Fate//welcome escatlogy wild clown (まろ茶量産型)
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経済の寄る辺に従い

雑多なfateの2次創作であります。
作成予定の同人作品の外伝ですので、わかりにくい箇所がありますれば解説致します。
どうぞお試しにお読みください。
楽しんで頂ければ幸いです。

途中読み苦しい箇所や、つまらない箇所がございましたら、忌憚なくコメント頂けると幸いでございます。

この作品に登場する組織、団体などは架空のものであり、またfate、ならびにfgoの設定に矛盾する展開や内容がある可能性がありますので、あらかじめご了承ください。


菩薩の掌とでも言えば良いのだろうか、

その女は大いなる相貌を持って、己を

深海の如く慈愛の瞳を持って、心を、

罪の総量を測る両手を持って、魂を

 

この存在の前では嘘偽り、伊達酔狂は塵芥、

神か仏か物の怪か、はたまたそれすら及ばぬ類いか、

言葉を紡ぐ事も、身体の自由も利かない。

 

巨大な白妙の細腕、両の掌の上に転がされ、

ただ自身の何十倍、何百倍もあろう女の美しさに両目を奪われるのみだった。

 

女は唇を動かす、その声を聞き取れぬまま、視界はホワイトアウトし、目覚める。

 

 

 

夢だった。

 

 

ここ数日頻繁に現れる。

小説や漫画の影響か、それにしてはどこか懐かしい印象を覚える。

何となく昔のロボットアニメの劇場版にこんなのが居たなと思いつつ二度寝し、適正な時間に目覚めると言うのがローテーションになりつつある。

 

そして夢の内容が曖昧になり、私の日常が目を覚ますのだ。

 

 

 

朝食を囲む父母と姉、

父は朝のテレビを見て政治に文句を言って、

母はそれに反論し、姉は黙って朝食を済ませた。

 

私は学校指定のややダサめの鞄を背負って出かける。

現在の高校生は進学の為なら通勤に1時間など当たり前で、冬などはまだ明るみかけただけの空を見ると憂鬱になる。

 

微かに凍える吐息、最寄りの駅に着き、学校に隠れて持っている携帯で巨大掲示板の集積された真偽の曖昧な情報を得て、自分はまた一つ何か知識を得たような錯覚に陥る。

 

30分に1本しか訪れぬ、ど田舎の駅から一気に都心部へと向かって人が加速度的に流入してくる。

 

ある者は己の姿勢を崩さず、ある者は鎮座する権利を得、そして私は壁画に描かれた絵のように押し固められていた。

 

時々思うのだが、この乗り合わせた乗客と言う存在を家族や友人と同じ、人間と捉えている人はいるのだろうか、

私は物として捉えている。

 

さて、本日の遅刻は無いようで、後はトイレが近くならなければ華麗に一日を始められる。

とにかく欠席と遅刻をしない事、それだけが学生の内で社会人で役立つ唯一の事だ、と姉は言う。

 

下車し、巨大なターミナル駅から乗り継ぎ、バスに揺られ、家から出て1時間きっかりで辿り着く。

 

都内有数の進学率を誇る名門校、

しかしここ数年偏差値が劇的に下がり続ける問題校、

 

ガシャン、と大きな音とガラスが割れる音。

窓枠が外され2階か3階の校舎から投げ落とされたのだ。

誰も居なかったから幸い、ではなく、居ない所に確実に狙って落とすのだ。

 

主犯格の生徒は誰も明かそうとせず、また教師も探そうとしない。

その生徒の親類の力が働いていると言う専らの噂が出回っているし、多分それは本当なんだろう。

誰も表立って言えないから、噂になるのがここの校風だ。

 

こんな陰湿な社会悪を10代の内から見せられて私達はどんな大人になっていくのだろう。

 

瑣末な日常を無視し、教室に辿り着く。

無味無臭、無感想な友人との雑多な会話と教師の授業。

何が私に蓄積されると言うのだろう。

 

そして放課後に至り、特に部活に顔を出す事もなく帰る。

友人の誘いもあったがそんな気分ではなく、誘いには丁重に乗っからない。

 

鬱病か? いや違う、いやそうかもしれない。

 

ずっとだ、ずっとあの夢を見続けるようになってからだ。

 

どこか胸騒ぎが止まない、起床から就寝に至るまでずっとだ。

 

まるでプールで溺れる子供を見続けるような焦燥感と、多動性、

 

駄目だ、人生に集中出来ない。

 

 

帰りの電車に乗るのに疲れて途中下車しそうになるがなんとか堪えて家路につく。

 

家に帰った後も謎の衝動は治らない。

 

何がしなければならないのだが、何をすればこれが治るのかは見当もつかない。

勉強もスマホゲームも、何もかもが手につかない。

 

衝動が治るのは寝て、あの夢を見ている間だけなのだ。

 

早めに就寝しよう、今日は特に酷い、

と自室で横になる。

 

