内「無事だな?」

エリカ「う、うん…。でも…。」

矢内「そうか、良かった…。」

エリカ「なんで…。良くないよ…。あたし…。悪い奴に倒されて…。」

矢内「バカ野郎、お前が無事だった事が1番大事な事じゃねえか。」

サチ「そうよ。」

勇者「エリカにゃん…。心配したのですよ…。無事で良かったです…。」

エリカ「賢者、みんな、ごめんな…。」

アリマ君「キー…。(ごめん…。)」

勇者「アリマ君も無事で良かったです…。」

アリマ君「キー…。(僕がもう少し強かったら…。)」

矢内「エリカ、アリマ君、お前達が俺達の後ろを守ってくれたからこの戦いに勝つ事が出来たんだ。」

アリマ君「キー…。(でも…。)」

矢内「明日はパーティーだぞ?だからそんな顔をするな。」

エリカ「分かった!賢者、ありがとう!」

矢内「ああ。」

 

山田が後ろから声をかけてきた。

 

山田「矢内、話し込んでいる所すまないが少し良いか?」

矢内「なんだ、改まって。」

山田「客だ。我々と話があるそうだ。上の階だ、来い。」

矢内「分かったよ。畑中、後を頼む。」

 

俺は勇者達や城の中の連中の事は畑中に任せて山田と上の階に上がると虎の大臣が待っていた。

 

矢内「国王の埋葬は終わったのか?」

大臣「賢者殿…。火葬して城の屋上にお墓を建てるつもりです。王が新しく生まれ変わる国を上から見れるように…。」

矢内「そうか…。手厚く葬ってやってくれ…。それで話ってなんだ?その事じゃないだろ?」

大臣「はい、私の処分についてです。」

矢内「どういうつもりだ。」

大臣「私の処刑を賢者殿にしていただきたい。」

矢内「…。」

山田「死んで罪が消えて無くなるか愚か者!罪を償いたかったら生きて死に物狂いで国に捧げろ!」

大臣「しかし、私は国家を脅かした言わば犯罪者…。民が私を許す訳がない。」

山田「だからと言って」

矢内「山田、止めろ。」

山田「矢内!貴様はこの者を死刑にするつもりか!」

矢内「だから、落ち着けよ。虎、お前はこの国の人々からなんて呼ばれているか知っているか?」

大臣「…。」

矢内「砂漠の国のヒーロー、救世主って呼ばれている。」

大臣「しかし、私はそんな大層な人物ではない…。」

矢内「でも、この国の人々はそう思っている。お前と戦っている時、俺は援軍に来た人々にボコボコにされたんだぞ。みんなお前を助ける為に必死だった。」

山田「それはお前が変な格好をしていたからだろうが。」

矢内「山田、黙っていろ。そんなヒーローを俺に処刑させるのか?そんなことをしたら今度は俺が人々に殺される。」

大臣「しかし、私はヒーロー等では…。」

矢内「そんなことを言ったら俺なんか賢者なんて大層な奴じゃない。」

大臣「賢者ではない?何故そんなことを?」

矢内「嘘も方便ってやつだ。だから、お前もヒーローで良いじゃないか。」

大臣「賢者殿は、この私を許すと言うのか。」

矢内「許すも許さぬもない。戦いは終わったんだ。これからも国の為に尽くして欲しい。この国の王が操られる前の志を継いでやってくれ。」

大臣「賢者殿…。」

矢内「明日は新しい国を祝うパーティーだ。これからの事はそのあとに決めていけば良い。明日の準備があるから俺はもう行くぞ。必ず来いよ?」

 

俺は階段を降りて勇者達のもとに戻った。

 

大臣「賢者殿、待ってくれ!私は…。」

山田「もういいではないか。」

大臣「しかし…。」

山田「それよりお前は王の埋葬が残っているのだろう、それをすませてやれ。」

大臣「かたじけない。」

山田「最後に1つ、これからは全てを一人で抱え込むな。周りを頼れ。お前には矢内 孝太郎という友がいる。」

大臣「矢内 孝太郎…。」

山田「お前達が知る賢者様とか名乗るペテン師だ。」

大臣「賢者殿…。」

山田「アイツは友人を見捨てる事は絶対にしない。アイツはそう言う男だ。」

大臣「私が賢者殿の友…。何故貴女はそこまで賢者の事を?」

山田「ただの腐れ縁だ。つまらん詮索は無用だ。私もそろそろおいとまする。明日はパーティーだそうだ。私もお前もそうそう休んでは居られないぞ?」

大臣「分かりました。この国の為にありがとうございます。」

山田「矢内の奴が居たらこう言われるぞ?友人に対して礼など要らないとな。」

 

再び、勇者達がいる下の階に降りて来た。

トンヌラも目を覚ましている。まだ立ち上がる事は出来ないみたいだ。

 

矢内「トンヌラ、気がついたか?」

トンヌラ「賢者様、目が覚めて周りの連中から話を聞きました。すみません…。俺なんかの為に…。」

矢内「何を言ってるんだ、お前は俺達の友人だ。お前が傷ついたら助けるしお前をバカにするような奴はぶっ飛ばす。当たり前の事じゃねえか。」

トンヌラ「賢者様…。俺なんかに…。そこまで…。」

勇者「トンヌラさん、無事で良かったです。」

トンヌラ「賢者様…。勇者のお嬢ちゃん…。俺は生涯あんた達に忠誠を誓う。」

矢内「だからそう言うのは…。」

サチ「分かったわ。」

矢内「おいサチ、何を勝手に言ってるんだ。」

サチ「賢者さん、黙っていて。まず、明日までに身体が動けるように今日はゆっくり休む事。そして、今日から私達の事を友達として接する事。それが出来なければ忠誠は誓わせないわ。」

 

たいした詭弁だな。つくづくこいつが仲間で良かったと思う。

 

トンヌラ「ああ、助けてくれてありがとうな。お嬢ちゃん達。」

サチ「ええ、明日のパーティー、精一杯楽しみましょう。」

 

さて、パーティーの準備だ。あそこで食材を揃えるか。

 

矢内「畑中!いるか!」

畑中「大声を出すな!聞こえてるわ!」

「あっ!賢者様!」

 

畑中は子供達の相手をしている。あれはキールにエースにポーキーに…。なんでいる!

 

矢内「お前達!何でいる!」

キール「ああ、賢者達を助けに城の戦士達が出陣するって聞いてついてきたんだよ。」

エース「ジークとかね童子は弱っちいから俺達が助けてやらないとな。」

 

ジークとかね童子…。居た!子供達の相手をしているな。俺は二人に近づいた。

 

ジーク「賢者、どうしたんだ?」

矢内「このカス共が!!子供達を連れてきてるんじゃねえ!危ない目にあったらどう責任とるんだ!」

かね童子「いきなり何だよ!コイツ等が勝手についてきたんだよ!」

矢内「元はお前達がくそ弱いからだろ!ふざけるんじゃねえぞ!」

ジーク「いきなり何だよ!もう我慢出来ねえ!俺達が弱いかどうかその体に教えてやる!俺達と戦え!」

矢内「ほう?賢者様である俺と戦うってか?」

山田「矢内、下らない言い争いをするな大人げない。お前は立っているのもやっとの状態だろう。」

 

山田が上の階から降りて来た。

 

ジーク「あっ、賢者の仲間の女。」

山田「ああ、お前達か。矢内、明日の準備があるだろう。こんなことで時間を止めるな。」

矢内「山田、やっと降りて来たか。よし、買い出しに行くぞ。」

かね童子「賢者!俺達から逃げる気か!」

矢内「お前達の相手は明日のパーティーでしてやる。明日のパーティーの買い出しに行ってくるからちゃんと子供達の事を見とけよ。」

ジーク「分かってるよ。そこは任せて置け!」

矢内「よし、畑中、山田、ついてきてくれ。」

ポーキー「賢者様、行っちゃうの?」

矢内「明日のパーティーの買い出しに行くんだ。明日は凄いぞ!今まで見たことのないご馳走が待っているからな。」

ポーキー「そうなんだ…。でも…。私達、この国の人じゃないから。」

矢内「何を言ってるんだ。ちゃんとジーク達が連れて来てくれるさ。一緒に楽しもう!」

ポーキー「え!いいの?」

矢内「お前達は俺の友人だ。みんなで来てくれ。」

キール「また、パーティーしようって約束したもんな!」

矢内「今回だけじゃないぞ。きっとこの先この国だけじゃなく色々な国でもするかも知れないからな。」

「すげえ!」

矢内「ああ!だからみんな!また明日な!畑中、山田、行くぞ。」

畑中「何処に行く気だ?」

矢内「行くって決まっているだろう。コストコだ。」

勇者「賢者さま、わたし達もお供します。」

エリカ「あたしも行くよ!」

サチ「賢者さん、買い出しのついでに何か美味しい物を食べるつもりよね。自分だけ美味しい物を食べようだなんてそうはいかないわよ。」

 

お前達も来るのか。後、荷物持ちがいるな。そうだ。ガリアスの元用心棒のアイツ等がいた。

 

矢内「おっ、いたいた。お前達、ちょっと付き合え。」

「何だ賢者?」

矢内「買い出しだ、手伝ってくれ。」

「何だよ、荷物持ちかよ。」

矢内「よし、行くか。」

畑中「矢内、コストコまでどう行くんだよ。」

矢内「コイツだ。ゼクスにコストコ前にゲートを作ってもらった。」

 

俺達はゲートストーンを使ってゲートを開いた。

さあ明日はパーティーだ!

 

 

 

第14話

砂漠の国の大決戦

END

 



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開国記念日大パーティー 1

昨日はあれからコストコで買い出しをして俺は一人貧民街の寝床に戻って直ぐに眠ってしまったからな。まだ朝の4時だがパーティーの料理の準備を始めようか。

準備をしようとしたら何かが近づいてきた。何だ?藁で出来た…。ひとがたの…。

 

「…。」

矢内「何だ?」

「…。」

 

敵意は無いようだ。

 

矢内「何か用か?」

「…。」

 

手伝いに来たのか?ん?

 

「…。」

 

何故かコイツの事が分かる。そうか、俺がロキからもらった魔物とかと話が出来る力のお蔭か。

 

矢内「おー、そうか。藁助か。俺はみんなが大好き賢者様だ。手伝いに来てくれたのか。パーティーまで時間がないから助かるぜ。」

「…。」

矢内「そうか。そのアリサって女がお前の仲間なんだな。」

「…。」

矢内「そうか、エリカにお前達は助けてもらってビーナスって糞を裏切ったって訳だ。よし、まずはこのじゃがいもをこれぐらいにカットしてくれ。」

「…。」

矢内「ああ、そんな感じだ。何?ビーナスに逆らったら殺されるかも知れない?何を言ってるんだ?そんな神の名を語った糞野郎にこの賢者様が負ける訳がないじゃないか。それに俺はそのビーナスをぶっ飛ばす為にここまで来たんだよ。」

「…。」

矢内「よし、この3枚下ろしにした魚の身をこれくらいの大きさに切ってくれ。」

「…。」

 

この藁助、結構器用だな。これから先、俺達と一緒に来てくれないかな?昨日、何も荷物を持たずに45㎝のピザを1枚平らげたサチと交換出来ないかな。ダメ元で藁助の飼い主のアリサと相談してみよう。

土鍋で炊いたご飯がそろそろ出来たころだな。よし、上手く出来てる。これに俺が前もって作ってある矢内流特製ワカメのふりかけをたっぷりかけて。

 

矢内「藁助、このご飯をまんべんなく混ぜてくれ。」

「…。」

 

言われた事を1発で理解してやってくれる。きっとエリカの倍以上のIQ数値はあるだろう。

日が昇ってきた。下処理はこれぐらいで良いだろう。

 

「あれ?けんじゃさま?きのうはおしろでおやすみしていたんじゃないの?」

 

貧民街の女の子だ。笑顔で話しかけてきてくれた。この戦い勝てて本当に良かった…。

 

「けんじゃさま?」

矢内「あ、ああ。おはよう。そうだ、藁助!パーティーまでまだ時間があるからこの子と一緒に遊んでくるといい。」

「…。」

「わらすけ?けんじゃさまのおともだち?」

矢内「ああ、そうだ。」

「けんじゃさまっていろいろなおともだちがいるんだね。」

「…。」

 

藁助は女の子を肩車をしてゆっくり歩いていく。

 

「すごい!たかーい!きゃははは!」

「…。」

 

女の子は藁助を気に入った様だ。今は7時か…。パーティー開始まで後3時間か…。

貧民街の人々が俺が居るのに気づいて近づいてきた。

 

「賢者様、昨日はお城でおやすみしていたのでは?」

矢内「パーティーの料理の準備をするために俺だけ戻って来たんだ。」

「賢者様、国を救っていただいただけでなく…。そんな…。お一人で…。」

矢内「俺がしたくてやってるんだ。気にするなよ。」

「でも…。せめて私達も手伝わせてください!」

矢内「うーん。」

「賢者様、俺達の国の開国記念パーティーです!俺達がしないでどうするのですか!なんでも言って下さい!」

矢内「あー、分かった分かった!料理の下処理は終わっているから切り分けた材料とか運ぶの手伝ってくれるか?」

「はい、これですね。って凄い量じゃないですか!」

矢内「何を言ってるんだ。国民全員分だけじゃなくて他の国の連中も来るんだぞ。これでも足りない位だ。」

「男はさっさと運ぶんだよ!女の私達は賢者様のお料理のお手伝いをさせてもらうよ。」

矢内「ああ、それは助かる。いっぱいご馳走を用意するからな。」

「あのおにぎりは出るのですか?」

矢内「ああ、用意している。」

「カップラーメンは?」

 

カップラーメンなんか出すか!

 

矢内「パーティー開始まで余り時間がないから急いで広場まで運んで料理しよう。」

「オー!」

 

 

朝の8時、メインのパーティ会場になる中央広場にたどり着いた。

 

矢内「よし、時間がないから次々と料理を完成させていくぞ。まずはおにぎりをこれぐらいの大きさで握ってくれ。」

「前に食べた時より大分小さいけど…。」

矢内「他の料理もたくさんあるからこれくらいでちょうどいいんだ。おにぎりだけでお腹一杯になったらもったいないだろ?そっちの3人でワカメのおにぎりを握っていてくれ。」

「あいよ。」

矢内「こっちの3人はたらこに鮭におかかと色々用意してあるからこのくらいを中に積める感じでおにぎり握ってくれ。握ったらこんな感じでのりを1枚挟んでくれ。」

「こんな感じ?これじゃ中に何が入っているか分からないよ?」

矢内「ああ、それでいいんだ。中身は口に入れた時のお楽しみってやつだ。」

「へー、私達じゃそんな事思いつないよ。流石は賢者様だね。」

矢内「そんなに感心する事か?」

「そりゃそうさ。私達は毎日食事なんて出来なかったからね。楽しむなんて余裕はなかったよ。」

矢内「まあ、今日からは楽しむ余裕が出来る国に変わっていくさ。じゃあ、そこの3人でおにぎりを握って2人は握ったおにぎりに海苔を巻いてくれ。」

「分かったよ。」

矢内「よし、次は…。」

 

俺は手伝ってくれる貧民街の女達に次々と指示を出す。

中央広場の真ん中にある処刑にする張り付ける木が邪魔だな。

 

矢内「男連中、いるか!」

「賢者様、俺達は料理なんて出来ないぞ。」

矢内「あの処刑にする時の木が邪魔だ。取り外してくれ。」

「勝手に外してもいいのか?」

矢内「ああ、構わん。もう下らない事で処刑になる奴は居ないから急いで外してくれ。もう必要ない物だ。」

「そうか…。そうだよな。このお立ち台もぶっ壊すか。」

矢内「待て!その台はいる!処刑にする木だけでいい!」

 

男達が作業に取りかかった。

少しして城の兵士達が近づいてきた。先頭にはトンヌラがいる。

 

トンヌラ「賢者様、水くさいじゃないか。俺達に黙って一人でパーティーの準備をするなんてよ。」

矢内「トンヌラか、もう大丈夫なのか?」

トンヌラ「ああ、もう大丈夫だ。それより教会に貯えてあった食糧で街の女連中が色々と作ってくれている。こっちに運べばいいか?」

矢内「ああ、頼む。後は料理を置くテーブルだな。たくさんいる。」

トンヌラ「よし、分かった。それじゃあ…。」

「そう言う雑用は俺達がやるのでトンヌラさんは休んでいてください。」

トンヌラ「しかし、それでは…。」

矢内「いいじゃねえか。病み上がりなんだからみんなの好意に甘えておけよ。」

トンヌラ「分かったよ、みんな頼む。」

 

兵士達が作業に取りかかった。

今は9時か…。後1時間しかないな。

向こうから俺を呼びながら近づいてくる連中がいる。

 

酒呑童子「ガハハハハ!賢者殿!酒を持ってきたぞぉ!さぁ飲むぞぉ!」

トンヌラ「な、なんだ、鬼!?」

矢内「そうか、トンヌラはあの時倒れていたから初対面だったな。安心しろ、俺の大事な友人だ。」

酒呑童子「おっ?お主、傷はもう大丈夫なのか?」

トンヌラ「ああ。さっき賢者様から話を聞いた。戦いの時に貧民街の女子供を助けてくれたみたいで…。」

酒呑童子「ガハハハハ!気にするな!今日は宴じゃあ、楽しく飲もうぞ!」

トンヌラ「あ、ああ…。」

茨木童子「賢者殿、お久しぶりです。今回は我々村の者みんなお誘いいただきありがとうございます。」

矢内「何を言ってるんだ。パーティーに友人を誘うのは当たり前じゃないか。」

茨木童子「今日は、村の者一同で取って置きの料理を振る舞わさせていただきます。では、早速準備を致しますので失礼します。」

矢内「料理ならここでしたらいいじゃないか。」

 

村の娘達が話に割って入る。

 

「イバちゃんは賢者様に振る舞う為にすっごい料理を編み出したんだから作っている所を見られたくないのよ。」

矢内「そうなのか?分かった。楽しみにしている。でも、あまり時間は無いぞ?」

茨木童子「大丈夫です。あらかた準備はしてきましたので。」

 

茨木童子達が村の女達を連れて作業にかかりだした。

また俺を呼びながらこっちに近づいてくる連中がいる。

 

皇帝陛下「矢内よ、お前も昨日から動きっぱなしで疲れているだろうに相変わらずだな。」

矢内「よう童帝、お前達は普段からろくな物を食ってないから今日はちゃんと栄養をとっておけよ。」

「賢者様、陛下に対して…。」

キサラギ「矢内殿が無礼なのは今に始まった事ではない。ですよね陛下。」

皇帝陛下「ああ。いちいち怒っていたら切りがないからな。それより矢内、今日はお前に客が来ている。」

矢内「客?誰だよ?」

???「お前が異世界から来た賢者か。」

矢内「なんだよお前は?いきなり偉そうに。」

キサラギ「偉そうにではない!ノートルランドの国王陛下だ!」

ノートルランドの国王…。俺に何のようだ…。

 

「お前達は1度我が国に来た様だな。」

矢内「ああ、そこでノートルランドの勇者、タイショウ達と出会った。」

「おお、タイショウと会ったか!ラーメンは食ったのか?」

矢内「ああ、魂のこもった美味いラーメンだった。」

「そうだろう、そうだろう!ワシも2週に1回は店に食いに行ってたからな。それがタイショウが勇者なんかに選ばれてしまった為にワシはラーメンを2ヶ月も食えてない。」

矢内「王様の権限でただでラーメンを食っていたのか。」

「そんな事をするか!我が国は食に関しては厳しく取り締まっている!食い逃げは人殺しより罪が重い!食い逃げした輩は一族親戚一同死刑と決まっとる!それは王族でも同じこと!」

 

無茶苦茶だ。どんな国だ…。

 

矢内「で、何の用事だ。俺はパーティの料理を作っている最中なんだよ。さっさと用件を言えよ。」

「そうだった。まずはさっさと魔王を倒すなり何とかしろ。ワシは早くタイショウ達に帰って来てもらってラーメンを食いたいのだ。分かったな?」

矢内「だったら始めに適当な弱そうな奴を勇者に仕立て挙げてたら良かったじゃねえか。」

「おお、その手が有ったか!もっと早くに気づいたら…。何でもっと早く言わなかった!」

矢内「知るかよ。用件はそれだけか。」

「後、我が城に来た奴隷商人がエルフの女性を連れていたので奴隷商人を切り捨ててエルフ達を保護して連れて来ている。何処に連れて行けばいいのだ?」

矢内「何!?マジでか!そっちを先に言えよ!城だ!城にいる山田に言ってくれ!」

皇帝陛下「山田殿か…。矢内、我も1度城に行く。」

矢内「ああ、急いで行ってくれ!パーティー開始まで時間がないから頼む。」

「城か、ワシが戻って来るまで勝手にパーティー始めたら死刑だからな!」

矢内「うるせえ!!早く行けよ!」

皇帝陛下「国王よ、急いで参ろう。」

「分かった。」

 

童帝達がノートルランドの国王達を連れて城に向かって行った。

 

トンヌラ「他国の国王達とも知り合いなんだな賢者様は。」

矢内「いや、ノートルランドの国王は今初めて会った。なんか、子供がそのまま大人になった感じの奴だったな。」

キサラギ「矢内殿、他国の国王に対して余りにも無礼な振る舞いをされては…。」

矢内「戦士長、相変わらず頭が固いな。今日は開国記念のパーティーなんだ。楽にいこうぜ。」

キサラギ「自分はそなたの様に誰にでも無礼を働く訳にはいかない。」

矢内「そういうのが駄目なんだよ。部下の戦士達の為にも今日は精一杯羽目を外せ。じゃないと楽しみにして来た他の戦士達が楽しめないだろ?」

キサラギ「部下の為か…。矢内殿は相変わらずだな。いつも自分がちっぽけな人間に思えてしまう。」

矢内「ハハハ、今日は食いきれない位の料理を用意している。みんなと一緒に楽しんでくれ。」

キサラギ「フフ…。矢内殿、自分は少し町を探索させてもらう。パーティー開始までには戻る。」

矢内「ああ。」

トンヌラ「町なら俺が案内させてくれ。あんたに色々と教えてもらいたい事があるんだ。」

キサラギ「そなたは?」

矢内「俺達と共に戦った友人のトンヌラだ。」

キサラギ「そうであったか。では案内をお願いしよう。」

トンヌラ「ああ。」

 

トンヌラが戦士長を連れて町の中に消えていった。

 

矢内「料理もラストスパートにかかるか。パスタは4種類位で良いか。カルボナーラにボロネーゼ、和風パスタと後1つ…あれで良いか。エルフの森で好評だったアラビアータで。」

 

俺はパスタを次々と仕上げていく。

パーティー開始まで後、10分。肉を焼いていくか。

鉄板焼にしよう。それなら他の物も焼けるしな。準備を始めようとしたらまた俺を呼びながら近づいてくる連中がいる。

 

「賢者様、今日は我々までお呼びいただきありがとうございます。」

 

俺が初めてこの世界に来た時に訪れた町の町長達だ。オークの村の連中も一緒にいる。

 

矢内「あれから仲良くやってるみたいだな。」

「ええ、賢者様のお陰です。」

矢内「そうか、また物騒な事に巻き込まれないようにみんなで協力していかないと駄目だぞ。」

「はい、もちろんです。それにお城からジーク殿とかね童子殿が町を見回りしていただいているので心配要りません。」

矢内「ジークは元々は人拐いだっただろう。信用するなよ。かね童子も元は人間を見下したような奴だぞ。」

「賢者様、ジーク殿は我々の為に一生懸命に働いております。それにかね童子殿は凄く器用な方でしていつも日曜大工を手伝っていただいて、今ではお二人は町の人気者ですよ。」

矢内「子供達がなついていたのは知っていたが…。へー、そうか。」

「我々も皆で今日の為にお作りした料理とお酒を持ってきました。これをパーティーでお使いください。」

矢内「そうか、それじゃあそっちのテーブルに置いてくれ。」

「こちらですね。おお!すでに我々が見たこともない料理が用意されている。」

矢内「おっ?スモーブローだな。」

「はい、賢者様に教えていただいたお料理です。」

矢内「そうか、料理はいくらあっても足りないだろうからな。助かったぜ。もうすぐ始まるからみんな適当にくつろいでくれ。」

「はい、他にも賢者様にご挨拶したい者もおりますので我々は失礼します。」

矢内「ああ、今日は楽しんでいこうぜ。」

 

町長は俺への挨拶が終わると砂漠の国の人々と話をしだした。

 

「賢者!久しぶりね!今日という今日は前にぶん殴られた借りを返してあげるわ!」

 

えっと、こいつは確か…。シュテちゃん達の村の元村長の娘のブス。

 

矢内「おー、しばらくだなブス。」

「ブスじゃないわよ!あたしは可愛いのよ!」

矢内「そんな訳あるか。」

酒呑童子「おー!ブスじゃないかあ!しばらく村で姿を見なかったが何処に行っておったんじゃあ!」

「だからブスじゃないわよ!それにあんたがかね童子を城に置いて帰って来たから町に引っ越したのよ!それに町ではみんなに「かね童子さんの奥様はいつも可愛らしいわね。」って言われているのよ!」

矢内「かね童子…。こんなのと結婚したのか…。」

酒呑童子「ブスが急に居なくなって村の娘っ子達も心配しとったが無事で良かったわい!ガハハハハハ!」

「だからブスじゃないわよ!」

矢内「いいかブス、俺はパーティーの料理を作っている最中なんだ。邪魔だからあっち行け。」

「だからブスじゃないって言ってるでしょ!」

 

ブスの大声を聞いてかシュテちゃんの村の娘達がこっちに来た。

 

「あっ!聞いた事のある声がしたから来てみたらやっぱり!」

「ある日、急に居なくなっていたから心配していたんだよ。」

「な、何よ…。どうせそんな事思っていない癖に。」

矢内「ほら、さっさと行けよ。」

「ほら、賢者様もそう言ってるし、こっちでお料理作るの手伝ってよ。」

「何でこのあたしがそんな事しないといけないのよ!あんた達だけでやればいいのよ!」

 

相変わらず腹立つブスだな。と、俺は殴りかかろうと思っていたら一人の娘が俺に耳打ちする。

 

「賢者様、大丈夫よ。アイツ、チョロいから。」

 

そのまま娘達は気にせずブスに話かける。

 

「えー、一緒にしようよ。」

「そうだよ。それに貴女が一生懸命お料理したらかね童子も凄く喜ぶと思うのになー。」

「そ、そうかな?」

「そうだよ。愛情のこもったお料理だから喜ぶに決まってるよ!」

「そう?まあ、あんた達がそこまで言うのなら手伝ってあげても良いわよ。さあ、案内しなさい。」

「こっちだよ。」

 

ブスは娘達に連れて行かれて料理を手伝いに行った。

 

矢内「シュテちゃん達の村も上手くやっている様だな。」

酒呑童子「ガハハハハハ!かね童子は城の戦士にしたから村を出たが他のみんな元気でやっているわい!」

矢内「そうか、それは良かった。」

 

