仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア (玄武Σ)
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予告

生存報告とリハビリ兼ねての予告風短編の投稿。
以前に予告集で投稿したきらファン多重クロスを昇華させ、平成ライダー20作とジャンプ50周年アニバーサリーネタとしてまとめ直しました。ごちうさのきらファン参戦が叶った嬉しさからやっちまえというノリで。
そんなネタですが、お楽しみいただけたら幸いです。

2019/1/27、修正入れました。
2019/1/30、予告集のネタ、削除しました。


緑豊かで幻想的な世界エトワリア

女神ソラが統治し、彼女が異世界を観測してその出来事を綴った聖書を読むことで、人々はクリエと呼ばれる生きる力を得て平和に暮らしていた。

しかしある時、筆頭神官アルシーヴの謀反により女神ソラは封印され、さらにクリエメイトと呼ばれる聖典の登場人物を無理矢理に呼び出す禁断の召喚魔法オーダーを行使し出した。アルシーヴを止めるべく、神殿勤めの少女ランプは伝説の召喚士を探しに向かい、その召喚士として覚醒した少女きららや、彼女が伝説の召喚魔法コールで力を借りたクリエメイト達と共に冒険の旅へと向かった。

 

しかしエトワリアに、新たな介入者が来訪する。

 

 

 

 

「皆の者、今こそ時は来た! エトワリアとかいうチンケな世界に散らばったアレを、『聖なる遺体』を手に入れ、我らオーバーヘブンショッカーが全ての世界を支配する時がな!

さあ、好きなだけ暴れてこい! 天国の住人となった我らの恐ろしさを、数多の世界に知らしめてくるのだ!!」

『イー!!』

『うぉおおーーー!』

 

確かな悪意と害意を持ったと侵略者と、

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

「仮面ライダーだぁ? ………やれやれだぜ」

 

黄金の精神を背負いし、正義の系譜が。

 

平成仮面ライダー20作

週刊少年ジャンプ50周年

きららファンタジア1周年

 

旅の途中でエトワリアに足を踏み込んだ、世界の破壊者ディケイドこと門矢士。

宿敵DIOを倒して日本へと帰国しようとした矢先にエトワリアに飛ばされた、最強のスタンド使い空条承太郎。

そんな二人ときららの一行の前に現る、最強の敵オーバーヘブンショッカー。そしてその魔の手が、エトワリアを襲う。

 

「私のハイエロファントと契約イマジン達は、敵を引きちぎると狂い悶えるのだ。喜びでな!!」

「きゃああああああああ!?」

「ゆのさん!?」

 

「あの婆さんの出した霧、奴らの動きをコントロールしてるのか!?」

「そうともさ。そういうことでアタシのスタンド、ジャスティスの前に敵うはずないんだよ。小娘どもが!」

「おばあさん、なんでこんなひどいことするの?」

 

「チノちゃん! なんか、うさ耳の変な人が出て来たよ!」

「ココアさん、あれ耳というより角っぽいんですが…」

「我がスタンドD4Cを見てその程度のリアクションとは、大した胆力だ。しかしこの能力を見て平静で居られるか!」

 

強襲するスタンド使い

 

「ミー達サドンダスシリーズは生体兵器、戦って破壊して殺すために生まれたダス。魔物なんてちゃちぃ生き物よりはるかに強いダスよ」

「て、店長さんは逃げてください。わ、私たちと違ってクラスの力もないから危険です…」

「そんな、苺香さんを置いていくなんてできませんよ!?」

 

「無駄だ。我らファントムには魔力の伴った攻撃以外は効かんし、そこの小娘程度の魔法で我らを倒そうなど百年早い」

「Oh my god これは本当にまずいです……」

 

「ソーニャ、わかったろう。このガイアメモリの力を持ってすれば、お前やそこのクリエメイトとかいう異世界人どももイチコロなのさ」

「まずいな……夢路って言ったか? お前、勇魚を連れて逃げろ。あたしはコントロールされてるやすなを解放してから追いかける」

「な、何言ったんだお前!?」

「そうだよ! ソーニャちゃんを置いていけないよ!」

 

ショッカーや財団Xの怪人軍団襲来。

 

「わふぁ彼岸こそ、クローバー王国への復讐だ。どのような悪党に協力しようと、奴らを滅ぼすためなら喜んで罪を背負うつもりだ」

「ひぃ!?(目から何か怖いものが感じます……これが憎悪?)

 

「俺は禍野から現へと乗り出し、いずれは世界の支配者となる。その為にエトワリアの全生物はこの俺、聖丸様に呪力を捧げる生贄になるんだよ!」

「それなら尚更、私はウミちゃんとリュウグウパレスのためにもあなたを止めないといけない!!」

 

「いくら足掻こうと、貴様ら軟弱な人間は我ら魔人(ヴァンデル)に蹂躙、支配されるしかないのだよ」

「まさか七賢者の私達が、ここまで歯が立たないとはね…」

「てめぇら、よくもセサミを!」

「我々ガロプラのトリガーの力を忘れてもらっては困る」

 

様々な世界の悪意や憎悪の侵攻。

 

 

 

「アルシーヴ、君も君の封印した女神ソラも、我が友の生み出す天国の礎となるのだ。光栄に思いたまえ」

「まだだ……まだ私は為すべきことを為しては……!」

 

「世界の破壊者だ? 基本世界の俺を倒した承太郎だ? 伝説の召喚士だぁ!? 無駄無駄、貴様らはこのオーバーヘブンの力で描かれる真実に敗北する運命なのだぁあああああ!!」

「「ぐわぁああああああ!?」」

「士さん! 承太郎さん!」

 

ディケイド&承太郎、絶体絶命!!

そして最強最悪の敵を前に為すすべのない、きらら一行。

そんな彼女達の危機に駆けつけたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この人達がクリエメイト以外の異世界の戦士と、仮面ライダーの方々……」

 

仮面ライダーとジャンプヒーロー、集結!!

 

平成最後のクロスオーバー大戦、ここに開幕!

 

「わ、私がやらなきゃ!」

「俺、参上!!」

「海賊王に、俺はなる!!」

ひだまりスケッチ×仮面ライダー電王×ONE PIECE

 

「がんばるぞい!」

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!!」

「僕が戦うのは、僕がそうするべきだと思ったからだ」

NEW GAME!×仮面ライダーエグゼイド×ワールドトリガー

 

 

「いっしょに楽しいことしよう!」

「命、燃やすぜ!」

「死神代行、黒崎一護。よろしくな」

がっこうぐらし!×仮面ライダーゴースト×BLEACH

 

「Okey. let's go‼︎」

「さぁ、ショータイムだ!」

「諦めないのが、俺の魔法だ!」

きんいろモザイク×仮面ライダーウィザード×ブラッククローバー

 

「行こう、みんな!」

「鍛えてますから」シュッ

「オイラ楽なのが好きだからさ、楽じゃねえ奴をほっとけねぇ」

うらら迷路帖×仮面ライダー響鬼×シャーマンキング

 

「まだいたんですか? 突っ立ってると邪魔なんですよ」

「お婆ちゃんは言っていた…俺は天の道を行き、総てを司る男だと」

「ここであんた達を見捨てたら、死んでも死に切れねぇ!」

ブレンド・S×仮面ライダーカブト×家庭教師ヒットマンREBORN

 

「ここから先は通行止めよ!」

「「さぁ、お前の罪を数えろ!」

「罪も穢れも、全部纏めて祓ってやる!!」

夢喰いメリー×仮面ライダーW×双星の陰陽師

 

「か、かおスパイラルですぅ〜…」

「誰も、人の未来を奪うことはできない!」

「知らないのか? それを正義っていうんだ!!」

こみっくがーるず×仮面ライダーアギト×冒険王ビィト

 

「お姉ちゃんに任せなさい!」

「勝利の法則は決まった!」

「ヒーローは命を賭して、綺麗事を遂行するお仕事だ!」

ご注文はうさぎですか?×仮面ライダービルド×僕のヒーローアカデミア

 

九つの聖なる遺体に導かれし、レジェンドライダー&ジャンプヒーロー&クリエメイトが立ち向かう。

 

「聖なる遺体と36以上の極罪を犯した魂、それが揃えば敵の首領に敵う存在は無くなってしまいます」

「神になった俺でも、正直勝てる気がしねぇ。だからディケイドと承太郎には頑張ってもらわねぇと」

 

託された意志

 

「私は信じられません! 仮面ライダーは聖書にもないから私が信用する根拠は無いですし、特にあのディケイドって言う人は理由はどうあれ世界を滅ぼしたんでしょう!?」

「ランプ、待って!」

「ほっとけ。あんなガキ一人にどうこう言われても、気にすることないっての」

「士くん、そう言う問題じゃありません!」

 

ぶつかり合う想い

 

 

 

 

「俺も手伝うよ、ディケイド」

「まさかお前の手を借りることになるとはな、ジオウ」

「父さんが今死んだら未来でアタシも消滅するし、個人的にも父さんには生きてて欲しい」

「僕もヴァレンタインに協力するのは癪だが、ジャイロを利用したやつに一泡吹かせたいから手伝うよ」

「徐倫にジョニィ……わかった、手伝ってくれ」

時を世界を超え、繋がる絆。

 

「見てるだけはもうたくさんだ! サソードゼクター、行くぞ!」

「私だって苺香さん達へ、彼らに手は出させる気は無いデスからね!」

「秋月君も店長も、無茶しないでよね!」

(俺のゼクターを使いこなしてみろ、ショ・ミーンの男よ!)

 

愛する者を

 

「海賊王は世界一偉いんじゃねえ、世界一自由な男だ。だからテメェらなんかに支配されねえしさせもしねぇよ!」

「うん。悪いけどそう言うわけだから、時間も世界も消させないし支配もさせない」

(ルフィさんも良太郎さんも、こんな威圧感の中……すごい)

 

自由を

 

「俺は大事なものを守るために魔法騎士になった。そして同じ理由で魔法帝を目指してるんだ」

「アスタなに言ってる? それ全部やるのは俺だぞ」

「ユノ、何おぅ!?」

「ははは。二人とも、俺もそんなお前達の希望を守ってやりたくなったぜ」

 

平和を

 

「行きましょう、皆さん」

「やれやれ……まだガキのくせに見上げたものだぜ」

「同感だ。それじゃ、早速行くか」

 

 

 

 

「「「世界を救いに!!」」」

 

世界を守れ!

 

仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven inきららファンタジア




以下ボツ組み合わせ
・NEW GAME!×エグゼイド×遊戯王
カードゲームなのでバトルものと合わせる構図が浮かばなかった。SAOみたいな奴がジャンプにあればよかったのに……

・うらら迷路帖×響鬼×鬼滅の刃
大正つながりでうららと相性良さそうでしたが、炭治郎をうまく動かせるか自信がなかった&パワーバランス的に炭治郎に厳しかったです……

・ブレンド・S×カブト×べるぜバブ
ドSvs俺様で男鹿と天道を絡ませたかったが、天道の手玉に取られる男鹿がイメージできなかった。

・キルミーベイベー×W×コブラ
ギャグマンガは組み合わせづらい&平成ジェネレーションズにしたかったため。

・Aチャンネル×アギト×NEEDLESS
Aチャンネル、アニメも原作も見てないため断念。コンセプトはこみがと共通でブレイドの病気を炸裂させたかったから。


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プロローグ(アバン)

平成ジェネレーションズForever公開!
まだ見れてませんが、まず公開記念でプロローグを投稿したいと思います。
平成仮面ライダー20作、週刊少年ジャンプ50周年、まんがタイムきらら15周年ときららファンタジア1周年、平成最後に重なった奇跡を祝いましょう。


「さて。突如として姿を消したアレは、何処の世界に散ったのか特定出来たのか?」

 

何処かの空間に、一人の男が部下と思しき白服の男に声をかける。

リーダーであろう最初の男は影になって容姿がわからなかったが、体からはこの世の悪意を濃縮してもまだ足りないであろう邪悪さを滲み出させている。

 

「はい。今、その世界についてまとめたデータをスクリーンに映します。幸運なことにアレは、全てが一つの世界に転移したようです」

 

白服の男が手に持っているタブレットを操作すると、巨大なスクリーンに何かが映される。

 

「その世界の名はエトワリア。女神ソラを名乗る存在に統治され、その世界の住人は女神の綴った聖書を読むことで、クリエと呼ばれる生きる力を得ている、とのことです」

 

スクリーンに映されたその世界は、草原や山々が広がる緑豊かな世界で、その中に巨大な樹とその根元に作られた町があった。そしてその樹のてっぺんがアップされたと思いきや、そこに大きな神殿が建てられていた。白服の男が話していた女神が住まうものと思われる。

 

「そのようなものに頼らなければ生きていけぬとは、滑稽だな」

「全くもってその通りですが、調査員からはもう一つ、面白い報告が来ています」

 

男がエトワリアという世界そのものを見下す発言をしたと思いきや、再び部下の男がタブレットを操作する。次に映されたのは、その女神ソラと思しきベールを被った金髪碧眼の美しい女性と、その女神が記した聖典と思しき書物。面白い報告とはこれ等に関することらしい。

 

「女神ソラには異世界を観測する力があり、聖書に記されている物語はその異世界での実際の出来事だそうです。これが我らにとって何を意味するか、お分かりでしょう?」

「!? そういうことか……」

 

男は部下からのその知らせを聞き、何かに感づいた。そして口元を醜く歪めながら邪悪なオーラを強め、言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女神ソラを我が手駒にする、もしくは力を奪うことで、様々な世界の様々な力を手に入れることが可能というわけだな」

「はい。ですが女神ソラは配下の神官であるアルシーヴなる者に魂を封じられているそうで、後者を行う方が確実でしょう」

「主、それも世界を丸ごと一つ統治する女神に謀反か……極罪を犯した魂の確保、これまたちょうどいいな」

「それだけではありませんぞ。神そのものということは、その女神ソラ本人も人間とは比較にならない強大な魂を持っているはず。もしかすればあなた様の欲する、36名以上の魂にも代用が効くかもしれませんですじゃ」

 

直後に現れて口を開くのは、褐色肌に杖を突く小柄な老婆。その魔女のような風貌に加え、両手とも右手になっているという奇怪な容姿が何とも言えない不気味さを醸し出している。そしてそれに並び立つのは、奇妙な剃り込みの入った髪型の、神父服の男である。

 

「財団Xからはガイアメモリやガーディアン、その他の生体兵器といった各種戦力は供給されている。君の力で蘇らせたスタンド使いやダークライダー達も、その他にスカウトした手勢も何時でも出撃可能だ」

「それにいくつもの世界と間接的に繋がっているとなれば、もしかすれば研究段階のあの力を手にすることも可能かもしれませんぞ」

「わかった。エンヤ婆、プッチ、ご苦労だ」

 

そしてそのまま男は部下らしき二人の人物を名で呼びながら労いの言葉をかけ、移動を始める。それに先ほどの二人が同行すると、男は壇上に上がって、眼下に広がる集団に向かって叫んだ。

 

「皆の者、今こそ時は来た! エトワリアとかいうチンケな世界に散らばったアレを、『聖なる遺体』を手に入れ、我らオーバーヘブンショッカーが全ての世界を支配する時がな!

さあ、好きなだけ暴れてこい! 天国の住人となった我らの恐ろしさを、数多の世界に知らしめてくるのだ!!」

「「「「「「イー!!」」」」」」

「「「「「「うぉおおーーー!」」」」」」

 

男の号令とともに、集団を構成するガイコツを思わせる模様をした全身タイツの男達と、異形の怪物達が沸き立つ。

わかることは一つ、エトワリアと呼ばれる一つの世界に、確かな脅威が近寄ろうとしていることであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

エトワリアのとある草原にて、空間の揺らぎが生じる。

 

「さて。新しい世界はどんなところなのか……」

 

空間の揺らぎから現れたのは、20代半ばほどの外見の青年だった。黒いジャケットを伊達に着こなし、首にはマゼンダカラーのトイカメラを下げている。

 

「服装が変わってないところを見ると、また特に役割は無しか。果たして、ライダーのいる世界かいない世界か……」

 

そして腰から下げていたカードホルダーを開くと、そこから一枚のカードを取り出す。そこにはカメラと同じくマゼンダカラーにバーコードのような意匠と緑の複眼という、奇怪な仮面を被った戦士の姿が描かれていた。

 

彼の名は門矢士。カードに描かれている戦士、仮面ライダーディケイドに変身する資格を持ち、嘗て世界の破壊者と呼ばれた存在であった。

 

「まあどっちにしろ、人のいない場所にいても仕方がないか。景色でも撮りながら移動するか」

 

今後の方針を決めた士は、カードをホルダーに戻すとそのまま写真を撮り出しながら近くに停めてあったバイク"マシンディケイダー"に乗り、その場を去っていった。

 

 

 

同時刻、士のいる草原とは別の場所で倒れている一人の男がいた。

 

「……ん? 俺は、なんでこんなところで寝ているんだ?」

 

目を覚ました男は起き上がり、辺りを見回す。男は2メートル近い高身長で、黒い長ランと帽子という、一昔前の不良のような恰好をしている。

 

「(確か、空港でポルナレフと別れてそのままジジイと日本行きの飛行機に乗ろうとしたら、いきなり空間が歪んで……)やれやれ、DIOを倒した矢先に新しい敵スタンドの襲撃か」

 

この状況に至るまでの経緯を思い返し、それに対してあきれている様子であった。

男の名は空条承太郎。スタンドと呼ばれる特殊能力が存在する世界で、宿敵を倒した矢先にエトワリアに迷い込んだようだ。

尤も、承太郎自身は異世界にいるということには気づいておらず、何にしてもスタンド能力によるものとしていたが。

 

「ポルナレフはわからんが、ジジイは確かに俺と一緒に吸い込まれた。こっちに来てる可能性もあるし、少し探してみるか……」

 

そして承太郎は歩きだし、戦いに参加した仲間の一人で自身の祖父ジョセフ・ジョースターを探しに行くことにする。少し歩いた先に町があったため、そこでまずは情報収集をしようと試みる。

 

門矢士と空条承太郎、異なる世界で異なる力を行使し戦ってきた二人の英雄は、やがて互いの運命の絡み合いにより出会うこととなる。

この世界を救うために力に目覚めた、伝説の召喚士の少女と。

 

 

 

平成仮面ライダー20作&

週刊少年ジャンプ50周年&

まんがタイムきらら15周年&

きららファンタジア1周年記念作品!!

平成最後のクロスオーバー大戦、開幕!

 

 

「わ、私がなんとかしなきゃ!」

「俺、参上!!」

「海賊王に、俺はなる!!」

ひだまりスケッチ×仮面ライダー電王×ONE PIECE

 

「がんばるぞい!」

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!!」

「僕が戦うのは、僕がそうするべきだと思ったからだ」

NEW GAME!×仮面ライダーエグゼイド×ワールドトリガー

 

「いっしょに楽しいことしよう!」

「命、燃やすぜ!」

「死神代行、黒崎一護。よろしくな」

がっこうぐらし!×仮面ライダーゴースト×BLEACH

 

「Okey. let's go‼︎」

「さぁ、ショータイムだ!」

「諦めないのが、俺の魔法だ!」

きんいろモザイク×仮面ライダーウィザード×ブラッククローバー

 

「行こう、みんな!」

「鍛えてますから」シュッ

「奪ったらほんの一瞬。でも、守るのはずっとだ」

うらら迷路帖×仮面ライダー響鬼×シャーマンキング

 

「まだいたんですか? 突っ立ってると邪魔なんですよ」

「お婆ちゃんは言っていた…俺は天の道を行き、総てを司る男だと」

「ここであんた達を見捨てたら、死んでも死に切れねぇ!」

ブレンド・S×仮面ライダーカブト×家庭教師ヒットマンREBORN

 

「ここから先は通行止めよ!」

「「さぁ、お前の罪を数えろ!」

「罪も穢れも、全部纏めて祓ってやる!!」

夢喰いメリー×仮面ライダーW×双星の陰陽師

 

「か、かおスパイラルですぅ〜…」

「誰も、人の未来を奪うことはできない!」

「知らないのか? それを正義っていうんだ!!」

こみっくがーるず×仮面ライダーアギト×冒険王ビィト

 

「お姉ちゃんに任せなさい!」

「勝利の法則は決まった!」

「ヒーローは命を賭して、綺麗事を遂行するお仕事だ!」

ご注文はうさぎですか?×仮面ライダービルド×僕のヒーローアカデミア

 

「自分にできることをしたいんです!」

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

「やれやれだぜ…」

きららファンタジア×仮面ライダーディケイド×ジョジョの奇妙な冒険アイズオブヘブン

 

仮面ライダー&ジャンプフォース 平成ジェネレーションズHeaven ディケイド&ジョジョ with レジェンドヒーローズ inきららファンタジア



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第1話「接触・破壊者と白金と召喚士」

本編開始となりますが、注意点があります。
本作はアイズオブヘブンの再構成という要素を入れているため、ライダーとジャンプの双方に時系列の調整があります。
ジオウに力を継承されたライダーも普通に変身しますし、ジャンプも既に死んだ敵の再登場とか普通にあります。また、先の展開を予想入れた展開や、アニメオリジナルで終わった作品の後日談ということもあるので、そういったものが苦手な方は不快に感じるかもしれません。
それでも構わないという方は、どうぞ。


エトワリア

緑豊かで魔法や魔物が存在する、所謂ファンタジーの世界。この世界はソラという女神が統治し、彼女の書き綴った聖書を読むことで人々はクリエと呼ばれる力を得て生きている。この世界の魔法もこのクリエを源に使用している。

 

しかしその女神ソラは現在、魂を封印されてしまっている。

その犯人は女神ソラの補佐でもある筆頭神官アルシーヴ。アルシーヴは女神の封印後、聖典の登場人物でクリエを生み出せる異世界の住人「クリエメイト」を無理やり召喚する禁呪オーダーを行使した。

その事実を知った一人の少女は、神殿を抜け出してそれを阻止すべく、ある存在を探すことにしたのだった。

 

オーダーと対を成す伝説の召喚魔法コールを使える、召喚士を。

 

 

 

とある町を訪れている、二人の少女がいた。

少女はそれぞれ、白を基調とした服に一冊の本を携えた幼い少女と、星形の髪留めに黒いマントと大きな杖という魔法使いのようないで立ちの少女だ。

この二人の少女がそれぞれ、アルシーヴの謀反を知ったランプと、コールを発現させた召喚士のきららであった。

 

「きららさん、ここがそうなんですか?」

「うん。この町の周辺でパスのような不思議な感覚がしたんだ」

「明確にパスと言えない何かか……警戒した方がいいかもしれないね」

 

きららの言葉に対して忠告したのは、白い猫のようなヘンテコな生物だった。この生物はマッチといい、ランプの保護者を自称する謎の存在である。

しかし保護者を名乗るだけあって良識や思慮はあるため、行っていることはまともだ。そんなマッチの言葉に注意しつつ、一行は街を見て回る。

そんな中、きららはあるものを見てそのまま立ち止まってしまう。

 

「きららさん、どうかしましたか?」

「うん。あの人が気になって……」

 

そういうきららの視線の先には、一人でカメラを片手に佇む青年の姿があった。門矢士である。

 

(今まで感じたことのないタイプのパス……なんだろ、この人?)

 

きららが先程から口にしているパスという言葉だが、これは彼女の生まれつきの能力に起因する。彼女には人同士の繋がりを感覚で感じ取るという不思議な力があり、コールを発現させたのもそれが原因ではないかとマッチは推察している。その繋がりこそがパスで、それが士からは奇妙な感覚として感じられたそうだ。

その感覚が何なのか気になってしまい、きららは士に近寄っていく。そしてそんな彼女にランプもついていく。

 

「あの、何をしているんですか?」

「ん? 見たことない景色だからな、写真に撮って納めておこうと思っただけだ。って、何だガキか」

「が、ガキって!? いきなり失礼ですねあなた!?」

 

いきなりの士の発言に、当然ながらランプも文句を言う。

 

「なんだ、どっからどう見てもまだケツの青いガキだろ。それとも、最近流行りのロリババアってやつか? 見た目に反して何百年も生きてるとか」

「私は人間で、見たまんまの年齢です! 私が言いたいのは、言葉使いが汚いとかそういう意味で言ったんです!!」

「まあまあ、ランプ抑えて。お兄さんもあんまり煽らないでください」

 

士の遠慮のない物言いにランプもつい憤慨してしまうため、きららは仲裁に入る。すると今度はマッチが士の前に出てきた。

 

「君、ランプがすまなかったね。保護者として代わりに謝罪するよ」

「……」

 

マッチを静かに見つめ、そのまま無言で写真を撮り出す士。

 

「君、いきなりどうしたんだい?」

「いや、この世界にはヘンテコな生き物がいるんだと思ってな。写真に残しておこうと思った。光栄に思いな」

「謝罪の直後であれだけど、君偉そうだし結構失礼なこと言うよね」

 

士の物言いに前言撤回するマッチだったが、きららは士の口にしたあるワードに反応、会話に割って入りそれに対して言及する。

 

「あのすみません。"この世界"ってことは、貴方は異世界からいらっしゃったんですか?」

「なんだ、この世界は異世界について認知されてるのか。ああ、俺は様々な世界を巡る旅をしている。尤も、行き先は自分で決められんがな」

「そうだったんですか。あ、私きららって言います。少しこの町で調べ物をしていて、良ければ話を聞かせてもらっても……」

 

そしてきららは士の素性と彼の不思議なパスから何か知っているかと思い、彼に聞き込みをしようとしたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

「おい、そこの野郎。ちょっといいか?」

 

また新たにこちらに声をかける人物が現れた。2メートル近い高身長に長ランを着た高校生ほどの男、空条承太郎であった。

 

「野郎ってことは俺か。急に出てきて威圧的な態度、気に入らんな」

「テメェみてぇな奴に礼儀なんてもんいらねぇだろ。こんな世界に俺を引きずり込んで、何が目的だ?」

「引きずり込んだ? お前も日本人っぽいが、いきなり何言ってんだ?」

 

威圧的な態度で士に突っかかる承太郎。当然身に覚えもないので問いかけるのだが、理由はすぐに彼の口から語られた。

 

「とぼけんな。この町の住人はドラクエみたいな典型的なファンタジーの服装してやがるが、てめぇだけは日本人丸出しの顔に現代的な服装……となればてめぇが、俺をこの世界に引きずり込んだスタンド使いってこと以外考えられねぇ!」

 

承太郎は自分がいるファンタジー丸出しなこの世界に対して、当然警戒していた。そんな中で承太郎は自分の常識に当てはめて、士を敵スタンド使いと断定したようだ。

宿敵DIOのスタンドは時を止め、他にもスタンドそのものが擬似太陽だったり、夢への侵入能力があったり、など強力かつ奇怪な能力が多いスタンド能力。故に空間転移の類もあるのだろうと解釈した。そしてそんな中で士を発見し、彼がそのスタンド使いと判断したというわけである。

 

「何だスタンド使いって? それにドラクエもいいが例えにするには古すぎやしないか? 21世紀なっても続いている人気のシリーズなのは認めるが……」

「あ? 何言ってんだてめぇ、まだ20世紀の真っただ中だろ。21世紀なんざ10年以上は先の話だぞ!」

 

士が旅してきたライダーの世界はどれも2000年代〜2010年代と、21世紀に入って数年は年は経過している。しかし承太郎は1987年、つまり昭和の末と士のいた時代からかなり離れていたのだ。

その食い違いのせいで、二人の問答が熱を帯びてしまい、互いの印象を悪くしてしまう。見かねたきらら達は仲裁に入ろうとする。

 

「あ、あの……少し落ち着いて欲しいんですが…」

「そうですよ! こんな往来で喧嘩なんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

やかましい! うっとおしいぞこのアマ!

「あ、アマ!?」

「も、もっと口の悪い人が……」

「俺は女が騒ぐとムカつくんだ! 少し黙ってろ」

 

いきなりの承太郎の暴言に、きらら一行も驚愕。その後は彼女たちを無視して、再び士に向き合う承太郎。

 

「そこまでシラを切るなら仕方ねえ……武力行使だ」

「聞く耳なしか……まあいい。喧嘩を売る気なら買ってやる」

 

直後に承太郎の周囲の空気が張り詰めていき、その様子に士も奇妙な形状の機械を取り出し、腹部に当てようとする。

士は承太郎の言動から、彼が少なくとも一般人では無く何か特殊な力を持っていると察したため、手加減なしという判断であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああ!?」

「みんな逃げろ! 奇妙な集団が街を襲ってきたぞ!!」

「魔物みたいなのを連れていたわ! 急いで逃げて!」

 

突然上がる悲鳴に、士も承太郎も気を取られてしまい、戦闘態勢を解く。

 

「何だ? 魔物だと?」

「少なくとも人外の敵がいる世界のようだな…おい、喧嘩は後だ。様子を見に行くぞ」

「な……てめぇ待ちやがれ!」

「ランプ、私たちも行くよ!」

「わかりました!」

「気をつけたほうがいいよ。町中に魔物が堂々と入り込むなんて、異常だからね」

 

そのまま士は戦闘を放棄して人々が逃げる方向と逆の方へと進んでいく。そしてそれを追う承太郎と、更にそれを追うきらら一行。

その先に見たものは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「行け、あのお方の忠実なる僕、オーバーヘブンショッカーの戦闘員達よ! まずはあれを探すための拠点を築くべく、この町の住民どもを捕らえて奴隷にするのだ!!」

「ガウ!」

「「「イー! イー! イー!」」」

「「「イー! イー! イー!」」」

「はっはははははは! 泣き叫べ、そして恐怖せよ! 命が惜しくば我らのいいなりになるのだ!!」

 

骸骨を思わせる模様の入った全身黒タイツの集団が、人々を襲っている光景だった。集団は片手にグルカナイフを持ち、逃げ惑う町の住民を、老若男女問わず追いかけては暴行を加えている。

そしてそれを率いるのは、見た目からして普通じゃなかった。褐色肌に赤い中東風の衣服を纏った男、一匹のボストンテリア、そしてカタツムリの殻を背負った二足歩行するチーターという1人と2匹である。

 

「な、何ですかあれ!? あんな魔物、見たことない…」

「人を、襲っているんですか?」

「大多数は人間みたいだけど、あまり穏やかな雰囲気じゃないね……」

 

きらら一行は予想だにしない光景に戦慄するも、この集団に見覚えのある士はその正体について簡単に説明してやることにする。

 

「ショッカーの怪人と戦闘員だ。ショッカーは俺がいろんな世界で仲間と戦ってきた、いわゆる悪の組織って奴だ。何度壊滅させても復活して、時には名前も変えてきたりしたが……こんなところにまで出てくるとはな」

「……」

 

士がショッカーについて説明している横で、承太郎は明らかに動揺している。その視線は戦闘員達を率いる男と犬に向いているようだった。

 

「どうした? あいつらに何かあったのか?」

「ああ。アイツらはモハメド・アヴドゥルとイギーっつってな……死んだはずの俺の仲間だ」

 

承太郎はDIOの本拠地に乗り込んだ際、自身を含めた五人と一匹のスタンド使いでチームを組んで乗り込んだ。しかし二手に分かれて乗り込んだ際に、DIOと彼の側近ヴァニラ・アイスと交戦。結果、目の前のアヴドゥルとイギー、そしてDIOとの対決時に花京院典明という仲間が戦死することとなった。

その筈が、その死んだ仲間が悪の手先を率いているという事態に、流石の承太郎も驚きを隠せずにいた。

 

「「イー!」」

「おらよっ!」

「ふん!」

「「イー!?」」

 

承太郎が驚いていると戦闘員がこちらにも近寄ってきたため、士の回し蹴りと承太郎の鉄拳で撃退する。

 

「あ、危なかった……」

「ありがとうございます」

「ん? 戦闘員達よ、一旦止まれ!」

 

きらら達が士達に礼を言うと、アヴドゥルがこちらに気づいて戦闘員達を止める。

 

「貴様らはディケイドと空条承太郎……あのお方が最優先に抹殺せよと仰っていた危険分子!」

「ガウ!」

 

そのアヴドゥルの言葉と同時に、彼はイギーとともに凄まじい殺気と紫の不気味なオーラを放ち臨戦態勢に入る。

 

「アヴドゥル、イギー……無事に再会できたってのに、その殺気と今の発言はどういう了見だ?」

「再会? 何を言ってるんだ、貴様は? 貴様とそこの男、門矢士こと"世界の破壊者ディケイド"はあのお方が率いられる、オーバーヘブンショッカーの障害、それも最大の危険分子だ! 今この場で、まとめて始末してやる!!」

「ちっ。聞く耳なしか」

 

アブドゥルの反応に悪態をつく承太郎。しかしその一方、きらら達はアヴドゥルの口にした士の呼び方が引っかかってしまう。

 

(世界の、破壊者? 何言ってるの、この人)

(門矢士というのが名前みたいですけど、ディケイドって何でしょう?)

 

しかし2人の思案など気にすることなく、アブドゥルとイギーは自身の能力を発動する。

 

「ここで果てるがいい、空条承太郎とディケイドよ!

マジシャンズレッド!」

「ガーウ(ザ・フール)!!」

 

その叫びと共に、アブドゥルとイギーの背後から何かが現れた。

アヴドゥルの背後から現れたそれは赤い体に鳥の頭をした人間が、炎を纏うという異形の姿である。対するイギーも、仮面を被った後ろ足がタイヤになっている四足獣という奇怪な姿の何かを呼び出した。

 

「な、なんですかあれ……あれも魔物? まさか、あの人もコールかオーダーを」

「ランプ、違うよ」

 

呼び出された何かを目の当たりにしたランプはそれを召喚された存在と勘違いしていたが、きららはパスを感じ取る力ゆえか、その正体に感づいたようだ。

 

「あの男の人達と呼び出された何かからはパスを感じない、というよりも呼び出された方もあの人達の一部というか、同一人物みたいな感じがするよ。分身とか、そういうものなんじゃないかな?」

 

そう。きららの指摘した内容、これこそがスタンド能力。魂のヴィジョンとも称され、能力者自身の魂が守護者の形をとって実体化したもの。そして超能力が形を持った様な存在である。

故に本来、スタンドはスタンド能力を持つ生物にしか視認できないはずなのだ。なのにきららやランプにも普通に見えているので異常である。

 

「……ほう、どうやらそいつらがスタンドとやららしいな」

 

士にも普通に見えていたが、特に驚いている様子はない。士も様々な世界を旅してきたのだから、異質な存在には慣れているといったところだろう。

 

「……やれやれ、どうやらこの場にいる全員に見えてるらしいな。全員がスタンド使いってのは考えにくいし、ここが異世界だからって方がありえそうだ」

「そうらしい。この俺様ですらこの世界に来てから、急にスタンドが見え始めたからな」

「チーターカタツムリ、無駄話はするな。今はディケイドと空条承太郎を抹殺することだけを考えろ」

 

アヴドゥルに諌められ、二足歩行するチーター=怪人チーターカタツムリも戦闘態勢に入る。そして士も承太郎も、その様子から戦闘態勢を取るのだった。

 

「状況はいまだに把握できてはいないが、今あの二人が敵でてめぇも俺も狙われているのはわかった。ひとまず共闘するが、まだ完全には信用してねぇとだけ、忠告しておく」

「ああ問題ねぇ。俺もお前のことはまだ信用してないからな」

 

ひとまず共通の敵ができたため、共闘を了承する二人。そして最初に動いたのは、承太郎であった。

 

「スタープラチナ!」

 

承太郎が叫ぶと同時に、彼のスタンドが現れた。屈強な肉体の長髪の男の姿で、深紅のマフラーに肩アーマー、そしてサークレットを装備という出で立ちだ。承太郎自身のオーラも相まって、仮面ライダーのそれとは異なる「神話のヒーロー」とでもいうべき姿をしていた。

 

タロットカードの星を暗示する、まさに無敵のスタンドというべき強大な力が今ここに降臨した。

 

「ほぉ、それがお前のスタンドとやらか。戦力としては申し分なさそうだな」

「まあ、殴る蹴るしか能のない力だが、強力ではあるな。戦うなら、てめぇもそろそろスタンドを出せ」

 

どうやら承太郎はまだ士をスタンド使いだと思っているらしく、それを強要してくる。

 

「俺に関してそっちが納得するかはわからんが、俺はスタンド使いじゃない。俺は…」

 

そして士は少し間をおいて、慣れた様子で告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

 

そう言い士は腹に先程の奇妙な形状の装置を腹部に充てると、それからベルトが伸びる。変身ベルト"ディケイドライバー"だ。そしてカードホルダー、正式名称".ライドブッカー"から一枚のカードを取り出す。それは最初にエトワリアに来た時に見ていたカードであった。

 

「仮面ライダーだぁ? やれやれ……てめぇ、確かにショッカーが出てきたが、テレビのヒーローの名前出してふざけてんじゃ…」

「変身!」

 

承太郎の言葉を遮り、士はそのワードを声高々と告げた。そして取り出したカードをディケイドライバーのバックルに挿入する。

 

【Kamen Ride DECADE!!】

 

ベルトから電子音声が流れると、士の周囲に九つの紋章が現れ、そこから発せられた光の玉が士を包む。するとその体は全身を黒い甲冑に覆われ、 やがて顔にバーコードを彷彿とさせる線状のパーツが付けられると、黒かった体はトイカメラと同じマゼンダに変わったのだ。

 

「な、何ですかこれ?」

「見た目が変わりました……」

「わぉ、すごいもの見ちゃったね…」

「……確かに、仮面ライダーに見えなくもねぇな、こりゃ」

「さっきの物言いからして、お前は仮面ライダーが創作物になってる世界から来たのか。で、少しは信じる気になったか?」

 

士の変身にきらら一行も承太郎も驚きを隠せない。

その姿は変身に使うベルト、全身を覆う甲冑、目の部分が複眼になっているマスク。1号がバッタの能力が付与された改造人間という出自故か、一部の例外を除いて皆が一様に複眼付きのマスクというフォルムをしている。まさに仮面ライダーの特徴を兼ね備えていたのだ。

 

これこそがかつて「世界の破壊者」と呼ばれし"仮面ライダーディケイド"の姿であった。

 

「まあ、異世界なんてものがあるなら仮面ライダーがいてもおかしくねぇのかもな。ともかく、いくぞ」

「あぁ、こっちも問題ねぇぜ」

「「いけ、総攻撃だ!」」

『『『イー!』』』

 

ディケイドと承太郎が駆け出すと同時に、アヴドゥルとチーターカタツムリが戦闘員達に号令をかけて突撃してくる。

 

「てや! はぁ! おりゃ!!」

 

ディケイドは迫って来た戦闘員の一人にパンチを叩き込み、吹き飛ばして次の戦闘員に蹴りを叩き込む。そしてそいつが吹き飛べば、また次の戦闘員にハイキックを放つ。

高い格闘能力とt単位の破壊力のパンチやキックは、生身の人間には必殺の破壊力だ。それを生身の人間より強靭とはいえ、数で攻めるために力を比較弱くして作り出された戦闘員では歯が立たなかったのだ。

 

『オラ! オラオラ! オラ!!』

 

一方の承太郎も、スタープラチナの屈強な拳から放つパンチラッシュで戦闘員達を蹴散らしていく。

スタープラチナのパンチ速度はプロボクサーの倍以上、しかも超高速かつ超精密な動作で繰り出す攻撃は直接戦闘用のスタンドとしては桁違いである。かつては乗っていた車が衝突しそうになったトラックをパンチ一発で吹き飛ばしたこともあるため、下手をすればライダーの攻撃力にも匹敵しある力である。

 

【Attack Ride Slash!】

「てやぁあ!」

「「「「イー!?」」」」

 

ディケイドはライドブッカーを剣に変形させ、いつの間にか取り出したカードをベルトに挿入。刀身にエネルギーを纏わせ、複数の戦闘員をまとめて斬り伏せた。

ライドブッカーはディケイドの力の源であるカードを格納すると同時に、剣と銃に変形する万能武器でもある。しかも銃は、三次元空間に存在しないとされるクラインの壺から無限に供給されるエネルギーのおかげで、弾切れしないのだ。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』

「「「「イー!?」」」」

 

そしてスタープラチナもさらにラッシュの勢いを増し、一瞬にして数十発のパンチを戦闘員達に叩き込む。しかもその全てが命中した。撃ち漏らしが無かったのだ。

スタンドにはステータスパラメーターが存在し、射程が短い物は破壊力とスピードが高く、逆に射程の長いスタンドは低くなる傾向だ。スタープラチナは前者でパワーとスピードは勿論だが、同時に高い精密性も合わせているのだ。それは肉眼では見えない大きさの敵スタンドを、潰さないようにして指でつまむと言うと芸当をやってのけるほどである。

尤も、スタンドには特殊能力を持つものが多いため遠距離型でも攻撃が得意なものは存在するため、一概に弱いとは言い難い。

 

「中々のパワーだな。スピードと手数も桁違いってとこだ」

「てめぇこそ素手でも剣でもやれるあたり、かなり戦い慣れてるようだ。で、雑魚はそろそろ終わり…」

「クロスファイヤーハリケーン!」

 

戦闘員をあらかた片付けたところで互いの実力を認め合っていると、アヴドゥルがスタンドで攻撃して来た。

マジシャンズレッドは炎を操る能力のスタンドらしく、それによって十字架の形をした炎の塊をこちらへ撃ち出して来たのだ。

 

「って、危ねぇな! 喰らえ!」

 

しかし咄嗟に二人は回避し、ディケイドはライドブッカーを銃に変形させてマジシャンズレッドに発砲する。しかしなんと、マジシャンズレッドに銃撃が効かない、というか攻撃自体がすり抜けてしまっていた。

けっこう異質な力になれていたディケイドも、これには流石に驚いた!

 

「な、嘘だろ⁉︎」

「マジで知らねぇのか、おい! スタンドは魂のヴィジョンだから、同じスタンドでの攻撃でしか倒せねぇ! てめぇがスタンドを倒すには、能力者本人を直接叩くしかねぇぞ!」

「おい、そういうことは先に言え‼︎」

 

承太郎から成されたスタンドの説明に、思わず悪態を吐くディケイド。そんな中、今の攻撃で出来てしまった隙を突き、イギーとチーターカタツムリがきらら達に迫り来ることとなる。

 

「イギー、今のうちにあの小娘を人質にしてディケイドどもを袋叩きにしてやるぞ!」

「(ああ、正攻法じゃ勝てそうもねぇからな。それでいくぞ!)」

 

動物型の怪人ゆえか、イギーと意思疎通して作戦を練るチーターカタツムリ。そしてその牙がきらら達に向けられようとしていた。

 

「おい、早く逃げろ!」

「大丈夫、私も戦えます!」

 

直後、きららが手にした杖を振りかざすと、そこから光が発せられて何かが現れる。

 

「……は?」

「な、なんだソイツら……?」

 

ディケイドも承太郎も困惑してしまう。何故ならきららは召喚と思しき技を使ったのだが、それによって召喚されたのは中学〜高校生と思しき少女達だったのだ。

赤、青、黄色と信号機を彷彿とさせる髪色の三人組と、小学生ほどの身長の小柄な少女、そしてどこか天然なオーラを放っている少女であった。いすれも軽装の鎧やらフリル付きの服やら聖女風のドレスやらと、ファンタジーな衣装を纏っている。

 

「うぉっと! いきなりすごいのが来たね‼︎」

「何にしても、るんちゃんたちに手を出すなら許さない」

「ぐへぇ!?」

「ガゥア!?」

 

赤髪の少女が猫耳の付いたハンマーでチーターカタツムリを、小柄な少女がバットでイギーを殴り飛ばす。

 

「きらら、呼ばれて早々あれだけど、何あの化け物と犬?」

「あそこのピンクっぽい全身鎧の人によると、異世界から来た悪者だそうです! あとあの犬の背後にいる怪物は直接は攻撃できないそうなので、呼び出している犬を直接倒してください!」

「トオルは普通に吹っ飛ばしてたけど、なんかやりづらいな……まあ、悪者なら遠慮しないでいいか」

「オッケーだよ、きららちゃん。唯ちゃん、私たちも行くよー」

「じゃあ、私はいつも通り回復に回るね」

 

そのまま唯と呼ばれた黄色い髪の少女が槍を手にチーターカタツムリに向かっていき、残る青髪の少女も目の前に浮かべているオーブからエネルギー弾を発射し、イギーを牽制する。

予想だにしない光景に、ディケイドも承太郎も呆然とする。

 

「な、何だ今の? いわゆる召喚魔法って奴か?」

「それにしても、女しかいねぇぞ。戦力として大丈夫なのか?」

「何を言うんですか⁉︎ あの方達は、この世界の聖典に記されている異世界人"クリエメイト"なんですよ! あなた達なんかよりずっと凄いお方なんですから‼︎」

 

ディケイド達の物言いに憤慨しながら反論するランプ。

女神ソラの記す聖典。これに記されている物語はいずれも実在する異世界の出来事であり、そのため聖典の登場人物はクリエを生み出す者としてクリエメイトと呼ばれている。そしてきららの行使する召喚魔法コールは、このクリエメイト達に呼びかけて異世界から召喚し、その力を借りる魔法なのだった。

しかしクリエメイトはその大多数を女性、それも10代後半の若い少女やその周りの大人(姉妹や学校の先生)が占めている。なのでコールで呼ばれるのも必然的に女性ということなのであった。

 

「クリエメイト?……そうか、あの小娘が伝説の召喚士! ディケイド と承太郎に並ぶ危険分子か!!」

 

しかしランプの言葉を聞いたアヴドゥルは何かを思い出し、それできららに視線を向ける。今の言動から、彼女にも攻撃を仕掛ける気のがわかった。

 

「クロスファイヤーハリケーン・スペシャル! 召喚士を焼き尽くせ!!」

「「まずい‼︎」」

 

先ほどマジシャンズレッドの放った十字架型の炎、それが連発してきららへと発射される。流石にマズイとディケイドも承太郎も感じ、二人はそれぞれ行動を起こした。

 

【Kamen ride KIVA‼︎】

【Form ride KIVA Basher‼︎】

 

別の仮面ライダー、コウモリを彷彿とさせるマスクのライダーが描かれたカードをディケイドライバーに挿入すると、電子音声が流れるとともにディケイドの姿もカードに描かれたライダーに変化する。

そして立て続けに別のカードを挿入すると、右腕が緑色でヒレのような意匠のある形状に変化、そしてその手には緑色の銃が握られている。

ライドブッカーに保管されているカードの中には、他の世界の仮面ライダーの姿と力を借りる物が存在し、ディケイドはそれでファンガイアと呼ばれる吸血鬼種族の王"仮面ライダーキバ"の姿と力を借りたのだ。

 

「炎には水ってな!」

 

そしてディケイドは銃から水の塊を連射して、炎を次々と撃ち落としていく。しかし攻撃が激しかったためか、撃ち漏らしもあった。

しかしそこに承太郎が次の行動へと入った。

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

 

承太郎が叫ぶと同時に、なんとディケイドを含めた周囲にある人物の動きが止まった。というより、マジシャンズレッドの放った炎までが静止しているのだ。

 

DIOとの決着時に承太郎が発現したスタープラチナの最後の力、時間停止だ。元々時間停止はDIOのスタンドであるザ・ワールドがその力を使っていた。ザ・ワールドはタロットカードの世界を暗示し、世界を支配する力としてこの力を発現したのに対し、スタープラチナはその超スピードが光の速度を超えることで時間を停止するのだ。

 

そして静止した時間の中を承太郎は走り、ディケイドの撃ち漏らした炎の前に立ちはだかる。

 

「てめぇがいくらか撃ち落としてくれたおかげで、少し楽になった。感謝する」

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

聞こえていないディケイドに対して礼を言うと、そのままスタープラチナのパンチラッシュを残りの炎に叩き込んだ。

 

「そして時は動き出す」

 

最後に承太郎のその一言で時間停止の限界が訪れ、周囲が再び動き出した。

 

「な!? いつの間にそんなところへ…」

流星指刺(スターフィンガー)!」

「うぐっ!?」

 

アヴドゥルが動揺した隙をついた承太郎は、スタープラチナの人差し指と中指に力を集中し、その二本の指を伸ばして刺突を放った。それは瞬間的に何メートルも伸び、マジシャンズレッドの肩に突き刺さる。魂のヴィジョンであるスタンドはダメージが本体にも直結するため、アヴドゥルも肩を負傷することとなった。

 

「(あの様子、まさか時間を止めたか?)そのブ男は任せた。俺はショッカー怪人を叩いてくる」

【Form rider KIVA Garuru‼︎】

 

ディケイドは仮面ライダーの中にも時間停止を使う存在がいたため、承太郎の行動の正体に気づいたようだ。しかし今は敵を倒すことに専念し、新たなカードをディケイドライバーに挿入し、別の姿になる。

今度は左腕が青く、武器は狼の顔の意匠のある曲刀だ。そしてその姿になったディケイドは、俊敏な動きできらら達の元へと駆けつける。

 

「よし、ここからは俺も加勢する。ありがたく思え」

「あ、どうも。さっきの攻撃も含めて、ありがとうございます」

「あんた何者? テレビの変身ヒーローみたいな見た目だと思ったら別のヒーローになったし…」

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

素直に礼を言うきららと疑問に感じて問い尋ねてくる唯に対して、ディケイドは先ほど承太郎に告げたことと同じことだけ言ってチーターカタツムリに斬りかかる。

 

「くそ、アヴドゥルめ。偉そうなことを言っておいてあのざまか。やはりいくら能力を持とうと生身の人間には荷が重いと言うわけか」

「お前味方のくせに、辛辣なこと言うんだな」

「ガゥア!」

 

チーターカタツムリと斬り合っていると、イギーがザ・フールを出したままディケイドに飛びかかる。するとザ・フールの体が砂と化して槍の形状を作り出して落ちてくるので、咄嗟に回避した。

 

「砂になるのがそのスタンドの力ってわけか。なら、砂は音に弱いってな!」

ガァアアアアアアアアアアアアア!

「グゥァアウ!?」

「うごぉおお!?」

 

直後に手にした剣ガルルセイバーの狼の意匠から、咆哮の様な音を立てて衝撃波が放たれる。イギーとチーターカタツムリをまとめて吹っ飛ばし、大きなダメージを受けたことでイギーもザ・フールを解除してしまう。

 

「すごいよ縁ちゃん‼︎ 本当に砂って音に弱かったんだ‼︎」

「みたいだね〜。ゆずちゃん、今度の部活のテーマにいいかも〜」

 

その横で何やら楽しげに話す赤髪と青髪の少女。唯の友人の様だが、彼女共々名前の様子や部活などと言うワードから、どうやら現代人の様だ。

しかしなにやら勘違いしたまま緩い空気が出ていたため、ディケイドは飲まれない様にスルーを決めることにする。

 

「じゃあ、このままトドメと行くか」

 

 

更にディケイドはコウモリを模した紋章の描かれたカードを挿入する。

 

【Final Attack ride KKKKIVA‼︎】

 

するとディケイドのマスクの口部が開き、そこでガルルセイバーを咥えた。そして駆け出してチーターカタツムリへと飛びかかる。そして一気に体を捻って、咥えたままのガルルセイバーで横一閃を放つ。これによってチーターカタツムリは倒され……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYY‼︎」

「ぐわぁあ⁉︎」

 

なかった。何者かが奇抜な掛け声とともに横からディケイドを攻撃し、妨害したのだ。そのまま必殺技が阻止されると同時に、キバから元のディケイドの姿に戻ってしまった。

 

一方承太郎は

 

『オラァァ‼︎』

「ぐぉお⁉︎」

 

スタープラチナの圧倒的なパワーと精密さはマジシャンズレッドを正攻法の殴り合いで下し、的確にアヴドゥルへとダメージを与えていた。

 

「凄まじいスタンドパワーだ……あのお方がディケイド 共々危険分子と見なすだけはある」

「さて、一旦お前にはノビてもらうぜ。後でそのあのお方とやらについても、詳しく説明してもらうか」

 

そう言って承太郎はアヴドゥルにとどめを刺そうとするが……

 

 

 

 

「おっと。お前に勝たれるとおれの都合も悪くなるんでな!」

「なっ!?」

 

ディケイド同様に何者かが妨害に入ってきたため、攻撃を阻止されてしまう。割って入ってきたのは人間の男の様だが、そいつの放った引っ掻きを避けるも、承太郎の服の袖が大きく引き裂かれることとなったのだ。

 

(なんだ? こいつも何かスタンドを……って、てめぇは!?」

 

男の攻撃について思案しようとした承太郎だが、そいつの顔を見てつい声を上げてしまう。

果たして、突如として現れた二人の乱入者の正体は?




12/22(日)、20:06追記
『』:ベルトの音声やスタンドの声など、人物のセリフ以外の音声
「「」」(カギカッコ複数人):複数キャラが同時に発したセリフ
"":強調したい単語
で統一します。


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第2話「襲来・意外なる刺客」

出てくる敵は、アイズオブヘブンのゲーム中で実際に戦うタッグをベースにしています。しかし他のライダーやジャンプヒーロー、きららキャラがいるため、キャラを動かしやすくするために一部ジョジョのキャラを省く事になります。ご了承ください。

そして、きららキャラが戦闘でガチのピンチになる事も多くなります。流血描写はできるだけしないようにしますが、それでも不快な人は注意です。


「おいおい、苦戦してるようだな。チーターカタツムリ」

「だな。おれ達が加勢に来て正解だったようだ」

 

ショッカー側に加勢に現れた二人組は、どちらも鋭い目つきの金髪の男だった。一人は黒衣に屈強な肉体の青年で、もう一人は水色の服を着たジョッキーという出で立ちで、DIOと承太郎の宿敵の名が書かれた帽子をかぶっている。

承太郎はこの二人に見覚えがあり、しかも二人とも自分の倒した宿敵に瓜二つであったため動揺を隠せずにいた。

 

「てめぇ、DIO? 何で二人もいやがる?」

「ほう……貴様が空条承太郎か。未来のおれを倒した、スタンドとかいう能力の使い手」

 

承太郎を見ながら興味深そうにする二人組だが、片方は今の一言で同一人物であることが明確になった。

 

「おれはディオ・ブランドー。世界の支配者となるため、不死身の吸血鬼になった男だ」

「そしておれはディエゴ・ブランドー。おれの存在についてはお前らに説明する義理もないし、長くなりそうだから省略しておこう」

「過去のDIOとDIOに似た何者かだと? やれやれ、わけわかんねぇ上に厄介極まりねぇぜ」

「ていうか、お前吸血鬼なんてもんと戦ってたのか。中々に波乱万丈な生活してるんだな」

 

宿敵DIOとそれによく似た何者かであるディエゴ、強敵の予感がしてならないため悪態をつく承太郎。ディケイドもまさかの敵と戦ってきた承太郎に、思わず感心してしまった。

 

「たった二人加わっただけで、有利になるって思わない方がいんじゃないかな?」

「そうそう! 私たち3人揃えば、不死身だよ!」

「そう、不死身だよ〜」

「うん。不死身かはともかく、二人でこの状態からの立て直しはまず無理だと思う」

 

ディオとディエゴの加勢について、余裕な様子で返すゆず子達情報処理部の三人とトオル。しかし、ディオ達は企みのある様子の笑みを浮かべ、告げた。

 

「「おれ達がいつ二人だけで加勢したなんて言ったか?」」

「え? って、きゃあ!?」

「「「「るんちゃん!?」」」」

 

直後に何処かから、るんと呼ばれた天然な雰囲気の少女に対して攻撃が仕掛けられてしまう。するといきなり何処からともなく、黄色い巨大な目にブヨブヨした体の、不気味な姿をした怪人が現れた。

 

「俺は怪人ヒルカメレオン。空条承太郎とディケイド、後ついでに召喚士とクリエメイトの抹殺に来た。よろしく頼むぜ」

 

新たな怪人の出現に動揺する中、きららは意を決してクリエメイトたちのサポートに回ろうとする。

 

「トオルさん! 今るんさんに回復魔法をかけますから、避難させて…」

「きららさん、危ない!」

「え? っ、きゃあ!?」

 

しかし直後、ランプが叫びたしたと思いきや、何かがきららを弾き飛ばした。

 

「アリアリアリ〜!マンモー!!

 

きららを吹き飛ばしたのは、鳴き声と同様にアリとマンモスの造形を合わせたような不気味な怪人であった。

 

「アリが小さいと思ったら大間違いだ象!

 

そして新たに現れた怪人、まだ名乗っていないが先程の鳴き声からアリマンモスと容易に予想されたそいつが、所々トーンの変わる声でふざけた言動を繰り返し、今度はクリアメイト達に突撃していく。

 

「小回りの効くアリのボディに、マンモスの突進力が加わった、俺の力を思い知れぇえ!!」

「うわぁ!? 何こいつ!」

「アリとマンモスって、なんだその組み合わせ!?」

「でもこいつ、すっごい強い……!」

 

ゆずこ達はアリマンモスの容姿に突っ込んでしまうも、パワーと小回りを兼ね合わせたアリマンモスは相当な強敵であった。

下手をすれば、きらら一行が対立しているアルシーヴ一味、その最高幹部である七賢者の一人ジンジャーにも匹敵するパワーだ。

 

「さらにダメ出しだ」

「「「イー! イー!」」」

「「「イー! イー! イー!」」」

 

ディオが直後に指を鳴らすと、さらにショッカー戦闘員の追加が来る。しかしダメ出しはこれでは終わらなかった。

 

「そこにおれのスタンドが加われば…」

「「「イー……ぎゃおおおおおおお!」」」

「「な!?」」

 

さらにディエゴがスタンド能力を発動すると、スタンドのヴィジョンが出ない代わりに、なんと戦闘員達が恐竜へと変化したのだ。ヴェロキラプトルのような小型の肉食恐竜で、明らかに獰猛で戦闘力も上がっていた。

 

「これがおれのスタンド、スケアリー・モンスターズ。あらゆる生物を恐竜に変える力だ。早くおれを倒さないと、逃げ遅れた住民やそこの召喚士どもも恐竜に変えちまうぜ」

 

ディエゴのスタンドの予想外の力に驚愕するディケイドと承太郎。しかし、それで戦意を削がれるほど二人は落ちぶれてはいないのだ。

 

「おい、てめぇはディオをやれ。相手は不死身の吸血鬼だ。仮面ライダーとしては生身の人間を殴るってのは御法度だろうが、まず適用されねぇだろ」

「だな。なら代わりに、お前があのディエゴってのをぶっ叩け。そっちは結構遠慮なくやってる感じだろ」

 

互いに攻撃対象を決めたところで、手早く敵を倒してきらら達に再び加勢しようと決めた。そしてディケイドはディオに、承太郎はディエゴに飛びかかる。

 

「成る程、話に聞いた世界の破壊者が相手か。だが変身者はただの人間だろう」

「それがどうした?」

「モンキーが人間に勝てんように、人間が上位の生物である吸血鬼に敵うはずなかろうがぁ!」

 

叫ぶディオはディケイドに拳を振るい、ディケイドもそれに対抗して拳をぶつける。至極当然ながらt単位、それも4tもの破壊力のパンチをぶつけられたディオの拳は血飛沫を上げて爆ぜた。

 

「……ほぉ、相当なパワーだ。貧弱なただの人間という評価は訂正しておいてやろう」

「何!?」

 

しかしディオの腕はメキメキと音を立てながら再生していき、あっという間に元の形状に戻ってしまったのである。

 

「マジか、不死身って比喩じゃねえのか。アンデッドかっつーの」

「貴様も不死の存在と相対したことはあるらしいな。だが、俺はいずれそんな奴らよりも優れた、世界の支配者になるのだよ!」

 

強大な戦闘力もそうだが、それ以上にディオは大きな野心を抱えているこそが真の恐ろしさだった。そしてそのために飽くなき力への探求を続けることとなる、それがDIOとして未来で承太郎が戦った、恐るべき敵というわけだ。

 

「だったらこれはどうだ!」

【Kamen Ride RYUKI!!】

 

ディケイドは対抗しようと新たなカードをセットし、ドラゴンを模した赤い戦士、"仮面ライダー龍騎"へと変身する。

 

【Attack Ride STRIKE VENT!!】

 

次に使ったカードで東洋龍の頭からを模した籠手"ドラグクロー"を腕に装着、そのままディオに向けて拳を構える。

 

「パンチ力を強化して再生できないレベルで粉々にする気か? そうなっても俺は再生できるんだよ、無駄無駄ぁあ!」

 

しかし当のディオ自身は特に気にした様子もなく、ディケイド龍騎へと飛びかかった。

 

「はぁあ!」

「な、ぎゃああああああああ!?」

 

しかし拳から放たれたのは、強力な火炎放射だった。それをもろに食らったディオは、あまりの熱さにその場で悶絶してしまう。

 

「残念、炎攻撃で焼き尽くしてやろうって魂胆だ。まだ死なねえ可能性もあるが、時間稼ぎには十分だろ」

「我らを忘れてもらっては困るな、ディケイド!!」

 

直後、今度はアヴドゥルのマジシャンズレッドによる炎が飛んできて、回避に回ることとなった。

 

「てめぇ、邪魔すんじゃねえ!!」

 

すかさずライドブッカーを銃に変形させ、アヴドゥルに発砲。しかし突如チーターカタツムリが高速ダッシュで回り込み、殻による防御でアヴドゥルを守ってしまった。

 

「ふふ。カタツムリの粘液を潤滑剤代わりにして、そこにチーターの速力を掛け合わせた俺のスピード技、素晴らしいだろ?」

「ガウァア(てめぇの噂はあのお方や過去のショッカー幹部から聞いたが、ここで終わりだぜ世界の破壊者さんよ)」

「くそ、残りの敵が俺んとこに集まりやがった……」

 

スタンド使いとショッカー怪人、不死身の吸血鬼による合同チーム、非常に厄介極まりない。このまま妨害が続けば、ディオの再生も時間の問題となってしまう。

ディケイド、久しぶりの大ピンチ!

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』

「「「「「ぎゃぅああああああああああああああ!?」」」」」

 

一方の承太郎は、ディエゴのスタンドで恐竜化したショッカー戦闘員を蹴散らして回っている。ディケイドに主戦力が集中しているが、逆に承太郎は数の暴力である戦闘員達を纏めて宛がっている状況だった。

スタープラチナのパワーとスピードから繰り出すラッシュは、恐竜化した戦闘員達を片っ端から蹴散らしていく。しかし恐竜化した影響で、彼らのパワーやタフネスも上がっているため、かなりしぶとい。

 

(チッ、やはり恐竜化の大元であるディエゴを倒さねぇと、先にこっちがバテちまう! どこか抜け出せそうな隙間は……)

 

思案した承太郎は、そのままスタープラチナを介して周囲を見回す。もう一度言うが、スタープラチナはパワーとスピードに並んで精密性にも長けたスタンドである。それは放たれた銃弾を指で摘み、暗い場所を写した写真の中から小さなハエを見つけ出せるほどで、それを駆使して包囲網から抜けられそうな場所を探していた。

そして、その場所をついに発見する。

 

(見つけた!)

『オラァア!!』

 

駆け出すと同時に、スタープラチナのパンチで戦闘員をぶっ飛ばし、包囲網を脱出する承太郎。

そしてそのままディエゴへと突撃していく。

 

 

 

「おっと、油断大敵だな!!」

「何!?」

 

なんとディエゴの腕が爬虫類じみた形状へと変化し、それで承太郎に攻撃して来たのだ。先ほど、袖を引き裂いたのはこれによるものだろう。

咄嗟に飛びのいて再びディエゴに視線を向けると、腕だけでなく尻尾まで生えているのが映った。

 

「スケアリー・モンスターズで恐竜化できるの対象は、おれ自身も含まれている。おかげで白兵戦も苦労はしないぜ」

「やれやれ、これは骨が折れるな」

 

ディエゴの言葉にうんざりした様子の承太郎。

 

「「「「イー! イー!」」」」

「「「「「「イー! イー! イー!」」」」」」

 

しかもそうこうしている内に、追加の戦闘員が続々と駆けつけてくる。そしてすかさずディエゴがスケアリー・モンスターズで恐竜化していく。

 

「どうした、空条承太郎? そんなことじゃ、このディエゴ・ブランドーを倒すことは出来ないぞ!」

「くそ、マジでやばいぞこれは」

 

あまりにも不利なその状況に、承太郎は悪態を吐く。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ふふふ、俺のいどころがわかるかな?」

「お前、ウザい」

 

姿の見えないヒルカメレオンに悪態をつきながら、小柄なクリエメイトの少女トオルはバットを振るう。しかし声が聞こえたと思ったところにはおらず、攻撃は空振りに終わってしまう。

 

「うぐ!?」

 

しかもそれを嘲笑うように、ヒルカメレオンの攻撃を喰らってしまう。トオルが倒れたのを確認すると、ヒルカメレオンは姿を見せながら近寄っていく。

 

「貴様程度の小娘、我らオーバーヘブンショッカーからしてみれば脅威度は鬱陶しい蚊程度の存在よ。大人しく軍門に下るなら、お友達共々命は取らんがどうする?」

「るんちゃんを傷物にした奴に従う気なんてない」

「ぶご!?」

 

しかし一瞬の隙を突き、トオルはヒルカメレオンにバットの強打を叩き込む。

 

「くそ……小娘、そんなに死にたいらしいな!」

「なんとでも言って。るんちゃんに近づく不埒な輩は、容赦しないから」

 

そして再び激突しそうになるのだが…

 

「「きゃああああああ!!」」

「うぐっ!?」

 

直後にランプとるんが吹き飛んできて、トオルを押しつぶしてしまう。

 

「るんちゃん? それにランプも、どうして…」

「あの、気色の悪い奴にるん様と一緒に放り投げられて…」

 

そう説明するランプの指さす先に視線を向けるトオル。

 

「アリアリアリアリアリ・マンモ~~!!

「こいつ、悪ふざけが過ぎるっての!」

「でもその割に、めちゃくちゃ強い!」

 

そこには相変わらずのふざけた言動で小躍りしながら、唯とその友人で同じ情報処理部の仲間、ゆずこと縁の三人を翻弄するアリマンモスの姿があった。しかしショッカー怪人は純粋に闘争と破壊のために生み出された本物の化け物である。故に、魔物やアルシーヴ一味といった今までの敵とは比較にならない強さだだったのだ。

そんな中でゆずこは逆転に乗りだそうと、とっておきを繰り出す。

 

「シャキーン! 行くよ博士号!!」

「よし、行けゆずこ!」

 

叫ぶと同時に武器から火の玉を発射すると、どこからともなくドリル付きの戦車のようなものが現れた。先ほどの博士号というのが名前のようだが、よく見ると禿頭に眼鏡の、子供向けアニメで見るベタな博士のイメージを思わせるデザインをしていた。

そしてゆずこはそれに乗り込み、何処からか取り出したドラム缶を投げる準備をしながら、アリマンモスに突貫していく。しかしここでアリマンモスが驚きの行動に出た。

 

「グンタイ!マンモ~ス!!

「え、うそ!?」

 

アリマンモスが敬礼しながら叫ぶと、なんと4体に分身してしまう。そして一斉に突撃し、そのまま博士号を押し止めてしまった。

 

「「俺達を轢き逃げしようと思ったなら、パワー不足だったな」」

「「俺達はこの5,6倍はでかいドリル付き列車に跳ね飛ばされたことがあるんだ象」」

 

アリマンモスは分散した影響か、声のトーンが高い個体と低い個体が半々ずつになって、ゆずこにダメ出しをする。そして4体がかりで博士号を持ち上げ……

 

「「「「マンモー!(マンモー!)」」」」

「うわぁあああああああああああああ!!」

「「ゆずこ(さん)!」」

「ゆずちゃん!」

 

そのままぶん投げた。その投げられた勢いでゆずこは放り出されてしまう。心配になって呼び止めようとしたきらら達だが、更にそれは起こった。

 

「きゃあ!?」

「って、きらら!!」

「ふふふ、召喚士の娘は頂いた!」

 

ディケイドと交戦していたはずのチーターカタツムリが、高速移動できららを捕まえていってしまう。

 

「なんだ、この程度なら透明化は初めから必要なかったな」

「は、離せ…」

「「トオル(様)!!」

 

その一方で、トオルもヒルカメレオンに捕まってしまい、身動きが取れなくなってしまう。

 

「そんでもって……とう!」

「う!?」

「あいた!?」

 

ヒルカメレオンにトオルは放り投げられ、そこに博士号から放り出されたゆずこが落ちてくる。

 

「そら、喰らえ!」

「「「きゃあああ!?」」」

 

するとチーターカタツムリが超高速で駆け寄り、きららを投げつけると同時に手から粘液を放射する。そしてそれが三人に命中してしまい、それを確認したチーターカタツムリは、そのまま高速移動で離脱してしまう。

 

「な、なにこれ……?」

「動けない…」

「あれ? これ、冗談抜きでやばくない!?」

 

粘液がそのまま固まってしまい、きらら達は身動きが取れなくなってしまう。ゆずこも普段のお茶らけた雰囲気も鳴りを潜めてしまう。

 

さぁて、そろそろとどめと行くか

 

そしてアリマンモスが近づき、最後の仕上げに入ろうと攻撃の準備に入る。

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ………」

 

そしてアリマンモスはエネルギーを溜め込む動作に入り、それによって黄金色のエネルギー塊が作られていく。

 

「ゆずちゃん!」

「ゆずちゃん!」

「トオル!」

「ゆずこ様、トオル様!!」

「行かせると思うか!」

 

唯達やランプが助けに行こうとするも、ヒルカメレオンがそれをさせようとしない。伸縮自在の腕と透明化で、なおも変わらずに一同を翻弄する。

 

(早く、カブトかファイズに変身し直して…!)

(スタープラチナで時を止めねぇと!)

「「「「おれたちがお前らを行かせると思うか!」」」」

「ガウア!(そこで味方の死を見ながら絶望してな!)」

 

ディケイドも承太郎も事態を察し、救援に向かおうとする。承太郎の時止め以外にディケイドもこの状況を打破できる手段があったが、ディオとチーターカタツムリ、そして敵のスタンド使い達がそれをさせまいと攻撃を仕掛けてくる。

そしてその時は、来てしまった!

 

 

「アリアリアリアリィィぃぃいいい……マンモー!!

 

そしてアリマンモスの溜めが完了し、巨大なエネルギー弾がきららとトオル、そしてゆず子に発射された。

 

「きゃあああああああああああ!?」

「「うわぁあああああああああああ!?」」

 

エネルギー弾は巨大な爆発を起こし、それがきらら達を飲み込んだ。

 

「そ、そんな……きららさん、ゆずこ様にトオル様も………」

「ゆ、ゆずこが……」

「嘘……ゆずちゃん?」

「え、トオル?」

 

ランプや他のクリエメイトも呆然し、そのまま膝をついて目の前の絶望に視線を向けたまま、固まってしまう。

 

「あっはははははははははははは! やったぞ、危険分子を俺が抹殺してやった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きららファンタジア、完!

あははははははははははは!!マンモォぉおおおおおおおおおお!!

 

そしてアリマンモスが己の勝利を宣言し、高笑いと雄叫びを上げて喜んでいる。

皆が絶望に飲み込まれる……

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ。なら、お前がこの子達の代わりやろうって腹か?

やめとけ、似合わねぇよ」

 

しかし直後、聞き覚えのない男の声が聞こえたので、その場にいた全員が声の出ている先に視線を向ける。

そこはなんと、先程の爆発のあった場所であった。そして爆風によって生じた土煙が晴れると……

 

「え、あなたは?」

「オレンジの……鎧武者?」

【ソイヤッ!】

 

そこにいたのは無事な様子のきらら達と、鎧武者のような風貌の戦士が立っていたのだ。仮面ライダーを思わせるその戦士は、手にはくし切りのオレンジを模した奇怪な形の刀を持ち、腰にも銃口の付いた刀を差している。どうやら前者の方の刀で、アリマンモスの攻撃を相殺してしまったようだ。

纏う甲冑もオレンジを思わせ、加えて登場と同時にベルトから流れた法螺貝の音と電子音声から、まるで果物の戦国武将という奇妙な出で立ちだ。

 

「おらよ!」

「アリリィぃい!?」

 

そしてその仮面ライダーがアリマンモスに斬りかかり、怯んだ隙に蹴り飛ばしてしまう。そしてそのままディケイド達に近寄り、声をかけてくる。

 

「久しぶりだな、ディケイド。加勢に来たぜ」

「鎧武か。まさか神直々の登場とは、かなりの大事みたいだ」

「まあな。で、そっちのが空条承太郎か。俺は仮面ライダー鎧武こと葛葉紘太だ、話は聞いてるぜ」

「話だあ? いったい誰が……」

 

その鎧武と呼ばれた仮面ライダーは自ら名乗ると、承太郎のことを知っているというので誰から聞いたか問い尋ねる。しかしすぐにその情報源が現れた。

 

「当然儂等じゃよ、承太郎。無事で何よりじゃわい」

「来て早々はぐれちまったから心配だったが、会えてよかったぜ」

「士君、いつの間にか一人で旅して……心配しましたよ」

「まさか、こんなファンタジー世界に来ることになるとはなぁ…まあ、元気そうでよかったよ」

 

そこにいたのは承太郎の仲間と思しき二人組で、片方はガタイのいい外国の老人、もう片方は頭頂部で平らに切り揃えた銀髪のこれまた外人である。

更にそれに続いて士の知り合いらしい二人組が登場。片方は丁寧語で話しているが少し気の強そうな女性、もう片方は少し軽そうだが柔らかな表情の心優しそうな青年で、二人とも日本人の様だ。

 

「君が紘太君の話しておった士君じゃな。儂はジョセフ・ジョースター、承太郎の祖父でアメリカで不動産業を営んでおる」

「俺はジャン・ピエール・ポルナレフ。フランスから来たナイスガイなスタンド使いだぜ」

「私は光夏海と言います。承太郎さんの事はジョセフさん達からよく聞いていますよ」

「俺は小野寺ユウスケ、クウガって仮面ライダーになる士の相棒だ。よろしくな」

 

鎧武が連れて来たそれぞれの仲間達は軽く自己紹介し、二人が対峙していたスタンド使い達に向き合う。

 

「紘太君から聞いておったが、本当にアヴドゥル達が敵になって生き返るとはのう」

「だけどジョースターさん、上手く正気に戻せればこいつらも戻ってきてくれるんじゃねぇっすか? その可能性を考えりゃ、むしろ感謝してぇっすけどね」

 

どうやら鎧武はこの事態について把握していたらしく、ジョセフ達も抑えられて事態を知っていた。しかし洗脳を解けば死んだ仲間も戻ってくると、希望を見出して戦闘態勢に入る。

 

「まだ俺を放って置いてるけど、それでいいのかな!?」

 

しかし再びヒルカメレオンがきらら達に襲いかかろうとする。

 

「うっしゃああああああああああッ!!」

「ぐぶぅぁあ!?」

 

しかし、直後に何者かが現れ、凄まじい勢いでヒルカメレオンを殴り飛ばした。

 

「君達、大丈夫かい?」

「え、はい……あの、貴方は?」

 

怪人を殴り飛ばした男に、きららが思わず問いかける。その男は承太郎と何処か似た顔立ちをしているが、雰囲気は彼よりも柔和な物である。しかしその肉体は承太郎よりも屈強で、肩幅もかなり広い。肩にプロテクターを付けているあたり、武闘家の類の様である。

 

「僕はジョナサン・ジョースター、親しい友人からはジョジョと呼ばれている。僕はあそこにいる吸血鬼のディオを追って来たんだが、このエトワリアについても、あそこにいる紘太君から聞いているよ。安心してくれ」

 

ジョセフと同じジョースターの姓を名乗る男。自己紹介をした後、今度はきららの肩に手を当てる。

 

「こぉおおおおおお……」

 

直後、ジョナサンは奇妙な呼吸音とともに、きららの肩に触れている手から淡い赤色の光を発しだす。直後、彼女の体に固まっていた粘液が溶けて落ちたのだ。

 

緋色の波紋疾走(スカーレットオーバードライブ)。仙道波紋法による奥義・波紋疾走で熱を生み出す技だ。これを微弱にして、その粘液だけを燃やすようにしたよ。さぁ、君達も」

 

そのままゆずことトオルにも同じ技を使い、粘液を取ってやるジョナサン。その最中、別の男が現れて、ランプ達の方へと駆け寄る。

 

「嬢ちゃん達、ここはジョースターさんに任せて離れるぜ」

「え? 貴方は……」

「俺はスピードワゴン。ジョースターさんの仲間で、ロンドンの貧民街から来たお節介焼きさ。さて、動けねぇなら肩を貸すぜ」

 

そしてその男、スピードワゴンはそのままランプ達を退避させようとする。

 

「ごめん。逃すのはランプとるんだけにして、私は一緒に戦わせて欲しいんだけどいい?」

「唯ちゃんが残るなら、私も」

「嬢ちゃんどういうつもりだ?」

 

しかし唯と縁がそれを断り、スピードワゴンに理由を語りだす。

 

「あのアリマンモスとかいうふざけた奴に、ゆずこがやられそうだったのがムカついた。だから、せめて一矢報いたいんだ」

「私も、大事な友達のゆずちゃんを怖い目に合わせた、あのお化けをやっつけたいんだ。いい?」

「友の為に戦いたいか……くぅうう、泣かせるじゃねえか!」

 

しかし唯と縁から理由を聞いたスピードワゴンは、止めるどころかノリノリな様子だった。そして早速、ジョナサンに確認を取ろうと声を上げる。

 

「ジョースターさん、この嬢ちゃん達も一緒に戦いらしいんだ! 俺はこの子達の意志を汲んでやりたいんだが、どうしましょう!?」

「……君達の仲間は戦うつもりらしい。君達はどうする?」

 

ジョナサンはまず返事を出す前にゆずことトオル、そしてきららに確認を取った。

 

「あのカメレオンお化けにはるんちゃんを、友達を傷つけられた。大事なるんちゃんを傷物にしたアイツに借りを返したい、許せない」

「私も行くよ! 乗りかかった船っていうか、友達が残るのに私が残らない理由がないもん!」

「私も後方支援なら出来るので、お力にはなれるはずです」

「……成る程、わかった。君にも曲げられない意志があるんだね。なら、一緒に戦おう」

「話は聞いた。俺も手伝わせてもらうぜ」

「皆様、どうか気をつけて!」

「トオル、無茶はしないでね!」

 

そして鎧武も交えて臨戦態勢に入り、チームも組み直しとなった。一方で、スピードワゴンに連れられてランプとるんは撤退することとなった。

一方で承太郎は助っ人達の名前を聞き、なにやら怪しんでいる様子である。

 

「スピードワゴンにジョナサン・ジョースターだ? ジジイ、テメェの祖父とSPW財団創始者、それも若いままの姿で何で揃ってここにいるんだ? どっちもすでに死んでる人間だろ」

「そこに関しちゃ、かなりややこしい状況があっての。まあ二人とも、エリナおばあちゃんが見せてくれた写真と瓜二つじゃから、本人には違いないわい」

「それ以前に、あんたらの敵だって男も過去から来てるらしいからな。今更だろ」

 

SPW(スピードワゴン)財団

承太郎達の打倒DIOの旅のバックアップを図った組織で、先ほどジョナサンとともに現れたスピードワゴンという男が後に興した巨大財団。彼の遺言でジョースターの一族をサポートするよう告げられたことが、旅のバックアップをしていた理由でもある。

 

「まあそれはともかく、夏みかんにユウスケ、久しぶりの実戦だが問題は?」

「無いですよ。それじゃ、久しぶりに行きますよ、キバーラ」

「はぁーい、待ってたわよ」

「じゃあ、俺も行くか」

 

夏海が呼びかけると同時に白い小さな蝙蝠が現れ、夏海がそれを掴む。そしてユウスケが両手を腹部に当てると、そこから赤い宝玉の埋め込まれたベルトが浮き上がる。

 

「「変身!」」

 

夏海とユウスケが口を揃えてそのフレーズを叫ぶと、二人の体も変化した。夏海は先ほどの白い蝙蝠キバーラが宙吊りの様な姿勢でベルトにセットされた、白を基調とした女性版キバのような仮面ライダーだ。

対してユウスケは、赤い体と複眼にクワガタムシのような金の角を生やし、口には牙のような意匠クラッシャーがついている。

それぞれキバの世界に住むキバット族というモンスター種族のキバーラから力を借りた、仮面ライダーキバーラ。

超古代の力で同じく超古代に存在した戦闘民族グロンギを倒すべく変身した、仮面ライダークウガである。

その姿を見て、承太郎もつい感心する。女の仮面ライダーであるキバーラの存在はやはり驚きなのだろう。

 

「あっちの女も仮面ライダーなのか……しかし、あのクウガってやつの方がお前よりも仮面ライダーっぽいな」

「遠慮なくズケズケ言うな、お前も。さて、そっちもスタンドを使えるそうだが、やれるか?」

「おうともよ! 見せてやるぜ、俺のナイスなスタンド"シルバーチャリオッツ"をな!!」

 

ディケイドに促され、ポルナレフも自身のスタンドを発現する。その姿は銀の甲冑を纏った騎士という風貌で、右手のレイピアが攻撃手段のようだ。

それに対してジョセフは右手から紫色のイバラというスタンドの像が浮き上がったため、戦闘には向かなさそうだ。

 

「儂のスタンド、"ハーミットパープル"は見ての通り戦闘には向かんが、長年使っている仙道波紋法との併用が効くんじゃよ。ユウスケ君、悪いが一緒にディオを食い止めてくれんか?」

「了解っす! クウガの力、見せてやるよ吸血鬼野郎‼︎」

「いくら仮面ライダーが人知を超えた力を持とうと、ベースは生身の人間だろう。モンキーが人間に勝てんように、人間が吸血鬼に敵うはずなかろうが‼︎」

 

そして臨戦態勢を整えたクウガとジョセフに、同じく臨戦態勢を整えたディオが飛びかかる。

 

「なら、私はポルナレフさんとあの洗脳されているらしい方達の相手をします」

「トレビアーン! 夏海ちゃんみたいな美女がタッグなんて、願ったり叶ったり出せ‼︎」

「そうやって調子付いていられるか、ライダーども‼︎」

 

キバーラもチャリオッツ同様にレイピアが武器のため、ポルナレフとタッグを組みアヴドゥルとイギーに立ち向かう。

 

「ならあのジョナサンってのと鎧武に向こうの怪人は任せて、俺らで残りの奴らを叩くぞ」

「消去法でそうなるか……やれやれだぜ。だがまあいい、いくぞ」

「いくら数が増えたところで、おれを倒せるかな‼︎」

「ディエゴ、そこは俺たちじゃないのか⁉︎」

 

ライダーとスタンド使いが集結し、戦いの火蓋は切って落とされるのだった。



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第3話「ジョースター、そしてライダー」

恐らく、年内最後の投稿になります。
元々一話ごとの文字数が多いですが、今回は複数の戦闘を一気に消化するため、かなり長いです。ご注意を。


鎧武&情報処理部vsアリマンモス

「おらよっ!」

「アリリ!?」

「メーロリン!」

 

鎧武がくし切りのオレンジを模した刀"大橙丸"でアリマンモスに一閃、そこにすかさず縁が魔法を放ってダメージを与えていく。

 

「そこにもういっちょ!」

舐めんな、小娘!!

 

すかさずゆずこがハンマーを叩きつけると、アリマンモスはそれをたやすく受け止める。そして力比べになったと思いきや……

 

「アホか、隙だらけだ!」

「アリリぃい!?」

 

背後から唯が槍をぶっ刺し、アリマンモスに的確にダメージを与えていく。

 

「ぎゃおおお!」

「って、やば!?」

 

そこに恐竜化したショッカー戦闘員が食らいつこうとするが、その牙は唯には迫らなかった。

 

ダンっ!

「ぎやぉおう!?」

「隙だらけだぜ、周りに気をつけろよ」

「あ、ありがとう」

 

鎧武のもう一振りの刀"無双セイバー"に取り付けられた銃口から弾丸が放たれ、戦闘員を撃破したのだ。するとまた新しく戦闘員が現れ、再び数の優位が相手に回ってしまう。

 

「すまねぇけど、周りの雑魚を片付けとくから怪人の相手を頼めるか?」

「え、あ、はい! でも、なるべく早めでお願いします!」

「了解だ」

【LOCK OFF】

 

唯からの了承が得られた鎧武は、ベルトについていた錠前・ロックシードを外す。するとオレンジを模した甲冑と大橙丸が消えるが、苺の描かれたロックシードを取り出した。そしてそれを代わりに解錠する。

 

【イチゴ】

 

直後に流れた電子音声と共に、鎧武の頭上にジッパーのような空間の裂け目が現れ、そこから金属質な巨大苺が現れた。

 

「え、何アレ!?」

「すっごーい! でっかいイチゴだよ〜!」

「わかってるよ縁! でも今はこっちに集中して!」

 

ゆずこ達も当然反応するが、鎧武は気にした様子もなく、ロックシードをベルトに装着し、刀を模したパーツを下ろす。

 

【LOCK ON! ソイヤ!】

【イチゴアームズ!シュシュッと・スパーク!】

 

すると電子音声が流れると、直後に頭上の巨大苺が頭から被さる。そしてそれが展開され、新しいアーマーと化した。

 

「じゃあ改めて、ここからは俺のステージだ!」

 

そして鎧武は手に現れた苦無・イチゴクナイを戦闘員達に投げつける。

 

「イー!?」

「ぎゃああおぅ!?」

「オラオラオラァァ!」

 

立て続けにイチゴクナイを投げつけ、恐竜化したものからそのままの姿のものも、次々と撃破していく。

 

「このまま一気に一気に行くぜ!」

【LOCK ON!】

 

そしてある程度の数を倒すと、鎧武は決め技を使う準備に入る。ロックシードを外して無双セイバーに取り付けると、再び電子音声が流れて刀身が赤く光りだす。

 

【一・十・百・千・イチゴチャージ!!】

「オラァァ!」

 

そして始まったカウントダウンの完了と同時に、鎧武は天へと向けて無双セイバーを振る。すると巨大な苦無形エネルギーが撃ち出され、炸裂して無数のエネルギー弾として戦闘員の大群に降り注ぐ。

 

「「「「「イー!?」」」」」

「「「「「ぐぎゃおおおお!?」」」」」

「全滅! 嘘だろ!?」

 

結果、残りの戦闘員は全滅することとなった。あまりにも呆気ない決着に、アリマンモスも驚愕する。

 

「あ、あんなに居たのにみんなやっつけちゃった……」

「すっごーい! 鎧武って、本当にヒーローなんだ!!」

「そんなかっこいいもんじゃないさ、俺は。じゃあ、とどめ行くぜ」

『オレンジ』

 

驚嘆する唯と素直にテレビのヒーロー番組のように楽しんでいる縁に、謙遜しながらロックシードを切り替える鎧武。

 

【LOCK ON! ソイヤ!】

【オレンジアームズ! 花道・オン・ステージ!】

「認めんぞ…鎧武の超越者としての姿ならともかく、基本の姿に俺が負けるなんて……」

 

最初に使っていたオレンジのロックシードを発動した鎧武。しかしその姿と今の状況にアリマンモスは怒り心頭な様子だ。

 

認めんぞこの野郎ガァアあああああああああ!!

「生憎、どんな目的だろうと罪のない女の子を傷つけた奴を、俺も許す気はねぇぞ!!」

【LOCK ON!】

 

アリマンモスは怒りに任せてまたエネルギーチャージを行う。しかし鎧武もアリマンモスは徹底的に叩き潰す気のようで、無双セイバーと大橙丸の柄同士を連結したナギナタモードにし、そしてロックシードを先ほど同様に取り付けた。

 

「消えてなくなれ、鎧武とクリエメイトどもがぁああああ!!」

 

アリマンモスは今度は一発の強力なものではなく、大量のエネルギー弾で手数勝負に出た。しかし鎧武は……

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

薙刀モードの無双セイバーを棒術の様に振り回して、飛んできたエネルギー弾を防ぐ。そして程なくして、エネルギー弾は尽きた。

 

「うわ、すご……」

「うん。私らには一発も届いてないや…」

「な、何ぃい!?」

 

ゆずこと唯の呟きが耳に入ったアリマンモスは驚愕の叫びを挙げる。そしてその隙を鎧武は見逃さなかった。

 

「このまま輪切りにしてやるぜ!」

 

そして薙刀モードの無双セイバーをX字に振ってエネルギー波を飛ばす。

 

「グェええ!しまった!?

 

それを食らったアリマンモスはオレンジの形をしたエネルギー球に閉じ込められ、身動きが取れなくなる。そしてそれを確認した鎧武は、大橙丸の刃を向けて駆け出した。

 

【オレンジチャージ!】

「せいはぁー!」

「アリぃいいいいいいいいいいいいい!?」

 

そしてそのままアリマンモスに必殺の横一閃・ナギナタ無双スライサーを放ち、一刀両断。結果、爆発四散し倒された。

 

「やった!」

「すご〜い!」

「ふぅ、一時はどうなるかと思った…」

 

鎧武の勝利にゆずこ達は沸き立ち、皆が安全を確信して安堵もした。そんな中で唯は、ある疑問を鎧武にぶつけてみる。

 

「さっきの法螺貝の音とか、花道・オンステージって音声とか、何なんですか? 何か意味が……」

「開発者の趣味らしいぜ。意味も特になさそうだ」

 

その言葉を聞き、唯はずっこけた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ジョナサン&トオルvsヒルカメレオン

「ふふふ。俺の姿が見えん中、どう戦う?」

 

ヒルカメレオンは、相変わらず姿を消してこちらを翻弄しようとする。故にジョナサンもトオルも正攻法の戦いを得意とするため、苦戦は必至と思われた。

 

「ハァア!」

「くっ!?」

「うっ!?」

 

ヒルカメレオンは透明化したまま伸びる腕でジョナサンとトオルを狙う。

 

「イー!」

「はぁ!」

「しつこい」

「イー!?」

 

更にこちらにも戦闘員達が湧いて来ており、数の暴力で抑えようとしてくる。

敵の数はこちらの方が多いが、恐竜化したものがいないためか二人だけでもそれなりに倒せていた。しかしこのままでは拉致があかず、ジョナサンは活路を見出すべく行動に出ることを決める。

 

「雑魚を一気に片付けると同時に、僕が奴を見つける。悪いけど君は、奴に一撃入れてくれるかい?」

「ん、そこの判断は任せる」

 

トオルから了承を得られたジョナサンは、腰につけていた水筒を開け、中身を口に含む。

 

「(ツェペリさん、技をお借りします)

波紋カッター!!」

パパウパウパウ!

「「「「「イー!? イー!!」」」」」

 

直後、ジョナサンは口に含んだ水に波紋を通し、それを超高速で歯の隙間から射出した。そしてそれが命中したショッカー戦闘員たちは、体を貫かれて爆発四散するのだった!

ジョナサンの波紋の師匠ツェペリ男爵の得意技を、見事に使いこなした瞬間である!

 

「すごい! ジョースターさんの若くパワフルな肺活量とそこから生み出す波紋エネルギー、そして舌の筋力のおかげでツェペリさんのそれより威力が出てやがる!」

「えっと、なんでぱっと見でそこまでわかるんですか…」

 

スピードワゴンもその様子に興奮しながら解説、そこに若干引きながらも感心するランプであった。

しかしジョナサンの行動はまだ終わらなかった。彼の口にはまだ水が残っており、これに波紋を溜め込んで探知機と化したのだ。

 

「(僕の口の中から外へ、それで肌から、足から、地面から、波紋が伝わる。ヒルカメレオンの居場所は……)そこだ!」

パウッ!

「ぬぐぁっ!?」

 

ジョナサンは背後に振り返り、残った水を波紋カッターで射出する。するとそこにヒルカメレオンがおり、カッターが命中して透明化が解除されたのだ。

 

「今だ、トオル!」

「了解」

 

そしてジョナサンの叫びに合わせてトオルも駆け出す。

 

「りんぴょうとーしゃー」

「ブゲッ!? ガハッ!? ぐがぁあ!!」

 

そのままトオルは気の抜けた掛け声とともにバットを振るい、ヒルカメレオンに連続殴打を叩き込む。

しかし攻撃はこれだけで終わらず、いつの間にか宙に浮き輪やサメの形の浮き袋やらと海でのレジャーグッズが浮いているのが見えた。そしてトオルは、これを足場に空高く飛び上がると、何故かそこにサイパンと書かれたゴムプールが鎮座していた。

 

「トロピカル・ビッグウェーブ」

 

またも気の抜けた掛け声で技名を叫びながら、なんとゴムプールをバットで一刀両断したのだ。そして驚くことに、そこからゴムプールの容量に合わない大量の水が滝のように降り注いだ。

 

「な、アァアアアアアアアアアア!?」

 

そのまま流されていくヒルカメレオンは、予想外の攻撃に情けない悲鳴をあげるしかなかった。

 

「な、なんとも言えないシュールな攻撃だが、あの嬢ちゃんの動き、妖精みたいに軽やかだ! 実は戦士として最高レベルじゃないのか!?」

「まあトオル様はるん様に近づく不埒な男を追い払うために、とことん力を使っていますから!」

 

またもノリノリな様子で実況をするスピードワゴンに、ドヤ顔で自分のことのように自慢するランプ。

 

「ぜぇ、ぜぇ…………こいつ、コケにしやがって!」

 

しかしヒルカメレオンは息も絶え絶えになりながらも、立ち上がってこちらへと駆け寄って来た。しかしトオルの攻撃が効いて疲弊したからか、透明化しないままであった。

 

「紘太君から聞いたが、君達ショッカー怪人は人間を改造と洗脳して生み出されるそうだな。なら、君も実は被害者なのかもしれない」

「え?」

 

ジョナサンの急な呟きに、トオルは思わず動揺する。しかし同時に、ジョナサンの口からコォオオッという独特の呼吸音が聞こえ、その直後に彼は叫んだ。

 

「しかし、それでも君達は無垢な命を踏み躙り、支配しようとしている。ならば僕も仮面ライダー達とともに、罪を背負う覚悟で戦おう。人間の尊厳と自由を守るために!!」

 

直後ジョナサンの両手に黄金のオーラが現れ、そのまま拳を構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!

刻むぞ血液のビート!!

「グォオ!?」

 

そしてジョナサンは叫びながらヒルカメレオンを殴り、

 

山吹き色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)!!

「グァアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

そのまま黄金の波紋のオーラを纏った拳で、スタープラチナのラッシュにも引けを取らない百裂拳をヒルカメレオンに叩き込んだ。

しかしスピードワゴンはこの光景を見て、ある懸念があった。

 

「すげぇ強力な波紋だが、奴は吸血鬼やゾンビじゃねぇ。炎を生む緋色の波紋疾走(スカーレット・オーバードライブ)ならともかく、出力はあれど生命エネルギーを流し込むだけの波紋疾走で果たして倒せるのか!?」

 

しかし、そのスピードワゴンの心配は無用だった。

 

「ムグ!?」ブチブチ! ブチュ!

「波紋の流れる音が聞こえたな」

 

ショッカー怪人は、先ほどジョナサンの口にした通り、人間を改造して生み出されている。つまりその存在は歪められた生命、石仮面の吸血鬼と化したディオやゾンビと広義の意味では近しい存在だった。それが強力な、太陽と同質の生命エネルギーである波紋を受け付けなかったのだ!

これはショッカー製の怪人だから波紋が効いたのであり、もしここで鏡の中の世界に住むというミラーモンスター(龍騎が戦っていた敵)など、生まれついての怪物を送り込まれていれば波紋は効かず、ジョナサンは負けていた!

つまり、天が味方したのである!!

 

「ぎゃあああああああああああああ!?」

 

ヒルカメレオンは絶叫し、爆発四散! ジョナサン・ジョースターの完全勝利である。

 

「やった、ジョースターさんの勝ちだ! 仮面ライダーじゃなくても、怪人を倒せるということを、ジョースターさんは証明してくれたんだ!!」

「待ってください、トオル様のとっておきが効いてたから、あの技でとどめをさせたんですよ! トオル様あっての勝利ですから!!」

「ランプ、抑えて。君も落ち着いて」

 

勝利の様子に興奮気味の、スピードワゴンとランプを抑えるマッチ。こちらはもう大丈夫そうだ。

 

「さらばだ、ヒルカメレオン…」

 

しかし勝利したのに、ジョナサンからは哀愁を漂わせているのを、近くにいたトオルのみがそれを感じた。やはり被害者だった可能性のあるヒルカメレオンの命を奪ったことに思うところがあるのだろう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

キバーラ&ポルナレフvsアヴドゥル&イギー

「「ハァア!」」

「ふん!」

 

キバーラとポルナレフのシルバーチャリオッツによる剣戟は、アヴドゥルとイギーに的確に攻撃している。しかし二人とも生来のスタンド使いということもあり、その戦闘力は高かった。

 

「調子に乗るな、小娘と若僧が!」

 

アヴドゥルが激昂すると同時に、マジシャンズレッドの拳が炎を纏い、殴りかかってきた。

 

「うぉ、危ね!?」

「す、凄い熱さです…!」

 

とっさに回避する二人だが、キバーラの指摘通り凄まじい熱気が二人を襲う。マジシャンズレッドの炎は鉄柵も余裕で溶かす威力のため、恐らくは1500℃は温度があると推測される。

 

「ガゥ!」

 

そこにイギーがザ・フールの前足によるひっかき攻撃を繰り出すので、とっさに回避する。二体ともスタープラチナには劣るが、近接パワー型のため素の攻撃力は高い。ライダーでも喰らえば無事では済まないだろう。

 

「レッドバインド!」

 

アヴドゥルが技名を叫ぶと、マジシャンズレッドが炎を放つため、キバーラとチャリオッツが回避する。しかしその炎が二人を追尾してくるのだ。

 

「うそ!?」

「夏海ちゃん、この技は炎を使った拘束だ! 破壊しない限りは逃げられねぇから、俺に任せてくれ!」

 

ポルナレフはキバーラに一つ注意すると、そのままチャリオッツによる剣戟で炎を切り裂いていく。しかし攻撃が思いのほか激しく、キバーラの方にも向かってしまう。

 

「夏海、賭けになるけど魔皇力を使ってみない?」

「……なるほど、わかりました。どの道このままだとやられてしまいますし」

 

ベルトになっていたキバーラから夏海(仮面ライダーキバーラ)へと提案がされ、一つの賭けを実行することとなる。

キバーラの持つサーベルに、キバの世界に住むファンガイアやキバット族のような生物”十三魔族”の使う魔皇力というエネルギーが纏わった。

 

「……これで、どうですか!」

「何!?」

 

レッドバインドは魔皇力を纏った剣戟で相殺され、アヴドゥルが動揺する。スタンドが魂のエネルギーのためスタンドによる攻撃でしか倒せない=スタンドが発生させた炎などの攻撃もスタンドにしか相殺できないのだ。しかし今、そのルールが覆された。アヴドゥルが驚くのも仕方ないだろう。

 

「な、嘘だろ!?」

「たぶんですけど一部のライダーの能力、魔法みたいな超常的なパワーなら魂みたいに実体のない力にも効くと思ったんです! で、今がチャンスかと!」

「あ、そうだった!」

 

夏海が推測をポルナレフに語ると、そのまま反撃を促す。そしてポルナレフは、シルバーチャリオッツの切り札を発動する。

 

「いくぜ、防御甲冑解除!!」

 

ポルナレフが叫ぶと、シルバーチャリオッツの装甲がパージされて身軽そうになった。しかし全体的に細身な上に胸に肋骨のような意匠が見え、打たれ弱そうな印象にも感じられた。

 

「アヴドゥル、覚えてねぇだろうからもう一度言わせてもらう……

 

 

 

 

 

 

今度の剣さばきはどうだぁああああああああああ!!

 

ポルナレフの叫びとともに、なんとシルバーチャリオッツが分身したのだ。

 

「な、一人で複数のスタンドだと!?」

「いや、こいつは残像だ。俺の騎士道精神に則って、能力を明かしたまま勝たせてもらうぞ」

 

ポルナレフはチャリオッツのこの技の詳細を明かすが、だからといって残像が見えるような超スピードを対処できるとは到底思えない。しかしアヴドゥルはDIOに洗脳されていた過去の彼がこれを使っていて、なお勝ったのだ。油断大敵である。

 

「行くぜ、夏海ちゃん」

「はい、わかりました」

 

そしてチャリオッツとキバーラは揃って剣を構え、再びアヴドゥルとイギーに向かっていく。

 

「ならば迎え撃つまでだ。行くぞイギー!」

「ガルル(いちいち命令するんじゃねえっての)」

 

アヴドゥルの呼びかけに、イギーは心の中で悪態をつきながら生意気そうに唸る。しかしそれでも律義に共闘するために並んで向かっていった。

 

「クロスファイヤーハリケーン・スペシャル!!」

「ガウゥア(潰れちまいな、ライダーにジョースターの仲間)!」

 

アヴドゥルは先ほども使った十字架の炎の乱射を、イギーはザ・フールが変形した砂のブロックを頭上から落とす攻撃を同時に放つ。

 

「夏海ちゃん、ちょっと失礼するぜ」

「え…きゃあ!?」

 

するとポルナレフは、チャリオッツの左腕でキバーラの体を抱え、そのまま高速移動したのだ。人体、それも鎧を纏って体重が増した仮面ライダーを抱えることで残像こそ出なくなったが、それでも生身の人間の動体視力では捉えきれないスピードだ。

 

「夏海ちゃん、アヴドゥルの手が読めて来たんだが…」

「え、本当ですか?」

 

しかしその中で、ポルナレフはチャリオッツを介してキバーラと相談をした。この戦いに勝つための相談を。

 

「その状態でそのスピード、驚嘆する。しかしそれでも当てて見せよう!」

 

しかしアヴドゥルの攻撃は予想上に激しく、今の超スピードでも振り切れない。

 

「別に振り切る必要はねぇぜ」

「そうですね。相殺すればいいわけですから」

 

しかし余裕そうな状態で二人が言うと、そのままチャリオッツのレイピアと左手に持ち替えたキバーラのサーベルを構え、それを超スピードで振るった。

乱れ斬りとでも言うべき連続攻撃に、アヴドゥルの攻撃は見事に相殺された。

 

「甘いな」

 

しかし直後、地面から新たな炎が噴き出した。アヴドゥルはいつの間にか奇襲用に別の攻撃を放っていたのだ。加えてザ・フールも飛びかかっており、八方ふさがりである。

 

「……読んでたぜ、アヴドゥル」

「ポルナレフさん、お願いします!」

 

しかし直後、ポルナレフはチャリオッツにキバーラを投げさせた。それにより再び身軽になったチャリオッツは一瞬でザ・フールの背後に回り、剣を高速回転して風を起こす。その風で砂のボディをしたザ・フールは吹き飛び、アヴドゥルの炎を浴びることとなる。

 

「ウゥウウウ!?」

「イギー、砂のスタンドであるザ・フールには剣や拳による攻撃は効かねえ、それは重々承知だ。だが、炎のような細かい粒の一つ一つに攻撃できる手段があれば、ダメージは多少は与えられるんじゃねえか?」

 

ポルナレフの指摘通り、イギーは出血しているため、ダメージを受けているような様子であった。

 

「はぁあああ!」

「な、くぅう!?」

 

そしてキバーラの魔皇力を纏ったサーベルが、マジシャンズレッドの体に一閃を放つ。その傷が本体であるアヴドゥルにも付き、大きな出血をすることとなる。戦闘は継続不能であった。

 

「生身のあなたではもう勝ち目はないです。降参してください」

「……くそ、ライダーめ」

 

キバーラの宣言に、忌々し気な態度のアヴドゥルであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

クウガ&ジョセフVSディオ・ブランドー

「はぁあ!」

「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

クウガとディオの拳がぶつかり合い、ディオの右腕がひしゃげる。仮面ライダーのt単位のパンチは、やはり生身の体では再生するとはいえ破壊され、しばらくは使えなくなる。

しかしディオも学習していた。

 

「な!?」

「貴様ら仮面ライダーのパワーは重々承知だ。しかしこの技を使えばパワーに関係なくダメージを通せるのだよ」

 

直後にクウガの右腕がディオに掴まれたと思いきや、なんと腕が凍り付いたのだ。

これこそディオが波紋法に対抗すべく編み出した”気化冷凍法”である。水が蒸発すると周囲の熱を奪うという性質を応用し、自身の肉体の水分を気化させることにより触れた物を瞬時に凍らせるのだ。

 

「ユウスケ君、離れろ!!」

 

直後、ジョセフがハーミットパープルを発動し、ディオを拘束しにかかる。

 

「ふ、無駄無駄ぁああ!!」

 

しかしディオは驚異的な跳躍力でそれを回避、とっさにクウガの腕も離すこととなってしまった。

 

「だったら、これで……ハァア!!」

 

直後、クウガの左腕を覆う氷が砕け散った。普通はこれで腕ごと砕けてしまうが、クウガの変身ベルト・アークルには霊石アマダムと呼ばれる神秘の石が埋め込まれていた。それによりアークルの装着者は肉体を異常に頑強に、且つ高い再生能力を与えるのだ。それを使い、彼は砕けた端から腕を再生してみせたのだ。

 

「なら……超変身!」

 

そしてクウガのその発言とともに、体が赤から青へと変わった。そして、ディオの後を追って凄まじい高さまで跳び上がった。

クウガは基本の赤い姿、通称マイティフォームから何かしら特定の能力に特化したファームへと姿を切り替えられるのだ。青はドラゴンフォームと呼ばれ、パワーが落ちる代わりに俊敏さやジャンプ力をはね上げるのだ。

 

「お前をここで倒せば、ジョセフさん達の因縁も無かったことになる。犠牲も消えるってことだ!」

「ちっ、小賢しい!」

 

そして空中でドッグファイトが始まるのだが、パワーを落としたドラゴンフォームでは武器も無しに有効打を与えられない。

 

「力がダウンしたようだが、無駄の積み重ねとなったようだな!」

「うぐぁあ!?」

 

結局は力負けし、クウガはディオに地面に叩きつけられてしまう。しかしその時、地面に落ちている何かを見つけてそれに光明を見出した。それは、先程るんが攻撃を受けた時に落とした杖だった。

 

「よし、これで」

 

クウガがその杖を手に取ると、なんとそれが形状を変化させたのだ。マイティフォーム以外のクウガには各フォームごとに専用武器が存在し、それに対応した形状の物体をその武器に作り変える能力が備わっていた。

ドラゴンフォームの武器は、古代文字の刻まれた美しい青い装飾の棒・ドラゴンロッドだ。最大2mまで伸びるそれを駆使した棒術で、落ちたパワーを補うのである。

 

「おりゃああ!!」

「くそ、忌々しい!」

 

ドラゴンロッドを手にしたクウガは、そのままディオと打ち合いに入る。クウガの実戦で鍛え上げた棒術と、ディオのパワーと打ち合っても傷一つつかないロッドの強度もあり、的確にダメージを与えて行く。

しかし不死身のディオはどれだけ大きなダメージを与えても、すぐに再生してしまうため、このままではジリ貧だ。

 

「今じゃ! ハーミットパープル+波紋疾走!!」

 

そこにすかさず、ジョセフが波紋を纏わせたハーミットパープルを放つ。

 

「無駄ぁああ!」

「Oh my god!?」

 

しかし打ち合いの最中であったにもかかわらず、ディオは飛び上がってたやすく回避してしまった。確実に当てられると思ったため、ジョセフもショックで叫ぶ。

 

「ふ。ジョジョの子孫というからどれほどのものかと思っていたら、この程度とは……」

 

 

 

 

 

 

 

「なぁぁんて……な!」

「何!?」

 

しかし直後ジョセフが不敵な笑みを浮かべたと思いきや、着地したディオの足元からロープが伸びて縛られてしまう。見るとジョセフがロープを引っ張っている姿が映り、罠を仕掛けていたと理解できた。

 

「ユウスケ君、今じゃ!」

「はい!」

 

ジョセフは波紋をロープを通してディオに流すと、それに合わせてクウガも再びマイティフォームに戻る。そして構えをとったと思いきや、右脚に炎が灯った。

 

「貴様、未来から来たなら気化冷凍法がある限り、おれに波紋は効かんと知ってるはず……なぁあ!?」

「おりゃああああああ!!」

 

そしてその脚でクウガはディオに飛び蹴りを放つ。

 

「知ってるとも。だからクウガの力を聞いてユウスケ君と組もうと考えたわけじゃ」

「そういうことだ。喰らえ、ディオおおおお!!」

 

そしてそのままクウガの必殺の蹴り、マイティキックがディオの腹にクリーンヒット! ディオの体は大きく吹き飛んだ。

 

「ぐぅうう……な、これは!?」

 

直後、キックを喰らった箇所に何やら刻印のようなものが刻まれている。しかもその刻印を中心に、ディオの体にヒビが入って来たのだ。

かつてのクウガはグロンギを倒す際、この蹴りや武器を介した攻撃で封印エネルギーを流し込み、それでグロンギを封印した。しかしそれはアークルを生み出した古代人"リント"が戦いで相手を殺すという概念を持ってないためその結果になっただけで、殺す概念を持つ現代人がそれを使えば、どんな相手も問答無用で即死されるのだ。

 

 

 

 

 

しかし、ディオは意外な方法でこの危機を脱してしまったのだ。

 

「おれはこんなところでは死なんぞ!

WRYYYYYYY!!」

「「何!?」」

 

なんと、ディオは鳩尾のあたりから自身の胴体を切り捨て、その場から腕の力だけで天高く飛び上がったのだ。切り捨てられたディオの体のみが木っ端微塵になり、本人はまだ仕留められていない。完全に予想外であった。

しかしさすがに、このまま戦闘を継続するのは難しそうな様子だ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ディケイド&承太郎VSチーターカタツムリ&ディエゴ

 

「さて、まずは戦力強化と行くか」

「ディエゴ、あれだな。よし、どんとこい!」

 

直後にディエゴのとった行動、それはスケアリー・モンスターズでチーターカタツムリの体を部分的に恐竜化させるというものだ。それにより、チーターカタツムリは左腕と尻尾がティラノサウルスの様な形状へと変わり、より攻撃的なフォルムとなる。

そしてディエゴ自身は、いつの間にかこちらに来ていた恐竜化戦闘員に騎乗する。これで機動力をあげるつもりの様だ。

 

「数の差も人質も解決した、なら遠慮はいらねぇな」

「ああ。速えところ、ぶっ倒しちまうぞ」

 

しかしこの程度のパワーアップで怖気付く様な二人ではない。片や歴戦の勇士で仮面ライダー、片や激戦を終えたばかりの無敵のスタンド能力者、フィジカルもメンタルもすでに最強クラスな奴らである。

 

「奴のスピードを10秒だけ超える術がある。俺はそれで行くぞ」

「偉く限定的だが、まあいい。任せるぞ」

 

そう言って、ディケイドは新しいカードでまた別の仮面ライダーに姿を変えた。

 

【Kamen Ride FAIZ!!】

 

そして変身したのは、黒と銀を基調としたボディに、紅いラインが走る、メカニカルな装甲の仮面ライダーだ。

名を仮面ライダーファイズ、仮面のデザインがギリシャ文字のφ(ファイ)を意識したデザインをしたのが特徴である。

 

「まず、こいつを使わせてもらうか」

【Attack Ride FAIZ OutBazin!!】

 

直後、町のはずれに停めてあったマシンディケイダーに変化が起きた。なんとそれがシルバーのオフロードバイクになったかと思いきや、さらに変形して人型ロボットになったのだ。

そしてそのマシン・オートバジンは空を飛び、ディケイドファイズ達の元へと駆けつける。

 

「ろ、ロボットだと?」

「これも仮面ライダーの力だ。雑魚はこいつに任せておけ」

 

そう言いながらディケイドファイズは、オートバジンを恐竜化した戦闘員の群れに嗾ける。オートバジンはタイヤが変形したガトリングを乱射して、戦闘員達を蹴散らしていく。

 

「んでもって、さっき話した10秒間の始まりだ」

【Form Ride FAIZ Axel!!】

 

直後、ファイズの胸部装甲が展開され、体の赤いラインが銀色に変化、複眼も黄色から赤になる。

ファイズの強化形態、アクセルフォームだ。

 

「ちぃっ! なら、加速させる前に倒せばいいだけのこと!」

 

そしてチーターカタツムリは再び加速し、ディケイドファイズに突撃していく。

 

「さて、反撃開始だ」

【start up】

 

しかしディケイドファイズは突進を見切って回避、そのまま腕についていたリストウォッチ型のツール・ファイズアクセルのスイッチを押す。その直後、電子音声と同時にその姿が消えた。

 

「しまっ……ぐぉおお!?」

 

その後、チーターカタツムリが吹き飛ばされる。しかし吹き飛んだ先で今度は逆方向に吹き飛び、またその先で逆方向に吹き飛ぶ。そんな感じです何度も何度も、チーターカタツムリが吹き飛ばされる光景が現れることとなる。

 

【3…2…1…】

「がはぁあ!?」

『time out』

 

そしてカウントダウンの終了に合わせ、チーターカタツムリは数メートル先まで吹き飛び、さっきまで立っていた場所にディケイドファイズの姿が現れる。

 

【reformation】

 

そして最後に流れた電子音声と同時に、再び胸の装甲が閉じる。そしてそのまま元のディケイドに戻った。

 

〜スロー再生〜

『start up』

 

ファイズアクセルから流れた電子音声と同時に、ディケイドファイズの動きがチーターカタツムリを上回るスピードでその背後に回り、蹴りで吹き飛ばす。

 

「……からの!」

「ぐふぉお!?」

 

そして吹き飛んだ場所に先回りして、今度は右ストレートを叩き込む。

 

「そらよ!」

「ぎゃあ!?」

 

そしてまた吹き飛んだチーターカタツムリを、先回りして蹴り飛ばす。 そのような攻撃を十数回は繰り返される。

 

【3…】

「はぁあ!」

 

そして加速終了の3秒前に入ったことを知らせる、カウントダウンの音声が入ると同時に、数発のジャブを叩き込む。

 

【2…】

「たぁあ!」

 

そして回し蹴りで大きく吹き飛ばす。

 

【1…】

「これで、最後だ!」

「がはぁあ!?」

 

そして最後に吹き飛ばした方は先回りし、強烈な右ストレートを叩き込んだ。

 

【time out】

【reformation】

 

そして攻撃は完了し、時間切れでアクセルフォームも解除された。

〜スロー再生、終了〜

 

「くそ…ディケイド、やはり強い……」

 

あまりの猛攻により、折角の恐竜ボディを活かせぬまま満身創痍となるチーターカタツムリ。しかし世界一つを攻撃しようとするショッカーの尖兵である怪人相手に、ディケイドは一切の容赦もなかった。

 

「それじゃあ、今度こそトドメだ」

 

そしてディケイドはチーターカタツムリがダメージで動けないのを確認すると、ベルトにトドメの必殺技を放つためのカードをセットする。

 

Final attack ride! DDDDicade!

 

するとディケイドの目の前に、自身の身長ほどある9枚のカードが並ぶ。そしてディケイドが跳び上がると、それに合わせていカードも上昇した。

 

「たぁああああ!」

 

そしてディケイドは飛び蹴りを放つと、そのカードを通過し徐々に加速していく。

 

「ぐぁああああああああああああ!?」

 

そしてディケイドの蹴りが命中すると、チーターカタツムリはそのまま爆発四散した。これが数少ないディケイド自身の必殺技"ディメンションキック"である。

 

〜同時刻〜

『オラァア!!』

「うぉっと!」

 

承太郎と対峙していたディエゴは、スタープラチナの攻撃を回避という形で、巧みな騎乗センスを披露していた。時に恐竜をしゃがませ、上空に跳び上がらせ、後ろに飛び退かせて、と上手く操っている。並の人間より身体能力の高いショッカー戦闘員がベースの為、普通の恐竜より身体能力が高いようだが、それを容易く乗りこなすディエゴは、服装同様に腕の立つジョッキーなのだろう。

 

「流星指刺!」

「また、これか!」

 

咄嗟に流星指刺を放つも、恐竜をしゃがませて避けるディエゴ。上手くダメージを与えられないが、スタープラチナのパワーとスピードから、ディエゴも攻撃に踏み込めずにいる、というジリ貧状態に入ろうとしてた。

 

「そこだ、空条承太郎!!」

「くそ、またか!」

 

しかしそんな中で、真っ先にディエゴが動いた。ディエゴは恐竜化した左腕を振るい、承太郎を切り裂こうとする。

しかしその時

 

 

「そうはさせない!」

「ぬぐぅ!?」

 

きららの叫びと同時に、彼女の杖の先から眩い光が生じ、なんとディエゴの動きが鈍くなったのだ。彼女がジョナサンに話していた、後方支援によるものだろう。

 

「私が好きを作りました。今がチャンスです!」

「すまねぇ、恩にきる」

 

そして承太郎は事態を理解し、きららに礼を言い、ディエゴとの戦いに決着をつけるべく攻撃に入った。

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』

「グワァぁあああああああああああああ!?」

 

結果、今撃てる全快のパンチラッシュをスタープラチナは放ち、ディエゴを乗っている恐竜諸共叩き潰す。そして大きく吹き飛んだディエゴは、近くの家に激突し、その家の煉瓦造りの壁が崩れて埋もれた。

承太郎の勝利は明白である。

 

「流石の恐竜野郎も、もう戦えねえだろう……やれやれだぜ」



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第4話「会合・世界の管理者達」

あけましておめでとうございます。新年一発目で、説明回になります。
そして今回からジョジョ以外のジャンプキャラが出ますが、ちょっと人によっては不快になるかもしれません。

※2020/9/22、里への移動シーンを漫画版に合わせて変更、それに合わせて他の会話も変更しました。


「さて、敵はほぼもう全滅だが……」

「後はアヴドゥル達を連れて行って、どうにか洗脳を解くだけだな」

「じゃあ2人には悪いけど、ふん縛らせてもらうぜ」

 

怪人は全滅、スタンド使い達も満身創痍。ショッカー側の敗北はもはや明白である。

そしてポルナレフがアヴドゥルとイギーを拘束すべく、何処からかロープを取り出す。

 

しかしその矢先

 

ガオンッ

「「「「何!?」」」」

 

突如、目の前の地面が抉れるという謎の現象が発生。ポルナレフは咄嗟に飛び退いて難を逃れるも、ディケイドやキバーラ、承太郎は驚きを隠せずにいた。

 

「残念だが、スタンド使いはオーバーヘブンショッカーとしても貴重な戦力だ。そして時代が違えど、DIO様を見捨てるのは私の忠誠心に反する行いだ」

「!? この声、まさか…」

 

直後にポルナレフにだけ聞き覚えのある男の声が聞こえる。

直後に空間が歪むと、そこから二本角に大きな口の、亡霊のような姿の何かが現れた。そして驚くことに、その口の中から声の主と思しきガタイのいい男が這い出して来たのだ。

男の格好はウェーブのかかった茶髪に紫のレオタードっぽい衣装、ハートをモチーフにしたアクセサリと、格好だけなら女性でも通じそうである。それが尚更、男の不気味さを強調していた。

 

「てめーは、ヴァニラ・アイス! なんで生きてるんだ!?」

「どうした? そんなに驚くことないじゃないか…」

 

そう。この男こそがアヴドゥルとイギーを殺害し、その後ポルナレフに倒されたヴァニラ・アイス本人であった。

味方が敵と化すだけでなく、倒した筈の敵までが蘇る。まさに最悪の事態だ。

 

「な、なんですか、あの人……」

「わからない……でも、なんか怖いよ…」

「あぁ、遠巻きに見てもわかる。掃き溜めよりも、ドス黒い何かがあいつの中に渦巻いてやがるぜ」

 

ランプとるん、そしてスピードワゴンは近くにいるわけではない。にも関わらずらヴァニラ・アイスの邪悪さを、びんびんと感じていた。

すると、その様子に気づいたのか、ヴァニラ・アイスはランプ達の方に視線を向けた。

 

「どうした? ポルナレフもそうだが、お前達も動揺しているのか?」

「あ、当たり前です…貴方みたいな、得体の知れない人、見てしまったら……」

「ランプ、話しかけちゃダメだ! スピードワゴンも言ったように、あいつは普通じゃ…」

 

ヴァニラ・アイスの問いかけに答えるランプを止めるマッチだが、当の警戒対象であるヴァニラ・アイス自身は気にしないで続けた。

 

「動揺する……それは恐怖するということだ……お前達は俺に、恐怖を抱いているようだな…」

「やかましい! 嬢ちゃん達、こいつの言うことをまともに聞くんじゃねぇ!」

 

ヴァニラ・アイスの問いかけを、声を荒げて止めるポルナレフ。するとヴァニラ・アイスは視線をポルナレフの方に移し、再び彼に声をかけた。

 

「お前と空条承太郎、そしてディケイドを倒せば、あのお方もお喜びになるだろう……しかし、今回はアヴドゥル達や過去のDIO様を連れ帰るために来たのでな。相手はまたの機会ということだ」

 

そしてヴァニラ・アイスは満身創痍のアヴドゥル達の方に近づき、いつの間にか現れたショッカー戦闘員達が、ディオとディエゴを抱えてヴァニラ・アイスに近づいた。

 

「あのお方、てめー何を言ってる!? そいつは何者だ!」

「……私が忠誠を誓うのは、この世でただ1人……そして現在、その方はオーバーヘブンショッカー首領の地位にある」

「何?」

 

ヴァニラ・アイスのその一言に対し疑問を抱くと、その直後に彼らの周囲の空間が揺れるような、不気味な感覚が走る。

 

「ポルナレフに空条承太郎、ディケイド、そして召喚士一行よ。お前達はいずれ、私のスタンドで呑み込んで殺してやる」

「そういうわけで、今回は引かせてもらおう。Good bye Jojoooo!!」

「待て、ディオ!!」

 

今まで静観していたジョナサンが、ディオに逃げられると感じて咄嗟に駆け出すが、紫の光に包まれると同時に全員消えてしまった。

案の定、転移したようである。

 

「あのド腐れ野郎、切り刻んで太陽に晒して塵に変えてやったはずなのに、なんで……」

「ポルナレフ、その反応からしてやはりあいつが……」

「ああ。奴がアヴドゥルとイギーを殺した。ちゃんと倒したはずなんだが……」

「おい、取り込み中に悪いが、聞きたいことがある」

 

ポルナレフから事情を聞く承太郎に、ディケイドは変身を解除して士の姿に戻りながら話しかける。

 

「今の物言いからして、あのバニラアイスとかいう男もディオって奴と同じ吸血鬼になったってことか?」

「……今のイントネーションが気になるが、まあいい。その通りだ」

「……なら何で、奴等は太陽の日の下を歩いていたんだ?」

 

その士の疑問で、承太郎達はハッとした。ディオもジョナサンと戦ってた頃から吸血鬼と化しているなら、先程のポルナレフの悪態にもあるように、太陽の光で塵と化す筈だからだ。

 

「最初はお前らの世界の吸血鬼が、言い伝えと違って太陽も平気だと思ってたが、今の物言いで違うってのがわかった。これは、どういうことだ?」

「……やれやれ、俺らしくもねえ。DIOがいる、しかも過去の姿だったことにばかり気を取られて、気づけなかった」

「ああ。寧ろ、わかんねえことが増えちまったぞ」

 

あまりの事態に混乱していた承太郎達だが、そこにジョナサンが割って入り、あることを告げた。

 

「奇妙なこと言って悪いけど、"同一人物だけど別人"という考えはできないかな?」

「何だ、それ? どういうことだ?」

 

士が代表して問いかけると、ジョナサンは続けた。

 

「僕のいた時代でも、ディオを追おうとしたらあのショッカー怪人達が襲ってきてね。戦っている最中、君の仲間達も放っていた紫のオーラが僕の師匠であるツェペリ男爵を襲ってね。そしたら彼が僕を敵だと言って、怪人達に付いてしまったんだ」

「……なるほど、だいたいわかった」

 

ジョナサンから聞かされた話と、先ほどの奇怪な意見。それだけを聞いて士はいつもの口癖を言うも、何か確証のある答えが浮かんだようだ。

 

「ただ洗脳されたというよりも、そのツェペリ男爵とやら限定で存在をねじ曲げられたっていう方がしっくり来るということか」

「ああ。それでディオもあの男の言う"あのお方"に、弱点の太陽を克服させられたということじゃないのかな?」

「……やれやれ。そんなことが出来る奴が親玉ってことは、そのオーバーヘブンショッカーとやらの規模はとんでもねぇってことだな」

 

まだ見ぬ強大な敵への警戒を強める中、突如それは起こった。

 

「え? 鎧武、どうしたの?」

 

ゆずこの声が聞こえたので、一同が視線を向ける。すると、鎧武の体が光り出して、少しずつ消えていっていたのだ。

 

「実は、今ここにいる俺は意識を移した分身体みたいなものなんだ。オーバーヘブンショッカーに先を越されて、この世界から締め出されちまったんだよ」

「おい、それって大丈夫なのか? これから奴等と本格的に、戦わねえと行けねぇはずだが…」

 

意外な事実が判明したところで、士も流石にマズイと思って問いかける。しかし心配は無用だった。

 

「まあ、その前にお前の知り合いの渡って奴と会って、手は打っておいた。細かい説明は、今から残すものを使ってするからちょっと場所を変えてくれ」

「ああ、わかった」

「良し。それと……」

 

そして最後に、鎧武は情報処理部の面々に視線を向ける。

 

「唯にゆずこに、縁って言ったか? 元々普通の女子高生だったらしいけど、やるじゃねえか」

「鎧武、さっきはありがとう。お陰で、私らみんな助かったよ」

「それじゃ、またな」

 

そのまま鎧武は姿を消し、代わりに一つの大きな鍵が落ちていた。するとそれを見て、きららが近寄っていく。

 

「これって……」

「何か、知っているのかい?」

「はい。私達が拠点にしている里で、これと同じような物を持っている子がいるんです。だから、その子の力を借りれば…」

「良し、それじゃあ早いところその里とやらに行くかの」

 

きららがジョナサンの質問に答えると、それを聞いたジョセフが提案してくる。

そんな中、マッチが一同に招集をかける。

 

「それじゃあ、僕が転移魔法で連れて行くから集まって」

「あ、ちょっと待ってくれ。俺達な、紘汰から移動の足にって車を用意されたから、そこに案内するわ」

 

そしてポルナレフの言った場所に案内され、一同はそのままマッチの魔法で里へと移動した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

到着したのは、山の中にある隠里といった場所であった。そして士達は、そこで出迎えを受ける。

 

「きららさん、おかえりなさい!」

「なんかゆず子達が疲れた顔してるけど、何かあったのか?」

「ちょ、るんまでケガしてるんちゃう!?」

「アルシーヴ以外の新しい敵が出てきて……でも、こちらの方々に助けてもらったので大丈夫です」

「……見事に女しかいねぇな。大丈夫か、ここ?」

 

 

出迎えたのは大きな鍵を持った水色の髪の少女、ゴーグルをかけて大きなトンカチを携えた露出の多めな少女、褐色肌にまた露出多めで巨大なコンパスを持った女性。そして遅れて、関西弁に露出多めな魔法使いファッションの少女と、気怠げなメガネの少女がやって来る。

 

「皆さん、紹介します。この里で一緒に活動している仲間で…」

「クレアっていいます。きららさん達を助けていただいたそうで、ありがとうございます」

「俺はポルカ。ここで鍛冶屋やってんだ、よろしくな」

「カンナ、家具職人兼建築家だ」

「ウチ、西由宇子いいます。トオル達を助けてもらったみたいで、世話になりました」

「私は天王寺渚、みんなからはナギって呼ばれてるから気軽にそれで」

 

一人一人自己紹介してくる里の住民達。しかしここでランプはふと何かに気づく。

 

「あれ、コルクとライネさんは? 他のクリエメイトの皆様もいないような…」

「そういえば、唯様以外のクリエメイトもいらっしゃらないですね?」

「コルクはまた仕入れに、ライネさんも仕事で里の外に出てます。何人かのクリエメイトは里の外に出てたり、自室でくつろいでたりします。中には帰省で元の世界に帰っている方もいますが…」

 

どうやらまだ人がいるようだが、名前の響きとクリエメイトというワードから全員女性らしい。

 

「やれやれ、マジで女しかいねぇのか……」

「おいおい、こりゃ地上のパラダイスか何かか? まだ美人の女の子がいやがるのかよ」

「お前ら、今はそれどころじゃないじゃろが。まず腰を落ち着けれそうな場所で、オーバーヘブンショッカーについて話し合いするぞ」

 

士同様にうんざり気味な承太郎に対して、鼻の下を伸ばすポルナレフ。しかしジョセフが年長者として、二人を諌める。

そんな中でジョナサンはクレアに近づき、声をかける。

 

「君、クレアと言ったね。その鍵って、何のための物なんだい?」

「えっと、これはクリエメイトの皆さんがいる世界へのゲートを開くもので、これを使ってきららさんの召喚を手伝うのが、私の仕事なんです……って、あなたの背中のそれ!?」

 

クレアは自分の仕事について語ると、ジョナサンの背にあるあの鍵に気づいた。

 

「やっぱり君が鍵の関係者か。これはここに来た時に助けてくれた知り合いが、置いていったものなんだ」

「そうなんですか……それってどんな方なんですか?」

「信じないかもだけど、異世界の神みたいなものかな?」

「……まあ、鎧武の認識はあながち間違いじゃねえが」

 

その発言し一悶着あるも、どうにかそれを落ち着けて一行は召喚を行うという館に向かう。その後、負傷したゆずこやトオルは休ませに居住区へと移動することとなる。ただし、ポルカとカンナは仕事があるとのことで離れていた。

 

「士君、彼は何を目的にこの鍵を残したんでしょうね?」

「大方、あいつや他の超越者のライダーを呼んで、一気に新しいショッカーを潰すためだろう。俺なら戦略確保のためにそうするが」

 

夏海の疑問に予測をつけて話す士。そうこうしているうちに全員が集合し、クレアが鍵を使う準備ができたようだ。

 

「それでは、開きますよ!」

「私もコールを使え準備ができたよ」

 

そしてランプが鍵の力を発揮し、ゲートを開くのだが……

 

 

 

「え!? ゲートがこんな大きく……」

「みんな、吸い込まれる!?」

 

ゲートから何かが出てくるどころか、ゲートそのものが館全体を飲み込むレベルで大きくなってしまったのだ。

 

 

 

 

 

「お久しぶりですね、ディケイド。そしてはじめまして、空条承太郎さんとエトワリアの方々」

「俺の方はさっきぶりだな。でも顔合わすのは初めてだし、はじめましてだな」

「……お前らに呼び出し受けるための鍵だったか。これは予想外だな」

 

士達は気づくと、一面真っ白な不思議な空間にいた。そしてそこで待っていたのは2人の青年と1人の少年である。

一人は黒を基調とした服装の優男、もう一人は銀の鎧を纏った神秘的な雰囲気の青年であった。少年は全身にマントを纏い、隙間から見える格好が上半身裸というのが窺い知れた。

そんな中、唯やゆずこは鎧の青年の声音に聞き覚えがあることに気づく。ついさっき共闘した、あの戦士だ。

 

「ま、まさかその声、鎧武?」

「鎧の中そうなってたんだね。神様ってジョジョは言ってたけど、正装?」

「まあ、そんな感じか? って、初めて見るやつもいるから、まず自己紹介を改めてだな。俺は葛葉紘汰、仮面ライダー鎧武で紹介通り神様みたいなものだ」

「僕は紅渡、世界の管理者で仮面ライダーキバです。今回は、皆さんのいるエトワリアに危機が迫っていることを伝えるため、お呼びさせてもらいました」

 

自己紹介をした紘汰と渡だが、士はもう一人の少年に見覚えがなく、まずそこから問い尋ねるのだった。

 

「で、なんか見覚えのねぇ奴がいるが、そいつは?」

「彼はライダーとは違う戦士の世界で超越者になった者です。今回の件での協力者なのでよろしく願いたいところです」

「とりあえず自己紹介しておこうか。僕はハオ、所謂霊能者の頂点に立った、シャーマンキングさ」

 

少年ハオの名乗りに、少し偉そうな態度が垣間見える。この場にいる超越者の中で、一番尊大な様子だ。

その一方、由宇子(以下ユー子)が何やら怯えている様子だ。

 

「えっと、霊能者ってことは、つまりお化けとかと……?」

「うん。精霊とかの力を借りることもあるけど、僕の弟の言葉を借りれば、”あの世とこの世を結ぶ者”ってことで、よろしく」

「ヒィイイイイイイイイイイイイ!?」

 

どうやらユー子はかなり怖がりなようで、ハオの言葉を聞いて怯え切ってしまう。しかし、士はそんな様子をスルーして渡から話を聞く。

 

「……まあいい。で、今回の敵はあのやたら長い名前になった新生ショッカーってことでいいんだな?」

「ええ。しかし今回のショッカーであるオーバーヘブンショッカーは、今までとは決定的に違う敵になります」

 

渡の妙な物言いだが、すぐにその意味は分かった。

 

「まず、何者かがショッカーの本拠地に部下とともに乗り込み、首領や地獄大使などの主要幹部を倒し、新たな首領として君臨してしまいました」

「……ある程度は予想していたが、マジか?」

「ええ。そして様々な世界からライダー以外の戦士、承太郎さん達の世界のスタンド使いのように、生身で力を行使する戦士を含めて多くの部下を手に入れました。だからまず、今回は生身の敵と戦う可能性を考慮してもらいます」

「まあ、やりづれぇって言えばそうだが、仮面ライダーの使命として戦うつもりではあるぜ」

「俺も、必要ならいくらでも相手してやる。それに、元々が人間同士の戦いだったから、全く問題はねえ」

「あなた達ならそう言ってくれると思いました。では、今からオーバーヘブンショッカーについてわかっていることを話します」

 

そして渡と紘汰から、そのオーバーヘブンショッカーの首領についての情報が開示される。

 

「わかっていることは二つなんだが、いずれも承太郎の世界に由来することなんだ」

「まず敵の首領がスタンド使いということ。スタンドは承太郎さんの世界の能力なので、少なくともそちらの世界に由来する人物ということになります」

「成る程、それで俺達も関係したってことか」

「じゃあ、アヴドゥルやヴァニラ・アイスの野郎が生き返ったのも、スタンド能力ってことかよ…」

 

スタンドは魂のエネルギーであるため、ある意味では生死に由来する能力を扱えても可笑しくはない。

 

「で、もう一つは奴らの狙いが『聖なる遺体』という代物ってことだ」

 

聞き覚えのないワードに首を傾げていると、ハオも説明に入ってくる。

 

「かのイエス・キリストのように歴史上で実際に奇跡を起こした人間、いわゆる聖人だね。そのミイラ化した聖人の亡骸が九つに分断されて、君の世界のどこかの時代に存在しているそうだよ」

「……つまり、死体にとんでもねえパワーが宿って、連中はそれで何かしようってわけか。やれやれ」

「死体……ミイラ…」

「ユー子、大丈夫か?」

「ユー子さん、しっかり」

 

いつの間にかユー子が膝を抱え、怯え切っている。それを心配して、ナギときららが近寄って声をかける。

 

「ユー子様を怯えさせないでください!」

「そうは言っても、敵が何を狙っていて、それがどんな代物なのか。確実に伝えないと先に手に入れて、守るって事も出来ないだろ?」

 

ランプが憤慨してハオを叱りつけるが、ハオの言う方が明らかに正論である。しかし、それでもランプは引かなかった。

 

「そうじゃなくて、もっと柔らかい言い方で誰も怖がらせない事も出来たんじゃないかって、言いたいんです! 大体、異世界でそれなりに偉い方になったのなら、もっとソラ様、この世界を治める女神様のように聡明で…」

「やれやれ、子供のくせに偉そうにして。本当……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちっちぇえな

「ひっ!?」

 

その時に一瞬、ハオから凄まじい威圧感が発せられる。それにランプは短い悲鳴を上げ、そのままフリーズしてしまう。

 

「このままじゃ説明が止まりそうだからね。悪いけど、少し乱暴な手を使わせてもらったよ」

「ハオ、納得できなくもねえけど、やりすぎだろアレは」

「ごめんごめん。じゃあ、いったん話を戻すね」

 

紘汰に諫められるも、ハオは軽く謝罪をして流してしまう。そしてそのまま、話を続けた。

 

「そしてその聖なる遺体が何故か、このエトワリアに転移して各地に散った。奴らはそれを追いかけてきたみたいだね」

「次に、どうやって僕達が遺体の存在を知ったかですが、敵の足取りを調べてる最中に、何処かの世界に怪人達が送り込まれました。追いかけると、そこが承太郎さん達の世界で、ジョナサンとスピードワゴンの二人に出会って、鎧武が連れ出すついでに遺体のことを聞いた次第です」

「ああ。ここから先は、俺たちに説明させてくれ」

 

そしてそこから、スピードワゴンとジョナサンに後退して、事情の説明がなされる。

 

「俺たちは風の騎士たちの町(ウインドナイツ・ロット)って町にディオがいることを知って、そこに向かおうとしたんだ。でもそこで不可思議な異変が生じて、ディオが最初に吸血鬼になった日に焼け落ちた筈のジョースター邸、つまりジョースターさんの生家が元に戻ってたんだ」

「中はディオが作った屍生人(ゾンビ)で溢れかえり、このままでは人が襲われると思い戦っていたんだが、そこに聖なる遺体が現れたんだ」

 

元々は、承太郎達の世界の過去であるジョナサンの世界、そこで最初に異変が生じた。正史では風の騎士たちの町でディオや、彼が屍生人にした黒騎士ブラフォードと相方の騎士タルカスといった、強敵達と死闘を演じることとなる。しかしそれが始まる前に、今回の異変が生じたようだ。

 

「遺体はこの異変を止めるために、別の時代に仲間を集めに旅立てと最初は導こうとした。僕は屍生人を食い止めるために残って、スピードワゴンを旅立たせようとしたんだが……」

「突然生じた空間の歪みが、遺体を吸い込んじまったんだ。このエトワリアの存在を知った今に思えば、何かがこの世界から遺体を引き寄せちまったんだろうな」

(異世界から人や物を引き寄せる……まさか?)

 

きららは話を聞いていて、何か心当たりがある様子だった。しかし今は話を聞くことに専念する。

 

「その後は仕方なしに屍生人を蹴散らして、満身創痍になりながらも勝った。だが、その直後に……」

「さっき話したショッカー怪人の襲来とツェペリさんの敵対化があって、そこを紘汰君達に救われ、現在に至るというわけだ」

「……聞いた限り、かなり厄介そうな案件だな」

「まったくもって、その通りだな」

 

本来ならばこの戦いは、承太郎の世界で様々な時代を巻き込むものとなるはずだった。しかし、エトワリアへの聖なる遺体の転移により、それが仮面ライダーの世界を含めた無数の世界を巻き込む大きな戦いに発展してしまったということになる。

 

「一応、僕らの方で下調べをして、このエトワリアについて簡単には把握しています」

「さっきそこの子供が言ってた女神ソラとやらが、この世界を統治していること。その女神が異世界を観測して、聖典を書き記していること。そしてこの世界の住人は、その聖典を読んでクリエとかいう生命エネルギーを得ていること、だね」

「なるほど。だから、そこの連中はクリエメイトって呼ばれているのか」

 

ハオからエトワリアに関する簡単な概要を聞き、承太郎は唯やトオル、いまだ縮こまるユー子といったクリエメイト達を見回す。

 

「そこで聞きたいんですが、何か異世界とエトワリアを繋ぐ手段と、それを使えそうな何かを知ってはいないでしょうか?」

「この世界の危機だ。それが出来る奴がいるとして、ショッカーどもと俺達のどちらに協力的か、どちらとも対立する気か、把握しておきたいんだ」

「……一人だけ、心当たりがあります」

 

その渡と紘汰の問いかけに答えたのは、きららだった。丁度、彼女達はその存在と対立関係にあるからだ。

 

「今、ソラ様は魂を封印されています。そして封印した人物が、クリエメイトを強制召喚する禁術オーダーを行使しました。おそらく、オーダーでその遺体が偶然召喚されてしまったんだと思います」

「ふうん。で、そいつは?」

 

ハオが問いかけると、きららは少し間をおいて話した。

 

「筆頭神官アルシーヴ。ソラ様の補佐をしていた人物です」

「なるほど。典型的なクーデターってわけか」

「相手は図らずして遺体を呼び寄せちまったが……そいつらも遺体の力とやらを知ったら、手に入れようとしてくるかもしれねえわけか」

(それは無い、と思いたいけど……まだ確証がない。下手に話さない方がいいかもしれない)

 

士も承太郎も、警戒を強めることとなる。しかし、きららはある事情からアルシーヴに対して、思うところがあるようだ。しかし周りを混乱させるかもと思い、今は黙っておく。

 

「何にしても、敵は強大で得体が知れない。そのアルシーヴも含めて、だな」

「しかし、僕も何人かの仮面ライダーに声をかけておいたので、いずれそちらにやって来るでしょう。まあ、その前に消息の途絶えたライダーもいるんですが、もしかしたらオーダーとやらか遺体が引き寄せてすでに来ていた、という可能性もありますからね」

「後、僕の弟で腕の立つシャーマンも向かわせた。その許嫁共々、戦力として使ってやってくれ」

 

最後に渡とハオからカミングアウトされた事実。先ほど、紘汰の分身が消える間際に「手は打った」と言っていたが、このことのようである。

しかしそれを伝えた直後、空間に揺らぎが生じる。

 

「おっと。どうやら時間のようですね」

「まあ、伝えるべきことは一通り伝え終わったな」

「せっかくシャーマンキングになったのに、世界を導く前に別の超越者に支配されたらたまんないからね。君達に、全ての命運を託すよ」

 

そして最後に、渡から士への言葉が発せられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼みましたよディケイド。この世界の全てを破壊し(・・・・・・)全てを繋いで(・・・・・・)ください」

「ああ、わかった。俺は破壊者だ、ショッカー諸共破壊しつくしてやる」

 

その互いの言葉と同時に、再び一同は召喚の館に戻っていた。そして真っ先に声をかけたのが、承太郎だった。

 

「色々気になることはあるが、正直なところこの異世界の存在やアヴドゥル達の復活も、イカれた話としか思えねえ。だが、見てしまった以上は事実だと認めるしかねえな」

「ああ、今はそれでいい。ひとまず、敵にお前と同じスタンド使いとやらがいるなら、協力を頼みたい。餅は餅屋ってことで、頼めるか?」

 

そして士は承太郎に協力を頼み、手を差し出す。そして承太郎の答えは

 

「てめぇの世界の破壊者とかいう、物騒な肩書からじゃまだ完全に信用できねえ。だが、もし俺達の敵ならさっきの戦闘でいくらでも不意打ちをするチャンスはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間を利用した奴らを倒すために、俺もてめぇの協力が必要だ。その提案、乗るぜ」

「すみません。私も自分に出来ることを、この世界の危機に立ち向かう手伝いを、私にもさせてください」

「わかった。助かる」

 

そして承太郎ときららは士と手を取り合い、新たなチームが結成された。この世界に迫りくる危機に、立ち向かうために。

 

「……」

「ランプ、どうしたんですか?」

「あ、ごめんなさいクレア。何でもないです」

(さっきのハオ君のあれの所為かの? なんにしても、この子が儂等に心を開くのは、しばらくかかるかの)

 

しかしランプはただ一人、彼らに疑いの目を向けていた。それに、ジョセフがただ一人気づく。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして早速、遺体に導かれたクリエメイトと仮面ライダー、そして他の異世界の戦士が出会うこととなる。

 

「どったの、ゆのっち?」

「ごめん、誰かに呼ばれた気がして…」

 

「まさか、異世界に来ていきなりデンライナーが事故って、その衝撃で放り出されるなんてよ」

「うん……なんで、僕って運がないんだろう?」

 

「ク、クゥウ~……」

「面白ぇ、この生き物! 俺、こいつ飼いたい!」

「だから、なんでおめぇはそんなに何でも仲間とかペットにしたがるんだよ!」

「けど、本当に飼うとして、こいつ何食べるんだろう?」

 

 




次回、ディケイドとジョジョ以外のメインライダー&ジャンプ作品が、きららキャラと会合。お楽しみに。


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第5話「ひだまりエンカウント」

今度からは七賢者も登場します。きららキャラ達同様、結構痛い目に合うので要注意です。
後、初めてオリジナル怪人作ってみました。あとがきに解説があるので、よければどうぞ。


ディケイド達がエトワリアに現れる前日、とある街に一人の女性がいた。

夜、自室でその女性は壁に立てかけてある絵を見つめている。

 

(明日の絵のコンクール、不安だなぁ……)

 

この街はエトワリア全土でも芸術の研究が盛んな文化都市で、彼女も駆け出しの絵描きの一人であった。しかしあまり絵に自信がないらしく、翌日開催される予定のコンクールに応募したものの、優勝できるか不安であったようだ。

やがて彼女はベッドに寝そべるのだが、やはり不安なままのため眠れずにいた。

 

 

そんな時、窓から不思議な光の玉が入って来て、彼女の体に入ってしまう。すると彼女の体から砂が落ち始め……

 

 

「お前の望みを言え、どんな望みも叶えてやる」

「え、何!?」

 

その砂が異形の怪物、それも上半身が地面から生え、その頭上に虚空から生えた下半身が浮いているという、不気味な外見のものへと変化したのだ。

 

「何、魔物かなにか?」

「魔物? 俺はイマジンだ、そこのところ履き違えるな」

 

その異形の姿に思わず魔物を連想する女性だが、そいつは自らの種族名と思しきものを口にする。そして再び問い尋ねた。

 

「で、もう一度言うぞ、女。お前の望みを言え、どんな望みも叶えてやる。お前が払う代償はたった一つ……」

 

それを聞き、女性は先ほどの不安について思い起こし、意を決して告げた。

 

「絵が上手くなって、コンクールで優勝したいです」

「それが望みか、わかった。お前の望み、聞き受けた」

 

しかし、それがまさに悪魔の囁きだと、この時の女性は露ほどにも思わなかった。

 

 

 

~翌日~

コンクール会場付近の屋台で買い食いをしている二人の少女がいた。片方はそのピンクの髪と黒のロリータファッションをした狐耳、もう片方は水色の髪と白のロリータファッションをした狸耳である。

この二人は筆頭神官アルシーヴに仕える七賢者のメンバー、シュガーとソルトという双子姉妹だ。この日、二人は七賢者の仕事でコンクールの審査員をしに来たのだが、開催時間まで街を見物していたのだ。

 

「うん、やっぱりオヤツは甘いものに限るね!」

「ソルトは逆に、塩気がないとダメです」

「甘味の良さがわかんないソルトはかわいそうだねぇ」

「別に。まあシュガーが虫歯になっても、ソルトには関係ありませんが」

 

屋台で綿菓子などの甘味を大量に買い込んで堪能しているシュガーに対し、ソルトはポテトフライらしきものを食べながら互いに意地悪なことを言う。しかし本人達に険悪な感じはなく、むしろ仲は良さげだ。普段からこの手の軽口は言い合ってあるのだろう。

 

「絵のコンクールってことは、ゆのお姉ちゃんも来るのかな?」

「あぁ、確かシュガーがクリアを奪うことを担当されたクリエメイトでしたね。確か絵の学校に通っているとか」

「うん。参加者のリストにはなかったけど、見学とかには来るかもしれないから、また会えるかも」

 

シュガーはきらら達が旅の最中で最初に戦った七賢者であったが、根が悪人ではない為か肝心のクリエメイトと仲良くなってしまったりする。そのこともあって、再会できるかもと嬉しそうにしていた。

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアア!?」

「化け物が暴れているぞ! みんな逃げろぉおおお!」

「あの化け物、コンクールの参加者を狙っているぞ!!」

 

しかしそんな中で急に人々の悲鳴が聞こえた為、二人はその歩みを止める。

 

「ソルト、今のって……」

「化け物がコンクールの参加者を襲う……そう聞こえました」

「やっぱりシュガーの聞き間違いじゃなかった。本当なら止めないと!」

「ええ。しかしその化け物とやら、七賢者のいる街で騒ぎを起こすなんていい度胸ですね」

「うん、コテンパンにしちゃおう!」

 

そのまま二人はそれぞれの得物である肉球付きグローブとハンマーをどこからともなく取り出し、コンクール会場へと急ぐ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして同じ頃、芸術都市を訪れようとする一行の姿があった。

 

「宮ちゃん、ひょっとしたらアレかも」

「おお。如何にもな街だね、ゆのっち」

 

小学生ほどの小柄な少女と逆に背が高くスタイルのいい金髪の少女がいた。彼女たちはシュガーなら話していたクリエメイトゆのと、その友人の宮子という。元の世界ではやまぶき高校という私立高校の美術科に通っており、学校近くのアパート"ひだまり荘"でも隣部屋同士の友人であった。

きららに召喚されてからは、同じひだまり荘に住む学校の先輩後輩としばらく過ごしており、今日はこの街で開かれる絵のコンクールを見物に来たのだった。

そしてその後ろにはその先輩後輩達がついて来ていた。それぞれ先輩二人が沙英とヒロ、後輩二人が乃莉となずなという。余談だが、ひだまり荘は美術科の変わり者が集うという伝統があるのだが、なずなは普通科の生徒ながら両親の転勤をきっかけにひだまり荘に引っ越してきたという事情もあったりする。

 

「芸術都市の絵画コンクール……なんかこういうイベントがないと、私達が美術科の生徒っていうの忘れそうになるね」

「ええ。異世界なんていると、学校にも行かなくなるし」

「まあ、元の世界でもみんなで美術館に行ったりで、そんなに差はない気もしますねどね」

「でも、楽しみだね乃莉ちゃん」

 

一同はひだまり荘の仲間達揃っての外出ということもあり、楽しみにしていた。しかし、道中で繰り広げられる奇妙な光景から、その歩みを止めて呆然とすることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉおおお! お前、面白ぇな!!」

「テメェ、マジでなんなんだ!? 見た目人間のくせして、手足がビロンビロンしやがって、妖怪か!?」

「いや、妖怪はオメェだろが!!」

「そうだそうだ! どっからどう見てもお前、鬼じゃねえか!!」

「誰が鬼だ、テメェ!? そっちこそ天狗みてぇな鼻と歩くタヌキのくせしやがって!!」

「おれはタヌキじゃねぇ、トナカイだ!!」

「テメェみてぇなチンチクリンなトナカイがどこの世界にいやがる!」

「まあ落ち着けって。それよりお前、一緒に海賊やらねぇか?」

「え、海賊? 嫌ですよ、悪者に好き好んでなるなんて。モモタロスもそうだよね?」

「あたりめぇだろ! 何言ってんだお前!?」

「クゥ〜(こんなわけわからん連中に捕まるなんて……クロの助、一生の不覚)」

 

手足が伸び縮みする麦わら帽子の青年が、その伸ばした手足を赤鬼のような見た目の男に絡めている光景だった。そして赤鬼に対して鼻の長い青年と自らをトナカイだという青鼻の小柄な獣人が口喧嘩しており、それにオドオドした青年が巻き込まれている光景だった。

ちなみに麦わら帽子の青年の腰には、エトワリア原産のクロモンという魔物を閉じ込めた虫取り籠を下げている。

 

「えっと……どういう状況?」

「沙英、呆けてないで止めた方がいいんじゃ?」

 

ヒロに言われ、沙英や宮子がこの騒動を仲裁しに向かった。

 

~騒動が収まり…~

 

 

「取り敢えず、助けてくれてありがとう。僕は野上良太郎、こっちは僕の仲間で……」

「モモタロスだ、よろしくな」

「おれはルフィ、海賊王になる男だ」

「ルフィの船で狙撃手やってる、ウソップだ」

「同じく船医の、トニートニー・チョッパーだ」

 

出会った集団を取り敢えず大人しくさせて、ゆの達は自己紹介する。しかしルフィの名乗りを聞いて、沙英は思わず聞いてしまう。

 

「海賊ってアレだよね? 船襲って、物奪う悪者の…」

「おれ、んなことしねぇぞ。まあやる奴もいるけど、おれは冒険がしたくて海賊になったんだ」

「おれも聞き捨てなんねぇな。勇敢な海の戦士、それがおれの海賊の理想だからな」

 

しかし見た目からして馬鹿正直そうなルフィと、夢を嬉しそうに語るウソップの姿に、少なくとも本心を喋っていると察する沙英であった。

そして落ち着いたところでゆのがあることを訪ねる。

 

「それで、さっきルフィさん腕を伸ばしたりモモタロスさんに巻き付けたりしてましたけど、あれは?」

「おれはゴムゴムの実を食べたゴム人間だからな」

「……ごめんなさい、何言ってるのかわかんないです」

 

しかしルフィから意味不明なワードが飛び出して来て、ゆのは困惑する。そこにウソップとチョッパーが口を挟んで来た。

 

「へ? 食べた人間は一生泳げなくなる代わりに不思議な力を得られる悪魔の実、噂くらいは聞いたことあるだろ?」

「ちなみにおれはヒトヒトの実で人間の力を手に入れた、人間トナカイな。間違ってもトナカイ人間じゃねえぞ」

「何、この世界ってまだそんなのがあるんですか?」

 

乃莉がルフィ一行の言葉についていけずに漏らすと、そこに助け舟を出したのは意外にも、良太郎であった。

 

「ひょっとしたら、ルフィさん達はエトワリアとは違う世界から来たんじゃないかな? 僕とモモタロスもそうだし」

「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

 

その言葉に良太郎以外の全員が反応する。そして、移動を再開しながらそれぞれの事情を説明することとなった。

 

~説明後~

「おれ達のいた世界以外にも、世界ってあんのか! スッゲェなぁあ!!」

「まさかルフィさんがまた違う世界の人達だったなんて……」

「しかも昔ながらの少年漫画みたいな激戦がある世界みたい…」

「まさかルフィの捕まえたこいつが、魔物だなんてなぁ。もっとでかいドラゴンとかじゃくてよかったぜ」

「良太郎さんは名前で日本人だと思ったんですけど、自分からエトワリアに来るってすごいですね」

 

ルフィのいた世界、過酷な自然環境や巨大生物の蔓延る偉大なる航路(グランドライン)の制覇を目指す大海賊時代の世界。ゆの達は口々に、その世界についての感想を漏らす。一方のルフィ達も異世界という概念がなかったことから、感心していた。中でもルフィは冒険準備万端病とでもいうべきなほど冒険大好きなため、興奮を抑えきれずにいる。ちなみにルフィは虫取り籠に閉じ込めたクロモンを、面白い生き物だからペットにするつもりらしい。

 

「で、良さんは自分でエトワリアに来たそうですが、何の目的でどうやって来たのでしょう?」

「うん。ひょっとしたらだけど、宮子ちゃんって名前からして日本人だよね。まさか、クリエメイトって呼ばれたり……」

 

そして目的地の街が目前に達したところで宮子に尋ねられた良太郎は、自身の目的について語ろうとする。しかし、モモタロスが何かに気づいて良太郎に呼びかけたことで、それは中断された。

 

「良太郎、街からイマジンの臭いがしやがる!」

「え!? モモタロス、本当?」

「「「「「「「「イマジン?」」」」」」」」

「なんだ? 暇人?」

 

モモタロスの口から出た、聞き覚えのない一同は思わず聞き返す。ルフィ一人だけ、聞き間違えていたが。

 

「うん。モモタロスと同じ種族なんだけど、僕達の元居た世界での敵なんだ」

「敵? 良太郎さん、詳しく聞かせてもらってもいいですか?」

「え? でも、危険だよ。ゆのちゃん達を巻き込むわけには……」

「私達、魔法とか剣が使えるから足手纏いにはなりません。それに悪者に、こんな素敵な世界を滅茶苦茶にされたくないんです」

 

ゆのと、ひだまり荘の面々の力強い目をみて、良太郎は少し思案する。そして、答えを出した。

 

「……わかった。でも、危険だって判断したらすぐに逃げてもらうからね」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、ルフィさんも良ければ……あれ、ルフィさんは?」

 

しかしルフィに話題を振ろうとした瞬間、彼がいないことに気づいた。

 

「いや、それがよお。さっき話している間に街に火が上がってるのが見えて……」

「ルフィの奴、一人で突っ走っていきやがったんだよ。あいつ、馬鹿なうえに方向音痴だし、大丈夫か?」

 

モモタロスとウソップからまさかの問題発生を聞かされ、思わず崩れ落ちそうになるが、良太郎はどうにか持ち堪える。

 

「とりあえず、おれとウソップでルフィは探しておくから、良太郎達はそのイマジンってのを探しておいてくれ」

「チョッパー君、ありがとう」

「私もついていきます。二人とも、エトワリアにはまだ慣れてないと思うので」

 

ルフィの捜索に対し、ウソップ達との同行を申し出る乃莉。彼女もこの街を訪れるのは初めてだが、エトワリアという世界に対して勝手のわからないウソップとチョッパー、そして見つけた後のルフィを御する人間が必要という判断だ。

 

「乃莉ちゃん、気を付けてね」

「なずなも、ゆのさんや良太郎さん達と上手くやってね」

「よし、話は纏まったみたいだな。チョッパー、頼む!」

「ああ! 脚力強化(ウォークポイント)!」

 

直後、ウソップの呼びかけに対してチョッパーが掛け声を上げると、チョッパーの姿が劇的に変化した。

四足歩行にふわふわの毛、枝分かれした立派な角、まさにトナカイのそれである。

 

「二人とも、おれに乗ってくれ!」

「わかった! じゃあ、行くぞ!」

「はい!」

 

そしてそのままウソップと乃莉を乗せ、チョッパーは走り出した。高い跳躍力で建物の上まで飛び、ルフィの足取りを追う。

 

「チョッパー君、本当にトナカイだったんだね……」

「ああ。見ちまった以上、信じるしかねえな……」

「ゆのちゃん、モモタロス、気持ちはわかるけど今はイマジンを……」

「おっと、そうだった! お前ら、イマジンの臭いはこっちからするぞ! 」

 

そしてモモタロスに先導される形で、一同はイマジンがいるという場所へと向かう。そしてその道すがら、良太郎はイマジンの説明をした。

 

「イマジンっていうのは、言ってみれば未来からの侵略者なんだ」

「し、侵略者ですか?」

 

あまり穏やかじゃない単語に、ゆのが思わず聞き返してしまう。そして良太郎は、その細かい説明を行う。

 

「僕の世界の2007年に、過去の破壊によって歴史を変えるため、精神だけでやってきた未来人がイマジンの正体なんだ。それでイマジンは、人に憑りついてその人のイメージから肉体を作り出す。そして、憑りついた人間の願いを聞くことで実体化するんだ」

「おお! つまり、億万長者に満漢全席も実現可能ですな!!」

 

願いを叶えるというイマジンの話を聞いて、思わず宮子は興奮してしまう。しかし良太郎は続きを話して、それを諫めようとする。

 

「でも、イマジンは勝手な解釈と腕ずくで願いを叶えようとするから、過去の破壊を除いても止めないといけないんだ。例えば、お金が欲しいといえば普通に強盗してお金を持ってくるし、酒癖を直したいって頼んだらその人の酒癖を知っている人を口封じしたり、ってね」

「え? そんな無茶苦茶な……」

 

イマジンの願いの叶え方があまりに傍若無人なため、ゆのは驚愕、宮子も黙り込んでしまう。そして最後の説明を行った。

 

「そして願いを叶えたイマジンは、その人にとって一番思い入れのある記憶の時間へと飛ぶ。そして、その先で過去を破壊するんだ」

「そうか……願いっていうのも、その思い入れのある時間に由来しているのかも。それも憑りつく基準になっているのかも知れないね」

 

すると、説明を聞き終えた沙英が一つの推察を上げる。元の世界で、美術科の学生と小説家を兼業しているだけあって、頭の回転は早いようだ。

 

「お前ら、そろそろイマジンの臭いが強くなってきたぞ!」

 

そしてモモタロスがイマジンの居場所に近づいたことを知らせ、視線を向ける。

そこには、崩れたモニュメントに火の上がる建築物、といった惨状でかつての芸術都市としての面影が残っていなかった。

 

「はぁ……はぁ……」

「つ、強い……」

「どうした? 七賢者なんて大層な肩書の割に、大したことねえな。やっぱ、しょせんはガキってことか」

 

そしてその先には、肩で息をするシュガーとソルトの姿と、その二人と対峙するイマジンと思しき異形の姿があった。

目測でも2メートル半はある巨体の牛に似た怪物だ。クロモンと同じエトワリア原産の魔物であるミノタウロスに類した容姿の、いわば”タウロスイマジン”である。両手には大斧とモーニングスターを持っており、見た目通りの力自慢なイマジンのようである。

 

「あ、あれがイマジン……」

「なんか、めちゃくちゃ強そうなんだけど……」

「こ、怖いです…」

「って、あそこにいるのシュガーちゃんじゃ!?」

 

タウロスイマジンのまさに怪物という姿に恐れおののくひだまり荘の面だが、その一方でゆのがシュガーの姿を見て驚く。シュガーとは初めて召喚された時に面識があったため、ゆのはすぐに気づくこととなった。

 

「さて。話を聞いた限り、お前らが絵画コンクールの司会者ってことでいいんだな?」

「そ、そうだけど……それがどうしたの?」

「今からある女を連れてくるが、そいつをコンクールの優勝者にしろ。そうでなければ、お前らの命も街の安全も保障はしない」

「そんな無茶苦茶な……聞くわけがないでしょう」

 

イマジンからの脅迫を聞き、当然ながら断るソルト。しかし、イマジンに敵いそうに無いのは火を見るよりも明らかだ。

 

「へ。イマジン相手なら俺が相手になってやるぜ!」

「モモさん、私も手伝うよ!」

 

そしてモモタロスと宮子は剣を片手に、タウロスイマジンに向かっていくのだが……

 

「エメラルドスプラッシュ!」

「うぉお!?」

「な、なにこれ!?」

 

直後、技名らしき掛け声が聞こえると、何処からかエメラルドの弾丸が二人をめがけて飛んできた。とっさに飛び退いて回避したため、二人とも特に傷を負うことはなかった。

 

「宮ちゃん、大丈夫!?」

「ゆの、危ないって! まだ攻撃があるかも……」

 

ゆのが宮子に近寄ろうとするも、沙英が危険に感じてゆのを遠ざけさせようとするが……

 

狙撃(シュートヒム)

 

直後、何処からか聞こえた声と同時に沙英の足元に何かが飛んできた。

 

「残念だが、あのイマジンは我々がスカウトするので、倒させるわけにはいかない」

 

そこに現れたのは、二人の男だった。紫のオーラを纏う緑の長い学ランを着た赤髪の青年と、杖を携えた褐色肌の男だ。後者はよく見ると白目で、盲目であることが察せられた。

 

「あ、あなた達は一体?」

「我が名は花京院典明。偉大なるオーバーヘブンショッカーに属する、スタンド使いでイマジンの契約者だ」

「同じくンドゥール。偉大なる悪の救世主たるオーバーヘブンショッカー首領の天下のため、貴公等クリエメイトと野上良太郎には死んでもらおう」

 

一同は知る由もなかったが、こちらも死んだはずの承太郎の仲間とDIOに仕えていたスタンド使いである。やはり復活し、供にオーバーヘブンショッカーの配下となっていた。

 

「やっぱり、ゆのちゃん達がクリエメイトだったんだ。それに、オーバーヘブンショッカー……」

「クソ、もう動き出していやがったか!」

「待って。今の人達も、イマジンと契約って……」

 

良太郎とモモタロスが敵の魔の手が迫っていたことに気づくが、その一方でヒロがもう一つの気になるワードに引っかかる。

 

「そういうことだ。来い、イマジン達よ」

 

そう言い、花京院とンドゥールが右手を差し出すと、そこから砂があふれ出し、それがイマジンとしての姿を形作った。花京院の体から出てきたのは、カボチャの頭に両腕に持った車輪型の武器が特徴のパンプキンイマジン。

そしてンドゥールは古代エジプトのファラオのような頭飾りに、モモタロス同様に鬼のような顔をした容姿だ。彼のスタンドからとって、ゲブイマジンとでも呼ぼう。

突如として敵が増え、しかも不穏な言葉を口にしたことを思い出したゆのは、思わず言及してしまう。

 

「あ、あの! 今、私達と良太郎さんに死んでもらうって……」

「ああ。君達クリエメイトと、それに戦う力を付与して異世界から呼び出す召喚士。どれほどの脅威かは知らないが、我らオーバーヘブンショッカーに仇為す可能性は、僅かでも摘まなけれないけないのだよ」

「そういうことで、貴公らにはここで果ててもらわなければいけないのだ」

 

ゆのの問いかけに、冷酷な答えを出す花京院。それに対してンドゥールが同意すると、再び何かが飛んできて、ゆのの頬を掠める。すると、薄っすらと血が流れた。

 

「ひぃい!?」

「ゆのっち、大丈夫!?」

「何、あの人? あの人も魔法か何かを……」

 

今の掠めた攻撃が、本気で命を取るという意思表示だと、ゆのは本能で察知した。それに恐怖して顔をゆがめ、宮子は珍しく本気の心配をする。そして今の攻撃に、沙英が警戒していると、ンドゥール自身から説明が為された。

 

「魔法などと一緒にされてもらっては困るな。これは私の世界に存在するスタンドという特殊能力で、我がスタンドはエジプト九栄神の一柱・ゲブ神を暗示している」

「そして私も同様に、タロットカードの教皇を暗示するスタンド、ハイエロファントグリーンを有している」

 

そしてンドゥールの横に水で出来た腕の姿のスタンド、花京院の横には光る緑の体と酸素マスクのような口をした人型スタンドが現れた。先ほどの攻撃も、これが飛んできたようだ。

 

「あれが、能力? イマジンみたいな怪物を呼ぶ力なの?」

「ううん。ちょっとこっちに来る前に知り合いから聞いたんだけど、超能力そのものが実体化した存在らしいんだ」

「へ。イマジンだろうが電気スタンドだろうが、ぶっ倒しちまえば一緒だろ!」

 

横にいるヒロに、良太郎は簡単に説明する。しかしモモタロスはそんなのお構いなしに、専用武器のモモタロスォードを振り回しながら突貫していく。

 

「へへ。特異点の野上良太郎に協力する、裏切り者だ。ぶっ殺してやるぜ!」

「同感だな。いくぞ」

 

しかしパンプキンイマジンとゲブイマジンは、それぞれの得物の車輪と錫杖を手にモモタロスに向かっていく。ゲブイマジンは見た目に似合わず武闘派のようで、錫杖でモモタロスと鍔迫り合いに持ち込んでしまう。しかもその背後からパンプキンイマジンが車輪を投擲し、的確にダメージを与えようとしていた。

 

「おっと、危ねえ!」

 

しかし咄嗟にモモタロスは剣を引き、車輪をはじき返す。その隙を付いて再びゲブイマジンが錫杖を振りかざすも、モモタロスは飛びのいて体勢を立て直す。

 

「面白そうじゃねえか。どうせ契約もすぐに果たせるし、噂のショッカーに手を貸すのもいいか!」

 

しかもタウロスイマジンまでがモモタロスに向かって、突撃していく。かなり分が悪い戦いだ。

 

「へへ。3対1か、上等だ!」

 

しかしモモタロスはむしろ楽しんでいる様子で、タウロスイマジンともチャンバラを始める。

 

「じゃあ、私達はあのスタンドとかいうのを!」

「オッケー、宮子!」

「あ、待って! 二人とも……」

 

その一方で宮子と沙英はそれぞれ剣とフラスコの投擲で、ハイエロファントグリーンに攻撃を仕掛ける。しかし、彼女達も士と同じく、スタンドのルールを知らなかった。

 

「あ、あれ?」

「攻撃が、すり抜けた?」

「スタンドは魂のヴィジョン、故にスタンド同士でないと攻撃が効かないどころか、触れることすら叶わない。しかし、スタンドは一方的に触れられる。そういうルールがあるのだよ」

 

花京院は律義にスタンドのルールを解説しながら、そのまま攻撃に移る。ハイエロファントは遠距離操作型でパワーは低いが、体を帯状に解く能力を持ち、それを伸ばして敵を拘束したり突き刺したりして攻撃するのだ。

咄嗟に宮子も沙英も回避するが、上手く避けきれずに尻もちをついてしまう。

 

「沙英、離れて!」

 

そして咄嗟にヒロが魔法を放つ。奇しくもキバーラに変身していた夏海と同じく、魔力のような力ならスタンドにも効くという予想が頭を過ったのだ。

 

「なるほど、いい着眼点だ。だが、無意味だ」

 

しかし相手の方が上手で、ンドゥールのスタンドが受け止めてしまう。

 

「残念だな。我がスタンドは水と一体化しているため、スタンド同士の攻撃も効かんのだ」

「ウソでしょ…」

「狙撃」

 

すかさずンドゥールは攻撃を仕掛けるが、ヒロも咄嗟に避けることができた。明らかに戦闘経験は敵の方が上、しかも命のやり取りを日常的に行っているのだ。真っ向勝負で敵うはずがないのは、目に見えて明らかだ。

しかもその間に、いつの間にか元の姿に戻ったハイエロファントが両手から緑色の液体を溢れさせている。

 

「皆さん、逃げて!」

 

それを見た良太郎は危険な物を感じ取り、ゆの達に咄嗟に逃げるように告げる。しかし、遅かった。

 

「エメラルドスプラッシュ!!」

 

先程聞こえたものと同じ技名を花京院が叫ぶと、ハイエロファントの手から溢れた液体がエメラルドの塊になり、無数に発射された。

 

「ゆのお姉ちゃん、危ない!」

「え、きゃあ!?」

「「「「きゃあああああああああああ!?」」」」

「うわあああああああああああ!?」

 

直後、いつの間にか体勢を立て直したシュガーがゆのを助けるが、残りの面々は良太郎を含める全員が攻撃を食らってしまう。

 

「良太郎さん! みんな!」

「ゆのお姉ちゃん、ゴメン! シュガー一人じゃ、お姉ちゃんしか助けられなくて…」

「おしゃべりとは、余裕だな!」

「「え……きゃあ!?」」

 

しかしそのままハイエロファントが再び帯状に解け、シュガー諸共ゆのを拘束してしまう。

 

「あ、あいつ!」

「よそ見してる場合か!」

 

モモタロスも気を取られてしまうが、直後にタウロスイマジンがモーニングスターを叩き付けてくる。回避こそできたが、イマジン三体を同時に相手取っているため、救援に向かえずにいた。

 

「ま、待ってください!」

「おい、誰だお前!?」

 

しかしその戦闘に割って入る、一人の女性がいた。それは、昨夜にイマジンに憑りつかれたコンクール参加者の女性だった。

 

「お、契約者の女じゃねえか。悪いが、契約完了はもうしばらく待ってろ」

「私、絵が上手くなりたいって頼んだはずです! なのに、なんで街を破壊するんですか!?」

「あ? お前より絵が上手い奴がこの街から消えたら、お前は必然的に街で一番絵が上手いってことになるだろう? まあ、そこで這い蹲ってる狸娘が審査員らしいから、こいつを脅してお前を優勝させるのもありだがな」

 

余りにも傍若無人な、イマジンの言動。それに女性は、思わず膝をついてしまう。

 

「わ、私、そんなつもりじゃ……」

「おい、そこの姉ちゃん! 落ち込むのはいいけど、危ねえから離れ……ぐあぁあ!?」

「お喋りはいいが、戦闘の妨げになってないか?」

 

モモタロスもショックを受ける契約者の女性に勧告するも、その隙にゲブイマジンからの攻撃を受けて吹っ飛んでしまう。

 

「さて。ゆのと言ったね? 聖典を拝借してクリエメイトについては調べさせてもらったが、君がどうやら君の世界の物語の中心のようだ。それに七賢者というのも、女神ソラの補佐官であるアルシーヴの部下だそうだね」

 

一方、拘束されたゆのとシュガーに花京院は語りかけ、冷酷に告げた。

 

「君たちが真っ先に死ねば、君たちの世界の物語は瓦解し、この世界への本格的な宣戦布告になるね」

「え、嘘?」

「いや、辞めて…!」

「駄目だよ。私のハイエロファントと契約イマジン達は、敵を引きちぎると狂い悶えるのだ。喜びでな!!」

 

そして花京院が大声で宣言すると同時に、ハイエロファントは帯に力を入れる。ゆのとシュガーの体を、二人纏めて引きちぎるために。

 

「「きゃあああああああああああああああ!?」」

「ゆの!?」

「「ゆのさん!?」」

「ゆのちゃん!?」

「ゆのっち!?」

「シュガー!?」

 

皆が傷つき、誰もゆのとシュガーを助けに行けない。まさに万事休す……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴムゴムの(ピストル)!! 

「ぐふぅう!?」

 

しかしその直後、何処からか伸びてきた腕が、花京院の顔面を殴り飛ばした。それにより花京院は吹き飛び、スタンドを解除してしまう。

 

「え? 今のは……」

「すまねえ、遅くなった!」

 

すると、先ほど先走ったルフィが走ってくる。彼のゴムゴムの実の能力で腕を伸ばし、花京院を殴り倒したのだ。

 

「な、なんだ今のは……」

「必殺・緑星デビル!」

「うぉお、なんだ!?」

 

イマジン達がルフィの攻撃に唖然としていると、今度はウソップが技名を叫ぶ声が聞こえる。するとどこからか飛んできた何かが、巨大なハエトリグサの様な植物と化し、イマジン達を襲う。

 

「まさか、まだ味方がいたのか!? ん? 今度は地面から…」

角強化(ホーンポイント)!」

「うぉお!?」

 

そしてンドゥールが警戒していると、いきなり地面から何かが飛び出してくる。目が見えない代わりに聴力の優れていたンドゥールだったが、予想だにしない攻撃に回避が遅れてしまう。

 

「ごめん、みんな! ルフィを見つけるのに、手間取ってた!」

「ゆのさん、大丈夫ですか!?」

 

飛び出してきたのは、角をクワガタムシのような形に変形させたチョッパーと、彼にしがみついた乃莉だった。どうやらあの角で、地面を掘り進んできたようだ。

 

「よかった。ルフィさん、見つかったんだ……」

「わりぃな。でも、もう安心しろ。あいつら纏めて、おれがぶっ飛ばすからな」

「おっと。俺も痛めつけられたんだ、鬱憤晴らしにもうひと暴れさせろ」

 

そして臨戦態勢を整えるルフィと、復活したモモタロスが並ぶ。そして、そこに良太郎も並びだした。

 

「ルフィさん、僕も戦います。僕とモモタロスが力を合わせれば、イマジンとも戦えます」

「そっか。何となくだけど、良太郎ってへなちょこなのは見た目だけだと思ってたから、大丈夫だろ?」

「良太郎さん、本当に大丈夫なんですか?」

 

ルフィからの若干失礼な評価とゆのの心配に、柔らかな笑顔で応える良太郎。そしてウソップの撃った植物を倒したイマジンと、復活したスタンド使い達に向き合った。

 

「君達には悪いけど時間は消させないし、ショッカーの好きにもさせない」

 

しかし良太郎は、普段のオドオドした様子が無くなり、芯の強さのようなものを醸し出しながら告げた。

 

「モモタロス、行くよ」

「おし、待ってたぜ!」

 

良太郎の言葉とともに、モモタロスは歓喜しながら赤いエネルギーに変化し、良太郎の体に入り込んだ。その様子にゆの一行だけでなく、ルフィ達も見入る。

すると良太郎は、いつの間にか手にしたベルトを腰に巻き付け、赤いボタンを押した。

 

「え? この音って……」

「駅みたいだね、ゆのっち」

 

そう、ボタンを押すとともにベルトから電車の発着音を思わせる軽快な音楽が流れたのだ。そして、何処からか取り出した一つのパスケースを構え、静かに、しかし力強くあのワードを告げた。

 

 

 

 

変身

【Sword Form】

 

そしてパスをベルトの中央にかざすと、良太郎の体を黒と銀の質素な全身スーツが覆う。そしてその上に赤いアーマーが装着され、最後に電仮面という仮面が顔に装着され、桃を思わせる形状のその赤い仮面が割れた。まるで桃太郎誕生を思わせるように。

 

「り、良太郎さんが……」

「変身したぞ、スッゲェええええ!!」

 

ゆのは驚きで動けず、ルフィも相当興奮している。他の面々も硬直し、特にチョッパーと屋根の上で狙撃体制に入っていたウソップの二人は目を輝かせている。

そんな中、変身した良太郎は右手の親指で自身を指差し

 

俺、参上!

 

モモタロスの声を発しながら、歌舞伎役者が見得を切るような、両腕と両足を開くカッコいいポーズで決め台詞を言ってのけた。

時の運行を守り、イマジンと戦い続けた時の列車デンライナーの乗り手"仮面ライダー電王"がエトワリアに降臨した瞬間である。




オリジナル怪人の解説

タウロスイマジン(CVイメージ:三宅健太)
エトワリアの芸術都市に住む駆け出し絵描きの女性に取り憑き、契約者にした牛型イマジン。お伽話ではなくエトワリアに生息する魔物、ミノタウロスの姿をイメージしている。大斧とモーニングスターを振り回すパワフルな戦い方を好む。
契約内容は、絵が上手くなってコンクールで優勝したい。しかし女性より絵の上手い人間を街から消すという形で望みを叶えようとし、街で破壊活動を行う。途中で止めに来たシュガーとソルトを返り討ちにし、コンクールの審査員だと知ると今度は女性を選ぶように脅迫する。

パンプキンイマジン(CVイメージ:岩田光男)
オーバーヘブンショッカーに洗脳されて蘇った花京院典明を契約者とする、カボチャ型イマジン。シンデレラのカボチャの馬車をイメージしたため、両腕に車輪を備えている。
契約内容はクリエメイトの始末と聖なる遺体の確保だが、元々オーバーヘブンショッカーの傘下怪人のため過去へと飛ぶつもりはない。契約者を得たのも肉体の確保のためだけである。
両腕の車輪を武器とし、投擲しての中距離攻撃も得意。

ゲブイマジン(CVイメージ:柳田淳一)
ンドゥールを契約者とした同じくオーバーヘブンショッカー傘下のイマジンで、過去に飛ぶつもりはない。エジプトのファラオを思わせるデザインだが、実際はンドゥールのスタンドが暗示していたエジプトの大地の神ゲブをイメージしている。
ゲブ神が大地の神のためか、意外と武闘派で錫杖を用いた近接戦闘を得意とする。


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第6話「無敵のヒーロー×☆☆☆」

キャラクターがどんどん増えていきますが、今回は敵側の増員になります。あと、サブタイはライダー側を意識していますが、今回は結構強引になったことをお許しください。
※わかりにくいですが、前回もひだまりスケッチのタイトルを強引に混ざった感じになります。


時空の狭間に設けられた、オーバーヘブンショッカーの拠点。そこで、芸術都市に現れた電王を監視する謎の男達がいた。

 

「特異点、既に例の世界にいるとはな」

「それにあのヘンテコな能力、たぶんあれは前に調べた世界にある悪魔の実とかいう……」

「まあ、どっちにしても食い尽くしてやるだけだがな」

 

男達は三人。内二人は和装姿で、それぞれ黒い侍のような着物で腰に鞭を差した男と、パイナップルを皮ごと齧る野武士を思わせる粗暴な格好の男だ。そして残る一人は、イマジンであった。しかも、黒い鬼のようなモモタロスに似た姿だ。

 

「何にしてもこの”最強の悪の組織”のオーバーヘブンショッカーを手に入れる為にも、こいつらは邪魔だからな。いずれ潰すというのは同意できるな」

「ああ。俺の目的のためにも、今この世に生きているヤツには全て死んでもらわないと困る。そのためにも、こいつらは真っ先にあの世へ送るつもりだ」

 

全員が危険な目的を持っており、しかも良太郎=電王に因縁があるようだ。いずれ、戦う機会も来るであろう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「やはりこいつが特異点、電王!」

「我らオーバーヘブンショッカーの障害、この場で消してやる!!」

 

タウロスイマジンとゲブイマジンは電王に変身した良太郎へと飛びかかるが、当の電王本人は落ち着いた様子で腰にある何かの部品を組み立てる。すると組み上がった何かから刃が生え、剣へと早変わりしたのだ。

これこそ、電王専用の可変式武器・デンガッシャーだ。

 

「てやぁあ!!」

「ぎゃああ!?」

「ぐぉお!?」

 

そして電王はすかさず、飛びかかってきたイマジン達にカウンターで一太刀浴びせていった。斬られて負傷したイマジン二体は、そのまま受け身をとれずに地面に叩きつけられる。

 

「エメラルドスプラッシュ!」

「喰らいやがれ、電王!」

 

そこに花京院のスタンドとパンプキンイマジンが攻撃してくるが、変身したことで身体能力も強化され、とっさの回避にも成功してしまうのだった。

 

「あの電気スタンドだかなんだかいうの、厄介だな。俺らの攻撃が効かねぇってのはよ」

『モモタロス、電気はいらないよ。でもそうだね、僕らがあの二人を直接攻撃したらマズイことになりそうだし』

 

電王の体から、モモタロスと良太郎の声が一緒に聞こえる。やはり今モモタロスは良太郎に憑依しており、その状態で電王に変身しているようだ。

そしてこの二人は今、生身の人間相手にどう戦うか検討している様子だ。

 

「あいつら死なさずにぶっ飛ばせばいいんだな。そういうことなら俺に任せろ」

「お、適任者がいやがった。よし任せる」

『そうだね、ルフィさんの方が人同士の戦いに慣れてるだろうし、任せた方がいいかも』

 

ルフィという適任者の存在に、彼に花京院達スタンド使いを任せる。そして電王は、イマジン達を倒すために彼らに向き合う。

 

「おい、そこの狸! その落ち込んでる女、避難させろ!!」

「了解です。でも、ソルトという名前があるんで狸呼びはやめてください」

 

ひとまず、ソルトに呼びかけて契約者の女性を逃がさせる電王。そして彼は、イマジン達に向き合いながら、大声で呼びかけた。

 

「おい、とりあえずこの場にいる全員に一つだけ言っておく。一度しか言わねぇから、耳の穴かっぽじっとけよ」

「「「あ?」」」

「なんだ?」

「良太郎さん?」

「ゆのっち、たぶん今はモモさんだよ。でも、なんだろう?」

 

イマジン達もゆの達もルフィも、何事かと思いながら電王の言葉に耳を傾ける。なんのつもりかと聞いてみるが、側から見ても派手好きなのがわかるモモタロスらしいことだった。

 

「いいか? 俺に前振りはねぇ。俺は最初から最後まで、徹底的にクライマックスだからな。覚悟決めろよ」

「おお、決めゼリフか! よくわかんねぇけど、これもかっけぇえな!!」

 

単なる意思表示の決めゼリフであったが、ルフィは海賊やっていながらヒーロー大好きなため(ある理由で自分はなりたくないらしい)、かなり興奮気味だ。

 

「何をわけわからんことを。死ねぇ、電王!」す

 

しかしパンプキンイマジンは意味不明とばかりにキレ、腕の車輪を投擲する。しかし電王は一気に駆け出して剣ではじき返しながら、突撃していった。

 

「行くぜ行くぜ行くぜー!!」

 

~挿入歌・Double Action~

そのままノリノリでパンプキンイマジンに斬りかかる電王。

 

「てりゃあ!」

「くぅ!?」

 

電王の素早い斬撃に、防御が追いつかずに一撃入れられるパンプキンイマジン。このままでは袋叩きになると推測して後ろに跳ぼうとするも、その前に鳩尾に蹴りを入れられて吹っ飛んでしまう。

剣の形に組まれたデンガッシャーは、モモタロスォードに比べて細身で軽量だ。そのため攻撃速度はモモタロスが生身で戦っていた時よりも、遥かに速い。更にその剣術は型のない、喧嘩殺法のようなものであり、攻撃パターンも読みづらく防ぎづらいのである。

 

「電王、調子にのるな!」

 

タウロスイマジンが背後から大斧を振り下ろすが、電王は咄嗟に飛び退いて避ける。そしてスライディングで一気に懐へ飛び込み、腹部を斬りつける。

 

「からの!」

「フギィ!?」

 

さらにタウロスイマジンの脛を蹴って、その勢いで離脱、距離を取って様子を伺っていたゲブイマジンに接近する。

 

「そらよ!」

「フグァア!?」

 

そしてそのままゲブイマジンにも先程の要領で斬りつけ、的確にダメージを与えていく。するとその体勢を整えられてない電王に、復活したパンプキンイマジンがすかさず車輪を投擲してきた。

 

「オラァあ!」

「何!?」

 

しかし電王はその体勢のまま体を一気に捻って、勢い良く回転しながら剣をふるい、車輪をはじき返した。元々の実戦経験もあり反射神経もあったが、ここでも武器の軽量化による恩恵が現れたわけだ。

 

「くそ、変身しただけでこんなに差が……!」

「へへへ。退治してくれようモモタロス、ってな!」

「調子に乗るな、電王!」

 

電王に変身した良太郎とモモタロスの強さに、思わず戦慄したゲブイマジン。しかし当の電王本人は、調子付いてそのまま戦闘を続行する。そこに自らを鼓舞する意味も込め、タウロスイマジンが啖呵を切って斧を振るう。

 

「もういっちょ、行くぜ行くぜ行くぜぇえ!」

 

しかし電王は更にテンションを上げ、再びイマジンに突撃していった。

 

一方、スタンド使い達と戦うルフィはというと…

 

「エメラルドスプラッシュ!」

 

ハイエロファントの強力且つ手数の多い遠距離攻撃が、ルフィに迫っていく。

 

「よっと!」

 

しかしルフィは鍛え抜かれた尋常じゃない身体能力で跳躍し、それを全て回避する。

 

狙撃(シュートヒム)!」

 

そしてそこにンドゥールのゲブ神による精密射撃が迫る。

 

「喰らうかよ!」

 

しかし、空中で身動きが取れないと思われたルフィは、体を捻ってその勢いで高速回転しながら避け、そのまま一気に地面に降りる。

 

「ゴムゴムの鞭!」

「ぬぐ!?」

 

しかもその際に足を伸ばし、遠心力に任せて長射程の回転蹴りまで叩き込んでいる。

 

「あ、ここヤベェ!」

 

直後にルフィが叫んで再び跳躍したかと思いきや、なんと先程着地した場所からハイエロファントの帯が伸びて来たのだ。

 

「ほぉ、勘のいい男だな。ハイエロファントの結界に気づくとは」

 

その一方、花京院はルフィを賞賛している。しかし直後、その花京院が次なる手を打って来た。

 

「なら、君の仲間とクリエメイト達にも僕を嗾しかけさせてもらおう」

パチンッ

「「「「「イー! イー! イー!」」」」」

「「「「「イー! イー! イー!」」」」」

「「「「「イー! イー! イー!」」」」」

 

花京院が指を鳴らした直後、何処からともなくショッカー戦闘員達が出現、大群でゆの達へと迫って行く。

 

「え、何こいつら!?」

「ヒーロー番組の戦闘員みたいなやつですかね!?」

「まあ見た目はそれっぽいけど……じゃなくて、マズイよ乃莉!」

 

突如として湧いて出てきた戦闘員の大群に、身構える一同。しかしそれにルフィが気づき………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンッ

「「「「「イー………いぃ」」」」」

「「何!?」」

 

直後、ルフィを中心にイナズマが走るような感覚がしたと思ったら、なんと戦闘員の過半数がその場で昏倒したのだ。十数人程無事なものもいるが、その全員が困惑している。しかしルフィは気にせず、驚いた様子の花京院とンドゥールに向かい、再び突撃していった。

 

「え? 何、どうしたの?」

「いきなり、倒れちゃいましたね……?」

「ルフィがやったんだ。ルフィには、覇気って言う悪魔の実とは違う力があるんだけど、それでやったんだよ」

 

しかし困惑はひだまり荘の面々も同様なため、ヒロとなずなのそばにいたチョッパーが簡単に説明する。

 

覇気とは体内エネルギーのようなもので、相手の気配や行動を読む見聞色、武器や体に纏わせて攻撃力を上げる武装色、そしてルフィが使った威圧だけで意識を刈り取る程のエネルギーを発する覇王色の三つがある。中でもこの覇王色は数百万人に一人の割合でしか素質がないと言う"王の資質"を持つ者のみが使える力なのだ。

 

「る、ルフィさんそんな力を……」

「ますます、私達なんて足元にも及ばない感じだね…」

 

乃莉も沙英も、住んでいた世界の違いとそこから来る圧倒的な強さに戦慄や己の無力さを感じることになる。しかし、チョッパーはそのまま続けた。

 

「けど、そんなルフィでもまだ一人じゃ勝てないような奴らが偉大なる航路にはいる。だから、おれはルフィを助けるためなら化け物にも喜んでなってやるさ!」

「「「「イー!」」」」

 

そしてそのチョッパーの宣言を合図に、撃ち漏らした戦闘員達がこちらに迫って来た。

 

「行くぞ! 重量強化(ヘビーポイント)!!」

 

直後、チョッパーの体が膨れ上がったと思いきや、ゴリラか雪男を彷彿とさせる厳つい筋肉質な姿へと変わった。

 

重量(ヘビー)ゴング!」

「イー!?」

 

そしてその屈強な肉体から放つパンチで、迫って来た戦闘員の一人を殴り飛ばす。そして次の戦闘員へと突撃していく。

 

「沙英、危ない!」

「イー!」

 

しかしまだ伏兵がいたのか、新しい戦闘員が沙英を背後から奇襲して来る。ヒロが呼びかけるも対応が間に合わない……

 

 

 

 

 

「イー!?」

「え、何!?」

 

直後にその戦闘員に飛んで来た何かが爆発し、沙英は無事にすんだ。

そしてそれが飛んで片方を見てみると……

 

「お久しぶりの火薬星! おれを忘れんじゃねぇっての!」

 

ウソップが大きなパチンコを構えている姿があった。先程の植物同様、何キロか離れた建物の屋根の上から撃ち抜いたのだ。

 

「そうだ。ルフィさんも良太郎さんも、見ず知らずの私達のために戦ってくれてるんだ。私達も協力しよう!」

「そうね。一緒に頑張りましょう」

「私、上手く戦えないけど回復は得意なんで、頑張ります」

「まあルフィさんの世界には魔法とかないっぽいからね。頑張りどころだよ!」

 

しかし此処で電王やルフィ達の戦いに奮い立つ事になったひだまり荘の面々は、最年長である沙英とヒロに続く形で、揃って戦いに赴いたのだ。

 

 

 

 

 

そんな中……

 

「え、誰?」

 

いきなり、ゆのが何かに反応し、不意に走り出す。

 

「ゆのお姉ちゃん?」

「ゆのっち、何処行くの?」

 

シュガーと宮子はその様子を目の当たりにし、そんなゆのを追いかけて行く。

 

「ゆのっち、どったの?」

「宮ちゃん、さっきから誰かが呼ぶ声が、この辺りからしてきて……」

「シュガーには何も聞こえないけど……」

 

自分にしか聞こえないというその声に、焦りのようなものを感じてゆのは走り続ける。幸い、戦闘員はあの戦闘に集中しているのか、此方には近寄ってこなかった。

そして、何処かの路地裏に入ったところで、その主を目撃したのだ。

 

「あそこに落ちている物から、呼ぶ声がする……?」

 

ゆのの視線に合ったのは、白い布に包まれた何かだった。近寄って手に取ってみると、何かがゆのの頭の中に響いた。

 

「え?」

「ゆのっち?」

「ゆのお姉ちゃん、本当にどうしたの?」

「なんか、これを手に取った瞬間に頭の中に声が……!?」

 

すると、いきなりゆのが走り出した。あまりに唐突な出来事に、宮子とシュガーも慌てて追いかける。

 

「ゆのっち、急にどうしたの!?」

「さっき言った頭に響く声が言ったの! あの花京院って人は、誰かに操られているって。それで、これが放っている光に当てたら、正気に戻せるんだって!」

「え、そうなの!?」

 

まさかの事態に驚くも、ゆのは確証もないのにそれを信じようと思った。まるで本能がそうさせるように……

 

この時、彼女は知るよしもなかった。これこそが敵の狙いである"聖なる遺体"であるということを。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おらよ!」

「グェエ!?」

 

一方、電王は再びタウロスイマジンをぶった斬り、そのまま蹴り飛ばす。見てみると、敵のイマジンは揃って満身創痍だが、ゲブイマジンだけは消えぬ闘志を見せながら錫杖を構えていた。

 

「へぇ、お前が一番骨があるみてぇだな」

「我らショッカーにも、悪の誇りというものがある。我が契約者のンドゥールも、自らの崇拝する悪の救世主に尽くすという誇りがあるのでな、それに応えてやろうと思ったまでよ」

「……良し、折角の異世界初陣だ。テメェに敬意を評して、俺の幻の必殺技を見せてやる」

【full charge】

 

そして電王はベルトに再びパスをかざすと、電子音声が流れると同時にデンガッシャーの刀身にエネルギーが溜まる。

 

「必殺! 俺の必殺技・パート1!」

 

技名を叫びながらデンガッシャーを構えて、ゲブイマジンに向き合う電王。対してゲブイマジンも迎え撃とうと、錫杖を構えて電王を睨む。

 

「「はぁあ!」」

 

そして同時に駆け出し、互いの得物を振るった。

 

 

 

 

 

先に、デンガッシャーの刃がゲブイマジンの腹に食い込んだ。

 

「がぁあ!?」

「うぉおおおおお!」

 

そして電王はそのまま力を入れ、ゲブイマジンを切り裂く。余りの威力にゲブイマジンは断末魔も挙げることなく、爆散した。

 

「な!?」

「もう、やられちまったのか!?」

 

ゲブイマジンの爆散を目の当たりにし、パンプキンイマジンもタウロスイマジンも驚愕する。

 

「さて、出血大サービスだ」

【full charge】

 

そして二度目の必殺技を使用する電王。しかし今度は構え方が違う。

 

「毎度お馴染み、俺の必殺技・パート2!」

 

電王が技名を叫ぶと、今度は刀身がエネルギーを貯めると同時に分離し、赤い稲妻で繋がれたような状態となった。

 

「てやぁあ!」

「グゥウ!?」

 

そして電王が剣を振ると、それに連動して分離した刀身はパンプキンイマジンに横一閃を放ち、

 

「喰らえぇえ!」

「ぎゃああああああああああああああ!?」

 

最後に縦に振り下ろし、一刀両断。パンプキンイマジンは二撃で倒された為、ゲブイマジンと違い断末魔を挙げて爆散した。

 

「チッ、ショッカーに参加するのはやめだ! 生き恥を晒してでも契約を完了してやる!」

 

残るタウロスイマジンは分が悪いと判断し、撤退しようとする。

 

「逃がすかよ」

【full charge】

「そして俺の必殺技・パート3」

 

そして3度目の必殺技に突入する電王。パート2と同じく刀身が分離し、逃げるタウロスイマジンへと迫っていく。

 

「な!? 速……ぎゃああ!?」

 

しかしタウロスイマジンは逃げきれず、デンガッシャーの刀身を喰らってしまう。そしてそのまま刀身はタウロスイマジンの巨体を天高く打ち上げ、そのままデンガッシャー本体に戻ってしまう。

 

「……と見せかけてストレートど真ん中!!」

「グワァアああああああああああああ!?」

 

そして落下してきた所を電王が叫びながら叩き切る。それにより、タウロスイマジンをとどめを刺されて爆発四散するのであった。

 

「へっ。決まったぜ!」

 

肩に剣を担ぎ、電王は勝利宣言をした。

 

一方のルフィは

 

「まさか、調査していた世界の一つの、実力者とはな……」

「悪魔の実に覇気……間違いない、要警戒対象の世界の一つだ」

「何ゴチャゴチャ言ってやがる! ゆの達を殺そうとしたオメェら、ぜってー許さねぇぞ!」

 

肩で息をする花京院とンドゥールに対し、決着をつけようと二人の懐へと飛び込んでいる最中であった。

 

「ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)!!」

「「ぬぐぉおおおおここここ!?」」

 

そしてルフィは、ゴムの伸縮を活かした無数のパンチ連打を叩き込み、そのまま二人にとどめを刺した。

 

「「が……ガハァっ!?」」

 

そしてそのまま、二人まとめて吐血してその場で倒れ伏した。此方もルフィの勝利は明白だ。

 

「おめぇ、やるじゃねえか。伸び縮みするだけの体だと思ってたら、あんな触れずに敵倒せる技まであんのかよ」

「オメェこそ、カッコよかったぞ! いやぁ、やっぱヒーローは派手で強くてカッコいいよな!!」

「おめぇもわかるか! 俺は最初、派手にカッコよく戦いたくて良太郎に手を貸したんだよ!」

『まぁキッカケはともかく、モモタロスは僕の最高の仲間ですよ。強さもお墨付きで』

 

そのまま意気投合する電王とルフィ。その一方で、いつの間にか戦闘員も全滅していた。

 

「ひとまず、なんとかなったねヒロ」

「ええ、沙英。でもコンクールは完全に中止よね、これ……そういえば街の人たちって…」

「心配ご無用。さっきソルトが街の外へ避難させておきました」

「そこはこっちでも見てたからな。間違いないぜ」

 

するとソルトとウソップがやって来て声をかけてくる。戦闘が激しくて気づかなかったが、街からは人の声は完全に消えていた。避難は完了したようである。

 

「皆さん、無事ですか!?」

「あ、ゆの。ちょうど終わったところだよ」

 

すると、此方に向かってゆのが駆けつけてくるのが見えた。しかしその後、全員がゆのの持っていたものに視線を移す。

 

「ゆのさん、それ何?」

「はい。なぜかこれに呼ばれた気がして……それと、あの花京院って人は誰かに操られているそうなんです。それで、これの放っている光に当てたら、正気に持たせるらしくて」

 

ヒロに拾った物について説明すると、そのまま気絶している花京院に近寄っていくゆの。

 

「え、それ本当なんですか?」

「うん。なんか、これを拾った瞬間に頭の中にそう言う声が響いて……」

 

乃莉が疑惑の目をしながら問いかけるも、そのまま花京院に近寄って、光を当てる。

 

「………う、ここは?」

 

すると花京院の体から紫のオーラが消え、直後に眼を覚ます。

 

「テメェ、もう眼を覚ましやがったな! ゆのに手ェだしたら、今度こそ許さねぇぞ!!」

「ゆの………それって、この子のことですか? というか、ここは何処なんですか?」

 

ルフィが目を覚ました花京院に声を荒げながら詰め寄るも、花京院には先程までの記憶がない。

否。それどころか……

 

「ボクはエジプトに居たはずなんだが……は!? DIOの能力の秘密がわかったんだ! 早くジョースターさんにこの事を……」

「エジプト? まさかこの世界に来た時のこと自体も覚えてないのかしら?」

 

花京院はエジプトでDIOにトドメを刺された時点で記憶が途切れており、ヒロの指摘通りエトワリアという異世界にいるということも知らない様子だ。

 

『ねぇゆのちゃん、その拾った物なんだけど中身を確認させてもらえないかな?』

「え、はい。いいですけど……?」

 

電王に変身したまま、良太郎はゆのの許可をもらって白い布を剥がす。そこには、ミイラ化した人間の右腕が収まっていた。

 

「ヒィ!?」

「み、ミイラの手!? なんでそんな物が街中に……」

『たぶん、これが敵の探していた聖なる遺体だよ』

 

〜ゆのは聖なる遺体の右腕を手に入れた〜

 

「聖なる、遺体?」

『別の世界から不思議な力を宿した偉い人のミイラが飛ばされたって聞いたんだけど、あのオーバーヘブンショッカーはその力で何かをしようとしているんだ』

「俺と良太郎は、あのショッカーどもをぶっ倒してそれを阻止しに来たってわけだ」

「成る程……つまり僕は、それを手に入れる為に利用されていたわけですか……」

(別の世界から……まさか、アルシーヴ様のオーダーの影響で? しかし聖典にない異世界で、しかも人じゃなく物を……?)

 

周りに事情を説明する電王の横で、ソルトは思案している。主であるアルシーヴが召喚を行なったということもあり、その関係について考えていたようだ。

 

「ふふふ…やはりあったか、聖なる遺体が」

 

その時、後ろから声が聞こえたので振り向くと、そこには満身創痍のまま立ち上がるンドゥールの姿があった。

 

「あいつ、死んだはずの敵スタンド使い!?」

「え、あの人って一回死んでるんですか?」

「そうだ、私はあのお方の手で蘇り、再びお仕えすることが出来た。しかし、このままではあのお方の足を引っ張るのみ。戻れば粛正されよう……なら!」

 

直後、ンドゥールはゲブ神のスタンドを発動する。花京院を含めた全員が身構えるが……

 

 

 

 

 

 

「がはっ!?」

 

ンドゥールは自身の心臓を、スタンドで貫いたのだ。まさかの自決に、一同は面食らうこととなる。

 

「え!?」

「あいつ、自分を!?」

「そうだ。私が死ねば、それを合図に刺客が来るよう体に仕掛けていた。次元の狭間に設けた、オーバーヘブンショッカーの拠点から、最強の刺客がな!

電王、貴様とも因縁のある奴らが三人甦り、オーバーヘブンショッカーに属している! 恐らくはその中から、最低一人は来るだろう!」

 

予想外の言葉に、一同はンドゥールを凝視する。しかも、電王の敵も甦っているという嫌な情報がセットでだ。

 

「奴らはこの私よりも強い、更に上の力を持ったスタンド使いもいる。様々な世界より、悪意や憎悪の元にオーバーヘブンショッカーに協力する者もいる。精々、足掻いていろ……がはっ!?」

 

そしてその言葉を最後にンドゥールは吐血し、イマジンたちと同様に爆発四散した。爆風が晴れると、当然ンドゥールの姿は跡形もなく、杖の燃え残りだけが残っている。

 

「うそ、死んじゃった?」

「あ、ああ。間違いねぇと思う…」

「あんな事を嬉々としてやらせるその首領って、どんなやつなんだよ?」

 

青ざめるシュガーにルフィが答える。覇気の修行で見聞色もそれなりに強くなったルフィが言うのだから、間違い無いだろう。

その一方で、ウソップはンドゥールの行動とそれを決行する程の忠誠心を抱かせる、オーバーヘブンショッカー首領の正体を考え、戦慄した。

 

「一人だけ心当たりがあります。僕がさっき言ったDIOという男なんですが……」

 

花京院はその心当たりであるDIOについて話そうとした瞬間、それは現れた。

 

「え、何アレ?」

「列車?」

「っぽいけど、アレは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先頭に骸骨の顔の意匠がある、黒い機関車だった。鬼火を纏いながら走行する不気味なその列車は、電王にも見覚えのある存在である。

 

「あ、アレは幽霊列車か!?」

『まさか、僕達と因縁のある敵って……』

 

そしてそこから降りてきたのは、オーバーヘブンショッカーのアジトで電王とルフィの戦いを監視していた内の一人、鞭を携えた黒衣の侍であった。

 

「久しぶりだな、特異点」

『死郎さん……』

 

かつて電王に変身する資格を持つ特異点の力を狙い、良太郎を拉致した死者の世界の侍"死郎"その人であった。




撤退する手段はありましたが、敵の増援を出す手段が他に思いつかず、ンドゥールの自決を理由に使ってしまいました。ンドゥールファンの皆様、申し訳ありません。
電王パートは次回で終わりの予定なので、特異点とかの説明は次回の予定です。


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第7話「エピソードオブ・ファイナルカウントダウン」

先週、平成ジェネレーションズforever見ました。超面白かったです!電王とW好きなら、見るべし!
そしてきらファンのメインシナリオも、アルシーヴとの決着と事の真相が判明しました。ひとまず矛盾しないように、今後のシナリオ展開は調整しないとな……


死郎

かつて、良太郎がモモタロスをはじめとした仲間達と戦い、倒したはずの男。その正体は良太郎がいた時代から400年前の武士で、死者の時間を運行する幽霊列車で生きながらに現世を彷徨っていた。野望が潰えた後、同じ列車に乗っていた恋人に抱かれながら逝ったはずだった。

 

「なんだ、あいつ? 侍っぽいけど……」

「でもよルフィ、あいつあんな骸骨っぽい列車から出てきやがったぞ。まさか……」

「ゆゆゆ、幽霊か!?」

「幽霊さんって、足あるの?」

 

ルフィ達も突如現れた死郎をしげしげと見るが、ウソップとチョッパーはおおよその正体を察し、かなり怯えている。横で一緒に見ていたゆのも、的外れなことを言いながら怯えていた。

 

「いや、そもそも幽霊なんていませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから……」

「あの、花京院さん。一応ここ、ファンタジーの世界なんですけど。所謂、ドラクエみたいな……」

「あの、乃莉ちゃんの言うこと、本当なんです…。それに貴方も不思議な力、使うんですよね…?」

「え?」

 

その一方、幽霊という存在そのものを否定する花京院だったが、乃莉となずなに告げられ、呆気にとられる。

しかしそんなやりとりも気に留めず、死郎は良太郎を指差しながら告げた。

 

「特異点・野上良太郎、俺は舞い戻ったぞ。オーバーヘブンショッカーの首領とやらに従うのは癪だが、再びソラをこの手に取り戻す時が来たんだよ」

『まさか、今度は聖なる遺体を使って……ダメだよ、前にも言ったよね?ソラさんが泣いているのは貴方の為だって……』

「黙れ、貴様がソラの何を知っている?」

 

電王に変身したまま、良太郎は死郎に問いかけるも死郎自身は取りつく島もない様子だ。

しかしその一方、シュガーが死郎の口にした名前に反応する。

 

「ソラ……お兄さん、ソラ様と……この世界の女神様と知り合いなの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽々しくソラと同じ名前の女のことを呼ぶなぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 

直後、いきなり死郎が激昂した。凄まじい怒号と殺気に、ルフィですら一瞬怯む。しかし死郎は意に介さず、声を荒げながら続ける。

 

なぜ俺のソラが悲しんで、ソラと同じ名の女が女神などと持て囃されるぅウウウウウウウウウウウウウウウウウ!

「な、なんだコイツ!? 急にどうしやがった?」

『彼は大昔にソラって名前の恋人と一緒に死んで、そのソラさんを甦らせるために、以前も彷徨っていたんだ。それでソラさんが悲しそうにする度に、ああなっているんだよ』

「前に倒した時に懲りたと思ったが、まだ根に持ってやがったみたいだな」

 

先程の静かな武人染みた雰囲気が一転し、ウソップが動揺する。そこに良太郎とモモタロスが説明すると、再び死郎は向き合って告げた。

 

「俺とソラの為にも生者と死者の逆転は果たさせてもらう。聖なる遺体の力で、今生きている全ての生者は全員死ね!」

 

そして腰に差していた鞭と、何処からか取り出した独楽を手に構えを取る死郎。

そして彼の口にした目的に一同は戦慄することとなった。

 

「生者と死者の逆転……私達を皆殺しってこと!?」

「さっきのイマジンといい、洗脳されてた花京院さんといい、やっぱり本気なんですね……!」

「あの怪物達の親玉のようなものみたいですね。なら、強さもそれ相応なんでしょう…」

 

沙英とヒロが口を揃えて死郎の言動に戦慄し、そばにいたソルトもイマジンの戦闘力から死郎の力を察して緊張感が高まっている様子だ。

しかし、そんな中でも折れない二人がいた。

 

 

「おれはこんなところじゃ死なねぇ。元の世界に帰って、海賊王になるって野望があんだからな!」

「ああ! どうせ一回は勝ったんだ、今更どうってことないだろ!」

 

ルフィと電王は揃って交戦の意志を向ける。そしてルフィがまず最初に動いた。

 

「ギア2(セカンド)!」

 

ルフィが叫ぶと同時に左腕を大きく広げると、その勢いで伸びた腕がポンプのように収縮する。するとルフィの体が高温を発し、全身から水蒸気を発しながら体を赤く染めていく。

 

「お前は何となく、ヤバイってのがすぐわかった。おれも全力でぶっ飛ばしてやる!」

「おぉまだそんな技あんのかよ! 俺も負けてらんねぇな!!」

 

ルフィの全力宣言に、電王も燃え上がる。そして、二人が同時に駆け出した。

 

「ゴムゴムの……」

「行くぜ行くぜ……って、おい速すぎだろ!?」

 

なんとルフィは、電王にも視認できない超スピードで一気に死郎の背後に回った。そしてそのまま、同様に超スピードを発する拳を死郎目掛けて放つ。

 

JET銃(ジェットピストル)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い」

「ぐぉぉおお!?」

「何っ!?」

 

何と、死郎はルフィの攻撃を体を軽く晒しただけで避けてしまい、それが電王に命中してしまう。そしてその攻撃の威力に、電王は勢いよく吹き飛んで建物に激突した。

そして死郎はルフィの方を振り返ると、独楽を投擲してそれを鞭で弾き飛ばす。

 

「グワァアああ!?」

 

超スピードで動いた反動で、回避モーションを取れなかったルフィに独楽が命中する。しかもその独楽は爆発し、ルフィも大きく吹き飛んでしまい、近くの家に激突した。

 

「「「「「良太郎さん!?」」」」」

「モモさん!?」

「「ルフィ!?」

 

見ていた全員が、驚愕した。3対1の戦いで終始イマジンを圧倒した電王。類稀なる潜在能力と、叩き上げの戦闘力を見せつけたルフィ。その2人が物の一瞬で、敗北したのだ。

 

「さて……仕上げだ」

 

死郎が呟くと同時に、宙へと新しい独楽を放り投げる。そしてそれを何度も鞭で打つと、独楽は打たれる度に分裂していったのだ。

そしてそれが地面に落ちて回転して行くと……

 

「え、あれ……」

「まさか、イマジン?」

「あんなに沢山……しかもあれって…」

「良さんとモモさんがやっつけたのもいる!」

 

その独楽から、次々とイマジンが出現したのだ。その数は先程ルフィが覇王色で倒した、ショッカー戦闘員よりも遥かに多いのだ。しかも宮子の指摘通り、電王がさっき倒したタウロス、パンプキン、ゲブの三体までいるのだ。

 

「オイオイ、まさか自分が幽霊だからって死んだ化け物まで操れるってのか!?」

 

ウソップが察してつい口にしてしまう。確かに現れたイマジンは皆が呻き声を上げ、体のどこかに必ずお札が貼られていたのだ。

 

「奴らを殺せ。そして聖なる遺体を奪え」

 

死郎が命じると、再生イマジン軍団は一同へと迫って行く。

 

「ソルトぉぉ……こんなの、勝てっこないよ…」

「同感です。これは逃げるが勝ち…きゃあ!?」

「貴様らが転移できることは承知だ。させると思うか?」

 

シュガーとソルトも弱気になり、転移魔法で撤退しようとする。しかし、死郎はそれを何故か知っており、妨害のために再び独楽を投擲してきた。やはりこれも爆発し、2人は大きな傷を負う。

 

「シュガーちゃん! なずなちゃん、シュガーちゃん達を…」

「は、はい!」

 

負傷したシュガーとソルトに、ゆのは慌てて治療しようと、なずなと2人で魔法を発動する。しかしその間にも、イマジンは迫ってきていた。

 

「チョッパーまずいぞ! このままじゃ……」

「仕方ねえ。ランブルボールを使って……」

 

自体を脱しようとチョッパーが懐から切り札を取り出そうとした時、それは起こった。

 

「エメラルドスプラッシュ!」

 

いつの間にか花京院が再びハイエロファントを呼び、イマジンの大群に攻撃したのだ。勢いよく飛んできた無数のエメラルドは、イマジン達に隙を作るには十分だった。

 

「お前、急にどうして……」

「僕自身は覚えてませんが、あなた達に迷惑をかけたようですね。ならその責任は僕自身が取るのは、道理です」

 

ウソップに問いかけられ、花京院は理由を説明する。

よく見ると、その目には何か強い決意のようなものが現れ、一瞬だが花京院の体から、黄金のオーラのようなものが吹き出して見えた。

 

(やっぱ、これがコイツの本当の姿なんだ……まるで俺の理想の"勇敢なる海の戦士"じゃねえか!)

