スーパーヒーロー宇宙大戦 (ゼウス)
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プロローグ

突然ですが、クロスオーバー超大作を連載していきたいと思います。
楽しみにしてくださったら幸いであります。


遠い未来、遥か彼方の銀河系で…

 

西暦3001年 31世紀の始まりでもあるその年、かつてない出来事が舞い降りる。

 

ここはディスクン星で、この星には宇宙有数の戦闘種族が住んでいる。彼らは皆野球狂であり、ときおり地球に赴いては野球を見る事もあった。

しかし、ある日、このディスクン星に突如何者かが襲撃を起こしに来た。

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ破壊、破壊、破壊、ぜぇーんぶ破壊だぁー! 逃さないよ! 死ぬまで遊びましょぉう、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。」

 

と狂いながら、いかにもメルヘンチックな衣装を着込んだ金髪の男がディスクン星人を虐殺している。

 

「怯むな! 闘え!!」

 

リーダーらしき男が、激励を掛けたが、その時空から無数の光線が降り注ぎ、次々と爆発していく。

「ぎゃあああ!!!」星人達は悲鳴をあげそのまま動かなくなった。

そうした行為が幾度か続いた後、気がつけば、そこにいたのはこの惨劇を行った者一人となった。

 

「おお、次々と死んでいく。やはり死のある破壊程、面白いものは無い。このまま続けて、続けて、続けて全部破壊して死の世界を作るのだ。うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

金髪を振り乱しながら、男は天に向かって喉が張り裂けんばかりに哄笑する。

 

一方、同刻__別の場所ではもう一つの惨劇が行われていた。

 

十数もの武装した星人達が、たった一人の敵を仕留められずにいた。

__いや、正確に言うならば、たった一人の敵に壊滅させらているのだ。

 

その渦中に黒衣を纏った黒髪の男が佇んでいた。

男の瞳は血の様に真っ赤であったが、その瞳には光を宿していなかった。

さながら、死神の様にも見える男が、体から溢れ出る血液を凝固させ剣に変えた。

そしてその血に染まった紅き剣で次々と斬り刻んでいく。

多くの星人達が、ブラスターで銃撃するが、彼は撃たれた状態でなお漏れ出る血を武器として扱っている。

 

最早、人間業では無い。

 

「__化け物だ」

 

ふと、男は自分に対して語り掛けた星人を見つめていた。

 

「__ひぃぃぃ」

 

「……」

 

すると何を思ったのか、男の周りから殺気が霧散した。

興が醒めたと言わんばかりに。

 

「た、助かったのか」

 

戦意喪失したその星人は自分が殺されずに済んだ事に安堵していた。

 

しかし、やはりそれは誤りであった。

 

「おや、いけませんねぇ。赤屍さん、ちゃんと殺しておかないと」

 

すると、赤屍と呼ばれた男と同じく黒衣を纏った緑色の髪をした男が現れた。

そして、その男は蛇を象ったワイヤー型の武器を使い相手を掴みながら、高く高く、上げていく。

 

「うわわわわ」

 

星人は急にパニックになるが、時既に遅し。武器が物凄いスピードで相手を地面に叩きつける。

 

「どぐしゃ!!」

 

叩きつけらたその星人はすでに物言わぬ屍と化していた。

 

「やれやれ。困りますねぇ。我々の任務はこの星の住民を皆、例外無く殺害する事ですよ。なのにあんな風に戦意が消えたからといって殺さないのは問題ですよー。」

 

そう赤屍に問い掛けたが返答は無い。

 

「ふぅ、まあいいでしょう。三度の飯より殺戮、いや破壊を好むケフカと合わせればちょうど均衡が取れています。仮にもかつては軍医ですからそうした経緯があるかもしれませんが、せいぜい大事にしてください。」

 

「さて、数としては丁度十万といったところですか。概ね任務は成功したと言えましょう。」

 

「……ハザマ君」

 

と、それまで、無言を通していた赤屍が口を開いた。

 

「機械仕掛けの魔道士は何処にいるんです」

 

「おや、赤屍さん、あの人に何か用があるんですか?」

 

「……」

 

再び無言である。さすがにハザマも呆れ気味に嘆息した。

 

