ARMOREDCORE compensation (天武@テム)
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Prolog : Welcome to the earth
注意点
※原作に沿ったIFストーリー ※IF設定・オリジナル設定 ※オリジナルキャラクターあり ※オリジナル主人公≠首輪付き 以上の項目を許容できない方は見る事はお勧めできません。 全部OKな方はご覧下さい
「━━━ごめんね、コスモス、兄さん、お姉ちゃん、グレイ、皆………僕は、行くよ」
『……本当に良かったんですか?』
「うん、いいんだ。これが僕が出した「答え」なんだ、もう迷っていられない」
『でも……!まだもっといい答えがある筈ですよ…!お兄様達と相談して…』
「いいんだ、自分で出した答えなんだ、僕は後悔しない。行こう、サクラ」
『………はい』
黒いネクストは航空プラットフォームクレイドルの心臓であるアルテリアへ向かうトンネルを抜けると、二機のネクストACが待ち構えていたが、黒いネクストの仲間というわけでは無さそうだ。黒いネクストはあの2機のネクストと対峙するであろう。それがあの子が出した答えなのだから━━
━━━企業間の大戦、リンクス戦争から十数年、人々はコジマ粒子で汚染された大地を逃れる為、建造された航空プラットフォーム「クレイドル」に避難し人々は高度約7000mの空で清浄な生活空間を見出していた。現在人類の過半数がクレイドルに住んでいる状況となっていた。
一方大地は資源基地と、それを巡る戦いの舞台に過ぎなかった。 企業が国家に代わって地上を支配するきっかけとなる、国家解体戦争の原動力であり、企業の力の象徴でもあった人型兵器ACネクストと、その搭乗者リンクスは、 その圧倒的戦闘力の個体依存性に危機感を抱いた企業により、企業機構「カラード」の管理の下傭兵として地上に残された。
今や企業軍の主力は巨大兵器アームズフォートであり、かつての戦場の支配者であったネクストは、薄汚れた大地で延々と続けられる経済戦争の尖兵と成り果てていた。
そして今、経済戦争の尖兵の仲間入りを果たさんとするパイロットが出現しようとしていた………
「━━聞こえる?ミッションを説明するわ。依頼主はGA(グローバルアーマメンツ)社、目的はインテリオルユニオンのミミル軍港の襲撃。駐屯してる艦隊や基地を破壊してっていう単純な仕事よ。でもあっちから時間指定されたからちゃっちゃと終わらせてね。そうそう、そのミミル軍港には新型AF(アームズフォート)があるって言う噂よ。もし、あったらボーナスしてくれるってさあったからいいわね。説明は以上よなにか質問ある?」
コクピットの中から女性の声が聞こえる。どうやら女性は管制室で話していて、紅色の機体に乗ったパイロットはそれに応える
「特に質問はないよ。ノアさ…」
「お姉ちゃん」
「お、お姉ちゃん……」
「はぁ……いつまで経っても直らないわね、もう家族になってからかれこれ10年は経つわよね?」
呆れ口調で話す彼女はノア、紅色の機体に乗るパイロットの義姉であり専属オペレーターである。
「あはは……」
それに対してパイロットは気まずそうに苦笑しながらもコクピット内で機体の準備をしている。コクピットは狭く、コクピットシートは傾斜になり1人が限界な造りになっている。
「もうすぐハッチ開けるわ、準備は出来てる?」
「うん、大丈夫」
「分かったわ、武!ハッチを開けて!」
ガレージの管制室の青年、もとい武にハッチを開けるように支持する。
「こっちはもう準備は出来てる、ジン!お前の初仕事だ、気張れよ!」
武は管制室からハッチを開き始めると、紅色の機体が見た目の割に軽い金属音を響かせながら歩き始める。
どうでしょうか?わかりやすくなっているのでしょうか?
次回は1.5話となってます、言わばオリジナル設定の解説回ですね?
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chapter 1- 1.5 「パートナー」
主人公のジンのネクスト「紅桜」には特集なAIが備えられております。ストーリー自体はあまり進みません
chapter1-1.5
「作戦領域まであと2キロ……サクラ、準備はいい?」
「………Zzz」
コクピットのサイドモニターから、寝息が聞こえる。
「…………サクラ!」
ジンは少し声を張り上げると
「うひゃあ!?はい!?」
線の細い少女が驚いた声がコクピット内に響く
「そんなに驚くことないでしょ……」
「お、驚きますよ…寝てたんですし…」
「ごめんごめん、でも作戦領域に到達するからね起きとかなくちゃね」
「もう初の依頼ですか……?」
少女の声が放たれる度にサイドモニターから波形が出てくる。サクラと呼ばれた彼女はアーマードコアネクスト(以後ネクスト)「紅桜」であり紅桜の人格媒体である。人格媒体はネクストがパイロット認証した際に出来上がるものであり、紅桜に乗る者以外はネクストの例外を除いて人格媒体は聞こえない。脊髄や延髄を経て脳とACの統合制御体が直接データをやりとりをするネクストに搭乗する際に必須マシン・生体制御システム。例外として紅桜のパイロットであるジンはAMSが特殊であり、どういうわけか機体と繋がってなくても聞こえる。
「ほ、ホントだ……」
「ね?だから、サポートお願いね」
「はい!若様の為に頑張ります!」
サクラは元気よく返事をする
「若様はやめてってば……名前でよんでって言ってるじゃないか…」
「それはなりません!私はあなたに仕えるただの遊撃士、私が若様の名前を呼ぶなんておこがましいにも程がありません!それにあなたは叢雲家の数少ない跡取りなのですよ。」
「そんなことないって言うのに……」
「横から失礼、好きに呼ばせたら?ジン」
ジンはうなだれていると、通信機からノアの声が聞こえてくる。
「ノア……お姉ちゃんまで……」
「別にいいじゃないの、あの子がそう呼びたいんだし。そういう風に呼ばれる事なんてそうそうないわよ。それに……言っても無駄だと思うわ、このやり取り何回目?」
「えっと、確か7回目」
「はぁ……7回も言ってダメだったら諦めなさいよ」
「えー」
「えーじゃないわよ、ほら任務に集中しなさい。」
「………はーい」
ジンは不満そうに返事をし操縦梶を握り直す。
「作戦領域に入ったわ、ミッション開始よ」
レーダーは作戦領域を囲んだ線が表示され、緑の三角はその線を超える。つまり、紅桜が作戦領域へ入ったのだ。
紅桜の目の前は空母や駆逐艦が駐屯していて、ネクストが来ることを知らなかったのか慌てて主砲を紅桜へ向ける。
「ノア様のオペレーティングシステム起動を確認、オペレーティングシステムとのデータリンクを試みます………接続完了しました。本機の耐久値、AMSキャパシティ、パイロットのメンタルヘルスデータを送信します」
サクラはノアが使うオペレーティングシステムとデータリンクを行うと、ノアの周囲に複数のウィンドウが現れて紅桜の各部分の耐久値、パイロットのAMSキャパシティ、メンタルヘルスデータが表示される。いよいよ、ミッションが始まろうとしていた。
原作と違ってラインアークを襲撃せずにミミル軍港へ襲撃する事になってます。
次回はミッション中の話なので戦闘が中心になりますね
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ARMOREDCORE compensation 設定集
オリジナル設定のほかに、原作の設定と変わって独自の考察も含まれています。
原作と同じ設定があるので、わからない方はこちらを↓
http://www.armoredcorefan.com/acpedia/index.php?FrontPage
キャラクター紹介
「ジン=叢雲」
年齢 15
身長 150cm
紹介
特異なAMS適正を持っている、独立傭兵の少年。幼少期は母と2人で有澤のコロニーに住んでいた民間人だったが、リリアナに襲撃され、リーダーのリンクスに殺され、母親の仇を取るためにリンクスになる。後に親戚に厄介者扱いされ、引き取り先をたらい回しにされるのが嫌になって家出したところを有澤コロニーで仲良くしてくれたフレンダム家に拾われ、養子となる。よってフレンダム家の長女であるノア=フレンダムとは義理の姉弟の関係となる。
15になった時、武が帰ってきて、ノアと武にリンクスになることを話す。
2人は最初は反対したが、説得の末にリンクスになることを許してくれた。
武にはテストパイロット時代に乗っていネクストを受け取り、晴々リンクスとなった。
艶やかな黒髪短髪に中性的な顔つきで、一件少女のように可憐な顔立ちをしていながら、年相応のリアクションをしたり、思春期ならではの純情な一面もある。
「武=叢雲」
年齢21
身長 175cm
紹介
ジンの兄であり元リンクス。レイレナードの最年少テストパイロットとして活動していた過去を持つ。リンクス戦争時、レイレナードを襲撃しに来たアナトリアの傭兵と交戦し、重傷を負い、長時間ネクストに乗れない身体となっている。また、右腕を失っていて金属製の義手をしている。レイレナード本社にいた父を失い、1人で故郷である有澤コロニーへ戻り、ジンと再開する。
今では、ミッション中の指示、機体のメンテナンス等をしたりしてジンを陰ながら支援してたりしている。
黒髪ハネっ毛でジンとは違って男らしく、顔立ちが整っている。右頬を十字傷を負っていて、同じレイレナードのテストパイロットである真改と真剣での手合わせの際に負った傷である。
ノア=フレンダム
年齢 24
身長172cm
GAにAMS技術を提供する企業AEGテクニカを経営するフレンダム家の一人娘であり、ジン=叢雲、武=叢雲の義理の姉でもある。有澤コロニー出身ということもあり、幼少の頃からジンとは仲が良く、今と変わらず弟のように接していた。コロニー襲撃の際、父と共に避難していて逃げ遅れたジンの無事を祈っていた。
今ではジンの傭兵業を支える為にオペレーターとなり、武と同様ミッション中の指示、依頼の受諾などを行っていたりする。
金髪ロングで、綺麗な顔立ちとしていて、AEGテクニカの顔としても活躍していたりする。
「サクラ」
ジンが乗るネクスト、紅桜に備えられてあるレイレナード製の戦闘補助AI。
サクラのイメージ像はないが、少女のような声をしていて、本物の人間のように喜怒哀楽があったりする。パイロットであるジンを慕っていて、戦闘中はジンと協力して戦う。
「紅桜」
ジンが乗るネクストで、ヘッドパーツをHOGIRE(オーギル)、コアパーツをSOLUH(サラーフ)に変更されている以外レイレナードの標準機体であるAALIYAHと同じである為、機動戦を得意としている。
・AEGテクニカ
アスピナ機関と同様、AMS技術の研究をしている企業。GAとは提携関係であり、ニューサンシャイン開発(NSSプロジェクト)をする際技術提供を行っていた。適性が低いリンクスでも乗れるように低負荷になるように日々研究している。
コスモス=ノイン
年齢18
身長167cm
ローゼンタール社に所属するリンクスであり、代表の娘である。
天真爛漫な性格で、ジンとは昔馴染みであったが。リンクス戦争が始まった頃に絶縁となってしまうが、ひょんな事からまた再会することになった。
リンクスとしての適性は非常に高く、1度ローゼンタール社内の精鋭小隊の指揮官に抜擢されたが断っている。
エリカ=ノイン
年齢22
身長165cm
コスモスの姉であり、ローゼンタール専属のリンクス兼技術者でもある。
表では、次期代表として相応しくお淑やかな態度を見せているが自分より下と見ている者や知った仲の前では天真爛漫なコスモスに反して、ツンとした態度を出す面がある。
しかし、技術者やリンクスとしての能力は非常に高く。新世代機のLANCELフレームの設計者の1人でもある。
だが、コスモスと比べればリンクスとしての能力は低く、そのせいで両親からあまり愛されず、天真爛漫なコスモスにコンプレックスを抱いている。
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chapter1-2「ミミル軍港襲撃」
「ミッション開始、制限時間内にミミル軍港の敵部隊の排除。アームズフォートを発見次第、すぐに破壊して」
ノアが声をかけるのと同時にジンはQB(クイックブースト)を駆け、一番近くの駆逐艦と距離を詰める。そして、左手に装備してある刀身よりも攻撃力を重視したレーザーブレード「DRAGONSLAYER」で駆逐艦の装甲を切りかかる。駆逐艦は呆気なく装甲を切断され轟沈すると同時に爆発する。紅桜は視界の斜め前にいる空母に向かってQBをし、空母をブレードで斬り轟沈させる。制限時間は約5分、ジンは次々とブレードで轟沈させながら進んでいく。
━新型AF(アームズフォート)内部━
乗組員達が忙しなく動いている。
「出撃準備はまだか!!」
艦長席に座る司令官は操縦席に座る乗組員に言う。
「まだ燃料の補充、ミサイルの装填がまだです!」
「あとどれくらいかかる!」
「約三十分です」
「急がせろ!もう山猫はこの港に来ているのだぞ!!」
怒鳴り声を上げ、部下に指示を送る。
「艦長!通報艦から通信です!」
通信席に座る乗組員が、艦長の方を向きながら
「……繋げ」
この忙しい時にわざわざ送るとは何事と思いながら顔をしかめる。
乗組員が通報艦と通信を繋ぐと、管制室の右上にあるモニターに切羽詰まった表情をした通報艦の乗組員が映り。
「艦長!我々の軍港がネクストによる襲撃されてます!既に駆逐艦、戦艦が9隻失われてます!」
「なんだと!?ネクストは今どこにいるんだ!」
「現在エリアBへ進行してます!ここままでは全滅してしまいます!どうか我々に撤退の指示を!」
「くっ……GAめ…新型AFスティグロの存在を嗅ぎつけてたか……忌々しい……蛮人如きが……いいか!蛮族の飼い猫如きに背中を見せるな!対ネクスト弾でプライマルアーマーを減衰させろ!」
「りょ、了解で…う、うわぁぁ…!!?」
通報艦からの通信は紫色の光で覆い尽くされるそして間髪も入れずに画面に砂嵐になる。どうやら、通報艦はブレードによって轟沈させられたようだ。
「………艦長、通報艦からネクストの場所をマーキングしたマップを頂きました。スグにモニターに映します。」
通報艦から轟沈する前に受信したデータとモニターを照合したマップが、ホログラムになって映り、ミミル軍港の全体図が映る。ミミル軍港は入り江の一本道を基本とし窪みや崖を削って利用し作られている。一本道のその先には作られた戦艦の収納する格納庫がある。その先には、巨大な空洞化されている場所に、戦艦とノーマル等のミミル軍港を主力部隊が集まっている。そこには新型AFも格納されていた。
軍港の入り口をAポイント、窪みをBポイント。中心戦力が集まる場所を、Cポイントと表記されている。Aポイントに配置されている戦艦は全滅し、ネクストはBポイントへ接近している。
「…………各員!出航準備を急げ!!」
艦長は歯ぎしりをした後声を荒げ、全乗組員に告げた。AF「スティグロ」はブースターを点火し出航準備を始めていた。
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chapter1-3 「Join the Scouts」
紅桜はマシンガンとレーザーブレードを駆使してミミル軍港に駐屯する艦隊を撃破していく。
「エリアΑ熱源なし、この辺りはもう片付いたようね。他に向かってあと4分よ」
管制室でジンをオペレートしているノアはミミル軍港の全体図が表示されているエリアレーダーを確認し、熱源が消滅したのを確認しジンに指示する。一本道となっており道の途中にある少し大きめの港をA.B そして、1番奥であり1番敵部隊が集まっている1本道をCと表記されてある。赤い点は敵部隊を意味し、Aと書かれてあるエリアは赤い点が見当たらない。
「りょーかい、次はエリアΒ?」
「ええ、一本道だから迷わないでしょ?」
「いくら方向音痴でも、流石に一本道道じゃあ迷わないよ。」
「そうよね、じゃあ急いで。」
「わかったよ」
ジンは返事をするとネクストのコアパーツに内蔵されてある大型ブースター ユニット【オーバードブースト】を起動し、移動しようとする。一本道の先にいたノーマルはレーザーライフルを紅桜に向けて撃ち始める。ジンはOBと止め、コクピット下の左側にあるペダルを踏む。そして、ブースターを瞬発的に高出力で噴射して短距離ダッシュをするQB(クイックブースト)を使い一瞬で左へ避ける。
しかし、ブースター自体が高出力なのと横の幅が狭いため崖の中腹に衝突する。紅桜は崖の衝突により硬直するが、ジンは一瞬呻くが、躊躇わず左トリガーを引く。左肩に装備してあるプラズマキャノンを撃ちながら右手に装備しているライフルで集中攻撃をノーマル浴びさせるに。すると、ノーマルはプラズマキャノンにより装甲が溶かされていき、ライフルが複数の穴が空きその場に沈んでいく。近くにいた潜水艦がにげようとする。
QBで接近し、レーザーブレードで潜水艦を轟沈させたる。一本道を抜けエリアBに到達すると、港の真ん中に配備されてある軍艦3隻の内真ん中の戦艦をプラズマキャノンとライフルで数発撃つ。すると、戦艦は爆発し周りの2隻は爆風に巻き込まれ3隻全て轟沈する。
その後右側に駐屯しているノーマル2機を接近しブレードで撃破した後、紅桜に機関銃で弾幕を放ってくる艦隊3隻をスラッグガンとライフルを弾幕を避けずネクストの防御機構【プライマルアーマー】でダメージを軽減しながら同時に撃ち3隻共轟沈させる。続けて、基地に駐屯しているMT(マッスルトレーサー)を接近しながらライフルで撃破。レーダーには赤い点は表示されていない。ジンはレーダーを確認し、駐屯している敵艦隊のQBを使用しその内の攻撃してこない敵艦に接近しブレードで轟沈させる。すると、敵艦から爆発が起こり紅桜が巻き込まれる。
「きゃあっ…!?ご主人、大丈夫!?」
サクラは心配そうにジンに声をかける
「大丈夫だよ…!サクラこそ大丈夫なの?」
「はい、この程度、全然耐えれます!」
「そっか、あの半分だ。頑張ろう」
「はい!」
サクラは元気よく返事する。
「だけど、どうして爆発が起こったんだろ…?」
ジンは疑問に思う、今までブレードで攻撃した戦艦の爆風でダメージを受けることはなかった。だけど何故あの戦闘だけ爆発が大きかったのか……ぐるぐる思考が巡り、紅桜の動きが止まってしまう。そんな中ネクスト内に備えられてあるモニターから聞き覚えのある男性の声が聞こえる。
「あー、聞こえるか?さっきのは輸送艦だ」
武の声だ、武はそのまま話し続け
「恐らく輸送してきた燃料でも入ってたんじゃないのか?」
ジンは紅桜を操縦し続けながら話し
「そうかもしれないね、うーん……これじゃあブレードをあんまり乱用できないね……」
「空母以外で攻撃してこない敵艦を目安にしたらどうだ?」
「うん、そうだね。そうしてみる」
「あ、そうそう、いよいよ大詰めだ。その先は敵が集中している。気をつけろよ?」
武は注意喚起したあと、通信を切る。
最後のスペース、エリアCへクイックブーストを使って移動する。
「エリアCの一番奥に大型の熱源反応を確認、多分例のアームズフォートよ。残り時間1分、先にアームズフォートを優先して」
ノアの声がモニターから聞こえる。
「わかった、アームズフォートまでは何キロある?」
「5700キロ、まっすぐ行った先よ」
「了解」
ジンはオーバードブーストを起動するとコア背部から大型のブースターユニットが展開される。その瞬間、正面から青い閃光が放たれ紅桜に直撃する。
「きゃああ!?」
サクラが青い閃光に撃たれ驚く。
「サクラ!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫です……今のは…」
「あの光の色と弾速……恐らくレールキャノンだ。」
レールキャノン、実弾を電磁誘導の原理を利用し高速で射出するキャノン系兵装である。インテリオル・ユニオンはエネルギー兵器の開発また、エネルギー兵器を装備する前提として、消費エネルギーが少ないパーツを開発しているが、レールキャノンは、スナイパーライフルのキャノン系兵装である。
スナイパーライフルのキャノン型のスナイパーキャノンを凌ぐ射程距離と弾速だが、消費エネルギーが大幅に大きくリロードに時間がかかる。
それに、ジンの知っているレールキャノンはネクスト用の兵装である為他の機体には載せられないはず。ネクストがジンが搭乗している「紅桜」しかいないのに、何故レールキャノンが撃たれたのか。
考えれば考えるほど作戦時間が過ぎていくと判断し、ジンはクイックブーストを連発しながらアームズフォートへ向かう。艦隊とノーマルはジンを阻止しようと機関銃やミサイルなどで攻撃を仕掛ける。ジンはプライマルアーマーで受けながら出来るだけノーマルと艦隊を撃破する。ジンは基地の端から青い光を発見したと同時に例のAF【アームズフォート】が移動しているのを確認した。
「残り一分…!AFが移動し始めた!急いで!」
ノアは少し声を張りながら話す。
「わ、わかった…!」
ジンはレールキャノンをクイックブーストで避けた後オーバードブーストを起動し.AFに一気に近づこうとする。速度は一気に1500kmに到達し、僅か数秒でアームズフォートのバックブースターの懐に入り、プラズマキャノンとライフルを撃ち続ける。すると、AFのバックブースターの周りの装甲が、いとも簡単に剥がれていきバックブースターが露わになりジンはそこを狙う。
「これで動きが止まるはず……」
ジンは六つの大型バックブースターを攻撃しバックブースターを一つづつ破壊する。すると、AFは推進力を失い、動きが極端に遅くなる。そのまま攻撃を続けようとするがプラズマキャノンが弾切れになる。
「弾切れ……!?ならば…!」
その後、側面に回り込みブレードで切る。すると、AFは甲板を飛ばしながら爆発し轟沈する。
「敵AFの撃破を確認、残り30秒。残りの敵を一掃して!」
ジンは引き返しライフルで敵艦を撃ちながら、青い光もといレールキャノンを発射源の場所まで引き返す。青い光の正体は四脚のレールキャノンの固定砲台だった。
「まさか、固定砲台だったとは……そうだ、この固定砲台の砲身持ち帰ろう…!」
ジンは早速動かなくなった固定砲台を一度蹴り、地面と脚部を固定している杭をライフルで破壊しブレードを取り付けてある左手で持つ。
「…………それ、持ち帰るの?」
ノアは呆れて軽く溜め息をつきながら話し
「うん、新しい武装の素材になるだろうし」
「はぁ…まあいいわ……作戦時間終了。アームズフォートを落とせたし初陣にしては上出来じゃないかしら?」
「そっか…!それならよかった!」
ジンはヘルメット越しで分かりづらいが、安堵した表情になり。
「ミッション完了よ、帰還しなさい。」
「はーい」
午後2時20分、固定砲台を鹵獲しネクスト「紅桜」は帰還を始める。
午後2時47分、パイプ椅子に座る片腕がない短髪ハネっ毛の青年、武(タケル)が頬杖をつき、暇そうに管制室のレーダーを眺めている。レーダーには何も表示されず、最大30kmまで表示される3Dマップには廃墟となったビル等の建物しか表示されない。これといって目立った事は起きない。彼はネクスト「紅桜」の専属メカニックであり、ジンの兄であり、ノアの弟である。ノアの弟、ジンの兄と言っても実際はノアと血の繋がりはない。
「………そうそろ戻ってくるだろ」
欠伸混じりに気怠けに呟くと、伸びをし始める。
「暇そうにしてるわね…心配じゃないの?初の実戦よ?」
そう言いながらノアは武の横にパイプ椅子を置いて座る
「シュミレーターの実績を見ただろ?大体ランクがAかS、BがちらほらあるがCはほとんど無かった。……まぁ、実戦とシュミレーターは違うのは百も承知だが、大丈夫だろアイツなら。」
「そう……それなら良いんだけど」
ノアは少々心配そうな表情をしていて
「そんな心配すんなって!……ほら、噂をすれば戻ってきたぜ」
レーダーには緑色の点がこっちに向かってくる。緑色の点は友軍を示している、友軍として登録してるは今のところジンだけである。つまり、ジンが帰ってきたのである。それを確認したノアは安堵した表情をしマイクのスイッチをONにし
「おかえりなさいジン、お疲れ様」
「ただいま、お姉ちゃん」
スピーカーからジンの声が聞こえる、声を雰囲気からして大丈夫そうだ。
「おー、お疲れさん無事か?」
武もインカムを使ってジンに話しかけ
「うん、この通り!ハッチ開けて!」
レールキャノンを持った紅桜はプライマルアーマーを解除し、ガレージ前に到着する
