オバロリ (ラゼ)
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1話

 現地人にとってユグドラシルのプレイヤーは化物以上に化物だ。加えてユグドラシルで大勢力を誇っていたプレイヤーともなると、神とすら言えるかもしれない。六大神と呼ばれてた連中だと少し足りないように思うけど、八欲王だのアインズ・ウール・ゴウンだのならば確かに神と言って然るべきだ。

 

「…そうすると、僕はどう評されるべきなのか──って思うんだよね。レイナースちゃんはどう思う?」

「あ゛っ、んっ、んぅっ……はっ…? な、なにが、でしょう──あっ、あっ、い、イキますっ! ああっ!」

「くっ、いい締めつけだな…! 僕も射精すぞっ! 膣内でいいな!」

「はい…っ! あ、あうっ──! っは、あ……ハァ…」

 

 ふぅ……気持ちよかった。ロリペド野郎である僕を、妙齢の女性でありながら満足させるとは、出番が少なかったとはいえ流石は原作キャラと言えばいいのだろうか? 物語の登場人物を犯すという精神的な興奮が作用しているのか、実際に彼女の体が特別なのかは気になるところだな。

 

 『レイナース・ロックブルズ』……誰もがご存知、重爆ちゃんだ。原作で容姿が明らかになった途端、一気に二次絵が増え二次創作のチョロインとして脚光を浴びた呪われっ娘ちゃんでもある。やっぱなんだかんだ女は容姿なんだろうね。

 

 彼女と僕がセックスしている理由は、別段特筆するべきところはない。呪いを解けばヤれる系女子であるレイナースちゃんだからして、むしろヤれない理由を探す方が難しいだろう。ちょちょっとアイテムを差し出せば、あちらは気持ちのいい穴を差し出してくれる……間違いなくウィンウィンの関係だろう。

 

「ふぅー……あー、気持ちよかった。ありがとね、レイナースちゃん」

「──ハァッ、ハッ……はい、こちら、こそ…」

「それにしてもホントに綺麗だねぇ。王国の黄金姫よりも美人だよ。断言してもいい」

「は、はい! ありがとうございます……ふふ、うふふ……戻った、戻った……私の顔…! ふふっ…!」

 

 精液でぐちょぐちょになった彼女の穴を、余韻を味わうように、柔らかくなった肉棒でゆっくり掻き回す。名器と言ってもいいその感触に感嘆のため息を吐きながら、彼女の容姿をこれでもかと褒めそやす。

 

 元々容姿に絶対の自信があったからこそ、呪いの解除に心血を注いでいたんだろう。そうなる前は褒め言葉など日常的であったろうが、現在のレイナースちゃんにとっては何度聞いても飽き足らない甘美な言葉の筈だ。

 

「さてっと……んじゃ、そろそろお開きかな。期待以上に満足させてもらったし、何か他に欲しいものがあるなら聞くけど」

「あ、も、もういいんですか…? それに、解呪以上に欲しいものなんて…」

「いいのかい? 無欲だねぇ。そんじゃまあ、何か困ったことがあったら言いなよ。これ使えば通信できるから」

「マ、マジックアイテムですか? そんな貴重なもの、よろしいのでしょうか」

「ん……引け目を感じるんなら、そうだな……じゃあそれで呼ぶ度に抱かせてもらうよ。それでいいかい?」

「あ、あはは…」

 

 呆れたように笑うレイナースちゃん。そんな彼女の胸をもう一揉みして、僕はベッドから体を降ろした。アイテムの効果を発動させ、色々な体液で汚れた体を清める。差し出した指輪を恐る恐る嵌める彼女を尻目に、右手を上げながら宿屋を後にした。

 

 いやぁ、しかし原作キャラがみんなしてあんなに気持ちいいとしたら、これからは積極的に狙っていくべきだろうか? 描写のあったキャラで少女、あるいは幼女ってなると意外と少ないけど……とりあえずヤりやすそうな女から狙っていくべきかな。

 

 犯すのも嫌いじゃないけど、基本は和姦にするべきだよね。ギリギリ残った倫理観というやつがそう訴えかけてくる。ヤッてみなきゃ解らんが、泣き叫ばれると萎える可能性もあるし。男性の遺伝子には、女が泣くと性的興奮が抑えられる要素があるって聞くしね。

 

 さて、それにしても……オーバーロードにおいて少女、幼女キャラか。どんな娘がいたっけ? ナザリック勢は流石にちょっと置いておくとしてだ。というかあの勢力の女で和姦が成立するキャラっていないだろうしな。あるとすれば、主人に『あいつとヤれ』と言われた時くらいだろう。まぁその可能性の方がありえんけど。

 

 ヤりやすそうな、か……おお、そういえば金でいけそうなのが帝国のワーカーにいたな。アルシェだっけ? 一応少女といえる年齢だった筈だけど……今はそこまで窮してはないかな? 一応候補には入れとこう。彼女の双子の妹も、ペド心をくすぐる年齢だったよな。機会があれば姉妹丼を検討しておこう。

 

 あとはオバロの登竜門と名高い、カルネ村のエンリちゃん……はもう少女ってほどじゃないか。ネムちゃんは文句なしにチンポに響くが、もうナザリック勢と接触してる頃だろうしなぁ。負ける気はしないが、さりとて無闇に敵対したいわけでもないし、優先順位は低い。

 

 あとはロリババア枠のイビルアイと、竜王国の女王か。前者はよくチョロイン扱いされるが、彼女とセックスしたいならまずマッチポンプ劇場が必要なんだよな。『ぐわっ、もう駄目だ…!』からの『大丈夫かい?』キラッ が必須項目だ。

 

 そして彼女が苦戦する相手などそうそういない上、僕は演技が非常に下手だ。国を滅せるような吸血鬼が苦戦してしまうようなモンスターを用意したとしよう。そんなのとエンカウントした上、更にそれを倒せるような強者がピンチに駆けつけるってどんな確率だよ。どう考えても自作自演を疑われるし、それを逸らせるような演技力など持ち合わせていない。

 

 うん、じゃあまずは竜女王だな。ドラウディロンだっけ? 場合によってはロリコンアダマンタイト冒険者にロイヤルマンコを使おうとしてたような節があるし、間違いなく和姦でいける幼女穴だ。しかも幼女姿を堪能した後、大人バージョンでもヤれると考えれば一粒で二度美味しいってやつだろう。

 

 ──行くか、竜王国。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということで、獣人見てから鏖殺余裕でした。縦横無尽に駆け回る剣士が斬撃と魔法でビーストマンを駆逐していく様は、竜王国の国民にとって胸のすく思いだろう。超位魔法やら次元断切やらを連発できるような戦場って中々ないし、僕としても割と爽快な体験だった。

 

 職種もリキャストタイムも全無視で好き放題にできるのは元運営の特権だろう。あちらの世界でも勝ち組だったけど、こちらにくれば超絶勝ち組が確定しているのだ。迷いなど一切なかったのは、言うまでもない。

 

 そんな殺しまくりシティを何日も続けていたら、ビーストマンに侵攻されていた領域をかなり押し返せたようだ。まあ橋頭堡という橋頭堡を軒並み潰していったし、当然の結果だろう。とはいえ、これほど馬鹿げた戦果を叩き出しても竜王国はまだ救われていない。

 

 そもそもがお先真っ暗、亡国まっしぐらの詰み国家だったのだ。個人がひっくり返すのは無理があるだろう……まあ超位魔法の種類によっては可能だけど、一回で救っちゃったら有り難みも継続しないからさ。脅威が完全に去ると、人はすぐに感謝を忘れるものだ。それはよろしくない。

 

 ドラウディロン女王陛下には是非とも、僕の肉棒を咥えて放さないような状況でいてほしいのだ。自分の穴の締まりが国を救うとなれば、彼女も王族として本望だろう。そんな妄想をしつつ数日が過ぎ、予想通り使者がやってきて女王との謁見の申し出を受けた。

 

 もちろん受けますとも。さて、どっちでくるのかな? 大人バージョンか、幼女バージョンか……まあ僕の戦果に対する褒美なんて払う余裕もないだろうし、幼女の懇願以外の選択肢はないと思うけど。

 

「よ、よくぞまいった! ぜんせんからのきゅうなひきあげ要せ、ようせい……ひきうけてくれてかんしゃする!」

「……」

「……」

「いえ。ドラウディロン女王陛下のご命令とあらば、たとえ地獄の底からでも馳せ参じましょう。感謝の必要など一切ございません」

 

 おいおい、褐色ロリですかそうですか最高かよ。しかもなんなのあの衣装。女王がしていい恰好なの? この位置からだと奥が、奥が……くそっ、ギリギリ見えないように調整されてやがる。

 

 しかし女王と、あと傍に侍る宰相が露骨に安堵しているな。まあ急に現れた人間だし、そもそも竜王国の国民かどうかすら不明なんだ。女王に敬意を払うかどうかすら定かじゃなかったろうし、たとえ僕が傍若無人に振る舞ってもあちら側としては頭を下げるしかないこの状況。

 

 内心がどうあれ、片膝をついておべっかを使う程度には、権威を大事にしていると捉えられたのだろう。まあ僕が大事にしてるのは女王の幼女マンコだけどね。しかし想像を超えて、更に素晴らしい容姿だ。しかもこう……ヤるとなると、すべてを理解してくれるってのがポイント高いよね。

 

 無知な幼女ックスはもちろん好きだけど、ロリババアとの大人の関係も良いものだ。どういう風に持っていくかな? ただ唯々諾々と従うなんてあり得ないけど、横暴に振る舞って体を要求するなんてガラじゃないしなあ。

 

「そのような謙遜をなされるな。貴殿の武勇、もはや伝説に謳われる英雄となんら遜色がありませんぞ。女王様と共に、私からも最大級の感謝を送らせていただきたい──それにしてもウン=エイ殿。その実力に対して些か名の通りが悪いように思えるが、以前はどこで活動しておられたのですかな? 恥ずかしながら、今回の件で貴殿の名をようやく知りましてな…」

「ああ、それは仕方のないことでしょう。私がこの周辺諸国に来たのはごく最近のことですから。それまでは少し毛色の違う人生を歩んでいたのですよ」

「ほう……詳しくお聞きしても?」

「つまらない話ですよ。語る程に中身があるとも思えません」

「わ、わらわもききたいぞ! えいゆう殿の話ならば、どんなものでもつまらぬわけがない!」

 

 宰相が『ファインプレー!』といった雰囲気を醸し出している。ふーむ、そうくるか。となれば交換条件だな。そっちが聞きたいんだったら、こっちも聞かせてもらう……うん、間違いなく対等だ。何も問題はない。

 

「そうですね……しかし先程も申し上げましたが、わざわざ語る程のものではないのです」

「そ、そうか…」

「ですが、話のタネとしてならば悪くはないかもしれません」

「…む?」

「二人きりで食事でも如何でしょうか? これまでの女王陛下の苦労は並々ならぬものでしょうが……しかし愚痴を吐き出す場など立場的にそうそうあり得ぬもの。私の過去もただの苦労話になりかねませんので、同病相哀れむという訳ではございませんが──胸襟を開いて語らう場としてどうでしょう? 臣下の方がおられては、吐き出すものも吐き出せぬというものですし」

 

 ニコッと爽やかに笑う。先行き不安な国のトップにすげられた、可哀想な幼女王を気遣う英雄、英雄英雄英雄英雄……うーん、ちゃんと下心を隠せてるだろうか。そっちの方は解らんが、とりあえず女王の生死に関しては問題ないと認識されてる筈だ。なにせやろうと思えばこの首都くらい落とせるし、あちらもそれは理解している。危険だと思うならば、そもそも謁見が成立していない。

 

 僕の言葉に、女王が宰相へと恐る恐る視線を向ける。あっ、宰相の女王を見る目が養豚場に送られる豚を見る目に…! ってことは下心を隠せてないんですね解ります。その上で『食われてこい』と。まあ女王の純潔で数十、数百万の国民が生き延びられるとなれば、選択肢は一つきりだよな。

 

「それは素晴らしい提案ですな! 女王陛下の心労については私共も思うところがございまして。幼き背に重責を負わせるばかりの、我らの至らなさ…! どうかエイ殿との語らいで少しでも癒されますよう、切に願っておりまする」

「よ、よ、よろしくお願いするのじゃ…」

 

 宰相さんマジ宰相。これじゃどっちが上か解らんな。なんというか、弁舌の立つ政治家を見てる気分だ。ものの言いようってあんなに多岐に渡るんですね。彼を睨む女王と、その視線を柳のように受け流す宰相。漫才コンビかな?

 

「え、えっと……にちじはいつにするのじゃ?」

「ご都合がよろしければ今からでも。いつでも拠点に移動できるマジックアイテムもございますので……こちらの指輪をどうぞ。使い方は嵌めれば理解できるかと」

「う、うむ。つーかこれ相当なマジックアイテムじゃないのか…?」

「女王陛下!」

「あ、いや、その……このようなものを、いいのかとおもったのじゃ」

「ええ、どうぞ差し上げます。是非とも有効にご活用ください」

 

 そういや原作でもわりとずさんな演技力だったっけ? まあほとんど描写されてなかったと思うけど。勘の良い人間なら、既に彼女が似非幼女だということを見抜いていることだろう。まあ僕はそれ以前の問題だけど。

 

「では参りましょうか」

「う……うむ…」

 

 めっちゃ嫌そう。嫌そうな幼女そそる。いや別に嫌な思いさせたいわけじゃないんだよ。ちゃんと自分から腰振りたくなるくらいには持て成すって。だからそんな屠殺される前の牛みたいな目をするなよ。

 

 ちなみに僕の拠点は、空間を隔てた場所にある。どこにも繋がっていないという点ではナザリック宝物殿にも似ているだろうか。あそこのロイヤルスイートには劣るだろうが、その分NPCには力を入れている。いやまあ力を入れてるってよりは、異世界にくることが解ってたからフレーバーテキストに力を入れまくった。

 

 職業構成もそうだが、テキストのところに『神を超えた腕のコック』だとか、とにかく『神の~』という言葉をつけまくった。いちいちレベルや職業構成を計算するより手っ取り早いし。モデリングはすべてつるっとしたマネキンだが、とにかくそれぞれの分野において超一流のNPC達だ。戦闘要員はいないが、此処にいればあらゆる贅沢を堪能できる。

 

「む、おお…?」

「すごいだろ? 仕事やりつつ、ちまちまと拠点作ったんだぜ。センスが無いから豪華に仕上げたりはできなかったけど、実用性はパないのさ」

「エ、エイ殿…? その、くちょうが…」

「こっちが素。さっきの謁見とか歯が浮きそうだったぜ。ドラウディロンも、もう演技いらないよ? 愚痴大会っつったじゃん」

「へ? あ、いや、え…?」

 

 幼女を持ち上げて食堂へ連れていく。既に用意されている天上の美酒に、神々の食物。何回か食べたけど、もはやこの世のものとは思えないレベルだった。ただ中毒になりそうで、あんまり頻繁には訪れないんだよね。美味しいものしか美味しいと認識できないより、馬鹿舌の方が人生楽しそうだもんな。

 

「うまーーーっ!?」

「ほら、こっちの酒もやばいぜ。素面じゃ愚痴も捗らんよな」

「うまーーーっ!?」

「いっき、いっき」

「んぐぐ……ぷはっ! なんだ? 今まで飲んできた酒は水だったのか? この香りの高さは…」

「ノッてこうぜドラウ! ほらほら、二十四時間苦悩オンリーだったんだろ? 吐いてけ吐いてけ!」

「ぬ……ぐ……ぬあぁぁぁ!! あのアホンダラ宰相! 私を娼婦かなにかと勘違いしているんじゃないのか! ロリコンアダマンタイトになんぞ誰がヤられるかちくしょー!」

「いいぞー!」

「ビーストマンのボケ共がー! だいたい敵がそのまま食料にもなるとか反則すぎるだろうが! 兵糧って言葉知ってるのか奴らは! あほー!」

「そうだそうだー! …いや、ほんとにそうだな。戦争で食料無限ってなにそのチート」

「法国はもっと援軍をよこさんかー! 毎年毎年いくら払ってると思ってるんだ!」

「まあそれに見合う隊は来てるんじゃないのか? 集団戦で陽光聖典以上の戦力とか、人間って括りならまずいないだろ」

「…っ!? な、なんで知って…!」

「僕は割となんでも知ってるのさ。どうにかしようとはしてるけど、どうにもならないと薄々気付いてる女王様の心情とかね」

「う、うぅ…」

「けどそんな心配も既に過去のこと! 僕がいれば全てはノープロブレム! だから明日のことなんて考えずに酔いつぶれたって、明日はやってくるのさ! 飲もうぜドラウ!」

「…本当に救ってくれるのか? 本当にか?」

「本当に本当さ。だから今はなんでもやっていいんだぜ。今は女王じゃなくていいのさ! ぜーんぶ放り出しても問題なし! 国のことなんて知るかーってさ、明日のことなんて知るかーってさ。そう叫んでも誰も咎めない。なんせドラウが放り出しても僕が勝手に解決するからさ」

「う、ううぅ…」

「そうそう、存分に泣いていいんだぜ──」

「うおぉぉ!! 酒池肉林じゃあぁぁぁ!!」

「えぇ…」

 

 無限に湧き出る酒壺に飛び込む幼女。つるべ落としかな? 酒に溺れるとはまさにあのことだろう。作法を完全に無視して、手掴みで食べ物を食い漁る様子はおよそ王女とは思えない。完全にヒャッハー状態である。

 

「楽しいかい? ドラウ」

「楽しい!」

「そっか、よかった。じゃあ酒池肉林って言ってたし、酒池の後はさ……どう? よかったら、だけど」

「………うむ。よいぞ」

「っしゃあ!」

「…楽しそうだな」

「ああ、楽しい!」

「そうか……ふふっ」

 

 酒でずぶ濡れの幼女を抱いて、テーブルに乗せる。ちっぱいにちゅうちゅう吸い付くと、高貴な酒精の香りと甘いミルクの香りが混然となって鼻孔をくすぐる。なめらかな肌が程よく露出している衣装をほどき、足先から太もも、そしてその奥まで舌を這わせていく。

 

 くすぐったいのか感じているのか、クスクスと笑いながら両足で僕の首を固定するドラウ。さてさて、もう完全に和姦だな。痛いほどに屹立した剛直を空気に触れさせ、僕の首に足を巻き付かせたままの彼女を持ち上げた。肉棒の先端を、ドラウの逆さまになった顔に突き出す。そして彼女はいささかの躊躇もせずそれを口に含んだ。

 

 ──これが高貴な口マンコか。うん、拙さが良い感じだ。目の前にある、割れ目とも言えないぴっちりと閉じた筋が背徳感をこれでもかと煽る。肉体的な気持ちよさはそれほどなのに、あまりの興奮のせいか一分も経たずに彼女の口へ吐精する。

 

 苦しそうに咽るドラウ。けれど我慢できず、弱々しく押し返そうとしてくる小さな舌を無視して、肉棒を奥へ押し込んだ。しばらくそのままで、長い射精が続いた。こくん、こくんと喉が小さく鳴る度に柔らかい刺激がチンポを包み込む。

 

 すべてを出し切った後、ずるりと彼女の口からイチモツを引き抜いた。ネバネバとした糸が、彼女の小さな口と肉棒をいやらしく繋ぐ。荒い吐息を零しながら口の周りを舐め取る仕草は、一度射精して落ち着きかけた肉棒をこれでもかと誘惑してくる。

 

 初めてがテーブルの上と言うのもあれだし、ベッドルームに行くか。雲でも掴んでいるかのように、軽すぎる彼女の体を抱きしめてベッドへ運んだ。少しだけ不安げなドラウの頭を何度も撫で、同時に舌で彼女の口内を蹂躙し尽くした。

 

 いやらしく絡み合う舌は、まるで互いのそれが性器になったかのように錯覚させる。にゅるにゅるともつれ合いながら、何度も唾液を交換し合った。

 

 ──そしてドラウの雌穴から蜜が絶え間なく溢れ出した頃、僕はそこに肉棒をあてがい……一気に貫いた。



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2話

二話目からは、前話で関わったキャラの三人称+主人公の一人称で進めていきます。


 執務室とは、悩み苦しむための場所である。少なくとも彼女──ドラウディロン・オーリウクルスにとっては、つい先日までそんな場所であった。しかしそれも既に過去のこと。うんうんと唸りながら対症療法的に、その場しのぎの政策を取りまとめるだけの日々は終わりを告げた。

 

 それが彼女にもたらしたものは、見た目によく似合った軽やかな鼻歌と、つやつやとした肌の潤いだ。誰から見ても『ご機嫌』という風に政務をこなす姿は、幼い体躯と相まって非常に微笑ましい光景である。

 

「随分と変わられましたな。女王陛下」

「うん? そうか? なんだ、どんな風に変わったというんだ」

「簡潔に言いますと……ふむ……草臥れ果てていたおっさんのようだった雰囲気が、風呂上がりのおっさんのような雰囲気に変わりましたな」

「もう少し上手く言えんのか、お前は」

「しかしまあ、陛下の御身体一つで全てが良い方向へと進み出しました。我々としても、陛下のロリっぷりには感謝しきれません」

「一々口の減らんやつめ……だが、まあ的外れとは言えんか。だがな、大人の姿でも同じくらい()()のだぞ? 私の幼女姿に惹かれたのではなく、私自身に惹かれた可能性も大いにあると思うのだが」

「ははっ」

「鼻で笑ったな宰相!」

 

 いつものようにコンビ漫才をしながら、各地に運び出す物資の流通を確認する女王。かつてあった国境まではまだ取り返せてはいないものの、着実に竜王国の領域を取り戻しつつある。そして無限とも思える物資の数々。彼女が王座についてから今まで、良い報告などは片手で数えられるほどだった。それが嘘のように、今では幸せの青い鳥が群れをなして飛び交っているような状況だ。

 

 疲弊仕切った竜王国は、ビーストマンに追われて難民になった者達すら満足に養えない。どこの都市も食料が足りておらず、それは首都でさえも例外ではなかった。それをイチャイチャしながらのピロートークで知ったエイは、インベントリから取り出した物資を、首都を埋もれさせるかのような勢いで積み上げたのだ。

 

 効率だけを考えるならば、彼が街を転位魔法で回ってばら撒いた方が手っ取り早い。しかし『王都』から各地に運び込まれたという実績こそが、結束の固い竜王国を更にまとめやすくする手段でもあった。加えて、ビーストマンを殲滅して周ったエイが事あるごとに『女王陛下ばんざーい』と叫んでいたため、ドラウディロンの人気はうなぎのぼりであった。

 

「しかしいったい何者なんでしょうな、彼は。陛下はお聞きになられたのですか? 建前とはいえ、連れて行かれる前にそのような話をしていましたが」

「うむ……そうだな。法国が崇める神が実在していたことは知っているな? エイはそいつらと故郷を同じくするらしい」

「──つまり神そのものということですか? それはまたなんとも…」

「いや、なんというかだな……ものすごくぶっちゃけられたんだが、単に常識が違うだけだと言われた」

「と言うと?」

「要は、だ。仮に私達が見知らぬ世界へ迷い込んだとするだろう? そして現地の者は姿こそ我々と似通っているものの、強さはその辺の虫にも劣るレベルだった──そんな感じらしい」

「彼らからすれば我々こそが虫であると……なるほど。ということは、彼らには彼らの文明や国家が普通にあるということですか? 無数の人々が暮らしているというのに、その内の一人ですらがこちらでいう国家クラスの戦力以上であると……いやぁ、想像できませんな」

「ちなみに彼ら基準で言うならば、六大神は平々凡々な冒険者程度らしい。逆に八欲王はアダマンタイトクラスのようなものと言っていたが……物差しが違いすぎて理解できんな、まったく」

 

 呆れたように笑い合う女王と宰相。しかしそこには、今まであった暗い陰が微塵も感じられない。軽口を叩きあっていた時でさえ垣間見えた、押し込めていた諦観の感情が消失していた。久しく忘れていた『希望』という感情がそれを消し去ってしまったのだろう。

 

「さて、三日後にはまた来るらしいからな……それまでに仕事を片付けるとしよう」

「…嬉しそうですな?」

「ぬっ…! やかましい! お前もさっさと手伝わんか!」

「あい畏まりました、女王陛下」

 

 周辺国家全てから援助を受けたとしてもこれほど国が潤うことはないだろう。そんな確信と共に、自身の幸運に感謝しながら、ドラウディロンは政務に張り切るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーん、どこかで噂されてるような気がしないでもないそんな今日このごろ。エ・ランテルにある黄金の輝き亭でお食事中なわけだが、まあこれが非常に美味である。もちろんNPCの作った料理には劣るんだが、だからといって不味く感じるわけもなし。

 

 ちなみに何故ここで食事をしているかというと、原作キャラを直接見てみたかったというミーハーな好奇心故だ。ソリュシャンお嬢様が癇癪をおこしてギャーギャー言ってるのは、演技と解っているのに見事なウザさだった。あの演技力、ぜひとも欲しい。

 

 まあ接触するつもりはないから傍観してるだけだけど、せっかく王国くんだりまで来たんだしセックスしたい。この街にいる原作キャラで若い娘っていたっけ? うーむ……あっ、そういえばニニャなんとかって娘は男装の少女だったっけ。いや待て、今の時期だと主人公と一緒にカルネ村か?

 

 つーかどっちにしてもヤれるビジョンが見えんな。とりあえず放置しとこう。あとは──あああっ! 向こうをてくてく歩いているアイツはまさかっ…! もしかして、もしかすると…!

 

「クレマンティーヌ!」

「っ!?」

「クレマンティーヌか? おぉ、やっぱり! クレマンティーヌだ。みんな大好きクレマンティーヌ、僕も大好きクレマンティーヌ」

「あぁ?」

 

 嫁になったり仲間になったり奴隷になったり、素材になったり餌になったり、可哀想な過去を持ってたり持ってなかったりするクレマンティーヌさんじゃないか。あらゆる二次創作から引っ張りだこの、謎の人気を誇るマンさんだ。

 

 ロリ属性はないけど、オーバーロードのカリスマと言ってもいい彼女とは是非エロいことをしたい。しかも僕が彼女を留めることによって、さきほどのニニャなんとかさんを助けることにも繋がる素晴らしい出会いだ。

 

「僕だよ僕! 忘れたのかい? ますます美人になったねぇ、クレマンティーヌ」

「え…?」

「え、なにその『マジで誰だ』みたいな顔……え? ほんとに覚えてないの? それは──……もしかして法国にいる間、頭を弄られた記憶はあるかい?」

「なっ…!」

 

 これぞ『人を疑うな、自分を疑え』アプローチだ。色々と暗い部分があるあの国だからこそ、知らぬ間に脳を弄られていた可能性が無きにしもあらず──という無茶苦茶な設定である。動揺するクレマンちゃん可愛い。

 

「くそっ…! まさか漆黒聖典であるクレマンティーヌすら実験動物にするなんて…! あの外道国家、よくも…!」

「…! ね、ねえ。ほんとに知り合いなの?」

「いや、初対面だけど」

「死ねオラァァーー!!」

 

 草。まだ日が暮れたばっかりなんだから、こんな往来でスティレット抜くなよ。しかしどうしたものか……彼女との和姦条件はなんだろう。原作キャラの背景をある程度知ってるからこそ、レイナースちゃんやらドラウやらをいただけたわけだが、クレマンちゃんが股を開く理由ってなんぞや。

 

 おっと、とりあえずスティレットはデコピンで弾いとこう。あ、消し飛んじゃった。目を見開くクレマンティーヌ可愛い。思わず飛蝗のように飛び退いた彼女──の背後に立つ。壁かと思ったら僕でしたゲーム。振り返って、信じられないものを見たようによろけるクレマンちゃん。

 

「あいむ『プレイヤー』!」

「なっ…! 『ぷれいやー』!?」

「あ、ごめん嘘だわ」

「て、てめぇ…!」

「プレイヤーの更に上、『運営』が僕ね。そこ重要」

「ぷれいやーの……上?」

「んー……解りやすく言うなら、プレイヤーを管理する側の方さ。つまり実力差も推して知るべし。例えば君たちはプレイヤー1人が敵に回ったら、国家単位で対抗しなけりゃきついだろ? そんなプレイヤー達を、最大規模で千二百万人近く管理統括してたのが僕達『運営』」

「はっ……嘘くさっ。どこでぷれいやーなんて単語聞いたか知んないけど、ほどほどにしとかないと法国の暗部が殺しにくるよー?」

「ま、神の存在証明なんて実質不可能だしね。でも絶望的な戦力差は理解してるんじゃないの? 仮に君が千人に増えたところで、僕は負けないぜ」

「ぐっ…」

 

 おらおら。無理矢理は好みじゃないけど、悪人にならちょっとくらいの強要は許されるんじゃないか? 苦しむほどではないだろうけど、まったく振りほどけない力の差はありありと感じている筈だ。必死に藻掻く彼女を、微動だにせず掴み続ける。

 

「ちっ…! …それで? あんたがその『うんえい』だったとして、私に何か用でもあんの?」

「セックスしない?」

「死ね」

「待て待て、もちろんタダじゃないぜ。ヤらせてくれるなら、君の願い事をなんでも一つ叶えてやろうじゃないか。自慢じゃないけど、叶えられないことの方が少ないぜ僕って奴は」

「じゃあ今すぐ自害」

「……」

「自害」

 

 なんなのコイツ。なにマンティーヌだよちくしょうめ。まあ自害して復活することは可能だけど……死んだ僕と復活した僕って連動してるのか? 正直あんまり試したい事柄じゃないし、御免こうむりたい。

 

「却下」

「あれー? なんでもって言ったのにー? 神様でも嘘はつくんだー」

「ぐっ…! …ちぇっ、じゃあいいよ。無理やりしたいわけじゃないしぃ……あ、一つだけ忠告しとくぜ。この街で騒ぎは起こさない方がいい。プレイヤーがいるからね」

「は…? あ、ちょっ、待っ……ていうかなんで私のこと知って──」

 

 いいさいいさ、他にも女の子はいっぱいいるもんね。最後の忠告は僕の優しさだ。ああ、大人の女性に虐められてささくれだったこの心、ぜひとも純粋無垢な少女に癒やされたい。誰かいないか? …おお、純粋といえば正義。正義と言えば聖騎士。聖騎士と言えばローブル聖王国。聖王国といえばネイアちゃん。

 

 犯罪者のような瞳とは裏腹に、その心は純粋だ。純粋すぎて染まりやすく、最終的にちょっと狂信者っぽくなったネイアちゃん。いいんじゃないか?

 

 ──よし、行くかローブル聖王国。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぴっかぴか。今の僕はとにかくぴっかぴかである。煌めき、輝いている。まさに純白の聖騎士。誰がどう見ても、どこに出しても恥ずかしくない聖騎士っぷりだ。もちろん職業も完全に聖騎士よりのものに変えてるし、中身以外は立派な聖なる騎士でござい。

 

 そんな僕がいま彷徨いているのは、首都ホバンスの中でも中心部にある裕福なセレブ街。確かネイアちゃんの家ってかなり裕福だった筈だから、会えるとしたらこの辺りだろう。聖王国が誇る『九色』の住居……その辺の人に聞いたら普通に教えてくれた。まあこんな世界で個人情報もクソもないよな。

 

 着いた着いた。うん、中々に立派な邸宅だ……ん? 誰かが家の前で剣を振っている。熱心なことで──って、もしやネイアちゃんでは? ああ、やっぱりそうだ。なんだなんだ、犯罪者瞳なんて書かれてたけど全然可愛いじゃないか。むしろ内心を知ってるとギャップ萌えが捗るな。

 

 まあ、そもそもこの世界って『ブサイク』全然いないからな。現地基準で微妙な娘も、リアルなら普通に可愛いレベルだ。ネイアちゃんの目も、なにも知らなければ嫌われてしまったのかと勘違いしてしまう鋭さだが、僕は知ってるから問題なし。はーい、かわい子ちゃん。セックスしようぜ。

 

「やあ、精が出るね。けどもう日も暮れてるし、治安が良いとはいえ程々にね」

「…っ!? あ、は、はい……その、父か母のお知り合いですか?」

「そう見えるかい?」

「あ……はい。あの、あなたより聖騎士らしい人って、あんまり見たことありません…」

 

 人間ってやっぱり着てるもので判断されるよねー。見目の良いアバターではあるけど、この装備を脱いでボロキレを纏えば、やっぱりホームレスとしか見られないだろうし。しかしなんとも、見てて可哀想な少女だ。剣の才能が欠片もないのに、剣を振っている少女……うーん、これは僕がなんとかしてやらねば。そしてお返しをしてもらおう。

 

「もう一度剣を振ってみて」

「えっ? …は、はい」

「もう一度」

 

 ダメダメだわー。中身以外は聖騎士の最高峰たる僕が言うけど、ダメダメだわー。というようなことをオブラートに包んでやんわりと伝えると、ネイアちゃんの鋭い瞳がじんわりと潤んできた。なになに? 自分でも気付いてるって? 父親にもそれとなく諦めろ的なことを言われてると。父親の血を濃く継いだのか、弓のほうに適正があると。

 

 それでも母親のように剣を振るう立派な聖騎士になりたいと。ってそれ父親ナミダ目じゃないかオイ。まあでも、なるほど納得。憧れは何にも勝るモチベーションだもんなあ。僕も子供の頃は、撃てもしないかめはめ波を散々練習したもんだ。挙句の果てに『繰気弾』くらいならいけるんじゃないかと、よく掌を上に向けてぶるぶるさせてたわ。あの頃から無意識にヤムチャさんを侮ってたんやなって。

 

「ふぅむ……よかったら少し稽古をつけてあげようか?」

「え……いえその、でも…」

「強くなりたいなら、どんな機会も逃さない貪欲さってのも必要だぜ。凛々しい目をしてるけど、ネイアちゃんは引っ込み思案の気があるね。君の尊敬する聖騎士は、常に胸を張って堂々としてるんじゃないのかい?」

「…! …は、はい」

「自慢じゃないけど、僕に勝てる人間なんてあんまりいない程度には強いからさ。良い機会だと思ってかかってきな」

「…はい! よ、よろしくおねがいします! ──せやぁっ!」

 

 一応、様にはなっている振り方で僕を攻撃してくるネイアちゃん。しかし本当に純粋無垢な娘だなぁ。いきなり声を掛けてきた男が稽古つけてやるって、もうちょっと怪しむとかなんとかすると思うんだけど。それとも、よほどこの格好が効いたのかな? 聖騎士への憧れが凄いし、無条件に信じてしまったのかもしれない。

 

 いなして、躱して、偶に反撃。圧倒的な実力の差は既に感じているだろう。少し遠慮がちだった打ち込みも、今では『なんとか当てるくらいはしてみせる』と全力だ。でも当てるのに意識を割きすぎて、もはや振り回してるだけになってるな。

 

「うん……やっぱり、あんま剣に適正はないね」

「…っ、ぅ…」

「そもそも体が剣を振る体じゃないんだよ。強くなりたいなら、まずはそこからだね」

「体、ですか…?」

「ああ、こっちじゃそういう考えはあんまりしないんだっけ。そっか……うん、ならちょっと僕がヤってあげようか」

「あ、あの…?」

 

 さあ、エロのお時間です。大丈夫大丈夫、ちょっとマッサージするだけだから。ちょっとエッチな感じになっちゃうかもしれないけど、下心とかはほんとにないから。ほら、リラックスして。しかし聖騎士訓練生用の服って薄くてエロいなぁ。

 

「──っ! や、やめっ…!」

「ほら、ちょっとの間だけだから。我慢しな」

 

 事ここに至って、ネイアちゃんもようやく不信が形になったようだ。自分に女としての魅力がないと思っていたからか、割と無防備だった態度が一変した。けれど関係なく、力で抑え込んで体中を不躾に触っていく。

 

「ひっ…! やめっ、やめてください! いやっ…!」

 

 ちなみに本気で無理やりする気はない。これは単なる布石だ。この変態的な行為が『本当に必要だった』と思わせるための布石。どう考えても敵わないと悟ったのか、ぎゅっと身を固めて涙を零すネイアちゃん。可愛い。

 

「はい、終わり。じゃあもう一回模擬戦をしてみようか」

「ひっ…! …え? あ、え…?」

 

 ネイアちゃんの体をまさぐり倒し、堪能しきった後に時間を止める。インベントリから()()()()()を取り出し、彼女を対象にステータスを弄る。異世界にくることが解っていたから、わざわざ管理者権限の全てを『アイテム』として具現化した一品だ。なんでそんな非効率をするんだという同僚の目も既に懐かしい。

 

 現地の人の構成まで弄くれるとは思っていなかったけど、作っていてよかった機能だ。とはいえ操作できるのは構成だけであって、経験値を無かったことには出来ないし、逆に増やすこともできない。けど『強欲と無欲』に経験値はぶっこんでるし、そこから引き出してレベルを上げるのは可能だ。

 

 弓術の職業消してー、剣士の職業追加してー、ついでにレベルも三くらい上げとこう。これだけやれば、完全に実感として認識できる変わりようの筈だ。

 

「無理矢理でごめんな。けどこれでだいぶ剣士に近付いたと思うぜ。ほら、かかってきな」

「は、え…」

 

 混乱しきった頭で、それでも剣を振りかぶってくるネイアちゃん。そしてその一撃は──先ほどとは雲泥の差だ。速さも鋭さも、そして威力も段違い。相対する僕がこれだけわかるんだから、本人はもっと認識しやすいだろう。

 

 それを証明するかのように、一撃を振り終わった後、呆然と自分の腕を見つめるネイアちゃん。その隙をついて、ややゆっくりめに剣を突き出す僕。先ほどであれば無様に食らっていただろうが、彼女はすぐさま反応して、僕の一撃を横薙ぎに防いだ。

 

「え……嘘…?」

「嘘じゃないぜ。ここまで変わる娘も珍しいけど、ちゃんと効果あっただろ? ま、勘違いされるのも仕方ないけどさ」

「あ…! そ、その、ごめんなさい! エイさんは善意でしてくれたのに、疑うなんて、私…!」

 

 ふはは、そうそう。存分に罪悪感を覚えてくれたまえ。これで彼女は容易に僕を疑うことができなくなった筈だ。つまりもっとエロいことをしても、ある程度までは許容範囲!

 

 その後も彼女の特訓に一時間ほど付き合い、親交を深めた。後ろから抱きつくようにして構えを修正したり、頭をなでなでしたり。そしてその間、事あるごとにネイアちゃんの容姿を褒めまくった。彼女のコンプレックスである怖い目も、僕にはとてもキュートに映ると何度も囁く。

 

 イケメンかつ強い聖騎士で、更には自分を強くしてくれて、その上で可愛いと褒めそやしてくる男。たった数時間とはいえ、これで好意を抱かない女性の方が少ないと思う。最後には相当ボディタッチしてたけど、嫌がる素振りもなかったしね。

 

「そういえば今更だけど、ご両親はどうしたんだい? 家の中から気配も感じないけど」

「ふぅ、ふぅ……あ、えっと、父は数週間ほど国境に駐屯してます。母の方は王宮の番で明日まで留守にしてるんです」

「ありゃ、そうなんだ。大変だねえ」

「いえ! 父も母も国のために任務を果たしています。私もそんなふうになりたいって、ずっと思ってるんです……まだまだ実力は足りませんけど」

「そっかー。立派だねぇ」

「立派だなんて、そんな」

 

 いや、立派立派。だからそろそろオマンコさせてくださいお願いします。流石にそろそろ我慢の限界だ。僕に真面目さは似合わないんだよ。

 

「さて、じゃあそろそろ……対価を貰おうかな?」

「たい──えっ?」

「まさか無償でここまでするわけないだろ? それがまかり通るなら、教師だの指南役だのも商売上がったりってもんだ」

「え、でも……あの…」

 

 ちょっと『裏切られた』って感じになっているネイアちゃんも可愛い。ほらほら、そんな顔しないでさ。要求するものは、別に大金とかじゃないから。動揺している彼女の顎をくいっと持ち上げ、桜色の唇を塞ぐ。

 

「んむっ──!? …ぷはっ、ひゃ、あ、あ、あのっ…! エ、エエエ、エイさん!?」

「対価……払ってくれるよね?」

「あ、う…」

 

 体を対価にしてくれと、視線で訴えかける。まだ恋愛とすら言えない感情だろうが、この世界なら攻略可能域まできてるんじゃなかろうか。そもそも割と性に寛容な社会だし、十代半ばで処女卒業は全然普通だ。二十ちょいの聖王国女傑三人組が行き遅れ扱いされてるんだから、むしろそろそろ卒業しとかなきゃ恥ずかしいまである。

 

 卒業相手としては申し分ない筈だ。押せ押せでいけば必ず応えてくれると信じてるぜ、ネイアちゃん! お願いしますお願いしますお願いします。

 

「あ、あの……はい。私なんかで、よければ…」

 

 やったぜ。じゃあ僕の拠点までご案内っと。ベッドの上まで直行転移だ。何が起こったのか解らない風の彼女を抱きしめ、汗でぴっちりと張り付いた訓練服を剥いでいく。真っ赤な顔で、先に体を洗わせてくれと懇願された。断る!

 

「じゃ、じゃあダメですっ! ダメー!」

「一回良いって言ったから、もう聞きませーん」

「う、ううぅっ…!」

 

 小さな胸も、毛の生えていない恥丘も、どこもかしこもじんわりしょっぱいな。だがそれがいい。これだけは二十を超えた女性には出せない魅力だ。匂いフェチってわけでもないし、汚いのが好きだとかいう性癖は持ち合わせていないけど、白人系の少女とか幼女の分泌物ってまったく汚さを感じないよね。

 

「舐め、舐めないで…! ひゃうっ!?」

「よくほぐしとかないとねー」

「んっ、あ、あっ、いっ──はっ、ひゃぅ…」

 

 感度バツグン、指で感じる締まりもバツグン。やはり原作キャラは何か特別なものがあるんだろうか。ドラウも幼女のキツマンの癖して、三段締めの名器だったし。これは否応なしに期待感が高まるな。魔法で痛覚を鈍化させて、ぐちょぐちょになったネイアちゃんの穴に肉棒をあてがう。

 

「よっ……と」

「──ぅあっ!? ん゛っ、あ゛っい゛、ひあっ…!? あぐっ、は、んぅっ!」

 

 十三、四歳の穴というだけでも最高なのに、やはり締め付けもチンポを悦ばせることに特化している。しかもこのうねりに加え、数の子天井ってやつなのか、亀頭に感じる違和感が射精を促してくる。

 

 ガシガシと激しく腰を打ち付け、粘性を含んだ卑猥な水音をこれでもかと響き渡らせる。ネイアちゃんもガッツリ感じてくれてるようだし、これは素晴らしいセックスだ。快感に喘ぐ彼女の口を塞ぎ、舌で口内をねぶる。

 

 チンポで膣内を犯し、舌で口内を犯す──まったく、最高だ。こみ上げてきた射精感を限界まで我慢し、びくんと彼女の体が震えた瞬間、一気に解き放った。腰の動きを止め、限界まで彼女の股に腰を押し付けた。搾り取るようにうねり締まる彼女の穴に、子宮に、白濁とした精液を注ぎ込む。

 

「は──あっ、あ…」

「ほら、呆けてないで。あと三回は射精すからね?」

「…ふぇ? うしょ、そんなの、む、むり……む──んぅっ!? も、もうかたくなっひぇ…?」

「やばいなこれ。一生挿れときたい名器だぜ、ネイアちゃん」

「んっ──あっ、あ、あ…」

 

 蕩けた表情で腰砕けになったネイアちゃん。正常位だった彼女をひょいと裏返し、先ほどとは逆になった膣の感触を堪能する。

 

 ──まだまだ夜は長そうだ。



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3話

皆様感想ありがとうございます。やる気がでます。


 ローブル聖王国、首都『ホバンス』。その都市の一角にて、聖騎士の女性と、聖騎士見習いの少女が剣を交わしていた。当然のごとく劣勢は少女であったが、しかし見るものが見れば驚愕で声を上げただろう。

 

 聖騎士の方は、ローブル聖王国の中でも上位に当たる猛者だ。そんな彼女と曲がりなりにも『戦い』と言えるレベルで模擬戦を繰り広げているのである。それが単なる訓練生ともなれば、その若さも相まって将来を有望視されることに疑いはない。

 

「驚いた…! どうしたの、ネイア。数日で見違えたじゃない。いったい何があったの? 母さん、びっくりしたよ」

「えへへ…」

「むぅ…」

 

 見習いには似つかわしくない、魔法の力を秘めた剣を鞘に戻し、少女──ネイア・バラハははにかんだ。剣の道を目指すことを褒められても、剣の腕そのものを褒められたことはなかったのだから、嬉しさもひとしおといったところだろう。数日前とはまるで別物になったその力を、憧れの象徴である母親から褒められ、ネイアは誇らしげに胸を張った。

 

 そんな彼女の様子を不満げに見つめるのは、二人の戦いを見学していたネイアの父『パベル・バラハ』だ。間違いなく弓の適性があった娘が、数週間ほど家を離れていた内に剣に熟れていたのだ。威厳ある父親として、娘に弓のなんたるかを教授するという妄想が崩れ去ったのだから、彼の不機嫌も仕方のないことかもしれない。

 

「お母さんとお父さんがいない時にね、稽古をつけてくれた人がいたの。すっごく強くて、教え方も上手で……それで強くなったの!」

「へぇ…! にしても、ちょっと信じられないくらいの成長だよ。どこの誰か知らないけど、教導官に打診したいくらいだねぇ。どんな人なんだい?」

「うん、ちょっと珍しい名前で……ウン=エイさんって言うんだ。凄く立派な聖騎士って感じの人でね…!」

「──ウン=エイだと?」

「あら、知ってるの? あなた」

「うむ……前線は情報が早いからな。いや、しかしこの国に居るとは思えんが。そもそも存在自体少し疑わしいというか…」

「エイさんのこと知ってるの? ねぇ、聞かせて! エイさん、あんまり自分のこと話してくれなかったの」

「いや、正直眉唾ものの話ばかりでな。単なる噂でしかないと思っていたんだが……ううむ」

「どんな噂なんだい?」

「信じられん話ばかりだ。竜王国に急に現れた英雄だの、十万を超えるビーストマンを屠っただの……最強の剣士だと言う者もいれば、信じられん威力の魔法を使う詠唱者だという話もある。胡散臭い噂だが、しかし竜王国が窮状を脱したというのは事実らしくてな」

「ふぅん…? どうなんだい? ネイア」

「うん、絶対同じ人だよ! 剣の腕も凄かったのに、転移の魔法も使ってたもん。エイさん、そんな凄い人だったんだ…! わぁ、わぁ…! 私、そんな人と──」

「…っ!? 待ちなさい、ネイア。『そんな人』と……なんだ? 何があった?」

「えっ? う、ううん。なんでもない。そんな人に教わったんだな、って思っただけ!」

 

 娘の変化に目ざとく気付いた父親が、殺し屋のような目を更に鋭くさせる。まさに視線だけで人が殺せそうな瞳だ。誰が見てもネイアの父親だと言うことが丸わかりな、遺伝子の妙である。

 

 そんな父親の追及を躱しながら、ネイアはプレゼントとして貰った剣を抱きしめる。これは間違いなく君が持つべき剣だ──と、微笑みながら渡してくれた瞬間を脳裏に浮かべ、頬を染めた。そしてその様子を見て、更に怒気を強めるパベル。溺愛している娘にいったい何をしてくれたのかと、両手をボキボキと鳴らし始めた。クスクスと母親が笑い、娘が慌てて父親を諌める。

 

 ──とある三人家族の、そんな日常であった。ちなみにネイアが持つ剣の名前は『アルティメイト・ツヴァイヘンダー・スーパー』……とある弓の同シリーズ武器である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元漆黒聖典、現ズーラーノーン所属であるクレマンティーヌは、己の悪癖に対しこれ以上ないほど後悔していた。先日エイに警告された彼女は、苛つきながらもその助言をしかと受け入れた。ふざけた言動を繰り返すふざけた男であっても、その実力は本物なのだ。ならばその言葉を軽々と扱うほど、クレマンティーヌは愚かではなかった。

 

 しかし行動そのものを止めるには、彼女を取り巻く事情が許さなかったのだ。そもそもクレマンティーヌは、いくら嗜虐趣味であったとしても、わざわざ街を滅ぼすような面倒事を計画する人物ではない。ならば何故か──その理由は“元”漆黒聖典という部分に集約される。

 

 国の暗部から抜け出した彼女を抹殺せんと、風花聖典が追手をかけているのだ。とはいっても、追われる最大の理由は国の秘宝を盗み出したという一点に尽きるため、まさに自業自得だ。

 

 人が移動すれば、どう気をつけようとも痕跡が残る。そして探索に特化した風花聖典は、どんな小さな痕跡も見逃さない。一時を逃れたとしても、いずれ捕捉されるのは自明の理であった。だからこそ必要なことは、足跡の完全な抹消だ。

 

 彼女は追手を完全に撒くため、エ・ランテルを死の街に変えんとする同僚へ手を貸したのだ。街がアンデッドの巣窟になってしまえば、いかに風花聖典といえども追跡は困難を極める。そんな目論見を持って行動していたのだが、クレマンティーヌはエイとの邂逅により予定を少しばかり変更していた。

 

 『プレイヤーがいる』と警告してきた意味を考えれば、取るべき選択肢は限られる。きっとそのプレイヤーは騒動を解決するのだろう。それはきっと予定調和で、街の壊滅は期待できる状態ではないのだろう。しかしそれなりの規模の騒動にはなる筈だ、とクレマンティーヌは考えた。

 

 彼女はもともと計画の半ばまでは墓地にいる心算であったが、それを変更し、計画のキーパーソン──『ンフィーレア・バレアレ』を誘拐した後、騒動の開始と同時に逃走を開始することに決めたのだ。

 

 騒動の大元は墓地故に、解決する者がいればそちらに向かうだろう……そう考えて。風花聖典もアンデッドを完全に無視はできない以上、逃走成功の確率は低くない。『これならぷれいやーが居たところで問題はないだろう』と計画を進めた彼女であったが、結果だけを見れば無駄な足掻きだったのだろう。

 

 全てが中途半端だった。やめるのならすっぱりとやめるべきであった。一応殺しは控えておこうと、誘拐の際に一戦交えた冒険者に情けをかけるのなら、温情を貫くべきであった。ハンティングトロフィーである『冒険者プレート』だけは頂こう──そんな色気を出してしまったが故に《ロケート・オブジェクト/物体発見》を使用したプレイヤーに追いつかれる羽目になったのだ。

 

(まずいまずいまずい…! くそ、間違いなくぷれいやーだよな…? 戦闘は悪手──つっても逃走も厳しい、か)

「どうした? あれだけのことをやらかした割には、随分と大人しいじゃないか」

「…プレートは返すからさ、見逃してくんない? 実行犯はカジッちゃんだしー、そこまで悪いことしてないよー?」

「無理な相談だな」

「…ちっ」

 

 エ・ランテルからかなり距離を稼いだというのに、追いつかれた事実。それは標的を捕捉し、容易に距離を縮める手段があるということに他ならない。彼女にとって『ぷれいやー』とは『神に等しい実力を持つ者』という認識だ。番外席次という別格の存在が知識にあるクレマンティーヌにとって、それを超える実力を有しているであろう人物との戦闘はありえない。選択肢にもならない愚かな一手だろう。

 

 故にここを逃れたくば、詭弁を弄する以外にない。しかしにべもなく、取り付く島もない様子に彼女は忌々しげに舌打ちをする。他に何かないかと、思考に隙を見せたその瞬間──彼女は閃光に貫かれた。

 

「ガッ…!?」

「モモンさ──んに舌打ちをするとは、身の程をわきまえなさい下等生物。そもそもこれだけ手を煩わせただけでも万死に値すると言うのに、こともあろうか見逃せなどと──」

「ナーベ。そこまでにしておけ」

「──はっ!」

 

 まさにゴミ虫を見るような目。ナーベと呼ばれた魔法詠唱者の瞳を見て、体中の痛みを忘れるほど怒りを覚えたクレマンティーヌ。しかし実力差は如何ともし難く、そもそも既に抗うほどの体力が残っていない。

 

 たった一つの魔法で勝負がついたことに、やはりぷれいやーかと歯を軋ませる。せめて負け惜しみでも、負け犬の遠吠えでも、なんでもいいから一矢報いたい。彼女は自身の命よりも、目の前の敵の顔が歪む様を見たかった。

 

 ──けれど現実は残酷で、目の前の男は虫が何を言おうとまったく気にしないだろうと、クレマンティーヌにはなんとなく理解できてしまった。それでも自身が英雄級であるという自負、あるいは矜持ゆえか、痺れの残る体を鞭打って立ち上がる。

 

「ほう。ナーベの一撃を食らって立つとはな……今までで一番レベルが高いか…? どうせなら持ち帰るのもアリか……ふむ」

「どうされますか?」

 

 そんな彼女の必死の行動も、彼らにとっては珍しい虫を見つけた程度にしか映らない。それがどうしようもなく悔しくて、腹立たしくて、クレマンティーヌは怒りのあまり奥歯を噛み砕いた。ガギリと耳障りの悪い音が響く。

 

(なにか、なにか……なにかないか? あいつらがちょっとでも悔しがるなにか……──っ! そうだ、アイツ……ぷれいやーを管理してるって言ってた……ほんとかどうかなんて解らないけど…)

「クレマンティーヌ、だったか。服従を誓うというなら、今すぐには殺さないでいてやるが……どうする?」

「はっ…! なんか調子に乗ってるねー。自分が絶対だって信じてるその態度……クソむかつく」

「少なくともお前程度になら、絶対の力だと思うがな。それより返答を聞かせてもらおうか」

「…たかがいち『ぷれいやー』が……調子に乗ってるって……アイツが知ったら、どうなるかな。くひっ…!」

 

 ぷれいやーに対してこのような言葉を吐いたと知れば、法国の上層部は『何をしてくれたのだ』と憤るだろう。そんな光景が手に取るように浮かび、クレマンティーヌは状況も忘れて口を歪める。しかし男にとっては予想外の言葉だったのか、驚きを露わにする様子に、彼女は少しだけ溜飲を下げた。

 

「…っ! …その単語はどこで知った? 『アイツ』とは誰のことだ。返答によっては、地獄すら生温いと感じる場所へ──」

「私ってさぁ! …『うんえい』のお気に入りなんだよねー。こんな目に合わされたって『うんえい』が知ったら……どうなるかなー? くふ、くひゃっ」

「なっ…!?」

「あ、あの、モモンさ──ん? どうされましたか? あの下等生物の言動が不愉快でしたら、すぐに消しますが…?」

「ま、待て!」

 

 蜘蛛の糸を掴んだ、とクレマンティーヌは口元を歪める。まさか男の言葉が事実だったとはと、驚きと共に喜悦が混じる。生き延びるためには頭を垂れる必要があり、しかし彼女はその選択肢を選ぶような性格を持ち合わせていない。故に完全に詰みの筈だった彼我の関係──それが覆され、彼等の立場は揺蕩い、対等な交渉の余地が生まれた。

 

「じゃあ──ちょっとお話しましょうか? くくっ」

「…そう、だな。そうするとしようか」

 

 ──かくして狂人と死の支配者の交渉が始まった。それがどこに向かっていくのかは、まさに神のみぞ知るといったところだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …はっ! なんかクレマンちゃんが危険な目にあってるような気がする。いや、気のせいかな? あれだけ警告したんだから、まさかプレイヤーに喧嘩を売る真似はしないだろう。何とも言えない嫌な予感を振り払い、僕は目の前の敵に向き直った。

 

「──〈次元断切〉」

「うおっ…!? ほんとにすげえな、エイの旦那」

「そりゃあ勘違いだぜ、ヘッケラン。僕が凄いんじゃなくて、僕が使う技が凄いのさ」

「同じことでは…?」

「ノンノン、同じようで全然違うんだよ。ロバーデイク」

 

 なんせプレイヤースキルで言えば初心者と大して変わんないからね。管理者権限がなけりゃ話にならないお粗末さだ。まあそんなとこまで話すつもりはないけど。

 

 ん? いったい何をしているのかって? なにってそりゃあ、未踏破の遺跡を『フォーサイト』の面々と一緒に攻略してるのさ。もっと言えば、アルシェちゃんの未踏破オマンコを攻略するために行動してるのさ。

 

 ここまで持ってくるのは結構苦労したぜ。まずトブの森の中域にダンジョンを作ってさ。そんでそれとなく噂を流して、欲に目のくらんだワーカーに探索させたんだよ。そして彼等を無事に帰せば、一攫千金の夢を掴んで悠々自適に引退したワーカーさんが一組、出来上がるじゃん?

 

 しかも途中で引き返してそれだ。奥にはまだまだ価値のあるお宝が眠っている可能性もある──あるが、彼等は身の程を弁えた優秀なワーカーだった。既に孫の代まで遊んで暮らせる大金を手に入れたのだから、奥まで進む必要性はないと帰還したのだ。

 

 大金は人を惑わせる……が、それが馬鹿げた金額ともなると別のものが生まれる。“余裕”だ。もうあくせく働く必要もなければ、危険に身を置く必要もない。そんな環境を手に入れた彼等は、幸せをお裾分けすることにも寛容だった。

 

 ワーカーとしては中々のお人好しである『フォーサイト』。そのチームの一人が金に困っていると聞けば、金を恵む程ではなくとも、ダンジョンの情報を教えてやる程度に恩を受けたことがある──まあそんなワーカーを僕が選んだわけだけど。

 

 かくしてフォーサイトは秘密のダンジョンを目指し、トブの森へ向かった。そして僕はアルシェちゃんのケツを追ったわけだ。ちなみにダンジョンは森の東の方……二次創作に出てきてはすぐ殺されちゃう系トロール『グ』さんの住処から、そう離れていない場所へ作った。

 

 人間種以外には探知されないように設定してあるから、変に荒らされることもない。しかしそこを目指す人間まで気付かないわけもなく、フォーサイトはものの見事に捕捉された。彼等のレベルでは『グ』の打倒どころか、逃走すら難しいだろう。

 

 よく雑魚描写される『グ』さんだが、仲間の存在を加味すればガゼフでも死は免れない強さを持っているのだ。ミスリル級程度のフォーサイトには厳しい相手だろう。

 

 唯一『グ』に再生不可能なダメージを与えられるアルシェちゃん。彼女が優先的に狙われるのは当然で、それを必死に妨害するヘッケランやイミーナちゃん……それを援護するロバーデイク。

 

 しかし奮戦むなしく、凶刃に倒れ伏す仲間たち。『空を飛んで逃げろ』と叫ぶ仲間に、涙を零しながら首を横に振るアルシェちゃん。嗤いながら毒の滴る剣を振りかぶる『グ』さん──そんなところに危機一髪で駆けつけた僕。まあ見計らってただけだけども。

 

 イケメンナイトよろしく、わざわざ彼女を抱きしめて、片手で大上段からの一撃を受けとめた。その後はお決まりの虐殺フルコースだ。取り巻きのトロールを首チョンパして、再生する前に六位階の魔法で焼いた。

 

 ちなみに今の職業構成は戦士よりの神官魔法剣士である。ユグドラシル基準で言うと中位職だけで構成されたゴミっぷりだ。でもあんまり高位階を使用できちゃうと、アルシェちゃんが『おげぇぇ!!』しちゃう可能性があったからさ。気遣いの出来る男ってやつだ。

 

 なら戦士職だけでよかったんじゃないかって? いやいやなに言ってんの。彼女より高位階の魔法が使えるという事実は、命の恩人というのも相まって好感度をアップさせるのに一役買ってんのよ。ついでに回復も使えると恩を着せやすいし。

 

 ことが終わった後、しきりに感謝される僕。うーん、なんとも心地良いじゃないか。セックスとはまた違った気持ちよさだ。しかしきっとアルシェちゃんの穴には敵わないことだろう。会話する内に目指す場所が同じだったと互いに知った僕らは、仲良しこよしでダンジョンへ侵入したってわけだ。

 

 彼等も彼等で、ある程度の打算はあったのだろう。自分たち以外の人間がダンジョンを目指しているという事実は、既に情報が漏洩しているということに他ならない。つまり時間をおけばおくほど宝を得る可能性が低くなるということだ。普通に考えれば、これだけ消耗したチームが一度引き返さない道理はない。

 

 しかしその間に他の冒険者やワーカーが大挙し、めぼしいものを全て持っていかれては全てがおじゃんだ。だからこそ、対価もなしに救ってくれた僕と一緒に進むことにしたのだろう。不測の自体に陥ってもなんとかしてくれると見越して、危険を推して進むべしと。

 

 強かだが、そういうのは嫌いじゃない。それに出来うる限りは自分たちでどうにかするという意思は感じるし、どうやって恩を返そうかという逡巡も伝わってくる。良いやつらじゃあないか。正直イミーナちゃんとも寝取りックスしたいと思いました。しないけど。

 

「情報ではこの辺りで引き返したらしいが……どうだ? イミーナ」

「罠の気配はないわね。それも情報の通りだけど…」

「いったいなんのために作られたんでしょうかね。通路にも複雑さはない……話によれば、そこかしこに貴重な品が置かれていたんでしょう? 目的が一切読めませんね」

「…不思議」

 

 まあオマンコ目的のダンジョンとか意味不明すぎてわけ解んないよね。とはいえ、もう少し進めばダンジョンの良さはきっと解ってくれるさ。なんせこれでも『運営』だ。確かに転生者という前提はあるけど、ユグドラシルという世界をおもしろくおかしくするために邁進してきた事実は確かにあるんだ。不純な目的があるとはいえ、マップ構築に手は抜かない。まあそのせいでクソ運営クソ運営言われてたわけだが。

 

 よーし、そろそろだ。イミーナちゃん程度のレンジャー能力では察知できない罠。それとなくアルシェちゃんの傍に寄って、と。トラップカード発動! 

 

「なっ…!?」

「ロバー!」

「イミーナ! ヘッケラン!」

「ぐおっ…!?」

 

 わりとよくある転移罠。とはいえこの世界ではまずありえないトラップに、見事分断されるフォーサイトの面々。イミーナとヘッケラン、僕とアルシェちゃん、そしてロバーデイク。周囲が光に染まり、それぞれ設定された場所へ飛ばされていく。

 

「大丈夫かい? アルシェちゃん」

「あ……うん、ありがとう。ここは…?」

「入り口は一つだけ、か。わざわざ転移トラップなんて仕込んでたんだ。ただの部屋じゃないと思うけど……ん? っと、この部屋全体に転移阻害がかけられてるな」

「…みんなが心配」

「ああ、とりあえず部屋を出ようか。危ないから僕の後ろにね」

 

 こくりと申し訳なさそうに頷くアルシェちゃん。いやいや、気にしないでおくれよ。どっちにしてもこの扉は開かないからさ。用心する振りをして扉を調べ、開かないことを見せつける。次元断切まで使用して見せるも、そもそも破壊不能オブジェクトに指定してあるため、傷一つ付かない結果に終わる。

 

「固いな……なにか特殊な条件が必要なのか? ふーむ…」

「あ……扉の上、何か書いてある」

「ん? ああ、気付かなかったな。なになに……あ、僕こっちの国の字は読めないんだった」

「字が読めないの?」

「…だね。おいおい、そんな目で見るなよアルシェちゃん。自分の国の字はちゃんと読めるってば」

「気のせい。考え過ぎ」

「そうかなー? なんかちょっと嬉しそうな雰囲気感じるけどなー」

「気のせい」

 

 やっと役に立てることが嬉しいのか、どことなく雰囲気が緩んだアルシェちゃん。可愛い。少し掠れ気味で、読みにくい文字を目を細めて睨んでいる。視線が左から右にすいっと移り、問題なく読み終えたことがうかがえる。

 

 さあどうしたんだいアルシェちゃん。何が書いてあったか教えてくれよアルシェちゃん。きっとこの部屋を出る条件が書かれていたんだろう? アルシェちゃん。さあ、さあ、さあ、顔を赤くしてないでさっさと口に出してくれたまえよ。

 

「なんて書いてあったんだい? 部屋の名前か、それとも開けるための条件かなにかだと思うんだけど…」

「…っ、ぅ、え、えっと…」

「アルシェちゃん?」

 

 怪訝な表情をつくる。いやたぶんつくれてない気がするけど、彼女も動揺しまくってるから気付いてないな、うん。真っ赤な表情で狼狽えるアルシェちゃんほんと可愛い。ほらほら、悪足掻きはよすんだ。なんて書いてあるのかなー?

 

「あ、あの…」

「うん?」

「セ……『セックスしないと出られない部屋』と……か、書いてある」

「…」

「…」

「アルシェちゃんってそういう冗談言うんだ…? なんというか、意外というか…」

「ほ、本当! 本当に書いてある!」

「いや、常識的に考えてそんな部屋があるわけないだろ……ひょっとして僕、馬鹿にされてるのかい?」

「ち、違う…!」

 

 まあ彼女も自分の言っていることが意味不明という自覚はあるのだろう。『字の読めない男をからかっている』という疑いを晴らそうと必死だ。そんな彼女の様子に、ふっと微笑む。

 

「ま、アルシェちゃんが良い娘だってのはわかってるよ。だからここが『セックスしないと出られない部屋』ってのは信じるけど……それはそれでどうしたもんか…」

「っ…! あ、あぅ…」

「試せるものは全部試したし、後はなにか仕掛けを探すくらいしか出来ることはないけど……僕もアルシェちゃんもそういう技能ないしなぁ」

「あ、あの…」

 

 仕方ないかなぁ。これは仕方ないかなぁ。うん、仕方ないよな。どうしたのアルシェちゃん? ああ、仲間が心配だから早くここを出たいって? でもここセックスしないと出られない部屋だよ? どうするの?

 

 えっ? オマンコしていいんですかやったー! 実はさアルシェちゃん、初めて会ったときから可愛いと思ってたんだよ。え? お世辞はいらないって? いやいやほんと可愛いって。セックスしなきゃならないから言ってるんじゃなくて、本心からだよ。

 

「とても申し訳ないんだけどさ、アルシェちゃん」

「な、なに?」

「こんな状況になって、実はものすごく嬉しいです」

「──は、はわっ…」

 

 よーし、和姦成立だ。今頃イミーナとヘッケランもよろしくやってるだろうし、僕達も楽しもうぜ。ロバー? あいつの部屋にはオナホを置いておいたから問題ないさ。男であれば、たとえ知識がなくともそれがチンポを突っ込むモノだと理解してくれるだろう。

 

「──は、ぁ……んっ」

「おやぁ? なんでする前から濡れてるのかな…? もしかしてアルシェちゃん、ずっと期待してたのかい?」

「…! ち、ちがっ──はひゃぅ!?」

「こんな良い締め付けで違うなんて言われてもね。もしかして、オナニー好きなの?」

 

 耳まで真っ赤だ。ほうほう、原作の裏ではオナニーっ娘だったのかアルシェちゃん。まあ常にストレス過多な生活だったろうし、どこかしらで発散しなければ人間壊れるからね。彼女の場合はそれがオナニーだったと。

 

 なるほど、Webの方では尻尾を付けられて悦んでたけど……元々その素養があったわけか。シャルティア嬢のお気に入りになるわけだ、うん。となると俄然僕もお尻の穴が気になってきたな。吸血鬼にぶっといディルドを挿れられた可能性もあった尻穴。吸血鬼に散々ほじくられる可能性もあった尻穴。お尻の尻尾を振りながら、下品に処女喪失をねだる可能性もあった雌穴。

 

 ──ものすごく興奮してきた。

 

「──ん゛っ!? そ、そっちは……だめ…!」

「ほんとに? 今すごく良い反応したけどなー」

「ひゃ、あ、う、いっ、だめっ…」

「今すぐ射精できなきゃ、こっちに挿れちゃおっかなー」

「…! はっ、うっ、んっ、んっ…!」

 

 おおっ。自分から必死に腰を振り出してくれた。くぅ、アルシェちゃんはミミズ千匹ってやつだろうか? 膣内のヒダが蠢いて、これでもかとチンポを刺激してくる。騎乗位でパンパン腰を打ち付けてくる彼女。限界の雰囲気を感じたから、ちょっとしたイタズラ心で両足をすくった。

 

「っ!? あ、あがっ…! いっ──ぎゅ、ぅ」

「僕も出すよ」

「あ、熱っ、ぅ……あ、膣内で…」

 

 子宮まで到達したチンポは、出口を塞ぎながら思い切り射精した。うっわ、この吸いつくされる感じ…! ちょっと普通じゃ味わえないだろうな。

 

「あ、あいた……みひゃい…」

「そっか。うん、じゃあこっち使わせてもらうね?」

「ふぇ……──うあ゛っ!? な、にゃんで、こっちで出ひた、のに…!」

「だって、アルシェちゃんの尻穴がずっとひくついて誘ってくるからさ」

「ひ、あ、あ、あ──」

 

 アルシェちゃん嬉しそう。やっぱり彼女は尻穴が似合うんやなって。にしてもこの入口の締め付け具合…! もう僕一生君の尻尾でいいや。そのくらい気持ちいい。むずがる彼女を壁に押し付けて、激しくピストンする。嫌がってる振りはしてるけど、さっきから何回イッてるのさ? 初めてのケツ穴でイくとか、もう認めちゃいなよ。君はアナルの方でこそ感じるド変態なんだって。

 

 ほら、もうわかってるんだろ? この先、チンポ無しじゃ生きていけないって。ふふふ

……帝国の現地妻ならぬ、現地穴手に入れちゃった。こっち来る度に使ってあげるからね? 他の肉棒くわえこんじゃダメだよ? オーケー? うん、いい子だ。なら──出すから受け止めな。

 

 ふぅ。今日もいいセックス日和だった。さ、行こうかアルシェちゃん。みんなも首を長くしてまってるよ。もしかしたらイミーナちゃん達はまだやってるかもしんないけど、イケそうなら混ざろうぜー。寝取りはNGだけど、スワッピングは嫌いじゃないんだよ僕。



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4話

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 バハルス帝国が首都、帝都『アーウィンタール』。皇城が遠目にもそびえ立ち、舗装された道が美しく交差する、皇帝が住まう地として相応しい街だ。ここを拠点としているワーカー『フォーサイト』の一員であったアルシェは現在、皇帝への謁見の真っ最中であった。鮮血帝とも呼ばれる皇帝──『ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス』により貴族の地位を剥奪されたアルシェにとって、ここは非常に居心地の悪い場所である。

 

「…それで? わざわざフールーダとの伝手まで使用して謁見を希望した理由を聞こうじゃないか。アルシェ・イーブ……いや、今はただのアルシェだったか。有望な弟子だったと聞いているが──鳶が鷹を生むこともあるものだな」

「何卒、お願い申しあげます。先日献上した数々の秘宝の対価……金銭ではなく、フルト家の再興を願いたく…」

「ならん。無能な貴族ほど国にとって害になるものはない。お前の父親は、かつて粛清する必要すらないと判断した者だ。たとえ新たに地位を得たとしても、百害の後に一利がある程度の働きしか期待できんだろうよ」

「形だけでいいのです。権力を与えず、役目を与えず、ただただ飼い殺していただくだけで」

「ならん。前例を作れば、いずれ悪しき慣習となる。お前の両親が馬鹿げた散財を続けているのは聞いているが、貴族に戻れば治まるとでも期待しているのか? …いい加減に目を覚ませ。お前の望む『いつか』など、いつまで経っても始まらん。お前のそれはただの甘えだ」

「…っ!」

「何かを得たくば何かを捨てろ。捨てたくないというならば、自分で躾けろ。いっそ市井で庶民として働かせれば、金の有り難みが解るだろうよ。一日必死に働いて銅貨を数枚得れば、考え方も変わるかもしれんぞ……まあそんな人物ではないからこそ、貴族位を剥奪したわけだが」

 

 エイとの冒険──そしてそこで得た宝物の数々。均等に分けたとしても莫大な金額になることは疑いがない、綺羅びやかな秘宝。魔法の力を秘めた装飾品なども多々あり、数点は国宝に指定されるクラスの逸品も含まれていた。

 

 アルシェは自分の取り分を受け取った後、一部を金に変え借金を完済し、残りの全てを皇帝へと献上した。彼女の父親が望むのは金ではなく地位であり、それを取り戻さぬことには、家族の団欒は永久に返ってこないだろう──そう考えた末の行動だ。

 

 しかし彼女の希望は切って捨てられた。皇帝にとっては、莫大な金銭を支払うか無能な人間を貴族位に取り立てるかの二択であり……結果からいえば、それほどにアルシェの父親は貴族に相応しくないという証明がなされただけである。

 

「正当な報酬は与えよう。後はお前次第だ」

「……」

 

 追い出されるように謁見は終了し、アルシェはとぼとぼと帰路につく。脳裏を過るのは、つい先日に体を重ねた男の顔だ。自分の取り分はいらないと、頑として受け取らなかった男。彼の体温を感じながら、自身の半生を語った時のことをアルシェは思い出す。

 

 まさに言ったとおりだった。エイがアルシェの事情を聞いた後に発した言葉と、皇帝がアルシェへ伝えた言葉は完全に同じだった。親が間違っていると感じているのならば、それを正すことが正道なのだと。結局、親に嫌われることから逃げているだけの小娘なのだと。

 

 彼女にとっては親へ苦言を呈するよりも、ワーカーとして働くことの方が楽だった……ただそれだけのこと。『苦労をしている』と対外的に訴え、そして自分すらも誤魔化せる手段として最適だった。

 

 もう貴族ではない。もう裕福ではない。一般庶民として働く必要がある。それを父親に理解させる労力と、ただ金を運んでくる労力を天秤にかけ、後者が勝っただけのこと。

 

 ──そうなんだろう、アルシェ。

 

 そうエイは言い、皇帝も結局はそれを見抜いていたのだろう。彼女は莫大な金銭と引き換えに、色々なものを失った。もうワーカーとして活動する必要はなくなった故に、仲間を失った。戦い続けている間だけは見ていられた、家の再興という僅かな希望を失った。

 

 残ったのは過去に執着する父親と、現実を見ていない母親。そして何よりも大事な二人の妹。当分の間は裕福に生きていけるだろうが、それは果たして幸福なのだろうか。疑問は尽きず、彼女は足取り重く歩き続ける。

 

 俯いて進む彼女には気付けなかった。家を目の前にするまで気付けなかった。希望どころか帰る家さえもが灰燼と化している事実に、跡地を目前にするまで気付けなかったのだ。

 

「…? …は? え?」

 

 綺麗さっぱりと屋敷が消滅し、その跡地で呆然と佇む両親や使用人の姿──そして双子の妹を抱きしめながらあやしているエイ。幼い二人はなにやらとても楽しそうで、彼は子守もうまいんだなぁと、現実逃避をしながら微笑むアルシェ。そんな彼女に気付いたエイは、ニコリと笑って言い切った。

 

「荒療治!」

「やりすぎでしょおぉぉ! バカぁぁーー!!」

 

 貴族街にアルシェの叫びがこだまする。しかし数日後には仕事に精を出すようになった父と、覚束ないながらも家事を覚えようとする母の姿があり、アルシェは苦笑いをしながら新しい形の団欒を噛みしめる。ああ、こんなにも簡単なことだったのか──そう呆れながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドマスターにして、たった一人のプレイヤーである彼は今、自室で盛大に悩んでいた。アバター名はモモンガ。今の名はアインズ。ゲームの世界が現実になり、NPCが動き出し、己の意思もあったとはいえ勝手に動き出す様々な事態に彼は困惑しきりであった。

 

 それでもなんとか上手くやっていた矢先、冒険者として追い詰めた犯罪者から飛び出た情報は、アインズ・ウール・ゴウンというギルドの活動の一切を停止させた。結局の所、その犯罪者と『運営』の関係性は問い詰めきれなかった。本当に運営がいるのかも、そもそも犯罪者──クレマンティーヌの素性すら調べきれなかった。

 

 もちろん無理やり体に聞くことは出来ただろうが、その結果が運営の不快を買うという事態に繋がれば、最悪としか言いようがない。結果として手を出すこと無く、見逃さざるを得なかった事実に苛立つアインズ。

 

 彼はとても慎重な人間だ。石橋を何度も叩き、出来得る限りの不安を排除して事に臨むタイプの人間だった。故にもし本当に運営がきているのならば自重しなければならないと、外で活動している全NPCを呼び戻したのだ。

 

(運営が来ているとして、それはどういう形だ? 無形の管理者としてか、それとも実態のあるGM……ゲームマスターとしての形を取っているのか。いや、あの女の話から推測するとまず間違いなく後者だろう。問題はその能力だ。管理者として、どこまで力を行使できる? 違反者に対する処置にしろなんにしろ、ゲーム内であれば管理者用のコンソールを使用していた筈だ。仕様が同じなら、それは使えなくなっているだろうが…)

 

 考えることに意味はあるのかと、幾重にも苛立ちと鎮静を繰り返すアインズ。運営の件だけであればここまで焦燥感を露わにすることもなかったのだろうが、問題は一つだけではない。彼が大事にしているNPCの一人『シャルティア・ブラッドフォールン』が何者かに操られ、ナザリックから離反させられるという憂き目にあっているのだ。命令が宙ぶらりん、待機状態になっているのがまだ僅かな救いと言えなくもないが、アインズにとっては忸怩たる思いだ。

 

(くそ、せめてもう少し早く運営の件を知っていれば、シャルティアにも帰還の命を出せていたというのに…! つくづくタイミングが悪いな。そもそもシャルティアの件と運営はなにか関係しているのか?)