「やれやれ、だんまりですか。ちゃんと理由を説明して頂かないと。まさか戦おうなどと考えてはいませんよね?」

 

「仮りにそうである場合、止めた方がいいですよ。力関係から見てもあの人には敵いませんし、なによりあの人は我々の上官であり、あの方の執事でもあるんですよ。貴方が叛意を持つと言うのなら、正直捨て置けませんが」

 

「私にそんなつもりはありませんよ」

 

「あー…… そうですか。それを聞いて安心しました。では先程の質問に答えさせて頂きます。」

 

言うと、ハザマは顎をしゃくって空を見上げた。

 

「我らが騎士団の首領と最高幹部は強い主従関係を結んでいます。であるならば、必然、あの人のいる場所は決定しています。見てください」

 

血の様に真っ赤に染まった星人達の屍。

その中心に何者かが立っていた。

 

「あー皆さん!、はい注目! 偉大なる我が君の御前です。その言葉、黙して拝聴してください!。」

 

いったいどのような方法を使ったのか、メガホン越しに叫んだかの様な声は全団員の耳に響き渡る。

その瞬間、全員が殺戮を行うのを止め、停止した。

皆、ある一点に注目しそこには白き天使が降臨していた。

 

たなびく髪は黄金

全てを見据える瞳は冬の湖の様な色。

背中に見える三対六枚の翼はさながら熾天使の様にも見えた。

 

その傍らに佇むのは背中に流した黒髪の黒衣を纏った男であった。

怜悧な容貌でありながらその黒瞳は死魚の様に濁っていた。

 

対照的なこの二人こそが、今彼らを見上げている総ての者を凌駕する魔人の中の魔人、超越者。

薔薇十字騎士団__位階10=1(イプシシマス)と位階9=2(メイガス)

首領と最高幹部

 

「__君達」

 

空を、いや全宇宙を睥睨しながら、白き天使が口を開いた。

 

「世の中に不満を抱いているとしたらどうする」

 

「勝てば官軍、負ければ賊軍と言う諺がある様に勝者ばかりが得をしているね。世界の仕組みがその様に動いていたらどうする。

戦争ではどの様な努力も祈りも願いをしても負ければ意味は無い。もちろん神の恵みも起こらない。全てがそうなる様に定まっていたら…世界の敵として滅ぼされ様としている者達は一片の罪咎無しに慈悲すら与えられず踏み躙られる。憎いだろう。許せないだろう。」

 

「その様な事態を覆したいと思わないかい?」

 

陰々滅々とした男の声は全団員の耳に届いていた。

それは絶望的なまでの説得力を持って聞く者の胸に浸透していく。

魔的なまでのカリスマの持ち主が語る言葉は常人ならば聞くだけで、魅了され、弱き者は恐慌しかねない絶対的な力の波。

 

「滅ぼせば良い。」

 

不遇の人生を変えたければ、勝者を滅ぼせ。

 

「運命と言う名の収容所に入れられるのが嫌なら全てを滅ぼせば良い。敗者の気持ちも考えず勝ち誇る勝者を、自分達だけが得をしているかの様にぬくぬくと生きている者達を滅ぼせば良い。」

 

「君達はそう思って僕に忠誠を誓ったんじゃないのかい。」

 

それは悪魔の誘惑以外の何物でも無い。

白き天使は遥かなる高みから地を這う者達に問い掛けた。

 

「もう一度、言うよ。君達は何を求めているんだい?」

 

答えは聞くまでも無かった。

 

滅びを。

滅びを。

全ての者を滅ぼす力を我らに与えてください。

 

「OK。」

 

白き天使は承諾した。

 

「我ら、炎によりて世界を更新せん。今までもそしてこれからも君達は僕と一緒に世界中、いや宇宙中を憎悪のままに滅び尽くすんだ。一緒に頑張ろう。」

 

その言葉を機に拍手喝采が巻き起こった。

 

「……素晴らしい」

 

「実に、実に素晴らしいです。我が君を慕い、我が君と共に世界の終焉を行う者達が素晴らしい。

我が君はこれから何を行うのです?」

 

それまで黙しただ傍らに控えていた黒衣の魔人が口を開いた。

 