今度は俺を呼びながら子供達が近づいてくる。キール、エースにポーキー達だ。かね童子とジークが引率している。

 

キール「賢者、俺達も来たぜ。」

矢内「ああ、久しぶりだな。」

エース「久しぶりだな、じゃねえよ。1週間前に会っているじゃないか。」

矢内「ああ、そうだったな。砂漠の国では大変だったから1週間でも凄く長く感じたんだよ。」

キール「砂漠の国の王様をやっつけたんだろ?そんな偉い奴をやっつけて良かったのか?」

矢内「やっつけるって言い方は少し違うな。俺達はこの国の人々の明日の為にやった事だ。」

エース「明日の為に?明日なんて夜寝たら来るじゃないか。」

矢内「俺達はこの国に着いた時はな、一部の者以外みんなが毎日食べる事も出来ないでいつ死ぬか分からない状態だったんだ。だからみんなが当たり前に明日を迎える事なんで出来なかったんだ。」

ポーキー「何で?王様も兵隊さんも居るのにどうして?」

「おかしいよそんなの!」

矢内「ああ、この国はそのおかしいことにずっと気づかなかったんだよ。王様や貴族は自分達が贅沢したい為に国の人々から無理矢理食べる物もお金も奪っていたんだ。そんな事がずっと続いていてみんなどうすることも出来ずに苦しんでいたんだ。」

キール「どうしてみんな黙っていたんだよ。」

矢内「それが出来なかったんだ。逆らったら直ぐに殺される。だからみんな従うしか無かったんだ。」

エース「なあ、賢者。他の国もそんな酷い事が行われているのか?」

矢内「そこまでは分からない。」

キール「そうか…。」

ポーキー「賢者様、この国の人達はもう辛い思いをしなくてもいいの?」

矢内「ああ、そう言うことにならない様に今日は色々な国の人達が集まって仲良くなる為のパーティーなんだ。だからみんな、今日は来てくれてありがとうな。精一杯楽しんでくれ。」

エース「そうか、ただ賢者が騒ぎたいだけのパーティーじゃなかったのか。」

矢内「まあ、それもあるがな。」

「ハハハ!賢者様らしいや!」

キール「なあ賢者、この国の子供達は何処に居るんだ?」

矢内「藁助が広場に連れて行ったから近くに居ると思うぞ。」

ポーキー「藁助?」

矢内「ああ、藁でできたゴーレムだ。俺達大人よりデカイから直ぐに見つかると思うぞ。」

エース「よし、じゃあその藁助って奴を捜すか。」

キール「そうだな。先ずはこの国の子供達と友達になろうぜ。みんな行こうぜ!」

矢内「もうすぐパーティーが始まるから直ぐに戻ってこいよ。」

 

子供達はそのまま走って行った。

 

かね童子「ああ、行っちまった…。」

酒呑童子「かね童子よ!しばらくじゃな!」

かね童子「酒呑童子様、お久しぶりです!」

酒呑童子「ガハハハハハ!元気でなによりじゃあ!城の方はどうじゃ?皆と上手くやっておるのか?」

かね童子「国の戦士達は皆、鬼神の様な強さで俺様なんかじゃ足元にも及ばず特に戦士長様は普段からも己に厳しくとても素晴らしい方でして日々精進しております。それに町の者達にも良くしてもらっています。」

酒呑童子「ガハハハハハ!そうかそうか!皇帝殿や戦士長殿は素晴らしい男達じゃからな!これからも精進せい!」

かね童子「は、はい!」

ジーク「かね童子、挨拶はそれぐらいにして子供達を追わないと迷子になったりしたら大変だ。」

かね童子「そ、そうだな。」

矢内「しっかりやれよカス共。」

ジーク「誰がカスだ!」

矢内「お前達以外に誰がいる。良いから行け。」

かね童子「なんでお前に偉そうに言われないといけないんだ。」

矢内「俺は偉大なる賢者達だぞ。偉いに決まってるじゃねえか。」

酒呑童子「ガハハハハハ!賢者殿はこの国を救った英雄じゃからのう!」

ジーク「まあ、他国の王様に喧嘩を売る様な奴は賢者ぐらいだからな。でもよく勝てたよな。」

矢内「戦う前に色々と準備はしていたけどみんなが助けてくれたおかげだ。」

かね童子「村の村長を追い出した時と言い本当に無茶苦茶な奴だよ。」

矢内「まあ今日はパーティーだ。子供達の面倒を見るのも良いがお前達自身もしっかりと楽しめよ。」

ジーク「あ、ああ。」

かね童子「酒呑童子様、俺様達は失礼します。」

 

かね童子とジークは子供達を追いかけて行った。

それはそうとアイツ等は何をしているんだ。パーティーが始まってしまうぞ。

 



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開国記念日大パーティー 2

わたし達は昨日、賢者様とお買い物してから虎のおっちゃんのご好意でお城でお休みすることになりました。その時にお人形さん使いのアリサさんと砂漠の国の魔法使いのリリーさんと色々お話をして仲良くなりました。

朝、わたしが目を覚ますとなんだかアリサさんが慌ただしくしています。

 

アリサ「藁助ー!藁助ー!」

勇者「アリサさん、おはようございます。何かあったのですか?」

アリサ「あっ、勇者ちゃんおはよう。朝から藁助が何処にも居ないの…。今までこんな事無かったのに…。」

勇者「藁助さんも昨日わたし達と一緒にお休みしていたのに何処に行ったのでしょうか。」

エリカ「アリサに勇者、おはよう。」

アリマ君「キー!」

リリー「みんな、おはよう。」

勇者「あっ、エリカにゃん達、おはようございます。実は藁助さんが朝から何処にも居ないのです。」

アリサ「藁助…。」

エリカ「そうなんだ。みんなで探したら直ぐに見つかるよ。」

山田「朝から騒がしいが何があった。」

勇者「山田さん、おはようございます。実は…。」

 

わたしは山田さんに藁助さんの事を相談しました。

 

山田「そうか、城の中には居なかったのだな?」

アリサ「はい…。でも、藁助が居なくなるなんて…。私、どうしたら…。」

山田「じゃあ外だな。外を探せばいい。あれだけ大きい藁人形だ。人に聞けば直ぐに見つかるはずだ。矢内の娘、パーティーは10時からだ。遅れない様にしろよ。」

勇者「えっ?山田さんは一緒に手伝ってはくれないのですか?」

山田「ああ、私は今からエルフの民を迎えに行くからな。手伝う事は出来ない、すまないな。」

エリカ「エルフのみんなも来るんだ。」

山田「エルフの民達だけではない。各国から招待されているみたいだぞ?」

リリー「なんか凄い事になっているわね。」

山田「今は9時を過ぎているからそろそろ他の国の者達も来るから急げよ。」

勇者「は、はい。」

アリサ「藁助…。」

エリカ「急いで探そう。」

勇者「それでは外に行きましょう。」

リリー「待って、もしかしたら私達が外に出て入れ違いになったら大変だよ。」

山田「仮にそうなったら私が伝えておこう。」

アリサ「あの…。」

山田「構わん、時間が無いから急いで探せよ。」

勇者「山田さん、ありがとうございます。急いで行きましょう。」

アリマ君「キー!」

 

わたし達はお城の外に出ました。

 

アリサ「なんでみんな私達に優しくしてくれるの?私はあなた達の敵だったのに…。どうして…。」

勇者「お友達が困っていたら助けるのは当たり前の事です。」

エリカ「当たり前じゃんか、藁助を早く探そう。」

アリサ「ありがとう…。」

 

外に出て少し歩くと大きな家が沢山有った所が無惨に壊されていました。

 

畑中「よう、勇者ちゃん達!」

勇者「屑野郎さん、おはようございます。実は…。」

 

わたしは屑野郎さんに藁助さんの事をお話しました。

 

畑中「ああ!あの藁人形か!見たぞ!」

アリサ「えっ!?知ってるの?」

畑中「朝早くから貧民街の方に向かってたな。矢内の所にでも行ったんじゃないか?」

リリー「ペテン師の賢者の所?もしかしたら藁助の事、分からずに戦っているかも…。」

アリサ「そんな…。もし、火の魔法を使われたら…。」

エリカ「不味いよ、賢者の奴直ぐに怒るから戦っているかもしれない。」

リリー「アイツ、短気なの?」

エリカ「そうだよ。あたしと勇者がつまみ食いしようとしたらいつも怒るよ。」

勇者「はい、頭に拳骨くらいます。」

畑中「ハッハーww!つまみ食いするからだろ!」

エリカ「何が可笑しいんだよ!毎日拳骨くらうんだぞ!」

リリー「つまみ食いしなかったらいいだけじゃない…。」

アリサ「うん…。」

勇者「それより時間がありません。藁助さんを探しに貧民街へ急ぎましょう!」

アリサ「そ、そうね…。」

畑中「勇者ちゃん、先に中央広場へ行け!矢内に一度聞いた方が早い!」

勇者「賢者さまに?賢者さま、中央広場に居るのですか?」

畑中「パーティーの準備をしている、それより良いのか?矢内の手伝いに行かなくて。」

勇者「あっ…。」

エリカ「あっ…。賢者、怒っているかも…。」

勇者「い、急ぎましょう!屑野郎さん、ありがとうございます!」

畑中「ハッハーww!」

 

わたしは屑野郎さんにお礼を言って賢者さまの所に急ぎました。

 

アリサ「あっ!藁助、いた!」

 

わたし達が中央広場に向かっていますと子供達に囲まれている藁助さんがいました。

 

アリサ「藁助!何処に行っていたのよ、心配したのよ。」

「…。」

「おねえちゃんだれ?わらすけのことしっているの?」

アリサ「えっと…。その…。」

勇者「藁助さんはわたし達のお友達です。」

「あっ!ゆうしゃのおねえちゃんたち!わたしたち、いまわらすけとあそんでいたんだよ。」

 

藁助さんはどうやら貧民街の子供達と遊んでいたみたいです。

 

リリー「まあ、見つかって良かったわ。」

アリサ「みんな、ありがとう。ほら、藁助も。」

「…。」

 

藁助さんはわたし達にお辞儀をしてくれました。

 

「あっ!アレじゃない?藁助っての!」

 

中央広場の方から新たに子供達が集まって来ました。ポーキー達、ファンタルジニアの子供達です!

 

ポーキー「あっ!勇者!」

勇者「ポーキー達もパーティーに来てくれたのですか?」

キール「ああ、朝早くから神様の使いの僧侶の姉ちゃんがお城のゲートから連れて来てくれたんだ。」

リリー「神様の使いの僧侶って…まさか…。」

マナ「呼んだかしら?平民の魔法使い。」

リリー「や、やっぱり…。マナ、あんただったのね。」

マナ「わたくしの仕える神様、ロキ様のご指示です。賢者が今まで交流してきた町や村の者を全員招待せよと、それとそんな楽しそうなパーティーに参加せずに朝早くから城を出ようとしたアホのアレスはわたくしがボコボコにして捕らえましたのよ。」

 

よく見るとマナさんの下に鎖で繋がれて倒れているアレスさんが横たわっていました。

 

アレス「マナ!俺は遊んでいる暇は無いんだ!少しでも強くなって…。」

マナ「黙りなさい!」

 

マナさんが喋ろうとするアレスの頭を踏みつけて喋るのを遮りました。

 

リリー「ちょ!ちょっと!マナ!何をするのよ!」

マナ「全てはアホのアレスがいけないのです!パーティーに参加しないアホは神の意向により死刑です!」

キール「滅茶苦茶な神様だ…。」

エース「ああ…。砂漠の国の勇者があんな目にあうなんて…。」

ポーキー「賢者様のお友達って変わった人が多いね…。」

アレス「あー!パーティーでも何でも参加するから鎖を外してくれ。」

マナ「始めからそう言えばよいのですわ。さあ、もうすぐパーティーは始まりますわ。皆さん、中央広場へ向かうのです!わたくしの後に続きなさい!」

 

マナさんはそう言うと近くの人達を連れて広場に向かって行きました。

 

勇者「アレスさん、大丈夫ですか?」

アレス「ああ…。平気だ。」

リリー「アレス、何処に行くつもりだったの?」

アレス「俺はこの戦いで何も出来なかった。それに世界の事も何も分からない。だから、まずはファンタルジニアの皇帝陛下の所に剣術を教わりたい。それから世界を周りたい。」

エリカ「童帝って毎日椅子に座っているだけだよ。戦士長にお願いしなよ。」

アリサ「今日は色々な国の人達が来ているんだよね。だったらその皇帝陛下も来ているかも知れないよ。広場に急ごう。私も賢者様に話があるし…。許して貰えるかは分からないけど…。」

エリカ「賢者、あたし達が手伝わないから怒っているかも…。急ごう。」

 



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開国記念日大パーティー 3

「賢者様、本日は我々まで呼んでいただきありがとうございます。」

 

勇者の兜を手に入れた時の国の大臣だ。今は王さまになるが。

 

矢内「どうだ、その後は?」

「はい、出ていった国の者は少しではございますが戻って来まして、更に住んでいた所を追われて難民になったゴブリン達を受け入れをしまして、人も増えてなんとか生活もそれなりになりました。」

矢内「ゴブリン達…。」

「ええ、何でも静かに暮らしていた所に黄色い1つ目の使い魔を従えた凶悪な女戦士に襲われたみたいでして…。」

 

エリカのバカの事だ…。そう言えば…。アイツ、何処かの村の者に騙されて魔物退治に行ってたな。

 

矢内「ゴブリン達…。来ているのか?」

「ええ、神様の使いの僧侶の方が全員参加しないと死刑にすると言われまして、余所の国に皆で押し掛けるのは気兼ねしたのですが…。」

矢内「いや、来てくれてありがとう。今日は楽しんでいってくれ。」

「流石に手ぶらと言うわけにはいかなかったので今作れた作物はこのモヤシだけではございますがどうかお持ちください。」

矢内「モヤシか。ありがとう、早速使わせてもらうよ。後でエリカのバカと1つ目をゴブリン達に謝りに行かせる。パーティーはもうすぐ始まるからくつろいでいてくれ。」

「分かりました、我々はこの国の方々に挨拶に周りますのでまた後程。それでは失礼します。」

 

本当に色々な国から来ているな…。

10時を過ぎているな…。乾杯のドリンクがいる。

 

勇者「賢者さま~!」

 

勇者達が来た。ベストタイミングだ。

 

勇者「賢者さま、みんなでお手伝いに来ました。」

矢内「勇者よ、良いところに来た。子供達用の乾杯のドリンクを用意してくれ。」

勇者「分かりました。あっ、スコールですね。」

サチ「賢者さん、時間は過ぎているけどまだ始まらないのかしら?」

勇者「あれ?さっちん?何時の間に来たのですか?」

サチ「あら?ゆうりん、少し前よ。5分前行動は人としてのマナーよ。」

リリー「私達が藁助を捜していた時にはまだ寝ていたのに…。」

エリカ「サチがご飯の時間まで起きて来ないのはいつもの事だよ。」

アリマ君「キー!」

サチ「無駄に起きているのは意味の無いことよ。それより賢者さん、まだかしら?」

矢内「サチ、今までぐうたらしていて何が5分前行動だ、舐めてるのかお前は。」

サチ「私はちゃんとゆうりん達より先に着いているわ。」

矢内「5分前行動ってのはな、全ての準備を終わらせる事を言うんだよ!寝癖位直してから来い!」

サチ「賢者さん、細かい事をガタガタ言っているとストレスで禿げるわよ。」

矢内「良いから寝癖を直して来い!お前だけ何も食わせねえぞ!」

サチ「しょうがないわね。」

 

舐めた事を抜かすサチは寝癖を直しに戻って行った。

 

アリサ「あ、あの…。」

矢内「アリサ、だったか?」

アリサ「え、ええ…。あの…。」

矢内「藁助から聞いている。今まで辛い思いをしてきたんだな。」

アリサ「藁助から?」

エリカ「藁助は喋れないのに聞ける訳ないじゃんか。賢者、お前バカなの?」

矢内「エリカよ、俺はお前だけにはバカとか言われる筋合いはない。俺はな、今まで言わなかったが神様のロキから魔物や動物とかとも話が出来る力をもらっているんだ。だから1つ目、お前が分からないだろうと思って俺の悪口を言っても全部分かっているからな。」

アリマ君「キー…。(マジか…。)」

矢内「ああ、マジだ。アリサ、お前の受け入れ先については童帝達と話をするから安心しろ。だから今日は精一杯楽しめばいい。」

アリサ「私達は…。貴方達と敵対していたのに…。どうして…。」

矢内「お前はビーナスに心を操られていただけだ。悪いのはビーナスって神を語る糞野郎だ。ビーナスは俺がいずれ倒すから気にしないでいい。」

アリサ「神様を倒す?そんな事が…。」

矢内「ああ、自分勝手に俺の友人を傷つける糞野郎は王様だろうが神様だろうが関係無い。さあ、パーティーが始まるから今日は楽しもう。」

アリサ「賢者様、ありがとう。」

俺達が乾杯用のドリンクを用意していると各国の王様達が戻って来た。

 

ロキ「矢内、これで全員だ!さあ、始めようぜ!」

矢内「ああ、そうだな。みんなを連れてきてくれて感謝する。」

山田「矢内、この人数は流石に多すぎではないか?この広場では収まりきらんぞ。」

矢内「おう、山田か。ノートルランドの国王には会ったか?」

山田「ああ、拐われたエルフの娘を連れてきてくれて今家族と合流している。エルフのみんなも到着した。」

矢内「そうか。流石に収まらないか…。」

畑中「矢内、場所を移動するぞ。城の前だ。周りの破壊した家の瓦礫は朝からみんなで撤去している。」

矢内「城の前か。何もせずにぐうすか寝ていた山田と違って気が利くな。」

山田「私はエルフの民を迎えに行っていた。さりげなく私をディスるな愚か者。」

矢内「よし、みんなすまないが場所を変えるから城の前まで行くぞ!」

「おー!」

矢内「すまないがテーブルや料理を運ぶのを手伝ってくれ!」

「ほら、男連中は早く運ぶんだよ!」

「よし、運ぶぞ!慎重にな。」

 

砂漠の国の人達が皆で荷物を運んでくれる。城の前にたどり着くと瓦礫は全て撤去されだだっ広く何も無い。

虎のおっちゃんが俺に近づいてきた。

 

「賢者様…。」

矢内「虎、思っていたより人が多くてな、城の前を使わせて貰うぞ。」

「賢者様…。やはり私はこの場にいて良い者では…。」

矢内「何を今更下らない事を言っているんだ。パーティーだ。派手に楽しめば良いんだよ。畑中!乾杯の音頭を頼む。」

畑中「よし、城の門の所がみんなを見渡せる。各国の代表者達は門の前に来てくれ。」

矢内「虎、お前は砂漠の国の代表だ。門の前に行けよ。」

「賢者様、しかし…。」

畑中「矢内!お前もだ!上がって来い!」

矢内「行くぞ。」

 

各国の代表者達が門の前に集まった。童帝陛下にノートルランドの国王に酒呑童子、各町の長達に、戦士長に、砂漠の国からは虎のおっちゃんにトンヌラか。ん?山田まで居る。

 

矢内「山田、お前は何で居るんだ。」

山田「ああ、エルフの民達に代表者にされてしまった。更に国の女王になって欲しいと泣きつかれている…。」

矢内「そう言えば、お前がエルフの国王を追放したんだったな。諦めて女王でもなんでもする事だな。」

山田「全くお前と関わるとろくなことにならん。」

 

集まっているみんなにドリンクが配られる。俺達の所にもドリンクが配られた。

 

畑中「みんなー!今日は、この新しく生まれ変わる砂漠の国の開国記念日に集まってくれて感謝する!そして!砂漠の国の新しい国王にお前達がよく知る伝説のヒーロー!虎のおっちゃん、そうだな、今俺が虎王と名付ける!そして、兵士の隊長にトンヌラを任命する!」

 

畑中が虎のおっちゃんとトンヌラを国の代表に任命した。人々の歓声が沸き起こる。

 

畑中「これからは王だけではなく皆、それぞれが国を思い!意見を言い!共に国を発展していくんだ!」

 

畑中の演説に歓声が止まらない。

 

キサラギ「エルフ達の代表に選ばれた山田殿に言葉で人々の心を掴む畑中殿、矢内殿達にはいつも驚かされる…。」

酒呑童子「流石は賢者殿の友人じゃあ!戦の時もあの男は凄かったからのう!」

山田「相変わらず口の上手い男だ。」

皇帝陛下「矢内が賢者ならあの男は言霊の魔導師と言った所か。」

虎王「私が王に…。」

矢内「そうだ、諦めて代表になれ。皆がそれを望んでいる。俺達を含めてな。」

畑中「最後は矢内、お前が決めろ。」

矢内「ああ。」

 

畑中から演説を受け継いだ。

 

矢内「みんな!明日からの事は明日に決めよう!そして、今日と言う日を精一杯楽しもう!各国から様々な料理を用意してある!みんな!グラスを掲げろ!」

 

俺の声に皆がグラスを掲げる!

 

矢内「さあ!!パーティーの始まりだ!!スコール!!」

「スコール!!」

「スコール!!」

 

楽しいパーティーが始まった!

 

 



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開国記念日大パーティー 4

乾杯の合図と共に皆の笑い声が聞こえてくる。おっと、俺が作った料理が勢いよく減って行くな。直ぐに作らないとな。

 

「肉が焼けたぞー!食いたい奴は一列に並べー!」

 

あれは金で裏切ったガリアスの用心棒達か。少し行くか。

 

矢内「お前達、昨日から手伝わせてすまないな。」

「おう、賢者か!こっちもしたくてやってるんだ、それにしても凄いな、本当に国が生まれ変わるなんてよ!」

矢内「ハハハ!みんなの協力があったからだ。そうだ、先に報酬を渡しておこう。」

「いや、それはもういい。本来なら俺達はガリアス側で倒されて処刑されていたかも知れないのにそれがこんな凄いパーティーに参加できるんだ。これ以上何かしてもらったらバチが当たる。」

矢内「そうか?しばらくしたら誰かに肉を焼くのを代わってもらってお前達もしっかり楽しめよ。」

「ああ!賢者、焼けた肉を少し持っていけよ。」

矢内「ああ、すまないな。」

 

俺は焼肉を少し貰い少し歩く。あれはエルフのイベサーチームか。俺達の応援に駆けつけてくれたんだったな。みんなで踊っているな。

 

「ヤナピッピー!」

矢内「おう、みんな!今日は来てくれてありがとう!」

「ウチ等こそ、仲間を助けてくれてマジ感謝。だから今日はテンアゲマックスで踊り明かすっしょ!」

「料理も激ウマだしマジ最高っしょ!」

「マジ卍ー!」

「ヤナピッピ、1曲お願いするし!」

矢内「いや、そうしたいのはやまやまだがな。料理が無くなりそうなんでまた作らないといけなくてな。」

皇帝陛下「矢内よ、1曲ぐらい踊って行かんか。」

 

童帝…。イベサーチームと一緒に踊っている…。中々キレのある動きだ。

 

皇帝陛下「ハハハ!矢内よ、お前が言っていた通りエルフの連中は気さくで楽しい者達だな!」

「グロメンやるじゃん!ウケるww!」

キサラギ「陛下に対してそのような…。」

酒呑童子「戦士長殿、固いことはいいっこ無しじゃあ!1杯飲め!」

 

酒呑童子が戦士長の酒を飲ますが戦士長は一口酒を口に含むと豪快にぶっ倒れた。酒は飲めないって聞いていたがここまでとは思わなかった。

 

矢内「誰か!戦士長が酔いつぶれた!日陰に運ぶから手伝ってくれ!」

「は、はい!」

 

ファンタルジニアの戦士達が直ぐに駆けつけて戦士長は運ばれていった。

 

矢内「シュテちゃん、飲めない奴に無理矢理飲ませたら駄目じゃないか。」

酒呑童子「まさか、一口でぶっ倒れるとは思わなくてのう…。」

皇帝陛下「ハハハ!ファンタルジニア最強の男にも弱点はあるわい!ハハハハハ!」

「いきなりぶっ倒れるなんて超ウケるww」

「陛下!笑っている場合ではありません、戦士長が倒れたのに!」

皇帝陛下「ハハハハハ!しばらくしたら起きてくるから大丈夫だ!お前達も一緒に踊らんか。」

矢内「踊る踊らないはさておきせっかくのパーティーなんだ。料理を摘まみながら精一杯楽しまないと駄目だぞ。」

「料理でしたら先程、砂漠の国の民からおにぎりという食べ物をいただきました。中に魚の切り身が入っていて大変美味でした。」

「えっ?魚?俺が食べたのは魚の卵が入っていたぞ?」

「いや、俺のは何か味がついた黒い野菜みたいなのが入っていたぞ?」

矢内「野菜じゃなくて昆布だな。海の中にある海藻だ。」

「海藻?とはいったい?」

矢内「学者じゃないから詳しくは答えられないが簡単に言ったら海の植物だ。細かい事は省くがそれを色々としてこのおにぎりの中の具にしているんだ。」

「このおにぎりという食べ物は…。まさか賢者様が?」

矢内「ああ、砂漠の国の貧民街の人々に指示して作ったんだ。」

「しかし、中身がそれぞれ違うだなんて…。凄い食べ物だ。」

「よし!もう1つ貰ってくる!」

「あっ!お前!ズルいぞ!」

 

ファンタルジニアの戦士達は走っておにぎりを貰いに行った。

 

矢内「ハハハ!そろそろ俺も料理を作らないと不味いな…。」

皇帝陛下「矢内よ、行くなら1曲踊ってからだ。」

酒呑童子「いや、皇帝殿。それを言うなら賢者殿はワシとの飲み勝負の決着がついておらん!賢者殿!あの時の勝負の再開じゃあ!」

矢内「いや、俺は減った料理を直ぐに作らないとだな…。」

山田「矢内、早く行け。皇帝陛下よ、ここは私が1曲披露しよう。ライアン、飲み勝負の相手をしてやれ。」

ライアン「えっ?自分が…ッスか?」

 

山田がライアンを連れて来てくれた。いきなりライアンにそんな役を押し付けるな。泣きそうになっているじゃないか。

 

酒呑童子「お主がワシの相手か?」

ライアン「じ、自分はあまりお酒飲めないッス…。」

トンヌラ「なんだ?情けねえ奴だな。代われ、俺達の国の女子供を守ってくれた鬼の大将よ。俺が飲み勝負の相手をしよう。国の為に戦ってくれた恩人と是非飲み交わしたい。」

 

今度はトンヌラが来たか。何故集まってくる?

