ポケットモンスターMINOR (とある世界のハンター)
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第一章
vsカモネギ 『初めまして、こちらの世界』


初めましての方は初めまして
数年前に見たことある名前だと思った方は、記憶をリセットしてお願いします。
まぁ、処女作が方向音痴なのはよくあるこった気にすんな。ってノリです。はい。
いつでも処女作を書いてるつもりの人間ですが、もしよろしければどうぞ((。´・ω・)。´_ _))ペコリ







 

 

 

「...あ、ありのまま今起こったことを話すぜ。俺は歩き孵化作業をしていたと思ったらいつの間にかツルペタ幼女になっていた。な...何を言ってるかわからねーと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった...頭がどうにかなりそうだった...夢落ちだとか、神様の手違いなんてそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...」

 

全くなぜ━━━━━━と、頭を抱えている男、もとい少女はふと周りを見渡す。辺りは木々が生い茂っており、薄暗く、少し不気味に感じられた。

 

「とりあえず、どっか人のいそうな場所へ行ってみるか。口調と一人称に気ぃつけねぇとな。」

 

よっのらしょとその歳に似合わぬ掛け声で腰を上げて、西と思われる方角へ歩みを進めた。

 

「もう夕方だよなー。ん?夕方ですわね?夕方っぽい?なのです?アル?」

 

寂しさを紛らわすためか、独り言を言いつつ、自分のキャラを定めようと努力する。が、

 

「普通が一番だよなコレ...」

 

と、結論づけてしまった。

そうこうしていると、開けた場所へと出た。少し先には町が見える。案外近かったが...しめた、と彼女は町へ向けて走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

と、頭ではしていたのだが体は違った。走り始めた瞬間、正面から何か飛んできた。否、文字通り飛んできたのだ。鳥が。

彼女はそれを見たことがあった。鳥の種類なんてカラスとペンギンしか分からないような人間でも、彼女は分かった。この鳥の種類を。

 

「カモネギ!!??」

 

急な大声に驚いて、元来た方向へと飛んでいこうとするカモネギ。しかし、そうは問屋が卸さない。

 

「いた!!カモネギ!」

 

町から帽子を被った少年と老人が走ってきた。どうやらカモネギを追っているようで、少年は空のモンスターボールを握っている。

ある程度彼らとカモネギの距離が縮まったところで少年が思い切りボールを投げた。しかし、そのボールを簡単に避けるカモネギ。

 

「まだ攻撃しないとダメか!」

 

と、悔しそうに少年が言ってる反対側では、その空振りしたボールを取った。彼女は、そのボールを右手でしっかりと持ち、左足を高らかに上げて、プロ野球並の綺麗なフォームで空に居座っている鳥目掛けて投げた。

少年と老人を敵として見ていたカモネギは、背後からのモンスターボールに気づかなかった。体を貫かんとする勢いでぶつかったボールは、開閉スイッチが開きカモネギを収めた。

 

「やれやれだぜ...こんなんでもあんな強く投げれるのか。」

 

「すっげー!」

 

カモネギの入ったモンスターボールを拾い上げると、さっきの少年が声をかけてきた。彼女はモンスターボールを彼へ投げ渡した。

 

「キミのポケモン?」

 

「まっさかー、この人の。」

 

と、少年が指差す老人。これも彼女は見たことがある。かの有名なオーキド博士だ。

 

「オーキド博士...ですか?」

 

「おぉ!ワシを知っておるとは流石じゃな。学会以外じゃワシの名前は有名ではなくなったからの...」

 

なんだか話が長くなりそうだな。と彼女は思った。とりあえず事情を説明...いや、記憶喪失ってことにしてオーキド研究所に転がり込むか、と考えていると、質問が飛んできた。

 

「君、名前は?」

 

━━━━━━━━しまったぁぁあ!!!すぐ答えろ、すぐ答えろオレ!いや私!

と、パニックになりながら名前を考える。そこで、過去に自分がやったシリーズのモブトレーナーの名前が浮かんできた。

 

「...マイ。」

 

「ほぉー、マイか。トキワシティに住んどるのかの?」

 

━━━━━もしかして、すぐそこの町はトキワシティか。カモネギ追いかけてわざわざ隣町まで来たのか。大変だな...いや待て、やばい。その前になんて答えるべきだコレ。

 

「...分からない」

 

多少の間は開いたが、恐らく誤魔化せたはずだ。と自分に言い聞かせて、表情に出さないようにするマイ。

 

「ふむ...断定は出来んが記憶喪失かもしれんの。とりあえず、今は私たちに着いて来なさい。」

 

━━━━マイは  オーキドの  仲間に  なった !

なんてくだらないことを考えていると、オーキド博士はカモネギの入ったモンスターボールを渡した。あくまで護身用じゃ、とだけ付け足して。

 

 

帽子を被った少年がポケモンを探している間。マイは博士から今の状況について説明を受けた。なんでも、少年が博士の研究所のモンスターボールのスイッチを全て開けてしまい、逃げたポケモン達を追っているのだと言う。

 

「やれやれだぜ...」

 

なんてクソガキなのだろう、彼は...

 

「ねー、手伝ってくれてもいいんじゃないのー?」

 

「自分で蒔いた種は自分で刈り取るべき。違う?」

 

頬を膨らませている少年を横目に、ボールに入っているカモネギに目をやった。カモネギはとても行儀よく、大人しくしている。

 

(知らない世界に出たら誰でも焦るよなぁ...)

 

と、先程の自分とカモネギを照らし合わせて感傷に浸っていると、少年がポケモンを捕まえた。

 

「おし、あとはフシギダネ一匹!」

 

「あそこいる。」

 

「え!マジ!?」

 

最後の一匹となったフシギダネがすぐ側までやって来ている。指された方向にすかさず帽子の少年はボールを構えるが、大きな声が耳に入ったからか、フシギダネは傍の建物へと入り込んだ。追いかけるように建物内へ入る少年と博士に続いて、マイも建物へと入った。

 

「暗...」

 

建物内は照明等なく、クモの巣が張っているほど長い間使われていないようだった。

 

「さ、大人しくこっちへ...」

 

オーキド博士がフシギダネを誘導しようとする。だが、フシギダネはオーキド博士目掛けて体当たりを仕掛ける。それはクリーンヒットしたが、その老体は何とか踏みとどまった。

 

「すご...」

 

と、関心している傍ら、少年はフシギダネに優しく声を掛けていた。

それは自分の役目ではない、と、マイはそちら側には行かず、目新しい物はないかと物色し始めた。

 

「あ」

 

そして早速見つけた。見つけてしまった。目新しいモノ、者を。

 

「━━━━━━━ッ」

 

咄嗟にボールを構えてそのモノの前へと投げ、ボールから出す。

使う技なんて知らないけど、と前置きしてカモネギへ指示を出した。

 

「接近」

 

その言葉に少し離れた2人は反応し、そして仰天した。

目の前にいるのは 格闘ポケモン ゴーリキー 。

近づいたカモネギに向けて大きなパンチを構えたゴーリキーだが、フシギダネが自身のムチでその腕を拘束したことによって攻撃は不発に終わった。そしてその隙にカモネギが攻撃する。クチバシで攻撃しているから"つつく攻撃"だろうか。しかし、大したダメージでは無いようで、フシギダネのムチを振りほどいた後、カモネギを捕らえようと構えた。

 

「上昇。」

 

それから逃れるために、マイは上へ飛ぶよう指示。カモネギはそれに従うと、ゴーリキーはマイを次の標的として見定め、マイへと走り始める。命の危険を察知したマイは後ろへと退こうとするが、その心配はないようだ。

 

「ええい!!」

 

帽子の少年が窓を開けたことによって、フシギダネのソーラービームが発射可能になり、それを撃つことによってゴーリキーが倒れた。

 

「助かった。ありがと」

 

少年に軽く礼をして、腰を抜かして立てないオーキド博士に肩を貸すマイ。

オーキド博士は立ちながら、2人のトレーナーに賞賛の言葉を贈った。そして、帽子の少年にフシギダネを、マイにこのカモネギを託した。なんでも、もう既にこの2匹は懐いてるらしい。

そして、帽子の少年━━━━レッドはこの件の言い訳、もとい経緯を話した。昨日、森で幻のポケモンと呼ばれるポケモンに出会ったこと。そのポケモンに全く歯が立たなかったこと。だから強くなるために研究所へ行ったこと。

それを聞いたオーキド博士はレッドに質問した。強くなることはどういうことかと。

レッドは答えられなかった。そして同じ質問がマイに回ってきた。彼女は、前世の記憶を呼び起こして必死に頭を回転させ、彼女なりの答えを導いた。

 

「...成長すること。」

 

「...具体的にはどういうことじゃ?」

 

「旅したり、ポケモンと仲良くしたり、勉強したり。そうすればどんなポケモンも強くなる。」

 

全て前世のゲーム知識から導いた答えだけどな、と彼女は心の中で呟いた。

オーキド博士は、そこから更に深い場所にある。と始めた。

 

「大切なのは心じゃよ。ポケモンと通わせた心が誰にも負けないポケモントレーナーへの道となるのじゃ。」

 

「絆?」

 

「そうとも言うな。」

 

絆って言った方が分かりやすい気がするのだけど━━━━━━━━

 

「さて、これをお主らに渡そう。」

 

と言って、赤い箱もといポケモン図鑑を貰った。この図鑑を全て埋めてほしいとの趣旨を聞いたレッドは、博士に勧められたトキワの森へと進むようだ。

 

「またなー!!」

 

大声で叫ぶレッドに軽く手を振り返し、マイは博士との話に戻る。話というのは、これからの生活費についてだった。マイはそれに対して

 

「トレーナーとして生きれば金は入る」

 

と答えた。それもそうだと笑って返すオーキド博士は、彼女にモンスターボールやタウンマップ、キズぐすり等の道具を渡して見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

22番道路━━━━━━━━

 

「で、これからどうするべきか...」

 

少女、マイは、カモネギのボールを片手に22番道路を放浪していた。この道の先には進めないことは知っていたのだが、この情報量の多さに耐えられなかったのだ。

木に体を寄せて、倒れるように座り込んだ。心配そうにカモネギが顔を覗くが、そんなことには目もくれず、カントー地方とジョウト地方の間にあるシロガネ山を見上げた。

 

「高っけぇなぁー。」

 

感嘆していると、ボールがガタガタと揺れる。開閉スイッチを押すとカモネギが出てきた。スイッチを押してポケモンが出てくることにマイは少し驚きの表情を見せるが、対してカモネギは余裕綽々とした様子でマイを見詰める。

 

「何」

 

無頓着に質問を問いかけるマイ。

しかし、カモネギは何も返さない。

 

「そりゃ何も言えないよなぁ...」

 

と、呟くとカモネギは クワ と短く鳴いた。

 

「何言ってるか分かんねぇよ...」

 

苦笑いすると、カモネギが葱を逆手に持ってマイの前で戦闘態勢に入る。なんだなんだとマイが立ち上がると草むらから野生のポケモンが飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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vsナゾノクサ 『さぁ、ニックネームを決めようか』

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野生のポケモンが現れた。マイは指示を出そうとするが、その前にカモネギが攻撃を受けてしまった。幸い、ダメージは少ないようだ。

 

「急接近!」

 

カモネギが接近している間に、ポケモン図鑑を取り出して技を確認する。

カモネギの技は

つつく

みだれづき

つるぎのまい

かまいたち

の4つだった。すかさずマイは技を選択、もとい命令する。

 

「みだれづき!」

 

カモネギが思い切り野生ポケモンへと体全体を使ってぶつかる。ここでマイは野生ポケモンの正体に気づく。

 

「ナゾノクサ」

 

そう、野生ポケモンはナゾノクサだった。

こんなことすら気づけない程余裕が無いとは、とマイは少し悔やんだが、すぐに気持ちを切り替えて指示を出す。

 

「つつく攻撃!」

 

カモネギは指示通りにつつく攻撃をしようとするが、ここでナゾノクサの"痺れる粉"。カモネギは麻痺になってしまい動きが鈍くなったため、その攻撃を避けられてしまった。

そしてそのナゾノクサはマイ目掛けて突撃しようとする。だがしかし、ナゾノクサは標的をマイに変えた瞬間、マイの方を振り向いた瞬間、勝負が決したと瞬間的に本能的に理解した。

マイはモンスターボールを握りしめ、その綺麗な投球フォームで思い切り足を地に振り下ろし、力強くボールを投げた。空のボールはナゾノクサに命中し、1、2、3でナゾノクサは捕獲された。

 

「捕獲、完了」

 

少し誇らしげに言ってみるマイだったが、誰も反応してくれないことに少し寂しさを感じた。カモネギに目をやると、コクコクと頷きながらこちらへ歩いてきた。

 

「...麻痺なおしはないし、一旦トキワシティまで戻るかなぁ〜」

 

そう呟くとカモネギは脛を軽く叩いてきた。痛みに悶絶するマイの横で、落ちた自分のボールに自ら入るカモネギ。なぜ自分が攻撃されたのか分からないマイは、そのよく分からないままトキワシティへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お預かりしたポケモンは皆元気になりました。またのご利用をお待ちしております。」

 

ぺこり、とジョーイさんが礼をするのに応えてマイも礼をしてポケットモンスターを後にした。

 

「やっぱり一瞬で回復じゃないか」

 

人気のない場所で呟く。コレはゲームではない、現実である。ということをマイは再度感じ取った。さっきのナゾノクサとの勝負も、カモネギがいなければどうなっていただろうか...

ふと、捕まえたナゾノクサのボールに目をやると、キラキラとした目を輝かせてこちらを見ていた。コレはゲームではないのだ、と彼女は再三思い返して、ナゾノクサ、そしてカモネギをボールから出す。

ボールから出たナゾノクサは真っ先にマイの胸元へと飛び込んできた。

 

「...これが目的?」

 

その問いにナゾノクサは首を縦に振って答える。なるほど、此奴ロリコンか。

 

「...いいや。放置で。」

 

抱きつかれたまま、マイは話を続ける。

 

「ニックネームを付けます。カモネギ、君はネギ。ナゾノクサ、君はラフだ。」

 

余りにも軽すぎるニックネームの付け方だが、本人達は喜んでいるようだった。それを確認したマイは次の街、ニビシティへと歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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vsイワーク 『秘密兵器』

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〜ニビシティ〜

 

ニビシティへと着いたマイ達は、早速ジムへと挑戦しにニビジムへと向かう。彼女のポケモン、ネギとラフはやる気満々のようだ。

 

「人多っ...」

 

ニビジムの中へと入ったマイは驚いた。人の多さに。ゲームとの形式の違いに。

マイはジムの壁に貼ってあるジムのルールについての紙を見つけて読み上げた。

 

「4つのブロックに分けられて、そのブロックでバトルを行いジムリーダーへの挑戦権を手に入れる。対戦相手はジムトレーナー達。」

 

なるほど、とマイは呟いて受付を済ませた。

 

 

「Cブロック...まだまだ先『次、24番 マイさん』うっそーん...」

 

予想外にもスグに順番が回ってきた。ソレはジムトレーナーが強いからなのか、それとも挑戦者が弱いからなのか...

ともかく、マイはリングの上へと上がっていった。

 

『開始!』

 

開始の合図が出される。相手トレーナーは筋肉質の男性、使うポケモンは岩タイプのゴローンだった。対して、マイが使うのは新入りのラフ。

 

「初陣、行くよ」

 

その言葉に体を縦に振って頷くラフだったが、相手のゴローンを見て後退りしてしまった。無理もないか、とマイは感じた。ラフを捕まえた道路には、そこまでポケモンは見かけられなかった。恐らくポケモン自体少なかったのだろう。さらに、こんな大きなポケモンも見たことがなかったのだろう。

だけど、とマイは口を開ける。

 

「この程度でビビってたら、コレからの旅はやってらんない。」

 

これからの旅━━━━━━━━マイは、いや男はゲームの知識しかない。しかし、この世界がそのゲーム通りに進む訳では無い。現に、ジムの形式が違うのだ。R団が活動しているという確証もないし、ミュウツーが作られているとも限らない。それならば大きな事件は起こらないだろう。だが、それ以上の事件が起きる可能性もあるのだ。

そんな中、自分が、自分たちが己の身すら守れないようなのは、癪だ。と、思ったのだ。マイは。

 

「この程度、だと?」

 

さっきのマイの言葉を聞いて頭に血が上ったのか、相手トレーナーは顔が真っ赤になっている。先制は相手が奪った。

 

「ゴローン!"たいあたり"!」

 

相手のゴローンがその巨体をラフの小さな体目掛けてぶつかってくる。しかし、マイは落ち着いて指示を出した。

 

「"しびれごな"、"すいとる"」

 

マイの落ち着きがラフにも伝わったか、ラフは落ち着いてしっかりと"しびれごな"を当てた。ラフの"しびれごな"によって動きが鈍ったところを、"すいとる"攻撃で集中攻撃。ラフの元へ辿り着く前にゴローンはダウンした。

 

『終了!勝者、マイ!』

 

わぁぁっと歓声が上がる。慣れないことに少し顔を赤らめるマイだったが、ふと現実に戻って呟いた。

 

「次」

 

 

 

 

 

 

 

『終了!勝者、マイ!ジムリーダーへの挑戦権を得ました!』

 

やっとか、と安心したマイは、ふとラフに目をやる。疲れているのではないかと思ったのだが、ラフはマイの足元に擦り寄って、目を輝かせていた。

仕方ないな、とマイはラフを抱き上げた。ラフはとても嬉しそうにしていたが、すぐに眠ってしまった。

そう、リハーサルを終えてこれから本番という時に寝てしまったのだ。

 

「...起きて。ねぇ、起きて。ねぇ、ねぇ。」

 

しかし、全く起きる気配がない。

無理もない、ここまで1匹で、連戦連勝してきたのだから疲労が溜まっていてもおかしくない。ラフも生き物なのだから。

ラフをボールに戻してネギのボールに手をかけるマイ。

 

「...ネギ。出番。」

 

ネギをボールから出してネギを確認するマイ。ネギは準備万端とでも言わんばかりに、自身の葱を高々と掲げる。おぉ、と感嘆の声を漏らすマイだったが、ズシンと大きな音が聞こえてそちらを見る。

 

「ナゾノクサは使わないのか?」

 

マイに問いかけるのはジムリーダーのタケシ。彼の後ろにはイワークが佇んでいる。上半身裸で腕を前で組んでいるその貫禄は、彼がジムリーダーであることを示しているようで、そのオーラに屈しそうになる。

 

「...秘密兵器の登場」

 

無論、嘘だ。虚言だ。だが、彼女マイは、彼のオーラに負けまいと虚言を張ったのだ。タケシはその言葉の真意をすぐに汲み取ったが、そんなことはどうでもいいと、マイにバトルを始めようと声をかける。マイはそれに応えて、ネギを抱きかかえ彼と向き合った。

 

『それではバトル開始!』

 

「飛翔、"つるぎのまい"」

 

先制したのはマイ。ネギの攻撃ではイワークには通じないと思っての技の選択だった。しかし、タケシは対策済みのようだ。

 

「"いわおとし"!」

 

イワークの"いわおとし"はネギ目掛けて飛んでくる。ネギはなんとか躱しているが、そこでネギに指示が飛んでくる。

 

「その高さで飛び回って、"つるぎのまい"」

 

指示は現状維持だった。観客は動揺の声をあげる。もちろん、タケシもだった。

 

「避けてばかりじゃ勝てないぞ!」

 

だがしかし、マイは指示を変えない。その状況を打破しようと思ったのか、先に指示を変えたのはタケシだった。

 

「残念だが終わらせるぞ!とどめの"ロケットずつき"!!」

 

イワークが体を竜巻の様に回転させて、空中にいるネギ目掛けて飛び上がる。

誰もが決まった。と思ったが、マイは違った。

 

「急降下」

 

ネギの急降下、それによってイワークは攻撃を外した。しかし、それでも状況は変わらない。飛び上がったイワークは首をネギの方へと曲げようとする。

 

「"かまいたち"」

 

ここでマイは"かまいたち"を指示する。しかし、"かまいたち"とは溜めを必要とする技だ。それを知っているタケシは再度"ロケットずつき"を指示する。だが━━━━━━━━

 

「なっ」

 

かまいたちを指示すると、すぐさま技が発動した。風の刃がイワークの体めがけて飛んでいく。だが、ジムリーダーであるタケシの実力は半端なものではない。すぐさま避けるように指示したが、それでも体の側面を削るような形で攻撃は命中。イワークは大ダメージを負ってしまった。

ここでタケシはレフェリーに判定の指示を出す。

 

『ジムリーダーにより、戦闘終了。この勝負、チャレンジャー マイの勝ち!』

 

「ふぅ...やれやれだぜ」

 

歓声が上がる中、危なかったと冷や汗を拭うマイ。上空から降りてきたネギを褒めてボールに戻した。

 

「なぁ、さっきのいつ指示したんだ?」

 

と、声をかけてきたのはジムリーダーのタケシ。周囲のトレーナーも勿論のこととして、気になることだった。

 

「バトル前、抱き上げた時。一筋縄じゃいかないと分かってたから。」

 

「なるほど、タイプ相性が不利だから予め作戦を立てておいたと...すごいな、全く気づかなかったぞ。」

 

「空中で尚且つ動いていれば見えにくいかと。イワークが気づかないほど攻撃を集中させたコイツのスピードのおかげ。」

 

流石だな、とタケシは感嘆し、彼女にニビジムのジムバッチ[グレーバッチ]を渡したのだった。

 

 

「バッチ、ゲット。」

 

バッチを受け取ったマイは特に鑑賞に浸るわけでもなく、そそくさとジムを後にした。

 

 

「人多いの無理...」

 

人混みはやはり苦手のようだ。声をかけられるのも嫌なので、マイはニビシティを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜3番道路〜

 

ニビシティとオツキミ山を結ぶ3番道路。ニビシティ側は木々が生えていて、傾斜や段差の多い地域。オツキミ山側は山岳地帯となっている。

 

「夕方、か」

 

オツキミ山麓のポケモンセンターに着いたマイは、空を見てポツリと呟いた。マイの傍には肩で息をしているネギが、建物に寄りかかっている。

 

「お疲れ様。」

 

慣れないことをさせてしまったな、とマイは思った。実はニビシティを後にした後、マイはネギの足に掴まってネギに空を飛ばせてここまで飛んできたのだ。

別に楽をしたかった為ではない。今後、この飛行能力によって救われる場面があるかもしれない、という考えの元だ。

 

━━━━━━━━多分、使えない。

 

その試しの結果は、バツ。

ネギの重さに対して、マイの重さは割に合わないようだった。

 

 

建物内に入ったマイは、ジョーイさんにポケモン達を預けて傍の椅子に腰を掛け、目を瞑るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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vsアズマオウ 『Dead or Alive』

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「...寝てた。」

 

マイが目を覚ました時には、外はもう青々としており、新鮮な果実のような雰囲気があった。

まだ朝は早いが、山を越える頃には昼を過ぎているだろう。

そう思ったマイは、預けていたポケモンを受け取り、センター内の小さな売店で食料を幾つか買って外へ出た。

 

朝日は眩しく、暖かみを感じられた。ネギとラフをボールから出して、軽く運動させた後、ラフだけボールに戻した。

 

「飛ぼうか。」

 

ネギの首根っこを掴んだ状態で、冷たく、どこかサディスティックに言った。昨日の続きをしようか、ということを理解したネギは逃げも隠れもせずに、マイを連れて飛び立った。

 

「あっち」

 

マイが指差した先は東。すなわちハナダシティだ。

 

「次の町もジムに行くよ。準備よろしく。」

 

その言葉に短く鳴いて反応するネギ、揺れて反応するラフ。

 

━━━━━━━━慣れたな。

と、思うマイ。もとい男。

 

忘れかけていた、自分は異世界の人間だということを。身体は適応しているが、心までも適応しそうになっている。怖い。

 

...なんてことをぐるぐるとぐるぐると頭の中で回していると、ネギが鳴いた。我に返ってみると、すぐ目の前には水のように透き通る様な町があった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハナダシティ、着いた。」

 

ハナダシティへと降り立ったマイは、早速ジムがある場所を探し始めた。しかし、どこを探してもジムらしき場所は見当たらない。仕方ない、と街の住民に場所を聞いた。

 

「あの、ジムの場所...」

 

「ん?あぁトレーナーかい?ジムは町の外れにあるけど、今ジムリーダーは出掛けているらしいんだよ。」

 

「え...」

 

「あ、ポケモントレーナーならちょっと手伝ってくれないかな。」

 

━━━━━━━━強引だなコイツ

 

場所を聞いてしまった手前、引くに引けないマイはその町民に連れられるまま、町北部に流れている川まで連れてこられてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「...デカ」

 

連れてこられたマイが見たものは、巨大な鯉。もといアズマオウだった。アズマオウの周りには幾人ものポケモントレーナーが各々のポケモンを出して一斉攻撃を仕掛けているが、すぐに"ねむる"で回復されているようだ。

 

「あのアズマオウは懸賞首でね。20万円だって、やる?って、あれ 」

 

彼が気づいた時には、既にマイはソコにはいなかった。町民の話の中に出てきた[20万円]という単語に反応して、その川の付近へと降りてきた。

 

 

「ネギ、"つるぎのまい"を最大まで積んで上空から"かまいたち"。ラフは"すいとる"で牽制!」

 

ネギは指示通りに"つるぎのまい"をして、ラフはマイに抱きかかえられて土手の下まで下って攻撃を開始した。

しかし、野生のアズマオウは水中に潜って敵の攻撃を避け、確実に1匹ずつ"つのでつく"や"みずでっぽう"を当てていく。そのトレーナーのポケモン達はほぼ1発でダウンしているため、束になって攻撃しているトレーナー達の中には離脱するものがチラホラ見られた。

 

「使えない。」

 

マイがボソッと呟くと、そんなことは言ってはいけない。とでも言いたげに、ネギが空からマイに向かって叫んだ。はいはい、と理解した旨を手で伝えてマイは土手の上へと戻ろうとする。このまま下にいれば角の餌食になると考えたからだ。しかし、ラフは残ろうとマイの腕で暴れる。その目はいつものキラキラとしたものではなく、真っ直ぐとした目だった。

 

「作戦、ある?」

 

その問いにラフは体を縦に振って答え、マイの腕から飛び出たラフは草むらをいじり始める。と、ここでアズマオウが次の標的としてラフを見定めて"つのでつく"の構えを取る。しかし、ラフは草むらの辺りを彷徨いて全く気づいてないようだった。

 

「ッ━━━━━━━」

 

声をかけても間に合うか怪しい。それを一瞬で理解したマイはラフのボールを取り出して戻そうとする。が、

 

 

マイの足元に風の刃が打ち付けられた。攻撃を仕掛けたのは、ネギ。攻撃を受けてマイが尻もちを着いたところで、アズマオウのその角がラフを捉えようとすぐ側まで来ていた。

ぶつかる━━━━━━━━と、目を瞑ってしまうマイ。しかし、薄らと目を開けると、アズマオウは止まっていた。否、拘束されていた。

拘束していたのは蔓や草。ラフが弄っていたのは水辺の植物だった。

一瞬何が起こったか理解できなかったマイだったが、我に返ってネギに"みだれづき"を指示する。ネギは上空から真っ直ぐ下へ、アズマオウを貫かんとする勢いで激突。それを数回繰り返したところでマイがモンスターボールを投げる。

1、2、3と揺れて、ボールの閉まる音が聞こえた。アズマオウを捕獲したのだ。

 

「捕獲、完了」

 

野次馬達から歓声が上がる。またか、という表情で土手を上がるマイだったが、そんな顔を気にせずに周囲の人間から声をかけられた。スゴいだの、どこから来たのだの...

