死した勇者と不屈の少女。 (Reidou Shion)
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勇者の記憶。

第一話・勇者の記憶。


書き忘れを修正しました。


俺は今、どこにいるのだろう。

 

 

もうこうして何かを考えるのもやめたい、もう死にたい。

 

 

 

此処は何処だ?いきなり足元に転移魔法陣が現れたのはわかるが、世界全ての地形や風景を覚えているはずなのに、こんな所は俺の記憶に存在していない。

 

 

おおよそ白で統一された部屋、自分が寝ているふかふかのベッド、そしてどこかで見たことあるような機械、恐らく××で見たものだろう、その記憶も曖昧だ。

 

 

俺は、少し前まで勇者をしていた。

 

 

いや、もう勇者とは言えないか、哀れな復讐者とでも言い換えようか…

 

 

地球と呼ばれる世界から異世界に突然転生した俺は、村で穏やかに過ごすつもりだった。

 

だが、10歳になったら手に入る職業で、俺は勇者を引き当てた。

 

 

その職業を手に入れた際おれはとでもはしゃぎまわり、喜んだ。

 

 

そしておれは、村の友達とみんなで修行をした。

 

 

俺、嫌、違うな、俺達、勇者、戦士、魔法使い、僧侶、盗賊、俺の後世の幼馴染達。

 

それぞれ職業を極めたエキスパートだったもの達。

 

 

 

 

 

 

その全てを、俺が殺した。

 

 

 

 

 

最初は頑張ってみんなで魔王を倒そう!、と意気込んでいたが、魔大陸を進むにつれそんな甘い考えなんて無くなっていった。

 

最初の内は魔大陸でも細々とした村や国の拠点としての城塞都市などがあったが、進むにつれ魔物の知能や力が上がっていき、そして魔族の集落へたどり着いた。

 

魔族は、平均な村人でさえ人間の熟練戦士一人分と称えられる魔物の上位存在だ。

 

俺達は食料と水に飢えていた、魔大陸に存在する魔物や植物、水までが全て魔素が含まれており、人間が食らったらショック死は免れないと言うもの。

 

俺達は魔族の集落へ近づいたら、魔族に攻撃され、正当防衛で殺してしまった。

 

集落に入るも、更に攻撃され、結局魔族の集落を滅ぼした。

 

泣き叫ぶ魔族の女子供も皆殺しにし、その日の夜は仲間みんなが罪悪感で眠れなかった。

 

 

その次の日は、何故か記憶が曖昧で、気づいたら魔素に汚染された水や魔物を喰らっていた。

 

恐らく飢えと精神的疲労で、皆狂っていたのだろう。

 

その後、皆で身体を這いずり回る魔素の痛みにもがき苦しみ、一日を過ごした。

 

 

普通ならばショック死する所だが、勇者とその仲間は、国に伝わる勇者だけが行う事のできる特別な儀式で、魂が生きていれば死んでも教会で生き返ってしまう。

 

だが、精神的に死んでしまえば魂を使った蘇生ができずに、本当に死んでしまう。

 

 

俺と仲間達は、数々の死の経験でショック死を免れ、ある事に気付く。

 

 

そう、身体に力が湧くのだ。

 

 

魔素は、一度の服用でショック死する程の痛みを発生されるが、一度発生し、それでも生きていた場合、抗体が作られ、魔素を服用すれば身体が強靭に強化され、更には肉体の再生効果もあると言うのが僧侶と魔法使いの考察だ。

 

 

そして、戦闘中以外は僧侶の回復魔法が必要無くなり、僧侶の負担が減った。

 

僧侶は、自分が役に立たなくなると申し訳無さそうに言ったが、気にするなと仲間で慰めた。

 

 

 

そして、更に数週間が経ち……

 

 

 

 

 

盗賊が死んだ。

 

 

 

 

 

 

盗賊の少女は、いつも気さくで気配察知と素早さのエキスパートだった。

 

 

その少女は、魔王の側近、暗殺のバーザンに殺された。

 

 

盗賊の少女は、バーザンの腕一本を切り落としたが、最初の不意打ちで、決して死なないが多くの苦痛が身体を駆け巡る毒、ヒュドラの唾液が塗られたナイフで傷を負い、のたうちまわっていた。