 

 コツン、と固い机を叩く。アインズが知りたい最大の情報は、まず本当に運営がきているかの真偽だ。そして来ていたならば来ていたで、運営がどういうスタンスを取るのか。『運営』というのは言うまでもなく『仕事』である。まさか異世界にきてまでそれをまっとうするような人間は、そういない。となれば、その後の行動は本人の性格次第で大いに変わるだろう。

 

 筋道だって考えた場合、アインズ・ウール・ゴウンにとって運営の存在は非常にまずい。運営を『普通の一般人』として考えた時、カルマ値マイナスだらけの異形種ギルドをどう思うだろうか。ゲームであればともかく、それが現実になった時、その集団はあまりにも危険である──と判断する可能性は極めて高い。実際問題として、アインズが推し進めていることはまさに悪のそれだ。

 

 単純な懸念としても、異形への嫌悪感などがある。そもそも異形種が嫌われている最大の要因は、見た目の醜悪さが由来だ。ポリゴンであればまだ直視できても、リアルな質感を備えた化物達に忌避感を覚えるのは、人間としてはむしろ正常だろう。

 

 そういった事実を鑑み、アインズは外で活動している者達を全て帰還させたのだ。あらゆる想定の中で、最悪を引いた場合の被害は計り知れない。下手をすればボタン一つで全てが消え去ってもおかしくはないのだ。

 

(手をこまねいているだけでは事態が進展しない。できれば早期の内に接触を試みたいが……クレマンティーヌへの接触はいまだ無し、か。助かりたいがための嘘だった可能性も十二分にあるが、とはいえ不用意に手を出すのはリスクが高すぎる。監視に留めておくのが最大限の譲歩…! 加えてシャルティアの件も放置はできん。ペロロンチーノさんにも申し訳が立たないし、優先順位をどうするべきか……問題が山積みだな)

 

 悩むアインズの元へ、全ての配下の撤退が完了したと報告が入る。『悪事をなさず、そして悪事をしていたならばその痕跡を全て消した後、何をおいても帰還せよ』と厳命を下した。もっとも時間がかかったのがデミウルゴスという点から、アインズは戦々恐々としていた。

 

(一番優秀と言ってもいいデミウルゴスが遅くなったってことは……めっちゃ悪事してたってことでいいのか? 悪魔だもんなぁ……運営にバレたらやばいよな、ほんとに。今の時点でアクションがないってことは、ゲームの時みたいに完全な監視体制は築けてないってことだよな? いや、普通に考えてそれはそうだ。ユグドラシルの『仕様』はそのまま残っている場合がほとんどだが、形のない『システム』はコンソールを始め、基本的には使用できなくなっているんだ。むしろ一番可能性が高いのは、単なるGM用キャラでこちらにきているというものだろう。となれば何一つアイテムを持っていないということもあり得る……単身、着の身着のままなんじゃないか?)

 

 プレイヤーがGMに傷をつけることは、システム上不可能だ。しかし誘惑することは可能なのでは、とアインズは思考し始めた。アインズの体は食欲、性欲、睡眠欲の全てが消失した──故に誘惑にも耐えていられるが、リアル世界の普通の人間がナザリックの豪奢さを味わえば、中毒のように『無くてはならぬもの』と感じるのではないか……そう考えたのだ。

 

(腑抜けにして、籠の鳥として飼い、そのまま寿命を迎えてもらうのが一番なのだが……いや、とにかくは存在の有無だ。運営がきている可能性、来ていない可能性、そして運営の名を騙るプレイヤーの可能性……全てを想定して事に当たらねば)

 

 玉座へと赴き、一様に顔を伏す配下達へ声をかけるアインズ。まずは撤退命令を出した理由を説明し、当座の危険を共有しなければならない──と考えたところで、先に重要な情報が伝えられた。

 

「…! プレイヤーの影だと?」

「はっ。竜王国方面の調査は後回しになっていたのですが……既に噂として出回っておりました。戦闘面での支援、そして物資の援助。現状で把握できている情報のみで推測するならば、時期的にもまず間違いなくプレイヤーかと」

「そう、か…」

 

 多数のビーストマンの殲滅──戦闘面だけならば、大抵のプレイヤーには可能なことだろう。しかし夥しい量の物資を援助した事実は、推測を容易に絞り込む。

 

(まずは規模だ。個人が持てるアイテムに制限がある以上、そいつは拠点ごと移動していると見ていい。同じことはナザリックでも可能だが、おそらくは右も左も分からない状況で、ギルドの資産を大幅に減らす馬鹿げた行為……相当なお人好しか、あるいは別の目的があるのか。どちらにしても、竜王国への助力は『人間種よりであることの証明』…! よほど財産管理のできない馬鹿でなければ、中規模以上のギルドということも間違いない)

 

 運営という可能性もあるが、それは最初に考えた推測が否定する。異世界に転移するという情報でもなければ、GM個人が大量の物資を持つ状況など有り得ない。となれば、竜王国の件は新たな問題として見なければならないだろう。

 

 出ないため息を幻視しながら、アインズはプレイヤーと思しき人物の詳細を尋ねる。アバター名でも解れば儲けもの、有名なプレイヤーであればアインズの知識にも入っている可能性が高い。

 

「はっ。出回っている名は『ウン=エイ』と──」

「まんまじゃねーか!!」

 

 盛大なツッコミを叫んだアインズが、『クゥ、クソ運営があぁぁーー!!』ともう一度声高に叫ぶ。主のキャラ崩壊に目を丸くする配下達……そんな彼等に対し、アインズが慌てて取り繕うまであと数秒。彼がこの世界にきてから一番の声量であったと、とある守護者統括の日記に書きこまれた──そんな日の出来事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クーデちゃんとウレイちゃんにキャッキャウフフチュッチュペロペロしてたらアルシェに切れられた件。まだペッティングまでしかしてないってのに。二人とも喜んでたんだからいいじゃないか、まったく。まあ仲直りのアナルセックスは気持ちよかったのでよしとしておくか。

 

 女児がお股弄りを覚えると癖になるっていうし、今度きた時はオナニー好きの幼女になっている可能性は大だ。なによりオナニーっ娘であるアルシェちゃんの妹なんだから、素質もばっちりだろう。

 

 さて、そんなこんなでやってきました今度の舞台は『リ・エスティーゼ』。王都といえばなーんだ。それはもちろん蒼の薔薇。一人を除いてみんな可愛い奇跡のチーム。ロリババア枠のイビルアイもさることながら、双子の忍者もわりとロリロリしてて可愛いよね。JK忍者って感じ? まあJKがロリと言えるのかは人によるだろうけど。たぶん男女でだいぶ差が出るだろうね、その辺の認識は。

 

 一部のマンさん達が『オタクはロリコン!』と声高に叫ぶのは、そもそもヒロイン枠の年齢制限がJKまでという暗黙の了解があるからだ。JKをロリ扱いするなら、なるほどラノベの九十九%はロリコン向けとなってしまうな。

 

「ってことで、よろしく頼むよ」

「ああ、任せときな。これだけ貰ったんだ。俺の人生で一番の役者っぷりを見せてやるよ」

 

 人相の悪いゴロツキという言葉が似合う彼に、金貨が百枚入った革袋を渡す。普通に暮らせば一生、散財して遊びまくっても十年くらいはいけるだろう。そんな大金を代価に頼んだことと言えば、『数分の名演技』である。

 

 蒼の薔薇で一番セックスしやすいのは誰か? それは言うまでもなくガガーラン。しかし彼女は童貞専門だから、既に卒業している僕は対象にならないだろう。というか僕の方も彼女は対象にならない。

 

 二番目にセックスしやすいのは、双子の忍者だろう。というかガガーラン、ティア、ティナはかなり性に奔放なようだ。逆にラキュース、イビルアイはお硬い。よく一緒にチーム組んでられるなぁ。まあとにかく、ティナちゃんとヤりたいなら自らがショタればいい。年齢を操作できる指輪を嵌め、僕の姿は見事なショタキャラと化している。

 

 十歳くらいだろうか? 半ズボンで生足をこれでもかと見せつけるファッション。田舎から出てきた、冒険者に夢見るお登りさんという風体を装っている。たぶん変態貴族とかにもケツを狙われそうな見た目だ。たぶんこれだけでも落とせそうな気はするんだけど、やっぱり大事なのはシチュエーションだよね。

 

 八本指の末端に扮するゴロツキが、なにも知らない幼気な少年を、口八丁手八丁で連れ去ろうとする一幕──そんな場面に出くわしたショタコンがどうするか? そんなの決まってる。かっこよく助けて、あわよくばショタチンポをいただこうとするだろう。たまには誘い受けもありだよね。存分に忍者っ娘へ甘え倒してやろうじゃないか。

 

 ──よし、予想ドンピシャでティナちゃんが一人で歩いてきおる。頼むぞゴロツキ。僕は演技が下手だから、成否は君の腕にかかってるんだ。ヅカもかくやという役者っぷりを所望するぞ。

 

「──よう、坊主。お前此処へ来たばかりか? 中々見所のある面構えしてんじゃねえか」

「えっ……と、僕ですか? そ、そうかなぁ……えへへ」

「強い冒険者になるやつってのは、最初からオーラが違うってもんだ。お前さん、でっかくなるぜ」

「そ、そうですか…?」

「ああ! 俺は将来有望そうな人間には唾を付けておくタイプでな。ちょっと一緒に行こうぜ。()()()()()()()()のがもう何人かいるんだ……ひひ、冒険者になるなら仲間も必要だろ?」

「紹介していただけるんですか? あ、ありがとうございます!」

 

 ガチの人攫いっぽくて笑えないぞゴロツキ。だがいいぞゴロツキ。君の迫真っぷりに釣られて、僕もなんだか本当に無知ショタになった気分だ。これならティナちゃんもきっと引っかかってくれる…! 来るか? 来るか? …よしキター!

 

「へへ、じゃあちょっとこっちに──ガッ!? て、てめぇ…! なにしやがる!」

「…何処に連れてくつもり?」

「てめえの知ったこっちゃねぇだろうが! あんまり調子に乗ってるとガキごと娼館に──いっ!? ア、アダマンタイト…? あ、蒼の薔薇かよ…」

「何処に、連れてくの?」

「あ、い、いや……なんでもねえんだ。ちょっと声をかけただけだ。お、俺はもう行くからな!」

 

 まさに惨めな負け犬のように、スタコラサッサと駆けていくゴロツキ。ぶっちゃけて言っていいかい? たぶん世が世なら名俳優として名を馳せたんじゃないだろうか。こんな文化の発達していない世界に生まれたばかりに、オマンコ劇場でしかその才能を発揮できないとは実に憐れだ。ん? いや、それで人生逆転レベルの大金を掴んだんだからいいのか?

 

 まあいい、とにかくあとは僕の演技にかかっている。ティナちゃんのオマンコは目の前だ。目線の高さで言えば、物理的にも目の前だ。

 

「…危ないところだった」

「え……っと…?」

「危機意識が足りていない。あのままだったら、たぶん男娼として売られてた」

「だん…? えっと、助けてくださったんでしょうか…? でしたら、その──ありがとうございます!」

「どう致しまして」

 

 うむ……演技下手という自覚はあるのだが、忍者の癖に彼女は気付いていなさそうだ。それはなぜか? うん、僕の生足を舐めるように見つめ続けているからだ。世の女性達が『男の視線ってほんとわかりやすいよねー』と言っているのは事実だったのか。視線に質量があるかのように、ブスブスと太もも辺りに何かを感じる。

 

「あ、あの……僕、お礼がしたいです。なにかできることはありませんか?」

「…! ………そう。ならあそこの宿屋に行く。大丈夫、代金は私が払う」

「は、はい。わかりました…?」

 

 直球だなオイ! 僕でももうちょっと時間かけるぞ。まあ男から女と、女から男は違うもんなー……男はただ気持ちいいだけだし。少年だろうがなんだろうが、童貞を『奪われた』なんて感覚はあまり感じるもんじゃないだろう。童貞『卒業』と処女『喪失』……もうこの言葉だけで違いがわかるってもんだ。

 

 さて、薄暗い部屋でいくつか言葉を交わし、ある程度は親交を深めた。そしてベッドに座るように言われ、なにも疑うことなく受け入れる。ふふ、逆レイプとか新鮮でいいね。ん? 目を瞑れって? はいはい、ティナちゃんはエッチだなぁ。

 

 ん? 手を後ろに回せって……おいおい、後ろ手に縛られちゃったよ。何も知らない純真無垢な子供に緊縛プレイとか、ちょっとアダマンタイト冒険者としてどうなんですかね…? まあ別にいいけどさ。そろそろ目を開けていいかな──うわっ!? なんか首筋にひやりと金属質なものが……ん? なぜナイフを首筋に?

 

「何が目的?」

「え? えっと、ティナさん、何を…」

「演技が下手すぎる。子供を装って、何が目的? 変装アイテムか……それとも《ディスガイズ・セルフ/変装》を使用した魔法詠唱者? 五秒以内に答えないなら、そのまま引き切る」

 

 全然引っかかってなかったの巻。おおい! ただの色ボケ忍者じゃなかったのかよ! エロい忍者娘の穴を堪能できると思っていたのに。つーか五秒って短かくない?

 

 えーと、どうするかどうするか……よし、じゃあここは『元頭領とはいえ、暗殺集団から足を洗うことが本当にできるとでも思ったのか?』作戦でいこう。確か抜け忍的な状態だよな、ティナティアって。

 

 ──シチュ的な意味ならともかく、ガチで僕相手に優位に立てると思うなよ? うおらっ!

 

「──なっ…!」

「くくく……冒険者などになって、腑抜けたな。だからこうしてやすやすと縄抜けをされるのだ。立場が逆転した気分はどうだ? お前が抜けた後、我らはさらなる高みへ登っているぞ…!」

「嘘。さっきも言ったけど、演技が下手すぎる」

「……」

 

 だからなんで解るんだよ。《センス・ライ/虚偽判別》使ってるわけでもないのにさー……しかし立場逆転しても動揺する気配がないな。やっぱ暗殺集団のトップだっただけあって、そういうのにも耐性あるのかな? 尋問プレイとかちょっとしてみたい。

 

 しかしイジャニーヤの追手という嘘もバレたし、どうすべきだろうか……よし、ならここは『かつてお前に父を殺された男』作戦でいこう。なんやかんやで結構殺してるんだろうしね、この娘。

 

「よく気付いたな…! ならば教えてやろう! 俺はお前にかつて父を殺された男! これは正当な復讐だ!」

「嘘」

「…くくく、まあ引っかからぬか。先程までは単なる戯れよ…! 我は秘密結社『ズーラーノーン』の高弟。元『イジャニーヤ』の頭領よ……お前には使い道がある」

「嘘」

「…ふ、それも見抜くか。さすがはアダマンタイト冒険者だ。私は世界を導く唯一にして絶対の御方『魔導王』の忠臣…!」

「嘘」

「……」

「……」

「…ティナちゃんとセックスがしたかったので、アイテムの力でショタっ子になりました」

「ほんと──えっ?」

 

 めっちゃ嘘っぽく言った本当のことは、マジで看破された。そんなに僕の演技って下手なのか…? いや、忍者がおかしいだけということにしておこう。汚ない、さすが忍者汚い。というか居た堪れなくなるから、その目をやめろ。『マジかよ…』みたいな目をやめろ。

 

 とりあえず拘束は解くか……じっと見るのはやめてくれよ。ちょっとエッチなことしたかっただけじゃん。現代だって『出会い屋』なんてものがあるんだし、ちょっと偶然を装って運命的なものを演出しようとしただけじゃん。そうだ、俺は悪くねぇ!

 

「……」

「……」

「…ショタは中身までショタじゃないと意味がない。初めての快感に我を忘れて、必死に腰を振っているのを優しく見守るのが至高。育ちきっていない小さな肉棒で突かれるのが快感。似非のショタっ子なんて……私の心には響かない」

 

 なに言ってんだコイツ。いやまあ、なんとなく言いたいことは解るよ。本当のロリ好きからすれば、ロリババアは似て非なるものって感じなんだろ? わからなくもない……が、未熟だね。

 

「…未熟」

「…っ! なにを…」

「それが君の限界なんだ。心の中までショタじゃないとダメ? はっ……なんという欺瞞。なら君はショタが成長してショタじゃなくなった時、なんの興味もなく捨てるってことだろ? そこに愛はあるのかい?」

「…っ!?」

「僕は少女が大好きだけど、抱いた少女が成長して大人になったからといって、捨てるなんて有り得ない。セックスし続ける自信がある。似非だ似非だと言っていたけれど……君の心こそが似非なんじゃないかい?」

「──っ!」

 

 ショックを受けたようにガクリと項垂れるティナちゃん。おいおい、こんなのまだ序の口だぜ。一時間は舌戦を繰り広げるつもりだったのに、なんという体たらくだ。それとも僕の論破スキルが高すぎたのか? 『クソ運営クソ運営』と盛り上がっているスレに降臨しては、レスバを繰り広げていたのが功を奏したのだろうか。

 

「人は間違うものさ。自覚したのなら、また立ち上がればいい」

「…っ」

 

 だからセックスしようぜ。ほんとのショタじゃなくたってヤれば興奮するもんだって。ドラウとセックスした時とか、彼女に『幼女の振り』をしてもらったことがあるけど、充分に興奮したし。僕もできるだけ演技を頑張ってみるからさ。

 

「わかった……やってみる」

「うぇーい!」

「ただし条件がある」

「ん?」

 

 なんだい? なんでも言ってごらんよ……え? 四歳ぐらいになれるかって? いや、そりゃなれるけど……えぇ…?(ドン引き)。完全にヤベェ奴じゃねえか。僕でも五歳ぐらいがギリギリだぞ。

 

 うん? まったく性知識がない子には手を出せなかったけど、興味はあった? なるほど、まあ中身が僕ならやりたい放題やれるしな……つーか中身が僕じゃなきゃそもそも勃起する年齢じゃないだろ。じゃあまあ、和姦成立ってことでいい? よっしゃオーケー。

 

「んむ──んぶっ、ちゅ、はむ、んっ……美味しい」

 

 どんだけ美味そうに頬張るんだよ。しかし小指くらいのチンポがキャンディのように咥えられている光景は、視覚的にめっちゃ興奮するな。しかもやたら敏感なチンポになってるせいか、舌の感触がすごく感じられる。

 

 なによりティナちゃんの淫らな顔だ。さっきあんなこと言ってた癖に、ものすごい興奮度合いが伝わってくる。まああれだ、男は幼女に悪戯できるし、小さい体の至るところで射精はできる。けど女が男児に悪戯しても、たぶん勃起しないだろからな。四歳の勃起チンポをしゃぶれるなんて、ショタコンにとってはまさに垂涎の状況だろう。

 

「じゅるっ、んっ……きもひいい?」

「うん、すごく気持ちいいよ……おねえちゃん」

「…! はぶっ、んっ、じゅぶっ……んんっ…!」

 

 うおっ! ちょ、吸い着きがえぐい…! めっちゃくちゃいやらしい顔した忍者娘が、自分の指で激しく雌穴を弄りながら、僕のチンポをぐちゅぐちゅとしゃぶり続ける…! なんてエロいシチュエーションだ。最高すぎる。

 

 都合三発ほど彼女の口に射精し、忍者の口淫の上手さを思い知らされた。幼い頃から“仕込まれた”のかという想像が、さらに興奮を高める。そのままベッドに寝転がったティナちゃんは、蕩けたような笑みでベッドの真ん中に座り込む。言うなれば体育座りだろうか、ふくらはぎの隙間から見える雌穴を指で広げ、おいでおいでと小さい陰茎を誘う。

 

 小枝のような肉棒ではガバガバに感じるかと思いきや、とろとろになった蜜穴はキュンキュンと刺激的に締め付けてくる。ああもう、くそ、きっとこっちも小さい頃から『チンポを悦ばせるように』仕込まれたんだろうなぁ! ガキのチンポまで愉しませるなんて、とんだ肉穴じゃないか。ええ? これまで何本任務で咥えこんできたんだよ。この淫乱忍者め──おらっ!

 

「は、あ、んっ、いっ──はふっ、いいっ、あっ」

「こんなちっちゃなチンポで感じるなんて……ほんと君って卑しいね。この“雌豚”」

「──っ! あ゛っ! いっ……あぐっ、んっ──!! は、あっ…」

 

 なんとなく解ったけど、たぶん『汚い自分』に『純真な子供』が腰を振ることで……下卑た興奮を覚えるんだろうね。自分への卑下もあり、そして『子供を犯した』、堕とした、汚い自分が汚しきったという事実が、たぶん綯い交ぜになった感情を倒錯させるんだろう。そこにはまあ、暗い育ち特有の悲哀と陰を感じる。

 

「はぁ、はぁ、は──ありがと。よかった」

「うん、僕もすごくよかった。いままでで一番……綺麗な体だったよ、ティナちゃん」

「…! …そう」

 

 なんだか申し訳なさそうに、けれど嬉しそうに、ぎゅっと抱きしめてくるティナちゃん。ふよふよとした胸の感触を感じつつ、しばらくは『おねショタ』にハマりそうな気がする僕であった。ちゃんちゃん。



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5話

えらい長くなってしまったので、エロだけ読みたい人は二つ目の■から読み始めてください。


 リ・エスティーゼ王国が誇る二組のアダマンタイト冒険者──その内の一つ『蒼の薔薇』。女性のみで構成されるチームであるが故に、同性愛者である一人を除いては色恋沙汰でもつれることはない。その同性愛者にしても、チーム内のメンバーに本気で迫るようなことはない。

 

 だからこそ、肉体関係やその類のことで不和が広がることなど有り得ない筈なのだが──先日、双子の忍者であるティアとティナが痴情のもつれを起こしたと聞いて、リーダーである『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』は耳を疑った。

 

 ショタコン忍者とレズ忍者。どう考えても一人の人間を取り合うような事態には成りえないのだから、いったい何が起こったのかと問いただすのは、まとめ役としても当然の帰結だった。拠点にしている宿屋に全員が集まり、机を挟んで相対する蒼い薔薇達。

 

 童貞食いの筋肉漢女『ガガーラン』、二百年ものの処女吸血姫『イビルアイ』、発達した文化に依らない純正の中二病『ラキュース』。彼女達三人の前には、非常に肌をツヤツヤとさせ、いかにも『充実しています』といった風の双子姉妹が並んでいた。

 

「あなた達、喧嘩していたんじゃ…?」

「喧嘩じゃない」

「機会の分配に関して物申すことがあっただけ」

「模擬戦で決めただけなのに、イビルアイが大事にした」

「ぬっ…! いや、しかしお前たち相当本気だっただろう! あれは完全な殺し合いだったぞ…」

「エイが作った『制限ぴーぶいぴー』空間だったから問題無し」

「結果的に、姉に勝てる妹などいないことが解った。重畳」

「あれは紙一重。次は私が勝つ」

「ちょっとなに言ってっかわかんねえな…」

 

 双子の言葉に疑問符を浮かべるばかりの三人。そもそも最大の疑問である『相手の性別』にすらまだ言及しきれていないのだ。肌ツヤ、雰囲気などを鑑みれば、彼女達の性生活が充実していることが窺える……しかしいったい男を取り合っているのか、女を取り合っているのかすら不明だ。

 

 とはいえ、それもすぐに解決するだろう。ラキュースが取り計らったこの時間帯は、その人物が来るであろう時間と被っているのだ。もう間もなく、宿屋の入り口を開いて二人に会いに来るだろう。ラキュースがチラとそこに目をやれば、どんぴしゃりで扉が開かれる。

 

 ──そこに現れたのは、年端もいかぬ見た目四、五歳の男児だ。キョロキョロと周囲を見渡した後、ティナの姿を確認して笑顔で寄ってくる様は、そういう趣味でなくとも庇護欲を掻き立てていた。

 

「おまたせ、ティナおねえ──」

「うおりゃぁぁーー!!」

「おぐぅぅっ! な、何を……鬼リーダー…」

「あなたって娘は、あなたって娘は…! 小さい子が好きだからって限度があるでしょう! 何も知らない子にそんなことをするなんて、最低よ! それこそ、腐った貴族となにも変わらないじゃない…!」

「えぇ…? おいおい、大丈夫かよティナちゃん。なにも説明してなかったの? そりゃラキュースちゃんもキれるぜ。幼い子へ手を出すやつなんかに、ろくな奴はいないからな」

「おま……いう…」

「うむ、僕はまごうことなきロクでなしだ。自覚してるからいいのさ」

 

 腹部を強打されたティナに駆け寄り、回復魔法をかける少年──エイ。そんな彼の口調にも、そして発動した魔法の位階にも驚愕を見せるラキュース。世界単位で見ても、上位に位置する神官戦士である彼女には、エイが使用した魔法が己にすら扱えぬほど高位であると理解できたのだ。

 

「エイ……説明して……ごふっ。私はもうダメみたい」

「いや、もう回復してるだろ絶対……まあいいか。こんにちは、蒼の薔薇の皆さん。僕の名前は『ウン=エイ』。この前ティナお姉ちゃんに襲われて、それからずっと酷いことをされて……うっ、うっ…」

「やっぱりかぁぁ!!」

「ごっふぅぅ! う、裏切りもの…」

「というのは冗談で、ほんとの姿はこっちね」

「──なっ!?」

「うおっ! マジかよ。マジックアイテムの効果か? だとしたら相当イイもんだな、オイ」

 

 再度腹部に痛打を食らったティナに寄り添い、またも回復魔法を行使するエイ。その後、からからと笑いながら元の年齢へと姿を戻した。その様子を見ていた三人は驚愕を露わにし、思わず席を立つ。

 

「そ、そう……本当は大人だったのね。よかったぁ…」

「全然よくない。殴られ損」

「あっ……その、ごめんね? ほら、やっぱり普段が普段だし…」

「謝罪と賠償を要求する」

「鬼ボスには体で払ってもらう。それでチャラ」

「あなたには何もしてないでしょう! ティア!」

「ティナの痛みは私の痛み……ティナへの賠償は私への賠償」

「いい話だなぁ、うん。その時はぜひ僕も混ぜてくれよ、ティアちゃん」

「了解」

「了解しないで!」

 

 気の置けない仲間たち──そんな仲睦まじいチームを見て、少しだけ羨ましそうにするエイ。彼は集団に帰属することがあまり好きではなく、奔放に生きることを是としていた。けれど絆や繋がりといったものに尊さを感じていることも、また確かだ。

 

「しっかしよぉ、ティナがお前さんのガキ姿に欲情すんのはまだ解るぜ? ティアはどういうこったよ」

「ん? ああ、それはこっちの姿でね」

「…ぬおっ!?」

 

 首を捻るガガーランへの答えとして、エイはその姿を絶世の美少女へと変化させた。彼は自身の外装を多数に渡って用意していたが、その中でも数点はその道のプロへ依頼して制作したものだ。もちろん自費故に貯金は目減りしたものの、どのみち時期がくれば無用の長物だ。惜しむ筈もない。

 

「そ、それもマジックアイテムか…?」

「いや、これは……これは……そういえばなんて言えばいいんだろ。外装は一アカ一アバター最高三つまでだから……運営特権って感じ?」

「駄目だ、何言ってるかわかんねえ」

「まあタレント的なものと思っとけばいいよ。不思議なことがあればタレントって言っときゃ済むのがこの世界の良いところだよね」

「それって褒め言葉なの…? ところで本当の性別はどっちなのかしら」

「そりゃあもちろん男さ」

「つってもよ、ティアってタチだろ? ってことはお前さん、ホモの気もあんじゃねえのか…?」

「ねえよ!」

 

 女だらけのチームではあるが、違和感なく溶け込むエイ。しかし今まであまり会話に入っていなかったイビルアイが、エイが発した言葉に違和感を覚え、指摘を入れる。

 

「この“世界”だと…? それに不思議な能力に、高位のマジックアイテム……お前、まさか“ぷれいやー”か?」

「うん? それは……イエスとも言えるし、ノーとも言えるね。それ以上が聞きたいならベッドの上でね。キーノちゃん」

「…っ!? お前、なぜその名を知って…!」

「タレント」

「絶対違うだろうが!」

「いやまあ、そこまで詳しく知ってるわけじゃないよ。二百年くらい生きてるとか、国堕としだとか、十三英雄の仲間だとか……そのくらい? あ、あと可愛い」

「──っ! 貴様、本当に何者だ…! “ぷれいやー”だとしても、そこまで知り得る筈が…!」

「タレント」

「全部それで済まそうとしてるだろお前!」

 

 ガーっと気炎を上げるイビルアイを『どう、どう』と押さえ込み、椅子へ座らせるエイ。他のメンバーを見渡せば、好奇心や警戒心などが幾つも混じった視線が向けられていた。イビルアイがアンデッドだというのは──それどころか伝説の吸血鬼『国堕とし』だというのは、蒼の薔薇のトップシークレットだ。それを知る人間を警戒するのは当然だろう。

 

 しかし同時に、エイがイビルアイを警戒していないことも確かな事実だ。人間は無条件でアンデッドを嫌うものなのだから、そうでないというだけで多少の安堵が混じるのは必然ともいえる。加えて、エイとイビルアイの間だけで通じている様々な単語が、警戒よりも好奇を誘う最大の理由なのだろう。

 

「エイさん、だったかしら? “ぷれいやー”というのはいったい…?」

「タレント……ってやつかな」

「いい性格してやがんな、マジで」

「オーケーオーケー、そろそろ真面目に話そうか。プレイヤーってのはそう、要は異世界からの来訪者のことだね。確認してる限りだと──六百年前の六大神を皮切りに、百年毎にこの世界へ訪れる異邦人を指す言葉さ」

「…! 本当、なの?」

「そりゃあイビルアイちゃんに聞けば早いでしょ。十三英雄だってプレイヤーを多数含んでるんだし。彼等がどこまで話したかは、僕も知らないけどね」

「む……私が知っているのは、異なる世界から偶に訪れる強者が居ること……そしてそれがぷれいやーと呼ばれているということだけだ。六大神がぷれいやーだったとは初耳だが、推測としては充分にあり得るだろうな」

「ふーん……まあ、そっか。たぶんだけど、十三英雄って新アカ作って最終日だけインした引退勢と、最後の乱痴気騒ぎでデスペナくらいまくった奴らっぽいんだよな……イビルアイちゃんからすればそうは思えないだろうけど、プレイヤーとしては相当レベルの低い集まりだった筈だぜ」

「なに? そんなわけがあるか。今の私ですら勝てるかどうか解らない奴らの集まりだったんだぞ」

「んー……別世界は……そう、『ユグドラシル』って言うんだけど、そこにいる存在は君ら基準で言う『難度三百』が基本なのよ。まずそこが最低線。だから六大神みたいな()()()でも、こっちに来ちゃえば神様扱いされるのさ」

「い、一般人って…」

 

 どこからか取り出した紅茶で唇を湿らせ、滔々と語るエイ。彼は嘘を必要とせず、真実を語ることに躊躇いはない。なにせ嘘をつくこと、真実を語らないことで得られるアドバンテージなど皆無なのだ。自身を害するものなど、あり得るとすればシステム外の強力な事象──真なる竜王が放つ“始原の魔法”くらいのものだろう。それすらも、精々が可能性というだけの話だ。限りなくゼロに近い確率である。

 

「逆にユグドラシルの頂点を誇った存在が『八欲王』。流石ワールドチャンピオンの集まりだけあって、この世界でも猛威を振るったみたいだね。なんだか悪として語られてるけど、人間種から見たらむしろ六大神より救世主してるんじゃない? 竜が蔓延する時代を終わらせて、人間にも扱える魔法──位階魔法という“法則”をワールドアイテムで生み出した。最後は自滅したところまで含めて、彼等に感謝すべきだよね」

「…三度目だ。()()()()()()()()()()()()? それが真実だったとして、なぜお前がそこまで知っている。お前はいつ──この世界に来たんだ?」

「僕? 僕は『運営』。プレイヤーを管理する存在だよ。この世界へ来たのはつい最近さ。なぜ諸々の事情を知っているかっていうなら、この世界でのプレイヤーの行動は全部ログに残ってるからね」

「ちょっと話が大きすぎてついていけないわね……つまりあなたは、とてつもなく凄い存在ってことでいいのかしら」

「ちょっと違うかな。僕の持ってる力がとてつもないってだけで、僕そのものはただの一般人だし。君らの王様と一緒さ。とても()()()一般庶民には絶対の存在だけど──無能だろ? 努力で得た役柄じゃないってのもミソだね」

 

 シニカルな笑みで肩をすくめるエイ。虚を突かれたように目を丸くするラキュース達をケラケラと笑う。『偉大さ』とは持っている力に宿るのではなく、歩んだ道と結果、そして精神性に宿るものだと彼は言う。だから自分は『一般人』なのだ、と。

 

「プレイヤーってのは、凄いけど凄くないのさ。僕だって凄いけど、凄くない。持ってる力が強すぎて、この世界の人には眩しすぎて、中身が見えにくいってだけだよ」

「…大丈夫、私達にはちゃんと見えてる」

「…うん」

「ティアちゃん? それにティナちゃんも…」

「神様は『おねえちゃん、おっぱいしゅきー』とか絶対言わない」

「神様がメスイキとかするわけない」

「あああぁぁぁぁ! 君らに合わせただけなんですけど! メスイキなんてしてないんですけど!」

 

 赤裸々な体験談をつまびらかに語る双子の忍者に、美少女姿のまま叫び声を上げるエイ。そんな様子を見て、ラキュース達は顔を見合わせてクスクスと笑った。なるほど、確かにただの一般人だ──そんな風に思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アインズ・ウール・ゴウン』という男は、非常に慎重である。しかし臆病者かといえばそんなことはなく、やるべき時は誰もが驚くような決断力を見せる。運営の存在を警戒しつつも、しかし最優先はシャルティアの奪還である──そう考えるような男だ。

 

 大切な仲間達が残した唯一無二のNPC。たとえ何をおいても救わねばならぬと、死の支配者は覚悟を決めた。そうと決まれば彼の行動は早かった。他の配下達の制止も振り切り、単身シャルティアの元へと向かい、死闘の果てに打倒せしめたのだ。

 

 そして拠点にてシャルティアを復活させ、ひとまずナザリックには全員が揃った──もちろんアインズ以外の至高の四十一人を除いて、だが。

 

 ならば次は何をすべきか? アインズは考え抜いた。運営の存在は既に疑いもなく、噂の限りでは間違いなく善性の人間種である。ならばナザリックという存在に不快感を示す可能性は高く、管理者権限の程度によってはそのまま消滅させられる恐れすらある。

 

 ──つまり、ナザリックは変わらねばならない。善性であるというならば、そこにつけ込めばよいのだ。言うなれば『ボク悪いスライムじゃないよ』作戦。いくらカルマ値が極悪でも、実際に悪いことをしていない存在を消滅させることはないだろうと、アインズはそう考えたのだ。

 

 否。むしろ積極的に善を成していくことで、ナザリックは良い組織であると対外的に訴えていこうという試みだ。故にその考えを実現するため、最初に声をかけたのはカルマ値が善、極善である『セバス・チャン』と『ユリ・アルファ』の二人である。

 

「セバス、ユリ。お前たちに聞きたいことがある」

「はっ。なんなりとお聞きください」

「叡智の結晶たるアインズ様のご質問……ご期待にそえるよう、全力を尽くします」

「う、うむ……実はお前たちの性質についてなんだがな。ナザリックは知っての通り悪を標榜しているわけだが、お前たちはそれに納得しているのか? 私が非道そのものの命令を下した時、どう考え、どう行動に表れるかが知りたい。たとえばユリ、お前に幼子を拷問するよう命じれば……どうする?」

 

 びくり、とユリの肩が震える。しかしそれも一瞬のことであり、唇を固く引き結んだ後、彼女は主の望むであろう答えを返す。

 

「アインズ様のご命令であれば、是非もございません」

「…セバスはどうだ?」

「同様にございます。至高の御方のお言葉は、全てに優先されます」

「ふむ……ならばその時の心情はどうだ。カルマ値が善に傾いている以上、何も感じないということはないだろう」

「──申し訳ございません、アインズ様。おそらくボク──私であれば、助命の嘆願を致します。立場を弁えぬと理解はしていても……お許しください。ですが、厳命を下されたのならば、必ずや成し遂げましょう」

「…そうか。セバスも、やはり良い気分にはならないか?」

「…はっ。申し訳御座いません」

「いや、そう創られたのだ。謝る必要など一切ない」

 

 アインズは顎に手をあて、ふぅむと考える。カルマ値が善に傾いている者が、悪を成す際に感じる思い。カルマ値が悪に傾いている者が、善を成す際に感じる思い。これは同じなのだろうか、と。

 

「現状、ナザリックが悪として居続けることは非常に危険だ。私自身は善悪どちらを成そうがそこまで気にはならないんだが……問題はカルマ値が低い者達がどう思うか、だ。シャルティアやアルベド、デミウルゴス……ナーベラルなどは、善行をどの程度苦痛に感じるのか。それが知りたい。何物にも代えがたい苦痛か? それとも不愉快に感じる程度なのか?」

 

 ナザリックやNPC達のためを思っての『ナザリック大改革』ではあるが、善行そのものが身を引き裂くような苦痛であったり、死よりも辛いものであった場合、本末転倒だ。故にアインズは、逆パターンを現在進行系で体験している彼等に問うたのだ。『本質が善の者が、悪の組織に身を置くのは辛いか?』と。

 

「本音が聞きたい。私を慮ったり、気を使った物言いはやめてくれ」

「…悪事を目の当たりにすれば、心苦しくはございます」

「しかし、栄光あるナザリックの任務を果たすことには代えがたい充実感を覚えます」

「心情に複雑さはあれど、我らは任務の完遂をもって絶対の忠誠を捧げます」

「それだけは──それだけはアインズ様におかれましても、自身にとっても、疑いようのない真実でございます」

「…そうか。お前たちの忠誠を嬉しく思う。しかしストレスがかかるのはよろしくないな……逆に、その心苦しさを軽減するような手段はあるか? それが言いにくいことでも、心当たりがあるのなら全て言葉にしてほしい」

 

 アインズの言葉に、ちらりと視線を交わすセバスとユリ。それは『心当たり』の存在を如実に表しており、しかし言葉にするには憚られるという心情がありありと見て取れた。

 

「…あるのだな? ならば言え。これは命令と心得よ」

「…はっ。アインズ様、恐れながら申し上げます」

「うむ」

「たとえどのような苦痛を感じようとも──その後に御方からお褒めの言葉を頂きますれば、幸福に塗りつぶされるかと」

「アルベド様やシャルティア様を例に出すのならば……あの方々が人間種などに頭を下げたりするような状況に陥れば、屈辱に身を震わすのは確かでございましょう。しかしその後にアインズ様にお褒めいただけると知っていれば、むしろ進んで屈辱へと向かうかと」

(なにそれこわい)

 

 御方から誉を求める浅ましさをお許し下さい、と頭を垂れる二人。そんな彼等に対し、アインズはドン引きであった。洗脳教育が完全に染み渡ったブラック企業の如き服従っぷりだ。褒めるだけで問題ないってなんだよ、と焦燥と強制的な鎮静を繰り返す。

 

「そ、そうか。ならば我らナザリックはこれより、世のため人のために活動する組織であることを、行動によって示していこうと思う。全配下に大々的に通達せねばならん。セバス……階層守護者を此処に集めよ」

「はっ!」

 

 『姉妹たちには申し訳ないが』『守護者達には申し訳ないが』と思いつつも、アインズの言葉に喜ぶセバスとユリ。他人への思いやりある行動が全てナザリックのためになるというならば、彼等にとってはこれ以上ないほど素晴らしい変革だ。加えて、直々に褒められる機会が増えるともなれば、さらなる忠誠を誓えるというものだろう。

 

 喜び勇んで部屋を後にする彼等の後ろ姿を見て、アインズは憂鬱そうにため息を吐く。『愛が重い』というのはこういうことなのか──そんなことを思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、なぜわざわざ蒼の薔薇に色々と説明したのか──それはもちろんセックスのためだ。自身が超越者だと知られれば、選択肢の幅が狭まるじゃないかって? いやいや、そりゃあノーセンスな奴が言うことだ。

 

 僕は運営だぜ? イベンターでもあり、シナリオライターでもある。ユグドラシル内のイベントやらシナリオやらの発案、進行を引き受けていた実績もある。その上で言えることは、セックスにおいて一番の大敵は『マンネリ』だ。

 

 毎度毎度弱みにつけ込んだり、手っ取り早い方法でしたってすぐに飽きちゃうだろ? イベントには深みや仕込みが必要不可欠だ。僕を『神様のような存在』だと知ってしまった彼女達だからこそ取れる手段もある。特にラキュースちゃんなんかは、僕にとって理想の“プレイヤー”だ。

 

 提供する側にとって、相手が中二病であるというのは一切マイナス要素にならない。中二病を馬鹿にする風潮こそが、人生を素直に楽しめない要素になるんだ。そもそも僕がアインズ・ウール・ゴウンに配慮するのは、中二病を患っているあのギルマスが好きだからだ。最後までユグドラシルを愛し、狂気に近い執着の対象にさえなる──運営冥利に尽きるってもんだろう。

 

 というわけで、ラキュースちゃんにはレイドボス討伐シナリオ『災厄の魔樹と運命の申し子』の主人公になってもらう予定だ。愛と勇気とセックスが王国を救う、彼女にピッタリなストーリーと言えるだろう。ほんとこの国って、利用できるイベントに事欠かないよね。

 

 ちなみにイビルアイちゃんにはラブコメディシナリオ『失われた記憶と偽りの恋慕』のヒロインになっていただく予定である。どちらにしても腕が鳴る、僕自身のセンスも問われるイベントと言えるだろう。とりあえず今日のところは、ラキュースちゃんへの仕込みをしてお暇する予定だ。

 

 和やかに会話が終わり、ラキュースちゃんとお別れの挨拶をする直前……指をパチンと鳴らし、時間を停止させる。この世界では、対策をしていない人間が時間停止の効果を受けた場合、かけた側が何もしなければ魔法が発動したことすら気付かない。

 

 反してユグドラシルでは時間停止対策をしていないプレイヤーであっても、停止中は動けないだけで意識はある。本当に時間が止まるわけはないのだから、それは当然のことだろう。この違いこそが重要なポイントであり、第一シナリオの肝は彼女に『中途半端な時間耐性』を付与することだ。

 

 こちらの世界にきて様々な検証を行ったが、時間停止に関しては中々興味深い結果となった。耐性を最低限にすると、体は動かないものの、意識は覚醒したままの状態となる──要はユグドラシルと似たような結果となるのだ。

 

 それを利用し、止まった時間の中でラキュースちゃんだけを覚醒させておく。しかし僕はそのことに気付いていない……振りをする。そして『この世界の管理者』と会話をする……振りをする。なんやねん世界の管理者って。

 

「──やぁ。どうしたんだい、急に連絡してきて。うん……ああ、偶然だけど、会ったよ。『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』……確かに『彼』の血を引いているね。覚醒の可能性は充分にある」

 

 めっちゃ視線感じる。いったい何が起きているのか──という彼女の雰囲気を感じつつ、話を続ける。

 

「おいおい、僕は何もするつもりはないよ。この世界の管理者は君さ。彼女達にも言ったけど、僕はあくまでも異邦人……傍観者に過ぎない。たとえもうすぐ王国が滅びるとしても、手は貸さない──というより、貸したら君、怒るだろう?」

 

 ピクリピクリと、僕が出す単語に反応している様子が窺える。特に『王国が滅びる』という言葉に反応しているようだ。あと『覚醒の可能性』とかいう意味不明の言葉にもめっちゃ気をやってる。ごめんね、そんなのほんとはないんだ。ラキュースちゃんごめんして。

 

「ルールは守るさ。安心してよ……うん? “契約”はルールの範囲外になるだろうって? まあ確かに僕が彼女と契約すれば覚醒を促すことになるけど──心配しなくても、彼女には無理さ。『無垢なる白雪』なんてつけてるんだ、君にも解ってるんじゃないのかい? ま、僕にできることは精々危険を呼びかけるくらいさ」

 

 ピクリピクリっていうか、ビクンビクンしてる。まあ意味深なこと言いまくってるから、中二心が刺激されてるんだろう。ごめんね、僕も半分くらいは何言ってるか解んないよ。ライブ感って大事だよね。

 

「ああ、災厄の魔樹の復活は近い。それが王国へ向かうとしても……それで滅んだとしても、腐敗のツケでしかない──そう言いたいんだろ? はいはい……うん、じゃあね」

 

 通話を切る。振りだけど。というか、ほんとになんか変な電波が飛んできそうなやり取りだ。『なにやってんだろ私』感が半端ない。とはいえ、最後までやり通さねば。再度パチンと指を弾き、時間停止を解除する。別れを告げるところだったから、その続きだ。

 

「じゃあね、みんな。ティナちゃん達はまた明日」

「ん」

「明日は十二歳ショタ茶髪セミロングのかっこでヨロ」

「清々しいほど欲望に忠実だなお前達……まったく、男にうつつを抜かす暇があるなら修行でもしろというに。色恋など強者には不要だ」

「──待って!」

 

 真剣な瞳で僕を呼び止めるラキュースちゃん。とりあえず一つ目のフラグはゲット、と。なんだい? 何か質問があるなら二人きりで聞こうじゃないか。じゃないとティナちゃんとティアちゃんにすぐバレるし。

 

 ──さあて、イベント一日目の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あー、頭を使った後は何も考えずセックスがしたい。『ラキュース・アインドラは勇者である』計画は順調だし、あっちで頭を使った分、別の場所では下半身を使おう。さて、この王都で手っ取り早く性欲解消をしたいならどうすべきか? そう、娼館だ。

 

 違法娼館に行って存分に下卑た欲望を叩きつける──というのは趣味じゃないので、娼館を叩き潰しつつ可哀想な娼婦達を救って、感謝のセックスと洒落込もう。事務的なセックスを避けるためのコツとは、可哀想な状況の人間を救うことから始まるのだ。うん、なんかすごいクズ思考だな。

 

「というわけで襲いにきましたー」

「っ! 来やがったぞ! …な──っ!? てめ……ガッ!」

「はいはいさっさと投降してねー……って『来やがった』ってなに?」

「こ、ここは八本指と関係のある娼館だぞ! てめえ自分が何やってるかわかってんのか!? どんだけの数を敵にまわ──あがっ!」

「はいはい八本指八本指。掛けましては六十四指」

 

 んー? なんかやたら武装してる人間が多いな。ある程度の護衛は常駐してるだろうけど、流石に戦力過多じゃなかろうか。というか襲撃されること知ってたみたいな反応がちょっと気になる。支配して聞いてみるか。いちいち拷問しなくて済むし、魔法ってほんと便利だよね。

 

「なんでこんなに数が多いんだい? 毎日こうってわけじゃないよな。護衛費用だって馬鹿にならないだろうし。それに襲撃があることを知ってた理由も教えてくれる?」

「最近……娼館への襲撃が相次いでいる……護衛の数が強化されて……警備部門である六腕の全員も雇われたらしい…」

「…へえ?」

 

 はて、時期的にはクライム君の活躍もまだな筈だけど……っていうか蒼の薔薇のみんなも何も言ってなかったし。まあ僕が好き勝手やっている以上、当然変化はあるだろうけど。でも襲撃が『相次いで』いるのは不自然だ。あの怪物王女様が発案するなら、一晩で全てが終わるように画策するだろう。散発的に行動して警戒を強めるなんて、悪手以外のなにものでもない。雲隠れされて、場所を変えてまたやられるのがオチだ。

 

「下手人に見当は付いているのかい?」

「解らない……だが……最初に襲撃があった日の前夜に……娼婦が一人連れ去られている。銀級の冒険者のチーム……尋問のため……六腕の内二人が向かっている…」

「ふぅん…? なんだそりゃ」

 

 そもそも戦力的に八本指を襲撃し続けられるような個人、あるいは組織って相当限られてるよな…? まさかアインズ・ウール・ゴウンってことはないと思うけど……つーか銀級冒険者って誰だよ。ワケワカメなことばっかりだ。さっさと可哀想な人達を助けてしっぽりセックスの予定だったのに。

 

 つーかよくよく聞いてみると今は経営してないらしい。ここは罠として待ち受けるための場所だって。ああ、どうりで大して調べもしてないのにここに辿り着けたわけだ。そっちから積極的に情報を流してたわけね。

 

 うーん……ん? 感知スキルに反応があるな。どれどれ……おや、シャルティアちゃんとソリュシャンちゃん? ああ、八肢刀の暗殺蟲も二人隠れてるな。なにごとだ? 確かにそろそろ王都での活動時期ではあった筈だけど……ツアレちゃんイベントでも早まったのだろうか。にしても面子があの二人ってのは理解の範疇にない。

 

 八肢刀の暗殺蟲がいるってことは正式に命じられた任務である可能性が高いし、既に僕の知る展開とは別物と考えた方がいいな。その上で先程のお雑魚さん達の発言を加味するなら、彼等こそが最近頻発しているという襲撃犯の正体に間違いないだろう。なんだなんだ、先に八本指を掌握しようって計画なのか? いや、それにしては少し杜撰すぎる。

 

 やろうと思えばすぐに掌握できるんだから、他に目的がある筈だ。数度にもわけて襲撃を行う意味……うーん……じわじわと追い詰めて恐怖を煽るため? いや、死よりも恐ろしい拷問の手段なんぞナザリックにはいくらでもある。わざわざここまで迂遠にする意味はないだろう。

 

 ──なら考えられるのは『見せしめ』か、あるいは『示威』『誇示』あたりだろうか。行動そのものに意味がないのなら、見せつけること自体に意味がある筈だ。それなら行動を数回にわける意味も出てくる。誰かに対して『お前もこうなりたくなかったら』のサイン……もしくは『我々はこういうことをしている』の主張。

 

 はてさて、どうしたものか。考えている内に扉が開かれた。何気にナザリック勢が僕を認識するのは初めてだろう。おお、めっちゃ驚いてる。まあ探知不可属性を僕自身に付与してるから、それも無理はない。八肢刀の暗殺蟲もそうだし、ソリュシャンちゃんもレンジャー技能は高かった筈だから、それを掻い潜っている時点で警戒に値するのだろう。ま、とりあえず適当に話しかけてみるか。

 

「あ、エ・ランテルのワガママお嬢ちゃまだ。なんでこんなとこにいるんだい? ずいぶん雰囲気が違って見えるけれど」

「…あちらでお会いしていましたか。恥ずかしい姿をお見せ致しましたわ……しかしあの時の私は世を忍ぶ仮の姿…! その正体は──」

「そうでありんす! 世のため人のため、悪を誅する正義のヒロインズ──」

「“イルミナティ・エナミティ”! 所属は『ナザリック』。ナザリック地下大墳墓ですわ」

「正義の墳墓、ナザリックでありんす!」

「……」

「……」

「……」

「そ、そう…」

 

 頭が沸騰しそうだよぉ……何が起きたらそうなるんだ? もしかしてギルマスじゃなくて、正義のワールドチャンピオンでも来てたのか? いやいや……ヘルヘイムの悪の華、異形種の筆頭、運営にもファンのいる偽悪の集団がなんの冗談だ。

 

 待てよ? もしかして僕が転移したのはオーバーロードの世界ではなく『ぷれぷれぷれあです』とか『不死者のOh!』の世界なのか? それならこの意味不明な事態もギャグ時空として納得できるけど。いやでもそれならみんなもっとぷにぷにろりろりしてていい筈だ。

 

 しっかし、なんにしても可愛いな……ダサいポーズと口上だけど、絶世の美女と美少女がやるとそれだけで様になるな。ん…? 『ダサいポーズと口上』ってことは──うん、間違いなくAOGのギルマスがきてるな。いまいち何が起きているかは解らんが、とりあえずおべっか使っとこう。NPC達ってご主人様アゲしとくと割とチョロいイメージ。

 

「──そのポーズと見得切り……そこはかとなく偉大さとセンスを感じるぜ。隠しきれない智慧が滲み出てる。どちらかが考えたのかい?」

「くふっ…! ぬしはわかっていんす。それにその隠密の上手さ……そいで僅かなヒントから御方の智謀を感じ取る慧眼…! 只者ではありんせん。何処の何方様でありんすかぇ?」

 

 『うんうん』って感じで頷くシャルティアちゃん可愛い。ちょっとこういう言い方はあれだが、やはり別格の容姿だ。福本作品に突如現れた矢吹ヒロインばりに違って見える。

 

 さて、とにかくだ。君たちがプリキュア風にくるってことは、僕も倣えばいいのかしらん。いいんだな? やるぞ? そっち系の空気ってことでいいんだな? よし、いこう。ついでに対『シャルティア・ブラッドフォールン』用の決戦外装を使うとするか。当たり前だけど、ナザリックに対する準備は万端だ。

 

「ふっ。バレたのならば仕方ない。僕は……いや! ──私は!」

 

 『魔の法則と少女達』アップデートで実装された変身ステッキの力を見よ! …まあ外装のチェンジは管理者権限でやってるだけだけど。くるっとステップ、ターン&ターン、くるりくるりとチェンジスピナー。

 

「ある時は娼館を襲撃する男! またある時は殺戮の堕天使! しかしてその正体は──」

 

 何言ってんだろ僕。とはいえ、これもセックスするためには意外と有効なのだ。もちろん女の子に変わることが、じゃなくて『馬鹿になること』が、だ。童貞はよくチャラい男のノリを馬鹿にするけど、あれはあれで真理だ。セックスへ移行するためには、男と女の双方がある程度馬鹿にならなければ成立しない。大学生の『うぇーい』は意外と馬鹿にできないもんだぜ。

 

「──街を裏から守る正義の吸血鬼! マジカル☆イウェン!」

 

 彼女達のダサいポーズを踏襲しつつ、胸を強調する姿勢を崩さない。今の僕の姿は、金髪ロングのちょいロリ美少女巨乳吸血鬼だ。屍体愛好家(ネクロフィリア)で巨乳好きで同性愛者でもあるシャルティアちゃんに対しては、中々の効果を見せるんじゃなかろうか。

 

「…くひっ…!」

 

 …うわー、現実に舌なめずりする人って初めて見たわ。まあ僕が取った姿もさることながら、衣装も衣装だからな。ワカメちゃんばりのミニスカな上、黒い乳バンドから零れそうな乳房は、動く度にぽよんぽよんと揺れ動くのだ。正直分身して自分を犯したいくらいだ。レベル高すぎだって? うん、僕もそう思う。

 

「あいあい、各々疑問はあれど、人ならざる者が集いし今夜……異形には異形に相応しき理が御座(おわ)します。此度の出会いは豈図(あにはか)らんや、されどただ求むは獣の道理なれど、それは我らの運命(さだめ)と定め──格の違いを引き比べましょう?」

 

 『偶然出会った僕達は互いに目的を知りたいだろうけど、人間じゃないのだからまず必要なことがあるでしょう……どちらが上かを決める、獣染みた格の付けあいが』という感じに訳せるセリフだ。ああ、心が中二の頃に戻った気分である。でも雰囲気って大事だからね。僕もやりたかないんだけど仕方ないんだ(棒)

 

「あぁら、ずいぶんと自信がありんすのね」

「うん。言葉の通り、自分を信じているからね」

「──くきっ」

 

 シャルティアちゃんが完全武装に変身した。歪んだ口元や不遜な態度とは裏腹に、まったく油断していない様子が窺える。誰も僕を感知できなかった事実に加え、おそらくは傾城傾国で操られたイベントは普通に起きたんだろう。世界には格下ばかりでないという認識がきっちりあるように思える。

 

 ──しかし今はお馬鹿なノリでいくと言った筈だぞ。エロゲ脳で『戦い』といえばセックス勝負だろうが常識的に考えて。臨戦態勢に移行した彼女達を前にして、僕も乳バンドを華麗に脱ぎ去って準備を整える。

 

「おほっ……んんっ! 戦うというのになんのつもりでありんすか? それとも……くひっ、ベッドの上での勝負でありんしたかしらぁ?」

「え? そのつもりだけど…」

「…え?」

「娼婦はもう居ないみたいだけど、元々そういう施設だし……地下には正義──じゃなかった、性技を競うのに向いてるグッズもいっぱいあるぜ。最初にイった方が負けの……『床勝負』を致しましょう?」

 

 右腕を下乳に添えて、美巨乳をこれでもかと主張させる。瞳にはエロさとだらしなさを込める……これは演技の必要もなく素だ。そんな僕の姿を見て、シャルティアちゃんは一瞬だけ目を丸くした後──欲望に爛れた瞳で、ニタリと口元を歪めた。

 

 まあ配下の『吸血鬼の花嫁』とネチョプレイしたり、アルシェちゃんのアナル調教したり、巨乳アンデッドであるユリちゃんを密かに狙っていたりと、元から変態の彼女である。こんな好機を逃すわけもないだろう。

 

「そう、そう、そう…! そういうことなら仕方ないでありんすねぇ。ソリュシャン? これは情報を得るために必要な戦いだと思いんす。すぐに終わらせんしょう。ぬしは上で見張ってなんし」

「…程々にしておかれますよう」

 

 トイレでレイプ中のヤンキーが、舎弟に『入り口見張っとけよ!』って言ってるみたいな雰囲気を感じるな。ソリュシャンちゃんにも言ってるんだろうし、さり気なく視線を八肢刀の暗殺蟲に向けてるあたり、彼等にも伝えてるんだろう。

 

「では……行きんしょうか」

「オーケー」

 

 どちらも負けることなど考えていない表情をしながら、並んで地下へ降りていく。うわぁ、拡張器具やら三角木馬やらスケベイスやら鞭にロウソク、媚薬にギャグボールとなんでもござれの、性戦にもってこいのステージだ。

 

 いくつかある部屋の内、一つを選んで入る。先手必勝、その無防備な後ろ姿をガバリと抱きしめ、ドレスの隙間から彼女の秘所へと手を伸ばす。パニエ必須の膨らんだスカートは、セックスするのに面倒な手順を増やす──通常であればそうだ。しかし彼女のそれは前から手を差し込めるようになっている多重構造で、金属のワイヤーは折りたたみ式のワンタッチ仕様。見た目と実用性がハイブリッドされた完璧な衣装だ。ペロロンチーノさん、こだわり過ぎで素晴らしいと思います。

 

「んっ……せっかちは嫌われるでありんすぇ」

「こんなに濡らしといて言うセリフじゃないよねぇ」

「はっ、ん…! あっ、はぁ…!」

 

 ぐちゅぐちゅと彼女の雌穴を掻き回すと、濃厚な雌の匂いが部屋に充満していく。肌触りの滑らかさ、入り口の締め付け、膣壁の感触……全てが一級を超えた、まさに理想の体だろう。まあ今の僕も負けてないとは思うけど──ってなに女として張り合ってんだ僕は。どうにも、精神というやつは体に引っ張られる傾向があるな。

 

「うひゃっ!?」

「んくっ、くふ…! 張りも形も感触も……極上でありんす」

「く、んんっ…!」

 

 く、勝負だもんな。そりゃあっちも攻めてくるさ。しかしこっちには明確なアドバンテージがあるんだ。僕は君をよく知っていて、君は僕のことを何も知らないだろう? 赤ちゃんのように僕の胸にしゃぶりついてくるシャルティアちゃん。そんな彼女の尻を撫で回しつつ、前の穴と後ろの穴を気ままに弄る。とめどなく溢れる蜜は、彼女の興奮具合を物語っているようだ。

 

「おやぁ…? 自信の割には、まだ処女なんだねぇ。男を知らない未熟な花で、僕に勝てるつもりかい?」

「くふ、その分女の扱いには自信がありんすの。ここは大事な御方のために取っているのよ」

「へぇ…!」

 

 蕩けたような笑みで処女を誇るシャルティアちゃん。頭に浮かべているのは主人か創造主か……ま、それが君の敗因だよ。NPC達の主人愛や創造主愛は異常なレベルで、彼女はそれが特に顕著だ。というより、その忠誠は性欲にも直結していると言うべきか。忠誠の儀でびしょびしょに濡らし、イく寸前だったという事実がそれを証明している。ならそれを利用すればいい。

 

「ふぅん……じゃあ()()を逞しいので貫かれる気持ちよさ、知らないんだぁ…!」

「…む…!」

 

 僕も知らんけどな。というか一生知りたくはない。

 

「じゃあちょっと想像してみなよ」

「そ、想像…?」

「そうだねぇ……今までで一番『良かった』のは“バードマン”だったかな?」

「──っ! バ、バードマン……でありんすかぇ?」

「そう。あの種族のアレって逞しくてねぇ……シャルティアちゃんの()()()()にバードマンがいるんなら、その人で想像してみなよ。彼のぶっとい剛直が、ここに入って……ガンガン突いてくるの。気持ちいいよぉ?」

「あ……あ…! ペ、ペロロンチーノさまの、太いの…!」

 

 うわっ、急に締まりが…! 指が痛いくらいだ。それに愛液もすごい勢いで溢れてくる。ぴっちりと閉じた割れ目の上、陰核を擦ると、先ほどとは比べ物にならない嬌声が上がる。ペロロンチーノ効果しゅごい。流石名前も微妙に卑猥なだけはある。ペロペロチンチーノ効果とでも名付けておくか。

 

「ほら……ガンガン突かれた後は、女として求めるものがあるよね? 言ってみなよ、ほら」

「あっ、あっ、ん゛っ…! ペロロンチーノ様…! 膣内に、膣内に出してくんなまし…! シャルティアは、わらわは孕みたくございます…! あぅっ! ふっ──」

「なら──イけよ、シャルティア。バードマンの肉棒を雌穴でいやらしく扱く妄想で……だらしない顔のままイッちゃいなよ」

「ああっ! ペロロンチーノしゃま、ペロ──んきゅぅっ! …は、あ…? ひゃふ、んぅ…」

 

 お尻だけ高く上げながら、脱力したようにベッドへうつ伏せになるシャルティアちゃん。バックから突いていいってことかな? そろそろ僕も我慢できないし、挿れさせてもらうか。勝者はなにをしても許される……それが真理だ。

 

「僕の勝ちだね」

「ひゃ、ひゃい……っ!? って、な、なんでありんすかそれは…? は、生えて…?」

「何って、オチンチンだよ。見りゃわかるだろ?」

「そ、そういう意味じゃ──だ、ダメでありんす! ()()は御方に捧げる、だ、大事な…!」

「解ってるって。だからこっちで……ね?」

「お、お尻の処女も、ぜんぶ捧げたいのでありんす…」

「ワガママ言っちゃダメだよ、シャルティアちゃん。それにさぁ…」

 

 まだ力の入らない様子の彼女の穴に、いやらしく肉棒を擦りつける。カリがクリトリスに引っかかる度、ぴくんと反応する様が淫靡だ。

 

「前の穴は、大事なもの。それはわかるよ。でも後ろの穴は? これはいったいなんのために付いてるのかな?」

「はぁっ、んっ、か、かきまわしゃないで……こ、ここは……排泄用の、あなでありんしゅ…!」

 

 がくがくと体を震わせながら、幼い体を捩らせるシャルティアちゃん。必死に答えてくれたのはいいけど、間違ってるぜー。

 

「おいおい、僕らアンデッドは飲食不要なんだから排泄用の穴ですらないだろ?」

「ふ、ふぇ…?」

「ここは──練習用の穴だよ。いざ愛しい人とセックスする時に失敗したら嫌だろ? だからそのために、チンポの悦ばせかたを学ぶ穴」

「あ……あ…」

「処女が大事と言うけれど、大事なのは心さ。どんな経験をしようが、心の膜さえ守っときゃ処女だって。ほんとほんと」

「あ……あ…! は、挿入ってく──んぅっ!」

 

 んじゃ和姦ってことで。僕も前の穴はモモンガさん用なイメージあるからさ、アナルで我慢しとくよ。にしても──こっちの具合も尋常じゃないな…! 奥に進む時は入り口が程よくしまって、抜く時は逃さないとばかりに絡みついてくる。

 

「は、あ、んっ、大き、い゛っ、ふ、ぅっ──」

「ペロロンチーノさんとやらは……もっと大きいだろうねぇ」

「──っ!」

 

 うひゃ、すごいうねった。ただでさえチンポ絞り特化の穴だったのに、極上なんて言葉じゃ言い表せないケツ穴に変化した。流石にこれは……保たないな。

 

「中に出すぞ! …主のチンポより先に、知らないチンポを受け入れただらしない穴で──受け止めろ!」

「ああっ、はう──も、もうひわけありまひぇん…! ペロロンチーノひゃまぁ! いぐっ──」

 

 …今までの人生で一番出たわ。中出ししてる最中、穴全体がごくごく飲み干すようにチンポを刺激してきた。最初から最後まで、信じられない気持ちよさだった。これがWeb版ではヒロインの座を我が物にしていた穴か…! できれば前の穴も体験してみたかったけど、残念だ。

 

 気絶した彼女を満足げに見ながら、ぎゅぽんとチンポを抜く。シャルティアちゃんのアナルからは噴水のように精液が溢れ出し、ベッドを汚す。いやあ、なんだか感慨深いものがあるね。

 

 ──ん? 人の気配……ソリュシャンちゃんか。ちょっと時間かけすぎたかな? 扉をノックされたので、どうぞの声をかける。蕩けたような顔で失神しているシャルティアちゃんと、まだ勃ったままの僕のチンポを見比べて驚きの表情を作っている。

 

「僕の勝ち、だね」

「…然様でございますか」

 

 …ん? どしたの近付いてきて……ソリュシャンちゃんも勝負するってのかい? おいおい、今更手コキごときでどうにかなる僕じゃないぜ──っ!?

 

「うわっ…!? ちょ、待っ…!」

「勝負に待ったはございません」

 

 手コキじゃなくて、なんだこれ……掌にチンポが飲み込まれて…? そういやソリュシャンちゃんってスライムだった──待て待て待て! なにこの感触、ちょ、洒落になってない…! やばい、すごく無様だ。彼女の腕を必死に掴んで、犬みたいに腰をカクカク振ってしまう。でも振らずにはいられない。ソリュシャンちゃんの蔑んだような視線と、歪んだ口元が被虐心を煽る…! やば、出るっ…!

 

「はぁっ、ふぅ──……っ!? ちょっ! いま出したからもう……うわっ!?」

 

 もう無理だって! く、くそ…! ならこっちも攻めて……え? スライムだから性感帯とかないって? ちょ、待ってほんとに待って……し、搾り取られる…! うぁ、また勝手に勃起して…!