 

トンヌラ「賢者様が作ってくれた料理の数々が空になりました。」

矢内「は?大分作ったんだぞ、30分足らずで無くなる訳ないだろ。」

山田「矢内、残念だが事実だ。お前の所のゴスロリ娘とノートルランドの国王が勝手に大食い勝負を始めて食うものが無くなってしまった。それで我々はお前を探していたんだ。」

 

何をやってるんだアイツは…。

 

矢内「分かった、急いで戻る…。」

 

俺は急いで料理を置いてある所に戻った。すると山田達が言っていた通り料理の数々が全て空になっていた。

 

「賢者様、良いときに戻って来てくれたよ!」

矢内「あ、ああ。直ぐに料理にかかろう。すまんがまた手伝ってくれ。」

 

パスタに使った茹で汁はまだ残ったままだ。米は炊くには炊くが時間がかかる。簡易のレンジ用のご飯を使うか。

先ずはパスタから。このパスタは真ん中に切り目が入っているやつで茹で時間が3分でいい。便利なのが出来たもんだ。5キロほど茹でて置こう。

 

矢内「よし、まずはパスタを盛り付けた皿を持ってきてくれ!たくさんだ!」

「あいよ!」

 

すかさず大皿が10枚ほど並べられる。

 

矢内「一気に5種類作る、みんな!フライパンに油をひいてくれ!」

 

1つは冷凍用のシーフードミックスを1つは玉ねぎ、ピーマン、ベーコン、1つはベーコンのみ、1つは細かく切ったタラコをフライパンで炒めていく。

 

矢内「よし、パスタを入れていくぞ。」

「賢者様、これだけ何も入っていないけど。」

矢内「ああ、良いんだ。それから味付けしていく。他のみんなは具材を均等に混ぜてくれ。」

 

先ずは何も具材が入っていないパスタに醤油を少しに紫蘇のふりかけをかけていく。ベーコンのみの分は粗挽きのブラックペッパーをかけていく。

 

矢内「よし、紫蘇のパスタは完成だ。皿に盛り付けてくれ。ベーコンの方は冷ますから火を止めてくれ。」

 

この間に簡易のレンジ用のご飯を茹で汁の中に入れておく。

そしてタラコのパスタに香り付けにバターを少し投入。

 

矢内「よし、タラコのパスタも完成だ。皿に盛り付けてこのきざみのりを振りかけてくれ。」

 

シーフードのパスタにトマトソースを多目に入れる。そしてもう1つはナポリタンだ。トマトソースを入れてからトマトケチャップで味付ける。

そして、冷ましたブラックペッパーで味付けしただけのパスタにお手製ソースをかけて矢内流カルボナーラの完成だ。

 

矢内「これで5種類完成だ!みんな!できたてだ!食べたい奴は並ぶんだ!」

 

俺の一声で周りの人々が一斉に集まりだす。

 

「こんな短期間に5種類も作るだなんてまるで魔法の様だね。流石は賢者様だよ!」

矢内「すまんが集まったみんなに取り分けてくれるか?俺はまだ作るから。」

「分かったよ、賢者様のお仲間の女の子と何処かの王さまがさっき根こそぎ食べられちゃったからね。みんなに渡る様に取り分けていくよ。」

矢内「すまん、頼む。」

 

そして俺は温まったレンジ用のご飯を全て取り出して次にかかる。その間に米も炊いておこう。

 

「賢者様、これはまたおにぎりかい?おにぎりだったら私達に任せてくれたら良いよ。」

矢内「うーん、そうだな。出来たご飯を半分使ってくれ。後の残りは俺が使う。」

 

矢内流黄金卵チャーハンを作る。作り方は企業秘密ってやつだ。

 

矢内「よし!完成だ!」

「おにぎりも出来たよ!欲しい人はみんな並ぶんだよ!」

 

更に人が集まってくる。

 

「おお!おにぎりだ!次は違う具材を当てるぞ!」

 

先程のファンタルジニアの戦士達が集まって来た。俺はすかさず声をかける。

 

矢内「お前達、いいタイミングで来たな。」

「賢者様、我々が来た時は既に何もない状態でして、他のエリアも食べ物がほぼ無くなっていて途方にくれて戻って来た所だったのです。」

矢内「他のエリアもか?」

「ええ。」

矢内「お前達は戻って来てラッキーだったな。今日はこれが食えるぞ?」

 

俺は出来た矢内流黄金卵チャーハンを指差した。

 

「あ、あれは!まさか、あの時城の食堂で陛下と戦士長が食べていた…」

矢内「ああ、矢内流黄金卵チャーハンだ。」

「おお!あれが我々にも食べれる日が遂に!」

矢内「さあ、大食らいの二人がこっちに来る前に色々食べておけ。」

「賢者様!ありがとうございます!」

 

ファンタルジニアの戦士達は感動して俺に敬礼しだす。

 

矢内「大袈裟に敬礼なんかするな。周りを見ろ、早くしないと無くなるぞ?」

「あっ!いつの間にこんなに人が集まって!賢者様、失礼します!」

 

さて、次は揚げ物にかかるか。と思っていたら畑中がこっちに来た。

 

畑中「矢内、揚げ物だったら任せておけ。お前は他のエリアに行け、一日なんて短いからここに居たら料理作るだけで終わってしまうぞ。他にもお前と絡みたい奴は沢山いるんだ。」

矢内「畑中、気が利くな。すまんがそうさせてもらう。サチとノートルランドの国王がこっちに来たらいっさい食い物を渡すなよ。」

畑中「ああ、それは多分大丈夫だ、さっきさっちゃんと国王があっちで焼き巨大サンドワーム1匹丸々早食い勝負ってのをしていた…。」

矢内「何をやってるんだ…。」

 

ここは畑中任せて俺は他のエリアに向かった。

 

 

 

あそこに人だかりが出来ているな。近くに行って見てみよう。

 

ノートルランド王「娘、賢者の仲間か知らんがワシにまだ勝てると思っているのか!」

 

ノートルランドの国王が丸焼きのサンドワームにかぶりついている。

 

サチ「国王なのに食べ方がなっていないわね。」

 

サチが凄い勢いでフォークとナイフでサンドワームを切り分けながら食っている。

 

ノートルランド王「しかし、見てくれは悪いが中々ジューシーな肉だ。いくらでも入るわい。」

サチ「そうね。これを食べ終わったらデザートが欲しい所ね。」

 

二人が勢いよく食べる姿に周りのギャラリーの歓声が沸き起こる。

 

「流石は賢者様のお仲間だ!」

「あの国王も負けていないぞ!」

「なんか分からんが凄えぜ!」

「丸焼きにしたサンドワームを食うなんてなんの冗談だと思ったけど、あれ美味いのかな?」

「始めにあった食い物もあの二人に全部食われてしまったし、俺等も食ってみるかサンドワーム。」

「ああ、そうだな。」

 

丸焼きにされたサンドワームを周りの人々が手をつけようとしたら衝撃の言葉が飛び出てきた。

 

サチ「おかわり貰えるかしら?」

ノートルランド王「ワシももう1匹くれるか?」

「え?」

「1匹丸々食ったの?」

「嘘だろ?」

 

流石に止めに入るか、これ以上食い荒らされたらたまったもんじゃない。

 

矢内「お前等!いい加減にしろ!」

ノートルランド王「おお!賢者よ!今まで何をしておったのだ?」

矢内「何をしていたじゃねえよ!お前等が根こそぎ食い荒らしたから料理を追加で作っていたんだよ!」

サチ「あら、賢者さん。そうだ、お口直しにデザートでも貰えるかしら?」

矢内「デザートじゃねえよ!お前達のせいで他の人達が何も食えてないんだよ!少しは遠慮しろ!」

サチ「仕方がないわね。腹八分目って言うしね。」

 

何が腹八文目だ、周りに気を使え。

 

「面白い物が見れたな。」

「ああ。」

 

ギャラリーは喜んでいる様だしいいか。って思っていたら今度は半分に切った巨大なバタールにアホみたいに具材が乗ったスモーブローが2つ運ばれて来た。

 

勇者「さっちん、次のお料理ができましたよー!」

矢内「おい…。」

ノートルランド王「おお!新たな料理が来たわい、ファンタルジニアの勇者よご苦労であった。」

サチ「中々の量ね。賢者さん、デザートは後にするわ。」

 

巨大料理に歓声が沸き起こる。

 

「勝負の再開だ!」

「それではヨーイ、スタート!」

 

二人が一斉に食い始める。

 

矢内「勇者、何をやってる。」

勇者「あっ、賢者様。実はさっちんとノートルランドの王様がさっき全てのエリアで提供している食べ物を食べつくしちゃったので、みんなで相談してお二人に巨大なお料理を出している間に他の皆さんに色々とお料理を楽しんでもらおうってお話になったのです。」

矢内「そ、そうか。」

勇者「皆さんの分もご用意しています。普通サイズのスモーブローです。」

「おお!やった!俺達も食い物にありつけるぜ!」

 

周りのギャラリーがスモーブローを摘まみ出す。

 

矢内「勇者よ、他のみんなはどうした?」

勇者「えっと、始めはみんな一緒だったのですが…。今は分かりません。」

矢内「そうか。せっかく色々な国から人が来ているんだ。お前も精一杯楽しむんだぞ。」

勇者「はい、賢者様はどうするのですか?」

矢内「俺は他の所にも顔を出していくつもりだ。」

勇者「だったらわたしもご一緒します。」

 

俺は勇者を連れて他のエリアに向かった。

 

サチ「賢者さん、行く前にデザートをいただけるかしら?」

 

俺は舐めた事を抜かすサチに黄桃の缶詰めを投げつけ立ち去った。



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開国記念日大パーティー 5

わたしは賢者さまとご一緒に行動することにしました。行くところ行くところで賢者さまは皆さんに揉みくちゃにされていました。

 

「賢者様、俺達の国を救ってくれてありがとう。これは俺達の国で取れるココヤシの果汁だ。あの姉ちゃんと何処かの国の王さまがまた来る前に持って行ってくれ、お嬢ちゃんもほら。」

矢内「ああ、これは初めてだな。ありがとう。」

勇者「ありがとうございます。」

「さあ、グイっといってくれ。」

矢内「いいなこれ。」

 

砂漠の国の人達は本当に賢者さまに感謝しています。

 

矢内「勇者よ、次は茨木童子達の所に行こう。今回俺の為に取って置きの料理を用意してくれているみたいだ。」

勇者「はい、賢者さま。」

 

そして、次はシュテちゃん達の村の人達がいるエリアに向かいました。着くと直ぐ様皆さんがわたし達を取り囲みました。

 

「おお!賢者様がた、よく来てくれただ。」

矢内「何でも俺の為に取って置きの料理を編み出したって聞いてな。」

茨木童子「賢者殿、よく来ていただきました。取って置きはこちらに隠していたのでどうぞお召し上がり下さい。」

勇者「凄いです!」

矢内「ああ、さつまいもで作ったのか。これは凄いな。」

 

お芋がきれいなお花の形になっています。こんなの見たことありません!

 

矢内「花びらはさつまいもの皮を揚げているのか。真ん中はスイートポテトか。これは食べるのが少しもったいないないな。写メを取っておこう。」

茨木童子「賢者殿?それは?」

矢内「ああ、簡単に言うと見たものをそのまま写す機械だ。そうだ、勇者よ。これでみんなを写してやってくれ。」

勇者「あ、はい。」

 

わたしは賢者さまから小さい四角い箱のような物を受け取りました。

 

矢内「これはデジカメといってな、電源を入れてこのボタンを押したら撮影される。やってみるといい。」

勇者「はい。」

 

わたしは賢者さまに言われるままに操作しました。するとわたしが撮影した人達がそのままデジカメという物の画面に写し出されました。

 

茨木童子「人々が画面に吸い込まれている。賢者殿、中の人はいったいどうなったのだ。」

矢内「吸い込まれたんじゃないんだ。どう説明をしたらいいかな。1回撮影するか。勇者、デジカメを貸してくれ。」

勇者「はい。」

 

わたしは賢者さまにデジカメを渡しました。そして、賢者さまはわたしを撮影しました。

 

矢内「これが今撮った写真だ。」

茨木童子「勇者殿が写っている。勇者は?無事なのか?」

勇者「へ?何がですか?」

茨木童子「勇者殿?写真の中にも勇者殿、これはいったい?」

矢内「ああそうだな簡単に言うと今このデジカメが勇者の姿を撮った。絵で例えたらこの画面がキャンパスでこのデジカメが一瞬で勇者の絵を描いたって言ったら分かるかな?」

茨木童子「何となくは…。しかし、一瞬でこんなことが出来るなんて…。」

矢内「後で紙に現像してみんなに配るから勇者よ、これで色々撮ってみるといい。」

勇者「分かりました。先ずはここの人々を撮ってからみんなを探してみます。」

 

賢者さまは不思議な物をたくさん持っています。わたしはこのデジカメを持ってみんなを撮影することにしました。

わたしは他のエリアに行きデジカメで人々を撮影しました。みんな笑顔で楽しそうな姿がデジカメの中に収められています。ファンタルジニアの戦士の人達がおにぎりを食べています。美味しそうに食べています。写真に収めておきましょう。

奥で屑野郎さんがお料理をしています。シャッターを押して…。あっ、みんなに気づかれてしまいました。

 

畑中「勇者ちゃん、良いものを持っているな。」

勇者「あっ、はい。賢者さまにお借りしました。」

「勇者殿、それはいったい?」

畑中「デジカメだ。今日の出来事を写し出す道具だ。」

 

屑野郎さんが戦士の人達に答えてくれました。

 

「今日の出来事を写し出す?」

畑中「ああ、聞くより見た方が早い。勇者ちゃん、ちょっとそのデジカメを貸してくれ。」

勇者「はい。」

 

屑野郎さんはわたしからデジカメを受け取り操作して皆さんに画面を見せています。

 

「あっ、我々の姿が写っています。」

畑中「今さっきの写真だな。色々撮っているな。」

「勇者殿に茨木童子殿だ。なんだこの見たこともない花は?」

勇者「あっ、それはイバちゃんがお花に見立てて作ったさつまいものお料理です。」

「凄い…。このような物が食材で作れるなんて…。」

「行ってみよう。」

畑中「そうだ、お前達の誰でもいい。このデジカメを貸してやるから持って行ってくれ。」

「そんな、このような貴重な物を受け取る訳には…。」

畑中「こんだけの大パーティーだ。撮影係りはたくさんいるからな。簡単に使い方を教えるから色々と撮って行ってくれ。」

「良いのですか?」

畑中「ああ、今日の為に昨日矢内からデジカメを3台預かっているんだ。1台持って行ってくれ。後1台は俺が使うからな。」

「それでしたら自分が…。」

「待て!俺が使う!」

 

ファンタルジニアの戦士の人達がデジカメを取り合いしています。これも撮影しておきましょう。

 

畑中「ハッハーww!勇者ちゃん、今のはいい写真が撮れたな。お前等、珍しいのは分かるがみんなで交代で使っていけ。」

 

ファンタルジニアの戦士の人達はデジカメを1台持って他のエリアに向かいました。

 

畑中「後1台は…。そうだな…。」

「なんだい、それは?」

 

先程までお料理をしていた女の人が近づいて来ました。

 

畑中「よし、あんたにしよう。」

「え?なんだい?」

畑中「写真の撮影係りをしてくれ。」

 

屑野郎さんが女の人に説明をしました。

 

「へえ、これを押すのかい?あっ、みんな写っている、凄い…。」

畑中「それで色々なエリアで撮影していってくれ。」

「面白いねこれ。でも、このデジカメの中でしか撮影した物は見れないんだね。みんなで見れたら1番良いのにね。」

畑中「見れるぞ。後で矢内に紙に現像させるからみんなで見る事が出来るぞ。だからいっぱい撮影して欲しいんだ。」

「分かったよ。みんなー!面白い物をもらったよー!」

「何々?」

 

砂漠の国の貧民街の女の人達が集まって来ました。

 

畑中「貸しただけだから後で返せよー!って聞いていないか。」

勇者「みんな行っちゃいましたねぇ。」

畑中「まあ、この世界じゃあ絶対に手に入らない物だしな。無理もないか。勇者ちゃんもそのデジカメでいっぱい撮影してきな。」

勇者「そうですね。分かりました、行ってきます。」

 

わたしは他のエリアに向かいました。

先ずはさっちんがいた所に行ってみましょう。居ました。流石にもう食べていないみたいです。ノートルランドの王さまもいます。二人とも食べ過ぎで凄いお腹になっています。写真に収めておきましょう。

 

ノートルランド王「娘、ワシとここまで張り合うとはあっぱれじゃ。」

サチ「今日だけで1ヶ月分の食事量だったわ。」

ノートルランド王「ワシもじゃ。途中から民が面白がって大量に食い物を持ってきよったからのう。流石に動けん…。」

サチ「食事の後は適度な運動が必要よ。寝転んでいたら豚になるわよ。さあ、食後のデザートをいただきに行くわよ。」

ノートルランド王「デザートじゃと?」

サチ「ええ、そうよ。ゆうりん、案内して貰えるかしら?」

勇者「え?」

 

見つかっていたみたいです。それよりまだ食べるつもりなのでしょうか…。

 

ノートルランド王「ワシはもういい。少し休む…。」

サチ「では、デザートを貰いに行きましょうか。」

勇者「さ、さっちん、それよりみんなは何処に居るか分かりますか?」

サチ「エリカさんは酔い潰れた戦士長の介抱をしていたわね。エルフ達が踊っていた所よ。」

勇者「分かりました、早速行ってみましょう。さっちんも来て下さい。みんなを写真に収めに行きます。」

サチ「写真?」

 

わたしは賢者さまからお借りしたデジカメの説明をしました。

 

サチ「へえ、面白そうね。これでみんなを写す訳ね。デザートは後でいいわ。みんなを探しましょうか。」

 

わたし達はエルフの皆さんが踊っていた所に戻って来ました。山田さんは何処か違う所に行ったのでしょうか。姿が見えません。エルフの皆さんと他の方々がみんな楽しそうに踊っています。これも写真に収めておきましょう。

 

ロキ「ダハハハハ!なんでもいいから踊れ!」

マナ「さあ、皆さん!神のお告げです!下手くそでもいいから踊りましょう!」

 

賢者さまのお友達の神様も一緒に踊っています。それをアレスさんとリリーさんが眺めています。

 

アレス「マナの奴、なんか楽しそうに踊っているな。」

リリー「あの隣で踊っている青い肌の男もペテン師の賢者の仲間なのよね。」

サチ「あれ、邪神みたいよ。」

アレス「じゃ、邪神!?」

リリー「えっ?勇者ちゃん達いつからいたの?」

サチ「たった今よ。」

リリー「って、あんたなんなのよそのお腹は!?」

サチ「そうね、パーティーだから少し多めに料理をご馳走になっただけよ。」

アレス「少し多めでそんなに腹が膨らむのかよ。」

勇者「さっちんはノートルランドの王さまと大食い勝負をして全てのエリアの食べ物を食べ尽くしていました。」

リリー「呆れた…。」

勇者「お二人は今まで何処に居たのですか?」

アレス「ああ、さっきまで色々な場所で人々に英雄だ、英雄だ、ってもてはやされてな。逃げ回っていたんだ。」

サチ「あら?砂漠の国の英雄、勇者アレスがどうして逃げ回っていたのかしら?」

アレス「俺は…。英雄なんかじゃねえ。何も出来なかった…。」

サチ「それを言うなら賢者さんなんてただの中二病のキチガイよ。」

アレス「あのペテン師野郎は飢えで苦しんでいる砂漠の国の人々を救い、この国に戦いを仕掛けた。英雄はあのペテン師野郎の方だ。」

勇者「お二人がいたからわたし達は砂漠の国にたどり着けて、お二人が街を襲いかかってきたサンドワーム達と戦ってくれたお陰で誰も死ぬことは無かったのです。」

サチ「そうね、貴方達が後方から支援してくれたからこの戦いに勝つことが出来た。そしてこのパーティーがあるのよ。」

アレス「止めろよ…。俺は…。アイツの仲間に担がれて、それで調子に乗って…。街を襲いかかってきたサンドワームを倒しに行って俺一人では1匹も倒せず返り討ちにあって…。英雄だ、勇者だ、救世主だ、ってみんなにもてはやされる度に惨めになる…。」

サチ「貴方は人々の為に先陣をきって戦った。なかなか出来る事じゃないわ。」

 

踊っている女の人がわたし達に気づきました。

 

マナ「アホのアレスにその仲間の魔法使い。」

アレス「誰がアホだ!」

マナ「アホとは、なけなしのお金でパフパフを受けに行って緊張して何もしないで全財産取られたアレス!貴方の事を言うのです!」

アレス「ちょ!なんでそれをたくさんの人の前で言うんだ!」

「ハハハハハハ!パフパフで全財産を使うって!」

ロキ「ダハハハハ!お前、パフパフから出てきて『金返せよ』って、ダハハハハ!お前が金を払った癖に『金返せよ』って!」

「ハハハ!自分で金を払って『金返せよ』って!ハハハ!アホだ!アホの勇者だ!ハハハハハハ!」

アレス「笑うな!」

マナ「まだアホのアレスのエピソードはありますわ!さあ!アホのアレスにその仲間の魔法使い!更に恥を晒したく無かったらわたくし達と踊りあかすのです!」

アレス「わ、分かったよ!踊ればいいんだろ!リリー!踊るぞ!」

リリー「…。分かったわよ!ちょっとアレス、手を引っ張らないで!勇者ちゃん達、ごめん。ちょっと行ってくる。」

 

お二人は皆さんと一緒に踊りに行きました。

 

サチ「アレス、もう大丈夫そうね。」

勇者「そうですね。」

サチ「近くにいた人に聞いたけどエリカさんはあの小屋に居るみたいよ。行きましょう。」

 

わたしは踊っているアレスさん達を写真に収めてエリカにゃんの所に行きました。

 

キサラギ「ううーん…。」

エリカ「あっ、戦士長。大丈夫?」

キサラギ「ああ、エリカか、すまない。」

アリマ君「キー!」

エリカ「アリマ君、食べ物持って来てくれたんだ、ありがとう。」

アリマ君「キー!」

エリカ「きっと賢者が作ってくれたんだよ。戦士長、食べよう。」

キサラギ「矢内殿が作ったのか。」

エリカ「…。」

キサラギ「エリカ、どうした?」

エリカ「うん…。」

キサラギ「何かあったのか?」

エリカ「うん…。ねえ、戦士長…。あたし、このままみんなと旅をしていていいのかなぁ…。」

キサラギ「勇者達とは上手くいってはないのか?」

エリカ「ううん…。勇者達と一緒に居るのは楽しいよ、賢者もあたしと勇者が摘まみ食いしたら怒ったりするけど色々な事を教えてくれる。数字も100まで数えられるようになった。」

キサラギ「…。」

エリカ「あたし、サチみたいに賢くないし、勇者みたいに色々な人と直ぐに仲良くなれないし、戦う事しか出来ないのに急に現れたビーナスって奴に簡単に倒されて…。今回、サチに助けてもらった。この前もネクロマンサーって奴と戦った時も剣で斬れない相手に捕まって賢者に助けてもらった…。」

キサラギ「…。」

エリカ「あたしは…。みんなの足を引っ張っている…。それなのにさ、賢者や勇者達はあたしがビーナスにやられて起き上がった時も無事を喜んでくれて…。」

キサラギ「そうか、エリカ。今までの自分だったら戦士の敗北は許されないって言ってただろうな。しかし、賢者矢内 孝太郎殿に出会ってからはそんな自分の考えがいかに小さいかを毎回思い知らされてしまう。」

エリカ「なんで?戦士は敵を倒す為に強くないといけないのに。」

キサラギ「確かにそれは間違いではないが、今回の件が特にそうだ。」

エリカ「…。」

キサラギ「畑中殿の言葉の力でこの国の人々を立ち上がらせ、山田殿の義の力でエルフの人々を救いだし、そして賢者殿、矢内 孝太郎の人々を繋ぐ力でいくつもの国を変えてしまった。その中には勇者殿の人と直ぐに打ち解ける力もサチ殿の魔術の力もある。」

エリカ「うん…。」

キサラギ「エリカが城で貴族の兵士を全て相手にしていたからみんな無事に勝つことが出来たと聞いている。エリカの戦士としての力があったから今こうして皆でパーティーをしているのじゃないのか?」

エリカ「そうかなぁ…。」

アリマ君「キー…。」

キサラギ「エリカ、アリマ君、これからも旅を続けて二人の戦士の力で賢者殿の力になって欲しい。次は二人が勇者殿達が危機に面した時に助けるといい。」

エリカ「うん、分かった。でも、負けた事はやっぱり悔しいよ。だからさ、次にお城に戻ったときはまた稽古つけ直してよ。」

 

エリカにゃんがいました。戦士長さんとお話ししています。カメラに収めて…っと

思っていたらさっちんに止められました。

 

サチ「大事なお話しをしているみたいだから邪魔しちゃダメよ。」

キサラギ「話は終わっているから大丈夫だ。エリカ、お迎えが来たようだ。」

エリカ「あっ、勇者にサチ。」

サチ「賢者さんに面白い物を借りたからエリカさんを探していたのよ。」

エリカ「面白い物?なに?」

勇者「これです。」

 

わたしはシャッターを押してエリカにゃん達を撮影しました。

 

勇者「見てください。」

エリカ「あっ!あたしとアリマ君と戦士長が写ってる!なんで?」

サチ「なんで?って言われたら説明出来ないのだけど…。」

勇者「これでみんなを写す事が出来るのです。」

キサラギ「これは凄い品物だな。貸してくれるか?3人を撮ってやろう。」

 

わたしは戦士長さんにデジカメを渡して写真を撮ってもらいました。

 

キサラギ「よし、これでいいのか?」

勇者「見せて下さい。」

サチ「よくとれているわ。」

エリカ「凄いな、これ。」

勇者「もっとたくさん撮りましょう。」

エリカ「うん。戦士長、行ってくるよ。」

 

それからわたし達はたくさんの人達を撮って周りました。

 

サチ「ねえ、お城の中の写真を撮りましょう。」

勇者「お城の中を?ですか?」

サチ「ええ、戦った跡もまだ残っているから撮って置きたいのよ。」

エリカ「なんで?あたしはみんなが楽しくしている写真の方がいいよ。」

サチ「もしかしたらまたこんな戦いが起こるかも知れないわ。そのためよ。」

エリカ「なんで?」

サチ「今じゃないけど遠い未来になったらまたクーデターや戦争があるかも知れないわ。だから、私達よりはるか先の世代の人達にそんな事をさせない為にも今回の事を記録しておくのよ。」

エリカ「そうかぁ、やっぱりサチはすげえな。」

勇者「そうですねぇ。みんな仲良くするのが1番ですからねぇ。」

 

わたし達は長い階段を上りお城の門の前にたどり着きました。そこからみんなを見下ろしました。

 

エリカ「みんな、本当に楽しそうにしているなぁ。」

サチ「そうね…。この国に着いた時とは大違いね。」

エリカ「そうだ勇者、ここからみんなの写真を撮ってよ。」

勇者「えっ?ここからですか?ここからだったら誰が誰か分からないですよ?」

サチ「そうね、ここからだったら全体を見渡せる良い写真になるわ。ゆうりん、お願い。」

 

わたしは言われるがままに写真を撮りました。すると門が開いて誰か出てきました。虎のおっちゃんです。

 