 

 

そして盗賊の少女は、俺に「殺してくれ」と頼み、俺は盗賊の少女を殺した。

 

次に死んだのは、戦士の男と魔法使いの少女。

 

 

 

魔王の側近、双子のアダムとイブが現れ、奴を倒す為に二手に分かれた。

 

勇者と僧侶、戦士と魔法使いで。

 

 

そもそも戦士と魔法使いは、いつも言い争いをしていたが、なんだかんだ言って両思いだった。

 

 

二人は、双子のイブを担当していたが、相手は双子でも魔王の側近の一人、そう簡単に倒せはしなかった。

 

だが、だんだんとイブに押され始めて、二人はある薬を飲飲んだのだろう。

 

特上魔薬草の超回復薬。

 

その薬は、体力の回復と一時的な強力ドーピング、その薬の副作用は、材料の名前通り、麻薬の様なもの。

 

薬の副作用は、目眩、幻覚、中毒性、そして常に身体を這いずり回る痛み。

 

 

アダムを倒した俺達を待っていたのは、苦しむ戦士と魔法使い、そして死んでいるイブだった。

 

 

俺が二人に近づくと、二人はこう呟いていた。

 

 

「もう嫌だ」「痛い」「殺してくれ(ジン!頼む!)!」

 

 

俺は叫びながら二人の首を飛ばした。

 

 

後ろでは僧侶の少女が泣いていた。

 

 

 

 

そして、最後に死んだのはその僧侶の少女。

 

彼女は、普段は可愛げのある少女そのものだが、戦闘になると、とんでもない不屈の魂が宿り、いつも諦めずに全力全開、そして、俺が恋をした少女だった。

 

 

俺と少女は、魔王城に侵入した、そこは魔大陸の最奥地、教会との魔法的繋がりも無くなった為、死んでも蘇生できない状態、二人で気を引き締めて挑んだ。

 

 

 

だが、そこで俺は()()()()()

 

 

魔王の側近、剛力のゲルダと智操のギルバが立ちはだかったのだ。

 

とんでもない剛力を持つ脳筋のゲルダに、仲間の肉体に憑依し、その力を効率的、最大限に生かす智操のギルバ、奴との戦闘で俺は相討ちとなり死んだ筈()()()

 

 

気がついたら見知らぬ部屋で意識を取り戻した、俺は死んだ筈()()()()()

 

 

 

そしてその部屋の隅にあったのは、僧侶の少女がもつピンク色の回復魔力が溢れる様に垂れ流されている心臓らしきものだった。

 

 

それを見た瞬間、俺はその心臓を胸に抱き泣き叫んだ。

 

 

その少女は、自らの命を犠牲に俺を蘇生したのだろう。

 

 

俺が恋をした少女が俺のせいで死んだのが何よりも悔しく、そして、俺は魔王に改めて復讐心を抱いた。

 

 

そして俺は魔王に挑み、瀕死の傷を負った。

 

 

一瞬の隙を突かれ、心臓に魔力弾を放たれ、死にそうになった時に、懐に大事にしまっていた心臓が勝手に動き出し、俺の心臓があった場所に収まった。

 

 

するとどうだろう、体の傷と言う傷が癒えて、更には魔力量が倍以上に跳ね上がった。

 

 

そして俺は魔王を殺し、自殺を図った。

 

 

 

 

 

 

だが()()()()()()()

 

 

 

そう、彼女が残した不屈の(心臓)が働き、俺は死ななくなった。

 

 

俺は不死を手に入れてしまったのだ。

 

落下死、餓死、精神死、その他にも色々と死ぬ方法を探したが死なず、不死の大元である彼女のモノであった心臓に刃物を射し込んでも死ぬ事は出来なかった。

 

 

それから数十年が経ち、俺の姿は変わらず、俺は魔族を殺し尽くし、二度と魔王が生まれない様にした。

 

 

 

そして魔王城でただただ退屈な毎日を過ごしていたらここに転移したのだ。

 

 

 

 

「あ⁉︎目を覚ましたんですね!」

 