 

「これで一対一。引き分けということでよろしいでしょうか?」

「は……ひ…」

 

 世界で一番気持ち良いのは、具合を自由に調節できるスライムの体内……そんなことを思い知らされた。掌だけでイカされるって、屈辱極まりないなぁ。この恨み、いつか晴らしてやるぞソリュシャンちゃんめ。



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6話

今回のエロはペド全開ですので、幼すぎる娘のエロが苦手な方は、一人称に変わった時点で読むのをお止めください。

…まぁこのタイトルでそんな人は居ないと思いますが。


 玉座にて、支配者然とした態度で鷹揚に構えるアインズ。眼前には片膝を立て顔を伏す、一人の階層守護者と一人の戦闘メイド。彼女達をわざわざ呼びつけてまで任務の報告をさせたのは、案件がそれほどに重要だとアインズが考えたからだ。

 

 アインズ・ウール・ゴウンの方針転換──それに際して何が必要であるか。それは根本的な原因を考えれば自明の理だ。運営に対し、自らが正義であるという主張をすること。となれば、そう……必要なものは『悪』である。

 

 自らが正義足らんとするならば、必要なものは信念だけだ。しかし自らが正義であると“主張”したいのならば、必要なものは『打ち倒すべき悪』だろう。ただ人を救いたいというならばどこでもできる──しかしそれを広く知らしめたいという偽善には、誰もが認める悪の存在が必要不可欠だ。

 

 故にアインズは運営に接触する前に、実績を作る必要があった。浅く広く周辺国家の事情を探った彼は、正義の証明に必要な対象を幾つかに絞る。

 

 リ・エスティーゼ王国に巣食う悪の組織“八本指”の壊滅。ローブル聖王国へ少なくない被害を与えている“亜人”の殲滅。法国が積極的に虐げている“エルフ奴隷”の解放。

 

 大衆に被害をもたらす悪を討つならば、ただ単に人を救いたいというならば、もう少しやりようはあった。しかし彼の目的はあくまでも『運営に対する正義の主張』であり、それ故に重要なポイントは『現代人が眉をひそめる状況』を解決することにある。

 

 ──麻薬を量産し、娼婦という名の奴隷を使い捨てる悪の組織。善性の人間であれば、間違いなく不快に思うだろう。

 

 ──人間種を襲う亜人。これは生存戦争とも言えるため、自然の掟だと考える人間もいるだろう。しかし竜王国を救うために十数万ものビーストマンを屠った運営であれば、正義であると考える可能性が高い。

 

 ──そしてエルフ奴隷の解放。これほどわかりやすい正義もないだろう。たとえ内情が国家間の戦争による報復の応酬によるものだったとしても、現代人にとって『奴隷』とはそれだけで悪だ。たとえアーコロジー住みの富裕層であっても、国民の九十九%以上は企業の奴隷のようなものなのだから、その言葉に対する憤懣もひとしおだろう。

 

 そんな事情もあり、配下を使い善行の押し売りを画策し始めたアインズ。もちろん人間世界の事情を鑑みれば、押しつけて売り飛ばすような善行であっても、喉から手が出るほどに欲しいものだろう。アインズ・ウール・ゴウンの目的が対象からの『感謝』とその流布である限り、双方に利がある取引だ。

 

 問題があるとすれば力の差が大きすぎることだろう。隔絶した力を持つナザリックにとって、八本指の壊滅など片手間かそれ以下の労力で事足りる。迅速に事が成された場合、正義が執行されたことすら気付いてもらえない可能性があった。

 

 だからこそ数度にわけて襲撃を行ったのだ。守護者や戦闘メイドを幾つかのパーティにわけ、じわじわと八本指を追い詰める。そこにわざわざシャルティアを加えたのは、先日の失態を拭う機会を与えるためだ。アインズと敵対するという、配下であれば自害をもってすら許されない大罪──そう考える憐れなNPCに対する慈悲。

 

 しかしアインズは考えもしなかった。シャルティアという最強の守護者が、このような簡単な任務でさらなる失態を重ねるという結果など。

 

「つまり、結果から言えば逃げられてしまったのだな?」

「──はい。申し訳ございません、アインズ様。二度に渡る続けざまの失態……階層守護者としても、配下としても許されません。先日の失態の折、自死は許さぬという慈悲深き御言葉を頂戴致しました……しかし度重なるこの醜態。どうか厳罰をお命じください…!」

「やめよ。やめよシャルティア。八肢刀の暗殺蟲とソリュシャンが認識も出来ずに終わった相手だ。間違いなく隠密特化型のカンストプレイヤー……おそらくはニグレドであっても厳しいだろう。高位アイテムのブーストがあってようやくと言ったところだ。たとえこの私がその場に居たとしても、逃走を阻めたとは思えん」

「ですが──!」

「私ですらが成し得なかったであろうことを悔やむか、シャルティア。それは少しばかり不遜が過ぎるのではないか?」

「そんな、そのような…! …至高の御方のお慈悲に、感謝を」

「慈悲もなにもないだろう。純然たる事実を述べたのみだ……これを失態と考えるのは、私の能力すらも侮辱することと知れ」

 

 このくらい言えば大丈夫かと、出もしない額の汗を拭うアインズ。感動に打ち震えているシャルティアとソリュシャンの姿を見て、心の中で深い溜め息を吐く。自虐系メンヘラの彼女を持った男の苦労とはこのような感じなのだろうかと、数秒の間、現実から目を背けた。

 

 しかし新たなるプレイヤーの存在が明るみに出てしまったのだ。現実逃避もそこそこに、シャルティア達に詳細を尋ねる。

 

「名は判明しているんだったな、ソリュシャン」

「はい。あくまで本人が名乗った名ではありますが『マジカル☆イウェン』と」

「『マジカル☆イウェン』か…(行動といい名前といい、そこはかとなくるし☆ふぁーさんと同じ匂いが……いや、あそこまで酷い人間がそうそういてたまるか)」

「先程聞いた容姿の他に、なにか特徴のようなものはあったか? もしくは手がかりになるものでもいい」

「…はっ。その…」

「…? どうした、ソリュシャン。何か言いにくいことでもあったのか?」

「いえ。こちらを、その──戦利品として渡されました」

「──っ! それはヘロヘロさんの……人形か?」

 

 ソリュシャンがおずおずと差し出したのは、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人『ヘロヘロ』を象った人形だ。しかしそのクオリティは見るからに高く、アインズが手ずから作成したアヴァターラよりも遥かに精巧である。

 

 そしてそれと同時、ソリュシャンの歯切れの悪さにもアインズは納得する。彼女はヘロヘロによって創造されたNPCであり、製作者に対する忠誠や愛情はただならぬものがある。これほどに見事な人形であれば、誰もが手元に置いておきたいと考えるだろう──そう、彼女であればなおさらに。アインズへと差し出せば、手がかりの物証として接収される可能性が高い。配下としてそれは当然だと考えてはいても、惜しむ気持ちを隠しきれていないのだ。

 

「なぜ彼女がヘロヘロ様の人形を持っていたのかは、不明でございます」

「ふむ…」

 

 珍しく動揺を表に出すソリュシャンを宥め、アインズは思考に時間を割く。ヘロヘロの人形の存在──実のところ、それ自体はおかしくない。オンラインゲームであれば……特にそれが大規模なものであればあるほど、特定のプレイヤーに対するファンというものは自然に発生するものだ。

 

 アインズ・ウール・ゴウン程に悪名を轟かせたギルドは、ユグドラシルでも数少ない。アンチの多さであれば五指に入るだろう。その分コアなファンも多く、中には信者と言える者もいたほどだ。嫌われ者とは、ある意味で人気者といえる。

 

 実際問題、アインズ・ウール・ゴウンが四十一人という少数精鋭であったのは、とある時期にギルド加入希望が殺到したためだ。スパイなどの懸念もあり、ぷにっと萌えが参加を打ち切った経緯もある。

 

 それを考えれば、ファンの間で自作の『AOGギルメンモデリングデータ』を売買、譲渡、共有していた可能性も充分にある。疑問があるとすれば『ソリュシャン』に『ヘロヘロ』の人形を渡した部分だろう。かつての大侵攻でさえ、戦闘メイドが守護する階層に辿り着いたものはいない。両者の関係性を知るものなど、ギルドメンバー以外には存在しないのだ。

 

 もちろんアインズ・ウール・ゴウンのファンだと言うのならば、既知の情報もあるだろう。ナザリックにはメイド好きが三人いる。その内の一人は普通のメイド好きだが、残りの二人は真性だ。メイドキチガイであるヘロヘロと、メイド服キチガイであるホワイトブリム。

 

 これは少し調べれば知れる情報である。そこから推測し、メイド服を着たソリュシャンの製作者が彼等だと考えるのは、可能性としてはあり得る。何しろ『ナザリック』と名乗ったのは彼女達なのだから。しかしピンポイントでソリュシャンにヘロヘロの人形を渡すのは、やはり違和感がある──アインズはそう考えた。

 

「まあ、そうだな……しかし警戒しすぎるほどでもないか…? そいつは異形種だったのだろう? それでいてヘロヘロさんの人形を持っていたのならば、我々のファンである可能性が高い。そしてファンといえど──いや、ファンだからこそ逃げたと考えれば納得もできる。ユグドラシルという枠組みであればともかく、この状況で接触したい組織ではないだろうからな」

「…? それは、どのような…」

「いや、こちらの話だ。ヘロヘロさんの人形は鑑定後、問題がなければお前が持っていろソリュシャン」

「…! よ、よろしいのでしょうか?」

 

 プレアデスにおいて最も沈着冷静なソリュシャンであったが、アインズの言葉には思わず破顔した。子供のように無邪気に顔をほころばせ、差し出していた人形を宝物のように抱き締めた。

 

「戦利品なのだろう? ならばそれはお前のものだ……というか聞き忘れていたが、どういう意味の戦利品だ? まさか実際に戦ったわけではないだろう」

「はい。性技を競う戦いでございました」

「正義を? …ああ、そういえば『正義の吸血鬼』と口上を述べていたんだったか。それにシャルティアは敗北し、ソリュシャンが勝ったと。ふぅむ……どのような戦いか想像できんが…」

「アインズ様! このシャルティア、次こそは必ずや御方に勝利を捧げます! 尻尾は付けさせるものであり、付けるものではない……その考えを恥じ、今は常に括約筋を鍛えております。挿入って五秒で即射精を目指し──」

「なに言ってんの?」

「ご安心ください。前の処女と心の膜はアインズ様に!」

「だからなに言ってんの?」

「戦利品として奪われた下着は、御身に誓って取り返します!」

(なんでパンツ奪還を宣誓されてるんだろう…)

 

 パンツを奪い合う戦いってなに? と頭を抱えるアインズ。更に悩みの要因が増えたことに肩を落とした。不幸中の幸いは頭髪がないことだろうかと、抱えた頭の頂点を擦る。もし生えていたままであれば、きっと徐々に薄くなっていくだろう──そんな訳のわからない思考をしながら、やる気に燃えているシャルティアを呆れと共に見つめるアインズであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『災厄の魔樹と運命の申し子』 Chapter:7 “覚悟”

 

 

 

 

 

 

 

 ──無限に続く白い空間。果てなき純白の地にて、轟々と燃え盛る炎の魔神が崩れ落ちていく。消えゆく瞬間にひときわ強く輝き、白い空間に在る二人の陰を濃く描いた。火傷、切り傷、打ち身……全身に隈なく怪我を負った女性は息を荒げながら、禍々しい剣を杖にして立ち続ける。

 

「──ハァッ、ハ……っ……やった…! 勝ったわよ……エイ!」

「……」

「これで…! いいんでしょう…? 覚悟の証…!」

「……」

「…エイ?」

「──信じられない」

 

 女性──『ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ』は、そんな言葉を呟いた青年に笑いかける。怪我の一切を感じさせない、生命力に溢れた美しい笑顔だ。呆然と言葉を紡ぐ青年は『ウン=エイ』。この空間と炎の魔神という存在を生み出した、神の如き力を持つ存在だ。

 

「そう? 私は信じていたわ。たとえどんな敵を用意されたって、きっと倒せるって」

「有り得ない。君のレベルで倒せるような敵じゃなかった」

「──それでもよ。理屈じゃないわ。倒れる度に、倒れる度に、誰かが私の腕を引き上げてくれた。私の中の誰かが背中を押してくれた。きっとそれは……私の中に眠る『彼』の血の成せる業。最古の管理者『ネフィリム』の…!」

「…っ! っく、ふぅっ…! ぷっ──おほんっ! そうか、彼の力が……目覚めかけているのか…!」

 

 何かを我慢するように、腕に爪を突き立てるエイ。まるでそうしなければ何かを抑えきれないという仕草に、ラキュースは心配そうな視線を向ける。『最古の管理者』と『滅びた世界の管理者』……その関係性は彼女には預かり知らぬものであったが、俯きながら体を震わせるエイから、並々ならぬ激情を感じ取ったのだろう。

 

「やめてくれよ。僕の心配をする前に、自分のことを考えるべきだろう? そんなボロボロの体になってまで──何が君をそうさせるんだい?」

「わからない……でも彼が囁くのよ。この感情こそが『真の勇者』である私の力だって。それが折れさえしなければ、どんな強敵にだって負けないって…!」

「──っ!」

 

 腕に立てた爪は皮膚を破り、血を滲ませる。いったい何を我慢しているのか、エイの体の震えは次第に大きくなっていく。そんな様子を見て、ラキュースはふわりとエイを抱きしめる。血や煤で汚れた体でも、きっと彼は気にしない……そんな確信を持ちながら。

 

「…ラキュースちゃん?」

「あなたの迷いは、私にはわからない。でも──私、こんな短い付き合いなのに……あなたのことを仲間だって思ってしまったの。もしかすると、この『血』がそう思わせるのかもしれない……大事な人だったんでしょう?」

「…っ」

「都合の良いことを言ってるのはわかってる。けど……お願い、私と契約して。“ルール”を破れとまでは言わないから──お願い!」

「……」

 

 抱擁から十数秒。体の震えが収まったエイは、答えの代わりとでも言うように抱き返しながら、ラキュースを完治させた。温かな光を感じ取りながら、彼女は頬を朱に染める。貴族の嗜みとして社交界のダンスで踊ったこともあった……男性をすぐ近くに感じたこともある。しかし今のそれは、彼女にとってまったく違うものであった。

 

「…ラキュースちゃん」

「…うん」

「僕と契約して、真の勇者になってほしいんだ」

「──ええ!」

 

 何もない白い空間。反響する壁も何もないそんな場所で、それでも響き渡ったラキュースの声。心の内から響く『もう一人の自分』からの称賛を受け止め、彼女はいま真の勇者となった。

 

 ──しかしまだ足りない。真の勇者とは一人で戦うものではない。全てを一人で背負わんとする彼女に、仲間が思いの丈を打ち明けるのは明日か明後日か──

 

 

 

 

 

 

 次回『災厄の魔樹と運命の申し子』 Chapter:8 “絆”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腹筋が死ぬ。この世界で初めて入ったダメージが、まさか自傷とはね。腕に爪痕とか、姉にリモコン争いで付けられた時以来だよ。確かに設定を伝えたのは僕だが、だからって『彼』の力感じすぎだろ。誰だよ『彼』って。いったいラキュースちゃんのどの辺に潜んでるんだ『彼』は。オマンコの中とか?

 

 まあいい、とにかく計画は順調だ。そして真面目に考えた後はひたすら下半身だけで行動すべきだと、僕の息子も言っている。この前はアルシェちゃんのせいで最後まで出来なかった、ウレイちゃんとクーデちゃんのところにでも行こうかな。今の所いちばんペドい彼女達は、貴重な癒やし枠だ。

 

 というわけでやってきました新フルト家。前と比べるとだいぶ質素だけど、それでも家族五人で不自由はしない程度だろう。莫大なお金を手にしたことは、アルシェちゃんも伏せているらしい。使用人へ退職金を支払い、すっからかんになったていで過ごしているようだ。

 

 今は帝国の魔法省で研究しているらしく、どちらにしても父親よりは高給取りだ。けれど父親も日雇いで頑張ってるらしいし、微笑ましい家族と言うべきだろう。

 

 …ん? 流石にこんな状況で手を出したらクズすぎるかな……うーん……よし、じゃあほんのちょっとでも嫌がられたらすぐ止めるってことでいこう。流石に本番は無理だろうけど、幼女とのペッティングはそれだけで興奮するし。

 

 こんにちはー。おじゃましまーす。おや、双子ちゃんとお母上だけでござんすか。あ、これお土産ですどうぞ。うーん、嬉しそうに抱きついてくる幼女可愛い。やたらと好かれているけど、幼いなりに僕が恩人ということを見抜いているらしい。

 

 子供というのは環境の変化に敏感だ。貴族位を剥奪されイラつく父親や、それによって憔悴する姉の様子は幼いながらも気付いただろう。そしてそれを全て解決したのが僕というのも、姉の反応を鏡にして気付いたのかもしれない。

 

「エイさん? 少しお買い物に行こうと思うのだけど、この娘達を見ていていただけるかしら」

「…騙されないようにしてくださいよ?」

「もう、心配性ね。そういうところ、アルシェと似てるわぁ」

「いくら安いからって果物を箱買いしちゃダメですよ? あと変な人に付いていかないように」

「大丈夫よぉ~」

 

 家事を覚えようとしているのは良い事だが、いかんせん生まれてからつい最近まで、フォークより重いものを持ったことがないような女性だ。買い物などの経験もあるわけがなく、財布を空っぽにして帰還することもよくある。

 

 そんだけぽやぽやしてても襲われたりしないのは、鮮血帝ことジルクニフさんのおかげだろうか。王国ならたぶん、庶民落ちした貴族が市井に混じったらすぐ行方不明になるだろうし。一応魔法で監視しておくか。いってらっしゃーい……よっしゃイタズラチャンスだ。二人ともおいでー。

 

「クーデちゃん、ウレイちゃん、イイもの見よっか」

「いいものってなにー?」

「なにー? エイにいさまー」

 

 寝室に移動し、ベッドの上にあぐらをかく。その上に二人して乗ってくる幼女。既に勃起しているため、二人の視線がそこへ向かう。

 

「またペロペロするの?」

「でもねえさまがやっちゃダメっていってた」

「そっかそっかー。じゃあちょっと……くくっ、動画再生っと」

 

 プロジェクターで空中に画面を浮かべる。見たこともない光景に興味津々の双子ちゃん達。黒い画面から一転、そこに映し出されていたのは僕とアルシェちゃんの──情事の光景である。自分のお尻の穴を弄りながら、一心不乱に僕のチンポをしゃぶるアルシェちゃん。おやおや、これは妹達に禁止していた筈では?

 

「おねえさま、ダメっていってたのにペロペロしてる…」

「そうだよねぇ。お姉ちゃんだけずるいよね。だからクーデちゃんとウレイちゃんもこっそりしちゃおっか?」

「おねえさま、すごくうれしそう…」

 

 コウノトリを信じている純粋な少女に、ポルノ動画を見せつけるような下卑た興奮……って誰が言ってたんだっけ。とにかくそれ以上に無知な幼女にポルノを見せつける──それも大好きな姉の艶姿を。食い入るように画面を見つめている彼女達は、それだけで射精案件である。

 

「この前の続き、しよっか」

「はーい」

「ん、ちゅ……えへへ、エイにいさまとちゅうしちゃった」

「ウレイずるい!」

 

 ウレイちゃんがずるいとのことなので、クーデちゃんにはディープキスをしてさしあげよう。性的な感覚が発達していない彼女達なら、たぶんこっちの方が気持ちいい筈だ。小さい舌をくちゅくちゅと無遠慮に絡め取ると、蕩けたように体を押し付けてくるクーデちゃん。

 

 セックスも粘膜の擦り合い、ディープキスも粘膜の擦り合い。後者は痛みが一切ない分、感触だけがダイレクトに味わえる。指でクーデちゃんの陰核を擦りながら、左手で小さなお尻を撫で回す。口では疑似セックスを激しく味わう──最高だ。

 

 右手左手と顔は塞がっているため、ウレイちゃんには何もできないが……チンポは空いている。僕の股ぐらに顔を突っ込みながら、視界の端でアルシェちゃんのフェラ動画を見て真似をしている。チロチロと感じる小さい舌の感触が気持ちいい。

 

 物理的な刺激としては弱いが、興奮は最高潮だ。十代半ばの姉の交尾動画を見ながら、一桁の幼女が一生懸命しゃぶってるんだぜ? これで射精できなきゃ嘘だろう。クーデちゃんを弄っていた右手をウレイちゃんの頭にそっと添え、苦しければ自力で吐き出せる程度に力を込める。

 

「ウレイちゃん、白いの出すからね…!」

「あむ……んぶっ、けほっ、こほっ……うー、おねえさまみたいにのめなかった…」

「お姉ちゃんは何度もペロペロしてるからね。ウレイちゃんもいっぱい練習して、お姉ちゃんをびっくりさせてあげよっか」

「うん! まだペロペロする?」

「今度はクーデちゃんにしてもらおっかな。ウレイちゃんはお口でちゅうしよっか」

「はーい……んむっ、ちゅ…」

 

 流石姉妹、両方ともアルシェちゃんのように飲み込みが良い。ウレイちゃんに至っては姉の真似をして、お尻を弄っている。僕もそれの介助をして、親指で陰核を擦りながら中指で尻穴をくちゅくちゅと弄る。入り口に少しだけ指先を挿入すると、体がびくんと跳ねて穴がぎゅうと締まる。

 

「ここにオチンチンいれるの?」

「んー……流石にまだ入らないからね。もう少し大きくなったら挿入れてみようか」

「うん…」

「…ちょっと試してみる?」

「うん!」

 

 好奇心旺盛だなー。まあ幼女はオマンコよりアナルだってどっかのペド漫画家も言ってたし、意外といけるかもしれん。なにせこの世界の人間って、ホモ・サピエンスが絶滅した後に出てきた新人類だし。人によってはオークの巨大チンポで腹ボコされても大丈夫なんだから、根本的に違うんだろう。まあオークの人間姦って、人間で言う獣姦みたいなものだから滅多にないらしいけど。

 

「あう……んっ、ぅ」

「んー、こりゃちょっと無理かな。そんな顔するなって。じゃあほら、二人で抱き合って……そうそう、足を広げてね」

 

 ロリペド漫画でお馴染み、幼女のオマンコサンド。たぶん統計を取ったら、なのはちゃんとフェイトちゃんのサンドイッチが多いような気がする。まあとにかく素晴らしい技だ。とはいえこれって女の子側だとあんまり気持ちよくないと思うんだよね。カリがクリトリスに上手く引っかかって気持ち良いなんてのは、ペガサスも驚きのファンタジーである。

 

 というわけで、ちょーーっとだけ感度の上がるお薬を垂らす。やっぱり疑似セックスとはいえ、どっちも気持ち良い方が健全だ。薬によって少しだけ上気し始めた双子の、密着している穴の間にチンポを挿入する。

 

 うはっ、幼女同士でキスしてる。愛液で泡立ち始めた結合部がパンパンと水音を立てる。奥まで押し込めば、幼女特有のぽっこりイカ腹がチンポを圧迫してくる。実際に挿入しているわけじゃないし、激しくしても問題はないだろう。

 

「んっ、んっ、んぅっ、くーひぇ、あ、んっ…!」

「あっ、ひぅ、うれい、いっ、あっ…!」

「…っ、出すよ、二人共…!」

 

 最後に思い切り腰を叩きつけて、疑似膣に中出しだ。疲れて仰向けになった二人のお腹を見れば、ゼリーのような精子がお腹を犯しているかのようにへばりついていた。イカ腹に手を伸ばし、その精液を幼い雌穴に塗りたくる。割れ目とも言えない一本の筋が、クピクピと精液を飲み干していく。その様子を見てまたも固くなっていく僕のチンポ。

 

 全力で遊んでいた子供が、急に電池の切れた人形の如く眠りこける光景は、幼児の母であればよく目にすると思う。今の双子ちゃん達はまさにそんな感じだ。おそらく何をしてもすやすやと眠り続けることだろう。

 

 少しだけ乱暴に、小枝のように細い足を掴んでこちらへ引っ張る。この年頃の女の子は、体のどこでも精液を搾り取れる。シャルティアちゃんのように舌なめずりをしながら、寝ている彼女達の雌穴にチンポをこすりつけた。

 

 お母上はまだ帰ってこないよな……あっ、なんか浮浪者に絡まれてる。くっ……仕方ない、あと二発出したら助けにいこう。ごめんねお母様。あなたの膣から出てきてまだ五年しか経ってない娘さんは、最高の味でございました。アルシェちゃんともども、最後まで幸せにするので許してくださいな。



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7話

賢者タイムだったからね。仕方ないね。

評価、感想等ありがとうございます。


 バハルス帝国首都『アーウィンタール』。鮮血帝が振るう辣腕のもと、豊かな暮らしを謳歌する国民で賑わう街だ。とはいえ、数代前までは王国と同じく腐敗が横行する醜悪な都市でもあった。先代、先々代の皇帝が時間をかけて浄化を図り、今代の皇帝たる『ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス』が凄惨な粛清のもと、腐敗した貴族を一掃したが故に隆盛を誇っていると言えるだろう。

 

 しかし都市の隅々までその威光が届くには、更に数代を要するだろう。皇帝が座すこの街であっても、暗い影はそこかしこに在る。邪教の集団や禁止されている奴隷の売買など、王国に比べれば少数ではあるが、犯罪行為というものはどうしてもなくならない。

 

 場所によっては浮浪者や犯罪者が彷徨いている危険な所もある。アルシェの母が迷子になった挙げ句そんな場所へ辿り着いたのは、偶然でもあり必然でもあった。なにせ移動となれば馬車が基本だったような女性だ。一般庶民が使用する街道を徒歩で歩く経験など皆無に等しい。

 

 アルシェの母は、貴族の女性というにはあまりにも天然である。そもそも貴族として没落した後も、その意味をあまり理解していなかったような人間だ。腹に一物を抱えた狸や魑魅魍魎が跋扈する貴族界隈において、フルト家に『嫁がさせられる』という時点で、彼女の凡庸ぶりも自ずと知れている。『金に困る』という概念すら、つい先日までは持ち合わせていなかったような女性だ。

 

 家計が火の車であるというのに、アルシェに高価なブローチを買い与えるような行いがその証明だろう。彼女なりの気遣いや優しさではあるものの、場合によっては無知も罪だ。今回の騒動もそれが引き起こしたと言えるかもしれない。

 

 浮浪者然とした身なりで、腹を空かせていそうな女性。そんな()()()()()を目撃したアルシェの母は、同情から財布を取り出して中身を浮浪者に恵んだ。それが本当に浮浪者であれば、あるいは泣いて喜ばれたのかもしれない。しかしその女性は施しを受けたと理解した瞬間、激昂した。『この私を憐れんだのか』と。

 

 怒りの度合いの割に暴力に訴えない不思議さはあれど、アルシェの母には人を宥めすかすスキルなど欠片もない。それどころか何に対して怒っているのかも理解しておらず、一方的な諍いは収まることがなかった。

 

 ──そんな場面に、すやすやと眠る姉妹を抱いた男が一人現れた。

 

「やあ、お困りですか? 危ない人に関わっちゃいけないってあれほど言ったじゃないですか」

「あら、エイさん。今どこからいらっしゃったの?」

「タレントです」

「へぇ~。すごいのねぇ」

「納得するのか……まぁいいや。それよりそこの君、何を怒って──ん? あれ、クレマンティーヌ?」

「…っ! お前っ…!」

「なんでそんなみすぼらしいカッコ…? 漆黒聖典からズーラーノーン、次は浮浪者とか斬新だぜ」

「誰が浮浪者だ!」

「今の君が浮浪者じゃなかったら、この街に浮浪者はいないってことになるな」

「うぐ…」

 

 薄汚れたマントを纏う彼女に、いったい何があったのかと事情を聞こうとする男──エイ。しかし彼女へと話しかける直前、何者かに遠隔で監視されている事実に気付く。とはいえ自身が探知不可である以上、その対象はクレマンティーヌで間違いないだろうとも考えた。

 

「ふーん…? …あ、お母上様。お買い物はもう済みましたか? 済んでますね。じゃあお送りしますのでちょいと目を瞑ってどうぞ。クーデちゃんとウレイちゃんは()()()ちゃんなんで、そのまま寝かせといてください」

「あらあら、遊びつかれちゃったのね。ありがとうね、エイさん」

「いえいえ、僕も楽しかったので」

 

 少し離れたところでアルシェの母と姉妹を転移させ、クレマンティーヌのもとへ戻るエイ。そのまま話しかけると思いきや、彼女の手を取り不思議な行動を取り始める。肩を抱いてくるくると回らせ、右手を取り上へあげる。左手も同様にし、最後は両手を取ってぶんぶんと上下させた。

 

 頭に疑問符を浮かべつつ、されるがままのクレマンティーヌ。しかし片足を持ち上げられ、Y字バランスの体勢を作らされたところでいい加減頭にきたのか、エイの手を振り払った。

 

「うざい! …さっきからなんなの?」

「ん……いや、相変わらずクレマンティーヌは可愛いなって。ところでなんでそんなカッコしてるんだい? ズーラーノーンの潜伏任務かなんかかな」

「う……いや、その…」

「…?」

 

 エイの問いに、彼女は口を噤んだ。なにせプレイヤーの存在を伝えられ、騒動を起こさないよう釘を刺されすらしたというのに、結局は醜態を晒す羽目に陥ったのだ。最悪の危機は脱したものの、おそらく監視されているであろうことは彼女も気付いている。

 

 クレマンティーヌの視点からすれば、冒険者モモンとナーベは『正義』である。犯罪者たる己を()()()から追ってきたプレイヤーだ。監視されているとなれば、下手な悪行は身を滅ぼす。しかし堂々と表に出てしまえば法国の追手に捕捉されかねない。現状ではズーラーノーンと関わる訳にもいかず、彼女には稼ぐ手段がなかった。故に浮浪者を装った──というより、浮浪者そのものになったと言うべきか。

 

「…お腹減ってるのかい?」

「っ…!」

「複雑な事情がありそうだねぇ……ところで『前の話』はまだ無くなってないぜ。何かお願いごとがあるなら聞くけど」

「…なんで私なの? そもそも()()に意味ってあるのかよ。『うんえい』なんでしょ? 指先一つでなんでも出来るような存在じゃないの? したいならすればいいじゃん……勝手にさ」

「ふぅん…? 前は信じもしてなかったってのに、随分な変わりようじゃないか。となると……なるほど、プレイヤーとはもう関わった訳だ。その上でシャルティアちゃんとソリュシャンちゃんのあの行動……そんで君がこの状況ってことは──」

「…?」

「………あぁ、オーケーオーケー。だいたい理解したよ。つまりAOGのギルマスは『運営』を認識してるわけだ。八本指の()()は“主張”か……この監視は法国の方だと思ってたけど、ナザリックの方ってわけね」

「…? 一人だけで納得されても困るんですけどー?」

「いやいや、簡単な話だよクレマトソン君」

「誰だよ」

「まず君が『運営』という存在をきちんと認識するには、それを知る誰かと接触する必要があるわけだ」

「…ふん」

 

 どこからかシャッポを取り出し、とんびを着込みながらパイプを咥えて煙をくゆらせるエイ。さながらシャーロック・ホームズといった風体だが、異世界の人間に通じるかは甚だ疑問である。というより、クレマンティーヌが彼に向ける奇異の視線を考えれば、通じていないと断言できるだろう。

 

「この世界の人で僕の役割を正しく認識しているのは、現状だと蒼の薔薇にドラウくらいだね。どちらも君と接点はない……とすれば、エ・ランテルに居たプレイヤーと接触したことが窺える」

「…それで?」

「君が彼等と接触したという推測を前提にすれば、やっぱり騒動は起こそうとしたんじゃないかい? となれば彼等が容赦するとは思えないから、一度は戦闘行為に入った可能性が高いね。けれど君は今ここにいる。しかし監視はされている……この時点で監視元は『プレイヤー』か『法国』のどちらかが濃厚だ。けど騒動を起こしたなら、叡者の額冠は君の手元に無い筈だよね。いくら元漆黒聖典とはいえ、至宝を手放した君に、わざわざ巫女姫の儀式まで使って法国が監視を継続させる意味はない」

「……」

「そもそも遠隔で監視を続けることが出来る存在は限られてる。状況から考えれば、それはナザリック──つまりプレイヤーだろうさ。エ・ランテルを死の街に変えようとした君を逃し、けれど監視下に置く意味は? 可能性としては、手の内に入れて何かをさせようとしている……もしくは『やむを得ず』のどちらかだ。でも前者だとすれば、プレイヤーのバックアップを受けているとは思えない見窄らしさ。つまりプレイヤー側としても、君の解放は予定外であった可能性が高い」

「…そうだねー。ってなにさり気なく尻さわってんだ! 殺すぞ」

「まあまあ。ところでお風呂はちゃんと入ってる? その……あー……ちょっと野性的な香りがね、うん。僕は嫌いじゃないけど」

「…ぅぐっ!」

 

 息を吸うようにクレマンティーヌのケツを触ったエイであったが、クレマンティーヌからふわりと漂ってきた匂いに眉をひそめる。先程まで甘いミルクのような幼女の匂いを味わっていただけに、その落差が気になったのだろう。ファンタジーな異世界というだけあって、人類圏の衛生観念は現代と大して変わらない。だというのに、今の彼女はあまり清潔と言えない状態であった。

 

「まあまあ、それは置いとこうか。それで、どこまで話したか……ああそうだ。プレイヤー側がなぜ君を解放したかってとこだ。しかるに、クレマンティーヌ。窮地に陥った君は僕を──『運営』をダシに使ったんじゃないのかい? 駄目で元々、動揺すれば儲けもの……そんな心算だったけど、彼等の困惑は想像以上だった。張子の虎もいいとこだけど、その威を上手く借りた君は晴れて逃げおおせることができた……が、監視までは振り切れなかったと。どう? 当たってる?」

「…まあね。ほんとはどっかで覗いてたんじゃないの?」

「まさか。僕は覗く暇があれば触りにいくよ。もちろんチラリズムは否定しないし、隠すことによって逆にエロくなる現象も肯定してるけど」

「馬鹿じゃないの?」

「男にエロを足すと理性が豆腐になるのさ」

 

 呆れたようなクレマンティーヌの視線を飄々と受け流し、服装を元に戻すエイ。期待していた尊敬の目は得られなかったものの、少しばかり疑問に思っていたナザリックの行動にも説明がついたようで、満足げに頷いた。

 

「…で? どうするんだい。プレイヤーにどう語ったかは知らないけど、君が真実を話したとは思えないぜ。ここで一つ、嘘を本当にしておくのも手だと思うんだよね」

「その代わり一発ヤらせろって?」

「別に代価なしでもいいけど、そうなるとさっきと同じになるじゃないか。()()()と施しがとても()()()なんじゃないのかい? …いや、憐れまれるのが嫌いっていうべきか」

「…はっ。なに解ったような口を聞いてんだか。それとも全知全能であらせられる“うんえい様”にはすべてお見通しなのかしらー?」

「君のことは多少知ってるけど、それは僕の能力とは関係ないかな。客観的な情報でしか知らないし、それだって法国を出てからのことくらいさ。人の内面なんて文字に起こせるほど簡単なものじゃないし、君のことは今までの会話で理解できた部分だけ──それ以上でも以下でもない。僕は君を君としてしか見てないつもりだけど」

「いきなりヤらせろとか言ってきた事実と矛盾してるんですけどー?」

「それは見た目が百パーセントだし」

「えぇ…」

 

 クレマンティーヌの見た目と言えば、誰がどう見ても痴女である。既に『冒険者プレートの胸当て』などという悪趣味な装備はしていないが、そうでなくとも足、ヘソ、肩と、肌の面積は多い。マントで隠しているとはいえ、目の良い者であれば中身はチラチラと見える程度だ。見目も良く、彼女が強者でなければレイプ被害の格好の的だろう。

 

「…ま、僕は人の意思をある程度までは尊重するタイプなんでね。蒼薔薇のラキュースちゃん、AOGのギルマス、それに君と……内面が好きなタイプには配慮もするし、尽くしもするさ。誰だって好きな人には好かれたいだろ?」

「…くっ、くひゃっ…! 私の内面が好きぃ? あっは、ははっ──酔狂極まりすぎでしょ。だいたいその『ぎるます』ってのは知らないけど、蒼の薔薇のラキュースっつったら……『良い子ちゃん』で有名じゃん。どこに共通点があるってのよ」

「正統派中二病に、メンヘラ系中二病に、狂気系中二病。僕ってその手の病気の人に弱いんだよ」

「ちゅう……なに?」

「特定の精神疾患を患った人のことさ。といっても命にかかわるものじゃないし、人生を楽しむにあたってはむしろ良いものだよ。自覚すると精神ダメージが入ることもあるけど」

「ふぅん…?」

 

 いまいち理解できないという風に首を傾げるクレマンティーヌ。無償の好意というものに胡散臭さを感じて鼻白むが、好意そのものは無償であっても、体を求められているという事実を思い出して納得する。

 

「というわけで、どうしても叶えたい願い事ができたら連絡してくれよ。これが連絡用のマジックアイテムで……こっちは『リング・オブ・サステナンス』。空腹と睡眠が不要になる指輪で、もう一つが『リング・オブ・クレンリネス』──常に清潔でいられるアイテムだよ」

「…一つ目はともかく、二つ目と三つ目は“施し”じゃん。言ってたことと違くない?」

「施しと贈り物は別ものだろ? 昔から惚れたもん負けって言うし、今回は君の勝ちってことで」

「…ふん。貰っとく」

「じゃあお礼にキスの一つでも…」

「死ね」

「じゃあハグの一つでも…」

「……」

 

 期待に満ちた目で見つめてくるエイに対し少しばかり逡巡し、ほんの一瞬だけ彼に体を預けた後、クレマンティーヌは人混みに紛れて去っていく。その背を見送ったエイは、柔らかな感触の余韻を味わいつつ、宙に視線を送る。

 

 最初にクレマンティーヌに取らせた奇怪な行動……そしてその後のやり取り。『エイ』という存在を目視以外で確認できない以上、監視相手には全て一人しか映っていない。つまり今までのやり取りは全てクレマンティーヌの一人芝居にも見える。

 

 ──『きっとキチガイ扱いされてるだろな』と含み笑いをしつつ、エイもその場を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──その日、アーウィンタールの皇城は揺れた。それは情報による動揺といった類のものではなく、物理的な振動だ。強大な魔法の行使による揺れ、そして地割れ。戦闘不能に陥った多数の兵士。それだけの規模にもかかわらず死人や重傷者が出なかった事実は、皇帝にとってけして喜ばしいものではなかった。

 

 明確に感じ取れる『手加減』は、実力の差を如実に物語っている。皇帝──『ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス』は、災害を引き起こした張本人である双子のダークエルフを前に、恐れをおくびにも出さず交渉に努めようとしていた。

 

 彼の優れた選定眼からすれば、双子のダークエルフの行動は正に子供の短慮そのものであった。問題はそれを成し遂げる実力を備えていることであり、下手な言動をして癇癪を起こされた時、帝国が滅びかねないという事実だ。

 

 『エルフの解放』。それを訴える双子の主張は、当然と言えば当然だろう。エルフとダークエルフ……多少の違いがあるとはいえ、基本的に種族を同じくする同胞が憂き目にあっているのだ。見た目通りの子供であれば、義憤に駆られて行動を起こすことは充分に考えられる。

 

 そう──となれば、ジルクニフが取る行動と言動は決まりきっている。子供の浅い考えがこの被害を引き起こしたというならば、利用するだけのことだ。

 

「なるほど……了解した。では私の権力における最大限をもって、迅速にエルフの奴隷制を廃止しよう」

「わ、わかって頂けて嬉しいです……兵士さん達のことは、すみませんでした」

「なに、数人が軽い怪我をした程度だ。威力に関しても素晴らしいものだが、その制御の緻密さには心底驚かされたよ。姉君も同じような実力をお持ちなのかな?」

「え、えっと……はい」

「ほう、敬服に値するな……さて、それはともかくだ。私の権力が届くのは帝国の領土のみ。エルフを虐げ、奴隷にしているのはあくまで法国なのだ。我々がそれを糾弾したところで、精々が『得意先を失った』程度にしか思われん」

「そうなの?」

「うむ。申し訳ないが……エルフの解放のために法国と事を構えるのは、皇帝として容認出来ん。先程言った通りのことが精一杯だ。それ以上を望むのならば、私の首を切って君達が帝国を動かすしかないな」

「そ、そこまでする気はありません」

 

 内心で目を細めながら、ジルクニフは目の前の二人の心情を推し量る。おどおどとした()の方は彼にとっても読み辛いものであったが──“お姉ちゃん”と呼ばれている姉の方は解りやすい。装ってはいるが、同胞の心配など欠片もしていない。

 

 真剣ではあるが、それは帝国騎士が任務に臨む時の雰囲気……すなわち『上位者からの命令』を確信させるものであった。それは同時に、さらなる厄介事の可能性を孕んでいた。心の中でため息を吐きながら、ジルクニフは護衛たる“四騎士”の一人『レイナース』の言葉を思い出す。

 

 ──どうにか出来る心当たりが御座います。

 

 その言葉を残し、何処かへ消えた『重爆』。正直ジルクニフにとって、彼女の言葉は半信半疑であった。既に呪いは解かれ、四騎士に在籍する必要性も薄まっていた状態だ。帝国そのものの危機に対し、逃走を選んでも不思議はない。

 

 そもそも国を滅ぼしかねない化物に対する心当たりなど、眉唾どころの話ではない。右手に付けた指輪にそっと触れながら退室するレイナース……その姿を脳裏に浮かべ、しかしそれを振り払うジルクニフ。僅かな希望よりは、自身がこれまで拠り所にしていた話術を頼るべきだと。

 

 ジルクニフは己に活を入れる。全身全霊、全力全開で法国に責任を擦り付けねばならない。潜在的な敵国の力が減衰し、王国と共に取り込めれば万々歳だ──と、不幸を嘆きながらも利益に腐心する彼は、やはり有能な皇帝であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある町外れの小屋で、自慰に耽る高貴な女性──聖王国の女王『カルカ・ベサーレス』。いやぁ、ロイヤルな御人がエロ本片手にクリを弄ってるのって、中々に興奮するな。なぜ彼女がこんなことになっているかと言えば、もちろん僕の仕業……いや、気遣いかな?

 

 王様ってとにかく大変そうだし、彼女の性格なら尚更だろうなって思うんだよ。もう即位から十年近く経つってのに、未だに南部諸侯から認められてないってのも心労の一端を担ってるんだろう。身分を超えた友人が二人いるとはいえ、何でもかんでも話し合えるってわけでもない。

 

 だから僕は、そんな彼女の自室──代々受け継がれている王室にちょっとしたギミックを付けてみた。大儀式魔法《ラスト・ホーリーウォー/最終聖戦》の収束具となる、聖王国の国宝ともいえる王冠……それを鍵として開かれる、秘密の扉。ひょんなことからそれに気付いた女王は、恐る恐るそれを調べた。

 

 不用意といえばそうだろうが、なんといっても王の私室だ。一番可能性が高いのは、受け継がれてきた中で失伝した隠し部屋といったところだろう。あるいは逃走経路と考えるのは当然の帰結。まさか危険なことなどないだろうと、歩みを進めた彼女が踏んだのは転移魔法陣。

 

 驚くカルカちゃんであったが、転移した先の魔法陣をもう一度踏めば問題なく帰還できることを確認し、転移先の調査に移行した。そこには僕が用意した『息抜き』用のマジックアイテムの数々と、エロ本が所狭しと並べ立てられていたわけだ。

 

 一番のお宝はなんと言ってもイミテ人形──要は自分をコピーできる人形──だろう。傍に置いておいた変装用のマジックアイテムと併用すれば、誰に憚ることもなく自由を満喫できるって寸法だ。

 

 予想と違うことなく、彼女は即位してから初とすら言える休暇を満喫し始めた。僕が書きしめておいた『伝言』も効いたのだろう。代々の王様もこの部屋を利用してリフレッシュしていた……そんな風に見えるよう色々と仕込んでいたから、彼女も心置きなく使用に踏み切ったというわけだ。

 

 最初は市井の観察、体験。解放感に酔いしれていた彼女であったが、それでも超えられない一線があった。そう、エロ体験である。ぶっちゃけて言うならば、おそらく彼女は男漁りをしたかったのだろう。それはビッチ的な意味ではなく『そろそろヤベェ』な意味で。

 

 現代で女性が婚期に焦り始める時期は、どんどん伸びている。むしろ結婚願望自体が薄い男女が増えてきているとも言えるだろう。対してこの異世界はと言うならば、そこはやはり中世チックなファンタジー。初潮を迎えりゃ性交可、十五を超えれば適齢期、二十を過ぎれば売れ残り……そんな感じだ。

 

 特に王侯貴族は婚礼に関して庶民よりも気が早い。二十二歳でありながら、結婚どころか婚約すらしていない彼女がどう見られているかはお察しである。それどころか、女傑三人衆が軒並み交際経験ゼロときているのだから、『もしやレズでは?』という噂も流れているほどだ。

 

 二十二歳で処女。リアルであっても、喜ぶ男性と引く男性が半々くらいと言ったところだろうか。女性であれば九割以上が残念な目で見るだろう。この異世界であればさらに割合は酷くなる。せめて処女くらいは捨てたい──彼女がそう思うのもおかしくはない。

 

 とはいえ、やはり軽々に喪失できるものでもない。女王の純潔というのも重要なものだ。なにより彼女はまだまだ乙女(自称)であり、『我が儘は言いません。糸の一切ついていない、私という人間を愛してくれるお婿さんを!』などと考えているような女性だ。

 

 変装しているとはいえ、その辺の飲み屋で男を引っ掛けるような愚行には出られなかったようだ。そんな煮え切らない彼女がハマったのは、当然というべきか『自慰』である。代々の王様も使()()()()()という事実が躊躇いを乗り越えさせたのか、最近ではもっぱら小屋に籠もってオナニーの日々だ。とはいえ政務は疎かにしていないあたりが、真面目さを感じさせる。

 

 膜を破るのは怖いのか、お気に入りはクリトリスにバイブを当てての行為だ。自分を重ねて見たいタイプなのか、エロ本の内容は女王モノや王女モノが大半である。どちらかというとマゾっ気があるようで、『女王の癖にこんなに乱れやがってよ』的なものが多いようだ。しかし乙女願望が根底にあるせいか、ガチの陵辱モノは手に取らない。あくまで恋愛的な要素が前提にあり、その上で乱暴な言葉遣いをされるのが好きらしい。

 

 どんどんどんどん性癖が暴かれていくカルカちゃん可愛い。しかし覗いてばかりじゃ意味がない。僕は彼女のオナニーを見るために舞台を作ったんじゃなく、彼女とセックスしたいがために舞台を整えたんだ。そろそろエロいことしたいよね。

 

 彼女のために費やした労力は、実を言うとこの世界で堂々のナンバーワンだ。なにせ人の手が入っていない未開の地に、広大な地下ダンジョンを創り上げたのだ。適正レベルは二十五から三十といったところだろうか。名前は『時の迷宮』。ラキュースちゃんが喜びそうな名前だが、今回はカルカちゃんのためのダンジョンである。

 

 ──というわけでご案内っと。

 

「あっ、んっ、ん……っ、私、女王なのにこんな──あっ……えっ? な、なんっ…!?」

「うおっと…! トラップかな? にしては手が込みすぎてるけど」

「え、え…? な、なにが……ここはいったい…?」

 

 右手にローターを、左手にバイブを、頭には王冠を乗せている全裸な変態女王様。陰部は濡れそぼっていて、しかし汚さは微塵も感じられない。成人しているというのに薄めなアンダーヘアは、処理しているというわけでもないのに美しく整えられている。一度も侵入されたことのない割れ目は桜の色を連想させ、幼い少女のようにピチリと閉じていた。エロい。

 

「とりあえず──敵じゃあないのかな? 変態ではあるようだけど」

「えっ、あっ、そのっ…! こ、これは違うんです!」

「どう違うんだい? 君がそのいやらしい器具を使っていたってのが、僕の勘違いってことかな。それとも“敵”の部分か……どっちにしても目の毒だし、これ使いなよ」

「う、うぅ……ありがとうございます」

 

 まあローターとバイブ使ってオナニーしていたというのは事実だし、変態か否かでいえば前者だろう。背徳感に酔うためか、王冠だけは被っていたあたりが最高にイッちゃってるぜ。まあ誰が導いたかというならば僕だが、昇華させたのは紛れもなく彼女だ。エッチな女の子っていいよね。

 

 とりあえず漆黒のマントを貸し与え、素肌に直接被せる。後で返してもらった時には、雌の匂いがこれでもかと付いていることだろう。付加価値で言えば元値の数十倍は固いな。全裸マントに王冠の女王様ってほんと変態チック。

 

「ど、どうも……えっと…」

「急に現れたけど、自分で転移したってわけじゃなさそうだね。事故か何かかい?」

「はい……おそらくは。転移の魔法陣が暴走したのか、元々そういう仕掛けがあったのかは解りませんが…」

「仕掛けってことはないと思うよ。此処は『転移不可』『空間系の魔法、マジックアイテム不可』領域だし。無限の背負い袋も使えないから、着替えも出せなくて申し訳ない」

「い、いえ! マントを貸して頂けただけでも充分です。それに、かなり上等な魔化を施された装備とお見受けします……見ず知らずの他人に貸し与えるようなものではないでしょう?」

「ま、その辺は気にしなくていいよ。とりあえず情報共有といこうか? 言いにくいことは言わなくていいし、僕も言いたくないことは言わないよ」

 

 全部が僕のシナリオなんてことは口が裂けても言いませぬ。まあ現状はともかく、ここ数週間は君も随分満喫してたみたいだし、ウィンウィンってことで。さて、僕にどう伝えようとしたものか悩むカルカちゃん。まあ『私が聖王国の女王です』なんて、この状況では言いたくないだろう。下手をすれば性王国のレッテルまで貼られてしまいかねない行為だ。

 

「転移事故ってことなら右も左も分からない、か。じゃあ先に僕から説明しようか」

「…ええ。ありがとうございます」

「此処は南海『トバルト』にある孤島、生命無き島『クルーズ』に座す『時の迷宮』の中だよ。僕はそれを調べている最中の探検家、ってとこかな」

「…どれも聞いたことがない名前ですね」

「ま、世界は広いからね。特に脆弱な人間種が把握できてる領域なんて、それこそ全体の数%以下さ。最低限、レベル五十はないと世界を周るなんて夢のまた夢でしょ」

「レベル……ですか。それも聞いたことのない指標ですね」

「地域によってそういうのは違ってくるからね。レベルと言ったりランクと言ったり、あるいは難度と言ったり…」

「…! 難度という言葉でしたら知識にございます。確か冒険者の間で使用されていた筈…」

「ああ、じゃあ君はあっちの大陸の人間か。随分遠くに飛ばされてきたもんだ。ここは位置的に考えると──君らで言う南方の砂漠、それより更に南に下って海を渡ったところにあるんだ」

「それは──困りましたね…」

 

 青褪めた表情で俯くカルカちゃん。まあイミテ人形は一日経過したら一度元に戻っちゃうし、その後の騒動を考えれば頭が痛いどころの話じゃないだろう。そもそも無事に戻れるかも不明だ。彼女も彼女で、人類の生存圏では強者だが──それでも不安なのだろう。僕が言った『脆弱な人間種』という言葉も効いているのかもしれない。

 

「その……難度で言えば、どのくらいあれば無事に大陸へ戻れるのでしょうか? 私もある程度は戦えるのですが」

「んー……百五十ってとこかな? 危なげなく戻るには、だけど。かなり無理をすれば九十台でなんとかってとこかな。君は見たところ八十前後ってとこだね。ただ後衛ってところを加味すると、生存確率五%くらいじゃないかい? ちなみにこの迷宮に出てくる魔獣の平均難度も、八十から九十くらいだよ」

「…っ! そうですか…」

 

 ほんの少しだけ顔を歪ませるカルカちゃん。とはいえ解決策は目の前にあるし、彼女が次に出す言葉は解りきっている。それを僕は理解しているし、僕が理解していることを彼女も当然理解しているだろう。となれば後は交渉次第、という話だ。

 

「…とても図々しいお願いになってしまうのですが、どうか私をローブル聖王国まで送っていただけませんか? 対価は必ずお支払い致しますので、何とぞ…」

「うん、いいよ」

「──えっ? あ、あの……そのように軽々しく頷かれてよろしいのですか? あ、いえとても助かるのは事実なのですが」

「いや、そんなカッコじゃどのみち此処から出るのも無理だしね。僕が断ったら、君は全裸かついやらしい器具だけを武器に出口を目指さなきゃならないんだし……流石にね、うん」

「あぅ……あ、ありがとうございます。対価は十二分に支払うことをお約束致しますので」

「それも別にいいよ。何かが欲しけりゃ、国ごと奪えるような実力は持ってるつもりだし。どうしてもお礼がしたいってんなら……くくっ、体で払ってもらおっかな? まぁ随分と“好き者”みたいだもんな」

「ご、誤解です!」

「じゃあそれで何してたの?」

「うっ、ううっ…!」

 

 顔真っ赤。顔真っ赤やで自分。肌が白いから余計に鮮やかで、とても美しい。流石『ローブルの至宝』と謳われるだけはある。キャラデザが若干ラナー王女様に被ってるとか思っててごめんよ。正直今すぐに襲いかかりたい気分だ。

 

「ところで名前を聞いてもいいかい?」

「はい。私は『カルカ・ベサーレス』と申しま──あばばっ! じゃなくてっ! カッ、カ…」

「いや、もう遅いって。ふーん……聖王国の女王様がこんな変態だったとはね。ま、その王冠を被ってる時点で薄々わかってたけど」

「こ、この件はどうかご内密に…!」

「はいはい。カルカちゃんの秘め事は漏らしませんことよ」

「ちゃ、ちゃん……ですか」

「様付けの方が良かった? ならそうするけど」

「…! い、いえ。そのままでお願いします」

「オーケー。あ、僕は『ウン=エイ』ね」

「エイさんですね……あら、どこかで聞いた覚えが──もしかして竜王国の救世主様ですか? まだ未確認の情報でしたので、信憑性に乏しいと思っていたのですが…」

「その呼び方は微妙だよねぇ……もっとカッコイイ二つ名で呼んでほしいもんだけど。まあ人物的には同じだよ。別に救うために行動したわけじゃなくて、結果的にそうなっただけだから──つまり善人じゃあないから、その辺は勘違いしないでよね!」

「は、はぁ…」

 

 僕にツンデレのマネは無理があったか。そういえばオーバーロードに典型的なツンデレってあんまいないよな。まあ今どき流行らないのかもしれないけど。型にはまったようななツンデレって、冷静に考えると精神疾患抱えてるレベルだもんな。その点アスカってすごいよね。ほんとにそうだったし。

 

 まあツンデレの意味も初期と後期でだいぶ違うから、一概には言えんが……おっと、今はそんな場合じゃなかった。まずはカルカちゃんの肢体を堪能せねば。そのために床をゴツゴツにしたといっても過言ではない。

 

「何から何まで、本当にご迷惑をおかけします…」

「いやいや。こっちも気持ち良いから気にしなくていいよ」

「…っ、あうぅ…」

 

 全裸だったってことは、当然靴なんかも履いてない。爪先から頭の上まで、全身が玉のようなお肌のカルカちゃん。足裏といえども傷つけるわけにはいかぬと、おんぶを申し出てみた。というかそのままだと普通に怪我して動けなくなるかもしんないし、ほぼ無理やりおぶった。

 

 両手が塞がっては危険だろうとむずがるカルカちゃん。しかし足だけで魔獣やらゴーレムやらを討伐していく僕を見て、諦観と憧憬と好意が綯い交ぜになったような表情を作っている。まあ強者がモテるのは世界共通の真理だ。ちゃん付けすることで『ありのままの私を見て欲しい』という部分も刺激できてるのかもしれない。

 

「出口まではどのくらいかかるのですか?」

「このペースだと一時間くらいかな。迷宮から出ればアイテムも出せるし、転移も可能になるからすぐ戻れるよ」

「そう、ですか……エイ様はとても凄いお方なのですね。国を救ったというのも頷ける話です」

「さてね。僕は好きにやってるだけだし、さっきも言ったけど結果的にそうなっただけだから。行動を評価されるだけならともかく、それで人格まで想像で固められるのはよろしくないぜ。それに──自分がそういう人間って自覚してるからこそ、カルカちゃんのことは凄いと思ってる」

「えっ?」

「女王ってのは求められる理想そのもので、即位した時点で『そうあれ』と強制される。そこに自分は存在しないし、自由はないだろ? それでもそこにいられるのは、国と国民を思ってこそだろうし……正直尊敬するよ。女王だから尊敬するんじゃなくて、君という人間そのものにね」

「あ…」

 

 クサい。どこぞの妖精が出てきそうなくらいクサい。しかし一応本音でもある。国民という他人を思い、自分を殺すなんて僕には絶対できないからな。僕が自分を殺すとすれば、後にエロが待ち構えている時くらいだ。

 

 しかしカルカちゃんには感動ものの言葉だったらしく、首に巻かれた腕が少し強く締まり、背中に感じる胸の圧力が増した。チンポが勃起しきりで、正直歩きづらいんですけど。気持ち良いんですけど。というわけで、都合よく出てきた休憩所のような場所で一休み。カルカちゃんをそっと下ろし、彼女と向き合う。

 

「ありが──…っ! あ…」

 

 ズボンを貫きかねないほどに、屹立した肉棒。それを目にしたカルカちゃんは、一瞬だけ恥ずかしそうに目をそらしたものの……頬を染めながらチラチラと視線を彷徨わせる。自分が勃たせてしまったという自覚はあるのだろう。マントの下にある裸体をもぞもぞとさせ、心なしか太ももを擦り合わせているようにも見える。よし、もういけるかな? そもそも最初にオナニーを見られた彼女だからして、かなり抵抗感は薄まっている筈だ。

 

「…やっぱり“代価”貰っていいかな?」

「…っ! あ、あの、その──はい」

 

 よっしゃ和姦成立っと。無理やりがお好みみたいだし、頷いたかどうかといった瞬間には既に、ぷるんとした桜色の唇を貪っていた。

 

「んむ──っ、は、ぇうっ、ん、ちゅ…」

 

 クーデちゃんとウレイちゃんはかなり受け身だったけど、カルカちゃんは隙あらばこちらの舌を絡め取ってきそうなくらい積極的だ。ぴちゃぴちゃとした水音と、荒い息づかいだけが数分ほど響く。キスをしながら彼女の尻を両手で強く掴むと、マント越しにも解る極上の柔らかさを堪能できた。一瞬だけびくりとしたものの、逆らわず、そのまま腰を押し付けてくるカルカちゃん。

 

 開いた部分から手を潜り込ませ、彼女が大好きなクリトリスを弄る。既に床へ滴るほどだった彼女の愛液は、秘所へ指を滑り込ませるための潤滑油として最高の役割を果たしていた。一切の抵抗なく、指が割れ目に入っていく。浅めに抜き差しを繰り返し、そのまま陰核を擦り続けると、カルカちゃんの嬌声が耳を楽しませてくれる。

 

「んっ! く、んきゅっ、あぅ──は、ぁっ…!」

「本当に変態な女王様だねぇ、カルカちゃん」

「い、いわない、れ、ひゃっ…!」

「イジメられるのが好きなんて、王族失格じゃないかい? それなら相応に扱うかな……ほら、舐めろよ。好きなんだろ?」

「あ、あ…」

 

 愛液まみれの右手を、彼女の口へ乱暴に突っ込む。被虐の快感に蕩けた瞳を見てとった後、彼女の頭を掴んで股ぐらに押し付けた。聖王国でもっとも高貴な口マンコに、限界まで勃起したチンポを無理やり挿入れる。

 

「んぶっ、んっ、じゅぶっ、は──あぐっ!? んぐっ、ん゛っ、じゅるっ…!」

 

 喉まで犯しているというのに、嬉しそうに舌を巻き付けてくるカルカちゃん。たぶんこれはエロ本の影響だろう。日本のHENTAI文化はほんと素晴らしいなあ。今まであんまりしてこなかったけど、彼女になら心置きなくイラマチオが出来る。

 

 さらさらと流れるような、絹よりも上質な髪。そこに手をおいて、カルカちゃんの口へこれでもかと腰を打ち付けた。それでも吸い付いてくる唇は、まさに最高の口オナホだ。我慢できず吐精し、喉奥へと精液を流し込む。えづきが丁度いい蠕動となって、残った精液を吸い出してくる。

 

「よく出来ました」

「は、はい…!」

 

 抱きしめながら頭を撫でて褒める。めちゃめちゃ嬉しそうだ。あれだねー、カルカちゃんはDV男に弱いタイプの人だね。酷いことされても、ちょっと優しくされたら依存してしまう系の娘だ。うーん、こういう娘って幸せにしてあげたくなるのが男の性だよね。

 

 嬉しそうにチンポを舌でお掃除しつつ、期待を込めて上目遣いをしてくるカルカちゃん。完全に日本の文化に毒された彼女の雌穴に、そそりたつ肉棒をあてがう。誘われるようにぐぷりと先端を飲み込まれたため、そのままの勢いで奥まで貫いた。

 

「────!」

 

 声にならない声を上げ、体をビクンと震わせるカルカちゃん。痛みのせいなのか、あるいは絶頂を迎えたのか。初めての挿入でイッたのだとしたら、やはりそっちの才能があったのだろう。遠慮なくピストンを繰り返す。

 

 なんだろう、膣内はとろとろなのに、吸い取られるような感触だ。『ここがいい』という目立った部分はないというのに、総評としては最高の一語に尽きる。これが聖王国の女王様の穴か。ドラウの時もそうだったけど、国のトップを犯すという精神的な高揚も相まって、正直長くは保たない。

 

「はっ、くっ──カルカちゃん、どこに射精してほしい?」

「んっ、いっ、うぁっ──な、膣内に……あ゛っ、だひ、て、んぅっ…!」

「孕むよ? ほんとにいいの?」

「はい、はいっ──だしてっ…!」

 

 全身で孕ませてほしいと訴えかけてくるカルカちゃん。そんなお願いをされて断れる男はいないだろう。子宮の入り口に亀頭を押し付け、今日一番に濃い精液を注ぎ込む。どくどくと肉棒が脈動する度に、膣が『もっともっと』と締まってくる。

 

 らんらんと瞳を輝かせ、少し危ういレベルで瞳孔が開いている彼女。すぐにチンポのお掃除に取り掛かり、今度は胸で挟み始めた。

 

 …もしかしてエロ本の行為、全部試すつもりかな? うん──今日は長い日になりそうだ。どっちが変態として上か決めようじゃないか、カルカ女王陛下殿……って感じ?