マイはそんな会話とキャッチボールをするわけでもなく、口を開け

 

「懸賞金」

 

とだけ呟いた。その言葉はまるで豪速球のようで、周囲を黙り散らかすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「財布重...」

 

賞金を貰ったマイはゴールデンブリッチを渡って24番道路へとやって来た。彼女の財布はパンパンに膨れ上がっていたが、これからまた膨れ上がるようだった。

先程、アズマオウの懸賞金を受け取った後、町民の代表からこう言った話を聞かされたのだ━━━━━━━━

 

 

「この町の北にある24番道路、その先のハナダ岬に最近凶暴なポケモンが現れるようになったのじゃ。君に任せる。のじゃ。」

 

「あの、拒否権は」

 

「よろしく頼むのじゃ、礼はたんまりするのじゃ。」

 

 

━━━━━━━━礼とやらに釣られたのだが、いくらかを聞くのを忘れてたな。

 

頭をポリポリと搔きながら、川を横目に溜め息をするにマイ。ふと、川を下流の方へと目をやっていくと、目的地、ハナダ岬が目に入った。

そろそろか、とボールに手をやるマイ。しかし、そんな時に地響きがなり始める。ドドドドと。

もうトラブルには慣れたのか、すかさずネギをボールから出して空中へと逃れようとする。咄嗟の判断が出来るようになったのかもしれない、と本人は感じた

。だが━━━━━━━━

 

「へ?」

 

地面が削れ、崩れ落ちる。川の方へと流れ落ちるように...

 

 

 

 

 

 

 



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vsキングラー 『パワーファイター』

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「━━━━━ッ」

 

地面が崩れ、川へと流れ落ちると共に、マイも川へと落ちていく。空へと逃げようと取り出したボールは既に手を離れた。幸い、ボールは共に下へと流れ落ちる木に引っかかったようだが、マイのピンチは変わらない。

落ちる━━━━━━━━と、マイは恐怖した。だがしかし、ここで諦める程彼女は馬鹿では無かった。下は川。即ち水上。すぐさま捕まえたばかりの"ボール"に手を伸ばして、下へと投げ出した。

 

「アズマさん!!」

 

そう呼ばれた アズマオウ は川へと飛び込み、マイを背中で受け止めた。アズマオウに飛び乗ったマイは流れ落ちた木へと飛び乗り、ネギのボールを手に戻した。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と。」

 

地上へと戻ったマイは、崩れ落ちたソコを見つめ、顎に手を当てている。ネギもマイと同じく、崩れ落ちた地盤を見ている。ただ違うのは、マイは地上から見ているのに対して、ネギは空中から見て回っていることだ。

 

「ディグダか、イワークか...」

 

マイはこの件の犯人をディグダかイワークだと予想する。いや、ディグダでないにしても、その進化系のダグドリオの可能性もあるのだが、とにかくこの3匹だとマイは考える。

 

「地面から出た拍子に崩れ落ちたか...だとしたら下に埋もれているはず。アズマさん。」

 

埋もれているのであればそれを見捨てるのは忍びない、道徳的に。マイはアズマさんに"ちょうおんぱ"を流れ落ちた地面に指示。

"ちょうおんぱ"は地面をすり抜けて埋もれているポケモンに効果があるはず、当たれば混乱状態になって、暴れる筈だ。という考えだった。

 

「暴れれば場所が分かる...」

 

埋もれているはずのポケモンに"ちょうおんぱ"が当たるのを待っているが、いくら待っても、当たる気がしない。

と、待っていると、その積み上がった小さな山が吹き飛ばされた。

やっと来た━━━━━━と、アズマさんをボールに戻そうとした瞬間、

 

「なっ、アズマさん!?」

 

アズマさんが吹き飛ばされた。その出てきたポケモンによって。

それを見ていたネギはすぐさまマイを空中へと持ち上げた。その瞬間、マイの立っていた場所は崩れ落ちた。

 

「危な...!」

 

感情が昂っているのか、少しばかり声が大きいマイ。それを睨むが如く、下から殺気が飛んできた。下を覗けば、そこには はさみポケモン のキングラーがいた。

キングラーはマイ達目掛けて"あわ"攻撃を仕掛ける。

 

「ネギ回避!」

 

マイはネギに回避を指示するも、この"あわ"攻撃は光線系やビーム系とは違って威力が落ちる分攻撃範囲が広いのである。つまり、回避しにくいのである。

マイはそれを理解し、水中にいるはずのアズマさんに声をかける。しかし、アズマさんは反応しない。

 

「倒された...?」

 

マイの記憶では、かなり耐久力に優れたアズマオウだったはずなのだが━━━━━━━━それほどまでにあのキングラーの攻撃力が高いということなのだろうか。

 

「アイツが懸賞首...」

 

なるほど、そう仮定すれば納得だ。というか、なぜ聞くのを忘れたのだろう...

マイは腰のボールに手をかけ、ラフを崩れ落ちた地面の上へと放り投げる。

しかし、ここで問題が発生した。ネギが"あわ"攻撃を避けられず、被弾してしまったのだ。フラフラと飛行が安定せず、飛ぶことに精一杯になっているネギ。対して、マイは特に慌てることもなく、ラフに"ねむりごな"を指示する。

その"ねむりごな"は命中し、キングラーは眠ってしまった。

 

「ネギ"みだれづき"、ラフは"すいとる"攻撃。」

 

すぐさまラフとネギの総攻撃でダメージを与え、ボールを投げる。

1、2、3と揺れて捕獲完了。

 

「懸賞金、確保。」

 

...マイには金としか目に映ってないようだ。倒れているアズマさんをボールに戻し、地上へと戻ったのだった。

 

「夕方...野宿の準備しなきゃ。」

 

 

 

 

 

 

 

〜ハナダシティ〜

外で一泊してからハナダシティへと戻ってきたマイ。出迎えられ、懸賞首と思われるキングラーを見せると見事に当たっており、またもや称えられた。

ここで、昨日の代表から礼として"あるチケット"を入手した。

 

「...なにこれ」

 

「君がジムに挑みたいらしいのでな、紹介状じゃよ。ジムリーダーは忙しいらしいのでな。」

 

金ではないのか、と残念そうにするマイだったが、ジムと聞けばその考えを改めるしかない。すぐさまポケモンセンターへ行き、ポケモンを回復させた後、ジムのあるという町外れへと走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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vsスターミー 『パワーファイターは止まらない』

お気に入り件数が33件も:(´◦ω◦`):
ありがとうございますo(_ _)o


 

 

 

 

 

〜ハナダジム〜

 

「ごめんくださ〜い...」

 

反応がないようだ。

マイは紹介状を持ってハナダジムへとやって来たのだが、いくらドアを叩いても反応がない。情報が正しければ、このジム内にいるはずなのだが...

戻るにしても、それは納得いかない。犯罪行為のように思うが、扉を開けてジム内へと入っていく。

ジムの中は誰もおらず、ずんずんと奥へと進んでいく。奥へ奥へと進むごとに、何やら音が聞こえてくる。その音は声となり破壊音となっていく。

 

「...たのもー。」

 

一番奥の部屋の扉を恐る恐る開けるマイ。

部屋の中には少女と少年、そしてポケモンが数匹いたのだった。少年はマイの顔を見るやいなや、その名を呼び叫んだのだ。

 

「マイ!!!」

 

「レッド。」

 

その少年は、マイが初めて出会ったトレーナー、レッドだった。

 

「何しに来たんだ?こんなとこに。」

 

「ジム戦。」

 

レッドの問いに、紹介状を取り出して答えるマイ。その紹介状はその場にいたもう1人の少女の目に入った。

その少女はマイからその紹介状を受け取り、中身を確認した後、出していたヒトデマンをボールに戻したのだった。

 

「はじめまして、私がここのジムリーダー、カスミよ。よろしく。」

 

「...マイです、よろしくお願いします。早速バトルしたいんですけど、いいですか?」

 

マイの目はギラギラと輝きやる気満々の表情だった。それに対してカスミは、勿論、と答える。

 

「レッドは審判をお願いね。」

 

「おう!任せとけ!」

 

━━━━━━━━トントン拍子で進むなぁ

 

しかし、そこがいい。

マイは腰のボールの一つを取り出してバトルの構えをとる。カスミも同じくボールを取り出す。

 

「どちらかのポケモンが一体でも戦闘不能になったら終了よ!」

 

「うし、じゃあ...バトル開始!」

 

その合図と同時に投げられたモンスターボールからポケモンが現れる。

カスミの出したポケモンはスターミー、マイの出したポケモンはラフだ。

 

「"ねむりごな"!」

 

まずはマイ側の攻撃。手始めに眠らせ、そこから総攻撃するという計略だ。ジム戦前に予め考えていたのだ。

しかし、流石はジムリーダーといったところ、その作戦は通じないようだ。

 

「スタちゃん"サイコウェーブ"!」

 

"サイコウェーブ"による念の波が、"ねむりごな"の軌道を捻じ曲げた。それだけではなく、ラフにも攻撃の余波が当たる。毒タイプを持っているラフには効果が抜群のため、余波とはいえかなりのダメージを負ってしまった。

 

「ラフ戻れ!次、ネギ!」

 

すかさずラフをボールに戻し、次はネギを出す。

 

━━━━━━━━この素早さでゴリ押す

 

そう考えた選出だった。

しかし、この考えは甘かった。

 

 

「上空で"つるぎのまい"、なるべく離れて!」

 

マイはいつも通りの指示をネギにする。ネギもそんな指示がとんでくるだろうと予想していたようで、ボールから出された瞬間に上へと飛び上がった。

それを聞いたカスミは次の指示をスターミーへと出す。

 

「"テレポート"!」

 

"テレポート"…ゲームではトレーナー戦以外での戦闘において戦闘離脱として使われたり、フィールドで使用したりする技である。

 

しかし、ここはゲームではない。

その名の通り、テレポートできるのである。

 

「なっ、逃げろ!」

 

「遅い!"みずでっぽう"!」

 

マイの指示を受ける直前に、ネギはスターミーが自身の背後へと瞬間移動したことに気付いていた。そして、攻撃を避けるためにすぐさま加速しようとしたが、無意味に終わった。

"みずでっぽう"が至近距離で直撃する。しかしここでネギはボールへと戻される。

 

「さ、次は誰で来るのかしら?」

 

「っ...」

 

ネギが大ダメージを負ってしまった。ボールの中を見る限り、少し休ませたからといってどうこうできる程体力は戻らなさそうだ。ラフは弱点を突かれる。アズマさんはこのコンクリート尽くめのフィールドではただの的にしかなり得ない。

ならば、と未だ新しいボールに手をかける。

 

力量(レベル)は充分、初陣。カニミソ!」

 

手持ちに入りたての新人、キングラーことカニミソを思い切り、ボールを投げてフィールドへと出す。

フィールドへと現れたカニミソはその巨大な左腕のハサミを持ち上げ振り下げる。そのハサミは地面へとめり込み、そのコンクリートにヒビを入れた。

 

「すっげぇ!」

 

「なんて破壊力なの...」

 

2人が感嘆している中、マイはカニミソへと指示を出す。

 

「カニミソ"かたくなる"からの"クラブハンマー"!」

 

マイの指示。しかし、カニミソは"あわ"攻撃を出す。カニミソはマイの指示を聞いていない。いや、聞いてはいるが、指示通りに動いていないのだ。

 

「捕まえたてでいうこと聞かないのかしら?」

 

「...最っ悪だ」

 

カスミの発言は図星だった。即ちチャンス、カスミはスターミーへ指示を出す。

 

「スタちゃん"10万ボルト"!」

 

「避けろカニミソ!」

 

しかし、カニミソはマイの指示を聞かない。それどころかマイを睨み付ける。そのため"10万ボルト"が直撃してしまった。

その攻撃が引き金となったのだろうか、カニミソはハサミを思い切り地面へと叩きつけ、ズカズカとスターミーへと歩み寄っていく。スターミーは"10万ボルト"を再度撃つ。

しかし、その攻撃に対してカニミソは"クラブハンマー"でそのコンクリート床を叩き上げ、飛び散った破片を"あわ"攻撃で誘導。"10万ボルト"を防ぐように宙に浮かせた。

"10万ボルト"はコンクリート片により防がれた。

 

「嘘...!?」

 

カスミがこれに動揺して指示が遅れた隙にカニミソはスターミーの元へと移動する。しかし、キングラーの弱点はハサミの重さ故の遅さ。スターミーの素早さにはついていけないようだった。

 

「防がれるのなら近距離で撃ち込むまで!スタちゃん、"テレポート"からの"10万ボルト"!」

 

「カニミソ後ろ!!」

 

指示は聞かないのは理解している。しかし、それでも指示を出さなければいけないという思いがマイにはあった。

それに応えるように、気まぐれだろうか、主として認めたのだろうか、カニミソは自身の背後へとその左腕の巨大なハサミを向ける。

マイの予想通り、スターミーはカニミソの背後へと"テレポート"してきた。そのスターミーへと向けられたハサミは、"はかいこうせん"を撃ち出す。撃ち込まれた"はかいこうせん"はスターミーをジム内の端まで吹き飛ばし、さらに壁へとめり込ませたのだった。

 

「なっ...」

 

なんて破壊力なのだろう。スターミーは既に目を回している。戦闘不能だ。

 

「スターミー戦闘不能、マイの勝ちだ!」

 

レッドはすごくテンションが上がっている。自分の事ではないのにも関わらず、だ。

それをみて呆れた顔をしているカスミだったが、すぐにマイの元へと駆け寄った。

 

「はい、ブルーバッジよ。おめでとう!」

 

「ありがと...」

 

バッジを受け取ったマイは、すぐさまカニミソの元へと駆け寄る。バッジを手に入れた影響が出ているか確認するためだ。

 

「カニミソ、お疲れ様。」

 

しかし、カニミソはそっぽをむいて無視する。

 

━━━━━━━━睨まれるよりかはマシになったか

 

なんて思いつつも、どこか寂しい様子のマイ。カニミソをボールに戻した後、ジムを後にしてポケモンセンターへと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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vsフシギダネ 『信念-理解』

今回は道徳的な感じの話です。
読み飛ばしてくれても、まあ多少はね?


 

 

 

 

 

 

 

〜24-25番道路〜

 

ハナダジムにてカスミとの激闘を終えたマイは、レッドと共にハナダシティを北上していた。否、無理矢理連れてこられていた。

なんでも、ジム戦を見ていたレッドは、マイのカニミソと自身のピカチュウのトレーナーとの関係に思い被さるところがあるらしい。

レッドはマイに、自身がピカチュウとの距離を縮められたきっかけ、ニビジムでのタケシとの勝負の話をしていた。

 

「だ〜か〜ら!仲良くなるためには一緒にピンチを乗り越えるんだって!」

 

「無理。こいつが感じるほどのピンチが来たら私に命の保証はない。だから無理。」

 

「無理無理無理ってそればっかだな〜。そのキングラーと仲良くなりたいんだろ?」

 

「キングラーじゃなくてカニミソ。別に仲良くはならなくていい。こいつは言うことを聞いてくれればそれでいいの。」

 

「...他のポケモンとは仲良いくせに」

 

レッドのその一言で、話が切られる2人。

話をまた繋ぐようにマイが口を開く。

 

「...戦ってみる?」

 

「へ?」

 

いきなり何を言い出すんだ、と言う様な目でレッドはマイを見つめる。マイは、目的も無く戦おうというわけではなさそうで、まっすぐとした意志を持った目をしていた。

 

「...何したいか分かんないけど、いいぜ、やってやる!」

 

レッドは闘争心を燃やし、自身のボールに手をかける。マイも同じく自身のボールに手をかけた。

 

「いくよ、カニミソ。」

 

「行けっ、フシギダネ!」

 

互いにポケモンを出す。出てきた2匹は睨み合い、どちらが先に動くかと見ている。先に動いた、指示を出したのはレッドだった。

 

「"はっぱカッター"!」

 

フシギダネの"はっぱカッター"の群れは一目散にカニミソへと飛んでいく。距離はあるため、回避は可能なのだがカニミソは特に避ける素振りはなかった。

 

「"かたくなる"」

 

「防御!?」

 

ここでマイはカニミソに指示を出す。しかし、指示はあくまで防御の体勢だった。

レッドはその指示に驚き、怯んだ。回避出来る距離で回避ではなく、防御なのだから。それは無駄だ。ダメージを無駄に負ってしまうだけなのだ。

"はっぱカッター"は直撃、しかしカニミソは怯まずにズカズカとフシギダネの方へと進んでいく。

 

「"やどりぎのたね"で動きを止めちゃえ!」

 

至近距離での"はかいこうせん"は脅威の威力だ。しかし、距離が空いていれば回避することも可能なはずだという考えのもと、レッドは"やどりぎのたね"を指示する。

その攻撃に対して、カニミソは"あわ"攻撃で対処した。

 

「なっ、指示なしかよ!?」

 

そう、マイの指示を受けずにカニミソは行動したのである。それに対して、マイは動揺もせず、ただカニミソの行動をじっと見つめるだけである。

 

「レッド、私はね━━━━━━━━」

 

マイは戦闘中にも関わらず、レッドと話を、一方的に始める。

 

「コイツにはコイツの方向性があると思ってるの。だから、私はコイツのやり方に合わせてやる。」

 

「じゃあなんで仲良くしないんだよ!」

 

「コイツが心を開くまでは、この距離でいく。そっちのが互いに楽だ。」

 

と、ここでマイはカニミソをボールへと戻す。カニミソが"はかいこうせん"の構えを取ったからだ。

 

「悪いね。今回はもうおやすみ。」

 

カニミソに声をかけ、腰のボールショルダーへと戻すマイ。レッドもフシギダネをボールに戻し、マイの元へ駆け寄る。

 

「世界は広いんだよ。分かった?」

 

「...よくわかんねェ。なんで避けさせなかったんだよ。」

 

「それがコイツの性格だから。自分の信念を曲げたくないんだよ。」

 

「よくわかんねぇな、」

 

「そ。分からないならそれはそれでいいと、思、う...」

 

急に言葉が詰まり始めたマイをみて、不思議に思うレッド。マイの見る視線の先を追うとコラッタがいた。しかし、通常のラッタとは違うようだった。

 

「ふぃ〜、まったく火起こすのも一苦労や。」

 

「しゃ、喋った!?」

 

「お、人、人や!こんなとこに来るなんて助かったわほんま。兄ちゃん姉ちゃんちょっと助けてくれや。」

 

喋るポケモンに戸惑うレッドだったが、マイは顎に手を当て怪訝そうに質問する。

 

「...何をすれば?」

 

「話が早くて助かるわ。ワイな、実はポケモン評論家なんやけど、訳あってポケモンと合体してしもーてな。家まで来て欲しいんやけど━━━━━━━━」

 

瞬間、そのコラッタは宙へと舞った。否、掴まれたのだ。オニドリルに。そしてそのまま空高く上空へと連れ去られていく。

 

「オニドリル!?え、えっとコラッタがオニドリルに...」

 

「人間でしょ。」

 

「え、オニドリルが?」

 

「コラッタが。」

 

「た、助けてくれぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 



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vsオニドリル 『コンボ』

 

 

 

 

〜24-25番道路〜

 

人語を喋るコラッタに出会ったレッドとマイ。助けてくれと頼まれた矢先、そのコラッタはオニドリルに連れ去られてしまったのだった。

コラッタを救出すべく、現在2人はオニドリルの後を追って走るのだった。

レッドはフシギダネ、ピカチュウ、ニョロゾを出しており、マイはネギとラフを出して追いかけている。

 

「まずはオニドリルの動きを止めなくちゃ!フシギダネ"はっぱカッター"!」

 

フシギダネの"はっぱカッター"が上空のオニドリル目掛けて飛んでいくが、簡単に避けられてしまった。

 

「アホか!そないな攻撃効かんちゅーねん!兄ちゃん覚えとき。飛行ポケモン相手なら、凍らすとか痺れさすとかして翼封じるんや。そないな草ポケモン役に立つかっちゅーの!」

 

「ネギ、ラフ連れて飛んで。」

 

コラッタがレッドに対して、トレーナーとしての授業をしている傍ら、マイはネギに指示を出す。

ネギはラフを背中に乗せて、上空のオニドリルを追いかけるように飛び上がる。ラフは落ちないように頭の草を器用に使って落ちないようにしている。

しかし、ネギのスピードではオニドリルには追いつけなかった。

 

「レッド、攻撃して。」

 

「わーってるよ!"れいとうビーム""でんじは"!」

 

"れいとうビーム"と"でんじは"がオニドリル目掛けて飛んでいくが、オニドリルはさらに上へと飛ぶことで回避、さらにコラッタに攻撃が命中してしまった。

 

「こっちに当ててどうすんやーっ!死にかけたやないかい!」

 

「ラフ"しびれごな"」

 

レッドがオニドリルの注意を引いているうちに、ネギがオニドリルの裏を取っていた。ラフの"しびれごな"がオニドリルの上から降り注ぎ、オニドリルは麻痺状態になる。

 

「おぉ!麻痺状態や!今がチャンスやチャンス!」

 

コラッタの叫び声と同時に、そんなこと言われなくとも分かっていると言わんばかりに2人は指示を出す。

 

「上から"みだれづき"で地面に落として」

 

「落ちてきたら"でんきショック"と"れいとうビーム"!」

 

ネギの"みだれづき"がオニドリルの背に1回、2回、3回命中した。そのままオニドリルは地面へと落ちていく。

ここでピカチュウとニョロゾが技を撃とうと構えるが、オニドリルも技を撃とうと構える。翼で首を隠すようにして、首をバネのように縮めるこの構えは━━━━━━━━

 