 

不意に声をかけられる、そちらを向くと、白い服を着た女性がいた。

 

 

 

俺はここがどこか女性に聞いた。

 

 

 

女性が言うには、ここは病院の中の病室と言うらしく、女性は看護師と呼ばれる職業らしい。

 

 

記憶は薄れたが、恐らく地球の施設の一つだろう。

 

 

すると、病室に一人の少女が入ってくる。

 

 

「あ⁉︎起きてるの!!」

 

 

俺はその少女を見た瞬間目を見開いた。

 

 

 

 

その少女は、前の世界で恋した僧侶の少女、「()()()」に姿、魂までがそっくりだったからだ。

 




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高町と勇者。

第二話・高町と勇者。


 

 

 

「あ⁉︎お兄さん!起きてたの⁉︎」

 

 

俺は今、目の前のリリアに()()()()少女を凝視している。

 

 

「あのね!お兄さんね!公園で倒れてたの!」

 

 

やはり、よく似ているだけでリリアでは無いようだ、だが、よかった、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

俺は、少女に名前を聞いてみる。

 

 

「ありがとう。君の名前は?」

 

 

そういえば、さっきの看護婦さんも含め、会話をしたのはいつぶりだろう、それよりも彼女の名前だ。

 

 

「私の名前は高町なのはなの!」

 

 

「なのはなのちゃん、かな?」

 

 

「ちーがーうーのー!高町な・の・は!なの!」

 

 

なのはちゃんと言うのか、やはりリリアと魂が似ているおかげか、口調以外はリリアと同じような性格だ。

 

 

「おや、起きたのかい?」

 

 

すると病室の扉が開き、男性が入ってくる。

 

 

「貴方は…」

 

 

 

「私は高町士郎、この子、なのはの父親だよ。」

 

 

子も子なら親も親なんだな、リリアの父親のおじさんにそっくりだ。

 

 

「士郎さん、と呼んでも?」

 

 

「ああ、いいよ、この子の事もなのはと呼んで欲しい。」

 

 

「ああ、よろしく、なのは。」

 

 

「よろしくなの!」

 

 

なんだろう、とても懐かしく、暖かい。

 

 

「大丈夫かい⁉︎どこか痛むのかい⁉︎」

 

 

「ふぇ?大丈夫なの?」

 

 

……どうやら、俺は泣いて居たらしい。

 

 

「すいません、貴方たちが俺の幼馴染と、そのお父さんにそっくりで、思い出したら涙が。」

 

 

ああ、思い出した。

 

俺は何故かどうしてもリリアとリリアの家族には嘘はつけなかったな。

 

 

 

「幼馴染…似ていたのか、妙な縁があったものだ、その人達はどこにいるんだい?」

 

 

「………。」

 

 

俺は目を伏せ、沈黙する。

 

 

「…そうか、君、行く宛はあるのかい?」

 

 

「…ありません。」

 

 

そう、俺の見た目は、転生とリリアの心臓の影響でかなり変質している。

 

 

前に地球にいた頃は至って平凡やな見た目だった。だが、

 

髪の毛はピンク色になり、顔は童顔の整った顔、体も引き締まっており、体には不死になる前の傷痕が沢山刻まれている。

 

よって、行く宛が無いし、こんな怪しい人物を雇ってくれる場所も恐らくない。

 

 

これからどうしようか。

 

 

「それなら、ウチに住み込みで働くといい。」

 

 

 

その言葉に俺は驚いて数秒固まってしまう。

 

 

 

「どうして、こんな怪しい人間を…」

 

 

 

「ハハッ!君が嘘を言っていないのは経験上わかったからね、いい人そうだし、それに、用心棒を探していたからね。」

 

 

 

「そうですか、確かに腕に自信はありますが、こんな怪しい人間を本当に信用はさていいんですか?」

 

 

「まだ完全に信用しきった訳じゃあないけど、少なくとも悪い人間じゃあないからね、その代わり、しっかりバイトはして貰うよ?勿論、衣住食を給料として雇うからお金は出ないがね?」

 

 

 

俺にとってこの内容はとても魅力的だろう、衣住食が確保されるだけではなく、リリアに似た彼女のそばにいる事ができる。

 