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8話

申し訳ありませんが、今回はエロ無しです。

何故こんなに期間が空いたかって? マーレはアリなのか無しなのかで二ヶ月くらい悩んでたんですよ。


 聖王国神官団団長『ケラルト・カストディオ』。ローブル聖王国における神殿勢力の頂点に座し、実力、知性、美貌の全てを持って生まれた傑物である。

 

 その若さに対し、四位階までを行使できる稀有な神官である──というのが公称されている評価だが、実際には五位階にすら到達している英雄の領域に立つ者であった。

 

 姉である『レメディオス・カストディオ』も聖騎士として頂点に立つ者であり、姉妹揃って神に愛された存在と言えるだろう。欠点らしい欠点と言えば、姉のレメディオスが母親の胎内に置き忘れてきた『知性』というものの存在くらいだろうか。

 

 とはいえその分、妹であるケラルトが余すことなくさらってきたため、釣り合いはとれているのかもしれない。脳筋の姉と腹黒の妹──そんな麗しの姉妹である。とはいえ大抵の苦労は妹の方が背負うため、賢すぎると言うのも考えものかもしれない。

 

 そんな知恵者であるケラルトは、上司であり友人でもあるカルカの変化に目ざとく気がついていた。清廉潔白の化身のような聖王女が、時折見せる『女』の顔。

 

 王として繁忙を極め、偶に訪れる余暇は友人付き合い……すなわち自分たちとの交流に使っているというのに、いったいどこにそんな余裕があるのだろうかと、ケラルトは首を捻る。身分に違いはあれど、友人として親交の深い自分たちにさえ何も話さない事実は、彼女にとって少々不満であった。

 

 ついでに言えば、抜け駆けをされたという感情もあるのかもしれない。妙な噂を立てられている仲間同士だというのに、相談もなしというのはたまったものではないだろう。加えて、単純に国の重鎮としての憂いもある。なにしろ『女王』だ。簡単に『恋人ができました』で終わる筈もない。

 

 身分は見合っているのか、貴族や組織との折衝に支障はないのか、その他にも多岐に渡る問題がある。権力というのは、持てば持つほど自由が少なくなるのだ。

 

 その最たるものが婚姻関係であり、王族が自由恋愛を謳歌できるのはお話の中だけだ。場合によっては苦言を呈することも視野に入れなければ──ケラルトがそう考えるのは当然の成り行きと言えるだろう。

 

「……」

「ど、どうしたの? ケラルト。今日はなんだか機嫌が悪いようだけど」

「…カルカ様。私達になにか言うことはありませんか?」

「む? どういうことだケラルト」

「姉様。最近のカルカ様の様子……明らかに変化があるでしょう? いったいどこにそんな暇があるのかは解りませんが、明らかに男の匂いがします」

「な、なんのことかしら。貴女も今まさに言ったではないですか……私にそんな暇はありませんよ」

「そうだぞケラルト。カルカ様がそんなつまらんことにかまける訳がないだろう!」

「ぅぐっ…!」

「もうその反応が答えですね。で? いったいどこでお知り合いになったんですか? 婚期を焦りすぎて騙されていやしませんか?」

「エ、エイ様はそんな人では──あっ、いえその…」

「エイ? エイ、エイ……そんな名前の貴族は……ふむ、聞いたことがありませんね。姉様は知っていますか?」

「知らん!」

 

 ジト目でカルカに視線を向け続けるケラルト。その圧を受けて観念したのか、針のむしろに堪えられなかったのか、カルカはようやく重い口を開いた。そうして語られた、彼女のつややかな唇から紡ぎ出されるエイの人物像は──そう、誰がどう聞いても“(こじ)らせた行き遅れ”の妄想であった。

 

 (いわ)くドラゴンを歯牙にもかけぬ剣技を持つ勇者。曰く神話の魔法を使う偉大なる魔法使い。曰く『糸の一切付いていない私』を見てくれる素敵な男性。

 

 曰くイケメン。曰く優しい。その他にもアレが上手い、アレが大きい、アレがアレがアレが……と、彼女の言はイケナイ薬をキメた妄想女のそれであった。

 

「…あっ、ごめんなさいケラルト。私だけがこんなことになってしまって……でもこれで変な噂もなくなるでしょうし、きっと貴女にも素敵な出会いがあるわ!」

「カルカ様」

「はい?」

「神官を呼んできます。それと薬師も」

「ふぇっ!?」

「くっ…! なぜ、なぜこんな酷いことになるまで気付かなかったのですか私は…! 大丈夫です、カルカ様には私達が付いていますから……だからご安心ください」

「な、なにを言ってるの? 私は病気じゃありませんし──というか貴女は神官団の団長でしょう! だいたい……あっ! …嫉妬? 嫉妬なのねケラルト。それなら私は許します……天にまします神よ、どうか彼女にも大いなる幸福を…」

「黙れボケ女王」

「ボッ!?」

「あなたは仮にも聖王女なんですよ? 妄想も大概にしてください」

「誰が妄想ですか! エイ様はちゃんと実在しています!」

「カルカ様の脳内にですか?」

「むうぅぅっ…! げ・ん・じ・つ・に・です! 何を隠そう、エイ様は竜王国を救った英雄──『ウン・エイ』様なのですから!」

 

 どういった男かは口にしても、その実態や背景は頑なに口を割らなかったカルカ。しかし友人の煽りによってエイの正体を口にする。

 

 そしてその瞬間、ケラルトはニヤリと口元を歪めた。『胡散臭い』『怪しい』と言われる彼女の妖艶な美貌は、実際に中身も腹黒である。軽い演技で上司の口を割らせることなど造作もない。

 

「──なるほど、それがカルカ様ご執心の男性ですか」

「…はっ!? ケ、ケラルト……嵌めましたね!」

「素直に教えてくれそうにもなかったので。それにしても救国の英雄様と……ですか。どちらでお知り合いに? 実際のところ、そんな暇はなかったでしょう」

「う、うぅ…」

 

 王の資質という点においてカルカとケラルトのどちらに軍配が上がるかと言えば、圧倒的に後者である。そもそも王という地位にありながら清廉に過ぎ、なおかつ腹芸も不得意なカルカは、教主としての適正はあれど君主としての器には欠けるのだ。腹の探り合いでケラルトに敵う筈もなかった。

 

 じわじわと真綿で首を絞められるように、エイとの出会いや秘密の部屋の存在を暴かれていく。オナニー女王という不名誉だけは何としても守り抜いた彼女であったが、それ以外のほぼ全てを説明する羽目となった。

 

「うふふふ……そうですか、そうですか。政務をお人形に任せて男とちちくりあっていたと……そういうことですか」

「そ、それは少し悪意ある解釈じゃないかしら? ちょっとした息抜きみたいなものよ……その、あなた達に黙っていたことは悪いと思っているけれど」

「姉様はどう思いますか?」

「──ん? 話は終わったか? 難しい話はよくわからん…」

「寝てたんですか!? …はぁ。イサンドロとグスターボの苦労がよくわかります」

 

 その後もいくつかの問答があり、最終的にはエイと引き合わせるように沙汰を下されたカルカ。聖王国に名高きカストディオ姉妹──天然娘と腹黒娘。彼女たちとエイの邂逅は近いようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓──シャルティアの自室。甘い匂いの立ち込める典雅なその場所には、十数人の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が死屍累々と横たわっていた。その誰もが秘所を泡立たせ、口元からよだれを垂らし、恍惚の表情で倒れ伏している。

 

 ──そしてそんな場所へ、不躾に立ち入る影が一人。女性の理想像とも言える均整の取れた体に、美の体現者と評すべき麗しい(かんばせ)。頭上の双角と腰についた翼は、彼女が人間であることを否定しているが、美しさは欠片も損なわれていない。彼女こそ、このナザリックを実質的に運営統括しているNPC──『アルベド』である。

 

「…酷い有様だわ」

「ふぅ……ん、ぅ、アルベド…? なんの用でありんすか? というか部屋へ入るならなんぞありんしょう」

「部屋の前に誰もいなかったもの」

「…ああ。そう言えばそこに転がっていんすな。小間使い程度にしか使い道がないと思っていんしたが、中々どうして()()が良かったでありんす」

「少し乱れすぎじゃないの? そんな体たらくじゃ、モモンガ様のご命令を満足にこなせるとは思えないけれど──ねえ? ()()()()()()。続けざまの失態……これ以上モモンガ様を落胆させるようなら、私にも考えがあるわ。守護者への失望は配下全員への失望になりかねない……理解しているわね?」

「……」

「…イウェン、だったかしら。随分探し回っているようだけど、まさかそれにかまけて任務を疎かにしていないでしょうね。栄えあるナザリックの守護者が、外部の吸血鬼に心を奪われたなんてことは……ありえないでしょう? ねぇ──シャルティア・ブラッドフォールン」

「……」

 

 ベッドに寝そべる同僚を、アルベドは鋭い眼光で射抜く。しかしそんな凍てついた視線にも動じず、シャルティアは深くため息をついた。

 

 彼女としてもサボっているつもりはないが、しかし(やま)しい部分が皆無というわけではない。ナザリックへの忠誠を疑われた時点で、弁明のために目的は吐かなければならず──けれどその相手がアルベドという点について、複雑な心境を覚えたのだろう。

 

「…はぁー……いっとう話したくない相手でありんす…」

「…なんのこと? まさか本当に懸想(けそう)しているわけじゃないでしょうね」

「専用の愛玩具にしたいと思ってはいんすが、わらわが愛を捧げるのは唯一モモンガ様のみ。見当外れもいいところでありんす」

「ならいったい何を隠していたのかしら。もしそれがナザリックに不利益をもたらすものだったなら──」

「──モモンガ様のやや子」

 

 剣呑な雰囲気を纏わせるアルベドであったが、シャルティアの言葉を聞いた途端、ピタリと口を閉じた。金色の瞳が爬虫類のように縦に裂け、鼻息を荒くしながら裸の少女へとにじり寄る。はたから見れば完全に変態であった。

 

「くわしく!」

「さぁて……どうしんしょう。わらわのことをさんざん腐していんしたけれどぉ…?」

「うぐ……ね、ねぇ、シャルティア? 私達、同じ御方を愛する仲間でしょう?」

「…くふ。ま、意地悪はここまでにしんしょうか。そう……ぬしが言及したイウェン……あれは最高の体でありんした。零れ落ちそうな乳房に、極上の尻…! そして──雄々しい()()

「剛直…? 女の吸血鬼だと聞いていたけれど、違うの?」

「間違いなく女でありんした。わらわが最初に(まさぐ)った時も、ぷっくりとした恥丘の感触があっただけ」

「…つまり?」

「“生えた”のでありんす。不思議なことに、それまで影も形も無かった肉棒が現れ……わらわの尻穴を蹂躙し尽くしたのでありんす。乱暴に犯し、えぐり、無遠慮に射精して……はぁ、んん…」

「サカるのは後にしてくれないかしら」

「はぁ、ふぅ……んっ……そう、わらわはしかとこの眼で見んしたの。あの魔羅(まら)が──イウェンが嵌めた指輪の力によって生え、そして消えるところを…!」

「…っ! と、ということは…」

「そうでありんす。アンデッドな上、女体ですらありんすのに生えたということは!」

「そのマジックアイテムなら、モモンガ様にも効果は見込める…!」

「燦然と輝く美しき白磁の体に、雄々しく屹立する一本の肉棒…! ああ、考えただけで、はふぅ…」

「く、くふーーー!!」

 

 頬を上気させ、いかにも発情していますと主張している極上の女性たち。今の彼女達を目の前にすれば、どんな男であろうとも(いき)り立つこと間違いなしだ。そして一頻(ひとしき)り妄想に浸りきった彼女達は、それを現実にするべく語り合う。

 

「貴女の不審な行動については理解したわ。だからまずは休戦協定……正妻の座を争うのは後回しね」

「兎にも角にもモモンガ様の『ご立派』を確保してから……そういうことでありんすね。ぬしに話した意味は理解していんしょう? わらわも随分探し回りんしたが、煙の如き隠形で困っていんすの」

「ええ、姉さんに協力してもらうわ。どんな手を使ってでも──その指輪、奪い取ってくれる!」

「あ、それはダメでありんす」

「…え?」

 

 殺してでも奪い取る──そんな雰囲気を隠しもしないアルベドであったが、それを諌めるシャルティアをポカンとした表情で見つめる。そんな間抜けな守護者統括を、シャルティアはフフンと笑った。

 

「モモンガ様のお言葉を忘れんしたの? 今のナザリックは正義の組織……ぬしが言うような横暴がまかり通る筈もなし。それ以前に『ウン=エイ』『マジカル☆イウェン』、その他プレイヤーと考えられる者には危害を加えるなと厳命されていんしょう? …ま、ぬしが考えなしに行動して指輪を奪い──謹慎処分を受けている間にわらわが孕むと言うのも悪くありんせんが」

「ぐっ…! な、ならどうするのよ。譲って欲しいと言って、素直にくれる相手なの?」

「わかりんせん……が、掴みどころのない女性(にょしょう)でありんした。そう簡単にいくとは思えんせん」

 

 そんな言葉とは裏腹に、シャルティアの顔には曇りがない。それを見て取ったアルベドは、何かしらの作戦があるのだろうと看破した──そして唇を噛む。

 

 休戦協定を結び協力体制にあるとは言え、マジックアイテムを手に入れた際の貢献度が、主へ迫る優先順位に影響を及ぼすのは明らかだろう。大した戦果もなく、報酬だけをかっさらうような真似は許されない。

 

「…どうするつもりなの?」

 

 きっと教えてはくれないだろう──そんな心持ちで問いかけたアルベドであったが、返ってきた言葉は彼女の想像をさらりと超えていた。

 

「性戦でありんす」

「…は?」

「わらわは性技を競う勝負に負け、下着を奪われんした。ソリュシャンは勝ち、ヘロヘロ様の精巧な人形を手にした……ゆえに、先にあやつを吐精させれば正々堂々と権利を主張できんすの。『それを寄越せ』と!」

「そ、それは……でも、私は…」

「──モモンガ様に操を立てるのは当然。さりけれど、アルベド……ぬしはこんな言葉を知っていんすか? 『アナルはノーカン』と。そして『心の膜さえ守っとけば処女』…! そもそも『女どうしだからセーフ』と!」

「アウトよ」

「くふっ、淫魔の癖に融通の利かない女でありんす。まぁ好きにしなんし。わらわが指輪を手に入れた暁には、ちゃあんと使わせてあげんすから……に・ば・ん・め・に」

「くぅぅっ…!」

 

 嘲笑から逃げるように部屋を後にし、悔しげに体を震わせながら帰路につくアルベド。彼女の主への愛は常軌を逸しており、そこに余人が入り込む隙間など一ミリもない。極上の体の全ては、余すこと無く主へ捧げると決めているのだ。

 

 元より配下相手にレズセックスを嗜んでいたシャルティアとは違い、全ての初めてを主に捧げたい──アルベドはそんな女性である。

 

 淫魔らしく性技に自信はあれど、しかし女性とは言え行為に及ぶのは抵抗がある。けれど寵愛を真っ先に受けるためには、どうしても先手を取る必要があった。うんうんと唸りながら廊下を彷徨き、手淫か口淫ならばありだろうかと妥協し始めた頃──彼女に声をかける者が現れる。

 

 戦闘メイド『プレアデス』が一人、『ナーベラル・ガンマ』である。ナザリック配下にも派閥というものがあり、正妻の座を争うシャルティアとアルベドの関係において、ナーベラルは後者を支援する筆頭であった。その対象が見るからに苦悩していれば、声をかけるのは当然と言えるだろう。

 

「どうかされましたか? アルベド様」

「あらナーベラル……ううん、なんでもないからほっといてちょうだ──」

 

 心配げに声をかけてきた彼女に対し、素気なく通り過ぎようとしたアルベドであったが──瞬間、天啓を受けたかのように立ち止まる。そして次に振り返った時には、裂けるような笑みが口元に貼り付けられていた。

 

「ねぇ、ナーベラル。少しお願いがあるのだけれど」

「…? は、どうぞお申し付けください」

「く、くふっ…! くふふっ…」

「あ、あの…?」

 

 淫魔の嬌笑が廊下に響き渡る。ああ、プレアデスの運命や如何に──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか良いことありそうな今日この頃。本日は『蒼の薔薇』の拠点でもある王都の宿屋にて、薬の作製に勤しんでるところだ。いくつものフラスコを並べ、怪しげな薬をコポコポと煮立たせ、まさにイカれたマッドサイエンティストといったところだろうか。

 

 宿屋には通常の何倍もの料金を払っているから文句を言われることもない。ついでにいうと、後ろから興味津々と言った風に覗いてくるイビルアイが死ぬほど可愛くて死にそう。

 

「…錬金術にも詳しいのか。これはなんの用途に使うんだ?」

「ん? ああ、この前スライムに負けちゃってさぁ。悔しいから色々と策を練ってるのさ。これもその一環」

「は? …お前がスライムに? いや、どんな化物だそれは」

 

 ちょっと前、僕の話が真実かどうか試させてもらうと戦いを挑んできたイビルアイ。結果は当たり前のものにしかならなかったけど、彼女の僕を見る目が変わったのは言うまでもない。

 

 恋心とかそんなのは無いようだけど、ちょくちょく絡んできてくれる程度には仲良くなった。どんどん実力が上がっているラキュースちゃんのこともあって、色々と気になっているんだろう。

 

「んまー、何百人ものプレイヤーを阿鼻叫喚の地獄に陥れた古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)が作ったNPCだから……君らで言うと『魔神』かな? うん、そんな存在だから僕が負けるのも仕方ない」

「なに…!? だ、大丈夫だったのか?」

「しばらく腰砕けになっちゃったけど、なんとか逃げ出すことはできたよ。今度は負けないぜ……そう、この薬があれば」

「そ、そうか……それはいったいどんな効果なんだ?」

「『性感帯が無いから無敵』なスライム……けど、人型である以上そんなことはないと思うんだよ。だからこそ──これだ! “感度を三千倍にするお薬”!」

「…スライムに脳でも溶かされたのか? それとも元々がバカなのか? ──ああ、そういえば後者だったな。すっかり忘れていた」

「酷いなイビルアイ。どう考えても画期的な新薬だろ? まぁ健常者が摂取すると空気に触れただけでイキ死ぬと思うけど」

「ええい! その薬を私に近づけるな! 変態め!」

「変態で何が悪い!」

「開き直るな!」

 

 お腹辺りに抱きつく僕を、げしげしと足蹴にするイビルアイ。あー、やわっこい。しかし実力の差は理解したというのにチョロインっぷりを発揮しないのは、やはり原作の『救出劇』が効いていたということなんだろう。まあ女の子はみんな『助け出されるお姫様』になりたいって言うしね。ただ強いってだけで惚れるほど安い女の子じゃないってことだ。

 

「ほら、さっさとしまえと言うに。というかよく考えたらお前……それはもはや超即効性の猛毒だろう。媚薬よりもタチが悪いぞ」

「まぁ希釈すれば効果は薄まるからさ。イビルアイもちょっと使ってみるかい? アンデッドだとちょっと感じにくいだろうし、たぶん百倍くらいに薄めるとちょうどいいんじゃないかな…」

「いらん! …まったく、ティアもティナもお前も…! 盛りのついた犬でもあるまいし、何が楽しいんだか…」

「……」

「な、なんだ? なんで黙るんだ」

「イビルアイはさ、愛だの恋だのを馬鹿にしてるけど……それはどういう理由で?」

「む……別に馬鹿にしてはいない。ただ……女の愛嬌や愛想は、男に守ってもらうための(こび)でしかないだろう? …だから、強くあれば必要のないものだと思っているだけだ」

「その言い方だとさ、例えば強者同士のカップルはいちゃつく必要がないってことになるけど。『甘え』と『依存』は弱者の特権ってことかい?」

「少し飛躍しすぎな気もするが、概ね間違ってはいないな。強者足らんとすれば、異性に甘える必要など一切ない」

「ふぅん…」

 

 まぁ何百年も生きてる彼女が言えば、なんとなく含蓄(がんちく)のある言葉に聞こえなくもないが……しかしこの発言は筋金入りの処女の声である。言葉とは不思議なもので、たとえまったく同じものであっても、発した人間によって印象はがらりと変化する。

 

 イケメンヤリチンが口にする『ハハッ、女なんて所詮…』という台詞。童貞キモータが口にする『ハハッ、女なんて所詮…』という台詞。もはや別物と言っていいだろう。

 

 まったく同じ文面だというのに、何もかもが悲しいほどに違う。それと同じで、イビルアイのそれも所詮は未通女の戯言だ。せめて経験してから言えってーの。処女膜から声が出ちゃってますよ、お嬢さん。

 

「高尚な人ほどさ、愛を幻想って言うよね。哲学者とか小説家とか、きっと何周も何周も考えを巡らせて……論考を重ねて、それで結論付けるんだよ。それは『本能に後付けされた付属品でしかない』って。文化が無ければ存在しない感情だからこそ、生物としては本来必要のないものだって。あるいは必要だとしても、それはより優秀な遺伝子を紡ぐための衝動でしかないって」

「…ああ、まさに道理だな」

「僕はさ、そういう気取った奴等に『んほぉぉ!!』って言わせるのが好きなんだ」

「ああ、真面目な話を期待した私が馬鹿だったよ」

「いや、真面目な話さ。だって滑稽じゃないかい? そいつらが巡らせる思考や論理的な解釈だって、文化によって後付けされたものじゃないか。彼らがなんの教育も受けていなければ、一生涯考えることすらなかった筈だぜ」

「…ふむ」

「だから彼らが論考を重ねて愛を欺瞞だと叫ぶなら、前提から否定できる。何も考えずに愛を虚構だと罵るなら、ただの考えなしの馬鹿野郎さ」

「いや……うぅむ……そうか? なにか煙に巻かれているような気がするんだが…」

「まぁその通りだからね」

「──ええい! 毎度毎度からかいおって! 目上の人間を敬うことを知らんのか貴様は!」

「ぷっ…! ヴァンパイアジョークかな? どこにも人間なんて見当たらないけど」

「お、おまっ…! そういうところだぞ! すっ、すす、すごくデリケートな部分だろ!? そこは! 超えちゃいけないライン考えろよ!」

「うん? でもさ、自分が大して気にしてないところを気遣われると、逆に嫌じゃないかい? 君は()()()()()()()()、とっくの昔に乗り越えてるように見えるけど」

「…まぁ、そうだが。でもお前、もうちょっと配慮してもいいだろうに…」

「そうかい? じゃあイイコイイコでもしてあげよう」

「いらんわ!」

 

 暴れるイビルアイを押さえつけ、後ろから抱きすくめる。まだまだ恋愛感情は育っていないが、まあ偶にはゆっくりでもいいだろう。ティアちゃんもよく彼女をクンカクンカしてるし、軽いスキンシップのようなものだ。多少意識してくれるだけでも悪くない。

 

「…どう?」

「ええい! は・な・せ……──うん? 何がだ?」

「いや、盛る理由を聞いてたからさ。結局なにを求めてるかってんなら……温もりってやつかな? 他人の肌って気持ちいいんだよね。だからどうかなって」

「…ふん。ならお前が私に求めるものは何もないな……なにせこんな体だ。冷たくて仕方ないだろう?」

「どれどれ、あそこも冷たいのかなっと…」

「そういうとこだっつってんだろがぁぁ!!」

「ぐふぅっ!!」

 

 うーん、どんどん遠慮がなくなってきてるな。実に良い傾向だ。なにせ自分と対等か、それ以上に強い奴となんてそうそう出会えない彼女だ。いくら蒼の薔薇のメンバーが仲間だとはいえ、突出した強さからくる疎外感はついて回る。その点、僕に対しては全力で殴ろうが魔法をぶっ放そうが問題なしだ。そういう存在は貴重だろう。

 

「──ま、これから長い付き合いになるんだし……遠慮のいらない相手はすごく貴重だと思うんだよ。僕は君にそういう存在でいてほしいし、君にとっての僕もそうでありたい。これも一つの愛だぜ」

「…! …そうか。お前は私と同じで、永劫の時を生きる者なんだな」

 

 えぇ…? ラキュースちゃんの病気でも移ったのか? いきなり『永劫の時を生きる』とか草生えるんですけど。というかそんなもんは深く考えなくてもいいのさ。好きなだけ生きて、満足するまで生きて、飽きたら死ねばいい。というか不老ではあっても不死じゃないんだから、君だって永遠ってわけじゃないだろうに。

 

 ──というか『君って生きてなくね?』と言いたくて仕方ない。けど流石に三度目のボケはあれだろうか……腕の中で少しだけしんみりしてる彼女を見てると、いくら僕でも空気を読まざるを得ない。流れるような金髪を手で梳いて、少しだけ抱きしめる力を強くした。

 

「──イビルアイ」

「…なんだ?」

「君って生きてなくね?」

「うがぁぁ!!」

 

 どうどう。おお、噛み付いてきた。ついに吸血鬼の衝動を我慢しきれなくなったのだろうか。はぐはぐと腕を噛んでいるけれど、ダメージは通らない。むしろ小さい舌が偶に当たって、ちょっとばかしエロスを感じさえするな。

 

 そんな感じで一頻(ひとしき)りじゃれあった後、疲労とも満足ともつかない表情を浮かべて退室する彼女を見送った。しかしなんとも、好ましい幼女である。

 

 容姿は言うまでもなく、そして精神の成熟ぶりに反して性的な未熟さを持ち合わせたロリババア。まさに理想じゃなかろうか。

 

 某魔法先生のロリババア吸血鬼が、新作でロリババア枠を脱した今、覇権を握るのは彼女なのかもしれないな。ま、今は僕にとっても現実なこの世界で、確固たる一人として存在してるんだ。非実在性の幼女ではなく、きっちり三次元幼女である。キャラとして見るのは言語道断と言えるだろう。

 

 さっき彼女にも言った通り、長い付き合いになるんだろうし……できる限り素で接しあえる関係になりたいものだ。いつか過去の出来事も話してくれるような──そんな関係に。




ノクターンノベルズでもちょいちょいロリペドものを書いてるんですが、男の娘を出したら感想で拒否反応を示す人が割といるんですよね……私が考えているよりニッチな性癖なのだろうか。

可愛けりゃ男の娘でも女装子でもいいと思うんですけどねぇ。エロ漫画の男の娘なんて、チンポ付いてる女の子だと思うんですけど(暴論)

マーレどうしよう…


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9話

もうなんか色々言いたいけど、とにかくアレだ。大量の感想ありがとうございます(半分くらいしか見れないけど)

とりあえず指摘されたとこについてはざっくりとした答えだけ書いときます。

マーレとのチョメチョメは? →無しです。

なんで二十二世紀に生きてた人間が魔法先生ネタを? →これは某焼き鳥先生のことではなく、二十ニ世紀の漫画『ゼロから始まる魔法先生に転生した件についてアートオンライン』という作品に出てくるロリババアのことです。いやー、こんな細かい設定まで練ってるってバレちゃったわー。言うつもりなかったのになー、バレちゃったわー

ロリペド成分薄くない? → このロリコンどもめ!




 ──目を見張るほどに巨大な満月。その怪しくも美しい、昏い輝きに照らされる少女が一人。月下の元、宿屋の屋根の上で黄昏れているのは数百年を生きる吸血鬼。誰も彼もが夢見に沈むこの時間も、彼女にとっては毎夜毎夜に訪れる孤独な時間だ。

 

 いつも身に着けている仮面やマントも外し、自身の年齢や外見の偽装を解く──ともすれば吸血鬼として追い立てられる危険性すら孕んでいる行為を、彼女は偶の息抜きとしていた。どのみちこんな深夜に出歩く人間などそうおらず、いたとしても彼女に気付く可能性はごく僅かだ。

 

 加えて、遠目からでは吸血鬼と人間の僅かな差異など見抜ける筈もない。高位の神官が夜な夜なアンデッドを探している──などという有り得ない事態を警戒するほど、イビルアイは小心ではなかった。

 

「…はぁ」

「どうしたの?」

「──へっ? どぁっ!?」

 

 物憂げにため息を吐く彼女の横に、いつのまにか鎮座していたレズ忍者──ティア。レベルに差はあれど、隠形に関してはその差もひっくり返る。動転して屋根から転げ落ちそうになるイビルアイを抱きとめ、ティアは胸いっぱいに少女臭を吸い込んだ。

 

「うーん……これは悩みを抱えている匂い」

「どんな匂いだそれは。別に悩んでいるわけじゃないさ。ただ、なんというか……『愛』という奴に関して考えていただけだ」

「…お年頃?」

「誰が思春期だ! というか、お前の何倍生きていると思ってるんだ。そうじゃなくてだな……なんだ、その……例えばお前とエイだが、セッ……あ、アレをしている時はどういう感じなんだ? 別に恋人という訳ではないんだろう? お前はお前で行きずりの女と関係を持つ時もあるし、アイツもアイツで他に相手がいるようだし……お前らの()()は愛なのか?」

「(完全に思春期)エイに何か言われた?」

「いや……私に対してというよりは、自分の考えを口に出しただけだろうな。私が勝手に気にしているだけだ」

「エイは普通じゃないし、私の生い立ちも普通じゃない。イビルアイの人生も普通じゃないから……あんまり他人を参考にしないほうがいい。それでも答えが知りたいのなら──」

「…知りたいのなら?」

「私がベッドの中で教えてあげっ、ぐふぅっ!!」

「なぜお前らはやることなすこと同じなんだ…」

 

 屋根の上で器用にルパンダイブをきめたティアであったが、腹部に掌打をくらい崩れ落ちる。そのまま緩やかにゴロゴロと転がり続け、屋根から放り出され──隣の建物の壁を蹴り、元の位置に戻った。アダマンタイト冒険者の身体能力を持ってすれば造作もないアクロバットである。

 

 呆れたように肩を竦めるイビルアイ。そんな彼女に性懲りもなく近付き、キスを迫るティアであったが──その表情は至極真面目くさったものであり、イビルアイはいったいどうしたのかと訝しむ。迫る顔は唇を通り過ぎ、そして耳元で囁かれた言葉は──警告であった。『囲まれている』と。

 

「…っ!」

 

 その言葉を耳にした瞬間、素早く仮面を付けマントを羽織るイビルアイ。『蒼の薔薇』は闇組織に煙たがられているチームではあるが、しかし今このタイミングで誰かしらに襲われる理由があるとすれば、彼女が吸血鬼であるという一点に尽きるだろう。

 

 あまりに油断しすぎたと、イビルアイは自責の念にかられる。現状ティアと一緒にいることを考えれば、下手をするとチームメンバーをも不味い事態に巻き込みかねない。どう言い訳をしたものかと、襲撃者の様子を窺う。そんな彼女の前に暗がりから身を現したのは──見目麗しい三人のメイドであった。

 

「ビンゴっす! アイテムかなんかで隠しちゃったっすけど、アンデッドの気配ビンビンさせてたっすよユリ姉!」

「遠目でしたけどぉ、ちらっと牙も見えましたぁ」

「あなたは目が良いものね、エントマ。それにしても探し始めて三日目で見つかるなんて……運がいいわ」

「夜な夜な探し回った苦労も報われたっす!」

 

 三方向から迫る、それぞれが方向性の違った美しさを持つ三人。声量は普通だと言うのに、まるで近くで会話をしているようなやり取りが違和感を醸し出していた。そして常人ではありえない身体能力で、イビルアイ達が乗っている屋根へと跳び移る。

 

 煙突の上に陣取り、軽やかに笑う褐色のメイド──ルプスレギナ・ベータ

 

 メガネをクイっと持ち上げ、上品さを漂わす夜会巻きのメイド──ユリ・アルファ

 

 甘ったるい声とは裏腹に、人形のように表情が動かない小さなメイド──エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ

 

 街中に現れたアンデッドを退治しにきた──というには少々有り得ない出で立ちに、イビルアイは怪訝な表情を作る。しかし三人の言動からは、既に自分の正体が割れていることが窺えた。彼女はため息を吐きながら、無駄だと思いつつも弁明を図る。

 

「…確かに私は吸血鬼だ。だが人を襲うことなどないし、悪行に手を染めてもいない」

「私は人間だけど、今の言葉は確かだと保証する。むしろ正義のために行動することの方がよっぽど多い」

 

 自身の立場も顧みず、擁護の言葉を口にするティア。そんな彼女に対し、イビルアイは嬉しさと心苦しさが綯い交ぜになった表情を浮かべ──しかし諦観を覚えてもいた。『自分は悪い吸血鬼ではない』と、そんな言葉が届くと考えるほど彼女は人間の善性を信じていない。というより、そんな人間は異常だとすら考えていた。

 

 アンデッドは人間に敵する者。それが常識であり、そもそもとして事実である。イビルアイのような吸血鬼こそが例外中の例外であり、まずもって考慮に値するべき存在ではないのだ。見つけ次第問答無用に滅すべき存在……それがアンデッド。

 

 そんな化物が正義を訴えたところで、信用されることなど有り得ない。しかし届くと思っていなかった言葉に対する返答は──彼女にとってあまりにも予想外であった。

 

「知ってるっすよー。()()()()()()()()()()()()()! ヒューヒュー、かっこいいっす!」

「ボクより高レベル……正義の吸血鬼……正体を隠している……うん、間違いないね」

「じゃあぁ、さっそくですけどぉ……選んでくださいなぁ~」

「…は?」

 

 逃げる素振りがないのを見て取った三人のメイドは、包囲を解き、トコトコと歩いて二人の前に並び立つ。その立ち居振る舞いはメイドとして完璧な所作であり、その立ち姿はまるで芸術品の如き美しさ。しかしそれがどういった意味を持つのか理解できず、イビルアイは呆けた声を零す。

 

「ほらほら、よりどりみどりっすよ? 清楚系淑女なユリ姉、可愛い系ロリっ娘のエンちゃん……なんなら私でもいいっす」

「いや、意味がわからないんだが」

「またまたー。シャルティア様を(なぶ)り尽くした御人(おひと)が言うことじゃないっすよ。気が乗らないんなら……ほい、ちょっとサービスっす」

 

 ルプスレギナのメイド服は修道服を模した衣装である。しかし前者の用途にしても後者の用途にしても、本来は有り得ない扇情的な意匠が随所に凝らされている。胸を強調するコルセットもその一つであるが、なにより視線を惹くのはスカートの切れ目──腰まで伸びたスリットだろう。

 

 膝上まで伸びるオーバーニーソックスにより、肌の露出こそ十数センチではあるが、ちらちらと見える小麦色の太腿は男にとって目の毒でしかない。ルプスレギナはそんなスリットを自らの手で()()と広げ、惜しげもなく肌を晒す。

 

 下着こそギリギリ見えていないが、その大部分がさらけ出された太腿は、むしろ全てが見えている状態よりも性欲を掻き立てる。傾城傾国とすら言える美しさも相まって、たとえその気がない女性ですら魅了しかねない危うさだ。

 

「いや、だから──私を誘惑する意味が理解できないと言っているんだ! というか私にそっちの気はない!」

「隠しても無駄っす! 女の子の尻穴が大好きな変態吸血鬼ということは調べがついてるっす!」

「どこの調査!? 人違いにも程があるわ!」

「王都を拠点にして、この世界においては伝説級の強さを持ち、正体を隠しながら正義を執行する吸血鬼……そんな存在が他にもいるっすか?」

「え……いや、まぁそれは流石に私以外いないと思うが…」

「ほらほらっす!」

「いや、ほらと言われても…」

 

 数百年ものの処女だというのに、女好きの変態扱いをされている。そんな意味不明な状況に(おのの)くイビルアイ。度し難い感情を共有しようと、横にいるティアの様子を窺う。しかしそこにあったのは──悲しさと切なさと心苦しさを瞳に秘めた忍者の姿だ。まるで裏切り者を見るような目をイビルアイに向けるティア。その顔には様々な感情が浮かんでは消えていた。

 

「な、な、なんだその目は!? なんでそんな目で見るんだ!」

「女の子が好きだったのなら……私がいたのに……なのに、他の女と…? それどころかあんな美女美少女に求められて──こんなに酷い裏切りはない」

「私はお前に裏切られた気分だよ!」

「少しこっちにも寄越すべきそうすべき」

「ええい、勝手にしろ! とにかく私には関係ない……というかお前らも! 仮に私がそんな変態だったとしてだ。だからといって()()理由にはならんだろう!」

「もちろん目的はあるっすよ!」

「ボク達が先に貴女を絶頂に至らせたなら──」

「オチンチンを生やす指輪……戦利品として所望いたしますわぁ」

「わかった。お前たち頭がおかしいんだな?」

 

 真剣に何を宣うかと思えば『チンチンを生やす指輪をくれ』である。イビルアイでなくとも、相手を“キ(じるし)”が入った相手だと考えるだろう。しかし彼女達の言葉に応じたのは、向けられた当人ではなくその横の忍者であった。

 

「…これのこと?」

「なんで持ってんの!?」

「やっぱり! 今は愛人に持たせてたんすね!」

「ああ、もうどこから突っ込めばいいんだ…」

「ふわぁ、どこから突っ込むかなんてぇ……えっちぃ」

「ならお前らはびっちだよ! もうなんなんだ本当に……誰か助けてくれぇ…」

 

 女性相手にはタチが基本のティアが『生やす指輪』を欲しがらない筈もなく、彼女がエイにねだって手に入れたのは当然の帰結だ。そもそもエイのアイテムは基本的に無限であるため、彼が惜しむこともない。女の子が女の子に対し腰を振る姿は、それはそれで興奮するものである──というのがエイの言であった。

 

「くぅぅ……とにかく、お前らが何か勘違いしてるのは間違いないんだ! 私達には何も関係ない! ──逃げるぞティア!」

「ここは私にまかせて、先に行って」

「わかった!」

「…即答は酷い」

 

 死亡フラグ満載のセリフでこの場に残る宣言をしたティアに、イビルアイは振り返ることもなくシュバっと逃げ出した。本来の彼女であれば、危険を推して残る仲間を見捨てたりはしない。しかし今この場での『危険』は、命ではなく貞操である。そもそも喜んで残っていそうなティアのために、自らを危険に晒すこともないだろう。

 

「待てっす──っと!」

「あの娘を追いたいのなら、まずは私を倒してから」

「…どうするっすか? ユリ姉」

「うーん……指輪を持ってるのはその娘みたいだし、無理して追わなくてもいいんじゃないかな。それに、あの娘と違ってあんまり強い感じがしないとは言え──」

「忍者の格好が酔狂じゃないならぁ、少なくともレベル七十近くはある計算ですぅ。邪魔されると厄介ですわぁ」

「それもそっすね。なら忍者のお嬢ちゃん──」

「ティア」

「じゃあティーちゃんっすね。勝負の方法はさっき言った通りでいいっすか?」

「モチのロン」

「良い返事っす。んじゃ、どこかいい場所は…」

「近くに昨日潰した八本指の違法娼館があるよ。建物はまだそのままじゃないかな」

 

 ユリの言葉に全員が頷き、屋根の上から軽やかに飛び降りる。夜の(とばり)も落ちきったこの深夜、連れ立って歩く三人のメイドと一人の忍者──なんとも怪しいことこの上ない。警邏(けいら)中の兵士が目撃すれば、間違いなく声をかける案件だろう。とはいえそんなヘマをするような彼女達ではなく、道中はスマートそのものだ。

 

「…八本指を潰したと言っていたけど、本当?」

「まだ完全には潰れていないけどね。でも時間の問題だよ」

「ふっふっふっ、なんと言っても私らは──」

「正義の組織ぃ~」

「ナザリック! だからね。覚えておいてくれると助かるよ」

「ナザリック……最近噂になってる、あの?」

「おっ、どんな感じっすか? まだ浸透はしてないって聞いてたっすけど」

 

 弱きを助け強きを挫く者達──それが王都で最近噂になっている謎の集団への評価である。小さいものであれば失せ物探し、大きいものであれば暴漢の鎮圧など、様々な場面に現れては問題を解決していくヒーロー。まだまだ知らない者の方が多いとはいえ、それも時間の問題だろう。情報通のティアであれば、当然のごとく既知だ。

 

 善行をなしては『ナザリックのものです』と言って去っていく者達。『消防署の方から来たものです』ばりに胡散臭いが、とはいえ騒動が自作自演という訳でもなく、見返りを求めることもないのだ。職業柄疑い深いティアであっても、ある程度は好意的に見ていたほどである。

 

「──『超速おじいちゃん』」

「…? どういうことっすか?」

「一番よく見かける“ナザリック”の人……執事姿のお爺さん。強くて渋くて優しくて──ものすごく速い。街の東で火事があれば駆けつけて、西で強盗が起きても駆けつける。目にも映らない速度で良いことをしていく老人……付いたあだ名が『超速おじいちゃん』。そう聞いた」

「そ、そっすか……ぶふっ、くく、くひっ…! ちょ、超速セバス様……うひひっ…」

「わ、笑っちゃダメよルプス──ふふっ」

「んふっ、んんっ……さすがセバス様ですわぁ」

 

 残像を残して走り回るセバスを想像し、三人のメイドは笑いを堪える。直属の上司であるが故に、その姿が容易に想像でき──だからこそ可笑さもひとしおなのだろう。お腹を押さえながら笑いこけるルプスレギナ、真面目な表情を保とうとしながらも口元をひくつかせるユリ、可愛らしく両手で口を押さえるエントマ。そんな姿であっても三者三様に美しく、ティアはこの後に訪れるであろう素敵な時間に思いを馳せた。

 

「──ここだよ。入り口はその棚の横の隠し扉」

 

 ユリの案内に従い、地下へ続く隠し通路を進んでいく一行。いくつもある部屋に微かに残った()()の残り香が、この建造物の用途を表していた。とはいえ鋭敏な嗅覚を持つルプスレギナやティアが気付く程度のものであり、清掃はきちんとされていたことが窺える。

 

 適当な部屋を選んだ彼女達は我が物顔で侵入し、四人を乗せてもなお余裕のあるベッドへ各々座り、あるいは寝転んだ。数瞬、なんとも言えない『間』が空いたのは、これまで一貫して余裕のある態度を崩さなかったメイド達が、ほんの僅かに緊張の糸を張ったからだろう。

 

 ユリ、ルプスレギナ、エントマ。『生やす指輪』を手に入れるために選ばれたこの面子は、当然のことながら処女である。首なし騎士、人狼、蜘蛛人と──人間のような貞操観念こそ持ち合わせてはいないものの、まったく何も感じないということはない。感覚としてはルプスレギナがある程度人間に近い感性を持ち、エントマがもっともかけ離れているといったところだろう。

 

 そもそも指輪を手に入れたいというならば、一度勝利を収めているソリュシャンがもっとも適当な人選であった。しかし彼女はアルベドとシャルティアの正妻戦争において後者の派閥だ。任務が正式なものであればともかく、実際にはかなり私的な感情が入り混じっている現状において、彼女がアルベドへの協力を拒否したのは当然とも言える。

 

 ナーベラルはアルベド派閥ではあるものの、冒険者として既に名が売れているため運用に適さない。シズはナザリックのセキュリティ上の観点から外出が禁じられているため、同行が叶わなかったのだ。

 

「…ルールはどうする? 人数は……三対一?」

「…ユリ姉」

「うん、わかってる。ティアさん……だったよね。始める前に一つお願いがあるんだ」

 

 ソリュシャンのような反則技を持ち合わせていない彼女達は、そも大した性技など覚えていない。シャルティアを下した百戦錬磨の相手に、いったいどう立ち向かうべきか。

 

 彼女達が最初に考えたのは、『ハンデを貰う』という身も蓋もないものであった。しかしシャルティアからの情報──正しくはソリュシャンから伝え聞いた情報だが──では、充分に交渉の余地があると判断したのだ。

 

 むしろハンデを引き出す、その部分から戦いが始まっていると考えた。このチームのリーダーであるユリは、見た目に反して無鉄砲な戦い方を好み、まずは殴ってから考えようという脳筋気質である。今回も『とりあえずヤってみよう』という、あまりに杜撰な計画を立てたお馬鹿なリーダーだ。

 

 そんな彼女に苦言を呈したのは、ナザリックでも相当な慎重派であるエントマだ。シャルティアを超える超ビッチ相手に、処女三人が無策で挑むほど愚かしいことはないと、滾々と説いたのだ。ナザリック以外の者など大したことはないと傲慢に振る舞う者が多いNPCの中で、彼女はしっかり相手との戦力差を見極める頭脳派なのだ。

 

 妹から丁寧に諭されたユリは己を恥じ、いくつかの案を素直に聞き入れた。まずはハンデを引き出すためのテクニック──女として最高クラスの美貌を利用した『誘惑』を。

 

 プレアデスの中でもっとも丈の長いスカート──その裾を両手でつまみ上げ、()()と持ち上げる。物憂げに、そして恥じらいながらのその行動は、どんな男の心をも掴む魔性であった。下着が見えないぎりぎりまでたくし上げられたスカートは、しかし輝くほどに白い太腿とのコントラストで、芸術的な美しさと性的な美しさの両方を演出していた。

 

「ボク達……まだ処女だから、ハンデが欲しいの…」

「──っ………ぅ…」

「…へっ?」

「はわっ…?」

 

 清楚な真面目系美女が魅せつける、ギャップ萌えの極地とでも言うような行動、そして言動。これで堕ちない女好きなどいないと、エントマは太鼓判を押した。そして練習通り完璧に演じきったユリの誘惑に──ティアの心臓は停止した。

 

「し、ししっ、心臓が止まってるっす! だ、誰か回復魔法を──!」

「ボ、ボボ、ボクのせいなの!? 回復──ってあなたの専門でしょう! ルプス!」

「そうだったっす!」

「お姉さま方ぁ、落ち着いてぇ~」

 

 悪事を固く禁じられている彼女達にとって、殺人はもっとも忌避すべきものだ。まさか魅了(物理)しただけで死亡するとはこれっぽっちも思っておらず、混乱が三人を包む。そして懸命な回復によりなんとか息を吹き返したティアは、少しだけレベルが下がっていた。

 

「ふぅ……死ぬかと思った」

「いや、死んでたっすから」

「えっとぉ……それでぇ、ハンデは受けていただけますかぁ?」

「わかった。どうせならこれも一時的に貸し出す」

「指輪……いいんすか? まだハンデの内容も聞いてないのに」

「問題ない」

 

 死亡騒動の後、ハンデの内容を確認して頷くティア。条件としてはまず、一人あたり十分間“攻め”の猶予を貰うこと──そして計三十分を耐え抜いた後にティアの反撃が許されること。それまではされるがままだ。そして三人のメイド達は三回まで絶頂しても敗北にはならない。

 

 その二つを勝負に織り込んでほしいという願いを、ティアは問題ないと受けた。あまりにも不利な勝負な上、そもそも『処女』とはいまいちハンデになっていないのだ。女性の絶頂とは男性ほど容易に導けるものではない。男性が物理的な刺激で勃起、射精しやすいのに対し、女性は快感も絶頂も精神的な部分の比重が大きい。

 

 女性の“開発”とはその優位性を逆転させる行為であり、精神的な快感と肉体的な快感を何度も結びつけ、最終的に肉体の反応を精神に及ばせる可逆的な行いなのだ。要はパブロフの犬と似たものだろう。

 

 故に未経験の女性を絶頂に導くというのは非常に難しい。それどころか、そこに愛情がなければ難易度は余計に跳ね上がるだろう。そんな不利な勝負をティアが受けたのは──もちろん勝算があるからだ。当然、指輪を貸し出したのもその一環である。

 

「じゃあエントマ、お願いね」

「はいぃ、ユリ姉様ぁ」

「──ちょっと待つっす!」

 

 そしてユリ達もユリ達で勝算はあった。それはエントマへ頼り切りの、姉としては不甲斐ない計画ではあったが──上手く行けば貞操を散らせることなく勝負が決する、何よりも望ましい作戦だ。

 

 いくつか保険はかけているものの、できれば最初の十分で勝負が決まって欲しい。そんな願いを込めながらエントマへ声をかけるユリであったが、ルプスレギナから待ったの声がかかる。その理由は姉としての意地と、指輪への興味であった。

 

 妹へ任せっきりにする申し訳なさと、不可思議なマジックアイテムへの興味。ついでに言うと『ナザリックの方針転換』で少し溜まりがちな鬱憤の解放だ。ルプスレギナにとって人間とは玩具であり、虐めて楽しむものである。

 

 とはいえ至高の存在にそれを否定されたならば、従う以外の選択肢はない。しかし悪性を持って生まれた彼女からすれば、口には出さずともストレスが溜まるのはどうしようもない。

 

 しかし今であれば──プレイの一環ということで嗜虐心を満足させることができると、そう思い至ったのだ。わざわざ貸し出してきたもので屈服させることができれば、尚更にその滑稽さを嗤えると。

 

「コレ……試してみるっす。エンちゃんの出番はないっすよ!」

「ちょっと、ルプス? 本気で言ってるの?」

「私はぁ、二番目でもいいですけどぉ…」

「どのみちエンちゃんが無理だったら厳しいっすからね。まずは姉から様子見するのが、年長者の義務っす」

「じゃ、じゃあボクが…」

「妹のお願いを聞くのが姉の務めっすよ?」

「──もう。ならルプス……頑張って」

 

 屁理屈をこねる妹に苦笑しながら、ベッド横の椅子に座り込むユリ。エントマも同様に続き、ベッドの上にはルプスレギナとティアだけが取り残された。そしてその状況に──ティアは内心でガッツポーズを取った。それは彼女にとって、もっとも与しにくいと感じたメイドがルプスレギナだったからだ。

 

 それが──()()()()()()()()()()()()()

 

「うぉぉ……ほんとに生えたっす」

「……」

「そんじゃ……うひひ、精々いい声で泣き喚くっす…!」

 

 処女であり、そして今は()()にもなったルプスレギナ。前戯もなしに挿入へ向かったのは、初体験故の未熟さからか──あるいは苦痛を与えることを目的としているからか。とは言え既に準備万端であったティアからすれば、特に問題はない。

 

 そう……問題があるとすれば、むしろルプスレギナの方だろう。性的な知識をあまり持ち合わせず、そして勿論のこと陰茎が生えたことなど一度もない彼女。男性器が女性を喘がせるモノとの認識はあったが──逆もまた然りであると失念していたのだ。

 

「ん……挿入った──……っ…!? う、ぁ…!」

「ん。もっと奥まで」

「あ、ちょ、待っ──!」

 

 ティアの膣内の半分ほどまで挿入したルプスレギナは、その未知の快感に思わず腰を引いた。しかし網にかかった獲物を逃す筈もなく、ティアは両足で器用に彼女の腰を掴み、自身の奥まで引き()れた。

 

「あっ、やっ……は──!」

「…まず一発」

 

 女でありながら女を味わうという未知の領域。ルプスレギナは腰の根本についた尻尾をピンと立たせ、次の瞬間には果てていた。ティアは既に足の力を抜いていたが、それでもメイドは自ら腰を押し付ける。もっと奥に入りたいと、もっと注ぎ込みたいとでも言うように。

 

 ティアはそんな彼女の背を優しく撫で、抱きしめる。ビクンビクンと体を震わせ、長い射精の快感に酔いしれるルプスレギナの顔を優しく引き寄せ、キスをする。帽子がずれ犬耳が露わになり、尻尾も見えてしまってはいるが──ティアは気にも止めず唇を貪り続けた。

 

 ()()()()()()()()()。女性は──突然生えた男性器の快感に抗うことが出来ない。性的な刺激はクリトリスから始まるのが女性というものだが、しかし実のところ男性器ほどの快感を得ることはできない。

 

 女性のオーガズムで得られる快感は実に男性の数十倍と言われるが、そもそも快感の質そのものが違うのだ。頭痛と肩こりを比べるような、そんな頓珍漢な比較である。故に女性が射精の快感を知ると癖になり、男性が女性のオーガズムを知れば中毒にもなる。

 

 それが予想できていたティアは、鍛えた舌技でルプスレギナの口内を蹂躙し尽くした。求めあうように唾液を交換し、ふいに尖った犬歯がティアの舌を傷つけ、二人の口内に血の味が交じる。しかしそれすらも興奮材料となったのか、膣内で柔らかくなっていた陰茎が再び硬さを取り戻していく。

 

「はぁっ、ん、ちゅ──んむっ」

「…はぷ、んっ……腰を、ね。乱暴に振って……おちんちんを出し入れしたら──すごく気持ち良いよ」

「はっ、ふ、ぅ…! うぁっ…!」

 

 唇を貪り合い、唾液の橋がかかり──ティアはルプスレギナの耳元でそっと囁いた。その肉棒は雌穴を乱暴に突くものだと……ゴシゴシと擦れば、さらなる快感を得られるのだと。欲望で湯だった頭にするりと入り込んだその言葉は、即座に腰の動きへと変換された。

 

 ルプスレギナが激しく腰を動かす度に、褐色の艶めかしい胸がぷるんと揺れる。乱暴に覆いかぶさられたティアは、それをしゃぶるように口に含んだ。女性の扱いには手慣れている彼女だ。転がすように舌を動かし、性感帯を煽る。元より名器を生まれ持ったティアは、加えて暗殺技術の一環として伽にも長けていた。秘所を擦り続ける陰茎を器用に締め付け、射精を促す。

 

 二度目の射精は、最初の挿入から五分後のことだった。荒い息を吐きながら叩きつけるように腰を打ちつけ、既に許容量を超えた膣へ精液を注ぎ込むルプスレギナ。射精に伴いピンと張った足が柔らかさを取り戻し、ようやく腰を引いた時──ティアの割れ目から噴水のように白い液体が溢れ出す。

 

「はっ、は──あ、しょうら……勝負らっひゃ……っす…」

「…お掃除してあげる」

「んぅっ──ひ、あぅ…!」

 

 愛液と精液で汚れた陰茎を、躊躇うことなく口に含むティア。弱いところを熟知しているように、舌が艶かしく動き回る。十数秒も経った頃、ルプスレギナの股ぐらには再度立派な剛直がそびえ立っていた。

 

「…だ、だめっす…! そっちからひゃっ、な、にゃにもしないって、やく、そく…」

「……」

 

 残された時間は後一分ほどだ。できればそれまでに一人脱落させておきたいと考えたティアは、口淫を拒否する──口だけだが──ルプスレギナに従い、厚ぼったい唇を陰茎全体に這わせながら、名残惜しそうに引き抜いた。

 

 びくりと身を震わせながら、切なそうにその様子を見ているルプスレギナ。本音は、数センチ先のすぼまった唇へ『自身』を突き入れたいのだろう。存分に出し入れしたいのだろう。しかし僅かに残った理性がそれを拒否しているのだ。

 

 ──そんな彼女を愛おしそうに眺めつつ、ティアは最後の一押しを決行する。拳を握って情欲に耐えるルプスレギナの前に跪き、瞳を潤ませ、蕩けた表情で口を開けた。覗き見える舌が淫らに動き、陰茎の表面から数ミリを這う。確かに触れてはいないため、ルール的にはセーフであったが──しかしラストストローには充分過ぎた。

 

 口元からよだれを垂らし、理性が消え去ったルプスレギナの剛直が、ティアの口内を乱暴に犯す。十数回ほどのピストンの最後、肉棒は完全に喉奥へ飲み込まれ──壊れた蛇口のように精液を吐き出した。

 

「ふーっ! ふーっ! …はぅ、はふぅ……気持ちいいっす…!」

「んっ、じゅるっ、はむっ……ぷはっ……これで三回。私の勝ち」

「──へっ? あっ…」

「ごちそうさま」

「あー……うー……お粗末様っす! ──ぎゃんっ!?」

「ル・プ・ス?」

「あだだっ! い、いやその……だって気持ちよかったんすもん……そうだ、()()()()エンちゃんでもぜひ試してみたいっす──ぎゃわんっ!」

 

 拳骨を二度も落とされたルプスレギナは、涙目でベッドの上から退散した。『ティアをイかせられなかった』だけならばユリもこれほどに怒りはしなかったのだろうが、結果としては『負けようがないはずの十分間』での敗北だ。駄犬の躾としては大変に適当であった。

 

「次はどっち?」

「では僭越ながらぁ、(わたくし)エントマが務めさせていただきますわぁ」

「ばっちこい」

 

 褐色元気娘の後は、可愛いロリ娘かと鼻息を荒くするティア。とはいえ本当に楽しめるのは二十分後だ。まずはあちらの責めを堪えなければならないと、興奮を鎮める。

 

 先程の醜態を見て再度指輪を使用する馬鹿はいないだろう。つまりあと二回戦は攻め手がなく、ただ耐え抜くのみだ。しかし幼子に己をどうにかするテクニックなどないだろうと、彼女はさして脅威を覚えていなかった。

 

 そんな彼女の前に立ったエントマのスカートから零れ落ちたのは……うぞうぞと動く、男性器を模したナニカだった。有り体に言えば、どこかの聖杯戦争に出てきそうなタイプの虫である。

 

「……」

「ではぁ、いきますねぇ」

「…それは、なに?」

「淫虫ですぅ」

「…認めるのは『道具』まで。自分以外の生命体を入れたら、一対三ですらなくなる」

「大丈夫ぅ。私の体を構成する一体として連れてきてるからぁ。人狼のルプス姉様も大丈夫だったんだからぁ、蜘蛛人だって差別なんか……しないでしょうぅ?」

「………わかった」

 

 ()()()もの。エロいもの。痛いこと。忍としてあらゆる苦痛に耐える訓練をしたティアであれば、この程度はまだ許容範囲であった。少なくとも、もう少し我慢すれば美女と美少女三人の処女をいただけるのだ。ルプスレギナの陰茎より二回りも小さい虫の陵辱など、耐えてみせると──そう決意して、背けていた顔をあげる。

 

 ──瞬間、ボタリボタリと粘性を含んだ音が何度も響いた。

 

 それはエントマのスカートから追加された、十数匹の淫虫の音。獲物の秘所へ向かう虫達の這った後には、強力な媚薬成分が含まれた体液が滲んでいる。それでもティアは歯を食いしばりながら──雄々しく吠えた。

 

「淫虫なんかに絶対負けないっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーん、いまどこかで誰かが即堕ち二コマをキメた気がする……気のせいかな? まあ世界には喜びも溢れてるし悲しみも溢れてるし、即堕ちだって溢れてる。きっとその内の一つが変な電波を伝って僕に流れ込んできたとかだろう。今はそんなことより、蕩けた顔でチンポを舐めるレイナースちゃんに集中すべきだ。

 

「んぅ、じゅる、ちゅ……んぐっ!? んぶっ、んっ、んっ──はぁ、あっ…」

「ふぅ……なんかめっちゃ上手くなってないかい? もしかして良い人でもできた? それなら無理にこういうことしなくても大丈夫だけど。人から奪うのはあんまり好きじゃないし」

「はふぅ……あ、い、いえ。またエイ様が伺われた時のために、その……張り型で練習などを…」

 

 マジで? えらい好かれようだな……確かに呪いは治したが、だからといってそこまで夢中になるほどじゃない気もするけど。あれかな、女性は初めての人が特別になるってやつなのかな。まぁ男も男でそんな感情がないとは言えないけどさ。

 

「竜王国での武勇、帝国にも轟いておりますわ。フールーダ様でも治し得なかった私の呪い……それを解呪してくださった時点で、絶大な力をお持ちであると理解はしていました──それでもまだ過小な評価だったのですね」

「ああ、なるほどそういう……ふーん…? 王国じゃ大した噂にもなってなかったってのに、帝国は耳が早いな」

「ふふっ。王国より情報が遅い国家があるとは思えませんが」

「そりゃあ間違いだ。なんだかんだ大きいだけあって、それなりの力はあるよ、あの国。たださ、手に入れた情報を上に報告しない貴族が沢山いるってだけの話さ」

 

 呆れたような、納得したような顔で頷くレイナースちゃん。唇が唾液やら精液やらでぬらぬらとしていて、非常にエロティックである。しかしなるほど、竜王国への援助はドラウの穴以外に思惑はなかったが、意外と色んなところでプラスに働いているようだ。直接あってなくとも好感度が上がってるとか、中々素晴らしいね。そしてレイナースちゃんも意外と現金である。

 

「…さて、それで用件はなんだい? 僕にできることならなんでも聞くよ。なんたってレイナースちゃんの頼みだしね」

「まぁ…! ふふ、ありがとうございます。では早速ですが──数時間前、この皇城へ襲撃者が現れ……そして私達は為す術もなく制圧されました。初めは彼女達が乗っていたドラゴンこそが脅威だと考えていましたが、問題はそれどころの話ではなく……たった一つの魔法で私達は敗れたのです」

「…へえ。ちなみにどんな容姿だったんだい?」

「二人の幼いダークエルフ……おそらくは双子でしょう。帝国で盛んに取引されている『エルフ奴隷の売買』をやめ、即刻奴隷を解放せよと要求していました。どちらが正しいかと言えば──ええ、あちらに正義はあると思いますが」

「なるほど、なるほど」

 

 胡散臭っ! 絶対エルフの奴隷解放とか興味ないだろあの双子。まぁ八本指への襲撃と同じく、善行の一環としてやってるんだろうな。

 

 それで? レイナースちゃんは僕に何を望むんだい? 死者はいない、怪我人もほんの少しってんなら、あちら側としても穏便に済まそうとはしてるんだろうし……奴隷云々に関しては君も肯定してるっぽいけど。

 

 …ああ、一応の保険ってことか。確かにあちら側がそれ以上の横暴を通そうとしてきた時、抑止力があると無いじゃ大違いだ。

 

 うーん……どうしたもんかな。『自分以外の別人』としてナザリックへ接するならともかく、『運営』としてはあまり近付きたくない……というより会話をしたくないんだよな。まあでもレイナースちゃんの頼みだし、仕方ないか。

 

「オーケー。じゃあ案内してくれるかい?」

「はい! 今は皇帝陛下と交渉をしている最中ですわ……おそらく割り込んでも問題はないかと」

「『皇帝の選択肢を増やす』ってことね」

 

 そういやフールーダお爺ちゃんはなにをしてるんだろう? 部屋の中に入ったら、マーレちゃんのおみ足をペロペロしてたなんてことになったらどうしよう。え? ああ、交渉そっちのけになりそうだから四騎士の三人が見張ってるのか。まぁその気になれば障害にもならなさそうだけど……取り敢えずまだ理性は保ってるのね。

 

 さてさて、部屋の前についたが──もちろん見張りが何人もいる。通ろうとするレイナースちゃんを止めようと奮闘しているが、実力的にも権力的にも難しいようで、ちょっと涙目になっている彼らが少し哀れである。がんばえー、みはきゅあー……あ、諦めた。

 

「失礼いたします、皇帝陛下」

「…誰も入るなと命じておいた筈だが。四騎士の地位にこだわる必要もなくなって、従順さも失ったか? ──答えろレイナース」

「そのようなことは。先程申し上げた『どうにかする術』がこちらの御方──ウン=エイ様でございますわ。あとは陛下次第かと」

「──やあジル! 久しぶり! 元気だったかい?」

 

 とりま、一発からかってみよう。しかしなんともまあ、イケメンである。今の僕なら負けていないが、アバターじゃなければ横に並びたくないレベルだ。さあさあ、どう出るのかな? ──ってジル君が反応する前にアウラちゃんとマーレちゃんが片膝をついた。なにごと?

 

「ウン=エイ様。あたしはギルド『アインズ・ウール・ゴウン』所属、階層守護者『アウラ・ベラ・フィオーラ』と申します」

「お、同じく……『マーレ・ベロ・フィオーレ』です」

「我が主、至高の御方がお会いしたいと申しております。どうか我等が拠点『ナザリック』へ招待させていただけませんか?」

 

 …! 片膝をついたマーレちゃんのスカートの奥が見えそう……もうちょい視線を下げれば──って何を考えてるんだ僕は。あの奥には穴じゃなくて棒があるのみだ。どれだけ可愛くとも男の娘はホモって武蔵さんも言ってたじゃないか……ってそうでもなくて、だ。どう答えたものか……などと逡巡していたら、先にジル君が言葉を発した。

 

「やあ、エイ。こちらこそ久しぶりじゃないか……君も元気だったかい?」

「うぇっ……し、知り合いだったの…? や、やば…」

「ど、どうしようお姉ちゃん…」

 

 おおぅ……機を見るに敏。こちらの冗談に乗っかって友人の振りをするジル君。あわよくばそのまま友人にしてしまおうと言った魂胆だろうか。クレマンティーヌとは役者が違うなぁ。

 

 実力を傘にきて交渉していた二人が狼狽えるのを、横目で楽しそうに見てる。性格悪そう。けどなぁ……将来ハゲるかもしれないとなれば、僕は彼に優しくせざるを得ない。だって可哀相だし。

 

「元気も元気、大元気さ。この前アルシェちゃんが虐められたって聞いたけど、僕は全然気にしてないぜ」

「ふむ……フルト家の娘と知り合いだったのか。今は魔法省で仕事をしていた筈だな。わかった、便宜を図っておこう」

「サンキュー、ジル」

「なに、気にするなエイ」

 

 どこまでこの茶番は続けるべきなのだろうか? まあ実は友人じゃないよって二人に暴露しても、それはそれでユーモアな感じに持ってくんだろう。まったく、できる男は違うぜ。ただしハゲ(可能性)である。この一言だけで許せちゃうんだから、実はハゲってすごいんじゃないか?

 

「さて、と……アウラちゃんにマーレちゃん」

「はっ、はい!」

「悪いけど招待は断らせてもらうよ。モモンガさん……今はアインズさんだっけ? そう、あの人が僕に会えば絶対に聞くことが一つある。僕は『運営』としてそれに答える義務があるけれど、それをアインズさんの耳に入れるのは時期尚早だと思うんだよね。それがどっちにとっても無難……じゃないかな、うん」

「…? あの、アインズ様のことをご存知なんですか?」

「そりゃあ有名人だしね。ところで、アウラちゃん達は僕のことをどう聞いてるんだい?」

「え、えっと……『ユグドラシル』を創造した神様だと聞いています……僕達にとっての至高の御方のようなものだと」

「ふぅん…? そりゃまた過分な評価を──いや、違うか」

 

 とにかくナザリックのシモベ達って他者を侮りまくりのアナドリストが多いからな。そうでも言っとかないと、どんな無礼を働くか解らない……的な考えでギルマスが盛りまくったんだろう。どちらかと言うとナーベラルちゃんやらアルベドちゃんへの牽制や対策なのだろうが、アウラちゃん達はみごと鵜呑みにしてしまったと。

 

「あ、あの……アインズ様が聞きたいことって…」

「んー……君らに言うのも大概なんだけどなぁ。でも会った以上は──……うん、じゃあこうしようか。一つ質問をするから、その答えによって僕も言うかどうか決めるよ。ただ、どっちにしてもギルマスへ『それ』を報告するのは禁じるけど。どうする?」

 

 顔を見合わせて迷っている二人。正直シリアスな雰囲気は大嫌いなんだけど、こればっかりはなぁ。僕が名詞として『ウン=エイ』を名乗っているのは、多少なりとも『運営』であり続けたいと思っているからだ。

 

 だからこそ、プレイヤーであるあのギルマスが『Question』を提示したならば、『Answer』を返す義務がある。いわゆる、運営への『Q&A』だ。まぁGMコールを無視してるあたり、非常に無責任な義務感だけども。

 

「…質問を先に聞いてもいいですか?」

「オーケー。『アウラ・ベラ・フィオーラ』『マーレ・ベロ・フィオーレ』……君達はギルドマスターである『アインズ・ウール・ゴウン』と、創造主である『ぶくぶく茶釜』──どちらがより大切だい?」

「なっ──!」

「…っ!」

 

 揃って体をビクリと震わせる双子ちゃん。まあ意地が悪い質問だということは理解しているんだが、いかんせん先にこっちを聞いとかないと別の問題が起きちゃうし。ぶっちゃけると、NPCは創造主を優先するんじゃないかとは思ってるんだけど──さて、いったいどっちなのかな。

 

「な、なんでそんなこと…っ!」

「質問に対する質問はマナー違反だぜ」

「…こ、このっ…! だいたいなんでぶくぶく茶釜様のことを──」

「お、お姉ちゃん!」

「あっ、うぐ…! し、失礼、しました」

「別にその辺りは気にしなくていいけど。普段通りでお好きにどうぞ。そもそもギルマスが言ってる僕の人物像も、かなり誇張されてるしね。プロジェクト初期から居た訳でもないし、『創った』んじゃなくて『管理してた』が正しいかな? ──そう、絶対の神様なんかじゃあない。もしそうなら、ユグドラシルはまだ存続してる」

「…?」

 

 僕が紛れ込んだところで、十二年という寿命はなにも変化がなかった。手を抜いていたわけでもないし、なんなら睡眠時間を馬鹿みたいに削ってまでイベントを計画したことだってあった。それでも結局、僕たちが無能だったせいでサービス終了となったのは、疑いようのない事実である。神様なんて言われたら逆に貶されてるのかと勘ぐっちゃうね。

 

「──対等さ。僕達は世界の法則を管理して、プレイヤーに提供してた。でもそれは上位者からの施しじゃなくて、プレイヤー側から対価を頂いて……それで僕達の生活も成り立ってた。僕達がいなきゃ彼等は存在できなかったけど、彼等がいなきゃ僕達も存続できなかった。だから……(へりくだ)る必要はまったくない」

「…じゃあ聞くけど! さっきの質問はなんなのよ!」

「そこに関しちゃ言う必要を感じないね。ギルマスを選んでも、茶釜様……んんっ、ぶくぶく茶釜を選んでも、それは君らが選んだことだ。どっちが悪いってこともないさ」

「いま『様』って言わなかった?」

「言ってないけど」

「言ったわよ」

「言ってない」

「言った!」

「言った!」

「言ってない!」

「言ったって言ってるじゃないか!」

「言ってないわよ! …ん? あれ?」

「じゃあ問題ないな、うん。さっさと質問に答えなよ、アウラ・ベラ・フィオーラ」

 

 危ない危ない。ぶくぶく茶釜様こと『風海久美(※エロゲ声優名)』様のファンだったってことは知られないようにしなければ──いやまあバレたところで大した支障はないが、なんかちょっとね。というか結構な有名声優だし、運営の中にも数人ほどファンはいた。ロリ声ばっかり務めるもんだから、僕にとっても大変お世話になった人物である。

 

「う、うぅ…」

「…あぅ…」

「別に悩む必要はないんじゃないか? 本音で言やいい。そもそも正解なんてないし、僕がどっちの答えでどう答えるかを君達は知らないわけで。わざわざ『君達にとっての不正解』を暴露するほど悪趣味でもないし。さ、返答は?」

 

 散々悩みぬいた彼女達は──最終的にギルマスを選んだ。正直とても意外だったけれど、『遠くの親戚より近くの他人』みたいな感覚なのかな? まぁ茶釜様がいればまた違う答えになりそうな、揺蕩う感情ではありそうだ。単純にギルマスを選んだ方が聞きたいことを聞けるという思惑もあったのかもしれない。別に嘘をつくなとは言ってないし、見知らぬ僕に本音を吐露する必要性もないしね。

 

「──そうかい。なら……大丈夫かな」

「…っ!」

「…ギルマスのことは大切かい?」

「あ、当たり前でしょ? そんなの聞かれるまでもないわよ」

「自分がどれだけ傷ついても、ショックを受けても、ご主人様を優先できる?」

「で、できます……それが僕達の存在理由ですから」

「──そう。なら運営として断言させてもらう。ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』メンバー……『至高の四十一人』は、ギルドマスター『モモンガ』を除いて誰も居ない。これからこの世界に来ることもない──未来永劫、君達が創造主と再会することは叶わない」

 

 ──ギルマスが必ず僕に問い掛けてくるであろう質問。けれど、きっと耳にしたくはない真実。

 

 あー……やっぱ泣くよね。正直こういうことを伝えるのは、アルベドちゃんやデミデミ……最悪パンドラ辺りが適当だろうし、精神年齢も幼気な彼女達に伝えるべきではなかったような気もする。とはいえNPC達で共有すべきことでもあると思うし……あー、こういうしがらみが嫌だからリアルと決別したってのに、結局ついてまわるのか。自分以外の他人と接する以上、当然っちゃ当然なんかね。

 

「…なんで僕がこれを伝えるかわかる? それと“時期尚早”って言った意味も──なぁ、泣くなよ二人共。泣いたって何も解決しないし、僕がこれから言うことを実践しないとギルマスまで消えちゃうぜ」

「…!」

「…っ!」

「今あのギルマスが支配者として君臨してる理由は──まぁ君達のためだ。正しく言うなら、君達を創った仲間を想うからこそ、かな。仲間への執着が彼の原動力と言ってもいい。だからこそ、もう二度と会えないと知った時どうなるかは僕にもわからない」

 

 自暴自棄になるのか、それともNPC達への責任感が勝つのか……どっちにしても、生きる気力がだだ下がるのは確かだろう。それがアンデッドになって変容した精神にどんな変化をもたらすのか、僕にだってわからない。

 

「だから君達が頑張らなきゃいけないわけだ」

「どういう、こと…?」

「メンバーによっては十年以上も付き合ってきて、育くまれた友情。それを今度は君らが育てろってことさ。ギルマスにとって君達こそが、()()()()()大事になれば……真実を知っても問題ないだろ? …ついでにそれは、主とシモベの関係のままじゃ難しいってことも理解しておいてほしいね」

「そ、そんなの…!」

「できるわけがないって? 親への不義理から? それとも主人への不敬から? そんなのどっちも君らの言い訳だろ。状況を知れば、ギルメン達は間違いなくそれを君達に望む」

「…っ、なんであんたにそんなこと…!」

「『運営』だからだよ。それ以上に──まぁ、『アインズ・ウール・ゴウン』のファンだからってのもある」

 

 …さて、これ以上言うことはない。後はもうNPC次第ってとこだろうし、最低限の義理は果たしたと言える。そもそも絶対に言う必要があったって訳でもないんだよね。アルベドちゃんやらシャルティアちゃんが妻の座を狙っている以上、何十年後かには『NPCとギルメンの価値』が逆転してる可能性は大いにあるし。

 

「…あ。ジル、レイナースちゃん、さっきの問答は他言無用で頼むね」

「ああ、わかっているとも。というより、そもそも何のことを言っているのかまったく理解できなかったからな」

「まあそうだよね……それじゃ、後は……というか僕なにしに来たんだっけ? …ああ、エルフの奴隷云々だっけか」

 

 正直なとこ、目の前で酷い目にあってたりしない限りはそこまで気にしないけどね。救おうとすれば大抵はできちゃうからこそ、線引きは必要だ。関係ない人間を気にしてたらキリがないし、それを冷酷だとも思わない。

 

 倫理だの人権だのと宣う人達も、貯金や給料をはたいてまで後進国へ支援したりしないよね。自分が質素な暮らしをすることで、遠い国の貧しい子どもたちが救われると知っていても、そこまではしない。人間なんてそんなもんだと思うし、それでいいとも思う。

 

「ま、若干僕のせいでもあるみたいだし……それ関係で掛かる費用は僕が払うよ。概算が出たら教えてくれる?」

「…いいのか? かなりの金額になるが」

「気にしないでくれよ。これから君に待ち受ける過酷な運命(ハゲ)を思えばこそ、僕は惜しみなく手を差し伸べるのさ」

「──それは神からの警告と受け取るべきか?」

「うん。いずれ髪から警告が出ると思うよ。兆しを忘れずにね……人はそれを、いつも気付かない“ふり”をする。勘違いだと信じるんだ──予兆は必ずあるのに。“鏡は嘘をつかない”。ジル、君にこの言葉を送るよ」

「…肝に命じよう」

 

 肝じゃなくて頭皮に命じておくべきだと思うけど……まあいいか。双子ちゃんたちは──まだ俯いたままか。うーん……なんか罪悪感。仕方ない、今の彼女たちに効くかはわからんが、茶釜様グッズでもくれてやろう。ついでに動画でも見せたげようかな? ピンクの肉棒がうねうねと戦闘してるとこって……元気出るのかな。

 

「アウラちゃん、マーレちゃん。ちょっとこっちにおいでー」

「な、なによ…」

「は、はい…」

 

 懐からピンクの肉棒を模したぬいぐるみを取り出し、二人に一つずつ渡す。実に卑猥だ。目を輝かせた幼女達がピンクの肉棒を大事そうに抱きしめているのは、なんとも言えないエロさがある。ジルとレイナースちゃんがドン引いているが、これが彼女達の創造主なんだから仕方ないだろう。

 

 その後は『ナザリック大侵攻』の動画を全員で鑑賞し、僕はその間アウラちゃんを膝上に乗せ、尻の感触を堪能した。常軌を逸した戦闘風景にジルが唸り、レイナースちゃんが乾いた笑いを零していたのがちょっと面白かった。まぁ期待した通りの反応だけども。

 

 茶釜様のタンクとしての活躍っぷりや、公式チートと言われたギルマスの虐殺コンボを見て大興奮の双子ちゃんたち。まあ元気が出たようでよかった……ちょいちょいお触りできて、僕の息子も元気になったが。

 

 ──ん? 誰だ? この反応は……カルカちゃんがお呼びのようだ。はて、約束の日はもう少し先だった筈だけど……まあいいや。褐色ロリエルフのお尻でいきり勃ったチンポを、ロイヤルマンコで鎮めてもらうとするか。

 

 じゃあね、双子ちゃん達。さっきの事はちゃんと皆に伝えて、全員がギルマス()大切になれるようにね。それがたぶん……誰にとっても幸せなことだろうし。




えらい長くなった上にいまいち面白く書けた気がしないな…

次はたぶん、頭からっぽで読めるエロメイン回になると思います。


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10話

 ナザリック地下大墳墓──執務室。この部屋の使用率がもっとも高い、アインズ・ウール・ゴウン最高峰の頭脳を誇るNPC『アルベド』。部屋の扉を開け、椅子に座り、ほうと一息をつくその佇まい一つとっても『優雅』そのものだ。

 

 しかしその雰囲気も長くは続かず、次第に口元が歪に曲がっていく。腹を押さえてくつくつと嗤い、机の表面を掻き毟りながら、息も絶え絶えに狂笑は続く。なぜ彼女がこれほどに喜んでいるかと言えば──それは先程、主に隠れて行われた『守護者会議』で語られた内容に起因する。

 

 彼女にとっては、まさに慶賀の至り。“至高の存在”が現存せず、そして未来においても帰還しないという事実が、彼女を喜びに打ち震わせているのだ。

 

「くふっ、くふふっ──アッ……ハハハ! アインズ様が『絶対』であると仰った『うんえい』が! 奴等の帰還を否定した! 断言した! ならばもう無駄な心配をする必要もない……くふっ、アインズ様のお心が乱れることもない。それに、ふふ……明らかに私達を『贔屓』しているじゃない? なんなのかしら、何に由来する感情なのかしら? アインズ様の御威光のおかげなのか、それとも──いえ、今は考えても意味はないわね」

 

 ただただ創造主達の不明を喜び、祝うアルベド。彼女はNPCの中で唯一『至高の存在』を憎む者であり、捜索部隊を装った『抹殺部隊』まで編成するほどに異端なシモベである。とはいえ運営が創造主達の帰還は有り得ないと断言した以上、その部隊も彼女にとっては既に無用の長物だ。戦力のほとんどを撤収させ、上辺を取り繕う程度にすべきかと考えているほどに。

 

 アウラとマーレから語られた真実に、守護者達は揺れに揺れた。真偽に揺れる者、嘘に違いないと激高する者、アインズに報告すべきだと提言する者。しかしその全てを抑え、運営の言う通り『自分達が主の大切になるべき』だとアルベドは主張した。

 

 その考えは不敬だと罵る者達へ、彼女は伝家の宝刀をきった。『アインズ様がお隠れになってもいいの?』と。その言葉はナザリックのシモベにとって何よりの毒であり、恐怖だ。アインズが『絶対の存在』だと断じた『うんえい』の言葉を利用し、アルベドは守護者達を懐柔していった。

 

 そもそもの話、彼女の言葉に嘘は無い。主へ不用意に真実を告げる危険性は言わずもがな、アインズ・ウール・ゴウンを永遠としたいならば、忠誠を捧げ続けたいと言うならば、どのみち大切に()()()()()()()いずれ見限られる。

 

 彼女の歪な忠誠も、仲間たちへの裏切りの感情も、この件に関しては大した意味を持たない。むしろ至高の存在の不帰が確約された以上、無用な軋轢が無くなったと言えるだろう。後は正妻戦争を勝ち抜くだけの、シンプルな構図になったとも言える。

 

「指輪も手に入れたことだし……ふふ、順風満帆ね。後はシャルティアの邪魔が入らないタイミングでアインズ様としっぽり…! く、くふぅーー!」

 

 幸せそうにくるくると回るアルベド。フリルの付いたスカートがひらひらと揺れ、太ももだけが露わになる扇情的な衣装がエロスを醸し出す。胸元がこれでもかとはだけた上半身は、豊かな双丘が零れ落ちそうなほど震えていた。