「我が君は何を求めるのです?」

 

「愚問だよアイザック」

 

「僕の求める物は全生命の終焉、それだけだよ。最も、他に個人的興味が無い訳でもないんだけどね。」

 

「それはいったいなんです?」

 

「彼だよ、彼。宇宙一の頭脳を持ちながら、宇宙一の嫌われ者」

 

「なるほど、すなわち」

 

あの男……

 

ふふっと喉を震わせ白き天使は微笑した。

 

「いや、実に素晴らしいです。あの者との闘争は何度経験しても飽きない。それだけに、正直名残惜しくもありますが…」

 

「やはり留まることは出来ないのかいアイザック?」

 

「申し訳ありませんが、完全では無い以上、再生に尽力を懸けた方がよろしいかと。半世紀もすれば、体の修復が終わり、存分に力を振るう事が出来ます。その頃には、あの王子もお仲間方を伴い、戦の準備も万端に整えていると思いますよ。」

 

「そう。それなら仕方ないね。わかったよアイザック。ただ、万全を期す為に幾人か"あちら"に連れて行きたいんだけど誰が良いと思う?」

 

「そうですね……私個人としては、ケフカ、ハザマ、赤羽蔵人の3人を連れて行くのがよろしいかと。」

 

「なるほど、確かにそれは隙の無い人選だね。あの3人なら僕の近くにいても大丈夫そうだし。」

 

眼下の部下たちを見据えたまま、彼らはチェスを興じる様な口調で話し合っている。

このお二方には単なる主従関係以上の何かが感じられる。

 

ふと、気がつくとその光景を見上げている者達が十一人程いた。

 

彼らは皆位階7=4(アデプタス・イグセンプタス)に達しており、中でも群を抜いて位階8=3(マジスター・テンプリ)にも達しているのは例の三人。

 

蛇の如き狡猾な顔をしている男は今後起こるであろう出来事に思いを馳せておりククッと不敵に笑っていた。

道化の如きおどけた顔をしている男は当分の間は破壊活動が出来ない事を悔み、苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。

死神の如き冷徹な顔をしている男は無表情のまま、その暗い瞳に殺気をただよせながら魔術師を見つめていた。

 

最も、当の魔術師本人はそんな凍てつくような視線など気にもしていなかった様だが。

 

「では、我が君。半世紀経った後、我らの目的が成就する事を祈りましょう。」

 

「何言ってるんだい、アイザック。祈るんじゃなくて実行して成功しなければ意味がない。そうだろう。」

 

「これはこれは………申し訳御座いません。私の不徳の致すところ反省いたします。それでは我が君、どうぞこちらへ……」

 

この日__全宇宙を震撼させたと思しき謎の集団は姿を眩ました。

その為、ディスクン星人が滅亡した事は全宇宙の知るところとなったが、滅亡の原因は未だ不明のままであり、巨大隕石が飛来した事による滅亡なのではと言うのもまた、真偽はともかく有名な話である。

 

魔人の如き力を揮った者達が何処に行ったのか、そもそも本当に存在したのかもまた不明なままに終わっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いきなり始まったこの作品、初っ端からいかにも強く狂気的な連中が揃い踏みであります。
今後彼らが、どの様に物語に関わっていくのかお楽しみなところであります。
そして、主人公ですが、本編中にも言われている様にあの敵にも味方にも回したくない彼であります。
お仲間方についても誰になるのかは現段階ではわかりませんが、一つわかっている事があります。
それは、最悪の事態を想定しろ!! この物語は必ずその少し斜め上を行く。
以上です。感想お待ちしております。


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第一話

プロローグから一年後、ドグラ星で摩訶不思議な出来事が起こる。


そして__現在

 

西暦3002年 ドグラ星

 

「フンフン♪~」

 

「何をしているんです王子。」

 

「見て分からないのかいクラフト 新聞を読んでいるんだよ。」

 

「逆さまの格好でですか。」

 

「座ってばかりじゃなく、たまには逆さまで読んでみるのもいいかなって思ったんだ。」

 

「それでご感想は?」

 

「うーん……正直字が読みにくいんだよね なんでだろう。」

 