その内に治る、皆ままある瑣末な出来事なのだ

 

良くある事だ、問題ない事だ、大丈夫な事だ、

と反芻しながら1時間きっかりかけて眠りに落ちる。

これが最近のローテーションだ。

 

 

またあの夢を見たが、変化は無かったので省略する。

 

 

ふと目覚める。

時刻は午前1時30分、

10時30分には事切れて眠りに落ちたと思うので、3時間ほどしか眠れていない。

 

しかしこういう時に限って目が冴えるものだ。

 

再びあの焦燥感が襲ってくる前に眠ろう、と目を閉じた時。

 

携帯のアプリからメッセージが届いた。

正確にはその音がした。

 

妙だ、マナーモードにして振動も切ってあると言うのに。

 

 

無視して目を閉じるが、どうも気になって眠れない。

薄っすら目を開いて、手探りでロックを外す。

 

それは普段使うアプリではなく、非通知の電話回線のメールだった。

 

メッセージの内容はこうだ。

 

 

名前を入力してください

 

 

まるで新しくゲームを始めるかのような見飽きた台詞。

匿名のメッセージでこれが来ると言うのは詐欺目的か悪戯か。

 

切り替え忘れたサイレントマナーを再び機能させ、目を閉じた。

 

間髪なくメッセージ音が飛んでくる。

完全にオカルトな領域の体験に突入していた。

 

恐怖と疑問符が飛び交い、ある一つの回答を頑なに否定する。

心霊現象だけは勘弁してほしい。

 

ホラー映画やドラマでは、何故か登場人物が恐怖の元を確認したがり、それ故に不幸に見舞われるものだ。

 

ならば私は確認しない、絶対に眠って夜を明かしてやる。

 

不可解な電子音は幾度となく続き、私は異物となった愛用のスマートフォンを遠く離れた部屋に置き、夜を明かした。

 

 

そこから記憶が途切れている。

 

 

男は自己催眠を解き、荒んだワンルームの貧相な寝台で目覚める。

組んだ足が痺れ、随分と長く座り寝をしていたことを物語る。

 

夢の中で夢を見た後に訪れる虚脱感は、現実を酷く曖昧に混濁する映画、インセプション宛らであった。

 

幾度と無く行われた記憶の追跡も依然として断片的で、整合性がない。

ある時は王であった、ある時は娼婦であった、ある時はサラリーマンであった。

時代は愚か性別すらも齟齬が発生する事がままあり、この行為の価値は未だに認められない。

 

それでもその男はそれを辞めなかった。

再び虚を潜行し、様々な誰とも知らぬ過去を探る。

 

無い、明確な真偽を決定付ける確証が何一つとして、

 

男は疲れて眠り、例の夢を見る。

神とも悪魔とも取れるその巨大な女と対峙するあの夢を、

 

そう、数ある記憶に迫ろうともその夢だけは共通していた、

まるで自らの現実すらも数ある中の一つの夢に過ぎず、どの夢よりも非現実的なこの悪夢こそが真実だと言うように。

 

 

その女の唇は数度開く。

声は、まだ聞こえない。

 

 

 

風の切られた便箋が届けられたのはそれから3日後だった。

 

男の生活は検閲されてる。

 

現在の記憶の連続性を遡っても、理由も、それがいつ始まったのかも定かではない。

 

差出人の名は英字であったが意図的に滲まされ読むことは叶わない。

 

手紙の内容は二つのある儀式を行え、との事だった。

何のことは無い、またあの時期がやってきて、また自分の番が回ってきただけの事だった。

 

男は塩と骨粉、それから少量の血液の混合物を指で絡めとり、フローリングの床で歪な文様を描く。

 

一つの儀は降魔である、

人類史、多岐に渡る伝承、御伽草子の人物を形取られた使い魔を呼び出し、それを使役する。

 

これは次の儀式に不可欠なものであって、それ自体はさほど重要では無い。

 

もう一つの儀は、戦争である、

自らも加え7人、たった一つの報酬を賭けて殺し合い、生き残った物がそれを手にする。

 

発端こそ秘中の秘であったこの儀も、今では効率的かつ普遍的に統合され、一種のルーチンワークとしてこの時代に偏在していた。

 

男はこの儀によって生計立てる、言わば

聖杯戦争経済者(バイオレットカラー)』であった。

 

今やアンダーグラウンドでその名を知らぬ者はなく、年々脱落者に比して新規参入する企業や各国政府、テログループすらも増加の一途を辿る。

 

 

男はある機関によって、その稼業をあてがわられていた。

その機関の実態を何一つとして男は知らなかったが、その命に従う以外の世界がある事すら検閲されている。

 

 

数度となく行われた動作は簡潔にして明快に終わり、今宵、数多の幻想からまた一つ、新たな偽の人格が再臨する。

 

 

 

 

それは騎士であった。

と言っても馬など何処にも見当たらず、風貌だけがそうだと告げる。

 

