「楯無ちゃんは本当に強いね、私も専用機持ちなのに全然敵わないや。」
織斑
「六花ちゃんのそういう自虐的なところ良くないわ、それに私だって会長に比べればまだまだ未熟よ。」
楯無は憂鬱そうな表情でそう言った。
更識家の当主にとって、IS学園最強の証である生徒会長になることは責務であるという。
しかしながら、現時点で彼女はその責務を果たせていない。
「1年が会長に勝つなんて無理だよ、でも会長は来年には卒業するから、次期会長はきっと楯無ちゃんだよ。」
「簡単に言ってくれるわね、2年には専用機持ちが4人もいるのよ、あの人達全員に勝たなければいけないと思うと気が重くなるわ。」
楯無はより一層憂鬱な表情で答える。
「それでも1年では間違いなく楯無ちゃんが最強だから、2年後は確実でしょ?」
「学園長が六花ちゃんのこと、大器晩成型だと言ってたわ、2年後の生徒会長はあなたということもあり得るんじゃない?」
彼女は冗談とも本気ともつかない口調でそう言った。
そんなの初耳である、おそらく楯無にハッパをかけるつもりで言ったに違いない。
「そんなことより、生徒会の招集かかってるわよ、早く着替えないと遅刻して怒られても、お姉さんは庇ってあげないわよ!」
楯無がおどけた表情で急かす。
昔から彼女は私に姉のように振る舞う癖があった。
私は急いで着替えると、楯無を追いかけるように更衣室を出た。
――――――
―――
私達が生徒会室に駆け込むと、既に私達以外のメンバー全員が揃っていた。
「遅いぞお前ら!生徒会役員の自覚はないのか!!」
開口一番、中央に鎮座する現生徒会長の篠ノ之
「ごめんなさ~い♥一華お・ね・え・さま~ん♥」
楯無のおどけた受け答えに爆発寸前の一華を、右に控える副会長のニナ・オルコットがなだめる。
「まあ、よろしいではないですか一華さん、本日の本題は生徒会のお仕事ではございませんし。」
「生徒会の仕事はもう終わらせちゃったしね~、ここからは自由時間の範囲内よね?」
その傍らで会計長の凰
「今日はお父さんの誕生日パーティーの相談なんだ。」
「父上と会うのも久しぶりであるし、ちょっとしたサプライズをと思ってな。」
左に居並ぶ書記長のヨツバ・デュノアが本題を告げ、庶務長のイツキ・ボーデヴィッヒがすかさず補足する。
そそくさと一華の向かい側の席に着く私は会計監査で楯無は広報長。
そして、生徒会役員全員が専用機持ちである。
「早速だが、六花は父さんが何時頃帰国するか聞いているか?」
一華に問われた私はやや不満げに答える。
「来週というのは知ってるけど正確な時間とかは分からないよ、私だってお父さんと話せる機会はみんなと変わらないもん。」
私は父の籍に入ってはいるが、仕事で世界中を飛び回る父が帰国する際は、大抵みんなが集まる場になり、連絡も
にもかかわらず、まるで私が父を独占しているかのような印象を与えている。
また学園長とも同姓であるため、クラスメイトから親子に間違われることもある。
更識家を継いだ楯無ほどではないにせよ、私にも気苦労があるのだ。
「それにしても不可解ですわ…、あんなに真面目そうなお父様が、こんなに無節操に子供をお作りになるとは…。」
突然、頬を赤らめて呟くニナに対して、バツが悪そうに一華が切り出す。
「……実は私の叔母の仕業という噂があってだな…。」
「何よそれ!!どうゆうことよお!!」
三音が驚いた様子で問い正す。
「私も最近耳にしたのだが…、父さんが叔母の研究に付き合わされてから3年程...その何と言うか...”おかしな時期”があったという話だ。真偽や詳細は不明だが…。」
「……………………」
衝撃の告白に全員が唖然とし、暫しの沈黙が流れる。
「…まあ、そのおかげで僕たちが生まれたわけだから…、責めるわけにもいかないのが辛いところだね…。」
「父上のおかげで我々は一生涯の生活を保障されているわけだからな。」
私達は世界で唯一の男性IS操縦者の子供として各国から支援を得ている。
その一方で、父は忙しなく世界中を飛び回っている。
「話が逸れてしまったが改めて本題に入ろう、会場はいつも通り更識家ということで頼めるか?」
「オッケー!、準備は任せて!」
安請け合いする楯無だが、別に彼女自身が準備するわけでもないだろう、更識家に代々仕える家の者がやってくれる筈だ。
「それでは、楯無から順に案を出していってくれ。」
「そうねえ~、コスプレとかしてみてはどう?みんなでバニーガールとかの格好して父さんを出迎えるの♥」
「却下だ!」
「ありえませんわ!」
「ないわ~!」
みんな一斉に反対する。
「アニメとかでたまに見かけるけど、現実にそんな恥ずかしいことする人いるのかなあ?」
「少なくとも我々の身近にはいないな!」
『ぷっははっはwwwwwww』
ヨツバとイツキのやり取りが、なぜかツボに入った私は思わず吹き出してしまう、すると周りもつられて笑い出し、その場の空気が一変する。
そこからは和やかな雰囲気の中で進行し、時折扇子を広げながら私をネタにする楯無の表情からは、更衣室で見せた憂鬱な雰囲気は微塵も感じられなかった。
そして眼鏡を外し、すっかり緊張が解けてしまった私はうっかり口走ってしまう。
「ヒドイよ
瞬間、みんなの視線が私に集中し、失言に気づかされる。
「
更識七瀬は少しだけ憂鬱そうな表情でそう言った。
更識楯無がIS学園1年の頃の些細なエピソードでした(笑)
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