「はいはい、今開けるぜ」
武は管制室の左端にあるレバーを下ろす。すると、ハッチは開き目の前にはネクストが入れるくらいの大きさのエレベーターが現れる。
紅桜が歩いてエレベーターに乗ると同時に、ハッチが閉じエレベーターが動き下に降り始める。このエレベーターは地下にある、ネクスト専用ガレージへ続いている。
エレベーターはそれなりに長く大体2分くらいかかる。
「ジン、お前が持ってるやつは…レールキャノンか?」
と武はエレベーターに設置されている監視カメラを見ながらジンに通信し
「え?うん、そうだよ。レールキャノンの無人砲台があったから取ってきたんだ。改良したらネクストに装備出来るし。」
「なるほどな。で?それを取り付ける作業は誰がするのかな?」
「えっと…兄さん…かな?」
武はそれを聞くと深いため息をし
「…ったく簡単に言うけど、ネクストで運用出来るのにするのって大分苦労するんだからな?」
「わ、わかってるよ…!僕も手伝うから…!」
「手伝って当たり前だっての……でないと、いつまで経っても装備出来ねーかもしれねーぞ」
「はーい…」
ジンは苦笑しながら返事をし通信を切る。話してる間にエレベーターは専用ガレージがある場所まで降りていた。
ガレージはギリギリ4機入るぐらいの大きさで紅桜以外には紅い流線形の脚部のないネクスト『アリーヤ』がガレージに配備されてあるアームで固定され格納している。ジンは紅桜をアリーヤの隣に並ぶように格納した。
「よしっ…と……ありがとうサクラ、お疲れ様」
ジンはそう言うとうなじに繋がっていたAMSプラグが外され、細長い緑色に光るカードキーのようなものを外すと紅桜のモニターは真っ黒になり、全システムは停止した。紅桜のコアの背部に設置されてあるコクピットハッチを開き紅桜から降り、ネクストに降りる為の簡易エレベーターに乗り下へ降りる。
ジンは地下4階のガレージから2階の管制室を続く簡易エレベーターに乗る。この施設は元々グレネード等が有名な会社「有澤重工」の子会社でありジン=叢雲、武=叢雲の父である獅郎=叢雲が社長を務めた「叢雲重工」の閉鎖工場であったものを武とジンが修繕して作られたアジトである。
叢雲重工は、社長である獅郎=叢雲がレイレナード本社へ企業訪問を向かってる際、不幸にもコロニーアナトリア所属の傭兵に本社襲撃され死亡し、同時に叢雲本家を過激派組織「リリアナ」に襲撃され叢雲本家は崩壊した。 結果的に叢雲 インダストリーは崩壊し稼働していた工場の一部は有澤重工が買い取ることになった。
ジンはエレベーターに乗ってる間にネクスト搭乗際に装着するヘルメットを外す。
「ふぅ……暑い…」
ヘルメットを外すと藍色がかった艶やかな黒髪ボブカットのまだ幼さが残る顔付きが露わになる。
ジン=叢雲、16歳でリンクスになり、武同様、数少ない叢雲本家の血を引く者である。
ミッション、ミミル軍港をクリアしました。
次のミッションを作戦を説明しよう━━
読んで頂きありがとうごさいます
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chapter1-5 「首輪付き」
最近は忙しいのでまた開くかもしれませんね。今回は日常パート?になります
chapter1-5
1
ジンの乗ったエレベーターは二階の管制室に到着し、ドアを開ける。
「……おかえりなさい、怪我はない?」
義姉であるノアはジンの方を向き近寄る。
「ただいま、うん大丈夫だよ」
「初ミッション成功ね、うん、スタートは順調よ」
ノアはジンの頭をポンポンと優しく叩き撫で
「よぅ、お疲れ。まだ依頼は来てないからゆっくり休んどけよ」
武はパイプ椅子に座ったままジンの方を向き。
「うん、そうするよ…ふぁぁ……じゃあ、ちょっと寝とくよ…」
ジンは欠伸をし管制室を出て自分の部屋に行こうとする。
「ああ、そうしとけ。俺は紅桜の整備をしておく」
「じゃあ、私は次の依頼を取りに行ってくるわ。ジンはゆっくり休んでて」
「うん…ありがとう…」
「武、アレの整備は終わってる?」
「ああ、バッチリだ」
「そう、ありがとう」
武はかけられた作業服を取りガレージへ行く準備をする。同じくノアもコートを着てガレージへ向かい、紅桜の隣にある戦闘機に乗り込む。一方ジンは管制室を出ていき更衣室に向かう。更衣室は管制室を出て通路の左側にある。ジンは更衣室に入る。更衣室は真っ白な壁と床の部屋で覆われていて元が工場だった名残か縦長のロッカーが部屋の中に複数並べてある。
ジンはそのロッカーの中で一番ロッカーに手を掛け開くロッカーの中には長袖Tシャツにジャージのズボンと比較的ラフな格好がハンガーにかかっていて、その下には緑色のスニーカーが置いてある。その後手で持っていたヘルメットを床に置き、パイロットスーツを脱ぐ。
パイロットスーツはネクストACのQB(クイックブースト)やOB(オーバードブースト)起動時にかかる高負荷なG(加速度)を軽減する耐Gスーツとなっている。ジンはパイロットスーツの首元にあるボタンを押す。すると、プシューっと空気が抜ける音が部屋の中に響き渡り下半身に取り付けてある浮き輪状の空圧調整器はしぼんでいき脱ぎやすくなった。パイロットスーツを脱ぐとそれを何もかけていないハンガーにかける。その後もうひとつかけていた服を取り着替える。ジンは更衣室を出て向かい側にある自分の部屋に行く。
ジンの部屋はドアの前に玄関靴を脱ぐ場所があり、畳が敷かれていて和室となっている。 部屋にはクーラーと冷蔵庫以外は特にこれと言った家具はなく、部屋に押入れとがある為タンスもなく殺風景である。あるとしたら、部屋の端に充電中のタブレット端末とスマートフォン、それと国家解体戦争以前に製造された二画面あって折りたたみ可能な携帯ゲーム機でそれ以外は特にない。なんとも殺風景な部屋である。ジンは靴を脱ぐとだらしなく畳に寝そべり、ボソッと呟く。
「……疲れた………眠い……」
初めての実戦なのだから、かなり疲労感があるのは仕方ない。それに、G対策はしてるがQBやOBはかなり負荷がかかるもの代物なのだから余計に疲労感を得ることは仕方ない事である。ジンはそのまま、深い眠りにつく━━
2
───カラード中枢施設───
カラードはネクストACに乗るパイロット「リンクス」を管理する幹旋施設であり、大企業への傭兵仲介業務を手がけている。多大な犠牲を招いたリンクス戦争の教訓からか、企業が直接リンクスを所有し運用する方式を改め、カラードを介した共同管理とした。
しかし、年月の経過と共にその機能・存在意義は薄れている。本組織内でのリンクスの能力を示す順位としてカラードランクが存在するが、それすらも企業の意志が介入するところとなっている。当然ながらリンクスになりたてのジンはカラードランクは最下位の32である。
カラードはオフィスビルのように真っ白な壁と床に包まれていて殺風景な 部屋である。そこには、書類を持ったビジネスマン、依頼を受けようとする傭兵、フランクに会話する2人組と様々な人々が忙しなく動いている。ノアは、ベンチに腰掛けている大男に歩み寄る。
「ハロー、ミスタージョージ。前回の依頼は達成したわ。レポートは既に企業に送っておいたわ」
そう言うとノアはジョージと呼んだ大男と同じベンチに間を開けるように腰掛けた。彼はジョージ=オニール、GA社グループの仲介人である。
「よう、新人リンクスの坊主のオペレータさんよ。坊主の調子はどうだ?」
「大丈夫よ、今は疲れて眠ってるだけ」
「そうか、死んでないならよかった」
「あの子が死んでたらここにいないわよ。そんな事より本題に移らせて頂戴」
「はいはい、分かった。」
ジョージは隣のスーツバックから書類を取りノアに渡す。
「今回の雇い主はBFF
目標は、オーメルのスフィア侵攻部隊だ 。今回は、偉いさんから具体的な計画が提示されている 。要はBFFらしさってやつだが、まあ聞いてくれ
敵部隊は、スフィアに向けてホワイトエンドを行軍中らしい 。この背後をVOBで強襲、なるべく多くの損害を与え、 突破後に反転、残敵を掃討しろ、とのことだ。
まあ、有効な作戦ではある。悪い話でないと思うぜ 」
BFF、正式名称はBernard(バーナード) and(アンド) Felix(フィリックス) Foundation(ファウンデーション)。
AC以外にも航空戦力や艦船、大規模コジマ施設の建造など多様な技術を有している。
特に狙撃銃やセンサーなど精密さが求められる部門では強く紅桜のライフルもBFF製である。
「ええ、そうね。ネクストの機動力を生かした作戦内容ね。このミッション受けるわ」
そう言うとノアは書類を鞄に入れ立ち上がり踵(きびす)に返す。
「おう、そいつはよかった。じゃあ坊主に明後日の朝VOB発射場まで来いと言ってくれ。」
「ええ、わかった」
ノアは振り返らずに、そのまま自機のもとへ向かった。
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chapter1-6 「Asutate」
オーメル飛行部隊だと思っていたがそこには━━
━━コジマエネルギー発電施設スフィア主権領域上空━━
「ぐ……ぐううう……」
爆撃機(GAC6-GALAXY496)とヘリの混成部隊がスフィアに向かって飛んでいる背後に、外付け大型ブースターVOBによって高速移動している紅桜が約マッハ2で翔んでいる。ジンはGを悶え、耐えながら紅桜の操縦桿を握っている。
なぜそうなったのかは2時間前……
━━2時間前━━━
「ミッションを説明するわ、依頼主はBFF。目標はスフィア侵攻部隊の迎撃。今回は、依頼主から具体的な作戦が提示されてるわ」
紅桜のコクピットの中からノアの声が聞こえる。
「具体的な作戦って?」
ジンはノアに聞く、リンクスとしては作戦を聞かないとどう行動すればいいか分からない為、聞かないといけない。
「今から説明する。敵部隊は、スフィアに向けてホワイトエンドを行軍中らしいわ、この背後をVOBで強襲、なるべく多くの損害を与え、突破後に反転、残敵を掃討しろ、とのことよ。仲介人のジョージはこれがBFFらしさって言ってたわね。とりあえずジンにはVOB発射場に向かってもらうわ」
「なるほど、だから左武装がブレードじゃなくてマシンガン(01-HITMAN)なんだね。それで、VOBって?」
「これは俺が説明する。VOBは、ネクストに取り付ける大型ブースターだ。VOBは略称であってフルネームはVanguard Overd Booster(ヴァンガード オーバード ブースター)、元々VOBはAF(アームズフォート)にネクストで対処するために開発されたもので、ネクストをAFの至近距離まで到達させるための物だが。こういう使い方は初めてだな。」
「でもAFに接近する目的だけのブースターじゃないから、これも有効な使い方かもしれないね?」
「ああ、そうだな」
━━現在━━
「前方に侵攻部隊確認、情報通りだな……今のうちに攻撃しておけよ、そのほうが楽だぞ」
武が指示を送る。
「うぐ………うん……」
ジンはGに耐えながら操縦桿を握り直す。ネクストの前方に備えられている、バックブースターを吹かし、戦闘ヘリ部隊に照準を合わせマシンガンとライフルを撃つ撃つ。マシンガンの弾はまっすぐは飛ばず、少々ばらつきつつヘリに向かって飛んでいき数発命中しヘリは爆発する。ライフルの弾はヘリめがけてまっすぐ飛んでいき、命中し爆発する。この調子で、ヘリ部隊を撃破しサイドブースターを瞬間的に高出力で吹かし(QB)、爆撃機(GAC6-GALAXY496)の背後に周りマシンガンとライフルを撃つ。弾は命中し一機の爆撃機が爆発。
しかし、爆撃機は当然のようにヘリより装甲が硬い。何発か撃ち続けないと撃破出来きず、爆撃機を撃破できずにVOBの加速によって通り過ぎてしまうこともある。
「VOB使用限界近いわ、そろそろ通常戦闘意識しておいて。」
今度はノアが指示をし、武がレーダーで探索する。
「っ……!大型の熱源反応!これは…アームズフォート…!?」
武は驚きながらも、紅桜のメインカメラ映像をモニターに映す。しかし、距離があって微かに大きなシルエットが見えるくらいだ。
「オーメルまだアームズフォートを開発中だった筈だそれに陸上型じゃなくて飛行型だ……アルゼブラは開発はしているが…まず有り得ない。まだ戦闘できる状態じゃないはず……消去法で考えると恐らくランドクラブだ!」
ランドクラブ、GAが開発した量産型アームズフォート。上部に主砲が四つ設置され、クラブと名前にあるだけに、多数の脚があり、前方だけでも八本の脚がある。
ジンはレーダーを確認する。レーダーには、侵攻部隊の向こう側に大型の熱源、恐らくあれがランドクラブだろう。ランドクラブは、主砲を紅桜に向けて砲撃する。しかし、約マッハ2で飛ぶ紅桜に命中せず、紅桜はランドクラブの上空を飛び越える。
「情報が違うじゃないの……!VOB、使用限界パージするわ!AFも含めて残った敵部隊を排除して!」
ノアは仲介人に苛立ちを覚えながら、使用限界に到達したVOBをパージさせる。VOBのパージされた紅桜は、VOBの余力で飛びながら陸地に着陸する。紅桜は方向変換し、ランドクラブがいる方向に向く。紅桜の正面にはショットガンを撃ちながら2機のアルゼブラ製ノーマル(SELJQ)がお互いに距離を置き、突撃してくる。
紅桜はマシンガンから、左背中武装の軽量プラズマキャノン(TRESOR)に武装を切り替え、接近してくるノーマルに照準を向けて撃つ。プラズマの光線は真っ直ぐ飛びノーマルに直撃し爆発する。もう撃破されたノーマルの後ろから続いて、もう一機のノーマルも突撃してくる。ノーマルは、紅桜との距離を詰めた瞬間、パイルバンカーを突き刺そうとする。紅桜はバックブースターを吹かしてパイルバンカーのレンジ外まで下がる。紅桜は再装填が完了したプラズマキャノンを放ちノーマルを撃破する。
「よしっ……!命中した……!」
「目標残り半分、気を抜かないでよ。いや……待って、紅桜以外のネクストの反応を確認…!増援…!?」
「いや待て、増援だったら紅桜に接近するはず……あのネクストはランドクラブに接近してる。」
武はレーダーを確認する。レーダーには、紅桜以外のネクストの反応がある。謎のネクストは、紅桜には接近せずランドクラブと距離を詰めている。
その瞬間、ランドクラブの主砲が砲撃した音が轟く。しかし、主砲は紅桜を狙わずに謎のネクストの方を狙う。
謎のネクストはグレネードキャノンと散弾を発射するスラッグガンをギガベースの主砲をすれ違いざまに放ち、1つの主砲を破壊する。不明ネクストは急旋回し、QB(クイックブースト)を吹かし、グレネードキャノンとスラッグガンを構えたまま接近する。しかし、ギガベースもただやられる訳にもいかず不明ネクストに向けて主砲で砲撃をする。しかし、高機動を得意とするネクストには当たらず接近を許してしまう。不明ネクストは主砲には攻撃せず、主砲が並ぶ上部の中央に辿り着く。主砲はここぞと言わんばかりに主砲を不明ネクストに向ける。
ランドクラブの四門の主砲は甲鈑の中央に降り立つ黒い不明ネクストに向けて撃とうとした瞬間だった、不明ネクストは緑の光に包まれまばゆい緑の光が広がる。
「うわぁ……!?」
ジンを思わずその眩しさに目を瞑る。
目を開けると、あの不明ネクストはおらずランドクラブは甲鈑と四門の主砲が抉られていて戦闘は到底出来ない状態だ。
「な、なんだったんだ……あれ…」
紅桜は呆然と立ち尽くすが、迎撃し損ねた爆撃部隊は紅桜に向けてハイレーザーを放つ。ジンはバッククイックブースターを吹かしてハイレーザーの直撃を免れる。紅桜は上昇し一機の爆撃機にライフルとマシンガンによる攻撃で撃破。しかし、エネルギー残量がなくなり上昇出来ずに落下、その隙を逃さずにハイレーザーを放つ。エネルギー残量が少ない紅桜はかろうじて避けようとするがハイレーザーばヒット。
『ぐっ……うう…』
「ごめんよサクラ……もう少しで終わるから…」
ハイレーザーはプライマルアーマーを貫通し、腕部の装甲を一部の装甲を溶してい紅桜は痛みに耐えるように歯を食いしばった声を出す。すぐさまにジンは反撃し爆撃機を撃破する。再び上昇すると爆撃機の後ろに回り次々に撃破する。レーダーには、爆撃機の反応はなく。残りは作戦領域の端のヘリだけだ。
「よし……あとはヘリだけ…」
ヘリだけなら問題はないと安心してオーバードブーストを起動して向かいヘリ部隊をマシンガンとライフルで迎撃する。
「敵熱源ゼロ、なんとか終わったな。ここからヘリで迎えに行くから、待っててくれよ。」
ヘリで迎えに行くと言う通信が兄さんから来た、これでなんとか一安心だ。
ジンは破壊されたランドクラブの方を向く。
「あの機体は……一体なんだったんだろう……でも、あのシルエットは…」
ジンはあの不明ネクストのシルエット見覚えがあった。それは、カラードランク9ネクスト「ホワイトグリント」だ。
疑問を持ちながらもヘリの迎えを待つ。
後にまた遭遇することをジンは思いもしなかった━━
……To be continued
次回も戦闘回です、よろしくお願いします
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chapter1-7 【A Gray Next】
大型輸送ヘリの迎えを待つこと約1時間、ジンの上空から武が搭乗している大型輸送ヘリが降りてくる。
「待たせたな、今から回収するからな」
大型輸送ヘリに備えられてあるカーゴのハッチを開くと、サブアームを展開しプライマルアーマーを解除した紅桜を掴むとそのままカーゴの中に入れてハッチを閉じる。
「ディムフロストコーティング開始っと…」
カーゴ内が密封状態になると紅桜のフレームに白い霜のようなものがつき始める。作戦領域上空に到達するまで、又は帰還する際完全密閉状態に保たれる。このとき、内部はコジマの分子運動を阻害するため極低温状態にして、ネクストの装甲表面は特殊な冷凍方法によってコーティングが施される。これをディムフロストコーティングと呼ぶ。
「そう言えば、輸送ヘリなんてどうしたの?いつの間に買ってたの?」
ジンは輸送ヘリを運転している武に疑問を持ち話しかける。輸送ヘリなんてウチにはなかった。ミミル軍港襲撃の報酬で買ったのだろうか。
「ああ、こいつはちょっとした取引で貰った物だ。」
「取引?」
「その話は私が説明するわ」
ノアが通信に割り込んで来てモニターに世界地図とノアの顔が映る。
「んぇ?お姉ちゃん、どういう事?」
「さっき、GAからの通信でね。今からリッチランドへ行って敵部隊を襲撃して欲しいってさ。もし成功すれば、報酬とこの輸送ヘリを渡すとの事よ。」
「なんとなくわかったんだけど…リッチランドって?」
「簡単に言うと、アルゼブラが所有する農業プラントよ。MTやノーマルACは勿論、鹵獲した量産型アームズフォートだけじゃなく、ネクスト戦力を投入されてるみたい。今リンクス、メイ・グリンフィールドが応戦してるけど結構不利な状況ね……」
カラードランク18、メイ・グリンフィールド、GAに所属するネクスト「メリーゲート」のパイロット。緑色に塗られた角張ったフレームと大きな笑顔のイラストのエンブレムが特徴のメリーゲートは支援機として高い評価を受けており、現時点でのGA専属のリンクスとして最高戦力とも言える。
「GAは他の企業に比べてネクスト戦力が乏しい。数少ないネクスト戦力をこんな所で失いたくないんだろうな。一応聞いておくが、ジンやれるよな?」
「うん、やれるけど……もうライフルとマシンガンの弾減ってるよ…?」
「残り何発だ?」
「ええっと……ライフルがあと61発でマシンガンが563発だね。あと、プラズマキャノンはあと7発だよ」
「それぐらいあれば十分足りる。さあ、急ぐぞ」
「うん……!」
輸送ヘリは最高速度でリッチランドへ向かい。ジンはできるだけさっきの戦いの疲れを取るために軽く仮眠を取ることとした。
━━旧ロシア、モスクワ近郊。現企業アルゼブラ農業プラント 「リッチランド」━━
『メイ!APが半分を切った!この調子だと堕ちてしまうぞ!』
「わかってる……なんとか援軍が来るまで持ちこたえないと……!」
メリーゲートのオペレーターはパイロットのメイに注意喚起をして、クイックブーストで後ろに下がりながらGA製のライフル「GAN02-NSS-WR」とバズーカ「GAN01-SS-WB」を撃ち続ける。その前には直撃を避ける灰色で流線形のフォルムのネクスト「AALIYAH」が突撃型ライフル「04-MARVE」とマシンガン「01-HITMAN」を撃ち続けるのと同時に灰色のネクストの後ろから砲撃が放たれている。メリーゲートは実弾防御力は高いが、機動性が低い為避けようとしても灰色のネクストの攻撃が当たってしまう。
「ネクストだけならまだしも…アームズフォートがまだ動くのが……!」
灰色のネクストの背後には半壊したアームズフォート「ランドクラブ」が援護砲撃を行っていた。ランドクラブの砲撃は辛うじて避けることはできるが、当たったらいくらGA製のネクストでもひとたまりもない。
「いた…!起きろジン!お前の出番だ!」
リッチランド領域内に到達した紅桜を積んだ輸送ヘリが到達し、武は戦闘しているメリーゲートを発見をする。
「どうする?降りるか?」
「うん……!もう大丈夫…!」
「オーケー了解した、投下するぞ!」
「行くよサクラ!」
「サクラ」は意気揚々にはいと返事をする。輸送ヘリのハッチが開き紅桜が降下し始めると同時にネクストの心臓部であるジェネレーターが起動し、カメラアイが光ると纏っていた真っ白な霜を割って戦闘準備を行う。
『……敵増援を確認。マスター、ネクスト「紅桜」です。』
「ネクストだと!?そんな情報聞いてないぞ!」
『GAが救難信号を送ったのでしょう……GAも貴重なリンクスを失いたくないのでしょう……』
灰色のネクストのオペレーターが紅桜の接近に驚くも、「イモータル」が冷静に返答する。
「ごちゃごちゃうるさいぞ亡者、イモータル。つまりは、GAがこの事を予測済み……という事なんだろ?」
『ええ、そうだと思います。意外と老いた巨人も侮れませんね。』
「だな……でも、相手は新人だ。それに、まだランドクラブも動いてる。行けるはずだ。」
『左様ですね、まだ勝機は残っています。』
「ああ…!行くぞイモータル!」
『仰せのままに、マスター』
……To be continued
次回は紅桜対灰色のネクストとの戦闘になります。
最近自動車学校やらで忙しい時が続いてますが、地道に書いていきます。
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chapter1-7-b 「IMMORTAL」
紅桜は輸送ヘリのハッチから降下すると、すぐさまクイックブーストを吹かしながらメリーゲートの傍まで近づく。
『援軍か…!!お前はランドクラブを頼む紅いの……!!』
『は、はい……!わかりました…!』
「━━こちらジン=叢雲です、メイ・グリンフィールドさん聞こえますか…!救援に来ました…!」
「救援ありがとう。貴方はランドクラブをお願い、あのネクストは私が食い止めるわ。」
「了解しました…!」
サクラとジンはメリーゲートとメイとの通信を終えると同時にオーバードブーストを起動し、灰色のネクストことイモータルを無視してランドクラブの元へ向かう。
「…!行かせるか……!」
「グレイちゃんダメだ…!」
「何っ…!?しまっ……ぐぅっ……!!」
イモータルは紅桜の後を追おうとす。しかし、背後からメリーゲートのバズーカに直撃して機体が硬直してしまう。
『AP50%減少……マスター、回避を優先を』
「分かっているイモータル…!先にあっちを対処しないとな!」
再び撃たれたバズーカを避けて、再びメリーゲートの方へ振り向き突撃し始める━━
「敵ネクスト、メリーゲートにヘイトが向いた…!今の内にランドクラブを撃破するよサクラ…!」
『はい…!!ランドクラブ確認しました…!主砲が驚異的です…回り込んで主砲を破壊した方がいいかもしれません…!』
「そうだね……急ごう…!」
紅桜はオーバードブーストでランドクラブの懐へ潜り込むが、潜んでいた3機のMTが攻撃を仕掛けてくる。
「こんな所に敵が……!」
ライフルでMTを撃破すると、ランドクラブの懐から抜け、背後に周ると甲鈑の上部に上がりプラズマキャノンとマシンガンでランドクラブの主砲を破壊する。
「よし……!残り3つ…!」
甲鈑上部に降り立つと主砲が紅桜の方を向き構える。
「ジン避けろ!!攻撃が来るぞ!」
「えっ、うわぁぁっ!!?」
ジンは慌ててクイックブーストで直撃を免れるが、主砲の衝撃で硬直し、甲鈑上部から落ちる。