虎王「ファンタルジニアの勇者達…。」

勇者「あっ、虎のおっちゃん!」

サチ「ゆうりん、今はこの国の王様、虎王よ。」

虎王「勇者達…。私は王の命令とは言え貴公達を処刑にしようとした…。」

サチ「今更そんな昔の事なんて覚えていないわ。そうよね?」

エリカ「え?」

サチ「そうよね?」

エリカ「あ、うん。」

勇者「あ、はい。」

サチ「そう言うことよ、虎王様。」

虎王「貴公達も中に居る賢者殿達と同じ事を言うのだな…。」

勇者「賢者さまが?ここに居るのですか?」

虎王「ああ、畑中殿と山田殿と中で休まれている。そして賢者殿に畑中殿に山田殿にも言われてしまった。そんな事を言ってる暇があったら外でみんなと楽しんでこい、とな。」

エリカ「そうだよ、せっかくのパーティーだから楽しまないとダメだよ。ほら、みんな待ってるよ。」

 

下を見るとみんなが虎のおっちゃんを呼んでいます。

 

「虎王様ー!」

「虎王様ー!」

 

やっぱり砂漠の国のヒーローはみんなの人気者です。

 

サチ「ほら、みんなが待ってるわよ?早く行きなさい。」

虎王「分かった、勇者達…。本当にこの国を救ってくれて感謝する。」

 

虎のおっちゃんは階段を降りてみんなの元に向かいました。そしてわたし達はお城に入りました。

1階から上に上がる階段に所々に血の跡があります。

 

エリカ「あたしが斬った兵士の血だ…。」

勇者「でも斬ったのに血の量が少ないです。」

エリカ「うん、絶対に殺さない様に手の甲や足を狙って斬ったから…。」

サチ「ゆうりん、先ずはここの写真を撮ってくれる?」

勇者「はい…。」

 

わたしは階段の血の跡を撮影しました。上に上がります。

 

エリカ「壁に穴が空いたままだ…。」

サチ「ああ、私がガリアスの用心棒をぶっ飛ばした跡ね。流石に死体は片付けられてるみたいだけど。」

 

わたしは壁に空いた穴を撮影しました。更に上に上がり4階にたどり着き、奥の部屋に入りました。

 

勇者「この国の王様が殺された所です。わたし達が入った時にはあのガリアスって人に斬られた後でした…。」

エリカ「えっ?王様って賢者がやっつけたんじゃないの?」

サチ「違うわ…。今思えばあの王様も被害者なのよね。10年もあのビーナスに心を操られていたそうよ…。」

勇者「それをあのガリアスって人は…。」

サチ「あんな自分勝手な男の為に…。たくさんの人達が酷い目にあっていた…。」

エリカ「アイツ、アレス達の仲間だったのに…。」

サチ「元々仲間ではないわ。アレス達を利用して後で殺すつもりだったのよ。だってアイツ、アレスとリリーを犯罪者に仕立て上げてたでしょ。」

エリカ「なんだよそれ…。それが戦士のする事かよ…。」

サチ「エリカさん、世の中にはどうしようもない奴だっているのよ。実力も無いのに権力を欲しがる奴は特にね。」

勇者「わたしは…。そんな人を取り逃がしてしまって…。」

サチ「確か、ガリアスに止めを刺そうとした時に山田に止められたのよね。」

勇者「はい…。」

サチ「きっと山田の行動が正解よ、気にしないで。確か腕を切り落としたのよね。アイツのこれから先の人生はきっと死ぬより辛いはずよ。片腕で死ぬまで不自由に暮らしていくわ。因果応報ってやつね。」

 

わたしはこの部屋の写真を撮りました。

 

サチ「後は、地下牢ね…。」

エリカ「うん…。」

 

1つ下の階に降りると何やら話し声が聞こえます。奥の部屋に賢者さま達がいました。

 

エリカ「あっ、賢者達だ。」

サチ「行ってはダメよ。」

勇者「えっ、どうしてですか?」

サチ「あの人達、今日のパーティーの為に動きっぱなしだったのよ。少しはゆっくりさせてあげましょう。」

エリカ「賢者達って普段はよく口喧嘩したりしてるのにさ、何だかんだ仲良いよな。」

勇者「何年たっても大切なお友達なのですね。なんか良いですね。わたし達もああいう風になりたいですね。」

サチ「何十年先の事なんて分からないわよ。」

エリカ「…。」

勇者「…。」

サチ「でも、私達もああなりたいわ。」

勇者「はい。」

エリカ「うん。」

 

わたし達が賢者さま達の様子を見ていると、下の階から賢者さまを呼ぶ声が聞こえてます。

 

サチ「賢者さん達がもう少しゆっくり出来る様に彼らの相手は私達がしましょうか。」

エリカ「分かった。」

 

わたし達が下の階に降りるとエルフの人達とシュテちゃんに前に会ったジークさんとかね童子さん達が来ています。

 

「ヤナピッピー!ウチらとオールで踊り明かすしょ!」

勇者「ダンスならわたしがお相手します。体を動かすのは得意なのですよ。」

「チビッ子ノリいいし、ウケるww。」

ジーク「賢者ー!今日は俺達の力をみせてやるぜー!勝負だー!」

かね童子「俺様達はカスじゃねえー!勝負だー!」

エリカ「うわっ!なんだよお前ら酒臭いぞ、そんなに勝負がしたいならあたしが相手をしてやるよ。外に行こう。」

ジーク「俺達だってファンタルジニアの戦士の一人だ!勝負だ!」

かね童子「後悔するなよ!」

酒呑童子「で、ワシの相手はお主か?娘っ子よ。」

サチ「ちょ、ちょっと2人共…。全く、1番面倒な相手を私に押し付けるんだから…。」

酒呑童子「賢者殿は上じゃな?」

サチ「ええ、でも残念だけどシュテちゃんのお相手は私がさせてもらうわ。」

酒呑童子「ガハハハハ!そうかそうか。ワシの相手はお主か、先程のトンヌラ殿も途中で連れて行かれてしもうたからな。さあ、飲み明かすぞ娘っ子よ!」

サチ「ええ、でもやるからには勝たせてもらうわ。」

酒呑童子「ガハハハハ!それでこそ賢者殿の仲間じゃあ!」

 

そうしてわたし達は賢者さまを呼びに来た人達のお相手をする為に外に出る事にしました。

 

 



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開国記念日大パーティー 6

矢内「勇者の奴も行ったし、俺もそろそろ別の所に行こうかな。」

茨木童子「賢者殿はどちらに?」

矢内「せっかく畑中が料理を作るのを代わってくれたからな。まだ乾杯をしていない奴の所に行く。」

茨木童子「そうですか、それでしたら…。熊童子!まだ酒は残っているか!」

熊童子「大声を出さなくても聞こえています!賢者殿、これを持っていって下さい。」

矢内「何から何まですまないな。」

熊童子「こんな楽しいパーティーに誘ってくれたんだ。俺達はいつだって賢者殿に協力する。これからもなにかあったら何でも言ってくれ。」

矢内「ああ、パーティーはまだまだ長いんだ。お前達も色々な国から来ている人々と楽しめよ。」

茨木童子「そうですね、私も色々な国の人達に楽しんでもらう為にもう少し料理を振る舞うとしましょう。」

熊童子「俺も他のエリアに酒を振る舞うとしよう。」

 

 

 

俺はまずは虎のおっちゃん、今は虎王だったな。その虎王を探しに城の中に入る。

中は少し片付いてはいるが俺達が戦った後がまだ残っている。一階の階段には血の後が2階、3階は壁が崩れたまま残っている。4階に上がり王の寝室にはおびただしい血の後が残っている。よく見ると奥にまだ階段がある。この上に虎王がいるのか?そのまま上に上がる。長い階段を上ると太陽の光が差し込んでくる。この上は屋上か。そのまま階段を上りきると奥で虎王が祈る様に座りこんでいる。近づいていくと虎王の前に墓がある。そのまま俺は虎王に声をかける。

 

矢内「それがあの王の墓か?」

虎王「け、賢者殿?どうしてここに?」

矢内「聞きたい事があってお前を探しに来たが手間が省けた。」

虎王「はい?どういうことでしょうか?」

矢内「ああ、その墓に用事が有るんだ。」

虎王「何をなさるつもりですか?せめて王を安らかに眠らせて下さい。」

矢内「何も壊したりなんかしねえよ。退いてくれ。」

 

俺は墓の前にいる虎王を払いのけて墓に語りかける。

 

矢内「この国はこれから先、皆で助け合って良くなっていく。今日、余所の国から来てくれている俺の友人達も協力してくれる。お前の心を操っていた神、ビーナスは必ず俺が倒しお前の無念を晴らす事を約束する。だから、ここからこの国をお前の友人を見守ってくれ。乾杯だ。スコール。」

 

俺は墓に先程もらった酒を墓の上から大量にかけて残った酒をいっき飲みした。

 

矢内「出来たら生きていた時のお前と飲み交わしたかったな。」

虎王「賢者殿…。わざわざ王の為に…。」

矢内「王の為に?違うな、友人と乾杯をするためだ。」

虎王「ありがとうございます…。王もきっと喜んでいると思います…。」

矢内「それよりも虎。お前、最初のパーティー開始の時から城に隠れていたのだな?」

虎王「いや、本来なら私は倒されていた側です。皆と騒ぐだなんて…。」

矢内「お前、このパーティーの意味が分かっていないな?」

虎王「だから、それは皆がこれから力を合わせて行くための記念の…。」

矢内「30点。やはり分かっていなかったな。この国だけじゃなくこれから先、国と国とが力を合わせて行くためのパーティーでもあるんだ。国の代表のお前がここで隠れていたら意味がないだろ。」

 

俺が虎王と話をしていると何者かが階段を上ってきた。

 

山田「矢内、国の代表でも無いお前が偉そうに言うな愚か者。」

矢内「山田、よくここが分かったな。」

畑中「山田さんだけじゃねえよ。」

虎王「貴校達もここへ?」

畑中「お前を探していたんだよ。早く下に行け、みんながお前を待っているんだよ。」

虎王「しかし、私はいわば国家犯罪者…。それを…。」

山田「前にも言ったと思うが罪を償いたいのなら先ずは自らが民の為に動け。民はお前と騒ぐ事を望んでいる。」

虎王「しかし、私は…。貴校達を処刑しようとしたのに…。」

畑中「かー!まだそんな事を言ってるのかよ、ハッハーww!」

山田「謝罪する暇があったらさっさと下に行け、みんながお前を待っている。」

矢内「そうだな。虎王、俺の仲間を処刑しようとしたことを不問にするから1つ頼みを聞いてくれるか?」

虎王「わ、私に出来ることなら…。」

矢内「そうか、俺は朝の早くからパーティー準備で疲れていてな。俺達の代わりに下に行って場を盛り上げてくれ。頼む。」

 

そう言って俺は虎王に頭を下げた。

 

虎王「そ、それは…。」

畑中「ハッハーww!諦めて下に行って来い。」

虎王「分かりました。その役目果たさせていただきます。」

矢内「そうか、助かる。所で少しだけ休める場所があれば使わせて欲しいのだが何処か無いか?」

虎王「それでしたら2階の奥の客間をお使いください。」

 

そう言って虎王は階段を下りて行った。

階段を降りて俺達は2階の客間で少し休む事にした。

 

山田「矢内、たいした詭弁だったな。」

矢内「ああ、まあな。」

畑中「しかしあの虎、もう少しはじけていかないとだめだな。」

矢内「今までがそう言う状況じゃなかったからそれは急には無理だな。」

山田「しかし、今日のパーティーは凄まじいな。私もあらゆる所で揉みくちゃにされて大変だった。」

畑中「始めの乾杯の時なんか城の前に収まりきらない位の人が居たからな。」

矢内「ああ。この国の人だけじゃなく色々な国からも来ているからな。」

 

俺はスコールサワーを二人に手渡した。

 

矢内「もう少し飲むか。」

山田「お前、まだ飲むつもりか。」

畑中「スコールサワー、ハッハーww!なんだよこれ、初めてみたぞ。」

矢内「いいか、このスコールサワーはな、スコールブランドのデイリーとサッポロビールが共同開発した…」

畑中「そのくだりは長くなりそうだから後で聞く。」

山田「お前のスコールに対するこだわりはなんなんだ…。」

畑中「まあ、とりあえず飲もうぜ。」

矢内「そうだな。」

山田「所で矢内、何故私のだけマンゴー味なんだ?」

矢内「ああ、お前がマンゴーなんて高級品は生涯口にする事は無いだろうからな。俺からの細やかな気遣いだ、ありがたく思え。」

山田「馬鹿にするな、果物などその辺の山に何処にでもある。なければ家庭のゴミから種だけを集めて蒔けばその内に芽が出て果物など簡単に出来る。」

畑中「山田さんって、本当に残念な人だな。」

矢内「ああ。悲しくなるほど残念な奴だ。」

山田「何が残念だ。相変わらず無礼な奴だな。」

矢内「お前も相変わらずで良かったよ。それに今回は二人とも居てくれて助かった。感謝する。」

山田「私は正しいと思った事をしたまでだ。お前に礼を言われる筋合いは無い。変な気遣いは無用だ。」

畑中「ハッハーww!矢内、せっかくだから乾杯の音頭をとれ。」

矢内「そうだな、いつまでも変わらぬ俺達に…。」

山田「スコール。」

矢内「…。」

山田「なんだ矢内、お前の流儀に従ったまでだ。」

矢内「いや、何でもない。スコール。」

畑中「ハッハー、スコール。」

 

俺は乾杯をして飲みながら目を瞑り今までの事を振り返っていった。

勇者が一人で俺を訪ねて来て、町の子供達を助けて、共に旅する仲間が出来て、色々な村や国で良き友人達に巡り会えて助けてもらった。そして、今がある。

外からパーティーの盛り上がる声を聞きながら俺はいつの間にか眠りに落ちていった。

 

山田「矢内?」

矢内「zzz…。」

畑中「寝かせてやろう。矢内の奴、朝の早くからずっとパーティーの準備をしていたからな。それにしても、みんなが大好き賢者様、か。俺達の世界では嫌われ者だったのにな。」

山田「ああ、確かにな。まあ嫌われていたのは主に教師やリーダー格の人間達だったがな。」

畑中「そう言えば山田さんと二人で話をするのは初めてだな。」

山田「そう言えばそうだな、しかし心配しなくても矢内に巻き込まれてしまったからにはこう言う機会は増えるだろうな。これからもよろしく頼む。」

畑中「ああ、新しいエルフの国の残念な女王陛下、よろしく頼むぜ。ハッハーww!」

山田「残念は余計だ…。」

???「ヤー!賢者って、ここに居るの?」

畑中「誰だ?初めて見る顔だな?」

???「賢者が居るかって聞いてるのよ。」

山田「女、矢内は疲れ果てて眠っている。用事なら明日にしてくれ。」

???「話があるから今すぐ起こして。神様の言うことが聞けないの?」

畑中「なっ!」

山田「明日にしろと言っている。」

???「ヤー!起こしてって言っているのが分からないの?あたし神様だよ?」

畑中「山田さんまずい!この女、もしかして…。」

山田「仮に矢内が探しているビーナスとか言う神なら、好都合だ。力ずくで引っ捕らえるまでだ。」

???「ヤー!なんで意地悪するのよ!だからー賢者に用事があるから起こしてよ!」

山田「女、神様だかなんだか知らんが明日にしろと言っている。今日は外でパーティーしているから外で楽しんでいれば良かろう、そして明日にならお前の用事を聞いてやる。」

???「えっ、参加して良いの?ヤー!新しいエルフの女王様、話分かってるじゃん!じゃあ明日また来るから賢者に言っといてね。」

 

俺はその時眠っていて気づいていなかった。すでにこの世界が動き始めていた事を。

 

 

 

 

第15話

開国記念日大パーティー

END



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時を越えて 1

昨日はみんな夜遅くまでパーティーが盛り上がりました。朝になったけど賢者さまはまだ目を覚ましていません。もうすぐお昼になろうとしています。

 

サチ「賢者さんはまだ寝てるの?」

勇者「はい…。揺すっても全然目が覚めないです…。」

エリカ「賢者を起こさないとみんな帰れないよ…。」

 

各地のゲートを開けるのは賢者さまだけなのでみんな帰れなくて困っています。

 

???「ヤー!賢者いるー?」

 

誰か来たようです。

 

勇者「あの…。どちら様ですか?」

???「賢者が居るか聞いてるのー!居る?居ないの?どっち?」

山田「またお前か、で、矢内に何のようだ。」

???「女!我が神様、クロノス様に対してその口の聞き方!無礼であるぞ!」

 

女の人の隣に居るネコさんの獣人の方が代わりに答えています。

 

畑中「クロノス!?ビーナスの使いって奴の!?」

クロノス「で?賢者は居るの?」

山田「ビーナスの使いか、まさか手ぶらでのこのこ現れるとはな。」

 

山田さんはクロノスって方に近づいていきいきなり見たこともない関節技を極めました。

 

クロノス「ちょ!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」

「女!クロノス様に何をするにゃ!」

サチ「私、ネコは嫌いなのよ。何処か遠くに消えてもらえるかしら。黒魔術『カーズ マリオネット!』」

「にゃ!動けないにゃ!」

サチ「この世から消えなさい。」

「にゃーー!」

 

ネコさんがさっちんの黒魔術でお城の窓から外に飛ばされてしまいました。

 

クロノス「痛い!痛い!痛い!痛い!死ぬ!助けて!誰か!」

山田「自分勝手に民を苦しめたお前達に神を名乗る資格などない!」

クロノス「苦しい…。死ぬ…。助けて…。」

山田「貴様の様な連中は苦しんで死ねば良い!」

ライアン「女王陛下のヤマダlockが完璧に決まっているッス…。」

「ウケるww!」

 

騒ぎを聞き付けてエルフの人々や他の人々が集まって来ました。

 

虎王「何事ですか?」

山田「この国を苦しめていた元凶の女がのこのこ現れたので退治している。あのビーナスの使いだ。」

クロノス「助けて…。死ぬ…。」

皇帝陛下「山田殿、待ってもらえるか!我はその者に聞く事がある。誰か!ジークを呼んできてくれ!」

「ハッ!陛下!」

 

皇帝陛下さんの指示で戦士の方がジークさんを呼びに行きました。

その間に他の方々が山田さんを止めに入ります。

 

クロノス「ヤー…。死ぬかと思ったよ。いきなり何をするのさ!」

山田「黙れ、お前の様な者は死ねば良い。」

畑中「山田さん、落ち着けよ。」

クロノス「酷いよ…。私は賢者に会いに来ただけなのにさ…。」

畑中「矢内の奴はまだ寝ている。全く起きようとしないから会っても話は出来ないぞ。」

クロノス「いつから寝てるの?」

畑中「昨日の昼過ぎ、だいたい3時くらいからだな。」

クロノス「案内して!それ、もしかしてヤバいかも知れないよ。」

エリカ「賢者が寝坊助なのはいつもの事だよ。」

クロノス「賢者、そのまま死んじゃうかも知れないから急いで!死なれたら困るの!」

勇者「この奥のお部屋です!」

 

わたしはクロノスさんを賢者さまが寝ているお部屋に案内しました。

 

矢内「zzz…。」

クロノス「これ、魔力を使い果たしてからも無茶したんだね。このままじゃそのまま眠ったまま死んじゃうね…。」

サチ「えっ?魔力なんて食べて寝たら回復するわよ?」

畑中「いや、そう言えば矢内は一昨日から多分ろくに寝てもないし食ってもいない。」

山田「そう言えば休みもしないで戦いの準備やパーティーの準備をずっとしていたな…。」

エリカ「賢者…。死んじゃうの?」

 

エリカにゃんの一言でみんながざわつき出しました。

 

酒呑童子「賢者殿ー!死ぬなんて許さぬぞー!ワシとの勝負は終わっておらんじゃろうがー!酒じゃ!飲み交わすぞ!」

茨木童子「酒呑童子様!落ち着いて下さい!」

酒呑童子「茨木童子!放せ!お前は賢者殿がこのまま死んでも良いのかー!」

茨木童子「落ち着いて下さい!皆!酒呑童子様を取り押さえろ!」

 

鬼の方々が暴れるシュテちゃんを取り押さえています。

 

虎王「賢者殿…。何とかならんのか、我が国の恩人を助けてくれ…。」

クロノス「エルフの女王様!エルフの秘薬ある?」

山田「エルフの秘薬?何だそれは?」

クロノス「あー!何で知らないのよ!エルフの人!誰でも良いからエルフの秘薬を持ってきて!」

ライアン「秘薬?」

クロノス「エルフの森の地下水よ!無いの?」

ライアン「えっ?この飲み水、そんな凄い物ッスか?」

クロノス「何でエルフのあんた達が知らなかったのよ!貸して!」

ライアン「わ、分かったッス。」

 

クロノスって女の人はライアンさんが持っているお水が入った水入れをぶんどりました。

 

クロノス「これを飲ませたら…。魔力が回復するはず…。」

 

クロノスさんは賢者さまの口を開けて受け取ったお水を飲ませています。

 

クロノス「これで起きるはず…。」

酒呑童子「おお!賢者殿!股間だけが立ち上がったぞ!」

畑中「勃起してんじゃねえよ!ハッハーww!」

サチ「はぁ…。とりあえず死ぬ事は無さそうね。」

皇帝陛下「そうか…。その内に目が覚めるのか…。」

クロノス「それだけじゃ駄目だよ。目を覚まさせないとエルフの秘薬の効果はちゃんと発揮しない。そうだ、私の使い魔は?」

サチ「ああ、あのネコね。私、ネコは大嫌いだからそこの窓から黒魔術で吹き飛ばしたわよ。」

クロノス「ちょ、ちょっと、なんて事をするのよ!」

 

リリーさんが先程のネコさんを連れて来ました。

 

リリー「誰よ!この子をいじめたのは!窓から突き飛ばされて可哀想に…。」

「にゃー、あたし、何も悪い事をしてないのにいきなりあの女が…。」

 

ネコさんがさっちんを指差して訴えています。

 

リリー「ちょっとあんた、この子がいったい何をしたのよ!」

サチ「ビーナスの使いの手下だから先手必勝で攻撃するのが普通よ。」

クロノス「ビーナスの使い?何を言ってるのよ。何で私達がアイツの手下になるわけよ。」

サチ「えっ?この国の神様はビーナスの使いのクロノスだって…。」

クロノス「だからそれが違うの。まあそれは賢者が起きてから話をした方が良いね。みんな、今から目覚めの歌を歌って賢者を起こすから静かにしててね。」

「にゃー。クロノス様に酷い事をした奴等の仲間なんて助けなくて良いにゃ。賢者なんて死んだら良いにゃ。」

畑中「ああ、そうなったら次は俺が主役になるからそうしろよ、ハッハーww!」

クロノス「ヤー、お前なんかが主役になったら毎回パチスロ行ってる話になっちゃうよ。」

畑中「何で異世界のお前がパチスロ知っているんだよ。」

クロノス「何でって…。そっちの世界に遊びに行ったりしてたからだよ。」

 

クロノスさんが目覚めの歌を歌いだしました。

 

クロノス「あなたとわ~たし♪出逢った日~から♪ふたりで歩くこの町~♪」

山田「お、おはよう朝日だ…。」

クロノス「ジャンボ・ジェットが♪輝く空へ♪今日も飛び立つ朝に~♪

goodmorning♪おはよう朝日~♪

故郷の空♪探します~♪

幼いあの日の思い出と~♪

生まれた子供の明日に~♪」

「おはよう朝日です!ただいま7時51分、正木さんのお天気です!」

矢内「しまったー!寝過ごしたー!」ガバッ

 

あっ、賢者さまが目を覚ましました。



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時を越えて 2

しまった!正木さんのお天気だと!完全に寝過ごした!俺は辺りを見渡す。

 

「にゃ?」

 

あっ、おきた君じゃない。ネコだ。砂漠の国だしアラビアンドリームだ。きっとコローニャだ、俺の気のせいだったんだろう。二度寝しよう。

 

矢内「zzz…。」

「あっ、また寝たにゃ。」

サチ「賢者さん、相変わらず寝起きが悪いわね…。」

エリカ「アリマ君、お願い。」

アリマ君「キー!」ドス!

矢内「ぐわっ!」

 

俺は1つ目のボディーブローで目が覚めた。毎回毎回優しく起こせよ。

 

クロノス「賢者、目が覚めた?」

 

誰だこの女は、なかなか大きいおっぱいだな。服の上からでも分かる。とりあえずなんかムラムラするし揉んでおくか。

 

クロノス「ちょ!ちょっと!何いきなり私のおっぱいさわり出すのよ!」

矢内「あれ?少し仮眠をとったつもりだったのに、パーティーはもう終わってしまったのか。」

勇者「賢者さま、大丈夫ですか?」

矢内「ん?大丈夫?どういう事だ?」

サチ「賢者さん、力を使い果たしてもう少しで貴方は死ぬ所だったのよ。」

「賢者、クロノス様のおっぱいから手を放すにゃ!」

矢内「いいかよく聞けコローニャ。目が覚めたらデカイおっぱいがある。それを揉んでやるのが大人のマナーってやつだよ。分かるな?」

畑中「ハッハーww!」

山田「そんな大人のマナーがあるか愚か者!」

矢内「所で、むねたいらさん。この女はいったい誰だ?」

 

俺は誰か分からない女のおっぱいを揉みながら山田に尋ねる。

 

山田「誰がむねたいらさんだ。」

皇帝陛下「誰に対しても無礼な男だ…。」

クロノス「ちょっと!いつまで胸を触っているのよ!」

 

あー落ち着くな。いつまでも揉んでいられる。少し落ち着いた所でみんなに経緯を聞いた。

 

矢内「そうか…。俺は死にかけていたんだな。」

「いい加減クロノス様のおっぱいを揉みながら話をするのを止めるにゃ!」

矢内「コローニャよ、デカイおっぱいには夢と希望が詰まっているんだ。揉むのは当然だ。」

「私、コローニャなんて名前じゃないにゃ。」

クロノス「もうコローニャで良いじゃん、そもそも名前無かったんだし。賢者、話を始めたいから手を離してよ。」

矢内「…。」

 

俺は聞こえていないふりをしておっぱいを揉み続ける。

 

山田「矢内!いい加減にせんか!」

矢内「ぐわっ!」

 

俺は山田にサブミッションをかけられておっぱいから手を離してしまった。

 

矢内「ぐわっ!痛い!痛い!痛い!止めろ!俺は死にかけていたんだぞ!」

山田「黙れ!女性に対してのセクハラ行為、これ以上見過ごせん!そのまま死ぬがよい!」

矢内「ぐわあああ!」

ライアン「女王陛下のヤマダlockが完璧に決まって賢者様の体がミシミシ言ってるッス…。」

 

くそっ、酷いめにあった…。寝起きの俺がいったい何をしたって言うんだ!