「なっ、アカン!"ドリルくちばし"やっ!!」

 

コラッタが叫ぶ。レッドは身構えるが、マイは逆。別の構えを取った。

 

「!マイ、まだ体力を減らしきれてねぇよ!捕まえらんねぇ!」

 

マイはモンスターボールを片手に投球モーションに入っていた。しかし、レッドの言う通り、あのオニドリルには未だダメージをあまり与えられていない。今ボールを投げても捕まえられないのだ。

しかし、マイは上げた足を地に付け踏ん張り、思い切りボールを投げる。

ボールはオニドリルへ真っ直ぐ飛んでいく。しかし、オニドリルはソレに気づかない。翼で顔が隠れているため、前しか見えてないためだ。ボールはオニドリルに当たり、オニドリルを包む。

1、2、と揺れたところでボールが破壊された。が、マイの狙いはソレではなかった。

 

「ラフ"ようかいえき"」

 

オニドリルの背後からラフが落ちてきた。ネギの背中から飛び降りたのだろう。"ようかいえき"がオニドリルの背中に当たりダメージを与える。怯んだところでネギがコラッタを奪い取った。

この隙にレッドはポケモン達に攻撃を指示。"れいとうビーム"と"でんきショック"がオニドリルにヒット。オニドリルは力尽きるように倒れ込んだ。

マイは再度ボールを投げる。1、2、3と揺れてオニドリルを捕獲する。

 

「捕獲、完了。」

 

 

 

 

 

 

 

〜岬の小屋〜

 

岬の小屋へとコラッタに連れてこられた2人は、コラッタに貰った指示通りに動いた。と言っても、コラッタがカプセルのような装置に入った後に、傍のレバーを下げるだけなのだが。

レバーを下げると装置から煙と共に人間が出てきた。

マイはこの人物を知っている。というか、コラッタと出会った時から誰かは予想ができていた。

 

「いやぁ〜助かった助かった。ワイはマサキ。改めてよろしくな。」

 

「俺はレッド。最強のトレーナー目指してんだ!」

 

「マイ。よろしく。」

 

そうかそうか、とマサキは頷く。そして助けて貰えた礼に、何でも相談にのると約束した。

レッドは大量に持っているモンスターボールについて相談した。これに対してマサキは自信満々にボールを受け取った。マサキの持っていた装置は、ポケモン転送マシンと言ってポケモンやアイテムを離れた場所に転送できる物らしい。

早速レッドはボールをマサキに預けた。

 

「うし、マイはなんか相談ないんか?」

 

「...特にない、かな?」

 

「そうかぁ...あ、そうだ。もし良かったらアレ貰ってくれ!」

 

「...アレ? 」

 

アレを渡したいと言って、マサキは小屋の奥へと潜り込んでいく。小屋の奥はガラクタで埋め尽くされているが、あったという声と共にマサキが戻ってきた。

 

「コレやコレ。新型の折りたたみ自転車!どーせ使わへんからあげるわ。場所はあんま取らへんし、旅が楽になるで。」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

マイは礼を言ってレッドと共に小屋を後にした。レッドは徒歩でハナダシティまで戻って、海を見にクチバシティへと向かうらしい。

 

「マイはどうするんだ?」

 

「タマムシシティまで行って買い物...かな?」

 

マイは腰のモンスターボールから、一番新しいボールを持って中身を出す。

 

「...えと、今日から君はトリね。よろしくトリ。」

 

トリ、という安直な名前を付けられたオニドリルは豆鉄砲でも喰らっかのように口を、否、嘴を開けている。

 

「それじゃ、また。」

 

「おう、またな!」

 

レッドに別れを告げたマイはトリの背に乗り、方角を指示。そちらの方に飛んでいく。

 

目的地は、タマムシシティ。

 

 

 

 

 

 

 



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vsベトベトン 『顔合わせだよ、全員集合』

お気に入りが47件も…ありがとうございます(´・ω・`)(´-ω-`)) ペ


 

 

 

 

〜タマムシシティ〜

 

トリに乗ってきたマイはタマムシシティへと降り立った。人がわんさか溢れている光景に、とり は目を見開いていた。

タマムシシティは、隣のヤマブキシティと並んでカントー地方の2大都市と言われるほど栄えている。そんなタマムシシティの有名所といえばタマムシデパート。

 

「さ、行こうか」

 

トリをボールに戻し、足を弾ませデパートへと入っていくマイ。今の彼女は、これまでの旅で見せたクール染みた彼女ではなく、歳頃の少女が見せる"女の子らしさ"を見せていた。はたから見たらショッピングをしに来たように見えるだろう。実際、彼女はショッピングをしに来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「お、あった。あった。」

 

探し物を棚から取り出し、数種類を幾つか手に取りレジへと持っていく。店員はその数と金額、そしてソレを持ってきた人間に目を丸くしたが、丁寧に受け答えをして彼女を見送った。

 

その階を後にしたマイは更に上の階へと行き、最後の探し物を買った。その探し物は未だ使う予定は無いのだが、これからのために買っておきたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と。」

 

町外れにある開けた場所へとやって来たマイは腰に巻いてあるベルトのボールを全て取り出し宙へと投げる。投げられたボールからはマイが今までに捕まえた5匹のポケモンが出てきた。

 

初めて出会ったポケモン、カモネギことネギ。

初めて一人で戦闘し、捕まえたポケモン、ナゾノクサことラフ。

懸賞首として攻撃されていた、通常より大きいアズマオウことアズマさん。

同じく懸賞首の問題児、キングラーことカニミソ。

マサキを襲ったために、レッドと共に捕獲したオニドリルことトリ。

 

「ここら辺で一応の顔合わせ、しとこうと思って。自由に遊んでいいよ。」

 

という、マイの計らいだった。

ポケモン同士での会話などあまりしていない、というよりそんな時間すらなくせっせと旅をしてきたため、ここで休憩をしたかった。というのもあった。

マイは地面に腰を下ろし、ポケモン達の様子を観察することにした。

 

まだ幼さを残すラフはトリの背中に飛び乗り、自身の頭でトリの顔を上へ上へと向ける。「飛べ」ということだろうか、トリは言われるがままに空を飛ぶ。それを追いかけるようにネギも空へと飛び立ち、2匹は空で追いかけっこを開始し、遠くへと飛んで行った。

 

「楽しそうだな」

 

ジュースを片手に呑気に呟くマイは、残り2匹に目をやる。アズマさんは地面に慣れていないようで、マイの元へと跳んで寄ったきた。ボールに戻りたいようだ。

 

「その前に、ちょっと待って。」

 

そう言いながらマイは先刻買ったばかりの物に手を伸ばした。取り出したのはCD状のアイテム、わざマシンだ。

 

「"ふぶき"と"つのドリル"...」

 

その2つのわざマシンを順にアズマさんの額に当てるマイ。数秒すると、わざマシンにヒビが入った。

 

「これで技を覚えた...と。」

 

図鑑を取り出して技を確認するマイ。アズマさんの技は

ふぶき

つのドリル

ちょうおんぱ

みずでっぽう

の4つとなった。

 

「よし、じゃあボールに戻って━━━━━━」

 

アズマさんのボールを腰から取り出したところでもう一匹のポケモンがその巨大なハサミを此方へ向け、"はかいこうせん"を撃とうと力を溜める。

 

「ちょ、待って!?」

 

アズマさんを盾に、すかさず攻撃を躱すマイ。しかし、彼の攻撃の狙いはマイでもアズマさんでも無かった。彼の狙いは━━━━━━━━

 

「ベトベトン...!」

 

いつの間にかマイの後方にいたベトベトンだった。しかし、ベトベトンに攻撃が効いている様子は見られない。ベトベトンは、攻撃されたことに気づいていないのか、ただただ真っ直ぐ進行し続ける。

カニミソはソレが気に入らないのか、続けざまに"あわ"攻撃を仕掛ける。しかしそれも効かない。

 

「っ、どうするべき...?」

 

パワーファイターであるカニミソの攻撃が効かない相手...そして相手はこちらを敵として見定めていない様子だ。早くこの場から立ち去るのが得策だろう。しかし、カニミソの戦闘意欲は高まるばかり、このまま逃げてはカニミソのヘイトを高めるだけなのだ。

 

━━━━━━━━それは、嫌だ。

 

「折角の機会、ここで共に戦って距離を縮める。」

 

しかし、戦うにしてもカニミソの中距離攻撃は効いていない。距離を詰めるにしても開きすぎている。寧ろこちらから距離を詰めた方が早い。

━━━━━━━━なら

 

「アズマさん、"つのドリル"!」

 

近距離攻撃を指示すれば流れが変わるかもしれない。しかも、一撃必殺なら当たれば確実に仕留められる。命中率の低い一撃必殺だが、動きの遅いあのベトベトンなら当たるはずだ、という考えから出た指示だった。

アズマさんの攻撃は反れることなく真っ直ぐ━━━━━━━━進まなかった。

 

「一撃必殺の命中率ってそーゆーこと...」

 

強大な威力故に力を制御しきれない。だから攻撃のルートが反れるのだ。これをマイは実感した。攻撃は届かなかった、だが近くまで寄ることは出来た。

 

「もっかい"つのドリル"!」

 

その距離僅か1m足らず。

 

━━━━━━━━この距離じゃ外しようがない

 

アズマさんはその自慢のツノを掲げ、ベトベトン目掛けて進んでいく。その攻撃は

 

「命中っ」

 

命中した。確実にベトベトンの体にツノは突き刺さっているのだ。しかし、ベトベトンは倒れていない。

ここで、マイは一撃必殺技の効果を思い出した。

一つは当たれば確実に倒せる。

そしてもう一つ、相手のレベルが自分のレベルより高ければ効かない。

 

━━━━━━━━やってしまった

 

自身の知識の欠落に頭を抱えるマイ。しかし、そんな暇は与えられないようで、マイに新たな試練が与えられるのだった。

ベトベトンがこちらを見たのだ。

 

「ッ━━━━━━━━」

 

━━━━━━━━マズイ、これ程までの力量差。まともにやり合って勝てる相手ではない。

 

逃げるようポケモン達に指示を出そうとした所で、マイはカニミソの行動に、ベトベトンとの距離に目を見開く。

マイがアズマさんに指示を出している最中、カニミソはカニミソで個人的な作戦を実行しているのだった。

"かたくなる"で異常に硬化したそのハサミを至近距離まで近づき、"クラブハンマー"を喰らわせんとしていた。

そしてその"クラブハンマー"はベトベトンに命中、しかしその攻撃でさえも効かない様だった。

 

「マジか...」

 

ベトベトンはカニミソの存在にも気づいたようで、カニミソの方に目をやる。そして口を開き力を溜める。

 

「"はかいこうせん"!?戻━━━━━━」

 

カニミソをボールに戻す間もなくベトベトンの"はかいこうせん"がカニミソに命中。そのまま10m程吹っ飛ばされ、ダウンしてしまった。

 

「カニミソッッ!!?」

 

━━━━━━━━今の手持ちで一番強いはずのポケモンがいとも容易く...

 

逃げるしかない、逃げるしかない、逃げろ、逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ......いや、待て。

マイの脳内に埋め尽くされた恐怖の逃走、しかしその中にある考えが浮かんだ。

 

「コイツを捕まえたら...」

 

意図せずまだ空のモンスターボールに手を伸ばすマイ。モンスターボールに手が触れ、意識を戻す彼女だったが、その行動(投球モーション)をやめることは無く、モンスターボールを思い切り投げる。

硬直状態のベトベトンはボールを弾けず、そのまま抗うことも出来ずにボールに収まる。

1、2、3と揺れ、ボールの開閉スイッチがカチッと音を出して揺れを抑える。

 

「捕獲、完了...え?」

 

━━━━━━━━全く体力を減らさずに捕まってしまうとは...

 

予想外の出来事に、暫く動けなかったマイだが、アズマさんに諌められ気を戻す。

倒れたカニミソ、健闘したアズマさんをボールに戻し、帰ってきた3匹と共にポケモンセンターへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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vsサンダー 『主の風格』

書き収めです。ヒロアカは間に合わなかった…( ˇωˇ )
良いお年を(2018/12/31 23:31)
あけましておめでとうございます(未来予知)



 

 

 

 

 

 

ポケモンセンターをあとにした後、マイはジム戦をすべくタマムシジムへと向かうのだった。しかし、ジムリーダーは出かけているようで、帰ってくるのはあと一週間後らしかった。

仕方なくマイはジムを去り、とりあえず広場を目指す。

広場についたあとは、特にすることも無くベンチに座って地図を広げてみた。

 

「...行きたい場所がない。」

 

旅をしているのに次の目的地が決まっていないのは、彼女にとっては闇の中に一人ポツンと立たされた様な気分になることだった。

 

━━━━━━━━ゲームなら次の目的地が明確にされていて楽なんだけど

 

なんてことを考えながら、手摺に肘を置き、更に顎を乗せる。

そう言えば、とマイは呟き、急いでバックの中を漁り取り出した。

 

「ポケモン図鑑全く埋めてねぇ...」

 

ポケモン図鑑を開き、捕まえたポケモンを確認した。と言っても、埋められているのはたったの六箇所だけだが。

 

「さて、と。図鑑埋めるかな...」

 

することは他に思いつかず、だがだからといって無闇矢鱈にポケモンを捕まえるのもスグ飽きてしまいそうだ。少し考えたマイは、突拍子もない、否、この世界の住人からすれば突拍子も無いことを思いついた。

 

「伝説のポケモンでも捕まえてみるかな」

 

軽い。余りにもノリが軽すぎる。

しかし本人に自覚は無く、なんの躊躇いもなくトリをボールから出して指示を出す。

飛ばす方向は北東方面、無人発電所だ。即ち、

 

「待ってろ...サンダー!」

 

この世界での初めての伝説ポケモンとの出会いに胸を高鳴らせ、マイは無人発電所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜無人発電所〜

 

無人発電所付近へと飛んできたマイはトリに指示して地面へと静かに降り立った。辺りに人の気配はなく、ポケモンはコイルやビリリダマなどのでんきタイプのポケモンが多く見られた。

これらのポケモンは、あたかも主の元へ異物を近づけさせんとするかのようにマイの前に立ち塞がった。

 

「肩慣らしには丁度いい...かも、ね。でんきに強いやつを━━━━━━━━」

 

腰のボールを取ろうとすると、マイはある事に気づいた。完全に忘れていた、とても重要なことに。

 

━━━━━━━━でんきに強いポケモンが、少ない

 

「...まあいいや、当たらなきゃいいし。」

 

考えるのをやめたマイは、再びトリに飛び乗りラフを出した。ラフは再び空の旅を出来て満喫していたが、スグに仕事に取り掛かることになる。

下にいるでんきポケモン達は、マイ達の出方を窺っており、先に攻撃しようという気はなさそうだった。

 

「ラフ"ねむりごな"」

 

先手を打たなかった彼らの戦略的敗北だ。上空からの攻撃に、彼らは抵抗する間もなく眠りにつき異物の侵入を許してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

建物内部へと侵入したマイは、ラフとネギの2匹に挟まれるように並んで移動していた。2匹とも、建物内の不気味な静けさと、その中に度々響き渡る静電気のような音に恐怖していた。ネギはなんとか恐怖を隠そうとしているのだが、やはり感じている。それはマイの目にしっかりと映っていた。

 

━━━━━━━━私がしっかりしなければ

 

そう感じたマイの腕は微かに震えている。やはり現実に伝説ポケモンと戦闘をするというのはこういうものなのか、とマイは感じた。

と、ここで彼女らは足を止めた。いや、これは彼女らの意思ではなく、外的なもの、威圧だ。

 

「サンダー...」

 

目の前に羽を羽ばたかせ舞い降りたのは、伝説の鳥ポケモンの一匹、でんげきポケモンのサンダーだ。

このサンダー、身体にはいくつもの傷を負っており、今にも倒れそうな状態だった。

これはチャンスだ、とマイは空のボールを取り出し、サンダーに向けて投げつける。しかし、そのボールは"10万ボルト"によって防がれてしまった。この攻撃はサンダーのものでは無い。別のポケモンのものだ。

 

「それは俺達の獲物だ。漁夫の利は卑怯じゃぁねぇのか?お嬢ちゃん?」

 

そう言って現れたのは、筋肉質な金髪の大男。そしてその取り巻きらしき、Rと赤で書かれた黒一色に染まっている男達。マイはこの大男を知っている。以前、見たことがあるのだ。

 

「クチバジムリーダー...マチス!なんでロケット団と...」

 

マイの言った通り、大男はクチバジムジムリーダーのマチスだ。そして彼の周囲にいるのはロケット団。悪事を働く悪の組織、ロケット団だった。

 

「ワハハハハ!見られちまったからには言うしかねぇな。そう、俺はロケット団なのさ!しかも幹部だぜ!」

 

マチスがそう言った後、彼の手持ちと思われるライチュウがマイに向かって"メガトンキック"を仕掛けてきた。咄嗟にマイは前転して避けられたが、問題は止まないようだ。

サンダーがこの隙に逃げ出そうと羽を上へ上げ、飛び立ったのだ。

 

「チッ、お前らはこの嬢ちゃんの相手しろ!ライチュウお前もだ!俺はサンダーの方に行く!」

 

「「「了解!」」」

 

軍隊のような雰囲気を感じさせた彼は、レアコイルに掴まり宙を飛んで追いかける。マイはそれを追いかけようとトリを出したが、そうはさせないとロケット団達がポケモンを繰り出す。出されたポケモンは、コイル、ビリリダマ、マルマインの三体。さらにマイの背後にはライチュウが。

マイが今出しているポケモンは、ネギ、ラフ、トリ、の三体だ。ラフは力量(レベル)があまり高くはなく、残りの2匹はひこうタイプ。つまりでんきが弱点なのだ。

 

━━━━━━━━まずい

 

このままやりあったとしても、部下のポケモンの力量が分からないが、あのライチュウに対して勝利をすることが出来るか怪しいとマイは直感的に感じ取った。

 

━━━━━━━━捕まえたばかりのアイツなら倒せるかもしれない、けど

 

少しでも動けばあのライチュウにまた攻撃されかねない。まずはあのライチュウを倒さねば、と考えたマイはポケモン達に指示を出す。

 

「ラフ"ねむりごな"をライチュウに!ネギとトリはそっち三体を相手!」

 

マイはライチュウに専念するため、ひこうポケモン2体への指示を放棄することにした。そして腰のボールに手を伸ばすが、そうはさせないとライチュウが"でんこうせっか"をマイ目掛けて撃つ。ラフはそれを阻止しようと"ねむりごな"を急いで放つが電撃を纏うことによってそれをはじき飛ばした。

ライチュウはそのまま進んでいくが、その攻撃を止めようとラフは自らを盾にすることによって阻止した。しかし、盾にするにしてはラフの体重は軽すぎた。ラフはそのまま吹っ飛び、マイにぶつかる。マイはその電光石火の速さについていけず、そのままラフと共に吹っ飛んでしまった。

 

「痛っ〜!」

 

しかし、息を吐かせる暇もなくさらなる追撃が襲いかかる。ライチュウは"10万ボルト"をマイとラフの2匹に目掛けて放った。ラフは咄嗟に背後の器材を倒し、その攻撃を防いだ。

マイはその隙にベトベトンのボールを掴み、戦場へと投げ出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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vsライチュウ 『無』

あけましておめでとうございます
今年も『ポケットモンスターMINOR』をよろしくお願いします

お気に入り58件も…!ありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ


 

 

 

 

 

「先生!お願いします!」

 

先生、と呼ばれたベトベトンは登場と共にのっそりと地面に着地し、目前の敵を見定める。マイは図鑑を取り出し、トレーナー側としても戦闘準備を完了させる。

先に動いたのはライチュウ。"メガトンパンチ"をアッパーカットの様にしてベトベトン目掛けて放った。しかし、その攻撃は効いてはいない。顔面目掛けて放ったそのパンチは、流動性を持った先生の体に去なされるような形で決まらなかった。

 

「"だいもんじ"!」

 

次はこっちの番だ、とでも言わんばかりの勢いで指示を飛ばすマイ。先生は彼女の指示通りに"だいもんじ"をライチュウ目掛けて放つ。攻撃が効かずに少し棒立ちしていたライチュウは、回避に遅れてしまい命中。大ダメージを負ってしまった。

ここで追い打ちをかけるべく、さらに攻撃を指示しようとした所で、マイの視界の隅にあるものが映った。咄嗟にその名を叫ぼうとしたが、無駄。気づけば建物の壁へと吹き飛ばされていた。

 

「っ、トリ...」

 

マイの視界に映ったのはトリだった。電撃を浴びているのか、体を痙攣させながら白目を剥いている。トリをボールに戻してふとネギの方に目をやると、ネギは防戦一方で回避に専念しているようだった。

 

「っ、カニミソ頼ん━━━━━━━━」

 

カニミソのボールを投げようと、腰のボールを取り出した瞬間、マイの言葉が、吐く息が、止まってしまった。マイの背後にはいつの間にかロケット団員が回り込んでいた。

 

━━━━━━━━最悪だ

 

マイは今現在、このロケット団員に首を掴まれている。そして、掴んでいたボールは手から引き剥がされ、両手を片手で拘束されているような状態だ。

 

「こうしちまえばよぉ、ポケモントレーナーってのは無力だよなァ!」

 

汚い笑いをするこのロケット団員達(下衆共)は、卑怯という言葉を知らないようだ。いや、知っていたとしても、その言葉(称号)を嬉嬉として受け入れるだろう。

マイは今現在出ているポケモン達の様子を窺う。ネギとラフはマイを心配して動けずにいる。ネギは隙を窺っているようだが、ラフは完全に恐怖していて、戦闘どころではないようだ。

続いて先生に目をやると、ライチュウに一方的に攻撃されていた。物理攻撃の"メガトンパンチ"は効いていないようだが、特殊攻撃の"10万ボルト"やその上位互換とも呼べる威力の"かみなり"は流石に堪えているようだった。しかし、ライチュウのスピードに翻弄され、反撃しようにもできない状態。マイの次の指示を待っているようだった。

 

━━━━━━━━せめて他のポケモンさえ使えれば

 

なんてことを考えているうちに、マイの首の拘束がさらに強くなる。踠き苦しむ姿を見て、彼等は大喜びのようだった。

指示をしようにも罵倒しようにも、空気が、酸素が肺に送られず、息が出来ない。

 

「で、どうすんだこっから?俺ら『この嬢ちゃんの相手しろ』としか言われてねぇけど」

 

「決まってんだろ?んなもん、嬢ちゃんの()()するしかねぇよなぁ!」

 

「「「ハッハッハッハッハッ!!!」」」

 

彼等が笑ったこの瞬間、マイを掴むこの手が緩んだ。この数秒間、マイの肺に、体内に酸素が供給される。すかさずマイは掴んでいた男の急所を蹴りあげる。

たった10歳の少女の体とは言え、急所を突かれては悶絶するしかない。マイはカニミソのボールを拾い上げ、ラフの元へと駆け寄る。

その際、彼等のポケモン達による妨害が行われようとしたが、()()溜めていた"かまいたち"が炸裂。彼等はひれ伏すように力尽きた。

 

「なっ、おおおい、こっからどうするつもりだいお嬢ちゃん。」

 

倒れていないロケット団の1人が怯えながら、マイを落ち着かせようと話をしようとする。しかし、マイは言葉を返すつもりはないようでカニミソのボールを投げる。

 

「暴れろ」

 

この世界に来て、もっとも低いトーンで彼女は言葉を発した。そしてこの言葉の破壊力は絶大なもので、彼らを震え上がらすには充分だった。

気の所為か、彼女の口角は上がってるように見える。

 

「「ひぃぃぃいい!!!」」

 

暴れろ、という指示にカニミソは嬉嬉として応える。人間相手だろうと容赦なく襲いかかった。

こちらは大丈夫だろう、とマイは先生の方に目をやる。図鑑で体力を確認してみると、半分を切ったところだった。

 

━━━━━━━━耐久力...

