狩人少女の輝かしい夢 (ジャパニーズダイズミール)
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プロローグ

ガラガラガラ、ガラガラガラ

アプトノスたちが引く車の車輪が大きな音を立てながら動く。彼らほど大人しく、頼りになり、人間を手伝ってくれるモンスターはいないだろう。我々はこの種に感謝せねばならない。

ガラガラガラ、ガラガラガラ

そんな大きい音と心地よい揺れの中、車の中で目が冴えている女の子がいた。名前はリリィという。つい数週間前に村の訓練所を卒業したばかりの新米、いや、まだ町のハンターライセンスを登録していないので新米ですらないハンターだ。そんな彼女が背負っているのはツインタガー。鉄鉱石で作られる初心者御用達の双剣だ。

揺れ動く外の景色を眺めながら、彼女は訓練所の卒業式を思い出していた。いつもうるさい教官がギャン泣きして一段とうるさかったあの日からパーティやら荷造りやらでゆっくりする間も無く気づけば出発の日になっていた。

「もう3週間かぁ…早いなぁ」

「お客さん、どうかなさいましたか?」

「あ!いえ!なんでもないです!」自分でも気づかぬうちに声に出ていたらしい。気をつけないと…

らしくないなあ、と思い、ため息を吐く。能天気とまではいかないが、彼女はあまり悩んだりしない性格であった。が、ハンターデビューや村から出て一人で暮らすと言った要素が今の彼女をこんな性格にしているのだろうが、本人はそのことに気づかない。

ガラガラガラ、ガラガラガラ

彼女の気持ちを知らないように青く晴れ渡る空の中、アプトノスの引く車は着実に目的地《ドンドルマ》に向かう。

 

 

 

 

リリィが産まれたのはウーデン村という北にある小さな村だ。両親はハンターというわけではなく、商人をしてる父と自作農をしている母との間に生まれた。家族の仲は良く、誰が見てもしあわせな家族であった。

そんな彼女がハンターを志すようになったのは6歳の頃である。母親の誕生日プレゼントのため花を摘みに来ていたことで彼女は帰り道で迷子になり大型モンスターに出会ってしまったのだ。そこで彼女はハンターによって助けられた。そのハンターが(正確に言えばその時にはハンター業を引退していたので元ハンターであるが)ウーデン村の村長である。ベタな話ではあるがそれが彼女がハンターを志した理由である。村長と同じように誰かを助けたい、そんな決意を10年間持ち続けて彼女はついにハンターデビューを果たそうとしているのだ。

 

 

 

 

 

「…さん!、お客さん!」

体を揺すられ目がさめる。どうやら寝てしまっていたらしい。

「長旅ご苦労様でやんす。目的地のドンドルマに着きましたぜ。」

ありがとうございます。とお礼を言いリリィは車を降りた。

目の前には村に中では絶対に味わうことのない広大な世界が広がっていた。赤色と緑色をした屋根の建物、奥ではパーティでもやっているのだろうか、喧騒が聞こえてきて、かすかだが焼いた肉の匂いが漂ってきた。

「すごい…」彼女はそう言うのが精一杯だった。車の中での不安は1つ2つ、3つとあっただろう。しかし今はそんなことよりも目の前にある世界を見てこれからの自分の送る生活に数えきれない楽しみを感じていた。

「それじゃああっしらはこの辺で」とアプトノス使いは引き返していく。リリィは彼らの姿が見えなくなるまで見送った後に振り返り、一歩ずつ踏みしめるように街の中心部に歩き出した。

「私の夢は、ここから始まる。」




はじめまして、ジャパニーズダイズミールと申します。
他では白味噌名義で活動してるのでそっちの方が馴染みありますね。
初投稿の小説の題材はモンハンとなっております。とは言ってもXXまでしかプレイしてないし、まだラスボスまでいってないんですけどね()
次からはもっと長めに書く予定なので許してください。


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