気がついたらわたモテの世界に転生していた (イチゴとメロン)
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プロローグ

最近、わたモテにハマっているので練習で書きました。小学生レベルの文章力なので期待しないでください。


今日は高校の卒業式だった。卒業式はすでに終わって僕は学校の校門近くで黄昏れていた。

もう自分が高校生ではなく、長く通ったこの学校の生徒ではないと思うと少し寂しくなる。

 

高校生活の感想は? と聞かれたら、凄く楽しかったとしか言いようがない。

クラスのみんなとは仲良かったし、男子と女子どちらとも仲良くやってた。

 

学校で虐められたこともないし、周りにも虐められたりする人もいなかった。

まるで日常アニメみたいな楽しい高校生活だったと思う。

唯一の不満は彼女が出来なかったことだろうか?

 

仲の良かった女子は何人もいたけど、友達より深い関係になることはなかった。

でもまぁ…彼女は出来なかったけど、凄く楽しかったらそれでいいのだ。

 

出来ることならもう一度、高校生活をやりたいなぁ…

 

そんなことを考えながら思い出に浸っているとクラスメイトから呼びかけられた。

どうやらこれからみんなで遊びに行くみたいだ。仲の良かったクラスメイト達が集まってる。

 

彼らの所に向かおうと足を踏み出した瞬間、いきなり激しい頭痛が僕に襲いかかり、意識を失った…

 

 

………………………………

 

………………

 

……

 

 

 

(えっ!?!?!?!?)

 

意識を失って目が覚めると、何故か女性に抱っこされていた。

 

(はっ!?)

 

(僕はさっきまで学校にいたはず…)

 

周りの様子や自分の状態を確認すると、さらに混乱した。

 

(えっ!?!?!?!? ど、どどどいうこと!?!?!?!?)

 

そのはずだったが、何故か僕は病院らしき所にいた。

しかも僕は赤ちゃんになっていて、知らない女性に抱かれているのだ。

 

訳がわからない…

 

それにこの女性…よく見るとめちゃくちゃ美人である。

 

(えっ…なんで僕は赤ちゃんになって…こんな美人に抱かれてるんだ?)

 

僕は自分の置かれた状況がまったく理解出来なかった。

声を出そうとしても…「あぎゃ~」というような声しか出ない。

 

「たっくんが無事に生まれて本当によかった~」

 

女性はそう言いながら僕の頭を優しく撫でた。

たっくんとは僕のこと言ってるみたいだが…本当にどうなってるんだ!?

 

「ああ、そうだな。ほ~らたっくん。パパでちゅよ~」

 

そう声をかけてくるイケメンの男性。

どうやら僕はこの人達の赤ちゃんになっているらしい。

 

何故!?

えっ…まじでどいうこと!?

いきなり頭痛がして気を失ったら知らない人たちの赤ちゃんになってました。

う~ん…自分でも何を言ってるか訳が分からん。

もしかして…僕は死んで…別の誰かに生まれ変わったのか?

 

………………………………………

 

いやいや!? さすがに人間こんな急に死んだりしないよね! 体に何の予兆もなかったし!

うん、これは夢だな! きっとそうだ夢に違いない。

高校卒業してセンチメンタルな気分になってたから、こんな変な夢を見ているのだ。

 

そのうち目が覚めるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思って七年が過ぎた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、全然夢が覚めませんでした…

夢が覚めることもないまま、小学一年生にまでなってました。

どうやら僕は前世の記憶を持ちながら、生まれ変わった? らしい…

 

これが転生と言うやつか…

 

そして…さらに驚くべきことが僕の身に起こっていた。

 

 

 

僕は卒業式に死んだ?…そして新しく記憶を持ったまま生まれ変わった。

それはまだ分かる。前世の記憶を持ってる人がいるって聞いたことあるし…。(それが本当かどうかしらないが)

 

 

だが僕は"僕が死んだ年から18年前"に戻って生まれ変わっていた。

 

つまり僕が転生前の両親から生まれた年に、新しく別人として生まれ変わったのだ。

 

 

 

………………………………………

 

 

 

もう訳が分からない。

死んだ後に新しく生まれ変わるのならまだ理解できなくもない。

輪廻転生とか死んだ"後"も魂は受け継がれていく……みたいな考え方とかもあるし…

 

でも過去に戻って生まれ変わるとか…そんなことあるんだろうか?