 

「先生、"はかいこうせん"をあっちに!」

 

あっち、とマイが指差した方向は先刻マチスとサンダーが飛び立って行った方向。その場所からは時折電撃が迸っており、今も尚戦闘をしていると思われる。

そんな場所へ高威力の"はかいこうせん"を放ったら、どうなるだろうか。否、こんな場所で遠くに向けて"はかいこうせん"を放ったらどうなるだろうか。

無論、機械に砲撃が当たり、爆発する。

つまり━━━━━━━━

 

「「「うわあぁぁぁぁああ!!!」」」

 

発電所内は爆発に見舞われる。幸い、発電所が壊れる程の威力では無いが、発電所内は爆風によって様々な器材が吹き飛ばされた。勿論、人間もだ。

マイは"はかいこうせん"の指示を出した後、ネギとラフ、カニミソをボールに戻して先生の体に埋まるようにして爆風を回避した。先生の体はヘドロなので、物を収納することが可能。図鑑によると、体重は30kgと意外と軽いが、寧ろソレは現在のマイにとっては好都合。爆風によって吹き飛ばされ、建物の外へと脱出が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「っと、助かった...」

 

建物から脱出し、ベトベトンから出たマイは無人発電所を後にした。火災が起きていたが、来る途中に小さな街はあった。そこにいる水ポケモンのトレーナーがなんとか処理するだろう。いればの話だが。

 

「サンダーの捕獲...失敗、と。さて、次はどこへ行こうか。」

 

トリを出して空の旅をしようとしたが、そう言えば倒れていたと思い出してボールにかけた手を離した。この機会に、もらったあの自転車にでも乗ってみようか、とマイは折りたたみ式の自転車をリュックから取り出し跨る。

 

━━━━━━━━次はどこへ行こうか...

 

特に宛もなく、捕まえたいポケモンも思い浮かばず、ただ気の向くままにペダルを踏み締めた。

 

 

 

 

 

 

 



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vsバリヤード 『侵入』

今回バトルないです…申し訳ねぇ(*_ _)
時系列的には前回から少し(?)時間が経過しています。その間、マイちゃんは図鑑埋めに精を出していました('ω')

1/3 誤字報告ありがとうございます(*_ _)


 

 

 

 

 

 

〜ヤマブキシティ西側通用門手前〜

 

「最っ悪だ...」

 

自転車に跨り、片手で頭を搔いているのはマイ。彼女は今、ヤマブキシティを通ろうとしている。しかし、ゲートの管理人に通り抜け禁止だと言われ通行止めを喰らったところだった。

別の通用門から行こうかと、舗装されてない道に向けて自転車を漕ぎ出そうとしたところで声をかけられた。

 

「どの門も空いてないわよー」

 

━━━━━━━━空いてない?

 

声の主はどうやら空中にいるようだった。上を見上げると、黒のワンピースに身を包んだマイと同じくらいの少女がプリンを片手に宙に佇んでいた。

マイは彼女の傍へと向かうべく、自転車を仕舞ってトリの背に乗るのだった。

 

「...君、名前は?」

 

「アタシ?アタシはブルーよ。あなたは?」

 

「マイ。さっきの話なんだけど」

 

マイが先刻の疑問を問いかけようとすると、彼女達の頭上を何かが通り過ぎた。そちらに目をやると、通り過ぎた何かはリザードンだった。そしてその上に乗っている少年、マイは彼を知っている。初代ポケモンで主人公のライバルとして登場した、オーキド博士の孫。

 

━━━━━━━━グリーン!

 

彼はリザードンに"かえんほうしゃ"を空中に向けて放つ様に指示しているようだった。しかし、その攻撃は何かしらの壁にぶつかっているかのように軌道は途中で曲がってしまった。

 

エスパー系ポケモン(バリヤード)が発生させた街全体を覆うバリアが張ってあるのよ、どう?私と手を組まない?」

 

━━━━━━━━手を組む、か

 

彼女の提案に乗ってみるか否か、乗らない方が危険に巻き込まれる可能性が低い。このまま上手く話を終わらせてさっさとずらかるのがいいか。と、マイは彼女の提案を断ろうとした時、頭上から彼女の名を呼ぶ人間が現れた。

 

「マイ!」

 

「あ...レッド」

 

また会ったな、と笑顔で返すレッドを見てマイも自然と笑顔になる。知り合いだったんだ、という呟きがブルーの口から漏れるのが耳に入ったが、気にせずに話を続けようとする。だがしかし、レッドはじゃな、と一言告げて下へと降りるのだった。下にはグリーンも降りており、中に入る策を講じているようだった。

 

「アタシたちの出番はなさそうね、ラッキー♪」

 

ブルーの発言の中にあった「私」が複数形になっていたことに首を傾げるマイだったが、その謎はスグに解かれることになる。

マイの怪訝そうな表情に気づいたブルーは、素知らぬ顔で、あなたも来るんでしょ?と言った。

そんなこと言っていないと反論しようとしたが、ブルーの助言によってバリアを貼っていたポケモン(バリヤード)を下の二人が撃破したことによってバリアが解除された。下の二人はバリア解除と共に走るようにして街の中へと駆けて行った。

 

「さ、アタシたちも行きましょ?」

 

「私行く意味ないんだけど...危なそうだし。第一、何がいるかわかんないし」

 

「え?ロケット団の本拠地よ。あなた、友達がそんな場所に行こうとしてるのについて行ってあげないの?」

 

友達、という単語にマイはピクリと反応する。たしかに、もしここでレッドをただ見送って、名誉の死なんてことがあったら心にイヤな物が残る。ソレは嫌だ、という考えがマイの脳裏に過ぎった。

 

━━━━━━━━戦力が多い方が、幹部と会う確率が減るし...なんとかして彼女を連れてかないと

 

ブルーはブルーで、自分の目的の達成の成功率を上げるため、なんとかマイを連れて行こうとしていた。

ここでマイはブルーの思惑通りに動くことになった。というのも、ネギのボールが揺れ、戦いたいという表情でマイを見つめたのだ。以前、無人発電所の件でネギはロケット団に対して色々思うところがあったようだ。マイとしては不本意だが、相棒が言うのであれば仕方ない。

 

「ネギ、と他のみんな。行くよ。」

 

マイはブルーと共に地面に降りて、ヤマブキシティの中へと隠密行動しながら本拠地へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜ロケット団本拠地『シルフカンパニー』〜

 

下っ端とは遭遇せずに本拠地へとやって来た二人は、裏口から入ることにした。裏口に見張りはいたが、ラフの"ねむりごな"で眠らせ、予めブルーが持ってきていた麻縄で猿轡した。

中へ入ると階段があり、上へ行く道と下へ行く道に分かれていた。

 

「アタシは上に行くけど、マイはどうするの?ついてくる?」

 

「二手に分かれた方がいいかな、私は下に行く。」

 

マイの言葉にどこか残念そうにそう、と答えたブルーは、急ぐようにして上への階段をかけ登って行く。

そんなブルーを見送ったマイは、自分が進む道を見つめる。敵の本拠地ということもあって、彼女は小柄なネギとラフをボールから出して下への階段を降りていくことにした。

今回のマイはどっしりとした雰囲気で、堂々としている。無人発電所の一件で、トレーナーの心持ちがポケモン達にも繋がると分かったマイは、その反省を生かして行動しているようだ。

 

「何が起こっても動じないように...」

 

頭で思っていることが、つい口に出てしまった。しかし、彼等はそんなこと気にせず、何が起こってもいいように戦闘態勢を取っている。

と、気づけば彼女達は大きな扉の前に立っていた。

 

「地下...3階。ここが最下階か」

 

そう呟き、マイはその重い扉をそのポケモン達と共に開ける。その先に待つ人物は━━━━━━━━

 

「フフフ...まさか私のプライベートルーム(私室)に侵入者が来るとはな。」

 

「お前は━━━━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 



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vsパルシェン 『邂逅。そして』

お気に入り62件ありがとうございます(*_ _)


 

 

 

 

 

「お前は━━━━━━━━」

 

最下階に降り立ったマイ。最下階の部屋の扉を開けると、そこには大きなバトルフィールドと彼女が以前見たことある人物が待ち構えるように立っていた。

黒いスーツに身を包む、この男の名は━━━━━━━━

 

「サカキ...」

 

自分の名前を知られていることに、この男、サカキは少し驚いたが、その驚きは彼のカリスマ性をただただ引き立てるだけになってしまった。

しかし、マイはソレに怖気ずに部屋の中へと進んでいく。勿論、ラフとネギも同じだ。

 

「さて、と。キミのことは耳に入っている。サンダー捕獲作戦の時に入った邪魔者...あの後一度はサンダーを逃してしまったが、つい先日捕まえたところだ。」

 

「...聞いてないんだけど?」

 

マイの言葉と共に、ネギは"みだれづき"をサカキ目掛けて仕掛ける。しかし、ネギの攻撃はあっさりと受け止められた。片手で受け止められたネギは空中へと放り投げられ、"れいとうビーム"を喰らってしまい呆気なく倒れてしまった。

 

「っ、戻れネギ!」

 

「あっさりやられてしまったな。たしかに素早い攻撃だが威力が足りなかったかな?カモネギの耐久ではこの"れいとうビーム"は受けきれないようだったな。」

 

余裕のあるサカキは不敵な笑みを浮かべ、今フィールドに出ている彼のポケモン、サイドンをボールへと戻す。

部屋に入った時にはサカキ以外誰もいなかったはずだが、あの会話から攻撃への一瞬でポケモンを出したということだろうか。

 

「さて、君は知っているようだが改めて自己紹介をしよう。君が知っているのはトキワジムジムリーダーとしての私だろうが、今の私はロケット団首領(ボス)、サカキだ。」

 

彼の言葉を耳に入れつつ、ネギをボールに戻したマイは、相手をしっかりと見定めながら次のポケモンを選ぶのだった。落ち着く為に深呼吸をしながら。

 

━━━━━━━━地面使いのジムリーダー...弱点を突けるタイプならいるけど

 

「ラフ、いける?」

 

この離れた距離、ボールに収めてある2匹の水ポケモンでは素早さで劣ってしまう可能性がある。それよりは、今出ているラフの方が素早さという点で見れば2匹より勝っているので、勝ち筋はあると考えた。

しかし、ラフからは返事が来ない。横を見ると、いつの間にかラフは倒れていた。否、氷漬けにされていた。

いつの間に、と呟く前に、マイは背後の殺気に背中を撫でられる感覚に襲われ、咄嗟にその場から地面に飛び込むようにして離れた。

 

「っ、パルシェン...」

 

マイの背後にいたのはパルシェンだった。彼女の目の隅に確認できるサカキの表情から察するに、このパルシェンは彼のものだろう。

マイは咄嗟にこのパルシェンに弱点を突ける技を覚えてるポケモンを出した。というより、本能的に一番力量(レベル)のあるポケモンを繰り出したのだった。

 

「先生"かみなり"!」

 

先生がボールから放たれると同時に、"かみなり"を撃った。空中から真下に向けて放たれたその攻撃に、出処が分からないパルシェンは焦っていた。

 

「篭れ」

 

しかし、やはり最強のジムリーダーが主であるということはアドバンテージであったようだ。彼の咄嗟の判断によってパルシェンは大ダメージを受けずにすんだのだった。しかし、効果は抜群。ダメージは受けている。マイは攻撃の手を緩めずに更に指示を飛ばす。

 

「休ませずに"かみなり"!」

 

「"れいとうビーム"で相殺しろ!」

 

空中で2つの技が衝突する。高威力の2つの技はお互いのエネルギーを打ち消し合い、互いに消滅した。

マイはそんなことには目もくれず、パルシェンを倒すために連続で"かみなり"を指示する。サカキも先刻と同じく"れいとうビーム"で相殺するよう指示をする。この攻撃もまた先刻と同じように相殺されてしまった。

この流れを壊すべく、マイは指示を変更、否、増援を出すことにした。

 

「トリ、"ドリルくちばし"をパルシェンに」

 

"かみなり"を指示した後に、呟くようにしてボールの中のトリに指示を出す。''かみなり"と"れいとうビーム"がぶつかり合うその直前、トリをフィールドへと送り込んだ。予めその構えを取っていたトリは、カゴの外へと放たれた瞬間真っ直ぐにパルシェン目掛けて飛んで行く。

"ドリルくちばし"はパルシェンに見事命中、したのだが、あまり効いていないようだった。

 

「殻で挟んで"れいとうビーム"」

 

「先生"かみなり"!」

 

トリはパルシェンの殻によって捕えられてしまったが、その隙にマイは"かみなり"を指示。その攻撃は命中し、パルシェンに大ダメージを負わせることに成功した。だが、パルシェンの"れいとうビーム"を至近距離で喰らってしまったトリはここで戦闘不能になってしまう。

 

「オニドリルを犠牲に大ダメージを与えたか。そんな調子で進んでいては、私の手持ちを全て倒すことは出来ないぞ?」

 

余裕の笑みを見せるサカキに、少し焦り始めているマイ。しかし、動かずにいることが危険だと思ったマイはまたもや"かみなり"を指示、サカキも先刻と同じ指示を出す。しかし、"かみなり"は外れ、サカキの足元へと落ちてしまい、"れいとうビーム"は天井の一部を凍らせて終わった。

 

「っ、」

 

"かみなり"が落ちた振動でサカキはよろけて地面に手を着いてしまった。この隙にマイは"かみなり"を指示。その攻撃は命中し、パルシェンを瀕死へと追い込んだのだった。

 

「まずは一匹...」

 

サカキのポケモンをとりあえず一匹倒して安心していたマイ。だが、ソレは慢心だった。

 

「なっ━━━━━━━━」

 

安心したのもつかの間、先生の体が宙に浮く。先生が元いた位置にはダグトリオが地面から顔を出している。恐らく、コイツが犯人だろう。

 

━━━━━━━━いつの間に?

 

「目の前に集中するあまり、こちらに気づいていなかったようだな。」

 

そう言うサカキの足元には彼のハイパーボールが埋まっている。恐らく、先程手を着いた時にボールを埋めて地中へと出したのだろう。

そんなことどうでもいい、と思った瞬間、部屋全体が、否、建物全体が揺れた。その犯人はサイドン、サカキのサイドンだった。

サイドンの"じしん"によって建物が揺れ、マイは体勢を崩してしまった。さらに、先刻の"れいとうビーム"で凍らされ、脆くなっていた天井の一部が先生の頭上へと崩れ落ちてきた。

なんとか状況を打破しようとマイが指示を出そうとした時、彼女の足元が揺れ、彼女もまた先生と同じように宙に浮かされてしまった。宙に浮かされた時にマイの体には響くように痛みが染み渡った。恐らく、"あなをほる"攻撃を食らってしまったのだろう。先生も同じく。

 

「かはっ...」

 

地面に叩きつけられると同時に、肺の中の空気が一気に外へと放出された。横に目をやると、先生は二体同時"じしん"をリンチ状態で喰らっていた。アレではこれ以上の戦闘は望めないだろう。マイは先生をボールに戻し、立ち上がろうとした。のだが、足が動かない。

 

━━━━━━━━折れたか

 

この最悪的な状況に対して、他人事のように思っている彼女は残っているボールに手をかける。

一体は自分の足にするため、もう一体は戦闘用として出すために。

 

 

 

 

 

 

 




戦闘可能ポケモン残り二体━━━━━━━━


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vsスピアー 『二体の水ポケモン』

自分の中では今回で終わらせるつもりだったんですけど…長引いてしまいました
お気に入り65件ありがとうございます(*_ _)
14話どーぞ


 

 

 

「アズマさん、カニミソ。GO!」

 

足が折れ、戦闘可能なポケモンが二体に減ったこの窮地に、マイは残りのポケモン全てをフィールドへと送り込む。アズマさんは自身の足とするべく自分の真下に、カニミソには戦闘を行ってもらうためにフィールド中央へと。

カニミソはフィールドに出た瞬間、"クラブハンマー"をダグトリオの脳天目掛けて放った。

 

「躱せ!ダグトリオ」

 

しかし、ダグトリオはこの攻撃を地中に潜ることによって回避。しかし、カニミソの"クラブハンマー"は地面にぶつかるや否や"じしん"と見間違えるほどの地響きを起こす。その反動でダグトリオが地中から顔を出したのをマイは見逃さなかった。

 

「"バブルこうせん"」

 

ダグトリオに効果抜群の"バブルこうせん"がアズマさんによって放たれる。いきなり地上へと出され怯んでいるダグトリオは"バブルこうせん"を避けることが出来ない。地表へと向けられたその攻撃に被弾してしまった。

被弾して更によろけたところに、モグラ叩きの要領で"クラブハンマー"が叩き込まれる。効果抜群の技を立て続けに喰らってしまったダグトリオは力なく倒れる。

 

「指示を出していないのに技を出すのはそう言う命令か?それとも、お前(トレーナー)自身の力量(レベル)の低さの表れか?」

 

ダグトリオをボールに戻しながら、彼は疑問をマイにぶつけた。しかし、マイから返答はない。

 

━━━━━━━━情報通りならば指示を聞くはずだが

 

不意打ちに気をつけねば、とサカキが考えている傍ら、カニミソはすぐ近くにいるサイドン目掛けて"クラブハンマー"をフリッカージャブの様にして打ち込んだ。その攻撃は両手で受け止められようとしたが、腕を弾く形で攻撃が成功。サイドンのボディがガラ空きになった。

 

「"バブルこうせん"!」

 

この隙を突くように、アズマさんの"バブルこうせん"と至近距離のカニミソの"はかいこうせん"がサイドンに命中。大ダメージを負ってしまったようで、サイドンは片膝をついた。

 

「攻撃力に自信のあるキングラーの様だな?私のサイドンがここまで追い詰められたのは初めてかもしれん。」

 

サイドンをボールに戻して次のポケモン、スピアーをフィールドへと出した。サカキのスピアーは場に出るや否や"こうそくいどう"を積み始めた。

 

「アズマさん、こっちも"こうそくいどう"」

 

それに対してマイは冷静に対応する。しかし、カニミソは無闇矢鱈に"はかいこうせん"を撃ち込んでいる。勿論、そんな攻撃は当たらずにスピアーは軽々と避けている。

 

「キングラーが困っているがいいのか?トレーナーならポケモンに指示を出すべきだろう。」

 

「この"こうそくいどう"は指示してないものでしょ?」

 

「ふっ、これは予め指示を出していたものだ。機動力のない2匹のポケモンを倒すための、な。」

 

荒唐な物でも見てるかのような目線をチラつかせ、蔑むようにしてマイを挑発する。しかし、そんな挑発には目もくれず、そう、とだけ返してマイはアズマさんに指示を出す。

 

「部屋全体に"ふぶき"」

 

━━━━━━━━範囲攻撃で当ててきたか

 

範囲攻撃で命中する可能性を上げてきた、と判断したサカキはスピアーに"ダブルニードル"を指示。スピアーは素早くアズマさんの背後に回り込んで攻撃を当てる。攻撃が当たり、アズマさんは怯んだが、"ふぶき"は部屋全体へと向けて放たれる。

 

「っ、」

 

「寒っ...」

 

"ふぶき"は部屋全体を冷却させ、さらに先刻の水攻撃によって湿った地面を中心に氷へと変えた。アズマさんの前方を7割程度、氷のフィールドへと変えることになった。

 

━━━━━━━━機動力を補うためのフィールドか

 

「氷のない場所に後退して"メガドレイン"。アズマオウにだ。」

 

このフィールドの意味に気づいたサカキは、これ以上氷のフィールドを作らせないためにアズマオウの処理を優先する。

しかし、その安定択はマイの思う壷だった。指示は出していなかったが、マイの思い通りになった。

 

「アズマさん戻れ。」

 

アズマさんをモンスターボールに戻すマイ。その行動にサカキは一瞬思考を停止したが、スグにその真意が分かった。

 

「左に躱せ!」

 

言われるがままに横にズレるスピアーだったが、なぜこの指示なのか理解出来ていなかった。しかし、その直後に自身がいた場所に向けて放たれた"はかいこうせん"を見て納得した。

"はかいこうせん"を放ったのはカニミソ。彼からすれば、いつスピアーが現れてもいいように"はかいこうせん"の構えを取っていたたところ、急に障害物(アズマさん)が消え標的が姿を現したのだった。攻撃するしかなかった。

この攻撃は惜しくも当たらなかったが、隙はできた。

 

「アズマさん"バブルこうせん"」

 

マイは着地する直前に、少しズレて氷のフィールドにアズマさんを出した。アズマさんは素早く動くスピアー目掛けて"バブルこうせん"を放ち、数弾ヒットさせることに成功。さらに追い討ちをかけるように、マイは"ふぶき"を指示。

"ふぶき"は氷のフィールドをさらに形成させると同時に、攻撃を喰らってふらついていたスピアーを戦闘不能へと追い込んだ。

次のポケモン、とマイが意気込んでサカキの方を振り向くとサカキは既にニドキングを出していた。

 

「アズマさん"バブルこうせ━━━━━━」

 

"バブルこうせん"を指示しようとした瞬間、アズマさんの体が大きく傾いた。アズマさんの表情を見るととても苦しそうにしている。

 

━━━━━━━━毒。"ダブルニードル"か

 

事情を汲み取ったマイは、バッグから'どくけし'を取り出し、中身を吹きかける。みるみる回復していくが、相手は待ってくれないようだった。"10万ボルト"をアズマオウ目掛けて放つ。しかし、まるで無視するなとでも言わんばかりに、カニミソが氷上を滑るようにして近づき"クラブハンマー"を撃ち込む。撃ち込まれる瞬間になんとかニドキングは受け止めたが、カニミソは至近距離で"はかいこうせん"を放つ。避けられなかったニドキングは、そのまま部屋の壁へとめり込むようにして吹っ飛ばされる。

 

「...さすが」

 

毒に気づくのが遅く、体力が限界まで近づいているアズマさんの背に乗ってマイはカニミソを見つめる。

 

━━━━━━━━戦えるのはカニミソだけ...

 

カニミソに全てを任せる、という気持ちを固めたところでカニミソがこちらを向いた。何を伝えたいのか、マイは瞬時に理解した。

 

「指示を出せ、と...」

 

━━━━━━━━指示出さなくても戦ってくれるのはこっちとしては楽なんだけどな

 

マイの問いに頷いて答えるカニミソ。その意図は分からないが、カニミソがそういうのであればそうしよう、とマイは思った。

 

「ふっ、やっと本領発揮、と言ったところか?一体で残り二体を倒せるかな?」

 

「...さぁ?」

 

シルフカンパニー地下の戦いは、ついに終盤になるのだった━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 




戦闘可能ポケモン残り一体━━━━━━━━


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vsニドキング 『一旦終結』

お気に入り71件ありがとうございます(*_ _)

これにてロケット団との戦いは一旦終わりとなります。
冬休みが明けて忙しくなっているので、投稿間隔は開きます…お許しください(*_ _)


 

 

 

 

 

 

サカキとの激戦を繰り広げ、遂にあと残り二体というところまで追い詰めたマイ。しかし、追い詰められたのはマイのようで、彼女の手持ちは残り一体となるのだった。

氷のフィールドに立っているのはマイのキングラー、カニミソ。やる気満々の表情で、相手を見つめるのだった。

 

「"10万ボルト"」

 

サカキの指示により、体を起こしたニドキングは体内で電気を生成し、標的目掛けて放出する。

 

「回避」

 

その攻撃はカニミソ目掛けて真っ直ぐ飛んで行ったが、カニミソは氷を滑るようにして回避した。さらに、そのまま流れるようにして左腕の射程範囲にニドキングを収め、"クラブハンマー"を叩き込んだ。効果抜群の技を喰らうニドキングだったが、すぐさまその左腕を捕まえた。

 

「"カウンター"だ!」

 

サカキの指示を予め分かっていたのだろうか、空いた手を使って"カウンター"を決める。相手の物理攻撃を倍にして返すこの技は、今のカニミソにとっては痛手となる。

至近距離で高威力の"カウンター"を喰らってしまったカニミソは一瞬気を失いかけるが、本能的に負けてはいけないという意志によって持ち堪えた。

 

「"ハサミギロチン"!」

 

"カウンター"を喰らって一度は敗北に肩を掴まれた感覚に陥ったマイだったが、カニミソの燃える闘志に背中を押され指示を飛ばす。指示したのは一撃必殺技の"ハサミギロチン"。

 

━━━━━━━━近距離なら外さない

 

マイの思い通り、カニミソの右腕はニドキングの首を穿かんとして引き寄せられるように動く。しかし、その右腕はニドキングの空いている手で防がれた。所謂取っ組み合いの状態になった。

 

「"10万ボルト"」

「"はかいこうせん"!」

 

2つの指示が同時に飛ぶ。先に攻撃を当てたのは、体内の電気をそのまま相手に流し込んだニドキングだった。一瞬遅れてカニミソも攻撃するが、ダメージを負ってしまった。カニミソは"はかいこうせん"の反動と高威力により、後方へと後退りする形で両腕の拘束を解くことに成功した。

 

「大丈夫?」

 

後退したカニミソを心配してマイは声を掛けた。その行為にマイは何ら疑問を抱かなかったが、実はこの行為、今までの旅でマイは戦闘中に行わなかったことだ。コレがマイにとって新たな1歩になったことに、彼女は未だ気づかない。

カニミソは彼女の問いに頷いて答え、指示を仰ぐように右手を振る素振りを見せようとした。攻撃の反動で実際には動かなかったが、微かに動いたその右腕をマイは見逃さなかった。分かった、とマイは答え次の指示を飛ばそうとする。

しかし

 

「っ━━━━━━━━」

 

突然、彼女等の立っているの地面が、否、建物自体が大きく揺れ始めた。その揺れに耐えられなかったのか、ギリギリの体力だったアズマさんは力無く体を横にして倒れた。そしてその上にしがみついていたマイも同じく倒れる。

 

「残念だが、ここまでのようだ。」

 

対峙していたはずのサカキは、いつの間にかゴルバットの脚に掴まり脱出の準備をしていた。サカキはニドキングに"みずでっぽう"を天井へ撃ち込むよう指示、鋭い水の光線が天井を貫き、穴を開ける。

 

━━━━━━━━未だ伸ばせる力、そして秘めている可能性...惜しい

 

「その力、惜しいが仕方ない。機会があればまた会おう。次会う時、お前のポケモン達の成長が楽しみだ。」

 

そう告げたサカキはニドキングをボールへと戻し、ゴルバットと共に地上へと脱出するのだった。

マイもそれに続きたかったが、今動ける手持ちはカニミソしかいない。アズマさんをボールへと戻したマイは、這いずってカニミソの元へ駆け寄ろうとしたが、逆にカニミソから寄ってきた。

 

「脱出...したいんだけどねぇ、動けないや。戻って。」

 

有無を言わさずにカニミソをボールへと戻すマイ。そして舞台に大の字になって寝転んだ。試しに自分の体を起こしてみようとするが、ピクリとも動かない。

 

━━━━━━━━電池切れ...みたいなもんか

 

自身の体をゲームのように例える彼女の意思は、どこかゲームプレイヤーらしさが感じられた。自分の体であって、借り物を使っている、と呟いたマイは静かに目を瞑る。

 

「楽しかったけど、残念だなぁ」

 

瞬間、彼女の頭上から瓦礫が崩れ落ちる...