 

 ──そんな光景を見ながら、机の上で堂々と自慰に耽る変態が一人。ご存知、元ユグドラシル管理者『ウン=エイ』である。絶世の美女が露出の激しい衣装で踊っているのだから、性欲を刺激されるのは当然とも言えるだろう。完全に自身を不可知にできるからこその、世界一自由なオナニーである。

 

 とはいえ、これがオナニーであるかは難しいところだ。陰茎をいきり立たせ、右手を上下運動させているのは普通だが──手に握るものはオナホではなく、レンズの入っていない虫眼鏡を思わせる何かだ。

 

 その穴に剛直を出し入れしているものの、穴に挿れた先から()()()()()しているのは──つまり、そういうことである。よくある転移オナホールと言うべきだろうか。《転移門/ゲート》を利用したリアルオナホール──ひみつ道具風に名付けるならば『どこでも肉オナホ』とでも称すべきマジックアイテム。

 

 転移先は任意で選択可能であり、現在はドラウディロンの膣へと繋がっていた。ちなみに彼女は現在、会議の真っ最中である。喘ぎを我慢しながら必死に問答を繰り返し、小刻みに絶頂しながらエイへの怨嗟を心の中でぶちまけていた。

 

 ロリ女王の幼膣を使用し、絶世の美女で見抜きする──これほど贅沢なオナニーがこの世に存在するだろうか。抜かずの三連発でドラウディロンの小さな子宮が満たされ、ようやく一息ついたエイ。愛液で泡立った秘裂から剛直をズルリと抜き、ズボンを上げながら不可知化を解いた。

 

「ふふ、くふっ──…っ!? なっ…!」

「あ、お邪魔してます」

「…! ──勘違いでしたら失礼……もしや『ウン=エイ』様であらせられますか?」

「…秒でそこに行き着くって、どんな思考速度なんだ? そりゃあまあ、ナザリックのセキュリティを抜いてここまで来てる時点で想像はつくにしても……ま、僕には関係ないからいいけどさ。ギルマスの苦労もわかるねこりゃ」

「…『ウン=エイ』様におかれましては──」

「アウラちゃんから聞いてない? 別に謙る必要はないし、そもそもそんな大した人物でもないよ。そのかわり、僕は誰にも謙らない。その辺の乞食でも、君でも、あるいは君を創ったタブラ・スマラグディナであっても同じように接するから」

「かしこまり──いえ、わかったわ」

「…形だけでも怒った方がいいんじゃない? 『我が創造主を乞食と比するか!』みたいな」

「あなたはアインズ・ウール・ゴウンのことを随分把握してるんでしょう? 取り繕う必要は感じないわね」

「んー……見透かされてるなぁ……ま、能力の方はともかくオツムの方はどう足掻いても敵わないんでね。変な比喩表現とか使われても気付かない可能性があるから、解りやすく丁寧な会話で頼むよ」

 

 胸元やスリットに向けられるだらしない視線に、アルベドはエイの本質を早々に看破したのだろう。上辺だけの敬意は放棄し、対等に向き合った。彼女の瞳には僅かながらの警戒が浮かんでいたが、ナザリックの利益にせんがための友好的な振る舞いは忘れていない。アインズからもたらされた情報──『そもそも勝ち負けを競うような存在ではない』という言葉は、彼女もしかと理解しているのだ。

 

「それで、なんの用かしら? アインズ様と顔を合わせるのはずっと先だと──さっきそう聞いたけれど」

「そうだね。少なくとも誰かしらがギルマスと結婚するくらいにはならないと、危なっかしくてさ。ちなみに運営である僕の目から見て、もっとも正妻に近いのは…」

「…! ち、近いのは?」

「…聞きたい?」

「聞きたい!」

「オーケー。じゃあおっぱい一揉みで一文字明かそうじゃないか」

「殺されたいの?」

「じゃあお尻……あ、ウソウソ。そのキツイ目やめて。美女の怒り顔って怖いぜ……ほら、ちょっとあわよくばと思っただけだからさ。君のアイン──モモンガさんへの執着は誰より知ってるとも」

「…なら早く本題に入っていただけるかしら? 私も暇じゃないのよね」

「ああ、そうだった。いやぁ、僕も別に来たかったわけじゃないんだけど……ティアちゃんが指輪を奪われたって聞いてさ。たぶん君かシャルティアちゃんの指示だろうなって思ったんだけど、どう?」

「…っ!」

 

 エイの言葉に、ぎくりと体を揺らすアルベド。彼女も『マジカル☆イウェン』と『ウン=エイ』に関係がある可能性は視野に入れていたが、嫌な予感が当たったとでも言うように、背中から冷や汗を垂らす。

 

「…正当な勝負の結果よ」

「ああ、別にそれはいいんだよ。あんな指輪いくらでもあるし。問題は用途に関してなんだけどさ……もしかしてギルマスに使おうとしてる?」

「──ええ。この指輪さえあれば、モモンガ様に私の初めてを捧げることが…!」

「あー……それさ、『女性にチンコを生やす指輪』であって、男にとっては意味ないんだけど。じゃないと二本生えて気持ち悪いことになっちゃうし」

「…っ!? そ、そんな…」

「それを伝えに来ただけだから。じゃね」

「ま、待ちなさ……待って! …貴方は神にも等しい存在なんでしょう? だったらモモンガ様にも効果のあるマジックアイテムを作ることもできるわよね…! そうよね?」

「んー……そうだね。作れるし、それ以前に持ってるし」

「なら! 是非! 譲っていただけないかしら! 私にできることなら何でもするわ!」

「じゃあいっちょ一揉み」

「それはイヤ」

「…ワガママだなぁ。まあ無理強いはしないけど……対価なしに何かを得ようとするのはよろしくないぜ。そういう奴は、大抵どっかでツケが回ってくるもんさ」

 

 エイは『女性に優しい男』ではなく、『ヤれる可能性がある女性に優しい男』である。指一本すら触れそうにないアルベドへは、大した配慮も見せない。アインズ・ウール・ゴウンという括りが無ければ、積極的に話そうともしないだろう。

 

「…貴方は女性と交わるのが好きなんでしょう? プレアデスのことも知っているようだし……ええ。あの娘達なら、私が命令すれば抱けるわよ」

「そりゃあ君からの対価とは言い難いね。ついでに言うと、事務的なセックスは嫌いなんだ」

「…あくまで私が体を差し出すべきだと?」

「それも違うかな。内心で嫌がられてるセックスはもっと嫌いだし」

「…ならどうしろと言うの」

 

 苛立たしげに爪を噛むアルベドに対し、にこやかに笑い、右手で肩を抱きつつなだめすかすエイ。眉間にシワを寄せる彼女の耳元に顔を寄せ、いくつかの案を提示する。それは双方にとって利がある、かくも素晴らしき提案だ。

 

 エイの言を聞くに連れ、アルベドの表情からは次第に険しさが消えていく。そして最後には手を取り合い、固い握手を交わしていた。そのまま自然に尻を触ろうとしたエイの右手をツネりつつ、アルベドはにんまりと口元を歪めた。

 

「そんじゃ、よろしく頼むよ。くれぐれもギルマスにはバレないようにね」

「ええ、まかせてちょうだい」

 

 いくつかの問答の後、アルベドの手の平には鈍く輝く指輪が握られていた。そして机の上には十数個に渡る別の指輪も。『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を嵌めてもいないというのに、当然のように転移魔法で部屋を後にするエイを見送り、アルベドは天を仰ぎながらガッツポーズを決めるのであった。

 

 

 ナザリック地下大墳墓が支配者『アインズ・ウール・ゴウン』の貞操や如何に──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、カルカちゃんに呼ばれて遥々聖王国までやってきた訳だが……何故かレメディオスちゃんと決闘をすることと相成った。レメディオスちゃんてほんと頭レメディオス。まあ剣で語るタイプの人だってのは解ってたし、この展開も可能性としてなくはないとも思ってたけどさ。

 

 しかし……なんというかアレだな。僕にとってリアルになった以上、キャラをキャラとしては見ていないんだけど──それにつけても知識にあるよりずっと馬鹿っぽい。カルカちゃんや妹が存命かつ安全であれば、実はこんな感じなのかね。まあ実際にずっと険しい性格だったのなら、彼女を信望する者も少なかったろうし、平常時はきっと問題ない人なんだろう。

 

 追い詰められると下を虐めちゃう人って考えると、若干なんとも言えない感があるけど……まあ可愛いからいいか。ちょっとムチムチ気味の二の腕がエロい。贅肉じゃなくて筋肉なんだろうけど、ムキムキの女の子でも触ったら意外と柔らかいもんだ。むしろ良質な筋肉であれば、男女関係なく柔らかいってどっかの格闘漫画で言ってた。

 

「…」

「どうした、臆したか? であれば、そんな軟弱な男にカルカ様を任せることはできんな」

「いやさ、いきなり呼び出されて決闘だなんだってちょっと意味不明だと思わない?」

「思わん。カルカ様に相応しい男かどうかを見極める必要があるからな」

「いや、そこだよそこ。なんで上から目線なのさ。例えば君がいきなり誰かに呼び出されてさ、『お前がカルカ様の側近に相応しいかテストしてやろう!』とか言われたらどう思う?」

「たたっ斬る!」

「だろ? じゃあ今の僕の気持ちも解ってほしいんだけど」

「むっ……まあ、そうだな。少し待て」

 

 あ、意外と素直。しかし少し待てってどういうことだ……レメディオスちゃんがテクテクと向かった先には、観戦しているカルカちゃんとケラルトちゃんがいる。姉の踵返しになにやら焦っている妹ちゃん……というか国の重鎮たちが護衛もなしに何やってんだろ。まあ彼女達より強い護衛なんていないだろうから、意味ないのかもしんないけどさ。

 

 ふむふむ……どうやらレメディオスちゃんが僕に挑んできたのは彼女の差し金だったようだ。そういや腹黒だのなんだの言われてる娘だったっけ? 姉を介して僕を探ろうとは、中々にいい根性である。しかしレメディオスちゃんが馬鹿正直に『アイツの言葉にも一理あるぞ。どうするケラルト』などと聞いているせいで全て台無しだ。アホ可愛いなぁ……あ、こっち戻ってきた。

 

「あー……カルカ様は……えーと、やん……やんとご無き? 身分のお方であり、どこの馬の骨とも知れぬ輩が近付くのは……ん? どうみても人間の骨格だぞケラルト……じゃなかった、とにかく私と戦え! ウン=エイ!」

「えぇ……もうちょっと頑張ろうぜ。そんなんだから皆に嫌われるんだよ?」

「私は嫌われてなどいない!」

「まあそこは置いとこう。とにかく僕の方には戦う理由もなけりゃ、メリットもないわけだよ」

「むぅ……少し待て」

 

 また聞きに行っちゃったよ。というか最初からケラルトちゃんが話した方が早くない? そんなに裏方に拘りたいのだろうか。彼女だって五位階だか六位階まで使えるんだから、レメディオスちゃんに比べて弱いってこともないだろうに。あ、戻ってきた。

 

「待たせたな。さっき言っていたお前の『メリット』の話だが……『勝負に負けた方が、勝った方の言うことをなんでもきく』という条件でどうだ。我が聖剣『サファルリシア』にかけて、約束は必ず守る」

「…へぇ?」

 

 うーん……つまりアレだな。どっちにしろ僕の実力は見れる。そんでもって、こっちが負けたら『弱き者に資格なし』と。あっちが負けたとしても、僕が約束をたてにしていかがわしい事をしようものなら、やはり『卑しき者に資格なし』と言ったところだろうか。なんて腹黒なことを考えるんだケラルトちゃんは。

 

「んー……じゃあこっちも条件をつけようか。君と一緒に、ケラルトちゃんも同時にかかってきなよ。一回でも僕に攻撃が触れたら君達の勝ちでいいよ」

「なに? …貴様、ふざけているのか? 私とケラルトを同時に相手取って勝てる者など、亜人の頭にすらいるものか」

「いやいやいや……というか、カルカちゃんに僕の実力とか聞いてないの? 君の言い方に倣って言うなら、僕に勝てる奴なんかこの世界にはいないと思うけど」

「十位階魔法だの、世界を断つ剣だのというあれか? ケラルトが言うには……あー……恋はもうろく? らしい。まあ私も正直なにかの間違いだと思っているがな」

「恋は盲目、ね。ふぅん……生粋の戦士は見ただけで相手の力量が大まかにわかるそうだけど──君から見て僕はどうなんだい?」

「弱いな。それどころか命のやり取りすら経験しているように見えん。戦う者が纏う雰囲気を、お前は持っていない」

 

 む……レメディオスちゃんの空気が変わった。なんというか、凛々しい感じだ。なるほど、戦いに臨む時の彼女はこうなるのか……一種のカリスマってやつなのかな? これなら確かに部下がついていきたくなる気持ちもわかる。

 

 それに戦闘における部分については、きっちり見透かしてきた。彼女の言う通り、僕のは『戦い』でもなければ『命のやり取り』でもない。結果を得るための作業でしかないし、その過程に意味を見出してもいない。戦士の矜持だのなんだのに配慮はしても、理解はしてないし。

 

「そっかそっか……ま、知ってなお信じずに向かってくるなら、もう言うことはないね。ちゃっちゃとかかってきなよ」

「…っ! ケラルト! いくぞ!」

「えっ、いや、ちょ」

 

 まあ強者の雰囲気なんてのはスキルでどうにでもなるもんだ。《威圧Ⅲ》をパッシブスキルとしてセットすると、あからさまにレメディオスちゃんの目が変わった。無理矢理ケラルトちゃんを巻き込んで向かってくる。

 

 ──まあ秒殺だけども。

 

 超位魔法《天軍降臨/パンテオン》で門番の智天使(ケルピム・ゲートキーパー)を六体召喚し、ケラルトちゃんの戦意を失わせる。最高位ではないが、それに近いレベルの天使だ。優秀な神官であればあるほど、天使の格は理解できるだろう。

 

 レメディオスちゃんの方へは、特殊エフェクト仕様の《次元断切》をお見舞いする──もちろん当たらないようにだが。地が裂け、天が割れる……というのをガチで効果にした一発だ。実のところ、通常のワールドブレイクは実際に受けてみないと威力がわからない。故にこれは『強さを解りやすく感じてもらうためのワールドブレイク』である。

 

 腰が抜けて、ペタンと座り込むカストディオ姉妹。それそれ、それが見たかったんだ。別に無双に興味はないし、調子に乗った相手をびびらせて楽しむ趣味もないが──驚く女の子の顔は可愛いものだ。

 

「まだやるかい?」

「…! い、いや……私達の、負けだ。カルカ様の言っていたことは本当だったんだな…」

「そっか。じゃあ約束も守ってくれるね?」

「へ? あ、ああ……うむ。負けたのだから当然だ。そうだな? ケラルト」

「は、はい……コホン。とはいえ、救国の英雄である『ウン=エイ』様が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ふーん……そういうこと言っちゃうんだ。ケラルトちゃんってば何か勘違いしてない? 僕は清廉潔白な人間じゃないし、そもそも出会ったばかりの聖王女様とセックスするような人間だぜ。そんでもって、カルカちゃんもそれを理解してるって……わかんないかな? 彼女にも真っ先に言ったけど。『英雄として見るな』ってさ。

 

「じゃあセックスしよっか。秘密の部屋へご案内ー」

「なっ…!」

「えっ…?」

 

 強制転移でセックス部屋に二人を送る。残されたのは術者である僕と、ずっと静かに観戦していたカルカちゃんだ。なんとも、勘違いしてくれたものだが──カルカちゃんは別段、僕に依存しているなんてことはない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。仮にも聡明な聖王女で、こういう言い方はなんだが、それなりに歳を重ねた妙齢の女性だ。恋心を覚えたとしても、恋する自分に浮かれていたとしても、そうそう盲目的になんてなるわけないだろ? 仮に僕の命で国が救えるとしたら、躊躇いなく生贄にするくらいには王様として頑張ってるよ。

 

 僕はカルカちゃんを愛してるし、カルカちゃんも僕のことを好きでいてくれてはいるだろうけど……それはそれ。これはこれ。 僕が他の女の子とも関係を持っていることを彼女は知ってるし、そこについては納得してもらってる。

 

 強い男が複数の女性を囲うのは、この世界ならそこまで特別なことじゃない。流石に一国の女王となるとあれだけど、その辺はどうにでもなるのが運営の力だしね。そう、つまり僕とカルカちゃんの関係をあえて言葉にするならば──『エロ仲間』である。

 

「カルカちゃんさ、このシチュはどう?」

「『女王騎士陵辱物語』ですか……確か王女を助けにきた女騎士の話……でしたよね? レメディオスには似合いそうですけれど……うーん…」

「あれ、あんまりかい? この前『TENPA』のローターでオナってた時にオカズにしてたから、てっきり好みのシチュかと」

「っ!? なっ、ななな、なんで知って…!?」

「ほら、僕って超常者だからさ」

「くうぅ…! エイ様と言えど、これは承服しかねます。プライベートというものをもう少し…!」

「まあまあ、それはともかく…」

 

 カルカちゃんもちょっと楽しそうにしてるじゃんね。どんなシチュがいい? …ほほう。やっぱり君ってだいぶエロいよね。幼馴染みの姉妹を巻き込んじゃうとか引くわー。ドン引きだわー。だがそれがいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──どちゅり、どちゅりと、粘液にまみれた肌と肌がぶつかりあう音が響く。もう何百回目のピストン運動だろうか。現実であれば体力も続かないし、そもそも摩擦で皮膚が悲鳴を上げているだろう。しかしここは魔法のある便利な世界。性欲ある限り無限にセックスを敢行できる、素晴らしい世界だ。

 

「あ゛っ! ひぅっ、ん゛、かふっ…! み、見ないりぇ、レメディオス…!」

「カ、カルカ様…」

「あーあー、聖王女様ともあろうものが乱れに乱れちゃって……ほら、処女のレメディオスちゃんに『どう気持ちいいか』説明してあげなよ」

「あ、あう、ん゛っ、エ、エイ様の大きいのが…! お゛っ、おくまで、えぐっ、ぅ゛っ……ぅあっ! ま、またイッちゃ……んきゅぅっ!」

「…!」

 

 ベッドの上で、僕のチンポに突かれて喘ぎまくるカルカちゃん。見ないでと言いつつ、自分から腰を振る様はなんとも淫靡だ。そんなに見せつけたいのなら僕も協力してあげようと、彼女の両足を持ち上げて浮かし、後ろからガン突きにする。結合部がレメディオスちゃん達に丸見えで、およそ『清楚な王女』とはかけ離れた行為だ。

 

「う……あ…」

「…ふぅ。カルカちゃん、お掃除してくれる?」

「んぅ…っ! ふぁ、ふぁい……んっ、じゅるっ…」

「…っ! 貴様っ!」

「なに? 別に無理強いはしてないけど。嫌なら言ってね? カルカちゃん」

「んっ、じゅぶっ、んぶっ、はふぅ……へっ? あ、いまなにか申されましたか? エイ様」

「あ、なんでもないです」

 

 蕩けた顔でチンポに舌を這わせるカルカちゃん。とはいえ催眠状態でもなければ、薬やなんやらで前後不覚って訳でもない。そんな彼女の様子を見せつけられたレメディオスちゃんは、物凄くなんとも言えない表情で、椅子に座り直した。心なしか、太ももをもじもじさせているような気がする。

 

 レメディオスちゃんは高潔な騎士で、カルカちゃんが求める理想を信じ、猪突猛進気味に生きてきた女性だ。ということは──このセックスもその一環だと理解できれば、意外とすんなりセックスさせてくれるような気がするんだよね。

 

 カルカちゃんの頭を片手で掴み、喉奥でガポガポとチンポを扱く。世界有数の贅沢な口マンコで、興奮もひとしおだ。そしてそんな状態のまま、レメディオスちゃんに問いかけてみる。

 

「どう? レメディオスちゃん。なにか感想は?」

「…ゲスめ」

「…ふむふむ。なんでゲスだと思うんだい?」

「カルカ様にそのような下品な行為をさせる、貴様の精神性がゲスだと言っている!」

「じゃあどこからが『ゲスな行為』なんだい? まさか男女のセックスが下品だとは言わないよな? 生物の営みまで否定してちゃ、自身の生まれすら疑ってるようなもんだ」

「だ、だから……その……いましているような行為だ! 子作りに、その、口でする必要がどこにある!」

「セックスってのはさ、興奮なしにできるものじゃないんだよ。もちろん互いに気持ちよくならなくていいってんなら、無理やり挿れてさっさと射精して終わりってのもできるけど……そこに愛はないよね」

「…!」

「カルカちゃんがしゃぶってくれて僕は興奮するし、嬉しい。カルカちゃん自身も、しゃぶってる自分に興奮して……ほら、こんなに濡らしてる」

「んぐっ!? ん、ふぅ…」

 

 チンポを夢中でしゃぶるカルカちゃん……そのオマンコを無遠慮に掻き乱す。溢れる精液とは別に、とめどなく分泌されている愛液。いくら処女のレメディオスちゃんでも、違いはわかるだろう。

 

「君がこれに嫌悪を感じる理由ってさ、要はカルカちゃんが『自分の理想』から外れてほしくないって感情があるからこそだと思うんだよね」

「…な、なんだと?」

「綺麗でいてほしい、清廉であってほしい、ずっとそのままでいてほしい……別にそれがダメとは言わないけど、人間って絶対に変化するもんだよ。『不変』は人間じゃない」

「む、むぅ…?」

 

 ぬっ……無理やり屁理屈をこね回して納得させるのが僕の常套手段なんだが──その前にレメディオスちゃんの頭がショートしそうだ。仮にも聖騎士団の団長なんだから、もう少し頑張ってくれよ……仕方ない、もっと簡潔に言ってみるか。

 

「あー……レメディオスちゃん、神人って知ってる? 法国が囲う強者達のことなんだけど」

「知らん。が、なんとか聖典に所属する者達のことであれば、聞いたことくらいはある……詳細は忘れたが」

「簡単に言えばさ、めっちゃ強い人達のことなんだけど……要は昔の神様の血を濃く引いていれば、強者の素養が大きくなるってことだね。まあ強者イコール神人ってわけじゃないけどね」

「…それがどうした」

「僕はそんな昔の神様より強いんだけど、そこは信じてくれるかい?」

「…まあ、な。自分の目で見たことは信じる主義だ」

「オーケー、なら話は簡単じゃないか。カルカちゃんが僕と『こういうこと』をするのは、君達が目指した理想と何も反しないよね」

「…?」

「聖王国は亜人の脅威が大きいし、王国やら帝国よりは人類の窮状を理解してると思うんだけどさ……やっぱ『人間種』って弱いだろ? 突出した個人の優劣はともかく、平均値を取ると本当に脆弱な種族だと思う」

「…」

 

 認めたくはないが、その通りだ──と言った感じで黙り込むレメディオスちゃん。よかった、そのくらいは理解していてくれたようだ。まあ一般的な成人男性の能力値が、既に五倍から十倍近く開きがあるからな。そもそも今滅んでいないのがちょっとした奇跡だろう。

 

「じゃあなぜ人類が持ちこたえられているかって考えると……そう、君みたいな『稀に生まれる強者』のおかげだね。亜人や異形種は平均値が高いけど、突出した強者はあんまり生まれない」

「…ふむ」

「そんでもって、『強さ』ってのは割と遺伝するんだよね。強者と強者の子であれば、素養の高さは折り紙付きだ……僕の言いたいこと、わかるよね?」

「わからん」

「…」

「…」

 

 馬鹿なの? ちょっと障害疑うレベルだぞレメディオスちゃん。ちょっとイライラしてきた……いや、オチンチンがイライラしてきた。ぺちゃぺちゃとチンポを舐めるカルカちゃんを引き剥がし、うつ伏せにして挿入する。響き渡る嬌声が、レメディオスちゃんの口を固く結ばせた。

 

「お゛っ! いっ、んっ…! さっきより、おっき──」

「だからさ、レメディオスちゃん。僕がこうやってカルカちゃんのマンコでチンポを扱いて、子宮にたっぷり注ぐのは──なんのためかって話だよ」

「っ、や、やめ……くっ……カルカ様…」

「…そんなに『これ』は嫌悪することかい?」

 

 セックスすれば子供ができる。そして人類の中では上位の実力を持つカルカちゃんと僕の子であれば、かなりの実力者になる可能性は高い。もしその子がそうでなくても、子孫に覚醒する者が生まれやすいのは確かだろう。加えて、単純な話──僕がカルカちゃんへ援助することによって聖王国は富むだろう。つまり、僕とのセックスはメリットしか生まれない……というのを懇切丁寧に説明してさしあげた。

 

「──つまり! お前のその『見返り』とやらは、カルカ様が体を差し出すことを前提にしているのだろう…! 娼婦と客の関係と何が違う!」

「全然違うでしょ。金銭的な契約が先にあって、体を重ねてるわけじゃないんだぜ。好きな人に贈り物をするのは──邪な感情かい?」

「む、むぅ…」

 

 うーん……なんというか、セックスそのものに抵抗感があるのかな……っと、油断してたら射精してしまった。ひときわ強く膣が締まり、そのまま気絶したカルカちゃん。ちょっとぽっこりしてるお腹がエロい。

 

「ふぅ……他になにか言いたいことはある? 無いなら、そろそろセックスしよっか」

「…! くっ、この…! け、結局はそういう男だな。なにが愛だ、私は貴様のことなど愛していないぞ!」

「んー……僕はレメディオスちゃんのこと結構好きだけど」

「う、うるさい! 近寄るな!」

 

 近付こうとしたら剣の柄に手をかけられた。刃を抜かないのは、正義の所在が彼女の中で揺らいでいるからだろうか。うーん……そこまで嫌ならもういいかね。別にどうしてもしたいってわけじゃないし。こういう言い方はあれだが、雌穴に困ってはいない。なんなら、失神して気の抜けたカルカちゃんのゆるマンでも、抜けないことはないしね。

 

「──はぁ。じゃ、もういいや。そこの扉から戻れるから、帰っていいよ」

「えっ…? い、いいのか…?」

「別に無理やりしたいわけじゃないし。ただ……なんていうかな。僕は決闘なんて受ける気はなかったけど、『なんでも言うことを聞く』って条件を──聖剣に誓ってまで提示されたから、受けた。レメディオスちゃんってすごく可愛いだろ? 男にそんな条件を突きつけたなら、体を求められることも納得づくだと思っただけさ。本気で嫌ならもういいよ……ああ、聖剣への誓いを気にするなら──『そこの扉から出ていくように』。これが僕のお願いってことでいいや」

 

 …というような言い方をすれば、レメディオスちゃんの性格なら案外ヤラせてくれるんじゃないかというテスト。いや、テストじゃないな。最後の悪あがきとでも言うべきだろうか。『そうか! すまんな!』とか言われたら終わりである。

 

「──っ! ………いや、言い出したのは私だ。見苦しい言い訳をした……好きにしろ」

 

 やったぜ。押してダメなら引いてみろ作戦、成功だ。レメディオスちゃんは悲壮感を漂わせながら服を脱ぎ、ベッドの上へマグロのように寝そべった。

 

 …色気の欠片もねえな! もうちょっとさぁ、なんかあるじゃん。なんかもうアレ。ギャルのグループに無理やり援交させられかけてる女の子みたい。

 

「うーん…」

「早く終わらせてくれ」

「う、うーん…」

 

 …いいや。今日は本番までいけたらいいかな、くらいの気持ちでいこう。カチンコチンになったレメディオスちゃんの体に腕を回し、脇腹を強めに突く。小学生がよくやる感じのイタズラだ。

 

「のあっ! …ちょ、やめ…! ば、ばかやめろ──ふあっ!?」

「もうちょっとさー、楽しもうよレメディオスちゃん。認識から変えてみない? セックスってすごくいいもんだよ」

「くっ……あは、くふっ、この…! やめっ、ひぅっ! いひゃひゃっ!」

「おお、聖騎士団団長の弱点がくすぐりだったとは。意外や意外……ん? あ、レメディオスちゃんパイパンなんだ」

「…! ば、ま、マジマジと見るな!」

「いや、でもすごく綺麗だよ。恥ずかしがる必要なんかないって」

「当たり前のように触りながら言うな!」

 

 レメディオスちゃんとじゃ、いまいちエロい雰囲気にならないなぁ。まあ昔の深夜番組のおバカエロっぽい感じにはなるから、これはこれでアリかな。まだオマンコを弄るのは早かったか……よし、緊張もほぐれたみたいだし、次に行ってみるか。

 

「じゃ、キスするね」

「…! あ、ああ……ふ、んっ……ん、ちゅ……んむっ」

 

 柔らかい肌を優しく抱きしめながら、舌を絡めつつキスをする。いつもならそのまま前戯、挿入の流れだが──今日はしつこくいくとしよう。

 

「んっ……はむ、ちゅ……えぅ、んむ…」

 

 背中を優しくさすりながら、キスを続ける。偶に頭を撫でつつ、口内の粘膜を幾度も交換する。息継ぎのタイミングで舌を離し、啄むようなキスを何度も繰り返した。手持ち無沙汰気味のレメディオスちゃんの左手をしっかりと握り、舌と同じように絡め合う。いわゆる恋人繋ぎだ。

 

「んむ、ちゅ、…っは、ぁ……い、いつまでするんだ。したいならさっさとすればいいだ──んぅっ! はむ、ん…」

 

 貪るようにキスを続け……そろそろ二十分くらいだろうか。何度も繰り返したからか、レメディオスちゃんも慣れたように舌を動かしてくれる。真っ赤な頬がなんとなく新鮮で、僕のチンポもガチガチだ。

 

 舌を放そうとすると、追ってくるような動きが心地いい。数度目の撫で撫でも、なんとなく喜んでくれているような雰囲気が漂っている。目の焦点はあんまりあっていない……未体験の刺激を長々と続けられたせいで、少しばかり惚けているようだ。そろそろキスもおしまいでいいかな?

 

「ん、はぅ、んむ……あっ…」

「もっとキスしてたい? それとも、もうちょっと先に……いってみるかい?」

「…っ、お、お前がしたいなら……好きにすればいいだろう。約束だからな──んむっ!?」

 

 まだしっかりしてるなー。仕方ない、根負けするまでキスし続けてやろう。幸いなことに、レメディオスちゃんはペッティング好きな女の子のようだ。カルカちゃんにやったような下品な行為は好きじゃないみたいだけど、愛情を示すようなやり方を好むようだ。意外と純情?

 

「はふ、はぅ……ん、んぐっ……ん、ちゅ…」

 

 既に一時間はキスし続けているだろうか。レメディオスちゃんの目もトロンとしてきて、偶にオマンコを弄ってもされるがままだ。ちょっと唇まわりがふやけてきて、僕の方も限界。ちょっと催眠ちっくな感じで申し訳ないが、この状態の“メス”なら堕ちやすいだろう。レメディオスちゃんが望む愛の理想も、なんとなく把握できた。

 

「は、ひ……んぅ…? あっ、そこ…」

「レメディオスちゃん」

「はぅっ、あ、え…?」

「好きだぜ。愛してる」

「は──んん゛っ!? い、っひゃ……あ、ぅ…!」

 

 蕩けた頭へ染み込ませるように愛をささやき、ぴちりと閉じた秘裂へ剛直を突き挿れた。うわっ、きっつ…! でもキツイだけじゃなく、肉棒を悦ばせるような膣壁のヒダが心地いい。それにマンコでチンポを締め付けつつ、腕と足で僕の体を締め付けるレメディオスちゃんが可愛い。不安がる子供が、全力で親に抱きつくような感じだ。

 

 求められるままにキスをすると、締め付けがやわらぐ。キス=安心感という構図を、先程の長時間のキスで刷り込んだおかげだろう。膣の締りも心なしかやわらいで、今度は優しく包みこむような極上のオマンコへと変化した。

 

 上も下もぐちゅぐちゅと、ぐぷぐぷと、液にまみれた汗だくセックスだ。長く我慢していただけあって、そろそろ射精しそう。腰を強く打ち付けて、ピストンの速度を速める。レメディオスちゃんも女として何かを感じたのか、太ももを絡めて腰を離さない。

 

「膣内に射精するけど──いいよね? レメディオスちゃん」

「ん゛っ! あっ、ひぅっ! いいっ! んぅ…っ!」

 

 言質とったー、っと。最後にひときわ強く腰を押し付け、何も侵入したことのない、まっさらな子宮へと精子を注ぎ込む。その間も舌を絡めた濃厚なキスを続け、中出しと幸福を彼女の脳内で紐付ける。いい感じに堕ちてくれただろうか? 僕としては、予想外に素晴らしいセックスで嬉しい限りだ。

 

「エイ様…」

「あ、カルカちゃん……おはよ。お掃除してくれる?」

「ふぁい……んむ、ちゅ…」

 

 眠るように気を失ったレメディオスちゃんと入れ替わるように、今度はカルカちゃんが目覚めた。ずるりとオマンコから引抜いたチンポを、彼女の目の前に持っていく。精液と愛液にまみれた剛直を嬉しそうに頬張る姿が、なんともエロい。

 

 ──さて、一部始終を別室のマジックミラー越しに見ていたケラルトちゃんのオマンコは……気持ちいいかな? 姉の情事でオナニーしてた妹マンコは、さぞ蕩けていることだろう。レメディオスちゃんと違って、そんなに潔癖じゃないみたいだし……メリットもちゃんと理解してくれるだろう。むしろ国のことを考えて、確実に孕むまで離してくれない可能性すらあるな。うん、楽しみだ。



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11話

え、え……エロはなしです。


 法国秘蔵の虎の子部隊──『六色聖典』。その名が示す通り、それぞれの分野に特色を持つ特殊部隊である。ゲリラ戦に優れた部隊、殲滅戦に優れた部隊、探知探索に優れた部隊など、『国』としてあらゆる局面に対応できることが強みだ。

 

 その中でも特に、戦闘に特化した最強の部隊こそが『漆黒聖典』である。彼等は入隊と共に“席次”を振られ、その後は一般人と同じ生活を送る。しかしひとたび任務を命じられたならば、人類最高峰の実力をもって敵を殲滅する精鋭部隊だ。

 

 隊長である第一席次などは、ユグドラシル換算で言えばレベル八十近くの実力を備え──そして神都の最奥で暇を持て余す『番外席次』に至っては、レベル百へと到達した超越者である。他の隊員達も、レベル帯にして三十から四十になる猛者たちが揃っている。

 

 周辺諸国最強と持て囃される『ガゼフ・ストロノーフ』が、レベル三十に届くかどうかという事実を考えれば、漆黒聖典の異常性が理解できるだろう。しかしだからといって、法国がその強さに増長し、各国に戦争を仕掛けることはない。

 

 彼等は人類そのものの守護者を標榜し、常に種族全体の利益を優先するのだ。法国の上層部などは、もし自らの死が人類に繁栄をもたらすとすれば、喜んで身を捧げるだろう。実際問題として、脆弱な人間種が現状である程度の勢力図を保つことが出来ているのは、法国の力によるところが大きい。

 

 亜人種や異形種が侵略を企めばそれを察知し、迎え撃つ。他国家がビーストマンの餌場になりかければ、聖典の一つを差し向ける──もちろん国家として見返りは要求するが。もし人類にとって不吉な予言が詠まれたならば、たとえ国境を侵してでも確認に向かうこともある。

 

 その過程で部隊が全滅の危機に瀕したとしても、彼等は()()()()で任務が失敗したなどとは思わない。表向きに──そもそも存在が裏ではあるが──最強である第一席次が敵わない吸血鬼が相手だとしても、彼等は諦めない。

 

 ナザリックが階層守護者『シャルティア・ブラッドフォールン』との不幸な遭遇戦は、漆黒聖典を壊滅寸前にまで追い込んだが──その一員たる『占星千里』の予言では、いまだ『破滅の竜王』の危機は去っていないと詠まれた。

 

 あるいはその吸血鬼こそが竜王という可能性もあり、法国は最強にして最後の手段である『番外席次』投入を決断した。聖域に秘された例外の席次──なぜ彼女の存在をそこまでひた隠しにしていたかと言えば、それは『世界盟約』と呼ばれる、評議国との取り決めを破っているからに他ならない。

 

 番外席次の存在そのものが約条を犯しており、それを評議国の竜王に知られたとなれば、国家単位での戦争が起こる可能性は極めて高い。しかし人類圏にヴァンパイア・ロードの血脈か──あるいはそれ以上の存在が放たれたとなれば、事態は急を要する。危険を推してでも吸血鬼の討伐は急務であった。

 

 “化物”が野に放たれたというだけならば、彼等ももう少し静観の構えを見せただろう。しかしそれが吸血鬼ともなれば、放置は有り得ない。仲間を増やし、眷属を作ることができる存在を相手に、時間を与えるほど愚かなこともないからだ。

 

 “中途半端な洗脳状態”が継続しているのならばともかく、討伐されたという情報もなければ、捕獲されたという話もない。忽然と消えてしまったのだ。早期に対象を討伐しなければ、国の一つや二つが滅んでもおかしくはないだろう。

 

 かくして番外席次は、尋常ならざる知覚能力を持つ“真なる竜王”に存在を把握される前に、迅速に吸血鬼を討伐する任務を命ぜられた。そしてそれは彼女にとって──半世紀以上ぶりの外出であった。

 

「ふん、ふん、ふん~」

「遠足ではないのですから、あまり気を抜かれ過ぎぬよう」

「仕方ないじゃない。忙しくとも自由なあなたとは違って、聖域に閉じ込められっぱなしなんだもの」

「…気持ちはお察ししますが」

「心配しなくても、任務はちゃんと果たすわよ……対象を発見できれば、だけど」

「発見した段階で出陣していただくのが、もっとも望ましいのですがね…」

「発見した段階で全滅しないならね」

「ふ、耳が痛い」

 

 破滅の兆しはトブの森にあり──その情報を元に、大森林を捜索する漆黒聖典達。番外席次を筆頭に、隊長である第一席次。第四席次“神聖呪歌”、第五席次“一人師団”、第十一席次“占星千里”、第十二席次“天上天下”。

 

 総勢六名をもって、破滅をもたらす吸血鬼の捜索を行っていた。とはいえ戦力として期待されているのは、番外席次と隊長のみ。他の面子に関しては、能力の強化役、召喚した魔物による総ざらい、占いによる探知、技能による物理的な捜索を担う。

 

「…隊長」

「む、何か見つけたか?」

「…前方、かなり先だが……戦闘音だ。双方、かなりの実力と思われる」

「…ほう──クアイエッセ!」

「ええ。今クリムゾンオウルを向かわせました」

「総員、警戒たい──ちょっ! 勝手な行動は…!」

「ふぅぅーー!!」

「くっ……追うぞ!」

「は、はい!」

 

 “天上天下”が何者かの存在を察知し、報告をした瞬間──隊長の指示を待たず、番外席次が飛び出した。元々人の指示を聞くようなタイプではないが、それにつけても現在の彼女は浮かれているのだろう。半世紀以上も外の世界にいなければ、それも当然の話だ。

 

「…! 隊長! 反対方向からも来ているぞ。四……いや、五人だ。おそらくあちらも気付いた」

「面倒な…!」

 

 逼迫する状況ではあるものの、焦る隊員はいない。この程度のことで動揺していては、法国の暗部は務まらないということなのだろう。なぎ倒された木々を道しるべに、番外席次を追う面々。

 

 ──その先にいた存在は果たして、彼等にとって既知の人物であった。

 

「んー? どっちも吸血鬼じゃなさそう……あれ、なんか見たことある顔」

「──ぅげっ! な、なんでこんなとこに…!」

「戦いの最中によそ見とは、余裕でござるな。それとも増援でござるか?」

「追いついたか──勝手な行動は謹んでいただき……むっ、お前は……クレマンティーヌ? なぜこんなところに」

「うおっ…! あ、あの勇壮な姿…! 白銀の大魔獣…! 隊長、きっとあれは噂に聞く森の賢王──ぜひテイムさせてください!」

「クアイエッセ様、先に妹御のことを気にすべきでは?」

「…ん? はっ……クレマンティーヌ! なぜここに!」

「…ちっ! 相変わらず腹の立つ…!」

「さ、流石にこの人数を相手にするのは厳しいでござるな……戦略的撤退でござる!」

「──隊長、来てるぞ」

 

 各々が思い思いに発言する、混沌とした状況──しかし場が静まる前に、さらなる闖入者が現れる。それはリ・エスティーゼ王国が誇る、五人からなる冒険者チーム『蒼の薔薇』であった。とある目的をもってこの森にやってきた彼女達は、『森の賢王』とクレマンティーヌの戦闘音を聞きつけてやってきたのだ。

 

「これは……どういう状況かしら」

「…ふむ。気をつけろよ、お前たち。あの風貌と、感じる強さ……おそらくエイが言っていた『漆黒聖典』だ」

「…これはこれは、随分と物知りのお嬢さんだ……お嬢さんでよかったかな? ところで、どこでそれを知ったかお聞かせ願いたい」

「隊長、おそらく『蒼の薔薇』です。ニグン殿が以前…」

「ああ、王国のアダマンタイト冒険者か。確かリーダーは王国の貴族……我らの存在を知っていてもおかしくはない──が、一目で看破する理由にはならんな。それに彼女を見られた以上、どちらにしても……ってうおいっ!? どこへ行くクアイエッセ!」

「森の賢王が逃げます!」

「捨て置け!」

「正気ですか!?」

「お前が正気なのか!?」

「おい、どうするラキュース。()()は時間が限られてるんだろう? こんなところで使うわけには…」

「う、うーん……どうしよう。災厄の魔樹を放置するわけにはいかないし…」

「──っ! …その“災厄の魔樹”というのは?」

「トブの大森林の奥深くに眠る、太古の災厄よ。大魔神の一柱……封印が解けかかっているらしくて、私達はそれを止めにきたの」

 

 脱兎のごとく逃げ出した森の賢王を、物欲しそうに見送るクアイエッセ。そんな彼を無視して、ラキュースと隊長が情報交換をし始めた。どちらも警戒は解いていないものの、双方ともに利があると見越してのことだ。

 

「…“占星千里”」

「ええ、おそらくは」

「では吸血鬼の方はまた違う……と。それはそれで厄介だな」

「…っ」

「…? どうかされたか」

「い、いや……なんでもない。その、きゅ、吸血鬼とはなんのことだ?」

「…先日、森の近くで人智を超える強力な吸血鬼が発生した。どこかに潜伏している可能性もある。あなた方は王都を拠点にしていた筈だな……何か知っていないだろうか」

 

 秘匿すべき情報だらけの漆黒聖典ではあるが、件の吸血鬼に関しては、むしろ募るべき情報である。問いかけられたことにこれ幸いと、情報を開示する。そして“それ”に関して、『蒼の薔薇』の一人イビルアイが顕著に反応を示した。それはつい先日、記憶にも新しい“吸血鬼間違い”をされたことによるものだ。

 

「…! まさか、女の尻穴が大好きな変態吸血鬼のことか?」

「お前は何を言っているんだ?」

「い、いや……すまん。じゃなくて、そう、王都でそんな噂を聞いたんだ……少なくとも、難度にして二百五十は下らん……らしい。そうだな? ティア」

「そう言ってた」

「…! 変態かどうかはともかく、強さから考えて間違いないな……王都で間違いないのですね?」

「あ、ああ……いまいち信憑性に欠けるが」

 

 情報の共有は終わり、二つのチームの間に、なんとも言えない沈黙が降り立つ。そんな状況を見て、静観していたクレマンティーヌがソロリソロリと後ずさった。幾度か逃げようとはしていたのだが、その度に番外席次に絡まれていたのだ。

 

「どこへ行くのですか? クレマンティーヌ。意地を張るのはやめて、そろそろ帰ってきなさい。額冠を返し、頭を下げれば神官長も命までは取らないでしょう……それほどに我等の実力は頭抜けているのです。今のあなたの行動は、人類という種族にとって多大な損失ですよ。兄として、私も一緒に頭を下げますから……ね?」

「どの口が言ってんだ…! …つーか額冠はもう取られちゃったし」

「えっ」

「えっ」

「…嘘でしょう?」

「いや、嘘じゃないし……ほら、エ・ランテルの騒動解決した奴。あれ『ぷれいやー』だったみたいでさー、殺されかけちゃった。額冠はあいつがポッケナイナイしたんじゃないかな」

「…クレマンティーヌ? 私はいまとても重大なことを聞いた気がするのですが」

「あ、法国の漆黒聖典として喧嘩売っといたから」

「クレマンティーヌゥゥーー! な、なんということを…!」

「いちいち狼狽えるなクアイエッセ。今なにもアクションがないと言うことは、そもそもクレマンティーヌの嘘か……ああ、『ぷれいやー』の方が信じていないという可能性もある。釈明の機会などいくらでもこよう──今は災厄の魔樹の方が重要だ」

「はっ……ったく、相変わらず憎たらしー。じゃあ──くひっ、『うんえい』って知ってる?」

「へっ?」

「ん? なに?」

「今、エイの名前を…」

「…エイ、『うんえい』……ああ、竜王国の英雄──『ウン=エイ』か。」

 

 法国もまだ把握していないだろうと考え、運営の名を出すクレマンティーヌ。しかしそれに反応したのはラキュース達であり、予想していなかった方向からの返事に、彼女も疑問の声をあげる。そして第一席次の方はと言えば、こちらもクレマンティーヌの予想とは違い、その名前に反応を示していた。

 

 浮浪者暮らしが続き、遂には森ガール(ガチ)にまで身をやつしたクレマンティーヌには、竜王国の近況など知る由もない。そして既に割と名を轟かせている英雄の名を、漆黒聖典が把握していない筈もない。勘違いは絡み合うが──全員が同時に言葉を発しようとした瞬間、地面の揺れと共に轟音が響き渡った。

 

 ──災厄の魔樹『ザイトルクワエ』が数百年の戒めを破り、遂には顕現したのだ。全長は百メートル以上にも及び、枝である触腕は広範囲への攻撃を可能とする。およそ人間に打倒できるような存在ではないだろう。しかし漆黒聖典最強の少女『番外席次』は、それを見て不敵に笑う。

 

「うわー……ふふ、すっごい。あれは私以外じゃ無理か……“番外席次が命ずる”──総員退避」

「──っ! 了解しました。全員撤退だ! …あなた達も逃げた方がいい。クレマンティーヌ、お前は我等と共にこい」

「へーへー」

「お気遣いありがとうございます──ですが、私達の目的はアレを討伐すること。お気になさらず」

「…失礼だが、もう少し身の程を知った方がいい。私一人でもあなた方全員を殺すことなど容易い……そしてあちらの彼女は、そんな私を一蹴するような存在です」

「素の実力が足りていないのは承知の上。でも──私達には勇者の力がある!」

「は、はぁ…?」

 

 魔剣を握りながら、威風堂々と宣言するラキュース。イカれた人間を見てしまったと汗を流す第一席次であったが、その傍にいたクレマンティーヌは、何かに気付いたように眉を上げる。

 

「…あ、思い出した。蒼薔薇のリーダーって、あいつが『好きなタイプ』って言ってた奴か……となると……いまこの状況なら……くくっ……あいつ、()()んじゃないの? ってことはー、逃げられるかな?」

「なにをブツブツ言っている、クレマンティーヌ。まさか逃げられるとは思っていないだろうな」

「──試してみるのもありかなって、さ」

「なに? 貴様……私の実力を忘れたとでも言うつもりか」

「さあねー。くひゃっ……やれるもんなら──やってみなよ」

 

 遠目にも巨大な災厄の魔樹──ザイトルクワエ。その存在に気付いた魔物や動物たちが一斉に逃走を始め、森がざわつく。そしてそんな状況の中、クレマンティーヌと漆黒聖典の間には極度の緊張が張り詰める。

 

 腐っても人類トップクラスの強者であり、同格の隊員相手にやすやすと捕縛されるクレマンティーヌではない。もちろん、第一席次が動けばその限りではないが──それを知っているはずのクレマンティーヌは、目の前の元同僚たちを嘲笑った。

 

「まったく、余計な()()()だ。気を失わせる、お前が担げクアイエッセ」

「はっ」

「ふっ! ──……なっ!」

 

 第一席次が動き始めた、その刹那。クレマンティーヌの体が光に包まれ、槍の柄による一撃を弾く。なんの痛痒も感じていないその様子に、第一席次は初めて動揺を露わにした。

 

「くくっ、どっかの神様がご加護でも与えてくれたのかしらー?」

「…ちっ、これ以上は時間をかけられん。撤退だ!」

「はっ! ──クレマンティーヌ! 帰ってくるのを待っていますよ!」

「誰が帰るかっての。バーカ」

 

 現状の漆黒聖典にとって、クレマンティーヌはそれほど優先すべき対象ではない。得体の知れない力に手こずる可能性を見るや、早々に手を引く決断をした。先程の番外席次の命に従い、撤退を始める。

 

 この場に残ったのは、番外席次とクレマンティーヌの二人のみ。無謀にも魔樹の方へ向かった『蒼の薔薇』を冷ややかに見ながら、番外席次は裏切り者へと声をかけた。

 

「ねぇ第九席次──お前は私が連れて帰るから、大人しくそこで待っときなさい」

「『元』だよ白黒馬鹿女。ろくに人の名前も覚えてられない、その小さな脳味噌に刻んどけ」

「…随分と調子に乗ってるじゃない。それに……どうせころころ変わる名前なんて、覚えていてもしょうがないでしょう? 私が聖域にいる間、どれだけ漆黒聖典の面子が代わったと思っているの?」

「あー……そっかそっか。くっ、ひひ……エルフが父親だから……寿命が永いものねぇ。ごめんなさーい、“強姦魔エルフ”の一人娘さまー」

「──」

 

 クレマンティーヌの挑発に、番外席次は──静かにブチ切れた。ザイトルクワエから感じる威圧感よりも、更に濃密な殺気。それだけで死人が出かねない重圧が場を支配し、当事者達以外の一切の生命体が逃げ去った。

 

「もういい、死ね──なっ…!?」

「さっきの見てなかったのー? ほーんと、お馬鹿さん」

「…っ、くっ、この…! なんで攻撃が通らない!」

 

 大鎌の一撃も、拳での殴打も、果ては頭突きまで試す番外席次。しかし衝撃すら通らない様子に歯を軋らせ、それでも意味のない攻撃を繰り返す。その強さはともかくとして、人生のほとんどを一人で過ごしてきた彼女は、まともな情操教育が行き届いているとは言い難い。感情面で未熟な部分が多々あるのだ。優先すべき敵を放置してまでも、クレマンティーヌを攻撃し続けているのがその証左だろう。

 

「このっ、この…!」

「効かないっつってんでしょー? レイプされて狂った母親に育てられただけあって、やっぱ頭おかしいんだー。神官長も嘆いてたよー? 『なぜあの母親の元に置いたのだ』って。くひゃっ、あははは!」

「──っ! うあ゛あぁぁぁ!! 死ね! 死ね! 死ねぇぇ!!」

「効・か・な・いっての。お馬鹿さ──ぶべらっ!?」

「あ、効いた……覚悟しろオラァァーー!!」

「うげ、ちょ、待っ──」

 

 あまりに酷い罵詈雑言に、流石のご加護も匙を投げたのだろうか。馬乗りになってボコられるクレマンティーヌの悲鳴が、なんとなく哀愁を誘う。とはいえレベル百の拳打嵐を受け生きていられる筈もないのだから、何かしらの力は働いているのだろう。

 

「ふぅ、ふぅ……これくらいで勘弁してやる。私はあいつを倒してくるから、大人しく待ってろ……ん?」

 

 ギャグ漫画のように腫れ上がったクレマンティーヌの顔を見て、ようやく溜飲を下げる番外席次。次は魔樹の番だと後方を振り返るが──彼女の視界に入ったのは、天を貫くほどの巨大樹が地に沈む瞬間であった。

 

「…え?」

 

 それはもう──ラキュースが覚醒したり、その力が仲間に行き渡ったり、彼女自身が魔剣キリネイラムになったり、ネフィリムの秘紋が開放されたり、色々とあったようだが──その全てはクレマンティーヌがボコボコにされている間に終わってしまったようだ。決着がつき、天に剣をかざすラキュースの姿は、まさに勇者であった。

 

「うそぉ…」

「──リグリットが言っていた『蒼の薔薇』か……キーノも随分と強くなってるみたいだけど……何があったんだろう」

「…えっ? だ、誰…」

 

 呆然とする番外席次の後ろに、いつのまにか現れていた白金の鎧。蒼の薔薇の勇姿を見届けた『彼』は、法国の裏切り()()()()の少女へと、優しげに声をかけた。

 

「君は完全に覚醒した神人だね? 随分と前から『世界盟約』は破られていたんだ……残念だよ」

「──っ! し、真なる竜王…!?」

 

 白金の鎧──その操者である、真なる竜王の一人『ツァインドルクス=ヴァイシオン』。彼が発した言葉からその()()を悟り、番外席次は青褪めた。絶対に知られてはならない存在に、自身を知られてしまった。それは戦争の引き金になりかねない、最悪の事態だ。

 

 ──事態は加速していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何事も最初が肝心と言うけれど、僕もその言葉は至言だと思う。むしろ人生は“最初”に支配されてるまであるな。僕が世間一般的ではない嗜好になったのも、小学生の時に初めて見たエロ本がそっち系だったからに他ならない。今でもなんとなく覚えてる。ロリっぽい娘が赤鬼に追いかけられて、ぶっとい金棒で腹ボコされてるエロ漫画。

 

 …よく考えたら父親も大概ってことだし、実は遺伝とかなのだろうか。まぁそんなことは置いといて、何が言いたいのかというと──レメディオスちゃんがキス大好きっ子になったという、喜ばしい事態について。

 

 性体験の“最初”が濃厚なキスで始まったせいか、それが大好きになったようだ。いやね、僕もキスは好きだけど、レメディオスちゃんはそこから先に中々いかせてくれないので妙にもどかしい。昨日の晩に聖王国にきて、レメディオスちゃんとケラルトちゃんと致した訳だが、今日の朝から昼までの間に至るところでキスをした。本番は一発だけなので、色々ともどかしい。

 

「どうした? エイ」

「いや、なんでもないよ。ところでどこに向かってるんだい?」

「さっき言っただろう……修練場だ」

「いや、言ってない。絶対に言ってない」

「む……そうだったか? まあいい、とにかく付き合え。お前ほどの強者となら、きっといい鍛錬になる」

「うーん……ま、いいけどさ」

 

 できれば二人きりでエロい鍛錬でもしたいもんだ。とはいえ無邪気に笑うレメディオスちゃんが可愛いので、言う通りにしてあげたい感が半端ない。本番オッケーでキスNGの風俗嬢がそれなりにいることから考えて、キスが愛情に及ぼす影響は結構あるんだろう。こっちにきて一番キスしてるのがこの娘だし、僕も割と影響されてるのかもしれない。

 

 …あ、修練場って街の外なのね。まあ一定以上の実力になると周りに結構被害が出るだろうし、当然と言えば当然か。レメディオスちゃんの直属ともなると、かなり強い人ばかりだろうし。

 

 僕達の姿をみとめた聖騎士達が、即座に集まって礼をとる。めっちゃバシバシ視線感じるわー。『こいつ誰?』感がすごい。新しい仲間だろうか、貴族のお偉いさんの視察だろうか、それとも……みたいな。

 

 特に前へ出てる二人の聖騎士が、レメディオスちゃんへ微妙な視線を送っている。たぶん彼等が噂の『イサンドロ』と『グスターポ』さんだろうか。おつむがよろしくないレメディオスちゃんに代わって、色々と面倒事を背負っている副長さん達だ。『またアポもなく勝手に…!』みたいな感じなのかな。うん、頑張って。

 

「今日は教導官を連れてきた!」

「いや、聞いてないんだけど」

「いま決めた!」

「そ、そう…」

 

 僕を含め、全員がレメディオスちゃんを胡乱げに見る。しかしこいつらよくこの隊長についていけるな。副長が倒れれば瓦解するんじゃないか? この部隊。まあとりあえず自己紹介でもするか。挨拶は人間関係の基本だし。

 

「えー……ご紹介にあずかりました──いや、紹介されてないな。とにかく『ウン=エイ』と……ん? あれ、ネイアちゃん?」

「あ、え、エ、エイさん…! お、お久しぶりです」

「ここにいるってことは、見習い卒業したんだ? うん、おめでとうネイアちゃん」

「は、はい…! …って、いえ、そうじゃなくて、その…」

「同期に相手がいなくなってねぇ、特別にこっちへこさせてるのさ。あんたが『ウン=エイ』さんか……ネイアが世話になったみたいだね」

 

 おお、ネイアちゃんのお母さんか。にしては目が怖くないな……そういやあれって父親からの遺伝だっけ? 目以外はなんとなく似てるし、ネイアちゃんの可愛い部分はこの人からの遺伝なんだろう。レメディオスちゃんに次ぐ『くっ殺』が似合いそうな女傑って感じ。

 

 さて、彼女が隊員に話した『娘の大成長』と、レメディオスちゃんが話した『自分が手も足も出なかった』という事実は、急に出てきた教導官への反発を零にした。おいおい、なんかこう解りやすい噛ませ犬とかいないのか? 『レメディオス隊長が認めたって、俺は認めねえぜ! 手合わせしろ!』って感じの奴とか。うーん……いないのか。まあエリート部隊にそんな馬鹿がいたら、既に死んでそうだしな。

 

「つーか教導とか言われてもなぁ……ネイアちゃんがちょっと特殊だっただけで、そこまで期待されても困るんだけど。純然たる技術だと、たぶんレメディオスちゃんの方が上だろうし」

「むっ……そんなことがあるのか? あの化物染みた強さで」

 

 ネイアちゃんの場合はさ、職業と合ってない鍛練ばっかしてたから芽が出なかった訳さ。そこんとこをちょっと弄っただけだし……いやまあ経験値もちょっと上げたけど。まぁ今までの無駄な努力分と考えれば、相殺されてるんじゃないかな。

 

 ──とはいえそこんとこを上手く説明するのは、ゲーム脳を一切持たない彼等に対しては、少しばかり面倒だ。

 

「んー……じゃあ、ちょっとばかし講釈を。まず『強さ』には、大雑把にわけて二種類あります。はい、レメディオスちゃん」

「え? あー……け、剣と魔法か?」

「全然違います。というか槍とか拳とか全否定してない?」

「くっ…」

「さて、では強さとはなんぞやと。定義にもよるんだろうけど、これは『肉体』に依存した強さと『技術』に依存した強さにわかれます」

 

 なんかみんなすっごい真面目に聞いてくれてる……レメディオスちゃんだけ難しい顔してるけど。運営チームの一人としてプレゼンしてる時みたいな感覚で、なんだか懐かしくなってくるな。

 

「基本的にこれは『肉体』の方が優位性を持ち、戦いにおいてアドバンテージを得ることができます。おおよそ百段階に分けられるんだけど……まあだいたい十近くも離れるとほぼ勝ち目がなくなるね」

「む、むぅ…」

「あー……わかりやすく言うと……そうだな。たとえばその辺の一般人とレメディオスちゃんが、中身だけ入れ替わったとするだろ? 当然、培った技術は圧倒的にレメディオスちゃんの方が上だろうけど──二人が戦ったとして、どっちが勝つ?」

「む……まあ流石に私の体を使っている奴だろう。いくらなんでも力と速度が違いすぎる」

「だね。とはいえ『肉体』のレベルがそう変わらないなら、重要になってくるのは『技術』の方だ。さっきの例を出すと……レメディオスちゃんの肉体をもった中身一般人と、肉体も中身も揃ったレメディオスちゃん。どっちが勝つ?」

「私だ。百回やって百回勝つ」

「うん、それも間違いないね」

 

 ドヤってるレメディオスちゃんが中々可愛い。さて、言わんとすることはだいたい伝わっただろうか。副長ズは既に理解してくれてるようで、流石。というかこっちにも『レベル上げ』の概念自体はちゃんとあるみたいだしな。

 

「つまり技術を疎かにするのはいけないけど、重要度は肉体面の方が高いわけだね。理解できた? なら次はその『強さ』の上げ方について。『技術』の方については、君達がいつもやっていること……要は日々の鍛練がモノを言う」

「うむ」

「この辺は生まれ持ったセンスも結構重要だけどね。周辺国家で言うなら……帝国の『エルヤー・ウズルス』とか、王国の『ブレイン・アングラウス』なんかが、純然たる剣技では相当な腕前だ。まあどっちも犯罪者スレスレみたいな人だけど」

「…気にくわんな」

「強さと高潔さは比例しないんだぜ、レメディオスちゃん」

 

 ちょっとアヒル口になったレメディオスちゃんも可愛いな。案外こういうところが人気の秘訣なのかもしれん。ちょっと和んでいると、イサンドロさんが話の続きを促してきた。間のとり方が上手くて、なんとも聞き上手だ。

 

「えーとそれで……そうそう、次は肉体面の方だね。まあこれもある程度は周知されてると思うけど、もっとも効率が良いのは──『殺害』だ」

 

 ちょっと顔をしかめる人が多数。まあ嫌な言い方をした自覚はあるが、事実なんだからしょうがないだろう。モンスターだろうが亜人だろうが……もちろん人間だろうが、殺せば経験値が手に入る。これは検証済みだから間違いない。

 

「その『殺害』を前提にして、だ。『肉体』の強さを得る上で、もっとも効率の良い方法は? はい、ネイアちゃん」

「へっ!? あ、えと……数をこなす……でしょうか」

「惜しいところ突いてくるね。それも間違いじゃあないんだけど、もっと効率の良い方法がある。“格上殺し”──俗に言うジャイアントキリング」

 

 ゴブリン千体殺すより、ギガントバジリスク一体殺す方がよっぽど効率が良い……とはいえ、それはゲーム脳寄りの考えでもある。蘇生が簡単にできない以上、格上にぽんぽん挑めるわけないしね。それはただの命知らずだろう。

 

 そもそも強い存在がその辺に沸いて出るわけもないので、強くなればなるほど強くなりにくいという悪循環が発生するわけだ。

 

「この辺、ある程度は数値で表せるんだよね。さっき言った指標で言うと、同格からプラスマイナス五レベルくらいは『経験値効率が良い』相手ってことになる。それ以下だと得られる強さがガクッと下がるし、それ以上だと殺される危険の方が高い」

「なるほど……ちなみにその百段階で私を表すなら如何ほどでしょうか、エイ殿」

「十八、九ってとこかな。人類の中ではかなり強者の部類に入るから、誇っていいと思うよ」

「エイ、私はいくつだ?」

「レメディオスちゃんは三十前後ってとこだね。この辺になると、周辺諸国でもトップクラス……冒険者で言うならアダマンタイトかな。まあそれもピンキリだけど」

 

 なるほど、と頷く聖騎士たち。まあ普段から立ち合ってる彼等だし、体感での強さとおおよそ合致してるんだろう。『流石は我々の隊長だ』という誇らしげな空気も感じる。

 

「エ、エイさんはどのくらいの強さなんですか?」

「僕? 僕は…」

 

 ネイアちゃんが目を輝かせて問いかけてくる。セックスしたい。にしても、うーん……僕の強さって数値で表せないからな。だからって『最強無敵です』とか言ってもまるで荒唐無稽だ。小学生の妄想のがまだマシレベル。

 

「んー……百ってことでいいのかな。『肉体』の強さは、だけど」

「ひゃっ!?」

 

 俺またなんかやっちゃいました? …じゃなかった。なんかネイアちゃんって都合のいいヒロインみたいな反応するから、なんか面白いな。つい虐めたくなっちゃうタイプってやつだろう。聖騎士たちがザワザワラッシュに突入しているが、なんとも居心地が悪い。

 

 性技を褒められると嬉しいけど、強さを褒められてもなあ……所詮は大した努力もなく手に入れたチートだ。別に卑屈になるわけじゃないけど、僕の強さと彼等の強さって、物理的な側面では圧倒的に僕に軍配が上がるけど──どっちが尊いかって言われると間違いなく後者だ。

 

「んー……君らは百って数値に驚いてるけど、僕以外にもいるところにはいるもんだぜ。例えば法国の秘密部隊『漆黒聖典』なんかは、ほとんどの隊員が三十から四十近いレベルで構成されてる。中でもトップツーは八十前後と、後は僕と同じ百。世界に散らばる『真なる竜王』は大抵そのレベルだし、評議国の永久評議員『ツァインドルクス=ヴァイシオン』もそう」

「──にわかには信じられませんが……しかしエイ殿の仰ったことが真実ならば、彼等はどのようにしてその数字に至ったのですか? 同格以上の相手を倒したとしても、そう簡単に強くはなれますまい」

「あぁ……まあそこが人間種の脆弱たる由縁だよね。異形種ってのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()。種族によって上がり幅や限界値は違うし、個体差も当然あるけど」

 

 異形種は生き残りさえすれば、定められたところまで勝手にレベルが上がってく。対して人間種は、技能を会得しないとレベルが上がらない。そりゃあ淘汰されるわけだ。そのかわり、同レベル帯なら人間種がやや有利だけどね。

 

「…つまり漆黒聖典の者らは人間ではないと?」

「ああ、ごめんごめん。さっきの説明は竜王の方だよ。漆黒聖典がなぜ強いかってのは、国としてそういう政策をきっちり取ってるから。出生届、戸籍謄本、その辺りがちゃんと整備されてるから“才能”をしっかり掬い上げるんだよね。法国以外は『強くなれた筈』の人間がぽんぽん死んじゃうからさ……特にリ・エスティーゼ王国とかは」

「…なるほど。しかしその『トップツー』とやらの説明はつきませんな。カストディオ隊長の三倍以上もの数値を誇る御仁は、どう境地に至ったので?」

「ああ、それは『血』だね。この世界には偶に『プレイヤー』ってのが、別の世界からくるんだよ。六大神とか八欲王とか。そいつらの血を引いてて、かつそれを『覚醒』させたのが『神人』。生まれついての強者って奴だね」

「…失礼。少し理解が及ばなくなってきたのですが」

「話半分で聞きなよ。嫌な言い方するけど、君らが知ったところで大勢に影響はないし。彼等に敵対しないなら意味なし。敵対しても意味なし……言ってる意味わかるよね?」

 

 ちょっと真剣な顔で《天地改変/ザ・クリエイション》を発動させる。街の方以外の、見渡す限りを溶岩地帯に変えてみた。その後、指パッチンで全てを元に戻す。上がった気温だけが、先程の奇跡を証明している。

 

「…とまあ、レベル百ってのは化物そのものだから。触らぬ神に祟りなしって言うだろ? そもそも真なる竜王は、一体を除いて世界に興味がないし……法国は基本的に『人類の守護者』ってスタンスだから。あれだけの強者が揃い踏みなのに、他の国を征服してない時点で証明されてる。だから君らは、今まで通り過ごせばそれが一番──ん?」

 

 …なんか無力さに打ちひしがれてる人が多数。俺またなんかやっちゃいました? …いや、やっちゃってるやっちゃってる! ドラウ然り蒼の薔薇然り、問われれば答えるのが基本だったから、普通に言ってしまった。

 

 そういえば彼女達は全然普通の人じゃなかったな。なんかそこまでどぎつい反応とか無かったから、それが普通だと思ってたわ。どうしよ。

 

 …どうしよ。え? 僕が悪いのか? みんな心が折れたブレインさん状態になってない? レ、レメディオスちゃんは──寝てる! いつから!?

 

「あ、あー……えっと、そ、そんな無力さを嘆く人に朗報! 僕は『プレイヤー』を管理する側の人間でさ! ひ、人を強くするダンジョンの制作とかすっごい得意だから! 君らがよければこの修練場に一つ作るぜ! 目指せレベル百!」

 

 聖騎士たちがガバッと起き上がった。うーん………ま、まあいいか。いや、むしろポジティブに考えよう。聖王国にエロダンジョンを造る許可を貰ったと!