 

まぁ…このことはもう考えてもどうにもならないので考えないようにしている。

これからのことを考えたほうがいいだろう。

 

 

 

この生まれ変わった僕の名前は神埼 拓弥。

 

両親が美男美女でその血を引いた僕も美少年になってました。

自分でもビックリするくらいの美少年である。元の顔は本当に普通って感じの顔であった。

 

転生してよかったことの一つである。

でも転生してつらい事もいっぱいあった。

 

例えば…転生した直後の頃だろう。

赤ちゃんの僕は何も出来ず、すべて転生後の母にやってもらっていた。

精神年齢18歳の男がよく知らない女性に下の世話をやってもらうのは精神的につらかった。

 

まぁ、特殊な性癖を持つ人ならご褒美と思うかもしれないが、僕にはキツイ。

 

 

 

それに今現在……辛いことの一つは学校に行くことである…。

 

転生前は学校に行くのが好きだった……。

でも転生して七年が経ち、今の僕は小学校に通っているが…学校の授業がつらい。

理解してる内容を長時間勉強させられるのである。これが地味にキツイ。

同級生とは仲良くやってる…だけど精神年齢が離れているせいで話を合わせるのがしんどい…。

 

転生したことによるメリット、デメリットはいろいろあった。

 

だが僕にとって一番きつかったのは、

この時代のゲームや漫画などの娯楽作品の内容を知っていることだった。

世の中の大抵の男子はゲームや漫画好きだろう。僕もそうである。

 

そして、僕は過去に戻っているのだ。

 

今出ている新作ゲームなんかも、転生前にプレイして内容は知ってるものばかりで新鮮味がなかった。漫画やアニメ、映画もそうだ。僕の好きそうなやつは、すでに転生前に全部見ていたのだ。

 

有名雑誌に連載されてる漫画もほとんど完結まで知ってるし、長期連載されてる漫画も十年ぐらい先の内容まで知っているのだ……。

 

漫画を読む楽しみが減った。漫画好きの僕には辛いことだ。

 

 

 

両親は映画好きだったので、新作映画が出ると面白そうだから見に行こうと連れられることが多かった。僕は映画の内容もオチも全部知っていることが多く、心の底から楽しめることが少なかった。

 

そんな感じで僕は転生してから少し退屈な日々を過ごしていた。

 

 

 

 

 

今、思い返すと転生前は暇さえあれば友達と遊び、漫画やゲームばっかりしてたなぁ…。

だが今は漫画やゲームをする気がまったく起きなかった。

 

(いや…せっかく転生したのだし、今度の人生は勉強もスポーツもできる文武両道な人間を目指すのもいいかもしれない)

 

ふとそう思った。そうだ……せっかく転生したのだ。

転生前の僕は普通という感じだったが、今度はちょと凄い人間を目指すのもいいかもしれない……どうせ暇だし。

 

 

 

とりあえずテニスを頑張ることにした。何故なら転生前の僕はテニス部だったからだ。

一応、真面目に部活動はやっていたが、それほど本気でやってなかったのでそれほど強くなかった。

 

だが今度は本気でやって全国目指してみるのもいいかもしれない。

 

それに勉強も今のうちに色々やっていたほうがいいかな?

子供の時の方が記憶力いいだろうし……若いうちに頭に詰め込んでいたほうがいい気がする。

まずは苦手だった英語でも勉強してみるか……

 

 

そんな感じで僕は文武両道を目指して頑張ることに決めた。

 

 

 

 

 

それから数カ月後、僕はテニススクールに通いながら勉強も頑張っている。

だが最近、未来の知識を生かしてなにか出来ないかと考えていた。

 

(やっぱり…せっかく未来の知識があるんだから、なにか有効に使うべきだよね?)

 

色々考えた結果、出した結論が"株"であった。

未来の知識を生かして株でお金を稼ぐことも出来るじゃね?と思ったからである。

 

(うろ覚えだけど、将来有名になる企業とか覚えてるし、今のうちに買っとけば大金になるかも!)

