ぐふーのみこ! (ニラ鍋)
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1話

少し長引いた仕事を終え、最寄りの駅で電車に乗り込む。

人の数のおかげで気温の上がった車内は外よりも幾分かマシだった。

 

電車を降りて降り始めた雪の中を歩く。街頭の光を反射しながら積もっていく雪に、もうそんな時期か、と思いながら歩くと、もう自宅のすぐ近くまで来ていた。

 

家の窓を見てみるとなんと灯りが点いている。誰か侵入者でも入ったのかと警戒しながら扉を開く。鍵は既に開いていた。やはりヤバイ(再確認)

 

そこに待っていたのは――!

 

 

「よく帰ったな我が眷属”暗黒の執行者“よ!」

 

第五の精霊(ヤベー奴らの片割れ)“だった。

 

多分執行者ってのは夜まで仕事してる人全般。

それにしても、

 

「何故ウチにいるんだ…」

 

思わず至極真っ当な疑問が口をついて出てしまったが、それに対してヤツは、

 

「愚問だな!我を救った(デレさせた)責任を取るべきだ!」

なんて正論で返してくる。

 

なるほど確かに、精霊というある意味身寄りのない相手を口説き、霊力を封印することがその相手の面倒を見る、という事を意味するのも道理である。

 

黙ってしまった俺を見て何か不安に思ったのだろうか、少し上目遣いになりながらも、ヤツは、八舞耶俱矢は、こう言った。

 

「それにその…ほら、接吻(キス)とかもしたわけだし…私達ってもう、そのこ、恋人なわけじゃない?だから、来てもいい…でしょ?駄目?」

 

「―――ッ」

 

()いた。今のは、効いた。

 

「そう、だな。特に面白いところも無いとは思うが、来たいならいつでも来ればいい。俺は仕事あるからあんまり家にはいられないが」

 

「やった!……と、当然の配慮だな!」

 

取り繕うには遅すぎると思うんですけど(名推理)

 

それはともかくとして、

「家入らせてくんね?外よかマシだがやっぱちょっと寒いし」

 

そうなのだ。玄関でぐだぐだやっていたが俺の体はヒエヒエになってしまっている。

そろそろ中に入りたいものだ。

 

「うむ!入るがよい、我が家へ!」

「俺の家なんだよなぁ…」

 

慣れ親しんだ我が家へ入り、リビングの中央に堂々と鎮座するこたつに入る。

そして、

 

「あったかぬくぬくだにゃー」

 

思わず息を吐く。

 

「…えっなに今の」

 

どうやら聞かれていたらしい。

 

「何ってお前…炬燵入ったらやるだろ」

「いやいや、やらないでしょ」

 

む、異端は俺の方であるようだ。

そのまま二人でぐだぐだとテレビ観賞タイム。

 

さて、

「腹減ったな…なんか作るか」

 

そう、流石に腹が限界を訴え始めたのだ。

 

炬燵の外に出たくない保守派の俺だが、腹の虫には逆らえない、はっきりわかんだね。

 

そう思い立ち上がろうとすると、

 

「ま、待つのだ!しばし暖かな楽園にて微睡んでおくがよい!」

 

なんか止められた。えぇ…(困惑)

 

「なに、どしたの」

 

「うむ、実は我が既に用意しているのだ!」

 

なんと、それは驚いた。

 

「一体どういう風の吹き回しなんだ…」

 

「む、我の手作りでは何か不満か?」

 

少しむくれてそう言う彼女が少し微笑ましく、思わず笑ってしまった。

 

「いや、別になにもねぇよ」

「かか、それで良いのだ!」

 

そう言い残して台所へ向かっていく。さて、どんなものが出てくるのか…

 

少しして、小鍋を持ってやってきた。

 

そして堂々とした態度で言うことには…

 

「フッフッフ、これなるは"堕天使の饗宴"!」

 

「はえー、すっごい格好いい…」

 

そう言って抱えた小鍋の蓋を開けると、

「パエリア、か…?」

 

「フッ、魔眼よ高き!」

 

普通に"お目が高い"とは言えないのか。

 

「ん?て、ことは…」

 

なんてことだ、エビが堕天使だったのか…(驚愕)

では、実食タイム。

 

もぐもぐ、ふむふむ…なるほど。

 

これはなかなか、

 

「美味い、だと…!?」

 

「本当!?…じゃなくてあ、当たり前だし!」

 

おいおい素出てる素出てる。

 

「うん、おいしい!」

 

思わずナイナイしてしまうレベルである。

 

外を見れば雪が少しずつ積もり始めている。

 

今年は、思えば色々なことがあった。

 

今まで見てきた無色の世界に別れを告げて、精霊(コイツ)がくれた新しい無彩限の世界に足を踏み入れる。

 

 

――今年の終わりも、もうすぐだ―――。




浪人生活も残り4ヶ月なので初投稿です。
(主人公の説明は)ないです。忘れてたからね、しょうがないね


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聖夜の社畜

クリスマスに投稿するつもりだったので初投稿です。


「ふーっ、こりゃ今日は早めに帰れそうだな」

 

今日も今日とて仕事、仕事、仕事である。

 

武士道とは、働くことと見つけたり…!と、悟りを開きそうになったが、頭を振って意識を目の前のパソコンに戻す。ふぇぇ…目が疲れたよぉ…

 

しかし今日はいつもの俺とは一味違う。

 

なぜなら今日はクリスマス、つまりいくら悪徳会社ラタトスク、その顕現装置(リアライザ)技術開発部とてノルマを削らざるを得なかったのである。

 

技術開発顧問"村雨令音"氏によると、

「…人間は30年は眠らなくても働ける」

とのことだが、あの人だけなんだよなぁ…

 

ちなみに、精霊対策部の方々は"五河家クリスマスパーティー大作戦!"の設営やら進行やら経過観察やらでなにやら忙しなく走り回っている。

 

精霊の相手はもうホント大変だもんね、頑張って。

 

まぁ、耶倶矢(アイツ)は楽な方だろう。なんたってその他の連中はヤベーのが勢揃いとか聞くし…

 

つくづく精霊対策部の方々の苦労が偲ばれる。

 

そんなことを考えながら街へ出ると、やはりと言うかなんと言うか天宮町はクリスマス一色に染まっていた。

 

この街案外イベント色強いですね…

 

「さて、任務開始といきますか」

 

たまには俺もやってみよう、

クリスマスくらい、らしくないことを。

 

 

 

 

という訳で天宮モールに到着、と同時に目的の店へ。

この間わずか2分(やや迷子)。

 

目的の店に到着。「厨二病でも服が着たい!」というなんかもうパロディ先に失礼極まりない店名の書かれた黒板が絶妙に入りづらい雰囲気を演出してくれている。

 

「ホントに大丈夫なのかこの店…?」

 

至極真っ当な疑問と共に入店し、目を見張る。

 

品揃えが、見事なまでにセンス抜群なのだ。

 

厨二病を乗り越えた俺でさえ心牽かれるアクセサリーの数々に、「welcome♥️hell」とかなんとか書かれた変なTシャツ、

ん?あれはデジヴァイス…!?あんなものまであるのか…!