「さあ、今の内に吹き飛ばされたお仲間を! 僕はこのまま殿を務めます!」

「あ、ああ! 助かった。チョッパー、行くぞ」

「私も良さんを助けに行くよ!」

「わかった! 脚力強化!!」

 

そしてチョッパーは変化してルフィの救出に向かう。そして残るウソップと宮子は、電王の救出に乗り出す。

 

「良太郎、大丈夫か?」

「う……ウソップさんに、宮子ちゃん?」

「およよ、変身が解けてる…」

「あ、ああ……あの野郎、あんな速ぇ攻撃避けるなんて、前より強くなってやがるぞ」

 

電王が叩きつけられた建物に入り込んで見ると、良太郎とモモタロスの姿に戻った二人の姿が見えた。あまりにも大きいダメージを受けると仮面ライダーは変身を解かれる場合があるが、電王はモモタロスを憑依させて変身するため、同時に分離してしまうようだ。

 

「おし。とにかく肩を貸すから、逃げるぞ!」

「うん、その方がよさそうだね……モモタロスもいい?」

「ああ。流石にこれじゃあ戦えそうにねえぜ……」

 

結果、モモタロスはまだ動けるだけの体力があるも、良太郎はウソップと宮子に肩を貸して運び出される。そして、建物から出ると同時にルフィを回収したチョッパーと合流できた。

 

「ルフィ、大丈夫か?」

「な、なんか知らねえけど、あの爆発食らってから、力が入らねえんだ…」

「あの幽霊野郎、何か仕掛けてたのかもしれねえな。急いでここからずらかるぞ!」

 

そしてモモタロスが先導して街から離れようとした時、それは聞こえた。

 

「!? この音楽って……」

「ああ、聞こえるぜ良太郎。ようやく来たか!!」

 

直後、電王のベルトから流れたものと同じ音楽が流れたと思いきや、何といきなり列車が現れた。何処か電王の仮面に似たデザインのそれは、虚空から出現する線路に沿って走行する。

 

「な、何だあれ……?」

「デンライナー、僕達の拠点で時の列車だよ」

「すげぇ、列車が空を走ってる!」

「おぉおおお、カッケェエ!」

 

突如現れたその列車デンライナーに、ルフィ達は状況を忘れて興奮気味だ。

するとデンライナーが良太郎達のそばで停車し、中から誰かが現れた。

 

 

「良太郎、やっと見つけたわよ!」

「センパイ、ズタボロじゃない。やっぱり単純バカのセンパイに、ファンタジーの世界は相性悪いのかもね」

「アハハハハ! モモタロス、ダッサイなあ!」

「カメの字にリュウタ、言ったら悪いで。それでモモの字、無事か?」

 

中から現れたのは良太郎を呼び捨てする幼い少女、三人のイマジンだった。一人は青い体に亀の甲羅のような意匠、黄色い体に熊を彷彿とさせる巨体、そして紫の体に竜を思わせる容姿の子供っぽい性格のイマジンである。

 

「ハナさん、みんな…」

「カメに熊に小僧にハナクソ女、おせぇんだよ…」

 

良太郎達の反応を見るに、どうやら仲間のようである。援軍の到着に喜んでいると、それだけに終わらなかった。

 

「ROOM」

 

突然だれかが一言そう言うと、辺りが白いドーム状の何かに覆われる。見てみると、いつのまにか見覚えの無い1人の男がいた。

ファー状の帽子と無精髭が特徴で、手には大太刀を携えている。そして男がその太刀を抜いて振るうと、

 

「「「ぎ……!?」」」

「「「ギャ……グゥうう!?」」」

 

なんと、ドーム内にいたイマジンの体が一斉に両断させられたのだ。

 

「シャンブルズ」

 

そしてまた呟くと、切られたイマジンの体同士が接続させられたのだ。しかも、街中に置いてあるタルや木箱に付けられたり、下半身が別のイマジンの背中に張り付いたりと、メチャクチャな形でだ。

余りにも異常な光景に、ひだまり荘の面々と七賢者の2人は驚愕。しかし助けられたのもあり、ゆのが勇気を振り絞って問いかける。

 

「あ、あの…貴方は?」

「トラファルガー・ロー。ハートの海賊団船長で、麦わら屋と同盟組んでる。まあひとまず、敵じゃねえ」

 

まさかの素性に驚くゆの達、そして同時にルフィの世界から来たなら今の技も悪魔の実の力だと察しがつくこととなった。

さらに援軍はもう1人いた。

 

「ストーンフリー!」

直後、1人の背の高い髪型が特徴的な女性が現れたと思いきや、スタンドを発動しながら叫ぶ。そして花京院に接近していたイマジンを殴り飛ばしたのだ。

そして現れたスタンドはサングラスをかけた、線の細い女性的な体格のものだ。しかし今の様子から、近接パワー型のようである。

 

「スタンド使い……君は?」

「あたしは空条徐倫、敵じゃないわ。あとあの列車なら確実に逃げられるから、そこのクリエメイトって子達を乗せて」

 

女性が承太郎と同じ苗字なのが気になるも、花京院はまずは窮地を脱することを優先し、徐倫の指示に従う。

 

「わかりました。皆さん、あの列車に乗ってください! 味方のようです!」

「あ、わかった! みんな、行こう!!」

 

花京院と沙英の先導のもと、デンライナーへと駆け出すひだまり荘の面々。当然、シュガー達も負傷しているため一緒に保護する。それを見て、良太郎やルフィ達もデンライナーへと急いだ。

 

「逃すか!」

 

しかし死郎がそれを見逃すはずもなく、すかさず独楽を飛ばしてこちらを攻撃して来た。

 

「ROOM」

 

だがその直後、再びローが力を発動し、それによりドームが発生した。

そして

 

「シャンブルズ」

「くっ!?」

 

先さっきと同じ技で独楽を死郎の懐に転移させて爆破した。それにより大きな隙が生じ、脱出の目処がつく。

 

「全員乗ったな。発進させろ!」

「なんで貴方が命令してるのよ!」

「そんな悠長なこと言うな、ハナ屋!」

 

一瞬、ハナとローの口喧嘩が挟まれるも、そのままデンライナーの扉が閉まり、発進していった。ひとまず、脱出完了である。

 

「くそ、逃したか……」

「ほう、存外悔しそうだな死郎」

 

聖なる遺体を手に入れられずに憤る死郎。そんな中、1人の男が死郎の背後から声をかけてくる。

 

「予想外の増援による、聖なる遺体奪取失敗。遺体は持ち主にクリエメイトを選んだようだが、同時に仮面ライダーをはじめとした守護者を呼び寄せた、といったところか」

「……恐らくはそうだろう。あの遺体には人知を超えた力が宿るそうだからな」

「まあ、遺体は一つになろうとする意志と性質を持つそうだ。なら一つでも手に入れれば、全てを同時に手に入れるチャンスも必ずくる。気長に待つといいだろう」

「俺を洗脳せずに、しかも死人のまま復活させた貴様なら知っているだろう。俺はソラの取り戻し、悲しみを断つ為に遺体を求めている。そんな俺に急かすなだと?」

 

話しかけて来た男に、振り向かずに問答を繰り返す死郎。この会話だけで、この男がオーバーヘブンショッカー首領だということが察せられた。

 

「だが、待てば待つほどその感情の昂りは凄まじい爆発力を生む。それこそが、お前を最強の戦士とするのだ。それに、この街は我々の拠点とすれば今後動きやすくなる。何もかもマイナスに考える必要もないのだよ」

「……勝手にしろ。俺はソラさえいれば支配などどうでもいい、生そのものが妬ましいだけだからな」

 

それだけ答え、死郎は現れた幽霊列車に乗ってその場を去っていく。その際、車窓から生気を感じないものの、美しい女性が悲しそうな表情をしているのが見えた。

彼女が死郎の恋人ソラであった。

 

そしてこの翌日、芸術都市は占拠されてしまい、オーバーヘブンショッカーの拠点の一つとなってしまうのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「クリエメイトの皆さんとエトワリアの方々、初めまして。私がこの時の列車デンライナーで、オーナーを務めている者です。以後、見知りおきを」

「あ、どうも。助けてもらって、ありがとうございます」

 

デンライナーの食堂車に案内された一同は、そこでオーナーを名乗る初老の男性に出会う。沙英が代表して礼を言い、残りの面々も倣って頭を下げると、それに合わせて良太郎の仲間や助っ人2人が自己紹介をしてきた。加勢に来たイマジンとは別に、白い体の偉そうな奴が1人いたが、そいつも自己紹介を始める。

 

「私はハナ。良太郎の仲間でこの列車の乗客よ」

「どうも、僕はウラタロス。皆さんのような美しい女性に会えて、光栄ですよ」

「俺はキンタロスや。まあ、よろしく頼むわ」

「僕はリュウタロスだよ、よろしくね〜」

「我はジーク。皆の者、我がお前達を救ってやるから光栄に思うが良い」

「客室乗務員のナオミでーす!」

「トラファルガー・ロー。さっきも名乗ったが、麦わら屋と同盟を組んでいる」

「空条徐倫よ。さっきの戦闘を見ての通り、スタンド使いよ」

 

幼女にイマジン4人に奇抜なファッションの女性、独特な呼び方をしてくるイケメンに、スタイルはいいが髪型が奇抜な女性。余りにも濃すぎるメンバーにゆの達だけでなく、シュガーとソルト、そして花京院も反応に困っていた。

 

「まずは、皆さんに我々の細かい素性や良太郎君の存在についてお話しないといけませんね。ナオミ君、コーヒーを皆さんに」

「了解でーす!」

「ナオミ、プリンつけてくれ。腹減った」

「飯あんなら、おれは肉が食いてえ! 骨ついたデッカいやつ!」

 

その結果、ナオミがコーヒーを用意し、話が始まる。モモタロスのプリンはすぐ出たが、ルフィの分は少しかかった。

そして説明が始まるも、ルフィは途中で出てきたマンガ肉に噛り付いてそのまま話からフェードアウトしてしまう。

 

「えっとつまり、その特異点っていうのはタイムパラドックスの影響を受けない特異体質、みたいなものなんですね?」

「ええ。そして特異点は、時間の破壊を起こしたイマジンを倒すことで、特異点自身を支点として破壊された時間を修復する力を持っています」

「そして、その特異点だけが電王になれる資質があるってわけよ」

 

沙英がオーナーから為された、何度か聞いた特異点という単語の詳細を要約する。そしてオーナー自身とハナから、補足がなされた。

ちなみにオーナーはチャーハンを食しながら話しているのだが、彼は何故か刺している旗を倒さないように食べるこだわりを持っている。

 

「で、そのデンライナーを使って、皆さんはイマジン相手にタイムパトロールをしているんですね……なんか、スケール大きいなぁ」

「そういうこと。又聞きでクリエメイトについては知ってたけど、ゆのちゃん達は戦う相手のいない平和な世界に住んでたらしいし、いまいちピンとこないかもね」

 

ゆのが感心していると、ウラタロスが話しかけてくる。実際、クリエメイトの住んでいた世界は世界を脅かす敵や、特殊な能力とは殆ど無縁な世界である。世界の危機と言われてもピンと来ないだろう。

 

「そして紅渡君達、世界の管理者や時の運行を守る関係者達の要請のもと、我々もデンライナーを使いこのエトワリアに乗り込んだわけです。前者の方達が世界を渡る手段を用意してくれたお陰で、我々もこの世界に来れたという次第になります」

「なんでも、オーバーヘブンショッカーは世界も時間も関係なく色んな場所に行き来出来るそうで、だから時の運行を乱す危険分子って事で、私達も戦うことになったのよ」

 

最後にどうやってデンライナーがエトワリアに乗り込んだのか、そして時の運行を守るのが目的の彼らがなぜ異世界の危機に駆けつけたのか、という理由が語られる。

 

その一方…

 

「ナオミお姉ちゃん、苦いのダメだよぅ。シュガーにもプリンつけて」

「ソルトにも何かください。塩味のする物を所望します(このコーヒー、お世辞にもできないくらい不味いです。口直しが欲しい…)」

「あ、了解でーす! お姉さん、急いで用意しますよぉ〜!」

 

シュガーとソルトに懇願され、ナオミが張り切った様子で注文された品の用意に入る。ちなみにコーヒーには極彩色のクリームが乗っており、見た目からして不味そうだ。しかしこれを普通に飲める者が、この場にいたりする

 

「ウソップはこのコーヒー、ダメなのか? おれは結構好きだぞ」

「……よく見りゃ、モモタロス達は美味そうに飲んでやがるな。人間の味覚からズレてんのか、これ?」

「ク、クゥウ〜(美味いな、これ。初めて飲んだけど、コーヒーっていったか?)」

(おれはパンと梅干しが嫌いだが、このコーヒーも追加だ)

 

少なくともイマジンやチョッパー、ついでにクロモンといった、人間以外の生物には好評だった。何故かルフィの捕まえたクロモンが籠から解放され、一緒にたむろしている。

そんな和気藹々の中、花京院は先ほどの疑問を徐倫にぶつけるのだが、ここで意外な声が聞こえた。

 

「徐倫、でしたか? その空条という苗字、かなり珍しいと思うんですが、承太郎という名前に聞き覚えがないですか?」

「あなた、まさか父さんを知ってるの?」

 

なんと徐倫は承太郎の娘という驚愕の事実を知ってしまう。

 

「承太郎が父さん? 彼、まだ高校生のはずなんだが、明らかに年上ですよね?」

「……ああ、そういうことね。まず順を追って説明するけど、実はあたしの所にも一度、あの聖なる遺体が現れたの」

 

どうやら、徐倫の元にもスピードワゴン同様に聖なる遺体が現れたらしい。つまり、彼女も承太郎の世界の別の時代の人間ということになる。

 

「それで遺体の意志か何かに、過去に飛んで父親を救えって伝えられたんだけど、その矢先に遺体が消えて、私も変な空間の歪みに飲まれて、この世界にいたわけよ。後はこの列車に拾われて、現在に至るってわけ」

「……なるほどね。僕も未来から来た僕の孫が変身する電王と、共闘したことがあるからね。徐倫さんの話は信じられるかも」

「……ファンタジーの次はSFですか。頭痛くなりそうです」

 

徐倫の素性と良太郎からの裏付けを聞き、花京院は頭を抑えながら呟く。元々特殊能力で戦う世界にいた彼でも、脳みそのキャパシティオーバーは避けられなかったようだ。

そしてルフィが肉を食べ終えたタイミングを見て、ローは声をかける。

 

「とにかく麦わら屋、おれ達が元の世界に帰るにはそのオーバーヘブンショッカーとやらを潰さねえといけないらしい。やることがある以上、さっさと済ましちまうぞ」

「ああ。早く帰って、ミンゴの野郎をぶっ飛ばさねえとな!」

「ミンゴ? ぶっ飛ばす?? ルフィさん達、ここにくる前に誰かと戦ってたんですか?」

「まあ、そうだな。おれが説明してやるよ」

 

ゆのの疑問に対し、説明するウソップ。

政府に上納金を出すことで合法的に海賊行為を行える、王下七武海。その一人である天夜叉ドンキホーテ・ドフラミンゴが兵器の密造と裏社会への売買に手を出していると知り、訳あって戦うこととなった。ルフィ達麦わらの一味は、その決戦とその後の目的のためにロー率いるハートの海賊団と同盟を組んでいた。

そしてドフラミンゴの拠点であるドレスローザという国に向かう途中で、気がついたらエトワリアにいたというのた。

 

「こ、子供を使った実験……?」

「人造の悪魔の実の開発……皆さん、そんなのと戦うんですか?」

「…おれも奴とは因縁がある。奴が七武海を抜けた今がチャンスだ、時間を無駄にできねえ。そういうことだから、お前らを狙う敵はさっさと倒す。そういうことだ、それ以上でも以下でもねぇ」

 

ドフラミンゴの所業と彼率いるドンキホーテ海賊団の組織力に戦慄するひだまり荘の面々、そしてそんな彼女達に据わった目つきで語るロー。強い決意が見受けられた。

 

「大丈夫だよ。さっきは失敗したけど、死郎さんもショッカーも僕達が止める。ただ、僕達も戦う相手がいるから、ルフィさんは手伝えそうにないけど……」

「大丈夫だ。ミンゴの野郎は俺がぶっ飛ばすから、安心しろ。でもその前にあんにゃろう、今度こそぶっ飛ばしてやるから待ってろよ!」

「さっき言ったが、俺達は最初からクライマックスだ。そうなんども負けねえから、お前らは安心してろ!」

「そういえばルフィ言うたか? さっきの傷で体が動かんようになった言うとったけど、大丈夫なんか?」

「ああ。肉食ったら治った」

「オメェどんな体してんだよ……」

「あはは、面白いねぇ!」

 

そして同じく決意表明する、良太郎達と麦わらの一味。しかもルフィ達もキンタロス達他のイマジンも、さっき知り合ったばかりなのに親しげな様子だ。チームプレイも問題なさそうである。

しかしここで新たな問題が生じた。

 

「そういえば、あの子達はどうしましょう? 一応、敵同士なんだけど……?」

「ああ、そういえばそうでしたなぁ」

 

ヒロがそう言い、宮子と二人で視線を向けた先にはナオミの持ってきた軽食を堪能するシュガーとソルトの姿があった。自分達を狙っているアルシーヴの部下、という立場のためこのまま里に入るわけにはいかない。

ひとまず簡単に説明すると、

 

「なら捕虜にでもしたらいいだろ、猫屋? そのアルシーヴとやらも幹部を捕えられたら、黙ってられねぇだろう」

 

ローが平然と言ってのけた。流石は海賊、言うことが違う。

 

「……可哀想だけど、それしかないわね」

「? ところで、猫屋というのは私ですかな、トラ男さん?」

 

そんな中、宮子から呼ばれた呼び方につい目を剥くロー。

 

「……そうだが、なんで猫屋がその呼び方を知ってる?」

「さっきルフィさんから聞きました。しばらく一緒にいると言うことで、親しみを込めてそう呼ばせてもらいます」

 

そんな様子はなかったのに、いつの間にか話していたらしい。本当はやめさせたい呼び方だが、宮子にルフィと似た空気を感じたローは、諦めることにするのだった。

 

「さて。ではその里に恐らくディケイド、つまり士君が来ている可能性がありますね。デンライナーを急がせましょう」

「あ、士って言うのはまた別の世界から来た僕達の知り合いなんだ。頼れる人だから、安心して」

 

そしてデンライナーは、ゆの達の持っていた地図を参考に、里へと進路を向けるのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その一方、二つ目の聖なる遺体に導かれたクリエメイトが、仮面ライダーと異世界の戦士と会合しようとしていた。

 

「ひふみ先輩、あそこが依頼のあった町ですよ!」

「うん…地図も合ってる…みたい」

 

「あれ? 僕、確か街中を走ってたはずだよね?」

 

「オサム、三門市にこんな場所あったか?」

「いや、僕も覚えてない。というか、ここ日本なのか?」




すまん、ルフィを死郎に負けさせてしまった……自分の中じゃ、死郎が電王最強の敵だと未だに認定されています。
ちなみに最初、ナミとブルックも出す予定だったんですが、キャラが多すぎると動かしづらいので断念。同様の理由で、ジョジョ6部は徐倫とプッチしか出しません。後、徐倫が聖なる遺体と出会うのは承太郎と会ったからなんですが、ちょっと御都合主義で先に遭遇させました。


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第8話「迷い込みしHEROES」

活動報告にアンケートを実施しています。協力してもらえたら幸いです。
今回の参戦作、ジャンプ側に固有名詞が多すぎるので説明してたらただでさえ長い文章がさらに長く……
あと、今回から組み合わせた作品の意図も載せます。
それでは、どうぞ。

p.s,アルシーヴのガチャ実装が決まったようですが、一応メインクエスト7章までに、独自設定絡めた内容にしています。ストーリー上でおいおい説明する予定なので、お楽しみに。


とある町を訪ねて来た、五人のクリエメイトがいた。その中でも小柄な二人組が、町の人から何か話を聞いている。

一人は熊のフードを被った明るい紫の髪色、もう一人は鮫を模した袖が特徴的な服を着た金髪少女である。それぞれ涼風青葉と桜ねねといい、なんと二人とも19歳なのだ。

 

「なるほど、ありがとうございます! じゃあ行こうか、ねねっち」

「オッケーだよ、青っち」

 

青葉は元居た世界ではイーグルジャンプというゲーム会社に勤めており、そこでグラフィック班に属している。ねねは青葉と幼馴染で大学生であるが、夏休みを利用してデバックのアルバイトに来ている。そんな彼女達は、同社に勤めている先輩達とこの世界に召喚された。

今回はその先輩の内3人、滝本ひふみ、飯島ゆん、篠田はじめと共にある依頼を受けて、里から離れたところにある町へとやってきたのだ。

 

「しかしまた召喚されて、しかも今度はきららちゃんやクレアちゃんのお陰でいつでも帰れるってのが良かったよ」

「だよね。私は前の召喚のことは知らないけど、そこの所はすごいご近所感覚な異世界だよね。フロ◯ャルドといい勝負だよ」

 

青葉と話しながらねねは異世界召喚についての感想を漏らす。その際、彼女が過去に視聴した深夜アニメの舞台となった異世界を比較にするのが、ご愛嬌である。

 

「うわああああああん! おかあさあああああああん!!」

「えっと、どうしたらいいんだ……空閑は子供の相手って…」

「いや、全然。ヨウタロウ位しか出来そうにないな」

「だよな……」

 

そんな二人の視線に飛び込んだのは、泣いてる子供をあやそうとするも、勝手がわからずにしどろもどろな状態の少年二人がいた。二人ともセーターにジーンズといった現代ファッションで、それぞれメガネの優等生タイプと、小柄で白髪とかなり特徴的なコンビである。

ひとまず力になれないかと思い、青葉とねねも声をかける。

 

「君達、どうしたの?」

「あ、すいません。ちょっと、迷子みたいなんですけど、子供の扱いに慣れてなくて…」

「? オサム、この人達同い年くらいじゃないのか?」

「な!? ちょっと、私19歳だよ! 何、この失礼な小学生!?」

 

白毛の少年に年齢について勘違いを受け、ねねは思わず怒ってしまう。しかし少年はかなり冷静だった。

 

「いや、俺ちっこいけど15歳、春から高校生。それと知らずに、失礼しました」

「あ、そうなの……私こそゴメン(やりづらいな、この子…)」

「うわぁあああああん! お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!」

「って、ねねっち! 騒いだから余計に泣いちゃったよ!」

 

ねねと少年は喧嘩に発展せずに済むも、迷子を刺激してしまい、余計に収拾がつかなくなってしまう。

 

「あれ? そこの君達、どうしたの?」

 

更にそこに、新たな人物が加わった。二十代半ば程の青年だが、顔は童顔で温和そうな雰囲気をしている。そして服装はシャツの上に大きな白衣を着ていて、何故かバイクを押していた。バイクも特徴的で、白と赤を基調とした車体に赤い字でAIDと刻まれている。

 

((え? まさか、この人って日本人?))

(格好からして、まさか医者なのか? )

「いい所に人が来たな! 実は迷子がいまして、どうすればいいか困惑していたところです」

 

青葉とねね、そしてメガネの少年が目の前の青年の正体について察するが、その間に白髪の少年が事情を説明する。

 

「成る程……よし、任せておいて」

 

話を聞いた青年は、子供の方に近寄って、目線を合わせようとしゃがむ。

 

「ボク、大丈夫かい? お父さんかお母さんと、はぐれちゃったのかな?」

「ひっく……うん。おかあさんとおかいものに、いったら……」

「そっか…でも、君が泣いてたらきっと、お母さんも悲しくなって、泣いちゃうかもしれないよ。辛くったって、泣かないで頑張れ」

「ひっく、でも……うわぁあああああん!」

 

青年の励ましも効果はなく、子供はまた泣き出してしまう。しかし、すぐに青年は何かを思いついたようだ。

 

「そうだ。お兄ちゃんがお守りをあげるよ」

 

そう言い、青年がポケットから取り出したのは一つのラバーストラップだ。ピンクのボール型ボディに逆立った髪、そしてゴーグルをしたつぶらな目と、かなり記憶に残りそうなデザインをしている。

 

「ひっく……なにこれ?」

「これはマイティって言って、僕の故郷で人気のヒーローなんだ」

 

そして青年はそのまま子供に、そのマイティというキャラクターについて話し続ける。

 

「マイティはお菓子の国をしょっぱくしようと企む、ソルティ伯爵を倒すために冒険をするんだ。マイティはお菓子を食べて強くなる不思議な力があるんだけど、それでもたった一人でソルティ伯爵とその部下たちをやっつけたんだよ」

「ひとりで…マイティはこわくなかったの?」

「怖かったと、僕も思う。でも、マイティはヒーローだから怖くても泣かない。そう思って戦って、ソルティ伯爵に勝ったんだよ」

 

青年からマイティの話を聞いている内に、子供も涙が引いていく。どうやら、届いたらしい。

 

「君だって辛くても悲しくても、あきらめなければマイティに、ヒーローになれるんだ。だから頑張れ、僕も応援してるよ!」

「……うん!」

 

最後にその言葉を聞いて、子供も完全に泣き止んだ。するとその直後、必死そうに駆け寄る女性が目に入った。

 

「あ、見つかった!」

「おかあさん!」

 

案の定、女性は子供の母親だった。親子は再会を喜び、抱き合う。そしてそれを済ますと、青年に向き合って礼を言った。

 

「ウチの子がお世話になりました。ありがとうございます!」

「いえいえ、職業柄子供の相手には慣れてるもので。それよりボク、頑張れよ」

「うん。おにいちゃん、ありがとう! ぼくもマイティみたいなヒーローになるよ!」

 

そして子供は母親に手を引かれながら、笑顔で帰っていった。

 

「ふぅ…一時はどうなるかと思った。ありがとうございます、僕達ああいったことは慣れてなくて……」

「その格好、もしかしなくてもお医者さんですよね? それで子供の相手って…」

「担当が小児科なものでね。趣味もテレビゲームだから、割と子供の相手は得意なんだ」

 

小児科、ゲームとエトワリアに無い単語を耳にした青葉は、確証を持って青年に問いかける。

 

「あの、まさかとは思いますけど、お兄さんって日本人ですか?」

「え? じゃあ、君も日本人なの?」

「? 日本人も何も、日本の三門市だろ、ここ」

 

すると隣で聞いていた白髪の少年が、反応する。まだここを日本だと思っているらしい。

 

「あ、この子気づいてない……ここ、日本どころか地球じゃないんだ。異世界ってわかる?」

「異世界? 近界(ネイバーフッド)とは違うんですか? いや、強ち異世界と言えなくもないか……」

 

すると今度はメガネの少年から、謎の固有名詞が飛び出してくる。

 

「な、なんかそっちの彼、すごい世界から来たみたいだね……」

「……まさか、君達って平行世界のことを認識して……」

「へ? まさか貴方も、異世界とか平行世界のことを…」

 

青葉と白衣の青年は、共に驚愕する。異世界や平行世界という、普通に生きていればまず出くわすはずのない物を認識していたのだから、当然だろう。

 

「……なんか、のっぴきない状況みたいだな。僕達、急にここにいたんで訳がわからないんですけど、詳しい事情を聞かせてもらってもいいですか?」

 

そして唯一ついていけなかったメガネの少年に頼まれ、青葉達は自分達の止まっている宿に3人を案内する。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「で、この3人がその新しい異世界人?」

「ウチらもちょっと聖典読んでみたけど、見たことないで」

(男の子、ばっかり…ちょっと、恥ずかしい……)

 

宿で紹介された青葉の先輩達。白いスリットの入ったドレスの魔法使い風衣装の女性が、滝本ひふみ。コスプレ好きなので異世界スタイルが様になっているが、本人はシャイで人見知りだったりする。

赤いケープを羽織った関西弁の女性が飯島ゆん。普段からフリル付きの衣服を好む傾向にあるため、あまり違和感もない。

長身でスタイルもいいが、ボーイッシュな印象の女性が篠田はじめ。オタク趣味でオモチャに給料の大半をつぎ込むだらしない一面も。

青葉達が自己紹介を終えたところで、3人もそれぞれの名と立場を明かす。

 

「僕は宝生永夢(ほうじょうえむ)。聖都大付属病院の小児科医として、働かせてもらってます」

「僕は三雲修(みくもおさむ)、三門市という街に拠点を置く、界境防衛機関ボーダー・玉狛支部の第二部隊隊長を務める、B級隊員です」

「同じく空閑遊真(くがゆうま)。背はちっこいけど、オサムと同い年で15歳だ。よろしく」

「防衛機関? 修くんって、中学生だよね?なんか矛盾してない?」

「ああ、実はボーダーの前線で戦う隊員は、10代から20代が基本なので、学生との兼業が多いんです。ひとまず、僕達の世界とボーダーについて、まずは話させてもらいますね」

 

聞けば、修と遊真のいた世界の日本にある三門市には、近界(ネイバーフッド)という異世界からの侵略者が現れるというのだ。そこに住む異世界人"近界人(ネイバー)"はトリオンという生体エネルギーを用いた道具トリガーを文明の利器として使っており、しかも国々がどこも戦争状態という状態なのだとか。そして日本に住む人々からトリオンを奪うため、トリオン兵という文字通りトリオンで生成された兵器人形を送り込んでくるという。

ボーダーはその近界人の攻撃に対抗する防衛機関で、近界人のテクノロジーを解析して量産した戦闘用トリガーを使い戦っているという。因みに、トリオン兵にはトリオンによる攻撃以外は効かないらしく、事実上ボーダーが居ないと近界人とは戦えないとのことである。

また、トリオンも20代前後で生成する器官の成長が止まるため、戦闘隊員は必然的に20代までとなってしまうのだとか。

 

「異世界から侵略……なんか、凄い世界から来たんだね二人とも」

「異世界が、ファンタジーじゃなくてSF……最近じゃ…あんまり聞かないかな?」

 

青葉とひふみは話を聞いて、結構びっくりしている。やはり大多数が敵や特殊な力のない世界から来たクリエメイト達は、そういったものと無縁なので驚くのも仕方はなかった。

 

「特定の攻撃でしか倒せないか……僕も趣味はゲームだし、そういう設定とかもよく聞くけど……そうか、平行世界にはそういう敵が…」

「あれ? 永夢さん、今なんて…」

「ああ、ごめんごめん何でもない! それで、涼風さんや三雲君達は、これからどうするつもりで…」

 

永夢が急にボソボソと呟きだし、しかも気になることを言っていたためつい聞き返す青葉。しかし、当の永夢自身は慌てて否定してしまう。そして今後の指標について聞いてみることにした。

 

「私たち、ちょっと依頼があってこの街に来たんですけど、これからその依頼主の所に行くんです。RPGのギルドみたいな、あんな感じの」

「なるほど……僕もこの世界について何も知らないので、よければ同行させてもらってもいいですか?」

「オサムに賛成だ。情報も手に入るし、俺も仲間が来れるかわからんし、帰り方探すのにもちょうどいいかもな」

「あ、そうか! 二人とも戦闘慣れしてるってことだし、依頼が魔物退治とかなら助かるかも!」

 

話を聞いていた修と遊真の提案に、はじめが意気揚々と乗る。しかしそれを横で聞いていたねねは、少し疑いの目を向けていた。

 

「でもさ、話だけ聞いても厨二病の妄想にしか聞こえないんだよね、正直。何か証拠ってないの?」

「まあ、それもそうですね。本当は隊務違反なんですけど、状況が状況なので、トリガーを実際に見せてみますね」

 

ねねの言葉に同調した修は、早速立ち上がってポケットからトリガーを取り出す。スマートフォンほどの大きさの装置であるそれを手に、修は叫んだ。

 

「トリガー起動(オン)!」

 

直後、修の体を光が包んだと思いきや、服装が変化した。青と黒を基調とした、SF映画の戦闘要員が着そうな衣服を纏った姿になり、手にはビームソードと思しき武器を持っていたのだ。

そして左肩には、彼が隊長を務める玉狛支部のエンブレムがある。中央に『BORDER』と刻まれた六角形、上部に丸が三つ、下部に大きな丸が一つ描かれているのが特徴だ。

 

「おお、変身……いや、この場合は装着の方が適任だ!」

「はじめ、そういう問題? まあでも、流石に驚いたわ…」

「うん…ちょっと、かっこいい…」

 

はじめ達先輩組は、修の変身を見てなかなか好評なようである。特にはじめやひふみは、オタク趣味もあって好印象なようである。

 

「正面から言われると、結構恥ずかしいな……ちなみに今の僕の体は、トリガーに圧縮して格納されていて、これはトリオンで出来た分身みたいな物なんです」

「え!? 異世界の超科学、何でもありだね……」

「ええ、本当に…ちなみに、五感がリンクしてるんで痛みも感じるし、飲み食いした栄養も供給されるらしいです」

 

横で見ていた永夢が、修の解説を聞いて驚愕する。ちなみにもう一人、目を輝かせていた人物がいた。

 

「……!」

「あれ? どうした、ねね先輩?」

「いや、証拠が思った以上にカッコよくて…って、先輩!?」

 

その本人であるねねは、いきなり遊真に先輩呼びされて驚く。するとそのまま遊真から理由が説明された。

 

「ひとまずこのエトワリアだっけ? 近界でも把握されてない世界に関しちゃ、俺は素人だからな。少しはここについて知っているあんたは、しばらく一緒にいる俺にとっちゃ先輩ってわけだ。というわけで、よろしくお願いします」

 

最後に遊真は言いながら、お辞儀をする。やはりねねも人の子故か、すぐに気を良くするのだった。

 

「そっか、そうだね! よし、先輩がじっくり教えてあげるから、一緒に頑張ろう!」

 

そして早速、二人は先行して宿を後にするのだった。

 

「なんというか、桜さんって見た目通りに子供っぽいですね」

「あはは…でも、ねねっち意外としっかりしてるから、いざってときは頼れるよ」

「空閑の奴、変におだてすぎて面倒なことにならないといいけど…」

 

横で見ていた永夢、青葉、修は口々にそんなことを口にする。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「みなさん、ようこそいらっしゃいました」

 

依頼主がいるらしい、町はずれにあるという集会所にやってきた一同。するとそれらしき女性が出迎え、中に一同を招き入れた。そして応接室と思しき場所に案内される。

 

「今回の依頼を受けてくれて、ありがとうございます。それでは、さっそく話をさせてもらいたいのですが……」

 

そして依頼について話がされ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまえ、つまんないウソつくね

 

なかった。なんと遊真がいきなり女性に対して、そんなことを言ったのだ。

 

「ゆ、遊真君?」

「いきなり、何を言い出すんだい?」

 

突然の遊真の物言いに、思わず青葉も永夢も聞き返してしまう。

 

「この人の依頼があるって話、ウソだな」

「か、開口一番になにを言って……何か証拠でもあるんですか?」

「いや、何も」

 

遊真のありえない物言いに、当然女性も反論する。しかし遊真はあっけらかんとした様子で言い、「でも…」とそのまま続けた。

 

「俺にはちょっと特別な力があるんだ。それのおかげでウソがわかる」

「な……私が一介の冒険者さんを騙す理由でも、あるんですか?」

「知らないな。この力さ、ただ人の言うことが漠然とウソかどうかわかるだけで、何を企んでいるのか、とかは全くわからん。でも、百パーセントあんたの言う依頼の件がウソだって、言い切れるぜ」

 

遊真の特別な力とやらに、それを合わせた暴論をぶつけられ、女性は唖然としてしまう。その横で、青葉はさっそく修に聞いてみるのだった。

 

「修君、本当なの?」

「はい。トリオンの影響で生じる、サイドエフェクトと呼ばれる特殊な力があります。空閑の言うあれも、それによるものです」

 

修からの裏付けも取れた青葉も、女性に疑いの目を向け始める。しかしいきなりのことだったため、同時に困惑もしていたのだが……

 

「はぁ……もういいですよ。この作戦は失敗のようです」

 

そんな中、奥から別の女性が現れて、このウソの件を認める発言をした。

 

「あ、この人!?」

「「うぇええ!?」」

 

現れたのは、エルフ耳にモノクル、青い髪という目立つ容姿の女性だった。しかしそれ以上に驚くことに、水着のような格好にローブを羽織るだけというかなり破廉恥な服装をしていたのだ。思わず永夢と修は顔を赤らめながら仰天し、目を背ける。

そんな彼女に、ねね以外のイーグルジャンプ組には見覚えがあった。

 

「私達が初めて召喚された時に会った……」

「ええ。みなさん、お久しぶりです。そしてそこの初めて見るお方達、私はアルシーヴ様に仕える七賢者の一人、セサミと申します」

 

そう、彼女は七賢者の一員であると同時に、アルシーヴの秘書を務めるセサミであった。つまり、この依頼そのものが罠ということだ。

 

「セサミ様、申し訳ございません!」

「いえ。あんなことをいう人物自体、私でも想定できませんでしたし、今回は不問にしておきます。下がっていなさい」

 

セサミの部下だったらしい女性は、そのまま部屋から下がっていく。

 

「私たちを狙うってことは、やっぱり……」

「ええ。しかも今回は召喚士や協力者のおかげで、クリエメイトの人数も増えたということで、より多くのクリエを得られると考えました。だからわざわざ、依頼という偽装工作でおびき寄せようと思ったんですが……」

 

青葉の推測に答えるように事情を話すセサミは、そのまま遊真を睨むように見る。それに対し、遊真自身も聞き返した。

 

「でもさ、もしアオバ先輩達じゃなくて、初めからこの世界の住人が依頼受けてたら、どうするつもりだったんだ?」

「その場合は適当な依頼を出して、報酬でも払うつもりでしたね。あとは同じことを繰り返す根気の作業、という予定だったので問題もないですよ」

 

遊真が当然の疑問をぶつけるも、権力者だけあって金に色目はつけない方針だったらしい。

 

「しかしバレてしまった以上は、不得手ですが力ずくという手段を取らせてもらいます」

 

そう言い、セサミが指を鳴らす。

 

「「「クー!」」」

「「「クー!!」」」

 

すると、部屋の中に大量のクロモンが入り込んできた。中には剣と兜を装備したクロモンナイト、魔女のような帽子と杖を持ったクロモンヌ、といった上位種も紛れ込んでいる。

 

「うわぁ、こんなにいっぱい!?」

「ダメ…逃げられ、ない…」

「仕方ない。迎撃するぞ!」

「修君に賛成、行くよ!」

「まさか、こんな形で戦うなんて、聞いとらんわぁ…」

「でもどっちみち、戦わないとまずいですよ!」

 

修が啖呵を切って、そのまま戦闘態勢に入る。ねねは剣、はじめは槍と盾と前衛用の装備であるため正面から乗り出す。

 

「オサム、確かボーダーのトリガーは生身の生物には……」

「あ……でも、無力化できれば一緒だろ!」

「なら、オサムはトリガー使え。どっちにしろ、生身じゃ上手く戦えんだろ」

 

実は道すがらで青葉達に説明したのだが、ボーダーが使う戦闘用トリガーには生身の生物には激痛による気絶こそあるが、外傷を与えないように調整されている。ボーダーはトリオン兵や近界民との戦闘以外に、一般人の保護も行う。そのため、逃げ遅れた一般人やトリガーを解除した隊員への巻き添えを防ぐためだ。

そしてトリガーを起動した修は、さっそくクロモンの群れへと突撃していった。

 

「くっ…このぉ!」

 

修は手にした剣、レイガストをクロモンナイトに振り下ろし、鍔迫り合いになる。

 

「喰らえ、アステロイド!」

 

直後、空いている手からエネルギー弾が生成されて撃ち出すと、クロモンナイトに命中して吹っ飛ぶ。そして、別のクロモンナイトに向かっていった。

ボーダーの隊員には兵種が存在し、修は射手(シューター)と分類される。銃を介して射撃する銃手(ガンナー)と二つの射撃兵があり、射手は銃を介さずにエネルギー弾を生成して攻撃するのが特徴だ。射撃精度や射程が低くなるが、威力や弾丸の能力調整もしやすいのが特徴だ。

ちなみに游真は近接要員の攻撃手(アタッカー)だ。

 

「この!」

「クー!」

「って、しまった!」

 

新しいクロモンナイトと戦っていると、背後から通常のクロモンが飛び掛かってくる。明らかに正面の敵に気を取られていたのだ。

 

「おっと、危ない!」

「あ、ありがとうございます…」

 

そこにねねが割って入り、手にした剣でクロモンに一閃を放つ。そしてそのまま修と背中合わせになった。

 

「修君、明らかに直線的な戦い方だね……もしかして、結構弱い?」

「あ、はい。実は僕、トリオン自体も量が少なくて、メインは作戦立案とサポートなんですよね…」

 

修自身は、一度トリオンの総量が少なくて試験を落ちたことがあるのだが、そこから子紆余曲折を得てボーダー入りしたのだという。

 

「ま、いいか。その剣って盾になるって聞いたし、飛び道具も使えるから、そのサポートお願いね!」

「了解です!」

 

そしてねねの指摘通り、修はレイガストをシールドモードに移行、ねねを攻撃から守る側に徹する。

 

「ほい、ほい、ほいっと!」

「グゥー!?」

 

一方の遊真は、クロモンナイトが振り回す攻撃を小柄な体を活かして巧みに回避し、懐でアッパーカットを叩き込む。すると小柄な体からは想像できない腕力を発揮し、クロモンナイトは天井にたたきつけられた。

 

「メガ粒子レクイエムシュート!」

「「「クゥウーーー!?」」」

 

そして青葉がクロモンナイトの後ろにいた通常クロモンの群れに、魔法を叩き込む。特大の魔力弾が生成され、一気にクロモンたちを吹き飛ばした。

 

「アオバ先輩、けっこうやるじゃん」

「私だって、魔法の特訓したからね! でも游真君、生身なのにすごい強いんだね…」

「……まぁ、俺はガキの頃から親父と戦場にいたからな」

「え?」

「おっと、なんでもない。そういえば、エム先生は……」

 

一瞬、遊真が気になることを言ったため気を取られる青葉。しかしすぐにはぐらかし、そのまま永夢のほうを気にする。実際、医者でゲーム好きという戦闘からかけ離れたイメージの彼の安否も気になった。

しかし、そんな二人の目に飛び込んできたのは、驚きの光景だった。

 

「てやぁあ! とぅ! おりゃあ!!」

 

なんと永夢は素手でクロモンの群れを蹴散らしていたのだ。

飛びかかって来た個体をサイドステップで躱し、回し蹴りを叩き込む。そして足元から襲って来たクロモンの攻撃をバク転で回避し、続けて蹴り上げる。更にクロモンナイトが剣を降って来たときは上手く仰け反って回避し、拳を叩き込む。

明らかに戦い慣れているのだ。

 

「え、永夢さん!? ゲーマーでお医者さんって言ってましたけど、なんか戦い慣れてませんか!?」

「実は僕、とぉ! かなり特殊な部署にいてね、はぁ! おかげで、荒事慣れ、してるんだよね! って、おりゃあ!」

「おぅ。こいつはびっくり」

 

青葉と遊真も、これには驚きだった。しかも話しながら、クロモンヌの魔法攻撃を避けて、挙句の果てに攻撃まで加えている。

 

「いやぁ、私らも総出で援護しようと思ったんだけどね……」

「あれ、うちらよりも強いんとちゃう……」

「うん……傍から見ても…そうだと、思う…」

 

襲ってくるクロモンの群れを抑えながら、合流してきたひふみ達が口々に告げる。彼の属する特殊な部署こそが、その戦闘力の由来であった。

 

「まさかクリエメイトでもない、よくわからない二人がここまで強いとは……仕方ありません」

 

そんな中、静観していたセサミがどこからか杖を取り出し、それによって魔法を行使しだした。

 

「ディープレイン!」

 

直後、セサミの掲げた杖から水の塊が打ち出され、それが部屋一帯に降り注いでいく。

 

「危ない!」

「きゃあ!?」

「まずい! 皆さん、こっちに!」

 

永夢がとっさに声を上げると、一斉に回避に入る。そして一斉に修の周りに集まる。

 

「シールド、展開!」

 

修はそのまま、レイガストだけでなく単体でシールドを張るトリガーを使用。永夢や青葉たちを守る。しかし、ここで一人攻撃に専念しすぎて気づかなかった者がいた。

 

「修君、遊真君がまだ!」

「空閑、こっち来い!」

「お?」

 

青葉がそれに気づいて、修が呼びかける。しかしその時にはもう遅く、游真は魔法を諸に食らってしまう。

 

「今です。ハイドロカノン!」

 

そしてセサミがチャンスとばかりに、ジェット水流を杖の先から放つ魔法で游真に追撃をかける。立て続けに攻撃を受けてしまった遊真が、無事で済むとは考えにくかった。

 

 

 

 

 

 

 

「おっとしまった。攻撃に夢中で回避失敗、初歩ミスすぎだろ……」

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

しかし遊真は、何事もなかったかのように立ち上がった。しかし腕は欠損し、顔にも傷があったが、血の一滴も流れていないのだ。

代わりに、光る霧状の何かが傷口から溢れ、顔の傷も陶器やガラスのひび割れを彷彿とさせていた。しかも驚くことに、それが徐々に修復されて何事もなかったかのように元の姿となったのだ。

あまりにも現実離れした姿に、修以外の面々は戦慄する。セサミも攻撃の手を止めてしまうのだった。幸いだったのは、この空気が伝搬してクロモンの攻撃も止んだことだろう。

 

「え? 傷が、一瞬で……」

「ウソ…遊真君、どうなってるの?」

「……あとで詳しく説明しますが、実は空閑は…」

 

修が簡潔に事情を説明し、状況を落ち着かせようとするも、直後にそれは起こった。

 

「おやおや、ボーダーにクリエメイトの皆さん。そしてCRの宝条先生、おそろいでどうも」

 

聞き覚えのない男の声が聞こえたと思いきや、その声の方には白尽くめに七三分けの髪の、胡散臭い優男がいた。しかも、先ほど下がったセサミの部下の女性、その首根っこをつかみながら立っていただ。

 

「!? 何ですか、あなたは!」

「私、財団Xの研究員カイ・キジマと申します。本日はオーバーヘブンショッカーに出向の任務で、このエトワリアに足を踏み入れさせてもらいました。以後、お見知りおきを」

「財団Xにショッカー!?」

 

セサミに問いかけられた男は律義に自己紹介し、その所属に永夢は驚きを隠せずにいた。

 

「永夢さん、財団Xって?」

「僕のいた世界の裏社会で暗躍する、いわば死の商人です。ショッカーも、悪の組織と思ってもらえれば……」

「流石はCRのドクターライダー、天才ゲーマーM。よくご存じで」

「そういうのはどうでもいいです! 彼女に何をする気なんですか!?」

 

永夢が財団Xやショッカーについて簡単に説明すると、カイが永夢に称賛を送る。その一方で、セサミが激高しながら問いかける。

 

「我々のこの世界に対する、宣戦布告と実験ですかね。その為に……」

「それは!?」

 

カイが告げながら取り出したのは、携帯ゲーム機のような奇妙な装置だった。ボタンがAとBと二つだけで、十字キーも無いため、ゲーム機ではないのは分かった。

 

「ひぎぃ!?」

 

そしてカイは徐に、それを女性に突き刺した。そして女性が苦しみだした直後

 

「発症ですね」

 

体がコンピュータ画面が乱れたかのように、彼女の身体がブレ

 

「きゃあああああああああああああああああああああああ!?」

 

断末魔を上げて体がオレンジの物体に覆われる。そして現れたのは、バクテリオファージを思わせる、巨大な節足動物のような何かであった。

 

「な、なんですかあれ!?」

「バグスターユニオン……なんで」

「バムスター? トリオン兵には到底見えないけど」

 

バグスターという単語を聞き、遊真はトリオン兵のバムスターと聞き間違える。しかしすぐに永夢が訂正し、そのバグスターについて説明を始めた。

 

「バムスターじゃなくてバグスター……僕達の世界で突如出現した、人間に感染するように進化したコンピューターウイルスです」

「え!? コンピューターウイルスが人間に?」

「所謂2000年問題でとあるゲーム会社から生じたコンピューターウイルスが、進化の果てに誕生したんですが、それに感染するとバグスターに体を乗っ取られて、あのようになります」

「つまり、病気であんな怪物になっちゃったんですか!?」

「つまり、彼女はもう……」

 

修も青葉も、あまりにもとんでもない事実に驚嘆する。周りの面々も何も言えなくなり、感染者の直接の上司であるセサミも膝をついてしまった。

 

 

しかし、ここで光明を出したのが、他でもない永夢本人であった。

 

 

「安心してください。僕のいる特殊な部署、CRはバグスターウイルスとそれで生じる病、通称ゲーム病の治療のために作られた部署です」

「え? じゃああなた、医者なんですか?」

 

横で聞いていたセサミが永夢の発言に驚いていると、すぐに行動に出た。

 

「はい。そしてこれを使えば、治療のためのオペが可能です」

 

永夢はまたゲーム機のような装置を取り出す。腹部に当てると、そこからベルトが伸びて装着される。そして懐から、何かを取り出した。

 

《マイティアクションX!》

 

永夢が取り出したそれは、どこかカセット式のゲームソフトに似た雰囲気の小さな装置だった。見てみると、先ほど話していたマイティの姿が描かれている。そしてスイッチを押すと、直後に高らかな掛け声が発せられる。しかしその直後、修や青葉は永夢の表情に視線を奪われてしまう。

 

「え、永夢さん? 何か様子が……」

「どうして、急にそんな笑みを……」

 

なんと永夢は先程までの温厚そうな雰囲気が嘘のように、勝気な様子の不敵な笑みを浮かべて居たのだ。

 

「患者の運命は、俺が変える!」

「「お、俺!?」」

 

しかも一人称まで変わっているのだ。明らかに何かおかしい。だが永夢は気にせず、構えをとって、あのセリフを口にしたのだ。

 

 

変身!

『ガシャット!』

 

そしてそのカセットを左手に持ち替えながら、ベルトの差込口に勢いよく差し込んだ。するとまた音声と同時に、今度はゲームの選択画面のようなものが永夢の周囲を舞う。

 

【レッツゲーム!

メッチャゲーム!

ムッチャゲーム!

ワッチャネーム!?】

 

そして声高らかにベルトから流れる、歌のような電子音声の中で永夢は画面の一つに手を触れる。するとそこが発せられたピンクの光に永夢が包まれ

 

I'm a 仮面ライダー!!

 

俺は仮面ライダーだと主張する掛け声が上がり、光も晴れる。そしてそこに立って居たのは……

 

 

 

「「え? ゆるキャラ?」」

「こんな時に、何をふざけているんですか!?」

 

修も青葉も目が点になりながら、呟いた。現れたのは二頭身ボディにピンクの髪、極め付けに目が複眼ではなく瞳の描かれたゴーグルと、仮面ライダーからかけ離れた容姿だったのだ。

二人の口にした、ゆるキャラという方がまだ説得力があった。セサミも憤慨している。

 

「俺は仮面ライダーエグゼイド。ゲームなら俺に任せておけ」

 

しかし永夢が変身したエグゼイドは、先ほど同様に勝気な発言をした。そして、彼の決意の言葉が発せられた。

 

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」




オリジナルキャラ
カイ・キジマ(CVイメージ:千葉雄大)
財団Xの研究員で、オーバーヘブンショッカーのエトワリア侵攻と聖なる遺体確保のために送り込まれた青年。見た目は七三分けの髪形の優男だが、人一人片手で持ち上げるだけの膂力があるなど謎の多い男。ボーダーのことを知っているなど、財団がトリガー技術に手を出していることをほのめかしている。

組み合わせた理由。
当初、ジャンプ側はゲーム繋がりで遊戯王(バイク要素を入れるために5D's)の予定でしたが、モンスター使役系はライダーと並べても違和感がある&デュエルから十年は離れているので上手く描写できない、といった理由で没にしました。
結果、主人公が組織に属するつながりで血界戦線と比べた結果、パワーバランス的に良かった&ワートリの連載再開があったので、こちらをチョイスしました。


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第9話「開始されたBATTLE」

実はマイティノベルXを未だに読んでないので、エグゼイド側の時系列はアナザーエンディング後になっています。
そしてワートリ側は18巻の生駒隊&王子隊戦の後になっています。ONE PIECEと違って、劇中で説明する機会がないのでこっちで説明しました。


(さて。ドクターライダーの中でも規格外の存在である、エグゼイドがどれほどの物か、見させてもらいますか)

 

セサミの部下の女性をゲーム病に感染させたカイは、そのままバグスターユニオンから離れた場所で、観察を始める。どうやら、エグゼイドの力を見極める目的もあるらしい。

 

【ガシャコンブレイカー!】

 

その一方で、エグゼイドは胸を叩くと同時に現れた、ピコハンのような武器を手にバグスターユニオンを見つめる。

 

「ここは狭いから、上手く戦えねぇ。だから……」

 

そう言い、エグゼイドはベルトを操作しようとするが、そこでカイが声をかけて来る。

 

「一つ忠告ですが、今この町全体に特殊なバリアを張っていますから、ステージセレクトは使えませんよ」

「なんだと!? なら、仕方ない。広い場所に出るまでだ!」

 

カイの言葉の最中、操作を受け付けないのを確かめたエグゼイド。代わりに全力疾走、窓をぶち割って野外に飛び出す。さっきまでバグスターユニオンは警戒していたのか動かなかったが、エグゼイドの疾走に合わせて走り出した。

 

「か、壁が……」

「まあ、あんなデカイのが暴れたら当然、ですよね……」

「……もう、訳がわかりません」

 

バグスターユニオンは集会所の壁をぶち抜いて、エグゼイドを追いかけていく。その様に青葉も修も騒然とし、セサミは再び膝をつく。

 

「それでは、私は他に用があるので一旦失礼しますね」

「な!? 待て…」

『あと、バグスターはトリオンによる攻撃は効くようなので、君たちのトリガーで戦いに支障は出ませんよ』

 

その一方で、カイは監視用のドローンのようなものを置いていって、そのままワープ装置のようなもので消えてしまった。修が追いかけようとするも、間に合わずに転移してしまう。そしてそのドローンも、カイからなぜかアドバイスを伝え、そのまま飛び去ってしまった。

 

「アイツの動向も気になるけど、エム先生を追いかけねぇか? 巻き添えを出すようには思えんけど、あんなのが町で暴れてたら、みんなパニクるんじゃね?」

「って、それもそうだ! みなさん、行きましょう!」

「青葉ちゃんに賛成! 戦えないにしても、避難誘導くらいは出来るはずだ!」

 

そんな中、ただ1人冷静だった遊真の言葉に我に返った一同は、真っ先に声をあげた青葉と、すぐに賛成したはじめを先頭に、町の住人の避難に乗り込む。それに真っ先に遊真が付いて行き、あっという間に青葉を追い越して先頭をはしるのだった。

そんな中、ひふみが修に声をかけてきた。

 

「修、君…さっきは驚いたけど…遊真君が、悪い子じゃないの…わかってるから、安心…してね」

「ひふみさん……ありがとうございます。空閑の件については、後で説明します。今は町の人の避難に専念しましょう」

 

そして2人も続き、セサミが1人残っていたが……

 

「……って、部下の危機に動かないのは、七賢者の名折れです!」

 

すぐ我に帰り、そのまま一同の後を追う。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おらよ、こっちだ!」

 

エグゼイドは町の外れにある林にバグスターユニオンを引きつけ、そこで戦っていた。割とすぐ、人のいない方に誘導できたらしい。

 

『『キィイイイイイイイイイイイイ!!』』

 

しかし、何故かバグスターユニオンは二体に増え、新しい方は首のない人型をしている。そして二体同時に、甲高い鳴き声をあげながらエグゼイドに襲いかかった。

 

「上手いこと引きつけてくれてたみたいだけど……」

「もう一体いたのか?」

「どうやらアイツ、集会所に来る前にもう一人感染させてたらしい!」

 

青葉達もその様子に驚いていたが、エグゼイドが攻撃を回避しながら説明する。セサミの部下が変じた個体はエネルギー弾による射撃攻撃で、もう一体の方は巨大な拳を叩きつける力押しの攻撃で、エグゼイドを狙っていた。

のだが……

 

「すごい…ピョンピョン飛び跳ねてるよ」

「グラスホッパー使ってるみたいだな、あれ」

「ああ。でも恐らく、純粋な身体能力だけなんだろう」

 

はじめの指摘通り、エグゼイドはそのずんぐり体型からは想像できない俊敏さで、バグスターユニオンの攻撃をかわしていた。ひとっ飛びで数メートルの高さを上昇し、手にしたガシャコンブレイカーを落下と同時に叩きつける。すでに歴戦の勇士と化していた彼にとって、これはお手の物だろう。

しかし、二体同時に相手取らないといけないため、ヒットアンドアウェイでチマチマと攻撃せざるを得ない。ドクターライダーの戦いは医療行為であるため、急ぐ必要があるからこれは良くない。

 

「やっぱ、二対一じゃ効率悪りぃな。強化アイテムが……あった!」

 

そんな中、エグゼイドが辺りを見回して見つけたのは、板チョコのような模様のブロックだ。それを目にした直後、エグゼイドはバグスターユニオンから離れて、そのブロックに向かっていく。

 

「永夢さん、いきなりどうしたんですか!?」

「俺はゲームの力で戦ってんだ! だから、ゲームと同じで強化アイテムでパワーアップ出来んだよっと!!」

 

いきなりのことに驚いた青葉に、説明しながらブロックのそばに駆けつけるエグゼイド。そしてブロックをガシャコンブレイカーで破壊すると……

 

「アイテムゲット!」

【高速化!】

 

中から飛び出した、走っている人間の描かれた黄色いプレートを手にした瞬間、エグゼイドが超スピードでバグスターユニオン達に向かっていく。その速度に相手は攻撃する隙を与えられず、エグゼイドに一方的に嬲られていく。

しかし一同には、それ以上に気になるものがあった。

 

「ゲームの力で戦う……そう言ってたよね、永夢さん」

「だね、ねねっち。じゃあさっきから見えてるアレは……」

「幻覚だと思ってたんですが、青葉さん達にも見えてたんだ。よかった…」

 

エグゼイドが攻撃するたびに、バグスターユニオンの体からHITやGREATといった字が浮かび上がるのだ。変身するときにベルトに差し込んだツール"ライダーガシャット"は、永夢のいた世界にある幻夢コーポレーションという会社のゲームをモチーフにしている。この幻夢コーポレーションがバグスターウイルスの生まれたというゲーム会社で、それ故かガシャットをはじめとしたドクターライダーの装備も、幻夢コーポレーションで作られたのだ。なので、この仕様というわけである。

 

「さて、これでトドメだ!」

 

そして天高く飛び上がったエグゼイドは、そのままセサミの部下が変じた方のバグスターユニオンに落下。ガシャコンブレイカーを叩きつける。

 

『キィイイイイイイイイイイイイ!?』

 

断末魔をあげて爆発するバグスターユニオンだが、エグゼイドはその爆風になってさらに大ジャンプ。

 

「お前も、終わりだ!」

『キィイイイイイイイイイイイイ!?』

 

そして再び、落下の勢いでガシャコンブレイカーをバグスターユニオンに叩きつけ、もう一体も撃破した。

 

そして爆風が晴れた先には、ゲーム病に感染した人間達が解放される。片方は当然セサミの部下だが、もう片方は意外な人物だった。

 

「あ、あの子!?」

「俺たちが最初に会った……」

 

遊真の指摘通り、最初に修と二人で出会った迷子の子供だった。手にはまだマイティのストラップが握られており、あの後すぐにゲーム病に感染させられたのが伺える。

 

「元に戻っている……よかったです」

「坊や!」

 

すると駆けつけてきたセサミと、町からバグスターユニオンを追いかけてきたらしい子供の母親が、二人の姿を見て安心する。そして駆け寄って起こそうとするのだが……

 

 

 

 

 

「え?」

「嘘、すり抜けて……」

「まだオペは終わってねぇ。パターン通りなら……」

 

解放された二人は、手で触れてもすり抜けてしまい、よく見ると体も若干透明になっている。

そしてエグゼイドがセサミ達の前に躍り出ると、異変が起こった。

 

「見て! さっき倒したやつの肉片が集まっていくよ!」

「このパターン、嫌な予感がするな……」

 

ねねの指摘通り、バグスターユニオンの残骸が寄せ集まって、何かの形を作っていく。修は以前、三門市への大規模侵攻を阻止する任務で、大型トリオン兵の体内から新型のトリオン兵が現れるということを経験している。そこから二段構えを思わせるこの様は、彼の警戒を強めることとなった。

 

「ドクターライダーめ。相変わらず、しょっぱいことをしてくれる」

「だが、この異世界こそがお前の墓場となるのだ」

 

そこに現れたのは二体の怪人だ。片方は青い体にマントと塩の塊でできたハットを身につけ、片腕が電気プラグのようになっている。

もう片方は赤を基調とした、魔法使いの杖を持った奇怪な姿だ。

そしてその周囲には、オレンジの頭の異形の集団・バグスターウィルスがいる。

 

「これが、バグスターの真の姿?」

「ああ。バグスターはゲーム会社から生じたコンピューターウィルスって言ったよな? だからか、俺の世界のゲームの敵キャラクターの姿をとる傾向にあるみたいなんだ」

 

青葉の疑問に答えるエグゼイド。そして次は、バグスターの詳細について語り始めた。

 

「青い方はソルティ、マイティアクションXのボスキャラでソルティ伯爵を模している。もう片方の赤いバグスターは、アランブラ。タドルクエストってRPGに出てくる、悪の魔法使いだ」

「マイティの敵? マイティって、ゲームのキャラだったんだ」

「ファンタジーの世界にRPGの怪人……送り込んだやつって、結構悪趣味?」

「言うとる場合かい! 先生、あれウチらで勝てるんですか!?」

 

ねねとはじめのリアクションにツッコミを入れるゆん、そして同時にエグゼイドに勝算について尋ねることにしてみる。

 

「さっきのバグスターユニオンは分離させるのに、このレベル1の姿を取らねぇと駄目だが、倒すだけならガシャットで変身したライダー以外でも出来るぜ」

「なら、俺にもひと暴れさせてもらうぜ」

「さすがに、もう見てるだけは我慢できないかな」

「遊真もはじめさんも、やる気十分だね。じゃあ私もやるぞ!」

 

そこに前衛3人がエグゼイドの隣にならび出て、臨戦態勢に入る。

 

「異界の科学技術にファンタジー世界の魔法か……相手にとって不足なし!」

「我が偉大なる魔力に、ひれ伏すがいい!!」

「観念するのはお前らだ! 天才ゲーマーMの名にかけて、患者は俺が救う!!」

 

ソルティとアランブラの二体のバグスターを前に、啖呵を切るエグゼイド。そして、ドクターライダーは次のステージへと突入した。

 

大変身!

【ガッチャーン! レベルアップ!!】

 

そしてエグゼイドはポーズを決めると同時に、ベルトの中央にあるピンクのレバーを倒した。するとレベルアップという掛け声と同時に、エグゼイドの体に変化が生じた。

 

【マイティジャンプ!

マイティキック!

マイティ! マイティアクションX!!】

「「えぇえええええええええええええええ!?」」

 

その変化に、修と青葉は同時に絶叫した。なんとエグゼイドの体が弾け飛んだと思いきや、残ったゴーグル部から、体が生えたのだ。

ピンクの髪や瞳の描かれたゴーグルといった面影は残っているが、頭身が上がってシュッとした、よりヒーロー然としたフォルムと化している。

これこそ仮面ライダーエグゼイド・レベル2。バグスターを患者から切り離すことに特化した先程の姿、レベル1から戦闘特化形態に移行した姿である。

 

「痩せた……というか、どないなっとるん!?」

「ゆんちゃん…たぶん、真面目に考えると…怖いよ…」

「いやいや、これは流石にないだろ…」

 

ゆんもひふみもあまりの変化ぶりに驚愕するしかなく、珍しく遊真も驚いている様子だ。しかし当のエグゼイド本人は周りの様子も気にせず、再びガシャコンブレイカ-を手に突撃していく。

 

「って、こんなことしてる場合じゃない! 私たちも行こう!!」

「そうや! ウチら、そもそも戦闘中やし!?」

「それなら俺も、トリガー起動」

 

そして残っていた面々も先頭に乗り出し、遊真もトリガーを起動して戦闘に乗り出す。修とお揃いの隊員服に、レイガストと異なるブレード、”スコーピオン”を手に立ち向かっていく。

 

「攻撃が効くなら、僕たちも行きましょう!」

「だね! セサミさん、悪いですけどその人たち見ててください!」

「あ、ちょっと……仕方ない。今回は譲りましょう」

 

そのまま修達も向っていくのだが、同時に青葉はセサミに指示を出していく。あまりの事態についていけないため、青葉の指示を素直に飲むことにするしかないセサミであった。

そして隣に並び立つイーグルジャンプ組とボーダー組に、エグゼイドから指示を出す。

 

「永夢さん、あのカイという男がトリガーでバグスターを倒せると伝えてたので、僕達も手伝います」

「成る程……なら、ここからは超強力プレイといくか。アランブラは回復を含めた多彩な魔法を使うから、俺が相手になる。それと青葉とはじめ、ゆんは手伝ってくれ。ソルティの方は単純な格闘戦タイプだから戦いやすい。修と遊真、ひふみとねねで頼む」

「よし。指示はあいつらと戦いなれてるエム先生に任せよう」

「だな。よし、皆さん行きましょう!!」

「それじゃあ、私たちも行こうか!!」

 

そしてエグゼイドのチーム配分に乗り、一同はそのまま散会、二体のバグスターに立ち向かっていく。

 

~VSソルティバグスター~

「くらえ!」

「おっと!」

 

ソルティは左腕のプラグに電撃をまとわせて、遊真に殴りかかる。しかし遊真は先ほどのクロモン戦同様に、小柄な体躯を活かして回避する。そしてスコーピオンのブレードで切りかかった。

 

「くっ!?」

「お、マジでトリオンが効いてるな。これなら難なく勝てそうだ」

 

ソルティは腕を切りつけられ、ダメージを負う。遊真はトリオンによる攻撃が効いている様子から、先程のカイの忠告が事実=勝算ありとみて戦闘を続行する。

しかしその一方、ソルティはあることを遊真に話しかけてくる。

 

「小僧、殺傷力のないそのトリガーが我々に効くということは、同時に何を意味しているかわかるか?」

「妥当なところで、お前の攻撃もこの体に効くってところか?」

「!? 感のいい小僧だな。しかし、それは同時にお前の優位性は、私には効かんといういうことでもあるのだよ!」

「嘘は言ってないな。でも、その前にお前を倒せば、解決だろ」

 

そしてそのまま、遊真とソルティのチャンバラが始まる。スピード重視の一撃必殺タイプの遊真と、体格と電撃によるパワー型のソルティ。タイプの異なる二人だが実力は拮抗しているようだ。

 

「遊真、やるみたいだね。それじゃあ私とひふみ先輩は、雑魚を片付けちゃいますか!」

「うん…修君の準備のためにも…頑張ろう」

 

その一方、ねねは周囲に群がるバグスターウィルスの軍団、つまり戦闘員を切り伏せていく。なぜか兵士やパティシエの格好をしているが、そんなに強くないようなのですぐに倒せていた。そしてひふみも、魔法で敵を狙い撃ちしていく。どうやら二人は、今この場にいない修から作戦を聞いているらしく、その準備のために雑魚を引き付けているようだ。

 

「そういえば、お前らって何の目的でこの世界に攻撃仕掛けてるんだ?」

「別の世界から迷い込んだらしい、聖なる遺体という代物を追ってきた、とだけ言っておこう。それが何かは教えてやらんがな」

 

戦いの最中、遊真はソルティから財団Xの狙いを尋ねる。やはり聖なる遺体が目的のようだが、ソルティはそれ以上の情報を明かさず、戦闘を続ける。

 

(未だに決定打を与えられないのは、流石に拙いな……修の準備までこいつを抑えないと…)

 

そして思案する遊真は、ある策を思いついて乗り出した。

 

「グラスホッパー!」

「何!?」

 

遊真が叫んだ直後、その背後の地面が発光する。そしてそれに飛び込むと、トランポリンのように遊真を天高く打ち上げた。

 

「からの!」

「ぐわぁあ!?」

 

直後、遊真のブレードが鞭のようにしなり、ソルティの顔面に斬撃を入れることに成功した。

グラスホッパーは先ほど使用した通りの、トランポリンを仕掛けるオプショントリガーだ。遊真は元から高軌道戦闘タイプのため、存在を知ってからは愛用している。

そして遊真のブレードであるスコーピオンは強度が低い代わりに、軽い&形状が自在に変えられるという特性がある。そして今の技は二つスコーピオンを装備し、繋ぐことでリーチを伸ばした"マンティス"という技だ。かつてボーダーのランク戦で戦った、B級2位の影浦隊が考案した技である。

 

「空閑、準備完了だ! 畳みかけろ!!」

「よし、来た!!」

「何をする気かは……な、なんだこれは?」

 

修の声が聞こえたと同時に、ソルティは体勢を整えなおす。しかしあたりを見回すと、林の木々にいつの間にかワイヤーが無数に張られている。その様子にソルティが困惑するも、これこそ修率いる玉狛第二の必勝パターンだ。

 

「ほいっと」

「ぐわぁあ!?」

 

直後、遊真がワイヤー伝いにソルティの背後に回り、一撃入れる。そして先ほど使ったグラスホッパーで離脱した。

そして離脱の最中に再びマンティスを使って、ソルティにもう一撃入れる。

 

「よっと!」

「ぎゃああ!?」

 

そして再びワイヤーから飛び掛かって、切りかかる。そしてまたグラスホッパーで離脱、といった具合でソルティを完全に翻弄している。

 

「くそ、なんてしょっぱいことを!? なら、クリエメイトとやらを先に片付ければ…」

 

このままでは埒が明かないと判断したソルティは、ねね達に向かっていく。しかし、それは失敗だった。

 

「ぐえ!? 何が……!」

 

ソルティはそのまま顔面に何かに引っかかって、潰れたカエルのような声を上げる。見てみると、見えにくい色のワイヤーが仕掛けられていた。

 

「そっち行ったのが失敗だったな」

「ぎゃあ!?」

 

そして遊真がソルティの正面に回り、再び切りつけ、その隙をついて蹴り飛ばす。しかも…

 

「なに…うわぁあああああああああああ!?」

 

すると、ソルティの吹っ飛んだ先にグラスホッパーが仕掛けられていて、今度はソルティが天高く打ち上げられたのだ。その様子を、雑魚を片付け終わった一同が見上げている。

 

「うわぁ、相手が防戦一方……なんか、惨いね」

「ええ。でも、僕達はランク戦を勝ち抜いてチームのランクを上げないといけないんで、手段は選びませんよ」

「それも…遊真君の、秘密と…関係あるの?」

「はい。後で、その秘密と一緒に説明します」

 

修が少ないトリオンと低い戦闘技術を補うため、縁のあったA級部隊の一つ"嵐山隊"の隊員・木虎藍から指南を受けた"エースを活かす戦闘法"とし、玉狛第二のエースである遊真のスタイルを活かした高軌道フィールドを準備するというものだ。しかもワイヤーは色を自在に変えられるため、派手な色と景色に溶け込む色、挙句には中間の色を濃淡順で複数使い分けることで、視覚に訴える罠も仕掛ける、という徹底ぶりだ。

 

「よし。そろそろとどめと行くか、ねね先輩」

「オッケー! 行こう、遊真!!」

 

そして遊真は再びグラスホッパーを使い、ねねと二人で飛び上がる。そして

 

「でぇええええええええええい!」

「おらよっと!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!?」

 

落下してきたソルティに、すれ違い際に二人で同時攻撃を叩き込んだ。ぶった切られたソルティは、そのまま爆発四散、GAME CLEARの文字が浮かび上がった。勝利したようである。

 

「ほい」

「おう!?」

 

そして遊真は落下しながらねねをキャッチし、そのまま地面に着地した。

 

「なんとか、勝てたな」

「うん…二人とも…お疲れ、様」

 

そして修とひふみが、着地した二人に労いの声をかける。

 

「オサム、ひふみ先輩、両手上げてくれ」

「え?」

「あ、あれか」

 

すると不意に遊真から言われるも、修が意図を理解して実際に上げる。そしてそれに、ひふみも従う。

 

「イェイ!」

 

遊真が修にハイタッチ

 

「イェイ!」

 

そしてねねがひふみにハイタッチ

 

「「イエーイ!!」」

 

最後に遊真とねねが肩を組んで終了。ワイヤー戦法を初めて使用したランク戦でも、こんな感じで勝利のポーズを決めたのだった。

 

~VSアランブラバグスター~

「オラオラ! 俺たちがこんな程度で止まるわけねえだろ!!」

 

エグゼイドは群がるバグスターウィルスを、ガシャコンブレイカーで蹴散らしまくる。大きさがピコピコハンマー程度なこともあり、至近距離で腹や胴などを直接叩けるのが売りだった。

 

「おらよ! くらえ!!」

 

更に一跳びで数メートル上昇し、落下の勢いで振り下ろす。それにより衝撃波が地面に走り、十数体のバグスターウィルスがまとめて吹き飛んだ。

 

「やっぱり、すごいな…」

「えい! 戦い慣れしてると、ちゃうんやな」

 

はじめが敵の攻撃を盾で防ぎながら呟くと、ゆんがフラスコをその敵に投げつけて倒し、視線を移す。エグゼイドの戦闘能力に、自分達との差を実感することとなる。しかし意外にも、ここで折れない人物が一人いた。

 

「メガ粒子レクイエムシュート!!」

 

青葉が先ほどクロモン戦で使った魔法で、数体のバグスターウィルスを撃破する。

 

「永夢さ……じゃなくて、エグゼイド! 私だって、足手まといじゃないから、力はつくします!」

「青葉……サンキューな! よし、このままいくぜ!!」

 

そして青葉の頑張りにエグゼイドも激励を受け、さらに攻撃が加速していく。無双アクションの如き勢いで群がる雑魚を倒していったのだ。そしてその打ち漏らしに、青葉が追撃をかけていく。ほどなくして、バグスターウィルスは全滅した。

 

「青葉ちゃんがあんなに頑張ってるんだ、先輩の私らが頑張らないでどうすんの!」

「それもそうやな……なら、いくで!」

「ふん。たかが人間如きが、我が偉大なる魔力に勝てると思うか!」

 

そしてその様にはじめとゆんも熱が入り、一人残ったアランブラに立ち向かっていく。

 

『ジャ・キーン!』

 

そしてエグゼイドは雑魚の全滅を確認したところで、ガシャコンブレイカーについているAボタンを押す。なんとそれによってハンマーから刃が生え、そのまま剣になったのだ。

 

「ジャッキーン!」

 

そしてエグゼイドはその剣となったガシャコンブレイカーを構え、同様にアランブラに立ち向かっていった。

 

「我が魔法、喰らうがいい!」

「うぉ!? 危な…」

 

アランブラが杖を振りかざすと、初めの目の前に魔法陣が浮かび上がり、そこから火柱が上がる。咄嗟に飛びのいたおかげで回避できたが、不意打ちに近いタイプの魔法なため、かなり避けにくい。

 

「はじめ! 二人がかりで畳みかけるぞ!!」

「そうか、二人同時なら隙も作りやすい! 行きますか!!」

「そんな足手纏いの小娘どもなぞ、何人来ようと一緒だ!」

 

そしてエグゼイドとはじめは二人がかりでアランブラに飛び掛かり、剣と槍で同時に切りつける。

 

「甘いな」

「うそ!?」

「防御魔法だと!?」

 

いつの間にかアランブラは新しい魔法を手にしていたらしく、二人の攻撃をシールドを張って防いでしまった。そして杖での近接攻撃で、二人を吹き飛ばす。

しかし、エグゼイドは咄嗟に飛びのき、はじめも盾で防いだことで大きなダメージはなかった。

 

「隙ありです!」

「うぉお!?」

「ウチも忘れたらあかんで!」

 

そしてすかさず、青葉とゆんが追撃をかけ、アランブラにダメージを与える。

 

「ちぃ、何のこれしき!」

 

しかしアランブラが新しく魔法を使うと、自分に向けられた魔法陣から光の粒子が放たれ、アランブラのダメージが消えてしまった。本当に回復魔法を使えたというわけだ。

 

「ふん。貴様らごときにはもったいないが、我が新しい魔法を使わせてもらう!」

 

するとそれにより、アランブラの周囲の地面にいくつも魔法陣が描かれる。そしてそこから、なんとバグスターウィルスが新たに召喚されたのだ。

 

「うそ、増援!?」

「どうだ、我が偉大なる魔法は? 戦闘の素人が急に使えるようになった魔法などより、遥かに強いだろう」

「それがどうした!? 俺が何度、お前たちを倒してきたと思っている!」

 

まさかの事態に驚くが、エグゼイドは啖呵を切りながらバグスターウィルスを蹴散らしていく。しかしすぐさまアランブラは召喚を行使し、軍勢を次々と増やしていった。

 

「流石に、このままじゃジリ貧だな……」

 

どうしたものかと思案していると、エグゼイドに青葉が再び声をかける。

 

「エグゼイド。ちょっととっておきの魔法を使うので、準備の時間を稼いでもらってもいいですか?」

「青葉……それで、雑魚を吹っ飛ばせるわけだな?」

 

青葉の提案に、エグゼイドが確認をとる。

 

「ええ。はじめさん達もいいですか?」

「確かにあの魔法なら、いけそうだね」

「うん。きっとあれなら、雑魚は片付くはずや」

「わかった、まかせろ」

 

青葉の策に乗り、そのままエグゼイドはバグスターウィルスの群れに突撃していく。

 

「おらよ! おりゃあ! ぜやぁあ!」

 

そしてバグスターウィルスの群れをかき分けながら、アランブラのもとに飛び掛かる。しかし切りつけると同時に、先ほどの防御魔法で防がれてしまう。

 

「いくぞぉお!」

「喰らいや、怪物!」

 

そしてその隙をついて、はじめの槍とゆんのフラスコが同時に飛んでくる。

 

「盾になれ、我がしもべよ」

「しまった!?」

 

しかしアランブラが召喚したバグスターウィルスが割って入り、代わりに攻撃を受けて爆散した。そして新たに、召喚で数を増やしていく。

 

「隙をつくより、防御を破る威力で一気に畳みかけるしかないか…」

「無駄だ。我が防御は、必殺技クラスの一撃をぶつけないと破ることは不可能だ。しかし、このしもべどもを盾にすればそれも防げるのだよ」

「なら、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる作戦で!」

「はじめ、使い方おかしいで!!」

 

アランブラの防御を破る策は現在難しいので、ひとまず青葉の準備が終わるまで時間を稼ぐことにする。はじめがゆんにツッコミを入れられるも、無視してアランブラの懐で槍を振り回す。

 

「愚かなり。鳥頭の小娘よ」

「誰が鳥頭だ、誰が!!」

「はじめ、落ち着け! そろそろ、青葉の準備が…」

「今だ!」

 

エグゼイドが初めに生死をかけた直後、青葉の魔法の準備ができた。

青葉の周囲に浮かんだペンが、彼女の動きに合わせて何かを描き出す。

 

「……雪だるま?」

「ふざけてるのか、小娘?」

 

エグゼイドもアランブラも、突然の事態に困惑するが、この雪だるまの絵が完成した直後、それは起こった。

 

スノーマン・ブリザード!!

「な!? くぅうう!!」

 

なんと、描かれた四体の雪だるまは、青葉が技名を叫ぶと同時に吹雪を放ったのだ。その風圧と冷気の合わせ技により、アランブラは防御に徹するしかない。しかも超高範囲攻撃のため、周囲にいたバグスターウィルスもまとめて攻撃されてしまう。そしてアランブラ自身も防御魔法を使うが……

 

「ぐぉお、防御が!?」

 

防御障壁は砕け、そのままアランブラはダメージを受ける。そしてバグスターウィルスも次々に氷漬けになり、撃破された。

 

「な!? 杖が…」

 

更にアランブラは魔法の触媒である杖を、今の吹雪で凍らされてしまい、魔法も封じられてしまう。そしてエグゼイドは、このチャンスを見逃さなかった。

 

「青葉、お前の必殺技すごかったぜ! だから、今度は俺が必殺技を見せてやる!!」

【ガシャット! キメワザ!!】

 

エグゼイドは青葉に称賛の言葉を送りながら、自身も必殺技の準備に入る。ガシャットを抜いて、腰のスロットに入れ直す。そしてそこにあったスイッチを押すと、エグゼイドの右足にエネルギーが収束される。そんな中でエグゼイドは構えを取り……

 

マイティクリティカルストライク!!

 

そしてもう一度スイッチを押すと、エグゼイドはアランブラへと飛び掛かった。

 

「ぐはぁ!? うぐぅう……ぬぉお!?」

 

そして飛び蹴りを叩き込んだと思いきや、そのまま上空で縦一回転してもう一発キック、今度は横一回転してキック、そして止めに左右の足で二連続キックをぶつけ

 

【会心の一発!!】

「ぎゃあああああああああああああああ!?」

 

ベルトからの音声に合わせて、アランブラは断末魔を上げて爆発した。そして

 

【ゲームクリア!!】

 

同じくGAME CLEARの文字が浮かび上がり、エグゼイドの勝利は明白のものとなった。




はい、NEW GAMEがきらら系で一番好きです。青葉ちゃん大好きです。なので戦闘面で優遇させてしまいました。贔屓したが、私は謝らない!

次回は遺体の回収やらでもう一波乱、その次は新しい参戦組の回になります。


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第10話「襲来するENEMY」

きらファンにリゼ参戦決定! きらファンのキャラはあんまり想像で使いたくなかったから参戦なかったら出番作れなかったんですが、これで遠慮なく出せるぞ!!
そしてジャンプフォース、承太郎出るからやりたいけど、金も時間もない……

p.s.今回も長いです。しかもキャラ増員と説明があったから、ちょっとグダクダになってしまいました。


バグスター怪人達がを撃破した後、エグゼイドは変身を解除し、永夢の姿に戻る。そしてゲーム病を診断するための装置で、感染者二人の安否を確認した。

 

「もう大丈夫。二人とも、完全に治りましたよ」

「ありがとうございます! まさか二度も助けて貰えるとは…」

「おにいちゃん、ありがとう!」

「まさか対立した相手に救われるとは……本当に助かりました」

「上司の私からも、お礼を言わせてください。ありがとうございます」

 

助けられた人々は、皆が永夢にお礼を言う。セサミも流石に、感謝せずにはいられなかったようだ。

 

「気にしないでください。体だけでなく、患者の心も救ってこその医療ですから」

(すごいな、この人。強さも信念も、しっかりと持ち合わせている……僕も負けていられないな)

 

永夢のその姿に、修は思うところがあったようで、決意を新たにする。

そして親子はそのまま町へと戻っていく。しかし先ほどまで敵対していたセサミがいまだ残っているため、油断ができない状態だ。

 

「本来なら、ここであなた方を捕らえてアルシーヴ様に身柄を届けるのですが……恩人に手を挙げるのは気が進みませんね」

「「「え?」」」

 

しかし予想外の発言を聞き、永夢、修、青葉の三人は声を揃えて驚く。後ろにいるほかの面々も驚いている様子だ。

 

「そうでなくても分が悪いですから……今回は撤退させてもらいましょうか。それでは、行きましょう」

「はい。皆さん、ありがとうございました」

 

そして、セサミは部下の女性と二人でその場を去っていった。どうやら転移魔法の類は使えないらしく、セサミ達は徒歩で去っていった。

 

「たぶんなんですけど、あのセサミさんは根っからの悪人じゃないと思うんですよね」

「それは、僕もわかります。近界人もエネルギー不足とか仕方ない理由で、僕らの世界を侵攻しているわけですからね」

 

青葉がセサミに対して思うところを口にすると、修がそれに同意する。やはり敵が戦争中という事情から、修自身も何か思うところはあるのだろう。

そしてセサミの姿が視界から消えた直後……

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

「あおっち、どしたの?」

「なんか、向こうの方から声がしたような……」

「? 僕は何も聞こえませんでしたが…」

 

青葉が何かを感じ取った。しかし修やねねには聞こえていない。しかし構わず、青葉は近くの茂みに駆け寄り、その辺りを調べる。

そして、すぐに何かが見つかった。

 

「? これから、声が?」

 

青葉が見つけたのは、白い布に覆われた何かであった。気になってそっとそれを開けると……

 

「ひぃ!? 骨?」

「まさか、形的に、人間の背骨……かな?」

「状態からして、ミイラとかの一部か? でも、なんでこんな物が?」

 

予想外の代物が出てきたことで、青葉とねねが顔を青ざめる。永夢も予想外の代物に、困惑していた。しかし遊真は、先ほどソルティが話していた、ある単語を思い出した。

 

「そういえば、あのバグスターと戦っている時、聖なる遺体とかいう物を探してるって言ってたな。まさか、これのことか?」

「こ、これがあの人たちの狙い?」

「聖なる……なんか、不思議な力でもあるんですかね? それが、青葉さんを持ち主に選んだ、のか?」

 

〜青葉は聖なる遺体の脊椎部を手に入れた〜

 

「流石は仮面ライダーエグゼイド。二体ともレベル10まで進化していたにもかかわらず、レベル2のまま倒してしまうとは。クリエメイトにボーダーの方々も、なかなかの腕前で……」

 

その時、何処からか拍手の音と一行を賞賛するが聞こえる。声のした方を振り向くと、そこには姿を消したカイがいた。

 

「しかも聖なる遺体も見つけていただけて、助かりました」

「財団とショッカーの狙いは、この遺体だったのか……それで何をする気だ?」

「そこは、守秘義務を行使させてもらいます。しかし遺体がクリエメイトを持ち主に選ぶとは……」

 

その様子を見たカイは、わざとらしく思案する様子を見せる。そして告げたのは

 

「武力行使させてもらいますか」

 

あからさまな敵対宣言であった。そして指を鳴らすと、直後にそれは起こった。

 

「な、何これ!?」

「空間に、黒い穴?」

「まさか、(ゲート)か!?」

「え!? 確かそれ、ネイバーが敵を送るとかいう……」

 

青葉と永夢がそれに驚く中、修は見覚えがあったのでついその単語を口走る。そしてそれを聞いていたねねが、思い出して口にした瞬間、それが現実に起こった。

現れたのは、軽自動車ほどの大きさの虫に似た姿に、巨大なブレードを備えた二本の前足を持った怪物が3体だ。人のような歯を生やした口の中に、モノアイと左右に二つの複眼が備えられている。そしてその周囲に、人型だがこちらも目は口の中のモノアイ、という奇怪な姿の何かが十数体現れた。

 

「まさか、修君の言ってたトリオン兵?」

「なんか、思ったより気色悪いんやけど……」

「はじめ先輩、正解。あと、トリオン兵は基本こんなのばっかだからあきらめてくれ、ゆん先輩」

 

はじめの推測通り、現れたのはトリオン兵であった。前者の軽自動車サイズのトリオン兵はモールモッド。巨大なブレードからもわかるように、戦闘特化型である。後者の人型はアイドラという集団戦闘用トリオン兵だ。

 

「まさかとは思ったけど、トリガーに手を出してたんだな。お前」

「ええ。我々、財団Xは“来たるべき壮大な計画”のため、様々な技術を手に入れることを目的としています。そのためなら、トリガー技術のような異世界の超科学も、この世界の魔法のような超神秘も分け隔てなく手に入れるわけです」

 

遊真の指摘に対して、財団の簡単な説明まで含めて明かしたカイ。

 

「近界にまで干渉する……どれだけ巨大な組織なんだ、その財団Xっていうのは?」

「それも、だけど…ショッカーだっけ? 財団が、スポンサーに…なってるん、だよね?」

 

財団Xと、その財団がスポンサーとなるショッカーという、巨大すぎる組織に戦慄する修とひふみ。しかし、それだけではなかった。

 

踊り手(デスピニス)

 

淡々とした男の声が響いた直後、何かが高速回転しながらこちらに飛んできた。

 

「皆さん、伏せて!!」

 

それに気づいた永夢が叫ぶと、一同が一斉にその場で倒れこむ。すると、飛んできた何かが近くの木々を次々と切り倒していく。

 

「そうそう、言い忘れてました。我々がトリガー技術を手に入れたのは、協力者兼提供者のおかげです」

「意図して言わなかったんだろう、どうせ? 性格の悪いお前のことだ」

 

そういい現れたのは、カイに声をかけるスポーツ刈りにした黒髪の青年と、おかっぱ頭の金髪の少年だった。前者の黒髪の青年が、先ほどの声の主のようだ。

 

「彼らは、ガロプラのトリガー使い!?」

「え? 修君、知り合いなの?」

 

修が現れた二人組を知る発言をしたために、永夢が問いかける。しかし予想は外れ、修から説明がなされる。

 

「いえ、僕自身はあったことはないです。でも、以前そのガロプラという近界の国が、ボーダーの基地に攻撃を仕掛けてきて、その時の記録映像で……」

「つまり、あの子たちが近界民(ネイバー)?」

「おう。そういえば話してなかったけど、近界民は俺らと変わらない人間なんだ」

 

修の話を聞いた青葉がまさかと思い聞くと、遊真から答えが返ってくる。財団Xの協力者らしき二人組こそ、ボーダーが対立する近界民であった。すると黒髪の近界民がこちらに声をかけてきた。

 

「仮面ライダーに、クリエメイトとかいったか? 俺はラタリコフ、ガロプラの兵士だ。で、こっちが同僚のレギンデッツ、俺たちはレギィと呼んでいる」

「ラタ。敵に、しかも抹殺対象に名乗っても仕方ねぇだろ?」

「レギィ君、例え敵対者相手や戦争状態であっても、相手への礼節というのは重要ですよ」

「そんなの知るか。あと言っておくが、上はどうか知らねぇが、オレはアフトをぶっ潰せるかもしれねぇからあんたらに手を貸してるんだ。信用はこれっぽっちもしてねえから、そこは理解しておけよ」

 

ラタリコフと名乗った黒髪の近界民に対し、不機嫌そうに諫めるもう一人の近界民レギンデッツ。協力者であるカイにもかみつくあたり、まだ精神的な幼さが見られた。

 

「抹殺……やっぱりだけど、これだけじゃなくて私達も狙いなんだね」

「察しがいいな。そしてカイの推測、見事に当たったな。クリエメイトが、聖なる遺体とやらの持ち主になるとかいう」

 

青葉が手にした遺体に目をやりながら言うと、ラタリコフからカイがこの事態を推測したという事実まで告げられる。

 

「そういうことだ。まあ、その遺体とやらをオレ達に寄越すなら、命は助けてやってもいいぜ。まあ、あんたらクリエメイトは戦争も知らねぇ甘ちゃんだし、選択する余地なんてねぇだろうけど」

 

そしてレギンデッツから交渉の提案が為されるが、口調からかなり舐めた様子が見られる。しかし、一同の答えは決まっていた。

 

「財団Xの協力者に、手を貸す道理はありません。僕は命と笑顔を守るために医療の道に入り、仮面ライダーにも同じ理由でなった。だから引けません」

「私だって、いきなり見ず知らずの人間にウイルス感染させて怪物に変えるような人、信用できませんよ!」

「そうだそうだ! 青っちの言う通りだし、そんな奴らに手を貸してる時点で信用なんないから!」

 

永夢、青葉、ねねが口々に告げる。しかしその時、レギンデッツの額に青筋が浮かび上がっているのが見えた。

 

「オレが好き好んで、こんな胡散臭い男に協力していると思うなよガキに甘ちゃんども! こうなったのも全部アフト……アフトクラトルにガロプラが侵略されたからだ!!」

「おい、レギィ……」

 

そしてそのまま喚き散らすレギンデッツ。ラタリコフが諌めようとするが、聞かずにそのまま続けた。

 

「そんな中でオーバーヘブンショッカーに財団Xが、ガロプラやロドクルーン、その他のアフトの属国や小国に接触して来たんだ! 技術提供するなら、アフトをぶっ潰すのに協力してやるってな!!

だからオレ達は、周りの信頼を無くそうが知ったこっちゃねぇ!! 自由のためにアフトをぶっ潰しちまえば、もう万事解決なんだよ!!」

 

激昂したレギンデッツから、ガロプラ側の事情が暴露される。そしてそれと同時に、彼の右腕が恐竜やドラゴンの尻尾を思わせる形状の、巨大な蛇腹剣へと変じた。

 

「交渉は決裂したみてぇだな。全員まとめて、オレの剣竜(テュガテール)のサビにしてやる!」

(冷静さを欠くのは御法度……戻ったらガトリン隊長に報告だな)

 

レギンデッツは腕が変化した剣の名前を告げながら構え、臨戦態勢に入る。ラタリコフもその様子を不満に思いながらも構え、先ほど飛ばしたものと思しき円盤をいくつか浮かべる。

 

「まさかアレが、近界民のトリガー?」

「はい。ボーダーの戦闘用トリガーは継戦力を重視して規格・量産化してますが、近界民は一人一人の戦闘スタイルに合わせたオーダーメイド品を使うそうです」

 

永夢が予想外の形状をしたレギンデッツのトリガーに注目すると、修が解説を入れる。

 

「なるほど……他所からトリオン取りに行くあたり、エネルギーコストを心配しているから量産しないのかな? トリオン兵も卵にして運べるとか言ってたし……」

「青葉ちゃん…なんだか、落ち着いている、ね……怖く、ないの?」

 

落ち着いた様子で青葉が推察をしていると、ひふみが思わず気になって問いかける。そしてそれに対して、青葉も胸の内を明かした。

 

「……正直、怖いです。でも私だって夢があるから、まだ死にたくありません。だから、怖がって動かないくらいなら少しでも強気とか冷静じゃないと……って、ところですかね?」

「青葉ちゃん、意外としっかり考えてるんだね…」

「はじめとはえらい違いやな」

「なんだとぉお!?」

 

それを聞いたはじめが感心しているも、すぐにゆんと漫才もどきのやりとりが始まる。しかしそれを見て不満な男が一人いた。

 

「お前ら、ふざけてんのか!? この局面で騒ぐんじゃねぇよ!!」

 

またもレギンデッツだ。精神年齢が幼いのは本当なのだろうが、先ほど激昂した時に明かしたガロプラの事情から、恐らく焦りの感情が大きいのだろう。

 

「もういい。トリオン兵ども、攻撃開始だ!!」

「うわ、動き出した!」

 

そしてその苛立ちから、モールモッドとアイドラが動き出した。ねねが思わず驚くが、冗談抜きですぐ何がないと危険だ。

 

「だったら…」

 

そしてその様子に永夢は懐から何かを取り出す。それはガシャットに似ているが、先ほどのマイティアクションXと違い、大きな白いガシャットだった。

 

「マックス大へ…」

 

そしてそれを使い変身しようとした瞬間、それは起こった。

 

 

 

 

 

 

どぉおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

「うぇ、何これ!?」

 

突如鳴り響いた轟音と同時に、頭上にビームのようなものが横切るのが見えたのだ。あまりの事態に、永夢は変身を中断してしまう。

 

「メテオラ!」

 

それに続いて、一人の少女が割って入り、アイドラに目掛けてエネルギー弾を放つ。着弾と同時に爆風を起こしたそれは、複数体のアイドラを巻き込んだ。

 

「遊真、探したわよ! 手間かけさせんじゃないっての!」

「おおコナミ先輩! 先輩もここに来てたのか!」

 

遊真の名を知り、遊真自身も名を呼んだことから、味方のようだ。コナミと呼ばれたその少女は、短く切り揃えた茶髪に羽根のような形のアホ毛が目立つ。そして手にはハチェット状の剣を二刀流で装備しており、それでモールモッドに突撃していった。

 

「遊真君の反応的に、味方?」

「みたいですね……まさかこの人も飛ばされて来たのか?」

 

唐突すぎる助太刀に、つい困惑する青葉と永夢。しかしそれだけでは終わらなかった。

 

「おりゃあああ!!」

「おっと。背後からとは、遠慮なしですね」

 

誰かがカイに背後から斬りかかるも、避けられてしまう。その斬りかかった人物は、日本人顔ながら金髪碧眼の似合うスレンダーな美女だ。そしてその顔を見た瞬間、青葉が歓喜の表情を浮かべた。

 

「八神さん! 来てくれたんですね!!」

「待たせたね、青葉。何か依頼で手伝えないかと思って後を追ってたら、この人達が青葉達がピンチになるって話しててさ。間に合ってよかったよ」

 

現れたこの女性こそ、青葉憧れのキャラデザイナー"八神コウ"その人であった。

 

「援軍……しかも最初の女は隊長を倒した斧使い!」

 

その時、コナミを見て反応したラタリコフは、彼女と交戦経験があった。そこから警戒し、真っ先に撃破しようとトリガーで生み出した円盤を飛ばした。

 

「エスクード」

 

直後、今度は地面から盾がせり上がり、それが円盤による攻撃を防いだ。

 

「修、まさかこんなところにいるとは思わなかったぞ」

「京介、俺のサイドエフェクトが言った通りだったな。あの紅渡ってのに協力しないとメガネ君達がピンチになるって…」

「ええ、本当に。迅さんの予知が無かったら、信用してませんでしたよ」

 

更に現れたのは、二人の男前だった。最初に現れたのは若干モサモサした黒髪をしており、もう一人の迅と呼ばれた方は濃いめの茶髪にバイザー風のサングラスを額にあげている。しかもサラッと、予知能力持ちだと明かされる。

 

「烏丸先輩に迅さん!? なんでここに……」

「聞いての通り、紅渡とか名乗るいう謎のイケメンがメガネ君や空閑がピンチになるとか話して来てな。しかも三門市にショッカーとかいう敵が来るかも知れねえから、手を貸してくれってことで来たのさ」

 

迅が修に事情を話しているが、渡はすでにこんなところにまで手を回していたのだ。直接来れない分、かなり手広いサポートをしてくれているようである。

 

「ひとまず、向こうにレイジさんと支部長が車を用意している。それで撤退するぞ」

「させると思うか!」

 

そしてもう一人の京介という男から話を投げる算段を聞かされるも、レギンデッツが腕の蛇腹剣を振るい、かけて来た。

しかしその時、予想だにしない援軍が来た。

 

「お前、たぎんねえよ」

「ぐわぁあ!?」

 

そこに割って入って来たのは、一人の仮面ライダーだった。エグゼイドと同じ目が複眼じゃなく瞳のあるゴーグルとなっている、ガシャットで変身するタイプだ。そしてそのライダーは、赤と青のコントラストが映え、腰布を装備して如何にもな強者感を出している。

その仮面ライダーは永夢が乗っていたバイクにまたがりながら、手にした銃でレギンデッツに攻撃している。同じタイプの仮面ライダーなのでやはり味方、しかも永夢もその姿を見た瞬間、とても嬉しそうであった。

 

「パラド、お前も来てくれたのか!」

「永夢、待たせたな。せっかくの異世界でゲームと行きたいけど、今は逃げるぜ」

 

そして永夢からパラドと呼ばれた仮面ライダー、正式名称"仮面ライダーパラドクス"は後ろに永夢を乗せて、そのまま撤退していく。

 

「それじゃあ、あたし達もずらかるわよ」

「よし。それじゃヒュース、頼んだぞ」

 

コナミの宣言と迅の呼びかけに合わせ、突如と空から黒いチップのようなものがいくつも飛んで来たかと思いきや、なんと青葉達に引っ付いた。そして、それが彼女達の体を宙に浮かせたのだ。

 

「え、え!? 私達、浮いてるんですか!?」

「コウちゃん…ちょっと、怖い…」

「なんかこれ、磁力を使うらしいよ。ひふみんも、味方のやつだから怖くないって」

 

そして驚く青葉とひふみを安心させるコウ。そしてはじめやゆん、ねねも回収されていく。続いて修と遊真、モールモッドを倒し終えたコナミも回収されるが、修達はこのトリガーに覚えがあった。

 

「まさか、これヒュースの……!」

「ああ。事が事だけに、アフトクラトルの強化トリガーがいると、俺のサイドエフェクトがいってな。城戸さんから許可もらってきたのさ」

 

先ほどからレギンデッツが口にしていたアフトクラトルの名が飛び出してくるが、今はこの場を去ることを優先したいので、青葉達は特に何も言わない。そしてこのまま撤退していくのだが……

 

 

 

「ひぇええええ! 速い速い!!」

「いや、いくらなんでも磁力強すぎでしょ!?」

「今回ははじめに同意するでぇええ!」

 

ねねとはじめ、そしてゆんが凄い勢いで飛んでいく。余りのスピードに、3人とも絶叫必死であった。しかしこの三人よりやばそうなのが一人いた。

 

「……」ブクブク

「八神さん、ひふみ先輩が泡吹いてます!」

「ひふみん、ごめん! でもこれしか手っ取り早い脱出方法なかったんだ!」

 

そしてそのまま、イーグルジャンプ組はワチャワチャしながら撤退していくのだった。

 

その一方、取り残されたカイとガロプラ組は……

 

「あらあら。逃げられちゃいましたね」

「何を落ち着いているんだ、お前!? 目と鼻の先にあった目標が、あんなあっさりと逃げていったのによ!」

 

戯けた様子で言うカイに、またレギンデッツが苛立つ。するとカイから反論がきた。

 

「それなら、近くの町を襲って住人を人質にでもすればよかったではないですか。捕獲機どころから爆撃機のイルガーだっているんですから」

「トリオン兵はアフトとの決戦までは取っておくんだよ! それにこの世界の人間はトリオン器官がないんだから、捕まえても仕方ねぇだろ!!」

「カイ、我々は兵士であって破壊者ではない。そちらの方針に口は出さんが、命令ならともかく無関係の人間を蹂躙するのは好かんのは、理解してほしい」

 

ラタリコフも途中で会話に入り、自分たちの誇りを語る。さらっとらレギンデッツが衝撃の事実を口にしていたが、カイはすでに知っていたのかスルーしている。

 

「まあ、お二人も聞いているはずですよ。遺体は各パーツが一つになろうとする特性があるから、一つ手に入れば全部揃うのは明白なんです。だから、気楽に行きましょう」

「……わかった。アフト打倒のためにも、俺達も遺体のパワーが欲しいから、その知識のあるお前達に手は貸そう。隊長達にも進言しておく」

「ありがとう、ラタさん」

 

そしてラタリコフはカイとの話を終えると、レギンデッツを伴ってその場を去っていく。

 

(エグゼイド……究極のバグスター"ゲムデウス"を退けたハイパームテキは流石に見れませんでしたが、基本形態であの強さ。やはり世界で最初のバグスターウィルス感染者だけはありますね)

 

そして一人取り残されたカイは何かを思案しながら、ノートパソコンをどこからともなく取り出して操作していく。

 

(僕自身、究極の力を手に入れるためにトリガー技術共々、とことん利用させてもらいますか)

 

飛び切り邪悪な笑顔を浮かべながら。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「おし、全員無事みたいだな」

「林藤さん、本当にありがとうございます。おかげで青葉ちゃん達を助けられました」

 

敵から逃げおおせた一同は、そのまま車とバイクで町から離れた平原に向かい、一息ついていた。その際、ボブカットの二十代半ばの女性が、メガネの30代半ばほどの男性にお礼を言っている。見たところ女性は青葉達の、男性は迅達の上司のようだ。

そしてその周りには先ほど加勢に来た迅達以外に、ガタイのいい青年と褐色肌の女性、メガネの少女に小学生ほどの背丈の少女、カピバラに跨るお子様にこめかみ辺りにツノを生やした青年、外人風の男と優しげな黒髪の女性といった、多種多様な人物がいた。

そして同時にコナミとパラドクスが変身を解除する。コナミはアホ毛はそのままで髪がロングに、パラドクスは背の高いパーマがかった髪の青年となった。

そして修が、一同について簡単に説明する。

 

「青葉さんに永夢さん、この人達が僕らの属する"ボーダー玉狛支部"の方々です。二人ほど、見覚えのない人がいますけど……」

「ああ、その二人はメガネくん達がいなくなってた間に戻ってきた、県外スカウトに出てたメンバーだよ。せっかくだし、初見の皆さんのために自己紹介でもしようか」

 

そして迅が補足説明をすると同時に、改めて玉狛支部のメンバーの紹介に突入する。

 

「俺はボーダー玉狛支部所属のA級隊員、実力派エリートの迅悠一(じんゆういち)。19歳の大学生だ、よろしくな」

「ウソ、私と同い年!?」

「お? おチビちゃんもか。意外だな」

 

改めて名乗る迅だが、なんとギリ未成年という驚愕の事実が判明した。雰囲気で二十歳は超えていると思ってたので、ねねが声を上げて驚く。

 

「俺は玉狛支部の支部長、林藤匠(りんどうたくみ)だ。34歳、よろしくな」

「私はオペレーターの宇佐美栞(うさみしおり)、17歳の高校生だよ。よろしく」

 

そして上司の男性とメガネの少女の、メガネコンビが続けて自己紹介していく。

 

「こっちの賑やかな子が、玉狛第一所属のA級隊員の小南桐絵(こなみきりえ)ちゃん。同じく17歳で高校生」

「何勝手に紹介してんのよ!」

 

すると栞が、コナミ改めて小南の紹介を勝手に行い、本人が憤慨する。しかし構わず、他のメンバーの紹介を続けていった。

 

「こっちのもさもさした男前が、同じく玉狛第一の烏丸京介(からすまきょうすけ)君。16歳のやっぱり高校生」

「もさもさした男前です、よろしくお願いします」

「とりまる、アンタまさかその下り、気に入ってる?」

 

そして栞からの呼ばれ方を、無表情ながらノリノリで自称する京介。すると小南が何故か烏丸なのにとりまる=鳥丸と呼び出した。わざとか?

 

「こっちの落ち着いた筋肉が、玉狛第一の隊長で木崎(きざき)レイジさん。21歳の大学生」

「だから、落ち着いた筋肉って人間なのか?」

 

そしてガタイのいい青年が紹介されるが、確かに雰囲気は落ち着いているが筋肉呼びは何かおかしい。レイジ本人も気にしているのか?

 

「はじめまして。三雲隊の狙撃手(スナイパー)雨取千佳(あまとりちか)です。14歳の中学生です」

「ちなみにさっきのどでかい砲撃は、チカの狙撃だぜ」

「ええ、中学生なの!? しかもこの子が、あんなビームを……」

 

そして小学生っぽい少女の自己紹介と、遊真の説明で青葉が仰天する。自分を含めて小柄な少女が多いクリエメイトだが、そんな彼女らと比べても下から数えた方が早そうなるので、無理もなかった。

 

「で、あそこの隅で黙っているのが、近界民のヒュース。訳あって、ウチの支部の捕虜兼メガネくんのチームメイトになってるんだが、仲良くしてくれ」

「言っておくが、馴れ合うつもりはない。ジンの言うことを本気にするな」

「あ、そうですか……しかし、近界民を味方にするって豪胆なことしますね」

 

そして迅からツノの生えた青年・ヒュースの紹介が入る。捕虜となった近界民をチームメイトに入れるという、まさかの事実に困惑する永夢であった。

 

「そんでこっちは林藤陽太郎(りんどうようたろう)。5歳、ウチの支部のお子様だ」

「かわいいおんなのこ、いっぱいだな。おれのおよめさんになったら、雷神丸のおなかさわらせてもいいぜ」

 

そして結構雑な紹介をされたお子様・陽太郎。結構ませているようで、乗っているカピバラの名前を引き合いにナンパしてきている。

そしてついに、修と遊真も初見の二人が、自己紹介に入った。

 

「はじめまして。支部長の姪の、林藤ゆりです。24歳、栞ちゃんと同じくオペレーターです」

「ミカエル・クローニン。表向きにはカナダ人で通ってるけど、近界民出身でエンジニアやってる」

「あなたが、話に聞いたクローニンさん…」

「近界民にも…いい人、いるんだ…よかった…」

 

修は以前に話だけ聞いていたが、県外の隊員スカウトに出ていたこのクローニンをはじめ、地球で生活している近界民は意外と多いという。その事実にひふみは、安心した笑顔を見せていた。

 

「ちなみに修君達がいない間に、ヒュース君はクローニンさんの親戚ってことに表向きはなったから」

「ちなみに、甥っ子設定な」

 

そして栞がヒュースの扱いについて説明、クローニンが補足を入れる。

そして次はイーグルジャンプの上司組が自己紹介を始める。

 

「八神コウ、25歳。まあ、この子達の上司ってことで、よろしく」

「私は遠山りん、コウちゃんと同期で同い年よ。アートディレクターやっているの」

「阿波根うみこ、プログラマーで同い年です。沖縄出身でこんな苗字ですが、皆さん名前呼びしてくださいよね。もし苗字で呼んだら……」

 

そしてコウだけでなく、ボブカットの女性と褐色肌の女性が立て続けに自己紹介するが、モデルガン片手に並んできたあたり、コンプレックスがあるらしい。

そして最後にパラドクスに変身していた青年が名乗るのだが、それに修や青葉はまた衝撃を受けることとなった。

 

「俺はパラド。永夢の仲間で、同時に永夢に感染したバグスターだ」

「え、バグスター!? でも、どこからどう見ても人間じゃ……」

「それに、永夢さんに感染って……」

 

そして静かに、永夢とパラド自身からその詳細を告げられた。

 

「実は僕が変身に使うガシャットと、このベルト"ゲーマドライバー"は、バグスターウィルスの抗体を持つ人間にしか使えないんです。そして僕は、世界で最初のバグスターウィルス感染者だから、抗体を持っていました。まあ、それ自体も最初は知りませんでしたが」

「俺が人の姿をしているのは、子供の頃の永夢が望んだ"一緒にゲームをしてくれる友達"の姿をイメージしたからなんだ。前は永夢とも対立してたけど、今は味方だから安心してくれ」

 

衝撃のカミングアウトに驚く修達。一方でコウや迅といった先輩組は、先に聞いていたのかそんなに驚いていない。

 

「流石に急にバグスターと言われても信じられませんが……助けられたのも事実ですから、そんなに煙たがるつもりはありません」

「私も修君に同意です。パラドさん、ありがとうございます」

「気軽に呼び捨ててくれよ、俺もあんたらとは仲良くしてえからさ」

「……じゃあ、パラド。よろしく」

 

そしてパラドは修と青葉に受け入れられ、二人と握手を交わす。すると今度は、修が先ほど話しそびれたあの事実を明かそうとする。

 

「もう、この勢いで空閑の事実を話させてもらっても、いいですか? なんか下手したら、忘れてしまいそうなので……」

「あ、そう言えば忘れてた……」

 

永夢もどうやら、立て続けに起こった出来事から忘れていたようだ。しかし、この直後にねねがなんとなく言い放ったことが、その答えとなってしまう。

 

「でも、この分だと遊真も近界民って普通にありえそうなんだよね……」

「お、ねね先輩。鋭いね」

「…………え、マジで!?

 

正解すると思ってなかったのか、ねねは遊真の言葉に仰天した。青葉も永夢もひふみ達も、開いた口が塞がらなかった。

 

「はい。空閑は元々、父親と近界の各地を旅していたそうなんですが、その先で巻き込まれた戦争で瀕死の重傷を負ったそうです」

「で、親父が死にかけの俺を助ける為に、(ブラック)トリガーって特殊なトリガーを作って延命してくれたってわけだ」

 

そう言い、遊真は手にした黒い指輪を一同に見せる。これがその黒トリガーのようだ。

 

「俺の本体は死にかけのまま、このトリガーに格納されているんだ。言ってみれば、俺は常時トリオン体で生活してんだよ。だからそうなった3年前から成長も止まって、背も伸びてねぇってわけさ」

「そうか……生身じゃないから、すぐにあの傷も治っちゃったんだ……」

「な、なんか遊真って、物凄いハードな人生送ってんだね……」

 

余りにもヘヴィな事実に、青葉とねねがまた騒然とする。するとそんな中、林藤支部長が声をかけてくる。

 

「さて。まだ話したりねぇだろうけど、そろそろ行くぞ。いつ敵が追ってくるか、わからねぇからな」

「それもそうですね……パラド、今度は僕が運転代わるよ」

「永夢、任せたぜ」

 

そしてそのまま、一同はコウの案内の元、里へと直行するのであった。

 

「………」

「永夢、どうした?」

「何でもないよ、パラド」

 

しかし移動中、永夢は何か思うところがあったらしい。

 

(特に語られてなかったけど、遊真君の父親は今何をしているんだ? それに特殊なトリガーを作ったとしか話してないけど……まさか、もう?)

 

遊真に対するある事実と、それに関する戦う理由。まだ明かされていないが、里についてからタイミングを見て言及すべきだと、胸に秘めておくことにする永夢であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その一方、次なるクリエメイトが仮面ライダーと新たな戦士に出会おうとしていた。

 

「みんなー、こっちだよー!」

「ちょ、千矢…早すぎ…」

 

「ここがハオの言ってた異世界か……正直、色々とめんどい」

「何言ってるのよ、葉。ハオの言ってた聖なる遺体とやらが奪われたら、もっとめんどいことになるのよ。だから頑張りなさい」

 

「ここが渡が言ってた異世界とやらか……よし、まずは合流だな」

シュッ




レギィの扱い悪くなりそうですが、私の印象はこんなものですね。未熟だからすげぇ身勝手な物言いも平気にしちゃう、的な。
あと参戦作の登場順ですが、最初はメインクエスト参戦組を順番に片付けようと思ったんですが、優先して出したい作品を先に動かしたかったので、順番弄りました。
というわけで次回、うらら迷路帖編、どうぞお楽しみに。


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第11話「出会う鬼」

リゼのイベントでのシュガー登場ときららのセリフから、イベントがメインクエスト後と確定されましたね。なのでちょっと、独自設定のタグを追加させてもらいます。
そして、また長くなりました。書きたがり&文字数より話数で調整したいために、毎回こんなことに……お楽しみいただけたら幸いです。

p.s.今更ですが、きらファンキャラのビジュアルは、会話シーンの立ち絵がベースなので、☆4の進化前になります。でも専用武器も普通に使うので、ご了承ください。


山の中を散策する、一人のクリエメイトがいた。

彼女の名は千矢(ちや)。地面まで届きそうな長い銀髪をポニーテールに結い、白いマントを羽織っているのだが、その下は胸当てとショートパンツだけしか身につけてない、かなり露出の多い格好だ。元々、彼女は山育ちの野生児で衣服を着ることを嫌う傾向にあり、元の世界の普段着も、金太郎のような腹掛に腰巻だけという始末だ。それが反映されてこうなったようだ。

 

「紺、見つかった?」

「こっちもダメだわ。小梅は……」

「私も。ああ、なんで甘味を食べに来たのにこんなことになってるのよ……」

 

そんな中、千矢に合流する友人二人。狐耳を頭につけた巽紺(たつみこん)と、魔女の格好にペンデュラムを持った雪見小梅(ゆきみこうめ)だ。三人はまだ別行動中の友人二人と、とある町の名物甘味を食べにやって来たが、材料になる果物がない為に食べれなかった。しかし小梅が諦めきれず、その材料を探しに山へと乗り込んだというわけだ。

彼女達は元いた世界で"うらら"という女だけがなれる占い師の修行をしており、その技術で果物を見つけようとしたのだが……

 

「だいたい、その果物がどんなものか聞かずに来たんだから、見つからないわよ。手掛かりのない探し物は、一番占にも難しいんだから」

「異世界の常識に馴染みすぎて、根本的なとこを失念してたわ……」

 

紺に指摘された小梅が項垂れる。うららには位の高い順に一から十までの番位が存在し、彼女達の番位は現在八である。一番でも難しいことをやろうとしたのなら、失敗して当然であった。

 

「みみみみみみみみみみんなぁあああああ!!」

 

そんな中に大慌てで駆けつける、市松人形を抱えた金髪の少女がいた。それに遅れて、ツノ付きの帽子とマントを身につけた薄紫の髪の少女がやって来る。

彼女らが残りの二人の友人で、それぞれ(なつめ)ノノと二条臣(にじょうおみ)という。ちなみに、ノノが抱えている人形はマツコさんという名前があり、占いの力で擬似的な魂を宿している。つまり意思を持っているのだ。

 

「ノノ、血相変えてどうしたの?」

「紺ちゃん、向こうで大変なことが……」

「子供が崖から落ちそうなのよ! とにかく来て!!」

 

臣は普段、得意な占いの都合から野外でも寝落ちすることがあるほど、ボーッとしていることが多い。その彼女が鬼気迫る様子で言うので、ただ事ではない様子だった。

そのため、大急ぎで二人の後を追う千矢達は、たどり着いた先で状況を把握した。

 

「たすけてぇえええええええええええ!?」

「うわ、これはマズイわね……」

 

見た目5、6歳ほどの男の子が、崖から生えている木の枝に掴まったまま、助けを求めて叫んでいた。体重もそこまでなさそうだから枝が折れる心配はないが、先に疲労が来て落ちる可能性もある。そのため、一刻の猶予もない状態だ。この手の状況に疎い小梅でも、すぐにわかった。

 

「君、今から私がそっち行くよ! 待ってて!」

「千矢、気をつけてね」

 

野生児ゆえに身体能力が常人を超える千矢は、その身軽さを活かして崖を一気に降りて行く。このような状況でマントや長髪は動きを阻害しかねないが、日頃から魔物ともこの格好で戦っているので、さして問題もないようだ。

そしてすぐに、子供の捕まっている枝に到達した。

 

「助けに来たよ。君、早く私の背中におぶさって!」

「ごめん、おねえちゃん。ぼく、さっきからここにいたからもう、手が……」

 

子供は既に限界だったらしく、動ける様子ではなかっな。

 

「……それじゃあ私が」

 

少し考えた後、千矢は子供の方に近寄り、左腕で抱え込む。

 

「すぐに崖の上に戻るから、がんばって…」

「うん、おねえちゃん」

 

千矢はそのまま男の子を抱え、どうにか崖を登ろうとする。しかし片手がふさがっていることもあり、上手く登れない。

そして程なく、バランスを崩してしまった。

 

「「え?」」

「「「千矢!?」」」

「千矢ちゃん!?」

 

千矢は手を離してしまい、子供と同時に呆けた声を出してしまう。そしてその様を見た紺達は、揃って千矢を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその時、誰かが崖から飛び降り、そのまま岩場に片手で掴まる。そしてもう片方の手で千矢の腕を掴んだ。

 

「大丈夫か、少年少女?」

 

千矢の腕を掴んだのは、サングラスをかけた壮年の男性だった。しかし片手で崖に掴まりながら、千矢を引き寄せるその膂力は、凄まじいものである。

 

「お、おじさん誰?」

「俺はヒビキ、ただの通りすがりだ。それより大丈夫か、少年少女?」

「……お、私か! うん、大丈夫。おじさん、ヒビキさんのおかげで」

「ぼくもだいじょうぶ。おじちゃん、ありがとう」

「よし。少年の方は、俺に任せておけ」

 

そのまま現れた男、ヒビキは千矢から子供の身柄を預かり、そのまま片手で抱えたまま崖をよじ登っていく。

 

「それじゃ、少女もここからずらかるぞ」

「おっしゃ!」

 

そしてヒビキと千矢は二人で崖を登って行き、数分後には無事に崖の上へとたどり着けたのだった。それを見守っていた紺達も、駆けつけてくる。

 

「千矢、大丈夫なの!?」

「うん。この人、ヒビキさんのおかげでね」

「それにしても、すっごい力持ちなおじ様なのね」

「鍛えてますから」シュッ

 

小梅の賞賛の言葉に、ヒビキは答えながら敬礼のような仕草から腕をスナップする。実際、片手が塞がったまま崖を登りきる膂力と技術は、かなりのものだ。鍛え具合はかなりのレベルだろう。

 

「友達みたいだな。それじゃ俺、急いでるからこの子のこと任せたぜ」

 

そう言い、ヒビキは千矢を任せて一人で走っていく。

 

「ヒビキさーん! ありがとーー!!」

 

それを見送りながら大声でお礼を言う千矢に、ヒビキは振り返って、再びシュッと先ほどのポーズを決めて去っていった。

 

「なんか、かっこいいおじさんだったね……」

「ノノ、ヒョットシテアアイウノガ好ミ?」

 

ノノがヒビキの去って行く姿に見惚れていると、不意にマツコさんが声をかけてくる。何処と無く機嫌が悪そうに見えた。

 

「ありゃりゃ。マツコさんが嫉妬してるわね」

「ピッ!? 小梅ちゃん!」

 

小梅のからかうような言葉に、驚いて変な声を出すノノであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「でも良かったね! あの子のお母さんが、お礼に探してた果物を分けてくれてさ」

「ようやくだわ。苦労した分、美味しい甘味が楽しめそうね」

 

あの後、助けた子供を母親の元に送り届けたら、なんと探してた果物を取っていた最中とのことで、千矢達もお礼にと手に入れられた。これで目当ての甘味を作ってもらえると、千矢と小梅はわかりやすくご機嫌で、そのまま街道を進んで行く。

 

「あれ?」

「臣、どうしたの?」

「いや、あそこに……」

 

そんな中、不意に臣の視線に何かが見えた。紺に声をかけられたので指をさすと、そこには一人の少年が平原で寝そべっている光景だった。

シャツのボタンを開け、履き物も便所サンダルというだらしない格好で、頭にはヘッドフォンをつけている。そして何故か、その傍らには刀と位牌が置かれていた。

 

「みんな、あんなあからさまに怪しい人、近づいたらダメよ。さっきのヒビキさんは咄嗟に助けてくれたけど、みんながそんないい人とは……」

「ねぇ! そこで何してるの?」

「って、千矢!」

 

紺が注意を呼びかけるが、千矢は気にせず駆け寄ってしまった。すると、少年の方も千矢に気づき、声をかけてくる。

 

「ん? どうした、アンタ?」

「アンタじゃなくて、千矢だよ。ねぇ、君なんでこんな所で寝てるの?」

 

少年は力の抜けた、眠たげな声であった。それもあり、千矢は臣の様な寝落ちしやすい体質ではないかと心配しながら、問いかけた。

しかし、その心配は杞憂であった。

 

「ああ、オイラ雲見ながら音楽聴いてたんよ。ボブって歌手なんだけど、いいんだぜコレが」

「こんな所で? 魔物も出てくるし、町に行った方がいいと思うよ。ここまっすぐ行くと、すぐに着くよ」

 

事情を話しながら、お気に入りの歌手のCDを見せてくる少年。しかし千矢もエトワリアでの生活から、魔物との戦闘を危惧しているのであまり今の状況をお勧めできないと思い、町への道のりを教えてあげる。

 

「オイラ、めんどいのがキライだからさ、町とか煩わしい場所にいるより、こうやって自然と一体になる方が好きなんよ」

「町に行かない理由はわかんないけど、自然と一体にっていうのはわかるかも。私も山育ちだから」

「ウェッヘッヘッ。話がわかってくれて、オイラも嬉しいぜ」

 

少年は意見を言うと千矢から賛同の言葉が返って来て、気の抜けた笑い声で喜んだ。なんというか、一緒にいるだけでこちらもユルくなってしまいそうだ。

 

(よう)、アンタ人探しサボってこんな所で油売ってたのね」

 

すると不意に、少年を名と思しきもので呼ぶ声が聞こえた。その先にいたのは、黒いワンピースに赤いバンダナの美少女である。しかしほの手には、異様に長い数珠を持っており、何やら怒気の様なものを放っている。

 

「あ、アンナ……」

「しかもアタシという許嫁がいながら、見知らぬ女と仲良くしてるだなんて……覚悟できてるでしょうね?」

「……スマン」

 

アンナと呼ばれたその美少女は、少年とはただの友人どころではない関係の様だ。そのため、モノすげぇ申し訳なさそうな顔で謝罪する。

 

「……帰ったら来月のCD代抜きよ」

「……うい」

 

そして処罰を言い渡し、少年も同意する。その様子に、千矢は呆然とするしかなかった。そして、紺達が大慌てで駆けつけて来た。

 

「千矢、何か変なことされなかった?」

「ううん。この男の子が、私と喋ったからってそこの女の子に怒られた」

「「「「はい?」」」」

 

ありのまま起こったことを話すと、全員目が点になったままキョトンとしてしまう。すると、美少女が千矢達に声をかけて来た。

 

「ウチの旦那が迷惑かけたわね。こいつの分も謝っておくわ」

「いえ、こっちは別に……って、旦那?」

 

紺は少年を旦那と呼ぶ美少女の物言いが気になり、つい聞き返してしまう。

 

「まあ、こいつは親同士の決めた許嫁。つまり婚約者な訳よ」

「許嫁って……まさか結構な御曹司?」

「残念だけど、そんなんじゃないわ。アタシもこいつも、特殊な家柄だからその血を絶やさないためにやってるの」

 

臣が期待を寄せて問いかけると、否定の言葉が返って来てあからさまに落ち込む。臣の実家は没落貴族の家で、うららになったのも大金を稼いで家を立て直すためであった。そのため、彼女の好きな言葉は"富と名声と権力"だったりする。

 

「まあ、親の方も相性はちゃんと考えてあるし…」

「へ?」

 

その時、美少女の顔が若干赤らめたのを、千矢は見逃さなかった。先ほどのの物言いに対して、意外と乙女なところもある様だ。

 

「なんでもないわ。行くわよ、葉」

「おう。悪いな、オイラ達ちょっと待ち合わせしてるから、そろそろ行かねえと」

 

そして少年はそばに置いていた刀と位牌を回収し、美少女に連れられてその場を去っていく。何だかよくわからない状況だ。

 

「なんか、変な子達だったね……」

「千矢が言っても説得力無いわよ」

 

去っていった二人にコメントする千矢だが、人のこと言えんとばかりに紺にツッコまれる。

 

「まあ何にしても、町に戻って調理してもらいましょうよ。これ、果物なのに生じゃ食べられないらしいし」

「小梅ちゃんの言う通りだと、思うよ。そろそろ行かないと………ピィ!?」

 

そしてノノが町のある方に視線を向けると、また驚きで小さな悲鳴をあげる。

 

「どうしたの、ノノ?」

「み、みんな、あ、アレ……」

 

千矢の呼びかけに対して、怯えながら目の前を指差すノノ。すると、なんと町のある方に黒い煙が立て続けに上がっている光景が見えた。

 

「ま、まさか町が!?」

「火事か何かかしら? とにかく急がないと!」

「行こう、みんな!!」

 

そして一同は慌てて、町へと急いだ。千矢は元々の身体能力の高さもあり、いつのまにか先行してしまう。

 

「ちょ、千矢! 先に行ったら危ない……って」

「もうあんな距離を…」

 

紺と臣が止めようと声をかけるが、すでに何十メートルと言う距離を進んでいた。そのため、一同は慌てて千矢の後を追うこととなった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「な、何これ?」

「「「イー! イー! イー!」」」

「「「イー! イー! イー!」」」

「「「イー! イー! イー!」」」

 

町に到着した千矢は、異常な光景を目の当たりにしていた。骸骨のような模様の入った黒タイツの集団、あのショッカー戦闘員が破壊活動を行っていた。戦闘員は士と承太郎がきらら達と出会った町と同様に、町の住人を追い立てては、老若男女問わずに暴行を振るう。

 

「「「イー!」」」

 

そして戦闘員の何人かが、千矢の存在に気づいて迫ってきた。得物のグルカナイフを手に襲い来るが、千矢は凄まじい跳躍力で宙へと舞う。

 

「うりゃー!」

「イー!?」

 

そしてどこから取り出した、柄に黒いうさぎのような顔が造形された剣を振るい、戦闘員を一人叩き切る。

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃー!!」

「「「イー!?」」」

 

そして連続突きで残りの戦闘員をまとめて攻撃。やはり戦闘員の宿命ゆえか、彼らはそのままダウンしてしまった。

 

「悪いことするなら、許さないんだから!」

「千矢、やっと追いつい……って、何これ?」

 

千矢はふくれっ面を見せながら倒れた戦闘員達に言うと、紺達がようやく追いついてきた。しかしやはりと言うべきか、町の惨状を見て唖然としてしまう。

 

「みんな、あの黒い人達と同じ格好の人達がやったみたい。なんか、嫌な感じがする」

「格好からして怪しいし、千矢の野生の勘なら信用できそうね」

 

倒したショッカー戦闘員を指差しながら、千矢が状況を説明する。小梅がそれを見ながら胡散臭げにしていると、それは起こった。

 

「……みんな、そうこうしているうちに、追加が来たわよ」

「臣、でもこれ…」

 

更に現れたショッカー戦闘員の行動に何かを感じた紺。なんと戦闘員の軍勢は、そのまま彼女達を包囲してしまった。

 

「オーホッホッホッホッホッホ! 飛んで火に入る夏の虫とは、このことを言うのね。まさかこんな簡単に、クリエメイトが釣られるなんてね」

 

直後に高笑いを上げる女の声が聞こえたと思いきや、ショッカー戦闘員達を掻き分けて、声の主と思しき人物が現れた。

褐色肌にグンバツな足のセクシー美女だが、この状況から彼らの統率者なのは明白だ。

 

「あ、あなたは?」

「私はオーバーヘブンショッカーのマライア。エジプト九栄神の一柱、バステト女神(じょしん)のスタンド使いさ」

 

マライア。かつてDIOからの刺客として、ジョセフとアヴドゥルに戦闘を仕掛けたスタンド使い。ンドゥールと同じく古代エジプトの神を暗示するスタンドの使い手、エジプト九栄神の一員である。

 

「スタンド? それが何かはわかんないけど、自分で神様を名乗るなんて、かなり図々しい女みたいね」

「小梅、それよりもこの人……私達がクリエメイトだって知ってるみたいよ」

「まさか、アルシーヴって人が味方になる人達を召喚したの?」

 

紺からの指摘を受けたノノは、真っ先にアルシーヴのことが頭に浮かんだので、マライアに問いかける。しかし、当然否定の声が帰って来た。

 

「残念ながら違うわ。私は敬愛する、オーバーヘブンショッカーの首領様に尽くすために、わざわざ組織立ってこんな田舎みたいな世界にやって来たのよ。光栄に思いなさい」

 

あからさまにエトワリア全体を馬鹿にする言動のマライア。千矢達は内心、怒りがこみ上げてきている。しかしそんな中、マライアはあることを問いかけてきた。

 

「まず駄目元で聞くけど、聖なる遺体っていうミイラの一部がこの辺りにあるらしいのよ。あんた達、聞いたことないかしら?」

「ミイラ? 何それ??」

「ミイラって確か、死体がお墓とかで腐らないように乾燥させた奴じゃ……死体なんて手に入れて何するかですか!?」

 

千矢は聞いたことのない単語なので聴き返すが、紺は怖がりなため自分で言って勝手に怯えてしまう。彼女もユー子の様に怖がりな様だ。

 

「知らないわよね……残念だけど、それを教えてやる義理は無いわ。あんた達はここで、私とコイツに倒される運命だから」

 

しかしマライアは紺の怯えながらの質問を答えず、別の人物を呼び出した。

 

「ほう。この嬢ちゃん達が、あのお方に楯突く存在というわけか」

 

現れたのは、また紫のオーラを纏う人物。白いスーツにチェック柄のシルクハットを身につけた、口髭の男だ。

 

「だ、誰?」

「私はツェペリ男爵。仙道波紋法の戦士にして、偉大なるオーバーヘブンショッカーの一員だ。そしてあのお方、オーバーヘブンショッカーの首領様に楯突く悪い子達に、お仕置きに来たのさ」

 

里できらら達にジョナサンとスピードワゴンが話していた、敵に操られた師匠。その師匠であるツェペリ男爵が、なんと千矢達に立ち塞がって来た。

 

「コイツの波紋法ってのが、中々に強力でね。うららとかいう、神から力借りるのに占い程度にしかそれを使わない馬鹿なあんたらに、力の本当の使い方を教えてやろうと思って、ここに送り込んだわけよ。ありがたく思いなさい」

 

マライアのあからさまに自分達を、ひいては全うららを馬鹿にしている言動。真面目に一人前のうららを目指している千矢達の怒りが頂点に達するのには、十分だった。

 

「私にはね、どうしても一番占を目指さないといけない理由があるの! それも知らないで、勝手なこと言わないで!!」

「千矢の言う通りよ。うららはね、私たちの世界じゃ国中の女の子の憧れなのよ! 私だって、母様のようなうららに憧れてるんだから!!」

「私も憧れの人に弟子入りするために、国一番になって仏蘭西に行くんだから! こんなところで負けたりしないわ!」

「お姉ちゃんもみんなも、馬鹿にしないで!? なんでそんなことが言えるか知らないけど、私も許せない!!」

「没落した二条家の立て直しのために、偉くなって大金をぶんどる。夢や野望があるなら、どんな風に力を使おうが勝手でしょ?」

 

千矢は行方不明の母を探すため。紺は憧れの母・時江に追いつくため。小梅は仏蘭西にいる憧れの人・魔女のマリに再び会うため。ノノは実家の茶屋で主人を務める姉・ニナを支えるため。臣は没落した家の再建のため。うららとして修行に励んで来た。

それを知ってか知らずか、馬鹿にしてくるマライアへ怒りをぶつけながら、千矢達は戦闘態勢に入っていく。

 

「一丁前に勇んじゃってるわねぇ。あんた達、包囲網は解かないようにしな!!」

「では私も、力の誤った使い方、今ここで正してくれよう!!」

 

しかしマライアもツェペリも、響いている様子はない。そしてマライアが戦闘員達に指示を送り、ツェペリが千矢達に向かって駆け出した。

 

「私もみんなを馬鹿にしたこと、町を壊したこと、全部許さないから!!」

 

そしてそれに合わせて千矢が駆け出し、ツェペリに突撃していく。そしてそのままツェペリに斬りかかった。

 

「こぉおおおおおお…」

「きゃああ! 何これ!?」

 

直後、ツェペリの口から独特な呼吸音が漏れると、彼の右腕に波紋のオーラが纏わる。そしてそれを剣脊にぶつかると、なんと剣からエネルギーが千矢の腕に伝わり、右腕が痺れて剣を落としてしまう。

 

銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)、金属に波紋エネルギーを伝える技だ。故に剣や盾による防御は、一切効かんのさ」

「よくわかんないけど、なんかまずい!?」

 

ツェペリが丁寧に説明すると、千矢は理屈こそわからなかったが、危険だとは理解した。なので早速、距離をとる。

だがツェペリは気にする様子もなく、ワインの入ったグラスを取り出し、それを飲みだした。

 

「波紋カッター!!」パパウパウパウッ

 

しかし直後、技名を叫ぶと同時に歯の隙間から波紋を纏ったワインを撃ち出してきた。ジョナサンがヒルカメレオン戦で披露した、ツェペリの得意技である。

 

「ウソ!?」

 

魔物やら魔法やらに慣れていた千矢も、これには流石に驚いた。しかし、咄嗟に持っていた盾でそれを防ぐと、盾はワインが付着した程度で傷一つ付いていなかったのだ。

 

「ほう。私の波紋カッターを受けても傷一つ付いてないとは、なかなか頑丈な盾だ」

「友達のポルカが、私のために作ってくれたんだよ! 強いに決まってるよ!!」

 

里に住む鍛治師の少女ポルカ。彼女がエトワリウムというレアメタルを使い制作、強化したこの剣と盾のセットは、おそらくエトワリアに置いて最高ランクの武器と思われる。ちなみに千矢以外にも、ゆずこのハンマーやトオルのバットなど、このエトワリウムの武器を有するクリエメイトが何人かいる。

 

「しかし、君と私には戦闘経験という、明確な差がある。それを埋める何かを持ち合わせてない限り、君に勝機は来ないと言っておこう!!」

「よくわかんないけど、私も負ける気は無いから!」

 

そして千矢はツェペリとの対話を終えた後、腕の痺れが切れたのを確認。先ほど落とした剣を拾って、再び戦闘態勢に入った。

 

一方、残る紺達とマライアはというと

 

「さて、あっちの半裸娘はツェペリ男爵に任せておけばいいか。あんた達、纏めてかかって来な」

 

なんと、マライアから全員と戦うという大胆発言が成された。

 

「な、何言ってるのこの人?」

「あなた、この大人数を使わないってどういうことよ? 」

 

突然の発言にノノは困惑する。一方の小梅は、先ほどの怒りが嘘のように、胡散臭げな目でマライアを凝視する。

 

「そうは言っても………そこの狐のガキはもう術中にハマってるし」

「え?」

 

そんな中、マライアに指摘されたのは紺だった。どういうことかと思ったその時、紺自身が異変に気付いた。

 

「足元に……何これ?」

 

何故か足元にコンセントがあり、それを踏んでしまった紺。しかし、その直後にそれは起こった。

 

「え、痛っ!?」

「紺、どうしたの!?」

 

なんと、いきなり紺を目がけて釘が飛んできたのだ。豪快に曲がっていたそれは、おそらくは破壊された家の一部だろう。しかもそれが一本ではなく、何本も立て続けに飛んできたのだ。小梅もビックリしている。

 

「そのコンセントが、私のスタンド・バステト女神のヴィジョンよ。そしてその能力は、スタンドに触れたものを磁石に変える!」

 

マライアの説明通り、なんとかのコンセントこそが彼女のスタンドだったのだ。見た目に関しては、これまでに確認されているスタンドの中でも異質な部類に入るだろう。

そのこともあって、初見ではジョセフとアヴドゥルも術中にハマってしまったのだ。

 

「後は適当にナイフでもぶん投げりゃ、勝手に引き寄せて刺さっておしまいなんだけど……味気ないから使わないでやるわよ」

「あなた、幾ら何でも舐めすぎ……って、ええ!?」

 

マライアが余裕たっぷりな発言をしながら近寄ってくると、紺はまだ戦えるとアピールしようとする。

しかしその直後、なんと彼女の胸が膨らみだしたのでギョッとする。

 

「バステト女神の力で磁石になった人間は、スタンドの本体である私が近寄るとその磁力が強まるのよね」

 

そしてマライアが能力の補足説明をすると、胸からなんと大量のネジやら釘やらが飛び出してきた! どうやら大量に仕込んでいたようだ。

 

「ウソでしょ!?」

「紺、危ない!!」

 

まさかの攻撃に紺は仰天するが、小梅がとっさに前に躍り出て、魔法で飛んできたのだネジや釘を吹き飛ばした。

 

「へぇ、あんな細かいの全部撃ち落とすなんて、やるじゃないの。でも、それで済むって考え方が甘いわね」

 

しかしマライアの余裕は崩れず、直後に飛んで言ったネジと釘の全てが再び飛んできたのだ。磁力の大元である紺をどうにかする、もしくは目の前の鉄製品を塵にするレベルで破壊しないと、防御はできない。

 

「ウソ……って、きゃあ!? 紺、いきなりどうしたのよ!」

「わかんないわよ、私だって!」

 

なんと、今度は紺が小梅の体と引っ付いてしまう。二人とも困惑しているが、その原因に気づいたのは臣だった。

 

「小梅、あなたの足元見て!」

「これさっき紺が踏んだ……!」

 

そう、小梅までバステト女神の力で磁石にされてしまったのだ。磁石同士の引き合う特性により、

二人の体も引き合ってしまったわけである。

 

「癪だけど、ジョースターのジジイにしてやられた、磁石同士の特性を利用してやったよ。敗北から学ぶのは、味方だけじゃないってね」

 

彼女と交戦したジョセフは、マライアの磁力で車やら自転車やらと重量物を大量に引き寄せられるも、磁石の引き合う特性を活かし、挟み撃ちにしてその重量物で押しつぶすという方法で倒した。マライアはこれで、全身骨折で入院させられていたのだ。

 

「「きゃああああああ!?」」

「紺ちゃん! 小梅ちゃん!」

 

結果として、飛んできた金属は紺と小梅を同時に襲う。痛みで叫ぶ二人に、ノノが回復しようと駆け寄った。

 

「待って、ノノ! その調子だとあなたも…」

 

臣が危険を察知し、制止しようと呼びかけるが、遅かった。

 

「えぇっ!?」

「ノノ!」

 

マライアはこの隙を予感し、ノノの足元にもバステト女神を発動、踏ませて磁石に変えてしまった。それにより、ついにノノまで引っ付いてしまった。

 

「あらあら。お友達の心配するあまり、悲惨なことになっちゃったわね」

「あなた……最低の戦い方するわね」

 

余りにも卑怯な手を使うマライアに、思わず罵倒の声が出てしまう紺。しかしマライアは気にも止めずに続けた。

 

「さて、もうそろそろ別働隊が下準備し終えた頃かしら?」

「別働隊? あんた、何する気?」

 

マライアの意味ありげな言葉に小梅が問いかけるが、すぐにわかった。

 

「あら。来たみたいね」

「え、ウソでしょ!?」

「流石にあれは……」

「あわ、あわわわ…」

 

紺達の視線に、その別働隊と思しきショッカー戦闘員の集団が何かを運んで来たのが見えた。それは巨大な鉄製の看板、それも自分達が町に来た目的の甘味処の宣伝用の物だった。

 

「町中探して、大型の金属があれだけしか無いってわけ……まあ、小娘数人ペシャンコにするには、十分か」

 

マライアはそう、はっきり言った。つまり、自分達は本気で殺されようとしていた。

 

「え? あの人達、何をするの?」

「どうやら、マライアは決着をつけるつもりのようだ。あれで嬢ちゃんの仲間を纏めて潰すかのようだ」

「え!?」

 

ツェペリと降参していた千矢も、突然のことに視線を向けてしまう。そしてツェペリの方から簡易的に真相を語られ、驚愕した。

そして、そんな中で紺から千矢へと呼び掛けられた。

 

「千矢、臣が一人だけ動けるから、一緒に逃げて!」

「このままじゃ、全員あの世行きよ! だから言う通りにして!」

「二人とも、何言ってるの!? 紺も小梅も、置いていけないよ!」

「お願い、逃げて千矢ちゃん!」

 

紺達の判断に対して、反対意見を出す千矢。しかし今度はノノからも逃げるように告げられてしまう。

 

「前にも言ったよね、私もみんなを守りたいって。たぶん、今がその時なんだと思う。だから……」

「そんな、嫌だよ!!」

「おしゃべりしている暇はないよ、嬢ちゃん!」

 

ノノの自己犠牲の言葉に否定意見を出す千矢だが、そこにツェペリがすかさず攻撃を繰り出す。オーバーヘブンショッカーの苛烈な行動、洗脳されたツェペリがそれに則るのも当然だった。

 

「さて。じゃあ、そろそろカウントダウンと行きましょうか。10…」

 

そしてそれは、かつてDIOに仕えていたマライアも同様だった。非常なカウントダウンが、とうとう始まってしまった。

 

「9…8…7…」

「みんな!?」

「「「イー! イー!」」」」

「くっ!?」

「あんたは後でじっくり処刑してあげるから、そこで待ってな」

 

一人身動きの取れた臣も、戦闘員達に拘束されてしまう。もはや、絶望しかなかった。

 

「じゃあカウントダウン、やり直しと。10…9…8…」

 

そしてカウントダウンが1からやり直しとなるが、依然としてピンチは変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、このやり直しを決行したマライアの隙が、ある者達からの攻撃を許すこととなってしまう。

 

「きゃあ!?」

「なんだ…むぐ!?」

 

突如として飛んできた何かが、マライアを攻撃。それにより、彼女はスタンドを解除してしまう。そしてツェペリにも攻撃がなされた。

 

「え? 何?」

「二人とも、動けるようになったわ!」

「え、どういうこと?」

 

紺達も突然の開放に、困惑している。しかしそれだけではなかった。

 

「真空仏陀切り!」

「「「イー!?」」」

 

突如として技名を叫ぶ声が聞こえ、臣を拘束していた戦闘員達がまとめて倒された。

 

「ふぅ……まさか、少女達がショッカーの攻撃を受けているとはな…」

「つまり、千矢とその友達がクリエメイトってことだったのか。全然気づかなかった」

「余計な仕事増やしたから、来月はおやつも抜きよ」

「いや、アンナだって気づかなかったろ?」

 

そんな中に話しながら現れたのは、先ほど会った三人の人物。ヒビキと謎の少年&美少女だった。しかも何やら余裕そうに喋っている。

 

「え? あなたさっきの…」

「おう、助けに来るのが遅れて悪かったな」

 

千矢の言葉に反応して返事をする少年。見てみると刀を抜いているため、これで先ほどの攻撃を放ったようだ。

 

「ヒビキさん、なんで…」

「いや。俺、君らが狙われているって仲間から聞いたから、助けに来てさ。そこの少年少女が協力者ってことで、落合に来たんだよ。悪いな、君らがクリエメイトってわかってたら、一緒に連れて行ってたのに」

 

紺の問いかけに説明すると、ヒビキの手に何かが飛んできた。それは鳥のような姿をしていたが、ヒビキの手に収まると同時に、なんとディスク状に変形したのだ。

 

「こいつはディスクアニマルっつって、まあ式神みたいなものだ。俺の仕事道具の一つ」

「いやぁ。オイラのじいちゃんも陰陽師だけど、そんな式神がいるって、異世界やら平行世界やらは、すげぇんだな」

 

ヒビキの説明を聞いて、少年が感心する。式神やら陰陽師やら、普通に生活していたら聞かない単語が飛び出してきたので、思わず千矢は問いかける。

 

「あなた達、何者なの?」

「ああ。オイラは麻倉葉(あさくらよう)

 

まず最初に名乗ったのは、少年だった。そして次に来た肩書は……

 

 

 

 

 

「あの世とこの世を結ぶ者・シャーマンさ!」

 

そして直後、その背後に偉丈夫に銀髪の男が現れる。突如出現したその人物に、思わず驚く千矢達。

 

「そしてこっちは、持ち霊の阿弥陀丸。侍で、この刀”春雨”の持ち主だ」

「この世界はどうやら、霊の拙者も見えるようなのでござるよ。よろしく願おう」

「侍の……霊!?」

 

現れた人物の正体に、仰天してしまう紺。しかし葉は気にせず、行動に出た。

 

「阿弥陀丸・人魂モード!!」

 

すると阿弥陀丸の姿が崩れ、見る見るうちに刀を持った顔つきの人魂へと変化した。

そして葉は、その阿弥陀丸をなんと春雨に叩き込んだ。

 

憑依合体・in春雨

「オーバーソウル!!

 

それにより春雨から侍、というか武者の甲冑を思わせる装甲を纏ったオーラが現れた。憑依ということから、阿弥陀丸が刀に宿ったようだ。

そしてそれに続き、ヒビキが行動に出る。

 

「俺も実はさ、ヒビキって本名じゃなくて仕事上の肩書きみたいなものなんだよね」

 

言いながらヒビキは、上着のポケットから何かを取り出す。鬼の顔が彫られた、それから突起が生えた。

 

「で、漢字で書くとそれが……

 

 

 

 

 

 

 

響く鬼で響鬼なんだ」

「お、鬼?」

「鬼って、あのツノ生やして金棒振り回す!?」

 

幽霊に続いて、鬼という単語にまた紺が怯える。しかし、あまり気にせずヒビキは行動をとった。

 

「そしてまたの名を……」

キィイイイイン

 

ヒビキがその道具の突起を、近くの岩に軽くぶつけると、共鳴音が響く。どうやらあれは音叉のようだ。そしてその音叉をヒビキが顔の前に持っていくと、ヒビキの全身が紫の炎に包まれる。

 

「「「「「!?」」」」」

「はぁああ!」

 

炎が弾け飛ぶと同時に、ヒビキの姿は激変していた。

黒寄りの紫を基調とした体に、体の各所にある金属製の装飾、腰には勾玉が三つ合わさったような模様"巴紋"が刻まれたベルト。そして頭部を覆う仮面は、眼鼻が無く赤い縁取りがあり、額には先程の音叉と同じ鬼の顔の装飾、更に二本の角、鬼を連想する様相をしていた。

 

仮面ライダー響鬼、参上。なんてね」シュッ

 

名乗りながらお決まりのポーズを決めるヒビキ、否・響鬼。彼のいた世界での鬼とは、仮面ライダーのことであった。エグゼイド同様、マスクの目が複眼でない例外の存在である。

かくして、新たな戦士たちがエトワリアしたのであった。




今回の参戦策の組み合わせ。
ぶっちゃけ、うららは和風&スピリチュアルなので、ライダーは響鬼で確定でした。ただジャンプは意外とモチーフ多いので、悩みましたね。ジャンプ側の協力者になる超越者としてハオを充てるということでマンキンになりましたが、他にもこんな候補が。
・るろうに剣心
・鬼神童子ZENKI
・陰陽大戦記
・ぬらりひょんの孫
・鬼滅の刃
・ゆらぎ荘の幽奈さん
他にもう一個候補はありましたが、別の作品と組み合わせることにしたので外しました。鬼滅とか大正つながりでうららと相性よさそうでしたが、パワーバランスを理由に外しました。


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第12話「冴える占い」

投稿が遅れて失礼しました。3月に入ってバタバタしていましたが、ようやく上がったので投稿します。
シュガー実装されたけど、結局期間内に引けませんでしたorz
たぶんフェス限定ガチャ的な形で再登場するとは思いますが、果たしてどうなるか……

後あんまり関係ないことですが、ディズニーの禁止が無くなったとかでKHの作品も出てきたようですね。ある意味、きらファンと相性良さそうですが、誰かクロス書かねえかな……


「はぁああ!」

「なに!?」

 

変身した響鬼は、そのまま脱兎のごとく駆け出し、ツェペリに殴りかかる。ツェペリ自身は咄嗟に跳躍して回避するも、殴られた石畳は小さなクレーターが出来るほどの衝撃を受けた。響鬼のパンチ力はなんと20tもの破壊力で、現行している仮面ライダー達の中でも、屈指のパワーファイターなのだ。

 

「おし。追撃行くか」

 

次に響鬼が腰にさしている二振りの棒を抜き取ると、先端の鬼の顔が彫られた部分に炎が灯る。

 

「はぁああ!」

「なんと!?」

 

そしてその棒を振ると、なんと灯った炎がツェペリをめがけて飛んで行ったのだ。

しかしツェペリも負けじと、空中で体をひねってその勢いで高速回転。回避と同時に一気に地上へと降りたのだ。

 

「ズームパンチ!」

「おっと!」

 

そして突撃しながら、右腕の関節を外して伸びるパンチを放った。だが響鬼も鍛え抜かれた動体視力で察知し、回避に成功する。

 

「何だ? 波紋戦士の話は渡達から聞いたけど、こんなビックリ人間ばっかなのか?」

「全ては修行により為せる技だ。しかし仮面ライダーの中でも屈指の実力者である響鬼、噂に違わない強さだ」

「そりゃどうも。でも俺、あんたを連れ戻さなきゃなんないから、遠慮なくのさせてもらうぜ」

 

そして互いの実力を認め合った響鬼とツェペリは、再び激突するのであった。

 

「もういっちょ、真空仏陀切り!」

「「「イー!?」」」

 

一方、オーバーソウルを発動した葉は、剣を振るうとその切っ先から飛ぶ斬撃が放たれ、迫ってきた戦闘員達をまとめて撃破して行く。技名から、臣を拘束していた戦闘員達もこれで倒されたようだ。

 

「な、なんかすごいね……」

「そりゃそうよ。ウチの旦那は逃しこそしたものの、シャーマンキングになるために修行してたんだから」

 

千矢が響鬼や葉の強さを目の当たりにしていると、そこに葉と一緒にいた美少女が声をかけてきた。

 

「あなた、さっきの?」

「そういえば自己紹介がまだだったわね。アタシは恐山(きょうやま)アンナ、葉の許嫁でイタコやってるの」

「イタコ……って何?」

「イタコって、あれですよね? 死者の魂を呼び戻して、自分に取りつかせて言葉を代弁する……」

 

美少女・アンナの名乗りに疑問を投げかける千矢。すると、紺がガクブル状態になりながら説明を入れてきた。一応、紺の得意な占いがコックリさんということなので、降霊術の類には知識的にも明るいようだ。

 

「あら、詳しいのね。その様子だと、この手の情報は怖がって仕入れていないと思ってたけど」

 

一応、アンナから褒め言葉が出てくる。そしてそのまま、千矢達うらら組に事情を説明し始めた。

 

「まず率直に言うわ。アタシ達は葉の兄で現シャーマンキングのハオから、ここに送り込まれたの。次に奴らオーバーヘブンショッカーは、このエトワリアという世界に侵略に来た。そして奴らは別の世界からここに飛ばされてきた、聖なる遺体とかいう代物を探しているわ。以上」

「し、侵略、ですか?」

「その遺体はあの人が言ってたけど……あんまり穏やかじゃないわね」

 

アンナからの話を聞き、紺と小梅が反応する。そしてそのまま、アンナは続けた。ちなみにハオの送り込んだディケイドの協力者とも、サラッと判明する。

 

「あと、あのツェペリっていうおっさんは、あいつらの親玉に洗脳されているだけで、元は善良な人間だったらしいわ。で、例の聖なる遺体を使えばその洗脳を解けるそうよ」

「え? そうなんですか?」

 

まさかの敵の狙いが、この状況を打開する鍵になるという情報。紺はそのまま聞き返すと、アンナは話の続きに入った。

 

「で、本題はここからよ。なんとか聖なる遺体を見つけて、手に入れてちょうだい。きっと遺体がこの世界に転移したのも、偶然なんかじゃないし、そうならクリエメイトの貴女達が鍵になるはずよ」

 

うららとは異なるが、神霊の力を借りるシャーマンの一人であるアンナの言葉。そして何より、現在進行形でエトワリアに脅威が迫っている。千矢の答えは、決まっていた。

 

「わかった。私に任せて」

「……そうね。私達になんとかできるなら、やってみましょう」

「このままマリに会えないまま人生終了なんて、ゴメンだわ。やってやろうじゃない!」

「わ、私だってみんなの力になりたい…」

「マツコモ、"ノノ"ノ為ニ頑張ルヨ」

「微力ながら、私も協力するわ」

 

マツコさんも含めた千矢達うらら組、彼女達が課題で作った店の名前にちなんで"チームなつみや"は、戦う気になってくれた。

 

「話が早くて助かるわ。最後に推測になるけど、遺体そのものに意志があるらしくて、だから貴女達の誰かを持ち主に選ぶ可能性があるの。近づけば、遺体そのものが場所を教えてくれるはずよ」

 

そしてアンナが最後に教え、千矢達が行動に移そうとする。しかしそれを黙って見過ごすはずのない、マライアであった。

 

「クソガキどもが、いい気になりやがって……奥の手を出してやろうじゃないか!」

 

口調の汚くなったマライアは、懐からお札のようなものを取り出し、それを地面に叩きつける。すると、地面が盛り上がり始める。

 

「出てきな!魔化魍・土蜘蛛!」

ギシャアアアアアアアア!!

 

マライアが叫ぶと同時に、地面から巨大な蜘蛛が現れた。その蜘蛛は節足動物ではあり得ない雄叫びを上げ、響鬼や葉、チームなつみやの面々を睨む。

 

「ま、魔化魍!? なんでこんな所に…」

「財団Xが作ってオーバーヘブンショッカーに卸した、人造魔化魍の試作品を封じた札よ。アンタ以外には倒せないから、他の場所で使おうと思ってたけど…しのごの言ってられないのさ!」

 

まさかの財団X経由に、流石の響鬼も驚きを隠せなかった。

 

「まさか、異世界で魔化魍とやり合うとは……仕方ねぇ、標的変更だ」

「それを容易くさせると思ったか!」

 

響鬼が土蜘蛛を優先して倒そうとするも、ツェペリの妨害が入り、上手く乗り込めない。状況は最悪だ。

 

「な、何あのでっかい蜘蛛!?」

「魔化魍。あの響鬼がもといた世界に出てくる、妖怪みたいなものだそうよ。彼を筆頭にした鬼にしか倒せないらしいから、アタシ達じゃ時間稼ぎが限界ね」

「え、 私たちじゃ勝てないの!?」

 

流石にここまでデカイ蜘蛛は千矢も見たことなく、アンナの説明とのダブルパンチで驚愕した。

 

「仕方ない、ハオから借りたアイツらを使うわ…」

 

そしてアンナは懐から人形(ヒトカタ)を取り出し、投げながら叫んだ。

 

「行きなさい! 前鬼(ぜんき)後鬼(こうき)!」

 

すると人形から二体の鬼が現れた。響鬼のような仮面ライダーではなく、トゲのついた球体に手足と複数の眼がついた外見をした、異形の姿をしていた。

ハオは元々、麻倉家の開祖とされる陰陽師の生まれ変わりで、その陰陽師である麻倉葉王の使役した式神が、この前鬼・後鬼なのである。アンナが一度手に入れ、ハオとの戦いで一度消滅するが、再生されて今回は貸し与えられたという事だ。

 

「こいつらでも倒しようがないけど、時間稼ぎはできる! だから、今のうちに遺体を探しなさい!」

 

アンナは式神を土蜘蛛に嗾しかけながら、千矢達に遺体捜索を促す。

 

「行こう、みんな。早くその遺体っていうのを見つけて、ヒビキさんたちを助けよう!」

「そうね。今こそ、修行の成果を見せる時よ!」

「探し物なら、私のユレールに任せてちょうだい!」

「マツコさん、がんばろう!」

「ウン、ノノ」

「紺、私は夢占いになるから、使うときはちゃんと守ってよね?」

「あ、そうだった。いいわ、任せて!」

 

そして千矢達は散開して、聖なる遺体を探しに行く。ちなみに、ユレールとは小梅が占いに使うペンデュラムに付けている名前である。本人曰く、ハーフの美幼女という設定だとか。

しかし、それを黙って見過ごすマライアではなかった。

 

「戦闘員ども、私はあの半裸娘を重点的に狙う! お前らは他の小娘どもを追え!」

「「「イー!」」」

「「「イー!」」」

 

マライアの命令に従い、戦闘員達は指令を出し、千矢達の捕縛に乗り出す。すると、必然的に葉が戦っていた戦闘員達も減っていくのだった。

 

「お、手薄になった。じゃあ、加勢に行くか」

 

結果、葉は響鬼と二人でツェペリに相対出来るとなり、そのまま向かっていった。しかし残りの戦闘員も、後を追ってツェペリに加勢する。

 

「おっちゃん、加勢に来たぜ」

「お、来てくれたか少年。あの旦那は洗脳を解かねぇとダメだから、俺じゃ力加減が難しいんだよな」

「成る程……おっし。じゃあ、さっさと済ましちまおう」

「なら、俺はあの戦闘員達を片付けておく。任せたぜ」

「戦闘中に作戦立案とは、呑気なものだな。しかし私は手加減してやるほど、優しくはないぞ!」

 

そして二人の戦士は、悪に操られた波紋戦士を救うべく、立ち向かっていく。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「zzz…zzz…」

「二人とも、臣が眼を覚ますまで凌ぐのよ!」

「あー、もう! ユレールを使う暇がありゃしないわ!」

「な、なんとかがんばらないと!」

 

まず、臣が地べたで寝息を立てているのを、紺達がショッカー戦闘員達から守っている。臣がどこでも寝落ちする理由となる得意な占い、それは夢占いだ。ざっくり言えば予知夢を任意で見る占いなので、無意識下で行われる。そのため最高難易度の占いとされているのだ。

ちなみにチョイスした理由は、下の兄弟の面倒を見ながら寝る間も惜しんで勉強した際にそれを知り、寝ながら仕事できるからお得だと思ったからだ。

 

「イー!?」

「こいつら、いくらなんでも多すぎるわよ!」

「一人一人がそんなに強くないのが、救いだけどね!」

「イー!?」

 

小梅が魔法で、迫ってきた戦闘員をぶっ飛ばしながら文句を言う。それに紺が答えながら、同じく戦闘員を斬り倒す。

紺の使う剣も小梅が魔法を撃つ為のオーブも、千矢のエトワリウム製武器には劣るが、伝説の鍛冶屋である父に弟子入りしたポルカが鍛えた高品質の武器だ。ショッカーにも有効なようである。

 

「きゃあ!?」

「紺ちゃん!」

 

しかし一瞬の隙を突き、戦闘員のナイフが紺の腕を掠める。思わず声を上げてしまい、ノノが反応する。

 

「やったわね!」

「イー!?」

 

しかし紺自身も黙ってはおらず、反撃して戦闘員を倒した。

 

「紺ちゃん、大丈夫?」

「ええ、掠っただけだから平気。でも、このまま続くと厳しいわね…」

 

ノノは心配して紺に声をかけるも、傷は浅いので問題はなさそうだ。しかし戦闘員はまだ数が多く、不利なのは変わらない。

 

「どうしよう、マツコさん…」

「落チ着イテ、ノノ。アレナラ、キット上手クイクヨ!」

「あれ? マツコさん、あれって?」

 

そんな中、ノノは人形占いでマツコさんに語りかけ、解決策を講じようとする。そんな中、マツコさんから案が出てきたので、詳しく聞いてみる。

そしてそれを実践するのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「語り継がれし形代(かたしろ)の♩

人形(ひとかた)語りものがたり♫

我が傍らのかたわれよ♩

知恵を授けてくれまいか♫」

 

突然、ノノが歌い始めた。うららは占いを行う際に、いわゆる祝詞を口にする。ノノは人見知りで喋り下手なため、祝詞を歌にするという形でそれを克服したのだ。

この天使の歌声とも称されるノノのヒーリングボイスは非常に強力で…

 

「あ、ノノの天使の歌声が……」

「ダメよ小梅、今寝たらアイツらにやられる……」

 

聞いた相手を眠らせてしまう効果があった。それにより、紺も小梅も猛烈な睡魔に襲われてしまう。

しかし、効果があったのは彼女達だけではなかった。

 

「イ、イィー………zzz…」

「zzz…zzz…」

「え、ウソ…」

 

なんとか睡魔に打ち勝った紺は見たのだった。目の前のショッカー戦闘員が、一人残らず熟睡しているのを。

ノノの天使の歌声は、奴らにも有効だったのだ!

 

「スゴイわ、ノノ! あの数を全員眠らせるなんて!」

「えへへ。マツコさんが私の祝詞が効くかもって、教えてくれて」

 

紺はこの危機を脱したノノに賞賛を送る。それに対して、ノノも流石に照れていた。

 

「zzz…」

「って、小梅! あなたまで寝ないの!」

「…ん」

 

しかしその横で小梅も熟睡している。大慌てで紺が起こしにかかると、ちょうど臣が目を覚ました。

 

「みんな。例の遺体だけど、ボンヤリとした場所ならわかったわ」

「え、本当!?」

 

小梅が目を覚ました直後、臣からの答えに3人は食いつく。しかし、返答はあまり望ましいものではなかった。

 

「どうやら千矢の近くにあるみたいなんだけど、あのマライアって人が邪魔して、思いのほか苦戦しているようね」

「あの人ね……美人のくせしてなんであんな性格悪いのかしら?」

「小梅、そこは重要じゃないわ」

「なら、早く千矢ちゃんを助けないと」

 

小梅が的外れな意見を述べると、紺がツッコミを入れる。しかしノノがすぐに救援を提案したため、そのまま4人は行動に移るのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「チョコマカすんじゃねえ、このビチグソがぁあああ!」

「おわぁあ!?」

 

ちょうど紺達が動き出したのと同じ頃、千矢はマライアから逃げながら遺体を探していた。当のマライア本人は、醜く表情を歪めてながら暴言を吐き、千矢を目掛けてナイフを投げて攻撃してくる。千矢は持ち前の身体能力の高さで回避出来たが、訓練された彼女の投げナイフは、速さも精度もかなりのものだ。

 

「あ、危ない!」

「チィッ!」

 

直後、千矢は足元にバステト女神のスタンド像であるコンセントを目撃、飛び上がって回避する。トラップ主体の戦い方をするマライア相手では、一切気の抜けない状況だ。

 

(この人、力も考え方もすっごい危ない…こんな人が何人も、この世界に来てるなんて、大変だ!)

 

そしてマライアの攻撃を避けながら、1人思案する千矢。初めて遭遇するであろう、明確な悪意と害意を持った敵の存在に、かつてない危機感を感じることとなったからだ。

 

(聖なる遺体……こんな人達が欲しがるなら、絶対に渡しちゃダメだ。私が見つけないと!)

 

そして千矢は、覚悟を決めて一人念じる。ショッカーの悪意を止めるために、完全に使いこなせていない、自らの得意な占いを行使することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力を貸して、くろう!」

 

そして千矢が叫んだ直後、彼女の背後に何かが現れた。

 

「な、スタンド!?」

 

マライアが思わずそれをスタンドと呼んだが、そう思っても仕方のない姿をしていた。見た目は黒いマントを纏った人型の何かだが、顔は黒いウサギに似た何かという異形の姿であったからだ。

千矢が最初に迷路町に来た日、紺が得意な占いとしてこっくり占いを披露した際、それで千矢の得意な占いが何かを当ててほしいと頼まれた。そしてそれで、”くろう”という謎の単語が飛び出したが、この千矢の背後に現れた何かがくろうであり、その力を借りる”くろう占い”が千矢の得意な占いであった。

千矢は現在、水晶占いが出来るようになるも、紺が見つけてくれたからということでくろう占いに拘る所もある。しかし何故か祝詞も必要ない異質な占いなためか、成功どころか使えない時の方が多いのが実情だった。だが、くろう自身が千矢の危機に感づいたのか、今回は現れてくれたのだ。

 

「くろう、来てくれたんだ。今、私は聖なる遺体っていう物を探しているの。どこにあるか、一緒に探して?」

「……」

 

千矢は自分の目的を明かし、くろうに協力を呼び掛ける。くろう自身は無反応だが、何か千矢だけに通じる物が感じられる。そして…

 

「ありがとう。それじゃ、行くよ」

 

くろうから了承が得られたようで、千矢は意識を集中し始める。そして、千矢の赤い瞳が輝き、彼女の脳裏に何かが見え始めた。

 

(遺体はこの近くにある……崩れたレンガの家…引き千切られた看板の跡…まさかこれ…)

「私達が食べに来たお菓子屋さん! あの近くにあるんだ!」

 

見覚えのある情景に、遺体があることが判明した。そして千矢はくろうを引っ込めると、占いの成功による歓喜の声をあげて走り出した。

 

「まさか、遺体の場所がわかったの!? ならあのスタンド、ジョセフの念写のような捜索特化タイプと見たわ!」

 

しかし千矢が大声で叫んだことが災いし、マライアも後を追う。まだスタンドと勘違いしている辺りは、ご愛嬌だ。

しかしここで想定外のことが起こった。

 

「よっほっとぉ!」

「ちょ、速すぎ…」

 

なんと、千矢の走力がどんどん上がっていき、マライアはあっという間に距離を話されてしまったのだ。しかしそんな中、千矢はマライアの視線からギリギリ見える所で止まってしまう。

 

「行くよ、くろう!」

 

直後、千矢が叫ぶと同時に、再びくろうが現れる。そしてその時に発した衝撃が、近くの崩れたレンガを宙に舞わせた。

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃー!」

「な、なにぃ!?」

 

そして千矢は剣でそのレンガを突き飛ばし、マライア目掛けて撃ち出したのだ。

 

「ぐぇ!? ちょ、待…痛い痛い!」

 

マライアは強力なスタンド使いではあるが、彼女自身の身体能力や動体視力ほ常人の域を出ない。そのため、飛んできたレンガを避けることは叶わなかった。

 

「りゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

「アガッ!? アギ……グヘェ!?」

 

千矢は普段、火のついた提灯を突き出すというこれと同種の必殺技を有しているが、今回は気持ち多めであった。マライアの明確な悪意に、遠慮無用と察したようだ。

そしてレンガ()が尽きた頃には……

 

「こ、この…ビチグソ、が……」

「あなたも悪いことするなら、許さないんだから!」

 

マライアはボロボロになったままレンガに埋もれ、最後まで汚い口調が元に戻らないまま気絶した。そんな彼女に対して、プンスカしながら宣言する千矢であった。

そしてそのまま、遺体の捜索を開始する。そんな中、千矢はついに白い布で覆われた何かを発見した。丁度、響鬼達の救援前に戦闘員達が運んできた、看板の立っていた跡である。

 

「ひょっとして……あった」

 

そしてまさかと思い、物体を包んでいた白い布を剥いでみる。するとその中から、ミイラ化した人間の頭が出てきた。

 

〜千矢は聖なる遺体の頭部を手に入れた〜

 

「……よし、行こう!」

 

千矢は覚悟を決め、遺体を手にツェペリの元へと急ぐ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「波紋カッター!」パパウパウパウ

「阿弥陀丸、防御だ!」

 

一方、葉が加勢した響鬼VSツェペリの対決。ツェペリの波紋カッターを防ぐ為、葉はオーバーソウルの装甲を展開する。

結果、波紋カッターは一発もこちらには届かなかった。

 

「ほう。霊能力をそのような使い方で操るとは…なかなかやりおるな、少年」

「本当はオイラ、こういうしんどいの嫌いなんだよなぁ…」

 

ツェペリの褒め言葉にあまり関心しない様子の葉。すると、あることを語り出した。

 

「おっちゃん。オイラさ、自分が楽なのが好きだから、人がしんどそうなの見てるのも、嫌いなんよ」

「急にどうした?」

 

あまりにも突然すぎる言葉に、ツェペリも困惑気味だ。しかしそのまま、葉は持論を語り続ける。

 

「だからさ、みんなをしんどくするショッカーを止めたいと思う。そんで、しんどそうなおっちゃんも止めてやりたい」

 

そしてその持論から、操られているツェペリにこんなことを言い出した。

 

「ほう。偉大なるオーバーヘブンショッカーに仕えることが、それほど苦痛とは思えんが…」

「考え方を捻じ曲げられて、無自覚のまんまやりたくないことやらされる」

「何?」

 

そして葉は、ツェペリについて事前に聞いていた話を、彼自身にぶつけてみるのだった。

 

「聞いたけど、最初はおっちゃんがショッカーと対立してたし、その前は悪者やっつけるために波紋とかいう技を身につけたんだってな」

「何を言う! ジョジョ達ジョースターの血族に仮面ライダー、そしてクリエメイトこそが、オーバーヘブンショッカーの歩みを邪魔する絶対悪だぞ! 少年こそ騙されるな!!」

 

しかし考えを根っこから捻じ曲げるレベルの洗脳を施されたツェペリには、その言葉は届かなかった。

そしてその反応を見た葉は……

 

「そんなレベルで操られちまってるんか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なら、オイラも遠慮はしねえ

「ぐっ!?」

 

直後、葉は普段の気の抜けたオーラが鳴りを潜め、瞳も冷たく鋭いものに変わった。ハオの弟だけあってか、彼の潜在的な絶対強者としての資質も備わっているようだ。

その表情に、ツェペリが一瞬だが怯んだ。しかしその一瞬を、葉は見逃さなかった。

 

阿弥陀流奥義・後光刃!!

「ぐぉおおお!?」

 

葉はツェペリの懐に一気に飛び込み、居合の要領で必殺の一撃を叩き込んだ。そのバックには一瞬、阿弥陀如来が幻視され、その一撃の威力を物語る。

そして吹き飛ばされたツェペリは、そのまま地面に落ちて気を失った。

 

「おいおい、スゲェな……」

「葉、手が空いたならこっちに来て頂戴! そろそろ前鬼と後鬼も限界よ!」

 

響鬼も戦闘員を片付け終わり、葉の実力に思わず感心する。その一方でアンナが式神達の限界を察して、救援を求めていた。

この戦いも、終着が近づいているようだ。




次回でうらら編は終了。その次は一回メインシナリオから追加参戦作に切り替わります。何が来るかは、楽しみにしていただけたら幸いです。


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第13話「唸る音撃」

昨日、マギレコの第1部完結イベントクリアしました。平ジェネinきらファン終わったら、マギレコで何か書いてみようかな?

今回で響鬼編終わりますが、ちょっとラストで変化球入れてきます。


「ヒビキさん、聖なる遺体……だっけ? とにかく、持って来たよ!!」

「お、待ってたぜ。目的の相手は少年の援護で押さえておいたからよ」

「このおっちゃん、結構手強かったな」

 

葉がツェペリを倒してすぐ後、千矢が遺体を手にこちらへと戻ってきた。回収後に紺達とも合流したようで、全員でやってきた。

 

「よし。その遺体の光を当てたら、いいらしいぜ」

「うん。それはこれも教えてくれたみたいだし…」

 

そして響鬼に促され、千矢はツェペリに遺体が発する光を当てる。すると、ツェペリの体から紫のオーラが消え、同時に目を覚ました。

 

「……ん、ここは一体?」

「おっちゃん、目ぇ覚めたみたいだな」

「君は誰だ? なにやら奇妙な者もいるようだが…」

 

目を覚ましたツェペリは、葉のことも覚えていない様子だ。どうやら、洗脳の解除は成功したらしい。

 

「オイラは麻倉葉、日本人でシャーマンだ。そこの仮面のおっちゃんは響鬼、そこの半裸の女の子は千矢っていうんだ」

 

ひとまず、葉は自分を含めたこの場での主要な人物の紹介に入る。そして、ツェペリに問いかけた。

 

「それよりおっちゃん、意識戻る前に何があったか、覚えてるか?」

「意識の戻る前……」

 

葉に促され、ツェペリは思案を始める。

 

「そうだ、思い出した! ジョジョと共に屍生人と戦っていたら、聖なる遺体なるものが現れてジョジョを導こうとした。でも突然消えてしまったから仕方なく戦いを再開して、新しい敵が現れたところで記憶が……なんとなく察しはついたな」

「ああ。おっちゃん、その新しい敵に操られてたんよ」

「それでね。みんなで協力して、おじさんを助けたんだよ。これのおかげで、正気に戻せたんだ」

 

状況を察したツェペリに、葉と千矢が答える。すると、ツェペリは千矢の見せてきた遺体に視線が行く。

 

「こ、これは聖なる遺体! そうか、嬢ちゃんが持ち主に選ばれたんだな」

 

ツェペリはジョナサンの前に現れた遺体の事もあり、すぐに状況を察した。

 

「で、先程から暴れているあの蜘蛛の化け物。奴が敵の手先と見て良いのかのう?」

「その通り。でもあの魔化魍ってのは、俺が修行してた音撃って技じゃないと倒せないんだよね。アンタの波紋でしか倒せない、吸血鬼みたいな感じの」

 

視線を見渡し、暴れている土蜘蛛について言及するツェペリ。響鬼が事情を話すと、少し思案する。

 

「よし。嬢ちゃん達に迷惑もかけた様だし、助けてくれた恩もある。このウィル・A・ツェペリ、喜んで協力しよう!」

 

そしてツェペリはフルネームを叫びながら、戦闘への協力を宣言するのだった。

 

「話は纏まったな。アンナ、もういいぞ! 式神を引っ込めてくれ!」

「遅いわよ! やっぱアンタ、来月はおやつ抜き!!」

 

アンナは憤慨するも、葉に言われたまま式神を引っ込めて離脱する。そして、代わりに響鬼達が総出で戦線に立つも、そこに千矢達が並び立って来た。

 

「千矢、無理しねぇでいいんだぞ。お前、こういうタイプの敵は慣れてねぇはずだろ?」

「うん! でも、私は友達が増えたこの世界が好きだから、それを無茶苦茶にしようとしている人達を止めたい。だから、手伝わせて!」

「……わかった。でも、無茶するなよ?」

 

代表者として千矢の言葉を聞いた葉は、その意志を汲んで共闘を許可する。彼にしては、珍しかった。

すると、それを見ていたツェペリが声をかけて来た。

 

「どれ、まず軽く戦闘指南と行こうか。戦いの思考その1」

『ギシャアアアアアアアア!』

 

そのツェペリの指南が始まろうとした瞬間、土蜘蛛が雄叫びを上げて襲ってくるが、全員がその場から跳躍して退避した。

そして、ツェペリが近くにいた千矢に先ほどの続きを話し出した。

 

「まず、『もし自分が敵なら』と相手の立場に身を置く思考。これで攻撃を予測し、立ち回るのじゃ」

 

そしてその説明を終え、再び土蜘蛛に視線を向ける。そしてその続きを話し始めた。

 

「この魔化魍とやらは、本能で動くケダモノじゃから今回は意味を成さん。しかし今後は明確な悪意を持って襲い来る敵とも、相対するじゃろう。そうなれば、きっとその思考は役に立つはずじゃ」

「そっか。悪い人達が次に何するかわかれば、なんとかできるってことだね!」

 

そしてツェペリは駆け出し、千矢も同時にに跳躍。2人で土蜘蛛へと突撃していく。

 

仙道波蹴(せんどうウェーブキック)!!」

「うりゃー!」

 

そしてツェペリの波紋を纏った膝蹴りと、千矢の剣による一撃が同時に決まった。

 

『ギシィイイイ!?』

土蜘蛛は前足に蹴りを受けた影響か、食らった箇所が痺れている様子だ。しかし千矢の一撃も含めて直接のダメージは無いようで、無理やりに動こうとしている。

 

「成る程。確かに、ワシ等では奴を倒せないようだ。だが、隙を作るには十分だろう」

「おっしゃ! このまま行くよ!」

 

そしてツェペリと千矢は2人で、もう一度土蜘蛛に突撃していく。

 

『ギシャアアアアアアアアア!』

「何!?」

「うわぁあ!?」

 

しかし土蜘蛛は雄たけびと同時に、その口から糸を吐き出してきた。突然のことに驚き、2人は攻撃を中断して回避に回る。

 

「おいおい、クモの糸って口から出てこないよな?」

「あれ、一応妖怪の類らしいからね。生身の生物の常識を当てはめたら、たぶん勝ち目はないわよ」

 

葉が土蜘蛛の攻撃に思わずツッコミを入れてしまうが、アンナがそれについて返す。しかし、その時にある単語を聞いて怯えてしまう人物が、一人いた。紺である。

 

「よ、妖怪って……やっぱり、土蜘蛛ってあの妖怪の土蜘蛛なの!?」

 

お化けの類が苦手な紺は、思わず恐怖のあまりに叫んでしまう。すると、そこにツェペリが駆けてきた。

 

「危ないぞ、嬢ちゃん!」

「きゃあ!?」

 

そのままツェペリは紺を抱えて跳び上がり、再び土蜘蛛が吐き出した糸を回避した。あのままだと、恐怖で慄いた隙に紺が捕まってしまっていただろう。

 

「嬢ちゃん、ひょっとして怖いのかね?」

「は、はい……昔から、お化けとかの類が苦手なもので……情けないですよね、こんな時に」

 

ツェペリの問いかけに対し、自嘲気味に告げる紺。しかし、そんな時にツェペリが再び口を開いた。

 

「嬢ちゃん、戦いの思考その2だ」

 

それは、次の戦闘指南であった。しかしその内容は、先程と違い一回聞いただけではわかりづらいものだった。

 

「ノミっているよな? ちっぽけな虫けらのノミじゃよ」

「え? はい、いますけど…」

「あの虫は我々、巨大で頭のいい人間に所かまわず戦いを挑んでくるが、これを勇気と呼べるかね? ノミどものは勇気とは呼べん。では勇気とは何かな?」

 

しかし紺はその問いかけに答えられなかった。しかしそのままツェペリは続けた。

 

「勇気とは怖さを知ることッ! 恐怖をわがものとすることじゃッ! 恐怖を支配することで、ワシらの波紋法は規則正しい呼吸となり、力を発揮するッ! 波紋法に限らず、戦士の力とはそういうものよッ!」

「人間賛歌は勇気の賛歌ッ! 人間のすばらしさは勇気のすばらしさ! この魔化魍とやらも本能のみで勇気も恐怖も知らん!! ノミと同類よォーッ!!」

 

そしてその叫びとともにツェペリは跳び上がり、波紋を足先に纏わせる。そして、そのまま空中で高速回転した。

 

波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)ーっ!!」

 

そして落下の勢いを生かし、波紋を纏ったドリル回転キックを放った。そしてその一撃は土蜘蛛の顔面に叩き込まれ、口の動きが痺れるという事態に陥った。糸攻撃を封じたのだ。

 

「おし、ちょっと離れてろ!」

 

直後に響鬼の声が聞こえたかと思いきや、腰に差していたあの棒に炎を灯しているのが見えた。そしてそれでツェペリも何をするか察したようで、跳びあがって回避した。紺も慌てて退避する。

 

「はぁあ!」

『ギィイイイイイイイイイイイ!?』

「ほう、これは凄まじいな」

 

棒を振るうと同時に、炎が土蜘蛛に飛んでいく。命中した土蜘蛛は、苦悶の叫びをあげていた。そしてその攻撃力に、ツェペリも感心する。

 

「そういうことだ。恐怖を捨てるのではなく、恐怖を乗り越える事こそが強くなることだ。今は怖くとも、やがて乗り越えられる。そう信じて立ち向かうことこそが、人間の強さだ。それを忘れてはならん」

「……はい!」

 

そしてツェペリは紺に呼びかける。そしてかけられた言葉に勇気付けられ、紺は力強く返事を返すのだった。

 

『ギシャアアアアアアアア!!』

 

しかし土蜘蛛はすぐに復活し、力任せに暴れ始める。しかし今度は紺も冷静で、ツェペリと供に咄嗟の回避を成功させた。

 

「それでは戦いの思考その3、これで最後じゃ。北国ノルウェーには『北風が勇者バイキングをつくった』という諺がある。今回は非常時なので結論から言おう」

「おう。そうしてくれたら、オイラも助かる」

 

そしてそこに葉達も合流し、最後の戦闘指南が行われた。

 

「厳しい北風が気骨あるしたたかなバイキングを生んだように、ピンチをチャンスに変えられる者こそが真の強者。どれだけ危機に陥ろうと、決して諦めるなッ! 先ほども言うたが、人間賛歌は勇気の賛歌じゃッ!!」

「まあ、確かに攻撃は激しくなったけど、ありゃ周りが見えてないな。上手くいきゃ、攻撃のチャンスを作れるかもよ」

 

そしてその指南に対して、響鬼からも同意を得られる。そしてその隙を作るために名乗り出たのが、葉である。

 

「よし、最後の押しはオイラがやってやるか。で、そこの魔女っぽいの、なんて言ったっけ? 千矢以外の名前、聞いてないからよ」

「あたし? 小梅よ、雪見小梅。もしくはミス・プラムよ」

 

そして同時に、まさかの小梅指名が入ることとなる。ちなみに、彼女が名乗りついでに推奨してきたミス・プラムとは、自分の名前が古臭いからという理由で西洋風に呼び直したものだとか。

 

「じゃあ小梅。オイラがとっておきの一撃で隙を作るから、魔法で援護してくれ。飛び道具ないと、ぶっちゃけ厳しいんよ」

「なるほど……いいわ、未来の大魔女に任せなさい!」

 

葉からの話を聞き、頼りにされていると感じた小梅は乗り気だった。すると何処からか、箒を取り出してそれにまたがって空を飛び始めたのだ。

 

「こういう時の為にコッソリ特訓した魔法、使ってやるわ!」

『ギシャアアアアアアアア!』

 

そして小梅は土蜘蛛に近づき、それに感づいた土蜘蛛が飛びかかってきた。

 

「おっと、危ない!」

 

しかしすぐに方向変換し、そのまま天高く上昇していく小梅。一方の土蜘蛛はそのまま崩れた家に激突、体勢を立て直そうとするも、先に小梅が動いた。

小梅は懐から、一冊の本を取り出してページを開く。

 

「エロイムエッサイム・吠えろグリモワール!」

 

そして呪文を唱えると、その開いたページから光線が放たれ、土蜘蛛の体を穿つ。土蜘蛛に直接のダメージはないが、光線の威力で押さえつけられ、動きは封じられる。

 

「おぅ、こりゃスゲェ。それじゃ、後はオイラに任せておけ!」

 

そして葉は土蜘蛛の懐まで飛び込み、先程のツェペリの洗脳を解くための戦闘で使った奥義を、再び使用した。

 

「阿弥陀流奥義・後光刃!」

『ギィイイイイイイイイイイイ!?』

 

そして再び放たれた後光刃は、土蜘蛛の巨体を吹き飛ばした。吹き飛んだ土蜘蛛は、そのままひっくり返って身動きが取れなくなってしまう。

 

「おし。トドメは任せておけ!」

「任せた!」

 

そして響鬼は飛び上がり、そのまま土蜘蛛の上に乗る。そしてベルトの巴紋の装飾部を取り外すと、それを土蜘蛛の体に付ける。すると驚くことに、付けられた装飾部は大きくなったのだ。

そして響鬼は、腰に差していた二振りの棒をまた抜き、それで奥義を放った。魔化魍を倒す為の、鬼の奥義を。

 

 

音撃打・火炎連打の型

ドン!

 

そして棒で装飾部を叩き、気持ちのいい音が響く。その様は、まるで太鼓を叩いているようだった。

 

「お、音撃?」

「つまり、楽器の演奏で、妖怪を倒すってこと?」

「らしいわよ。まあ、厳密に言えば倒すというより浄化らしいけど」

 

響鬼の技を聞き、思わず千矢と紺が疑問に感じる。すると、アンナが事前に聞いていた音撃についての簡単な説明を入れる。

 

「はぁあ!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

『ギシャアアアアアアアア!?』

「た、確かに効いているみたいね…」

「うむ。これは、彼の勝利が揺るがない状況となったな」

 

響鬼が太鼓を叩くにつれて、土蜘蛛は苦悶の声を上げている。明らかにダメージは通っているようで、臣とツェペリもそれを確認していた。

 

「はっ!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

その一心不乱に叩かれる

 

「てぇい!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

勇ましく力強い太鼓の音は

 

「ほっ!」

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

聞く者の心に響く何かがあった。

 

「はぁあああああああ!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

そしてその演奏は加速していき、土蜘蛛もそれに合わせてダメージが重なっていく。そして

 

 

 

 

 

「はぁあ!!」

ドドンッ!!

ドォオオオオオオオオオオン

そして最後の一撃が加わると、土蜘蛛の体が爆散した。これは誰がどう見ても、響鬼の勝利である。

 

 

「よっと!」

 

そして響鬼は爆風に乗って空中で一回転し、そのまま地面へと着地した。

すると響鬼の頭が光り始めたかと思いきや、顔だけが変身解除され、ヒビキの素顔が現れる。

 

「おっちゃん、やったな」

「ヒビキさん、スゴイ! カッコよかった!!」

「うむ。見事な力であったよ」

「まあ、鍛えてますからね」シュッ

 

葉、千矢、ツェペリが順にヒビキに賞賛の声をあげる。そして当のヒビキ自身も、お決まりのポーズを決めて答える。

 

「しかし、ヒビキさん本当に強かったわね」

「仕事で普段からやってるらしいし、相当なものでしょうね……月給いくらくらいかしら?」

「臣ちゃん、またお金の話してる」

「あんなのがよく出てくる世界って、どんだけ物騒なのよ…」

 

その一方、残りのチームなつみやの面々もヒビキの強さにいろいろ言っている。臣がやっぱりお金に話題を結び付けているのは、ご愛嬌だが。

 

「そんな……あのお方から賜った、人造魔化魍の試作品が……」

 

そんな中、マライアがいつの間にか目を覚まし、土蜘蛛の撃破にショックを受けている。彼女の発言から、財団Xの作った人造魔化魍は首領からの預かり品だったらしい。

 

「おのれ、小娘ども。おのれ、仮面ライダー……覚えていなさい! 次こそは、地獄に送ってやるわ!!」

 

そして呪詛を吐いてそのまま転移するマライア。どうやら撤退していったようだ。

 

「ふぅ……ひとまずは凌いだな」

「でも、これでもう本格的な戦いは避けられないわね。葉、もうめんどいからって逃げられないから、覚悟は決めなさい」

「おう、わかってるって」

 

起こりうる今後の戦いを予感し、言葉を交わし合う葉とアンナ。しかし、すでに覚悟は決まっているため、どんと来いという状況だ。

 

「それじゃ、戦いが終わってすぐで悪いけど、何処か腰を落ち着けられそうな場所はねぇかな? 俺の仲間達と落ち合いたいんだよな」

 

すると、それに続いてヒビキが持ちかけてきた話題。良太郎をはじめとした、渡の送り込んだ仲間との合流を急ぐ必要があると判断した結果だ。

 

「そうですね…私達がこの世界で住んでいる里があるんですけど、どうですか?」

「え、もう帰るの? あたし達、まだここの名物食べてないんだけど」

 

紺が集合場所に着いて提案すると、小梅が異議を申し立てて来る。しかし理由が、この非常時には不謹慎なものだった。

 

「いや、この様子じゃお店もやってないでしょ? いつの間にか、町の人もいなくなっているし」

「そうね。流石に、この状況じゃお客もいなくなって、商売どころじゃないし」

 

しかし紺と臣がダブルパンチでツッコミを入れてきたため、折れるしかなかった小梅であった。

結果、一行はそのまま里へ帰還することとなった。

 

〜移動中〜

「速い速い速い速い! 速すぎます、無理です!」

「贅沢言わない。他に移動の足も無いんだから」

(箒で飛ぶ魔法がこの世界にあって、助かったわ……)

「zzz…」

「臣ちゃん、この状況で寝落ちしてる…あ、このまま道なりにまっすぐです」

 

再び召喚された前鬼・後鬼に乗せられて、半狂乱状態の紺達チームなつみや。小梅は箒での飛行が出来、かつ自分1人を乗せるので精一杯だったため、その横で飛んでいる。

ちなみに、ノノが唯一冷静だったこともあり、そのまま道案内をしていた。

一方、1人だけ千矢が見当たらなかったが……

 

「ほう、嬢ちゃん千矢というたか? 中々の身体能力だ。波紋法を教えたら、いい戦士になりそうじゃよ」

「ありがとう。でも、私はもう、うららになるって決めちゃったから」

 

ツェペリと2人で、その後ろについて走っていた。野生育ちゆえか、ツェペリに身体能力で張り合えていたのだ。

 

「おっちゃん、バイクなんて乗れたんだな。オイラ、なんとなく機械オンチだと思ってたんだけど」

「いや、全然そんなことないぜ。参ったな、ははは」

(なんか、焦ってねぇか?)

 

そしてその横で、スピードを調整してアメリカンな大型バイクで並走するヒビキの姿があった。ちなみにヒビキは、後ろに乗せている葉に言及されているように、実は機械オンチだったりする。バイクも結構な量の特訓で、ようやく乗れたものだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ヒビキ達が里に向かうのと同時刻、オーバーヘブンショッカーの拠点にて。

 

「おいおい。あのマライアとかいう女、思いっきり失敗してたじゃねえか。もうこれは処刑確定だな。うん…そうだよなぁ! そうに違いねぇな!!」

「やめろ、あれでもまだ使い道はある。私がいいと思うまでは、手を出すな」

 

影になって顔の見えない、オーバーヘブンショッカー首領。彼と対談する、1人の異様な容姿の男がいた。

男は浅黒い肌で、長い白髪を何故かツインテールに纏めている。そして、はだけたジャケットから見える腹部には、九字紋と呼ばれる格子状の模様が刻まれていた。

そしてその男は、首領に自分の意見を反対されて不満な様子だ。

 

「おいおい、首領さんよ。アンタは俺達ケガレが呪力、つまり人間が俺達に向ける負の感情から来る呪いの力を取り込んで強くなるのは知ってるはずだろ? あの女が見限られたショックと、死への恐怖は俺をもっと強くすると思うんだがなぁ」

聖丸(ひじりまる)、お前はンドゥールの最期を見ていなかったのか? マライアは奴ほどではないが、私への強い忠誠心を持っている。処刑しても、お前が欲しいだけの呪力は出さないだろう」

 

首領に名を呼ばれたその男、聖丸はどうやら人間ではないらしい。自ら口にした”ケガレ”という言葉が、種族名と思われる。

 

「どうだか? ああいう野郎の方が稀だ、数百年と人間を見ていればわかる。あいつらは自分可愛さに家族や恋人を見捨てる、そういう奴らだ。そうやって仲間に見限られた人間や陰陽師をぶっ殺して、俺は力を蓄えたからな」

「聖丸。重要なのはそのような者を、どうやって絶対の服従者にするかだ。ヴァニラ・アイスやンドゥールのような者こそ、稀有な存在だからな」

「なるほど、違いねぇ」

 

聖丸の言葉に、自分の考えを押し付ける首領。そこに納得したようで、同意の声を上げる聖丸。しかし、同時にある疑問をぶつけることとなった。

 

「なら、今更だがなんで俺達をお前の能力で服従させなかったんだ? 闇無(くらなし)の龍黒点計画に乗らなかった、支配されるのを拒む俺をその能力で操ることもできただろう」

「まあ平たく言えば、お前のその野心も利用価値がある、とだけ言っておこうか。お前や死郎をはじめとした、強い感情とその爆発は強大な力となる。それは身を以て体験したからな」

「へぇ〜。一応、褒め言葉として受け取っておくか」

 

疑問に対しての首領の返答を聞き、満足げな様子の聖丸。納得はしたようだ。

しかし直後、プッチに連れられて部屋に入って来る人物がいた。それは、クリーム色の髪から蔦が伸びた少女と、鉄の鎧から落書きのような顔が覗く異形、という明らかに人外の二人組であった。

 

「さて。彼がオーバーヘブンショッカーの首領だ、御目通り願おう」

「貴方が首領ね。貴方に忠誠を違えば、これから行く世界で好きなだけぶっ殺してもいいって聞いたけど本当?」

 

プッチに連れられ、最初に口を開いたのは少女の方だ。しかし開口一番に、物騒な発言をしているあたり、かなり危険な存在だ。

 

「ああ、そうとも。それにお前がその気なら、隙をついてこの私を殺しに来ても構わんぞ。もっとも、私の能力がそう易々とはさせんがな」

「あはっ♡ それ最高!!」

火火(カカ)ッ! 俺を力を持ったまま復活させて、俺の(ユメ)を燃やしてくれる場所まで提供してくれるたぁ、ありがてぇ! しかも謀反上等とは、太っ腹だ!」

「噂に違わぬ狂気だな、これは心強い」

 

首領の発言を聞き、少女も鎧も歓喜の声を上げる。しかも首領は、そんな2人の狂気染みた人格を許容している。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! なるほど、その胆力と絶対的な力がそうさせるのか。うん…そうだな! そうに違いねぇな!!」

 

するとその様を見ていた聖丸が高笑いをあげ、連れられてきた2人組の方に寄って行き、声をかける。

 

「俺は聖丸、お前ら同様に謀反上等でここに協力している者だ。それとお前らのことは首領から聞いているし、聖書とやらにも記載があったから知っているぜ。まあ取り敢えずよろしく頼むぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルクレスにミストルティンさんよ」

 

エトワリアの聖典で唯一、明確な敵意との戦いが記述された世界がある。聖丸に名を呼ばれたこの2人は、その世界から連れてこられた敵意の持ち主達であった。

 

灯台(ファロス)エルクレスと樹海(フォレスト)ミストルティン

ついにオーバーヘブンショッカーは、聖典世界の悪意をもエトワリアに持ち込んでしまう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして、4つ目の遺体に選ばれたクリエメイトが、仮面ライダーと異界の戦士に出会うこととなる。しかもクリエメイトは、エルクレス達が元居た世界の住人だ。

 

「サナ、こんなもんでいいかしら?」

「うん。大丈夫だと思うよ、メリー」

 

「ここが異世界か……風都から離れてこんな場所に来ちまうとは」

「だが、世界全体の危機は風都にも危機を及ぼす。なら、僕達が動かない道理はないよ」

 

「あれ? 紅緒、なんかこの禍野、おかしくないか?」

「うん…というか…ここは禍野…じゃない?」

 

しかし、今度は想定外の人物までがこの会合に立ち会うこととなる。

 

「なんなんだここ? 新しい夢魔の幻界(ユメ)?」




今回は先に言っちゃいます。ジャンプ側の参戦は双星の陰陽師で、アニメ最終回後です。理由としては、ろくろと紅緒がちゃんと揃っている&原作最新話での技を使いたい&一番好きな婆娑羅の聖丸がアニオリに出なかったのが無念、の3つが理由となっています。

ちなみに、双星はうららを組ませる候補の1つでした。変更の理由は次回のあとがきで説明予定なので、少々お待ちください。ラストに出てたライダーが関係しています。


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第14話「接触のN・前/夢魔と地球の記憶」

新元号の発表からは十日以上経過してしまいました……
引越しとかあってバタバタしてたんですよね。投稿遅れて失礼しました。

クロとGAのイベントでも、里にいるクリエメイトが8章で語られた"魂の写し身"って適用されているの明言されました。じゃあ、実装前のショートアニメで珠ちゃんがいつでも元の世界に帰れるって言ったの、何だったんだろう……?
独自設定は盛ってますが、ちゃんと違和感のないように努力したいと思います。

前回の後半とあとがきでジャンプ側は双星の陰陽師と明言しましたが、ライダーときららは何が来るか?
お楽しみに。


〜エトワリアのとある漁港〜

「コルク、これでいいのかしら?」

「うん、それで全部。メリーが来てくれて、助かった」

 

騎士のような格好をした、紫の髪にエルフ耳の少女が、ゴーグル付きの帽子を被ったクールな少女に話しかけている。しかしその少女は、人間の膂力では持てなさそうな大きさの木箱を、担いで来たのだ。

 

彼女はクリエメイトの一人でメリー・ナイトメアというのだが、なんとクリエメイトでは数少ない人外の存在なのだ。

メリーは夢魔と呼ばれる異種族で、元は夢魔達の住む幻界(ゆめ)と呼ばれる異界と、人間の住む現界(うつつ)の境界を守る門番だった。ある日を境に記憶を無くし、現界を彷徨っている最中で出会った仲間達のところに厄介になっていたのだが、そこを召喚されてきたのだった。

 

そして現在、メリーは他のクリエメイトと共に、このクールな少女コルクの手伝いに来ていた。コルクは里を拠点に活動する商人で、ポルカの幼馴染だ。そのコルクがこの漁港で今の時期が旬の魚を買い付けに向かい、メリーはその手伝いと護衛に同行していたというわけだ。

 

「この時期、ここで漁れる魚は絶品。各地の料理人達も、重宝している」

「なら、戻ったら早速ライネに料理して貰うわ。報酬から魚のお金の分、引いといて」

「了解。私達が戻るのと同じくらいに、里に帰っているはず。ちょうどいいタイミングだと思う」

 

メリーは好物がドーナツだが、基本食べるは好きなので、今からこの魚を使った食事が楽しみなようだ。

 

「戻ったよう」

「こっちも、ひとまずは終わったぞ」

「やすなもソーニャも、手伝い助かった。ありがとう」

 

そこに現れた、茶髪で他のクリエメイト達よりも頭身の低い少女"折部やすな"と、同じく低頭身の金髪ツインテール"ソーニャ"。二人は元々、メリーとも違う世界から召喚されてきたクリエメイトであったが、メリーと同じ世界から召喚されてきたのがあと1人しかいなかったため、同じく人数の少ないチームでかつ手の空いていたクリエメイトに手伝いを頼んだというわけだ。

 

「メリーもソーニャも、戦い慣れしていたから助かった。道中も魔物の襲撃に、楽に対応できた」

「私としては、コルクが戦い慣れている方が驚きだがな」

「旅商人として、自衛は当たり前。でもソーニャは戦闘が本職。私よりはずっと強い」

「まあ、ソーニャちゃんはプロの殺し…んぐぅ!?」

「バカ! 往来で堂々というやつがあるか!?」

 

ソーニャはコルクとの会話中、割って入ってきたやすなの言葉を途中で止めて怒鳴りつける。

実はソーニャは女子高生と、とある裏組織に属する殺し屋を兼業しているのだ。やすなはそれを知りつつ、彼女にちょっかいを出して打倒を目論んでいる。しかしいつも返り討ちに合っているという、変な日常を送っているのだ。

ちなみに、ソーニャと同じ組織に属する忍者の"呉織(ごしき)あぎり"というクリエメイトもいるのだが、今回は任務で元の世界に帰っている。

 

そんな中、近場の人々が二人の騒ぎを聞いて視線を向けてしまう。殺しというワードが出てしまったこともあり、非常にマズイ。

 

「騒ぎになる前に退散するのが吉。勇魚と合流したい」

「それもそうね……って、サナいないけど、何処に…」

 

そんな中、メリーと同じ世界から召喚されたサナこと橘勇魚(たちばないさな)がまだ戻らないことに気づいた。そして辺りを見回してみると……

 

「サナ!?」

「夢路!?」

「え? 子の声…」

 

不意に勇魚の声と、勇魚を呼ぶ男の声が聞こえた。しかし、メリーはこの声に聞き覚えがあるらしく、声のした方に走っていく。

 

「お、おい! メリー、どうした!?」

 

それにソーニャが慌てて後を追うのだが、メリーは気にも止めずに走り続ける。

そしてその先に、薄紫の髪をツインテールに結った少女"勇魚"と対面する一人の少年がいた。茶髪のアホ毛と、Tシャツとジーパンという現代ファッションで、かなり浮いている。

 

「え? マジで、夢路なの?」

「メリー……か? ていうか、サナといい、その格好なんだ? コスプレ??」

 

この少年の名は、藤原夢路(ふじわらゆめじ)。勇魚の幼馴染で、数少ない男の聖典の主要人物である。

しかし、クリエメイトに認定されていないのか、召喚されていない人物だったのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「異世界エトワリアに、俺たちの世界の出来事が本になっている、ねぇ……」

 

その後、コルク行きつけのカフェで一度腰を落ち着けながら、夢路に事情を説明する。

 

「まあ、白昼夢(デイドリーム)に巻き込まれたのとは、何となく違う気がするけど…」

「とりあえず、信じてくれたようね」

 

ひとまず、夢路自身も納得しているようなので、メリーも案配する。

しかし問題は、”なぜ召喚された覚えの無い夢路がエトワリアにいるか”という点である。しかもこの世界基準の衣装や戦う力も、身についていない状態で。それがそもそもの謎だ。

 

「確か、きららが話していたアルシーヴっていうのが、同意なしの無理やり召喚をする手段を持っているらしいが…」

「もしそうなら、そのオーダーって魔法の影響が出てるはずなんだよね?」

「それに、数か月前からアルシーヴも動きがない。七賢者も、正規の公務で動いている情報しか無い」

 

さらっとコルクから重要なワードが飛び出すも、それを踏まえても夢路が今ここにいる理由がはっきりとしない。

そんな中で次に口を開いたのは、やすなだった。

 

「まあここに留まるのもアレだしさ、里に戻ってみようよ。クレアちゃんとかの方が、そういうの詳しいかもだし」

「「「「「………」」」」」

 

それを聞いた瞬間、一同は静まり返った。

 

「あれ? どうしたの?」

「いや…お前が理に適ったこと言うなんて、嵐でも来るのかと」

「ソーニャに同感」

「アタシも同感」

「ゴメン、私も…」

「初対面だけど、俺も…」

「みんな、ひどい!!」

 

実際、やすなはバカという認識で友人間でも里でも、共通だった。夢路も第一印象で、そう判断してしまうレベルだ。

 

「でも、賢明な判断。もともと、仕事が終わって里に戻る手はずだったから、ここで行こうと思う」

「じゃあ、しばらくお世話になろうかな」

 

結果、コルクも推して来たこともあり、夢路も里入りすることとなる。そして荷馬車を止めている場所に向かう矢先…

 

「ん?」

「夢路、どうしたの?」

「いや、あの人が気になってさ…」

 

夢路の視線に現れたのは一人の女性だった。

紫の髪にゴスロリファッションをしており、デコレーションしたコンパクトから何かを出して、食べながら歩いている。非っっ常に目立つ人物だ。

すると、女性がこちらに気づいて歩み寄ってきた。

 

「えっと……なんか、用ですか?」

 

ひとまず夢路は問いかける。すると…

 

「食べるぅ?」

 

そう言って、先ほどのコンパクトを開けて中身を見せてきた。しかし中身は、あまり食欲をそそらない代物だった。

 

「い、イナゴの佃煮?」

 

そう。ラメラメのデコデコなコンパクトに似合わない、イナゴの佃煮がギッシリと詰まっていた。

 

「あ、いや…結構です」

「あたしも、いい。そういう手のヤツ、苦手なんだ」

「そう。美味しいのに……」

 

夢路とソーニャに同時に断られ、落胆した様子の女。しかし……

 

 

 

 

 

 

「ふっ!」

「え!?」

 

なんと女は、いきなり2人に蹴りを入れてきた。あまりの自体に驚くも、咄嗟に二人はバラバラの方向に、飛び退いて回避する。

 

「はぁああ!」

「うおっ!?」

 

すると女は、真っ先にソーニャの方に駆け寄り、再び蹴りを放つ。

 

「こいつ、まさか刺客か!」

 

ソーニャは剣を手にしながら、思わず叫ぶ。彼女は組織内でも腕が立つのか、よく敵対組織からの刺客に狙われていた。かつてエトワリアにも一度、刺客が召喚に巻き込まれて襲ってきたことがあったので、今回もその類と推測したのだ。

 

「はっ!」

 

女はスカート姿でも遠慮なく、蹴り主体の格闘戦でソーニャに挑んできた。しかもその蹴りは鋭く、風圧だけでソーニャの頬から出血するレベルだ。

 

「てめぇ!」

 

街頭でもお構いなしに襲い来るという、いつもの刺客とあからさまに違う様子に困惑するソーニャ。しかし負けじと剣を振るうと、女はその剣に向けて蹴りを放つ。ちょうど踵が刀身に触れたその時、それは起こった。

 

「グワァア!?」

「ソーニャちゃん!?」

 

いきなり剣と女の踵が光り出したかと思いきや、ソーニャが苦悶の声を上げて剣を落とす。

突然の事態にやすなが駆け寄ると、女も距離をとる。

 

「ソーニャちゃん、どうしたの?」

「あの女、靴にスタンガン仕込んでやがる」

 

ソーニャが指摘するので女に視線を向けると、踵から発せられた光は、まさに稲光のそれであった。

一方の女は、再びイナゴの佃煮を取り出し、ほくそ笑みながら堪能しだした。

 

「さすがはイナゴ先生。ソーニャと正面からやり合えるとは」

「な!? こいつら…」

 

突然、男の声と拍手の音が聞こえたのでソーニャが視線を向ける。するとそこには、かつてソーニャを襲った敵組織の刺客達の姿があった。

初めて見るモブっぽい刺客2人に、かつて対峙したナイフ使いに人形使いにデスコタツ、そして召喚に巻き込まれたヘル・ドーナッツ。何故か揃って、このエトワリアにいたのだ。

 

「お前ら、まさかまた召喚に巻き込まれたとか…」

「残念だが違う。オレ達は今回、協力者のおかげでこの異世界に乗り込めたのさ。様々な異世界を渡り歩く超巨大な組織の協力さ」

「そうとも。その組織オーバーヘブンショッカーと、出資している財団Xの技術の結晶ってわけよ」

 

ヘル・ドーナッツが話した直後、聞き覚えの無い男の声が響く。そして現れたそいつは、カウボーイのような格好のナイスガイという、妙に時代錯誤した男であった。

 

「俺の名はホル・ホース。お前達クリエメイトの首を、取ってこいと命令された賞金稼ぎさ」

「賞金稼ぎ……私らが狙いか!?」

 

ホル・ホース。承太郎のDIO打倒の旅で送り込まれたスタンド使いの一人だ。そんなこと知らない一同だが、今の一行は彼らが敵という事実、これだけで状況把握には十分だ。

 

「まず最初に言っておくが、俺は美人も不細工も関係なく、女性という存在のすべてを尊敬している。だから、クリエメイトが女ばかりって話を聞いて、あまり気乗りしなかったんだな」

 

突然のホル・ホースの宣言に、困惑の色が隠せない一同。しかし、彼にとっての本題はここからだった。

 

「そんな中に、その仲間っぽいそこのボーズがいた。というわけで、俺はお前を相手させてもらうぜ」

「……え、俺!?」

 

まさかの夢路への宣言、これは予想外だった。そして直後…

 

「エンペラー!」

メギャンッ

「うぐっ!?」

 

独特の音と同時にホル・ホースの手に突然、拳銃が出現。すかさず発砲すると、夢路の腕をかすって出血した。あまりの事態に、先ほどから野次馬根性で見ていた町の人々も、悲鳴を上げる。

 

「この銃はスタンド、俺の世界に存在する特殊能力だ。本当は同じスタンドを持つ人間にしか見えねぇんだが、この世界じゃ誰にでも見えるらしい」

「もともと、特殊能力持ち…だと?」

「夢路!?」

「おら! おめぇらは俺たちが相手だ!!」

 

勇魚が心配して夢路に駆け寄ろうとした時、モブっぽい刺客が襲ってきた。

 

「夢魔じゃないけど、ここから先は通行止めよ!」

「うおっと!?」

 

しかしメリーが割り込み、箒を模した形状のハンマーを振りかざす。襲ってきた刺客は、そのハンマーを咄嗟に蹴りを入れて衝撃を殺し、一気に距離をとった。

 

「へぇ、すっげぇパワー。クリエメイト唯一の人外ってだけはあるらしいな……仕方ねぇ、切り札使うか」

 

そしてそのモブっぽい刺客の言葉と同時に、懐からあるものを取り出して構えを取る。

 

「何だあれ? USBメモリか?」

「まさか、揃って電子機器使いとかいうわけわからん殺し屋に転向したのか?」

「でも、気味悪い見た目してるわね…」

 

取り出されたそれは、某チョコバー並みの大きなUSBメモリだ。ソーニャがまたわけのわからない道具を使う殺し屋に転向したのかと、しかしそれは、肋骨が巻き付いたような形状で、メリーの指摘通り不気味だった。

そして刺客一同は、メモリについていたスイッチを押し始める。

 

『アームズ!』

『アイスエイジ!』

『スイーツ!』

『パペティアー!』

『バイオレンス!』

『ゾーン!』

 

押した瞬間、低い男の音声でメモリから英単語が発せられる。そして刺客達は徐に衣服をめくり、首や手のひら、脇腹を露出する。そしてそこに刻まれたタトゥーに、何とメモリを差し込んだのだ。

 

すると刺客達は一人残らず、異形の怪物と化したのだ。

ナイフ使いが赤いボディに折れた剣を担いだ怪物、ヘル・ドーナッツが極彩色のエイリアン染みた怪物、人形使いが顔だけが異形化した白スーツの怪物、デスコタツはピラミッド状の体の一つ目お化け、へと変じた。

そしてモブっぽい刺客二人もそれぞれ、冷気を纏う白い体の怪物、右腕が鉄球になった筋肉お化けへと化したのだ。

そのどれもが、明らかに常軌を逸した怪物。町の人々もホル・ホースの銃撃時よりも大きな悲鳴を上げ、逃げ惑うこととなる

 

「な、なんだこいつら!?」

「人間が魔物に、化けた?」

 

資格たちのあまりの変貌に、ソーニャも驚愕する。コルクは現れたその偉業たちを、思わず魔物と呼んでしまう。しかし、それは魔物よりも質の悪い存在だった。

 

「どうだ、ソーニャ? これがお前を葬り去るための切り札・ガイアメモリの力だ」

「そしてその力で変じたこの姿が、ドーパントだぜ」

 

かつて、財団Xが出資していた巨大組織ミュージアムが製造販売していた、人間の悪意の象徴。ミュージアムが壊滅したことで一度は製造が止まり、財団Xも産業から撤退した。しかし一部勢力が極秘に開発ノウハウを吸収し、ついに量産へとこぎつけたのだ。

 

「ドーパント……ガイアメモリに込められた地球の記憶で、己をドーピングした超人」

 

するとイナゴの女がドーパントという単語について説明していると、なんと彼女もガイアメモリを取り出したのだ。

 

「あなた達全員、そのガイアメモリの力で食べてあげる」

『ホッパー!』

 

そしてイナゴの女も自身の太ももに刻まれた刻印に、ガイアメモリを差し込んだ。そして変じたのは、赤紫色の体色をしたイナゴの化け物だ。

 

「イナゴ喰う奴がイナゴの怪物になるのかよ…」

「うん。悪趣味だと思う」

 

ソーニャは再び剣を手に取り、コルクも危険と判断して二振りの短剣を抜き取る。揃って、臨戦態勢に入った。そして戦闘に入ろうとするも…

 

「喰らえ!」

ブォオオオオオオオオオオオオオオオン!