「な、なんとか直撃は免れた……?」
『免れたはいいですが……今のでAP50%以下になりました……』
「う……そんなに食らうなんて…」
『今度から甲鈑上部に上がらずに攻撃しましょう……』
「うん、そうだね……」
紅桜はマシンガンのリロードをすると、再び上昇しプラズマキャノンのマシンガンで破壊する。再び主砲が紅桜の方を向くが、撃たれるに前に落下し砲撃を避ける。それを繰り返して次々主砲を破壊する。 全ての主砲を破壊すると、今度はランドクラブの側面に着いてあるミサイルランチャーをマシンガンで破壊する。すると、ランドクラブは攻撃手段を失い、多数の脚を使って退避していく。
「もうそいつには何も出来ない。直ぐにメリーゲートの救援に行ってくれ」
「うん、わかったよ兄さん」
紅桜はこちらに攻撃を仕掛けるノーマルとMTをライフルとマシンガンで破壊しながらメリーゲートの救援を送る。
『敵ネクスト再接近、ランドクラブを楽したようですね……』
「くそっ……大して時間稼ぎにはならなかったか……マーヴの弾も底尽きる…ブレードで一気に叩くぞ!」
『了解04-MARVEをパージ、格納ユニットのEB-O600を装備します。』
「よし……行くぞぉぉ!!!」
イモータルはアサルトライフルをパージするとハンガーユニットに備えていた小型レーザーブレードに持ち替えて、クイックブーストを利用してジグザグに進みながらブレードでメリーゲートを攻撃する。メリーゲートも負けじとバズーカを構えるがブレードで銃身を切断され爆破する。
「くっ……流石にバズーカを破壊させられると不味いわね……」
「メイさん、下がってください!ここは僕がやります…!!」
紅桜はイモータルに突撃してマシンガンとライフルでラッシュをかける。
「そんな攻撃……!」
イモータルはマシンガンを撃ちながらクイックブーストを吹かして右へ左へ瞬時に紅桜の攻撃を避ける。しかし、紅桜も同様にイモータルのマシンガンをクイックブーストで避ける。
「くそっ……速い…!」
メリーゲートはイモータルの背後からライフルを撃つが、弾速が遅く弾が当たらない。
「ローゼンヘッドとサラーフコアの混成機よりフルアリーヤの分あっちの方が機動力は上だ、でもあっちはブレードとマシンガンだから近づかなきゃ武器真価を発揮出来ない、一旦距離を置いて戦うんだ」
「っ…!うん、わかった……!」
今まで長くネクストに乗っていたのかジンから疲れが見え、動きが鈍くなりながらもイモータルと距離を取り、引き撃ちを行う
『紅桜の動きに疲れが見えます、攻めるなら今が好機です。』
「よしわかったイモータル、うおおぉ!!」
イモータルは被弾を気にせずマシンガンを撃ち続けながら接近し、紅桜のプライマルアーマーを剥がす。
「しまった……!プライマルアーマーが…!」
「それで終わらせる…!!」
「くそっ…!ここでやられてたまるかぁ……!!」
イモータルは一気に距離を詰めてブレードで仕掛けてくる。しかし、紅桜は抗うようにライフルをパージし、プラズマキャノンを放つとイモータルのプライマルアーマーが剥がれる。ジンはその瞬間を逃さず、腕を溶かされつつもブレードを持っている腕を弾きコクピットへの直撃を避ける。
「…!?いなした!?」
「今だ…!」
ブレードをいなされたイモータルの一瞬の隙を逃すことなくマシンガンを引きながら連射する。
「ぐぅぅっ!!中々やる……そっちがその気なら…」
「グレイちゃん、撤退して!」
「なんでだ!!まだオレは闘える!」
「アルゼブラの部隊が引き始めた、作戦は失敗だ……それに、君の機体はボロボロだ…これ以上戦ったら持たない、一旦引き上げよう」
「っ……わかった……」
イモータルのパイロットは悔しそうにしながらも作戦領域を離脱する。
「はぁ……はぁ………、待て…!まだおわって……」
「……ジン?おい、ジン!大丈夫か!返事をしろ!!」
ジンは激しい戦闘を行った分の負荷に耐えきれず、口と鼻から血を吹き出し意識を失う。
……To be continued
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chapter1-8 【仇】
少年はリンクスだ、しかし彼は只のコロニーの住民の1人だった。しかし、ある1つの事件が彼の人生を狂わせる━━
chapter1-8
━━━焦げ臭い匂い、パチパチと何かが破裂する音、鎧を着て歩くような音……いや、違うこの音は鎧を着て歩くような音じゃない、鎧より大きな物だ。ジンが目を開けるそこは、幼い頃家族と共に過ごした家が燃えていく景色とコクピットが無残にも穴が空けられた紅色の機動型ノーマル。そしてそれを見つめる草色のショットガンを持った逆関節のネクストACだった。
「……!!」
ジンは思わず息をのみ、立ちすくむ。忘れもしない、これは幼い頃の記憶だ。ジンの母親は10年前の真夜中このネクストに殺され帰る家も燃やされた。
━━逃げて
ジンは誰かからそう言われたような気がして走り出す。 言っているのが誰かが分からない聞いた事がある懐かしい声。でも、走らなきゃ行けないような気がした。
━━ 早く逃げて、どうか逃げて誰にも傷つけられない場所に…
どうかお願い━━━
………思い出した、お母さんの声だ。
「………!!!! はぁ………はぁ……」
ジンは夢半ばで目が覚め、額には汗がびっしょりかいていた。
「夢……だったの?」
汗を拭いながらゆっくり起き上がる。
あの声は確かに忘れかけたけど、お母さんの声だった。
━━いや、忘れようとしてたのかもしれない。嫌な記憶と一緒に。
「目は覚めたか?」
「は、はい…ってあれ?ここは?確か僕はリッチランドで…」
目が覚めると病院のベッドの上に寝ていてた。服は入院着に着替えられ、腕には点滴が打たれていた。ベッドの横には医療機器が置かれていて、白衣を着た金髪のドクターが椅子に座っていた。
「ここは、GA開発都市ジラーフの医療機関だ。口と鼻から血吹き出してコクピットで意識を失ったお前さんをお兄さんがこっちに運んできたんだよ」
「ジラーフ…?開発都市って、もうコロニーは殆ど破棄されて一般人はクレイドルに移民したんじゃなかったんですか?」
「正確に言えばGAアジアエリア最大を誇る工業地帯の中にある従業員の洋上居住区域だ。チャイニーズならわかると思ったんだが」
「あのー……僕は日本人、有澤地域出身なので中国人じゃないんですが…」
「おっと、それは悪かったな。大体のアジア人は同じように顔が平たいからわかんなかったぜ」
「はぁ…」
ドクターは悪気はなくケラケラ笑う。ジンは思わず、半ば呆れ口調で生返事をしてしまう。同じアジア人だし、中国人と勘違いされてもおかしくはないと理解するが、やるせない気持ちになる。
「坊や、リンクスとして依頼を受けるようになったのはこれで何回目だ?」
「ええっと…2回目ですね」
「だと思った、まだAMSに慣れてないのに連続して激しい戦闘したから意識失ったんだ。全くこういう無茶なことはするなよ?数少ないリンクスなんだから死なれちゃ困る」
「す、すみません……」
「お前が意識を失っている間にもう検査は済ませてるから、親御さんが来るまで大人しくしとけよ。じゃあ、俺は別の患者にところに行くから大人しくしておけよ?」
「あの、兄さんはいつくるのですか?」
「さぁな?一応報酬受け取ってから迎えに行くそうだぜ?いつ来るかは知らないな」
ドクターは立ち上がり、ジンの病室を出ていく。病室は暇を潰せる物は全くなく、隣には空いたベットと医療器具しかなくとても暇が潰せるものがない。正直早く迎えに来て欲しいとジンが思っている中、病室のドアが開く音が聞こえる。
「兄さん?」
もう兄さんが迎えに来たのかな?と思うが、入院着を着た無精髭が生えた中年男性が入ってくる。知らない人が入ってきて一瞬ビックリするが、中年男性もぎょっとした表情になる。おそらく、病院の患者であろう。
「お?初めて見る顔だな」
「は、はい…!初めましてです…!」
「そう固くなるなって、気楽に話していいぜ」
「はぁ……そうですか…」
「ほらほら、まだ固いぜ?リラックスリラックス!」
中年男性は近づくと、ジンの背中をバンバン叩いて、空いていた隣のベットに座り込む。
「んで、坊主どうしたんだ?怪我はしてる様子じゃなさそうだが、病気にでもかかったか?」
「あ、いえ…戦闘中に意識失っちゃって、ここに運ばれたんです」
「戦闘中にか……ってことはパイロットか…なんの戦闘だったんだ?」
「ええっと、リッチランドの襲撃ですね」
その瞬間、男性は朗らかな表情から急変し真剣な顔になる。
「……坊主、お前リンクスか?」
「は、はい…そうですけど?」
「リンクスになって何日だ?」
「なんでそんなこと聞くんですか…?えっと、カラードに登録されてからは一週間は経ってますね」
「……そうか」
「…?どうかしましたか?」
「いいや、なんでもない。ちゃんとメシは食ってるか?きちんと休んで睡眠をとっているか?」
「はい…、ちゃんとご飯は食べてますし、夜更かしはあんまりしてませんよ?」
「よし、ならいい。なにか困った場合は俺の名前を言えば話は通るからな」
「あ、ありがとうございます……えっと…おじさんの名前は?」
「ん?知らんのか?」
「わかんないです……」
「そりゃそうだよな、リンクスなって一週間から仕方ない。俺はドン・カーネル、一応リンクスだからお前の先輩にあたるだろうな」
「よ、よろしくお願いします…カーネルさん…」
「相変わらず固いなぁ、気軽にカーネルパパなんて呼んだっていいんだぜ?」
「それは…やめておきます……」
「なんだよぉ?遠慮すんなって!」
「遠慮はしてませんけど!?」
カーネルはガハハと笑いながら話し続ける。
「いいじゃん減るもんじゃないし」
「僕まだカーネルさんのこと知ったばっかりなのに……」
「そんなの気にすんなって!話は変わるが坊主、お前さんなんでリンクスになった?」
「え?なんでって……」
「くそったれな時代だが、その歳なら他の道を選べた筈だ。わざわざ自分から死に近づこうとしてるんだ」
「えっと、それは……」
「なんだ?言えない理由があるのか?」
「いえ…そういう訳じゃないです………ただ……」
ジンはゆっくり口を開ける
「……僕は殺したい人がいるから、リンクスになりました。」
……to be continued
次回は過去の話になります、何故あの子がリンクスになったのか、なぜ彼は戦うのか━━
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chapter1-8 # 「これがただの悪夢だったら」
夢だったら、泣きじゃくりながらお母さんに抱きしめてもらいたかった。
小さい頃は明日は必ず来て、戦争なんてテレビの向こう側だけの話で僕にはなんも関係がない話だって思ってた。
ただ、いつも通りに過ごして大人になったらお父さんの仕事を継ぐものだって思ってた。
…………………………アイツが来るまでは
「お母さん見て見て!ほら、お庭のさくら描けたよ!!」
「あら、とっても綺麗かけてるわね。ジンはお父さんと似て絵が上手ね」
「お父さんは絵が上手だったの?」
「そうよ〜お父さん絵が上手でね、あなた達が産まれる前まではよく描いてたの」
「そうなんだ、でもどうしてぼくたちがうまれてから描かなくなったの?」
「お仕事が忙しくなってよく出張するようになっちゃってね、絵を描く暇がなくなったの」
「そっか〜、お父さんが描いてる絵見たかったなぁ」
「お父さんが帰ってきたら今度お願いしてみたら?きっと描いてくれるわよ」
「ほんと!はやく帰ってこないかな〜」
「そうね、向こう側の戦争が終わったらきっとお父さんも武も帰ってくるわ」
僕のお母さん凪=叢雲はふふっと笑うと、頬を撫でてくれた。その日は寒かったから、お母さんの手は冷たかった。
僕のお父さんは旧カナダ領地に位置するレイレナードの技術者で、家にいないことが多かった。兄さんは高いAMS適正があったらしく、レイレナードの史上最年少のテストパイロットになった。兄さんのメールに書かれている通りだったら、向こう側で大きな戦争が起こってて帰る暇もないらしい。
だから今は、お母さんと僕と2人だけで旧日本 有澤コロニーにある家で暮らしている。2人っていうのは少し寂しかったりはするけど、いつも通りに過ごしてる。こんな日が続いて、暫くしたらお父さんや兄さんが帰ってきてまたみんなで過ごせるんだって思ってた━━
━━リーダー、ほんとにオーメルの依頼なんて受けて良かったんですか?1つのコロニーを破壊する為だけなのにあんな馬鹿でかい報酬金……怪しくないですか?
━━企業は依頼をこなせばどんな奴でも報酬金は必ず支払う、それが罠でもな
夜も更ける頃、人々が寝静まった頃にその時は来た。
過激派武装組織「リリアナ」の部隊が僕らが住んでいる場所にやって来た。部隊のノーマルAC一機が持っていたバズーカが発射され、町の護衛をしていた一機のMTが被弾し、住宅街を犠牲にしながら倒れていく。
ノーマルACの破壊活動でコロニーは炎に包まれた。人々の恐怖の悲鳴が響き始め、何処かへ逃げ惑う姿が見え始める。
『ここは只の居住区だから襲撃されないんじゃないのか!』
『防衛部隊はまだなのか…!?早く来てくれよぉ…!!』
『誰か、誰かうちの息子を助けて!あの瓦礫の下敷きなの!このままじゃ息子が死んでしまいます!』
『怖い……怖いよぉ母ちゃん…』
━━━ ここまでは順調ですね、後はあの家系の人間を殺ればいいですね?
━━ ああ、そうだ。それが終わればさっさとずらかるぞ
リリアナの部隊は町が炎に包まれたのを確認すると先へと進んでいく。その先には僕の家があった ━━
「っ…!?はぁ……はぁ…な、なに…?どうしたの…!?」
ノーマルACによる破壊活動の轟音で僕は起きた。窓を開けて見ると遠くからカメラアイの光が段々大きくなってるのがわかる。
ノーマルACが着実に近づいてる
「なに…これ…?夢…じゃないの?」
夢と信じたがったが、辺りの建物が燃える匂い、足がすくんでいる感覚からして到底夢とは思えなかった。
頭の中に響くアラート音が僕に逃げろと警告をしてくる。でも、足がすくんで動けない。
助けて、誰か助けて……
「ジン君!なにしてるの!?早く逃げるわよ!?」
後ろを振り返るとお母さんではなく、義理の姉であるノアの母のアリアおばさん僕を担いで部屋を出ていく。
「アリアおばさん!?な、なんでここにいるの!?お母さんは!?」
「凪ちゃんは防衛部隊として駆り出されたの!ノーマル部隊が足りないからってさ!」
「お母さんは帰ってくる!?無事に帰ってくる!?」
「きっとね、でも、今はそんな場合じゃないでしょ!あなたのお母さんは大丈夫よ!悪い奴をやっつけて帰ってるわ!」
隠し扉を開け、地下階段を降りた先には装甲車両があり、それに乗り込む。
アリアがアクセルを踏み込むと装甲車両は一気に加速し走り出す。装甲車両は通路のハッチを破壊して無理やり脱出する。町は焼け野原になり逃げ惑う人々が僕の恐怖を煽り立てた。
迎撃しに来た防衛部隊は襲いかかってきたリリアナの部隊を迎撃する。しかし、MTだけの防衛部隊ではリリアナの部隊を壊滅することは出来ず焼け石に水だった。そんな中、突如としてリリアナ部隊の後ろから、流線型のシルエットで紅色の機動型ハイエンドノーマルACがやって来て左に持っていたレーザーブレードでリリアナ側のノーマルACのコクピットを貫通させる。お母さんの機体がやってきたんだとわかった。
「増援だと!?こんな早くかよ!?」
「なんだあの機体……どこの企業のACだよ!」
「落ち着け、たかが一機だ、こっちの方が数が上なんだ。冷静に対処するぞ」
リリアナ部隊は紅色のハイエンドノーマルACに向けてバズーカを撃つが、コクピットを刺したリリアナ部隊のノーマルACを盾にして攻撃を防ぐと今度は右手に持っていたレーザーライフルを構え、敵ノーマルの一機のバズーカの砲身を溶かし、攻撃手段を減らす。
「相手の動きが鈍い……この程度なら皆が逃げ切る前に行けるかもしれない……!」
紅色のハイエンドノーマルACのパイロットである凪=叢雲は、逃げ惑う人々を確認しながらもリリアナ部隊をレーザーライフルで引きながら撃ち続ける。レーザーライフルの光線は的確に相手のコクピットを貫き、これなら勝てると確信した瞬間━━
「型遅れのノーマルになに手こずってるんだお前ら」
上空からノーマルACより大きな逆関節の草色のネクストACが人々に銃弾の雨を浴びせながら降りてくる。人々は一瞬で肉塊と化し、生き残った者は発狂しまさに地獄絵図だった。ネクストACの背部武装はローゼンタール社標準型のマイクロミサイルが敷き詰まった散布型ミサイルとマシンガンよりも大口径で弾を連射するチェーンガンの試作品。ノーマル一機相手には充分過ぎる火力だが、それに加えて腕部武装にアルゼブラ社の標準ショットガンとマシンガンを装備している。
「り、リーダー……ですが、相手も手強くて…」
「お前らは先に撤退してろ、後処理は任せろ」
「了解です…!!」
残ったリリアナのノーマル部隊は撤退し始め、紅色ハイエンドノーマルと逆間接の草色のネクストの一騎打ちの環境となった。
「なんてことを……アンタは、罪のない人の命無駄にして…!それでもリンクスなの!!」
凪は今まで仲良くしてきたコロニーの人々の命を一瞬で奪った逆関節のリンクスに怒りをぶつける。ただの虐殺をしたお前にリンクスとしての誇りがないのかと問いたかった。
「所詮命は消えるもんだ、早かろうが遅かろうがどうせ時間が経てば消えていくんだ。選んで殺すのがそんなに上等かね?」
「そういう事じゃないわ!あの人達は関係なかったでしょ!!皆これからの生活があった!それをアンタが奪ったんだよ!」
「知らねえな、そんなのはこれからがなんだろうが俺には関係ない」
逆関節のネクストはマシンガンをハイエンドノーマルに向けて撃つと、すぐさま加速して避けるとレーザーライフルで反撃するが、飛び上がって避ける。
「俺はこの居住区の襲撃依頼を受けた、それ以上もそれ以下もない。お前だって殺してるだろ?」
「私は違う…!!あの子を守る為に戦ってるの…!人の命を奪ってなんとも思わないアンタとは違うわ…!!」
「へぇ……そうか、なら……」
上空にとどまり装甲車両を見つけると、そのままロックオンし散布型ミサイル発射する。
「っ……!?ジン…!!」
凪は思わず庇って放たれたマイクロミサイルから装甲車を守る。防ぎきれなかったミサイルは地面に着弾し、道路を破壊する。
「うわあああああ!!」
装甲車両はバランスを崩し転倒し、ジンは車内で頭を強打し意識を失ってしまう━━
「………ぁ……うぁ…」
ミサイルが道路に直撃した衝撃で装甲車は転覆した時、頭を打ちつけて意識を失っていたようだ。お陰で頭が痛い。運転していたマリアおばさんはエアバッグに包まれ、気絶していた。
呻き声を漏らしながらも、目を開ける。目を開けても暗くてどういう状況なのか分かりにくい。外はどういう状態なんだろう。シートベルトを外してドアを開けて様子を見てみる。
すると、想像の絶するものが目に入ってきた。
「なに…これ………?」
辺りに倒れているMTの残骸、街にそびえ立っていたビル群は燃え、工場があった場所はもはや原型をとどめておらず、なにかが燃えているぐらいとしか認識出来ない。挙げ句の果てに今立っている道路は、ひび割れたコンクリートとデコボコした道となり真っ直ぐ走れる状態ではなかった。建物や緑に溢れていた街は一瞬で焦げ色に変わり果てていた。
「お母さんは……?」
そう思って上を見上げると、お母さんが乗っていた桜色のノーマルがレーザーブレードを持っていた右手を失い、関節から火花を散らして、膝を着いていた。そして、その先には草色の逆関節ネクストがこっちを見ていた。
「ほう、まだ生き残りがいたんだな?」
逆関節のネクストから声が聞こえる。恐らくパイロットの声だ。
「お前が……お母さんを…」
「お母さん?あの型遅れノーマルのパイロットの事か」
「お前が……お母さんを……殺したのか…?」
「街の被害が大きけりゃ大きいほどたんまり報酬が貰えるからな。それに邪魔しに来たんだから、殺すしかないだろ?」
「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ!!そんなの絶対に嘘だ!!これは夢なんだ……こんなの夢に決まってる!!」
「じゃあ…試してみるか?」
リンクスは鼻で笑いながらマシンガンの銃口を僕の方へ向けた。
僕は慌てて逃げ出そうとするけど、足が竦んで上手く走れず転んでしまう。
リンクスはマシンガンの引き金を引こうとした瞬間、桜色のノーマルが撃ったレーザーがマシンガンの銃身を溶かしていく。
「はぁ…っ…はぁっ…逃げなさいっ…!早く…急いでっ…」
「お母さん!!」
ズドンッと重い音が2回鳴ったと同時にぶらんとノーマルの腕が落ちる。よく見ればネクストのショットガンから煙が出ていた。子供ながらに分かってしまった。
━━あのネクストがお母さんを殺したんだ
「あ、ああ……あああっ…」
悲嘆の声を漏らしながら膝から落ちる。此方にショットガンを突きつけられると、ここで死ぬと思った。そんな時、西側から放たれたであろう太いレーザーが草色のネクストに直撃する。
「ちっ……増援か…ここが潮時だな」
草色のネクストは飛び上がり逃げていった。西側から放たれたレーザーの元を探ると、真っ白い細身のある二脚のネクストが立っていた━━
助かったんだと僕は安堵した。それと同時に、クソッタレな現実を知る事になった。
僕が知った世界は、酷く救いようがないものだった
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chapter1-9 「boy meet Lady」
・獅郎=叢雲の日記から一部抜粋
chapter1-10
「━━暫くして、あの白いネクストはホワイトグリントって名前なのを知りました。僕はお母さんを殺したあの緑のネクストを許しません……お母さんの仇を取るためにリンクスになりました。これが僕がリンクスになった理由です」
俯いていた顔を上げてみると、目の前にはティッシュ片手にカーネルさんが号泣してた。
「あ、あの……カーネルさん?」
「うっ……ぐず…お前ってやつは……辛かっただろ…いいぞっ…!俺の胸の中で泣いていいぞぉ…!!」
「うわあぁっ……けっこう苦しい…」
そう言うとカーネルさんは号泣しながら抱き締めてきた。リンクスってだけあって、結構抱き締めてる手に力入ってて苦しい……
「はぁ……なにやってるのよカーネル。病人、しかも女の子に抱きついたりなんかして」
聞き覚えのある声だと思っていたら、ドアの前には呆れた表情をした緑髪の女性が立っていた。
「セクハラだと思っているな?違うぞメイ、これは愛情表現だ!」
「はいはい、そうですか。それより、ジンって子知らない?ここの病室にいるって言われたんだけど」
「えっと…ここにいます」
僕はカーネルさんの腕の中で手を挙げた。メイってことはこの女性がメリーゲートのパイロットなんだろうな。
「君がジン君なのね、リッチランドの時はありがとう。君のお兄さんが着替えてハンガーまで来て欲しいって言ってたわ。また新しい依頼ですって」
「新しい依頼……はい、わかりました」
「おいおい、身体の方は大丈夫なのか?」
「平気ですよ、検査でも異常がないみたいでしたし行けますよ!」
「ふむ…なら、いいんだが。気をつけろよ?」
「はい!行ってきます!」
「あ、待ってジン君」
ベットを降り、病室を出ようとすると。メイさんに手を掴まれ止められた。
「君、ここに来るの初めてでしょ?私が案内するわ」
「あ、ありがとうございます」
そう言うとメイさんは手を繋ぎ直して歩き出した。隣に並ぶと頭一つ分くらいメイさんの方が身長が高いのがわかった。そして、改めて自分の身長が低いことに気づいた。僕は思わず小さくため息をついた。
「どうしたの?急にため息なんかついて」
「ああ……いえ、早く大きくなりたいなって」
「そう?大きくても不便なだけよ?」
「だとしてもこの身長だと子供にみられるんですよ……!」
「ふぅん、今何歳なの?」
「えっと、今年で15歳になりました」
「15歳かぁ、まだまだ子供ね」
「子供って……もう15だから子供じゃないです…!」
「私からしてみればまだ子供よ。それに……」
メイさんはニヤッと笑うと僕の腰に手を当てて、突然胸元に抱き寄せた。
「ほわぁぁぁ!?」
「ふふっ、こんなことでビックリしてたらまだ子供だね〜」
突然の出来事で思わず変な声が出た。
それに対してメイさんはずっとニヤニヤ笑ってた。柔らかさと甘い匂いに頭が追いつかず、顔が熱くなってるのがわかった。