読みにくくて当たり前だ。新聞を逆さまで読んだ状態で理解出来る奴など、この惑星いや、全宇宙どこを探してもそうそういないだろう。

 

クラフトは呆れはて、王子の部屋から退出しようとした。

 

「あっ、待って クラフト。面白い話があるんだ。」

 

「面白い話と言うのはまた碌でもない話じゃないんですか? 聞きたくもありませんね。」

 

「そんな事言わないで。聞いてよー クラフトー」

 

まったく!! クラフトは構わず無視して退出しようとしたが、王子の頼みを無碍にするのは臣下としてはあるまじき行為なので、仕方なく聞く事にした。

 

「それで、どんな話なんです。出来れば手短にお願いいたします。」

 

「うーん…… 正確に言えば、話と言うより夢なんだけどね。それもお告げの。」

 

「お告げの夢?」

 

夢と言うのは人それぞれで見るものが違うが、お告げの夢と言うのは滅多に見れるものでは無い。

どんな内容なのか? クラフトは内心ドキドキしていた。

 

「『集え、始まりのもとに』、そう言うお告げだったと思うんだ。たぶん。」

 

「なんです? それは」

 

「さあ、それは僕にもわからない。でも、これから物凄い事が起こると思うんだよね☆」

 

「はあ、何故そう思うんです。」

 

「だって~ 今まで僕の周りには物騒な出来事が日常茶飯事に起こってるじゃないか。」

 

その物騒な出来事は殆どが貴様のせいだろうが!!

 

クラフトはそう叫ぼうとしたが、直前に言葉を飲み込んだ。

 

「だからさ、クラフト。何が起こっても決して驚かないでくれよ。」

 

「ご安心ください 王子。例えこの惑星に隕石が降ってきようが私は決して驚きません。」

 

「へえ~ あ、そうだ クラフト。隕石と言えば、あの話は知っているかい。」

 

「あの話と言いますと、ディスクン星の事ですか。」

 

「そう、それそれ。ディスクン星人って確か戦闘種族だったんだよね。それが突如、隕石が降り注いで全滅。なんか在り来りすぎるんだよね。」

 

「そうですか?」

 

「僕はね、むしろ侵略者がやって来て襲撃したって言う説の方が面白いと思うんだ。」

 

「しかし、王子。あの星には骸と化したディスクン星人達しか残っていなっかたんですよ。」

 

「うーん…… じゃ侵略説ははずれか。いい線言ってると思ったんだけどな。」

 

と、その時だった。突如、王子の部屋が小刻みに揺れはじめた。

 

「な、なんだ!?」

 

「……!?」

 

揺れはどんどん大きくなり、王子もクラフトも動揺している。

そして、まばゆい光が二人の目に降り注いだ。

 

「わあー まぶしい!?」

 

「くっ!!」

 

目が開けられない状態が数分続いた後、光と揺れが止んだ。

二人が目をあけると信じられない光景がそこにあった。

 

 

見知らぬ格好をした連中が11人倒れているのだ。

一人は学ランを着ている黒髪の少年。

一人は全身黒ずくめのムサい長髪のちょいわる親父の風貌をした黒男。

一人は黒男とは対照的に白い着物で大きな鏡を持った頭に白椿らしき花を2つ付けている少女

一人は少女と同じく白髪で髪結いでまとめられている。着ている服は白と言うより、灰色に近い着物を着た少女。

一人は青い縦ロールの髪をしており、藍色のマントを纏っており、青色のワンピースをしている少女

一人はノースリーブのパーカーにショートパンツをはいている茶髪の少女。白い狐らしきペットと一緒に倒れている。

一人は紫色のふわふわしたショートカットヘアーをした黒ネクタイがあるセーラー服を着用した少女

一人は金髪のロングヘアーで黄緑色のジャケットを羽織っており桃色のインナーを着ている女性。

一人は長いウェーブがかかった金髪に左目に眼帯をしている黒いコートに黄色のロングスカートを着用している女性。

一人はロン毛の髪型でカウボーイファッションに身を包んだ男。

一人は頭に赤い羽飾りを付けた、白い羽織を纏ったピンクの衣装を着込んだ少女。

 