 

矢内「そう言えば、クロノスって言ったな?」

クロノス「ヤー、そうだよ。」

矢内「ビーナスの使いが何のようだ?」

クロノス「まず、そこから違うんだよ。じゃあ最初から説明するよ。この国の王様、もう死んじゃったけど元々はみんなが苦労しないようにって一生懸命頑張っていたんだよ。虎は知ってるよね。友達だったから。」

虎王「はい、それが何故あんなに人が変わってしまったのですか、陛下はどうして…。」

クロノス「それなんだけど、当時私もあの王様なら安心して任せて置けるなって思ってその時のバイトリーダーだったビーナスに神様の仕事を任せてコローニャと賢者の住んでいる世界に10年近く遊びに行ってたの。」

山田「は?」

矢内「は?」

畑中「10年も遊びに?」

クロノス「そしたらさ、アイツ王様を少しずつ洗脳してやりたい放題し始めてこの国が滅茶苦茶になっちゃったんだよ!本当に頭にくるよ!しかも、もう逃げられて何処に居るか分からないしさ!」

コローニャ「あの女、バイトテロだにゃ!」

矢内「だいたい神様の仕事をバイトにさせるな!」

山田「貴様等が国を放置したせいでここの人々がどれだけ辛い思いをしてきたか分かっているのか!この愚か者が!」

ライアン「神様に説教しているッス…。」

「ウチ等の女王マヂパネェ!」

畑中「山田さん、落ち着けよ。」

山田「落ち着いていられるか!こんなのが神様なのだぞ!」

矢内「この世界の神様はだいたいふざけたクソ野郎だからな、落ち着けよむねたいらさん。」

山田「誰がむねたいらさんだ!お前が1番のクソ野郎ではないか!」

 

そうやって直ぐにイライラするから婚期を逃したんだ。

 

畑中「矢内と山田さんは置いといてお前達は何しに来たんだよ。」

クロノス「ああ、そうだったね。国を滅茶苦茶にしたビーナスを懲らしめるんだけど私一人じゃ無理だから賢者に協力して欲しいの。」

サチ「悪いけど賢者さんじゃビーナスに返り討ちに会うだけよ。私はビーナスと対峙したから分かるけど、ここに居る人達全員でかかっても勝てないわ。」

クロノス「ヤー!それは知っているよ。アイツ、余所の神様を倒して力を奪い取ってるからね。それに利用できそうな奴に力を与えて自分の配下にしているんだよ。特に賢者、あんたが今までやっつけた奴はだいたいビーナスの配下になっているよ。あのガリアスって男もそうだよ。」

アレス「ガリアスが!?」

リリー「なんでアイツが神様の配下になれるのよ!?」

クロノス「欲の強い奴は洗脳しやすいからだよ。特に賢者に恨みを持つ奴を優先的に集めているよ。」

サチ「1つ聞いても良いかしら?」

クロノス「何?」

サチ「そのビーナスだけど、どうして賢者さんにこだわっているのかしら?」

クロノス「うーん…。そこまでは分からないよ。ただ、神様が支配する世界に賢者は邪魔なんじゃないかな?」

勇者「賢者さまが邪魔だなんて…。そんなの絶対におかしいです!」

エリカ「そうだよ!賢者は色々な国の人達と仲良く出来るようにいつも考えているんだよ!それなのに邪魔だなんておかしいよ!」

クロノス「それだよ。それが神様にとっては都合が悪いんだよ。」

畑中「矢内が行く町行く町で貴族や王様に喧嘩を売って毎回革命を起こしていったら神様に対しての貢ぎ物が無くなるからか?」

クロノス「支配欲の強い神様にとってはそうだね。ろくに働いてもいないのに頭良いね。」

畑中「うるせえ。」

コローニャ「それに賢者が何気なく使っている道具の数々はこの世界じゃオーバーテクノロジーなんだにゃ。初めて見る人達にとっては奇跡の力なんだにゃ。それも神様達にとってはやっかいなんだにゃ。」

酒呑童子「確かに賢者殿はいつも摩訶不思議な道具を使っておるわい。」

皇帝陛下「あのゲートの力も矢内の世界では普通にある物なのか…。」

矢内「あれは俺が働いている会社で作ったやつだ。映画の撮影の道具だとゼクスの野郎に騙されて作ったんだ。」

山田「は?」

畑中「あのゲートって中小企業の人間に作れるのかよ。」

 

働いてもいない奴が俺の働いている会社を批判するな。

 

矢内「作ったって言ってもただの鉄の輪っかだからな。」

山田「では、どうやって色々な場所にワープできる?」

矢内「魔法の力だ。ゼクスの奴が場所のイメージがしやすいようにこのゲートストーンを渡したんだろうな。それであのゲートも移動するイメージを出させるように作らせたんだろう。」

畑中「魔法の力だ?なんでそんな力がお前にあるんだよ?」

矢内「決まっているだろう。それは俺はみんなが大好き賢者だからだ。」

 

俺は最高の決めポーズでいつもの決め台詞を言う。

 

畑中「ハッハーww!ダッセー!」

山田「なんだそのダサいポーズは…。30過ぎの男が恥ずかしいと思わないのかお前は。」

サチ(畑中と山田が居ると賢者さんにいちいち突っ込まないでいいから楽でいいわね…。)

矢内「所でビーナスを懲らしめる為に俺に力を貸してくれって話だったな。」

クロノス「ヤー、そうだよ。」

矢内「居場所も分からないのにどうやって懲らしめるんだ?それにサチが言っていたが今の俺達が束になっても勝てないんだろ?」

サチ「ええ、賢者さんじゃ間違いなく瞬殺されるわ。」

クロノス「だからビーナスが力をつける前にボコボコにしてやるんだよ。」

矢内「力をつける前に?」

クロノス「ヤー、だから私の力で過去に行くんだよ。15年前くらいで良いかな。」

 

何!?こんなふざけた奴にそんな力を持っているのか。

 

クロノス「じゃあ、そう言うことでコローニャ、お願い。」

矢内「いや、ちょっと待て。パーティーに来てくれた人達を先にゲートを開けて帰してやらないと駄目だ。」

クロノス「ヤー、そんなの後でもいいじゃん。」

矢内「たくさんの人が国を抜けてここに来ているんだよ。みんなはお前と違って生活があるから後じゃ駄目なんだよ。」

皇帝陛下「矢内よ、皆を帰してくれるのはありがたいが体は大丈夫なのか?」

矢内「ああ、調子もすこぶる良い。チンコもビンビンだ。」

畑中「ハッハーww!お前バカだろ!」

山田「粗末な物を膨らませるな愚か者。」

矢内「俺のご立派なマーラ様に何を言うかむねたいらさん。」

山田「だまれ、良いからその粗末な物を引っ込めろ。」

 

生理現象だのに引っ込めれる訳ないだろうが。

 

矢内「とりあえずゲートがある町外れに行くか。ビーナスの事はその後だ。」

 

俺達は他所の国から来た人達を帰す為に町外れに向かった。

 

 



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時を越えて 3

矢内「みんな、遅くなってすまないな。今からゲートを開いてそれぞれの国に帰してやる。」

 

ゲートの前に溢れる程の人達が居る。

 

クロノス「ヤー!賢者、また倒れられたら面倒だから私達がやるよ。」

矢内「私達?どういう事だ?」

クロノス「私とコローニャの歌の力でみんなをお家に帰してあげるんだよ。」

畑中「歌の力だぁ?シンフォギアかよ、ハッハーww!」

クロノス「シンフォギア?」

コローニャ「どうせパチンコで得た知識にゃ。こいつは仕事もろくにしていない奴にゃ。」

クロノス「そっか、パチンカスだもんね。」

畑中「うるせえ!」

矢内「パチンカスのせいで話がそれてしまった。コローニャ、早速みんなを帰してやってくれ。」

畑中「お前もパチンカスだろうが。」

 

黙れパチンカス。1度でも敵と戦ってから物を言え。

 

クロノス「じゃあ、みんな!お別れの時間だよ!また会おうね!」

矢内「お前は何もしてないだろカス女、凄いのはコローニャだ。」

クロノス「ちょっと賢者!話しかけるからまた最初からじゃない。もうお別れの歌は始まって居るんだから邪魔しないでよ!やり直しじゃないのさ!」

 

その台詞から始まるのかよ!

色々な国から来た子供達が俺に近づいてきた。

 

キール「なあ賢者、ちょっと良いか?」

矢内「キールか、どうした?パーティーの時は余り話が出来なくてすまなかったな。」

キール「そんなのは良いよ、俺達も他の国の子供達と勝手に仲良くやってたしな。ちょっと来てくれよ。」

勇者「キール、どうかしたのですか?」

キール「ああ勇者、実はな…。砂漠の国のチビスケがエースに帰らないでくれって泣きついて離れないんだ。」

矢内「分かった。案内してくれ。クロノス、ゲートを開くのは少し待ってくれ。」

 

キールに案内されて奥に行くと砂漠の国の女の子がエースに泣きついて離れようとしない。

 

「あああーーん!嫌だよー!」

エース「な、泣くなよ…。またいずれ賢者がパーティー開いてくれるからその時にまた会えるから、な?」

「あああーー!そんなのまてないー!」

矢内「どうした?」

ポーキー「あ、賢者様。あの子、昨日のパーティーでエースに凄くなついたんだけど、帰る時になったら行かないでって泣いちゃって…。」

矢内「そうか、次って言っても直ぐではないからな…。」

「うん…。あの子じゃないけど僕達もせっかく他の国の子達と仲良くなれたのもうお別れするのは嫌だよ。」

「エルフの子やゴブリンの子とも友達になれたのにね。」

山田「なんだ、そんな事か。」

「そんな事ってなんだよお姉ちゃん!」

「そうだべ!おら達だって、初めて他の国の人間と仲良くなれたのに!」

「そうだー!新しい女王様はヒドイよー!ショッキングピーポーマックスだー!」

「女王がん萎えだー!」

 

子供達が一斉に山田を批難する。こう言う空気の読めない残念な発言するから婚期を逃すんだ。

 

山田「いいか?お前達よく聞け、私は来年の春までに学校を作る。」

「学校?なにそれ?」

山田「ああそうだな。学校が出来たら子供達はみんなそこに集まり色々な勉強をする事になる。」

「みんなが集まる?」

山田「ああ、だから近い将来、毎日みんなと会える様になる。」

ポーキー「えっ?本当?」

キール「そんな事が?」

山田「出来る。今朝、私は各国の代表者達とその話をして可決された。」

矢内「はぁ?山田、勝手な事を言うなよ。だいたい、どうやって毎日学校なんか通うんだよ。具体的な事はまだ何も…。」

 

pipipipipipipipipipi俺の携帯電話が鳴り響く。嫌な予感がするが電話に出る。

 

社長『矢内、お前今何処におんねん!』

矢内「あっ社長、今は出張で砂漠の国です。アラビアンドリームです。コローニャと一緒です。」

社長『お前何言ってんねん!ゼクス商会からまた急な工事の仕事が来たんや!現場代理人お前にしといたから早く打ち合わせに行けや。』

矢内「…。社長、ちなみにどういう仕事内容ですか?」

社長『エルフの森私立山田麗子学院新築設置工事や。』

矢内「エルフの森私立矢内孝太郎学院新築設置工事ですね。」

社長『山田麗子学院や、こっちはスターゲート追加設置工事の作業追われてるから任せたからな。』ガチャ

 

電話は一方的に切られてしまった。

 

矢内「おい山田、どういう事だ。」

山田「何がだ?」

矢内「何がだ?じゃねえ、学校の工事がもう始まっているじゃねえか!」

山田「は?何を言っている。今日の話だぞ各国の代表者と話をしたのは。」

矢内「俺の所の会社で見積りが決まって現場代理人が俺になっているんだよ!どういう事だよ!面倒な事を勝手に押し付けるなよ!」

山田「は?私は知らんぞ!だいたい私が知っていたらお前などに現場は任せたりはしない!」

勇者「賢者様?どうしたのですか?」

矢内「ああ、勇者よ。春まで冒険の旅は中止になった。」

勇者「えっ?」

矢内「みんなが通う学校の工事が始まってしまっている。俺が責任者にされたからもう少ししたらずっと付きっきりになる。」

山田「工事が始まっているってどういう事だ矢内。何処の誰がそんな勝手に…。」

矢内「ゼクス商会のゼクスだよ!毎回何かあったらアイツがうちの会社に見積り出しているだよ!」

山田「毎回?あのゲートもか?」

矢内「ああ、また追加でゲートも作っている。だから俺が学校の工事の現場代理人を任されている。」

山田「ゼクス?何者だ?」

矢内「俺がこの世界で初めに会ってぶん殴った神様だ。」

山田「神様をぶん殴るな愚か者!」

矢内「じゃあお前も1度会って見ろ!ぶん殴りたくなるから。」

山田「お前と一緒にするな。」

矢内「とりあえずみんなに学校の説明するか。」

 

俺は子供達をみんな集めて学校が出来る事を説明した。

 

「学校かあ。」

「おら達ゴブリンも行けるだか?」

山田「ああ、問題ない。どんな種族の子供でも通う事になる。」

矢内「そうだな、子供の時から色々な種類と交流していたら差別などはしない世界になるな。」

ポーキー「凄い…。」

エース「賢者、本当にそんな事が出来るのか?」

「ほんとう?学校が出来たらエースやみんなと毎日会えるの?」

矢内「ああ、そうだ。だから、もう泣き止め。」

「わかった。けんじゃさま、ありがとう。」

矢内「ああ、立派な学校を必ず作るから楽しみに待っていてくれ。山田、行くぞ。」

山田「待て、何処に行くつもりだ。」

矢内「ゼクスの所だ、畑中、ちょっとの間みんなを頼んだ。」

勇者「賢者さま!わたしも…。」

畑中「勇者ちゃん、ここは矢内に任せておけばいい。」

 

俺はゲートを開いて山田を連れてゼクスの元に行った。

 

畑中「学校か、考えたな山田さん。」

勇者「いつもお友達と会える学校、わたしも行ってみたいです。」

畑中「心配しなくてもちょいちょい行く事になるよ。矢内と旅をするんだからな。」

勇者「そうですね、わたし、その時が楽しみです。」

 

 

ゼクス「賢者様、急に来て…ブフェ!」

 

俺はゲートを通りゼクスを見ると同時にぶん殴ってやった。

 

ゼクス「いきなり殴らないで下さいよ。いたたた…。」

 

ゼクスは尻餅をついて何か言っているが俺は構わず捲し立てる。

 

矢内「テメエ!毎度毎度俺を巻き込みやがって!」

山田「矢内!落ち着け!神様相手に殴りかかるな!」

 

山田が俺を止めに入る。

 

ゼクス「賢者様、そんなボンビーガールを連れて来たら駄目じゃないですか。あっ、30過ぎの年増はガールではないですね。」

山田「き、貴様ー!神だか知らんが無礼にも程があるぞ!」

矢内「なっ?ぶん殴りたく気持ちが分かるだろ?」

山田「お前と一緒にするな!」

ゼクス「まあ、冗談はこれくらいにして本題に入りましょうか。学校設立の件で来たのですね。」

山田「ああ、私が各国の代表者と話をしたのは今朝だ。それをどうして建設工事が始まっているんだ?」

ゼクス「神は何でもお見通しですよ、ボンビーさん。」

山田「何!?貴様、真面目な話をしている時にふざけた事を抜かすなよ。」

矢内「山田、こんなふざけた糞野郎の言うことをいちいちムカついていたらキリがないぞ。」

山田「お前も糞野郎ではないか。」

ゼクス「まあ、学校の件は前々からそう言う事になるだろうと思っていましたので準備はしていたのですよ。骨組みはほぼ出来ていますので2月末には完成予定です。」

矢内「ゲートの時といい相変わらず準備が良いな。」

山田「準備が良すぎる…。あらかじめ分かっていたとしか思えない。」

ゼクス「(鋭いな、この年増…。)そ、そんな訳ないじゃないですか。」

矢内(こいつ、絶対に何か隠し事をしてるよな。)

山田「で、学校の設置場所は何処になる?」

ゼクス「迷いの森を抜けた砂漠に入る前の平原です。」

矢内「ゲートを設置した所か。」

ゼクス「ええ、こちらで土木の基礎調査は終わって杭の打ち込みも昨日済んでいます。」

矢内「鉄骨はどうなっている。」

ゼクス「来週から随時搬入していきます。これが図面です。」

 

俺はゼクスから図面を受け取り確認する。

 

山田「お前に分かるのか?」

矢内「バカ言え、こっちはプロだぞ?今が11月頭だから、納期も厳しいな…。」

ゼクス「電気は通しませんのでそこまでは厳しくないかと…。」

矢内「ああ、そうか。灯りはランタンとかか。だったら鉄骨は耐火塗装だな。で、2階建てだから、鉄骨は1本10mが350角で…。それが24本でそれにつく梁があるから…。だいたい450㎡だな。錆止めの塗料は会社の在庫を使うから…。ゼクス、壁はどうする?」

ゼクス「モルタル材を使います。」

矢内「腕の良い職人じゃないと駄目だな。もうすぐ年度末に入るのに人がいないだろ。」

ゼクス「それはこの世界の人達を使いましょう。中には器用な人もいるでしょう。みんな喜んで手伝うと思いますよ。ボンビーさん、早速各国に人を募集してください。」

山田「貴様、目上の者に対する物の言い方がなっていないようだな?」

矢内「山田、落ち着けよ。こんな奴にキレるだけ時間の無駄だぞ。ゼクス、こっちの人達の給料はどうするつもりだ、タダ働きさせるつもりじゃないだろうな?」

ゼクス「日給で金貨2枚払います。現場代理人の賢者様とは別にみんなに指示を出す人間を二人賢者様の会社で用意して下さい。」

矢内「ああ、分かった。それにしても金貨2枚か、太っ腹だな。」

山田「この世界の紙幣価値が分からないが金貨2枚とはどれくらいなんだ?」

矢内「ああ、金貨1枚で約2万円で銀貨1枚が500円だ。」

山田「そんなにするのか…。この金貨1枚で2ヶ月も暮らせるとは…。」

 

お前は一ヶ月一万円生活でもしているのか。ラーメン1杯千円するのに暮らせる訳ないだろ。

 

矢内「それなら直ぐに人は集まるな。」

山田「しかし、募集はかけるとはいえそんなに直ぐに集まるのか?」

矢内「バカ言え、金貨2枚、1日40000円だぞ。原発の汚染除去作業でも15000円ぐらいだのに俺達の世界じゃ10秒で募集打ち切りになる。山田、早速準備に入るぞ。ゼクス、また後で来る。」

ゼクス「…。」

 

俺達はまた砂漠の国に戻った。



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時を越えて 4

再びみんなが集まっている所に戻る。

 

クロノス「賢者、もう良いの?」

矢内「あ、ああ。やってくれ。」

クロノス「じゃあ、帰りの歌を始めるね。みんなー!お別れの時間だよー!」

コローニャ「また遊ぼうにゃ!」

クロノス「か~えりたくな~い♪」

コローニャ「か~えりたくな~い♪か~えりたくないけど~♪」

クロノス「さよならマーチ♪」

 

ゲートが開かれた。こんなことでゲートが開くとは…。

 

クロノス「さあみんな!このゲートを通ったらお家に帰れるよ!」

矢内「いやいや、1つの地域の人達がまとまって行かないと…。」

コローニャ「大丈夫にゃ、それぞれのお家に繋がっているから問題ないにゃ。」

 

クロノス「さ~らバイバイさ~らバイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪」

コローニャ「さ~らバイバイさ~らバイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪」

 

みんな半信半疑でゲートに入っていく。

 

クロノス「さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~らバ~イ♪エルフの女王様もパチンカスも一緒に歌って。」

山田「なっ!」

コローニャ「早く歌うにゃ!」

矢内「早くやれよ、じゃじゃ丸にピッコロ。」

畑中「誰がじゃじゃ丸ピッコロだ。」

コローニャ「パチンカスは基本的に役に立たないからたまにはちゃんとやるにゃ!」

クロノス「そうだよパチンカス。」

畑中「俺にだけ失礼だな。」

クロノス「ろくにはたらいてもいない奴に敬意は持てないよ。良いから一緒に歌うよ。さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪」

コローニャ「さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪お前達も続くにゃ!」

畑中「あー!やれば良いんだろやれば!さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪」

コローニャ「足踏みがちゃんと出来てない!ちゃんとやれにゃ!」

畑中「うるせえ!」

クロノス「さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪ほら、女王様も早く!」

山田「なっ!私にもさせるのか!」

矢内「良いからやれよ!ゲートが閉まってしまうだろ!」

クロノス「そうだよ!早く!」

山田「何故私に言う!?矢内!お前がやれ!お前が!」

クロノス「賢者は病み上がりで魔力を使わせたくないの!だから早く!一緒にこういう感じで、さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~らバ~イ♪」

矢内「そうだ!やれ!」

山田「くっ…。矢内、後で覚えていろよ?さ~らバイバイ♪さ~らバイ♪元気にさ~らバ~イ♪」

 

面白いから動画を撮っておこう。そうこうしている内に次々にみんなゲートに入っていく。

 

「賢者様ー!ありがとー!昨日は楽しかったよー!」

矢内「ああ!来てくれてありがとうな!またやろう!」

「次も呼んで下さいねー!」

矢内「ああ!次もみんなで盛り上がろうぜ!」

 

みんな、感謝の言葉を言ってゲートに入っていく。

 

山田「矢内め…。何もしてない癖に…。」

クロノス「ほら、女王様!足踏み止まっているよ!ちゃんとやって!」

山田「くっ…。やっているだろうが!さ~らバイバイ♪さ~らバイ♪元気にさ~らバ~イ♪(恥ずかしい…。消えてしまいたい…。)」

畑中「さ~らバイバイ!さ~ら~バイ!元気にさ~ら~バ~イ!」

矢内「ダハハハ!おい、じゃじゃ丸!ちゃんとやれー!」

畑中「誰がじゃじゃ丸だ!お前もやれ!」

矢内「そこまで言うなら見本を見せてやる。さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪」

クロノス「賢者はしないで!」

 

止められてしまった。なんで俺だけ…。

 

コローニャ「さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪パチンカス、あの子達を見習ってちゃんとやれにゃ!」

勇者「さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪さっちんもエリカにゃんも一緒にやりましょう!」

エリカ「さ~らバイバイ♪さ~ら~バイ♪元気にさ~ら~バ~イ♪なんか楽しいな。サチもやろうよ。」

サチ「嫌よ、だって恥ずかしいもの。」

矢内「良いかサチ、恥ずかしがらずにこんな感じでな。さ~らバイバイ♪さ~らバイ♪」

クロノス「だから賢者はしないで!」

 

なんで俺だけ…。みんな順番にゲートに入って行って来客者はみんな帰った様だ。

 

クロノス「最後はみんなで歌うよ!」

「あしたのあし~たに~♪また遊ぼう~♪にっこり笑ってまた~ね~♪やくそくマーチ~♪」

 

ゲートは閉じた。

 

クロノス「これでみんな元の国に帰ったよ。それじゃあ賢者、過去の世界に行こっか?」

矢内「行くのは良いが、どれくらいの期間行くんだ?」

クロノス「うーん、期間は分からないけど行って帰って来るタイムラグで戻って来るのは一週間後ぐらいかな?」

矢内「一週間後か、分かった。今のうちにこれから先の工程を決めるか。畑中、いろんな人達に貸したデジカメ回収しているか?」

畑中「ああ、お前がぐうたら寝ていた時に回収はしている。この数を写真屋に持って行くのか?だいぶ金がかかるぞ?」

矢内「まずは会社のコピーで現像する。写真屋に持って行くのはそれからになるな。」

 

畑中から渡していたデジカメを受け取った。

 

矢内「勇者、お前達は俺が帰って来るまで畑中と一緒にこの国の復興を手伝ってやれ。」

勇者「分かりました。」

畑中「ちょっとまて、勝手に俺を巻き込むな!」

矢内「勝手にこの国の人達を戦いに巻き込んで何を言っている。最後まで責任を取れ。」

畑中「ちっ、お前と関わるとろくなことにならない。」

矢内「山田、畑中、俺は1度会社に戻るから後の事は頼む。」

山田「ああ、学校の建設はお前に任せる。各国の代表者達との話し合いは私がやろう。畑中、この国の内政を補助してやってくれ。」

畑中「いやいや、山田さんまで何を言い出すんだよ!」

山田「矢内と関わったらろくなことにならない。諦めてやれ。」

矢内「ハハハ!そう言う事だ。頼りにしている。では、行ってくる。」

「待てよ!」

 

俺はゲートを開こうとゲートストーンを手にかざそうとしたら誰かに止められた。

 

アレス「待てよ、ペテン師野郎。」

矢内「アレスか。」

アレス「いいかペテン師野郎!お前はまだお前を認めた訳じゃねえ。」

リリー「アレス、ちょっと!何ケンカ腰で言っているのよ!」

アレス「俺は必ず強くなってやる。そして世界を旅してお前がどういう奴か見定めてやる。もし、お前が悪党だったら俺がこの手で倒してやるから覚えていろよ!」

 

アレスはそう言い残して去っていった。

 

リリー「ちょっとアレス!待ってよ!」

 

リリーはアレスを追って去っていった。

 

山田「やはり寝首を取られる事になりそうだな。」

矢内「…。」

勇者「アレスさん達、行っちゃいましたね。」

サチ「きっとまた会えるわよ。もしかしたら今度は本当に敵になるかも知れないけど…。」

エリカ「えっ、あいつ等良い奴だからあたし戦いたくないよ。」

サチ「そうね、そうならないようにしっかりして行かないとね。」

矢内「ああ、そうだな。とりあえず俺は会社に戻る。」

クロノス「ヤー、また何処かに行くの?」

矢内「俺は毎日遊んでいるわけじゃないんだよ。」

 

俺はゲートストーンをかざして会社に戻る。

 

クロノス「コローニャ、賢者に着いて行くよ。」

コローニャ「分かったにゃ!」

俺は社長室に入って打ち合わせの報告をする。

 

矢内「社長、ゼクス商会との打ち合わせ終わりました。」

社長「そうか。で、何時から工事始まるねん?」

矢内「本格的に始まるのは一週間後です。現場の人員の確保や細かい作業の調整をしますので俺は明日から現場に付きっきりで行きます。」

社長「そうか。」

矢内「で、作業が始まり出したら現地で指示を出す人間を二人貸して欲しいのですが…。」

社長「分かった、用意しといたるわ。」

矢内「ありがとうございます。では…。」

社長「所で矢内、お前隣におる女は誰やねん。」

クロノス「ヤー、神様だよ。」

社長「お前、何が神様やねん!髪の毛ない俺に対して当て付けか!」

コローニャ「このハゲ頭、クロノス様に失礼にゃ!」

 

ややこしくなるから喋るな!