「ほ、ほほぉら……!そ、そんなことしないで……い、行きましょ…!」
慌てて離れると早歩きで更衣室に向かった。
……まだ顔が熱い、お姉ちゃん以外の女性であんなことされたのは初めてで、恥ずかしさと色んな物が混じったような気持ちになった。
暫くすると沈黙が訪れた。メイさんはまた手を繋ぎ直して隣に並んで歩いてた。
「…改めてリッチランドの時はありがとう、君が来なかったらやられてたかもしれなかったわ。」
でも、とメイさんは言うと僕の顔を振り向かせて顔を近づける。
「無理するのはダメよ。君はまだリンクスになって間もないんだから、無茶して倒れると君の家族が心配するよ」
「すみません、でも僕強くならなくちゃいけないんです。早く強くならなきゃ…お母さんを殺したアイツがいつ来ても必ず倒せるようにしなくちゃ…」
「そう…でも、それで無理して倒れちゃったら元も子もないでしょう?」
「でも…!」
「君は知らないかもしれないけど、AMSによる過度の精神負荷で死んじゃうこともあるのよ。焦る気持ちも分かるけど、今は来た依頼を確実に完遂していくこと。わかった?」
「………はい、わかりました」
「ならいいのよ。ほら、しゅんとしてないで行きましょ?もうすぐ着くからね」
頭をポンポンと撫でられると、メイさんは手を引いて案内を再開した。
更衣室でパイロットスーツに着替え、メイさんに案内されてながらハンガーに向かうと、紅桜の前で兄さんが作業員と話をしていた。紅桜はリッチランドの時で破壊されたライフルは銃身が長いGA製のライフルに、腕がいつものアリーヤフレームから違うものに変更されていた。
「おお、起きたか。検査では異常ないって聞いたが、調子はどうだ?」
「大丈夫、もう元気だからね。それより、そのライフルと腕はどうしたの?」
「ああ、これのことなんだが。ライフルは次の依頼に使う為に借りたもんだ。次に腕なんだが、BFFの063ANをさっき買った。中古だからカタログスペックより低いが、こっちの方がエネルギー消費も少ないし、射撃性能も遥かに良いからな………でだ、ここから本題だ」
そう言うと兄さんは険しい顔をしながら手に持っていたタブレット端末を僕ら2人に見せた。タブレットには朱色の全面にチェーンソーのような刃を持った鉄塊らしきものと「カブラカン撃破依頼」と書かれていた。
「カブラカン……?」
「アルゼブラ製の突撃型アームズフォートよ、それに今GAの悩みの種の1つじゃない……」
メイさんは顔を顰めながらでも……言った。どことなく張り詰めた空気になったと感じた。
「私もその依頼頼まれたわ……」
「そうらしいな。俺も仲介人から聞いた。だから、この作戦は共同任務になる」
次に弱点だが、と兄さんは険しい顔のまま話し続ける。
「機体下部のスカートアーマーの内部にあるキャタピラだ。これを壊せばめでたく機能停止、作戦完了……ってわけだ」
「でも、ちょっと待って……それじゃあ…」
「分かってる、キャタピラが壊れれば機能停止するなんてバカにでもわかる。それだけなら、ネクスト2機は必要ない。だからこそこれ以上になにかあるはずだ」
物申そうとすると兄さんは被せて言った。
「ただ、それ相応の報酬になってる。その報酬の中に……リリアナのアジトの位置データがある」
思わず目を見開き、息を呑んだ。リリアナのアジトが分かれば、もしかしたらお母さんをあのネクストの情報が得られるかもしれない。
「ぼ、僕はやるよ……」
「ジン君……!!ダメよ…!君にはまだ荷が重いわ…!」
「大丈夫だよ…!ネクスト2機なんだから、きっとなんとかやれるはず…!」
「………決まりだな。出撃するのは2時間後だ、いつでも準備しておけよ。」
僕は急いでコクピットへ向かった。
メイさんもメリーゲートの方へ向かおうとしたら兄さんに止められた。
「ああ、待ってくれ。メイさんって言ったっけな……アイツが無茶しないようにバックアップを頼む」
「……大丈夫よ、なんとかなるわ」
次回は初のアームズフォート戦となります。
社会人になった為投稿頻度が低くなるかもしれませんね
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chapter1-10【Giant Killing -α】
今回は対アームズフォート戦になってます
「ミッション開始、カブラカンを撃破をする。あの分厚い装甲にネクストの兵装じゃ撃破出来そうにないわね。参戦通りキャタピラを狙って」
ノアの指示に、ジンとメイは了解と応えると、オーバードブーストを起動し、カブラカンとの距離を詰めていく。当然、カブラカンはそれを許すことは無くミサイルを放っていく。機動性を重視した紅桜にはミサイルは当たる筈はないが、ジンはマシンガンで多少のミサイルを迎撃をしながら距離を詰めていく。
「カブラカンの進行ルートに強力な地雷が埋まってるわ。それを活用すればあのスカートアーマーの中に入れそうね」
「前方の特殊ブレードには気をつけろ、触れると機体が粉々になると思え。ジンはミサイルランチャーの攻撃を引き付けつつ各個撃破、その間にメイはキャタピラの破壊をしてくれ」
武が指示すると、ジン達は2手に分かる。紅桜はスカートアーマー上部にある4つのミサイルランチャーに接近する。
「敵ネクスト、接近して来ます!」
「敵ネクスト照合完了、ランク32紅桜です。艦長、ご指示を」
「焦るな、ネクストと言えど所詮は低ランクだ。スラッグガンで迎撃しろ」
カブラカンは迎撃しようとミサイルではなくスラッグガンを放ち、紅桜は慌てて横にクイックブーストをして避ける。カブラカンは隙を見せず、スラッグガンを撃ち続けていく。
「スラッグガン全弾命中せず!」
「逃げ足だけは1人前だな、そのまま攻撃を続けろ」
「隙が全くない、これじゃあ破壊なんて出来ないよ!!」
「相手も弾が無限に装填されてる訳じゃないわ、装填する時に隙があるはずだからそれを狙って」
ノアの言う通り、4つのミサイルランチャーはスラッグガンを撃ち終えたら、攻撃が止まる。その隙に紅桜らプラズマキャノンとマシンガンを同時に撃ち、1つ破壊する。
「ミサイルランチャーを破壊したのね、私もなんとかキャタピラを……」
メイはレーダーでミサイルランチャーを示す敵信号の1つが消えたのを確認して、スカートアーマーをライフルとバズーカを撃って破壊しようとするが、ビクともしない。
「スカートアーマーが硬すぎるわ……これじゃあキャタピラまで辿り着かないわ」
なんとかしてキャタピラに近づき破壊しようと考えようとした矢先、カブラカンは地雷を踏み、スカートアーマーが大きく捲れる。メリーゲートはその隙を逃さずに、スカートアーマーの中に入り、キャタピラにバズーカとライフルを撃って破壊する。キャタピラは爆発し、パーツが飛び散りながら停止していく。
「カブラカン停止……呆気なかったわね…」
ノアはカブラカンの停止を確認して一息つく。しかし━━
「キャタピラ破壊されました!これ以上の装甲は不可能です!!」
「やってくれたなGAめ…!ええい、やむ得ん!アレを出せ」
カブラカンは特殊ブレードを持つ鉄塊の上部、側面の甲板が剥がれ落ちていく。
「姉貴、まだ終わってねえぞ……どうやらまたなんかありそうだ…」
甲板が剥がれたカブラカンは側面、上部から一斉になにかを射出する。
「なんだあれ……ミサイルか…?」
武はカブラカンが映っているモニターをズームする。見えたものはミサイルではなく、小型の自律兵器だった。
「自律兵器…!?なんて数なの…!?」
「これを全部撃破しろっていうのか……」
紅桜の上空には自律兵器で埋め尽くされていた。ジンは数に圧倒されて、思わず立ち止まっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『例の坊やが、カブラカンとな………さて、どうなるかな』
『僚機付きだろ?可能性はあるだろ。もっとも、シンデレラを退ける程度の実力はあるのだからな』
『そうだな。結果によっては、首輪を外させようと思う。テルミドールはもうすぐ帰ってくる。あの少年も入れば、計画も大きく進むだろう━━』
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chapter1-11 【Giant Killing - β】
前後編連続投稿です
chapter1-12 【Giant killing -β】
「なにが起きてるのジン君!?急にレーダーに大量に敵影信号が…!」
「ランドクラブから……大量の自律兵器が…」
キャタピラを破壊し、スカートアーマーの中で身動きが取れないメリーゲート。
自律兵器は紅桜の上空を覆うように飛び交う。その数は、レーダーを敵影信号で埋め尽くす程だった。
「いくらなんでも不味いわよこんな数……武、なんとかならないの!?」
「こっちは僚機付きだ、今から援軍が来るわけないだろ……いいかジン、こんな数でも単機での戦闘力は低いはずだ、ランドクラブを盾しながら一機ずつ確実に破壊するんだ。今はそうするしか手がない…」
「わ、分かったよ……!」
自律兵器は紅桜に向かって散弾を撃ち始める。しかし、自律兵器は紅桜と距離が離れていた為か、拡散した弾はプライマルアーマーに弾かれていく。
その間に、距離を離しながらライフルを着実に当てていく。自律兵器に2発当てると落下していき、そのまま壊れる。
「有り難いことに装甲は薄いみたいだ……あとは気を付ければなんとかなる…!」
『若様、この距離じゃマシンガンは届きません…!ライフルで地道に撃破するのがいいかもしれません』
ジンは分かったと答え、ライフルの照準を意識し、徐々に接近してくる自律兵器を一発一発着実に撃破していく。しかし、接近してくる数と撃破する数は追いつかず、直撃は免れるものの被弾を許してしまう。
「これじゃあジリ貧だ……なにか打開する手があれば…」
このまま被弾し続ければ、いつか限界が来て撃破される。そう考えていたジンにある通信が送られる。
「こちらGA、アームズフォート部隊だ。此方の作戦が終わり次第、援護する、もう少し耐えてくれ」
「援軍……という事はこの事はある程度予想してたみたいね…聞こえた?援軍が来るまで耐えるのよ!」
ノアからの指示を聞くと、ジンは避けることを優先し、徹底的に自律兵器の攻撃が来ない距離まで離れていく。
「私もなんとかここから出られれば…」
メリーゲートはカブラカンの強固なスカートアーマーから出られずにいた。
なんとか出ようと考え、辺りを見回すと、メイはスカートアーマーの下に埋まっている不発した地雷を見つけた。
ライフルで撃つと地雷は起爆し、スカートアーマーは大きくめくれた隙にスカートアーマーから抜け出す。
「ごめんなさい、やっと抜け出せたわ」
そう言うとメイは上空の自律兵器をマルチロックをすると背面武装の垂直に発射されるミサイルで弾幕を張る。大量の自律兵器にミサイルに当たり、その中の数機を撃破する。
「サクラ、あと何機?あた、腕武器の残弾数も教えて」
『解析……残り76機です。腕部武装の残り弾数は、右ライフル残り396発、左マシンガン、820発です。余裕でたります』
「ありがとう、この残弾数ならなんとかなる…!」
紅桜は距離を離しながら自律兵器に照準を合わせて撃ち、次々撃破していく。機動力の遅い大量の自律兵器は紅桜とメリーゲートの攻撃を直撃して数が減っていく。このままGAのアームズフォート部隊が来れば一気にカタがつく……そう武が思った矢先、通信が入ってくる。
「トラブルだ。アームズフォート部隊は停止した。すまんが、支援は難しい。そっちでなんとかしてくれ。」
「おいちょっと待て!2機だけでやれって言うのかよ!」
「2機もいるんだ、それにこっちは高い金払ってるんだ、出来るだろう?リンクス」
アームズフォート部隊からの通信は反論する余地もなく切断される。
「……ジン聞こえたか、援軍は来ない」
「そんな…!いくらなんでもこの数は…!」
「どう言おうがお前ら2人で何とかするしかないんだ。数を多いが動きは遅い、冷静に対処すればどうってことない……いけるな?」
「うん…分かったよ」
幾らネクスト2機と言えど、ジンはまだ戦闘経験が浅い。武は最悪撃墜されるかもしれないと心配しつつも冷静にジンに指示する。
紅桜はブーストで自律兵器の距離を離しながら着実にライフルを当て続ける。メリーゲートの協力もあって自律兵器の数は確実に減っている。
そして20分後、自律兵器の最後の一機を紅桜が撃破する。
「自律兵器撃破…武、敵影は?」
「スキャン完了、敵影なしだ。今ので最後だったようだな」
「終わった……の?」
「ああ、よくやったな」
「作戦完了ね……ジン君、おつかれさま」
「はい、ありがとうございますメイさん」
暫くすると紅桜とメリーゲートの上空から輸送ヘリが降りてきて回収して行く。ミッションは無事成功し、ジンは安堵して輸送ヘリのカーゴ内で一息つく。
企業における軍事力は、コントロールをその第一の要件とし、代替不能な個人にこれを委ねることは厳に慎まれるべきである。リンクス戦争以降、それは企業の共通認識であり、その結果として生まれたのが、巨大兵器アームズフォートであった。
代替可能な多数の凡人によって制御され、ハードウェアとして安定した戦力を約束する。アームズフォートは、正に企業の望むソリューションであり、事実としても、その戦力は平均的なネクストを遥かに凌いでいた。
物量とパワーの戦争。大多数のネクストにとって、ジャイアント・キリングは、その名の通り奇跡の親戚にすぎなかったのである━━━
という訳で原作通りchapter1おしまいです。
次回からchapter2へ続きます
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chapter2-1 「砂漠の狼」
━━ ミッションを連絡します。 コロニーアスピナを占領したリリアナのネクストを排除してください。コロニーアスピナには貴重なAMSのデータがあります。愚かな組織に、奪われる事のないようにしてください。ノーマル部隊を少数ながら確認されていますが、大した障害にはならないでしょう。優れたネクストであれば、問題はありません。快諾を待っています ━━
紅桜を乗せた輸送ヘリはコロニーアスピナの上空を飛行する。リリアナに占拠されたアスピナは居住区は燃え、ネクスト機は確認されておらず、ノーマル部隊だけが蹂躙しているようだった。
「うわぁ…ひでぇ有様だな。同じ人間がやることかよ……」
「目的の為には手段を選ばないって感じね。どの辺で下ろしましょうか?」
「そうだな、ジンどの辺で━━」
「今すぐ下ろして」
「……は?」
「だから、今すぐ下ろして!」
ジンは間髪入れずに強く下ろせと言う。武は素っ頓狂な声を出してしまう。大人しく、内気なジンがここまで強く言うことは殆どなかった。
「けどなぁ…今降ろすと敵部隊のど真ん中に降りるけどいいのか?余計に被弾するぞ」
「被弾しなかったらいいんだよね。じゃあ、降りるよ」
「あ、おい待て…!!」
ジンは聞く耳を持たず、勝手にハッチを開けて飛び出てき、そしてそのままリリアナ部隊の方へ突っ込んでいく。
「リンクスだ!リンクスが来たぞ!」
「くそっ…!企業の差し金か!!」
「撃て!撃ちまくれ!」
ノーマル部隊は紅桜が接近していることに気が付き、それぞれ持っているバズーカ、ガトリングガン等の武器で弾幕を張っていく。普段なら、一定の距離からライフルを撃つが、紅桜は被弾しつつも、バズーカ等の威力の高い攻撃は避けながら接近する。
「どうしたアイツ……らしくない動きをして」
「アイツらがやってることが許せないんだと思うわ」
「許せない…か、確かにあの時と似たような風景を見せられたら許せないよな……」
武は仕方ないか、と言いたげな物言いで蹂躙されたコロニーを輸送ヘリから覗く。そこから見た風景はジンが幼い頃に住んでいたコロニーを蹂躙された風景とそっくりだった。
紅桜は一機のノーマル間合いを詰めると、左腕のブレードでコクピットを狙ってコア部と脚部を分断する。為す術もなく分断されたノーマルは爆発。紅桜は爆風をクイックブーストで避けると、もう一機のノーマルに背面武装のプラズマキャノンを放ち直撃して撃破する。
「撃て!撃ちまくれ!同じ人間だ、殺れる筈だ!!」
ノーマル部隊は怖気ずくこともなく紅桜に攻撃を仕掛ける。しかし、紅桜はそれに動じずに被弾しながらも接近してブレードでノーマルを次々と撃破していく。最後の一機が残ると、ノーマルが持っていたバズーカとミサイルポッドをマシンガンで破壊してコクピットへ突きつける。
「お前らのリーダーは何処にいるんだ」
「リーダー…?聞いてどうするつもりだ」
「いいから早く答えろ…!!早くしないとお前を━━」
ジンは震えた声になりながら尋問を急す。しかし、突然紅桜のコクピット内からアラートが響く。紅桜は慌てて正面を向くと上空からマイクロミサイルが迫ってきたのに気づき、慌てて後退しながらマシンガンで迎撃する。
「増援…!?一体どこから……」
辺りを見回すがノーマル以外の敵は確認できない。しかし、背後から衝撃がコクピットまで伝わる。
「後ろか!!」
「遅せぇよ」
紅桜はクイックターンで後ろを振り向いた瞬間、赤黒い影が見えた。しかし、再び衝撃が走り紅桜のプライマルアーマーは剥がれてしまう。
「ほんとにコイツがカブラカンを落としたのか?GAの犬にやられるくらい落ちぶれたな、アルゼブラは」
「お前は…?」
再び振り向くと、見覚えのある球体型の肩部に、甲虫を彷彿させるような頭部の、アルゼブラ製のネクストが立っていた。
「俺は、砂漠の狼だ」
「砂漠の……狼…?」
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CHAPTER2-2 「メメント・モリ」
「俺は、砂漠の狼だ」
「砂漠の狼……?」
紅桜の目の前に降り立つアルゼブラの軽量機はそう言った。武はその言葉に聞き覚えがあった。リンクス戦争以前、アマジークと言うリンクスが存在した。彼は低いAMS適性を受け入れて高い戦闘能力を発揮して、企業のリンクス達と同等に戦ったという記録がある。その彼のまたの名を「砂漠の狼」と呼ばれていた。
「お前、オールドキングを捜してるんだろ?」
「オールドキング……それがアイツの名前なのか!?」
「知らなかったのかよ、呆れる。そんなんでよく探し回ったな」
「う、うるさい!そんなことよりもオールドキングはどこにいるんだ!」
「お前みたいなやつに教える訳ねえだろ」
「じゃあ、どうすれば教えてくれるんだよ……!」
「言い方を間違えたな、ここで死ぬ奴に教える必要はない」
そう言うとアルゼブラの軽量機は、両手に持っている武器で攻撃を始める。
紅桜は咄嗟に避けきれず、直撃してしまう。軽量機の武器はアサルトライフルと衝撃力の高いショットガンであり、紅桜はプライマルアーマーを展開しているにも関わらず、硬直してしまう。
「なっ…!?こいつ…!!」
紅桜は体制を立て直し、一度クイックブーストを吹かし、その後通常ブースターで後ろに下がって距離を置く。しかし、軽量機は空中を飛びながら迫り、散弾とアサルトライフルの弾は容赦なく降り注ぐ。
それに対して紅桜は、マシンガンとプラズマキャノンで迎撃しようとするが空中でクイックブーストで容易く避けられ、反撃を食らう。
「弾が当たらない!?」
『ここからじゃ、敵機が遠くて当たりづらいです!もっと接近しないといけません…!』
「でも、これ以上近づけばショットガンと餌食になっちゃうよ!?」
『真正面から接近するのではなく、敵機の真下をくぐって側面や背後から接近しすればなんとか……』
紅桜のAIであるサクラは、飛んでいる軽量機の下をくぐり抜け、背後に回ることを提案する。
ジンは早速クイックブーストで下をくぐり抜け。サイドクイックブーストで急旋回すると、マシンガンで軽量機を撃つ。しかし、軽量機は被弾を気にせずに振り向いてアサルトライフルとショットガンを放ちながら距離を詰めて再び紅桜の上空を飛び越える。
「くそっ…!捉えきれない!!」
紅桜は、横にクイックブーストをして距離を離すが、軽量機はすぐに紅桜を捉えて散布型マイクロミサイルを放つ。紅桜は、マシンガンで迎撃するが、数発被弾してしまう。その隙を狙って、軽量機はアサルトライフルとマイクロミサイルを容赦なく放ち続ける。
紅桜は必死に避けるも、避けきれずに被弾してしまう。
『AP60%現象!!これ以上被弾したら機体が持ちません!!』
「不味いわよジン、早く撤退して!」
「そう言われても…!あいつが逃がしてくれない!!」
ノアが撤退命令を出し、紅桜は逃げようとするが、軽量機は、撤退しようとする紅桜から回りこみ、逃げ道を塞いでいる。その光景は、獲物を逃がそうとしない獣のようにも見える。
ジンは逃げられず、機体を撃破するしかないと考えてプラズマキャノンを捨ててブレードを構える。
「レーザーブレード?そんな武器で何をしようってんだよ」
「決まってる、お前を倒すんだ!!」
「はっ、よく言うよ。さんざん逃げ回ってた癖によ」
「そう言っていられるのも今の内だからな…!」
ブレードを地面に沿って振り上げて砂埃を起こし、軽量機のヘッドカメラを覆う。軽量機のカメラは砂まみれになり、紅桜をロックオンすることが出来なくなる。
「砂埃で目隠しか、だけどな…」
軽量機は、迷うことなく接近し、アサルトライフルとショットガンを連射する。ブレードを構えて接近する紅桜は直撃してショットガンの衝撃でよろけ、プライマルアーマーが強制的に解除される。紅桜は、体勢を立て直すように後退し、軽量機は、それを追い詰めて攻撃を続けていく。
「その単純な動きじゃ、狙わなくても当たるんだよ!!」
紅桜は、蛇行しながら攻撃を避けていくが拡散するショットガンの弾は完全に避けきれずに被弾して、装甲は銃弾の跡や穴ができ、関節部分からは火花が散る。
「AP80%減少…!!早く撤退して!これは命令よ!!」
「でも、どうやって逃げればいいのさ!!どんなに離しても追いついてくるよ!!?」
「っ…!どうすれば……」
【こちら、ハーディン。現在そっちに向かっています。私が対処しますので、それまで耐えてください】
「援軍か…!くそっ…やっとか……。聞いたかジン、援軍が来るまでなんとか耐えろ。オーバードブーストで距離を離せ、出ないとお前が死ぬぞ!!」
武とノアは大破寸前の紅桜を見て焦りながらも援軍が来るまで持ちこたえろとジンに指示を送る。紅桜は蛇行しながらオーバードブーストを起動して軽量機と距離を離していく。
「怖気づいたのか?でも逃がさねえよ」
軽量機もオーバードブーストを起動して紅桜との距離を段々と詰めていくと、武器を構えて狙いを定めて攻撃を行う。
「このまま追いつかれる!何とかしないと…!!」
紅桜は思わず、廃墟と化した建物の裏に周り攻撃を防ぐと廃墟が崩れて砂埃を起こる。すると、紅桜の視界が砂埃で視界が塞がれてしまう。思わず、片手で砂埃を振り払うと目の前に今まで追いかけて来た軽量機が目の前に現れる。
「うわああぁぁぁぁ!!」
ジンは驚き、思わずマシンガンを連射するがショットガンで破壊され、その衝撃でバランスを崩して、尻もちをついてしまう。
「ったく、逃げ足は一丁前だな。手間をかけさせんなよ、お前一人に」
コクピットに向けてショットガンを突きつけらる。その光景は幼い頃、逆関節のネクストに母親を殺された時の構図とそっくりだった。ジンは逃げなきゃと思いながらも、額が冷や汗でベッタリになり、頭の中が真っ白になり身体が動かなくなる。
「おい!ジン!!逃げろ!!早くしろ!!」
武は大きく叫び、ジンに呼びかけるがその声を聞こえておらず、さらにジンの動悸が激しくなる。
軽量機がショットガンの引き金をひこうと指をかけて今にも撃とうとした瞬間だった。
ズドンッ!と重い音が響くと同時に軽量機は衝撃で硬直した。
モニターを見ると、遠くで角張ったシルエットが見えた。
「えっ……?」
「ちっ…!手間取りすぎたか!!」
ジンは何が起きたか分からなかった。しかし、軽量機は撤退して行くのを見て、助かったということだけは理解出来ていた。そんな中、紅桜に通信が届く。
「こちらハーディン、生きていますか?」
「えっ…?あ、はい……」
「ならよかった、今迎えが向かっていますから安心してください」
また、助けてもらった。その安心感と自分の弱さに悔やみながらも瞼を閉じる。
久しぶりの投稿になりました
次回もまた遅くなるかもですねぇ…
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chapter2-3 「勿忘草」
「えっぐ…ぐすっ…」
どこからか小さい子供の泣き声が聞こえる。
怪我したのかな、それとも親に叱られたかな?