 

 

 

 

 

 

 

それからどのくらい時間が経っただろうか、マイの体曰く、10分も経っていないようだった。頬を叩かれる感触に彼女は目を覚ます。

 

「...ここは?」

 

彼女の目には自身の手持ち、そしてレッド、オーキド博士がいた。ラフはマイが目を覚ますとスグに胸元へと抱きついた。

 

「まったく無茶しおって...グリーンが気づかなければ幹部や首領共々あのビルの下敷きじゃったぞ。」

 

オーキドが指し示す先には崩れ落ちた後のシルフカンパニーがあった。上体を起こせず、顔を横に倒して覗き込むマイだったが、その視界には疲弊しきったゴルダックをボールへと戻すグリーンが映った。マイの視線に気づいたグリーンは、マイの方へとやってきた。

 

「あ、ありがとう...で、いいのかな?」

 

今の状況を飲み込めてないマイだったが、命の恩人と思われるグリーンに対して一応の礼はした。しかし、グリーンはそれに対して特にこれといった反応はなく、レッドに一言二言告げて、ピジョットに乗り飛び去った。

 

「あいつのゴルダックが助けたんだよ。グリーンが地下に降りた時、さらに下から響いてくる音に気づいたんだってさ。」

 

それを聞いたマイは、また眠ることにした。

何故、といわれたら、疲れたからだろう。

とにかくマイは目を瞑り、後のことは全て周囲の人間へと任せた。

その際、マイはレッドから告げられた言葉が頭に残った。

 

━━━━━━━━セキエイ高原で会おうな

 

 

 

 

 

 

 



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vsケンタロス 『トキワの森捕獲大作戦』

なんとか三連休中に投稿出来ました( ˇωˇ )
お気に入り79件ありがとうございます(*_ _)


 

 

 

 

 

 

 

「...退院、ですか。」

 

「ええ、足の調子も良くなりましたから。一週間ぐらいは走れませんが、歩くことは可能だと思います。お大事に」

 

 

診察室を後にしたマイは、受け付けに座っていたオーキドに医師からの言葉を伝え、病院をあとにした。

ロケット団との激戦を繰り広げたマイは、足の怪我のため、しばらくの間トキワシティの病院に入院していたのだった。その間彼女のポケモン達は、オーキド博士の元へ預けられていた。オーキド曰く、キングラーの暴走とそれを抑えようとするカモネギは手に負えなかったらしい。

 

「ポケモンリーグ前に退院出来て良かったの。」

 

「ええ、わざわざありがとうございます。」

 

マイとオーキドは、マサラタウンへと移動するため、飛行ポケモンを出そうとボールを取り出すが、後ろから声を掛けられる。

声を掛けられたのはオーキドのようだった。声を掛けたこの伯父様曰く、最近トキワの森で今まで見たことの無い凶暴なポケモン達が現れて、住民達を困らせているらしい。

 

「で、ワシならなんとか出来るのではないか、とな。」

 

「ええ、こちらにあのポケモンの権威、マサラタウンのオーキド博士がいらしたのが幸運です...どうにか出来ませんでしょうか?」

 

ふむ、とオーキドは頷き、マイの顔を横目で見た。マイはオーキドの目線に気づき、顔を逸らすが時すでに遅し、肩を掴まれてしまった。

 

「彼女なら力になれるでしょう。マイ、行きなさい。」

 

保護者か、とマイはツッコミたくなったが、記憶喪失であると認知されている今、マイの実質的な保護者はオーキドであることを実感した。よくよく考えれば、入院費用等もオーキドに支払って貰っているため、マイは彼に頭が上がらないのだ。

 

「...分かりました」

 

オーキドは病院傍のベンチに腰を掛けマイを見送り、マイは伯父様のあとを追って、トキワの森へと向かうのだった。

 

 

 


 

 

 

「では、お願いします。」

 

トキワの森へと連れてこられたマイは、所々傷を負っている青年や成人男性達の間をくぐり抜け、奥へ奥へと進んでいく。これらの男性達は、恐らく凶暴なポケモン達を抑えきれずに反撃されたのだろう。力量もないのによくやるな、とマイは零しかけたが、なんとか喉で引き留めた。

 

━━━━━━━━一々倒すのは面倒だな...

 

「トリ、ラフを乗せて飛んで、ラフは上空から"ねむりごな"」

 

ボールから2体のポケモンをボールから放つと、2匹はマイの指示通りに動く。10秒も経てば、彼女等は上空からの攻撃を開始する。

広範囲の"ねむりごな"は空爆のようにして地上へと降り掛かる。この細かい爆弾は、地上にいるポケモン達殆どに命中した。

 

「さて、あとは捕獲かな。ネギ、先導お願い。」

 

ボールから放たれたネギは、久々のマイの指示に張り切っているようだ。任されたとでも言わんばかりに葱をくるっと回して応える。

 

ネギと共に奥へ奥へと進んでいくマイは、本来この森にいないポケモンや、寝ているのにも関わらず凶暴な雰囲気を醸し出しているポケモン達を捕獲していく。

捕獲の際には、ネギやカニミソの攻撃でダメージをある程度与えていく。ダメージを受けて目を覚ますか覚まさないかのところでマイがボールを投げる。

そうして捕まえたポケモンは10種類を超え、数は40匹を捕まえた時点で数えるのを諦めた。大量のモンスターボールを先生の体に埋め込む形で持たせ、森中を散策するマイ。

 

「トリ、ラフ、ネギ、どう?」

 

マイと共に、他にポケモンがいないかどうか散策している3匹に、取りこぼしはないか聞く。返事は3匹揃って無いらしい。これで充分だろう、とマイは3匹をボールに戻し、先生と共に森を後にした。

 

 

 


 

 

 

「一通り捕まえました。これで本来の生態系になると思います。」

 

見せびらかすように大量のボールを住民達へと差し出した。住民から讃えられ、少し居ずらくなったマイだが、ボールを置いてスグに離れるという訳にはいかなかった。住民曰く、凶暴なポケモン達を手にできる程の実力がある人間はこの街には居ないらしい。ということで、これらのポケモンはマイが所持することとなった。

 

「...と、いうわけなので博士、これお願いします」

 

「うむ、ちょっと待て。」

 

面倒事を押し付けて本人はその場から離れようとマイは考えたのだが、そうは問屋が卸さない。

 

「...私では扱えきれないのでお譲りします」

 

「無茶を言うな無茶を。ただでさえお前のキングラーで疲れておるんじゃ。これ以上は体が持たん。」

 

マイは差し出したボールを渋々戻し、これらのボールを覗き込んだ。ボールの中身は今にも暴れんとするポケモンが、こちらを睨んでいる。

 

「...悪に染まったポケモンは正しい主に育てられれば素直になるという研究結果がある。お前さんなら元に戻せると思うのじゃが。」

 

━━━━━━━━違う、面倒事は嫌なだけなんだ

 

マイの思いはオーキドには届いていないようで、オーキドはなんとかマイを説得しようとしている。マイはなんとか面倒事から逃れようとしているが、さらに追い討ちをかけられることとなった。腰のボールが勝手に開き、ネギが出てきたのだ。そしてネギはマイの足元へと歩み寄り、真っ直ぐとした目でマイを見つめる。

 

「...預かれと?」

 

何となくネギの真意に気づいたマイだったが、念の為確認する。ネギはマイの問いに頷いて答えた。マイはあまり気乗りしないが、ネギの気持ちに負けたようだ。

 

「分かった、預る...」

 

預かることにする、と言いかけたマイは、背後にいた先生を凝視してしまった。彼に預けていたボールの幾つかは、彼の身を離れ、ボトボトと地に落ちた。その際にあるボールの開閉スイッチが地面に当たり、その中に収められていたポケモンが解き放たれた。

 

「先生ぇ!?」

 

放たれたのはケンタロス。ケンタロスはボールから出た瞬間、ベトベトン目掛けて"たいあたり"を仕掛けた。しかし、その攻撃はベトベトンのヘドロで出来たどこか液体らしさのある固体の体に去なされる形で失敗した。

 

━━━━━━━━コイツ、何食わぬ顔してやがる...!

 

出会った時のマイペースさを感じながら、マイは腰のボールからカニミソを出す。カニミソはボールから放たれるやいなや、ケンタロスの角を左の鋏で掴んだ。カニミソの左手によって掴まれたケンタロスは、そのまま脚を地から離してしまう。

 

「そのまま"クラブハンマー"!」

 

空いた右手でケンタロスの顔を殴りつけるカニミソ。カニミソの攻撃に、空中で避けきれなかったケンタロスは大ダメージを負ってしまうが、すぐさま反撃の姿勢をとる。

 

「"みだれづき"」

 

しかし、ネギの速攻で追い討ちを掛けられ、ケンタロスはダウンした。地面に落ちたケンタロスのボールを拾い上げ、倒れたケンタロスをボールに戻すマイ。

さて、と呟いてマイは先生に預けているボールを引き取ろうとした。しかし、その瞬間、先生の持っていたモンスターボールは全て先生によって振り落とされた。その拍子に、またもや数匹ボールから放たれた。

 

「"あやしいひかり"...!」

 

先生を叱ろうと顔を上げたマイだったが、先生の様子を見てスグに何が起こったか察した。ケンタロスがボールから出た時に出たポケモンは、ケンタロスだけではなかったのだ、と。正解だと言うように、ゴルバットが空中を泳ぐように浮遊している。

オーキドの身を案じたマイはオーキドの方を振り向くが、余計なお世話だったようで、自分のポケモンで対処していた。

先生をボールに戻したマイは、目の前にいる凶暴なポケモン達との戦闘、もとい教育を始める。

 

「ネギ、カニミソ...いくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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vsゴルバット 『教育』

意外と早く投稿出来ました
お気に入り82件ありがとうございます( _ _)


 

 

 

 

 

 

「"クラブハンマー"をサイホーン、"みだれづき"をゴルバットに!」

 

唐突に始まった乱戦だったが、カニミソもネギも動揺はせずに戦闘を開始する。指示された技を指示通りに当てるが、サイホーンはその攻撃を耐え"しっぽをふる"でカニミソを退けた。ネギの方は攻撃を4回当て、ゴルバットに反撃の隙を与えさせない。

 

「カニミソは"かたくなる"からカウンター気味に"クラブハンマー"、ネギは倒すまで攻撃続行!」

 

混乱状態の先生を一旦ボールへ戻し、2体へ指示を飛ばしたマイ。しかし、暴れん坊達はマイに休む暇を与えてくれないようだ。背後から攻撃の態勢を取っていたゴーリキーの殺気を感じ、すぐさま先生をフィールドへと放ち盾替わりにするマイ。"からてチョップ"を去なさせたマイは、その後ろからトリを投げた。

 

「トリ"こうそくいどう"でゴーリキーを翻弄、先生は"だいもんじ"!」

 

トリの"こうそくいどう"に気を取られたゴーリキーは至近距離で放たれた"だいもんじ"を躱しきれなかった。そのまま後ろへ吹っ飛ばされ、さらに'やけど'状態にもなってしまったようだ。弱ったところで、マイは空のボールにゴーリキーを戻し、周囲を確認する。どうやら相手にしていないポケモンは他にはいないようだ。一安心したマイは、相手しているポケモン達の方を観る。

ゴルバットはネギと空中戦を繰り広げているが、ネギの攻撃はゴルバットには躱されるばかりのようだ。サイホーンの方は、タイプ相性で不利を強いられているにも関わらず、攻撃を耐えつつ反撃をしていた。しかし、カニミソの攻撃力には勝てなかったようで体力はもう残っていないようだ。既に立っているのもやっとのヘロヘロの状態だ。

 

「トリ、"すてみタックル"をゴルバットに」

 

遠くからサイホーンをボールに戻し、トリに指示を出した。トリはその素早い動きで一直線に飛んでいく。真横から飛んできた攻撃に、ゴルバットは反応が遅れ攻撃が当たってしまった。高威力の技を喰らったゴルバットはそのまま吹っ飛ばされ、力なく地面にはらりと落ちた。

その隙にゴルバットをボールに収め、この場を収めた。

 

「これで一旦完了...オーキド博士。」

 

オーキドの方を向けば、オーキドに襲い掛かっていたゴーストは既に倒れていた。さすが博士、と内心煽てつつゴーストをボールへ戻す。

 

「これで終わりのようじゃな。いやぁ疲れた疲れた。」

 

その言葉と共に地面にヘタレこむオーキド、そしてマイ。しかし、スグに立ち上がってマイは呟いた。

 

「研究所に送りましょう。すぐに...!」

 

 

 


 

 

 

ポケモンセンターへ移動した後、マイ達は40を超えるボールの山をオーキド研究所へと送った。そのまま彼女等は研究所へと戻ろうとしたが、処理を依頼した伯父様が礼をしたいと言ってきた。マイはさっさと帰りたかったが、オーキドに諭されて礼を受けることになった。オーキドは仕事で帰ると言い残し、マイを残してトキワシティを後にした。

 

「...」

 

伯父様の家へと連れてこられたマイは、その家の大きさに少し圧倒された。しかし、伯父様はソレに気づいていないのか、特に何か言うわけでもなくマイを家へと招き入れた。

家の中は豪勢に飾られている、という程飾られてはいなかったが、一般家庭に比べれば飾られている方なのだろう。絵画や骨董品が幾つか見られた。リビングへ通されると、彼の妻と息子と思われる人間が座っていた。

 

「自己紹介が未だだったね。私はナスタ。この街の市長をしている。こっちは妻のキンカ、そして私の甥に当たるミツルだ。こちら、オーキド博士の助手のマイさんだ。」

 

「よろしくね、マイさん」

 

「よろしくお願いします...」

 

「...あ、こちらこそよろしくお願いします。」

 

リビングでは軽く自己紹介をして、その後彼等はマイに対して今までの旅について色々質問をしていた。マイは答えられそうな範囲で答えていたが、自己紹介の時点で気になっていたことがあった。

 

━━━━━━━━ミツル君がミツル君なら、なんでここにいるの...?

 

陽が地面に隠れ始めた頃、マイはキンカの手料理を振舞われた。マイはとても気に入ったようで、いつもより多めに食べてしまった。

食べ終えた後は半ば強制的に一泊することになった。

 

「...ねぇ、なんで君は叔父さんの家にいるの?」

 

寝る前に聞いておきたかったことを聞きに、マイはミツルの部屋へとやって来た。幸い、ミツルは未だ起きていたようで部屋に入れてくれた。

 

「えっと...お父さんとお母さんが仕事忙しいから、叔父さんのお家に来たんだ。僕、体が弱いからお留守番はしちゃいけないんだって。」

 

━━━━━━━━ちょっと記憶と違うなぁ

 

「そっか、ありがとう」

 

質問に答えてくれた礼をして、マイはミツルの部屋を後にしようとする。しかし、ミツルに呼び止められそれをやめた。

 

「もし良かったら、ポケモン...寝てる間だけ貸してくれませんか?」

 

お易い御用、とマイは微笑み、ラフとネギの2匹をボールから出した。2体共ボールの中から内容は把握しているようで、任せろと頷く。そしてラフはすぐさまミツルの胸へと飛び込んだ。

 

━━━━━━━━子供ならなんでもいいのかコイツ...

 

ミツルは積極的に絡むラフに喜んだようで、会った時の強ばった表情とは一変して年相応の表情を見せている。

 

━━━━━━━━病弱だからあまり外との関わりがないのか...

 

マイは何となく彼の事情を汲み取った。そしてソレはネギも同じようで、マイはネギと顔を見合わせる。ネギは任せろ、と胸を張ってみせた。

この2体なら特に心配事もないだろう、とマイは自室に戻ろうとドアノブを握った。

 

「じゃ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 



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vsペルシアン 『開幕、カントーリーグ!』

一章もそろそろ終盤です
お気に入り91件ありがとうございます( _ _)

1/19 ニックネームを一部間違えていたので訂正しました


 

朝日が東と南の間に差し掛かった頃、トキワシティを後にしたマイは1番道路上空を飛んでいた。ボールの中にいるラフはとても気分が良いようで、ボールの中で踊っている。

 

━━━━━━━━呑気だな

 

それだけミツルの胸が心地よかったのだろうか、少しマイは興味を唆られる。

 

「来た、マサラタウン...」

 

マサラの広大な野原が上空から確認できた。街の端にあるのが恐らく研究所だろう。トリに指示を出し、研究所の前へと降り立った。

研究所のドアをノックすると中から入れと言う声が聞こえる。中へ入るとオーキドが資料を室内の端から端へ移動、資料の修正やら制作やらをしていた。

 

「仕事が貯まっておっての、すまんが一人でやっといてくれんか?」

 

分かりました、とだけ答えてマイは転送されたボールを幾つか取って外へと駆けた。外に出るやいなや手に取ったボール達の中身を外へと放つ。

 

━━━━━━━━さて、と。戦力強化になるかな

 

マイがオーキド研究所へとやってきたのは、ポケモンリーグ挑戦のための手持ちの強化のためである。本来はもう一日早く始めるつもりだったが、思わぬ収穫があった。このR団のポケモン達は力量にバラつきはあるが、言うことを聞かせることが可能であれば戦力の強化に繋がることは明確。ポケモンリーグまであと2週間程度だが、マイはこの期間で現在の手持ちの強化と新たなポケモン達の教育をするつもりだ。

 

「じゃ、"はかいこうせん"」

 

カニミソの"はかいこうせん"が新入り目掛けて放たれる。

 

 

 


 

 

 

そしてそれから2週間。マイはセキエイ高原へとやって来ていた。短い期間だったが、全体的に手持ちの力量は上がっている。その幼さから発せられる雰囲気は、場にそぐわない物ではなかった。

受付を済ませたマイは、予選開始の時を待つ。その時は思っていたより早く来たようだ。マイは呼ばれると、その大きな舞台にてくてくと歩いて上がった。相手は熱気を放つ青年男性、経験も力量もあちらが上だとマイは感じ取った。

 

『Dリーグ予選一回戦一戦目。始め!』

 

「行け!ペルシアン!」

 

「カーリィ、出番。」

 

バトルが開始された。青年はペルシアンを、マイは捕まえて日の浅いカイリキーをフィールドへと送り込んだ。群衆に晒し上げられているようなこの大舞台、このカイリキーにとっては初めての経験なのだが、緊張はしていないようだ。寧ろ、自身の肉体を見せつけることに意識を向けている。

その隙を突くように、青年が先制を奪った。

 

「"スピードスター"!」

 

星型の光線弾がカーリィを集中砲火で襲い掛かる。予め作戦を練っていたのか、ペルシアンは的を絞らせないためにフィールドを縦横無尽に動き回っている。これでは遠距離攻撃の当たる確率が低くなってしまう。

 

「"じしん"で止ませ」

 

しかし、範囲攻撃の"じしん"ならソレは関係なかった。両足で地面を揺らし、敵の砲撃を止めさせることに成功した。だが、それで勝負が決するわけはなく、ペルシアンは遠距離からの攻撃を続けるようだ。

 

「"はかいこうせん"!」

 

「躱せ」

 

カーリィの真正面から"はかいこうせん"が放たれる。物凄い威力の光線がカーリィを襲うが、カーリィは寸でのところで上体を反らすことによってその攻撃を回避。さらに反動で動けなくなっているところへ走り込んで距離を縮めた。

 

「っ、戻れ!」

「"からてチョップ"」

 

青年がボールを持つとほぼ同時にカーリィの"からてチョップ"が炸裂する。攻撃が命中したペルシアンはボロ雑巾のように吹き飛ばされた。

 

「ペルシアン!!?」

 

『ペルシアン戦闘不能。カイリキーの勝利!』

 

「初陣お疲れ、カーリィ。」

 

敵を討ち取ったことで、マッスルポーズを見せつけ自身の強さをアピールするカーリィを褒め称えるマイ。褒められまたスグに調子に乗るカーリィだったが、スグにボールへと戻された。

 

「さ、休憩だ。」

 

 

 

 

 

 

 

20分後、マイのリーグの一回戦が一通り終了した。2回戦が幕を開ける。マイの2回戦の相手は空手着に身を包んだ空手王のようだ。

 

『Dリーグ予選2回戦1試合目。始め!』

 

「行けぃ!オコリザル!」

 

「...リッパー」

 

空手王が出してきたのはオコリザル。対してマイが出したのはスリーパーだった。オコリザルはボールから放たれるとスグにリッパーの元へと跳んでいき、首根っこを掴んだ。

 

「"ちきゅうなげ!"」

 

オコリザルはそのままリッパーの体を持ち上げ、地面に叩きつけようとした。しかし、そう簡単に攻撃を成功させはしない。

 

「"テレポート"」

 

"テレポート"でオコリザルから一旦距離を放すスリーパー。一瞬で消えたことにより、オコリザルは動きが鈍ってしまった。その隙をマイは見逃さない。

 

「上だ!」

 

「"サイコキネシス"」

 

空手王の声がオコリザルに聞こえると同時に、"サイコキネシス"がオコリザルを襲う。"サイコキネシス"によって空中へと浮かされたオコリザルは、念力のよって体を締め付けられあっさりと気絶してしまった。

 

「ぬぅ...戻れオコリザル」

 

『オコリザル戦闘不能。スリーパーの勝利!』

 

オコリザルを倒したリッパーは、飛び込むようにしてマイの元へと駆け寄る。しかし、マイはそれを一本背負いで去なして地面へと叩きつけた。リッパーをモンスターボールへと戻したマイは面倒臭そうに舌打ちしてその場を去った。

 

「自分のポケモンを手懐けられてないのか?」

 

入れ替わる形で入るトレーナーに声を掛けられた。労いの言葉ならまだしも、煽りの言葉は今のマイに響いたようだ。咄嗟にマイはトレーナーの首根っこを掴みにかかった。しかし、ソレは簡単に防がれる。

 

「...グリーン」

 

マイに声を掛けてきたのはグリーンだった。グリーンはマイの手を離し、マイの立っていた舞台へと歩いていった。特に言い返す気力が起きなかったマイはそのまま屋内の隅へと移動する。その際、他のリーグでレッドとブルーが戦闘しているのが見えたが、マイは話に行こうとは思わなかった。

 

━━━━━━━━次はグリーンとか...