真紅の西洋甲冑、血の滴る白い長槍、

均整の取れた体格と白い肌。

男にはその者の正体を早くも見抜いたし、これまで呼び出した使い魔の中で最も猛々しく勇敢な人物でもあったが、何の歓喜も湧かずに黙ってその男が口を開くのを待った。

 

当然だ、いかに強かろうが、いかに徳があろうが、これは聖杯という魔性の装置が織りなす幻想であり、偽物だからだ。

 

故に出逢えた感動も喜びも微塵すらないのである。

 

 

ランサー「我が名はランサー、聖杯の寄る辺に従い推参した。 貴公がマスターと見受けられるが、如何か」

 

 

快活な言葉に、好青年らしい態度はまさに騎士然としていた。

 

 

男「如何にも、私がお前のマスターだ」

 

 

男は右手に刻まれた赤い紋章をかざす。

 

 

ランサー「正しく証と見受けます。 このランサー、不詳ながらこれより先の必勝を貴方にお約束しよう」

 

男「図に乗るなランサー、パラディン、サー・パーシヴァル」

 

 

双眸に曇りなければ間違いない。

かの英国の伝説、アーサー王伝説に記される円卓の騎士が一人、聖杯に至った数少ない聖騎士パーシヴァル卿、その人物の偽である。

 

確かに、この儀によって真の英霊、すなわち偽りなき過去の魂を呼び出すことは可能である。

それらの英霊達はマスターと呼ばれる使役者と同じくして聖杯なる装置を手に入れ自らの願いを叶えんがため現界に応じるものである。

 

しかしパーシヴァル卿は自身自体が聖杯に至った身である以上、現世の薄汚れた機械になど頼る必要は無い。

 

よって多くの例に漏れず、男が呼び出したこの使い魔もまた、数多くの余人の雑多な類推、伝説の羨望により生まれたパーシヴァル足る人格の縁取りを呼び出したに過ぎない。

 

要するに本人ではなく聖杯が作った幻を呼び出したのである。

 

 

男「今はその名で呼んでやる、たがお前はただの『槍兵(ランサー)』だ、それ以上は無い」

 

ランサー「その慧眼見事、風貌はちと好きませぬが、さぞ実力のある魔術師に相違ない、無礼を承知で申し上げますが、どうか名をお聞かせ願う」

 

男「存在しない。 残念ながらお前と同じだよ」

 

 

ただのエネルギーの塊を前に独り言をぼやくのと違わぬと、無為な行為であったが、

男は目を細め一枚の札、カードを取り出してランサーに見せる。

トランプカードであり絵柄は道化、ジョーカーであった。

 

ワイルド「ワイルド、それが付けられた蔑称の中でたぶん一番マシなやつだ」

 

 

 

 

 

ランサー「マスター、マスターワイルド! 」

 

 

記憶の深海より無理に起こされる。

男にとって大事な日課であったが、偽とは言え仮にも人格であり同居人である、こういった方針、目的の違いに出くわすことはある。

 

 

ランサー「何故戦に参らぬか、あれから既に三日と半日、他勢力は既に動いておる頃合い、こちらも早急に手を打たねば敗北は必定ですぞ! 」

 

ワイルド「黙れ、集中が途切れる」

 

ランサー「しかし! 」

 

ワイルド「くどいぞランサー、それでもかの円卓の騎士か、いや見事、田舎の猪武者だな」

 

ランサー「その詰りは慣れております、私はマスターの身を案じて再三進言しているのです」

 

ワイルド「ならばお前に問う、策も弄さず敵に挑んで敗れる、これは稀なるか」

 

ランサー「策も何も、マスターはここで三日三晩寝ては覚めても夢現、まるで病人です。 もし何かお考えがお有りなら、御教え下さらねば・・・」

 

 

ワイルドはランサーをジッと見て、しばらく黙った。

別に怒ったわけでも悲しいわけでもない。

 

ただふとこの仕事に充てがわれたばかりの頃、ひいては覚える限りの一番過去の自分の事を思い出していたのだ。

 

若い頃、と言っても数年前だが、この英霊の模造はワイルドの若き日と重なるようだった。

 

 

ランサー「マスターの願いはわかります。 しかし戦わねば己の存在すら勝ち取れぬのです」

 

ワイルド「そうさな。 ところでランサー、聞いていなかったがお前の願いはなんだ、なぜこの戦いに参加した」

 

ランサー「話せませぬ、マスターが戦わぬと仰るならば、私一人で聖杯を勝ち取れば済む話であります故」

 

ワイルド「無いわけじゃないんだね、安心したよ」

 

 

ワイルドは安堵した様に再び足を組み、うつらうつらと夢の中に入ってゆこうとする、が、ランサーの怒声が上がる前に、まるで雷に打たれた様に立ち上がり、テーブルの上の雑多な品々を蹴散らした。

 

 

ランサー「な、何をなさりますか! ご無礼を働き、お怒りなのは重々承知で御座いますが・・・ぶぅっ! 」

 