 

おっと、こんなことしてる場合じゃない。

 

この店は設計図や構想を送り付ければ全力を尽くしてその通りに作ってくれるのだ。

 

以前には〈オリハルコン〉なる素材すら使用したと聞く。

えっなにそれは…(畏敬)

 

頼んでおいた商品を受け取り、外に出る。

 

また来ることもあるだろう…(リピーター化)

 

 

 

家に帰り着き、そのまま転送装置を使って〈フラクシナス〉へ。

 

艦橋に着くと、モニターには五河家のクリスマスパーティーの様子が映されており、横には精神状況のパラメーターなどが表示されている。

 

いや、マジで大変そう…

 

「おや、叡斗くんではありませんか!」

 

今話しかけてきた人は〈神無月恭平〉。魔術師として破格の性能を誇るフラクシナスの主力である。

 

この人がいるからフラクシナスはこれだけの人数での任務を任されていると言ってもいい。

 

なんせこの人がいなけりゃ俺が魔術師として配属させられてた所だし…(一応は非常勤魔術師として配属している)

 

「お疲れ様です。これ、耶倶矢(アイツ)に渡しといてくれませんか?」

 

先ほど用意したプレゼントを渡す。

パーティーの中なら渡しやすかろうという考えからである。

 

しかし、〈フラクシナス〉の乗組員からの視線は冷たい。

 

緊急事態だけとはいえ俺もクルーだよ?ん?

 

ゴー☆ジャスが、呆れたとでも言いたそうな顔でこう言ってきた。

 

「叡斗くん、それは君本人から渡してこその物なのですよ。」

 

「いや、まぁそうなんですけど…」

 

「そうです!あえて下着などの類いを贈ればご褒…お仕置きに踏んでもらえるんですよ!?」

 

それはアンタだけだと思うんですけど(名推理)

 

けどまぁ、ぶっちゃけ恥ずかしいのだ。

プレゼントを用意したのは良いが、いざ渡すとなると突然とんでもないレベルで緊張してしまったのである。

 

「……大丈夫さ、心配はいらない。彼女なら絶対に喜んでくれるはずだよ。」

 

「……主任!?何故〈フラクシナス〉に!?」

 

何で村雨主任が飛空艇にいるんだ…この人ほんと過労死しちゃうんじゃない?

 

なんか知らないけどこの人からはたまに殺気?のようなものを感じることがあるのだ。

 

特に気にするまでの事ではないが、なにか、とても恐ろしい"ナニカ"が潜んでいるような…まぁ今はいいか。

 

それはともかく何だかこの人が言うと凄い説得力がある。

 

「わかったらちゃんと渡して来て下さい…ね?」

 

「……その、ありがとうございました。」

 

「……はい♪」

 

この中でも比較的まともな部類の椎崎さんから念を押され、〈フラクシナス〉を後にする。

 

なんか椎崎さんからの好感度振り切れてたけど呪われたりとかしないかな…?




零音さんこわいなーとづまりすとこ
(耶倶矢の出番は)ないです。
主人公くんの経歴
五河士道のクローンとして〈ラタトスク〉本社で誕生→魔術師として育つ→或美島に精霊顕現→五河士道の修学旅行先が本編と異なる→そのためのクローン?あとそのための唇?→クリスマスプレゼントどう渡そう?


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聖夜の社畜・続

終身栄誉ホモガキの称号が欲しかったので初投稿です


フラクシナスの方々からも念を押され、結局自分で渡す事になってしまったが、さてどうしたものか。

 

普通に渡すんじゃ気恥ずかしいし、かと言って顕現装置を使用して砲弾のように発射するのもアレだし…これもうわかんねぇな

 

ん?待てよ?クリスマスってことは仮装もOKなのでは…?

 

 

という訳で、ただ鼻が赤いというだけで後世まで歌として辱められるクッソ哀れな聖獣、トナカイ兄貴の着ぐるみを着装。

 

「いざ着てみるとなかなかしっくりくるな…」

 

そう、なんというか、安心感…?のようなものがあるのだ。俺実は祖先トナカイなんじゃねぇかな…

 

ともあれ、これで懸念事項はクリアされた。

 

あとはフラクシナスのスタッフを装ってプレゼントを渡せば任務は達成されるはずだ。

 

そうと決まれば出発だ、いざ鎌倉!

 

 

そういう訳で、五河家にやってきたのだ。

 

しかし、どうやって渡そうか…

 

玄関の前で待機していたラタトスクの人に話しかけ、中に入る許可を得る。

 

トナカイの姿を見て少し驚いていた様子だったが、中に俺が入っているという事を伝えると「頑張ってな」と一言掛けてくれた。

 

どうにもフラクシナス配備の人達には良い人が多い気がする。うちの開発部はホント変人ばっかりだから…

 

何故なのかと少し考えたが、どう考えても主任の人選が影響しているので考えても仕方ない事に気付いた。

 

おっと、こんな事をしている場合じゃない、早く渡す方法を考えねば。

 

五河家のリビングからはこの世の終わりみたいな異臭が立ち込めていた。

 

………は?

 

設置されたカメラで中を確認すると、真っ暗である。ははーん?さては闇鍋だな?

 

何故クリスマスに闇鍋なのかは分からないが、これは好機…!

 

音を立てずに扉を開き、そのまま目標へ近づいて行く。

 

しかし、ここで鳶一折紙(元AST)がこちらに気付いたような素振りを見せた…!

 

これはマズい。即座に隠密用にカスタムした顕現装置を起動、隠蔽のために随意領域を展開する。

 

なおも不審な表情を向けていたが、10秒ほどこちらを見て気のせいかと視線を鍋に戻した。

 

あ、危なかった…「鳶一半端ないって」テンプレが始まる所だった…

 

作戦を続行、2つ目の関門が立ち塞がる。ここは暗闇の中、耶倶矢と他の精霊との区別はついても、夕弦と耶倶矢の区別がつかない……!