 

社長「矢内!誰がハゲやねん!」

矢内「俺は何も言ってないし最初に言ったのは社長でしょうが!失礼します。」

 

俺は急いで社長室を後にした。

 

矢内「お前ら、ややこしくなるから着いてくるなよ!」

クロノス「ヤー、良いじゃん別に。早く行こうよ。」

矢内「まだだ、部下の西森に用があるんだ。」

 

事務所に行き部下の西森に話かける。

 

矢内「西森、ちょっと良いか?」

西森「はひ?矢内さん?しばらく出勤してきてなかったから大変だったのですよ~。聞いて下さい~。」

 

うだつの上がらないメガネ女がいきなり泣きついてきた。

 

矢内「何だ?」

西森「実はこの仕事なんですけど~相手先が全然納期をくれなくて~。」

矢内「見せてみろ。」

 

西森から資料を受け取り確認する。

 

矢内「お前、これで仕事を受けたのか?」

西森「だって、相手先がどうしてもって言うから…。」

矢内「こう言うのは始めに毅然とした対応を取らないから相手先に舐められるんだよ。一週間は伸ばさないと話にならんぞ。何考えているんだ。」

西森「何でその時居ない人に言われないといけないのですか…。その時に居てくれたら…。直ぐに親戚の子が来て何処かに行く癖に…。」

矢内「何だ、言いたいことがあるならハッキリ言え。」

西森「い、いえ…。」

矢内「とりあえずこの件は俺が1回相手先と話をする。工場の作業はどうなっている?」

西森「3日後に寸法検査です。」

矢内「は?いきさつを教えろ。」

 

西森から最初の仕事の打ち合わせの話を聞く。

 

矢内「最初から工程の納期がおかしかった訳だな。よし、俺が相手先に話をするからお前は発注者と役所に相手先が嘘の報告書を出しているってメールしろ。」

西森「はひ?良いのですかそんな事しても?」

矢内「構わん。向こうは俺と話をしたら都合が悪くなるからお前と打ち合わせをしたんだよ。立場の弱そうな奴を狙って仕事をするのがこの会社の担当の特徴だ。俺の名前でメールしたら良い。」

西森「分かりました。メールしときます。」

クロノス「賢者ー!まだー?」

西森「矢内さん、さっきから気になっていたのですがその人は?」

クロノス「ヤー、神様だよ。」

西森「はひ?神様?」

 

だからややこしくなるから喋るな!

 

コローニャ「賢者、早く終わらせるにゃ。」

西森「はひ?猫?何で喋っているのですか?私、魔法少女になっちゃったのですか?」

 

うだつの上がらないモブのお前が魔法少女になんかなれるか!

 

矢内「お前ら、邪魔だからとりあえず金を渡すから外の自動販売機でスコール飲んでろ。」

クロノス「ヤー、何で私達を追っ払おうとするのさ!」

西森「あの…。矢内さん?この人達は?」

矢内「とりあえず浮遊霊だと思って無視したら良い。」

西森「いや…。はっきり見えて話かけて来るのに無視出来ないですよ。」

矢内「ああ、そうか。お前、浮遊霊見えないんだったな。その辺に結構いるんだけどな。」

西森「怖いこと言わないで下さいよ。」

矢内「まあ、お前のケツ拭きはこれでいいとして、お前に1つ仕事を頼む。」

西森「な、何ですか?」

矢内「このデジカメの中のデータを取り出してパソコンから印刷して1枚ずつラミネートして欲しい。」

 

俺は西森にデジカメを8台渡す。

 

西森「はひ?これ、全部ですか?」

 

西森はデジカメの写真をチェックしている。

 

西森「これ…。何処の写真ですか?人じゃないのも写っているのですが…。コスプレですか…。」

矢内「ああ、鬼にオークにゴブリンにエルフだ。砂漠の国で撮った写真だ。」

西森「はひ?砂漠?」

クロノス「コローニャ、私達が殆ど写っていないよ。」

コローニャ「本当だにゃ。」

 

パーティーの写真だから写っている訳無いだろ。

 

矢内「そう言うことだから来週までにしてくれ、任せたからな。」

西森「ら、来週?ラミネートまでは無理です~。」

矢内「じゃあ印刷まででいい。」

 

そう言い残し俺は事務所を後にし取引先の電話を終えて人目に付かないゼクスの所にやって来た。

 

矢内「ゼクス、学校の建設の件、来週からで良いか?」

ゼクス「賢者様、それは構いませんがその方は…。」

クロノス「ヤー、神様だよ。しばらくコローニャが世話になるよ。」

ゼクス「はぁ…。分かりましたよ。ボンビーさんが人の募集を始めてくれてますので一週間後から工事開始にしましょう。」

矢内「よし、じゃあクロノス、行くか。ビーナスをボコボコにしに。」

クロノス「ヤー、今回は体験版だから時の扉を使うよ。」

矢内「時の扉?」

クロノス「うん、時の扉で過去に行くと歴史を大きく変える事は出来ないの。」

矢内「ん?」

 

どういう事だ。するとクロノスが人が通れる位の扉を召喚した。

 

クロノス「コローニャ、お願い。」

コローニャ「さあ賢者、時の扉を潜り15年前のファンタルジニアに行きましょう。」

 

すげえ、シェラザードの世界の再現だ。ファミコンの世界に入ったみたいだ!テンション上がってきた!

 

矢内「よし、行くか!15年前の世界に!」

クロノス「賢者がノリノリで良かったよ。さあ行こう!」

 

俺とクロノスは時の扉を潜り過去に行く。

 

ゼクス「15年前のファンタルジニア…。(ついにこの時が来たのですね…。)」

 

 

 

 

 

第16話

時を越えて

END



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15年前のファンタルジニア
過去の世界 1


矢内「オェー!オェー!」

 

時の扉を使い過去の世界にやって来た。なんか宇宙空間をさ迷った様に身体中が 回されてジェットコースターを何回も乗らされた感じだ。盛大に吐いた。まだ気持ち悪い…。

 

クロノス「ヤー、賢者、大丈夫?」

矢内「オェー!オェー!」

 

昨日食ったご馳走が全て吐き出された。

 

矢内「オェー!何だよあれは!全身がシェイクされたみたいじゃねえか!」

クロノス「ヤー、ジェットコースターみたいで楽しかったでしょ?」

矢内「楽しい訳あるか!ゲロ吐いてるんだぞこっちは!」

 

くそっ、スコールを飲んで少し落ち着こう。森の中だな。どの辺りになる…。

 

矢内「で、ここは何処だ?」

クロノス「ヤー、15年前の世界だよ。」

 

それは知っているわ!細かい場所を聞いているんだよ!何者かの足音が近づいてくる。

 

矢内「前から誰かが近づいてくる。身を隠すぞ。」

 

俺達はいきなりトラブルに巻き込まれるのを防ぐ為に森の茂みに隠れる。

 

「誰か!そこに居るのか!」

 

あれは…。だいぶ若いけど童帝か?何故城に居ないでこんなところに居るんだ?いきなり知り合いに会えて助かった。

 

クロノス「賢者、出て行ったら駄目…。」

矢内「童帝だから知り合いじゃないか。大丈夫だよ。」

クロノス「15年前だから向こうは賢者の事は知らないよ。怪しまれるから今は駄目。」

 

俺達が様子を見ながら話しているともう一人誰かが近づいてくる。

 

「敵が現れたのか?」

 

あれは…。戦士長か…。やっぱり若いな…。何故末端がやる警備などしているんだ?

 

「いや、気のせいのようだ。」

「そうか、自分は流れ者だから末端仕事でも有り難いがあんたは災難だな。王の一族なのに末端の仕事をやらされて。王に逆らうなんてどうかしてるぞ。」

「私は一族と言っても血の繋がりは薄いから元々疎ましく思われていた。仕事があって生きる為の飯が食えるだけ民よりましだ。」

「それもそうか、隣の国との戦争に勝ったらひもじい思いもしないですむさ。」

「しかし、仮に戦争に勝っても隣の国の民がひもじい思いをするだけ…。」

「まあ、俺は雇われた傭兵だから他の人間がどうなろうと関係無いがな。警備に戻るぜ。」

「ああ…。」

 

二人は引き返して行った…。

 

矢内「…。」

クロノス「ヤー、賢者?どうしたの?ボーっとして。」

矢内「ああ…。」

 

あれが俺が知っている誰よりも自分に厳しいキサラギ戦士長か?それに童帝が末端の兵士だと?それにあのファンタルジニアが戦争をしている?俺は夢でも見ているのか?

 

クロノス「賢者、とりあえず移動しようよ。」

矢内「ああ…。あの二人が向こうから来たからこっちに行こう…。ファンタルジニアと違う国があるはずだ。とりあえず情報を集めよう。」

クロノス「賢者、あまりに歴史が変わるような事をしたら強制送還で元の世界に戻されちゃうから気を付けてね。」

矢内「ああ…。」

 

俺達はそのまま歩いて森を抜けると大きな町が見えてきた。奥にはデカイ城がある。これがファンタルジニアの戦争相手か。町に入ろうとすると数人の兵隊に呼び止められる。

 

「待て!お前たちは何者だ!?」

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ。」

「は?」

 

この兵隊達は耳が遠いのだろうか、ちゃんと賢者様ポーズもとっていなかったしな。もう一度やるか。

 

矢内「ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ!」

 

賢者様ポーズもバッチリ決まったので次はちゃんと聞こえただろう。

 

「それはさっきも聞いた!怪しい奴だ!賢者だと?嘘をつくな!引っ捕らえてやる!」

クロノス「ヤー、そんなダサい事をするからだよ。私達は旅の途中なんだ、通行料払うから通してくれる?」

 

クロノスが兵隊達に金貨を渡している。

 

「旅の方でしたか、引き留めてしまってすみませんでした。どうぞお通りください。」

クロノス「ヤー、ありがとう。賢者、行くよ。」

 

町の中に入る。

 

クロノス「賢者、駄目だよ。あんまり怪しまれる事をしたら…。」

矢内「怪しまれる?俺は何者だ?って聞かれたからカッコいい賢者様ポーズをとって自己紹介しただけじゃないか。」

クロノス「カッコいい訳ないじゃん、賢者ってさぁ、たまに凄くバカだよね。」

矢内「誰がバカだ!誰が!バイトに神様の役職を乗っ取られたお前にだけは言われる筋合いは無い!」

クロノス「ヤー、それは言いっこなしだよ。」

 

町に入るがなんか静かだな。町を歩くと広場にたどり着いた。広場の中央を囲む様に人が群がっている。何をやっているのだろう?俺達は人混みの中に入って行く。

 

「集まっている者達、聞け!これより!今月分の税金を払えなかった者の公開処刑を行う!」

 

公開処刑だと!今月、って言ったよな?この国は毎月こんな馬鹿げた事をしているのか!

 

クロノス「賢者?」

矢内「…。」

 

兵隊の一人が痩せ細った神父さんが連れて来られてギロチンにかけられる。

 

「しんぷさまー!しんぷさまをはなしてー!」

 

小さい女の子がギロチンにかけられた神父に近づいて行く。兵隊が女の子を蹴り飛ばし怒鳴りつける。

 

「どけ!!」

「ああああ!いたいよー!」

 

蹴り飛ばされた女の子は泣きじゃくるが誰も助けようとしない。周りの人達のひそひそ話が聞こえてくる。

 

「自分の生活もままならないのに戦争孤児なんかの面倒なんか見るから…。」

「あんな小汚ないガキ共を引き取ったりするから税金が払えなくなるんだよ…。本当にバカな人だね…。」

 

この国は腐ってやがる…。そこに住む人間達も…。

 

矢内「クロノス、あの子を連れて行ってくれ…。」

クロノス「賢者?何をするつもりなのさ、勝手な事を…。」

矢内「あの神父さんを助ける…。こんな事を許してたまるか。」

クロノス「賢者、顔ばれしたら不味いからこの仮面被って。」

 

俺はクロノスからお祭りの的屋のお面を受け取った。しかし、これ…。

 

矢内「おい、何でこれなんだよ。ポロリって、前回の件を引き継いでいるんじゃねえよ。」

クロノス「じゃあ、こっちのセーラームーンにする?」

矢内「ポロリでいい!」

クロノス「賢者、気を付けなよ?」

「しんぷさまー!やだー!」

クロノス「ヤー、大丈夫だよ。あの正義のネズミ仮面が神父様を助けてくれるから。下がるよ。」

「しんぷさまー!」

 

クロノスは嫌がる女の子を連れて人混みから離れて行った。俺はポロリのお面を着けて兵隊達に近づいて行く。

 

矢内「その人の2ヶ月分の税金だ、その人の処刑を取り下げろ。」

 

俺は兵隊に金貨を10枚投げつける。

 

「何だテメエは!」

矢内「聞こえなかったのか?その人の処刑を取り下げろって言ってるんだ!」

「王の意向で処刑は決定したんだよ!今更金を払っても遅いんだ!まあ、この金は俺達がありがたく頂いてやるから安心しな!」

 

兵隊は3人か…。手持ちの武器になりそうな物は…。俺は異次元袋の中に入れている物を思いだしながら作戦を考える。

 

矢内「金貨が足りないか?拾え!」

 

俺は30枚ほど金貨を兵隊達の周りにばら蒔いた。

 

「おい!マジでか?こんだけあればしばらくは贅沢三昧できるぜ!」

 

兵隊達が金貨を我先にとしゃがんで拾い出す。その隙に鉄パイプを取り出ししゃがんで無防備になった兵隊達の後頭部を殴り付け気絶させる。二人倒した時に最後の一人が立ち上がり剣を抜いた。

 

「き、貴様!何を!俺達に手を出して生きて帰れると思うなよ?」

矢内「そんなお喋りをしている暇があったらちゃんと周りを見るべきだったな、ティロ フィナーレー!!」

 

俺は一斗缶に満タン入ったラッカーシンナーを剣を抜いた兵隊に思いっきりぶっかけた!そして、直ぐ様マッチに火をつけて兵隊に投げつけた。シンナーを浴びた兵隊の体は一瞬で火だるまになって転げ回り断末魔をあげた。周りにいた人間は叫び声をあげて我先にと逃げていく。

そして、ギロチンにかけられた神父さんを助けだし声をかける。

 

矢内「大丈夫か?」

「助けていただいてこんな事を言うのはあれですが…。」

矢内「ちゃんと助かりたかったら俺の言う通りにしろ。」

「な、何を…。」

矢内「気絶している二人の兵隊の服を剥ぎ取る。手伝え。」

 

神父さんに手伝わせて兵隊の服を2着手にいれる。

 

矢内「お前の服を脱いでその兵隊に着せるんだ。」

「は、はい…。」

 

神父さんの服を着せた兵隊をギロチンにかけ首をはねる。

 

矢内「よし、これでパッと見はお前がギロチンにかけられて死んだ事になった。後の一人は連れて行く。何処かいい場所はないか?」

「私の教会の隣に物置小屋がありますのでそこなら…。」

矢内「よし、じゃあ連れて行こう。その前に…。」

 

俺はばら蒔いた金貨を全て拾い集めて一人生き残った気絶している兵隊を連れて行った。

 



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過去の世界 2

俺は神父さんの案内で教会の隣の物置小屋に入る。そして、気絶している身ぐるみを剥いだ兵隊を動けないように縛りつける。

 

矢内「よし、これでいいな。神父さん、面倒をかけてすまないな。」

「いえ、こちらは命を助けていただいたので…。」

矢内「面倒ついでに近くに人を軽く埋めれる位の穴を掘ってくれ。」

「えっ…。それは…。まさか…。」

矢内「ああ、この男を起こして拷問をする。国の情報を洗いざらい喋らせたら生き埋めする為だ。」

「私は…。神父です…。人の死、葬儀に係わる仕事もします…。人を殺す方に協力する為には…。」

矢内「自分を殺そうとした人間を許すのか?」

 

ガチャ、誰かが物置小屋に入ってきた。

 

クロノス「ヤー、おかえりー!」

「しんぷさま!」

矢内「ああ…。そっちも無事だったんだな…。」

「おお、エリカ。痛い思いをさせてすまなかったな。子供達は?」

 

エリカ?このガキ…。まさか…。そう言えば…。面影がある…。

 

矢内「クロノス、まさか…。コイツ…。」

クロノス「ヤー、そうみたいだね。だから、正体を明かしたら強制送還されちゃうからその仮面はしばらく被っていてね。」

 

俺達を見る気もせずにエリカは神父さんと話をしている。

 

エリカ「しんぷさま、みんなどこにもいないの…。」

「みんなはどこに…。」

クロノス「私達が教会に着いた時には誰も居なかったよ。」

矢内「どう言うことだ?」

 

俺達が話し込んでいると兵隊が目を覚ました。

 

「ぐっ…。テテテッ…。ここは…。」

矢内「ちっ…。もう目を覚ましやがったか。」

「き、貴様ッ!う、動けない!こんな事をしてただで済むと思っているのか!」

エリカ「ひぃ…。」

「エリカ、下がっていなさい。」

矢内「神父さん、その子をここから出してくれ。」

「分かりました。しかし…。」

矢内「この男の態度しだいだが出来るだけ殺さない様に心掛ける。」

 

神父さんはエリカを連れて物置小屋を出て教会の中に入って行った。

 

「テメエッ!こんな事をしても俺と一緒に居た同僚が…。」

矢内「残念だがお前の仲間は地獄まで永久出張だ。お前も一緒に行きたいか?」

「何ッ…。お前…。仲間を…。」

 

先程の事を思い出し震える手を隠して話を続ける。

 

「他の兵隊達がここに来るのは時間の問題だぞ!」

矢内「お前の仲間に神父の服を着せてギロチンで首をはねた。直ぐには来ない。」

「そんな事が通用すると…。」

矢内「あのなぁ、国のトップの王様が1末端の兵隊の顔なんかいちいち覚えている訳ないだろ?王様からしたら税金を払わなかった奴を見せしめに処刑した、その結果が欲しいんだ。お前達がどうなろうと知ったことではないんだよ。」

「そんな事が…。」

クロノス「戦争して余所の土地を手に入れようとする王様なんてそんなもんだよ。だから、誰も助けに来ないよ。」

「俺は…。国家の為に毎日、戦って…。」

クロノス「別にそんなの知らないよ。あんたは楽しそうに神父さんを殺そうとしていたじゃん。何を人のせいにしているのさ。」

「何だよ女の癖に!俺達兵隊が戦っているからお前達が毎日楽できているんだろうが!」

クロノス「なんか腹立つよね。ネズミ仮面、もう殺しちゃいなよこんな奴。」

矢内「まだ何も聞いていないだろ。殺したくなる気持ちは分かるけどな。」

「お、俺も殺すのか…。」

矢内「さあな。それはお前の態度しだいだ。さて、殺されたくなかったら色々と質問に答えてもらおうか?」

「…。(コイツ等…。下手な事を言ったら本気で殺される。)」

クロノス「返事は?私、神様だよ?殺されたいの?」

「ま、まさか、アテナ様!何なりとお答えします!先程の無礼をお許し下さい!どうか殺さないで下さい!」

 

何か勘違いしている様だが態度が180度変わったな。この国の神様の名はアテナか。しかし、この世界はどうも俺達の世界と似た所があるよな…。とりあえずはコイツから情報を集めよう。

 

矢内「まずは、お前達の国について教えてもらおうか。」

「俺達の国について?」

矢内「何処の国と戦争をしている?」

「西の隣国のファンタルジニア王国と東のバージニアだ。まずは南に住むオークの土地を侵略してそこを足掛かりにしてファンタルジニア攻め込め段取りだ。」

 

ここの近くは15年後はオークの村になっているんだな。少し土地勘が分かってきた。って事はこの国は滅ぶんだな。

 

矢内「この国の人はどういう生活をしている?」

「兵隊が他国を侵略して奴隷を増やしてその奴隷に全てをやらせている。」

矢内「そうか…。兵隊は手柄をあげて土地をもらってその土地で奴隷に作物を作らせているんだな。」

「ああ、この教会に居たガキ共も城に連れて行かれて奴隷になっているだろうな。」

矢内「城か。町にいる人達はみんな奴隷なのか?」

「町の人間は兵隊の家族だ。奴隷は昼間は町の外で農作業をさせている。」

矢内「そうか、分かった。だいたい聞きたい事は聞けたな。後はお前の処分をどうするかだ。」

「こ、殺さないでくれ!何でもする!だから助けてくれ!」

クロノス「ヤー、ちょっと虫が良すぎだよね。」

矢内「まあ、そう言うなよ。お前、何でもするって言ったな?」

「助けてくれ!頼む!」

矢内「じゃあ…。お前、俺と共に城に行って国王を暗殺しろ。」

「は?何を…。」

矢内「上手く行ったらこの国はお前に全部やる。王様に成り代わるんだ。」

「そんなの、上手く行くとは…。」

矢内「じゃあ、生き埋めにするしかないな。俺達の存在を知られたから殺すしかないな。残念だが…。どうせ死ぬなら夢を見た方が良いと思うが、まあお前の自由だ。好きな方を選べ。」

クロノス「死ぬの?王様を殺しに行くの?どっち?ハッキリしなよ。」

「や、やります!神に意向に従います。」

矢内「よし、縄を解いてやる。服を着ろ。」

 

俺は兵隊に服を返して縄をほどく。俺も兵隊の服を着てお面を外す。

 

矢内「サイズもちょうど良いな。神父さんを呼んでくれ。とりあえず腹ごしらえをしよう。」

クロノス「分かったよ。」

 

クロノスが神父さん達を呼びに行った。

 

クロノス「ヤー、連れて来たよ。」

矢内「神父さん、子供達は城に連れて行かれたみたいだ。俺はこれから子供達を取り返しに行ってくる。が、その前に少し腹ごしらえをしたい。」

「子供達が城に!?そんな…。」

矢内「大丈夫、必ずみんな連れて帰って来る。それより…。」

「腹ごしらえですね…。しかし…。」

矢内「ここに食うものがないことぐらいは分かっているよ。調理をするから台所を少し貸して欲しいだけだ。」

「はい…。それでしたらこちらになります。」

クロノス「ヤー、今日のご飯なに?」

矢内「さっと作るからあまり期待はするなよ。それより、ソイツを見張っておけよ。」

クロノス「ヤー。」

 

何がヤーだ。コローニャの方が優秀じゃないかダメ神様が。俺は神父さんに案内されて台所に向かう。

 

矢内「さてと、今日は何にしようかな。」

 

俺が考えていると幼いエリカが入ってきた。正体がばれたらダメだったな。あわててお面をつける。

 

エリカ「あっ、ねずみかめん、しんぷさまをたすけてくれてありがとう。」

矢内「今からご飯を作るから向こうで待っててくれるか?」

エリカ「えっ?ごはん?」

矢内「ああ、直ぐに作るからな。」

「これ、エリカ。邪魔をしたら駄目だよ。こっちに来なさい。」

エリカ「わかったー!」

 

エリカは奥に戻って行った。代わりに神父さんが入ってきた。

 

「すみません…。」

矢内「神父さんも待っていてくれ。直ぐに作る。」

「そんな…。命の恩人に…。」

矢内「世話になって厄介事に巻き込んでしまった詫びをしたい。それくらいはさせてくれ。」

「貴方は何故見ず知らずの我々にそこまで…。」

矢内「そうだな…。あえて理由を言ったら俺がそうしたいからかな、飯はみんなで食うのが1番美味いからだ。」

「すみません…。」

矢内「さあ、いつまでも台所に居られたら飯を作る時間が遅くなるから向こうで待っててくれ。」

「はい。」

 

神父さんも奥に戻って行った。献立は決まった。チーズと目玉焼きのニコニコハンバーグにしよう。旅の時はいつも言っていたよなエリカの奴、ハンバーグが好きだって。俺が得意じゃないからいつも魚系の献立にしているが…。元の世界に帰って来たら作ってやろう。ハンバーグ。よし、完成だ。持っていこう。

 

クロノス「ヤー、美味しそうだね。」

矢内「ヤー、じゃねえよ!こっちに来てないであの兵隊を見張っておけよ!」

 

ちゃんと見張りぐらいやれよ役立たずが!