目を開けてみると、自分が誰かにおんぶされていた。この泣き声は、小さい頃の僕だったことが分かった。
「大丈夫だ、絆創膏貼ったんだから痛いのは治るよ」
「うん……」
「でも楽しかったですよね!こんな体験初めて!ねっ、お姉ちゃん!」
後ろからじゃ顔はわからなかったけど、声的に、当時の自分と年の離れた男の子のような気がした。その隣にはショートカットで、金髪の少女と、同じ髪色をした大きなリボンをつけたロングヘアーの女の子が並ぶように歩いていた。
「災難でしたわ、コスモスから珍しい物が見られるって聞いてついてきましたのに」
「あははは……でも、お姉ちゃん黒い虫が飛んできて喜んでたじゃない」
「あれは喜んでたんじゃありませんわ!まったく……お母様になんていえば…」
「母さんからは俺が言っておくよ」
「ありがとうお兄様…」
2人の女の子の顔はよくは見えなかった。だけど、リボンを付けた女の子はほっとしたような雰囲気は分かった。
この子達は、初めての筈…なのにどこか暖かく、懐かしく感じる。どうしてだろう━━
「……やっと目が覚めたか」
「兄さ……っ…いたたた…」
目を開けると、目の前で兄さんが呆れた顔でこっちを見ていた。起き上がろうとした瞬間、体のあちこちに痛みが走った。隣の手鏡を見ると、頭には包帯が巻かれていた。
顔を上げればら見覚えのない白い天井……ということは、あの時助けが来たところで、意識を失ったんだなって分かった。
「大丈夫かよ?無理して起きるなくていいぞ」
「頭と身体のあちこちが痛いんだけど……」
「医者によると、全身打撲と、頭、手足から出血してたらしい」
「そっか…えっと、ここは?」
「アスピナ機関の医療帰還だ。もうすぐ姉貴の方が━━」
そう言ってる最中、荒っぽい足音と同時にドアが勢いよく開くとお姉ちゃんがこっちに駆け寄って来ると、僕を強く抱きしめた。
「く、来るしいよ…」
「勝手に無茶してこんなボロボロにして…死んじゃうかと思ったじゃない!!」
「ご、ごめんなさい……」
お姉ちゃんの声は震えていて、抱きしめた手は全く離す気はなさそうだった。
これだけ心配させたんだなってわかるとちょっと申し訳なく思った。
「もうこんな無茶な真似はしちゃだめよ?」
「うん、わかってるよ……」
「次こんなことをしたら、リンクスを辞めさせるからね?」
「そんなっ…!どうして…!?」
「決まってるでしょ、死ぬリスクがある職業を家族が喜んで勧めると思う?私はジンに死んで欲しくないのよ」
そりゃそうだよね、リンクスになるって言った時みんな賛成はしてくれなかった。機体が破壊され、搭乗しているリンクスが死亡した事案は幾つもある。
「……分かったよ、もう無理しないよ」
「分かってくれたならなにより。武、機体の方はどうなの?」
「アリーヤのパーツはともかく、新品の腕パーツまで大破している。治すのに、金と時間がかなり必要になるな」
「困ったわね、どうしようかしら……」
「お取り込み中失礼します、資金にお困りならオーダーマッチがありますよ」
「オーダーマッチ……?」
僕らが悩んでる中、部屋のドアをノックして入って来たのは、白髪が混じって、少し髪が長いお兄さんだった。
そのお兄さんの声は、あの時殺されかけた瞬間、助けに来てくれた人の声と同じだった。
アスピナ跡地で助けてくれた声の主に、ランクマッチというものにオススメされた。それは、少年の運命を大きく変える事となるのを誰も知らなかった。
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chapter2-4 「order」
そんな中悩める姉弟達にオーダーマッチのお誘いが……
「オーダーマッチ……?っていうか、あの時のお兄さん…?」
「あの時っていうのは?」
「ほら、さっきリリアナ部隊にやられそうな時に救援に来てくれたじゃないですか?」
「さぁ?なんのことでしょうか?私は、君の医療担当の私の姉の代わりに君の様子を見に来ただけです。」
「えっ……でも…」
「声が似ていたからと言ってその人と安易に判断するのはよくありませんよ。きっと他人の空似でしょう」
お兄さんは僕を治療してくれた人の弟で、助けてくれて人とは違うって否定した。でもお兄さんの声は、僕が死にかけた際助けに来てくれた人の声と確かにそっくりだった。
「体の調子はいかがですか?」
「あ…はい、あちこち痛いけどなんとか…それでランクマッチっていうのは?」
「シュミレーターでカラードに登録されてあるリンクス同士で戦い、勝った方はカラードのランクが上がり、賞金が得られるのですよ。カラードには登録されていますよね?」
「はい、リンクスになる前に、企業連から登録するように通達されましたから」
カラードに登録されてあるリンクスはそれぞれランクがある。ランクが高ければ高いほど実力があり、契約している企業からも一目おかれる存在となっている。
当然僕は、新米のリンクスでミッションをこなした数も少ないから、最下位のランク31。
「それなら大丈夫です、ランクマッチの会場は調べたら出てますので」
「あ、待ってください…!」
「どうしました?」
「もし、助けてくれた人に会ったら僕が助けてくれてありがとうございますって言ってたって伝えてください」
お兄さんはふっと微笑むと僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「君はいい子ですね。ですが、申し訳ありませんが私はその人を知りません。自分で見つけて自分で伝えてください。」
それではと小さく会釈してお兄さんは病室から出ていった。
「勝ったら報酬金が貰えるし…ランクも上がる」
「ランクが上がればその分知名度も上がって依頼が来ることも多くなる。機体の修繕もしばらくかかるだろうから、怪我が治ったら行ってみたらどうだ?」
「そうだね、そうしてみるよ」
「ああ、それじゃあ俺達は家に戻るな」
「怪我を治る前に病室から出ないで、いい子にしてるのよジン」
「もう子供じゃないんだから分かってるよ…!」
分かってるよとクスクス笑いながらお姉ちゃんは兄さんと一緒に帰っていった。
時計を見るともう夕暮れ時だった、1人になった途端とても静かだった。周りを見回すとベッドの隣に置かれてある棚に紙媒体の本が置かれていた。
今時紙媒体の本は珍しいな、今は殆ど電子書籍ばっかりで本物の紙の書籍は初めてだった。本を読もうとしてそのまま手を伸ばしたけど、距離があって届かなかった。
焦れったく思い、一気に手を伸ばして本を取った……が、バランスを崩してベッドから落ちてしまった。
「あいたたた……」
受身もできず、顔面から落ちたため鼻元がジンジンする。
「ふふっ、相変わらずドジなんですね〜」
「ほっといてよぉ……ん?」
思わず反射的に返答したけど、誰の声か分からなかったから顔を上げた。
顔を上げた先には、屈んで僕が読もうとした本を笑顔で差し出している金髪の女の子がいた。
「久しぶりですね!ジンさん♪」
女の子の笑顔は明るくて可愛かった。そして、不思議と夢に出てきた女の子の面影が重なった。
久しぶりと金髪の女の子に声をかけられたジン
その女の子は夢で見た女の子の面影と重なった。あの夢はなんだったのだろう、そして女の子が声をかけた理由は……?
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chapter2-5 「コスモス」
chapter2-5 「コスモス」
「久しぶりですね!ジンさん♪」
本を差し出してくれた女の子は笑顔でそう言った。青い瞳に金色の髪、そして女の子の眩しい笑顔は、思わず見入ってしまいそうだった。
「えっと…君は……?」
「もー、忘れたのですか?小さい時に庭園で遊んだじゃないですか〜!私です!コスモスです!」
女の子は笑顔のまま自分の名前を答えてくれたが、名前を聞いてもピンと来なかった。夢で見た顔をしている……って言って変な人って思われても嫌だなぁ。でも、その笑顔は少し懐かしく感じたのに、変わりはなかった。
「コスモス……うーん…ご、ごめん思い出せないや。僕、小さい時の事をあんまり覚えてなくて……。あ、でも兄さんに聞いたらなにか思い出せるかもしれない…!ちょっと待ってて!」
「そんな無理して思い出さなくても大丈夫ですよ。ゆっくり少しづつでいいです。私はいなくなったりしません」
慌てて携帯を取ろうとした時、コスモスは微笑みながら僕の手を握ってくれた。
「……うん、ありがと」
携帯を机に置くと、コスモスはニッコリ笑って「それでいいのです!」って言った。
どうしてかわかんないけど、コスモスの顔を見ると不思議と安心する。やっぱり小さい頃に会ってたんだろうな。
「その怪我はどうしたのですか?」
「これは…ネクストと戦ってる時にやられたんだ。僕が強かったら、こんな風にはならなかったんだろうけど……」
「…ジンさんも、リンクスになったんですね。」
「えっ…?どうして分かったの……?」
「首のAMSジャックを見ればわかります。どうしてリンクスになったのですか?」
コスモスはうなじにある僕のAMSジャックを撫でる。僕は、幼き頃にリリアナに襲われたこと、そこで母親は殺されたこと、そして、オールドキングに復讐する為にリンクスになったことを話した──
「そんな事情があったのですね……可哀想に…」
そう言うと優しく僕の頭を撫でた。同情してくれたのだろうか、コスモスは悲しそうな表情をしていた。
「私も何かお力になれたらいいんですが……」
「ありがとう、でも大丈夫だから。これは…僕だけの問題だから…気にしなくてもいいよ」
「そうは言っても事情を聞いた以上なにかしてあげたいんです…!うーん……そうだ!」
コスモスは何か閃いた表情を見せると、僕の携帯に何かを打ち込み始めた。
「あの…何してるの?」
「……強くなりたいんですよね?なら、特訓しないとですよね?」
「……うん」
「ジンさんの携帯に私の連絡先を登録しておきました。もし、特訓がしたかったら私に連絡してください」
「でも、君はリンクスじゃ──」
「私、これでもリンクスなんですよ?」
「え……?」
「カラードランクNO.14、少なくともジンさんよりかは上ですよ。もう、失礼しちゃいます」
コスモスはふくれっ面でそういった。確かに僕が悪かったけど、しょうがないじゃないか、こんな女の子がリンクスだなんて想像つかないよ。
「コスモス、帰るわよ」
ドアの向こうから声がした。振り向くと、大めなリボンを付けたコスモス似た女の子が立っていた。
「それじゃあジンさん、今度!」
ニコッと笑って手を握ってくると、手を振りながら部屋を出ていった。まるで嵐のような子だった。電話帳を開くと、そこにはコスモスとかかれた連絡先が確かに、登録されていた。
「強くなる為に特訓……しなくちゃな」
コスモスと出会い、特訓をしようと意を決した。
だが少年は気づきもしなかった、この出会いで運命が変わるとは思ってもいなかった──
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chapter1-6 「解体屋」
今回はオーダーマッチのお話となります
退院してから数週間、身体は完治した僕は、病院に出会ったお兄さんが言ったオーダーマッチを行うことにした。
本当は依頼が来てたんだけど機体は修理に出してるから当然受けられない。
オーダーマッチが行えるシュミレーターはカラード本部にあり、場所が分からないからお姉ちゃんについてってもらった。
シュミレーターは、パイロットの戦闘データを参考にして作られたCPUと相手をするらしい。
「最初の相手はギルドーザー。パイロットは……チャンピオン・チャンプス?なんのチャンピオンなの…?」
「さぁ?解体のチャンピオンなんじゃない?」
お姉ちゃんはそう言いながらシュミレーター室の前でカードを僕に渡した。
「なにこれ?カード?」
「リンクスとして登録した時のIDカードよ、一応無くさないように私が持ってたの」
「もう子供じゃないって言うのに…」
「そうね、これから物を無くさなかったらいいわ」
ぐうの音も出ない。最近端末を無くしてなくしは兄さんやお姉ちゃんに怒られてばかりだから尚更……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
シュミレーターに入ってIDカードを入れて起動させると、画面は一瞬にして旧ピースシティに写り変わり、開始のブザーが鳴った。
機体を探そうと前進すると、正面に見えるビル群の1つが倒壊していくのが見えた。
ジンはさそこにいると思い、クイックブーストを吹かしながら接近する。
案の定、ギルドーザーはそこにいた。ジンは狙いを定めると、マシンガンを連射してダメージを与える。しかし、ギルドーザーは構わず紅桜に突っ込んできて、腕部に装備されてある先の尖った鉄塊を当てようとするが届かずに空ぶってしまう。
「なーんだ、大したことないじゃないか!離れて撃てば全然大丈夫だ」
紅桜はクイックブーストをふかしながら一定の距離を維持しながら攻撃し続ける。
ギルドーザーはブーストで接近しながら、武器を切替えてグレネードキャノンとミサイルを放つ。紅桜は避けるが爆風に巻き込まれるが構わず撃ち続けながら飛び越え、クイックターンをしてギルドーザーの背後に回る。
そして、反撃される前に下がりながらプラズマキャノンとマシンガンで攻撃をすると、ギルドーザーは火花を散らして動かなくなり、[Match Finish]の文字が出る。
シュミレーターの席を外し、ターミナル向かってIDカードをかざすと、賞金5万コームとあのギルドーザーが持っていたあの鉄塊のクーポンが貰えた。
「初勝利おめでとう、でも相手は壊し屋。調子乗らないことよ」
振り向くと、長い髪を大きめのリボンでまとめた女性が腕を組んで僕も鋭い目で見ていた。
「うん、ありがとう?でも……誰?」
顔に見覚えがなく、彼女は呆れた顔をしてため息をつき、こっちを睨む。
「貴方、何も覚えてないのね。全く、コスモスはこんなのを選んだのかしら…」
彼女はじっと睨んだままブツブツ呟く。面倒事になりたくないから、その場を離れようとすると。お姉ちゃんがやってきた。
「もう終わったのね、どうだった?」
「勝てたよ、賞金もそこそこ貰えたし。もう少し頑張ればパーツを買う余裕も出てくるよ」
「それは良かった。……あら、エリカ、ちょうどいい所にいたわ」
「ノアさん、お久しぶりです。依頼の事ですが?」
「ええ、前に頼まれたミッション、武と相談して受けることにしたわ」
「ミッション?でも、紅桜はまだ修理中だってさっき……」
「今から受けるミッションはネクストは要らないわ。そこにいる、エリカと妹のコスモスの護衛をしてもらうのよ」
経験したことないが、護衛というのは苦手だと思っているジン。
しかし、新たに受けることになったミッションは有名なノイン家の姉妹の護衛だった。
ジンはミッションを完遂させることは出来るだろうか……
次回から投稿ペースあげたいと思います……
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chapter2-7 「旧知との再開」
ボロボロになった紅桜を目の前にして、武は悩んでいた。
今回のミッションで贈られた報酬があまりにも少なく、修理費、弾薬費を計算すると赤字になってしまうからだ。
いっその事、修理を諦めて他のパーツで代用しようかと思っていたところ、後ろから声をかけられた。
「武さん?叢雲=武さんですよね?」
振り向くと、白いシャツに青いカーディガン。そして、フリルの着いたスカート姿を履いたコスモスがいた。
「……どちら様で?」
「やだな〜私です、コスモス・ノインです」
なんだ、フランメの妹さんか。10何年も会ってなかったらそりゃ分からんな。
「それで、俺に何の用だ?」
「ちょっと頼みたいことがあるんですよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「護衛って……どういうこと?」
唐突に言われて困惑した、目の前にいる女の子はただの女の子にしか見えないし、いきなり護衛と言われても……。
「そのまんまの意味よ、重要な会議があるから、ローゼンタール本社までノイン家のご子息のエリカ嬢とコスモス嬢を乗せた輸送機の護衛をするの」
「ノイン家って……あのローゼンタールの代表の…」
「そこまで言わなきゃ気づかなかったっていうの?全く…ムラクモは随分落ちぶれたね」
そこまで言われるのは心外だ。こっちだってなりなくてなった訳じゃないのに。
「……色々言いたいことはあるだろうけど、お嬢様?貴方が住んでるコロニーまで案内してくれるかしら?」
「ええ、もう手配は済んでるわ。着いてきて」
僕らは、ノイン家のお嬢様に着いて行き、最上階にあるヘリポートまで向かった。その間、色んな方向から誰かに見られてたような気がしたけど、恐らく護衛の人が監視してたんだろう。
ヘリポートには、既に離陸準備が完了したヘリと護衛の人。そして、肩に大きな単眼を中心に、翼と足が生えたようなシルエットをした不気味な機械を乗せ、鋭い赤い目に輝いて見える銀髪ロングの少女待っていた。身長は僕と同じくらいだろう、少し大人びて見える。
「やっと来たか、お前の後ろにいる奴が今回のパートナーなのか?」
「ええ、今回パートナーに選んだ、ジン=ムラクモよ」
「ムラクモ……じゃあ、お前が武兄の…」
銀髪の少女は僕の方をじっと見る。……というか今兄さんの名前を言ったよね?一体何者なのだろうか。
「あの──」
「何ボーッとしてるの、早く乗りなさい」
「ま、待って…!引っ張んないでよ…!」
お姉ちゃんに襟をを引っ張られながらヘリに乗せられる。
全員乗ると、ヘリは離陸してカラード支部から飛び立ち、砂の大地真っ直ぐ飛んでいく。
数十年前のリンクス戦争で大半の大地がコジマ粒子で汚染され、大地は水没、砂漠化して人々が住めなくなった。どこを見ても、砂漠と海と企業の基地。国家解体以前の面影はなくなっていた。
ヘリが飛び続けている間、沈黙が流れる。
お姉ちゃんは、ノートPCで黙々と打ち続け、エリカ嬢は不機嫌そうに窓から外を眺めていた。
というか、エリカ嬢はさっきまで機嫌が良かった様子が全くなかったんだけど……。
どうしたものかと思い、隣を見ると僕の方に乗った巨大な目玉がじっとみていた。
「うひゃあああぁ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げて、椅子から崩れてしまった。その瞬間、全員僕の方を見た。
「そんなに驚くことはないでしょうに……」
「目の前にでかい目玉が肩に乗っていたら普通驚くだろ」
「なるほど……それは申し訳ありません」
デカい目玉は、お辞儀をするように目玉だけを下を向いた。
「悪いな、うちのイモータルが驚かせた」
「ううん、大丈夫。気にしてないよ。えーと……」
「俺はグレイ、グレイ=アンダーソンだ。これでもリンクスだ。お前は?」
「僕はジン=叢雲。今日はよろしくね」
「ああ、ムラクモ……ってことはタケル兄の弟なのか?」
「兄さんのこと知ってるの?」
「ああ、知ってるぞ。レイレナードで同じテストパイロットで、世話になったんだ」
「そうなんだ、テストパイロットしてたってのは聞いたことあるけど、当時の兄さんってどんな感じだった?」
「気さくで、誰にでも分け隔てなく接したな。俺の事を妹分みたいに可愛がってくれたな」
「そうなんだ!昔から変わってないだ…もう少し聞かせて欲しいな」
「ああ!いっぱい聞かせてやる」
グレイは嬉しそうに顔をほころばせて話してくれた。僕の知らない兄さんの姿を聴けてなんだか嬉しかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暫くすると廃ビル郡の中で目立つ巨大なドーム状の何かが見えてきた。リンクス戦争以前、巨大兵器をドームで隠していたっていう文面は見かけたことはある。だけど、近くに基地やコロニーがない砂漠のど真ん中にあるのは不自然だ。
「ねぇ、あれ何かわかる?」
「あれか?ローゼンタールの数少ない残ってるコロニーだ」
「コロニー?それにしてもなんか小さいような……」
「住民をAMSの研究者と被検体だけに制限してるの。このご時世、クレイドルに移住した方が安全よ」
グレイの隣にいたエリカ嬢が答える。
確かに、汚染された地上よりもクレイドルに乗って空で過ごした方がとても安全だ。
ヘリはドーム付近のビルへ降下する。ビル屋上には既にノーマルACが3機鎮座していた。
2機はオーメル製の頭部がアンテナ型で戦闘機のような主翼がある特徴な空戦タイプで、もう一機は母さんが使っていた型式の白い流線型のハイエンドノーマルだ。恐らく、兄さんが乗っているのだろう。
「もうすぐ着くわよ、ブリーフィングはノーマルに乗ってからよ」
ヘリは着陸し、僕とグレイの2人だけ降ろして飛んでいく。依頼主はどうして僕らを選んだのか気になったけど、初めてのノーマルに緊張しながらコクピットに乗った。
後書きって何を書けばいいんですかね……?
最近起こったこととか書けばいいの……?
まぁ、それはそれとして。ノイン家のエリカとコスモスは仲のいいフォロワーの許可を得て使わせていただいてます。
エリカは高飛車お嬢様でコスモスはおてんばお嬢様って思ってくれたら大丈夫だと思います(多分)
また、次回でお会いしましょう。
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chapter2-8 「Scramble」
行きでは、何も起こらなかったが──
「ミッションを説明するわ。用心が乗ってる輸送機の護衛。グレイとジンは左右に展開して索敵、敵が来ない限り武は輸送機内で待機よ。来るとしてもノーマル程度だろうけど、気をつけてね」
ブリーフィングを終えると、タイミング良く輸送機が降りて後部のハッチを開く。
「ジン、グレイ、ノーマルはプライマルアーマーも無ければクイックブーストもない。そこを意識しておけよ」
了解。グレイと僕は返事をして輸送機と同時に離陸して共にローゼンタールの本部まで飛び立っていく───
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
輸送機の空路には敵はおらず、問題なく本部まで辿り着いた。帰還まで護衛する任務となっている為、僕らは会議中は輸送機内で待機していた。シュミレーターで操作は覚えていたが、本物のノーマルを実際に操縦するのは初めてだったから心配だったが、敵機と鉢合わせにならずに済んだから安心した。
「何も来なかったね?」
「ローゼンタール本社にいる時はともかく、道中で平和だったのは運がいいな」とグレイが余裕そうに言った。
「ジン、グレイ、さっきまで何も来なかったからって、気を抜くなよ」
「「分かってる(よ)」」
僕とグレイは兄さんに注意されるが、確かにその通りだった。
「所属不明機、防衛目標に接近!」
ほっと一息つこうとした瞬間、アラートが鳴り響く。レーダーを見ると、前方からノーマル機が接近して来るのがわかった。
「敵!?このタイミングで!?」
「言っただろ、気を抜くなって。フォローは任せろ。空を飛べるお前らは、目の前の敵を蹴散らせ」
敵の数は5機、モニターを拡大すると、エイのような形をした戦闘機が2機、ノーマルが3機の編成だ。兄さんは輸送機から出ると、輸送機の甲板部分で、レーザーキャノンを構える。兄さんが乗っているハイエンドノーマルは、ノーマルと違ってカスタマイズの幅が広く、運動性能は上だが、空中や水上でのホバリングが出来ない。僕達は身構え、戦闘準備をするが、ノーマル部隊は止まり、一機だけ近づいてきた。
「そこのノーマル三機、企業の人間じゃないだろ?」
オープン回線から、男の声が聞こえた。恐らく、目の前のノーマルのパイロットだろう。どうやって答えたらいいか迷っていたら、兄さんが通信に応えた。
「だったら、なんなんだ?俺達も依頼を受けてやってるんだよ」
「俺達は無駄な戦闘はしたくない、さっさと輸送機から離れろ。もう離れたら、報酬以上くれてやるよ」
「知らない奴に言われても信用出来ねえよ。まず、お前達は何者なんだよ」
「答える必要な無い。死ね」
ノーマル部隊はライフルを撃ちながら接近してくる。僕とグレイは前進して、右手に装備してあるレーザーをノーマルに当てるが、撃破出来ずに、機関砲を撃ってきた。
慌てて避けて、なんを避けるがもう一機ノーマルが避けた先にライフルを撃たれて被弾してしまった。
「落ちなかった…!?」
「エネルギー対策はやってるってことよ。ノーマルはネクストより火力が低いのを忘れないでよ」
お姉ちゃんの言った通りだ、ネクストより性能が低いなら、武器の火力も必然的に低いし、瞬間的に避けられるクイックブーストも当然ない。
慌てて姿勢を制御して、反撃を仕掛けるも避けられるが、レーザーキャノンで貫かれて墜ちていく。
「バックアップは任せろ、お前は無理に撃破しなくていい」
「分かった…!でも、この機体って…」
「今は考えるな、とにかく輸送機を守れ!」
そう言った、グレイは機関砲を撃って来た戦闘機をレーザーでコクピットを撃ち抜いて撃墜した。流石に、ノーマルと戦闘機じゃあ、戦力の違いがあるから簡単に撃破できる。
僕も負けじと向かってくる、戦闘機の撃ち落とすと、残りはノーマル二機だけになった。
「どうしたんだ?その程度だったのかよ」
「ちぃ…撤退するぞ」
ノーマル二機は反転すると、撤退して行った。
「なんだったんだろ……あれ」
「おおよそ、盗賊とかそんなところだろ。なんにせよ、クライアントに、大事なくてよかったな」
グレイと言う通り、盗賊だったのかもしれない。企業専属の部隊だったら、肩部に企業のロゴが入ってあるが、遭遇した部隊にはなかった。この世界には、国という概念はない。20数年前の国家解体戦争で企業が勝利したからだ。だから、人を罰する法律は大半は無くなり、クレイドルや企業のコロニー以外の生存区域の治安は、かなり悪い。
兄さんやお姉ちゃんがいなかったら、盗賊の仲間に入っていたのかもしれない。そう考えると、僕は人を恵まれているのかもしれないと、帰還しながら考えた。
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chapter 2-9「麦の海」
「……何処ここ」
護衛任務が終わった後、僕はノイン家の庭園で迷子になったいた。何故なら、兄さん達が報酬の受け取りをしている間、暇だったのでちょっと散歩する程度に屋敷を出て、庭園を歩いていたら、いつの間にか迷っていた。