 

霊力で判別するか?いや、元は同じ精霊である以上霊力は同一の波長を記録する。

 

そこで驚愕の事実に気が付いた。

 

八舞夕弦:B90/W61/H86

八舞耶倶矢:B79/W56/H81

 

あっ、ふ〜ん(察し)

死屍累々といった様相を呈しているリビングを静かに駆け抜け、貧相な方を抱えてリビングを出る。

 

トナカイらしく主人を背中に乗せて空を飛ぶ。

 

目的地に着いたので主人の目覚めを待つ。

 

随意領域の中の気温を調節していると、耶倶矢が目を覚ましたらしい。

 

「くっ…狂三に折紙め、何入れたのよ…」

 

どうやら変態と最悪による飯テロ(物理的)に遭ったらしい。

 

そして目の前のトナカイを見て、

 

「えっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

珍しく可愛らしい悲鳴を上げた…ってそりゃそうだな

 

「えっとほら、俺だ俺」

 

被り物を外して自分を指さし、改めて自己紹介。

 

「え、トナカイがしゃべっ、て…叡斗!?」

 

どうやら気付いてくれたらしい。

 

「おう。ってか、一体何をしたらあんな酷いクリスマスパーティーが開催されるんだ…サバトかなにか?」

 

「あ、あたしは悪くないし!夕弦とか折紙とかの全力で相手を潰しにいく闇鍋スタイルのせいだし!」

 

あの2人相手にしてる時点で負け確なんだよなぁ…

 

「そりゃ大変そうだな…ってそれはともかく

その、なに、遅くなったがクリスマスプレゼントを渡しに来た」

 

言った。言ってやった。

 

間が怖くなって恥ずかしさで俯いた顔を上げると、耶倶矢は俺よりもっと真っ赤になって今にも目を回しそうな勢いで顔から煙を上げて手をわちゃわちゃさせていた。

 

「えっ…わ、わた…我にプレ、供物…?」

 

「ああ、その…受け取って、くれるか…?」

 

情けない。今になってまた怖気付く自分が嫌になる。

 

「開けていい…?」

 

「俺はもう渡した。好きにしてくれ…」

 

ヤケになりながら答える。

そんな俺の横で耶倶矢はとても嬉しそうに箱を開ける。

 

そして――

 

「わっ、コレ、私の…ありがとね、叡斗!」

 

―――綻ぶような、照れたような笑顔で、そう言った。

 

俺が用意したプレゼント、それは「颶風騎士―穿つ者(ラファエル―エル・レエム)」のペンダントである。

 

あの店が1晩でやってくれました。

ノヴァクリスタルやマカライト鉱石を随所に散りばめ、内部にウルム=マナダイトを埋め込むことで霊力の循環を手助けする機能も内蔵したこだわりの逸品である。

 

素材の回収には苦労したものだ。

 

だが、ああ、この笑顔を見ることが出来たならこの苦労もきっと意味があったのだろう――

 

「―――ああ、どういたしまして――」

 

照れるのも忘れて、素直に返してしまう。

 

でも、まあ、良い子にはプレゼントがあって然るべきなのだ。

 

だから、たまには「こんなのも良いよね?」

 

サンタさん僕セリフ取られました。この人悪い人です。




ホモ特有の弐撃決殺(前後編構成)


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襲撃!義妹?義姉?八舞夕弦!

新年明けまして初投稿です


正月、それは新たな一年の始まりの日。

 

正月、それは社畜に許された一時の休息。

 

そんな正月に俺は今―――

 

「確信。やはり夕弦こそが姉なのです。」

 

「たっ、たまたま調子悪かっただけだし!次は大吉に決まってるし!」

 

――神社に初詣に来ていま、ちょっと待てムキになって風巻き起こすな!ちょっ――!

 

それは今日の早朝のこと。

 

年越しスレスレまで開発部で働き、帰りのタクシーで年を越した俺は死にかけで家に戻った。

 

ANIM○Xで魁!!男塾の一挙放送をうっつらうっつら観ていると突然家のベルが鳴り、耶倶矢(アイツ)の声で目を覚ました。

 

寝ぼけながらもドアを開けると、

 

「1つの物語がここに完結し、新たな物語が始まる――そう、前だけを見据えて突き進む獣の時代は終わりを告げ、その矮小な体躯に強大な敵にさえ牙を突き刺す力を秘めた獣の時代へと――」

 

まーた何か言ってるよこの娘…

 

翻訳すると、

 

「今年も終わって、新たな年になりますね、亥年から子年になりますよ」

 

ということである。

 

強大な~力を秘めたの部分は多分窮鼠猫を噛む、とかいうその後の結末が容易に想像つくエピソードから来ているのだろう。

 

それより、何故耶倶矢(コイツ)がここに…?大晦日は五河家でパーティーが開かれるはずではなかったか。

 

「おう、おめっとさん。今年もよろしくな」

 

殊の他サラッと口から出てきたことに自分でも驚きながら挨拶を返すと、何かが嬉しかったのか、少し頬を赤くしながら微笑んで、こう宣った。

 

「ふっ、仕方ないからよろしくされてあげるし!」

 

新年早々全1レベルの煽りを受けながらも質問は忘れない社会人の鑑、どうも僕です。

 

「それよか何でココに?五河(オリジナル)んとこで集まるんじゃなかったっけか」

 

俺の質問に対して耶倶矢は、少し気まずそうに目を逸らしながら答えた。

 

「いや、そのね?夕弦が「急務。耶倶矢を誑かした男がどんな人間なのか確認する必要があります」とかなんとか言ってアンタんとこに行くって聞かなくて…」

 

どんどん目の泳ぐ速度が上がっていく。

 

五輪代表もかくやというスピードで目が泳ぎ始めたその時、耶倶矢の後ろから

 

「滅殺。耶倶矢を騙し手篭めにしようとする悪漢はこうしてやります。てりゃー」

 

という声とともに鎖のようなものが伸びてきて俺の首を締めて持ち上げ――あかんこれじゃ俺が死ぬゥ!