 

ダンジョンマスター=エロ。これは確定的に明らか。みんながダンジョンの奥を目指す間、僕は聖騎士のオマンコを目指すとしよう。ダンジョンに出会いを求めるのは、なにも間違っていないとも。うん。




わお、アンケート機能とか実装されてますね。せっかくだから使ってみよう。暇な方はぜひお答えくだされ。


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12話

感想や評価等、沢山いただけて嬉しい限りです。現金なものですが、やっぱり反応があると書くスピードも早くなりますね。


 VRMMO『ユグドラシル』末期。オンラインゲームが衰退を辿る時は、運営がとる対策も似たようなものが多い。難易度の緩和、取得経験値増加、レベリングを手助けする場の提供。レアドロップ率アップ、加工に必要なアイテムの配布、無料ガチャの頻度を上げる等──しかしそれらが根本的な解決になった例はほとんどない。

 

 ユグドラシルもその例に漏れず、新規参入の間口を広げるために様々な施策を取ったものの、サービス終了は免れなかった。そしてその施策の一つが『練磨の塔』である。カンスト──つまりレベル百が当たり前になったユグドラシルで、新規勢が古参勢に追いつくための取り計らいだ。

 

 しかし古参が新参を嫌う風潮はどこにでもあり、狩り場をせめぎあって研磨された彼等からは、その塔は『ゆとりの塔』などと揶揄されていた。

 

 エイは聖王国にダンジョンを造るにあたって、そのデータの大部分を流用した。それはかつてこの塔を作成したのが彼であったため、細部まで把握しているという部分が大きい。

 

 どういった目的にしろ、改良するにあたって原型を深く知っているかどうかは重要だ。もちろん根幹がレベリングだからこそ、このダンジョンを選択したのも確かな事実である。

 

 元々は非常に経験値効率の良いダンジョンというだけの塔だが、改良された今では、随所に非常に高度な仕掛けを施された施設となっていた。その名は──『キマシ・タワー』。

 

 各所に“素質”を見抜くギミックが仕掛けられ、その対象は上手い具合に誘導されてしまう、世にも恐ろしきダンジョン。そしてあくまで選択式であるが、誘導された先には『個室』が用意され、自身の行く末を決められる。

 

 ──今日もそんな犠牲者が一組。

 

「はっ……あ、ひ、きもちいいっ……ご、ごめんなひゃい、モブリシア先輩、わらひっ…!」

「い、いいのよパコレア。ひ、うっ、ぐ……わ、私、ずっとあなたとこうしたかった…」

「せ、先輩…!」

 

 エイが生きた二十二世紀は環境こそ最悪だったものの、その技術水準は非常に高度であった。それは科学的な意味でも、そして心理学的な意味でもだ。

 

 何の変哲もない模様や文字が、特定の人間に与える影響。嗜好による無意識の選択。そういった高度な人間心理を駆使して造りあげられたのは、百合の素養がある人間を『秘密の部屋』へ誘う『psychology induction aisle』──通称ユリロードである。

 

 それに加えること『セックスしないと出られない部屋』『リング・オブ・フタナライズ』『ちょっといい感じになるお香』のセット。ここまでお膳立てが整えば、聖騎士たちの中に潜む同性愛者を燻り出すことなど容易い。

 

「ふむふむ……ロリ系がコロネロールお嬢様を犯すのも中々いい……うん、これでだいたいのデータは取り終わったかな。正規の聖騎士が五百十六人中、二分と四厘……『軍士』は六千三百十二人中、一分と二厘……戦場に出る機会の多い方が、同性愛者の率は顕著だね。吊り橋効果の多さのせいかな? さて…」

 

 エイが行っている作業は、聖王国の全戦力の数値化──及び性的嗜好の傾向、ついでに言うとセックスできそうな娘の選別であった。彼も運営として『バランス崩壊』には非常に気を使っているのだ。聖王国の騎士達だけがあまりに突出すれば、良くない事態を招くと考えるのは当然。運営がインフレを制御できなくなったゲームは、破滅へと直行する。

 

 ゲームであれば、それは『サービス終了』といった形で終わりを迎えるが、現実ともなればそうはいかない。責任感とは無縁の生活がしたいからこそ、異世界へと旅立ったエイではあるが──それでも細心の注意を払って微調整をこなすのは、ひとえに聖王女の心労を軽くするためだ。

 

 聖王国北部と南部の確執、亜人の脅威。いまだに“聖女王”ではなく“聖王女”と名乗らざるを得ない情勢。清廉過ぎるがゆえの煮え切らない政策。色を覚えてからはある程度の息抜きは出来ているものの、その重責はあまりに重い。

 

 だというのに、聖王女カルカ・ベサーレスは──エイへと何も頼まない。ドラウディロンを始め、彼が関係を持った相手は、持ちつ持たれつの形が基本だ。前提に好意があるとしても、ベッドの上で何かしらをおねだりする女性は多い。

 

 それが物資であることもあれば、ナニが生える指輪であったり、あるいは無形の援助など多岐にわたる。しかしカルカは性交に関しての要求はあれど、王として何かを求めたことは一度たりともない。となれば人間のまっとうな心理として、何かをしてあげたくなるのが人情というものだ。

 

 大元は成り行きではあったが、聖王国の全体的な強化は、カルカにとってかなりのメリットである。半分ほどはエイの都合も取り入れたとはいえ、双方ともに悪くない形となったのは間違いないだろう。

 

「──ふぅ。次は一般市民かあ……とりあえず次年度に徴兵される人から始めるとして、おおよそ五万人。中規模以上の都市で練兵……最大規模で二千人か……その時だけ臨時で造るかな? 流石に一つに集めるのはやりすぎだし…」

 

 聖王国には徴兵制があり、ほとんどの成人男性が多少の戦闘技能を持つ。そして国境には全長百キロにもなる防衛線が敷かれているものの、その全てが常時稼働している訳ではない。故に、村単位でもある程度は持ちこたえられるような防衛体制を築き上げているのだ。徴兵はその一環であり、エイはそれも利用して戦力の数値化を図っていた。

 

「…うん、こんなもんかな。にしても、数字にするとだいぶ粗が目立つな……見るからにカリンシャに偏ってるし。資料はまとめてカルカちゃんに渡して、と。しかし南部の情報が少ないのはいただけないな……仮にも一国の王なんだから、不透明な部分がそのままだと──」

「エイ様、こちらは終わりました」

「ん、ありがと──えっ? …僕がやってる作業のたっぷり三倍はあったと思うんだけど……僕まだ半分くらいしか終わってないよ? 六倍差ってやばくない?」

「間違いなくそのいかがわしい映像のせいかと。できればもう少し音を抑えていただけると助かります」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと防音対策はとってるから、部屋の外には漏れてないよ」

「そういう意味ではないのですが…」

 

 エイにとって異世界の諸々は、元いた世界と比べると、どうしてもどんぶり勘定の感が拭えない。だからこそ効率化を図るために、例年までの大雑把な資料をきっちり仕分けしているのだ。しかしある程度までは自動化できるにせよ、手作業も多い。

 

 ならば有能かつ暇人な人間に依頼しよう──という訳で、エイが頼ったのは『リ・エスティーゼ王国』が第三王女『ラナー・ティエール・シャルドルン・ライル・ヴァイセルフ』であった。有能な人間とは基本的に忙しいものだが、彼女はその智謀に対して時間が有り余っている人間の代表である。

 

「…」

「ん? ありゃ、意外……ラナーちゃんもこういうの興味あるんだ」

 

 その天才性ゆえに、エイが多くを語らずとも協力を約束した──もちろん見返りあってのことだが──ラナー。当然それに際し、聖王国の情報がだだ漏れになっていたが、どちらも気にしてはいなかった。

 

 邂逅から数時間が過ぎ、彼女の作業の速さに慄いていたエイであったが──合間合間に見ていた『聖騎士キャットファイト』を映す画面へ、ラナーが興味深げに近寄るのを目を丸くした。エイにとって彼女は『やべぇ人』であり、何かに興味を持つということが、あまりにも意外だったのだ。

 

「女性同士の性交など見たことがありませんから。というより、少し気になっていたのですが──」

「ん?」

「エイ様は、私に対して偏見がありすぎるように思います。そうですね……なにか、人形として見られているような異質さと言うべきでしょうか」

「そう? うーん……ほら、やっぱラナーちゃんてなんでも手の平の上で転がしてるイメージあるからさ。なのに脳内メーカーはクライム君九十九%だし。とりあえず邪悪な笑みで『計画通り』って言ってる新世界ゴッドガールじゃん? IQが二十違えば意思疎通は困難って聞くし、人間じゃなくて『ラナーチャン』っていう生き物として見た方がいいかなって」

「…これほど人の話を理解できなかったことは初めてです」

「んなこたないっしょ。子供の頃は『なぜこんなことも理解できないの?』って、他人の低能さを理解できてなかったんだろ?」

「…! …よくご存じで」

「──ラナーちゃん目こわっ! やめて、そのドロドロした瞳やめて!」

「ふ──ふふ…! 本当に変な御方です」

 

 美貌に相応しい、輝くような瞳は消え失せ──黒と灰で濁ったような目でラナーは笑う。しかし笑顔そのものは自然な、なんとも度し難い相貌であった。エイからすればそれは『レイプ目』であり、あまり好きではない系統の瞳である。

 

「…にしても、意外と感情とかあるんだね」

「ですから、偏見が過ぎます」

「ほら、ラナーちゃんって人気あるけど……人によってキャラがぶれぶれだからさ。僕のイメージも固まってないっていうか」

「…? 市民の方々の、私に対するイメージが……ということでしょうか?」

「や、こっちの話。にしても人間味があるなー……実は演技とかじゃないよね?」

「さぁ、どうでしょう」

「おっぱい揉んでいい?」

「どうぞご自由に」

「…なんか怖いな。様子見しよう」

 

 顎に手を当てながら、獣のようにラナーの周りをぐるぐる回るエイ。人は得体の知れないものに恐怖を抱くのだ。たとえ知能のレベルが違おうと、アルベドやデミウルゴスの内面は彼にとって既知であるが──反面、ラナーの狂気はいまいち理解できなかったこともあり、懐疑的な目を向けてしまうのだろう。

 

「おっぱい揉まれるの、クライム君に悪いと思わないの?」

「…私を理解しているようで、理解できていないのですね。私の貞操とクライムへの執着が、どう結びつくのですか?」

「いや……『愛』ってさ、その対象以外への性的嫌悪に繋がらない? 特に女の子は」

「…そうですか? うーん……そうですね。私は気にしませんが……仮に私が犯されている姿をクライムが見て、泣き喚くとすれば──心がぽかぽかとします」

「ドン引きだよ」

「私は私に興味がないのです。けれど、『そんな私』をなによりも大切だと訴える、クライムの瞳が好きなんです。こんな私を、世界の何よりも尊いと考える曇りきった瞳が」

「いやいやいや。じゃあなんでその『大切』が汚されて泣き喚くクライム君を見たいのさ」

「その慟哭の深さは、私への執着の深さでしょう? 汚される私を見てクライムが傷付けば傷付くほど、私を想っていることの証明です」

「いや……うーん……リストカットまんさんの究極系なのか…? でもあれって自己愛の歪んだ形だし……ダメだ、わからん」

 

 首をひねりながら、目の前の変人を睨む変態。しかし先程までとは違い、エイはラナーを『人間』として見始めたようだ。所詮は文字だけで人を表すことなど出来ないのだと。自分が見たままを信じる──つまりラナーは、意外とありふれたメンヘラなのだと。

 

「…ちょっと踏み込んでもいい? もうちょいラナーちゃんのこと知りたくなってきた」

「はい、どうぞ。珍しく──私も楽しいですから」

「どうも。じゃあ……クライム君が誰かを好きになりました。どうしますか?」

「消します」

「どっちを?」

「もちろん、クライムが好きになった人間を」

「バレると嫌われちゃうよ?」

「私なら、バレないようにやり遂げます。やり遂げられます」

「ふむふむ……じゃあこっちは少しよく考えて答えてくれる? ──クライム君はラナーちゃんに興味がなくなりました。どうしますか?」

「──……そうですね……それは…」

 

 目を閉じながら、静かに考えるラナー。一分間は経っただろうか、面白そうにその様子を観察するエイへ向かって、ぽつりと零す。

 

「…私も興味がなくなるかもしれませんね。けれど……それは、また灰色の世界に戻るということですから。絶対に嫌です」

「なるほどなるほど……なら──自分で言うほど『自分に興味がない』って訳でもなさそうだね。んー……ちょっと待ってね、入力するから」

 

 その後も三十ほどの質問を繰り返し、カタカタと端末に答えを入力するエイ。まるでカウンセラー気取りではあるが、やっていることは実際その通りである。二十二世紀において心の病は人工知能頼りとなっており、療法は人間だが、診断はAIの専売特許であった。

 

「──ふぅん。ちょっと面白い結果だ」

「…?」

「ラナーちゃん、君は……精神年齢がまだまだ子供のままみたいだね。情操教育が上手くいってない」

「…私のような子供は見たことがありませんが」

「知識の多さと精神の成熟は比例しないんだ。それに君が持つある種の残酷さは、他人の不幸を喜ぶ相対的なものじゃなくて、『興味』で虫の手足を千切る子供に近いね。うーん……精神的な幼形成熟(ネオテニー)とでも言うべきか……表向きのコミュニケーションは取れてるから発達障害ではないんだよな……ちょっと脳のCT取らせてね。ああ、うん……正常だ。なら少なからず後天的な部分はある……直接的な原因は天才性であっても、根本的な原因ではない、と。なら──」

 

 腕組みをしながら思考に耽るエイ。そんな姿は、ラナーにとって新鮮そのものであった。彼女の本質を知る僅かな人間は、不気味なものを見る目を向ける。彼女の上辺しか知らない人間は、親愛と尊敬の目を向ける。

 

 だからこそ、内面を知ってなお好奇の目を向けるエイは、ラナーにとってあまりに異質だ。『飾らない自分』を他者に見せるのはいつぶりだろうかと、暗い瞳と柔らかな口元が相反して浮かび上がった。

 

「──うん。なあラナーちゃん」

「はい」

「ちょっと旅してみよっか」

「はい?」

「環境って結構大事だからね。こっちの方は僕がなんとかしとくから……旅行にでも行ってきなよ」

「ふぇっ? ──きゃあぁぁ!」

 

 エイが指を弾くと、ラナーの足元にぽっかりと黒い穴が空き──彼女は吸い込まれるように消えていった。悲鳴は普通の女の子だな、とぽつりと呟くエイ。

 

「知識は海みたいなのに、君の世界は水たまりみたいじゃないか。もう少し世界が広がれば──きっとクライム君なしでも、灰色にはならないよ」

 

 ラナーへ任せる予定だった書類の山を、自分の方へと引き寄せるエイ。彼にとって先程の行動は百%善意である。たとえ黄金の如き美女であっても、“病人”に手を出さないのは、最低限の倫理であった。

 

 そしてラナーが強制転移させられた場所はというと──

 

「…ひゃえ?」

「…ラナーと申します。ところでそのお顔はどうされたのですか?」

「…ひひゃないへ」

「は、はぁ…」

 

 ──トブの大森林。湖の畔で療養中の……顔をパンパンに腫れ上がらせた、クレマンティーヌのすぐ傍であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、いまいち幼女成分が足りていないと思う今日この頃。ウレイちゃんとクーデちゃんは、基本的にアルシェママや友達と一緒にいるので、意外とチャンスがないのだ。もちろん強制的に場を作ることはできるが、エロってのは一期一会である。なんでもできちゃうからこそ、偶然の機会を慈しみたいってのはあるよね。

 

 違法奴隷幼女とかもいるっちゃいるんだろうけど、買ったらその後も面倒見なくちゃならないし。僕はできるだけ自由でいたいんだ。身の軽さは尻の軽さと股の緩さに繋がるって言うし。

 

 さて、そんな訳で──やってきましたカルネ村。異世界転移したらまず登場する系ヴィレッジだというのに、随分放置してしまったぜ。まあ行く意味もなかったからだけど。そういやンフィー君って何故かこっちに来てないんだよね……まあクレマンティーヌが死んでない時点で、エ・ランテルの騒動も何かしらの変化はあったんだろうから、当然と言えば当然か。

 

 むしろハムスケがハムスケしてない方が気にかかるんですけど。ギルマスもいまだにミスリルのままだし。というか全然冒険者として活動してないみたいだしな。ホニョペニョコ案件は秘密裏にやったみたいだし、色々と変わってきてる感。

 

 まあ結果としてイグヴァルジさんの尊い命が助かったと考えれば、僕の心も晴れやかになるというものだ。とはいえ──ギルマスが『運営』のせいで冒険を楽しめてないとすれば、これは放置できる案件ではない。接触する気はないが、どうにかすべきではあるだろう。

 

 …ま、今日はとりあえず幼女だ。カルネ村の幼女と言えば? それはもちろん、ネムちゃんである。機会があればセックスしたかったのだが、ちょうどアルベドちゃんから連絡がきたので、遥々カルネ村へとやってきたのだ。

 

 伝え聞いたティアちゃんとプレアデスの戦い──その中で、生えたチンポに夢中になったルプスレギナちゃんの話。基本的にはカルネ村へ常駐している彼女。僕がアルベドちゃんに渡した、いくつもの指輪の存在。

 

 そのほとんどは『リング・オブ・フタナライズ』であり、『上手いこと流してくれ』と彼女に伝えて渡したものだ。どこまで女性NPCに浸透しているかは知らないけど、ルプスレギナちゃんはきっと真っ先に欲しがっただろう。『あっちのエンちゃんで試してみたい』という言葉を、ティアちゃんはしかと覚えていて──当然、僕にも伝わってる。

 

 つまりルプスレギナちゃんによるエンリちゃんレイプ事件──あるんじゃない? 『今日渡したわ』という連絡があったため、夜の帳も落ちきったこの時間……エモット家の寝室をこっそり覗き見てみようという訳だ。

 

 どれどれ……あれ、ネムちゃんしかいない。んー……ん? 居間にいるゴブリン達が、揃いも揃って机に突っ伏して眠っている。いや、違うな……あれ気絶してるわ。ルプスレギナちゃんの仕業だろうか。

 

 どこかに連れ出したのかな? どれ、鏡よ鏡よ……いまカルネ村で一番美しい女性を映すんだ。さぁ、どこで情事に耽ってるのかな……ん? あ、僕の後ろ姿が映ってる。そういやさっきまでティアちゃんとしてたから、女のままだったわ。やだ、私ったら絶世の美少女。

 

 …なんてボケはいらないから、さっさと映せやポンコツミラー。さ、気を取り直して──おっ、ここは……二軒先の空き家か。そういや村民がそこそこ死んだから、空き家が多いんだった。そんなとこでレイプするとか、ルプスレギナちゃんったら鬼畜。まあまだ始まってないみたいだし、少し様子を窺うか。

 

「あ、あの……ルプスレギナさん、お話って…? それになんでわざわざこっちに…?」

「…ちょっとエンちゃんに頼みたいことがあるんすよ」

「私に、ですか? それは──ぜひ! おねがいします! なんでも言ってください!」

「…っ!? そ、そっすか。じゃ、じゃあ…」

 

 疑問符だらけの表情から一転、ルプスレギナちゃんの言葉に、ずずいと前へ出るエンリちゃん。それが意外だったのか、驚き気味にのけぞる駄犬。やはりチンポが生えたとはいえ、人の気持ちには疎いのだろう。

 

 村を救った上に碌な対価も取らず、それどころか度々援助をしてくれる足長おじさん(アインズ)。だというのに、恩返しもままならない──そんな人間の気持ちが、彼女には解らなかったのだろう。もどかしい生活を送る中で、足長おじさんの縁者が『頼みたいことがある』などと言えば、それはもう張り切るだろう。ルプスレギナちゃんを通じて、少しでも恩を返したいと。

 

 ──そんな降ってわいたような幸運に、ルプスレギナちゃんが驚いたのも束の間。言質を取れたことにこれ幸いと、その瞳に爛れた感情が揺らめく。素朴な村娘には素朴な村娘の味わいがあるものだ。見慣れている美女姉妹とは違う、生活感に溢れた生々しいエロスというのは、確実に存在する。

 

「んじゃ……コレの処理、お願いしてもいいっすか?」

「…へ? ──え、あ、え……な、なんで生え…?」

 

 ボロンッ! って感じで大きめのチンポを露出させるルプスレギナちゃん。それを見た瞬間、エンリちゃんはピシリと固まった。女性だと思っていた人にチンポがある疑問。勃起チンポそのものへの驚き。その他諸々の疑問と混乱が伝わってくる。

 

「この指輪の()()で生えちゃったんすよ。射精しないと治まらないっす」

「…! え、えっと……その、わ、わかりました! 私にお手伝いできるなら…!」

 

 うーん……指輪のせいときたか。まあ嘘は言ってないな、嘘は。なんか僕のやり方に通じるものがあるけど。さて、そんなこんなで、メイドと村娘の情事が目の前で始まった。

 

 褐色狼娘の巨根が、純朴な村娘のお口へと侵入していく。えづきながらも懸命に舌を動かす献身が、ルプスレギナちゃんの興奮を煽ったのだろうか──おもむろにエンリちゃんの頭を掴むと、激しく腰を動かし始めた。

 

「んぶっ!? まっ、るぷひゅれぎ──んぐっ、じゅぶっ、はぶっ…」

「はぁ──いいっす! エンちゃん! もっと舌を動かして……喉も締めてほしいっす! うぁ──射精る!」

「じゅる、ん゛っ、んぶ──けほっ、こほっ…」

 

 最後に思い切り両手で頭を抑えつけ、喉奥で射精するルプスレギナちゃん。中々の早漏である。しかしまるっきりレイプの場面だな、これは。飲みきれなかった精子を口から垂らし、軽く咳き込むエンリちゃん。エロい。

 

「は、ふ……き、気持ちよかったですか? ルプスレギナさん」

「…っ」

 

 しかしそんな自分の状態よりも、相手が気持ちよかったかどうかの方を気遣うエンリちゃん。天使かな? おっ……ルプスレギナちゃんの表情がなんとも言えない感じに変わった。困惑と……ほんの少しの罪悪感かな? うーん……カルマ値から考えるとかなり意外な光景だ。

 

 『虫けらに罪悪感など感じない』。徹底的に下として見ているものに、申し訳ないと思う気持ちなど発生する訳がない。となると今のルプスレギナちゃんには、多少なりともエンリちゃんへの思いやりが生じている訳だ。

 

 これはなんとも興味深い。定められた設定が絶対ではないことの示唆でもあり、NPCが変化する可能性でもあるだろう。百合から始まる優しい世界……いいんじゃないか? そのままエンリちゃんの服を脱がし始めるルプスレギナちゃんだが、心なしか手付きが優しい。

 

「あ、あの……その、初めてなので、できれば優しく…」

「…っ」

 

 くにゅくにゅと慣れない前戯をして、挿入の準備を整えるルプスレギナちゃん。ナザリックのNPCが人間の雌穴をクンニするとか、中々お目にかかれる光景じゃないだろう。なんとも、エンリちゃんのオマンコにバターを塗りたくなる。バター犬ルプスレギナ……ありだな。

 

 そして恥ずかしそうに処女宣言をかましたエンリちゃんの言葉に反応して、犬チンポがひときわ大きく跳ねた。急いて急いて、オマンコにチンポをあてがうルプスレギナちゃん。完全に情欲に支配された表情だ。

 

「んっ…! は、ぁ…! ル、ルプスレギナさん…!」

「うぁ……やっぱオマンコって気持ちいいっす…! エンちゃん、エンちゃん…!」

 

 ………はっ! 見入ってしまっていた。危ない危ない、今日は覗き見じゃなくてネムちゃんとチョメチョメしにきたんだった。寝ている彼女をこっそり連れ出して、エンリちゃんとルプスレギナちゃんのセックスをこっそり見せつけつつ、『ネムちゃんもやってみる?』的な作戦である。

 

 …しかしそれをするには、チンポがギンギンすぎてキツイ。幼い子が相手とはいえ、思考誘導の際は自身の冷静さこそが重要だ。男というのは、勃起すると知能指数がガクンと下がってしまうのだ。これはいけない。どうしよう? …おっと、そう言えば目の前にちょうどいい人たちがいるんだった。

 

 ──うん。即興だけど、悪くないシチュエーションを思いついた。二人が一息ついたのを見計らって、『マジカル☆イウェン』姿で乱入を試みる。

 

「──誰っす!」

「こんばんは、ルプスレギナ・ベータ。僕が誰かと言うならば──そう! その指輪を間接的に奪われた……『マジカル☆イウェン』その人である!」

「…なっ! と、取り返しにきたっすか?」

「イエス。勝者であるエントマちゃんならともかく、おめおめと射精させられた駄犬が、なぜその指輪をつけてるのかな?」

「ぐっ…! い、妹のものは姉のもの、姉のものは妹のもの。それにこれは一度上司に渡した後、改めて頂いたものっす」

「指輪を持つ資格があるかどうかは僕が決める……さ、勝負しようかルプスレギナ」

「…! の、望むところっす!」

 

 なんでこんなところいるかとか、その辺を突っ込んでこないところが駄犬たる由縁なのだろうか。パチクリと目を瞬かせるエンリちゃんが、中々に可愛い。オマンコから流れ出る精液が、卑猥さを助長している。

 

「あ、あの……すみません、どういう状況なんでしょうか…?」

「その指輪は元々、僕のものなんだよ。それを取り返しにきたって状況」

「人聞きが悪いっすね……正当な勝負の結果っすよ」

「それはそうだけど──勝負の結果、奪ったなら……勝負の結果として奪われることも覚悟すべきだね」

「…道理っす。なら──」

「あの、ルプスレギナさん。その指輪は呪いのアイテムじゃないんですか…? いまの話だと、知ってて嵌めたように聞こえるんですけど…」

「あわっ!? え、えと……その…」

「彼女は生えたチンポの気持ちよさに魅了されたのさ。だからこう思った──『エンちゃんでも試してみたいっす』……ってね」

「…本当なんですか?」

「あ、や、えーっと……コホン。実はその通り! 気持ちよかったっす!」

「開き直らないでください! う、うぅ~…! 初めてだったのに…」

「ほんと、酷いよね。こりゃあエンリちゃん……ちょっとばかし仕返ししても、バチは当たらないぜ」

「へっ?」

「あぎゃっ!? なな、なんすかこれ! 動けないっす!」

 

 ルプスレギナちゃんに金縛りの術をかけ、指輪をスッと外す。そしてエンリちゃんの手を取り、そのまま右手の中指に嵌めて差し上げた。その途端、エンリちゃんはエンリさんになり……そして先程までの性的興奮からか、いまだにびしょ濡れのオマンコを晒す駄犬が目の前に一匹。

 

「喧嘩両成敗って言うし、ほら……エンリちゃん、腰をもっと前に」

「え? あ、や、え…」

「──んぅっ!?」

 

 レズセの介助って結構興奮するな。エンリちゃんのおっぱいを揉みつつ、後ろから抱きつくように押して──童貞を捨てさせた。訳のわからないままの挿入ではあったが、チンポが雌穴に埋まった瞬間、エンリちゃんの体がビクンと跳ねた。

 

 動かす余裕もないのか、荒い息を吐きながら、快感に抗うようにして小刻みに震えている。そのまま見てる分にもいいんだけど……やっぱセックスの醍醐味って、オマンコでチンポをごしごし擦ることにあると思うんだよね。

 

 というわけで、ぷるぷる震えてるエンリちゃんのオマンコに挿入してみた。初体験だというのに、挿入される感覚と挿入する感覚の二つを味わうって、中々得難い経験だろう。ルプスレギナちゃんの膣壁の感触と、自分のオマンコに侵入されるチンポの感触。

 

 脳が処理しきれなかったのか、叫ぶような喘ぎ声と共に、精液と潮を吹き出して絶頂に至ったようだ。しかし構わず、エンリちゃんのオマンコを犯しぬく。うむ、やはり極上の穴だ。覇王は伊達じゃない。

 

「あがっ、う゛っ、あうっ──ひゃ、また射精る…! もう、わ、わけわかん、ひゃい、よう…! んきゅぅっ!」

「エ、エンちゃん、出しすぎっす! も、もう入らな──んぅっ! あぐっ」

 

 指輪から常に精液を補給されるから、漫画みたいな精液ボテ腹もお手の物だ。ぽっこり妊娠したようなルプスレギナちゃんは、とてもエロい。そしてもう僕が動く必要もないくらい、エンリちゃんの腰の動きも激しくなってきた。

 

 前へ動かせばチンポが快感を得、後ろへ引けばオマンコが気持ちいい。きっともう、普通のセックスじゃ満足できなくなるんじゃなかろうか。ああ、そういえば……もともとビッチの素質に言及されていた娘でもあったな。

 

 ンフィー君が精力増強の薬を作らざるを得ないほど、エンリちゃんがセックスにハマったってちらっと書かれてたし。

 

 …ん? あ、そういえばンフィー君のこと忘れてた……忘れてたけど、別に寝取りって程でもないか。エンリちゃんも、現状でンフィー君のことが好きかって言われるとそうでもないだろうし。関係が進んでたならアレだけど、片思いの男性に遠慮してたらセックスなんて出来ないぜ。まあこの場合は──『寝取り』というか、『寝取らせ』なのかもしれんけど。

 

 明日以降、毎日セックスするであろうエンリちゃんとルプスレギナちゃんを思うと、中々興奮するな。人間と人狼のハーフだらけになるカルネ村……いいと思います。

 

「はひぃ…」

「お疲れ様、エンリちゃん。ルプスレギナちゃんのこと、許せそう?」

「え? あ……えっと、はい。その、これは……ちょっと我慢できないのも、あの、わかると言うか…」

「そ、そっすよね! エンちゃんならわかってくれると思ってたっす!」

「…あ、あはは……その、えっと……あ、明日からも……()()()()、した方がいいですか?」

「…っ!」

 

 もじもじしながら誘い受けの文句を発するエンリちゃん。コクコクと頷くルプスレギナちゃんが妙に可愛い。しかし、一応指輪をかけた勝負の最中だということを忘れていないだろうか。エンリちゃんと位置を交換して、褐色ボテ腹を優しく撫でる。

 

「…じゃあ明日からも素敵な性生活を送るために、頑張って勝たないとね」

「…へ? あ……ちょ、ちょっと待つっす! いまは腰が抜けて──」

「真剣勝負に待ったはないよ」

「わぎゃ──んあ゛っ、ら、らめ──」

 

 やはりルプスレギナちゃんにはワンワンスタイルが似合う。艶めかしい褐色の尻を強めに掴みながら、抜かずの三連発で雌穴にたっぷり射精した。途中でエンリちゃんも乱入してきたので、二人がかりで穴という穴を蹂躙し尽くす。朝方には、褐色の肌も白く染め上げられていた──そんな日のことであった。

 

 …あ、ネムちゃんのこと忘れてた。




この前『ハクメイとミコチ』って漫画をまとめ買いしたんですが、めちゃくちゃ面白かったです(ダイマ)
絵もSSも数が少ないので流行れ(願望)


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13話

 トブの大森林、南端──カルネ村から目と鼻の先の距離で、エイとルプスレギナは和やかに談笑していた。二人だけを見れば、それは男女の逢い引きとも見て取れただろうが、しかし二人のすぐ近くには多数の死体が所狭しと転がっていた。血生臭さが漂うこの場で、平然としている彼等こそが──下手人で相違ないだろう。

 

「これめっちゃ美味いっすね!」

「ポテチは『関西だし醤油』が至高だからねー……まあこんなところで食べて美味しいと言える感性はわかんないけど」

「…? なんでっすか?」

「僕はグロ耐性あんまないんだよ。それ抜きにしても、食事は食事で集中したいし……ご飯食べながらフェラさせる男の神経とか、一生わからない自信があるね」

「ご飯と一緒に…? そういうのもあるんすか……こんどエンちゃんにやってもらうっす!」

「…まあ好き好きだけどさ。それにしても──ザイトルクワエの影響をもうちょっと考えるべきだったか。ちょっと反省」

「ザイトルクワエ?」

「そそ。ユグドラシルのレイドボス……まあ適正はレベル八十以下だから、そんな脅威でもないけどね。プレアデスじゃちょっときついかな? …“プレイアデス”ならなんとかなるだろうけど」

「ウンはなんでも知ってるんすねー」

「おいやめろ、ウンコみたいに聞こえるだろうが。エイにして、エイに」

 

 魔樹の復活はラキュースの活躍により阻止されたが──天を貫く程に巨大な化け物は、森のほとんどから臨むことができた。当然、それによる恐怖で生存本能を刺激された森の住人はてんてこ舞いである。一も二もなく逃走した者、諍いをやめ、団結して事にあたろうとする者。巣の中で震えて引き籠もった者と、それぞれ普段とは違う行動を強いられた。

 

 そんな騒がしい森の状況に、カルネ村が平穏でいられる筈もなく、ありとあらゆる危険が降り注いだ訳だが──その全ては、水面下で抑えられた。もちろんエイとルプスレギナの活躍によるものであり、村の住人たちは危険など知る由もなく安全を謳歌していた。

 

「それにしても、イウェンが『ウン=エイ』だとは思わなかったっすけど……一つ聞いていいっすか?」

「いや、並べ替えただけなんだから気付けよ……で、なんだい?」

 

 死体の上に座り込みながら、ポテチを口に放り込みつつエイに問いかけるルプスレギナ。あまり優雅な座り方とは言えず、スリットからは下着もちらちらと見えていた。血の匂いに刺激されたせいか、性欲が少々高まっているエイには目の毒である。

 

「見すぎっす」

「だってエロいんだから仕方ないじゃないか……それより聞きたいことって?」

「…至高の御方々が帰ってこないって──ほんとっすか?」

「ああ──うん、事実。ルプスはもう聞いたんだ?」

「アルベド様がシモベを選別して話してるっす。一定以上の地位にいる者にしか話さないとは言ってたっすけど…」

「プレアデスはお眼鏡に適ったってことかい?」

「…派閥より、個人で見てると思うっす。ナーちゃんとシーちゃんには伝えてないみたいっすから」

「へぇ。まあナーベラルちゃんは隠し事できなさそうだしな……シズちゃんはショックがでかいからとか? 顔には出なくても繊細みたいだし」

「…ほんとになんでも知ってるんすね」

「運営だからね」

 

 物憂げな表情で俯くルプスレギナ。既に諦めてはいたのだろうが、断言されてしまうと堪えるものがあるのだろう。そのまま数分がすぎ、やがてヤケ食いのように残ったポテチを流し込み、立ち上がった。

 

「ならせめて、アインズ様がお隠れにならないよう頑張るっす!」

「うん、その意気だ。シモベの中だったら、きっと君は重要な立ち位置になると思うぜ」

「へ? なんでっすか?」

「ギルマスが欲しいのは『シモベ』じゃなくて『友達』だから。その垣根を超えられる──『越えようと行動できる』シモベってあんまりいないでしょ。ルプスはその辺、得意そう」

「──私の忠誠心が低いって言ってるんすか?」

 

 エイの言葉に、喉の奥で少しだけ唸り声を上げるルプスレギナ。獣のようなそれは、やはり彼女が人間以外であることを──そして自身の忠誠を他者に疑われることへの怒りを如実に表していた。しかしそんな彼女の様子を気にすることもなく、飄々と答えを返すエイ。

 

「『忠誠』って人によって多少異なるんだろうけどさ……やっぱ重要なことは、主人の望みを叶えること……叶えようと努力することだと思うんだよね」

「…」

「気兼ねなく付き合える関係を望まれてるのに、『私はシモベで御座います』、と。『恐れ多く御座います』、と。まあそれも忠誠なんだろうけどさ、本人からすれば寂しいもんだと思うよ。その辺りを柔軟に考えられる『忠誠』が、君にはあるって言ってるんだけど……買い被りかい? ルプス」

「…アインズ様は、本当にそれを望まれてるんすか?」

「望んでいるかどうかまではわからないけど、君らの重すぎる忠誠を心労には感じてるね。アルベドちゃんにも言ったんだけど──あの人の中身は、割と普通の人だから」

「そんなわけないっす! アインズ様は至高の御方々を纏められ、最後までナザリックに残ってくださった慈愛の御方…! その智謀も──」

「だからそれが重いって言ってんのさ。たとえば君が他の姉妹にこう言われたらどうする? 『ルプスレギナ様は我等の姉妹なれど、本来は会話すら許されぬ御方…! 普段の砕けた態度も私達を慮ってのこと…! ありとあらゆる事態は、まさにルプスレギナ様の掌の上!』って。しかもずっとそれが続いたら?」

「それは……つまりアインズ様を過大評価しすぎってことっすか?」

「まさにそうだね。彼は偉大じゃないし、飛び抜けた頭脳なんてのを持ち合わせてもいない。君達を創った造物主とはいえ…」

「──黙れ」

 

 死体から飛び退いたルプスレギナの瞳には、完全な敵意が宿っていた。縦長の瞳孔は殺気を剥き出しに、たとえ敵わずとも、決死を以って一矢を報いる気概に満ち満ちていた。犬歯を見せながら唸る彼女を見て、エイは目を細め──指先で宙空を弄った。

 

 その瞬間、ルプスレギナの瞳は驚愕に揺れた。敵意は雲散霧消し、起きた事態を受け入れられずに棒立ちとなる。

 

「な、なん、で…」

「──まあ、こういうことだよね。理解できた?」

 

 なぜ彼女が動けずにいるか。それは、エイの体から感じ取れる『支配者の気配』によるものだ。ナザリックのシモベたちは、例外なく『至高の四十一人』の気配を感じ取ることができる。そしてナザリックに連なる者──要は同僚や配下なども識別できる。

 

 そして現在、その感覚器官がエイを『至高の存在』であると訴えていたのだ。彼女の混乱も無理からぬことだろう。加えて、NPCは()()()に『支配者』を敬うように、敬愛するように設定されているのだから。

 

「…解除、と」

「あ──え…」

「一時的にナザリックのメンバーになってみた訳だけど……さっきの瞬間、君から見た僕はどうだった?」

「…敬服すべき御方……だったと思うっす」

「だよね。でもその前までの僕は、どういう人間だと思ってた?」

「ドスケベで女装癖のある、どうしようもない人間だと思ってたっす…」

「そこまで!? …い、いやまあ……とにかく、そんな印象ですらあったのに──『ナザリックの支配者の一人』になった瞬間、素晴らしい存在に映ったわけだ。どれだけ『至高の存在』にフィルターがかかってるか、自覚できた?」

「…っす」

「なら、その認識がどれだけ重荷かもわかるだろ?」

「…ど、どういうことっすか?」

「僕の目から見てもね、ギルマスは虚栄心の強い人じゃない。ならなぜ偉大な支配者を装っているかって言うと……まあ君達の『期待』に応えてる訳だ。『我等の支配者であれば、世界で一番素晴らしい御方である筈』──なんて、一種の脅迫とも言える期待に。ギルマスは君達に失望されないよう頑張ってるんだろうね……健気だと思わないかい?」

「…っ!」

「でもそんな強がりを何年続けられる? 何十年、何百年……アンデッドの精神抑制ってのは、不変を意味してる訳じゃないぜ。永く在ってほしいと望むなら、求めるばかりじゃないだろうに」

 

 唇を固く結びながら、ルプスレギナは顔を伏せる。言い返したい言葉は山程あれど、そのどれもが伽藍堂(がらんどう)の虚勢でしかない。エイの言葉が真であると、他ならぬ彼女の心が認めてしまっているのだろう。

 

「…というような趣旨のことをアルベドちゃんに伝えといたんだけど、聞いてないみたいだね」

「…へっ?」

「いや、別に諭すつもりもなかったんだけど……ただね。手をこまねいてると、ギルマスの心をアルベドちゃんに全部持ってかれるよー……って言いたかっただけ。たぶん実際のギルマス像を自分だけが知ってる状況にして、『私だけがアインズ様のお心を全て理解しておりますわ!』って懐柔していくつもりなんだろうね」

「なっ…!?」

「ないと思う?」

「やりかねないっす!」

「だろ? ちょっとアンフェアかなって思ったからさ。まあそれでギルマスが安定するなら良いのか、それともずるいと思っちゃったりするのか……僕はNPCじゃないからわかんないけどね。実際のとこ、どう思うんだい? アルベドちゃんにギルマスを独り占めされたら」

「ずるいっす!」

「なら頑張りな。そのためのアイテムもあげよう」

「………メガネ?」

 

 縁の厚い、赤色のメガネを渡されたルプスレギナ。それは()()()特殊な光を可視化する、エイ謹製のマジックアイテムである。守護者統括が最近になってつけ始めたものと酷似しており、ルプスレギナにも見覚えがあった。

 

 誰もいないというのに、何故か耳打ちでゴニョゴニョとメガネの説明を始めるエイ。様式美というやつだろうか。新しいオモチャを手に入れたように、目を輝かせるルプスレギナ。そしてそれを満足気に見たエイは、ようやく“本題”へと入る。

 

「さて、ではでは……『友人』と『メイド』。これは両立できるものであり、メイドとして生み出された以上、君はそうである必要がある」

「…?」

「アルベドちゃんやらシャルティアちゃんは、友人ではなく妻の座を狙ってる訳だけど──やっぱ物理的に()()がなければ始まらないよね。だから僕は、ギルマスに()()が生えてくる指輪を、アルベドちゃんに渡した訳だけど…」

「…ん? それってこの指輪じゃないんすか? 量産できたとかで頂いたっすけど…」

「や、それは女の子に生える指輪。そもそも物が違うよ」

「…ってことは……昨日の一件はつまり……茶番ってことに…?」

「イエス!」

「噛んでいいっすか?」

「どうぞご自由に」

 

 晴れやかな笑顔でサムズアップするエイへ、身体中に手当たり次第に噛み付くルプスレギナ。この世の生物を『弄り役』と『弄られ役』にわけるとすれば、彼女は間違いなく前者である。だからこそしてやられた事実に、釈然としないものを感じるのだろう。

 

「話を戻すけど……そう、メイドとしての役回りの話だね。ギルマスはアンデッドだからこそ、美女や美少女を侍らしつつも手は出さない訳だ。しかしアイテムによるものとはいえ、()()()なら……性欲は復活する。というより、あれには多少の興奮作用も備わってるからね」

「えーっと…?」

「君も生えた時の自分を思い返せばわかるだろ? ギンギンになってる時に可愛い女の子が傍を通れば?」

「ヤりたいっす!」

「そう。そして君も含め、プレアデスの女の子は超美形だ。となると?」

「──っ! ア、アインズ様の……お手つきになれるっすか?」

「可能性は高い。そうなると、当然“ご奉仕”しなきゃいけない訳だけど……そこで上手くできなきゃ…」

「次はない……ってことっすね」

 

 こくりと頷くエイ。そして深刻そうな表情のルプスレギナに、いよいよ最大の目的を話し始めた。『プレアデスエロ化計画』の、その全貌を。しかし──なんという悲劇か、その計画は始まりの時点で破綻していたのだ。

 

「そこで君だよ! そのチンポでもって他の姉妹のテクを上げていけば……君も気持ちいいし、結果的にギルマスも大満足だぜ! ──ついでにちょっと動画にとってくれれば僕も…」

「や、それはちょっと無理っす」

「──な、なんで?」

「いや、だって姉妹っすよ? …エイには姉とか妹とかいなかったんすか?」

「僕? …“前”の“前”にはいたね。お姉ちゃんが」

「ヤりたいと思うっすか?」

「…いやー、ちょっときついっす」

「っすよね。いくら可愛いったって、姉妹は無理っす」

「うーん……なるほど。確かにそこは盲点だったな…」

 

 人には“線引き”がある。倫理と言い換えてもいいそれは、個人個人によって上限は様々だ。魅力的な女性だけれど『人妻』だからアウト。魅力的な上に『人妻』だから逆に良い。

 

 可愛いけれど『幼女』だからアウト。可愛くて『幼女』なんて最高。ヤりたいけど男の娘だったから残念。ヤろうとしたら男の娘だったとか神。そういった、人によっての線引きは数多存在する。

 

 エイにとってのそれは、余人には理解し難い部分がある。例えばプレアデスで言えば──ルプスレギナ・ベータ以外に手を出すのは『なんか悪い気がする』という、適当な線引きである。しかし彼にとっての『なんとなく』は、ともすれば人生に直結するほどに重要なものでもあった。

 

 そして適当だからこそ、ルプスレギナが他の姉妹に手を出すのはセーフという、普通の人間にはいまいち理解しにくい方向へと誘導し、せめて動画だけで楽しもうという魂胆であったのだ。

 

「ま、そんなら仕方ないか。ルプスとセックスできただけでよしとしよう」

「なんか釈然としないっすけど」

「ふふん……僕ってやつは、エッチなことが好きな知り合いが多いんだぜ」

「…ん? どゆことっすか?」

「エロが好きな友達の輪を広げていけば、そのうち世界はエロで溢れる……馬鹿な妄想だと思うかい?」

「…っ!」

「とりあえず、レイプシチュが好きな聖王女様と……アナル弄りが好きな女の子を紹介できるけど」

「──私とエイは親友っす!」

「おお、我が友よ!」

 

 死体の山の傍で抱き合う二人はまさに変人で──そして変態であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トブの大森林──その中心にある湖は、ひょうたんのような形をしている。ざっくばらんに分けるとするならば、北側がトードマンの縄張り──そして南側が蜥蜴人の縄張りである。そんな湖の南端で、クレマンティーヌは回復に努めていた。

 

「いちち…」

「動かないでくださいな」

「んむ…」

 

 刻んだ薬草を腫れた顔に貼り付けていくのは、一目で高貴な存在であると理解できる王女様。エイによってクレマンティーヌのところへ飛ばされた彼女は、目的が理解できないながらも、とりあえず怪我人の治療へと着手したのだ。

 

「これほんとに効くの?」

「本来はすり潰すものだったと記憶していますが、器具もありませんし……でも、やらないよりはマシでしょう」

「…ったく、あの糞女……ま、結果的に戦争になりそうだし? くっ、ふふ…! あー、面白いことになりそう」

「戦争……ですか?」

「そーそー、聞いてよ! 法国と評議国が──や、たぶん法国と竜王かな? 戦いおっ始めんの! わくわくするよねー」

「…そうなんですか。リ・エスティーゼにまで被害は……いえ、確実に及ぶでしょうね」

「人類全土巻き込まれんのも面白そうっちゃ面白そうだけどねー……ま、それなりのとこで落とし所はつけるだろうけど」

「そうなんですか?」

「あっは──頭が良すぎて飛ばされたとか言ってた割に、察しは悪いじゃん」

「“予測”とは前提となる情報があって初めて成り立つものです。なにもない状況から推測できたなら、それは未来予知の類ですね」

「ま、それもそっか。なんつーか……法国は本気で評議国に敵対する気概なんかないし、あっちもあっちでかなり穏健派って聞くし。となれば神官長たちはかなり分の悪い条件でも飲むだろうし……まあ番外席次の身柄要求と、神の遺産の一部譲渡くらいってとこかな。後は折り合いつけるための小競り合い……戦争なんてそんなもんでしょ?」

「ええ、その通りです」

 

 身も蓋もない会話をしながら、治療は続く。膝枕をされながら意気揚々と喋るクレマンティーヌは、それだけ法国が被害を受ける事態が楽しいのだろう。偶に薬草が口の中に入り咽るが、それでもお喋りは止まらない。

 

「しっかし……私のとこなんかに飛ばしてきて、どういうつもりなんだか」

「なにか、そういった専門家様ではないのですか?」

「んー? 絶望させるのは得意だし、心が壊れるのを見たりってのは楽しいけど──どう考えても人選ミスでしょ」

「そうですか……その割には、私に優しくしてくださいますが」

「借りを返してるだけ。あいつを利用したって言えば聞こえはいいけどさー、結局ただ守ってもらっただけだし。あんたの世話で返せるなら、まあ悪くないでしょ……あいつもそれが狙いだろうし。ったく、軽薄なんだか細かいんだか…」

 

 あくまで願いを叶えてから、納得ずくのセックスをしたい。貸しの押しつけで、引け目の積み重ねから体を許すのは“違う”──そういうことなんだろうと、クレマンティーヌは解した。『王女様の世話で貸しはチャラにしてやる』と。ヤりたいのかヤりたくないのか、『変な奴だ』と彼女は皮肉げに笑った。

 

「さってと……法国はもう私なんかに構ってる暇ないだろうし……『ぷれいやー』の監視もなんか無くなってるみたいだし、やっと森から出られるー…」

「よくわかりませんが、大変だったんですね」

「ほんとにねー。とりあえずポーションか神官探すかしないと、この顔じゃキッツイって」

「ええ。私もクレマンティーヌ様の素顔を見てみたく思います」

「あんたほどお綺麗でもございませんけどねー」

「それは仕方ありませんわ」

「おい」

「冗談です」

 

 腫れは治まらないものの、ようやく痛みが引いてきたこともあり、クレマンティーヌは行動を開始した。現状の彼女にとってもっとも注意すべき相手は、法国でもなくアインズでもなく、秘密結社『ズーラーノーン』である。

 

 彼女がエ・ランテルでの事件の首謀者『カジット・デイル・バダンテール』へと協力していたことは、ズーラーノーンも把握している。しかしそれが失敗し、首謀者の死亡は確認されても、彼女の情報が一切上がってこないとなれば──追手をかけるのは明白。

 

 クレマンティーヌはズーラーノーン幹部『十二高弟』として在籍してはいるものの、秘密結社とはいえ所詮は“組織”。派閥での争いや諍いなどは当然のように存在し、その性格故に煙たがられていた彼女を蹴り落としたい人間は多かった。となれば、捕らえられた時点で釈明の機会を封殺される可能性は十二分にある。彼女が仮宿に戻る必要性は皆無だ。

 

 ズーラーノーンの拠点は主に帝国、そしてそれより東──小国家群が主たる活動の場だ。故にクレマンティーヌは湖の縁をなぞるように西へ進み、リ・エスティーゼ王国を目指すことにした。ラナーを最終的に送る場所というのも、ある程度は関わっているだろう。

 

「…あん? …こんなところに集落? 物好きだねー」

「森の湖には蜥蜴人が住んでいると聞いたことがあります。おそらくはそれでしょう」

「ふーん……ポーション持ってるかな?」

「…そのような技術があるとは思えませんが」

「うわ、出た出た王国っ子(エスティーザ)の偏見。あんたらが亜人()()なんて言ってられるの、私達のおかげだからねー? ちょっと人の領域出たら、人間なんて家畜でしかないってのに」

「別に見下しているわけではないのですが……というより、法国出身の方に言われると物凄く違和感です」

「法国はそうすることで強国を維持してんの。そっちは単なる自尊でしょ」

「…耳が痛いですね」

 

 そういって、ズカズカと蜥蜴人の集落へと踏み込んでいくクレマンティーヌ。ラナーがキチガイを見たように必死で止めるが、意味をなさない。顔を腫らした女戦士の背中にしがみつき、ズルズルと足を引きずる王女──そんな出で立ちで現れた二人に、集落の蜥蜴人が壁を作るようにして集まってくる。

 

「…何者だ!」

「なになに? ものものしー。二人ぽっちの侵入者なんかに、こんな集まっちゃってさ」

 

 既に見張りから通達が入っていたのだろう。毛色の違う戦士たちが続々と近寄ってくる。蜥蜴人は見た目に反し、魚を主食とする穏やかな種族だ。仮に人間が迷い込んできたとしても、追い払いこそすれ襲うことはあまりない。だというのに、彼女達の前に集まってきた蜥蜴人は非常に殺気立っていた。

 

 そんな中、蜥蜴人の集団を割るように出てきた人物が六人。黒い鱗を持つ、威風堂々とした蜥蜴人。氷の塊のような、奇妙な剣を持つ蜥蜴人。片方の腕だけが異様に太い、巨躯の蜥蜴人。頭の先から背にかけ赤髪を携えた、骨の鎧を着込む蜥蜴人。真っ白な鱗を持つ、白蛇を思わせる蜥蜴人。そして斑色の鱗を持つ、青いモヒカンの蜥蜴人。

 

「この人数を前にして、肝の据わった人間だな……人間だよな? 顔はゴブリンに似ているが…」

「腫れてるだけだっつーの。殺すぞ」

「…今すぐ出ていけば殺しはしない。今は皆、あの化物のせいで殺気立っている……留まるというなら、命の保証はせんぞ」

「…殺気立ってるぅー? く、ひゃひゃっ……アッハハハハ!」

「クレマンティーヌ様? 皆様、かなり興奮状態にあるようですし……治療は諦めて先を急ぎましょう」

「ああ、ほんと世間知らずのお嬢様ねー……くく、あれは殺気立ってんじゃなくて──ビビってんのよ」

 

 クレマンティーヌの言葉を聞いた瞬間、蜥蜴人からの圧力が数倍にも変化する。野生に生きる以上、蜥蜴人は多かれ少なかれ“強さ”への信仰を持っている。五つある部族の内、その一つは強さのみを崇拝しているほどだ。それをあろうことか、外部の人間に侮辱されたのだ。この時点で、普通の人間であれば生きて帰れる芽はない。

 

 ──普通の人間なら、ではあるが。

 

「イカツイのが雁首揃えて『ボク怖いでちゅー』ってさぁ、くひっ──殺気立ってんなら殺しにくればー? …雑魚共ぉ!」

「──なっ!」

 

 前に進み出ていた、六人の蜥蜴人──各部族の族長と、一人の“旅人”。本来であれば、同種族であるとはいえ、部族間での交流など行わない彼等。しかし先日現れたザイトルクワエの威容は、そんな部族同士の壁を粉々に砕いた。

 

 どんな融和政策よりも効果がある、『共通の強大な敵』という認識。彼等からすれば、ザイトルクワエは突如表れ──そして突如として消えたにすぎない。またいつ現れるともしれないそれを、とにかくは部族の族長達で寄り集まり判断しようと、彼等は結束したのだ。

 

 そんな折、クレマンティーヌが侵入者としてやってきたのである。まさに踏んだり蹴ったりというやつだろう。不幸中の幸いと言えば、彼女の武器が殴打武器のみであったことだ。エイとの最初の邂逅時に、スティレットを四本全て消し飛ばされたため、彼女の武器はいまだにこれ一本である。

 

「は──っはぁ!」

「ぐっ、なんだこの強さ──!」

 

 巨躯の蜥蜴人──ゼンベル・ググーが、飛びかかってきたクレマンティーヌの一撃を右腕で受け止め、しかしただ一合の元に骨を砕かれた。モンクである彼の最大の武器であり、最硬の盾である右腕が、だ。

 

 次に標的となったのは、斑色の鱗を持つ蜥蜴人──スーキュ・ジュジュ。彼が得手とする攻撃手段は『投石』であり、元より近接戦闘は苦手としていた。その上、この人数を相手に人間が向かってくるなどとは露程も思っておらず、結果として腹部へ強烈な衝撃を受け昏倒した。

 

 そのまま流れるように次の相手へと移ったクレマンティーヌだが、結果としてそこで攻撃の手を止めることとなった。その相手は骨の鎧を着込んだ蜥蜴人──キュクー・ズーズー。彼が纏う鎧は蜥蜴人の四至宝の一つ『白竜の骨鎧』であり、その硬度はアダマンタイトにも匹敵する魔法の防具だ。

 

 知力と引き換えに凄まじい防御力を引き出すこの防具は、かつて蜥蜴人で最も聡明と言われた彼の智慧を奪い、そして正しくその真価を発揮していた。ユグドラシルの法則を当てはめるのならば、『呪われた装備』とは──場合によっては込められたデータ量を上回り、ワンランク上の性能を発揮する。

 

「──砕けない…? 相当なアイテムだねー。それにどっちも死んでないかー……割と頑丈じゃん。全員このレベルならちょっと厳しいかな? …ま、あんたらだけだろうけど」

「…取引だ!」

「あん?」

「先程、そちらの女が『治療は諦めて』と言っていた。察するに、その顔の怪我を癒やしたいのだろう! 俺は治癒の魔法が使える……治療する代わりに矛を収めてくれないか?」

「正気かシャースーリュー! そいつは俺達を侮辱したんだぞ!」

「あの化物がまた出かねない状況で、これ以上戦力の低下は避けたい。そもそも──勝ち筋が見えん。後ろの女が同じくらいの実力だとすれば、全滅は必至だぞ。俺は族長として、部族の者達の命を取りたい」

「ぐっ…!」

 

 黒い鱗の蜥蜴人──シャースーリュー・シャシャの言葉に、うめき声をあげるゼンベル。砕けた腕の痛み故か、それとも族長としての責任感か、ズサリと地面に座り込んだ。クレマンティーヌの圧倒的な強さに、場が静まり返る──その瞬間。後方で静観していたラナーから小さな悲鳴が上がった。

 

「──武器を捨てろ!」

「げっ……マジ?」

「も、申し訳ございません…」

 

 振り返ったクレマンティーヌの目に入ったのは、戦士の一人がラナーに剣を突きつけている光景だった。そもそも“誰かを守る戦い”などしてこなかった彼女は、戦闘に入った時点でラナーのことなど忘却の彼方である。

 

 一応お守りを引き受けただけに、どうしたものかと立ち尽くすクレマンティーヌ。人質のために自分を顧みないなどという、殊勝な人物ではないが──とりあえず武器は捨てるかと、モーニングスターを数メートル先へ放り出した。武器がなかろうが、所詮は彼女にとって己の足元にも及ばない亜人の群れだ。最悪でも逃走くらいはできるだろうと踏んでの、義理と保身に揺れた選択肢であった。

 

 しかしそんな彼女を見て、初めて“本当”の驚きを見せたラナー。親ならば理解できる。騎士ならそれが責務。王国民ならば、あるいは。しかしクレマンティーヌはラナーに縁もゆかりもなく、大した義理も絶対の義務もない。異性ですらないのだから、魅力に惚れたというわけでもない。だというのに、この状況下で武器を捨てたのだ。なぜ私のために自殺行為を──という勘違いをしていた。

 

 ──しかし戦士の行動を阻んだのは、誰あろう蜥蜴人その人であった。

 

「やめろ! ──お前のその行動は……祖霊に誇れるのか! こんな状況で拾った勝利を! 俺達が喜ぶと思うのか!」

 

 吼えるように放たれた言の葉は、静かな森へ響き渡った。氷の剣を持つ蜥蜴人──ザリュース・シャシャ。ただ一人、族長ではないというのに前へ出た蜥蜴人だ。四至宝『フロスト・ペイン』を持つ勇者であり、帰還した“旅人”の一人である。

 

 そんな彼の覇気に気圧され、戦士の手から剣が滑り落ちる。ほっと一息ついたクレマンティーヌと、そんな彼女をじっと見つめるラナー。ひとまず──戦いは終わったようだ。

 

「…失礼をした。手当をしよう、こちらへ」

「ついでに食料かなんかない? あ、人肉は勘弁ね」

「我々は基本的に魚しか食わん……というか、あまり余裕はないのだが」

「お気になさらずー」

「むぅ……それはこっちのセリフではないか?」

「じゃあ適当にその辺で取ってくる」

「ま、待て! 今は弟が養殖というのをしていてな……あまり荒らされたくないんだ。こちらで用意する」

「よろしくー」

 

 傍若無人なクレマンティーヌの態度に、あからさまな態度でため息をつくシャースーリュー。弟であるザリュースをちらりと見ながら、頷きあって湖の方へと向かう。そしてそんな彼等を見て、ラナーは後ろについていく。

 

「…ん? なぜついてくる」

「少し興味がございまして。なぜあのまま私を人質にし続けなかったのですか?」

「…あの時に言った通りだ。あのような方法で勝ちを奪えば、祖霊に顔向けができない」

「祖霊……ですか。あなた方の信仰はそこにあるのですね」

「人の世界は──四大神、だったか? だが俺達は遠く歴史を重ねてきた祖霊こそを大切にするんだ」

「あら、よくご存知ですね」

「俺は“旅人”──外の世界を知りたくて旅をした、蜥蜴人の中でも変わり者だ。だが、そのおかげで養殖というものを知ることができた。かつて起きた部族間での戦争も……この技術があれば、せずにすんだのではないかと思う。過去を悔やんでも仕方ないが、教訓は活かすべきだろう」

「…」

「──さ、ここが生け簀だ。一人一匹で足りるか?」

「いえ、二人で一匹で充分です。ところでこの生け簀ですが……あまり水質に気を使っておられませんが」

「…どういうことだ?」

「餌の食べ残しや排泄物、死骸の堆積による水質汚染は無視できません。特に稚魚の生存率が大きく変わってきますし…」

「──ま、待て。書くものを持ってくる」

 

 湖の縁でしゃがみ込むラナー。本で得た知識とはいえ、ザリュースが記憶を頼りに手探りで作成した生け簀よりは、よほど実践的だ。慌てて家に戻る彼をクスリと笑い、先程の一連の流れを思い返す。彼女は、人の善も悪も理解しているつもりだった。むしろ理解していなければ、遠隔で人を操ることなどできよう筈もない。

 

 ただ彼女にとって予想外だったのは──当事者になった際の感情の振れ幅。たとえ暗殺者が目の前に現れても、心を動かすことなどないだろう。そう思い込んでいた彼女の心は、意外にも命の危機に対し少なからず動揺し、救い出そうとしてくれた人物への、憧憬にも似た感情を自覚した。

 

 甘味や辛味、酸味という味覚を知っている上で、リンゴの味を説明されたとしよう。それが甘酸っぱいものであると彼女は理解し、知った気になっていた。しかし食べた際の感動など、説明だけで得られよう筈もない。ようやく彼女は“体験”を知ったのだ。

 

 『こういった状況下では、人はこういった感情を持つ』。それを図式に当て嵌めて人を操る少女は、計算式に間違いはなかったと確信しつつも、その揺らぎは実に面白いものだとようやく気付いたのだ。

 

 ──その晩、クレマンティーヌよりシャースーリューへ魔樹の説明がなされ、蜥蜴人の警戒態勢は終わりを告げた。同時に泡沫の協力体制も消滅したが……しかし養殖という技術はラナーにより昇華され、ザリュースによって各部族に伝えられた。

 

 久しく途絶えていた交流は復活し、蜥蜴人はかつての隆盛を多少は取り戻すだろう。まさに万々歳、ここで物語が終わればきっと素晴らしい話となるのだろうが──主人公は腐ってもクレマンティーヌである。むしろ性根が腐りきっている彼女であるからして、華麗な幕引きなど有り得ない。

 

 蜥蜴人が寝静まった深夜、ラナーは彼女に揺り起こされた。出発準備万端といった彼女の腕には、蜥蜴人の四至宝が一つ『白竜の骨鎧』が抱えられていた。

 

「あ、あの…?」

「いやー、やっぱ私って誰かを守るのって向いてないからさ……かっぱらってきちゃった。あの硬さならオーガの一撃くらい耐えられるだろうし。んじゃ──行こっか、お姫様」

「ぷっ……く、ふふ…! ──クレマンティーヌ様」

「あん?」

「私、あなたに逢えて良かったです」

「は、はぁ…? まあ勝手に思う分には別にいいけど……ほら、さっさと鎧つけて」

「はい!」

 

 差し出された手を取り、暗闇の森へ駆け出すラナー。その笑顔はクライムを想う時よりなお美しく──そして鎧を纏った彼女の知力は、『異次元の天才』から『普通の天才』へとだだ下がった。ちなみに鎧が呪われているとされる由縁は、『一度下がった知力は戻らない』という事実に起因するものである。

 

「あら…? なんだか頭がふわふわします…」

「なに言ってんだか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 使い込まれて良い感じに熟れたオマンコを、ズンズンと突く。腹の下で喘ぐエルフに興奮していると、横からディープキスをされ、更に逆の手にはキュンキュンと閉まるアナルの感触が心地良い。初めての四人プレイだが、これは中々いいものだ。

 

 欲を言うともうちょいおっぱいが欲しかった。僕はロリっ娘が好きだけど、つるぺた趣味という訳ではない。成人女性とヤるならおっぱいの感触はぜひ欲しいところだろう。

 

 エルフの奴隷制が無くなった帝国では、色んな商人や個人が影響を受けた訳だけど──そんな中、かの高名な噛ませ役『エルヤー』さんはいまいち納得いかなかったようだ。三人の元奴隷エルフ達を開放したはいいものの、扱い自体はなにも変わっていなかった。

 

 もちろん逃げることは出来ただろうが、そもそも奴隷のエルフとは『徹底的に心を折られた』エルフである。自分が奴隷であろうがなかろうが、主人に逆らう気概が起きないのも当然の話だろう。

 

 そんな彼等とばったり出会った僕は、お決まりのようにエルヤーさんからエルフ達を救って、感謝のセックスと洒落込んだわけだ。しかしまあ、なんというか……性欲処理用の道具にされていただけあって、男が悦ぶツボを抑えている。穴も良い感じにほぐれてるし、申し訳ないながらも気持ちいい。

 

 そんなこんなで真っ昼間から数時間ほどサカり、事が終わった後は皇城へと出向いた。ジルが奴隷を解放して『はい終わり』などという杜撰な政策を取る筈もなく、元奴隷の支援機構はきっちり用意してある。そこへ彼女達を預け、なにかあったら連絡するように伝えてお別れした。

 

 その後はジルとのお喋りタイムである。なんせ僕って男の友達がいないから、彼との会話には割と癒やされる。もちろんジルは打算込みで友人関係を続けているんだろうが、そもそも成人して以降の友人関係など、割と損得や利害込みのものだ。長年続けば普通の友情くらいにはなるだろう。

 

「…それでドラウがさー、こっちにも塔を造れっておねだりしてきて…」

「うーむ……若作りのババアにおねだりされるとか、ゾッとするんだが」

「ギャップ萌えってやつだよ。見た目が幼女で中身がババアだからこそ、そこに価値があるんだ。ロリババア最高!」

「なるほど、わからん」

「ジルだってロクシーちゃんだかロキシーちゃんだかを愛してるじゃん? もっと綺麗な娘も可愛い娘もいるのに」

「む……まあ、そうだな」

「“ギャップ”ってのはそれだけで一つの萌えさ。昼は貞淑、夜は淫乱……ほら、男の夢だ」

「どこがだ?」

「人前ではツンツン、二人きりの時はデレデレ……これはツンデレじゃなくて“ギャップ萌え”だぜ。そう、男の夢だ」

「うーむ…」

「可愛い娘にアプローチしたら()()()いた……これも一種の──」

「ホモでは?」

「…うん、それはそうだった」

 

 最近フタナリ娘とか相手にしてたから、ちょっと緩んでたぜ。しかし的確なツッコミを入れてくれるジルとの会話は、やはり楽しい。たまにお見合いを勧めてくるところとかが、近所のオバサンみたいでアレだけど。後腐れなくヤれる可愛い娘とかなら、いくらでも紹介してくれていいんだけどなあ。

 

「そういやアルシェちゃんの働きぶりはどう? 上手くやってるかい」

「ああ。つい最近、四位階に到達したらしい……魔法省全体でみても類稀な才能だ。フールーダの後継筆頭だな」

「そりゃ良かった。やっかみとか嫉妬とか大丈夫かな?」

「無いとは言わんが、本人で処理できる程度だ。何かにつけこちらが守っていては、魔法以外の部分が育たんしな」

「ごもっとも」

 

 練磨の塔の調整段階で手伝ってもらったからか、アルシェちゃんもちょこちょこレベルアップしてるんだよね。触手部屋でアヘ顔も見れたし、本人も強くなったし、僕も気持ちよかったしで良いことだらけだった。

 

「そういやフールーダお爺ちゃんはまだ見たことなかったな…」

「…ほう、興味がないのかと思っていたが……そうでもないのか?」

「や、興味って言うか──いや、興味だな。興味本位」

 

 足ペロお爺ちゃんとか、中々見れるもんじゃないからな。魔力量を可視化できるって、MP無限にしたらどうなるんだろう。アルシェちゃんはゲロ吐くんだろうけど。

 

「…会っていくか?」

「んー……そうだね。アルシェちゃんのついでに見ていこっかな」

「逸脱者をついで扱いにするのか…」

「僕は超越者だし」

 

 ジルに案内してもらい、魔法省へと向かう。皇帝直々の道案内とは、なんとも贅沢だ……おっ、あっちから歩いてくるのは、もしやフールーダお爺ちゃんでは? ぞろぞろと弟子を引き連れて、実験室にでも向かっているのだろうか。後ろの方にアルシェちゃんもいる。ちょうどいい、さっき言ってた魔力無限状態にでもしてみよう。足ペロを回避する避けゲーの開始だ。設定変更……そいっ。

 

「──目がぁぁぁ!?」

「目ぎゃぁぁぁ!?」

 

 うおっ! なになになに!? 二人共、目を抑えながら倒れ込んでしまった……あれか、光の量で位階を判断してるから──光量が強すぎて、閃光弾みたいな感じになったのだろうか。ごめんアルシェちゃん。

 

「…何をしたんだ?」

「や、魔力無限にしたらどういう反応するんだろうと思って……ごめんジル」

「いろいろ無茶苦茶だな……命にかかわるものではないんだな?」

「たぶん。寝起きに強い光を向けられたような感じだろうし」

「そんなレベルではなかったような気がするが──まあいい。お前たち、二人を医務室に運んでおいてくれ」

「は、はいっ!」

 

 …めっちゃビビられてる。そういやタレント持ちとかじゃなくても、マジックキャスターならある程度の魔力は感じ取れるんだっけ。とりあえず魔力は普通に戻しとこう。驚かせて申し訳ない。

 

「心配だし、僕も医務室行ってくるよ」

「ああ。私は溢れっぱなしの仕事に戻るとしよう……最近、色々ときな臭くて敵わんな。お前が関わっているのか? エイ」

「関わってるのもあるし、関わってないのもあるし。まあそうだね──よっぽど困ったことがあれば、手伝うよ」

「ふん……まったく、心強いことだ」

 

 手をひらひらとさせて執務室に戻るジル。弟子たちが数人、慌てて付いていく。皇城で暗殺もないだろうけど、自由奔放な皇帝である。さて、じゃあ僕はアルシェちゃんのお見舞いにでも行くか。網膜が焼き切れてたとかだったら、土下座しよう。

 

「アルシェちゃーん……お元気?」

「──『ウン=エイ』様。フルト様のお見舞いでございますか?」

「うん。具合はどんな感じ?」

「なにやら強いショックで気を失っておられますが……直に目を覚ますでしょう」

「そっかそっか。あれ、フールーダお爺ちゃんは?」

「医務室は男女別でございますので、隣の部屋におられます」

 

 ほうほう……しかし広い割に利用者は少ないな。まあ皇城で怪我人なんて早々でるわけもないか。さてさて、それでは──ちょっとイタズラでもするか。ピンク髪のメガネっ娘な女医さんには眠ってもらい……ん? 地味に可愛いな。ちょっとおっぱい揉ませてもらお。ケツもいい。後でお誘いでもかけてみるかな。

 

「アルシェちゃーん? 起きないとイタズラしちゃうよー」

「ん…」

 

 うーん、起きないな。ってことはイタズラオッケーってことだ。たまには睡眠姦というのもありだろう。うつ伏せにして、お尻を高く上げてみる。ズボンと下着をずり下ろせば、可愛いアナルとオマンコが丸見えだ。

 

 …なにやらアナルビーズ的なものが刺さっているが、気のせいということにしておこう。まあ準備する手間が省けたってことで、むしろ有り難い。指を一本挿れると、吸い付くように奥へ誘い込んでくる。うん、いい感じにほぐれてるし……チンポ挿れちゃおう。

 

「──っ、ん、ぐ…」

 

 相変わらず極上の締まりだ。くぐもった声で鳴くアルシェちゃんだけど、起きる気配はない。なんか犯罪行為してるみたいで興奮するな……や、まごうことなき犯罪行為だけど。尻たぶを強く掴み、ピストンを速める。さっきの奴隷エルフちゃんたちには申し訳ないけど、やはりアルシェちゃんの尻穴は比べ物にならないほど気持ちいい。

 

「ひぅ、んっ──は、ぁ…」

 

 最後にひときわ強く腰を打ち付け、精液を流し込んだ。そのままぐるりと回転させ、繋がったままキスをする。小刻みに揺らしながら二度目の射精を行いつつ、舌で口内を蹂躙していると──ようやくアルシェちゃんが目覚めた。

 

「ん……──っ!? な、エ、エイ…?」

「おはよ、アルシェちゃん」

「な、なんで──んむっ!?」

 

 覚醒と同時、アルシェちゃんの尻穴がぎゅっと締まる。気絶して緩んだ状態ですらあの極上っぷりだったんだ。気の入ったアナルがどれほどの雌穴かなど、言うまでもない。そのまま乱暴にピストン運動を開始し、三回戦を始める。

 

「あ゛っ、ん、ひぅ…! こ、ここっ、医務室…?」

「そうだよ。ほら、お昼寝してる女医さんに見せつけてあげよう」

「だっ、あ、だめ……んぅっ!」

「あ、起きそう」

「──ふぅっ、ん、あぅっ…!」

 

 女医さんの眼前に繋がってる部分をもっていくと、顔を真っ赤にしたアルシェちゃんの尻穴が更に締まる。ゆるふわトロふわなのにキツいって、矛盾してるけど──きっと雌穴だけがこの相反を体現できるんだろう。

 

「射精すよアルシェちゃん」

「あ、い゛っ──んきゅぅ…!」

 

 都合三度目の射精で、アルシェちゃんのお腹もタプタプだ。名残惜しそうにチンポを離すアナルは、けれどぴっちり閉じて精液を溢さない。何も言わずともお掃除フェラをしてくれる甲斐甲斐しさに、またぞろチンポが熱り立つ。

 

 さて、四回戦目でも始め──

 

「失礼します。こちらにエイ様が向かったと……あっ」

 

 ──ようとしたら、レイナースちゃんが扉を開けて入ってきた。アルシェちゃんが驚きのあまりチンポを噛んだのが、地味に痛い。慌てて布団を被ってるけど、流石に手遅れだと思うぞアルシェちゃん。

 

「こっちおいでー、レイナースちゃん」

「え、あ、え……は、はい」

 

 最近思ったんだけど、浮気への嫉妬に対する最適解って──女の子にチンポを生やすことなんじゃないだろうか。頭隠して尻隠さず状態のアルシェちゃんの下半身を撫で回し、レイナースちゃんに指輪をはめて、剥き出しのアナルへとチンポを誘導する。事態を理解できていないのか、混乱の声を上げる彼女であったが──数分後には、アルシェちゃんのアナルに魅了されていた。四騎士『重爆』が魔法省期待の新人の尻穴を犯してるとか、その事実だけで既にエロい。

 

 うんうん、仲良きことは素晴らしきかな。ルプスにも言ったけど、ぜひぜひこの輪を世界に広めていきたいものだ。夢中で腰を振る彼女達を見ていると、心の底からそう思う。そう──エロは世界を救うのだ。ペロロンチーノさんもそう言ってた。




昨日メイドインアビスのアニメをアマプレで全話見たんですが、珍しく涙腺が緩みました。原作は大好きで、昔に短編小説を書いたこともあるんですが、やっぱりアニメもアニメでいいものですねー。


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14話

 アルベドというNPCは、ナザリック配下の中でも非常に強欲なシモベである。常に主の心を独り占めしたいと考え、機会さえあれば行動にも移すような女性だ。彼女が『男にも生やす指輪』を手に入れたとなれば、もはやアインズの貞操が散ることに疑いはない──が、それを阻止せんとする者がいることも事実。

 

 シャルティアとの同盟の一件もあり、そしてエイからの『あまりやりすぎると顰蹙を買うよ』という言葉もあり、アルベドが出した結論は『モモンガに選んでもらう』というものであった。

 

 指輪を手に入れるにあたってもっとも貢献度が高かったのは、アルベドで間違いないだろう。彼女が優遇され、しかし他の者にもチャンスはある──そういった計画を拵えるのは、守護者統括である彼女の専売特許だ。