 

「本当に我々の分まで…。」

矢内「当たり前じゃないか…。さあ食べよう。」

エリカ「えっ?なにこれ?はじめてみる?」

クロノス「ヤー、ハンバーグだよ!目玉焼きとチーズが乗ってるよ、美味しそうだね。」

エリカ「ハン…バーグ?」

矢内「ああ、暖かいうちに食べよう。」

「私も初めて見る…。」

 

得意じゃないから出来が不安だが食べるか。

 

クロノス「ヤー、美味しいね。」

 

コローニャが来てくれたら良かったのに役立たずめ。エリカが恐る恐るハンバーグを口に入れる。

 

エリカ「おいしい!こんなのはじめてたべたー!」

矢内「そうか。」

エリカ「うん!」

 

エリカがいつもハンバーグが好きだって言っていた事って…。この味をずっと覚えていたのか…。

 

「うぅ…。」

矢内「神父さん、どうした?口に合わなかったか?」

 

神父さんが溢れんばかりの涙をこぼしている。

 

「この土地に来て…。うぅ…。」

エリカ「しんぷさまー?おなかいたいの?」

「違うんだ…。違うんだよエリカ…。嬉しくて…。この土地で…。初めて…。人に優しくしてくれて…。人の手助けをしたくて…。神父になって…。でも…。この国は…。うぅ…。」

クロノス「今まで辛かったんだね…。」

矢内「クロノス、食べ終わったら神父さん達を連れてファンタルジニアに行ってくれ。」

クロノス「ヤー、何で?この国とファンタルジニアは戦争しているんだよ?」

矢内「この国は滅びる。居たら神父さん達は犠牲になる。歴史を変えられないんだよな?」

クロノス「ヤー、そうだよ。」

矢内「だったら神父さん達はファンタルジニアに亡命しないと歴史が変わってしまう。」

クロノス「この子がエリカだからか。分かった。食べ終わったら神父さん達を連れて国を離れるよ。」

矢内「ああ、後でこの世界に出てきた場所で合流しよう。」

クロノス「ヤー。」

 

食事を終えて神父さん達にこの町を出る準備をさせる。

 

矢内「俺は城に行ってくるから神父さん達の事は頼むぞ。」

クロノス「ヤー、任せてよ。」

矢内「いや、本当に頼むぞ?」

クロノス「何か作戦とかあるの?」

矢内「まあな。こっちは任せておけ。上手く行ったら一網打尽で方がつく。」

クロノス「手早く頼むよ?」

「お待たせしました。」

エリカ「しましたー。」

矢内「神父さん、いずれここに兵隊が来ると思うから今のうちにファンタルジニアまで行ってくれ。俺も後から合流する。俺の作業着を着ていたら怪しまれずに通れる筈だ。ヘルメットも深く被っていたら大丈夫だ。」

エリカ「しんぷさま、へんなかっこうだ。」

クロノス「よし、じゃあ神父さんとエリカちゃん、行こっか?」

エリカ「ねずみかめんは?」

矢内「俺は後から行く。だから、それまで神父さんとそこのアホ女の言うことを聞くんだぞ?」

エリカ「わかったー!」

「あの…。ファンタルジニアとは今は戦争中でして…。もし、向こうの兵隊に見つかったら…。」

矢内「神父さん、もし、兵隊に遭遇したらキサラギと言う男を訪ねるんだ。」

クロノス「ちょっと…。向こうはこっちの事は知らないんだよ?」

矢内「それを何とかするのがお前の役目だろ。」

クロノス「ヤー!人使いが荒いよ!」

矢内「マジで頼むぞ?畑中もサチも居ないんだからお前しか居ないんだぞ?」

クロノス「ヤー。」

 

何がヤー、だ。クロノス達は町を出ていく。

 

「あの…。」

クロノス「何?」

「貴女達はいったい…。」

クロノス「んー。神父さんにだけは特別に教えてあげるよ。私は時の神様で私の連れは賢者様だよ。他の人には言ったら駄目だからね。特に賢者の事は、分かった?」

「はぁ…。(頭大丈夫かこの人…。)」

 

 

 

15年前の世界、仲間が居ない中で戦争中のファンタルジニア。きっと俺が戦争を終らせないと歴史が変わってしまうのだろう。また、俺は人を殺さないといけないのか…。ギロチンで首を切った感覚がまだ残っている。手の震えが止まらない。人を直接殺した…。でも…。やらないといけない。

この世界の15年後、勇者とサチ、エリカが出会える為に…。

 

 

第17話

過去の世界

END



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戦いの神アテナ 1

俺は物置小屋に戻り中に入る。

 

矢内「待たせたな。城まで案内してくれ。」

「お前、一人か?」

矢内「ああ、俺を殺すつもりなら止めておけ。」

「何?」

矢内「まず俺を殺してなんの手柄になる?俺の首を城に持って帰っても税金を払えなかった者を取り逃がした罪でお前が死刑になるだけだぞ?」

「お前の首で帳消しになる。」

矢内「ならねえよ。たったの1ヶ月税金を払わないだけで死刑にするような王様だぞ?1末端の兵隊なんか大事にすると思っているのか?この国の王様は兵隊なんか代わりはいくらでも補充したらいいとしか思っていないぞ。」

「そんな訳…。みんな、ずっと必死に戦って…。」

矢内「知らねえよ。お前達は今まで何も考えずに生きてきただけだろ!都合が悪くなったら人のせいにするな!この人殺しが!」

「何で…。この国の人間でも見ず知らずの奴にそんな事を…。」

矢内「外からだから見えるんだよ。この国が腐っている事ぐらいはな。で、この国の王様は何代目なんだ?」

「何代目?何を言っているんだ?」

矢内「なんだよ。それすら知らないのかよ。どうしようもねえな。まあ、どうせ王の座を受け継いでから何年も経っていない糞ガキだろう。剣なんてろくに握った事のない奴だと思うぜ。」

「何でそんな事が分かるんだ?」

矢内「何も考えられないお前に話をしても時間の無駄だ。お前は王様を殺す事だけ集中していろ。」

「本当に殺るつもりなのか?」

矢内「別に俺はこのまま逃げても良いけどお前は普通に戻っても死刑になるだけだからどっちでも良いがな。」

「そんな…。助けてくれ!」

 

本当に自分の事しか考えられない奴だな。まあ、精々利用させてもらうか。

 

矢内「作戦は考えてあるから安心しろ。お前は玉座に近づき王様を刺し殺すだけの簡単な仕事をしたらいい。」

「わ、分かった…。成功したら俺が王様か。全てが手に入る!」

矢内「おう、そうだぞ。次の王様はお前になるからしっかり殺れよ。」

「ああ!城まで案内する!」

 

何も考えずに生きてきたお前なんかが人の上に立てる訳ないだろマヌケ。俺は捕まえた兵隊をそそのかして城に向かう。

 

矢内「城の中の構造を教えてくれ。」

 

俺は捕まえた兵隊に城の構造を聞いて作戦を立てる。謁見の間の入り口は1つだけだから人払いをしたら暗殺は簡単だ。

 

「お疲れ様です!」

 

思った通り兵隊の服を着ているから門番も素通りできた。そのまま城に入る。

 

「なっ…。本当に素通りできた…。」

矢内「謁見の間に行くぞ。」

「あ、ああ…。(本当にこの男の言う通りに事が進んでいる…。いったい何者なんだ…。こいつの言う事を聞いていたら全て上手く行く。)」

矢内「あっ、その前に兵隊の階級や役職はどうなっている?」

「兵隊の隊長以外はみんな同じだ。」

矢内「隊長は何人いる?」

「えっと、今は3人だ。」

 

3人か、見つかったら厄介だな。

 

矢内「その隊長は今は何処にいる?」

「二人の隊長は軍を率いて東のバージニア国に進軍中だ。」

矢内「この国は西と東を相手に戦争をしているのか?」

「南にはこの土地に住んでいたオークの群れの残党がまだ多数いる。」

矢内「北は?」

「北には敵はいない。」

 

3つの部隊で3ヶ所に戦争を仕掛けているのか?この国はアホなのか?誰も止めないのかよ…。

 

矢内「一人残っている隊長が何処にいるか誰かに聞いてこい。」

「何で俺が…。」

矢内「良いから行け。兵隊の中に知り合いぐらい居るだろ。聞いてこい。」

「分かった…。」

 

今のうちに子供達が何処にいるか探ろう。分かりやすいのは牢屋だよな。地下に降りる階段は…。あれか。

 

「おい、隊長は留守の様だ。南に向かっているそうだ。」

矢内「よし、チャンスだ。謁見の間に行くぞ。」

「分かった。しかし、どうやって…。」

矢内「殺るときは目立たない様に剣じゃなくてナイフで刺せよ。」

「剣で斬りつけたら駄目なのか?」

矢内「剣なんか抜いたら警戒されて人を呼ばれるだろ。しっかりしろよ次期国王様。」

「ああ、すまない。」

 

謁見の間に近づくと兵隊二人に止められる。

 

「おい、一般兵が勝手に近づくな!」

矢内「はっ、隊長から王に伝言を預かっていまして…。」

「本当か?」

矢内「ファンタルジニアを攻める策を預かっております。至急、王に会わせていただきたい!」

「わ、分かった!あのファンタルジニアを落とせるのか!?あの前線に居る傭兵キサラギとウィル公子を倒せると言うのか!?」

 

ウィル公子?もしかして童帝の事か?

 

矢内「ああ、取って置きの策がある。」

「分かった!くれぐれも王に粗相の無いようにしろよ?」

矢内「急ぎなのですまない。」

 

上手く王の間にたどり着いた。奥の玉座に座って居るのが国王か。小太りでなんの苦労もしていない面をしたおっさんのようだ。俺達の世界で例えるとコネとゴマスリだけで役職に就いて責任は部下に押し付けて手柄は全て横取りするようなタイプだ。俺が1番嫌いなタイプだ。

 

「本当にここまでこれた。あれが国王か、初めて見る…。」

矢内「まだ、隣に兵隊が二人居るな。あれが邪魔だな…。」

 

俺達は国王に近づいていく。

 

「貴様ら!何を勝手にズカズカと入って来て!ワシが誰か分かっているのか!頭が高いぞ!」

 

いきなり恫喝してきたな。何様のつもりだ?もう少しまともな奴ならやり方を考えたがこれなら遠慮は要らないな。

 

矢内「ハッ!隊長から至急の伝言を預かって参りました!」

国王「おい、この二人を処刑にしろ。ワシの気分を害した罪だ。」

「えっ?」

矢内「陛下、ファンタルジニア攻略の策ですよ?我々を処刑にするとファンタルジニアは落とせませんがよろしいのですか?」

国王「何?国境にも近づく事すら出来なかったファンタルジニアをか?」

矢内「ええ、今はオークを倒しながら迂回してファンタルジニアを攻める手筈ですが、それではいたずらに兵を失うだけです。それで隊長は自分にファンタルジニアのウィル公子と傭兵のキサラギを討ち取るように命じられました。」

国王「貴様、ワシの策にケチをつけるつもりか!それにその二人に我が国がどれだけ被害が出ているか分かっているのか!もうよい!この二人を処刑しろ!」

 

国王の隣にいる兵隊達が俺達に近づいてくる。

 

矢内「自分に任せて頂けたらその二人、倒せますよ?良いのですか?」

国王「貴様、本当に倒せるのだろうな?」

矢内「ええ、あれだけの武人相手にに正攻法で戦うから負けるのです。それに兵を南に迂回している間に二人が攻めて来たらこの国は滅びますよ?策ならあります。ここで自分を処刑にするぐらいなら自分の策を試させて頂けませんか?失敗しても1兵隊を失うだけ。試して見る価値はあると思いますが?」

「陛下、ここはやらせて見てはいかがでしょうか?」

 

国王の近衛兵が後押しし出した。流れが来ている。

 

国王「仮にやらせて成功でもしてワシの威厳が損なわれたら我が神アテナ様がどう思われるか…。」

「アテナ様に1つでも勝利を納めて置かないと陛下自信の命が危うくなると思いますが…。」

国王「うむ…。そうだな…。よし、貴様等にファンタルジニア攻略を任せる!」

矢内「ハッ!ありがたき幸せ!」

国王「貴様、分かっておるな?成功したらワシの策で勝利を納めたと言う事だからな?そこは勘違いするなよ?」

矢内「ハッ!」

 

アテナ様とやらに命を奪われる前に今日死ぬ事になるのにな。バカな奴だ。

 

矢内「で、まずは教会から連れてきた戦争孤児を全て自分に貸していただきたいのですが、どちらに居ます?」

国王「あの新しい奴隷か?何に使うつもりだ。」

 

子供を奴隷扱いか。何処まで腐った奴だ。

 

矢内「それはお楽しみってやつですよ。そこのお二人さん、案内してくれますか?多分、牢屋に閉じ込めているのでしょう?」

「よく分かるな。良いだろう。私が案内しよう。」

矢内「もう一人の方もご一緒頂けますか?協力して頂きたい事がありますので。」

「?どういう事だ?まあ良いだろう。陛下、我々はこの者と一緒に牢屋に向かいます。」

国王「良いだろう。行け、ファンタルジニアを滅ぼすのだ!」

矢内「ハッ!それでは!言って参ります!」

 

俺は大袈裟に敬礼をして国王の近衛兵を連れて謁見の間を後にする。

 

国王「貴様はいつまでそこに居るつもりだ。」

「ええ、実は陛下に込み入ったお話がございまして…。」

 

その間、俺と共に来た兵隊が国王を殺す為に近づいていく。

 

 



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戦いの神アテナ 2

「牢屋に閉じ込めた教会の子供に用がある。出してやれ。」

「ハッ!」

 

近衛兵の一人が牢屋の中に入っていく。その間に俺はすかさずポロリのお面を被る。

 

「なんだそれは?」

矢内「子供達を安心させる為の小道具ですよ。」

「お前、なかなか面白い奴だな?何故我々二人共ついてくる様にした?」

矢内「まず、俺が子供達を連れて町の外に出ようとしたら怪しまれて門番に止められるからお二人に連れられて国外追放と言う形にしたいのですよ。」

「ほう?」

 

もう一人の近衛兵が俺の事を根掘り葉掘り聞こうとしてくる。奥に入った近衛兵が子供達を連れて出てきた。

 

「来い!こっちだ!」

「あああーん!神父さまー!」

 

近衛兵に恫喝されながら子供達が泣きながら出てきた。ここは俺が子供達を和ませてやるとするか。

 

矢内「良い子のみんな~ネズミ仮面だよー。さあ、お家に帰ろうねー。」

「あああーん!怖いよー!」

 

子供達が更に泣き出した…。

 

「何をやっているんだお前は。」

矢内「いや、子供達を和ませてやろうと思ってだな…。」

「あああーん!怖いよー!神父さまー!」

「お前ら!泣くな!」

「あああーん!」

 

泣き止まない…。どうしよう…。なにかないか…。物で釣るか。

 

矢内「さあ良い子のみんな~!あま~いあま~いスコールキャンディだよー。」

「あああーん!いやだー!かえりたいよー!」

 

何故だ…。何故泣き止まない…。

 

「おい、なんだそれは?」

矢内「飴ちゃんです。おやつです。」

「なんだこれ?食べ物なのか?」

矢内「え、ええ…。」

 

子供達じゃなく近衛兵達が興味をしめした…。

 

「なあ、1つ貰えるか?」

矢内「え、ええ…。良かったら…。」

 

近衛兵達がスコールキャンディを口の中に入れる。

 

「甘い!なんだこれ!?初めて食べるぞ!おい、お前達も貰え!こんなの絶対食べられないぞ!」

 

近衛兵達が子供達にスコールキャンディを勧める。

 

矢内「さあ、スコールキャンディだよー。」

「いやだー!あああーん!」

 

子供達が泣き止まない…。

 

「何をやっているんだ!貸せ!」

 

近衛兵にスコールキャンディをぶんどられた。

 

「よし、お前達。このキャンディを食べてみろ?ほら。」

 

近衛兵が子供達の口にキャンディを入れる。

 

「あまい…。」

「おいし~い!」

「やっと泣き止んだ…。行くぞ!町の外までだよな?」

矢内「え、ええ…。」

 

子供達が泣き止んだ…。

 

矢内「さあみんな~!お家に帰ろうね~!」

「あああーん!怖いよー!」

「だから、何をやっているんだ!また泣き出しただろ!もう喋るな!」

 

納得がいかない…。何故だ…。

 

城の外に出たが子供達は脅えたままだ…。楽しい歌でも歌って和ませるか。

 

矢内「月曜日はウンジャラケ~♪火曜日はハンジャラケ~♪」

 

完璧の振り付けで場を馴染ませる。

 

「静かにしろ!奇妙な動きをするな!」

 

近衛兵が俺に怒鳴り付ける。

 

「ハハハ!怒られてやんの!ハハハハハハ!」

 

おっ、やっと笑ったな。

 

矢内「水曜日はスイスイス~イ♪木曜日はもーりもり♪金曜日はキンキラキン♪」

「ハハハハハハ!変な歌ー!」

矢内「土曜日はキンキラキンのギンギラギンのキンキラキンのキン♪日曜日はランラランラランラン♪」

 

子供達が元気になった。

 

矢内「ウンジャラケのハンジャラケ♪スイスイスイのもーりもり♪キンキラキンのギンギラギン♪ランラランラランで1週間♪」

「なんだそのふざけた歌は…。」

矢内「これは1週間を楽しく過ごす為の歌です。」

「ハハハハハハ!なあネズミ仮面、こうか?月曜日はハンジャラケ♪」

矢内「おっ?なかなか様になっているぞ。」

「ハハハハハハ!」

「こら、マネをするな!バカが移るぞ!町の外に行くのだろ!バカな事をしていないで早く行くぞ!」

 

近衛兵に急かされて町の入り口にたどり着く。見張りの兵達が近衛兵達に敬礼をする。

 

「お疲れ様です!あのどちらへ?」

「ファンタルジニアだ。余計な詮索はするな、命が惜しかったらな?」

「ハッ!お気をつけて!」

 

町の外に出ることができた。少しファンタルジニアの方角に向いて歩いていく。

 

「なんで、町の外に行くの?教会に帰してくれるんじゃないの?」

矢内「ああ、それはだな…。」

「神父がこの国から脱出してファンタルジニアに亡命する事だよな?」

矢内「なっ!」

「えっ?どう言うこと?教会に帰れないの?」

 

全てばれていたのか!不味い!

 

矢内「お前達!このまま真っ直ぐに走って行け!」

「えっ?えっ?」

 

俺が大声を出した為か事態を把握出来ずに子供達は混乱している。

 

「お前達、この先に神父が待っているからこのまま真っ直ぐに歩いていくんだ。」

矢内「そうか、よしみんな真っ直ぐに歩いていこう!」

「子供達だけだ!お前、さりげなく逃げようとするな!」

矢内「バレたか…。」

 

どうする…。このままじゃ殺される…。

 

「おっちゃん達は一緒に来ないの?」

「俺達はこの男と話が有るからここまでだ。」

矢内「そうか、少しの間だが世話になった。さあみんな、神父さんの所に行こうか。」

「何をお前は行こうとしているんだよ!行かす訳ないだろ!」

矢内「雰囲気で行こうとしたけど駄目か?」

「駄目に決まっているだろうが!」

 

近衛兵達が剣を抜いた。やっぱり誤魔化して逃げる事は出来ないか…。

 

「兵隊のおっちゃん達が剣を抜いた…。」

矢内「大丈夫だ、お前達はこの先に神父さん達が待っているから行くんだ…。」

「ネズミ仮面は?」

矢内「俺も後から行くから気にせずに行け。」

「うん…。」

 

子供達はファンタルジニアの方角に走って行った。

 

「さてと、お前の処分だが…。」

矢内「…。」

 

町の方から町の入口にいた兵隊が慌てて走って来た。

 

「大変です!国王が暗殺されました!暗殺者はただいま逃走中です!直ぐにお戻り下さい!」

「分かった、後で向かう。将軍達は戻って来たのか?」

「はい、3人共戻って来ていますが…。」

「後で向かう…。行け!」

「ハッ!」

 

あの兵隊、上手く暗殺は出来たようだ。

 

「フフフフフ…。ハハハハハハ!お前、これが狙いだったのか!ハハハハハハ!」

矢内「…。」

「お、おい…。どうするんだ…。」

「あの無能の国王、いつかこうなるとは思っていたけどこんなにあっさり暗殺されるとはな!ハハハハハハ!殺るのは野心に目が眩んだバカな将軍だと思っていたけど、ハハハハハハ!」

矢内「…。」

 

どういう事だ…。国の主が殺されて何で笑っていられる?

 

「まあ、あのバカな将軍達が覇権を争ってこの国は終わりだな。」

「それはいいとして、この男はどう処分する?」

矢内「俺の処分より暗殺者を探した方が良いのじゃないか?」

「ああ、そんなのは最初からどうでもいいんだよ。俺達は神アテナの使いの騎士だからな。」

矢内「アテナ…。」

「気になるか?じゃあ、早速来てもらおうか。我らの神アテナ様の元へ。」

 

近衛兵の一人が空に手を掲げると空に向かって光の階段が現れた。

 

矢内「ゲートじゃ無いのか…。」

「この階段を登れ。」

 

何処まで続いている…。先が見えない…。

 

矢内「あの…。俺は高いところは苦手なのでお二人が先に行ってもらって後から行きます。」

「まだ逃げれると思っているのか?いい加減にしろ!本当に殺されたいのか!」

 

近衛兵が俺の喉元に剣を突き立てる。今までの様に口先ではどうにもならないか…。こんなときにサチか畑中が居たら上手くいったかもしれないが…。俺は仕方なく光の階段を登って行く。階段に乗るとエスカレーターの様に上へ上へと登って行く。螺旋状に階段が回っている。目が回る、気持ち悪い…。

 

「着いたぞ。あれがアテナ様の光の宮殿だ。」

矢内「オエー!オエー!」

 

さっき食べたハンバーグが全て吐き出された。

 

「うわ…。汚ねえ、ゲロを吐くな!」

矢内「オエー!オエー!」

 

俺が吐いたゲロは遥か彼方の地上に落ちていった。それにしてもこの光の宮殿、ファンタージェンの象牙の塔みたいだな。近衛兵、神の騎士に言われるままに中に入る。中から聞き慣れた声が聞こえてくる。

 

クロノス「ちょっと!私、神様だよ!帰してよ!」

「黙れ!静かにしろ!」

クロノス「神様を怒らせたらどうなるか思い知らせてあげるよ!クロノス タイムパワー メークアープ!」

 

セーラームーンのお面を付けて何をやっているんだバ神様が!

 

「あれ、お前の仲間だよな…。」

矢内「ああ、なんかすまんな…。」

 

俺はラッカーシンナーの入った一斗缶を取り出してクロノスに近づく。

 

クロノス「美少女ゴッド、セーラークロノスだよ。時に代わってお仕置きよ!」

矢内「うるせえぞバ神様が!ティロ フィナーレー!!」

 

頭にきたので俺はクロノスにラッカーシンナーを思いっきりぶっかけた!

 

クロノス「ああああ!痛いよ!熱いよ!痛いよー!」

矢内「何を捕まっているんだ!足を引っ張っているんじゃねえよ!糞が!」

???「何事じゃ、騒々しい。」

 

奥の部屋から何者かの声が聞こえてくる。周りの奴等が膝をついて頭を下げだした。

 

「アテナ様!例の男を連れて来ました!」

アテナ「ほう?」

 

アテナが奥の部屋から出てきて玉座に座る。なんだあの服装は!ムッチリした体つきに鎧が張り裂けそうになっている。あんなエロい格好、クイーンズブレイドでしか見ないぞ!リアルで見るのは初めてだ!

 

アテナ「そこの男、名を名乗れ。」

矢内「ネズミ仮面だよ~。」

 

アテナが槍を俺の喉元に突き立てる!

 

アテナ「もう一度だけ言う。面を取って名を名乗れ。次ふざけると、殺す。」

 

正直に名乗るしかないか。俺はお面を取って名乗りをあげる。

 

矢内「仕方ないな。ああ、俺か?俺はみんなが大好き賢者様だ。」

 

賢者様ポーズもバッチリ決めて名乗りをあげる。

 

「あの男、この状況でよくそんなふざけた事を…。」

アテナ「ほう?賢者と申すか。なかなか凛々しきポーズじゃな。気に入ったぞ。」

クロノス「えー…。絶対にダサいよーあれ…。みんなもそう思うよね?」

「あ、ああ…。」

アテナ「お前達!口を閉じよ!妾は賢者殿と話をしている!」

「ハッ!申し訳ございません!」

 

どうやら話せば分かる女だ。それにしてもエロいな。

 

アテナ「所で賢者殿、そなたは妾が支配している国の王を暗殺した様じゃな?まずは理由を聞こうか?」

矢内「あの国は何も罪の無い人を殺そうとしていた。王を暗殺したのは成り行きだ。」

アテナ「ほう?成り行きで暗殺を成功させるとは、たいした者じゃ。どうじゃ?そなた、妾の配下にならぬか?」

矢内「…。」

「アテナ様!正気ですか!?」

アテナ「黙れ!」

矢内「イタズラに他国に戦争を仕掛ける奴の配下になどなる気はない。」

「き、貴様!アテナ様に対して何て事を!」

アテナ「黙れ!妾は賢者殿と話をしている!次に騒ぎ立てた者は妾の槍で心臓を貫くぞ!」

 

エロい体つきをして力で他人に言うことを聞かせるタイプか。

 

アテナ「賢者殿よ、戦争を仕掛けているのは世界中の神々じゃ。神々が人間を操り全てを我が物とするためにな。」

矢内「自分達の都合で関係無い者まで巻き込むのか。」

アテナ「そうじゃ、戦うなら神々同士で戦えば良いものを各地の神々は一対一では妾に勝てぬと見て人間を巻き込むのじゃ。」

矢内「で、お前も人間を操って戦争を仕掛けているのか?」

アテナ「妾は合えてあの滅びても良い国を選んで戦っておる。国が負けてチャンスと見て迫ってきた神々を返り討ちにするためにな。それをそなたが国王を暗殺したお陰でわざと負ける手間が省けた。感謝するぞ。」

 

この女、下界に住む一般市民の事など考えていないのか。

 

矢内「戦争をして辛い思いをするのは力の無い一般市民だ。」

アテナ「妾は戦争を無くす為にはまずは神々を排除する事だと思っておる。まずはファンタルジニア王国の神アフロディアとバージニア国の軍神マルスの排除する事じゃ。」

 

ファンタルジニアの神はゼクスじゃないのか?

 

アテナ「妾が神々を倒すまでは人間には辛い思いをさせて仕舞うがの。」

矢内「ファンタルジニア王国の神にはどうやって会えばいい?」

アテナ「賢者殿、どういうつもりじゃ?」

矢内「東と西で囲まれたら攻めるに攻めれないだろう。」

アテナ「賢者殿、妾の力になると言うことじゃな?」

矢内「どのみちファンタルジニアに行くつもりだったからな。俺が行っている間に東の守りに徹したらいい。戦うかどうかは分からんぞ。」

アテナ「どういう事じゃ?」

矢内「まだファンタルジニアの内部の事が分からんからな。平和な国なら戦う事は無いだろ。」

アテナ「そうか、分かった。ゼクスを呼べ!」

「ハッ!」

 

騎士の一人が横にある部屋に入って行った。ゼクス!?まさか…。

 

ゼクス「お呼びでしょうかアテナ様?」

 

ゼクス…。まだ少し幼さが残っている。そうか、15年前から俺の事を知っていたのか。

 

アテナ「ゼクス、そこの人間と共にファンタルジニアに行け。賢者殿、ファンタルジニアの内部についてはそこのゼクスに聞けば良い。」

矢内「ゼクス、よろしく頼む。」

ゼクス「…。ファンタルジニアに向かいながら内部についてお話しましょう。」

矢内「では、行っている。」

クロノス「ちょっと賢者、置いて行かないで!」

 

俺達はまた、あの目が回る光の階段を降りて行った。この15年前の世界、行くのは必然だったって事か。俺がしくじったら歴史が変わってしまう。ファンタルジニアの未来の為にやるしかない。仲間が居ないこの世界で…。

 

 

第18話

戦いの神アテナ

END



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いざ、ファンタルジニア王国へ 1

俺達は元の場所に戻ってきた。あの高速で動く光の階段、なんとかならんのか?また酔った…。気持ち悪い。

 

クロノス「ヤー、何とか戻って来れたよ。」

ゼクス「それでは、ファンタルジニアに向かいましょう。」

矢内「ちょっと、待って…。オェー!オェー!」

 

俺は余りの気持ち悪さに盛大に胃液を吐き出した。

 

クロノス「ヤー、賢者、大丈夫?」

矢内「オェー!オェー!」

ゼクス「!!前方から誰か来ます!」

 

前から誰かが近づいて来る。

 

「そなた達!そこで何をしておる!」

クロノス「ま、不味いよ…。」

ゼクス「まさか…。いきなりウィル公子に出くわすなんて…。」

 

俺はすかさずお面を被り素顔を隠す。

 

矢内「俺の話に合わせてくれ。」

 

ゼクスが無言で頷く。

 

「ウィル!敵か!?」

 

もう一人近づいて来た!キサラギ戦士長か!

 

矢内「待っておくんなせえ!私達は大道芸のヤナウィス一座と申します。」

キサラギ「大道芸?何だそれは?」

ゼクス「簡単に言いますと町の人達に我々の芸を見せて投げ銭で生計を立てている芸人でございます。(よく咄嗟にそんな嘘が思い付くな、この人…。)」

ウィル「ほう?大道芸、しかし、今は戦時中で民は食べる物もままならない状態だ。」

矢内「そうでしたか…。」

キサラギ「大道芸?どうも怪しいな?」

ウィル「キサラギ、余り疑うのは良くないぞ。」

キサラギ「しかし、コイツらは東のバッド王国の方から来ている。スパイの可能性もある。お前達、本当は何者だ?」

クロノス「ヤー、神様だ…。」

矢内「オラッ!」

 

俺は本当の事を言おうとしたバ神様に思いっきりボディーブローを喰らわせる!

 

矢内「何者って、私達はしがない大道芸人ですよ。」

キサラギ「さっきそこの女が何か言おうとしていたよな?」

 

完全に疑われている。後ろから誰かが走って近づいて来る。

 

「居た!おい助けてくれ!隊長達に命を狙われてやっとの思いで逃げて来たんだ!」

 

コイツ、最悪のタイミングで来やがった!

 

キサラギ「コイツはバッド王国の兵隊!どういう事だ!少し前に逃げて来た神父も…。もしかしてスパイか!」

「まさか、ウィル公子にキサラギ!お前、どういう事だよ!ファンタルジニアのスパイだったのか!」

ウィル「流石に見過ごせないな…。洗いざらい話して貰おうか?」

 

ウィル公子とキサラギ戦士長が俺達に剣を突きつける!