以上11人が眠っているかの様に倒れている。

その内の何名かはこの近未来に場違いな衣装をしている。

しかし、クラフトにとってさらに場違いだと思ったのは彼らではなかった。

なんとそこには黒い棺も置かれており、しかも棺には何かの詩が書かれている。

「何か書かれているね。何々、『The bird of Hermes is my name,eating my wings to make me tame』だって、何だと思う、クラフト。」

 

「さあ、私にも正直わかりかねます。」

 

「ふーん、まっいっか。やっぱりお告げ通り物凄い事が起こったね☆」

 

ああ、またこのバカ王子が仕組む恐るべき陰謀がおこるのか。クラフトはため息をついた。

 

(そこで眠っている者達よ・・・頼む!どうか、このバカに協力しないでくれ・・・!)

 

クラフトはせめて純粋な祈りを11人に捧げているのだった。




以上、第一話終了です。
バカ王子に協力するお仲間方はとんでもない連中ばかりですね。
これから一癖も二癖もある連中とどう付き合っていくのか正直楽しみです。
では、また。


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第二話

突如、バカ王子の部屋に降って来た見た事も無い様な連中。はたして彼らは一体?


「う、うーん。」

 

「ああ、皆起きたみたいだね。」

 

すると、今まで気絶していた連中が起き上った。そして全員起き上ったと同時に王子とクラフトの顔をみてほとんどがびっくりして絶叫した。

 

「「「「なんじゃこりゃー!!!」」」」

 

クラフトは絶叫が飛び交う中で何名かが、バカ王子に興味津々の眼差しをしている事に気付いた。

 

(おい、君達こんなバカに興味を持っている様だが、協力だけは絶対しないでくれ! 頼む!)

 

クラフトは心の中で彼らに伝えるが、果たして届いているかどうかは不明である。

 

数分後

 

「えー、それでは全員落ち着いた様なので一人ずつまず自己紹介をしましょうか。」

 

バカ王子を中心に全員が円卓を囲んでいる中で、一人だけ直立状態のクラフトが話し出した。

 

「はーい、まず僕ね。僕はドグラ星の王子、バカ=キ=エル・ドグラ バカ王子とでも呼んでくれたまえ。ああ、安心していい。君達に危害を加えるつもりはないからね。」

 

(うそつけ、毎回毎回碌でもない事ばかりしやがって。)

 

クラフトは心の中で毒付いた。

 

「さて、じゃ順番に自己紹介をしてくれるかい。」

 

『OK、分かったよ。僕の名前は球磨川禊って言うんだ。よろしくね皆。』

 

「へえー学生服を着ている様だけど、どこの出身なんだい。」

 

『箱庭学園出身で好きな女の子のタイプは銀髪のロングヘアで手袋をしている子だよ!』

 

「 ああ、好きな子のタイプまで、教えてくれてありがとう。さあ、次行こうか。」

 

『おいおい、きみも好きな子のタイプを話してくれよ。』

「僕が先に話したんだ。話すんなら、まず自己紹介は君からするんだったね。じゃ、改めて次。」

 

バカ王子は球磨川の抗議を華麗にスルーした。

 

「俺は真木司郎だ。」

 

「君はクラフトと同じ服を着込んでいるけど、どこかの国の護衛か何かをやっていたのかい。」

 

「俺はどこの国にも属していない。そもそも俺が忠誠を誓っているのは。」

 

「ん、何か言ったかい。」

 

「いや、なんでもない。」

 

真木は何かを言おうとしたが、出かけた言葉を飲み込んだ。

 

「ふーん。そう、まあいいか。それじゃ次。」

 

「……」

 

「あれ、自己紹介してくれないのかい。」

 

「…神無…」

 

「へえ、かわいい名前だね。君はどこの所属なんだい。」

 

「…奈落のところ…」

 

「奈落、物騒な名前だね。どんな人なんだい。」

 

「…人じゃ無い…」

 

「えっ。じゃあ異星人か何かかい。」

 

「……」

 

神無はそれ以上語らなかった。

 

「うーん。もし異星人だったらぜひ僕との友好の盃を交わしたいんだけどなー。」

 

(そんな事せんでいい!!)