「「うわぁあ!?」」

「きゃあ!?」

「な、何この音……?」

 

人形使いが変身したパペティアー・ドーパント。そいつが巨大なクラリネットを取り出し、演奏するととんでもない騒音が響く。

あまりの音量に皆が耳を塞いでいると、パペティアーが指先から糸を伸ばす。そして、それがやすなに絡みついた。

 

「な、やすな!?」

「……」

 

直後、やすなの顔から感情が消えた。目も虚ろになっており、不気味な印象をソーニャに与える。しかし直後、それは起こった。

 

「……」

「な!?」

 

なんと無言のまま、やすながソーニャに槍を振るってきた。

 

「パペティアーは人形使いの記憶を宿したメモリ。俺の指先から伸びた糸は、捉えた相手を俺の意のままに操れる人形へと変える力があるのさ」

「おいおい。まさか、これでやすなを盾にするつもりか?」

 

パペティアーが能力を説明すると、ソーニャがやすなを狙った理由を口に出す。しかし、直後にドロップキックをやすなに叩き込んだ。

 

「私はこいつを、いつも遠慮なく叩きのめしている。盾にする相手を間違えたな」

 

吹っ飛ばされて倒れるやすなを見ながら、堂々と宣言するソーニャ。実際、いつもやすな自身がソーニャの打倒を狙っていた。しかし、直後にパペティアーが口を開くが…

 

「……お前、何か勘違いしてないか?」

「な!?」

 

しかし直後、やすなを操りながらパペティアーが、再びソーニャを攻撃してくる。

 

「お前らの関係なんて、招致済みだ。俺は折部やすなの不死身ボディで、お前を叩きのめすのさ」

「まじか…」

 

話しながらもやすなが槍を振り上げ、ソーニャに再び襲い掛かってきた。

 

「くそ……あ、お前倒したら、そのままソーニャも開放されねえか?」

「あ、やべ…」

 

直後、ソーニャが弱点に気づいてパペティアーを襲う。しかし、それをそうやすやすとはさせない敵たちだ。

 

「それじゃあ、いただきまーす」

「なに!?」

 

今度はイナゴの女が変じた、ホッパー・ドーパントが飛び蹴りを放ってきた。変身前と変わらず、蹴り主体の戦闘を取っているようだ。

 

「はぁあ!」

「なっ!?」

 

回避するとそのまま回し蹴りを放つホッパー。防御しようと剣を構えると、なんとその剣が折れてしまった。凄まじい威力の蹴りである。

 

「イナゴ先生。それじゃあ、やっちゃいましょうか」

「うふふ。そうね、クライアントからも協力しろって命令だったし」

「くそ……最悪だ」

 

そしてパペティアーとホッパーは、同時にソーニャへと襲い来るのだ。

 

~その頃、コルクは~

 

「むははははははっ! アームズは武器の記憶のドーパント、両腕を自在に換装出来るのさ!」

 

ナイフ使いが変じたアームズ・ドーパントが右腕をマシンガンに変化させて乱射してくる。コルクは疾走しながらそれを避け、懐で短剣を切りつける。

しかし……

 

「か、硬い…」

「ドーパントは人間の肉体を超越した存在だ。そんなちゃちなナイフが、効くかっての!」

 

そして左腕をアーミーナイフに変えて切り付けてきた。コルクは咄嗟に飛びのいて回避、腰に差していた薬瓶を投げつける。

 

「おっと!」

 

しかしアームズは背負っていた剣を手にして、それで防いでしまう。バカではあるが、本職の殺し屋であるため純粋な身体能力や動体視力は、高い水準に達してるのだ。

 

「すかさず、ドカーン!」

「くっ!?」

 

そこに、名もなき刺客の変身したバイオレンス・ドーパントが右腕の巨大鉄球を叩きつけてくる。これも避けることができたが、すさまじい破壊力によって石畳は広範囲にわたって破壊された。

 

 

「俺のバイオレンスは暴力、そんな抽象的な記憶を有している。でも、シンプルな破壊と闘争特化の力だぜ!」

「興味深い……でも、かなり恐ろしい」

 

コルクは旅商人としての高い好奇心を刺激されるも、これだけの力を人間に与えるガイアメモリの力に、戦慄することとなる。

 

~その頃のメリー~

 

「おりゃあ!」

 

メリーは得物をヘル・ドーナッツが変じた、スイーツ・ドーパントにハンマーを叩きつける。が、しかし…

 

「な、なにこれ!?」

 

スイーツ・ドーパントは、体を白いペースト状の何かに変化させた。それが、なんとハンマーの衝撃を吸収してしまうのだ。

 

「スイーツは甘味のドーパント、体をクリーム化して衝撃吸収が可能だ。ドーナツ使いの俺に甘味とは、運命感じたね」

「あんた、現世の至宝のドーナツを殺しの道具に使うなんて、正直腹立つんだけど!!」

 

メリーは自身の好物を得物に使うヘル・ドーナッツに憤慨、わざわざ彼に戦いを挑んだのだ。しかし武器の特性上、スイーツ・ドーパントになったヘル・ドーナッツは相性最悪なようだ。

 

「しゃっはー!」

「冷たっ!?」

 

直後、もう一人のモブっぽい刺客の変じたアイスエイジ・ドーパントが高速接近、メリーに冷気を当てていく。あまりの冷たさに、思わず距離を取って体勢を立て直すのだった。

 

「アイスエイジは氷河期のドーパントだから、とにかく氷の力が強い! どうだ、怖気付いたか!」

「ったく、ユメもキボーもありゃしないわ」

 

アイスエイジの強力な冷気に、メリーはネガティブな時の口癖をつい言ってしまう。それだけ、敵の戦闘力が脅威というわけだ。

 

「おい、新人。俺まで巻き添え食らっちまったじゃねえか」

「す、すいません…」

「ま、今は気分がいいから許してやる。ほれ、これ頼むぜ」

「了解でさ!」

 

そして掛け合いの後、スイーツがクリーム化した片腕を成形して、アイスエイジが固める。それにより、片腕は硬く鋭いブレードへと早変わりだ。

 

「クリエメイトの首一つで、1億だ。財団様様ってとこだな!」

「よっしゃ、狩りの時間だぜ!」

 

そしてアイスエイジが地面を凍らせ、スイーツとともに高速で滑ってメリーへと迫っていく。

 

〜その頃、夢路と勇魚〜

 

「8×3」

「そらよ!」

「くっ!?」

「4×7」

 

ホル・ホースは、デスコタツの変身したゾーン・ドーパントがつぶやくと同時に、周囲の地面に浮かび上がった9×9のマス目の上を転移。そして夢路に発砲すると、さらに転移を繰り返して翻弄していく。

 

「夢路、大丈夫!?」

「ああ、なんとか……でも、これが長続きすると厳しいな」

 

傷の方は勇魚が治癒魔法で治してくれるが、ホル・ホースとゾーン・ドーパントのコンビネーション攻撃から逃れる術が見つからなかった。

 

「俺のエンペラーは弾道を変えられる銃ってだけの能力で、スタンド使い同士のタイマンには向かねぇんだな。故に、俺は誰かと組んで初めて強くなるってわけよ」

「そして俺のゾーンメモリは、9×9のマス目のフィールド内にある物や人を、自在に転移させられる。だが攻撃能力に乏しいんで、同様にホル・ホースの能力を借りてんのさ」

 

ホル・ホースもゾーンも、互いの能力のデメリットを嬉々として話しながら、強力なコンビネーションで襲い来る。かなり手強い。

 

「くそ、武装明晰夢(ルシッドガジェット)が使えりゃ、まだ戦えたのに…」

「夢路、無理しないで。なんとか隙をついて逃げないと…」

 

夢路は夢魔との戦いの中で編み出した技があるも、各夢魔の領域に入り込まないとその力を使えないので、今回は戦うことすらままならない状態だ。

そんな中

 

「おらよ!」

「う!?」

 

なんと、メリーの武器がスイーツの攻撃に弾き飛ばされる光景が、夢路の目に映った。凍った地面を滑る速さは、メリーの目では追いつけなかったようだ。

 

「そら、凍えろ!」

「うわぁ!?」

 

さらにアイスエイジが地面に冷気を放ち、それでメリーの動きを封じてしまう。凍えて身動きが取れなくなったメリーに、スイーツが近寄って来たのだが…

 

「さて、じゃあとりあえず…いただきまーす!

「え?」

 

なんと、スイーツ・ドーパントは大口を開けてメリーに迫りながらそう言った。明らかに、彼女を食おうとしているのだ。

メリー・ナイトメア、絶体絶命。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、巨大な装甲車が現れた。

 

「ぶべら!?」

「へ?」

 

なんとそれがスイーツ・ドーパントを跳ね飛ばしたのである。突然の事態にメリーも困惑、周囲のドーパント達もホル・ホースも攻撃の手を止めてしまう。

 

「ふぅ……異世界に来て早々に、ドーパントと会うとはな」

「ということは、彼女達が話に聞いたクリエメイトだね。早速会えたのは、幸運だ」

 

そしてその中から二人の男が現れる。

ソフト帽の似合うクールそうな外見だが、どこか締まらない雰囲気の美男子。

ロングパーカーに髪を文具のクリップで留めた、だらしない服装の若者。

奇妙な二人組であった。

 

「あ、あんたら何者だ?」

「俺は左翔太郎(ひだりしょうたろう)、こっちは相棒のフィリップ。お前らを助けに来た、安心しろ」

 

翔太郎は警戒しながら問いかける夢路に、安心させるように言う。そんな中、ドーパント達は二人に対して警戒を強める。

 

「てめぇ、ドーパントのことを知ってて、そんなごついマシン持ってるってことは……」

「向こうの世界の、同じ裏の人間か?」

「いや、ICPOとかFBIみたいな連中の可能性もあるぞ」

 

しかし、そんなドーパント達の言葉を否定しながら、2人は告げる。

 

「生憎、俺達はそんな大層なもんじゃねえ」

「そうとも。ぼく達は、2人で1人の探偵さ」

「ガイアメモリの生まれた街、風都の涙を拭う二色のハンカチ、それが俺達さ」

 

フィリップのその名乗りに対し、格好をつけながら付け足す翔太郎。

 

「あははははははは! 何言ってんだ、このキザ男は!」

「探偵如きがドーパント、それもプロの殺し屋の俺達が変身した奴らに勝てるわけが……」

 

ドーパント達は2人の物言いに爆笑するも、ホル・ホースはあることを思い出して警戒心を強める。

 

(2人で1人……このフレーズになんか警戒対象がいたんじゃ……そうだ、思い出した!)

「お前ら、その2人を優先して殺せ! そいつらは……」

 

しかしホル・ホースの呼びかけが遅く、翔太郎とフィリップはいつのまにかお揃いの赤いベルトを腹部につけている。

そして懐からある物を取り出し、スイッチを押した。

 

『サイクロン!』

『ジョーカー!』

 

フィリップは緑でCと書かれ、翔太郎は黒でJと書かれたガイアメモリを持っていたのだ。そして2人は肩を合わせて、メモリを持った手でアルファベットのWを思わせる形を作る。

 

「「変身」」

 

そしてフィリップがメモリをベルトの右側に差し込むと、その場で意識を失い、メモリは翔太郎のベルトに転送された。そして翔太郎も左側に自身のメモリを差し込み、左右の差込口を展開してこちらもWを彷彿をさせる形となった。

 

『サイクロン! ジョーカー!』

 

そしてメモリの名称を電子音声が繋げて復唱すると、翔太郎の姿が変わった。

体が左右で綺麗に色が分かれ、右半身が緑、左半身が黒いボディをしている。そして赤い複眼に風になびくマフラー、これまたWの形をした角、まさに仮面ライダーだと主張する容姿をしていたのだ。

そして変身が完了すると合わせて、彼らの体を中心に竜巻が起こる。

 

「え? その姿、ブラックリストの!?」

「遅かった……」

 

彼らこそ、風都の守護者である2人の仮面ライダー……否! "2人で1人の仮面ライダー"! その名を…

 

「仮面ライダーW(ダブル)

 

そして名乗ったWは左手でドーパント達を指差し、言い放つ。彼らの街、風都を泣かせる悪党達に永遠に投げかけ続けるあの言葉を。

 

 

 

 

 

「「さあ、お前達の罪を数えろ」」




今回の参戦作品の組み合わせ
Wがライダー好きになるキッカケなのでどうしても出したかった。そこでコンビ主人公、二人セットで初めて成立するキャラという意図で、メリーと双星をチョイスしました。

もともとはキルミーとコブラでやろうと思ったんですが、ギャグ作品を仮面ライダーと組ませるのは難しいと踏んでサブに回した次第です。刺客がドーパントに変身したのも、その名残になります。
コブラは翔太郎に真のハードボイルドを見てもらおうかと思ったのですが、平成の終わりに企画したから、平成ジェネレーションズにして昭和作品を廃そうと路線変更、双星の陰陽師をハーメルンに布教すべくチョイスした次第です。


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第15話「接触のN・中/罪もケガレも」

仮面ライダーW 今回の依頼は…

メリー「え? マジで、夢路なの?」
夢路「メリー……か? ていうか、サナといい、その格好なんだ? コスプレ??」

藤原夢路inエトワリア

アームズ「どうだ、ソーニャ? これがお前を葬り去るための切り札・ガイアメモリの力だ」
スイーツ「そしてその力で変じたこの姿が、ドーパントだぜ」
イナゴの女「あなた達全員、そのガイアメモリの力で食べてあげる」

ドーパントとスタンド使いの強襲

フィリップ「ぼく達は、2人で1人の探偵さ」
翔太郎「ガイアメモリの生まれた街、風都の涙を拭う二色のハンカチ、それが俺達さ」
ホル・ホース「お前ら、その2人を優先して殺せ! そいつらは……」

最強のヒーロー、エトワリアに降臨

「「変身」」
仮面ライダーW「「さあ、お前達の罪を数えろ」」


突如として現れた二人組、左翔太郎とフィリップが変身した、仮面ライダーW。現れた二人を前に、ホル・ホースとドーパント軍団は警戒態勢に入る。

 

『ぼくの体、暫くお願い』

「「「「「え?」」」」」

 

Wに変身したのは翔太郎。しかし、何故か右の複眼が点滅すると同時に、何とフィリップの声で喋ったのだ。Wは変身している間、フィリップの意識が翔太郎の体に憑依しているのだ。

一同がそのことに驚いていると、Wは真っ先にアームズ・ドーパントに立ち向かっていく。

 

「オラァァ!」

「グォオ!?」

 

疾風の如きスピードで懐に飛び込み、鋭いパンチを叩き込むW。鳩尾に叩き込まれ、コルクの攻撃で微塵も答えていないアームズ・ドーパントが苦悶の声をあげる。

 

「ふっ! はっ! おりゃあ!」

「ぐぅ!? げぇえ!? がぁあ!!」

 

そして立て続けにパンチの二連撃、胴に打ち込む。そして疾風を纏った回し蹴りを、脇腹に放って吹っ飛ばした。

 

「くそ、銃撃で……」

「させるかよ!」

「ぐわぁ!?」

『アームズの取り柄は武器換装。なら、それをさせる隙を与えないのが戦う基本さ』

 

アームズは一度退治したことのあるドーパント。故に、ミュージアムを壊滅させて、その後も数多の戦いを乗り越えた今のWにとって、敵ではない。

 

「死ね、仮面ライダー!」

「うお!?」

 

そこにすかさず、バイオレンス・ドーパントが鉄球を叩きつけてくるので、咄嗟に回避する。

 

「行け、折部やすなよ!」

 

そして体制を立て直すも、パペティアーがやすなをコントロールし、Wに襲いくる。やすなは手にした槍でWに畳み掛け、Wの方も生身のやすなを攻撃するわけにいかないため、防御に徹する。

 

「くそ、人質なんて使いやがって……」

『翔太郎。ぼくの側、メモリ変えるよ』

「ああ。任せる」

 

そしてフィリップが翔太郎に呼びかけ、黄色いガイアメモリを取り出した。

 

【ルナ!】

 

そしてメモリを起動し、サイクロンとそのメモリを取り替え、再びベルトを展開する。

 

【ルナ! ジョーカー!】

 

すると新しくベルトから音声が流れ、Wの右半身が緑から黄色へと変わった。そしてその状態で右腕でパンチを放つと……

 

ビヨオオオオオオオン

「「「「「ええええええええ!?」」」」」

「ウソだろ…ぐは!?」

 

なんと腕が伸び、そのままやすなを通り過ぎて、パペティアーのみを攻撃したのだ。吹っ飛ばされたパペティアーは、やすなのコントロールを失って倒れる。

そしてWも、追撃に乗り出す。

 

「……う〜ん。あれ? 何事?」

 

やすなはすぐに目を冷ますが、先ほどのことは覚えていないらしい。そんな彼女に、ソーニャや夢路が駆け寄ってくる。

 

「二人とも、私どうしてたの?」

「あの刺客が変身したドーパントとかいう化け物に操られてたんだが…」

「あの半分こな変身ヒーローっぽいのに、助けられたんだよ」

 

そして夢路が指差す方をやすなが見てみると

 

「な、なにあれ……」

「ビックリするよな、お前も…あれも刺客と同じで、ガイアメモリとかいう道具を使っているらしい」

「しかも、この倒れている人の意識が憑りついてるみたいで…」

 

困惑するやすなの目に飛び込んだのは、Wが空中で身を捻りながら、右足を伸ばして鞭のようにして、パペティアーを攻撃している姿だ。絵面がシュールすぎたのだ。

ちなみに、勇魚がフィリップの体を保護している。

 

「デスコタツの旦那、反撃行くぞ!」

「ああ! このまま舐められてたまるか!」

「仮面ライダー。また私の食事を邪魔するつもり!?」

 

そこにホル・ホースとゾーン、ホッパーが総じて反撃に乗り込んでいく。しかしWもそれを察知して、パペティアーへの攻撃を中断した。

 

『翔太郎。生身のあの男は、おそらく紅渡の話していたスタンド能力者だ。警戒していこう』

「だな。それでいて、下手に攻撃はできないから…」

 

すでにWの二人もスタンドについて知っていたようで、警戒態勢に入る。そして新しく青いメモリを取り出し、起動スイッチを入れた。

 

【トリガー!】

 

そして今度は左側のジョーカーメモリと、その新しいメモリを入れ替える。

 

【ルナ! トリガー!】

 

それにより今度は、左半身が青に変わり、いつの間にか手には黄色くWの字が刻まれた青い銃"トリガーマグナム"が握られていた。

 

「1×9」

「エンペラー!」メギャンッ

「はぁあ!」

 

そしてゾーンの力で転移しながらの銃撃を、再び放つホル・ホース。そしてすかさず、ホッパーの飛び蹴りが放たれた。

 

「おっと」

 

しかし飛んできた弾丸をWは左手で払いながら、飛び蹴りも横っ飛びで一気に回避する。

 

「そらよ!」

 

そして右手のトリガーマグナムを発砲した。すると驚くことに、銃口から放たれたのは、弾道が曲がるビームだった。

 

「なにぃ!?」

「え、ちょ、……ぎゃは!?」

「ぐぉお!?」

 

ビームはホル・ホースをピンポイントで避け、そのままゾーンとホッパーにだけ命中する。なかなかにとんでもない光景だ。

 

『ゾーンは厄介だし、ホッパーもスピードがある。先にメモリブレイクしておこう』

「そうだな。異世界戦闘最初のマキシマム、いくぜ」

 

するとフィリップが翔太郎に対案を出すも、二人とも固有名詞だけなので夢路達一行は理解できていない。

しかしWとしてはドーパントを倒して彼らを守ることが優先のため、トリガーメモリをベルトから抜き取り、トリガーマグナムに装身した。

 

【トリガー! マキシマムドライブ!】

 

メモリの装身すると新しい音声が流れ、トリガーマグナムを簡単に変形させ、構える。

 

「「トリガーフルバースト!」」

 

そして二人同時に技名を叫び、発砲。

放たれた無数の、黄色と青の二色の追尾ビームが、ゾーンとホッパーの二体のドーパントに浴びせられる。

 

「「ぎゃあああああああああああ!?」」

 

そして二体のドーパントは断末魔をあげながら爆散、その跡地にはデスコタツとイナゴの女が倒れており、すぐ側には破損したガイアメモリが落ちていた。

 

「す、すげぇ…」

「倒しても、元の人間は死なねえのか。それとも、あいつだけか?」

 

Wのあまりの強さに、夢路は感心する。その一方、ソーニャはドーパントが倒されても元になった人間が生きていることに気が行っていた。

 

「お次はあの甘味野郎と氷野郎だな」

『了解、熱いのを食らわせてあげよう』

【ヒート!】

 

するとWは、今度はスイーツに標的を切り替え、赤いガイアメモリのスイッチを入れる。

 

【ヒート! トリガー!】

 

そしてそれをルナメモリと入れ替え、赤い右半身にトリガーマグナムを構えた姿となる。

 

「そらよ!」

「「アチチチタチチチチ!?」」

 

するとトリガーマグナムからはビームではなく、火炎弾が乱射された。それによりスイーツとアイスエイジはダメージを与えられている。

 

『翔太郎、接近戦で畳み掛けるよ』

「了解だぜ、相棒!」

【メタル!】

 

そして新しくグレーのメモリを取り出して起動、今度はトリガーメモリと取り替えた。

 

【ヒート! メタル!】

 

それにより今度は左半身がグレーになり、武器がトリガーマグナムから変化、赤いWの字が刻まれた棍"メタルシャフト"となる。

 

「オラァア!」

「ぐへぇ!?」

「うぐお!?」

 

メタルシャフトは炎を纏い、それをWが二体のドーパントにたたきつける。クリーム化による打撃を吸収するスイーツ、純粋に氷の力を持つアイスエイジ、いずれも炎と熱の力を持つヒートの力でダメージを与えていく。

初めて戦ったアイスエイジ・ドーパントはヒートの炎を寄せ付けない力だったが、刺客が変身したこの個体はうまく使いこなせないのかダメージを食らっていた。

 

「もういっちょ!」

「あっつ!?」

 

さらに右腕に炎を灯し、思い切りアイスエイジをぶん殴るW。武器を使う形態でも、肉体にその属性を付与可能なようだ。

 

「あの仮面ライダー、ダブルといった? 凄まじい」

「見た感じ、攻撃の属性と戦闘スタイルを、それぞれのメモリで切り替えているみたいだな」

「だな。で、今まで使った分で6個。それぞれ3個ずつだから、全部で9形態あるんだろうな」

「? 変身アイテムが6個あるのに9個しか姿無いの?」

 

コルクが感嘆している横で、ソーニャと夢路はWの戦闘形態について考察している。実は夢路は特撮ヒーロー好きなので、それを彷彿とさせる仮面ライダーについて一緒に考察できたようだ。横でやすながバカゆえについていけてないので、ひとまずスルーする一同。

すると、いつの間にかとどめを刺す寸前までドーパント二体が追い詰められていた。

 

「それじゃあ、こいつらもメモリブレイクだ」

【メタル! マキシマムドライブ!】

 

そしてメタルシャフトにメタルメモリを装身すると、両端から炎が噴き出す。そしてそれを構えて駆け出した。

 

「「メタルブランディング!!」」

「「ぎゃあああああああああああああああ!?」」

 

そして炎を纏ったメタルシャフトによる一撃を叩き込まれ、ドーパント二体はまとめて爆散した。そして案の定、地面には気絶したヘル・ドーナッツとモブっぽい刺客の一人が倒れ、メモリも破損している。

 

「か、仮面ライダー……強すぎる」

「やばいやばい! このままじゃ金どころか俺らの命も危ういぞ!?」

 

アームズとパペティアーの二体が、惨敗寸前の状態で慄いている。すると、パペティアーの方が何となく視線を向けたのが…

 

「そうだ! あの私服っぽい男のクリエメイトを人質に!」

「おし、それに乗った!」

「また俺か!?」

 

そして再び夢路に襲い来るドーパントとホル・ホース。夢路もとっさに逃げ出した。

 

「あ、おまえら!」

「「行かせると思うか!」」

 

パペティアーを止めに入ろうとするも、アームズとバイオレンスの直接戦闘タイプ二体が妨害に入る。バイオレンスの方は左腕を除いて鉄球へと変化。腕を地面に叩き付けた衝撃で、飛び跳ねるようだ。

 

「くそ、邪魔すんな!」

『翔太郎、倒すにしろ振り切るにしろ、サイクロンのスピードの方が有利だ!』

「みたいだな……」

【サイクロン! ジョーカー!】

 

そして再び、最初と同じ形態へと移行する。そして抗戦するも、一方で夢路はパペティアーから逃げる。

 

「夢路!」

「行かせねえよ、嬢ちゃん方!」メギャンッ

 

メリーが咄嗟に夢路を守ろうとするも、ホル・ホースが妨害してくる。その一方で、パペティアーが糸を伸ばしながら夢路に迫っていく。

 

「戦う力がないってのは、こういう時みっともないな」

(くそ!  力が使えないのが、こんなもどかしいなんて……あれ?)

 

逃げる最中、夢路は何かを感じ取る。そして何となく右手に力を入れてみると……

 

 

ズバババババッ

「なに!?」

「え? これって…」

 

その時、夢路の手に握られた何かで、迫ってきた糸を切り裂いてしまった。それは、元の世界で夢路に味方をしていた夢魔”ジョン・ドゥ”の使う鋸のような形の剣だった。

これこそ、夢路が夢魔と戦うために編み出した技武装明晰夢(ルシッドガジェット)だ。過去に夢路とメリーが戦ったことのある夢魔の能力を、一時的に使用できるというものである。しかし名前のもととなった明晰夢、つまり「夢を見ていると自覚のある夢」に近い夢魔の領域でしか使えないはずだった。しかし、なぜか今は使えている。

 

 

「何にしても、ありがてえ……借りるぜ、縛鎖(チェイン)!」

「ぐぉお、なんだこれ!?」

 

戦う力に気づいた夢路はそのまま手のひらを向け、かつて対峙した夢魔の能力を行使する。それにより鎖が放たれ、パペティアーは拘束された。

 

「もういっちょ借りるぜ、孤影(ロンリネス)!」

「え? ……うげ!?」

 

するとパペティアーの頭上に、人間大のこけしが落ちてきた。それにつぶされ、パペティアーも気絶する。

 

「き、きゅう~…」

「あれ? なんか、戻っちまったぞ」

 

しかもその影響で、ドーパント化も解除されてメモリも体内からはじき出された。ただし、破壊はされていない。

 

「なんか知らねえが、向こうは片付いたみたいだな」

『それじゃあ、こっちもメモリブレイクと行こうか』

 

そして夢路の方が心配ないと判断し、そのまま残り二体のドーパントを倒すために必殺技の準備をする。

 

【ジョーカー! マキシマムドライブ!】

素手で戦うジョーカーメモリの必殺技は、ベルトの腰部分にあるスロットにメモリを装身して発動するようだ。そしてサイクロンの力で起こったつむじ風に持ち上げられたWは、一定高度に達したところでベルトのボタンを押す。

 

「「ジョーカーエクストリーム!」」

「「「「「「えええええええええええええええええ!?」」」」」」

 

技名を叫ぶと同時に、Wが縦に真っ二つに割れた。大事なことなのでもう一回言うが

 

 

 

 

 

 

 

真っ二つに割れたのだ。

「「ぎゃあああああああああああ!?」」

 

そしてその割れたWがそれぞれ、アームズとバイオレンスに飛び蹴りを叩き込み、この二体のドーパントも倒された。

そして人の姿に戻った二人の刺客のそばに着地したWは、いつの間にか元に戻っている。

 

「さて。それじゃあ、こいつのメモリも…」

 

そしてWは気絶している人形近いに近づき、落ちていたガイアメモリを拾った。

バキッ

そして、握りつぶした。

 

「か、仮面ライダー……よくも…」

「え? あの人の体が、崩れて…」

 

すると、イナゴの女が恨みの念を込めてWを見るのだが、勇魚の指摘通りその体が崩れている。

 

「やっぱり、あの女”NEVER”だったんだな」

「ね、ネバー?」

『ああ。僕らの世界で、死体をベースに開発された改造兵士だ。彼女は昔に死んだ人間だったんだけど…』

「死体の改造…闇が深すぎてついて行けないな…」

 

まさかの事実に、青ざめる一同。ソーニャも裏稼業者としては、聞いたことがない闇の深さだった。

 

「あ…おの…れ……」

 

そして、倒れ伏したイナゴの女は恨み言を呟く。そして、完全に崩壊した。

 

「……哀れだが、感傷に浸っているわけにもいかねえ」

『次は、スタンド使いの君だね』

「……」

 

そしてWは、気持ちを切り替えてホル・ホースを睨む。当のホル・ホース本人は額に冷や汗を流し、険しい表情となった。

 

(おいおい。仮面ライダーがここまで強ぇのは、想定外だな。ドーパントも殆ど一人で倒しちまったが、タイマン向きじゃない俺のスタンドで勝てるはずがねえ。となれば…)

 

そして思案を始めたホル・ホース。彼の出した答えは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっし、逃げちまおう」

「あ、待ちやがれ!!」

 

全力疾走で、その場を去っていくホル・ホース。それを必死になって追いかけるWとクリエメイト組。

 

「俺は能力がタイマンには向かねえ! 誰かと組んで初めて力を発揮するんだよ! 一番より№2がホル・ホースの人生哲学ってわけだ!モンクあっか!」

「だからって、ここで逃げるのは往生際わりぃだろ!!」

 

持論を吐き捨てながらも全力疾走を続けるホル・ホース。地味に、仮面ライダーに匹敵する身体能力を発揮している。

そしてそうこうしているうちに、町の外にやって来たのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐぉおおおおおおおおおおお………

「な、なんだこりゃ…」

「まさか、魔物?」

 

そこに突如、巨大なグロテスクな風貌の巨人。明らかに敵意を持っているようだ。

 

「おいおい、幾ら何でも遅すぎだろ。旦那」

「だだだだ黙るが良い! 吾輩達が人間如きに協力すること自体が、本来ならばありえんことなのだ。だからきききき貴様は、むしろ感謝すべきである!」

 

すると現れた異形の巨人に声をかけるホル・ホース。すると何かがその頭上から飛び降りて、ホル・ホースに話しかけてきた。

 

「では改めて…

お初にお目にかかる! かかかか仮面ライダーと、くくくくクリエメイトの諸君! 吾輩、銀鏡(しろみ)と申す!」

 

現れたのは、吃る様に単語の最初の文字を繰り返す、奇妙な喋り方の男であった。見た目は更に異質で、褐色肌の人間のそれだが、髪と目の色が左右で別々になっている。右側は黒髪と金色の瞳、左側は白髪に黒い目と紫の瞳だ。

服装も、目と口の意匠があるシルクハットに白い燕尾服、そして何故かボトムスが袴と、グロテスクとアンバランスが合わさった異質なものである。

 

「な、なんだこいつ?」

「何? まさか新手の夢魔? ユメもキボーもありゃしないわ……」

「いや、なんとなくだけど夢魔と違くねぇか?」

 

現れたそいつにソーニャは疑問を浮かべ、メリーは過去に対立したリシュカという人物と同じ、エトワリアに干渉した夢魔ではと推察する。しかし、夢路だけは何か違うものを直感で感じ取っていた。

すると、その男がみずから自己紹介を始める。

 

「吾輩はむむむむ夢魔などてはなくケガレという存在、その最上位の婆娑羅(バサラ)の一体だ。そしてこれは、貴君らを始末するために特別に拵えた複合型移動式ケガレ要塞・百々々々々目鬼(どどどどどめき)!!」

 

ホル・ホースと知り合いな様子から、この男もオーバーヘブン・ショッカーの協力者のようだ。この百々々々々目鬼と呼ばれた巨人も、自分たちを倒すべく生み出されたようである。

 

「さあ、蹂躙の時間だ! 百々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々目鬼ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

百々々々々目鬼は、こちらを潰そうと巨大な手を叩き付けてくる。デカい分動きが鈍く、おかげで勇魚も含めて全員が回避に成功した。

 

『翔太郎、あの図体じゃ接近戦は危険だ!』

「だな。もう一回トリガーで行くか」

【サイクロン! トリガー!】

 

そしてまた変身を重ねるW。今度は緑と青の形態となり、トリガーマグナムから風の弾丸を乱射する。

 

「的がデカいから、当てやすいな」

「俺も援護します。初恋薊(ラバーズ)!!」

 

翔太郎は攻撃を重ね、夢路も武装明晰夢で作った、宙に浮かぶ拳を乱射していく。連続で攻撃を食らっていく百々々々々目鬼だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無駄だ。我らケガレには呪力による攻撃以外は効かんよ」

「ぐわぁああ!?」

「う!?」

 

いつの間にかこちらの懐に、銀鏡が飛び込んできて攻撃してきたのだ。銀鏡は両腕を触手のような形状へと変化させ、Wを締め上げながら夢路の脇腹を貫通した。

しかも、百々々々々目鬼にはダメージが行っている様子が見当たらなかった。

 

「夢路!?」

「あんた、よくもやったわね!!」

「これ以上、見てるだけはうんざりだっての!」

 

勇魚が激しく動揺し、そこにメリーとソーニャが激高しながら銀鏡に飛び掛かる。そしてそれぞれの得物で切りかかるが…

 

「なななな何度も言わせるな! ケガレにはしゅしゅしゅしゅ呪力以外の攻撃は効かんと!」

「「うぐ!?」」

 

手ごたえがなく、しかも銀鏡の体から新たに細い触手が生え、それによってメリーとソーニャも攻撃を食らう。メリーは夢路同様に脇腹を貫通していた。

 

「ソーニャちゃん!」

「メリー…まずい!」

 

やすなとコルクも、慌てて二人を回収しに行く。ソーニャは放り投げられるも、メリーはWと夢路と一緒に、捕まってしまった。事態は最悪だ。

 

「むははははははは! 呪力が使えないとはいえ、聞いていたほど強くはないな。かかかか仮面ライダーとやら!」

「ぐぁ…くそ、こんなやつがいるなんて…」

『呪力とやらが何かわからないが、魔力しか効かないファントムのようなものか?』

「れ、冷静にしている場合じゃ…がはっ!?」

「夢路…ごほっ!?」

 

メリ-と夢路は、人体貫通してしまい吐血。

 

(くそ……どうする!? 今の俺たちじゃこの男に勝てない! どうすりゃ…)

「さて。こここここの場が貴様らの墓場なのだ! 百々々々々目鬼、残りのクリエメイト共を叩き潰せ!!」

 

翔太郎が思案する中、銀鏡は百々々々々目鬼に指示を出す。それに合わせて百々々々々目鬼が、勇魚達を潰そうと腕を振りかざす。絶体絶命の事態……

 

 

 

 

 

 

 

「裂空魔弾! 救急如律令!!」

「むぐぉおおおおお!?」

 

すると何処からか技名を叫ぶ声が聞こえ、それが銀鏡の顔面に命中した。ダメージが通ったのか、銀鏡は苦悶の声を上げてWとメリー、夢路を離してしまう。

 

「今だ、撤退するぞ!」

 

そしてそのすきに、Wはメリー達を担いで離れる。

 

「夢路! メリー! すぐに治すから!」

 

そして勇魚が、負傷した二人に治癒魔法を行使し、どうにか事なきを得る。

さらにその直後、何かがとびかかって百々々々々目鬼に攻撃を仕掛けた。その衝撃は思いの外強く、百々々々々目鬼はその巨体を地面に伏せることとなる。

 

「よっと。あんたら、大丈夫か?」

「奴らは…私達の専売特許…任せておいて」

「え? あんたら、誰?」

 

現れたのは、二人組の少年少女であった。少年は夢路より若干背が低く、ギザギザの歯が目立つ。少女は黒髪ロングのスレンダーな美少女で、クールな雰囲気と喋り方も相まって、大和撫子という言葉がよく似合う。

しかし服装は、黒をベースにした、狩衣を近未来風にアレンジしたような奇妙な物を着ている。

そして2人は、夢路の問いかけに対して名乗りを上げた。

 

「俺は焔魔堂(えんまどう)ろくろ。総覇陰陽連所属・双星の陰陽師だ!」

「同じく…化野紅緒(あだしのべにお)

 

二人組、ろくろと紅緒は確かに、陰陽師と名乗った。

 

「なにぃいいいいい…そそそそ双星だと…そそそそそそそそそそそそそ双星ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

「確か陰陽師って、旦那たちの仲間の天敵じゃ……」

 

その二人の肩書を聞いた瞬間、銀鏡が恨めしそうにする。ホル・ホースも顔を青ざめている。

そしてその際、ろくろと紅緒は戦闘態勢に入る。

 

星装顕符(せいそうげんぶ)(ほむら)》」

「…」

 

ろくろは懐から赤い札を一枚、紅緒は黒い札と複数枚の白い札を取り出す。そして紅緒は腰に差していた石造りの剣を構え、白い無地の仮面をかぶる。

 

「「祓へ給へ、清へ給へ……」」

「守り給へ、(さきは)め給ヘ……」

 

二人は呪文のようなものを唱え始め、途中からろくろだけがその続きを唱える。

その時、ろくろの右腕が赤く刺々しい見た目の、顔のような意匠が浮かんだ不気味な形状へと変化した。さらにその上から、赤く熱を帯びた装甲のようなもので覆われていく。

 

「重奏陰陽術式・星方舞装(アストラル・ディザスター)! 」。

 

そして紅緒は両足に白く美しい装甲が纏わり、手にした二振りの剣とかぶっていた仮面も、何かの力を帯びて不思議な文様が浮かび上がった。仮面の方は形状も相まって、まるで狐のようである。

 

白凛闘牙(びゃくりんとうき)来災先観(らいさいせんかん)、以下陰陽呪装」

「「救急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)!!」」

 

そして叫ぶと同時に、二人は白銀と百々々々々目鬼へと向かっていく。

 

「紅緒、俺がまずデカブツをどうにかする。紅緒は婆娑羅を頼む!」

「…心得た」

 

そしてろくろは、立ち上がろうとする百々々々々目鬼へと向かっていく。

 

「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ 宇内八方ごほうちょうなん たちまちきゅうせんを貫き 玄都に達し太一真君に感ず」

 

ろくろは百々々々々目鬼の周囲をかけながら、呪文を詠唱していく。するとその周囲に印ようなものが浮かび上がってくる。そして…

 

鳥天衝弾(ゴルトスマッシュ)・救急如律令!!」」

「ぐわぁあおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

技名を叫びながら印を殴ると、全ての印からビームのようなものが放たれ、それを食らって苦悶の声を上げる百々々々々目鬼。どうやら、ケガレに陰陽師の力が有効というのは事実のようだ。

 

「なななななんというざまだ、百々々々々目鬼! 双星の呪力を奪えば、わわわわ我らの悲願に近づけるはず…」

「させるはずが…ない!」

 

憤慨する銀鏡の懐に、紅緒が飛び込んできた。そして剣を交差させて技の準備に入る。

 

朧蓮華(おぼろれんげ)の舞 射程零距離・反閇(へいばい)《猛虎の型》!」

 

そして剣を交差させたまま突撃し、銀鏡を吹き飛ばした。そして飛んで行った銀鏡を追って飛翔する。

 

玉兎(ぎょくと)天衝弾(てんしょうだん)!!」

「ぬぐぉおおおおおおおおおおおお!?」。

 

そして白い装甲を纏った脚による、必殺の蹴りを叩き込まれる銀鏡。断末魔を上げて、大きく吹き飛ばされることとなった。

 

「すげぇな、おい……」

『翔太郎、最近の陰陽師ってああいう物なのかい?』

「知らねえよ、異世界の戦闘事情なんて……ガイアメモリで手一杯だってのに」

「アタシらよりずっと強いわね…やっぱ、ユメもキボーもありゃしないわ」

「メリー、久しぶりな上に普段より多く言ってるな…」

 

あまりにもぶっ飛んだ陰陽師の戦闘スタイルに、Wとメリー一行は何も言えなかった。

やすなとソーニャ、果てはコルクまで呆然としてしまうのだった。

 

「紅緒、やったみたいだな……俺も負けて乱ねえな!」

 

その一方で、ろくろは紅緒の奮戦ぶりに気合が入ったようだ。右腕に力を貯めながら再び呪文を詠唱し始める。

 

「東海の神・名を阿明(あめい) 西海の神・名を祝良(しゅくりょう)

南海の神・名を巨乗(きょじょう) 北海の神・名を寓強(ぐうきょう)

四海の大神 百鬼を退けを凶災を祓い給えっ!!」

 

呪文に合わせて、ろくろの右腕に凄まじい焔が纏わっていく。そして拳を構え、百々々々々目鬼の顔面へととびかかる。

 

流星拳(メテオスマッシュ)!!!」

 

顔面に凄まじい衝撃を受けた百々々々々目鬼だが、こらえて何とか倒れないように踏ん張ってしまう。しかしそこに、紅緒が駆けつけてきた。

 

「遅くなった…ごめん」

「いいさ。でも、おかげで婆娑羅はしばらく動けねえんだろ。ありがとう」

「…うん。このまま…とどめに入ろう」

 

そして二人が並ぶと、手をつなぐ。そして…

 

「「共振(レゾナンス)!!」」

 

叫ぶと同時に、なんと二人の体が同時に光りだす。そして構えを取ると、ろくろの右腕の装甲が展開し始めた。

 

 

「「紅蓮流星拳(クリムゾン・メテオスマッシュ)!!!!!」」

 

そして同時に技名を叫ぶと、先ほどの物とは桁違いの、それこそ数倍から数十倍の威力はあろう衝撃と焔が放たれた。

 

「おいおい、うそだろ…」

『凄まじいとは、こういうことを言うんだね…彼らの世界の陰陽師に、更に興味がわいたよ』

 

翔太郎とフィリップがかろうじて口を利けたが、目の前の光景を見たら黙り込んでしまうのは仕方がなかった。

そして、それは吹き飛ばされた銀鏡も同様だったようだ。

 

「おのれ、双星ども……な!? 百々々々々目鬼の頭が…」

 

なんと、百々々々々目鬼は頭が丸ごと消し飛んでいたのだ。

双星の陰陽師とは、彼らのいた世界で夫婦に与えられる最強の陰陽師(・・・・・・・・・・・・・・)の称号である。




W編ということで、Wっぽい前回のあらすじを入れてみました。いかがでしたか?
あと、ベルトや武器の音声を今回から【】に変更することにしました。こっちの方が読みやすかったので。
ほかの話も少しずつ修正していくので、少々お待ちください。


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第16話「接触のN・後/守りたい物のために」

仮面ライダーW 今回の依頼は…

W(フィリップ)『ぼくの体、暫くお願い』
夢路一行「「「「「え?」」」」」

仮面ライダーW、エトワリアの危機に駆け付ける。

夢路「借りるぜ、孤影!」
パペティアー「え? ……うげ!?」

藤原夢路覚醒

銀鏡「無駄だ。我らケガレには呪力による攻撃以外は効かんよ」

新たな敵、婆娑羅の襲来

ろくろ&紅緒「「共振!!」」
「「紅蓮流星拳!!!!!」」

同時に新たな戦士、双星の陰陽師の加勢!


ドーパントの強襲に対応した仮面ライダーW。

突如として夢路の特殊能力の発動。

新たな敵ケガレと、それに立ち向かう陰陽師の出現。

 

状況が二転三転と変わり続けるこの戦闘も、ようやく終わりが見えてきた。

 

「おのれ双星! 吾輩のささささささささ最高傑作を、よくも!!」

 

戻ってきた銀鏡(しろみ)は、百々々々々目鬼を撃破されて激昂状態となる。

 

「生憎、俺達もお前のやってきたことを許すつもりはねぇからな。おあいこみてぇなモンだろ!」

危険度(リスク)S…婆娑羅の銀鏡。数百年の時を生き…闇無と別勢力で…現世の掌握を狙う一体。数ヶ月前も…東北で陰陽連支部の一つを…壊滅させた」

 

しかし、同種の敵との戦いに慣れていた二人は、屈することなく向かい合っていた。どうやらエトワリアへと乗り込む前にろくろ達の世界で戦闘を行っていたらしい。

 

「昨日、変態パンツ男が神託でお前の仲間の居所を掴んだんだが、まさかこんな異世界なんてモンに攻撃しかけるとはな!」

「あの…葛葉紘汰という人の…言う通り…だったみたい」

「葛葉紘汰……まさか、この二人が!?」

『紅渡の話していた協力者か! まさか、こんな若い人間だったとは』

 

紅緒の口から、まさかの葛葉紘汰の名が飛び出したことにWが反応する。どうやら、事前に協力者がいることだけは聞いていたらしい。

しかし不利になったにもかかわらず、銀鏡は退く様子が見えない。

 

「どどどどどうやら貴様らも、噂の超越者とやらに送り込まれた口か! ささささ策士気取りの闇無を止めたからといって、いい気になるなよ!」

「どうとでも…言いなさい。貴方はここで…私達に…祓われるのみ」

「おうよ。お前の罪もケガレも、全部まとめて祓ってやるから、大人しくしてろ!」

 

ろくろと紅緒は、揃って強い意志を見せながら銀鏡と対峙する。しかし銀鏡は、後ろにいるWと夢二たちに視線を向けた。

 

「きききき貴様らはいいが、呪力を持たん後ろの連中を守りながら、吾輩の本気を止められると思うな!」

 

激昂した銀鏡は、懐からろくろ達が使ったものに似た黒い符を取り出して構える。

 

「まままま纏死穢(マトイマカルサワリ)っ!」

「な、なんだ!?」

「来やがるか!」

 

すると符からドス黒い瘴気のような物が噴き出し、翔太郎が動揺する。ろくろ達の警戒を強めたため、銀鏡が本気を出したというのが見て取れた。

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ、銀鏡」

ドォオオオオオオオオオオオンッ

 

しかし直後、また新しい男の声が聞こえたと思いきや、いきなり落雷が生じた。それに銀鏡も攻撃の手を止め、他の全員も声のした方を向ける。

現れたのは、軍服を纏った薄紫の髪の偉丈夫だった。銀鏡と同じく褐色肌と片目だけが黒い色ということから、同じ婆娑羅というのが見て取れる。

 

「こいつ、新しい婆娑羅か!?」

氷鉋(ひがの)…銀鏡と同じ一派に属する…と、データベースに…あった」

 

そして紅緒はこの男の情報を知っていたようで、名前と素性を言いながら警戒を強める。同様に、新たな敵の出現に同じくWとメリー一行も警戒を強めた。

 

「事情は知らねぇが、オメェもそのシルクハットマンの仲間ってところか?」

「仲間…少し違うな」

 

翔太郎の問いかけに、含みのある様子で答える氷鉋だが…

 

「仲間というのはそもそも、一定以上の信頼関係を築いて初めて成立する関係だ。そういう意味では、俺はこいつをあまり信用していないから、仲間とは言えんな。貴様ら人間の言葉で言うなら、どちらかと言えば同僚の方がしっくりくる。アレなら同じグループの所属でそこそこ長い付き合いがあれば、一応は信頼関係がなくとも成立はするだろう。とはいえ、人間の社会はかなり複雑と聞いたから信頼関係も必要なのかもしれんが、人間の常識を俺達ケガレに当てはめるのも、そもそもおかしいか」

「煩いわ! たたたた助けに来たなら、黙って吾輩に手を貸すのが道理だろう!! まぁ、助けなどいらんが」

 

突然、氷鉋は講釈を垂れ始めた。あまりにも長いため、仲間のはずな銀鏡もキレ始める。

 

「な、なんだあの長ったらしい薀蓄(うんちく)みてぇなの……」

『あの銀鏡という男といい、例の婆娑羅という連中には妙な性格のやつが多いのだろうか?』

「フィリップ、お前が言っても説得力ないからな」

((((((正直、二人ともそうだと思うけど……))))))

 

氷鉋のキャラに困惑気味なWだったが、同じく変わり者を見る目でそのWを見る、クリエメイト組。二人で合体する、半分こ怪人もといヒーローはそれだけのインパクトというわけだ。

 

「まあいい。俺は上からの命令で、銀鏡とホル・ホースの回収に赴いただけだ。この場で争う気はないし、例の遺体も譲ってやる」

「氷鉋! 吾輩はここでお前に従う義理など…がはっ!?」

 

そして撤退の意思を示す氷鉋に対し、反論しようとする銀鏡。しかしすぐに鳩尾に鋭い拳撃を叩き込んで黙らせてしまう。そして痛みのあまりに悶絶している銀鏡を抱え、ホル・ホースともども紫のオーラに包まれ、転移しようとする。

 

「ありがたいぜ、旦那。それじゃあ、俺はここで置賜させてもらうぜ!」

「調子のいい奴め……双星の陰陽師に仮面ライダー、それとクリエメイトども。一つ、いや二つ忠告しておこう」

 

ホル・ホースの様子に呆れていた氷鉋だが、ここでこちらに向き合いながら告げてきた。

 

「お前達人間は所詮、俺達ケガレの餌に過ぎないのだ。そして貴様らは、我が王たる聖丸(ひじりまる)の前にその命を散らすだろう。覚悟しておけ」

 

あからさまな宣戦布告の後、彼らは姿を消していた。

 

「行ったみたいだな…で、大丈夫か、あんたら?」

 

そして完全に撤退を確認したろくろは、Wとメリー達クリエメイトに声をかける。Wも変身を解いて翔太郎の姿に戻り、対応する。

 

「まあ、おかげさまでな。まさか、お前が話に聞いていた協力者だとはな…」

「あ、やっぱ思われてなかったか…高校入っても、身長170いってねぇし、無理ねえか……」

 

翔太郎の言葉を聞き、いきなり自虐的なこと言って落ち込むろくろ。どうやら、少なからずコンプレックスに思っているらしい。

 

「え、もう高校生なのか? すまん、素で気づかなかった」

「き、気にすんなよ! さすがに俺でも、あそこまで派手に戦えは…って、あれ?」

 

そのろくろの様子に対して、翔太郎と夢路が慰めようとするが、途中で夢路は何かを感じ取る。

 

「夢路、急にどうしたの?」

「いや。急に俺を呼ぶ声が、頭の中に…」

 

メリーが気になって夢路に問いかけると、それに対しての答えがこうだった。

 

「おそらく、聖なる遺体が君を呼んでいるんだろう」

 

そこに問いかけるのは、意識を取り戻したフィリップだった。先ほどまで保護していた勇魚が、心配そうについてきている。

 

「な、なんだそりゃ? 遺体って?」

「奴らの狙いで、異世界からここに飛ばされてきたらしい聖人のミイラだそうだ。九つのパーツに分断されて、その一つ一つに超常の力が宿っているらしい」

「呼びかけているってことは、たぶんあんたを持ち主に選んだんだと思う。早く探そうぜ」

 

フィリップとろくろが、それぞれ事前に聞いていた情報を夢路に伝える。するとそれを聞いて、コルクが何かに気づいた様子だった。

 

「まさか…その遺体とやらが、召喚されていない彼をエトワリアに?」

「! なるほど…じゃあとりあえず回収してみるか」

「君を持ち主に選んだのなら、自ずと場所はわかるだろう。この近くを探してみたまえ」

 

コルクの推察を聞いた夢路は、自分がエトワリアに来た原因=変えるための術に起因すると思い、フィリップに促されるまま探しに向かう。

そしてそのまま、荷馬車の置き場所に到着した一同は、そこで白い布に覆われた塊を発見する。

 

「どれどれ……うえ、グロ…」

 

夢路が確認のために布を剥がしてみると、そこにはミイラ化した人間の下半身がまるごとあった。

 

~夢路は聖なる遺体の両脚を手に入れた~

 

「気持ちはわかるが、お前を持ち主に選んだ以上は、お前がそれを守る義務があるんだ。我慢してくれ」

「その代わり、僕達も君を守るから心配はしないでくれたまえ」

「責任重大だな…まあ、厄介ごとには慣れているからいいけどさ」

 

ミイラのパーツを前に顔をしかめる夢路だったが、翔太郎とフィリップからのフォローもあって、遺体の所有を覚悟するのであった。  

その後、翔太郎たちは最初に乗ってきた巨大装甲車”リボルギャリー”を町の外に出し、お互いに自己紹介を始める。

 

「じゃあ改めて……俺は左翔太郎。私立探偵やってる傍ら、仮面ライダーWとしてあのガイアメモリを使った犯罪と戦っているんだ」

「探偵…コートもパイプもないけど、本当?」

 

翔太郎の職業を聞き、怪しげな目で見るメリー。しかし、彼女の中の探偵像はえらく偏っていたようだ。

 

「おいおい、お嬢ちゃん。俺が尊敬する探偵はシャーロック・ホームズじゃなくてフィリップ・マーロウなんだよ。だから推理よりも、ハードボイルドなのが俺の持ち味なのさ」

「はい?」

 

しかし嫌な顔一つせず、メリーに対して自分のこだわりを述べる翔太郎。しかしそのこだわりがいまいち理解できなかったのか、メリーは困惑の表情を浮かべていた。

 

「気にしないでいいさ。翔太郎はハードボイルドになりきれない半熟君、つまりハーフボイルドだからね。単なる格好付けみたいなものだよ」

「おい相棒、初対面の女の子に何を教えてんだ」

 

そこにフィリップが寄ってきて、翔太郎について補足を入れる。彼の二枚目ながらどこか抜けている雰囲気は、そのハーフボイルドに由来しているのだ。そこから今度は、フィリップが自身の名を告げる。

 

「僕はフィリップ、翔太郎の相棒さ。昔は僕も、悪魔とか魔少年とか呼ばれててね。だからこの異世界にも、興味があったのさ」

「魔少年? 魔法使いのようなもの?」

 

するとフィリップが名乗った肩書に、コルクが反応する。魔法の存在する世界ゆえか、その発想が真っ先に出たようだ。なので正しく説明しなおす。

 

「いや、そういう意味での魔じゃないよ。昔、僕は過去の記憶をなくして、知識欲のためにあのガイアメモリを生み出した組織に協力する魔性の子供だったんだ。ゆえに、魔少年ってわけだよ」

「まあ今は違うから、あんまり警戒しないでも構わないぜ」

 

その説明の際に、フィリップの過去と業が明らかになり、警戒されないように翔太郎がフォローを入れる。

 

「これでも商人をやっているから、人を見る目に自信はある。貴方達は信用してもよさそう」

「そうか。助かったぜ、お嬢ちゃん」

「かまわない。それと、私にはコルクという名前がある」

 

コルクから好意的な答えが返ってきたことで、翔太郎も内心で安心する。そしてひと段落ついたところで、ろくろ達が自己紹介に入ることとなった。

 

「じゃあ今度は俺らの番…俺は焔魔堂ろくろ。そっちの翔太郎とは違う世界の日本で、陰陽師やってんだ。で、こっちは同じチームの仲間で……」

「化野紅緒……ろくろとは…将来を約束…した仲。よろしく」

 

その際、紅緒が爆弾発言をしたことで一同、特に翔太郎に衝撃が走った。

 

「え? 将来を約束? まだ高校生で? 俺はまだ碌に出会いもないのにか?」

 

女運がなく、かつてフィリップからも悪女に惹かれ、そのすべてが悲恋に終わるという恋愛の傾向を推察された翔太郎。そんな彼に、すでに将来を約束しているというろくろと紅緒の存在は、いろんな意味で衝撃を受けてしまう。

 

「そもそも、さっきあいつらが呼んだ双星の陰陽師ってのが、ケガレとの戦いを終わらせる神子を生む夫婦に与えられる称号ってことでな…」

「あ、うん。そういう系の話か(なんか少年漫画かライトノベルみてぇだな)」

 

そんな翔太郎は放っておいて、ろくろが双星の由来について説明し、夢路がそれを聞いている。一方、隣で聞いていた勇魚はそこまで深い男女の仲ということもあり、顔を赤らめている様子だ。

 

「あんた達が何者で、どういう存在かは分かった。だけど、そのあんた達のそれぞれの敵がどうして結託して、しかもこの世界にいるのか? わかる範囲でいいから聞かせてくれないか?」

「ソーニャに同意。自分達の危機なら、知る権利はあると思う」

 

すると今度は、さっきから聞く側に徹していたソーニャが質問してきて、コルクも同意してきた。

 

「まあ、道理だな。いいぜ、聞かせてやるよ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

地球・日本の関東某所

風都

文字通り絶え間なく風が吹き続け、街の景観を風力発電の風車が彩る、風とエコの街。街に住む人々は、"我が街"を愛し、今日も街に生きている。

そんな街の一角、古びたビリヤード場の二階に居を構える"鳴海探偵事務所"。

 

(静かな午後。ハードボイルドな俺の心を、一杯のコーヒーが温める。依頼も来ていない、束の間の平和……果たして、いつまで続くのか?)

「翔太郎。格好つけてないで、たまには自分から仕事でも探してきたらどうだい?」

「……相棒、それやったらハードボイルドな探偵っぽくねえだろ? なんか、こう…貧乏臭ぇっつーかさ」

 

その事務所に属する私立探偵である、翔太郎とフィリップは事務所内で駄弁っていた。

現在は特に依頼は来ておらず、事務所の所長である翔太郎の師匠の娘”鳴海亜希子(なるみあきこ)”は、旦那で風都警察の警視”照井竜(てるいりゅう)”、そして一人娘の”春奈(はるな)”と外出中だ。

 

今のところは探偵の仕事も仮面ライダーとして立ち向かう超常犯罪も、起こっていない平和な状態だ。しかし、それは突然に崩れ去ることとなる。

 

「な、何だここ!?」

「無地の白い空間……いろんな意味で興味深いね、ここは」

「フィリップ、落ち着いている場合か!?」

 

いきなり発生した転移現象に混乱する翔太郎。対してフィリップは落ち着いた様子だ。

そしてそこに、ある人物が現れた。ディケイドとも関わり深い、あの青年だ。

 

「初めまして、左翔太郎さんにフィリップ。僕は紅渡といいます。突然で申し訳ありませんが、あなた方に依頼があってお招きしました」

「依頼? ってことは、お前がここに俺らを呼んだわけか。で、わざわざこんな所に呼び出すってことは……」

「ドーパントや財団Xが絡んでいる依頼かい?」

「ええ。彼らが厄介なことを、やろうとしていましてね」

 

ドーパント。風都で起こる超常犯罪の元凶とされる怪人で、人間が意図して変身する特殊な存在だ。そして財団Xは、かつてそのドーパントに変身するためのアイテムを製造していた組織に、援助をしていた。財団Xやその援助していた組織"ミュージアム"と戦っていたこともあり、2人はこの異質な空間とそこに自分達を招いた渡に、すぐに対応出来たのだった。

そこに満足気な様子の渡は、早速説明を始める。

 

「お二人は、ディケイドのことはご存知ですよね?」

「あ? まあ、一応は共闘したし」

「ぼくもだ。ということは、別の世界が絡んだ依頼ということなのかい?」

 

ディケイドが大ショッカーと戦いを繰り広げていた時、2度ほど2人の変身した仮面ライダーと加勢と共闘を経験している。2人はその時のことを覚えていたようだ。

そして、それを確認した渡は説明を始めた。

 

「察しが良くて助かりました。しかし今回は平行世界ではなく、完全な異世界が目的地になります」

「か、完全な異世界?」

「ええ。仮面ライダーやそれに類した、スーパー戦隊といった戦士の住む別々の地球。それがディケイドの巡った世界でした。しかし今度、彼が戦う相手オーバーヘブンショッカーは財団Xと供に、地球から完全に乖離した異世界へと侵略を開始したのです」

 

渡は依頼を説明する。そしてその横で、フィリップが顎に指を添えながら思案する。

そして気になった単語を、自ら口にした。

 

「オーバーヘブン……直訳すると"天国を超える"か。中々に大仰な名前を付けているが、そいつらは一体?」

「ディケイドの宿敵”大ショッカー”。それがライダーと異なる能力者の世界から来た何者かに乗っ取られ、今の名前となりました。その名前についての詳細は不明です」

「おい、相棒。それ以前に異世界だぞ。並行世界じゃなくてだ。そんなところに行くって、前代未聞だろ?」

「すみません。続きをいいでしょうか?」

 

2人とも着眼点は異なるが、色々と異様な話になりつつある今回の依頼に、思うところあるのだけは共通していた。そして渡は話が途切れてしまったため、2人に呼びかけて話を戻そうとする。

 

「おっと、すまねえ。まだ途中だったな」

「まあ、混乱するのも無理はありません。それでその世界の名はエトワリアといい、平たく言えば剣と魔法のファンタジー世界になります」

「あ? んなもんが存在するのかよ」

「ほぅ、それは興味深いね」

 

まさかの単語につい反応する2人。そして、渡は続けて依頼の詳細を話す。

 

「そしてオーバーヘブンショッカーと財団Xは、異世界平行世界問わず、様々な世界から悪意や憎悪に駆られたものをスカウトして手勢に加えました。超能力者や科学の発達した異世界の兵器、はたまた人外の種族。当然、ガイアメモリもその中に含まれています」

「そんな世界に侵攻した、そのオーバーヘブンショッカーの目的は何だい?」

「”聖なる遺体”。そのショッカーを乗っ取った首領が元居た世界にあった、実際に聖人となった人間のミイラ。それがそのエトワリアに転移してしまった結果、彼らが侵略を開始しました」

「ミイラだぁ? なんで、そんなもん狙ってんだ?」

 

当然だが、翔太郎が敵が聖なる遺体を狙う動機が読めない。そして、渡はスピードワゴン達から聞いた遺体の情報を、2人に話し始める。

 

「元あった世界から来た協力者によると、遺体そのものに超常の力が宿っているそうです。所持した人間に特殊な能力を覚醒させたり、半身不随者を回復させたり、といったことが可能らしいですね。そして九つに分断されたそれを集めると、強大な力が手に入るとか」

「な、なかなか突拍子もない話だな……」

「しかし、そんなものを財団Xやそのオーバーヘブンショッカーとやらが手に入れたら……」

「ええ。間違いなくこの世界にも災厄が訪れますね」

 

その話を聞いた2人の返事。それは

 

「わかった。世界の危機ってことは、風都も危ないんだろ? その依頼、受けるぜ」

「ああ。ぼく達の愛するこの街を守ることに通じるなら、ぼくも異世界に行こう」

 

翔太郎もフィリップも、最初から返事は決まっていた。愛する我が街を危機から守る、そのために2人は仮面ライダーとしての力を振るう。それは異世界だろうと平行世界だろうと関係ないことだ。

 

「それに、個人的にも異世界は興味深いからね」

「ありがとうございます。それでは、あなた達のマシンも一式、一緒に送らせてもらいますので、役立ててください」

「すまねえな。それで、亜希子や照井には…」

「ええ、こちらから話しておきますよ。この街を守護するもう一人の仮面ライダーですからね、事情の把握はしてもらわないと」

「おっし。なら留守中の風都は安泰だな」

「じゃあ、早速行かせてもらおうか」

 

照井竜も仮面ライダーであるため、翔太郎達が風都を空けるなら当然事情は話される。そういうこともあり、2人はエトワリアへと送り込まれるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翔太郎とフィリップが渡からエトワリア行きの依頼を受けたの同時刻

ろくろ達の地球・京都の陰陽連本部

 

「いらっしゃい、待ってたよ二人とも」

「変態パンツ男、いきなり呼び出してなんだよ?」

ろくろ、失礼陰陽頭(おんみょうのかみ)様、お久しぶりです」

 

ろくろ達を出迎えたのは、長身で腰まである長さの銀髪の美青年。狩衣に烏帽子と、絵にかいたような陰陽師の格好をしている。しかし彼の実年齢は、四十代半ばだったりする。変態パンツ男とは、ろくろが初対面の時にパンツ一丁で遭遇したための仇名だった。ちなみに、ナンパして大人のホテルに入ったらヤの付く職業の愛人だったため、その格好だったとか。

だがしかし、この男こそが陰陽連のトップである陰陽頭(おんみょうのかみ)土御門有馬(つちみかどありま)なのだ。二人はそんな組織のトップに呼ばれて本来の所属・東京の鳴神町から本部へとやってきたのだった。

 

「いや、先日にちょっと奇妙な神託が来てね。それが君達に関わる物だったから、こうして呼んだんだよ」

「神託…あれ? あんた、たしか呪力が闇無の事件の諸々で殆ど無くなったんじゃ…」

 

ろくろの指摘通り、有馬はかつて婆娑羅の最古参・闇無とその一味、そして紅緒の双子の兄でありながらケガレ側に就いた”石鏡悠斗(いじかゆうと)”の起こした事件で、その力の殆どを失ったはずだった。

それがなぜか、神託という高位の術を使っていたのだ。驚きもあるだろう。

 

「うん。どういうわけか、一時的に力が戻ってね。で、内容としては…」

 

闇よりい出し汚れし魂、異郷の地に顕現せん

彼の者、異郷の邪悪と結びつき、世を破滅へと導かん

しかし双つ星、異郷の善なる意志と会合

さすれば彼の邪悪に打ち勝てるであろう

 

「まあ、ざっくりいうと『婆娑羅がどこか未知の領域で、別の悪者と結託した。そして君たち双星が、協力者を募れば勝てる』こんな感じだね」

「未知の領域? 日本の外にでも出ちまったのか?」

「そういえば…銀鏡という婆娑羅が、東北の支部を…壊滅させたと、聞きました…関係が?」

「たぶんね。彼と合同で組んでいる聖丸と氷鉋という婆娑羅共々、その後で行方知れずとなった。そう見て間違いないと思うよ」

「なるほど。でも、問題もあるよな…」

 

そう。問題は、婆娑羅達が向かった異郷がどういうところなのか、であった。この時の彼らからすれば、異世界に侵略などという発想自体、浮かんでこないだろう。

しかし、翔太郎達の時と同様に、こちらにも協力者が現れることとなった。

 

「ちょっと、そのことで話があるんだ。いいか?」

「うぉ、なんだ!?」

 

直後にろくろ達に聞き覚えのない男の声が聞こえると、まばゆい光が部屋に迸る。そして光が晴れると、銀の鎧を纏った神秘的な青年が現れたのだ。鎧武こと葛葉紘汰である。

 

「突然押しかけてすまねぇ。俺は葛葉紘汰っていうんだが、その婆娑羅って連中の行方に心当たりがあるんだ。それで、少し協力して欲しいんだが…」

「な、な、な!?」

 

突然現れた謎の青年に、ろくろは動揺を隠せずにいた。口をあんぐりと開け、上手く話せないほどに驚いている。

 

「ろくろ…落ち着いて…!」

「ごふっ!?」

 

しかしそれを落ち着かせるべく、紅緒が思いっきりろくろの腹を殴る。

 

「いてぇよ! 紅緒、何するんだよ!?」

「落ち着いて…話を聞くべきと…判断した。だから…落ち着かせた」

「いや、そうだけどよ、他になかったのか?」

「ああ~…仲良さげにわちゃわちゃしてるみたいだが、そろそろいいか?」

「いや、ごめんね。ウチの若い衆が。僕が聞いておくから、かまわず話していいよ」

 

そんな二人の様子に困惑する紘汰だったが、有馬がおどけた様子で対応してきたのですぐに話に入る。ろくろ達もすぐに話を聞く側に回ったので、事情の説明にすぐ入れた。

 

「まず、その婆娑羅ってやつらと思しき連中は、異世界に侵略に向かっている。所謂、剣と魔法のファンタジー世界みたいなところだ」

「い、異世界? 何かの冗談だろ?」

「残念だが、ガチだ。そこに更に別の世界から、”聖なる遺体”っつう超パワーの宿ったミイラが飛ばされたらしくてな。それを狙った悪の組織と手を組んだんだ」

 

あまりに突拍子のない単語が飛び出したため、ろくろは信じられないといった様子だ。紅緒も表情にこそ出していないが、やはりすぐには信じられないだろう。

しかしその一方、有馬は一人で納得したような表情だ。

 

「なるほど。異郷というのは異世界を指す…婆娑羅をはじめとしたケガレ達の住む禍野(まがの)も、この世界と次元を隔てているから、ある意味じゃ異世界だからね。僕は納得できたかな」

「ボスっぽいあんたは理解してくれたか。で、連中が手を組んだオーバーヘブンショッカーっていう奴らは、異世界平行世界問わず、様々な悪意や憎悪の下で動く連中を仲間に引き込んでいるわけだ」

 

そして有馬にそのまま、敵に関する情報を聞かせていく。すると紅緒の方も、何か感づいた様子だ。

 

「まさか…先ほど話した遺体とやらの力…それを奴らも狙って?」

「察しが良くて助かるぜ。例の遺体に宿るパワーだが、手にした人間に特殊な力を付与したり、半身不随が回復したり、って物らしい。それを狙う奴らを上手く囲い込んでしまったらしい」

「ふむ…聖丸は闇無と別勢力で、禍野開放による(うつつ)の侵略が目的の婆娑羅だ。早く祓わないと、例の遺体でそれを実現されかねないが、どうする?」

 

そして紘汰の話を聞き、有馬はろくろ達に話を振る。しかし、渡に同じ話を振られた翔太郎とフィリップ同様、返事は決まっていた。

 

「行くに決まっているだろ! 安倍晴明との約束『千年後には素晴らしい世界を』。この為にも、本当に悪意のある婆娑羅は倒さねえといけねえ。

罪もケガレも、全部まとめて祓ってやる!

「ろくろに…同意、します。手を取り合える世界も…大事ですが…本当の悪意に…立ち向かえる強さも、素晴らしい世界のために…必要です」

「助かる。俺の仲間の仮面ライダーって呼ばれる戦士達も、何人か声をかけているからな。協力して奴等を止めてくれ」

 

そして、ろくろと紅緒もエトワリアへと送り込まれたのだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「っつーわけだな」

「夢魔ならともかく、異世界から悪の組織の侵略か……ヤバすぎやしねぇか、おい?」」

「本当……ユメもキボーもありゃしないわ」

 

話を聞いた夢路とメリーは、予想外の敵に気が重くなってしまう。しかし、そんな中でフィリップは夢路の口にしたある単語に引っかかる。

 

「夢魔? 人間の夢の中に現れる悪魔で、淫魔とも称される…」

「フィリップ、変な知識を口に出して言うんじゃねえ」

 

フィリップの言動に待ったをかける翔太郎。すると、二人は事情を説明し始める。

 

「いや、そっちじゃなくて俺達の世界に出てくる、人外の存在なんですよ」

「夢の世界の住人なんだけど、ある日を境に人間の夢に寄生して、現世に干渉できるようになったのよ」

 

そしてメリー達の世界の夢魔の話を聞き、フィリップが反応する。しかし、それがまずかった。

 

「人間の夢に寄生する……君たちの世界にはそんな生物がいるのかい?」

「ええ。まあ、アタシもその夢魔なんだけど」

 

 

 

 

 

興味深い! 今すぐ、その夢魔について君自身でわかることを全て! ぼくに教えてくれたまえ!!

 

目を輝かせながら、メリーに詰め寄るフィリップ。これが彼の知識欲が暴走した結果だ。

 

「これが…魔少年」

「知識欲の暴走、よく言ったものだな」

「なんか、怖いんだけど…」

 

やすなですらフィリップにドン引き状態である。ソーニャをからかう時以外なので、中々に珍しい状態だ。

すると、勇魚があることに気づいた。

 

「あの、まさか夢路が力を使えたのって、その遺体の力なのかな?」

「! 持ち主に特殊能力を開花させるとか、言ってたよな。なら、納得できるな」

 

しかし、おかげでこの世界でも戦える。夢路は内心でありがたいと思いつつ、翔太郎達への協力を決めるのだった。

 

「一騒動会ったけど、いったん里に戻るほうがいいと思う。他の仮面ライダーとやらも、向かっているかもしれない」

「お、コルクちゃんの言うとおりだな。移動の足はあるし、行ってみるか」

 

そして一同はフィリップを落ち着かせ、そのままリボルギャリーで里に移動するのであった。

 

「これが異世界の乗り物…とても興味深い」

「まさかファンタジーの世界で、こんなハイテクマシンに乗るとはな」

「ねぇねぇ夢路君、あのパーツなんだろう?」

「たぶん、翔太郎さん達が乗ってるバイクのパーツだろうな。じゃなきゃ、前後であからさまな色分けなんてしねぇだろ」

 

リボルギャリーの中で男子二人と、コルク&やすなが興味深そうにしている。中々に楽しそうだ。

ちなみに、夢路の指摘通り翔太郎とフィリップは、外でハードボイルダーというバイクに二人乗りしている。夢路の指摘通り、リボルギャリーにはハードボイルダーの後部パーツを換装できる仕様だ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

次なる仮面ライダーと異世界の戦士、そしてクリエメイトの接触が近づきつつあった。

 

「チノちゃん、探してたコーヒー豆あそこにあったよ!」

「本当ですか? 似た名前の別物じゃないですよね?」

 

「な、なんだここ? ていうか、万丈どこ行った?」

 

「あれ? 僕、確か寮で寝てた筈…って、麗日さん!?」

「むにゃむに…もう食べられないよ~zzz」




平成最後の投稿に間に合った…次回は令和最初になりますが、平成ジェネレーションズHeaven、今後も楽しんでいただけたら幸いです。
そしてとうとう千夜とシャロの参戦イベントが開始。ごちうさメイン五人が気兼ねなく出せるぜ! 次回いよいよごちうさ編なので、お楽しみに。

P.S.架空の町で行ってみたい場所。学園都市にネオ・ヴェネツィア、木組みの町にヘルサレムズ・ロット…色々ありますが、風都が自分の中で不動の1位です。


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第17話「ベストマッチな喫茶店」

令和最初の投稿。あらすじにも入れましたが、新元号に入ったこともあり、pixivでマルチ投稿することにしました。読者増えて欲しいので、切実に…
そしていよいよ、みんな大好きごちうさ編に突入。合流前半もごちうさ編の3話で完了の予定なので、それが終われば一度里とディケイド&承太郎での合流と共闘のシナリオに入ります。


「しかし、なんだここ? 俺、タイムスリップでもしちまったのか?」

 

エトワリアのとある街を歩きながら、困惑気味で見まわす一人の青年がいた。ベージュのコートにジーパンの、準日本人な顔立ちの男だ。

男の名は桐生戦兎(きりゅうせんと)。かつては物理学者としてとある世界の日本にあった研究所に就職していたが、現在は色々あって無職である。前職の関係もあってか、異世界への転移という発想はなかったようだ。

彼には万丈龍我(ばんじょうりゅうが)という相棒がいるのだが、エトワリアに迷い込んだ時にはすでに行方知れずであった。

 

「万丈のバカが問題起こしてないかも気になるし…しかし腹減ったなぁ…ん?」

 

行方知らずの相棒の身を案じつつ、空腹に苛まれる戦兎。しかし、ふと気になる看板を見つけた。

 

「喫茶店ラビットハウス・出張店? この時代背景で喫茶店なんて概念あるのか?」

 

英字で書かれた看板と、その先にある市場の一角を借りたオープンカフェと思しき物を見て疑問に思いつつ、何か惹かれるものを感じる戦兎。そして…

 

「戦兎なだけにウサギの名を関した喫茶店……ベストマッチだな」

 

そんなこと言いながら、ポケットから出したウサギの絵が刻まれた、小さな赤いボトルを握りしめる。先刻、そのボトルに秘められた力で偶然、掏りの指名手配犯を捕らえて賞金を手に入れたので、食事くらいはできそうだ。そしてそのボトルをポケットに仕舞い、早速ラビットハウスへと足を踏み込む戦兎。

 

「すみません、一人なんですけどいけますか?」

「いらっしゃいませ! お一人様ですね、こちらへどうぞ!」

 

戦兎を出迎えたのは、十代ほどの少女だった。髪はセミロングのストロベリーブロンド、瞳の色は済んだ紫、服装はピンクのマントと羽付帽子、とかなり目立つ容姿だ。

 

(喫茶店員の格好じゃないな…どっちかというと三銃士とか、ああいうイメージのコスプレ、か?)

「あの、失礼ですけどお兄さんって日本人ですか?」

 

戦兎が少女の服装について思案していると、いきなりその少女に声をかけられる。

 

「え、はい。まさかとは思うけど、君も?」

「はい! 私、ココアっていいます。色々あって、この世界エトワリアに召喚されました! 同じ日本人のお客さんが来て、うれしいです」

 

そう、このココアこと保登心愛(ほとここあ)もクリエメイトの一人だ。彼女は元居た世界でホームステイ先の少女や同級生達とエトワリアに召喚され、そのホームステイ先で経営していた喫茶店である、このラビットハウスをこちらでも営業することとなったのだった。

 

(召喚? まさかタイムスリップじゃなくて最近流行りの異世界召喚ってやつか? 仮面ライダーがか?)

 

予想だにしない返答が返ってきて顔を青くする戦兎。実は彼も仮面ライダーなのだが、永夢と同様に渡達とは全く接点がないようだ。

つまり、望まざる異世界への移動ということになる。

 

「……最悪だ」

「へ? 何がですか?」

「ああ、ゴメンゴメン! こっちの話だから…ブレンドコーヒーとホットサンドで!」

 

思わずついてしまった悪態にココアがきょとんとしてしまい、誤魔化すように慌てて注文をする戦兎。

 

「はい、かしこまりました! チノちゃん、ブレンドコーヒーお願い!」

 

しかし何事も無かったかのように他の店員に呼びかけるココア。結構マイペースなようだ。

 

(今、名前呼ばれてたあの子がコーヒー担当か? 美空より年下じゃねえか、アレ?)

 

そして戦兎が視線を向けた先には、ココアに名を呼ばれた少女がコーヒー豆を挽く姿があった。

青みが買った長い銀髪の美少女で、頭に毛玉のような変な生き物を乗っけている。しかしそのチノこと香風智乃(かふうちの)は背が低く、小中学生程度にしか見えない。加えて服装も魔法少女っぽいフリル付きの青と白の衣装という、ココア同様に喫茶店員に見えない格好だ。

 

(異世界召喚で勇者にされた…いや、それじゃ喫茶店なんかやってる場合じゃないよな。もっと別の目的、何か功績を挙げたとかで客人に招かれたとかか? でも一介の喫茶店員、しかも女学生が何を…)

「お待たせしました! コーヒーとホットサンドになります!」

 

色々と思案していると、注文の品を運んできたココアの声が響く。元気のあふれる大きな声だったので、一瞬ビクッとしてしまう。

 

「あ、ごめん。ちょっと考え事してて…(まあ、俺が気にする問題でもないか。さっさと腹ごしらえして、あの筋肉バカを探さないと)」

 

ココアに愛想笑いでごまかしながら謝罪し、しばらく相棒捜索に専念することを決める戦兎。そしてコーヒーを一口飲んでみる。

 

「……あ、美味い」

 

丁寧にローストされた香ばしい風味と、すっきりした酸味、深みのあるコクと苦み。とてもバランスの取れた、実に美味な一品だった。

 

「ですよね! これ、自慢の妹が淹れたんですよ」

「へぇ、姉妹で店やってるんだ。スゴイね」

「お客さん、私たち姉妹じゃないです。姉という立場に憧れるココアさんが、勝手に言っているだけなので」

 

戦兎がココアの言葉に感心していると、件のチノからツッコミが返ってきた。その言葉に苦笑するココアの様子から、チノの言うことが本当らしい。

しかしその様子に、戦兎は思うところがあったのか、気づいたら声をかけていた。

 

「まあ、いいんじゃない? 姉妹だろうが友達だろうが、深い繋がりなら大事にしなよ」

「えへへ。お客さん、ありがとう。それじゃあ、仕事あるから失礼しますね」

 

そして笑顔で離れていくココアの様子に満足した戦兎は、ホットサンドにかぶりつく。しかしその直後、それは起こった。

 

「魔物だぁああああああああ! いきなり魔物が湧いてきたぞぉおおおおおおおおおお!」

 

その叫び声を聞いて食事を中断する戦兎。その先にいたのは、なんと斧を持った牛頭の怪物が数匹。まさに地球の神話に登場する、ミノタウロスそのものだ。

 

「え? ねぇ、異世界って普通に街中に魔物とか出てくるものなの?」

「そんなわけないです! 皆さん、逃げてください!!」

 

思わず呆けてしまう戦兎がチノに問いかけると、慌てた様子で否定する。そしてお客たちに呼びかけ、避難を促した。戦兎としても、自身の掲げる信念から放っておけないと感じて問いかける。

 

「中々にヤバそうだが、何か手伝おうか?」

「大丈夫です。ここに召喚されて魔法も使えるようになりましたから」

「うん。ライネさんもいるし、時間稼ぎできれば食い止められるかも」

 

そう言い、チノはティーポットのような何かを宙に浮かべる。ココアも、太陽のような形の鍔をした剣を取り出して店を出た。一応、戦兎も後を追っておく。

そんな中、ココアの視線にある者が引っかかる。それは、長い黒髪に豊満なスタイルの美少女で、白と緑を基調とした服装だ。それがミノタウロスから、息を切らしながら逃げている様子だった。

 

「千夜ちゃん!? まさか、逃げ遅れたの!?」

「まさか、友達か?」

「はい。ココアさんのクラスメイトの、宇治松千夜(うじまつちや)さんといいます。さっき話していたライネさんと買い出しに行ってたはずなんですが…」

 

まさかのココアたちの友人ということだったが、なんと千夜は躓いてしまった。

 

「千夜ちゃん!?」

「くそ、最悪だ!」

 

戦兎は悪態をつきながら千夜の救出に乗り出そうとするも、直後に誰かが凄まじいスピードで千夜に駆け寄り、抱きかかえて一気に跳躍した。

 

「あれ?」

「もう大丈夫です。ケガはないですか?」

 

千夜を助けたのは、一人の少年だった。

緑っぽいボサボサの黒髪に楕円形の大きな目、そばかすといった冴えない感じの地味目な少年だった。それがすごい俊敏な動きで、千夜を救出したのであった。

 

「ええ、大丈夫よ。貴方は?」

「雄英高校ヒーロー科一年A組の緑谷出久(みどりやいずく)、ヒーローネーム・デクです。状況はわかりませんが、非常事態と見て救助活動に入らせてもらいました」

 

自己紹介する少年、出久はポケットから免許証を取り出して見せてくる。学校のヒーロー科という奇妙な単語に首を傾げる千夜だが、仮免と書かれていたそれを見るに本当のことらしい。

 

(また別のクリエメイトさんかしら? でも、男の子って聞いたことないわね…)

「千夜ちゃん! それとそこの君、危ない!!」

 

千夜が思案していると、ココアが叫ぶ声が聞こえたので見てみる。すると、いつの間にかミノタウロスが迫ってきており、手にした斧を振り下ろそうとしていた。

 

「緑谷、油断しすぎだぞ」

 

直後に響いた低めの少年の声と同時に、なんとミノタウロスの全身が氷漬けになった。すると一同の視界に、髪の色が左右で赤と白に分かれた少年がいる。声の主でこの攻撃を行った、張本人のようだ。

 

「ゴメン、轟君。それと、ありがとう」

「ったく…はじめまして。雄英高校ヒーロー科一年A組の轟焦凍(とどろきしょうと)。ヒーローネームもショートで通っています。先日、仮免取ったばかりですが、腕には自信ありです」

 

近寄ってきた少年も出久と同じ所属を名乗ってきたことから、仲間のようだ。一方、戦兎は現れた少年二人の言動から、思案に入ることとなる。

 

(また別の平行世界から、ここに飛ばされて来たっぽいな。しかも今の言動からして、ヒーローが職業化している……なんかとんでもねぇことに巻き込まれてねえか?)

「デクくん! 避難誘導済ませてきたよ!!」

 

思案している傍で、突然ココアの声で誰かに呼びかける声がしたので問いかけるのだが…

 

「ココア、いつの間に避難誘導を?」

「え? 知らないです……っていうか、喋ってないよ?」

「あ、ごめんなさい!ウチです!!」

 

ココアも困惑気味な中で返してきたのは、丸顔丸目でショートボブの茶髪な少女だった。声色は非常に似ていたが、容姿は別物だ。

 

「あ、初めまして。雄英高校ヒーロー科一年A組の麗日(うららか)茶子(ちゃこ)、ヒーローネーム・ウラビティいいます」

「あ、どうも。私は保登心愛、そこでやってるラビットハウスって喫茶店でバイトしてるよ」

「あ、そうなん? じゃあ、この場片付いたらご飯でも…」

「いいよいいよ。私、あって3秒で友達がモットーだから、是非に!」

 

しかし件の少女お茶子は、あって早々にココアと名乗り合って、すぐに仲良さげにしていた。ココア自身も語ったモットーもありそうだが、何かシンパシーのようなものを感じたようだ。

 

「二人とも、雑談するのは後にしときなよ」

 

直後に戦兎の声が響くが、なんと彼がミノタウロスの顔面を殴り飛ばしている光景が、ココアとお茶子の視線に映った。左手には、あの赤いウサギが刻まれたボトルが握られていた。

 

「うへぇ、硬いな。あいつが筋肉バカなら、こいつは筋肉の塊だな……」

「そこの人、危ない!」

 

その直後、今度は出久が叫ぶ声が聞こえる。戦兎が振り返ると、そこには別のミノタウロスが迫ってきてるのが見えた。

 

「大丈夫大丈夫っと」

 

しかし戦兎は余裕の表情でボトルを振ると、なんと凄まじいスピードで走りだし、そのままミノタウロスの背後を取ってしまう。そして足払いしてミノタウロスを横転させた。

 

「今がチャンスだ、やれ!」

「あ、はい!」

 

そして戦兎の呼びかけに出久は答え、一気に跳躍。そしてそのままミノタウロスに飛び掛かり…

 

「セントルイススマッシュ!」

 

技名を叫んで必殺の蹴りを頭部に叩き込んだ。その衝撃でミノタウロスは角を折り、意識を闇の中へと沈めていく。見た目の反して、かなり高い身体能力だ。

 

「ごめんなさい、使わせてもらいます!!」

 

その一方で、お茶子が近くに置いてあった樽に指を当てたと思いきや、叫びながら思いっきり蹴飛ばした。すると樽はサッカーボールのように勢いよく飛んでいき、そのまま最後のミノタウロスにぶつかった。

 

「ココアちゃん、今だよ!!」

「オッケー、お茶子ちゃん!!」

 

そしてお茶子の呼びかけにココアが答え、剣でミノタウロスを切り伏せた。即興にしてはなかなかの連携だ。

 

「だったら私達も…」

「負けてらんねぇな」

 

そして最後の一体にチノが、あのティーポットのようなものを触媒に魔力弾を発射。それで怯んだ隙に焦凍が凍らせて無力化。見事に、ミノタウロス達は鎮圧されたのだった。

 

「揃って、戦い慣れてるんだな。結構やるじゃないか」

「まあ、こっちでも魔物退治はよくやっていますから」

「俺もヒーロー科の生徒なんで…魔物? 生物兵器じゃなくてか?」

 

戦兎が感心していると、チノと焦凍がそれぞれ返す。しかしその一方、焦凍はチノの口にした単語に引っかかる。

 

「ココアちゃんって、何処のヒーロー科に通ってるん? 剣なんて使うヒーロー、見ないけど…」

「ヒーロー? 違うけど、っていうかお茶子ちゃん。ここ異世界なんだよ」

「はい?」

 

一方、ココアとお茶子も会話に引っかかりが生じる。

 

「出久君って言ったかしら? スゴイいい動きしてたけど、どういう特訓したのかしら? それとも、魔法?」

「特訓っていうと、個性のコントロールを指南受けたり自分で研究したり…って、魔法?」

「個性? 性格の話じゃないと思うのだけど…」

 

やはり、千夜と出久も会話に引っかかりが生じる。少なくとも、このヒーロー予備軍の少年たちは、異世界にいるというのに気づいていないらしい。

そんな中、一人冷静なうえに年長者な戦兎が、提案をして皆を落ち着かせる。

 

「まあ、細かい事情の説明、いると思うけどな俺は。いったん、ラビットハウスに戻るのがいいと思うぞ」

「いいけど……あんたは?」

「そういえば……手伝ってもらいましたが、まだ名前も聞いてませんでしたね」

 

そんな戦兎の提案に乗る焦凍だが、まだ名も知らない不審人物という目で戦兎を見る。チノもそれを聞いて思い出したように、問いかける。

しかし戦兎は嫌な顔一つせず、おどけた様子で自己紹介を始めた。

 

「俺は桐生戦兎。てぇんっさい!物理学者さ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「まさか、異世界召喚なんてベタなファンタジー設定……ガチであるとはな」

「俺からしたら、そっちのいた世界の方がびっくりだよ。”個性=特殊能力”って認識がさ」

 

焦凍と話している戦兎は、彼らの世界がある意味じゃ仮面ライダーよりもとんでもないことになっている世界という認識だった。

人間が進化の果てに超能力の類に目覚める、それによるヒーローの職業化、これだけなら割とSFでありそうだった。問題はそれが世界人口の8割にまで発展し、能力を”個性”と称するほどに一般認知されているという件である。力の強弱に個人差はあれど、日常でいつ能力バトルが勃発するかわからないような状況である。

さらに深い話を聞いてみると、まだ個性が異能と称されていた最初期の頃”超常黎明期(ちょうじょうれいめいき)”には、力を得た人間の暴走で某世紀末救世主伝のように文明が止まっていた。未来には遺伝と進化の積み重ねで個性がどんどん強力になっていき、人類という種が個性の力で滅ぶという学説がある。等、色々と物騒な話も見え隠れしていた。

 

「これココアちゃんの焼いたパンってほんま? めっちゃ美味しいんやけど!!」

「ありがとう、お茶子ちゃん。さっき手伝ったお礼だから、もっと食べていいよ」

 

その一方、お茶子がココアの自作だというパンを頬張りながら、目を輝かせている。話を聞くと、ココアは実家がパン屋とのことで、店を経営する姉や母の手伝いもあって腕前はかなりのものだ。

 

「はい、こちら黄金の鯱スペシャルになります。助けてもらったお礼だから、遠慮しないで食べてね」

「あ、ありがとう、ございます…(どうしよう。さっき、助けるためとはいえ…お、女の子を、お、おお、お姫様抱っこしちゃった…)」

 

千夜も出久に和スイーツを振舞っているが、一方でかなり赤面しながら視線を逸らす出久。彼は女子への免疫が低いヘタレ野郎なので、さっきの救出劇を思い出して心臓バクバクだった。

周囲のなごみ具合に反して、戦兎と焦凍は情報交換を繰り返している。

 

「そういえば、あんたどうやってあんな俊敏な動きしたんだ? 個性の発生していない世界での、特殊能力って見たが…」

「ああ。それはこいつのおかげさ」

 

そう言い、戦兎は焦凍にあの赤いボトルを見せ、その概要を説明し始める。

 

「俺の世界の、フルボトルって道具。起源は地球外文明って言われているけど、よくわかってない。そしてこれには、生物・無機物問わずにあらゆるものの成分が凝縮されている」

「成分? ていうか、地球外文明って…」

「なんだか、皆さんとんでもない世界に暮らしてたんですね」

 

焦凍がフルボトルの話を聞き、無表情のままギョッとした様子を見せていた。そこにコーヒーのおかわりを運んできたチノも、会話に加わる。

実際、戦兎の地球外文明という説明は厳密には違うのだが、一から説明すると彼の宿敵との因縁なども話さないといけないため、伏せておくことにした。

 

「そしてボトルを振ると成分が活性化し、持っている人間に成分に由来する力を付与する。こいつの場合はラビットフルボトルだから、ウサギの俊敏さが見に付くってわけさ」

「なるほど(なぜそんなものが作られた、とか引っかかる物もあるが……掘り返すのも野暮か)」

 

フルボトルの解説を聞き終えた焦凍は、引っかかりを感じつつも聞き返すことはやめておいた。

そんな中、不意に戦兎は疑問に思ったことを口にしたのだった。

 

「そういえば話は変わるけど、この店ってなんでラビットハウスって名前なんだ?」

「……確かに、猫カフェならぬ兎カフェってわけでもなさそうだな」

「うちで飼っている、アンゴラウサギのティッピーがマスコットだからです」

 

そう言うチノは、頭に乗せている毛玉の生き物を撫でていた。つまり、こいつが兎なのだ。

 

「「……」」

 

一応、アンゴラウサギという品種は知っていた。しかしなぜそんな一般にウサギと聞いて浮かべないイメージの品種にしたのかわからず、フリーズしてしまうのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「くそ…アルシーヴか七賢者が来る前にあんなわけわからん連中に魔物どもを」

 

一方、物陰からラビットハウスにいる面々を不快な様子で見ている人物がいた。ローブで全身を覆っているが、声音から女性ということだけは察せられる。そして先ほどの魔物騒動の犯人のようだ。

 

「見つけた。情報提供、感謝する」

「気にしないで。この町が荒らされるのは、僕にとっても不都合だったからね」

 

その時、声がしたので女性が振り返ると、そこには二人組がいた。

片方は黒い和服とエプロンドレスを合わせたような服と、キツネの面をつけた少女。もう片方は、現代ファッションで青い銃を携えた胡散臭い青年。女性はこの内、前者の方の顔を知っていた。

 

「お前は七賢者……しかも確か、アルシーヴの秘蔵っ子!」

「肯定。我が名はハッカ、国勢調査で町を訪ねていた」

「そして僕は海東大樹(かいとうだいき)、旅のお宝ハンターさ。ちょっとある物を探して町を調査していると、君の悪だくみを聞いてね。神殿とやらの関係者だっていう、彼女に話したのさ」

 

まさかの七賢者出現に、慄く女性。女性はこの計画のため、誰にも悟られないように魔物召喚の魔法陣を仕掛けて回った。しかし、その海東と名乗る男に知られていた。かなり高いレベルの隠形術を持っているようだ。

 

「話を要約すると君は魔術師で、そのアルシーヴっていう一番偉い神官さんに牢屋に放り込まれた恨みがあった。その復讐のために町で騒ぎを起こし、本人をおびき寄せて始末しようとした。これでいいかい?」

「な……そこまで知って…」

「どちらにせよ、貴君はここで拘束する。抵抗するなら、容赦はせぬ」

 

大樹が女性、否・女魔術師の犯行動機などまで把握しており、当の本人は顔を青ざめる。しかもハッカは女性自身が秘蔵っ子と呼ぶだけあり、七賢者でも上位の使い手だ。そのハッカは得物と思しき札を手に、彼女を威圧してきた。

もう後がない。しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで捕まるわけにいくか! いでよ!!」

 

女魔術師は最後の手段とし、新たな魔法を発動した。その時、町の上空に巨大な魔法陣が展開される。そして、その魔法陣からヤバい奴が出てきた。

 

「ぎしゃああああああああああああああああああ!!」

 

現れたのは巨大な鳥型の魔物だった。鋭い目つきと頭頂部の角が目立ち、なんと竜巻を纏っているのだ。超凶暴そうだ。

 

「なんだ、アレ? 新手のミラーモンスターか?」

「否。それが何かは知らぬが、あれはテンペストという魔獣。竜巻を起こす力を持ち、非常に凶暴」

「なるほど……ありがとう、ハッカちゃん」

 

大樹は落ち着いた様子で魔物を観察していると、ハッカがその詳細を告げた。そしてそのことにお礼を言うと、大樹はテンペストに発砲する。

しかし宙を舞うテンペストは非常に素早く、たやすく回避してしまった。

 

「デカいわりに素早いんだね」

「本当ならアルシーヴとこいつを戦わせる予定だったんだが、計画を止められた以上は仕方ない! 部下の貴様やこの街を潰して、間接的な復讐にしてやる!」

 

そして自棄を起こした女魔術師は、大樹とハッカに対してテンペストを嗾けてきた。

しかし直後…

 

「デラウェアスマッシュ・エアフォース!」

『ギェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?』

 

出久の叫び声と同時に、空気弾がテンペストに目掛けて飛んできた。それを食らい、テンペストは広間へと落下していく。

 

「まさか、また魔物が出てくるなんて…」

「しかも、かなりデカい奴みたいだな」

 

すると戦兎と出久を先頭に、一同がこちらへと駆け付けてくるのが大樹たちの視線に入った。

 

「しかし、なんでサポートアイテム持っている状態でこっちに来たんだろう?」

「ファンタジー世界なら、科学的な理屈は通じそうにねぇし……妥当なところで俺達を呼んだ誰かがそう仕向けたとかか?」

「どちらにしても、こっちとしては都合がいいがな」

 

移動しながら会話する戦兎と出久、焦凍の三人。話している出久の手には、先ほどの攻撃に用いたと思しきガントレットを装着していた。出久達は学生寮で寝ていたところ、目覚めたらエトワリアにいたらしい。普通なら着の身着のままいるはずなので、これはあり得ないはずだった。

 

「いい所に増援が来たね。クリエメイト一同に雄英高校の生徒、そして仮面ライダービルド」

「な!? なんで俺達の素性を…」

「仮面ライダービルド? 戦兎さんのこと?」

 

大樹の言葉を聞き、動揺する一同。初対面の筈なのに、自分たちの素性について知っていたのだ。そしてその時、仮面ライダーという聞き覚えのない単語に、ココアも困惑してしまう。

 

「お前、なんで俺のことを知っている? 何者だ?」

「僕のことは後でね。それより、このローブのお姉さんが魔物を呼び出した犯人さ。同機は、アルシーヴってえらい神官さんへの復讐だとか」

「な、こいつ……ああ、そうだよ! 私が犯人さ!」

 

大樹にばらされた女魔術師は、開き直って怒鳴り散らしてしまう。

 

「奴に敗れ、牢屋にぶち込まれた私は、釈放されてからもアルシーヴへの復讐のために研究を重ねた。そのために魔物の使役術、魔獣テンペストの召喚とあれこれ調べてやったが、お前らに魔物を倒され、そいつらにバレてしまった!

だから、もうここから逃げるついでに町をぶっ壊して間接的な復讐に切り替えてやったわけさ!!」

「こいつ……!」

 

余りにも傍若無人な女魔術師の物言いに、一同は怒りの色を見せる。

 

「……最悪だ。どこの世界にも、碌でもない悪党ってのはいるもんだ」

 

一人、呆れながら呟く戦兎を除いて。

 

「え? せ、戦兎さん?」

「俺は許せないっていうより、哀れでなんないよ」

「えっと…どう哀れなんですか?」

 

ココアも出久も困惑の色を浮かべ、問いかけてしまう。

 

「科学の進歩と同時に兵器が発展して、戦争で多くの人が傷つく。でも、そこから過ちに気づいて、人は科学を平和に使うように努力していく。俺たち人類は、その繰り返しで発展を続けた。でも、個人単位ではその過ちを認めない、もしくは気づかないで同じことを繰り返す。それで結果、多くの人が傷ついちまう。そういう奴が何人もいて、彼女もその一人だ」

 

そして今度は、女魔術師を見てはっきり告げた。

 

「わかるか? あんたは自分で世界の敵になっちまってんだよ、哀れ以外の何だってんだ?」

「こいつ、言わせておけば!」

『ギァアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 

ハッキリと告げられた女魔術師は、怒りで戦兎に対して敵意を向けた。そしてそれに合わせるように、テンペストも咆哮を上げる。しかし、戦兎自身は怯むことなく、目の色を憐れみから覚悟のそれへと変えた。

 

「そして俺は、そういう奴から人を守る。正義のために戦うって決めたんだ」

 

言いながら腹部に手回しハンドルの付いたベルト、”ビルドドライバー”を装着した。そして、二つのフルボトルを取り出して構える。一つは赤いラビットだが、もう一つは初めて見る青いフルボトルだ。

 

「さぁ、実験を始めよう」

 

そう言い、戦兎は二つのフルボトルを高速で振り始める。シャカシャカと耳に心地の良い音が鳴り響くが、戦兎の周囲で信じられないことが起こっていた。

 

「え、ええ!? 何これ、なんなの!?」

「数式が浮いている…こんなの個性でも見たことない」

「魔法準基で見ても、これはないですね…」

「どこから突っ込んだらいいのかしら?」

 

無数の数式が実際に戦兎の周囲に浮き上がる怪現象に、一同は困惑してしまう。千夜が一人だけ、的外れなことを言っていたが。

しかし戦兎は気にせず、振り終わったフルボトルの先端を回すと、ビルドドライバーにそれをセットした。

 

【ラビット! タンク! ベストマッチ!!】

 

フルボトルを差し込むと、ビルドドライバーから高らかに掛け声が上がる。しかし、そのフレーズに一同が引っかかってしまう。

 

「うさぎと戦車で……何がベストマッチ?」

「さ、さあ?」

「リゼちゃんが好きそうな組み合わせだね」

「ココアちゃん、その子変わった趣味やね…」

 

ココアが訳あって別行動中の友人で同じラビットハウスの従業員”天々座理世(てでざりぜ)”を彷彿とさせており、そのことにお茶子がツッコんでしまう。しかし他の面々は、差し込んだフルボトルの種類とベストマッチの意味が分からず、困惑していた。

だがここでも戦兎は動きを止めず、ドライバーのハンドルを回し始めた。

 

「な、なんだコレ!?」

「プラモか何か、でしょうか?」

 

直後、なんとプラモのランナーのような装置、”スナップライドビルダー”が生成されて戦兎の体を前後で挟み込むように配置される。そして、それがアーマーのようなものを生成していく。黙り込んでいた焦凍とチノも声を上げて驚くこととなる。

 

【Are You Leady!?】

 

アーマーが完成した直後、覚悟はいいか? そう問いかけるベルトからの音声とともに、戦兎はボクシングのような構えを取ってあの言葉を叫んだ。戦う意思を体現する、あの言葉を。

 

変身!

 

そして直後に、生成されたアーマーが戦兎の体を挟み込み、装着された。

赤と青のストライプボディに、複眼は右に戦車の砲身、左は兎の横顔を模したデザインである。そして腰に左手を添え、右手をフレミングの法則に似た形にして複眼の先端部に近づける。

 

鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!!

 

そして奇妙な口上をドライバーが叫び、変身は完全に完了した。余りの出来事に一同騒然、女魔術師も思わず叫んでしまった。

 

「姿が変わった……何者だお前!?」

「"仮面ライダービルド"。作る、形成するという意味のビルドだ。以後、お見知り置きを」

 

そしてかつてこのライダーシステムを開発した、悪魔の科学者と同じことを言ってのける。そして女魔術師とテンペストに向き合い、物理学者で仮面ライダーな彼を象徴する決め台詞を、ビルドは言ってのけた。

 

勝利の法則は、決まった!




組み合わせた理由
ごちうさは兎繋がりでビルドしかありえないと思ってたので、逆にごちうさが平ジェネForever公開までに参戦しなかったら、ビルドの参戦もありませんでした。
そしてヒロアカは原作者の過去作品”逢魔ヶ刻動物園”でギリ兎繋がり&職業ヒーローの認められた世界とヒーローとしての在り方を語る戦兎は合わせるべき、という考えのもと組み合わせた次第です。

後者の理由でキン肉マンシリーズも考えましたが、戦い方がレスリング一辺倒になってしまうため没にしました。


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第18話「その男、お宝ハンターでライダー」

戦兎「てぇんっさい!物理学者の桐生戦兎はある日、突如として異世界エトワリアへと飛ばされてしまう。そこで出会ったのは、喫茶店ラビットハウスを営む姉妹ココアとチノ…」
チノ「戦兎さん、妹じゃないです」
戦兎「そして超能力が個性と呼ばれるほど一般化した世界から来た、ヒーロー養成学校に通う緑谷出久と友人達だった」
お茶子「ちょ、ウチ等雑に紹介されてない!?」
戦兎「全員紹介してると長くなっちゃうから、仕方ないでしょ。しかしそんな中、突如として現れた筆頭神官アルシーヴに恨みを持つ女魔術師がテンペストという魔獣を呼び、街を強襲!」
焦凍「冗談抜きでマズいな……早くぶっ倒さねえと」
戦兎「そして桐生戦兎は、彼女たちの力となるべく仮面ライダービルドに変身し、立ち向かうのだった!」
出久「しかし、異世界のヒーローって、なかなかすごいですね」
ココア「うんうん! ウサギと戦車って、なんかリゼちゃんが喜びそうな組み合わせだし」
戦兎「…そのリゼって、どんな子なのよ?」


突如現れた魔獣テンペストと対峙し、仮面ライダービルドへと変身した戦兎。その様に驚きを隠せずにいる雄英高校一年A組と、ラビットハウス組。

 

「仮面ライダー、ビルド?」

「そそ。まあ、現役ヒーローってことでよろしく」

 

その名を反芻する出久に対して言いながらビルドは、ベルトから出現した刀身がドリルになっている剣・ドリルクラッシャーを手に、暴れているテンペストへと駆け出す。

 

「よっと!」

 

そして出久にも引けを取らない跳躍力で宙を舞い、ドリルクラッシャーをテンペストの角にたたきつける。高速回転するドリルとテンペストの角がぶつかり合い、火花を立てる。

 

「硬いな……これ、パワー押しじゃないと厳しいか?」

 

ひとり呟いたビルドは、ドリルクラッシャーを引いて角を蹴る。そしてその勢いで距離を取ると、新しいフルボトルを取り出し、それを振り始める。

 

ゴリラ! ダイヤモンド! ベストマッチ!!

 

ベルトに付け替え、再びハンドルを回し始める。するとまたスナップライドビルダーが展開され、新たなアーマーが形成された。

 

 

Are You Leady?

ビルドアップ!

 

そしてビルドが叫ぶと、それが装着されてアーマーのデザインが一新した。今度は茶色と水色のストライプで、右腕だけが肥大化している。

 

輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド! イエーイ!

 

最後にベルトが変身形態の口上を上げ、ビルドは再びテンペストに駆け出す。その一方で、焦凍が今の肩書について一つの考察を上げる。

 

「輝きはダイヤモンドを指すんだろうから、ゴリラがデストロイヤー…破壊者ってことかよ」

「あれ? ゴリラって森の賢人じゃなかったっけ?」

宇希(うき)さんがこの場にいなくて、良かったですね…」

 

そしてその考察を聞いたココアが、ふと疑問に感じることとなった。同じく聞いていたチノも、別の世界から来たクリエメイトが名前から猿やゴリラを連想するため、その本人がいないことに安心していた。

 

「あらよっと!」

『ぎぃいいい!?』

 

一方、フォームチェンジしたビルドは肥大化した右腕でアッパーカットを叩き込み、テンペストをひっくり返す。

 

「テンペスト、逃げなさい! そいつ、なんかヤバい!!」

『ぎぇええええええええええ!!』

 

すると女魔術師が大声で指示を出すと、テンペストは咆哮を上げながら空へと逃げていく。

 

「空に逃げるか。なら、追いかけるまでだ」

 

しかしビルドは、新たなボトルを振って反撃に乗り出す。今度はオレンジとグレーだ。

 

タカ! ガトリング! ベストマッチ!!

 

そして再びドライバーのハンドルを回し、新たなアーマーを形成する。

 

Are You Leady!?

ビルドアップ!

天空の暴れん坊! ホークガトリング! イエーイ!!

 

今度はオレンジとグレーのストライプで、背中に翼を持っている。そして手には小型のガトリング銃・ホークガトリンガーが握られていた。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくる」

 

ビルドは翼を広げて飛翔、上空へと逃げたテンペストを追いかけた。そしてその様を見ながら、呆然とする一同。

 

「すごいね、チノちゃん…」

「はい。ベストマッチという単語からして、たぶん一番相性がいい組み合わせなんでしょうね」

「ああ。さっきのゴリラとダイヤモンドはわかるが、他はどう言えばいいんだろうな?」

「ねえ、みんな…ちょっといいかしら?」

 

ココアやチノ、焦凍がビルドのさまを見て口々に漏らす。しかしその一方、千夜が珍しく不安そうな声で三人に声をかける。その先にいたのは…

 

たぶん、最初のラビットタンクは兎のスピードと戦車の攻撃力を兼ね合わせてるんだろう…ゴリラモンドも見たまんま怪力と硬さの組み合わせ…となれば今のホークガトリングは、飛行能力と飛び道具の組み合わせで広域制圧特化になったんだと思う…他にどんなボトルがあるかはわかんないけど、相乗効果で戦闘力を跳ね上げるのがベストマッチなのか? うん、やっぱりその可能性が高そう。でも、もしかしたら暴走抑制とかそういう組み合わせのベストマッチも…」

「出久君が、さっきからこうなのだけど…」

 

出久が一人でビルドの各フォームの特性についての考察を、一人でボソボソと呟く姿があった。どうやら千夜はこの様に怯えているようだ。

 

「ごめんな。デク君、ヒーローオタクやから興味深いもの見るとすぐこうなるんだ」

「ああ。うちのクラスじゃ、お馴染みの光景だ」

 

そこにフォローを入れるお茶子と焦凍。

一方その頃…

 

「よっと!」

『ぎぃええええええ!!』

 

ビルドはホークガトリンガーの連射で、テンペストにダメージを与えていく。しかし意外とダメージが薄かったのか、そのまま持ち堪えてしまう。

 

『ぎしゃあああああああああ!!』

「うお!?」

 

そして銃撃を耐えながらテンペストはビルドに突撃、その一撃で体勢を崩して地上に降りてしまう。

 

「はははははははははは! やっぱりテンペストは最強の魔獣みたいだね。あんなもので倒せるわけないんだよ」

「ああ…それなりに準備しただけはあるな」

 

ビルドが不利になった様子から、高笑いを上げる女魔術師。しかしその時、ビルドに声をかける一人の少女がいた。

 

「テンペストは風属性の魔獣。故に、炎の力に弱い」

「成る程、いわゆる魔術の四大元素ってやつか」

「なら、こっちのほうがいいか」

 

ハッカからのアドバイスを聞き、納得する焦凍。そして同じくビルドも、新しいフルボトルを準備する。

 

フェニックス! ロボット! ベストマッチ!!

「フェニックスと、ロボット?」

「不死鳥…空想上の動物まであるんだ」

 

まさかの組み合わせにココアと出久は再び困惑することとなった。しかし気にする様子もなく、ビルドは新しいアーマーを生成していく。

 

Are You Leady!?

ビルドアップ!

 

そしてアーマーが換装されると、赤と黒のストライプと化した。そして炎のような揺らめく翼と、万力型の左腕が目立つ。そして挙げられた口上が…

 

不死身の兵器! フェニックスロボ! イエーイ!!

「不死身の…兵器?」

「なんですか、そのパワーワード?」

「…今更だけど、なかなかのネーミングセンスよね」

 

ココア達が予想外の口上に困惑してしまう。その一方で、千夜は独創的な名前の和スイーツを作ることから、一人感心していた。

 

そうか。不死鳥の再生能力に兵器としてのロボットの力を組み合わせる、つまり相反する特性の両立っていうパターンもあるのか。でも、ロボットは今、実用的な物が殆ど…いや、不死鳥なんて出た時点でガン〇ムみたいなものをロボットに優先させたのは納得か? となると、他にどんな組み合わせが…

「縁谷、流石にそろそろやめておけ。実戦の場だぞ」

 

一方、また出久のボソボソ考察が始まったため、状況的に止めに入る焦凍。すると、そこで女魔術師に動きが出た。

 

「隙だらけだよ、小僧ども!」

「しまっ…」

 

そして女魔術師は、ビルドの次に厄介なのが出久と焦凍だと察して飛び掛かってくる。絶体絶命……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱへっ!?」

「みんな、大丈夫?」

 

にはならなかった。突然、エプロン姿の優しげな女性が割って入り、おたまで女魔術師の顔面を強打。そのまま撃破してしまったのだ。

 

「あ、ライネさん」

「さっき、街のはずれにミノタウロスが出てきてね。追い払っていたんだけど、彼女が犯人なようね」

 

チノに名を呼ばれた女性、彼女が同行していたライネであった。いわく、元冒険者で勇者とも呼ばれていた実力者らしい。実際にミノタウロスを迎撃してきたようで、疲労の色が見えている。

 

「その子達の保護者ってところだね。悪いけど、頼みますよ!」

 

そしてビルドはライネにココア達を任せ、自らは炎を纏って再び飛翔。テンペストへと突撃していく。

 

「ほらよ!」

『ぎしゃあああああああああああ!?』

 

そしてテンペストの頭部へと接近し、右腕から放つ炎で炙る。するとテンペストがここ一番の苦痛の声を上げ、ダメージが大きいというのが見て取れた。

 

「確かに効いているな……なら、もういっちょ!」

 

ダメージが通っていることを察したビルドは、再び炎でテンペストを炙る。

 

「そんでもって!」

『ぎしぇえええええええええええええ!?』

 

そしてその焼かれた顔面に、万力状の左腕を叩きつけると、そのまま地面へと落ちていく。

 

「よし、そろそろとどめと行くか」

鋼のムーンサルト! ラビットタンク! イエーイ!!

 

そしてビルドも地上へと向かいながら、再びラビットタンクフォームへと切り替わる。そして着地と同時に、再びビルドドライバーのハンドルを回す。

 

「ちょっと待ってね」

 

そしていきなり、ビルドは走り出した。しかもテンペストのいる方と、逆向きだ。

 

「え、いきなり逃げるんですか!?」

「逃げるんじゃなくて、距離とってんの」

 

驚く出久に返すビルドは、一定の距離を走ると地面を踏み抜き、その時に空いた穴に落ちるのだが……直後に驚くことが起こった。

 

「え、なにあれ!?」

「グラフ……かな?」

「……私も、見たことないわね」

 

どこからどう見ても、グラフにしか見えない物体がテンペストを拘束してしまったのだ。ココアと出久がそろって声を上げ、ライネも困惑気味だった。残りのメンバーも、大口を開けて呆然としてしまう。

そしてビルドが穴から飛び出すと、グラフの放物線に乗りかかった。

 

Ready Go! ボルテック・フィニッシュ! イェエエエエエエエイ!!

 

そしてベルトからの音声と同時にビルドは放物線を滑り、右足でテンペストの顔面にキックを叩き込む。右足の裏にキャタピラが敷かれており、それがテンペストの嘴を抉り、そしてついに頭部を貫いた。

 

ドォオオオオオオオオオオオオン!!

そしてテンペストは肉体を爆発四散させ、完全にその痕跡は残ってはいなかった。そしてその場には、ビルドが立っているのみ。

 

「す、すごい……」

「かっこいい……」

(強いんだな。経験も能力も、それなりに高いみてぇだ)

 

一同はビルドの強さに騒然とする。焦凍が一人で思案していたが。そんな中、ビルドがこちらに視線を向けてきた。

 

「なんとかなったな……みんな、大丈夫か?」

「ええ、おかげさまで」

「あの悪い人も、ライネさんが何とかしてましたので」

「戦兎さん、ありがとう」

「私からもお礼を言うわ。この子たちを守ってくれて、ありがとう」

 

そのままラビットハウス組とライネにお礼を言われるビルド。

 

「気にしないで。俺は、ラブ&ピースのためにヒーローやってるからね」

 

それに対し、自分の信念を語りながら答えるビルド。その一方で…

 

そうか。ああやって固定すれば、衝撃の逃げ場が無くなって威力が大きくなるんだ。戦兎さん、物理学者って言っていたけど、それだけに理に適った攻撃をするんだな。となると他のベストマッチも…

「デク君、いつもよりハッスルしてない?」

「異世界のヒーローだしな。案外、仕方ねえのかもしれねえ」

 

また出久が暴走を起こしていた。一応、今回は焦凍がフォローを入れていたが。しかし、そのとき一人の男に動きがあった。

 

「流石は地球外文明を解析したライダーシステム……この世界のお宝や聖なる遺体にも勝るお宝だ」

 

そう。先ほどハッカとともに現れた謎の男・海東大樹だった。

 

「そういえば忘れてたけど、あんたは?」

「僕は海東大樹。通りすがりのお宝ハンターで…」

 

ビルドの問いかけに答える大樹は、シアンカラーにバーコードの意匠があるマスクの戦士が描かれたカードを取り出す。

そして、あの名を名乗ったのだ。

 

「またの名を”仮面ライダーディエンド”さ」

「仮面ライダー……戦兎さんの仲間?」

 

そしてココアの疑問を余所に、手にした銃・ディエンドライバーを展開し、そこに例のカードをセットした。

 

【Kamen ride】

変身

 

そして海東は銃口を頭上へ向け、そのフレーズを口にした。そして発砲。

 

Diend!!】

 

 

ライダー名を告げる電子音声とともにエネルギーが飛び上がり、ディケイドのものと似た残像が海東の体を覆う。そしてシアンを基調としたアーマーが体を覆うと、撃ちだされたエネルギーがバーコード上のパーツとなって、顔のマスクに装着された。

カードに描かれたあの戦士”仮面ライダーディエンド”が現れた。

 

「実は、俺には平行世界の知り合いがいてね。その世界には俺の装備と異なるシステムの仮面ライダーが何人もいるんだ」

「え? つまり、この人はその一人ってことですか?」

「まあ、ビルドともエグゼイドとも違う世界のシステムなんだけどね。というわけで……」

 

ビルドからの言葉に驚く出久と、それに対して答えるディエンド。しかし彼は少し間を置き…

 

「君達の力、お宝に値するかを確かめさせてもらうよ」

 

銃撃を仕掛けてきたのだ。

 

「ふっ」

 

しかし直後、ハッカが札を投げてバリアを発動する。それでどうにか銃撃は防げたようだ。

 

「ハッカちゃん、どういうつもりだい?」

「クリエメイトに傷をつけるのは、如何なる理由があろうと見過ごせぬ。アルシーヴ様のためにも、貴殿を排除する」

 

ディエンドとの問答の末、ハッカは札を投げて攻撃してきた。ディエンドの方も、銃撃で応戦してきた。

 

「アルシーヴって……確かきららさんが対立していた?」

「みたいね。クリエが狙いなら、確かに傷つける訳にもいかないだろうし」

「アルシーヴにクリエ? なんだ、それ?」

 

ハッカがこちらを守る行動をとったことに、困惑するチノとライネ。その時に会話に引っかかった焦凍が問い尋ねる。

 

「実はココアちゃん達のいた世界での出来事は、この世界を統治する女神ソラ様が観測して聖典に書き記している世界なの」

「なんでも、それを読むことでクリエという力を供給して、この世界の人たちは生きているそうです。で、アルシーヴというのは女神様に仕えている神官さんだそうです」

「……予想外すぎて、ぶったまげたな」

 

二人からの返答に、思わず驚く焦凍。相変わらず、無表情だが。

その頃、ハッカと交戦していたディエンドは…

 

「やれやれ。このままじゃビルドの力を試せないし、やるか」

 

すると、ディエンドは何枚かの仮面ライダーが描かれたカードを、ディエンドライバーにセットする。

 

【Kamen Ride Ryuuki!!】

【Kamen Ride Saiga!!】

【Kamen Ride Garren!!】

【Kamen Ride Ixa!!】

 

カードのセットを終えると、ディエンドライバーの引き金を引くディエンド。すると、それによって4人の仮面ライダーが召喚された。

 

「仮面ライダーを、召喚した?」

「な、なんかいっぱい出てきたよ!?」

「こ、今度はさっきよりマズそうな…」

 

ビルド達が驚いていると、仮面ライダー達に動きが出始める。

 

「しゃあ!!」

 

ディケイドがエトワリアでの初戦で変身した一人、”仮面ライダー龍騎”。

 

「It's showtime!」

 

ジェットパックを装備した、ギリシア文字のΨ(プサイ)を模した白いボディの”仮面ライダーサイガ”。

 

「俺の体はボロボロだ!!」

 

赤いボディにトランプのダイヤマークを模した”仮面ライダーギャレン”。

 

「その命、神に返しなさい」

 

十字架の意匠をマスクに持つ白いボディの”仮面ライダーイクサ”。

そして四体の仮面ライダーを召還したディエンドは…

 

「行け」

 

その仮面ライダー達をこちらへとけしかけてきた。

 

「うそ、襲ってきた!?」

「仕方ねぇ、戦うぞ!」

 

そして一同は、否が応でもなく戦うことになってしまった。

 

「コールに似た技……不覚の極み」

「ハッカちゃん、よそ見している場合じゃないよ?」

 

その一方で、ハッカもディエンドとの戦闘を続けることとなる。

 

~ビルドVS龍騎~

「はぁあ!」

「うぉっと」

 

襲ってきた龍騎のパンチを、咄嗟にビルドは回避する。

 

「危ないな、おい!」

 

そして反撃にドリルクラッシャーを振るう。しかし龍騎もバックステップで回避してしまい、代わりに手に装備された東洋流の頭部を模した装備”ドラグバイザー”にカードをセットする。

 

【Sword bent】

 

無機質な電子音声とともに、龍騎の手に一振りの剣が握られる。柳葉刀のような形状の”ドラグセイバー”だ。

 

「カードで武装を呼び出すシステムか……なるほど」

「しゃあ!」

 

そしてビルドは龍騎のライダーシステムを分析しながら、回避に専念する。動きにどこか無機質な様子が見え、同時にビルドの中である仮説が立つ。

 

「みんな! おそらくこいつ等は、人形みたいなものだ! 本物の人間が変身したライダーじゃないから、遠慮なく戦え!」

「おらぁあ!!」

 

そして周りに呼びかけながら龍騎の剣戟を回避する。しかしその一方で、反撃の準備をしていた。

 

【オクトパス! ライト! ベストマッチ!】

 

新しいベストマッチに使うフルボトルをセットしたビルドは、ビルドドライバーのハンドルを回す。そして新しいアーマーがスナップライドビルダーに生成される。

 

【Are you Ready!?】

「ビルドアップ!」

【稲妻テクニシャン! オクトパスライト! イェーイ!】

 

新たなベストマッチは紫と黄色のストライプで、右左の肩にそれぞれ、タコの触手を模したパーツと電球上のパーツが装備されている。

 

「手数で翻弄してやるから、期待してろ……って、自我がないなら無理か」

「おらぁあ!」

 

ビルドの投げた言葉にも特に反応せず、剣を振り続ける龍騎。そんな相手に対して、ビルドは距離をとって左肩から電撃を放った。

 

「ぐぁあ、くぅう!?」

【Gurd Bent】

 

しかし電撃を食らいながらも、龍騎は新しいカードを使って巨大な盾を召還。それで残りを防いでしまう。

 

「厄介だな。武装のカード化でいくらでも手数を用意できるってのは」

 

その様子に悪態をつきながらも、今度はタコの触手を伸ばして龍騎から盾を奪いにかかるビルド。そのまま戦闘を続行するのであった。

 

~ライネとお茶子と千夜VSサイガ~

Either you, or me(決着をつけよう)!」

「妙にテンション高いわね、彼」

「でもさっきの戦兎さんの言葉が本当なら、遠慮なくやれる!」

 

英語でハイテンションなしゃべり方のサイガと対峙する、ライネとお茶子。

その二人だが、サイガの軽やかな蹴り主体の体術を慣れた様子でいなす。元腕利き冒険者のライネと、職業体験で武闘派ヒーロー”ガンヘッド”から戦闘指南を受けたお茶子。揃って戦闘慣れしているのだった。

 

「千夜ちゃんはあんま慣れてないから、そこに避難してて!」

「そうさせてもらうわ。代わりに、回復は任せて」

 

千夜を安全圏に逃がして、お茶子は近くの木箱に指先を当てる。すると、先ほどの樽同様に軽々と持ち上げてしまった。

 

「私たちの世界には個性って呼ばれる特殊な力があって、私のは指先で触れた物から重力を消すゼログラビティっていいます!」

「なるほど、使い勝手いい力ね」

「ただ、使いすぎると酔ってしまうんで多用はできませんが!」

 

そしてライネに自身の個性を説明するお茶子は、そのまま木箱をサイガにぶん投げる。しかしその直後、サイガが宙に舞った。背中のジェットパック”フライングアタッカー”を使用したのだ。

 

「Enjoy! Come on!」

 

そしてそのまま加速して突撃していった。

 

「うぇ、ちょ!?」

「隙が無いわね…」

 

二人はぎりぎりで回避することができたが、そのままヒット&アウェイ戦法で再び突撃していくサイガ。反撃のチャンスが見えず、膠着状態となってしまう。

 

~焦凍とチノVSイクサ~

「その命、神に返しなさい」

「こいつ、さっきからこればっかりだな」

「人形という戦兎さんの言葉、間違いなさそうですね」

 

焦凍とチノは目の前で同じセリフを繰り返すイクサに、構えを取る。するとイクサが拳を振りかぶって来た。

 

「だったら、遠慮はいらねえな!」

 

すると焦凍が回避すると、直後に掌から炎が凄まじい勢いで放たれ、それにイクサも飲まれた。しかしそれでチノは疑問が生じてしまう。

 

「あれ? 焦凍さんの個性って、氷の力じゃ…」

「そういえば、説明してなかったな。俺の個性の正式名称は”半冷半燃”。右手から冷気を、左手から炎を発するって代物だ」

「な、なんかすごいの来ました……」

 

予想外の強力な個性に、思わず驚いてしまうチノ。しかも説明中も炎を放ったままで、イクサが完全に倒されるのを確認するまで油断しない、というのが見て取れた。

 

「ひざまずきなさい」

「何!?」

 

しかし炎の中から、剣を手にしたイクサが飛び出してきたのだ。思わず、驚いて攻撃を中断してしまう。

 

「焦凍さん!」

 

咄嗟にチノが放った魔法が命中し、イクサは体勢を崩す。

 

「その命、神に返しなさい」

 

だがすぐに体勢を立て直し、再びこちらに向き合ってくる。そして手にした剣・イクサカリバーを向けてきた。

 

「あんまり堪えてねぇな」

「しかもさっきからこの言動……宗教家なんでしょうか?」

「モデルがいんのかもしれねえな」

 

イクサの言動に思わず場違いな疑問を浮かべてしまう二人。しかしその時、イクサが攻撃に乗り出そうとする。ベルトの腰部から、何か小さなパーツを取り出し、ベルト正面にセットする。

 

【イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・アッ・プ】

 

すると、イクサのベルトから電子音声が流れ、イクサカリバーの刀身にエネルギーが間と割っていく。

 

「まずい!」

 

しかし焦凍が咄嗟にイクサを氷漬けにしようと地面に冷気を放つ。しかしイクサはバックステップで回避すると、先ほどまで立っていた場所に巨大な氷柱が生える。

 

「なら、このまま…!」

 

そしてそのまま冷気を放出し続け、巨大な氷の壁を生成する。即席の防壁を築き上げてしまったのだ。凄まじいパワーである。

 

「焦凍さん、いろんな意味ですごいです…」

 

あまりのパワーに驚くチノだが、直後にイクサが仕掛けた。

 

「ふん!」

ズバッ!

「なに!?」

「切……った?」

 

なんとイクサの必殺の斬撃は、巨大な氷柱も氷壁も切り裂いてしまったのだ。必殺技そのものは防げたが、防壁は一瞬で破壊されてしまった。

 

「ひざまずきなさい」

「仮面ライダー……マジで何なんだ?」

 

思わず悪態をつく焦凍だが、それで状況が好転するとは考えづらい。

 

~出久とココアVSギャレン~

「俺の体はボロボロだ!」

「じゃあ、戦わないでくださいよ!」

「そうだよ! 無理して怪我でもしたら……」

「俺の体はボロボロだぁあああ!」

 

ひたすらそのセリフを叫びながら突撃していくギャレンに、思わず心配してしまう出久とココア。しかし言っている割には戦闘の意思は強い様子だ。

これは一重に、オリジナルのギャレン変身者”橘朔也”がライダーシステムの不備で、実際に体がボロボロになってしまったことに起因していると思われる。

 

「オデノカラドハボドボドダぁあああ!」

 

段々と呂律が回らなくなり、ものすごく聞き取りづらい。しかしそれに合わせてギャレンのパンチラッシュが激しくなっていく。

 

「ココアさん、ごめんなさい!」

「へ? きゃあ!?」

 

そんな中、出久は思わずココアを先ほどの千夜同様にお姫様抱っこ。そしてそのまま、個性を発動した。

 

(ワン・フォー・オール、フルカウル!!)

 

そして全身の身体能力を満遍なく強化し、一気に跳躍してギャレンをかく乱し始める。

 

「あのままじゃあ、場慣れしてないココアさんは厳しいと思ったんで……だからかく乱したらココアさんを安全圏に置くんで、一対一で行こうかと」

「ええ……でも、それだと出久君が危ないような…」

「ヒーロー志望なんで格好つけさせて……ぐ!?」

「出久君!?」

 

移動中、会話しているといきなり出久が苦悶の表情を浮かべだす。いったん静止し、二人が振り返ると…

 

「オデノカラダハボドボドダァアアアアア!」

「銃!?」

 

なんとギャレンが銃を片手にこちらへ駆けてくる姿が見えた。これがギャレン専用武器”ギャレンラウザー”だ。すると迫ってきたギャレンを見据えたココアが、剣を抜いて構える。

 

「出久君、逃げられそうにないしこのまま迎え撃つね!」

「え、ココアさん!? 一応、金属仕込んでた床に当たったから平気なんだけど…」

 

出久が説明する一方、ギャレンラウザーに付けられたカードの束を広げ、その中から三枚抜き取る。

 

【ドロップ! ファイヤー! ジェミニ!】

 

そしてそのカードをラウザー側部のカードリーダーにスキャンすると、カードの絵柄が浮き出てギャレンの体に重なった。描かれていたのはクジラ、尻に火のついた虫、シマウマの動物三種だ。

 

【バーニングディバイド!】

 

するとギャレンラウザーから技名と思しき電子音声が流れ……

 

「小夜子ぉおおおおおおおお!」

「「誰!?」」

 

聞き覚えのない名前を叫びながら飛び上がる。すると、なんと空中でギャレンが二人に分身したのだ。そして二人のギャレンは両足に炎を纏わせ、出久達に襲い来る。

 

「やばい! 避けられ……」

 

そして二人に必殺技が迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

Ready Go! ドラゴニック・フィニッシュ! イェエエエエエエエイ!!

オラァアアアアアアアアアアアア!!

 

いきなり誰かが割って入り、キックで二体のギャレンをまとめてぶっ飛ばしたのだ。そしてそのまま、ギャレンは二人とも消滅する。

出久とココアの二人、そして今の声を聴いたビルドがその人物を見る。

 

「え?」

「仮面、ライダー?」

 

現れたのはドラゴンを模した仮面ライダー、それもビルドと同じビルドドライバーで変身するタイプだ。しかしデザインはビルドと異なり左右対称、同じドラゴンモチーフの龍騎が赤と銀なのに対し、こちらは青と金だ。

 

「おいおい……遅いんだよ、万丈!!」

「戦兎、元気そうじゃねえか」

 

この仮面ライダーに変身する人物こそ、行方不明の万丈龍我である。

 

「えっと、戦兎さんのお仲間…ですか?」

「ああ、俺の名は万丈龍我。またの名を……」

 

そして出久の問いかけに答える龍我、改め……

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダークローズだぁああああああああああ!!

 

クローズは、そのままビルドと対峙する龍騎へと突撃していったのだった。




ようやく書けた……で、今回はビルド編なので、前書きにあのやり取り入れてみたんですが、どうでしょう? フェニックスロボが必殺技以外で普通に飛んでますが、ご都合主義ということでよろしくお願いします。
次回は万丈の側の話に触れてから決着の予定なので、どうぞお楽しみに。

P.S.ケボーンダンスをPetit Rabbit'sに踊ってほしいと思う今日この頃。


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第19話「無限の回転とプロテインの貴公子」

戦兎「仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、魔獣テンペストを撃破するも、そこに海東大樹と名乗る謎の男が現れた」
大樹「そしてその僕が、君たちの力を試すべく、仮面ライダーディエンドに変身して戦闘開始だね」
戦兎「ちょ、あらすじに割り込んでくるんじゃないよ! あんたとは敵同士なんだから!!」
大樹「細かいこと言わないの。そしてその僕がビルドやクリエメイト、そして雄英生の力を試すべく召喚したライダー達を嗾けたのが、前回の話」
出久&ココア(しかも続けるんだ……)
龍我「そしてそんなこいつらのピンチを救ったのが俺、仮面ライダークローズ。またの名を……」
チノ「戦兎さんの仲間の仮面ライダーですか……って、またの名?」
龍我「ああ。またの名を"プロテインの貴公子・万丈龍我"だ!」
チノ&焦凍&お茶子(だ、ださい……)
千夜(……新メニューの名前の参考になりそうね)
克己「つーか、そろそろ俺の出番よこせや……」
天哉「爆豪君、今回で俺達も来るからもう少し我慢したまえ」
戦兎「ああ、あらすじ紹介の大半を持っていかれた……」
ジョニィ(ぼくも今回から出てくるんだが……忘れ去られたか?)


戦兎がラビットハウスを訪れたのと同じ頃

 

紫の髪をツインテールに纏めた、軍服をファンタジー風にアレンジした格好の少女が街道を進んでいた。彼女が何度か話題に出ていたココアの友人、リゼこと天々座理世(てでざりぜ)である。その後ろに金髪碧眼で癖毛の少女、シャロこと桐間紗路(きりましゃろ)はリゼの学校の後輩だ。

なぜ二人はココア達と別行動中なのかというと、それは彼女らが一緒に行動している別のクリエメイトのチームの頼みによるものだった。

 

「まさか、成り行きで魔物退治に付き合うことになるとはな」

「ごめんね、リゼちゃん…」

「別に気にしてないさ、花名。友達の頼みなら当然だ」

「いやぁ、リゼちゃんはナイスバディだけど太っ腹ですねぇ」

「な、何を言ってるんだ!?」

「こらこら、あんまりからかわない」

 

リゼに話しかける二人の少女、おとなし気な一ノ瀬花名(いちのせはな)とハイテンションなツインテールの百地(ももち)たまてだ。その後ろにたまてを諌めながらも、小悪魔っぽい雰囲気の十倉栄依子(とくらえいこ)。その影に隠れるように寄り添う、チノよりも小柄な千石冠(せんごくかむり)がいる。

花名達は里で開店したラビットハウスのエトワリア1号店でココア達と仲良くなり、今回の出張店の話を聞いて遊びに来た。しかしその道中で野生のクロモンに栄依子からもらったアクセサリーを取られてしまったという。だが後を追うと、魔物の大群が住み着いている洞窟に入ってしまったという。

そしてそれを取り戻せないか相談すると、リゼ達が名乗りを上げたという次第だ。ちなみにリゼは父が軍人ということから、射撃やCQCの心得があるとか。

 

「リゼちゃん、そろそろだと思うんだけど…」

 

そして花名が魔物に逃げられた一帯へと近づいたのを告げたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそが、くたばりやがれ!!」

「マジで何なんだ、こいつら!」

「知らんが、まさか脳無のような生体兵器の類か!?」

「そっちの事情は知らないが、僕らの共通の敵っていうのは間違いないな!」

 

その一帯で四人の男達が、魔物の群れを相手に激戦を繰り広げている光景だった。

まず金髪で目つきの鋭い少年は、手のひらから爆炎を放ち、ピエロのような姿の魔物ワラバカシを焼き尽くしている。しかもその力を推進力に使っての緊急離脱や急接近、至近距離での爆破、爆炎を飛び道具に使うなど、幅広い使い方をしている。一つの力を多種多様に使うその様子は、高い戦闘センスが見て取れた。

 

次に白と青を基調としたスカジャン姿の成人男性。彼は手にした青いボトル、"ドラゴンフルボトル"持った手で襲ってきた半魚人型の魔物”うおのたみ”を殴り飛ばす。直後にパパリザーという竜人タイプの魔物が襲ってくるが、振り向かずに攻撃を回避し、振り返りながらその勢いでフックを叩き込んだ。そしてそのまま、パパリザーの大群に飛び込んでいく。

こちらは格闘技経験があるのが見て取れ、それもかなり高水準に達しているようだ。

 

そして眼鏡の偉丈夫が、凄まじいスピードで周囲を疾走する。その速度は肉眼では視認するのが困難なレベルで、それで魔物の群れ全体をかく乱しつつ、蹴り主体の攻撃によるヒット&アウェイ戦法で戦っている。

よく見ると、脹脛から車やバイクのマフラーを思わせるものが生えており、これがスピードに由来するのかもしれない。

 

最後に、蹄鉄のような飾りがついた帽子を被る青年と、その傍でチュミミーンと鳴く赤子のような奇妙な姿のスタンドと思しき何かだ。彼は左手で指でっぽうを作ると、指先から何かを撃ち出してクラゲ型の魔物スケジェルンを撃墜する。膝をついたままの様子から、どうやら足を負傷しているらしい。そのため、ひたすら援護に尽くしている。

そしてその傍には、同じく負傷した白い馬がいる。鞍がついていることから、青年が乗っていたと思われる。

 

「な、なんかスゴイことになってるんだけど…」

「まあそれはともかく……イケメンパラダイスってやつですかね!」

 

栄依子が珍しく顔を引きつらせ、たまても顔を引きつらせつつも誤魔化すようにおどけてしまう始末だ。人見知りの激しい冠も見知らぬ男、特にあの金髪少年の苛烈さに怯えてしまっている。

 

「言ってる場合か! 数の差があるんだ、加勢するぞ!!」

「そうよ、リゼ先輩の言う通りだわ!」

 

結果、一同はそのまま魔物の群れと乱闘する男達に加勢することとなる。

 

「はぁあ!」

 

そして手始めに、リゼが手にした槍でジャケットの青年の背後にいたパパリザーを切り倒す。それに続いてシャロがフラスコを投擲、パパリザーの群れを牽制した。

 

「そこの人、私たちも加勢するぞ!」

「あ、餓鬼か? いや、やめておけって! 危ねぇぞ!」

 

しかし加勢に来た2人に対し、それを拒む発言をするスカジャンの男性。この事態での発言に、シャロが思わず反論する。

 

「いや、貴方だって危ないんだから手を借りた方が……」

「そうじゃ……って、離れろ!!」

 

そして青年が叫んでリゼとシャロを突き飛ばし、自身もその場から飛びのく。

 

榴弾砲(ハウザー)……」

 

すると何処からか声が聞こえたと思いきや、何かが魔物の大群へと目掛けて、高速回転しながら飛んでいくのが見えた。

 

 

着弾(インパクト)!!

 

そして技名らしきものを叫んで衝突と同時に大爆発を起こしたのだ。

 

「今の声……さっきの爆発を使っていた奴のか?」

「ああ。さっき知り合ったばっかだが、性格も攻撃も物騒だからな。下手すりゃ、お前らもお陀仏だったぞ」

 

リゼの推測に同意した青年の忠告を聞き、シャロの顔が青ざめる。下手をすれば、目の前の魔物達と同じ消し炭になっていたかもしれないのだから、無理もなかった。

するとその直後に、眼鏡の偉丈夫がこちらに戻ってきた。

 

「女の子? あの、彼女達は?」

「なんか俺たちを見て加勢に来たとかだってよ。けど、あの爆弾マンの巻き添え食いそうだったから、止めてるとこだ」

「そうですか……心配してくれて、ありがとうございます。だが、俺もあそこにいる爆豪くんも、ヒーロー科の生徒だ。戦闘慣れしているので、お気になさらず」

 

そして眼鏡の偉丈夫の言葉からほどなくして、魔物の群れは全滅するのであった。ちなみに、ほとんどあの金髪少年によるものだ。リゼ達は知るよしもないが、ヒーロー科という単語から出久と同じ世界の住人なのが伺えた。

 

「なんだか、私たち見てるだけだったような……」

「まあ、あんなコミックヒーローみたいな大暴れされたら、仕方ないですけど」

 

花名の呟きにフォローを入れるたまてだったか、その表情は未だに引きつっていた。エトワリアではまず見ない、苛烈な戦いだったため仕方ないだろう。

 

「……あ、そうだ! すみません、あのお馬さんに近づいてもいいですか?」

「? スロー・ダンサーにか?」

 

しかしすぐにあの倒れた馬について思い出し、帽子の青年に許可をもらって近寄る。そして青年にスローダンサーと呼ばれたその馬に近寄り、杖をかざした。

 

「君、何をする気だ!?」

 

いきなりのことに動揺し、青年は激高。しかし直後、花名は一瞬ビクッとするも回復魔法を馬に対して使用する。するとそれが効いたようで、馬は健康な様子で立ち上がった。

 

「な!?」

「これで、このお馬さんも治ったと思います。私、回復魔法は得意なので」

「花名ちゃんの魔法には、いつも助けられてますからねぇ」

 

まさかの光景に青年は驚愕し、花名とたまてから説明を受けると、早速スローダンサーに跨ってみる。

 

「凄い。もう健康そのものじゃないか……ありがとう、君は恩人だよ。それと、急に怒鳴ってすまなかった」

 

そして愛馬の安否を確認し、青年は花名にお礼を言うと、自己紹介を始めた。

 

「僕はジョニィ・ジョースター。イギリス出身でジョッキー、つまり騎手をしているんだ。こいつは愛馬のスロー・ダンサー、本当に助かったよ」

「イギリスの方なんですね……あ、私は一ノ瀬花名。日本人です」

「花名ちゃんの学友で、百地たまてと申します!」

「同じく十倉栄依子です」

「千石冠、よろしく」

 

ジョニィと名乗ったジョースター性の青年に、自己紹介する花名一同。それに続く形でリゼとシャロも名乗る

 

「私はリゼ。親父が軍人だから、先頭の心得がある。さっき見てるだけだったが、ここから先は守ってやるさ」

「シャロです。リゼ先輩の学校での後輩…だけど軍人じゃないので、あしからず」

「軍人? いや、俺も爆豪君もも、ヒーロー科の所属だから戦闘訓練は受けているが……」

「はい?」

 

眼鏡の偉丈夫からのヒロー科という単語にきょとんとするリゼ。その様子に思うところあり、彼も自己紹介を始めたのだった。

 

「俺は雄英高校ヒーロー科1年A組のクラス委員長を務めている飯田天哉(いいだてんや)だ。彼はクラスメイトの爆豪勝己(ばくごうかつき)、よろしく頼む」

「勝手に紹介すんな、メガネ」

「俺は元格闘家で……」

 

天哉が勝手に紹介してきたことに、苛立った様子の勝己。しかしそれをしり目にスカジャンの青年が名乗りを上げるのだが……

 

 

 

 

 

「プロテインの貴公子・万丈龍我だ!!」

 

彼こそが戦兎の相棒、万丈龍我その人だったのだ。しかしその馬鹿げた自分の異名で、一同が凍りつくこととなる。

 

「何言ってんだ、あんた? 大人のクセしてバカなのか?」

 

悪態をつく克己を除いて。

 

「んだと、このガキ!? せめて頭に筋肉つけろ!!」

「ああ、筋肉バカがいいってか!?」

「いや、いきなり喧嘩するんじゃない……」

 

大人気ない龍我と勝己の言動に呆れながらツッコむリゼ。しかしその最中、花名は当初の目的を思い出して一同に問いかけた。

 

「あ、あの……皆さんの名前も分かったところでなんですけど、私ここに探し物に来てて……四葉のクローバーの形をしたブローチがありませんでしたか?」

「ん? ああ、それっぽいの一番弱そうなのが落としてたから拾ってたが……」

 

その時、花名の言葉に反応したのは龍我であった。その彼のポケットから取り出されたのは、四葉のクローバーをモチーフにしたピンクのブローチだった。花名の言った特徴と一致している。

 

「あ、それです! ありがとうございます!!」

「おう。次からは気ぃつけろよ」

「さて、ひとまず全員の問題も解決……あ!」

 

問題解決に安心した直後、ジョニィはあることを思い出して一堂に問いかける。

 

「すまない、僕の問題がまだ片付いていなかった。聖なる遺体はどこに?」

「痛い? おめぇどこか怪我してるのか? やっぱり足か?」

 

龍我は遺体を痛いと勘違い、という小学生でもしなさそうな間違いを起こした。しかし丁寧に説明を入れてやるジョニィであった。

 

「そうじゃなくて遺体。人間の死体、厳密にいえばミイラを探しているんだが…」

「ミイラ!?」

「な、何でそんなものを探しているんですか?」

「ん、墓泥棒?」

「それは……」

 

横で聞いていたシャロと天哉が驚愕し、冠がやましいことをしたのではと思ったのか、そんなことを聞いてきた。しかしジョニィは微妙に言いよどんでいる。

 

「ジョニィ・ジョースター、聖なる遺体はこの世界エトワリアに散り散りになっている。が、いくつかはどうやらクリエメイトと呼ばれる異世界人を持ち主に選んで一か所に集まりだしたようだ」

「こ、この声は……!?」

 

その時、何処からかジョニィを呼びかけながら遺体について話す、男の声が聞こえる。そしてジョニィ本人は、その声を聞いた瞬間に激しい憎悪を目に浮かべる。そして声の主を見つけた時、驚愕の表情と先ほどより強まった憎悪を浮かべる。

 

「そ、そんな!? どうして無事なんだ……どうして、僕の撃ち込んだ"無限の回転"が消えているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァレンタイン!!

 

ジョニィがヴァレンタインと呼んだその男は、カールした金髪にピンクの上等なコートを纏っている。

ジョニィがエトワリアに転移する直前まで戦っていた宿敵、ファニー・ヴァレンタインである。

 

「バレンタイン? 今、2月じゃねぇんだけど?」

「バカか、てめぇ? どう考えてもあの変なおっさんの名前だろうが」

「んだと、ガキ!? だから、筋肉つけろ!」

「静かにしてくれ。アイツ、妙な格好の割に凄みがハンパないぞ」

 

龍我の的外れな言動と勝己の口の悪いツッコミから、また喧嘩になりそうになるのをリゼが諌める。実際、ヴァレンタインからは凄まじい威圧感とオーラが発せられる。喧嘩している場合ではなかった。

 

「初めましてだな。クリエメイト諸君に平行世界の特殊能力者一同、そして仮面ライダーよ。

我が名はファニー・ヴァレンタイン。そこのジョニィ・ジョースターの元住んでいた世界で、アメリカ合衆国大統領に就かせてもらっている」

「だ、大統領!? 」

 

ヴァレンタインの肩書に、オーバーなリアクションで驚く花名。目の前に現れた人物が、国家元首なのだから仕方ないだろう。

 

「ジョニィ・ジョースター。まず言っておくが、我らの聖なる遺体を賭けた戦いだが、横槍が入った所為で勝者は無くなった。その横槍を入れた者が、貴様の黄金の回転エネルギーを消し去った」

「何? ヴァレンタイン、何を言っているんだ?」

 

ヴァレンタインの言葉を聞き、理解できないジョニィ。しかし、当の本人は気にせず話を続ける。

 

「しかしお前の黄金の回転エネルギーを込めた爪弾なら、その人物"オーバーヘブンショッカーの首領"を倒し得る可能性がある」

「オーバーヘブンショッカー? なんだそれは?」

「様々な世界を支配するべく暗躍する巨大組織”大ショッカー”を前身とした集団。それを例の男が乗っ取って首領として君臨した組織だ」

 

オーバーヘブンショッカーのことを、ジョニィに対して律義に説明してやるヴァレンタイン。そしてまだ説明を続けるのだった。

 

「そしてもう一つ、ここエトワリアは平行世界ではない。我らのいた世界と次元を隔てて隔絶された、完全なる異世界だ。そして例の首領が遺体の脊椎部を手にしようとした時、突如として時空の歪みに吸い込まれた。そして調査の結果、ここに遺体が転移したということが分かったわけだ」

「……そうだ、思い出した。ヴァレンタインの攻撃を警戒していたら、いきなり遺体と僕が吸い込まれて、目が覚めたら…」

 

ヴァレンタインから話を聞き、ジョニィは飛ばされてくる直前に自分の身にあったことを思い出す。そしてその直後、ヴァレンタインは行動をとる。

 

「いきなりで悪いが、私は君達の力を試したい。そこで、こいつをあてがわせてもらう」

 

直後に空から何かが降ってきた。それは胸部にXマークが刻まれ、銃で武装した人型ロボットの大群だ。そして、龍我には見覚えがあった。

 

「ちょ、おい! 何でガーディアンがいるんだよ!!」

「ガーディアン?」

「俺のいた世界の兵器だよ! そうか、またヘイコー世界?とかいうのが絡んでやがんのか…」

「異世界に平行世界……なるほど。本当なら、さっきの怪物達にも納得できる」

「……それでは、武運を祈る」

 

龍我が勝己と天哉に説明を終えると、ヴァレンタインはそのまま紫のオーラによって転移してしまう。

その直後、ガーディアン達が集まりだして合体した。それによって、巨大な二足歩行のモンスターマシンと化す。手に持っていた機関銃が各部に取り付けられた、凶悪な巨大兵器だ。

 

「せ、せんぱぁい……」

「まいったな。いくらなんでも、これは…」

「私たち、死んじゃうの?」

「花名は心配しすぎだけど、今回は流石に…」

「ま、まさか今度は、SFな展開…でしょうかね?」

 

目の前の巨大兵器に、クリエメイト一同は恐怖で慄く。一人無言の冠も、栄依子の陰になりながら怯えていた。

そんな中、なんと龍我と勝己が前に出てくる。

 

「爆豪って言ったか? お前、さっき一番暴れてただろ。だから、今回は俺に任せておけ」

「あ? 全然問題ねえよ、むしろわけわかんなくてイライラしているんだ。もう一回暴れさせろ」

「……言うじゃねえか。じゃあ、二人で倒そうぜ」

「待つんだ! あのでかさじゃ、君のパンチで倒せるはずが…」

「爆豪君、なぜ彼を止めないんだ!?」

 

龍我が勝己と二人で戦うというので、ジョニィと天哉が慌てて止める。しかし、勝己は何となく察していたようだ。

龍我が戦士であることを。

 

「メガネ、察しが付くだろう。こいつの妙な道具とかで、少なくとも一般人じゃねえのは」

「そういうこった」

 

直後、龍我の懐に飛んできた小さな物体。西洋竜を模したロボット”クローズドラゴン”だ。そして龍我はドラゴンフルボトルを振って、クローズドラゴンに挿し込んだ。

そして腰に、ビルドドライバーを巻き付けた。

 

Wake UP! Cross-Z Dragon!

 

そしてクローズドラゴンをドライバーにセット。ハンドルを回してスナップライドビルダーを形成した。

 

Are You Leady!?

 

アーマーが完成した直後、覚悟はいいか? そう問いかけるベルトからの音声とともに、龍我は構えを取ってあの言葉を叫んだ。戦う意思を体現する、あの言葉を。

 

変身!

 

そして形成されたアーマーを纏うと、そこにはビルドとは異なる仮面ライダーの姿があった。ストライプ柄のビルドと異なり、左右対称の青と黄色を基調としたカラーで、仮面にはどこかドラゴンを彷彿とさせる意匠が見られる。

 

Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!

「え、ええええええええええええええ!!?」

「へ、変身した?」

「まさかこれが、あの大統領が言っていた、仮面ライダー?」

 

変身した龍我の姿に驚愕して叫ぶ花名。その一方シャロも静かに驚き、リゼはヴァレンタインの口にした仮面ライダーという単語を、龍我に照らし合わせる。

そんな中、変身した龍我は一振りの剣”ビートクローザー”を手に合体ガーディアンの片割れと対峙する。

 

「俺は仮面ライダークローズ。今の俺は……

 

 

 

 

 

負ける気がしねぇぜ!!

 

そして叫びながら、合体ガーディアンに立ち向かっていく。

 

ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンヒット!

 

 

直後にクローズはビートクローザーの柄についている取っ手を引っ張ると、ふざけたような電子音声と動時に刀身にエネルギーが溜まっていた。

 

「おらぁああ!!」

 

そして剣を振ると、切っ先から衝撃波が放たれた。そしてそれは一瞬で、合体ガーディアンを撃破してしまったの

だ。

 

「行くぜ!」

 

まず勝己は爆破の推進力で一気に宙を舞い、そのまま合体ガーディアンの頭上へと舞い上がっていった。

 

徹甲弾機関銃(A・Pショット・オートカノン)!!

 

そして指先から狙いを定めつつ、凝縮された爆炎を乱射する勝己。攻撃バリエーションも豊富で、非常に強力だ。ほどなくして、ガーディアンは二体とも倒されるのだった。

 

「す、すごい…」

「ヒーローの学校…あながち嘘じゃなさそうだな」

 

その一方、巨大な兵器を相手に一瞬にして決着を受けた二人にクリエメイト達が呆然とする。しかしその直後、それは起こった。

 

「……みんな、街の方を見るんだ!!」

 

リゼが真っ先に気付いたそれは、ココア達がラビットハウス出張店を開いている街が竜巻に襲われる光景だった。一同は知る由もなかったが、丁度ビルドがテンペストと交戦していた時間であった。

 

「まさか、さっきヴァレンタインの話していたオーバーヘブンショッカーか!?」

「何にしても、ヒーローとしてこれは放っておけない! 爆豪君、行くぞ!」

「仕方ねぇな。あんたも行くか」

「おうよ。仮面ライダーはラブ&ピースのために戦うからな、いくらでも手伝うぜ」

 

その一方で、男衆がやる気満々な様子であった。そしてそのまま、街へと駆け出すこととなる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そして街に到着し、クローズはギャレンの攻撃から出久とココアを救ったのだった。

 

「よう、戦兎。苦戦しているみてぇだな」

「何を余裕そうなんだ、バカ。お前こそ、知らない世界に一人でしんどかったろ?」

「んなわけねぇだろ! あと筋肉をつけろ!!」

「はいはい。ところでお前、なんかボディがグレートクローズじゃなくなってるけど、どうした?」

「うぉ、マジか!? 全然気づかなかった!!」

「やっぱり筋肉バカじゃなくてただのバカだろ。普通、変身する時に音声でわかるでしょうが」

「なんだと、てめぇ!!」

 

そしてビルドとクローズは互いに悪態を吐くと、それが段々と口喧嘩へと発展していく。しかしその最中でも、ノリノリで龍騎を圧倒していくのだった。

するとその様子を見ていた出久に声をかける人物がいた。

 

「おいクソナード、無事か?」

「え、かっちゃん!? かっちゃんも異世界に来てたの!?」

「カッチャカッチャうるせえ。だがまあ、その通りだ」

 

克己のあまりの口の悪さに、隣にいたココアもさすがに驚いて出久に問いかけてしまう。

 

「ね、ねえ出久君。知り合いみたいだけど、誰?」

「爆豪克己。同級生で、幼馴染です」

「え?」

「嘘じゃないです、意外にも」

「おいデク。見知らぬ女に何言ってんだ?」

 

流石に今回の物言いに思うことあり、出久に対して文句ありげな目で見ながら言うのだった。

 

「レシプロ・バーストォオオオオオオオオオオ!!」

 

その同時刻。掛け声と同時に天哉が超速ダッシュでお茶子とライネの戦闘に入り込み、二人の対峙していたイクサに飛び蹴りを叩き込む。

 

「Oh!?」

「しまった、避けられたか」

 

しかし咄嗟に旋回し、攻撃をよけてしまうサイガ。

 

「麗日君、大丈夫かい?」

「飯田君もこっち来てたん!?」

「まあね。で、そちらは?」

「私はライネ。お茶子ちゃんたちのお友達みたいだけど、細かく自己紹介する時間もなさそうね」

 

天哉はそのままお茶子とライネ相手に言葉を交わすも、サイガが再び突撃していく姿が見えた。

 

「Act2!」

 

そして同時刻、ジョニィがスロー・ダンサーに跨ったまま焦凍とチノに割って入り、イクサへと攻撃する。とっさにイクサは回避するも、放たれた弾は追尾してイクサに命中する。

しかしその際、何故かジョニィのスタンドと思しき物が赤子から機械じみた姿へと変じていた。

 

「僕はジョニィ・ジョースター。いろいろあって、急にこの世界に飛ばされたんだ。僕の目的もあるから、共闘するよ」

「あ、ああ。助かる…俺は轟焦凍。こっちは、香風智乃だ」

「どうも…」

 

ひとまず自己紹介しておく一同。その最中、イクサは何事もなかったかのように立ち上がって再びこちらに対峙する。

 

「その命、神に返しなさい」

 

そしてまたいつものセリフを口にした。そして同時に、イクサの手にした剣が銃に変形しているのが見える。

 

「ジョニィ、だったか? アイツは自我のない人形みたいなやつで本物の人間じゃない。遠慮なく攻撃しても問題ない」

「そうか。なら僕のスタンド、タスクの爪弾で仕留めてみせるさ」

 

そして轟焦の言葉に、ジョニィは指でっぽうを構えてイクサに視線を向ける。

そしてその一方、ディエンドはその様子に気を取られていた。

 

「クローズに他の雄英生、加えて聖なる遺体の元あった世界の住人で、スタンド使い……これは少し厳しいね」

「余所見は厳禁。その首、取らせてもらう」

 

ディエンドはビルドチームの救援に気を取られていると、再びハッカの札が飛んでくるので撃ち抜く。

そして、龍騎のベルトにある龍の顔を模したエンブレムを描いたカードを、ディエンドライバーにセットした。

 

 

Final Form Ride RRRyuki!!!

「痛みは一瞬だ」

 

カードをセットした直後、なんと龍騎に銃口を向けたのだ。

 

「う!?」

「あいつ、味方を?」

 

そして発砲したため、ビルドも思わず困惑する。しかし、直後にとんでもないことが起こったのだ。

 

「え、うそだろ…」

 

なんと龍騎の体がまたから裂けたと思いきや、そこから変形してドラグセイバーをはじめとした武装と完全に一体化。それにより赤い東洋竜型ミラーモンスター”無双竜ドラグレッダー”に似た姿の”龍騎”ドラグレッダーへと変じたのだ。

 

「アブねぇ!?」

 

そして口から火炎弾を放ち、ビルドとクローズを焼き払おうとする。とっさに二人は回避するも、そのまま尻尾で薙ぎ払おうとしてくる。

 

「「戦兎さん!」」

 

しかし咄嗟に出久の放った空気弾を食らい、龍騎ドラグレッダーはひるんだ。そしてそこに、ココアが風を纏って飛んでいき、そのまま斬撃を叩き込む。

 

「出久にココア…なんで」

「なんでも何もないよ。お茶子ちゃんに言ったことだけど、会って3秒で友達がモットーだから、戦兎さんも私と友達だから、助けるのは当然だよ!」

「僕は雄英ヒーロー科の生徒、ヒーローになるために学び鍛える人間だからこういう時に戦うのは当然ですよ。あと僕の憧れのヒーローの受け売りなんですが…」

 

ビルドからの問いかけに答えるココアと出久。そして出久はさらに続けた。

 

「余計なお世話は、ヒーローの本質だそうです」

「……はは。最っっ高だな!!

 

その出久が口にした言葉に、同じく正義のために戦うビルドも思うところあり、歓喜の声を上げるビルドであった。

 

「それじゃあ、俺も君らの熱意に応えて、一気にパワーアップさせてもらうか!」

 

そして決意を新たにそう言い、ビルドはフルボトルとは異なるアイテムを取り出す。見た目はビルドの顔を模したジュース缶のような形状で、配色はラビットタンクフォーム時のそれである。

そしてビルドはそれを振り、フルボトルの代わりにビルドドライバーに取り付けた。

 

ラビットタンクスパークリング!

 

そしてドライバーのハンドルを回すと、スナップライドビルダーの形状が変化し、何やら発泡成分のような物がアーマーを生成する液体に注入された。

 

Are you ready!?

ビルドアップ!

 

そして新しく生成されたアーマーを装着すると、ラビットタンクフォームの各装甲がギザギザになった物を纏い、色に白が加わったトリコロールへと配色が変化している。

ビルドの基本フォームであるラビットタンクが上位形態になったこの姿。その名を……

 

シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング! イエイ! イエーイ!

 

 

ラビットタンクスパークリングフォームだ。

 

(な、なんだ? この炭酸飲料の宣伝文句みたいな口上は?)

 

新たに流れた口上に、思わず唖然としてしまう出久。しかしそうこうしている内に、龍騎ドラグレッダーは復活してこちらに迫ってきた。

 

「させるかっての!」

バシュッ

「ぐぎゃぉおおおおおおおおおおお!?」

 

すると新形態となったビルドは、体から泡を放出しながらラビットタンクとは比較にならないスピードで、龍騎ドラグレッダーを蹴り飛ばした。パワーも比較にならないほど上がっているようだ。

 

「よし、速攻で決めるぞ。万丈、出久、ココア、一斉に必殺技だ」

「おっしゃ、一気に決めるか!」

「早く倒さないと被害も大きくなりそうだし、同感ですね」

「よし。出久君、お姉ちゃんに任せなさい!」

 

そしてビルドとクローズはベルトのハンドルを回し、エネルギーを集めていく。そしてビルドは再び泡を体から発しながら、その泡の破裂で一気に加速し宙へと舞う。

 

「今の俺達は、負ける気がしねぇぜ!」

 

その一方でクローズの背後には、稲光を纏った青い東洋竜が現れ、口にエネルギーを集めている。

 

「私たちも行くよ!」

「はい! ワン・フォー・オール、フルカウル!!」

 

そして出久とココアもそれぞれの力を発動。ココアはつむじ風に乗って宙へと舞い、出久は踏ん張って一気に全面に飛び出す準備をした。

 

一気に行くよ、戦兎さん!!

ああ。やるぞココア!!

Ready Go!! スパークリングフィニィッシュ!!

 

そして空中で身を翻し、ビルドは再び発した泡の破裂の勢いで加速しながら飛び蹴りのポーズを取る。ココアも一緒にその勢いに乗り、剣を向けて突撃していった。

 

Ready Go!!ドラゴニックフィニィッシュ!!

俺達も行くぞぉおおおおお!!

セントルイススマッシュ!!

 

そしてクローズの背後にいる竜のブレスに乗り、クローズと出久も飛び出して蹴り払う。

 

「ぎぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

結果、龍騎ドラグレッダーは態勢を整える前に必殺技を連続で食らい、そのまま爆発四散した。

 

~同時刻~

「行くぞ、スロー・ダンサー!」

 

ジョニィも愛馬を加速させ、直後にスタンドを発動した。しかし…

 

「あれ? なんだか、また姿が…」

「ああ。だが、これは…」

 

ジョニィのスタンドはまたその姿を大きく変えていた。鎖帷子を纏った人型で、屈強な姿をしている。

 

「亡き僕の相棒が教えてくれた秘術”黄金の回転”。そこに”馬の走る力を利用した回転”を加えること生まれる無限の回転。それによって進化した僕のスタンド・(タスク)Act,4」

 

ジョニィ自ら自身のスタンドについて解説し、そして振り返って向こうで天哉が交戦していたサイガに向けてゆびでっぽうを作り、爪弾を放った。

 

「Oh No!?」

 

サイガは危機を察して、離脱を図る。しかし、放たれた爪弾はサイガを追尾して後を追う。

 

「Act,4に進化したタスクは、相手に僕が願った事象、この場合は倒したいという事象を叶える。殺意を持てば攻撃対象は確実に死ぬ。そしてそれは相手に当たるまで消えることはなく、防御などによる物理的な障害も、次元すらも超える。奴がまた違う世界に逃げても、当たるまで永遠に追い続ける」

「おい、それって……」

「結構、反則技ですね」

 

あまりにも理不尽すぎるAct,4の力に、そんな感想しか出てこない二人であった。

 

「そして今のこいつは、直接の攻撃力も高い」

「その命、神に返しなさい」

 

直後、ジョニィにイクサが襲い来るが…

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラぁあああ!!」

「ぐわぁあああああああああああ!?」

 

そのままスタンドによるパンチラッシュで、イクサを粉々に粉砕してしまった。

 

「す、すげぇ…」

 

あまりの強さに、それだけしか感想の出ない焦凍。チノも騒然としている。

 

「黄金の回転エネルギー……仮面ライダーや異界の特殊能力にも引けを取らない、強大な力だ。そして地球外文明の力で変身する、仮面ライダービルドとクローズ、貴様達もだ」

 

すると、またヴァレンタインが姿を現し、こちらへと話しかけてくる。

 

「万丈、あいつ何? すげぇ格好してるけど」

「ヘイコー世界? のアメリカ大統領っつってたぞ」

「あ、あれが大統領?」

「すっごい髪形だね…」

 

現れたヴァレンタインについてビルドや出久、ココアはそのインパクトあるビジュアルもあって見入ってしまう。

 

「ジョニィ・ジョースター、そしてビルドとクローズよ。貴様達のその力、磨いておくがいい」

「ヴァレンタイン、敵である僕に何をさせようっていうんだ?」

「他にもスタンド使いではあと1人、ジョルノ・ジョバァーナという男。スタンド以外に魂に由来する能力者、麻倉葉と黒崎一護、仮面ライダーゴーストの三名。後はディケイドとそこのディエンドだな。彼らにも可能性があるから、エトワリアに来ている可能性を信じ、探しておけ。そして、麻倉葉は他のクリエメイトと仮面ライダーに接触しているらしいから、合流を勧める」

 

ヴァレンタインはジョニィの言葉を無視し、そのまま続けた。

 

「では諸君、健闘を祈る」

 

そして再び、ヴァレンタインは転移していった。

 

「ヴァレンタインの奴、敵である僕らに塩を送るなんて何を考えているんだ?」

「さあな。ひとまず、奴の言っていた遺体とやらを探して、例の里とやらに行こう。味方との合流を急ぐべきだ」

おーい!

「あ、リゼちゃん達だ!」

 

ジョニィがこちらに合流しながらビルドと疑問を語っていると、リゼ達が遅れて到着。ココアも気づいて顔を向けた。しかしその直後、ココアが何かを感じ取る。

 

「あれ? なんか、声が?」

「まさか、聖なる遺体がここに? 君、どこかにあのヴァレンタインが狙っていたミイラのパーツがあるんだ! それを探してくれないか!?」

「え!? あ、はい」

 

そしてジョニィに促されるまま、ココアは周囲を捜索。そしてついに、遺体を発見した。

 

〜ココアは聖なる遺体の左腕を手に入れた〜

「うわぁ……」

「ココアさん、大丈夫ですか?」

「全然大丈夫じゃないかな……でも、私はお姉ちゃんだから頑張らないと」

 

ミイラのパーツを手にとっては、流石のココアも不快な気分となる。出久も心配するが、ココアは自分に言い聞かせて覚悟を決めるのだった。

その一方で、ジョニィはココアの手にした遺体を見て暗い表情をしてしまうのだった。

 

「左腕、僕がスタンドを発現したきっかけのパーツ……また、一からやり直しか」

「でもあの男の言う通りなら、もう他のクリエメイトって異世界人の子達が何個か手に入れたらしい。全部集めたら君に託せるように、俺も話してみるよ」

「……ありがとう、戦兎」

 

その後、到着したリゼ達や花名一行と話をし、互いの事情を把握できた。

 

「なるほど。それなら、急いで里に戻った法がよさそうね」

 

そう言いながら、ライネは何やら一枚の札を取り出した。

 

「これは特殊な転移魔法を使う道具なの。回数制限がある上に一度指定した場所、今回は里にしか移動できないわ。でも、人数制限もないから全員で行ける」

「なるほど。それじゃあ、私達も行くか」

 

ライネから話を聞いたリゼは、そのまま全員を先導して移動することとなる。そんな中、出久があることに気づく。

 

「あれ? そういえば、あのハッカって子は?」

「ディエンドもいつの間にか消えちまった。戻ってこないうちに行くか」

 

しかし戦兎に促されて一同は転移していくこととなった。

 

かくして、聖なる遺体の半数はクリエメイトを持ち主に選んで里に集まろうとしていた。

ついに、異界の戦士と仮面ライダーたちが会合を果たす。




だいぶ文字数ぶち込んだが、おかげで龍騎ドラグレッダーが雑な扱いになってしまった。申し訳ない……
次回はいよいよ、里での会合編・久しぶりに士と承太郎が動きます。

そして、ちょっとしたゲストが登場。ジャンプサイドの作者繋がりなんですが、誰が来るのかお楽しみに。


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第20話「侵食されるエトワリア」

ジオウの最新話、まさか士からディケイドの力が奪われるとは……予告からして、スウォルツ自らアナザーディケイドになるのか?
そして仮面ライダーアクアがまさかのTVシリーズ参戦も気になります。

サブタイが不穏なうえに、ラストでちょっとアンチっぽいシーンが入りますが、こちらはそのつもりないのでタグの変更はしません。
そしてラストで語ったゲストは文字数の都合で次回に回します。申し訳ありません。

P.S.シャーマンキングのキャラブック・原色魂図鑑を先日、手に入れました。
ダムコロロ、超かわいかったです。


現在、里にて九つの内五つの聖なる遺体の持ち主に選ばれたクリエメイト達と、彼女達の守護者に選ばれた仮面ライダーと異世界の戦士達が集っていた。

 

遺体の右腕を手に入れた”ゆの”、仮面ライダー電王こと野上良太郎と仲間のイマジン達、モンキー・D・ルフィ率いる麦わらの一味三名と同盟の海賊トラファルガー・ロー。

 

脊椎部を手に入れた涼風青葉、仮面ライダーエグゼイドこと宝生永夢、界境防衛機関ボーダーの玉狛支部。

 

頭部を手に入れた千矢、猛士関東支部の仮面ライダー響鬼、ハオの弟である麻倉葉とその許嫁の恐山アンナ。

 

両脚を手に入れた藤原夢路、仮面ライダーWこと左翔太郎&フィリップ、双星の陰陽師・焔魔堂ろくろと化野紅緒。

 

左腕を手に入れた保登心愛、仮面ライダービルドこと桐生戦兎、緑谷出久ら雄英高校ヒーロー科・1年A組の5人。

 

そして彼女らに洗脳を解かれた花京院とツェペリ男爵、未来から来た承太郎の娘・空条徐倫、そして聖なる遺体が元あった時代の住人ジョニィ・ジョースターである。

 

 

ひとまず集結し、各戦士達は互いに情報を公開し合う。

 

「しかし、仮面ライダーってのも意外と節操ねぇラインナップなんだな。タイムパトロールに医者兼ゲーマー、妖怪退治屋で鬼、探偵コンビが合体して変身、地球外テクノロジー使う物理学者……やれやれ、他にどんな奴がいるか想像つかねぇ」

「俺も同意だ。列車型のタイムマシンに地球の記憶なんて抽象的な物を内包したツール、一体どうやったらそんなものが作れるんだ?」

「それ言うなら、ライダー以外の戦士も節操なさすぎだろ。異能力持ちの海賊に異世界からの侵略者と戦う防衛機関、ハオの弟はともかく、陰陽師なんて霊能者もいるし、極め付けは異能の一般化による職業ヒーロー養成学校の生徒だぜ」

「ですね。仮面ライダーやスーパー戦隊と違い、変身せずに力を行使する人たちがこんなにいるとは思いませんでしたよ」

「私はクリエメイトの皆さんと接していろんな世界を知ってきましたけど、ここまでいろんな世界があるなんて……」

 

ここまでで集まった戦士達をざっくりと上げていき、そのラインナップに何も言えなくなるディケイド組とジョースター組であった。複数のシステムで変身する仮面ライダーがいる世界出身の永夢や翔太郎と違い、完全に独立した世界で仮面ライダーとなっていた戦兎も、承太郎に同意している。

一方で召喚士として目覚め、様々な異世界を知ってきたきららにとっても、仮面ライダーやそのほかの戦士たちの世界の存在は驚きであった。

 

「スッゲェな、異世界ってそんなにたくさんあんのか! 俺も行ってみてぇ!!」

「だな。俺ももっとカッコよく活躍できる場所があるかも知れねえしよ!」

「わ、私はいいかな。なんか、戦いの大きそうな世界ばっかりで怖いし……」

 

話を聞いていたルフィとモモタロスは興奮して様々な異世界に興味を示し、隣で聞いていたゆのは怯えているようだ。実際、何処の世界もそれなりに戦いの多い世界だから当然だろう。

そんな中、ポルナレフはそんなゆの達に連れられた花京院に視線を向けることとなった。当然、彼もエトワリアで最初に相対したアヴドゥルとイギー同様に、戦死したはずだからだ。

 

「なぁ、お前って本当に花京院なんだよな? そんでもって、洗脳も溶けてるんだよな?」

「ええ。あそこにいるゆのさんが、聖なる遺体とやらで助けてくれたんです。そこのツェペリ男爵という方も、千矢という子に同様の手段で助けられたそうで」

 

帰ってきた花京院に疑いの目を向けるポルナレフだが、直接見てない以上は仕方のないことだった。

しかし、その疑惑はすぐに解決してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花京院、俺のことを覚えてるならこのハンドシグナル、わかるよな?」

 

目の前で両手をパンッと鳴らし、右手の指を二本立てる。次に親指と人差し指で丸を作り、最後に平にした右手のひらを額に当て、遠くを見渡す仕草をとる。

このハンドシグナルに対しての花京院の答えは

 

「パンツーまる見え」

YEAAAH

 

ポルナレフは歓喜の叫びをあげると花京院が水平にした両手にこちらも両手でタッチ。そこからは互いに無表情になりながら、ピシガシグッグッと拳をぶつけ合う。

そしてトドメに、ハイタッチ。

 

「なぁ、これ何なんだ?」

「さあな。知らねぇし、知りたくもねぇ」

「再会できて嬉しいのはわかるが、敵が本格的に動き出した非常事態にくだらんことするな!」

 

あまりのバカっぽさに士は疑問を浮かべ、承太郎は関わり合いになるのを拒み、ジョセフは二人を叱る。

 

「あんなバカっぽい大人が仏蘭西人なわけない……だって、仏蘭西はマリの故郷で、もっとお洒落で……」

 

一方、なつみ屋のメンバーである小梅はこの一部始終を見て、ショックを受けていた。彼女はフランスから来た魔女のマリという女性に憧れ、彼女に弟子入りするために国一番の魔女=一番占になるという約束をした。そのこともあり、フランスへの憧れは人一倍強いというわけだ。そのため、ポルナレフの出身と頭と下半身が分離してると比喩される性格は、かなりショッキングなわけだ。

 

「しかしヒーローが職業化している世界か……出久ってすげぇ世界から来たんだな」

「藤原君もスゴイよ、夢に寄生する夢魔と戦うなんて。夢に干渉する個性なんて、僕の世界でも聞いたことないしさ」

「夢路でいいって。俺もヒーロー好きだし、出久とは仲良くしてぇしさ」

「……わかった。じゃあ改めてよろしく、夢路君」

 

その一方で、出久と夢路はウマが合ったのか、そのまま仲良くなっていた。夢路は元々、フルヘルボーダー・グリッチョという特撮ヒーローのファンということもあり、ヒーローオタクな出久とは通じるものがあったのだろう。

しかしその一方、何故か勝己が不機嫌そうな表情をしている。

 

「……あのクソナード2号、なんか腹立つな」

「お前と声が似てるのに、性格が緑谷寄りだからじゃねえのか? つーか、クソナード2号って」

「あ!? おい半分野郎、俺があのクソナード2号と似てるダァア!?」

(確かに声だけ聴いてたら夢路そっくりだけど……)

(性格は別物ね)

 

そんな勝己を見ていて勇魚とメリーも内心で驚いていたりする。

 

「オイラの爺ちゃんも陰陽師なんだけどさ、仕組みも目的も全然違うんだな」

「葉も凄いんだけど、ろくろも凄いんだね! うららも神様の力を借りるんだけど、占いのためだけだからそんなに色々できるの少し羨ましいかも」

「サンキューな。でも俺、今は克服してるけどこの力を恨んで呪ったこともあって、頭ごなしに褒められても複雑なんだよな…俺からしたら、千矢みたいな戦いの関係ない、優しい力の方がうらやましいかな」

 

一方のうらら、シャーマン、陰陽師の面々も和気藹々と互いの力について話している。

するとそんな中に、ジョナサンとツェペリが近寄ってくる。

 

「千矢といったね。君がツェペリさんを…僕の師匠を救ってくれたそうだね」

「え? うん、ツェペリさんは確かに私が何とかしたけど…」

 

突然の言葉に千矢は困惑しつつも答えると、いきなりジョナサンが頭を下げ始めた。

 

「ありがとう! 君のおかげで、僕は師匠と殺し合わずに済んだ。本当に、君は恩人だ!!」

「私からも改めて礼を言わせてくれ。ありがとう」

「え!? あははは…」

 

突然のジョナサンのお礼の言葉とその誠意の籠った声に、思わず困惑しつつも照れてしまう千矢であった。ツェペリも続いて頭を下げてきたため、拍車をかけることとなった。

 

「で、この"くろう"ってのは、何なんだ?」

「スタンドに見えなくもねぇが、触れるってことは違うだろうな」

「物を依り代してに実体化するスタンドもありますが、これは明らかに違いますよね」

 

その一方、いつの間にかやってきた承太郎たちが、同じくいつの間にか現れていた”くろう”が何なのか?という事に注目してしまう一同。元々、霊能の専門家である葉やろくろも、その正体を測りかねていた。

 

「少なくとも、人間や動物の霊ではないよな。強いて言えば、精霊に近いっぽい雰囲気というか……」

「式神に見えなくもねぇけど、なんか違う気がすんだよな」

「ちょい待ち! そんなむっつり黒兎なんかとワイを一緒にしてもらったら、困るで!!」

 

直後に聞き覚えのない叫び声が聞こえたと思いきや、紅緒の懐から狐に似た小さな生き物が出現した。

 

「うぉ!? なんだ、こいつ?」

「ワイは紅緒様専属のお世話係、式神のきなこ。非戦闘型やからさっきは出てきそびれたけど、まあよろしゅう頼むわ仮面ライダーはん」

 

現れたその生き物に驚く翔太郎に、自己紹介を始める生き物改めきなこ。するときなこは、そのままろくろに飛び掛かってハリセンを叩きつけてきた。

 

「いてぇな! 何すんだよ!!」

「じゃかしぃ、ジャリガキ! こんなようわからんもんを、ワイ等誇り高い式神なんかと一緒にすんなや!!」

「こんなって! ”くろう”は友達の紺が見つけてくれた、私の得意な占いなんだよ! 馬鹿にしないでよ!!」

 

きなこの物言いに当然、千矢は反論して大声を出してしまう。当然、きなこもその言葉にハッとしてしまうのだった。すると、それを見ていた紅緒も当然…

 

「今のは…きなこが、悪い…引っ込んでいて」

「紅緒様!? ……その、すまんな。知らんとはいえ、一方的に文句言うてもうて…」

 

紅緒の怒気に充てられ、きなこは千矢に謝ると再び形代の紙に戻って紅緒の懐に帰っていった。

 

「きなこが…ごめんなさい。お詫びの…代わりに、おはぎ…食べる?」

「いいの!? ありがとう!!」

 

紅緒が謝罪の言葉と同時に重箱をどこからか取り出すと、ふたを開けて中にぎっっしりと詰まったおはぎを見せて問いかける。千矢はそれを見て目を輝かせ、おはぎを頬張りだした。

 

「まあ、あの”くろう”とやらは後回しだな。問題は…」

「そこの二人だな。未来から来た俺の娘と、聖なる遺体が元々あった時代の人間…」

「今回の問題に一番詳しそうな人と早く出会えたのは、幸運でしたね」

 

一旦、くろうについての話題は終わりにし、士と承太郎、そしてきららは徐倫とジョニィに視線を向けるのだった。遺体に導かれた戦士の中に、実際に遺体のあった時代の人間と、未来から来た承太郎自身の娘がいたのだ。気になるのも当然だろう。

 

「父さん……まあ、アタシから見たら父親なのは変わんないから、便宜上は父さんと呼ばせてもらうわ。でも、こんな形で無事なあなたに会うなんて…」

「その様子だと、俺は厄介なことに巻き込まれているようだな…まあ、聞かないでおいてやる」

「それよりも、ジョニィっていったか? 例の聖なる遺体やそれと身近な連中について、わかる範囲で教えてもらえないか?」

「ああ。僕も遺体を欲しているし、協力者が多いに越したことはないからね」

 

そしてジョニィは、自らの身の上に起きたことを話し始める。

 

かつてジョニィは天才ジョッキーとして名を馳せていたのだが、そのせいで高慢になっていたために罰が当たり、行列の取り合いというくだらない喧嘩が原因で足を撃たれた。その傷が元で下半身不随になってしまう。

しかしある時、ジャイロ・ツェペリという男が持つ”黄金の回転”と呼ばれる秘術の影響で足が一時的に治ったことからジャイロに会うため、彼が参加していたアメリカ大陸横断の乗馬レース大会”スティール・ボール・ラン”に参加を決意する。

その大会で聖なる遺体を知り、その一部(ココアの手に入れた左腕)を手にしたことでスタンド能力を手に入れた。そして後に宿敵となるアメリカ大統領のファニー・ヴァレンタインが九つに分断されたこの遺体を回収するのが、レースの真の目的だと察してジャイロと共に戦っていた。全て揃うと所有国家は千年は繁栄する、というほどのパワーを宿した聖なる遺体。傭兵やテロリストを雇ってまでそれを手に入れようとするヴァレンタインを止めるべく、ジョニィとジャイロは戦った。

しかしここに来る直前の戦いでジャイロが戦死し、進化したスタンドの力でヴァレンタインを追い詰めるも、いきなり意識を失ってエトワリアに来ていたという。

 

「ヴァレンタインのスタンド・D4Cの能力は平行世界の行き来をするというものだ。奴が無限の回転を込めた爪弾から逃げる際に平行世界へ行って、例のオーバーヘブンショッカーとやらに関わりを持つことになったんだろう」

「成る程。そこに例のアルシーヴとやらが禁術を行使したのが重なって、今回の事件が起こっちまったわけだ」

「……やれやれ。平行世界を行き来するスタンドってだけでもとんでもねぇが、そこにファンタジー丸出しな異世界が絡んで、どんどんややこしくなってやがる」

「特殊能力で平行世界を自在に行き来、か……最上魁星(もがみかいせい)もビックリだな。しかも使い手が国家元首って……」

 

ヴァレンタインのスタンドの力が何気なく判明し、それに合わせて今回の事件のそもそもの元凶と言うべき戦いに、頭が痛くなりそうな士と承太郎だった。戦兎もかつて戦った敵が平行世界の融合を目論み、その為に平行世界を行き来する装置を開発していた為に、ヴァレンタインと照らし合わせて

 

しかし、承太郎は徐倫のある一言でそれら全てが頭の中から霧散することもなる。

 

「早くこの一件を片付けて、元の世界に帰らないといけない。エンポリオにアナスイ、エルメェスにウェザー。仲間たちを向こうに置いてきているし……」

 

仲間達の名を呟き、徐倫は決意を新たにするのだが、その際に口にしたある単語に承太郎は覚えがあった。

 

「このままじゃ、プッチの奴が天国に到達を……」

「!? (まさか、徐倫が関わっている戦いは、アレが絡んでいるのか?)」

 

不意に聞こえた"天国"という単語に目を見開く承太郎。彼はDIOを倒した直後、ある物を彼の屋敷で発見したのだが、それに天国にまつわることが記録されていた。DIO自身が研究したらしいその記録を危険視し、承太郎は燃やしたはずだったのだが……

 

「……」

「あれ? ランプちゃん、どうしたの?」

 

その一方、ランプが珍しく険しい表情でいたので気づいた青葉が問いかける。そこに、永夢とボーダー組も駆け寄ってくる。

 

「どうしたの? やっぱり、これから起こる戦いが怖いのかな?」

「心配しないでいいぜ、お嬢ちゃん。この実力派エリートが来たからには、この里の住民は誰も傷つけさせないぜ」

「あなた達が…」

 

そしてそんな二人に対してランプが何かを言おうとした矢先、それが起こった。

 

「みんな、大変だよ!!」

「急患や! 怪我した人達連れてきたから、保護したって!!」

 

現れたのはピンクのロングヘアの少女に関西弁でしゃべるスタイルのいい少女。そして後ろに小柄でクールな雰囲気の少女と、黒髪に眼鏡の少女だ。

 

「なでしこさん、どうしたんですか?」

「だから、葵ちゃんが言ったみたいに怪我した女の子を保護したから助けてって!!」

 

なでしこと呼ばれた、クリエメイトと思しき少女が負ぶって来たのは、フリル付きの衣装に杖を携え、頭に王冠をつけた幼い少女だ。それが傷だらけで息も荒い為、ただ事じゃないのは察しがついた。

そしてクールな少女に連れられているのは、亀の甲羅を模した装飾を身に着けた少女である。

 

「えっと、ひょっとして君達もクリエメイトなのかな?」

「誰? 日本人っぽいけど…私は志摩リンでそっちの眼鏡は大垣千秋、察しの通りクリエメイトって呼ばれている。ただ、この子はこの世界の人だから違うかな」

 

良太郎が話しかけると、少女は自ら自己紹介を始める。そしてその少女、リンに連れられていたエトワリアの住民だという少女が、必死な様子でこちらに訴えかけてきた。

 

「私はウミガメのウミといいます。そちらのなでしこさんが負ぶっているお方を…オトヒメ様を助けてください!!」

 

そして自らを海亀だという少女は、そのままなでしこが背負っている少女をオトヒメと呼んだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

~里の居住区~

「ひとまず、傷の手当は済んだな。裂傷が多かったんでおれとタヌキ屋で縫っておいたぞ」

「そこにゆのとなずなの魔法が合わさったから、上手く治癒してくれたぞ。後は体力さえ回復すれば、なんとかなりそうだな。で、おれはトナカイだって何度言わすんだ」

 

連れてこられた少女、オトヒメはローとチョッパーに手当てされた。そこに回復魔法が加わり、傷はもうほとんど回復している。しかしまだ意識は戻ってないため、後はチョッパーの診察通り、体力の回復を待つのみだ。

ちなみに、ローからタヌキ呼びされて不機嫌そうだ。

 

「チョッパー君、船医って言ってたけど本当にお医者さんなんだね」

「うん、本当すごかったよ。ローさん共々、手際もよかったし」

「な!? そ、そんな褒められたってうれしかねーぞ! コンチクショー!!」

 

なずなと乃莉に褒められ、露骨な照れ隠しをしてしまうチョッパー。その一方で、士達はリンやウミから事情徴収をしていた。

 

「で、何があったんだ? 俺達が戦っている敵が、そっちに来たかもしれねえし、話してくれ」

「はい。私達、シーズンオフ時にキャンプするのが趣味で、海水浴場にキャンプまで行ったんですけど…」

 

そして、承太郎の問いかけにリンは話し始めた。

 

~回想~

「アキ、設営できたで」

「お、イヌ子よくやった。じゃあ、昼飯の準備するぞ」

「よし、じゃあおいしいの付くから、みんな待ってて!」

 

リンが話した通り、海でキャンプをしていた一同。千秋にイヌ子と呼ばれた犬山葵が設営、なでしこが食事といった具合に役割分担してキャンプを楽しんでいる。

 

「そういえば、なんか今日は人が多いよね?」

「出る前にコルクに聞いたんだけど、ここにはこの時期にしか連れない珍味の魚が釣れるんだって。で、それが下手な魔物より凶暴だから、冒険者的な人たちが主に狙っているとか」

 

なでしこが海水浴シーズンから外れているのに、人が多いことに疑問を感じていた。そこにリンが説明していると、直後にそれは起こった。

 

バシャアアアアアンッ

「うひゃ!? 何!?」

「まさか、今リンの言ってた魚が出てきたのか!?」

 

突然上がった水しぶきに驚く一同。千秋がリンの話していた魚の件を思い出して口に出す。しかし、それは見当違いだった。

 

「た、助けて…ください!」

「え? 女の子?」

 

現れたのは、助けを求めてきた少女ウミであった。傷だらけのオトヒメを連れているため、どうやらこの時すでに彼女は危機に陥っていたらしい。

 

「地上の方、ですか? 私達は海の底の、リュウグウパレスに住んでいましたが、そこにとんでもない奴等が襲ってきて…」

「と、とんでもない奴等?」

 

ウミの言葉に、尋常じゃない何かを感じたリンだったが、その時再び水しぶきが上がる。

 

「見ぃ~~~~~付けた!」

「おいおい、随分と手間取らせやがったな」

 

現れたのは褐色肌に銀髪ツインテールの男と、剣とも斧とも覚束ない巨大な刃物を携えた長身の男だった。後者の男は他にも眼帯や、常に歯を見せている口など、目の立つ特徴が見られた。

一同は知る由もなかったが、褐色肌の男は聖丸である。

 

「な、なんだこいつら?」

「見た目は人間っぽいけど…なんか?」

「あ? おいおい、破面(アランカル)を人間と勘違いなんざおめでたすぎじゃねえか?」

「俺も同感だな。婆娑羅を知らねえっつっても、人間なんぞに間違えられるのは癪だ」

 

破面、婆娑羅と種族名をそれぞれ口にする二人組。当然、いきなり現れた二人組に、海辺に集まっていた人々が騒ぎ立てる。

 

「おいおい、そんなカスみてぇな呪力しか持ってねえ人間ばっか集まっても仕方ねえんだが…」

「だったら、俺の食事にさせてもらうぜ。あんまり味には期待できねえが、量はそれなりに多いしよ」

 

そして破面を名乗る男が聖丸に言うと、空を見上げると同時に口を大きく開け、息を思いきり吸い込んだ。直後、それは起こった。

 

「あがぁ!?」

「ひぎぃ!?」

「がっ!?」

 

いきなり海辺に集まっている人々が一斉に倒れたのだ。結果、なでしこ一行を含めた数名だけが無事だったが、残りは全員が倒れ伏した。

 

「ぷはぁ~。思いのほか美味かったが、それでも現世の人間に毛が生えた程度か」

「しかし、魂を直接食わねえといけねえのは、不便なもんだな。ノイトラさんよぉ」

「直接殺さねえと呪力とかいうエネルギーを取り込めねえ、お前さんほどじゃねえが」

 

聖丸の言葉からして、彼にノイトラと呼ばれた長身の破面は周囲の人間達の魂を今ので吸い込んでしまったようだ。

 

「魂? 食べた? まさか!?」

「倒れた人たち、みんな死んじまったのか!?」

「おうよ。俺達、破面が周辺の魂を一斉に食らうための技”魂吸(ごんすい)”だ。今ので死んでねえ辺り、てめぇらは少しは骨がありそうだ」

 

なでしこと千秋が怯える様に、ノイトラは丁寧に説明してやる。すると生き残っていた一人の男が、それを聞いて憎悪に塗れた表情を撃兼ねてノイトラ達を見る。

 

「てめぇら、おやっさんも兄貴も、かわいい後輩もみんな殺しやがったのか!?」

「あ? てめぇら人間だって、他の生き物を食うだろ。それと同じで俺もお前ら人間を食ってるだけだよ」

 

悪びれた様子もなく、冒険者の男に告げる聖丸。しかし、それが男の怒りに火をつけることとなった。

 

「てめぇえええええええええええええええええ!!」

 

そして手にした剣で男は聖丸に切りかかるが……

 

バキッ

「!?」

「うん、いい絶望顔(かお)だ」

 

剣が折れ、男の表情が憎悪と怒りから恐怖と絶望へと変わる。そしてそれに満足気な聖丸が上で振るうと、男の体が縦から両断される。間違いなく即死だ。

そしてそのまま血の雨を降らせ、リン達にもそれが降りかかる。

 

「うん。呪力の方も、俺らの世界の雑魚人間に毛が生えた程度だな」

「だろ。そこの小娘どもはさっきの抵抗の様子から、まだマシだと思うが…」

 

しかもそんな惨劇を起こした張本人達は、本当に人間が食事の感想を告げる感覚であった。

 

「り、リンちゃん…まさか?」

「そのまさか、だと思う。私らも殺して、魂を食べるんだと思う」

「アカン、みんな逃げるで!!」

 

最悪の想像が一同の脳裏をよぎり、葵も焦った様子で逃げるように勧める。

 

「「そうはいかせねぇよ!!」」

 

しかし聖丸もノイトラも攻撃モーションに入り、一同の息の根を止めようとする。

 

「ウミちゃん…今だよ!」

 

しかし直後、オトヒメが目を覚まし、持っていた杖を振りかざすと海水がノイトラと聖丸に襲い来る。

 

「「な!?」」

 

そしてそのまま二人は驚き、海水に飲まれてしまった。

 

「今です! 逃げましょう!!」

「そうだ、今のうちに!!

「おい、キャンプ道具とかどうすんだ!?」

「置いていき!! 命あっての物種や!!」

 

オトヒメのおかげで出来た隙をついて、どうにか逃げ出した。千秋は持ち物を置いていくことに困惑するも、葵に論されて逃げることを優先するのだった。

 

「くそ! 雑魚の分際で…」

「お前ら、よくも仲間を!」

「ちっ…しゃらくせぇ!!」

 

そして他の冒険者達が、聖丸とノイトラに一斉に襲い掛かってくる。結果、彼らは図らずもなでしこやオトヒメ達を救うこととなった。

~回想了~

「聖丸……もう動き出していやがったか」

「あの婆娑羅とかいう奴等の、一派のリーダーだね」

「しかし破面か……今まで統合した情報に無い敵だな」

「連中、怪人以外にも遺体の数と同じだけ、別世界の悪意を持ち込んできている可能性もあるな」

 

聖丸の名に反応する、ろくろとフィリ

ップ。実際に婆娑羅と相対しただけあって、翔太郎や夢路共々、彼らの脅威については良く理解していた。その一方で、新たな敵の存在に警戒心を強めることとなる士と承太郎であった。

しかし、一人的外れながら一つの疑問を感じてしまうユウスケの姿があった。

 

「なあ、この子ってオトヒメって名乗ってたけど……例のリュウグウパレスといい、マジモンの竜宮城があんのか?」

「はい。この世界の海には人の姿を取る生物がいくらか存在していて、そのリュウグウパレスで生活しているそうです」

「ふ~ん……って、誰?」

 

ユウスケの疑問に答えたのは、いつの間にか部屋に入ってきたソルトだった。見覚えのない少女に、ユウスケは驚いてしまう。

 

「どうもはじめまして、七賢者のソルトといいます。今回、クリエメイトのゆのやそこの電王、あとルフィという方々に保護されてこちらに保護されました。別室で同じく七賢者で双子のシュガーもいますので、見知り置きを」

「保護じゃなくて捕虜だ。一応、こいつらの敵のアルシーヴとやらの部下らしいからな」

 

ソルトの自己紹介と簡潔な事情の説明に、ローが付け加える。

 

「こんな人畜無害そうなのがお前らの敵か。いろんな意味でこの世界、大丈夫か?」

「ソルトは高度な変身魔法が使えて、それでクリエメイトの偽物を用意したりして結構厄介でしたよ?」

 

士が相変わらず遠慮のない物言いに、きららがフォローを入れる。しかし当のソルトは一瞬ムッとするも、すぐに険しい表情を浮かべた。

 

「まさか、この世界がこんなことになるなんて……」

「そこは同意ですね。アルシーヴ様の御身も心配ですし…」

「クレア、心配しないで。仮面ライダーの皆さんや、承太郎さんのような異世界の戦士の人達もいるし…私も手伝って勝ってみせるから。出来れば、ソルトやシュガーにも手伝ってほしいけど…」

 

 

そして聞き手に回っていて不安な様子だったクレアに、きららは安心させるように告げる。そしてソルトにも協力を持ちかけようとするのだが…

 

「きららさん、私は信用ができません」

 

ランプが突然、異議を唱えだしたのだ。

 

「え? 確かにソルトは敵対している七賢者だけど、今は非常事態なんだし…」

「違います、ソルト達じゃありません」

 

きららが論そうとするも、いきなりそれを否定するランプ。

 

「百歩譲って、アルシーヴ先生や七賢者たちと協力しようとしても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その仮面ライダーとやらやほかの異世界の戦士達を信用ができないんです。特に、そこの士さんは”世界の破壊者”だなんて呼ばれているそうじゃないですか」

 

そして疑惑の目を持って、士の方を見るのだった。




ノイトラ先行登場。破面の他にも、後半から出てくるジャンプキャラは敵だけ先行登場する奴がそれなりに出てくるので、お楽しみに。
そしてランプの疑惑とその真意は、果たして?


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第21話「ランプの恐れと刺客襲来」

令和ライダー1号のゼロワンがカッコいい。Dr.stoneに彼方のアストラ、まちカドまぞくとジャンプ&きらら作品が面白かった。そんないいニュースがある一方、京アニ放火事件なんてバッドニュースが……
犯人には法の裁きを受けてもらわないと困りますね。

本編では終わりがけでようやくゲスト参戦。お楽しみに。
P.S.きらファンっぽさは明らかに霧散して完全にジャンプのノリになっています。ご注意を。


仮面ライダー達を信用できない。ランプはそう言った。そしてランプはそのまま、敵意の籠った眼で士を睨みながら続ける。それは渡達超越者組と対面した時に士へと向けられた、あの言葉だった。

 

「あの紅渡という方も言ってました。『この世界の全てを破壊し、全てを繋いでください』と。それって破壊は比喩だとしても、例の敵たちとは別でこの世界を手に入れようとか、そういう風にしか受け取れません」

「そんな!? 士君は確かに破壊者とか悪魔だなんて呼ばれていましたけど、それは世界を救うために…」

「そのために全く違う世界を攻撃したとか、ですか? だとしたら、いい迷惑です」

 

夏海がフォローしようにも、ランプは聞き入れようとはしなかったし、夏海もこれに対して反論できなかった。

実際、士はかつての旅で崩壊していく世界を救うため、その世界で戦っていた仮面ライダーを倒して回っていたことがある。ともに旅をしている、小野寺ユウスケも含めてだ。最終的に彼らは復活したものの、一度は完全にその命を奪っていたのだ。

 

「別にお前が俺を信用しないのは、構わねえ。だが、そこの承太郎はそれを承知の上で、俺の協力を求めてきたんだ。清濁併せ呑む必要、あるんじゃねえか」

「私情で申し訳ないですが、その承太郎さんも正義の味方とは到底思えない口の悪さじゃないですか。ご先祖様だというジョナサンさんの方が信用できます。だからって、信用はしませんが」

「……屁理屈だらけのガキだな、やっぱり」

「……!」ブチッ

 

士とランプでそのまま問答になるが、またガキ呼ばわりされたことでランプの怒りが頂点に達した。

 

「兎に角、私は今はそこの皆さんを信用はできません! ひとまず、今日は放っておいてください!!」

「ランプ、待って!!」

 

そしてそのままランプは会話を打ち切ってしまい、きららの制止も聞かずに部屋を出て行ってしまう。

 

「なんだアイツ? さっきからわがままばっかりだな」

「同感だな。おれだって、流石に全員を信用できねぇけど協力は必要だと思っているんだが」

「ルフィさん、遊真君…」

 

去っていったランプに対して、遠慮なく思ったことを口にするルフィと遊真に、思わずゆのも冷や汗をかいて二人を見てしまう。

 

「なんだよ、わざわざ助けに来てやったのに文句ばっかり言いやがって…」

「ソルトはあなた方に助けられたから信用はしてますが…正直、あなたの方が悪人然とした面構えで一番怪しいです」

「んだと、この狸!!」

「モモタロス、落ち着いて」

「そうですよ、ソルトちゃんも悪気はないんだし」

「まあ、仮面ライダーや他のみんなも聖典ってのに載ってないらしいし、混乱するのも仕方ないんじゃ…」

 

モモタロスもソルトからの指摘で怒り出すも、良太郎と青葉が宥めようとしてくる。

夢路のようにフォローする者も含めて、思い思いのことを口にする一同。そんな中、一人考え事をする人物が。

 

「う~ん……」

「出久君、どうしたの?」

 

その人物である出久の様子が気になり、ココアが声をかけてきた。そして意を決したように、口を開き始めた。

 

「皆さん。僕が思うに、ランプちゃんは怖いんだと思います」

「怖い? おれ達がか?」

「ハオの件は聞いたけど、オイラ別に怖がらせることやってねぇけど…」

 

その言葉にルフィと葉が反応するので出久は返すのだが…

 

「僕達が、というより……ココアさんや千矢ちゃんや青葉さん、そんなクリエメイトの皆さんに起こりえる今後のことに対して、かな?」

「わ、私たちに?」

「はい……僕のお母さんが、前に思ったことをランプちゃんも感じているんじゃないかって」

 

そんな中、出久は語り出した。

 

オールマイト

出久のいた世界の日本で、平和の象徴と呼ばれた最強のヒーロー。現在は引退して雄英高校の教師として赴任している。個性は単純な身体強化だが、そのパワーは拳の一振りで竜巻などの自然災害すらねじ伏せてしまう程なのだ。

しかし実は、今から数年前に個性を犯罪に用いる(ヴィラン)、その中でもとりわけ強大な相手との戦いで負傷、雄英への赴任は後継者の発見と育成が目的であった。だがそれを察してか、件の敵であるオール・フォー・ワンとその後継者・死柄木弔(しがらきとむら)の率いる敵連合による雄英の生徒への襲撃が何度か発生。そして今年の夏にオールマイトは、オール・フォー・ワンとの死闘の果てに彼を検挙することに成功するも、負傷の件が明るみに出て引退を余儀なくされたのだった。

この一件は多くの職業ヒーローが負傷し、戦闘の現場となった地区も壊滅状態となった。そのことから、地区名からとって”神野区の悪夢”と呼ばれている。

 

「僕の個性、実は受験シーズンの最中にようやく発現して、それもあって上手く使いこなせてなかったんです。そんな中でその敵の襲撃に何度も遭遇して、怪我もいっぱいして……お母さんを心配させてしまいました」

 

オールマイトの話を終えた出久は、自分の個性についても明かしながら暗い表情で告げた。

 

「そこに僕の憧れのヒーローでもあるオールマイトの一件が重なって、僕の進む未来も彼みたいに血みどろになりそうだって。だからそんなオールマイトに僕を預けられないって……雄英をやめさせられそうにもなりました」

 

言いながら袖をめくる出久の右腕は、全体に生々しい傷跡があった。今でこそ出久はそれなりに筋肉はついているが、もともと華奢でそこまで背も高くない。そんな彼が身体強化能力を急に身に着け、ごり押しで戦っていれば周囲は心配するのは明白だ。

 

「だから、ランプちゃんも同じなんじゃないかって思ったんです。クリエメイトのみんなが暮らしていた世界の大多数は、超常の発生やスタンドみたいに影からある特殊能力、仮面ライダーの皆さんが戦ったような明確な悪意、そういったものと無縁だから……僕らの血生臭い世界に巻き込まれてしまうんじゃないかって」

 

メリーと夢路のいた世界は戦いがあったものの、他はそうではない。里の外に出ているクリエメイトにもう一チーム例外がいるが、基本的には異常も異能も世界の危機も訪れていない。きわめて平和な世界だ。

そんな世界での暖かな日常が聖典に記され、それがクリエを生み出しているのかもしれない。そんな世界とつながっているエトワリアにとって、仮面ライダーもスタンド使いも、他の戦士たちも異質な存在であった。ランプが怯えるのも必然だった。

 

「出久、でもこの世界には魔物だっているしあの魔術師みたいな悪人だって、他にもいるんじゃないか?」

「でしょうね。でも他で襲撃をしている例の、オーバーヘブンショッカーみたいな過剰な攻撃意識や支配欲があるわけでは、無いんですよね? ろくろ君達の敵みたく負の念を食らって強くなるとか、ガイアメモリのように使い手の悪意の増長する道具も…おそらく、まだ見ぬ敵もそんな奴らが多いから、あげたらきりが無いですよ」

 

戦兎からも話を振られるが、それを踏まえても自分たちのほうが異質だという指摘が上がる。その話を聞いて、色々と思うところがあった一同であった。

そして最初に口を開いたのは、ゆのだ。

 

「そういえば、私が初めに襲われた時にいたンドゥールって人、私達のことを本気で殺そうとして……しかも、その為ならって、自分の攻撃で死んじゃって……」

「ゆの、落ち着け。おれ達で、なんとかしてやるから」

「そうですよ! 私だって怖いけど、こんなに味方がいるんだし…」

 

彼女の脳裏に浮かんだのは、ンドゥールが死郎を呼び寄せるために自爆したあの瞬間だ。明確な悪意を持った敵、使命と主のためなら己の命さえ捨てる狂信ぶり、一般人のゆのからしたら常軌を逸していた。

その時を思い出して、恐怖で震え出すゆの。その様子を見て、チョッパーと乃莉がなだめ始める。

そしてその次に打ち明けたのが、修だった。

 

「血生臭い…僕も身近に体感しましたね。僕も近界最大の軍事国家”神の国アフトクラトル”の襲撃に応戦して…」

 

修が話したアフトクラトルの襲撃。曰く、近界は宇宙空間のような暗闇に惑星のように浮かぶ国家が一定の軌道を動いているのだが、それらの惑星は(マザー)トリガーと呼ばれる、特殊なトリガーで国土を形成しているという。

アフトクラトルが神の国と呼ばれる所以は、その母トリガーに特定の高いトリオン能力者を”神という名の人柱”として拘束、それによって軍備に人材を回していた為だ。そして件の襲撃の理由は、その神の寿命が尽きそうだったから新しい神を見つけに、修のいた世界の地球を含めた周辺の国々に、国防が疎かになるまで兵力を投入したというのが真相だ。

 

「その神にするために千佳が狙われたので、あの手この手で守り通したんですが、僕も負傷して一週間は意識不明に…」

「え!? 修君、トリガーを使っている間は生身にダメージはいかないんじゃ…」

「それに、トリガーには緊急脱出機能も付いているって…」

「はい。僕、その時は生身だったので…」

 

青葉と永夢の疑問に答える修。

アフトクラトルの司令官ハイレインは黒トリガーを使っており、それはトリオンで出来た物質を圧縮してキューブに閉じ込める弾丸を放つという、トリガー使い最大の天敵という代物だった。トリガー使用時の戦闘体にも適用され、千佳がそれを食らってしまったのだ。

しかし弱点として、トリオン以外の物質には一切効果が無いことから、千佳を圧縮したキューブを生身の修が担いで撤退するという手段を取った。結果、千佳は守れたが他の攻撃能力があるトリガー使いがいたために負傷してしまった。

 

「同時に、空閑の相棒兼お目付け役として、空閑の親父さんが作ったレプリカというトリオン兵もやられてしまって…」

「まあレプリカはアフトの船を緊急発進させた後、向こうに回収されたのか生きてるらしいからな。また会うために向こうへ乗り込む準備してるんだ」

「……遊真君、そういえば君のお父さんについて気になったことなんだけど」

 

そんな中、話を聞いていた永夢は意を決してあの事を尋ねた。

 

「例の黒トリガーなんだけど、作った後の遊真君のお父さんがどうなったか話してなかったよね。まさか、もう……」

「隠しても仕方ねえし、話しておくか。親父は黒トリガー作ったときに死んだ」

 

永夢の推測は当たり、やはり遊真の父は死んでいた。そして、そこに迅を交えて事の詳細を語る。

 

「そもそも黒トリガーは、高いトリオン能力を持った人間が全トリオンと自分の命を注ぎ込んで初めて作れるんだ。親父はこいつを作って、俺の代わりに死んだ」

「俺も今は本部に返還してるけど、俺の師匠がボーダーが公になる前にあった戦いで黒トリガー残して死んで、しばらく使ってたんだ。空閑も元々、親父さんの親友だったその師匠に会いに来たそうでな」

「うわぁ……聞いてると、結構きついですね」

 

色々と重い話が飛び出て、青葉も心なしか顔色が悪い。そして次に口を開いたのは、戦兎だった。

 

「俺と万丈のライダーシステムも、実は戦争に利用された代物でな。そしてこいつの開発者は、俺の父さんだ」

「「え?」」

 

その言葉に、出久もココアも反応。声にこそ出ていないが他のクリエメイトやライダーたちも驚いている。そして続ける戦兎。

 

「で、その戦争やら裏で糸を引く悪の組織やらとの戦いに巻き込まれて……万丈のやつも恋人を亡くした」

 

万丈が別室で休んでいたが、本人に思い出させたくないと配慮したのか、戦兎は彼の過去についても軽く触れた。その言葉に、また一同は驚愕と旋律を感じることとなった。

 

「どこの世界でも悪意やらなにやらってのはあるものだと思ってたが……すまねぇ、配慮ミスだ。まさか、そこまでここが平和な世界だったなんて。俺を含めて、誰かがもっとあの子を上手くフォローできれば…」

「いえいえ! 何にしても、私たちやこの世界のために戦ってくれるんですから。ランプも落ち着けば、話を聞いてくれるかもしれないので…」

 

そして戦兎からの謝罪と、それに対して驚きながらもきららが応対。しかしそんな中、いきなりルフィが床を大きく踏み鳴らし、告げた。

 

「たしかに色々やべぇのかもしれねぇけど……おれ等がやることなんて一つしかねぇだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここにいる全員で強くなって、敵は全員ぶっ飛ばす! 仲間なんだから、互いに守り合えばそれで済むじゃねぇか!!

 

そして力のこもった眼で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ。こいつ、バカそうに見えていきなり確信つきやがったな」

「同感だ。まさか、こう来るとは…」

「まあ、ルフィはこういうやつなんだ。悪く思わないでくれ」

 

しかしこのルフィの言動が予想外だったため、士も承太郎も結構失礼なことを告げる。そこに思わず、ウソップがフォローを入れる。

しかし、そのルフィの言葉が一同に火をつけることになる。

 

「だけど、これぐらいシンプルな動機で戦う方がやりやすそうだけどな」

「だな。オイラもそういう方が、めんどくなくていいや」

「だね。みんな、それなら気兼ねなく戦えるかも」

「そうだな。俺も守りたい物のために戦ってんだ。それくらいシンプルな方がやりやすい」

「うん。仲間、友達、それなら助け合わないと! 悪い人たちが狙ってるなら、なおさらだよ!!」

「正直怖いけど、うん。そうですね」

 

ろくろに葉、良太郎に翔太郎、千矢にゆの、次々にルフィの言葉に反応。そしてそれがほかの面々にも伝播していく。

 

「……すごいですね、ルフィさん」

「ああ。奴が数百万に一人しか使えない王の資質を持ってるって、言ってたが…」

「だな。リーダーの素質は、間違いなく持ち合わせてやがる」

 

きららもそのルフィの資質に驚き、士と承太郎は彼の持つ覇王色の覇気も、だから持ち合わせたのだろうと冷静に分析する。

そんな中、部屋の隅で見ていたローは一人物思いにふける。

 

(コラさんはDの血族は神の天敵と言っていたが……それを踏まえても麦わら屋のアレは、大したもんだ)

「トラ男さん、どったの?」

「なんでもねぇよ、猫屋」

 

ルフィ達に明かしていないロー自身の過去。その時の恩人の残した言葉を思い出して、ルフィに照らし合わせていた。そんなローは話しかけてきた宮子に素っ気なく返すが、最初はどの困惑は見られず、嫌悪も特にしていない様子だった。

ロー自身がこういった穏やかな様子なのも、クリエメイト所以なのかもしれない。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

その日の晩、ランプは里の外の河原でポツンと座っていた。

 

「ランプ、こんな所にいたんだね。探したよ」

 

呼びかける声がしたので振り返ると、そこにはマッチの姿があった。

 

「部屋の外でこっそり聞いてたよ。せっかく助けに来てくれた彼らを、信用できないってはねつけて」

「……だってそうでしょ。世界の破壊者なんて、おっかない呼ばれ方してるんだし」

 

相変わらず警戒している言動を見せていたランプだったが、マッチの返答は意外なものだ。

 

「そうは言いつつ、頭の何処かではわかってるんだろう? 彼らは味方で、信用できるって」

「……まあ、全部が全部信じられないわけじゃないけど」

 

マッチの推察にも似た言葉は、ドンピシャだったようだ。しかし、それでもやはり受け入れられないといった様子で語り出した。

 

「でも、聖典に載ってない未知の異世界の方々を、私は信用したくない。クリエメイトの皆様が、あの人達みたいに大きな絶望の渦中に飲まれるんじゃないかって。私の知っている聖典が、汚れてしまうんじゃないかって……」

「成る程。知っている世界が壊れるのが怖い、そこに住むクリエメイト達の身に起こることも心配ってことだね」

 

出久の推察は当たっていたようで、話を聞いてマッチも納得した。

 

「でもさ、もし彼らが来ないまま例の敵・オーバーヘブンショッカーが現れてたら、確実にこの世界は壊滅してたって考えられない?」

「え?」

 

まさかのマッチからの切り返しに、ランプは困惑気味な声を漏らしてしまう。

 

「ランプから見たら、彼らが厄介ごとを持ってきたようにも感じられるかもしれないけど、逆に厄介ごとの為に駆けつけてくれた。そういう風には見れないかな?」

「考えたこともなかった……でも、もうしばらく考えさせて」

「うん。ゆっくりでいいよ」

 

マッチの言葉のおかげで少しだが、受け入れる準備のできたランプ。

しかし、そんな彼女達に近づく怪しげな影が……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜翌朝〜

里の周辺で見回りついでにジョギングをしていたリゼとうみこが、ある人物と遭遇する。

 

「あ、木崎さんに千佳。おはようございます」

「リゼさんにうみこさん、おはようございます」

「おはよう、天々座。うみこさんも、おはようございます」

「みなさん、おはようございます」

 

レイジと千佳の二人であった。事前にこの二人が師弟だとは聞いていたが、筋肉質で大柄なレイジと、チノよりも背の低い千佳の二人が並ぶと、色々と不思議なものを感じた。そんな二人だが、どうやらリゼ達と同じくジョギング中のようだ。

 

「二人でトレーニングとは、関心ですね」

「はい。レイジさんから、スナイパーは場所を特定されると危ないから、常に走れるように体力をつけておけと」

「俺も亡くなった親父が、レスキュー隊員でな。その受け売りでガキの頃から体は鍛え続けている」

 

走りながら談笑を始めると、レイジの口から衝撃のカミングアウトが為されて思わずギョッとしてしまう。

 

「涼風さんから色々と聞きましたが、まさか木崎さんも親族を……」

「ええ。九年ほど前に、何もないところで子供を庇うようにして、胸に穴を開けられていたそうで。推察になりますが、公の存在になる前に近界民が仕掛けてきたのかと」

 

うみこがまさかと思い問いかけると、やはりレイジも近界民の被害者だったようだ。しかし、彼は強い意志のこもった目で告げた。

 

「ですが、俺はあくまで人を助ける為にボーダーに入ったので、親父の仇を討つ気は別にありません」

「え? じゃあ、普通にレスキューをすれば……」

「これも親父の受け売りだが、生きて帰れないレスキューは失格。死なない為に戦う力を欲したからだ」

 

リゼの疑問に対しても迷いなく告げるレイジ。

 

「だから、その為にも体は鍛える、強くもなる。俺の行動理念は、それで十分です」

「……まだ大学生だそうですが、立派ですね。桜さんに爪の垢を飲ませたい位には」

「あはは…」

「ほ、程々にお願いしますね」

 

レイジの立派さに感心する一方で、ねねを引き合いにしてしまううみこ。そんな様子に、リゼと千佳は思わず苦笑してしまうのだった。

 

〜その頃、ラビットハウス・エトワリア店〜

「「「おおお!!」」」

「凄いな…これ君が作ったんだって?」

「まあね。設計は別の人間だけど、組み立てとかは僕が」

「フィリップ君も凄いんだね…」

「まあな。相棒は並みの天才じゃないんだぜ」

 

出久とろくろ、そして夢路の男子組が目を輝かせながら見つめ、戦兎とココアも感心する物があった。ガラケーから変形したクワガタムシ、カメラから変形したコウモリ、といった具合に道具が変形した小動物型メカが室内を飛び回っている。

これらはメモリガジェットと呼ばれ、ガイアメモリを模したツール・ギジメモリを使うことで起動するサポートメカである。普段の探偵業務でも役立つ上に、W変身時は武器にセットしてマキシマムドライブが撃てたりする優れものだ。

そんな中、フィリップはあることを切り出すのだが……

 

「さて。里周辺の偵察のためにガジェットを出したはいいけど、一つ問題を思い出した」

「「「「「「?」」」」」」

「実は僕達の持つガイアメモリはこの6本以外にも、これらのガジェットのように変形して自立メカになるメモリが二つある。そしてそれらは、僕達の切り札だ」

 

フィリップが話題にあげたメモリ、ファングとエクストリーム。それらは手持ちのガイアメモリ6本を用いた基本形態を凌駕する存在だ。

しかし……

 

「しかし残念なことにそのメモリは現在、行方不明だ。この世界に来た時にオーバーヘブンショッカーの張った結界のせいか、到着した時に座標がずれてどこかに飛ばされてしまった」

はぁあ!?