 

手持ちのポケモン達の様子を確認しながら、グリーンとのバトルに対して色々作戦を練るマイ。一戦目、二戦目で出した2体のポケモン達はまだまだ体力が有り余っているようで、早く外に出たいようだ。うち一匹は戦闘以外の目的のようだが。

残り4体のポケモン達のコンディションも確認していると、Dリーグのアナウンスが流れる。

 

『ナッシー戦闘不能。ピジョットの勝利!』

 

 

 

 

 

 

 



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vsゴルダック 『暗転』

暗転とは→演劇で、幕をおろさず、舞台を暗くして、その間に場面をかえること。

お気に入り94件ありがとうございます( _ _)

これにて一章編はおしまいです。しかし、これはまだ終わりではありません。その他諸々含めて今回のサブタイトルはこうなりました(裏話)
今回、今までとは少し書き方を変えて、地の文のポケモンの書き方をニックネーム→種族名という風にしてみました。
どちらが見易いか等の意見があればお聞きしたいです。なければこのまま変更…だと思います。

次回は主人公のプロフィールになります

前置きが長くなりましたが、一章最終話どうぞ( _ _)





 

 

 

 

 

 

Dリーグ予選の2回戦が一通り終了した。次は3回戦、マイはグリーンと戦闘することとなっている。

伸びをしながら舞台へと上がると、既にグリーンが舞台に立っていた。グリーンはボールを手にしており、いつでもバトル可能と言っているようだった。

 

『Dリーグ予選三回戦一試合目。始め!』

 

「先生、GO!」

 

「"きりさけ"ストライク!」

 

特に言葉を交わすこともなく戦闘が始まった。マイの先発はベトベトン。対してグリーンはストライクだ。ストライクは"きりさく"攻撃でベトベトンに攻撃するが、マイはソレに対しての処理はしなかった。なぜなら、マイのベトベトンの体はヘドロの性質が強く、並の攻撃は効かないからだ。

 

「"だいもんじ"溜めて」

 

マイは"だいもんじ"を指示、ベトベトンは口を大きく広げ攻撃の体勢をとった。攻撃を受け止めてから確実に攻撃を当てて相手を倒すという作戦だった。

しかし、その作戦は簡単に壊れてしまう。ストライクの"きりさく"攻撃は、ベトベトンの体を横一閃に文字通り切り裂いたのだ。

 

「「なっ」」

 

切り裂かれたベトベトンの体は、上半身は動いたが下半身はびちゃっと嫌な音をたて舞台を濡らした。上半身部分は指示通り"だいもんじ"を発射、しかし元いた位置からズレたことにより、軌道がずれ攻撃を外してしまった。

 

「ヘドロで体を大きく見せていたのか...」

 

━━━━━━━━知らなかった...

 

ここで初めて明かされた事実に、マイは驚きを隠せなかったが、スグにベトベトンをボールへと戻した。その体の特性が売りのポケモンが、その種を明かしてしまったのならしょうがないことだ。

 

「ネギ、"つるぎのまい"」

 

ここでマイはカモネギを投入する。カモネギはフィールドに出るとスグに飛び上がり、不規則な円を描き始めた。

 

「"かまいたち"か」

 

マイのカモネギのよく使う戦法、"つるぎのまい"を積みつつ"かまいたち"の準備をするというものだったが、グリーンにあっさり見破られてしまった。

 

「両腕の"きりさく"で止めさせろ!」

 

「中断、こっちも"きりさく"!」

 

ストライクは上空へと飛び上がって"きりさく"攻撃、カモネギは"かまいたち"の溜めを止めて自慢の葱を構えて"きりさく"攻撃の体勢に入った。

両者の"きりさく"が空中でぶつかり合う。この時、カモネギはストライクの右鎌の峰に当たる部分に攻撃を当てていた。そのため、ストライクの右腕の攻撃は軌道を下げられ、それと共に体は前のめりになる。

 

「"きりさけ"!」

 

体が前のめりになったことより、カモネギはストライクの後ろを取った。背後からの攻撃を躱すことの出来なかったストライクはそのまま地面へと落とされる。

 

「戻れストライク。行けっ、キュウコン!」

 

地面へと叩きつけられる寸前に、グリーンはストライクを戻しキュウコンを投げた。白熱した試合に、グリーンは冷や汗を掻く。

 

━━━━━━━━地面に叩きつけられていたら...!

 

「ネギ、交代。カニミソGO!」

 

マイもそれに合わせるようにしてキングラーを出す。キュウコンの炎ならカモネギのクキを燃やしかねないと考えての行動だった。

 

「"どくどく"攻撃!」

 

「"なみのり"で迎え撃て!」

 

キュウコンは"どくどく"攻撃、対してキングラーは"なみのり"で近づいてくるキュウコンを仕留めようとする。範囲攻撃である"なみのり"はキュウコンに迫るが、キュウコンはそれを跳んで躱して攻撃を命中させた。

 

━━━━━━━━水のない場所だと範囲が減る...!

 

「"ふぶき"、そして"クラブハンマー"!」

 

初めて行った作戦、想定より範囲が狭まったことに対して内心舌打ちするが、マイは"ふぶき"を指示した。大量の水を凍らせ、氷のフィールドを完成させる。さらにその上を滑り、慣れないフィールドに踊らされているキュウコンに"クラブハンマー"が撃ち込まれる。

 

「"だいもんじ"だ!」

 

しかし、撃ち込まれる直前に"だいもんじ"が炸裂。キングラーは怯まず攻撃を撃ち込むが、熱によって氷が一部溶け、キングラーの足が止まってしまった。それによってキングラーの攻撃位置が遠のいてしまい、キュウコンには攻撃が届かなかった。

 

「"ほのおのうず"で氷を溶かせ!」

 

さらにその隙に"ほのおのうず"がフィールドを覆うようにして展開される。キングラーはその熱渦に閉じ込められ、身動きが取れないようだ。そしてあっという間に氷のフィールドは溶かされ、キングラーの舞台は幕を閉じる。

 

「戻れカニミソ!リッパーGO!」

 

炎に対抗するための«水»だったが、キングラーでは速さとリーチが足りなかった。それを理解したマイはスリーパーをフィールドへと送り込む。

 

「浮いて、"どくガス"!」

 

マイはスリーパーの肩に乗りスリーパーは念力で体を空中へと浮かした。そして"どくガス"を舞台上へと噴出、空気より重いこのガスはふわふわと舞台上を漂い、キュウコンを'どく'状態にした。この"どくガス"は範囲を意識したもので、薄まって早々に消えてしまった。

 

━━━━━━━━ここでくるなら恐らく飛行ポケモンの

 

「翔べ、"でんこうせっか"!」

「キャッチして"サイコキネシス"」

 

グリーンの次の行動はポケモン交代、出したのはピジョットだ。ピジョットは目にも留まらぬ速さでスリーパーへと突っ込む。マイはスリーパーの肩を蹴って飛び降り、的を僅かにズラした。それにより、腹部を狙った"でんこうせっか"は掠れる形で命中。スリーパーはそれを掴もうとするが、電光石火の速さに追いつけず、掴み損ねてしまった。

 

「"サイコキネシス"」

 

「"つばさでうつ"」

 

受身をとって着地したマイは、スリーパーがミスを感じないような素早い指示を再度飛ばす。しかし、やはりスリーパーはミスを気にしているのか反応が遅れてしまった。対してピジョットは切り返して"つばさでうつ"攻撃。スリーパーが攻撃するよりも先に攻撃を命中させた。

攻撃を喰らったスリーパーは受け止めきれずに地上へと落ちる。

 

「戻れリッパー、おつかれ。ゲンムGO!」

 

スリーパーの体が地面に触れる寸前でボールに戻したマイ。続いて出したのはゲンガーだった。ゲンガーはフィールドへ出ると、フワフワと浮いて舞台上を埃が舞ってるかのように漂い始めた。

 

「"つばさでうつ"だ!」

 

ピジョットはゲンガーに狙いを定め、急降下。対してゲンガーはフワフワと笑みを浮かべながらピジョットを迎え撃つ。

 

「"さいみんじゅつ"」

 

と、マイが指示を出し終える前に既に"さいみんじゅつ"を放つゲンガー。ピジョットが眠ってしまうとスグに"ゆめくい"をして、ピジョットにダメージを与える。

 

「あー、"10万ボルト"!」

 

勝手に行動するゲンガーだが、指示を出されると指示通りに動いた。効果抜群の"10万ボルト"を放とうとするが、ピジョットはボールへと戻される。

 

「ゴルダック、"ねんりき"だ!」

 

ピジョットの次に出されたのはゴルダック。ゴルダックはスグに"ねんりき"の構えを取って、ゲンガーの頭を締め付けた。フワフワ浮かんでいたゲンガーも、弱点であるエスパータイプの技を受けては大ダメージを免れず、地面に片足をついてしまった。

 

「戻れゲンム!ネギ、もっかいGO!」

 

体力が少なくなったゲンガーを戻し、カモネギを繰り出すマイ。カモネギはフィールドへと降り立つと"つるぎのまい"を積み始めた。

 

「"そらをとん"で"きりさけ"!」

 

舞が終わると、カモネギは勢いよく飛び立って急上昇、ある程度飛び上がったらクキを構え直して急降下、"きりさく"攻撃の構えだ。

 

「"れいとうビーム"で迎え撃て」

 

グリーンは確実に攻撃を当てて仕留める為、迎え撃つという選択肢を選んだ。しかし、マイはそれを読んでいた。だからこそこの攻撃だった。

 

━━━━━━━━撃たれるより速く...!

 

マイは祈った。相手より先に攻撃をすることに。しかし、グリーンは違った。

 

「"ねんりき"で動きを制限しろ!」

 

ゴルダックは右手で念を発動し、カモネギの動きを少し鈍らせた。そして空いた左手で"れいとうビーム"を発射、カモネギは呆気なく氷漬けにされてしまった。

 

「なっ...」

 

『カモネギ戦闘不能。ゴルダックの勝利!』

 

アナウンスと共に外野がワァッと声を挙げる。予選だと言うのに、気が付けば様々な人間に観戦されていた。しかし、マイはそれに気付かず、カモネギをボールへと戻した後、舞台を後にするのだった。

しかし、舞台を降りた後、すぐに呼び止められた。そして一言だけ告げられ、彼はマイから離れた。

 

━━━━━━━━

 

聴いたことのある声、以前にも聞いた言葉。マイは彼に何か返そうと思ったが、言葉が出てこなかった。そして、マイもその場を後にした。

 

 

 


 

 

 

ポケモンの回復を終えたマイは、建物の外へと出ていた。中では決勝戦、レッドとグリーンが戦っている。マサキに頼んでビデオを貰うことにしてあるから、観なくても大丈夫だろうと思って、外に来ていた。

 

「成長、できた?」

 

その問いに、マイの隣に座っているカモネギは首を横に振って答えた。ラフならそうは答えないかもな、なんてことを思いながらマイはカモネギの頭を撫でる。

目の前を見ると、カイリキーとキングラーは勝手に戦闘を始めていた。今の手持ちでは一番疲労は溜まっていないのだから、そんな体力があるのも頷ける。

 

「...そろそろどかない?リッパー」

 

体力が回復してから、マイにずっと抱きついているスリーパーは首を横に振る。ミスを引きずっているのだろう、落ち着いたら思い切り投げ飛ばすか、なんてことを思いながらゲンガーの頭を撫でた。

 

「...フサフサ」

 

ゲンガーの毛はとてもフサフサしており、とても撫で心地が良かった。撫でられているゲンガーは、すやすやと眠っている。疲れたから、という訳ではなく、いつもこんな感じなのだ。

 

「先生、そんなもんじゃない?」

 

顔を上げると、ベトベトンが必死に土を毒を使ってヘドロにして、体を大きくしていた。普段なら何を考えているか分かりずらいベトベトンだが、今の彼は落ち着いていないようだった。

 

━━━━━━━━ま、これで戦術の幅が広がったんだけど...

 

「さて、こっからどうしようかな。」

 

スリーパーを振り払って立ち上がるマイ、同じくカモネギも立ち上がった。体が元のサイズになったベトベトンをボールへと戻し、寝ているゲンガーも、取っ組み合いになっているカイリキーとキングラーもボールへと戻した。

 

「一足先に帰るか、それともまた旅に出るか...」

 

━━━━━━━━図鑑埋めでもするか

 

何かがマイのそんな衝動を駆り立てた。マイはスリーパーの肩に掴まり、カモネギを片手に"テレポート"を指示。テレポートする際、マイは咄嗟に目を瞑ってしまった。

マイは、新たな一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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カントー編終了後プロフィール

カントー編終了後のマイとそのポケモン達のプロフィールになっています

勝率が記載されていますが、これは作者の判断で勝敗を決めています。
また、ラフとトリの協力プレイによる上空から"ねむりごな"はノーカウント。原則として、捕獲時の勝敗は先生を除いてノーカウント、描写がある戦闘のみカウントとなっています。



 

 

 

 

 

 

【マイ】

年齢:11歳

誕生日:12/1

血液型:A型

身長:129cm

持ち物:ポケモン図鑑、折り畳み自転車

家族:この世界ではなし

出身地:カントー地方マサラタウン(オーキド宅ということにされている)

特技:投球、柔道

元々はこの世界の人間ではない。周囲の人間には記憶喪失と言って通している。

旅を始めた理由は特になく、レッドと同じ扱いをされて成り行きで行くことになった。

ポケモンに対する知識はゲームやアニメのみ。この作品の原作であるポケスペに関しては一切何も知らない。

転生前の記憶は旅をするにつれ薄れている。今覚えていることは、男だということと、ポケモンに関することだけ。しかし、本人の推測では、投球フォームが体に染み付いていることから野球をやっていたと考えている。

スリーパーを一本背負いするなどのマサラ人並みの体の強さを見せるが、これはリッパーが1度夜這いしてきたときに、護身術として身につけようと思って身につけたものである。師はカーリィ。

 

【ネギ】Lv.42(♂)

カモネギ。真面目な性格。

ニックネームは「カモネギ」からとって「ネギ」

元々はオーキド研究所にいたが、成り行きでマイについてきた。度々マイに攻撃することがあるが、ソレはマイの言動に怪しさを感じたため。

R団を始め、悪の心を許さない。無人発電所にてR団と初めて遭遇した時に、マイが暴行されそうになった時にそういう感情が芽生えた。

戦闘スタイルは"そらをとぶ"と"きりさく"の近距離と、空中から"かまいたち"を撃ち込む遠距離攻撃のどちらか。

技:"つるぎのまい"

     "かまいたち"

     "そらをとぶ"

     "きりさく"

     "みだれづき"

勝率:9勝3敗▶︎75%

マイの相棒的存在として多くの勝利を飾る。初期からいたため戦闘数は多い。尚、敗北する際は大抵弱点のタイプの技を至近距離で喰らっている。

 

 

【ラフ】Lv.34(♀)

ナゾノクサ。臆病な性格。

ニックネームは進化後の「ラフレシア」からとって「ラフ」

マイとネギが26番道路へやってきた時に襲い掛かったところを捕獲される。襲い掛かった理由はマイに抱き着きたかったから。所謂ロリコンであるが、派手なスキンシップは求めない。

戦闘スタイルは草木を巧みに使ったトラップ制作と、鳥ポケモンに乗って空中からの"ねむりごな"

技:"ねむりごな"

     "しびれごな"

     "ようかいえき"

     "メガドレイン"

勝率:5勝2敗▶︎71.4%

初期からいたため戦闘数は多い。勝率も悪くないが、本人はあまり戦闘は得意ではない。

マイもそれは認識しており、ポケモンリーグの際にはボックスに預けてきた。マイはラフの持ち味は捕獲や逃走、サポートにあると考えている。

 

【アズマさん】Lv.31(♀)

アズマオウ。のんきな性格。

ニックネームは種族名からとって「アズマさん」。なぜ「さん」付けなのかは覚えてはいないが、「アズマ」では口が止まらずに「さん」まで言ってしまうのだ。某スナイパーとは何も関係ない

ハナダシティで懸賞首になっており、マイに捕獲された。通常のアズマオウよりもサイズは大きい。戦闘する機会はあまりなかったが、本人は戦闘は得意としていないため別に気にしてはいない。本編では描かれていないが、水上ではマイを乗せて運んだりしている。

技:"ふぶき"

      "こうそくいどう"

      "バブルこうせん"

     "なみのり"

     "つのドリル"

勝率:2勝1敗1分け▶︎50%

初戦のキングラー戦ではあっさり敗北。ベトベトン戦では攻撃が通らないまま終了。と悲惨な結果だったが、サカキ戦では大健闘した。

ポケモンリーグ予選では、自らボックスへ行くことを志願して預けられる。

 

 

【カニミソ】Lv.48(♂)

キングラー。いじっぱりな性格。

ハナダ岬の懸賞首だったところを、報酬目当てのマイに捕獲された。とても凶暴な性格で、最初はマイの言うことを聞かなかった。当初は敵の攻撃は全て受け切って相手を倒すというスタンスだったが、他のポケモン達を見習って躱すということを身につけた。しかし、躱すための速さがないため、氷のフィールドで戦わなければそれは出来ない。新入り達の教育期間中に氷のフィールドでの戦闘の特訓を行った。

また、新入りのカーリィとはライバル関係にある。

戦闘スタイルは、巨大な左腕による"クラブハンマー"と中距離から放たれる"はかいこうせん"。さらに、素早さの低さを補うための氷のフィールド上での戦闘だ。

技:"クラブハンマー"

      "はかいこうせん"

      "ふぶき"

      "ハサミギロチン"

      "かたくなる"

      "あわ"

      "なみのり"    

勝率:6勝1敗2分け▶︎66.7%

戦闘は得意で、戦闘数は多い方だが7割を上回ってはいない。しかし、敗北や引き分けの相手は実力はカニミソやマイより圧倒的に上の人間が多かったため仕方ないと言える。

ポケモンリーグ予選では、グリーンにあっさりと氷のフィールドを破られてしまった。今後も成長の見込みがあるポケモンだ。

 

 

【トリ】Lv.35(♂)

オニドリル。やんちゃな性格。

ニックネームは「鳥」だから「トリ」

マサキを襲ったところを、レッドとマイのコンビによって捕獲。戦闘に出されることは少ないが、加入後は飛行要員として酷使される他、ラフとのコンビプレイ等で活躍した。

技:"ドリルくちばし"

      "こうそくいどう"

      "すてみタックル"

      "そらをとぶ"

勝率:1勝2敗▶︎33.3%

戦闘数が少ないため、それに伴い勝利数も少ない。敗北時の戦闘相手はどれも弱点を突かれる相手だったため、相手が悪かったと言えるだろう。

ポケモンリーグ予選では、戦績の悪さなどを加味されてボックス行きとなる。しかし、ポケモンリーグまでマイを運んだのはトリなので、トリは飛行要員としてこれからもマイの旅を支えてくれるはずだ。

 

 

【先生】Lv.63(♂)

ベトベトン。のうてんきな性格。

ニックネームは、あまりにも強過ぎる故に尊敬の意を込めてマイはそう呼んでいる。

タマムシ郊外でマイたちとばったり会い、そのまま戦闘となり、偶然捕まえた。圧倒的な防御力と高い攻撃力が売りのポケモンだが、ポケモンリーグにてその防御力の秘密が明かされる。本来はベトベター並の大きさだが、それをコンプレックスに思っているらしく、体の半分以上は自然のヘドロで出来ていた。そのため、攻撃を喰らっても本体にダメージはあまりないのだ。

その体質を活かして、無人発電所の爆発の際にはマイを覆って外へと脱出するという芸当も見せた。

技:"だいもんじ"

     "かみなり"

     "はかいこうせん"

勝率:4勝2敗▶︎66.7%

加入した時期が遅かったため、意外にも戦闘数は少ない。しかし、安定した強さを誇っているため、マイにとっては頼れる存在であり、手持ちの大黒柱である。

 

 

 

これ以降のポケモン達は、R団のポケモンとしてトキワの森に放たれていたところを、マイによって捕獲されたポケモン達である。

 

 

 

【カーリィ】Lv.46(♂)

カイリキー。ようきな性格。

ニックネームは種族名からとって「カーリィ」

ワンリキー系統の兄貴分として、弟分であるワンリキーやゴーリキー達を纏めている。捕獲後すぐはマイに心を開かなかったが、カニミソとの戦闘を経てカニミソをライバル視し、その流れでマイにも心を開いた。

時間があればカニミソと勝負するか、自主練に励んでいる。自分の筋肉に自信を持つ、ナルシストな一面もある。

他のワンリキー系統と違い、体が柔いことが特徴。また、人間の技を目で見て覚えており、柔道なら体で教えることは可能。弟子はマイのみ。

技:"からてチョップ"

      "じしん"

勝率:1勝0敗▶︎100%

戦闘描写があるのは一戦のみ。あまり当てにならない戦績だが、カニミソとライバル関係になれる実力は持っているので、中々の戦闘力だと思われる。

まだまだ戦闘能力は未知数のポケモンだ。

 

 

【リッパー】Lv.49(♂)

スリーパー。すなおな性格。

自分の欲望に素直な、スリープ系統の長。

教育1日目でマイに扱かれ崇拝しだす。所謂ロリコン、そしてドMだ。1日目終了後、マイを夜這いしようとマイの部屋に忍び込むが、ネギとカニミソに叩きのめされた。それ以降も何度か試したが、最近ではマイが柔道技を覚えたことで、中々上手くいかずにいる。

技:"さいみんじゅつ"

      "どくガス"

      "サイコキネシス"

      "テレポート"

戦績:1勝1敗▶︎50%

まだ戦闘数が少なく、戦闘能力はよく分からないが、マイのポケモンではレベルは高い方。

"テレポート"を使用して移動に用いたり、覗きに用いたりする。

 

 

【ゲンム】Lv.49(♀)

ゲンガー。気まぐれな性格。

ニックネームは種族名と覚えている技の"ゆめくい"の夢からとったもの。某神とは何も関係ない

ゴース系統のまとめ役

いつもフワフワと浮かんでいるゆるふわ毛皮ガール。ただし、浮かんでいるのは起きている時だけで、寝ている時は地面にいる。寝ていることが多く、気が付けば寝ているような女の子。そんな性格をしているが、ゴース系統のポケモン達は皆彼女を慕っているので、ゲンムの主であるマイには一切手出しはしない。

マイの指示を聞かずに"ゆめくい"をするのは、他人の夢を食べたいからである。

技:"さいみんじゅつ"

     "ゆめくい"

     "10万ボルト"

戦績:1勝1敗▶︎50%

自分は睡眠をとることが多いが、相手を眠らせる"さいみんじゅつ"を使うことが多い。そしてそこから"ゆめくい"をすることが彼女にとっては理想の戦闘スタイル。

力量も高く、ゲンガー自体のスペックも高いため、リーグでは手持ちに加えられた。

 

 

 

これ以降のポケモンは、R団のポケモンとして捕えられたが、ポケモンリーグではボックスに預けられていたポケモンである。

 

 

 

【カンタロー】Lv.50(♂)

ケンタロス。いじっぱりな性格。

ニックネームは種族名を模したもの。

R団のポケモン達の総リーダー。

マイのことはあまり信用していないが、リッパーやゲンムの姿を見て、心を開きつつある。

ポケモンリーグ予選に連れて行きたかったが、未だ信頼関係は充分に築けていない、監視役として研究所に配置しておきたかったということでボックスに。

 

【キンタロー】Lv.42(♀)

ケンタロス。いじっぱりな性格。

ニックネームは種族名を模したもの。

R団のポケモン達の総副リーダー。

マイのことは気に入っておらず、マイのスパルタ教育の最中でもマイを狙って攻撃することがある。しかし、どれもマイの手持ちによって防がれてしまう。

 

【イチロー】Lv.40(♂)

ゴローニャ。ようきな性格。

ニックネームは種族名を模したもの。

イシツブテ系統の親分である。

自分達を真っ当な道へと引き込んでくれたマイに対して恩を感じており、命令とあらば自爆することも厭わない。

 

【マター】Lv.41(♂)

マタドガス。まじめな性格。

ニックネームは種族名を模したもの。

ドガース系統のまとめ役。

同じどくタイプの「先生」に憧れを抱いており、追いつこうと必死に特訓している。しかし、ドガース達の中にはイタズラ好きが多く、他のポケモンにちょっかいをかけてすぐ問題を起こすため、あまり集中できずにいる。

 

【バット】Lv.37(♂)

ゴルバット。やんちゃな性格。

ニックネームは種族名から取ったもの。

ズバット系統のまとめ役。

ボールから外へ放たれると、暗い場所や影に隠れる。洞窟の中や暗い森の中などへ行くと、群れで行動して飛び回る。

 

【リュウ】Lv.32(♀)

ミニリュウ。おくびょうな性格。

ニックネームは種族名から取ったもの。

R団ポケモンでは珍しく、仲間がいないポケモン。

リッパーやゲンムのマイと絡む姿を見て、野生本能を抑えた。のんびりしていることが多いが、揉め事が起きるとスグどこかに隠れてしまう。

 

【ホーリル】Lv.54(♂)

サイドン。ゆうかんな性格。

ニックネームは「ホーン」と「ドリル」を組み合わせたもの。

R団ポケモンでは珍しく、群れがいないポケモン。しかし、ホーリルは気にしてはおらず、一人で特訓している事が多い。

本来はポケモンリーグ予選に連れていく予定だったが、他のポケモン達が起こした揉め事を止めた際にダメージを受けてしまい、カーリィと交代する形でボックス行きに。

とても義理堅く、そして本人も耐久に優れている。マイのことはとても信頼している。それは彼の進化した際のエピソードにあるが、ここでは割愛する。

 

【ボアー】Lv.33(♀)

アーボック。のんきな性格。

ニックネームは種族名から取ったもの。

アーボ系統のボス。しかし、ボスというよりは、アーボ達が勝手に崇拝しているだけで、本人はアーボ達を下僕としか見ていない。

自分では戦闘はしようとはせず、アーボ達が戦うのを補助技で援護するだけである。

マイのことは気に入っているが、使えるものとして見ている部分もある。

 

 

 

 

 

 

 




R団ポケモン達のチョイスについて色々。
基本的にはR団が使用したポケモンを使っていますが、サワムラーやビリリダマ、ヤドンなど捕獲していないポケモンもいます。ビリリダマ系統、及び炎ポケモンは森にいたら燃やしかねないな...という理由で排除。ヤドンは他の小説でよく見かけるので()。
その他のサワムラーやディグダ、ニドラン系統やベトベトンは、増やし過ぎると作者の脳が追いつかない(既に追いついていない)というのと、増やし過ぎても出番がないから、という理由で出してはいません。


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第二章
vsサンドパン 『不穏な旅立ち』


お気に入り98件ありがとうございます( _ _)
今回から2章の始まりとなります

1/23 誤字報告ありがとうございます( _ _)


 

 

 

 

 

「"はなびらのまい"!」

 

ナゾノクサがくるりとその場で回ると、幾つもの巨大な花弁がナゾノクサから放たれる。花弁達は相手のカイロスを囲い込み、動きを制限した。

 

「花を"きりさく"んだ!」

 

相手のトレーナーは花弁を"きりさく"ように指示。しかし、攻撃と対象の数が釣り合っていないようで、処理が追いつかないカイロスは続けざまにダメージを受けてしまった。

 

「カイロス!!」

 

カイロスが片膝を着いたところで花弁が斬られたり焼け焦げたりして勝負は強制終了される。カイロスを使ったトレーナーは、相手トレーナーの元へ走りアドバイスを求めた。求められたトレーナーは、自分の考えを相手に伝え、ナゾノクサをボールへと戻し休ませる。

 

「ライ、ネギ、ありがと」

 

勝負を終わらせたポケモンを褒めたのはマイ。前回のポケモンリーグで予選敗退したが、実力はトップレベルだったポケモントレーナーだ。

彼女は今、ジムリーダー無き町トキワシティでポケモンバトルをしている。

 

━━━━━━━━力量は全体的に上がってきたけど、街を守れるほどじゃないな...