 

喚くランサーの口に一枚のカードを投げつけ、咥えさせる。

カードの絵柄は砂袋を背負う奴隷、愚者。

 

 

ワイルド「戦備えだ、お前にわかるようやる、だからおしゃべりは後にしよう」

 

 

ランサーはカードが口から離れずモゾモゾしている。

 

 

ワイルドは古い本にくり抜いて開けられた中から、真っ黒に淀んだ山札を取り出し、その中でひとりでに蠢く物の怪様なカードを殺風景になった木製の机の上へと投げ入れる。

 

激しく回転し、ワイルドに対して正しく絵柄の見える位置に止まる。

そこに記されているのは裸体の美女の上に燦然と輝く、星の絵柄。

 

 

ワイルド「星が動いた、これは我々の過去、まずは吉兆受けたってとこか・・・お前が現界した事かも知れん、そしてその結果は」

 

 

ワイルドは山札の上の一枚を、再び投げ入れる。

ワイルドから見て、間を置いて星の真上に収まるよう回転しながら進み、やがて正位置へと止まる絵柄は、魑魅魍魎が車輪に群がり回る、運命の輪。

 

 

ワイルド「これが、現在。どうやらツキが廻っているらしい、さて最後にその変化後、所謂未来を予見する」

 

 

ワイルド山札をシャッフルし順を入れ替えた後、一番上のカード投げ入れる。

 

カードは回転し、星の、運命の輪との二等辺三角形になりかけたところ、それを外して真下に動いていく。

二本の角と黒い翼の化け物が、二度と三度跳ね周り、不自然かつ急に静止した。

ワイルドから見て逆の位置に止まる絵柄の名は、悪魔。

 

運命、星、そして逆位置の悪魔の一直線を目にして固まるワイルド、

 

やっとの思いで愚者を吐き出し、ランサーは口を再び開く。

 

 

ランサー「やっとの戦備えで占いとは! マスターは乙女か古代人か! 」

 

ワイルド「シッ、初心者は黙ってなさい」

 

 

ワイルドは一人ぶつぶつと嘯く。

このタロット占いはワイルドの独自の占術ではあるものの、規則は必ずあり、詳細な説明は省くとしても通常、悪魔はこの位置には止まらないし、カードの配置も一直線にはなり得ない。

 

そして何より悪魔のカードが回転したあの歪な挙動は、数多持つ経験を持ってしても初めてのものであった。

 

 

ワイルド「珍しいな、失敗か・・・もう一度・・・ぐっ」

 

 

稲妻のような頭痛が走る。

それに鳴動するように激しく意識は揺さぶられる。

 

 

ランサー「マスター、如何された。 しっかりしてくだされ! 」

 

 

ランサーに抱えられ、無駄に品性のある相貌を狭くなりつつある視野で見上げる。

少なくとも現実のワイルドの視神経と細胞はそのように働いていた。

 

しかし、ワイルドの精神の現実には、夢朧に見たあの女が居たのだ。

 




ここまでお読み頂き、本当に感謝致します。

連載に関しては、読んで頂ける方がいらっしゃれば続けようかなと思っております。
未熟で拙い文章力ですので、アドバイス等頂ければ幸いです。

貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。


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少年魔術師(チャイルドウィザード) 前編

大多数の国民の信任によって成立する政府は、国民の支持する政治家によって、
一党独裁により成立する政府は、指導者のカリスマによって、
王権神授に根ざす政府は、その伝統と信仰によって、

武力による戦争は個々人ではなく曖昧な統計的多数決により成立してきた。
強権の介在はあれど、少数の反対はあれど、大多数の人間の総意によって獲得された人類の習性であった。

故に一個人に権力、武力を過集中させる事は厳に憚られるべきであり、その例に類するものは大なり小なり人類史の悲劇として刻まれ続けてきた。

ある貧困国の独裁政権の指導者は、武官文官に声高らかに告げた。

ーーこの無数に繰り返される聖杯戦争の戦場で、最後の一人、生き残る者が居るとする。
だが、その者は神にも王にもなれない。
第2の核兵器になるのだーー

現在、世界には90万人を超える魔術師が存在する。


 

 

 

その緋とも藍ともつかぬ双眸の中にワイルドはいた。

姿見のような巨大な瞳に全身が吸い込まれる錯覚を覚えつつ、今日こそは、と男は唇を動かす。

 

だが肝心な声帯がまったく震えない。

身体の奥から末端に至るまで、電圧をかけられたように麻痺しているからだ。

 

金縛りにあった感覚と似ている。

全く動けないのではなく、筋肉の組織が部分的にだけ稼働するからこそのもどかしさがそこにはあった。

 

女は微笑を浮かべて唇を動かす。

 

普段の夢と違い意識は比較的明瞭であったワイルドは、眼をしかと見開き唇の動きに注視する。

 

we...l...co...me...