 

そのフィリップの言葉に、思わず大声で驚いてしまう翔太郎。予想外の大声に、全員が耳を塞いでしまう。

 

「というわけで、今後僕達は例のメモリ二つを探すのも目的になる。けど、それらが見つかったら僕達コンビは百人力だと保証しよう」

「おいおい、相棒。それまで、保つのか? 昨日の婆娑羅みたいに特定の攻撃しか効かない奴らが来たら、どうするんだ?」

「いや、そういうのが来たら俺らが対応すんだろ? その為にも紘汰や渡って人が、あちこちに声かけたんじゃねえか?」

 

フィリップからのカミングアウトから、ずっと狼狽っぱなしな翔太郎。そんな彼を一緒に話を聞いていたろくろが落ち着かせようとする。

その様を見ていた全員は、思った。

 

『全然ハードボイルドじゃない』と。

するとそんな中、メリーが店を訪ねてきた。

 

「夢路、ライネが朝ごはん出来たって。行きましょう」

「お、もうか。じゃあみんな、行くか」

「天才も脳に栄養やらないと、動けないからね」

「僕も腹ペコ」

「さて、今日のメニューは何かな? チノちゃん、コーヒー入れにいってたみたいだけど」

 

そのまま続いていき、翔太郎とフィリップ、ろくろが取り残される。

 

「……」

「翔太郎さん、一旦食事にして落ち着こう。紅緒もそろそろ訓練上がるだろうし」

「焔魔堂ろくろに賛成だ。行こう」

「ちくしょー……ハードボイルドはまだ遠いか」

 

結果、一同はライネが里で経営している食堂に集まった。既に士や承太郎は到着済みだ。

 

「ひとまず、朝食にしましょうか。戦うにしろ、食べて力をつけないと」

「私も手伝いました。ハーブティーも入れてみたんで、よければ」

 

そう言いながら、ライネは大量の料理を並べた机の横に立っている。するとシャロがティーセットを準備しながら、厨房から出てきた。

 

「シャロちゃんは元の世界じゃ、ハーブティーの専門喫茶でバイトしてたんだよ」

「へぇ~。紅茶なら僕のクラスに詳しい人がいたけど、ハーブティーは未経験かな?」

 

ココアからの解説を聞き、出久も感心する。ちなみに出久の言う紅茶に詳しいクラスメイトは、八百万百(やおよろずもも)といい、ベタなお嬢様キャラだったりする。

 

「さて。いつ戦闘になってもいいように、食べてコンディションを上げておくぞ」

「昨日、軽く軽食をつまんだがとても美味だった。この分ならライネさんの本格的な料理は、フランス人の俺の口にも合う飛びっきりの料理だろうぜ」

 

そして士に続いてテーブルに着く一同。その際、ポルナレフがライネの料理に食べる前から称賛するのだが……

 

(ポルナレフが言うと、あまり美味そうに聞こえんが…)

(ですね。便所トラブル担当ですし…)

やれやれだぜ……

 

ジョセフと花京院がそろって、失礼なことを言っていたりする。承太郎もそんな様子に小声で呆れていた。

 

「あれ? そういえば、ランプがいない?」

 

そんな中、ランプがまだこの場にいないことに気づいたきらら。

 

「どうせ、まだ拗ねてんだろ。あの見た目だ、小学生かそこら程度の年齢に違いねぇ」

「ランプは本当、お子ちゃまだからねぇ」

「シュガーも人のことは言えないかと」

「な、なにをぉおお!!」

 

士の遠慮ない物言いと、それに同意するシュガー。しかしシュガーのほうはソルトに同レベルと見なされて、憤慨していた。

その一方、シュガーとソルトが普通にこの場で食事を共にしようとする様に、困惑していた人物が一人。

 

「(おれ、こいつら捕虜にするって提案したと思うんだが……なんで一緒に飯食うことになってるんだ?)言っておくが、おれはパンが嫌いだからな」

「トラ男さん、好き嫌いはよくないですぞ」

 

困惑する一方でスキキライについて言及するローに、宮子が諫めに入る。

そして食事をとろうとするのだが…

 

「うむ、実に美味ですね」

「そっすね」

 

なんと、いつの間にか見知らぬ二人組が食堂に入ってきており、朝食に手を付けているのだ。

片方はタキシード姿の金髪男性、もう片方は眠たげな眼のロン毛の男性だ。

 

「え!? だ、誰?」

「てめぇ、いつの間に入ってきやがった!!」

 

ゆのが驚愕し、モモタロスも突然の不審者二人組に怒号を飛ばす。しかし、タキシードの男はロン毛の男が入れた紅茶を啜りながら、そのまま立ち上がる。

 

「突然お邪魔し、しかも食事に手を付けて失礼しました。後、普通に入口から入らせてもらいましたが」

(気配を全く感じなかった……こいつ、まさかショッカーの送り込んだ殺し屋か?)

(かもしれねえな。怪人かスタンド使いか、はたまた別の能力者か?)

(何にしても、気を付けないといけませんね)

 

タキシードの男の言葉を聞き、警戒してこっそりと話をする士、承太郎、きららの三人。

 

「そして自己紹介も遅れてしまい、申し訳ありません。私、こういう者です」

 

そして男はそのまま警戒する三人、真ん中に立っている士に名刺を渡す。だが、書いていたのは…

 

 

 

 

 

 

紳士

その単語だけが、ドンと書かれているだけだった。

 

「てめぇ、ふざけてんのか?」

 

その様子にふざけているとしか思えず士も青筋を立てそうになるが、男はそのまま自己紹介に入りだす。

 

「立てばジェントル座れば紳士、歩く姿はマジ紳士。

初めまして、私は財団Xに雇われた傭兵"紳士ウィルバー"と申します。こちらは部下の、ローライズ・ロンリー・ロン毛」

「どもっす」

 

名乗ったタキシードの男ウィルバーと、見た目まんまの呼ばれ方をされたロン毛。しかし名乗った際に、聞き捨てならない単語があった。

 

「財団X!? 私たちを襲った、カイって人と同じ!?」

「ここを勘付かれたっていうのか!?」

 

実際に財団Xと相対した青葉と修が、とっさに警戒態勢に入る。

 

「しかし、まさかボーダーの方々がこちらにいて、しかも仮面ライダーの方と共闘するとは思いもしませんでした」

「え? 僕たちを知っているんですか?」

「ええ。我々、三門市の隣町である蓮乃部に住んでおりますから」

 

ウィルバーが意外にもボーダーを知っているという事実に驚く修だが、同じ世界の町にいるということまで判明する。しかしその町の名前に、修は気づいた。

 

「蓮乃部……僕の実家だ」

「え、マジ?」

「はい。僕、隣町から三門の中学に通ってて、通うのも不便だから今度から玉狛支部に寝泊まりすることに…って、今はそんな身の上話してる場合じゃ!?」

 

まさかの修の返答にねねが反応、思わず自分の身の上話をしてしまうが、すぐにそんな場合じゃないとウィルバーに視線を向ける。すると、とんでもない事実をウィルバーから告げられてしまう。

 

「それと遅くなりましたが、あなた方のお知り合い……ランプさんと言いましたか? 彼女ならペット共々、我々が預かっております」

「あの喋る猫みたいなヤツ、君らのペットでいいんすよね?」

「! あなた、ランプとマッチに何を!?」

 

ウィルバーがランプを攫ったという事実に、きららも思わず激昂してしまう。

 

「我々の目的、門矢士と空条承太郎と戦うための人質ですよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「えっと……マッチ、これどういう状況かな?」

「閉じ込められてはいるんだけど……」

 

その頃、当のランプとマッチは閉じ込められている場所で困惑していた。何故なら……

 

 

 

 

 

「何でこんな豪華な部屋に閉じ込めたんだろう?」

「この手紙の通りなら、僕たちは誘拐されたんだね。でも、これは…」

 

見た感じどこかの小屋なのだが、天井に吊ったシャンデリアや高そうな花瓶などの調度品で飾られてそれなりにゴージャスだったからだ。今座ってい折るソファも、超フッカフカである。

そして机の上には、モーニングセットと一緒に手紙が置いてあった。

 

『この度は私どもの都合であなた方を誘拐させていただきました。大したおもてなしもできませんが、どうぞごゆっくりおくつろぎください』

そう書かれた手紙の横に「私どもがまごころを込めて誘拐しました」という表記とともに、ウィルバーとロン毛のツーショット写真が載せてある。

 

「なんかご飯の用意がしてあるけど、食べていいのかな?」

「毒入ってない、って露骨に書いてあるけど……逆に怪しいな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そしてそのランプ達の様子を、ウィルバーの持っていたタブレットで見せられる一同であった。

 

「見ての通り、ランプさんとペットの方は私どもが誘拐しました。しかしご安心を! 紳士は決して、命を奪いません!」

「てめぇ、そんなことが信じられるわけが…」

 

ウィルバーのその言葉に承太郎は疑いを隠せずにいたが…

 

「いや、こいつはウソは言ってねえよ」

 

遊真の能力もあって、それは真実だと明かされるのだった。

 

「承太郎さん、空閑には相手のウソを見抜く能力があります。そんな空閑が言うなら、間違いないでしょう」

「なに? すると、てめぇ心が読めるのか?」

 

修からの解説を聞き、思わずそんな感想を漏らす承太郎。しかしすぐに否定の言葉が返ってきた。

 

「いや、相手の言っていることが漠然とウソか本当かわかるだけだ。そこまではわかんねえよ」

「そもそも俺たちの持っている能力”サイドエフェクト”は感覚の延長線だからな。おそらく、息遣いとか顔色とかによるものだろう」

「……なるほど、わかった」

 

遊真と迅の言葉に、ひとまず納得する承太郎。するとそんな中、再びウィルバーは語り出した。

 

「私、元はとある裏組織にそちらのローライズ・ロンリー・ロン毛と属していたのですが、色々あって組織を追われる身になりましてね。その後は、組織の仕事関係で交流のあった一家に厄介になってたのですが、いい加減自分の食い扶持くらい稼げとそこの長女に追い出されたのですよ。そこを財団Xに拾われましてね」

「解説どうも。で、人質までとって何をする気だ?」

 

身の上話を書き終えた士は、ウィルバーに問いかける。

 

「門矢士さんに空条承太郎さん。あなた方二人を戦って倒せとのことです。本当なら紳士らしく、チェスで対決と行きたいのですが、財団は直接戦えとのご所望でして」

「まあ、そういうわけなんでお願いするっす」

 

そして二人は頭を下げて頼み込んでくる。財団Xはなんでこんな奴らを雇ったのか、不思議でならない。

しかし、二人の返答は決まっていた。

 

「わかった。あのガキには説教してやんねぇといけないから、とりあえず助けてやる」

「同感だ。とっととケリつけて、あのガキ助けて文句言うか」

 

口ではこう言いつつ、ちゃんとランプを助けることを前提とするのだった。そして、朝食後に決闘が始まる。




賢い犬リリエンタールがワートリと世界観共有してるらしいので、今回の案を考えついた次第です。
もう一つ、ダービーvs千矢のポーカー対決という案もあったんですが、作者がポーカーを文章にできる自信がなくて取りやめました。


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第22話「対決・紳士!」

盆は帰省してますが、初日は家でfilm gold見てました。
予定あるし台風も近いので盆休みの間は行けないが、明けたらジオウとONE PIECEの映画見に行く予定である。


オーバーヘブンショッカーの拠点にて、カイ・キジマは巨大な端末を使ってある作業を行っている。そんな彼に、声をかける二つの人影があった。

 

「カイ。残りの聖なる遺体捜索、ディケイドと承太郎抹殺の刺客についてどうだね?」

「おやおや。これはエンヤ婆様にMr.グリニデ、ご機嫌麗しゅう」

「挨拶はいい。エンヤの言う通り、遺体と刺客の方はどうなのだね?」

 

片方は首領の側近と思しき、小柄な両右手の老婆エンヤ。そしてもう一人のグリニデと呼ばれた大男は、緑の肌に屈強な肉体に額のツノといった具合の異形でマントを羽織った、ベタなRPGの魔王のような風貌をしていた。

しかしそんな異形を前にしても、カイは気にせずに端末を操作し続けながら説明した。

 

「残り四つの遺体のパーツはそれぞれ、砂漠、荒野の町、美食街、冒険者ギルドの本部がある町、にそれぞれ反応があります。恐らくはこのエリアにそれぞれ、持ち主に選ばれるクリエメイトがいるのでしょうが、目下捜索中になります」

 

説明しながら画面に表示された、エトワリア各地の地図。そしてそれぞれの場所に画像が映って細かい様子が見られる。

 

「刺客についてですが、ボーダーの皆さんが住んでいた世界の元裏組織のエージェントだというコンビに、先日強奪したある世界のライダーシステムを渡しています。彼らならあるいは、あの二人を倒せる可能性があるわけですよ」

 

そして説明を終えると、直後に画面が切り替わって紳士ウィルバーとローライズ・ロンリー・ロン毛の二人の写真が映る。

 

「ほう。で、この二人は強いのかね? それとも、深緑の智将と呼ばれた私にも負けない頭脳派なのかね?」

 

グリニデは二人に関する問いかけと同時に、自身の二つ名と思しきものを口にする。屈強な肉体に反して表情や思考は思慮深そうだ。

 

「一言で言えば……完全に未知数」

「なん……だと?」

 

しかし、そのカイの答えを聞いた瞬間、グリニデの雰囲気が変わった。彼の周りの空気が澱み、額のツノが伸び始めたのだ。

 

「君はそんな具体的な能力もわからない、曖昧な奴らに重要任務と装備を与えたの言うのか? これでそいつらが負ければ、奴らがさっさと残りの遺体を探しに行ってしまうんじゃないのかね!?」

 

そして時間とともに声に怒りが篭り始め、いきなり凄まじいまでの殺気を放ち出したのだ。智将と呼ばれながら、どうやら非常にキレやすい性分らしい。

しかしカイは落ち着いた様子で、グリニデをなだめ始める。

 

「Mr.グリニデ、落ち着いて。クールに行くのがあなたの信条じゃないのですか?」

「!? 私はクール、冷静だ……BE COOL…BE COOL…」

 

カイに指摘されると、グリニデはひたすらに自分に言い聞かせるようにクール、冷静といった言葉を口にする。すると、伸びていたツノが徐々に縮んで行き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない。それで真面目な話だが、何故未知数な力の持ち主を刺客に送り込んだのかね?」

 

先ほどまで殺気を放っていたのが嘘なように、穏やかな表情を浮かべていたのだ。キレやすい一方で同時に自制もしているらしく、智将の肩書きは決して口先だけではないようだ。

隣で見ていたエンヤも、その様子にどこか感心した様子だ。

 

「彼らの元いた組織について洗ってみたのですが、どういうわけか無能扱いされてたにも関わらず、その組織のエリートチームですら手を焼いていた案件を解決させたそうです。この実力の底の見えなさ、そこに目をつけたわけです」

「う〜む……どうにも胡散臭く見えてしまうのう。しかし、何故あのお方や財団の幹部どもがこんな男を使おうとしたのか、ようやくわかったわい」

 

そしてカイからの説明を聞き、二人はどうにか納得した様子だ。

 

「まあ、それとは別にあなた以外で我々に協力してくれている魔人(ヴァンデル)に、一人独断でエトワリアへと侵攻した人がいます。もしもの時は、その魔人や回収に送る部隊を纏めてぶつける予定なので、ご安心を」

「ほう。腹黒い貴様のことじゃ、どうせそちらが本音じゃろう」

「魔人の品位を落とす愚か者め……で、大方の予想はつくがそいつは?」

 

そしてグリニデの種族名と思しき単語"魔人(ヴァンデル)"まで発覚。士や承太郎の推察通り、まだ見ぬ異世界の悪意をオーバーヘブンショッカーは取り込んでしまったようだ。

そしてグリニデの問いかけに、答えるカイの顔もまた何処か強い悪意を秘めた笑みであった。

 

「あなた同様、首領の力で甦った七つ星・"不動巨人ガロニュート"ですよ。そして回収班に同じく七つ星の"魔人博士ノア"に、六つ星の"鉄壁鎧将レイガルド"になります」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一方、朝食を終えた一同は里の外へ出て、士と承太郎VS紳士ウィルバーとローライズ・ロンリー・ロン毛の決闘を見守ることとなる。

そこには、仕事で朝食の席に遅れていたポルカやコルク、カンナといった里娘の面々もいた。ちなみにクレアは、まだウミと二人でオトヒメの看病をしている。

 

「しかしランプが誘拐されるなんて……アイツは傷つける気は無いそうだけど、大丈夫なのか?」

「どっちにしろ、俺達はあの子を探す手がかりがねえんだ。今はあの二人が勝つか、きららを信じるしかねぇだろ」

 

心配するポルカに声をかける翔太郎だが、彼が名を口にした肝心のきららは、なぜかこの場にいなかった。その他

 

「さて。それではギャラリーも増えたようですし、決闘を始めましょうか」

「そっすね。俺等にも明日の飯がかかってるわけっすから」

 

しかしウィルバー自身はそれに気づいてないのか気にしてないのか、そのまま戦闘準備に入る。ロン毛もリアルな実情を口にしながら構えをとった。

 

「さて。お前らが元裏組織の人間とはいっても、トリガーみたいな特殊装備を今使えるわけじゃないだろ? ショッカーか財団が何か装備を貸していると思うが…」

「ええ、ご名答。では我々も、ショッカーから貸し与えられた装備を使わせてもらいましょう」

「そうっすね」

 

そしてウィルバーとロン毛が手を掲げると、何かが飛来して来てその手に握られる。見ると、それは昆虫型のメカだった。そして当然、士も知るツールである。

 

「な!? ゼクターだと?」

「ええ、仮面ライダーには仮面ライダーを、とのことで貸し与えられました」

「というわけで……」

 

そしてウィルバーは手に飛んできた銀色のゼクターと呼ばれるツールを構える。同時にロン毛も、ブロンズのゼクターを構えて臨戦態勢に入った。

そして、あの言葉をつぶやいた。

 

 

「「変身」」

【HENSHIN】

 

ウィルバーはシルバーの、ロン毛はブロンズのゼクターをブレスレットに装着。すると電子音声とともに、2人の体は昆虫を模した仮面ライダーのアーマーを纏う。

ウィルバーはヘラクレスオオカブトをモチーフとした、仮面ライダーヘラクス。ロン毛はケンタウロスオオカブトを模した、仮面ライダーケタロスである。右肩にそれぞれ、モチーフとなった虫の角を模した意匠が特徴的だ。

ギャラリー一同もこの変身には驚愕であった。

 

「では、お次はあなた方の番です。変身とスタンドの発動を」

「なら遠慮なく」

 

ウィルバー改めヘラクスに言わるまま、士はディケイドライバーを装着。そしてライドブッカーからカードを取り出した。

 

「変身!」

【Kamen Ride Decade!!】

 

そしてカードをセットし、マゼンダピンクの仮面ライダーディケイドへと変身した士。

 

「スタープラチナ!」

 

そして承太郎もスタンドを発動し、ディケイドとともに臨戦態勢に入る。その一方で、ヘラクスとケタロスも開発元の組織の名を関した武器、”ゼクトクナイガン”を構えて臨戦態勢をとっていた。

 

「では、始めましょうか!」

「そうっすね」

「俺は紳士をたたく。お前はロン毛を任せた」

「アイアイサー」

 

そしてゼクトクナイガンを斧モードで構えたヘラクス&ケタロスが向かってきたため、迎え撃ちに乗り込むディケイドと承太郎。

ディケイドも自らの、承太郎もスタープラチナの拳を放ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「「ぐふっ」」

「「は?」」

 

まさかの顔面にクリーンヒット、そして勢いよく吹っ飛んだ。思ったより弱い、まさかの事態に二人とも驚いた。

 

「ふむ。仮面ライダーのパンチ力は弱い物でも1tの破壊力だそうですが、まさかこれほどとは」

「ぶっちゃけ、生身じゃ首取れてるっすよ。だから辞めましょうって言ったっすよね、試しに食らって見ようなんて」

 

しかしすぐに立ち上がり、分析するヘラクスとそのことについてツッコミを入れるケタロス。

 

「お喋りとは、随分余裕だな!」

「おっと、紳士的では無いですね」

 

直後にディケイドがライドブッカーを剣にして飛びかかるが、咄嗟に二人は飛びのき、そのままゼクトクナイガンの銃撃を放つ。

しかしディケイドも剣を振って銃撃を防いだ。

 

「隙だらけだぜ」

 

ヘラクス達が飛びのいた先で、背後から承太郎がスタープラチナのパンチで迎え撃とうとする。

 

「やべ」

「おっふ!?」

 

やはりウィルバーが諸にパンチをくらい、大きく吹っ飛んでいった。対してケタロスは回避に成功、そのままゼクトクナイガンをクナイモードにして切りかかってきた。

 

『オラァァ!』

 

そしてスタープラチナが片手白刃どりでその刃を防ぎ、防御に成功。

 

 

 

 

 

 

「油断大敵っすよ」

「何!?」

 

しかしすぐにゼクトクナイガンを手放し、一気に承太郎の懐へ飛び込んできた。そしてそのまま承太郎に蹴りを入れる。

 

「うぐ!?」

 

咄嗟に飛びのこうとするも間に合わず、脇腹にケタロスのキックが当たってしまう承太郎。意外にも変身者のロン毛が、上司のウィルバーよりも能力が高かったようだ。

 

「おいおい、マジか?」

「余所見とは余裕ですね」

 

その様に驚くディケイドだったが、すぐにヘラクスがゼクトクナイガンで切りかかってきた。

 

「そろそろカード使うか」

 

呟きながらディケイドが攻撃を避けると、一枚のカードをベルトに装填した。他の仮面ライダーに変身するようだ。

 

【Kamen Ride Forze!!】

 

ディケイドが新たに変身した仮面ライダーは、宇宙服を思わせる白いボディに、スペースシャトルを模した白黒のマスクが特徴の”仮面ライダーフォーゼ”だった。

そしてフォーゼの姿となったディケイドは、いきなりしゃがみ込んで、立ち上がると同時に両腕を上げながら、

 

宇宙キ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タ、と言っておいてやるか」

 

一瞬ハイテンションになるもすぐに冷静に戻って、更なるカードを投入した。

 

【Attack Ride Rocket Modules!!】

 

するとディケイドフォーゼの右腕にロケットが装着され、そのロケットの噴射で中に舞い上がる。

 

「さて、反撃開始だ!」

「ほほう。別の仮面ライダーの能力が使えるとは聞いてましたが、なかなか面白いですね」

 

しかしヘラクスは余裕そうな雰囲気で、そのまま戦闘は再開される。

 

〜その頃のギャラリー〜

「一瞬、弦太朗さんの決め台詞言いそうだった……士さんって案外、ノリがいいのかな?」

「あのままだとたぶん、宇宙キター! になったんでしょうね。確かに、あの人とキャラ合わなさそう……」

「ですね……でも、士くん電王になった時にカードの効果で決め台詞真似しちゃったらしいですし」

「そ、そうなんですか……」

「何にしても、ディケイドは見てて滾るな。あいつとゲームできたら、楽しそうだぜ」

 

永夢と青葉がまさかのディケイドの行動に感想を漏らすと、夏海からまさかの事実が明かされる。その様子に花名が困惑している一方、パラドはディケイドと戦ったらどうなるかと子供のような目で語っていた。

 

「はい。"黒曜を抱く桜花"、食後のデザートにどうぞ」

「? あ、桜餅か。どうも」

「ほう。どら焼きと同じ、和菓子ってやつか」

(あのたい焼きの乗ったパフェ、黄金のしゃちほこスペシャルだっけ? それといい、なんでそんな変な名前にしちゃうんだろ?)

「おはぎを…所望」

「紅緒ちゃんって、本当におはぎ好きなんだね」

「ああ。おはぎマンなんてオリジナルヒーローを考える程な」

「なぁ、肉ねぇか? さっきの飯じゃ、食い足りなくてよお」

「あれだけ食ってまだ肉肉言うか……あ、俺はプリンにしてくれ」

 

一方、千夜が周りの面々に食後のデザートと称して桜餅を配って回っていた。修は名前でキョトンとし、遊真は初めて見る菓子に興味津々、出久も困惑と様々な反応をしていた。その一方で、紅緒にルフィ、モモタロスは自身の好物を所望する我の強さを見せている。そしてゆのが紅緒のおはぎ好きについてろくろに言及すると、紅緒のおはぎ愛の大きさが判明する新事実を告げられる。

紳士組が思いの緩かったからか、結構ほんわかとしていた。

 

「……敵も仮面ライダーになった。つまりオーバーヘブンショッカーは、仮面ライダーの力も有しているということ。これは、結構由々しき事態では?」

 

そんな中、不意にコルクが紳士コンビの変身について言及し出す。しかしそれについて、迅が返した。

 

「まあ確かに気になるって言えば、気になるな。でも、俺達ボーダーが敵の技術を解析して武器にしてるのがトリガーだし、敵さんにも俺達のベイルアウトっつう緊急脱出機能を真似されたんだ。仮面ライダーでも、同じことがありえるんじゃねえか?」

「そういうことだ。で、実際はどうなんだ?」

 

迅の言葉に匠が反応し、夏海やユウスケに問いかける。しかしそれよりも早く、花京院が答えた。

 

「僕達の世界の創作物としての仮面ライダーは、元はショッカーが世界征服のための尖兵とするための改造人間として生み出されました。それが洗脳される前にショッカーの基地から脱出して、彼らを止めるために戦う、というストーリーです。その後のシリーズも、悪の組織の生み出した怪物に挑むために彼らのテクノロジーで自らを強化した戦士、というのが仮面ライダーの基本スタンスとなっていますが、実際はどうなんですか?」

「概ねそうだな。俺のクウガもグロンギって古代の戦闘民族に対抗するために同系列の強化手段を開発したってベルトで変身するし、士と旅してきた世界の仮面ライダーも、そんな奴が多かったな」

「つまり、今後も敵に仮面ライダーが現れる可能性がある、と……非常に危険だけど、異世界の超常の力は正直、興味深い」

 

花京院の言葉を肯定するユウスケによって、裏付けが取れる。結論を聞いたコルクは警戒する一方で、好奇心も刺激された。

しかし、次に開かれた言葉がこの場にいる一同に重くのしかかることとなる。

 

「仮面ライダーもそうだが、ディオが吸血鬼にならなければ、僕も波紋戦士として正義のために戦う事は無かった……つまり"正義はいつも悪より生まれ出ずる"ということか。皮肉なものだ」

「ですけど、逆も然りだと思います。俺もジョースターさんに会わなけりゃ、貧民街で追い剥ぎを続けてたかもしれねぇですし」

 

話を聞いていたジョナサンとそのフォローをするスピードワゴンの言葉、特にジョセフらジョースターの系譜に連なるもの達にはなおさら重く感じられた。そして、その言葉に彼らと同じくらいに思うところがあったのは、出久であった。

 

(正義はいつも悪より生まれ出ずる……オールマイト、貴方が教えてくれたこと、どうやら他の世界でも同じみたいです)

 

出久はオールマイトからある秘密を明かされ、それは彼自身の個性"ワン・フォー・オール"にも由来している。そしてこの場にいる人間では幼馴染の勝己だけが秘密について知っている。

敵サイドの仮面ライダーの出現は、様々な衝撃を一同に与えることとなった。

 

「……まあ、変に重く考えないようにしましょう。気分転換も兼ねて、甘兎の和菓子を召し上がってください」

(こういう場面じゃ、こんな子の方が強いよな)

 

そして千夜は雰囲気を変えようと、再び自作和菓子を配って回るのだった。そしてその様子を見た戦兎も感心していた。

 

〜再び決闘へ〜

「紳士は射撃も嗜みますので」

「そうかよ」

 

ヘラクスがゼクトクナイガンを銃モードにして発砲、ディケイドも対抗してフォーゼのロケットで飛翔しながら、銃モードのライドブッカーで反撃する。

 

「流星指刺!」

「うぉっと」

 

承太郎もスタープラチナの指先に力を集中し、一気に伸ばしてケタロスに刺突を放つ。しかしギリギリでケタロスは咄嗟に回避してゼクトクナイガンで射撃を行う。

 

「やれやれ。ビームガン機能付きの手斧とは、仮面ライダーらしくねえ上に厄介極まりないな」

「まあ、そこは昭和ライダーと平成ライダーの違いってことで、納得してくれ」

 

承太郎も回避しながら悪態をつくが、それに対して士から仮面ライダーに対してのフォローが入る。

そして、再び戦闘が再開された。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一方その頃、里の外に出てする数名の人間+αがいた。

きららとその隣にいる阿弥陀丸を先頭に、葉とアンナと千矢達うらら組、ポルナレフと龍我だ。

 

「おい。戦兎から聞いたけど、あのチビは俺らを信じてねぇんだろ? じゃあ、知ってるやつだけで助けに行きゃいいんじゃねえのか?」

どうやら皆はランプの救出に動き出していたのだ。しかし、龍我が人選について疑問を感じた為に、つい言及してしまったようだ。

 

「どっちにしてもあの子とは向き合わないといけないわ。だったら、人選なんて途中の襲撃を想定して戦力を固めたほうがいいでしょう」

「まあ、そこは彼女の言う通りだな」

 

そこに答えたあんなに、ポルナレフも同意する。きらら達がなぜ別行動をとっているのかだが、それは決闘開始前のことだった。

~回想~

「俺の予知でな、ランプのおチビちゃんが危険に晒されるって出たんだよ」

 

それは、迅から告げられた予知だった。当然、その話を持ち出されてきららは思わず反論する。

 

「え? でも、あのウィルバーさん達はランプを傷つけないって……嘘をついてないんですよね?」

「それが、あの二人もその時に敵の攻撃を受ける未来が見えた。どうやら初めから、利用されてたようだ」

「んだと!? あいつら、そんなこと企んでやがんのか!!」

 

迅からの説明を聞き、龍我が激高した。そして当然だが、それを聞いてクリエメイト達も奮起する。

 

「だったら、みんなでランプを助けないと!!」

「うん。ランプちゃんも、友達だから」

 

千矢や花名も強い意志を持った目で告げる。平和な世界に住んでいたとはいえ、友人の危機に立ち向かうだけの意思はあったようだ。

 

「皆さん、私には人同士の繋がりを、感覚で感じ取る力があります。それを使えば、ランプも見つけられるはずです」

「私達も手伝うわ。何かで妨害されているかもだし、うららの力もきっと役に立つはずよ」

 

きらら自身の能力に、紺が告げたようにうららの占いがあれば人探し、それも見知った人間なら確実に見つけられるだろう。

そして、それに協力する者も当然この場にいた。

 

「承太郎、おめぇはあの二人とこのまま決闘しててくれ。その間に、俺が救出を手伝うぜ」

「ポルナレフ、わかった」

「オイラも行ってくるわ。少数精鋭にしたって、護衛はいるだろ?」

「アタシも行くわ。あの子には一言、言ってやりたいこともあるし」

 

名乗り出たポルナレフに葉とアンナも加わり、戦力は十分そうだ。そこに、もう一人指名が入る。

 

「よし万丈。戦闘力だけならお前は無駄に高いからな、一緒について行ってやれ」

「え? いいのかよ?」

「いいのいいの。俺の代わりに、ラブ&ピースの戦士を知らしめてくれや」

「……おし、わかった。任せてけ」

 

そしてそこに龍我も加わり、救出チームは完成したのだった。

~回想了~

「ランプのパスは、この先に感じます。阿弥陀丸さん、付いてきてください」

「あいわかった。きらら殿、任せましたぞ」

「うん。ユレールもこっちを指しているし、里から距離はあるけどあんまり目立ったものも無さそうね」

 

そのまま、一同はランプの軟禁場所をどうにか見つけられそうな様子だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「結局、ご飯食べちゃったね……美味しかったけど」

「うん。僕も空腹に勝てなかった……でも美味しかった」

 

その頃、ランプは軟禁されている部屋で、ることもなくマッチとただ寛いでいた。あの後も結局、空腹に勝てずに置いてあったモーニングセットを平らげたようだ。

 

「私達、どうなるのかな?」

「この様子からして、僕達を誘拐した二人は傷つける気はないんだろうけど……上に立っている連中は何をする気かはわかんないね」

 

マッチは薄々とだが、自分達の今後に危険が迫っていると察している。それに対してランプは不安そうな一方、何かあきらめたような表情を見せていた。

 

「これ、バチでも当たったのかな? せっかく助けに来てくれた人達を、自分の考えだけで跳ね除けてしまって…」

「ランプ…」

 

昨日の一件を振り返り、ランプは自嘲気味に話していた。そんな彼女に、同声をかけるべきか迷うマッチだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ランプ殿ぉおおおおおおおおおおお!!

「「きゃあああああああああああああ!?」」

 

その時、いきなり人が壁をすり抜けてランプ達に大声で呼びかけてきたため、ランプはマッチと共に絶叫することとなる。

余りの事態に、思わず腰を抜かしながらすり抜けてきた男を指さしながら問い詰める。

 

「な、なななななななななななななななななな何ですか貴方!?」

「昨日、自己紹介したでござろう! 葉殿の持ち霊、阿弥陀丸でござる! お忘れか!!」

「ら、ランプ、間違いないよ…まさか、助けに来てくれたのかい?」

 

同じく腰を抜かして地面に落ちるマッチからも、言質が取れた。そんなマッチの問いかけに阿弥陀丸も返答する。

 

「うむ。きらら殿の能力に、千矢殿達うららの力のおかげでござる。すでに表まで来ているので、今呼びかけますぞ」

 

そしてそのまま阿弥陀丸は、再び壁をすり抜けていった。

 

「あ……きららのパスを感じる能力があれば、助かるのも時間の問題か」

「当たり前すぎて、忘れてたね……」

 

思わず呆けてしまう二人だったが、その直後に部屋の出入り口が切り刻まれた。そしてその先には、スタンドを発動させたポルナレフが立っている。

 

「どうよ? シルバーチャリオッツは特殊な能力はないが、スピードと精密さを兼ね備えた剣技で大体はなんとかできるんだぜ」

「確かに、つえぇなコリャ」

 

自慢げに語るポルナレフと、その冴えた剣技を見せた彼のスタンドを純粋に称賛する龍我。すると、そんな二人を押しのけてきららが部屋に入ってきた。

 

「ランプ、大丈夫!?」

「きららさん……!」

 

するとランプは近寄ってきたきららに、そのまま無言で抱き着く。

 

「勝手に出て行ってごめんなさい……おかげで、きららさんやクリエメイトの皆様にもご迷惑を…」

「ううん。私は気にしてないし、無事でよかった…」

「そうだよ。友達なんだし、そんなに気にしないから…」

「いや、気にしなさいよ」

 

そしてそんなランプを宥めるきららと千矢に、いきなりアンナが割って入ってきた。

 

「ランプ、だったわよね。ちょっとこっち向きなさい」

「アンナ、さん?」

バチンッ!!

 

するといきなり、ランプに左手で思いっきり平手打ちを叩き込むアンナ。いきなりのことで面食らう一同。しかし、この中で葉と阿弥陀丸はこれについて知っていたのか、身震いしている。

 

「ま、幻の左……」

「いきなり放つとは、アンナ殿は相当お怒りでござるな…」

 

普段は右手で平手打ちを放つアンナだが、かつてハオに求婚された彼女がその右手を防がれた際に放ったのが幻の左の起源だ。以降、彼女の切り札の代名詞と化している。

突然の事態に回りがどよめく中、まっすぐにランプを見つめて問いかけるアンナ。

 

「今あんたをぶった理由、わかるわよね?」

「はい…勝手な思い込みで、せっかく助けに来てくれた皆さんを跳ね除けて……それで勝手に外に出て皆さんに迷惑をかけていることです…」

「ええ。どうやら、ちゃんと頭は冷えているようね」

「そこは、僕も話してたからね。でも今回の誘拐は、僕も不注意があったよ。ゴメン」

 

ランプがちゃんとぶたれた理由を理解しているとわかると、アンナも認めた。するとマッチの方からも、その件で謝罪が返ってきたのでアンナも返事をするのだが…

 

「謝罪は、向こうに戻って門矢士と空条承太郎の二人にしなさい。あの二人は今、あんた等を助けるために誘拐犯達と決闘している最中だから」

「……わかりました」

 

アンナからの言葉に、まっすぐな目で答えるランプ。そして、一同はそのまま里へと戻るのだった。

 

「そういえばさっきの阿弥陀丸さん、大活躍だったね!」

「ああ。侍の霊だから戦う時くらいしか役に立たねぇと思ってたんだが、意外と使い道あるんだな」

「だな。確かに、普通は壁すり抜けて中を見る、なんか出来ねぇしよ」

「いや、阿弥陀丸には普段の生活から助けられてるからな」

 

道中、千矢の言葉で阿弥陀丸が意外な形で役に立った件に気づき、葉に話しかけるポルナレフと龍我。ちなみに、当の阿弥陀丸本人は位牌に入って休んでいる。

そしてそのまま葉は阿弥陀丸のそのまま普段の生活での役立ちに付いて語るのだが…

 

「朝起きられないときは金縛りで確実に起こしてくれるし」

「金縛りを目覚まし代わり…ないわね」

 

その答えに、臣がツッコむ。

 

「道に迷ったときは空から案内してくれるし」

「あ、それ便利そう」

 

リアルに助かる手に、小梅が同意する。

 

「不良に絡まれた時は、憑依させれば怖くねえし」

「そっか。お侍さんだから、不良も怖くないんだね」

 

今度はノノも納得した様子で答える。

しかしその一方で、一人無言だった少女がうちに恐怖を溜め込んでいた。

 

(金縛りに憑依? ちょっと待って、冷静に考えればトンデモナイことじゃない?? お狐様みたいな遣い的なのじゃなくて、人間霊がそれをやるって…)

 

当然、その人物は紺なのだが、次の葉の一言で決壊した。

 

「最悪、夜のトイレが怖いときは付いてきてくれるし」

阿弥陀丸さんが幽霊だから、本末転倒じゃないかしら!?

「お化けじゃなくて、暗いのが怖いんじゃないかな?」

 

涙目でツッコむ紺に、まさかのツッコみ返しが千矢から返ってくる。しかし恐怖に彼女の心が塗りつぶされており、聞こえてる様子がなかった。

 

「お喋りはそこまで。いつ敵が来るかわかんないし、急ぐわよ」

 

見かねたアンナが制止をかけ、そのまま里まで走るのだが……

 

「!? このパスは……」

 

直後、きららが何かを感じ取った。言動からパスのようだが、彼女の表情は終始険しい。

 

「皆さん、急ぎましょう。ちょうど、士さん達のパスを感じる辺りに敵が来ます。それも、私たちのよく知る人が」

「よく知る……まさか!?」

 

ランプはその言葉に、思い当たる節があったようだ。それを知り、そのままきらら達は走る速度を上げていった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「一気に畳みかけるぞ」

【Form Ride Forze! Fire!!】

 

一方、ディケイドフォーゼは新しいカードを入れてフォームチェンジに入る。するとフォーゼは赤いボディに消火器と火炎放射器の合いの子のような銃・ヒーハックガンを装備した姿へと変じた。

その名も、フォーゼ・ファイアーステイツだ。

 

「纏めて、ぶっ倒してやる」

「おっと、これは危ない」

 

そしてそのままヒーハックガンから火炎弾を乱射するディケイドフォーゼ。一気に火力を上げられ、ヘラクスとケタロスはそのまま回避に入りだす。

 

(ゼクトのライダーシステムなら、こいつらもクロックアップが使えるんだが……どうせ知ってても紳士的じゃないとか言って使わねぇんだろうな)

 

攻撃しながらふとそんなことを考えるディケイド。しかしそれならチャンスだと思い、このまま一気に決着をつけようと一気に畳みかける。

 

「おし。一気に決めるから、お前は奴らを一か所に集めてくれ」

「わかった。さっさと終わらせるぞ」

【Final Attack Ride FFFForze!!】

 

そして必殺技を使うためのカードをドライバーに装填し、ヒーハックガンにエネルギーを溜め込む。そして承太郎も二人を一か所に纏めようとするのだが、直後にそれは起こった。

 

「な、なんだ!?」

「また敵襲か!?」

(な、なんだこの気配?)

(なんかぼんやりと誰かが乱入してくる未来が見えたが……そいつが来たのか?)

 

いきなり戦闘中の平原で光が発生、ディケイドも承太郎も戦闘をやめて警戒態勢に入る。

しかしギャラリー達も警戒を強める中、ルフィはきみょな気配を感じ、迅も予知に対して不明瞭な点があったことを思い出して違う意味での警戒に入る。

迅の予知は、迅本人が顔か名前を知る人間の未来しか見えない、予知で乱入者が現れるとしてもその乱入者が知らない人間なら、ぼんやりとしか見えない、というデメリットが存在する。

 

 

 

 

「……ここか。クリエと類した、大きな力の気配がしたのは」

 

そこには、数人の女性の姿があった。

赤い髪に褐色肌の少女に、獅子のような耳と尻尾を生やした番長のような格好の女性、緑の髪の騎士風の女性、そして永夢や戦兎が接触したセサミとハッカの姿があった。

シュガーとソルト以外の七賢者が、今この場に揃っているのだ。

 

そして声の主の女性は、桃色の髪に赤い瞳。男性的な服装の上から肩当とマントといった、いかにも権力者な雰囲気の格好をしている。

 

「まさか、彼女がきららちゃんたちが話しとった…」

 

残りの七賢者を従える形で現れたことで明白だが、彼女らについて知らなかったジョセフでも察しはついた。

筆頭神官アルシーヴ。この世界での敵が、乗り込んできたのだった。




グリニデ閣下のBe Cool、アンナの幻の左、とりあえずやりたいネタはまずぶっこませてもらいました。
そして7章からパラレル設定ということなので、アルシーヴさんには最初、敵として出てもらうことに。さて次回、どうなる?


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第23話「襲来・七賢者とアルシーヴ」

終わり掛けに、きらファンオリジナルキャラで(たぶん)人気のあの子が出てきます。この子の参戦は結構前から決めてました。
アルシーヴと七賢者も本格的に絡んできたが、果たしてどうなる?

2020/9/22、後半のきららのセリフを一部変更しました。


まさかの七賢者とアルシーヴの出現。まさかの事態に、一同は動揺を隠せずにいた。

そして、そのタイミングでランプを救出したきらら達が戻ってきた。

 

「もう来てた……皆さん、気を付けてください! この人が…」

「大体わかった。あのキツそうなねーちゃんがアルシーヴってことだろ」

「ついでに言えば、後ろの女共が残りの七賢者ってことだな」

 

きららが説明しようとするも、ディケイドと承太郎はジョセフ同様すでに察していたようだ。少なくとも友好的には見えない相手の出現に、一同は警戒態勢に入る。

 

「おや? 誘拐したランプさん、勝手に助け出したようですね。見事に見つけ出したと褒めたいですが、正々堂々とした決闘の最中でしたのでやめておきましょう」

 

ランプを勝手に救出されたことにヘラクスは思うところあったようだが、それだけ言って今度はアルシーヴ達の方に目を向ける。

 

「それとそこのレディ。今は決闘の最中ですので、割り込むのはいささか紳士的ではありませんね。もう少しお待ちいただけ…」

「悪いね。私らも仕事なんだ、ちょっと引っ込んでいてくれ」

 

しかしそのまま、獅子の耳の生えた女性がヘラクスの体を片手で持ち上げる。全身にアーマーを纏い、総体重が普通の人間よりも重いはずなのだが、女性の細腕で軽々と持ち上げたのだ。

 

「おらよ!!」

 

そしてそのまま、ヘラクスをぶん投げてしまう。そしてあっという間に、ヘラクスはお星さまになってしまったのだ。

 

「………レオーネ?」

「誰だそれ? 私はジンジャーっていうんだけど」

 

そんな中、不意にユウスケが以前たまたま読んだ漫画のキャラクターに目の前の女性に似たやつがいたため、その名前で呼んでしまう。するとそのまま自ら名乗る女性。

その一方、ケタロスは変身を解除してローライズ・ロンリー・ロン毛に戻った。ディケイドもそれに合わせて、フォーゼへの変身を解除する。

 

「……うちの上司が飛んで行ったんで、助けに行っても大丈夫っすかね? 捕まえた子も、勝手に助かってるみたいだし」

「ああ。それにここからは俺たちの問題だ、下がってろ」

「どうもすみませんね。それじゃあ、俺はこれで」

 

そのままディケイドはロン毛を下がらせて、承太郎と共にアルシーヴと対峙する。

 

「話は聞いている。この世界を統治する女神の補佐をしていながら、その女神を封印したとか。つまり、諸悪の根源ってことだな?」

「こっちは今、戦力が整いつつある。そこに飛び込んでくるとは、いい度胸じゃねえか」

 

そのまま二人で言葉をぶつけながら、臨戦態勢に入る。するとその直後…

 

「お前が筆頭神官とやらか。こっちにはお前の部下二人がいる。返して欲しければ、こっちの言うことを聞くんだな」

「アルシーヴ様…」

「そういえば、ソルト達は捕虜扱いでした。不覚です…」

 

ローがシュガーとソルトを拘束し、その首に太刀を突き付けている。海賊だけあって、手段はとらないというのが見て取れた。

 

「……」

 

しかしアルシーヴは無言で右手をかざすと、その手がいきなり輝きだす。

 

「な!?」

 

直後、シュガーとソルトが一瞬にして消え、そのままアルシーヴの傍に現れた。せっかくの人質が、奪還されてしまったのだ。

 

(おれのシャンブルズと同じことを、一瞬でやりやがった……この世界特有の魔法とやらか!)

(アルシーヴさん、あんな魔法を一瞬で…しかも疲弊している様子がない)

 

ローがまさかの事態に苦虫を嚙み潰したような顔をしていると、見ていたきららもかつて対峙したアルシーヴと様子が違うことに、警戒心を強める。オーダーは行使者のクリエを膨大に消費するらしく、かつて戦った時はアルシーヴはかなり疲弊していた。しかし今は、その様子が見えなかったのだ。

しかしその一方、アルシーヴは奪還したシュガーとソルトに声をかける。

 

「シュガー、ソルト……お前たちは先に神殿へ帰還しろ。私達は成すべきことを成した後に戻る」

「え!? でも、アルシーヴ様…」

「お前たちは召喚士やあの謎の協力者達にと一晩過ごしたことで、情が移って判断が鈍ると見た。帰還しろ」

「……わかりました。シュガー、帰りましょう」

「うん…みんな、バイバイ」

 

そして、そのまま拘束を解除されたシュガーとソルトは、二人で転移していった。

 

「まず、率直に言う。私はお前達と敵対する気はない。探している物がある」

 

そして二人の帰還と同時に、アルシーヴはこちらに対して口をきき始めた。

 

「召喚士きらら。数か月前にお前達が神殿に入る直前に私が行使したオーダー、それが失敗したあの時にこの世界に紛れ込んだ何かを私達は探している。そして、それはどうやらクリエメイト達の何人かが持っているようだ」

 

クリエメイトが探し物を持っている、というこの言動に一同はアルシーヴの目的に察しがついてしまう。しかし、ひとまず話を聞くことに専念する。

 

「それはクリエに類する膨大なエネルギーを秘めているようで、私達はそれが欲しい。それを寄越すのなら、今後オーダーは行使しないと約束しよう」

「まさか、お前達も聖なる遺体を欲するのか!?」

 

しかしそれをはっきりと欲しいと口にしたことで、思わずジョニィが反応する。こちらが集めている聖なる遺体が狙いなことが、判明してしまった。

 

「聖なる遺体? つまり、その何かは人の亡骸だというのか?」

「ああ。僕たちの世界で奇跡を起こした聖人のミイラのパーツ、それにその奇跡のパワーが宿っているらしい」

 

アルシーヴの疑問に、隠しておく必要性がないと判断してジョナサンが説明する。そしてそれに続き、ディケイドが会話に参加した。

 

「そして、それを狙う奴等から守るために、俺達はこの世界にやって来た。それが俺達のこの世界での役割ってわけだ。そいつらの目的は所謂世界征服だが、あんたらはなんで遺体を欲する?」

 

しかしそもそも、遺体を狙うオーバーヘブンショッカーと同じことを企んでいる可能性があるため、まずは目的について言及して探りを入れようとする。

 

「貴様達の知る必要はない。一つでもいいから、渡してもらおう」

 

しかし、そのままバッサリと切り捨てられてしまい、聞きだすに至らなかった。

 

「答えられないなら、何かやましいことに使うとも取れるんだが?」

「アルシーヴ様がそんなことのために力を得ようとするはず、ありえませんわ!!」

 

ディケイドの言動の直後、緑の髪の女性がレイピアを構えて突撃してくる。しかしディケイドは、それをライドブッカーのソードモードでいなす。

 

「なかなかやりますわね。でも私はまだこの程度じゃ…」

「そろそろ俺も暴れさせろやぁああ!!」

 

女性がディケイド相手に身構えてると、モモタロスも剣を片手に飛び掛かってきた。しかしその剣は、女性に防がれてしまう。

 

「目的次第じゃ協力もしてやらなくもなかったが…交渉にすらなってねぇな。モモタロス、暴れてこい」

「言われるまでもねぇよ! そろそろ、俺も暴れてぇ頃だったからな」

 

ディケイドはそのままモモタロスを暴れさせようと声をかけると、ノリノリな様子のモモタロスだった。

 

「涼風さん、下がっててください。遺体を守ることに専念して」

「永夢さん……わかりました。みんな、ここは任せよう」

 

次に永夢が前に出て、青葉を下がらせる。そして青葉も他のクリエメイト達に呼びかけ、遺体を守ることに専念する。

 

「にしし。あいつらぶっ飛ばせばいいんだな」

「さて。そろそろ実力派エリートの腕前、見せてやるかな」

「僕も行きます。こういう時こそ、ヒーローの仕事ですから」

「モモタロスが行くなら、僕の出番ですね」

 

そしてそれに続き、ルフィと迅、出久と良太郎の四名が前に出てくる。いつオーバーヘブンショッカーが来るかわからないため、このまま1対1で対応したほうが賢明だろう。

 

「皆さん、彼らは姿を変えて戦闘能力を跳ね上げます。警戒を」

「そうでない者も、得意な力や武器を有している。油断大敵」

 

するとセサミとハッカも仮面ライダー達の戦いを目の当たりにしたことから、他の七賢者達に警戒を呼び掛ける。

 

「クリエメイト以外の異世界人、私は興味がそそられるな」

「まあ、どっちにしても勝つのは私らだ」

「例え相手が何者だろうと、アルシーヴ様のために力を尽くすだけですわ」

 

それに対して闘志を燃やすジンジャーと、残り二人の七賢者も奮起する。民族衣装風の少女はコルク同様に好奇心が強いようで、ディケイドに切りかかった騎士風の女性はアルシーヴの崇拝者らしい。

そしてそれぞれから戦う者達が前に出る形となった。

 

「まさか、あなた方とこんな形で再び相まみえるとは思いませんでしたよ」

「はい。根っからの悪人じゃないらしいですから、僕も対立はしたくありませんでしたが」

 

セサミと対峙する永夢。永夢が戦うことへの抵抗を口にする中、セサミ自身も部下の命の恩人である永夢と戦うことに抵抗はあったようだ。

 

「でも、僕には彼女達を守る義務があります。だから、手を抜く気はありません」

【マイティアクションX!!】

「そうですか。なら、私も遠慮なく戦わせてもらいます」

 

しかし永夢は決意を口にしながらゲーマドライバーを腰に巻き、ガシャットを起動した。セサミもその様子に、杖を構えて臨戦態勢に入る。

 

「変身!」

【マイティジャンプ! マイティキック! マイティ!マイティアクション!!】

 

そしてがシャットをドライバーに差し込み、そのままいきなりレベル2に変身して、ガシャコンブレイカー片手にセサミへと突撃していくエグゼイド。

 

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!!」

「七賢者セサミ、お相手いたしましょう!」

 

そしてセサミは、そのまま突撃してきたエグゼイドに水の弾丸を乱射していく。しかしエグゼイドは、剣に変形したガシャコンブレイカーで捌きながら立ち向かっていった。

 

 

 

「悪いけど、負けてもらうよ」

 

今度は民族衣装の少女が両手にナイフを持ち、一気に駆け出す。しかし彼女が向かっていったのは、実力派エリート迅であった。

 

「エスクード」

「な!?」

 

そして地面から盾を生やすトリガーで、少女の進行を阻止。迅自身は少女が動揺している隙に一気に懐まで飛び込み、スコーピオンで切りかかる。

 

「く!?」

 

しかし少女はそのままナイフで、迅の攻撃を防いで一気に背後へと飛びのいた。

 

「やるね。速さには自信があったんだけど」

「そこは、たたき上げの実力派エリートだからな。そして一言言っておくが、お嬢ちゃんはおれに勝てねぇ。おれのサイドエフェクトがそう言っている」

 

少女は迅を純粋に称賛する様子だが、直後の迅の言葉に少し可笑しそうな様子で笑う。

 

「そのサイドエフェクトが何かわからないけど…お兄さん、面白いね。私は自分が面白いと思ったことが正義だって思ってるから、お兄さんに興味が湧いたよ」

「おいおい、ナンパか? もう少し胸か尻が大きくなってから、出直してくれって」

 

少女の言動に迅が冗談交じりで返事を返すと、そのまま少女は今度は愉快そうに笑う。

 

「ふふっ。その軽口、ますます気に入った。七賢者の一人にして調停官のカルダモン、お兄さんに敬意を表して手加減抜きで行かせてもらうよ」

「おれはボーダー玉狛支部の実力派エリート・迅悠一だ。お眼鏡にかなったようで、光栄だ」

 

そして少女改めカルダモンと迅は対峙し、それぞれの得物で切りかかった。

 

 

 

 

「どりゃぁあああ!!」

「ゴムゴムの…」

 

ジンジャーは迫ってきたルフィを迎え撃とうと鉄拳を放つも、ルフィは武装色の覇気を纏って黒くなった拳を自身の背後に伸ばす。

 

銃弾(ブレット)!!」

 

そして縮んだ勢いを利用したパンチを放ち、ジンジャーの鉄拳と激突した。その衝撃により、二人の周囲の空気が激しい振動を起こす。

 

「へぇ、なかなか重いパンチだな。それに今の異様に伸びる腕、異様に硬い黒い拳、出鱈目につえぇよ」

「悪魔の実喰って力を手に入れたし、覇気って力の修行もしたからな。おめぇこそ、女にしちゃパワーすげぇぜ」

 

パワーで張り合えるジンジャーに、称賛の声を上げるルフィ。

 

「へぇ。中々に激しい修行積んだみてぇだな。お前、さしずめクリエメイト達の危機に駆け付けたヒーローってところだな。その力も納得だ」

「おれは海賊だ! ヒーローは好きだがなりたくねぇ! そこ間違えんなよ!!」

 

しかしジンジャーからの称賛の言葉に対して、特にヒーローの下りで強い否定の声を上げるルフィ。その様子にキョトンとしてしまったジンジャーは、そのまま問い尋ねる。

 

「なんでだ? ヒーロー好きなのに何でなりたがらねぇんだ?」

「例えば、ここに肉があるとする。海賊はそれで宴会するけど、ヒーローは人にやる。おれは肉が喰いてぇ、人にやりたくねぇ!!」

 

謎の理屈で説明するルフィに、ジンジャーはまたフリーズ。しかし、賢者と呼ばれるだけあって頭はそれなりに優秀だったようで、そのまま自分なりに理解しようとする。

 

「(要するに、無償の精神は嫌いってか? まあ、それだけ我が強いから、目的のために強くなろうってなったんだろうけど)どっちにしてもクリエメイトを守るなら、私の敵ってことでいいんだな」

 

そしてジンジャーは考えをまとめ終えると、どこからか釘バットを取り出して構えだす。武器がどう見ても不良のそれで、番長っぽい服装と相まってなぜか様になっていた。

 

「私はジンジャー、ご存じのとおり七賢者だ。相手になってやるよ」

「おれはルフィ。海賊王になる男だ、よろしくな!」

 

そしてそのままルフィとジンジャーは戦闘を開始した。

 

 

 

「どうあっても、引く気はないんですね?」

「ええ。正直、私は世界の危機とかそういったものにあまり実感がありません。ただ、私はアルシーヴ様を敬愛しておりますから、そのために例の聖なる遺体とやらを頂戴したいのですよ」

 

一方、騎士風の賢者の女性と対峙した良太郎とモモタロス。しかし世界に危機が迫ろうとする中でも、アルシーヴを第一に考えて行動するつもりらしい。

しかし良太郎も譲れないものがあるため、そのままライダーパスとベルトを準備する。

 

「悪いけど、遺体は渡さない。モモタロス」

「おっし、待ってました!!」

 

そして意思表示の後、モモタロスを憑依させてベルトをセット。そして赤いボタンを押して変身準備に入った。

 

「変身」

【Sword Form】

 

そしてそのまま電王へと変身し、肉体の主導権をモモタロスに明け渡す良太郎。

そしておなじみの決め台詞を口にするが…

 

「俺、参上!!」

「何ですか、そのセリフ?」

 

真っ先に疑問を持たれることとなる。しかし電王は気にした様子もなく、デンガッシャーを組みながらこれまたいつものセリフを口にしたのだった。

 

「まず言っとくが、俺は最初から最後までクライマックスだ。覚悟決めろよ」

「覚悟を決めるのはそちらです。この七賢者フェンネルが、貴方を畳んでしまいましょう」

 

そして騎士風の賢者フェンネルはレイピアを構え、電王とにらみ合いになる。そして…

 

「行くぜ行くぜ行くぜぇえええええ!!」

「それでは、参りますわ!!」

 

同時に二人の戦士は、突撃していった。

 

 

 

「たしか君、ハッカっていったっけ?」

「肯定。我、本来はアルシーヴ様の懐刀故に、表立っての活動は厳禁。しかし、アルシーヴ様の悲願のために総力でぶつかる必要があった」

 

一方、出久はハッカと対峙して構えを取る。突然の戦闘のためサポートアイテムは持たなかったが、相手が(ヴィラン)でない年の近い少女なので丁度よかった。

しかしここで出久は一つ気になり、ハッカに問いかける。

 

「一つすみません。アルシーヴさんはなんで目的について話したがらないんですか? 内容が私利私欲とかじゃないなら、僕達にも手伝えるかもしれないのに」

「無駄。貴公らに手伝えることは、皆無」

「なんで決めつけるんですか!? 少なくとも、関係のない誰かを利用するよりずっといいんじゃ…」

「綺麗ごとをほざくな。アルシーヴ様の方が正しいし、時間もない」

 

しかしハッカはアルシーヴ同様、取り付く島もない様子だ。しかも、出久のことも罵倒すらしていた。しかし、それでも出久は折れない。何故なら……

 

「綺麗ごと上等ですよ! ヒーローは命を賭して、綺麗ごとを遂行するお仕事ですから!!」

 

ただ純粋に、最高のヒーローになりたいから。

 

「……平行線。話も無駄、畳みかけさせてもらう」

「なら、僕は全力で君を止めさせてもらう!!」

 

そして、二人は戦うことを決める。しかしハッカはすでに仕込みをしていたようで先に動き出す。

 

「我が真骨頂、夢幻魔法の力! 受けてみよ!!」

「しまった!(きららさんから聞いてたのに、油断した!!)」

 

ハッカが懐刀とされている理由、それは相手を夢の世界に捕らえる夢幻魔法が使えるためである。きららは例の数か月前、神殿のある言の葉の木の頂上にある町でこの魔法の餌食に会い、そのまま夢の世界でランプ共々クリエメイト達と同級生だと信じ込まされていたという。

 

「対象者を一人に縛り結界に我共々閉じ込める。さすれば魔法の短時間発動も可能、我の意識がない間でも攻撃を受ける心配は皆無。このまま夢の世界に沈むがよい」

「なら、僕はその夢も…乗り越える…甘い幻想なんかに…おぼれ…」

 

しかし抵抗も虚しく、出久は眠りに落ちてしまう。そしてハッカも出久共々結界に閉じ込められたのを皮切りに、夢の世界へと堕ちていった。

 

 

 

「どうやら、他の七賢者達も戦闘を始めたらしいな。なら、私も貴様らの相手をしよう」

 

アルシーヴも、周囲の戦闘状況を目の当たりにして臨戦態勢に入る。手をかざすと同時に虚空から杖と薔薇の花の形をした水晶が現れる。そして右手には杖を手にし、水晶は彼女の周囲を浮いてビット兵器のように構えている。

しかし、ここでディケイドはあることに気づき、それに関してきららに言及する。

 

「おい、きらら。確か、アルシーヴはオーダーの副作用で異常に消耗してるって話だったよな?」

「はい。でもこの里に来る数か月前の話ですし、ひょっとしたらさっき話していた、聖なる遺体がオーダーで引き寄せられた時に…」

「なるほど、回復した可能性があるってわけか……やれやれだぜ」

 

アルシーヴが全快状態というまさかの事態に、警戒心を強めるディケイド。そして承太郎ときららに呼びかけるのだが…

 

「これは全力でやらないと骨が折れそうだ。承太郎、きらら。全力で行くぞ」

「はい。私もいざとなったら、コールで援軍を呼びます。いくらか魔法も使えるので、サポートも…」

「おい、ちょっと待ってくれ」

 

きららからコールに関する新事実が明らかになる中、承太郎がいきなり待ったをかけてくる。直後に彼の口から出たのは、信じられない言葉だった。

 

「こいつの相手は、俺一人でやる。てめぇらは下がってろ」

「え!? 承太郎さん、いきなり何を…」

「消耗を避けてぇってのもあるが、仮面ライダーが生身の人間、それも女とやり合うこと。そして年頃の生娘が強大な相手に身を削って立ち向かうところ。全てがおれ自身の心に後味の悪いものを残す。前者はすでにやってるやつがいるが、まあこの際は目を瞑ろう。すでに起こってるんじゃ、仕方ねぇ。取り合えず、汚れ役はおれに任せろと言ってるんだ」

 

まさかの宣言に今まで黙っていたランプが口を開いた。だが

 

「そんな!? アルシーヴは強いです! 一対一で戦うなんて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やかましい! うっとおしいぞ!

 

またこの言葉に、当然ながら一同は困惑する。しかしそれを無視して、承太郎はポルナレフ達に指示を送る。

 

「まあ、というわけでポルナレフと万丈、葉はそのまま小娘どもを守って下がっててくれ。士にきらら、もし俺がやられた時は代わりに頼むぞ」

「あいよ。さて譲ちゃん達、この場は任せていくぞ」

「え? でも…」

「千矢も聞いたろ、あいつの狙いが聖なる遺体だって。じゃあ、このまま下がっているほうがいいと思う」

「葉……うん、わかった」

 

千矢は承太郎を見捨てているようであまり気乗りしなかったが、葉に論されてそのまま下がることとなる。

そして、そのまま承太郎も身構えてアルシーヴに目線を合わせる。そしてその直後…

 

「え!? 士さん、なんで元の姿に…」

 

 

なんとディケイドが変身を解いて士に戻ってしまったのだ。つまり、承太郎の指示に従い、彼を一人で戦わせるということだ。

 

「あいつなら、まあ心配ないだろう。それに、あいつの言う通り仮面ライダーのモラルってのもあるしな」

 

それだけ伝えると、そのまま静観を決め込む士。その際、きららの傍について一人残っていたランプに声をかける。

 

「ランプ、とりあえず見守ってろ。あいつは見せるだろうぜ」

「え?」

「人間の強さってやつをよ」

 

ランプに承太郎のことを見守らせようと告げ、そのまま言葉を続ける士。

 

「お前にも言いたいことはあるだろうが、まずはそれを見てからでも遅くねぇだろ」

「……わかりました。私も頭は冷えたし、お二人のことを受け入れるにしてもちゃんと見ていないと」

「わかったらしいな。だったら、見ていろ」

 

ランプ自身も承諾した。昨晩マッチに論され、先ほどアンナにひっぱたかれ、完全に頭は冷えたようだ。

 

「一人で挑むとは、勇気と無謀をはき違えるのは感心せんが……」

 

そんな時、アルシーヴの方から忠告の声が聞こえた。しかしそれに対して返事をしなかった承太郎。

その代わり、間を置いてあることを告げた。

 

 

 

 

 

「この空条承太郎はいわゆる不良のレッテルを貼られている」

「「え?」」

「は?」

 

承太郎のその一言にきらら達だけでなく、士までキョトンとしてしまう。しかしアルシーヴだけは静観を決めていた。

 

「ケンカの相手を必要以上にブチのめし、いまだ病院から出てこれねえヤツもいる…イバルだけで能なしなんで、気合を入れてやった教師はもう2度と学校へ来ねえ。料金以下のマズイめしを食わせるレストランには、代金を払わねーなんてのはしょっちゅうよ」

「じ、承太郎さん……それは…」

「不良じゃすまねぇだろ、極悪人じゃねぇか」

(あれ? 私、答えだすの早まっちゃった??)

 

承太郎の独白があまりにも衝撃すぎて、きららは唖然とし、士もツッコミを入れてしまう。ランプも、つい己の判断を疑ってしまう。

しかし、彼の言いたいことはここから先が本題であった。

 

「だがこんなおれにも吐き気のする「悪」はわかる!!「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!」

 

そして承太郎は、かつて対峙した悪人と呼べる者達の所業を脳裏に浮かべ、はっきりと告げる。しかし、すぐにアルシーヴと向き合って再び口を開くのだが、それは驚くべき内容だった。

 

「だがアルシーヴ、テメェの眼には何か信念のようなものを感じる。俺の勘でしかねえが、テメェは吐き気のする悪とは違うのだろう……」

「!?……」

「やっぱりか」

(え? 二人とも、まさかあの人の胸の内に何かあるの、気づいて…)

 

まさかの指摘に、アルシーヴも一瞬は動揺する。士はそれを聞いて何やら納得しており、きららも最初に説明した際に伏せていたことを二人が察していたことに驚く。

しかしアルシーヴはすぐに平静を装い、再び承太郎と向き合った。そして、承太郎はそのままアルシーヴに聞かせるように告げた。

 

「だが、どんな目的があろうと、テメェが何も知らねぇクリエメイト達を大勢、無理やり呼び出して利用しようとした以上、それはそのクリエメイト達にとっては紛れも無い悪だ」

 

そしてそのうえではっきりと断じたのだ。被害者が出る以上、アルシーヴが悪だと見られる存在なのだと。

 

「テメェはクリエメイト達の世界の法の管轄外で、この世界で法の管理者だから法では決っして裁けねぇ……」

 

そして帽子の鍔に右手の指をやり…

 

だから、俺が裁く!!

 

鍔を指でなぞってハッキリと宣言した。

 

「……お前も、自分の成すべきことのために戦う者か」

 

するとここにきて、ようやくアルシーヴが口を開く。その様子は、承太郎への敬意のような物を感じている様子だった。しかしその状態のまま、自身の周囲に魔力の塊を生成する。

 

「なら、ここからは互いの成すべきことのため、全力で潰し合うとしよう! 空条承太郎!!」

 

そして叫ぶと同時に、承太郎を目掛けて生成した魔力弾を発射した。

 

 

「スタープラチナ!」

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』

 

しかしスタープラチナのラッシュでそれはあっという間に相殺されてしまう。戦いは、まだ始まったばかりだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

同時刻、里からいくらか離れた林にて。

 

「黒雪だるま、そろそろ行動を始めようと思うの」

「よいのですか? まだクリスマスまで日がありますが…」

「うん。なんだか、この先の人里が急ににぎやかになって、鬱陶しいから」

 

その林の中で、黒い和装に銀髪の少女が真っ黒な雪だるまと会話をしている。何か企んでいるようだが、今回の事態を察知して便乗するつもりらしい。

 

「う~ん……復活して早速のリハビリ、と思ったんだけど碌な獲物がいないなぁ。こんなんじゃ、八輝星なんて夢のまた夢だよ」

 

そんな中、ぶつぶつと独り言を呟く一人の巨漢の姿があった。全身を岩のブロックで出来た鎧に覆われている、かなり屈強そうな男だ。その男が意味深な単語を口にし、悩ましそうな様子であった。

 

「黒雪だるま、あの男で力の実験をやろう」

「暗黒冬将軍様、かしこまりました。では手始めに、あの男を黒歴史に沈めてやりましょう」

 

そして暗黒冬将軍と呼ばれた少女は、そのまま巨漢を力の実験に使おうとするのだが……

それが悪夢の始まりだとは知る由はなかった。

 

その頃・エトワリアの上空を飛ぶ一隻の飛行船があった。どこかトリオン兵を思わせる、口のような意匠が先端にあるのが特徴的な船だ。

そしてその傍に、羽付帽子をかぶった一羽の隼が飛んでいる。

 

「さて。ガロプラの諸君、君達の船を勝手に改造してしまった件、財団の者に変わって謝罪する」

「気にしないでくれ。船が大きければ人員やトリオン兵の卵も多く運搬可能だ、むしろ感謝したい」

「そっちの事情は知らねぇが、おかげでおれも麦わらのリターンマッチに早く挑めるんだ。感謝しかねぇぜ」

 

船の中で三人の壮年の男が会話をしている。神に奇妙な剃り込みの入った神父服の男、額に傷のある屈強な男だ、そして割れたような奇怪な髪形の狐っぽい男だ。神父服の男の言葉によれば、男はガロプラの軍人らしく、割れ頭の男はルフィと因縁があるらしい。

そして神父服の男こそ、徐倫の宿敵”エンリコ・プッチ”であった。

 

「でよぉ、そろそろ目的の場所に到着するんだろうな?」

「ああ。俺らもそろそろ、本格的に暴れてぇし、例の仮面ライダーとやらにも会いてえんだがな」

「安心したまえ。君たちの力があれば、確実にライダー達もジョースターも抹殺できるだろう」

 

するとその会話に割って入る二人の男、聖丸とノイトラの姿があった。ここまでくればオーバーヘブンショッカーの傘下の者が、本格的に動き出したのは明白だった。

 

「仮面ライダーと戦いたいなら、俺が相手になってやるが?」

「だな。こっちも暴れたくて仕方ねぇんだ、だったらおめぇらでも構わねぇだろ」

 

そこに現れる、新たな人物。赤と黒を基調にしたジャケットの男と腰に音叉を刺した野武士風の青年だ。言動から、彼らも仮面ライダーに変身する気らしい。

 

「落ち着きたまえ、大道克己に歌舞鬼。君達も本格的に暴れる時はもうすぐだ。特に克己には部下がいるのだから、彼らにも準備の方を促しておいてほしい」

「ああ」

 

それにぶっきらぼうな様子で返事をする黒いジャケットの男”大道克己”。そして彼と歌舞鬼という男が去っていくと、入れ替わりにエルクレスとミストルティン、そして右腕が巨大な盾と一体化した大男の姿があった。

 

「ねぇ、私達もようやく暴れてきていいのよね? このエトワリアとかいう世界を、悪夢と絶望に沈めてやりたくてウズウズシしているんだけど」

「ああ。それも君達夢魔や魔人を含めたすべての生命が、次のステージに進化するために必要だからな。存分に力を奮って、研鑽してくれたまえ」

「天国の時っていったか? よくわからんが、更なる高みとやらには興味あるな」

「そのステージとやらが無くとも、この私”鉄壁鎧将レイガルド”の理論”防御は最大の攻撃”で七ツ星、ひいては八輝星へと至れる自信はあるのだがね」

 

この男がアジトでカイの話していた、レイガルドのようだ。”攻撃は最大の防御”はよく聞くが、その逆を彼はモットーとしているらしい。

そして一通りの主力が揃ったところで、プッチが作戦開始の宣言をした。

 

「さて。では、聖なる遺体奪取作戦を開始しよう。真の天国への道……

 

 

 

 

 

 

 

アイズオブヘブンのためにっ!




ウィルバーとロン毛はいったんフェードアウトしますが、また出ます。近いうちに。

連休明けるので、また更新ペースが落ちます。
お付き合いいただければ、幸いです。


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第24話「強き力と黄金の精神」

VS七賢者とアルシーヴ、思いのほか難産でしたがどうにか完成。ラストで急展開になります。
ゼロワンが想像以上の面白さで、令和ライダーは好スタートを切った予感です。

p.s.鬼滅の刃がアニメ最終回近いのでずっと気になってたことを暴露します。
善逸が雷に打たれて金髪になったのをもしシノが聞いたら、マジで打たれに行きそうなんだが、どうでしょう?


突如として勃発した、アルシーヴと七賢者たちとの戦闘。果たして勝者は、誰だ?

 

~セサミVSエグゼイド~

「食らいなさい!」

 

セサミ最初と同様に杖を振り、エグゼイドへと水の弾丸を打ち出して攻撃する。それをエグゼイドはガシャコンブレイカーで捌いていく。

 

「へへ。こんなもんじゃ威力は足りねぇぜ」

「その様ですね……ならば、アクアスプレッド!!」

 

エグゼイドの余裕な様から、セサミは更に強力な攻撃を繰り出す。空高く打ち出された水の塊が、エグゼイドをめがけて落下していく。

 

「おっと、アブねぇ!」

 

しかしエグゼイドの強化された身体能力は、その攻撃をたやすく回避する。

 

「それなら…ディープレイン!!」

 

そしてセサミも負けじと攻撃を続け、無数の水の塊をエグゼイドに向けて落としていく。ただ早いだけでは避けられると危惧し、手数でお好きのようだ。

 

「おっと! それにしても、攻撃激しいな!!」

 

激しくなっていく攻撃に、エグゼイドも回避がどんどん難しくなっていく。

 

「アイテム取ってくる余裕ねぇな……

 

 

 

 

 

それじゃあ、こいつでパワーアップさせてもらうぜ」

【シャカリキスポーツ!!】

 

危機を感じたエグゼイドが新たなガシャットを取り出し、起動する。すると自走する自転車が表れてエグエイドの周囲を駆け回る。

 

「な、なんですかこれは?」

「いくぜ……

 

 

大・大・大変身!!

 

そして先ほど起動したガシャットを持った右腕を、大きく3回転させる。そしてマイティアクションXを差し込んでいるスロットの隣になる空きスロットへと差し込んだ。

 

【ガッチャーン! レベルアップ!!】

【マイティジャンプ!

マイティキック!

マイティ! マイティアクションX!!】

 

そしてそれにより、再びレベル2へ変身した音声が発生した。それにより、変身時と同じ音声がなるのだが、今回はそこでは終わらなかった。

 

【アガッチャ!!

シャカリキ!シャカリキ!バッドバッド!

シャカっと

リキっと

シャカリキスポーツ!】

 

結果、エグゼイドは新たな姿となった。自転車の車輪が両肩に装着され、頭部には自転車用ヘルメットを被ったようなフォルムと化している。

仮面ライダーエグゼイドレベル3・スポーツアクションゲーマーの誕生だ。

 

「そんでもって、コイツを喰らいな!!」

 

そして肩に付いている車輪を片方外し、ブーメランのように勢いよく投擲するエグゼイド。すると車輪は高速回転し、不規則な軌道で飛行。セサミの放った水の塊を、次々と破壊していったのだ。

 

「また奇妙な姿になったと思えば、まさかこんな力を……」

「他にも、パワー特化のゲキトツロボッツにローラースケートで走るジュージューバーガー、複数人でパーツを分割使用するドラゴナイトハンターZ、って具合に色々あるぜ。今回は対人戦だからパワー出せねぇし、あんたの攻撃に対応できるよう飛び道具の使えるコイツでいかせてもらった!」

 

そしてエグゼイドはそのまま手持ちガシャットの説明の後、再び車輪を構えてセサミと向き合うエグゼイド。

 

「そんじゃ改めて……ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!!」

 

そしてお決まりのセリフを叫び、セサミに突撃していくエグゼイド。

 

「でしたら……物量戦で行かせてもらいます!!」

「「「「「く~!!」」」」」

 

直後にセサミが叫ぶと、どこからともなく無数のクロモンが湧いてきた。今回は以前戦った種類だけでなく、コウモリのような翼を持つ大型種”ド・クロモン”もいる。

 

「なるほどボスラッシュ……いや、ゲームアプリのWaveみたいなものか。上等だ!!」

 

しかし、むしろ闘志を滾らせるエグゼイド。再び車輪を投擲し、ガシャコンブレイカーを片手に敵の大群に突撃していく。

小型のクロモンが次々と投擲した車輪に撃破されていき、ガシャコンブレイカーでクロモンナイトやド・クロモンをぶった切っていく。

エグゼイドは終始優勢なままであった。

 

~迅悠一VSカルダモン~

「それじゃあ、悪いけど切り刻まれてもらうよ」

「おっと、こいつは手荒いナンパだな」

 

ナイフの二刀流で迅に駆け寄るカルダモン。そのスピードは魔法で強化でもしているのか、生身の人間とは思えないレベルだ。

 

「残念、読めてたぜ」

 

しかし今、迅が宣言したとおりに突如地面からエスクードによる盾がせり上がって、カルダモンの進路を阻む。そして盾を飛び越えて迅が斬りかかった。

彼の予知のサイドエフェクト。能力の対象は迅が名前と顔、どちらか片方でも知っていることである。カルダモンが迅と対面して、自ら名乗った時点で、その行動はすべて予知され対策される。一対一の面と向かった対決では、圧倒的なアドバンテージである。

 

「やっぱりお兄さん、すごいね。それじゃあ、私もそろそろ本気出そうか」

 

そしてカルダモンはその言葉の直後、走力を跳ね上げて一気に回避した。そのスピードは、常人の動体視力でギリギリ目視可能、なレベルである。

 

「お、こりゃ厄介だな。なら、こうすりゃ…」

 

しかし迅は落ち着いた様子で先ほど出した盾に飛び乗り、それを足場に大ジャンプした。

 

「へぇ、そのまま残せるんだ。なら、私も!」

 

しかしカルダモンも同様に盾を足場にして宙を舞ってしまう。そしてその際、迅を超える跳躍力を発揮し、すぐに追いついてしまった。

 

「残念だったね、お兄さん」

 

そしてカルダモンは手にしたナイフを、無慈悲に迅の胸に突き刺す。

 

 

 

 

「残念、今のおれにナイフは効かないぜ」

「え!?」

「というか、このトリガーって武器を使っている間、おれはそのエネルギー源になるトリオンって力で作った仮の肉体と入れ替わってんだ。そしてこのトリオンには、同じトリオンによる攻撃以外は効かないとされる。まあ、魔法とかは食らってみないとわかんねぇけどな」

「なるほど、私には絶対勝てないってそういうことか……」

 

カルダモンはトリガー使いの、戦闘でのアドバンテージを知らないまま迅に立ち向かってしまった。それに気づいた彼女は、とっさにナイフを引き抜いて迅の体を蹴り、その勢いで地上へと戻っていった。

そして同じく地上に戻ってきた迅に、あることを告げる。

 

「けど、そのトリオンって力も使えば減っていくんでしょ? なら、無くなるまで待てば私の勝ちってことだね」

「お、極論だが勝ち目を見出したか。やるねぇ」

 

そして再び、戦いを開始することとなる。

 

~ルフィVSジンジャー~

「ゴムゴムの槍!」

「うぉっと!?」

 

ルフィは両足の裏を合わせて、その状態で武装色の覇気をまとわせる。そしてゴムゴムの能力で突き刺すように伸ばした。ジンジャーは驚きつつも、どうにか回避。

 

「そらよ!」

 

そしてその足にバットを叩きつけるが、ルフィには大したダメージにはならない。その理由は…

 

「効かねぇよ、ゴムだからな」

「なるほど、衝撃を吸収しちまうわけか…なら!」

 

ルフィの言葉からバットでの打撃は効かないと知ったジンジャー。すると距離を取って、魔力の球を生成する。

 

「食らいやがれ!!」

 

そしてそれをバットで打ち、ルフィへと放ったのだ。しかし、それすらも無駄に終わる。

 

「遅ぇ」

「何!?」

 

ルフィは三つある覇気の内、未使用だった気配を読む”見聞色”の力を発揮。それによって紙一重で回避してしまう。そしてすかさず、ジンジャーの目の前に飛び込んできた。

 

「おらぁああ!!」

「ぐおらぁああああああああ!!」

 

そして再び武装色で硬化した拳で殴り掛かる。ジンジャーも魔力で拳をコーティングし、迎え撃とうとその拳を放った。

 

「うっ!?」

「いっ!?」

 

するとすさまじい衝撃が走り、なんとルフィとジンジャー双方の拳から、血が噴き出したのだ。

実はジンジャーは神殿がある言の葉の樹の麓にある街で、領主を務めている。そして過去にその街で起こった火災を止める際、なんと拳圧のみで火災現場とその付近の家を吹き飛ばす、というでたらめな膂力を発揮したという。

そこに覇気に対抗可能な力が手に入れば、ルフィにも対抗可能というわけだった。

 

「はぁ…はぁ…おめぇ、すっげぇパワーだな。それに覇気にも対抗できる力も持ってやがる」

「私も、そのパワーには目を張るものがあるよ。でも、ちょっと足りねぇかな?」

「みてぇだ。おれのゴムの腕も、ダメージがいってやがる」

 

事態からルフィは自身の方が不利を察する。そして、切り札の一つを使うことを決意した。

 

「だったら見せてやるよ。進化するおれの技をな」

 

言いながらルフィは、左腕を後ろへと伸ばした状態のまま、右手の親指を噛む。

 

「ギア3(サード)……

 

 

 

 

 

 

 

 

骨風船!+武装色・硬化!!

 

そして勢いよく息を吹き込み、体に空気を流していく。そしてその空気が体内を伝っていき、左腕を巨大化させてしまう。そしてその巨大化した拳に覇気を纏わせ、ルフィは構えた。

 

「骨から骨へ移動する空気(パワー)! そして今のおれの腕は、巨人族の腕だ!!」

「空気入れてデカくした腕が、力なんてあるわけねぇだろ!!」

 

しかしジンジャーは見掛け倒しと判断して、迎え撃とうと準備する。覇気に対抗するために、手にしたバットに魔力を纏わせて強度を跳ね上げ、拳圧で火事の街を吹き飛ばす程の筋力を限界まで跳ね上げた。

 

「ゴムゴムの……」

「ぶっ飛べやぁあああああああああ!!」

 

そして両者の拳が激突し……

 

 

 

 

 

象銃(エレファントガン)!!

「な……ぐぇえ!?」

 

しかしその空気の注入で巨大化した拳が、ジンジャーの振るうバットを砕き、そのままジンジャー本人に激突。

その衝撃にジンジャーは遥か彼方へと、吹き飛ばされてしまった。

 

「はぁ…はぁ…悪りぃな。おれ、もっと強え奴に勝たねえといけねぇ。だから、ここで負けてられねえんだ」

 

大技を放ったルフィは、息を切らしながらも己の胸の内を曝け出す。

 

~電王VSフェンネル~

「行くぜ行くぜ行くぜぇえええ!」

「喧しいですわ!!」

 

電王はフェンネルとチャンバラを演じていたが、電王の喧嘩殺法のような型の無い剣技に対して、フェンネルはフェンシング風の素早い剣技。そのため、攻撃は掻い潜られて電王が一方的に斬られていく。

 

「へ。そんな軽い攻撃じゃ、俺は倒せねぇぜ」

「そのようですね。そちらは全身鎧だから、当然かと」

 

しかし普段から人外の膂力を発揮するイマジンと戦っている彼らからすると、フェンネルのスピード主体かつ人間の範疇の筋力から来る攻撃は決定打とはならなかった。

 

「ですが、手数で勝負させてもらいます!」

 

そしてフェンネルは更に攻撃速度を上げ、電王を滅多斬りにしようとするのだが……

 

パシッ

「な!?」

 

一太刀入った瞬間、電王がフェンネルの腕を掴んだ。

 

「これぞ肉を……肉を…………

 

 

 

良太郎、なんて言うんだっけ?」

『肉を切らせて骨を断つ、だよ。モモタロス』

「そうそれだ! というわけで、俺が勝たせてもらうぜ!!」

 

締まらない様子のモモタロスだが、それでもこのチャンスは無駄にしまいと、フェンネルに斬りかかる。

しかし、直後にフェンネルの体が魔力障壁でコーティングされて剣が防がれてしまった。

 

「なにぃいい!?」

「私はアルシーヴ様の盾。故に本質は守りにこそあります」

「てめぇ、卑怯なことしやがって!」

 

まさかの事態に、フェンネルへ不満をぶちまけながら距離を取る電王。そしてすかさす、フェンネルが追撃に入る。

 

「アルシーヴ様のお力になれるのなら、卑怯者上等。例えアルシーヴ様に見限られようと、あの方を守れるのなら構いませんわ!」

 

そして攻撃しながらも、自らのアルシーヴへの敬愛を語るフェンネル。愛の深さとそこから来る力に、電王は徐々に追い詰められていく。

 

 

 

 

 

 

しかし、ここで事態を好転させるまさかの出来事が起こった。

 

『モモタロスばっかりずるい! 僕もそろそろ戦いたいよ!!』

 

どこからかリュウタロスの声が響いたかと思いきや、電王の体に紫の光が降り注ぐ。

 

「うぉお!?」

 

そしてそのまま、モモタロスは電王の体から弾き出され、電王もアーマーが解除されてしまう。電王の素体・プラットフォームへと劣化してしまった。

 

(先程入り込んでいた、赤い魔物が飛び出てきた? まさか、他にもいた?)

『リュウタロス、急にどうしたの?』

「僕も亀ちゃんもクマちゃんも、ずっとデンライナーで留守番ばっかりして、飽きちゃったよ! そろそろ僕も出番が欲しい!」

「おい、小僧! いきなり出しゃばってんじゃねぇぞ!」

 

フェンネルがいきなりの事態に思案している横で、良太郎と彼に憑依したリュウタロス、そして弾き出されたモモタロスが騒ぎ出す。いきなりの事態に困惑するも、すぐに良太郎は決断した。

 

『あの人、たぶん接近戦じゃ不利だと思う。モモタロス、一回リュウタロスに代わってあげて』

「な!? 良太郎、ちょっと待ってくれ!」

『実際、そろそろみんなの力が必要だからさ。わかって?』

「……しょうがねえな。小僧、代わりにちゃんと勝てよ」

「わーい、やったー!!」

 

そしてリュウタロスは歓喜の声を上げ、電王プラットフォームに変じたままの良太郎の体で、ベルトの紫のボタンを押した。するとモモタロスの変身形態・ソードフォームとは違う音楽、どこかダンスミュージックの要素を取り入れた音楽がなった。

 

【Gun Form!】

 

そしてパスをベルトにかざすと、新たなアーマーと電仮面が装着される。

アーマーは装甲が展開して玉を持った龍の両手のようなパーツがつき、電仮面もリュウタロスに因んで髭の生えた東洋龍を思わせる形状となっている。

リュウタロスの憑依形態・ガンフォームだ。

 

「お姉さんのことやっつけるけどいいよね?」

 

そして電王はリュウタロスの声で言いながら、デンガッシャーを組み直しながらダンスのステップを踏み、デンガッシャーはやがて銃へと組み上がった。

 

「答えは聞いてない!」

 

そしてその発言と同時に、無慈悲にフェンネルへと発砲したのだ。

 

「飛び道具!?(姿だけでなく、攻撃手段まで変わるというのですか!?)」

 

まさかの事態にフェンネルは驚愕、攻撃を警戒して防御ではなく回避を取った。

 

「よし、お姉さんをこのままやっつけちゃおう!」

 

そして電王はそのままハイテンションになり、軽快にステップを踏みながらフェンネルを追撃していく。子供っぽい性格のリュウタロスが主人格の形態のため、無邪気な様子で一切の容赦がない辺りが恐ろしかった。

 

~出久VSハッカ~

「ちょ、待って……なんなのこれぇえええええええ!?」

「へむー」

「へむー」

「「「へむむー」」」

「……」

 

ハッカの夢幻魔法に囚われた出久は、学校の校庭のような場所でヘンテコな生き物の大群に追われていた。ペンギンとムー◯ンに出てくるモ◯ンを足して割ったような生き物と、楕円形の体に蛙のような手足の生えた紫の生き物だ。

奇怪な生物に襲われ、出久は恐怖と困惑の入り混じった妙な感情に支配されて逃げ続ける。

 

「これは日向縁というクリエメイトの想像から生まれた存在で、それぞれ砂肝うま太郎と"めんどうくさいという魔物"。聖典に記されてない異世界から来た貴殿の過去を知らぬ故、夢想に捕らえるのでなくこのような手法を取らせてもらった」

 

どこからか聞こえるハッカの声での解説が入り、おかげで生物達の正体はわかった。余談だが、縁達情報処理部がオーダーで呼び出された時、めんどうくさいという魔物が大量発生したそうだ。

 

「そして砂肝うま太郎の最大の特徴は……」

「へ? ……って、うわ!?」

 

直後、出久の目の前にもう一匹砂肝うま太郎が現れるのだが……

『あんまり無理するなよ』

「実は寄ると怖い」

「うわ、ビックリした!?」

 

近寄ってわかったのだが、目はシュメール人のように瞳が異様に大きく、かつ嘴は無駄にリアルだった。加えてこちらに喋りかけてきたような気がしたため、確かに『寄ると怖かった』。

あまりの驚きに出久は尻餅をついてしまう。

 

「いてて……え、地震?」

 

直後に地面が振動したので身構えていると、なんと巨人の姿が目の前に現れた。

古墳時代みたいな髪型にジーパンと上半身裸の、老人のような姿だ。

 

「ワシは、ふくの神じゃ」

「ふ、福の神?」

 

神を名乗る謎の巨人の出現。幸い、それに合わせて砂肝うま太郎もめんどうくさいという魔物も消えたが、あまりの事態に身動きが取れずにいた出久。そんな彼に対してふくの神は……

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前にロンTを百枚やろう」

 

そういった。意味がわからず、出久は混乱する。

 

(福の神がロンT、ロングTシャツ… 福の神がなんで服を……福、いや……ふく?)

 

しかし持ち前の分析能力のおかげで、少しずつ理解していき、そして察した。

 

福の神じゃなくて、服の神だ!!

「正解。しかし油断大敵」

 

叫んだ直後、ハッカが服の神の頭の上から飛び降りながら、札を放って攻撃してきた。

 

「うわ!?」

 

着弾した札は爆発し、出久もダメージを受けてしまう。完全に不意を突かれた攻撃は回避できず、出久に大きなダメージを与えてしまう。完全に向こうのペースに呑まれていた。

そして倒れた出久にハッカは近寄り、突然告げてくる。

 

「そしてもうじき、貴殿は我に敗北する」

「なんで、そんな………あれ? 力が…」

 

ハッカの宣言した直後、出久は突然の倦怠感と睡魔に襲われる。どうにか立ち上がろうとするも、上手く体を動かせない。

そんな彼に、ハッカは律儀に説明してくる。

 

「今回の夢幻魔法は特別性。召喚士以上の脅威を排除すべく、空間内の我以外の人間は徐々に睡魔に呑まれていくようなっている。そして完全な眠りにつけば従来の夢幻魔法同様、死ぬまで目覚めない」

「そ……そん、な………」

 

つまりは夢幻魔法を食らった時点で出久の敗北は決まっていたも同然だったということだ。もっと早く彼女を見つけ、ノシてしまえば出久の脱出はかなったかもしれないが、超人社会の観点から見ても異質なこの状況では、かなりの困難であった。

 

(かっちゃん、麗日さん、飯田くん、轟くん…みんな…お母さん………オール……マイ…ト……ごめ……)

 

薄れゆく意識の中、一緒にエトワリアへ飛ばされた仲間達や同級生達や故郷の母、そして恩師にして最も愛するヒーローたるオールマイトの顔が、走馬灯のように脳裏に浮かんできた。

出久の運命は、風前の灯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンッ

直後、その風前の灯が燃え盛る業火へと変じた。

 

『俺たちが付いているぞ』

『負けるんじゃない』

『希望を捨てるんじゃない』

『お前がワン・フォー・オールを完遂させるんだ』

『君は一人じゃない』

『『『………』』』

 

直後、暗闇の中から複数人の人影が現れた。影なっている二人と揺らめく炎のようなイメージの一人、姿がはっきりわかる人間が五人の、計八人が出久の脳裏に現れた。

それぞれが目元に傷のある青年、口元を隠した黒髪の青年、スキンヘッドにゴーグルの男、凛とした表情にヒーロー風マントの女性、そして白髪で目元の隠れた華奢な青年だ。

出久の個性ワン・フォー・オールに隠された秘密。今現れた面々はそれに関わる人物達だ。

 

「ぐ……うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「な!? 急に力が増幅……何故!?」

 

それにより出久は目を覚まし、全身に力が溢れる感覚も同時に感じた。それにハッカが驚愕して距離を取ると、いきなり出久は腕を突き出した。

 

黒鞭(クロムチ)!!」

「な、動けぬ!?」

 

直後、出久の腕から黒いエネルギーのようなものが伸び、ハッカが逃げきる前に体を拘束した。そして勢いよく引き寄せ……

 

「ごめん、僕も負けられない理由があるんだ」

「がはぁあ!?」

 

引き寄せられたハッカの鳩尾に、左拳を叩き込んで意識を刈る。その直後、空間が振動を始めた。

 

「たぶん、これで現実に戻れる筈……先代継承者の個性、今使えた? ライネさんに頼んで、ちゃんと訓練してみるかな」

 

意味深なことを言いつつ、結果は出久の逆転勝利となった。

 

~承太郎VSアルシーヴ~

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!』

 

魔力による弾幕を張るアルシーヴに対し、スタープラチナのラッシュでそれを撃ち落としながら突撃する承太郎。

 

「ならば、これでどうだ!!」

 

すると今度は、空から雷撃が放たれた。どうやらアルシーヴは、全力で承太郎を潰すつもりのようだ。

 

『オラァアアア!!』

 

しかしいきなりスタープラチナがパンチを放ったと思いきや、なんとその雷撃が相殺された。

 

「ふむ。確かそのスタンドとやら、己の魂を守護者の姿で実体化させた存在だそうだな…それだけ強靭な魂なら、魔力による攻撃も相殺可能ということか」

「まあ、そういうことだろうな。正攻法でやり合うには、そっちが不利なんじゃねえか?」

 

アルシーヴの推察を肯定する発言をした承太郎。しかしそれを聞いても彼女は折れる様子を見せない。

 

「ならば、いくらでも攻撃する手段はある」

 

その時、なんと承太郎を中心に辺り一帯の地面から黒い魔力があふれ出した。

 

「承太郎さん、それはアルシーヴさんのとっておきの魔法です! 早く逃げてください!!」

「もう遅い。このまま塵となれ、空条承太郎!!」

 

きららが必死に呼びかけるが、あっという間に魔法の発動準備ができてしまう。回復して全盛期の力を取り戻したの彼女は、大規模な攻撃魔法の発動も容易なようだ。

 

ダークマター!!

スタープラチナ・ザ・ワールド!!

 

しかし、アルシーヴが技名を叫ぶと同時に、承太郎も叫んだ。

彼の切り札、時間停止の発動キーを。

 

 

 

その時、確かに時は止まった。アルシーヴだけでなく、きららもランプも、士も。この場にいる人間で、唯一承太郎だけが動けていた。

そして承太郎は、そのまま一気に走り抜けて安全圏=アルシーヴの懐へと飛び込んだ。

 

「そして、時は動き出す」

 

そしてその言葉と同時に、時間停止のリミットが経過。動き出すと同時に、アルシーヴのダークマターも攻撃対象のいないまま発動してしまった。

 

「!? なぜ、お前が私の傍に…」

「確かにてめぇは強い。だが、俺も負けるわけにいかねぇんでな」

『オラァアアア!!』

 

流石に動揺を隠せなかったアルシーヴだが、承太郎はそれでも容赦なく、彼女の首根っこをスタープラチナの左腕で掴もうとする。

 

「舐めるなぁああ!!」

 

しかしゼロ距離で魔力を暴発させ、その爆風に乗ってアルシーヴは離脱する。

 

(強い……彼らの力、我々よりも遥かに攻撃力……いや殺傷力が高い。どんな環境になれば、人間はあんな能力や技術を身につけられるというのだ?)

(今のはヤバかったが……こいつ、おれ達の世界に比べたら比較的軟弱なこのエトワリアで生まれ育ちながら、戦闘力はかなり高え。曲がりなりにも世界の統治者を補佐していただけはあるな)

 

互いに予想外の戦闘力に、アルシーヴも承太郎も警戒モードに入る。その様子に思わず、士もきららもランプも、見入ってしまう。

 

「あいつ、人間の強さを見せるとは思っていたが……これは想像以上だな」

「アルシーヴさんと一対一で互角だなんて……」

「す、凄すぎます」

「承太郎は黄金の精神を宿してあるんじゃから、まあ当然じゃろうな」

 

するとそんな三人に、いつの間にかジョセフが近寄ってきて声をかけてくる。戦闘の真っ只中で、この場所まで突っ切ってきたらしい。

しかしその一方、きららはジョセフの口にしたワードが気になった。

 

「黄金の精神? ジョセフさん、それって一体?」

「儂の持論じゃが、どんな逆境にも屈さず立ち向かう、"正義の輝きの中にある偉大なる精神"とでもいうのかの。儂達はDIOを倒すための旅の最中、それを自分の中に見出したんじゃ」

 

そしてきららに説明した後、今度は士に視線を向けて告げた。

 

「士君、実は儂も君たち仮面ライダーや他の異世界の戦士達の話を聞いて、その黄金の精神を感じてあったのじゃ。だから、仮にランプちゃんやクリエメイトの嬢ちゃん達があのまま認めんでも、儂は君たちを認め、絶対に見限らんつもりでおった。そこだけは信じてくれ」

 

そう、強い意志の篭った目で告げるジョセフ。それに対して、高さは返すのだが……

 

「お褒めに預かり光栄だが、一つ訂正することがある」

「なんじゃ?」

「俺達仮面ライダーが戦う理由は、正義じゃない」

「え? じゃあなんで……」

 

まさかの返しに、士達を信じようとしていたランプが問いかけるが、士も強い意志の篭った目で告げた。

 

「俺達は"人間の自由と平和を守る為"に戦っている。これは仮面ライダー1号・本郷猛が戦いの初めからずっと言っていることだ」

 

そしてそれに対し、

 

「ふはははははは! 正義じゃなく自由と平和をか! こりゃ、一本取られたわい!」

「すごい……これが、気高さっていう物なんですね…」

「なんだろう……皆さんを疑ってた昨日の自分にお説教したいです……」

 

ジョセフは気に入り、きららは感心、ランプも昨日の自分を思い出して自己嫌悪に陥る、という事態に。いずれにしても好感触なようだ。

 

しかしそんな中、この空気とアルシーヴ達との戦いは、中断せざるを得なくなった。

 

「ぎぎゃおおおおおおおおお!!」

「な!?」

「魔物か? だが、これは……」

 

突如、承太郎とアルシーヴに向かって巨大な二足歩行するカブトムシのような魔物が現れたのだ。承太郎は超巨大な敵に、アルシーヴは見たことない種類の魔物に驚愕。しかしそんな二人に対し、魔物はその腕を振り下ろそうとしていた。




ハッカの魔法は、ブラッククローバーで出てきた夢魔法・幻惑の世界(グラマーワールド)を参考にしました。幻に囚われるストーリーって、どう書けばいいかわからず、ついやってしまいました……
しかし砂肝うま太郎と服の神が書けたのでこれで行こうと決めました!


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第25話「逆襲のE/強敵の再来」

switch持ってなかったからLite買ったんですが、ゼルダにどハマりして執筆遅れた……申し訳ないorz
きらファンでもチマメ隊揃っちゃいましたが、マとメは本編で出す予定はないです。あしからず。


承太郎とアルシーヴの一騎打ちに割って入る、カブトムシ型の巨大な魔物。その手が迫ろうとするも、すぐに妨害が入る。

 

「ゴムゴムの灰熊銃(グリズリーマグナム)!!」

「ぎぎゃあああああああああああああああああ!!」

 

ルフィがギア3で巨大化した上から覇気を纏った両腕、それを同時にぶつける技ですぐにぶっ飛ばしたのだ。それにより倒れ臥す巨大魔物だが、直後にろくろが駆けつけてくる。

 

「承太郎さん、離れてろ!」

 

直後にろくろは印を結び、中空に描かれた印が整列。それに合わせて、ろくろはその印殴りつける。

 

金烏天衝弾(ゴルトスマッシュ)旭日昇天(ホワイトハウリング)!!」

 

直後、印が重なったことで呪力のビームが収束され巨大化して放たれた。その威力により、魔物は跡形も無く消し飛んでしまう。

 

「ふぅ。ルフィの攻撃が効いてたあたり、ケガレじゃないみてえだが…大丈夫か?」

「あ、ああ。問題ねぇ(やれやれ。どれもこれも破壊力が可笑しい技ばかりだが、巻き添え食らわされねえように気をつけねぇと)」

(あの麦わら帽子の男がいるということは、ジンジャーが負けた? あんな力があるなら、ありえなくもないが…!? 夢幻魔法も感知されてないだと!)

 

出鱈目な戦闘力の味方を見て、改めて彼らの強大さを認識する承太郎。しかし、それはアルシーヴも同様だった。

そして彼女は周囲の状況を察し、そのまま宣言する。

 

「全員、撤退せよ! 余りにも分が悪い!!」

 

その言葉に七賢者達は驚愕した。

 

「なぜですか!? 確かに彼らは強いですが、今逃げ出しては…」

「ジンジャーとハッカが負けた! 落ち着いて周りを見回せ、そして気配や魔力を確かめろ!」

 

フェンネルの反論に対してすぐに返すアルシーヴ。そしてフェンネルだけでなく、指示を聞いた残りの七賢者メンバー達も状況を察した。

 

「……ハッカの夢幻魔法解除、確認しました。その指示に、従います」

「こっちも、ジンジャーの気配がないのを確認。死体や血痕がない辺り、遠方に吹き飛ばされたっぽいね」

「…………私も確認できました。ハッカを回収して撤退します」

「理解が早くて助かる。ジンジャーの捜索は態勢を立て直してからだな……空条承太郎に召喚士きらら、そしてまだ名も知らぬ男よ、今回は私の負けだ。オーダーの準備にしばらくかかるので、束の間の平和を謳歌しておけ」

「あ、ちょっと待ってよ!」

 

そして周囲から同意が得られたアルシーヴは、そのまま承太郎達に宣言して転移魔法で撤退していった。

一方、フェンネルと戦っていた電王は相手に逃げられ、変身解除とともにリュウタロスは良太郎の体から抜け出す。

 

「もう! あとちょっとで勝てたのにぃ!!」

「まあまあ、落ち着いてよリュウタロス」

 

そんな憤慨するリュウタロスを、良太郎が宥める。やはり消化不良なようだ。

 

「思いもよらねぇ形で危機が去ったが……やれやれだぜ」

「だな。しかしさっきのデカブツ、なんだったんだ?」

 

危機は去った物の、明らかに別の脅威がこちらに近寄ってきた感覚に、士も承太郎も警戒を強める。そんな中、最初に異変に気付いたのはきららだった。

 

「このパス……かなり距離があるけど、何か嫌な感覚がこっちに向かっています。しかも、それと繋がったパスがこの向こうの林にもあります」

「差し詰め、敵の先行部隊とかそんなところだな」

 

きららの言葉を聞き、パスの主の正体を察する士。しかしその時…

 

「皆さん!!」

「お前ら……危険だから下がってろと言っただろうが」

 

そこに青葉を先頭に、なんとクリエメイト一同がこちらへと駆け寄ってきたのだ。聖なる遺体を守るために下がらせたのに、また出てきたため承太郎も呆れるのだが、次の言葉にて前言撤回することとなる。

 

「この遺体が告げているんです! 敵の起こした異変と、その影響を受けた人たちが近づいているって!!」

「! まさか、アヴドゥル達も?」

 

オーバーヘブンショッカー首領の起こした異変。それにより甦った仲間の洗脳を、聖なる遺体で止められる。現に、花京院やツェペリ男爵もそれでこちらに戻ってきたのだ。

遺体が持ち主に選んだ彼女らの力が必要なのも、明白だ。

 

「みたいだからな。今回は総力戦でいかせてもらうぞ」

「そうそう。いよいよ仮面ライダーの仕事が、本格的に始まりそうだぜ」

 

そう言いながら千矢を連れてやって来た葉と響鬼。その際、葉の服装も黒の袖なしベストに変わっていた。ズボンに取り付けられたホルダーに、赤い石造りの短剣が入れられているのも、印象的だ。

 

「それはいいが、その格好なんだ?」

「アンナお手製のバトルコスチュームだよ。ついでに、切り札も用意して来た」

 

承太郎の指摘に、少し自慢げに話す葉はホルダーに入れた短剣を見せる。この短剣が切り札のようだが、どうやらオーバーソウルの媒介に使うようだ。しかしその時、士はあることが気になってヒビキに問うのだが……

 

「そういえば、あんたは朝飯の時にいなかったけど何してたんだ?」

「修行だよ、修行。少年少女達には置手紙おいてきたんだが、見てねぇのか?」

「置手紙…………あ」

 

ヒビキの言葉に千矢は何かを思い出す。

~回想~

「むにゃむにゃ……あれ? なにこれ」

 

早朝、目を覚ました千矢は厠に向かう途中に居間で例の置手紙とやらを発見した。

 

『ちょっと、裏の山で修行してくる。朝飯もいらないって、飯屋の姉ちゃんにも伝えてるからお構いなく。ヒビキ』

「ふーん……わかったよ、ヒビキさん…むにゃ」

 

しかしこの後、厠から戻った千矢は二度寝してしまう。寝ぼけてたために、記憶から抜け落ちていたらしかった。

~回想了~

「ごめんなさい…寝ぼけて、忘れてました……」

 

そのまま千矢は涙目で一同に謝罪するのだが、なんと地面に寝そべって自身の腹を見せつけるようなポーズを取ってきたのだ。

 

「おい、なんだそのポーズ? ふざけてんのか?」

「え? ごめんなさいする時はお腹見せないとだよ。人間は、あんまりやらないみたいだけど…」

「獣は降伏の証に腹を見せるというが……それをてめぇがやるのか?」

 

士の問いに答える千矢に対し、承太郎はかつて戦ったスタンド能力持ちのオランウータンを思い出す。奴も許しを請いて腹を見せてくるが、動物のルールからはみ出したということでスタープラチナのオラオラの餌食となった。

当然、千矢にはやらないきやる理由もないが。

 

「気を取り直して、さっさと行くぞ。おそらく、かなりの強敵が来るはずだ。リュウタロス、新しい敵が来るからそこで大暴れしていいぞ」

「本当!? やったー!!」

「夏ミカンとユウスケは里を守ってくれ。こっちを勘付かれて、人質取られたらマズイからな」

「わかりました。士君、気をつけて」

 

色々と思うところある千矢の謝罪ポーズだが、今は置いておくことにする士であった。そしてその士の言葉にリュウタロスも機嫌を直し、夏海とユウスケに里を任せて移動を始める。

 

「僕とスピードワゴンとツェペリさんも残ろう。大多数が抜けるから、守りの手は足りないだろうからね」

「そういうことなら、アタシらも。アタシとやすなは例の遺体に選ばれてないし」

「ワシも流石に前線で何度もやり合うのは勘弁じゃ。今回は守りに入らせてもらおうかの」

「ジョナサンにソーニャちゃん、助かったよ」

「ジョセフさんも助かります」

 

そんな中、ジョナサンやジョセフから防衛への名乗りが出てきて礼を言う2人。いつの間にかやってきていたソーニャも、防衛のために残ってくれるようだ。

 

「皆さん、ちょっといいですか?」

 

そんな中、いきなり駆けつけてきたのは栄依子だった。何事かと思い、夏海が話しかけるのだが……

 

「栄依子ちゃん? 一体どうしたんですか?」

「花名がいつの間にかいなくなってたんです。あと勇魚さんも。こっちに来てないかと思って探しに来たんですが…」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〜目的地の林の中〜

 

「ぎゃあああああ!?」

「黒雪だるま!」

 

先ほど里に乗り込んで騒ぎを起こそうとしていた、暗黒冬将軍と呼ばれた少女は現在ピンチだった。彼女が自身の力の実験に使おうとしていた、石のブロックで出来た鎧を纏う巨漢が怒りの形相で付き人の雪だるまを殴り倒していた。

見てみると同様に雪だるまの残骸と思しき黒い雪やバケツが辺りに散乱している。

 

「君……確か、忘れたい負の記憶のことを黒歴史って言ってたよね?」

 

そして巨漢は憤怒の形相で暗黒冬将軍を睨みながら、いきなり問いかける。そのにじみ出る怒りの感情に、暗黒冬将軍は涙目で頷くしかなかった。

 

「だとしたら、ボクの場合はあの屈辱の記憶が黒歴史ってことになるのかなぁ? ビィト戦士団に負けたのと、その直後にロディーナちゃんがボクを裏で操ってたってわかった、あの記憶が……」

 

それを見た巨漢は、納得して怒気をそのままに笑顔になった。この巨体とイカツイ風貌に対して、一人称ボクというインパクトもさながら、笑顔のままの憤怒は暗黒冬将軍を威圧する。そして萎縮した彼女に巨漢は歩み寄ってくる。

 

「おかげで、取り乱しちゃったよ……大甲虫を、グリニデの奴から拝借したとっておきのモンスターを封じたブロックをどこかに放り捨てちゃったし…これは、お仕置きが必要だね……

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、ぶっ殺す!!

 

そして巨漢は笑顔を解いて叫びながら巨大な拳を振り上げ、暗黒冬将軍を殴殺しようとした。

 

 

 

「朧蓮華の舞!」

「むぐぅう!?」

 

しかし凜とした少女の声で技名を叫ばれ、声の主と思しき何者かが巨漢に連続タックルを叩き込む。常人の動体視力では目視できない、圧倒的スピードの連続攻撃に巨漢も怯む。

 

「もう、大丈夫よ…心配、しないで」

 

攻撃を終えたことでその人物が、紅緒であることが判明する。そして紅緒は呪装用の仮面を外しながら、暗黒冬将軍を安心させるように、笑顔で接する。

 

「いてて……人間の小娘みたいだが、今のは?」

【ヒート! マキシマムドライブ!!】

「って、あっつい!?」

 

さらにガイアメモリの音声・ガイアウィスパーが響くと同時に、炎を纏ったクワガタ虫が巨漢に突撃していく。メモリガジェットの一つ、スタッグフォンにヒートメモリをセットしてのマキシマムドライブだ。

その熱量に、巨漢はダメージを食らっていく。

 

「阿弥陀流奥義・後光刃!!」

「うりゃああ!!」

 

そこにすかさず、葉と千矢が飛び掛かって斬りつける。

 

「ちぃ! 軟弱な人間のクセして、ボクの邪魔しやがって……」

 

しかし全身に纏う石のブロック、そしてその下の頑強な筋肉が大きなダメージを与えられずにいた。

そんな中、遅れて残りのメンバーも集結することとなった。

 

「なんだコイツ? なんかドラクエの魔王みてぇな(ナリ)してやがるが、それっぽい世界から来たのか?」

「お前、ドラクエ好きだな……だが、同感だ。例の婆娑羅とか破面とも、共通点は見当たらねぇし」

「なんだか、嫌な予感がします。士さんも承太郎さんも、気をつけてください」

 

士と承太郎が巨漢を観察していると、きららが二人に警戒を呼びかける。すると、巨漢はいきなりニヤつき始める。

 

「ツカサにジョウタロー……そうか。君達が仮面ライダーとスタンド使いのリーダー、みたいな奴だね。どうやら、ボクにも運が回ってきたみたいだね」

「俺らを知っているか。お前もどうやら、オーバーヘブンショッカーの協力者みてぇだな」

 

すでに情報が知れ渡っていることを察し、士は警戒を強める。しかしそんなとき、巨漢のほうから自己紹介が始まった。

 

「とりあえず自己紹介はしてあげるよ。ボクの名はガロニュート、不動巨人の二つ名を持つ、七ツ星の魔人(ヴァンデル)さ」

「ヴァンデル? また聞いたことねぇのが来やがったな」

 

また聞いたことのない種族の出現に、警戒心を強める士。すると巨漢改めガロニュートは、そのまま自身の種族について律儀に説明し始めた。

 

「魔人はまあ、一言で言えば人間の敵だね。とある世界で人間を駆逐し、滅ぼすことを生業兼楽しみにしている種族だよ」

「おいおい、いきなり物騒な自己紹介だな」

 

ガロニュートが語る魔人の概要に、横で聞いていたヒビキも若干だが珍しく引き気味な様子だ。しかし気にせず、ガロニュートはいきなり自らの左腕をこちらに見せてきた。

そこには、七つの宝玉のようなものが埋め込まれている。

 

「そして人間の町や国をどれだけ滅ぼしたか、魔人に対抗するヴァンデルバスターって人間をどれだけ殺したか、とかを功績にしてこの腕にはめている星を集めて昇格していくんだよ。最初は生まれつき一つだけで、今のところはボクと同じ七ツ星が最高位だね」

「そんな……階級なんかのために、人を…」

「きらら落ち着いて。こういうのには話をするだけ、無駄よ」

 

ガロニュートの言葉から彼ら魔人の所業を聞き、膝をつきながらショックを受けるきらら。それを落ち着かせるメリーはクリエメイトで一人、明確な悪意と戦ったことのある人物のため冷静だった。

 

「そしてボクは元いた世界でとあるバスターの小僧に負けて死んだんだけど、オーバーヘブンショッカーの首領が生き返らせてくれたんだ。しかも死と同時に砕けるはずの星まで再生させてね。そして、首領はボクを含めた魔人達にある提案をした」

 

大体の予想がつく中、ひとまず静観を決める一同。するとガロニュートがその提案について詳細を話した。

 

「君らを皆殺しにして聖なる遺体を献上するなら、魔人の評価役に話を通してくれるそうだ。そうなればボクは、七ツ星より上の階級、八輝星へと最初に昇格できるってわけさ!」

「だいたいわかった。要するに、お前を倒せばとりあえず脅威は一つ取り除けるってことだろ」

「おし、じゃあぶっ飛ばすぞ!」

 

というわけでガロニュートへの敵対意識MAXで決め込む一同。士の言葉に続いたルフィが覇気を纏い、他のメンバーも変身や武装の準備をするのだが……

 

「ふん!」

「うわ!?」

「な、なんだ!?」

「か、体が…重い…」

 

なんとガロニュートが両腕を交差した瞬間、全員の体に凄まじい荷重が生じる。その負荷は実戦で鍛え上げた仮面ライダーたちだけでなく、ルフィやデクのような素でライダーの身体能力に張り合えるレベルのパワーファイターですら、地面に縫い付けられるような程だ。

 

「お、重い……」

「潰れる…」

「痛い、です…」

「いやぁ、これ以上重くなるのは嫌ぁあああ!」.

 

その為、きららやクリエメイト達の、普通の十代の少女の肉体強度ではそれだけで凶悪な攻撃とかしてしまう。

尤も、ヒロが1人だけ体重を気にするという的外れな恐怖を抱いていたが。

 

「魔人は冥力っていう力を体に秘めていてね、それを使った冥撃や魔奥義っていう必殺技を使えるんだ。そしてボクの魔奥義は、見た目通りスピードのないボクが周りに張り合うために周りをノロくするために編み出したんだ」

 

そんな中、ガロニュート自身からこの状況について説明がなされる。そしてそのまま自信満々な表情で、告げた。

 

「名付けて”超重領域(グラビ・ゾーン)”。バスターどもの使う天力って力には、属性にもよるけど中和可能なんだけどね。それを持たない君らは有効範囲であるこの一帯に近寄った時点で、負けが確定だったんだよ」

 

そしてそのまま勝ち誇った笑みで士と承太郎に近寄るガロニュート。

 

「それじゃあバイバイ。最強のスタンド使いさんに、世界の破壊者さん!」

 

そしてそのまま士と承太郎を隣にいるきららごと押しつぶそうと、巨大な拳を振り下ろした。

 

「スタープラチナ!」

『オラァアア!!』

「ぐふっ!?」

 

しかし承太郎がとっさにスタープラチナを発動、そのパンチをガロニュートの腹部に叩き込む。そのパワーに、ガロニュートも怯んだ。

 

「承太郎さん、スタンドを?」

「なるほど。魂の化身なら、重力負荷も関係ねえわけか」

 

驚くきららに、感心する士。魔法でスタンドにダメージを与えられたことから、この冥力という力に由来する魔奥義も同様の性質があるかもしれない。しかし直接攻撃じゃなかったからか、この重力負荷も効かずにガロニュートに一撃入れることに成功したのだ。

 

「君、往生際が悪いんだよ!!」

「あいにく、てめぇみたいなのにくれてやるほど、俺の命は安くはねぇんでな」

 

ガロニュートには思いのほかダメージを食らったことに憤慨し、腕にその冥力と思しきエネルギーを腕に溜め込む。承太郎も迎え撃とうとスタープラチナの拳を構えるのだが……

 

 

 

 

 

虚閃(セロ)

「!?」.

 

突然響いた聞き覚えのない男の声に反応し、ガロニュートは声のした方を向いて溜めていた冥力を放つ。

 

「な、なんだ!?」

「うお!?」

 

直後、ガロニュートの攻撃とぶつかる巨大な光の塊が見えた。その攻撃は相殺されて両方とも消滅するが、直後に起こった衝撃は辺りの木々をざわめかせる。

 

「ラァアアア!!」

「ふん!!」

 

さらに直後、何者かが一瞬でガロニュートの眼の前に現れ、手にした巨大な武器で斬りかかる。しかしガロニュートも咄嗟にガードし、あたりに凄まじい衝撃が走った。

 

「あ、体が軽く…」

「今のうちに離れるぞ! たぶんまだ…」

 

その時、ガロニュートは今の攻撃で超重領域を解除してしまう。それにきららが気づいたので、士は離散を促す。

そして、案の定攻撃は続くなどとなった。

 

「死ぃあああああああ!!」

「うお!?」

「ちっ!」

 

新たに空から降って来た別の誰かが、腕を振ると同時にガロニュートと現れた男が一気に距離をとる。すると地面に深い切れ込みが何本も刻まれた。

 

「おいおい、獲物の独り占めは良くないぜ。つーか、おめぇ巻き添え食いそうだったぞ、俺」

「んだよ、食らわなかったんだからいいだろ。しかしグリニデとかいうやつのいう通りだな。お前ら魔人ってのは、野蛮で礼儀知らずしかいねぇらしい」

「不満があるなら、ボクを葬ってから言いなよ。首領殿はボクらの同士討ちも謀反も、快く許可してるんだしさ」

 

現れたのは、白尽くめで長身、手に剣とも斧ともおぼつかない巨大な刃物を持った男。褐色肌に男なのにツインテールにまとめた銀髪、そして腹に九字紋が刻まれた男の2人だった。

昨日に野クルメンバーから話を聞いた、2人であった。

 

「聞いた通りの見た目してやがる……お前らが婆娑羅と破面とかいう連中か」

「へぇ、話はいってるみてぇだ。余計な説明はいらなさそうだな」

 

士の言葉に反応し、破面の男が向き合いそのまま自己紹介に入る。ツインテールの婆娑羅も、名前の察しはついたが名乗り始めた。

 

「破面のノイトラ・ジルガ。テメェら人間の言葉で言やぁ、悪霊ってやつだ」

「婆娑羅の聖丸だ。婆娑羅、つーかケガレは負の念とか怨念から生まれるからまあ、似たようなもんだ」

「悪霊!?」

 

ノイトラの名乗りに真っ先に反応したのは、紺だった。ただでさえ幽霊や妖怪と遭遇した中、今度は悪霊と彼女の弱点に何度も遭遇しているのでメンタルが削られっぱなしだ。

 

「まあ厳密に言えば、(ホロウ)って悪霊が進化の果てに仮面を剥がして死神の力を得たのが、俺をはじめとした破面ってわけだ」

「死神だ? てめぇのいた世界には死神なんていやがるのか」

 

まさかのノイトラからの単語に承太郎もビックリだ。しかし敵の攻撃はこれだけにとどまらない。

 

「ノロノロビーム!!」

「うぉ……ぉおお〜」

「うぅごぉ〜きぃ〜がぁあ〜…」

「まさか、この技…」

 

今度はどこからか光線が飛んできて、それを浴びたポルナレフと万丈がスローモーションになってしまう。

そんな中、ルフィはこの攻撃に見覚えがあった。

 

「フェーフェフェフェフェ!! 久しぶりだな、麦わら!」

 

そこに現れたのは、ルフィを知っているそぶりの奇妙な笑い方の男だ。長い鼻に割れたような特徴的な髪型の中年男だ。そしてその男の両脇には、青い髪の美女と地面に腕を付いたゴリラのような巨漢が控えている。二人とも、中年男の髪形を模した帽子が一体になった様なデザインのマスクをしている。

 

「あ! いつかの割れ頭!!」

「また言った……割れ頭って言った……」

「おやびん、落ち込まないで!!」

「うぷぷぷぷぷぷ!」

 

ルフィに髪型で呼ばれた中年男は露骨に落ち込み、それを美女が慰めて巨漢は逆に笑っている。愉快なようだが、ルフィの反応から一応は敵らしい。

 

「えっと……知り合い?」

「ああ。銀ギツネのフォクシーって海賊で、二年前に一悶着あった連中だ」

「じゃあ、今の遅くなるビームは悪魔の実の力?」

「触れたものを30秒間遅くするノロマ光子を体から生成する、ノロノロの実のノロマ人間だとか」

 

ヒロがあまりの間抜けさに唖然としながら問いかけると、ウソップから解説が入る。沙英も話を聞き、先ほどの力が悪魔の実によるものだと察した。これに関してもウソップからの証言が出たが、能力は攻撃力に乏しいが凶悪極まりないものだ。

そして当然だが、なぜか自分たちの世界の敵がいたことにルフィは問い尋ねる。

 

「で、なんでお前がここに居やがるんだ!?」

「まあお前もここにいるなら聞いているだろ? オーバーヘブンショッカー、ここの科学力とか手に入れたら更に一味を強化できそうだからな。ちょいと協力させてもらっているんだが、そこにお前らが来たんで前回の対決のリベンジを果たそうと思ったわけだ」

「というわけで、このポルチェちゃんとハンバーグだけじゃなく、フォクシー海賊団総出で相手してあげるから、待っててね」

「うぷぷ、今度こそやっつけてやる」

 

まさかの敵の襲来に困惑するルフィ達だが、そこに新たな敵が襲来する。

 

「久しぶりだな、仮面ライダーW」

「な……てめぇまで、復活しやがったのか…」

 

そこに今度は、紹太郎たちのよく知る男だった。黒をベースに所々に赤が入った、ライダースーツのような服の青年である。

 

「大道克己。僕たちが初めてあった時に戦った、NEVERのリーダーだ」

「え? じゃあ、あの人も一回死んだっていうのか?」

「死体の改造兵……俺は初めて会ったけど、業が深すぎじゃねぇか?」

 

フィリップから男の詳細を知り、夢路もろくろも驚愕する。

 

「どうやら自己紹介の必要はなさそうだな。率直に言うが、聖なる遺体とてめぇらの命、纏めて寄越せ」

「いきなり、遠慮ないわね。飲むわけないでしょ、そんな要求」

 

いきなりの克己の物言いに、メリーは当然反論した。しかし直後、彼女らも驚く出来事が起こった。

 

「話は聞いているぞ、メリー・ナイトメア。お前と縁のあるやつも、オーバーヘブンショッカーに協力している。今ここにきているから、適当に挨拶しておけ」

「というわけで、久しぶりだな子羊」

「そして私は、はじめましてね」

 

そこに現れたのは、西洋の鎧から落書きのような顔が除く異形の男と、植物をイメージしたゴスロリファッションの女の二人組が現れた。メリーに呼びかけたことから、面識ありのようだ。

 

「メリー・ナイトメア。片方の異形は君を知っているようだが…やはり」

「ええ。夢魔、それも私らが敵対してた連中の親玉よ。片方は知らないけど」

「初めましてだな、仮面ライダー。俺はエクルレス、二つ名は灯台(ファロス)だ」

「あたしはミストルティン。二つ名は樹海(フォレスト)、好きなことは、まあ破壊と殺戮ね」

 

フィリップの問いかけにメリーが答えると、二体の夢魔はそのまま名乗り始める。そして異形の夢魔・エルクレスから、オーバーヘブンショッカーに参加した経緯が語られる。

 

「俺は夢界に連れ戻された後、力を与えた張本人に消されたんだが、他の連中同様に首領に復活させられ、そのまま協力させてもらっているわけだ」

「あたしもエルも、好きなだけ破壊してもいいって言われてね。これは乗るしかない、そう思ったわけよ」

「エルクレスと意気投合するロクデナシの夢魔ね……ユメもキボーもありゃしないわ」

 

エルクレスの身の上話とそんな彼に同調したミストルティン。あまりに最悪な組み合わせに、メリーは完全に気分を害されていた。

 

「そう落胆する必要はないぞ、メリー・ナイトメア。君達も彼らも、全ての生命は彼の導くまま、真の天国へと到達するのだから」

「この声、まさか!?」

 

その声を聞いて一番に反応したのは、ここまで沈黙を貫いていた徐倫だった。その時、いつの間中上空に浮く巨大な飛行船が現れ、そこから1人の男が飛び降りてきたのだ。

 

「し、神父かあれ?」

「いや、でもアレは……」

「へ、変な髪……」

 

ヒビキも葉も現れた男に困惑する。それは千矢の指摘通り、神父服に奇妙な剃り込みの入った短髪という、ミスマッチな身なりをしていたためだ。

しかし徐倫はこの男に見覚えがある。そう、元の時代で彼女が対立していた男だったからだ。

 

「プッチ! あんたまでこの世界に来ていたっていうの!?」

(こいつがエンリコ・プッチ…徐倫が元の時代で戦っていた、天国への到達を目的とした男)

 

まさかの敵の出現に警戒を強める空条親子。しかしプッチの口から、驚きの言葉が出てきた。

 

「初めましてというべきか、ディケイドに空条承太郎……尤も承太郎に関しては、それも"1988年の承太郎"と出会うのは2回目だがね」

「何?」

 

なんとプッチは承太郎と既にあっているというのだ。それも、徐倫の生まれた後の時代でなく、DIOを倒しにエジプトへと旅に出た承太郎とだ。正確に年代まで覚えている始末である。

 

「おい、プッチとか言ったか? なんでこいつの娘と対立してた時代の住人が、それより過去の時代のこいつと既に会っているんだ?」

「君が知る必要はない。幾多もの世界を旅する君なら理解できるだろうが、彼の作る天国に承太郎と君は邪魔なのだから」

「プッチ! あんたも聖なる遺体を欲しているようだけど、渡すつもりはないしあんたを天国にも行かせはしない!!」

 

士の問いかけに答えるのを拒否するプッチに、徐倫は噛み付く。しかしその時、彼を知る徐倫にとって意外すぎる返事が返ってきたのだ。

 

「徐倫、その天国というのは……君のいた世界の私が求めていたものだろ? 私の求めていた天国は他にあった、だからそれはもう必要ない」

「何?」

 

その言葉に驚愕する徐倫だったが、プッチは気にせず言葉を続けた。

 

「今の私はその天国を彼に、オーバーヘブンショッカーの首領に……わが友に見つけてもらった」

 

そしてプッチは続ける。その周囲にいる全員を圧倒する、凄みを醸し出しながら。

 

「今の私は苦難の道を歩み続ける殉教者ではなく、"真実"への道を得た"天国"の住人だ。そして私は知らしめねばならない……

 

 

彼の生み出す真実! その尊さを!!

「な、何この人?」

「こ、怖い……」

 

その狂信者のようなプッチの言動に、きららもランプも怯える。しかしプッチはそれすらも気にせず、言葉を続ける。

 

「オーバーヘブンショッカーも、その為にわが友が大ショッカーを乗っ取り結成した。人類だけでなく、魔人に夢魔、虚に破面にケガレ……数多の生命が彼に導かれるまま、等しく天国の住人として幸福となる為に!」

「その為にならどれだけ人を傷つけてもいいってか? イカれてる……」

「気をつけて。私の仲間曰く、プッチは"自分が悪だと気づかない最もどす黒い悪"だそうよ」

「もしそれが本当なら、ヴァレンタインよりもタチが悪いな…」

 

プッチの言葉に対して強い怒りと嫌悪感を見せる戦兎。そんな彼に徐倫はプッチの人となりを伝えると、一緒に聞いていたジョニィも強い警戒心を抱くこととなる。

 

「君たちは全人類、全生命の幸福のための尊い犠牲を同意できない。だから、確実に消す必要がある……克己、任せたぞ」

「ようやく、俺の出番か」

 

そしてプッチに促された克己は、腹部にある装置を取り付けるのだが……

 

「へ? あれって、ダブルドライバー?」

 

そこにあったのは、夢路の指摘通りダブルドライバーによく似た装置だった。しかし、メモリを左サイドからしか装慎出来ないように作られているという違いがある。

 

「ロストドライバー。ダブルドライバーよりも旧型のドライバーで、一人で変身できる代わりメモリも一本しか装填できない仕様だ。そして奴は、これで変身を…」

「御託はいい。見ればわかるさ」

 

翔太郎の解説をブチ切りにした克己は、懐からガイアメモリを取り出して起動した。

 

【エターナル!】

 

永遠を意味する、白いガイアメモリ。それをロストドライバーに差し込み、克己は確かにそれを口にした。

 

 

「変身」

【エターナル!】

 

そしてドライバーを展開すると、克己の姿は変わった。

白いボディに、腕などの各所に混じる青、黄色い複眼、アルファベットのEを模した大きな角、ボディと対照的な黒いマント……そう、その姿は彼らに酷似していた。

 

「か、仮面ライダー?」

「敵に仮面ライダーがいるかもって、コルクの予感が当たったわね」

 

ついに、先ほどのウィルバーたちとの決闘から懸念されていた危機が、現実になってしまった。そして変身した克己は、自らの仮面ライダーとしての名を名乗る。

 

「俺は仮面ライダーエターナル。お前らを地獄に送るために甦った、悪の化身だ」

 

プッチと違い、自らを悪だと自認してそう振る舞う克己改めエターナル。ある意味では開き直っている分、彼の方が危険かもしれない。

そして、エターナルは腰のスロットに別のガイアメモリを差し込む。

 

【ゾーン・マキシマムドライブ!】

「はぁあああ……」

「ゾーン……俺らが戦った転移のあれか!?」

 

夢路はエターナルが使用したメモリが、昨日エトワリアに初めて迷い込んだ時に襲ってきたドーパントの物だと気付く。しかし、これを使われた時点でもう遅い。

 

「今回は特別製のマキシマムだ。お前らはそれぞれ、オーバーヘブンショッカーのからの刺客が張っているエリアに転送される。そこで確実に潰してやるから、楽しみにしておけ」

「ついでに言えば、その先にはNEVERと破面が1人ずつ張ってあるから、まあ覚悟して起きたまえ」

「何……って、お前ら!?」

「うわ、なんだこれ!?」

「瞬間移動!? 個性じゃ、こんな能力は使え……」

 

エターナルとプッチの言葉に続いて気づく翔太郎。立て続けにクリエメイトを含めた仲間達が、喋っている途中の出久をはじめとして次々に転移していく。

 

「麦わら! 転移先にはフォクシー海賊団ともう1人、お前と因縁のある奴がいるから、対決を楽しみにしてな!!」

「知るか、んなもん!! そいつもまとめてぶっ飛ばしてやるからな!!」

「ルフィさん、めちゃくちゃ怒ってる…」

「ゆのちゃん、たぶん相当あの人がルフィさんを怒らせるようなことしたんだと思うよ…」

 

そのままフォクシー達も電王組、ルフィ組、そしてひだまり荘組と転移していった。

 

「ディケイドに承太郎、あと召喚士とやら。てめぇらは俺とプッチ自ら相手してやるから、楽しみにしてろよ」

「生憎、俺はバトルジャンキーじゃないんでな。相手はしてやるが楽しみにはしねぇぜ」

「この状況でその余裕、楽しみだな」

 

そしてそのまま、ノイトラとプッチも士達とともに転移してしまう。

さらに、最悪なことは起こった。

 

「「きゃあ!?」」

「その声、サナか!?」

「花名まで! 何してるの!?」

 

なんと、栄依子がいなくなったと話していた勇魚と花名がこちらについてきてしまっていたのだ。そして、ゾーンのマキシマムによる転移に巻き込まれてしまったのだ。

 

「あの紫の髪の女、お前の知り合いか……なら、お前も!」

「うお!?」

「夢路!?」

 

そしてそのままここに残るはずだった夢路も、勇魚達とともに転移してしまう。

結果、この場に残ったのは翔太郎とフィリップ、ろくろと紅緒、メリーと暗黒冬将軍。敵サイドはエターナルとミストルティン、聖丸とエルクレス、そしてガロニュートだ。

 

「さて。ガロニュート、好きなの1人か2人やるから機嫌を直せ」

「そうかい……じゃあその黒髪の女と、ボクの負の記憶を呼び覚ましたガキをもらおうか。エルクレス、あっちのチビ氷使いみたいだから、手伝ってよ」

「なるほど。俺も陰陽師とやらに興味があるんでな、乗った」

 

そしてガロニュートは、残ったメンバーの中から紅緒と選出し、エルクレスと二人掛かりで潰しにかかろうとする。

 

「なら、俺は仮面ライダーWを潰させてもらうぜ」

「双星の片割れか。1人だけでも相当な呪力を貰えそうだな。うん、そうだろうなぁ!!」

「それじゃ、残った門番の小娘をやっちゃいますか!」

 

そしてエターナル、聖丸、ミストルティンも獲物を定めて戦闘態勢に入る。

 

「さあ……

 

 

 

 

地獄を楽しみな!!

 

そして、決戦の火蓋は切って落とされた。




おやびんがルフィと因縁ある奴がもう1人来ていると言いましたが、ヒントは劇場版のオリジナルキャラとだけいっておきます。
次回出てくる予定なので、お楽しみに。


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第26話「フォクシー海賊団とメカ巨兵+α」

お待たせしました。混合戦なので時間がかかってしまい、申し訳ない。
サブタイで分かりますが、ゲストが今回で判明。


〜里から数キロ離れた湿地帯〜

「ここか……あの割れ頭、懲りてねぇみたいだったな。またぶっとばさねぇと」

 

転移が完了し、そのまま機嫌が悪そうになるルフィ。その様を見ていたゆのは、少し不安そうにしていた。

 

「ルフィさん、あんなに怒るなんて何があったんだろう」

「たぶん、あいつらとデービーバックファイトで対決したときを思い出したんだろうな」

「デービーバックファイト……麦わら屋、んなもんに巻き込まれてたのか」

 

それを横で聞いていたウソップが、思い当たることを口にした。ローはそこから何かを察したようだが…

 

「デービー…なんだって?」

「ルフィさん達の世界の競技か、何かですか?」

「あ、わりぃ。わかんなかったか」

 

モモタロスも良太郎もそれが何かわからないといった様子だ。そこから、ウソップが解説をする。

要約すると、海賊同士で競技試合を行い、勝った方は負けた方から仲間1人か海賊旗を奪い取る、という内容なのだ。そして3セットのゲームで一度敗北、それでチョッパーを奪われたのが怒りの要因だそうだ。しかし残りの2試合で連勝し、チョッパーを取り返したついでに海賊旗を分捕ったらしい。

 

「仲間の取り合い……そんな酷いこと…」

「やっぱり、海賊さんって怖い人多いんですね…」

「デービーバック……まさかデービー・ジョーンズに由来している?」

 

ゆのもなずなも、その概要に恐怖を抱いていた中、沙英は1人冷静に分析している。

 

「沙英ちゃん、知っているの?」

「はい。元々、小説家やってるから知識はかき集めてるんで……確か、悪魔に呪われて深海に住むことになった海賊って伝説なんですけど」

「驚いた。違う世界なのに、そんなとこまで同じなのか」

「案外、異世界っていうのも創世記や古代の段階から枝分かれした、平行世界なんてこともあり得そうですね」

 

沙英の世界に伝わるデービー・ジョーンズの伝説が、まさかのルフィ達の世界と同じということが判明した。そこから興味深い考察をする人物がいたのだが……

 

「花京院さん!? なんでこっちに……」

「なんで承太郎達じゃなくて皆さんのところに来たのか、ですよね? それが、僕もよくわかってないんです」

「まさか、こっちで最初にであったのが僕達だったからとか……そんな訳ないよね」

 

まさかの花京院に、驚きを隠せない一同。良太郎がなぜかロマンチックな理由を考えるが、自分でもないと思ったらしい。しかし直後、それは起こった。

 

『さあ皆さん、お待たせしました!! これより、フォクシー海賊団による麦わらの一味へのリターンマッチが始まります。実況兼司会は私、フォクシー海賊団宴会会長のイトミミズが、超スズメのチュチューンの背の上からさせていただきます!!』

 

いきなり上空から大きな声が聞こえたので見上げると、巨大な鳥が空を飛び回り、その背に乗る男がマイクで声を発しているらしい。そしていつの間にかギャラリー席が設けられ、そこにはフォクシーが連れていた側近二人とお揃いのマスクを付けた、団員らしき集団が座って湧いている。

それだけ団の規模も大きいからか、団に宴会会長という役職がいるのも驚愕だ。そしてその男、イトミミズはそのまま続ける。

 

『今回の対戦相手、麦わらの一味は、船長"麦わらのルフィ"と狙撃手のウソップ、船医の"わたあめ大好きチョッパー"、そしてどうやら同盟を組んでいるらしい"死の外科医トラファルガー・ロー"の四名となっています。そこに仮面ライダー電王こと野上良太郎と、協力者のイマジン二名。クリエメイト六名とオマケが一名という構成になっております!』

「僕オマケですか? これは手厳しい……」

「僕だってリュウタロスって名前あるんだよ! モモタロスと一緒になんかしないでよ!!」

「おい小僧、それは聞き捨てならねぇぞ!!」

「みんな、落ち着いてよ! 今それどころじゃ…」

 

イトミミズに雑に紹介され、軽く落ち込む花京院。リュウタロスも不満を漏らすとその内容にモモタロスが憤慨、良太郎が止めようとする。しかしそんな下の様子も気に留めず、次はフォクシー海賊団の紹介に入る。

 

『対するフォクシー海賊団からは、当然前回のデービーバックファイト参加者がリベンジとして参戦しています。我らが船長"銀ギツネのフォクシーおやびん"に我らがアイドルのポルチェちゃん、そして"四足ダッシュの奇人ハンバーグ"の古参組三名も、当然参加だ!!』

「フェフェフェ。コテンパンにしてやるぜ、麦わら。ポルチェ、行くぞ」

「ガッテンです、おやびん」

 

そしていつの間にかボクシンググローブを付けて臨戦態勢に入るフォクシーと、同様に得物と思しきバトンを手に取ったポルチェが現れた。残るゴリラ風の巨漢ハンバーグがいないと思われたが、その次にとんでもないやつらとともに現れた。

 

『そしてそこに、カジキの魚人カポーティに、ハンバーグ率いるグロッキーモンスターズも参戦! タックルマシーン・ピクルス、魚人と巨人のハーフ"魚巨人(ウォータン)のビッグパン"もやる気満々です!! 陸地での戦闘ですので残念ながら、”ホシザメのモンダ”は水槽からの応援となります!!』

 

更に現れたのは、常人を超える筋肉量にヒレやエラを持つ魚のような男で、実際にカジキのように鼻が尖っている。そしてハンバーグを先頭に丸い体の大男と、これまた魚っぽいが目測で20メートルはありそうな巨人が現れたのだ。

そして同様に、ギャラリー席には海賊団員に混じって水槽に入ったサメがいる。こいつもマスクを着けていることから、団員らしい。

 

「ちょ、なんですかアレ!?」

「魚人っていうおれ達の世界に住む種族で、人間を超える怪力と水中での活動が得意で、超強い」

「そんで巨人はまあ、そのまんまだな。ただ、でかい分他の種族の比じゃないパワーに平均寿命が三百年もある。けどアイツはハーフだから、その所為か普通の巨人より小せえ」

「え? あれよりおっきいのがいるんですか?」

 

仰天する乃莉に、チョッパーとウソップから敵の種族について説明がなされる。しかし同時にビッグパンが純粋な巨人と比較しても小さい、という驚愕の事実まで判明した。なずなの疑問にウソップも無言で答える。

 

『更に今回は、腕の立つ助っ人達が参戦しております! まずはこちら!!』

 

しかし今回はそれに加え、オーバーヘブンショッカーが別の世界から連れてきた増援もある。そしてNEVERと破面が1人ずついると、プッチは話していた。

 

『死者蘇生実験の検体で、肉体を強化された鞭と関節技の達人。加えて悪魔の実に匹敵する凶悪ツール・ガイアメモリの使い手! NEVER副隊長の泉京水!!』

「イケメン坊や3人とやんちゃそうな麦わら坊や……いいわ、メスガキども始末したら貰っちゃいましょう!!」

 

克己とお揃いの黒と赤のライダージャケットを纏った、お姉口調のおっさん。紹介通りに得物の鞭を片手に体をくねらせ、男衆に色目を使ってくる。

 

『可愛い顔して実は男! 曰く悪霊だそうだが、見た目は完全に人間のソレです!! 破面のルピ・アンテノール!!』

「悪魔の実に仮面ライダー……訳わかんない連中だけど、まとめて始末してあげるよ」

 

抽象的な見た目にぶかぶかの袖とへそ出しファッションの美少年が、こちらを小馬鹿にしたような雰囲気で臨戦態勢をとる。

 

『かつて麦わらの一味に世界征服の夢を絶たれた、とある島の領主様。稀代の天才発明家ドクターラチェット!!』

「麦わら! 強化改造した私の鉄人君28号がお相手致しますから、覚悟をなさい!!」

 

腹部に巨大ドリルを備えたロボットに乗る、黄色い眼鏡の痩身の男。紹介の内容から、こいつがルフィ達に恨みを持つ男のようだ。

 

『以上の布陣となります、我らがフォクシー海賊団。さあ、麦わらの一味プラスαとのリターンマッチ、開始です!!』

「フェッフェッフェ。麦わら、おめぇらが新世界の腕利きどもと戦う力を身に着けたってんだ。こっちは数で優位をつけさせてもらうぜ」

「やい、割れ頭! こっちには戦い慣れてないのが何人かいるんだ!! ちょっとは手加減しやがれ!!」

「悪党の我々が素直に聞くわけないでしょうが、麦わら! それよりも、世界征服の野望を阻止した件を忘れたとは言わせませんよ!!」

 

フォクシーの言い分に反論するルフィ。しかしラチェットがそれに対して返すのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーか、あのヘンテコ眼鏡マジで世界征服なんて考えてるのか?」

「なんというか…えっと、古典的な…」

「はっきり言え、古臭いって」

「トラ男さん、ゆのっちも言いづらいんだから」

「アハハハハ! だっさいねぇー!」

「ちょ、リュウタロス! 失礼だよ…」

 

モモタロスの言葉をきっかけに、皆が口々にラチェットの世界征服という願望に対しての意見が飛び交う。特に良太郎が咎めるのも聞かず、リュウタロスが大笑いするのが癪に障り、ラチェットは額に青筋を浮かべる。

 

「異世界でも世界征服は古い……ですか。いいでしょう、そこまで言うなら我が鉄人君28号でまとめて始末して差し上げましょう!!」

 

そしてラチェットは乗っていたロボットを起動、そのまま突撃していく。

 

「良太郎、来るぞ!」

「うん、行くよ。変身!!」

【Sword Form!】

 

しかし迎撃しようと、良太郎はモモタロスを憑依させて電王ソードフォームに変身。

 

『これが仮面ライダー電王! なんでも、異世界の未来からやってきたイマジンという怪物と戦うため、逆に味方につけたイマジンの力を借りて変身する、超人だとか。

 

その直後、イトミミズから解説が入った。事前に仮面ライダーを筆頭に、情報は与えられているようだ。

 

「おし、おれも行くぞ!」

「僕だって、行くよ!!」

「おう、行くぜ行くぜ行くぜぇええええ!!」

 

そしてルフィとリュウタロスと三人で迫ってきた鉄人君28号に突撃していく電王。しかしルフィの前に一瞬にして、ルピと呼ばれた少年破面が現れる。

 

「君の相手は僕だよ~」

「な!?」

 

一瞬にして現れたルピは、そのまま腰に差していた刀を抜いてルフィに斬りかかる。咄嗟にルフィは回避できたが、予想外のスピードに完全に攻勢が解かれることとなった。

 

「改めて自己紹介。僕は破面No106のルピ・アンテノールだよ」

「おれはルフィ、海賊王になる男だ。後、おれお前のこと嫌いだからぶっ飛ばしてやるよ」

「あっそ。でも、君は強力な力を持っていても所詮は人間だからね。絶対に、僕には勝てないよ」

 

初見でルピの印象最悪なルフィは、敵と分かっているので遠慮なく倒す気のようだ。

 

「あ! てめぇ、急に割り込むんじゃねぇ!」

「麦わらを取られたなら、同じく世界征服を馬鹿にしたあなた方を叩きのめしてやりますよ!」

『モモタロス、今はこっちに専念しよう!』

「仕方ねぇ。行くぞ小僧、良太郎!!」

「よし、僕も暴れるぞ!!」

 

結果、電王は一人で鉄人君28号と戦うこととなった。そして、迫ってきた拳を回避して斬りかかる。リュウタロスも専用の銃リュウリボルバーで援護射撃に回った。

 

「しょうがねぇ…麦わらは後回しで、仲間どもを叩かせてもらうか。お前、他は好きなのもらっていいぞ」

「あら、おやびん。それじゃあお言葉に甘えて、外科医と赤髪の坊やをもらっちゃいましょ!」

 

そしてフォクシーはそのまま、京水と二人で駆け出した。

 

「トラ男さん、私も戦うよ!」

「待て、猫屋!!」

 

そして迎え撃とうと、宮子がローの制止も聞かずに剣を片手に京水に向かっていった。

 

「生意気なメスガキね。あんたはお呼びじゃないのよ!!」

「お!?」

「宮ちゃん!!」

 

しかし京水の振った鞭が宮子の腕に絡み、そのまま引き寄せられる。そしてそのまま、宮子を蹴り倒そうとするのだった。ピンチによってゆのが悲痛な叫びを上げる。

 

「ローさん!」

「わかった! ROOM!!」

 

しかしその時、花京院の呼びかけに答えたローが自身の悪魔の実の力を発動。

 

「シャンブルズ!!」

「あら!?」

 

宮子と花京院を入れ替え、驚く京水は迎撃態勢を解いてしまう。そしてすかさず地上に着地して一気に後ろに回り…

 

 

 

 

 

 

 

「当て身」

「ぎゃふん!?」

 

延髄に当て身を当てて、京水を落とした。

 

「ノロノロビーム!」

「おっと、危ない!」

 

その直後、フォクシーが襲ってくるがどうにかビームをよける花京院。そしてハイエロファントを発動し、

 

「エメラルドスプラッシュ!!」

「あべ!?」

 

必殺の一撃を放つ。

 

「もういっちょおまけだ、緑星デビル!!」

「ぎゃああああああああああ!?」

 

そこにすかさず、ウソップが肉食植物の種を発射してフォクシーを攻撃させる。

 

「おやびんを助けるわよ! カポーティ、グロッキーモンスターズ!!」

 

そのままポルチェに先導されて、一斉に突き進むグロッキーモンスターズだったが…

 

「続いて緑星・ラフレシア!!」

 

そのままウソップが新しい植物の種を発射し、巨大なラフレシアが花を咲かせる。

 

「うぇ! くさい!!」

「鼻が、鼻がぁああああああああああ!!」

「うぷぇええええええええええ!?」

『狙撃手のウソップ、新兵器を引っさげてきたと聞きましたが、まさかの攻撃! 悪臭がこっちにも漂ってきて……うぇ、臭!?」

 

そのままラフレシアの悪臭で悶絶する、フォクシー海賊団の面々。空から実況をするイトミミズにも被害が出るほどの悪臭で、ひとまずは体勢を立て直す時間は稼げた。

 

「相手の能力もわかってないのに、無暗に突き進むな。命を無駄にする」

「ご、ごめんなさい…それと、ありがとう」

 

そして、ローにそのまま忠告を受ける宮子。人に迷惑をかけた、という事実があるため珍しくしおらしい。

 

「能力っていうと、ローさんの能力って私達知らなかったですね。協力するのにも、教えてほしいです」

「それもそうだね。えっと…ベタなところで、ワプワプの実のワープ人間、ですか?」

「沙英。それだと昨日の、怪物を切り刻んだあれの説明がつかないんじゃ…」

 

ゆのの疑問に沙英も同意し、自身の推測と一緒に問いかける。しかし、ヒロはそれだと説明がつかない点があるので言及すると、意外な答えが返ってきた。

 

「んな安直なわけねぇだろ。おれの食べた実の名前はオペオペの実。おれの周囲一帯をおれ専用の手術室に変える、”改造自在人間”だ」

「え……それ…」

「めちゃくちゃ、すごいじゃないですか…」

「おおお! しかもお医者さんやってる、トラ男さんにピッタリじゃないですか!!」

 

沙英もヒロもあまりにも埒外なローの能力に驚愕し、宮子もすぐに機嫌を直してそのままローに賞賛の声を上げる。

 

『そう、その通り! 能力の行使には医療知識が必要ですが、なんでも究極の悪魔の実と称されるオペオペの実。詳しい情報は入っていませんが、どうやら切ったりくっ付けたりするのもその改造の一端といったところでしょうね!』

 

一方、イトミミズの解説でも詳しいことはわからなかったが、この埒外の能力は究極の悪魔の実にと呼ぶに相応しいものではありそうだ。

 

「もう、こんなところで寝てる場合じゃないわね!!」

「「な!?」」

 

しかしそんな中、いきなり京水が目を覚まし、そのまま近くにいた花京院にとびかかってきたのだ。ローも横で見ていて花京院共々驚愕、そのまま花京院はベアハッグを受けて身動きが取れなくなってしまう。

 

「イケメンな上に戦いなれてるのね。嫌いじゃないわ」

「僕は嫌いですけどね。あなたみたいな人は!」

 

そのまま花京院は勢い良く体を倒し、京水を地面に叩き付ける。そして怯んだすきに脱出するのだが…

 

「しかもかなり肝も据わってるし、ますます気に入っちゃった♡」

 

京水は堪えている様子がない。やはり強化人間だけあり、体は普通以上に頑強なようだ。しかもここで、京水は切り札を取り出した。

 

「坊やに敬意を表して、あたしも本気出してあげる」

【ルナ!】

「え? それは…」

 

京水が起動したガイアメモリは、なんと翔太郎が変身に使うメモリと同じ記憶が内包されていたのだ。

 

「ふぅうん!」

 

そしてメモリを放り投げると、京水は体をくねらせながらポーズを取り、そのまま額に浮かんだ差込口にメモリが吸い込まれていった。

 

「来た、来た来た来たわぁああああああああああああああ!!」

『本邦初公開! これが超人ドーパント、ガイアメモリを使うことで完全に人間から乖離した肉体を得る、悪魔の実に匹敵する力! これが人間の手で作られるとは、異世界とんでもないですね!!』

 

そして変身したのは、黄金のボディに長く伸びた両腕の”ルナ・ドーパント”だった。ルナメモリで変身しているため、彼も伸縮自在な腕が武器なようだ。

 

「いってらっしゃああああああああい!!」

 

しかもそれだけでなく、ルナ・ドーパントが叫びながら両腕を振るうとその先から肋骨のようなマスクに黒スーツの集団が召喚されたのだ。

ガイアメモリを開発した組織”ミュージアム”の工作員、マスカレード・ドーパント。それを模した分身体を生み出したのだ。

 

「じゃあ、あなたたちはメスガキをよろしく。坊やは私といいことしましょう!!」

「だから僕、あなたは嫌いだって言っているでしょう!」

 

そして当のルナ本体は、花京院をめがけて腕を伸ばす。花京院も咄嗟に飛びのきつつ、エメラルドスプラッシュで腕をはじいて凌ぐ。

 

「なんか、いっぱい出てきた!?」

「今度は遠慮なくいかせてもらうか」

「それじゃおれも…柔力強化(カンフーポイント)!!」

 

一方、分身を差し向けられて乃莉が驚愕していると、先ほどまで抜かなかった太刀をローが抜き、チョッパーも形態変化で迎え撃つ。

その姿は、ぱっと見じゃずんぐり体系であまり強そうではなかった。

 

「チョッパー君、それ大丈夫…」

「ホワチャアアアアアアア!!」

 

なずなの問いかけに答えず、カンフーのような掛け声でルナの召喚した分身体達に突撃していく。そして蹄の両腕による鋭いパンチ、凄まじい跳躍力で分身体達は次々と蹴散らされていくのだった。

 

注射(インジェクション)ショット!」

 

そしてローも太刀で狙いを定め、一気に加速して刺突で分身体を一直線に貫く。仮にも世界中から指名手配されるだけの海賊、素の戦闘力もけた違いだ。

 

「い、意外と強い…」

「トラ男さんも、やりますなぁ」

「魚人空手・海面割り!!」

 

乃莉がチョッパーの戦闘力に唖然とすると、宮子もローに賞賛の声を上げる。しかしその直後、いつの間にか体勢を立て直したカポーティが手刀で地面を切り裂いた。

 

「さっきはよくもやりやがったな、長鼻!」

「前のデービーバックファイトの恨み共々、晴らしてあげるわ! おやびんもしっかり」

「いてて…まあいい。麦わらはあの坊主が始末するから、おれ等は聖なる遺体とかいうブツを手に入れるぞ!! グロッキーモンスターズ、攻撃開始!!」

「合点です、おやびん! ビッグパン、行くぞ!!」

「ぶしし!」

 

他のフォクシー海賊団の面々もいつの間にか復活、そのまま全員で戦闘態勢に入る。そしてフォクシーがハンバーグ率いるグロッキーモンスターズに何か指示を出すと、ピクルスが跳躍し、そのままビッグパンの口に咥えられる。

 

「人間大砲!」

 

そして、そのまま技名を叫んでピクルスを勢いよく吐き出した。

 

「お掃除タックル!!」

「まずい! みんな、散って!!」

 

そして右肩の棘付き肩当を突き付けて飛んで来た。沙英も事態を察し、全員に呼び掛けて一斉にその場を離れる。

しかし、その辺りはフォクシー海賊団も読んでいたようだ。

 

「キューティバトン・お花手裏剣!!」

「うそでしょ!?」

 

ポルチェがバトンを回すと、なんとその先から花で彩られた手裏剣が発射されたのだ。

 

「撃ち落とすぞ!」

「はい!」

 

ウソップの指示と同時に、ヒロの魔法とで飛んで来た手裏剣を撃ち落としていく。しかし思いの外段数が多く、二人掛かりで撃ち落としきるので精いっぱいだ。

 

「ハンバーガーハンマー!」

「せやぁあああ!!」

 

その一方、乃莉となずなに迫るハンバーグとカポーティのパワーファイター二人。特にハンバーグは両手にメリケンサックを嵌めながら技名を叫んでおり、高威力の一撃は確実だ。

 

「なずな、危ない!!」

「きゃあ!?」

 

カポーティの出鱈目なパワーは自分でも防げないと思い、乃莉はなずなの手を引いて逃げる。

やはりというか、今の一撃で地面は大きな亀裂が入る。

 

「上手く避けたな。けど、それも時間の問題…」

「ホワチャアア!」

「うぐえ!?」

 

カポーティの言葉を遮り、そのままチョッパーがとびかかって殴り飛ばす。

 

「二人とも、無事か?」

「う、うん。ありがとう」

 

チョッパーにお礼を言うと、その直後にビッグパンが突撃してきた。

 

「ドジョウすくいスライディング!」

 

ビッグパンはスライディングでチョッパー達を一斉に空に打ち上げる。

 

「からの、ドジョウレーシングサーカス!!」

「「きゃああ!?」」

「うわぁ!?」

 

そしてビッグパンは背中に三人を乗せた後、エビぞりになって自身の両足の先を掴む。すると三人の体はビッグパンの体の上を何度も滑ってしまう。

 

「え…何あれ…」

「ビッグパンはドジョウの特性を持った魚人だからな、全身がヌルヌルしてやがる。それを活かした技ってわけだ」

 

横で見ていたゆのが困惑していると、フォクシーが自信満々に解説をしてくる。魚人は一人一人が異なる魚の能力を有しており、ルフィの知り合いにはたこ焼き屋をしているタコの魚人がいたりする。彼は二本の足と六本の腕でタコのような八本の手足を備えている。

 

「とどめのドジョウコースター!」

 

そしてそのまま、ビッグパンは腕に到達した三人を打ち上げてしまう。そして吹き飛んでしまうのだが…

 

「まずい! ROOM!!」

 

気づいたローは能力を発動し、なるべく大きくドームを展開。

 

「シャンブルズ!!」

 

そして戦っていた分身体達と三人の居場所を取り換えてしまう。

 

「まったく、たぬき屋もお前らも世話が焼ける…」

「あ、ありがとうございます…」

「すまねぇ、トラ男…」

 

ローのとっさの起点に助けられた三人。ひとまずお礼を言うのだが、フォクシー達はこれで終わらない。

 

「ノロノロビーム!!」

「うぉ~……」

「「ローさん!」」

「トラ男!?」

 

なんとゆのと向き合っていたはずのフォクシーがこちらに近寄ってきており、彼の放ったノロノロビームがローに命中してしまう。

 

「九尾ラッシュ!!」

 

そしてスローになったローに、技名と合わせてパンチラッシュを叩き込む。しかし、スローになった影響か衝撃もなかなか来ない。

しかし30秒という時間はすぐに到達。

 

「ぐわぁああ!?」

 

一気にパンチラッシュの衝撃を受けてしまい、ローは吹っ飛んでしまう。

 

「さて。それじゃあ、前仲間にしそびれたチョッパーを今のうちにもらっちまうかな?」

「話には聞いてましたけど、まだ欲しかったんですか!?」

「お前なんかの仲間になるかよ!!」

 

そしてそのまま、無事な様子のチョッパーに近寄ってくるフォクシー。結構まずい状態だ。

 

一方、ルフィと怠慢を張っていたルピはというと。

 

「ゴムゴムの銃弾!」

「ふん」

 

ルフィが技を放つと、ルピは一瞬で姿を消し…

 

「えい!」

「うぉ!?」

 

またも一瞬で背後に回って切りかかってきた。

 

虚弾(バラ)

「やべ!」

 

赤いエネルギー弾を生成して、それを左手からすさまじい速度で発射。しかし実践で積み重ねたルフィの反射神経と動体視力、見聞色の覇気のおかげで回避できた。

 

「やるじゃない。海賊王なんて大層なものを目指しているだけは、あるみたいだね」

「一個だけ言っておくぞ。海賊王は世界一強いやつでも世界一偉いやつでもねぇ、世界一自由な奴やつだ。でも、他になりたいやつが強いから、おれも強くなろうとしてるんだよ」

 

ルピの言葉に対して反論するルフィ。しかし、直後にルピはあることを始める。

 

「へぇ、そうなんだ。なら、そいつらと戦う前に君はこの世界で死んじゃうかもねぇ」

 

小ばかにした様子でルピは刀を構えたと思いきや……

 

 

「くびれ、蔦嬢(トレパドーラ)

 

奇妙な単語を口にし、そのまま煙に包まれる。

 

「な、なんだ…!?」

 

突然の事態にルフィが困惑していると、いきなり煙の中から何かが自分をめがけて飛んできた。しかし見聞色の覇気のおかげで、とっさの回避に成功する。

 

「アブねぇ……でも、今のスピードじゃあおれには当たらねぇぜ」

「それが話に聞いたハキって力か。確かに今程度のスピードなら、簡単に避けられるだろうねぇ。でも…」

 

ルフィの覇気という、自身にとって未知の力に対して評価を下すルピ。そこに何か含みのある言い方をしていたのだが……

 

「もし今の攻撃が…

 

 

 

 

 

八倍になったらどうかなあぁ~~!?

 

煙の晴れた先にいたルピは、背中から八本の触手を生やした姿へと変じており、小馬鹿にするような口調でこちらに狙いを定めている。どうやら今の攻撃は触手の一本を使ったもののようだ。

そして残りの触手を一斉に伸ばし、それでルフィへと攻撃を仕掛ける。しかも触手から無数の針を生やしてだ。

 

「うぉ、やべ!?」

 

手数が増え、一気に攻撃が激しくなる。ルフィも覇気を駆使して回避し…

 

「こんにゃろ!」

 

時には避けきれない触手を、武装色で固めた腕でぶん殴って防ぐ。

 

「なんだ? 急に見た目も攻撃の仕方も変わって…」

「僕たち破面は、虚って悪霊が進化した姿って聞いたよね?」

「え…ぐわぁあ!?」

 

突然の事態に困惑するルフィだったが、いつの間にかルピが背後に回って話しかけてくる。そしてそのまま、蹴り飛ばされるルフィ。

 

「それによって人型になるんだけど、この斬魄刀って刀に虚だった頃の姿と能力を封じて消耗を抑えるんだ。それで刀の名前を呼ぶことでそれを開放、本気の戦闘力を発揮できるって寸法さ」

 

そしてこの変化についての詳細を語るルピだったが、直後に両掌を合わせて赤い光が灯る。

 

虚閃(セロ)

 

そしてその光を、光線にしてルフィめがけて発射した。そしてその光線がルフィに命中、爆発した。

 

『え、ルフィさん!?』

「よそ見とは余裕ですね!」

「「え…うわぁあ!?」」

「良太郎! モモタロス!」

 

しかもその光景を見ていた電王に、ラチェットが鉄人君28号の攻撃で吹っ飛ばす。リュウタロスの必死の叫びと銃撃による妨害もむなしく、攻撃を許してしまった。

 

「食らえ、飛び出すパンチ!!」

「「うわぁああ!?」」

 

そして射出されたパンチをもろに食らい電王は変身解除、良太郎とモモタロスも分離してしまう。

危機的状況は立て続けに訪れるようだ。




ルピのNoが3桁になった件ですが、グリムジョー復帰と同時に生き残ってても十刃落ち扱いになるだろうと思ったので、今回のNoにしました。
ラチェットは取得前にギア2を無自覚に使用して倒した映画の敵、ということでその縁からです。


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第27話「ハニカム笑顔で俺達、参上!」

過去最大の文字数になった……すみません、キリのいいとこが見つからなかったので。

あと、そうこうしているうちにきんモザが完結までのカウントダウンに入りやがった。高校卒業が近づいてたのでもしやと思いましたが、まさか現実になるとは……
ま、まあ斉木楠雄だってキリのいいところで綺麗に終わらせましたし(汗)


フォクシー海賊団の予想外の戦力規模、NEVERと破面の桁違いの戦闘力、それらは電王を麦わらの一味を、そしてひだまり荘の面々を確実にピンチへと追いやっていた。

そんな中、ラチェットの操るロボットのロケットパンチを受けて変身解除してしまった良太郎とモモタロスは……

 

 

「いてて……おい良太郎、無事か?」

「な、なんとか立てるかな?」

 

ひとまず、立てないほどのダメージではないようだったので体制を立て直せそうではあった。

 

「うわぁあ!?」

「!? リュウタロス!!」

 

いきなりの悲鳴に良太郎が反応すると、視線の先には鉄人君28号の左腕に鷲掴みされたリュウタロスの姿が映った。

 

「如何にイマジンが人外級の膂力を持とうと、魚人のパワーを上回る鉄人君28号のパワーに敵うはずないのですよ。このまま握りつぶして差し上げましょう!」

「痛い、痛い! やめてよぉお!!」

 

そしてラチェットの宣言通り、リュウタロスを握りつぶそうとする鉄人君28号。リュウタロスも思わず苦悶の声をあげ、ピンチなのは確かだ。

 

「モモタロス、もう一回変身を…」

「ノロノロビーム!」

「うぅ〜わ〜…」

「し〜ま〜っ……」

 

リュウタロスを助けようとした矢先、いつの間にかフォクシーが接近してノロノロビームを放ってきた。予想外の奇襲でモモタロスともども対応できず、食らってしまう良太郎。

 

「からの、九尾ラッシュ!!」

 

そして先ほどローをぶっ飛ばした、必殺のパンチラッシュを放ってくるフォクシー。そして衝撃がとどまり、30秒後……

 

「「うわああああああ!?」」

 

一気に衝撃が放たれ、二人まとめて吹っ飛ばされてしまう。姑息だがこと団体戦においては、フォクシーの踏んだ場数のほうが上だ。

 

「誰と戦うかはっきりしてください!!」

「おっと!」

 

そこに文句を言いながら乃莉が飛び掛かるも、読んでいたのか容易く回避するフォクシー。

 

「おれが悪い奴だって、さっきまでの戦いでよくわかっただろ?」

「いや、まあそうですけど…」

「というわけでノロノロビーム!!」

「やば!?」

 

開き直った態度のフォクシーに困惑してつい動揺するも、その隙をついてノロノロビームを放ってくる。どうにか避けられたが、油断のできない状態だ。

 

「あはははははははははは! 一番強いらしい麦わらと電王がこのざまじゃ、もう負け確定だね!!」

「つ、強い…」

「っていうか、これ何のプレイ?」

 

その一方、ルピの伸ばした触手にウソップとチョッパー、ゆのと乃莉以外のひだまり荘の面々が拘束されていた。

 

「え、いつの間に…」

「乃莉ちゃん! みんなが…」

 

すると乃莉が異変に気付いてゆのに駆け寄ってくるが、直後にルピが動き出す。

 

「いいなぁ~。スタイル抜群のお姉さんにもふもふ小動物、どっちも羨ましいから……」

 

ヒロとチョッパーに視線をやりながらそんなこと言った直後…

 

「串刺しにしちゃおうかな~?」

「ひぃ!?」

「くっ!」

 

いきなり触手から無数の棘を生やして、それを二人に突きつける。

 

「そこの一番ちっこいの、君が聖なる遺体の持ち主なんだって? それ寄こさないと、お友達の体に穴が開いちゃうよ」

「え?」

 

そしてゆのに提案を突き付けてくるルピ。絶体絶命だ。

 

(普通ならおれは気にせず、とか言うところだけどヒロはこういう場面に慣れてねぇ。上手くフォローできねぇかな…)

 

怯える様子のヒロに視線を向けながら、どうするべきかを思案しているチョッパー。しかしその時、意外な助けが入る。

 

「うらぁあ!」

「うげ!?」

 

いきなり誰かが飛び掛かって、ルピを殴り飛ばす。その痛みで怯んだルピは触手の拘束を解除してしまう。

 

「大丈夫だったか?」

「へ? あなた、七賢者の…」

「おう、ジンジャーだ。お前達、私の吹っ飛んだ先で戦ってたの、本当に運が良かったよ」

 

まさかのジンジャー加勢、全くの予想外の事態であった。しかもその直後、新たな援軍が空から来た。

 

「いてて……あ! デンライナー、おせぇじゃねえか!」

「みんな、来てくれたんだ…」

 

宙をかけるデンライナー、その光景に悪態を吐くも、隣の良太郎と同じく安心した様子であった。

そしてデンライナーの扉が開き、ハナがウラタロスとキンタロスに支えられたまま出てきたのだが…

 

「「「いけぇえええええ!」」」

バゴォオオオオオオオオン!

 

なんとバズーカを発射、それで鉄人君28号の腕を破壊。リュウタロスを解放した。

 

「なぁあ!?」

「痛た…みんな、来てくれたんだ」

 

ラチェットは自身のメカの破壊に驚愕、解放されたリュウタロスは安心してその場を離れる。

 

「くそ、もうここを嗅ぎつけられた…」

「図が高い!」

「ふげ!?」

 

悪態を吐くフォクシーだったが、直後にジークが降ってきて踏み潰す。潰された蛙のような声をあげるフォクシーを尻目に、そのままルピから解放された組に駆け寄るジーク。

 

「大丈夫か? 姫その2よ」

「へ? 姫って、私ですか?」

 

なずなの手を取り、彼女をそのまま姫と呼び始めるジーク。

 

「うむ。デンライナーの姫は強く凛々しい姫だが、貴女は守り手の必要な可憐な姫。なれば、王子である我が守るのは当然だろう」

「あいつ一目見たときから思ってたけど、やっぱキザだな。自分で王子って…」

「ていうか、なずなが姫か。やっぱモテるんだね…」

 

ジーク自身の解説を聞き、ウソップと沙英がそれぞれの感想を述べる。しかもこれだけではなかった。

 

「わりぃ。思いの外吹っ飛ばされて、戻るのに時間かかった」

「あの割れ頭……もとい銀狐屋、よっぽど痛い目を見てぇらしいな」

 

ルフィとローも復活。衣服の焦げなども見えないことから、ルピの必殺の一撃は直撃を免れたらしい。ローも思わずフォクシーをルフィと同じ割れ頭呼びしそうになり、訂正する。怒り心頭のようだ。

 

「虚閃を避けたか……例のハキって力なら出来なくないだろうけど、あの体勢から…」

 

ルピも自分の必殺技を避けられ、ショックが大きそうだ。しかしそんな中、フォクシーが動いた。

 

「くそ、コケにしやがって……お前ら、もうルール無視だ! イマジンプリーズ!!」

『!! イマジンプリーズ、頂きました! フォクシー海賊団一同、戦場に降りちゃってください! そしてイマジンの皆さん、出番ですよぉおお!!』

 

フォクシーのその叫びと同時に、イトミミズは観客席に呼びかける。すると水槽にいたサメのモンダを連れ帰る数名を除き、フォクシー海賊団の体から砂が溢れ始める。

 

「え? まさか……」

「そのまさか、あの割れ頭の部下達は揃ってイマジンと契約中なのさ。君がすぐに遺体を渡してくれたら、こうはならなかったんだけど」

 

ルピの宣言通り、そのまま溢れた砂は一斉にイマジンとして実体化した。数の差が圧倒的なものとなった。

 

『さあさあ、ここで軽く説明! 実は今回、オーバーヘブンショッカーに協力するにあたり一般団員は組織の傘下にあるイマジンと契約を果たしました。イマジンプリーズは、そのイマジン達と契約した団員達に戦闘態勢に入るよう呼びかけるコールなのです! ちなみに、私は実況解説の専門なので今回の参加はいたしません』

「おい割れ頭に黄色メガネ! オメェら、はじめっから真面目に戦うつもりなかったんだろうが!!」

「まあルフィさん、落ち着いて……でも、ハナさん遅かったね?」

 

イトミミズからの解説を聞き、ルフィがフォクシーとラチェットに文句を言う。しかし、今更だがまともに聞くわけがない。

一方、良太郎が救援に遅れたことについてハナに尋ねる。

 

「ごめん、みんな! オーナーが準備に手間取ってたの!」

 

するとそう言い、ハナはモモタロス達にある物を渡す。それは、どこか見覚えのあるパスケースで……

 

「え、それって変身用の…」

「お、待ってました!」

「さて。そろそろ僕たちも一仕事しないとね」

「こっから、俺も加勢するから大船に乗ったつもりでいてくれ」

「やったぁ、久しぶり!!」

「それでは、姫達のために我も一肌脱ごうか」

 

ゆのが指摘した通り、それは変身や必殺技に使うためのライダーパスだった。そして、それを手にしたイマジンズの手にベルトが生成され、一斉にそれを腰に巻きつける。

 

「おい、まさか……」

「ああ。きっとやる気だ…」

「お、おれドキドキしてきた……」

(そういうことか)

 

ルフィ達がこれから起きることに察しがつき、そのままウズウズし出す。ローも、ある程度察しはついたらしい。

 

「あ、でも皆さんその前に」

 

するといきなりゆのが待ったをかけるのだが、不意に懐からてるてる坊主を取り出す。そしてそれを放り投げたと思いきや、いきなり大きな布団をてるてる坊主っぽい形にした物が落ちてき、その場でバウンドする。

 

「え、ゆのさん?」

「いきなり何やってんだ?」

「ちょっとした準備を…」

 

突然の出来事に困惑する良太郎とルフィだが、ゆのはそう言ってそのままその大きなてるてる坊主に飛び乗る。そして弾んだタイミングで杖を掲げた瞬間、空がいきなり快晴へと変わった。

 

「え? これって」

「傷が治ってやがる…」

「それに、力湧いてきたぞ!!」

「…どうやら、この世界の魔法をまだ甘く見てたらしい。助かった、ひだまり屋」

 

ダメージが一気に回復したばかりか、いつもより体力気力が溢れる感覚が、一同に迸る。ローもゆのの呼び方を決めたらしく、これは好印象そうだ。

 

「私、直接戦うのは苦手だけどこれくらいならいくらでもお手伝いできるんで、任せてください」

「ありがとう、ゆのちゃん。それじゃみんな、行こう」

「お、いよいよか……」

 

そして良太郎もベルトに、ガラケーを模したタール"ケータロス"を嵌めた状態で装着した。

そして、ベルトを装着した六名は、一斉にあの掛け声を叫ぶ。

 

『変身!!』

 

そして良太郎と5人のイマジンは、その体をアーマーに覆われる。そこに現れたのは、色とりどりな電王達だった。

 

「や、やっぱり皆さんが全員…」

「電王になっちゃったよ!」

「「「わかってたけど、すっげぇぇええええええええええええ!!」」」

 

ゆのが圧巻され、宮子も仰天。ルフィ達三人の海賊は、その光景に耐えきれず、歓喜の叫びをあげた。他の面々も敵も、この事態に思わず見入ってしまう。

しかし、電王達は気にせずに前に出て、そのまま口上をあげた。

 

「俺、再び参上!」

 

モモタロスが変身した桃のような仮面の赤い電王、お馴染みソードフォームことソード電王。歌舞伎の見栄の様なかっちょいいポーズを、慣れた様子で決める。

 

「お前達、僕に釣られてみる?」

 

ウラタロスが変身した亀の甲羅のようなアーマーの青い電王、ロッドフォームことロッド電王。不敵な様子で敵を指差し、挑発的な口調で告げる。

 

「俺の強さに、お前が泣いた!」

 

キンタロスが変身した金のアーマーと斧のような仮面の電王、アックスフォームことアックス電王。首を指で押して鳴らした後、相撲のような構えを取りながら言ってのける。

 

「お前達倒すけどいいよね? 答えは聞いてない!!」

 

リュウタロスが変身したドラゴンのような仮面の紫の電王、ガンフォームことガン電王。軽くステップを踏みながら、無邪気で一方的な宣言を敵に告げる。

 

「降臨! 満を辞して…」

 

ジークが変身した、ソード電王に似ているが仮面に羽のような意匠が見える白と金の電王、ウイングフォームことウイング電王。天に手を掲げ、セリフとともに少しずつ下ろして指先を敵に向ける様が偉そうだ。

 

「みんな、準備はいいね?」

 

そして良太郎が単独変身した、赤と白を基調として仮面にモモタロス達をイメージした色の小さな羽がついた仮面のカラフルな電王、ライナーフォームことライナー電王。そしてその手にはソード〜ガンまでの四人の電王の仮面が付いた大ぶりな剣・デンカメンソードが握られている。

その彼が全員に呼びかけると、そのまま臨戦態勢に入る電王達。

 

「おし! 今度はこっちの番だ!」

「もともと、こいつらを潰すのがおれらの目的だ。やるぞ」

「ゆのっちの分も戦うぞ!」

「僕も微力ですが、お手伝いしましょう」

「私だって、七賢者として無法者どもに負けてらんねぇよ」

 

そしてそれに刺激を受け、ルフィ達とローの海賊組、ゆの達ひだまり荘組、花京院とジンジャーの助っ人2人、合計18名の戦士達がここに集った。

 

「くそぉ、増援が来たからっていい気になりやがって…」

「このまま、まとめてぶっ飛ばして差し上げましょう!」

「僕も、数が増えた程度で破面には勝てないってことを教えてあげるよ!」

 

そしてその様にフォクシーとラチェットが憤慨。ルピもそれに触発され、戦闘態勢に入った。

ちなみに、フォクシーはいつのまにか鉄人君28号に乗り込み、ラチェットと二人乗り状態になっていた。

 

「「フォクシー海賊団&イマジン軍団、突撃ぃいい!!」」

 

フォクシーとラチェットの怒号とともに、敵が一斉に動く。

 

「行けぇえええええ!!」

 

そしてハナの怒号と同時に、電王組も一斉に突撃していった。そして激突、合戦が始まった。

 

「それじゃ、私も…!?」

 

ハナも戦闘に参加しようとすると、いきなり発砲音が聞こえたのでその場から飛びのき、音のした方を見る。

 

「お嬢ちゃん、君みたいな子は戦場に来てはいけないな」

 

ハナに発砲した男が声をかけて来たが、服装はオーソドックスな海賊の服にフォクシー海賊団のマスクを着けている。そして武器も拳銃とサーベル、という如何にもな海賊スタイルだ。

 

「何を隠そう、儂はフォクシー海賊団にデービーバックファイトで連敗し、団の過半数を取り込まれたキバガエル海賊団の元船長。悪魔の実こそ食べてないが、腕っ節は他の団員よりは……」

「やぁあ!」

「ぶふっ!?」

 

しかしその男が喋っている最中に、ハナは鳩尾に全力の右ストレートを叩き込む。

 

「でゃあ!」

「がっ!?」

 

そしてその隙をついてサマーソルトキックを食らわせる。顎に衝撃を受けた、そのツノガエル海賊団元船長は一瞬のうちに沈んだ。

 

「話が長い! 隙だらけ!」

 

そしてど正論をぶつけ、そのまま他の海賊団員達をノシに行くハナ。モモタロス達の喧嘩を腕ずくで止める彼女の戦闘力は、偉大なる航路を行く海賊達にも通じたのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「おら! とりゃあ! ずおりゃああ!!」

 

ソード電王はデンガッシャーを剣に組み、迫り来るイマジンとフォクシー海賊団の面々を次々と斬り伏せていく。

 

「くそ、こいつこんな強かったのか…」

「昼間な、相手は1人だ! 麦わら並みの化け物じゃねえんだから、数で押せばいけるはずだ!」

 

一瞬、士気が落ちそうになるも海賊の1人が叫び、一斉に立ち向かっていく。

 

「へ、遅ぇ遅ぇ」

「うぉ!?」

「速い…ぎゃあ!?」

「これが電王の…あぎゃあ!」

 

しかし、ソード電王はその攻撃を的確に避けて行き、時には剣で防ぐ。そして1人ずつ的確に袈裟斬りにして、確実に倒していった。

 

「へへ、退治してくれようモモタロス……って、おわぁあ!?」

 

しかし格好つけてる間に足を滑らせ、湿地に嵌ってしまう。

 

「今だ、ぶっ殺せ!!」

 

そしてそれがチャンスと言わんばかりに、イマジンが一斉に襲いくる。

 

「おりゃああ!」

「カウンターショック!」

「「ぎゃあああああ!?」」

 

しかし宮子とローが割って入り、イマジンをそのまま迎撃してしまった。宮子は剣で斬り伏せたが、ローはなんと両手の親指で触れたイマジンに電気ショックを放ったのだ。

そしてそれにより下級だったのか、イマジン二体は呆気なく倒された。

 

「トラ男さん、今のは電気マッサージをイメージしたのですかね?」

「よくわかったな、猫屋。オペオペの能力は手術を連想する力を大抵使えるし、おかげで戦闘での応用も効くから苦労しねぇ」

「オメェ、さりげなくとんでもねぇこと言いやがるな」

 

宮子の推察を肯定し、オペオペの実のとんでもない力が次々と判明していく。

しかしその間に、敵の増援が来てしまう。

 

「さて、面倒だからまとめて始末するか…ROOM」

 

しかし冷静にローは再び能力を行使し、オペオペの実の有効範囲となるドームを展開。そして太刀を放り捨てると…

 

死の刀(ステルベン)

 

なんとその太刀を操作対象にし、高速回転させながらイマジンの軍団の方へと飛ばしたのだ。

 

「うお!? 逃げろ…ぎゃあ!?」

「は、速い!」

「マズイマズイ、斬られるぞ!?」

 

ローに操作された太刀はフォクシー海賊団を追いかけ、まとめて斬り伏せていく。非常に強力な攻撃だ。

 

「おいおい、やるじゃねえか。それじゃ、俺も」

【Full charge】

 

そしてその様子に触発されたソード電王も、パスをベルトにかざして必殺技を放つ準備に入る。

 

「もういっちょおまけ」

【Full charge】

 

しかも今回は二回連続のチャージだ。デンガッシャーの刀身に赤い電流が走り、いつもの様に刀身が分離して宙を舞う。

 

「宮子、トラ男、伏せてろ」

「! そういうことか。猫屋、伏せろ!」

「お? わかった」

 

ソード電王の突然の指示に何かを察したローは、宮子をそのまま伏せさせて自らも地に伏す。そしてそんな中でイマジンは大群で一斉に襲ってきた。

 

「俺の必殺技・異世界バージョン!」

 

そしてソード電王は振りかぶり、その場で高速回転した。

そして分離した刀身もソード電王を中心に円を描いていく、謂わば回転斬りだ。

 

「ちょ、ま…ぎゃあ!?」

「んなバカなぁあああ!!」

「チクショウがぁあああ!!」

 

そしてその回転斬りで、迫ってきたイマジンは次々と断末魔をあげて爆散していく。ものの数分で、周囲のイマジン達は全滅した。

 

「ふう。ちっと目が回ったが、やったぜ」

「おぉ! モモさん、やっぱ強いなぁ」

「ああ、褒めろ褒めろ! 宮子はどっかのカメとか小僧と違っていいやつだな、本当」

(自然に自分の仲間に毒を吐きやがるな、コイツ。口調からしていつものことか?)

 

ローの感想はともかく、ひとまずこちらはもう安心なようだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「僕の得物は、槍。間合いには自信あるから敵は近づけないよ。だから2人とも安心してね」

「なるほど、飛び道具主体のおれらには頼もしい前衛だな」

「それじゃ、ウラタロスは私たちをしっかり守ってね」

 

ロッド電王がデンガッシャーを組んで作った武器を見せながら説明、ウソップと沙英も安心した様子で武器を構える。

ウソップはお馴染みのパチンコだが、沙英はなぜかフラスコではなくマーライオンを構えていた。

 

「それじゃ、先手必勝!」

「「「へ? って、ぎゃあああ!!」」」

 

そして沙英が構えたマーライオンから、高速水流が放たれる。そしてフォクシー海賊団の団員たちが喰らい、一斉に吹っ飛んだ。

「いてて……あの女、よくも…って、ありゃ?」

「な、なんか力が抜けて…」

「水浴びただけなのに、なんか寒気が…」

 

すると沙英の攻撃を受けた海賊達は、急に様子がおかしくなった。しかしその直後、沙英は味方2人に呼びかける。

 

「今ので打たれ弱くなったはずだから、一気に決めて!」

「なるほど。沙英ちゃん、ありがとう」

「いやいや……って、ちゃん付!?」

 

ロッド電王に呼ばれた呼び方に顔を赤くする沙英だが、それも気に留めずロッド電王自身は海賊達の方へと向かっていく。

 

「ほら! これで! おしまいっと!!」

「グェ!?」

「いてぇ!!」

「ぎゃは!?」

 

そのまま集団の懐に飛び込んで、ロッド電王は長い得物を駆使して次々となぎ倒していく。

 

「よし、おれは今のうちに仕込みしてくる。ちょっと待ってろ」

「へ? ウソップさん、仕込みって…」

 

すると不意にウソップが冴えから離れていき、何かを辺りに撒いていく。

 

「お花手裏剣!」

「おっと、危ない」

 

その一方で状況を見かねたポルチェによる攻撃がロッド電王に放たれるが、得物で手裏剣を的確に防ぎながらそのまま駆け寄る。

 

「お姉さん、美人な上に強いんだね。惚れちゃいそうだよ」

「え!? 美人って、そんな…」

 

そしてまさかの甘い言葉にポルチェも顔を赤らめる。変身前のウラタロスは異形の怪人だが、こうやって素顔が見えないと声音だけで二枚目と判断しそうであるから、効き目抜群だ。

 

「団のアイドルに色目使ってんじゃねぇ!!」

「うおっと!」

 

そんな中、近くの水場からカポーティが飛び出して突撃してきた。間一髪で避けられるも、ポルチェの無力化は失敗だ。

 

「ポルチェちゃん、あいつもイマジンだから見た目は完全に化け物だぞ」

「……はっ! 危ない危ない。ありがとう、カポーティ」

 

そしてそのまま正気に戻してしまう。もう、同じ手は効かないようだ。

 

「君、今のスピードすごかったね。見た目だけじゃなくて泳ぐ速さもカジキ並みなのかな?」

「今更気付くか。そうとも。そして貴様はそのカジキのスピードに敗北するんだよ!」

 

そして再び水場に飛び込もうとするカポーティ。しかしその間際、ロッド電王は告げた。

 

「ここにくる前に聞いたんだけど、この湿地帯にはでっかい蛇の魔物が住んでいるらしいよ」

「へ?」

 

その言葉を聞いて一瞬呆けるも、すぐに水中で臨戦体制をとるカポーティ。

 

(蛇も水中で活動することがあるらしいからな。先におれの魚人空手で仕留めたほうが良さそうだ)

 

そしてロッド電王の言っていた魔物への警戒心を持つのだが、直後にそれが起こった。

 

チクッ

「いて……って。うおわぁああ!?」

 

いきなり肩に何かが刺さる感触がしたと思いきや、そのまま一気に水上まで引き上げられたのだ。

そして楽にあげられたカポーティが見たのは、ロッド電王の槍の穂先から何か糸のような物が伸びる光景と、それを見て驚くウソップと沙英の姿だった。

 

「ごめん、槍っていうのは嘘でこれ釣り竿なんだ」

「「え? マジ?」」

(へ? なら、さっきの蛇の魔物とやらも?)

 

カポーティに対してしれっと言ってのける、ロッド電王。しかし当のカポーティ本人は騙されたことに気づき、だんだんと怒りで顔を赤くしていく。

 

「てめぇ、卑怯だぞ!!」

「「いや、それ……」」

 

卑怯上等のフォクシー海賊団に属するカポーティからの糾弾に、沙英とウソップは物申そうとするが、それを何故か止めるロッド電王。

 

「ああ、よく言われるよ。ふっ!」

「ぐぁ!?」

 

そしてその一言とともにカポーティを一突き。

 

「てやぁあ!」

「ポルチェちゃん、逃げ……ぎゃああ!?」

「カポーティ!?」

 

怯んだ隙に一気に蹴り飛ばす。延髄に鋭い蹴りを叩き込まれ、そのまま意識が飛んだカポーティの姿があった。ポルチェも怯えて、カポーティの指示に従って逃げる。

 

「うわ、ひどい……」

「おれも嘘で隙はつくけど、これは頂けねぇ……」

 

しかし沙英とウソップは揃ってドン引きしていた。同じく嘘を戦いに利用するウソップですら、この反応だ。

 

「やっぱあんなわけわかんねぇ生き物、信用できねぇ! 」

「だな。我々イマジンで一気に潰してやりましょう!」

 

今の間に海賊は過半数が倒され、それに見切りをつけたイマジン達は自らで電王達を倒そうと駆け出す。

 

バインっ

「あぎゃああああ!!」

「おま、ぎゃあ!!」

バインッバインッバインッ

「ちょ、うわ!?」

「なんだこれぇえええ!?」

「いやぁあああ!?」

 

突然地面から奇妙な植物が生え、それを踏んだイマジン達が次々と空へと打ち上げられる。

 

「え? まさか、これがさっきの準備?」

「ああ。トランポリアっていう植物で、近づいたものを弾き返す特性があんだ。さあウラタロス、狙撃手はサポートがメインだ!トドメは任せたぜ!!」

「ありがとうね、ウソップくん」

【Full Charge】

 

ウソップに礼を言った後、ロッド電王はパスをベルトにかざして必殺技に入る。デンガッシャーを槍投げの要領で、打ち上げられたイマジン達に投擲。

 

「うお、マズイ!!」

 

それを食らったイマジン達は、亀の甲羅のようなエネルギー網に拘束されて一纏めにされた。ロッド電王の必殺技、ソリッドアタックだがこれだけでは倒せない。

 

「よっと!」

 

そしてロッド電王はトランポリアに自ら飛び乗り、それに打ち上げられて宙を舞う。

 

「たぁああああ!!」

『ぎゃあああああああああああああ!!』

 

そしてその勢いで必殺の飛び蹴り・デンライダーキックを叩き込んだ。拘束されてダメージが伝播し、イマジン軍団はまとめて倒された。

 

「ナイスアシスト」

「おうともよ!」

(後半、私空気だったな……まあ、アレと張り合うのは無理だけど)

 

そして沙英の反応を他所に、着地したロッド電王はウソップにサムズアップを見せ、ウソップ自身も返すのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「どすこい!」

「だりゃあああ!」

 

アックス電王はジンジャーと2人で海賊達を吹っ飛ばす。ジンジャーは普通に鉄拳だが、アックス電王は変身しているキンタロスが相撲スタイルで戦うため、張り手なのが特徴だ。もう片方の手には斧に組んだデンガッシャーが握られているが、対人戦なのでまだ使っていない。

 

「ミンチにしてやる!」

「危ない!」

 

ハンバーグがアックス電王にどこからか取り出した棍棒で殴りかかろうとする。ヒロがそれに気づいて叫ぶも、アックス電王は反応せず、避ける様子がない。

 

「ふん!」

「何!?」

 

なんと、アックス電王はハンバーグの振り下ろした棍棒を片手で受け止めてしまった。

 

「こんな強さで、泣けるかい!」

「うぶ!?」

 

そしてもう片方の手で張り手を放ち、思いっきり吹っ飛ばしてしまった。

 

「ダイナミックジャーンプ!!」

「あぎゃあ!?」

 

そして叫びながら飛びかかり、ボディプレスをお見舞いする。パワーで目の前の巨漢を、圧倒していたのだ。

 

「す、凄いですね」

「ああ。あれを片手で止めるとは、やるなアイツ…」

「切り刻んでやるど!」

 

目の前で起こった出来事に、ヒロもジンジャーも驚きを隠せずにいた。しかしその時、背後からピクルスが剣を持って高速回転しながら2人に突撃してきた。

 

「おっと、失礼!」

「きゃあ!?」

 

しかしそれに気づいたジンジャーはヒロの体を抱え、一気に跳躍。ピクルスの回転斬りを回避する。

 

「ちょっとのびてろ、デカブツ!」

「ぶふっ!?」

 

そして脳天にかかと落としを放ち、ピクルスをノックダウン。ルフィと殴り合いで張り合えるジンジャーの戦闘力なら、これくらいわけなかった。

 

「ライオンの姉ちゃん、やるやないか! 泣ける強さやで!」

「サンキューな。アンタもいいパワーしてるみたいだ」

 

そしてアックス電王とジンジャーは、互いに賞賛し合ってそのまま戦闘を続行した。

 

「「うごぁあああ!」」

 

その時、良太郎達が初戦で倒したものと別個体だが、なんとタウロスイマジンが2体も迫ってきた。

 

「「よくもやりやがったな! ハンバーガーじゃすまさん!!」」

 

しかもハンバーグ&ピクルスがもう復活、そのまま駆け出してきた。

 

「ライオンの姉ちゃんにピンクの姉ちゃん。俺がイマジン、あの怪物を倒すから残りの2人は任せたで」

「受け持った」

「へ? ピンクって私……まあ、いいわ。やりましょう」

 

そしてアックス電王はジンジャーとヒロにハンバーグ達を任せ、自身はイマジン撃破に乗り出す。

 

「「死ねぇええ!!」」

 

二体のタウロスイマジンは、アックス電王に向かって大斧とモーニングスターをそれぞれ振り下ろす。

 

「どすこい!」

「ぎゃふ!?」

 

しかしアックス電王は張り手で飛んできた鉄球をはじき返してイマジンにぶつける。

 

「はぁあ!」

「ぎゃああ!?」

 

そしてもう一体のタウロスイマジンを斧で切りつける。打たれ強さと一撃の重さで押す、攻防一体スタイルがアックス電王の特色だ。

 

「あっちは大丈夫そうだな。私がこいつらにトドメ入れるから、魔法で牽制頼むぞ」

「わかりました!」

 

一方、ジンジャーは必殺の一撃を入れる準備に入り、ヒロは隙を作るため魔法を放つ。

 

「んなチマチマした攻撃で、俺らが落ちるわけねぇだろ!」

「うぷぷ、バーカ!」

 

しかし気にせず、ハンバーグ達はそのまま突撃していく。しかし、ヒロはまだ諦めていない。

 

「だったら、これで!」

 

なんとヒロの次の攻撃は、どこからか取り出した中華鍋を振ったと思いきやそれから火の玉を放つというものだった。

 

「「あっつ!?」」

「おし、今がチャンス!」

 

それを浴びたハンバーグ達は火だるまになり、そのまま大ダメージを負った。そしてその隙をつき、ジンジャーはピクルスに狙いを定めて駆け出した。

 

「おらよ!」

「ぎゃあ!?」

 

そして手に持ったバットでピクルスを空に打ち上げ、自らも飛び上がって再びバットを振るう。

 

「いち、にぃの……!」

「いて、いでぇ!!」

 

そして空中で身動きの取れないピクルスは、そのまま滅多打ちにされ…

 

「さん!」

「うぎゃああああ!」

「あびゃ!?」

 

そしてトドメにピクルスを叩き落し、真下のハンバーグにぶつけた。今度こそ完全に気絶し、勝利は確定だ。

 

「おし。なら、俺も」

【Full Charge】

 

アックス電王も、決着をつけるべくパスをベルトにかざして必殺技の準備に入る。そして迫ってきた二体のタウロスイマジンに対して放った。

 

「はぁあ!」

「ぐぎゃあああ!?」

 

まず、エネルギーの溜まったデンガッシャーで一体を切り上げ、それと同時にデンガッシャーを真上に放り投げる。

 

「とう!」

 

そしてアックス電王自身も飛び上がり、空中でデンガッシャーをキャッチする。

 

「おりゃあああ!」

「ぎゃああああああ!?」

 

そして落下の勢いでもう一体を一刀両断。二体の大型イマジンはこれにより爆散、無事に倒されたのだ。勝利は確定だ。

 

「ダイナミックチョップ」

「倒した後で技名言うのか…」

「め、珍しいですね」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「イェーイ!」

「ホワチャァアア!」

 

一方、ガン電王とチョッパーは迫り来るイマジンと海賊達を蹴散らして回る。カンフー主体の俊敏なチョッパーと、ダンスの動きで軽やかに戦うガン電王、共に数の差をものともしない強さだ。

 

「ぶしし! 串刺しにしてやる!!」

 

しかしそんな団の危機にかかってたビッグパンが、2人を踏みつけようと迫ってくる。しかしその時、乃莉は団の一兵卒達を相手にしながらもあることに気づいた。

 

「2人とも、あの人の靴底から刃物が生えてる! 串刺しって、アレのことですよ!!」

「ちょ、またこれかよ!」

「うわ、危ないなもう!」

 

乃莉の気づきのおかげで、どうにか二人ともビッグパンの攻撃を喰らわずに済んだ。するとチョッパーは怒った様子で、懐から何かを取り出した。

 

「もう怒った! おれの切り札を見せてやる!!」

「まさか、例の…」

「ねえ、トナカイさんの切り札って何? なんなの?」

「昨日、軽く聞いたんですけど」

 

そして、乃莉は昨夜なずなと2人でチョッパーから聞いた切り札の話を思い出し、問いかけてきたガン電王に話す。

〜回想〜

『動物系の悪魔の実には、人型と獣型、この二つの中間の人獣型の三つの形態変化があるんだけど、おれはこれを使って変形のバリエーションを増やせるんだ』

 

そう言い、チョッパーは懐から小さな球状の何かを取り出してみせる。

 

『何ですか、これ? 飴玉?』

『おれが調合した丸薬で、ランブルボールっていうんだ。服用すると3分間だけ悪魔の実の形態変化の波長を狂わせ、最初の三つと合わせた七つの変形を使えるようになる』

『チョッパー君、本当にすごいんだね…お昼の手当ての時もだけど、ただ可愛いだけじゃなかったんだ』

 

チョッパーのまさかの才能を聞き、乃莉もなずなも感心している。しかし、ただ便利なだけのものではないらしいことが判明する。

 

『で、ここからが本題だ。おれは昔、こいつの連続使用で悪魔の実の力を暴走させて無差別に暴れたことがあるんだけど、二年の修行の成果でそれの制御に成功した』

『え? 暴走するの、これ』

『まあな。でもその修行のお陰で他の形態をランブルボール無しで使えるようになって、代わりにその暴走形態の制御薬にすることに成功した。でも、やっぱり連続使用すると暴走の危険があるから一緒に戦う時は気をつけてくれ』

『チョッパー君、なんでそこまで体を張るんですか? 話聞いてるだけじゃ、すごい辛そうなんだけど…」

 

そんな乃莉の疑問に答えようとするチョッパーだったが……

 

『おれを立派な医者にしてくれた偉大なドクター達に、仲間にしてくれたルフィ達。そんなみんなの為にも、おれは強くなりてぇんだ。どんな病気も治す万能薬に、大事な仲間を守れる化け物に、おれはなりてぇんだ』

 

その屈託のない笑顔で誇らしげに告げる様子は、彼のルフィや医術の師匠への信頼が見て取れた。

〜回想了〜

「ランブル!」

 

そしてチョッパーはランブルボールを口に放り込み、叫びながら噛み砕いた。

 

「ぶしし……へ?」

「え…えぇえええええええええ!?」

「と、トナカイさんがぁああ!?」

 

そのチョッパーの変化に、ビッグパンは笑いを止めてしまう。

その変化の様をすぐ隣で見た乃莉とガン電王も、驚愕に満ちた声をあげる。

 

なんと、チョッパーはビッグパンとためを晴れるほどの巨体を誇る、謎の生物と化していたのだ。トナカイとも人とも、ゴリラとも違う得体の知れない獣である。暴走形態というのも、納得のいく容貌だ。

そして制御に成功したその姿を、チョッパーはこう名付けた。

 

怪物強化(モンスターポイント)!!」

 

巨大化して声音も重低音と化したチョッパーは、重量強化の比ではない威圧感を放っている。過去に暴走した姿、という話も相まってまさに怪物だ。

 

「おれはこのまま、こいつをぶっ飛ばす。だから、イマジンは任せた」

「オッケー、トナカイさん! このままイマジンはやっつけちゃうよ!」

【Full Charge】

 

そしてチョッパーに促されるまま、ガン電王もパスをベルトにかざして必殺技に入る。銃口にエネルギーが収束され、ガン電王はそれを迫り来るイマジンの大群に向ける。

 

「いけぇええええええ!」

『グワァああああああああああ!』

 

そして放たれた一撃・ワイルドショットを喰らい、イマジン達はまとめて消し飛んだ。それを見たチョッパーも、必殺技の準備に入る。

 

「悪いけど、一撃で決める。刻蹄(こくてい)…」

「逆にぶっ飛ばしてやるよ、化け物がぁあああ!」

 

そしてそのままビッグパンはチョッパーに迫り、チョッパーも迎え撃とうと構えた。

 

椰子(パルメ)!!」

「グェエエ!?」

 

しかしチョッパー渾身の右スイングを諸に喰らい、ビッグパンの体が大きく吹き飛ぶ。そしてビッグパンも意識を闇に沈め、そのまま地に伏した。

 

「残りの雑魚はおれが蹴散らすから、2人は休んでてくれ」

「うわぁ、トナカイさんカッコよかったよ!!」

「本当! 技名も男前でなんかよかったです!!」

「! そ…」

 

チョッパーがガン電王と乃莉を気遣って声をかけると、その二人から称賛の声が上がる。すると…

 

「そんなに褒められたって、嬉しくねぇぞ! この野郎!!」

「「いや、怖い怖い!!」」

 

いつもの照れ隠しをするも愛嬌が消えて声も低いため、不気味でしかなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「なんと混迷とした戦い……やはり私には似つかわしくないな」

 

悪態をつきながらも、手にした武器で海賊とイマジンを蹴散らしていくウイング電王。彼はデンガッシャーを手斧とブーメランという小回りの利く武器に組んでおり、二刀流でのスピードと手数で押すタイプのようだ。

 

「そうですか? むしろ、状況を選ばずにエレガントに戦える方が王子として映えそうですけど」

「……言うではないが、お供よ。なら、その通りにしてやろう」

「お供になった覚えはありませんが、その意気ですよ王子」

 

ハイエロファントで雑魚を蹴散らしながら、自身でも戦う花京院。そんな彼に言われてその気になったウイング電王は、勝手に花京院をお供にしてそのまま戦闘を続行した。

 

「王子だなんて言っても、人外は趣味じゃないのよ!」

 

ルナ・ドーパントはウイング電王に対して拒絶の言葉を口にし、伸びる腕で花京院共々攻撃していく。

 

「遅い!」

「ああ、切れちゃった!?」

 

しかしウイング電王は上手く回避し、そのまま片腕を切り落とす。ダメージは薄そうだが、間合いを封じるのは成功だ。

 

「追撃のエメラルドスプラッシュ!」

「あら、大胆♡」

 

しかしそれを防ぎながら嬉しそうな声を上げるルナ・ドーパント。しかしその矢先、それは起こった。

 

「きゃあ!? 何これ、足に何か絡まってるわ…」

「へ? うわ、おれも!?」

「なんだ、コレ!」

 

ルナ・ドーパントだけでなく、今ウイング電王と花京院に敵対しているもの全員が足に何かを絡めてしまう。すると、花京院自らその説明がなされた。

 

「僕のスタンド・ハイエロファントグリーンは体を帯状に解く能力がある。それを周囲に気づかれないよう、細く長く伸ばしてこの辺りの地面に忍ばせておいたのさ」

「な、こいつそんな…」

「応用の効く能力な上に、頭も切れるのね! ますます気に入っちゃった!」

 

花京院の周到さに驚愕するイマジンと海賊達をよそに、ルナ・ドーパントは相変わらずな様子だ。

 

「では、トドメに入る前に一言…」

 

すると突然、花京院がそんなことを言い……

 

「我が名は花京院典明! 君達が今まで傷つけた人々やこれから傷つけるであろう人々の安全の為、そして君達がこれ以上罪を重ねるのを止めるため、君達を我がスタンドで裁く!」

「ドキーン! カッコいいわぁあああ!」

 

そのままバシッと決め台詞を決めるのであった。ルナ・ドーパントも狂喜乱舞している。

 

「さあ、このままトドメに入りましょう!」

「ああ、行こうか。お供が王子より目立つのは癪だが」

【Full Charge】

 

そしてウイング電王を促し、二人で必殺技の準備に入る。パスをかざすと二振りのデンガッシャーにエネルギーが充填される。

 

「せい!」

「エメラルドスプラッシュ!!」

 

そしてウイング電王は武器を投擲してイマジンをまとめて切り裂くロイヤルスマッシュを、花京院はハイエロファントの体液をエメラルドの破壊エネルギーに凝縮して放つエメラルドスプラッシュで、敵を一斉に薙ぎ払う。

 

「ああ! これ、流石に死んじゃう! でも、イケメンにやられるなら、本望!!」

 

同時に必殺技を食らったルナ・ドーパントはそのまま嬉しそうな叫び声をあげる。しかし、そんな彼に花京院から一言あった。

 

「僕が言えた義理ではありませんが、本来死者は生き返ってはならないんです。いずれ、あの世で会いましょう」

「アハァアアアアアアアアン!!」

 

その言葉の直後にルナ・ドーパントは爆散。一瞬京水に戻るも、そのまま体が崩れてしまう。二人の完全勝利であった。

 

(花京院さんもジークさんもすごい…それに比べて、私って…)

 

一方、今回の戦闘で逃げるしかなかったなずなは、二人の闘いぶりに自らの無力さを痛感することとなる。しかし……

 

「なずなさん、僕もこの王子に回復魔法をお願いします」

「え?」

「我も流石に無傷とはいかなかったのでな。姫、頼めるか?」

「…はい!」

 

二人のフォローがしっかりしてたので、大丈夫そうだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「それじゃ、おれも本気出すか」

 

ルピと対峙するルフィは、そのままギア2を発動。身体中から蒸気が吹き出る様に、流石にルピも身構える。

 

「そういや、お前って一瞬凄いスピードで動けてたな。あれ、ほかの攻撃みたく技名ってあんのか」

 

ルフィが質問した瞬間、ルピはまたその超スピードで動く。そして、一瞬にしてルフィの背後に回る。

 

響転(ソニード)だよ。冥土の土産に教えてあげる」

「そっか」

 

しかしルピが攻撃しようとした瞬間、ルフィの姿が消えた。

 

「おれもギア2使ってる間だけ、(ソル)って似たようなの使えんだ」

「へ?」

 

そしてルフィは直後、一気にルピの背後へと回る。そして拳に覇気をまとわせ、必殺の一撃を叩き込む。

 

「ゴムゴムのJET銃!!」

「ぐぁあ!?」

 

背中にある触手の付け根となっている甲殻を殴りつける。甲殻を粉砕され、そのまま衝撃を受けて大きなダメージを負った。

しかし外見に反してタフなルピは、どうにか耐え凌いで距離を取る。

 

「お前、意外と固いな。甲羅じゃなくて、肌が」

「ま、まあね…僕らの表皮自体が、鋼皮(イエロ)って鎧に、なってるからね…」

 

重いの外頑強なルピの体に驚くルフィだが、息を切らしながら説明するルピの様子からそれなりのダメージは通っているようだ。

 

「だったら…JETバズーカ!!」

「な、早…ガハッ!?」

 

しかしルフィの追撃は止まらず、ルピは回避できず更に重い一撃を叩き込まれる。

 

「えい! やぁあ!」

「くそ、小癪な!」

「まだだ、追撃!」

 

一方、ライナー電王はぎこちない動きながら鉄人君28号の攻撃とノロノロビームをかわしつつ、デンカメンソードで切りつけて少しずつダメージを与えていく。

 

「だいたい、貴方達とこの世界は特に関係なんてないでしょう! それなのになんでバカみたいに必死に助けようと…」

「関係ないからこそ、ですよ」

「「はい?」」

 

ラチェットが憤慨しながら言うと、それに返すライナー電王。

 

「関係のない世界だからこそ、僕達や貴方達の事情に巻き込まない。だから、僕は戦うんです」

 

そして決意のこもった声で告げ、距離を取ってそのままトドメの一撃に入る。

 

【モモソード! ウラロッド! キンアックス! リュウガン! モモソード!】

 

ライナー電王はデンカメンソードのレバーを連続して引っ張る。そしてデンカメンソードのターンテーブルが一回転すると、ライナー電王は一気に駆け出す。

 

「え? 何あれ…」

 

見ていたゆのは困惑した。なんと走っているライナー電王のすぐ隣に、エネルギーで生成された線路が現れたのだ。そしてそのままその線路の上に飛び乗ると、そのまま自走する。

そして、その体をオーラでできたデンライナー、通称オーラライナーで覆いつくして鉄人君28号へと突撃していく。

 

「良太郎のやつ、決める気だな。なら、おれも」

 

そしてそれを見たルフィは、自分も決着をつけようととどめの一撃の準備に入る。武装色の覇気を纏わせた左腕を、ゴムゴムの銃弾の要領で一気に背後まで伸ばした。

 

「正面から来るとは余裕ですね。なら、こいつでとどめと行きましょうか!」

「そして追い打ちのノロノロビームで、確実に当ててやるぜ!!」

 

一方、敵も当然ながら迎撃態勢に入る。フォクシーがノロノロビームをライナー電王に向けて照射、ラチェットも鉄人君28号の胴体のドリルを発射してきた。

 

「人間如きに破面を倒せると思うな!!」

 

当然、ルピも激高しながらルフィを撃破しようと、そのまま虚閃の発射した。

 

「良太郎さん! ルフィさん!」

 

ゆのは心配し、二人の名前を叫ぶ。しかし、それは杞憂に終わった。

 

「「「なに!?」」」

 

ライナー電王はノロノロビームが命中しないままドリルに正面から切りかかり、そのまま切り裂いてしまった。

ルピの放った虚閃も、ルフィは難なく回避して一気に懐へと飛び込んだ。

 

「必殺…」

「ゴムゴムの…」

 

そしてライナー電王は鉄人君28号に向けて剣を振りかぶる。それと同時にルフィも拳をルピに向けるのだが、なんとその拳が炎に覆われたのだ。

そして、両者の必殺の一撃が放たれた。

 

 

 

電車斬り!!

火拳銃(レッドホーク)!!