 

 

こうして、第五精霊・八舞夕弦(シスコンのヤベー奴)はこの聖域(ボロアパート)に踏み込んだのである。




ア パ ー ト こ わ れ る
精霊がやったことだから〈ラタトスク〉から保険がおりるしまぁ、多少はね?
しかし1万字近い文章を毎日更新してる人達たまに見るけどあの兄貴たちどうなってるんですかね…
僕なんて1話につき1000~2000字が限界なんですけど


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番外編・想いを込めて貴方に捧げるチョコレート

今年もチョコレート0個だったので初投稿です。


外をみれば街を歩く人々も普段より落ち着かない様子で浮き足立った雰囲気の今日は2月14日、俗に言う"煮干しの日"…ではなくバレンタインである。煮干しくん完全に忘れ去られてかわいそう。

 

1年に1度、この世の全ての空気がダダ甘になるであろうこの日に、しかし、「ラタトスク」は大忙しであった。

 

なにせ五河家横の精霊マンションで精霊達が五河士道(オリジナル)に渡すためのチョコレートを製作していたからである。

 

元がアイドルだった誘宵美九はなにかの番組で作ったことがあり、本条二亜も以前にはイベントで配るチョコを作った経験はあるらしい。

 

耶倶矢(アイツ)は大丈夫だろう、何度か料理の腕見たことあるし。

 

問題はその他大勢(残りの精霊達)である。

 

というか主に鳶一折紙。

 

栄養ドリンクを始めとした様々な前科を持っており、チョコともなれば何を仕込むかわかったものではない。

 

つい先程も職員から止められて危なそうな薬の隠し味を断念したところだ。

アレ本当に何の薬なんですかね…

 

解き明かせない謎(知らなくていいこと)から目を逸らし、別角度のカメラの、今やチョコ製作の先生と化している耶倶矢の方を見てみると、意外と言えば失礼だが、ガサツなイメージが強かった夜刀神が存外に大健闘し、見るからに美味そうなガトーショコラを完成させていた。

 

なんだアレめちゃくちゃ美味そう…あ、食べた…食べた!?

 

思わず食べてしまったらしく、ガックリと背を落としてまた1から作り直すらしい。全部食べたのか…(困惑)

 

「よ、四糸乃っ!これ、チョコ、義理っていうか、その、と、とも…」

 

「…?は、はい、私からも、友チョコ、です」

 

「友チョコ…よ、良かったー!なにこの天使結婚したい」

 

「はぇ!?け、結婚…ですか…?」

 

他のカメラに目を向けると、ハーミット(四糸乃)ウィッチ(七罪)がお互いに完成したチョコを真っ赤になりながら渡しあっていた。

 

まーた百合百合してる…ええやん!

 

その後も鳶一が五河士道型のチョコの彫刻みたいなのを作ったり、鳶一が「ちょこにあうおいしいのみもの」を自作したり、鳶一が「プレゼントは自分だ」だのなんだの言ってダンボールに入ったりしてる内に、全員がチョコを作り終えたらしく、会はお開きとなった。

 

アイツもう出禁にしろ。

 

さて、このバレンタインの甘い波動は、しかし、我らがラタトスク開発部には届かない。

 

最近DEM社の顕現装置技術が著しく発展してきており、魔術師の数の差もあってラタトスクが押される事態が発生している。

 

よって顕現装置の開発は最優先の急務とされており、ここ開発部は「修羅の国」と化しているのである。

 

あと少し、本当にあと少しで次の段階にたどり着く…という所まで来ており、しかしそこで煮詰まってしまっていた。

そのためここ2、3週間近く残業残業アンド残業の日々を過ごす我々はもう生ける屍(リビングデッド)の様相を呈している。

 

日付が変わる少し前にようやく家に帰り着く。

 

ん…?家の明かりが付いている…このパターンは…

 

「ただいまー」

 

「ふっ、よくぞ戻ったな我が第1の眷属よ!」

 

おお…"おかえりなさい"のひと言でここまで癒されるものなのか…

 

「悪い、大分遅くなっちまった、寒かったろ」

 

「別に寒くはなかったよ、叡斗待ってるの楽しかったし、いやホント、寒くないし」

 

そう言う耶倶矢の手は、指先が真っ赤になっていたが、それでも彼女が心から笑顔を浮かべていることも伝わったから、

 

「手、貸せ」返事も聞かずに両手で耶倶矢の手を握る。

 

「わ、あったか…ありがと…」

 

やり過ぎたかと一瞬不安になったが、気にしてはいなかったようだ。一歩前進…か?

 

「やば、日付変わっちゃう」

 

耶倶矢はそう言うと、ぱたぱたとリビングに早足で駆けていく。もちろん手を繋いだ俺も。

 

そして、

 

「はい、チョコ。えっと、その、本命っていうか、もう付き合ってるし、なんて言うんだろ」

 

照れているのか目線を右上に向けたままチョコを渡してきた。

 

瞬間、なにかが溢れてきた。

 

意図せずして、だからこそ止められないその熱はゆっくりと頬を伝い、スーツの黒をもう少しだけ黒くした。

 

「えっ!?泣くほど嬉しかった!?」

 

――ずっと、自分は心のどこかで「自分はクローンである」ということを強く意識してきたのだ。

 

だから、耶倶矢をデレさせて以降ずっと「五河士道(オリジナル)と一緒にいた方が幸せだったのではないか」と自問し続けてきた。

 

だから彼女に対して常に罪悪感、と呼ぶべき感情を抱いていたのだが、きっとそれは大きな過ちであったのだ。

 

俺が抱くべきだった思いは、そんな粘ついた理論武装ではなく「絶対に五河士道(オリジナル)よりも幸せにする」、この決意だけだったのだ。

 

そうして純粋な恋心だけで彼女を見て、圧倒された。

 

可愛さの暴力である。ここまで可愛かったか、と今になって気付かされる。

 

だから、今度こそ、ここから、初恋(世界一幸せな物語)を始めよう――

 

「頑張って作ったの、その、叡斗型チョコ!」

 

鳶一折紙ィィ!出てこォォイ!