 

自分でも短絡的で考えが浅いとは思うが、試してみるのも悪くない。

まぁ、問題は小学生に株をやらしてくるかどうかだけど…。

 

 

無理を承知で両親に頼んだらあっさりとOKをもらった。

どうしてOKしてくれたのか理由を聞いたら…

 

「拓弥は昔から何もわがまま言わないし、おもちゃも欲しがらないから心配だった」

 

「自分からやりたいことを言ってくれるのは嬉しいし、親として出来るだけ叶えてやりたい」

 

と言われた。出来るだけ両親に迷惑をかけないように良い子にしていたがそれが却って心配だったらしい。まぁ、聞き分けの良すぎる子供も気味が悪いよな…。

そういえば両親に頼み事したのも、前にテニスを習いたいぐらいしか記憶にないな…。

 

株を始める環境は両親が整えてくれた。口座を作ったりパソコンを用意してくれたりと頭が上がらない。そうして株を始めた。元手は僕のお年玉とお父さんのお小遣いであった。

 

「頑張ってお父さんの小遣いを増やしてくれよ」と言われたので色々世話になってる恩を返すためにも頑張ろうと思う。

 

 

 

 

それから一年たった。

 

一年経ったが生活は特に変わらない。普通に学校に通いながらテニスして、勉強して、株をやってる。株は本などを見て勉強したが最初は上手く行かず……損失もけっこう出したりしていた。

 

だが最近は慣れてきたのか、今は順調である。元手が少ないので大してお金は稼げてないが順調だった。少しずつ資金を増やしている。

 

 

 

 

 

 

それから更に時は過ぎて、僕もいつの間にか中学生になった。

 

二回目の中学校生活である。中学になると周りのみんなも少しずつ大人っぽくなった。

そのため同級生達と少しずつ話も合うようになって学校も小学生の時よりは楽しくなった。

 

相変わらずテニスは続けて本気でやっている。勉強の方はそこそこやるぐらいに変わった。

小学生の時に高校の範囲はすべての教科を勉強しまくったので、もうあんまり勉強する所がなくなったので減らした。

 

株の方は自分でもビックリするくらい順調である。

未来の知識があると言ってもうろ覚えだし、社会情勢とかに企業に詳しいわけじゃなかった。

ダメ元でやってみるか!って感じでやっていたのだが…いつの間に資金が億を超えていた。

 

これには自分も両親もビックリである。というかうまく行き過ぎて怖い…。

両親はこの子は天才だ!って親バカっぽくなってたけど、僕は未来の知識を利用してるだけの凡人なのです。

 

 

 

 

そうして更に三年の月日が経ち…僕はいつの間にか高校生となった。

 

今日が高校の入学式である。

中学生活を振り返ると僕にしては頑張ったなという感じだ。

頑張って続けていたテニスはなんと中学の全国大会で見事優勝を果たした。

でも人生二回目だし、大人が子供の大会に参加して優勝したって感じでなんかズルいような気がするけど…

 

さらに中学生活を思い返すと……めちゃくちゃモテたことを思い出す。

性格は転生前とたいして変わってないのに凄くモテた。

転生前は彼女が一人もできなかったので、やはり男は顔なのかと落ち込んだ。

 

そしてある日、僕は一人の女子に告白された。

 

精神年齢30歳ぐらいの男が女子中学生と付き合うのは、なんか犯罪臭いと思ったりもしたが気にしないことにした。僕にとって初めての彼女であったが……すぐに別れた。

 

別れた理由は……彼女の愛が重すぎたとしか言えない。

 

高校受験もあったけど高校は正直どこでも良かったので、家から近くの学校を受験して普通に合格した。

 

中学生活はそんな所だ。

 

株の方は…自分でも信じられないが、何十億というお金を株で稼いでしまった。

もう将来何も心配せずに遊んで暮らせるが、ここまで稼ぐと冗談抜きで何者かに命を狙われそうで怖い…。

 

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

 

転生後の人生は転生前と比べれば、ずっといい人生だ。

前と違ってイケメンだし、スポーツもテニスでは全国一位、お金だって山程ある。

でも……何故だろう……転生前の人生の方が楽しかった気がする……

転生後の人生に不満なんてないし、楽しくないわけじゃない……

 

 

 

でも……何かが足りない気がした。

 

 

 

転生前の僕は普通だった、顔も普通だし、スポーツはテニス選手としてはごく普通で、お金はない……

 

今の人生の方がずっと充実してるはずなのに……僕は転生前の人生より退屈に感じてる……

それは…未来を知っていたり、僕にとって新しい娯楽作品がないせいだけじゃない。

上手く言えないけど……今の人生はそれなりに楽しいけど……何かが足りなかった。

 

 

そう思うのは二度目の人生だからだろうか?