 

だが、俺が愛すると決めた相手はリリアだけで、決してなのはでは無い、リリアが自分を犠牲にしてまで救った命を、簡単に投げ捨てたりはしない、それに、リリアに似た彼女を支えると言う目的ができた以上はそれを達成するまで自分を殺す手段を探すのはやめにしよう。

 

 

「わかりました、ありがとうございます、こんな自分を雇ってもらって。」

 

 

「うん、それに、君がなんで公園に倒れていたのかも気になるからね。」

 

 

「すいませんが、どうしてもまだ言えないことはあるので、言える範囲だけならお答えするつもりです。」

 

 

そう、ここで全てを打ち明けるなんて愚か者のする事だ、例え全て信じて貰えても、どこから情報が漏れるかわからない、記憶を盗み見る力を持つ者だっているかもしれないし、少なくともなのはが大人になるまでは打ち明ける訳にはいかない、どこに敵が潜んでるかわからない以上、情報と言う武器を渡してはいけない。

 

 

「なのは、下にいるお兄ちゃんのところに先に行っていなさい、僕はこの人ともう少し話さないといけない事がある。」

 

 

「わかったの!」

 

 

そう言ってなのはは病室を出て行った。

 

 

「さて、先ず最初に、君の名前は?」

 

 

「ジン・()()()

 

 

「どこから来たんだい?」

 

 

「言えません。」

 

 

「君は何をしていたんだい?」

 

 

「言えません。」

 

 

「君は親はいるかい?」

 

 

「…()()()()。」

 

 

「君は人を殺した事があるかい?」

 

 

「はい。」

 

 

「君に親しい人はいるかい?」

 

 

「……()()()()。」

 

 

「君の願いは何だい?」

 

 

「今は、生きる事、先程までは死ぬ事。」

 

士郎さんはその言葉に若干目を見開くが、すぐに表情を戻す。

 

 

「君は私達に秘密を打ち明ける気はあるかい?」

 

 

「いつかは打ち明けます、少なくとも今は言えません。」

 

 

「そうか、ありがとう、大体察することはできたよ。」

 

 

どうやらこの人はその手の事には慣れているらしい。

 

 

「君はどうやら私達には抱えられない、とても重い秘密を抱えているらしい、それも、特に一般人には教えてはならないような、下手にバレたら誰かが殺されるレベルの…ね。」

 

 

 

「流石ですね、概ね当たっています。敢えて言うなら、バレたらなのはが人質にとられ、例え日本でも俺が人体実験の材料にされかねません。」

 

 

「そうか、どうやら僕は大層大きな拾い物をしたらしいね。」

 

 

「ええ、ですから俺の事は本当に信用できる人間にしか喋らない方がいいです、最悪、俺が貴方を殺さなければならないかも知れません。」

 

 

「…ハァ、また秘密事が増えてしまった。」

 

 

「また?」

 

 

「君は気にしなくていいんだ、取り敢えず退院手続きはしておくから、明日までここで過ごしてくれ。」

 

 

どうやら俺には深く言えないものらしい、まあ、知ったばかりの俺なんかに秘密を打ち明けるなんてバカのする事だが。

 

 

「はい、わかりました。」

 

 

 

……だが、久しぶりにぐっすり眠れそうだ。

 

 




質問、指摘、感想等ございましたら、感想欄にて受け付けて居ますので、簡単な感想でもコメント下さると、作者のモチベが上がります。


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起源と月村。

まず始めに、長い間執筆活動をせず、作品投稿をサボって居た事を深くお詫び申し上げます。

理由としては、私は自己満足で作品投稿をしている訳ですが、どうしても他の事に視線が行ってしまい、そちらの方に興味が集中し、作品投稿をサボって居た訳です。

この作品を読んでくれた数少ない読者様にもう一度、深くお詫び申し上げます。


第三話・吸血鬼と不死ノ勇者。


 

 

俺が高町家に引き取られてから、10ヶ月がたった。

 

 

あの後起きた出来事と言えば………

 

 

なのはの兄、高町恭也と模擬戦をして圧勝したり………

 

 