 

ようこそ。

ようこそ(welcome)』とは一体なんだ

 

声が出ない、せめて一言だけでも言わせてほしい。

 

 

お前は誰なんだ

 

 

女は次第に遠のき、男は両の掌の上で果てていく。

 

 

ランサー「マスターッ! 大事ないか! かくなる上は・・・オホゥッ!」

 

 

抵抗から解放された筋組織たちは、それまでの命令を一気に遂行し、結果このように意図せぬ事故が起こるのである。

 

 

ランサー「占いの次は頭突きとは・・・クッ、頭の痛いのはこちらですぞ・・・」

 

 

ランサーは不意であっても全くの無傷で軽口を叩きながら身体に散った埃を払っている。

流石は曲がりなりにも英霊の体を成しているだけはあるが、一方ワイルドはと言うと、

 

 

ランサー「マスター、誠に・・・誠に大事ないか」

 

ワイルド「・・・くっ、つぁっ、案ずるな、よくあることさ・・・」

 

 

衰弱した身体を無理に起こし、尋常の発汗ではなく、視線も定まっていなかった。

 

 

ランサー「まさか、まさか私めの頑丈さのせいでその様になられて・・・」

 

ワイルド「違う・・・ハァ、冗談言ってる場合か・・・それより・・・」

 

 

ワイルドが息も絶え絶えな言葉を終わらせる前に、物々しく古ぼけた扉を開け黒のスーツの男達が所狭しと立ち込める。

 

 

ワイルド「迎えに来やがったぞ」

 

 

ランサーは軽装から瞬時に逞しい真紅の戦鎧を纏い、槍を握る。

 

 

ランサー「我が主人の御前になんたる不敬か、理由如何によっては現人にあっても容赦せぬぞ」

 

ワイルド「待て・・・いいか、こいつらに構うな・・・それと、ッ、これから起こることに・・・い、一切の手出しは無用だ」

 

 

未だ様子に不調のあるワイルドを他所に、黒服達は騎士の主人を囲む。

 

 

ランサー「しかしマスター・・・」

 

ワイルド「くどいって言ってんだろ・・・」

 

 

黒服達の隙間からワイルドの姿が見え隠れする、

目隠しをされ、首に注射器の様なもので薬物を投与されていく。

 

主人の言葉もあり、この時代の知識も最低限しか無かったランサーだが、眼前の光景を邪悪であることは理解できる。

 

 

ランサー「いや・・・流石にこればかりは聞けませぬ! 」

 

 

騎士は槍を携え、構える。

狭い室内で槍の埃先は当たるべくもないが、英霊サーヴァントとの筋力ともなれば、あたりは血の池に没するだろう。

 

ワイルドは衰弱しきった右手の紋章を輝かせ、騎士を制止した。

 

 

ワイルド「『令呪を持って』命ずる・・・頼む、言うこと聞いてくれよ」

 

 

三画ある紋章の一画が眩く輝いた後に散り、ランサーはその場で先程のワイルドの様に微動だに出来なくなる。

 

聖杯戦争参加者に付与される、自らの使い魔に対してだけ発動可能な絶対命令権、あるいは使役の手綱である。

これを出されると一部の屈曲な英霊を除き、主人の命には絶対に逆らえない。

かのパーシヴァル卿本人ならいざ知らず、寄せ集めの現代人の流言飛語、誇大妄想の塊であるランサーに、抗う術など初めから無いのである。

 

苦しみもがきながらランサーはその喉から絞り出す。

 

 

ランサー「令呪・・・です、と・・・マ、スター・・・この者共は・・・い、いったい・・・」

 

ワイルド「ヘッ・・・ただのタクシードライバーだよ・・・あとな、そのカード持ってきてくれよ、替えが効かないんだ・・・」

 

 

それ以後、ワイルドは黒い袋を被せられ幾重ものベルトで身体中を拘束され、真っ黒な繭の塊の様になって運ばれていった。

 

騎士が義に熱く、動こうと思えば思うほど、その令呪による緊縛は頑強になり、それは数時間にも及んだ。

 

ようやく令呪による命令が解ける頃には、ただ一人、呆然と部屋の一隅に取り残されるのみであった。

 

 

 

 

ワイルドの失われた意識の中で、女の容貌が木霊か、あるいは波の様に映り込んでは消えていく。

 

 

 

 

 

ランサーはあらかじめ繋いでいた主人との魔力の繋がりを頼りに、国々を跨いだ。

その間、片時もマスターを案じない瞬間は無かったが、飛行機に忍び込んだ時と、はるか東国、日の本の国に辿り着いた時ばかりは少年の様にはしゃいでいた。

 

やがて右も左もわからぬままに、東京の片隅の雑居ビル、基礎の鉄骨も剥き出しの廃墟同然の一部屋にてワイルドの姿をようやく確認できたのだ。

 

 

ワイルド「よう、意外に早かったな・・・」

 

 

あの黒い袋は外されていたが、未だに目隠しと全身の拘束が弛まぬ姿で、ワイルドは囚人のようにカタカタと足の長さが揃わない南京椅子に座らされていた。

 