転生前……僕はもう一度、高校生活をやってみたいな……と思った。

 

 

そう思ったのは高校生活が凄く楽しかったから……

 

そして今日、これからまた二度目の高校生活が始まる。

 

あの時と同じように……僕は楽しい高校生活を送れるだろうか?

 




小説書くのってすごい大変……定期的に長文投稿出来る人…しゅごい…


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第一話

わたモテの二次小説もっと増えて……




原宿教育学園幕張秀英高等学校……今日から僕が通う高校の名前だ。

 

(今日から、ここに通うことになるのか……)

 

眼の前に映る校舎を目て、僕は気合を入れる。

周りを見渡すと、僕と同じ新入生がたくさんいた。

 

学校生活が楽しいかどうかなんて、自分の行動次第で結構変わるものだ。楽しい学校生活を送りたいなら、それなりに努力しなきゃだめだろう。

 

知らない人にも積極的に話しかけて、友達を作る。学校行事にも積極的に参加して最大限、楽しむ努力をしなければ!

 

自分で言うのもなんだが、昔からコミュ力はあるし、ポジティブ思考だ。だからこそ友達が多かったと思う。転生前…何故か彼女だけは出来なかったが……解せぬ……

 

まぁ、とりあえず教室に向かおう。

 

僕は玄関口に張り出されたクラス分け表を見て自分のクラスへと向かった。

 

(やっぱりちょっと緊張するな)

 

二回目の高校生活……どんな人達とクラスメイトになるのか、楽しみでもあるが少し不安でもある。

 

(イジメとかするような、悪い人がいなきゃいいけど…)

 

自分の教室に着くと、クラスメイトの半数ぐらいがすでに来ていた。

 

同級生達は自分の席に着いて、大人しく座っていた。

おしゃべりしてる人達もいるが、ほとんどの人は静かにして自分の席に座っている。

高校初日特有のそわそわと落ち着かない雰囲気がクラスに充満している。

 

僕はこういう雰囲気は嫌いではない。逆になんだかワクワクしてくる。

今はまだクラスメイト達とお互いのことをよく知らない。

でも、これから仲良くなってワイワイ楽しくできるんじゃないか、と思うとワクワクする。

 

僕は楽観的とよく言われるのだが、僕は自分の楽観的な性格を気に入っている。

楽観しすぎて失敗することもあるが、人生前向きに考えるほうが楽しいはずである。

 

教室の前に張り出された、席順が書いてある紙をみて自分の席を確認した。

 

(出席番号順か…)

 

自分の席に向かうと僕の周りの席は、僕より早く到着した同級生達がもうすでに座っていた。

僕は席に座る前に、周囲の同級生に笑顔で挨拶をした。

 

「これからよろしくね」

 

僕は転生前の両親から挨拶は大切だと教えられた。そして"笑顔"も大切だと。

笑う門には福来たる…その教えを僕は今でもちゃんと守ってる。

 

僕が笑顔で挨拶すると周りの同級生たちも返事してくれた。

 

「う、うん。これからよろしく」

 

「よろしく」

 

「おう! 仲良くやろうぜ!」

 

席に着いた僕は周りの同級生達と自己紹介を初めた。担任の先生が来るまで暇である。

同級生たちとおしゃべりしてた方が楽しいだろう。

 

「私は岡田 茜。よろしくね」

 

その名前を聞いて僕は既視感を感じた。

 

(岡田…茜? どこかで聞いたような……?)

 

僕は転生後の人生で、既視感を感じることがよくあった。

二度目の人生だからだろうか? 転生前に知らなかったことを転生後に知っても、何故か前から知ってるような気がする…ということがよくあった。

 

この学校の制服も初めて見た時、何故か前から知ってるような既視感を覚えた。

まぁ…制服なんて似たようなのが多いから、特に気にしなかったけど。

それに既視感を感じても、転生前に普通に知ってたのに、ただ僕が忘れていただけどいうことも多かった。だから既視感を感じても特に実害はないので気にしなかった。

 

(だけど……僕はこの子を…どこかで見た気がする。この子のことを知ってるような……)

 

彼女のことを思い出そうとするが……思い出せない。彼女も僕のことを知らないようなので、おそらく初対面のはずだ。だが、今までよりかなり強い既視感を感じた。もしかして、彼女とは転生前の知り合いなのだろうか?