 

クラフトがまたバカ王子に心の声で罵った。

 

「まあ、いいか。それは今後の楽しみにおいておくとして。はい次。」

 

「わたくし、凶月咲耶と申します。」

 

「凶月! さっきの奈落と言い、ずいぶんと物騒な名前が多いね。もしかして君達実は知り合いなんじゃ。」

 

「…違う…」

 

「違います」

 

「えー 違うのお。てっきり僕は服装から見て知り合いだと思ったんだけどな。ほらそう言う凶悪そう名前使う連中いるよね。えっーと何だったかな。」

 

「ヤクザの事ですか。」

 

「あっ。そうそうそれそれ。良く知ってるねクラフト。もしかして君も前職はヤクザだったんじゃ。」

 

「断じて違います!!」

 

「ちっ。ヤクザだったらいろいろネタになりそうだったんだけどな。まあ次に行こうか。」

 

(私がヤクザだったらいったいどんなネタにする気だったんだ。)

 

クラフトはビクビク震えていた。

 

「キイチです。」

 

「キイチ? へえ 木苺みたいな名前だね。名前でからかわれたりしない?」

 

「余計なお世話ですぅ」

 

「ああ、ごめんね。あっ。その胸に付けてるアクセサリーきれいだね。どこで買ったんだい。」

 

「朔ちゃんに奢ってもらったんです。」

 

「朔ちゃん。変わった名前だねえ。どんな人なんだい。」

 

「キイチの上司ですが大雑把な人でいつも苦労してますぅ。」

 

「へえ。部下に呆れられてるんじゃあまり良い上司とは言えないね。」

 

(人の事が言えるか!)

 

クラフトはまた王子を罵った。(通算3回目)

 

「さて。自己紹介もちょうど半分と言った所だね。ここから後半に向けてアクセル全開で行こうか。

 

それじゃ次。」

 

「わたしは若杉葛です。」

 

「若杉。めずらしい名字だねえ。僕の知りあいに雪隆って言うのがいるんだけどね。彼の名字もまた変わってて。まあ そんな事はどうでもいいか。どういう家なんだい。」

 

「わりと普通の家ですが、我が家の家風は『弱肉強食』です。」

 

「『弱肉強食』かあ。古い価値観だなあ。君はどう思う クラフト。」

 

「はあ。私としてもその考えは古いかと。(貴様が『弱肉強食』で滅びれば良いのに)」

 

「ん。今 何か声が聞こえた様な。気のせいか。それじゃ次。」

 

「私は不知火七海。七つの海をまたにかける光となれという願いがこもった名前。」

 

『不知火! 奇遇だね。僕の知りあいにも同じ名字の子がいるんだ。よろしくね頼むね、七海ちゃん。』

 

「……こちらこそ」

 

「いやー仲良くなってなによりだ。それじゃ次に行こうか。」

 

(貴様もたまには気のきいた事言うじゃないか。)

 

クラフトが王子に対してめずらしく感心していた。

 

「私は鷹野三四よ よろしくね。」

 

「ふーん。変な名前だね。」

 

「あら、私の名前の何処がおかしいのかしら。」

 

「いや だってね。三四って数字の並び方みたいで変だなって。子供の頃名前でからかわれなかった。」

 

「からかわれたりしてないわ。失礼な人ね。」

 

「よく言われるよ。」

 

バカ王子はゲラゲラ笑った。

 

「まあ、気を取り直して次に行こうか。」

 

「ああ。私ね。マリー・ミョルニルよ。」

 

「左目に眼帯してるけど、なんでなの?」

 

「これはちょっとした事情があって、今は言えないの。今度、気のきいた時に話すから。ごめんね。」

 

「そっかー 残念だなー。まあ次に進むとするか。」

 

バカ王子は心底残念がっていたが、気を取り直して先へ進めた。

 

「菅原マサキだ。」

 

「カウボーイの服を着てるけど趣味なのかい。」

 

「趣味だ」

 

間髪入れずにマサキが答えた。

 

「まあ、黒スーツを着用する事もあるがな。」

 

「へえ。今度でいいから見せてくれよ。それじゃ次。」

 

「はーい。最後は私だね。ピスティって言うんだよ。よろしくね。」

 

「へえ 君はずいぶん可愛らしい格好しているんだね。」

 

「えへへ ほめても何も出ないよ。」

 

「うーん いけずー」

 

(何がいけずなんだ?)