 

ランサー「何というお姿・・・これではまるで・・・」

 

ワイルド「まるで、死刑囚か・・・まぁ似たようなもんだろうなぁ・・・」

 

 

ランサーは頼まずとも、ワイルドの拘束を解いていく。

他ならぬマスターの命令とは言え、自らの脆弱性に改めて自失しながらも、ベルトを一本一本外し、最後に目隠しを解いた。

出無精が祟るワイルドの髭はことごとく剃り落とされ、20代後半の、幾らか年相応に見えたが、充血した目と顔体至る所に刻まれたタトゥーのようなマーキングと痩せた裸体がランサーには酷く痛々しかった。

 

ランサー「これを隠すために髭を蓄えられたのですか」

 

ワイルド「そうかもな、でも意外とこれはこれで趣きがあるもんさ。 流石に顔はやめてほしいがね」

 

 

ワイルドの顔には口まわりに二つ、右目の下に一つ、手足にそれぞれ一つから二つのマーキングあった。

その模様とも数字とも取れぬ模様とは別に、夥しい英数字で縁取られた円形の文様が背中に印されている。

 

 

ランサー「これは・・・」

 

ワイルド「それが俺の本名、14の14乗、未だに名乗る気になれん」

 

ランサー「それで14番目(ワイルド)ですか、確かに多少はマシですね」

 

ワイルド「だろ、でも・・・」

 

 

でもそれ『割り切れ』って意味なんだけどな、と言おうとしてランサーの心中を察して言葉を溜飲した。

自分の姿を見て、まるで捨てられた子犬を見るように哀れむランサーの顔が見えたからだ。

なに、恥じる事も逆上する事もない、かつて呼び出した使い魔達は皆ランサーの様に憐憫の情を抱くか、己の過去を想起し、憤怒するかのどちらかであったからだ。

 

 

ランサー「でも・・・なんです」

 

ワイルド「いや、お前に頭突きをかました時に『頭の痛いのはこちら』・・・って事は、魔力の経絡(パス)は機能してるようだってことをね」

 

 

ワイルドの魔力は見えない経路(パス)を通じてランサーに供給されるが、その際痛覚を含む肉体の記憶までフィードバックされる事がある。

別に言わずとも良かったのだが、言葉を濁すにはちょうど良い文句であったために口にしたに過ぎない。

 

 

ランサー「マスターとの絆のパワーにより遥々ジャパンまで馳せ参じ、再び相見えること叶いましたぞ! 」

 

ワイルド「日本か・・・珍しいな・・・」

 

ランサー「そうですとも! 現界の折、知識だけは与えられておりましたが、こうも面妖な国とは思いませなんだ。 マスターもどうぞ一度ご照覧くださいませ! 」

 

 

ランサーは彷徨い歩く間に見かけた浅草だの秋葉原だのと様々な新体験を童心に帰ったように話し倒している。

熱狂するランサーであったが、何かに感ずるところがあったのか急に黙ってワイルドに問いかけた。

 

ランサー「マスター・・・やはり万全とは仰り難いのでありましょうか」

 

 

我に帰り気苦労する騎士に、主人は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

マスター「そうじゃないさ・・・お前の漫談の才能が凄いんで、感心してたんだよ・・・見ろよ、客が1人湧いて出たぜ」

 

 

ランサーは戦装束を身に纏い、振り返って身構えた。

歳幅もいかぬ幼気な少女が音もなく、成人した異性の裸体を凝視していた。

身につけている防寒具などは赤黒く染まり、元あったであろう艶のある品質の良い幼児用のロングコートは、乾燥した血液らしき物を吸って所々ひび割れていた。

 

少女「ようこそ」




この度は最後までお読み頂きありがとうございます。
設定や世界観についてご質問等ございましたら、その都度ネタバレにならない程度に解説させて頂きます。
わかりにくい箇所や面白くない箇所があれば、指摘して頂けると幸いです。
また、原作のキャラクターは設定や登場人物の話の中に登場する程度にする予定ですので、予めご了承くださいませ。

また読んでくださる方がいらっしゃいましたら続きを投稿させて頂きます。
本日も貴重な時間を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。


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少年魔術師(チャイルドウィザード) 後編

富裕国の政府お抱えの研究員だった一人が取材に応じた。

「人工的に魔術師を作る工程は三段階ありますが、品質を気にしなければ、どの段階からでも生産過程に入る事ができますよ」

「第一段階では適性があった者の遺伝子のクローンを使い、精子と卵子を選別し、それを適切な配合になるまで数億から数兆通り、あるいはそれ以上の配合データを参照しながら選定します」

「選定された後、生後一週間〜二週間まで人工の子宮により保育されますが、望む突然変異が起こらない個体は破棄されます」

「第二段階は・・・実はこれが一番堪えたんですが、
出産して間もなく製造物は装置と薬物によって全ての五感を剥奪され、全身も麻痺させられます、個体によっては、その・・・四肢を切断したりしていましたね」