鳶一折紙とかいうギャグとガチの両方をこなせるユーティリティープレイヤー使いやすくてすき

やっぱりクローンも色々大変なんやなって…(悲哀)


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夕弦降臨!(序)

阪神が何故か首位なので初投稿です


…かくして玄関での騒動から数分後、家庭訪問(夕弦強襲!地獄級)はその場所を居間へと移し、第2ラウンドへ突入していた。

 

「……」「……」「……」

 

痛いほどの沈黙が支配する中、意を決したのか耶倶矢がゆっくりと口を開いた。

 

「それで、夕弦は何しに来たの?」

 

そうだよ(便乗)

 

実際、彼女は如何な用事でここまで来たのか。

 

わざわざ精霊マンションを抜け出してまで来るとは一体どれほど深刻な―――――

 

「宣言。耶倶矢は渡しません」

 

……どれほど深刻な―――

 

「再宣。耶倶矢は」

「聞こえてるんだよなぁ…」

 

聞こえなかったから黙った訳では無い。

 

「疑問。では何故無言なのです?」

 

「唖然としてんだよ」

 

というかドン引きしていた。

 

何食わぬ顔で人ん家突っ込んできて第一声がそれとか…

 

精霊こんなのばっかじゃないか(呆れ)

 

精霊の中でもよりによって鳶一折紙(マジキチ)を師と仰ぐだけのことはあり、こいつも大概やべーやつらしかった。

 

…いやまぁ、わかってはいたけど。

 

五河士道(オリジナル)はコイツ含め10人近くの精霊の相手を毎日してるのか…控えめに言って動物園では?

 

しかも力も強くて精霊マンションが1部吹っ飛ぶなんてザラだし、異常気象だって日常茶飯事だという。

 

改めて考えるとやっぱ精霊ってやべーわ。

 

他があんなのばっかなのもあって第四精霊(ハーミット)や耶倶矢が天使に見える。

 

本来のエンジェル?ヤバいの筆頭はポイーで。

 

……思考が横に逸れてしまったが、本題は「娘はやらんぞ」といった類のものである。

 

「いや、そうは言われてもな…」

 

「わ、我は貴様の所有物ではない!」

 

そうだ、言ってやれ!

 

「排斥。耶倶矢は黙っていてください」

「ム、ムキー!」

 

ああもうここまで動物園に…!

 

(ザザ…ザ…聞こえるか…叡斗くん…すまない、夕弦くんがキミのところに向かってしまった)

 

(…村雨解析官!?無茶ですよ!どうやってアレ鎮めるんです!?)

 

インカムから聞こえてくる村雨解析官の声に食い気味で反論する。だってこれ無理だもん!

 

(あと数分もすれば<フラクシナス>が上空に到着するはずだ。それまで持ちこたえてくれ、頼んだよ)

 

(ちょっ、解析官!待っ――(ざざー(棒)おや、でんぱが…ざー(棒))

 

それきりインカムの音は途絶えてしまう。なんてこったあの人、丸投げしやがった―!

 

「催促。いつまで待たせやがるんですかこのやろー」

 

あぁもう既に怒っていらっしゃる…!

 

機嫌をとる意味も込めてお茶を注いで居間へ戻る。

 

「とりあえず、ほいお茶」

 

「抵抗。こんな餌では釣られくまー」

 

どうやらお気に召したらしく、アッサリと釣れたので作戦は続行しとうござりまする。




クッソ久々に投稿したけど1000文字程度しか書けなくなっててカナシイ…


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夕弦降臨!(破)

夏も暑くなり始めたので初投稿です


「茶菓子もあるぞー、こたつもあるぞー、アニマックスも見られるぞ〜」

 

誘惑ラッシュで畳み掛ける。

 

「葛藤。案外いい人かも知れません…!」

 

「夕弦めっちゃ釣られてる!?」

 

姉(妹?)のチョロさに驚愕する耶倶矢(素)

 

「本題。それはそれとして…それは、それとして……」

 

あーやっぱダメか。いい作戦だと思ったんだが。

 

「やっぱり釣られてなかった!」

 

そして姉(妹?)のしっかりさに驚愕する耶倶矢(素)

 

キミ今日ずっと素だね。

 

「…そんで、結局俺たちは何をすればいいんです?」

 

「要求。耶倶矢 が欲しければ私を倒していくことです。どや」

 

………これがやりたかっただけなのでは?

 

 

―――数分後――――

 

「勝負って言うけれど、夕弦、一体何の勝負をするのかしら?」

 

婿・義姉(妹)論争はその戦場を〈フラクシナス〉に移していた。

 

そこで幾度となく我々の頭の中に浮かんだ疑問を投げかけた人こそ、〈五河琴里〉である。

 

五河琴里―あの若さにして〈ラタトスク〉の秘蔵空中精霊艦フラクシナスの艦長を任される、その身に精霊の炎を宿す少女。

 

なんでもオリジナルが最初に封印した精霊だとか。……最初に妹デレさせてるのヤバない?

 

改めて五河士道という男のヤバさを実感していたが、八舞夕弦の声で現実に引き戻された。

 

「回答。私と耶倶矢が今までに行ってきた対戦の中でも、耶倶矢がこの私に勝利した種目から選びます。耶倶矢が欲しいのならそれぐらいやってもらわなければ困りますから。」

 

言ってることはなんとなく理解できるが…

 

「ハァ…仕方ないわね。総員、準備なさい!これよりオペレーション〈チキチキ!花婿修行!(首が)ポロリもあるよ!〉を開始するわ!」

 

えぇ…(困惑)

 

……えぇ…(困惑)

 

思わず2度も困惑してしまったが、これは仕方ないと思うの。

 

だって、そのタイトル…えぇ…?

 

あーもうめちゃくちゃだよ。

 

五河妹の作戦名も、それに微塵も疑問を持たずに超スピードで準備始めてる職員たちも全く理解できない。

 

この艦どうなってんだ。

 

かくして準備はつつがなく進み、今ここに今世紀最大の花婿修行が幕を上げる―――!