 

そしてライナー電王の一撃で、鉄人君28号は一刀両断される。ルフィの拳を受けたルピも、拳を受けた個所から爆発した。

 

「「うっそぉおおおおおおおおおおおおん!?」」

 

鉄人君28号は大爆発、ラチェットとフォクシーは間抜けな叫び声でまとめて吹っ飛んでいく。

 

「がはっ………!?」

 

ルピも吐血した後、遥か彼方へと吹き飛んだ。

誰がどう見ても、こちらの勝利だ。

 

「ふ、二人ともすごいです…」

 

余りにも高威力の一撃を放った両ヒーローに、驚きを隠せないままのゆの。そのままへたり込んでしまう。

 

「良太郎、その姿とあの技はかっけぇけどよ……電車斬りって名前は正直だせぇぞ」

「え? 僕、気に入ってるんだけどな……あ、ゆのちゃん。僕の電車斬りって、どう思う?」

 

そんな中、談笑しながら戻ってくるルフィとライナー電王の姿があった。ゆのにも技名について問いかける辺り、余裕そうだ。

 

「えっと……すみません、聞いてませんでした」

「あ、そうか気づかなかった……ごめん」

 

どうにか声を絞り出したゆのに対し、フォローができてなかったことを反省するライナー電王。すると、ソード電王が宮子とローを伴ってやってきた。

 

「そっちは片付いたみてぇだな。早ぇとこ、みんなの所に戻ろうぜ」

「うん。デンライナーもこっちに来てるし、行こうか」

 

そのまま、全員でデンライナーへと乗り込んで里近辺へと戻っていく一行だった。

 

 

「……」

 

その頃、意識を失ったルピはその体が崩れていき、そのまま光の粒子となって消滅してしまった。

そして完全消滅した直後、吹っ飛んでいったフォクシーとラチェットが戻ってくる。

 

「くそ、麦わら。強くなったとは聞いてたがここまでとは…」

「電王も予想以上の強敵でした…どうやら、あれを使う時が来たようですね」

「まさかあれか!?」

 

そんな中、ラチェットは何か切り札を隠し持っているらしい。フォクシーもその切り札を知るようで、それについて察して意識を取り戻したクルー達に呼びかける。

 

「お前ら! まだ気絶しているクルーを連れて撤退しろ! ポルチェとハンバーグは、俺についてこい!!」

「おやびん、まさかあれを!?」

「……あ、あれか!!」

 

呼びかけられた二人もそれを察し、そのままフォクシーたちについていく。

そしてラチェットは、そのまま通信機(彼らの世界に生息する電伝虫という電話機能付きのカタツムリ)でどこかに連絡を入れた。

 

〜同時刻・とある岩山の中の遺跡〜

「というわけで、ドクターラチェットからの要請があった。起動準備に入るぞ」

 

財団Xから出向された技術者達が、遺跡内の巨大な物体へと集まり、作業に入る。

それは、超巨大な顔と鉄柱がセットになったロボットのようなもので……




次回で一旦エグゼイド編に入ります。ラストのあれはディケイド編にて。


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第28話「Revengerな近界民」

最近、感想に質問や「ダイの大冒険の新作アニメやります」とかの最新情報を書き込む機会が増えています。情報とかはありがたいですが、感想以外の書き込みって規約外の筈なんですよね。
ログイン外からのコメントばかりなので、場合によってはログイン者に限定することも検討させてもらいます。今年最後の投稿ですが、注意勧告させてもらいます。感想と一緒に書く分にはこちらも不問としますのでご協力願います。


転移させられた永夢、青葉、ヒュース以外の三雲隊メンバー。しかし、その際あることに気づく一同。

 

「あれ? 迅さんや烏丸先輩達がいない…」

「涼風さん以外のイーグルジャンプの人達もいない?」

 

修と永夢が辺りを見回してみるも、自分達以外に誰もいない。しかしそんな中、不意に口を開いたのは青葉だった。

 

「たぶん、人数が多いから分断されたのかもしれません」

「え? 青葉さん、どういうことですか?」

 

青葉の推察を聞き、千佳が尋ねる。すると意外なことが判明した。

 

「さっき、迅さんから私と遠山さんにだけ伝えられたんですけど、全員がバラバラの場所で戦っているって予知が見えたそうなんです」

「なるほど。チームの総数なら俺たちが一番多いから、妥当かもな」

 

青葉から話を聞いて納得した様子の遊真。しかしその話を聞いた永夢は疑問を感じたので、思わず尋ねる。

 

「でも、なんでその二人だけなんですか? 何か聞かされてたりって、あります?」

「それが遠山さんの転移先に…」

ダンッ

 

会話を遮り、突然銃声が鳴り響く。音のした方に一同が視線を向けると、NEVERのジャケットを着た銃で武装した男と額に傷のある壮年の男の二人だ。するとその銃撃した男は壮年の男に咎められる。

 

「おい、いきなりの威嚇は礼が成っていないぞ……すまないな、急に。俺はガトリン、ガロプラからの出向部隊で隊長を務めている。この男は協力者の一人、芦原賢(あしわらけん)。NEVERという強化人間だそうだ」

「おいおい、近界民と噂の改造人間が手を組んだのか。笑える話じゃねえな」

「空閑、言ってる場合じゃない。この人、記録映像じゃ前の襲撃部隊を率いて……」

 

目の前の壮年の男、ガトリン。彼はアフトクラトルの属国の一つ、最初に青葉たちが遭遇したレギンデッツ達ガロプラの軍を率いる隊長だ。

以前彼らは同じ属国の一つロドクルーンから提供された三百近くのトリオン兵を率い、ボーダーを襲撃した。目的は四年前の近界民第一次侵攻で攫われた民間人と、アフトクラトルの大規模侵攻で攫われた訓練生達の奪還のための遠征艇を破壊することであった。

その時の襲撃は、迅の予知による万全の防衛体制と、格納庫にたどり着いたガトリンを小南を含めたソロランクトップ4のアタッカー総出での撃破によって阻止できたが、彼の部下であるラタリコフをアタッカー2位の風間蒼也が抑え、3対1で互角という強敵である。

 

「だとしたら、この人相当強いんじゃ…」

「それに、例のNEVERという強化人間もかなり強いらしいし…」

「どっちにしても、戦うしかない。幸い、バグスターはトリオンに干渉できるから、バグスターウイルス由来のガシャットの力でも対抗できるはずだから、僕も戦います」

 

目の前の強敵二人に対して、思わず委縮してしまう青葉と修。しかし、永夢は強い意志の籠った眼で二人を見据える。そして対抗しようと、ゲーマドライバーを装着する。

 

「戦士の顔をしている……話には聞いたが仮面ライダーとやらは強さも信念も相当らしい。そんなお前に敬意を表して、全力で相手をしてやる」

 

するとガトリンから称賛の声が上がると同時に、彼のトリガーが起動される。

ガトリンの背中からブレードを装備したロボットアームが4本も生える。見た目からして、攻撃力特化の装備であった。

 

「俺のトリガー”処刑者(バシリッサ)”は切れ味と強度に自信がある。いかに仮面ライダーといえどまともに斬り合えば命はないと思え」

「…ゲームスタート」

【トリガー!】

 

一方の賢も、ここまで無口だったところで一言だけしゃべり、ガイアメモリを起動。そしてそれを投擲したと思いきや、右掌に浮かんだ差込口にメモリが吸い込まれた。

それによって賢は、右腕が大型ライフルと化している青い武骨な体の”トリガー・ドーパント”へと変化した。

 

「……」

スチャッ

「!? 危ない!!」

「きゃあ!?」

 

トリガー・ドーパントが銃口を向けたことから、永夢はすぐに察して青葉を解き飛ばして自身も飛びのく。

修達も察して飛びのくのだが、その判断は正しかった。

 

ドォオオオオオオオオンッ

「も、問答無用で発砲した…」

「でもあの冷淡な感じ、傭兵向きな性格ではあるな」

「遊真君、言ってる場合じゃないよ。早く戦闘準備を!」

【マイティアクションX!!】

 

さっきまで自分たちの立っていた場所が大爆発し、修は冷や汗を流しながらその光景を見る。遊真が感心している横で永夢もガシャットを起動して二人の敵に駆け出した。

 

「変身!!」

【マイティ! マイティアクションX!!】

「永夢さんの言うとおりだ! 千佳、空閑、行くぞ!!」

「「「トリガー起動(オン)!」」」

 

そして一斉に変身し、エグゼイドと修と遊真は三人でガトリンとトリガー・ドーパントに立ち向かっていく。

 

「青葉さん、私たちも援護しましょう!」

「だね、千佳ちゃん! メガ粒子レクイエムシュート!!」

 

そして千佳が黒い狙撃銃をガトリンに向けて撃ちながら青葉に促し、その青葉も必殺の魔法をトリガー・ドーパントに放った。

 

「修、遊真、このまま超協力プレイだ!」

「オッケー、エム先生」

 

そしてエグゼイドに呼びかけられた遊真は、グラスホッパーを発動して二人で飛び上がる。そしてガシャコンブレイカーとスコーピオンでガトリンに切りかかった。

 

「……!? これは」

 

ガトリンも二人を迎え撃とうと処刑者のアームを操作するが、アームの一本が異様な重さを感じたので視線を向ける。そして事態を察して距離を取るも、逃げきれずに遊真の斬撃で片腕を切り落とされてしまった。

一方のトリガー・ドーパントも青葉の魔法を回避して発砲。

 

「そう何度も上手くはいきませんよ!」

 

しかし今度は、青葉も自力で避けることに成功した。今回は不意打ちではなく、冷静に相手の射線を把握できたので成功したようだ。

 

「重石になる弾丸のトリガーがあると部下の報告を聞いたが、まさか狙撃にも使えるとはな。ルーキーですら厄介とは、玄界(ミデン)は侮れんな」

 

遊真と距離をとったガトリンは千佳に撃たれたアームに視線をやると、確かに重石のようなものが一体化しているのが見える。

諸事情で人を撃てない千佳が、ランク戦においてメインの攻撃手段としていた鉛弾(レッドバレット)狙撃だ。攻撃力0を代償にトリオンで生成された物体以外は通過、着弾すると重さ100kgの重石となる強力な射撃オプション鉛弾。しかし重くする効果にトリオンの大半を割いたため、弾速と射程が著しく低いというデメリットがある。

しかしある狙撃手発案の、膨大なトリオンを持つ人間が弾速強化の狙撃銃ライトニングを使うという手段で狙撃に用いることに成功したのだ。

 

「だが、こういう時のカバー策も用意してある」

 

しかしガトリンは冷静に鉛弾の重石を付けられたアームを切り離し、アタッチメントのようなトリガーを当てる。すると、それによって新たなブレードが形成された。

 

「一瞬で修理された……まさかとは思うが、財団とやらが作ったのか?」

「ああ。トリガーを知って一週間そこらでこんなものを開発したあたり、底が見えん技術力を持っているらしい」

 

遊真の推察を肯定しながら、ガトリンは切り落とされた腕にもアタッチメントを当てて、機関銃を生やして代わりの腕にする。

 

「では、戦闘続行と行かせてもらう!」

「…ゲームリスタート」

 

そしてガトリンは機関銃を構え、いつの間にかトリガー・ドーパントと二人がかりでの銃撃を開始した。

 

「二人とも、ここは僕が!」

 

そして修がレイガストをシールドに切り替え、エグゼイドと遊真の前に躍り出る。そしてそのまま防ごうとするのだが……

 

「修! お前のトリオンで防げるのか、それ!?」

「片方はトリオン由来じゃないし、おそらくギリギリ……ぐわぁ!」

 

エグゼイドが心配してかけた声に修が答える最中、突然大きな爆発と同時にシールドが砕けた。そして爆風で吹き飛んだ修から、なんとトリオンが漏れ出しているのが目に映る。

 

「「修君!!」」

 

直後、青葉と千佳が修を助けようと駆け寄り、青葉は敵二人を迎撃しようと爆炎越しに魔法を放つ。それを低威力と思ったのか、トリガー・ドーパントは片手で払って青葉を撃とうとする。

 

「!?」

 

しかし、腕に大きな痛みが生じたトリガー・ドーパントは、怯んで攻撃を中断してしまった。

 

「逃がすか!」

 

するとガトリンはこの隙に逃げられると思ったのか、飛び出してブレードを稼働させる。

 

【ぶっ飛ばせ!突撃!ゲキトツパンチ!ゲキトツロボッツ!】

「おりゃああ!!」

「ぐっ!?」

 

しかし直後に鳴り響く熱血アニメのようなサウンドと歌に合わせてエグゼイドがガトリンに殴りかかる。

とっさにガードするも大きく吹き飛ぶガトリン。彼が見たエグゼイドの姿は、赤い装甲にV字型のアンテナがついたヘッドギア、強化パーツを装着して肥大化した左腕といった、まるでロボットアニメの主人公ロボのような様相となっていた。

 

「あの、そのエグゼイドの姿は…」

「ロボットアクションゲーマーレベル3。エグゼイドがレベルアップした姿だ。見たまんま、左腕のパワーが上がって攻撃力超強化モードになったわけだ」

 

急に変化したエグゼイドに思わず青葉が問いかけると、変身時の勝気な口調のまま能力について自ら解説する。

しかしその際、遊真から先ほどの攻撃についての疑問が生じる。

 

「でもおかしくないか? 爆発の具合からして、あのドーパントってやつの攻撃でシールドが砕けたんだろ? 奴はトリオン使えねぇはずなのに…」

「……まさか」

 

そんな中、何かに気づいたのは修であった。そしてそれについて問いかける千佳だが…

 

「修君、何か気づいたの?」

「あいつが使ったガイアメモリってアイテム、確かトリガーって言ってたけど…まさか、"僕たちの使うトリガーの記憶"も入っているんじゃ?」

「え? そんなダジャレみたいなことあるの?」

「でも、そうじゃないとこの状況の説明が…」

 

まさかの修の回答に、一緒に聞いていた思わず青葉が問い返してしまう。しかし現在進行形で起こってしまった以上、それを前提で戦うしかないのは明白だった。

 

「ギリギリで防げたが、アームの損傷が思いのほか激しいな。なら、あの時渡されたこれを使うしかないか…」

 

一方、ゲキトツロボッツのパンチ力でアームが破壊されたガトリンは新しいアタッチメントを取り出す。そしてそれを背中の処刑者本体に取り付けると、とんでもないことが起こった。

 

処刑者(バシリッサ)・Ver.アラクネ。財団Xが試作した戦闘用トリガーで、俺の処刑者の上位型のようなものだ。実戦使用は初なんで、手柔らかに頼む」

 

なんとガトリンの背中のアームが、8本にまで増えていたのだ。まさにアラクネ=ギリシャ語で蜘蛛というわけだ。

 

「敵もパワーアップ、ゲームより漫画寄りの展開だなこりゃ…」

「言ってる場合じゃありません! 来ますよ!!」

 

青葉の慌てる様子に何事かと思いきや、ガトリンは背中のアームを足代わりにして迫ってくる。しかもその上に乗るトリガー・ドーパントと共に一斉射撃を仕掛けてきたのだ。

 

「やべぇ! 青葉、ちょっとわりぃ!!」

「きゃあ!?」

「俺たちも離れるぞ!!」

 

青葉の体を抱えて飛び上がるエグゼイド。遊真もグラスホッパーを使って修と千佳の退避に協力する。

 

「さて、これはどう攻略するべきか?」

 

エグゼイドが仮面の下で思案する。敵側にトリオン破壊が出来るドーパントという、予想外のアドバンテージがあった。これは、今回の勝敗を左右する大きな要因だろう。

 

「逃がさんとさっき言っただろう!」

「何!?」

 

しかしその直後に声が聞こえたと思いきや、なんとガトリンが宙を舞ってこちらに迫ってくるものが見えた。バーニアのようなパーツもないことから、アームの力でジャンプした可能性が高い。

そしてガトリンは青葉を抱えているエグゼイドごとぶった斬ろうとアームを振るう。

 

「うぉお!?」

「きゃあ!」

 

エグゼイドは咄嗟に左腕の強化パーツ・ゲキトツスマッシャーで攻撃を防ぐも、肝心のゲキトツスマッシャーは切り裂かれ、エグゼイドは体勢を崩して青葉と2人で地面へと落下していった。

 

「永夢さん! 青葉さん!!」

「修くん、危ない!!」

「え?」

 

修が落ちた2人を心配して叫ぶが、直後に千佳の叫び声が響く。その時、修は不意に地上のトリガー・ドーパントに視線を向けると、彼が自身に向けて発砲するのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「シールド!」

「空閑!?」

 

するといきなり遊真が身をひるがえし、そのままシールド用のトリガーを起動して修を庇う。シールドのおかげでダメージこそなかったが、爆発によって体勢を崩してしまい、そのまま地面へと落下してしまう。

 

(空閑が落ちた! 上手く防御したみたいだからダメージは無いだろうけど、このままじゃ……油断した、僕のミスだ!)

 

その様を目の当たりにした修に、動揺が起きる。圧倒的に不利な状態に持ち込まれてしまう。まさに絶体絶命だ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

~一方その頃~

「あの、うみこさん……これは一体?」

「桜さん、馬鹿なんですか? どう見ても敵に囲まれているに決まっているでしょう」

 

大量のトリオン兵、人型のアイドラと犬型のドグに囲まれながらねねは、冷や汗をかきながらうみこに問い尋ねる。そしてうみこ自身もそれに呆れながら答える。他にレイジ等玉狛第一の3人とひふみ、はじめ、ゆんの計8名がこの場にいた。

 

「とりあえず初見さんばっかりだから自己紹介しとくね。俺はこの場の指揮を任されたコスケロって者です、お見知り置きを」

「ウェン・ソー。慣れ合う気は無いけど、一応名前は覚えてもらうわ」

『トリオン兵越しで申し訳ありません。オペレーターのヨミと申します』

 

そしてトリオン兵を指揮する四人のトリガー使いと、トリオン兵を介して話しかけてくるオペレーターの計五人が敵の総戦力なようだ。

四人のトリガー使いはラタリコフとレギンデッツの他に、名乗った順に眠たげな目と顎髭が特徴の青年と冷淡な雰囲気のポニーテールの女性、そしてアイドラに仕込んだ通信機で話しかけるオペレーターを名乗る少年の声の人物だ。

 

「みなさん、一応彼らとの戦闘データはあるので使用トリガーと戦闘パターンはわかっています。上手くいけば皆さんでも有利に立ち回れるかもしれません」

「京介くん、ありがたいけど私らで有効活用できる情報かな?」

 

京介の言葉に対応するはじめだったが、自分たちと戦い方がまるっきり違うのでうまく立ち回れるかわからず、不安そうだった。

 

「念のため、伝えておきますね。顎髭の男は粘液を生成するトリガーでの妨害メイン、女性は分身を出すトリガーを使います。残り二人は皆さんも相対してたのでまあ、わかりますよね」

「うん、まあ……ていうか、一人分身作るって言わなかった?」

「鏡を利用した映像なので、攻撃力はないですから、そこはご安心を」

「トリマル、そういう話じゃないと思うんだけど…」

「トリガーって、結構何でもありな技術なんやね」

 

 

 

「それじゃ、私らも暴れますか」

「小南、気をつけろよ。搦め手や妨害メインのトリガー使いが多い、真正面から当たると落とされるぞ」

「まあ、ソロ攻撃手トップ3の小南先輩なら心配ないでしょうが」

 

言いながらトリガーを取り出す三人。そして、同時に起動した。

 

「「「トリガー起動(オン)」」」

 

そして戦闘モードに変身した三人。レイジはノースリーブの隊服の上にジャケットを装備、小南は髪が短くなり緑の隊服を纏う。そして京介は青地に白いラインの入った隊服、と三人とも隊服を揃えていない。

そして戦闘態勢をとり、レイジから指示が入る。

 

「チーム編成は前後衛のバランスを考えて、俺とうみこさんと桜、小南と滝本さん、京介と篠田と飯島で行こうと思う。トリガー抜きの攻撃が効くかわからないから、クリエメイトの皆さんはサポートメインでお願いします」

「それが無難ですかね。桜さん、でしゃばったら命はないと思ってください。今回は冗談で済みませんから」

「いや、流石にわかってますって…」

 

結果、レイジの組んだチーム分けになって、そのままガロプラ軍へと突撃していく。一方のガロプラ側も、迎撃態勢に入っていた。

 

「俺達も行くか。黒壁(ニコキラ)

「了解しました、副隊長。藁の兵(セルヴィトラ)

「レギィ、俺達も行くぞ。踊り手(デスピニス)

「言わずもがなだ。竜剣(テュガテール)!」

 

そして総力戦が始まる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「パラド君、だけみたいね」

「みたいっすね。俺一人じゃ戦力状況だと、りんさん守れなさそうだけど…大丈夫っすか?」

「そこは大丈夫。さっき迅君から予知の話を聞いてたから…」

 

人数の少なさにパラドは少し不安げな様子だが、りんは青葉が永夢に話した通り、迅の予知を聞かされていたのか不安な様子は無い。そしてその話をしようとした直後…

 

「クロスファイヤーハリケーン!」

「!? 危ない!!」

「きゃああ!?」

 

技名を叫ぶ声と同時に、何処からか十字架の形の炎が飛んできた。りんはパラドに手を引かれてどうにか避けると、炎が飛んできた場所に視線を向ける。

 

「クリエメイトと仮面ライダーが一人ずつ、か。承太郎やディケイドがいないのが残念だが、贅沢は言えんな」

 

そこで悪態を吐くのは、炎を纏った鳥人間=スタンドのマジシャン・ズレッドを従えた中東ファッションに褐色肌の男。モハメド・アブドゥルだ。

 

「迅君の予知が当たったわ。アブドゥルさんがここに来ているって」

「あれがジョセフ爺さんの持ってた写真の…」

 

一応、二人ともアブドゥルは写真で顔を知っていたようだ。

 

「でも、聖なる遺体を持っている青葉がいないのに、どうするんすか? 気絶でもさせます?」

「そこは、まあちょっとね」

 

そう言い、りんは普段の彼女らしからぬ悪戯っぽい笑みで、パラドに説明し始めるのだが……

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「迅君とヒュースだけ? 青葉達は?」

「チラッと予知が見えましたけど、分断された可能性が高いですね。俺ら、人数多かったから敵も警戒してた可能性は高そうっす」

「無駄話をするな。どうやら敵はすでに張っているらしい」

 

残りのメンバーの迅、コウ、ヒュースの三名。ヒュースが二人に警戒を呼びかけると、そこに敵がついに接触を図ってきた。

 

「はいはいはいはぁ~~い、ちゅうも~~く♪」

 

この場に似つかわしくないハイテンションな声が響く。近寄ってきた敵が声の主のはずだが……

 

「あなた達ね。この最も美しき破面"シャルロッテ・クールホーンちゃん"と戦うことになった、運のない子猫ちゃん達は」

 

現れたそいつは、紫の混じった黒髪にガタイのいい体とタラコ唇、そこに女性的な口調が入った破面だった。

それを見て、迅とコウは口を揃えて感想を口にした。

 

「「オカマ?」」

「ぬぁあんですって?」

 

しかしシャルロッテ自身はそれが気に入らないのか、侮蔑するような目で二人を見る。そしてそのまま詰め寄ってきた。しかも、コウをピンポイントでだ。

 

「オカマの何が悪いのよ! あんた、心が腐ってんじゃないの!?」

「いや、それが悪いとは一言も言ってないじゃん! だから文句言われる筋合いなんかないやい! ていうか、心が腐ってるってそういう単語思いつくあんたの方が腐ってんじゃないの!?」

「口の減らない女ね! あたしがオカマ云々はともかく、あんただって女のくせして何よその男みたいな恰好? 美に対しての意識が低いんじゃないの!?」

「いいじゃん、別に! 私は好きで女っぽいの着ないだけだし、その美とやらにも執着してるわけじゃないんだから! ていうか、そういうものの押し付けする方が美しくないんじゃないの!?」

「欠点を指摘してあげたのに逆切れですって!? あんたのほうこそ、美しくないじゃない!!」

 

そのままコウとシャルロッテは口論を始めてしまう。突然の出来事に、思わず迅とヒュースも固まってしまった。

 

「ジン、あいつは何を言っている? 戦いの場で美しさにこだわるなど、よくわからんが…」

「アフトクラトルの事情は知らないけど、まあそういうやつもいるってことさ」

 

思わずヒュースが冷ややかな目で問いかけるも、迅にも個々人のこだわりやそれを持つに至る経緯についてなどわかるはずもなく、そうとしか答えられなかった。

しかしそんな中、事態は急展する。

 

「それだったら、こうしましょう。ここで戦って、勝ったほうが美しく、負けた方が醜い。シンプルでいいでしょう?」

「ああ、そう来るよね。まあ、どの道あんたらとは戦わないといけないしさ」

 

シャルロッテは提案すると同時に腰に差していた刀を抜く。それに同意しながら、コウも剣を手にとって臨戦体制に入った。

 

「本当ならサシでやり合いたいところだけど、そこの2人も始末しなきゃだし、あなたの実力じゃあたしには敵わないだろうから、ハンデとして共闘を許すわ」

「ありがたいね。迅君もヒュースも、よろしく」

「それじゃあ、さっさと終わらせますか」

「こんなわけのわからん奴に、時間を割くのも勿体ない。一気に終わらせるぞ」

 

そのままシャルロッテからのハンデにのり、迅とヒュースもトリガーを起動する。

迅は普段のジャケット姿のまま、遊真と同じスコーピオンを装備。ヒュースはアフトクラトルの軍服らしき衣服の上から、黒いマントを纏った姿になる。そしてその周囲には、磁力を放つ黒い無数のビットが浮いている。

 

蝶の盾(ランビリス)

 

そしてヒュースがトリガーの名前を呟くと、ビットが集まってエッジの付いた車輪を二つ生成する。そして、それをシャルロッテに向けて射出した、

 

「単調な攻撃ね」

 

しかしシャルロッテが呟いた直後、一瞬でその場から姿を消す。別エリアでルフィが相対した破面ルピが用いた高速移動技・響転(ソニード)だ。

 

「な!?」

「まず、そこの坊やの首からもらうわ」

 

そして動揺するヒュースの反応をよそに、その彼の背後に回って首を切ろうとする。

 

「させないぜ」

「ぬ!?」

 

しかし予知のサイドエフェクトのおかげで、迅はシャルロッテの攻撃を読んでいたようだ。スコーピオンで切りかかり、シャルロッテの攻撃を阻止することに成功した。しかしシャルロッテには咄嗟に防御されてしまったため、ダメージを与えるには至らず。

 

「だったら、アタシが!」

 

そして体勢の崩れたシャルロッテに、コウが追撃を仕掛ける。

 

「調子乗ってんじゃないわよ、ブサイク!!」

 

しかしすぐに体勢を戻してしまい、そのままシャルロッテは尋常じゃない跳躍力で天高く飛び上がる。そして空中で剣を構え…

 

「必殺…

 

 

 

ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ミラクル・スウィート・ウルトラ・ファンキー・ファンタスティック・ドラマティック・ロマンティック・サディスティック・エロティック・エキゾチック・アスレチック・ギロチン・アタック!

 

やたら長い技名を叫びながら高速回転して落下して来た。

 

「技命長!?」

「言ってる場合か!離れるぞ!!」

 

思わずコウはツッコんでしまうも、ヒュースに促されて逃げるコウ。技の予備動作が長かったおかげで避けるのは簡単だったのだが、直後に起こった事態に戦慄することになる。

 

「ぬぅううん!!」

ドゴォオオオオオオオオオオオオンッ

「ウソ……って、わぁああ!」

「マジか…」

 

なんと、シャルロッテの一撃が地面を粉砕し、凄まじい地響きを起こしたのだ。その衝撃でコウも足元をすくわれてしまう。迅も思わず、冷や汗をかいてしまう程だ。

 

(身体能力のみで地形を変える破壊力……近界と玄界、どちらの常識からも外れすぎている! 異世界とやら、侮れんな)

 

ヒュースもその凄まじい戦闘力に戦慄し、警戒心を強めることになった。

 

「なら、まずは動きを封じさせてもらう!」

 

結果、ヒュースの次の行動は決まった。蝶の盾のビットをバラバラのまま飛ばす。そしてシャルロッテの両腕に纏わりつかせる。

 

「あら、あら? ちょ、なにこれ?」

「剣を振るう腕は封じさせてもらう。ジン、コウ、今のうちだ!」

「ナイスだヒュース!」

「いきなり呼び捨てって…でもよくやった!」

 

そして磁力で腕を封じたシャルロッテに対し、迅とコウが二人係で切りかかる。しかし、そこで上手くいかないのが実戦だ。

 

「そんなもんであたしを止められるなんて、甘い考えね!」

「「な!?」」

(ラ、蝶の盾を振りほどいた…!?)

 

シャルロッテは怒号を飛ばすと、そのまま腕力で強引に蝶の盾を振り払ってしまう。

 

虚弾(バラ)!」

「なに!?」

「ヒュース、その攻撃を食らうな!」

 

そして距離を取りながら、エネルギー弾の乱射を仕掛けてくる。しかも、ヒュースを集中的に狙っている。迅に促されてヒュースは回避を取るも、弾速が早くて2,3発食らってしまう。

 

「何!?」

 

そこでヒュースに驚愕が走る。なんと、彼の纏うマントが今の攻撃でボロボロになってしまっていたのだ。このマント自体がトリオンで生成された装甲の役割を果たしているのだが、トリオンで生成された物体はトリオンによる攻撃しか効かないはずなのに、今のシャルロッテの攻撃で破壊されてしまった。

 

「やっぱりか。嫌な予知が見えたが、それが当たっちまったわけか」

「迅君、ヒュース、今の攻撃って…」

「バグスターウイルス由来の力と同様、トリオンに干渉可能な一部の例外か?」

 

まさかの事態に、一同の中でシャルロッテへの警戒レベルが跳ね上がる。幸い、マントは新しく生成可能なため防御が落ちるのは一瞬で済んだ。

 

「あんたたちが姑息な攻撃したせいで、地味な破面共通の技使っちゃったじゃない。美しくないわね」

「え? これを同族みんな使えるの?」

「まあ、そんなものね。さて、景気づけにもう一発さっきのを…」

 

まさかの事実を聞き、青ざめるコウをよそにシャルロッテは刀を構えて跳躍の準備に入る。またあの技を使うつもりのようだ。

 

必殺! ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ミラクル・スウィート・ウルトラ・ファンキー・ファンタスティック・ドラマティック・ロマンティック・サディスティック・エロティック・エキゾチック・アスレチック・ギロチン・アタック!

 

技名を叫ぶ美ながら、さっきの倍は高く跳躍。隙は大きいが、あの威力が段違いな一撃が再び、それも先ほどより高威力となって迫る。

 

「だから、技名長いって! ヒュース、ちょっとあたしを空に打ち上げて」

「正気か? あの破壊力だ、すれ違いざまの風圧だけでも殺傷力がありそうだが」

「ちょっと考えがあってね。迅君、予知で安全な距離とかの目安はわかる?」

「! なるほど。でも、結構危ない賭けになるからおすすめはできませんけど」

 

直後のコウの提案にヒュースはあり得んといった目で見てくるが、迅は何を考えているのかも予知で察したようだ。一応、念は推しておくが彼女の決意は固かった。

 

「大丈夫。阿波根に対抗してちょろっとやっただけだけど、自信はあるから。それに、自分だけ守られるってのも癪だし」

「……わかりました、この実力派エリートにお任せを。ヒュース、真上じゃなくてちょっと左にずらしてから、トリガーの磁力ビットで八神さんを空に打ち出してくれ」

「…どうなっても知らんぞ」

 

コウの意思を汲んで、彼女の考えに乗る迅。ヒュースに一番安全な角度を伝えて、そのまま打ち上げ準備に入る。

 

「何をする気かは知らないけど、このまま一気に決めさせてもらうわ!!」

 

落下中のシャルロッテは、下の様子を見て怪しく思うも、このまま決めようと落下速度を上げる。

 

「今だ、発射!」

 

そして迅の合図に合わせ、コウを上空へと打ち出す。そしてシャルロッテと同じ高度に迫った瞬間、コウは懐から何かを取り出した。

 

「食らえ、化け物!」

ダンッ

「うぎゃあ!?」

 

それは一丁の拳銃で、どうやらこれでの攻撃を目的としていたようだ。上手くシャルロッテに命中したようで、そのまま攻撃が中断される。

 

「当たったな。ヒュース、成功だ」

「ジン、コウは何をしたんだ?」

「ああ、実は昨日…」

 

シャルロッテが体勢を崩したことから、作戦が上手くいたことを察する迅。何が起こったのかいまいち理解できないヒュースに、その詳細を説明するのであった。

 

~回想~

「簡易トリオン銃?」

「そう。トリオンを充填して、弾丸にする近界の武器っすよ」

 

コウ、りん、うみこのイーグルジャンプ年長者組が玉狛支部の用意したキャンピングカーに呼び出されて、件の銃を見せられていた。キャンピングカーは、玉狛の装備をメンテナンスするための設備を兼ねており、中でクローニンがレイジ達の装備を調整している。

 

「トリガーは近界の文明の根幹を支える技術なうえに、生体エネルギーであるトリオンを動力源にするから純粋な戦闘用トリガーとその使い手は、結構貴重なんだよね」

「だから、向こうじゃ攻勢側はトリオン兵を使うことが多くて、防衛側もこういうタイプの武器を使う国が多いんす」

 

そしてクローニンと二人で、向こうの戦闘事情を説明している。しかしそんな中、当然疑問も生じるのでうみこが代表して問いかけた。

 

「あの、何故そのような情報を私達に明かすんですか? 知ったところで、皆さんの世界に行くわけでもないのに…」

「その簡易トリオン銃のサンプルが、いくつか余ってるって言ったらどうです?」

 

するとクローニンがアタッシュケースを机の下から取り出し、それを開けて中に入っていた物を見せてきた。

ビームガンのようなSFチックな拳銃が3丁入っており、さっき話していた簡易トリオン銃のことだと、察しがついた。

 

「これがあれば、トリオン兵やトリガー使いに皆さんでもダメージを与えられます。でも、ボーダーの戦闘用トリガーと違って、殺傷力があるので研究用として保管されていました」

「年長者のお三方には、正しく使ってもらえると信じさせてもらったので、今お貸ししようと思った次第です。まあ、皆さんの手を汚しかねないから、その判断はお任せしますが」

 

結果、この時のトリオン銃をコウは覚悟の下で受け取った次第であった。 

 

~回想了~

「という次第さ」

「簡易トリオン銃か。まさか、クリエメイトに手渡していたとは…」

「まあ、受け取ったのは八神さんとうみこさんの二人だけなんだがな」

 

事情を話し終えたころに、ちょうどコウも地上に戻ってきた。シャルロッテの攻撃は当たらなかったようで、コウの策は上手くいったようだ。

 

「いたた…まさかこんなのに攻撃を受けるなんて」

「取り合えず、人間なめるなってとこかな? 素人も素人なりに足掻こうとはするさ」

 

起き上がったシャルロッテに、少し得意げにしながら告げるコウ。しかし今回は不意を突いた一撃ということもあり、コウは内心では警戒を続けていた。

 

「相変わらず美しさには無頓着ねって、アタシの顔!?」

 

シャルロッテは喋っている途中、顔に痛みのようなものを感じる。見ると、右頬に傷を負っていた。どうやら、先ほどの銃撃が顔に当たったらしい。鋼肌(イエロ)という、破面共通の頑強な表皮。それが銃撃を致命傷ではなくしたが、無傷で済まなかった結果のようだ。

 

「よくもあたしに恥をかかせるだけじゃなくて、美しい顔に傷を……許さないわ。あんた達、あたしの真の姿で葬り去ってあげるわ!!」

「し、真の姿!?」

 

シャルロッテのその一言に警戒心を強めるコウ。迅とヒュースも同様だったが…

 

「………ぶっ」

 

いきなり、迅が噴き出した。

 

「え…迅君、どうしたの?」

「いや八神さん、例の真の姿が予知で見えたんですけど…」

 

思わずコウが問いかけると、迅から返ってきた答えがこれだ。つまり、真の姿が笑えるものということになるのだ。

訳が分からずにいると、シャルロッテが刀を構えてその真の姿を開放する準備に入る。

 

「煌めけ……

 

 

 

 

 

 

レイィィィイイイイイイナ!!

 

デ・ロサァァアアアアアアアス!!

うふっ

 

豪快にポーズとウインクを決めながら、シャルロッテはその姿を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女のコスチュームみたいな露出の多い姿に、腹部には淫紋のような物が浮き上がっている。当然その姿を見たコウは…

 

「あははははははははははははははは! 何それ、それが真の姿!? おかしすぎでしょ!!」

「でしょ? これ、流石に反則…ぶふっ!」

 

遠慮なく爆笑。迅も抑えようとするが、堪え切れず噴き出す。

 

「前に戦ったブサイク死神と同じリアクションね。この美しさがわかんない奴、多いのかしら?」

 

しかしシャルロッテはこの姿を本気で美しいと思い、気に入っているようだ。そして、その解説をしようとするのだが……

 

「これが私の帰刃(レスレクシオン)、真の姿の宮廷薔薇園ノ美女王(レイナ・デ・ロサス)よ。この姿の何が「あははははははははははははははは! いや、それ反則 おかしすぎ…あははははははははははははははは! もうだめ、ゲホゲホッ」がポイント…」

 

コウの爆笑する声に遮られ、説明が全く聞こえない。当然、シャルロッテも怒りに燃えるのだった。

 

「アンタねぇ、少しは聞きなさいよ!!」

「ごめんなさぁあい! あ、やばっ。弾みで謝っちゃった…でも、これは…」

「ちょ、八神さん謝らないで…おれも落ち着いたのに、またツボに…ブハッ!」

 

揃って遠慮なく爆笑する敵対者に、シャルロッテは怒りのボルテージがどんどん上がっていく。そしてついに、それは起こった。

 

「……ぷ」

「お、ヒュース。お前今、笑った? 笑ったよな?」

「笑って…ない…くっ」

「いや、めっちゃ堪えてるじゃん。恥ずかしがらなくて…」

〜同時刻〜

「ん?」

「どうしたんすか?」

「パラド君、なんかコウちゃんの爆笑する声が聞こえた気がしたんだけど……気のせいよね?」

「だと思う。今、戦闘中だしな」

~再びVSシャルロッテ~

「はぁ、やっと落ち着いた……じゃあ、再開しようか」

「ですね。さっさと終わらせてしまいますか。でも、アレ見た目はふざけてますけどかなり強いみたいっすから、気を付けてください」

「真の姿ということは、つまり力のリミッターを外した状態だ。警戒を怠るな」

 

ようやく落ち着くも、シャルロッテは真の姿を開放したので警戒は必然だった。

 

「まあ、力はわかるみたいだけど、この美しさはわかんないようね。それも、心の醜さ故……」

 

直後、シャルロッテの姿が消えた。

 

「え?」

「かしらねぇ!」

 

そしていつの間にか一同の背後に回り、迅をそのまま殴り飛ばす。しかも、腕力だけで何十メートルも吹っ飛んでいったのだ。

 

「迅君!」

「人様の心配、してる場合じゃないわよ」

「やば…うわぁあ!?」

 

コウは吹っ飛ばされた人を心配し、同じくシャルロッテが殴りかかる。咄嗟に剣で防御したものの、その剣が折れてしまい、コウもすさまじい勢いで飛んで行った。

そしてそれを確認し、シャルロッテは残る一人、ヒュースに視線を向ける。

 

「後は、角生えた坊やだけね。覚悟はできているかしら?」

「まずい!」

 

一人残されたヒュースだったが、蝶の盾で自身を高速で上空へ射出。一気にシャルロッテから距離を取る。

 

「それで逃げられると思うなんて、あたしも舐められたものね!」

「何……ぐわぁああ!?」

 

しかしシャルロッテはヒュースを上回るスピードで上昇し、そのままヒュースを上空へと蹴り上げる。そしてさらに高く飛翔し、両手を組んだ。

 

「必殺! ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ラブリー・キューティー・パラディック・アクアティック・ダイナミック・ダメンディック・ロマンティあうっ…舌噛んじゃった……・サンダー・パンチ!

「がはぁ!?」

 

そして組んだ両手を勢いよく振り下ろし、ヒュースにたたきつける。しかもヒュースの体が殴られた場所からひびが入り、トリオンも漏れだす。そして、そのまま勢い良く地面に叩きつけられてしまった。

 

「だ、打撃攻撃まで、トリオンに干渉、だと?」

「舌噛んじゃったから、威力半減ね。もしフルパワーで食らったら、あなた即死だったわよ」

 

ヒュースはシャルロッテの埒外の強さに、戦慄することとなる。

 




サブタイに近界民とありますが、シャルロッテ戦に気合入れてしまいました。


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第29話「Conectする絆」

正月休みの間に、何とか次の投稿ができました。
クロスオーバーなのでちょっとした演出が入ります。
青葉ちゃんがなんと…おっと失礼。ここから先はまだみなさんにとっては未来の出来事でしたね。

P.S.恋する小惑星はまだ見てません。正月はテレビ空いてなかったので。


「あいててて……派手に背中打ったな。剣も折れてるし」

 

吹っ飛ばされたコウは、どうにか痛みをこらえて立ち上がる。しかしシャルロッテの拳を防いだ時に折れた剣を見て、つい気が滅入ってしまう。

 

「八神さん、無事みたいっすね」

「迅君はどう…って、なんか体にヒビ入ってるんだけど!?」

 

迅がこちらに近寄ってきたのでコウは驚愕した。彼の体にヒビが入り、トリオンが漏れ出しているのだ。

 

「あのオカマさん、ただのパンチまでトリオン体を破壊可能みたいですね。元が悪霊って話してましたし、霊体がトリオンに干渉可能ってことになるんすかね」

「だとしたら、向こうに残ってるヒュースが心配だね。なんか、予知で勝つためのヒントとか見えないの?」

 

迅から話を聞いて、コウは藁にも縋る思いで問いかける。そして迅もそれに対し、予知の状況について解説を始める。

 

「おれの予知はいくつかの未来のパターンが見えるんすけど、今はあちこちでその分岐点でそれぞれが自分の優位な未来に進めようとしてる状態っすね。で、おれ達の戦闘はあと10分持ちこたえれば、増援が来てくれるはずっす。ただ、アレを相手にあと10分持たせられるか、すかね」

「あの化け物相手に10分……なんか先に心折れそうだけど、そうも言ってられないね。行こうか」

 

迅の予知でも対応できないスピードと、桁違いのパワー。加えて拳の一撃でトリオン体を破壊可能なシャルロッテが相手だ。かなりの苦戦が予想されるが、迅から微かな希望を聞かされて戻っていく。しかし戦闘エリアまであと大体10メートルといったところまで到着したところ…

 

「ぐわぁああ!?」

「「え…ぐえぇえ!?」」

 

いきなりヒュースがこちらに向かって吹っ飛んできて、それに潰される二人。余りの速さに、また迅も対応できなかった。

 

「あらあら、ブサイクちゃんもまとめて潰せて一石二鳥かしらね。でも、これでわかったかしら?」

「な、なにを?」

 

近寄ってきたシャルロッテの言葉にコウは疑問をぶつける。そしてそれに対し、シャルロッテは答える。

 

「この圧倒的な美しさ! そして美こそが強さ、力!! ということを。流石に審美眼に欠けるあなた達にも理解できたんじゃなくて?」

 

両手を広げながら大仰に告げるシャルロッテ。しかし、コウもヒュースも答えは決まっていた。

 

「そ、それが美しいかはともかく…美しいから強いは流石にないよ。それだったら、綺麗ならその辺の花でも人間より強いってことになるんだからさ」

「同感だ。戦闘能力を決めるのは訓練、装備、元々の素質など、様々な要因が絡んでの物だ。何か特定の一つが飛びぬけて高いが=強いになることはありえん」

「へぇ、まだ減らず口を叩けるのね。角の坊やは死に体の筈なのに……」

 

そんなコウとヒュースの返答に、眉間にしわを寄せるシャルロッテ。そして次に自分が取る行動を決める。

 

「まあいいわ。審美眼が足りないこと自体は罪じゃない、というか哀れみすら感じるわ。そんなあなた達に引導を渡してあげる」

 

そして再び攻撃態勢に入るシャルロッテ。

 

「必殺! ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ファイナル・ホーリー・ワンダフル・プリティ・スーパー・マグナム・セクシー・セクシー・グラマラス……

 

また異様に長い技名を叫びながらのポージング。三人は敵の攻撃動作を見極めようと、その動きをじっくりと観察する。そしてシャルロッテはポージングの締めに手でハートマークを作り……

 

虚閃(セロ)

 

そこから破壊光線をぶっぱなした。

 

「ちょ、そんなのアリ!?」

「ジン、コウ、飛ぶぞ!!」

「ヒュース任せた!!」

 

しかしヒュースは再び蝶の盾(ランビリス)でコウと迅諸共空へと打ち上げ、緊急回避をどうにか成功させる。しかし破壊光線の斜線上にあった森は、一瞬で更地へと変わってしまうのが見えた。

 

「うそでしょ、あんなのまで種族共通の技なの?」

「たぶん。セロって技名は、最初に遭遇したノイトラってのが使ってましたし」

「何なんだ、あれは!? 種族共通で異常な身体能力、地形が変形する火力、挙句トリオンにまで干渉可能、冗談も大概にしろ!!」

 

改めて破面の桁違いな力にコウも迅も戦慄、ヒュースまで普段の彼からは想像できないほど激高することとなる。

 

「あら、冗談でこんなことしないわよ!」

「な…ぐわぁあ!?」

 

しかしまたシャルロッテに追いつかれてしまい、そのまま再び拳の一撃を叩き込む。それにより、三人纏めて地面に叩きつけられた。そしてシャルロッテ自身も、それを追って地上へと降りて行く。

 

「さて、そろそろとどめと行こうかしら」

 

シャルロッテが呟いた直後、いきなり周囲に黒い茨が伸び始めた。するとそれが巨大なドームを形成し始める。そんな中で、シャルロッテはヒュースの胸ぐらを掴んで動きを封じる。

 

「な、なんだこれは…」

白薔薇ノ刑(ロサ・ブランカ)。あたしの最も美しく残酷な技よ」

「な、なんか急にまともな技名が来たんだけど…」

「あら、この技だけは気に入ったみたいね。よかった」

 

突然の事態に困惑するヒュースに技名を告げると、傍で聞いていたコウが今までの長ったらしい技名と違うこの技を思わず称賛してしまう。

 

「この周囲に現れる白い薔薇、これが咲き誇ったその時に貴方達は命を散らすことになるわ。あたしや死神の持っている霊圧って力、それを完全遮断するから閉じ込められた最後、誰にもその最期を気づいてもらえないってわけよ」

「へぇ…でも、この茨の檻がデカすぎて回りにバレバレだと思うけど?」

「!? 言うじゃないの。でも、見つけられても並のパワーじゃ敗れないから、貴方達が終わること自体は変わらないわね」

 

コウの言葉に驚くものの、すぐに平静を装ってシャルロッテは自分に言い聞かせるように、告げる。

 

(けど、こいつの言う通りだ。そろそろ10分が経つけど、増援が入ってこれるかどうか……ヒュースの命が危ないんじゃないの?)

 

シャルロッテの強大な力に、今にも消されそうなヒュース。戦況は最悪だ。

 

 

 

 

 

 

 

しかしその時、光明が差す。茨の檻に異変が生じたのだ

 

「え? 煙が立ってる…」

「はあ? そんな言葉であたしの気をそらそうたって、そうは問屋が…」

「いや、本当に後ろ見て!」

「何よ、本当にしつこい……って、ええ!?」

 

余りにもしつこいコウに、業を煮やして背後を見るシャルロッテ。しかし、その視線の先には茨の檻がごうごうと音を立てて燃えている光景が見えた。

そしてその様に、してやったという表情を浮かべた迅。

 

「よし、増援が来たな」

 

そしてそのまま燃える茨の檻をぶち抜き、増援に来た者が姿を現す。

 

「マジシャンズレッド!!」

 

炎を纏う、赤い体に鳥頭のスタンド。そしてそいつが腕に炎を集中させてシャルロッテに殴りかかる。

 

「あっつい! なんでこいつが!?」

 

シャルロッテはダメージを受けると同時に、驚愕してしまう。そのスタンドの本体も自身が知る相手のため、同時に驚愕することとなったようだ。そしてそのままヒュースを開放してしまうため、コウも駆け寄る。

 

「ヒュース、大丈夫?」

「ああ。しかし、アレが例の増援とやらか? いったい何者……」

 

そしてヒュースの疑問に答えるように、そのスタンドの本体が近寄ってきた。中東風の赤いファッションに身を包んだ褐色肌のブ男。コウもヒュースも、そいつについて顔だけは知っていた。

 

 

「お前は確か…」

「ジョセフ爺さんが見せてくれた写真の…」

「チッチッ♪ チッチッチッチッ♪」

 

リズミカルに舌を鳴らしながら右手の人差し指を振り、中空に残った火を消す男。そして男の名前が脳裏に浮かんだコウとヒュースは同時に、その名を叫んだ。

 

「「モハメド・アブドゥル!!」」

「Yes I am!!」

バーンッ!

 

そう。かつての戦いで死んだ承太郎の仲間のスタンド使いで、今回洗脳された状態で甦った男"モハメド・アブドゥル"その人だった。

 

「迅君が増援が来るって予知をしてたけど、貴方がそれ?」

「なるほど、予知能力持ちの味方がいるとは聞いていたが、私の登場もすでに知っていたか。ああ、そうだ」

「まあ、誰が来るかまでは知らなかったけど…でも、助かったよ」

 

増援があまりにも予想外な人物だったため虚を突かれるも、コウはひとまず礼を言う。しかしその一方、シャルロッテは怒り心頭な様子でアブドゥルを睨む。

 

「なんで、なんで貴方がそっち側についてるのよ!? 聖なる遺体を持っている青葉って小娘は、あんたの所から離れた場所に飛ばされているはず! なのに、なんで洗脳が解けているの!?」

「それはね、私が青葉ちゃんから遺体を預かっていたからよ」

 

激高するシャルロッテの問いに答えたのは、先ほどアブドゥルと対峙していた遠山りんであった。そしてそれに、パラドが追従する。

 

「りん! それにパラドもいるけど、なんで…」

「八神さん、実はりんさんと青葉さんにだけ伝えてたことがあるんすよ。りんさんの飛ばされる先に、このアブドゥルがいるって予知が見えたって話を」

 

コウが当然のように疑問をぶつけると、そこに答える迅。そしてそこに、りん達が続いた。しかもその手には、確かに青葉が持っているはずの聖なる遺体の脊椎部があったのだ。

 

「迅君が私の未来を予知で見たんだけど、その時に飛ばされる先にいた人が事前に写真で見たアブドゥルさんだったのよ。それを敵に気取られないように、私と青葉ちゃんだけに伝えて、遺体を預からせてもらったの」

「後は一緒に飛ばされた俺がこいつを抑えて、その隙に遺体の力で洗脳を解いて、三人でここまで加勢に来たってわけさ」

「話は聞かせてもらったが、どうやら君達には迷惑をかけたようだ。だが、ここからは私も君達に協力させてもらうから、大船に乗った気でいてくれたまえ」

「というわけで、まずはコウちゃんの傷を何とかするわね」

 

そして味方が増えたことで一気に優位に立った。りんがまずコウの傷を魔法で癒し、そのまま万全の状態となる。流石に迅とヒュースのトリオン体には効かない可能性もあるので、ひとまず保留とする。

しかし、その一方でシャルロッテはまた怒りが強まることとなる。

 

「まさか増援なんて来るとは思わなかったわ。でも、美しくないわね。ハンデを許した身で言えることじゃないけど、最初の倍の人数で攻めるなんて品位がないんじゃなくって?」

 

そして悪態を付くのだが、パラドが前に出てそこに物申す。

 

「あんたは美しい奴が勝つって思うみたいだが、俺は違うな」

「なんですって?」

「俺は心を躍らせるか、滾らせるか、とにかく心がどうかで勝敗が決まると思ってるな」

 

パラドの物言いに不機嫌なさまを見せるシャルロッテだったが、それに物怖じせずに持論を語るパラド。そして自身のゲーマドライバーを装着し、ガシャットを差し込んだ。

 

【デュアル・ガシャット!】

 

その音声が指すように通常よりも分厚く、黄色いダイヤルと左右に分かれた2つのラベルが描かれている。

 

【The strongest fist! What’s the next stage?】

【The strongest fist! What’s the next stage?】

 

そしてその2つのラベルが指すように、2種類の音声が流れる。このガシャットは2つのゲームのデータを組み込んだ"ガシャットギアデュアル"、呼ばれる特殊なものである。

本来は内包するゲームをダイヤルで切り替えて、異なる戦闘形態を変換する仕様だが、パラドは敵対時代に人間の遺伝子を得たことである特殊な使い方を可能とした。

 

「マックス大変身!」

【ガッチャーン! マザルアーップ!!】

 

両手を交差させながらポーズを決め、ドライバーのレバーを開くパラド。それによってエグゼイドのレベルアップと違う音声が流れる。そして、宙に浮かぶ2種類のゲームのタイトルが混ざり合い、パラドと重なった。

 

赤い拳強さ!

青いパズル連鎖!

赤と青の交差! パーフェクト・ノックアーウト!!

 

ガシャットと同じく赤と青が入り混じるカラーリングに、背中にはガシャットのダイヤルに似たパーツが備わったこのフォルムこそ…

 

仮面ライダーパラドクス・レベル99

 

レベル99はゲーマドライバーで変身する仮面ライダーの、最大レベルである。つまり、パラドは初めから一番強い形態に変身したのである。彼の手加減抜きでコウやりんを守り抜くという、決意の表れとも取れた。

 

「パラド君も全力みたいね…コウちゃん、大丈夫?」

「ありがとう。もう大丈夫だから、りんは下がってて」

 

そしてコウもりんのおかげで傷も治り、そのまま武器を構えてシャルロッテを見据える。

 

「じゃあ、ヒュースもトリオン漏れが激しいから一気に決めるか」

「言わずもがなだ。まだボーダー仕様のトリオンも点検中で、他に攻撃の手もないからな」

「ならばなおのこと、このモハメド・アブドゥルも全力で援護させてもらおう」

 

そして残る男性陣も装備しているトリガーとスタンドをそれぞれ構え、シャルロッテと向き合う。

 

「数が増えただけ、しかもブサイクしかいないチームにあたしが敵う筈ないのよ!!」

 

しかしシャルロッテは不利な状況にも関わらず、そのまま突撃していく。実際、アフトクラトル製の軍用トリガーと実力派エリートの異名を持つ迅がいたにも拘らず、こちらはずっと不利だったのだ。

 

【ガシャコンパラブレイガン!】

「何!?」

 

直後、パラドクスがベルトから一振りの手斧を出し、それでシャルロッテの拳を防ぐ。そしてそのまま一気に切りかかった。

 

「硬ぇ!」

「あたし達は表皮そのものが鎧になっているの。並の攻撃じゃ通じないわ」

 

シャルロッテは自前の防御力で耐えしのぎ、怯んだパラドに向けて殴りかかる。しかしここで妨害が。

 

「やらせるかっての!」

「あいた!?」

「からのもういっちょ!」

 

コウが簡易トリオン銃で背後からシャルロッテに発砲、そこに出来た隙をついて迅が切りかかる。

 

「こいつ、調子に乗って…」

「先ほどの借りを返させてもらう!」

 

シャルロッテが反撃に入ろうと二人の方に向き合うが、そこにヒュースが再び蝶の盾で構築した車輪を放つ。

 

「じゃあ、今度はこっちで」

【ズ・ガーン!】

 

パラドクスはガシャコンパラブレイガンのAボタンを押して、銃に変形。そして飛びのきながらシャルロッテに発砲していく。

 

「ぬぐぅ、うぅう!? 斬撃が効かないなら他の攻撃手段ってわけね」

 

今回はダメージを与えられているらしく、加えてヒュースの攻撃ももろに食らったシャルロッテは、苦悶の表情を浮かべつつも激昂する。そして、そのまま飛び掛かっていく。

 

「私も忘れてもらっては困るな! クロスファイアーハリケーン!!」

「くそ、小賢しいわね!」

 

そこにアブドゥルが追撃で、十字架の炎を放つ。

 

「エスクード!」

「あぎゃ! か、壁が出てきた?」

 

しかし迅がエスクードを咄嗟に発動、シャルロッテは顔面からぶつかって攻撃を阻止されてしまう。そしてすかさず、コウとヒュースが動いた。

 

「コウ、援護するから接近戦で畳みかけろ」

「私も手伝わせてもらう。 レッドバインド!!」

「オッケー、ヒュースにアブドゥル!」

 

するとヒュースは蝶の盾のビットを収束してライフルを形成、それでビットをシャルロッテの体に打ち込む。そしてアブドゥルの放った炎の拘束が放たれたと同時に磁力を発動し…

 

「あ! 小癪な…」

「遠慮なくいかせてもらうからね!」

 

エスクードに張り付けられたシャルロッテの背中に簡易トリオン銃を発砲。

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!」

 

そしてそのまま連射していく。そして全弾撃ち尽くしてから…

 

「これなら、どうだ!」

「こいつもついでに!」

「いったい!!」

 

そして迅と二人で切りつける。同じ個所に何度も攻撃を受けたため、シャルロッテもダメージを受ける。

 

「俺も負けてられないな!」

【マッスル化! 鋼鉄化!】

 

そしてその隙をついてパラドクスは強化アイテムを回収。マッスル化が指すように一瞬マッチョになって戻るも、ちゃんとパワーは強化されたままだ。

 

「このまま一気にとどめと行くか!」

【ガッチョーン! ウラワザ!】

 

そしてベルトのレバーを閉じると必殺技発動の音声が流れる。そしてパラドクスの足にエネルギーが収束されていくが、同時にシャルロッテはの拘束を振りほどいた。

 

「そっちがその気なら、私も必殺技を使わせてもらうわ! ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ファイナル・ホーリー・ワンダフル・プリティ・スーパー・マグナム・セクシー・セクシー・グラマラス……

 

そして先ほど放った長い名前の虚閃を、早口で唱える。そして直後、パラドクスはゲーマドライバーのレバーを再度開き、同じく必殺技の準備が完了した。

 

パーフェクトノックアウト・クリティカル・ボンバー!!

おらぁあああああああああ!

虚閃(セロ)

 

そして音声がゲーマドライバーから流れると同時に、必殺のキックが放たれる。そしてシャルロッテも虚閃を放ち、それが正面からぶつかった。互いのフルパワーの一撃が正面からぶつかり合い、凄まじい衝撃が一帯に生じ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやぁああああああああああ!!」

「な、そんな!?」

 

パラドクスが虚閃を打ち破った。そして、それがシャルロッテに激突する。

 

「心の滾った俺達の、超強力プレイの勝ちだ!」

「くそ、くそくそくそ! くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

そしてシャルロッテは激しい憎悪に染まった目で叫びながら、パラドクスの必殺キックを食らって大爆発。パラドクスの勝利は確定だ。

 

「よっと。どうだ? 心を躍らせたり、滾らせた奴の力は」

 

そして爆炎の中からパラドクスが飛び出し、シャルロッテに問いかけるように言う。そしてそこに、他の面々も駆けつけてきた。

 

「……オーバーヘブンショッカーの首領が言ってたわね。感情の高ぶりから来る爆発、それは凄まじいパワーを生み出すと。仮面ライダーはともかく、ただの人間があたしに傷を負わせられたのは武器の性能とかだけじゃないのは確かね」

 

そしてパラドクスの問いかけに答えるシャルロッテの声が響くが、爆風が晴れた先にいた本人は下半身が丸ごと消し飛んでいる。しかも、体が徐々に崩れて光の粒子になっていることから、もう長くはなさそうだ。

 

「美によらない強さもあることは認めてあげるわ。そんなあなた達に、冥土の土産に教えてあげましょうかね」

「な、なに? まだ何かあるの?」

 

ここに来てのシャルロッテからの情報に、聞く前から戦々恐々なコウ。その警戒は、必要なものだとすぐ思い知ることとなる。

 

「あたし達破面は、(ホロウ)から進化した順の数字を体に刻んでいて、あたしは№20なの。でも、その数字にはある例外が存在するの」

「れ、例外?」

「1から10の数字を与えられた破面は、十刃(エスパーダ)と呼ばれる最強の破面で、この10人だけは強さの序列に当たるわ」

 

一同に戦慄が走るのは当然だ。あの埒外の力を発揮したシャルロッテ、それ以上に強い破面、それもはっきり最強と言われる個体が10人も存在しているのだから。

 

「うそ……あんたより強いのが、10人もいんの?」

「このレベルの更に上……頭が痛くなるな…」

「まあ、今は過半数が死神に倒されて僅かな生き残りも敵対せずにひっそりと暮らしてるらしいわ。でも……」

 

一応、十刃とやらは空席が多いという話をシャルロッテから聞かされる。しかし、今の服のある物言いから迅はあることを予測。それをシャルロッテ自身に問い尋ねる。

 

「大体察しはついたな。そのうちの何体かが、噂の首領に復活させられたってところだろ」

「ええ。ちなみに10番は帰刃を使っている間だけ1番より強い0番になるんだけど、1番共々その復活者にはいないわ。ただし私の直属の上官、その二人を除いて1番強いのが復活して破面チームのリーダーとして君臨しているのよ。せいぜい、お仲間に知らせてあげることね」

 

敵の戦力について判明したところで、迅はダメもとで更に質問する。当然、その復活した十刃で一番強い破面についてだ。

 

「ちなみに、そいつ何番だ?」

「そこは黙秘、させてもらうわ。せいぜい、陛下の力に…絶望する、のね…」

 

そしてそのまま、シャルロッテは消滅した。

 

「俺はいったん緊急脱出(ベイルアウト)するんで、里に待機しているボスに車用意してもらいます」

「確かに今、何処にいるかわかんないから足がいるね。迅君、任せるよ」

 

そして決着を見届けた迅は、コウ達にそれだけ告げて里へと戻っていく。待機している間、一同はまだ見ぬ強大な敵への警戒を強めることとなった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

~その頃のエグゼイドと青葉と三雲隊~

「空閑、永夢さん、青葉さん!!」

「大丈夫ですか!?」

 

地上に降りた修と千佳は、敵の攻撃で落とされた青葉とエグゼイド、そして遊真の安否を確認する。

 

「涼風さんは、僕がクッションになったからひとまず無事だよ」

「うん、なんとか。ありがとうね、心配してくれて」

「まあ俺も無事だな。上手いこと防御したので」

 

青葉は確かに無事で、遊真も迅と違ってトリオン漏れが生じてはいない。しかしエグゼイドは変身解除してしまっており、ガトリンの攻撃が予想以上に聞いていたことがわかる。

 

「ひとまず、この場を離れて体勢を立て直しましょう。敵の戦力は想像以上なので……!?」

 

修が撤退を提案しようとした直後、何かが迫る音が聞こえてきた。大体の察しは付いたが、やはりガトリンとトリガー・ドーパントが迫ってきた。

 

「あまり手こずらせないで貰いたいものだな。確か、そこの薄い紫の髪の娘が聖なる遺体を持っているそうだが…」

 

少しうんざりした様子のガトリンは、そのままアームと腕の銃口を向けて一同に取引を持ち掛けようとする。しかし、それは無駄なこととなった。

 

「残念ですけど、私は聖なる遺体を持っていません。人に貸しているので」

「な…」

「「「え?」」」

「ほほう、それはビックリ」

 

そしてここで、青葉がカミングアウトする。遊真が一人だけおどけた様子だったが、全員この事実に驚くこととなる。無口なトリガー・ドーパントも、思わず呆けて銃をおろしてしまう。

 

「涼風さん、どういうことなんですか?」

「さっき戦いが始まって説明し損ねたんですが、遺体のパワーで洗脳が解除できる人が遠山さんの飛ばされた先にいるって、迅さんから聞いたので」

 

永夢は青葉から話を聞いて、納得する。修達も同様に、納得していた。しかし、これに対してガトリンは困惑する。

 

(玄界(ミデン)の艇を破壊する任務の時もそうだが、何故奴らは見聞きしていない情報を得られる? 何らかの情報収集の伝手があるのだろうが、それもこちらに来ているのか?)

ダンッ

「うわぁ!?」

「きゃあ!?」

 

ガトリンが思案する横で、トリガー・ドーパントは永夢と青葉に発砲する。咄嗟に飛びのいたおかげでダメージはなかったが、この男はガトリンよりも隙が無く、非常に厄介であることが分かった。しかも、それでガトリンも決意が固まってしまう。

 

「…そうだな、おれ達の任務はお前達の始末だ。今は任務の遂行だけを考えればいい」

「それで、いい。俺達は兵士、戦うことが、全てだ」

(こいつ……普通に喋れたのか)

 

まさかのトリガー・ドーパントが喋ったことに困惑するも、そのまま気を取り直して戦闘態勢を取り直す。

 

(((((ゲームスタート以外、喋れたんだ)))))

 

しかし、それはこちら側も同じであった。遊真ですら、この反応である。

 

「って、今そんな場合じゃない!大変身!!」

【マイティ! マイティアクション!】

 

すぐに正気に戻った永夢は、再度エグゼイドに変身してトリガー・ドーパントに殴りかかる。

 

「まずはお前たちの始末を優先させてもらう!」

「そうやらせるかっての!」

【ガシャコンブレイカー!】

 

直後にガトリンが切りかかってきたので、ガシャコンブレイカーで攻撃を捌く。しかし、アームが八本に増えたため手数は大きく増えた。かなり厳しい状況である。

 

「先生、力を貸すぜ」

「助かったぜ、遊真!」

「一人増えただけで戦況は覆らん!」

 

どうにか遊真が加勢してくれたおかげで捌けるようになったが、修のトリオン量や直接攻撃ができない千佳、トリガーに魔法でダメージを与えられない青葉、とあまり戦況は有利には思えなかった。

 

「エム先生、他に使える装備とか無いのか?」

「レベルの高い奴だと、巻き添えをくらわしかねねぇからな。今使えそうなのは、レベル5のドラゴナイトハンターZ辺りだが…」

 

言いながら件のガシャットを手に取る。しかしその時、異変が生じた。

 

「え? ガシャットが光って…青葉!?」

「な、なにこれ?」

 

いきなりガシャットが発光し、それに呼応するかのように青葉の体もほんのりと光り出したのだ。しかもその時、青葉の脳裏に不思議な声が聞こえる。

 

「え? そうか、そういうことか」

「青葉さん、どうしたんですか?」

「修君、遺体の声が聞こえたんだけど、私の中に持っていた遺体のパワーの残滓があって、それがあれば今光ったガシャットが使えるって…」

「遺体のパワー……そうだ!」

【ドラゴナイトハンター!ゼット!】

 

青葉と修の会話を聞いたエグゼイドは、早速ガシャットを起動する。それと同時に出現したゲーマは、西洋風ドラゴンを模したデザインをしている。そしてそれが周囲を飛び回り、ガトリンとトリガー・ドーパントをけん制する。

 

「そんでもって、受け取れ!」

 

エグゼイドが叫ぶと同時にガシャットのコピーが三つ出現、青葉に本体が投げ渡され、コピーは三雲隊の三人の手に渡った。そしてそのまま、ガシャットの仕様について説明する。

 

「ドラゴナイトハンターZは最大四人プレイでドラゴンを狩る、ハンターアクションゲームだ! だからガシャットも四人で分割使用できるから、お前達でこれを使うんだ!」

「え!? そんな急に…」

「トリオンとバグスターウイルスが干渉しあうなら、それに由来する装備も使えるはずだ! 一回試してみろ!!」

 

急な事態に困惑する修に、必死に呼びかけるエグゼイド。実際、このままでは勝ち目が薄いのは明白だ。

 

「また何かをする気のようだが、それでも俺のすることは変わらん。追撃にかかるぞ」

「…ゲームリスタート」

 

しかしそれを無視して二人はエグゼイド達に武器を向ける。

 

「もう駄目元で試そう。じゃあ、みんな行こう!」

【ファング!】

 

そしてエグゼイドに促された青葉が、三雲隊の面々に呼びかけながらシャットを起動する。

 

「よし、僕達も!」

【ブレード!】

「大丈夫…きっと、やれるはずだ」

【ガン!】

「それじゃあ、おれも」

【クロー!】

 

それに続いて、修達もそれぞれに渡されたガシャットを起動する。そんな中、青葉からある提案が上がった。

 

「掛け声は変身じゃなくて、修君達のと合わせて……は、どうかな?」

「お、アオバ先輩いいですね」

「空閑も青葉さんも、このタイミングでふざけるのは…」

「修君、いいんじゃないかな? こういうのが、チームワークに繋がるのかも」

「千佳…それもそうか」

 

そしてその掛け声と同時にガシャットのスイッチを起動する。

 

『ガシャット起動(オン)!』

【ガッチャーン! レベルアップ!!】

【マイティジャンプ!

マイティキック!

マイティ! マイティアクションX!!】

 

マイティアクションXの音楽が流れると同時に、召喚されたゲーマが分割。そしてそれが青葉と三雲隊の面々に飛んでいく。

 

【アガッチャ!!

ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナーイト!

ドラ!

ドラ!

ドラゴナイトハンター!!】

【アオバ!オサム!チカ!ユウマ!】

 

分割されたパーツは、ドラゴンの頭部状パーツが青葉に装着される。普段被っている熊のフードが、ドラゴンのそれへと変わったとも取れる。

修は右腕と右脚に装甲が装着され、腕と一体になったブレードを武器とするのが見える。レイガストをシールドモードにして左手に持ち、騎士のようなスタイルとなった。

千佳は逆に左腕と左脚に左腕の装甲を装着し、左腕の銃による射撃戦メインとなる。狙撃手(スナイパー)の彼女が銃撃手(ガンナー)に変わったようにも見え、戦いにくそうとも取れるがどう動くのか?

最後に遊真は複製された左右の手足用の装甲が複製され、それを自身の両手足に装備する。脚部パーツだけでは攻撃に不向きなためか、このスタイルとなったようだ。

 

結果、全員がフル武装した戦闘集団へと変貌したのだ。

 

「一斉にパワーアップしたか。だが、何もさせんぞ!!」

 

しかしガトリンはトリガー・ドーパントと共に先手を打ち、一斉射撃で一網打尽にしようとする。

 

「うぉおおおおお!!」

 

しかし修が反射的にレイガストを構え、その攻撃を防ぐ。すると驚くことに、修のトリオン量でも全弾凌ぐことに成功してしまったのだ。

 

(凄い! まさか、これを装備している間はトリオンまで強化されるのか?)

「オサム、ナイスだ!」

 

そして修が困惑するも、その間に遊真が一気に敵へと飛び掛かる。その際、飛び蹴りをガトリンへとむけて放つ。

 

「ぐっ!?(蹴りが重い! 足の強化パーツが、奴の脚力を増強したのか?)」

 

咄嗟にアームを盾の代わりにして防ぐも、アームにひびが入る。遺体のパワーを仲介しての、トリガーとガシャットのパワーの融合。それによる力の伸び幅は相当なもののようだ。

 

「そっちも!」

「ぐぉお!」

 

更にそのままもう一回アームを蹴り、その反動で一気にトリガー・ドーパントへと飛び掛かる。そして右手のブレードと左手に発動したスコーピオンで✕字に切りかかる。一瞬ダメージでのけぞるが、そのまま遊真に銃身を向けるトリガー・ドーパント。

 

「させない!」

 

しかしそれに真っ先に反応した千佳が、なんと左腕の銃をトリガー・ドーパントに放ったのだ。だが驚くことに、それで撃たれた弾は鉛弾(レッドバレット)だった。しかも、ドーパントの体にも作用している。

 

(修君達のパワーアップを見てまさかと思ったけど、これなら撃てる!)

 

そのまま連続で敵に発砲し、一気にガトリンとトリガー・ドーパントの動きを拘束してしまう。

 

「おし、このままハメ技いかせてもらうか!」

「させるか!」

 

そしてエグゼイドも負けじとガシャコンブレイカーで切りかかる。しかしガトリンは重しの付いたアームを、強引に動かしてそれで切りかかってきた。

 

「うぉっと、アブねぇ!」

 

しかし咄嗟にガシャコンブレイカーの刀身でそれを防ぎ、どうにか事なきを得る。トリガーそのもののパワーも上がっていたが、まさかの鉛弾の重量すら振り回せるようになっていたようだ。

 

「よし、私も…メガ粒子レクイエムシュート!!」

 

そんな中で青葉も負けじと魔法を放つのだが、その威力の伸びしろが予想以上で…

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

「きゃあ!?」

「「ぐわぁああ!」」

 

千佳ほど巨大ではないが、大きな魔力の塊が超高速で放たれた。青葉自身が反動で吹っ飛ぶレベルのそれは、標的二体にかなり大きなダメージを与えるに至った。

 

「青葉、大丈夫か? でもナイスだ!」

「あ、ありがとうございます…」

 

その光景を見たエグゼイドは、青葉を起こしてサムズアップする。そして一気に決着をつけようと、エグゼイドは青葉と三雲隊の面々に呼びかける。

 

「みんな、今から必殺技の準備をする! このまま一気に決着をつけるぞ!」

「「「わかりました!」」」

「了解だ、エム先生」

 

全員からの了承も得たところで、青葉からガシャットを受け取るエグゼイド。それをガシャコンブレイカーの装填スロットに差し込む。

 

【ガシャット! キメワザ!】

 

するとエグゼイドの持つガシャコンブレイカーの刀身と、青葉と三雲隊の装備したゲーマにエネルギーが収束される。

 

【ドラゴナイト・クリティカル・スペシャル・フィニッシュ!】

 

柄のスイッチを押して必殺技を発動。そして、エグゼイドと遊真と修は三人でトリガー・ドーパントとガトリンに向けて駆け出した。

 

「「「はぁああああああああ!!」」」

「「うぉおおお!?」」

 

そして、そのまま三人がかりで二体の敵を滅多切りにする。超高速で放たれる連続斬りは、反撃の隙を与えない。ガトリンはなんとか処刑者のアームでガードし、どうにか攻撃を凌いでいた。

 

「ならば、一人でも…」

「「させない!」」

「ぐ!?」

 

そして僅かな隙をついて反撃しようとするが、青葉と千佳がけん制してそれを防ぐ。特に千佳は、ガトリンはガトリンを重点的に撃ってその動きを完全に封じる。そしてそれによって再び出来た隙を突き、再び三人がかりでの滅多切りを再開する。

 

「よし、このままフィニッシュだ!」

「はい!」

「おう!」

 

そしてエグゼイドが呼びかけると同時に、修と遊真も行動に出る。三人ともに攻撃対象である二人から距離を取り、再び武器にエネルギーを収束する。そして一気に駆け出した。

 

「「「はぁああああああああああ!!」」」

 

そしてダッシュ斬りでとどめの一撃を叩き込んだ。

 

「ゲーム、オーバー…」

 

トリガー・ドーパントはそれだけを呟くと爆発し、変身者の賢に一瞬だけ戻ってそのまま消滅した。しかし…

 

「な、何とか耐え凌げたか。なら、このまま追加武装で…」

 

ガトリンは全アームを盾の代わりにすることで、必殺技を耐えきってしまう。しかも、千佳が重しをつけすぎたせいでそれが本人のダメージを抑える結果となってしまった。そしてアタッチメントで追加武装を準備しようとするが、そこで意外な人物が動きに出る。

 

「私を忘れないでください!」

「な!?」

 

青葉がガトリンに駆け寄りながら、魔法で操るペンでクマの絵を描く。そして自身が装備するドラゴンファングを解除、それに合わせて修達の装備も解除され、元のハンターゲーマに合体する。それが描いた四体のクマと並べて合計五体のオプションが口部に炎を収束させる。

 

「ドラゴン&ベアー・バースト!!」

「ぬぉおおおお!?」

 

そして青葉が声高らかに技名を叫ぶと、その炎が一斉にガトリンへと放たれる。凄まじい業火となったそれは、ガトリンに大きなダメージを与え、そのトリオン体を一気に破壊していく。

 

「……クリエメイト、侮っていたようだ。一戦士として、認めよう」

 

そして青葉に称賛の声を与えると、そのままトリオン体を爆散させる。しかしガロプラは緊急脱出を開発している近界の国だったため、そのまま本人はこの場から消失しているのだった。

それを見届けるかのように、ハンターゲーマは消失。青葉もそれを見送る。

 

「やったな」

「はい」

 

エグゼイドは青葉に呼びかけながら拳を構え、青葉もそれに応える。そして互いに拳をぶつけあったのだった。すると、そこに遊真が近寄ってきて呼びかける。

 

「お二人とも、おれ達もいいか?」

「お、わりぃな遊真」

「あ、ねねっちがやった例の」

 

そしてエグゼイドも青葉も遊真がやりたいことを察した。そして両手を構え…

 

「「いぇい」」

 

まずは遊真と青葉がハイタッチし、

 

「「いぇい!」」

 

続いてエグゼイドとハイタッチ、

 

「「イェーイ!」」

(まさか、またやるとは…)

 

そして修と千佳と手をつないで、万歳した。修はまさかの事態に困惑するも、まんざらでもないようであった。ちなみに一同はこの後、迅が呼んだ林藤支部長の車に回収されることとなる。




残りのガロプラ部隊は尺の都合から、総力戦時に回します。
申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。


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第30話「歌舞く鬼」

久しぶりの投稿ですが、まずは幸腹グラフィティ参戦イベントの後で思いついた小ネタを。
あとがきにも小ネタ挟むので、お楽しみいただければ幸いです。

誰かが言った……

通りがかりの船に、旬の海鮮を持ってけと言わんばかりに投げつけて攻撃するイカ、持ってけ大イカがいると。

堅い殻を破ると、中にぎっしりとモッツァレラチーズが詰まった、チーズの実がなる木があると。

濃厚な卵を無尽蔵に産み、それを賭けの景品にした力比べが大好きなドラゴン、タマゴカケドラゴンがいると。

世はグルメ時代、未知なる美味を探求する時代……



「さて、どんなのが来るか気を付けねぇとな」

「千矢、遺体はお前が持ってるからさ。あんまり無茶はすんなよ」

「大丈夫。私も例の悪い人達が許せないから」

 

一方、こちらは響鬼と葉、千矢と仲間達が転移させられたエリア。ヒビキ、葉、千矢がそれぞれで敵の襲来に警戒にあたる。そんな中、小梅はあることに対して不満を募らせていた。

 

「みんな、こんな時にワガママ言うけど…」

「何? どうしたの小梅?」

 

紺が気になって問い尋ねると、一緒に転移させられたある人物を睨むようにして見る小梅。

 

「なんであの似非仏蘭西人が一緒なの?」

「え? 俺?」

 

そこにいたのは、ポルナレフだった。先日の初対面でのショックが、未だに引きずられているらしい。大正浪漫な世界から来た彼女からしたら、西洋文化=お洒落で綺麗な物のイメージが強い。財閥令嬢という立場で触れる機会は多く、且つ憧れの人がその出身なのだ。そんなところに、その出身者だという無骨な見た目で頭と下半身が完全に分離した男が出てきたら、当然ショックを受けるわけだ。

しかしポルナレフも負けじと、反論して見る。

 

「おいおいお嬢ちゃん、似非フランス人は心外だな。俺ほどに騎士道精神溢れるナイスガイなフランス人は、そうそういねぇと思うぜ?」

「騎士道精神溢れる人が、パンツ丸見えなんて暗号でハイタッチするのかしら?」

「うぐ、痛い所を突くなぁ…」

「小梅、確かにこの人はアレだけど、その……」

 

否定できないところを突かれ、ポルナレフも思わずうなだれる。紺はなんとかフォローしようとするが…

 

「ごめんなさい、思いつきません」

「な、なんかすまねぇな…」

 

結局は紺も思いつかず、ポルナレフも申し訳なさそうな様子だ。しかし直後にその空気は、払拭されることとなる。林の向こうから激しいエンジン音が響いてきたのだ。

 

「ぴぃい!?」

「なんか出てきた!」

 

林から飛び出してきたものを見て、ノノが甲高い声で叫んだ。なんとバイクに乗って疾走する女性がこちらに迫ってきたのだ。女性の服装が克己のジャケットとお揃いだったことから、NEVERであることは一目瞭然だ。

 

「はぁあ!」

「うぉっと!?」

 

バイクから飛び降りた女性は、そのまま飛び蹴りをヒビキに向けて放つ。しかしヒビキも咄嗟に、横に大きく飛んで回避する。この中で一番実戦経験のあるベテランなので、これ位は容易かったようだ。

 

「ふっ!」

「やべ!?」

「葉、任せて!」

 

すると女性は標的を葉に変更し、すかさず鋭い蹴りを彼に目掛けて放つ。そこに千矢が割って入り、エトワリウム製の盾でそれを防ごうとした。

 

「はっ!」

「きゃあ!?」

「「千矢!?」」

 

しかし女性の蹴りが盾に当たった瞬間、激しい衝撃とともに痛みが千矢の腕に伝わる。それにより盾を手放してしまい、葉と紺は同時に彼女の名を叫ぶ。

 

「悪いけど、死んでもらうから」

 

そのまま女性は、無慈悲に千矢への死刑宣告をして彼女の頭を潰す勢いの蹴りを放とうとした。

 

「させないぜ!」

「う!?」

 

だがそれも、ヒビキの放ったディスクアニマルに阻まれることとなった。鳥のディスクアニマル・アカネタカか千矢に放たれた蹴りを阻みみ、女性の体勢を崩す。

そしてその隙をついて紺が駆け寄り、どうにか助け出す。

 

「千矢、大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも。うまく防いだつもりだったけど、まだ手がジンジンする…」

 

その言葉が指すように、NEVERの強化された身体能力がすさまじい威力をたたき出したようだ。それを抜きにしても高い格闘センスが伺えるため、重い一撃をどう効率よく叩き出すかがわかるようだ。

 

「だったら、そっちから!」

「ひっ」

 

するといつの間にか女性が小梅の背後に回っており、今度は彼女の頭をめがけて蹴りを放とうとしている。

 

「シルバーチャリオッツ!」

 

しかしそこにポルナレフが割って入り、スタンドを発動。タロットの戦車を暗示する騎士のスタンドが、レイピアを振るい女性へと切りかかった。

女性は並外れた反射神経で回避しようとしたが、チャリオッツの超スピードがそれを許しはしなかった。

 

 

 

 

 

 

ピィイイイイイイイイイイイイイ!

「うおっ!?」

 

その時、いきなり何かが高い鳴き声とともにポルナレフを襲撃してきた。その所為でチャリオッツの動きが止まり、女に攻撃を避けられてしまう。見たところ襲ってきたものは鳥のようだが……

 

「ディスクアニマル? なんで?」

 

ヒビキは確かに見た。黒をベースにした、アカネタカに似たディスクアニマルが飛んでいる。

 

「こいつは消炭鴉(ケシズミカラス)、俺の使っている音式神だ。しかし、ディスクアニマルっていい名前だな。使わせてもらうか」

 

ふと聞き覚えのない声が聞こえたと思いきや、声のした方から野武士のような格好の男が歩いてきた。紫のオーラを纏っている様から、首領の洗脳を受けているようだ。しかも今のディスクアニマルの所有者らしく、男が消炭鴉と呼んだそのディスクアニマルが手に収まる。

 

「俺はカブキ、お前より過去の時代の鬼だ。よろしく」

「鬼? つまり、あんた仮面ライダーなのか?」

「仮面ライダー、確か鬼以外にも異形化して戦う戦士をそう呼ぶんだっけか」

 

カブキと名乗る男、まさかの仮面ライダー襲来に苦戦が必至となる。するとそんなカブキを尻目に、最初の女はヘルメットを脱ぎ去る。その時にヘルメット内に収まっていた長い茶髪が翻って、大人の女の色気が醸し出されている。

 

「こいつは羽原レイカ、ネバーとかいう普通より強い人間だとか」

「勝手に紹介すんな、色ボケ鬼」

 

勝手に名前を告げられ、そのNEVERの女レイカはカブキに悪態をつく。

 

「それじゃあ、そのまま消させてもらうから」

「うぇえ!?」

 

そのまま葉に迫り、蹴倒そうと再び襲い来る。だがそこは実戦経験の高い葉だ。攻撃の回避は割と容易くできるようで、すぐに春雨を抜刀して応戦する。

 

「ちょっと、急すぎだろ姉ちゃん!」

「私はあんたらの始末が仕事なの。NEVERも研究テストの一環で、傭兵してるから」

 

レイカの蹴りを捌きながら文句を言うと、そのまま応対しつつも蹴りを続けるレイカ。

 

「葉、手伝うよ!」

「私も手伝うわ! 恐怖を克服する、それで強くなれるってツェペリさんも言ってたわ!」

 

そして千矢と紺も得物を手にレイカを止めようとする。紺も、最初の共闘でツェペリが話していたことを復唱し、繊維は強いようだ。すると不意に、千矢の赤い瞳が輝いたと思いきや…

 

「紺、危ない!」

「え…きゃああ!?」

「ぬぅううん!」

 

その時、空から何かが落ちてきて、その落下の勢いで殴り掛かってきたのだ。とっさに千矢が気づいたので回避できたが、そいつの拳は地面を大きく粉砕してしまう。落ちてきたそいつは、のっぺりした顔と顎に仮面のようなものがある大男だった。

 

「な、なんなのこの人…」

「破面№25、チーノン・ポウ……オ前ラ、消ス」

 

現れた破面・ポウは鈍いようで、間延びした片言口調が特徴的だった。そしてゆっくりと右腕を振り上げ、こちらへと攻撃準備に入る。

 

「みんな、来るよ!」

「ひぃ!」

 

千矢が周りに呼びかけると、一斉にその場を離れる。だがポウ自身はかなり鈍重で、パンチの動作が超スロウだった。故に回避そのものは、そこまで運動が得意でないノノや臣でもすぐにできた。

 

「ぬぅん!」

「きゃあ!」

「うぉお!?」

「ヤベ!」

「マジか、これ……!」

 

しかし先ほどの一撃からもわかる通りパワーが凄まじく、またも地面は粉砕。地震と間違えそうな巨大な衝撃があたりを襲う。ヒビキ達男衆も体勢を崩してしまう。

 

「なら、その隙を!」

「狙うまでだ!」

 

だがそんな中、状況を読んでいたのかレイカはカブキと二人で大きく跳躍しており、聖なる遺体を奪取すべく千矢に蹴りを放つ。

 

「そうは問屋が卸さないっと!」

 

するとヒビキが新たなディスクアニマルを投擲する。青と緑のディスクが変形、”ルリオオカミ”と”リョクオオザル”となってアカネタカと供にレイカとカブキに飛び掛かる。

 

「く…あぁあ!?」

「うぉお!?」

「「今がチャンス!」」

 

空中でアカネタカの攻撃を受けて落下、ルリオオカミがレイカに噛み付き、リョクオオザルもカブキに顔を殴られる。そしてそこに、ポルナレフと葉が切りかかる。しかし、ここで新たに妨害が入る。

 

「うわぁ!?」

「ザ・フール!? まさか…うぉ!?」

 

仮面を被り、後ろ足が車輪になっている異形の四足獣が現れて飛び掛かったのだ。ポルナレフもよく知る、スタンド”ザ・フール”である。つまり、ポルナレフがよく知るあいつがいる。ポルナレフがかつての仲間であるイギーの出現に大きく動揺、その隙を突かれてチャリオッツは攻撃を受けてしまう。

 

「イギィィァアアアアアア!」

「いてぇ!」

「イギー、お前まで!」

 

どこからが飛び出してきた、スタンド持ちのボストンテリア”イギー”。イギーは自身の名前を叫びながら、葉の腕に噛み付く。幸い、左腕だったので愛刀の春雨を落とすことはなかったが、攻撃は中断されてしまう。

 

「ちっ、やってくれたわね。イギー、とりあえず助かったわ」

 

悪態をつきつつイギーに礼を言いながら、ルリオオカミに噛まれて出血した腕を見る。忌々しそうにしながら、レイカは懐から注射器を取り出してそれを体に打ち込む。すると、急激に傷が塞がっていった。

 

「な、なんだ? あんた、回復薬みたいなの持ってるのか?」

「回復薬? これはNEVERの体を維持する酵素、それを強化した細胞増殖剤よ。これで代謝を一時的に加速させて治しただけ」

 

急な事態に問いかけると、レイカは律義に説明し始める。しかしその内容は、屍人兵士たるNEVERの宿命を打ち付けるものであった。

 

「私たちNEVERは聞いたように、死体を改造して蘇生した兵士。でも、生き返ったわけじゃない。この酵素を定期的に投与しないと元の死体に戻ってしまうし、時間とともに人間時代の記憶や感情が消えていく」

 

レイカから語られた、NEVERの凄まじい宿命。全員が青ざめている様子だ。克己の自身を悪だと語り、その内に凶暴性を秘めた様子は、レイカの言う記憶や感情の摩耗に由来すると思われる。

 

「それだけなら良いわ。でも、私には一つだけ許せないことがある。体温よ」

「た、体温だぁ?」

 

レイカが忌々しそうにしながら告げる、彼女のたった一つの不満。それに思わず聞き返してしまうポルナレフ。

 

「私たちNEVERは死んでないだけで生物とは言えない。だから死体と同じで体温が無い。これが私にとっては、たまらないコンプレックスなのよ」

「ひっ」

 

まさかの真実を聞いた紺が短く悲鳴を上げ、聞いていたレイカ自身はうんざりした様子だった。するとそれを払拭するように、赤いガイアメモリを懐から取り出す。

 

「そしてそんなあたしに最も適合したメモリが……」

【ヒート!】

 

起動したメモリは、これまた翔太郎たちの持つ物と同じ記憶を無い風していた。そしてメモリを投げると同時にあることをする。

 

「ひゃあ!?」

「おう、セクシーだぜ…」

 

レイカの鎖骨に差込口が浮き出てきたため、ジャケットをはだけたのだ。紺が顔を赤らめ、横でポルナレフがウットリしている。そしてその様をジト目で見る小梅の姿があった。

しかしレイカは気にせず、そのまま鎖骨にメモリが刺さると体内に吸い込まれ、炎そのものを擬人化したような女性型怪人”ヒート・ドーパント”となった。

 

「そいじゃあ、俺も行かせてもらうか」

 

直後、カブキも音叉を取り出してそれを鳴らす。直後、それを草履裏でたたいて鳴らすと同時に、桜の花びらが彼らの周りを舞う。

 

「シャア!」

 

現れたカブキ改め仮面ライダー歌舞鬼の姿は、緑を基調とした体に隈取のような赤い淵の仮面、金の肩当といった具合に今までの仮面ライダーに比べて派手な外見をしている。

 

「カブキだけに歌舞伎役者の鬼なんか……おっちゃん、鬼って駄洒落っぽい名前の人ばっかなのか?」

「俺の知り合いだと伊吹鬼(イブキ)轟鬼(トドロキ)、もう亡くなっているけど斬鬼(ザンキ)ってのがいるな。で、猛士(たけし)って鬼の組織の支部が関東とか関西って具合に地方ごとにあるからまだたくさん…」

「談笑してる場合じゃねぇだろよ!!」

 

その時の葉とヒビキの和気藹々とした様子に、思わずポルナレフも論して臨戦態勢に入る。

 

「さて。じゃあ克己に倣って、死神のパーティータイムといきましょう!」

「パーティーよりフェスティバル、祭りのほうがいいな俺は!」

 

そしてヒート・ドーパントと歌舞鬼は、二人がかりでこちらに飛び掛かって来る。しかし、こちらも迎撃準備は万端だ。

 

「俺達も行くぞ」

「よし、いくか。阿弥陀丸!」

「承知しました、葉殿!」

「二人とも、そっちは任せた! 俺はイギーを…」

 

対するヒビキは音叉を叩き、葉も阿弥陀丸を位牌から呼び出すと同時に人魂へと変換。ポルナレフもスタンドを発動しながらイギーに狙いを定めて戦闘を始めようとする。

 

ブゥウンッ

「ぎゃは!?」

「な、なんだ!?」

 

何か車輪のようなものが飛んで来て、ポルナレフを吹き飛ばした。葉が飛んできたそれを見ると、ロープか何かで繋がれているのが見える。しかもそれだけでは終わらなかった。

 

「え、ちょ!?」

「なんかこっちに来た!」

「ピィイイイ!?」

 

そのまま千矢達チームなつみやの面々へとその何かが飛んでいき紺、小梅、ノノの三人がポルナレフと同じ方向に吹き飛ばされる。チームが分断されてしまった。

そんな中、ヒート・ドーパントは今の攻撃に見当がついたのか、攻撃の入ってきた方向を見てみる。

 

「あんた、待機命令出てなかったかしら? 上に消されるわよ」

「うっさいわね。あたしは破面の本能に従ってるの。仮にも元十刃、戦いがあるのに駆り出されない位なら、好き勝手に戦って死ぬ方が本望よ」

 

そこにいたのは女性型の破面で、虫の羽のような意匠が背にある白いゴスロリっぽい服装をしている。しかもヒート・ドーパントの言動から、本来は出撃が無い予定の相手だったようだ。しかも、本人の口から元十刃という、

手には新体操のリボンのような物を持っており、これが先ほどポルナレフらを襲った車輪と繋がってヨーヨーの様になっているようだ。

 

「まあ、いいわ。とりあえず今ぶっ飛ばした連中、あたしが貰っていくから。そこんところよろしく」

 

そしてそのまま、女破面はポルナレフ達の方へと向かっていく。

 

「十刃落ちノ…分際デ……余計ナコトヲ!」

「臣、ちょっとごめん!」

「ていうか、任せたわ」

 

女破面の出現と独断行動に憤慨、ポウはその苛立ちをぶつけるように千矢達を本格的に潰そうとする。しかしただでやられる気はなく、持ち前の身体能力で臣を連れてポウの拳を回避する。

 

「……水を差されたけど、戦闘再開とさせてもらういますか!」

「だな! 喧嘩祭りだ!!」

「がう!」

 

それに続いて、ヒート・ドーパントと歌舞鬼、イギーも揃って襲い来る。

 

「2対3か……少年、気合入れていくぞ!」

「わかった、おっちゃん。阿弥陀丸も行くぞ!」

「あいわかった、葉殿!」

 

これに対して、響鬼も葉に呼び掛けてオーバーソウルを発動させる。不利な状態の中、彼らの戦いは始まった。真っ先にヒート・ドーパントと歌舞鬼は響鬼に襲い掛かり、イギーは葉に狙いを定める。

 

「はぁあ!」

「シャア!」

「おっと」

 

ヒート・ドーパントの炎を纏った蹴りと、歌舞鬼のパンチを響鬼は意外と余裕に回避する。そして反撃しようと、響鬼はとんでもないことを始めた。

 

鬼闘術(きとうじゅつ)鬼爪(おにづめ)!」

 

響鬼が技名を叫ぶと同時に、手の甲から鋭い爪が生えたのだ。そしてその状態で構えを取り、二人の敵に立ち向かっていく。

 

「ほぅ、鬼闘術まで使えるか。やるじゃねぇの」

「なるほど。鬼ってのも、私らとも負けない人外魔境な連中なのね」

 

対して歌舞鬼も音撃棒を構えて迎え撃ちにかかる。ヒート・ドーパントも今度は両腕に炎を纏わせ、殴りにかかってきた。

 

「おっし、行くぜ…「真空仏陀斬り!!」うぉお!?」

 

しかしそれを葉も黙ってみているわけにいかず、必殺技による妨害を入れる。そしてそれはうまくいき、歌舞伎は攻撃を阻止されてしまう。

 

「ナイス少年! はぁあ!!」

「く!? ちぃ、鬱陶しい」

 

そして反撃に乗り込み、爪による一撃をヒート・ドーパントに叩き込む。それを食らったヒート・ドーパントは、距離を取って火の玉を投擲してきた。

 

「はぁ…………はぁああ!!」

 

すると響鬼は口から紫の炎を吐き出し、それで火炎弾を相殺してしまった。仮面ライダーらしからぬ、おどろおどろしい技である。

 

「ほげぇ……おっちゃん、スゲェ攻撃すんだな」

「ガウ!」

「う!? やったな、おい!」

 

だが葉が呆然としながらその様を見ていると、イギーのザ・フールが攻撃を仕掛けてきたのだ。隙だらけの所を突かれ、会費もできなかった。そしてそれに対し、オーバーソウルによる一撃をザ・フールに叩き込んだ。

 

「はぁ…やっぱだめか」

 

しかし体を砂化できるスタンドのため、同じ魂由来の力でならスタンドを攻撃できるという法則も通じなかった。どうしたものかと思っているその時…

 

「「きゃあ!?」」

「うわぁあ!」

 

千矢と臣が大きく吹っ飛んで来て、それにぶつかって葉も倒れてしまう。

 

「コレガ…本物ノ…パンチダ!」

 

二人が飛んできた先に視線をやると、そこには拳を構えたポウの姿があった。どうやら奴の攻撃を受けたらしく、ポウの構えている拳から煙が上がっているのが見えた。

 

「ガウ!」

「やべ!」

「あ、任せて!」

 

すかさずイギーが攻撃を仕掛けてくるも、すぐに立ち上がった千矢が盾を構えてギリギリで防げた。

 

「…盾、傷一ツ…無イ?」

 

その時の様子を見たポウは遠目ながら、千矢の持つエトワリウム製の盾が全くの無傷であったことに驚いた様子だ。あまりの頑丈さに、パワーに自身のあったポウは、次第に怒りを見せるようになる。

 

「ユ…ユル……許サン!!

 

激昂して大きな声を上げるポウは、響転で一瞬にして葉達の背後に回ってしまう。

 

「速っ!?」

「ヌゥウン!!」

 

そしてそのまま、ポウはパンチを放つ動作に入る。咄嗟のことで会費も防御も間に合わず、ポウの攻撃を許してしまう。しかし、そうは問屋が卸さないといったところか。

 

「はぁあああ!」

「ウグッ!?」

 

響鬼が飛び蹴りをポウの顔面に叩き込んだのだ。それにより攻撃動作を解除、大きく地面に倒れこむこととなった。

 

「ついでに、もういっちょ!」

「ガウ!?」

 

そして響鬼は空中で音撃棒を構え、灯した炎を放ってイギーの足元を爆破する。スタンドに攻撃が効かず、本体が小型犬なうえに洗脳されているため直接攻撃はできない。けん制する分には、上出来なものだろう。

 

「おっちゃん、助かった…」

「いいってことよ。でも、数の優位もあって戦いづれぇな」

「ヒビキさん、あの二人はどうなったの?」

「ディスクアニマル達に足止めしてもらってる。しばらくは大丈夫かもな」

 

千矢の質問に答える響鬼が指さすほうには、十数体のディスクアニマルの群れがヒート・ドーパントと歌舞鬼を妨害している様子が見えた。確かに、大丈夫そうだ。

 

「けど、早めに数を減らさないとまた不利になっちまうぞ。どうすっかな…」

「あの犬も操られてるんだっけ? なら千矢の持ってる遺体で、味方に引き込めないかしら?」

 

しかしやはり懸念も響鬼にはあり、臣もどうにかするための提案をするも不利は変わらない。するとその時、葉がある作戦を思いつく。

 

「みんな、オイラに作戦がある。阿弥陀丸も、聞いてほしい」

「「「え?」」」

「拙者にも? 葉殿、どういうことでござるか?」

 

面倒くさいのが嫌いが信条な葉の発言に全員が口をそろえて困惑し、阿弥陀丸もオーバーソウル状態のまま疑問を口にした。そして作戦を聞いたのだが…

 

「……葉殿、本気でやるのでござるか?」

「うん。なんか、阿弥陀丸さんがかわいそう……」

「すまん。オイラ、頭脳労働は苦手だから、こんなのしか浮かばんのよ」

 

阿弥陀丸も千矢も乗り気ではなかった。当の葉本人も申し訳なさそうな辺り、阿弥陀丸に負担がかかるようである。

 

「でも、確実だろうな。実行するかは別で、あのでかいのが起きそうだから俺が足止めしてくる」

 

言いながら響鬼は、再びポウのもとへと駆け出していく。しかもその間にイギーが再びザ・フールを発動。こちらに狙いを定めてきた。

 

「悩んでる暇はなさそうだ。すまん、阿弥陀丸」

「葉殿、拙者も覚悟を決めた。思う存分やってくれ」

「こうなったら、私も行くよ」

 

結果、その作戦を実行することとなった一同。そしてそのための第一段階として、なんとオーバーソウルを解除、ヒトダマモードの阿弥陀丸を手に持ち始めた。

 

「ワウ?」

 

突然のことにイギーも困惑するが、直後にそれは実行された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒトダマ豪速球!!

うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!

「イギャアア!?」

 

なんと、葉はヒトダマモードの阿弥陀丸を全力投球したのだ。流石にこれは予想外で、イギーも仰天している様だ。

 

「うりゃああああああ!!」

 

そこにすかさず千矢が飛びかかり、手にした聖なる遺体の光をイギーに当てようとする。果たして、作戦はうまく行くのか?

 

~ポルナレフと紺達うらら3名VS女破面~

「そらそらそらぁあああ!」

 

女破面は先程と同じくヨーヨーのような武器を投擲し、ポルナレフ達を狙う。巨大な車輪による質量攻撃で、かつ軌道の読みにくい動きをするのだ。苦戦は必至である。

 

「ピャア!?」

「ノノ、危ない!」

 

そんな中でノノが躓いてしまい、車輪攻撃が迫ろうとしている。しかしそれを黙った見過ごすポルナレフではなかった。

 

「チャリオッツ、あの嬢ちゃんを助けろ!」

 

すかさずチャリオッツのスピードでノノのすぐそばまで到達、そのまま抱き上げて距離をとる。

 

「くそぉ、けったいな武器を使うねーちゃんだと思ったら、ものすげぇ避けづらいな。軌道が全然読めねぇ」

「ど、どうしようマツコさん?」

「ゴメン、ノノ。マツコモ、ワカンナイ」

 

ポルナレフが悪態をつく横でノノが人形占いでマツコに問いかけるも、いい結果は得られなった。しかしそんな中、意を決して行動を起こした少女が1人。

 

「男の人がいるから恥ずかしいと思ってたけど、背に腹は変えられないわ。ポルナレフさん、今からやることは戻った後でみなさんには言わないでください」

「? 何する気だ?」

 

するとその人物、紺はポルナレフに一つだけ忠告をして行動を起こした。いきなり両手で狐のポーズを取ったかと思うと、祝詞を唱え始める紺。

 

「奇々も怪々お招きします

こっくりこっくりおいでませ

この身を差し出す御代わりに、どうか答えてくださいな

いざ、憑依!!」

(憑依? 葉と違って、自分に何かの霊を取り憑かせるってことか?)

 

ポルナレフがその行動と祝詞の内容に困惑していると、それは起こった。

 

「よし、久々の出番じゃ……ありゃ? 千矢がおらんぞ」

 

紺に憑依したと思しきその何者かが、偉そうな年寄り口調で辺りを見回す。そしてポルナレフの顔が視線に入る。

 

「で、代わりにむさ苦しい西洋人がおるが、こいつは?」

「俺はポルナレフというのだが、むさ苦しいって、手厳しいな……で、紺の嬢ちゃんに取り憑いたアンタは何者なんだ?」

「妾はこっくり占いで呼び出される狐の霊。本来のこっくり占いは硬貨を依り代にするんじゃがこの娘、紺は自分の体を依り代にする術を会得しての」

「え、ええそうです。ただ、お狐様がついている間は偶にはしたないことしてしまうんで、周りには秘密に…」

 

紺に乗り移ったお狐様はそのままポルナレフに自己紹介し、紺が行使した術の概要を簡単に説明する。すると紺に人格が切り替わり、そのまま説明を引き継ぎながら恥ずかしそうにする。

 

「あ、ああ……なるほどな(言った傍からこれか……確かに隠したくもなるな)」

 

困惑しながらも納得するポルナレフの視線には、再びお狐様に人格が切り替わり、犬のように足で首を掻き始めた紺の姿があった。

しかし行動はともかく、このお狐様は有能だった。

 

「で、あのへんちきりんな小娘がお主等を襲ってきて、どうにかする手段が欲しいと言ったところじゃろう」

「お、やっぱりお狐様すごいわね」

「なるほどな、任せたぜ」

 

そしてそのまま、お狐様に打開策の発見を任せる。結果、それはそのまますぐ打開策は見つかった。

 

「うむ。あの小娘、次はノノを狙ってくる。それにあの武器と繋がっている紐のようなもの、普通に剣でも斬れそうじゃから、思い切り叩き切ってしまえ」

「よし、任せた」

「うん。私も、がんばってみる」

「ノノ、私も手伝うわ」

 

そしてその回答を聞き、ポルナレフとノノが動き出した。そしてまず、小梅は待機しながら箒を準備する。

 

「見つけた、一番弱そうなの!!」

 

そしてノノとポルナレフが二手に分かれると、女破面が真っ先にノノを狙う。しかしその直後、

 

「わかってたわよ、あんたの考え!」

「何!?」

 

小梅が箒で飛びながらノノを救出、女破面の巨大ヨーヨーは地面にめり込む。

 

「行くぜ、シルバーチャリオッツ!!」

 

そしてすかさず、ポルナレフとチャリオッツの攻撃でヨーヨーを繋ぐ紐が切り裂かれた。さらにお狐様が前に出てくるのだが、ここで彼女にも動きが。

 

「狐の恐ろしさ、舐めるでないぞ小娘!

 

 

そぅれ♡」

 

可愛らしい声音と供にポーズを決めた直後、なんと地面にめり込んだヨーヨーが浮き上がる。

 

「からの、そりゃあ!」

「んな!?」

 

さらにそのまま吹っ飛び、女破面にヨーヨーが衝突して大きく吹き飛んだ。紺に憑依したお狐様は、念力を使ったのだ。

 

「ひょえ~……スゲェじゃないの」

「どうじゃ、すごかろう? 妾の力はこんなものではないぞ!」

「お? 外にどんなことが出来んだ?」

 

ポルナレフが感心すると、お狐様も調子づいてそんなことを言う。思わず気になったポルナレフも、そのまま質問に入ってしまった。

 

「んまぁ、そうじゃな……紺が今すぐ油揚げをお供えしてくれるなら、すぐにでも見せられるんじゃがの」

「ちょっと、お狐様! 今戦闘中だから後にして! 私が知っている範囲なら、あと金縛りが使えたはずですけど…」

「紺、流石にネタバラシはやめて欲しいんじゃが…」

「あ、ごめんなさい…」

「申し訳ないと思うのなら、油揚げのお供えやっぱり増やしてもらおうかの?」

「ちょ!?」

 

紺が肉体の主導権を取り戻してお狐様に話しかけ、そのままポルナレフの質問に代わりに答える。すると再びお狐様が主導権を奪い、その次に紺に戻って…を繰り返す光景が一同の目の前で広がっていた。

それを見たポルナレフの感想は…

 

「なんか、人格破綻者なうえに情緒不安定な感じだな」

「うん、本当に……」

「ですよね……」

 

まさにその通りだった。小梅とノノも同じ感想らしい。

 

 

 

「くそ、コケにしやがって……

 

 

 

 

 

 

 

掻っ切れ……車輪鉄燕(ゴロンドリーナ)ぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

女破面が叫ぶと、その姿が白い煙に包まれる。

 

「な、なんだぁあ!?」

「! お主ら、逃げろ!!」

 

その様子にポルナレフらも動揺を隠せずにいたが、紺に乗り移ったままのお狐様が叫ぶ。そのすぐに煙の中から刃のようなものが飛んできた。咄嗟の叫びもあって全員が回避に成功するも、煙が晴れた先を見て全員が戦慄した。

 

「随分と、舐めてくれたじゃないの。この私に帰刃(レスレクシオン)、真の姿の開放を使わせるなんて…」

 

現れた女破面は、虫の前足を思わせる長い両腕、連獅子のような白いと長髪同じく白い毛に覆われた両足、背中には先ほど飛ばした刃が連なっている巨大な翼。

人型の姿に、それらのパーツが付随され巨大な姿となっていた。

 

「全員ぶっ潰す! この破面№104チルッチ・サンダーウィッチがね!」

「おいおいおいおい! こんなごついの来るって、聞いてねぇぞ!!」

 

女破面改めチルッチの姿に、スタンド使いとして歴戦の猛者となったポルナレフですら、動揺を隠せずにいた。

強敵の襲来、果たして彼らはどう立ち向かうのか?




アランカル大百科・エトワリア出張_前篇

ギン「どうも、市丸ギンいいます。今回、エトワリアのみなさんに破面について知ってもらおうと思い、参上しました。まあ尺と描写の都合もあるんで、今回は代表者としてきららちゃんと聖なる遺体に選ばれた五人だけに来てもらいましたけど。よろしゅうな」
一同『よろしくお願いします』
きらら「それで、挨拶までしたはいいものの……誰ですか?」
ギン「さっき自己紹介したでしょ、市丸ギンって? とりあえず元死神で破面、ひいてはその前身の虚を倒す仕事してた身です。なので、彼らのことは専門家みたいなものなんで、よろしく」
ゆの「そ、それはありがとうございます。でも本当、急に出てきて何者なんですか?」
ギン「細かいこと、気にせん方がええよ。メタな話、俺もう死んでるはずやのに出て来とるしボソッ」
一同『え?」
ギン「あ、なんでもないよ。それじゃあ、まずは虚と破面についてから」

モニターに鎖が胸についた人間が映る。

ギン「まず、俺らのいた世界では生き物の魂の胸に”因果の鎖”て呼ばれる鎖がついててな。それが肉体と魂をつないで、千切れてまうと肉体と魂の繋がりが消えて、生き物は死ぬ」
青葉「なるほど。虚が悪霊っていうのは、この後で成仏できないで変化してしまうんですね?」
ギン「お、青葉ちゃんゆうたっけ? 鋭いね。普通は俺ら死神が死後の世界”尸魂界”に連れて行く、君ら風に言う成仏があるんやけど、それが出来ないまま放置されると鎖が侵食していって、胸に穴が空く。この穴は”心を失くした”って意味で、それによってその魂は異形の化け物の姿へと変じる。これが虚や」

映像が骸骨のような白い仮面の怪物に代わる。

夢路「悪霊っていうか、マジに化け物だな。これが仮面を剥いだら、人型に戻るってことか?」
ココア「みたいだね。元が人間の幽霊なら、むしろ当たり前なのかも」
ギン「まあね。でも、仮面剥いで完全な人型になるんは、メノスっていう上位種、その更に最上位だけなんよ」

モニターが切り替わり、黒いローブの巨人虚、其れよりいくらか白い虚、小さな人型虚が映る

ギン「虚は人間の魂を捕食するんやけど、中には共食いする個体もおってな。他の虚を食らって幾百、幾千の虚が混じり合った大虚に進化する。それで大虚にも進化の段階があって、でかい順にギリアン、アジューカス、ヴァストローデになっていく。一番小さいヴァストローデが一番強くて、これが破面になると確実に人型になるわけや」
千矢「じゃあ、私が戦っている人、すっごく大きかったよね?じゃあ、その一番強いやつじゃないってことかな?」
ギン「そうやね。でも、運よくアジューカスかギリアンで人型になるやつもおって、そういうのは大体が真の姿を開放すると原型留めんほどゴツくなったりするもんやし。見た目だけで強さが図れんから、気ぃ付けるように」

そして放送時間終了間近に。

ギン「それじゃあ、次回は破面の能力について解説するからお楽しみに」
きらら(さっきの呟き……まさかギンさん幽霊か何かなんですかね?)
青葉(でもそれだと、さっきの説明と矛盾しないかな?)
夢路(たぶん、これは知らない方が幸せなたぐいの話だと思うぞ)
ゆの&ココア&千矢「?」


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第31話「精霊の劔」

ようやくかけましたが、まずはこの一言。
先日、ヒロシこと藤原啓治さんの訃報がありました。ガンらしいです。
新型コロナで志村けんが亡くなったニュースを聞いて以降、漫画家や声優、俳優といった方々の安否が不安でしたが、まさかの……
ご冥福をお祈りいたします。

P.S.あとがきはアランカル大百科後編になります。ちょっとしたゲストも追加するので、お楽しみに。


「変な髪形のあんたから、スライスしてやるわ!!」

「うぉお!?」

 

突如として真の姿を披露したチルッチ。まずは最優先でポルナレフを潰そうと、その巨大な翼を振り回して切りかかってくる。

 

「だったら、先にその羽をぶった切ってやるよ!」

 

そして攻撃を避けたポルナレフは、チャリオッツの剣でチルッチの羽を切り落とそうとする。しかし切っ先がその羽に触れた瞬間、「攻撃をやめないといけない」考えに至った。

 

「!?」

「え、いきなりどうしたんですか?」

 

咄嗟にスタンドを解除し、距離をとるポルナレフ。その様子に紺は困惑するも、すぐにその理由を説明した。

 

「あの羽なんだが、剣が触れた瞬間になって初めてわかった。ものすげぇ速さで細かく振動している。触れた物に斬撃と一緒にその振動を直に叩き込む攻撃のようだが、下手すりゃ触ったそばから破壊さえれかねねぇ」

「え?」

 

紺はポルナレフの話を聞き、それを反芻して少しずつ理解していく。

 

(つまずいて怪我したところを触ると痛いからそこを触るなんてもってのほかだけど……だとしたらアレで斬られたら!?)

 

チルッチの攻撃の余りにも残忍で攻撃的な力に、紺は青ざめる。幽霊や妖怪の類が苦手な彼女だが、殺意や暴威など自らを害するものへの強すぎる恐怖に当てられてしまったようだ。

昨日のマライアと交戦した際もそうだったが、今回チルッチの攻撃による痛みがポルナレフの解説と相まって、より鮮明に感じ取れたのだろう。

だからだろうか。それは起こってしまった。

 

「嬢ちゃん、一旦距離を……って、なんか震えてねぇか?」

「あ、あぁ…」

 

ポルナレフの問い掛けにも答えられず、ひたすら青白い顔で震え続ける紺。相手が本気で自分たちの命を奪おうとしている、そうはっきりと認識してしまった所為だろう。

 

「……紺は今、動けんようじゃ! 妾がしばらく主導権を取ろう!」

「みたいだな。頼むぜ、キツネの姐さん」

 

咄嗟に憑依したお狐様が肉体の主導権を取り、どうにか退避に成功する。そしてそのままお狐様はポルナレフに自身の読み取った紺の感情を語る。

 

「ポルナレフといったか? 今、紺はあやつの羽で切られた痛みを想像して怯えておる様じゃ。お主が安易にあやつの能力を明かした所為かの?」

「ちょ、それは流石に……いや、確かにデリカシーなさすぎたな。すまない」

「喋っている暇なんかないだろ、人間!!」

 

二人が話している間も御構い無しに、チルッチは攻撃を仕掛ける。放たれた刃の羽が再びポルナレフたちに迫ろうとしていた。

 

「紺から離れなさい!!」

「あだ!?」

 

しかし不意に、小梅がチルッチに魔法を放つ。不意を突かれた攻撃で羽の制御が出来ず、放たれた羽も明後日の方向へと飛んで行った。

 

「くそ、ヘンテコ頭の始末に失敗か……で、その原因は」

「ひぃ!?」

 

攻撃を妨害され、額に青筋を浮かべるチルッチ。そして振り返った彼女に睨まれ、小梅は短く悲鳴をあげた。

しかも先ほど飛ばした羽の再装填も完了してしまった。

 

「小梅、危ない!」

(な!? 紺、急に立ち直った!)

「させてたまるか!」

 

その時、不意に紺が復活してお狐様も驚愕、主導権を反射的に返してしまう。どうやら、友の危機から反射的に恐怖を乗り越えたようだ。それに合わせるようにポルナレフも突撃していく。

 

「鬱陶しいんだよ!」

「ひゃあ!?」

「うぉお!」

 

しかしチルッチは再度羽を放ち、二人を妨害してしまう。牽制目的の なのか当たる様子の無いことから、もう狙いは小梅一筋のようだ。

 

「ガキ……どうやらあんたから死にたいらしいわね。上等じゃない」

「あ、あんたみたい性格悪そうな女に、み、未来の魔女王が、まま、負けるわけが……」

 

チルッチはそのまま小梅に迫っていく。それに対して啖呵を切ろうとする小梅だが、声も足も震えており、明らかに無理をしている。

するとその時、ノノが小梅の前に躍り出てチルッチの進路を遮りろうとする。

 

「こ、小梅ちゃんに近づかないで!」

「ちょ、ノノ! バカなことはやめて逃げなさい!」

「いや……友達を置いてなんて、出来ないよ。逃げるなら、小梅ちゃんも一緒じゃないとやだ!」

「これ相手に二人で逃げるなんて無理よ! ノノ、私は放っておいて!!」

 

小梅とノノの、互いを心配しての遠ざけ合う言葉。げに美しきは友情だが、目の前の敵はそれで止まる聖人ではない。

 

「それじゃあ、お望み通り纏めて細切れにしてやるわ!」

「「ひっ!?」」

 

そして再び巨大な翼を構え、二人を切り裂こうとした。

 

 

 

 

 

「う!? 砂が目に……」

 

いきなり砂嵐が生じ、チルッチの目にも砂が入って攻撃を中断してしまう。しかし、いきなり砂嵐が固まってそれは現れた。

 

「ガァアアウ!!」

「な!?」

 

その直後、固まった砂嵐は仮面と車輪の後ろ足の四足獣へと変貌、チルッチを殴り飛ばした。先ほど敵として迫ってきた、ザ・フールである。

 

「あれって……さっきの子犬が呼び出していた?」

「つーことは、まさか!?」

 

紺が困惑気味に呟くと、ポルナレフはそれに対してあることを確信した。愚者を名乗る勇者イギーの復活である。

 

「ガウ!」

「イギー! 葉達が洗脳を解いてくれたのか!」

「みたいですね! 千矢が遺体を持っていましたけど、まさかここで……」

 

ポルナレフも紺も、このタイミングでの増援に思わず笑みがこぼれる。特にポルナレフは、ヴァニラ・アイスとの決戦時に惨殺されたイギーと、生きて再会できたので喜びもひとしおだろう。

 

「ふぅ〜……ガウ!」

 

ポルナレフ達の反応をよそに、イギーは呆れたような鳴き声を上げる。そしてチルッチに狙いを定めて、再びザ・フールを発動した。

 

「洗脳が解けちゃったわけか……まあ、スタンドなんて私らにとって未知の能力、最初っから信用してないけど!」

 

一方のチルッチは特に悔しそうな様子はなく、そのまま体制を整えなおしてイギーに向き合う。しかし、それはポルナレフ達も同じだった。

 

「戦闘要員が増えたなら、反撃のチャンスだぜ!」

「はい。このまま切り抜けましょう!」

「さっきは怖かったけど、今度はそうはいかないわ!」

「うん。みんな、頑張ろう」

「ガウ、ガウ!」

 

こうして、ポルナレフ組は反撃に入るのだった。

~その頃、葉達~

「上手くいったみたいだな」

「だね。あとはこの人をどうにかしないと…」

「そうね。あとはこの大男をどうにかすれば…」

 

葉達はヒトダマ豪速球作戦が上手くいき、イギーの洗脳が解けてポルナレフ達の救援に向かったのを見送った後だった。そして千矢と臣の言う通り、ポウをどうにかしようと向き合う。

のだが……

 

 

 

 

 

 

ポハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

 

しかしいきなり大声で爆笑するポウ。急な事態に面食らう一同を気にせず、ポウは続ける。

 

味方ガ、増エタカラト…言ッテ、オ前ラノ……ヨウナ、雑魚ガ…バラガン陛下ノ忠実、ナル僕……デアル、私ニ敵ウモノカ!

(((変な笑い方している、この人……)))

 

ポウの口から彼の上官らしき人物の名が飛び出すも、臣を含めて全員がポウの笑い方に気を取られてしまう。

しかしその間にポウは3人のバックに一瞬で移動し、再び拳の一撃を叩き込む。

 

「おっと!」

「危ない!」

 

しかし葉は臣を抱えて飛び上がる千矢とともに、上手く攻撃を避けることができた。

 

「真空仏陀斬り!!」

「うりゃああ!」

 

ついでに、葉も一撃を叩き込み、千矢もその隙をついて斬りかかった。

 

「ムグッ……虚閃!」

 

しかしポウは今の攻撃を耐え抜き、口にエネルギーを収束。それによって着地した瞬間を狙い、虚閃を放ってきた。

 

「マジか!?」

「これマズい!?」

 

あまりにも派手な一撃、それも遠距離攻撃を放ってきたため3人ともギョッとするが、どうにか回避に成功する。

 

「今の、隙がでかいのが幸いだったか……でも威力がとんでもねぇから、食らわねぇようにしないと」

「うん。あれは、流石に防げないかな?」

「回復は……食らった時点で消し飛んじゃいそうね」

 

ポウの放った虚閃のあまりの威力に、戦慄する一同。それは歌舞鬼とヒート・ドーパントを相手取っていた響鬼も、同様であった。

 

「おいおい、あれは流石にとんでもないな…」

「よそ見している場合じゃねえだろ!!」

 

しかしその隙をついて歌舞鬼は音撃棒に灯した火炎を、響鬼の攻撃と同じ要領で放って来た。

 

「うぉっと!」

「私もいるんだっての!」

 

どうにか回避するも、更にヒート・ドーパントが飛び蹴りを放ってくる。しかし響鬼は着地と同時に地面に倒れ伏し、そのまま転がって攻撃を回避した。

 

「早くに倒して、若人達の救援に行かねぇと…」

 

攻撃を捌きながら、響鬼は葉やポルナレフらの救援に向かうことをまず考えている。

先刻、最初に対面した破面のノイトラ。奴は長身痩躯の体格でありながら、身の丈以上の巨大な武器を振るう膂力に加えて虚閃という広域殲滅向きの攻撃技、主食となる魂を周囲から吸い尽くす技まで持っている。この場にいるチルッチとポウは流石にノイトラに劣るであろうが、破面という常軌を逸した戦闘力を保有する存在が二体もいる時点で、響鬼は警戒レベルを最大まで引き上げているのだ。

 

「「てゃああ!!」」

「やべ!?」

 

しかし響鬼の思案もよそに、歌舞鬼とヒート・ドーパントは攻撃の手を緩めない。

そんな中、響鬼は脳裏に今朝の特訓の記憶がよぎる。

 

〜回想〜

「そういや、この世界っていろんな時間軸と繋がってる的なことを渡達から聞いたっけ?」

 

夜明け前に特訓に出たヒビキは、太鼓を背負いながら里の裏山を登る中でふと思い出した。

渡や紘汰、ハオといった超越者達から聞いた、このエトワリアと繋がる世界の数々。これらの時間軸は幾つもの時間軸を持っているという。

例えば、ゆの達の世界は2000年代なのに対し、青葉や夢路達の世界は2010年代、自分が関わった千矢は大正時代の出身でココア達の世界に至っては日本なのに西洋風の街並がごく当たり前なのだという。同じ地球がベースながら、非常に多様な時代背景、文化体系なのである。

 

「ライダー以外の戦士の世界と合わせても、スゲェ色々な世界があったな。確かマルチバース、だったか? 平行世界よりそっちの方がしっくり来るとかなんとか」

 

多元宇宙論とも称される、異なる世界、または宇宙が壁を挟んで無数に存在するという理論。仮面ライダー達やその他の戦士達の全く異なる種類の力。同じ地球でもファンタジー寄りや科学寄りで様々な力があり、ハオ達シャーマンの世界の様に死後の世界の有無という極端な違いまである。更にルフィ達の世界や近界(ネイバーフッド)という完全な異世界及びそれらと繋がる地球まである。

これを考えると「もしもの世界」である平行世界よりもしっくり来るかもしれないと、渡達は考えているようだ。

 

「だから時空が入り混じっているらしいから、夏限定のアレが使えるかもな」

 

響鬼の呟くアレ。現在は強化アイテムのおかげで強力な変身形態を使えるが、それが完成するまでは特定の時期限定で出現する魔化魍に有効な特殊強化形態を、己の特訓だけで発現させていたのだ。それも、その時期が来るたびに特訓し直してだ。マルチバースの交差するエトワリアなら、その形態及び特訓が出来るのではと思いついたのである。

そして、開けた場所を発見するヒビキ。

 

「ここなら良さそうだ」

 

そして背負っていた太鼓をそこに置き、腰に差していたバチを抜いて構える。

構えると同時に目を瞑り、深呼吸。夜明けは近いが、まだ山の動物達も魔物達も眠ったままで、辺りには他に物音は無い。

 

 

 

 

 

「はぁあ!!」

ドン!!

 

目をカット見開くと同時に、勢い良く太鼓を叩き始めるヒビキ。そしてそれと同時に、山に住む生き物達は一斉にざわめき始める。

その後、アルシーヴ襲来の時までひたすら太鼓を叩き続けていたヒビキであった。

〜回想了〜

「ぶっつけ本番、やらせてもらうか!」

 

思い返していた響鬼は、そのまま叫んで歌舞鬼とヒート・ドーパントから一気に飛び退く。そして音撃棒を構えながら力み始める。

 

「はぁああああああ……」

「な、何?」

 

突如として響鬼の体に炎が灯り、ヒート・ドーパントと歌舞鬼が警戒を始める。いつも変身時に体に纏う紫の炎では無く、赤い炎であった。

 

「はぁあ!!」

「「な!?」」

 

掛け声とともに炎が弾け飛び、歌舞鬼達が驚愕した。そこにいた響鬼の姿は、先ほどまでの黒と紫を基調としたもので無く、赤を基調とした派手な外観へと変じていたのである。

これこそが、夏に現れる特定の魔化魍に有効かつ、通常の響鬼を上回る戦闘力を持つ強化形態。その名を……

 

 

響鬼紅(ひびきくれない)

 

赤く染まったこの姿は持続時間は一時間が限界だが、今回は短期間の特訓かつ特殊な環境で無理やり変身したため、更に短い時間しか維持できない。しかし、それでもこの場を乗り切るだけの戦闘力は発揮可能だ。

 

「行くぜ!」

 

叫ぶと同時に、響鬼は残像が見えるスピードで一気に歌舞鬼の懐へと飛び込む。

 

「うぉお!? 速い…」

「はぁあ!!」

「ぐはっ!?」

 

余りのスピードに歌舞鬼が驚愕し、その隙をついて鋭い拳を叩き込む。その余りのパワーに、歌舞鬼は大きく吹き飛んだ。

 

「舐めんじゃないわよ!!」

 

するとヒート・ドーパントはその隙をついて、響鬼の延髄を目掛けて鋭いハイキックを叩き込もうとする。

 

「てゃああ!!」

「きゃあ!?」

 

しかし響鬼は振り返りざまにハイキックを放ち、ヒート・ドーパントのキックを相殺した。いや、大きく体勢を崩す様子から、パワーの大きな差により逆にヒート・ドーパントが足を痛める結果になったようだ。

 

「くそがぁあ!」

 

その時、歌舞鬼の投げたディスクが再び消炭鴉へと変形。これで一矢報いようとするようだが…

 

「おっと!」

 

腰に掠った程度で、大したダメージにはなっていなかった。

 

「ぐふっ!?」

 

そしてそのまま響鬼は、歌舞鬼の懐に飛び込んで膝蹴りを叩き込み、怯ませる。

 

「そんでもって!」

「ぐわぁあ!?」

 

そして歌舞鬼の腹を蹴って、その勢いで態勢を立て直していたヒート・ドーパントに急接近する。そしてベルトの巴紋を彼女の体に取り付け、続けざまにヒート・ドーパントの胸を蹴る。

 

「うわ!? マズい……」

 

そしてその勢いでバック転を披露。響鬼が宙を舞う最中にヒート・ドーパントの腹部に付けられた紋章は肥大化し、音撃鼓と化す。そして着地と共に響鬼はそこを目掛けて音撃棒を振るった。ヒート・ドーパント自身もその様子から危険だと判断するが、咄嗟の蹴りで動きを封じられ、防御も回避も間に合わない。

 

「音撃打・爆裂真紅の型ぁああ!!」

ドドンッ!!

「う!?」

 

重い一撃が入り、一気に怯むヒート・ドーパント。しかし、これだけでは終わらない。

 

「はぁあああああああああ………」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

「あ、ぁ…あ゛ぁあ!?」

反撃の隙を与えない、凄まじい数の連撃を一気に叩き込んだのだ。ヒート・ドーパントは成すすべなく、苦悶の声をあげるしかなかった。そして……

 

「はぁあ!!」

ドドン!!

「うわぁああああああ!?」

 

トドメの一撃を喰らい、ヒート・ドーパントは大きく吹き飛ぶ。そして体の各所が爆発していき……

 

「きゃああああああああああああ!」

 

最後に全身を爆発させながら、断末魔を挙げた。爆炎が晴れたその先には、変身が解除されて元の姿に戻ったレイカの姿があった。しかし、やはりこの攻撃に耐えきれずにその体を崩壊させていく。

 

「悪いな、お嬢ちゃん。屍人は本来は生き返っちゃいけねぇんだ。俺の仲間の斬鬼さんも、弟子のために一時的に生き返ってたけど、最後にはまたその分の命も尽きて消えてしまったから……まあ、来世はきっといい事あるさ」

「言ってくれるじゃない。でも、気をつけることね……」

 

消滅していくレイカに響鬼は言葉を送るも、最後に一つだけ忠告を残していくレイカ。そしてそれは、自分たちのリーダーである克己に関するものだった。

 

「克己は、仮面ライダーエターナルは本当の怪物。私達、他のNEVERとは比較にならない憎悪と悪意に揉まれ、圧倒的な強さを得たわ。まさに、究極の悪の仮面ライダーよ。破面もスタンド使いも、寄せ付けはしないから……」

「成る程……忠告、ありがとうな。でも、俺達は負けないからさ。だって毎日…

 

 

 

 

 

鍛えてますから」シュッ

 

そしてお馴染みのポーズを決め、消滅するレイカを見送るのだった。一瞬、彼女が穏やかな笑みを浮かべたような気もした。

そしてそのまま、他のメンバーの救援に向かおうとする響鬼。しかし、ここである疑問が生じる。

 

「あれ? あの歌舞鬼ってやつ、どうした?」

 

 

~ポルナレフチーム&チームなつみやVSチルッチ・サンダーウィッチ~

 

「オラァァ!!」

 

チルッチは再び羽を飛ばしてこちらを攻撃していく。

 

「ガウ!」

「ちっ」

 

しかしイギーがザ・フールを変形させて防壁を作り、チルッチの攻撃を防ぐ。変幻自在の砂のスタンド、当然ながら攻防一体の利便性を有している。さらに、かつてはDIOの忠臣であるヴァニラ・アイスの目を欺くためにDIOの姿をまねたこともある。搦手も使えるその万能さに、隙は無かった。

 

「こんにゃろ!」

「やぁああ!」

「ぐっ!?」

 

そこにすかさずポルナレフと紺が飛び掛かり、斬りかかる。咄嗟のことで羽ではなく、腕で防いでしまう。そのため、ダメージが通っているような様子だ。

 

「食らいなさい!」

「ちっ!」

 

そしてその隙をついて、小梅が魔法で追撃する。だがチルッチは咄嗟に飛びのき、攻撃を回避することに成功した。

 

「はぁ……せっかく首領が再生させたっていうのに、動きづらいわね」

 

その時、ため息とともに独り言を呟いたかと思いきや、突如それは起こった。いきなりチルッチが翼や前足などのパーツを切り離したのだ。結果、彼女は連獅子のような白髪と長い尾を除いて、元の人型に近い容姿へと変わる。

 

「え? 取り外した?」

「俺のスタンドも甲冑を剥がして高速戦闘モードになれるからな。パーツを捨てるのも、恐らくは能力のうちだ」

 

紺達が困惑する横で、ポルナレフは似たことがチャリオッツでできるため、警戒を強める。しかしそんな中、チルッチ自身の告げた真実は予想外のものだった。

 

「取り外したんじゃなくて切り捨てたの。もう元に戻らないわ」

「え?」

 

まさかのチルッチの言葉に、面食らう一同。しかし当の本人はそのまま続ける。

 

「言ったでしょ、帰刃は破面としての真の姿と能力の開放だって。それを解除して再び武器に真の姿を封印、そのプロセスを踏まずに人型に無理やり戻るのは、あんた達風に言えば自分の手足を焼き切るようなものよ。超速再生能力でも持っていたら話は別だけど、それが無いからもう戻らないって言ったのよ」

「え? じゃあなんで、そんなことしたの?貴女、武器になる羽まで捨ててたら、戦えないんじゃ……」

「うん。それに、痛くないの……」

「別に? それと私の攻撃、霊力の消耗が激しいから燃費が悪くてね。だから、さっきまでみたいに羽を使ってチマチマ攻撃するくらいなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

一纏めにして威力を上げた(・・・・・・・・・・・・)方がマシ」

 

言いながらチルッチは残った尾に霊力を集め、先端から扇状の大きな光の塊を生成する。その様に皆が警戒を強めるも、紺がわからないといった様子で問いかける。

 

「あ、あなた……なんで自分の体を傷つけてまで戦うんですか? そこまでして、勝たないとダメなんですか?」

「当たり前よ! 勝たないでいい戦いがあったら、戦争なんて起きないわよ。私達破面は戦士、もしくは兵士。つまりは戦うための存在よ! 戦って勝つことだけが、私たちの存在意義よ!!」

 

紺の問いかけに激昂しながら叫ぶチルッチ。その尾の先の光を巨大な光の剣に変形させ、こちらへと飛び掛かる。

 

「イギー、頼む!!」

「ガウ!!」

 

ポルナレフが危機を感じ、イギーに呼びかける。イギーもそれに応えてザ・フールを再び防壁に変化させ、攻撃を封じようとする。

 

「さっきまでと一緒にするんじゃ、ないわよ!!」

「「え!?」」

「ワウ!?」

 

しかしその防御を、チルッチはたやすく切り裂いてしまう。そしてそのままこちらへと突撃していく。

 

「みんな、散って!!」

 

危機を察知し、紺が周りに呼びかける。そしてそれに合わせて、全員が散っていく。

 

「きゃあ!?」

「小梅ちゃん!!」

 

その時、小梅が逃げる途中で躓いてしまった。ノノが思わず声を上げてしまうが、それが拙かった。

 

「ナイスタイミング。さっきの不意打ち小娘、今この場で始末しちゃってもいいかもね!」

「ひぃ!?」

 

チルッチが先ほどの攻撃を思い出して、小梅に狙いを定めてしまう。そしてそのまま、再び尻尾の剣を構えて飛び掛かる。

 

「小梅!」

「ガウ!!」

 

チルッチを止めようと、紺とイギーが一緒に駆け出す。しかし……

 

響転(ソニード)

「え!?」

「キャウ!?」

 

チルットは高速移動で一気に距離を離し、そのまま小梅の背後に回ってしまう。そして、また尻尾の剣を構えて小梅目掛けて振りかぶる。

 

「え?」

「それじゃ、さようなら」

 

無慈悲に、巨大な光の剣は小梅へと振るわれてしまう。そこに恐怖し、小梅は思わず目を瞑ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嬢ちゃん、小梅だっけか? 怪我はねぇか?」

 

いきなり聞こえたポルナレフの声に目を開けると、肩から血を流したポルナレフの姿が目の前にあった。

 

「え? なんで…」

「シルバーチャリオッツは高速移動形態があるって言ったろ。それを咄嗟に発動して、嬢ちゃんをこっちに引き寄せたってわけだ」

 

見てみると、確かにシルバーチャリオッツは装甲を剥がして身軽になっていた。しかしチャリオッツは左肩に傷を負っており、ポルナレフにダメージが伝播してしまったため出血しているようだ。

 

「傷の方は大丈夫だ。確かに痛ぇけど、掠っただけで骨にも別状はねぇ」

「それもそうだけど、なんで貴方のことを勝手に嫌っていた私を…」

 

思わず疑問を口にしてしまう小梅に、ポルナレフは語り始めた。

 

「一つは嬢ちゃん、小梅がフランスを好きでいてくれること。俺は天涯孤独だが、思い出のおかげで今でも故郷を愛していられる。だから、世界は違えど故郷を好きでいてくれるお前が放っておけなかったわけさ。そしてもう一つは……ちと恥ずかしいが、俺の唯一の肉親だった妹を殺されたときを思い出しちまうからなんだな」

 

その返答に小梅は驚きの表情を浮かべる。傍で聞いていた紺やノノも驚いていた様子で、チルッチもなぜか静観を決めている。

 

「三年前、嬢ちゃんたちくらいの歳だった妹のシェリーが、スタンド使いの殺人鬼に襲われて亡くなってな。そいつはもう倒して仇は打ったんだが、偶に思い出しちまうんだよ。シェリーが死んだ時の悲しみ、殺した奴への怒りや恨みをな。そこを別の敵スタンド使いに付け込まれて、シェリーの偽物を嗾けられた事もあった……」

 

DIOの忠臣の一人で彼がスタンドを知ったきっかけのエンヤ婆、その息子J・ガイルが件の殺人鬼だ。シェリーは辱めを受けたうえで胸を切り裂かれて死亡、一緒にいた友人も重傷を負わされている。目の前で小梅に命の危機が迫ったことから、その時を思い出してしまった、というのが今回無茶をして原因らしい。

そして話し終えたところで、ポルナレフは再びチルッチと向き合う。

 

「チルッチ・サンダーウィッチ。テメェもテメェ自身の誇りや本能、そういったものに従っているだけなら、こんなことを言うのも筋違いだ。だが、それでも俺の譲れないものがある……よって、未来ある少女に手をかける、ド低俗な行為を見逃せねぇんだよ!」

「そうかい。けど、それは勝ってからいいな!!」

 

そしてポルナレフは右手でチルッチを指さすと、それに合わせてチャリオッツも剣の切っ先を向ける。チルッチも負けじと啖呵を切った。

 

 

「俺は大事な妹を守れなかった。だが、戦う力はいつも手にある……ならばやることは一つ、シェリーの分も若人達の未来を守るために、この力を振るうだけだ!!」

 

そこからのポルナレフの動きは早かった。脱兎の如き速度でチルッチの懐へと駆け込み、シルバーチャリオッツを発動。そして狙いを定め、チルッチの左腕の付け根に超高速の刺突を放った。

 

「グゥウ!? てめぇえ!」

 

すぐさま激昂し、右腕にエネルギーを収束して虚閃を放とうとするチルッチ。しかしチャリオッツは剣を素早く抜き取り、右腕を斬り飛ばす。それによって、虚閃は強制解除されることとなった。

 

「ぎゃああ!?(速い……何、このスピードは!?)」

「本来、女を斬るなんて騎士にとってはご法度だがよ。テメェ相手なら心も痛まねぇ。このジャン・ピエール=ポルナレフが、アンタを倒させてもらう!」

 

直後、チャリオッツは高速移動によって残像を作り出す。その様子に、チルッチも動揺してしまう。

そこから、ポルナレフの行動は早かった。

 

「ぎゃあ!? 速すぎ……う゛!?」

 

チルッチはそのまま、四方八方からのチャリオッツの攻撃に一切の反撃のチャンスを与えられずにいた。そして…

 

「こいつで、とどめだ!!」

「ぐぅ!?」

 

そして剣はチルッチの胸を貫通し、ついに倒れ伏したのだ。ポルナレフの、完全勝利である。

 

「テメェのやろうとしたことを考えたら、針串刺しの刑でもと考えた……けど、やめておこう。後ろのレディ達にあまりスプラッタなものは見せたくねぇし、テメェの命こそ奪えど尊厳まで奪うのは心苦しいものがあるんでな」

「……敵にそんなこと言われるなんて、アタシも…まだ、まだ……ね……」

 

ポルナレフのその言葉と同時に、チルッチは言いながら倒れ伏す。そしてその体は光の粒子となって消滅した。

すると紺達は安全になったのを察して、ポルナレフに近寄っていく。

 

「見苦しいもんを見せて、すまない。敵対者とはいえ流石に命を奪ったからな、軽蔑しても構わねぇぜ」

 

紺達に、自嘲気味な様子で告げるポルナレフ。

しかし…

 

 

 

 

 

「か、かっこいい……」

「「「え?」」」

「わう?」

 

まさかの返答に思わず、ポルナレフを含めた全員がきょとんとしてしまう。

 

「いや、流石に異性として見るのはアレですけど…さっきの騎士道精神云々については、訂正するわ」

「あ、そうか。そいつは、なにより…」

 

そのまま小梅からの言葉にいい顔をするポルナレフだが、直後に肩からの出血が勢いを増し、その場で崩れ落ちる。

 

「つ、疲れた…」

「きゃあああああああああ!! ポルナレフさんがぁあああ!!」

「ノノ! 早く、早く治療して!!」

「わわわわわ分かった、小梅ちゃん!」

「ノノ、落チツイテ」

「わぅ…」

 

顔色が真っ青になるポルナレフの姿に、全員が大慌て。イギーもあきれた様子であった。大事なところで閉まらない男、それがポルナレフである。

 

 

~葉&千矢&臣VSポウ~

「おりゃあ!」

「うりゃあ!」

「ぬん!」

 

相も変わらず、葉と千矢が二人がかりでポウに斬りかかるのが繰り返されるが、ポウは腕でそれを防ぐ。チルッチと違って大柄、かつ頑強な体をしているため防御力は上のようだ。

 

「力だけじゃなくって、体も硬いみたいね」

「うん。どうしよう?」

 

大したダメージもない様子から、臣も推察できたようだ。千矢もどうしようかと思案すると、葉が何かを思いついて二人に語り掛ける。

 

「千矢、臣。オイラは今こいつの倒し方ふた通り思いついたんだけど、どっちがいいか迷ってるんよ。占いで決めてくんねぇか?」

「倒し方? 葉、どうするの?」

「とりあえず聞かせて。どんな手か知らないと、占えないから」

 

そんな葉の提案について臣が早速問い尋ねるのだが…….

 

「一つ目は切り札を使って全力の一撃を叩き込む。これならすぐに決着がつくけど、巫力っていうシャーマンの持つ力の消耗が激しいからしんどい。もう一つは今のまま地道に削り倒す。これなら消耗を抑えられるけど、ぶっちゃけ時間がかかってめんどい」

「しんどいとめんどい、どっちを取るか………悩ましいわね」

「え、えぇ……」

 

葉が迷っている理由を聞いて、それに同意する臣。その様子に、千矢も思わず困惑してしまう。

 

「モウ、面倒クサイ……本気、出ス」

 

そのとき、ポウの方から動きがあった。ついに斬魄刀を抜き、奴が帰刃を発動する時が来たのだ。

 

「気吹け、巨腕鯨(カルデロン)

 

ポウが帰刃を発動した直後、斬魄刀は光と化して桜の花のように散っていく。そして、いきなり頭が膨れ出した(・・・・・・・)

 

「「「え゛っ」」」

 

三人は声を揃えて驚くが、ポウの肉体の膨張は続く。そしてドンドン膨れ上がっていき……

 

 

 

 

 

 

 

 

鯨のような胴体に腕が生えた、超巨大な体へと変じたのだ。

 

「ええええええええええええ!?」

「「でか!?」」

 

千矢は声を上げて驚き、葉と臣も思わずハモってしまう。

 

モウ、潰スノモ……面倒ダ…

 

そして巨大化したそのポウが腕を振り下ろそうとする。これで更に鈍重になったが、その質量から繰り出される攻撃はけた違いだろう。

 

「逃げるぞ!」

「う、うん!」

 

そしてここから来る攻撃を予測し、その場で高く跳躍する葉と千矢。当然、臣を抱えて飛ぶのを忘れずに。

 

「ぬぅうん!!」

ズゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン…

 

やはりというか、拳が振り下ろされると同時に辺り一帯に激しい地響きが生じる。

 

「こりゃ、長いこと暴れさせるとマズいぞ」

「うん。ヒビキさんや紺達も危ないかも」

 

ポウの巨体からなる攻撃に、今後の被害を想定する一同。そして着地後、葉は意を決してあることを決めた。

 

「しゃーない、切り札の使用を余儀なくされちまった。阿弥陀丸、行くぞ」

「葉殿、こちらはいつでも行けます。危険なので、千矢殿と臣殿は後ろに下がってくだされ」

 

言いながら葉と阿弥陀丸はオーバーソウルを解除。そしてバトルコスチュームのホルダーにつけてあった、切り札だという赤い石造りの短剣を抜き取る。

春雨と違い実戦用の武器ではないため、いざ使うとなって千矢は彼の正体について疑問を抱くこととなった。

 

「その剣なんなの? 切り札って言ってたけど……」

「ああ、フツノミタマノツルギって言ってな。神話に出てくる伝説の刀と同じ名前した、神器なんよ。爺ちゃん曰く国宝級の代物らしくてな、強いオーバーソウルを使うための媒介にはもってこいなんよ」

「国宝級!? いくら位するのかしら?

 

切り札の詳細を聞いて臣が俗っぽい発言をするも、それを他所に葉と阿弥陀丸は戦闘準備を終えたようだ。

 

「葉殿、拙者はいつでもいいでござるよ」

「わかった。阿弥陀丸・ヒトダマモード」

 

阿弥陀丸からの呼びかけに、葉も彼をヒトダマモードに変化させて、ついにそれを発動させた。

 

「いくぞ! 憑依合体!!」

 

そして葉最強のオーバーソウルが、ここに顕現しようとする。のだが……

 

「阿弥陀丸in春雨!!」

 

何故か、また春雨に阿弥陀丸を憑依させる。これには千矢と臣は揃って抗議することとなる。

 

「え!? 葉、さっき言ってた剣使ってないよ!!」

「そうよ! こんな時にそう言うボケはいらな……」

 

 

 

 

 

 

 

「inフツノミタマノツルギ!!」

 

かと思いきや、更にフツノミタマノツルギも使用。つまり、媒介を二つ使用したオーバーソウルを発動したのだ。そしてそれによってあふれ出した膨大な巫力が、一つの形を作り出していく。

 

 

「阿弥陀丸・精霊進化!!」

「えぇええええええええええええ!?」

「な、何これ……」

 

そして生まれたオーバーソウルに、二人は仰天する。

そこにあったのは、天を衝くような巨大な刀へと変じた阿弥陀丸の姿であった。その中心には春雨が核のように浮いており、葉の手に持つフツノミタマの剣と巫力で接続しているようだ。

これこそ、阿弥陀丸が二つの媒介と麻倉葉王の残した秘伝書、超・占事略決の秘術により刀の精霊へと進化した姿。その名を……

 

オーバーソウル! スピリット・オブ・ソード!!

 

その巨大な刀を手にした葉の姿を見て、ポウの様子が変わった。

 

「な、ナン、だ……それ、……」

 

まるで何かにおびえるように声が震え、顔から汗が止まらなくなった。葉達は知る由もなかったが、彼も一度倒された後、狩猟によって再生させられた破面の一人である。そしてポウは自身を倒した人物を思い出したのだが……

 

 

 

 

『卍解』

 

侍のような黒い着物の上から白い羽織を着た、狼の頭を持つ大柄な男。

 

『黒縄天遣明王!!!!』

 

その男が使役する、解放状態のポウと同サイズの巨大な鎧武者であった。当然、その武者も手に巨大な刀を握っており、スピリット・オブ・ソードがそれを彷彿とさせていたのだ。

 

「ナンなんだおマエハァアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

恐怖に溺れ、ポウは絶叫しながら虚閃を放つためのエネルギーを口に収束する。ポウの頭には、すでに目の前の恐怖の根源=葉を取り除くことしかなかった。

 

「そういや、自己紹介してなかったな」

 

しかしそうとは知らず、葉は律義に自己紹介を始める。

 

「あの世とこの世を結ぶ者、シャーマンの麻倉葉だ!」

 

そして葉は跳躍し、スピリット・オブ・ソードを構える。そして、一気に振り下ろした。

 

「阿弥陀流……

 

 

 

 

 

 

大 後 光 刃 ! ! 

 

その一太刀と同時に、無数の斬撃がポウの体に叩き込まれる。それによって全身がバラバラになり、ポウはそのまま消滅していった。

 

「や、やった!」

「彼が味方で、本当に良かったわね…」

 

千矢は葉の勝利した様子に歓喜し、臣はその葉の出鱈目な強さに戦慄、同時に彼が味方であることに心底安心した様子だった。

 

「よぉ、そっちも片付いたみたいだな」

「お、おっちゃん」

 

すると響鬼が声をかけながら近寄ってくるのが見えた。

 

「しかし見てたけどよ、随分でっかい剣だったな」

「ああ。さっきのがデカかったからアレにしたけど、もう一段階上の奴があんだよな」

「え? あれより強いのがあるの??」

 

遠巻きでスピリット・オブ・ソードを見ていた響鬼からの言葉に答える葉だが、聞き捨てならないものを聞いてしまう臣。

 

「ああ。もう一段階上のやつは甲縛式オーバーソウルっていうんだけど…」

 

告げた直後、何かがこちらに着地してきた。何事かと思い一同は警戒するが…

 

「葉、迎えに来たわよ」

 

そこには、前鬼と後鬼を引き連れたアンナの姿があった。

 

「アンナ! どうやって向こうに戻ろうかも考えてたから、助かったよ」

「口寄せで適当な霊を呼び寄せて、ここを探らせたのよ。さて、向こうでポルナレフが怪我してるみたいだから、回収するわよ」

「え? 大変、早く助けなきゃ!!」

 

アンナからポルナレフの状況を聞かされ、大慌てで彼と一緒にいる紺達のもとへと向かう。

 

「そういえば、あの歌舞鬼ってのどうなったんだ?」

「それが、いつの間にかいなくなっててな」

「逃げられたのかしら……でも、あんまりしんどいのも考え物だし、ちょうどいいかもね」

 

歌舞鬼についての話を聞き、そのまま一同はこの場を後にする。しかし響鬼はこの時、あるものを歌舞鬼に奪われていたのだ。しかし、それについて知るのは、もう少し先の話。




アランカル大百科・エトワリア出張_後篇
ギン「ほな、今回は破面の能力について紹介していこうかと思います。ちなみに今回は、前回のゲスト達と一緒にランプちゃんとマッチくんも参加することになりました」
一同『わー!』パチパチパチパチ

拍手に合わせて、ランプとマッチ入場。

ランプ「不肖ランプ、クリエメイトの皆様のお力になるべく、未知の敵である破面の能力を学んでいこうと思います!」
マッチ「心意気はいいんだけど……ランプのサボリ魔と聖典以外の勉強に意欲的になれない気質で果たしてうまくいくのかな?」
ギン「さすがは保護者、手厳しい評価やね。そしてもう一人、解説のために助っ人を紹介させてもらうんやけど…」

モニターに突如、顔中に黒いメイクをした不気味な男が映る。

マユリ『はじめまして、護廷十三隊・十二番隊隊長の涅マユリだ。技術開発局局長も兼任しているので、確かに破面どもに関しても詳しいヨ。故に奴らの能力を紹介する際の解説を担おう』
一同(なんかホラーな見た目の人出てきた!?)

マユリの姿に、クリエメイト一同驚愕&戦慄。

夢路「ん? 護廷十三隊って……死神にも組織的なものがあるのか?」
ギン「お、夢路くんも結構鋭いね。その通り、尸魂界の死神は護廷十三隊の名前どおりに、十三の戦闘部隊を持っているんや。涅隊長もその一つで隊長をやってて、俺も昔は三番隊隊長やってました」
きらら「じゃあ、ギンさんって所謂エリートさんだったんですね」
ギン「きららちゃん、褒めてもなんも出ぇへんで」

きららの言葉と同時に、ギンに対して感心する一同。

マユリ『君達、今回は破面の話をするのであって我々の話ではなかったはずだが?』ギロッ
ゆの「ひぃ!? ご、ごめんなさい……」
ギン「ゴメンな、涅隊長は結構気難しい人やから。それじゃあまり脱線させるのもいかんし、紹介いくで」

モニター切り替わり。

ギン「まずはゴンズイ。周囲の魂魄、つまり魂を根こそぎ吸引する。破面は人間の魂が主食やからね」
マユリ『破面は虚同士の食い合いで進化する上位種のメノスが変異するものが殆どだからネ。それだけ食らいたいという本能が強い故、こうなったと推察しているヨ』
きらら「あ、野クルの皆さんを襲った技ですね」
青葉「魂が主食……魂が食べられるってことは、死後の世界でもさらに死んじゃうってことじゃ……」

青葉の言葉にハッとして、青ざめる一同。

ギン「周辺の霊圧をまとめて察知するペスキス。レーダー能力みたいなものやね」
マユリ『我々死神や破面、あと滅却師(クインシー)と呼ばれる人間の身で虚を狩る集団の持つ、強さの指標ダネ。霊力との違いは、体の内にある力が霊力で、外に放出する力が霊圧ダヨ』
マッチ「え? この状態で続けるのかい?」

しかし紹介を続けるギンとマユリ。とんだドSである。

ギン「霊圧を圧縮して破壊光線にするセロ」
マユリ『破壊力、射程、範囲の三拍子揃っているがいかんせん弾速が遅いのであまり命中してないのが実サ』
千矢「うん。これ、もっと速かったら避けられなかったかも……」

ギン「セロの威力を落として、弾速と連射性に重きを置いたバラ」
マユリ『弾速が速い分、セロより当てやすい。しかしあまり使う個体がいないあたりこだわりでもあるのかもしれんネ』
ランプ「こんなの危なすぎです、怖すぎです……」

ギン「瞬間高速移動技のソニード。めっちゃ速いよ」
マユリ『我々死神も舜歩、滅却師も飛廉脚という高速移動用の歩法を持っている。速さは戦闘の基本の様なものだからネ」
ココア「私これ使いたい! これがあればチノちゃんや他の妹達にも一瞬でそばに…」

ギン「表皮が丸ごと鎧となっているイエロ。これも超硬いで」
マユリ『霊圧の高いものほど硬くなる傾向にあるヨ」
ゆの「ルフィさんのパンチも効きにくかったんだよね、確か……」

ギン「ちなみに、順番に漢字を当てるとこんな感じ」

魂吸、探査神経、虚閃、虚弾、響転、鋼皮
モニターに以上の感じが表記される。

千矢「え、えぇ……」
青葉「なんか、超当て字っていうか……いわゆる中二っぽい名前なんですね…」
ココア「私文系苦手だから、これだめだよ…」
夢路「あの、たぶん文系とか関係ないと思うんだけど…」

困惑するクリエメイト一同。

ギン「そして此処からが破面最大の特徴である帰刃(レスレクシオン)の紹介や」
マユリ『まず、我々死神は斬魄刀という刀を武器にしている。破面は虚が死神の能力を得た存在だから、当然武器も斬魄刀なわけだ』
ギン「そして斬魄刀はね……」

脇差の様な短い刀を天井に向けるギン。

ギン「射殺せ、神鎗(しんそう)
一同『え!?』

勢いよく刀身が伸びる刀に、一同仰天。

ギン「こんな風に名前を呼ぶと、斬魄刀の固有能力が発動するんや。刀以外の武器に変形したり、炎や冷気を操る力があったり。俺の昔の部下は切りつけた回数だけ相手の重さを倍にする能力で、昔の上司は完全催眠なんておっかない力使ってたな」
夢路「うわぁ……物にもよるけど、エルクレスが可愛く見える力だな」
マユリ『ちなみに私の斬魄刀の名は疋殺地蔵(あしそぎじぞう)、斬った対象の手足の動きを封じる能力だ。身体能力に自信が無いので、これで動きを封じて嬲らせてもらうのが基本だネ』

赤子の顔が浮かんだ気味の悪い刀を持つマユリ。怯えるクリエメイト一同。

ギン「続きに入るけど、これに対して破面の斬魄刀は虚としての姿と能力を刀に封じ込めているから、開放すると本人の姿に変化が生じるんよ」

直後、モニターに開放状態の破面が次々と映る。

蔦嬢:背中から八本の触手を生やしたルピ
車輪鉄燕:蛾の様な前足と刃の翼を備えたチルッチ
巨碗鯨:山の様な巨大のポウ
龍拳:両肩にアルマジロの様な装甲を纏った、アフロの破面
百刺毒娼:ムカデの胴体の様な両腕の、少女の破面
宮廷薔薇園ノ美女王:魔法少女の様な露出の多い格好のシャルロッテ

一同『え、ええ……(最後のって……)』

シャルロッテにドン引きする一同。

ゆの「あれ? あのチルッチって人、あの状態じゃスカートの下丸見えじゃ……」カァッ

顔を赤くするゆの。しかし直後

チルッチ『ああ、大丈夫。帰刃使うと、スカートの下に装甲増えるから』

マユリのそばに、消滅したはずなチルッチが出現。

千矢「あれ? その人、ポルナレフさんにやっつけられて消えちゃったんじゃ…」
マユリ『こいつらはすでに戦死した破面を、私の部下のゾンビ兵士に改造した代物だ。例のオーバーヘブンショッカーに強奪されたんだが、倒されたら私の所に戻るよう仕込んでおいたのさ』
シャルロッテ『まあ見た目は美しくないけど、頭脳は目を張る物があるわね』

更にシャルロッテ登場。さらにマユリは告げる。

マユリ『このゾンビ破面なのだが、あと一人そちらから帰ってきてないのがいてネ。君達がそちらで戦っている時に見つけたら、倒してくれたまえ。そうすれば、こいつらと同じく私の所で再構成されるから』
きらら「そ、そうなんですか……ちなみに、その人って名前なんて言うんですか?」
マユリ『覚えてない。コイツらは道具として都合がいいから置いているだけだ、個々人に興味はないヨ』
一同(ひ、ひどい……)

画面越しに考える破面達。ルピもやってくる。

シャルロッテ『確か、美味しそうな名前のナイスミドルって感じだったわよね……』
ルピ『うんうん。確か……ドンパニーニだっけ?』
チルッチ『ああ、だいたいそんな感じだったわね』


ゆの「ドンパニーニ? パニーニってなんだっけ?」
ココア「フォカッチャってパンを使ったサンドウィッチのことだよ。日本だとトマトソースとチーズとベーコンを挟んで、ホットプレスにしたヤツが有名だよ」
ゆの「あ、すごいイタリアンっぽい料理だね」
千矢「なにそれ、美味しそう……ココア、今度作って!」
ココア「いいよ、千矢ちゃん。お姉ちゃんに任せなさい」テッテレー

盛り上がる三人をよそに、残り三人がギンに耳打ち。

きらら「この様子、絶対にドンパニーニが名前じゃないですよね」
ギン「うん。ドルドーニが本名やね」
青葉「ドの二しか合ってない……」
夢路「そのおっさん、なんか不憫だな……」

ギン「さて。それじゃあアランカル大百科のエトワリア出張は以上になるで。みんなありがとうな」
一同『ギンさんとマユリさん、ありがとうございました』


~翌朝~
きらら「昨日、変な夢見たんですけど…あの破面って人達の能力について説明してくれる内容で」
ゆの「え? きららちゃんも見たの?」
青葉「ちょっと、私も見たんだけど…」
千矢「あ、私も見たよ」
夢路「実は俺もなんだが…」
ココア「あ、私も。なんか、運命みたいだね」
ランプ「まさか、きららさんとクリエメイトの皆様と同じ夢を見れるなんて…すごいです! 尊いです!! 奇跡です!!」
マッチ「ランプ、落ち着いて」




~尸魂界にて~
マユリ「さて。ゾンビ兵どもの逆探知で割り出した世界に、破面の情報を送れたが…上手くいけばオーバーヘブンショッカーとやらに一泡吹かせられる。せいぜい、役に立ってもらうよ」
ギンの残留思念(久しぶりに出番貰えて、ありがたいわぁ)
マユリ「しかし、何故市丸ギンのやつがいたのだ? 装置を調べなおしてみるか…」


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第32話「昨日の友は今日の敵・昨日の敵は今日も敵」

戦兎「天っ才物理学者の桐生戦兎とヒーロー養成学校雄英高校の緑谷出久、そしてクリエメイトの保登心愛は敵の転移能力によって仲間と分断させられてしまう。果たして、その先にどんな敵が待っているのか?」
出久「転移系の能力、僕らの世界の個性としても希少ですけど、かなり強力でしたね」
勝己「仮面ライダー……無個性の人間が道具で無理やり強くなっただけかと思ったが、油断ならねぇみてえだ」
戦兎「……なあ、名前呼んでてふと思ったんだけど、ココアのフルネームって当て字みたいじゃねえか? ホットココアって…」
ココア「あはは、流石に自覚ありますよ。千夜ちゃんから暖かそうな名前って、お墨付きだし」
出久「そうですか? 僕らの世界の感覚じゃ割と普通なんですけど……寧ろ僕みたいな名前の方が珍しいくらいですし」
戦兎「マジか? そういえば、轟なんか下の名前が焦凍で炎と氷の二重属性だったな…」
リゼ「それ、私も思ったな。爆豪が名前まんま爆破能力持ちだから、"個性"がそのまんま名前になりそうな感じでいいのか?」
出久「はい、だいたいそんな感じですね。クラスメイトだと放電能力の上鳴電気(かみなりでんき)くん、カエルの能力がだいたい使える蛙吹梅雨(あすいつゆ)さん、自分の影をスタンドみたいにして操る常闇踏陰(とこやみふみかげ)くん。隣のクラスだと五分だけ他の人の個性をコピーできる物間寧人(ものまねいと)くんに、拳を巨大化する拳藤一佳(けんどういつか)さん、まだまだ居ますけど長くなるんでまた後日ってことで……あれ?」
勝己とココア以外全員「え、えぇ……(へ、変な名前……)」
ココア「みんな、どうしたの? 変わった名前だけど、みんな覚えやすくていいと思うよ」
勝己(こいつはこいつで、何も考えてなさそうだな……)
花名(どうしよう……ココアちゃん達が心配でついてきたら、変な空気に巻き込まれちゃった)


「チノちゃんとリゼちゃんはいるけど……千夜ちゃんとシャロちゃんがいない」

 

転移させられた直後、ココアは周囲を見回してこの場にいるメンバーを把握する。自分と同じ世界のクリエメイトに欠員がいることを気にしている。

 

「おそらく、分断させられたんだろう。万丈の筋肉バカがいないのが、いい証拠だ」

「ですね。僕とかっちゃん以外に雄英組もいませんし」

「まあ、アランカルだか何だか知らんが俺がぶっ倒してやる。だが一つ問題がある……」

 

戦兎の推察を肯定する出久。実際に、彼と勝己以外に雄英のメンバーがいないのだった。しかしそんな中、勝己は自信満々に告げると、直後に不機嫌そうな様子を見せる。そんな彼の視線の先にいたのは……

 

「なんで例の遺体と関係ねぇ奴がこんなところに紛れ込んでるんだ?」

「ひぃ!?」

 

いつの間にかついて来ていた花名であった。勝己に睨まれて怯えた様子の花名は萎縮、しかしそのまま勝己は迫っていく。

 

「てめぇ、本当なら大人しく留守番してるか向こうの守りに専念するべきだろ。それをなんで勝手についてきやがった?」

「そ、それは…ココアちゃん達が、心配で…」

 

勝己の凄味に押されながらも、付いてきた理由を告げる花名。しかしそれが勝己に火を注ぐことになってしまった。

 

「てめぇみたいなトロそうな女、居ても足手纏いなんだよ! お前は云わば要救助者、つまり助けられる側の人間だ!! そこのツインテ軍人女とこのクソナード一人いりゃ、戦力は事足りんだよ!!! それにこの自称天才物理学者も、戦力としても申し分ねぇから、なおさらお荷物だってんだ!!!」

「かっちゃん、それ言いすぎだよ! 一ノ瀬さんも、自分なりに考えて決心したのに…」

「そうだぞ! 戦闘慣れしてる人間のお墨付きを貰えたのはありがたいが、だからって友達にそんな言われ様だと…」

 

勝己の言動に涙目で縮こまる花名、そんな彼女を見ていられずに出久とリゼは当然反論する。しかし、その時に戦兎は何かに気づく。

 

「全員そこを離れろ!!」

『え?』

 

危機を察して叫んだ直後、何者かが出現して出久に斬りかかってくる。

 

「おらぁあああ!!」

「やば!?」

 

反射的にフルカウルを発動、一気に距離を離して回避する。

 

「やぁあああああ!!」

「おっと!」

 

その隙をついてココアが襲ってきた相手に斬りかかると、そのまま鍔迫り合いに入る。それによって判明した相手の姿は、虎の頭骨を頭に被った出久やココアと同年代の少年剣士、恐らく破面だ。刀を忍者のように逆手で持っているが、これが得物のようだ。

 

「それなりに戦闘慣れしているみたいだ、反応はいい。だが、お前の膂力で俺に勝てるかな!」

「う!?(何この人、すごい力…)」

 

相手は僅差だが出久よりも背が低い少年。そんな見た目にも関わらず、凄まじいパワーを発揮していく。このままでは押し切られそうだが……

 

「すっこんでろ、パン屋女!!」

「きゃあ!?」

 

そこに勝己が割って入り、ココアは弾き飛ばされる。しかし、それは勝己の爆破の力で巻き添えを出さないためだ。

 

爆破式(エクス)カタパルト!!」

「うおぉお!?」

 

爆破の推進力を活かした投げ技で、襲ってきた少年を勢いよく吹き飛ばす勝己。そして投げ飛ばした瞬間、腕に着けていた装備を構えて少年剣士に狙いを定める。それは手榴弾を模した籠手で、彼の爆破の力の源である「掌の汗腺から分泌されるニトロのような物質」を溜め込む機構があった。

 

徹甲弾(A・Pショット)!!」

 

ヴァレンタイン大統領が嗾けてきた合体ガーディアンを撃破した技。その単発仕様版が、射程も威力も更に上の物として放たれた。しかしその直後、それは起こった。

 

響転(ソニード)

「あ゛ぁあ!?」

 

瞬間高速移動で、勝己の攻撃を回避してしまったのだ。そしてそのまま勝己の背後に回り、再び手にした刀を振るう。

 

「させるか!!」

 

しかし寸でのところでリゼが割って入り、盾でそれを防いだ。そしてその隙を突き、戦兎とチノ、出久が動く。

 

「ちょっと、大人しくしてろ!!」

「「やぁあああああ!!」」

 

戦兎はラビットフルボトル、出久は自身の個性で高速移動を始め少年剣士に飛び掛かる。チノも追撃で魔法を放つが、少年剣士はまた高速移動で離脱してしまう。

そんな中、破面の少年に戦兎は問いかける。

 

「その頭の骨みたいな仮面と人間離れした身体能力……さしずめ、あのノイトラとかいう男と同じ破面ってところか」

「ああ。俺は破面No.24、ジオ=ヴェガ。十刃の一人にして虚の世界・虚圏(ウェコムンド)の王、バラガン・ルイゼンバーン陛下に仕える従属官(フラシオン)の一人だ」

「ふら、しおん? えっと、何それ?」

 

現れた破面、ジオの名乗りには固有名詞が多すぎて困惑するココア。するとジオは誇らしげな様子でその説明を始めた。

 

「俺達破面には数字が振られる。1から10が最強の十人・十刃(エスパーダ)、11からの二桁数字が破面に進化した順の数字持ち(ヌメロス)、三桁数字は十刃から降格した十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)。従属官は数字持ちの中から、現十刃が直属の配下として選出した、忠臣ってところだ」

「へぇ……つまり、自分が一番上になれないからって一番強い奴に尻尾を振る負け犬ってことか」

 

しかしそこに割って入る勝己の身も蓋もない物言い。突然のことで一同が困惑するも、ジオは勝己に侮蔑の目を向けながら返す。

 

「戯言を。バラガン陛下は先ほど話したように、虚圏の王。そしてそれにふさわしい、神の如き圧倒的な力を有している。相対すればわかるだろうが、超えるなんておこがましいんだよ」

「あ゛あ゛ぁあ!? 俺は世界最強のヒーローを超えるのが目標だ、仮にそいつが神だろうが超えてやるつもりなんだよ!!」

 

ジオにキレ気味で飛び掛かる勝己だったが、再び響転で消えるジオ。

 

「らぁああ!」

「な…ぐわぁあ!?」

 

ジオは勝己を抑え込み、そのまま刀を首筋に充ててくる。そしてそれに真っ先に反応したのは戦兎だった。

 

「爆豪、今助けるぞ…」

「俺にも獲物、寄越しやがれぇえええ!!」

「え!?」

 

直後、鉄棍を振るうバンダナにライダージャケット姿の大男が割って入る。男にギョッとしてその場を飛びのくと、男は戦兎と対峙して構える。

 

「お前も仮面ライダーなんだってな。俺はNEVERの堂本剛三(どうもとごうぞう)、てめぇを殺す男だ!」

「ダブルが戦ってた相手で、仮面ライダーが狙いか……みんな、こいつは俺が引き付けるからそっちは任せた……」

「お前の相手はNEVERだけじゃねぇぞ」

 

直後、聞き覚えのない男の声が聞こえたと思いきや、空から鉄塊が戦兎を目掛けて落ちてくる。

 

「な、なんだ!?」

 

驚きつつも、戦兎はラビットフルボトルを振って高速移動。どうにか避けると、一人の男がこちらに殴りかかってきた。

 

「や、やべぇ!?」

 

どうにか回避して、カウンターパンチを顔面に叩き込む。しかし……

 

「硬!?」

「科学者って聞いたが、思いのほか間抜けだな。鋼鉄製の仮面を殴るとは」

 

戦兎は拳を痛めながら男の顔を見ると、金属を継ぎ接ぎしたような仮面を被ったガタイのいい成人男性であった。服装も防弾チョッキの上から白いコートを羽織った、まるでテロリストのような風貌の男である。しかしそいつを見た瞬間、反応を示したのは出久と勝己の二人であった。

 

「お前……ウォルフラム!!」

「I・エキスポの時の(ヴィラン)野郎か!」

 

出久が名を呼び、勝己が関与した事件を思い出す。

かつて出久が巻き込まれた敵襲撃事件。世界中の科学者が個性の研究やヒーロー用の装備の開発のために集まった巨大人工島「I・アイランド」で開かれた技術博覧会『I・エキスポ』を襲撃した敵が、このウォルフラムである。彼はオールマイトの友人の科学者デヴィット・シールドの開発した個性増幅装置を狙って、I・エキスポを襲撃したのである。

イベントに招待されたオールマイトに付き添っていた出久をはじめとした雄英高校のメンバーが立ち向かい、出久とオールマイトの共闘の末にウォルフラムは倒され、逮捕されたのである。

 

「ヴィラン……確か、出久さん達の世界の犯罪者じゃ」

「え? ……じゃあ、冗談抜きの悪い人?」

 

チノが出久達から聞いた話を思い出して口に出すと、ココアが思わず顔を青くする。ココア自身は仮面ライダー達との会合にオーバーヘブンショッカーの関係者と交戦しておらず、度を越した悪意には初めて遭遇することになる。

 

「雄英の小僧どもにも借りはあるが、今俺は仮面ライダーとやらに興味がある。超常が発生していない、無個性の人間しかいない世界のヒーロー、にも拘わらず俺達の世界のヒーローにも匹敵しうる力を持つ……あのお方の開放や、噂の後継者の覇道に役立ちそうと思ってな」

「あのお方……まさか!?」

 

言いながら、ウォルフラムは戦兎に視線を集中、出久もそれを聞いて反応した。実は彼、本来持つ個性とは別にオール・フォー・ワンに筋力強化の個性を与えられている。

というのも、オール・フォー・ワンの敵名は彼の個性名をそのまま取っており、「これは他者の個性を奪い自ら使用する、奪った個性を別の人間に付与する」という能力なのだ。その力によってオール・フォー・ワンは、超常黎明期の頃から何らかの個性で延命して今も生きているらしい。故に複数の個性の同時使用による強大な力と、何百年と生きたことによる知識と経験から来る老猾さを併せ持った最強の敵とされている。

それによってオール・フォー・ワンは敵としては圧倒的なカリスマ性も持っており、ウォルフラムのような忠臣達があちこちにいるとされている。

 

「戦兎さん、今加勢に…」

「させねぇよ!!」

 

出久が加勢しようとした直後、ウォルフラムが地面に手を当てながら叫ぶ。すると地面から金属の柱が生えてきて出久を妨害した。ウォルフラム本来の個性"金属操作"によるものだ。

 

「これは…」

「言い忘れていたが、俺の個性はオーバーヘブンショッカーのおかげで強化されている。地面を伝って、地中の鉱石にすら干渉可能になったのさ」

 

出久に告げた後、戦兎と向き合うウォルフラム。

 

「さて、俺も力を使わせてもらうか!!」

【メタル!】

 

するとそれを見て剛三もガイアメモリを起動。内包している記憶はこれまたダブルの有するメモリと同じ「メタル」であった。剛三は起動したメモリを放り投げると、ジャケットを脱ぎ捨てる。そして背中の差込口にメモリが吸い込まれた。

 

「うがぁああああああああああ!!」

 

そして変じたのは金属質なボディに仮面ライダーのような大きく赤い目をした、"メタル・ドーパント"だった。手にした紺は先端がハンマー上に変化しており、左腕に鉤爪が備わっている。見た目からもわかる完全戦闘特化のドーパントだ。

 

「こいつは厄介そうだな」

 

そして戦兎もビルドに変身すべく、ビルドドライバーを装着してフルボトルの準備に入る。

 

【ラビット! タンク! ベストマッチ!!】

「変身はさせてやるよ。仮面ライダーの力そのものに興味があるんでな」

「そいつはどうも」

 

ウォルフラムが変身のチャンスを寄越してきたので、ありがたく乗らせてもらうことにする戦兎。ビルドドライバーのハンドルを回して、アーマーを形成する。

 

【Are You Ready!?】

「変身」

【ラビットタンク! イェーイ!】

 

 

さっそくビルド・ラビットタンクフォームに変身した戦兎は、ドリルクラッシャーを手にメタル・ドーパントとウォルフラムに突撃していく。

 

「さて、いくか」

「了解したぜ」

 

直後、ウォルフラムがメタル・ドーパントの肩に触れると同時に、メタル・ドーパントの体から棘が生えてくる。鋼鉄ボディのドーパントも、金属操作で自在に変形させられるようだ。

 

「そう来るか。でも、俺も負けられないからな!」

 

しかしビルドは怯まず、ドーパントと敵1(ヴィラン)という未知の敵に立ち向かっていく。全ては彼の理想、ラブ&ピースをこのエトワリアでも体現するため。

そして出久達も未知なる敵、破面に挑むことを決める。するとそれに合わせて、ジオは勝己を開放する。

 

「まあいい。どうせ人間ベースのお前らが俺に敵うはずもないんだ。まとめて掛かって来な」

「クソが、嘗めやがって…お前ら、こいつ速攻でぶっ倒すぞ」

「だね、かっちゃん。ココアさん達も、行こう」

「オッケー! 花名ちゃん、下がってて…」

俺も混ぜろや人外小僧がぁああああああああああ!!

 

その直後に何者かが叫びながらこちらに落ちてきた。

現れたのは血走った目に凶悪な笑みを浮かべた大男だった。非常に筋肉質な体に、左目には傷跡と義眼が目立ち、形相の凶悪さに拍車をかけている。

出久はこいつとも面識があり、顔を青ざめることになる。

 

「マスキュラー……お前まで、オーバーヘブン・ショッカーに居たのか」

「ああ。噂のオール・フォー・ワンはヤバすぎるってことで手が出せなかったが、タルタロスに捕まってる敵はそこのあいつ以外にも、何人かいるぜ」

 

オールマイトがオール・フォー・ワンと対決した"神野区の悪夢"の直前、雄英林間合宿を強襲した敵の一人。血狂いの通り名を持つ快楽殺人鬼だった。

一方で、リゼはマスキュラーの口にしたタルタロスという単語に引っかかりを覚え、悪い想像をしながら隣にいた勝己に問いかける。

 

「なあ爆豪、あいつの言っていたタルタロスって何だ? スゴイいやな予感がするんだが…」

「俺らの世界の日本にある特殊監獄の通称だ。死刑すら生温いって判断されるような、凶悪犯を収監する場所だよ」

 

これが意味すること、目の前の敵は冗談抜きの危険人物ということだ。しかもそこからオール・フォー・ワンこそいないものの、凶悪な敵が開放されているという。

 

「こっちの戦士、クリエメイトってのが潰しがいのある奴か気になってたが、チビガキで女しかいねぇか」

「「ひぃっ!?」」

 

マスキュラーの言動に、ココアと花名は反射的に抱き合って短く悲鳴をあげる。明確にこちらの命を狙っての宣言だったため、当然だった。

 

「まあいいか。そこのボサボサ頭にリベンジするいい機会だし、そこの目つきの悪いガキも雄英の生徒らしいしな。ちょうどいい相手がいたな」

「お前の楽しみ云々は好きにしていいが、聖なる遺体の回収を忘れるな。あそこのピンクの小娘が持っているらしい…」

「早速始めさせてもらうぜ!!」

 

するとマスキュラーはジオがいさめるのも聞かず、出久達に向かって突撃していく。直後、彼の腕から何かが生えてきてそれが右腕を覆い始める。

 

「ぶっつぶれろ!!」

「危ない!!」

「「きゃあ!?」」

 

危機を察知し、出久はココアと花名を纏めて抱きかかえて飛び上がる。

 

「ちっ。お前ら、捕まってろ!!」

「え!?」

「おい、爆豪!」

 

一方の勝己も、チノとリゼを両脇に抱えて跳躍。爆破の推進を活かして一気に距離を離す。回避されたことによるマスキュラーの攻撃は、地面を大きく粉砕する。

 

「逃げるなんてよぉ、卑怯じゃねぇか!!」

 

するとマスキュラーの両脚にも腕と同じ何かが生えてきて、跳躍力を跳ね上げてくる。

 

「ぶっつぶれな!!」

「やば…セントルイススマッシュ!」

 

咄嗟に出久は、迫りくるマスキュラーに蹴りを放つ。しかし空中で、しかも人二人を抱えながらでは真っ向から力を出せない。だから、攻撃を逸らすことに専念する。

 

「く……はぁああ!」

 

結果、攻撃を逸らすというより蹴りの反動で一気に距離を離すこととなる。しかしマスキュラーの攻撃からココア達を守ることには成功した。

 

「ねぇ、出久君。あの人の力ってなんなの?」

「僕の個性と同じ筋力の強化なんですけど、奴の場合は筋繊維の総量を増やすタイプなんです。しかも皮膚の下からあふれ出す量にもなるから、筋肉自体を鎧にすることも出来ます」

「な、何それ…」

 

マスキュラーの個性の詳細を聞き、びっくり仰天の二人。すると、マスキュラーは着地してきて再びこちらに視線を向ける。

 

「ほぉ。蹴り主体に切り替えたらしいが、なるほど経験もそれなりに積んだみたいんだな。潰しがいがありそうだ」

「マズい、こっちに完全に狙いを定めている……一ノ瀬さん、逃げてください。あれは確実に危険な相手です」

「そうだよ、花名ちゃん。ここは私たちに任せて!」

「あ、ココアちゃん!」

 

マスキュラーに危険を感じ、花名に逃げるように促す。そしてココアと二人でマスキュラーに突撃していった。本来、ココアも逃がすべきなのだがまだジオがいることもあり、彼女の力も借りることを選んだ。

一方、そのジオはというと…

 

「クソが、爆殺すっぞ!!」

「ちょ、爆豪待て! 少しは連携を…」

 

勝己やリゼと交戦中であった。勝己は再び爆撃でジオを追撃するが、大火力攻撃のため上手くリゼは攻撃を繰り出せずにいた。

 

「攻撃力だけで俺を倒そうなんざ、百年早ぇんだよ」

「な!? また…」

 

だがジオは再び高速移動を発動、勝己とリゼの背後を取る。そして刀を抜き、二人の首を刈ろうとその刀を振るった。

 

「ぐわぁ!?」

「私を忘れないでください」

 

そんな時、チノの放った魔法がジオにダメージを与える。まさかの不意打ちによって、ジオのダメージは予想外に大きいものとなっていた。

 

「まさか、お前みたいなガキに傷を負わされるとはな……」

「私だって、そこそこ戦いは経験しています。敵わずとも、抵抗はしてみせます」

 

チノの強い意志の籠った目に、ジオは何か思うことがある様子だった。すると、意を決して行動を始める。

 

「お前ら、今から俺の真の姿を見せてやる。光栄に思いな」

「真の姿だぁ?」

「だとしたら、止めないといけないんだろうが……」

 

ジオもついに帰刃を発動するのだが、その際に刀を地面に突き刺しながら跪くようなポーズをとる。その様はまるで、騎士が君主に忠誠を誓うようも見える。リゼの言う通り止めないといけないのだが、その様相につい見入ってしまう。勝己ですら動きを止めてしまったほどである。

 

「喰い千切れ、虎牙迅風(ティグレストーク)!」

 

そして変貌したジオの姿は、両手の甲から生えた刃と、三つ編みの髪の先端に備えた刃の、計三本の刃を持った姿となった。脚部も獣のようになっているが、他の場所で戦うメンバーが遭遇した破面達ほど極端な外見の変化はみられていないが、威圧感は増している。

 

「さあ、いくぞ」

 

直後に浮かべた好戦的な笑みに、全員が警戒心を強める。その一方、ビルドは……

 

 

「おらぁああ!!」

「うぉっと!」

 

メタル・ドーパントの猛攻を、オクトパスライトに切り替えた状態でいなしていた。先ほど持っていたドリルクラッシャーが手に無かったのだが…

 

「ほら、どうした? もっと力を見せてみろ!!」

 

ウォルフラムの手にあった。しかもドリルクラッシャーはドリル部を取り外して銃形態に変形できるようで、それによる射撃攻撃を繰り出していたのだ。

 

(まさか、奴が触った瞬間に例の金属操作とやらで引き寄せてくるとはな。一介の犯罪者がこんな力を使うなんて、とんでもない世界だ)

 

ウォルフラムへの警戒を強めながら、雷撃で銃撃を相殺する。そして新しいフォームに切り替えようと、フルボトルを準備する。

 

【忍者! コミック! ベストマッチ!】

「ちょいと変わり種、行かせてもらうぞ!」

「忍者だ? 動物と無機物じゃなかったのか?」

 

まさかの動物じゃないフルボトルが使われ、ウォルフラムもメタル・ドーパントもそろって困惑sてしまう。しかしこれが隙となって、変身に成功した。

 

【Are you ready?】

「ビルドアップ!!」

【忍びのエンターテイナー! ニンニンコミック! イェーイ!】

 

現れたビルドは紫と黄色のカラーリングで、複眼には手裏剣と万年筆があしらわれている。そして手には刀身に4コマ漫画が刻まれた日本刀風の武器、"4コマ忍法刀"が握られている。

 

「一気に決めさせてもらうぞ!」

【分身の術!】

 

そしてビルドは柄に付いているトリガーを引くと、ビルドが分身してウォルフラムとメタル・ドーパントに突撃していく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

一方、龍我たちは

 

「ココアちゃん達、無事かしら?」

「リゼ先輩やあの緑谷君たちが一緒なら、大丈夫じゃないかしら?」

「安心しろよ。戦兎は物理学者で頭でっかちだけど、強いからな。他の連中共々、助けになってくれるだろ」

 

引き離されたココア達の安否を気にする千夜に、シャロと龍我が安心させようと声をかける。龍我は仮面ライダーの本分として、シャロは千夜と幼馴染なので共に彼女を安心させようとする。

 

「皆さん、敵は未知の能力を持っているんですから、警戒するようにしてください」

「だろうな。車に憑依してパワーアップしたり、夢に入り込んだり、なんてやべぇ能力が多いらしいからな」

「私らの世界の個性も色々あるけど、そこから見てもスゴイ能力多いらしいしね」

「僕からしたら、遺伝する君らの世界の個性という能力もたいがいだけどね」

 

一方の雄英チーム3名も、スタンドという自分たちの世界から見ても未知な力に警戒を強めることなる。横で聞いていたジョニィもスローダンサーに跨ったまま語る。自分たちにとって彼らの世界の個性も得体のしれない能力に見えていたようだ。

 

「お前らか。オーバーヘブンショッカーが話していた、ツェペリ一族の秘伝を盗んだテロリストどもってのは」

「!? この声は…」

 

その時、ジョニィの耳に聞き覚えのある声が響く。現れたのは、テンガロンハットにマントといった西部劇スタイルの青年。しかし手に持つ武器は拳銃ではなく、掌サイズの小さな鉄球。

その姿に、ジョニィは見覚えがあった。

 

「ジャイロ!! 死者が復活したとは聞いたが、まさか君も…」

 

この男こそが聖なる遺体をヴァレンタイン大統領から守るために、ジョニィと共に戦った"ジャイロ・ツェペリ"その人である。ヴァレンタインの攻撃が致命傷となって命を落としたが、案の定オーバーヘブンショッカー首領によって復活、敵となったようだ。証拠に、その背から紫のオーラを発している。

 

「ジャイロ、奪ったなんて人聞きが悪い。君が僕に教えてくれたんじゃないか!!」

「あぁ? 俺が一族とその祖国ネアポリスの秘伝を、見ず知らずの人間に教えるわけねぇだろ。惑わそうたってそうはいかねぇぞ、テロリストめ!!」

 

ジョニィの言葉を信じず、声を荒げながら鉄球を投げつけるジャイロ。最早、言葉は通じないようだ。

 

「マズイ!」

 

咄嗟に焦凍が氷の壁を生成し、それでジャイロの投げた鉄球を防ごうとする。しかし……

 

バリィイイイイインッ

「何!?」

「追撃行くぜ、テロリストめ!!」

 

一瞬で氷の壁は砕け、ジャイロは焦凍に向けてさらに鉄球を投げる。

 

「轟君!!」

 

しかし咄嗟に天哉が焦凍を地面に伏せさせたことで、避けることに成功。

 

「今がチャンス!」

「私も手伝うわ!!」

 

お茶子がその隙を突いてジャイロに飛び掛かり、シャロも援護しようとフラスコを当的する。ジャイロはそれを見て微動だにせず……

 

「え!?」

「硬!?」

 

フラスコを頭にぶつけられてもジャイロは微動だにせず、お茶子が顔面に放ったパンチも逆に彼女の拳を痛めることになった。

 

「ツェペリの秘伝技術、テロリストとはいえガキに敗れるわけないだろ!」

「「きゃあ!?」」

 

叫びながらジャイロはお茶子を蹴飛ばし、シャロにぶつける。その手にはもう一つ鉄球があり、それはどういうわけか独りでに回転している。

 

「何なんだ、あれは? スタンド能力ってやつか?」

「ジャイロの力は能力じゃなくて技術、例のツェペリ家の秘伝技術で自然界の"黄金長方形"に干渉する、特殊な回転を鉄球に加えて操るんだ」

 

ジャイロがかつてジョニィに教えた「黄金の回転」は、自然界に存在する黄金比の長方形を利用するための技術。ジャイロの祖国ネアポリス王国には、その黄金の回転を継承した二つの一族がいるらしく、その片割れがツェペリ一族である。それぞれが異なる使用用途で回転を継承しているが、ツェペリ一族は死刑執行人を生業にしていることから、恐らくは戦闘用途と思われる。

 

「話に聞いていたが、それが黄金の回転。中々の力だな」

「あんたか。人外から誉め言葉が来るとは、光栄だな」

 

そんなジャイロに声をかける新たな敵。眼帯に額の割れた仮面の、美男子である。割れた仮面からもわかるように、この男も破面である。

 

「破面No.50、テスラ・リンドクルツ。ノイトラ様唯一の配下で、彼に貴様らの魂を捧げる者だ」

「ノイトラ……あのデカい武器持った眼帯の男か」

 

ノイトラと最も縁の深い破面、テスラ。《b》刀身の途中に輪の形をした刃がある《b》という奇怪な形状の刀を抜いて臨戦態勢に入る。しかも敵はこれだけではなかった。

 

「「俺達のことも忘れては困るな、ジョニィ・ジョースターよ」」

「ディエゴ!? なんで、お前が二人も…」

 

そこに現れたのは、ジョニィが元の世界で対立していたというディエゴ・ブランドーであった。承太郎も初戦でディオとタッグを組んだディエゴに勝負を挑んでいたが、なぜかそのディエゴが二人もいたのである。

しかしその正体は、すぐさまディエゴの片割れが明かし始める。

 

「特別に教えてやろう。俺は平行世界、聖なる遺体のあった基本世界とは異なる世界からやって来たもう一人のディエゴだ」

「なに?  そんなこと、できるはずがない!! 平行世界の同一人物が近寄ったら、対消滅するはずだ!!」

「ジョニィさん、なんだか物騒な単語が聞こえてきたんだけど?」

「消滅ならわかるけど、なんだそのツイショウメツって?」

 

ジョニィの反論について聞いていた千夜が不安げに尋ねる。龍我も聞き慣れぬ言葉に対しての質問を投げかけるのだが、それは非常に危険な真実であった。

 

「ヴァレンタインのスタンドで平行世界に行った、もしくは平行世界からこちらに引き込んだ存在は、生物だろうが物だろうが、同じ存在と引き合い、重なり合って消滅してしまう特性がある。例えば僕が平行世界の僕と遭遇してしまったら、互いに引き寄せ合って重なり合い、そのまま消滅してしまう。この特性がある以上、ディエゴは同じ世界に二人以上は存在できないはずなんだ」

「なんだ、それ……」

「思いのほか、怖すぎるんだけど」

 

同じく話を聞いていた焦凍とシャロが、得体のしれない恐怖に襲われる。しかしそんな中、他でもないディエゴ本人がその詳細を語り始めた。

 

「それを可能にしたのが、今は亡き財団Xの幹部"最上魁星(もがみかいせい)"が平行世界の自分と共同開発したエニグマという装置の力だ」

「このエニグマを使うことで最上は、平行世界の自分自身と融合することで不老不死になろうとしていたらしい。その装置の応用で、俺達は平行世界の同一人物同士でありながらともに存在できている」

「ちょ、またエニグマかよ!」

 

ディエゴからまさかのエニグマの単語が聞こえて仰天した。かつての敵対者が使っていた装置の名を、まさかまた聞くことになるとは思わなかったのだ。

 

「万丈さん、もしや何か知っているのですか?」

「その最上ってやつ、俺と戦兎が昔戦ってた敵の一人でよ。そのエニグマで他の仮面ライダーの世界に飛ばされちまったことがあんだ」

「エニグマを知る物がここにいたか。では、これ以上の説明は不要とさせてもらおうか」

 

天哉からの質問に答えながら、龍我は目の前の敵たちに警戒しながら、ビルドドライバーとクローズドラゴンの準備を行う。

その一方で、ディエゴ達もスタンドを発動して戦闘態勢に入る。

 

「俺のスタンドはスケアリー・モンスターズ。自分を含んだ生物を恐竜に変化させる能力だが、お前らは抹殺対象だからあえて恐竜化させないでおこう」

「そしてこれが俺のスタンド、THE WORLDだ」

 

そこに現れたもう一人のディエゴのスタンドだが、何故かジョニィの知るディエゴと違うスタンドを有している。この時一同は知る由もないが、そのスタンドの姿と名は承太郎が倒したDIOと同じだったのである。

ディエゴはすでにバレているため能力を明かしていたが、もう一人のディエゴは能力を明かしていない。

敵は未知の能力持ちが多い中、龍我はそれでも折れない。

 

「お前らが何者だろうと、俺は愛と平和のために戦う仮面ライダーだ。どんな理由があろうと、女子供を傷つけようなんてマネ、認めねぇ!!」

【Wake UP! Cross-Z Dragon!】

 

龍我はクローズドラゴンにドラゴンフルボトルをセットし、それをビルドドライバーにはめ込む。そしてハンドルを回して変身準備に入る。

 

【Are You Ready!?】

「変身!」

【Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!】

 

生成されたアーマーを纏い、仮面ライダークローズとなった龍我。ビートクローザーを構えてテスラと対峙する。

 

「仮面ライダー、生身の人間がどれだけ強化されようと破面との地力の差は埋まらん。大人しくノイトラ様の糧になっていればいいものを」

「んなもん知るか! 俺達は誰が相手だろうと負けるわけにいかねぇ!!」

 

そして二人は駆け出し、そのまま互いの剣が激突する。

 

「おらぁああ!!」

「ぐっ!?」

 

しかし鍔迫り合いの最中、テスラの顔面を殴りつけるクローズ。普通なら子の一撃で大きく吹き飛ぶだろうが、頑強な破面の肉体は微動だにしない。

 

【ヒッパレー! スマッシュヒット!】

「おらぁああ!!」

 

咄嗟に距離を取ったクローズは、ビートクローザーの柄の取っ手を引っ張る。そして刀身に纏った蒼炎を叩き込みに入る。

 

「虚閃!」

「ぎゃあああああ!!」

 

だがテスラはクローズが懐に入り込んだところで、虚閃を叩き込む。それによって、大きく吹き飛んでしまったクローズ。

 

「万丈さん! 大丈夫ですか…」

「人様の心配をしている余裕があるか、少年よぉ!!」

「うわぁあ!?」

 

クローズに気を取られてしまった天哉は、その隙を突いてディエゴの攻撃を受けてしまう。恐竜化したことですさまじい膂力を発揮するディエゴのパワーに、天哉は成す術なしであった。

 

「近づけさせねぇ!!」

「僕も手伝う!」

 

一方の焦凍も、もう一人のディエゴに近づけさせないよう氷を生成して一気に制圧しようとする。ジョニィもタスクの爪弾で援護射撃に入るが……

 

「THE WORLD!!」

 

ディエゴがスタンドの名を叫んだと同時に、なんと周囲の時間が止まっていた。このTHE WORLDもDIOのザ・ワールドと同じく時を止めるスタンドであったのだ。

 

「このTHE WORLDは5秒間このディエゴ以外の全ての時間を止める。DIOとやらのスタンドは時間がスタンドの成長に合わせて伸びたらしいが、まあ無い物ねだりにしかならないか」

 

ディエゴは時の止まった中、一人説明するように呟きながらジョニィと焦凍に向けて無数のナイフを投げる。そしてそれが終わった瞬間、5秒が経過した。

 

「「なに!?」」

 

四方八方からナイフが迫ってきて、二人は絶体絶命に。

 

「女子供だろうと、テロリスト相手には容赦はしねぇぞ!!」

 

一方、ジャイロもお茶子とシャロに鉄球の回転パワーで迫りくる。

 

「シャロちゃん、危ない!」

「え…ひゃあ!?」

 

ジャイロの投げた鉄球から逃げるべく、お茶子はシャロをゼログラビティで軽くし、宙へと放り投げる。そして自身も跳躍する。

 

「その程度で逃げられるわけねぇだろ!!」

 

直後、地面に落ちた鉄球の回転が凄まじい勢いで早まり、それが巨大な竜巻を発生させた。

 

「「うそぉおお!?」」

「シャロちゃん! お茶子ちゃんも!!」

 

そしてそれによって大きく吹き飛ばされる二人を、千夜が追いかけようとする。体力のない自分では先に敵に追いつかれそうだが、そうも言っていられない。

 

「逃がすか! ヴァルキリー!」ピィイイイ!

「ヒヒーン!!」

「きゃああ!?」

 

だがその前にジャイロの呼びかけに応じて一頭の馬が現れて、そいつが千夜の行動を妨害してしまう。ジャイロがスティール・ボール・ランに参戦した時に乗っていた愛馬、ヴァルキリーだ。

敵は強敵、しかも想定外の増援までいる。果たして、彼らの明日は?




お待たせしました。花名ちゃんについてですが、メイン作品を決めた後でスロウスタートの魅力を再認識したため、彼女にヒロインの役割を担ってもらうことにしたでござる。
あとバラガン陛下もそのうち出てきます。そのうちね……


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第33話「信じる正義のために」

戦兎「常軌を逸した戦闘力の破面とNEVER、そして(ヴィラン)の力に苦戦を強いられる俺達」
出久「まさか、ウォルフラムがここまで強くなっているなんて……どうすれば」
ジョニィ「ジャイロの回転パワーも、敵に回ってしまってかなり厄介だ。」
花名「確か、ジョニィさんの一番強いスタンドってお馬さんに乗りながらじゃないと使えないんですよね。これ、すごいピンチじゃ……」
シャロ「よね。隙とか大きそうだし……」
戦兎「仕方がない。"ギュインギュインのズドドドドな俺の切り札"を出すしかないな!」
龍我「俺の"メラメラビキビキな極熱筋肉"も活躍するぜ!!」
勝己「なんだそれ!? どっちも擬音ばっかで意味わかんねぇよ!!」
リゼ「爆豪、意味わからんのは私もだが落ち着け」
ココア「え? リゼちゃん、戦兎さんは"速くなって一気にやっつけちゃうパワーアップ"で、龍我さんは"熱い体と物凄い怪力"だよ」
リゼ「ココア、一瞬でわかったのか?」
チノ「ココアさん、そういえば甘兎の必殺技みたいなメニューも一回でわかりましたよね」
焦凍(感性が独特だから、か? まあ、おかげでだいぶわかりやすかったが)


「そらよ!」

「うぉお!?」

 

ウォルフラムが地面に手を付くと、巨大な鉄塊がビルドの足元からせり上がってくる。

 

「嘗めてもらっちゃ、困るな!」

 

しかしビルドも多くの修羅場を潜り抜けており、咄嗟の判断でジャンプして一気にはるか上空へと飛翔する。そして手にした4コマ忍法刀のトリガーを2回引いた。

 

【火遁の術!!】

「手加減はするから、勘弁してくれ!!」

 

すると4コマ忍法刀の刀身に炎が纏わり、ビルドは落下の勢いに任せてウォルフラムに斬りかかる。しかしウォルフラムは仮面越しにもわかるようにほくそ笑み、手招きをするような仕草を取る。

 

「いやっほー!!」

「何!?」

「てめぇらは文字通りの人外としか戦っていない。なら、生身の人間にはどんな悪党相手でも手加減しちまうってわけだ」

 

なんとその直後にメタル・ドーパントが引き寄せられ、ビルドの炎の斬撃を防がれてしまう。

 

「そんでもって、こいつを食らいな!」

「ぐわぁあ!」

 

引き寄せられたメタル・ドーパントは、そのまま手にしたハンマーでビルドをぶっ叩く。筋肉質な体で繰り出す攻撃は、ビルドの体を装甲越しに大きなダメージを与えていく。

その一方でウォルフラムは近づきながら、個性で変形させた鉄塊を腕に纏わせる。見てみると、先ほど地面から生やした鉄塊が引き寄せられて変形したようだ。

 

「しかも、ラブ&ピースなんて実現不可な夢のために戦うのがてめぇらしいからな。付け込まねぇ理由はないだろ!!」

「がぁああ!?」

 

更にかつてオール・フォー・ワンから与えられた筋力強化の個性を同時発動、追撃といわんばかりにビルドを殴り飛ばす。それによって、大きく吹き飛んでしまうビルド。しかもそのダメージで、変身解除までしてしまう。

 

「しゃああ!!」

「くっ!?」

「ちっ」

 

一方、勝己とリゼはジオ相手に防戦一方となっていた。ジオは帰刃によって二刀流スタイルに変化、加えて自前のスピードも跳ね上がって攻撃はより激しくなってしまう。

 

「皆さんから離れてください!」

 

どうにか隙を突いてチノが追撃に入るのだが、今度はあっけなく回避されてしまう。しかも…

 

双射牙(ミシル・ディエンテ)

「うっ!」

 

ジオの頭部の仮面、そこから生える牙が射出される。それが命中したチノは、地面に拘束されてしまった。

 

「少し大人しくしていろ。ガキに手を上げる趣味はないが、場合によっては首を切り落としてやる」

「チノに何をするんだ!!」

 

ジオがチノに釘を刺している隙を突いて、リゼが追撃に入る。しかしジオはまたも響転でそれを回避してしまう。

 

「仕方ねぇ。助けてやっから、大人しくしてろチビウサ!!」

 

すると勝己が隙を突いてチノの救出に乗り出すのだが、ジオがその隙を逃すはずがなかった。

 

「虚閃!」

「「な!?」」

「爆豪さん! リゼさん!」

 

ジオの放つ破壊光線・虚閃が勝己とリゼに迫る。そしてチノの叫びも虚しく、二人の立っていた辺りは大爆発を起こしてしまう。

 

「ぶっ潰れちまいな!!」

 

そしてマスキュラーと交戦していたココアは、個性で強化された相手の剛腕が迫ろうとしていた。

 

「危ない……やぁああ!」

 

ギリギリで回避に成功し、そのまま剣で斬りつける。しかし、ここで誤算が生じた。

 

「おいおい。何で出来てるかしらねぇけど、そんなんで俺の体は切れないぜ」

「え?」

 

マスキュラーの頑強な筋肉の鎧、それがエトワリウム製の剣をさえぎってしまったのだ。ココア自身の筋力の問題もあるが、肉体強度は並の魔物を上回るレベルである。

 

「あんまり潰しがいないが、そのままミンチになっちまえ」

「ひぃっ!?」

 

マスキュラーはそのまま剛腕を再び振るい、ココアに狙いを定める。

 

「デラウェアスマッシュ・エアフォース!!」

 

しかし出久がサポートアイテムのガントレットを使った遠距離攻撃で隙を作る。"出久の強化された筋力指をはじき、それで生じた風圧に指向性を持たせて攻撃すると"いう代物である。

 

「んぁあ!?」

「ココアさん!」

 

頭部に攻撃を受けたマスキュラーは怯み、その隙を突いて出久はココアを救出しようとする。

 

「まあ救出を優先するわな、ヒーローよぉお!!」

「やば!?」

 

しかしココアの体を抱きかかえた直後、マスキュラーが持ち直して再び拳を振り上げる。咄嗟に蹴りを放ち、先ほどの緊急回避と同じく蹴りの反動で離脱しようとした。

しかし…

 

「ぶっ飛びな!!」

「うわぁあ!?」

「きゃああ!?」

 

しかし先ほどよりも強い力で拳が振るわれ、出久はココアを抱き抱えたまま大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「どれどれ。パワーアップしているなら、あの小僧も肉体強度が上がってるかな? どれぐらいのパワーでミンチになるかテストしてやるか…」

 

そして吹っ飛んだ二人の方に視線を向け、嬉々とした様子で更に個性を発動。頭部以外の全身が、皮下からはみ出した筋繊維に覆われていく。そして駆け出そうとした直後、それは起こった。

 

ゴンッ

「ん?」

「やめて……ください…」

 

マスキュラーは頭に何かがぶつかる感触を感じたため、振り返る。そこに居たのは、涙目で何かを投げつけてきた花名の姿であった。ふと足元を見ると、どうやら彼女の杖が投げつけられたらしい。

 

「なんで、こんなことするんですか? 私達、ただ友達と笑っていたいだけなのに…誰かを傷つけたいわけでもないのに…なんでみんなを、傷つけるんですか? 私達、あなたに何かしました? 恨まれるようなことなんて、何も…」

 

そのまま涙目で問いかける花名。

姉という立場に憧れる余りにシスコンを拗らせているが、コミュ力の化身とでも言わんほど人と仲良くなるのが得意なココア。気弱でたまに暴走するオタク気質だが、純粋にヒーローに憧れていて率先して自分たちを助けようとする出久。そんな二人を目の前の男は、凶悪さと無邪気さが同居する狂気的な笑顔で嬲っている。それが理解できずに、純粋に疑問を問いかける。

 

「お嬢ちゃん、俺は別に誰かが憎いわけでも恨んでいるわけでもねぇぜ」

 

するとマスキュラーは、以外にもその質問に答えてきたのだ。そしてそのまま花名に近づいていく。

 

「俺はただ自分の力で人を殺す、それをやりたいからやっている。その為に、オーバーヘブンショッカーに参加した。そしてコイツらは、それを止めたいから俺を倒そうとする。つまりだ、お互いやりたいことやってるだけだ、恨む恨まないはお門違いなんだよ」

「え?」

 

しかしらその口から出た答えは、自己解釈を抉られた犯罪者の理論そのままなのである。その為、答えを聞いた花名は顔を青ざめることとなった。

 

「ただ悪い奴は決まっている。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出来もしねぇことをやろうとするお前らだよ!!

 

そして嬉々とした様子で花名を殴殺しようとするマスキュラー。しかし…

 

「悪いのはお前だろ!!」

「花名ちゃんから離れて!!」

「お?(小娘共々、さっきより速ぇな)」

 

出久とココアが同時に飛び掛かり、マスキュラーの攻撃を阻止する。今度はココアの一撃が上手く決まり、マスキュラーの腕に剣が刺さった。

 

「出久君!」

「はい!」

 

そしてココアの呼びかけに応じて、出久は彼女の剣を思いっきり蹴る。それによってマスキュラーの剛腕に、剣は深く突き刺さった。

 

「へぇ、ちっとはやるみてぇだ。だが、この程度じゃ腕一本潰すことも敵わねぇぜ」

 

しかしマスキュラーは余り堪えた様子がなく、むしろ倒しがいのある獲物がいると嬉しそうな様子だ。だが、ここで事態は好転することとなる。

 

「やらせるかっての!!」

「ぐえぇ!?」

 

なんと何処からか戦兎がバイクに乗って登場、マスキュラーの頭部に体当たりを仕掛けたのだ。ウォルフラム達を振り切ることができたようだ。

 

「ぐわぁああ!?」

「あ? お前、なにやってんだ?」

 

直後、マスキュラーの胸にジオが吹き飛んできた。さらにその直後、原因となった人物が攻撃を仕掛ける。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

「「ぐわぁああああああ!?」」

 

勝己が高速回転しながらマスキュラー、正確には彼に投げつけられたと思しきジオに突撃した。錐揉み回転を伴った高速タックルと爆撃の合わせ技、その威力は頑強な体の二人にもダメージを与えることに成功したようだ。

 

「流石にまだ倒しきれねぇだろうが、ちったぁダメージいったろ」

「じゃなきゃ、こっちも困るけどな…」

「すみません、私がもっとうまく動ければ少しは楽に…」

 

爆撃を放った勝己は一気に距離を取り、自信ありげに告げる。すると、リゼがチノを背負って駆け付けてきた。二人とも虚閃から逃げ切り、チノの救出に成功したようだ。

 

「みんな無事だった。良かった……ところで戦兎さん、そのバイクは?」

 

花名が他のメンバーの無事を知って安心すると、いつの間にか戦兎が乗っていたバイク"マシンビルダー"に気づく。

 

「あ、これね」

 

なんと戦兎がバイクから降りた直後、バイクが折りたたまれてスマートフォンになってしまったのだ。当然、その場にいた全員が口をあんぐりと開ける結果となる。

 

「これとか変身後に使う武器も、俺の発明ね。で、気を取り直してあいつらがどう動くかが問題だな」

「……え? あ、はい!」

「確かに、今ので倒せちゃいねぇだろうな……」

 

不意に戦兎が振った話題で我に返る、出久と勝己。そんな中、策を思いついたのは何とリゼだった。

 

「みんな、少なくとも生身の体で戦っているヴィランだったら、すぐにでも倒せる手を思いついたんだ」

「え? リゼちゃん、本当?」

「ああ。爆豪の攻撃と私のとっておきがあれば、おそらく……」

「だが、そのためには全員を一まとめにしないとダメだ。何か、手はあるか?」

 

リゼの案に対して、戦兎が問題を指摘する。すると……

 

「かっちゃん、僕のアレを明かそう」

「な!? デク、てめぇ…」

「轟君達には黙っていてもらうから。というわけで、隙を作る技があるにはあるんで恐らく…」

「何かあるんだな?」

「はい。ですが、エトワリアに来ているメンバーじゃかっちゃんしか知らない秘密で、皆さんにも黙っていてほしいことなんですが…」

 

意を決して、勝己を含んだ一部の人間にだけ共有している、自身の個性についての秘密を打ち明けることを決めた出久。

 

「オッケー。仲間だからな、そういうのは守るさ」

「うん。私もいいよ」

「何があるのかは知らないが、私もだ」

「私も異存はないです」

「わ、私も」

「皆さん……ありがとうございます」

 

戦兎も、ココア達ラビットハウス組も、花名も了解してくれた。そこにお礼を言うと、再びフルカウルを発動して敵たちの隙を突く準備に入る。

 

「それじゃあ、俺も協力しますかね」

【ラビットタンクスパークリング!!】

 

そして戦兎も、再びラビットタンクスパークリングに変身する準備をする。

 

「行きますよ、戦兎さん!」

「了解だ、出久。変身!!」

【ラビットタンクスパークリング! イェイイェーイ!!】

 

そして勝己の攻撃から立ち直ったマスキュラーとジオに立ち向かっていくビルドと出久。

 

「おいおい、戦闘中に逃げるのはどうなんだ!?」

「しょうがねぇから、そこのチビも潰してやる!!」

 

さらにウォルフラムとメタル・ドーパントまで駆け付け、そのまま乱戦に突入する。

 

「よし、いったん距離を置くぞ。花名、回復の方を頼む」

「う、うん」

 

そしてそのまま離脱する一同。花名はこの時、魔法を使うために杖を回収しようとするのだが……

 

「俺が取ってくる。お前じゃ、トロいから巻き添えを食らいかねねぇ」

「え、ごめんなさい…」

 

また勝己に止められ、そのまま彼に回収を任せることとなった花名。しかし、ここで勝己から意外なことを聞かされる。

 

「俺はオールマイトを、伝説のヒーローを超えるヒーロー目指してんだ。だから不要に(ヴィラン)に人を傷つけさせるわけにいかねぇんだ。大人しくしてろ」

「え? あ、ありがとう」

 

まさかの勝己からの言動に、花名は思わずお礼を言ってしまう。キレ気味に自分を非難していたあの声も、実は彼なりの気遣いだったようだ。キレ気味なのは、完全に勝己自身の性分によるのだろう。

 

「往生際が悪いヒーローどもは、さっさと潰れちまいな!」

 

一方、ウォルフラムは地面からどんどん鉄塊を生やしていき、それをビルドと出久にぶつけようと躍起になる。

 

「うぉ!? おい、ちょっとは気をつけろ!!」

「全くだ。動きにくい……」

 

しかしもともと我が強い上に協調性の低い者同士で組んでいたためか、ウォルフラムの攻撃が他の敵対者たちの動きまで阻害することとなっている。メタル・ドーパントとジオが、揃って文句を言うあたりが顕著だ。

 

「おいおい、ちょこまかしてんじゃねぇよ!!」

 

そんな中でマスキュラーだけは意に介さないで、鉄塊を粉砕しながらビルド達を狙う。しかし二人そろって俊敏なこともあり、ウォルフラムの生やした鉄塊を利用しつつマスキュラーをかく乱している。

そしてタイミングを見極めた出久は、すかさず行動を起こした。

 

「いけ! 黒鞭!!」

 

直後、出久の両腕から黒い紐状のエネルギーを放出。それが敵を纏めて拘束した。そして一気に距離を取る。

 

「このまま、引き込む!」

「「「ぐわぁあ!?」」」

「ああ?」

 

そして一気に引っ張り、まとめて引き寄せる。マスキュラーは体重の関係で微動だにしなかったが、残りの三人は引き寄せられてそのマスキュラーの体に衝突。全員が一纏まりになるタイミングがあった。

 

「今のは……あとでいいか。次は、私の番だ!」

 

出久が説明したはずの能力と異なる力を振るったことにリゼは動揺するが、気を取り直して攻撃態勢に入る。なんと虚空から巨大な銃を出現させたのだ。そしてそれで狙いを定める。

 

「うぉ!? すげぇ、流石軍人の娘だな…」

「実際は水鉄砲だが、威力はちょっとしたものだ。というわけで……食らえ!!」

 

ビルドに詳細を説明し、その水鉄砲を一気に発射する。それがマスキュラーの巨体を、一気にずぶ濡れにしてしまった。ただし、残りの面々はそのマスキュラーの体に遮られて、水は食らっていない。

 

「むぐ!? 思ったより、スゲェ水圧だな……だが、この程度じゃ…」

 

マスキュラーに多少ながらダメージを与えられたが、まだ余裕そうな雰囲気である。しかしここでとどめとなる勝己の攻撃が放たれた。

 

「そういうことか! 徹甲弾機関銃(A・Pショット・オートカノン)!!