「視覚障害者の聴覚が良くなったりするでしょ? あれと似たようなもんです」

「だいたい5歳を迎える頃にようやく五感と体の自由を返還するんですが、その頃には魔力でそれらの機能を全て補えるようになるんです」

「第三段階はーー


映像はここで止まり、8年後の政権交代後も報道される事は無かった。



少女「待ってたわ」

 

 

それだけ言うと、少女は静かに微笑んだ。

10代にも満たない容姿であったが、瞳の曇りと表情の不器用さ、

何よりも浅黒い肌と濃い眉毛と黒髪から、中東以遠の民族である事は容易に類推が叶った。

その少女がまごう事なき少年魔術師(チャイルドウィザード)である事をワイルドは悟ったが、どうもおかしい。

 

今日の聖杯戦争で、敵方の魔術師(マスター)または英霊(サーヴァント)と言葉を交わすのは珍しい。

伝統ある魔術師なら兎も角として、現在の世界にありふれた粗製品達はただ勝ち、生き残って報酬を得ることのみが至上目的であり、生業なのだ。

 

それが何を意味するかと言うと、かつての対峙や決闘などは起こるべくもなく、定石に確立された戦法は奇襲による暗殺であるという無情であり、国勢の一端を担う一兵士として徹底して訓練されるものだ。

 

 

少女「おにいさん、おなまえは? 」

 

 

足音の鳴らない不気味な歩みを、少女はワイルドに向けた。

 

少女の足元にぽたりぽたりと、不快な水音と共にそれは無数に聞こえる。

耳や指等、人体の細々なパーツが落ちていた。

 

 

ワイルド「落し物だよ、お嬢ちゃん」

 

 

少女はそう言われると、本物とも人形の物ともわからないそれを掻き集めポケットにしまう。

ランサーは槍を深く握りこみ、少女の喉元にいつでも突き入れられるよう身構えている。

当然、武人という脚色が付与されたその戦士に、戦場で幼子を手にかける苦悶や葛藤の色は無い。

 

しかし、ワイルドはそれを制止し続けた。

問答無用で殺しにかかる事の無いその奇妙さに対する警戒と、

少女の一言目の『ようこそ(welcome)』が、『あの女』と符合して感じられたからだ。

 

 

ワイルド「Lvhu(来たれ)

 

 

その一言に呼応するように22と54枚の黒いカード達は列を成してランサーの鎧の隙間より這い出てる。

ワイルドの手には、あの分厚い山札が再び築かれた。

 

少女はその芸当に歓喜したように、手を叩いて笑った。

 

 

少女「凄い凄い! 手品だ手品だ! 」

 

ワイルド「ありがとよ、だが人に名前を聞く時は、自分から先に言うもんだよ。 お名前、ちゃんと言えるかな」

 

 

少女は二、三の間を置いて申し訳なさそうに答える。

 

 

少女「ごめんなさい、覚えてないの」

 

 

ああ、こいつもかと、ワイルドは落胆するわけでもなく理解した。

恐らく最初の『ようこそ』も偶然の符合であり、この幼気な少女は今や世界にごまんと居る、訓練すらされていない使い捨て(インスタント)に過ぎなかった。

 

 

ワイルド「そうかい、じゃあ代わりの名前を付けてやる。 占いは好きかい」

 

少女「うん、好きだよ」

 

ワイルド「そりゃ良かった、今からこのカードを上から順番に落とす、好きな時にストップって言いな」

 

 

ランサーは臨戦を解かず、じっと少女に挑もうとしていたが、

衣服以外は普通の女の子と戯れ続ける主人に業を煮やしているのか、尋常ならざる貧乏ゆすりをしている。

忠犬の如く誠実な騎士ではあるが、この度も『待て』は中々に長かった。

 

 

少女「ストーップ! 」

 

 

次々に落ちゆくカードは止まり、ワイルドは落ちたカードの一番上をめくった。

カードの絵柄は七人の赤子の天使が戯れる、ハートの7

 

 

ワイルド「ハートのラッキーセブン」

 

少女「見せて見せて! 」

 

 

少女はワイルドに駆け寄る。

無邪気に、笑顔で、

そしてある程度近づいたところで、少女は無残にも身体の至る所が膨張していく。

膨大な内なる魔力が急速に肥大化し、少女の身体を破り、炸裂する。

 

使い捨て(インスタント)とはこの自爆兵器の通称である。




最後までお読み頂きましてありがとうございます。
2次創作と申し上げつつfateらしさのかけらも御座いませんが、
次回以後は普通にfateらしく仕上げていこうかなと予定しております。
また、前書きの部分で世界観の断片的な補足も入れさせて頂きました。
ディストピアものとして楽しんで頂けると幸いです。
それでは本日も大変貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。