 

勝負を終え、ベンチに腰を掛けながらそう感じたマイ。彼女がこの街でポケモンバトルをしている理由は、街のポケモントレーナーの力量を上げるためだ。2年前、トキワの森に凶暴なポケモン達が溢れかえった際にこの街の人間は処理を渋っていたらしい。聞けば凶暴なポケモンに対抗できるほどの力量を持ったトレーナーがいなかったそうだ。それを聞いたマイは、1年半程前からトキワシティを拠点として活動するようになったのだ。

 

「ん?どうしたライ」

 

ぼぉっとしていると、彼女の新たな手持ち、ライチュウことライがマイの元へ歩み寄ってきた。ライの後ろにはポケモントレーナーが立っている。マイに挑戦するつもりのようだ。

マイはベンチから立ち上がり、ライチュウと共に開けた場所へと挑戦者を誘導する。ライチュウは移動中に軽く体を動かしており、戦闘する気満々だった。開けた場所へやってくると、ライチュウはスグに戦闘の構えを取る。選択肢を無くしたマイは、挑戦者に話し掛ける。

 

「私はこのライチュウで戦うけど、貴方は?」

 

「でんきタイプ相手ならじめんタイプ!行けっ!サンドパン!!」

 

挑戦者はサンドパンを繰り出した。トレーナーもサンドパンもやる気満々、準備万端のようだった。マイの方も勿論準備万端のようで、勝負を開始する。

 

「先攻どうぞ。」

 

「うし、じゃあ"じしん"!」

 

挑戦者の先制攻撃で勝負が幕を開ける。攻撃は"じしん"、ライチュウには効果抜群で尚且つ高威力の技だ。しかし、マイは落ち着いて対処する。

 

「"でんこうせっか"」

 

ライチュウは電光石火の速さでサンドパンの懐へと突っ込んだ。"じしん"のダメージは多少受けてしまったが、それと同等以下のダメージをサンドパンは受け、後ろへと吹っ飛びかける。しかし、ライチュウがそれを許さず、その細長い尻尾でサンドパンの体を掴んだ。

 

「"みだれひっかき"で隙作って逃げろ!!」

「"メガトンパンチ"...って、早い」

 

挑戦者が指示を飛ばす、よりも先にライチュウは"メガトンパンチ"を連続でサンドパンに叩き込んでいた。マイの指示の「メ」という単語を聞いただけで行動に移し、相手に次の行動を悟られる前に攻めたのだ。

 

━━━━━━━━一方的な勝負は避けたいんだけどな...

 

勝負はほぼ決したようで、マイは反省点を感じる余裕が出来た。フィールドを見ると、ライチュウは既にサンドパンを離しており、サンドパンはヘトヘトの状態で座り込んでいた。

 

「戻れサンドパン...ありがとうございました。」

 

声を掛ける間もなく挑戦者はポケモンセンターへと走って行く。やってしまったという後悔に包まれるマイだったが、胸を張ってコチラへやってきた。あまりにも堂々としていて怒る気力も失せたマイは、遊びに出掛けた手持ちのポケモンを待つことにした。

 

 

 


 

 

 

「ビー、こっち」

 

数分もしないうちにマイの新たな手持ち、ビードルがマイの元へと寄ってきた。ビードルは眠たそうにしており、マイの膝に乗るとスグに寝てしまった。

 

━━━━━━━━いつもなら五月蝿いんだけどな

 

いつもより静かなビードルに寂しさを感じながら、マイは気紛れにオーキド研究所へと行くことにした。理由といえば、単純に暇だからである。

 

「オーキド研究所、行くよ。」

 

トレーナーの気紛れに付き合わされるポケモン達だったが、文句を言うものはいなかった。一匹を除いて、だが。

 

「リュウは残る?」

 

暴れるボールを抑え、マイは中に入っているポケモンに質問をした。中に入っているミニリュウは、その問いに首を縦に振って答えた。

 

━━━━━━━━研究所居たくないんだろなぁ

 

研究所に預けているポケモン達を思い出し、マイはミニリュウの意見に納得するのだった。そしてマイは、このミニリュウを預けられそうな場所へと頼みに行くのだった。

 

 

 


 

 

 

「そういうことなら構わないよ!マイさんの頼みならお易い御用さ!」

 

「それは良かった...お願いします」

 

マイはトキワシティ市長ナスタ宅へとやって来ていた。ミニリュウを預かってもらおうと交渉しに来たのだが、あっさり了承して貰えた。その後、彼の甥に当たるミツルと少し話してトキワシティを後にした。

 

トリに掴まれどのくらい経っただろうか、トリの全力疾走のお陰で案外早く着いた。研究所の敷地内へ入ると、真っ先にスリーパーがマイに抱きつこうと飛び交ってきた。マイはそれを片脚を後ろへズラして回避、ライチュウの"メガトンパンチ"を叩き込ませることで少しの間動きを封じた。

 

「ライ、遊んでていいよ。」

 

倒れたスリーパーを指差し、マイはライチュウにそう告げると研究所の中へと入った。入る際に、その他の手持ちも外へ放した。そのうちカモネギとビードル、ナゾノクサはマイに付いてきた。

研究所屋内に入ると、オーキド博士が机に突っ伏していた。何やら考え事をしているようだったが、マイの存在に気付くとスグに反応してくれた。

 

「ちょうど良かった。連絡しようと思っとったところじゃ。」

 

「どうかしたんですか?」

 

「実は、レッドが行方不明になっておっての...さっきピカだけが帰ってきたんじゃ。ボロボロでな。」

 

「っ、ピカはどこに?」

 

「レッドを探しに出たよ。麦わら帽子の少年が来ての、知り合いらしいから一緒にな。」

 

「麦わら帽子の少年...?と、とりあえず私も探しに行きます。先生とカニミソのボール用意しといてください」

 

「ん?ベトベトンならブルーに貸したんじゃないのか?」

 

へ?と素っ頓狂な声を出してしまうマイ。自分のポケモンを他人に貸した覚えなどない。ましてや自身のポケモンで最もレベルを、だ。

 

「じゃあ代わりにホーリルを...」

 

ブルーの行動に疑問を覚えたが、本人に問いただすより先にレッドの方が大事なことだ。次にレベルの高いサイドンを研究所の中から探してみると、外で巨大な爆発が起きた。急いで外へ出てみると敷地内の一部では大量のポケモンが倒れている。

その爆発の中心にはキングラーとライチュウがいがみ合っている。そしてその付近にはケンタロスを初めとしたマイの主力達が倒れている。恐らく、彼等2体の喧嘩を止めに入ったのだが返り討ちにあったのだろう。そしてゴローニャ達イシツブテ系統は自爆をして止めようとした...しかし、本人達には効かず、止めに入ったポケモンや野次馬していたポケモンにはダメージが入ってしまった、と。

 

「...最っ悪だ」

 

なぜこのタイミングで問題が起きるのか、マイはこの怒りを2体にぶつけたかったが仕方ない。早くレッドを見つけなければいけないのだ。

 

「倒れてないのは...!」

 

倒れていないポケモン、というよりダメージを受けていないポケモンを探してみると、マイと共に研究所に入った三体と喧嘩をしている2体と力量が低いのが数匹...ではなかった。敷地の隅で倒れているスリーパーもいた。

 

「...みんな、行くよ。」

 

状況を把握している三体は頷きボールへと入る。喧嘩している二体に関してはマイに一蹴りされ、オーキドから渡されたボールに入れられた。

 

「博士、レッドが最後にどこへ行ったか分かりますか?」

 

「わからん...この挑戦状には何も書かれておらん。」

 

そう言ってオーキドはレッド宛の挑戦状をマイに渡した。差出人は志覇。

 

━━━━━━━━志覇...シバ?

 

「シバ」というトレーナーの名前にマイは心当たりがあった。マイの前世、その記憶によればカントー地方の四天王の一人、ジムリーダーをも越える実力者の一人だ。

 

━━━━━━━━R団幹部の件もある...四天王が悪になりうる可能性も捨てきれない

 

「リッパー起きて、とりあえず北方面に"テレポート"して、今すぐ!」

 

挑戦状を博士に返したマイはスリーパーを蹴り起こした。起されたスリーパーは状況をよく飲み込めていなかったが、マイのどこか焦った表情に押され"テレポート"をする体勢に入った。

 

━━━━━━━━レッド...!

 

目を瞑り、しっかりとスリーパーに捕まったマイは力強く彼の名前を心の中で叫んだ。

しかし、彼には届かない━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 



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vsジュゴン 『解き放て』

文字数が安定しなくなってきました(ˇωˇ)


 

 

 

 

 

 

 

「...名を聞いておこう!」

 

━━━━━━━━見えた!

 

トキワの森上空、ひたすら"テレポート"を繰り返し、マイはやっと麦わら帽子の少年を見つけた。少年は一人の男と共にドードーに跨り、ジュゴンに跨った女性に追い掛けられているようだった。

 

「...トキワグローブ。イエロー・デ・トキワグローブ!」

 

少年は名を名乗るが、それで攻撃の手は休まる訳では無い。女性のジュゴンは"れいとうビーム"を少年の行く手を防ぐように放つ。

 

「"どくガス"」

 

少年と男性の姿を消すために"どくガス"を頭上から放つが、"オーロラビーム"で簡単にかき消された。少年は誰だと空中を見上げるが、もう既にそこにはいなかった。

 

「初めまして、四天王の...」

 

空中にいたはずの人間は、いつの間にか自分の前へと現れたように少年は見えた。"テレポート"で移動したマイは息を整える時間を作る為の行動をとった。幸い、相手は乗ってくれたようで、マイは戦闘態勢に入れた。

 

「カンナ、よ。こちらこそ初めまして?前回のリーグ予選敗退者の...誰だったかしら。」

 

「マイ...!」

 

『予選敗退者』という言葉にマイの心はピシリとヒビが入ったような感触を覚えた。ヒビが割れ、そこから流れ落ちるように怒りが流れる、それも感じ取った。

 

「よ、よぉマイ。久し振りやな。」

 

そう言って麦わら帽子の少年、イエローの背後から声を掛けるのはマサキ。ポケモン評論家で、マイの知り合いだ。マイはマサキを確認すると、ボールを一つ取り出しキングラーを出した。

 

「カニミソ、"ふぶき"で舟作って。」

 

キングラーはマイの指示通りに簡単な舟を作り、"クラブハンマー"で傍の川へと押しやる。

マイはマサキに舟で逃げるように指示、しかしカンナはそれを見逃す訳もなく、"オーロラビーム"で壊しにかかった。

 

「ライ、"10万ボルト"。マサキ、とイエロー...?ここは任せて行きなよ。レッドを見つけて、さっさと、早く!」

 

「は...はい!」

 

マイの気迫に押されてか、イエローはドードーに乗ったまま舟へと乗り、釣竿をオール代わりにして急いで脱出する。

脱出の一部始終を見送ったマイは、改めてカンナと向き合う。カンナはイエローを追いかけようとするが、そうはさせない。

周囲はカンナによって氷のフィールドが完成されている。これは、キングラーの舞台だ。

 

「カニミソGO!」

 

キングラーは氷のフィールドへと乗り、滑るようにしてカンナへと近づく。キングラーだけではなく、ライチュウも負けじと"でんこうせっか"でカンナに接近する。2体の登場によりカンナはイエローを追えず、マイと戦闘を行うことになる。

 

「"クラブハンマー"、"10万ボルト"!ネギラフ飛翔"しびれこな"!」

 

次々にポケモンに指示を出すマイ、しかし相手は四天王。カンナは冷静に対処する。"れいとうビーム"で新たな壁を作り、キングラーとライチュウの攻撃を妨害、さらにダメージを与える。

 

「あなたの目的は何かしら?イエローとは初対面のようだったけれど」

 

「レッドの救出、アイツとは利害の一致の協力!!」

 

"オーロラビーム"で簡単に跳ね返される"しびれごな"に対してイライラを隠しきれないマイは、自分も戦闘に参加しようとスリーパーに"テレポート"を指示。しかしスリーパーはマイの安全を考慮してか、行動には移さなかった。マイはそんなスリーパーに怒りを覚えたのか、横に押し退けて戦おうとするがスリーパーに止められる。

 

「ポケモンに諭されるなんて未熟ね...」

 

マイの行動を揶揄するカンナに、またマイはヒートアップする。そんなマイを止めようとスリーパーは必死に彼女を抑えるが、カイリキーの元で修行したマイを止めるにはパワーが足りなかったようだった。

そんなことには全く気付かずにライチュウとキングラーは氷を崩しては進むという作業を繰り返していた。指示が無ければ本能のままに動くしかない獣、当然知恵ある獣に蹂躙される。

 

「哀れね、主がこれじゃポケモンの力量もたかが知れてるわ。リーグ優勝者はまだ冷静に戦えたわよ?」

 

「っ、カンナア゙ア゙ァ゙!」

 

荒れる、マイの心は荒れる。敵の言葉は全て煽りに聞こえる。存在が自分を嘲るように見下している。マイの心は、燃える。

 

「っ、」

 

そんなマイが吹き飛んだ。吹き飛ばされた。"かまいたち"を撃ち込まれたのだろうか。起き上がって見てみると、目の前にはクキを持って浮かんでいるカモネギ。見下すようなそして真っ直ぐな目でマイを見つめている。

そんなカモネギから目を逸らし、マイは不貞腐れるように呟いた。

 

「...ビー、おいで。」

 

マイは立ち上がってビードルをボールから出す。ビードルはボールから放たれると、独自のリズムを刻みながらマイの頭の上に乗っかった。

マイは一呼吸置いてカモネギの足に掴まった。カモネギは特に抵抗する素振りも見せずに飛び上がる。

 

「カニミソ"なみのり"!"ライも乗っかって突っ込んで!」

 

空中から指示を繰り出すマイ。2体の戦闘バカはマイの指示に従って動く、その姿はまるで傭兵のようだった。

 

「リッパーおいで!"テレポート"、カニミソのとこ!ラフは上から"どくどく"!」

 

カモネギから離れ、スリーパーに抱き着く形で着地するとキングラーの元へ"テレポート"した。さらにそこからまた"テレポート"、その先は

 

「っ、"れいとうビーム"!」

 

カンナの目の前。カンナは反撃するには遅かったようで、ジュゴン諸共波に飲み込まれてしまった。さらに波の上から"どくどく"を撃ち込まれる。"どくどく"は水にジュースを零したように拡がり、カンナもジュゴンも'どく'状態に侵されたはずだ。

マイは"テレポート"で一旦距離を離し、相手の出方を伺うことにする。疲れたのか、傍の木に身を預けた。

 

「なっ、これは...!」

 

その時、マイの右腕に異変が起こった。氷で出来た枷が、気づいた時にはマイの右腕に取り付けられていた。傍の木に縛り付けられる形で付けられており、どう引っ張っても外れない。いつの間に、とマイは波に飲まれたカンナの方を見るが、波は凍らされ、ずぶ濡れのカンナとジュゴン、そしてルージュラが波の上にいた。カンナは'どく'に侵されている影響か、ジュゴンに体を預け、なんとか立っている状態だった。

 

「はァ...毒に"しびれごな"も...混ぜていたのかしら...?指先がもう動かないわ...」

 

「"10万ボルト"、"はかいこうせん"、"かまいたち"、"サイコキネシス"!」

 

「"ちょうおんぱ"!」

 

倒すなら今しかない、とマイは主力ポケモン達に攻撃を命令する。しかし、なんとか腕を動かしパルシェンをボールから放つと"ちょうおんぱ"による妨害で攻撃を逸らすことに成功。さらにマイ達の隙を作ることにも成功した。

しかし、毒の影響かカンナは嘔吐物を吐き出し、その場に倒れてしまった。ポケモン達は主の隙を突かせまいと攻撃をするが、数の有利でマイ達の方が優勢だった。

トレーナー双方なんとか立ち上がろうと踏ん張る。先に立ち直ったのはマイだった。

 

「リッパー"テレポート"ビー連れて。ビー、"いとをはく"をトレーナーに。ネギラフ飛翔から"ねむりごな"、ライとカニミソは2体の援護!」

 

マイの指示により、ポケモン達は一斉に動き出した。上空から、側面から、近距離から攻撃する3方向に分かれ一斉攻撃だ。

だが、カンナはこれを待っていたとボールを投げる。中から放たれたのはラプラスだった。

 

「"ハイドロポンプ"よ」

 

ラプラスの射線上には、拘束されたマイがいるだけだった。つまり、壁になるものは何も無い。鋭い水圧の砲撃がマイ目掛け放たれる。当然マイは避けきれる訳はなく、マイと共に繋がれていた木は貫かれ、メキメキと嫌な音を立てて倒れてしまった。

 

「ゔ...ゔがぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!」

 

しかし、マイは貫かれてはいなかった。マイに砲撃が迫り来る直前で、スリーパーが"テレポート"を使用してなんとか救出した。マイの体だけ、だが。

無理矢理引きちぎる形になり、無くなってしまった右腕の切り口を抑えながら、マイはなんとか立ち上がろうとする。しかし、足に力が入らず倒れてしまった。

 

「ふっ...いい気味、ね...」

 

カンナの負け惜しみも含めた煽り言葉が、マイの手持ちを刺激させた。怒りがきっかけか、ビードル、そしてナゾノクサの体が震え始める。

 

「進...化...?」

 

マイの予想通り、2体のポケモンは進化するのだ。進化の前兆、カンナは目に見える強化を見過ごす訳がなかったが、また嘔吐してしまい、正確な指示が出せなかった。しかしポケモン達は理解しているようで、"れいとうビーム"や"ちょうおんぱ"で妨害しようとする。だが、キングラーの"クラブハンマー"やライチュウの"メガトンパンチ"、カモネギの"きりさく"がラプラスとジュゴン、ルージュラを襲う。パルシェンに対しては、スリーパーが"テレポート"を使って遠くに追いやった。進化に気を取られた三体のポケモンは、意識から消えていたポケモンの攻撃を喰らってしまい、妨害に失敗してしまう。

 

「っ、ラフ!」

 

ナゾノクサが進化し、クサイハナになった。マイはこの時の為に買っておいた『リーフの石』をクサイハナ目掛けて投げる。利き腕ではない左腕で投げたが、"はなびらのまい"を上手く使ってクサイハナは自分の元へと運び、石に触れた。石に触れた途端、また体が震え、一回り大きいサイズへとなり、頭の蕾は一気に開いた。

 

「ラフ、"はなびらのまい"!」

 

ラフレシアになった事により、"はなびらのまい"で発生させることのできる花弁の枚数が幾倍も増えた。それは姿を隠すことが出来るほどに。"はなびらのまい"の花弁が消え失せると、マイはそこにはもういなかった。

 

 

 


 

 

 

「フェフェフェ、逃げられたねぇカンナ。」

 

毒に侵され倒れたカンナの元へ、一人の老婆が歩み寄る。彼女はキクコ、カンナと同じ四天王の一人で司る力は(ゴースト)。キクコは手持ちのゴーストに指示をして、カンナが侵されている毒を吸い取らせた。

カンナの体内を蝕んでいた毒はみるみるうちに消え去ったが、疲労からかカンナは未だ目が覚めない。

 

「さて、どこに行ったのかねぇ...」

 

ゴーストポケモン達に辺りを捜索さているが、見つかったという報告はない。"テレポート"で移動できる範囲などたかが知れてるはずだが、とキクコは頭を悩ませていた。

 

 

 


 

 

 

「ん...ここは、知らない天井だ...」

 

カンナとの戦闘からどのくらい経っただろうか、目が覚めたマイは体を起こそうとする。しかし、体が動かない。というより、フラフラとして力が入らなかった。

 

「あら、やっと起きたの?」

 

聞き覚えのある声が耳に入り、マイはそちらの方へと顔を向けた。茶髪のロングに黒のワンピース、年齢はマイと同じ程度。2年前、シルフカンパニーでR団と戦闘をした際にマイと共に侵入した人間が、そこにいた。

 

「ブルー...?」

 

ブルーはそうよと頷き、隣の椅子に腰掛けた。ここでマイは辺りの様子を確認する事にした。部屋は広く、研究室のような雰囲気が感じ取れる。マイは部屋の端のベッドで寝かされているようだった。

 

「...ブルーの、家?」

 

口がはっきりと動かなかったが、なんとかマイは言葉に出来た。ブルーはそれに対して顔を横に振って否定した。

 

「アタシじゃなくて、あの人よ。」

 

そう言ってブルーが指差した先にいたのは、せっせと何かを作っている老人。一瞬見えたその横顔は、マイの消え掛けていた記憶を呼び戻した。

 

「カツ...ラ?」

 

名前を知っていたのか、と名を呼ばれた老人、カツラはマイの方を振り向いた。

 

「よく知っていたね。グレンタウンジムリーダーのカツラだ。」

 

「初め、まして。マイです...」

 

カツラはブルーにマイのことを任せ、また作業へと戻った。何かを作っているようだが、マイの位置からは何も見えない。 

 

「ね、なんでここに...?」

 

「なんでって、アンタがアタシのとこに"テレポート"してきたから急いで運んできたのよ。義手を作ってくれそうな技術者の元へ。」

 

━━━━━━━━リッパーか...