翠屋にやってくるマダムにチヤホヤされたり………

 

 

それと、暇な時なのはと遊んだりとかしたな……

 

 

そう言えば、この町を軽く探索してた時に、町の一部の豪邸から魔物と似た生物の気配を感じたのだが、魔力を感じなかったなぁ。

 

 

 

まあ、邪悪な気配はしなかったし、害は無さそうだから問題が起きない限り放置しておこう。

 

 

 

そして現在、朝の5時に日頃の鍛錬をしている。

 

鍛錬の内容は、まず最初に自分の身体にある魔術的擬似神経、魔術回路に魔力を通し、自分の身体全体を解析魔術で解析し、自分の状態を確認、そして起源へ接続する。

 

 

俺の起源は『【不滅】と【不屈】』どちらも魔王を倒した直後に覚醒した魔力だった。

 

 

その起源のせいではあると理解しているが、俺はつい10ヶ月前まで生きる理由、つまり死ぬ事が出来ない為生きて自分がやるべき事を探して居た、覚醒した当初は魔族を殺し尽くす事を目標にして居たが、殺し尽くした後はする事が無くなり、気まぐれで人間の国に戻ったら今度は人間が襲いかかってきた、終いには彼女の事を侮辱され、気付いたら人類も滅ぼして居た。

 

 

更に数百年経ち、前作(転生する前の地球)の記憶も殆ど無くなった頃、緑豊かになった異世界(転移前の世界)から俺は突然この世界に着いたと言う訳だ。

 

 

起源のせいで生きる事を諦める事が出来ず、自殺を図ろうものなら、不屈の起源を内包した心臓の魔力が発動し、心臓に刃を突き刺そうものなら不滅の起源が心臓を再生する。

肉体的(不滅)にも精神的(不屈)にも死ぬ事も出来なくなって居た俺にしては、とても嬉しい限りだった。

 

 

そして、この世界に来て初めて自分の起源に接続した時、とんでもない事に気付いた。

 

 

 

なんと、なのはにも【不屈】の起源があり、俺の【不屈(精神)】からなのはの【不屈(精神)】に接続し、なのはの状態が確認できる事だ。

 

 

これは憶測だが、恐らく俺はリリアの魂に引き寄せられこの世界にやって来た可能性が高い。

 

 

起源とは、あらゆる存在が持つ、原初の始まりの際に与えられる方向付け、つまりあらかじめ定められた自分の本質、または魂に刻まれた絶対命令、抗えない宿命、人によれば存在意義、の様な物だ。

 

 

そして俺には普通ではありえない特殊能力が付与されてある事をこの世界で初めて理解した。

 

 

その能力とは、一定以上の信頼も持つ存在を殺した時、その殺した物の意思を己の心像風景の一部に武器として内包し、それを召喚し現実世界で使用する事ができると言うもの。

 

 

そして内包されているのは、

 

 

『盗賊』の意思で形成された【不可視のローブ・ジャック】

 

 

『魔法使い』の意思で形成された【霊杖・アルキメデス】

 

 

『戦士』の意思で形成された【反魔の鎧・ジャルグ】

 

 

そして意外な存在の意思も存在して居た。

 

 

『魔王』の意思で形成された【魔剣・グリンバード】

 

 

最後に……俺の心臓風景の最奥、高台の様に盛り上がった大地の頂点に突き立ててある、何故かピンクではなく純白に輝く……

 

 

リリア(僧侶)の意思で形成された【聖剣・スターライト】

 

 

 

俺は固有結界なんて馬鹿げた魔術を発動なんか出来ないが、自身の心臓風景に入り込むぐらいはできる。

 

この世界に来て最初にここに来た時は涙が堪えきれず泣いたよ……

 

 

おっと、久しぶりに深く考え込んでしまった、恐らくかなり時間が経っているだろう、早くしないと朝食に遅刻してしまう、それはなんとしてでも避けなければ!!