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英霊不要論 前編


第2期聖杯戦争と呼ばれる新世代の戦争形態の歴史は意外に古い、
その祖たる便宜上第1期に分類されるものと枝分かれした起源は、第二次世界大戦末期から間もなくのことであった。

大戦に費やした戦費は大日本帝国だけ見ても約7600億、
これは当時の同国国家予算の約220倍という桁外れの損失である。
戦場となった欧州は壊滅し、次々に植民地を手放していく。

結果、比較的被害の少なかったソ連とアメリカの両国が覇権を握ることになった。

ここまでが表の歴史である。

欧州、アジアにおいて壊滅的被害を被った国々が、如何にして今日の国勢を維持しているのか
その補填がいかにして行われたのか
あれだけの資源を食いつぶして、なぜ今だに人類は豊かなのか

そして何より、なぜ未だ戦争を繰り返せるのか


その歪な歴史は、血の川より生まれた。



 

 

 

失明するような眩い閃光、

少女だった細胞たちは散り散りになり、光へと溶け込んでいく。

灰塵が立ち込め、その土気色の濃霧が晴れる頃、荒涼とした廃墟は溶解した基礎と、残光の影の群れが刻まれていた。

爆心地(ヒロシマ・ナガサキ)のようであった。

 

 

ランサーの鎧は所々ひしゃげていた。

未だ熱の篭る鎧は、その真紅を血の色のように暗く貶めていく。

 

主人の言いつけ通り、敵に突き立てる刃こそ禁じられていたが、我が身を盾にすることには何の咎めも無い。

マスターを庇う、その

尋常の聖杯戦争において英霊として自然な働きを、ワイルドは批判した。

 

 

ワイルド「何やってんだ、薄鈍」

 

ランサー「くっ、マスター、ご無事でなによりです」

 

ワイルド「んなことはどうでもいい、質問に答えろ」

 

 

優しげで寂し気な戦争被害者の面影はなく、初見の頃の、あの冷徹なワイルドの姿がそこにはあった。

いつの間にかその男は黒の装いを身に纏い、ぼうっと光る細い走査線がその上を流れる。

 

 

ランサー「マスターをお守りした次第でありますれば・・・」

 

ワイルド「誰がそんな事頼んだよ」

 

 

怪訝なランサーに、なおも冷たい言葉を投げ捨てる。

 

 

ランサー「しかし、御身に何かありますれば・・・」

 

ワイルド「誰も頼んでないよな」

 

ランサー「・・・」

 

 

ランサーは閉口したがその実、自らの所業も、ワイルドの変貌についても怪訝さが募るばかりである。

いったいこの男に、自分の務めの何が気に食わないのか、尋常ならざる尋常の騎士は糸口すら掴めない。

 

 

ワイルド「駄目だな、お前も・・・『令呪を以って』命ずる」

 

 

その傍若無人に、流石の忠犬も、

いや忠犬であるからこそ反論し、抵抗する。

 

 

ランサー「お待ちください! 令呪など用いずとも、不詳ランサー。 次こそは必ずや主人のお望み通り振舞います。 ですが、先程から話が見えませぬ」

 

 

ランサーは義に厚い戦士であり、忠を重んじる一廉の将でもあったが、まるで暴君に仕えているかの様な心持ちであった。

 

 

ランサー「いえ、此度だけではありませぬ。 マスターを攫った男たちも、自害した幼子も・・・。 今回の聖杯戦争は尋常というにはあまりにも・・・」

 

ワイルド「では、尋常の聖杯戦争とは。 騎士道に基づく由緒ある決闘か」

 

ランサー「それは・・・」

 

ワイルド「違うよなぁ」

 

 

冷たく尖った棘に、返す言葉もない。

 

 

ワイルド「英霊(サーヴァント)の仕事は誰かを守る事でも、相手を力で上回る事でもない」

 

 

ワイルドはカードの束を切り、混ぜる。

 

 

ワイルド「勝つことだ、相手を負かし、蹴落とし、殺すこと。 寝首を掻き、傷口には毒を塗り込み、倒れていれば踏みつける」

 

ランサー「それは・・・わかっております・・・」

 

 

ワイルド再び一枚のカードを取り出し、ランサーに投げつけた。

鎧に弾かれ、力なく床に汚れる砂袋を運ぶ奴隷、愚者。

 

 

ワイルド「わかってねんだよ」

 

 

突如として、地響きが襲う。

ビル全体が激しく揺さぶられる。

先程の爆発で元から脆かったこのフロア一帯の基礎は完全に破壊されている。

当然、このビルは当階を起点として折れるように倒壊するのである。

 

その破壊の足音が今か今かと2人を狙っていた。

 

 

ワイルド「お前は今倒れたんだ・・・次は踏み殺しにやってくるぞ」

 

 




読んでくださる方の為に借りに書き上げました。
後日多少変更があるかもしれませんが、だいたい続きはこのようにまとめようと思います。
貴重なお時間を頂き、本日もここまで読んでくださり誠にありがとうございました。


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