 

 『アインズに指輪をはめさせ、男性器を生やし、興奮状態に陥った状況で二人きりになる』。そしてその順番こそが、先の貢献度順という訳だ。一番手さえ取れるならば、アルベドにとって何も問題はなかった。性欲のなかった時とは違い、ギンギンに昂ぶった男の誘惑など彼女にとっては朝飯前だ。

 

 ──かくしてアインズを慕う女性NPCによる『誘惑作戦』は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったいなんなんだこれは!」

 

 自室で怨嗟の叫び声を上げるオーバーロード──アインズ。困惑と混乱が綯い交ぜになった彼の様子は、アンデッドとは思えない精神の乱れを感じさせる。加えて、アンデッドとは思えないご立派な肉棒が股間についているのだから、今の彼は『五分の四デッド』くらいだろう。

 

 それもこれも、彼の部屋に置かれていた指輪が原因である。慎重派のアインズが、鑑定もせずに装備することなどあり得ないが──見覚えのないアイテムをつい手にとってしまうくらいは仕方ないだろう。なにせナザリック最奥ともいえる彼の自室へ何者かが侵入し、あまつさえトラップを仕掛けるなどという事態はあり得ないのだから。

 

 彼が手のひらの指輪をしげしげと眺めた瞬間、その効果は発動した。元々装備していた指輪を跳ね除け、その指輪は左手の薬指を陣取ったのだ。そして生えるご立派様。漆黒のローブの隙間から高々と主張するそれは、彼が人間であった時の数倍もの威容を誇った。

 

 湧き上がる筈のない性欲が鎌首をもたげ、外そうとしても取れない指輪を見て、ようやくアインズはそれが呪いの装備品であったことを理解した。そして上位道具鑑定をかけ──その説明文を読んでの感想が、先程の叫び声に繋がったのだ。

 

 『生える指輪:薄い本によくあるアレ。薄い本によくある通り、セックスすれば治る。アイテム没案百二十四個め』

 

「クゥ、クソ運営がぁぁ!! というかなぜ没アイテムが俺の部屋にあるんだ!」

 

 混乱しながらも、いくつかの案を脳内で検証するモモンガ。実際のところ、ユグドラシルのデータが異世界で現実になっていることを考えると、いくらでも想像はできるだろう。ユグドラシルの片隅にひっそりと置かれていたデータが、異世界への移行によって顕現した──そしてそれは同じ世界のものに引き寄せられ、アインズの元へ現れた。そんな推測をしながら、彼は頭を抱える。

 

 既に呪いを解除する手段は試したものの、その一切が効果を発揮しなかったのだ。つまり未完成品故に、ユグドラシルの理の外にある──そう考えるべきだろう。しかしセックスの相手など、簡単に見つかる筈もない。もちろん望めばいくらでも相手は湧いてくるだろうが、ギルドメンバーの子供のように思っているNPCを相手に『そういったこと』をするのは憚られる。

 

 外に出て娼館にでも行くべきだろうか──アインズがそう考えた瞬間、部屋の扉が勢いよく開かれた。

 

「アインズ様ぁ!」

「あ゛あ゛ぁぁ!!」

 

 満面の笑みで、軽やかな足取りで部屋へ侵入してきたのは、ナザリック守護者統括──アルベド。腰の羽根をパタパタと上下させ、なにやらご機嫌な様子がうかがえる。頬は紅潮し、腰をくねくねとさせる姿は男の情欲を誘っていた。

 

「な、なななんだ、どうしたというのだアルベドよ」

「くふぅ…!」

 

 アルベドに対し、高速で後ろを向くアインズ。そのステップは戦士職を確実に凌駕し、ワールドチャンピオンに比肩するほどの速度であった。そしてそんなアインズを見て、アルベドは口が裂けるような笑みを浮かべた。

 

 部屋の中で肉棒をさらけだしたままだったということは──部屋中に雄のフェロモンが巻き散らかされているということだ。鼻をひくひくと動かし、胸いっぱいにそれを吸い込むアルベドはまさにビッチの極み。アインズが振り返ればドン引きすること請け合いだ。

 

「失礼いたしました。急ぎご報告することが……『運営』と思われる者と、一時的に接触することができました」

「なに! それは本当か──っ、とと」

 

 アルベドの言葉につい振り返るアインズ。ローブの前をしっかりと閉じ、若干ながら腰を引いている姿が物悲しい。しかしあばたもえくぼと言うべきか、そんな情けない姿であってもアルベドにとっては子宮が疼く雄姿である。

 

「はい、こちらの──ああんっ、失礼しました……すぐに拾います」

「…! う、うむ…」

 

 わざとらしく手に持った資料を落とし、よつん這いになりながらそれを拾うアルベド。主へ尻を向ける姿は非常に不敬であったが、今のアインズにとってそんなことは何一つ気にならなかった。なにせ形の良いヒップが目の前でどどんと主張しているのだ。

 

 なぜかお尻を高く上げていることや、ふりふりしていることや、何度も資料を落としていることにも気付かない。ローブの中のご立派様がビクンと跳ね、我慢汁を垂らし始めた。ああ、何を迷うことがあるだろうか。そのまま柔らかな尻たぶを乱暴に掴み、剛直を挿し込めばいい──そんな邪な感情が彼の脳内を埋め尽くす。

 

「くふぅ、申し訳ございません……滑りやすい資料ですわぁ…」

「う、うむ……いや、ゆっくりでいいとも。気にするな」

 

 食い入るような視線を尻に感じ、アルベドはほくそ笑む。もはやよつん這いではなく女豹のポーズになっているが、双方ともに気にしてはいない。腰をくねくねと揺らす女と、それを棒立ちで見ている骨──傍から見れば意味不明な光景であった。

 

「おまたせしました──ああんっ」

「ぬおっ…!」

 

 ようやく資料を集め終わったアルベドは、ますます腰を引いているアインズの姿を見てトドメを刺しにいく。足を滑らせた振りをして、仰向けに床へ倒れた。白くなめらかなフトモモをさらけ出し、扇情を煽る。アインズが眼窩の光を揺らし、理性のタガが外れたとでも言うように雄叫びを上げた。

 

「うおおぉぉ!!」

「…! アインズ様ぁ!」

 

 咆哮した主を見て、無理やり組み敷かれる自分を幻視したアルベド。しかしいつまで経ってもその時は訪れず、俯いた顔をちらりと上げると──主の姿は忽然と消えていた。

 

「…え?」

 

 そう──彼女は童貞の奥手ぶりを舐めていた。彼とセックスをしたいのならば、誘い受けではなくグイグイと行くべきだったのだ。かくして一番手という最高のチャンスを逃した彼女は、十分ほど忘我し──そしてナザリック全域に響き渡るほどの悲しい叫び声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リ・エスティーゼ王国辺境、カルネ村。かつて理不尽にさらされたこの村も、現在では見違えるほどの復興を見せていた。一度救われた後は自力での復興を目指した村人達であったが、ある時期を境に魔法詠唱者『アインズ・ウール・ゴウン』からの援助の規模が増したのだ。

 

 それは各地で『ナザリック』という善の集団が現れ始めた時期とほぼ同時であったが、村人には知る由もない。しかし彼等の胸の内には、しかとアインズへの感謝と尊敬が刻まれていた。そしてそんな村の大恩人から、直々にマジックアイテムを賜った一人の少女──エンリ・エモット。

 

 アインズが派遣した人員『ルプスレギナ・ベータ』と非常に()()()こともあり、彼女は成人も迎えないままにカルネ村の村長に任命されていた。それは彼女が持つ『ゴブリン部隊』という戦力が、村全ての戦力より大きいことも無関係ではないだろう。

 

 村の規模に対しあまりに頑強な城壁が築かれたカルネ村は、所々に散りばめられたトラップの存在も加味すれば、城塞都市にも劣らない防衛力を誇る。そしてそんな村で采配を振るうエンリが有能かと言えば──そんなわけもない。ただの村娘に市政のあれこれなど期待できる筈もなく、彼女は助言されるがままに村を成長させていっただけだ。

 

 傀儡政権と言えなくもない状況ではあったが、助言する方が彼女を敬っているため、それなりに健全な関係とも言える。結局のところ、エンリの生活は村長という役職には似つかわしくないものとなっていた。忙しさとは無縁の、割とほのぼのとした村娘の生活と言えるだろう──いや、()()()だろう。

 

 現在の彼女は()()が非常に多い。村の大恩人の関係者『ルプスレギナ』と二人きりでの会議ともなれば、それを邪魔するものなどいないだろう。“秘密の会議”──もちろんただのセックスである。とにかく彼女たちはセックスの魅力に取りつかれ、日がな一日を性交に興じることすらあった。

 

「ん゛っ、は──ぁっ……だ、だめ、ルプス……もう、仕事の時間……あ゛ぅっ!?」

「はふぅ……じゃああと二回射精したら終わりっす」

「そ、れ──んぐぅっ、三回前にも、い゛っ、言って、た、でしょ──きゃうんっ!」

「くぅ…! そんなイイ声で鳴かれたら──また射精るっす!」

 

 口の端にだらしなく舌を這わせながら、エンリの雌穴を蹂躙し続けるルプスレギナ。既に抜かずの射精は六連発に達しており、幾度も抜き挿しされた秘裂は精液と愛液で泡立っていた。肉がぶつかる音に、粘性の水音が混じる。

 

 ルプスレギナがぶるりと体を震わせるのを見て取ったエンリは、彼女の腰に足を絡ませて肉棒を子宮に迎え入れる。指と指を熱く絡み合わせ、舌と舌を淫らに絡み合わせ、長い射精の時間を双方が堪能し合う。

 

 数分ほどそのままの体勢を維持していた彼女達であったが、再びどちらともなく動き出す。先程の約束など忘却の彼方にあり、いかに快楽を貪るかが二人に共通する思考であった。どちゅどちゅと肉棒を出し挿れする音が響き、部屋の中に充満していた雌の匂いがますます濃くなっていく。

 

 ──そんな部屋へ、一人の男が足を踏み入れた。

 

「入るぞルプスレえぇぇぇーー!?」

「また射精る──で、え……あ、アアアインズ様!? し、失礼致しました……え、エンちゃん! アインズ様の御前っすよ!」

「い、いきゅ──ん゛ん゛っ……へっ? あ、え、あわわ…! し、失礼しました!」

 

 アルベドの誘惑から逃げおおせたアインズは、そのままナザリックに居てはまずいと考え、カルネ村へと避難したのだ。冒険者としてあまり活動していなかったが故に、彼の行動範囲は非常に狭い。単身で見知らぬ地へ向かうより、勝手知ったるこの村へ来たのは自然の成り行きだろう。

 

 そして特に縁の深いエンリや、この村に入り浸りのルプスレギナの元へ向かうのもまた道理。村人から“会議”などという言葉を聞けば、なにかあったのかと心配するのは当然だろう。徐々に小康状態になっていた肉棒も、真面目な話になれば更に鎮まるだろう──そう考えたアインズは何も間違っていない。

 

「え、いや、え……は? なん…?」

「どうかされましたか? アインズ様」

「いやいやいや……どうかもなにも……え? ちょ、え…」

 

 ささっと身なりを整えた二人を見て、混乱の極地に陥るアインズ。あらゆる意味で困惑していた彼であったが、なによりも気になったのはルプスレギナの肉棒である。生やすマジックアイテムの存在など聞いていなかったアインズは、彼女の下半身を見て『もしやルプスレギナは両生具有であったのか』と思い至った。NPCの身体検査などしていなかったのだから、そう思うのも仕方ないだろう。

 

 そして実のところ──エンリなら事情を話せば()()()くれるのではないかと、ほんの少しだけ期待していたアインズ。それが配下に肉棒を突き挿れられていたのだから、童貞の心には甚大なダメージであった。

 

「………」

「…アインズ様?」

「…お前には失望したぞルプスレギナ」

「ふぁっ!?」

「ドちくしょおぉぉーー!!」

「ア、アインズ様ぁぁーー!?」

 

 失望したというよりは『嫉妬した』の方が正しいだろう。出ない涙を隠しながらアインズは転移した。嫉妬と悔しさと羨ましさが滲み出る、アンデッドとは思えない性への渇望であった。

 

「…どういうことっすかエンちゃん!」

「へっ? な、なにが…?」

「さっきのアインズ様は……完全に私“に”嫉妬してたっす! いつのまにアインズ様を誘惑してたんすか!」

「え、ええぇぇぇ!? そ、そんなわけないでしょ? 私なんかがアインズ様に…」

「言い訳は許さないっすよ! 誰彼構わず誘い込むオマンコには……躾が必要っすね!」

「え──ひゃうぅぅ!?」

 

 出しそこねた精液を、浮気への怒りとともに注ぎ込むルプスレギナ。主を誘惑された嫉妬と、自分以外のチンポを咥え込もうとしたエンリへの嫉妬──ごちゃまぜになった感情を、膣内にぶちまける。ああ、エイがこの場にいればこう言ったことだろう。『NTR属性に目覚めたね』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リ・エスティーゼ王国首都『リ・エスティーゼ』。その街の一角に立つとある一軒家──それがナザリックの『王国支部』、“善行の家”である。基本的にセバスが常駐するこの家で、現在は一人の女性が療養中であった。

 

 八本指の壊滅にあたり、紆余曲折ありセバスの庇護を得た女性──『ツアレ』。拷問に近い性的暴行を繰り返し受け続けていた彼女は、ようやく救いを得たのだ。辛い記憶は消えずとも、彼女の元には()()()()()()()()()()()がいた。彼等とセバスの厚い介抱により、ツアレの心の傷は徐々に癒えてきていたのだ。

 

「ツアレ、まだ無理をしてはいけません。体の傷が癒えたとはいえ、心の健康は快復し辛いものです」

「いえ……みんなに迷惑をかけてばかりですから。あの子の仲間の皆さんも、本来なら無関係なのに…」

「『仲間の姉だから』……あの方たちが関係するには充分なのでしょう。好意を受けてばかりで心苦しいのは理解できますが、恩返しはあなたが万全になってからでも遅くはありません。今は自分を労ることが、彼等の献身へ報いるただ一つの手段ですよ」

「…はい」

 

 ──エイが八本指の娼館を襲撃した際に、護衛が漏らした『銀級の冒険者』という情報。それはエ・ランテルの騒動に際して活動の場を王都に移した『漆黒の剣』の四人のことであった。ひょんなことからボロボロのツアレを発見した彼等は、八本指傘下の娼館から彼女を奪い返したのだ。

 

 もちろん、面子を重んじる犯罪組織がそのままにしておく筈もない。マジックキャスターを含んだ冒険者という厄介さを鑑みて、八本指最強の戦力『六腕』も動こうかというそんな折に──ナザリックが善行の押し売りを開始したのだ。

 

 六腕の報復にあわや全滅の危機に瀕した漆黒の剣の前に、颯爽と駆けつけるイケメン執事。結果は誰もが予想する通りであり、語る必要すらないだろう。その後は、一冒険者チームには手の届かない高位の治療が望める“善行の家”へツアレを移し、今に至るという訳だ。

 

 漆黒の剣自体は王都の宿屋に拠点を持っているが、妹であるニニャが頻繁にツアレの元を訪れる関係上、その仲間たちも何かと彼女を気をかけていた。

 

 とはいえ──最近のツアレとセバスのやり取りを見て、彼等も見舞いの頻度を減らしていた。人の恋路を邪魔する奴はなんとやら、ニニャ達の生暖かい視線に気付いていないのは当事者の二人だけであった。看病する者とされる者。それだけの関係であった筈の両者だが、しかしその空間には甘酸っぱい空気が漂っていた。

 

 ツアレの震える手がそっとセバスの手に重ねられ、見つめ合う二人。『まだ心に不安があるのだろう』という気遣いから、執事はその手を握り返すが──ツアレの方は意を決したように目を瞑り、そのまま上体を起こして……キスをした。

 

 ──そしてそんな部屋へ、一人の男が足を踏み入れた。

 

「入るぞセバ──あぁぁぁス!?」

「…っ!? ア、アインズ様! このような場所に何故……っ、大変申し訳ございません、早急に部屋を整えさせていただきます。しばしお待ちを…」

「…」

「アインズ様?」

「…ブルータス」

「は…?」

「ブルータス、お前もか」

「ア、アインズ様? 私はセバスめにございますが…」

「ドちくしょおぉぉーー!!」

「アインズ様!?」

 

 ルプスレギナとエンリの情事を目にし、傷心のままに王都へ向かったアインズ。先述の通り、彼がナザリック以外へ向かおうとすれば選択肢は少ない。とりあえずは格好を『冒険者モモン』に変え、王都の拠点である善行の家へ姿を現したのだ。なによりその状態であれば、彼のご立派様は鎧に押さえつけられて目立たない。窮屈ではあるものの、ベターな選択肢だろう。

 

 そしてナザリックの中でもトップクラスに常識人であるセバスであれば、アインズも安心して相談ができる──そう踏んでこの地を訪れたのだ。そう、彼は何も間違ってはいない。しかしリア充な空気を前に、アンデッドの精神は耐えられなかったようだ。

 

 ──彼の逃避行は暫く続くようである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界にきて何が一番素晴らしいかと問われるならば、やはり最高クラスの女性達とセックスし放題なところだと答えるだろう。二番目は豪勢な食事かな? リアル世界の住人ならば『自然』などと答えるかもしれないが、あいにくと僕は普通の日本も経験してるわけで、きれいな空気や水にそこまで感動したりはしない。

 

 そういう訳で、食事の次点には『飛行魔法』あたりが選択肢に上がるのだ。何を言っているのかと思うかもしれないが、これは実際に体験せねばわからないだろう。生身のまま空を飛ぶというのは、思いのほか楽しい。

 

 スカイダイビングにハマる人の気持がなんとなく理解できたね。むしろ僕のそれは自由度が桁違いなのだから、楽しさも倍増だ。そりゃあユグドラシルでも擬似的には体験できたけど、圧倒的なリアル感がそのまま感動の差に繋がっている。

 

 ──そんなわけで空のお散歩を楽しんでいるのだが、なにやら地上が少し騒がしい。エ・ランテル近くの平地だから、冒険者による魔物の間引きだろうか? もし危険な状況になっていれば、助けてあげるのも吝かではない。男だったら普通に助けて、女の子だったら下心ありありで助けようではないか。

 

 …と思っていたけど、完全不可知化で近付いた時にはもう終わっていた。危なげなく魔物を狩った冒険者チームの手際は、レベルに対して見事なものだ。というより、この世界の人々はレベルに対して技術が高い傾向にある。

 

 まあゲームではなく常に命懸けなのだから、真剣味が違うのだろう。ついでにレベリングの非効率さがそれに拍車をかけている……しかしそんなチームの中で、一人ばかし精彩に欠ける動きをしていた女の子が一人。

 

 いや、身も蓋もなく言うなら完全に足手まといになっていた。本人も自覚はあるようで、暗い顔で俯いている。しかしなんか見覚えあるんだよなこの娘……誰だっけ? ニニャなんとかさんではないし……どこかで会っただろうか。

 

 現実とイラストの差と言うべきか、よほど特徴のある姿でもしてない限り原作キャラかどうかなど解りはしない。仮にここがハリーポッターの世界だとしたら、ハーマイオニーはエマ・ワトソンなのだ。でもエマ・ワトソンをイラスト化したら魔理沙とかセイバーみたいになりそうじゃん? 何が言いたいかよく解らなくなってきたが、とにかくエマ・ワトソンの幼少期は可愛いのだ。

 

「…なあ、ブリタ。やっぱもう諦めた方がいいんじゃねえか…?」

「…! つ、次は! 次は大丈夫だから…! だから…」

「別に多少の迷惑はお互い様だがよ、俺達も完璧にフォローできるわけじゃあるめえし。そのうちおっ死んじまうぜ?」

「う…」

 

 ああ、誰かと思いきやブリタちゃんか。ポーション壊され娘ことブリタちゃん。ちょっとギアスのカレンに似てるブリタちゃん。はて、この時期ならカルネ村に移住しててもよさそうなもんだけど……村民の募集時期がずれているのだろうか。

 

 シャルティアちゃんに心折られて冒険者をやめた……んだっけ? いまいちよく覚えてないけど、冒険者稼業から足を洗ってはいないようだ。というか大した蓄えもなさそうだし、食い扶持を稼ぐ選択肢があまりないのだろう。

 

 戦闘に対する恐怖心がまだ残っていて、上手く動けない……とか? いやでもトロールの襲撃とかでは普通だったような……うーむ……まあ気にしてもしょうがないか。がんばれブリタちゃん、僕は応援しているぞ。

 

「うひゃぁっ!?」

「おわっ!? な、なんだよ急に」

「だ、誰よお尻触ったの!」

「はぁ…? いや、誰もお前の後ろにいなかったろうが」

「あ、そ、そっか……でもいま確かに…」

「やっぱ疲れてんだよお前。しばらく休業したらどうだ?」

「うーん……でもお金ないし……貸してくれる?」

「はっはっは! 俺ぁ今日、借金を返すために狩りに出てんだが!」

「俺はツケの酒代が…」

「俺も装備新調したばっかでなぁ」

「西側の復興で人足募集してたろ? お前もそっち行きゃいいじゃねえか」

「あのさぁ、賃金いくらか知ってて言ってんの?」

「だははは! まあタダよりはマシだろ」

 

 うーん……意外と深刻そうでもないみたいだ。しかし中々いい感触のお尻だったな……あの底辺御用達の宿屋で襲われたりはしないのだろうか? それともこの世界の美醜基準では大したことがないせいなのか。

 

 ブリタちゃん可愛いのになぁ。そもそも美の水準が高い上に、モンゴロイド目線で見たコーカソイドってなると余計に違いがわからない。もちろんラナーちゃんやカルカちゃんは尋常じゃなく可愛いんだけど、ブリタちゃんだって僕目線だとめっちゃ可愛い。というかお尻を触ったせいでムラっときたので、セックスしたい。彼等もそろそろ帰るみたいだし、ついていってみるか。

 

 …いや、待てよ? そういえばあまりに陳腐すぎてやっていなかったシチュエーションが一つあったな。まさに丁度いいタイミングだし、ブリタちゃんとセックスするにあたっても誘導しやすい状況だ。ここはいっちょ、オバロ名物『マッチポンプ』を試してみるとするか。

 

「…ん? あっちからなにか…」

「──なっ…! ギ、ギガントバジリスク!? なんでこんなところに…!」

「なんかこっち向かってきてねえか?」

「まあ遮蔽物もない平地で餌がいりゃ、向かってくるわな」

「い、言ってる場合!? 逃げるわよアンタ達!」

「恨みっこなしだ! フォーメーションオールサイド!」

 

 危機感ねえなこいつら……というか逃げ一択なのか。いやまあ、それはそうか。僕だってそうするし、誰だってそうする。むしろ判断の速さを褒め称えるべきだ。しかしフォーメーションオールサイドってなんぞや──っておおい! なんで散開すんの!? 僕がかっこよく助けるところを目撃できなくなるじゃん!

 

 あー……あぁ……うん、なるほど。そもそも完全なチームというわけじゃなくて、間引き用に集まった即興のチームなんだろう。立ち向かえないような強力な魔物が出た場合、散らばる用に逃げて運任せの囮作戦をするってことか。

 

 弱者の戦略と言うべきか、刹那的に生きる者達の知恵と言うべきか……でも間違ってはいないのかな? 立ち向かえば全滅必至だし、このやり方なら上手く行けば一人の犠牲ですむ。もちろん帰還する際に一人というのは非常に危険だが、まあギガントバジリスクと相対するよりはマシだろう。

 

 ──しゃあない、とりあえずブリタちゃんの方に差し向けよう。

 

「ぎゃああ! なんでこっち来んのよ!」

「よっしゃ! 頼むぞブリタ!」

「骨は拾ってやるからなぁー!!」

「うわぁぁん! 呪ってやるぅー!」

 

 コントかな? 意外と底辺冒険者稼業って楽しいのかもしれんな。つってもブリタちゃんってポーション買える程度には稼ぐんだから、一般人からすれば高給取りだと思うんだけど……おっとと、そろそろ魔眼の効果範囲に入っちゃうな。

 

 ブリタちゃん程度の耐性だと、ある程度まで近寄られたら即座に石化だろう。さて、剣士で行くべきか詠唱者で行くべきか……よし、前者でいこう。そっちの方がなんとなくかっこいいい気がするし。

 

「もうダメだぁ……おしまいだぁ…」

「伏せろ!」

「──え…」

「《次元断切》」

 

 特に伏せさせる意味はなかったが、『女の子の危機に言ってみたいセリフ』七位くらいには入ってるから言ってみた。というか僕の後ろにいるのに伏せる意味よ。でも律儀に伏せるブリタちゃん可愛い。突き出たお尻がキュート。

 

「うそ……一撃…?」

「大丈夫?」

「あ、は、はい……その、ありがとうございます!」

「まあお気になさらず。あ、料金は金貨二十枚になりまーす」

「にっ…!?」

 

 顔面蒼白ブリタちゃん。まあでもギガントバジリスク討伐依頼ってなると二十枚じゃ利かないし、割と妥当だと思うけどな。彼女もそれが解っているのか、現実的な値段に慄いている。金貨一枚ちょっとのポーションを手に入れてご満悦だったブリタちゃんからすれば、節約に節約を重ねても年単位で頑張らねば稼げないだろう。

 

「…というのは冗談だけどね。ほら、手」

「あ……う、うん……ありがと──っていうかタチの悪い冗談やめてくれる!? 心臓止まるかと思ったわよ!」

「まあまあ、いっても冒険者ならそのくらい払えるだろ?」

「わ・た・し・は! 鉄級の冒険者なの! 金貨二十枚なんて、何百回依頼受ければいいかわかったもんじゃないわよ」

「ああ、そりゃ失礼……まあでも、何百回も受けてりゃランクも上がるだろうに」

「…」

「ん……なんか悪いこと言っちゃったかい?」

「…ううん。あんなのを一撃で倒せるような人には、言ってもわからないだろうし」

「…君は──僕がなんの犠牲も払わずにここまで強くなったとでも思うのかい?」

「…っ! …ごめんなさい。そうよね、何かを得るには……相応の対価が付き物。あなたも色々と失ってきたのよね…」

「いや、僕のはなんの犠牲も払わず手に入れた強さだけど」

「さっきの前振りは!?」

 

 いい突っ込みだな……正直リアルで出会ったなら相方に誘いたいくらいだ。『ウン=エイ』と『ブリタ』だからコンビ名は──あ、ダメだ。絶対にウンコブリブリとか言われるやつだ。

 

「はあ……あやかりたいもんよね。アンタと比べて私ときたら、オークどころか今はゴブリンの一体でも怪しいわ…」

「へぇ。なら少しくらい指導してあげようか? 僕の『簡単ラクラク冒険者教室』なら、短期間でミスリル級くらいは間違いなしだぜ」

「あ、怪しすぎる…」

「やだなぁ、そんなことないヨ」

 

 ものすごく疑いの目を向けてくるブリタちゃんだが、しかし同じくらい興味も惹かれているようだ。ギガントバジリスク瞬殺という実績は、それほどに強い。ぶっちゃけアダマンタイトがチームで挑んでも苦戦しかねない強さだし、発言の信憑性が深まるのは当然だ。

 

「…た、対価は?」

「君がこれから冒険者として活動する上で、経費を除いた純利益……その五%でどうだい? 今がお先真っ暗って言うなら、悪くない提案だと思うけど。もちろん引退してから稼ぐお金にはノータッチだぜ」

「…! なるほど…」

 

 これから長い人生で稼ぐ内、常に五%を取られるとなればかなり莫大な金額に昇るが……しがない鉄級の冒険者がミスリル級の実力を得られると言うなら、安い買い物だろう。どちらにも充分なメリットがある提案は、猜疑心を薄めさせるものだ。お金はどうでもいいが、ブリタちゃんの納得を得る上では効果がある筈。

 

「…うん、決めた! ──お願いします!」

「オーケー。じゃあ期間は今日から三日……その間は僕の言葉に絶対服従。始めた瞬間から、降りるのは許されない──それでいいなら契約しようか」

「…騙してないよね?」

「ウン」

「怪しすぎる!」

「じゃあやめるかい?」

「う~……あーもう! ここが人生の岐路よ私! 伸るか反るか! やってやるわよ!」

「承りましたー。ではでは、試練の間へとご案内」

「へっ…?」

 

 ブリタちゃんを連れて、ささっと転移。到着したのはラキュースちゃんでお馴染み、全てが真っ白い空間……通称『試練の間』だ。強くするだけなら経験値を譲渡すれば済む問題だが、やはり真に身についたとは言い難い。ならばどうするか……うむ、真っ当に強くなってもらえばいい。

 

 現地の人間が強くなりにくい最たる要因は、適正レベルの敵が少ないせいだ。強すぎる敵にエンカウントすればゲームオーバー、弱すぎる敵を倒し続けても大した意味はない。これでレベルを上げろというのは酷だろう。だから僕は場を整えるだけでいい。

 

「じゃあ無限耐久戦闘開始だね。まずはゴブリン千体いってみよう!」

「え、いや、ちょ、え…? 死ぬわよねこれ」

「大丈夫大丈夫、死ぬ前に回復魔法打つからさ。精神力の続く限り無限に戦えるぜ!」

「ちょっ──無理だってえぇー!!」

 

 ブリタちゃんに殺到する無数のゴブリン。うわぁ、これはゴブリンスレイヤーさんが必要ですね。まあ不幸中の幸いと言うべきか、こっちの世界のゴブリンはレイプとかないから。人間を犯すゴブリンとか、人間社会でいう獣姦好きみたいなもんだ。

 

「やっぱり騙されたぁぁー!」

「いや騙してないって。三日後にミスリルかオリハルコンくらいになれるように調整してるからさ、頑張って」

「むりいぃぃー!」

 

 んじゃ、後はNPCに任せよう。とりあえず……六時間後でいいか。疲労困憊ブリタちゃんへの()()()()()が楽しみだ。まったく──女の子が絶対服従なんて契約、受けちゃだめだよねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまたせー。おつかれー」

「ぜひぃ……はひぃ…」

「お、予想よりだいぶ上がってるね。どうにも早熟型と大器晩成型の二極化してるからなぁ、この世界。後者は生き残れない人が多いし、まあ良きかな良きかなってやつ?」

「もう……無理ひ…」

 

 わお、ズタボロで大の字になってる女の子っていいよね。とりあえず回復させてっと……最後だけはそのままにしておくあたり、NPC達の優秀さがうかがえる。ブリタちゃんの方は──髪が額に張り付いて、なんだか艶めかしい。

 

「あ……ふぅ。やっと落ち着いた……にしても──なんなの此処!? アンタ何者なの!? 殺しても殺しても湧いてくるし……ま、まさかこの前のアンデッド騒動って…」

「いや違うって。あれはズーラーノーンの幹部がエルダーリッチになりたくて起こした事件。僕とは無関係さ」

「うー…」

「さ、それより明日のために英気を養わなきゃね。次はゴブリンからオークにランクアップするから、頑張んなきゃだぜ」

「ひぃ…」

「じゃあ()()()()。これを欠かしちゃ今日の修行も意味なくなっちゃうし」

「そうしあげ…?」

 

 魔法でパパッと汚れを除いて、ブリタちゃんを施術台に乗せる。そしてそのままバサッと服を剥いだ。物理法則を無視した、まさに本物のマジックである。悲鳴をあげるブリタちゃんが新鮮でなんだかいい感じ。

 

「な、ななな、なにすんのよ!?」

「いや、最後に特殊なマッサージをしないとね……ほらほら、この特殊なローションも結構お金がかかってんだぜ? 素肌に馴染ませないと。ちなみに五百ccあたり十五金貨でござい」

「じゅっ…!?」

 

 あ、おとなしくなった。なんとなくわかってきたが、彼女はお金に弱いタイプだな……いや、弱いというよりその価値以上に有り難がるというべきか。前世はもったいないお化けだったのかもしれん。

 

「はーい……力抜いてねー」

「ひゃうっ!? ちょ、ちょっ…」

「はい、一塗り金貨二まーい」

「うぅ…」

 

 …さて、そろそろ本番といこう。ちなみにローションはちゃんと効果を持たせていて、永続的な能力上昇効果が見込める。力の種とかタウリンとか、そっち系のやつだ。飲んでも美味しいし、潤滑剤としても優秀な一品である。

 

「…んっ、ちょ、ちょっと!? そこは…!」

「あー、この辺にリンパが集まってるからね。リンパマッサージこそが強くなるための根幹みたいなとこあるから」

「い、いや、だからって……んっ、ぐっ…」

「あー、これほんとリンパ。マジリンパ。これは集中的にヤらないとダメですねー」

「ウソつけぇ! ひゃっ──んぅっ! あ、そこダメ……ひっ、あっ──」

「ちょっと指じゃ奥まで届かないなー……指より大きくて、返しがあるナニかがないと……おや? ちょうどいいモノがここに」

 

 もう体中ローションまみれでぐっちょんぐっちょんのブリタちゃん。乳首もクリも尖らせて、膣口をなぞると体をビクンと跳ねさせる。彼女に伸し掛かるように押し倒し、雌穴に鈴口をあてがう。裏筋と入り口をにゅぷにゅぷと擦り合わせると、ぷるんとした唇から嬌声が漏れる。

 

「挿れていい?」

「はふ──あぅ、ひんっ……い、いれないと効果が出ないんでしょ…? なら──しかたないじゃない」

「──だよね」

「お゛っ──んきゅぅぅ!! も、もっとっ、ゆっくり……んん゛っ!」

 

 うひゃー、ソープよりもぬるぬるだぜ。ぶっちゃけると潤滑剤を使いすぎて、チンポへの刺激が若干ながら緩んでるんだけど……これはこれで悪くない。ローションでテラテラと光る女性の肌って、なぜこうもエロく見えるのか。

 

 刺激が緩いぶんピストンを速くしたら、ブリタちゃんの喘ぎ声がひときわ強まった。ちょっとガッシリめの体型だけど、充分やわっこい。それにいちいち反応が可愛いから、こちらとしても下半身に響くものがあるね。

 

「ほら、膣内に出すよ」

「あっ──熱、ぅ……う、ぁ…」

「ほら、お掃除して。これも修行の内だよ」

「ん、んぶっ……んぐ……ひゅぎょうなら、しひゃはないよえ…」

 

 ぽっかりと空いたオマンコをヒクつかせながらチンポをしゃぶるブリタちゃん。仰向けに寝かせた彼女の顔に、腰を打ち付ける。両手でおっぱいを揉みしだきながら、口をオナホ代わりにするのって──すごい興奮するよね。

 

 後ろの穴は二日目か三日目にとっておくとして、今日は上の口と雌穴を徹底的に堪能するとしようか。ルプスも呼んであげようかな? 最近『マジカル☆イウェン』時のオマンコを狙われているようで、ここらでガス抜きをしとかないと貞操が危うい感。

 

「ん、ちゅ……はぷ、じゅるっ…」

「ん、そのくらいでいいよ。じゃあ今度は後ろからしようか……おっと、修行のためにね」

「ふぁい…」

 

 そういえば、これは騙したと言えるのだろうか? まあ別にセックスしないなんて言った覚えはないし、絶対服従の約束もしたよね。そして三日後に彼女は強くなってるんだから、何も問題はないだろう。うむ、言い訳完了だ。

 

よし──今日は一晩中挿れ続けてみよう。無限耐久戦ならぬ、無限耐久セックスだ。惚けた顔のブリタちゃんに後ろからキスをして、そのまま挿入する。悲鳴のような嬌声は、いまのところ異世界で一番蠱惑的で……いくらでも腰を振れそうだ。




亡国の吸血鬼の値段おかしい……おかしくない?


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15話

アンケート結果はどういうことなんですかねぇ。なるほど、男の娘の“男”の部分に拒否反応を示していたのではなく、“娘”の方が嫌だったんですね。ハーメルンはホモが多いインターネッツですねまったく……シャルティアさんは反省してどうぞ。

まあ流石に冗談だろうとは思いますけど。

あとすみません、今回はエロなしです。次の話はイビルアイメインのR18になる予定です。


 エ・ランテル──冒険者御用達の安宿。駆け出しの冒険者がよく利用するこの宿屋だが、メインの客層はうだつの上がらない鉄級冒険者達である。新人であればすぐに死ぬか、あるいは駆け上がっていくか──そうでなければ彼等の仲間入りをするか。故にこの場所は常に底辺であり、中核をなすメンバーは古株が多い。

 

 一階の酒場はもちろん自由席だが、こういった場所では大抵の場合において『定位置』が存在する。いわゆる『常連席』というものであり、新人が間違って座った際に絡むための決まりでもあった。

 

 ──当然、それなりに長く鉄級冒険者をやっているブリタにも定位置はある。そこが埋まっていたからといって因縁をつけるような彼女ではないが、他者からはそこが『彼女の席』という認識をされていた。

 

 しかしその席には今、みすぼらしい花がボロボロの花瓶に活けられていた。明らかに死者を悼む目的で置かれたそれは、ブリタという女性が二度と帰ってこないであろうことを悲しく示していたのだ。そしてその机の前には──ぷるぷると体を震わせながら怒る本人が居た。

 

「…私は死んでなぁぁい! 誰よこれ置いたの!」

「やっべ、おい生きてたぜ」

「悪運の強い奴だぜ、まったく」

「乾杯だ乾杯! 強運のブリタに乾杯!」

「いやあ、寝覚めの悪さもこれで解消ってもんよ!」

「こ、こいつら…!」

 

 死んだ筈のブリタが宿屋へ姿を現した瞬間、すわゾンビかと構えた冒険者達。アンデッドの大騒動は彼等の記憶にも新しく、彼女が化けて出たと考えてもおかしくはないだろう。そんな彼等にゲンコツをお見舞いしつつ、自らの生存を主張するブリタ。

 

 なんだかんだで顔なじみの帰還が喜ばしいのか、昼間だというのに宴模様になる酒場。陽気に歌う彼らに大いなる憤慨と、少しばかりの感動を滲ませて彼女は口元をひくつかせた。そしてそんなブリタの肩に手を置き、宿屋の主人は帰還の祝いと重要な情報を伝える。

 

「なんにしても生きてて良かったな、ブリタ」

「へへ……あんがと」

「まあそれはともかくだ。お前さん、死亡認定されてるから早いとこ組合に顔出しといた方がいいぞ」

「ええぇっ!?」

「どう逃げ切ったかは知らんが、『クラルグラ』に会ったら礼でも言っておくんだな。あいつらがギガントバジリスクを討伐しなけりゃ、また出くわす可能性もあっただろうよ」

「…はあぁぁっ!?」

「ああ、俺もミスリル級があれを討伐したと聞いた時は驚いたが……よほど上手く戦略が嵌まったんだろうな。結成以来死人が出ていないチームだとも聞く。優秀な奴は上にあがっていくもんだ──今回の件でオリハルコンも近いって噂だぜ」

「いやそうじゃなくて……ギガントバジリスクは私の目の前で倒されたんだけど」

「…どういうことだ?」

「どういうこともなにも──ああもう! ちょっと行ってくる!」

「お、おい!?」

 

 勢いよく駆け出したブリタを止められず、立ち尽くす宿屋の主人。そんな二人のやりとりを聞いていた冒険者達が、興味深そうに集まってくる。

 

「んん……なんだ、つまりクラルグラの奴らは他人の功績を掠め取ったっつーことか? おやっさん」

「…かもしれんな」

「だははは! そりゃいいや! 他のメンバーはともかく、リーダーのイグヴァルジってのはどうもいけ好かねえ奴だったからな……オリハルコンに昇格どころか、下手すりゃ白金に降格もあんじゃねえか?」

「うーむ…」

「なんだよ、歯切れ悪いな」

「いや、ブリタがそれを指摘したところで水掛け論になると思ってな。そうなれば後は発言力が物を言う……鉄級冒険者とミスリル冒険者の言い合いなんぞ、結果は見えてるだろう?」

「あー……そりゃそうか」

「あまり食い下がるようなら、立場がなくなる可能性もある。行ってやったらどうだ?」

「俺が? ミスリル級に物申しに行く馬鹿を止めろって? 冗談キツイぜ。それにそいつら目の前にしたら、アイツだって冷静になるだろ……だいたいメリットが何もねえじゃねえか。ブリタは損得勘定のできねえ馬鹿じゃねえよ」

「…それもそうか」

「そうそう! そんなことより酒追加だ!」

「先にツケを払え大馬鹿野郎!」

 

 仮にクラルグラの悪事が明るみに出たところで、ブリタがギガントバジリスクを討伐したという訳でもない。ゆえにそれを指摘するメリットなどなに一つないだろう。偽証を叫んで組合での立場を悪くするか、あるいは証明されたところでクラルグラに恨まれるかの二択だ。

 

 ブリタが正義感で動く類の人間ではないと彼等も知っている。だからこそ止める必要性は感じず、そのうち冷静になって帰ってくるだろうと考えていたのだ。

 

 そう──彼女の三日間など知る由もない彼等は、そう考えた。しかしブリタは、師弟愛とまでは行かずともエイに恩を感じてはいた。その男の功績を掠め取ったチームへ憤慨するのは当然で──そしてその強気に相応しい力を得たことなど、現状では誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エ・ランテル冒険者組合。冒険者が依頼を探して賑わうこの場所も、現在は剣呑な雰囲気が漂う空間と化していた。それもこれも、宿屋の主人が危惧した通り──ブリタが冒険者チーム『クラルグラ』を糾弾したことに端を発する。

 

 『たまたま死体を発見して持ち帰っただけだろう』『このホラ吹き男め』『これが上位冒険者のやることか』──などと組合で叫べば、騒ぎになるのは当然のことだ。加えてブリタの発言は、鉄級冒険者の嫉妬で済ませられるものではなかった。

 

 なにせ他のメンバーが帰還した際、組合へ一通りの報告は済ませているのだ。その上でブリタという鉄級冒険者の生存は絶望視されており、組合としても強力な魔物が彷徨いている事態を放置できるわけもなく、早急な調査が望まれた──その矢先。クラルグラがギガントバジリスクの死体を持ち込んだのだ。

 

 最後にギガントバジリスクを確認したのがブリタである以上、彼女の発言は無視できるものではないだろう。その諍いはギルド長『プルトン・アインザック』が出張る程の事態となり、冒険者組合は一時騒然としていた。

 

「なにがミスリルよ! 駆け出しからやり直した方がいいんじゃない!?」

「…っ! 言わせておけば…! 鉄級如きが調子に乗るなよ? …組合長も、このような妄言のために時間を費やす必要はないかと思いますが」

「それは我々の方で判断すべき事柄だ。生きたギガントバジリスクに対する最後の目撃証言は、彼女を追った際のそれだ。ならば一定の信用は置くべきだとも……無論、ミスリル級である君達を徒に疑うというわけではない。まずは詳細を問うべきだと言っているんだ」

 

 ギガントバジリスクから逃れた後、どうしていたのか──そう問いただすアインザックに、ブリタは包み隠さず真実を話した。『ウン=エイ』と名乗る男が助けてくれたこと、弱さを嘆く自分に修行をつけてくれたこと、そして確かに自分は強くなったことを。

 

「ふむ……『ウン=エイ』……なるほど、噂通りの実力ならば確かに可能だろう。解体されて()()()()()()なってはいたが、頭から一刀両断されたであろう傷は少し気になっていた。クラルグラにそれほどの剣技を持つ者はいなかった筈だからな」

「…! い、いや、それは…」

「もちろん罠を仕掛けた、あるいは奥の手を使用した可能性も十二分に残っている。このようなところで冒険者が手の内を明かす必要もない」

「あ、ああ……そうさ。だいたい竜王国の英雄が都合よく助けに現れて、修行をつけてくれただと? バカバカしい…! 妄想も大概にしておけ!」

「はぁ? 誰が妄想よ!」

 

 ミスリル級ともなれば、その強さに相応しい“圧”というものが存在する。鉄級如きが耐えられるプレッシャーではないが──しかしブリタはそれを物ともせず、負けじと吼える。それを見たアインザックがどうしたものかと考え始めたその瞬間、組合の扉が開いた。

 

 そこに現れたのは、エ・ランテルに存在する四組のミスリル級の一組──漆黒の英雄『モモン』であった。漆黒の鎧を纏い、二本の大剣を携える姿はまさに英雄。登録してから間をおかずミスリル級となり、その後なんの音沙汰もなかったことで様々な憶測が流れている人物だ。

 

「…む。なにか騒ぎですか? 組合長」

「…モモン君。色々と言いたいことはあるが──ひとまずは置いておこう。“野暮用”は終わったのか? …トブの大森林近くで凄まじい戦闘跡が確認できた。誰の独断専行かは知らんが、成した偉業を考えると……正式に手順を踏んでいればアダマンタイトは確実だっただろう」

「…奇特な人間もいるものですね。それより、これはいったい?」

「ふぅ……まったく、君は立場に執着しないな」

 

 睨み合うブリタとイグヴァルジを見て、首をかしげるモモン。内密に吸血鬼を討ったであろうモモンと、オリハルコンへの昇格が危ぶまれる事態に取り乱すイグヴァルジとの差を見て、アインザックは二人の器の違いにため息をついた。そして諍いの経緯を軽く話し始める。

 

 ──もちろん、『ウン=エイに鍛えられた』というブリタのことも。

 

「…ほう。ならば話は簡単だ。彼女の言葉が真実かどうか──実力を見てみればわかるのでは? 鉄級を凌駕する強さを見せたのならば、その話の信憑性も高まるでしょう」

「…ふん、良い案だな。ブリタとか言ったか……裏の修練場で模擬戦だ。つまらねえ妄想ごと叩き潰してやるよ」

「上等よ!」

「待て、そんな安易な案を認める訳には……というより、ミスリル級と鉄級の模擬戦など──」

「ええ、そうですね。それに双方頭に血がのぼっているようですし、模擬戦で終わる保証もない。ですからここは、同じミスリル級の実力を持つ私が試してみるというのは? 部外者の私であれば、冷静に見極めることができる」

「い、いや、しかし…」

 

 明らかにブリタの実力を知りたがっているモモンに、困惑を覚えるアインザック。イグヴァルジがモモンを煙たがっていることもあり、場の混迷具合は相当なものだ。早期的に事態を鎮静化するには、モモンの提案に乗るのもありだろうか──そう考え、アインザックは修練場の使用許可を出した。

 

 そしてモモンの提案を静観していたイグヴァルジは、複雑そうな表情で腕を組んでいた。彼としても鉄級冒険者との戦闘に敗北する気はないが、それはそれとしてモモンの実力が己を超えているであろうことは気付いているのだ。どちらがより実力差の出る戦闘になるかは、わかりきっている。

 

 一方モモン──もといアインズは、ブリタが本当に運営と接触したのか……そして接触したのならば接触したで、どれほど実力を得たのか気になっていた。彼にとってブリタという存在は『ホニョペニョコ(シャルティア)の姿を目撃した冒険者』という部分で重要な人物だ。

 

 折を見て記憶を操作する必要性のあった人物が、運営の関係者になったかもしれないとなれば、これはあまりよくない事態だろう。故に、本当に彼女が運営と接触したかどうか確認する意味合いも込めての、模擬戦の申込みであった。

 

 ──ちなみに彼の鎧の下はいまだにギンギンである。

 

「…確か君は先の吸血鬼戦での生き残りだったな。どこまで強くなったかは知らんが、今の実力なら──どうだ? 倒せる自信はあるか?」

 

 ブリタの実力を推測する上での質問は、いくつか目的があった。要は運営がどの程度『考え無し』かという点だ。アインズも運営が各地で行動を起こしていることは認識している。そして明らかに()()()()()()()()()()という点も、当然ながら気付いていた。

 

 GMコールが『ただいま留守にしております。またのご連絡お待ちしております』などというふざけた文言になっている以上、それは確信犯だろう。運営が『どの程度まで好き勝手しているのか』『どの程度まで異世界に気を使っているのか』。これはアインズが異世界に存在し続ける以上、どうしても確認したい事柄だ。

 

 弱い冒険者を気の向くままに強くしてやる──ああ、いかにも増上慢だ。絶対的な上から目線で、『良いことをしてやった』と自己に酔う行為だ。あるいはゲームキャラを強化するような遊びに近い感情かもしれない。

 

 そして対象をどの程度まで強くしているのかで、運営の性格を多少は把握できるだろう。平均的な強さが異様に低い世界で、仮にレベル百付近まで強化したのだとすれば──運営はなにも考えていない、あるいは異世界への迷惑をなにも考えていない大馬鹿だ。

 

 逆に既存の冒険者の枠に収まる範囲内だと言うならば、最低限ではあるにせよ、常識的な感性と考え方を持ち合わせている可能性はある。どちらにせよ見極める必要があると、アインズは《完全なる戦士/パーフェクト・ウォリアー》を発動して模擬戦に臨む。

 

「…たぶん、無理かな。夜に眠れなくなるほどじゃなくなったけど……まだ怖いもの。アレは何か……あり得ない存在だって、いまだに思ってる」

「…そうか」

 

 戦士としての技術という点において、アインズのそれはいまだに未熟であった。技術のみをランク付けすれば、精々が銀級といったところだろう。しかしパーフェクト・ウォリアーによって百レベルの戦士と化した今であれば、その未熟さを見抜く者はいない。百レベル戦士の戦闘とは、正しく音速である。その力と速度は技量の低さを覆い隠し、見る者を畏怖させる。

 

 ──故に、目の前から一瞬にして消失したアインズをブリタが捉えたのは、彼が手加減をしたからに他ならない。しかし背後からの攻撃を長剣でいなした技術は、彼女の実力の確かさを、観戦している者達に一目で知らしめた。

 

 オークとオーガに後頭部をかち割られること二十二回──実際に死んで得た体験というものは、しかと身につくものだ。脳漿をぶちまけた代償として手に入れた強さは、アインズの大剣を受け流す境地に達していた。

 

 ──言い換えれば、天賦の才能を持つ者が順当に手に入れる技術は、彼女にとって数十回死ななければ掴めない感覚であったとも言える。

 

「…ミスリル級、か。彼が自身をそう評価するならば、どの国のアダマンタイトも裸足で逃げ出すだろうな。そうは思わんか? イグヴァルジ君」

「ぐ…!」

「そして明らかに手加減はしているが……君はあの猛襲を捌き切ることができるか? ブリタ君のように」

「…くそ、ふざけやがって……鉄級が三日の修行であんな──ちくしょう、ありえねえだろうがよ…!」

 

 剣戟はアインズによる一方的なものになっていたが、だからといってブリタを嗤う者は皆無だ。自分がそこにいれば、一合も持たず挽き肉になっているだろう──それが理解できたから。

 

 戦いは佳境に入り、詰将棋のようにブリタは追い込まれていく。一手、足りなくなる。次の一撃でもう一手。更に次と──手詰まりとはこのことだろう。アインズが最後とばかりに二本の剣を交差させ、ブリタの長剣を弾き飛ばしながら首元で剣を止める。

 

 誰が見ても決着はついた。アインザックが終了の声を発そうとし、周囲も高レベルな模擬戦に感嘆のため息をつく。が、ただ一人──ブリタだけは違った。エイによる素人考えな修行による弊害と言うべきか、彼女は()()()()()()()()()()()()()()

 

 傷を負っても終わらない。体力が尽きても終わらない。死にかけても、そして死んでも終わらない。無数の敵がひたすらに襲いくる状況が三日も続けば、身につくのは防衛反応よりも攻撃本能である。

 

 己がどうなろうと、敵の急所を攻撃し続ける──職業として『狂戦士』を手に入れた彼女は、首筋に剣を突きつけられた程度では止まらなかった。

 

「うおらぁぁーー!!」

「ぐおぉぉっ!?」

 

 剣を弾き飛ばされたならば、手で、足で。戦いに狂った戦士は的確に急所を──男の急所を蹴り上げた。男の比率が多い冒険者という職業故に、観戦していたものもまたほとんどが男だ。残像が見えるほどの速度で股ぐらを蹴り上げられたアインズを見て、周囲の者も思わずゾッとした。

 

 とはいえ、三十レベルにも届かない程度のブリタの攻撃がアインズに通る筈もない。人間だった頃の残照で悲鳴をあげはしたものの、ダメージが入ったのは精々が鎧までだ。頑強な骨の体は傷一つ付いていない。

 

「け、決着はついただろう!?」

「へっ? …あ、ご、ごめん……つい癖で」

「どういう癖なんだ…」

 

 ブリタへ突っ込みはしても、攻撃自体にはまるで痛痒を感じていないアインズに、周囲の冒険者達から尊敬の目が向けられる。そしてアインザックが今度こそ制止の声をあげ、模擬戦は終わりを迎えた。

 

 ブリタの強さは鉄級の枠に収まるようなものではなく、オリハルコンは確実……ともすればアダマンタイトにも届きうる水準だ。元高位冒険者として確かな選定眼を持ち合わせているアインザックは、彼女をそう評価した。

 

 モモン共々エ・ランテルで囲い込めば、王都の組合すら凌駕する戦力となるだろう。既にクラルグラとの諍いの件など思考から追いやり、ブリタをどう昇格させていくか考え始めたアインザック。いくら多数が彼女の強さを目撃しているからといって、それだけで高位の級を認定する訳にはいかない。ミスリル級以上には、誰もが認める偉業が必要なのだ。

 

 とりあえずモモンには無理やり吸血鬼の件を認めさせ、アダマンタイトになってもらおう──そう考えてにこやかに二人へ近付くアインザック。しかし事態は彼の思惑から外れ、盛大な()()()を立てて砕け散った。

 

 ──アインズの尊厳と共に。

 

「…へっ?」

「…ん? ──はっ…?」

「で……でかい!」

「どっちの獲物もすげえな…!」

「つーかなんで勃ってんだ?」

「まさかブリタで…?」

「いや、戦闘に興奮するバトルジャンキーってやつじゃねーか?」

「なんにしてもでけえ…!」

 

 ──ひび割れた鎧の股間部分から、雄々しく屹立する巨大な肉棒。それを見た周囲の者達は、ゴクリとつばを飲んだ。男にも女にも、等しく畏敬の念を抱かせる存在感。まるで心臓のように脈打つ陰茎は、数少ない女性冒険者の下半身を疼かせる。

 

 ブリタの蹴撃による衝撃は、アインズ自身に効果はなかったが──鎧にはしかと届いていた。もちろんアインズの魔法によって作製された以上、その堅固さは確かなものだ。しかし百レベルであるアインズ自身の肉棒が、常に内側から圧力をかけ続けていたのだ。ブリタの一撃は呼び水であり、雌穴を求めてやまない陰茎が、抑え込まれ続けたが故の復讐でもあったのだ。

 

「…エ、エイよりでか-い…」

「…」

「モ、モモン君? あー……そうだ、いい娼館があるのだが今晩にでも…」

「…」

「くそ…! なにもかも上をいってやがる…! 気に食わねえ…」

「…あ゛あ゛ぁぁぁ!!」

「モモン君!?」

 

 アインザックによる娼館への誘いは、これで二度目だ。一度目は娼婦に排卵誘発剤まで飲ませ、モモンをエ・ランテルへ根付かせようと画策していた。そしてそれを覚えていたアインズは、あえてそれに乗り肉棒を治めようとこの街へ足を運んだのだ。

 

 つまりアインザックの提案は渡りに船であったのだが──このような状況でそれに応じるほどの度胸を持ち合わせていれば、そもそも童貞など卒業しているだろう。まるで高位の大治癒でも食らったかのように苦しげな声をあげ、アインズは転移した。

 

「なっ…! 転移魔法!? あれほどの技量の戦士が、高位の魔法まで…!」

「う、嘘だろ…?」

 

 最強の戦士。しかし高位の詠唱者。そして巨根。いまこの時より、アインズの二つ名は『漆黒の英雄』ではなく──『黒光りの英雄』となった。そして彼の“夜のお世話”をしているであろう『美姫』ナーベもまた、『ブラックホール』などと囁かれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エロ──それは人によって見え方が異なるものだ。低俗であり、崇高である。浅くもあり深くもある。子作りではなく快楽を得るためだけの性交は、神に背く行為だと声高に叫ぶ者もいる。エロの在り方は千差万別、多種多様だ。

 

 しかしあらゆるものに通ずる『飽き』という観念からは、エロも逃げられない。世の中にありとあらゆる性癖が溢れているのは、それに抗う先人たちの、飽くなき挑戦の結果なのだ。『好きなものが好きでなくなる』──これほど不幸なことがあるだろうか。

 

 だからそれを避けるためには、努力が必要だ。『好き』に努力が必要なんて、それはもう好きではないのでは? と揶揄する人がいる。けれど、個人的な見解では間違っていると思う。肉が好きだからって、そればかり食べていては気持ち悪くなる。たとえ野菜が嫌いでも、それを付け合せるからこそ肉の旨味がより映えるのだ。

 

 つまり何が言いたいかというならば、新しいシチュエーションの開拓である。セックスへの『飽き』とは、つまるところ心因性の勃起不全に繋がる。せっかく極上の女性達と繋がりをもてたんだから、いつまでもいつまでもそれを幸せだと感じてたいじゃん?

 

 となれば、やはり必要なものは新しいなにかだ。同じ女性とセックスするにしても、場所や趣向を変えれば新鮮味が増し、当然ながら興奮も増す。マンネリを回避する努力は、常に怠るべからず。それがセックスへの──ひいては女性への敬意というものだ。

 

 というわけで、新たなシチュエーションを切り拓くと同時に……イビルアイと仲良くなるためのイベントもこなしていきたい所存である。といっても──もうそれなりに仲が良いし、なんなら押せ押せでいけばセックスさせてくれそうな気がしなくもなくもないくらいではあるんだけど……やっぱり永い付き合いになるのなら、より親密な関係でいきたいものだ。

 

 女の子には基本的に“素”で接しているけど、それでも多少なり被ってはいる。人間関係としては当たり前のことだし、なんなら誰とでも同じように接する人のほうが珍しいだろう。だから本当の本当に素で接してるのは、ドラウとかイビルアイとか──つまり寿命が長かったり、あるいは不老だったりする存在だけだ。恋人であると同時に良き友人でありたいというのは中々贅沢だろうが、彼女達も彼女達でそんな節を見せることがある。

 

 人間としての短期的な視点と、人外としての長期的な視点の両方を持ち合わせた、長寿特有の精神性なのかもしれない。僕だって前世を考えればそれなりに長生きしてるし、あまり普通の感性とは言えないだろう。何かしら通ずるものがあるのかもね。

 

 ──さて、前置きが長くなってしまった。結局なにをするかっていうと、『記憶の操作』だ。誰もが一度は思ったことはないだろうか? 『記憶を消して、もう一度あの作品を見てみたい』……なんてことを。

 

 伏線がうまいこと回収される作品や、思いもしない結末を迎える作品などに対して、特にそう思える。結末を知っているからこそ二度目三度目を堪能できるとはいえ、やはり初めての感動を二度と味わえないのは悲しいものだ。

 

 しかし今の僕ならば、自身の記憶操作すら可能だ。それを利用して面白いイベントを開催したい。ぶっちゃけると、僕にとっても割とリスクとかありそうなイベントなんだけど──だからこそやってみたいってのはあるよね。

 

 なんたって『運営』だ。自分自身で危ないことをしない限り、ハラハラドキドキなんて味わえるものじゃない。ちょっと危険なことをしてみたいなんて──それは僕だけじゃなく、どんな世界にもどんな人種にも共通する感性だろう。

 

 死亡率三割超えの登山を敢行する人間も、少なからず墜落死する可能性があるのにスカイダイビングを趣味にする人間も──あるいはバンジージャンプで遊ぶような人間も、その大元は同じだ。

 

 スリルなくしてカタルシスは得られない。立ち向かうハードルが高ければ高いほど、超えた時の快感は大きい。それは現実でも創作でも同じことで、楽しさとはヤマでありオチなのだ。だから僕もそれに倣って、多少の無茶をしてみようと思う。

 

 このイベントにおいて一番重要なのは『どれだけ自分を理解しているか』だ。自分がこういった状況に陥れば、きっとそう行動するだろう──それをどれだけ理解しているかで、どういった方向に進むのかも決まる。

 

 ──ではでは、タイトルを決めてから随分経ってしまったけれど……『失われた記憶と偽りの恋慕』、始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…い! おい! ──大丈夫か? なにをやっているんだお前は…」

「…う……あ…?」

 

 …視界がぐらぐらする。というか誰の声だ? 父さんでも母さんでも、お姉ちゃんでもないが──なんだか心配されているようだ。体の感覚が戻るにつれ、硬い床の感触が不快感を訴えてくる。ぼやけた目に入ってくるのは、知らない天井だ。

 

 というかあの灯りはなんだ? モダンといえばいいのか、およそ近代的とはいえない不可思議な形だ。そもそも眠った記憶もないのになぜ“目覚めた”んだっけか……うーむ……むむ……ああ、思い出した。

 

 大学へ行く途中、トラックに轢かれそうになったんだった。反射神経の申し子と言われた僕が華麗に左へ避けたら、あろうことか運転手も右にハンドルを切りやがったのだ。響く轟音、凄まじい衝撃……で、そこで記憶が途切れた。

 

 生きてるんなら病院の筈だが、上体を起こしてみれば血色の悪い幼女が心配そうに覗き込んでくる。はい、異世界転生ですねわかります。なんか変なマントとか着てるし、これはもう確実に剣と魔法の世界だろう。そうか……あれが噂に聞く転生トラックだったのか。サイン貰っとけばよかったな。

 

「エイ、大丈夫か? まったく……雑に扱うからそうなるんだ。錬金術とは本来繊細なものなんだぞ? 適当に調合などするから爆発するんだ……当然のように無傷なのはアレだが」

「…」

「…エイ?」

 

 …ん? ちょっと待て、これはもしや転生ではなく……誰かに魂が憑依したとか、そっち系なのか? オイオイオイ、やめてくれよ神様。つまり僕は間違いなく死んでて──その上で異世界の人物の体を乗っ取ったってことになるじゃないか。

 

「ちょっと、変な音がしたけど……大丈夫?」

「危ないお薬のにほい……どうせまた変なクスリでも作ってた」

「つーか宿屋で実験すんなよな。金で解決するつっても、限度あんぜ? おい……エイ?」

 

 どやどやと部屋に入ってきたのは、金髪美女に双子の忍者にいかついおっさん。この体の持ち主の仲間だろうか? うーむ……どうすべきか。相手の立場にたって考えるならば、今の状況は非常に危険が危ない。仲間が見知らぬ他人に乗っ取られたとか、超お怒り案件だろう。

 

 剣と魔法の世界であれば、悪霊に取り憑かれたとかそっち系の判断もあり得る。だったら事情を隠すべきか……うーん、それもどうかと思う。死にたくはないけど、もう死んでしまったのは確かっぽいのだ。他人の人生を破壊してまで生き延びるのは、ちょっと心苦しい。

 

 僕は小市民なんだ。常に罪悪感を抱えてストレスだらけの人生を送るのは、勘弁願いたい。ここは正直に状況を申し出て、どうにかこの体を持ち主に返却したいところだ。ただ──もし同時に存在できるなら、たまに体を貸してくれる状況にもっていけたら万々歳だろう。

 

 せっかく自我が消滅しなかったのだから、面白おかしく生きたいものだ。なにせまだ童貞だしな……ああ、使用できなかった我が息子よ、すまんこって。

 

「あー……『エイ』って僕のこと言ってる……よね?」

「はぁ? お前がエイじゃなかったら誰がエイだってんだ」

「いや──非常に申し訳ないんだけど、僕はその『エイ』じゃないんだ」

「…っ! ま……まさか…!」

「ん? なんか心当たりあんのか? リーダー」

「エイの内に眠る……ネフィリムの欠片が覚醒した…!?」

 

 なに言ってんだコイツ……いや、待て待て。ここは明らかに現代日本ではないのだ。あちらでは痛い中二病発言だとしても、こっちではマジのガチという可能性はある。

 

「アホか。さっきの爆発でおかしくなっているだけだろう。それで? お前がエイじゃないならどこの誰だというんだ……どうせからかっているだけだろうがな」

 

 明らかに僕の発言が信用されていない気がする。まったく、元の体の持ち主はろくな奴じゃないようだな。普通、仲間がそんなことを言い出したらまず心配するだろうに。

 

「…でも嘘は言ってない」

「同じく」

「…なに?」

 

 ん? 双子の忍者ちゃんはちゃんと信じてくれたようだ。というか、なんだ嘘は言ってないって。嘘を見破る技能でも持っているのか? 本音と建前が殴り合っている現代日本じゃ、生きにくそうな能力だな。しかし今この時であれば非常に助かる。

 

 しかしまあ……とりあえず、なんとなくの力関係は見えた。こう見えても人間観察は得意なのだ。リーダーと呼ばれた金髪美女は、そのままリーダーだろう。しかしもっとも態度がでかいのは、あの顔色の悪い幼女だ。お偉いさんの孫とかそんな感じ?

 

 おっさんだと思っていた人は女性のようだが、見た目とは裏腹になんとなく気遣いができる雰囲気を感じる。パーティの調整役とかかもしれんな。双子の忍者は……綾波とかタバサ的な独特な喋り方をしてるけど、感情の起伏が薄いというわけではないようだ。というか異世界に忍者ってどういうことだよ。よくある『極東の島国』的なとこ出身なのか?

 

「や、やっぱり……これは私に与えられた試練…! 失われたネフィリムの秘紋が覚醒する兆し…! エイ、よく聞いて! …あなたは“失われた世界の管理者”。私のために、この世界にあまねく“最古の管理者”と敵対することになって…」

「う、うん…」

 

 どういう運命背負ってんだよこの体。誰も突っ込まないということは、本当の本当にガチなのか? 一応よく聞いておくべきか……頭が痛くなってくる。しかしそんな超常の存在が関わっているからこそ、別世界の魂が入り込むという異常な事態が起こったとも考えられるな。

 

 『ネフィリム』『管理者』……それに『太古の厄災』。絶え間なく喋り続ける金髪美女の話を、要点だけ記憶に留めて整理していく。うーむ……もしかして体の持ち主の魂はその『管理者』に囚われたとか? 空っぽになった体に、別世界の魂が入ったとか。どこの少年誌展開だ。

 

「…それで、私の中に眠る彼の魂が……“白亜の空間”での修行が……そして……」

 

 とりあえず三十分は経過したと思う。これは本当に覚えておくべき情報なのだろうか? 記憶容量の無駄であると、僕の直感がひしひしと訴えてくるのだが。心なしか他のメンバーも面倒くさくなってきている感。

 

「そ、それでね……試練に打ち克った私と契約を……そ、その契約っていうのが…! そ、そして私は災厄の魔樹と…」

 

 一時間くらい経ったかな? いかつい人は飽きてどっかに行ってしまった。幼女はベッドでゴロゴロし始めて、双子の忍者の片割れとよくわからない攻防を繰り広げている。あの忍者はレズでロリコンとかなのだろうか。救いようがないな。

 

「…それで……それから……うんたらかんたら…」

 

 ダメだ、もう頭に入ってこない。もういいや、直感を信じよう。この娘の言ってることは覚えなくていい。このままじゃ更に数時間くらい続きそうだし、適当にはぐらかしておこう。たぶん中二病患者だし、意味深なこと言っとけば勝手に解釈してくれるだろう。頑張れ僕、エヴァ信者を前にした庵野になりきるんだ…!

 

「ラキュース」

「それでね……えっ? あ、う、うん…?」

「君の話を聞いて、僕もなんとなくそう思ったよ! ネフィリムを取り戻すために何をすればいいか──君にはもう解ってるね? さあ、早く! あまり時間はないようだ」

「──! わかったわ! 私は試練の間に行ってくる……あなたの契約者として、必ず記憶を取り戻すから……待ってて、エイ」

「ウン、ガンバッテ」

 

 部屋の外へ飛び出していく美女を見送って、ようやく一息ついた。ベッドの上の攻防も決着がついたようで、頭に大きなたんこぶを作った忍者が、涙目で床に突っ伏している。片割れが慰めながら姉(妹?)を背負い、部屋を出ていく。え? ちょ、おいおい僕の処遇はどうなるんだ……みんな薄情すぎない? それとも別に仲間とかではなかったのだろうか。

 

「記憶がないのは本当みたいだけど」

「どうせまた何かの遊び」

「ずっと戻らなかったら手を貸す」

 

 記憶を消す遊びってなに!? この体の持ち主ってどういう存在なの? まったく訳がわからんな……残された幼女は探るようにこちらをうかがってくるし、なんだよもう。自由に行動しちゃっていいのか? チュートリアルは? なんかチートとかないのか神様……いや、ネフィリム様。

 

「…本当に記憶がないのか?」

「いや、だから記憶喪失とかじゃなくて……別人なんだって。僕が僕である記憶はちゃんとあるよ」

「…」

 

 疑るように僕を睨めつける幼女。ぐるぐると僕の周りを彷徨う様子は、警戒する子猫さながらだ。そして何かを思いついたように手をぽんと打ち、僕の膝の上に乗り出した。この歳で対面座位とか、中々レベルが高い幼女だ。

 

 …と、なるべく動揺を表に出さないようにはしているのだが──いかんせん、僕はロリコンの童貞である。こんな美幼女にくっつかれたら、手が出る前に口から心臓が出そうだ。緊張すると勃たないってほんとなんだね。いま血圧を測ったら異常値を叩き出していることだろう。甘ったるい香りが鼻孔をくすぐってきて、心臓が早鐘を打っている。

 

「…ふむ」

「な、なんだよ?」

「いや……こんなことで赤面するとは思ってもみなかった。いつもならそっちから抱きついたり揉んだり触ったりと、変態そのものだったからな」

 

 どんな変態だよ。というか──女の子にこんな密着されることはそうない。ドギマギするのは仕方ないだろう。努めて冷静を装っていたのだが、見透かされているようだ。つーか体が冷たいというか……体温感じないな。子供ってもっと暖かいイメージだけど。

 

「…別人なのか記憶がないのか、なぜ判断できる?」

「へっ?」

「ある一定までの記憶がすっぽぬけただけかもしれんだろう? 私達に見覚えがないからといって、別人だというのは──」

「いや、そもそも明らかに世界が違うし……体だってどう見ても僕じゃないし」

「お前は最近『こちらの世界』に来たと言っていた。姿も自由自在に変化できるだろう? ならば根拠とするには薄いな」

「それ人間やめてない?」

「力は神そのものだな」

 

 なんだ別世界って……そういうのって認知されてるのか? しかし彼女の言葉を信用するならば、記憶が抜けただけの可能性も確かに否定はできないな。トラックで転生して、チートを手に入れて……好き勝手やった後に記憶が抜けたとか? だとするとどうなってんだチート、僕の記憶もちゃんと守れよチート。

 

「そもそも、別人にしては言動や雰囲気がそのまますぎるぞ。ティアの発言がなければ、単にからかわれているとしか思えん」

「うーん……そっか。ならどうすべきかな……あ、えっと名前は…」

「…イビルアイだ」

「イビルアイちゃん、ね。一応──うん、一応ヨロシク」

「ちゃん付けはやめろ」

「おっと、大人扱いしてほしいお年頃だったか。そりゃあ失礼」

「お前より年上だろうが! …ああ、忘れているんだったな…」

 

 …ん? 幼女が僕より年上…? ははあ、これはもしやロリババアというやつだろうか。血色が悪いのは、もしかして吸血鬼だからとか? ロリババアと言えば狐娘か吸血鬼娘だと相場が決まってるしね。

 

「もしかして君って……人間じゃなかったり?」

「ん? ああ、そうか……そうだとも、私は吸血鬼だ……気味が悪いか?」

「じゃあ吸血行為がセックスに相当するってほんとなのかい? ──ぐふぅっ!?」

「いま確信したよ。お前はエイだ」

「もうちょっと感動的な場面で言ってほしかったな、そのセリフは……ん? あれ、痛くないな…」

 

 いくら幼女とはいえ、かなり腰のはいった一撃だった筈だ。まったく痛くないというのは違和感だが……イビルアイが言うところによると、僕はちょっと反則的な存在であるらしい。やあ、やっぱりちゃんとチートしてるじゃないか。サンキューネフィリム。フォーエバー管理者。

 

「さて……まあ別人なのか記憶が抜けてるのかはわかんないけど、どうすればいいのかな。なんか良い案とかない?」

「そうは言ってもな。そもそもなんの薬を作っていたんだ?」

「いや、そう聞かれても。僕に対する僕の認識は、一般人でしかないし……どこにでもいる学生だし、家庭も一般的な中流家庭だよ」

「…! ふむ…」

 

 ん? なにやら幼女が複雑な顔をしている。これはどういった感情だろう……うーむ……『興味』と、ちょっとばかしの罪悪感……かな? しかし見れば見るほど可愛い幼女だ。どのくらい生きてるんだろうか。ロリババアの定義は曖昧だが、個人的には百歳は超えていてほしいところだ。五十歳とか半端なところだと、生々しい年かさを感じるし。

 

「ああ……そうだ。お前が本当にエイなのか、簡単に判別する方法があったな、う、うむ」

「ほほう。どうやって?」

「ま、前に聞いた『昔話』を聞かせてくれれば──それが合致していたら、間違いないだろう? その、お前がまだ普通の人間だった頃のだ。つ、つまり今の記憶だ、うん」

 

 キョドりすぎだろこの幼女。絶対知らないよね僕の過去。しかし……チートを手に入れたところで、過去バナを避けるような僕ではない。別に虐められてた記憶もなければ、知られて恥ずかしい経歴もない。ならなんで話さなかったのか……それはおそらく、トラックに轢かれてから今現在までのどこかで──何かしらを挟んでいるのではないだろうか?