 

矢内「分かった、正直に話をする!」

 

俺はゼクスとクロノスにアイコンタクトを取る。

 

矢内「俺とそこの女は未来から来た…。」

キサラギ「未来だと?そんな嘘が通ると思っているのか!まずはそのふざけた仮面を外せ!」

矢内「訳あってそれは出来ない。ちなみにそこの小僧がお前達の国の本当の神様ゼクスだ。」

ウィル「我が国の神は美のアフロディア様だ。」

矢内「そのアフロディアが勝手にファンタルジニアを支配している為に今、戦争が起きている。」

ゼクス「ちょっと…。」

矢内「俺が話をします、ゼクス様。」

「えっ?えっ?あの…。俺は?助けてくれるんだよな?」

クロノス「ちょっと黙っていなよ。」

 

周りが困惑している。

 

キサラギ「話が見えてこない…。」

矢内「そうだな…。何処か人目につかない所に案内してくれないか?」

ウィル「そ、そうだな…。先程、バッド王国から亡命してきた神父と子供達を匿っている小屋があるからそこで良いか?」

キサラギ「おい、バッド王国の亡命者は全て城に連れて行って処分する決まりなのに良いのか?」

ウィル「俺には罪の無い人を殺す事は出来ない。」

矢内「そうか。子供達を助けてくれて感謝する…。」

 

俺はウィル公子に頭を下げる。

 

「おい!ガキ共の事など良いんだよ!俺はお前に言われた通りに国王を暗殺までしたんだぞ!俺はこれからどうしたら良いんだ!答えろよ!」

ウィル「何!?バッド王国の国王を殺した!?」

矢内「馬鹿かお前は。何他国に情報をペラペラ喋っているんだ。まあ良いか。」

キサラギ「では、今バッド王国は…。」

矢内「内乱が起きている。大方、3人の隊長が覇権を争って先に暗殺者を見つけようとしているのだろう。ここにもバッド王国の兵隊が来るかも知れないから直ぐに移動しよう。」

ウィル「わ、分かった。」

 

俺達は神父さん達が居る小屋へ向かう。

 

ウィル「あそこだ。ん?不味い…。バッド王国の兵隊達が見える。小屋に向かっているぞ。」

 

小屋に向かっている兵隊の中に一際偉そうにしている奴が居る。あれが隊長だな。兵隊達が小屋に入って行く。

 

「あっ!コイツらは!」

「ひぃ!兵隊だ…。」

「みんな、私の後ろに隠れて居なさい。」

 

不味い!神父さん達が見つかった!

 

矢内「童帝…。じゃなかったウィル公子と、えっとキサラギだったか?」

キサラギ「何だ?」

矢内「俺達が注意を惹くから周りこんであいつ等を倒してくれ。」

ウィル「何をする気だ。」

矢内「俺がコイツを引き渡す振りをする。」

「おい!俺を隊長に売るのか!」

矢内「良いからついて来い。」

キサラギ「いや、必要ない。俺一人であいつ等など充分だ。」

矢内「子供達の安全が…。」

キサラギ「関係無い。」

 

俺の制止を聞かずにキサラギが兵隊達に近づいて行く。俺が知っているキサラギ戦士長、誰よりも下の者の為に動く男だったのに…。

 

クロノス「ヤー、行っちゃったよ。どうするの?」

矢内「子供達の安全が先だ。いざと成ったらお前も手伝って貰うぞ。」

「おい!まだ俺に何かさせるのか!」

矢内「死にはしない。安心しろ。」

ウィル「何故そこまで子供達に気をかけるんだ?お前の身内では無いのであろう?」

矢内「子供達は国の宝だ。子供を大事にしない国などに未来は無い。ウィル公子、奴等の後ろに周りこんでくれ。」

ウィル「子供は国の宝…。分かった。俺が奴等を逃がさない様にするんだな?」

矢内「あのキサラギという男が奴等を討ち逃した時は頼む。」

クロノス「私はどうしたらいい?」

矢内「役立たずは何もするな。おい、行くぞ!」

「おい…。」

矢内「あの隊長に引き渡す振りをするだけだ、あの男が全て兵隊を倒したらその必要は無くなるがな。」

 

俺達も小屋に近づいて行く。

 

「隊長!今日、処刑をするはずだった神父が居ました!城に連れて行ったガキ共も居ます!」

隊長「よし、全て殺せ!俺の国から逃げ出す奴はこうなるって見せしめにするんだ!」

「ハッ!」

 

兵隊達が剣を抜き神父さん達に近づいて行く。

 

キサラギ「バッド王国の兵隊だな?ファンタルジニア王国の領土に入って来た敵国の兵は全て倒す命令が降っている。悪いが俺の生活費の為に死んでもらう!」

隊長「き、貴様は!」

キサラギ「俺の名は傭兵キサラギ。死んで恨むならファンタルジニアより先に俺を雇わなかった国を恨むんだな。」

隊長「き、キサラギ?お前が!しかし!一人でこの数を相手に出来るわけが無い!全員でかかれ!」

 

周りの兵隊達が一斉にキサラギに襲いかかる。

 

キサラギ「だいたい20人か…。俺と戦うなら桁が2つ足りなかったな。」

 

キサラギが剣を抜き電光石火の剣捌きで兵隊を倒していく。

 

隊長「なっ!あれだけの兵が一瞬で!?」

キサラギ「大将らしく覚悟を決めろ。」

 

キサラギが隊長の首に剣を突きつける。

 

「そこまでだキサラギ!剣を捨てろ!さもないとガキ共を殺すぞ!」

 

一人倒しきれなかった兵隊が子供を人質に取り出した!

 

キサラギ「…。」

「おい!剣を捨てろ!」

キサラギ「下らんな。」

 

キサラギは剣を下ろそうとしない。このままでは子供達が危ない!

 

矢内「行くぞ。」

「おい、大丈夫だろうな?」

 

俺達は子供達を助ける為に動き出す。

 

矢内「子供達を放せ!」

隊長「何だテメエ!」

矢内「お前達が欲しいのは子供の命じゃなくて暗殺者の首だろう、コイツがお前達の国王を殺した暗殺者だ。」

 

俺はキサラギとウィル公子にアイコンタクトを取る。

 

「おい!」

矢内「黙っていろ。どうだ、コイツを引き渡すから国に帰れ。」

隊長「そいつが暗殺者…。貴様、何故それを知っている?」

矢内「そんな事はどうでも良いだろ。お前はコイツを連れて帰って王に成るための大義名分を得る方が大事じゃないのか?」

隊長「そうだな…。確かに…。」

 

ウィル公子が後ろから油断している隊長に近づいて行く。

 

「た、隊長!後ろ!」

キサラギ「よし。今だ!」

 

キサラギが子供達を人質に取っている兵隊を斬り倒した!

 

隊長「な!」

ウィル「油断したな。ここで倒させてもらう。」

 

ウィル公子が隊長を斬り倒した。これで敵は全てだな。

 

「隊長が率いる1小隊が一瞬で…。」

矢内「良かったな。あの隊長に殺されなくて。」

「お前!俺を囮にしやがって!」

矢内「お前、マジで言葉に気を付けろよ?何時でもあの二人に斬り殺されてもおかしくないんだぞ。」

「えっ?」

 

やっと自分の立場が分かったか。

 

ウィル「貴公、えっと…。何と呼べば…。」

???「フフフ、時をかける魔導師って言った所かしら?」

 

女の声だ…。何処にいる…。

 

???「フフフ、こっちよ?」

 

何もない所にドアがある。ドアが開くとフードつきのローブに身を纏った女が出てきた。これはまさか…。

 

矢内「サ、サチか?。」

???「あら?誰かと勘違いしている様だけど?違うわよ。」

ゼクス「み、三神さん?どうして?」

三神「メスゴリラ…。じゃなかった、アテナから貴方達の監視を言われてね、面倒だけど来たのよ。」

キサラギ「怪しい女め、名を名乗れ!」

 

キサラギが剣を構えて警戒する。

 

三神「フフフ、大丈夫よ。貴方達の味方だから。それより、ここから移動しましょう。もうじき敵の部隊が来るわよ?」

ウィル「何故その様な事が分かる?」

三神「私は近い未来が見えるのよ。」

矢内「信用しよう、みんな直ぐにここから移動する!」

 

俺は中の神父さん達に声をかけて行く。

 

キサラギ「おい、コイツらも連れて行くのか。」

矢内「ウィル公子、ファンタルジニア国内の安全な場所に案内してくれ。」

ウィル「分かった、孤児院に行く。しかし、あそこもギリギリの生活をしているから…。更に子供が四人も増えるとなると…。はたして食べていけるかどうか…。」

矢内「食うものは心配しないでくれ。さあみんな!行くぞ。」

キサラギ「おい、足手纏いを連れて…」

矢内「剣が使えるだけの男が図に乗るな。お前ごとき、何時でも倒せるんだぞ。」

「おい、止めろよ!挑発するな!」

キサラギ「お前、死にたいようだな?」

ウィル「キサラギ、止めろ!」

キサラギ「いや、俺はこの男を信用していない。それに虚仮にされて黙って居られるか。」

矢内「ウィル公子、子供達と先に行ってくれ。ゼクス、クロノス、お前達も一緒に行け。」

クロノス「ヤー、分かったよ。」

ゼクス「あの…。ここで争うのは…。」

矢内「いや、一瞬で方がつく。心配するな、これも必要事項だ。行け。」

ゼクス「分かりました…。」

 

ウィル公子が子供達を連れてファンタルジニアに向かって行く。

 

矢内「お前は行かないのか?」

三神「あら、孤児院に行くまでの道案内がいるのじゃないかしら?」

キサラギ「貴様、武器を取れ。」

矢内「本当に剣の腕しかないつまらない男だな。俺の敵ではない。」

キサラギ「貴様~!どこまで俺を馬鹿にしたら気がすむ…」

矢内「そら、これで勝負ありだ。」

 

俺はワンカップを取り出しキサラギの顔にぶっかけた。

 

キサラギ「いきなり何を…。これ…。このにおい…。」

 

キサラギは豪快に倒れた。アルコールが弱いのは知っていたからな。

 

「本当にキサラギを倒したのか?」

矢内「酔っ払って潰れて寝ただけだ。」

「よし、じゃあ止めを!」

矢内「馬鹿な事は止めろ。それよりこれからファンタルジニアに行くからこれに着替えろ。」

 

俺は異次元袋から代えの作業着を渡す。

 

三神「フフフ、面白い男ね。さて、そろそろ私達も移動しないと不味いわね。」

矢内「この男を運びながらだからな、急ごう。」

三神「その心配はないわ。今回は特別に私の黒魔術を使いましょう。」

 

黒魔術…。この女…。やはり…。

 

矢内「お前、名前は?」

三神「三神 ネモフィラ、黒魔術を使う私に取ってネモフィラなんて名前は滑稽でしょう?だから三神で良いわよ。しばらく貴方に協力するわ。」

矢内「そうか。よろしく頼む。」

三神「では、行きましょうか。黒魔術、『ドワープ』はぁぁぁぁ!」

 

三神が両手を広げて魔力を込めると大きなドアが出てきた。この女、やはりサチの一族か。

 

三神「では行くわよ。」

矢内「それ、一人用じゃないのか?」

三神「強めに魔力を込めたから4、5人位は大丈夫よ。」

 

三神が召喚したドアを開ける。

 

三神「さあドアをくぐって。」

矢内「ああ。」

「えっ?えっ?」

矢内「早くしろ!」

 

俺達は眠っているキサラギをかかえてドアをくぐって行く。

 

三神「フフフ、本当に面白い男。見定めさせて貰うわ。未来から来た賢者様。」



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いざ、ファンタルジニア王国へ 2

ドアをくぐって孤児院の前にたどり着いた。俺はキサラギを叩き起こす。

 

矢内「着いたぞ。起きろ。」

キサラギ「ぐっ…。頭が痛い…。」

矢内「気がついたか?お前達は先に入っていてくれ。俺はこの男と話がある。」

キサラギ「お、俺は…。負けたのか…。あのような卑怯な手で…。負けたのに何故止めを刺さなかった…。」

矢内「本当に戦う事しか頭に無いんだな…。」

キサラギ「今までそう言う生き方しかしてきていなかった。これからもだが…。」

矢内「それだけの剣の腕があるのにいつまでも流れの傭兵のままでいるのか?例えばファンタルジニアに仕えるとか。」

キサラギ「あの国に仕えるだと?あの国王に仕える気にはならんな。ウィルが王にでもなったら考えるが…。」

矢内「ウィル公子か…。」

キサラギ「俺が傭兵で色々な国に仕えたがアイツだけだな。弱者の為に考えている奴は…。アイツは王族だのに疎まれてしたっぱの仕事をさせられているから王になるのは無理だがな…。」

矢内「じゃあ…。その他の王族を排除してウィル公子を国の代表にするか。」

キサラギ「何?お前、何をするつもりだ?」

矢内「クーデターだ。俺とお前とウィル公子でだ。」

キサラギ「は?」

矢内「隣のバッド王国が内乱になっている今が好機だ。」

キサラギ「俺がお前に協力する理由が何処にある。」

矢内「ウィル公子が治める国、見たくないか?お前、傭兵を止めてその国に仕えたくないか?」

キサラギ「…。」

 

俺達が話し込んでいると孤児院のドアが開いて子供達が出てきた。エリカも一緒にいる。

 

エリカ「ねずみかめん、なにしてるの?みんななかにいるよ?」

矢内「あ、ああ。」

 

子供達はキサラギを取り囲むように集まって行く。

 

「お兄ちゃん、僕達を助けてくれてありがとう!」

「兵隊をバッサバッサ斬り倒してスゲエカッコ良かったぜ!」

矢内「そうだお前達、晩ご飯が出来るまでこの兄ちゃんに剣術を教えてもらえ。」

「えっ?晩ご飯?」

矢内「今から作ってやるからな。」

「えっ?ねずみ仮面、ご飯なんか作れるのか?」

エリカ「あたし、おひるにごはんつくってもらった!すごくおいしかった!」

矢内「腹一杯食わせてやるからそれまで剣術を教えてもらってめいいっぱい腹を空かせておくんだぞ?」

キサラギ「お、おい!」

矢内「子供達の面倒を見てやってくれ。」

 

俺は孤児院の中に入っていく。

 

「お兄ちゃん、剣術を教えてくれよ!」

エリカ「あたしもやる!」

キサラギ「あ、あいつ、何を考えているんだ。晩飯だと?大人でさえ食うものに困っているのに…。」

「なあ、剣術教えてよー!」

エリカ「あたしもおしえてー!」

「お兄ちゃん見たいに強くなりたいんだよ!教えてくれよー!」

キサラギ「あー!分かった分かった!教えてやる!教えてやるから引っ張るな!」

 

孤児院に入り連れて来た神父さんに声をかける。

 

矢内「神父さん、危ない目に会わせてしまってすまないな。」

「いえ、貴方のお陰で子供達が救われました。」

ウィル「ここのシスターには話はしている。所でキサラギは来ていないのか?」

矢内「ああ、飯の時間まで子供達の相手をしている。」

 

奥からシスターが出てきた。

 

「あの…いきなり来て食事だなんて…。私達にはその日に食べるパンですら無いのです!それを!」

矢内「ここの孤児院の責任者の人か。」

「ええ、貴方達兵隊が戦争なんかして人が亡くなり戦争孤児が増えるのです。子供達は引き取りますが帰って下さい。」

矢内「俺はこの国の戦争を終わらせる為にやって来た。もう戦争孤児は増やさない、約束する。食事の件は…そうだな。台所を貸して貰いたい。材料はみんなの分を用意してある。」

「えっ?は、はい。そ、それでしたら…。こちらです。」

 

シスターの案内で台所へ向かう。

 

矢内「うーん、今日は何を作ろうかな。」

「あの…火を焚く薪を取って来ますので…。」

矢内「いや、カセットコンロがあるから必要ない。」

 

パーティの時に買ったコストコのディナーロールがえっと、3袋も残っている…。

 

矢内「シスター、このパン、めちゃくちゃ余っているから明日以降みんなで食べてくれ。」

「えっ?こんなに沢山…。良いのですか?」

矢内「俺のせいで子供が更に増えたからな。2日は食べていけるだろう。」

「あ、ありがとうございます!私、貴方に失礼な事を言ったのに…。あの…何か手伝える事は…。」

矢内「そうだな。このジャガイモをこんな感じで棒状になるように切っていってくれ。」

 

子供が喜ぶフライドポテトにしよう。お鍋に油を注いでカセットコンロに火をつける。その間にもうひとつカセットコンロを出してお鍋に水を沸かしてスープを作る。野菜が入ったミネストローネだ。キャベツの千切りとキュウリのスライスを和えたサラダにメインディッシュは…。

 

「あの…切れました。凄い数ですね…。これを次はどうしたら…。」

矢内「ジャガイモは油で揚げるから、この切った野菜を人数分に盛り付けてくれ。」

「は、はい!」

 

チキンナゲットも揚げるか。コストコで買い置きしていたクロワッサンに少し炙ったチーズとベーコン、サニーレタスを挟んだサンドイッチだ。なんとか形になったな。

 

矢内「シスター、そろそろ子供達を呼んで来てくれ。」

「はい、凄いごちそう…。これ…子供達の分ですか?」

矢内「みんなの分だ。出来立てが1番美味いからな。」

「はい、直ぐに呼んで来ます!」

 

シスターは大喜びで子供達を呼びに行った。

 

三神「あら?良いにおいね。」

クロノス「ヤー、晩ごはんも美味しそうだね。」

ウィル「これは、そなたが作ったのか?凄いごちそうだ…。」

 

食べ物の匂いに釣られて大人達が入って来る。

 

矢内「ああ、人数分作ってあるからテーブルに並べてくれ。」

ウィル「わ、分かった。」

クロノス「ヤー。」

三神「見たことも無い物ばかりだわ…。」

矢内「あっ、そうだ三神。」

三神「何かしら?」

矢内「ちゃんと人数分を分けているからつまみ食いしたら張り倒すからな?」

 

この女、出で立ちや格好がサチに似ているからな。念押ししておこう。

 

三神「人聞きが悪いわね。そこのバ神様と一緒にしないで貰えるかしら。」

クロノス「ヤー、つまみ食いなんてしないよ。」

 

フライドポテトも揚がったな。味見をしてみよう。

 

矢内「よし、見よう見まねだがうまくいったな。これは大皿にいれて塩をまぶして完成だ。これも持っていってくれ。」

三神「分かったわ。(山盛りね。一本ぐらいつまみ食いしてもばれないわね。)」

クロノス「ヤー、フライドポテトだ。」

 

次々と完成した料理を運ばせていく。メインのサンドイッチも完成だ。サンドイッチを置いた皿にチキンナゲットをそえて…。

 

矢内「よし、これで全部完成だ。運んでくれ。」

ウィル「凄いな。」

矢内「王族だからもっと良いもの食っているんじゃないのか?」

ウィル「…。」

矢内「冗談だ、悪かった。気にしないでくれ。」

 

台所を出てリビングに入る。神父さんが俺達に話しかけてきた。

 

「ウィル公子…。バッド王国に住む私達を匿っていただきありがとうございます…。子供達によろしくお伝え下さい。」

ウィル「どういう事だ?」

「私はそこの方とバッド王国に戻ります。私達が居なければ少しでも多く子供達に食べ物が行き渡ります。」

ウィル「子供達の為に命を投げ出すと言うのか…。」

「俺も無い頭を振り絞って考えぬいたんだ。お前、分かってくれるよな?」

 

バッド王国の兵隊だった男が俺に言い寄って来る。

 

矢内「神父さん、子供達にはあんたが必要だ。この孤児院に居てくれ。食うものは心配するな。」

ウィル「俺も約束する。子供達にひもじい思いはさせない。」

「神父さん、良かったな。あんたは死ななくても大丈夫そうだ。俺一人でバッド王国に帰るよ。」

三神「フフ、死んでも罪は軽くはならないわよ、おバカさん?」

「人の決意をバカにするな。」

三神「良いかしら?貴方がここに匿っているからバッド王国は隊長同士で争っているのよ?ファンタルジニアにとっても良いことなの。だから、今貴方がする事は死に物狂いで生き抜く事よ。」

「じゃあ、俺は…。」

矢内「死ぬことなんていつでも出来るから飯でも食いながらゆっくり考えたらいい。それよりゼクスは何処に行った?」

クロノス「シスターと外に行ったよ。」

 

俺達が話し込んでいるとゼクスが孤児院に慌てて戻ってきた。

 

ゼクス「大変です!シスターがファンタルジニアの兵士達に!」

ウィル「どういう事だ、何故民を守るべきファンタルジニアの兵士が…。」

矢内「そんなのは後だ、行くぞ。」

ゼクス「はい、こっちです!」

「お、俺も…。」

矢内「お前は中でみんなを守ってくれ。頼む。」

ウィル「良いのか?その男…。」

矢内「構わん、任せたからな。」

「あ、ああ。」

 

 

 

小屋を出るとシスターがファンタルジニアの兵士2人に絡まれている。

 

「ねえちゃん、美人だな?ちょっと相手をしてくれねえか?」

「や、止めて下さい。」

「止めて下さいだぁ?」

「離して!」

 

このままじゃシスターがファンタルジニアの兵士に襲われる!

 

ウィル「民を守るべき兵士がなんて事を…。」

矢内「急いで止めるぞ!」

 

俺達は急いでシスターの元へ急ぐ!が、いち早くキサラギが戻って来て兵士達に剣を構える!

 

キサラギ「止めろ!!」

「なんだテメエ!身分の低い傭兵ごときが指図するな!」

キサラギ「その人を放して退け、今退くと命だけは助けてやる。」

「お前、俺達が誰か分かっていないようだな?」

キサラギ「忠告は聞く気は無い様だな。仕方ない…。」

 

キサラギが兵士達を斬りにかかるがウィルが止めに入る。

 

ウィル「キサラギ!手を出すな、王の息子達だ!俺のいとこにあたる。」

キサラギ「何、王族か?」

「やっと分かったようだな、立場の違いによう!ハハハ!分かったら俺達のお楽しみの邪魔はするなよ?」

ウィル「待て!シスターを解放しろ。」

「ああ?誰かと思えばウィルじゃねえか?俺達に逆らったらどうなるか分かっていないようだな?親父に言い付けて今度こそ死刑にしてやろうか?」

ウィル「俺を死刑にしたかったらしろ、シスターは解放するんだ。」

 

ウィル達と兵士達が膠着状態の所に子供達が棒を持って飛び出している。

 

「お姉ちゃんを放せ!」

「放せ!」

エリカ「はなせ!」

 

子供達が棒を振り回して兵士達を叩いている!

 

「このガキ共!」

 

兵士達が剣を抜いて子供達に斬りかかる!

 

キサラギ「させん!」

 

キサラギが兵士達の剣を受け止める!

 

矢内「ウィル!シスターと子供達を先に逃がせ!」

ウィル「わ、分かった!」

 

ウィルが兵士達の隙をついてシスターを助け出した!

 

「お姉ちゃん!」

「みんな、ごめんね…。」

矢内「今のうちだ!ウィル!シスター達を連れて戻れ!」

ウィル「あ、ああ。」

 

ウィルがシスター達を連れて孤児院に逃げ出した!

 

「女が逃げた!貴様等、せっかくのお楽しみを~!」

キサラギ「何がお楽しみだ、それが国を守る兵士のする事か!ましては王族がする事か!!」

矢内「まあ、待てよキサラギ。」

キサラギ「止めるな。」

矢内「お楽しみを邪魔して悪かったな。俺達がもっと楽しい所へ案内してやるよ。ついてきな。」

「ああ?なんだテメエ!おかしな仮面をつけやがって!何者だ!」

矢内「ああ、俺か?じゃなかった。俺が何者だなんてどうでも良いだろ?ついてこいよ。良いものを見せてやるから。」

キサラギ「どういうつもりだ?」

矢内「さっきの小屋に連れて行く。」

 

俺はキサラギに耳打ちした。

 

「良いものってなんだ?」

矢内「行ってからのお楽しみだ。一時の快楽より良いものだ。お前達の株の上がる良いものだ。」

「なんだ?」

 

俺達は兵士達を先程バッド王国の隊長達を殺した小屋に連れて行く。

 

矢内「着いたぞ、この小屋だ。」

「ああ?こんな町の外れの小屋に何が有るって…。」

 

ファンタルジニアの兵士達が小屋のドアを開ける。

 

「な、これは!」

矢内「バッド王国の1小隊とその隊長だ。」

「この数を殺ったのか?」

矢内「ああ、そうだ。」

「確かに敵国の隊長の首を持っていけば俺達の株も上がる…。」

矢内「そうじゃねえだろ?隊長の首1つで良いのか?」

「どういう事だ?」

矢内「だからこの兵隊の服に着替えてバッド王国に進入して後二人の隊長もたおすんだよ。」

「そうか!上手く行けばバッド王国は俺達の物に出来る!」

キサラギ「…。(この男は何をするつもりだ?)」

 

ファンタルジニアの兵士達はバッド王国の兵士の服に着替える。その間に俺はキサラギに小声で話しかける。

 

矢内「ここなら死体を隠すのに問題ないだろ?俺が合図をしたら殺ってくれ。」

キサラギ「分かった。」

 

着替え終わった兵士達が俺に話しかけてくる。

 

「これでバッド王国に潜り込めるって訳か。あの女を逃した事は不問にしてやるよ。ウィルにもそう言っとけ。」

矢内「1つ教えてくれ。」

「ああ?お前、さっきから口の聞き方が成って無いな。」

矢内「ウィル公子は何故王族なのに国境の警備なんかやらされているんだ?」

「神の意向だ。我が神アフロディア様は醜いものが嫌いでな。妹のヴィーナス様の為にも顔の美しいものにしか城には近づけないんだよ。」

矢内「そうか、あの顔ではしょうがないか。(ヴィーナス…。こんなに早くに見つけれたか。)」

「そうだな。俺も男前に生まれて来て良かったよ。」

矢内「服は預かっておく。貸してくれ。」

 

俺はファンタルジニアの兵士の服を2着受け取った。

 

「確かに良いとこに連れて来てもらったな。」

 

俺はキサラギに目を向けて合図をする。

 

矢内「良い所に行くのはこれからさ。二名様、地獄の底までご案内だ!頼む。」

キサラギ「そう言うことか。」

 

キサラギが鋭い突きのラッシュで兵士達を刺し殺した!

 

「がっ…。貴様!こんな事をして…。ただで…。」

 

兵士達は息を引き取った。

 

矢内「連撃乱舞か。」

キサラギ「何故その名を?」

矢内「あっ、いや、なんかカッコ良さそうな名前がパッと浮かんだんだよ!ハハハ!」

キサラギ「まあいい。で、どうする?何か考えがあってここに誘導したのだろう?」

矢内「ああ、ここで殺して全て燃やしたら分からないだろう。服もこっちにあるしな。」

キサラギ「証拠隠滅か。」

矢内「で、協力してくれるのだな?」

キサラギ「ウィルしだいだ。」

矢内「分かった。すまなかったな、汚れ仕事をさせてしまって。とりあえず戻るか。」

キサラギ「ああ。」

 

小屋に火をつけて俺達は孤児院に戻った。

 



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