でも僕は転生前にこの学校に通ってもいないし、知り合いもいないはずだが……

 

でもやっぱり彼女のことを知ってる気がする……転生後に会ってたりしてたかな?

どうしても気になってきたので彼女に直接、聞いてみることにした。

 

「ねぇ、岡田さん。僕たちどこかで会ったことある?」

 

「えっ!? い、いや…ないと思うけど……」

 

やっぱり会ったことはないらしい。やはりただの既視感? そう考えてると…

 

「おいおい 高校初日にナンパかよ~」

 

と笑いながら後の男子から茶化された。

 

「えっ!? いやいや違うって! ほんとに会ったような気がしたから……」

 

茶化してきた男子は清田君。さっき自己紹介を済ませたばかりのクラスメイトである。

明るくてノリが良さそうだし、仲良くなれそうだ。

だが……彼のことも知ってるような気がする……これもただの気のせいか?

 

僕はまた既視感を感じたが気にしないようにした。そんなことを気にするよりも同級生達と仲を深めたほうがいいだろう。

担任の先生がくるまで同級生たちとのおしゃべりに興じた。

 

 

 

 

 

それからしばらくすると、担任の教師がやって来た。少し話をした後、僕ら新入生は入学式をするため体育館へと移動した。

 

入学式の新入生代表挨拶は僕がやった。なんでも、入試の成績が一番良かった人がやるらしい。めちゃくちゃ緊張したし、やりたくもなかったが……しょうがない。ちゃんと出来たかどうか不安だ……

 

式が終わるとまた教室に戻ってきた。ロングホームルームが始まり、生徒たちの自己紹介が始まった。

 

 

 

「神埼 拓弥です。中学ではテニスをやっていました。楽しい高校生活を送れるように友達をたくさん作りたいと思ってます。どうか皆さんよろしくお願いします!」

 

学校での自己紹介は何回もやってきたけど、やっぱりちょっと緊張する。

入学式の代表挨拶よりは、全然マシだが……

 

自分の自己紹介が終わったので、他のクラスメイト達の自己紹介を見ていると……一人の女子が目に入った。

 

(んっ!? あの子……)

 

その女子は小柄で長い髪をしていた。前髪も片目が隠れるくらい長く、目に隈もありどこか暗そうな子だった。

自己紹介を控えて緊張しているのか落ち着かない様子でソワソワしている。

 

彼女を見た瞬間、今までにない強い既視感を感じた。

 

(……彼女のこと知ってる! 絶対見たことある!)

 

だが、どうしても彼女のことを思い出せない。転生前も含めて出会った女子を全て思い出そうとしてみたが…彼女のことは思い出せなかった。

だけど絶対に知ってる気がする。名前を聞けば思い出すかもしれない。

そう思った僕は彼女の自己紹介が始まるまで待った。

 

そして彼女の自己紹介が始まったが……何故か紙を持っていた。

 

(んっ? 自己紹介の内容をわざわざ紙に書いてきたのか?……変わった子だな)

 

彼女は折り畳まれた紙を開き、自己紹介を初めた。

 

「黒木智子 趣味 読書です 以上」

 

シーンとした空気が教室に広がった。誰もが無反応だった。

そんな長い紙を用意して自己紹介それだけかよ!…とツッコミをいれるものは誰おらず…

ただ…静寂が教室を支配していた。

 

クラスメイト全員…彼女の自己紹介に無反応だったが…僕は違った。

 

彼女の名前を聞いた瞬間、凄まじい衝撃が僕を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

(黒木智子……って…………わたモテの主人公じゃん!!!!!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

声に出して叫んでないのが不思議なくらい、僕は心の中で叫んでいた。

 

"私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! "

 

それは僕が転生前…好きだった漫画である。転生前に読んだっきりで、かれこれ十五年くらい見てない。好きな作品だったが、転生後は漫画をあまり読まなくなったので、今までその漫画のことを忘れていた。

 

だが黒木智子という名前を聞いた瞬間、その存在を思い出した。

 

(あっ!? あぁぁぁぁっ!?)