 

何かに納得したように勝己は、連続攻撃でずぶ濡れのマスキュラーを火あぶりにしていく。

 

「リゼちゃん、濡れている物は燃えないんだよ! それじゃあんまり効かない……」

「ココア、お前理系だったよな? ここで質問だけど、水の主成分って何だったかわかるか?」

 

ココアが不意に築いた疑問をぶつけるのだが、ここでリゼがこんな質問を返してくる。

 

「え? えっと…」

「H2O、水素と酸素ですね……」

「ああ。なるほど、そういうことか」

「緑谷、正解。そして流石は物理学者ですね、戦兎さん」

 

突然だったため、ココアは困惑して答えられなかったので出久が回答する。すると一緒に聞いていたビルドも何か納得がいった。

 

「お前ら、水に火の攻撃って何考え…」

「バカか、てめぇ!? このままじゃ……」

 

マスキュラーは勝ち誇った様子だったが、直後にウォルフラムが状況を理解して慌てふためく。そしてそれは起こった。

 

 

 

 

 

ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ

「「ぎゃあああああああああああああああああああ!?」」

 

突如として大爆発が発生、生身むき出しのマスキュラーとウォルフラムが断末魔を上げる。人外のジオとメタル・ドーパントはわからないが、叫ぶ二人はそのまま戦闘不能になるのは明白だった。

 

「え? リゼさん、これは一体?」

「なんか、いきなり爆発したんだけど…」

 

突然の事態に困惑するココアとチノに、リゼが解説を始める。

 

「さっき緑谷が答えたように、水は酸素と水素で構成されている。しかもこの二つは可燃性、つまり燃えやすい気体だから火を消せる水と真逆の特性を持っている。それが一気に蒸発して気化したら、後はどうなる?」

「あ、水素爆発だ!」

「理科の実験でも見る奴ですね」

 

リゼの解説を聞いていると、ココア達が納得した様子で今の攻撃の手段を察した。

 

「ちなみに豆知識だが、この特性もあって大火災が起こっていると水で消火しても逆効果になることがあるらしいぞ」

「半々野郎の技を彷彿とさせるのが気に入らんが、まあやるじゃねぇか」

「かっちゃん、轟君の"膨冷熱波(ぼうれいねっぱ)"は熱膨張を活かした爆発だから、また別物なんだけど……」

 

 

 

 

「死ねヤァあああああああああああ!!」

「「がぁああ!?」」

 

そんな中、メタル・ドーパントが超高速で飛んできてビルドと出久に激突する。

 

「戦兎さん! 出久君!!」

 

いきなりの事態に驚き、ビルド達に呼びかけるココア。しかしこれだけで攻撃はこれだけにとどまらなかった。

 

「虚閃!!」

 

ジオが放つ虚閃が、一同目掛けて放たれたのだ。

 

「まずい…うわぁああ!!」

「うぉおおお!!」

「きゃああああ!!」

「チノちゃん危な…きゃあ!?」

「ココアさん!?」

 

直撃こそ免れたが、虚閃の勢いによって生じたソニックブームが残りの面々を大きく吹き飛ばす。無傷で済んだは、ココアが突き飛ばしたチノ一人であった。

 

「ワン・フォー・オールの小僧と、仮面ライダーは…抑えた。後は……なんとか、しやがれ…」ドサッ

「ああ。ひとまず、礼は言っておこう」

 

爆発が晴れた先には、ズタボロのウォルフラムが手を構えた態勢でいたが、すぐにジオに後を託して気絶してしまう。どうやら最後の力で、メタル・ドーパントを高速で撃ち出したらしい。残るマスキュラーも息はあるが、黒焦げで倒れ伏しているため戦闘不能状態だ。

 

「さて。せめてものハンデだ、この剣は返してやるよ」

 

するとジオは何を思ってか、気絶したマスキュラーの腕に刺さっていた、ココアの剣を引き抜く。そしてそのまま、投げ返してきた。

 

「おいおい。本気の状態で、しかも人手が半減してるんだ。むしろハンデはそっちが必要じゃねぇか?」

 

勝己はそのまま、ジオに挑発するように告げるのだが……

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら、俺が真の姿=本気なんていつ言った?」

「は?」

『え?』

 

突然のジオの発言に一同は思わずきょとんとしてしまうが、ジオが信じられないことを起こす。

 

「見せてやるよ。お前ら脆弱な人間と破面の、力の差って奴をな!」

 

叫んだ直後、ジオは自身の右腕を天へと掲げ、それと同時に全身を赤い光が包み込む。

 

「え?」

「う、嘘だろ…」

「で、でっかくなっちゃった……」

「ちぃ、クソが」

 

ジオは身長が二回りほど大きくなったうえに、全身の筋肉が膨張。顔は先ほどの少年のままだが、それ以外は先ほどまでとは原形を留めないほどに変異していたのだ。

 

「これが、虎牙迅風(ティグレストーク)の実戦形態……

 

虎牙迅風(ティグレストーク)大剣(エルサーブル)だ!」

 

そして新たに変化した姿を名乗り、ジオはそのまま一同に迫っていく。そして巨大な腕を振るい、負傷して動きが取れそうにない一同を狙う。

 

【Ready Go! スパークリングフィニッシュ! イェーイ!!】

「「でやぁあああああああああ!!」」

 

しかし直後、ビルドと出久が二人で必殺技を叩き込む。二人の重たい蹴りはジオの頭部に命中。そのまま二人は地面に着地して距離を取るが…

 

「そんな攻撃、いまさら効くか」

 

ジオは堪えた様子がない。巨大化したことでパワーやタフネスは一気に増強されたようだ。

 

「以前は暗殺特化タイプの死神に、この姿を開放した直後に倒されたんでな。陛下の忠臣たる俺の力を発揮できなかった……その鬱憤をお前らで晴らしてやるよ!!」

 

ジオは宣言と同時に響転で一瞬で背後に回る。

 

「らぁあああ!!」

「させるか……ぎゃああああ!?」

 

ジオの剛腕から放たれる一撃に、ココア達をかばおうとして身を乗り出すビルド。受け身はとれたので変身解除されるほどのダメージではないが、かなりの痛手を食らうこととなる。

 

「戦兎さん、そんな……」

「あの巨体で、まだ速く動けるのか?」

 

ジオにまともな攻撃が効かず、ココアも出久も深い絶望に飲まれる。そんな中、ジオは気にも留めずに倒れ伏しているビルドに向かって告げる。

 

「お前は愛と平和なんてくだらん理想を語ってるみたいだが……力こそがすべてである俺達破面からしたら、馬鹿げているな。人間どもはいつもくだらん争いをしているし、人間じゃない俺たちもそうなんだ。どうあがいてもお前ひとりなんぞに実現できるはずないだろ」

 

ジオに理想をバカにされるビルドだったが、彼はそれに屈することなく返答する。

 

「ラブ&ピースがどれだけ弱くて脆い言葉かなんて重々承知だ。だからこそ、俺はそれを謳い続けているんだよ」

「あ?」

「愛と平和は俺がもたらすものじゃない。どれだけ大きな理想も、たった一人の人間でしかない俺だけじゃ実現なんてできない。だから、1人1人がその想いを胸に生きていける世界を作る。そのために俺は戦う!」

 

そしてジオに対して、力のこもった声で告げた。

 

「それが桐生戦兎の、仮面ライダービルドの戦う理由だ!」

【ハザード・オン!】

 

懐から取り出した装置を起動し、ビルドドライバーに装着するビルド。ハザード=危険を意味する不穏な装置だが、ビルド自らその概要を語り始める。

 

「ハザードトリガー。本来はビルドドライバー装着者の戦闘力を上げる代わりに、自我を抹消した兵器へと変えてしまう禁断の装置。だけど、俺はそれを制御する術を開発している」

 

そう言い、ビルドは一本のスティック状のツール”フルフルラビットタンクボトル”を振る。そしてボトルのキャップを回す。

 

「本当は後まで取っておきたかったが、それでこの子達を危険にさらしたら元も子もないからな」

【ラビット!】

 

それを中央の接続部で折り、ビルドドライバーにセットした。しかし、その時に流れた音声が、ココアと出久が困惑の表情を見せることとなった。

 

【ラビット&ラビット】

「兎と兎……あれ? 何かおかしくない?」

「はい。確かフルボトルって、生物と無機物の組み合わせなんじゃ…」

 

それだけでない。ドライバーの接続部に2つの異なる成分でなく、全く同じ成分が組み込まれたのだ。しかしビルドは気にした様子もなく、新たな変身に取り掛かる。

 

「ビルドアップ」

【ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!】

【Are You Leady!?】

 

そして生成されたのはいつものスナップライドビルダーでなく、鋳型のような”ハザードライドビルダー”だ。そしてそれにプレスされたのは、複眼以外のすべてが真っ黒なラビットタンクフォームであった。

 

「ひっ」

「な、なんだあれ?」

「まさか、失敗した?」

 

ココアが短く悲鳴を上げ、リゼと出久も冷や汗を流しながら様子をうかがう。暴走形態・ハザードフォームの姿が、この黒いビルドなのだ。

 

【オーバーフロー!】

 

しかしそれだけでなかった。どこからともなく、赤いウサギを模したロボットのようなものが現れたのだ。

 

「ふざけてんのか、おい?」

「でも、かわいいです」

 

その様子に勝己があからさまな不快感を見せる。その一方で、チノが目を輝かせて首を振るそのロボットを見ていた。

しかし直後、そのロボットがバラバラになって宙を舞う。

 

「はっ!」

 

そしてビルドも飛び上がり、ばらけた兎ロボットを、アーマーとして纏っていく。右腕、左腕、右脚、左脚、胴体と身体の五か所に装着。最後に複眼部が変化し、左右ともに兎を模した赤い物へと変化したのだ。

 

【紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!】

【ヤベーイ!ハエーイ!】

 

肩書からもわかるようなスピード特化。全身赤のビルドを見た一同は、口を揃えて言ったのだった。

 

 

『あれが、ギュインギュインのズドドドド……』

「今更姿を変えたくらいで、どうにかなると思ってんじゃねえよ!!」

 

ジオがすかさず、ビルドへと飛び掛かってくる。先程出久達を追い詰めた圧倒的質量の肉体から繰り出される斬撃が、ビルドへと迫る。

 

「ふっ」

「な、がはぁ!?」

 

しかしビルドは紙一重で回避し、一気にジオの背後を取った。そしてストレートパンチを叩き込む。

 

「な、なんだこの攻撃…てめぇ何をしやがった!!」

 

ジオは予想以上にダメージを食らったらしく、ビルドへと再び拳をふるった。しかしそれも避けられ、肩に強烈な蹴りを叩き込まれる。

 

「あ、がぁあああああ!?」

「嘘…効いている?」

 

ココアは苦悶の声を上げるジオを、信じられないような目で見ていた。彼の増量した筋繊維はラビットタンクスパークリングと出久の蹴りを食らっても、微動だにしなかった。しかし、今のビルドの打撃は確かに大きなダメージを与えている。

 

「なんだよ、情けねぇな!」

 

しかし敵は彼だけではない。いつの間にか戻ってきたメタル・ドーパントが、愛用の棍を振りまわしながら突進してきたのだ。

 

「死人兵士……なら、遠慮はいらないな!」

「おりゃ……ぐはぁあ!?」

 

しかしビルドはNEVERの詳細を聞いていたため、メタル・ドーパントから先手を奪う。鳩尾に叩き込まれた拳が凄まじい衝撃を受け、大きな隙を作る。

 

「はっ! ふっ、せい! はぁああ!!」

「が、ぎぃ、ぐぁああ!?」

 

そしてジャブの連打を叩き込み、メタル・ドーパントに隙を与えない。一気にダメージを通していく。

 

 

「強いけど、何かおかしい。ラビットはスピードと跳躍力に焦点を当てているって、戦兎さんも言っていた。とてもじゃないけど、パワーとタフネス特化のあの二人にダメージを与えられるタイプじゃない。飯田君のレシプロバースト並みの加速と、一転集中攻撃なら出来なくもないけど……一転集中、まさかこれに何かあるのか?」

 

出久がまた独り言で考察するのだが、それによって図らずもラビットラビットの攻撃の秘密に気づくこととなる。

 

「可能性があるとすりゃ、その一転集中だろうな。あの形態だと攻撃時の衝撃を収束する機能があんだろう。そうでねぇと鋼鉄の塊と筋肉の鎧にまともなダメージなんて通せねぇだろう」

「素人の私達でもわかるのは、あの形態はスピード特化じゃなくって攻撃力も段違いに高いってことなんだろうな」

「まだ、あんなパワーがあったんですね……」

 

皆がビルドの新たな力に驚き、その戦いをじっと見続けている。そんな会話が続く中でも、メタル・ドーパントにラッシュを叩き込み続けるビルド。

 

「これが正義の……桐生戦兎の力だ!」

「グァア!?」

 

そしてメタル・ドーパントの超重量ボディを、必殺の拳激で大きく吹き飛ばすビルド。そしてまたジオに視線を向けて新たな武装を発動する。

 

「来い! フルボトルバスター!!

 

叫ぶと同時に、ビルドの手に大振りな剣が握られる。柄に引き金があることから、銃に変形する仕様のようだ。そしてビルドはその剣"フルボトルバスター”の柄を開き、フルボトルを装填する。

 

【ラビット!】

 

ボトルを装填した直後、早速銃形態にしたフルボトルバスターをジオに向ける。

 

「てめぇ、やらせるか…」

 

ジオはダメージをこらえて立ち上がろうとするも、隙をついてフルボトルバスターを発射する。

 

【フルボトルブレイク!!】

「ぐわぁああああ!?」

 

ジオは体勢を立て直す前に命中、大きなダメージを食らうこととなる。

 

【ラビット! パンダ! ジャストマッチデース!!】

 

ビルドはその隙にフルボトルを更に追加で装填する。すると銃口に大きなエネルギーが収束されていく。

 

「ふざけるな、てめぇ!!」

【ジャストマッチブレイク!!】

 

ジオは立ち上がって腕の刃を振るうと、同時にビルドが発射したフルボトルのエネルギーが衝突する。

 

「ぎゃあああ!!」

 

しかしジオは力負けし、そのまま大きく吹き飛ばされる。

 

「追撃行くぞ!」

【ラビット! パンダ! タカ! ミラクルマッチデース!!】

 

今度は3本のフルボトルを装填、一気に威力を上げていく。

 

「今度こそ、食らってたまるかぁあ!!」

 

ジオはそれでも負けじと、両腕に霊圧を収束して虚閃を発射する準備に入る。しかし…

 

【ミラクルマッチブレイク!!】

「ぐわ…あああああああああああああ!!」

 

溜めが完了する前にビルドの攻撃が放たれた。大技のための大きな隙を突かれたことで、ここまでで一番大きなダメージを負うこととなった。

 

「よし。このままいくぞ!!」

【ラビット! パンダ! タカ! サメ! アルティメットマッチデース!!】

 

そして4本のフルボトルを同時に装填、より大きなエネルギーが銃口に収束されていく。

 

「俺を忘れんじゃねぇえええ!!」

「そうだ、お前を忘れてた」

 

すると先ほどまで伸びていたはずのメタル・ドーパントがこちらに迫ってきた。大声で叫んでいたこともあり、ビルドはすぐに気づいて攻撃対象をメタル・ドーパントに切り替えた。

 

「命を弄ばれた屍人兵士……あばよ」

【アルティメットマッチブレイク!!】

 

仮面越しに哀愁に満ちた目をメタル・ドーパントに向けたビルドは、ジオに向けた銃口をメタル・ドーパントに向けなおして発射した。

 

「ぎゃああああああああああああああ!?」

 

メタル・ドーパントは爆散、剛三の姿に一瞬だけ戻ってそのまま消滅してしまう。するとジオが立ち上がって、そのままビルドに向き合う。そして勝ち誇った笑みを浮かべるのだが…

 

「へっ。せっかくの特大の一撃を、使っちまったようだな。俺を倒す術が……」

「それが、あるんだな」

【ガタガタゴットン! ズッタンズタン! Ready Go!!】

 

するとビルドはドライバーのハンドルを勢いよく回し、一気に飛び上がる。ライダーキックがまだ未使用であった。

 

【ハザードフィニッシュ!!】

 

直後、なんとビルドの右脚が勢い良く伸びてジオの目の前で制止した。

 

「てめぇ、ふざけんじゃねぇ!!」

 

いきなり止まった攻撃にジオは怒り、腕の刃でビルドを叩き落そうとするが……

 

【ラビットラビットフィニッシュ!!】

「ぐわぁああ!?」

 

足が縮み、その反動でビルドはライダーキックを叩き込んだのだ。それによりジオはその巨体を宙に浮かせ、完全にノックダウン。ビルドの勝利は確実である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「まさか、例のDIOと同じで時間を止められるのか?」

「ほう? 察しはいいらしいな」

 

その頃、どうにかディエゴの投擲したナイフを氷の障壁で防いだ焦凍とジョニィは、THE WORLDの能力の正体に気づいたようだ。事前にスタープラチナとザ・ワールドの能力は聞いていたため、今の攻撃から察しがついたらしい。ちなみに投げたナイフはあの後、焦凍が咄嗟に氷のドームを生成して全て防ぎきれた。その氷のドームはそのまま、ディエゴのTHE WORLDに直接粉砕されることとなる。

 

「ちなみにこのTHE WORLDの時間停止は5秒という制限がある。上手くその隙を突けるといいな」

「ああ、やらせてもらう。ジョニィ、少し危険だから離れてくれ」

「(まさか、話に聞いた技から例の……)わかった、君も気を付けてくれ」

 

焦凍からの忠告を聞いたジョニィは、スローダンサーを駆って一気に距離を離す。そのついでにタスクの爪弾でもう一人のディエゴを追撃する。

 

「チッ、小賢しい!」

「複数人での戦い、有効利用させてもらうぞ!!」

 

そしてその隙を突いて天哉がディエゴの懐に飛び込んで蹴りを放つ。そしてそのまま、焦凍は更なる攻撃を放つ。

 

「膨冷熱波」

 

そして同時刻に出久が話していた熱膨張を利用した爆発を起こし、一気にディエゴを倒そうとする。

 

「THE WORLD!」

 

しかしディエゴは負けじと、THE WORLDの時間停止で回避しようとする。そしてディエゴは5秒の間に、一気に焦凍の背後へと回る。そこが安全圏で、且つ奇襲ができると判断してだ。

 

「さて、このままとどめを……ぎゃああああ!?

 

だが、ここでディエゴに誤算が生じた。時間停止が解けた直後、ディエゴは爆発を食らってしまう。焦凍は自分自身も巻き添えを食らう範囲の爆破を起こしたのだ。

 

「ヒーローは人助けに命を懸ける仕事だ……なら、俺自身も体を張って戦うまでだ」

「ちっ……ガキだからって油断してたか」

 

ディエゴも焦凍も手傷を負い、互いにまともに動けずにいる。そんな中、もう一人のディエゴが動き出した。

 

「やはり平行世界の俺は時間停止にかまけているようだ。なら、俺も一気に決めさせてもらうぞ!」

「なに!?」

 

直後、ディエゴはスケアリー・モンスターズを発動するのだが、今までと違う所があった。

 

「ぐぎゃぉおおおおおおおおおお!!」

「なに!?」

 

ディエゴは、なんと全身を恐竜に変貌したのだ。その姿は、人間サイズのティラノサウルスとでも言わんような姿である。

 

「ディエゴは民間人や野生動物を完全な恐竜に変えて、手ごまにする。しかも己の野心のためなら、己の体まで恐竜に変えることも厭わない奴だ」

「そこまで凶悪な男だったのか……」

 

ディエゴの果てしない野心と、その為にならどんなことも厭わない屈強な精神に天哉もたじろぐ。ディエゴとそのまま対峙し、警戒を強めることとなる。

 

「テロリストの小娘どもめ、遠慮なく潰させてもらうぞ」

「く……」

「麗日さん、大丈夫?」

 

一方、ジャイロの回転パワーに追いつめられるお茶子とシャロ、そして千夜の三人。千夜が回復魔法を使えたおかげでどうにか持ち直しているが、自然の法則を利用する黄金の回転の前に、防戦一方となってしまう。しかも、ここでテスラまでがこちらに向かって来る。

 

「中途半端に力を手に入れたから、そんなに諦めが悪いわけか……なら、明確な力の差を見せるまでだ」

 

そしてそのままテスラは刀を抜き、ついに帰刃を発動する。

 

「打ち伏せろ、牙鎧士(ベルーガ)

 

そして変貌したテスラの姿に、三人は思わず慄いてしまう。

 

「う、ウソやん……」

「い、猪のお化け……」

「しかも、でっかいわね」

 

現れたテスラは、ジオの実践形態と同じような巨大な筋肉の化け物で、頭部は猪の頭骨のような仮面で覆われる。

 

「単純な質量攻撃から来る破壊力、もっとも原始的だが同時にもっとも生物に死の恐怖を与える力だ」

「おいおい、野蛮だねぇ……譲ちゃん達、大人しく死ぬか聖なる遺体を持っている他の連中をおびき出すのに協力するか、選びな。後者を選べば、テロリストだが特別に生かしてやる」

 

そして、そのままジャイロと共に脅しを振って迫って来るテスラ。その巨大な拳から来るパワーを、三人の前で披露しようとするのだが……

 

【ギギャアアアアア!!】

「なんだ?」

 

直後、龍我の持っていたはずのクローズドラゴンが現れる。そしてそのまま、テスラとジャイロを妨害し始めたのだ。

 

「おらぁああ!!」

「ぐっ!?」

 

その直後、龍我がテスラの腹部に思いっきり殴りかかる。しかも、生身であるにもかかわらず、その拳はテスラを怯ませる威力を出したのだ。

 

「すまねぇ。怖い思いさせちまったな……」

 

現れた龍我は、三人を安心させるように告げる。見てみると、彼の手には拳を模したオレンジのナックルダスターが装備されている。これがあの攻撃力を叩きだしたようだ。

 

「仮面ライダーの鎧が虚閃のダメージを抑えたか……だが、今更戻って来た所で戦況が覆るとは思えんな」

「うるせぇ!!」

 

テスラの言葉を無視し、そのまま今度はジャイロの所に飛び込む。

 

「無駄だ、回転のパワーで肉体硬度を……ぐっ!?」

 

しかも驚くことに、ジャイロは回転の力で跳ね上げた肉体硬度を上回るパワーで殴られたのだ。しかもそれを無視して、龍我は標的を二人のディエゴに変更する。

 

「おらぁあ!!」

「ギギャアアアアア!?」

 

そして恐竜化した基本世界のディエゴを殴り飛ばし、平行世界のディエゴに突撃していく。だが……

 

「THE WORLD!!」

 

そしてそのまま5秒の時間停止を発動、一気に龍我の背後を取ってスタンドのパンチを叩き込む。

 

「ぐぇええ!?」

「ようやく止まったか……まさか、変身前からここまでの力を発揮するとは」

 

余りの事態にディエゴも驚愕。そのまま、その場にいた全員が龍我を警戒してそちらに戦闘の意思を向けることとなる。

 

「上等だ、全員纏めて相手になってやる」

「な!? 万丈さん、何を……」

 

そして龍我は天哉の問いかけに答える間もなく、新たにオレンジの”ドラゴンマグマフルボトル”を取り出してそれを振り始める。

 

「お前らの所はヒーローが仕事になってるから忘れてるかもしれねぇな。でも仮面ライダーは、ヒーローは愛と平和と正義のために戦っている。報酬が無くたって、誰にも知られなくたって、それで誰かの笑顔を守れるなら安いもんだよ!!」

 

そして決意を語った直後、ドラゴンマグマフルボトルを先ほど使用したナックルダスター”クローズマグマナックル”に差し込む。

 

【Bottle Burn!】

 

野太い叫び声がナックルから鳴り響き、万丈はそのままナックルを、ビルドドライバーにセットした。

 

【クロォォォズマグマ!!】

 

そして再び鳴り響くその叫びに続き、万丈はレバーを回し始める。しかしいつもアーマーを生成するスナップビルダーが現れず、代わりに炉のような形の”マグマライドビルダー”という装置が万丈の背後に生成された。

 

【Are You Leady!?】

 

そしていつものビルドドライバーの音声で、「覚悟はいいか?」と問いかける音声が流れた。だが万丈はいつものように、すでに決まった覚悟をその意思表示として、あの言葉を叫ぶ。

 

 

「変身!!」

 

するとマグマライドビルダーが傾き、中に貯まっていたマグマが万丈にぶちまけられた。

 

「え!? 万丈さん!!」

「万丈さん、何やってるんですか!?」

「あんた、マジで死ぬぞ!!」

 

焦凍も慌てて、自身の個性で冷却しようとする。

だが冷気の方が力負けして、それを止めることはかなわなかった。

 

「あの人、いくら勝ちたいからって何をや…って…え?」

 

しかし直後、起こったその現象に思わず、見惚れて言葉を止めてしまう

 

「な、なにこれ?」

「り、竜、か?」

「か、かっこいい…」

 

そのマグマがだんだんと形を変えていき、八岐大蛇を思わせる八つの東洋竜の首を形作った。その荒々しくも美しい造形に、一同は魅入られることとなった。

 

 

そしてすぐにそのマグマの竜が冷えて固まると、マグマライドビルダーがそれを砕いた。

 

【極熱筋肉! クロォォォズマグマぁああああ! アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!】

 

その中から現れたのは、いつものクローズと違った。

 

「力が漲る…」

 

造形こそ似ているが、カラーリングはマグマを彷彿とさせるオレンジと、焼けた鉄のような煤けた黒。

 

魂が燃える…

 

翼が追加され、頭部以外の装甲、左右の手足と肩にも竜の意匠が見られる。

 

俺のマグマが迸る!!

 

その名は、仮面ライダークローズマグマ。

 

「新しい変身のようだが、そんなもんで回転の力を止められるはずないだろ!」

 

まず、敵のジャイロが真っ先に動く。回転パワーを伴った鉄球を投擲し、一気にクローズマグマを撃破しようとする。

 

「しゃぁああああ!!」

「なに!?」

 

しかしクローズマグマの体が発光し、凄まじい高温となった。その熱によって、ジャイロの投擲した鉄球が溶解してしまう。

 

「こいつ、俺の鉄球を高熱で溶かして無理やり回転を……」

「んな理屈知るかぁあああああああああ!!」

「ぐへぇ!?」

 

そして驚くジャイロを殴り飛ばし、その意識を奪うクローズマグマ。更に、ディエゴ二人に狙いを定めて翼を展開した。

 

「な、飛べるのか!?」

「ああ、驚いたか!!」

 

そして動揺したディエゴの一瞬の隙を突き、空中からマグマを放った拳を叩き込む。空中から勢いをつけた拳撃は、衝撃と熱でディエゴ達に大きなダメージを与えた。

 

「熱い! 熱いぃいいいいい!!」

「くそ、やはり時間停止は当てにならんか……覚えていろ!!」

 

そのまま攻撃による熱で悶絶する平行世界のディエゴを担ぎ、ディエゴは転移した。撤退したのは明白である。

 

「熱と飛行能力か……だが、素のパワーで私を倒せるはずがない!!」

 

そんな中、一人残されたテスラは巨腕でクローズマグマを撃滅しようと迫ってきた。のだが…

 

「なに!?」

 

なんとクローズマグマは、テスラの放った拳を受け止めてしまったのだ。そしてそのまま掴んだ腕を持ち上げ……

 

「おらぁああ!!」

「ぐわぁああ!!」

 

思いっきりぶん投げてしまう。

 

 

「もう誰にも…止められねぇえええええええええ!!」

 

そしてテスラが立ち上がる前に、クローズマグマは炎を纏ったままテスラに突撃していく。そしてマグマを纏った拳を叩き込んでいく。

 

「ぐわぁああ!!(す、隙が無い……)」

 

クローズマグマの激しい攻撃に、今度はテスラが防戦一方となってしまった。しかしそこに、意外な弊害が生じる。

 

「ん? って、熱い!」

「桐間くんの服に火が!!」

「どんな熱さしてるんだ、あの姿!?」

「ちょ、なんで私だけ!?」

 

まさかのシャロの服が燃えるというトラブル発生。慌てて焦凍が消火する中、シャロは己の災難を嘆くのだった。

そんな中でも、クローズマグマの攻撃は止まらない。

 

「今の俺は、負ける気がしねぇぜえええええええええ!!」

【Ready Go!!】

 

そして一瞬の隙を突いて、ビルドドライバーのハンドルを回して必殺技の準備に入る。そしてマグマの竜数体を伴って天高く飛翔した。

 

ボルケニック・アタァアアアアアアアアアアアアアアアック!!

おらぁあああああああああ!!

 

はるか上空から放たれる、極熱のライダーキックがテスラに命中した。

 

「ぐわぁああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

そしてすさまじい衝撃と、莫大な熱量の合わせ技でテスラは大ダメージを負い、そのまま爆散した。完全勝利は明白だ。

 

「ふぅうう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熱い! なんか、いつもよりアッツイんですけど!!」

「あれ? 万丈さんも熱いんだ?」

 

まさかの事態にちょっと安心する一同。微妙に閉まらないのも、クローズこと万丈龍我のお約束である。




先にビルド編持っていきましたが、W編はエターナルと直接対決するためトリとしてとっておいた次第です。ようやく先に進めそうです。
失礼しました。


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第34話「Bな雪の華/絶望の襲来」

大変お待たせしまして失礼いたしました。ようやくダブル編突入。
エターナル筆頭に強敵がひしめいていますが、果たしてどうなる?

P.S.きららさんの誕生日が七夕になりましたが、今年の七夕はあいにくの天気でしたね。遅れましたが、ひとまずおめでとう。


「さぁ、地獄を楽しみな!」

 

エターナルはディケイドや承太郎、クリエメイト達を転移させたのち、翔太郎達に向けてサムズダウンをしながらその言葉を告げ、突撃していく。

 

「翔太郎! 早速変身を…」

【サイクロン!】

「了解だ、相棒!」

【ジョーカー!】

 

エターナルの攻撃を避けながら、フィリップが呼びかける。それに合わせて翔太郎はガイアメモリを起動。そしてダブルドライバーを装着する。

 

「「変身!!」」

【サイクロンジョーカー!!】

 

フィリップの意識が翔太郎の体に乗り移り、翔太郎がダブルに変化すると同時にフィリップの肉体はそのまま倒れてしまう。するとすかさず、紅緒が懐から符を取り出す。

 

「きなこ…フィリップさんの、体を…」

「はいな!」

 

紅緒は符からきなこを実体化させ、フィリップの体を安全な場所に運ぶように命じる。きなこは小さな体ながら、フィリップの体を運ぼうとする。

 

「きなこ…それが終わったら、この子の保護を…」

「え!? 紅緒様、急に…かしこまりました!!」

 

ついでに暗黒冬将軍の保護もきなこに依頼する紅緒。急な追加任務で困惑するも、すぐに了承するきなこ。

しかし、それで止まるほど敵も親切ではない。

 

「さぁ、照時間(ショウタイム)だ!!」

「私も行かせてもらおうかな!!」

「ボクも雪辱晴らさせてもらうよ!!」

 

直後、エルクレスとミストルティンもそれぞれ動き出す。エルクレスは虚空から巨大な斧を呼び出し、暗黒冬将軍を真っ先に狙ってきたのだ。更にガロニュートまで迫りくる。

 

「ならば…迎え撃つのみ!」

『まさかウィザードと同じ決め台詞を言う敵がいたとはね』

「言ってる場合か、相棒! 来るぞ!!」

「俺も準備万端だ、行くぞ!」

 

フィリップが気になるのも尤もだが、既にダブルへと変身した二人とろくろの目の前には、聖丸が迫ってきていた。

 

「さぁて、先手必勝。血飛沫立てて愉快に死にやがれ!」

 

そして聖丸が真っ先に攻撃を発動しようと腕を振るうのだが……

 

「「おらぁ!!」」

「な……ぐぇええ!?」

 

ダブルとろくろは無傷のまま突撃していき、二人がかりで聖丸を殴り飛ばした。ろくろの攻撃分しかダメージは通らないが、仮面ライダーの人外級の膂力によってその体を大きく吹き飛ばすこととなる。

 

「お前の能力は割れている。そこから相棒が考えた結果、サイクロンジョーカーが一番相性がいいってわかったんだ」

「へ…俺の基本的な能力は知ってやがるか。情報ソースは双星どもか?」

『厳密には、化野紅緒の持っていた君たちのデータブックさ』

「そういうわけだから、お前には切り札さえ使わせなけりゃ確実に倒せるはずだ」

 

どうやらすでに、ダブルはろくろ達経由で聖丸についての情報を得ていたようだ。ノイトラと共にここへ現れた際に使った、見えない斬撃の正体を悟っているらしい。

~回想~

それは昨夜、実際に聖丸とオトヒメが交戦した場に居合わせていたウミから話を聞いた時であった。

 

「あの聖丸という男ですが、腕を振っただけで遠くのものを切り裂いたんです」

 

ウミからの証言、聖丸が見えない斬撃を放つということはこの時点で判明していた。

 

「それでリュウグウパレスに住む生き物達の命を次々と奪っていきました。オトヒメ様は何かに気づいて、上手く攻撃を防いでいたんですが……」

「まさか、符のような物を取り出してから戦況が一変したのかい?」

 

そこでフィリップが思い当たったことを、ウミに問いかけてみる。一瞬驚いたような表情を浮かべたことから、どうやらそのようだ。

 

「その聖丸の仲間と思しき男が似たような物を持っていてね。その時は使う前に阻止されたんだが、恐らく強化アイテムの類だろう」

「そうなんですか……その通りです。それを使った直後に、男の腕に巨大な黒い刃が装備されて……」

 

オトヒメの体に刻まれた裂傷、それはその刃による攻撃なのだろう。

 

「それはともかく、見えない斬撃ってなんなのよ?」

「無難なところでカマイタチ、風の斬撃だろうけどそれじゃあ水中で使えるはずはないし……」

「となると、空間断裂でも起こしたのかな?」

「フィリップ、もしそうだったらとんでもない化け物だろ……でも、熱で焼き切ってたら水中で気づかないわけがねぇし」

「あれかな? ジェット水流で金属を切る、ウォーターカッターみたいな…」

「奴の能力…わかり、ます…」

 

勇魚も交えて一同は、聖丸の能力の考察を行っている。そんな中、紅緒が部屋に入ってきた。その後に続いて、ろくろときなこも入ってくる。

 

「化野紅緒、何か知っているのかい?」

「はい。陰陽連の…データベースには、婆娑羅の戦闘データも…記録されて…います。それに、聖丸の…データもあります」

 

そして紅緒から聖丸に関する情報が開示されるのだが、そこで判明した聖丸の属性は驚くべきものだった。

 

「婆娑羅の属性は…木火土金水(ぼっかどごんすい)の五行思想に由来…します。そして聖丸の、属性は……です」

「ちょっと待ってくれ! なんで土で見えない斬撃なんだ?」

 

当然、疑問をぶつける翔太郎。土属性なら砂や泥や岩、大地に由来する攻撃を想定するのが定石だ。場合によっては植物がらみの攻撃も土属性に分類されるかもしれない。

しかし、ここでその理由が判明するため納得となる。

 

「聖丸の武器は、大気中の塵や…埃です。それを呪力で繋いで…極細のワイヤーを生成し、敵を切り裂きます」

「たぶん、水中だと舞っている泥とか砂を繋いだんじゃねぇかな?」

「なるほど……つまり刃じゃなくて糸で切る攻撃だったということか」

 

推理物の小説や漫画でも、ワイヤーを使ったトリックでの殺人シーンは稀に見られるので、探偵である翔太郎とフィリップの二人も納得だ。余談だが、ルフィ達がこれから倒しに行くところだった七武海の一人ドンキホーテ・ドフラミンゴも、体から糸を生成して切断や拘束に用いる、イトイトの実という悪魔の実の能力者だったりする。なので、糸も立派な武器というわけだ。

その後、紅緒とろくろから、残りの婆娑羅たちに関する情報が提供される。

 

「残りの二体、銀鏡(しろみ)は…肉体を自在に…変形させる力を持ち、氷鉋(ひがの)は雷撃を…操ります。まだ他に…婆娑羅がいる可能性も…あるから、油断は…出来ませんが、データブックは……手元にあります」

「でもって、さっき話してた符を使って発動するのが婆娑羅専用の呪装"纏死穢(マトイマカルサワリ)"だ。能力は婆娑羅毎に異なるけど、使用時の戦闘力はけた違いになる」

「あの時、銀鏡ってやつが使おうとした奴か……相当やべぇことになるんだろうな」

「直接ダメージを与えることは出来ないが、それさえ使わせないよう対処などは出来るんじゃないかな?」

 

そしていくつか作戦を考えた結果、聖丸の攻撃に対する対策は立てることに成功した。

~回想了~

『というわけで、周囲の塵や埃をサイクロンメモリの風の力で巻き上げて、君に使わせないようにしたというわけだ』

「あとは俺と紅緒ならダメージを与えられるし、地道に削り倒しゃ何とかなるだろ」

 

そしてそのことを告げながら、再び聖丸に立ち向かっていく。

 

「夢魔なら、アタシに任せなさい!」

「ちっ!」

 

すかさずメリーがハンマーを手に、迎撃に乗り出す。ミストルティンはすぐに攻撃を中断して回避してしまうが、そこから追撃が始まった。

 

「白道鬼百合の舞!」

「な…がぁああ!?」

 

紅緒が吹っ飛んだミストルティンに急接近し、剣撃を加えて打ち上げる。更にミストルティンが飛んで行った上空に先回りして叩き落し、更に先回りして打ち上げ、これの連続でミストルティンに一切の隙を与えず確実に手傷を負わせていく。

 

「おっと、この餓鬼を忘れてんじゃねぇか!」

「今度こそあの世に送ってあげるよ!」

「ひっ!?」

 

しかしその一方、エルクレスとガロニュートは一人で行動できずにいた暗黒冬将軍を狙って攻撃を仕掛ける。恐怖で顔を青ざめた暗黒冬将軍に、炎を纏った斧と巨大な拳が迫ろうとした。

 

金烏天衝弾(ゴルトスマッシュ)・救急如律令!!」

「「な……ぎゃああ!?」

 

しかしそれを許さない者がいた。ろくろの攻撃がこの二人を目掛けて放たれ、一気にダメージを与える。魔人(ヴァンデル)も夢魔も未知なる敵だったが、こちらの攻撃が効くのは幸いであった。

 

「おし。これなら聖丸を抑えながらでも…」

「油断大敵だな」

「な…ぐわぁあ!?」

 

そんな時、ろくろにエターナルが鋭い蹴りを叩き込んで吹っ飛んでしまう。ろくろは鎧包業羅(がいほうごうら)という防御術で体をコーティングしているため無事だったが、エターナルの強化された身体能力と傭兵として鍛えられた格闘スキルで、普通なら人体が粉砕されるパワーを発揮していた。

 

「さあ。次は仮面ライダーダブル、お前の番だ」

 

しかもエターナルはメモリの差込口を備えたコンバットナイフ形の専用武器"エターナルエッジ"を構え、ダブルに突撃していく。

 

「うぉお!? ここで二対一ってか!?」

『翔太郎、文句を言っている場合じゃないよ!』

「アタシも手伝う!」

 

対するダブルは、エターナルのナイフによる攻撃をいなしながら聖丸へのけん制に専念しようとすると、メリーがそのままエターナルに突撃していく。しかしいつの間にかハンマーを捨て取り、徒手空拳でエターナルに挑んでいた。

 

「らぁあ!」

「ふん!」

 

メリーとエターナル、互いに放った蹴りが激突。夢魔である彼女は人間の膂力を凌駕しているのだが、それでもエターナルのパワーは彼女を凌駕しており…

 

「きゃああ!? ……なんの!」

 

その体を大きく吹き飛ばす。しかしすぐに体勢を整えてエターナルに再度駆け寄り…

 

「そういえば決め台詞、まだ言ってなかったわね?」

「あ?」

 

 

 

 

ここから先は通行止めよ!

「ぐぉお!?」

 

決め台詞とともにメリーは、エターナルを殴り飛ばす。装甲で体を覆われているエターナルだが、顔面に鋭い一撃を喰らい、大きく吹っ飛んだ。メリー自身も、元の世界にいた頃から戦っていたため、戦闘経験は他のクリエメイトよりも高いわけだ。

 

「ショウタロー達はそっちを抑えるのに専念して! こいつはアタシが食い止めるから!!」

「すまねぇメリー! 早い所こいつをぶっ倒しちまうから、それまで耐えてくれ!」

 

そしてメリーがエターナルに突撃していくのを見守り、再び聖丸に立ち向かう。しかし、聖丸がいきなり声をかけてくる。

 

「お前、俺の技と纏死穢を使わせなけりゃ勝てると思ってるんだろ? 思ってるよな、思ってるんだよなぁあ!」

「あ? 思ってるわけない、つーか俺の攻撃じゃダメージ通らねぇのはわかってるからな」

『あくまで僕らは、隙を与えないための牽制に徹する。加えて、焔魔堂ろくろ達の方が攻撃力が高いからね』

 

聖丸のこちらの希望を折ろうとしているような言動に、すでに割り切っている事実を告げる翔太郎とフィリップ。するとその時、声が響いた。

 

焔磊(えんらい)

紅擲(こうてき)

 

いつの間にか戻ってきたろくろが一言呟いた直後、紅緒がすかさずろくろに接近して手を繋ぐ。

 

「「共振(レゾナンス)」」

 

そしてそれによって、双星のみが使える術を増幅する力"共振(レゾナンス)"を発動した。事前にばらまいた小石に呪力を込めて放つ"裂空魔弾"に対して共振は発動され、増強された弾丸を聖丸に向けた。

 

裂空魔双弾(スカイストライザー)!!」

「うぉおおおおおおおおおおおお!?」

 

そして強化された攻撃は、一斉に聖丸へと放たれた。聖丸の婆娑羅としては上位となる頑強な肉体にも、大きなダメージを与えていく。

 

「ナイスだぜ、ろくろに紅緒」

「おうよ、翔太郎さん! でもって次は…」

 

ダブルのサムズアップにろくろも返し、次なる攻撃へと入る。

 

「食らえや、聖丸! 流星拳(メテオスマッシュ)!!」

「な、ぐぅう!?」

 

一気に懐へと飛び込み、更に炎を纏った拳をぶつける。腹部に諸に食らった一撃は、聖丸に手痛い傷を負わせた。

 

「無刀・朧蓮華 反閇(へんばい)飛燕(ひえん)の型」

 

一方の紅緒は、ガロニュートとエルクレスに次なる攻撃を加えようとする。ケガレの力で変異した白い両脚で、脱兎の如き超スピードを繰り出した。

 

「がぁ!?」

「ぐぅう!?」

 

結果、ガロニュートは紅緒の膝蹴りを顔面に叩き込まれ、吹っ飛ぶと同時に真後ろにいたエルクレスも巻き添えを食らうこととなった

 

「その足の一撃で、またボクらの邪魔する気だね!」

「ガロニュート、先にどけ! 重いんだよ!!」

 

エルクレスを下敷きにしたまま激昂するガロニュート。いつの間にかミストルティンへの攻撃をやめていた紅緒は、ガロニュート達の妨害をしていたようだ。

紅緒の方はそんな二人を無視して、更に追撃をかける。

 

「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」

「あが、が、ぎぃいい!?(ぐ、超重領域(グラビ・ゾーン)を使う隙が無い!!)」

「重い上に、こっちにまで衝撃が……」

 

紅緒の繰り出した連続蹴りは凄まじいスピードの上に、一撃一撃が重たい。それがガロニュートは顔面を連続で攻撃され、反撃の隙を一切与えなかった。しかし、それも時間の問題である。

 

「七つ星魔人を……なめるなぁあああああああああああああ!!」

 

遂にぶちギレたガロニュートは、無理やりに紅緒の蹴りを耐えて一気に殴り飛ばそうとする。

 

「はっ!」

「うそでしょ!?」

 

なんと紅緒は、ガロニュートのパンチの勢いと自身の蹴りの威力を利用して一気に天高く舞い上がったのだ。

 

「せいやぁあああああああああああああああ!!」

「あぎゃああああああああああ!!」

 

そして落下の勢いを利用した蹴りで、ガロニュートの胴に命中。纏っていた石のブロックを粉砕して、大きなダメージを与える。そして紅緒はいったん態勢を立て直そうと、距離を取る。

 

 

 

 

 

 

「へへ……手痛い攻撃は食らったけど、やっちゃったね」

「? なに、アレ!?」

 

不意にガロニュートが不敵な笑みを浮かべたと思いきや、突如どこからか巨大なカメが出現する。それも背中に大砲を背負った現実離れした外観で、敵意もむき出しだ。ガロニュートは紅緒が驚いている隙に、体勢を立て直す。

 

「ボクの纏うブロックには、配下のモンスターを格納する機能があってね。こいつは軍艦トータスっていって、ボクが魔札(まさつ)っていう魔人用のお金をたっぷり払って仕入れたんだ」

火火(カカ)ッ! お前、こんなもの隠し持ってたのか。少し見直したぜ」

 

ガロニュートのまさかの隠し玉に、エルクレスも上機嫌な様子だった。すると軍艦トータスは、紅緒を無視して別の方が喰い砲身を向ける。

 

「まさか!?」

「そう。君の子分と、そいつが逃がしたあのチビガキを狙うのさ」

 

そう。きなこと、彼に逃がされた暗黒冬将軍がいる方に攻撃を仕掛けようとしているのだ。

一方、当の二人はというと。

 

「アカン! なんか、デカいのがこっち狙っとるで!」

「……もういい。もういいよ」

 

なんと、いきなり暗黒冬将軍は諦めたような言動をする。その様子に、フィリップの体を背負ったまま驚愕するきなこであった。

 

「ちょ、アンタ何言うとんねん! 諦めんと逃げたら、何とかなるはずや!」

「その必要ないから。だって、私はあなた達を陥れようとしてたんだから」

「え?」

 

説得するきなこにそう返す暗黒冬将軍の目には、何やら目に暗いものが見えた。そしてその間にも軍艦トータスの砲身がこちらに迫ろうとしている。

 

「させるか!」

 

だが軍艦トータスの巨体は、聖丸と相対していたろくろの目にも映っていたため、そのまま流星拳を叩き込んで攻撃を阻止する。

 

焔刃(えんば)

紅斷(こうだん)

 

そして一気にとどめを刺そうと、再び共振を使用して技を強化しようと乗り出す。

 

「「共振(レゾナンス)」」

 

そしてそれによって今度は、紅緒が呪力を込めた剣が巨大化した。そしてそれを二人で持ち、一気に軍艦トータスを目掛けて振り下ろした。

 

双覇暁哭剣(ワールドエンドオーバーレイ)!!」

 

そしてそれによって、軍艦トータスは一刀両断された。そのまま爆散し、軍艦トータスは跡形もなく消し飛んだ。

 

「おし。それじゃあ、もういっちょ聖丸を…」

 

そしてろくろはもう一度、聖丸に攻撃を仕掛けようとしたのだが、ここで不測の事態が発生する。

 

「『うわぁあああああああああ!?』」

「きゃあああああああ!?」

 

突然、ダブルとメリーが大きく吹き飛ばされてきたのだ。ろくろ達は思わず、二人が吹き飛ばされた先に視線を向けると…

 

「まったく、こんな程度で夢魔の世界の門番を名乗るなんて烏滸がましいな」

「仮面ライダーとやらも、まさかあんな不意打ちにあっさり引っかかるなんてね」

 

その先には、エターナルとミストルティンが歩いてくる姿があったのだ。エターナルは純粋にメリーを圧倒したのだろうが、ミストルティンがダブルを吹っ飛ばせた理由が謎である。

 

「あなた…確かに、私が気絶…させたはず。なぜ、もう…起きているの?」

 

紅緒が信じられないといった様子で、ミストルティンに疑問を投げかける。するとミストルティンは、こちらを嘲笑いながら律義に詳細を語りだす。

 

「きゃははは! アタシね、こういう能力があるのよ。それでダメージを受け流して、適当に気絶したふりしてただけなわけ」

 

言いながらミストルティンは、体を部分的に木の葉へと霧散させてみせた。これがダブルへの不意打ちを成功させた要因なのだろう。

 

「……は。驚きこそしてるけど、ショックは小さそうね。こいつらの絶望している顔が見たかったのに」

「まあ、そこは俺の圧倒的な攻撃力を見せてからのお楽しみってな」

「早くしろ、聖丸。俺は仮面ライダーどもを抹殺出来りゃ、何でもいい」

 

するとミストルティンが勝手に不機嫌な様子を見せたと思いきや、そこに聖丸まで近寄ってきた。そして、遂にそれを発動してしまう。

 

「行くぜ、纏死穢……斬礁霧形(ざんしょうむぎょう)、救急如律令!!」

「しまった!」

 

遂に聖丸の切り札が発動してしまった。そしてそれにより…

 

「というわけで…

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界の綺麗な青空によぉお! 綺麗な花火を咲かせてやるぜぇえええええ!!

てめぇらの血!! 肉!! 骨!! 皮!! (はらわた)でぇええええええええええええっ!!

真っ赤な血の花火をよぉおおおおおおおおおお!!

 

両腕の五指と肘、肩には無数の黒い刃が装着され、それを構えながらハイテンションで悍ましい言動をする聖丸。

 

「というわけで、早速くたばれ双星よぉおおおおお!!」

「! きなこと…あの子が!」

 

そして嬉々として叫びながら、聖丸は両腕を勢いよく振るう。そして咄嗟に、紅緒はきなこと暗黒冬将軍の安否に気づいて咄嗟に駆け出す。

 

「死ぃあああああああああああああああああああああ!!」

「全員、しゃがめ!!」

 

そして振るわれた両腕の攻撃を警戒し、翔太郎は周りに回避を促す。咄嗟に全員をしゃがませ…

 

「危ない!」

「きゃああ!?」

「紅緒様、何を…」

 

紅緒もギリギリできなこと暗黒冬将軍を伏せさせることに成功。しかし、一同は戦慄することとなった。

 

「な…ウソだろ?」

 

一撃にして、周囲の木々や岩が丸ごと切り裂かれることなる。

 

「あが!?」

「聖丸、てめぇ!?」

 

ガロニュートとエルクレスまで巻き添えを食らうが、これが逆に聖丸の力の強大さに拍車をかけることとなる。

 

「なんつー威力と範囲だ……鎧包業羅超しでも、食らったらひとたまりもねぇな」

 

余りにも高い攻撃力に、ろくろも戦慄してしまう。あまりにも高威力のため、残りの面々も驚愕することとなった。

 

「さて、エルクレスは再生能力持ちだからな。回復終わったらまた動くんだな」

「ガロニュートは…まあいいか。俺らで楽しませてもらおうか!」

「ちょ…何でボクだけ……」

「だからって…やっていいこととそうじゃないことは、あるだろ!」

 

一人だけ深手を負ったガロニュートを放っておいて、エターナルも聖丸もこちらへと追撃に入る。敵側の反撃が始まってしまった。

 

「なんで? なんで、こんなことに?」

 

一人、この状況を疑問に思う暗黒冬将軍を残して…

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「サナ、大丈夫か?」

「うん、なんとか」

 

一方、夢路は自分と同じ場所に転移させられた勇魚を心配していた。同じく勝手について来た花名は勝己に責められていたが、こちらは見知った顔である夢路相手のためそんなこともなかった。

 

「ごめん、夢路。なんか敵の狙っている物を夢路が持っていると、夢路が危ないんじゃないかって…」

「まあ、危険なら元の世界でもそれなりに経験してるしさ。それこそ、昨日の奴等みたいなのでも来ない限りは……」

 

 

 

 

 

 

「ふむ。まさか先日の小僧が、聖なる遺体の所有者になって俺の所に送られるとはな。聖丸と大道克己、揃ってぞんざいな仕事を……」

 

不意に聞こえた声の方に振り返ると、そこには白い軍服を纏い、左目を閉じた婆娑羅の青年がいた。先日に遭遇した、氷鉋である。

 

「聖丸にクリエメイトの呪力と聖なる遺体の力を吸収させねばいかんというのに。いや、そもそもマトモに作戦立案をしなかった俺の落ち度でもあったか? だが、克己の転送技がランダムなら具体的に誰と誰を戦わせるかを決めても無意味かもしれんな。いやまず無意味の定義から……」

 

いきなり勝手に一人で考察を始める氷鉋。この性格のおかげで、夢路は勇魚に作戦を伝えることに成功する。

 

(サナ、俺達にはこいつを直接倒せる手段がない。隙を作って、なんとか逃げるぞ)

(え!? そもそも逃げられるの? 確か、電撃使いで動きも速いとか……)

(聖なる遺体のおかげで、こっちでも武装明晰夢が使えるんだ。なら、動きを封じてしまえば)

 

そして勇魚に伝え終えたところで、夢路は武装明晰夢を発動する。

 

「借りるぜ、縛鎖(チェイン)!」

 

発動したのは、かつてエルクレスの配下だった女の夢魔ノワールの鎖を操る力だ。それによって、氷鉋は一瞬で拘束されてしまう。

 

「ほう、これは……」

「サナ。逃げるぞ!!」

 

氷鉋の体に鎖が巻き付いたのを確認した夢路は、勇魚の手を引いてその場から離れる。

 

「俺に直接ダメージを与えられないと悟って、拘束しての撤退か。理にはかなっているが……」

 

夢路に対して感心した様子で述べる氷鉋だったが、自身を拘束した鎖を一瞬で引きちぎってしまう。そして駆け出した直後……

 

「な!?」

「あの程度で動きを封じられる程、俺はひ弱ではない」

「夢路!」

 

一瞬で夢路の正面に回ってしまい、フルパワーの蹴りを叩き込む。勇魚は吹き飛んだ夢路に呼びかけるが、氷鉋はその悲痛な叫びを無視して追撃しようと構えを取る。そして駆け出した瞬間…

 

初恋薊(ラバーズ)!!」

「む?」

 

更に武装明晰夢で生成した無数の拳を撃ちだす。呪力が伴っていないためダメージは与えられないが、牽制するには充分であった。

 

「もういっちょ借りるぜ。孤影(ロンリネス)!」

 

更に上空から巨大なこけしを落下させて氷鉋の動きを阻害する夢路。

どちらも、メリーと会って間もない頃に戦った夢魔"クリス・エヴァーグリーン"と"イチマ"の能力をコピーしたものである。

 

「サナ、逃げろ! 俺もどうにか隙を突いて…」

「妨害や牽制なら、もう少し上手いやり方があると思うが?」

 

勇魚に一人で逃げるよう呼びかける夢路であったが、それを遮って氷鉋が語りかけてきた。今の猛攻を、もう掻い潜ってしまったのである。

 

「え…ぐぇええ!?」

 

そして驚く夢路の鳩尾に、鋭いパンチを叩き込む。その重たい一撃に、夢路はその場で崩れ落ちる。意識こそ残ってはいたが、痛みで悶絶して動きが取れずにいる。

すると、氷鉋は身動きの取れない夢路に対して告げる。

 

「貴様、能力を使うたびに『借りる』としきりに言っているが……そもそも『借りる』というのは他者から物などを一時的に譲り受けることを指すはず。借りる相手もいない、しかも能力という形の無い物を借りるというのは些か理解できんな」

「この能力さ…俺が戦った奴等の技を、コピーして使ってんだよ。だから…俺が勝手に、礼儀だと思って…借りるっつってんだよ」

 

薀蓄を勝手に語りながら解せない様子で語りかけてきたので、理由を説明してやる夢路。だが…

 

「そうか……だが、礼儀云々をどれだけ大切にしようと、実戦の場では役立つとは思えんがな……」

「ぐわぁあ!?」

 

一切の容赦もない言動と攻撃を繰り返す氷鉋。また鋭い蹴りを食らい、夢路は再度大きく吹き飛ぶこととなった。

 

「はぁ…はぁ…借りるぜ…指揮者(マイスター)!」

 

更に別の夢魔の攻撃をコピーして、氷鉋に音符を飛ばす攻撃を繰り出す夢路。ダメージが無いのは承知だが、隙を作るために攻撃の手は止められない。

 

「攻撃の規模と種類だけは大したものだ。だが、俺も近接戦闘だけが取り柄というわけではない……」

 

氷鉋は怯む様子がなく、更に今まで使おうとしなかった雷撃をついに発動させようといた。右掌から稲光が放たれ、それを夢路へとむける。

 

「俺は実は、あまり雷撃が好きではない。近接戦が好みとかそういう話ではなく……」

「な、なんだ?」

 

突然の独白に、困惑して夢路は一瞬だが攻撃の手を止めてしまう。そしてその一瞬を突き…

 

「人間の消し炭が臭くて好かんからだ」

 

冷酷に告げて夢路に雷撃を放とうとする。

 

 

 

 

 

「夢路、逃げて!!」

「サナ!?」

 

なんと、勇魚が氷鉋に飛びついてきたのだ。それにより、氷鉋は攻撃を中断してしまう。当の勇魚はそのまま、夢路の方へと駆け寄って治癒魔法を発動し始めた。

 

「サナ、なんで逃げなかった!?」

「相手は夢路が狙いなんだよ? それだったら、むしろ私が隙を突いて夢路を逃がさないと…」

「そうは言っても、お前は直接戦闘向きじゃないんだから…」

「呆れたものだ。まだ逃げ切れるつもりでいるのか?」

 

そんな時、不意に氷鉋が二人の問答に割って入ってくる。攻撃の妨害をされたためか、怒りが彼の表情に浮かんでいるのが見える。

 

「聖丸やあのミストルティンとやらみたく、絶望を味わせる趣味はないのだが……

 

 

 

 

そこまで理解力が低いのも腹が立つ」

 

そして氷鉋は業を煮やした、と言わんばかりに黒い札を取り出す。そう、聖丸がダブルやろくろ達との戦いで使用したものと同じものである。

 

紫電弧虐(しでんこぎゃく)、救急如律令」

 

直後に氷鉋の体に落雷が生じる。そしてそれを浴びた氷鉋は体中から稲光を発し、それに伴って全身が白く光っている。纏った稲妻は一部が尻尾のようにしなり、閉じていた左目も開かれている。

 

「つ、遂に使いやがった……」

「流石に聞き及んでいたか。これが婆娑羅専用の呪装・纏死穢だ。婆娑羅の一人一人が手にする異なる能力の専用呪装、俺の紫電弧虐は自らの体に稲妻を纏って自慢のスピードを跳ね上げる力がある」

 

そしてそのまま自身の能力について説明した後……

 

「「え?」」

「こんな風にな」

 

一瞬で氷鉋は夢路と勇魚の背後に回る。そして、二人纏めて凄まじいパワーの蹴りを叩き込んで吹き飛ばしたのだ。

 

「がぁ! な、なんだこれ……」

「蹴られた痛みだけじゃなくて……痺れまで…」

 

蹴られた痛みで悶絶する一方、雷撃を纏った蹴りはその体を痺れさせ、まともに動ける様子は見えなかった。そこに、氷鉋は近寄ってきて告げる。

 

「貴様らの回復力が追い付かないパワーも、逃げる隙を与えないスピードも、仮に逃げられても離れた相手を攻撃する術も、俺は兼ね備えている。俺を傷つけうる力を持たない時点で、戦うことも逃げることも考える自体、烏滸がましいというものだ」

 

告げられた内容は、初めから且つどころか逃げ切ることは出来ないと断言する無慈悲な答えである。そして氷鉋は、更に

 

「故に貴様らが助かる方法は一つ、聖なる遺体を俺に差し出すだけだ。さっさと諦めて俺に遺体を渡せ。それが嫌なら遺体を守り切って死ね。お前が死んだ頃には双星どもが増援に来て、俺も倒されるかもな」

「あ、諦められるか…」

「何?」

 

「人間ってのは……ついつい夢を見ちまうもんなんだよ。ユメもキボーもあるから、諦めるわけにいかねぇんだよ! そしてそれをメリーに、過去の記憶が無くてユメもキボーも無いなんて言うあいつに伝えた、俺が折れるわけにいかねぇんだ!!」

 

メリーは幻界と現世の狭間を監視する門番だが、突如記憶を失って10年も現世を彷徨っていた。かつてのメリーはその所為でネガティブ思考となっていて、口癖の「ユメもキボーもありゃしない」はその時の名残である。

そんなメリーを夢路は助けたいと思った。幼い時の"誰かとの約束を守れなかった"後悔をもう二度としないため。

 

「まだ理解できんか?」

「あ゛あ゛あ゛ぁぁ…!」

 

しかし氷鉋は、冷酷に夢路の体を踏みつけにした。

 

「その理想論が、甘さが、今貴様自身の命も仲間の命も脅かそうとしている。加えて、聖なる遺体も奪われようとしている。まだ理解できんのか?」

「夢路!? ちょっと、やめてください!!」

 

勇魚が氷鉋を止めようと、必死にしがみついて妨害する。しかし、婆娑羅の膂力を生身の人間でしかない勇魚が止めることは叶わない。

 

「それでも、俺は……」

「何?」

 

しかしそんな中、夢路の方から氷鉋へと言葉が放たれる。

 

「俺はもう二度と後悔したくねぇ! サナもメリーも、お前みたいな奴等に嫌な思いをさせたくねぇんだよ!!」

 

その言葉はすでに満身創痍とは思えないほどの力強い声で放たれる。だが、それでも氷鉋には届かない。そればかりか……

 

「先ほども思ったが、ここまで理解力がないと哀れみを通り越して腹が立つばかりだ」

「きゃあ!?」

 

いきなり夢路の体から足をどかしたと思いきや、勇魚の首を掴み始めた。

 

「ならば、貴様の近しい人間の命が先に脅かされれば、少しは考えが改まるか?」

「あ…ぁぁ……」

「サナ!」

 

そして、氷鉋は一切の慈悲もなく夢路に問いかける。

 

「1分だけ時間をやるから、それまでに遺体を渡すか否かの返事を出せ。遺体を渡さなかった場合、このままこの娘には黒コゲの死骸となってもらう。まあ、その前に首の骨がへし折られるか窒息死するかもしれんが」

「やめろぉおおおおおおおおおおお!!」

 

氷鉋との圧倒的戦力差と己の無力さに夢路が叫び、空にとどろく。それに応える者はいない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勘弁しろし。見てらんねぇ」

「グワァア!?」

 

かと思われた直後、聞き覚えのない声が響いたと思いきや、氷鉋の体が大きく吹き飛んだ。勇魚も解放され、どうにか

 

「え?」

「けほっけほっ……ありが、え?」

 

そしてその氷鉋を攻撃したと思しき人物を見た夢路は呆け、勇魚もお礼を途中で止めてしまう。

 

「だが、目は死んでねぇようだ。そんなお前に、ある提案がある」

 

そしてそいつは、夢路に対して声をかけるのだがまずその容姿が問題であった。

 

「お前……婆娑羅か?」

 

そう。その人物は夢路達と同年代の少年の身なりだが、褐色肌に黒い片目、ウェーブのかかった銀髪に腹部の九字紋、まさに婆娑羅の特徴を備えていたのだ。

 

「俺は神威。お察しの通り婆娑羅だが、ぶっちゃけお前らと敵対するつもりはねぇ。そして、お前に奴を倒すための提案を一つ、出してやる」

 

そして神威はある提案を夢路に出すのだが……

 

「俺の力、借りる気はないか? 答えろし。10数える間待ってやる」




次回、仮面ライダーW

「呪いをその身に宿してでも戦う力が欲しいか? 答えろし」

神威からの提案! そして夢路の選択は?

「私なんかが! 黒い雪しか振らせられない私なんかが、あんな奴らに勝てるわけないわよ!! ましてや、貴方達の心の傷を上がろうとした私が、助けられていいわけ…」
「微かな願望や希望が…穢れた欲望だとしても、人は…前に進める」

自責の念に囚われる暗黒冬将軍と、彼女に寄り添おうとする紅緒。

「生憎だけど、俺はお前らなんか怖くねぇからな! 紅緒の怒った顔の方が百倍怖えよ!!」

絶望的な戦力差の中で己を奮い立たせるろくろ。
そして、ついに解禁される……

「神威、借りるぜ!」
「黒玉雪華」
「焔魔焰撃」
「「急急如律令!!」」

新たなる力!

「Bな雪の華/愛と友情の式神呪装」
これで決まりだ!


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第35話「Bな雪の華/愛と友情の式神呪装」

※すみません、先ほど編集ミスで文章が重複した状態で投稿してしまいました。お目汚し、大変失礼いたしました。
2020/8/10/20:38に修正。

仮面ライダーW、今回の依頼は…
エターナル「さぁ、地獄を楽しみな!」

最強の敵、仮面ライダーエターナル襲来。

エルクレス「さぁ、照時間(ショウタイム)だ!!」
ミストルティン「私も行かせてもらおうかな!!」
ガロニュート「ボクも雪辱晴らさせてもらうよ!!」
聖丸「血飛沫立てて愉快に死にやがれ!」

夢魔、魔人(ヴァンデル)、婆娑羅と強敵来襲。

氷鉋「貴様の近しい人間の命が先に脅かされれば、少しは考えが改まるか?」
夢路「やめろぉおおおおおおおおおおお!!」

分断された夢路と勇魚に、危機が迫る。

神威「俺の力、借りる気はないか? 答えろし」

そこに接触してきた新たな婆娑羅、神威の意図とは?


突如として夢路の前に現れ、勇魚を氷鉋から救った婆娑羅の少年・神威。その神威から夢路に提案があるのだが、二人はますます困惑してしまう。

 

「神威…貴様、何故そいつらに協力を…」

「別に。俺がこいつ、この遺体の持ち主ってやつが死なすのに惜しいと思っただけだ。それに、お前らと敵対する方が面白そうだともな」

 

氷鉋の言葉から神威もオーバーヘブンショッカーの協力者のようだが、裏切るつもりの様子だ。しかしあまり感情の起伏が見えず、どこまで本気なのかが不明である。

 

「止みなん止みなん説くべからず」

 

直後、神威が相性を始めるといきなり氷鉋の体が鎖で拘束される。

 

「止縛法……貴様、本気で!」

「俺はこいつと話があるから、少しじっとしてろ」

 

まさかの事態に氷鉋も激昂するが、神威は一蹴して再び夢路に向き合う。

 

「で、もう一回話をするが、お前は戦うための力、欲しいか?」

「力? お前、何を言って…」

「ああ、そうか。双星の二人から聞いてねぇのか。まあ、言う道理もねぇだろうから、仕方ないのか?」

 

一人納得した様子の神威は、そのまま夢路に提案についてより細かい説明を始めるのだが……

 

「改めて聞くぞ。俺の呪力をお前の体に流し込んで、ケガレに有効な攻撃手段を手に入れることが可能だが、それが欲しいか?」

 

対抗手段を夢路に身に着けさせる、という予想外の物であった。

 

「え? んなこと、出来んのか?」

「ああ。ただし、リスクもある。陰陽師、というか人間の持つ呪力は陽の力に対し、俺たちケガレの持つ呪力は陰の力。それを人間が持とうとすると殆どの場合"ケガレ堕ち"、平たく言えば人間から俺達のようなケガレになっちまう」

「な……」

「え? 夢路が怪物になるの?」

 

しかしながら、やはりというかリスクはそれなりに高いらしい。ケガレに対抗するためにケガレと同質の力を人間が得ようとしたことがかつてあったらしいが、そのケガレ堕ちが原因で禁術として秘匿されたという過去がある。数年前、ある陰陽師がこの術の存在を知ってその力を手に入れようと暗躍した陰陽師がいたが、それはまた別の時間にて語ろう。

そして一方、神威はそれに関して新たに補足説明をしてくる。

 

「その数少ない成功例が、双星の陰陽師の二人だ。あいつらは謂わば究極の陰と陽の化身、故にその強大な陰の力を御することに成功したわけだ」

「え? ろくろと紅緒の二人が、そうなのか?」

「そうだ。ただ、お前は聖なる遺体という超常の力を秘めた物を持つ。なら、その力で陰の力を御することも可能かもしれねぇが、どうする?」

 

件の力を制御できる可能性も神威は示唆するも、夢路も勇魚も不安だった。自身が人外と化してしまうリスクもそうだが、同時に敵と同族である神威がこちらに協力しようとしたことも裏があるように思ってしまう。

そして思い切って問いかけるのだが、意外な理由が明かされる。

 

「一個だけいいか? お前、なんで俺たちの味方をしようって思ったんだ?」

「まあ、一言で言えば趣味だな」

「「え?」」

 

その理由に思わず夢路は、勇魚と共に口を揃えて驚く。しかし神威は気にせず、そのまま説明を続けた。

 

「俺は単純に強いやつと戦うのが好きなんだ。相手が人間だろうが同族だろうが、ましてやそれが異世界の存在だろうが、とにかく生きるか死ぬかのギリギリの戦いが楽しめたならなんだっていいのさ。で、お前らは見込みがありそうだから俺たちに通用する力を会得して、それでいて強くなったところを再戦するのがいいと思ったわけだ」

 

一言でいえば、神威は戦闘狂であるらしい。その為、聖なる遺体による世界の支配や更なる強さを得ることそのものには、興味がないようだ。だがそれによって新たな疑問も生じることとなる。

 

「そ、それだったら勝手にオーバーヘブンショッカーと戦えばいいんじゃねえか? エルクレスとかあのエターナルってやつの方が、圧倒的に強いだろうし俺みたいな生身の人間に手を貸したって…」

「勘弁しろし。わかってねぇな」

 

夢路からの新しい質問を聞き、神威はうんざりした様子になりながら夢路に再び質問に答える。

 

「お前ら人間は、弱いからいいんだよ。弱いやつが弱いなりに足掻いて、命を燃やして挑んでくる。それによって得られる強さは計り知れねぇから、戦って楽しめるんだ。そして、お前は俺のお眼鏡にかなったわけだ。逆に、聖丸やミストルティンとかいう女は”強さをひけらかして弱者を嘲り笑う”、見ていて癪に障るタイプからあまり関わりたくねぇ」

 

自分にとっての人間に対する認識、それを語り終えたところで神威は、再び夢路に問いかけた。

 

「そういうわけで、改めて質問だ。

僅かな可能性に賭けてすぐに逃げるか、呪いを身に宿してでも戦う力を得るか? 答えろし。十数える間待っててやるよ」

 

そして神威が問いかけた直後、十から数字を数え始める。その横で夢路は少し思案し…

 

(確かに武装明晰夢だけじゃ戦闘に無理がある。このケガレとかいう奴等には攻撃が効かねぇ。でも、もし俺がケガレになっちまったら、サナに危害を加えかねない。でも……)

 

言いながら勇魚に視線を向けると、不意にメリーの顔が脳裏に浮かんできた。そして先ほど、氷鉋に啖呵を切ったときに思ったことを思い出す。そして神威のカウントが終わろうとしたところで、答えを出した。

 

「三……二……」

「俺は、メリーを幻界に戻すためにも生きて元の世界に帰らないといけない。だから、その為にもこの場を切り抜けないといけない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから俺に力を貸してくれ、神威!

「はっ、いい返事だ」

 

神威は夢路の返答を聞いて笑みを浮かべ、夢路の胸に手を置く。

 

「もしケガレに堕ちた(失敗した)ら、俺が責任もって殺してやるよ」

「介錯か……わかった、頼む」

「夢路!?」

 

そしてそのまま、神威は驚く勇魚をよそに夢路の胸に手を置いて詠唱を始めた。

 

アハリヤアソバストマウセヌアサクラニ

ケガレノオホカミオリマセシマセ

 

そしてケガレの呪力を流し込む術の詠唱を行う。直後、夢路の体に神威の呪力が流れ込もうとしたときにそれは起こった。

 

「? 聖なる遺体が……」

「お、上手くいったか?」

 

いきなり輝きだした聖なる遺体が、夢路の体に流し込まれた呪力を吸い上げる。そしてそれが夢路の体に纏わっていく。しかも…

 

「お?」

「え、神威?」

 

なんとそのまま神威の体まで輝きだし、いきなりその体が霧散したのだ。

 

「ふん! どうにか拘束を……なんだ?」

 

その直後、氷鉋は拘束を引きはがしてその光景を目の当たりにしてしまう。そして光が晴れたところで、現れた夢路の姿に驚くこととなる。

 

『勘弁しろし。確かに俺の力を貸すことに同意はしたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を呪装にして纏えなんて一言も言ってねぇ』

「んなこと言っても、こういう形になっちまったんだから仕方ねぇだろ」

「夢路…それ、なに?」

 

現れた夢路の姿は、神威の着ていた黒いボロボロのコートを纏い、両脚に神威の纏死穢(マトイマカルサワリ)である断神闇脚(だんしんあんぎゃ)を模した装甲が装着されている。しかし肌と目の色は変わらず、まさに神威の格好をした夢路そのままな容姿である。勇魚も予想外の形で生じたパワーアップに、困惑気味だ。

この時の夢路は知る由もないが、彼は戦いの最中で自身を味方の夢魔の器にすることで、その夢魔と合体する"超夢幻位相合体"という技を後に会得することとなる。これはまさに、聖なる遺体が夢路の未来を読み取ってそれを先取りしたようだ。

 

「神威を呪装にした、だと? 十二天将の式神を呪装にする式神呪装があるが、聖なる遺体が婆娑羅でそれを再現したというのか?」

 

流石に氷鉋も驚愕したようで、夢路相手に警戒を強めることとなる。

 

「でも、確かにスゲェ……体から力が湧いてきやがる…」

『喋ってねぇで構えろし。来るぞ』

「え?」

 

すると夢路の目の前に、氷鉋が飛び蹴りを仕掛けてくる様子が見えた。夢路は思わず、反射的にその場から飛び退いたら驚くことが起こる。

 

「きゃああ!?」

「うぉおおおおおお!? 足の力、超強い!!」

 

なんと軽く跳んだだけで何メートルも高く跳躍してしまったのだ。それによって生じた衝撃で勇魚は引き取んでしまうが、それによって氷鉋の攻撃を喰らわずに済む。夢路自身も驚愕するが、同時にこれでようやく氷鉋と互角に戦えると自身も沸く。

 

「これなら……神威、何か必殺技みたいなのないか?」

『もうすでに纏死穢が発動しているみてぇだから、常時その必殺技が発動しているみたいなもんだな。とりあえず、蹴りを奴に入れてみろ』

 

夢路は神威に問いかけると、そのまま攻撃の手を伝えた。そして早速夢路は、着地と同時に構えて氷鉋に狙いを定める。

 

「よし……これでも食らえ!!」

 

そして夢路は一気に前へと飛び出し、ドロップキックを氷鉋に放った。先ほどの超強化された身体能力のおかげで、凄まじい勢いで飛んでいく。そして…

 

「ぐわぁあ!?」

「入った!」

 

見事に氷鉋の鳩尾に命中した。夢路の攻撃で初めて苦悶の声を上げた氷鉋は、かなり大きなダメージを負っているようだ。

 

「あれ? なんか手応えが予想以上にあった?」

『俺の纏死穢は、蹴りが当たった場所から衝撃を伝播させる能力がある。防御も無意味だ』

「え、えげつない攻撃だな…でもようやく同じ土俵に立てたか」

 

神威の攻撃的すぎる能力に、使用した夢路自身もドン引きしている。しかし同時に、決定的な攻撃手段を得たことで戦意に火が付いた。

 

「とりあえず、ヴァイブレイトガッシュと名付けさせてもらうか!」

『勝手に変な名前つけんなし』

 

夢路が意気揚々と技名をつけながら氷鉋に突撃し、神威の方は名前について文句を言う。

 

「確かに神威の能力そのままだが、使用者である貴様が未熟だということを認識してもらわねばな」

 

一方で氷鉋は怯むことなく、夢路と神威の撃破に乗り出す。その際の氷鉋は、先ほどとは比較にならないスピードをたたき出した。そして、夢路は足を掴まれてしまう。

 

「な!?」

「それに神威は婆娑羅に進化して10年にも満たない、若い個体だ。その力を借りて粋がっている貴様に、格の違いを見せてやろう」

「うわぁあああ!?」

 

驚く夢路に告げた氷鉋は、そのまま夢路の体に電流を流す。神威と一体化していることで耐えられたが、生身の人間では黒焦げになってしまう電圧がかかっている。

 

「ふん!」

『「ぐぉおお!?」』

 

そのまま夢路の体を振りまわし、地面に叩きつける。氷鉋は一瞬で数メートルの距離を飛び回り、岩や木にも連続して夢路を叩きつけた。

 

「また借りるぜ、縛鎖(チェイン)!」

「また拘束。しかしこの程度で…」

 

だが夢路もたただやれるだけでなく、咄嗟に武装明晰夢で鎖を生成、氷鉋を拘束した。氷鉋は鎖を引きちぎろうとするも、これだけにとどまらなかった。

 

『止みなん止みなん説くべからず』

「神威の止縛法!?(神威の意思も独立しているようだが、まさかこんな…)」

 

予想だにしない二重拘束により、氷鉋はパワーが足りずに動きが取れなくなってしまう。そして夢路は、その隙を逃さなかった。

 

「どりゃあああ!!」

「ぐわぁああ!?」

 

体を縦に一回転、その勢いに乗って踵落としを氷鉋の頭部に叩き込む。拘束されてまともに受け身を取れなかった氷鉋は、大きなダメージを負うこととなる。

 

「もういっちょ、食らえ!!」

「ぐわぁあ!?」

 

追撃で回し蹴りを叩き込み、氷鉋は大きく吹き飛んで行った。強烈な一撃を連続して食らい、氷鉋は確実に大ダメージを負っている。

 

「夢路…すごい。これならきっと!」

 

先ほど吹き飛んでから、ずっと傍観に徹していた勇魚も、目に希望の色が見えてきた。だが、そんな中でも氷鉋は立ち上がる。

 

「婆娑羅の力を掌握しつつ、自身の能力と併用まで出来る。もしそのまま呪力を能力に上乗せできるようにまでなれば……」

「ひ!?」

 

直後、氷鉋の纏う稲妻がより強い光を発する。それにより、氷鉋の威圧感も膨れ上がる。離れた場所から見ていたはずの勇魚も、思わず短い悲鳴をあげることから、その圧がどれほどのものかがうかがえる。

 

『あいつ、とうとう本気出しやがったな。本腰入れないと死ぬかもよ』

「な…まだ本気じゃなかったのか?」

『だな。どうやら、あいつお前を消さないと自分と聖丸がヤバいと思ったらしい。光栄に思え』

「思えるか!」

 

神威からの話を聞いて驚愕する夢路。しかしそれでも逃げる気は無い、というかスピードの差から逃げ切れるはずもないため迎え撃つ以外の選択肢は無かったのだ。

この状況でもツッコミを忘れなかったのは腹を括ったという証でもあるのだろう。

 

『呪力を込めるのは俺がやっておくから、お前はそれを乗せたままとにかく全力で蹴り倒せ』

「わかった。そっちは専門外だから任せる」

 

そして夢路が構えを取ると同時に、彼を通しての神威の威圧感も増した。そして神威と氷鉋は同時に詠唱を開始する。

 

『オンシュチリキャラロハウンケンソワカ…』

迷故三界城(めいこさんかいじょう) 悟故十方空(ごこじっぽうくう) 本來無東西(ほんらいむとうざい) 何處有南北(かしょうなんぼく)

 

神威と氷鉋、それぞれが詠唱を開始すると呪力は急激に跳ね上がる。そしてそんな神威の呪力を纏った夢路は、氷鉋に狙いを定めて構えを取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢路オーリーキィィイイイイイイイイイイイイック!!

『だから変な名前つけんなし』

 

飛び出すと同時に夢路が、お気に入りの特撮ヒーローである"フルヘルボーダーグリッチョ"の必殺技を模した技名を叫び、また神威に文句を言われる。

一方、氷鉋はその夢路を迎え撃つべくギリギリまで夢路をひきつけ…

 

「でやぁあああ!!」

「ふん!!!」

「きゃあああああああ!?」

 

直後、二人の蹴りが衝突。待機が揺れる大きな衝撃が発生した。あまりの衝撃に、勇魚も吹き飛ばされそうになるがどうにか堪えて、決着を見届けようとしていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「おらぁあ!」

「『はぁあ!!』」

 

その頃、ダブルはエターナルと交戦していたが、変身形態をヒートメタルに切り替えていた。聖丸が纏死穢を発動したため、サイクロンメモリの風の防御も通じなくなってしまった。そのため、エターナルの相手に専念することとなった。

エターナルの卓越したナイフ捌きに、メタルシャフトで防御しつつ反撃に乗り出そうとした。

 

「俺を忘れてもらっちゃ、困るな!」

「何!?」

 

その時、背後から再生が完了したエルクレスが斧で斬りかかってくる。咄嗟ではあったが、どうにか回避に成功する。

 

『翔太郎、距離を取ってトリガーで反撃だ!』

「その方が良さそうだな」

【トリガー!】

 

エルクレスの斧での攻撃を捌きながら、トリガーメモリを起動するダブル。そしてメタルメモリと入れ替え、フォームチェンジに入る。

 

【ヒート! トリガー!】

 

変身に成功し、武器もメタルシャフトからトリガーマグナムに切り替わる。そしてトリガーマグナムから火炎弾を連射し、エルクレスとエターナルを纏めて攻撃する。

 

火火(カカ)ッ! 火力勝負か、いいねぇ!」

 

しかし堪えるどころか喚起している様子のエルクレスは、なんと片腕を方針に変形させた。そしてそこから、熱線を放ってくる。

 

「何っ…ぐわぁあ!?」

『まさか遠近両対応できるとは…』

 

予想だにしなかったエルクレスの攻撃に、対応できずに食らってしまうダブル。ヒートメモリのおかげで熱耐性がついていたため、致命傷にはならなかった。

 

「おらぁあ!」

「『ぎゃああ!?』」

 

直後、その結果を見越してかエターナルが急接近。飛び回し蹴りを放ち、それがダブルの頭部に命中して大きなダメージを負うこととなる。

 

「ショウタロー!?」

「よそ見してると輪切りだぜ!」

 

一方でメリーが気を取られた所に聖丸が襲い来る。指先に装着された巨大な黒い刃が、メリーに対して振るわれた。

 

「やば!?」

 

メリーは咄嗟に身をひるがえし、どうにか回避する。聖丸の一閃はまたも遠方の木々を切断していき、相変わらずその驚異的な攻撃力と間合いを見せつけてきた。

 

「メリー、そのまま離れろ!!」

 

ろくろは金烏天衝弾(ゴルトスマッシュ)で聖丸を狙い撃ちし、どうにかダメージを与えようとする。攻撃直後の隙を狙ったため、ダメージを与えられると思われた。

 

「しゃらくせぇ!」

「くそ、失敗か」

 

聖丸が腕を振るった直後、その一撃が金烏天衝弾を相殺してしまう。複数の金烏天衝弾を収束して放つ旭日昇天(ホワイトハウリング)ならダメージを通せたかもしれないが、メリーの巻き添えを考慮して威力を抑えたのが仇となってしまった。

 

「隙だらけよ、惰弱な人間!」

「しまっ…ぐわぁあ!?」

 

しかもこちらが隙を突かれてしまい、ろくろがミストルティンの蹴りをもろに食らってしまう。ミストルティンも夢魔ゆえに人外級のパワーを持っていたため、ろくろはダメージを負ってしまう。

 

「…! 玉兎天衝弾!!」

 

するとその光景を見た紅緒が、ミストルティンに反撃しようと乗り出す。必殺の蹴りを彼女に向けて放つのだが…

 

「な!?」

「はい、捕まえた♡」

 

またも体の霧散で攻撃を防いでしまい、そのまま紅緒の足を鷲掴みするミストルティン。そして、更に攻撃が行われる。

 

「あぐ!? きゃあ!? あ゛あ゛ぁあ!?」

「きゃはははははははははははははは!! 世界を救う陰陽師夫婦の片割れ、なんて言われてるけど所詮は人間なわけね、弱すぎ!!」

 

紅緒の体を振りまわし、馬鹿にしながらひたすらに地面へと叩きつける。肉体と精神の両方を徹底的に痛めつけるその様は、夢路と接触した神威の、強さをひけらかして弱者を嘲り笑うという評価そのままの行動であった。

 

(そ、そんな…)

(やから勝手にどっかに行くな…って、紅緒様にジャリガキが!?)

 

そんな中、暗黒冬将軍がきなこの制止を振り切って戻ってきてしまった。その結果、後を追ってきたきなこも一同が劣勢の様子を目撃して戦慄してしまう。ちなみに、フィリップの体はどこか安全な場所に置いてきたようだ。

 

「おやおや? いつの間にか逃げ出したちびっ子が戻って来ちまったな」

「あの子、なんで…ぐわぁあ!?」

 

聖丸がそれに気づき、倒れ伏しているろくろが気づいたタイミングでその体を踏みつけにする。

 

「せっかく逃がしたのに戻って来ちまって、無駄になったな? なってしまったな!? 残念だったな!!」

 

そしてこちらも相手を傷めつけながら嘲り笑う、という悪辣さを見せつけてくる。

 

「聖丸にミストルティン、さっさとそいつらを殺せ。それから聖なる遺体を手に入れに行くぞ」

「ああ。遺体のパワーで、さっさとこの世界を焼き尽くしちまおうぜ」

 

一方、エターナルとエルクレスはダブルの体を踏みつけにしている姿が目撃された。そして宣言通り、エターナルはエターナルエッジを構えてダブルに狙いを定める。投擲でさっさと始末するつもりのようだ。

 

「ダメ!!」

 

するとその光景を見た暗黒冬将軍は、咄嗟に躍り出て黒い雪を周囲に吹き荒らさせる。先に食らっていたガロニュート曰く、黒歴史=負の記憶を思い出させる効力があったようだが……

 

「何かしたか?」

「へ? なんで黒歴史が見えないの??」

 

エターナルには全く効果がないようだ。暗黒冬将軍の言動から彼女にも黒歴史を見ることが可能なようだが、エターナルにはそれが無かったという。

 

「黒歴史…確か人に知られたくない負の記憶をそんな俗称でいうらしいが、残念だったな。俺達NEVERは強靭な肉体と引き換えに、時間経過とともに過去の記憶が失われていくって代償がある。加えて、オーバーヘブンショッカーの首領が俺の記憶に封印措置をしたらしいから、何かのはずみで甦るってこともあり得ねぇ」

 

エターナル自ら効果がない理由を明かし、そのまま暗黒冬将軍に標的を変更する。しかも、そのまま懐から赤いガイアメモリを取り出して起動した。

 

【ヒート!】

「誰にどう効果が出る能力かわからねぇから、さっさと始末させてもらうぞ」

【ヒート! マキシマムドライブ!】

 

そして起動された仲間のレイカと同じメモリをロストドライバーの装填スロットに差し込み、マキシマムを発動。エターナルの右腕に業火が灯る。

 

「雪の精とかなら、炎と熱の力で蒸発しちまいそうだな!!」

「ひっ!?」

 

そしてその炎を纏った拳で、暗黒冬将軍を殴りつけようと動き出したのだ。

 

「たぁああああああああああああああ!!」

「あが!?」

 

その時、いつの間にかミストルティンの攻撃から逃れた紅緒が、エターナルに斬りかかってきたのだ。必殺技を放つ際の一瞬の隙を突いたことで、技の阻止に成功。紅緒も咄嗟に暗黒冬将軍の身柄を確保、一気に距離を置く。

 

「チッ、まさかあの状態から逃げるなんて…」

「させるか!」

「きゃあ!?」

 

ミストルティンが忌々しそうにしていると、ダブルがメモリガジェット・スタッグフォンを投げつけて妨害する。エターナルの標的が暗黒冬将軍に移ったことで、どうにか隙ができたようだ。

 

「このまま反撃行くぞ!」

『了解だ、翔太郎!』

【ルナ! ジョーカー!】

 

そしてそのまま、ルナジョーカーに変身しなおしたダブルは腕を伸ばす。そして伸ばした腕を、エルクレスにぶつける。

 

「ぶへっ!?」

 

腕はエルクレスの顔面に命中し、頭を掴んで一気に力を込める。そしてエルクレスの体を勢いよく振り回した。

 

「おらぁあ!!」

「きゃあ!?」

「うへぇ!?」

「ぎぇええ!? なんでボクが……」

「小賢しい!!」

 

振り回されたエルクレスは、そのままミストルティンと聖丸に命中し、二人を大きく吹き飛ばした。しかも、そのまま未だに倒れ伏すガロニュートに命中したのだ。その際、エターナルにだけは避けられてしまう。

 

「てめぇら、とことんコケにしたいらしいな!」

「そっちこそ、やらせるか!」

【メタル!】

【ルナ! メタル!】

 

エターナルは再び襲い来るが、ダブルもルナメタルに切り替えて応戦する。メタルシャフトがルナメモリの力で鞭の様にしなる伸縮自在の武器へと変じ、迫りくるエターナルに向けられる。

 

「しゃらくせぇ!」

 

しかしエターナルも負けじと、エターナルエッジを振るってメタルシャフトの攻撃を捌いていく。

 

「聖丸、てめぇの相手は俺だ!!」

「そうかい、乗ってやるよ!」

 

そしてろくろは聖丸に標的を絞り、流星拳(メテオスマッシュ)を放つ。聖丸も回避して、ろくろに斬りかかり、しかも命中してしまった。

 

「残念、さっきやられてる時に防御は整えさせてもらったぜ。鎧包業羅(がいほうごうら)から、一番強力な防御術の鐵塊羅岩(てっかいらがん)にな!」

「へぇ…そりゃ斬り甲斐がありそうだな!!」

 

防御がいつの間にか強化されたろくろは、そのまま聖丸の斬撃を耐えることに成功し、一気に畳みかける。聖丸もろくろに戦い甲斐を感じて、非常に乗り気になっていた。

だが、その一方でまさかの事態が発生してしまう。

 

「揃いも揃ってボクをコケにしやがって……ツチギンチャクに罪人たいまつども、ボクの代わりにそいつらを皆殺しにしてしまえ!!」

 

ガロニュートが体に纏った石のブロックをいくつか射出、巨大なスライム状の体の巨人と、そこから炎を纏った木のような魔物の大群が出現する。

 

「まだ、こんなに配下を隠し持ってたわけか」

「ごつい割に用意周到ね…」

「なんとでもいいなよ。獲物は独り占めさせてもらうからね」

 

エルクレスもミストルティンも、ガロニュートの行動が予想外だったのか困惑気味だった。しかしそうしているうちに、罪人たいまつと呼ばれた樹の魔物の大群が紅緒と暗黒冬将軍にせまっていく。

対して、ツチギンチャクはろくろと聖丸に向けられた。

 

「当然、ボクをぶった斬ったヒジリマルも抹殺対象だよ!!」

「おいおい、連れないな。じゃれ合いみたいなもんだろ!!」

 

狙われた聖丸は意に介していない様で、そのままツチギンチャクを斬礁霧形で切り裂こうとする。のだが…

 

「ツチギンチャクに物理攻撃は効かないよ。飛び散った奴も独立した魔物になるからね」

「チッ! 面倒な!!」

「離れた場所でやり合うほうがいいか!!」

 

そしてそのままろくろと聖丸は離れた場所に移動、それをツチギンチャクが追いかけていく。一方の紅緒も、罪人たいまつの吐き出す火炎弾を捌きながら、暗黒冬将軍を守るべく回避に専念する。

 

「ねぇ、私なんかもう放っておいて…」

「何を…言っている…の?」

 

不意に暗黒冬将軍から告げられたその言葉に、紅緒が問いかける。

 

「私はさっき見たように、黒い雪を降らせる力がある。こんな他と違う能力、誰とも打ち解けることができない。だから、あなた達のいた里に黒い雪を降らせて、憂さ晴らしに困らせようとしたの。あの人達にもその巻き添えを食らわそうとしてこうなったから、これはバチが当たったんだと思うから放っておいて」

 

そのまま暗黒冬将軍が、自分が狙われた経緯とその際の行動を起こした理由。しかしそんな際、紅緒は攻撃を回避しながらも、穏やかな笑みを浮かべて暗黒冬将軍に語り掛けた。

 

「それだったら、私の方が…穢れている。私は…ろくろに出会うまで、両親の復讐と…そのための力を得ることだけのため…生きていたから」

「え?」

「それに…亡くなった兄も、極罪を犯した…から」

 

そのまま、罪人たいまつの攻撃を捌きながら紅緒は己の過去を語り始めた。

幼少期、両親がケガレに殺されてしまったこと。その後、兄と別れてそれぞれが父方と母方の家に引き取られたこと。そこから、両親の仇である神威を殺すための力に固執したこと。別れていた兄、石鏡悠斗(いじかゆうと)が禁忌の術をに手を伸ばして、陰陽師の組織を敵に回したこと。兄の起こした惨劇を、ろくろが起こしたと勘違いして、彼を憎んでいたこと。

 

「だから、あなたより…私の方が死んだほうがいい…かもしれない。でも、私は…生き続けるって…決めた」

「なんで? 私なんかよりもっとひどいことがあったのに、なんで…」

「ろくろと出会って、一緒に生きたいと思えるようになったから」

 

出会った当初こそ、ろくろと紅緒はいがみ合った。会って間もないにも関わら、ず世界を救うために夫婦となれと言われたので仕方ないだろう。だが、それでも生活と戦いを経るにつれて絆は育まれ、何よりも大事にしたい思いが生まれた。

 

「実はね…私は、さっき話した神威から力を貰ったの」

「うそ…なんで?」

「そうしてでも…ろくろと、肩を並べて…戦いたかった。一緒に…生きたいと思えたから」

 

更なる告白の末、暗黒冬将軍に伝えた。

 

「だから強さを得る…ことが、穢れた欲望だとしても…それを受け入れて、生きていきたいと…思えた。だから…あなたのその黒い雪が穢れだとしても…きっと受け入れられる」

「…無責任なこと言わないで! 何の確証も無しにそんなこと…」

「それが敵わないなら…私が、受け入れる!!」

 

暗黒冬将軍にの強い否定を、打ち消す叫びをあげた紅緒。

 

「あなたの犯そうとした罪も、あなたが汚点=穢れと思っている力も、すべて受け入れる! 私が、その第1号になる!」

「え……いいの?」

「うん。…でもそのために、今は…ここを生き残る!!」

 

紅緒の力のこもった叫びに、遂に暗黒冬将軍が折れた。

 

「……ありがとう」

 

そしてその時、紅緒と暗黒冬将軍の体が輝き始めた。

 

「え? なにこれ??」

「…! 予備の式神用に作った、呪符が…」

 

厳密には、紅緒の光は彼女が懐にしまっていた符によるものだった。きなこ以外に戦闘用の式神を準備しようと、その為の呪符を準備していたのだが、それに暗黒冬将軍が反応したのだ。

 

「あなたと一緒に…彼らを倒せる力が、あった。行きましょう…」

「今、イメージが頭の中に入ってきた……わかったわ!!」

 

そして、暗黒冬将軍の了承が得られたと同時に紅緒は声高々に呪符を構えた叫んだ。

 

黒玉雪華(こくぎょくせっか)っ急急如律令!!」

 

紅緒の叫びと同時に、暗黒冬将軍の体が解けていく。そして紅緒のケガレの両脚・白凛闘牙(びゃくりんとうき)にそれが纏わっていく。そして白い装甲に黒い雪の結晶のような意匠が現れ、足先に刀の切っ先のような鋭いエッジが装着された。

 

白凛闘牙(びゃくりんとうき)雪華黒凛刀(せっかこくりんとう)!!

 

紅緒が声高々に新たな呪装の名を叫び、エルクレスとミストルティン、そして罪人たいまつの大群に視線を向ける。

 

「な、なんだありゃ?」

『化野紅緒が、パートナーの式神を呪装にして纏う式神呪装という技があると話していたが、まさかあの少女とそれを行ったというのか?』

「おいおい、このタイミングで強化されやがったぞあいつら」

 

遠巻きに見ていたダブルとエターナルも、交戦しながら紅緒の様子に見入ってしまう。フィリップが事前に紅緒から情報を聞いていたこともあり、ひとまず状況の理解は出来た。

すると、ろくろと聖丸、二人を追ってきたツチギンチャクがこちらに戻ってきた。

 

「紅緒、このタイミングでよくやるな……じゃあ、俺もとっておき使わせてもらうぜ!!」

 

そしてろくろも、紅緒のパワーアップを嬉しく思いつつも自身もいつの間にか用意していた切り札を出す。事前に式神呪装の話をしたのは、ろくろがエトワリアに来る前にその技を完成させていたことに起因する。

 

「来い……

 

 

 

 

 

焼きおはぎマン!!!

 

直後にろくろが札から式神を呼び出すのだが、その名前にWと合流してきたメリーは引っかかりを覚えることとなった。

 

「焼き……おはぎマン?」

『おはぎというと、あの和菓子の?』

「なんで、そんな名前の式神なんだ?」

『ギィイイ~~~~~~~~』

 

そうこうしている内に鳴き声を上げながら現れたのは、炎を纏ったおはぎを模したきもいマスコットキャラ染みた式神がいたのだ。

 

「「『ええええええええええええええええええええええええええ!?』」」

 

あまりにもふざけた見た目の式神にダブルもメリーも驚愕した。

 

「お前、ふざけてんのか?」

「そんな気色悪い式神出して、自棄になったな! なりやがったな! なっちまったな!!」

 

当然、エターナルはバカにされたと思って怒りを覚え、聖丸もそんなろくろをあからさまに見下している。

 

「バカにしてもらっちゃ困るぜ。こいつ、めっちゃ強いからよ!!」

 

しかしろくろは臆することなく、むしろ闘志を燃やして戦闘に対しての強い意志を見せた。そして狩衣の袖を破ると、その下に鋼鉄製のガントレットが装備されているのが見えた。

 

「燃えろ…焼きおはぎマァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」

『ギィィィアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

ろくろの叫びと同時に焼きおはぎマンの纏う炎が強まり、直後にそれは始まった。

 

焔魔炎撃(えんまえんげき)っ救急如律令!!

 

そして焼きおはぎマンが爆散し、その呪力がろくろのガントレットに纏わる。そしてそのまま、高熱を発する両鉄拳の呪装が完成した。

 

双天破神焔魔炎撃拳(ツインバスターフランベルジェ)!!

『フランベルジェというと西洋の騎士が使う剣の一種だね。刀身が波を打つ造形をしていることから、炎を連想してそういう名前になったそうだが……言い得て妙だね』

「解説ありがとよ、相棒。確かに、とんでもねぇ熱量だな」

「あ、あんなキモイのがアレになったの…?」

 

ダブルとメリーは、おはぎマンのまさかの変化に驚愕することとなる。そして双星の二人が更なる強化を成したところで、反撃が始まった。

 

「無刀・朧蓮華 反閇(へんばい)飛燕(ひえん)の型!」

 

まずは紅緒。技そのものは先ほども使ったものだが、両脚に暗黒冬将軍の力がブーストされ、スピードが先ほどの比にならないレベルに跳ね上がる。

 

「「ぎゃああ!?」」

 

そしてそれは的確にエルクレスとミストルティンを捕らえ、勢いよく蹴り飛ばしていく。そしてそれを追従しようとさらに駆け出す。そしてそのまま二人を追い越して構えを取る。

 

『紅緒、任せて!!』

「…そういう、こと」

 

その時、暗黒冬将軍が空に黒い雪の塊を生み出し、宙に浮かせる。紅緒は何かを察し、構えを解いて真上に飛び上がる。そしてその黒い雪の塊を足場代わりにし、エルクレス達が飛んできたタイミングで一気に飛び出した。

 

「ぜいやぁあああああああああああああああああああ!!」

「「ぎぇえええ!?」」

 

跳ね上がったスピードと威力で放つ飛び蹴りは、エルクレスの再生とミストルティンの霧散が追い付かない物と化していた。すると、罪人たいまつの大群がこちらに追いついてきたが紅緒は落ち着いていた。

 

大叫喚魔凍氷殺(だいきょうかんまとうひょうさつ)っ救急如律令!!

 

呪符を取り出して新たな術を発動すると、そのまま罪人たいまつの大群がまとめて氷漬けになる。しかもそのまま、エルクレス達に連続蹴りも忘れずにいる。

 

「「てめぇ(あんた)…調子に乗るな!!」」

 

エルクレスもミストルティンも、怒りに任せて紅緒を弾き返そうとする。しかし紅緒はそれを察して一気に飛び上がって緊急離脱。

 

『紅緒、また行くよ!』

「任せて…」

 

そしてまた暗黒冬将軍が上空に雪の塊を作り出し、それを踏み台にして一気に地面へと加速していく。

 

「まだまだぁあああああああああああああああああ!!」

「「ぐわぁああああああ!?」」

 

蹴りの衝撃でクレータが発生、さらに大きなダメージを負う二人の夢魔。もはや形成は完全に逆転だ。

~同時刻~

「聖丸にミエターナル、勝負だぁああああああああああああああああああああ!!」

 

ろくろが叫んだ直後、彼の背後に呪印が浮かぶ。そこにはREADY(用意)と刻まれており…

 

星方獄炎焦殺(スターダムド)!!」

 

技名を叫んだ直後にそれがGO(発射)に切り替わり、両肘から火炎を放って超加速で三人の敵へと突撃していく。

 

「ぐぇえ!?」

 

まずは聖丸の懐に飛び込み、アッパーで一気に天空へと殴り飛ばす。

 

「おらぁあ!!」

「何!?」

 

そしてそのままエターナルの体を投げ飛ばし、再び炎を噴射して天高く舞い上がる。そして、その隙を突いてツチギンチャクが迫って来る。

 

「食らうかよ!」

 

しかしろくろは更に炎の噴射でより高く舞い上がり、ツチギンチャクの攻撃を避ける。そして打ち上げた聖丸に狙いを定めて攻撃に入る。

 

星命咆哮連弾(スターバーストストリーム)っっ!!

 

技名を叫びながらろくろは、聖丸にスタープラチナも顔負けの百裂拳を叩き込む。しかも火炎を纏ったその拳は、ただ殴られるよりも大きなダメージを与えていく。

 

「ぐぁあ!? ぎぃい…ぎゃああ!?(こいつ、隙を与えねぇ気か!)」

 

殴られながらも聖丸は反撃の隙を狙うが、 ろくろの連打に手も足も出なかった。

 

「おらぁあ!!」

「な…ぐぉおお!?」

 

聖丸を撃ち落とした後、ろくろは一気に決着をつけに入った。

 

「奇一奇一たちまち雲霞を結ぶ 宇内八方ごほうちょうなん たちまちきゅうせんを貫き 玄都に達し太一真君に感ず 奇一奇一たちまち感通っ!!」

 

上空で金烏天衝弾(ゴルトスマッシュ)の詠唱を開始する。すると構えた両手にそれぞれ五つずつ印が重なり、詠唱の完了と同時にろくろはその印を殴りつけた。

 

『翔太郎、メリー・ナイトメア! 離れるんだ!!』

「相棒、それ乗った!」

「確かにヤバそうね、わかった!」

 

そして状況を察し、ダブルとメリーは急いでその場を離れる。そしてついに攻撃が発動した。

 

金烏天衝炎滅魔焦弾(ゴルトスマッシュ・インセンディオ)!!

 

そして印から強力な熱線が放たれ、聖丸とツチギンチャク、更には投げ飛ばしたエターナルまでを飲み込んだ。




次回はやっとディケイド&承太郎VSノイトラ&プッチになります。きららさんとランプ、徐倫も活躍させる予定となっています。


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第36話「十の刃とかつて新月を待った者」

ようやくディケイド&ジョジョ編。きららさんがあるクリエメイトを召喚しますが、やっぱり定番だったのでは外せない作品でした。
それではどうぞ。


士達が転移させられたのは、遮蔽物のない平原のど真ん中だ。

そんな中、敵はノイトラとプッチの2人のみ。こちらは士と承太郎と徐倫、きららとランプだ。数の差を埋められるきららのコールもあり、一見有利そうに見えるが……

 

「まず、奴はあの細身な体からは想像もつかねぇ膂力とそれで振り回すあの馬鹿でかい武器が主な攻撃手段だな。そこに、さっきのとんでもねぇビーム技まで備えてやがると見た。まだ何か隠している危険があるな」

「プッチのスタンドは重力に干渉するC-MOONっていうんだけど、かなり凶悪なスタンドだから気を付けて」

 

士が分析したノイトラの能力、武器からもわかるようにパワーは下手な怪人より上の可能性がある他、虚閃による広域攻撃まで可能という辺りから、これまでの敵と比較にならない強さであろう。そこに徐倫が対峙したプッチ神父のスタンド能力についての解説が入り、敵が非常に強力であることは確実となった。

そしてそれを聞いていたきららは、意を決してコールを発動した。

 

「本当はこんな戦いに巻き込みたくはないですけど…来てください!!」

 

杖を振りかざして現れたのは、5人の少女であった。

茶髪ボブカットのちょっとアホッぽい雰囲気の平沢唯。

黒髪ロングの凛とした秋山澪。

外ハネが著しい茶髪とカチューシャが特徴の田井中律。

ブロンドの髪と太い眉にのほほんとした雰囲気の琴吹紬。

黒髪をツインテールにした中野梓。

元の世界では同じ高校の軽音部メンバー、そして同部員によるバンド"放課後ティータイム"のメンバーである。

 

「異界の住人を召喚するコール…スタンド能力とどちらが強力か比べてみるのも、面白いかもしれないな」

 

プッチが呟いた直後、彼の背後にスタンドが出現する。塩基配列の描かれた包帯状のラインが全身に、頭部を始めとした体の各位に紫の装飾を施されている。しかしその姿を見て、徐倫の表情に驚愕の色が浮かぶ。

 

「ウソ、ホワイトスネイク!?」

「ホワイトスネイク? お前、さっきC-MOONって言ってなかったか?」

「C-MOONはある経緯で、あのホワイトスネイクから進化スタンドなの。それがなぜか退化していて…」

「なるほど、大体わかった。あのプッチとやら、もしかしたら平行世界から来たのかもしれねぇな。例の天国とかを目指さないでいい理由があったとか…」

 

どうやらスタンドが徐倫の把握していた物とは別物だったらしい。士はそこから、一つの推察を立てるが本人から聞きださないと真実はわからないだろう。

 

「プッチもスタンドを出したから、戦闘準備完了だな。さっさと始めようぜ」

 

ノイトラはプッチの臨戦態勢を見ると同時に、待ってましたと言わんばかりに手にした巨大な武器を構えて承太郎に対峙する。

呼ばれて早々、得体のしれない敵が二名現れたため、放課後ティータイムの面々は戦々恐々することとなる。

 

「きらら、あの二人が戦う相手っぽいけど……めちゃくちゃ強そう。怖い…」

「はい。こちらの人達曰く、異世界からの侵略者だそうです」

 

特に澪が顕著な様子だ。凛としたクールな美少女に見えて、実は怖がりで寂しがり屋、恥ずかしがり屋とかわいらしい性格なのだった。そんな彼女がプッチとノイトラの姿に怯えているが、きららから詳細を聞いてさらに怯える。

そんな中、律が士達に気づいて、声をかける。

 

「で、そっちのお兄さん達は何さ?」

「俺は門矢士、こっちは空条承太郎。そんでこの女は未来から来た承太郎の娘の徐倫だ」

「一先ずお前らの味方だ、安心しろ」

「あ、そうですか…(未来から来たこの学ラン兄ちゃんの娘って、急にSF入ってない?)」

 

とりあえず軽く自己紹介すると、改めてプッチとノイトラに視線を合わせる士達。ディケイドライバーを腰に装着し、変身用のカードを取り出す。

 

「早い所ぶっ倒さねぇとマズそうだ。変身!」

【Kamen Ride Decade!!】

「同感だ。スタープラチナ!!」

 

駆け出すと同時にディケイドへの変身とスタンドを発動した士と承太郎は、一気にノイトラの懐に飛び込む。

 

「はぁあ!」

『オラァア!』

 

先手を取ることに成功し、ディケイドとスタープラチナのダブルパンチがノイトラの体に叩き込まれる。それぞれ腹部と鳩尾にクリーンヒット。

 

 

 

 

 

 

 

 

-ブシュウウウウッ-

「硬ぇ!」

「なに!?」

「え!? 士さんと承太郎さんの手が…」

「逆に血を吹いてます!!」

 

なんと二人のパンチはダメージが通るどころか、逆に拳を痛める結果となってしまう。しかも肝心のノイトラには…

 

「この程度か?」

 

全くダメージが入っている様子はなく、手にした巨大な武器を振り下ろそうとしている。

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

 

咄嗟に承太郎が時を止め、その隙にディケイドの体を抱えて一気に距離を取る。そして時が動き出したタイミングで、更に行動に出た。

 

流星指刺(スターフィンガー)!」

 

指先に一転集中したスタンドパワーを、ノイトラの眼帯部分に目掛けて放つ承太郎。スタープラチナの指が伸び、確かにノイトラの眼帯に命中、そこから頭を貫いたのが見えた。

 

「体は硬かったが、流石に目はそうでもねぇだろ。悪く思うな」

「あの硬さは想定外だったが、流石に目をやられたら…」

 

その直後、ノイトラの姿が消えたかと思うと、そのまま二人の背後に回ってしまう。

 

「残念、あの世に行くのは俺じゃなくてお前らだ」

「「な!?」」

 

なんとノイトラはこれまたダメージを負った様子が無かったのだ。そして手にした巨大な武器での薙ぎ払いが、二人を襲う。

 

「「おぉおおおおおおおおおお!!」」

 

しかし仮面ライダーとスタンドの埒外のパワーで、どうにか受け止める。見立て通りの出鱈目な膂力に、一瞬吹き飛びそうになるが、地面に大きな掏り跡を残しながらも耐えきることに成功する。

 

「仮面ライダーもスタープラチナも、とりあえず噂通りパワーがある方だったらしいな。そこは安心したぜ」

「お眼鏡にかなったようだな…だが解せねぇ。なんで頭を貫通したのにダメージすら無ぇんだ?」

 

解せないといった様子でディケイドが問いかけると、ノイトラは眼帯をめくってその下を見せてきた。その姿を見て、ディケイドも承太郎も驚愕することとなった。

 

「この眼帯の下、元から穴が空いてるから効かねぇんだよ」

 

なんとノイトラの左目には、大きな風穴が空いていたのだ。しかも穴の周りに歯のような模様があったことから、生まれつきの物と思われる。

 

「冥土の土産にいくつか教えてやるよ。まず俺達破面は、虚っつう悪霊が進化した存在なんだが、その虚の胸には元になった魂が心を無くしたっつう意味で穴が開いてんだよ。これはその穴が、進化の過程で移動した物だ」

「どういう進化だ、おい!」

 

ディケイドがツッコミながら、ライドブッカーをソードモードにして斬りかかるも、ノイトラはなんとそれを素手で防いでしまった。だがその隙をついて、承太郎が再びスタープラチナの拳を振るう。

 

『オラァァ!』

「次に破面は生まれた順番に数字が降られているんだが、1から10までの数字だけは強さの序列である十刃(エスパーダ)に分類される。そして…」

「グゥうう!?」

 

説明しながら、ノイトラは承太郎を己の武器で薙ぎ払う。咄嗟に防いでダメージを抑えた直後、ノイトラがいきなり舌を出して、そこに刻まれた物を見せてくる。

 

「舌に5の数字……マジか?」

「やれやれ。てめぇ、その十刃ってわけか」

 

舌に刻まれた5の数字、まぎれもなくノイトラ自身が話していた十刃の5番目という意味になっている。図らずも、最強クラスの破面と交戦することとなってしまった。

 

「最後に、俺達の表皮は鋼皮(イエロ)と呼ばれてんだが、それ自体が鎧の役割を果たしている。そして俺の鋼皮は歴代十刃で最高硬度だ」

「なるほど、パワーと硬さのごり押しスタイルなわけか。こういうシンプルなのは、付け入るスキがねぇから厄介だな…」

 

ノイトラの異様な防御の高さの理由がわかり、うんざりした様子のディケイド。

 

「改めて自己紹介。第5十刃(クイント・エスパーダ)ノイトラ・ジルガ、てめぇらを殺す男だ!」

 

フルネームを名乗り、得物を構えて飛び掛かってくるノイトラ。最強最悪の敵が、世界の破壊者と最強のスタンド使いに襲い来る。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「空条徐倫に召喚士の娘よ。大人しく我らがオーバーヘブンショッカーの軍門に下り、聖なる遺体を手に入れる手伝いをするなら、その命を助けよう。そうすれば君達は等しく、我が友であるオーバーヘブンショッカー首領の作る天国の住人に迎えられるだろう」

「天国って、おじさん何言ってるの? 私たちまだ死んでないんだけど…」

 

プッチの誘いに質問で返す唯。彼女の中で、天国は死後の世界のあの天国しか連想できなかったようだ。そして、それは他の放課後ティータイムの面々やきらら達も同様のようだった。

 

「平沢唯だったか? 私の言う天国とは、生前に善行を積んだ死者がいく死後の世界のことではない。全ての人類が未来に起こる出来事を希望も絶望も分け隔てなく知り、それに対しての覚悟を持てる世界のことだ。それによって、全ての人類がより高い次元に到達できると踏んでいる」

「? ??」

 

プッチから天国に対しての解説が為されるが、天然丸出しな唯にはあまり理解できていない様子だった。代わりの返事を出したのは、徐倫であった。

 

「乗るわけないでしょ! あんたとその友とやらが、その天国とやらのためにどれだけ犠牲を出してもいいって考えてるのが、まるわかりよ!!」

「そ、そうです! どんな理由があるか知りませんけど、あなた達のせいでいろんな人たちが傷ついているんです! そんな話には乗れません」

「交渉決裂か……ならば、君達とは当初の予定通り交戦することになるな」

 

徐倫に便乗してプッチは返事を聞くと、ホワイトスネイクが構えを取る。

 

「気を付けて。ホワイトスネイクは人の記憶をDISCにして、頭から抜き取る能力を持ってるわ。触れないようにして」

「ホワイトスネイクって、あの人の隣にいる奴の名前ですか?」

「梓様、あれはスタンドと言ってあの人の魂を守護者にして実体化させた物だそうです。あそこで戦っている承太郎さんとこちらの徐倫さんも、同じ能力者だそうです」

「それと、スタンドはダメージが肉体と連動する一方、スタンド同士か同じ魂由来の能力でしかダメージを与えられないから気を付けて」

 

徐倫からホワイトスネイクの能力を聞いていると、スタンドを始めて見た放課後ティータイムの面々はその存在に疑問を感じる。代表して梓が効くと、ランプと徐倫が解説する。

 

「そして私のスタンドが、この"ストーン・フリー"よ!」

 

そして発現した徐倫のスタンドは、女性的な体躯に青いボディのサングラスをしたスタンドであった。

 

「諸君、掛かって来たまえ。数の有利を上手く使えるか、見ものだな」

「それじゃあ、行くわよ!」

「徐倫さんだっけ? オッケーだよ!」

「唯様、気を付けてください!」

 

そしてプッチからの挑発に乗るように、徐倫と唯は駆け出す。唯はエトワリウム製の、幅広な黒い大剣で武装している。意外にパワフルなようだ。

 

『オラァア!!』

「ふん!」

 

ストーン・フリーの放ったパンチを、ホワイトスネイクが防いで反撃しようとする。しかし、直後にストーン・フリーは固有能力を発動、それによってスタンドの腹部が解けて糸状になって、ホワイトスネイクのパンチを避けた。この糸への変化がストーン・フリーの能力で、これによる拘束や緊急回避が最大の強みだ。ちなみに、承太郎と士にはすでに伝えている。

 

「えい!」

「ほぉ、存外いい動きをするな」

 

そして唯が事前情報から、プッチを直接狙って剣を振る。しかしプッチ自身も実戦慣れしていたためか、たやすく避けられた。

 

「はぁ!」

「うわ!?」

 

そしてプッチは反撃に蹴りを放つ。唯は咄嗟に剣で防ぐが、元々の筋力差もあって唯は吹き飛んでしまった。

 

「「唯さん(先輩)!!」」

 

そしてきららと梓が同時に攻撃魔法を放ち、プッチへの追撃に入る。しかし、直後にホワイトスネイクが動き出す。

 

『ソノ程度ノ奇襲デ、我ラニ勝テル思ウナ』

「「え!?」」

 

そして喋りながら二人の放った魔法を拳で粉砕したのだ。スタンドが喋ったことに、きららも梓も驚愕した。そしてその隙を突き、プッチが迫りくる。

 

「スタンドは自我を有する個体も存在している。私のホワイトスネイクも、その一体というだけだ」

「しまった…きゃあ!?」

「梓さん!」

 

プッチに殴り飛ばされた梓を見て、きららは杖を振るって殴りかかる。しかしそれもプッチはたやすく防いでしまう。

 

「やはり実戦慣れしていないのは、痛い点だったな。召喚士の娘よ」

「く!?」

 

そしてそのままプッチときららのタイマン勝負が始まるが、きららは防戦一方だった。確実に彼女を倒そうと、プッチはホワイトスネイクによる攻撃で畳みかけてきたのだ。

 

「余裕がなさそうだな。私は心を落ち着かせる時、素数を数えるようにしている。君は何か、そういう物は持ち合わせているかね?」

「マズい……」

 

杖を構えながら防御魔法を使うが、常人のパワーを上回るスタンドの攻撃では、破られるのは時間の問題だ。

 

「離れなさい!」

「むぐ!?」

「「はぁああああああああ!!」」

 

しかし防御が破られるより前に、徐倫がストーン・フリーによる一撃を叩き込んだ。ホワイトスネイクに当たったパンチがプッチにダメージを連動させ、プッチが吐血する。そしてその隙を突いて唯と律がプッチに飛び掛かる。

 

「ストーン・フリー、行くわよ!」

「しまった!」

 

プッチが攻撃を避けようとしたその時、徐倫はストーン・フリーの体をまた糸に解き、それでプッチを拘束した。そしてそれにより身動きが取れず、唯達の攻撃を諸に食らってしまう。

 

「ぐ!?」

「やった!」

「ああ、やったな唯!」

 

どうにかプッチに大きなダメージを負い、ようやく光明が見えた唯達。そしてそこに澪が駆けつけるが…

 

「みんな、手当てするから待ってて…」

『油断大敵、トイウヤツダナ』

「え?」

 

なんといつの間にか、澪の傍にホワイトスネイクが接近してきたのだ。そして澪の頭部を、思い切り殴りつけてしまう。

 

「澪様!?」

「安心したまえ、命は取らん。だが…」

 

悲痛な叫びをあげるランプにそう告げるプッチ。ホワイトスネイクが拳を引くと、その手には一枚のDISCがあった。そしてそれと同時に、澪が倒れ伏す。

 

「彼女の記憶を封じたDISCは預からせてもらう。そこの彼女も仮死状態になっただけだ、DISCを戻せば復活する」

「プッチ! 貴様ぁあああああああああああ!!」

 

遂に被害者が出てしまい、徐倫は激昂する。そしてストーン・フリーもそれに呼応する様に猛り、プッチにラッシュを叩き込もうと拳を構える。

 

『冷静サヲ欠クトハ、マダマダダ』

 

しかしホワイトスネイクが動き出し、迎え撃とうと迫りくる。

 

『ウショオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』

 

そこからホワイトスネイクとストーン・フリーによるラッシュの速さ比べが始まった。ホワイトスネイクは先ほどの順応無人な動きからわかるように、遠距離型である。にもかかわらず、何故か近接戦闘が得意なスタンドなのである。結果、二体のスタンドの対決は拮抗している。

 

「な、何これ…」

「本当。スゴイことになってるわね…」

「マジで何だ、今回の派手な戦闘? ジャンプのバトル漫画かよ…」

「律先輩、言ってる場合じゃないです! どうにかして、澪先輩を…」

 

放課後ティータイムの面々は、初めて見るスタンド同士の対決に圧倒されてしまう。律の言動に梓がツッコミを入れながらも、澪の心配をしている等、それぞれの色が出ている光景だった。

 

「きららさん、澪様が…」

「ランプ、ちょっと考えがあるんだ」

 

不安げなランプを安心させるように、穏やかな笑顔で告げるきらら。そしてそのまま梓に視線を向けた。

 

「梓さん、以前ゆのさん達から聞いたんですけど、あのスタンドっていうのは同じ魂由来の力もですけど、魔法も効くらしいです」

「え? じゃあ、つまり…」

「上手くいけば、あの人に私達でも勝てるかもしれません」

「可能性はあるかもしれないわね。あの人、今も夢中になってるみたいだし」

 

きららから話を聞いた梓は、光明を見出して少し明るさを取り戻す。紬も同意し、先ほどから動けていないこともあって闘志が目に浮かんでいる様子だ。

 

「ということで、私が囮になるから上手くやってね」

「え、紬さん…」

「紬様、ちょっと…」

「ムギ先輩!」

 

そのまま周りが驚くのも気にせず先行する紬は、フラスコをプッチ目掛けて投げつける。

 

「ほう、付け入るスキを見つけようとしたのはいい着眼点だ」

 

しかし単調な攻撃ゆえ、プッチは容易く避けてしまう。そしてホワイトスネイクを行動させたまま、紬へと特攻を仕掛けに行くのだった。

 

「ムギちゃんは私達が守る!」

「ムギのケーキが喰えなくなるのは、困るしな!」

「その我欲の強さ、感心せんな」

 

そこに唯と律が割って入り、紬を守ろうと武器を振るう。だがプッチはそのまま二人を相手に立ち回りを演じようとする。

 

「今です、梓さん!」

「はい、きららさん!」

 

そんな中で、プッチが唯達に注目した隙を突いてきららと梓は魔法をホワイトスネイクに放つ。そしてその光景を徐倫も見逃さなかった。

 

「今だ。ストーン・フリー!」

『!?』

 

そしてストーン・フリーの体を糸に解き、ホワイトスネイクを拘束する。結果、無防備なままホワイトスネイクに魔法が命中した。

 

『がぁああ!?』

「がはっ!? なん、だと…?」

 

ホワイトスネイクに魔法が命中し、ダメージがプッチにリンクしてそのまま吐血する。そのままプッチは動揺、スタンドを解除して一同から距離を取った。

 

「思わぬダメージで心を乱してしまった。素数を、1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字を数えねば…2…3…5…7…11…13…17…19…23…29…」

 

そしてそのまま、本当に動揺した際に素数を数え始めてしまうプッチ。突然の事態に、きらら達も放課後ティータイムの面々も驚いてしまう。

 

「ほ、本当に素数を数えてる…」

「冷静になるためらしいけど、どういうわけなんですか?」

「……うん。孤独な数字から、勇気をもらえた。どうやら、君達の精神はそれなりに強靭らしい。ただの女学生だと思ったが、クリエメイト達も一端の戦士というわけか」

 

思い思いの感想を口にしていると、プッチの方からまさかの称賛の言葉が漏れる。しかし、澪のDISCを持ったまま、プッチは紫のモヤを纏って転移しようとしている。

 

「後は、君達総出でノイトラに打ち勝ってみたまえ。そうすれば、この秋山澪のDISCは返してやろう」

「! 待ちなさいプッチ…」

 

そして一方的に告げたまま、徐倫の制止も聞かずに転移してしまう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「それじゃあ、こいつはどうだ!!」

 

叫んだノイトラは得物の柄から伸びる鎖を手に取ると、投げ縄の様にその得物を高速で振り回し始める。超質量の武器が超高速で振り回され、それによって竜巻が発生する。

 

「こいつ!」

「出鱈目なパワーだとは思ったが、ここまでとはな…!」

 

ノイトラの姿が見えないうえに、凄まじい風が巻き起こることでこちらも身動きが取れなくなっていた。

 

「承太郎、もう一発時間を止められるか? 隙を作るにはそれしかないが…」

「出来なくはないが、連発したら相手に勘繰られちまいかねねぇ」

 

思わずディケイドも承太郎も攻めあぐねる、想像以上の強敵。このレベルの強敵達が、スタンド使いのような能力者や破面同様の人外を問わずに属している、そう考えると危険にしか思えなかった。

 

響転(ソニード)!」

「な!?」

 

ノイトラの叫びと同時に、瞬間高速移動でディケイドの背後を取ってしまうノイトラ。

 

「食らいな!」

「やべぇ!」

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

 

そのままノイトラは一気に得物で薙ぎ払って来る。ディケイドも対応できず、結局はまた時間停止で緊急回避という形を取ってしまう承太郎。そして制限時間が切れ、停止した時間も動き出してしまった。

 

「また瞬間移動か……虚弾(バラ)!」

「な…ぐわぁあ!?」

「ぐぅう!?」

 

しかしノイトラは虚弾の連射でディケイドと承太郎を纏めて攻撃、そのままダメージを与えてしまう。ディケイドは装甲のおかげである程度は耐えられたが、スタープラチナの頭部に命中したことで承太郎はそのまま流血してしまう。

 

「自分の魂を守護者にして実体化させて戦わせる、しかもダメージが肉体にも連動するってのは不便極まりねぇ能力だな」

 

承太郎の様子に少し馬鹿にするようなことを告げるノイトラ。するといきなり、舌なめずりを始める。

 

「だが、その分かなり濃い魂みてぇだ。喰いがいがありそうだなぁ」

(こいつに襲撃されたクリエメイト達から聞いたが、魂が主食らしいからな。ある意味、スタンド使いの天敵なのかもしれねぇ)

 

ノイトラの今までの敵には無い脅威を感じ取り、承太郎も戦慄する。

 

「瞬間高速移動に小回りの利く飛び道具も備えている……マジで隙がねぇな」

「となると攻略には、あの防御を破れる攻撃力と、さっきの高速移動みたいな技を両方使えねぇと厳しいな」

 

ノイトラの多様な技、能力にうんざりした様子の二人。しかし承太郎のその言葉で、ディケイドは対抗策を考え始める。

 

「奴の防御を破って、且つスピードのあるライダーなら…何人か候補がいたな」

 

言いながらディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。そこに描かれていた仮面ライダーは、スポーツカーのようなデザインに白い複眼の、真っ赤なライダーであった。

 

【Kamen Ride Drive!!】

 

そしてディケイドが変じた新たなライダー、"仮面ライダードライブ"が姿を現す。

 

「そいつ、どういうライダーなんだ? なんか車みてぇな見た目してるが…」

「仮面ライダードライブつって、バイクじゃなくて車に乗ってるのに、なぜか仮面ライダーになっている」

 

ドライブの詳細を聞き、承太郎は思わず顔を歪めた。仮面ライダーのライダーはバイクの乗り手を指すためだ。一応、BLACK RXという仮面ライダーはバイクとは別にライドロンという車に乗っていたが、バイクに一切乗らないドライブの存在には驚かずにいられなかった。

 

「やれやれ、変わり種にも程があるだろ……つーか、それ仮面ドライバーじゃねぇのか?」

「俺にツッコむな、このライダーのシステムを作った奴に言え。後、奴にダメージを与えられる武器へのツッコミも、名付け親に会った時まで取っておけ」

 

いいながらディケイドドライブはアタックライドカードで武装を取り出す。のだが…

 

【Attack Ride Handleken!!】

 

手に握られた剣は、持ち手の部分が明らかに車のハンドルの形をしているのだ。ハンドル剣というのは空耳ではないらしい。

 

「……やれやれだぜ」

「呆れるのもわかるが、効果を見たら評価も改まるだろ」

 

そんな承太郎をよそにディケイドドライブは、左腕に装着されたシフトレバーを三回連続で倒す。そしてハンドル剣を右手に握ったまま駆け出した。

 

【Speed! Speed! Speed!】

 

「何!?」

 

急な加速にノイトラも面食らい、ディケイドドライブは懐に飛び込むのに成功した。そしてハンドル剣で一閃。

 

「ぐわぁあ!?」

「おし、やっと一撃」

 

遂にノイトラは胴に裂傷を負い、まともなダメージが入ったことがようやく確認できた。承太郎も、その隙を逃さなかった。

 

「そこだ!」

『オラァア!!』

「ぐぼぉおお!?」

 

ノイトラに付けられた裂傷を目掛けて、スタープラチナによる一撃を叩き込む。流石に頑強な肉体でも、傷口を諸に攻撃されてはただでは済まないだろう。

 

「てめぇ、やりやがったな…」

「今よ、ストーン・フリー!!」

「なんだとぉお!?」

 

ノイトラが激昂しようとしたその時、徐倫がこちらに飛び込んできてストーン・フリーの体を糸に解く。そしてそれでノイトラを拘束してしまった。

 

「今よ、きららに唯!」

「はい!」

「オッケー!」

 

そして徐倫の呼びかけに答え、きららが魔力弾を放ち、唯が剣で斬りかかる。

 

「がはっ……がぁああ!!」

 

拘束された上に完全に不意を突いた連続攻撃のため、ノイトラにも大きなダメージが通ることとなった。

 

「お前ら、どうして…」

「なぜか、急にプッチが戦闘を取りやめてね。この際だから、隙を突かせてもらったわ!」

「でも、澪ちゃんがやられちゃって…」

 

突然の加勢に困惑していると、徐倫と唯が説明し、それに続いて仮死状態の澪を担いだ律がやって来た。その際、状況を察した承太郎は空気を変えようとドライブの武装について、改めて尋ねてみた。

 

「しかし、その剣ふざけた見た目のくせに強力だな」

「なんか刀身が特殊な振動エネルギー纏ってるとかで、地上の全ての物質を破壊できるらしい。で、ドライブ自身も瞬間加速ができるから有効じゃねぇかと思ってな」

「こ、この見た目でおっかない武器なのね…」

 

ドライブの姿から元に戻ったディケイドが、ハンドル剣について解説すると徐倫が驚愕する。きららや放課後ティータイムの面々も、顔を青ざめている。

しかしそんな中、ノイトラに異変が生じた。

 

「ウソだろ…俺が、あんな女子供に一撃食らわされるだ? クリエメイトも召喚士も、仮面ライダーやスタンド使いにはるかに劣る、取るに足らねぇ雑魚どものはずが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな事実、認めてたまるかぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

そして激昂しだすノイトラ。よほどプライドが高かったのか、最初から期待していないきららやクリエメイト達に手傷を負わされたことが、耐えきれなかったようだ。その結果、それは発動された。

 

祈れ! 聖哭螳蜋(サンタテレサ)!!

 

ノイトラの刀剣解放だった。最強の10人、その一角の真の力がディケイド達に襲い来る。

 

「祈れ? この局面で何言ってやがんだ?」

「サンタテレサ……確かスペイン語でカマキリのことだったはず……」

 

承太郎が唐突なその掛け声に困惑し、徐倫が自身の記憶からノイトラの叫んだ単語の意味を考えていると、遂にノイトラの変異が完了した。

 

「な、なにあれ……」

「これと戦えって、骨が折れそうだ…」

「やれやれだぜ……」

 

現れたノイトラの姿は、4本の腕とそれぞれに握られた巨大な鎌、体の各部に纏わった外殻、三日月のような巨大なツノ、と異形化していたのだ。

鎌で武装していることもあり、徐倫の言っていたカマキリという表現もあながち間違いではない。

 

「どうだ? これが破面が己の武器である斬魄刀に封じた、虚としての真の姿と戦闘能力を解放する帰刃(レスレクシオン)だ。初見が十刃のそれとは、お前ら確実に死んだぜ」

 

勝ち誇った笑みを浮かべながらノイトラは告げ、鎌を握った四本の腕を構えてこちらに視線を向ける。

まだ、戦いは続く。




けいおん!はひだまりスケッチ同様、きらら系列の顔的作品なので、ONE PIECEかドラゴンボールくらいしか組ませられる作品が思いつかず、前者はすでにひだまりスケッチと組んでいる、後者はパワーバランス的にNGにしました。

プッチですが、アイズオブヘブンでは天国DIOと出会ったことで自分が天国に行くことをやめたとのことですが、言動から「天国DIOと同じ平行世界から来た」としか聞き取れませんでした。ただ、今作のプッチは平行世界から来たわけでもないです。士のお予想は外れてますが、果たして?


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第37話「絶望をぶっ壊せ」

新ライダーのセイバー、なかなか面白いじゃないの。あのストーリーテラー、タッセルは果たして本編に絡むのか、否か?
そしてきらファン初コラボが開始しましたが、まさかのサンリオとな。けいおん!組がいたら、show by rockの意匠来てたんですかね?
ノイトラとは今回で決着ですが、もう一波乱行きます。


プッチが突如撤退した一方、ノイトラが帰刃によって最大の力を発揮してしまう。しかもよく見ると、先ほどディケイドがドライブに変身した際に付けた裂傷が塞がっていたのだ。

能力の強化だけでなく、せっかく付けたダメージも戻ってしまったのである。

 

「お? プッチの野郎、いなくなってやがるな……まあ、獲物の独り占めができるってことでいいか」

 

ノイトラも、急なプッチの撤退に気づいたようだがあまり意に介していないようだ。そして再びこちらに向き合い、あることを告げる。

 

「さて、せっかくだからもう一個教えてやるよ。十人の十刃(エスパーダ)は、一人一人が死の形を司っている。破壊や虚無、犠牲といった形があるが俺が司る死は絶望だ。どうだ、俺の圧倒的な力に絶望したんじゃねぇか?」

「「ひぃ……」」

 

勝ち誇った様子で告げるノイトラ。純粋にあのパワーに手数が加わるのは、確かに脅威だった。実際、梓やランプは青ざめ、短く悲鳴を上げる。

 

「敵がとんでもなく強い、なんてのは俺達にとっては日常茶飯事だ。その程度で絶望するわけねぇだろ」

「俺だって、何度も戦いで殺されそうになった。同じく絶望なんてしてらんねぇ」

 

しかし数多の修羅場を潜り抜けたディケイドと承太郎は、ただ敵が強いだけで絶望することはない。これがノイトラの癪に障ったのか、体が小刻みに震えるのが見える。

 

「それよりも、ざんぱくとうってことはさっきの武器って刀なんだよね。全然見えないかな?」

-ブチッ-

 

そこに唯が天然発言でとどめを刺してしまう。額には遠めでもわかるほどくっきりと浮かんだ青筋が目立ち、威圧感が跳ね上がった。

 

「てめぇら、揃いも揃って俺のこの力に絶望しねぇだ?」

-ズンッ-

「うぉ!?」

「ぐぅう!?」

「何、これ…!」

 

直後、ノイトラが霊圧と呼ばれる破面や死神特有だという力を発する。そのプレッシャーが、一同を押しつぶさん勢いで襲ってきた。

 

「だったら、実際に死んで絶望しやがれ! 矮小な人間どもがぁあああああ!!」

 

そして叫びながら、ノイトラは4本の鎌を手にこちらに襲い掛かる。しかも、唯をピンポイントで狙ってきたのだ。

 

「マズい!」

【Attack Ride Slash!!】

 

ディケイドはプレッシャーを堪えながら唯の前に躍り出て、ベルトにカードを装填する。そしてソードモードのライドブッカーにエネルギーを纏わせて迎え撃とうと斬りかかる。そして、鎌の内一本と、剣が激突する。

 

「がぁああ!?」

「うぇえええ!?」

「士さん!?」

「唯様!!」

 

なんと、あまりの衝撃にディケイドは唯共々吹き飛ばされた。ノイトラは単純な膂力まで強化されているようだ。

 

「次はてめぇらだ、スタンド使い!!」

「マズい!」

「迎え撃つわよ、父さん!!」

 

更に空条親子に標的を切り替え、ノイトラは迫って来る。二人はスタンドのパワーとスピードを活かして、先にノイトラを叩こうと動く。だが、ここでノイトラが予想外の動きに出た。

 

「てめぇらはスピードも半端ねぇから、こうだ!」

「「な!?」」

 

なんと、ノイトラは鎌を投げ捨てて手刀で攻撃してきたのだ。巨大な獲物が消えて身軽になったことで、近接スタンドのスピードにも対応できたということである。しかもノイトラは元が霊体故に、スタンドに直接攻撃ができる。結果スタープラチナとストーン・フリーの体に腕は深く刺さり、承太郎と徐倫はリンクして腹から血が噴き出した。

 

「ぐぅう!?」

「あぁあああああああああ!?」

「刀を両手持ちに変えただけで異様に強くなる奴がいるんだ、なら素手に切り替えて強くなるのもありだろう」

 

激しい痛みで動きの取れない空条親子を、ノイトラは左右の腕二本ずつでそれぞれ掴み、ディケイドと唯の吹き飛んだほうに投げ飛ばす。

 

「さて。今度は、不意打ちなんて舐めた真似した召喚士の小娘の番だ」

「来ないでください!」

 

そしてノイトラは次の標的をきららに定め、対するきららも撃退しようと杖を振るって魔法で攻撃する。しかし、ノイトラの強化された鋼皮に阻まれ、ダメージが通らない。

 

「てめぇごときの攻撃が、今の俺に通じるわけねぇだろ!」

 

叫んだその後、ノイトラはなんと鎌を捨ててきららに急接近。手刀を放って、それできららを叩き切ろうとする。

 

「やらせるかぁあああ!!」

「律さん!」

 

そこにすかさず、律が割って入って盾でそれを防ごうとする。

 

「え?」

「なんだ、随分と脆い盾だな?」

 

だがノイトラは、その盾をただの手刀で切り裂いてしまったのだ。彼の歴代十刃最高硬度と自負する鋼皮、それとあの出鱈目な膂力が実現可能な攻撃だったわけだ。

ノイトラはすかさず、四本の腕全てで一気に手刀を放ち、律をきらら諸共スライスしようと動く。

 

「律さん、危ない!!」

「な!?」

 

しかしその時、きららが防御魔法でノイトラの一撃を防いでしまった。連発不可能だが、一度だけ完全に攻撃を遮断するタイプの魔法である。だが、これが癪に障ったのかノイトラはある行動に出てしまう。

 

「小賢しいマネばかりしやがって……せっかくだ。十刃だけが使える、最強の虚閃で葬ってやる」

 

ノイトラは響転で先ほど放り投げた鎌を回収すると、それを地面に突き刺して大口を開ける。口から、細かく言えば舌先から虚閃(セロ)を放つ彼だが、その時に強い光が放たれるのだが、虚閃は赤い光を発する筈が、なぜか青黒い光が収束していく。

よく見ると、鎌はかなり深く地面に刺さっていることから、反動を抑える目的のようだ。それだけ強力なのだろう。

 

王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)!!

 

放たれた青い極光が、凄まじい勢いできらら達に迫る。攻撃の規模も速度も、最初に接触してきたときにはなった虚閃とは、比較にならない物だった。

 

「「え?」」

「「うそ…?」」

「澪先輩!」

 

あまりにも唐突に強大な攻撃が放たれ、きらら達は呆けて全く対処できなかった。ただ一人行動できたのは、梓だけだった。それでも、仮死状態の澪を案じて抱き寄せるくらいが限界だったが。

そしてそのまま、一同はノイトラが放った最強の虚閃に飲まれてしまう。そして攻撃が止んだところで、その一帯は焦土と化し、遠方の山まで消し飛んでいたのだ。そしてそのタイミングで、ノイトラは地面に突き刺した鎌を引き抜いて構えなおす。

 

「さて、召喚師とクリエメイトどもは消し飛んだだろう。ディケイドとスタンド使いどもと一緒の所に、一人だけ残ってたが、纏めて潰しちまえばいいだろ」

 

ディケイドと空条親子、そして一緒に吹き飛ばした唯を纏めて倒しにかかろうとしているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Refomation!】

「ん?」

 

いきなり電子音声が流れたので、その音の出る方に向き直るノイトラ。その視線の先には…

 

「超加速と時間停止の分担作業での救出、何とかなったな」

「やれやれ。迅の予知でのランプと紳士共の被害、これの巻き添えだったんじゃねぇか?」

「だとしたら、今助けられて正解だったかもね」

「みんな、ありがとう! あずにゃんも無事でよかったよぉおおお!!」

「唯先輩、暑苦しいです。でも、おかげで助かりました」

 

ファイズアクセルフォームに変身したディケイドに担がれ、無事な様子のきららとランプの姿があった。しかもその脇には、承太郎と徐倫がスタンドで放課後ティータイムの面々を担いでいる姿が見える。ちなみに、澪だけは承太郎が自分で担いでいたりする。

 

「時間停止……なるほど、瞬間移動だと思ってたのはそういうからくりだったわけか。じゃねぇと、あの攻撃からそいつらが助かるはずもねぇからな」

「やれやれ、やっぱバレちまったか。というか、勝手に解説入れるな」

「悪かった。今回は素直に謝罪する」

 

しかしその代償としてノイトラに承太郎の時間停止を知られてしまう。理由が士の失言だったため、珍しく素直に謝罪する。だが、これでディケイドも覚悟を決めて自身の切り札を使うことを決意した。

 

「仕方ねぇ、俺も切り札を使うか」

 

ディケイドはファイズへの変身が解けると同時に、懐からタッチパネル式携帯電話を模したアイテム”ケータッチ”を取り出す。それに一枚のカードをセットし、カードに描かれた9つの平成仮面ライダー達の紋章”ライダーズクレスト”をタッチしていく。

 

【Kuuga! ■■■! Ryuki! Faiz! Blade! ■■■! ■■■! ■■■! Kiva!】

「ん!?」

 

しかし、ここで異変が生じる。タッチした一部のライダーズクレストから、ライダーの名でなく雑音が生じたのだ。

 

「な、何だこれ……」

 

士は唖然とした。雑音が鳴った「アギト、響鬼、カブト、電王」のライダーズクレストが、潰れて見えなくなっていたのだ。これでは、ディケイドの最終形態"コンプリートフォーム"への変身ができない。

 

(電王と響鬼はこのエトワリアに来ているが……まさかこっちに来るライダーだけ使えないのか?)

「何を動揺しているのか知らねぇが、隙だらけだ!!」

 

一人で何故使えないのかを考えていると、その隙を突いてノイトラが迫ってきた。しかもまた手刀に切り替え、スピード重視で迫ってきたのだ。

 

『『オラァア!!』』

「呆けてる場合じゃねぇだろ、このバカ!」

「す、すまない…」

「それ、切り札っぽいけど何かあったの?」

 

しかし空条親子がスタンドでノイトラの腕をつかんでどうにか防ぐ。四本の腕による鋭い手刀だったが、今回はフルパワーで掴みかかったことであの膂力をどうにか抑えることに成功する

承太郎に怒鳴られ、珍しく素直に謝罪するディケイド。予想外の事態に、流石に動揺は隠せないようだ。すると徐倫がディケイドに生じたトラブルについて、聞こうと声をかける。

 

「ああ。実は…」

 

そしてその件について話そうとした時それは起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「がはっ!?」」

「何!?」

「「「え?」」」

 

いきなり、承太郎と徐倫は揃って吐血したのだ。突然のことにディケイドは驚愕、きらら達もわけがわからないといったように見ている。そして承太郎たち二人が自らの腹に視線を移した時、驚愕することとなる。

 

「残念だったな。俺の腕の最大本数は6本なんだよ」

 

なんとノイトラの宣言通り、彼の腕が6本に増えていたのだ。承太郎と徐倫は揃って、この増えた腕にスタンドの体を貫かれていたのである。

 

「こいつ、まだこんな隠し玉を…!」

「どうしよう!? まだ澪ちゃんの目も覚めてないのに……」

 

ディケイドも思わず動揺し、唯は承太郎達の傷の手当てができない状況に不安な表情を見せる。

かと思いきや、それは起こった。

 

「だったら、尚更逃がすわけにいかないわ!!」

「だな。これを機に隙を作るまでだ」

「!?」

 

徐倫のその言葉と、それに同意する承太郎の発言の直後、ノイトラは異変を感じた。なんと、突き刺した腕がスタンドの腹部から抜けなくなったのだ。どうやら腹筋だけで腕を抑えているらしく、勝利を確信したノイトラも驚きだ!

 

「その腕を押し込んできたらスタープラチナのラッシュを叩き込もうかとも思ったが、あの硬さじゃそれも出来ねぇからな」

「私たちのスタンドが近接パワー型だったのが、運の尽きね」

(こいつら、本当なんで絶望しねぇんだ!? 前に俺を殺した死神と違って、死を恐れていないわけじゃねぇはず…)

 

決して折れない空条親子の精神力、ジョセフが士に語った黄金の精神から来る諦めない意志が破面にも対抗可能な力を発揮したのだ。

 

「よくやった、後は任せろ!」

【Final Attack Ride DDDDecade!!】

 

そしてディケイドはこの隙を逃すまいと、ノイトラと距離を取りながらディケイドライバーにカードを装填、ディメンションキックの体勢に入った。ディケイドとノイトラの間にカードのヴィジョンが並び、ディケイドがキックを放つと、そこを通過してノイトラを目掛けて一気に加速する。

 

「食らいやがれぇえええええええ!!」

「離れるぞ、徐倫!」

「わかったわ、父さん!」

 

そしてディケイドのキックが迫って来る最中、承太郎と徐倫は緊急離脱した。スタンドの脚部にパワーを込めたことで、腹部に刺さったままのノイトラの腕も一気に引き抜かれて、距離を取ることに成功する。

 

「はぁあああああああ!!」

「ぶっ…ぎゃあああああああああああああ!?」

 

そしてディメンジョンポリスは、ノイトラの顔面にクリーンヒット。あの膂力と頑強な鋼皮を以てしても、流石に威力30tのキックを顔面に叩き込まれては吹き飛ばざるを得ないのだ。

 

「流石にこれで倒しきれるとは思えないが、これは無事じゃすまねぇだろ」

「あ、ああ…だが、流石にこっちもダメージデカいのを食らっちまったがな…」

 

ノイトラにようやくまともなダメージが入るが、承太郎が息も絶え絶えな様子だ。見ると腹部からの出血が激しく、先ほどスタープラチナの腹部からノイトラの腕を引き抜いたことで、そのダメージが承太郎にリンクしたのだろう。

 

「承太郎さん、すぐに治療します」

 

その時、きららが駆け寄ってきて承太郎に対して杖を振りかざす。すると回復魔法が発動し、承太郎の傷が一気に治癒された。

 

「…やれやれ。そういえば、お前も回復できるんだったな。助かった」

「いえ、むしろすみません。動揺が大きすぎて、なかなか助けれなくて…」

「私もさっきは助かったわ。ありがとう、きらら」

 

後から続いて徐倫も、万全の状態で近寄ってきた。だが、ここでディケイドが警戒を強めながら声をかける。

 

「お前ら、談笑は後回しにしとけ。あいつは、まだピンピンしてるぞ」

「……そういうことだ。再戦といこうぜ」

 

現れたノイトラは、頭部から流血しているもまだまだピンピンしている。しかも、いつの間にか手に鎌を出現させ、それが6本全ての腕に握られている。今のノイトラには、こちらへの殺意をより強めている。

そんな中、ディケイドはある手段を取ることを決意した。コンプリートフォームが使えない中、強力な力を使うにはファイナルフォームライドというカードを使う必要があるが、これには「他の仮面ライダーが居ないと使えない」という制約があった。しかし一つだけ思いつく策がディケイドにはあった。

 

「仕方がねぇ。消耗が激しいからこの手は使いたくなかったが…」

 

言いながらディケイドがまた別の仮面ライダーのカードをベルトにセットする。

 

【Kamen Ride OOO!!】

【タカ! トラ! バッタ! ♪タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!!】

 

ベルトから軽快な音楽と同時に妙に耳に残る歌が流れると、ディケイドは新たな仮面ライダーの姿となる。

黒字の生体アーマーに頭部は赤、上半身は黄色、下半身は緑で文様が描かれている。胸のエンブレムには歌に上がったように鷹と虎と飛蝗が段重ねに描かれているが、マスクにも鳥の翼が描かれ、両腕には虎を模した鋭い爪が取り付けられている。

 

「……妙に派手な仮面ライダーが出てきやがったな」

「それもなんですけど、なんですか今の歌?」

「この姿は仮面ライダーオーズ。大昔の錬金術師が地上の動物のパワーを込めたメダルを作って、それを作らせたとある国の王がメダルを使って変身したのが起源らしい。後、歌は気にするな」

 

承太郎もきららも、この極彩色の仮面ライダーオーズと変身時のな歌には、困惑の色を見せることとなる。ディケイドはひとまずオーズについて解説すると、そのまま新たな形態に変身するカードを準備する。

 

「先に断っておくが、オーズは他の形態になるたびに、あんな感じの歌が流れるから気にしてたらもたねぇぞ」

【Form Ride OOO! Gatakiriba!!】

【クワガタ!カマキリ!バッタ!♪ガ~タガタガタ・キリッバ・ガタキリバッ!!】

 

フォローを入れながら文様が緑系統に統一された、オーズ・ガタキリバコンボに変身したディケイド。頭部にクワガタムシのような二本の角が備わり、両腕にもカマキリをイメージした折り畳み式の剣が装備されている。

しかも直後、ガタキリバオーズは分身してしまったのだ。

 

「ええええええええええ!!?」

「なんか、増えちゃったよ!?」

「ざっと数えて、50人ってところか…」

「これはスゴイですね!」

 

きららも唯も仰天、承太郎はスタープラチナの精密な視力でどうにか分身の総数を数えて驚嘆。ランプも珍しく、クリエメイト以外の話題で興奮することとなった。

 

「行くぞ!」

「数だけそろえたところで、俺に勝てるわけがねぇんだよ!!」

 

ディケイドオーズはガタキリバを一斉にノイトラに嗾けるが、ノイトラは6本の鎌を振るって立ち向かう。そんな中、ディケイドオーズが一人だけこちらに残っており承太郎達にある策を伝える。

 

「きらら、お前って確か味方の攻撃力を一回分だけ跳ね上げる魔法が使えるって話してたよな」

「え? はい、使えますけど…」

「なら、ちょっと考えもある。承太郎達もだが、唯だったか? お前らにも協力してもらうぞ。といっても、お前らは隙を作る手伝いくらいだが…」

 

そして承太郎だけでなく、放課後ティータイムの面々にも策への協力を伝えると、唯が即答で答えた。

 

「何でもするよ! 澪ちゃんを助けるためにも、あの人をやっつけないと!!」

「わ、私もです! 澪先輩は私にとっても大事な人ですから…」

「私も手伝うわ。律ちゃんはさっき、武器を壊されたから休んでないとダメだけど」

「うぐ…けど、ムギの言う通りだ。今回はみんなに任せる」

「やれやれ……で、策ってのは?」

 

結果、ノイトラに武器を壊された律以外の全員が協力することとなる。そこに承太郎は、彼女達の強い意志を聞いて思うところあったのか、微笑を浮かべるのだった。そしてディケイドから策を聞く。

 

 

~その頃~

「はぁあああああああ!!」

「単なる物量戦特化と思ったが、雷撃と斬撃で畳みかけるのか。面白れぇな!」

 

ディケイドオーズの分身たちが角から電撃を放ち、ノイトラを攻撃する。ノイトラも単純な硬さで防げる攻撃以外はダメージを受けざるを得ないが、タフネスも人外のそれだったのか、耐えきって迎撃に入る。しかし分身ディケイドオーズは、腕からカマキリの手を模したブレードを展開して一斉に斬りかかる。

 

「私達も忘れないでください!」

 

そこに作戦立案を聞いた梓が、割って入って魔法で攻撃する。しかし流石にもディケイドオーズの攻撃よりも威力は低く、命中しても特に堪えた様子はない。

 

「だから、てめぇら程度の攻撃で俺を倒せるわけねぇだろ!」

「そんなこと、ないわ!」

「あが!?」

 

ノイトラは梓に虚弾を放とうとするが、その時に紬が叫んで気を引きながらフラスコを投擲する。それが頭部に命中し、ダメージが梓の物よりも通っているようだ。紬はあることに気づき、唯と梓に呼びかけた。

 

「唯ちゃん! 梓ちゃんも! この人、さっきのケガもあって頭が弱点になってるわ!」

「オッケー、ムギちゃん!」

「そうか、わかりました!」

「俺達も協力させてもらうぞ!」

 

それを聞いた二人は、早速行動を開始した。横で聞いていたディケイドオーズの分身たちも、その援護に入る。

 

「てめぇら、弱点見つけたからって調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

しかしノイトラは鎌を構えて高速回転を始めた。斬撃を伴った超高速回転に、ディケイドオーズ達はうかつに近づけなかった。しかしそのうち二人が、唯と梓にそれぞれ近づく。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

「それから、しっかりつかまってろ」

「「え…きゃあ!?」」

 

そしてそのまま唯と梓の体を掴んで、強靭な脚力での大ジャンプを放つ。そして遥か上空へと飛び上がった二人のディケイドオーズはノイトラの頭上に狙いを定め…

 

「あ、そういうことか。あずにゃん、ちょっと怖いことになるかも…」

「え? まさか…」

「察したか。じゃあ、行ってこい!」

 

そしてディケイドオーズは、唯と梓(通称ゆいあず)をノイトラに投擲したのだ。そしてディケイドオーズ達も一緒にキックの体勢を取って落下していった。

 

「こうなったらもう、自棄ですぅうううううううううう!!」

「覚悟決めたか! 行くぞぉおおおおお!!」

「いっけええええええええええええええええ!!」

 

梓が涙目になりながら、落下中に魔法を乱射する。そこに唯も剣を構えて、ディケイドオーズ達と一緒に落下していった。

 

「みんなを傷つけるなら、許さないよぉおおお!!」

「な!?(マズい、避けられねぇ!)」

 

そしてノイトラが気づいた時にはもう遅かった。梓の魔法は狙いが定まらず頭部には当たらなかったが、何発もの魔力弾が鎌に命中し、ノイトラに隙を作った。そして唯はディケイドオーズ二人と一気に突撃していく。

 

「やぁああああああ!!」

「「たあああああああああああああ!!」」

「がっ!?」

 

そして唯の剣がノイトラの頭に、ディケイドオーズの蹴りが両肩に命中。ノイトラは痛みで悶絶して動きが止まった。その直後に梓と唯を回収したディケイドオーズが、二人を安全なところに連れて行くと、いきなり分身を解除。そのまま7人だけ残ったと思いきや、一斉にディケイドライバーにフォームチェンジのカードを装填し始める。唯がつい気になって問いかけると…

 

「え? 何する気なの??」

「このまま畳みかけさせてもらおうと思ってな」

【Form Ride OOO! Tatoba!!】

【Form Ride OOO! Gatakiriba!!】

【Form Ride OOO! Ratrata!!】

【Form Ride OOO! Sagozo!!】

【Form Ride OOO! Syauta!!】

【Form Ride OOO! Tajadle!!】

【Form Ride OOO! Brakawani!!】

 

残った7人のオーズが、なんと一斉にフォームチェンジのカードをディケイドライバーにセットしたのだ。それにより、一斉に変身が開始される。

 

【クワガタ!カマキリ!バッタ!♪ガ~タガタガタ・キリッバ・ガタキリバッ!!】

【ライオン!トラ!チーター!♪ラタ・ラタ・ラトラァータァー!】

【サイ!ゴリラ!ゾウ! ♪サ・ゴーゾォ…サ・ゴーゾォッ!】

【シャチ!ウナギ!タコ! ♪シャ・シャ・シャウタ!シャ・シャ・シャウタ!!】

【タカ!クジャク!コンドル! ♪タ~ジャ~ドルゥ~~!】

【コブラ!カメ!ワニ! ♪ブラカ~ワニ!!】

【タカ! トラ! バッタ! ♪タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!!】

 

変身が完了した異なる形態のオーズが誕生した。

 

"ガタキリバコンボ"。緑の昆虫メダルで変身した、クワガタの角を模した頭部から放つ雷撃と、最大50人の分身による多人数との戦闘に特化したコンボだ。ディケイドが先ほど変身したオーズである。

"ラトラーターコンボ"。黄色の猫化哺乳類メダルで変身した、目にもとまらぬ俊足と鬣を模した頭部を発光させての高熱と目くらましで、敵に気取られずに確実に倒す暗殺タイプのコンボである。

"サゴーゾコンボ"。灰色の重量系哺乳類メダルで変身した、胸部を叩くドラミングの動作で重力操作を行い、圧倒的な重量とそれを振るう膂力で敵を粉砕するパワー特化コンボ。

"シャウタコンボ"。青の海洋生物メダルで変身した、液化能力で攻撃を受け流しつつ、脚部から生やす蛸足と両腕に装備された電気ウナギウィップで動きを封じて戦う、水中戦特化コンボだ。

"タジャドルコンボ"。赤の鳥類メダルで変身した、専用武器タジャスピナーから射出する火炎弾で空中から畳みかける、飛行能力持ちの炎の力を持ったコンボだ。炎を纏い飛翔する様は、まるで不死鳥のようである。

"ブラカワニコンボ"。どういうわけか徳川家に伝わっていたメダルで変身する、再生能力と防御力を兼ね合わせ、更に毒での攻撃も可能なコンボ。オーズのコンボは消耗が激しいが、ブラカワニはその再生能力の恩恵でコンボの消耗が少なく、しかも今は全オーズにその力が伝播している。ただ、もともと消耗しているのもあっていくらかその能力も弱っているようだ。

そして"タトバコンボ"。異なるメダル同士を組み合わせていながら、メダルを作らせた800年前の王が最初に変身したことでコンボに登録されたバランスタイプだ。オーズの基本にして本来の姿ともいえる。

合計7体のオーズが誕生した。

 

「おし、恐竜メダルのコンボはねぇが大丈夫だろ」

「やれやれ。まさか、こんな壮観な光景になるとは」

(恐竜……ってことは、本来はもう一人いたってこと? 結構、とんでもないのね)

 

まさかの事態に、待機していた承太郎も驚愕している。きらら達も、開いた口が塞がっていない事態だ。しかしディケイドオーズは気にせず、一斉にカードを装填した。

 

『はぁああああああああ!!』

「が……う、動けねぇ…!?」

 

そして7人のディケイドオーズは、一斉にノイトラに突撃していく。

まず、サゴーゾがドラミングでの重力操作で、ノイトラですら立つのもやっとな程の重力負荷をかけていく。そこにすかさず、ラトラーターの発光能力による目くらましが放たれた。

 

「! ……小癪な…!?」

「たぁああああ!」

「な、がぁああああああああああああああ!?」

 

激昂しようとしたノイトラに、シャウタの電気ウナギウィップが襲い来る。巻き付いた鞭から流れた電流で、少しずつ確実にダメージを与えていく。そしてすかさず、ガタキリバの電撃とタジャドルが空中から放つ火炎弾が追撃をかける。

 

「そんでもって、これはどうだ?」

「「「ヘビィイイイイイイイイイイイ!?」」」

「あら、面白い技使うのね」

「流石紬様、全然動じていません……」

 

そこにブラカワニがどこからか取り出した縦笛を吹くと、頭部のターバン状のパーツが解けてコブラに変形、笛の音に合わせてノイトラを攻撃する。

その様に、紬を除く放課後ティータイムの面々は仰天した。

 

「「「そらよ!!」」」

「が!? てめぇ、調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

 

更にタトバがソードモードのライドブッカーを手に飛び掛かり、ラトラーターが両腕の爪"トラクロー"を突き立てて突撃していく。更にサゴーゾが両腕の装甲"ゴリバゴーン"をロケットパンチの様に発射し、確実にダメージを与えていった。

だが、ノイトラはただでは転ばず、迎撃しようと虚閃を放つ体勢に入った。ただ、消耗したためか王虚の閃光は使えないようだ。

 

「撃たせる前に、とどめと行かせてもらうぞ」

【Fainal Attack Ride! OOOOOO(オ・オ・オ・オーズ)!!】×7

 

だがその前にディケイドオーズは、七人で一斉に必殺技に入った。タトバとガタキリバは両脚を飛蝗のような形状に変形させ、凄まじい跳躍で空に舞う。それに続き、サゴーゾが自身にかかる重力を遮断して天高く跳躍、その後を翼を広げたタジャドルが飛翔して追う。

そしてラトラーター、シャウタ、ブラカワニが一斉にノイトラから距離を取って、助走をつけてから一気に接近していく。ラトラーターは俊足の足で駆け、シャウタは脚部を八本の蛸足に変化させたまま、電気ウナギウィップをラトラーターに巻き付けて引っ張られていく。そしてブラカワニはスライディングの体勢で、蛇のように体を蛇行させてながら加速していく。

 

「な!?(マズい、反応が追い付かねぇ!!)」

 

結果、空中から4人、地上から3人、合計7人のオーズがそれぞれ別々の方向から襲い来る事態が発生。ノイトラも対応できなかった。

 

『せいやぁああああああああああああああ!!』

 

そして7つのライダーキックがノイトラに命中した。タトバ、ガタキリバ、ラトラーターはオーソドックスな飛び蹴りだが、残り4人はかなり特殊だ。

サゴーゾは両脚を連結、自らに重力負荷をかけて加速したズオーストンプ。

シャウタは蛸足を1つに束ねてドリル回転させながら突撃するオクトバニッシュ。

タジャドルは足先から猛禽類の爪を展開して飛び掛かるプロミネンスドロップ。

そしてブラカワニはワニの頭部を模したオーラを纏ってスライディングから飛び掛かるワーニングライド。

そしてそれらを全て、ノイトラに見事命中させると、そのまま大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ、まだ立ってやがるか」

 

オーズへの変身を解いて元に戻るディケイドの視線の先には、外殻を粉砕されて鎌もボロボロだが、まだ立っているノイトラの姿があった。ディケイドも予想していたのか、未だに倒しきれていない。

 

「ぜぇ…ぜぇ…何とか耐えてやったぜ。このまま反撃に…」

「「この隙にぶん殴る!」」

「な…がはぁあ!?」

 

しかしすかさず、承太郎と徐倫が互いのスタンドで、同時にノイトラに殴りかかる。疲弊し、外殻も破損した今のノイトラには近接パワー型スタンド二体分のパワーに耐え切れなかったのだ。

 

「とどめは俺じゃなくて、きららの強化魔法をかけた承太郎と徐倫の二人だったのさ」

「はい…ただ…初めての2連発だったんで、少し…疲れました」

「きららちゃん、ゆっくりやすんでてね」

「まさか、こんな…!?」

 

ディケイドが種明かしをする横で、疲弊した様子のきららと彼女をねぎらう唯の姿を目撃したノイトラ。だがその隙を逃がさず、徐倫はストーン・フリーの糸でノイトラの全身が覆い隠されるまで拘束してしまった。

 

「この辺り?」

「そう、そこだ」

 

そして二人は狙いを定め…

 

「「ここが一番、拳を叩き込みやすい角度!!」」

 

同時にスタンドを発動して一気にとどめに入る。

 

『『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!』』

 

あまりに凄まじい、一体辺り数百発はくだらないパンチラッシュがノイトラに叩き込まれる。徐倫と二人がかりのため、軽く千発は超えているだろう。

 

「「「うわぁ……」」」

「まあ、そうなるわな。俺ですらドン引きだ…」

 

きらら、ランプ、唯の三人があまりにも過激で容赦のない空条親子の合体攻撃に、唖然としている。

そして…

 

『『オラァア!!』』

「がはっ!?」

 

フィニッシュブローが決まり、ノイトラは白目を剥いて吹き飛んで行った。そして、そのままノイトラはピクリとも動く様子がない。

 

「か、勝ったの?」

「ああ、なんとか。……しかし、恐ろしい敵だったな」

「そうね。もう強いとか以前に、天災並の殲滅力よこれ」

「これクラスが他にもゴロゴロいるって考えたほうがいいぞ、これは」

「は、はい……」

 

ひとまず、死闘を制した一同。しかしその時、何処からか拍手の音が響く。

 

「なるほど。流石は世界の破壊者に伝説の召喚士、そしてジョースターの血統というわけか」

「プッチ! 出てきたならちょうどいいわ」

 

なんと、本当にプッチが戻ってきたのだ。そしてディケイド達に称賛の声を上げると、徐倫が澪のディスクを返すように要求しようとする。

 

「みなまで言わずとも良い。秋山澪から抜き取ったディスクは返そう」

「やけに素直ね。まさか、偽物か別の誰かのディスクじゃないでしょうね?」

 

言いながら、プッチは一枚のディスクを徐倫に投げ渡す。あまりにもあっさりとしていたため、徐倫は疑惑の目を向けるのだが…

 

「本物だが、体に返すのは後にした方がいいだろう。他にも、君達と戦いたい者がいてな。まあ、ノイトラほど極端な強さではないから、安心したまえ」

「え? まだ、誰かいるの??」

 

プッチのこの発言に、唯が珍しくギョッとすることとなる。そして紫のモヤと共に、その戦いたい相手と思しき一人の男が現れた。

 

「貴様らが仮面ライダーにスタンド使い、クリエメイトか。我が名はフレーゼ、祖国クローバー王国への復讐のため、オーバーヘブンショッカーに協力している。見知り置き願おう」

 

そこには、立派な髭に貴族風の衣装という装いの初老の男性が立っていた。そしてその手には、クローバーの絵が表紙に書かれている本と、黒い宝石の付いた指輪があった。

更に、腹部には手形のような意匠(・・・・・・・・)のあるベルトをしている。

 

戦いは、まだ終わらない。




※カルテットナイツはゲーム未プレイなので漫画版順基で行きます。


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第38話「撃侵・ダークライダーズ」

ごちうさ3期、2話目で早速怪盗ラパン出てきましたね。面白かったです。
おちフルはこれからですが。

そしてタイトルでわかりますが、ボス仮面ライダー総集合です。しかも一部魔強化されているライダーもいます。


ノイトラをどうにかして倒したディケイド達。そんな彼らの前に、プッチ神父に連れられて新たな敵が姿を現す。

 

「クローバー王国? ランプ、この世界にそんな名前の国はあるのか?」

「すみません、聞いたことないです。でも、この世界全体がソラ様の統治下にあるので…」

「なら、また知らない世界の国ってことになるな」

「私の生まれた世界については、まあ戦ってみればわかるだろう」

 

最初、ディケイドはクローバー王国がエトワリアの国という線を考えてランプに尋ねてみる。すると違うという答えが返って来るが、直後にフレーゼが戦闘に入る。腰に差していた杖を抜き、こちらに向けてきた。

 

 

「月影魔法・クレセントカット!」

 

フレーゼが技名を叫ぶと、杖の先から三日月を模した刃が無数に放たれる。そしてそれが、ディケイド達を目掛けて襲い来る。

 

「やべ!」

【Attack Ride Blast!!】

 

ディケイドはベルトに攻撃用のカードをセットし、ガンモードのライドブッカーからエネルギー弾を乱射する。フレーゼの魔法は、それによって相殺される。

 

「ならば、数で対抗するまでだ。クレセントカット・二重(ダブル)!」

 

しかしフレーゼは更に弾数を増やし、弾幕を張ってきたのだ。

 

「なら、俺達の番だ。スタープラチナ!」

「そうね。ストーン・フリー!」

 

そこに承太郎と徐倫が躍り出て、スタンドのラッシュで相殺する。先ほどノイトラを下した、近接パワー型スタンドのコンビなら、弾幕の相殺などお手の物だった。

弾幕の相殺後、つい承太郎がフレーゼに問いかける。

 

「てめぇの技、魔法と言っていた辺り魔法が一般的な世界からきたみてぇだな」

「一般的どころか、私のいた世界は全ての生物が魔力を持ち、魔法が文明の根幹を支えている。貴様らの世界にある科学とやらが、纏めて魔法とすげ替えられたと思え」

「す、すごい世界から来たんですね……」

 

フレーゼの出身世界に関する情報が本人の口から語られ、きららも驚きを隠せずにいた。更にフレーゼが手に持っていた、表紙にクローバーが描かれた本を見せながら情報を明かしてくる。

 

「そしてその世界の住人は、15歳になるとこの魔導書(グリモワール)を授かり、より高度な魔法を行使できるようになる。だが私はそこに加え、オーバーヘブンショッカーから新たな魔法を得た」

 

告げながら、フレーゼはベルトと同じく手形のような意匠の奇妙な指輪を取り出してはめる。そしてそれをベルトの手形のマークにかざした。

 

【ドライバーオン! ナウ!】

「な!? そのベルト……」

 

その時、フレーゼの腹部にベルトが浮き上がる。問題の手形のマークがついた、機械染みたベルトだ。

ディケイドはというと、このベルトに見覚えがあるらしい。するとフレーゼはベルトを操作し、中央の手のマークの向きが変わる。

 

【シャバドゥビタッチヘーンシーン!シャバドゥビタッチヘーンシーン!】

「な、なんだこのやかましい音は……」

「一応、呪文の詠唱をベルトが代行しているってことらしいが…」

「な、なんというか愉快なベルトですね……」

 

ベルトから流れた音声、というかノリノリのスキャットに承太郎が珍しく驚いている。士もとりあえず理由を説明するが、本人もあまり納得はしていない様子。きららもかろうじてフォローしたが、だいぶ苦しそうだ。

しかし、フレーゼは特に気にした様子もなく、左手につけている黒い宝石の指輪を構える。それに金色の縁を下ろすと、何処か仮面ライダーの顔を思わせる形に見える。

 

「変身」

【チェンジ! ナウ!】

 

そしてその指輪をベルトにかざしながら、フレーゼは告げた。直後、彼の体を魔法陣が通り抜け、その姿は激変する。

 

「マジか……」

「あれ、仮面ライダー……ですよね?」

 

変じたフレーゼの姿は、黒と金を基調としたカラーリングのローブととんがり帽子を纏った、魔法使いのような様相だ。しかしその顔は黒い宝石に金の縁取りを付けたような仮面で覆われ、紛うことなき仮面ライダーの姿をしていた。

 

「仮面ライダーソーサラー、というらしいな。異世界の魔法、試運転といこうではないか」

【コネクト・ナウ!】

 

そしてフレーゼ改めソーサラーは、新たな指輪をベルトにかざす。すると虚空に出現した魔法陣から、ディースハルバードという長斧を取り出して迫ってきた。

 

「だったら、迎撃に入るだけだ」

『オラァア!!』

 

迫ってきたソーサラーに、スタープラチナの拳を叩き込もうとする。しかし、ソーサラーはディースハルバードでそれを防いでしまう。フレーゼはソーサラーに変身したことで、片手でハルバードを軽々と振るえるほどの身体能力を獲得していた。

 

「なら、この指輪か?」

 

スタープラチナのパンチを捌きながら、ソーサラーはベルトを操作して新しい指輪をかざす。

 

【エクスプロージョン! ナウ!】

「ぐわぁあ!?」

 

ベルトに別の指輪をかざした時、承太郎の懐で爆発が生じた。まさかの攻撃に対応できず、承太郎はもろに攻撃を喰らってしまう。

 

「父さん!?」

「マズいよ! 早く助けないと…」

「ちっときついが、さっさと終わらせるぞ!」

 

徐倫と唯、そしてディケイドがソーサラーを止めようとソーサラーに駆け出す。

 

「唯先輩、援護します!」

「律ちゃんはきららちゃんをお願い!」

「ああ、わかった」

「す、すみません…」

 

そして梓と紬が、消耗したきららの保護を律に任せて援護に入る。しかし、ソーサラーはディースハルバードを地面に突き立て、魔導書を開きながらまた別の指輪をかざす。

 

「月影魔法・妖月光(ようげつこう)!」

「な、なにこれ…」

「あ、魔法が!?」

「きらら、どうした!?」

「律さん、力が…抜けて…」

 

ソーサラーが魔導書で魔法を発動すると、それを受けた梓と紬の放った魔法がかき消された。きららの力が抜けるという発言から、魔力を弱める魔法のようだ。

 

【トルネード! ナウ!】

「うわぁあああああ!?」

「ちょ、マジか!?」

「こんな…きゃあ!?」

 

更に指輪の魔法で竜巻を起こし、接近していたディケイド達を吹き飛ばす。攻撃のバリエーションが多いのだ。

 

「魔導書の魔法に加え、今の私は指輪の魔法が使える。ここに貴様らの探している聖なる遺体とやらが合わされば、私の忠誠を裏切ったクローバー王国への復讐、今度こそ果たすことが可能だ!」

「ひぃ!?(これが、憎悪っていう物ですか? とんでもなく、怖いです…)

 

確かにノイトラのような天災級の殲滅力は無いが、今のソーサラーは別の世界の魔法との合わせ技でかつての変身者以上の力を発揮している。そしてその原動力は、計り知れない復讐心となっており、一人傍観するしかなかったランプはその復讐心から来る威圧感に、身動き一つとれていない。

 

「そのための礎として、死んでもらうぞ。世界の破壊者よ」

 

そしてソーサラーは、地面に突き立てていたディースハルバードを再び手に取り、ディケイドに迫りくる。

 

「お前の事情は知らんが、俺もショッカーに負けるわけにいかねぇんでな!」

【Attack Ride Illusion!!】

 

しかし負けじとディケイドがカードをディケイドライバーに装填する。すると、ディケイドが6人に分身してソーサラーを取り囲んでしまった。

 

「な!?」

『そんでもって、こいつだ!』

 

そして6人のディケイドがガンモードのライドブッカーを構え、一斉掃射で畳み掛ける。

 

「ならば、クレセントカット・満月(フルムーン)!!」

 

しかしソーサラーも負けじと、魔導書の魔法で四方八方から三日月の刃を乱射して相殺しようとする。

結果、全ての攻撃を落としきってしまった。

 

「ふ。この程度…」

『オラァア!!』

「な…がはっ!?」

 

しかしその一瞬の隙を突き、スタープラチナのパンチがソーサラーの顔面に叩き込まれる。そして、その体を大きく吹き飛ばした。

 

「ナイスアタック」

「してやったぜ。だが、宝石っぽい見た目通り、硬い仮面みてぇだな」

 

しかし外見通りの頑強さをしていたらしく、ソーサラーを殴ったスタープラチナの拳に若干ひびが入り、承太郎の右手も流血している。

先ほどのノイトラに畳みかけたこともあり、腕のダメージは思いのほか大きいようだ。

 

「これは、どうにか隙を突いて撤退しねぇと…」

 

そしてディケイドがそう思った瞬間、それは起こった。

なんと、空からデンライナーが落ちて来る光景が見えたのだ。

 

「な!?」

 

ディケイド達が驚いていると、デンライナーは数メートル先の地面に落下してそのまま動きを止める。しかも、それの後を追うように三両の列車が走って来るのが見えた。

 

「おいおい。モモタロス達も、厄介なことになっちまってるらしいな」

~約10分前~

「ジンジャーさんでしたか? なんで、僕達を助けてくれたんですか?」

 

デンライナーで里へと帰還する途中、食堂車で良太郎がジンジャーに質問していた。それに対して、ナオミの入れた極彩色クリームの乗ったコーヒーをすすりながら答えるジンジャー。

 

「クリエメイトを傷つけるのはクリエを失うことに繋がるから言語道断なんだが、それを抜きにしても私自身アルシーヴに思うところがあってな…にしても、このコーヒー格別に美味いな」

 

その際、まさかのコーヒーを気に入った発言がジンジャーからなされることに驚く一同。

 

「え? このコーヒー格別に不味いじゃねぇか。おめぇ、舌おかしいんじゃねぇの?」

「おい、麦わら!! 舌がおかしいのはてめぇだろ、ナオミのコーヒーが不味いだと!? おめぇこそ、あの死ぬほど不味いアップルパイを美味いって言いやがってよ!」

「んだと!? さっきのアップルパイは死ぬほどうめぇだろ!」

「モモタロスもルフィさんも、喧嘩しないの。ジンジャーさん、騒がしくしてすみません」

「ああ、いいっていいって。邪魔してるのは、私なんだし」

 

そこにルフィが物申してくるが、そこにモモタロスが文句を言ったことで大喧嘩が始まる。しかしこの直後、事態は急変した。

 

「うわぁあ!?」

「な、何!?」

「列車が揺れてる!?」

 

いきなりデンライナーに衝撃が走り、一同の休息と談笑が中断されることとなった。

 

「みなさん、少々厄介なことになりました。どうやら、敵の列車がこちらに迫ってきたようです」

「え? オーナー、敵の列車って…」

「まさか、あの死郎って人の乗っていた…」

 

オーナーからの発言から、ライナー電王とゆのが幽霊列車を連想するが、事態はより最悪な方向へと進んでいたようだ。

 

「モニターに映しますが、より最悪な状況ですね」

 

そして食堂車内にモニターが展開されるが、そこには幽霊列車だけでなく更に二両の時の列車が走っている光景が映っていた。

 

「何だこれ? ワニみたいな列車と…」

「色違いのデンライナー?」

 

ウソップと沙英の言う通り、ワニの頭部を模した列車と紫色のデンライナーが幽霊列車の両脇にそれぞれ走っている。そこに、オーナー自ら説明がなされる。

 

「ワニの列車はガオウライナー。かつて、あらゆる時代を行き来できる神の路線を走るために作られましたが、時間をも破壊できる強大なパワーから封印された列車です。もう一台はネガデンライナー、以前パスを強奪したイマジンが量産したもう一台のデンライナーです」

「どっちも、俺達がぶっ壊したはずなんだが…」

「まさか、この二台がいるってことは…」

 

その光景を見た良太郎は、モモタロスと共にマスクの下の表情を曇らせることとなった。

そしてガオウライナーとネガデンライナーのタックルにより、デンライナーは脱線してしまった。

 

「「きゃああ!?」」

「やべぇ!?」

「マズい! 脚力強化!!」

「ゴムゴムの風船!!」

 

一同はそのままデンライナーから放り出されるも、チョッパーが変形してなずなと乃莉を回収し、ルフィは空気を吸って体を膨らまし、自らをクッションにして他のメンバー達を受け止める。

 

「うぇえ!?」

 

一人、良太郎だけ地面に激突する。持ち前の運の悪さが、ここで発揮されてしまった。

 

「良太郎、大丈夫か?」

「相変わらず、運だけは悪いなぁ」

「うん、本当に…」

「電王屋、本当に運だけは悪いんだな」

 

ひとまず、ローに呆れられながらもモモタロスとキンタロスに助けられて、事なきを得た良太郎。そのままバックでデンライナーが地面に激突すると、三両の時の列車がこちらの前に停車する。

 

「だ、誰か降りてきた…」

「一人は、色違いのモモさん?」

 

降りてきたのは、鳥の丸焼きを丸齧りする野武士風の男、宮子の指摘通りモモタロスをそのまま黒くしたような色違いのイマジン、そして死郎の三人であった。

 

「久しぶりだな、特異点にイマジンども」

「かつての雪辱、晴らしに来たぞ」

 

野武士風の男と黒いモモタロスが、こちらに強い殺気を向けながら近寄ってくる。それに対して、良太郎達から説明がなされた。

 

「牙王にネガタロス。それぞれ時の列車専門の強盗と悪の組織を作る野望を持ったイマジンで、どっちも僕達が倒したはずの敵です」

「幽霊野郎と同じで、敵に復活させられたんだろうな」

 

良太郎とモモタロスから話を聞いていると、いきなり殺気立ってこちらに迫りくる三人。そんな中、モモタロスはディケイドが近くにいることに気づく。

 

「お! ディケイド、いい所じゃねえか。普段なら俺の獲物ってなるけどよ、手ェ貸してくれねぇか?」

「無理だ、今それどころじゃ…」

【エクステンド! ナウ!】

「グォオ!?」

 

モモタロスがディケイドに増援を頼むも、その直後にディケイドがソーサラーの発動した魔法でディケイドは吹き飛ばされる。

 

「たったの一発で今の私を倒せると、思わぬことだな」

 

ソーサラーの右手に握られたディースハルバードが、鞭の様にしなる伸縮自在の武器に変化しているのが見えた。これがディケイドに一撃を入れた攻撃のようだ。

 

「スタンド使い、次は貴様だ!」

「くそ、最悪だな」

 

続けて、ソーサラーは承太郎に狙いを定めて突撃していく。承太郎もスタープラチナを再度発動して迎え撃ちに動く。

 

「おいおい、マジかよ…」

「オーナーから借りてたパス、まだ持っててよかったね先輩」

「そうやな。全員、気合入れていくで」

「一度はみんなでやっつけたんだ、どうせ負けないよ!」

「王子たる我に、歯向かうことなど頭が高い!」

 

その様子にディケイドからの増援が期待できないことを察するイマジンズだが、まだパスが手元にあることもあって、戦意は強かった。

 

「花京院さん! 私達のことはいいから、承太郎さんを助けてください!」

「え? ゆのさん…」

「お友達なんですよね? じゃあ、いなくなって欲しく無いですよね!?」

「……ありがとうございます。ゆのさん、ご武運を」

 

そしてゆのの優しさに負けた花京院は、一人で承太郎やディケイドへの加勢に向かう。一人減ってしまったが、問題は無かった。

 

「にしし。おれ達がいること、忘れんじゃねぇぜ」

「こんな状況で、弱気は言ってられねぇな」

「おれもお前らと同じバケモノだ。負けねぇぞ」

「タヌキ屋、切り札の丸薬は使っちまったんだ。無理はするな」

「あの、ローさん。チョッパー君はトナカイなんですけど…」

「え、そうだったのか?」

「そういえば、ジンジャーさんには話してませんでしたね…」

 

何故ならルフィ達海賊組に、ゆの達クリエメイト組、加えて七賢者のジンジャーもいる。数の差は圧倒的、敵の方が不利なのは見て取れるが……

 

「やっぱり、食われねぇとわからない身の程知らずのバカだな」

「俺の理想の悪の組織を設立する障害ども、ここで今度こそ消してやる」

「貴様らを皆殺しにして、ソラの涙の元を断つ」

 

三人の敵は一切の動揺もなく、それぞれベルトを装着してスイッチを起動する。

牙王のベルトからは荘厳なパイプオルガンの演奏が、ネガタロスのベルトからは電王ソードフォームの音楽を曇らせたような不快な音楽が、そして死郎のベルトからは歌劇で魔王や死神など負の存在が出現したシーンで流すような絶望をイメージする音楽が流れた。

 

「「「変身」」」

【Gaoh form】

【Nega form】

【Hijack form】

「う、ウソ…」

「あれって、お前らと同じ…」

「はい。仮面ライダーです」

 

そして敵対者三人は、仮面ライダーの姿へと変じた。ゆの達はおろか、ジンジャーまでも戦慄することとなる。

仮面ライダーガオウ。牙王が変身する、牙の意匠がある銅色のアーマーを纏った仮面ライダー。

仮面ライダーネガ電王。ネガタロスが変身する、電王ソードフォームを紫にしたようなアーマーの仮面ライダー。

仮面ライダー幽汽。死郎が変身する、黒と赤のアーマーに腰布が、海賊を連想する仮面ライダー。

 

「ジンジャーさん、あの死郎って人は女神さまと同じ名前の恋人がいるんで、安易にソラって口にしないでください」

「わ、わかった。気を付ける…」

 

ライナー電王は以前シュガーがした失言を思い出し、ジンジャーに呼びかける。敵の得体の知れなさもあって、すぐに了承してくれた。

 

「それじゃあ、俺達も行くぞ!」

『変身!!』

 

そして残るモモタロス達イマジンが、一斉に電王に変身してそのまま分担してそれぞれの敵ライダーに駆け出す。

 

「キンちゃん、僕達はガオウをやるよ」

「亀の字、了解や!」

「おれ達も行くぞ!」

「だね。ヒロ、手伝って」

「わかったわ、沙英!」

「おし、私も手を貸すぞ!」

「身の程知らずども、食ってやるよ」

 

ジンジャーも交えてガオウに突撃していく一同だが、ガオウは特に動じずにガオウガッシャーという武器を剣に組む。アックス電王とジンジャーのパワーファイターが、真っ先に懐に飛び込むことに成功した。更に、ロッド電王がデンガッシャーをロッドモードに組みながら後に続く。

 

「「いっけぇええええええええ!」」

 

沙英とヒロが魔法で援護をかけ…

 

「だりゃあああああ!!」

「どすこぉおおおい!!」

「たぁああああああ!!」

 

鉄拳と掌底、刺突で一斉に攻撃する。確実にダメージを与えられる布陣を敷くことができた。

魔法は揃って剣で捌かれてしまうが、前衛三人の一撃がすべて命中。

 

「効かねぇな」

「「「なっ!?」」」

 

なんと、ガオウは全く攻撃が効いている様子がない。その状態に、三人そろって驚愕の声を上げることとなった。

 

「はぁあ!」

「ぐぇえ!?」

 

そしてジンジャーの鳩尾に鋭い蹴りを叩き込み、数メートル先まで吹っ飛ばす。重く鋭い一撃を受け、派手に吐血しながら吹き飛ぶジンジャー。

 

「オラよ!」」

「「ぐわぁああ!?」」

 

そしてガオウガッシャーでロッド&アックスの電王二人を叩き切る。しかも剣圧で二人纏めて吹っ飛んでしまった。

 

「な、なんだあの異様な重さの蹴りは?」

「それもやけど、手応えの割に攻撃が効いてる素振りあらへんで…」

「だね。あれは痩せ我慢しているわけじゃ、なさそう…」

 

一撃で異様なダメージ、素の防御力の高さも異常。三人揃って警戒心が強まることとなる。

 

「隙だらけだ! 衝撃狼草(インパクトウルフ)!!」

 

そこにウソップが追撃を仕掛けようと、パチンコで緑星の球根を発射する。するとそれが成長して狼の姿を象り、球根は鼻先となっていた。この球根が衝撃波を生み出し、敵を攻撃する仕組みなのだが…

 

「こけおどしが」

「な!?」

 

その衝撃波が来る前に、衝撃狼草は切り裂かれてしまった。するとガオウは、地面を大きく踏み鳴らすと大きな地響きが生じた。

 

「うぉお!?」

「きゃあ!?」

「な、何やこれ!!」

 

その振動で一同は動きを封じられ、そのままガオウが駆け出すと全員にすれ違い際に剣で斬りつけた。

 

「い、痛い…」

「強すぎるわ、なんなんや…」

「さっきの奴等の比じゃない…」

「マジで何なんだ、こいつ…」

 

ガオウがあまりにも強すぎ、心を折られそうになるヒロ達。一度交戦したロッド電王達や、それなりに実力者であるジンジャーやウソップまでたじろぐ程の始末だ。

 

そして、苦戦を強いられているのは彼らだけではなかった。

 

「オラ! さっさと負けを認めろ!!」

「うわ!? もう、なんなのさ!!」

「リュウタロスさん、怪我は私が治します…!」

「そんで、なずな達は私が守る!」

 

ネガ電王はネガデンガッシャーソードを振るのだが、なんとそこからカマイタチが生じてガン電王にダメージを与えてきたのだ。負けじとガン電王は銃撃で応戦し、なずながダメージを治療している。乃莉も盾を構えて、ネガ電王のカマイタチを何とか防いでいた。

 

「図が高いぞ、貴様!!」

桜吹雪(ロゼオミチエーリ)!!」

 

そしてウイング電王と柔力強化のチョッパーが一気に懐へと飛び込み、ネガ電王に畳みかけるが…

 

「はぁあああああああ!!」

「ぬぉお!?」

「「わぁあああああああ!!」」

「「きゃああああああああああ!?」」

 

ネガ電王が一閃すると、斬撃を伴った竜巻が生じて、ウイング電王とチョッパーを吹き飛ばした。更にそれは、ガン電王となずな、乃莉をも巻き込んでしまう。

 

「ずるいよ! なんでそんな攻撃できるの、前はそんなの無かったのに!?」

 

そこでガン電王が、いきなり駄々をこねるようにネガ電王に文句を言う。しかし、ここでネガ電王からとんでもない事実が語られた。

 

「俺と牙王が悪魔の実を食べたと言ったら、信じるか?」

『え?』

「あ、悪魔の実を食べた……?」

「なんと…」

 

聞いていた全員が驚嘆した。食べただけで超常の力を得る悪魔の実を、イマジンという人外の戦闘力を持った存在が食し、仮面ライダーにまで変身したのだ。脅威でしかない。

 

「俺はカマイタチを自在に起こせるカマカマの実、牙王は体を鋼鉄化するカチカチの実を食った。俺達からしたら、泳ぐ機会なんて無いからデメリットは皆無なんでな」

 

そして説明を終えたところで、ネガ電王が再び動き出す。

 

そして、幽汽と対峙するソード&ライナー電王、ルフィ&ロー、ゆの&宮子の6人。今回のダークライダー3人でも飛びぬけて強い幽汽は、どうなっているのか。

 

「死者と生者の逆転、今度こそ叶えさせてもらうぞ。海賊ども、その為の切り札をお前らの世界から首領が取り寄せたんでな」

 

言いながら、死郎は一本の剣を手に取った。翡翠を連想する、美しい緑の刀身を輝かせている。しかし、どこか禍々しいイメージを与える。

 

「七星剣とかいう銘の妖刀らしいが、相当強力な武器だ。一気に決めさせてもらうぞ」

「!? 七星剣だと…」

 

それを聞いた瞬間、ローの顔色が青ざめる。どうやら、聞き覚えがあるらしい。

 

「麦わら屋に電王屋、ひだまり屋ども! その剣は危険だ!!」

「「「「え?」」」」

「トラ男さん、どったの?」

 

突然のローの取り乱しように、対峙していた一同は茫然とする。その直後、七星剣に緑の炎が纏わって幽汽が駆け出してきた。

 

「はぁあ!」

 

そして幽汽が一閃すると、その緑の炎が広がってこちらを襲う。

 

「くそ! ROOM・タクト!!」

 

咄嗟にローがオペオペの能力で結界を張り、一同を操作能力で宙に浮かせる。

 

「おわぁあ!?」

「おお! トラ男さん、こんなことも出来たんだ!」

「た、助かりました…ありがとう、ローさん」

「ローさん、さっきの剣は一体?」

 

宙を舞うことでどうにか攻撃を回避するが、その際にライナー電王は七星剣についてローに尋ねる。

 

「ああ。あの剣は…」

「おっしゃ、行くぞ! 麦わら!!」

「おお、行くぞ!!」

「あ、待て!」

 

しかし話を聞く間もなく、ソード電王とルフィは幽汽に飛び掛かって攻撃に入る。そしてデンガッシャーソードの斬撃とゴムゴムの銃を放つのだが…

 

「ふん」

「な!?」

「いっ!?」

 

幽汽は二人の攻撃を七星剣で防ぐ。その時、刀身に纏わった緑の炎が拳と剣に移ってきた。そこに二人は背筋が凍るような感覚が襲い、二人は咄嗟に距離を置く。

 

「な、なんだその剣!? めちゃくちゃ気持ちわりぃぞ!!」

「そうだぞ! お前、そんなもん振りまわして平気なのか!?」

「確かに怨念のような物が俺の頭の中を囁くが、生ける死者である俺にとっては心地良い物だ」

 

そして再度、七聖剣を振るって火炎弾を放つ幽汽。攻撃そのものは単調で回避も容易いが、その都度得体のしれない気配が通る感覚が二人を襲い来る。

 

「シャンブルズ!」

 

するといきなり、ローが幽汽の背後に転移して刀を振りかぶってきた。いつの間にか、相手の背後に自信と居場所を入れ替える石か何かを放り投げたようだ。そしてローはその首を取ろうと、刀を振り下ろす。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「簡易トリオン銃…玄界から武器を卸されてるとは思わなかったね」

「ただの要保護者だと思ったのが、運の尽きでしたね」

 

その頃、ガロプラと交戦していた玉狛とイーグルジャンプの合同部隊。桐絵が周囲のトリオン兵を蹴散らし、ダメージを与える手段のないひふみ達が牽制しつつ、京介やレイジがトリガー使い達を攻撃してどうにか手傷を与えていた。

うみこは攻撃手段を持っていたおかげで、ねねに陽動させつつ副隊長のコスケロと上手く立ち回れた。彼のトリガー"黒壁(ニコキラ)"はトリオンで出来た物体をジェルでコーティングするという、妨害特化のトリガーだ。鉛弾(レッドバレット)やアフトの黒トリガー"卵の冠(アレクトール)"のように、トリオン以外の物質には効果がない。これが良かったのだろう。

 

「よし、一気に決めるか。全武装(フルアームズ)起動(オン)

 

そして隙を見てレイジが一気に勝負に出た。

彼の肩にランチャーとキャノン、腕に機関砲と突撃銃、更に近接トリガーのレイガストを装備した二本のロボットアームが装備された。全武装の名に相応しい、超攻撃特化の姿と化していたのだ。

 

「え、なにこれ!? 特撮ヒーローみたい、かっこいい!」

「はじめ、今それどころちゃうやろ!」

 

レイジの変化にはじめは大興奮、ゆんが諌める。そして、レイジはそんな二人を気にせず、一斉掃射でガロプラのトリガー使い達をまとめて攻撃していく。

 

「な!?」

「レギィ! ラタリコフ!」

「クソぉお!?」

 

そしてすさまじい勢いの銃撃によって若手トリガー使いが二人倒され、残るはウェンとコスケロの二人となった。緊急脱出(ベイルアウト)のおかげでそのまま拠点に帰還できたが、トリオン体の破壊による消耗もあって、今回はもう戦闘不能だろう。

 

「もう、攻撃要因はいなくなった。大人しく撤退する方がいいんじゃないか?」

「…聖なる遺体があれば、ガロプラの属国から脱却できるかもしれない。そのチャンスを、逃すわけにはな」

 

レイジから撤退を勧められるも、ウェンはその意思を見せる様子がない。今回の戦闘に国家の独立が叶うチャンスがあるなら、それに欠けるのは当然だろう。

 

「残念だが、君たちガロプラを含んだ、いくつかの国との契約は解除との通達が財団本部からあったよ」

「なっ!?」

 

突如、聞き覚えのない成人男性の声が聞こえたと思いきや、ウェンの体を背後から何者かが貫いた。

 

「な、なんだ…」

「なんか、ホラーな見た目の人が来たんだけど…」

「なんや、この人……」

 

乱入者は黒いコートにシルクハットを見に付けた、全身包帯の不気味な男だった。首には何故か、黒い炎を灯したおしゃぶりを下げている。この黒い炎がウェンを貫いた腕にも覆われているため、バグスター由来の力や霊力と同じ、"トリオンを破壊できる例外の力"なのだろう。

 

「貴様……!?」

「文句が言いたいなら、同じく財団と取引中のエルガテスに言ってくれたまえ。それでは、御機嫌よう」

 

一言だけ告げると、そのままウェンもトリオン体破壊による緊急脱出の起動で、去ってしまった。そして黒衣の男は、一人残っているコスケロに向き合った。

 

「そういうわけだから、副隊長殿とオペレーター君も撤退を勧める。隊長のガトリンも敗北したようなのでね」

「そうか……仕方ない、帰らせてもらうよ。そういうわけで、お姉さん達にはもう会わないだろうね」

『餞別代わりですが、エルガテスはトリオン兵開発で有名な国家ですから、』

 

最後に黒衣の男に告げられ、コスケロも撤退していった。

 

「私はジャック。まあ、本名を捨てて久しいので仮の名として名乗っている。かつては、私の世界においてマフィアの秩序の番人"復讐者(ヴィンディチェ)"に属していたが、現在は離反して財団Xに協力している」

「「マフィア?」」

「マフィアというと、あの犯罪組織のか?」

 

予想外のマフィアという単語に、相対していたレイジ、はじめ、ゆんの三人は困惑の色を隠せずにいた。明らかに異形の姿で異能の力を使っているのだ、当然だろう。すると、そのジャックと名乗る男は自身の能力について明かし始めた。

 

「我々の世界では、マフィアは己の生体エネルギーを特殊な指輪を介して圧縮し、炎の形で可視化した"死ぬ気の炎"という力を用いて戦っている。私も通常と異なる"夜の炎"という炎を使っている」

「また、えらく物騒なものを使うマフィアもいたものだな」

 

死ぬ気の炎なる未知の存在に、警戒心を強めるレイジ。それは他の玉狛メンバーも、イーグルジャンプ組も同様だ。

 

「が、本来この夜の炎は私のかつての上司しか使えなくてね、それを貸し与えらる形でしか使えなかった。彼と快を分かった後で偶発的に発現できたが、これでも非常に微弱なのだよ」

「お! それじゃあ、逆に言えば今が倒すチャンスじゃない」

「だからと言って、油断しないでくださいよ小南さん。相手は、私たち全員にとっても未知の力を使うのですから」

「そうやで、桐絵ちゃん。あいつの攻撃も、桐絵ちゃん達に効くみたいやし」

「お二人の言う通りですからね、小南先輩」

「わかってるわよ、それくらい」

 

桐絵はジャックの発言からこちらの優位を察するが、そこに油断が生じていることを察せられる。だが、ここでジャックから信じられないことを伝えられる。

 

「だから、オーバーヘブンショッカーが貸してくれたこの力で戦わせてもらうよ」

 

言いながらジャックが左腕を構えると、そこに何かが飛んでくる。そこに、一同は見覚えがあった。

 

「あれって…確か今朝の紳士達が使ってた?」

「ええ。ゼクターという、とある世界のさる組織が開発したツールだ」

 

ジャックの腕にはめたブレスレットに装着されたそれを見たねねは、確かに紳士ウィルバーたちが使ったゼクターというツールであった。色は金色で、こちらもカブトムシを模している。

 

「変身」

【Henshin!】

 

そしてジャックは全身を、コーカサスオオカブトの角を模した仮面と、黄金のアーマーを纏った仮面ライダーに変身した。右肩の角上のパーツも、コーカサスオオカブトのそれを模していた。

 

「仮面ライダーコーカサス、降臨。早速行かせてもらおう」

 

そしてコーカサスに変身したジャックは、右腕に死ぬ気の炎を纏わせてこちらに迫ってきた。

 

「俺が防ぎます!」

 

直後、レイジが真っ先に正面に躍り出て、全武装のアームでレイガスト二本を構えて防御に入る。シールドモードのレイガストの硬さのおかげで、どうにか防ぐことができた。

 

「はぁあああああああ!!」

 

直後、桐絵はレイジを飛び越えながら自身の持つブレード"双月"を連結する。するとハチェットから大斧へと変化し、それで背後から斬りかかろうとする。

 

「クロックアップ」

【Clock up!】

 

しかしコーカサスが腰に手を当てると、いきなりその姿が消えた。

 

「え?」

「な…がっ!?」

 

それによって、桐絵の斧による一撃がレイジに当たってしまった。レイガストで防ぐことができたが、その直後にコーカサスが桐絵の背後に姿を現す。

 

「ぬん!」

「きゃあ!?」

 

そして桐絵に蹴りを叩き込み、そのまま吹き飛ばす。死ぬ気の炎は纏っていないのでダメージは無いが、大きく隙を作ってしまう。

 

「スピードアップした!?」

「なるほど、なら俺の出番ですね」

 

ねねが驚愕したその時、京介が警戒心を出して自身の戦用トリガーを起動した。

 

「ガイスト起動(オン)

「おお! これが噂の…」

 

京介がそのトリガーを起動した瞬間、はじめが歓喜した。京介の四肢が黒い装甲に覆われ、体を構成するトリオンが乱れ始める。そして刀を模したブレードトリガー"弧月"を構えながら、右手に表示されたパラメーターを操作する。

 

機動戦特化(スピードシフト)白兵戦特化(ブレードシフト)

 

斬と速のパラメーターの値を上げると、そのパラメーターに沿った超スピードで、これまたコーカサスの背後を取ることに成功した。

 

「ふっ!」

 

コーカサスは身をひるがえして斬撃を躱すが、完全には躱し切れずに装甲に裂傷を付けてしまう。しかし、変身者であるジャックの体にまでダメージは通っていない。

 

「その様子を見るに、急激なパワーアップの代償としてトリオン体の持続時間が短くなるようだな」

「!? …だったら、どうします?」

「その前に倒させて、君の心を折る」

 

コーカサスはガイストの弱点を指摘するが、それを突かずに京介に勝つと宣言する。そしてまた、例の能力を起動した。

 

「クロックアップ」

【Clock up!】

機動戦特化(スピードシフト)

 

それに合わせて京介もスピードを上げ、回避に専念しようとする。しかし、予想外の事態が発生した。

 

「ぐわぁあ!?」

『え!?』

「が、ガイストより速い?」

 

京介の体が吹っ飛び、しかも炎を纏わせた拳での攻撃のため、トリオン体の腕が破壊されてしまう。一切反応できずにいた様子から、女性陣が声を合わせて驚き、レイジも信じられない物を見た様子だ。

 

「このクロックアップは、ただ速くなる力ではない。タキオン粒子という物を使用しているのだが、聞いたことがある者もいるのではないか?」

「タキオン粒子って、たまにSF物でも聞く? まあ、それくらいしか知らないけど…」

 

この中で唯一、はじめが聞き覚えがあったようで反応した。オタク趣味が高じて、そういった知識もある程度は把握していたようだ。

タキオン粒子とは仮想上での存在とされる粒子で、「特殊相対性理論に矛盾しない、光速度より速く動く」という特性がある。言葉上で説明するとよくわからないが…

 

「このタキオン粒子を全身に纏うことで、私のスピードは光速、つまり光の速さに達しているというわけだ。しかも、このゼクターで変身するライダーは皆がこの能力を使える」

「な…」

「ちょ、いくら何でも反則やろ!」

 

あまりにも分が悪すぎる、コーカサスの能力。しかも同じ規格のライダー全員が使える力ということもあり、全員が顔を青ざめることとなる。ゆんがそれについて文句を言うも、特に気にした様子がないコーカサス。しかも、コーカサスは必殺技の準備に入ろうと、腕にセットされたゼクターを180度回転させる。

 

「ライダーキック」

【Rider kick!】

 

そして、炎を右脚に纏わせると同時に角にタキオン粒子から生成されたエネルギーが、その右脚に収束された。そしてその足による鋭い蹴りを、京介に叩き込んだ。

 

「な!?」

「「とりまる(さん)!?」」

【トリオン体活動限界・緊急脱出】

 

京介のトリオン体は蹴りの衝撃だけで胴体が千切れ、そのまま強制離脱してしまった。規格外の強敵が出現したことで、一同は一気に危機へと陥ってしまう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「アンナの嬢ちゃん、助かったぜ。移動の足が無くてよぉ」

「無駄話はそこまでよ。今、あちこちで敵の仮面ライダーが攻め込んで来てるみたいだから」

「え!? じゃあ、急がないと!!」

 

前鬼と後鬼に運ばれながら、アンナから状況を聞かされる一同。千矢は話を聞いて、仲良くなった他のクリエメイト達に迫る危機を察した。しかし、そこで予想外の事態が発生する。

 

「逃がさねぇぜ」

「よう、ポルナレフ。久しぶりだな」

「な!?」

 

なんと、巨大な消炭鴉(ケシズミカラス)に乗りながら歌舞鬼と、いつの間にか合流したらしいホル・ホースが追いかけてきたのだ。

 

-メギャンッ-

「エンペラー!」

 

ホル・ホースの手に独特な音を立てて銃のスタンドが出現し、銃弾を連射してくる。自在に弾道を変えられるスタンドのため、式神の背に乗りながらではまともな回避が取れず…

 

「きゃあ!?」

「紺!」

「やべ!? アンナ、ちょっと降りる!!」

「他の子たちを連れてってくれ!」

「響鬼のおっさんに同意だ! イギーはわりぃけど、そっちに残ってくれ!!」

「仕方ないわね…飛ばすわよ!!」

「がう!!」

「え、ちょ!?」

 

紺がバランスを崩して前鬼の背から落ちてしまう。千矢が救出のために飛び降り、後を追う男衆。アンナとイギーに小梅達の退避を任せ、そのまま歌舞鬼とホル・ホースと戦うことになってしまった。

 

「悪い、キツネのお嬢ちゃんに銀髪の嬢ちゃん。俺は本来、女を傷つけるのは不本意なんだぜ。全ての女性を尊敬してるんだが…本当すまねぇ」

「そうなんだ…でも、私は悪い人に手を貸しているおじさんのこと、嫌いだな」

「私もあなたみたいな軽そうな大人、願い下げです」

「そうか? しかも、おじさん呼びは流石に傷つくねぇ……」

 

ホル・ホースの謝罪とそれに対するフェミニスト宣言だったが、千矢達から嫌悪感を抱かれて若干へこんでる。すると、そこに歌舞鬼が割って入ってくる。

 

「まあ、それとは別にポルナレフと仮面ライダー達は纏めて消させてもらうが」

「おお。聖なる遺体を渡すなら、話は別だぜ」

「生憎だが、例の首領とやらみたく得体のしれない奴に遺体を渡すわけにはいかねぇんだよ」

 

そしてそんな二人に対して、真っ先に交戦の意を告げたのはポルナレフだ。シルバーチャリオッツを発動し、剣の切っ先を二人に向けた。

 

「おし。よく言った、青年!」

「それじゃ、オイラも手を貸させてもらうぜ!」

「私だって、戦うよ!」

「そうね。こんな人たち、放っておけないし」

 

そこに加勢の意を伝える響鬼達。だが、心なしか歌舞鬼たちは余裕のありそうな表情だ。しかし、その理由はすぐに判明することとなる。

 

「いいのか? 今、俺の手にはてめぇの切り札があるんだぜ」

 

言いながら、歌舞鬼が見せてきたのは一振りの短刀だった。鍔の部分に拡声器のようなパーツがあるそれを見た時、響鬼は自分の体をまさぐって探し物をする。

 

「あれ? 無い、無い!!」

「だから、これはお前のだって言ってるだろ」

「! まさか、あの時…」

 

どうやら、響鬼の武器だったそれはいつの間にか歌舞鬼に奪われていた。そこで響鬼が思い出したのは、戦闘中に消炭鴉の攻撃が腰に掠ったことがあった。その時の可能性が高い。

 

「おっちゃん、あの剣なんだ? 見た感じ、取られたら不味い物みたいだけど」

装甲声刃(アームドセイバー)っていう俺の切り札でな。使用者の声を音撃に変える機能があって、直接切り付けても強力な剣なんだよ」

「けど、人から聞いたがこいつにはこういう機能があるんだってな」

 

葉に装甲声刃の機能について説明すると、歌舞鬼がとんでもないことをした。装甲声刃を構え、拡声器に対してあるワードを投げかける。

 

「歌舞鬼、装甲」

「な、なんだ!?」

「えええええ!?」

 

その直後、何処からか無数のディスクアニマルが歌舞鬼を目掛けて飛び掛かってきた。その様に葉も千矢も臣も驚愕した。そしてそのディスクアニマルが、何と歌舞鬼の全身を覆う装甲へと変じた。

 

装甲歌舞鬼(アームドカブキ)、ただいま参上ってな」

 

響鬼が装甲声刃を介することで使える強化形態、それを何故か歌舞鬼が使用してしまったのだ。

 

「それ、確か俺にだけ使えるよう調整された変身の筈なんだが…」

「さっき話してた首領、そいつに体を調整してもらったものでな。じゃあ、早速行かせてもらうぜ」

 

そしてそのまま、歌舞鬼が剣を振りかざして駆け寄ってくる。そこに、ホル・ホースも援護射撃を仕掛けてきた。

 

「俺がホル・ホースを相手取る! 響鬼のおっさんと葉はあの歌舞伎野郎を頼むぜ!!」

「「了解」」

「じゃあ、私が守る!」

 

そして千矢が防御を買って出て、そのまま男三人で攻勢に出る。数の差もあり、こちらが優位と思われるが…

 

「バカが、今の俺のパワーに敵うはずねぇだろ!」

「きゃあ!?」

 

しかし、装甲歌舞鬼にパワーアップした歌舞鬼の蹴りが、千矢の構えた盾に命中。だがあまりの威力に、そのまま千矢は吹っ飛んでしまった。

 

「嬢ちゃん!」

「隙だらけぜ、ポルポルくんよぉ!」

 

そこに気を取られたポルナレフを、すかさずホル・ホースが狙い撃つ。エンペラーの銃弾が、チャリオッツを通り過ぎてポルナレフを直接狙う。

 

「しまっ…」

「させるか!」

 

しかしそこに葉がオーバーソウルで銃弾を防ぐ。そしてすかさず、反撃に出た。

 

「真空仏陀切り!」

「やべっ!?」

 

ホル・ホースに向けて斬撃を飛ばし、そのまま倒そうとする。のだが、ここで妨害が入ってしまう。

 

「はぁっ!」

「うそ!?」

 

歌舞鬼が装甲声刃の拡声器で放った、声の音撃で相殺されてしまったのだ。しかもそれで驚いた隙を突いて、歌舞鬼が葉に斬りかかってきた。

 

「少年、離れろ!」

「おっちゃん!」

 

そこに響鬼が迎撃しようと、音撃棒を振って火炎弾を飛ばす。そしてそれが歌舞鬼に命中する直前に葉は飛びのき、歌舞鬼は爆発した。

 

「そうか。それじゃあ、お前を先にやらせてもらうか!」

「何!?」

 

しかし歌舞鬼は装甲で覆われたことで大したダメージを受けていないようで、そのまま標的を響鬼に切り替えて襲い掛かってきた。

 

「だったら避けて…」

「させるかよ!」

「うぉ!?」

 

だが攻撃を避ける前にホル・ホースの銃撃で妨害されてしまい、歌舞鬼の接近を許してしまう。

 

「そらよ!」

「がぁあ!?」

 

そして一閃を受けてしまい、そのまま響鬼は倒れてしまう。そこで変身が部分的に解け、響鬼は素顔がむき出しになってしまう。

 

「さて。生身がむき出しになったところで、このまま始末させてもらうぜ」

「一同、聞きな! 響鬼のおっさんを助けてほしけりゃ、聖なる遺体を寄越しな」

 

そして響鬼の顔に装甲声刃の切っ先と、エンペラーの銃口を向けられる。それに対して、葉もポルナレフも、戻ってきた千矢も動けずにいる。

 

「これはポルナレフに昔言ったんだが、(ハジキ)じゃ剣には勝てねぇぜ。剣でも拳でも、とにかく懐に潜り込む攻撃は、銃じゃ勝てねぇのさ」

 

勝ち誇ったホル・ホースの一言に、誰も反論できずにいる。一度は彼を倒したポルナレフでも、今の状況では反論も出来ずにいる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「さて。バイクの往復をしている余裕なさそうだし、歩いて帰るしかないか…」

「ひ、ひえぇ…」

「そういえば、花名さんって運動苦手でしたね…」

 

戦闘を終えたビルド達は、帰還の方法を考えていたのだが、このメンバーで一番体力のない花名が驚いている。その時、物音がしたので振り返ると…

 

「お前ら…俺は、まだ戦えるぞ…」

 

なんと、ジオが満身創痍ながらも立ち上がってきたのだ。

 

「あの…私達、君と戦う理由は無いんだけど」

「ああ。さっきも言ったが、俺が戦う理由はラブ&ピースの為だ。殺し合うためじゃない」

「そっちに無くても、俺にはあるんだよ! バラガン陛下の従者として、生きている限り敗北は許されん!!」

 

ココアやビルドが戦意がないことを告げるも、ジオは聞き入れる様子はない。骨の髄まで戦士としての精神が染み込んでいる破面に、彼らの優しさは通じていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、目障りだからもう消えちまいな」

「が!?」

 

その時、聞き覚えのない声が響くと同時に、巨大な鉄塊がジオを背後から押しつぶす。その光景に面食らった直後、信じられないものが見えた。

なんと、気絶したはずのウォルフラムが立ち上がっていたのだ。

 

「え? もう、ウォルフラムの目が覚めた?」

「残念だが、今ウォルフラムの意志は眠っているぜ。緑谷君に戦兎」

「!? この声、まさか…」

 

出久が驚いていると、何とウォルフラムの口からは先ほどの聞き覚えのない声が発せられたのだ。しかし、ただ一人ビルドだけは聞き覚えがある。

 

「久しぶりだ戦兎、そして初めましてそのほかの連中。俺の名はエボルト、今はウォルフラムの体に寄生させてもらっている。こいつの言っていた個性を強化した要因ってのは、俺の遺伝子のおかげだ」

「え、エボルト?」

「寄生って、何なんだこいつ?」

 

出久も勝己も、エボルトと名乗るそいつに得体のしれない恐怖を感じることとなる。そして、そんな彼らにビルドがその正体を説明し始めた。

 

「エボルトはブラッド族っていう、フルボトルの起源になった文明を持つ地球外生命体の一人だ。そしてブラッド族は、惑星破壊を生業にしている、危険な戦闘民族でもある」

「え?」

「わ、惑星破壊?」

「それが本当なら、めちゃくちゃ危険じゃないですか!!」

「おいおい、下手な(ヴィラン)より愉快なことやってるじゃねぇか」

「爆豪、冗談でも愉快とかいうんじゃない。こいつ、尋常じゃない何かを感じるぞ」

「あ、ああ…」

 

 

 

 

「さて。色々話しこみたいこともあるが、聖なる遺体を手に入れねぇと俺も首領に消されかねないからな。早速やらせてもらうぞ」

 

言いながら、エボルトは一つの装置を腹部に充てる。すると、それがベルトとなった。

 

「ビルドドライバーの色違い?」

「まさか、あの人も……」

「残念だが、このベルトはエボルドライバー。ビルドドライバーの元になったベルトで、より高性能だぜ」

 

出久とココアが察しがついたことで、顔を青ざめる。そんな中で、エボルトは陽気な様子で自身のベルトの説明を始める。そして、そのままフルボトルらしきアイテムを振ってベルトに差し込んだ。

 

コブラ! ライダーシステム! エボリューション!!

「あいつと同じ声?」

「変なところでナルシストみてぇだが……」

 

ベルトから流れた音声がエボルトの声そのままだったため、リゼと勝己が思わず口ずさんでしまう。だがエボルトは気にした様子もなく、ベルトのハンドルを回し始める。

すると"ベートーベンの交響曲第9番"がベルトから流れると同時に、アーマーが生成されていく。そしてエボルトがポーズを決めた直後…

 

Are You Leady!?

「変身」

 

エボルトの声で覚悟はいいか?の問いかけがベルトから流れる。そして変身の掛け声とともにエボルトの体をアーマーが挟み込み、変身が完了した。

 

コブラ! コブラ! エボルコブラ! フッハッハッハッハッハッハ!