 

クラフトはバカ王子のその言葉に疑問を覚えた。

 

「君はどこの出身なんだい。」

 

「シンドリア王国で私はそこの八人将を勤めてるんだよ。」

 

「八人将 ! 凄い。ねえねえ クラフト。護衛軍隊にもさ、八大護衛将軍って言うのを設けないかい。」

 

「王子、真に申し訳ありませんが、現状、多くの人材を養う余裕がありません。なにとぞご容赦なくよう。」

 

「えーそうなの。良い案だど思ったんだけどな。」

 

(仮に八人集まったとしても貴様には絶対に心からの忠誠を誓ったりしないだろう)

 

クラフトはそう確信していた。

 

「ふう。さて一通り自己紹介は終わったようだけど、皆ずいぶん変わった衣装をしてるんだね。流石の僕も驚いてるよ。」

 

『そう言って頂ける事、恐縮次第でございます ドグラ殿下。』

 

「!!」

 

『とでも言ってくれれば、貴方は嬉しかったのかい。』

 

「さっき僕が好きな子について答えなかったから仕返ししてるのかい。」

 

『とんでもない! むしろ僕は貴方に興味を抱いてしまってね。これはほんの感謝の印だよ。』

 

「だったら、自己紹介の時にすれば良かったんじゃないかな。」

 

『ああ。そうか すっかり忘れていたよ。』

 

「『はははは』」

 

(なんて奴らだ。はっきり言って付いていけない。)

 

そうクラフトはバカ王子と球磨川のやりとりを見て思った。

 

(まさか、他の連中もこのバカに興味を抱いてるんじゃないだろうな)

 

クラフトはざっと見回したが、今のところ殆どはここがどう言った場所なのかを気にしており、王子に対しては無関心である様である。

 

「ああ、そうだ禊だっけ。君はあれについてどう思う?」

 

『ん、あれと言うのはあそこに置いてある棺の事かい ドグラ殿下。』

 

それは先程、クラフトがあまりに場違いだと思われている黒い棺の事である。

中になにが入っているかは誰にもわからない。

 

「君はあの中に何が入っていると思う。」

 

『そうだな。僕としては吸血鬼が中に入っているんじゃないのかと思うんだけど。』

 

「ふーん。じゃあ夜にこの棺を一緒に調べてみないかい。本当に吸血鬼が入っているか?」

 

「王子! 何を考えているんですか? もし本当に吸血鬼が入っていたら危険すぎる。」

 

「クラフト。僕は今、禊に質問してるんだよ。黙っていてくれるかい。」

 

「なっ!!」

 

「それで、球磨川君。君はどうするんだい。」

 

『そうだね。殿下の頼みなら協力してあげても良いよ』

 

「OK! それじゃ今夜の21時にここに集合だ。」

 

「…待って…」

 

「ん。どうしたんだい。」

 

「…私も…協力する…」

 

「えっ! 本当に? うれしいなあ いいのかい。」

 

コクン 神無は頷いた。

 

「よーし! それじゃ3人で棺を調べるぞ。」

 

そして21時になってこの円卓に3人が集まった。

 

「さーて、もう夜になったんだ。そろそろ来るよ。」

 

しかし、30分経っても何も起こらなかった。

 

「まだまだ、もう少し待ってると必ず。」

 

1時間後……

 

「まだだ、もう少し待てば。」

 

2時間後……

 

「いや、あきらめないぞ。あと少し我慢すれば。」

 

3時間後……

 

「……」

 

もうすでに0時を過ぎて翌日になっているのに棺には何の変化も見当たらなかった。

 

「あれー。おかしいな。絶対何かあると思ったんだけどなー。なんでだろ。」

 

『もしかして、昏睡状態なんじゃないのかい。』

 

「昏睡! じゃニ度と目覚めないのかい!」

 

『おそらく……』

 

「やだやだ! こうなったら棺を揺らして起こしてやる~」

 