庭園は木々が生い茂り、色とりどりの花が咲いていて、今の時代じゃ見れないくらい綺麗な自然が作られていた。凄く魅力的でずっと見ていたいが、今はそれどころじゃない。
とりあえず、来た道を戻ろうと振り返ると一瞬、金髪少女の後ろ姿が見えた。
「あれって…?」
緑を背景に麦わら帽子に白いシャツ、青いスカートと、いかにもに絵画出てそうな格好をした姿に何故か懐かしさを感じた。
「あ、まって……!」
思わず、通り過ぎた彼女を追いかけるように走り出した。なにか思い出せるかもしれない、分かるかもしれない。そう思いながら走って追いかけた。追いかけていくと、庭園の道が舗装されいないぬかるんだ道の上を走っていた。
「待って!待ってってばぁ!!」
「えっ?きゃあっ!?」
必死に追いかけ、彼女を止めようと思わず手を掴んだが、勢い余って彼女と一緒に倒れてしまった。
「痛たた……ごめん…ってコスモス!?」
「もう、いきなり手を引くのはなしじゃないですか?」
僕が追いかけてた少女はコスモスだった。彼女は起き上がるとムスッと頬を膨らませて僕の頬を引っ張った。
「ごめんっ、転けるなんて思わなかったからぁ…!」
「もう、せっかくの散歩が台無しです。着替えなきゃいけませんね」
隣に並ぶようにぬかるんだ地面で倒れたせいでお互い服が泥だらけになってしまった。
コスモスは自分の家が近いから直ぐに着替えられるけど、僕の場合そうはいかない。着替えも持ってきてないし、さっき着たパイロットスーツは汗だくで着たくないし、どうしたら……。
「ほらジンさん、帰りますよ?」
「え?あ、うん……ごめんよ」
「もう怒ってませんよ、それに、懐かしかったですし」
「懐かしかった?」
「はい!小さい頃、ここの庭園で一緒に追いかけっこしたんですよ!」
「そうなんだ?」
「やっぱり、覚えてませんか……?」
「うん、ごめん……。思い出せないや」
「いいんです、気にしてませんから。ほら、着替えに行きましょ?」
「着替えるって、僕着替え持ってないよ!?」
「私の貸してあげますから♪ほら、早く早く」
コスモスは笑った顔で手を引っ張って走り出した。突然の事とぬかるんでいる地面のせいで足がもたついたけど、直ぐにペースを合わせて走った。
一緒に追いかけっこをしたと、コスモスはそう言った。それがもし本当だったら、どうして僕はここにいたんだろうとふと思ってしまった。
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chapter2-10 「Girmeet girl?」
秋になってから仕事が忙しく、遅筆状態でした。
chapter2-10 「Boy or Girl?」
「うーん、私よりも小さいんですよねぇ。サイズ合うかなぁ…」
コスモスは屋敷の部屋1つ分程の大きなクローゼットを開けると、服を探し始めた。中にはスカートにワンピースと、女物しか入っていない。服を手に取ってはバスローブ姿の僕の目の前にかざしてはまたクローゼットに戻すの繰り返している。
遡ること数十分前、泥だらけで屋敷に戻るとメイドさんにシャワールームへ連れて行かれ、身体は綺麗になった。それに、泥だらけの服も洗濯してもらっている。
「あのー……コスモス…さん?」
「なんですか?いきなり堅苦しい呼び方なんて」
「いや、一応さっきまで依頼主だからさん付けした方がいいかなって……」
今まで、家族以外の人とほとんど会話をしたこと無かった僕だけど、兄さんから、依頼主には敬語を使えって言われたのを思い出した。
数時間前まで依頼主だったコスモスは「そんなの気にしなくてもいいですよ」と、微笑みながら服を持ってきた。リボンの着いた白いシャツにカーディガン、そしてミニスカートと明らかに女物だ。
「……これは?」
「はい!セーラー服です!」
「いやそうじゃなくて……僕が着るの?」
「それ以外なくないですか?」
コスモスは不思議そうに首を傾げる。彼女は僕の事を女の子だと勘違いしてる気がする。お姉ちゃんが言うには、顔つきが幼く、身長が低いせいで僕は女の子に見えるらしい。
「折角持ってきてくれたのはありがたいんだけど、それ女物だよ?僕男なんだけど…」
間違われるのはよくあることだから、さほどショックはないけど、きちんと訂正した。
「はい!知ってますよ!」
「じゃあなんで僕に着せるの!?男だって分かってのになんで!?」
「まぁまぁ、サイズの合う服がないから仕方ないですよ。さぁ、大人しく着替えてくださいな!!」
そう言うと、服を持って近づいて来た。咄嗟に避けて部屋から出ようとしたら、鍵がかかってドアが開かない。
「ふふ〜、中からでもロックがかけられるんですよ〜」
コスモスはニコニコしながらこちらに迫り、壁際の僕の顔の横に手をついた。「もう観念してください」と笑顔でいいながら、彼女はバスローブの紐を解いて着替えさせようとした。僕の抵抗も虚しく、女の子に着替えさせられた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ジンとコスモスが戯れている間。姉のエリカとノイン家姉妹の護衛を務めていた武とグレイは、今回の報酬の話をしていた。
「報酬額は依頼通り。それから弾薬費や諸々差し引いて、この額よ」
エリカからタブレットを差し出され、報酬明細を見せられた。報酬額としては申し分ないが、差し引き項目にある「特別修繕費」で大きく引かれていた。
「なぁ、この特別修繕費っていうのはなんだ?」
「お宅のネクストの修繕費よ。アリーヤフレームなんだから、高くついたわよ」
「ちょっと待て、修理してくれなんて一言も言ってないぞ」
「いいじゃない、新品同様よ。それに…」
エリカはリモコンのスイッチを押すと、部屋が薄暗くなると同時に部屋の壁に見たこともない装備を付けたGA製のネクストが映し出された。
「今から依頼を請け負うのに、ネクストが動けないんじゃ意味ないでしょ?」
言わなくてもわかるよね?と言わんばかりに、武を見つめるエリカ。武は苦笑いしながら察した。これは、面倒事を押し付けられたと。
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chapter2-11「戦火の引き金」
spoonってアプリで台詞を投稿して色んな方に読ませていたら、相互に「小説はどうした」と痛いことを言われて、投稿を再開しました……。
ほんと申し訳ありません……。
chapter2-11 「Unknown NEXT」
「ど、どうでしょうか……」
「わぁ……!!無茶苦茶似合ってるじゃないですか!」
コスモスは目を輝かせたまま、半ば強引に着せられ、恥ずかしがるセーラー服姿のジンを写真に収めていた。ジンの童顔と相まって男子には見えず、さながらその姿は恥じらう可憐な少女にしか見えない。
「あ、あのー……もうやめません…?」
「駄目です、私が満足するまで着ててください。あ、大丈夫ですよ。ちゃんと依頼料も払いますし、2人だけの秘密にしますから♪」
「そ、それは大丈夫っていいません…!!」
「あ!逃げちゃダメ!!」
コスモスはイタズラな笑顔を見せながら近づくとジンの耳元で囁き、ジンは顔を真っ赤にしながら逃げようとするが、おぼつかない足取りで簡単にコスモスに捕まり、床に押し倒される体勢になってしまったが-
「あんた達……なにやってるの」
「あっ……こ、これはあの…!」
「お姉ちゃん?急に私の部屋に来てどうしたんですか?」
押し倒されたままジンは顔を上げると、白い目で此方を見つめるエリカが立っていた。
「爺やに聞いたわよ、また可愛い子を連れて遊んでるって。それに、人前の時はお姉様って呼んでって言ったわよね?」
「ご、ごめんなさいお姉ちゃ……お姉様」
「まぁいいわ、それよりもブリーフィングを開始するからそこのリンクスを呼びに来たの」
「ブリーフィング……?新しい依頼ですか…?」
「ええ、それもとびきり条件の良い依頼よ。ついてきなさい」
「こ、この格好でですか!?」
「いいじゃない、お似合いよ」
「良くないです!!ちょ、ちょっと待て下さい!」
「はぁ……先に行ってるわ」
ジンはバタバタと慌ててセーラー服を脱ぐ姿を見て、エリカは呆れた顔をして部屋のドアを閉じて行った……。。。
「お、お待たせしました…!!」
慌ただしく扉を開けると部屋の中は薄暗く、真正面のプロジェクタースクリーンには、太陽のマークに赤い背景のアルゼブラ社の企業ロゴが映され、厳かな雰囲気でブリーフィングが始まる瞬間だった。その中には、武やノアは勿論、先程ミッションを共にしたグレイが座っていた。
「あれ…?なんでグレイさんまで……?」
「報酬を受け取る時に一緒に頼まれたんだ。結構いい条件だからとりあえず聞いてみることにした」
「ああ……そういう…」
『一先ず、全員揃いましたかね?』
「はい、内容をお願いします」
『では始めます。初めましての方がいらっしゃるので先ず自己紹介をさせていただきます。私はアディネイサン、オーメル社系列の依頼の仲介人をしております』
スクリーンの傍にあるスピーカーから男性の声が聞こえた。どうやら、仲介人の様だ。
『では、ミッションの説明をしましょう。依頼主はアルゼブラ社。目的は、リッチランド農業プラントを占拠するネクストの撃破となります。ネクストの詳細は不明です。少なくとも、カラードの所属ではありませんが、かなりの難敵のようです。』
画面が変わり、目的のネクストのシルエットが写った画像になった。角張ったGAフレームの重量二脚タイプに、ショルダーユニットには、輪っかを半分に切り取ったモノが取り付けられていた。
「当然、依頼主は単騎で戦うことは望んでいません。低ランクリンクスで勝てるようなものだと思ってはいませんし。そこで、お2人に共同戦線を貼ってもらいます。説明は以上となります。アルゼブラ社との繋がりを強くする好機です。そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが?」
アディはグレイとジンを遠回しに小馬鹿にしたようなことを言い。2人はイラッとして、ジンは言い返そうおするが武に止められた。
またこのミッションが、大きな戦争に巻き込まれることになるとはジンは知る由もなかった-
そう言えば、前話から9ヶ月経ってました……
次回はグレイとジンの不明ネクスト戦となります
私はエタらないように頑張ります……。
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chapter2-12 「傷の理由は」
気になった方はD-deltaという名前で調べてください
リッチランド農業プラント--
「ネクストだ!ネクストが来たぞ!」
「識別信号が出ない…イレギュラーネクストだ!」
「クソっ!アームズフォートがやられてるって言うのに!!」
農業プラントの防衛部隊は、灰色のネクストによって全滅し、上空の輸送機から次々とノーマルが投下されていった。
「これで状況は整った。後は待つだけだ…さて、どう来るか」
灰色のネクストは防衛部隊のMTを殲滅するノーマルを背にして何かを待つように見上げていた。
--------------------
ローゼンタール支社では、ハンガーで2機のネクストの出撃準備が行われていた。
「あれ……?僕の紅桜がなんか変わってる…」
出撃準備をしたジンはハンガーに向かうと、「紅桜」は以前のAALIYAH(アリーヤ)の腕部パーツから軽量型のJUDITH(ユディト)に変更され。武装していたマシンガンからローゼンタール社製の弾数が多いアサルトライフルに変更されていた。
「AALIYAHの腕の修理がまだ終わってないの。代用品としてJUDITHを使ってもらうわ。悪いけど、君の高機動タイプに使えるのこれしか無かったの、上手く戦ってよね」
「……ホワイトグリントに近くなった」
ジンは以前、マザーウィルで補給を受けていた時に出会った少年の事を思い出した。歳も近そうで、黒い髪に顔に酷い傷を負った少年だった。彼は、ホワイトグリントによって酷い傷を負い、父親を奪われて憎んでいた。自分を救ってくれたら英雄が憎まれている事を知らなかったジンはずっと心残りになっていた様だった。
「-ちょっと、ねぇ、聞いてる!?」
「うわぁっ!?な、なに…?」
「急にボーッとしないの、早く行きなさい」
ジンはじっと紅桜を見つめ、隣にいるエリカに背中を叩かれる。ジンは慌ててエレベーターに乗って紅桜のコクピットに乗り込む。
コクピットは狭く1人しか入れないスペースになっている。
「はぁー……。しっかりしろジン!戦争なんだ、こんなことで悩んでたら、母さんの敵を討つことは出来ない!!」
相手は手練の所属不明機、迷えば死ぬかもしれない。そう思いながらジンは頬を叩き、気持ちを整えることにした。
「さてと……お姉ちゃん、入れてもいいの?」
「…………」
「お姉ちゃん!」
「わっ…な、何?」
「サクラ入れるけどいい?大丈夫?」
「うん…大丈夫。今開けるわ」
『位置情報、ゲート解放を確認、格納させます。』
ノアは心在らずな様子で、声もこころなしか元気がなくなっていた。カタパルトに乗せてある紅桜は移動盤は移動し、輸送機近くまで寄ると背面部のゲートを開ける。
ネクストが奥まで入ると、アームが伸び、紅桜を固定した。
「こっちは問題ない。そっちは行けるか?グレイ、デモンさんよ」
「格納完了したら、いつでもいける」
「了解、先に離陸準備に入るぞ」
輸送機の操縦を任されていた武は搬入作業をしているもう一機の輸送機の方に一瞥し、通信を入れる。其方には、グレイのネクストイモータルが格納している。武は輸送機を滑走路に移動させ、離陸推力まで加速させる。
機首を上げ、離陸し始めると空へと上昇して行った。
「……はぁ」
飛行し、作戦エリア移動中、しばらくするとノアはナビゲーションシステムの準備をしながらため息をついた。
「どうしたんだ姉貴。らしくねぇじゃねえか」
「……そう?」
「そうだよ、紅桜を入れる時ボーッとしてたじゃないか」
「そうだな。それに、ノイン嬢に連れてこられてから、ため息も多い。姉貴のことだ、ローゼンタールといざこざのか?」
ノアはため息をつき、曇った表情をしていた。武は気づいていた様で、操縦しながら声をかける。
ノアの両親は、GA系列の企業、GAEテクニカの代表を務めている。その為、一人娘であるノアが確実に跡継ぎになることが確定している。恐らく、ローゼンタールと以前何かあったのかもしれない……と、2人は推測し。
「…別に、ちょっと昔を思い出しただけ」
「昔?」
「ええ、若い頃ローゼンタール社の男に恋したの。だけど……」
「リンクス戦争があって恋が叶わなかった……って感じか?」
「そうよ、ほんと…バカだったわ……」
「…ったく、昔を思い出すのはいいけど、それでナビゲーション失敗して弟を見殺しにしましたなんて笑えないからな」
「分かってるわよ。…それより、私のことより、ジンの事を心配したら?」
「……マザーウィルでの出来事だろ?あれから、暗い顔する事が多くなってるのは知ってる」
「ええ、救われた人も入れば、奪われた人もいる。それが戦争だって…あの子も分かってくれたらいいんだけど」
「……だな、前にも言ったんだ。いつまでも引きづってたら命取りになるぞって」
「それで納得してくれる子じゃないって武だって分かってるでしょ?」
「知ってる。こればっかりは、信じるしかない。聞こえるかジン?」
「聞こえる、どうしたの?」
「相手は所属不明機だ、何をしてくるかわかん。グレイと協力して打ち勝て。迷えばお前が殺される、それだけは覚えておけ」
「大丈夫、分かってるよ」
「ああ、それならいい。勝って生き残るぞ」
「うん!!」
「作戦エリア近いよ。そろそろ準備してよ」
目の前にある山を抜けると作戦エリアになっている。ジンは覚悟を決めてAMSを繋げ、気を引き締めるように操縦桿を強く握った。
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chapter2-13 「Metal Dancer (α)」
「リッチランドが見えた……武君、数は?」
輸送機は山を越え、リッチランドが見えてきた。武に続くデモンの輸送機は敵の数を確認した。
「アルゼブラのMTが6機、識別不明のノーマルが3機、後は例のターゲットだ。ジンは先にノーマルを撃破を優先。グレイはネクストの足止めをするんだ。」
「足止め?撃破しなくていいのか?」
「相手は所属不明機だ、何をしてくるかわからんからな。警戒するに越したことはなんだ、2人がかりで確実に倒す……分かってくれるな?」
「…武にぃがそう言うなら」
「作戦エリア到着と同時にネクスト投下!……ちゃんと生きて帰るのよ」
紅桜とイモータルを乗せた輸送機は作戦エリアに入ると同時に投下される。
作戦エリアには、リッチランド農業プラントには破壊されたGAのランドクラブの残骸が2つに、逃げ惑うアルゼブラのMTをノーマルが追い詰めていた。そして、灰色のネクストが投下する2機を確認すると、着地地点に近づき始めた。
「来たのは2機か、丁度いい。アームズフォートにも飽きていたところだ。遊ばせてもらうぜ、メルツェル」
そう言うと、降下する2機に向かってミサイルを発射する。2機は分断し、紅桜はOB(オーバードブースト)を発動すると、灰色のネクストの頭上を突っ切って行く。しかし、灰色のネクストは紅桜を無視して、着地するイモータルへグレネードを撃ち込むが、間一髪、QB(クイックブースト)で直撃を免れた。
「どうした?仲間を見捨てるのか?」
グレイはオープンチャンネルで灰色のネクストに聞きながら、両手に持った突撃型ライフルで反撃を開始する。
「あれは無人機だ。こんな所で人員を無駄にする訳にはいかない。それよりも、無駄口を叩く余裕があるのかね?」
「へぇ、言ってくれるじゃなねぇか…!!」
「おい待てグレイ!!迂闊に突撃すれば-」
武の制止を聞かずに、イモータルは突撃し近距離で軽量型グレネードキャノンを放つ。
「度胸はいい……。だが」
灰色のネクストはその巨体に合わない速さでグレネードを避けて、プラズマライフルを放つ。イモータルは、プラズマライフルを避けるが、プラズマによるECMでレーダーがジャミングを受けてしまった。
「ECM!?しまった……!?」
イモータルのレーダーは砂嵐にまみれ、敵の所在がわからなくなる。灰色のネクストはイモータルの死角に回ると手に持っているバズーカを放つと直撃し、細い脚部では受け止めきれずにバランスを崩してしまう。
「その細い脚じゃこの威力は受け止めきれんだろう」
「言ってくれる!!」
体勢を立て直すと、イモータルはブーストを吹かして飛行して両手の突撃ライフルを灰色のネクストに撃つが、展開されているコジマ粒子を作られたバリア【PA(プライマルアーマー)】によって、弾は殆ど削られ、実弾に強いGA製の装甲には損傷を与えられなかった。
「GAの癖にPAがやけに硬い……なんなんだこいつ…」
「突撃ライフルのMARVE……いいセンスだが、相性が悪かったな」
「さ・せ・る・かぁぁぁ!!!」
灰色のネクストは気にしない様子でグレネードを構えるが。背後からのプラズマキャノンに気づき、咄嗟に避けるがQBで急加速したブレードを構えた紅桜が衝突する。
灰色のネクストはブレードの刀身に当たらなかったがマッハで飛んでくる紅桜にはさすがに避けられず、吹き飛ばされて膝を着く。
「ごめん…!遅れた!!!大丈夫グレイさん?」
紅桜はノーマルを撃破すると、急いでグレイの元に駆け寄ってきたのであった。
「お前…気をつけろ!!!こいつ…普通じゃない!」
「普通じゃないってどういう……」
「GAの癖にPAがやけに硬い!恐らく、あの肩にある装置が固くしてるんだ」
「兄さん!これからどうすれば……ってECM!?」
ジンは正面から飛んでくるミサイルをマシンガンで迎撃しながら武に通信を送ろうとするが、ECMによってジャミングを受けて砂嵐しか聞こえない状態だった。
「ECMで頼れない……。俺達で何とかするしかない、行くぞ!まずはあのPAを何とかしないと…。」
イモータルと紅桜は左右に散開し、灰色のネクストを囲うように攻撃を開始する。
「二手に分かれて挟み込むか。数で圧倒するなら効果的だな。……だが甘いな」
しかし、灰色のネクストはOB(オーバードブースト)を使って2機と一気に距離を離してサイドブースターを使って急旋回をする。すると、ミサイルとグレネードを2機に向かって後退放つ。
「これじゃ相手のペースに乗せられてる…!」
「こっちの方が機動力はあるんだ!追いかけるぞ!」
紅桜はミサイルを撃ち落としつつ、イモータルは空中でQBを使いながら、弾を避けて、それそれ2機はミサイルとグレネードの弾幕を避けながら真正面から突撃する。2機は距離を詰めるとそれぞれグレネードキャノンと突撃型ライフル、プラズマキャノンとアサルトライフルで攻撃し続けた。灰色のネクストはQBで避けるが、2機の弾幕量に完全に避けきれず、弾を受け止めているPAは次第に弱くなり、右肩の装置は破壊されてしまう。
「よし…!これならコイツを倒せる!!」
「数で圧倒するなら…それじゃあ、詰めが甘いぞ!」
灰色のネクストはイモータルの方を振り向くとグレネードキャノンとバズーカを放つ。イモータルはブースト残量がなく、コア部に直撃してしまう。PAによって装甲に直撃はされなかったが、空中でバランスを崩して地面に叩きつけられてしまう。
衝撃はコクピットにダイレクトに伝わってグレイは身体を打ち付けられて意識を失ってしまう。
「グレイさん…?グレイさん!?返事をして!!」
ジンは焦って何度を声をかける。しかし、意識を失ったグレイに声は届かなかった。
「……詰めが甘かったな。この程度じゃフェラムソリドスは堕ちんさ。今度はお前の番だ」
「このままじゃ…やられる…!?」
ジンはたった一人となり、次にやられるのは自分の番だと悟る。
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chapter2-13(β)「紅い刃」
「ジン…!ジン!!グレイちゃんとの通信が途絶えた!そっちは何が起きてるの!?聞こえてる?返事して!」
ノアはレーダーの砂嵐が続く中、ジンとグレイに通信をかけるがジャミングを受けて返事は一向に帰ってこなかった。
「ダメだ、ECMの影響をモロに受けてる…」
「どうして!?こっちのECM対策はしっかりしてる筈…!」
「こっちの対策が万全でも。紅桜とイモータルのECM耐性がないんだ……」
「それじゃあ…2人が助けを呼んだって何も聞こえないってこと…!?嫌よそんなの!!」
「姉貴落ち着け!まだレーダーには友軍信号が点いてる。まだ戦ってるが、一機は動いてない……」
レーダーは、砂嵐が混じりにも表示されており、友軍信号の緑のアイコンは2つ表示されていた。まだ、機体は稼働している証拠だ。
「動いてないのがきっとグレイちゃんね…死んでないわよね?」
「そう思っておこう、信じるしかない。対策を考える。俺達は俺達で出来ることを探そう」
2人はジンとグレイを信じながらオペレーター室で対策をしながら無事を祈ることにした。
―――――――――――――――――
一方リッチランド農業プラント。敵のネクストは逃げ惑う紅桜にグレネードやミサイルによる飽和攻撃を仕掛け。それを避けるのにジンは必死だった。
「フハハハッ!!いいぞ…お前の感情が見える。やはりでかいだけのデカブツとは違う!!」
「避けてるばかりじゃ、こっちがやられてしまう……!!サクラ!こっちのAPと全部武装の残弾を!」
ジンは飛んでくるミサイルをアサルトライフルで迎撃したり、グレネード弾を避け続けながら機体の耐久とプラズマキャノンの残弾を支援AIのサクラに尋ねる。
『AP残り50%!ライフルは300発、バックウェポンのプラズマキャノン残り2発。まともに撃ち合えばこっちがやられてしまいます!』
「相手はGAフレーム、ライフルでチマチマ撃ってるとこっちがやられる…。相手として相性が悪すぎる!!」
『相手は単発武装を沢山持っててどれもリロードに時間がかかります。その隙にレーザーブレードを使えば……まだ可能性はあります!』
「まだ近接戦闘慣れてないのにやれっていうの!?」
『やるしかありません…!でないと…』
「生き残れないってことだよね……!わかったよ。僕だって、こんなところで死にたくはない!!」
紅桜はクイックターンをして敵ネクストに真正面から突入し始めると、プラズマキャノンとライフルで集中攻撃を行った。敵ネクストはQBで直撃は避けられるがプラズマキャノンの影響でPAの形状が不安定になっていく。
「ようやく戦う気になってくれたか…。いいだろう、存分にかかってこい!!」
敵ネクストのパイロットはコクピットの中で笑みを浮かべる。今まで逃げ腰だった相手が振り向いて攻撃してくることで昂っているのだ。敵ネクストは負けじとミサイルとバズーカを放ってくる。紅桜はミサイルを迎撃しながらも迫ってくるバズーカとミサイルをQBで避けると、負けじと再びプラズマキャノンを放つ。今度は直撃し、PAの形が徐々に歪んでいく。
『プラズマキャノンパージ!!敵ネクスト、PA減衰していきます!このまま行けば…!』
「こうなったらこっちのもの!!」
出来るだけ身軽になるようにプラズマキャノンをパージする。紅桜は紫色レーザーブレードを構えて灰色のネクストに切り込こもうとする。
「思い切った判断だ!!だが甘いぞ!」
敵ネクストは接近してくる紅桜にミサイルとグレネードで迎え撃つ。
「避けなきゃ ──」
『ここは私が!』
サクラは紅桜を操縦し、グレネード弾をライフルで撃ち抜くと目の前で爆発し、同時に迫っていたミサイルも誘爆して大きな爆発が起こる。
「あの爆発じゃ直撃か……。度胸は良かったが、未熟だったな」
煙が立ち上る様子を後にして、敵ネクストは武器を下ろして、動かなくなったイモータルの元を向かおうとした次の瞬間だった-
「なんだと!?」
煙の中から紅桜が飛び込んで来てブレードで斬りかかる。灰色のネクストのPAは破られて、バズーカの砲身も切断して爆破させる。紅桜は爆風に巻き込まれないように瞬時に距離を離してライフルを撃ち始める。
「今のは一体……」
『これなら致命傷を与えられると思って…。ごめんなさい、操縦権勝手に奪っちゃって……』
「ううん、大丈夫…!凄いよサクラは……。僕もあんな風に動けたら…」
『ご主人ならやれます。信じてますから!』
「……うん!やってみるよ!」
紅桜は前傾姿勢になりながら弧を描くように旋回しながら徐々に近づいていく。
「次はそうはいかんぞ!!」