「ウソ、でしょ…」

「敵の仮面ライダー…やっぱり…」

 

 

現れた仮面ライダーの姿は、紫と金を基調としたカラーリング、仮面のデザインは口を開いて牙を剥くコブラ、胸の天球儀を模した装甲など宇宙を連想したパーツ、といった荘厳さと凶悪さが共存した姿をしている。これでもこの仮面ライダーの基本形態で、最も戦闘力の低い形態。しかしライダーシステムのコンセプトが"敵を倒すための力"ではなく"敵を滅ぼすための力"とされているため、油断はできない。

そしてそんな恐るべきライダーの名は…

 

「仮面ライダーエボル・フェーズ1」

 

名乗ったエボルト改めエボルは、赤い光を体から発して一気に駆け出す。そしてそのまま、ビルドの懐に飛び込んできた。

 

「やば…」

「オラよ!」

「が!?」

 

そして赤いエネルギーを纏ったパンチを放ち、その一発だけでビルドは大きく吹き飛ぶ。そしてそのまま、変身解除されて戦兎の姿に戻てしまった。

 

「戦兎さん!」

「そんな…一撃で…」

 

ラビットラビットのスピードを上回る超スピードと、一撃で変身解除に追い込ませる桁違いのパワー。その桁違いの力に一同は戦慄する。そしてそんな中、エボルが次の標的に定めたのは…

 

「ワン・フォー・オールの小僧と聖なる遺体の小娘、次はお前らだ。せいぜい楽しませろよ」

「デクにパン屋女、狙われてんぞ! 逃げろ!!」

「そんな! かっちゃ…」

 

そしてエボルを足止めしようと、出久の反論も待たずに徹甲弾機関銃(A・P・ショット・オートカノン)をエボルに向けて放つ勝己。攻撃の手を決して緩めない勝己だったが、エボルに効いていない可能性しか頭に浮かんでこない。

 

「邪魔だよ、爆弾小僧」

 

そして案の定、エボルは一切のダメージの様子もなく勝己に迫ってきたのだ。そして邪魔者を始末しようと、勝己に拳を向けようとした。

 

「だから、そいつ連れて逃げろやクソナード! 閃光弾(スタングレネード)!!」

「…! わかった!」

「え、ちょっと…」

 

そして出久は結果的に折れ、勝己の目くらまし技で作った隙を突いてワン・フォー・オールを発動。ココアと花名を担いでその場から逃走した。

 

「すみません、チノちゃんとリゼさんは自力で逃げてください!」

「出久、わかった。チノ、このまま逃げるぞ!」

 

そしてリゼも出久に促され、チノを負ぶって撤退しようとする。だが…

 

「おいおい、俺のラブコールを無視するのは酷いじゃねぇか」

 

エボルは何処からか拳銃型武器"トランスチームガン"を構え、天高く跳躍した出久を狙い撃つ。銃口から、深紅のエネルギーを纏った火炎弾が放たれ…

 

「がぁあ!?」

「出久君!?」

「きゃあ!!」

 

命中して出久は落下、担がれていたココアと花名もそのまま地面に落ちていく。

 

「あのやろぉ、俺を無視しやがって!」

「ココアさん!?」

「緑谷も花名も、待ってろ!!」

 

そしてその光景を目撃した勝己達は、出久達を助けようと、急いで駆け出す。しかしエボルトは再び超加速して出久とココアに牙を剥こうと急接近する。

 

「聖なる遺体はバラガン陛下の物だ!」

「お?」

 

なんと、急にジオが復活してエボルを妨害しに来たのだ。恐らく響転(ソニード)でこちらに駆け出したのだろう。彼からしたら、妨害ではなくエボルを自らの手で倒そうという魂胆のようだが…

 

「手負いの雑魚に用はねぇよ」

「ぐっ!?」

 

そしてジオにアッパーを叩き込み、天高く吹き飛ばしてしまう。そしてエボルドライバーの手回しハンドルを回し始めるエボル。

 

「さて。それじゃあ、先にあの雑魚を始末するか。邪魔されると面倒だしな」

 

真っ先にジオを始末しようと、必殺技の準備に入るようだ。そして、ベルトから再び"ベートーベンの交響曲第9番"が流れると同時に、足元に星座早見盤を模したフィールドを発生させと、右脚にエネルギーを収束していく。そしてジオが落下してきたタイミングで…

 

Ready Go!! エボルテックフィニッシュ

「オラァア!!」

「がぁあ!?」

 

その右脚で、落ちてきたジオに対して鋭いキックを叩き込む。ジオは凄まじい勢いで吹き飛んでいき…

 

Ciao(チャオ)

 

ベルトから流れたその音声と同時に、数㎞離れた先でジオは大爆発した。これまで見たライダーキックとは比較にならない、出鱈目な破壊力に一同は戦慄してしまう。

そして、エボルは倒れ伏す出久達に視線を向け……

 

「さぁ、次はお前たちの番だぜ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「よし。とりあえず、これで何とか片付いたか?」

「ろくろ…お疲れ……」

 

聖丸とエターナル、夢魔達をどうにか倒したろくろと紅緒。凄まじい攻撃力を発揮し、かつてない強敵達に強力な一撃を叩き込んだ。これで残りは、手負いのガロニュートただ一人……

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が、いつ負けたと言った?」

「な!?」

 

聞き覚えのする声が爆炎の中から聞こえたと思われたが、そこには無傷のエターナルが佇んでいたのだ。周りには大ダメージを負った聖丸やガロニュートの呼んだモンスターの死骸が転がっている中、エターナルは纏っていた黒いマントが無くなっているだけで、戦闘に支障もなさそうである。

 

「あのマント自体が、地球上のあらゆる攻撃を遮断する防御シールドの役割を果たしていてな。だが、お前の呪力は俺の世界の地球には無いから遮断し切れなかったようだ」

『なるほど。それでも、使い捨ての盾代わりにはなったということか…』

「…ユメもキボーもありゃしないわね」

 

あまりにも救いのない結果、フィリップの推察を横で聞いていたメリーは顔に絶望の色を浮かべている。

 

「さて。聖丸以下負傷者ども、お前らにNEVERの力がどれだけの物か見せてやるよ」

「克己、てめぇ…」

 

倒れ伏す聖丸に、エターナルは一方的に告げながら一本のガイアメモリを起動する。そしてろくろ達に告げた。

 

「まず、お前らが俺に勝てない理由が大きく分けて二つ。一つは、持っている力がお前らと違う」

【アイスエイジ!】

 

エターナルは、起動したガイアメモリをエターナルエッジに装填し、トリガーを引いた。

 

【アイスエイジ! マキシマムドライブ!】

「はぁああ!!」

「(奴の防御壁は潰した。なら、攻撃が通るはずだ)行くぞ、焼きおはぎマン!!」

 

そしてエターナルエッジを一閃すると、凄まじい冷気がろくろに迫る。ろくろは迎え撃とうと拳に火炎を纏わせ、立ち向かった。

 

星方獄炎焦殺(スターダムド)!」

「はぁあああああああ!!」

 

そしてろくろの火炎を纏ったパンチラッシュと、エターナルの冷気を纏った一閃が激突し…

 

「ぎぃああああああああああああああああ!?」

「焼きおはぎマン…ぐわぁあ!?」

 

凄まじい冷気が呪装に大きなダメージを与え、焼きおはぎマンが分離してしまう。しかも、鐵塊羅岩を維持できるだけの呪力も消費してしまっており、ろくろ自身も大きなダメージを負うこととなった。

 

「ガイアメモリは地球の記憶そのものを封入したツールだ。そして俺はそれをエターナルメモリを含んで26本有している。わかるか? お前らの持ってる力と比べて、質も量も段違いに上なんだよ」

「! 貴様ぁあああああああああああああああ!!」

 

エターナルからの解説が終わった直後、紅緒はろくろを傷つけられたことで怒りを顕わにし、エターナルに蹴りを叩き込もうと駆け出した。

 

「そしてもう一つは、肉体レベルが違う」

【ユニコーン!】

 

その一方でエターナルは、新たに水色のガイアメモリを起動して腰のスロットに装填した。

 

【ユニコーン! マキシマムドライブ!】

「おらぁあ!!」

「はぁああ!!」

 

そしてドリル状のエネルギー波を纏わせたパンチを放つ"ユニコーンヘルブレイク"が、紅緒の蹴りに激突した。結果…

 

「「きゃあああああああ!?」」

「紅緒ぉおおおおお!!」

「あの子まで!?」

 

こちらも力負けしてしまい、紅緒と暗黒冬将軍も呪装を解除してしまう。そして倒れ伏したところで、再び解説を始めた。

 

「俺達NEVERは、常人を超える身体能力と不死性を持った、死体がベースの改造人間。どう足掻こうと、生身の人間であるお前らに勝ち目はない」

(嘘、こいつこんなに強かったのか…)

(もし、こいつが呪力での攻撃手段を見に付けたら、俺も危ねぇんじゃ…)

 

あまりにも強すぎるエターナルの力に、負傷したまま動けずにいる聖丸とガロニュートも戦慄していた。そしてそんなとき、エターナルがメリーに凄まじいスピードで駆け寄ってきた。

 

「な…ぐっ!?」

「さて。クリエメイトであるお前が、聖なる遺体の持ち主の筈だ。寄越してもらおうか」

 

そしてその首を締めあげ、遺体の持ち主であると勘違いした発言をしながら告げる。本物の戦場を練り歩いた傭兵、その殺意は確かなものである。

 

「あ、アタシは持ってないわ…」

「ああ? 他のクリエメイトども、それも聖典とやらの物語で中心人物になってる女が持ってたんだ。誤魔化すんじゃねぇぞ」

 

しかし、メリーが持ち主でないという話を信じずに殺意を止めないエターナル。

 

「メリー…ぐっ!」

『ダメージが大きすぎる……ファングがあれば、僕と交代できるのに』

 

ダブルはベースになっている翔太郎の体にダメージが蓄積され、満足に動けない。フィリップが自分の肉体をベースに変身するメモリが無いため、助けに行けずに歯がゆい思いをすることに。

 

 

 

「聖なる遺体を持ってるのは、俺だ!!」

「何!?」

 

そこに突如、割って入ってきたのは夢路だった。神威との融合はまだ続いており、それによる蹴りをエターナルに叩き込んだ。

 

「夢路? その姿、何なの?」

「え? まあ、聖なる遺体が新しいパワーアップをくれてな。それが、その…」

『ちゃんと言えし。婆娑羅の俺が、こいつと融合してパワーアップしてるってな』

 

メリーが夢路の姿に困惑していると、説明しづらそうな夢路の代わりに神威がそこを代わりに説明する。急に聞こえた神威の声に驚いていると、神威からメリーや近くにいたダブルやろくろ達に名乗りだす。

 

『俺は神威。婆娑羅だが、聖なる遺体に興味はねぇ。ただこいつらと敵対する方が面白そうだと思ったのと、お前らが死なせるのに惜しい俺のライバルってやつにちょうど良さそうだと思ったから手を貸している』

「え? マジで神威なのか? 確かに、理由とかあいつが言いそうなことだけど…」

「そうなんだよな、ろくろ…」

 

神威が協力することに、横で聞いていたろくろは思わず困惑する。

 

「聖丸、遺体の持ち主が…」

「遅ぇよ、氷鉋。どうやらお前も、ヤバいらしいな」

 

しかもその直後、氷鉋が現れて聖丸に駆け寄る。だがその姿は、片足が爆ぜて一本足でバランスを取りな柄つという、痛々しいものだった。

 

「とにかく、遺体が欲しいなら俺を狙え。相手になってやるよ」

「へぇ……それじゃあ、どれだけ粘れるか試してやるよ」

『気をつけろし。こいつ、ショッカーの中でも上から数えたほうが早いくらいには強いぞ』

 

夢路は自らがエターナルの相手になろうと、彼と対峙する。神威からの忠告があり、警戒心を強めるのだった。そして膠着状態に陥ってしまう。果たしてどちらが勝つことになるのか?




後半参戦組との接点を、申し訳程度に混ぜます。
後半参戦組の登場回まで、あと3話かかる予定です。もう少々お待ちください。


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第39話「救援のジョースターズ」

ようやく書きあがりました。お待たせして申し訳ございません。
サブタイでもわかりますが、ジョースター総集結になります。


各エリアにダークライダーが襲いかかり、ピンチになるクリエメイト達と仮面ライダー達守護者だったが、龍我達も想定外の敵が襲来し、ピンチになっていた。

 

「てめぇ、マジで何者なんだ! なんでいくら殴っても効かねぇんだよ!?」

「先ほど名乗った二つ名で理解できないとは……本当に脳みそまで筋肉なんですね、あなた」

 

クローズマグマに変身したままの龍我は敵対する一人の男に、攻撃が通らず焦っていた。そいつは青い肌に顔以外の全てを覆うプレートメイル、右腕と一体になった巨大な盾が特徴、という魔族染みた外見をしている。魔族っぽいという点は、ガロニュートと類似している。

 

「私の名はレイガルド。鉄壁鎧将の二つ名をいただく、六つ星魔人です。防御は最大の攻撃をモットーとし、現在最も七つ星に近い六つ星と評価させれています」

「魔人…さっきの、ガロニュートとかいう奴の同族か」

「ちょっと! なんか、また新しい敵が出てきたんだけど!?」

「桐間君、状況はわかるがあんまり動かないでくれ…その、色々と…」

「あ…」

 

新しい敵の襲来に焦凍やシャロが危機を感じていたが、シャロに関してはさっきの戦闘で服が燃えてしまったため、天哉が目のやり場に困っている。

その一方、ジョニィは気絶したジャイロの身柄を守りながら鎧を纏ったサイの大群と交戦している。

 

「ジョニィ・ジョースター。貴殿のスタンドが放つ無限の回転の話は聞いているのでね、配下のアイアンライノスを嗾けさせてもらいますよ」

「くそ…この数じゃ、ACT4を使う隙が…」

 

ジョニィの望む通りの事象を起こすタスクACT4、強力だがジョニィが"黄金の回転"と"馬の走る力を利用した回転"を利用しないと発動できないため、大勢の敵に囲まれている上にジャイロを守っている今では、使用する隙が無い。

 

「とにかく、俺達は雑魚を片付けるぞ!」

「オッケー! 飯田君はシャロちゃん達を!」

「わかった! 二人とも、気を付けたまえ!」

「こいつはしばらく俺が相手してるから、頼んだぞ!!」

 

焦凍とお茶子が、ジョニィに加勢しようと動く。特に焦凍の氷の力は、多くのアイアンライノスを纏めて氷漬けにしていくため、今回の一対多の戦いに向いていた。

 

「オラァア!!」

「ふん! はぁああああ!!」

「ぐわぁあ!?」

 

その一方で、クローズマグマはレイガルドに攻撃を仕掛けるが右腕の巨大な盾が、攻撃を弾き返してロクにダメージが通らない。それどころか、逆にクローズマグマがダメージを負ってしまう。

 

「我々魔人は、冥力と呼ばれる大地から来るパワーを使って、冥撃という攻撃や魔奥義といういわば必殺技を使えます。私は全冥力を全身の肉体強度とこの盾の高度の強化に費やしています」

「なるほど、完全防御特化というわけか…万丈さん、こいつは攻撃を防ぐことに全ての力を使っています!」

「あぁ、わかった! だったら、それをぶち抜ける攻撃出せりゃいいんだろ!!」

「ええ!?」

「ウソでしょ!?」

 

レイガルドの能力について聞いた天哉はクローズマグマにそれを伝えるも、聞いてるのかどうかわからないことを叫びながらレイガルドへと攻撃を繰り出す。そして案の定…

 

「効かないと言っているでしょが!」

「がぁあ!?」

「あのおバカ! 言わんこっちゃない!!」

「シャロちゃん、見えるわよ…」

「確かに気になるけど、今それどころじゃないでしょ!!」

 

攻撃を防がれ、一気に押し返されるクローズマグマ。その様を見てシャロが憤慨する。

 

「だから、筋肉を付けろ…」

「どれだけ筋肉好きなんですか、あなた?」

「ぐわぁあ!?」

 

シャロに物申そうとするクローズマグマだったが、立ち上がる前にレイガルドに体を踏みつけられる。状況は最悪だ。

 

(くそ、俺の力じゃ奴の防御は貫けない。だからと言って轟君達に加勢に行ったら、彼女たちが…)

 

一人守りに徹していた天哉だったが、自身のエンジンの個性を活かせない状況に、歯がゆい思いをすることとなる。そしてその時、それは起こった。

 

 

 

 

 

 

「ソフト&ウェット。お前の体から摩擦を奪う」

「うぉ!?」

 

聞き覚えのない男の声が聞こえたと思いきや、その直後にレイガルドがいきなり足元を滑らせて倒れたのだ。

 

「え?」

「な、何が…」

「大丈夫かぁ?」

 

一同が困惑していると、そこに声の主の男が近寄ってきた。そいつは、セーラー服に帽子という服装だったが、日本でよく見る女学生の制服ではなく、水夫が着る本来のセーラー服という服装である。

 

「俺は東方定助(ひがしかたじょうすけ)、紅渡って男にここに送られたスタンド使いだ。合流が遅れて、すまなかった」

「スタンド、ということは奴のアレも?」

 

現れた定助の言葉を聞き、天哉はレイガルドに生じた異変も彼の物と推察して問いかける。見てみると、レイガルドは体中が滑って未だに立てずにいる。

 

「ああ。俺のスタンド、ソフト&ウェットの能力だ」

 

言いながら定助が出したスタンドは、胸に錨のマークが描かれた人型スタンドである。スタープラチナの様に人間染みた顔をしているのではなく、口も鼻もないロボットのような無機質な顔をしている。

そして定助から能力の解説が為されるのだが…

 

「俺の首筋にある痣からシャボン玉が出るんだが、それが割れた時に"何か"を奪う。今、あいつの体から摩擦を奪って滑るようにした」

「え? 摩擦……それ、物理的に奪えるんですか?」

「ああ。壁から音を奪って破壊しても周りに気づかれないようにする、敵の肺から酸素を奪って窒息させる…物なり概念なり、とにかく何かを一つだけ一時的に奪う力だ。ちなみに、普段は地面の摩擦を奪うんだが、それだと踏まれているあいつも滑って行っちゃうからな」

「ちょ…何ですか、そのめちゃくちゃな能力?」

 

聞いていた天哉もシャロも、そのめちゃくちゃな能力に驚きを隠せずにいた。しかしその一方で、クローズマグマは危機から脱すること人あった。

 

「よし、今助けるぞ!!」

【Ready Go!! 】

 

自由になったクローズマグマは、必殺技を放つためにドライバーのハンドルを回す。そしてアイアンライノスの大群に突撃していった。

 

ボルケニック・アタァアアアアアアアアアアアアアアアック!!

「オラァアアアアアアアア!!」

 

そして炎の竜を伴ったライダーキックで、アイアンライノスを一掃する。

 

「おし、今はとりあえず逃げるぞ!!」

「え!? まだ、敵が…」

「今はそれどころじゃねぇからな! それに、お前の仲間も元に戻さねぇとだろ!!」

「…そうだな。すまない」

「貴様ら、待ちなさ……ぐぉ!?」

 

そしてそのまま、クローズマグマの先導の下、全員で撤退することとなる。体を滑らせるレイガルドを放置して。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「それじゃあ、今度はお前らを相手にしてやるよ」

(くそ…このまま戦うしかないか!?)

(花名ちゃんだけは守らきゃ!)

 

エボルの追撃から逃げ切れなかった出久とココアは、迫ってきたエボルを迎え撃とうと臨戦態勢に入る。しかし……

 

「いたっ…」

「え、一ノ瀬さん?」

「おっと、余所見は厳禁だぜ!」

 

花名が痛がる声に出久が気を取られてしまい、そこにエボルトが殴りかかってきたのだ。

まさに絶体絶命……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好き勝手してくれたな、エボルトよ」

「む!?」

 

突如、しわがれた男性の声が響くと同時に、エボルトが攻撃を受けた。出久達の目に映ったその主は、浅黒い肌をした屈強そうな老人だった。その老人が、巨大な斧でエボルトに斬りかかってきたのだ。

老人は片目に傷跡があり、頭部に王冠のような割れた仮面が見える。ジオと同じ破面であることは察せられたが……

 

「何を怒ってんだ、バラガンの爺さんよぉ?」

「狡猾な貴様ならわかると思うがな。自分の手駒を勝手に始末されて、許容できるとでも?」

「まあ、そうだわな。俺だって都合のいい道具を奪われるのは、癪に障る」

(バラガン……さっきの彼が言ってた主の…)

(でも、何これ…)

 

その老人、バラガンはエボルトと独善的な会話を続けているが、その際も凄まじい威圧感を放っていた。その威圧感はエボルにも匹敵し、ジオが陛下と呼びながら心酔した様子を見せていたのも、納得だった。

 

「な、なんだ…あのジジイ……?」

「流石に、爆豪もわかるか。だが……」

「異常な威圧感…なるほど、最強の十人の一角ってだけはあるな……」

 

勝己もリゼも戦兎も、それどころかエボルトを始めとした強敵達と死闘を繰り広げた戦兎ですら、体の震えを止められずにいる。それほどの威圧感を発していたのだ。

 

「聖なる遺体の持ち主と、その守護に呼ばれた人間の戦士か。冥土の土産に名でも教えてやろうか」

 

そして、バラガンは周りを見回した後で一言呟き、続けて名乗りをあげる。

 

第2十刃(セグンダ・エスパーダ)バラガン・ルイゼンバーン。1番は現在空席故、2番の儂が現状での十刃最強となっておる」

(さ、最強の10人の2番……今のが本当なら1番が今いないらしいけど、2番でこの威圧感……)

 

その凄まじい威圧感に、全く身動きが取れない出久。ジオが超えることも烏滸がましいと言っていたことは、伊達ではないらしい。

 

「仕方ねぇ。まず、爺さんから始末させてもらうか!」

「上等だ。ついでに、聖なる遺体も儂が手に入れさせてもらおう」

 

そしてそのまま、エボルの放った拳を手にした斧とぶつけるエボル。しかしその時、異変が生じた。

 

「うぉっ…」

「ふっ」

「ぐわぁあ!?」

 

なんと、いきなりエボルの放った拳の勢いが落ち、そのままバラガンの斧での一撃をもろに受けてしまう。そしてそのまま吹き飛んでいったのだ。

 

「え? あのエボルトが…」

 

エボルトが急に追い込まれた様から、戦兎は困惑を隠せずにいた。しかしそんなことも気に欠けず、エボルトはトランスチームガンで接近してくるバラガンを迎え撃とうとする。

 

「セネスセンシア」

 

しかしバラガンが一言呟いた直後、飛んできたエネルギー弾が徐々に小さくなり、そのまま消滅してしまった。この光景に、一同は目を丸くする。

 

「フィンドール、儂はエボルトを始末する。その間に聖なる遺体を回収しておけ」

「はい、バラガン陛下」

 

そして何処からともなく現れた、金髪に顔の上半分を覆う仮面の青年型破面に命じて、エボルへと突撃していく。

 

「おいおい。やっぱ、その能力は反則だねぇ」

「貴様には言われたくない」

 

そして悪態をつくエボルと交戦するバラガン。先ほど戦ったジオが主と敬う最強格の破面だけあり、エボルですらただでは勝てないというのは、見て取れた。

エボルとの戦闘の危機は去ったが、同時に新たに現れたバラガン配下の破面がこちらに向き合って来る。

 

「初めまして。破面№24のフィンドール・キャリアスだ。お前達が交戦したジオと同じく、バラガン陛下の従属官の一人と言えば、わかるな」

「一難去ってまた一難ってことか…」

「でも、さっきの疲労もたまってますから気を付けないと…」

 

結果、新たな破面フィンドールと戦うこととなったが、チノの指摘通り戦闘で消耗しているため、正直なところは厳しい。しかしその直後、フィンドールがいきなりこんな発言をしたのだ。

 

「さて。先ほどエボルトの攻撃が減速や消滅していたが、その理由を知らないまま死ぬのも勿体ないだろう? 冥土の土産、と言ってもただ教えるのもつまらないので、回復の時間も兼ねて問題を出そうか」

『え?』

「まあ、満身創痍のお前達と戦ってもつまらないというのが本音だが。まず、ヒントをやろう」

 

そしてフィンドールはそのままそのヒントとやらと共に、十刃に関するある情報を与えた。

 

「まず、10人の十刃はその一人一人が死の形を司っている。ディケイドと交戦に向かったノイトラという十刃は絶望を司り、あるものは孤独、ある者は犠牲、ある者は破壊、ある者は憤怒、ある者は虚無……まあ死の形と言ってもどんな死に方か、死に対してどんな感情を抱くか、など色々ある。そしてそんな中、陛下が司る死の形は……

 

 

 

 

 

 

"老い"。そんな、全ての生物に当たり前のように訪れる死が陛下の司る物だ、以上がヒントだ」

 

ココア達クリエメイト組は頭に?を浮かべるが、出久や戦兎はそれでどういった能力なのか察しがついてしまう。それは、下手をすれば承太郎やDIO、ディエゴの持つ時間停止よりも恐ろしいものかもしれない力だった。

 

「まさか奴の能力は、あらゆる物を老い朽ちさせる力なのか?」

「そうか。攻撃に使われたエネルギーも時間とともに目減りする=老いと見たら、あのエネルギー弾の消滅も消滅してしまう!」

「パンチにも力学的エネルギーがかかっているからな。それすら老化させちまったわけか……」

正解(エサクタ)!! さて、陛下が虚界の王と呼ばれる所以もわかったところで、勝負と行こうか」

 

言いながらフィンドールは臨戦態勢に入る。しかしその時、一人の人物が顔を特別青ざめている人物がいた。ココアである。チノが気になって問いかけてみるが……

 

「ココアさん、どうしました?」

「(`0言0́)<ヴェアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! もしあのお爺ちゃんが本気出したら、チノちゃんがシワシワのおばあちゃんにされちゃうううううううううう!?」

「えっと……おばあちゃんどころか、一瞬でミイラにされちゃいそうな…」

 

的外れな絶望に思わずツッコミを入れてしまう花名。するとそれが面白くないのか、フィンドールの怒気が跳ね上がる。

 

「そうか…陛下の偉大な力についてまだ理解が及ばないか。なら、従属官の私が代わりに見せつけてやるか」

 

 

そして仮面の右半分を砕き、その直後に刀剣解放を行う。しかも、仮面を砕いた瞬間から威圧感が跳ね上がるのが感じられた。

 

「水面に刻め、蟄刀流断(ピンサグーダ)

 

そして変異したフィンドールは、右半身が白い外殻に覆われた頑強そうな姿となる。特に目立つのは、右腕の白く巨大な鋏だ。そしてそれを見た一同は、ある物を脳裏に浮かべる。

 

『シオマネキ?』

 

片方のハサミだけが大きい蟹、それを彷彿とさせる外観だ。

 

正解(エサクタ)、お前達人間が似たような生物をそう呼ぶらしいな。ちなみにこの仮面は、砕くと私の霊圧が跳ね上がる。リミッターのような物だ」

 

言いながらフィンドールがその巨大なハサミを開くと、そこから何かが発射され、地面を抉る。しかし、その攻撃の跡が濡れていることに一同はすぐ気づいた。

 

「水……まさかウォーターカッターか?」

「えっと……確か、高圧水流で金属を切るアレですよね?」

 

真っ先に連想する物を頭に浮かべた戦兎が答えると、それに察しがついた花名。すると直後、フィンドールの姿が消えてしまう。

 

正解(エサクタ)、そして君達はその一撃でこの世を去るのだよ」

「え?」

 

そして一瞬で背後を取り、しかも身動きが取れそうにない花名に狙いを定めるフィンドール。そしてもう一度ウォーターカッターでの攻撃を放つ。

 

「まずい!?」

「花名ちゃん!」

 

そして傍にいた出久とココアも間に合わず、花名にフィンドールの攻撃が放たれてしまう。

しかし直後……

 

 

 

 

 

 

「ザ・ハンド! その嬢ちゃんを引き寄せろ!!」

ガオンッ

 

直後にまた聞き覚えのない男の声が聞こえた直後、花名の姿が消えて攻撃も空振りとなる。

 

「な、なんだ?」

『3 FREEZE、発動シマス』

「ぐぉお!?」

 

突然の事態に困惑するフィンドールだったが、直後に無機質な男の声が聞こえると同時にその体を地面に押さえつけられる。

 

「え? なんだ??」

「よぉう、大丈夫か?」

 

困惑する戦兎達に声をかけるのは、奇妙な三人組だった。

髪形をリーゼントにしているが、そこそこ整った顔立ちに180センチ越えの大柄な体格の青年。ブラシのような広がった髪形に、チノよりも背の低い少年。左右に短く刈り上げた髪と、$や億のマークがついた服装の強面の青年。花名はこの強面の青年に抱えられていることから、助けた人物らしい。

お揃いの学ラン姿なことから、どうやら高校生らしい。

 

「君達、たぶん仮面ライダーとクリエメイトって人達だよね? 僕達は紅渡って人に頼まれて、加勢に来たスタンド使いなんですけど…」

「わりぃな。昨日にはこっちに来てたんだけどよぉ、道に迷っちまって来るのが遅れちまってなぁ」

「え? 味方なの?」

 

予想外の味方の登場に驚くココア。そこで、リーゼントの青年達が自己紹介を始める。

 

「俺は東方仗助(ひがしかたじょうすけ)、1999年のM県S市にある杜王町(もりおうちょう)って町のぶどうヶ丘高校1年生だ。こっちの背が低くて親しみやすそうなのが広瀬康一(ひろせこういち)、この厳ついけどバカっぽいのが虹村億泰(にじむらおくやす)、揃って同級生だぜ」

「おい仗助、バカっぽいはひでぇだろ! 頭わりぃのは本当だけどよぉ…」

「え? 私高2だけど、年下だったの?」

 

さらに驚くことに、三人とも同級生でココアより年下だったのだ。ガタイのいい仗助がこれだったため、全員開いた口が塞がらない。

 

「まあ億泰はともかく、俺は父親が外人だからってのもあるからなぁ……ところで、怪我してる奴もいるみたいだが、俺のスタンドは触れるだけでどんな怪我でも治せるから、手当てしてやるぜ」

「みんな、さっき私の足折れてたみたいなんだけど、その能力で治っちゃったみたい。私の魔法でも骨折までは治せないから…」

「渡さんから聞いたけど、本当に魔法なんてあるんだね。ますますドラクエっぽいよ」

 

そしてそのまま仗助は自身のスタンド、"クレイジー・ダイヤモンド"を発動して花名の魔法と共に手当てを始める。心なしかDIOとディエゴのスタンド"THE WORLD"の色違いといった風貌であった。

しかし、仗助自ら語った効果は確かなものである。

 

「すげぇ、もう治ったぞ…」

「自然治癒力を強化する個性は聞いたことあるけど、これはスゴイな…」

 

戦兎も出久もエボルの攻撃を諸に食らって重傷だったが、あっという間にそれは治ってしまう。しかし…

 

「でも流石に、腕の後遺症までは治ってないか……」

「あ、それはいいんです。これはもう、戒めみたいなものだって自分で片づけてるんで…」

 

右腕の傷跡が残っていることから、今している怪我までしか治らなかったようだ。しかしその一方…

 

「くそ、よりによってスタンド使いの増援とは…」

『サテ、コノママ重サヲ増シテ押シツブスコトモ出来マスガ、ドウシマス?』

「Act.3、流石に押しつぶすってのは…」

「だな。敵の親玉の名前とか、聞けることはいくらでもあるしよぉ…」

 

地面に押さえつけられたフィンドールが忌々しそうにしていると、康一の出したスタンドらしき小柄な男が自らの意思で会話している。

 

「残念だが、首領に関しては我々破面でも知らない。陛下を始めとした十刃にしか知らされていないのでな」

「なんだよ、おい。そりゃ残念だな……にしても、こいつダサくねぇか?」

「ああ。流石にこのファッションはあり得ねぇな」

 

フィンドールから情報が取れないとがっかりした億泰の、その何気ない一言に同意する仗助。

 

「うわ、ハッキリ言ったぞ。私も我慢してたのに…」

「まあでも、このカニの鋏みたいな腕はないわな」

「つーか、元から肩の部分が膨らんだその服はあり得ねぇわ」

 

その仗助たちの言葉に、思わず口を漏らしてしまうリゼ。戦兎も勝己も、思わずダサい点を指摘してしまう。

実際、フィンドールの服は破面共通の白尽くめで、俗に言うパフスリーブ=膨らんだ袖という、昔の貴族のような服装をしている。確かにダサかった。しかしそれが気に食わなかったのか、フィンドールが反論する……

 

 

「私よりも、そいつの方がダサくないか? その変な髪形のお前だ」

「「あ…」」

 

フィンドールの発言の後、奥康と康一が揃って「マズい」といった表情になる。

 

「君達、急いで仗助君から離れて!!」

「え? 急に…」

「訳は後で話すからよぉ! とにかく逃げるんだ!! 嬢ちゃんはこのまま抱えていくぞ!!」

「え、ええ!!」

「な、なんか尋常じゃないな…勝っちゃん、ここは従おう!」

「あ、ああ…なんかさっきから悪寒が…」

「チノ、このまま負ぶっていくぞ!!」

 

そして一同は、康一達に促されてそのまま走り去る。康一もスタンドを解除したためフィンドールも解放されるが、一人残っていた仗助の様子に困惑して動けずにいた。そしてついに仗助が動き出し…

 

 

「おまえ…この髪型がダサいと言ったか…

 

 

 

 

 

 

 

ダサいと言ったのかぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

「な…!?」

 

仗助は怒号を上げながらクレイジー・ダイヤモンドを発動し、フィンドールの対応が間に合わない速度でのパンチラッシュが叩き込まれたのだ。

 

ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!!!

「ぎゃああああああああああああああああ!?」

 

そのままパンチラッシュを諸に食らい、フィンドールは吹っ飛んだ。そしてバ近くの巨岩にぶつかり、その岩が崩れてフィンドールは埋もれてしまった。

 

あの野郎…この髪型がサザエさんみてぇだとぉおおおおおおおおおおおおお!?

 

しかも仗助は言われてない罵倒まで言われたと勘違いして、そのまま怒号を上げながら走り出した。

 

「な、なんか急にマジギレしやがった…」

「あの悪寒の正体はこれか…」

「あ、こ、怖い…」

(ココアさんが人間相手に怯えている!?)

 

余りの事態に戦兎は茫然、勝己も震えが止まらず、更にコミュ力お化けなココアまで怯えるその怒り様は尋常ではなかった。そして

 

「仗助君の髪形、子供の頃の命の恩人をリスペクトしてああしてるんだって」

「だから、髪形をけなされる=その恩人をけなされたってみなして、とんでもないキレ方しちまうんだよなぁ」

 

説明が終わった直後、何かが砕ける音が聞こえた。それは、仗助がスタンドと自分の拳で周囲の木や崩れた岩を破壊して回る光景だった。

 

あの野郎、どこ行きやがったぁああああああああ!! 隠れてんじゃねぇ!!!

「ただ逆上しすぎて、周りが全く見えなくなっちまうんだよなぁ。あんな風に…」

『え、ええ……』

 

億泰からの補足を聞き、仗助のあまりの怒り様に全員がドン引きしている。ココアと花名に関してはガクブル状態のままである。

 

出てこい、このスットコがぁああ!!! こっちはまだ、殴り足りねぇぞぉおお!!!!

(ウソだ…能力以外はただの人間の筈が、こんなパワーを……)

 

一人戦慄していたフィンドールはこの後、発見されて消滅するまで殴られ続けるのであった。そして花名を先ほど救った億泰のスタンド、"ザ・ハンド"の右手で触れた物を空間ごと削り取る能力で一同は里まで運ばれるのであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「さあ、(ハジキ)じゃ剣には勝てねぇ。どうする?」

 

歌舞鬼とホル・ホースのの連携によって、響鬼は大ピンチに陥ってしまう。しかしこちらにも、光明がさしかかることとなった。

 

「だったら、同じ(ハジキ)のスタンドなら勝てんじゃねぇか?」

『やっはー!!』

「ぐわぁあ!?」

 

直後に聞き覚えのない男の声が響くと同時に、小さな何かがホル・ホースの手を打ち抜いた。痛みに悶絶して、ホル・ホースはスタンドを解除してしまう。

 

「な、なんだ…」

『かぁあああああああああ!』

「なんだ!?」

 

更にどこからか鴉の大群が飛んできて、そのまま歌舞鬼に襲い掛かる。それで拘束が緩んだことで、響鬼も脱出に成功した。

 

「え? いったい何が…」

『よう、姉ちゃんにおっちゃん! 間一髪だったな』

「な、なんだ?」

 

響鬼と困惑している紺の目の前に、宙に浮く小人が姿を現して話しかけてきた。見てみると額に1と刻まれており、言動から今ホル・ホースを攻撃した張本人のようだ。そしてポルナレフは一目見て、そいつの正体に察しがついた。

 

「まさか、こいつスタンドか?」

「その通りだ。こいつはセックス・ピストルズ、6人セットの群体型スタンドで俺の持ってる拳銃に憑依させて自在に弾道を変えられるってわけだ」

 

スタンド名と能力をポルナレフに説明しながら現れたのは、青のへそ出しセーターとヘルメットのような形状の赤い帽子の青年だ。手には例のスタンドを憑依させたと思われる、リボルバー拳銃を持っている。

 

「えっと、誰?」

「グイード・ミスタ、イタリアンギャング・パッショーネに属しているスタンド使いだが、例のなんたらショッカーは関係ねぇから、安心してくれ」

「むしろ、そのオーバーヘブン・ショッカーを倒すために、紅渡という方に送られたのですが、合流が遅れて申し訳ありません」

 

千矢の問いかけに答えて名乗る男、ミスタの所属を聞いて一瞬驚く一同だったが、すぐに表れたもう一人の男と敵でないことを伝える。

問題のもう一人の男は、前髪を独特な形にカールさせた金髪に、胸がハート形に開いた紫の学ランっぽい服という強烈な装いをしている。それに続いて、パレオと水着にしか見えない露出の多い服装と、ピンクの髪が目立つ女性が現れる。

 

「僕はジョルノ・ジョバァーナ。同じくパッショーネの所属で、紅渡に送り込まれました。僕がギャング組織にいるのは、彼らの支配する町を僕自身がギャングスターになることで立て直そう、という考えのもとになりますので、誤解の無きように」

「トリッシュ・ウナよ。同じくパッショーネ関係者で、スタンド使い。それと味方よ」

(ジョルノ……確か、オイラの浄の力とかジョニィの他に、例の首領を倒せるかもって言ってた?)

 

葉は名乗った男、ジョルノの名に聞き覚えがあった。ヴァレンタインがジョニィにオーバーヘブン・ショッカー首領を倒せるかもしれない能力者を伝え、それを里に合流した者達に伝えていた。その中に、確かにジョルノの名があったのだ。

 

「おいおい、俺のスタンドと同タイプ…しかもあっちの方がタイマン慣れしてるじゃねぇか!」

「その程度で自身無くすたぁ、情けねぇなホル・ホース!」

 

ホル・ホースが驚く中、歌舞鬼がこちらに斬りかかってきた。しかし、直後にジョルノが迎撃しようとスタンドを発動した。

丸みを帯びた金色の体の外殻を纏う人型スタンドに、テントウムシのような斑点模様が描かれている。

 

「これが僕のスタンド、ゴールド・エクスペリエンス。能力は触れた物体に生命力を流す…まあ、百聞は一見に如かずということで」

 

ジョルノがスタンドの名と簡単な能力説明をすると、地面に落ちていた小石をスタンドで触り始める。すると、その小石から木が生えた(・・・・・・・・・)のだ。

 

「え!?」

「ど、どうなってんだそれ!?」

「生命力を流すことで、物体は一時的に生命…すなわち動植物へと変異させます。先ほどの鴉も、この能力で生み出しました」

「そして私のスタンド、名はスパイス・ガール。能力は…」

 

そして立て続けに、トリッシュがスタンドを発動してジョルノの生やした木を触る。こちらはピンクを基調とした、女性的な体格のスタンドだ。そして歌舞鬼の振るった装甲声刃(アームドセイバー)が触れた瞬間……

 

 

 

「な!?」

「け、(けん)が…」

 

なんと、木は刃が触れた瞬間にスライムのような感触となり、そのまま刀身を飲み込んでしまった。あまりにもぶっ飛んだ光景に、全員開いた口が塞がらない。

 

「これがスパイス・ガールの"物を柔らかくする能力"よ。私が柔らかくしたい物に力を発動すると、その物はすぐに柔らかくなるわ」

『柔ラカサモ、ゴムノヨウナ弾力ヲ持タセタリ、手デ千切レル程ニ柔ラカクスルコトモ可能デス』

「え? 能力もスゲェけど、そいつ喋れんの?」

「そういや、自我を持ったスタンドってのもいるらしいな…」

 

能力にも驚きだったが、スパイス・ガールは徐倫たちが交戦したプッチ神父のスタンドと同様、自我を有したスタンドであったようだ。

 

「ちっ。だが、攻撃を一回防いだ程度でいい気に…」

「なるつもりはありませんよ!」

 

そして歌舞鬼の動揺した一瞬のついて、そのままゴールド・エクスペリエンスとスパイス・ガールを懐に潜らせる。そしてそのまま…

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!』

『WAAAAAAAAANNABEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』

「ぐぉおおおおおおお!?」

「うそ…ぎぇえ!?」

 

スタンド二体によるラッシュを畳みかけ、装甲歌舞鬼を撃破する。しかもそのまま、ホル・ホースを巻き込んで吹っ飛んで行った。

 

「よし。今のうちに脱出しましょう」

「向こうに車を止めてある、それで逃げるぞ」

 

そして歌舞鬼が吹っ飛んだ隙を突いて、一同は撤退する。林の中に停めてあったワゴン車に乗り込み、ミスタの運転でそのまま撤退する。山育ちの千矢は物珍しそうに中を見回していたが……

 

「しっかり捕まっとけよ!」

「え…きゃあ!?」

「ぐえ!?」

「千夜、大丈夫!? 後、ポルナレフさんも…」

 

ミスタが車を急発進させたことで、バランスを崩してしまう。そしてそのままポルナレフと激突、互いの頭をぶつけあって悶絶することとなった。突然だったため、紺が心配して声をかけるが杞憂だった。

 

「うん、大丈夫…」

「俺はついでか…まあ、大丈夫だぜ」

 

ついでだったことに落胆するポルナレフ。その一方で、一同の乗った車はホル・ホースと歌舞鬼からどんどん距離を離していく。そんな中、不意に響鬼はある懸念を思い出す。

 

「そういや、あいつら空飛ぶ手段があったんだけどさ。車で逃げ切れるのか?」

「そこはご安心を。僕のスタンドが既に生きているものに生命エネルギーを流し込むと……」

 

その懸念を響鬼が伝えると、ジョルノがゴールド・エクスペリエンス(以下GE)の生命エネルギーを流し込む力について、改めて説明を始める。

~同時刻~

「くそ……あの、スタンド使い…」

 

立ち上がって後を追おうと、ディスクアニマルに手を伸ばす歌舞鬼。しかしその時、異変が生じた。

 

「な、なんだ!?」

 

なんと、放り投げたディスクアニマルがそのまま空高く飛んで行ってしまったのだ。あり得ないパワーの発生に、困惑して動けていない。更に、それだけではなかった。

 

「l歌ぁあ〜舞ぅう〜鬼ぃい~のぉ~だぁ~ん~なぁ~、どぉ~うぅ~しぃ~たぁ~?」

「な、なんだ!?」

 

隣にいたホル・ホースの声と動きがとんでもなくスローになっていたのだ。ここまで来て、歌舞鬼は己の体に起きた異変の正体に気づいた。

 

(まさか、例の生命エネルギーとやらで、身体能力や感覚が強化されたのか? でもって、それについて行けてねぇのか!?)

 

実際は感覚のみが暴走しており、投げたと思ったディスクアニマルはまだ腰に装着されたままだ。感覚の暴走で意識だけが先に動いて、歌舞鬼自身はまだ身動きすら取れていない。この状態で攻撃を喰らうと、鋭敏になった感覚で更に強烈な痛みを味わうことになるという。

これによって歌舞鬼の動きが止められることとなり、彼らから逃げ切ることに成功したのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「さて。それではこの場にいる皆さんにはあの世へ行ってもらいましょうか」

(こいつのスピード能力……ただの加速能力よりもはるかに厄介だ。京介が先にやられたのは、かなり手痛いが…どうする?)

 

厄介極まりないコーカサスの能力に、レイジは一切の油断ができない状況にいた。しかし、ここでも新たに加勢をしてくれる人物が。

 

「紳士的ではないですね、ミスタージャック」

「そっすね」

 

ただし、こちらに加勢に来たのはジョースター家の関係者やスタンド使いではなく、意外な人物であった。

 

「え? あんた達…」

「さっきの…紳士さん…達?」

 

なんと、そこに現れたのはヘラクスとケタロスに変身した紳士ウィルバー&ローライズ・ロンリー・ロン毛のコンビであったのだ。

財団Xに傭兵として雇われたはずの二人が、何故かこちらを守ろうと現れたのだ。

 

「紳士ウィルバーにローライズ・ロンリー・ロン毛…君達は財団の傭兵の筈なのに、なぜ彼らに味方する? 返答次第では、報酬どころか命すら危ういぞ」

 

当然ながらコーカサスは二人に疑問をぶつけるのだが…

 

「まず、紳士は決して命を奪いません。あなた方の行動を見て、まず確実にそういうことを生業にしている組織であることを実感しましてね。そしてそれ以上に……」

 

そして返答するウィルバー改めヘラクス。そしていったん、間を置き……

 

「婦女子への暴行、実に紳士的ではありません! なので、私の方から契約破棄させていただきます」

「あと、ゼクターに仕込んでた自爆装置もすでに解除済みなので」

 

宣言と同時にコーカサスに向き合って、臨戦態勢を取ったのだ。

 

「さあ、我々が殿を務めますのでボーダーの皆様は、クリエメイトの方々を」

「! すまない、恩に着る!」

「桜さん、小南さん、私達で他の皆さんを先導しましょう」

「わ、わかったわ」

「うみこさん、オッケー!」

 

まさかの事態に驚くも、レイジは素直に礼を言ってうみこや桐絵、ねねと共に残りのメンバーを先導して撤退していく。

 

「面倒ですね。では、纏めて始末して差し上げましょう」

「元の世界の友人達を残して死ぬのも、紳士的ではありませんので」

「それに、このライダーシステムなら逃げ切ること出来ますんで」

 

そしてコーカサスと対峙する、ケタロスとヘラクス。共にベルト残し部分に手をやり、同時にそれを発動した。

 

「「「クロックアップ」」」

『CLOCK UP!』

【クロックアップしたライダーフォームは、人間を遥かに超えるスピードで活動することができるのだ!】

 

そして謎のナレーションと共に、三人のライダーは一瞬にしてその姿を消した。そしてその場では超高速で何かがぶつかり合う衝撃が飛び交っていた。

 

「ねぇ、レイジさん。なんか変なナレーションみたいなの聞こえたんだけど…」

「気のせい…ということにしておこうか」

「そうですね。私もこれは触れない方がいいと思います」

 

しかもそのナレーションは撤退する一同にも、何故か聞こえていた。そしてその直後…

 

「お、お前らこんなところにいたのか!」

「ボス、助かったわ!」

 

林道支部長が他のメンバーを回収しに出したトレーラーが到着、無事に逃げおおせることにせいこうした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「うぉらああああああああ!」

「はぁあ!」

 

夢路はエターナルに飛び蹴りの体勢で飛び掛かり、エターナルも迎え撃とうと蹴りを放つ。

 

「うぉお!?」

「ぐっ!?」

 

純粋なパワーはエターナルの方が上で、且つ戦闘センスもはるかに高い。そのためにエターナルのキックの方が高威力で、夢路は派手に吹っ飛ばされる。

しかし、エターナルも決して無事というわけではないようだ。

 

「なるほど、蹴った対象に衝撃を伝播させる効果があるのか。生身だったら足もズタズタにされてたかもな」

 

しかし屍人兵士である彼はすぐに体勢を立て直し、夢路を迎撃しようと駆け出す。だが、夢路は敵が強いことをすでに察していたために、使える手段をすぐに取る。

 

「借りるぜ、縛鎖(チェイン)&孤影(ロンリネス)

 

武装明晰夢でエターナルを拘束し、その頭上に巨大こけしを落として一気に決着を付けようとする。

 

「そう来るか。なら、新調したメモリを使わせてもらおうか」

【グラビティ!】

「新調だと?」

『確かに、以前の戦いで見なかったメモリだが…』

 

言いながら鎖を引きちぎり、エターナルはGのイニシャルが刻まれたメモリを起動して腰のスロットに装填する。Wも知らないメモリだったことから、警戒を強めることとなる。

 

【グラビティ! マキシマムドライブ!】

「ふぅううううううん!」

 

直後、エターナルが右手を天にかざすとそこから重力波が発生。夢路が武装明晰夢で生成したこけしを持ち上げてしまう。

 

「ウソだろ!?」

「俺を倒したければ、ダブルがエクストリームを使えるか、焔魔堂ろくろが破星王に覚醒するかのどちらかしか無いだろうな!」

 

そしてエターナルは気になるワードを口にしつつ、そのこけしを一同に向けて叩き行けようとする。ダメージでまともに動けなかった一同は、絶体絶命であった。

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

「な、何これ?」

『何か転移のような気配が…』

 

直後、一同は光に包まれたかと思うとその場から姿を消してしまう。それによって、エターナルの攻撃は空振りとなり、結果助かることとなった。

 

「……この技、あのロディーナとかいう女か。となると、ノアもショッカー側からは離れそうだな」

「カツミ、さっきからずっとボクをコケにしてくれたね!!」

 

エターナルが状況を分析していると、いきなりガロニュートが超スピードで接近してきたのだ。見てみると、ガロニュートは纏っていた石のブロックを全て外しており、傷もいつの間にか塞がっている。

 

「へぇ……狡猾なお前のことだが、やっぱり隠し玉があったわけか。傷は魔人特有の強靭な体でふさいだとして、あのブロックが無くなったことでスピードも強化されたようだな」

「そういうことだよ。そして…ふんっ!」

 

エターナルが冷静に分析していると、そのままガロニュートは超重領域(グラビ・ゾーン)を発動して動きを封じようとする。

 

「どれだけ強化されようと、ベースが人間の君にボクを倒せると思うなよ。君を始末したら、改めて聖なる遺体の力と八輝星の地位を貰いに行かせてもらうよ!」

 

そして克己を始末する前提の話を一方的に終わらせ、そのまま超高速で殴りかかる。あまりのパワーに、エターナルもさすがに吹っ飛んでしまう。

 

「そんでもって、こいつだ!!」

「ぐっ!?」

 

そしてアッパーで天へと打ち上げ、ガロニュート自身も人外の脚力で飛び上がる。そしてエターナルを地面に叩きつけようと、距離を詰めてく……

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念。てめぇの負けだ」

【グラビティ! マキシマムドライブ!】

【エターナル! マキシマムドライブ!】

「え?」

 

しかしエターナルはいつの間にかエターナルエッジにグラビティメモリを、腰のスロットにエターナルメモリをそれぞれ装填。二つのメモリを同時使用の、ツインマキシマムが発動したのだ。

 

【マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ!】

「てめぇの敗因は、重力操作を動きを封じるための技だけに使ってたことだ。重力は、こういう使い方も出来るんだよ!」

「ぐぉお!?」

 

メモリの電子音声"ガイアウィスパー"が、壊れた機械の様に連続してなり続ける。その横で言い放ちながら、エターナルはガロニュートに一閃。そしてその切り口から…

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!? 何だコレはぁああああああああああああああああああああああああああ!?」

「重力と永遠の記憶の力で、無限ともいえる重力力場を発生させた。厳密には違うが、ブラックホールみたいなものだと思え」

 

断末魔を上げながらガロニュートは胸の切り傷から生じた重力場に、その体がだんだんと飲み込まれていく。そしてどんどんその体を圧縮されていき……

 

「日に二度も同じセリフを言うとは思わなかったな……

 

 

 

 

 

 

さあ、地獄を楽しみな!!

「ぎぃいいいいいいいいやあああああああああああああああああああああああああ!?」

 

そしてガロニュートはそのエターナルのセリフと共に、断末魔をさらに強めながら大爆発。跡形もなく消し飛んだ。

 

「逃がしちまったが、まあいい。聖なる遺体は惹かれ合う…なら、後からまとめて手に入れることも出来るわけか」

 

そしてそれだけを言いながら、エターナルは変身を解除。克己の姿でそのまま去っていった。そしてその様子を見ていた残りの面々は…

 

「これが最凶の悪の仮面ライダーの力…人間の業というわけか」

「だな。更なる力がねぇと、俺らも消されるぞ」

(火火火(カカカ)ッ、これぞまさに破壊の権化ってわけか)

(こんな痺れる強さ、柄に無く惚れそうね…)

 

エターナルの強大な力に戦慄する者、崇拝のような念を抱く者、と様々様子であった。

~同時刻~

「助かったけど、これは素直に礼を言っておいていいのか?」

「翔太郎さん、確かにそうですね…」

 

転移させられた一同、Wはいつの間にか変身を解除して翔太郎に戻ったまま疑問をぶつける。それに、いつの間にか合流していた勇魚が同意して助けてくれた人物二人に視線を向けるのだが…

 

「警戒するのもわかるが、君達に敵対する意思はない」

「私たちは少なくとも、聖なる遺体に興味ありませんので」

 

そこにいたのは、それぞれモノクルとマントを見に付けた魔族染みた外観の男と、純白のドレスを纏った少女、執事のような衣装にステッキを携えた兎の獣人の三人だった。そして前者の二人には共通して、ガロニュートと同じく左腕に埋め込まれた"星"と呼ばれる七つの宝珠があったのだ。

 

「改めて自己紹介をしよう。私の名はノア、七つ星の魔人(ヴァンデル)で"魔人博士"の異名をとっている」

「同じく七つ星の"小悪魔ロディーナ"と申します」

「魔人の評価役兼、彼らの社交場"魔賓館(まひんかん)"の館長を務めている、シャギーと申します。以後、見知り置きを」

 

まさかの七つ星魔人の出現に警戒する一同だが、確かに敵意は感じられない。どういう経緯で加勢したのか?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ふん」

「何!?」

 

幽汽の首を落とすつもりで振るったローの刀は、振り向かずに防がれてしまったのだ。そして放つ一閃を防ぐことができたが、そのまま吹っ飛んでしまう。

 

「ふっ」

「ぐわぁあ!?」

「「トラ男!!」」

 

しかも追撃に独楽を投擲、それが空中で身動きの取れないローに命中して爆発する。そしてそれによってローの能力が解除されてしまう。

 

「きゃあ!?」

「うわああああ!?」

 

ライナー電王とゆのはそのまま落下し、バランスを崩して地面に倒れてしまう。しかしその一方で一人だけ着地に成功した宮子は、すぐに戦闘を始める。

 

「よくもトラ男さんをやったな!」

「よせ、宮子!」

 

ソード電王の制止も聞かず、宮子は幽汽に斬りかかる。しかし変身者の死郎は生前は武士のため…

 

「雑魚が」

「うぉおお!?」

 

巣の戦闘能力は段違い。防御に成功して致命傷馳せたが、一太刀で敗北を喫する大きなダメージを負ってしまう。

 

「宮ちゃん!」

「「おめぇ、マジで許さねぇぞ!」」

「ゆのちゃんは、早く回復を!」

 

ソード電王とルフィは怒り心頭で幽汽に斬りかかり、ライナー電王もゆのに宮子の治療に専念させるために幽汽へ立ち向かっていく。

 

「纏めて、あの世に行くんだな!!」

 

幽汽はそんな彼らを迎え撃とうと、七星剣を振るとともに緑の炎が放たれた。そして独楽も投擲して猛攻を仕掛けてくる。

 

「こいつ!」

「うわぁああああ!?」

 

攻撃を捌こうとソード電王はデンガッシャーを、ライナー電王はデンカメンソードを振るって独楽や炎を防ぐ。しかし、ルフィにはその弾幕は効果を成していない。

 

「てめぇ、絶対にぶん殴ってやるからな!」

 

見聞色の覇気で攻撃をかいくぐり、幽汽に急接近するルフィ。そして拳に武装色の覇気を纏わせ、ゴムゴムの銃弾(ブレット)を叩き込もうとする。

 

「おらぁあああああああああ!!」

「ふぅううん!!」

 

しかし幽汽は咄嗟に拳を放ち、それでゴムゴムの銃弾を相殺。そしてそのまま反動で動けないルフィに斬りかかる。

 

「やべっ!?」

 

咄嗟に武装色で胴をコーティングし、斬撃をギリギリで防ぐ。

 

「ふんっ!」

「ぐえっ!?」

 

だが幽汽はその一瞬の隙を突いて、ルフィの顎を蹴り上げた。ゴム人間の体の為に、蹴りの威力で大きく首が伸びるが、それによって大きな隙が出来てしまった。

 

「終わりだ!」

「がっ!?」

 

ルフィの体で、武装色が覆われていない脇腹に七星剣を突き刺す。ゴムの体は打撃を防ぐが斬撃は通るため、ここで遂に大きなダメージを負ってしまった。

 

「そこのお前らも、ソラの為に死ね!」

「わぁああ!?」

「ぐぉおおお!?」

 

更にダメ押しと言わんばかりに、独楽の投擲で電王二人を迎え撃つ。ゆのに攻撃が入らない辺り、放っておいても無害と判断されているらしい。

 

「ゆのさん達が…」

「余所見とは余裕だな!」

 

一方、花京院は承太郎に加勢に向かったはいいも、電王組とゆの達の劣勢に気を取られてしまう。そしてその隙を突いて、ソーサラーが攻撃を仕掛けてくる。

 

「むっ!?」

 

しかし事前にハイエロファントグリーンの体を解いた帯が地面に仕込まれ、ソーサラーはそれを踏んづけてしまったようだ。それによってソーサラーは拘束されてしまう。

 

「事前に罠を張っておいて、正解でしたね…早い所、彼を片付けないと」

「「ナイスだ、花京院」」

 

そしてディケイドと承太郎は声を合わせて花京院を称賛、そして二人でソーサラーを撃破しに飛び掛かる。

 

「月影魔法"クレセントカット・満月(フルムーン)"!」

「「何ぃっ!?」」

「こんなっ!?」

 

しかし拘束された状態で魔導書(グリモワール)の魔法を放ち、ディケイドと承太郎を迎え撃ってきたのだ。更に後方の花京院にまで攻撃が迫り、またもピンチになってしまう。

 

「スタンドも解除されたようだな。このまま畳みかけさせてもらうか」

【ビッグ・ナウ!】

「マジか…」

 

花京院のダメージで拘束も解けてしまったソーサラーは、ベルトを操作して新たな魔法を発動。頭上に現れた魔法陣にディースハルバードを潜らせると、魔法陣を通ったハルバードが巨大化した。流石にディケイドも危機を察知していた。

 

「マズい、士さん達が…」

「あっちのゆの様たちもピンチだし…どうしましょう?」

 

ソーサラーの魔法で消耗したきららは、ランプや唯達放課後ティータイムに介抱されながら戦況を憂いている。ランプもゆの達や電王組のピンチに、身動き出来ない自分が不甲斐ないと言った様子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「波紋・シャボンランチャー!!」

「ぐぉお!?」

 

しかし聞き覚えのない男の声が聞こえると同時に、シャボン玉が飛んできてソーサラーを吹っ飛ばす。攻撃を喰らって魔法が解除されたソーサラー。

 

「士、手を貸すよ」

【Attack ride Blast!!】

「何!?」

「この声…」

 

どこからかディケイドを呼ぶ声と電子音声とともに、ソーサラーへの攻撃が放たれる。ディケイドは聞き覚えのある声にまさかと思い見てみると、バーコードを模したシアンブルーの装甲を纏った仮面ライダーの姿があった。

ビルド達が既に交戦してた、海東大樹こと仮面ライダーディエンドの姿だ。

 

「海東、何のつもりだ?」

「僕がお宝ハンターってこと、忘れたはずないよね。聖なる遺体なんてとんでもないお宝、ショッカーに渡すわけにいかないし」

「こいつが話に聞いてたてめぇの知り合いのライダー…やれやれ、確かにめんどくさそうな奴だ」

 

現れたディエンドは加勢した目的を語ると横で、承太郎は事前に聞いた人となりと照らし合わせ、実に面倒そうな顔をしている。

そんな中で、花京院があることに気づいてディエンドに質問を投げる。

 

「取り込み中にすみません。今、波紋って聞こえたんですけど…誰か波紋使いの助っ人でも連れてきてくれたんですか?」

「それなら、僕だ。彼にここに案内されてね。それと自己紹介の前に、少しやることがあるので失礼」

「おいおい、さっさと終わらせろよな」

 

花京院の質問に答えたのは、バンダナを鉢巻の様に巻いた金髪の伊達男と、ジョナサンに似ているが妙にチャラそうな雰囲気の青年の二人組だった。

そして二人組は休んでいるきらら達に近寄ると、伊達男が膝間づいてそのまま手を取り出した。

 

「大丈夫ですか、シニョリーナ達?」

「しにょ…え?」

「きららちゃん。地球のイタリアって国の言葉で、お嬢さんって意味よ」

 

突然の聞き覚えのない単語に困惑するきららに、紬が解説を入れる。そこにそのまま、自己紹介を始める伊達男。

 

「おれはシーザー・A(アントニオ)・ツェペリ。紅渡と葛葉紘汰という二人から、このエトワリアという世界の危機に向かうよう頼まれた、そこの彼と共に訪ねてきた波紋戦士です。さあ、ここはおれに任せてご安心を」

「おいおいシーザー、そのぐらいにしろ。さて、お嬢ちゃん。あっちの方も援軍がいるらしいから、安心しておけ」

「え?」

 

そしてジョナサン似の青年の呼びかけと共に、一同が視線を向けるとすぐにその意味が分かった。

 

「そこまでだ!」

「援護します!」

「ぐぉお!?」

 

幽汽に攻撃を加えるエグゼイドと、その援護を行う青葉の姿があった。青葉はまたドラゴナイトハンターZのゲーマを纏った姿だ。

 

「おめぇら、なんでここに?」

「さっき、あのディエンドから増援に来てほしいって頼まれてな。さっきまで乗ってた迎えの車から、急遽飛び出して、青葉ともどもこっちに来たわけだぜ」

「青葉さんも? そういえばその格好…」

「聖なる遺体のおかげで、ガシャットが使えるようになったんだ。私もこれで、相手と互角に戦えるよ」

 

困惑するゆのに青葉は説明し、エグゼイドと共に幽汽と対峙する。その姿は頼もしさすらある。

そしてさらに加勢の手はあった。

 

「アステロイド!」

(ボルト)!」

 

ガオウとネガ電王の間に割って入り、修と遊真が射撃攻撃を仕掛ける。そして遊真はガオウと、修とヒュースがネガ電王とそれぞれ対峙する。姿は見えないが、千佳も後方から援護射撃にきたようだ。その際、遊真の姿が三雲隊の制服ではなく黒一色のボディースーツのような物を纏っている。そこが気になった紗英が思わず問いかけた。

 

「空閑君、その姿は?」

「昨日話した、黒トリガーだ。お目付け役のレプリカってトリオン兵のサポートが無いとフルで使えないけど、それでも強力だから緊急で使わせてもらった」

 

説明しながらガオウと対峙する遊真。その一方で、ガン電王もヒュースの姿が気になって質問を投げかける。

ヒュースも側頭部の角が無くなっており、三雲隊の隊服を纏った姿をしている。

 

「ねぇねぇ。頭のツノ、無くなってるけどどうしたの?」

「俺は近界民であることを隠してボーダーに入ったからな。トリガー使用時の戦闘体を、玄界(ミデン)の人間に偽装しているというわけだ」

「ヒュースはアフトクラトルのトリガーでダメージを負ってたので、連携のテストも兼ねてこっちを使ってもらってます」

 

そしてヒュースは修と二人で説明を終えると同時に、それぞれブレードを構えて臨戦態勢に入る。ヒュースの方は日本刀型のブレード"弧月"だ。

そして、その様子を見ていたジョナサン似の男は不意に唯にある頼みをした。

 

「なあ嬢ちゃん、俺の技に人の髪の毛がいるんだ。ちょっとだけ鋏で切らせてくれねぇか?」

「髪の毛? ちょっとくらいならいいけど?」

「唯先輩!?」

「サンキュー!」

 

唯があっさりとその頼みを、二つ返事で了承した。梓が驚く横で、そのまま青年は礼を言いながら唯の髪を少量切る。そしてそれを両手の指でつまみ、直後に全身から黄金のオーラが立ち上った。

 

「人呼んで、波紋ヘア・アタック!」

「予想はしてが、こいつも波紋使い?」

「……まさか、こいつ!?」

 

そして技名を叫ぶ青年に、承太郎は何かを察した様子だった。すると青年もそれに気づいて、自己紹介を始めた。

 

「そういや、俺の名前まだ言ってなかったな……

 

 

 

 

 

ジョセフ・ジョースターだ! よろしく頼むぜ、未来の俺の孫よ!!

 

青年の正体は、若い頃のジョセフだったのだ。承太郎のことは、恐らくディエンドから話を聞いて知ったのだろう。

 

「波紋だか何だか知らないが、我が復讐の邪魔をするなら貴様も葬ってやる!」

【コピー・ナウ!】

【エクステンド・ナウ!】

 

しかしソーサラーは臆せず、そのまま追撃に指輪の魔法を発動。ディースハルバードをコピーし、二本とも先ほど同様、鞭の様にしならせて連続攻撃で畳みかけようとした。

 

「バリアだぜぇええええええええええ!!」

 

だが臆してないのは、ジョセフも同様だった。波紋を流した唯の髪の毛を放り、波紋の物体を弾く性質を利用したバリアを張って攻撃を防いでいく。

その後もソーサラーは攻撃を続けるが、ジョセフは宙を舞う髪に波紋を流し続けて見事に防ぎきってしまった。

 

「…これが全盛期のジジイか。確かに、強力な波紋だな」

「あの頭脳プレイの肉体も波紋も高いパワーを発揮、確かにすごいですね」

「海東、お前たまには役に立つんだな」

「褒めなくてもいいさ、僕もお宝の為に動いているからね」

 

若いジョセフの力に承太郎と花京院が称賛の声を上げる。そしてこのまま臨戦態勢を取ろうとした直後……

 

ダークライダー諸君、私とフォクシー海賊団が手柄も遺体も独り占めさせてもらいますよ!!

 

ドクターラチェットの声が響いた直後、空から何かが降ってきた。現れたのは、巨大ロボットだった。

外観は一つ目の巨大な顔に、ミサイルランチャーを備えている。そして左右に巨大な四本の柱が守るように備わっている。

 

「うぉおおおおおおおおお! スッゲェエエエエエエエ!!」

「おい麦わら! お前、敵にまで何を興奮してるんだ!?」

「ルフィ、一応敵だから落ち着け」

「まさか巨大ロボが来るなんて、思いませんでした……」

 

ルフィはラチェットの乗るロボに興奮し、それを諫めるソード電王とエグゼイド。青葉はまさかの巨大ロボの出現に、困惑を隠せずにいたが…

 

「…まさか、鋼鉄巨人か?」

「ライオンの姉ちゃん、知っとるんか?」

「まさか、こいつエトワリア由来だってのか?」

 

不意にジンジャーがロボットの名と思しき単語を呟く。それを横で聞いていたアックス電王とウソップが問いかけると、ジンジャーが語り始めた。

 

「私は七賢者と兼業でエトワリア最大の都市で領主もやってるんだが、そこに昔やってきた考古学者と意気投合して聞いたことがあるんだ。エトワリアには大昔、戦争で滅んだ古代文明があったんだが、未完成のまま放置された決戦兵器が今もその文明の遺跡に眠ってるって伝説を離してたんだ」

「まさか、それを完成させて持ってきたと?」

「ああ。その考古学者が持ってた設計図に似てやがる…だけど見ないパーツもあるから、改造されてるかもしれねぇ」

「え? それ、最悪じゃない?」

 

ジンジャーの話を聞いてヒロとロッド電王は顔を青ざめる。するとラチェットは話を聞いていたのか、大仰に説明を始めた。更に同乗していたのか、フォクシーも一緒にその解説に乗り出す。

 

『確かに大本はその鋼鉄巨人だったが、今はそんなチープな名前ではありません。世界征服が目的の私が武装を追加して、鉄人くんシリーズの最強機体として生まれ変わらせました』

『おれとポルチェとハンバーグの、フォクシー海賊団古参トリオが乗れるよう調整されたんだ』

 

そして二人は同時に、機体の名を思いっきり叫ぶ。

 

『『その名も、鉄人くん49号!!』』

 

ここに来て更なる敵の襲来。しかもダークライダー達から手柄を奪う目的のようなため、ここからは乱戦が予想される。果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか?




次回は鋼鉄巨人改め鉄人くん49号と決戦。この次に説明回を入れて、そこからゴースト×BLEACH×がっこうぐらし!編に突入予定です。

P.S.クレイジー・ダイヤモンドならデクの腕の後遺症云々も治せるかもしれませんが、原作と矛盾するので治さない方向で行きました。


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第40話「倒せ、ドクターラチェットの決戦兵器」

すみません。仕事と創の軌跡のやりこみで執筆遅れました!
年内にもう一話投稿して、来年には後半参戦組の話に入る予定なので、少々お待ちください。
そしてもう一つ謝罪ですが、鉄人くん49号は消化試合となりました。ライダー側も手加減なしにしたので。その所為で一部、全く動きのないキャラも…

そんな感じですが、どうぞ。


ドクターラチェットが古代のエトワリアに存在した鋼鉄巨人、それを改造して生み出した"鉄人くん49号"がディケイドや電王達がダークライダーと交戦している場に現れた。

 

「お前ら、正気か!?」

「ライオンの姉ちゃん?」

 

そんな中、不意にラチェット達の乗る鉄人くん49号に向けて怒号を放つジンジャー。いきなりのことで一同は面を喰らうが、それも気にせず続けるジンジャー。

 

「古代の戦争の決戦兵器を、改造してパワーアップさせただ? そんなもの暴れさせたら、辺り一帯が焦土と化しちまいかねねぇぞ!!」

『関係ありませんね。私は生まれ故郷で世界征服を目的にしておりますので、征服対象に無い世界世界がどうなろうと知ったこっちゃないですから』

『ついでに言えば、おれ達の目的は麦わらへのリベンジでもある。恨むんなら、おれ達がこの世界に来る切っ掛けの麦わらを恨むんだな』

 

ジンジャーからの糾弾も意に介さず、ラチェットとフォクシーは攻撃態勢に入る。そんな中、こちらも戦闘態勢に入る者達の姿があった。

 

「あれがヤバそうな兵器っていうのは、よくわかったよ。さっさと破壊しちゃおうか」

「そうやな、亀の字。地球より自然豊かな世界で、あないな兵器を暴れさせるわけもいかんからな」

「確かにあれはカッコいいけど、おれ達を襲うんだったら破壊しちまわねぇと」

「あんた達…」

 

ロッドとアックスの2人の電王とウソップが得物を片手にジンジャーの前に躍り出る。そして当然、彼らだけではなかった。

 

「悪者ライダーもいるけど、一緒にやっつけちゃえばいいよね? 答えは聞いてない!」

「言うではないか、お供その4。だが、王子たるもの無垢なる民を傷つける輩は見過ごせんな」

「おれだってやるぞ。一回ランブルボールは使っちまったけど、おれの形態変化はそれだけじゃねぇんだからな」

 

ガンとウイングの更に二人の電王が追加、チョッパーも奮起している。ちなみになずなは、先ほどガオウ達に負傷させられた沙英達の治療に向かっている。そして当然、彼らも動きだす。

 

「何べんも言わすな、俺は最初からクライマックスだっての。ついでに言えば、終わりって意味じゃねえぞ」

「うん。悪いけど、あなた達に聖なる遺体は渡さない」

「割れ頭に黄色眼鏡、今度こそぶっ飛ばしてやるからな!」

「仕方ねぇ、さっさと破壊するか。ひだまり屋、猫屋の手当てをしろ」

「は、はい!」

 

そして残りのソードとライナー電王、ルフィとローも臨戦態勢を整えていた。ルフィの傷もゆのが治癒したようで、ローもそのまま宮子の治療に行くよう促す。

 

「なるほど…ここに来てボスキャラ登場ってわけか。上等だぜ」

「あの、永夢さん。この状況でゲームに例えるのはどうかと…」

「でも、この調子だから仮面ライダーエグゼイドってヒーローが通用するのかな?」

 

一方のエグゼイド、青葉、三雲隊も戦闘準備万端である。修がエグゼイドの調子に物申すが、青葉がそこにフォローを入れる。

 

「さて。電王組とエグゼイド組はあっちのデカブツの相手をするみたいだが、どうする?」

「引き続き、この魔法ライダーを相手取るのが無難だが、果たしてそうさせてくれるか…」

「そうよね。全員倒さないといけない相手ではあるけど、その上あのデカいのをぶっ壊さないと…」

「それもそうだね。いくら僕らも加勢に来たとはいえ、機械相手じゃ波紋もどこまで通用するか…」

「えらく弱気だな、シーザー。とはいえ、流石にこんなドイツ軍でもお目にかかれないような兵器が相手じゃな…」

 

そしてディケイド組も、戦意は十分。しかし現実問題、巨大兵器の乱入という事態には依然としてこちらがピンチというのが事実であった。加勢に来た若い頃のジョセフとシーザーも、それは同じらしい」

 

「……頃合いか」

「キョォオオオオオオオン!!」

 

その時、不意にプッチが呟いたかと思いきや、空から何かの鳴き声が響くとともに氷の弾丸が飛んできたのだ。

 

「なんだ!?」

「!?」

 

しかもその弾丸は、こちらだけでなく対峙していたダークライダー達まで攻撃してきたのだ。突然の事態に困惑していると、攻撃したと思しき何者かがプッチの方に寄り添う。

 

「鳥…隼?」

 

徐倫が真っ先に気づいたその正体は、一羽の隼だった。赤いスカーフを巻き、猛禽用の目隠しをゴーグルの様に被った、精悍な顔立ちの雄の隼である。この隼こそ、エジプト九栄神の一柱・ホルス神を暗示するスタンド使い"ペット・ショップ"だ。

そしてペット・ショップがプッチの肩に捕まった直後、プッチは幽汽を始めとしたダークライダー達に宣言した。

 

「ダークライダー諸君、今回はラチェット達に譲り給え」

「何だと!?」

「おい、どういうつもりだプッチ?」

「いくら力を与えた恩人の一人といえど、我が復讐への準備を邪魔するならば…」

 

突然の提案に、当然ながら意義の声が届く。無言の幽汽と復讐に目が入っているソーサラーは、プッチにも手を出そうという気満々である。しかし、次の一言で一同は従わざるを得なくなってしまう。

 

「君達も天国の住人から外す…つまりは極罪を犯した魂として搾取することも可能なのだぞ」

『!?』

「理解したようだね。懸命だ」

(極罪を犯した魂……だと?)

 

そしてそのプッチの言葉を聞いた承太郎も、同じく反応する。しかしそれに気づいているのか否か、プッチはこちらに対してあることを伝えてくる。

 

「夜空に輝く満天の星を見たことはあるか?」

「星空……ここに来て何を?」

 

突然のプッチの発言に、きららはワケが分からないという様子で聞き返す。そしてプッチは、それに答えるかのように続けた。そしてその言葉を聞き、理解する。

 

「全ての星々は互いに引き合うことでいっそう輝き、その光を増していく…お前たちは"引力"を信じるか? 人と人との間にも"引力"があるということを…」

「おい! それって確か…」

「まさか、この人パスのことを言っているの?」

 

多阿木に引き合う人同士の引力、まるできららが感覚で感じ取れるという人同士の絆"パス"のようだ。しかしプッチはこちらの反応を無視して、そのまま続ける。

 

「お前達には計り知れないことだろうが、私たちは真の"天国"に至る唯一の道に到達した。それこそが、この世の全ての生物が真の"幸福"に導かれるための道…」

 

そして大仰に両手を広げながら、プッチは叫んだ。

 

「アイズオブヘブンッ!!」

 

その不可解な単語と、それを伝えるプッチの大仰な仕草に一同は圧されてしまう。しかもその時、プッチやダークライダー達を紫のモヤが多い始める。転移で撤退するようだ。

 

「もしこの戦いを生き残れたのなら、そのまま聖なる遺体の光に導かれるがいい…

お前達が"遺体"をすべて集め終わったその時こそ! 我が友の天国が幕を開けるのだ!!

楽しみにしているぞ……お前達が彼の作り出す、天国にひれ伏す時を」

 

そして最後のメッセージを残していくと、プッチはそのまま転移していった。周りのダークライダー達や彼らの乗っていた時の列車も、丸ごと姿を消す。一緒に転移したようだ。

 

「さて。敵が減ったのは喜ばしいが…」

「敵の決戦兵器だ、油断しないで行くぞ」

「ですね。早く倒して、残りの遺体を探しに行かないと」

 

ディケイド、承太郎、きららは気持ちを一新し、改めて鉄人くん49号に向き合う。相手は古代の戦争の決戦兵器、それを更に強化改造した戦闘マシンに一切の油断は出来なかった。

 

『ふん。油断しておらずとも、この鉄人くん49号に勝てる者などいませんよ。おやびん!』

『あいよ! ノロノロの実の力を活かす機能、使わせてもらうか!』

 

妙に自信満々なラチェットは、フォクシーに指示を送る。そして彼らの自信満々な理由がここで判明した。

 

『食らえ、ノロノロ・フィールドッ!!

「なっ!?」

「こぉ…れぇ…はぁ…」

 

フォクシーの叫びと同時に、鉄人くん49号を中心に何かが発生。それを諸に浴びた一同は、自分達の体に異変が生じる。

 

「こぉお~れぇえ~はぁあ~…」

「おぉ、おぉ~そぉ~くぅ~なぁ~…」

『ふはははははははははは! これこそ、ノロノロの実のパワーで生成されたノロマ光子を、周囲一帯に拡散するノロノロ・フィールドです!』

『ラチェットの頭脳と、おれの能力の合体で纏めてぶっ倒してやる!』

『そして、対ノロマ光子素材の銃弾を喰らいなさい!』

『うぷぷぷぷぷぷぷ! コテンパンにしてやる!』

 

ノロマ光子の拡散はかなり強力で、辺り一帯にいる味方は全員がノロくなってしまった。更にポルチェとハンバーグが叫ぶと同時に、鉄人くん49号の下部から機関銃とポルチェのお花手裏剣が乱射された。

 

(このままじゃ、ゆのさん達が…)

 

身動きが取れない中、きららはゆのや青葉に迫る危機を退けられないことに焦る。しかしその時、予想だにしないことが起こる。

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」

「なぁあ…」

「そぉ…れぇ…はぁ…」

 

ノロくなってしまったディケイドときららは、確かに見た。承太郎はノロくなっている様子が無くスタープラチナの時間停止を発動させたのだ。

そして承太郎は止まった時の中、飛んできた機関銃の弾やお花手裏剣をスタープラチナの攻撃で、次々と叩き落していく。

 

「そして時は動き出す」

『『え!?』』

 

そして時間停止が解除されたことで、フォクシー海賊団もラチェットも驚愕した。

 

『な、なぜノロマ光子が効いてねぇんだ…』

「さあな」

『オラァア!!』

 

そこにすかさず承太郎はスタープラチナのパンチを叩きこむ。コクピットを兼ねた一つ目の顔に攻撃を放つが、それが4本の鋼鉄の柱が動いて防いでしまった。

 

「な!?」

『おやおや、そちらこそ油断大敵ですよ』

 

驚く承太郎の様子に、ラチェットは隙ありとばかりに背部のミサイルを発射。それが承太郎に目掛けて飛んでいく。

 

「承太郎さん!」

「任せろ。(バウンド)

 

きららの悲痛な叫びを聞いて真っ先に動くのは、遊真だった。ちょうどノロノロ・フィールドの効果が切れて動けるようになった彼は、黒トリガーで足元に《弾》と書かれた印を出現させる。そしてその場から凄まじい勢いで跳躍、承太郎を回収する。

 

「危なかったが、助かった」

「まあ、なんとか。ひょっとして、さっきのノロくする力が効かなかったのは、アンタの時間を止める力のおかげか?」

「恐らくな。かつてDIOの時間停止も、おれ自身が時間停止を使える素養があったのかある程度耐性があってな。周りより早く解除されたり、停止した時の中でも意識を保ったりできていた」

 

遊真の質問に答える承太郎は、予想だにしなかったがこれはチャンスだと思った。

そんな中、ディエンドに対してエグゼイドがいきなり声をかける。

 

「おい、ディエンド。さっきお前が取ってったハイパームテキガシャット、さっさと返せ!」

「確かにこの状況を切り抜けるには、必要かもね」

 

どうやら、エグゼイドがこの状況を打破できるアイテムを持っていたらしいが、ディエンドがそれを奪ってしまったらしい。しかし当のディエンド本人は……

 

「だけど、断るよ。せっかくのお宝を手放すなんて、お宝ハンターにあるまじきことだからね」

「え、そんな!?」

「この状況で何を…」

「おい、ふざけんな!」

 

断られてしまい、エグゼイドと状況を知っていた青葉と修は驚愕した。しかしその隙を狙って、鉄人くん49号が動き出す。足となっている鉄柱が、こちらに向けて射出されたのだ。

 

「やべ!?」

「スラスター起動! 青葉さん!!」

「うん?」

 

エグゼイドは咄嗟に飛びのき、修もレイガストのスラスターで、青葉共々どうにか離れることに成功する。

 

「しゃあねぇ、こいつでゴリ押し勝負するか…」

【マキシマムマイティX!!】

 

そう言いながら起動したガシャットは、スロット二つ分を埋める大きさで、上からはエグゼイドの顔だけフィギュアが飛び出している、奇妙な形状である。

 

「なんだ、あれは……」

「ちよっと、可愛い……」

 

遠巻きに見ていたヒュースは困惑、千佳は思いのほかデザインが好みだったのかそんなことを呟く。

 

「ちょっと可愛い…」

「あ、青葉さん?」

 

それは青葉も同じだったらしい。困惑する修をよそに、エグゼイドはマイティアクションXのガシャットをベルトから外す。そして…

 

マックス大変身!!

マキシマムガシャット! レベルマァアアアアックス!!

 

ガシャットを差し込んだ直後、これまで無いほどハイテンションな電子音声が轟く。そして変身が始まる。しかし、ここまでの変身と比べ物にならないほど、珍妙なことが起こったのだ。

 

最大級のパワフルボディ!

ダリラガーン!

ダゴズバーン!

「な、なんだ?」

 

これまた耳に残る歌がベルトから流れると共に、なんと上空に巨大なエグゼイドの顔が出現したのだ。

 

「えっと、これは……」

「あれ、どうするつもりなんだろう?」

「なんだ? あいつ、何する気だ?」

 

青葉や遠巻きに見ていたゆのもコメントに困り、ルフィは対照的に次に何が起こるかワクワクした様子でそれを見ている。敵もこれは予想外で、思わず固まってしまった。

しかしエグゼイドは気にした様子も無く、ベルトに差し込んだガシャットに拳を叩きつける。

 

マキシマームパワー!エェーックス!

 

そしてエグゼイドが跳びあがると同時に、上空に現れた顔が開く。そしてエグゼイドが格納されると、顔から屈強な手足が生え、頂上からエグゼイドの顔が生える。

その様は、パワードスーツに乗ったエグゼイドというべき姿である。

 

「「でっけえええええええええええええ!!」」

「すっげええええええええええええええ!!」

 

目を輝かせながら絶叫する麦わらの一味の三名。マッシヴなそのエグゼイドがドストライクだったらしい。そして満を持して、エグゼイドは一つ宣言する。

 

「今のレベルはマキシマム……

 

 

 

 

レベル99(ナインティナイン)だ!!

 

これこそ、仮面ライダーエグゼイド・マキシマムゲーマーレベル99。ディエンドに奪われたハイパームテキにこそ劣るものの、とりわけ強大な変身形態である。

 

『確かにゴツくて強そうですが、その見た目だと鈍重極まりないでしょう?』

『そういうことだ。そこのノロマ光子が効かねぇアンちゃんでも、全員のカバーはやり切れねぇだろ!』

 

しかしラチェットもフォクシーも勝ち誇った声音で宣言すると同時に、ノロノロ・フィールドを展開する。

 

(マズイ! また時を止めねぇと……)

 

承太郎も今回は流石に対応が間に合わず、そのままノロノロ・フィールドは発動してしまう。しかしその時…

 

「おおおおおおおおおおお!!」

『『え?』』

「「「え?」」」

「うそ、だろ……」

 

エグゼイドは普段通りのスピードで走り出し、そのまま鉄人くん49号へと突撃していく。

 

「教えてやるよ! 俺のスピードは"100mを0.99秒"で走破可能だ!」

『『え゛っ』』

 

まさかの超スピードを誇っていたマキシマムゲーマー。元が速すぎるから、ノロくしても通常より遅くならないという事だ。本当にゴリ押しである!

 

「オラァァ!!」

『なにぃいいいいいいい!?』

 

そして放ったパンチが、防御に動いた鉄柱を大きく吹き飛ばす。この形態はパンチ力とキック力も99tというデタラメな高さを誇り、レベル99という事を強調している。これだけでも強力だが、更にバグスターのデータを書き換えて敵の能力を封じる技"リプログラミング"も使用可能という、トンデモ形態なのである。

そしてエグゼイドは、そのまま追撃に乗り出す。

 

「おいおい、あいつも派手にやるじゃねえか! 良太郎、俺達もてんこ盛り行くぞ!!」

「うん、そうだね」

 

エグゼイドの大暴れに触発されたソード電王は、いきなり変身解除してモモタロスに戻る。そして出した提案をライナー電王が承諾すると、ケータロスをベルトから外した。それによってアーマーが消え、黒と白を基調とした電王の素体"プラットフォーム"が姿を現わす。

 

「電王屋、てんこ盛りってなんだ?」

「良さん、なんなのそれ?」

「それは、確かに気になるな。あのゴツい奴みたいな切り札だと思うが…」

「仲間のイマジンを全員憑依させて変身する、一番強くて一番かっこいい電王ですよ」

 

ローや宮子だけでなく、ジンジャーまで興味津々なてんこ盛りに、そう説明するプラット電王。そしてケータロスのボタンを順番に4つ押していく。

 

【Momo! Ura! Kin! Ryu!】

「変身!」

【Climax Form!!】

 

そしてケータロス側部のボタンを押すと、変身開始。プラット電王にモモタロスが憑依する。しかしその姿は、これまでの6形態のどれにも該当しない電王へと変じたのだ。

ソード電王の仮面に、胸と肩には線路のような意匠がある赤い装甲が装着される。その直後、ジーク以外の3人のイマジンも各電王の仮面へと変わり、それが両肩と胸に装着される。

ロッド電王の仮面が右肩、アックス電王の仮面が左肩、ガン電王の仮面が胸だ。そしてそれが装着されると、ソード電王の仮面が展開され(モモタロス曰く皮がむけた)、オレンジの仮面に変化する。

 

「俺達、参上!!」

 

その名はクライマックスフォーム。てんこ盛りの呼び方通り、ジーク以外の4人のイマジンが全員、良太郎に憑依することで変身可能なのだ。ちなみに、良太郎はこの形態を一番カッコいい電王だと思っているのだが…

 

「「だ、ださい…」」

「宮ちゃんもジンジャーさんも、失礼だよ…まあ、確かにダサいけど」

「だな。良太郎が一人で変身してたあっちの方がカッケェのになぁ」

「「右に同じく」」

((流石に、これはねぇな…))

「え、そうかな?」

『良太郎、何度も言うけどこれに関しては全員同意見だぜ』

 

みんな揃ってダサいとしか言えない容貌だった。麦わらの一味ですら、このリアクションである。モモタロス達イマジン組も、こればかりは理解できないセンスのようだ。

 

「お、それがお前たちのとっておきか! 一緒に暴れるぞ!!」

『良太郎、あいつもああ言ってんだ! 今は、こいつぶっ倒すことだけ考えるぞ!!』

「うん…そうだね」

 

エグゼイドやモモタロスに推されて立ち直った電王だったが、今もまだショックは抜けてないようだ。するとそんな中、ディケイドも流石にディエンドへの異議の声をあげる。

 

「海東、お前もいい加減にしろ。今回はかつてない規模のヤバさなのはわかってるだろ」

「まあ、そこはわかってるからね。代わりの助っ人をもう一人」

「「「あ?」」」

 

ディエンドがそんな言葉を口にしたため、ディケイドだけでなく承太郎と徐倫も口を揃えて疑問の声を上げる。そこに駆け付けたのは、予想だにしない人物だった。

 

「士、すまん! 海東に呼ばれて里から出てきちまった!!」

「ユウスケ!?」

 

それは、クウガに変身してトライチェイサーを駆る小野寺ユウスケの姿だった。彼の言動から、ディエンドが連れてきたもう一人の助っ人のようだ。

 

「なるほど、そういうわけか…」

「けど、助かります!」

 

承太郎は納得した様子で、きららも素直に礼を言う。しかし、その時に徐倫が一つ疑問を上げる。

 

「あれ? そういえば、そこの人と一緒に来たならとっくに合流できてたはずだけど…」

「あ、ごめん…道に迷って……」

 

実に締まらない理由だったようだ。しかしそこで、ディエンドが懐からカードを取り出してディエンドライバーにセットする。

 

「それだけでも勝てるかわからないし、ちょっと切り札を使わせてもらうよ」

【Kamen Ride Faith!】

【Kamen Ride Blade!】

 

そしてカードをセットして、ファイズともう一人、スペードと剣をモチーフにした青い仮面ライダー"仮面ライダーブレイド"を召喚する。

 

「すごい。本当に仮面ライダーを召喚した…」

「なんか、きららちゃんみたいだね」

 

事前にディエンドの能力を聞いていたきららは、その様を始めてみて驚き、唯もコールを連想する様子に驚いている。

 

『ほほう、増援も呼べるのですか! でも、その程度で鉄人くん49号に勝てるなんて…』

「思ってないよ。だから、こうするのさ」

 

ラチェットがその様子にバカにした態度を見せるが、それに返しながらディエンドはとあるカードをセットする。

 

【Final Form Ride! FFFFaith!!】

「痛みは一瞬だ」

 

そしてディエンドは言いながら、なんと召喚したファイズに発砲したのだ。そしてそのまま、ファイズは巨大なキャノン砲"ファイズブラスター"へと変形した。

味方ライダーを変形させて武器やサポートメカにする切り札"ファイナルフォームライド"略してFFRを使用したのである。ビルドや出久達と交戦した際、龍騎をドラゴンに変形させたのもこのカードの力である。

 

「「「ええええええええええええええええええ!?」」」

「うそ、でしょ……」

「話には聞いてたが、マジで変形しやがった…」

 

きらら、ランプ、唯は揃って絶叫、徐倫も驚愕している。承太郎が言うように事前に聞いていたが、この事実には驚きを隠せずにいる。

 

「なるほど。なら、俺も…」

【Final Form Ride! BBBBlade!!】

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

ディケイドも納得した様子で、同様にFFRを使用。ブレイドの背中に手を突っ込むと、そこから体を変形させて、巨大な剣“ブレイドブレード”となったのだ。ちなみに、この剣はブレイドの主要武器"ブレイラウザー"を模している。しかし、これだけではない。

 

「だけど、これだけじゃ心許ないから…」

【Final Form Ride! KKKKuga!!】

「ユウスケも、ちょっとくすぐったいぞ」

「ああ、どんとこい!」

 

ディケイドもブレイドブレードを地面に突き立てるとクウガのFFRを使用する。クウガの背中に手を突っ込むと、そのままクワガタムシ型の飛行メカ"クウガゴウラム"に変形させる。

 

「こいつはいいな。乗せさせてもらうぜ」

「ああ、どんとこい!」

 

そしてクウガゴウラムに飛び乗った承太郎は、一気に加速して鉄人くん49号に突撃していった。

 

「おい、ジジイ! 掴まれ!!」

「いいけど、ジジイはやめろ!!」

「事実だから勘弁しやがれ」

 

その際、助っ人に来た若ジョセフの腕をつかんで一緒に飛翔する。ジジイ呼びは不服だったようだが。

 

「だが、まずは先手を取らせてもらうぜ。クラッカーブーメラン!!」

 

しかし若ジョセフは懐からアメリカンクラッカーを取り出し、波紋を流して投擲した。アメリカンクラッカーは本来、二つのボールと紐を繋いだおもちゃなのだが、ジョセフはこのボールを鉄球に付け替えて投擲武器に使っているのだ。

 

「ジョセフもやる気みたいだな…ならば新技の試運転だ!」

 

そしてシーザーも触発され、新しい技を披露する。ジョセフ達が当時、ディオを吸血鬼に変えたオーパーツ・石仮面を生み出した闇の一族"柱の男"を倒すための技を。

 

「食らえ、波紋シャボンカッター!!」

 

シーザーは波紋を流す技にシャボン玉を使うのだが、これは彼の着ている服に仕込まれた石鹸水を使ってシャボン玉を作っている。そしてシーザーは、そのシャボン玉に回転を加えて円盤状にして飛ばす。

 

『おっと、危ない!』

 

しかし鉄柱でカッターもクラッカーも、まとめて防いでしまうラチェット。跳ね返ったクラッカーをジョセフがキャッチした直後、ラチェットはすかさずミサイル発射で追撃しようとする。

 

「それじゃあ、今度は僕が」

 

しかしすかさず、ディエンドがファイズブラスターを構えてビームを発射する。そしてビームが命中し、ミサイルは空中で爆発した。

 

「にしし。おれも負けてらんねぇな!」

 

するとルフィがそれに触発されて、ギア3を発動する。そして巨大化した拳に武装色の覇気を纏わせ、一気に放った。

 

「ゴムゴムの象銃(エレファントガン)!!」

『『な!?』』

 

そして鉄柱が一本吹っ飛び、フォクシーとラチェットは口を揃えて驚いた。ギア3は今回初めて見たようで、かなり驚いていたようだ。

 

「おっしゃ、ナイス!」

「畳みかけるぞ!!」

「おっしゃ、俺達も行くぜ!!」

「お供しますよ!」

「右に同じく」

 

そこにエグゼイド、ディケイド、電王、青葉、遊真が一斉に駆け出す。すると鉄人くん49号が迎え撃とうと機関銃をと、更に本体の目からレーザーを照射して来た。

 

『まだ不安が残るから、ハンバーグ行ってきなさい!!』

「うぷぷぷぷぷ! 了解!!」

 

するとポルチェがまだ倒しきれないと判断し、そのままハンバーグにも迎撃を命じる。ハンバーグはポルチェの命令に了解しながら飛び出し、手にした金属バット二本でディケイド達を迎撃しようとする。

 

「銃弾とレーザーは、こっちに任せろ!」

 

するとディケイドは前に躍り出て、ブレイドブレードを振るって銃弾を弾き返す。そのまま巨大な剣を振り回し、レーザーもどうにか防ぐ。

 

「メガ粒子……」

 

その一方で、青葉両手を突き出しながらお得意の魔法を放つ準備をする。前回、ガシャットで強化された際に放ったら反動で吹っ飛んだため、今回は地面に踏ん張りながら狙いを定めていた。

 

「レクイエムシュート!!」

「ぱぎゃっ!?」

 

放たれた魔法がハンバーグに命中し、そのまま吹っ飛んで鉄人くん49号に命中する。

 

「俺たちも負けてらんねぇな!」

「だな。行くか、エム先生」

「やべ!?」

 

そしてさらにその青葉に触発され、エグゼイドと遊真も一気に駆け出した。するとハンバーグは、慌てて鉄人くん49号のコクピットへと撤退していく。

 

(ブースト)二重(ダブル)!」

「おらぁああああああああ!!」

 

そして遊真は印で腕力を強化し、エグゼイドと二人で一気に殴りかかる。またも鉄柱で防がれるが、これも一撃で吹っ飛んでしまう。

 

「おれ達も行くぞ!」

「私も負けてられないぞ!」

「仕方ねぇ、乗ってやる!」

 

するとそれに触発されたのはライダーだけでなく、ウソップ、宮子、ローが立て続けに攻撃に乗り出した。ウソップは先ほどガオウに防がれた衝撃狼草を放って畳みかける。

 

『マズい、防御を…』

「試してみるか。ROOM・タクト!」

 

ラチェットは残りの一本の鉄柱でウソップの攻撃を防ごうとするも、すかさずローがオペオペの実の力を発動する。すると、その一本の鉄柱がローの能力で空中に浮いた。

 

『え?』

「すぐに終わるから安心しろ」

 

そしてその鉄柱を鉄人くん49号の本体に叩きつけ、それと同時に衝撃狼草が命中する。直後にシールドが本体に張られ、攻撃を防がれる。

 

『うぇえ!?』

『ぎゃああ!? 衝撃がこんな…』

 

しかしコクピット内に激しい衝撃が走り、完全には防ぎきれていないのが中からの声でよくわかった。

 

「おし、このまま攻撃続けるぞ! シールドをぶっ壊すぞ!!」

「おし、分かった!」

【Charge & Up!!】

「おっしゃ、私もやるぞ!」

 

そして追撃に入ろうとディケイドは、ブレイドブレードを手に飛び掛かると宮子も剣を手に、ディケイドに続いた。

電王も続けて、ベルトにハマったケータロスのボタンを押してパスをかざすと、初めて聞く電子音声が流れる。すると両肩と胸についた仮面が線路の意匠を移動し、全て右腕に装着された。一番前にアックス電王の仮面があり、そこにエネルギーが収束されていく。

 

「だりゃああああああああああ!!」

 

すると電王がディケイドと宮子を抜いて飛び出し、必殺の拳"ボイスターズパンチ"を叩き込む。すると余りの威力に、シールドが遂に粉砕された。

 

『おやびん! それにさっきから吹っ飛んだ鉄柱を戻してこようとしてるんですけど…』

『戻ってこないんだな!』

 

そんな中、防御を整えようとするポルチェとハンバーグが以上を察して慌てだす。そしてディケイドと宮子はその隙を突いて畳みかけた。

 

「「はぁああああああああああああ!!」」

 

ブレイドブレードと、宮子の持っていたエトワリウム製の剣が見事に命中。完全には両断されなかったが、それでも大きなダメージを与えることに成功した。

 

『どういうことですか!? 何で防御用の鉄柱が反応を…』

「どうやら、修達が上手くやったらしいぜ」

『『はい?』』

 

困惑しているラチェットに答えるように、承太郎の声が空から聞こえた。すると、クウガゴウラムに乗ったままの承太郎が、こちらに目掛けて急降下してくる光景が見えた。

 

「さっきは失敗したが、もういっちょ食らいな!」

『オラァア!!』

「だぁああああああ!!」

 

するとそしてスタープラチナとゴウラムの突撃、ジョセフのクラッカーが同時に命中した。鉄人くん49号はギリギリでシールドを張るが、また一撃で破壊され、コクピットにまたも衝撃が走る。

 

『あ、危なかった…』

「そういうわけではないだろうな」

 

しかし直後、先ほどまで動きの無かったヒュースがエスクードを足場にして飛び掛かり、弧月を本体に突き刺す。そして続けて至近距離でバイパーという銃弾トリガーをぶっ放した。

 

「本来の用途と違うが、四の五のは言ってられんからな」

『『ぎょへぇえええええええ!?』』

 

そして炸裂と同時に飛び上がり、巻き添えを喰らわずに済むヒュース。その直後、同じく戻ってきた承太郎とクウガゴウラム。ゴウラムも変形して、クウガの姿に戻った。

 

「何をしたかは知らんが、あの眼鏡がいい仕事したらしいな」

「ああ。空からちらっと見えたんだが…」

 

不意にディケイドが承太郎に話を振ると、承太郎の口から姿の見えない修達が何をしたのか語り始める。

 

~同時刻~。

「修君、上手くいったみたいだね」

「ああ。千佳が手伝ってくれたおかげだよ」

 

修と千佳の視線の先には、スパイダーのトリガーで張ったワイヤーで拘束された、鉄人くん49号の防御用鉄柱残り三本があったのだ。ボーダーのトリガーは味方がトリオン切れを起こした際、他の隊員のトリガーと接続してその隊員のトリオンを借りてトリガーを使えるようになっている。それで修のスパイダーを、千佳の膨大なトリオンでワイヤーの強度を上げることに成功したようだ。普通なら千佳が砲撃でこの鉄柱を破壊すればいいのだが、千佳が人に対して攻撃トリガーを使えない&味方に巻き添えを出さないように、修が気を使った結果である。

そして完全に斜線上に人が誰もいないのを確認した千佳は、威力特化の狙撃トリガー"アイビス"を構えて砲撃の準備に入る。

 

「それじゃあ、修君も離れて」

「ああ、頼む!」

 

そしてそのまま砲撃し、鉄柱を完全に破壊する千佳。これで、敵の防御を崩すことに成功したのだ。

 

~再びディケイド達~

「なるほど、よくやったと言っておこうか」

「聞いたとおり、お前偉そうなやつだな」

 

承太郎からこの様子を聞いたディケイドは、上から目線で修達の働きを褒める。それにジョセフが、思わずその態度にツッコミを入れてしまった。

そしてこの話はラチェット達にも聞こえており、そのまま大慌てになる。

 

『やべぇぞ、このままじゃまたおれ達、お空の星にされちまうぞ!!』

『大丈夫、こういう時の為の最終防御システムがありますから!』

 

しかし慌てるフォクシーをよそに、ラチェットはそのままなんと更にシールドを張り始める。しかし、そのシールドはなんと五重に張られているのだ。

 

「あの野郎、まだこんなの隠したのか!」

「でも、逆にこれが最後の手段でもあるだろう。麦わら屋に電王屋、そのほか連中もやれるか?」

「へ、誰にも聞いてると思うんだ?」

【ガッチャーン! 決め技!!】

 

するとエグゼイドが真っ先に反応して、ゲーマドライバーのレバーを開閉。必殺技の体勢に入る。

 

「行くぞ、遊真!!}

【マキシマムクリティカルブレイク!!】

「オッケーだ。(ブースト)六重(クインティ)

 

そしてエグゼイドに促された遊真も、強化の印を使えるだけ使って二人で飛びあがる。そしてそのまま二人で飛び蹴りの体勢に入り…

 

「「はぁああああああああああああ!!」」

『よし、ならこのまま迎撃してやります!』

「更にノロノロ・フィールドで…!』

 

そのまま一緒にライダーキックの体勢で鉄人くん49号へと突撃していく。しかしラチェットも迎撃しようと、そのままミサイルで二人を纏めて撃墜しようとするのだが…

 

【ショルダーファング!】

『『『『えええ!?』』』』

 

直後、聞き覚えのない音声と共にブーメランのような物がミサイルへと飛んで行き、それがミサイルを迎撃した。発射した直後でミサイルが爆発し、その衝撃でノロノロ・フィールドは未然に阻止されてしまった。

 

「みんな、遅れてすまない」

「え、ダブルですか?」

 

現れたのはダブルだったが、左半身がジョーカーの黒に対して右半身は白という見たことない姿だった。しかも、体中が刺々しい姿をしている。

 

「これはファングジョーカーと言って、紛失していた自立型メモリの一つで変身した姿なんだ」

『制御が難しくて、ジョーカーメモリでしか変身出来ないのが玉に瑕だけどな』

 

見たことが無い姿に困惑するきららに、ダブル自ら説明する。その時、何故か左目が点滅して翔太郎の声がして目が光らない時にフィリップの声がする。そしてその直後にエグゼイドと遊真のキックが命中した。

 

「「はぁああああああああああああ!!」」

『ひぇえええええええええ!! シールドがぁあ!?』

『落ち着いてくださいおやびん! まだ四枚も残って…』

「「双赫螺旋雹星群(リユニオンスパイラルヘイル)!!」」

 

しかしその直後、なんとろくろと紅緒が超加速してそのまま突撃していった。そしてろくろの炎の拳で加速した紅緒のキックを、そのまま叩き込む。あまりの威力に、これまたシールドを粉砕されてしまった。残り三枚だ。

 

「おっし、俺達も加勢に来たぞ!」

「でも…今ので、呪力が…切れました」

 

加勢に来たは良かったが、どうやら必殺の一撃で残りの力を使いきってしまったようだ。しかし、シールド一枚は確実に破壊したので撃破までは一歩進めた。

 

「焔魔堂ろくろ、よくやった」

『あとは任せておけ!』

【ファング! マキシマムドライブ!!】

「おっし、今度は私も暴れさせろ!」

 

だがダブルがその隙を突いてそのまま必殺技の体勢に入る。ダブルドライバーにセットされたファングメモリはティラノサウルスの横顔を模しており、その鼻先の角を模したパーツを三回押すと、右脚の側面に刃が生える。そして負傷していたジンジャーが、いつの間にかこちらに駆け出してきた。ゆのやなずなが、魔法で治癒したようだ。

 

「『ファングストライザー!!』」

「食らえや、必殺の拳!!」

 

そしてダブルの斬撃を伴った回し飛び蹴りと、ジンジャーの拳圧だけで大火災を鎮火したという必殺の拳が、同時に叩き込まれた。当然、これでシールドは壊れて残り二枚だ。

 

「おし、麦わら! 俺達も行くぞ!!」

【Charge & Up!!】

「おっしゃ、やるか!!」

 

そして電王とルフィも、更に必殺技の体勢に入る。電王は仮面が右足に集中し、ロッド電王の仮面が先頭に回る形になっている。更にルフィも、両腕を骨風船で巨大化させて武装色でコーティングしている。

 

「だりゃああああああああああ!!」

「ゴムゴムの灰熊銃(グリズリーマグナム)!!」

 

そして電王の必殺キック"ボイスターズキック"が、ルフィの必殺技と同時に放たれた。命中したことで、シールドは更に破壊され、残り一枚だ。いよいよ、フォクシーもラチェットも揃って慌てだした。

 

『マズいですよ! 早く、何とかしないと…』

『落ち着け、まだノロノロ・フィールドが…』

「させません!」

 

しかし、このタイミングできららが、ノイトラを倒した手段を再び決行した。承太郎と徐倫に、強化魔法をまとめて掛けたのである。

 

「無理をかけてゴメンね」

「大丈夫です…その代わり、決めちゃってください!!」

「アイアイサー!」

 

きららからのエールを受けて、承太郎と徐倫は駆け出した。そしてそれに合わせ、クウガは再びゴウラムへと変形して二人を乗せて飛翔する。

 

【Final Attack Ride! FFFFaith!!】

「士、このまま僕達も畳みかけるよ」

「だな。やらせてもらうぞ」

【Final Attack Ride! BBBBlade!!】

 

そしてそれを見たディエンドとディケイドが示し合わせると、共にとどめの必殺技を放つためのカードをセットする。

ファイズブラスターの銃口とブレイドブレードの刀身にエネルギーが充填されてき、二人はそのまま鉄人くん49号に狙いを定める。

 

『やべぇ! ノロノロ・フィールド!!』

 

フォクシーが危険を察し、ノロノロ・フィールドを発動しようとする。しかし、そうは問屋が卸させない。

 

「させるか!!」

『『『『ぐへぇえっ!?』』』』

 

そこにクウガゴウラムが衝突、その衝撃でノロノロ・フィールドも阻止に成功した。そして激突する直前に、二人そろって跳びあがった。

 

「ダメ押しのクラッカーブーメランだ!」

「同じく、シャボンランチャー!!」

 

そしてジョセフとシーザーも援護しようと、波紋でのクラッカーとシャボンで牽制する。そしてそのまま、承太郎と徐倫は落下の勢いでスタンドのパンチラッシュを叩き込んだ。

 

『『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』』

『『オラァアアアアアアッ!!』』

 

そしてついに、完全にシールドを破壊することに成功した。もう、後はディケイドとディエンドの攻撃を叩き込むだけだ。

 

『マズい、今度こそノロノロ・フィールドを…』

「させると思うか!」

 

しかし、そこでシーザーがまさかの活躍を見せた。なんと、先ほどのシャボンがいつの間にかカッターに変化してたのだが、それがレンズの役割を果たして太陽光線を収束し…

 

『あっちっぃいいいいいいいい! 何だコレ!?』

『太陽光の収束による熱光線…まさかこんな!?』

「対柱の男用の切り札だが、悪人相手なら遠慮はいらん。そのまま真っ黒に感光しろ!!

 

そのままコクピット内が高熱にさらされ、ノロノロ・フィールドを使う隙を完全に失ってしまった。そしてその間に、必殺技の為のエネルギーは充填された。

 

『どういうことですか!? 麦わらを始めとした連中を苦しめるために、死苦と韻を踏んで49号ににしたはずなのに、何で負けそうになるんですか!?』

 

その一方で、49号から響くラチェットの叫び。49号のナンバリングの意味が判明するが、そこにディケイドが攻撃の直前に返事を返す。

 

「それ、お前らが苦しむって可能性は考えなかったのか?」

『『あっ……』』

『『おやびん!?』』

「でも止める必要はないよね」

 

そしてそのままディエンドも返して、ファイズブラスターを発射する。ファイズの攻撃エネルギーである"フォトンブラッド"で構成されたビーム"ディエンドフォトン"が鉄人くん49号に照射された。

 

「こいつも食らいやがれ!!」

 

そしてそれに合わせて、ディケイドもブレイドブレードで縦一閃"ディケイドエッジ"を放つ。一閃とビームが叩き込まれ、鉄人くん49号はすぐさま爆発四散した。

 

「「これで勝ったと思うなよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

「今日はこれで勘弁してあげるわぁあああああああああああああ!!」

「うぷぷぷぷぷぷぷ!」

 

フォクシー一味もラチェットも、大きく吹き飛んで行った。ハンバーグだけはフォクシーを小馬鹿にするいつもの笑いを上げていたが。そして4人は、飛んで行ったまま空の星になったのであった。

 

「さて。後は里に戻るのと、他の連中の安否の確認だな」

「だな。何人かは逃げちまったが、これでゲームクリアだろうな」

「皆さん。脱線したデンライナーも線路に戻せましたから、これで一緒に里へ帰還しましょう」

『オーナー、ありがとうございます!』

 

勝利を確信したディケイドとエグゼイドだったが、その直後にオーナーから伝えられた情報もあって、電王共々、変身を解除してデンライナーへと乗り込もうとする。

 

「皆さん、ちょっといいですか?」

 

そんな中、ランプが急にこちらへと声をかけてきた。

 

「どうした?」

「今回の戦いもあって、皆さんのことを信用したいと思いました。なので、私が皆さんに隠していたことを、仮面ライダーや他の異世界からの助っ人の皆さんに話したいと思います」

「ランプ、まさかあのことを…」

 

どうやら、ランプは何か隠していることがあるらしく、それについて話したいというのだ。

 

「あの事? なんだ?」

「詳しくは他の皆さんと合流してからになりますが、私の過去、女神候補生だっていう話をしたいと思います」

「それだったら、私もあの話をしたいです。承太郎さんが言っていた、アルシーヴさんの信念云々について」

 

ランプに便乗するように、きららからも打ち明けたいことがあるという話が飛び出した。そしてそれを聞いた士と承太郎は、当然…

 

「わかった。全員が揃ったタイミングで、改めて聞かせてもらうぞ」

「里に戻ったら、改めてジジイとも会議が必要だな。特に、ジジイのスタンドの念写を何とかして使わせて、ショッカーの新首領の情報を手に入れねぇと」

「おし、ならそっちは任せた。私はちょっと、アルシーヴにこの事を話しておく」

 

そんな折、不意にジンジャーからそんな提案がなされた。それについて思うところあり、声をかけたのはローだった。

 

「例の神官に不信感があるらしいが、こっちに味方はしねぇのか?」

「エトワリア全土の危機かもしれねぇから、できれば協力したい。でも、今のアルシーヴを放っておけないのもあるしな。できれば他の七賢者や、アルシーヴとも協力したいが……」

 

そして事情を離したジンジャーは、いったん間を置いて話を続ける。

 

「もし今後も敵対するようなら何とかしてアルシーヴもあの敵の連中共々、倒して止めてくれ」

「…わかった。その時は、改めて俺のスタンドで裁いておく」

「頼んだ。ルフィ達も、期待してるからな」

「ああ、任せておけ!」

 

そして特に期待してたのか、承太郎やルフィにそれらを託して本人は転移魔法で去っていった。

 

「おっし、それじゃあ里に戻るとするか…」

「その前に、私の話を聞いてくれないか」

 

そしてディケイドが告げながら変身を解除しようとすると、不意に聞き覚えのない声が響く。そこにいたのは、ダブルたちを助けたノアに、何故か翔太郎の体を運ぶ夢路と、それについてくるメリーと勇魚の姿があった。

 

「誰? っていうか、翔太郎さんがなんで?」

『ああ。言い忘れてたけど、ファングでの変身はフィリップの体をベースにしてるんだ』

「その通り。それと彼、ノアは魔人(ヴァンデル)だが敵対の意思が無いから安心してくれたまえ。ファングも、彼が見つけてくれたんだ」

 

ゆのの疑問に対して事情を説明すると、ダブルが変身を解除する。そこに現れたのは、確かにフィリップの姿があった。そしてそのまま、ノアがまた声をかけてくる。

 

「君達に興味があってな。有力な情報を与えたいと思った次第だ」

「情報? なんだ??」

「この世界に来るかもしれない遺体の守護者"ビィト戦士団"についてだ。他にも、守護者としてこのエトワリアに呼ばれるかもしれない戦士達の目星もついている」

 

そして、ノアからそれらの情報を受け取った後、彼らはデンライナーで里へと帰還していった。




次回で前半と総力戦の終了です。そこからがっこうぐらし編に入るので、ぜひお楽しみください。


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第41話「アルシーヴの思惑と首領の正体。そして…」

お待たせしました!
年内最後の投稿、前半のラストになります。

一部の説明、デクのワン・フォー・オールやろくろの破星王については尺の都合で省略することになりました。各パートでの回想で説明する予定なので、少々お待ちください。後、シャロの衣装を燃やした理由も序盤で明かします。

今回のあとがきは予告を挟むので、先に言っておきます。
皆様、よいお年を。


「で、あちこちにスタンド使いやら波紋使いやらの援軍もあって、あの紳士どもも協力してくれたお陰で全員無事……なのはいいが」

 

里に戻ってみると、渡達が送った増援のお陰でクリエメイトも味方のライダーやそれ以外の戦士達も無事だったことが判明する。ちゃんとウィルバーとロン毛も、あのジャックという男が変身したコーカサスから逃げ切ったようだ。そんな中、士は一つ気になることがあった。

 

「何でお前、服装変わってんだ?」

「それが、さっきの戦いで燃えてしまって…」

 

シャロの着ている衣装が最初に着ていた物と違うのが気になったようだ。クローズマグマの攻撃の余波で燃えてしまった服は着替えており、元とは別の格好をしている。

ヘソ出しでミニスカート、毛皮の縁がついた金のマントと露出が増えてかつゴージャスな格好になっている。

 

「でも、なんというか…意外と似合ってるよね」

「ああ。桐間君は日本人離れした金髪碧眼に、育ちの良さが見える仕草もあるしな」

 

そんな中、出久と天哉がシャロの新衣装について好印象な発言をする。しかし天哉がシャロの仕草について触れたところで、急にシャロの表情が気まずそうになる。

 

「あ、実は私って家が貧乏で、お嬢様学校で特待生取ってるんです。それで仕草は…生き残るための処世術みたいなもので」

 

滅茶苦茶世知辛い事情が語られ、天哉の顔が青ざめる。失言をしてしまったと気づいたようだ。

 

「すまない桐間君!! 俺は事情を知らぬとはいえ、君に失礼なことを!!」

「ええ!? いや、そんなオーバーな謝罪をされても…」

 

天哉が地面に頭を叩きつける勢いで土下座し、シャロも仰天してそんな彼を止める。

 

「私の意識が無いうちにそんなことが…」

「でも澪ちゃんが無事で、本当に良かったよぉ~~~~!」

「え、唯!?」

 

一方で、プッチに抜かれたディスクを戻したことで、澪も目を覚ましたようだ。そしてそんな彼女に、唯が泣きながら抱き着いて頬擦りまで始めてしまう。そこに澪も驚いてしまうのだった。

 

「良し、何はともかくそこの嬢ちゃんの話とやらを聞いてみようぜぇ」

「だな。俺達はこの世界の情勢を、何も知らねぇからな」

 

そんな中で仗助と定助の二人が先導する形で一同はランプが話したがっていたことを、聞こうと集まった。この二人は名前が一文字違うだけで後は同姓同名、妙に気が合うのかもしれない。

 

「……」

「ジジイ、気持はわからんでもねぇがあいつは気にしてねぇって言ってるんだ。気にするな」

 

そこで以外にも、承太郎の時代のジョセフ"老ジョセフ"が気まずそうにしている。なんと仗助はジョセフが不倫した日本人女性との子なのだという。仗助自身は自分の時代でジョセフと和解したとのことで気にしてないようだが、ジョセフ自身はやりづらそうな表情である。

 

「しかし、アレが未来の俺ねぇ…」

「不満か? おれは正に未来のお前だと思ったけどな」

 

その一方で、未来の自分を見た過去の時代のジョセフは何やら不満なようだ。シーザー視点ではジョセフがそのまま年を取ったように見えるので、むしろ納得していたようだが。

そんな中、一同は集まってランプから話を聞くこととなる。

 

「まず、私は女神候補生という女神様の後継者を養成する学校の生徒でした。まあ、私は落ちこぼれだったんですけど」

 

ランプがまず語ったのは、自分の素性だった。ここらについてはきららにすでに話しているが、仮面ライダーやジョースター一行、ルフィ達それ以外の戦士は初耳の情報である。

しかしそんな中、ポルナレフが質問してくる、

 

「おい、神って後継とかいるのか? おれはてっきり、世界の始まりからずっと生きてるものだと思ってたんだが……」

「え? えっと、どう言えば……」

 

しかしランプが質問の意図がわからないような反応をしている。正直なところ、この話を聞いた一同全員の疑問である。

その時にウソップが何かに気づいたようだ。

 

「あ、ひょっとして…」

「ウソップ君、どうしたんだい?」

 

ウラタロスが気になって質問すると、かつて旅した際に立ち寄った島での冒険を簡単に説明する。

 

「実はさ、おれ達が偉大なる航路(グランドライン)の前半で立ち寄った島の一つに、島の統治者の肩書が"神"になっている場所があったんだ。ひょっとしてこの世界の女神様ってのも、肩書みたいなのであって実際は人間なんじゃねぇのかな?」

 

ウソップの話を聞いて、全員が納得した表情をしていた。

 

「なんだ、鎧武のヤツみてぇな超越存在ってわけでもねぇのか」

「とすると、異世界を観測するのも、能力じゃなくて秘術や技術の違いなのかもしれないな」

そうか、この世界の魔法も個人の適正こそあれど、スタンドや個性のような能力と違って誰でも身に着けられる。なら、その異世界の観測とやらも…! あ、ごめん。続けて」

 

士と戦兎が順に女神について思ったことを口にして、それを聞いてまた出久がボソボソと考察を口にするが、すぐに話の腰を追っていると気づいてランプに話を振りなおす。そこから、またランプは話を続けた。

 

「それで女神候補生の学校では、代々の筆頭神官が教師として勤めています」

「ああ、そう言うことか……」

「あ? なんだ、何が言いてえんだ?」

 

その単語で一同(ルフィ除く)は、察した。そして回答したのは、この中でも一番の頭脳派である、戦兎だ。

 

「アルシーヴは君の恩師、そういうことだろ?」

「はい。アルシーヴ先生は女神候補生や神殿に勤める人達から慕われる、人格者でした。それがどうして、オーダーに手を出したのか……」

「君達、すまないね。最初はきららにも隠していたんだけど、かつての師匠と対立するランプの様子に、協力者をいたずらに混乱させると思ってたからね」

 

マッチから謝罪と同時に隠していた理由が語られたが…

 

「いや、別にそんなことねぇけど?」

 

最初に士から、予想外の答えが返ってきた。そして次々に言われる言葉。

 

「あのアルシーヴってのがランプの母ちゃんとか姉ちゃんで、最初からその女神様をどうにかするのを知ってんのなら驚いたけど、別にな」

「僕ももっとこう、このエトワリアが"何かの目的のために作られた世界"とかそういう話だったら、多少は驚いたんだけど…」

「それか、聖典を作るために生贄を捧げる必要があるけど、アルシーヴがそれについて行けなくなったならともかく……」

 

最初にルフィが鼻をほじりながら言うと、修やろくろが思いのほかに物騒な推察を口にして「だから別に驚くことも無い」ということを伝える。そしてそこに、今度は承太郎が口を挟んできた。

 

「まあ、良くも悪くも普通じゃねぇ経験は多いし修羅場もそれなりに潜っている……そんな俺たちだ、この程度で混乱なんざしてらんねぇのよ」

「ま、まあ……とりあえず受け入れてくれてありがとう」

 

承太郎の言動に冷や汗をかきつつ、お礼を言うマッチ。ランプも無言で、何度も頭を下げていた。

 

「で、今度はきららがアルシーヴの謀反について話してた思うところってのを、次は話してくれねぇか」

「は、はい。それじゃあ…」

 

そして士が話を振り、今度はきららが話し始めた。

 

その内容は、士達がエトワリアを訪れる前のこと。七賢者の秘蔵っ子であるハッカと交戦した際、彼女が自身の記憶を夢幻魔法の応用で見せてきたという。

そしてそこには、封印される直前の女神ソラとアルシーヴのやり取りが映っていたらしく…

 

「アルシーヴに封印されることを、女神の方が了承してたかもしれねぇってことか?」

「はい。もしそうなら、今回の事件は何か理由があったのかも…」

 

その話を聞き、ますます頭が追い付かない士。ちなみに、その後で使用したオーダーで聖なる遺体が召喚されてしまったようである。そんな中で、話を聞いていた康一が何かを思い出してそれを口にする。

 

「そういえば、僕のお姉ちゃんが昔見てたアニメで、異世界に勇者として召喚された三人の女子高生の冒険物があったんだ。最初は召喚したお姫様を魔王から助けるんだと思ったんだけど……」

 

そして間を置いてそのアニメの結末を離すのだが、中々ショッキングな内容だった。

 

「そのお姫様が世界に害をなす存在になっちゃったから、"自分を殺してもらうために勇者を召喚した"って結末だったんだ。魔王はそのお姫様に恋してたから、殺させないために攫ったって展開で…」

「え? じゃあ、女神様もそうなってるの?」

「だとしたら、救いが無さすぎるんだけど…」

 

あまりにも救いのない展開で、ココアもゆのも顔を青ざめる。もしも女神ソラも似たような理由で封印されていたら、最悪自分達で倒さないといけないかもしれない。

 

「でも、これゲームにしたらだいぶ斬新な展開で話題になりそう…」

「うん。それで世界を救うかたった一人を救うかで葛藤したり、両方とも救えないか模索したり…」

 

ゲーマーな永夢とゲームクリエイターな青葉は、むしろ創作意欲が溢れている。完全に職業病だ。

そんな二人を差し置いて、まず士と承太郎、そして老ジョセフは話をまとめる。

 

「まあ、何にしてもまずは話を聞いてみねぇとわかんねえだろ」

「そのためにも、ジジイにはまずショッカーの新首領の正体を暴いてもらわねぇとな」

「じゃな。連中をぶっ倒して、じっくりとそのアルシーヴから話を聞かせてもらおうかの」

 

そして改めて今後の方針を決めた一同は、そのまま居住区へと移動する。そしてそこで見つけた物は…

 

 

「まさか、ファンタジーの世界にテレビがあるとはな……」

「カンナさん、家具職人のはずなのに普通に電気製品も作れるんですよね」

 

士の視線の先にあった薄型テレビを目の当たりにして、驚愕と呆れが同居する奇妙な感情が沸き上がる。ゆの曰く、カンナがクリエメイト達の話から地球の文明機器の類を知り、色々と試作した末にできたとか。

ちなみに、ノイトラと最初に遭遇した野クルメンバーも、キャンプ道具を作ってもらっている。

 

「まあ、ともかくこれで念写が可能なはずじゃわい。だが、一つ忠告しておくことがある」

 

そんな中、ジョセフがテレビに相対した直後、カンナに向き合ってあることを言った。それは、ハーミット・パープルの欠点についてだ。

 

「ワシの念写は、一回使う毎にカメラを破壊せんと発動せん。テレビでも、必ずどこかで使用限界が来て爆発してしまうんじゃ。だから作り手、それも手作業の職人がおるならそれを了承して欲しいんじゃ」

「成る程な。まあアタシも自分の作品が壊されるのに思うところあるけど……」 

 

ジョセフから聞かされた話に対し、カンナは少し思案する。しかしすぐに答えは出た。

 

「里、ひいてはエトワリア全体の危機だ。贅沢は言わないよ」

「感謝する。それじゃ、早速」 

 

そしてジョセフは、早速ハーミット・パープルを発動。それをテレビに触れさせ、発動した。

 

『このマンションちょっと変わってるけど、私がいるから大丈夫よ』

 

するとテレビが点き、台詞が字幕の白黒アニメが映し出された。幽霊っぽい女性が舞台と思しきマンションにやって来た兄弟に語りかけている。それに食いついたのは、永夢だ。

 

「あ、マーマーマンションやってる」

「なんだこれ? 白黒の台詞なしアニメって、何時のやつだよ」

「いえ。これ、それっぽい作風にした最近のアニメなんですよ」

「そ、そうなのか」

 

永夢から説明を受け、意外そうな顔でその映像を見るポルナレフだった。

 

『おしゃれ探偵ラブリーショコラ、大好評放送中!』

「あ、ショコラさんだ。懐かしいなぁ」

 

するといきなりチャンネルが変わり、テレビに美少女アニメのCMが映る。ゆのが食いついた辺り、彼女の世界の番組らしい」

 

『ヤンキーだったアタイが……何の因果かマッポの手先!』

「あ、ヤンキー刑事(デカ)もやってる」

 

かと思いきや、またチャンネルが変わってヤンキー風ファッションの美少女がそんな台詞を言うドラマの冒頭部が映る。今度は青葉の世界の番組らしい。

 

『さあ、鬼丸関と横綱・刃皇の試合が始まりました!』

「ほう、相撲中継か……後でゆっくり堪能させてもらうか」

 

またもチャンネルが変わって、相撲中継が映る。160cm前後しか身長のない力士と横綱らしき巨漢の試合という、危うさのある光景だ。承太郎の言動から、相撲好きというのが見て取れる。意外な趣味だ。

 

『怪盗ラパン、華麗に参上!』

「え、これシャロさん?」

「違うよ、出久くん。私たちの世界の小説家さんが、シャロちゃんをモデルに作った小説のアニメ版だよ」

 

更にチャンネルが変わると、そこにシャロそっくりの怪盗少女が名乗りを上げるシーンが映し出される。ココア達が暮らす木組みの町在住の、"ペンネーム・青山ブルーマウンテン"はこの怪盗ラパン以外にも身の回りの人物をモデルにした小説をいくつか執筆しているらしい。

 

『おーい、ネコドラくーん!』

「な、なんか見覚えある気が……これは?」

「さあな。おれは知りたくねぇし、たぶん知らねぇ方がいいだろ」 

 

しかしまたチャンネルが変わり、某国民的アニメの猫型ロボットに似た何かが映る。士が珍しく冷や汗をかきながら言及するも、承太郎に咎められた。

そしてそこから、何度もチャンネルが変わり続ける様が映り、映像も音声もぶつ切りのものがテレビから流れ続ける。

 

「おい、これは何だ?」

「なんか、目がチカチカするよぉ……」

「ですね。これは…」

「ひとまず念写と言っておいたが、音声を拾って知りたい情報の掴むという手法なんじゃよ。もっと細かく言えば、念聴とでも言うべきかの」

 

困惑する士、画面の移り変わりに不快感を覚える千矢と夏美。そんな中でジョセフがこの能力を解説して、早速音声がつなげられた。 

 

『オーバー……ヘブン!」

「よし、オーバーヘブンと来た! このままショッカーと続けば、首領の名が出てくるはずじゃ!!」

 

そしてしばらくその音声を聞いていると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ショッ…カーの! シュ、料……の、縄、ディ…オー!」

「な、何!?」

「今の音声を続けて言うと……」

「オーバーヘブンショッカーの首領の名は、DIO!?」

 

なんと、オーバーヘブンショッカーの首領は、すでに死んでいるはずのDIOなのだ。ジョセフだけでなく、ポルナレフや花京院も驚愕した。しかしジョナサンと彼がいた当時のディオがいたことを考えると、承太郎と会う前のDIOなど色々な想像が浮かんできたが、次の言葉でそれらの可能性は消し飛んだ。

 

『ヘイ! コー! 世界…殻、北、D! 王!」

「平行世界から来たDIOだと!?」

「おい、もし今のが本当だとしたら……」

 

まさかの言葉にアブドゥルも驚愕。承太郎が次の言葉を紡ごうとしたその時、それは起こった。

 

 

 

「な!?」

「コイツは……」

 

 

 

突如、テレビに何者かの姿が映った。それは死人のような白い肌に金髪の男性で、左肩には星型のアザがある。振り返ると顔は影が差していて分かりづらいが、承太郎達には面影が重なった。

 

 

 

『ジョースターの血族どもに仮面ライダー…そしてクリエメイトども………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴様ら、見ているな!!

「DIOぉおおおおおおおお!」

 

承太郎がその名を叫んだ直後、テレビは大爆発。今回の念聴は終了となってしまった。

 

「なるほど、これで大体わかったな」

「わ、分かったって何が……」

 

衝撃の情報、まさかのDIOがこちらの念聴を嗅ぎ付ける、など驚きの展開が続いたが、ここで士はオーバーヘブンショッカー首領の正体についてある推測を立てた。そしてそれをきららに効かれた際に答えたのだが…

 

「恐らくそのDIOは、承太郎に勝った場合の世界から来たDIOなんだろう。そうじゃねぇか?」

「ああ。俺も丁度、同じ仮説を立てたところだ」

「え? それって…」

「士君も承太郎さんも、一人で納得してないで話してください!」

 

二人の話を聞いたきららも夏美もついて行けず、細かい解説を求める。そこに仕方ないと言った感じで答える士達。

 

「最初にジョナサンがDIOと戦い始めたのが、ジョースター一族の戦いの始まりだ。そこに柱の男とかいう化け物と戦った若い頃のジョセフ、復活したDIOを倒す旅に出た承太郎、スタンド使いを生み出す矢を巡る事件があった時代から来た仗助…って言った具合に、ジョースター家の人間達が大きな事件に立ち向かった時代から、各時代のジョースターとその仲間がこの世界に来たわけだ」

「恐らく、それらの時代に聖なる遺体は飛んでいくはずだったんだろう。それを考えると、戦いが始まる前のDIOや俺達と関わりのない平行世界から来たことは、考えづらいだろう。(えにし)って言葉もあるくらいだしな。後、仗助からもちらっと聞いたんだが…」

 

そして解説していると、そこに仗助もさっそく参加してくる。これを聞いた際、きららは深く納得することとなる。

 

「おれ達が関わったスタンド使いの一人曰く、"スタンド使いはスタンド使い同士惹かれ合う"らしいっすよ。運命の赤い糸とか戦い合う宿命みたいなもの、らしいっす」

「なるほど。私もパスを感じる力を使えるので、結構納得です…もしかして、あのプッチって人もそのことを言ってたのかも?」

「ともかく、これで敵の正体がわかったが後は目的だな…フィリップ、何とかできるか?」

「少し試す形になるけど、恐らくは」

 

そんな中、今度は翔太郎とフィリップがDIOの目的について推察が出来ないかを話していたのだが、そこでフィリップが夢路に声をかけてくる。

 

「藤原夢路、君の聖なる遺体を貸してくれないかい?」

「? いいけど、それで何する気だ?」

「ちょっとぼくの能力をエトワリアでも使えないか、実験したいんだ。本来はぼくや翔太郎のいた世界でしか使えないんだけど、遺体の超パワーがあればいけるかもしれないんでね」

 

言いながら、夢路の持っていた遺体の両脚を受け取る。そして意識を集中し始めると、遺体の光が彼を包み込み…… 

 

「よし、行けそうだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

検索を始めよう」

 

フィリップがそう呟いた時、彼の脳裏には無数の本棚とそこに収まった大量の本がいくつも広がる光景が浮かんだのだ。そして翔太郎は、それを察したのか一言呟く。 

 

「使えたか。地球(ほし)の本棚」

「星の本棚? なんだそれ??」

「説明、求めるんだけど…」

 

急な固有名詞の出現に、ろくろは困惑。メリーもそのまま続きを聞こうとするが、ここでフィリップのとんでもない力が判明した。

 

「フィリップの脳はな、俺たちの世界の地球に刻まれた記憶にリンクして、ありとあらゆる情報を得られるんだ。それこそ、現在進行形で起こっている事件や一個人の詳細な情報まで、事細かく」

「ちょ、なんだそれ!?」

 

ろくろは余りにもとんでもない力に、素っ頓狂な声を上げる。他のメンバーも、士を始めとした一部のライダー組以外は全員、開いた口が塞がらない。

しかしフィリップは気にすることなく、そのまま情報を引き出そうと本棚の本を検索し始める。

 

「最初のキーワードはDIO」

 

DIOの名を検索ワードにすると、脳内の本棚が一部姿を消して、そのままDIOに関する情報の記載された本だけが残った。

 

「二つ目のキーワード、スタンド能力」

 

そこで更にキーワードを入れると、また本が減っていった。普段の探偵業やガイアメモリ犯罪でも、翔太郎の集めた情報で検索をして犯人や使用メモリを炙り出すのだが、今回はある程度キーワードの推測がつくため、検索自体は非常に容易だった。

そしてここで、最後のキーワードを口にした。

 

「三つ目、おそらくこれが最後のキーワードだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天国」

 

そしてついに、一冊だけ本が残った。恐らく、これがDIOの目的に関する本だろう。そしてその本の題名は…… 

 

「天国への行き方?」

 

そしてその本を読み、内容を把握したことで承太郎へ声をかけるフィリップ。

 

「空条承太郎。君はこの世界に迷い込む前、エジプトでDIOの残した本を読んで、その内容が危険だと察知してすぐにその本を燃やした。違うかい?」

「……まさかそんな事まで知れちまうとは、やれやれだぜ。ああ、その通りだ」

「やはりだ。まだ平行世界のDIOについての詳細はわからないが、恐らくそれが奴に関与している」

 

そして承太郎が知っていたある事実、それを聞いた一同は戦慄することとなる。 

 

「DIOの残したこの天国への行き方。この天国とは、"精神が進化して行き着く先"との事だそうだ。そしてDIOはそこに行くために、いくつか必要な物を理論上は必見したそうだ。今からそこの文面を読み上げるよ」

 

そしてフィリップは、間に解説を挟みつつその内容を読み上げた。

 

< 第1節 >

必要なものは 『わたしのスタンド』である

『ザ・ワールド』

我がスタンドの先にあるものこそが、人間がさらに先に進むべき道なのである

 

「ザ・ワールドはタロットの世界を暗示し、スタープラチナと同じく時間を止める力を持つ。基礎能力としてはパワーとスピードは互角、かつ射程は近距離操作型にもかかわらず10mに達する。その強力な力を基盤にするそうだ」

 

< 第2節 >

必要なものは 信頼できる友である

彼は欲望をコントロールできる人間でなくてはならない

権力欲や名誉欲 金欲・色欲のない人間で彼は人の法よりも

神の法を尊ぶ人間でなくてはならない

いつかそのような者に このDIOが出会えるだろうか?

 

「この友というのは、エンリコ・プッチその人だ。聖職者でかつあの狂信ぶりは、まさにDIOの欲望をコントロールする神の法を尊ぶ人間には相応しいだろう」

 

< 第3節 >

必要なものは 『極罪を犯した36名以上の魂』である

罪人の魂には、強い力パワーがあるからである
 

 

「大ショッカー幹部を配下にせず始末して乗っ取ったのも、これで辻褄が合ったね。この極罪を犯した魂として手にする目的だったわけだ。ダークライダー達が素直に命令を聞いたのも、これによるものだろう」

 

< 第4節 >

必要なものは 『14の言葉』である

「らせん階段」「カブト虫」「廃墟の街」「イチジクのタルト」「カブト虫」

「ドロローサへの道」「カブト虫」「特異点」「ジョット」「天使(エンジェル)

「紫陽花」「カブト虫」「特異点」「秘密の皇帝」

わたし自身を忘れないように

この言葉をわたしのスタンドそのものに、傷として刻みつけておこう

 

「恐らく、この言葉はプログラムの様なものだろう。言語の組み合わせで機械に指示を出す様に、スタンドにこの14の言葉をプログラムとして聞かせるのが、恐らく重要だ」

 

< 第5節 >

必要なものは 『勇気』である

わたしはスタンドを一度捨て去る『勇気』を持たなければならない

朽ちていくわたしのスタンドは 36の罪人の魂を集めて吸収

そこから『新しいもの』を生み出すであろう

「生まれたもの」は目醒める

信頼できる友が発する 14の言葉に知性を示して…

『友』はわたしを信頼し、わたしは『友』になる

 

「この目覚めたもの、というのはジョニィ・ジョースターのタスクの様な、スタンドそのものが変化や進化を経た姿、なのだろう。ザ・ワールドが強力かつ使いやすいことを考えると、強力になっても何かしらデメリットが生じる可能性や、今までの戦い方も捨てる必要があるから、勇気は必要だろう」

 

< 第6節 >

最後に必要なものは 場所である

北緯28度24分 西経80度36分へ行き……

次の「新月」の時を待て……

それが『天国の時』であろう……

 

「この座標に相当するのが、空条徐倫がこの世界に来るまでいたケープ・カナベラルだ。この新月の時、そこでDIOは天国に到達する……このエトワリアで彼らを実践するとして、果たしてこの座標に位置する場所がどこかは、未だ不明だ」 

 

「以上だ。ぼくもこれは得体が知れなさすぎて、正直怖いね。みんなは、何か感想は?」

「……正直、得体が知れねぇとしか言えんな。前の首領や地獄大使を従えずに始末したのも、とりあえず納得はいったが…」

「確かに、何か空恐ろしいものを感じました。それが今回の敵の目的なんて……」

 

フィリップから承太郎が知ってしまったDIOの野望、その得体の知れなさには多くの修羅場を潜った士ですら得体のしれない恐怖を襲った。当然ながら、きららもかつてない脅威を本能的に察したようだ。

 

「しかし平行世界、それも儂等が負けた世界のDIOが敵の首領とはのう。あれだけの規模の組織を率いて、しかも奴自身も得体の知れないスタンドを持っている……早く残りの遺体を回収して、戦力を整えねばこの世界はおろか、あらゆる異世界と平行世界は奴の支配に陥ってしまうかもしれん」

 

ジョセフのこの言葉に、全員は重い空気をその身に纏うこととなる。

士ときららが視線を向けると、不安げな表情を隠せずにいるランプとクリエメイト達に、手に持った己の変身アイテムを見て決意を固める仮面ライダー達、同様に自分の武器や握り拳を見て決意を固めるスタンド使いをはじめとした他の戦士達。反応や行動に違いこそあれど、全員がこれから激しい戦いに身を投じることを予感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガム噛むかい?」

 

1人、空気の読めない発言をしたポルナレフを除いて。和まそうとわざとトボけた可能性もあるが、どちらにしろ場違いだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

~その頃、言の葉の木の神殿にて~

「ジンジャー、無事で何よりだ」

「すまんな、アルシーヴ。それよりも、厄介なことになっちまって…」

 

そしてジンジャーはアルシーヴや他の七賢者達に先ほどの戦いについて話す。

 

「なるほど。古代兵器を強化改造した天才科学者に、あの者達と互角以上に戦う戦士や能力者達…確かに、由々しき事態だな」

「ああ。私としては、あの仮面ライダーやらスタンド使いやら、召喚師たちと手を組んで一緒に戦うべきだと思うだが…」

「シュガーもそれがいいと思うよ。ソルトと一緒に会ったんだけど、めちゃくちゃ強くて怖かった…」

 

ジンジャーから話を聞いてシュガーが賛成の意を告げる。隣で聞いていたソルトも無言で頷いていた。しかしアルシーヴの返答は…

 

「ダメだ、彼らをこの世界の問題に関わらせるわけにいかない」

「何故だ! 奴らはこの世界の常識や強さの基準から、大きくかけ離れている! 私達だけで手に負えるとは…」

「今からそのことについても話す。これは本来、ハッカにしか明かしてない事実なんだが…」

 

しかしアルシーヴから反対意見が飛び出す。しかし、アルシーヴはその理由について話そうと、女神の寝室へと案内した。そしてある事実を明かした。

 

「そんな、ソラ様が…」

「だから、オーダーを使用したのですね」

「ああ、アルシーヴ様。その忠誠心に改めて敬愛いたしますわ!!」

 

横たわる封印されたソラの姿と、アルシーヴから聞かされた事実に驚愕する七賢者達。禁術オーダーを行使した理由が判明した。

 

「なら尚更あいつらと協力するべきじゃないか? 奴等が下手をしてこの神殿を攻撃でもしちまったら…」

「代わりに、聖なる遺体をクリエの代用にするのは止める。堂々と敵対して、今更彼らが協力してくれるとも思えんからな」

 

そこで話は打ち切り、アルシーヴは部屋から去っていった。妙に強情なアルシーヴだったが、今の自分達には従うほか無く、そのまま一同は部屋へと去ることとなる。

そんな中で移動中、セサミがジンジャーに声をかけてくる。

 

「ジンジャー、今回の件で同意できる点は多いですが、アルシーヴ様の意見もわかります。下手に協力して攻撃の意思をこちらに向けられたら、本当にソラ様にも危機が訪れる可能性も否めません」

「……そうかもしれんが」

「とりあえず、理解できるなら納得しなくともよいです。こちらでも独自に対抗手段を立てたほうが良いかもしれませんが」

 

煮え切らない所もあるが、今回でアルシーヴ達はそのまま去っていく。果たして、彼らは今後何が待っているのか?

 

~そして同時刻、オーバーヘブンショッカーの拠点にて~

「やはりか。ジョセフの念写スタンドで、このDIOの正体を気取られたのか」

「ああ、DIO様。おいたわしい……」

 

オーバーヘブンショッカーの拠点にて、首領改めDIOは己の正体がバレたことを察する。それを隣で聞いていたエンヤが嘆いている。しかし、そこでDIOはその心配はないと語る。

 

「いずれバレることはわかっていた。奴のハーミット・パープルで正体がバレたこと自体、これで二度目だからな。ところで、エボルトとバラガンは回収したのか?」

「プッチからの報告ですが、何とか成功したそうですじゃ。バラガンが帰刃を使おうとしたギリギリのタイミング、らしかったですぞ」

 

思いのほか、激戦だったらしいエボルトとバラガンの戦い。しかし、それすらプッチが食い止めて拠点まで連れ帰ったらしい。

 

「今のプッチはかつて天国に至るためのスタンド、メイドインヘブンを使えるのだ。そのパワーはこのDIOのスタンドに次ぐ、強大な魂の力を持っているのだからな」

「なるほど。それで、先ほどカイが聖なる遺体の在処を発見したそうですじゃ」

 

そしてDIOは、午前にカイから報告があった聖なる遺体の在処を伝える。

 

「恐らく、そこに遺体が持ち主に選んだクリエメイトがいるのだろう。さて、誰を回収に向かわせるか…」

「DIO様、よろしければ儂とこの者を砂漠の回収部隊に使わせてはもらえませんかの?」

 

そして回収に誰を送るかを思案した傍から、なんとエンヤが名乗りを上げる。そしてもう一人同伴を名乗らせてきたのは、縦長の白い仮面とヒダのある白いコートを纏った不気味な人物だった。

 

「「DIO殿、僕達を今回の回収に使わせてもらえないかな?」」

「アーロニーロ、まさか貴様が名乗り出るとはな」

 

そこにアーロニーロと呼ばれた仮面の人物を見て、DIOは意外そうな声を上げる。そして肝心のアーロニーロは、何故か声が二重になっているという、不気味さが極まりない。

 

「「実は、ちょっとこの間喰った魂に面白い人物がいてね。そいつの記憶を読んだら、回収に使えそうでね」」

「貴様の喰った(ホロウ)の能力を自在に使う力か…その能力の一つか?」

「「そうだね。そしてその魂の姿をコピーする力もあるんだけど…」」

 

言いながら、アーロニーロが仮面を外したのだが…

 

「恐らく、この姿の女が使えそうで」

 

仮面の下から現れたのは、ウェーブのかかった紫の髪の女性だった。しかも上背もいつの間にか縮んでおり、声も女の物一つと化している。そしてそれを知ったDIOは、アーロニーロとエンヤを砂漠への遺体回収へと向かわせた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そして翌日、改めて遺体の回収に赴くチーム編成と情報整理が為される。

 

「それじゃあ、改めて昨日にノアから聞いた話をまとめるぞ」

 

そして士はノアから聞いた遺体の守護者になる戦士たちの情報を明かし始める。

~回想~

「ビィト戦士団ってのは、何者なんだ?」

「我々の世界で魔人に対抗するヴァンデルバスター、そのチームの中でも若干15歳ながら特に注目されている若手のチームだ」

 

ノアが話していたビィト戦士団の詳細について聞いてみると、思いのほか若いメンバーばかりらしい。しかしそれだけではないらしく、更に詳しい情報を語り始める。

 

「今から数年前、大陸最強と謳われたゼノン戦士団というチームがいたのだが、彼らの壊滅後にリーダー・ゼノンの弟ビィトが興したチームである」

「リーダーの名前が、チーム名になってるんですね…」

「そのようだな。ビィトはゼノン戦士団の戦いに巻き込まれて命を落としかけたそうだが、戦士団の5人が己の生命力を注ぐことで命を繋ぎ、彼らの力である才牙(サイガ)を受け継いだ」

「サイガ? 何だそれ??」

「才牙はバスターが技を使うための力"天力"が結晶化した武器で、バスター最大の奥義だ。本来、バスター一人に一つしか持てないが、ビィトは先進団のメンバー五人の才牙を使えるというわけだ」

 

一人一つだけの特別な力、それに該当する物を持っている人物は今ここに何人かいる。それについて真っ先に反応したのは、徐倫だ。

 

「ちょっと待って! 一人に一つだけの力って、まるでスタンドじゃない!!」

「ああ。君たち風に言えば、スタンドを一人で五つ使えるような物だな。しかも、最近になってビィト自身の才牙を手に入れたから六つに増えたそうだが」

 

想像以上にとんでもない逸材らしいビィト、そんな彼を味方に引き込めれば戦力は大幅に高まるだろう。しかし、そんな彼に注目するのは当然、敵である魔人達も同じだった。

 

「そういうこともあって、ビィトは人で倒せば確実に星が一つ手に入るから、昇格を狙う七つ星達が戦う順番を決めている。そして君達が交戦したガロニュートは、そのビィトに倒された七つ星の一人でもあるというわけだ」

「だったら、早めに見つけないとマズいだろうな……で、他にもこっちに来る連中の目星がついたそうだが、そいつらは?」

 

そして士はそこで、もう一つの情報である他の来訪者達についての予測について聞いてみる。

 

「他にも、死ぬ気の炎という能力を使うマフィアという人間の組織が戦う世界…その世界で最強のマフィアといわれる"ボンゴレファミリー"のボス候補と呼ばれる少年。君達も戦った破面、彼らと戦う死神に人間からなった黒崎一護という少年、そしてクローバー王国の魔法騎士になった"魔力を無効化する反魔法(アンチまほう)"を得た魔力を持たない少年。恐らく、彼らが遺体の守護者に選ばれると見ている。

「情報提供は感謝する。だが、何故おれ達に協力するんだ?」

 

そしてひとしきり情報を聞いたところで、承太郎は人間の敵対種である魔人の彼が協力してくれるのかについて気になったので尋ねてみる。すると、それについては思ったよりもあっさり話したのだ。

 

「私が、人間という存在の可能性に興味があるからだ」

「「「人間の可能性?」」」

 

士、承太郎、きららが口を揃えて質問を返す。すると、これも律義に説明するノア。

 

「私自身、元は人と魔の双方を研究している。人とは何か、魔人とは何か。だれが何のために生み出し、なぜここまで両者に違いがあるのか…そんな中で異世界と、仮面ライダーという人間の為に力を振るう戦士や、多彩な能力や技術を持つ異世界の人間達…世界が違うだけでここまで人間に違いが出るのかも、とても興味が湧いたのでな」

 

人類の敵対種であるにも拘らず、明確に敵意は持っていないらしいノア。かといって好意等を持っているわけでもなく、ただ純粋に知識欲に従順という何処までもストイックな理由がノアの今回の行動理湯だったのだ。

ちなみに、この性格の所為でバスターや他の魔人には都合のいい獲物に見えたらしく、襲ってきたそれらを撃退している内に七つ星に昇格したらしい。

 

「そこでオーバーヘブンショッカーに手を貸したのだが、少々肌に合わないのでな。ある程度調査ノートをまとめたので、残りは元の世界で考察などに専念しようと思っている」

「ノア様、撤退の知らせは首領様に済ませておきましたよ」

 

そしてノアが説明を終えたタイミングで、シャギーが門を生成してロディーナと二人で転移してきた。どうやら彼女と二人で首領であるDIOに話を付けてきたらしい。

 

「さて。話も終わったことなので、私はお暇させてもらおうか」

「それでは仮面ライダーにスタンド使い、あとクリエメイトの皆様。検討をお祈りしておりますわ」

「では皆さん、ごきげんよう」

 

そしてノア達はそのまま、ゲートを介して去っていった。

 

(あなた方には期待してますよ。我らの造物主たる暗黒なる瞳(ダークネス・アイズ)に危害を加ええかねない、オーバーヘブンショッカーの始末をね)

 

その際、シャギーがオーバーヘブンショッカーが自分達に都合の悪い存在なので彼らに始末を託したということも悟られないまま。

 

~回想了~

「それじゃあ、今の4チームは里の外にいるクリエメイトの一団にそれぞれあう可能性が高いから、それを改めて纏めさせてもらうぜ」

 

そして情報を整理し終えたところで、スピードワゴンがチーム編成と目的地を語り始めた。

 

電王組・麦わら一味・ひだまり組・ジョセフとシーザー

目的地とクリエメイト:砂漠地帯の学園生活部

学園生活部はゾンビ化現象が蔓延した巡ヶ丘という町でサバイバル生活を送る女子高生の一団

選定理由:彼女たちがオーダーで呼ばれた際、砂漠地帯にゾンビが大量発生。今回も危険が派生する可能性が高いため、デンライナーで確実に保護する必要があると判断

 

ビルド組・雄英高校組・ラビット組・ジョナサン&ジョニィ組

目的地とクリエメイト:荒野の町にいるもえぎ高校チーム

イギリス人留学生アリスとそのホームステイ先の少女である忍、そしてその友人達が通う高校である。

選定理由:ココアの「世界の妹アリスちゃんの危機だよ!」という熱い希望によるもの。何故か出久が、直感的にここに行きたいと思ったことも大きい。人数が多いため、ジョルノ達の飼ってた亀のスタンド使いを借り受けて馬とバイクで移動。イギリス人繋がりでジョナサンとジョニィも同行。

 

光写真館組・承太郎組・きららとランプ・パッショーネ

目的地とクリエメイト:美食の町に出店中の喫茶店スティーレ(イタリア語で属性の意)

スティーレはツンデレやドSなどの属性女子が接客する喫茶店

選定理由:士の直感で、面識のあるライダーがこっちに来てそうだから。また、スティーレ店長がイタリア人なのでジョルノ達パッショーネがいれば話が通じやすいのではということ。徐倫は同じ時代の仲間がいないため承太郎組にカウント。

※海東はまた姿を消していたので除外。

 

鳴海探偵事務所組・双星の陰陽師・メリー達夢魔組・杜王町組

目的地とクリエメイト:コミックエトワリアで連載中の漫画家達

現役女子高生と漫画家を兼業している少女で連載されている漫画雑誌だ

選定理由:メリーと夢路の希望。勝木翼というクリエメイトが連載している暗黒勇者について、本人から話を聞きたいらしい。翔太郎もビィト達に会えるのでは? と直感を働かせた模様。仗助ら杜王町組は知り合いのスタンド使いが漫画家をしていることから、そいつに会う可能性を危惧しているよう。

 

「まあ、妥当だな。聖なる遺体は近寄ると共鳴するらしいから、持ち主のクリエメイトかそれを呼び出せるきららが出向くのは、必須だろ」

「それじゃあ、僕達やヒビキさん、ボーダーの皆さんや葉君が今回は里の警護をするわけですね。任せておいてください!」

「きららちゃんも、必要だったら呼んでね!」

 

士が理由について納得していると、留守を任されたチームを代表して永夢と青葉が士達に声をかける。そんな中、葉がちょっと複雑そうな顔をしていた。

 

「それが、ヒビキのおっちゃんはしばらく放っておいて欲しいんよ」

「? なんでまた…」

「あのポルカって鍛冶屋の姉ちゃんいたよな。おっちゃん、取られた武器を新しく作るからって弟子入りしたみたいなんよ」

 

まさかの情報を聞いて一同仰天。しかし、彼を知る士だけは冷静そうだった。

 

「まあ、奴は修業を繰り返して強くなる仮面ライダーだ。武器を自分で作るってのも、その修行の一環なんだろ。放っておいても大丈夫だ」

「あ、そうですか……でも、今回私も留守番でいいの?」

 

士から理由を聞いて納得した様子の花名だったが、まだ他のメンバーが心配だったらしく、問いかけてきた。

 

「一ノ瀬さん、君がココアさんや僕達を心配してくれるように、僕達も君を心配してるんです。だから、わかってください」

「そうそう。花名ちゃんも、こういう時はお姉ちゃんに任せなさい!」

 

出久が花名を諫め、ココアが自信満々そうにポーズを決めながら宣言する。そしてそれでも心配そうな花名を、栄依子が無言で笑顔を向ける。口で言わずとも、大丈夫と伝えているようだ。

 

「……うん。その代わり、ちゃんと無事で帰ってきて!」

「はい! 僕の個性ワン・フォー・オールに誓って!!」

 

それに応えた花名に、出久は笑顔で宣言した。昨晩、敵について調べ終わった後、出久は戦兎やココア達ラビットハウス組だけでなく、花名にも自分の個性の秘密を明かしたらしい。自身の個性名を声高々に叫ぶ彼を見て、戦兎はどこか嬉しそうだった。

ちなみに、龍我、千夜、シャロには明かしてない。あまり大勢に話すと勝己以外の仲間には伏せている秘密が露呈しかねないからだ。

 

「それじゃあ、話はまとまったようじゃのう。改めて……」

 

そして最後にジョセフが締め、遂に遺体回収のための旅が改めて始まる……

 

 

 

 

行くぞ!

To be Continued




次回予告
「うそ…何であいつらが?」
「由紀ちゃん、あっちに行ってようね」
「?」

砂漠地方の洞窟にて、セーラー服を改造した服装の少女達が、洞窟の外にはびこるゾンビらしき存在に顔を青ざめている。

「おい、石田。ここ、何処だ?」
「わからん。確かに僕達は大学の講義室から出た筈なんだが…」

同じ砂漠の遠く離れた場所で途方に暮れる、オレンジの髪の青年と同い年らしき眼鏡の青年。

「え?ここ、何処?」

オフロードバイクに跨ったまま同じく途方に暮れるのは、着物風のジャケットを着た金髪の青年。

次回、がっこうぐらし!×BLEACH×仮面ライダーゴースト編


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第42話「仰天! 砂漠にゾンビ!?」

皆さん、大変お待たせしました。
私用と途中の描写で悩んでたので、二か月も更新が止まってしまいました。
申し訳ありません。

ちなみに今回の組み合わせの意図は、学園生活部の面々に守る強さと死生観について再認識してもらおうと思ったので。前書きで書いたのは、あとがきに死神図鑑ゴールデンを入れるためです。
P.S.アマゾンズと東京喰種という案もありましたが、東京喰種を読んでない上にアマゾンズ共々、他のライダーやジャンプ作品と共闘が難しそうだったので辞めました。


ディケイド達が里の外のクリエメイト達への合流へと向かって二日後。エトワリアのとある砂漠地帯に、三人の人物が迷い込んでいた。

天空寺タケル

着物風のジャケットに金髪といういで立ちの青年で、寺の跡取りで超常現象調査家という側面を持つ。

実は仮面ライダーゴーストに変身することが可能で、一度死んで幽霊のライダーになる、という稀有なパターンだったりする。

 

黒崎一護

オレンジの髪の目つきが悪い青年で、例媒体質以外は普通の人から死神の力を得た"死神代行"となったのである。現在は大学生だ。

 

石田雨竜

一護の同級生で同じ大学の医学部に進学した眼鏡の青年。実は滅却師(クインシー)という、(ホロウ)を退治する特殊能力者の血を引いている。一護とは、いわば戦友という間柄だ。

 

そんな三人は転移して早々に顔合わせをすることとなり…

 

「くそ、いくら蹴倒しても立ち上がってきやがる!」

「でも、攻撃の手を緩めないで! 一瞬でも隙を見せたら…」

「二人とも、先行するな! 直接のとどめは僕が…」

 

肩を並べて戦うことになっていた。砂漠中から湧いてきたゾンビのような人型生物達に、いきなり襲撃されたのだ。映画の様にウイルス感染でゾンビ化など、洒落にならないため肌がむき出しの腕は攻撃には使えない。そのため、必然的に蹴りでの攻撃しか使えなかった。

 

「疾っ!」

 

そんな中、雨竜が光の弓を生成してそこから放つ矢でゾンビを一体ずつ撃ちぬいていく。この弓が、滅却師の主な攻撃手段である。一護はある理由で死神の力を使えず、タケルも数の差があって変身時の隙を突かれる危険から生身で戦わざるを得ない状況だ。そのため、決定打は雨竜に任せることとなってしまう。

 

「けど、これいつまで耐えれば…」

「だな! こう、足場の悪い場所で長期戦は流石にきついっての!」

 

辺り一面が砂で覆いつくされた砂漠での長期戦、踏ん張りが効きにくく足も奪われやすくなる。このままでは、いずれ疲弊してしまうだろう……

 

 

 

「おい、あんた達!」

 

そんな中、三人の耳に少女の声が響く。声のした方に視線を向けると、紫の髪をツインテールに纏めた少女だった。セーラー服を改造したような格好に、何故かスコップを持っている。

 

「そう、そこのイケメン三人組! こっちなら安全だ!!」

「イケメン…僕達がか?」

「今は気にしてる場合じゃないよ! とにかく、あっちに」

「だな。石田、追ってきたやつ迎撃頼むぜ」

 

そして少女の先導に従って、タケルと一護が先行する。そして殿となった雨竜が迫って来るゾンビ達を弓で迎撃していく。そして、どうにか少女について行き、安全圏らしき洞窟にたどり着いた。

 

「ふぅ、ここまで来れば……大丈夫か、あんた達?」

「あ、ああ。なんとかな」

「ありがとう、助かったよ」

「ところで、君は一体……」

 

そして少女にお礼を言い、詳しい事情を聴こうとした直後。

 

「くるみちゃん、おかえりぃいいいい!!」

「え、由紀!?」

 

突如、ピンクの髪とニット帽の少女がこちらに全力疾走してくる姿が見えた。ツインテールの少女の名前らしきものを叫んでいるあたり、友人のようだがこのままでは激突してしまう。そしてそれを察したのか…

 

「すまん!」

「え…ごふっ!?」

 

なんとツインテールの少女が避けてしまい、走ってきた少女の頭が一護の鳩尾に激突したのだ。あまりの痛みに悶絶し、そのまま一護は気絶してしまう。

 

「黒崎、大丈夫か!?」

「わぁ!? ごめんなさい、お兄さん!!」

「と、とりあえず俺達で中に運ぼう!」

「そ、そうだな。本当に、ごめんなさい!!」

 

そのまま大騒ぎになるも、そのまま一護は洞窟の中で寝かせられる。

 

~十数分後~

「と、トッポギ!? って、なんの夢見てんだよ、俺?」

「いや、それ俺が聞きたいよ」

「ああ。前もマタタビとか叫んだらしいけど…」

 

目覚めて早々、謎の叫び声をあげる一護。そしてそこに突っ込む、タケルと雨竜。

 

「あ、起きたんだ!」

「うぉ!? って、子供?」

 

一護が目を覚ましたのに気づいて声をかける人物が現れたのだが、それは先ほどに一護と激突した少女であった。一護はその容姿と雰囲気から、かつての知り合いである死神の一人、草鹿やちるを思い出したのは完全な余談である。

 

「お、オレンジ頭の兄ちゃん、気がついたんだな。さっきは避けてすみません!!」

「胡桃ちゃん。謝るのいいことだけど、そんな呼び方したらダメよ」

「そうですよ、そこの皆さん年上っぽいですし」

 

そこに立て続けにやってきたのは、高校生ほどの少女達であった。先ほどこの洞窟に案内してくれたスコップを担いだツインテールの少女を筆頭に、泣き黒子に豊満なスタイルの大人っぽい少女、物静か且つボーイッシュな少女、と揃って特徴的であった。そして先ほどのピンクの髪の少女共々、学校の制服を改造したような格好をしていた。

そして一人、紫のウェーブヘアーの成人女性がいた。服装はひだのある白いコートで、他のメンバーと比べても浮いた格好をしている。

 

(なんだ? この人の服装、どっかで見たような……それに、この霊圧は?)

「由紀、そこのちっこいのが人の声がするって聞いて、嫌な予感がしてさ。駆けつけたらあんたらがいたんだよ。運が良かったな」

「えへへ、ほめてほめて〜」

「そうか、君が……ありがとう、おかげで助かったよ」

 

一護が成人女性に対して何か違和感を感じていると、少女たちが改めて自分達に気づいたことをについて説明する。そしてタケルが礼を言うと、そこであることに気づく。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺は天空寺タケル、大天空寺って寺の跡取りで超常現象調査家でもあるんだ」

「僕は石田雨竜、大学で医学部を専行している。で、あっちは高校時代からの仲間で……」

「(まあ、後でいいか)黒崎一護だ。空座町(からくらちょう)在住で、学科は違うけど同じ大学に通ってる。よろしくな」

「お寺の息子さんと医大生……随分立派なんですね」

「あんたの名前、苺? 男の名前で、しかもその(ナリ)でか?」

「かわいい名前だね! わたし、好きかも〜!」

 

自己紹介の際、少女たちが真っ先に反応したのは一護の名前である。語感から果物の苺と間違えられているようだ。当然、一護自身は不服があった。

 

「ちげーよ! 果物の苺じゃなくて、一等賞の一に守護神の護だ!」

「え、そうなの……ごめん」

 

若干キレ気味に伝えたため、少女はへこんでしまう。そんな中、泣き黒子の少女が空気を変えようとこちらの自己紹介に入る。

 

「じゃあ改めて…私は巡ヶ丘高校3年生、学園生活部部長の若狭悠里(わかさゆり)です。周りからはりーさんで通ってるわ」

「同じく恵飛須沢胡桃(えびすざわくるみ)、よろしく!」

「おなじく丈槍由紀(たけやゆき)、いちごは子供って言ったけどわたしも3年生だからね!」

「「「え、本当(マジ)!?」」」

「すみません、本当なんです。で、私は直樹美紀(なおきみき)、唯一の2年生です」

「学園生活部の顧問、佐倉慈(さくらめぐみ)といいます」

 

順に自己紹介をしていく少女達だが、不意にタケル達はある単語に引っかかる。

 

「あの、学園生活部って言ってたけど、何か部活なのかな?」

「それだけじゃねぇ。あんた達、あのゾンビみてぇなのにも詳しそうだが…」

「あ、その前に丈槍さん、あっちに行ってようね」

 

しかしそこで慈が由紀を遠ざける様子を見せる。当の本人は頭に?を浮かべるも、そこに同意してついて行った。そしてその後、胡桃と悠里の口から詳細を語られる。

 

「あのゾンビのことだけど、単純に"あいつら"とだけ呼んでる」

「で、学園生活部っていうのは…」

 

そこで語られたのは、衝撃的な話であった。

 

彼女たちの暮らしていた世界の日本にある巡ヶ丘という町で、未知の感染症が発生。それが原因であのゾンビ達が出現してしまったという。彼女たちはそこでの生き残りで、学校内で共同生活を送っていたところ、エトワリアに召喚されたらしい。

ちなみに学園生活部は、単に避難生活だと辟易しそうなので"部活"という体で行っているらしい。

 

「異世界に平行世界…しかも日本滅亡寸前か。なんか、思いのほか面倒なことになっちまったな」

「え、信じてくれるのか?」

「普通じゃないことには、俺も石田も慣れてるからな。天空寺も、ってのは意外だったが」

「うん。俺もかなり、特殊な経験は多い方だし」

 

異世界云々については、一護もタケルもすんなりと受け入れた。そこに驚く胡桃だったが、そこにとりあえず簡単に事情を話す一護と雨竜。

 

「さっき、石田が弓みたいなの出してたけど、あれも元居た世界から使ってた力でな」

「滅却師っていう、まあ平たく言えば悪霊退治のための能力者の血を引いていてね」

「悪霊……そんなのと戦ってたのか?」

「まあ、俺も今は理由があって使えねぇけど、戦う力あってな」

「一組、クリエメイトの中にはそういう戦いのある世界から来た人もいるけど、まさかね」

 

一護達から話を聞いて驚いている学園生活部だったが、不意に悠里は何かに気づく。

 

「あんまり驚いていないけど…タケルさんも、何か特別な力をもってるんですか?」

「あ、そうか。それに一護も石田の力を知ってるなら、一般人ってわけじゃないのか?」

「「そ、それは…」」

 

悠里の話を聞いて胡桃も気づいたようだが、タケルも一護も揃って、少々説明しづらそうなようだ。しかし、その直後に異変が生じる。

 

「ん?」

「これ、霧か?」

「本当ね。でも何で…」

 

いきなり洞窟内に立ち込めた霧に、一同は疑問を感じずにいられなかった。しかもその直後…

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……

 

なんと、洞窟にゾンビが出現したのだ。

 

「な!?」

「なんでこいつ等がここに!?」

 

驚きを隠せずにいる一同。その時、咄嗟に胡桃はシャベルを手に突撃していく。

 

「頭を潰せ! そうすれば、一撃で倒せる!!」

「わかった!」

 

言いながらゾンビの一体を、シャベルを叩きつけて頭部を粉砕する。そして雨竜もそれに続いて、弓を生成してゾンビの頭部を穿った。

しかし……

 

「な!?」

「うそだろ!?」

 

頭を粉砕されたばかりのゾンビが、そのまま襲い掛かってきたのだ。咄嗟に回避できたからよかったが、胡桃の反応から本来あり得ない物だということが分かった。

 

「みんな、どうしたの!?」

「ひっ!?」

 

すると騒ぎを聞きつけて慈が由紀を連れて掛けてきたのだが、その際に由紀がゾンビ達とそれが血しぶきを上げて倒れる様を見て怯える。

 

「めぐねえ、ちょっと待って!」

「丈槍さん、見ちゃダメ!」

「言ってる場合か、早く外に出るぞ!!」

 

慈の行動を咎めようとする学園生活部の面々だったが、一護に促されてそのまま外に出ることとなった。

 

「ケーッケッケッケッケッケ!! クリエメイトどもに黒崎一護、そして天空寺タケルよ。ようやく出て来よったか!」

 

外に出た直後、大量のゾンビとそれを従える小柄な老婆の姿が目に映った。老婆は、両方の手が右手になっているという異常な姿をしていた。

 

「婆さん、アンタ何者だ?」

「私の名はエンヤ。この世界を始めとした数多の異世界を支配しに来た、オーバーヘブンショッカーに属しておる。その偉大なる首領、DIO様のために貴様らを始末しに来た」

 

一同の前に姿を現した、エンヤ婆。そして彼女が従えているらしき、ゾンビの大群が迫りくる。

 

「なるほど、クリエメイトってのは彼女達から軽く聞いたけど、ショッカーの今回の狙いなわけか」

「天空寺は、こいつらのこと知ってるのか。それに……でやぁあ!!」

「!?」

 

タケルが察したその直後、いきなり一護が慈に殴りかかったのだ。しかも、その慈は人外級の跳躍力で飛び上がり、その攻撃を避けてしまった。

 

「ちっ、丈槍由紀から手を放してしまった…」

 

慈は忌々しそうな表情で小さく呟くと、そのままエンヤ達のいる方に着陸してしまう。

 

「一護、なんでめぐねえを!?」

「いや、あいつはめぐねえとやらじゃない」

 

胡桃が糾弾しようとするも、一護はそれを断じて慈を指さしながら告げる。

 

「気づくのが若干遅れたが、あんたからは霊圧を感じる。(ホロウ)、それも破面(アランカル)に進化したそれだ。正体を見せやがれ」

「彼女達は霊圧云々も知らないからそもそも気づきようがなかったが、僕や黒崎がいたことは運が悪いとしか言えないな」

 

一護達の言動から、目の前の慈は破面が化けた姿だという。一方の慈(?)はというと……

 

「アハハハハハハハハハハハ!! そこの彼の言う通り。私は佐倉慈の姿をコピーした破面、つまりあなた達の敵…」

 

高笑いしてそこまで言った直後、慈(?)の顔が溶けて上背もぐっと伸びたのだ。そして溶けた顔の下から現れたのは……

 

「「これが俺(僕)の真の姿、第9十刃(ヌベーノ・エスパーダ)アーロニーロ・アルルエリさ」」

「ひぃっ!?」

「めぐねえが偽物…しかも、化け物?」

 

ガラスのカプセルとその中に入った二つの骸骨のような頭。これがアーロニーロの真の姿だったのだ。声が二重だったのは、二つの人格が一つの体に入っていることによる物だったのである。

余りにも人間からかけ離れたグロテスクな外見は、由紀達を怯えさせるには十分だった。

 

「第9十刃…確かルキアが倒した奴だったか。でも、なんで生きてるんだ?」

「アア、確カニ僕ラハ朽木るきあニ倒サレテ死ンダ」

「しかし、今俺達が協力しているオーバーヘブンショッカーという組織の首領の能力。それが俺を含んだ十刃を甦らせた次第というわけだ」

「下級の虚が破面化すると異形化するパターンが多いらしいが…それで十刃にまで上り詰めるとは、油断できないな」

「よくわからないけど、あいつは一護達がいた世界の敵ってことか」

 

アーロニーロは一護が死神になる切っ掛けの少女・朽木ルキアがかつて交戦し、倒した筈の破面だった。雨竜の指摘通りなら、アーロニーロは破面としては下級となっているが、にも拘らず十刃となったのは相当の力を持っているのだる。

詳しいことは知らないながら、タケルも目の前の彼らを警戒することとなる。

 

「おい、お前。とりあえずお前が偽のめぐねえだってのはわかった……何処でめぐねえのことを知った?」

「そうね…もうめぐねえはいないはずなのに……」

「え、りーさん?」

「ちょ、先輩…」

 

そんな中、胡桃と悠里がアーロニーロに対して慈について尋ねる。焦っていたのか、その事実を伏せている由紀がいる場であるにも関わらずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ。その女の魂俺が喰っちまったが」

 

アーロニーロから返ってきたのは、非情な答えだった。その言葉に、学園生活部の面々は青ざめる。

 

「え?」

「僕達ニハ、喰ラッタ同族ノ能力ヲ自分デ使エルッテ特殊能力ガアルンダ。ソノ中ニ喰ラッタ魂ノ姿ト記憶ヲ再現スル力アッタンダ」

「それで佐倉慈の魂の残滓がお前達の召喚に巻き込まれて、ここに来てしまったらしくてな。それを食って、あの姿をまねてお前らに近づいたんだ」

「まさか、私達を始末するために…」

「ああ。貴様らを持ち主に選ぶと思われる、"聖なる遺体"を手に入れるためにな」

 

ショッカー側は学園生活部の面々が聖なる遺体を手にすることを予測し、こちらに赴いたようだ。しかし、彼女達には聞き覚えのない単語を気にする余裕はなかった。

 

「めぐねえ……もしかして、死んじゃった?」

「先輩…」

「そんな、めぐねえ…」

 

ショッキングな事実を聞かされ、打ちひしがれる学園生活部の面々。死んだと思っていた大切な人が生きていたと思ったら、それが偽物だった。しかも、その本人の魂すらもう存在していないというのは、彼女たちの心に暗い影を落とすこととなる。

 

「お前ら…よくも、めぐねえを……お前らが直接殺ったわけじゃないが、よくも……!」

 

そしてただ一人、強い怒りの表情を浮かべた胡桃は、得物のシャベルを手にしてアーロニーロに視線を向ける。

 

くたばれ、この野郎がぁあああああああああ!!

 

そしてそのまま、アーロニーロにシャベルを叩きつけようと一気に駆け出した。対するアーロニーロは微動だにせず…

 

「「響転(ソニード)」」

「え…うわぁああ!?」

 

破面の高速移動術で一気に背後を蹴り、そのまま胡桃を足踏みにする。そして腰から刀"斬魄刀"を抜いてそれを首筋に付きつけてきた。

 

「ワカッタカイ? 破面ト人間ニハ比較ニナラナイ、圧倒的ナ力ノ差ガアルンダヨ」

「お前達は俺の餌でしかないこと、理解するんだな」

「僕がいることを忘れていないか!?」

 

胡桃に対して一方的に力の差を分からせようとするアーロニーロへ、雨竜は背後を取って弓で入ろうとする。しかしその直後、妨害が入った。

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

「な、ぐわぁ!?」

「石田!」

 

なんと、ゾンビ達が一斉に雨竜へと飛び掛かり、そのまま埋もれて身動きが取れなくなってしまう。咄嗟に、一護が救出しようと動き出すが…

 

「え!?」

「なんで、あいつらがこんな統制された動きを…」

 

ゾンビ達が一斉に一護やタケル、他の学園生活部の面々を取り囲んだのだ。そんな中、その理由をいきなりエンヤが明かす。

 

「これが私の特殊能力"スタンド"によるもの。私のいた世界には、己の魂を守護者として実体化させ戦わせる能力がある。それこそが姿ある(ヴィジョン)、並び立つ者"スタンド"」

 

エンヤのスタンド、それが周りのゾンビ達を操っているため統制が取れているというのだ。すると砂漠一帯にいつの間にか発生していた霧がエンヤの背後で押し固められ、王冠を被った骸骨のような姿となったのだ。

 

「この霧こそが私のスタンド・ジャスティス、タロットカードの正義を暗示する。能力はスタンドそのものを霧と化し、傷をつけた生物に霧を通すことでその生物を自在に操れるのじゃ」

「え? あのおばあさんが、操ってるって…」

「なるほど。だから頭を粉砕されても動けていたわけか」

 

エンヤが己のスタンドについて明かすと、タケルは納得した様子だった。指定対象を自在に操れるなら、弱点を木端微塵にされても他が無事なら無理やり動かせるというわけである。

余りにも絶望的な中、不意に膝をつく悠里。

 

「悠里ちゃん?」

「せっかく異世界なんて場所にいて、今だけはあの地獄を忘れられるのに…」

 

タケルが彼女のことが気になり、声をかける。しかし悠里自身はその声が聞こえていない。そして…

 

なんでこうなるのよ! 私たちが何をしたっていうの!?

 

遂に限界が来て、悠里は叫んでしまった。見た目は同級生に比べて大人っぽいが、それでもまだ十代後半の少女だ。部長という立場に立つことで、己を奮い立たせて精神の安定を図ったのだろう。しかし、明確な悪意と強大な力を前にし、遂に限界が来てしまったのだろう。

 

「りーさん…」

「悠里ちゃん…」

 

傍にいる由紀やタケルは、何か声をかけようとするも、何も思いつかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐怖を捨てろ前を見ろ! 進め決して立ち止まるな。引けば老いるぞ臆せば死ぬぞ!!

 

突如、一護が叫び出したのだ。突然の事態に、敵も味方も騒然として一護を見つめる。悠里も流石に、これには面食らって涙も引っ込んだ。

 

「昔、俺に力を貸してくれたある人の言葉だ。俺はこの言葉を胸に、いつも戦ってきた」

 

そして一護はポツリと話し出す。そして、そのまま続けた。

 

「俺の名前、一護ってのは親父曰く"何か一つのものを護り通せるように"って願いを込めたからだそうだ。そこに今の言葉もあるからな……」

 

そして自身の名の由来や先ほどの言葉について改めて話し終えたあと、少し間を置いて宣言した。

 

 

「俺がお前達を守ってやる。だから、こいつらは俺が倒すから下がってろ」

「え、一護?」

「無茶だ黒崎! 今、君は代行証を持ってないから力を使え…」

 

そして雨竜の制止も聞かず、包囲しているゾンビに戦いを挑もうとする一護。

 

 

「一護ぉおおおおおおおおおおおおお!!」

「おぶっ!?」

 

しかしその直後、一護の名を叫びながら何かが彼の顔面に飛び掛かった。しかし、その後ですぐに顔に張り付いたそれを慣れた様子で引っぺがすと、そいつに声をかけた。

 

「お前もこっちに来てたか、コン」

「本当だよ、おい! 気づいたら砂漠で、俺一人で、そんな中で変な生き物が俺を襲って…もうマジ大変だったんだからな、てめぇ!!」

「ぬ、ぬいぐるみ?」

 

なんと一護に飛びついたそいつは、ライオンのぬいぐるみだった。しかし二本足で歩いて喋るため、普通じゃない。そしてそいつが、真ん中にデフォルメされた髑髏が描かれた五角形のプレートを持っている。

 

「代行証、ちゃんと持ってきたか。よくやった、後は任せておけ」

「へいへい、そっちは任せたぜ」

 

そして一護にエンブレムを当てられると、コンは口から丸薬のようなものを吐き出して、物言わぬぬいぐるみへと変わったのだ。

すると、そんな一護の横にタケルが並び立つ。

 

「やっぱ、お互い普通の人間じゃねえわけか」

「だね。なんとなくだけど、察しはついてたかな」

 

するとタケルの腹部に、お化けのようなデザインのベルトが出現する。それを見て一護はタケルが普通の人間じゃないと確信を持つ。

そしてタケルは懐から目玉の形をしたアイテム、眼魂(アイコン)を取り出してスイッチを押し、ベルトに装填した。

 

【アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!】

「「「「な、何これ……?」」」」

「「ほう、こいつが噂の…」」

 

そしてトリガーを引くと、何とベルトから黒地にオレンジの縁のパーカーが出てきたのだ。そしてそのパーカーは周囲のゾンビを蹴散らしながら、ベルトから流れる音楽と音声に合わせてノリノリで踊り出す。これには思わず、学園生活部の4人も困惑してしまう。対して、アーロニーロは何かを察したようだ。

しかしタケルは気にした様子もなく、突然両手で印を結び出す。

 

「変身!」

【開眼・オレ!】

 

そしてその掛け声と同時にベルトのトリガーを右手で押す。それと同時に、新たな電子音声が流れると、タケルの姿が変わった。

全身真っ黒に骨格を思わせるオレンジの模様が入った不気味なものだった。

 

【レッツゴー!

覚悟!

ゴースト!】

 

そして先ほど現れたパーカーが装着されると、黒いのっぺらぼうな顔がオレンジ一色に黒い複眼、そして額に一本の角が現れたのだ。そしてフードを脱ぎ、拳を構える。

これこそ、仮面ライダーゴースト・オレ魂となったタケルの姿であった。オレ魂はタケル自身の眼魂で変身した形態である。そしてゴーストの手には、ベルトから出現したメカメカしいデザインの黒い両刃の剣"ガンガンセイバー"が握られた。

 

「じゃあ、いくか」

 

そして一護がコンの口から飛び出た丸薬を飲むと、彼の体から何かが飛び出してそのまま倒れた。

 

「え、一護それ……」

「お、おさむらいさん?」

 

なんと飛び出してきたのは、侍のような黒い着物を纏った一護の姿であった。そしてその手には身の丈サイズの巨大な刀が握られており、鍔が無いそのデザインは出刃包丁を思わせる。

そして臨戦態勢を整えたゴーストと一護は、互いに改めて名乗りを上げる。

 

「仮面ライダーゴースト。命、燃やすぜ!」

「黒崎一護。職業は大学生兼死神代行、よろしくな」

 

死んで蘇った仮面ライダーと、死神の力を与えられた霊能者、異なる力で命と魂に向き合った2人の英雄が降臨した。そして2人は、悪のスタンド使いと命を歪められたゾンビに立ち向かって行く。

 

「はぁああ!!」

 

ゴーストはガンガンセイバーを振るい、ゾンビを一体ぶった切る。更に左右から近づいてきたゾンビを、回転斬りで切り裂く。そして背後から迫ってきたゾンビを、回し蹴りで吹っ飛ばす。

 

「行くぞ!」

 

更にゴーストはガンガンセイバーを変形させると、それが大型の銃となった。銃を連射して、襲ってきたゾンビの大群を次々と撃ちぬいていく。

 

「オラッ!!」

 

その一方で一護は、死神の拘束歩法術"瞬歩"で雨竜の傍に入り込む。そして手にした斬魄刀"斬月"を振るって、雨竜を抑えていたゾンビを纏めて切り裂く。

 

「大丈夫か、石田?」

「黒崎、助かった。ここからは僕も…」

 

そして解放された雨竜も前線に立とうとするが、そこで一護がある提案を出す。

 

「石田、今回は俺に任せてあいつらを守ってやってくれ。あんなこと言っちまった建前、俺が連中を守ってやんねえと」

「……わかった。君は言い出したら聞かないからね」

「サンキューな」

 

そして雨竜に由紀達の守りを任せると、そのままアーロニーロに駆け出す一護。すると、アーロニーロは胡桃を開放してそのまま斬魄刀で斬りかかる。

そしてそのまま、互いの斬魄刀で鍔迫り合いに突入する。

 

「へぇ。胡桃たちを狙ってた割に、あっさり開放するんだな」

「マア、標的トハイエ手応エノ無イ相手ニ、カマケル程暇ジャナインデネ」

「そうかよ……胡桃、今のうちに逃げろ! 石田にお前を守るよう伝えている!!」

「わ。わかった!」

 

そしてそのまま胡桃を逃がし、アーロニーロと一騎打ちに入る一護。すると…

 

「よし、俺も一緒に守ってくれ!」

「え? 一護から違う人の声が…」

「ああ、さっきのぬいぐるみの魂が黒崎の体に入っていてね……って、死神状態の黒崎が見えてるのか?」

 

その一方で、コンの魂が入った一護の体が雨竜と胡桃の方へ近づき、合流した。エトワリアでは無条件で霊体が見えるという事実を知らなかったため、雨竜も一瞬驚いていた。

その一方で、一護の様子を見たゴーストは、次の行動に移った。

 

「よし。武蔵さん、行くぞ」

 

新しい眼魂を取り出して起動したのだ。そしてそれをベルトに装填すると…

 

【アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!】

 

刀を持ち、フードに丁髷の意匠がある赤いパーカーがベルトから飛び出して、更にゾンビを切り裂いていく。そして再度ベルトのレバーを引くと……

 

【開眼・ムサシ!】

【決闘!

ズバット!

超剣豪!】

 

それまで纏っていたパーカーが消滅して、先ほどの赤いパーカーが装着された。顔には交差した刀が描かれ、手にしたガンガンセイバーが二分割され、二刀流となった。

 

「そりゃ! おりゃあ!!」

 

そして手にした二刀流の刀で、次々にゾンビ達を切り伏せていく。流石にバラバラにされるとエンヤのスタンドでも操作できないのか、そのまま動かなくなった。

 

「なるほど、やりおるわ。だが…」

_パチンッ_

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

 

しかしエンヤが指を鳴らした直後、追加のゾンビ達が襲ってきた。しかもそれだけでなく、いきなり空が割れ始めた。

 

「え……なにあれ?」

 

割れた空から現れた敵を見て、由紀が思わずつぶやいた。黒いローブを纏った、尖った鼻の仮面をつけた巨人のようなものが数体、出現したのだ。雨竜はそれを見て、思わずつぶやいた。

 

「バカな…メノスまで連れているのか?」

「メノス?」

「さっき話した悪霊、(ホロウ)っていうんだが、主食が人間の魂なんだ。だけどあれは、虚同士で共食いを繰り返すことで、数百もの虚が入り混じった大虚(メノス・グランデ)へと進化するんだ」

 

問いかけてきた美紀にメノスに関する説明を入れる。しかし、それで説明は終わりではなかった。

 

「メノスは強い個体の方が小さくなる傾向があって、あの巨大なものが最下級のギリアンと呼ばれる段階なんだ」

「え?」

「あれが、一番弱いって…」

 

途方もない話に、美紀も悠里も驚愕を隠せずにいる。そして、当然その光景は一護も見ていた。

 

「へぇ。まさか、メノスまで従えやがるとはな」

「ああ、オーバーヘブン・ショッカーの首領DIO、奴は下手をしたら愛染様すら凌駕しうるかもしれん」

「ソウイウコトモアルカラ、僕達ヤ何人カノ復活シタ十刃モ、大人シク従ッテイルンダ」

 

アーロニーロと斬り合いを続けながら、敵の圧倒的な力を再認識する一護。そんな中、一護はゴーストに呼びかけた。

 

「タケル、俺はあのメノスどもを倒す! だから、ゾンビは任せた!」

「え…わかった。専門家みたいだし、任せるよ!!」

 

一瞬戸惑うも、ゴーストはすぐに察して一護にメノスの撃破を任せる。そしてこちらはゾンビの救援を倒すことにし…

 

【アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!】

「行くよ、ニュートンさん!」

【開眼・ニュートン!!】

 

次なる眼魂を起動し、新たな形態に変身したのだ。その際現れたパーカーは、手にボクシンググローブの様な物を付けた水色の物だった。

 

【リンゴが落下!

引き寄せまっか~~!】

 

新たなパーカーを纏ったゴーストは、そのまま左手のグローブを構えたかと思うと…

 

「あいつらが引き寄せられてる!?」

 

胡桃が思わず叫んだ。なんとゾンビの大群が、そのままゴーストの方に引き寄せられたのだ。そして、そのまま右手のグローブを構えて殴りつけると…

 

「ふっとべぇえ!」

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

 

そのままゾンビの大群は纏めて吹き飛び、衝撃で一気にばらばらとなったのだ。そしてこれまでのゴーストの戦いを見た雨竜と悠里は、ある仮説を立てる。

 

「さっきから武蔵にニュートンと言ってたけど、まさか…」

「ああ。恐らく、あれらのパーカーには歴史上の偉人に由来する能力が宿ってるんだろう」

「? どういうこと?」

 

それがよくわかってないらしい由紀に、二人は簡単に説明した。

 

「ムサシは宮本武蔵っていう、昔に実在した侍でね。二刀流の剣士でも有名なんだ」

「対してニュートンは、引力っていう物が落下する力の存在を発見した科学者なの」

「??」

「なるほど、そういうことですか。武人ならその武人の戦闘能力、学者ならその人が発見した科学に由来する力が、それぞれ使えるわけですか」

 

由紀はまだ頭に疑問符を浮かべているが、美紀はどうやら察したらしい。子供っぽい性格だが、どうやら地頭もそんなに良くはないらしい。

しかしそうこうしている内に、ゾンビはニュートン眼魂の引力操作で繰り出した攻撃力によって、ほどなく全滅した。

 

そして一護はアーロニーロとの戦いの最中、見計らって一気に天高く跳躍した。

 

「おらぁああ!!」

 

そして一護が一閃すると、その切っ先から放たれた衝撃波がメノスの一体の顔面に命中。そのまま頭から消し飛んで、そのメノスは倒された。

 

「す、すごい…」

「これ、下手な仮面ライダーの攻撃より強いんじゃ…」

 

余りの攻撃力に、由紀たち学園生活部とゴーストも、驚きを隠せないでいた。しかしそんな中、エンヤがいきなり大笑いし始める。

 

「ケーッケッケッケッケッケッケ! その技が噂に名高い月牙天衝、大した威力よ。しかしあの程度の威力では、まだまだいるメノスどもを倒し切ることなど叶わんわい! 貴様が母から継いだ滅却師の力とやらが無い今、それしか技の無い貴様に勝ち目など無い、正義(ジャスティス)は勝つ!!」

 

一護は、なんとたった一つしか必殺技を持たないというのだ。つまり、使える手は今ので出し尽くしたこととなり、後は純粋な斬り合いか隙を突いて同じ技を使うしかないということだ。

初見の敵ばかりのこの状況で、それは厳しいだろう。しかし、一護は冷静そうだ。

 

「婆さん、確かに俺の技は月牙天衝だけだし、滅却師の力があっても二刀流になった斬月で使う月牙十字衝くらいしか技はねぇ。引き出しの少なさは自覚している」

「ほほう、認めよったか」

 

 

 

 

 

 

 

「けどな、今のは月牙天衝じゃねえ」

「え? それってどういう…」

「まさか、他に新技を作ったとか?」

 

 

一護から衝撃の言葉が飛び出し、一同は困惑する。しかし、次の言葉は更にとんでもないものだった。

 

「そもそも、今のは剣圧だ。技ですらねぇ」

 

剣圧。剣を振った際に生じた風圧で、あの威力をたたき出した。それが、いかに一護が強大な力を有しているかの証明でもあった。

そして一護は斬月を突き出すと同時に、彼の霊圧が迸って天を衝く光の柱となった。

 

「な、なんだコレ…」

「綺麗」

 

その青白く輝く光の柱に見惚れる、ゴーストと学園生活部の面々。しかしそんな中、エンヤのみはその表情を驚愕と絶望に染め…

 

「なんじゃ…

 

 

 

なんなんじゃその力はぁああああああああああああああああああ!?」

 

驚愕するエンヤを尻目に、一護は斬月を振るいながら叫ぶ

 

月 牙 天 衝 ! ! 

 

 

そして一護が一閃し、巨大な光の斬撃が残りのメノス達へと放たれた。

そしてその一撃はメノス達を飲み込み…

 

 

 

 

 

 

 

上空の雲すらひとつ残らず吹き飛ばしてしまったのだ。




『死神図鑑ゴールデン!』

「うしし。一人前の化け猫になるための、人間を"ぎゃふん"と言わせる準備は整ったにゃ」

エトワリアのとある社に、一人の巨乳美女がいた。
彼女の名はタマミ。実は人間ではなく化け猫で、化け猫の里の一人前になる試練の準備をしていた。その試練とは。彼女が言った人間をぎゃふんと言わせることなのだが……

「なんか知らねぇが、いきなり奇妙なところに来ちまったな」
「技術開発局の実験破面を盗んだ犯人を見つけてぶちのめせって、依頼があったはいいんですが…」
「この現世とはどこか違う世界に、犯人たちがいるんですかね…」

タマミのすぐ目の前に三人の男が通りかかっていた。
眼帯に11本の棘の様にまとめた髪、その先端に結びつけた鈴という派手な見た目で強面な男。目元に赤い化粧を入れた、スキンヘッドに三白眼の男。おかっぱ頭に派手なエクステの美男子。三人とも派手目立つ印象だ。

(あの強そうなのをぎゃふんと言わせれば、私も一人前隔日にゃ!)

タマミは男達を標的に定め、早速社におびき寄せようと声をかける。

「お兄さん達、ちょっとお願いがあるんです」
「あ、何だてめぇ?」
「実は、この奥のお社に落とし物をしちゃったんですけど、お化けが出るって噂があって怖いんです。良ければ、ついて行ってくれませんか?」

涙目になって、それっぽい理由を付けて男達をおびき寄せようとするタマミ。リーダーらしきとんがり頭の大男は心底面倒くさそうだったが…

「隊長、ひょっとしたらそのお化けって虚かもしれませんぜ。だとしたら、放っておいたら上が煩いんじゃねぇですかね?」
「そうでなくても、戦えない弱い人間を守らないというのは美しくない行為ですからね」
「……しゃあねえ。とりあえず、行くか」
「ありがとうございます!!(うしし、上手くいったにゃ)」

スキンヘッドと美男子に催促され、大男はタマミについて行くこととなる。タマミはしてやったと心の中で思い、そのまま社の奥へと三人を誘導していく。

「着いたぞ。で、落とし物ってのは何だ? 俺はお前に関わってる暇はねぇんだ、さっさと終わらせて…」
「ふふふ……」

面倒くさそうな大男の言葉に目もくれず、タマミは不敵な笑いを浮かべながら振り返ると、いきなり白い煙に包まれる。

「ハーッハッハッハッハ! まんまと引っかかったな、馬鹿め!!」

煙が晴れた先のタマミは、猫耳と尻尾を生やし、周囲に人魂を浮かべている。化け猫としての真の姿を披露したのだ。

「間抜けな人間ども、ここは私達化け猫一族が力を発揮するための社、そこに来たのが運の尽きだにゃ!! さあ、早速お前らをぎゃふんと言わせてやるぞ!!」

その叫びとともに、タマミから威圧感が跳ね上がる。しかし……





「へぇ、つまりお前がお化けの正体ってわけか。虚じゃねぇみたいだが、ちょっとは骨がありそうだな」

口角を上げて好戦的な笑みを浮かべながら言ったのだ。そして刀を抜いて、そのまま構える。

「どれ、俺にとっても未知の敵だ。少しは楽しませてもらうぜ」
「へ? 何を…」
「呑め、野晒(のざらし)

呟いた直後、大男の持つ刀に大きな変化が現れた。刃こぼれの目立つボロボロの刀が、一瞬にして男の身の丈を上回る大きさの、巨大な斧へと変貌したのだ。

「せっかくだし自己紹介だ…





護廷十三隊十一番隊隊長・更木剣八。てめぇを殺す男だ、よろしくな!!
「こ、殺すって…私はただ、ぎゃふんと…」

しかしその男、剣八はタマミの言い分を聞かずに斧を振り下ろした。

「ちょ、ちょっと待つにゃ…ぎゃああああああああ!?」

弁明しようとするタマミだったが、剣八の振り下ろした斧が迫ってきたので、咄嗟に逃げる。すると、そのまま後ろの社が粉砕され、地面も巨大な切れ目が入る事態となった。

「へぇ、初見でよく避けたじゃねえか…ちょっとは骨がありそうだな!!」
「いやああああああああああああああああああああ!!」
「待ちやがれ、女!!」

そのまま全力疾走して逃げだすタマミ。そしてそれを追いう剣八。

「ありゃりゃ、あの姉ちゃん隊長にちょっかい出して哀れだな」
「同感。でも、どんな理由があれだまし討ちみたいなことして、美しくないね」

その光景を見たスキンヘッドの男、十一番隊副隊長の班目一角(まだらめいっかく)から同情の眼を、同隊第三席の綾瀬弓親(あやせゆみちか)から侮蔑の眼をそれぞれ向けられるタマミだった。

ちなみに、この後剣八は化け猫の里までタマミを追いかけ、そのまま大暴れしたらしい。
これをきっかけに、化け猫たちは人間に見つからないよう、つつましく暮らしたとか、暮らしてないとか。


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第43話「襲来! 破壊の十刃!!」

中々筆が進まず、しかも思いのほか長くなってしまいました…申し訳ない。
今回もおまけに死神図鑑ゴールデンを入れたので、お楽しみいただけたら幸いです。

P.S.サモンナイトのシナリオライターだった都月景さんがきらファンの世界観を監修したら、どうなったんだろう? 新作マグラムロードをプレイしててふと思いました。


俺は天空寺タケル、大天空寺の跡取りだ。

俺はある時、気がついたらエトワリアという異世界に迷い込み、そこで同じく迷い込んだという黒崎一護と石田雨竜という大学生と出会った。

その後、俺達を助けてくれた学園生活部のみんなと聖なる遺体という物を狙ってオーバーヘブンショッカーが襲ってきた。

俺と一護は、彼女達と聖なる遺体を守るために仮面ライダーゴーストと死神代行にそれぞれ変身して、ショッカーに立ち向かうことにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ゴーストと一護が学園生活部の面々を守るため戦っていたのと同時刻、砂漠へ彼女達を迎えに走るデンライナー。その食堂車で、以前に交戦した死郎が変身した幽汽の持っていた剣についてローから話を聞いていた。

 

「呪われた聖剣?」

「何だ、そのオカルト極まりない代物はよ?」

「トラ男さん、なんか矛盾してない?」

「そういわれても、そういう伝承が残ってんだから仕方ねえだろ」

 

困惑する良太郎とジョセフ、そしてツッコミを入れる宮子に返しながら、説明を入れるロー。

偉大なる航路でローが辿ったルートで立ち寄った島の一つ"アスカ島"。その島に残っていた伝承の中に、件の七星剣に関する物があった。

かつて、島で栄えていた王国に美しい巫女の少女がいた。その巫女に恋をした王子三兄弟が、その七星剣を手に巫女を奪い合って血で血を洗う争いを繰り返した。それによって聖剣だったはずの七星剣は、呪われてしまい世界を滅ぼそうとしてしまう。

最終的に問題の巫女が自らを生贄に捧げて七星剣を封じ、悲しみに暮れる王子達に神が二度とこの悲劇を起こさぬようにと、七星剣を封じる宝珠を授けたという。

 

「なんか、悲しいお話ですね…」

「恋は盲目、とはいうけど……それで想い人を追い詰めちゃったら、世話ないよね」

「それはともかく、じゃあその宝珠ってのを手に入れたらあいつを止められるのか?」

 

七星剣の伝説を聞いて悲しそうな顔をするゆのに、伝説に出てきた王子達を皮肉るウラタロスと、それぞれが性格の出る反応をする。そんな中、チョッパーが伝説の最後に出てきた七星剣を封じる宝珠について言及するが……

 

「おそらくその宝珠は今この世界に持ち込まれてないと俺は見ている。あの男が世界そのものに向ける憎悪を考えると、七星剣の力を抑制する宝珠は邪魔でしかねえからな」

「なるほど。おそらく、ショッカーもその憎悪を戦力として利用するつもりなのでしょうね」

 

ローから最悪な推察を聞いてしまい、一同は落胆する。対していつものように、ナオミ作のチャーハンを食しながら返事を返すオーナー。いつものように、刺してある旗を倒さないようにゆっくり一口ずつ食べている。

 

「まあ、何にしてもそいつをぶっ倒しちまえば万事解決だろ」

「だな。モモタローの言う通り、全員で力を合わしてぶっ飛ばしちまえばいいか」

 

そんな中、いつもの調子でモモタロスとルフィが一同を勇気づける発言をする。

しかしその直後…

―ドォオオオオオオオオオン―

「きゃあ!?」

「な、なんだ!?」

「うえぇ!?」

―ガシャン―

「!?」

 

直後、窓から激しい光が差し込み、同時にデンライナーを激しい振動が襲う。乗っていた全員が体勢を崩し、良太郎だけが派手に机の角に頭をぶつける。

一人オーナーだけが微動だにしなかったが、食していたチャーハンは皿ごとテーブルから落ちて物凄くショックを受けた。

 

「な、なんだ!?」

「まさか、あのアランカルとかいう奴等のビームか?」

 

突然の事態に驚く中、ルフィは一つ思い当たる技を思い出す。彼自身が交戦したルピが放った、虚閃(セロ)が思い当たったのだ。

 

「まさか、由紀ちゃん達の所に…」

「もう敵が来ちまったのか!?」

「オーナー、急いで下さい!」

 

学園生活部の面々の身を案じ、デンライナーを光の発生源へと急いだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

結論から言えば、デンライナーから見えた光の正体は一護の放った月牙天衝だった。その一撃によって、メノスの軍団は壊滅させられた。その圧倒的な攻撃力に、エンヤも戦慄する。

 

「あ、あがが…」

「一護、凄すぎるな…」

「あれは、仮面ライダーでも出せない威力だね…」

 

余りにも強力極まりない、一護の月牙天衝。その様に敵も味方も驚愕を隠せずにいた。そんな中、

 

「悪い、やりすぎた。次はちゃんと手加減する」

「……!」

 

一護はエンヤに斬月の切っ先を向けながら、静かに告げた。エンヤ自身に引導を渡すつもりのようだ。

その有無を言わさぬ威圧感に推されたエンヤは…

 

「!?」

「あ、逃げた!」

「しかも速い!! 陸上選手かなんかか!?」

 

ゾンビパンデミック以前、陸上部にいた胡桃もびっくりな脚力だ。しかも砂漠のど真ん中でだ。

 

(想定外じゃ! あれは人間に許された力の範疇を超えておる!! DIO様以外に、そのような力を持つなど……)

 

一護の予想外すぎる戦闘力の高さに戦慄し、エンヤは逃走して態勢を立て直そうとするが…

 

「逃がすかよ」

「ひぃっ!?」

 

一護は瞬歩で先回りし、エンヤに斬りかかる。大事なところで甘さを捨てきれないところのある一護だが、それでも罪なき少女達を手にかけようとしたエンヤの行動は許せなかった。

 

「エンヤに死なれたら、俺達が危ないのでな」

 

アーロニーロが響転で割って入り、そのまま一騎打ちに入る。

 

「そうだな。まず、優先するべき敵はテメェだった」

「「何……ぐぉおお!?」」

 

しかし一護は、そのままアーロニーロの服の襟をつかんで、力の限りぶん投げる。一度で十数mは投げ飛ばされる辺り、死神化した一護の身体能力は計り知れないようだ。そして一護は跳躍し、投げ飛ばしたアーロニーロへと急接近。そのまま斬月で斬りかかる。

 

「ぐっ!?」

「オ、重イ!?」

 

アーロニーロも斬魄刀で防ぐが、余りにも重い一撃で腕が痺れ、体勢が崩れた。

 

「代行とはいえ、俺も死神だから虚や破面は斬る。だが、それ以上に……」

「「ぐっ!?」」

 

一護はアーロニーロを蹴り飛ばす。そして再び斬月を構え、再度瞬歩でアーロニーロへと突撃していった。

 

学園生活部(あいつら)の思いを踏みにじったテメェを、許すわけにいかねぇんだよ!!」

「「がはっ!?」」

 

そしてその一護の叫びとともに、アーロニーロを一閃。鋼皮に遮られて致命打にはならなかったが、あまりの威力に大きく吹き飛ぶこととなる。

 

「「チィッ……虚閃(セロ)!!」」

 

アーロニーロは咄嗟に体勢を立て直し、左腕から虚閃を放って一護を迎撃しようとする。しかし、一護は避けようとする素振りすらなく、斬月を構えたまま動かなかった。

 

「まさか、一護はアレを防ぐ気か!?」

「一護、だめだよ!? 逃げて!!」

「そうだ! いくらアンタでも……」

「ダメ、一護さん!?」

(一護さん!)

 

ゴーストが一護の行動に思いつくことがあり、それを叫んだ直後に学園生活部の面々が悲痛な叫びをあげる。美紀はただ一人、彼の無事を祈る。しかし…

 

「…!」

「「何!?」」

 

一護は無言で迫ってきた虚閃を切り裂いたのだ。そしてそこにアーロニーロが驚愕した直後、一護は再び月牙天衝を放つ体勢を取った。斬月を居合いの要領で構えると、刀身から凄まじい光が迸る。

 

月 牙 天 衝 ! ! 

 

そして放たれた月牙天衝は、先ほどよりも巨大だった。迸る強大な光が、アーロニーロを飲み込んだ。

そしてその光景を見たエンヤの脳裏に、先ほどの一護の言葉が浮かび上がる。

 

(そうじゃ。 あやつはやり過ぎたとは言ったが、全力とは一言も言うとらん! まだまだ力を強力に出来るということなのか!?)

 

一護の底が見えない戦闘力、それを目の当たりにしたエンヤは戦慄した。

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい。せっかく開眼した滅却師の力も内なる(ホロウ)も消えちまったとは聞いてたが……強さに陰りはねぇみたいだな、黒崎」

「……その声、テメェも来てやがったか」

「お前に助けられるのは不服だが、ひとまず礼は言っておこう」

 

しかし一護とアーロニーロにだけは聞き覚えのあるらしい声が響く。そして光が晴れた先に、新たな破面の姿があった。

 

「な、なに…あの人?」

「見た目は人間っぽいけど…」

「お腹に風穴が空いてるのに、生きてる?」

 

水色の髪に端正な顔立ちで好戦的な笑みを浮かべたそいつは、右頬を覆う牙のような仮面に腹部に空いた孔という破面の特徴を持っている。人と同じ姿でありなあら異質なその存在に、学園生活部の面々は恐怖を抱くこととなる。そいつが月牙天衝を防いでしまったのか、後ろにいたアーロニーロは無傷だった。

その正体を知る雨竜は、彼女らの傍にいたためその詳細を語った。

 

「奴の名はグリムジョー・ジャガージャック。最強の十人の破面、十刃(エスパーダ)の6番目だ。破面は生まれた順番に数字を振られるが、1から10だけは強さの序列になっている…」

「え? じゃあ、つまり……」

「あのめぐねぇの偽物よりずっと強いってことじゃ!?」

 

想像だにしない強敵の出現に、動揺が走る一同。しかしこれだけではなかった。

 

「ほほう。まさかぼうや(ニーニョ)がそこまでの力を身に着けていたとは、吾輩も対決が楽しみで仕方がないな!」

「え?」

 

直後に聞こえた声も一護は聞き覚えがあったらしいのだが、グリムジョーの時と違ってうんざりしたような表情である。そしてそのまま声の主らしき何者かが落下していき…

 

―ズゥウウウウウウウウウウン―

「きゃあ!?」

「砂埃が…」

「ゲホゲホッ!? む、むせた…」

「由紀ちゃん、大丈夫!?」

「う、うん…」

「め、眼鏡の隙間に…!?」

「石田さんも、大丈夫ですか?」

 

砂漠の地面に激突したため、激しい砂埃が辺り一面にまき散らされる。それによって、一同大パニックだった。一応、ゴーストと美樹が無事な様子で周りを気遣っていると…

 

「ジャーーーーーーーーーーーーーーン!」

 

砂埃の舞う中で、先ほどの声の主がいきなり叫び出したため、全員が面食らうこととなった。 

 

「ジャンジャジャンジャジャンジャーーーーーン! ジャジャ……ゲッホ! ジャーンジャー……ゲホッゲッホ!! ゲーッホッ!ゲホッ!」

 

そのまま口でBGMをノリノリで叫ぶ声の主だが、砂埃で所々むせ返って情けない様子だった。そして砂埃が晴れて顕になったその姿は……

 

「ジャ…ハーーーーーーーーーーーン…ヘイ!!!

 

ラテン系ダンサーのような格好に口ひげを蓄えた、ダンディな成人男性の風貌をした破面だった。

 

『……』

 

そのグリムジョーやアーロニーロと比べても間抜けそうな破面を見て、学園生活部の面々とゴースト、雨竜や顔見知りのはずの一護、挙句にエンヤや他の破面二人まで白けたような表情で彼を見る。

それによる沈黙がしばらく続き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てえい!!」

 

破面の男から物申しが出た。

 

「そこのお嬢ちゃん(ベベ)達や仮面のぼうや(ニーニョ)は初見だからともかく、味方の諸君や一度見た筈のぼうや(ニーニョ)は失礼ではないかね!?」

「あぁ、えっと……人伝に生きてたことは聞いてたが、久しぶりだな…」

 

糾弾されつつも、とりあえず久しぶりに会うので挨拶する一護。一応、その辺りは欠かさないつもりのようだ。

 

「ドン・パニーニ」

「違う、ドルドーニだ!? 吾輩あそんな美味しそうな名前ではない、二度も言わせるな!!」

 

ただし、名前はちゃんと覚えてなかったようだ。

余談だが、一護は人の名前を覚えるのが苦手で雨竜のことも、出会った当初は"ういり"だの"ウォーリー"だのうろ覚え気味だったりする。

 

「石田君、彼は一体…?」

「僕も直接会ったのは初めてだが、№103の破面で昔に黒崎が倒した敵の筈だ。3桁は十刃を除籍になった破面に振られる数字らしいんだけど…」

「うん、めちゃくちゃ弱そうだな」

「というより、間抜けそうですね」

 

ゴーストからの問いに答える雨竜の返答に困る様子から、胡桃と美樹が察してつい口にしてしまう。

 

お嬢ちゃん(ベベ)達、それは聞き捨てならん! 人を見た目で判断するなと、ママンに教わらなかったのかね!?」

 

そこに当然ながら、ドルドーニは反論する。

 

「それはまあ、そうだけど…そうされない程度に見た目にも気を付けろって言われるからな」

「ああ、それもどうだな……って、吾輩が絆されてどうするのだ!?」

 

しかし胡桃からの物申しに一瞬同意してしまうドルドーニ。美樹の間抜けそうという評価も、あながち間違いではなさそうだった。

 

「どうせ最強から外されるんだ、その間抜けな言動と合わせて大して強くないんだろ!」

「言ってくれるね、お嬢ちゃん(ベベ)……!」

「よせ、胡桃!?」

 

そしてそのまま、胡桃がドルドーニへとスコップ片手に突撃していってしまう。そこに一護は制止の声をかけるが胡桃は聞かず、そのままスコップを振り下ろしてドルドーニに叩きつけようとする。

 

「ほっ! はっ! とぅっ!」

「おっさん、ちょこまかと…」

 

しかしドルドーニは踊るような軽やかなステップで、胡桃の攻撃を容易く避けてしまう。召喚前から命懸けの戦いをそこそこは経験している胡桃だったが、すぐ窮地に陥ってしまった……

 

「先ほども言っただろう、お嬢ちゃん(ベベ)……

 

 

 

 

 

 

 

人を見かけで判断するなと、ママンに教わらなかったのかね?

「え……ぐわぁ!?」

 

ドルドーニは一瞬で彼女の背後を取り、鋭い蹴りを叩き込んだ。砂漠の踏ん張りが効かない地面で、見事なターンを決め、その回転の勢いを乗せた見事な一撃だ。

それだけの攻撃を受けた胡桃は大きく吹き飛び、ドルドーニは響転でそれを追う。

 

「胡桃!?」

「黒崎、いい加減こっちも始めようぜ!」

 

一護は胡桃のピンチに駆け付けようとするが、それを許さず一護に斬りかかってくるグリムジョー。彼は純粋に、一護との戦いだけを望んでオーバーヘブン・ショッカーに参加していたのだ。

 

「ちっ、仕方ねぇ! さっさと終わらせて…」

 

一護は咄嗟に防いで、仕方なくグリムジョーを倒してから胡桃の救援に向かおうと構えなおす。しかし、その直後にそれは起こった。

 

「? 何だ、この音?」

「電車の発着音みてぇな音だが……」

 

一護もグリムジョーも、不意に空から聞こえた音に気を取られて上を見上げるのだが……

 

「「え゛」」

 

二人そろって、度肝を抜かれることとなった。

~同時刻・吹き飛ばされた胡桃~

お嬢ちゃん(ベベ)に恨みはないが、吾輩の未来の為にも消えてもらおうか!」

 

吹き飛ばされた胡桃は、そのまま先回りしていたドルドーニの抜いた刀で斬られそうになる。

 

「死んでたまるか!」

「ぬっ!?」

 

しかし咄嗟にスコップを構え、斬撃を防ぐことに成功した。その様子に、ドルドーニも驚いて距離を取る。

 

「なるほど、全くの素人というわけではないのか。しかし、吾輩にその程度で勝てるかね?」

(だめだ、完全に油断してた。このおっさんも、滅茶苦茶強い!)