王子は棺を担いでグラグラ揺らしている。

 

「おーい! 起きろー! 朝だよー!」

 

『おいおい、今はまだ0時で朝じゃなくて深夜だよ』

 

「えーい そんなの関係ないもんね。さっさと起きろー!」

 

その後、神無はさすがに疲れたのかスヤスヤと眠ってしまったが、球磨川は『睡眠欲も湧かないから』と言う理由で最後までバカ王子に付き合うのだった。




第2話をしてようやくバカ王子と12人が互いを知る事になりました。
果たしてこの先何が起こるのか?
そして棺の中身はやはり吸血鬼なのか?
感想お待ちしております。


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登場人物紹介

さて、ここでこの物語の登場人物をご紹介いたしましょう。
まあ、かなりはっちゃけた内容になっておりますがそれではレッツGO


主人公とその一派

 

バカ王子・・・言わずとしれた斜め上のトラブルメーカーです。

宇宙一の頭脳を有していながら、その実、悪魔さながらの性格の悪さからとんでもない事に浪費する為、ろくでもない奴です。クラフトを始めとした護衛隊達に蛇蝎の如く嫌われていますが、今回ドグラ星に召喚された12人のメンバーからもかなり嫌われています(特に戦闘面で)。

 

球磨川 禊・・・箱庭学園三年生。自称「愚か者と弱い者の味方」。

強烈なカリスマ性を有していながら好きな相手との堕落を望む破滅的な思考の持ち主であるが、意外にも仲間思いでもある。

戦闘面ではまともな勝負をせず結果全てを台無しにしてしまう方向に持っていくが、それは嫌われ者だろうと憎まれっ子だろうと最低な奴だろうと勝利して主役である事を証明する為である。

そういう意味では戦闘時にはわざわざ本物に真似た偽物やロボットを使い自分は安全圏でさも高みの見物をする様なスタンスをするバカ王子とは相いれないと思われる(他の連中もバカ王子のこうしたスタンスを嫌っている)。

 

真木 司郎・・・革命組織P.A.N.D.R.A幹部

超能力者(エスパー)であり、炭素系の合成能力を有している。

P.A.N.D.R.Aでは副官を務めており良く上司の気まぐれに振り回されて苦労しているらしい。

当然の事ながら、本編でもバカ王子のトラブルに他のメンバー同様勝手に振り回される事になる。

外見はちょいわる親父風だが、常識人である。

一般人(ノーマル)を嫌っているが、メンバーのほとんどは現実社会では確実に疎外される様な連中ばかりなので比較的良好である。

 

神無・・・無の妖怪

妖怪でありながら、妖気も気配も匂いも無く、妖魔を滅する清浄な場所でも自由に行き来が出来る。

見た目は白い着物を着た少女である。

口数は少なく表情を変える事がほとんど無い。

武器は死鏡と呼ばれた大きな鏡で相手の魂を吸い取ったり、攻撃を跳ね返したりする。

最初の内は他のメンバーと距離をとっていたが、徐々に信頼関係を結んでいる(ただし、バカ王子の事は様々なトラブルに巻き込まれる為、嫌っている)。

 

凶月 咲耶・・・凶月一族の姫で東征軍所属

心優しい性格の可憐な少女だが、芯が強く、思った事をはっきりと口に出す。

能力は『禍津日神禁厭』と言う他者に不幸を押し付けることにより、自身への不幸を拒絶する運気操作である(あくまで運のみを操作する為、何が起こるかは本人にも分からない上何時発動するかの制御も出来ない)。

その為、元の世界では歩く爆弾と揶揄されていた。

義兄を深く敬愛しており、比較的まともな性格で基本的に他社を嫌う事は無い(バカ王子は例外)。

 

キイチ・・・国家防衛最高機関「輪(サーカス)」壱號艇闘員

プライドが高く負けず嫌いな性格。

語尾に「~ですう」とつけている。

基本的に他人には敬語口調で喋るが、気が強くいつも憎まれ口を叩いている。

戦闘時には腕輪(ブレス)を装着して空を飛び鎌を具現化して闘っている。

趣味はお買い物とグルメ。

 

 




以上でありますが、楽しみにしていってください。


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