 

なんてことはなかった。1回戦の"男に求められるのは安定感!積み上げろ!ジェンガ!"では、緊張からか霊力が一瞬コントロールを離れた夕弦の周りに吹く風によってジェンガが倒れて勝ち。

 

2回戦の"やっぱお金だよね!稼げ!人生ゲーム!"では、お互いが多額の借金を背負いながら泥沼の戦いをくりひろげ、最終的に株の暴落によってギリギリ夕弦の借金額が-5億を超え、-4億だった俺がギリギリで勝利した。

 

…いずれも、俺の力は何ひとつとして証明されていない気はするものの、既に勝ち越しを決めてしまっていた。

 

「賞賛。……くっ、なかなかやりますね」

 

「これ夕弦がダメなだけじゃない?」

 

「…夕弦、こんなんだから耶倶矢と戦績イーブンだったのね、ようわく謎が解けたわ。」

 

実際、どうしてこのポンコツ耶倶矢が夕弦と50勝50敗だったのかまるで理解できなかったが、今回の件でようやく得心がいった。

 

この精霊、なかなかにポンコツである。

 

「憤慨。こんなんとはなんですか、こんなんとは」

 

そんな彼女の声も届かず、最終ラウンドが開始される。

「最終ラウンドは、"耶倶矢についてくわしいのはどっち!?なぜなにカグヤちゃん!"タイトル通りクイズ対決ね」

 

「えっそれは…」

 

「タイトル通りクイズ対決ね」

 

謎の圧力によってこちらの意見は押しつぶされた。

 

「ちなみにここで勝利した方には3ポイントが与えられるわ。夕弦にとっては逆転のチャンス、そこのにとっては大差勝ちのチャンスってわけね」

 

……よくあるクイズ番組かな?三本勝負で大差勝ちってなんだよ(困惑)

 

「第1問!耶倶矢が自分のことを評する際に用いる二つ名は?」

 

…こりゃ簡単だ、まったく先が思いやられる。まぁなにはともあれ、

 

「回答。ぐふ〜のみこ(笑)」

 

「まあ、これはな…ぐふ〜のみこ(笑)」

 

「待って!?(笑)ってなに!?」

 

取れる問題を確実に取っていこう――




ついに我らが琴里ちゃんが参戦。
クッソ書きやすいツンデレキャラいいゾ〜
今月中に次話投稿出来れば…


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夕弦降臨!(急)

オレ今月2本目の投稿していースか?師匠…(コキ…


………絶望していた。

 

1問目を終えた時点では楽勝だろうと踏んでいたが、まさかここまで難しい問題ばかりとは。

 

やれ「耶倶矢の現在の体温は?」だの

 

「耶倶矢のスリーサイズは?」だの

 

とてつもなく難しい問題たちに完全に打ちのめされていた。

 

無理スギィ!あまりにも無理スギィ!

 

10問中9門が終了した時点で俺たちのスコアは2対2と拮抗していた。

 

…9問終わってこのスコアとかクイズ番組だったらお茶の間ヒエヒエ待ったなしなんですがそれは…

 

「さぁこれが最後の問題よ!第10問!耶倶矢の1番大事な人は誰!?」

 

…むむ、困った。ここにきて適度な難易度の問題。

 

さすがに最終問題と言うだけあって難しいことは難しい。

一体アイツの大事な人とは誰なのか…!?

 

一緒にいる時間が長いのは間違いなく夕弦だが、えっと、その、一応俺もパートナー、な訳だし…?(テレテレ

 

「辟易 そんなにクネクネしていては何を考えているのか丸わかりです。」

 

見抜かれてしまった。反省しなければ…でもなぁ…(クネクネ

 

「………(じとー)」

 

……おふざけはここまでにして、そろそろ真面目に考えなければ。

 

――――「制限時間終了よ!さぁ2人ともペンを置いてちょうだい!」

 

五河琴里の声に、お互いにペンを置く。

 

考えられることは全て考えた。あとは自分の解答(こたえ)を信じるだけだ――

 

「両者、フリップを同時にあげなさい!せーの!」

 

「回答 叡斗さん」

 

「まぁ、普通に考えて夕弦だろ」

 

……それぞれがお互いを答えに挙げるというなかなかアレな結果となったが、実際俺たち以外にアイツと仲良い存在が思いつかないしまぁしゃーない。

 

「疑問 何故私なのですか 貴方の方が信頼されているのでは?」

 

「いや、どう考えたって姉妹の方選ぶだろ。流石に家族かこ、恋人かって言えば家族だろ」

 

もっとも、俺も耶倶矢も親は居ないためよく分からないところもあるのだが…

 

「落ち着きなさい、2人とも。今議論した所で答えは変わらないわ」

 

「む…」

「反省 ごめんなさい」

 

むむっ、即座に謝れるあたりあちらの方が人間性ができているのでは。

 

「まぁ、何はともあれ正解発表!正解は――「みんな大事」よ!」

 

………いや、どっちもハズレかーーい!

 

思わず新喜劇みたいな激寒ツッコミが飛び出したが、これで引き分けが確定し、俺の勝ち越しも決まった。

 

「よって勝者、叡斗!」

 

嬉しいなー(棒)

 

「落涙 悔しくなんかありません。ひぐっ、えっぐ、カグヤぁ…」

 

なんかめっちゃ泣いてる!?そんなに悔しかったの!?

 

「再起 貴方は魔術師(ウィザード)であるとか」

 

「まぁ、確かに俺は魔術師だが…まさか」

 

なんか嫌な予感がする(数分ぶりn回目)。

 

甲子園強豪校ぐらい嫌な予感してるやんけ!

 

「布告 そのまさかです 勝負(ガチンコ)です。かかってきなさい」

 

彼女はキメ顔でそう言った。

 

……普通、そっちがかかってくる側では?




ちなみに主人公くんに耶倶矢の霊力が封印されているため、令音さんの計画は既にルートを外れてしまっています。令音さんが主人公くんから霊結晶を無理矢理摘出する可能性も微粒子レベルで存在している…?


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颶風乙女(ワルキューレ)は止まらない

いつの間にかマクロスΔの劇場版が公開されていたので 初投稿です


「ガチンコって言ってもお前、霊力封印された状態でどうやって戦うんだよ…」

 

確かに霊力を封印されていても、感情を爆発させることで一時的に霊力を逆流させて天使を顕現させることは可能であるらしい。

 

しかし、俺も非常勤とはいえこれでも万全の状態の精霊を相手取ってなお問題なく討滅できる一線級の魔術師(ウィザード)である。

 

率直に言ってしまえば、勝負として成立するかも怪しいのだ。

 

しかし、

 

「否定 私自身は霊力を封印されてはいません」

 

なんて、驚愕の事実をあっさりと口にして見せた。

 

「――――――――」

 

思わず唖然としてしまったが、よく良く考えてみればあの時に俺が霊力を封印したのは耶倶矢だけだ。

 

どんな仕組みかはわからないが、耶倶矢の封印に成功した時点で第五精霊・八舞姉妹の現界による騒動〈八舞テンペスト〉は収束を見た。

 

2人でひとつの精霊であったことから、耶倶矢の封印によって厳密に言うと精霊としての力には足りなくなってしまった事が原因と考えられる。

 

要は、精霊に1歩足りない存在と言ったところか。

 

「あー、そういやお前俺ん家の玄関で鎖使ってたっけか」

 

思い出すだけで少し首の痛みが蘇ったような気がして、些か顔をひきつらせながらちょっとした皮肉を言ってみる。

 

「肯定 あれが私の天使の力です。えっへん」

 

なんか偉そう。なんだコイツ可愛いな。

 

「……ほーん。てことはなに、お前にも出来たりするの」

 

「カカカ、当然!夕弦に出来て我に出来ぬことなど無いわ!」

 

なんか偉そう。なんだコイツめちゃくちゃ可愛いな。

 

……この姉妹の可愛さはともかく、ガチンコ自体は問題なく行えそうだ。

 

「まあ、それならいいけど。五河司令、場所はどうします?」

 

「問題ないわ。〈ラタトスク〉本部 トレーニングルームを貸し切ったわ。転送なさい!」

 

……だから、準備良すぎない?