 

 それがどういったものかはわからないけど、話していないなら話していないなりの理由があるのだろう。記憶が戻るかどうかは不明だが、もし戻ったときに困った事態になるのは避けたいものだ。

 

 嘘をついて人の過去を探ろうとする幼女へのお仕置きも兼ねて、ここは遥か昔に作成したブラックヒストリーの一部でも公開するとしよう。中学二年生の頃、ノート一杯に書き連ねた設定集。主人公にはこれでもかと悲惨な過去を詰め込んだ、中二心満載のノートである。

 

 主人公の辛い過去を、仲間が知らされる展開って胸がくすぐられるよね。その点において某魔法先生の記憶(夢)覗き魔法は優秀である。数々のEMIYAさんやYOKOSIMAさんといったクロス主人公が、過去を暴露されてきたものだ。僕もそれにあやかって、辛い過去()でも話すとするか。

 

「…記憶の始まりはいつも雨だったかな。無数の死体と瓦礫の山の中で……黒い雲を見つめてた」

「…! あ、ああ…」

 

 平々凡々だったという前置きをいきなり無視したが、幼女は突っ込んでこない。いや、突っ込めよ。むしろ僕が君に棒を突っ込みたいよ。ベッドで横並びに座るとか、もうこれオッケーサインじゃないの? それとも童貞の早とちりなのか? くそ、わからんちん……仕方ない、もう少しブラックヒストリーを語るとしよう。割と僕にも精神ダメージが入ってくるんだけど、ネタばらしのタイミングが掴めない。

 

「“ブラッド・チルドレン”……それが僕たちに付けられたただ一つの呼び方だった。個人を識別はされない。兵器でさえナンバーはあるってのに、酷いもんだったよ。まあ名前を付けられたところで、すぐ死ぬ運命……つける必要性は薄かったんだろうね」

「…、っ…」

「戦場を血で彩る子供たち……そんな中で偶然か必然か、僕は生き残り続けた。百回も帰ってきたころから、一つだけあだ名がついた。“死にぞこない(イモータル)”、なんてね」

 

 百回の戦場ってあたりがほんと草。激戦区でもあり得ないだろ常識的に考えて。しかし常識的に考えられないからこそ中二病患者であり、実際に中学二年生の頃に考えたのだから仕方ないだろう。なんか手をギュッと掴まれたが、押し倒していいのだろうか。

 

 とりあえず話を続け、なんか色々と凄い活躍とか悲劇とかを並べ立てる。いやあ、意外と覚えてるもんだね。途中から宇宙人や地底人が出てきたり、魔界やら天界やらが出てきたりと、設定を書いている途中で何にハマっていたのか透けて見える。黒歴史って大抵の場合はパクリ要素の寄せ集めなことが多いけど、僕のこれもご多分に漏れずオマージュだらけだ。

 

 最後は元気玉っぽい感じで力を集めてボスを倒して終わりだ。現代風の戦争モノから一転、異能バトルやらSF要素が入り乱れているが、まあよくあることだ。そして最後に放った一撃は一つの街を崩壊させて……うむ、要はあれだ。ラスボスを倒せずに世界の終わりを選ぶか、一つの街を犠牲にしてラスボスを倒すかの究極選択的なやつだ。

 

 しかし『もっと犠牲を少なくできた筈だ』と声高に叫ぶ輩に糾弾されて、僕は夕日をバックに姿を消す。じゃじゃーん……はい、終わり。要所要所で突っ込んでほしかったのに、最後まで語るハメになってしまった。大丈夫か? この幼女。

 

 …ん?

 

「わ……私も、同じなんだ…」

「え? あ、はい……ん?」

 

 僕が話を終えたと思ったら、今度は涙混じりに自分の過去を話し始める幼女。僕にしがみつきながら話す姿は、いまさら『冗談でしたー』とは言えない雰囲気だ。というかやっぱり過去の話なんてしてなかったんじゃないか。

 

 そして語られる幼女の歴史……ふむふむ、元は普通の幼女で……どこぞの竜が『プレイヤー』とやらに対抗するため人の魂を集め始めて…? ほほう、それで? タレントとかいう固有能力でその力をコピってしまった幼女が、図らずも吸血鬼になって…? ふむ、結果的に国を一つ滅ぼしてしまったと。それで『国堕とし』。

 

 …重すぎない? ちょっと受け止められないんですけど。え? お前と同じ? あ、いや僕のはただの妄想というかなんというか……どうしたもんだろう。なんか妙な雰囲気だ。色気のある空間とでも言うのだろうか? 『女性のオッケーサイン』というものがあるならば、まさに今って感じ。

 

「…私はお前のように性に奔放な男を良く思っていなかった。むしろ毛嫌いしていたと言ってもいい……だがお前だけは、どうにも憎めなかった。私よりも強いから──だからなんだと思っていた。だけど違ったんだな……お前は私なんだ」

 

 いや全然違いますけど。性格も過去も人種も、なんなら性別すら違うんですけど。ちょ、待って、幼女に迫られるのは嬉しいんだけど、勘違いさせたままというのは非常にアレだ。後々にこじれるやつじゃないか。イビルアイちゃん! 赤い顔で唇近付けないで!

 

「んっ…」

「──っ」

 

 ──唇が触れた瞬間、何かが輝いた。

 

 

 …ん? あ、記憶戻った……早いなオイ! 少なくとも三日はかける予定だったんですけど。イビルアイとの粘膜接触で記憶が戻るようにしていただけに、長期間かかる可能性もあった。最悪の場合はNPCに頼んでいたけど、彼女のチョロインぶりを舐めていたぜ。

 

 …っていうか過去重っ! そして僕の過去()も重っ! 恥ずかしい思い出が僕を苛む……やめて、ブラッド・チルドレンとかほんとやめて。大学生の僕は大丈夫だったようだが、今の僕はそれをネタにするのもちょっとキツい。

 

「エ、エイ…? その、嫌だったか…?」

「…ん、いや……記憶戻ったみたい」

「…! そ、そうか! 良かった……あ、その……騙すような形でお前の過去を聞いてしまって……すまん」

「あー…うん、気にしないで」

 

 謝罪するイビルアイを抱きしめ、押し倒す。顔を赤くする彼女は非常に可愛いが、血が通っていないのに赤面するとはこれいかに。まあそれは気にせず、謝罪を受け入れる代わりに僕の謝罪も受け入れてもらおう。うん、まさにイーブンってやつだ。

 

「は、ん…」

「…イビルアイ」

「う、ん…? あっ、ひぅっ…」

「君のことを許す代わりに、僕のことも許してほしい。一つだけ……嘘をついていたんだ」

「ん、っ……ああ、なんでも言ってくれ。お前のことは……全て受け入れるつもりだ」

「ありがとう。それじゃ言うけど──さっきの話って全部ネタなんだ」

「うおらぁぁ!!」

「ぐふぅっ!?」

 

 金玉を蹴り上げられた。おいおい、許すって言ったじゃないか。こらこら、腕を噛むんじゃありません。皮膚を突き破らないと吸血はできないでしょ? どうせなら腕じゃなくてチンポを口に含んでくれませんかね。

 

 ──しかしセックスするような雰囲気でもなくなってしまったし、数日はご機嫌とりに専念するとしよう。なんやかやで処女を喪失する相手として合格判断はされたのだ。あとは機会があればってところだろう。

 

 プンスカ怒っているイビルアイを撫でながら、申し訳なさそうに笑う。彼女も本気で怒ってるって訳じゃないだろうし……これもイチャツキの一つと思えば可愛らしいものだ。

 

 …ん? なにやら階段をドタドタとかけ上がる音が…

 

「──エイ! 戻ったわ! …え…? イビルアイ……あなたまさか、記憶がないのを良いことにエイを…!」

「ラ、ラキュース!? いや、これは違うんだ、その…」

 

 半裸でベッドインしてイチャついてるとか、これは言い訳できませんねイビルアイさん。ここは一つ、ベル薔薇みたいな表情になっているラキュースちゃんに乗っかろうじゃありませんか。

 

「えっと……彼女と僕は恋人だって聞いたんですけど、違うんですか?」

「ちょ、おまっ」

「イ、イビルアイ、あなた…! ──ティナ達のこともあるし、普通にエイと関係する分には何も言わないけど……こんな卑怯なやり方を認める訳にはいかないわ!」

「イビルアイさん……残念です」

「エ、エイ、おまっ──どわぁっ!? 待てラキュース! これは罠だ! まずは落ち着いてだな──」

「問道無用ぉぉ!!」

「エイいぃぃ!!」

 

 あっはっは、ラキュースちゃんもだいぶレベルアップしてるし……相性を考えればイビルアイでも結構キツいだろう。世界最高峰レベルの鬼ごっこは中々に見応えがある。鬼の方が追いかけられているのはご愛嬌といったところだろう。

 

 ──ま、どんな過去でも今が楽しければそれでいいんじゃないかな……僕はそう思うけどね、イビルアイ。



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16話

イビルアイのエロ? 書くとは言ったが……その時間と場所までは指定していないっ…!

いや、したな。すいません、なんか違う方向いっちゃいました。


 国家間での戦争とは、あらゆるものが激しく動く。人の移動、兵糧の運搬、その他諸々。いかに質の高い兵士を揃えようとも、数の力とはそれを覆しかねない。故に少しでも多くを揃えようとするのは、国として当然の行動だ。例年行われるバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国との戦争──前者は専業兵士を揃え、後者は農民を徴兵しているため、質の差など歴然だ。しかし王国は数に物を言わせ、曲がりなりにも帝国の侵攻を防いでいる。その事実を鑑みれば、数は力と断言できるだろう。

 

 しかし──あるレベル以上の『個』が出現した時、『数』は意味をなさなくなる。難度にして二十にも届かない弱者の群れなど、限界近くまで鍛えられた強者にとっては塵に等しい。何をしようとも傷一つ付けることすら叶わないだろう。

 

 もしその『強者』がアンデッド等であれば、弱者にとってはもはや悪夢だ。疲労もせず、空腹も覚えず、睡眠すら不必要な絶対の『個』。どんな奇跡が起ころうとも勝利は掴めない。仮に敵がアンデッドでなくとも、終わりを迎える時間が遅くなるだけで、結果は変わらない。

 

 つまり絶対的強者を抱える国同士での戦いとなると、暗黙の了解が成り立つのだ。それすなわち──『代理戦争』。現代で言うならば、オリンピックのようなものだ。一流のアスリートとは、富国ならずして育たない。メダルの数は強国としての象徴のようなものだ。だからこそ、国家ぐるみでドーピングを奨励する事案なども発生する。競技の勝敗は、国の優劣を決めると言っても過言ではない。それと同様に、強者と強者の戦いの行方こそが戦争の勝敗を決めるのだ。

 

 取り決めもなしに戦争が始まってしまえば、強者のすれ違いの果てに、互いの領地での蹂躙が始まる。それはどちらにとっても不利益で、言うまでもなく『無駄な犠牲』だろう。それを避けるため、竜王と法国の戦争とは『個人での戦闘』に代替されるのだ。

 

 『ツァインドルクス=ヴァイシオン』と『番外席次』の激突。法国にはツアーの他にも『真なる竜王』は存在するものの、その全てが個人主義である。そもそも現状で生き残っている竜王とは、八欲王との戦争において無視を決め込んだ者達だ。世界の命運を分かつほどの戦いにすら興味を示さなかった者達が、たかが一国との諍いに出張る筈もない。

 

 そして法国において真なる竜王を相手にできる存在は二人しかいない。一人は言うまでもなく『番外席次』──そしてもう一人は存在を秘された『神人』。番外席次の存在が明るみに出てしまった今、残った一人は法国の希望だ。今回の戦争に出張るとすれば、国が滅びかねない危機においてのみだろう。

 

 ──しかして『戦争』は『戦闘』となり、決戦の地は『王国』となる。

 

 元々王国は『法国と評議国が諍いを起こさないため』の折衝地としての役割が大きい。となれば、両者が決裂した時に被害を受けるのもこの地だ。そもそも両国とも、街一つ消えかねない強者同士の戦闘を、自国で起こすことなど認めはしない。ゲームとは違い、相手に当たらなかった攻撃が消える筈もない。近接同士の戦いであればともかく、一方は空を飛び広範囲のブレスを吐く“竜王”なのだ。となれば中間に位置する王国での戦闘になるのは、自然の成り行きとも言えるだろう。

 

 二国間のちょうど中心──王都『リ・エスティーゼ』と『エ・レエブル』に挟まれた平原。そこでツアーと番外席次は相対し、睨み合っていた。

 

「はーぁ……憂鬱」

「心中察するよ。僕も荒事はあまり好きじゃないし」

「あら、じゃあ戦わなくてもいいじゃない。お互いに戦いたくないなら、意見の一致ってやつよね? はい、終わり!」

「それは助かるね。なら君の身柄と──プレイヤーが残したアイテムを全て差し出してほしい。それで今回の裏切りは見逃そう」

「無理に決まってるでしょ?」

「なら残念だけど、戦うしかないね」

「う~……別にいいじゃない、強者の一人や二人。そっちの国の方がずっと強いことなんてわかってるでしょ?」

「問題はそこじゃないよ。“プレイヤーの血を引いた存在が”“至高の領域に至った”ことが問題なのさ。君達の魂は世界のバランスを崩す……もちろん一人や二人程度で揺らぐことはないけど、だからといって放置はできない。明確に盟約を破られるような状態が続けば、いつのまにか世界が汚れるかもしれないしね……君が短命種であれば、少しは違ったんだけど」

「魂?」

「強いことが問題じゃないんだ。“存在すること”が問題なんだけど……まあ散々話し合って理解しあえなかったんだ。これ以上は話す意味もない」

「…」

 

 会話が終わり、数瞬の時が流れ──戦いは始まった。難度にして三百を超える存在の戦いとは、真実、おとぎ話に語られる戦闘だ。余人には何をしているかも理解できない、高速の戦闘。白金に光る鱗が縦横無尽に空を駆け、十字槍に似た奇妙な鎌が鋭く走る。

 

 かつて世を支配した“始原の魔法”が飛び、今の世を示す“位階魔法”が受ける。牙が、刃が、ブレスが、尋常ならざる威力の攻撃が飛び交い、大地を削り取っていく。純然たる実力で言えば竜王に分があり──しかし、少女にも十二分の勝機があった。

 

 席次の番外という称号は伊達ではない。職業構成こそ無駄な部分はあるものの、それを補って余りある『タレント』が彼女にはあった。奇跡のような確率で生まれた『強者』──そんな存在に神が与えたのは、世界に二つと無い奇跡のようなタレント。

 

 その二つが合わさった結果が、上位のプレイヤーにも引けを取らない『番外席次』という怪物だ。ともすれば、大墳墓の支配者すら打倒しうる実力を彼女は持っていた。

 

「しぃっ──りゃあぁぁ!!」

「…っ!」

 

 空間が歪曲し、予想された軌道から外れた鎌の一閃が、ツアーの翼を──その皮膜を傷付ける。神人とはいえ、自身の実力からは大きく下回るだろう……そんな推測をしていたツアーは、即座に慢心を戒めた。敵は己を殺し得るのだ、と。

 

「…強いね」

「はぁっ! ──っふぅ……降参してもいいわよ」

「うん、そうだね。負けそうになったらそうするよ」

「むぅ……そんなの想像もしてないって顔じゃない」

「そんなことはないさ、君は十分に強い。ただ、長く生きてるとね……なんとなく想像もついてくるもんさ──三、四十回も戦えば一回くらいは落とすかもね」

「あら、朗報じゃない。なら──それをいま持ってくればいいだけだもの!」

「はは、そういうことだね」

 

 人外の膂力で振られた鎌が、ツアーの瞳を正確に狙う。しかし刹那の攻撃を見逃すことなく、その頑丈な顎と牙で鎌を咥えるツアー。空間がギシリと軋めいたのもほんの一瞬──ツアーが体を半分に折り曲げ、番外席次の無防備な背を、尾で強かに打つ。

 

 あまり戦闘の経験がない上に、その少ない機会もほとんどが人型との模擬戦だった番外席次。予想もしていなかった攻撃手段とその衝撃に、思わず武器を手放し、肺の中の酸素を咳き込みながら吐き出す。

 

 ──幼さの残る言動とは裏腹に、ツアーの戦闘は老獪そのものだ。あからさまな勝機を見逃す筈もなく、そのまま番外席次の胴に尻尾を巻きつけ、咥えていた鎌を放り出し──鋭い牙で首を落とさんと噛み付いた。

 

「…ぐっ、──あ、あぐっ…! ふ、ぅ…っ!」

 

 胴に尾を巻きつけられたとはいえ、両腕は健在だ。その細い腕からは考えられない程の力をもって、番外席次はツアーの上顎と下顎を掴み、抵抗を試みる。しかし人間種と異形種はそもそもの能力値に大きく差があり、その中でも“竜”はあらゆる面で優遇され、世界に祝福された最強の種族だ。

 

 断頭台の如く、ゆっくりと顎が閉まり──番外席次の腕が圧力に耐えきれず、小刻みに震えだす。尾の締め付けも強まり、口の端からは血の泡が溢れだしていた。勝敗は既に明らかだが、しかしツアーにとっては彼女を捕虜にするより、殺してしまった方がなにかと都合が良い。自他共に温厚な性格と認識されている彼であっても、必要とあらば厭いも躊躇もない。

 

 ──硬いナニカが千切れる、無情な音が平原に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒いポニーテールが目の前で揺れる。対比が鮮やかな白い肌は、うなじからヒップまで染みひとつ無い。何度も下半身を打ち付けたせいか、結合部の周囲だけがほんのり桜色で淫らだ。そして目の端から悔し涙を滲ませる様子は、嗜虐心をこれでもかと煽ってくる。

 

「ほら、もっと締めなよ『ナーベラル』。ルプスと比べると緩いぜー」

「ぅ、っ、ぐ……こ、の…!」

「あれ、なんか反抗的? ふーん…」

「っ! ふぐっ、んっ、ぐっ…!」

「おっ、そうそう。やればできる娘って素敵だぜ。頑張れナーベラルちゃん、ナザリックの存亡は君の雌穴にかかってるぞー」

 

 潤滑液でまみれた穴がキュンと締まる。それでもまだ名器とは言い難いが、抜き穴としてはギリギリ合格点だろう。ピストンを早め、チンポを昂ぶらせる。中のヒダがいまいちなので、穴の入り口をカリ首で擦るように小刻みに体を揺らす。

 

 うーん、もうちょっと刺激が欲しいな。ひくついてるケツ穴に指でも突っ込んでみるか。排泄の必要がないだけあって、汚さとは無縁だ。出す穴じゃないってことは、用途としては挿れるためだけに存在してるんじゃなかろうか。なら無遠慮に突っ込むのも、むしろ当たり前の行為だろう。

 

「んぅ゛っ…!? き、きさ──」

「なに?」

「…う、ぅ…!」

 

 こちらに顔だけを向け、呪い殺すかのように睨んでくる彼女。応じるように、親指で乱暴にケツ穴をほじくる。まさに『くっ、殺せ』といった風だが、僕にできるとすれば精々イキ殺しにするくらいのものだ。

 

 ケツ穴を弄る手とは逆の方で、乱暴に後頭部を押さえつける。完全無欠にレイプの場面だが、ちゃんと合意の上でのセックスだ。何も問題はない。

 

「あー出る出る…! く、ふ…!」

「ひっ、あ、熱っ…!」

「あーあ、美味しそうに飲み干しちゃって。この穴はご主人様のためのものだろ? だらしないマンコだなぁ……それとも僕を主として認めたってことなのかな?」

「だ、誰が──んぅ゛っ!?」

「まだ出し終わってないんだから、気を抜くなよ。ちなみにこの精液……“的中率”百%の大サービス中だぜ」

「ひっ…!? や、やめ──!」

「もう遅いって」

 

 四つん這いで必死に逃げ出そうとする彼女だが、僕の方でガッチリと腰を押さえつけているため、射精からは逃れられない。むしろ動いたせいか、より膣奥に精液が流れ込んでいく。やがて諦めたのか、嗚咽混じりに動かなくなった。ただ精液を流し込まれるだけの、哀れな雌と化している。

 

「ご主人様にちゃんと報告しなよ? 初めてのチンポで淫らにあえいで、立派にメイドとしての役目を果たした──ってさ。膜はもうないけど、ご褒美に抱いてくれるかもしれないぜ」

「ひっ、うっ、……ひぐっ…」

「泣いてないでさぁ、射精が終わったんならお掃除だろ? …それとも、使えないメイドだったって報告しとこうか?」

「…っ! き、清めさせていただきます……、っぅ…!」

 

 雌穴から精液を溢れさせながら、汁にまみれた肉棒を頬張る彼女。できる限り接触面を増やしたくないのか、舌でチロチロと精液を舐め取っていく。人外の美貌でそんなことをされると、確かに興奮するけど──じれったいよね。

 

「んぶぅっ!? ん、ぐっ──じゅぶっ、じゅるっ、……ぷはっ、や、やめ──……んぐっ!?」

「おー、喉奥の方が雌穴より締まりいいんじゃない? ほら、もっと舌を動かして」

「…ん゛っ、ん゛っ……っ、あえ゛っ、じゅぶっ、ん゛──んぐぅっ!?」

「ほら、さっきの三倍ぐらい早く射精できたぜ。ナーベラルは下の穴より上の穴が名器……っと。覚えとこう」

 

 後頭部をこれでもかと押さえつけ、えづく喉の感触を楽しみながら射精を堪能する。苦しさのせいかマンコから逆流した精液が迸っている。まるで喉奥に流し込んだものがそのまま流れ出ているようで、少し滑稽だ。モデルのように整ったボディが、お腹だけポッコリ膨らんだ頃──ようやく射精を終える。

 

 ベッドの上で苦しげに嘔吐する彼女。まあ胃の中にあるのは精液だけだから、これも一つの射精と言えるのかもしれない。四つん這いのまま、上から下から精液を垂れ流す姿はひどく惨めで……無性に虐めたくなる。

 

「え……なっ、や──」

 

 ご主人様にケツを向けたまま嘔吐するなんて、失礼だろ? でも完璧なメイドである君がミスをする訳はないんだから──その醜態は誘惑の一環ってことにしといてあげよう。思わず逃げようとした彼女の体を、ベッドに押し付ける。まだ未使用の新品アナルに肉棒をそえ、一気に突き挿れた。寝バックと言えばいいのか、体全体で押さえ込みながら全力で腰を振る。もっとも征服感のある体位の一つだろう。

 

 何百回ピストンを繰り返しただろうか……諦めたように脱力する彼女の、そのケツ穴がポッカリ開ききって戻らなくなった頃、ようやく僕の性欲も落ち着いた。最後の射精を堪能した後、柔らかくなったチンポを尻タブで挟み、擦る。にゅるにゅるとした感触が心地よく、火照った体が落ち着いていくのを感じる。スポーツでいうクールダウンってやつだろう。

 

 ──さて、もういいかな。

 

「いやー、名演技だったよ。ありがとね」

「はっ! 恐悦至極に存じます!」

 

 哀れなレイプ被害者といった姿から一転、シュタッと立ち上がって敬礼するナーベラル……ならぬドッペルゲンガー。まあナーベラルちゃんもドッペルゲンガーだけど、もちろん彼女は僕が作った別個体である。その能力を使い、ナーベラルちゃんに変身してもらっていたのだ。

 

 無理やりが良くないってのは確かだけど、たまにレイプもので抜きたくなるのは男の本能だろう。チンポの具合によって、ケモナーにもレイパーにも熟女好きにもロリコンにも純愛信者にもなるのが、男ってものだ。

 

「ご満足いただけましたか?」

「うん、充分充分。強いて言うなら、本当の彼女だったらもう少し言い返してきそうかな……ってとこくらい?」

「も、申し訳ございません! 精進いたします!」

「あ、いや、充分に高水準だったからね? 余は満足じゃって感じー」

 

 感極まったように震えるドッペルちゃん。なるほど、一言一句にいちいち感銘されるというのはこういうものか。ギルマスの苦労の一%くらいは理解できたような気がする。さて、性欲も落ち着いたことだし今日はナニをしようかな。

 

 頭を撫でる代わりにケツを撫でながらそんなことを考えていると、監視システムからメッセージが入る。何事かと思えば、ちゃんツアーと番外席次ちゃんが戦闘を開始したとのことだ。まあどちらにしても国力を消耗させたくないだろうから、トップ同士の対決になるのは既定路線か。

 

 僕に関係ないのなら放って置くところだけど、思いっきり近くでドンパチされてるこの状況。王国に被害が出るのをよしとしない友人が多い関係上、無視はちょっとあれかな。なにより番外席次ちゃんの可愛さは、ラナーちゃんに勝るとも劣らない。機会としては絶好ではなかろうか。

 

 困った時に、苦しい時に助けてくれた人には恩を感じる。そしてそれが講じて愛へと変わる。本能に依存した当たり前の反応とも言えるだろう。つまり僕が番外席次ちゃんの危機を颯爽と救えば、待ち受けるのは感謝のセックスである。ほとんど謎に包まれている彼女だが、一つだけ覚えていることがある。『私より強い男とエッチしたい』──だったっけ? もうちょっと真面目な言葉だったような気もするけど、まあ似たようなものだろう。

 

 つまり今は恩を着せるいい機会でもあり、これ見よがしに実力を見せられる素晴らしい機会でもあるということだ。

 

 …しかし気になるのは、番外席次ちゃんの陰毛だ。つーかあの髪の色は本当にどうなってるんだ? 真ん中できっちり白黒になってるとか、モノクマなの? 似たような毛色の猫とかいるけど、あれと同じなのかな。遺伝子って不思議。

 

 まあそれは置いといて、さっさと現地に向かおう。甲斐甲斐しく服を着せてくるドッペルちゃんにお礼を言い、転移する。どれどれ……おお、強いな番外席次ちゃん。現地の人間でプレイヤーに勝つ人ってまずいないと思ってたんだが、あれだと準廃人クラスはある。ロマンビルドにしてるギルマスなら負けもありうるかも……まあ実際に戦えば、使えるアイテムの差からして結果は見えてるけど。

 

 決着まだかなー。まだかなー。ちゃんツアー、早く決めちゃってよ。ちらちら見えるフトモモが目の毒なんですけど。クール系とサディスティック系と不思議ちゃん系が混ざった彼女に、『なのはの声でヤってよw』とか言ってみたい。単芝はやしたい。

 

 しかし彼女のゆかりん声といい、クレマンティーヌのまどか声といい、どういう絡繰なんだろうね。まあ人の声なんて機械で再現可能だし……というかアニメの声だって実際は機械が発してる音声な訳だし、今更か。そもそも前世の地球上でも、ほぼ同じ声の人間は多数存在した筈だ。常識的に考えて、人の可聴域という狭い範囲で、何十億種類もの声に分かれるってことはないだろう。だからこそ──

 

 …ん? ──っ!? ば、番外席次ちゃんの首が無くなって…? しまった、決定的瞬間を見逃した。この場合、蘇生魔法は頭にかけるべきなのか? それとも体? ちゃんツアーがペッと吐き出した頭には、絶望の表情が彩られている……うわぁ、グロテスク。

 

 重い何かが落ちた音が、都合二つ連続した。勝利の咆哮を上げる竜王さん……そういうとこあるんだ、意外。いやまあ殺し合いの後だと、種族問わずに昂ぶるものなのかな。彼に少しでも危険を感じさせる敵なんて早々いないだろうしね。とりあえずさっさと蘇生させよう。レベルダウン、意識混濁なしのスペシャル仕様だ。

 

「──っ! …君は? 戦闘中だったとはいえ、僕の知覚をすり抜けるなんて──」

「あいあい、ちょっと待ってねー」

「…? あ、あれ……私、死んで…?」

「大丈夫かい?」

「え、えっと…?」

 

 状況を充分に理解してくれていないのは残念だけど、まだ挽回は可能だろう。とりあえず僕が蘇生魔法をかけた旨は伝え、彼女をかばうようにちゃんツアーへと向き直る。軽い警戒に、探るような瞳。知性ってのはやっぱり目でわかるんだなぁ……というのがよくわかる、深慮遠謀を感じる眼差しだ。

 

「どうも、ウン=エイです……プレイヤーって言った方がわかりやすいかな? 君の知ってるそれとはかなり違うだろうけど」

「…! そっか……もうそんな時期だったか。ちなみに、彼女を助けた理由を聞いてもいいかい?」

「美少女は助ける主義なんだ」

「…つまり誰かに頼まれたとか、国の事情とかは関係ないってことでいいのかな」

「はいかイエスなら、前者かな」

「………。…彼女との戦いは正当な理由あってのことだし、なるべくなら死んでいてほしいというのが僕の希望なんだけど……やっぱり竜と人なら、後者に寄っちゃうか。君も人間種みたいだし」

「んー……異種族に偏見とかはないよ。でもツアー、君が幼女になれるなら君寄りになることもあるね」

 

 竜の人化といえば古今東西、幼女である。いやまあ最近の風潮だろうけど、やはり竜=幼女は鉄板だ。狐娘、吸血鬼、このあたりも幼女でいてほしい存在である。

 

「…百年くらい前にも聞いた言葉だよ、それ。プレイヤーだと理解できるセリフなのかな? ちなみに僕は雄だからね」

「そりゃ残念……でも人化はできるんだよね? じゃないとドラウの存在自体おかしいことになるし。となれば、変化の際の性別くらいは選べる筈だ。だって元から人の姿が固定されてる訳はないんだから──となると幼女姿にもなれる!」

「なぜ人の子にこだわるのかが理解できないんだけど」

「様式美ってやつ? まあどっちにしても中身が雄なら意味はないけど」

「ふぅん…? まあそれは置いておくとしよう。先に答えてほしいことがあるんだけど──」

「うん?」

「──君はこの世界でどう生きるつもりなんだい?」

 

 ふむふむ……ちゃんツアーの問いの真意は、結局のところ『ワールドアイテムによる世界の法則改変』に集約するんじゃないだろうか。他にもあるのかもしれないけど、ワールドチャンピオンズの行動ログと、ウロボロスや五行相克の使用履歴からしてもそんな感じだろう。

 

 位階魔法を使いやすくするための法則改変は、主流であった始原の魔法の仕様に大きく制限がかかった。要は竜王たちの既得権益を犯した形になったのだろう。彼等がどれだけプレイヤーのことを理解しているかは知らないけど、また同じことをされたらたまったものじゃないだろうことは理解できる。

 

「んー……まあ僕の幸せって、なかなかちっぽけだからさ。大したことをするつもりはないよ。もちろんできるかできないかで言うなら前者だけどね。君達が結局どうにもできなかった八欲王……が、仮に八百万欲王になったところで、僕には逆らえない」

「…!」

 

 『僕には逆らえない』。『僕には逆らえない』。言った後で思ったんだが、中二病全開だなこのセリフ。どこぞのキセキの世代が使いそうな言葉だ。『僕に逆らうやつは雄でも犯す』ってか──いや無理無理。

 

「『プレイヤーとは違う』ってさっき言ってたね。詳しく教えてもらってもいいかな?」

「うーん……短く纏めるのって中々難しいんだよね。わかりやすく言うなら……そう、君らと一緒かな? 真なる竜王は『世界の管理者』を自認してるんだろ? それと一緒。君達が見てきたプレイヤー、苦戦したプレイヤーは、元いた世界で言うとごく普通の人々。僕はその世界での、管理者の一人」

「…!」

 

 難しい顔をしている……のだろうか? 目で知性がわかるといっても、表情までは読めない。異種族の顔の違いなんてわからない、という言葉がよく理解できるな。別にちゃんツアーを屈服させたい訳でもないが、僕という存在がどういったものか不明のままだと、あちらとしても気持ちが悪いだろう。

 

 という訳で、わかりやすい形で示してみるか。彼がこの世界でほとんど動かない理由は、遥か遠くにあるギルド拠点──『浮遊都市』のギルド武器を守護しているからだ。どういう経緯かは知らないけれど、彼はあの都市が滅びることを良しとしていないのだろう。ギルド武器の消滅とは、すなわちギルド拠点の崩壊と同義。いま離れているだけでも、彼にとっては非常に不本意な状態である筈だ。

 

 そしてギルド武器は権限がなければ絶対に動かせない。だからこそ自由に羽ばたける翼を持ちながらも、一所に留まり続けているのだろう。ならそれをどうにかすれば、そこそこ友好的にはなれるんじゃなかろうか。

 

「まあ証明はできるから、実際にやってみるよ。まず君が守ってるギルド武器をこっちに移動させて…」

「…え?」

「おー……白金水晶のフランベルジュか。そういやミズガルズのチャンピオンがフランベルジュ使いだったっけ? 装飾弄るのは失礼だし……サイズだけ変更して、と。アクセにしたから、首にかけときなよ。破壊不可オブジェクトにしといたから、壊れる心配もないぜ」

「…!」

 

 おお、驚いてる……のだろうか? さっきも言ったけど、表情の変化がマジでわからない。もっと『アリエナイんですけどおぉぉぉ!!』とか『魔女様すごすぎですぅぅぅぅ!!』とか言ってくれたらわかりやすいんだけどな。

 

「これで信じられるかい?」

「う……ん、…そうだね。確かに僕が守っていたギルド武器だ。ここに来る前に、何重にも防護魔法をかけておいた筈なんだけど…」

「まあほら、僕の管理者権限って結構エゲツないからさ。という訳で、そんな僕の顔に免じてこの娘は諦めてくれないかな?」

「…うーん……仕方ない、か。そのかわり、また話す機会をつくってもらえるかな。君がプレイヤーを管理する存在だって言うなら、頼みたいことがいくつかあるし。君は──プレイヤーに対して責任を持ってるって認識でいいんだよね?」

「…ん、それは……この世界にきた時点で、その関係は破綻してる……かな? 君達みたいな自主的な責任感じゃなくて、僕が彼等を管理してたのは仕事の一環。彼等が管理されていたのは遊びの一環。それでも多少なり気を使ってるのはさ……んー…」

「…?」

「んん……言語化できない感覚ってあるよね。そんな感じ」

「訳がわからないよ」

「ま、理解して欲しいとも言わないよ。とりあえず、今見たように──僕の管理者権限なら大抵のことはできるからさ。もし争い事でしか解決できない案件があるなら、最初に相談してくれるかい? 大局的な考え方をする君の頼みなら、たぶん優先するだろうから」

「…ずいぶん買ってくれてるんだね」

「プレイヤーに関する過去ならある程度まで見れるからね。君は──竜の癖に人間に気を遣うみたいだ。そうだろ? ツアー」

「…」

 

 笑った……のか? 口元を歪められても、威嚇してるのか笑顔なのかわからない。ワンピースみたいに特徴的に笑ってくれたらわかりやすいんだけどな。『ツァツァツァツァ!!』とかどう? 嫌? そっか、残念。ではでは……うん、また後日。

 

 …さて、では長くなってしまったが本命だ。やあやあ、命拾いしたねモノクマちゃん……じゃなかった、番外席次ちゃん。その髪どうなってんの?

 

「え、えっと…」

「どこか痛いとことかない? 蘇生はちゃんとうまくいったと思うけど」

「は、はい……あの、その」

 

 感謝よりも困惑が強いなー……くそ、手順を間違えてしまったな。かっちょよくギリギリで助けて、ちゃんツアーを相手にちょっとした無双でもすればまた違ったんだろうけど。まあ育ち的に対人関係に難はあるけど、頭が悪いという訳ではなさそうだ。

 

 僕とちゃんツアーの話を理解していたからこそ、かしこまっているのは間違いないだろう。つまり僕が自分より強いと認識はしている……となれば、もうそのままイっちゃっていいんじゃないか? 『自分より強い男の種が欲しい』とか公言しちゃってる系の女の子だし、そうだ、断るまい。

 

「よし、セック──」

「ご無事ですか!」

 

 …そこかしこからぞろっと現れる謎の集団。いやまあ謎っていうか、法国の人達なんだろうけどさ。そりゃ見張ってないわきゃないかー……急いで来たからシナリオもクソもないし、理想通りの展開など望むべくもない。というかめっちゃひれ伏されてる。魔法的な監視では認識できなくとも、物理的な視覚は制限していない故に、番外ちゃんの蘇生とちゃんツアーを追い返した場面はしっかり見ていたのだろう。

 

 口々に神の再臨を叫んでいる……うーん……法国で祭り上げられると、ちょっと面倒くさい感じなんだよな。そりゃあ女の子は選びたい放題できそうだけど、こちらを妄信する信者とのセックスは、催眠セックス以上に気味が悪い。

 

 ちなみに僕は催眠系の作品では抜けないタイプの人間である。肉体だけが勝手に動き、意識はちゃんとある系の催眠なら好きだけど……え? 細かいって? いやいや、性癖というのは人間の願望の中でもっとも細分化されるものなのだ、仕方ないだろう。

 

 ま、ここはいったん退こうかな。番外席次ちゃんとの顔合わせは済んだわけだし、彼女の願望を考えればいつでもセックスできるようになったとも言える。

 

 『お待ちをー!』などと叫んでいる宗教好きな人々を尻目に、王都へと転移する。どうにもこう……三つ子の魂百までと言うべきか、日本人の感性が抜けないというか。“信者”というものへの忌避感が否めない。

 

 たぶん僕みたいに自己愛が強い人間は、彼等みたいな人種と相容れないんだろう。得体の知れない存在に縋り、敬う人というものが、どうにも気持ち悪くて仕方ない。言い換えてみれば、信者とは純粋な人間で、僕みたいなのは汚れた人間とも考えられる。要は価値観の違いでしかないんだろうけどさ。

 

 『私はこうします、だから神様、どうか見守っていてください』──そんな考え方は好きだ。けど実態は、信仰を言い訳に他人を害する信者も多い。行き過ぎた信仰は寛容の幅を狭めるのかもしれない。そもそも日本においての神は、古くから『敬うべき存在』ではなく『どうにもできない存在』を指すことが多いのだ。

 

 歴史を紐解いても碌なエピソードがないしな……まあそれは日本以外もそうだけど。というか思考が逸れまくってるな。そんな高尚な考えは前世に置いてきたのだ。今の僕はオマンコがあればそれでいい。ちゃんツアーにも言ったけど、僕は適当に楽しく生きればそれでいいんだから──さ。




なんか微妙な出来で申し訳ない……次回から調子あげてきます。あとタイトルがあれなのに幼女成分薄すぎない? との声が割とありましたので、さっぱりさせてみました。


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17話

かなり期間が空いてしまったので、前回までのあらすじをさっと書いておきます。





バーテックスとの激しい戦いにおいて魔剣キリネイラムを解放し、徐々に身体機能を失っていくラキュース。仲間たちはそれでもなお戦おうとする彼女を止められず、せめて少しでも力になるため、ガンダムに乗ることを決意した。

一方、ガゼフとの決戦を控えたクレマンティーヌ。切り札である『封印されしエクゾディア』のカードを湖に捨てられ失意に沈むも、王国の王子バルブロに叱咤され立ち上がる。新たな力を手に入れるため、南方の砂漠へ向かう彼女を待ち受けるのは…?


 王都の中でも最高級の宿屋──その一室で、四人の女性が机を囲んでいた。その全てが見目麗しく、それぞれが別々の輝きを放っている。そのうち三人は冒険者においての最高位『アダマンタイト』を冠する者であり、そして残りの一人といえば、それすら凌駕する化け物(運営)であった。

 

 ──が、いまこの場においての頂点は違う。本来であれば、あらゆるものを思うがままに出来るような美少女……そんな人物が、今にも儚く消え入りそうになっているのだ。汚されることに恐怖する生娘のように、半裸かつ涙目で、指先を震わせていた。そして残る三人の内の二人も、同様に半裸であった。

 

 エイが姿を変えた美少女の外装──その白魚のような指から、おそるおそる差し出された白磁の牌。河に投げ捨てられたそれを見て、ただ一人服を纏っているティアは、無情にも目の前の十三牌を倒した。

 

「ロン」

「なばっ!? イ、イビルアイがさっき出したじゃないか! そのあとツモ切りだっただろ!?」

「直撃狙い。これで全員首切れ……三コロトップ」

「ぐっ…! くっ、ここ三回の依頼料が吹っ飛んだ……おい! ビンタアップだ!」

「了解。じゃあイビルアイとは差しビン金貨百枚」

「ね、ねえイビルアイ……そろそろやめたほうがいいんじゃ…」

「手は入っているんだ! 次は勝つ!」

「で、でも……次に直撃されたら、全裸よ?」

「…っ……」

「エイもさっき直撃。さっさと脱ぐ」

「むぐっ…!」

 

 うら若き乙女たちが集まって何をやっているのかと言えば、ギャンブルの代名詞とも言える『麻雀』であった。そしてエイからの提案というだけあって、当然のように脱衣麻雀である。しかし誘った当人の思惑は大いに外れ──素人をむしるだけの簡単なお仕事だった筈が、いつのまにかケツの毛まで毟られかねない状況に瀕しているのであった。

 

「くっ…! もう読みもクソもないぜ! 棒攻めだ棒攻め!」

「ロン」

「ふぁっ!?」

「フハハハ! 見ろ! 役満テンパイだ!」

「嬉しいのは解るけど、言うなよイビルアイ…」

「ふふふ、しかも不要牌はティアの現物だ……もらったぞ!」

「ロン」

「なっ…! ふざけるな! 一萬は三巡目に捨てただろう──って無いっ!?」

「見間違い」

「これが変わり身の術ってやつか…」

 

 元暗殺者だけあって、表情から心を読み取る能力に長けたティア。手癖の悪さも相まって、完全に無双状態であった。順位点は現金精算、直撃ボーナスは脱衣という特殊ルールにも臆することなく、舌なめずりをしながら仲間の裸体を拝んでいた。

 

「ラキュースってオープンリーチとか好きそうだよね」

「すごく馬鹿にされてる気がするわ…」

「…カン」

「──ちょっと待て! カンドラは人差し指で捲れよ!」

「ん」

「そう、そうだ……ふふ、新ドラは三枚切れだな」

「嶺上ツモ」

「あうっ!? しまっ──そっちか!」

「責任払いは直撃扱い……イビルアイ」

「ぐっ、くっ…! ぬがぁぁぁ!!」

 

 怒りの叫び声を上げながら、イビルアイは下着を脱いだ。一糸まとわぬ青白い肌に、薄いピンクの割れ目がむき出しになる。しかしそれが欲情を煽るかといえば、そうでもなかった。なにせ、幼い体のその上──端麗な顔がある筈のそこには、興奮を削ぐ奇妙な仮面があったからだ。

 

「局部より顔を優先とは……いったいどんな顔なんだ…!」

「知ってるだろうが!」

「顔より体を見せつけたいお年頃」

「んなわけあるか!」

「や、やったわ……オープンリーチ!」

「結局するんだ……しかもペン七萬…」

「追っかけリーチ」

「ひいぃっ!?」

「一発」

 

 場は進み、ティア以外の全員が全裸になったところで部屋の扉がノックされた。ガガーランあたりから昼食のお誘いだろうかと、エイはたわわな双丘をぶるんと揺らしながらドアを開ける。しかしそこにいたのは、無骨な骨の鎧を装備したラナー、そしてクレマンティーヌであった。

 

「あれ、ラナーちゃん……とクレマンティーヌ?」

「あん? 誰アンタ」

「…! 僕を覚えてないのかい? それは──まさか、法国が記憶を弄って…! くっ、なんてことだおひゃぅっ!?」

「それはもういいっつーの。ふーん……アンタ……女にもなれるんだ」

「乱暴に揉まないでくれる?」

「エイ様……なのですか?」

「そうだぜー。そんなにマジマジ見られると恥ずかしいんだけど」

 

 目を丸くしながら、エイの裸体を観察するラナー。なんの邪気もない視線に晒され、逆に恥ずかしくなってしまったのか、エイはさっと両手で胸を隠す。そしてクレマンティーヌは、そんな彼を見て口元を歪めた。出会ってから今まで、常に上から見下ろされていた──少なくとも、彼女の主観においてはそうだった。その屈辱が晴らせそうだと言うのだから、是非もないだろう。

 

 ヤンキー座りでエイの眼前に陣取り、しげしげと秘所を眺める。産毛の一本も生えていないそこは、作り物のように整っていた。

 

「へー……ほー……ふーん…」

「なんだよクレマンティーヌ」

「べっつにー?」

「まさかそっちの気が…? それならそうと言ってくれりゃ、最初からこの格好でするのに」

「ねーよ!」

「あ、そうだラナーちゃん──外の世界はどうだった? 面白かっただろ」

「ええ、とても。クレマンティーヌ様もよくしてくださいました」

「よしよし、なら君は僕に恩があるわけだ」

「…? ええ、そうですね」

「じゃあ代打ちオナシャス! このままじゃ僕の貞操が…」

「えっと…?」

 

 麻雀という競技においてエイが金を掛けたとしても、彼にとって何一つリスクは生じない。故に、ティアとエイの間にはまた別の取り決めがあった。ギャンブルとは、負けに不利益が生じてこそギャンブル足り得るのだ。そしてこのままエイの敗北が続くのであれば、もはや彼が『女の悦び』を教え込まされること間違いなしである。たとえ女の姿を取っているとしても、好き好んで棒を突っ込まれたい男はいないだろう。

 

 そんな状況に突如現れた異次元の天才──ラナー。たとえ麻雀を知らなくとも、勝ちを確信させるほどの器量が、彼女にはある。喜々として彼女を卓につかせるエイの脳裏には、ティアをどこまで陵辱してやろうかという皮算用しかなかった。

 

 ──そして数局後。

 

「ラナーちゃぁぁぁん!?」

「も、申し訳ございません……どうもここ最近、頭が冴えないと言いますか…」

「前と後ろの権利ゲット」

「ふ、ふふ……貯金が全て無くなったな…」

「お金もだけど、尊厳も持っていかれたわ……あら? あなた、確かトブの森で会った…」

「いま気付くんだ…」

「こんな格好でごめんなさいね。私は蒼の薔薇のラキュースよ」

「全裸で挨拶された…」

「まあ部屋にいる半数が全裸なんだし、むしろみんな脱ぐってのはどう?」

「死ね」

「相変わらず辛辣ゥー」

「なに喜んでんだか……ん? あれ、そっちのちっこいの……もしかして吸血鬼…?」

「──ハッ!? し、しまった!」

「あーあ、仮面まで外しちゃうから」

「誰のせいだ! 誰の!」

「吹聴されちゃまずいぜ。とにかく確保だ!」

「ええ!」

「はあっ!? ちょっ、まっ──」

 

 全裸の幼女と全裸の少女と全裸の美女が、クレマンティーヌへと襲いかかる。あまりにもあまりな光景に、彼女も思わず固まってしまったのだろう。なにより、法国生まれかつ漆黒聖典であったクレマンティーヌからすれば、吸血鬼は嫌悪の対象──というよりは、討伐対象である。それが裸にされて辱められているなどとは、想像もつかなかったのだ。

 

「うぎゃぁぁぁっ!? 放せ変態ども!」

「見られたからには逃がせんのでな…!」

「ごめんなさい、まずは話を聞いてほしいの…!」

「へへへ、良い体してんじゃねーか姉ちゃん」

「一人おかしいだろうが!」

 

 三人に担がれ、ベッドへと投げ込まれ、拘束されるクレマンティーヌ。そして身動きできない状況で、いかにイビルアイが人畜無害なのかを語られる。なんとも意味不明な状況であったが、しかし彼女にとって()()()()()は他人ごと以外のなにものでもない。己に類が及ばないのであれば、吸血鬼だろうがゾンビだろうが勝手にやってくれという話である。

 

「はいはい、そうですかそうですかー。わかったから放してくんない?」

「…本当か?」

「吸血鬼だかなんだか知んないけど、正直どうでもいいんだよねー。襲ってくるならぶっ殺すけど」

「はは、そりゃ無理だぜクレマンティーヌ。イビルアイを倒したいんなら、少なくともナナ……いや、ハチマンティーヌは必要さ」

「なにその単位!?」

「番外席次と第一席次を除いた漆黒聖典全員でかかれば、なんとかなるかもってくらいだよ。クレマンティーヌ一人じゃ、ひっくり返っても勝てないだろうね」

「はぁ? …ちっ……そんな強いやつがゴロゴロいるとか、最近おかしくない?」

「ま、時期が時期だし。ちなみに蒼の薔薇一人一人が相手でも、たぶん厳しいと思うぜ」

「…あぁ?」

「彼女たちも君と一緒でさ、安易に強くなることを良しとはしてないけど……強くなるための『場』の提供くらいは、僕も手伝ってるから。順当に強くなってってるよ」

「…」

 

 クレマンティーヌが法国にいた際に聞かされた情報……彼女と対峙できるレベルの戦士。王国戦士長『ガゼフ・ストロノーフ』。蒼の薔薇『ガガーラン』。『ブレイン・アングラウス』──その他数人を知識として把握していた彼女は、蒼の薔薇のうち、戦士職ですらない面子にも及ばないだろうと聞かされ、額に青筋を立てた。

 

「…試してみるかい?」

 

 そんなクレマンティーヌを見て、何かを思いついたとでも言うように、指先をパチリと弾いて笑うエイ。ヤれるチャンスは見逃さない──そんなイヤらしい笑顔であったが、手のひらの上で()()を弄っているティアが横目に入り、ドッと冷や汗を流した。ヤるかヤられるか……勝負の世界はいつでも非情である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 住人が寝静まったカルネ村……ほとんどの者が夢の世界に浸っているこの時間だが、ある場所だけは毎夜毎夜、嬌声が響いるようだ。肌と肌がぶつかり合う音──肉と肉がぶつかり合う音。そこへかすかに粘性の水音が混じり、籠もった苦しげな声がアクセントになっている。

 

 しかしその声もどこか悦びが混じり、深夜の秘め事がどういったものかを如実に表している──などとナレーションのような思考をしながら、こそこそと情事を覗いている僕。視界に入るルプスとエンリちゃん……彼女たちも、既に肉棒の扱いは手慣れたもので、入れ代わり立ち代わり突き合っている。

 

 もちろん乱入すれば快く迎え入れてくれること間違いなしだが、本日の目的は別にある。僕とは違う位置で覗いている、小さな女の子……ネムちゃんだ。ごくごく普通の村人だし、隠密のおの字も習得していない彼女だが、ルプスには気付かれていない。

 

 言わずもがな、僕が完全不可知化をかけているからである。頬を上気させながら、食い入るように情事を見つめている彼女が見つかったら──間違いなくルプスにいただかれてしまうだろう。人狼と姉に貪られる幼女というのも、それはそれで見てみたいが……幼い膣に初めて肉棒を挿入するという快感も、やはり捨てがたい。

 

 空き家の窓の端から顔を覗かせるネムちゃん。不可知化をかけていなければ、向こうからも丸見えだろう。しかし男も女も、性欲が高まっている時は馬鹿になるものだ。質素な服の上からもぞもぞと秘所を擦り始めた彼女には、バレる危険性など彼方に吹き飛んでしまったに違いない。

 

 確か十才前後だっただろうか? 小学五年生と考えれば、性的な知識は十分に持っているだろう。現代よりもむしろ、こういった世界の方がそっち系の教育は早そうだ。まあ作品的な知識を前提に考えると、言動は実年齢より幼かったような気がするが……どちらにしても、自ら雌穴を弄る幼女は実に淫靡だ。

 

 下半身付近に広がる染みは、彼女の興奮具合をよく表している。姉と友人の痴態は、それほどに興奮するものなのだろうか? なんにしても、僕の方も限界だし行動に移すとしよう。腰を引きながら快感に惑うネムちゃんの後ろに立ち、肩をポンと叩く。

 

「はぁっ、んぅっ、ぁ、ん…! は、ぁっ──え、ひゃわぁっ!?」

「覗き見する悪い子はここかなー?」

「ひゃっ、えっ、あわっ…!」

 

 達する瞬間を狙って叩いたせいか、その驚きも相当なものだったようだ。足を絡ませて転倒し、尻餅をつくネムちゃん。しかし快感の余韻は、達するに充分だったのか──頬を真っ赤にしながら、チョロチョロとお小水が漏れ出した。大開きになった足を閉じて、必死に誤魔化そうとする幼女可愛い。

 

「お姉ちゃんのセックスを見て、自分で慰めてたのかい? お漏らしまでするなんて、ネムちゃんはエッチだねえ」

「ち、ちがっ…」

「エンリちゃーん、ルプスー! こっちにネムちゃんが──」

「ひゃめぇぇ! ダメっ、おねがいっ、いわないで…!」

「えー? どうしよっかなー」

 

 二人を呼びに行こうとする僕の足を掴み、ぐるぐると目を回しながら懇願してくるネムちゃん。スカートの前部分はすっかり濡れてしまっていて、すっかり出し切ったことがうかがえる。スカトロ趣味は一切ないが、『お漏らしをした事実』に恥ずかしがる女性はアリだ。

 

 縋り付いてくるネムちゃんの胸部分を軽く押すと、こてんと引っくり返った。びしょ濡れになった下着を脱がし、スカートを捲ると、てらてらと光る一本のスジが見えた。慌てて起き上がろうとするネムちゃんを片手で止め、無遠慮に股間へ手をのばす。

 

 瞬間、ぬちゅりと粘ついた感触が指に触れる。驚きと羞恥の入り混じった声が、小さな口からかすかに零れた。見知らぬ男に性器を触られる恐怖より、自身が『イケナイこと』をしていた恥の方が勝っているようだ。まあエンリちゃんとルプスを呼びに行こうとしてたんだから、ある程度は想像できるか。

 

「これ……おしっこじゃないよね。どれだけ興奮してたんだい?」

「ひ、ひぐっ…」

「姉妹揃って“好きもの”とはねぇ」

「す、すきもの…?」

「んー? 好きものってのはね、こういう風に──」

「──ひゃっ……あぐぅぅっ!? んきゅっ、ひぅっ…!」

「雌穴ぐちゅぐちゅされて悦ぶ、淫乱なメスガキのことだよ」

「ん゛ぅぅっ──ひぁっ、あ゛ぅっ…!」

 

 男と違って、女のオーガズムは連続して達することができる。快感の波をグラフにするなら、男は鋭角の鋭い逆V字、女は富士山のような形になる。山頂を長くすることも、開発すればできないことはないのだ。さっき達したばかりのネムちゃんは、まだまだ敏感な状態だ。

 

 幼い割れ目に指を突っ込み、陰核を擦り上げれば波も復活するだろう。こちらの世界の女性はなんかイきやすいし、公式淫乱娘ことエンリちゃんの妹ともなれば、素質は十二分だと思われる。

 

「あぐっ、や、やめっ──んくっ…!? ひゃぅっ!」

 

 膜を破らない程度にじゅくじゅくと掻き回していると、喘ぎ声が増すごとに色を含んでいく。女性の方が性的な成長は早いと言うが、処女でここまでとは流石エモットの血族だ。覗きオナニーをしていただけはある。もちろん僕の誘導あってのことではあるが、別に催眠や暗示を使ったわけでもない。二人の情事を目にしてからの自慰は、彼女の素質ありきのことだ。

 

 幼い顔が淫らに彩られ、そのギャップが下半身にこれでもかと訴えかけてくる。我慢できずに、彼女の頬に肉棒をべちりと叩きつけた。最初はそれが何かわからなかったのだろう──少し顔を引いて、その全容を視界におさめた彼女は、目を見開いて息を呑んだ。

 

 雌穴を掻き回されたままの呼吸は、荒く激しいままだ。熱い吐息が亀頭にかかり、びくりと震える。ネムちゃんにどこまで性的な知識があるかは不明だが、少なくともフェラは知っている筈だ。なんせルプスの肉棒を、蕩けた表情で頬張る姉の姿を見ていたのだから。

 

 鼻先に突き出されたそれを、唇を小刻みに震わせて見つめるネムちゃん。唾をニ、三回、こくりと嚥下し、快感に乱された目がそれでも数度逡巡し、ようやく小さな口が開いて──舌先がちろりと亀頭に触れた。

 

 よくできましたとでも言うように、彼女の頭を撫でる。そしてそこからは、堰を切ったように肉棒をむさぼる幼女の姿があった。チンポが欲しいというより、見たままの行為を『そういうもの』として覚えたのだろう。顎まで目いっぱいに開いて男根を受け入れる様は、姉とそっくりだ。

 

 苦しいだろうに、ちらりと上目遣いで僕をうかがう様子は──ああ、そういうことか。確かに、ルプスはイラマチオが大好きだ。犬科だけに、征服するのが好きなのだろう。期待に応えるためにも、僕は彼女の小さな頭を掴み、乱暴に前後させた。

 

「おごっ──んぶっ……じゅぶっ、んぐっ……ん゛ぅっ…!」

 

 ネムちゃんを持ち上げ、逆さにして、口を雌穴に見立てて腰を振る。ひっくり返った雌穴を気ままに弄ると、時折乳歯の固い感触が肉棒を刺激する。それでも食いしばらないように配慮するのは、子供とは思えないエッチングマナーである。

 

 このまま喉奥に出してもいいが、やはり一発目の濃い精液は子宮に出したいというのが男の本能だ。急速に湧き上がってくる射精感を覚え、慌てて彼女の口から肉棒を引き抜く。唾液の糸が絡みつくそれを、ふやけきった割れ目にあてがい、思い切り腰を前に押し出した。

 

「……ん゛──っ!?」

 

 熱くトロトロに、しかしぎゅうぎゅうに締まった幼膣は、見合わないサイズの肉棒を必死に呑み込み引き挿れる。限界までぎちぎちに伸び切った割れ目は、吐き出された精液の逃げ場をなくした。白く濁った液体を無遠慮に排泄し、狭い子宮をこれでもかと満たす。

 

「は……ひ……っ、んっ、あっ……なか、びゅるびゅるって…」

 

 小刻みに痙攣した体が、だらりと脱力した頃──ようやく肉棒を引き抜く。途端、割れ目から溢れ出す精液。ぽっこりと膨らんだお腹が元に戻ると、幼穴もぴちりと閉じた。いまだ締まりのよさを見せつけてくるスジに、またぞろ男根が熱り立つ。

 

 そうだ、今度はエンリちゃんとルプスの目の前でヤってみよう──ん? あれ、いつのまにかいなくなってる。そういや完全不可知化も解けて──ハッ!

 

「エ・イ・さ・ん?」

「…やぁ、エンリちゃん……さん。月が綺麗な夜ですね」

「エイ! なんてことするっすか! 私が目をつけてたのに…!」

「ふふ、ふ…」

「…エンリちゃん?」

「──少しは…」

「っ!? ちょっ…!?」

「少しは挿れられる気持ちを味わいなさい!」

「うわわっ!? ちょっ、せめて女のすがっ──」

 

 人を呪わば穴二つ。フタナリ指輪は、カテゴリー分けすると呪いの装飾品である。それをばら撒いた僕に因果が帰ってくるのは、道理なのだろうか? …このあとどうなったかは、神のみぞ知るということにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 情報の広がる間口が『人の口』しか存在しない、未成熟な文化形態の世界──そんな場所で情報を収集する場合、やはり『酒場』というものは鉄板である。アルコールが入った人間の口は、とかく軽くなるのだ。浮ついた気分は、警戒心も緩くなる。

 

 そして王国の首都ともなれば、得られる情報も多岐に渡る。もちろん、そのほとんどは酒場に相応しい下世話なものが大半である。しかし会話の端々から得られる僅かな情報を繋ぎ合わせ、重要性を高く昇華させる──ラナーのような存在がいれば、諜報には最適な場所だろう。

 

 エイがその酒場へ足を向けたのは、そんな目的のため──という訳ではなく、むしろ下世話な話の方をメイン目的としていた。『どこどこの娘が可愛い』『あの店の人妻は股が緩い』『あの娼館のナンバーワンのテクがパない』『エ・ランテルのミスリル冒険者に超巨根がいるらしい』『その相方の美女は既にガバガバらしい』などと、様々な話題が飛び交っている。カウンターでグラスを傾けながら、エイはそんな喧騒を肴にしていた。

 

 しかしその姿は常と違い、どことなく影を背負っている。まるで心に傷を追った少女のような雰囲気が、背中から滲み出ていた。彼がここに来たのは、男としての自信を取り戻すためだ。酒場特有の俗な情報を求めてきたのだが──しかしいまだ動かずにいるのは、心の痛みかケツの痛み故か。

 

「ふぅ…」

「はぁ…」

 

 そんな彼の横には、いつのまにか白い騎士が座っていた。同じようにため息をつく騎士に親近感を覚えたのか、あるいは『酒場の隅っこで一人グラスを傾けてる自分』に酔ってしまったのか、エイは珍しく男に声をかける。

 

 暗い雰囲気を纏った白い騎士などという、いかにも訳ありそうな人物に好奇心をくすぐられたというのもあるだろう。酒場で一度はやってみたいシチュエーション『グラスをシュッと滑らせる』を試してみたのも、これもまた仕方ない行為である。

 

「…君もなにか抱えてるみたいだね……何があったか知らないけどさ、赤の他人のほうが話しやすいこともあるぜ。滑らせた口は、その酒のせいにすればいい」

「…」

 

 傷心はどこへやら、『決まった…!』などと内心で思いつつ、白い騎士へと顔を向けるエイ。揺れる液体に視線を落とす騎士の様子は、まさに意気消沈といったものだ。何もかもがうまくいかない、そんな疲れた雰囲気を醸し出している。

 

「…娘や息子のように思っていた者が……いつのまにかずっと先へ行っていた……そんな時、どうすればいいんでしょうね…」

「へぇ……まぁ、子は親を超えていくってよく言うし。娘や息子のように思ってたんなら、成長を喜べばいいんじゃ?」

「ですが……私でさえまだなのに……というかなんで生えてるんだ…!」

「は、はぁ…?」

 

 机に突っ伏しながら嘆く白い騎士の様子に、さしものエイも狼狽える。酒には口を付けていないというのに、悪酔いでもしているかのようだ。ヘルムの中の瞳が危なげに据わっているだろうことも、容易に想像できる。

 

「あー……んん、まあそう落ち込まずにさ。寂しいときには女の肌が最適って言うじゃん! 最高級の娼館でも行かない? もちろん奢るぜ!」

「…!」

 

 連れションならぬ連れソープ。会社勤めかつ、独身の先輩と仲がいい人間であれば、誘われたことくらいはあるだろう。白騎士はそんな誘いを耳にすると、ビクリと体を揺らした。逡巡する様子は、まるで経験のない素人のようだ。

 

「僕は『ウン=エイ』。君は?」

「…っ! ウン……エイ…」

「あ、聞いたことある? 最近わりと有名なんだよね」

「ええ。何度も……何度も、聞いたことがありますよ」

 

 騎士にそう言われ、エイは心地よさと鬱陶しさを綯い交ぜにした笑顔を返す。人を『有名になりたい人間』と『有名になりたくない人間』にわけるとするならば、エイは前者よりの後者である。人である以上、多かれ少なかれ承認欲求というものはある。多数から称賛される状況を忌避する人間は少ないのだ。

 

 しかし『有名税』というものは、確実に存在する。『有名になりたくない人間』というのは、称賛されることそのものは嫌いでなくとも、それに付随するデメリットを考慮して『表舞台には出たくない』というものが大半だ。

 

 エイは称賛や尊敬を向けられること自体は嫌いではないが、それについてくる面倒事は嫌いであった。『自分のやりたいようにやる』ということが、なによりも好きなのだ。白騎士に()()知っていると言われても、大して気にせず流したのはそのせいだろう。騎士の()()()()()()にも気付いてはいない。

 

 

「…珍しい名前ですが……本名ですか?」

「ん? ああ、いや…? そんなこと聞かれたの初めてだな。まあ本名と言えば本名だし、違う名前があると言えばあるし…」

「不躾ですが、どのような?」

「へ? まあ佐藤とか田中とかモミジとか──どぁっ!?」

 

 特に嘘はつかない──つく必要がないエイは、問われると大抵のことは答える。前世で本名だった『佐藤』も、リアルで本名だった『田中』も、GMキャラとして名乗っていた『モミジ』も、知られたところでデメリットなど存在しないからだ。

 

 しかし最後の『モミジ』という名を聞いた瞬間、白い騎士はエイの肩を強く掴んだ。“上手く情報を得よう”……そんな慎重な雰囲気から一転、明らかに怒気を発したのだ。

 

「お前、俺のことネットで馬鹿にしたよな? 『イキリ骨太郎』とかなんとか言って」

「…っ!? ──……モッ、モモン──あ、いや、えー……えー? ……なんでこんなとこに…? じゃなくて、えっと……し、知らんモミャッ!」

「語尾ぃっ!」

「モミは何も知らんモミ! 帰らせてもらうモミャッ!」

「クソ運営がぁぁ! 俺が何も知らないとでも思っているのか! ヘルヘイムのGMナンバー十三! “クソレス製造機”『モミジ』!」

 

 ユグドラスレに降臨しては、クソにも劣るレスバを繰り返して去っていくGM……クソコテ『モミジ』。『運営が贔屓をする訳にはいかない』という信念の元、全方位に喧嘩を売っていくスタイルを確立させたクソ運営である。もちろんアインズ・ウール・ゴウンにもそれは及び、心ならずも『イキリ骨太郎』などというレスを書き込んだこともあったのだ。

 

「い、いや、それには深い理由があるモミ…」

「ほう。言ってみろ」

「楽しかったんだ…」

「浅い!」

「娯楽は何にも勝る幸せモミ! だから君もユグドラシルをプレイしたんじゃないのかモミ!」

「そのふざけた語尾をやめろ!」

「オーケーオーケー、わかった。だから剣から手を離すんだ、アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスター」

 

 モモンガがふと辺りを見渡すと、周囲の客が縮み上がっていることに気付いた。絶望のオーラこそ漏れてはいないが、存在の格が違う者の怒気にあてられて、本能が恐れているのだろう。怒りがすぐに沈静化したこともあり、モモンガは慌てて腰をおろした。

 

「…GMコールを無視し続けたのは、何故だ」

「異世界に来てまで職務を全うしろってかい?」

「その答えはおかしいだろう? 俺はこの世界に来てすぐGMコールを試した。ここが異世界だと最初から解っていたわけでもあるまいし、普通はすぐに応える筈だ」

「…」

「なぜ黙る」

「いや……確かにそうだな、と」

「もう少し言い訳の仕方ってあるだろう!」

「すぐに言い訳考えられるような頭してないんだよ! そっちがいいように解釈すればいいだろ! そしたら僕が『全て見抜かれていたか、流石はモモウルゴス』って言ってやんよ!」

「ぬぐっ…!? おまっ……ナザリックを覗いていたのか!」

「ふふん、僕にかかればシャルティアちゃんの下着の色までお見通しさ」

「…! シャルティアの下着…? お前、まさか…!」

「ようやく気付いたかい?」

「尻の穴を掘られることが大好きな変態吸血鬼か…!」

「なんでだよ! …ナザリックの報連相って、伝言ゲーム並にむちゃくちゃじゃない?」

「…正直、うまく機能しているとは言い難いな」

 

 いったい『マジカル☆イウェン』の正体はどこへ向かっているのか……そんなことを思いつつ、エイは白騎士を横目で見る。日常から一々個人を精査している筈もなく、白騎士がアインズ・ウール・ゴウンであると気付けなかった──それはいい。

 

 問題は、先日モモンガの配下に語った『至高の四十一人の帰還はあり得ない』といった部分だ。いつそれに関することを聞かれるのかと、エイは戦々恐々としていた。しかし彼の予想とは違い、モモンガの口から零れ出たのは──

 

「…この呪いの指輪も……お前の仕業か?」

「…っ! …し、知らんモミ。おおかた性欲を失った哀れな骨に、優しい誰かが恵んでやったに違いないモミ」

「効果まで言った覚えはないが」

「ギクッ」

「御託はいい。さっさと外せ」

「う、うーん…」

 

 悲しいかな、人間とは目の前の物事に集中すると、それ以外がおろそかになる癖がある。モモンガにとって最大の関心事は、間違いなく仲間たちのことだ。しかし、現状での問題は限りなく肉棒である。今にも鎧を突き破り、雄々しく屹立する機会をうかがっているポケットモンスター。これをどうにかせねば、仲間に会う会わないの話ではないだろう。とはいえ、エイにもアルベドとの約束がある。そう簡単に頷くことはできない。

 

「あー……ほら、なんてーの? 異世界にきて色々法則が変わってるってのは、君も理解してるだろ? 僕にだって出来ることと出来ないことがあるんだよね」

「む…」

「っていうかさ、セックスするだけでいいんだから自分で解除できるだろ?」

「…っ! む、ぐ…!」

「NPCとセックスしたくないってんなら、その辺に娼館なんていくらでもあるし。正体バレずにヤる方法だってなくはないだろうし、最悪でも記憶改竄すればいいわけだし」

「うぅ…!」

 

 ドンドンと萎れていくモモンガを見て、エイは調子を取り戻していく。相手が童貞だと理解した上で『セックスなんて大したことないじゃん』という論調で話を進めていく──それはあまりにも残酷な行為であった。しかし童貞とは、そっち系の話になると急に口数が少なくなるのだ。それを利用するのは、エイにとって当然のことである。

 

 このまま仲間のことを聞かせずに、上手くフェードアウトしよう……そんな目論見で話し続けるエイ。『コンドームはどこのメーカー派?』などという必殺の間合いに踏み込み、モモンガの心を殺していく。

 

 ──しかし、そんな彼らの間に割り込む偉丈夫が一人。それは誰もが知る王国の雄“王国戦士長”『ガゼフ・ストロノーフ』その人であった。

 

「失礼。私の聞き間違いでなければ、そちらは──もしや『アインズ・ウール・ゴウン』殿では?」

 

 竜王国の英雄『ウン=エイ』。近隣諸国最強と謳われる王国戦士長『ガゼフ・ストロノーフ』。そして最近台頭し始めた、善なる秘密組織のトップ『アインズ・ウール・ゴウン』……彼らが交わる時、何が起きるのか──今はまだ、誰も知らない。





下記の作品も同時更新しております。

ロリコンがロックマンエグゼの世界で生存を誓う話 ※R18 ロックマンエグゼ二次

混譚~まぜたん~ ※全年齢 オリジナル

ほむら「ハーレムつくったら全部上手くいく気がしてきた」※全年齢 まどマギ二次 


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