しかし敵ネクストも同じ手は通じんとばかりにQBを利用して左右に瞬時に移動しながら後退し、プラズマライフルとグレネードキャノンで近寄らせないようにする。
「引き撃ちしてくる相手にはどうしたらいいサクラ?」
『機動力は確実にこちらの方が上です。グレネードは私が処理します!多少の被弾は気にせず、ちょっとずつでいいからQBを使って距離を詰めましょう!』
「やってみる!!」
紅桜はグレネードを撃ち抜き、QBで瞬時に弾道を避けながら距離を詰め、ブレードが届く距離まで近づく。しかし、近づいた瞬間に敵ネクストのミサイルコンテナが開き発射されて直撃を食らって足止めされるが構わずにブレードを振りかざす。
再生しきれてないPAは完全に機能せずにブレード等身は敵ネクストの装甲を傷跡を残す。
「あと少し……!!」
「やってくれたな……だがこのくらい!」
敵ネクストは反撃しようとグレネードキャノンを構える。
「ジン!!離れろ!!」
「っ……!グレイさん!」
紅桜は咄嗟に離れ、その背後からグレネード弾が飛んでくる。敵ネクストに直撃し、膝を着く。
「至福のうちに果てるとは……。これも戦場を甘く見た報いか…」
敵ネクストのカメラアイは消え、機能を停止した。紅桜はそれを後にして両膝を着いている、イモータルの元へ向かう。
「……やったんだよね?そ、そうだ……グレイさん体調は?」
「身体のあちこちが痛い…。そうだ、通信は?」
「そうだった……。兄さん、お姉ちゃん!聞こえる?」
プラズマの影響が無くなった今、通信回線を開くと、ノアの声が聞こえ始めた。
「ジン、グレイちゃん!!……よかった、無事なのね?」
「なんとかね……目標、撃破したよ」
「ほんとか!!よくやった……今そっちに向かう。…無事でよかった」
「……ジン。ほんとに今回は助かった、ありがとう」
「こっちこそだよ、グレイさんがいなかったらやられてたかも」
「あのな……呼び捨てでいいぞ?武にぃの弟なんだろ?」
「え?あ……うん。いいの?」
「いいんだよ。むしろかしこまった呼び方されるのは苦手でな」
「そっか、じゃあ……ありがとうグレイ」
「ああ、こっちこそ」
武の安心した声が聞こえる。紅桜はイモータルに手を差し伸べて立ち上がる。ジンは少しばかりか、彼女との友情が育まれたような気がした。
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chapter2-13.5 「また、交わる時」
D-delta氏の主人公のトーマスくんと主人公のジンくんの二人の会話です
「検査はこれにて終了だ。君は、ロビーで待っていてくれ」
不明ネクストの撃破が終わった後、ノアのツテでGAのコロニーにある大病院で検査が行われていた。ジンは言われた通りロビーで待っていたが、待ちぼうけを食ってしまった。
病院内は怪我人も多く、院内は忙しなくて人が行ったり来たりしていた。
「……何があったんだろ」
「隣、座っていいか」
「ええ、どうぞ──」
顔を上げて見ると、頭に包帯を巻き、顔に火傷跡の青年が立っていた。以前、マザーウィルで補給行った際に出会った青年だ。
出会い頭に銃を突きつけられ、憧れていたホワイトグリントへの憎しみをぶつけられたのは今でも覚えている……。しかし、マザーウィルの青年はホワイトグリントによって家族を奪われて憎むのは無理のないのない話だ。
青年は隣に座ると、二人の間に沈黙が流れた。
「あ……えっと…貴方一体…」
「トーマス。トーマス=フェイスだ。」
「えっとじゃあトーマスさん……その怪我は、一体どうしたの?」
沈黙を破ったのはジンの方だった。最初に出会った時と比べると意気消沈しているように見え、何よりもこれ程の怪我をしたと言うことは激しい戦闘が行われたと思い、思わず声をかけた。
「……数週間、でネクストの襲撃に遭った。そのせいでマザーウィルは崩壊して、俺はここで入院中って訳だ」
「えっ…マザーウィルが!?そんなことが…」
「ありえたのさ、仲間も兵器もなんもかんも壊されて……なんで俺は生き残ってるんだろうな」
BFFが所有するアームズフォート、スピリットマザーウィル。アームズフォートの中でかなりの大型で、10年以上稼働し続けている兵器。あのホワイトグリントでさえ破壊出来なかった代物だ。
「なんでって……生き残ったのは機体が守ってくれたから……じゃないかな?」
「守ってくれた……ねぇ。俺はいつまで経っても地獄から抜け出すことはできないって事か?」
「地獄って……そんな言い方しなくたって」
「地獄だよ。母親は俺を産んで間もなく死んで…父さんはホワイトグリントに殺された!そして俺は生き残る為にノーマルに乗って戦って、何度も死にかけた!これの何処が地獄じゃないって言うんだ!!」
「ご、ごめんそんなつもりじゃなかったんだ……!ほんとに……ごめん」
「……いや、俺も言いすぎた。お前は関係ないのにな…。そういやお前はなんでここにいるんだ?」
「コジマ汚染濃度の検査だよ。今までネクストに乗る事が増えてきたし、それにこの前激しい戦闘があったからいい機会だってお姉ちゃんが…」
「そういう事かリンクス様は大変だな……。でも、お前GAの人間じゃないんだろ。なんでわざわざGAのコロニーまで来て診察受けてんだ?」
「死にそうな目に遭ったトーマスさんも人のこと言えなくない?お姉ちゃんがGAのAMS技術者の娘さんなの。だから、コネがあるみたいでさ」
「補給の時にいた金髪の姉ちゃんか?あーあ、姉弟揃って顔がいいのは羨ましいぜ」
「顔がいいって……確かにお姉ちゃんは美人だけど……」
そう言いながらジンはじっとトーマスの顔を見つめ出した。
「なんだ……急にジロジロ見るなよ」
「いや、綺麗な顔してるなぁって」
「はぁ!?急に何言ったんだ!?」
突拍子に中々言われない事を聞き、トーマスは驚いた。しかし、それに対して「なにか変なこと言った?」と言わんばかりにジンはキョトンとした顔になった。
「なんで?化粧とかすればもっと良くなりそうなんだけどなぁ……」
「お前…銃を突きつけた奴によくそんなこと言えるな。普通そんな事されたら避けようとするだろ?」
「そりゃ…怖かったよ。いきなり出会ったら怒鳴りながら銃を突きつけて…。でも、事情を知ったら怒れるのも怒れなくて…」
ジンは苦笑しながらもふっと下を向いて話し始めた。
「前に言ったと思うけど、リリアナのネクストにお母さんを殺されたんだ。…1度も忘れたことも無い。だから今も探してるし、仇討ちの為にリンクスにもなった。トーマスさんだってそうでしょ?ホワイトグリントにお父さん殺されて憎んでる。マザーウィルがホワイトグリントに襲われたって話を聞いたよ。だから、ホワイトグリントに似た機体を見かけたらそりゃ銃突きつけられてもおかしくないよなって思っちゃって…」
「へぇ…。じゃあ、あの時のこと許すのか?」
「二度としないって言うなら許してあげる。それとランチ1回奢りね」
「ハハッ…それで許してくれるのか?お前安いもんだな。傭兵の癖に」
「そうかな?あと、お前って言わないで。ジンって名前があるんだから」
「はいはい……じゃあ、俺もさん付けはしなくていいぜ。堅苦しいのは苦手だからさ」
以前、銃を突きつけたのにも関わらず、ここまで絡んでくる相手は今まで出会ったこと無く、思わずトーマスは顔が緩んでしまった。
「ジン=叢雲さん。4番診察室までお越しください」
「案外早かったな」
「だね…また、話したいな…。いいかな?」
「ああ、こんな変わったヤツと会ったのは初めてだ。また話したい。次会う時も戦場じゃないといいな」
「ほんとだね…。じゃあ、またねトーマス!」
ジンはニコッと笑いながら診察室へ向かい、途中で振り返ってトーマスの方を手を振る。
また、それに応えるようにトーマスも軽く手を振る。
カラスと山猫。それぞれの生き方は違うが、戦場で生き抜く者同士。また座って話せる時があればいいとジンは心の底からそう思った。
次回からは本編に戻ります
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chapter2-14「少女グレイス」
GAのリンクス、ドン・カーネルが入院していると聞き、ジンは心配になり、駆けつけることになる。
「軽度のコジマ汚染で済んでる。薬剤を用意しておくから、暫く飲めば体内のコジマ汚染を抑えることが出来ると思う」
「はい、ありがとうございます」
ジンは診察室で、レントゲンのデータを見せられながら診断結果を聞いていた。結果は大したことはなかったため、ジンは内心ほっとしていた。
「よく連続でネクストに乗ってたのに、軽度の汚染で収まってるね。これもAMS適性の高さのお陰なのかな」
「さぁ…?どうなんでしょうか……?」
ジンのAMS適性は高く、リンクス戦争時代に【オリジナル】と呼ばれたリンクス達に匹敵するらしい。しかし、AMS適性が高いからといって無条件で戦闘能力が高くなるわけではなく、最終的にはパイロットとしての技量が試される。
「君のAMS適性の高さはGAの中には誰にもいない。DNA採取をさせてもらいないかな?汚染抑制薬の対価として」
「はぁ…それは別に構いませんけど…?」
ジンは医者の言うことを、自分の遺伝子でなにか変わるのかと半ば疑問に思いながらも大人しくDNA摂取に協力した。
「ありがとう。これで多少なりとも研究材料になれば有難いんだけどね」
「その…AMSってそんなに大事なものなんですか?」
「そりゃ大事に決まっている。今では、アームズフォートが主流だが、ネクストはそのアームズフォートをも破壊する力を持っている。他企業よりもリンクスが少ないGAにとっては、喉から手が出る位さ」
「そういうもんなんですね?」
「そうさ。君のような傭兵じゃピンとは来ないだろうけど。今現在主力ネクストが1機しかいないんだから、数を増やしたいんだ」
「1機?3機の間違いじゃ……?」
ジンは首を傾げた。現在カラードに登録されてあるリンクスは3人だ。残り一機は上位ランカーのローディであり、企業として切り札として大事にしたいという点を考えて除くとしても2機になる。
「ああ……、ドン・カーネルがユニオンのネクストに襲撃されたんだ」
「カーネルさんがネクストに…!?大丈夫なんですか!?」
「ああ、敵機の弾切れで難を逃れたが彼は入院中だよ」
「そうなんだ……よかった、生きてるんだ」
「ああ、だけど彼の乗っていたニューサンシャインはダメになったらしいね……。」
「カーネルさん…もうネクストには乗らないんでしょうか……?」
「さぁ、そこは上の判断を待つしかないね。上質なリンクスがいないってのは企業も大変だねぇ」
医者はどこか他人事のように話ながらDNA採取の準備をしていた。ドン・カーネルは元ノーマルAC乗りの叩き上げであり、AMS適性は低く「粗製」と酷い呼ばれるような人間だった。しかし、ジンにとってその事情は知らず、ただ新人の頃に気さくに話しかけてくれたイメージしかなく、あの人は無事なのかと心配だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
検査と採取が終わった後、ノアに「用事が出来たから、終わったら連絡する」とメールを送ると、医者から教えてもらった番号の病室まで向かった。
「失礼します、入院してるって聞いたので…。大丈夫ですか?」
「おお坊主!久しぶりだな!元気にしてたか?」
「元気ですよ。それより、カーネルさんは……元気そうですね」
部屋にはカーネルと、椅子に座っていた長めの髪に跳ねっ毛、それに白髪が混じった青年に、猫耳ショートヘアに黒いワンピースを着た小さい少女がカーネルのベットに手をついて立っていた。
「おや、久しぶりですね。生き残っててなにより」
「あれっ、この前病室に来た……」
「ええ、元気そうでなによりです。ジンさん」
「は、はい…!えーっと……」
「ノラです。あの時は名前を言ってませんでしたね」
ノラは、以前オーダーマッチのことを話してくれた青年だった。当時とは変わり、黒染めにストレートヘアだった為、一目見ただけわからなかった。カーネルにこっち来いよと手招きされ、ジンは傍の椅子に座った。
「なんだ?お前ら知り合いだったのか?」
「そうですよ。ジンさんとは以前アスピナの医療機関で姉の頼みで様子を1度見に行きました」
『お姉ちゃんが頼んだってことは……もしかしてこの人もリンクスなの?』
「そうだよグレイス。彼は新しいリンクスなんだ」
グレイスと呼ばれたワンピースの少女はリンクスだと聞くと、パッとジンの方を見た。
『じゃあ、じゃあ!新人さん!!君が乗ってるネクストって喋る?もし喋るんだったr』
「グレイス、そのお話は後で。今は病室だから静かに。すみません、コイツ着いてくるって聞かなくて」
「気にすんな、ちびっこはよう喋る方が賑やかでいいじゃねえか」
「そうです?なら構いませんが?」
ノラはグレイスの口を塞ぐが、気にするなと聞くと口を塞ぐ手を離すとすぐさまグレイスはジンの側へ駆け寄る。
『ねぇ新人さん!貴方のネクストって喋ったりする?』
「え…?喋ったりっていうのは……」
『そのまんまの意味だよ!!それで、喋るの?喋らないの?』
「あ、えっと……ネクスト自体は喋らないけど、そのネクストに搭載されてあるAIは喋ったりするよ?」
質問に困惑しながらも、紅桜に搭載されてあるサクラのことを話した。すると、グレイスは嬉しそうにパァっと笑顔になった。
『ねぇご主人!!僕間違ってなかったよ!!やっぱり身体があると色んな人と喋れるね!』
「ああ、お姉様にはちゃんとお礼を言わないとだな」
「えっ?」
「身体?どういうことだ?」
「説明してませんでしたね。お二方、彼女…グレイスは人ではありません。ネクストに搭載されてあるAIを人工の身体に試験的に移しているのです」
「そ、そんなこと出来るんですか!?」
「あくまでも試作品ですが…。気になりますか?」
慌てて立ち上がるジンに、ノラはふっと微笑む。
「は、はい…。少し」
「それは、どうしてです?」
「えっと……その、サクラはずっとネクストの中から離れられなくて、戦う以外じゃ話すことも出来ないから寂しいかなと思ったんです。こうして身体があればみんなと一緒だから寂しくないかな…って」
ジンははっとして椅子に座る。
一人ぼっちのサクラが心配だった様らしく、身体があれば傍にいられると思っていた。
ノラはジンを見て、クスクスって笑うと「いいですよ」と微笑みながら言う。
「えっ!?ほ、ほんとですか!?」
「ええ。だけど、お姉様が許可してくれたら……の話ですが。連絡先の交換いいですか?」
「はい、いいですよ!」
ジンは携帯をポケットから取り出し。ノラと連絡先を交換した。
「ありがとうございます。わかり次第連絡しますね。では、次の仕事があるので私はここで失礼します」
「おう、来てくれてありがとうなノラ」
ノラは一礼すると、病室出て行き。ジンは小さく手を振って見送った。それと同時にジンと携帯から着信音が病室に鳴り響く。
「わひゃあ!?」
ジンは着信音で驚き、素っ頓狂な声を出して携帯を落としかける。
「おいおい、そんなんでビビってたらこの先生き残れんぞ」
「そんなの言われたって……あ、兄さんからだ。もしもし?え、さっきメールで用事があるって……。急ぎの依頼???わかった、すぐ行く」
「どうした?依頼が舞い込んで来たか?」
「はい…なんか、急ぎの依頼って……。ごめんなさいちょっと行ってきますね!お大事に!!」
「はいはい……。慌ててコケるなよ?」
ジンはバタバタ立ち上がり、病室から慌てて出ていく。カーネルは「生き残ってくれよ」と聞こえていないであろう言葉を呟きながら後ろ姿を見ていた。その言葉には、先輩リンクスとして、子供を見守る親としての想いが込められていた。
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chapter2-15 「コロニーの再生」
「……それで兄さん、急ぎの依頼ってなんなの?」
武がレンタルしたコンパクトSUVはジンを助手席に乗せてコロニー内のハイウェイを走って行く。
走行車両には一般車両は殆どなく、GAグループのトラックや装甲車両が多く走っている。
「計画都市フィリップ跡地を占拠しているテロリストの排除だとよ。至急してローゼンタール社に向かうように…だとさ」
リンクス戦争以前、企業によって一般市民への居住区として作られた人口都市である。しかし、人類の大半がクレイドルに住むようになってから都市だけが残り、反動勢力の拠点と化している場所が幾つか存在している。
「ふぅん……。でも、それってローゼンタール社が運営してるんでしょ?僕達、お姉ちゃんの会社のAGEから多少のバックアップ受けてるのに、なんで僕達に依頼がくるの?」
「それが……テロリストの正体がリリアナかもしれないって話なんだ」
ジンはリリアナの文字を聞くと、顔色が一瞬で変わった。ジンは今度こそ、オールドキングの情報を聞けるかもしれないと、思わず前のめりになりながら武の話を聞いていた。
「それは本当なの?そいつらの目的はなんなの!?」
「落ち着け、まだ決まったわけじゃない。それに、今は濃霧で視界が不安定らしい。ネクスト戦力がいるって話だが……まだ不確定要素が沢山ある。正直やりたくは無いが」
「僕やるよ!今度こそ分かるかもしれない…!!」
「お前……前に死にかけたの忘れてないだろうな?」
「忘れてない…!今度は大丈夫だって……」
武は呆れたようにジトっとジンを横目に見ると、ジンはたじろぎ大人しく座り直す。
「はぁ……まぁ、今回はお目付け役がいるから大丈夫か」
「お目付け役って…?」
「そう、ローゼンタールからも調査隊を出すみたいだ。自由都市を開発するための調査だとかなんとかって」
「へぇ、自由都市……か。なんでそんなものを?」
「さぁ?お嬢さんの聞いてみたらどうだ?」
「ん?お嬢さんって?」
国家解体戦争後、企業はコロニーを設立し、パックスエコノミカが施行され、住民に資源の節度ある配給が行われた。しかし実情は最低限の衣食住を渡すだけの奴隷制度であった。しかし自由都市は真逆で、クレイドルと同様に住民達が自由に売買が可能となり、国家解体以前の様な体制となる。
ジンは、お嬢さんって言葉にピンと来ずに首を傾げていた。
「お前……あんだけ仲良さそうに追いかけっこしてて分かってないのか?」
「追いかけっこって……もしかしてコスモスの事!?」
「ああ?なんだ違うのか?呼び捨てだしってきり」
「違うっていうか、呼び捨てでいいって言ってたし…それに、あの時はその…なんか見覚えのある人だったと思ったから思わず…」
「見覚えのある人ってそりゃそうだろ。覚えてないのか?」
「思い出せたらいいんだけど……小さい時の事を思い出すそうとしても、思い出せなくって…」
ジンは母親を殺された時以前の記憶を思い出せずにいた。それ故に、コスモスのことを思い出せずにいることを負い目を感じている。
コンパクトSUVは空港に着くとノアがローゼンタールのバッチを付けたスーツの男性と話していた。男性は兄弟の方を見ると会釈をした。
「彼が例のイレギュラーネクストを?」
「ええ、腕は下手なリンクスよりかは戦力になりますよ」
「ええ、期待しています」
そう言うと、男性は武の方に近づいて手を差し伸べた。
「初めまして、ジン=叢雲。今回はよろしくお願いします。噂通り、端正な顔出しですね」
「ありがとうございます。でも、ジンは俺じゃなくて…こっち」
男性はキョトンとした顔になり、ジンは深くため息をついた。
武の方がリンクスと間違えられる事はよくある。しかし、だからといって気にしていないわけではなかった。
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Chapter2-16 「潜める狼」
だが、想定していた敵部隊は逃げていったのだが……。
「ミッションの説明をするわ。着替えながら聞いて頂戴。」
武が操縦する輸送機の中で、ジンはパイロットスーツに着替え、ノアはクライアントから送られた作戦内容を見ながら話していた。
「依頼主はローゼンタール社、作戦内容は廃都市を不法占拠した連中の排除。リリアナが占拠しているって情報があるけど…濃霧が発生してて本当かどうか分からないわ。それと、コジマ汚染軽減の為にプライマルアーマーの展開は禁止されているわ。プライマルアーマー頼りに無闇に突っ込んで行かないようにね。」
「分かってる…兄さんからあらかた聞いてるし。敵戦力は?どのくらいいるの?」
ジンは着替え終えるとヘルメットを被り、紅桜を格納しているハンガーのロックを解除する。
ハンガーへ続くドアは何重にも重なっており、コジマ粒子の拡散を抑える役割を果たしている。
「情報によれば、ノーマルが小隊クラス程度の数らしいけど──」
「ネクストがいるかもって話でしょ?大丈夫」
「大丈夫って…あなた、リリアナが持ってるネクスト戦力よ?分かってるの?」
ノアはジンが以前砂漠の狼を自称するネクストに撃墜されかけたことは記憶にも新しく、今度は撃墜されるのではないかと心配だった。
「次は勝つ。そして、必ずお母さんの仇を討つんだ」
「…仇をとるのはいいが、目的を忘れるなよ、目的は敵戦力の排除とエリアの確保なんだ。それに私情だけで動いて、ローゼンタールの評価を落とされたら仕事が無くなるかもしれないからな。そこんところわかってるな?」
「わかってるよ…」
武に勝手な行動をしないように釘をさされ、不貞腐れながらも返事をし、紅桜のコクピットに入り、起動準備を開始する。
『こちらローゼンタール所属、イカロス小隊です。其方の準備はよろしいでしょうか。』
「こちら紅桜オペレーター。こっちは降下準備に入ってる。行けるわね、ジン」
「うん、いつでもどうぞ」
『了解しました。着陸次第、任務を開始してください。共に幸運を』
「ハッチ解放、紅桜出撃」
「了解、行きます!」
ローゼンタールから通信が届き、ノアはそれに返事をすると、輸送機のハッチを開き、紅桜を濃霧の中へと降下させる。
「リコンの設置は完了してます。レーダーの反応を元に敵部隊を撃破してください」
紅桜のレーダーには一定の等間隔でリコンが設置されているのが確認でき、複数の赤い敵信号がエリア外へ逃げていくのが確認できる。
「…?敵が逃げてる?」
『あー、あー。ジンさん聞こえますか?』
聞き覚えのある少女の声が通信から入ってくる。ジンは思いもよらないことに困惑しつつも返事をしようと回線を開く。
「もしかして…コスモス?」
『はい!今回はこの私、コスモスがサポートさせて頂きます!危険であれば、いつでも向かいますからね!』
「そうなんだ、それは助かる…じゃなくて!なんでこんなところに…」
『なんでって…そりゃ、この作戦の第一人者ですから?』
「ああ、そっか…じゃなくて!向かうってことは……ここにいるの?」
『そうですよ?ここの部隊指揮任されてるの、私なんですからね』
「…コスモスって、凄い人なんだね」
『別にそんなことありませんよ。ノイン家の娘として当然なことです』
「そうなの?」
『そういうものなんです。ほら、お喋りしてる暇あったら早くミッションを遂行して下さい』
「はーい」
一瞬間が空くも、コスモスは返事をする。
ジンはそれに気づかず、そのまま濃霧の中を進んでいく。
濃霧に包まれた廃都市は非常に静かで物音1つ聞こえない。レーダーを確認するも、敵信号はひとつもなかった。全員逃げたんじゃないか────
そう思った瞬間だった。突然ECMが作動し、レーダーに砂嵐のようなノイズ走る。
ジンは反射的に身構えて、トリガーに指を構え、廃ビルを背にして周囲を見回す。
しかし、濃霧で包まれた廃都市を見回しても何も見えない。
『それで警戒出来てると思ってるのか?』
武ではない、男性の声が聞こえたと思ったら、背にしていた廃ビルが崩壊すると同時になにが紅桜の後ろからショットガンの引き金を引く所だった。紅桜は右側のサイドブースターだけを噴射させて反転させ、そのまま勢いを乗らせたまま左手に装備していたレーザーブレードで斬り掛かる。
しかし、背後にいた機体はバックブースターで瞬時に身をかわした。
『残念、その程度じゃ俺には当たらねえよ』
「砂漠の狼……!!」
振り向くと、目の前には赤いSOLUH(ソーラ)フレームのネクスト、コロニーアスピナで戦って、殺されかけた、あの砂漠の狼だった。
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chapter1-17「因縁再び」
ジンさん!ジンさん…!なにがあったんですか!応答してください!』
コスモスの応答に答える余裕もなく、紅桜は砂漠の狼を正面に捉え、装備していたマシンガンを突き付ける。
「くそっ…!なんでお前が……お前がこんな時に!!」
『お姫様の邪魔をするように依頼されてな、お前には用はない』
「なんだと!!」
『この濃霧の中、俺を捉えられたら構ってやるよ』
砂漠の狼は、飛び上がり濃霧の中へ姿を隠した。レーダーには再びECMによって居場所がつかめなくなっていた。
「またECM…!一旦どこから!」
『恐らく敵ネクストが安易的なECM発生装置をもっているのかと…ご主人!後ろ!!』
紅桜は追いかけようと砂漠の狼と同様に飛び上がり、濃霧の中で視界を巡らすが機影らしきものは見えなかった。しかし、背後から威力よりもマイクロミサイルによる面制圧を優先した散布型ミサイルが背後から迫ってくる。紅桜は迎撃が遅れ、ミサイルの爆風に巻き込まれて落下してしまう。
「くそっ…!どこにいるのかさえ分かれば…!」
『メインカメラを暗視スコープに切り替えます!お兄様が万が一の為にと、つけて頂きました…!ですが、暗視スコープは熱を感知し、映像化します。これを使えばカメラの解像度が低くなり、障害物の有無、友軍機と敵機の見分けがつかなくなりますが…』
「それでも構わない!!どうせ僕とアイツしかいないんだ。お願い、切り替えて」
『了解しました。システム、暗視スコープに切り替えます』
サクラは、暗視スコープに切り替えると視点の殆どが緑色に変わり、熱源体は赤く映っていた。しかし、熱源体は複数あり、戦っている様子だった。
「見えた!でも、戦ってるのは見えるけど、どれがどれだか…」
『そう言う時は通常のカメラに切り替えるんだ』
「兄さん…!ECMの影響は?」
『もうとっくに解消されてある。効果が短いものみたいだ。友軍機がいる内に急いで援護にまわれ!』
「了解…!」
紅桜は熱源体が複数ある方向へブーストを吹かしながら、通常カメラへと切り替える。
通常カメラに切り替えて索敵していると、監視役として同じ作戦領域にいたイカロス小隊は黒色に塗装されたGA製のノーマルを主体としたリリアナ部隊と、白いネクストは砂漠の狼と交戦していた。