 

――――――――――――――――――――――

場所は変わって某所、〈ラタトスク〉トレーニングルームにて、魔術師と精霊が対峙する。

 

互いに数秒ほど相手の出方を伺いながら、奇しくも同時に地を蹴った。

 

ここに、戦いの火蓋は切って落とされた―――

 

が、……その瞬間、耳のインカムから不本意ながら聞きなれてしまった声が。

 

「……分かっているとは思うが、いくら万全に近い状態とはいえ彼女では君には到底敵わない。だから君の顕現装置(リアライザ)の出力を約半分ほどカットしておく」

 

「村雨解析官!?どうして始まる前に言って下さらないんです!?」

 

「ぶつん、ざーざー(棒)」

 

まーた丸投げしやがったー!いや出力半分て!

 

…こんなことを言っている場合ではない。

なにせ、

 

「突撃 てやー。」

 

相手、爆速で突っ込んで来てるし――!

 

「速攻 先攻ガン有利です…!」「っと……!」

 

なんとか躱したものの、やはり感覚が普段と違いすぎる。

 

一方で相手と言えばまたも何か言いつつ突撃をかましてくる。

 

「辟易 こんなものですか、と夕弦は夕弦は呆れてみたり」

 

なんか混ざってるゥー!

 

ギリギリでワンキルを回避。持っててよかった、灰流うらら。

 

などと言っている場合ではない。

 

顕現装置(リアライザ)の出力半減も勿論だが、相手(夕弦)が想定よりもずっと疾い。

 

流石は神速の天使〈颶風騎士〉(ラファエル)

 

風を纏った砲弾がほぼ認識と同時に着弾するようなものだ。

 

一刻も早くCRユニットを着装しなければ…!

 

このままでは防戦一方、すり潰されてゲームエンド。

 

どうにかして隙を作れるか―!

 

「哄笑 えっへん。これが精霊の力です ははー」

 

なんか自分から煽りフェイズに突入してくれたのでとりあえずヨシ!

 

顕現装置(リアライザ)に魔力を叩き込んで光を発生させる。

 

「!?」

 

即席のスタングレネードではあるものの、これだけの隙があれば十分……!

 

「来い!〈希望皇〉――――!」




初めての真面目(大嘘)な戦闘パートです
経験ないから描写下手なのもお兄さん許して


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颶風乙女×アムネシア

ファンタジアリビルドがサ終したので初投稿です。


「哄笑 えっへん。これが精霊の力です ははー」

 

相手は防戦一方。戦局は私に傾いている。

 

そう考えた彼女は先程までの鬱憤もあって思わず煽りフェイズに突入。

同時、相手が顕現装置(リアライザ)に魔力を叩き込むのを見て反射で回避にスイッチを切り替える。

襲い来るであろう攻撃を回避し、反撃を叩きこむ――

 

身構えたものの、想定していた攻撃はやってこない。

不審に思い眉根を寄せると、一拍の(のち)、光と音が五感を殴打した。

 

「!?」

閃光が眼を灼き、轟音が耳朶を叩く。人間ならばとても立ってはいられない音と光の奔流は、しかし、

 

「憤慨 こんなものが、精霊(私たち)に効くとお思いですか

…!?」

 

精霊である自分が、膝をつくことなどありえない――!

言って、気付く。

相手は〈対精霊〉の専門家(スペシャリスト)であるところの魔術師。通じないことの分かっているような手を打つだろうか?

 

何より今、あの男(叡斗)、笑っていた、ような―――

 

「来い、〈希望皇〉――――!」

 

瞬間。希望の光が〈ラタトスク〉を呑み込んだ。

喚ぶ声と共に顕現せし穢れなき白亜の城。

全ての望みを託されし白き翼はためかせ、

見るもの全てを威圧する荘厳な白銀と世界を遍く照らし出さんとする黄金の鎧こそまさしく、

 

「――希望皇。…現ラタトスクにおける魔術師最高戦力よ」

インカムから琴里の声がする。

思えば今までに幾度と戦ってきた魔術師は皆何かしらの鎧を纏っていた。なるほど道理で手応えが無かったわけである。

 

では、ここからが本番ということか。

自分が上を取っているのにも関わらず、狂おしく光を放ち続ける雄大な月を見上げているような。

 

威圧感に震えそうになる身体を無理やり押さえつけて、彼女(夕弦)は静かにスイッチを全開に切り替えた。

――――――――――――――――――――――――――

自らの身体に見慣れたCRユニットが着装されるのを確認。

手を握ったり開いたりするのと同時に随意領域(テリトリー)の展開も行い、動作を確認する。

 

認識と寸分の狂いもなく動作する相棒に安堵し、上空に佇む超常(精霊)を見据える。

 

「悪いな、時間とらせて」

 

「回答 気にする必要はありません。」

 

さあ、反撃開始だ。あまり人間を無礼(ナメ)るなよ……!

 

随意領域(テリトリー)でもって自らを浮遊させ、(ソラ)を舞う精霊と今度は真正面から対峙する。

 

数瞬の(のち)、両者が同時に動いた。

凄まじい風圧と共に唸りを上げて眼前に迫る天使の鎖。

腰部の魔力砲をスライドさせ即座に照射、鎖を撃ち落とす。

 

続けざまにチャージを完了させた肩の魔力砲を放つ、が、翼を前方に展開し、弾かれた。

「その翼、盾にもなるのか…」

あの機動力では遠距離からの砲撃は命中させるのも一苦労だろう。

それも命中しても防がれてしまうと来た。

 

ならば、

「距離を詰める…!」

迫る空気の砲弾の雨の中を突っ切って相手に一太刀浴びせるしかない―!