 

 

 

そうして俺はリビングに向かい、テーブルの周りに置いてある何時もの定位置の椅子に座る。

 

 

すると丁度なのはが部屋から出て来た。

 

 

「おはよう、なのは。」

 

 

「ふわぁ〜……おはよう、ジンお兄ちゃん……。」

 

 

 

そして、士郎さんが降りて来た。

 

 

「おはようございます、士郎さん。」

 

 

「おはよう、ジン君。」

 

 

そして次に恭也と美由希が椅子に座る。

 

 

「おはよう、恭也、美由希さん。」

 

 

「おはよう、ジン。」

 

 

「おっはよ〜、ジン君!!」

 

 

すると台所から桃子さんが食事を持ってやってくる。

 

 

「おはよう、もうみんな揃ってるわよね?」

 

 

 

「おはようございます、桃子さん。」

 

 

「おはよう、桃子。」

 

 

「おはよう、母さん。」

 

 

「おはよー、お母さん。」

 

 

「おはよう!!ママ!!」

 

 

皆で桃子さんに挨拶する、まあ、高町家カースト最上位の桃子さんに挨拶しないのは下策だよな、ウンウン(教育済み)。

 

 

 

まあ、今日も一日バイトを頑張るか。

 

 

 

そして昼になり、桃子さんにより買い出しに駆り出された俺はスーパーからの帰り、翠屋のすぐ近くで、とある空気を感じ取る。

 

 

 

空気を感じた方へ行くと、嫌がる少女二人を無理やり拘束し車に詰め込む怪しい大人達を見つける。

 

 

 

取り敢えず俺は袋をカウンターに居る美由希に押し付け急いで追いかける。

 

 

 

そして先程の大人達の気配がする場所に向かうと、町の人気の少ない場所にある廃ビルにいる事が分かった。

 

 

 

俺は不可視のローブ、ジャックを取り出し、急いで少女の居場所に急行した。

 

 

そしてドアを開けると、醜い男達が今にも少女達を襲おうとしてる場面を目撃し、俺は即座に男達を拘束した。

 

 

少女達は驚いている様で、現在の状況を理解できて居ない様だ。

 

 

 

「大丈夫だよ、助けに来たんだ。」

 

 

 

すると少女達は安心した様に眠ってしまった。

 

恐らく極度の緊張と恐怖で疲れてしまったのだろう。

 

 

それよりも少女二人のうち一人から薄くだが魔物らしき気配がするのだが……

 

 

すると後ろから魔物に近い気配を感じる。

 

 

「全く、面倒な事をしてくれる…。」

 

 

 

「お前、何者だ?少なくとも人間では無い……そして口元から血の匂い……吸血鬼か?」

 

 

「ご名答!!私は偉大なる夜の一族の一人、名を氷村 遊、そこにいる月村すずかの叔父にあたる。」

 

 

「何故血の繋がりのある者を誘拐する必要がある、更にその友人まで…」

 

 

 

「ふむ、実はね、現在の夜の一族の名家、月村家の当主が月村忍と言ってね、月村すずかの姉なんだ、だからこの娘と引き換えに当主の座を頂こうとね。」

 

 

「結局有り余る力を持つばかりに傲慢になり権力に浸りたいだけか……くだらん。」

 

 

「黙れ!!劣等種の人間風情が!!!」

 

 

 

氷村は激昂し襲いかかってくる。

 

 

 

ふむ、常人よりかは身体能力が高めだが前の世界の吸血鬼の方が手強かったな……。

 

 

そして俺は襲いかかってくる氷村の顎を殴打し、脳を揺する。

 

 

それだけで氷村は気絶し、地に倒れる。

 

 

 

「ふぅ、終わっ……ん?」

 

 

一息つこうとしたら物凄い勢いでこちらに向かってくる数人の気配がした。

 

 

 

「これは……恭也と士郎さん?そしてすずかに似た気配……先程氷村が言って居た月村忍とやらか?」

 

 

「ふむ、この惨状だけ見れば誤解されかねないな、どうしようか……」

 

 

よし、逃げよう。

 

 

そうして俺は翠屋に戻り、バイトを再開した。

 

 

 

まあ、恭也と士郎さんには悪い事をしちゃったな……今度模擬戦をしてあげよう。

 

 




今話はこれで終わりです。


感想、指摘等ございましたら感想欄にコメントをくれると嬉しいです。


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