「リリアナ…!?潜伏してたって言うの?」
『最初に撤退していったのはフェイクだったって事か…。まんまと騙されたな』
紅桜は、すぐさまマシンガンを撃ちながら、イカロス小隊の壁なるように前に降り立ち、すぐさま敵ノーマルにレーザーブレードで切りかかる。エネルギー刃によってノーマルは容易く胴体と脚部が分断される。すると、緑色の爆発が起こり紅桜は爆発に巻き込まれてしまう。プライマルアーマーは徐々に減衰し、モニターで表示されていた機体の耐久値も擦り減ってしまう。
「なんで…!?何が起きたの!?」
『高濃度コジマ粒子による爆発です!恐らく、撃破したノーマルにコジマタンクを積んでいたのかもしれませんね』
「お姫様の邪魔をするって、まさか…」
『恐らくは…、とにかく敵機を爆破させないようにしないといけません』
「するってどうやって…!」
『例えば、ジェネレーターを破壊せずに…。ご主人、三時の方向!!』
今度は仇を討つかのようにパイルバンカーを持ったノーマルが紅桜に接近するが、近づかれる前にバックブースターを吹かして距離を離す。すると、イカロス小隊による援護射撃によって動きを止める。
『援護感謝する、だが先に姫様の護衛にまわってくれ。』
「姫様って…コスモスのこと?」
『ノイン家のご令嬢だぞ!軽々しく呼び捨てにするな!わかったなら、さっさといけ!』
「は、はい…!」
紅桜はイカロス小隊を後にして、コスモスの元へ向かうことにした。
廃墟を駆け抜けると、砂漠の狼と白いネクストが交戦しているのが確認でき、紅桜はすぐさまマシンガンを撃った。
『ちぃっ!タイムオーバーか!』
砂漠の狼は紅桜に気付き、飛び上がって紅桜の弾を避けると紅桜に散布型ミサイルを放つと、紅桜を飛び越えてエリア外へ飛んで行った。
「逃げる気か!!」
『追いかける必要ありません。あくまでもコロニー跡地の調査ですから…ですが、ここのコロニー再開発は厳しいかもしれませんね…』
コロニー跡地は許容範囲以上のコジマ粒子が飛び交っており、人が住める環境ではなくなっていた。
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chapter3-1「動き出す者-α」
ジン達がコロニー跡地の調査がリリアナの襲撃に受け、調査が中断となる。また、イカロス小隊の損傷はコジマ爆発によって被害が想定よりも大きく、報酬もその分少なくなってしまった。
武とノアは報酬を受け取ると、武は報酬の少なさにと軽くため息をつき、ノアは腕組みをしながら、自身が乗っていた輸送機を置いたドックまで歩いていた。
「……まぁ、リリアナがコジマタンクを抱えていたなんて誰も想像出来なかっただろうしな。仕方ないと言えば仕方ない……」
「でも、邪魔をするってどうして……。元々わざわざコジマ爆発までさせてまで退却させるかしら?」
「居場所を知られない為に拠点ごと爆破したのか。はたまた、企業に知られたくない何かがあったのか……。どちらにせよ、リリアナの情報は得られないわ、報酬は少ないわ、良い事なしだな」
「赤字じゃないだけよしとしましょう。ところで、ジンはどうしたの?あの子、報酬の取引現場にいないで、どこほっつき歩いてるのかしら」
「ああ、それのことなんだけど。ジンはちょっと調べ事をしてもらっている」
ノアは調べ事って?と聞くと、武は神妙な顔つきで話し出す。
「以前、ジンが不明ネクストと戦っただろ?その不明ネクストに気になる装備があってな」
───────────────────── ────────
ジンはネクスト用パーツの扱う企業連のカタログモニターで調べ事をしていた。武から預かった写真には、不明ネクストの上半身だけが映っている。
「GA、ユニオン、オーメルサイエンス。どれも該当パーツなし……か。もー、こんなんじゃ見つかる気配全くないよ。休憩しよ、休憩……。ずっとモニターばっか見て疲れた」
ジンはカタログモニターを閉じて、カフェに向かおうとするが、写真を眺めながら歩いていた為、通路の角で人とぶつかってしまう。
「わ……っと、ごめんなさい。前見てなかったです」
「夢中になるのはいいですが、ちゃんと歩く時は前を向いてください。ジンさん、」
「はい、すみません……ってノラさん?」
「ええ、お久しぶりです、ジンさん。今日は一人でどうしたんです?」
顔を上げると、以前出会った白髪混じりの青年、ノラに出会った。
「ちょっと調べ事をしていて……。この機体に装備してある、電波装置みたいなパーツを探しているんです」
ジンは、ノラに武から預かった写真を見せると、にこやかな表情から神妙な顔つきに変わる。
「ジンさん。この写真は何処から入手したのですか?」
「えっ…?僕はこのネクストと戦うので必死で分からかったんですけど、多分兄さんがこっそり撮っていたのかと……」
「この機体と交戦したのですね?」
「は、はい……それがどうしたんですか?」
ノラは真剣な顔付きでジンに詰め寄り、思わずおずおず後ずさりした。
「随分と面倒なことに巻き込まれましたね…」
ノラは深くため息をすると、周りを確認し、周りに人がいないことを確認すると再び話し始める。
「その機体は、【フェラムリソドス】という名前で、現在私が調査を進めていました。ですが、オーメルからは、交戦の禁止を命じられていました。」
「交戦の禁止…?僕が依頼されたのはアルゼブラで、内容は撃破でしたよ」
「この件については、企業連の中で利用価値がなくなったかと私は推測しています。ネクストというのは、企業の資本がなければ維持するのに非常に厳しいものです」
ネクストは非常に高性能で高い戦闘能力を持っているが、コジマ技術の結晶でもあるので少しの損傷でも高い修繕費が必要になる。その為、カラードに登録してあるリンクスの大半は企業がスポンサーとして、背後についている。
「僕は企業と契約してないですけど…?」
「ジンさん、君のお姉さんのノアさんから、なにか約束事か何かをしませんでした?」
「はい、リンクスになる前になにか書かされました。確か、GAの依頼を優先的に行い、定期的に戦闘記録を姉に送る…みたいなのが書かれてました」
「その場合は、ジンさん自身ではなく、ジンさんの義姉さんが企業と契約をしているのかと。ノアさんは、GAEテクニカの跡継ぎ候補ですし、不思議ではありません」
ノアは、自分から言うことは全くないが、GAEテクニカの令嬢であり、ジン達の支援も企業に貢献することを条件に許可されている。
「じゃあ、なにかを知るために泳がせていたけど。用済みとなったから消した…って感じなんですか?」
「恐らくは…。企業のことですし、不思議ではありません。それに…」
「それに…なんですか?」
「…最近クレイドルを支えるアルテリア施設が襲撃されたのです」
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Chapter3-2 「動き出す者-β」
「アルテリア襲撃!?アルテリアが壊されたら、クレイドルが飛べなくなるじゃないですか!」
アルテリアは空飛ぶ居住区である【クレイドル】を飛行させる為の発電施設であり、世界各所に備えられている。そして、クレイドル自身アルテリアに依存している為、当然アルテリアを失えば飛行能力を失い、墜落してしまう。
「そう、だから問題なのです。防衛は成功してますし、企業はクレイドルの住民には知られないようにしているようですが時間の問題でしょうね。とにかく、正体不明の戦力に喧嘩売ってしまった可能性があるので、今後身の回りに気を付けてください」
「はい……でも、ノラさんってなんでそんなこと知ってるんですか?」
「姉がアスピナのAMS部門の最高責任者なんで、仕事柄そういう情報が入ってくるんです」
「そういうことでしたか。……でもこんな話聞いていいんですか?」
ジンは縁もよしみもない自分に色々な情報を提供してくれるノラに警戒心を抱く。
「勿論、タダで情報をあげるつもりはありません。少しお手伝いをしてもらいたいのです」
「お手伝い…?依頼ですか?」
「ええ、アスピナ初のネクストX-SOBRERO(ソブレロ)の性能テストに協力して欲しいのです」
「性能テスト?」
「はい、何か問題でもありますか?あ、少額ですが報酬はありますのでご心配なく」
「あ、いやそうじゃなくて…企業じゃないのにネクストを作るんだなーって思っただけです」
ジンのイメージでは、アスピナ機関は研究しかしていないイメージがあったようで、ネクストを製造しているとは全く考えていなかった様だ。
「研究用の実戦データ収集するためです。どうでしょうか、引き受けてくれますか」
「あ、はい…!多分大丈夫ですけど、兄さんに聞いてみないと…」
「分かりました。では、依頼を受けてくれるのであればこのアドレスにご連絡下さい。良い返事を期待しています」
ノラはポケットから名刺入れを取り出して、ジン名刺を渡すと、一礼をしてその場を去っていった。
──後日、武と同伴することを条件に、ノアから許可を貰い、依頼を受けることにした。
集合場所の空港に紅桜を載せた輸送機を着陸させ、待合室で2人で座って待っていた。
「俺達が狙われるかも……か。気をつけるに越したことはないが、なんでわざわざ教えてくれたんだ?」
「交換条件でテストの協力って言ってたけど、そこまでの理由は……」
「お前なぁ……いくらなんでも警戒心がないんじゃないか?」
「え?そうかな?」
武は呑気に背もたれに寄りかかるジンと目を合わせ、指を突きつける。ジンはぎょっとして、視点を指に合わせる。
「前にマザーウィルでリンクスだって素直に答えて死にかけたのを覚えてないのか?」
「う……それはその…銃突きつけられるって思わなかったし…」
ジンはバツが悪そうに目を逸らすも、武はそういうところだぞと言いながら指で頬を突きつける。
「お前に足りないのは警戒心と想像力だ、何時までもそんな調子だといつかやられるぞ」
「わかってるよ」
ジンはムッとしながら武の指をのけて、立ち上がり滑走路が見える窓ガラスを見ると、オーメル製の小型ジェット機が見えた。
「……あれに乗るのかな?」
「いえ、私は2人が乗ってきたのに乗りますのであれには乗りません」
「えっ、ノラさんいつの間に……」
振り向くと、待合室の出入口にノラが立っており、武の方を向くと軽く会釈をする。
「貴方が武さんですね。ノラです、今回はよろしくお願いします」
「ああ、どうぞよろしく」
武は相手を見定める用にノラを見つめた。
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chapter3-3「アスピナのネクスト」
アスピナ機関に到着すると、複数の研究員らしき人物がジン達を待っていた。研究員達は女性と男性半々といったところで、見た目の人それぞれなのだが、研究員の中心にいた女性以外は全員真顔でジン達を見ていた。
中心にいた女性は艶やかな白髪に白い肌、またそれを一際目立たせる赤い瞳は、文字通りの美女と言っていい見た目であった。そんな美女はジンに微笑みかける。
「いらっしゃい、ノーちゃん。ジン君と武君は初めましてね、ようこそアスピナ機関へ」
美女はジンに近づき、微笑みかける。
「は、はい。よろしくお願いします…!」
今まで姉を含めて年上の女性と会話するのは少なくはないが、慣れていないジンは緊張のあまり声がうわずってしまった。
「緊張しなくて大丈夫よ、どんな人が来るかと思ったけど、こんな可愛らしい子だったなんて思わなかったわ」
「別にそんなことは…」
ジンは可愛らしいと言われるのにどうも慣れておらず、むず痒い反応を示す。
「あら、ホントの事よ?君みたいな可愛い顔だったら、フリルとか似合うかも?」
「えっ!?あ、あの…!ま、待って下さい!?」
ハンナはジンに近づき、軽くしゃがんでジンと同じ目線になると、ジンの顔に手を添えてじっと見つめる。ジンは突然の事で狼狽える。その光景を後ろで見ていた武はノラに軽く肘で小突くと小声で話し始める。
「なぁ、あの人随分と馴れ馴れしいけど、一体誰なんだ?」
「彼女は、ハンナ・L・ミーハイル。アスピナの中でも1、2を争う研究員と同時に、私の姉です」
「…止めなくていいのか?」
「それもそうですね。……姉さん、ジンさんをからかうのはそこまでにして、依頼の説明をお願いします」
「あら、ごめんなさいね、久しぶりに可愛い子をみたらついからかいたくなっちゃって」
ハンナは手を離してごめんねとジンのポンポンと子供をあやすように頭の撫で、立ち上がると、「着いてきて」と言って先を歩き出す。三人はハンナの後ろをついていき、残りの研究員はその後ろからついていく形をとる。ジンは表情を一切変えない研究員を少し不気味に思いながらも何も言わずに武の傍から離れないように歩き続けた。
アスピナ機関は全面真っ白で、所々ガラス張りの壁や観葉植物が置いてあるだけで殺風景な空間で如何にも研究所のような光景が見られた。
「…どこにネクストがあるのですか?」
ジンは、ふと疑問に思い、ハンナに聞く。こんな如何にも研究所のような雰囲気の中、ネクストを開発しているとは思えなかったからだ。
「あら、研究機関だからって全部のフロアでAMSの研究しているわけじゃないのよ?」
そう言いながらハンナは、オペレーションルームとネームプレートに書かれた自動ドアをカードキーで開ける。
そこは、今までの雰囲気と変わって企業と同様の指令室となっていた。既にテストは始まっている様で、メインモニターには黒い巨体が動いているのが見える。恐らくあれがネクストなのだろうが、早すぎてカメラが追い付いていないようだ。
「一度中断してもらってもいい?後、ソブレロをカメラに映して頂戴」
黒いネクストは動きを止め、モニターの中心に映る。
「どう?我々アスピナが一から作ったネクストよ」
「これが…ネクスト?」
モニターに映ったネクストは、文字通りのT字の胴体。腕部パーツも腕とは言えず、関節がなく、ただL字に曲げて武器を固定させただけのマニピュレーター、脚部も関節がなく非常に細い。まるで板を取り付けただけの様に見えた。あまりにも異形なシルエットにジンは言葉が出ないと同時に、これから行う性能テストに大きな不安を抱いた。
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chapter3-4「Practice」
まだ忙しいので、スキマ時間に地道に書いていく所存です
アスピナ機関の領地の半分占める国家解体戦争以前の旧ピースシティを模した性能試験場に紅桜と先ほど見せられたフラジールと呼ばれているX-SOBUREROが地面足を付けて向かい合って待機していた。
『もう一度ルールを確認するわよ。お互いの武器はこちらで用意したペイント弾を使用。ブレードの使用、プライマルアーマーの展開は禁止。制限時間は5分間、時間内に相手より多く当てた方を勝ちにするわ。お互い、異論はなくて?』
「はい!大丈夫です」
「問題ありません」
「了解、カウントダウンを開始。」
ハンナの呼びかけにジンは緊張混じりなハッキリとした返事で応えるが、フラジールのパイロットのCUBEは淡々と応える。カウントダウンは開始され、数字が0になった瞬間ブザーが鳴り響く。
先手必勝と言わんばかりに、紅桜はブーストで接近しながら手持ちのマシンガンをフラジールに向けて発射するが、フラジールは紅桜に視線を向けたまま横にクイックブーストで急加速して避けながら、両目に持っていたハンドガンサイズ程の武器からペイント弾を高速で連射し始める。
「紅桜よりも速い…!でも…!」
紅桜は、負けじとクイックブーストで同じように横に急加速して連射してくるペイント弾を避けつつ、前方に急加速してフラジールとの距離を詰めようとする。しかし、バックブースターで距離を離しながらビルを盾にするように曲がり角に入っていく。
「逃がすか…!」
紅桜はフラジールを追いかけるように曲がり角へ入っていったが、フラジールの姿は見当たらなかった。
「隠れた?でも、何処に?」
ジンはコクピットに表示されてあるレーダーを確認すると、フラジールはビルを外周りして此方に接近しようとしていた。
「だったら迎え撃てば…!」
紅桜は後ろを振り向き、フラジールを迎え撃つようにマシンガンを構えるも、フラジールが姿を出した瞬間、両手のマシンガンからペイント弾を一斉発射される。思わず、バックブースターでクイックブーストを吹かしながら引き撃ちしながらビルの影に隠れる。フラジールは容易くペイント弾を避けながら、紅桜を追い詰めていく。
─────────────────────
「貴方の弟君、筋は良いわね。うちのフラジールといい勝負してるわ。いい結果が出そうね」
「…何故俺達が呼ばれたんです?」
ハンナと武は2機の戦闘をモニタールームで観戦をしていた。ハンナは戦闘の様子を見て、ご満悦だが、武は戦闘を見つつも、自分達がなぜ呼ばれたのか未だに疑問に感じていた。
「あら、意外と疑い深い子ね?そんなに悪い人に見える?」
「そういうことじゃないんですけど、俺達は世間からして見れば、ぽっと出の傭兵ですよ?」
「あら、そんなことはないわよ?こっちじゃ「イレギュラーネクストを倒した期待の新人」だって思っている人は沢山いるわ」
「そうですか。それが性能テスト相手として呼ばれた理由ですか?」
「もちろんそうよ?うちはX-SOBRERしかないし、オーメル専属のリンクスはカラードランク1と12の2機しかいないわ。依頼はしてみたけど、当然受理してくれなかった」
「だから俺達に依頼してみたと?」
「ええ、報酬もちゃんと出すし悪い話じゃないと思うわよ?それに、あの子もいい経験になるんじゃない?ほら、画面を見て?」
モニターにはフラジールと紅桜が試験場上空で、ドッグファイトを行っていた。お互い、ペイント弾で機体があちこち汚れているが、紅桜の方が汚れている箇所は多く、フラジールの方が若干優勢と言える。残り時間は30秒、誰もがこのままフラジールが優勢のまま終わると思っていた矢先、モニタールームから警報が鳴り響く。
「複数の所属不明機、領域内に侵入。リリアナです!」
「リリアナですって……!?」
アスピナに侵入してきたのは、ジンの仇でもある、過激派組織リリアナだった。兄弟は再び戦火に巻き込まれることをまだ知らない。
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chapter3-5 「妨害者再び」
試験場内にサイレンが鳴り響く。ラストスパートをかけようとしていた2機は、動きを止める。
「サイレン?一体何が」
『リリアナよ!今すぐこっちに戻ってきて頂戴』
「リリアナ!?アイツらまた……!場所は何処ですか!戦います!」
ジンは応戦しようと、食い気味に場所を聞く。
「落ち着いて!まず状況確認を…」
食い気味に場所を聞こうとするが、アンテナのような頭部に、背中に戦闘機のジェットを取り付けたような飛行型ノーマルが紅桜とフラジールに向けてレーザーを撃ち始める。 フラジールは装甲に当たらない向きに機体を傾けた後、ノーマルの頭部にペイント弾を打ち付ける。ペイント弾によってノーマルは視界を塞がれてしまい、紅桜が左腕に装備していたレーザーブレードで飛行型ノーマルを切り裂れる。
残りの2機も紅桜に向かってレーザーを連射する。レーザーは紅桜の紅い肩部に命中するも、紅桜はレーザーブレードで一機切り裂き、もう一機はマシンガンを叩きつける。叩きつけられたノーマルは、ブースターを損傷し、不時着した。
『ご主人、急いで戻りましょう。』
「だけどこのまま戻ってる間にリリアナが……」
「その心配はないわ。こっちもテストパイロットを出撃させたから、急いで武器を取りに来て頂戴」
「…分かりました」
ジンはハンナからの通信を受けて、紅桜をアスピナのドッグへ急がせた。
「リリアナ?なんでこんな所に……」
「分からないわ。でも、何か嫌な予感がするわ」
武はリリアナの襲撃に疑問を持ち、懸念な表情をするのに対し、ハンナは表情を固くしてノーマル部隊に率いたネクストが領域内へ近づく様子が映ったモニターを見つめる。
「姉様、私も出ます。テストパイロットだけでは力不足かと」
「ええ、お願い」
ノラは頷くとモニタールームを出ていき、出撃する準備へ移った。
「ハンナさんよ、こっちの戦力はどれくらいなんだ」
「ジン君を含めると出撃予定のネクストが4機、それに迎撃ミサイルに機関砲台がそれぞれ二機ずつ」
「ネクストが建物周辺の防衛は危険だろ?アスピナはノーマルを持ってないのか?」
ネクストは、ノーマルと比べると圧倒的な持つが、起動するだけでコジマ粒子を散布してしまうため、非戦闘員がいる周辺での使用を暗黙の了解として禁止されている。武は、ネクストの防衛範囲からすり抜けてきた部隊の迎撃を懸念した。
「GAのSolarWindなら鹵獲したものなら持ってるわ。でも、ここには操縦出来るパイロットがいないのよ」
「だったら俺が乗る」
「乗るって…貴方動かせるの?それに、たった一機しかないのよ?危険だわ」
「俺だって元リンクスだ。ノーマル位動かせる。それに、ネクスト戦力だけの企業が本社を襲撃されて壊滅してるのを俺は知ってる。そんなの事になるなんて、あんただって嫌だろ」
「…貴方それってもしかして」
「話は後だ、ハンガーに案内してくれ。悪いようにはしない」
「…わかった、案内するわ。ついてきて」
ハンナはモニタールームから出ていき、武はその後についていく事にした。
紅桜は、アスピナのハンガーに到着すると作業員に誘導されてネクスト専用ハンガーに移動する。ドッグ内は各作業員と作業用ロボット【MT】(マッスルトレーサー)が慌ただしく動きながら、アスピナのネクストX-SOBREROが出撃していく中、ジンはドッグに待機していた例を見ないコアパーツに独特の複眼カメラを持つヘッドパーツをした機体である黒いホワイトグリントが出撃準備をする姿を確認する。
「サクラ……あれの機体、解析できる?」
『黒いネクストですか?かしこまりました、過去のカメラデータと比較します………類似度98% 反転迎撃の頃の救援に来た機体とほぼ同じです』
「やっぱり……じゃあ、パイロットもノラさんじゃ…」
「その感の良さは、いつか身を滅ぼしますよ」
「うぇっ!?その声もしかして……」
「ええ、ノラですよ。あの時助けたのも私です」
オープン回線からノラから通信が来る。ジンの予想は的中した。
「じゃあ、あの時なんで僕を……?言ってしまえば、あの時は他人だったじゃないですか。助ける理由が想像出来ないです」
「確かに、想像出来ないかも知れませんが、君のお姉様から依頼されてたのですよ。これはほんとです。お話はここまでです。行きましょう」
正面のハンガーの隔壁が開かれ出撃を促されていた。紅桜は歩き出し、隔壁から外へ出るとブースターを吹かして移動を急ぐ。
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chapter3-6「アスピナ機関防衛戦」
未だに就職活動が終わってないので投稿ペースは大きく落ちると思われます
『もう近くまで押し寄せて来てる、PA《プライマルアーマー》の展開は禁止よ。何とか食い止めて頂戴』
ハンナから通信が入り、紅桜はリリアナの侵攻を食い止めるべく、コアパーツに内蔵されている大型ブースターユニットOB《オーバードブースター》で進行する4機ずつで編隊を組むノーマル部隊の1つに突撃し、緊急で装備されたSOBRERO用のマシンガンでノーマルに撃ち続ける。GA製ノーマルのである為、実弾への耐性は高いが撃ち続ける事で一機撃破する。装備したマシンガンは1発の威力が他のマシンガンと比べてとても低く、連射力で補っている。その為装弾数も多く、弾消費も激しい。ネクスト二機でリリアナの侵攻を止めるには時間がかかり過ぎるとジンは考え、ノーマル部隊をクイックブーストで飛び越える。ノーマルは紅桜を視線に捉える様に旋回するが紅桜の機動力を追いつかず、ブレードで背後を切り裂かれて爆発する。
『コイツっ…!』
残った2機のノーマルはバズーカやミサイルを紅桜に向けて撃つ。紅桜は前面に備えられているバックブースターを吹かし距離を取りつつ、クイックブーストを駆使して攻撃を避けつつ距離を詰めながら1機にマシンガンを撃ちつつ、もう1機をブレードで切り裂いて2機共撃破する。その隙に飛行型ノーマルが上空を通り過ぎて行った。しかし、拠点の方向から3発のミサイルが飛び、飛行型ノーマルはミサイルを躱すも何処からかマシンガンが飛んできて蜂の巣にされて撃墜される。
『こっちに来る通常兵器は任せろ、俺とアスピナの新型がなんとかする』
「兄さん!?なんとかするって、まさかネクストに…」
紅桜は頭部のメインカメラをアスピナ機関の方へ向けると、GA製ノーマルがSOBRERO用のマシンガンに盾を装備して、屋上から敵を待ち構えていた。
『ばーか、格納庫に眠ってたノーマルに借りてんだ。それよりサクラ、ノーマルは残り何機だ?』
【残存ノーマル部隊、残り半数なります。ですが、敵ネクスト1機、自立型ネクスト4機こちらに向かっています。現在味方ネクストが向かっています】
先を見ると黒いホワイトグリントが自立型ネクストに接近していくのに気づく。自立型ネクストは両手が大型のレーザーブレード、大型のキャノン砲が一体化したような自立型ネクストのような機体だ。また、自立型ネクストをよく見れば、レイレナードのネクスト[03-AALIYAH]を大型にしたようなシルエットに見えた。
「自立型ネクスト、リリアナが作ったっていうの?」
『いいや違う、あれはレイレナードの物だった筈だ』
「じゃあなんで…!」
『わからん、とにかくそいつを近づかせるなよ。そいつのコジマキャノンが一発でもアスピナに当たれば全滅するのは確かだ、気を付けろよ』
紅桜も自立型ネクストと破壊すべく、接近する。既に黒いホワイトグリントは、自立型ネクストと緑色のネクストと交戦していた。黒いホワイトグリントは手持ちのマシンガンとショットガンを撃つも自立型ネクストはPAを展開できる様で、大したダメージになっていない様子だ。リーダー格のようなネクストを拡大して見ると虫のような緑色に、頭部には弧を描くアンテナ、ジャンプ力が高い逆関節型の脚部、手持ち武器には大型ショットガン。肩部には鎖で縛られた女性のエンブレムが付けられていた。
「あれは……いや、見間違いなんかじゃない。お前は……!」
ジンにとって必ず忘れはしないであろう、あの機体はジンの母親を殺したオールドキングのネクストに間違いなかった。
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