 

放たれる鎖は不規則な軌道を描きながら、それでも寸分の狂いなくこちらを打ち据えんとまるでそれ自身が意志を持つかの如く迫り来る。

 

クソ、距離が全く縮まらない…!

常に有利な距離を維持してくるあたり結構戦い慣れてるなコイツ…

 

こうなったらアレをやるしかない。

人呼んで「叡斗スペシャル」、多分呼んでるの俺だけだと思う。

 

両肩と両腰の魔力砲をそれぞれチャージして叩き込む――

「? ここで出力勝負ですか…!」

しかし相手も並ではない。

鎖を壁のように前面に展開し、真っ向から受け止める。

 

着弾すると同時、凄まじい爆風が発生。

その衝撃と反動でもって相手との距離を大きく離しながら、すかさず左右四対(よんつい)、計八枚からなる翼を射出。

 

魔術師の指示を受けた翼がそれぞれ魔力砲を放ち、あるいは霊力の刃を展開し突貫する。

 

「!? 苦戦 なんですかこの武装は…!」

うめきながらも、冷静に翼を防ぎ、躱し、撃ち落としてくる。

いや、ホント強ぇなアレ(夕弦)… だが…!

 

「撃退 これで最後です…!」

最後の翼を撃ち落とさんと走る鎖。

瞬間。最後の翼が大爆発を引き起こした。

 

そう。あれなるは我が奥の手、やけくそメガンテよ…!

本日2度目の目くらましだが、今回は先程の即席スタングレネードとは訳が違う。

初めから目眩しを目的に作られた武装である以上、即座に対応は出来ない。

 

爆風でもって視界を奪い、奇襲をかける…!

これも耶倶矢のため…

精霊よ!卑怯とは言うまいな!?




今回は真面目(偽りなし)な戦闘パートその2です
読者兄貴ほんとに感想ありがとナス!
すげぇ励みになってます

ちなみに〈希望皇〉の設定です
霊魔複合式超大型レイザーブレイド「ルーツ」
収束複相魔力砲「レイ」
志向型随意領域展開武装「ビヨンド」
霊力追従式機動兵翼「ドラグナー」
肩部充填式魔力砲「ヴィクトリー」
精霊兵装・伍式「ライトニング」
それぞれ元ネタがあるから気になった兄貴は調べてみて♥


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最速で、最短で、まっすぐに、一直線に

贔屓球団がシーズン開幕以降まだ一勝もしていないので初投稿です


飛来した8枚の光の羽根。

それぞれが意志を持つかの如く巧みに囲い、あるいは逃げ、そして攻めてくる。

お互いの隙をカバーしながら最適な位置を常に確保する連携は見事と言う他ない。

しかし、自分も精霊である。あの魔術師(人間)が相手ならばともかく、こんな機械の翼なぞには負けられない…!

 

迫り来る霊力の刃を紙一重で躱し、その隙を庇いに来た翼をそれ以上の速さで以て撃ち落とす。我こそは颶風の騎士、速さにおいて並ぶものなどあろう筈が無い―――――!

 

持てる力の全てを動員し、次々と光の翼を地に堕とす(撃破する)

 

「撃退 これで最後です…!」

 

7基の翼を堕とし次が最後、というところで最後の翼が一瞬不自然に硬直する。とてつもない違和感を覚えながら、しかし鎖は止まらない。

放たれた鎖は正確無比に最後の黒い翼を貫き、瞬間、膨大なまでの魔力が放出された。

 

「なっ……!?」

 

視界を覆う魔力の奔流。それと同時、爆風を突き抜けて向かってくる影がある。

鎖は伸びきってしまっており、防御には間に合わない。

……結果として、彼女に取ることの出来る選択肢はただ1つであった。

―――――――――――――――――――――

翼を囮にしたのは目眩しのためだけでは無い。

身体の中を巡る耶倶矢の霊力を擬似霊結晶(デミ・セフィラ)に充填させる時間を稼ぐ意味もあった。

――精霊兵装・伍式(ライトニング)

第五の精霊・八舞耶倶矢の霊力による颶風を纏い、超高速での突貫を可能とする装備である。

まさしく人ならざる力を用いる代償に、第五の精霊は一定時間の飛行の不可を要求した。空を自由に飛び回ることは我ら精霊にのみ許された行為である、というものである。

故に、この一撃は絶対に外せないし、外さない。

そのために奴の鎖を引き出したのだ……!

 

「俺と一緒に落ちろ、精霊!」

 

「あ――――――」

颶風を纏い、空を舞う精霊に向けて放たれた一条の光の矢。裂帛の叫びと共に一瞬で目標(対の元)に到達した矢は、爆風を巻き上げて精霊の翼を粉砕した。

 

――――――――――――――――――――――

「あ――――――」

 

凄まじい衝撃を受けて砕かれる自らの翼を見て、自らの敗北を悟る。よもや一度ならず二度までも目眩しにしてやられるとは。

翼を失い、ろくに姿勢も保てぬまま重力に身を委ねる。

 

「おい…生きてるか」

 

聞こえてきた声に横を見ると叡斗がこちらに手を伸ばしている。……なんだか癪なので無視することにする。

 

「つーん」

 

「つーんてお前…えぇ…?今俺たち割とピンチなはずなんだけど…?」

 

この男はそもそもここからどうやって助かろうと言うのだろうか?

 

「疑問 手を取ってどうするのですか」

 

「んなことは決まってる。こうするんだよ、助けて耶倶矢さぁん!」

 

強引に手を掴まれた。

その事に非難の眼差しを向けようとして、出来なかった。

どうにも繋がれた手の方が気になって照れてしまうから、また明後日の方向を向いて誤魔化すことにした。

今回限りはクール枠(自称)な私が照れてしまうのも許して欲しい。

……………だって、そんな。

『俺と一緒に地に落ちろ』なんて、それは、プロポーズ以外の何物でもないのだから。




くぅ~疲れましたw これにて真面目(大嘘)なバトル完結です!
(正直そこまで自信は)ないです
本作における夕弦は割とポンコツ感を出しているつもりですが、どうでしょう。ちゃんと可愛く書けてましたかね…?
ちなみにサブタイトルは一直線(物理的)に突っ込んでいく様子から付けました


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