 

「あなたのベトベトンほんと凄いわね。隠密行動が上手くいって、なんとか包囲網を抜けられたわ。」

 

義手、というワードを聞いて、マイは自分の右腕のことを思い出した。右腕を上げてみると、傷口は炙られており、傷口は塞がっていた。腕は肘から手にかけての部分が無くなっており、マイは変な感覚に陥っていた。

 

「さて、恐らくこれで大丈夫だろう。」

 

そう言ってカツラは、マイの腕に合わせるように義手の確認をする。義手は鉄製で銀色に輝いていたが、スプレーで塗れば隠し通せそうだった。

 

━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 



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vsゴース 『切り裂け』

お気に入り104件ありがとうございます(o_ _)o
マイちゃんの義手についてですが、今は長袖シャツと手袋で誤魔化しています。このことを知っているのはその場に居合わせた人間とポケモン達のみです。
今回から段落下げを導入しました。以前よりも見やすくなっていると思います。


 

 

 

 

 

 

 

「タマムシシティ...来たのは2年ぶりかな」

 

 夜の蒼が深く染まった頃、マイはタマムシシティへとやって来ていた。カツラ曰く、レッドが見つかったそうで、マイはカツラとは別ルートでタマムシシティへと移動してきたのだ。といっても、カツラが連絡するよりも早く、マイはグレンタウンを後にしていたのだが。

 やって来たのはいいものも、辺りには誰もおらずレッドがどこにいるのか分からない。

 

「ライ、人が多いとこ分かる?」

 

 スリーパーの"テレポート"で探すことも考えたが、それよりもライチュウの尻尾のレーダーで人が多い場所を探す方が早いと考えた。ライチュウは尻尾の先をプラグのように地面に挿し、タマムシシティで人口密度が多い場所を特定する。

 ライチュウは尻尾を地面から離すと、街の方を指差した。

 

「リッパー"テレポート"、街中にね。」

 

 ライチュウをボールへと戻すと、スリーパーの肩に跨ってマイは瞬間移動する。転移先は街中だ。

 

 街中へと移動すると、誰かと誰かが戦闘をしているところのようだった。ビルの屋上から見た限りでは、片方はあのイエローのようだった。

 

「押されてるな...コラッタとドードーがボロボロだ。ネギ、ビーを連れて相手を見つけて、ビーは"いとをはいて"拘束。GO!」

 

 カモネギと、進化したコクーンを上から送ったマイは、イエローが今手を焼いている"ほねブーメラン"を止めるべくカイリキーと共に地上へと飛び降りた。

 

 下へ行くにつれて"いやなおと"が耳を刺激する。ライチュウをボールから出して"10万ボルト"の電撃を誰もいない場所へと放ち音を相殺した。

 

「受け止めて」

 

 カイリキーはイエローの前に立ち塞がると、綺麗な曲線を描いている"ほねブーメラン"を片手でキャッチした。

 イエローは突然の助っ人に驚きを見せたが、誰だかが分かると緊張の糸が途切れたように足の力が抜け倒れてしまった。

 

「っと、大丈夫?」

 

「すいません...」

 

 イエローの腕を掴み、肩を貸してなんとか立たせた。マイはイエローのポケモン達をボールへと戻させ、カモネギとコクーンを待つことにした。フラフラのイエローをどこで休ませようかと場所を探していると、カモネギが一人の男と三匹のポケモンを引き摺ってやってきた。ポケモンはペルシアン、パラス、カラカラだ。

 

「ん、ピカ」

 

 さらにもう一匹、イエローが預かっているというレッドのピカチュウがこちらへと走ってきた。ピカチュウは拘束された男を見ると、放電を始める。さらに、ボールに入れたばかりのドードーとコラッタが出せと暴れ始めた。

 

「...ネギ、気絶させた?」

 

 その問いにカモネギは首を横に振って答えた。ならいいか、とマイは2匹を外へと解放する。

 解放された2匹は、ピカチュウから離れた廃ビルの元へと駆け寄り、コラッタはビルを削り、ドードーはそのビル片を蹴り上げる。

 

「ピカの電撃が理科系の男にダメージを与えてないってことは、絶縁スーツ辺りか。ビー、糸を離して」

 

 コクーンに糸を離させると、マイは彼らの行動を見送った。イエローを傍の芝生に寝かせると、遠くから岩を引き摺る音が聞こえてきた。

 そちらの方角を見ると、イワークがのそのそと移動してきた。イワークの背には誰か乗っているようだった。

 

「久し振りだな、マイ。」

 

「タケシ」

 

「私もいるわよ!」

 

「カスミ」

 

 イワークに乗ってきたのは、ニビジムジムリーダータケシ。さらにハナダジムジムリーダーのカスミも、スターミーに乗ってやって来ていた。

 さらに遅れてクサイハナを連れたタマムシジムジムリーダーのエリカも、そしてカツラもやって来た。

 

「初めまして、タマムシジムリーダーのエリカと言います。オーキド博士からお話は伺っております、私たち『正義のジムリーダーズ』と敵は同じ、仲間です。」

 

 エリカはマイの緊張を解くように握手を求める。マイはそれを断わる理由などなく、握手に応じた。

 マイは握手を終えると、地べたに座り込んでピカチュウ達の勝負を観ることにした。といっても、もう終わっていたようで幾つものビル片が磁石となって男に付いていた。あまりの重さに理科系の男は気絶したようだった。

 

 ジムリーダー達は何やら話し込んでいるようだったが、マイは混ざらなかった。というより、混ざりにいけなかった。それよりもすべきことがあると、マイの体がそう言ったからだ。

 

「ネギ、カーリィ、構え」

 

 マイはカモネギとカイリキーに戦闘態勢を取るよう指示した。何かがいる、それはカモネギも感じ取っているようで辺りを見回して警戒している。

 

「な、理科系の男の体が!?」

 

 ジムリーダー達が何やら驚いている。咄嗟に振り向くと、理科系の男の体が浮き上がっていた。彼の周囲には黒い霧が漂っており、それが無理矢理男を宙へ持ち上げているようだった。さらに霧は男の首を締めるようにして動く。

 ジムリーダー達は各々のポケモンで男を取り押さえようとするが、それよりも早くマイのカイリキーが動いた。しかし、黒い霧に阻まれ、男の体を逃してしまった。

 

「"みずでっぽう"!」

「"メガトンパンチ"!」

 

「"きりさく"!"メガトンパンチ"!」

 

 しかし、カスミのオムナイトとタケシのゴローンは攻撃技を用いて霧を破り、男の体をがっちりと掴んだ。ワンテンポ遅れて、マイのカモネギとカイリキーも同じく男の体を掴む。引き下ろそうと4匹は試みるも、霧が正体を現してそれを阻止しようとする。

 

「あれは、ゴース!」

 

「ポケモンだと分かれば話は早い。熱風圧で吹き飛ばす!ガーディ!」

 

 カツラは皆に下がるように指示し、ガーディに火炎攻撃を指示した。ガーディの火炎は曲線を描きつつゴース目掛けて飛んでいく。

 曲線の描く通り道の傍、マイは街路樹の影にポケモンがいることに気づいた。しかしこの距離で、今動けるコクーンの"いとをはく"で間に合うのか、一瞬思考が止まってしまった。

 

「いけない!木の影にポケモンが!」

 

 他のジムリーダーもスグに気づいたようだった。マイは気を持ち直して、カモネギに指示を出そうとする。しかしその必要は無かったようで、視界の端に動くトレーナーが見えた。

 イエローだった。イエローは釣竿を巧みに操ってピカチュウを木のそばへと放ち、なんとか野生ポケモン、キャタピーを救出した。

 

「ナイスピカ!」

 

 ━━━━━━━━ボロボロの体でよく動けたな

 

 マイはそう感じたが、それはジムリーダー達も同じ。各々感嘆の言葉を漏らすのだった。

 マイはポケモン達をボールへと戻し、ふぅっと息を漏らした。イエローに話し掛けるジムリーダー達を横目に、マイはコクーンに"いとをはく"を指示。理科系の男にまた面倒事を起こされては面倒だからだ。

 

 ━━━━━━━━ゴースはどこだ?

 

 先刻吹き飛ばされたゴースをマイは探し始める。ガス状なのだから遠くに吹き飛ばされていてもおかしくはないが、確実に倒しておいた方がいいだろう。辺りの草むらを捜索しようと戦闘をしていないポケモンをボールから出そうとする。

 

「なっ」

 

 しかし、マイの体は浮いた。否、飛ばされた。"テレポート"をする時と似た感覚、恐らく念の力だろう。

 

「ホーリル!」

 

 さっとサイドンをボールから出して、受け止めさせるマイ。正面を振り向くと、理科系の男がまたもやゴースに操られていた。吹き飛ばされたと思われたゴースは、実際は傍に隠れていたのだった。

 マイはカモネギをボールから出し、ゴースに"つつく"を指示した。しかし、念の力で向かい風になっているカモネギは思うように進めない。それはジムリーダー達も同じことだった。

 

「相手は霧状のポケモンだ!核を打て!」

 

 そんな時、どこからともなく声が飛んできた。さらに、それと同じくストライクも飛んできて、ゴースを"きりさ"いた。ゴースは綺麗に4等分され、力なく地面に倒れた。

 

「霧は吹き飛ばしたり引き裂くよりも、全体を統率している核を撃ち抜く。そうすれば復活を阻止できる。」

 

「「「グリーン!」」」

 

 ゴースを倒したのはグリーンだった。グリーン曰く、このゴースは四天王の一人、霊使いのキクコの差し金らしい。グリーンは2年前、キクコと一戦交えているらしく、攻撃パターンが同じだったらしい。

 この後マイは知ったことだが、この理科系の男はレッドを偽ってピカに近づいたらしい。ピカはレッドと同じ匂いのこの男にまんまと騙され、危うく連れ去られるところだったようだ。カツラのガーディの良く利く鼻を使ったところ、男がレッドの匂いを入手したのはオツキミ山だと目星がついたそうだ。

 

「...ネギ、どうした?」

 

 隣にいたカモネギの不自然さにマイは気づいた。深い感銘を受けた様子だった。思い返す限り、そんな瞬間があったとすればストライクの"きりさく"だろうか。ポケモンリーグで一度打ち合ったはずだが何か違ったのだろうか、マイは頭を悩ませる。

 

 ━━━━━━━━ゴースに"きりさく"...?

 

 答えは単純、初歩的な事だった。ゴーストタイプであるゴースにノーマルタイプの"きりさく"が効いている、それにカモネギは感慨に浸っているのだ。

 マイはその絡繰りを聞こうとグリーンに歩み寄るが、グリーンはイエローと共にどこかへ飛び立とうとしているところだった。

 

「どこ行くの?」

 

「修行をつけてもらいます!グリーンさんに!」

 

 イエローは元気に答えた。ボロボロな姿とは打って変わってやる気満々の姿だった。

 マイはそっか、と答え、グリーンに同行の許可を貰おうとする。グリーンは素っ気なく許可を出し、リザードンに乗って高く飛び立った。

 マイはカモネギの足に掴まり、淡い闇の広がる夜空へと飛び立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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vsニャース 『閑暇』

お気に入り108件ありがとうございます(*' ')*, ,)
今回はあまり話進みませんでした...


 

 

 

 

 

 

「"きりさけ"、ネギ」

 

 崖の上から降り注ぐ岩の群勢を、カモネギはそのクキを使って"きりさ"いた。クキで岩を斬り裂けるか、と聞かれれば不思議なものだが、カモネギはたしかに斬り裂いた。

 

 マイは現在、イワヤマの荒野へと来ていた。グリーンの修行場所らしい。

 グリーンもマイと同じ様に、というよりマイもグリーンと同じ様な修行をしていた。本来はストライクの"きりさく"でゴースを倒せた絡繰りを聞くだけのつもりだったのだが、グリーンは師の教えに従っただけだとあっさり返されてしまった。それでは引き下がれなかったマイだが、どう足掻いても聞けそうになかったのでポケモン達の力量を上げるため修行をすることにしたのだ。

 修行法は、上から燃えた岩を落とし対処するというもの。燃えている、つまり炎を意識していることから、ワタル対策のことだろうとマイは理解している。

 

「ネギ交代。次...ビー、やる?」

 

 疲れてきたカモネギを休ませ、次のポケモンを呼ぶ。しかし、岩を落とし燃やす役割のサイドンを除くと、コクーン以外のポケモンは疲労を回復仕切っていなかった。

 仕方なくコクーンを呼んだが、コクーンは独特のリズムでこちらへと寄ってきた。恐らくやる気があるのだろう。マイはサイドンに軽い"いわおとし"だけを指示した。

 

「ビー、"かたくな"って"どくばり"!」

 

 コクーンは全身を硬化させ、体の下半身部分から"どくばり"を放った。"かたくなる"を使わせたのは、万が一のことを考えてだが、現実は上手くいくもので岩は砕けずにコクーンに直撃した。

 岩にぶつかったコクーンは、頭上からぴきぴきと嫌な音を立てて綺麗に真っ二つに割れた。蛹の中からは黄色い影が飛び出し、縦横無尽に宙を飛び回り始めた。

 

「進化...スピアーか」

 

 マイはポケモン図鑑を開いて能力を確認する。元気一杯のスピアーは自己流ダンスを踊りながらサイドンの元へと駆け寄る。サイドンは進化したスピアーに拍手を贈った。仲間が進化したことがとても嬉しいのだろう。

 スピアーはさらにマイの他の手持ちの所へも飛んで行った。皆疲れているが、スピアーはお構い無しに自分の姿を自慢する。

 

「ビー、もっかいやるよ」

 

 ポケモン達を休ませる為、マイはスピアーをこちらへ呼び戻した。覚えた技の確認の為、サイドンにもう一度"いわおとし"を指示した。

 スピアーは軽くステップを踏み、落ちてくる岩に狙いを定めた。

 

「"ダブルニードル"」

 

 スピアーは両腕の巨大な針を構え、真上に飛び上がった。その巨大な針は岩を簡単に貫き、粉砕する。

 

「お、すごい。」

 

 飛び散った石屑から頭を守りながら、マイはスピアーを褒めた。スピアーは嬉しいようで、サイドンに"いわおとし"を再度するよう指示を仰いだ。

 サイドンはスピアーの言われた通り、"いわおとし"を連続で放つ。"いわなだれ"に似た状況になったが、スピアーはスイスイと宙を飛んで貫いて行った。

 

 スピアーの姿を見たマイは、その場はサイドンに任せてグリーンの元へと歩み寄る。グリーンは丁度休憩に入ったところのようで、近くの岩に腰掛けていた。

 

「ねぇグリーン」

 

「...何の用だ」

 

 声をかけると、グリーンは素っ気なく返した。マイはその冷たさに少し不満を感じたが、話を続けた。

 

「四天王の拠点とか分からないの?」

 

「...ある程度の目処は立っている」

 

 ならすぐそこへ行こう、とマイは言ったのだが、グリーン曰く戦力が圧倒的に足りないそうだ。本拠地へ行くのであれば、ある程度手薄になった時に行くのがセオリーなのだから、今は未だ動くときではないらしい。

 

「そっか...」

 

「なんだ、それだけか?」

 

「え?えっと...グリーンの留学してたとこって、どこ?」

 

「...師匠に会う気か?」

 

「そうだけど?」

 

 グリーンは顎に手をあて少し考えた後、この戦いが終われば教えるとだけ言い、修行を再開した。追い返される形でマイは自分の定位置へと戻った。

 定位置へと戻ると、ポケモン達は各自トレーニングに励んでいた。カイリキーとライチュウは組手をしており、その他のポケモン達は岩を処理する特訓だった。

 指示をしなくてもやってくれているので、マイは傍の小岩に腰掛けた。アドバイスでもしようかと思ったが、カモネギとサイドンを中心にそれをしているようでマイの入る隙は無かった。

 

「...暇だ」

 

 岩に両手を着いて空を見上げるが、この空いた時間は埋まらず体を地面に預けた。世界が反対に見え、視界の端にはキャタピーと接戦を繰り広げるイエローが見えた。

 さらに奥には、野生と思われるニャースが走っている。右から左へと走っているようだった。

 体を起こし、後ろを向いてマイは軽く走り始めた。標的であるニャースは木の実を咥え、岩陰に隠れて食事をしていた。

 岩陰に近づくと、マイはそろりそろりと忍び足で近づきモンスターボールを構えた。体を半身向けて、スっと左足を上げると、そのまま左足を前に着いて思い切りボールを投げた。ボールはニャースの額に直撃し、あっさりと捕まった。

 

「...」

 

 ボールを拾い上げ中を覗いてみると、ニャースは不思議そうな表情をしてマイを見詰めてきた。

 

 ━━━━━━━━言葉でも覚えさせてみるか...

 

 暇潰しの道具とでも言えばいいか、マイはニャースに言葉を覚えさせることにした。トボトボとマイは定位置に戻ったが、途中で未だキャタピーと戦闘を続けているのが見えた。

 

「...大丈夫?」

 

 とりあえず声をかけてみたが、気付いていないようだった。マイは定位置へと戻り、イエローを見守ることにしたのだが、気付けば目を瞑って寝てしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 



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vsハクリュー 『開戦』

お久しぶりです。お待たせいたしました
最近ずっとヒロアカ×仮面ライダービルドのssばかり書いていたので、ちょっとコチラを更新
お気に入り113件ありがとうございます*_ _)


 

 

 

 

 〜イワヤマの荒野〜

 

 グリーンの元で修行を始めてから数日が経った。グリーンは敵に居場所を悟られる前に拠点を移すべく、3人は解散することになった。

 グリーンとイエローは海路を通って離れるらしく、マイも同じように海路を通って離れる。

 

「じゃ、またね。イエロー」

 

「はい!マイさんもお元気で!」

 

 "なみのり"が使用できるポケモンを持ち合わせていないイエローは、近くを通る定期船までマイに送ってもらった。マイはイエローに別れを告げると、サイドンに南下するように指示を出してその場を離れるのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 〜オーキド研究所〜

 

「...で、レッドを探しには行かんのか?」

 

 南下した後、西へと泳いでグレン島を過ぎてマサラタウンへと戻ってきたマイは、オーキド研究所でポケモン達のレベルアップを図っていた。怪訝な顔をして窓からこちらを見ているオーキドに、マイはこう答えた。

 

「レッドを見つけたとしても、四天王との争いは避けられそうにないですからね。だったら戦力増強して戦いに備えた方が良いかなって」

 

 ケンタロスの"とっしん"を避けながら、マイは左のストレートで着々とダメージを与えていく。

 このメスのケンタロスは、未だマイのポケモンの中で心を開いていないポケモンの一匹で、今はこうして彼女に自分を認めさせようとしているところなのだ。

 何時もなら他のポケモン達が割って止めに入るのだが、今いるポケモンの大半はカイリキーとサイドン、ライチュウの三匹によるスパルタ教育を受けている。飛行ポケモンであるゴルバット系統のポケモン達は、カモネギと空中戦の特訓をしていた。

 そのような日々を、彼女等は数日送ることとなる。

 

 

 

 


 

 

 

 それから数日、修行を終えたポケモン達はオーキド研究所の傍でスヤスヤと眠っていた。トレーナーであるマイは、グリーンから送られてきた手紙を読み上げていたところだった。

 

「スオウ島、ねぇ」

 

 グリーンの手紙には、スオウ島へ行くという旨が書かれていた。修行の際にグリーンが言っていた大凡の目処とは、恐らくこの島のことだろう。マイはゆっくりと立ち上がって、手持ちの状況を確認することにした。

 

「珈琲どうぞ、マイちゃん」

 

「ナナミさん」

 

 マイの背後から声を掛けたのは、グリーンの姉であるナナミ。彼女は今、オーキド研究所でオーキド博士の助手として仕事をしている。

 ナナミに渡された珈琲を飲もうともう一度椅子に座ろうとしたマイだったが、隣の部屋からオーキドの動揺の声が聞こえ、ナナミと共に部屋へと向かった。

 

「ど、どうしたんですかおじいさま!?」

 

 ドアを開けてナナミは声を掛けるが、オーキドは既に研究所から出ているようだった。急いで外へ出てみると、オーキドは北を向いて唖然としていた。

 

「なんてことだ...!」

 

「二ビとハナダが...!」

 

 マイの目に映ったのは、けたたましい音を立てながら煙を上げている二つの都市、ニビシティとハナダシティだった。

 

「博士、他の都市は!?」

 

「タマムシもじゃ...恐らく四天王の仕業じゃろう」

 

 オーキドは疾く疾くと研究所へ入り、パソコンの画面へと向き合った。画面にはハナダの街とそれを破壊する大量のゴーストポケモンの姿があった。

 

「マイ、イエローはこれを機にスオウ島へと向かったと情報が入った。四天王の持つ4つの軍団のうち、3つが本土(カントー)へと来ているということは、島の戦力は手薄と考えたからじゃろう。お前も急いで行くんじゃ!」

 

 オーキドの剣幕に押されるが、マイはその前にとオーキドにポケモン達のボールを全て用意させた。その間にマイは外で寝ているポケモン達を叩き起す。

 

「起きてみんな。四天王が攻めてきた。今からいくつかのグループに別れてもらうよ。」

 

「おいマイ、一体何をするんじゃ」

 

 大量のボールが入った箱を持ったラッキーと共に、オーキドも外へと出てきた。

 

「ボックスメンバーには被害に遭っている街の対処に当たってもらいます。博士、先の3つ以外の街で被害の報告があった所は?」

 

「入っとら...いや、きた!第4の軍団と思われるドラゴンポケモン達が本土(カントー)上空を飛んでいるらしい!」

 

 研究所内のパソコンを見ながらそう叫んだオーキドは続いてこう叫んだ。

 

「トキワ、セキチク、クチバ、ヤマブキ、グレンの5方面へと別れた...らしい!」

 

 分かりました、とマイは答えてポケモン達を8つのグループに分けた。

 カイリキー系統、ゴローニャ系統、スリーパー系統、ゴルバット系統、アーボック系統、マタドガス系統、ゲンガー系統の7つのグループ、残ったポケモンのうち、カモネギ、ライチュウ、スピアー、サイドン、ケンタロス2体は腰のボールホルダーへとモンスターボールに収めて入れた。

 グループ分けされた他のポケモン達もスリーパー以外はボールに収め、それらはスリーパーに持たせた。

 

「スルガ、アズマさん、留守番よろしく。リッパー"テレポート"、まずはグレン島!」

 

 スルガと呼ばれたニャースは一声鳴いて応えた。マイはスリーパーの肩に乗り、"テレポート"を指示。グレン島へと飛ぶのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 〜トキワシティ〜

 

 マイが"テレポート"でカントー中を飛び回っている中、トキワシティでは第4の軍団(ドラゴンポケモン)が街を破壊していた。しかし、それをみすみす見過ごすような住人では無かった。

 

「いくぞー!!」

 

「「「「おおぉーー!!!」」」」

 

 住人達は自分の手持ちと共に、ドラゴンポケモン達に立ち向かう。ドラゴンポケモンには力量(レベル)もスペックも足りないようなポケモンばかりだが、それでもなんとか抗っていく。

 そんな中、一人だけその乱戦から身を引いて森へと駆けて行く少年がいた。

 

「ハァ...ハァ...!」

 

 ポニータの背に掴まる少年の名はミツル。彼の住んでいた家は真っ先に襲撃の被害に遭ったのだ。市長夫妻は手持ちのポケモン達で応戦しており、ミツルはその隙に安全な場所へと移動しているのだ。

 

「っ、後ろ!?」

 

 しかし、ドラゴンポケモンはそれを許さない。ミツルを追い掛けるようにして、ハクリューが三体背後から飛んで来たのだ。

 

「えぇっと、い、行け!」

 

 ミツルは手にした4つのモンスターボールを宙へと投げた。モンスターボールからはキングラー、オニドリル、ミニリュウ、ラフレシアがそれぞれ出てきた。

 キングラーは"クラブハンマー"を薙ぎ払うようにぶつけ、2体のハクリューの動きを止める。その隙にラフレシアは"ねむりごな"を降らして眠らせた。もう1匹のハクリューはミニリュウとオニドリルの"こうそくいどう"で翻弄され、その隙に横からキングラーの"ふぶき"を喰らってしまい倒れてしまった。3匹のハクリューは、傍の木に蔦で体を巻き付けられ、その上から"ふぶき"で凍らせて身動きを取れないようにする。

 

「すごい...!」

 

 一連の流れをトレーナーの指示なしで当然のようにするポケモン達に、ミツルは感動を覚えた。しかし、そんな暇すら与えないと、ドラゴンポケモン達は更に襲い掛かる。ハクリューだけではなく、カイリューやプテラまで現れた。数も先刻の比ではない。

 キングラーはポニータとオニドリルに何かを指示すると、2匹は森の奥へとさらに進んで行った。

 

「え、待って。君達は!?」

 

 ミツルの叫び声を無視するようにキングラーは"なみのり"と"ふぶき"で氷壁を作り、彼等の元へは近付けさせないと意思表示した。

 キングラーは巨大な左鋏を掲げ、"クラブハンマー"の構えをとる。ラフレシアは"ねむりごな"、ミニリュウは相手を"にらみつけ"て戦闘態勢をとる。

 圧倒的不利の状況で、開戦の火蓋が切って落とされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 



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