 

余りの実力差に胡桃は己の危機を実感する。しかも破面という自分達やこの世界にとって、完全に未知数の

存在が相手だ。対処法も思いつかないでいた。

しかしその時、一護達も聞いたあの電車の発着音のような音が、こちらにも響く。

 

「ん? 何だ、この音は?」

「空から…なぁ!?」

 

空から聞こえた音の主、それは駆け付けたデンライナーだった。空に線路を出現させて、その上を駆ける列車は一護や破面たち、そして学園生活部にとっても度肝を抜かれる光景だった。

すると、デンライナーの先頭車両が開いて何かが射出される。

 

「行くぜ行くぜ行くぜぇええええ!!」

「おっしゃ、行くぞぉおおおおお!!」

「きゃああああああああああああ!?」

 

ソード電王がルフィ、ゆのとバイクに三人乗りしながら飛び出したのであった。デンライナーのコントローラーを兼ねた電王専用機・マシンデンバードだ。

 

「な…ぶべ!?」

 

そしてそのままデンバードは、ドルドーニの顔面に着地。弾みで一度は放り出されるも、そのまま砂地に再度着地成功する。

 

「誰だ、吾輩の顔面を乗り物で押しつぶしたのは!?」

 

ドルドーニは激昂しながらバイクの方を見るのだが……

 

「「俺達、参上!!」」

「あ…こ、怖かった…」

 

ノリノリでポーズと名乗りを決める、ソード電王とルフィの姿があった。そして一人、ゆのが体を震わせている。

 

「ゆのがいる……ってことは、あれ味方か?」

 

自分達以外のクリエメイトが駆けつけ、しかもゴーストと同じ仮面ライダーと思しき姿の男を連れてきてくれた。反撃のチャンスだというのは、彼女にもすぐわかった。

 

「その姿、向こうにいた仮面のぼうや(ニーニョ)と同じく仮面ライダーとやらか」

「ああ、仮面ライダー電王。最初から最後まで、徹底的にクライマックスなヒーローだぜ」

「そしておれは、海賊王になる男ルフィだ。よろしく」

 

ドルドーニからの問いかけに答え、自己紹介する電王とルフィ。電王は自己紹介しながらデンガッシャーを組み立て、いつでも戦闘可能である。

 

「…あ、胡桃ちゃんがケガしてる!?」

 

そんな中、ゆのが胡桃の負傷に気づいたようで、そのまま駆け寄って治癒魔法を準備した。

 

「助かった……で、あのバイクで飛んできた二人組は味方でいいんだよな?」

「うん。別の世界、それもここより激しい戦いのあるところから来てくれたらしくて…」

 

治癒を受けながら胡桃の質問に答えるゆの。そしてその頃には一護達の方にも援軍が駆けつけてきたのだ。

~再び、一護VSグリムジョー現場にて~

「なんか、飛び降りてきてねぇか?」

 

一護の眼には、デンライナーから立て続けに飛び降りる影が見えた。

 

「なんか怖いのがいるけど、やっつけちゃえ!!」

 

飛び降りた一人であるリュウタロスが、アーロニーロの姿を見て愛銃のリュウリボルバーを構える。そしてエネルギー弾をぶっ放した。

 

「「な!?」」

 

アーロニーロは驚くも、咄嗟に響転で回避する。その一方で、同様に飛び降りたチョッパーが他の仲間達を受け止めるために行動を起こす。

 

毛皮強化(ガードポイント)!!」

 

悪魔の実の形態変化で、超巨大な毛玉へと変身したのだ。そして自らクッションになることで、イマジン達やひだまり荘の面々、ジョセフ達を受け止めたのだった。

 

「聞いてたけど、本当にクッションになるんだね…」

「こりゃ、確かに便利やな」

「これも修行の成果ってやつだ」

 

驚く紗英と感心するキンタロスに、元に戻りながら自身気に語るチョッパーだった。リュウタロスからの攻撃を避けた後、そんな彼らを見るアーロニーロ。

 

「何だ、アレ…」

「増援ミタイダケド…」

「次にお前らは、『その割には弱そうだな』という!」

「「その割には弱そうだな……え?」」

 

何者かが自身のセリフを先読みしてこちらに教える、という不可解なことが起こった。声のした背後に視線を移そうとすると、そのまま攻撃を受けることとなる。

 

波紋肘支疾走(リーバッフオーバードライブ)!!」

「「ぐえぇえ!?」」

 

声の主はジョセフで、アーロニーロは波紋を纏った肘打ちを頭部に叩き込まれる。頭のビーカーに僅かだがヒビが入り、中の培養液が漏れ出す。

 

「ぐへぇえ!?」

「ナ、何ダコレハ!」

「悪霊って話だったから波紋が効くか怪しい所だが、多少はダメージあるみてぇだな」

 

波紋という未知の攻撃を受け、アーロニーロが動揺する。ジョセフお得意の、相手のセリフを先読みして虚を突く作戦だ。

 

「ナイスアタックだったね、ジョセフ」

「おほめに預かり光栄…と言いてえが、何呼び捨てしてやがんだてめぇ」

「まあ、落ち着けって。しばらくは一緒に戦う、仲間なんだからよ」

 

そこにウラタロスとウソップが駆けつけ、軽口を叩きながら戦闘態勢を整える。相手は未知の敵のため、油断は禁物である。

 

「人外の何かが入るみたいだけど、味方みたいだね…」

「確かイマジンだっけ…未来人の精神が怪人になって現代に来たとか」

「未来…怪人って、ヒーローがやっつけるあれ?」

「うん。でも、味方してくれる奴もいるから、たぶん安心していいよ」

 

雨竜が突然の援軍に驚いていると、ゴーストから解説が入る。由紀が怪人という単語に一瞬不安そうな顔をするが、ゴーストは自身の体験もあって味方の怪人もいると伝えて安心させようとする。

 

「おのれぇ! せめて、そこの小娘一人くらいは儂自ら始末してくれる!!」

「しまった!?」

 

その時、エンヤがその隙を突いて由紀を消そうと鋏を片手に飛び掛かってくる。だが、これを阻止する者も当然いたわけだ。

 

「波紋・シャボンランチャー!!」

「な…ぎゃああ!?」

「へ?」

「シャボン、玉?」

 

シーザーが十八番の、波紋を纏わせたシャボン玉での攻撃でエンヤを吹き飛ばす。シャボン玉という予想外な攻撃手段で、学園生活部の面々も驚愕する。

 

「年若いレディを傷つけようなら、例えご婦人相手でも容赦はしないつもりだ」

「が、外国人?」

「しかも結構男前…」

 

割って入って拳を構えるシーザーに、雨竜は思わず首を傾げる。一方で、悠里は伊達男であるシーザーを見て、思わず顔を赤らめる。

その一方で、一護とグリムジョーは加勢に来た仮面ライダーや麦わらの一味、ジョースター関係者一同といった面々を見回す。そして、彼らの正体について察した。

 

「おばあさんのこと、やっつけるけどいいよね? 答えは聞いてない!!」

(な、なんて無慈悲な…)

「リュウタ、シーザーさんと一緒にその人抑えてて。私となずなで、みんなを連れて行くから!」

「オッケー、乃莉ちゃん!」

 

そこにリュウタロスと乃莉&なずなが駆けつけ、学園生活部の面々の避難とエンヤとの戦闘に突入に入る。リュウタロスの言動に美紀がドン引きしてたが、そのまま促される。

 

「なるほど…あれが聖なる遺体とかいう代物に引き寄せられた、異世界とやらの戦士どもか。少しは骨がありそうだな」

「事情は知らねぇが、俺達みたいな奴等が他にいるのはわかった」

「そういうこった。じゃあ黒崎、俺らも始めようか!!」

 

そのままグリムジョーは斬魄刀を抜き、一護に迫る。一護も斬月を構えて迎え撃ちに出る。そして、互いの刀が激突したことで凄まじい衝撃が巻き起こる。

 

「くっ…一護、すぐ助けるから!」

【アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!】

 

グリムジョーの強大な力に、ゴーストは一護を援護しようと新たな眼魂を起動する。ベルトに装填した直後、新たに緑で羽飾りのついたパーカーが宙を舞う。

 

【開眼・ロビンフッド!】

【ハロー!

アロー!

森で会おう!】

 

ベルトのレバーを起動すると、パーカーが装着され、ロビン魂となる。するとその直後、何処からか鳥の姿をした小型のサポートメカが飛来した。黒電話の意匠がある通信機を兼ねたガジェット"コンドルデンワー"だ。そしてそれがガンガンセイバーと合体し、弓(クロスボウ)となったのだ。

 

(ロビンフッド…天空寺君の世界では実在してたのか?)

「マンマミーヤ…ロビンフッドは伝承上の存在の筈だが、まさかね」

 

ロビンフッドは伝承上の存在の筈なので、偉人の力を宿した眼魂にそのロビンフッドの物があるため、雨竜もシーザーも驚きを隠せなかった。しかし、ゴーストは気にせずにガンガンセイバーの柄に描かれた目玉のシンボルを、ベルトにかざした。

 

【ガンガンミナー! ガンガンミナー!】

「さっきのベルトの音と言い、どうにかなんないかな?」

「こういう仕様みたいだから、何とも言えないかな」

 

雨竜はガンガンセイバーから流れたハイテンションな音声につい苦言を漏らすも、仕様もあってどうにもならないことを告げる。若干、申し訳なさそうだ。

しかしそんな最中でも、ゴーストは一護と斬り合うグリムジョーに狙いを定め、トリガーを引いた。

 

【ダイカイガン・オメガストライク!!】

「ぐっ!?」

 

穂先から収束されたエネルギーの弓が放たれ、それがグリムジョーに見事命中。月牙天衝を素手で相殺する頑強さゆえに倒しきれなかったが、グリムジョーに大きな隙を与えることに成功した。

 

「サンキューな、タケル!」

「ぐぉお!?」

 

そしてゴーストに礼を言いつつ、一護はグリムジョーに一閃。胴に大きな傷を負わせることに成功した。そしてすかさず、瞬歩で高速移動して背後を取る。

 

「今は優先保護しないといけねぇ相手もいるんでな、さっさとケリを付けさせてもらうぜ!」

「がぁあ!?」

 

そしてさらにもう一閃。一護は早期決着のために、畳みかける。しかし、そこでグリムジョーが動き出す。

 

「てめぇ、横やりを入れるんじゃねえ!!」

「しまった!?」

 

グリムジョーも咄嗟に響転で一護から離れ、ゴーストの懐に飛び込んだ。しかし、ロビン魂の力は単なる射撃能力ではない。

 

「何!?」

 

なんと、ゴーストの姿が消えたのだ。それにより一瞬、グリムジョーが驚いて攻撃の手が止まった。すぐに攻撃するも、そこにゴーストはもいなかった。

 

「ロビンフッドは森の木々に紛れて弓で戦うからね、隠形も得意なんだよ」

「なんだと?」

 

ゴーストの声が響くと同時に、グリムジョーを囲むようにゴーストが分身したのだ。そして再びガンガンセイバーを向け、矢で攻撃を仕掛ける。

 

「ちぃ、小賢しい!」

「僕も便乗させてもらうぞ! シャボンカッター!!」

 

そしてその隙を突いて、シーザーもシャボンを飛ばして攻撃する。回転を加えた波紋が円盤状になり、弾く波紋の性質とその回転の力が合わさることで丸鋸状のカッターとして、グリムジョーに迫る。

 

「な、なんだコレは!?」

「頑丈な体らしいからな、遠慮はしない!!」

 

始めてみる波紋に動揺を隠せないグリムジョーに、続けざまに攻撃を仕掛けるシーザー。

 

「ROOM!!」

「な、何これ?」

「ナイスだ、Mrトラファルガー」

 

しかもそのタイミングで、ローの能力が発動して一帯がドームに覆われる。直後、シャンブルズでローがシーザーと入れ替わった。

 

「な!?」

「ラジオナイフ」

 

グリムジョーが驚くのも束の間、ローが技名を呟くと同時に大太刀でグリムジョーを切り刻む。直後、グリムジョーの動体が輪切りにされた。

 

「ダメージは無いが、しばらくは動けないだろ。遺体を手に入れるまで、大人しくしてろ」

「あ、あなたは一体?」

「トラファルガー・ロー。海賊兼医者で、悪魔の実って代物を食って異能を手に入れた。とりあえず、てめぇらの味方だ」

「海賊…見方によっては、英雄になりえそうだね」

「なるほどな。とりあえず、助かったぜ」

 

ローのオペオペの実の力で、グリムジョーは一瞬にして無力化された。雨竜の問いに答えて名乗るローに、ゴーストは感心、一護も礼を言う。

実はゴーストの使う眼魂は、変身者であるタケルが"命を燃やした歴史の英雄達"に憧れる、という思いから偉人でなく英雄の力として使っている。そのため、伝承上の存在はロビンフッドだけだが、同じくアウトローのビリー・ザ・キッドや石川五右衛門の眼魂も存在している。

 

「てめぇら、邪魔すんじゃねぇ…!」

「生憎、戦いだけに専念するわけにいかねぇんでな」

「確か、聖なる遺体って物を敵が狙ってるとか…」

「ああ。遺体同士の共鳴か、持ち主になる者への呼びかけがあれば見つけられるはずだ」

 

グリムジョーからの糾弾に対してのローの答えを聞いて、雨竜は敵の狙いを思い出す。そこにシーザーが戻って来ながら、説明を入れる姿が見えた。

 

「ねぇ。その遺体って、誰を持ち主にするかわかる?」

「とりあえずクリエメイト、お前らとさっきまで一緒にいた異世界人の誰かが選ばれるらしい」

「なるほどな…俺があいつらに着いててもいいか」

 

ゴーストが質問をすると、ローから返ってきた答えを聞いて一護が進言する。

 

「あの4人の誰かに危険が迫るとしたら、あいつらに守るって宣言しちまった俺が着いていてぇ。いいか?」

「構わねぇ。こっちは守るより攻める方が性に合ってるし、どのみち分担作業になる。なら、志願してもらう方がありがてぇ」

「すまねぇ!」

 

そして、一護はローからの許可をもらうと同時に由紀達の方へと走っていった。

その直後…

 

「「ぐわぁああああああああ!?」」

「「きゃあああああああああ!?」」

「え?」

 

電王とルフィ、ゆのと胡桃が吹き飛ばされてきた。いきなりの事態で一同は驚愕するも、4人が飛んできた方角に視線を向けるとそこにドルドーニの姿があった。

 

「やりおるなぼうや(ニーニョ)達。吾輩の帰刃、暴風男爵(ヒラルダ)を使わせるとは」

 

現れたドルドーニは解放済みで、姿が変貌していた。

両肩に備わった角の様な鎧と、両脚の側面から竜巻が噴き出すと言ったものだが、それ以外は元の人型を残している。しかし先ほどの胡桃への攻撃を見るに、蹴り主体の格闘戦が得意なようで、それをより強める姿となったのは厄介だ。

 

「クッソぉ、あの能力厄介極まりねぇな」

「あの蛸足野郎より、何倍も強ぇぞ…!」

 

電王もルフィも、ドルドーニの高い戦闘力に警戒心を強める。しかしその直後…

 

「いたた…あれ?」

 

ゆのが何かを感じ取ると懐から遺体の右腕を取り出す。包んでいる布越しにもわかるほど、強い光を発していたのだ。

 

「この感覚、まさか近くに?」

「ゆの、どうした!?」

 

そこにゆのは、これが遺体同士の共鳴だと察してそのまま駆け出す。事情を知らない胡桃は驚くも、そこにドルドーニは何かに気づいたようだ。

 

「まさか、あそこのお嬢ちゃん(ベベ)は遺体の持ち主か?」

 

ゆのが遺体の持ち主のクリエメイトだと察してしまうが、そのままライダーや他の面々に向き合って臨戦態勢に入る。

 

「遺体の回収は見つけ終わったところで纏めて行えばよいか。それまで、諸君との戦いを楽しませてもらおうではないか」

「へへ、やる気満々みてぇだな。クマ公に守りを任せて、良かったってもんだぜ」

「てめぇがどんだけ強くても、おれは負けねぇからな!!」

 

しかしドルドーニが臨戦態勢を整えても、電王もルフィも狼狽えない。それどころか、ルフィはギア2を使って、遠慮なしの勝負にするようだ。

 

「おっさん、俺も混ぜさせろや!!」

「な!?」

(もう、ラジオナイフから復活しただと!?)

 

しかしその時、グリムジョーが復活してこちらへの攻撃入る。斬魄刀を抜くと同時に、勢いをつけて回転斬りを放つ。全員で咄嗟の回避に成功するも、グリムジョーの復活は戦力差的に厳しい。

 

「ゴムゴムのJET銃!!」

「俺の必殺技パート1!!」

「ぐっ!?」

 

そんな中、ルフィと電王は同時に必殺技を放った。それぞれ、腹と背中に同時に攻撃を叩き込まれた。グリムジョーにも大きなダメージが入…

 

「へぇ、やるじゃねぇか…」

「な!?」

「ウソだろ!?」

 

らなかった。なんと、必殺技同時攻撃を諸に食らってもピンピンしていたのだ。しかも、その状態でグリムジョーは二人の頭を鷲掴みにしてくる。

 

「いででででで!?」

「なんて力してやがる!」

「さっきは不意打ちでムカついたが、一対多の戦いを楽しむって考えりゃむしろ楽しくなってきたぜ!」

 

しかも喚起した様子を見せながら、二人の頭を掴んだ両手でそのまま虚閃を放つ体勢に入った。ゼロ距離で虚閃を放つ彼の得意技、掴み虚閃(アガラールセロ)だ。

 

「マズい!?」

【ダイカイガン! オレ・オメガドライブ!!】

 

しかしゴーストは敵の必殺技を察し、咄嗟にオレ魂に切り替えてベルトのレバーを引く。直後に体は宙を舞い、ライダーキックを放つ。

 

「食らえ!!」

「な!?」

「「今だ!!」」

 

ライダーキックがグリムジョーの頭に命中し、虚閃は阻止されどうにか脱出に成功する。更にローが追撃に入る。

 

「ラジオナイフ!!」

「二度と喰らうか!」

 

しかしグリムジョーがローの姿を見た瞬間、グリムジョーは己の体に霊圧を込める。その結果、ローの一閃はグリムジョーの体を切り裂くことに失敗してしまう。

 

「鋼皮の強度を上げりゃ、どうやら防げるらしいな」

「なに!?(武装色の覇気と同列の力でもあるのか!?)」

 

グリムジョーの予想だにしない防御に、ローは警戒心を強めて距離を取る。

 

「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

 

その直後、グリムジョーが笑い出した。大口を開け、心底愉快そうな様子である。そして電王とゴースト、ルフィとローの4名に視線を向け、語りだす。

 

「まさか、黒崎以外にここまで見込みのある連中がいたとはな! 胡散臭い集団だったが、オーバーヘブン・ショッカーについてきたのは正解だったわけだ!」

 

大喚起するグリムジョーだったが、ここで彼がとんでもないことを始めようとする。

 

「そんなお前らに敬意を表して、俺の帰刃(レスレクシオン)を見せてやるよ」

「!? 麦わら屋に電王屋、やらせるな!!」

 

グリムジョーが帰刃を使うと言った直後、ローは慌てて阻止しようと周りに呼びかける。数字が一つ違いのノイトラが、山すら消し飛ばす殲滅力を発揮した。しかもローは存じてなかったが、蘇生によって倒された直前の強さを保ったままだったノイトラと違い、グリムジョーはその後も生存してより強くなったのである。今止めなければ、危険なことは間違いなかった。

 

「おいおい、そんな味気ないことしてんじゃねえぞ!」

-ズンッ-

「ぐわぁ!?」

「なんだ、これ…!?」

「空気が重く…」

「覇王色に似てるが、何か違う…!?」

 

しかしグリムジョーの霊圧によるプレッシャーに押しつぶされ、阻止することは叶わなかった。そしてそのまま、グリムジョーは右手で構えた斬魄刀に左手を添え、刀身に爪を立てる。

 

「軋れ、豹王(パンテラ)!!

 

そして解号を叫ぶと同時に、グリムジョーは刀身を引っ搔いた。それと同時にグリムジョーの体を竜巻が覆い、皆がそれによって動きを封じられる。

 

『みんな、出てくるよ。気を付けて…』

「あ、ああ…」

「一体、どうなるんだ?」

 

電王は良太郎の人格で周りに呼びかける。すると、竜巻が晴れてグリムジョーの姿があらわになった。

全身を白い外殻で覆い、尻尾を生やし、髪が伸びて連獅子を思わせる物と化す。耳や犬歯が尖って猫背になったことと合わさり、まるで獣人のようだ。

 

「あの背中から蛸足生やした奴と、また違うな」

「ああ。なんか猫っぽいが…」

「パンテラ、一部の地域で豹を意味する単語だったが…」

「豹…ネコ科の動物だし、あながち間違いなさそうだね」

 

変異したグリムジョーの姿に、対峙した4人は思い思いに言葉を発する。しかし、それは直後のグリムジョーの行動で遮られた。

 

-すぅッ-

「!? 全員耳をふさげ!!」

「え?」

 

グリムジョーが深く息を吸う仕草を見せた時、ローが慌てて呼びかける。しかし、ルフィと電王だけ対応に遅れてしまった。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「ぎゃああ!?」

「耳がいてぇ!?」

 

凄まじい叫び声がグリムジョーの口から発せられたのだ。あまりの音量に、電王もルフィもダメージを負うことになった。しかも、被害はこれだけに及ばず…

 

「ぐあぁああ!?」

「何これ、全身が痛いよ!?」

「衝撃波…まさか、音圧か!?」

「叫び声でこれって、化け物か!?」

 

音による被害は防げても、全身にダメージを与える音圧までは防げなかったゴーストとロー。胡桃も驚愕だ。しかしそんな中でも、グリムジョーはすかさずルフィと電王に攻撃を仕掛ける。

 

「おらよ!」

「なっ…」

「ぎえぇ!?」

 

そして回避する間もなく、グリムジョーの拳を諸に食らうこととなる。その威力に、電王達は上空何十メートルも吹っ飛ばされてしまう。

 

「麦わら屋!?」

「おめぇらも、相手してやるよ!!」

「しまった…ぐっ!?」

 

そして同様に、ローとゴーストも吹っ飛ばされる。そして飛んで行ったローとゴースト、先に飛んで行ったルフィと電王が合流するところに、グリムジョーは先回りしてしまう。

 

「向こうで楽しもうぜ!!」

 

そして回し蹴りで、4人纏めて吹っ飛ばされてしまった。これまた何十メートルという距離で、一気にジョセフ達と分断されてしまった。

 

「現役十刃にぼうや(ニーニョ)達を取られてしまったな……諸君らは吾輩を楽しませてくれるのかね?」

「ドルドーニよ、遊び半分ではこちらも困るのでな。このエンヤも混ぜさせてもらうぞ」

「クソ、こっちに標的を定めてきた」

「一番強力なのが主力にぶつかったことを考えると、ある意味で安全なのか?」

「このおっさんには、私も恨みがあるからな。一緒に戦わせてもらうぞ」

「よーし、みんなで頑張ろう!!」

 

その一方で、雨竜とシーザー、リュウタロスはドルドーニと復活した交戦することとなる。そこに胡桃も参加表明をしたところで、意外な人物たちが現れる。

 

「なんか、スゲェデカい声が聞こえたけどなんかあったのか?」

「ジョジョ、何をしてるんだ!?」

 

なんと、向こうでアーロニーロと交戦ていた筈のジョセフが、こちらに駆け付けてきたのだ。

 

「それが、戦ってた奴がどこかに消えちまってな。長鼻と亀に避難させた奴らを任せて、こっちに来させてもらった」

 

ジョセフが語るも、アーロニーロは意外なところに出現することとなる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「なるほど。敵がやたらと話してたけど、君が黒崎一護ってやつだね」

「見てるだけでもわかるで…メチャクチャ強いやろ。泣けるくらい」

「死神って聞いてたけど、見た目は完全に侍だな」

「遠目に見てたが、全員味方でいいんだよな?」

 

一護が学園生活部の保護されている現場に合流した時、ウラタロスやキンタロス、ウソップが彼を見て思わず感想を述べる。一護も見た目が異形のウラ&キンタロスについ目が入ってしまうが、先ほどの行動もあって敵とは認識していなかった。

 

「そういえば、聖なる遺体ってのが学園生活部の誰かを持ち主に選びそうって聞いてたんだが…誰か目星はついてるのか?」

「それが、まだなんだよね。一応、遺体のパーツを持ってるとパーツ同士が引き合うらしいんだけど…」

「今こっちに来てる持ち主のゆのっちが、あっちの方に…」

「え?」

 

その際、聖なる遺体について聞いてみるとウラタロスと宮子が話をしようとするのだが、そんな時に由紀が何かを感じ取る。

 

「どうしたの、丈槍さん?」

「今、誰かが呼んで…」

 

悠里が問い尋ねると、そんな返事が返ってきた。そしてその直後、ゆのがこっちに戻ってきた。

 

「皆さん、たぶん向こうに聖なる遺体が! これが共鳴何だと思います!!」

 

そう言いながら、ゆのが走っていく。話していた直後に、遺体が近くにあることがわかったようだ。そしてその直後、由紀も走り出した。

 

「丈槍さん!?」

「ってことは、遺体とやらは向こうなわけか。俺も行ってくる!!」

 

悠里が由紀の走り出したことに驚くと、一護は状況を察して後を追う。

 

「たぶん、コンの奴もどっかに隠れてるはずだから見つけたらふん縛っておいてくれ!!」

 

去り際に、ここに来て姿の見えないコンへの対応を告げながら。そのことに、思わず茫然としてしまう悠里と美樹だった。

 

「…コンって、誰?」

「一護さんって魂だけの状態になることで戦えるらしいんですけど、その間に体に入って守ってくれる相棒さん、かな?」

 

ヒロの問いに悠里が説明を入れる。何気に一護が魂だけの状態と聞いて、一同は内心で驚愕していた。

 

~その頃~

「二人とも、この向こうで間違いないのか!?」

「はい、これが教えてくれるんです!」

「一護、もうすぐだよ!」

 

一護達は三人で走っていると、その先の岩の陰に白い布で包まれた何かがあるのを発見する。ゆのの持つ遺体の右腕と同じ黄金の光を纏っているため、ほぼ確実だ。

 

「あれは…」

 

そして引き寄せられるように由紀が駆け寄ると、それを回収。布をはぎ取ると、そこには乾燥させた臓器と思しきものが入っていた。

―由紀は聖なる遺体の心臓を手に入れた―

「これが、あの人達の探していたもの…」

「よし。早いところ、向こうの奴等と合流に行くか」

「はい。良太郎さんやルフィさん達と力を合わせれば、きっと…」

 

由紀が聖なる遺体を手に入れたことで、当初の目的は達した。後は敵を退けてデンライナーで撤退するのみ、早速他のメンバーの所へ向かおうとするが…

 

「そう易々と、行かせるわけがないだろ!」

「! 伏せろ!」

 

しかしここで、アーロニーロが追い付いてきた。服装でアーロニーロと判別できたが、一護を黒髪にしたような青年の姿で、手に三又槍を持っていた。その槍で水を操って攻撃してきたが、咄嗟に一護が剣圧で相殺する。アーロニーロは気にせず嬉々としたようである。

 

「聖なる遺体、どうやら見つかったらしいな。しかも、別の所で遺体を見つけたガキもいるってことは、一度に二つも手に入るわけだ」

「こいつがおめぇらの目当てらしいからな。見つかるのを待って、張ってたってところか」

 

迫ってきたアーロニーロに、一護は斬月を構えて対峙する。アーロニーロが槍を振るうと、彼の周囲に水が発生して守るように固まる。そんな中、アーロニーロが口を開いた。

 

「そういえば、さっき俺が下級の虚から破面化したって推察してたが、正解だぜ。俺はギリアンから破面に進化したんだ」

「だろうな。で、それがどうしたってんだ?」

「それが9番なんて下の数字とはいえ、どうして十刃になれたのは、さっき話した喰った虚の能力を使えるようになる力のおかげだ。

俺は朽木ルキアと交戦した時点で33650体も虚を喰ったが、そこに当時のルキアの上官"志波海燕(しばカイエン)"と同化した虚を食って、この姿と斬魄刀の捩花を使えるようになった」

 

アーロニーロが話した自分の秘密。しかし、ここからが本題だ。

 

「今はそこから更に増えて、51780体にもなったのさ。そして、帰刃を使えば、その全ての力が一斉に使える…

 

 

 

喰い尽くせ、喰虚(グロトネリア)!!

「「ひぃっ!?」」

 

直後に現れたアーロニーロの変異に、ゆのも由紀も顔を青ざめる。

アーロニーロは胸から下が膨れ上がったかと思いきや、それが丸ごと蛸足を彷彿とさせる、触手の怪物へと変じたのだ。しかも触手の一本一本に、虚の顔と思しきものが浮かび上がっている。

 

「そして、その5万を超える虚の中に周囲を結界で覆う能力を持った奴もいる。今、その力を発動した!!」

「え?」

「あ、空が!?」

 

勝ち誇ったような調子でアーロニーロが叫ぶと、周囲がサイケデリックな色のドーム状結界に覆われていくのが見える。それによって青空はあっという間に見えなくなってしまい、ゆのが気づいた時にはもう手遅れだった。

 

「さあ。お前達はたった3人で、虚の大群と同じ存在である俺を倒さなくちゃいけなくなった。さっさと諦めて聖なる遺体を渡すことを、勧めるぜ!」

 

こちらを脅すように告げるアーロニーロに、一護は無言で斬月を構えなおす。単純な戦闘能力は一護の方が上だが、多彩な能力を操る敵を、ゆの達を守りながら戦うことになってしまう。明らかに、一護の方が不利な状況だった。




『死神図鑑ゴールデン!!』
エトワリアで海賊家業を営んでいる少女ロッテは、現在大ピンチだった。

「こいつら、ふざけた見た目してる癖に強い…」
「なんだ、異世界の海賊ってのは大したことねぇんだな!」

オーバーヘブンショッカーに協力する"偉大なる航路"から来た海賊、"魚人海賊マクロ一味"と交戦していたためだ。
それぞれリーダーでマクロファリンクス(フクロウナギ)の魚人マクロ、海パン一丁のアロワナの魚人タンスイ、間抜けそうな顔の出目金の魚人ギャロの三人組で、マクロ以外の二人は肥満体で弱そうだ。しかし、魚人の基礎身体能力の高さに加え、偉大なる航路の海賊とエトワリアの海賊では基礎戦闘力の差が大きく…

「「「イー! イー! イー!」」」
「「「イー! イー! イー!」」」
「「「イー! イー! イー!」」」
「クソ、こいつらも異様に数が多いぞ!」
「お頭、マズいですぜ!」

加えてオーバーヘブンショッカーから貸し与えられた戦闘員の軍勢で、数の差も歴然である。

「いっちょ旗揚げしようかと思ったが、まさかこんな弱いとは思いもしなかったな」
「あんたらがどこの海で海賊してるか知らないけど、ここらじゃ海賊ってのは運送業や漁師の延長線だからね。今時はそこまで荒事しないんだよ」
「へへへ、なら尚更おれ達の天下は間近ってことか!」

ロッテの口からエトワリアの海賊の実情を聞いたマクロは、機嫌良さそうに笑い声をあげる。しかし、調子に乗ってるためかすぐに罰が当たることとなる……




吼えろ、蛇尾丸(ざびまる)!!
三百六十煩悩鳳(さんびゃくろくじゅうポンドほう)!!
「「「イー!?」」」

突如、何者かの攻撃によって戦闘員達の過半数が消し飛んだ。突然の出来事にマクロ一味もロッテ海賊団も激しく動揺すると、攻撃した者達が船へと飛び乗ってきた。

「攻撃した後であれだがよ、さっきの全身黒タイツが敵でよかったんだよな?」
「わかんねぇが、おれ達と敵対するなら両方斬っちまえばいいだけだろ?」

現れたのは二人の剣士で、黒い着物に赤い髪、手に巨大な鋸のような刀を持っている。額には鉢巻きの様に手ぬぐいを巻いており、その下には派手な刺青が目立つ。
その隣には緑の短髪と緑の着流しが目立つ隻眼の剣士で、手に持った刀と別に腰にも二本、合計三本の刀を持っているのが特徴的である。
この二人のうち、緑髪の剣士の方にマクロ一味は見覚えがあった。

「ああ!? ハチと一緒におれ達の邪魔したマリモ頭!!」
「ロロノア・ゾロだ! てめぇらまでマリモ言うんじゃねぇ!!」
「ま、マリモ…た、確かに似てるな…!」
「てめぇも初対面のくせに笑ってんじゃねえ!!」

髪形でマリモ呼ばわりされてキレる緑髪の剣士。赤髪の侍も、ツボに入ったのか笑いをこらえている。
この緑髪の男の名はロロノア・ゾロ。ルフィの仲間の一人で世界最強の剣豪を野望に抱く男だ。両手と口で剣を構える三刀流の剣を操るが、二刀流や一刀での居合も使いこなす凄腕剣士だ。ルフィの仲間になる前は海賊の賞金で生計を立てていたため、"海賊狩り"という二つ名を貰っている。

もう一人の赤髪の侍の名は"阿散井恋次(あばらいれんじ)"。一護の仲間の死神で、死後の世界"尸魂界(ソウルソサエティ)"の戦闘部隊である護廷十三隊の六番隊副隊長である。一護に死神の力を授けた死神の少女、朽木ルキアとは幼馴染の関係に当たる。
斬魄刀"蛇尾丸"は鞭の様にしなる蛇腹剣となっており、近接戦では機動が読みづらくリーチもある攻撃を可能とする。

ちなみにマクロ一味は以前、因縁のあるタコの魚人はっちゃん(ハチが仇名)と麦わらの一味と交戦したことがあったため、記憶に残っていたようだ。
※はっちゃんが瞬殺したため直接戦ってはないが。

「恋次、本当のことでも笑うでない! 成り行きとはいえ、今は共闘する仲であろう!!」
「てめぇ、チビ助!! マリモの部分は否定しねぇのか!?」
「おいマリモ、ルキアちゃんに怒声浴びせてんじゃねぇ!!」
「てめぇは今関係ねぇだろ、エロコック!!」

そんな中、こちらに近づく船から声をかける二人の人物と口論になるゾロ。
紫の瞳と黒髪セミロングの小柄な、侍風の装束を来た少女。こちらが件の朽木ルキアである。恋次とは流魂街という尸魂界の貧民街のような場所で過ごした幼馴染だが、現在は大貴族の朽木家に養子に引き取られ、その後は護廷十三隊の十三番隊に配属。現在は副隊長の座についている。

もう一人は金髪で片目が隠れた無精髭の男前だったが、眉毛が渦を巻いているという特徴な顔立ちをしている。
麦わらの一味でコックをしている"黒足のサンジ"だ。黒いスーツと革靴を愛用し、コックは手が命という信条から手を傷めないよう蹴り主体の格闘戦で戦うためこの異名が着いた。そしてサンジは極度の女好きで"死んでも女は蹴らん"を信条とするフェミニストでもある。なのでゾロの怒声も納得がいかなかったようだ。

そしてそんな一同が乗るのは、デフォルメしたライオンの顔を船首にした巨大な船。麦わらの一味の海賊船"サウザンドサニー号"という。名付け親が船首を太陽と勘違いしたことから、「過酷なる"千の海"を"太陽"の様に陽気に越えていく」という願いを込めてのことだ。

「あの船がいるってことは、麦わらがここにいるのか!?」
「懸賞金四億ベリーになったとか聞いたが、やべぇぞ!?」
「そうでなくても他の連中も滅茶苦茶強かったはず!」
(懸賞金四億!? その麦わらって人、何やらかしたの…?)

マクロ一味がサニー号を見て慌てふためくが、その時にルフィの懸賞金の額が聞こえてロッテは仰天した。ロッテが語ったように、今エトワリアの海賊は無法者や略奪者というわけではない。なので、そんな破格の懸賞金を懸けられたルフィの存在は、畏怖の対象になり得たのだ。

「いや、今うちの船長は他の船員二名と同盟の船長と一緒に行方不明中だ」
「あ、そうか…だったら僅かにも勝ち目があるか!」

しかしゾロの口からルフィ達が行方不明なことを聞いて自信を取り戻すマクロ。そして指を鳴らし、更に増援を呼び出す。

「「「イー! イー! イー!」」」
「「「イー! イー! イー!」」」
「「「イー! イー! イー!」」」
「今、おれ達はある組織に協力したことで戦力を貸し与えられたのだ! この数の暴力で押せば、万が一にも勝ち目はある!」
「おれも魚人空手の腕を磨いて、今や三十段の領域だ! バラバラにしてやるぜ!!」
「おれも対ハチ用に編み出した金魚剣術に改良を重ねまくったからな。それをもって、この海を血で赤く染めてやる!!」

そのまま臨戦態勢に入るマクロ一味に、ゾロも恋次も警戒した。そこにルキアとサンジも飛び入り、マクロ一味を迎撃しようとする。
のだが……

「な、なんだ?」
「突然、雲行きが…」
「おい、おめぇらこっちに来い!」
「え、ああ…」

突然、マクロ一味の頭上に黒い雲が出現して困惑し始める。ゾロがロッテに呼びかけると、何か尋常じゃないことが起こると思ってすぐに駆け出す。

サンダー=ボルトテンポ!!
「「「イー!?」」」「「「イー!?」」」
「「「イー!?」」」「「「イー!?」」」「「「イー!?」」」
「「「イー!?」」」
「「「イー!?」」」「「「イー!?」」」
「「「アビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャ!?」」」

女性の声で技名を叫ぶと同時に、黒雲から稲妻が落ちて戦闘員達を全滅。マクロ一味も諸に食らって感電してしまった。
そしてすかさず、ルキアが斬魄刀を発動した。

舞え、袖白雪(そでのしらゆき)

ルキアの斬魄刀は形状こそ解放前と変わらないが、刃も柄も白い美しい刀へと化す。そして感電しているマクロ一味の周囲を舞うように、地面に円を描いた。

初の舞(そめのまい)月白(つきしろ)

そのまま技名を呟くと、円の中にいたマクロ一味が一瞬で氷漬けになった。
その一方でサンジは何故か高速回転しているのだが、それが終わった瞬間に彼の右脚がオレンジの炎を纏って輝いているのが見えた。

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)

そしてそれだけ呟くと、氷漬けのマクロ一味の元に飛んで行き…

画竜点睛(フランバージュ)ショット!!

必殺キックを叩き込んで、マクロ一味を天の彼方へと吹き飛ばした。高熱を帯びた蹴りは冷凍された一味を一瞬で解凍してしまい…

「「「今日の所は勘弁してやらぁあああああああああ!?」」」

意識を取り戻した彼らが負け惜しみを叫びながら吹き飛んで行ったのが見えた。

「みんな、お疲れ様!」

直後にサニー号から飛び乗ってきたのは、ウェーブのかかったオレンジ髪のセクシー美女だった。下はちゃんとズボンを履いているも、上半身はビキニオンリーで豊満なバストを強調しているスタイルだ。
彼女は一味の航海士"泥棒猫ナミ"だ。先ほどの雷撃は、ウソップが作成した彼女の得物"天候棒(クリマ・タクト)を用いることで使用した技だ。他にも蜃気楼など、天候に由来した技をこれで行使するため航海士にはぴったりな武器である。

「ナミすわぁああん、おれやりましたよぉおおお!!」
「本当、この男は女なら誰でも良いのだな…」
「うちのエロコックがすまねぇな」

眼をハートにしながらナミに詰め寄るサンジに、ルキアもゾロも呆れていた。その一方でロッテが近寄ってくる。

「あの、助けてくれてありがとう。メチャクチャ強いんだね…」
「おめぇら、あんま強そうに見えねぇけどよく海賊なんてやってるな」
「さっきあいつらにも言ったんだけど、ここらの海賊は漁師や運送業の延長線みたいなものなんだ。昔ほど荒事はやらなくてね」

ロッテが礼を伝えると同時にエトワリアの海賊事情をゾロに話す。すると今度は、サンジがロッテの方に近寄ってきた。

おお、美しいお嬢さん。貴女、その帽子からしてこの船の船長とお見受けします。おれはサンジ、あの船でコックとして勤めているのですが、良ければお名前を教えていただいてもいいですか?
「え!? 美しいだなんてそんな…ロッテっていいます
ロッテさん! ああ、なんて可愛らしいお名前…天から二物も三物も与えた素晴らしき…
「はい、サンジ君。この子に話があるから、いったん下がって」

サンジがロッテにナンパし始めたのでナミがとりあえず止める。そして話を振るのだが、ここでサンジ以外の面々が寒気を感じ取った。

「私、ナミっていうんだけどあの船で航海士やってるの。で、今うちの船長が行方不明だからとりあえず代理やっててね」
「あ、そうなんだ。貴方のおかげで助かったわ(すっごいスタイルいいわね…)」

内心ナミのスタイルにうらやましさを感じていたロッテだったが、その提案は不意にナミから出された。

「あんた達、荒事慣れしてないらしいからあたし達が用心棒になってあげようと思うんだけど……





報酬にそれなりの額とこの辺りの海図、もらえないかしら? 突然知らない海域に飛ばされちゃったみたいでね…

とんでもなく悪そうな笑みでロッテに交渉を持ち掛けてきた。

「ひっ!?(まさか、これが目的? 気を許すの早まっちゃった!?)」

余りの戦闘力の高さに、戦慄して取引を飲まざるを得ないロッテ。

「なるべく派手に戦えって言ったのは、これが目的だったわけか…」
「あまり、敵に回したくはないな…」
「金と損得がらみの話をこいつの前でするなよ。命が惜しかったらな」
「同じく未知の世界に迷い込んだ同士、一緒にやっていこうと思ったが…早まっちまったみてぇだ……」

小声で話す恋次、ルキア、ゾロの三名。エトワリアに飛ばされていきなり遭遇した一護の仲間と麦わらの一味は、こうして一緒に協力することとなった。果たして、彼らとロッテ海賊団の運命は如何に?

この後、船で待機していた残りの一味と顔合わせしてロッテが腰を抜かしたは、また別の話。


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第44話「決戦! 守る強さがここに!!」

大変、お待たせいたしました!!
書きたいことが多すぎる上に、筆の乗らない日が続き、気づけば八月ど真ん中……しかも、二万字超えました。
がっこうぐらし編、ようやく完結。お楽しみください。

P.S.BLEACHの新作で成人後の一護の職業が翻訳家とあったので、42話の一部文章を修正しました。


俺は天空寺タケル、大天空寺の跡取りだ。

俺と一護達が破面と戦っていると、新たな破面二人が襲来して危機に陥ってしまう。

そこに俺達と同じくエトワリアにやって来た仮面ライダー電王と、海賊麦わらの一味、そして波紋使いジョセフとシーザーが加勢に来てくれた。

しかし破面も真の力を開放し、俺達に牙を剥いてきた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「さっき、とんでもない音が聞こえたと思ったけど…」

「ルフィ達、とんでもない奴と戦ってるみたいだな」

「こっちは、俺らでなんとしても守らんとな」

 

紗英がグリムジョーの咆哮が聞こえた方を見ると、何度も凄まじい竜巻とそれによって生じた砂嵐が吹き荒れる光景を見た。そしてその数十メートル先には、何度も轟音や爆発が生じる。

竜巻はドルドーニ、轟音や爆発は電王達をその一帯まで吹き飛ばしたグリムジョーによるものである。そこからチョッパーやキンタロスは、電王やルフィが激戦を繰り広げていると推察している。改めて、今この場にいる仲間達を守ろうと決意するのだった。

~同時刻、VSグリムジョーの現場~

「シャアアア!!」

「うぉっ!?」

 

グリムジョーの爪による一撃を、見聞色の覇気のおかげで回避できたルフィ。しかし、凄まじいスピードでの攻撃だったため、それでも間一髪であった。

 

「らぁああ!!」

「な…がっ!?」

 

しかし、直後にグリムジョーはルフィを蹴り飛ばした。しかも、足の爪を突き立てることで斬撃の特性が加わった蹴りとなり、ルフィにも大きなダメージを与えることとなった。

 

「「はぁああああああ!!」」

 

そして背後から、電王とゴーストが剣で斬りかかる。攻撃後の隙を突いた背後からの一撃、確実に決まるはずだった。

 

豹鉤(ガラ・デ・ラ・パンテラ)!!」

「ぐえぇえ!?」

『「うわぁあ!?」』

 

何とグリムジョーの両肘の装甲、その隙間から棘状の弾丸が発射された。それを諸に食らった電王もゴーストも、大きく吹き飛ぶこととなる。電王に至っては、モモタロスだけでなく良太郎も苦悶の声を上げるほどのダメージを負うこととなった。

 

「ROOM・タクト!!」

 

そんな中、ローは咄嗟にオペオペの能力でドームを作り、その中の物を自在に動かす技を使用。動かす対象は、辺り一帯の砂だ。

 

「へぇ…」

注射(インジェクション)ショット!!」

 

それによって砂嵐を起こしたローに、グリムジョーは感心する。そしてローはグリムジョーの視界が砂嵐によって封じられたこのタイミングで、大太刀による刺突を放った。武装色の覇気を纏わせ、その頑強な体を確実に貫くために。

そして、その一撃がグリムジョーの脇腹に見事命中した……

 

 

 

 

 

 

「着眼点は良いし、今の一撃もなかなか良かったぜ」

「なに!?」

 

にも拘わらず、グリムジョーの体には大きなダメージも無い。その体を覆う白い装甲は、僅かな傷をつけた程度で済んでしまったのだ。

 

「けど、その程度の一撃で十刃に勝てると思うなよ!」

「ぐっ!?」

 

グリムジョーはそのままローの体を蹴り上げる。どうにか武装色で体をコーティングし、耐えるロー。しかしグリムジョーは、そんな彼に虚閃を放とうと右手を構える。

 

【Full Charge】

俺の必殺技パート2!!

「ん……くっ!?」

 

しかしその時、電王の必殺技が放たれた。分離したデンガッシャーソードの刀身が放った横一閃が迫り、グリムジョーに命中する。刀身がドリルの様に高速回転しているためか、ローの一撃よりもダメージが大きそうだ。

 

ゴムゴムの火拳銃(レッドホーク)!!

そんでもって、こいつだぁああああ!

「がはっ!?」

 

更にルフィのギア2ど武装色の合わせ技による、高熱を纏った鉄拳がグリムジョーの腹部に諸に命中する。同時にデンガッシャーによる縦一閃が頭上から叩き込まれ、グリムジョーにようやくまともなダメージが入った。

 

「よし、今だ!」

【アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!】

 

そしてゴーストはその隙を突いて新しい眼魂を起動すると、炎を纏った赤いパーカーが出現する。ベルトのレバーを引くと、新たな姿に変身する。

 

闘魂カイガン! ブースト!

俺がブースト!

奮い立つゴースト!

ゴー!ファイ!

ゴー!ファイ!

ゴー!ファイ!

 

そして現れたゴーストの姿は、オレ魂をそのまま赤くしたような見た目をしており、目をはじめとして各所に炎が燃えるような意匠をしている。

その名はゴースト・闘魂ブースト魂。タケルの亡き父・天空寺龍の力で誕生したオレ魂の上位互換形態だ。ベルトから新たな武器・サングラスラッシャーを出現させ、ブラスターモードにして銃撃を叩き込む。

 

「三人とも、離れて!!」

「「ああ!」」

「おう!」

 

そして巻き添えを喰らわないよう、電王達に呼びかける。咄嗟に離れたことで、グリムジョーのみにダメージを与えることに成功。

 

「よし、このまま…」

 

そしてゴーストはサングラスラッシャーに二つの眼魂を装填する。名前まんまのサングラスを模した武器の為、そこに眼魂を二つ組み合わせてはめ込めるのが特徴だったわけだ。そして使ったのは、闘魂ブーストとビリー・ザ・キッドだ。

 

メガマブシー! メガマブシー!

 

これまた騒がしい音声が流れると同時に、ゴーストはサングラスラッシャーのトリガーを引く。ルフィもそれを察して電王に呼びかけると、二人同時にその場から飛び退いた。

 

メガ! オメガフラッシュ!

「やぁあああああああああああ!!」

 

そして発射、グリムジョーはそれを受けて大爆発。ゴーストも瞬時に背後へと飛び、爆発の巻き添えを喰らわずに済んだ。

 

「ぜぇ…ぜぇ…これでも倒しきれる気がしないけど…」

「流石に…ちっとは効いたよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャアアアアアア!!

「「「え!?」」」

「ウソ…だろ…!?」

 

なんと爆炎の中から、グリムジョーがこちらに向かって飛び出してきたのだ。頭部を始め体の各所から血を流しているため、ダメージはそれなりにあったようだが、意に介した様子が無い。

 

「「ぶっ!?」」

 

そして電王とゴーストの顔面を同時に殴り、そのままはるか後方へと吹き飛ばすのだった。そして続けざまに爪を立て、ルフィとローに襲い来る。

 

「「ぎゃあああ!?」」

「そらよ!!」

 

グリムジョーの苛烈さに呆気に取られ、ルフィもローも回避できなかった。深く爪で斬られ、そのまま回し蹴りで纏めて吹き飛ぶ。

 

「ヒャッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ! 血沸き肉躍るってのは、こういうことを言うのか。いいねぇ、唆るじゃねぇか!!」

 

牙を剥きだしながら高笑いを上げ、歓喜した様子のグリムジョー。そして仮面ライダーとルフィ達、どちらに追撃を仕掛けようか品定めする目で、両チームを吹き飛ばした方を見回す。

 

「仮面ライダーも悪くねぇが、やっぱり生身の人間で俺とやり合えるあっちだな!!」

 

そしてルフィとローに狙いを定め、そのまま超高速で飛び出していく。

しかし、彼らも黙ってやられるほど甘くない。

 

「ん?」

 

直後、ローが能力で生成したドームが広範囲に発生。そこにグリムジョーが入った瞬間、それは起こった。なんと、ドーム内の岩山が切り抜かれたのだ。

 

「タクト!」

「なに!?」

 

そしてその岩山から切り抜いた大岩を、グリムジョーに向けて放った。流石に驚き、グリムジョーも迎撃態勢に入る。そしてその一瞬の隙を突いて、ルフィがグリムジョーの懐に飛び込む。

 

火拳銃(レッドホーク)!!

「がはっ!?」

 

そして再び放った火拳銃を、今度は顔面に叩き込んだのだ。グリムジョーも大きく怯むこととなり、流石にこれは今までで一番のダメージを与えられたのが見て分かった。

そしてそれを確認したルフィは、すぐに退避する。

 

「ぶっ潰れろ!!」

 

そこにすかさずローの操る大岩が放たれ、グリムジョーの全身を押しつぶす。今までのパターンだと岩に押しつぶされた程度で倒しきれないだろうが、時間を稼ぐことくらいは可能だろう。

 

「後は電王屋達が戻って来るまで押さえつければ…!?」

 

しかしその直後、グリムジョーを押さえつけている岩に振動が走る。内側から拘束を解こうと暴れているようだ。

 

「(こいつのパワー、底なしか!?)やらせるか!」

「おい、医者! 無事か!?」

「モモタロー達、無事だったか!」

 

ローが戦慄しながらもグリムジョーを抑えようとすると、そこに電王とゴーストが駆けつけてきた。二人の無事を見てうれしそうなを浮かべるルフィだったが、それは直後に起こったグリムジョーの変化によって戦慄することとなる。

 

「「な!?」」

「何、アレ…」

「おいおい、いくら何でもそれはねぇだろ…」

 

岩を粉砕したグリムジョーの姿、厳密には指先から伸びる霊力で生成された、巨大な光の爪。それが彼を押さえつけていた大岩を、切り裂き粉砕したようだ。そしてその声が聞こえたか否か、グリムジョーがその詳細について語り始める。

 

「俺の最強の技、豹王の爪(デスガロン)。お前ら、こいつを見せるに値する敵と認めてやるよ」

「あの野郎、まだあんなもの隠し持ってやがったのか…!」

『モモタロス、気を付けて。わかってると思うけど、あれは今まで戦った敵の比じゃないよ』

 

電王も驚愕する中、良太郎側の人格からも警戒を促す声が上がる。明らかに対人戦用じゃない技には、仮面ライダーとしては警戒せざるを得ないのだ。

~同時刻・VSドルドーニ~

「どうした? ぼうや(ニーニョ)達はその程度なのかね!?」

「うぉっ!?」

「こいつ、攻撃が激しい!」

「こんなのと日常的に戦ってる一護の世界って、どんな魔境だよ!?」

 

ドルドーニの脚部から伸びる竜巻が、ジョセフ達を襲う。こちらも攻撃が苛烈そのもので、胡桃は思わずそんな悪態をついてしまう。

実際のところ、破面は虚の世界である虚圏(ウェコムンド)から現世に出てくることは少なく、一護のいた世界は表立った争乱や怪事件の類は発生してない。しかし、話にも聞いたことが無い彼女では目の前の事態で想像することしかできなかった。

 

「風使い相手じゃ、クラッカーブーメランやロープマジックは使えねぇか…」

「ジョジョ、そこは使いようだ。俺もシャボンで畳みかけさせてもらうからな!」

 

ジョセフが悪態をついた中、シーザーはシャボンカッターでドルドーニを攻撃する。元々、彼らが元の世界で戦っていた"柱の男"。その一人にして風に由来する戦士ワムウに対抗するため、波紋カッターを参考に編み出した技だ。シャボン玉に高速回転を加えて円盤状にして飛ばすことで…

 

 

「むぅ!?」

「思いのほか頑強だった…だが、届いたぞ!」

 

ドルドーニの風を纏った蹴りを搔い潜れるだけの勢いをつけ、見事に命中したのだ。鋼皮による防御こそ貫けなかったが、これによってこちらに攻撃の手段があることが確立された。

そこでシーザーは、再びシャボンカッターを飛ばす。

 

「チマチマした攻撃だが、人間にしてはやりおる…だが、他の連中はどうだね!!」

「「何!?」」

「ちょ、そんなのありか!?」

 

ドルドーニはシーザーの攻撃を凌いでいると、両脚から噴き出している竜巻が増えた。手数を増やす彼の技・双鳥脚(アベ・メジーソス)だ。

そしてドルドーニは、その増えた竜巻を操って攻撃していく。

 

「ただでさえ強いのに、手数が増えやがった!」

「マジで、こいつ反則だろ!?」

 

ジョセフも胡桃も防戦一方、一気にピンチとなってしまった。

 

「イマジン一匹如き、この儂手ずから葬ってくれるわ!!」

「うわぁあ!?」

 

一方でリュウタロスも、懐から取り出した鋏を片手に襲い来るエンヤに驚きながら攻撃を何とかかわす。足場の悪い中で、素早い動きを繰り出すエンヤに狙いを定められないリュウタロスも苦戦を強いられていた。

 

「お婆さん、怖いよ!? あっち行け!!」

「ほほう、そんなに怖いか。消えて欲しいか……だが断る!!

 

怯えるリュウタロスに、とあるスタンド使いの漫画家がかつて使ったセリフをぶつけ、そのまま戦闘続行するエンヤ。

その鬼気迫る表情に、リュウタロスは恐怖を覚えることとなる。そしてその一瞬の隙を突かれてしまった。

 

「そこじゃ!」

「いたっ!?」

 

エンヤが振り回した鋏が、リュウタロスの腕に微かに傷をつけた。直後、エンヤが霧のスタンドを発動。その霧がリュウタロスの傷口に吸い込まれたと思いきや……

 

「え、何これ……」

 

傷口が広がって十円玉くらいの穴が出来てしまう。そこに霧が通っているのが確認されたが……

 

「かかりおったな!!」

「うわぁあ!?」

 

それがいけなかった。

リュウタロスの腕が、霧の本体であるスタンド・ジャスティスに操作され、彼の意志と関係なく動き出す。そしてその銃口を、ジョセフに向けようとしていた。

 

「ジョースターの関係者も、味方の攻撃で命を奪われたらたまらんじゃろうて」

「うう…そんなこと、させないから…」

 

エンヤのコントロールに抗うリュウタロス。そして銃口を何とかしてエンヤに向け、彼女を倒そうと引き金に指をかける……

 

「そこじゃ!」

「うわぁあ!?」

ダンッ―

 

その直後、エンヤがスタンドのコントロールを強める。それによって、発砲した瞬間にジョセフに銃口を向けてしまったのだ。それにより、フリーエナジーで生成された銃弾はジョセフに向けて放たれた。

 

「うわぁあ!? 何しやがる、てめぇ!!」

「僕じゃないよ! この御婆さんが…」

 

間一髪で回避に成功するジョセフだったが、事情を知ってか知らずかリュウタロスに文句を言う。

 

「無駄話をしてる場合ではないのではないかね?」

「ぐぉお!?」

「ジョジョ!」

 

そこの隙を突いたドルドーニの蹴りが、ジョセフの腹部を穿つ。どうにか踏ん張って堪えたジョセフだったが、ドルドーニが追撃を書けようと跳びあがった。

 

「くそっ! こうなったらあの手か……」

「何をする気かは知らんが、無駄な足掻きという物だ!」

 

体勢を立て直したジョセフが何かを企んでいると見たドルドーニが、そのまま上空から攻撃を仕掛けようとするが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げるんだよォ!

「あがっ!?」

 

なんとジョセフは全力疾走、ドルドーニの真下を通って逃げ去ってしまったのだ。これには思わず、ドルドーニも虚を突かれて思わず攻撃を中断し、そのまま着地に失敗して頭から地面に激突する。

 

「あのぼうや(ニーニョ)、戦士の風上にも置けん……ぶっ潰す!」

 

怒り心頭のドルドーニはジョセフに狙いを定めて、両手の人差し指と小指を構えて霊圧を収束し始める。虚閃を放つ準備のようだ。

 

「あやつ、懲りずに戻って来よったか。もう一発ぶっ放してやろうかの!」

「も、もう…やらせ、ないから…」

 

そして走ってきたジョセフを見たエンヤが、再びリュウタロスの体を操って攻撃を仕掛けようとする。リュウタロスは抵抗するが、エンヤのスタンドパワーの強大さに結局は操作されてしまった。しかもジャスティスの霧は指に絡まっており、銃撃もすでにエンヤの任意で撃てる状態だったのだ。

 

「ジョセフ・ジョースターよ、貴様は協力者にドタマぶち抜かれて死ぬのじゃ!」

「ちょっと、逃げて! 危ないから!!」

 

そしてそのままリュウタロスはジョセフに撤退を促すが、ジョセフは何故かエンヤの方に向かっている。そんな中でジョセフへと銃口が向けられるのだが…

 

「婆さん、次のアンタの台詞は『脳漿ぶちまけてくたばれ!』だ!!」

「脳漿ぶちまけてくたばれ! ……はっ!?」

 

そのジョセフのセリフに気を取られたエンヤだったが、その所為でエンヤは銃撃がワンテンポ遅れてしまう。そしてその一瞬の隙を、ジョセフは見逃さなかった。

 

「よっと」

 

その場で倒れ伏し、ジョセフはリュウタロスの銃撃を避ける。そしてそれは、虚閃の準備で身動きが取れなかったドルドーニに真っ直ぐ飛んでいく。

 

「虚閃…あだ!?」

 

そして発射の直前に顔面に命中、それによって仰け反ったドルドーニによって、虚閃は明後日の方向へと飛んでいく。しかも、その虚閃は一護や由紀達を閉じ込めた、アーロニーロの張った結界にぶち当たる。しかし、結界そのものは特に傷ついた様子が無い。

 

「あいててて……吾輩としたことが心を乱してしまった。って、ええ!?」

 

体勢を立て直したドルドーニだったが、直後に地面からロープが伸びて拘束されてしまう。ロープの伸びる崎を見ると、何とジョセフがそのロープを握っていたのだ。

 

「どうよ、おっさん? これがジョセフ・ジョースターの戦い方だ!!」

「ぐぉおお!?」

 

ジョセフがほくそ笑みながら告げると、そのままロープを介して波紋を流し込む。アーロニーロの時のように決定打にはならないが、強い波紋が人体に有害なこともあって、それなりのダメージにはなったようだ。

 

「ちぃ! 流石は青年時のジョセフ、頭だけでなく体のキレもいいようじゃ…」

「婆さん、隙だらけだ!」

「あだ!?」

 

そしてそこに気を取られたエンヤの隙を突き、胡桃が背後からスコップでぶん殴る。それによってエンヤは気絶し、スタンドも解除されてリュウタロスが解放されたのだった。

 

「よし、やった!」

「悪いけど、私は回復魔法が使えないから我慢してくれ」

「これくらい、どうってことないよ」

「後は一人だけだが、強さが段違いだからな…気を引き締めていくぞ」

 

そして体勢を立て直した二人は、合流してきたシーザーと共にジョセフの下に駆け付ける。

そして到着した直後、ドルドーニはロープを引きちぎって拘束から脱出してしまう。

 

「おいおい。柱の男どももヤバかったが、こいつも相当だぜ」

「どうやら、ぼうや(ニーニョ)を見くびっていたらしい。改めて、全力を出させてもらおうか」

「ジョジョに君達も、油断するな。ジョジョの言う通り、奴は柱の男、僕達が元の世界で戦っていた敵にも匹敵しうる相手だからな」

 

ジョセフが警戒を強めると同時に、ドルドーニも体勢を整える。そんな彼を見て、シーザーもリュウタロスと胡桃に警戒を呼び掛けたのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

その頃、一護達が閉じ込められた結界内

「黒崎一護、くたばりな!!」

 

アーロニーロが叫ぶと、手に持った捩花を手首を軸に高速回転させると、そこから水が発生する。更に触手から、過去に食らった虚の能力から冷気を操るを使用、水から氷の弾丸を生成し、飛ばしてきたのだ。

 

「二人とも、しっかり掴まってろ!」

「「きゃあ!?」」

 

一護は、ゆのと由紀を背負ったまま跳躍、アーロニーロのまき散らす氷の弾丸を回避した。そして斬月を振るい、剣圧で攻撃を仕掛ける。

 

「その程度、今の俺に効くかよ!」

 

しかし、アーロニーロは触手でそれを防いでしまう。更に触手を伸ばし、上空の一護へと伸ばして追撃を仕掛けてきた。

 

「すまねぇ、二人とも。ちょっと、動きが荒くなる!」

「え……ひゃあ!?」

「うわああああ!?」

 

一護は足元に霊子というエネルギーを押し固めた足場を作り、そこから一気に跳躍してアーロニーロの伸ばした触手から距離を取る。

 

「月牙天衝!!」

 

そして一気に勝負を突けようと、月牙天衝を放ってアーロニーロを倒そうとする。しかし、ゆのと由紀にかかる負担を考慮した結果、威力が抑えてしまい…

 

「虚閃!」

「やっぱり、これじゃダメか!?」

 

アーロニーロの放った虚閃で相殺されてしまった。そしてそこに動揺した一護の一瞬の隙を、アーロニーロは逃がさなかった。

 

「虚弾!!」

 

触手を突き立て、そこから無数の虚弾を掃射してきたのだ。そして、それが一護を目掛けて飛んでいく。

 

「マズい…二人とも、すまねぇ」

「一護…きゃあ!?」

「何を…!?」

 

一護は避け切れないと察し、ゆのと由紀を肩から降ろしてそのまま地面に落としてしまう。落とされた二人は一瞬驚くが、一護が飛んできた虚弾を全て相殺しようと、斬月を振るった。

 

「ダメ押しだ。虚閃!!」

「しまっ……!?」

 

しかしアーロニーロは、直後に虚閃まで放ったのだ。そのまま一護の斬撃が振るわれる。虚弾は一太刀の下に相殺されるも、一護が刀を振るったその隙に虚閃が命中してしまったのだ。

そしてそのまま、一護は地面へと落下してしまう。

 

「一護、すぐに治すから待ってて!」

「由紀ちゃん、私も手伝う!」

 

由紀が"そうりょ"の回復魔法で一護を治療しようと駆け寄ると、ゆのもそれに同行する。

 

「お前ら、俺は良いから自分の身を守れ…あいつに捕まったら、そのまま殺されるぞ…」

「ダメです! あの人の仲間に襲われた人から、魂を食べるって聞いてます。じゃあ、一護さんも危ないんじゃ……」

「そうだよ! 一護が食べられちゃうなんて嫌だよ!!」

 

一護が二人を逃がそうとするが、二人は聞かずに一護の治療を開始する。しかし、そこにアーロニーロが迫ってきた。

 

「健気なもんだな。聖典とやらについては軽く調査した程度だが、その優しさとやらがクリエメイトの共通点らしいな。けど、戦闘の場じゃそれが命取りになるってもんだ」

 

迫ってきたアーロニーロの顔が、いきなり崩れ始める。そしてそれが変形していき、アーロニーロの顔は海燕から慈の物へと変じたのだ。

 

「折角だから、お前の恩師の顔で殺してやるよ。二度と会えない相手の顔を見ながら逝ける、謂わば冥土の土産ってやつだ」

「めぐねえの顔と声で、そんなこと言わないで…」

「残念だが、それは聞けねぇな。さっさとくたばっちまえ」

「この…ど外道がぁあ!」

 

しかしアーロニーロの言動に怒りを隠せない一護は、回復しきってない体で斬月を振るう。しかし、それに気づいたアーロニーロは咄嗟に距離を取って再び捩花を回転させる。直後、捩花からまたも生じた水が一護に襲い来る。

 

「ぐ!?(くそ、さっきより勢いが強い…)」

「そらよ!」

「がぁあ!?」

 

発生した水はより勢いが強まり、その陰からアーロニーロの振るった捩花が一護の腹部を切りつける。そしてまた体勢を崩した一護は、そのまま落下していく。

 

「さて、気を取り直して…お前らを潰して聖なる遺体を持って行かせてもらうぜ」

 

そしてそのままアーロニーロは、再びゆのと由紀に視線を向ける。そして捩花を構えなおして再度接近していく。

 

「どうしよう、このままじゃあの一護って人…」

「一護の無くなった力……それがあれば」

 

自分の身が危ない中、一護の心配をするゆの。由紀も、不意に一護の紛失した力という話を思い出した。

 

 

 

 

 

 

そしてその直後、それは起こった。

 

「え? なにこれ…」

「聖なる遺体が!」

「何!?」

 

二人の持つ遺体のパーツが強い光を発し、それがなんと一護に向かって照射されたのだ。アーロニーロも虚を突かれて、思わず仰け反る。

 

「何だ、これ…こ、これは!?」

 

最初は照射された光に困惑するも、体に不思議な感覚が生じると驚嘆する一護。その時、彼の霊圧が膨れ上がり……

 

 

 

 

~同時刻~

「!? この霊圧…そう来るか」

「なんだ?」

「あの野郎、いきなりどうした?」

 

豹王の爪(デスガロン)を発動した直後、グリムジョーが一護の霊圧の高まりを感じ取った。そしてそのまま視線を結界のある方に向けると、そこに困惑するルフィや電王達。

 

「!? ぼうや(ニーニョ)の霊圧が高まった…なるほど!」

「あ!? 急にどうしやがった?」

 

ドルドーニもその霊圧の高まりを感じたようで、顔色をよくしてその方へと高速で移動し始めた。ジョセフもつい困惑してしまうが、その直後にそれは起こった。

 

「ぐわぁあああああああああああ!?」

「何!?」

「アブねぇ!!」

 

結界が破壊され、アーロニーロがグリムジョーのいる方へと吹き飛ばされてきたのだ。そこに驚きつつも、グリムジョーはすぐに回避する。当然、ルフィ達も同様だ。

すると、何者かが由紀とゆのを抱え、こちらに飛んでくる。

 

「由紀、それとゆのだったか? お前らの持ってた聖なる遺体とやらのおかげか、失ってた力が戻ってきた……ありがとう」

「一護……?」

 

現れたのは一護だったが、地面に下ろされたゆのと由紀は礼を言われながら困惑する。そしてその一護の姿は、先ほどとは違う点が散見される。

まず、一護の左側頭部に巨大な白い角が生え、左目も黒く染まっている。そして手に持っていた斬月は、出刃包丁のような大剣から変貌しており、片手剣と短剣の二刀流と化していたのだ。

その異様な姿は不気味にも見えたが、ゆのも由紀も不思議と恐怖を感じていない。

 

死神にも虚にも種族としての強さの限界値という物が存在しているが、それを超える手段として死神の虚化と虚の死神化を考案した男が尸魂界にいた。その男は虚の死神化をメインに研究をしていたのだが、その研究の過程で作られた実験虚が、滅却師だった一護の母"黒崎真崎"に寄生し、やがて息子である一護にその虚の寄生が滅却師の力と共に継承された。一護は、その力によって死神の虚化を使用可能となっていたのだ。

そして二刀流の斬月は、一護の滅却師の力が発現したことで誕生した真の斬月ともいう形である。

 

かつての戦いで一護はこの内なる虚も滅却師の力も、敵に奪われる形で喪失してしまった。しかし、聖なる遺体の超パワーが一護に作用し、その失われた力を復活させたのだ。

 

「二人とも、ちょっとやることが出来たから行ってくる」

「…うん。いってらっしゃい」

 

一護は二人に申し訳なさそうに告げると、由紀も彼の意図を察したのか背中を押す。ゆのもそれを察したのか、無言で見送った。そしてグリムジョーに向き合い、右手に持った方の斬月の切っ先を向ける。

 

「待たせたな、グリムジョー。ここからは、おめぇの相手は俺だ」

「おいおい、ここに来て力を甦らせるとは……本当に飽きさせてくれないな、黒崎!!」

 

対するグリムジョーもここに来ての一護の覚醒に、歓喜しながら向き合う。しかしそんな中で、突如ルフィが一護の隣に並び立つ。

 

「おし。おれもこいつの相手、手伝わせてもらうぜ」

「ん?」

「おめぇもおれも、これから同じ敵と協力して戦わねぇといけねえだろうしな。お前にも色々あるんだろうけど、ここは一緒に戦うぞ」

「……なるほど、道理だな。俺は黒崎一護、学生兼死神代行だ。よろしくな」

「おれはルフィ。海賊王になるのが夢の、ゴム人間だ。こっちこそよろしくな!」

 

ルフィから共闘の申し立てがあり、その意図を聞いて同意した一護。互いに自己紹介して、グリムジョーと向き合う。ちなみに、大学生と言ってもルフィに伝わるかわからなかったので、学生とだけ話しておく。

そして当のグリムジョーは……

 

「黒崎もそこの麦わらも、俺を楽しませてくれたからな。いいぜ、二人纏めて掛かって来な!!」

 

この対戦カードを喜んで受け入れ、そのまま戦闘に突入する。そしてそんな二人に対し、仮面ライダー二名が声をかける。

 

「あの蛸足お化けと竜巻オヤジは俺達でぶっ倒す! そっちは任せたぜ!!」

「皆さん! あとは俺達に任せて、由紀ちゃん達をお願いします!!」

「仕方ねぇ、おれじゃ火力不足だからな……任せたぞ電王屋に幽霊屋」

 

 

ローにゆのと由紀の守りを任せ、電王は到着したドルドーニ、ゴーストはアーロニーロに向き合う。

 

「ちっ。黒崎一護がパワーアップするとは…だが、てめぇ如きに俺を倒せるか?」

「貴方がどれだけ強くても関係ない。魂を喰らって、命を踏みにじる。そんな貴方を、俺は許せない。貴方は、俺が絶対に倒す!!」

【オヤスミー】

 

ゴーストは力強く宣言すると、いきなり変身を解除してタケルの姿に戻った。その際に気の抜けた音声が聞こえるが、気にせずに懐から新しいベルトを取り出して装着した。黒と金を基調とした、巨大な眼魂にも見えるデザインをしている。

 

【グレイトフル!!】

(ベルトを付け替えた? 何のつもりだ…)

 

タケルのその行動に首をかしげるアーロニーロ。しかしそんなことも気にせず、タケルはベルトを起動して変身ポーズをとる。このベルトこそ、タケルの持つ15個の眼魂を結集した"アイコンドライバーG"だ。

 

【ガッチリミーナー!コッチニキナー!

ガッチリミーナー!コッチニキナー!】

「変身!」

 

そしてベルトからの音声が流れると同時に、タケルは印を結ぶようなポーズと共にベルトを起動した。

 

ゼンカイガン!

ケンゴウハッケンキョショウニオウサマ

サムライボウズニスナイパー!

ダ~イヘンゲ~~!!

 

そして変化した姿は、黒と金を基調としたアーマーを纏った物となる。そして胸にムサシを現す十字に交差した刀、左上腕にニュートンを現す落下中のリンゴ、右脛にロビンフッドを現す弓、といった具合にこれまで変身した形態を始めとした、眼魂のシンボルマークが体の各部に刻まれている。まさに15の眼魂を結集したような姿だ。

その名は、ゴースト・グレイトフル魂

 

「見た目は豪華絢爛…お前の最強形態ってところか」

 

外観からもわかるグレイトフル魂の力に、アーロニーロも感心した様子だった。しかし、すぐにその表情は好戦的な笑みへと変わる。

 

「だが、たかだか15人の人間の力が結集したところで、5万を超す虚の力を宿した俺に勝てるはずないだろ!!」

 

そしてそのまま襲い来るアーロニーロだったが、直後にそれは起こった。

 

【無双!】【ダゼヨ!】【武将!】

「何!?」

 

音声と同時にベルトから3つのパーカーが飛び出したかと思うと、それに手足が生えてゴーストの隣に並び立ったのだ。これには、アーロニーロも驚きを隠せない。

 

「この姿の俺は、眼魂に宿った英雄の魂と共に戦える! それが最大の特徴だ!」

『眼魂からお前のことは見てたが、俺も許せんぜよ!』

『タケル殿と共に命を燃やした、我らも相手してやろう』

『タケル殿、助太刀いたそう』

 

グレイトフル魂の特徴について明かすと、現れた三体の偉人ゴースト達も言葉を発し、臨戦態勢を取った。それぞれ、青が坂本龍馬、白が弁慶、紫が織田信長である。

 

「命、燃やすぜ!!」

「だったら、燃やし尽くしてあの世に行きやがれ!!」

 

お馴染みの決め台詞と共に、三体のパーカーゴースト達と駆け出すゴースト。アーロニーロも負けじと啖呵を切り、触手を伸ばして攻撃してくる。

 

「『はぁああ!!』」

「何!?」

 

しかし、迫ってきた触手を振るった拳ではじき返すゴーストと弁慶。強化されたゴーストの剛力に加え、弁慶ゴーストが誇る天下無双の怪力があってこその結果だ。流石に、アーロニーロも驚きを隠せない。

 

『数が多いからって、勝てると思うのは甘いぜよ!』

「くっ!?」

 

すると龍馬ゴーストがサングラスラッシャーを巧みに振るいながら触手の攻撃を捌き、銃形態に切り替えて咄嗟にアーロニーロ本体を打ち抜く。アーロニーロの方は触手を使って攻撃を防ぐが、龍馬ゴーストはすぐに剣モードに戻して再度触手攻撃を捌いていく。

坂本龍馬が北辰一刀流の使い手で、拳銃も所持していたことから剣術も銃撃も使いこなせた次第だ。

 

『そしてわしも、数を揃えることが出来る!』

「何だと!?」

 

大して信長ゴーストは、マジックハンド型の武器"ガンガンハンド"を銃に変形させ、それを複製して一斉掃射したのだ。そして迫りくる触手が、次々に撃ちぬかれていく。

その姿はまるで、鉄砲師団を率いて武田信玄を打ち破ったかつての織田信長のようだ。

 

そしてそうこうしている内に、ゴーストはアーロニーロの体をよじ登り、懐まで近づいていた。

 

「人間の分際で、俺より強いなんてあってたまるか!!」

 

激昂したアーロニーロが左腕を振るうと、手袋がはじけ飛んでそこから触手が伸びる。そしてそれがゴーストに迫って来るが……

 

【カウボーイ!】【怪盗!】【大王!】

「な!?」

 

新たな偉人ゴーストが現れて攻撃を防いでしまったのだ。

新たな偉人ゴーストは茶色がビリー・ザ・キッド、蛍光イエロ―が石川五右衛門、そして水色がツタンカーメンだ。

 

「あが!?」

『人間を見下しているようだが、あ舐めてもらっちゃ困るってもんだ!』

 

素早い動きでサングラスラッシャーを振るい、腕を切り落とす五右衛門ゴースト。伝説の大泥棒だけあって、怪盗や忍者を彷彿とさせるスピードが売りだ。

そして歌舞伎のような言い回しとポーズで、アーロニーロに物申す。

 

『タケルは俺達が認めた男の中の男。おめぇみたいな下種に負ける筈ねぇだろ!!』

「がぁ!?」

 

ビリー・ザ・キッドゴーストが言いながら、銃モードのガンガンセイバーと、サポートメカ"バットクロック"が銃に変形した二丁拳銃で撃ちぬく。伝説のガンマンであるビリー・ザ・キッドの銃捌きは、的確にアーロニーロにダメージを与えていく。

 

『僕は二十歳にも満たない齢で死んだ…彼女達を僕のように、させるわけにいかない!』

「ぐわぁあ!?」

 

直後、ツタンカーメンゴーストがガンガンハンドを変形させた鎌で、アーロニーロの脇腹に切りつけた。あまりの痛みに、ついにアーロニーロは慈の顔を崩し、そのままビーカーとその中に浮かぶ二つの顔を露出することとなる。

 

「人間は限られた命の中、それを燃やして何かを成そうとする。それを成して大勢の人々が認めた時、その人は英雄となる! そんな英雄が、お前なんかに負けるはずがないんだ!」

「「がぁああ!?」」

 

そしてゴーストの叫びと同時に放たれた拳が、アーロニーロの腹を穿つ。そして怯んだ隙に飛び退くと、ベルトを操作し始める。

 

【ゼンダイカイガン!

グレイトフルオメガドライブ!!】

 

そして天高く飛び上がると、先に召喚した六体の偉人ゴーストがパーカーに戻り、残り九つの眼魂に宿るパーカーもベルトから飛び出してきた。そして15体全てが揃うと、巨大な光の弾を生み出す。

 

「たぁああああああああああ!!」

 

そしてゴーストはそこに飛び込んで、アーロニーロに向けてライダーキックを放った。眼魂のエネルギーを結集し、飛び蹴りでそれを叩きつける必殺の一撃だ。

 

「「ちぃ! 王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)!!」」

 

しかしアーロニーロは迎え撃とうと、十刃専用の最強の虚閃をゴーストに向けて放った。そして二つの必殺技がぶつかり合い…

 

「「何!?」」

「はぁあああああああああああ!!」

 

ゴーストが競り勝ってライダーキックがアーロニーロの体に叩き込まれた。ダメージを負って消耗した状態で放つ苦し紛れの一撃では、王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)も威力は減衰するだろう。

加えて、歴史の英雄達の想いの力が結集したゴーストのこの一撃が負けるはずがない。

 

「これが人間の、英雄の、仮面ライダーの力だ!!」

「「ぎゃあああああああああああああ!?」」

 

そしてライダーキックがアーロニーロの体を貫き、爆発四散。その中から、ビーカーに浮かんでいた二つの顔が吹き飛んでいく。

 

「イヤダイヤダイヤダイヤダ!! 僕ハマダ死ニタクナイ!? 苦シイノハモウ、タクサンダ!! 藍染様デモDIO殿デモイイカラ、僕ヲ助ケテクレェエエエエエエ!!」

「……くそ、俺もここまでか。折角、地獄から舞い戻れたってのに…」

 

片方は死への恐怖に晒されながら、もう片方は静かに落胆しながら、それぞれ消滅していった。

 

「死ぬのが怖いのは、俺も一度死んだからよくわかる。でも、だからって関係ない誰かを傷つけてまで生きようとするのは、俺には見ていられないんだ」

 

消滅するアーロニーロを見送り、ゴーストは変身を解除。タケルの姿でクリエメイト達を保護しに向かうのだった。

~電王VSドルドーニ~

「へぇ、あっちにもてんこ盛り形態があったわけか」

『モモタロス、ここは僕達も……』

「何の相談をしてるかは知らんが、吾輩を前にして話している暇があるのかね!」

 

遠目にグレイトフル魂の戦闘を目の当たりにした電王は、ドルドーニの攻撃を避けながらケータロスを取り出して起動し始める。

 

【Momo! Ura! Kin! Ryu!】

「変身」

【Climax Form!】

 

直後にロッド、アックス、ガンの仮面が飛来。線路の意匠がある赤いアーマーの両肩と胸に装着され、最後に顔の仮面が展開され、クライマックスフォームは完成する。

 

「俺達、参じょ…って、うぉ!?」

『センパイ、早速悠里さんをナンパしようとしたのに、いきなり呼び出さないでよね』

『亀の字、しゃあないやろ。このおっさん、どえらい強敵みたいやしな』

『へへ。早速、やり返させてもらうよ。答えは聞いてない!!』

 

しかし決め台詞の途中で憑依したイマジンが体の主導権を奪って口々に文句やらなんやらを言うので、いまいち締まらなかった。見た目がダサいことに並ぶ、クライマックスフォームの欠点だ。

 

「向こうにいたイマジンのぼうや(ニーニョ)も、中にいるようだな……だが、寄せ集めの姿に吾輩が負けるとでも思ったか!!」

 

しかしドルドーニは電王の新たな変身にも動じず、そのまま双鳥脚(アベ・メジーソス)を再度使用、一斉に電王へと攻撃を仕掛けてきた。そしてそれが命中……

 

「効かねぇな」

「何!?」

『センパイ、僕は普通に痛いんだけど!?』

 

なんとダメージがウラタロスにのみ流れ、電王本体には特に大きな影響はなかったのだ。更に進む電王にまた攻撃が当たるが…

 

『モモの字、また俺にだけ攻撃が入っとるやないか! ちょっとは気ぃ付けてくれ!!』

「うるせぇ、クマ! こいつ相手にそんな余裕ねぇよ!!」

「味方を盾に……貴様、人でなしではないか!?」

 

今度はキンタロスのみにダメージが流れ、彼の叫びが聞こえる。ドルドーニが電王の言動とクライマックスフォームのこの使い方に思わず驚愕して叫んでしまう。そこで更に追撃しようと虚弾も乱射、一発命中する。

 

『モモタロスのバカ、今度は僕が痛いよ!!』

「小僧も我慢しやがれ! こいつぶっ倒したら、とりあえず楽になるからよ!!」

「まだやるのか!? 流石の吾輩もドン引きだぞ!!」

 

やっぱりリュウタロスのみにダメージが通ったため、ドルドーニも続けて仰天する。しかしそのまま、跳躍して電王に狙いを定める。

 

「味方の巻き添えも考慮しない、クソガキが! ぶっ潰す!!」

 

ドルドーニも思わず口が悪くなる、モモタロスのクライマックスフォームの使い方。手数で押して彼や本体の良太郎を倒しに向かう。

しかし電王は気にした様子も無く、ベルトにはめ込んだケータロスのボタンを押してライダーパスをかざす。

 

「へ。生憎、負けるわけにいかねぇんだよ」

【Charge And Up!】

 

そして必殺技が発動するのだが、いきなり胸に装着されたガンフォームの電仮面が開き始めたのだ。

 

「吹っ飛びやがれ!!」

「何ぃいいいいい!?」

 

そして開いた胸の電仮面から、大量のミサイルが発射された。技名は"ボイスターズシャウト"だ。

発射された大量のミサイルを、ドルドーニは迎撃しに動く。蹴りに合わせて脚部から噴き出す竜巻も動き、次々にミサイルを撃ち落としていく。

そして最後の一発を撃ち落としたドルドーニは勝ち誇った表情を浮かべる。しかしジョセフから喰らった波紋の影響か、思いのほか息が上がっている。

 

「ぜぇ、ぜぇ…どうだ、これで…」

「なんの! まだまだ、ここからだぜ!」

【Charge And Up!】

「な!? しまっ…」

 

しかし電王も負けじと、ベルトにパスをかざして必殺技を発動。ボイスターズシャウトをもう一度発射したのだ。ドルドーニは攻撃後の隙を突かれて、迎撃に間に合わずに命中。

 

「な、あ……(体が動かん…中々に効いたな)」

「おし、今だ!!」

『行こう、モモタロスにみんな!!』

『僕もいつでもいいよ』

『おっしゃ、派手に決めるで!』

『それじゃ行こう! 答えは聞いてない!!』

【Full Charge!】

 

落下していくドルドーニを見た電王は、良太郎と憑依したイマジン全員で示し合わせると同時に、ケータロスのボタンを押さずに、パスにベルトをかざして駆け出す。その結果、電仮面が定位置から動かないまま右足にエネルギーが収束していき……

 

俺達の超必殺技ぁああああ!!

「がはっ!?」

 

落下して来たドルドーニに、5人で声を合わせながら技名を叫び、飛び回し蹴りを叩き込む。ドルドーニの顔面に諸に叩き込まれたそれは、凄まじい威力で彼の体を地平の彼方へと吹っ飛ばした。

 

「先ほどの評価は訂正しよう。見事だ、ぼうや(ニーニョ)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、仮面ライダー電王」

 

吹っ飛んだ先で電王への称賛の言葉を小さく呟くと、そのままドルドーニは大爆発。

 

『ん?』

「どうした良太郎? あのガキ達をデンライナーに連れて行こうぜ」

『あ、そうだね…』

 

良太郎はドルドーニからの称賛が聞こえたのか否か、若干反応する。しかしモモタロスに話しかけられ、変身を解除して学園生活部の保護に向かうのだった。

~一護&ルフィVSグリムジョー~

「シャアアアアアアア!!」

 

グリムジョーは、両腕に展開した豹王の爪(デスガロン)を振るって一護とルフィを狙う。

 

「「よっと!」」

 

しかし二人そろって人外染みた跳躍力で軽々と避けてしまう。そして上空から…

 

「月牙天衝!」

「ゴムゴムのJET銃!」

 

同時に必殺技を放って、畳みかける。月牙天衝は威力こそ抑えて小さい攻撃だったが、的確かつスピーディにグリムジョーを狙う。ルフィもギア2による加速と武装色の覇気を纏ったパンチで、一気に畳みかけようとする。

 

「そんなもの、効くかよ!」

 

しかしグリムジョーは、自ら跳躍して二人の攻撃を易々と回避する。そして至近距離で二人を切り刻もうと、再び両腕の豹王の爪を振るおうと構える。

 

「うぉおおおおおおお!!」

「おらぁああああああ!!」

 

迫ってきたグリムジョーに、同様に二刀流となった斬月を振るって迎え撃つ一護。そしてそのまま鍔迫り合いになろうとした直後…

 

「JET(ランス)!!」

「うっ!?」

 

ルフィの両脚を合わせた蹴りに、武装色の覇気を纏わせた一撃を背中に命中させる。それによりグリムジョーは怯む。

 

「そこだ!」

「ぐわぁあ!?」

 

そしてその隙を突き、一護は✕字にグリムジョーを切りつける。そこに鋭い裂傷を付け、ようやくまともなダメージが入ったのが見て取れる。

 

「やるじゃねぇか!!」

「「やべっ!?」」

 

しかしグリムジョーはすぐに体勢を立て直し、回転しながら豹鉤(ガラ・デ・ラ・パンテラ)を連射して二人を迎撃しにかかる。ルフィは見聞色の覇気による攻撃予測、一護は瞬歩を駆使した加速で射程圏内から脱出する。

 

「なら、これでどうだ!」

「な!?」

 

そして一護が次に出した攻撃は、角の先に収束した霊圧を光線にして放つという物だった。

そう、虚化したことで虚閃が撃てるようになったのだ。虚化で虚の技が使えることはグリムジョーも知ってはいたが、突然の使用に不意を突かれて諸に食らうこととなる。

 

「やったか?」

「いや、まだだ!」

 

一護が思わずつぶやくと、ルフィの見聞色による気配察知でまだ無事であることが判明した。

 

「こんなに滾る勝負は久しぶりだぜ! もうしばらく付き合わせろや!!」

 

そして爆炎の中から飛び出して来たグリムジョーは、再び両腕の豹王の爪を振るって襲い来る。ギリギリで回避出来たが、威力と射程が揃って桁違いな技のため、連続して使われたら、長期戦では厳しい。

 

「なあイチゴ、ちょっと威力高いけど遅い技があってな。それで一気に勝負つけてぇから、隙作ってくれねぇか?」

「……なるほど、わかった。あと、イントネーションは苺じゃなくて一護な」

「イン…トネ…ああ、果物のイチゴじゃねぇのか! わりぃな、一護!!」

「わかってくれたならいい。じゃあ、行きますか!!」

 

そしてルフィと相談を終えた一護は、再びグリムジョーに斬りかかる。

 

「相談は終わったみてぇだな。もういっちょ始めるか!!」

 

そしてグリムジョーは律義に待っていたらしい旨を伝え、そのまま戦闘を再開した。そして斬月と豹王の爪が再度ぶつかり合う。だが……

 

「悪いな、グリムジョー。今はダラダラと長く戦ってる場合じゃねぇんだ、一気に終わらせてもらう」

「は?……まさか!?」

 

グリムジョーは一護の言葉に一瞬呆けるが、直後に何をしようとしているのかを察する。

すると一護の血管が浮き上がり、そのまま凄まじいパワーを発揮してグリムジョーを吹っ飛ばした。

 

(あの時は咄嗟だったが、感覚を覚えてたみてぇだ。上手くいった!)

 

それは血装(ブルート)という滅却師が自分の血管に霊子、"霊体を構成する粒子"を流し込んで身体強化を図る技である。一護の母が滅却師と判明した時の戦いで偶発的に一度使用しただけだったが、その時の感覚を体が覚えていたらしく、試してみたら上手くいったようだ。

ちなみに、攻撃用の動血装(ブルート・アルテリエ)と防御用の静血装(ブルート・ヴェーネ)の二種類があり、前回使えたのは後者だが、上手く応用して前者の攻撃用を使用することに成功したのだ。

 

「行くぜ。月牙天衝!!」

「何!?」

 

そしてグリムジョーが体勢を立て直す前に、二振りの斬月で月牙天衝を二連続で放った。それに驚愕するグリムジョーだったが、なんとギリギリで回避してしまったのだ。

 

「くそ、黒崎が堂々と滅却師の技を使うのは予想外だったな。だが…」

「ギア3+武装色・硬化!!」

「な!?」

 

しかし回避した先にルフィがギア3で巨大化した両腕に覇気を纏わせて、待っていたのだ。後ろに勢い良く伸ばした両腕を叩きつけようと、グリムジョーに狙いを定める。

 

ゴムゴムの灰熊銃(グリズリーマグナム)!!

「うぐっ!?」

 

そして放たれたルフィの技だったが、なんとグリムジョーは咄嗟に体勢を整えたと思いきや、正面から受け止めたのだ。

 

「ぐぉお!?(見掛け倒しじゃねえ、とんでもねぇ威力だ! だが、黒崎に麦わらを投げつけりゃ…)」

 

しかし、ギア3の出鱈目な威力は受け止めたグリムジョーも驚愕に値するものだった。そんな中でグリムジョーも反撃に転じようとしていたが……

 

「一護ぉおおおおおおおおおおおおおおお! 今のうちにとどめを刺せぇえええええ!!」

「「な!?」」

 

突如、ルフィが一護に向けて叫び出した。そのことに、グリムジョーだけでなく一護本人も驚愕した。しかし、続けてルフィは叫び続ける。

 

「こいつが動けないうちに、何でもいいからデカい攻撃をぶっ放せぇえええええ!! おれは大丈夫だ、耐えるなり避けるなりするし、助けてくれる仲間もいる! 気にせずやれぇえええええ!!」

「うぐ…(さっきまでのダメージもそうだが、だんだん威力が上がってやがる。マジで動けねぇ…!?)」

 

グリムジョーは一護が動き出す前にどうにか動こうとするが、それまで蓄積されたダメージが大きかった上にルフィの技も威力が減衰するどころか威力は上がっていた。

己の夢と、仲間を守るという執念染みた力は、十刃にも食い下がる程だったのだ。

 

「……ああ!」

 

そしてそんなルフィの意志を汲んで、己の最大の一撃の準備に入る。二振りの斬月に己の霊圧を収束し、同時に振るう。

 

月 牙 十 字 衝 ! !

 

そしてフルパワーの月牙天衝を、剣で十字を切るように放った。それによって放たれた、巨大な十字型の斬撃がグリムジョーを飲み込んだ。

 

「ROOM・シャンブルズ!!」

 

そしてルフィまで飲み込もうとした矢先、ローの技が発動した。ルフィはそこらへんに落ちていた小石と入れ替えられ、ローに救われたのだった。

 

「麦わら屋、てめぇ無茶しやがる。最悪だな…」

「……お前も、その世代だ」

 

悪態をつくローにそう返すルフィ。億越えの賞金首で、且つ世界規模の大事件を起こしたに関与した実績から"最悪の世代"と呼ばれている。ルフィとローも、そう呼ばれる12人に数えられていた。

そしてそんな二人は現在、デンライナーと並走する腕の生えた空飛ぶ帆船に乗っていた。

 

「で、このイカす船はなんだ?」

「幽霊屋の持ってるメカで、キャプテンゴーストっていうらしい」

 

どうやら、ゴーストが用意した代物らしくそれでデンライナーへと撤退することとなった。

そしてその様子を遠巻きに見ていた一護の所に、雨竜が駆けつけてきた。

 

「黒崎、戦闘は終わったみたいだな。撤退するぞ!!」

「だな……流石に、少し疲れた」

 

そして二人も高く跳躍し、デンライナーへと向かっていく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

その後、里へと向かうデンライナーの車内にて

 

「黒崎、君寛ぎ過ぎじゃないか?」

「一護、食べてすぐ寝たら牛さんになっちゃうよ」

「うるせぇな。戦闘後なんだから、ちょっと位いいだろ」

 

食堂車でナオミの用意した軽食をいただいた後、座席に寝転ぶ一護の姿があった。雨竜や由紀が注意するも、意に介した様子も無い。既に一護は自分の肉体に戻った状態で、コンもぬいぐるみに戻っていた。

ちなみに、オーバーヘブン・ショッカーの目的や聖なる遺体について、エトワリアについても食事の際に説明済みだ。

 

「それで、一護はどうする? 俺はショッカーが絡んでいる以上、仮面ライダーとして止めないといけないから戦うけど…」

「うん。貴方のあの力、僕らも貸してくれたら嬉しいかな? 勿論、無理にじゃなくていいけど…」

 

タケルや良太郎も自分の想いを話しつつ、一護の意思確認を取る。そんな中、一護はいきなり起き上がって、話し始めた。

 

「当然、手を貸すつもりだ。虚がいる以上は俺にとっても他人事じゃねえから、ダメだって言われても手伝う。それに、それ以上の理由もある」

「それ以上だぁ?」

「そうだな。一緒に戦う以上、話しておく必要もあるか」

 

モモタロスから懐疑的な声が上がって来たが、直後に自らの戦う理由について話し始める。

 

「俺のおふくろは、俺がガキの頃に虚に殺された」

 

そこから、一護は自らの過去を打ち明ける。

つい最近まで伏せられていたのだが、一護の父・黒崎一心(旧姓・志波)は死神だった。つまり、一護は死神の父と滅却師の母の混血のため、生まれつき高い霊能力を持っていたのである。

しかしその為に、幼少期は幽霊と生きた人間の区別がつかなかったらしい。そんなある日、偶然雨の日に見かけた虚が少女の姿に偽装した疑似餌を川に落ちそうな人間と勘違い、助けようとして川に落ちてしまう。真咲はそれが虚だと気付いて一護を助けようとするも、ある事情で滅却師としての力を喪失、虚に返り討ちにあって命を落としてしまう。

虚の存在を知らなかった当時の一護は、この一件から母を死なせた自責の念と守る為の力に固執していた。

 

そんなある時、高校生になったばかりの彼は死神の少女・朽木ルキアと出会い、負傷した彼女から死神の力を借り受けて虚を撃破。それを皮切りに数多の強敵と死闘を演じることとなった。

 

「そういうわけだから俺は……って、どうした?」

 

説明の最中、一護はつい疑問を覚える。

ゆの達ひだまり荘の面々や学園生活部の四人は目に涙を浮かべ、モモタロスも顔をうつむかせて嗚咽を繰り返すところを、良太郎に慰められている。ルフィ達麦わらの一味の三人は恥も外聞もなく、号泣しているようだ。ジョセフとシーザーも、思うところあってか暗い表情を浮かべる。

 

「ひっく……一護さん、辛かったんですね」

「一護のおがあ゛ざん゛があ……」

「良太郎、苺の母ちゃん天国から見てるよな?」

「うん、きっと……」

(そういや、この世界で生前の爺さんに会えたが、この数年後には…)

「戦士だった母親……か(父さん……)」

「ゔぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

皆が思い思いに言葉を口にする中、大声で泣き喚くルフィが一護に摑みかかる。そして、自身も過去に起こった不幸を語った。

 

「おれもよぉお、血は繋がってねぇけど兄ちゃんが二年前に死んじまってよぉお! その十年前にも一緒に兄弟になった兄ちゃんが死んでて……だから、オメェの気持ちスッゲェわかる! 家族がいなくなるの、つれぇよなあ!!」

「あ、ああ……ありがとうな(悪くねぇ筈なんだが、ちょっと暑苦しいな…)」

 

ルフィからも重い過去が判明、一護の過去について激しく共感したらしい。そこに礼を言いつつも、鬱陶しく感じる一護であった。

その後、全員が泣き止んだところで話を再開した。

 

「落ち着いたところで話を戻す。戦うきっかけがそんなだからよ、俺はお前らを守りてぇと思ったわけだ。

いくら大きな力を持っていても、俺は万能のスーパーマンじゃねえから、世界中の人間すべて守りたいなんて出来そうにない大きなことは言えねぇ。かといって、仲間や家族だけとか手が回る相手だけを守りてぇなんて、そんな無責任なことも言いたくねぇ。

だから俺は、山ほどの人間を守りてぇんだ

 

そして、間を置いてもう一度言葉を紡ぎ出す一護。

 

「でだ。俺はいつまでも此処にいるわけないかねぇけど、こうして知り合っちまった以上は、ここに居る全員がその俺が守りてぇ山ほどの一部になっちまっている。だから……

 

 

 

 

 

改めて言わせてもらう。手伝わせてもらうぜ」

 

言いながら、タケルと良太郎に向けて手を突きだし、握手を求めてきたのだ。

 

「ありがとう! 一護も手伝ってくれて、心強いよ!!」

「僕からもお礼を言わせてください!!」

「その、一護さん……ありがとうございます」

「私からも、ありがとうだよ!!」

 

そしてタケルと良太郎も礼を言いながら握手を返していく。その横で、ゆのと由紀も改めて礼を言うのだった。すると、それを見計らったかのようにルフィも口を開きだした。

 

「おし、話も終わったな。いいか? おれ達は今、共通の敵と戦う為にこうして手を取り合っている。つまりおれ達は、同志ってことだ」

 

言いながら、車内にいる面々を見渡すルフィ。すると、その意図を呼んだのか一護、タケル、良太郎、ジョセフはルフィに近づき、ゆのと由紀も何となくそれに倣う。

 

「さっきの仮面野郎どももそうだが、敵にはタケル達と同じ仮面ライダーに変身できる奴がいるし、他にもいろんな能力や武器を使うとんでもねぇ強さのやつらがウヨウヨしている。でも、例の遺体とやらにこの世界にやって来た味方がおれ達以外にもいるし、どんどん仲間になってくれる奴らがこの世界に集まりつつある……

 

だから、全員で敵をぶっ飛ばして、それぞれの世界でやるべきことをやるためにも、協力するぞ!

「「「「応!!」」」」

 

そしてルフィが拳を突き出すと同時に、タケルたちもそれに倣って拳を合わせる。

 

「えっと、みなさん……」

「私達も、まざっていい?」

 

すると身長差ゆえに参加できなかったゆの達も混ざりたい旨を伝え……

 

「あ、わりぃな。それじゃあ、これで…」

「君達も、よろしくね」

「はい!」

「うん!」

 

一護とタケルが言うと同時に6人でしゃがみ、ゆの達もそこに参加できたのだった。こうして、デンライナーは里へと向けて走り去っていく。

 

~次回~

 

「アスタ、早速行くデスヨー!!」

「ごめんなさい、異世界から来て早々に手伝ってくれて…」

きんいろモザイク

「気にすんなって、これも修行だ。待ってろギャングー団! 未来の魔法帝がぶっ倒してやる!」

「アスタ、未来の魔法帝は俺だ」

&ブラッククローバー

「……ここが異世界か。あれ、仁藤がいない?」

&仮面ライダーウィザード編、突入!!




『死神図鑑ゴールデン!!』
「う~ん…」
「ゆのっち、どったの?」

デンライナーが里へと帰還する途中、ゆのは一人で頭を悩ませていた。何に悩んでいるのか、宮子が問い尋ねると…

「一護さん達の世界じゃ死神がお侍さんの格好してて、死後の世界の人達も日本っぽい名前の人ばっかりなんだよね……じゃあ、外国の人達はどうなってるのかな?」
「あ、それもそうだよね…」
「うわ、言われてみたら超気になってきた」
「その辺りって、どうなの?」

ゆのの疑問は、確かに当然だった。下手をすれば、ヨーロッパやアフリカの人々が侍姿の死神に死後の世界へ連れていかれることになる。これは、奇妙な光景でしかないだろう。

「なんだ? どういう意味だ??」
「おい、俺と麦わらにもわかりやすくいってくれ」

そんな中でルフィとモモタロスはよくわかってなかったようだが。そこに、ウソップとウラタロスが説明に入る。

「つまりだ、侍がいない国じゃ死神がどんな格好してるかが気になるってことだよ」
「アメリカとかヨーロッパ諸国の死神まで、侍の格好してるのかそうじゃないのかってことだよ」
「あ、そういうことか! みんな侍の格好してじゃねえのか?」

ルフィ達がようやく理解したことで、一護の口から衝撃の事実が語られる。

「これな、俺も前に気になって仲間の死神に聞いてみたんだがよ…








西洋じゃ死神は魔女とか魔法使いで通ってるらしいぜ」
『え?』

予想の斜め上を行く一護からの回答に、全員が間抜けな声を上げる。

「それ、何かの冗談じゃねえよな?」
「俺も最初はそう思ったけど、あいつがそういう方面でウソをつく人間じゃねえのが分かり切ってるしな…ついでに言えば、虚もドラゴンってことになってる上に資源としても使われてるとか」

余りにも突拍子もない発現に、ウソップがつい問い返す。しかし、一護自身も困惑の色を浮かべながら話を続けたのだった。

「ねえ、それ本当に同じ世界なの? なんか、あまりにも突拍子無さ過ぎて…」
「紗英さんの言う通りですよ。いくら何でも言っていい冗談と悪い冗談がありますって」
「つっても……ああ、そういう文句は俺の世界に直接行って、創造神的な奴にでも言いやがれ!!」

同様に困惑していた紗英と乃莉の返しに反論する一護。しかし、その言葉に困惑の色を強める雨竜がいた。

(……僕らの世界じゃ、今は霊王がそれに該当するのか? でも、霊王が出てくる以前にそういう風に世界を作った存在がいたとしたら……)

そしてそんなことを少し考え……

「止めよう。これ以上考えても、たぶんロクなことが無い」
「石田、どうした?」
「何でもないよ、恵飛須沢さん……って、呼び捨て!?」
「あ、悪い。なんか、その方が呼びやすくて…」

危うく、世界に闇に踏み込みそうになったが胡桃のその発言に持っていかれるのであった。


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第45話「魔法騎士と指輪の魔法使い」

大変お待たせしました。ようやくウィザード編、突入となります。
ブラッククローバーの時系列は、ハート王国に来てから修行中の半年の間にしています。なので、まだナハトやリーベとも顔合わせはしてません。

P.S.あとがきにプチット・クローバーを入れようかと思ったのですが、話が思いつかず無しになりました。申し訳ない。
代わりにオリジナル怪人を出したのでその解説を入れています。


ビルドチームがクリエメイト・九条カレンと友人達を迎えに行く際、正気に戻ったジャイロ・ツェペリも同行することとなっていた。

 

「ピザモッツァレラ♪ ピザモッツァレラ♪ レラレラレラレラレラレラレラレラ♪」

「パンが焼けたよ~♪ 食〜べないなら食べちゃうよ~♪」

 

道中、朝食の準備をしているとジャイロとココアがそれぞれ、独特のセンスが光る歌を歌っていた。そんな歌にどうコメントしていいかわからない一同だった。

 

「ココアちゃんもジャイロさんもブラボー! 耳から魂出そうな素晴らしい曲だわ!」

「うん、いいんじゃないか? どっちも、ヨーロッパ辺りで流行りそうかも」

「お、ジョニィは毎度のことだが嬢ちゃんも気に入ってくれたか!」

「ありがとう! これ、自信作なんです!」

 

しかしそんな中、心の底から称賛して拍手を送る千夜と真顔のまま話を合わせるかのように話すジョニィ、という対照的なリアクションをする二人の姿が。

 

「戦闘以外だと、あの二人あんな感じなのか……」

「あのノリで大陸横断レースしてたって……なんか愉快そうですね」

「あれが戦友って物なのか……私の親父とチノの親父さんも、昔はそうだったかもしれないな」

 

そんなジョニィとジャイロのやり取りを見て、楽しそうにする戦兎、チノ、リゼの三人。そんな中で、朝食の準備も終わりそうだったので出久達を呼びに向かう。

 

「だりゃー!!」

「ウッシャァアアアアアア!!」

徹甲弾機関銃(A・Pショット・オートカノン)!!」

「波紋カッター!!」パパウッ! パウッ!!

「ジョースターさんとミドリヤの坊主による、ド派手な肉弾戦! そしてバクゴーの坊主とツェペリさんも弾幕の応酬! この若さであの二人と渡り合うなんて、見事としか言えねぇぜ!!」

 

そこで出久と勝己はジョナサンとツェペリ相手に模擬戦を行っていた。それを見て、スピードワゴンも実況に熱中している。

ジョナサンの重機関車の如き巨体から繰り出すパワーと頑強さに、出久は個性によるパワーと俊敏さの両立から来るヒット&アウェイ戦法で対抗する。勝己とツェペリも、己の能力を駆使した射撃技で対決を繰り返している。

しかし長期戦になったら折角の朝食も冷めてしまうので、いったん中断させようと声をかけることにした。

 

「出久、そろそろ朝食が出来るぞ!!」

「爆豪も、いい所で切り上げろ!」

「ジョジョさん達も来てください!」

「あ、わかりました!」

「そんなデカい声じゃなくても聞こえるっての!」

「バクゴー君、レディに暴言は良くないよ」

「だな。お前の技で爆音も響いてたし、デカい声じゃねえと聞こえねぇだろ」

「そうじゃな。お主は精神面を強化せねばならんかもしれんのう」

 

そんなこんなで、一同も朝食の席に向かう。そして戦兎達は去っていく一同、正確には出久の背中を見てあることを思い出していた。

 

「実戦さながらの特訓、凄まじいですね」

「けど、あいつらの背負っている物を考えると、仕方ないのかもしれないな」

 

言葉を交わす戦兎とリゼ、隣で無言でいるチノはある話を思い出した。それは最初の襲撃から生き延びた日の夜、ジオやエボルと交戦した際のメンバーは出久の個性の正体を聞かされたことにある。

ワン・フォー・オール

実はこの個性の能力は単純な身体強化ではなく、『力をストックし、別の人間に譲渡する』という物。自身の鍛えた身体能力を他者に継承させる、その繰り返しで強力なパワーを発揮していたというのである。

 

この個性の誕生は、個性が異能と呼ばれた"超常黎明期"にまで遡る。神野区の悪夢の話にも触れられたオール・フォー・ワンは、『他者から個性を奪い自ら行使する』『奪った個性を他者に与える』という力を持ち、それで何かしらの個性を手に入れて黎明期の頃から今も生き続けていたのだという。

当時、人間が異能の力を急に手に入れたことにより『異能や異形化を悪用する者や異能持ちを差別・迫害する者』が世界各地で発生、社会の秩序が崩壊した。

オール・フォー・ワンは当時、迫害される者から異能の力を奪い普通の人間に戻す、奪った力を虐げられた者達に与えて自衛できるようにする、などを繰り返して人心を掌握、世界を支配せんとしていた。

 

そんな状況に心を痛めていたのは「オール・フォー・ワンの弟」だった。彼は病弱な上に、『個性を与える個性』というそれ単体だけでは効果のない個性しかもっていなかったことから、無個性の人間だと思われていた。そんな彼にオール・フォー・ワンは屈服させるためか愛情故か、『力をストックする個性』を与えるのだが、この二つの個性が混じり合いワン・フォー・オールへと変じたのだ。

 

しかし彼は病弱な自分ではこの個性を行使して兄を止めることは出来ないと悟り、他者へ継承させ鍛えさせる、それを更に継承させ鍛えさせる……これを繰り返していつか兄を倒そうと考えた。

継承されたワン・フォー・オールは歴代の使い手の鍛え抜かれた身体能力がストックされ、現在出久は9代目として強大なパワーを宿している。更に、最近になって『歴代の継承者が持っていた個性』までが強化されて使用できるという新たな力が発現、前回の戦闘で使っていた黒鞭はその一つであった。

 

そしてこの個性の先代の使い手は……

 

 

 

 

 

 

平和の象徴オールマイトその人だった。

 

 

「何度も思うが、アイツらなんて運命を背負ってんだよ……」

「私たちの世界じゃ、想像もつかない話ですね」

「これはおいそれと話すことはできませんよね」

 

このワン・フォー・オールについて知っているのは、雄英職員やの警察関係者の中の一部のみ。同級生でこの事実を知るのは勝己のみ。余りにも重すぎる出久の背負った運命に、話を聞いていた一同は思わず身構えてしまうのだった。

 

「そういう意味でも、あの時の花名さんの話も気休めになってくれるといいですね」

 

そんな中、チノがある話を思い出していた。それはあの場で黒鞭の使用を見ていたため、花名にも秘密を明かした際のことだった。

~回想~

「あの……実は私も高校受験を病気欠席して、一年浪人したことがあるんです。だから、私はたまちゃん達より一歳上で……」

 

自身の身の上について話すと、聞いていた出久が呆けている様子が見えた。

 

「その、出久くんほど重くはないけど、私も隠し事してるから……そんな重く受け取らないでって……その、それだけです…」

 

その話を聞いた出久はしばらく沈黙。そして……

 

「アハハハハハハハハハハハ!! あ、ごめんごめん!! バカにしてるとかじゃなくって、みんな秘密持ってて当たり前だなって思って…ハハハハハハハハ!!」

 

笑い出した。しかしすぐに弁明を始めるも、笑いが止まる様子も無い。しばらく笑い終わった後…

 

「でも、そうだよね。僕も元々気が弱い所あるから、気負い過ぎたかもね……ありがとう、一ノ瀬さん」

 

思わず、人懐っこい笑顔で礼を告げるのだった。

~回想了~

「まあ、それ聞いた時にココアもショック受けてたけどな」

「ああ。花名が妹じゃないってことをな」

 

そして話す戦兎とリゼの脳裏に「(`0言0́)<ヴェアアアアア!」と絶叫するココアの顔が浮かんでいた。相変わらず姉になる願望が強すぎるようだ。

 

「リゼちゃんに戦兎さん、朝ご飯冷めちゃうよぉおお!!」

 

すると件のココアから呼び出されたため、揃って朝食の場に向かうのだった。

その同時刻・とある荒野にて。

 

「……プレーンシュガーもラスト一個か。異世界にもドーナツって、あるのかな?」

 

荒野のど真ん中にバイクを止め、ドーナツを齧る青年の姿があった。手形の意匠のあるベルトと、右手につけた大きな指輪が特徴的だ。

直後、空から小さな鳥のようなものが飛んできて、青年に何かを伝えようとする。

 

「お! この先に町があるのか……サンキュー、ガルーダ」

 

青年が礼を言った直後、小さな鳥は消滅した。そしてその後に残っていた指輪を回収すると、止めてあったバイクにまたがり始める。

 

「俺が救援するクリエメイトって異世界人、その町にいるのかね? そうでなくても、仁藤がいるかもしれないし」

 

ヘルメットを被りながらそう独り言を呟くと、青年はバイクを発進させて先ほどの鳥が知らせてくれた方向を突き進む。

次なる仮面ライダーとクリエメイト達の出会いは近い。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エトワリア辺境のとある荒野の町。

この町は現在、ギャングー団という俗に言うギャング組織による犯罪に脅かされていた。そしてその町からいくらか離れたところにあるギャングー団のアジトは、蜂の巣をつついたような騒ぎに包まれていた。

 

「なんか、メチャクチャつえぇ餓鬼が攻めて来やがったギャー!!」

「急いで、ボスに報告だグー!!」

 

アジトでは、ギャングー団の団員たちが突然の襲撃者に狼狽していた。取ってつけたような語尾だが、何故かギャングー団に属すると一部の例外以外はこんな喋り方になるらしい。

 

「オラァァ!!」

「ソォオオイ!!」

「「ぎゃー!?」」

 

しかし、その団員二人組は襲撃者らしき人物二人組にぶった切られて気絶してしまった。

 

「よし、あそこがボスの部屋ってわけか」

 

そして目の前の大きな扉の奥にボスがいることを察し、扉を開ける。

 

「ギャングー団、お前らの企みもここまでだ!!」

「神妙にお縄に着くのデース!」

 

ギャングー団の前に立ち向かってきたのは、牛の顔が描かれた黒いケープと、同じく牛の顔が描かれたバンダナに、灰色の髪が特徴的な少年だ。身長は160㎝以下だが、片手で身の丈以上の巨大な剣を担いでいるという物である。

その隣には、青と黄色を基調とした衣装の金髪美少女で、肩にかけたユニオンジャック(イギリス国旗の柄)のケープが特徴的である。同様に剣を持っているも、こちらは細身で所々金色になっている以外は普通の剣である。

 

前者の少年はアスタ。ノアからもたらされた情報にあった、反魔法(アンチまほう)の力を手にした少年である。手にした巨大な剣も、反魔法の力を宿した代物で彼の魔導書(グリモワール)に収納されている。牛の顔が描かれた黒いケープ(向こうでローブ扱い)は、クローバー王国の9つの魔法騎士団の内一つ"黒の暴牛"に属する者の証である。

もう一人の少女の名は九条カレン。クリエメイトの一人でイギリス人のハーフ、そのため日本語に不慣れで片言口調になっているようだ。ケープの柄も、元の世界で学校の制服の上から、ユニオンジャックのパーカーを羽織っていることに起因している。

 

「ほほう。餓鬼ども、ここが泣く子も黙るギャングー団のアジトと知って攻め込んできたのかギャー」

「ああ。弱い民を傷つけて金やら物やら分捕って行くなんて、魔法騎士として許しておけねぇぜ」

「魔法騎士? 魔法使いなのか騎士なのか、ハッキリしない奴だギャー」

 

部屋にいたボスと思しき強面の男は、乗り込んできたアスタの名乗る魔法騎士という肩書きに不信感を持っているようだ。

そんな中、急にカレンが声を上げた。

 

「聞いて驚くのデスよ。アスタはなんと、異世界からエトワリアに迷い込んできた最強の魔法騎士なのデス!」

「異世界かギャー? それが本当なら、自分の世界と関係ない奴のために戦うなんて、飛んだお人好しだグー」

 

カレンから詳細を聞いたボスだったが、明らかにバカにするような態度でこちらを見てくる。しかし、それに臆せずアスタは剣を向けながら宣言したのだった。

 

「俺がなんのためにここに飛ばされたかは、正直わからねぇ。けど、何処の国だろうと世界だろうと力のない人を守るのが、俺の仕事だからな! 観念しやがれ!!」

「その啖呵、褒めておいてやるギャー。野郎ども、この餓鬼どもをぶちのめせ!!」

 

そんなアスタの姿に対して、ボスは数名の手下を嗾けて来た。迎え撃とうとアスタとカレンも、それぞれ剣を構えるも……

 

「風魔法"カマイタチの三日月"!」

「「「ギャーッ!?」」」

「「「グーッ!?」」」

 

直後に、三日月状の風の刃がギャングー団に放たれた。命中し、数名のギャングー団がノックアウトされる。

 

「アスタ、こいつらを倒すのは俺だ」

「流石ユノ! このままやっつけちゃおう!」

「ユノ、てめぇ美味しい所持っていきやがって! コノヤロー!!」

 

すると空から先程の攻撃を行ったらしき少年が降りてくる。黒髪にクールそうな雰囲気、太陽の絵が刺繍された魔法騎士団のローブを纏っている。そして妖精と思しき手のひらサイズの少女が、その周囲を舞っていた。

アスタにユノと呼ばれたこの少年は、孤児院での幼馴染兼ライバルで強大な魔力を持った者に与えられる四つ葉のクローバーの描かれた魔導書を手にしている。そしてその才から、9つの魔法騎士団で最強の団である"金色の夜明け"に属することとなった。

妖精っぽい少女はとあるダンジョンに眠っていた風の精霊シルフで、普段はベルと名乗っている。ユノの魔導書に宿り、ユノ第一で彼に力を貸している。

 

「カレン、もう先走りし過ぎだってば!!」

「流石に無茶でしたよ、カレン!!」

「バカスタ、アンタも無茶し過ぎ!!」

 

さらに追従して来たのは、金髪ツインテールの小柄な少女とおかっぱ頭の黒髪少女、銀髪ツインテールで黒の暴牛のローブを纏った少女の三人組だ。

それぞれカレンの幼馴染(同い年で高校生)のアリス・カータレット、そのアリスがホームステイしている家の娘の大宮忍、アスタの同期団員で王族出身のノエル・シルヴァである。

 

「ほ、他にもいたのかギャー……と油断させておいて!」

 

一瞬動揺したようなそぶりを見せるボスだったが、直後に机の下に隠していたスイッチを押す。

 

「先に後ろの連中をハチの巣にしてやるグーッ!!」

「しまっ…」

 

直後に、天井が開いてそこから大量の機関銃を乱射してくる。アスタも一瞬動揺するが、ノエルは魔導書を開きながら杖を構える。

 

「水創生魔法"海竜の巣"!!」

 

すると三人を水のドームが覆い、銃弾を防いでしまった。王族出身で魔力の総量も桁違い。一時は制御できずに落ちこぼれ扱いされていたが、多くの実戦を積んだことで今では立派に魔法騎士として活躍している。

 

「んなバカなギャー!?」

「アスタ、さっさとトドメ指しちゃいなさい!!」

「ああ! ノエルこそ、そっち任せたぜ!!」

 

ノエルに守りを任せて、アスタはボスを倒しに剣を片手に立ち向かう。

 

「クソ! かくなるうえは……」

 

しかしボスもアスタを迎え撃つため、懐に手を突っ込んで何かを取り出す。

 

「裏ルートで仕入れたマジックアイテム、食らえギャー!!」

 

取り出したのは拳銃型のマジックアイテムで、それを構えてアスタに発砲。魔力の銃弾が放たれ、アスタに迫りくる。

 

「そんなもん、食らうか!」

「んな!?」

 

しかしアスタは剣を振るい、魔力弾を切り裂いてしまった。魔力を切り裂き無力化する断魔の剣、その前にはいかなる魔力攻撃も通用しない。

 

「ちょっと寝てろ!!」

「アブっ!?」

 

そしてアスタは断魔の剣の剣脊(けんせき)をボスの頭に叩きつける。ボスは脳震盪を起こし、そのまま気絶したのだった。

 

「おっし。こいつを町の偉い人に引き渡せば、任務完了だ」

「アスタ、やっぱりスゴイデース!」

 

伸びているボスの首根っこを掴み、片手で運ぶアスタにカレンが称賛の言葉を浴びせる。自分達より戦い慣れしている彼ら魔法騎士に素直に感心していたのだった。

 

「アスタ、ボス一人倒したからっていい気になるな。俺の方が多く倒した」

「なんだと、俺の方が多く倒しただろ!」

「いいや、俺だ」

(ま、またやってる……)

 

そんなアスタにユノが無表情のまま突っかかる。そこに対抗するアスタの様子に、アリスも思わず呆れたのだった。ユノはクールそうに見えて、物凄く負けず嫌いな性格らしい。

ちなみに、ユノも風魔法で大量の下っ端を運んでいたりする。道中でアスタも対抗して、自分の怪力でユノの拾い忘れも纏めて運ぶのだった。

 

そしてそんな一行がアジトの外に出ると、待っていた人物と一羽の鳥が。

 

「あ、帰ってきたみたい」

「おかえり~。こっちは特に異常なしだったよ」

 

ボーイッシュな茶髪の少女"猪熊陽子"、何処かリゼに似ているツインテールの少女"小路綾"、陽子の頭の上に留まっていた生意気そうな顔の小鳥"ネロ"である。

陽子と綾はカレンや忍の友人で、ネロは黒の暴牛で飼っているアンチドリという"魔力の低い人間に群がる習性の鳥"である。ネロにはある秘密があるのだが、それについてまだカレン達に明かしていないようだ。

 

「それじゃあ、そいつらを突き出したら報酬でなんかご飯でも食べようか」

「おっしゃ! 実はさっきから腹減っててよぉ……」

 

陽子の提案にアスタもつい上機嫌になる。しかし、そんな彼らを陰から見つめる者が……

 

「兄者、あれがクローバー王国の魔法騎士のようだな」

「そしておそらく、近くの小娘どもがクリエメイト……機を見て仕掛けるぞ」

~約二時間後・町にて~

「ああ、腹いっぱいだ……」

「うん、もう食べれない…ところで、アスタ達はどうするの?」

「それなんだよな。異世界に転移する魔法なんて、クローバー王国どころかエルフでも知らねぇだろうし」

「悪魔とかなら知ってるかもしれないけど、頼れるわけないわよね…」

 

食事が終わった後、アスタ達はアリスに今後について聞かれるも答えに困っている。

アスタとノエルは2日前に友好国のハート王国で修行していた際、ユノはクローバー王国で任務にあたっていた際に、それぞれ突如現れた空間の歪みに飲み込まれてエトワリアに飛ばされた。そこで途方に暮れていると、昨日に里からギャングー団討伐クエストにやってきたカレン一行と出会い、話を聞いて手を貸すことを決めたのだった。

しかし、アスタ達は別の世界の住人とされる悪魔と、その力を持った魔導師達が暗躍するスペード王国に対抗するためにも、早く元の世界に帰る必要があった。

 

「あ、そうだ! 里できららちゃんやクレアちゃんに、アスタ君達を紹介するのはどうでしょうか?」

 

帰還について考えていると、忍がそんなことを思いついた。

 

「きららって……確か忍達を召喚したって女の子だったか?」

「はい。ついでに言うと、クレアちゃんは召喚をサポートするための鍵を管理してくれる子になります」

「そうか。召喚の専門家なら、私達も召喚で呼ばれたのかどうかも、わかるかもしれないってことね」

 

忍からの説明を聞いたノエルも納得した。女神ソラが封印されていなかったらアスタ達の世界を探して貰えただろうが、現状で頼れるのは召喚に精通しているきらら達しかいないだろう。

 

「ならさっさと行くか。オレの風魔法なら、ここにいる全員を移動させられる」

「しかし凄いわよね。このエトワリアも魔法の世界だけど、そこまで発展しているのは見たことないし…」

 

ユノの発言に対して、感心した様子の綾。

聞けばクローバー王国での魔法の発展度合は、相当なもののようだ。主だった長距離移動も移動用魔法を使い、乗り物は魔法の触媒となる箒や絨毯くらいしか存在しない。床屋では魔法で生成した刃を鋏として使用。料理も食材の加熱に炎魔法を使う。

と言った感じで、魔法が戦いだけでなく日常生活に浸透しきっているのだ。エトワリアでも魔法仕掛けの日常品はあるが、ここまで浸透しきっていなかった。その一方で、魔力の強弱による差別など問題もあるようだが、今は置いておこう。

 

(クリエメイトにもゆのっているけど、こっちのユノと会ったらどんな顔するかな?)

 

その一方で陽子がどうでもいいことを考えているも、そこはご愛嬌。

そして移動を開始しようとした直後……

 

お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛……

「な、なんだ?」

 

いきなり何処からともなく、人型の怪物が大量に出現したのだ。灰色の鬼のような姿で、体に罅割れが浮かび上がった不気味な姿をしている。そして瞬く間に、その怪物に囲まれてしまった。

 

「何かしらねぇけど、敵なのは間違いないらしいな」

「まさか、ギャングー団さんのお仲間でしょうか?」

「シノ、たぶんそれは無いよ!?」

 

突然の事態に警戒するアスタに対し、忍が推測を口にする。ただ、まとはずれ内容だったため、アリスからのツッコミが入ることとなったが。

 

「とりあえず全員、戦闘態勢に入るぞ」

 

ユノが魔導書を構えると、他の面々も戦闘態勢に入る。

アスタも魔導書を開くと、中から断魔の剣が飛び出して来た。同じく前衛担当のカレンと陽子も、剣と槍をそれぞれ構えて突撃していった。

 

「先手必勝、ぶった斬る!」

「ちょ、バカスタ!?」

 

アスタが真っ先に剣を手に突撃、そのまま怪物に攻撃する……

 

「え?」

 

しかし、断魔の剣を叩きつけられた怪物は無傷だったのだ。そしてお返しと言わんばかりに、何処からか取り出した槍を突き刺そうと構える。

 

「ソォイ!」

「おりゃあ!」

 

しかしカレンと陽子がタックルで怪物を突き飛ばし、事なきを得た。そして2人で近くにいた怪物に、持っていた剣と槍で切りつける。

 

「アスタ、大丈夫ですか!?」

「あ、ああ。なんとか……でも、手応えはあったのに何で…」

「どうやら、アスタだけじゃないみたい」

 

陽子もマズいと言った顔で怪物を見ていたが、なんと今の攻撃も効いていないようだった。そして怪物は先ほど吹っ飛ばした怪物も含めてまた突撃して来たのだ。

 

「陽子、危ない!」

「アスタ!?」

 

綾とノエルが咄嗟に魔法を放ち、迫ってきた怪物を攻撃する。先ほどの様子から、効くと思われなかった……

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?

「あれ?」

「効いてる?」

 

なんと2人の攻撃を受けた怪物達が消滅した。今の一撃であっけなく倒されたのだ。

 

「Wow! やっぱり、攻撃がちゃんと効くみたいデス!」

「そうとわかりゃ、こっちのもんだ!」

 

敵が不死身じゃないとわかり、再び攻撃に入るアスタとカレンだった。しかし…

 

お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛……

「「あれ?」」

 

2人の攻撃に応えた様子も無く、拳を振り上げてこちらを迎え撃とうとする。

 

「うぉお!?」

 

アスタは拳の一撃を防ぐも、今だに攻略方法が見えない。そんな中、今度はユノの魔法が炸裂する。

 

「風創成魔法・疾風の白鷹!!」

 

風の魔力で生成された鷹が、数体の怪物を薙ぎ払っていく。攻撃の命中した怪物たちが、次々に消滅していく。その様子を見て、陽子が疑問の声を上げることとなった。

 

「どうなってるんだ? 攻撃が効いたり効かなかったり、意味わかんないんだけど…」

「そのグール達はな、魔力による攻撃以外は一切効かないのだ」

「つまり、魔力0のテメェ達3人に勝ち目なんて無ぇのさ」

 

疑問に答えた声の主、それはこの怪物の仲間と思しき2体の怪物だった。どちらとも人型だったが、胸と両肩に犬の顔を模した意匠のある赤い怪物と、両腕に犬の顔を模した意匠のある青い怪物、という見た目をしている。

 

「何者だ、おめぇら? 悪魔か、その仲間ってところか?」

「否。我が名はケルベロス、財団Xに作られし人造ファントムだ。貴様らの首を貰いに来た」

「俺はその弟オルトロス。クローバー王国の魔法騎士にクリエメイトども、相手をしてやる」

 

名乗りを上げるケルベロス&オルトロス兄弟。その名に疑問を投げかけたのは、ユノだった。

 

「ファントム……何だそれ?」

「どれ、冥土の土産代わりに教えてやろう。我らの世界にも一部の人間にだけだが、ゲートという魔力を持つ人間が存在する。そのがゲート深い絶望に飲まれると、精神世界内に誕生する魔物、それがファントムだ」

「その後、そのゲートの命を喰らって実体化するんだが、そこでゲートの見た目と記憶も手に入れて、ファントムは人間に成りすますこともできるんだぜ」

 

ケルベロス&オルトロスの律義な説明のおかげで、ファントムというのが何者なのかよくわかった。しかし、それを聞いて綾はあることに気づく。

 

「ってことは……あなた達、元人間ってことですか!?」

「違う。我らの場合、とある学者がある目的のために作った人造ファントムの資料を、先ほど言った財団Xで手に入れて試作した存在だ。故に、人間ベースではないのだ」

「人間に化けられない代わり、財団の兵器ビジネスの為に戦闘力を底上げしてある。てめえらそのテスト相手に選ばれたんだ、光栄に思え!!」

 

綾の懸念は杞憂だったが、同時にケルベロス&オルトロスは臨戦態勢に入った。二体のファントムが右腕に魔力を宿し、それが炎に変わっていった。

すると、ユノが先頭に躍り出て魔導書を構える。

 

「アスタ、下がってろ。こいつらがさっきの奴等の仲間なら、こいつらにも魔力の無い攻撃が効かない可能性が高い。オレに任せろ」

「んだと!? もしかしたらこいつらが知らねぇだけで、反魔法も効くかもしれぇだろ!!」

 

ユノからの忠告に反論しながら、アスタは魔導書から二本目の反魔法の剣"宿魔の剣(しゅくまのつるぎ)"を取り出す。そしてその剣に反魔法のエネルギーを流し込み…

 

「ブラック・スラッシュ!!」

 

斬撃と同時にケルベロス&オルトロスに向けて放った。黒いエネルギーの斬撃が二体のファントムに命中、右腕に宿した魔力が霧散していく。

 

「先手必勝、ここで決める!」

「アスタ、オレも行く…」

お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛……

「な、いつの間に!?」

 

アスタが突撃するとユノも続こうとするも、直後にグールの大群に囲まれ、阻まれることとなった。

 

「アスタ、私も行くデス!」

「カレン、待って…」

お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛……

「ああもう、邪魔よ!!」

 

カレンもアスタに続こうと駆け出す。アリスやノエルも後を追おうとするが、こちらもグールの大群に囲まれて身動きを取れなくなってしまう。

 

「行きますよ!」

「おうよ!」

 

そしてアスタとカレンが合流すると、そのまま二体のファントムに斬りかかる。しかし……

 

「言っただろう。魔力以外の攻撃は効かないとな」

「当然、反魔法の力も例外じゃないのさ」

「な…がっ!?」

「Wow!?」

 

ファントム二体に目立ったダメージも無く、逆に蹴り飛ばされてしまった。人外級のパワーによって、アスタもカレンも大きなダメージを負うこととなる。

 

「お仲間の魔法騎士どもは、そろってグールどもの相手をしてもらう。向こうがこっちに来た頃には、てめぇらを片付け終えた後って寸法さ」

「おい…」

 

オルトロスの発言に対し、アスタが何か物申そうとするのだが……

 

「オレのライバルと仲間、舐めてんじゃねぇぞ」

「あ?」

 

何故かアスタは勝ち誇ったような顔をしている。その様子にオルトロスも疑問を感じるが、すぐにその詳細が判明した。

 

「アリスにシノブ、巻き添え喰らわないよう掴まってて!」

「う、うん!」

「ノエルちゃん、何かやるつもりですね…」

 

ノエルが杖を構えると、そこに強大な水の魔力を収束していく。敵に囲まれているため散会できないので、アリス達を巻き込まないよう指示を出す。

 

「水創生魔法・海竜の咆哮!!」

 

技名を叫んだ瞬間、ノエルの収束した魔力が巨大な水の竜となって放たれ、大勢のグールを撃破する。そしてその水の竜がオルトロスに向けて突撃していったのだ。

 

「カマイタチの三日月・四刃!!」

「陽子から離れなさい!!」

 

その一方でユノも飛翔して上空から、綾と共に魔法でケルベロスに攻撃を仕掛ける。

 

「な!?」

「カレン、離れるぞ! ヨウコも逃げろ!!」

「OKです!」

「わ、わかった!?」

 

そしてアスタも巻き込まれないよう、カレンを連れて退避する。陽子もなんとか、ケルベロスから距離を取った。オルトロスも余りにも強力な魔法に驚いていたが、そんな中でケルベロスが叫んだ。

 

「オルトロス、魔石を使え!!」

「!? あ、ああ! その手があったか!!」

 

ケルベロスは叫んだ直後に何かを投げる。するとオルトロスもそれで察したのか、同じものを投げた。

 

お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛……

「え?」

 

なんと、投げられた石から大量のグールが出現し、ユノ達の魔法を防ぐ盾となったのだ。グールはそのまま消滅するも、ケルベロス&オルトロスは無傷である。

 

「グールは通常のファントムと異なり、この魔石から生み出される。その関係で知能は低いが、こうして雑兵や盾として重宝されているわけだ」

「兄者、助かったぜ! で、生意気な餓鬼どもは……だらぁあああ!!」

 

ケルベロスからグールについての説明がなされた後、オルトロスは両腕から炎と水の二つの魔法が同時に放たれたのだ。

 

「なに…ぐっ!?」

「きゃあ!?」

 

すると驚いて対応に遅れたユノは魔法を諸に食らってしまい、彼の魔法で一緒に飛んでいた綾も落ちてしまう。

 

「「綾(ちゃん)!?」」

「そこに気を取られるとは、戦士失格だな!!」

「しまっ…ええ!?」

 

そこに気を取られたノエル、忍、アリスもケルベロスの魔法を食らってしまう。なんとケルベロスは、口から炎、両腕から風と土の計三属性の魔法を放ったのだ。

 

「二重属性に三重属性、だと?」

「普通ならファントムも一部例外を除けば、一人一属性しか魔法を使えない。しかし俺達は強化改造によって複数属性を使用可能だ。兄者は三属性、俺は二属性だが代わりに身体能力を強化してある」

「ぐっ!?」

 

そしていつの間にかアスタの懐に入ったオルトロスは、律義に自分の魔法について詳細を説明すると、そのままアスタに膝蹴りを入れる。そしてひるんだ彼の胸倉をつかんだ。

 

「てめぇらは財団と協力関係にある組織が探している、聖なる遺体を手にれるために邪魔なんでな。諦めて死を受け入れろ」

「アスタ!」

「貴様らはまだグールの相手をしてもらう。反魔法の小僧を始末するまでな」

 

ユノ達も加勢に向かおうとするが、ケルベロスによって呼び出された大量のグールに妨害されてしまう。しかしそんな中、他でもないアスタが言葉を発した。

 

「誰が、諦めるか…」

「あ?」

「オレは、周りが当たり前に使っている魔法を、子供の頃から魔法を使えなかった。でも、諦めなかったから、最高のライバルが信じてくれたから、反魔法の力を手に入れられた。つまり…」

「つまり?」

 

そしてアスタは叫んだ。己の信条、いつも心に抱き続けたあの言葉を。

 

諦めないのがオレの魔法だ!! 死んでも諦めてたまるか!!!

「そうかい。じゃあ、その魔法を俺で解いてやるよ!!」

 

そしてそこからアスタにとどめを刺そうと動き出すオルトロス。このままではアスタの命も風前の灯火となってしまう……

 

 

 

 

ブォオオオオオオオオオン!!

「な、なんだ!?」

「バイク?」

 

いきなりけたたましいエンジン音とともに、一台のバイクがこちらに接近してきたのだ。カレン達やユノ、ノエルだけでなくファントム達まで視線を向けることとなる。

 

【コネクト・プリーズ!】

 

そしてバイクに乗る青年がベルトに指輪をかざした直後、虚空に魔法陣が出現した。そしてそこに手を突っ込むと、そこから大振りな銃を取り出した。

そして、バイクに乗ったまま銃を乱射……

 

 

 

 

 

「ぐわぁあ!?」

「うわっ!?」

 

銃弾がカーブし、オルトロスに命中したのだ。そのままオルトロスも手を離してしまい、アスタも地面に落下する。

 

お゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛……

「! 今だ…」

 

更に青年は銃撃を続け、グールを殲滅していく。するとそれを好機と見たユノが、飛行魔法でアスタの救出に向かう。

 

「ユノ、助かった…」

「ああ。でも、今のあいつ空間魔法で武器を取り出した?」

「みたいだな。でも、何者だ?」

 

加勢に来たと思しき青年の登場に、つい首を傾げることになるが、ケルベロスの口から楚の正体らしき言葉が飛び出す。

 

「現れたな、指輪の魔法使い! よくも弟を!?」

「指輪の…魔法使い?」

 

弟が倒れたことで怒りをあらわにするケルベロス。その彼が口にした単語が気になり、思わず復唱するカレン。そして青年の手についた指輪が目に入り、指輪の魔法使いという呼び名に納得する。

すると、青年がヘルメットを外し、茶髪で整った顔立ちであることがあらわとなった。

 

「お嬢ちゃん、君がクリエメイトでいいのかい?」

「あ、はい。クリエメイトの九条カレンと申すデス。あっちで膝をついてるのが、陽子といいます」

「カレンに陽子か。俺は操真晴人(そうまはると) 、君とお友達の加勢に来たんだ」

【ドライバー・オン!】

 

名乗った青年、晴人は指輪を付け替えてベルトにかざすと、ベルトが手形の意匠をそのままに機械染みた外観に変化する。これこそウィザードライバー、魔法の仮面ライダーが操る変身ベルトにして魔法を発動するための装置である。

するとアスタとユノがカレンの下に駆け付けた。

 

「カレン、無事か!?」

「あ、大丈夫です。このお兄さん、晴人もいるので。そういうアスタ達は…」

「オレもなんとか。ハルトだったか、アンタ味方でいいのか?」

「ああ、そうだ。フルネームは操真晴人、またの名を…」

 

アスタにも自己紹介をしながら、ベルトを操作した。

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!】

「何、このやかましい音と歌!?」

「ちょっと、うるさいデスけど…確かにかっこいいです!!」

「何だ、このカッケェ歌!?」

(か、カッコいいのか…これ?)

 

突然ベルトから流れたノリノリのスキャットに、陽子はツッコミ、アスタとカレンが称賛、ユノ困惑、といったように様々なリアクションが発生。

しかし晴人は気にせず、仮面ライダーの顔を思わせる縁取りの付いた赤い宝石の指輪を左手の薬指に装着。して、あの言葉を叫んだ。

 

「変身!」

 

直後にベルトにその指輪をかざすと、晴人の真横に赤い魔方陣が出現した。

 

フレイム・プリーズ!ヒー!ヒー!・ヒーヒーヒー!

 

歌と同時に魔法陣が晴人の体を通過、それによって変じた姿。

黒いローブを風になびかせ、赤い宝石に指輪のような縁取りを模した仮面。これこそ魔法の仮面ライダー……

 

「指輪の魔法使い、仮面ライダーウィザード。よろしくな」

 

そして晴人改めウィザードは名乗ると同時に、先ほど取り出した銃を変形させて、片刃の剣と化した。ウィザード専用の可変式武器、"ウィザーソードガン"である。

そしてウィザーソードガンを構え、決め台詞を叫ぶウィザード。

 

《xbig》「さぁ、ショータイムだ!!




オリジナル怪人
ファントム・ケルベロス
イメージCV:掛川裕彦
財団Xが笛木奏の研究資料を基に生み出した人造ファントム兄弟の兄。両肩と胴に犬の顔を思わせる意匠が見られ、デフォルトで炎、風、土の三属性を使用可能。

ファントム・オルトロス
イメージCV:吉水孝宏
財団Xが笛木奏の研究資料を基に生み出した人造ファントム兄弟の弟。こちらは両腕に犬の顔を思わせる意匠があり、炎と水のに属性を持っている。ケルベロスより使える属性こそ少ないものの、代わりに身体能力が高い。


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第46話「復活のアクマ」

お久しぶりです、玄武Σです。すっかり3か月更新がデフォルトになりつつありますが、まだまだ終われないので見ていただければ幸いです。
そして今回の組み合わせの意図を前回書き忘れていたので、記載しておきます。
魔法繋がりでウィザード&ブラッククローバーの組み合わせは決まってたのですが、構想を練っていた時はまちカドまぞく未参戦で、他にきらら系列で魔法絡みの作品を知らなかっため案が決まってませんでした。
そんな中、おなじく出したいけど組み合わせる作品が思いつかなかったきんモザが、「タイトルに色が入っている繋がりでブラクロと組ませるの良くね?」と思い決行した次第です。


指輪の魔法使い仮面ライダーウィザードこと操真晴人(そうまはると)は、オーバーヘブン・ショッカーを倒すため異世界エトワリアに駆け付ける。

そこで、救援対象であるクリエメイトとクローバー王国の魔法騎士達と出会うのであった。

 

「仮面ライダーウィザード?」

「オレ達の世界にも変身魔法ってあるけど、こんなの初めて見るぜ…」

「ああ。炎属性みたいな力を生じていたが……さっき空間魔法を使ってなかったか?」

 

カレンだけでなく、魔法の世界出身であるアスタやユノまで驚きを隠せないウィザードの存在。

アスタ達の世界の魔法は、地水火風の四属性を基本とし、そこから雷を操る魔法や金属を操る魔法、植物を操る魔法や空気を操る魔法、といったような派生属性が多く存在している。そこに血の交わりが永い時を経て繰り返されることで、空間転移魔法や記憶を読む魔法、自分を含めた指定対象の見た目を変える変身魔法、魔力を獣の形にして纏う獣魔法、魔力の刃を生成する裂断魔法、他者の魔法のコピーに特化した模倣魔法、といったような個人限定の特殊な魔法を使えるようになった者達が現れた。

なので、ウィザードが空間魔法で武器を出し入れしたり、変身魔法で戦闘形態になる等、一人で多彩な魔法を行使出来るのは異質なのである。

 

「こっちの魔法がどんなものか知らないけど、勝手は大分違うみたいだな。けど、結構強いって自負してるぜ」

 

困惑するアスタ達をよそに、ウィザードはソードモードにしたウィザーソードガンを構えてケルベロスに向かっていく。

 

「来るか。いいだろう、掛かって来い!!」

 

ケルベロスの手に槍が出現し、ウィザードに立ち向かっていく。そして、互いの得物がぶつかり合う。

 

「ふっ」

「な…がぁあ!?」

 

しかしウィザードは咄嗟に剣を引き、飛び回し蹴りをケルベロスの頭に叩き込んで、吹っ飛ばす。しかしケルベロスもすぐ体勢を立て直して槍を構えなおした。

 

「だったら、これでどうだ!」

「おっと」

 

ケルベロスは左手に土属性の魔力を収束し、土の塊を押し固めた弾丸を乱射しながら突撃してくる。

 

「兄者、加勢するぜ!」

 

するとオルトロスもカトラス風の双剣を出現させ、グールの軍団を率いて襲ってきた。

 

「こりゃ少し厳しいかな? だったら…」

 

ウィザードは剣を振り回して土の弾丸を破壊しながら、新たな指輪を左手に装着する。これもウィザードの顔を模しているが、宝石が緑になっている。そしてベルトを操作し、その指輪をかざした。

 

【シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!】

ハリケーン・プリーズ! フー!フー! フーフーフーフー!

 

現れた新たな魔法陣がウィザードの体を通過すると、体の赤いパーツが緑になり、仮面の宝石の形が逆三角形になっている。

 

「風属性になった!?」

「空間魔法と合わせて、3属性だと!?」

「2属性でも希少なのに、マジでか!?」

 

アスタ達が驚いていると、ウィザードの周囲に竜巻が生じ、それに乗って飛翔するウィザード。

 

「うぉお!? 速い……ぐわぁあ!?」

 

そして超スピードでケルベロスに斬りかかるウィザード。そのまま離脱して別の方向から斬りかかり、また距離を取って斬りかかり…を繰り返すヒット&アウェイ戦法でケルベロスにじわじわとダメージを与えていった。

 

「兄者…うぉお!?」

 

さらにオルトロスにも同様の手段で攻撃を仕掛けていく。

 

「グールども、クリエメイトから先にやれ!!」

「ヤバいぞ、あいつらシノブ達を狙ってる!?」

 

するとオルトロスが後ろで退避していた忍達を狙い、グールを嗾けて来たのだ。アスタも慌てた様子で声を上げるのだが……

 

「おっと。まず、あっちをどうにかするか」

【エクステンド・プリーズ!】

 

そんな中でもウィザードは冷静だ。新しい指輪をベルトにかざし、それによって出現した魔法陣に腕を突っ込む。すると、そのまま腕が伸びたのだ。

 

「「えええええええええええええええええええええ!?」」

「なんだ、あの魔法……!?」

「いやいや、ツッコミ追い付かないから!?」

 

これには魔法に疎い地球人のカレンや陽子だけでなく、アスタ達まで吃驚である。実際、ノエルや忍達も開いた口が塞がらない状態だ。しかしウィザードは気にせず、そのまま腕を鞭の様に振るってグール達を薙ぎ払うのだった。

 

「おし、このまま決めるぞ」

【キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ! キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ!】

 

今度はウィザーソードガンを操作し、側面に付いた手の形のパーツ"ハンドオーサー"を起動。ハンドオーサーが、グーからパーの形になると新しいスキャットが流れる。そしてウィザードがそこに指輪をかざすと…

 

【ハリケーン・スラッシュストライク!フー!フー!フー!……フー!フー!フー!】

 

発動した魔法によって刀身に風の魔力を収束し出す。それと同時に、その現象は起こった。

 

「竜巻……?」

「あのグールとかいう奴等を…」

 

突如、巨大な竜巻が生じ、グールの大群を飲み込んだのだ。その竜巻にグール達は巻き上げられ、そこにウィザードは剣を向ける。

 

「たぁああああああああああ!!」

 

そして竜巻に巻き上げられたグール達に、刀身にこもった風の魔力を斬撃と同時に放ったのだ。そしてそれが命中し、そのままグールは全滅する。

 

「す、すごいですね……」

「とんでもないわね…」

「っていうか、あの歌なんなの?」

「だよねぇ…」

 

忍や綾が驚く中、ノエルとアリスはやっぱりあのベルトや武器からの歌に気が向いてしまうようだ。

 

「よし、次はこいつだ」

【シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!】

 

続いてウィザードはまたベルトを操作し、青い宝石の指輪をかざす。

 

ウォーター・プリーズ! スイ~スイー!スイースイ~♪

「今度は水属性!?」

「4大属性中3属性も使いやがった…空間魔法にさっきの腕伸ばし魔法に…バリエーション多すぎるだろ……」

「ありえねぇ……」

 

新たな姿となったウィザード。今度は青を基調としており、仮面の宝石も丸みのある青い物になっていた。

アスタ達魔法騎士組も、先程からウィザードに驚かされっぱなしである。

 

「隙だらけだ、ウィザードよ!」

「だったら今度は……」

【リキッド・プリーズ!】

 

すると隙を突いてケルベロスが槍を振るって襲い来るも、ウィザードが次なる魔法を使ってそれを防いだのだった。しかし、その魔法は……

 

「何…うおぉお!?」

「体が水になりまシタ……」

「もう、何見ても驚かねぇ…」

 

ウィザード自身の肉体を液化する魔法だったのだ。それによって液体状になったウィザードは、ケルベロスの攻撃を受け流した後、体に纏わりついて動きを阻害する。その光景を見ていたアスタも…

 

「なんかよくわからんが、スゲェ魔法だぁあああああ!!」

 

再び目を輝かせて驚愕している。

 

「兄者、今助けるぞ!」

「バカ、来るな…!」

 

するとオルトロスも兄であるケルベロスを助けようと、両腕に魔力を溜めて駆け出す。しかしケルベロスは自分の二の舞になる可能性を危惧し、止めようとするのだった。

 

「そっちから来るなら、好都合だな!」

「な…ぐぉお!?」

 

そのケルベロスの危惧は当たり、オルトロスもウィザードによる攻撃を受けることとなった。液化したままの体当たりに翻弄されるのだった。

 

「よし、それじゃあここで一気に……」

【シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!】

 

ウィザードは距離を取ると更に指輪を付け替え、新たな形態となる。

 

ランド・プリーズ! ドッドッ、ド・ド・ド・ドンッ! ドンッドッドッドン!

「土属性……四大属性を全て使えるってことか」

「しかも空間魔法とか身体強化、武器の性質変化となんでもござれ……クソォオオオ、反則だろ! 凄すぎるぜぇえええええええええええ!!!」

 

土属性を象徴するよう、黄色っぽい茶色を基調とした姿になり、仮面も四角い宝石になっている。ユノの静かな驚嘆と、対照的にテンション最高潮のアスタ。その他の面々も茫然としていたのだ。

 

「確か、パワー特化形態だな……面白い、掛かって来な!!」

「いいぜ、来な」

 

するとオルトロスが体勢を整え出し、そのままウィザードに突撃していく。それに応えるように、ウィザードも拳を構えて迎え撃ちにかかる。

 

「「はぁああああ!!」」

 

そして、ウィザードとオルトロスの拳同士が激突し、空気も振動する。そしてそのまま肉弾戦に突入する二人に、圧倒されるクリエメイト一同と魔法騎士三人。

 

「属性を複数使う、遠近両対応の武器を持ってる、属性不明の未知の魔法……凄い所を上げていったらキリないわね」

「ああ。しかも風属性ならスピード、土ならパワーって具合に能力の割り振りも姿で変わるみたいだな」

「なあ、忍やカレンの世界やこの世界でも見ないタイプなんだよな?」

 

ノエルとユノがウィザードの能力について上げていくと、アスタもふと気になってクリエメイト組に問い尋ねる。

 

「私達の世界には、魔法そのものがありませんでしたから違いますね。一応、他の世界のクリエメイトに魔法に似たような物ってありますけど……」

「ああいうのは見たことないデス。テレビ…お話のヒーローくらいデスね」

「なるほど……じゃあ、俺達みたいにこの世界でも知られてない異世界とかか?」

 

忍やカレンとウィザードの正体について話しているのだったが……

 

「私のことを忘れているようだな、魔法騎士ども!!」

「しまっ…」

「やべっ!?」

 

その間にケルベロスも体勢を整え直し、こちらに迫ってきた。ウィザードが動揺する中、アスタも咄嗟に宿魔の剣を取り出し、ケルベロスの槍を防ぐ。

 

「アスタ、俺達で強力なの決めるから抑えといてくれ!」

「バカスタ、しくじったら承知しないから!」

 

その間にユノとノエルが魔導書を構え、魔力を収束していく。強力な魔法の準備をしているようだ。

 

「アスタ、私達も手伝う!」

「なんとか時間を稼ぎますよ!!」

「私とアリスも魔法で攻撃するから、少しはダメージの足しになる筈!」

「そうだね綾!」

「もしケガしたら、私に言ってください!」

 

そんな中でもクリエメイト一同もアスタに加勢しに立ち向かう。一方、アスタも宿魔の剣を手にケルベロスの槍による攻撃を捌いていく。断魔の剣より細身の剣であったため、こうなることを見越して選んだようだ。

 

「仕方ない。そっち任せたぜ!」

 

ウィザードもその様子を見て、自身もオルトロスとの戦いに専念する。

 

「ベル、フルパワーで行くぞ」

「オッケー、ユノ。派手に行っちゃおうか」

 

ユノの方は、ベルに呼びかけて高速で魔法の準備を進めていく。そして準備が完了すると、風の魔力で形作られた巨大な弓が出現する。

 

「風創成魔法"疾風の白弓"!!」

 

そしてユノが魔法名を叫ぶと、ベルが出現して弓に息を吹きかける。その直後、風の魔力の矢を放つ。

 

「かかったな!!」

 

しかしその直後、ケルベロスは風の魔力を両脚に溜めて跳躍。そのまま足元に生じた小さな竜巻に乗り、天高く舞い上がった。

 

「反魔法の小僧にクリエメイトども、仲間の魔法を喰らってあの世に行くのだな!!」

「そうはいくか!」

 

しかしその直後、アスタが宿魔の剣を放り出すと同時に断魔の剣を取り出し、一気に振り上げる。その時、刃でなく剣脊がユノの魔法に命中するのだが……

 

「喰らえぇえええええええええええええええ!!」

「何!?」

 

なんと、魔法が弾き返されて上空のケルベロスに向けて飛んできたのだ。突然のことで反応できず、そのままユノの魔法はケルベロスに命中。

 

「ぐぉおおお!?」

「喰らいなさい、海竜の咆哮!!」

 

そこにすかさず、ノエルも魔法を放った。強大な水の魔力によって作られたドラゴンが、上空のケルベロスを目掛けて飛んでいく。その光景を見ながら、アスタも宣言した。

 

「さっきも言っただろ。諦めないのが、オレの…いいや、オレ達の魔法だってな!!」

「ぎゃあああああああああああああ!?」

「兄者ぁああああああああああ!?」

 

そしてフルパワーの魔法を連続して叩き込まれたことで、ケルベロスは倒され、上空で爆発四散する。オルトロスもその光景を見て、絶叫した。

 

「魔法騎士め、よくも兄者を!!」

 

兄を倒された怒りで激昂したオルトロスが、アスタ達に攻撃を向けようとする。しかしいつの間にかフレイムスタイルに戻ったウィザードに、妨害されてしまった。

 

「ウィザード、邪魔をするな!!」

「お前らの絆、確かに本物なんだろう。だからって、不当に人を傷つけたことを見逃すってことはできねぇけどな」

「ぬぉおおおお!?」

 

そして飛び回し蹴りを叩き込むと、オルトロスも派手に吹っ飛ぶ。そして止めを刺すべく、ウィザードも必殺技用の指輪を装着した。

 

【ルパッチマジック・タッチゴー! ルパッチマジック・タッチゴー!】

「フィナーレだ」

【チョーイイネ! キックストライク・サイコー!】

 

ベルトからの音声と同時に、ウィザードはその場で一回転。直後に足元に展開された魔法陣に、炎の魔力が収束していく。直後にウィザードが駆け出すと、美しいフォームでロンダートを決める。そして、一気に跳躍し……

 

「たぁああああああああああ!!」

「ぐわぁあああああああああ!?」

 

炎を纏ったライダーキックをお見舞いしてやった。ロンダートで助走をつけて増強した、魔力を込めたキックを叩きつける"ストライクウィザード"である。

 

「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」

 

ストライクウィザードによるダメージが致命打となり、オルトロスも爆発四散。ウィザードの勝利となった。

 

「ふぃー」

 

そして気の抜けたため息をつくと、そのまま変身を解除して晴人の姿に戻ってアスタ達に近づいていく。

 

「あんた、助かったぜ。ありがとうな」

「気にすんなって。そもそも、君らの加勢にこの世界に来たんだからよ」

「そういえば、クリエメイトのことを知ってたようですけどどうして?」

「ああ。知り合いにちょっと…」

 

そして忍からの質問に答えようとした時、エンジン音らしきものに気づく晴人。そこにはバイクで二人乗りする男達とそれに追従する二頭の馬、一台の自転車が見えた。

 

「おぉ、晴人無事だったんだな!」

「あれが君の仲間、魔法の仮面ライダーか」

 

バイクに二人乗りするのは、戦兎と龍我。並走する自転車に乗る純日本人顔の金髪男(おそらく染めている)の姿があった。晴人の名を知るあたり、仲間のようである。

ちなみに、馬二頭は当然ジョニィとジャイロの愛馬である。

 

「よし、とりあえず到着か。一同、亀から出てこい」

『あ、分かりました!』

 

馬から降りたジャイロが、ジョルノから借りた亀のスタンド使いココ・ジャンボを懐から取り出すと、中から出久の声で返事が返ってくる。

そしてそのまま、中から出久達雄英組、ココア達クリエメイト組、そしてジョナサン組が一斉に出てきた。

 

「でぇえええええええええええ!? 亀の中から人間出てきたぞぉおおおおおおおおお!!」

「ココアちゃん達、来てたんですね!!」

「やっほー、忍ちゃんにアリスちゃん!」

 

アスタが腰を抜かして驚く一方、忍とココアがのんきに挨拶を始める。そんな中で、戦兎と龍我も晴人に近寄って話しかけてみる。

 

「そこの彼から聞いたけど、あんたが魔法使いの仮面ライダーか?」

「ああ。指輪の魔法使い操真晴人、またの名を仮面ライダーウィザードだ。なら、あんたも仮面ライダーなのか?」

「ああ。科学の仮面ライダー、ビルドに変身する……」

 

晴人の自己紹介に対して、戦兎も名乗りをあげる。その際、少し間を置いて改めて名乗った。

 

「天っ才物理学者の桐生戦兎だよ」

「そして仮面ライダークローズ改め、プロテインの貴公子・万丈龍我だ!!」

「ビルドにクローズ…鎧武やゴーストの言ってた平行世界のライダーか。よろしく」

 

かつて財団Xの幹部"最上魁星"によって起こった戦兎たちの居た世界と鎧武やゴースト、エグゼイドの世界が融合させられようとした事件。その際の戦いにウィザードは関わっていないが、かつて共闘したライダー達から事情を聴いて知っていたらしい。

その一方で、自転車に乗っていた晴人の仲間の青年もクリエメイトや雄英組に自己紹介をしていた。

 

「晴人の仲間で仁藤攻介(にとうこうすけ)ってんだ。俺も魔法使いなんだけど、さっきの戦いに来れなくて悪かったな。この世界に着いた瞬間、晴人と逸れちまってよ…」

「いえいえ、来ていただいただけでもありがたいです。あ、私は大宮忍といいます。友達からはシノと呼ばれていますので、良ければそれで」

「私、ココア。モットーは"出会って三秒で友達"、よろしくお願いします!」

「緑谷出久、ヒーロー名はデクです」

「魔法騎士団"黒の暴牛"のアスタだ。齢近そうだし、呼び捨てでいいぜ」

「ジョナサン・ジョースター、気軽にジョジョと呼んでくれ」

「ジョニィ・ジョースター。ジョナサンと姓は同じだけど、親戚ではないんだ」

「そのジョニィの相棒、ジャイロ・ツェペリってんだ」

 

そして残りのメンバーも自己紹介をしようとした矢先、ココアの懐から光が発せられる。一同、ついそこに視線を向けてしまう。

 

「ココアちゃん、それって一体……」

「近くにあるの? みんな、そっちで頭の中に声が響く人いない?」

「さっき戦ってたみたいだけど、そいつらの狙っている物があるかもしれないんだ」

「聖なる遺体といって、ミイラ化した大昔の聖人の亡骸なんだ。その聖人の持つ奇跡の力が宿っていて、敵はそれを狙っているらしい」

「急いで回収しないといけない、すぐに探したいから名乗りを上げてくれ!!」

 

忍の指摘に一斉に説明を始めると、一人手を挙げる人物がいた。

 

「あ、それ私デス。なんか、呼ばれてるような…」

「え、カレンなの? シノじゃなくて??」

「いやアリス、悪者の狙いわかったんなら先に探そうよ」

 

まさかのカレンであった。話を聞いていたアリスが予想と違うことに困惑するも、陽子の指摘もあって捜索に乗り出す。そして近くに置いてあった樽に何かを感じ取って覗いてみると…

 

「あ、これですか?」

「それだよ、それ! 良かった、見つかって…」

 

中にあった白い布に包まれた聖なる遺体の一部。ココアの持つ左手に共鳴して光っているため、間違いないだろう。

~カレンは遺体の両目を手に入れた~

 

「ふぅ。無事に回収できたね、かっちゃん」

「だな。でも、かっちゃん言うな」

「見た感じ、オレとユノの関係みたいな感じだな」

「みたいだな。口はかなり悪いが」

「ああ!? テメェ喧嘩撃ってんのか!?」

 

その様子を確認していると出久&勝己、アスタ&ユノのそんな会話が響く。そんな中、いきなり陽子が挙手したかと思うと…

 

「一通り終わったところで悪いんですけど…何か食べるもの持ってない? 安心したらお腹すいちゃって……」

「陽子、さっきお昼食べたばかりでしょ?」

「そうなんだけどさ、さっき戦ってそれなりの運動にもなったし…」

「言われてみれば、魔力の消耗もあったし私も…」

 

綾もジト目で見る中、陽子の言い分にノエルまで同意する。すると……

 

【コネクト・プリーズ!!】

 

晴人は、武器を取り出したものと同じ空間魔法の指輪をベルトにかざす。すると、1つの紙袋を取り出した。ふと気になり、戦兎が問い尋ねると…

 

「それは?」

「俺行きつけの店のドーナツ。店長に新作の感想聞かせてくれって渡されたんだけど、俺だけじゃ食べきれなくてさ」

 

晴人の好物のドーナツは、"はんぐり〜"という移動経営のドーナツ屋で購入した物だ。そこの店長は所謂オネェで、晴人のことを気に入って店の新作ドーナツを勧めてくる。しかし、晴人自身はプレーンシュガーしか食べないためいつもスルーされてたりする。

 

「しかも俺自身、プレーンシュガーしか食べないからさ。無駄にするわけにもいかないし、お近づきの印も兼ねて食べてくれよ」

 

言いながらラスト一個のプレーンシュガーを取り出し、全員にドーナツを渡していく晴人。そんな中で陽子とアスタは真っ先に齧り付き……

 

「うぉおおおおおおおおおおおおお! ウメェエエエエエエエ!!」

「本当だ、超美味しい!!」

 

大絶賛。アスタのオーバーリアクションもあり、周りもつられてドーナツを口にした。

 

「あらヤダ、何これ美味しいじゃない!」

「うん、甘さもしつこくいし生地もふっくらしているよ」

「甘い物ってあまり食べないけど、こいつはイケるな」

 

思い思いの感想を口にする一同、どうやら"はんぐり〜"のドーナツは好評なようだ。特にそば好きで寝る時は和室派な、和物好みの傾向がある焦凍が素直に美味いと言うあたりに見て取れる。

 

「皆悪くないリアクションだね。でも、ドーナツは揚げパンみたいなものだから、パン屋の娘としてリアクションで負けられないよ」

 

そんな中で、ココアがドヤ顔で言いながらドーナツ(モッチリ系)を口にする。そして…

 

「ヴェアアアアア! モッチモチィイイイイイイイイ!!」

(ウルセェ……!!)

(賑やかな奴だな)

 

オーバーリアクションに目が行ってしまう、うざそうな顔の勝己といつも通り無表情のユノ。しかしその状態でもドーナツを食べ続けている。勝己も辛党なのに食べるのをやめない辺り、相当美味なのだろう。

 

「悪い、俺いらねぇから誰か食ってくれないか?」

「ごめんなさい、私も…」

 

そんな中、龍我と綾の二人からこんな申し出が出た。

 

「万丈、それと綾ちゃんだっけ?どうしたんだ?」

「いや、ドーナツなんて筋肉の大敵だしよ。ちょっと抵抗あるっていうか…」

「私も、ちょっとダイエット中で…」

「お、それじゃあ俺食うよ」

 

戦兎の問いかけに二人が答えると、それらしい理由が返ってきた。そしてそのドーナツを攻介が受け取り、最初に晴人からもらった分と合わせて食べようとする。

 

 

 

 

 

しかし、その食べ方はとんでもない物だった。

 

「え? マヨネーズ??」

「まさか…」

 

懐からマヨネーズを取り出す光景を見たシャロと天哉。そして二人の予想通り…

 

「いただっきまーす!」

 

紙皿に乗せたドーナツ三個に、躊躇なくかけて齧りついたのだ。

 

(こ、これがいわゆるマヨラーってやつかしら?)

(マジで何にでもかけるんだな)

(ドーナツって揚げ菓子だろ? そこにマヨネーズなんてかけたら、くどくならねぇか?)

(うむ。体に悪そうな食べ方じゃな)

「てめぇ何喰ってんだ!? そんな脂肪しかつかねぇ筋肉の敵みたいな食い物を……」

「あ、おめぇこそ何言ってんだ? マヨネーズはこの世で最も偉大な食い物だ、敵なわけねぇだろ!?」

 

皆で唖然とする中、龍我と攻介で口論になってしまう。

その後、戦闘で消耗したこともあって荒野の町で一泊することになる一同だった

 

~宿、女子部屋にて~

「しかしお茶子ちゃんもココアちゃんも、似た声してますね」

「「いやいや、それ程でも……」」

「ちょっと、同時に喋らないで。ややこしくなるから…」

「いつか話してたことだけど、綾とリゼも声だけじゃなくて顔まで似てるよね」

「ああ、そうだな。最近あまり触れてないけど…」

「そ、そうよね…(大きく声にして言いたい、胸が違うって!)

 

女子部屋で何度か指摘された似た声についての会話が行われていた。そこで触れられるように、リゼと綾は声音だけでなく顔もよく似ており、紫と青みのある黒という似た髪色をツインテールにしている始末だ。綾の思うようなスタイルに関する点以外は、瓜二つといってもいい。

するとそんな中、ノエルからある話が飛び出した。

 

「そういえばシノブに話したことなんだけど、そのシノブに似た声の知り合いが私の元居た世界にいるのよね」

「「え!?」」

「ミモザちゃんというらしいんですけど、ノエルちゃんの従妹らしいんですよ。しかも、金髪美少女らしくて……」

 

ノエルの従妹で同じく王族のミモザ・ヴァーミリオン。ユノと同じく金色の夜明けに所属し、植物属性の魔法に適正がある。治癒や索敵と言ったサポート用の魔法が得意で、一緒にハート王国に修行に出ている。今回の転移に巻き込まれていないため、まだ元の世界にいるようだ。

そのミモザが、どうやら忍と声音がそっくりらしい。

 

「まさか世界に同じ顔の人間が三人いるように、異世界に広がると声までそっくりな人間も複数人いるのかしら?」

「そんなわけない…と言い切れないわね。バラバラの世界のクリエメイト同士だと、そういう傾向あるみたいだし」

 

話を聞いていた千夜の考えにシャロはツッコミを入れるも、エトワリアでの出会いなどから安易に否定できなかった。シャロも一人、自分と同じ声音のクリエメイトに心当たりがあるためである。

そんな感じで女子が集まっている中、楽しげな会話が繰り広げられるのであった。

一方で男子部屋の一同はぐっすりと寝ているようだったが……

 

 

 

~宿の外~

「87、88、89、90……」

「出久、どうしたんだ? なんか焦ってるみたいだけど…」

 

一人で蹴り技のフォームを練習していた出久に、戦兎が話しかけてきた。

 

「戦兎さん…実は、夕食前の会話でアスタ君の話聞いてたら、少しヤバいなって思っちゃって…」

 

そして出久の口から、その会話について語られる。

夕食前、なんとなくアスタと話をして彼のこれまでの経緯などについて聞いてみた。そこでアスタとユノは赤ん坊の時に同じ孤児院に保護された幼馴染であること、アスタが魔力を持たない中でユノは逆に魔法の才に長けた天才であること、そんな中で魔法を無力化する剣を宿した魔導書を手に入れ、無事に魔法騎士になれたこと、など色々なことを聞いた。出久もワン・フォー・オールについて隠しつつある程度の身の上話をしたのだったが……

 

「僕、魔法が当たり前の世界で魔力を持ってない彼に、無個性だった頃の自分を重ねてたんですけど……全然勝てないなぁって、つい思っちゃったんですよ」

 

つい自嘲的な顔を浮かべ、そのまま話し続ける。

 

「ワン・フォー・オールをオールマイトから受け取ったのに対して、アスタ君は自分の力で反魔法を手に入れた。しかもそれ以前から、いつか魔力を手に入れられると信じて体を鍛え続けていたらしいし……僕よりずっと前向きで、寧ろ羨ましいなって」

「出久……その…」

 

そんな彼になんと声をかけていいかわからずにいた戦兎。そんな中、それは起こった。

 

パリィイイイイイイインッ

「「波紋カッター!!」」

「「ええ!?」」

 

突然、ジョナサンとツェペリが窓を割って飛び出し、上空に向けて二人で波紋カッターを連射する光景が見えたのだ。

 

「ジョジョさん達、どうしたんですか!?」

「イズク君。ツェペリさんが寝る前に仕掛けた波紋探知機が、敵を察知してね」

「おかげで奇襲を防ぐことが出来たわい……出てくるのじゃ、ディオよ!!」

 

出久に説明するジョナサンとツェペリだったが、直後にツェペリが叫んだところで何者かが地上に降り立つ。そこにいたのは、叫ばれた名前の男であった。

 

「ジョジョにその師匠、よく俺だと気づいたな」

 

ジョナサン達の時代から連れてこられたスタンドに目覚める前の、吸血鬼ディオ・ブランドーである。クウガに変身したユウスケとの戦いで消滅した下半身も、すでに再生している。

 

「こいつが敵の首領の過去の、厳密には平行世界での過去の姿か……」

「例の首領より強くないらしいけど、それでも凄まじい威圧感…並の(ヴィラン)の比じゃない」

「ふむ。どうやら奴の、別世界の俺の言う通りバレてるらしいな。まあ、いずれ奴を始末するなりエニグマとやらを使って取り込んでしまえば、俺がオーバーヘブン・ショッカーの首領となる。そうなればあまり関係も無いがな」

 

戦兎と出久がディオの威圧感に圧されていると、ディオの口からとんでもない話しを聞かされる。この野心こそ、ディオを最強の悪たらしめているのだろう。

すると、先ほどのジョナサン達の飛び出した音で他のメンバー達も飛び起きて宿から飛び出てくる。

 

「おいおい、まさか敵来ちゃったのか?」

「ああ。どうやら、ジョナサンと縁のある敵らしい」

「洗脳されてた時の記憶って残ってないんだが、あれと組んでたってのか…」

「あれが噂に聞いた吸血鬼野郎か」

 

一同は外に出てさっそく、ディオを目撃する。晴人、ジョニィとジャイロ、勝己の順にディオについて言及すると、残りのメンバーも続けて登場。先に到着したのは女子組で、やはり先程までガールズトークしてたのが大きいだろう。

 

「アレが噂の悪い人ですか?」

「うん。なんか、吸血鬼らしいよ」

「吸血鬼……ヴァンパイアってこと!?」

「らしいですね。他にも、超能力者や悪者の仮面ライダーもいるそうです」

「まるでテレビのヒーローか漫画みたいですね…」

 

ディオの威圧感に圧され、つい忍が疑問を投げるとココアとチノから簡単な説明がなされ、アリスとカレンも驚く。するとそんな様子を見ていたディオが、ため息をつく。

 

「女が集まれば姦しいと言ったものだが……なるほど、確かに少しうるさいな」

「こっちはそれなりに頭数を揃えている。ディオ、君も一人じゃないんだろう?」

「察しがいいな、ジョジョ。当然、俺の作った屍生人(ゾンビ)どもも待機中だ。オーバーヘブン・ショッカーから貸し与えられた、戦力だって用意している」

 

ジョナサンが思わず問いかけると、ディオも答えながら指を鳴らす。すると、空から一人の人物が降りてきた。

 

「アフフフフフフフフフ。アスタ君、オーバーヘブン・ショッカーに仇名す魔法騎士になっちゃったみたいだね」

「え? お前……」

 

降りてきたのは、筆のように盛り上がった特徴的な髪形をした、水色の魔法騎士のローブを纏った少年。特徴的な笑い方のその少年はアスタの名を知り、かつアスタ自身も知り合いらしいその人物は紫のオーラを放ち、首領に洗脳されているのがわかる。

 

「リル? なんで、そいつと一緒にいるんだ?」

「アスタ君、何言ってるの? 僕ら魔法騎士はオーバーヘブン・ショッカーの戦士だから、仮面ライダー達と一緒にいる君こそ、裏切り者じゃないか。」

 

アスタの問いかけに返すリルと呼ばれた少年。洗脳によって、魔法騎士=オーバーヘブン・ショッカーの一員という意識を刷り込まれているらしい。

 

「えっと、アスタ達の知り合いなの?」

「リル・ボワモルティエ。魔法騎士団の一つ、"水色の幻鹿"の団長だ」

 

陽子の疑問にユノが答えると、一同はギョッとすることとなった。

 

「騎士団長って……私達より若干年上くらいじゃないか?」

「ああ。俺達の世界じゃ20歳で成人なんだが、それで見ると未成年なんじゃ…」

「ああ。実際、19歳で現役最年少の騎士団長でもある」

 

リゼと天哉も疑問となるも、ユノからの答えに警戒心も強まった。最年少で騎士団長ということは、若さに見合わない天才的な実力や人徳、頭脳を有していることでもあるためだ。

 

「ねぇ、君達も指輪の魔法使いに因縁あるんだよね。だったら、早速来ないかな?」

「ああ。早速来させてもらうか」

 

するとリルに話しかけられて三つの人影が現れる。今度は晴人と因縁のある敵であった。

 

「お前ら…アクマ族の!?」

「ああ。あの世から舞い戻ってきたぞ」

 

その三つの人影は三体とも異形であった。黒と赤を基調とした、側頭部に蝙蝠の翼のようなパーツを生やし、眼を覆う赤いゴーグルも蝙蝠っぽいデザインをしている。その両脇に黄色を基調とした同じく蝙蝠の翼のようなパーツを生やした男と、赤茶色と青を基調としたずんぐり体系の三人組であった。

 

「あいつら、悪魔っていってたけどハルトの世界にもいるのか?」

「いや、あいつらはあいつ大昔に異形の所為で悪魔扱いされて、地底世界に追いやられた一族の末裔らしい。地上人類に復讐しに来たから戦ったんだけど……」

「なるほど。首領に復活させられたわけね」

 

アスタが晴人に質問すると、その説明を成される。戦兎も一度倒されたという話を聞いて、これまで戦った敵同様に復活した物だと察した。

すると、リーダーらしき異形がこちらに向き合う。

 

「初見の連中の為、自己紹介くらいしてやろうか……我が名はザタン!!」

「拙者の名はイール!!」

「ガーラなんだな~!!」

 

そして名乗った異形の三人組は、腰に差してあったサーベルを抜く。そこに一瞬、全員で身構えるのだが……

 

「ザラード!」

「イラード!」

「ガラード!」

 

それぞれサーベルの切っ先を合わせ、天に掲げる。

 

「「「我ら、魔の三銃士アクマイザー!!!」」」

 

自ら口にしたように、まさに三銃士の誓いのような名乗りを上げるアクマイザー達。しかし、その際もディオに匹敵しうる威圧感を纏っている。

 

「仁藤、そういえばお前に会う前に奴らと戦ったから知らないんだよな。連中は…」

「皆まで言うな。ファントムと違う敵、今はそれだけわかりゃ十分だぜ」

 

警戒態勢でいる中、晴人からの説明をぶった切ってそのまま臨戦態勢に突入する攻介。

 

【ドライバー・オン!】

 

するとベルトを起動すると、門のような意匠のバックルが出現。そして、あのかけ声を上げる。

 

「変~……身!」

【セット・オープン!!】

 

ポーズを決めた直後、ベルト正面に指輪をはめ込むと、そこが開いて中からライオンの顔をした金の彫像が出現する。そしてそこから魔法陣が展開され…

 

【L・I・O・N……LION!!

 

攻介の体を通過して彼の姿を仮面ライダーの物に変えた。その姿、それは先程の音声で叫ばれたような、ライオンを模した黄金のアーマーを纏った物である。

ベルトに封じられたファントム・ビーストキマイラの力を纏う、ウィザードを始めとした指輪の魔法使いの原型(アーキタイプ)、古の魔法使い。その名は……

 

 

「仮面ライダービースト! さぁ…

 

 

 

 

 

 

 

ランチタイム…じゃなかった。ディナータイムだ!!」

 

そしてそのまま珍妙な決め台詞と同時に突撃していく、攻介改めビースト。当然、この決め台詞には皆が疑問を感じることとなる。

 

「え? ご飯の時間??」

「どんな名乗りだよ」

「あれな。仁藤って変身の代償に、倒したファントムの魔力食べないと飢え死にするようになってるからしいんだよな。一応、代用品のストックあるみたいだから、その辺り心配ないらしいぜ」

 

ココアと勝己がふと疑問を口にすると、晴人から衝撃発言が飛び出す。

 

「それはまた難儀な……でも、もう夕食って終わったよな?」

「うん。だから夜食、夜中の間食で"midnight snack"になると思うよ」

「今それどころじゃないだろ、来るぞ!!」

 

その説明を聞いた直後、戦兎とアリスからツッコミが入ったが、今それどころでないとジョナサンからも指摘され、改めて臨戦態勢に突入することとなった。

 

「よし、それじゃあ実験といくか」

【ラビット! タンク! ベストマッチ!!】

「おし、いっちょ暴れてやるか」

【Wake UP! Cross-Z Dragon!】

「だな。この子たちの希望、守らせてもらうぜ」

【シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!】

 

そして戦兎、龍我、晴人も一斉に変身の準備に突入した。

 

【Are You Ready!?】

「「「変身!!!」」」

【ラビットタンク! イェーイ!】

【Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!】

【ヒーヒーヒー!】

 

そしてビルド、クローズ、ウィザードが一斉降臨した。先程のビーストと合わせ、科学の仮面ライダー二人と魔法の仮面ライダー二人のスーパーチームが誕生した。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおお! 仮面ライダーってこんなにいんのか、スゲェエエエエエエエエエ!!」

「いや、確かにかっこいいけどアスタ煩い」

「仲良いのは結構だが、来るぞ」

 

アスタに同意する一方、声のデカさにツッコミを入れるノエル。そこに焦凍からさらにツッコミが入るも、そのまま戦闘に突入する。

 

「勝利の法則は、決まった!」

「今の俺負ける気がしねぇぜ!!」

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

仮面ライダー達も決め台詞と同時に、戦闘突入となる。




当初、ビルド組はごちうさメンバーいるので、喫茶店つながりでブレンド・S編に行かせようと思ってました。しかし、デクとアスタの対比、魔法ライダーと科学ライダーの絡みを書きたいと思うなどあって、この組み合わせにしました。
軽くネタバレになりますけど、デク&アスタ、かっちゃん&ユノでコンビバトルを書きたいので楽しみにしていただければと。

P.S.もうすぐ日本でも18歳から成人が適用されますが、ヒロアカ連載開始時期がまだ20歳で成人だったので、そちらに合わせています。


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第47話「対決・悪のカリスマ」

半年以上放置して申し訳ない。ちょっと普通に2万字近くいく回が増えそうなので、各章ごと3話で完結スタイルを辞めようかと思います。私用で忙しかったりもしたのですけど、やはり1話辺りが長くなるのでそれで上手くかけないのもあったり…

次回でウィザード編の完結予定なので楽しんでいただけたら幸いです。


クリエメイトと別世界の仮面ライダーや戦士達と、無事に合流できた操真晴人。しかしそこでオーバーヘブン・ショッカーからの刺客との戦いが始まってしまった。

 

「さあ、ショータイムだ!」

「勝利の法則は決まった!」

「今の俺は負ける気がしないぜ!」

 

先に駆け出したビーストに続きウィザード、ビルド、クローズも駆け出す。

 

「我らが蘇った今こそ、アクマ族の悲願を達する時!」

「で、ござるな!」

「ぶちのめしてやるんだなぁあ!!」

 

そこにアクマイザーの三人も手にしたサーベル、ジャンケルを構えて駆け出す。そしてザタンはウィザードとビルド、イールはビースト、ガーラはクローズとそれぞれ対決に突入する。

 

「仮面ライダーの皆さんだけに戦わせるわけにいかない。僕らも行こう!」

「ああ! ここで見てるだけなんて、魔法騎士の名折れだ!!」

「ディオがいるなら僕も戦わないわけにいかない。行くぞ!!」

 

そこで仮面ライダー一同に感化され、出久とアスタ、そしてジョナサンも駆け出す。

しかしそれに反応するように、ディオが指を鳴らした。

 

「「でぁらぁああああああああああああああああああああ!!」」

「「「な!?」」」

 

すると血色の悪い二人の男が出久達に襲い来る。咄嗟に飛び退いて攻撃を回避するも、現れたそいつらに戦慄することとなる。

 

「な、なんだこいつ等?」

「いろいろと普通じゃねえ……たぶん、魔導士とかじゃないだろうけど」

「おそらく、ディオに屍生人にされた人間だろう」

 

その二人組は大量のメスを持った髭の大男とズタ袋を被った奇人で、どちらも血色が悪い上に異常なまでに興奮している。しかも後者の男は、ズタ袋の下で何かが蠢いている。石仮面で吸血鬼になった者の能力の中に、自身の体液を取り込ませた人間を従順な屍生人に改造するという物があるため、血色の悪さはそれによるものだろう。

 

「その通り。そいつらはジャック・ザ・リパーと怪人ドゥービー、おれの体液を与えて吸血屍生人に改造した下部どもだ」

「……一人、俺の世界の騎士団長に似た名前の奴がいるな」

「そうなのか!? でもジャック・ザ・リパーといえば、最近話題の殺人鬼と同じ名前じゃないか!」

 

アスタが名前に反応した直後、ジョナサンも食いついた。

ジャック・ザ・リパー

かつてロンドンを騒がせた娼婦専門の連続殺人鬼で、日本でも切り裂きジャックとして名を知られている。最近になって消息を絶ったそうだが、どうやらディオによって屍生人に改造されたようだ。

クローバー王国の魔法騎士団長の一人にも、似た名前のジャック・ザ・リッパーという男がいる。翠緑の蟷螂(とうろう)と言う騎士団を率いており、腕に魔力で生成した刃を生やして斬りかかる"裂断魔法"を操る。

 

「さらに、ダメ出しだ」

パチンッ

「「「KYAAAAAAAAAHHHHHH!!!」」」

「「「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!!」」」

 

直後、ディオが指を鳴らすと同時に大量の屍生人が出現した。

 

「勢力を拡大している途中でこの世界に来ることになったのでな。屍生人の半分以上はこの世界で作らせてもらった」

「ウソだろ、こいつ……!!」

 

ディオから衝撃の発言がなされる。つまり、すでにエトワリア各地で吸血鬼ディオの被害が出ていたのだ。

 

「これだけの数の人を襲ったなんて……あなたも元々人間だったのに、なんでこんな酷いことを!?」

「そうだよ! なんでそんな悪いこと出来るんですか!?」

「酷い? お前達は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」

「「え……」」

 

出久とココアから糾弾の声があがるなか、ディオからの返しに何も言えずにいた。しかし、そこでいまいち理解していない人者が一人。

 

「パン? 人間とパンで何でそうなるんだ?」

「頭の弱いモンキーも混じってたか……特別にわかりやすく言ってやる。おれにとって他人など、パンと同じで日ごろの食い物だということだ」

 

その人物であるアスタに、律儀に説明してやるディオ。そこでようやく理解したアスタも、ついに激情に駆られることとなった。

 

「ふざけんな! お前だって元々人間だったらしいから、同じ人間を食うことに戸惑わないなんてあるわけねぇだろ!!」

「戸惑う? おれは人間をやめて全てを超越した、やがて世界の支配者になる男だ。人間なんぞ全ておれの僕、もしくは道具でしかない」

 

しかしそんなアスタの怒りにもあっけらかんとした態度で返すディオ。そんな中で更に怒りを燃やすこととなるも、スピードワゴンが制止を駆ける。

 

「アスタの坊ちゃん。奴はゲロ以下の臭いがプンプンする、吐き気を催す邪悪だ。まともに聞くだけ無駄だぜ」

「でも…」

「それに聞いた感じ、魔法騎士っていうのはそういう存在から国を守る戦士なんだろ? なら、やることは一つしかないんじゃないか?」

 

そしてジョナサンから続けて聞かされた言葉に、ハッとする。それに伴い、アスタの頭も冷静になっていった。

 

「…! いけねぇ、飲まれるところだった。ありがとう、ジョナサンさんにスピードワゴンさん」

「気にしなくていいさ。それと、呼びにくいだろうからジョジョでいいよ」

「そうだぜ。おれも呼び捨てで構わねぇさ」

「話しが終わったなら行くぞ、アスタ。オレも驚いたけど、聞いてて踏ん切りついた」

「そうね。まだ修行の途中だけど、成果を確認するのもいいかもしれないし」

 

ジョナサン達の言葉で覚悟が決まった、アスタ達3人。すると、何処からか少女の声が聞こえた。

 

「そうね。折角私も暴牛の一員になったわけだし、ここで魔法騎士の責務を果たすのもありかもしれないわ」

「? お茶子ちゃん、何か言った?」

「いや、何も。っていうか、ココアちゃんじゃないの?」

「二人でもないなら、誰が……」

 

少女の声はココアとお茶子そっくりで、2人もお互いが喋ったと思っているようだ。皆が困惑していると突然、近くを飛んでいたネロがいきなり黒い靄に包まれる。

全員がギョッとしていると、靄の中から少女が現れたのだ。黒の暴牛のローブを纏い、側頭部に小さな角を生やした黒髪の少女である。

 

「……誰?」

「ネロよ。訳あって鳥の姿になってたけど、こっちが本当の姿なの」

 

例のココア&お茶子のそっくりな声音の人物が、まさかのネロであったことに驚く一同。すると、そこでノエルから簡単に説明がなされる。

 

「そういえば伝えてなかったわ、ごめんなさい。私達も最近知ったんだけど、ネロは元々人間だったんだけど、禁術を使った代償で鳥の姿になってたの」

「黙ってたのは、不義理だったわね。私からも謝罪するわ」

 

ノエルとネロ自身で一同に謝罪するも、謝罪された側からは特段気にした様子も無い。それどころか…

 

「確かにビックリしましたけど、ネロちゃんがそれを利用して悪いことしたわけでもないし気にしないでください」

「そうそう! それに私のモットーは出会って3秒で友達だから、とっくにネロちゃんとも友達だからね!!」

「Yes! 2人の言う通り、私達もとっくにネロと友達デース!!」

 

忍、ココア、カレンの3人がそれをネロとノエルに伝えると、他のクリエメイト達も頷く。その光景に雄英組もつい微笑ましく思うのだった。

 

「この俺を前にそんな談笑してるヒマないんじゃないかな!」

 

そんな中、好戦的な笑みを浮かべながらディオが迫って来る。石仮面で吸血鬼となったことで得た、桁違いの剛力で忍&ココアに殴り掛かろうとしてきた。

 

「ディオ、お前の相手は僕だ!」

「おっと!?」

 

しかしそこにジョナサンが波紋を纏わせた拳を振るい、乱入する。ディオにその一撃を回避されてしまった。

 

「Act.1!!」

「くっ!?」

 

そこにジョニィもスタンド能力による爪弾で追撃をかける。肩に掠ってダメージを負ったようだが、すぐに回復してしまった。

 

「ツェペリさんにスピードワゴン、ディオは僕達で抑えておくから彼女達をお願いします!」

「ジャイロも頼む。ディエゴに似たあいつを、僕も放っておけないみたいだ!」

「ああ、二人とも気を付けてくれ!!」

「うむ。ジョジョ達よ、健闘を祈っとるぞ」

「俺の分もぶちかましてくれや、ジョニィ!」

 

そしてジョナサンとジョニィは、仲間達に後を任せてディオに向き合う。ジョニィに呼びかけられて駆け付けたジャイロも、愛馬ヴァルキリーに跨ったまま鉄球を構えている。

 

「まあいい。ジョジョ、それにジョニィとかいったな? お前達ジョースター家を葬り去るいいチャンスでもある、ここで相手になってやろう!」

 

一方のディオも、因縁の相手との決着に乗り気らしい。そのままジョナサンとジョニィは、ディオを迎え撃つべく立ち向かう。

 

「アフフフフフフフフフフ! それじゃあ僕も待ちくたびれたし、始めさせてもらうね」

 

そんな中で律儀に待っていたらしいリルが絵筆を取り出すと、それで虚空に絵を描きだしたのだ。その様子を見て、ふとアリスが気になったことをユノに尋ねた。

 

「ねぇ、ユノ……あの人、騎士団長って言ってたけどどんな魔法を使うの?」

「あいつの使う魔法だが……」

「よし、出来た!!」

 

そして説明しようとした矢先、リルの描いていた絵が完成する。直後……

 

絵画魔法”幻竜ヴィーヴルの叫び”!!

 

描かれた絵から、人間の女性の顔をしたドラゴンが実体化し、ブレスで攻撃してきたのだ。

 

「「「えええええええええええええええええええええ!?」」」

「全員散れ!!」

 

一同が仰天していると、焦凍が咄嗟に呼びかけたおかげで何とか回避に成功する。そこでユノからリルの魔法の説明がなされるも、とんでもない詳細が判明する。

 

「奴の魔法は絵画魔法、魔力で生成した絵の具で描いた絵を実体化させて攻撃するって代物だ」

「流石は魔法…個性やスタンド以上に出鱈目だね」

「クソナード、感心してる場合じゃねぇぞ!」

「アフフフ、目つきの悪い彼の言う通りだよ!」

 

リルのとんでもない魔法に出久が感心し、勝己がそこに悪態をつく。しかしそんな中でもリルは次の攻撃の準備を終えていた。

 

絵画魔法”炎と氷の双嵐(ドュータンペット)”!!

 

虚空を赤と青の二色で塗りたくったと思いきや、そこからそれぞれ炎と冷気が噴出して一同に襲い来る。描いた絵の実体化は、一人一属性が原則とされるクローバー王国の魔法を覆す力だったのだ。それぞれの属性を連想する絵を描けることが条件だが、その才こそ彼を魔法騎士団長たらしめるのであった。

 

「爆豪、俺達で抑えるぞ!!」

「主導権握るな、半々野郎!!」

 

そして咄嗟に焦凍が勝己に呼びかけ、勝己も文句を言いながらも対応。それぞれで爆炎と冷気をぶつけて、リルの魔法を相殺する。

 

「アフフフフフフフ、DIO様の言ったとおりだ! 魔法も使わずにそんな力を使えるなんて、個性やスタンドって興味深いね。でも、だからって手加減しないよ!!」

「それはこっちの台詞だ、筆頭! 未来の最強ヒーローを舐めんじゃねえ!!」

 

規格外の敵の襲来に、警戒を強める雄英組。同様に彼を知る魔法騎士達も、その実力からやはり警戒することとなった。そんな中でも勇んでいる勝己は、相変わらずのようだ。

そんな中、突如として勝己と焦凍を囲むように4体の屍生人が出現した。

 

「かっちゃん、轟君…!?」

「リルだけが相手じゃねぇってか…」

 

出久とアスタも勝己達を助けようとするも、ジャックとドゥービーが襲い掛かって来る。他の面々にも屍生人が来襲し、分断されてしまった。

しかしそんな中、ツェペリが勝己達に呼びかけた。

 

「屍生人どもは普通の火で焼いても再生してしまう。じゃが、お主達の能力なら再生が追い付かん勢いで奴らを焼き尽くせるかもしれん! 人間賛歌は勇気の賛歌、お主達の勇気を信じるのじゃ!!」

「ああ、わかった。それにしてもこいつ等…」

 

ツェペリのエールに冷静に返す焦凍。そんな中で屍生人達を改めて見てみると、4体とも金属パーツや別の生物のパーツをつなぎ合わせているようで、異形化している。

 

「おれの名はペイジ!」

「ジョーンズ!」

「プラント!」

「ボーンナム!」

((自己紹介し出した?))

「「「「血管針攻撃!!」」」」

 

名乗った4体の屍生人達は、自らの血管を触手のように伸ばして二人に突き刺そうとしてくる。しかし、名乗りやらなんやらで大きく隙を作ってしまったのが、運の尽きだった。

 

膨冷熱波!

「「「「ぎゃあああああああああああ!?」」」」

 

屍生人達は、焦凍の技で起こした爆風によって天高く打ち上げられた。半冷半燃の冷気で空気を冷やし、炎で温めて空気の熱膨張による爆風を起こしたのだ。

 

「爆豪、とどめ頼むぜ」

「言われるまでもねえよ」

 

そしてとどめを勝己に譲ると、勝己も個性の爆炎による推進力で飛翔。打ち上げた血管針カルテット達にとどめを刺しに行く。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!

「「「「グゴゲェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!?」」」」

 

そして錐揉み回転しながらの突撃爆破で、屍生人達を木端微塵に吹き飛ばす。バラバラになった4体は、そのまま焼き尽くされていく……

 

 

 

 

 

 

「せめて、てめぇだけでも屍生人に…」

「な、てめぇ!?」

 

しかし、右腕と頭だけのペイジが勝己の腕をつかんでおり、道連れにしようとしてきた。だが、その時!

 

「風魔法"暴嵐の塔"」

「ぎにゃああああああああああああああ!?」

 

後を追ってきたらしいユノの魔法で、そのままペイジは更に天高く打ち上げられる。風に煽られて体に付いた火の勢いも増し、遥か上空で焼き尽くされたのだった。

 

「無事か?」

「余計な事すんな! あんなの、俺だけで十分だっての!!」

「アンタ、ユノが助けてあげたのにその言い草なんなの!?」

 

助けてくれたユノにまで噛みつく勝己に、不満を隠せずにいるベル。しかしユノはそんな様子を気にする様子も無く、そのまま勝己の手を引き……

 

「それだけ啖呵キレるなら大丈夫そうだ。手伝ってくれ」

「あ、てめぇ!!」

 

有無を言わせず協力させようとしていた。

 

~同時刻・出久とアスタ~

「どうやら、オレ達でこいつらを倒さねぇといけないらしいな」

「うん。僕達で戦兎さん達の救援に行かないと…」

 

二人は後ろに忍とココアを守るように、目の前のジャック&ドゥービーと対峙する。そんな中、不意にドゥービーからの攻撃が入る。

 

「うわっはぁあああああああ!!」

「「なっ!?」」

「「ええっ!?」」

 

ドゥービーの被っているズタ袋を突き破って、何かが襲ってきたのだ。

 

「アブねぇ!?」

 

しかしアスタが瞬時に剣を振って、それを叩き落す。そしてそれをよく見てみると…

 

「これ、蛇か?」

「しかも、これってコブラだよね? あの毒蛇の」

「そうか、屍生人なら体に毒蛇を絡ませても問題ないのか…」

「でも、大きさ的にあの袋に入りきらないですよね?」

 

出てきたものの正体について口々に語っていると、ドゥービーが被っていたズタ袋を外す。そして袋の下の顔は、見るもおぞましい物であった。

 

「「ひぃっ!?」」

「「うげっ!?」」

「ぬウフフフフフフ、たまげたかぁああ!」

 

なんとドゥービーの頭のそこかしこに穴が空いており、そこから無数の蛇が顔を出していたのだ。更に左目を突き破ってもう一匹蛇が顔を見せている。なんとこいつ、自分の頭で蛇を飼っていたのである。

 

「ドゥービー、おれにもこいつらを切り刻ませろや…」

「わりぃわりぃ、次譲るぜ」

 

そんな中、今度はジャックが動き出す。しかしこいつも常軌を逸した行動を取り出したのだ。

 

「ぬぅん!」

「ええ!?」

「こ、今度は自分の顔を刺しやがった……」

「「い、痛そう(です)…」」

「ディオ様に楯突く悪い子達め、ばらして骨ごとベロベロしてやる…」

 

更にジャックがポーズを取ると、なんと体の中から大量のメスが出現する。どうやら体中に埋め込んでいたようだ。

 

絶望ォーーーに身をよじれィ虫けらどもォオオーーーッ!!

 

そしてそれを射出して攻撃してきた。

 

(落ち着け! さっきの毒蛇と同じだ、飛んできたメスの氣を読んで叩き落す!!)

 

アスタはジャックの攻撃を対処しようとする。

黒の暴牛の団長ヤミ・スケヒロが教えてくれた、生物無機物問わず存在する万物の呼吸"氣"を第六感で察知する技術。それを使って飛んできたメスに対処しようと、断魔の剣を構えるアスタ。この間、0.5秒。

 

「デラウェアスマッシュ・エアフォース!」

「おおっ!?」

 

しかしそれより早く、出久の攻撃が飛んできたメスをはじき飛ばした。ワン・フォー・オールで強化された筋力で、衝撃波を飛ばしたのである。サポートアイテムで指向性を持たせ、デコピンで狙いを定めて撃ったため、ピンポイントでメスを撃ち落としたのだ。この行動にアスタも驚いた。

 

「「どぅおっ!?」」

 

しかもその後も勢いが収まらず、ジャック&ドゥービーを纏めて吹き飛ばした。そんな中、出久は個性の行使で身体能力を強化して突撃していった。彼はこの街に来る前、ツェペリから聞いた話死を思い出す。

 

『石仮面は被った人間の脳に骨針を突き刺すことで、その者の脳の未使用部分を開発して吸血鬼に作り変える。それはつまり、脳を潰せば吸血鬼を波紋以外で吸血鬼を倒すことが可能とうことでもあるのじゃ。勿論、屍生人も同様じゃろう』

(なら、僕の個性で彼らの頭を潰せるパワーを引き出せば……この人達、ゾンビってことは一度死んでいるってことだ。大丈夫、僕で倒しても殺したことにならない!)

 

異形化した相手とはいえ、相手の命を奪うことに抵抗のあった出久。職業ヒーローとしても殺しは御法度だろう。しかし、相手がすでに死んでいるので倒しても殺しにならないと言い訳してジャックの頭を蹴り砕こうとする。

しかしその思案をする最中に隙を作ってしまい、そこを突いてドゥービーが動き出した。

 

「隙だらけだぜ、ダボがぁああああ!!」

「なっ(しまった!)」

 

ドゥービーが飛び掛かって、頭で飼っている毒蛇を嗾けようとするのが見えた。空中で攻撃態勢を取っていたために回避できず、毒蛇の餌食になりそうになる出久。

 

「海竜の水鞠!」

「どへっ!? 誰りダァ~!?」

 

しかしその直後、ノエルによる水属性魔法での攻撃を食らって撃ち落とされるドゥービー。そしてそれに気を取られた隙をすかさず、ネロが行動に出た。

 

封緘魔法(ふうかんまほう)"憂瞑(うれいつむり)"

「だべっ!?」

 

駆け出して来たネロが、ドゥービーの体に触れて魔法を使用する。彼女の魔法が発動した瞬間、なんとドゥービーの頭中に空いた穴と言う穴が閉じられたのだ。

 

「私の魔法は物を開け閉めする封緘魔法、扉の鍵だろうと魔法による封印だろうと自在に開け閉めできるわ。今のも本来は、その応用で傷口を閉じることで回復する魔法なのだけど…」

「頭の傷を閉じて蛇を出れなくしたか。ナイスだ、ネロ!」

「えええええ!?」

 

解説の直後にアスタの声が聞こえたと思いきや、なんと彼が空を飛んできたのだ。断魔の剣をサーフボードのような乗り物にして、その上に乗っているのだ。ちなみに、ココアと忍も乗せている。

 

「イズク、掴まれ!」

「う、うん!」

 

そしてそのままアスタの腕をつかみ、一緒に飛んでいく出久。

 

「どっちみち、オレ達じゃ相性悪いからな。なら、リルの方を優先した方がいいだろ!」

「操られてるんなら、聖なる遺体で何とかなるからね!」

「向こうにカレンもいるみたいですし、早く合流しましょう」

「そ、そうだね…(アスタ君、さっきも落ち着いてたし僕より実戦慣れしてるのかな?)」

 

そのまま離れてしまったカレンと合流しつつ、操られたリルを倒して正気に戻すことに専念することとなった一同。

 

「それじゃあ、私達も離脱するわよ」

「ええ。相性も悪いし…」

「「よくもやってくれたな、このクソアマども!!」」

「「しまっ…!?」」

 

そしてノエルとネロも離脱しようとした矢先、ジャックとドゥービーが怒りの形相で迫ってきた。突然の事態に驚き、対応できずにいた二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

レシプロ エクステンド!!

「「えべっ!?」」

 

しかしその時、天哉が超加速してこちらに接近。その勢いを乗せたキックを叩き込んでジャック達を吹き飛ばしたのだ。

 

波紋乱渦疾走(トルネーディオーバードライブ)ーっ!!

「「ぐべぇっ!?」」

 

そしてその吹き飛ばされたジャックとドゥービーを、波紋を纏ったツェペリの錐揉み回転キックが穿つ。波紋を流され、二体の屍生人の体が溶けだした。

 

「「ぎぇえええええええええええええええええええええええええええ!?」」

 

そのまま断末魔を上げながら、ジャック・ザ・リパーと怪人ドゥービーはこの世から消滅したのだった。

 

「中々に良い蹴りじゃったな。体幹や肺も相当鍛えておるようじゃし、良い波紋使いになり得そうじゃわい」

「ありがとうございます。けど俺は、同じくヒーローだった兄の意志を継ぐつもりなので遠慮しときます」

 

ツェペリに称賛されながらも、波紋使いへのスカウトをきっぱり断る天哉。とある(ヴィラン)との戦闘で再起不能の重傷を負わされた兄の後を継ぎ、ヒーローになることを決めていたからだ。

 

「嬢ちゃん達、大丈夫か?」

「あ、はい。おかげで…」

「助かったわ。ありがとう」

「良かった…それじゃあ、みんなと合流しようか」

 

そしてツェペリと天哉に先導され、ノエルたちも移動を開始した。

 

 

~同時刻・リゼと陽子~

「マズいな。このままじゃ、ジリ貧だぞ…」

「だね。私達じゃ、こいつらを上手く倒せそうにないし」

 

一方、分断された一同の中でリゼと陽子はコンビで迫って来る屍生人達を払いのける。槍と盾での守りに秀でた武装のおかげで特にダメージも無いが、二人の膂力だと屍生人の頭を潰すことは出来ないし、魔物と異なり人間の原型を残すため、もともと普通の女子高生だった二人には抵抗もあった。

そんな戦いづらい相手を前に、次第にピンチに陥っていそうになる。しかし…

 

「おっし、加勢に来たぜ!!」

「仁藤さん!?」

 

そこにビーストが駆けつけてきた。ビーストは右手に握った、柄にダイスの埋め込まれた剣"ダイスサーベル"を振るって屍生人達を退けていく。イールと戦っていた筈の彼の出現に、リゼも驚く。

 

「仁藤さん、さっき戦ってた相手って…」

「お前らがピンチみたいだったから、振り切って助けに来た。ってわけで、こいつらも俺で倒させてもらうぜ!!」

 

リゼに軽く事情を説明し、ビーストもウィザードのように指輪を付け替えた。そしてバックルの側面に指輪をはめ込む。

 

【カメレオン!ゴーッ!カカッ・カッ・カカッ・カメレオー!】

 

緑の魔法陣が展開され、ビーストの体を通過する。しかしウィザード程大きな見た目の変化が無く、元の姿のまま右肩にカメレオンの顔の意匠がある、緑の肩マントが装着された。

 

「あれ? あんまり変わってない…」

 

陽子が、ビーストの変化の少なさにキョトンとしている。しかし、そこで気にせずビーストが行動に出た。

 

「行くぞぉおおおお!」

「「「うびゃおうっ!?」」」

 

ビーストが掛け声を上げると同時に、その身を翻す。すると肩にあるカメレオンの意匠から舌が伸びて、それが数体の屍生人を薙ぎ払う。そしてカメレオンの舌を屍生人達の頭に巻き付け、一気にを締め上げていき……

 

「ふんっ!」

「「「んべらっ!?」」」

 

纏めて粉砕した。そして物言わぬ屍となった屍生人達が、纏めて地面に落ちていった。

 

「つ、強い…」

「うん。でも、グロい…」

「言うなって。これしか手ぇ無かったしよ」

 

スプラッタな光景を見てしまい、リゼと陽子が揃ってドン引きしてしまう。そんな二人に応対しているビーストだったが……

 

 

 

 

 

 

 

「油断大敵、というでござる!!」

「うぉお!?」

「危ない!!」

「うわっ!?」

 

そこにイールの声が空から聞こえたと思いきや、ビーストたちに空から襲い来る影が。その影からの攻撃を咄嗟に躱すと、その正体を確認する。

 

「おいおい、お前飛べたのかよ!」

「そうでござる。悪魔を舐めてかかったこと、間違いでござったな」

 

攻撃してきたのは、イール本人だった。背中に巨大な翼を広げ、飛翔している。手に持っているイール専用のジャンケル"イラード"で攻撃してきたようだ。そんなイールに対抗するため、新しい指輪を装着する。

 

「だったら、俺も飛んでお前と戦うだけだ」

【ファルコ!ゴーッ!ファッ・ファッ・ファッ・ファルコ!】

 

そしてその指輪をベルトに嵌め、新たな力を発動する。今度は隼の顔の意匠のある赤い肩マントが装着された。

 

「さぁ、掛かって来い!!」

「それはこちらの台詞!」

 

そしてビーストも飛翔し、イールと空中で対決する。イールのサーベルによる巧みな剣術に対抗するため、同じくダイスサーベルで攻撃しつつ、時折距離を取って風を起こすなどヒットアンドアウェイで上手く立ち回る。

 

「…あっちは仁藤さんに任せるか」

「だね。私達より戦い慣れてるだろうし、他の人を助けに行く方がいいかも」

 

その光景を見たリゼと陽子は、この場をビーストに任せてその場を去ることを決めたのだった。実際、空を飛ぶ手段も無いため役に立てそうもない。

 

~同時刻・クローズ&お茶子&綾&千夜~

「全員纏めて掛かって来るんだなぁ~!!」

「そのセリフ、公開すんじゃねぇぞ!!」

「ここはウチと万丈さんで抑えとくから、二人は後ろから援護お願い!」

「え、ええ。わかったわ」

「二人とも、気を付けて」

 

ガーラからの挑発もあり、そのまま4対1でガーラに挑むこととなったクローズ、お茶子、綾、千夜。まほうつかいとそうりょである綾と千夜を下がらせ、クローズとお茶子がガーラに挑みかかる。

 

「おらぁあ!!」

「ふん!」

 

クローズのビートクローザーとガーラのジャンケル"ガラード"が打ち合う。両刃の剣と細身のサーベルでの打ち合いにも拘らず、ジャンケルの素材が頑丈なのか曲がっている様子も無い。加えてガーラも相当な膂力なようで、クローズともパワーで渡り合っていた。

 

「万丈さん、避けて!!」

「わかった!!」

「んなっ!?」

 

お茶子の叫び声に反応して飛び退くと、ガーラがお茶子がいくつもの樽を投げつけて来た。ゼログラビティの個性で樽にかかる重力を0にし、一気に攻撃に使ったわけだ。

見た目通り鈍重そうなガーラはそれを避け切れず、纏めて食らってしまったのだ。そしてそのまま砕けた樽の残骸に埋もれた。

 

「おっし。一気にとどめだ!!」

Ready Go!!ドラゴニックフィニィッシュ!!

 

飛び退くと同時にビルドドライバーのハンドルを回し、必殺技のエネルギーを溜めていたクローズ。東洋竜のオーラを纏った飛び回し蹴りで、樽の残骸に埋もれたガーラにとどめを刺そうとした。

しかし…

 

 

 

 

 

変わるんだら~ガーラッチョ!!

「ぐわぁあっ!?」

 

そんなガーラの叫び声が轟くと同時に、樽の残骸を吹き飛ばしてそこから何かが出現してクローズを吹っ飛ばした。

 

「いてて…って、うぇえっ!?」

悪魔を舐めると怖いこと、教えてやるんだなぁ~~

「「えええええええええええええええ!?」」

「ウソやろ!?」

 

立ち上がったクローズ、そして残りの面々も現れた物を見て一同驚愕。それは巨大なダチョウのような怪物となったガーラ改めガーラッチョであった。かつてウィザードと交戦した際も、この姿で巨体を活かした攻撃や口からの火炎ブレスで彼を苦戦させていた。

 

全員纏めて、黒焦げにしてやるんだなぁあ!!

「アブねぇ!!」

「綾ちゃん、掴まって!」

「きゃあ!?」

「あ、はい!」

 

そして早速、ガーラッチョの口から火炎ブレスが放たれた。クローズとお茶子によって千夜と綾は抱えられ、そのまま安全圏に退避できた。しかし、町にあった木造の建物がいくつか燃えてしまう。

 

「しまった、大火事になっちまったな」

「確か、あの辺りって空き家ばっかりだったような…」

「でも、他の建物に燃え移ったりとかするかも」

 

綾から偶々空き家の多い一体であったと聞き、人的被害がまだ出てないことに安心する。しかし、それでも火災の燃え移りや更なるガーラッチョの攻撃でいつ被害が出るか分かった物ではなかった。

そしてその光景を見たクローズは……

 

「…おし。俺があのデカブツを抑えておくから、お前らは町の奴等を逃がしてくれ」

「うぇえっ!? 万丈さん、確かに避難とか必要だろうですけど…」

「一人であれと戦うつもりなんですか!?」

 

その発言を聞いていたお茶子や綾も驚愕する。クローズが以前の戦いで倒したテスラも、帰刃を使うと巨大化した。しかし目の前のガーラッチョはそれ以上の巨体を有しているため、その分だけパワーも段違いだ。しかも火炎ブレスまで使えるため、かなりの強敵であろう。

 

 

 

 

 

しかし、それでも彼は仮面ライダーである。

 

「別の世界の連中曰く、仮面ライダーは人間の未来と平和を守るためらしい。だったら町の連中だけじゃなくって、お前らの未来だって守りたい。だったら、役割分担して行くぞ」

 

ただそれだけの言葉。しかし強い覚悟を伴った言葉には重みがあり、指示に従おうという気持ちが湧き上がる。

 

「……確かに、そうね。甘兎をこのエトワリアで全国展開するって野望もあるし」

「そうね。陽子にもちょっと言いたいことがあるし、まだ死ぬわけにいかないわ」

「でも万丈さん、それ終わったら救援に行くからそれだけ勘弁な。そこに万丈さんも居らんとダメやから」

「ああ。その時は頼むぜ」

 

女子が同意して撤退してくれたことで、心置きなく戦えるという物だ。

 

一人でどうやって戦うつもりなんだなぁ?

「見くびんじゃねえぞ、デカブツ。人間の、仮面ライダーの力を見せてやる」

【Bottle Burn!!】

 

~同時刻・ウィザード&ビルド&チノ&アリス&カレン~

「分断されたと思ったら、こっちに来ちゃったね」

「ハルト、お昼に戦ってる時に見たらとっても強かったデスけど…」

「はい。そこは戦兎さんも同じはずなんですが…」

 

リルの攻撃で分断されたチノ、アリス、カレンの3人。そこで見た物は…

 

「こいつ、なかなかに強いな!」

「でも、前より手強くなってやがる…!」

「復活に際して、首領にパワーアップを施されたのでな。その力を有効活用させてもらっている」

 

2対1にも拘らず、ビルドとウィザードを相手に互角に勝負するザタンの姿であった。ザタンも自らの持つジャンケル"ザラード"を巧みに操り、両ライダーの剣での攻撃を的確に捌いていく。

ドリルクラッシャーを回転させながら切りつけているも、ジャンケルが破損する様子も無い。ガーラの時もそうだったが、恐らく地上に存在しない素材で作られてるのだろう。

 

「喰らえ、ザタンノヴァ!!」

「「ぐわぁあっ!?」」

 

そして一瞬の隙を突き、両肩から魔力弾を連射して2人を吹っ飛ばした。

 

「Oh!? ハルト達がピンチです、助けに行きましょう!!」

「ちょっと、カレン!?」

「カレンさんは聖なる遺体を持ってるんですから!!」

 

そしてそんな光景を見たカレンが動き出してしまい、アリスとチノが慌てて追いかける。そしてそんな所を見て、ザタンも動き出した。

 

「貴様の持っている遺体、アクマ族再興のために使わせてもらうぞ!」

 

そしてザタンノヴァをカレンに向けて発射する。そしてこのままカレンに命中するかと思いきや…

 

「とうっ!」

「なんだ!?」

 

カレンがその場で跳躍したのだ。避けたのかと思いきや、上空で両手を掲げてエネルギーを溜めていく。

 

ソォオイッ!!

「うごっ!?」

 

バレーのサーブでそれを叩きつけてきたのだ。そしてザタンにそれが命中し、大きく隙を作ることとなった。

 

「か、カレン凄い…」

「え、ええ。これは予想外でした…」

 

これにはアリス達も思わず驚愕した。まさかのカレンが活躍したことで、ビルド達も反撃に乗り出すことが出来た。

 

「サンキューな、カレンちゃん。おかげでパワーアップできそうだ」

「同じくサンキュー! 君、最っ高だな!!}

 

カレンに対して賞賛の声をあげつつ、ビルドはスパークリングフォームに変身する準備を取り、ウィザードもドラゴンの絵が刻まれた赤い指輪を装着してベルトを操作する。

 

【ラビットタンクスパークリング! Are you ready?】

【シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン!】

「ビルドアップ!」

「変身!」

 

そしてそれぞれのアイテムをベルトにセットし、変身が完了する。

 

シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング! イエイ! イエーイ!

フレイム・ドラゴン!ボゥー!ボゥー! ボゥーボゥーボォー!!

 

ビルドのラビットタンクスパークリングフォームに並ぶ、ウィザードの強化形態。仮面に角のようなアンテナを備え、ローブの色も黒から赤に変化している。

ウィザード・ドラゴンスタイル。ウィザードの4属性形態それぞれに存在する上位形態で、変身者である晴人の中に住むファントム・ウィザードラゴンの魔力をより強く引き出す形態だ。

 

「おのれぇえ!! 強化を許してしまったか…!」

 

そして強化された二大仮面ライダーを見て忌々しそうに叫ぶザタン。しかし、改めて己の得物を構えるウィザードとビルド。

 

「「さあ、反撃だ」」



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