 

(うわっ!? 本当にわたモテの主人公にそっくりだっ!?)

 

(なんか見たことあるなと思って、今まで出会ったことのある"人間"で思い出そうとしてたけど……漫画のキャラじゃんっ!?!?!?!?!?)

 

(そ、それに!? この学校の制服もどっかで見たことあるなと思ったら…わたモテの学校の制服じゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!)

 

(と、ということは……この世界は漫画の世界ってこと!?!?!?!?)

 

(いやいや、そんなばかなっ!?!?!?!?)

 

 

僕は黒木智子と自己紹介した女子をじっくりと観察する。

 

(見れば見るほど、わたモテの主人公にそっくりだけど……そんなことがあるのか!?)

 

彼女をまじまじと見つめていると……目があった。

 

まだ彼女は自己紹介して立ったままだったが、僕と目があった瞬間、うつむいて座ってしまった。

 

(ああ……やばい……落ち着かないと……)

 

たぶん僕は凄い顔で彼女を見ていたと思う。そんな僕の姿を彼女は見た。

怖がらせたのか、引かせたのかわからないが……僕から目をそむけるように座ったのだ。

 

(と、とにかく落ち着こう!)

 

さっきから心臓がバクバクいってる。まずは落ち着いて考えるべきだろう。

黒木智子と名乗った彼女は……本当にわたモテの黒木智子なのか?

 

(いや……黒木智子って、けっこう普通の名前だし……ただの同姓同名かもしれない……)

 

(もこっちにそっくりな姿だけど……)

 

(それは彼女もわたモテ好きで……主人公の真似ををしているだけかも……)

 

 

そうだ! ここがわたモテの世界だというのなら他にもわたモテのキャラがいるはずだ。

え~っと……わたモテってどんなキャラいたっけ?

 

わたモテを最後に見たのは十五年も前である。しかも転生して色々あったせいか、わたモテの内容があまり思い出せない。

主人公である黒木智子……もこっちはちゃんと覚えている。だが他のキャラは……

 

(え~っと……一年の時…もこっちと一緒のクラスのキャラは……たしか……ね…ね、ネモだっ!)

 

(ネモってキャラがいたはず……)

 

教室を見渡し、ネモを探してみると…………いた。

 

漫画で見たことがある、漫画のキャラそっくりのネモがいたのだ。

しかも、ちょうど自己紹介してる最中で根元陽菜と名乗っていた。

 

(そうだ……名前は忘れていたけど……そうだよ! 根元陽菜って名前だった!)

 

根本さんを見ていると先程、仲良くなった岡田さんを思い出した。

 

(あ、あぁぁぁぁ~~~~~!?!?!?!?)

 

(そ、そういえば……ネモと仲の良かったキャラに岡田さんにそっくりキャラがいた気がするっ!?)

 

(わ、わたモテのキャラにそっくりな人間が何人もいる……これはただの偶然か?)

 

(もしかして本当に……この世界はわたモテの世界なのか……?)

 

 

 

 

僕は学校が終わると、すぐにスマホで"わたモテ"について調べてみた。

だが……ネットで検索しても何も出てこない。

 

速攻で家に帰り、家のパソコンからも調べてみたが同じである。

わたモテが連載されていたサイトにも見に行ったが、何故かわたモテだけが連載されていなかった。

 

それから僕は転生前に知っていた、わたモテ以外の漫画を片っ端から調べてみると……全て普通に存在していた。

わたモテだけがこの世界にはなかった。一応、本屋にも見に行って確認したが……わたモテの漫画だけがない。

 

そう……信じられないことだが……この僕が転生した世界はわたモテの世界だったのだ。

 

この世界に転生してから十五年……初めて気づく衝撃の事実だった。

今の今までまったく気づかず、十五年間…この世界で普通に暮らしていた。

でもそれはしょうがないだろう……わたモテが存在しない以外は、転生前の世界とまったく一緒だったのだから。

 

この世界が漫画の世界だと思うと、何だか異常なほど興奮してきた!

こんなに興奮しているのは、転生前も含めて生まれて初めてである。

今日の朝……なんだが転生後の人生はちょっと退屈だな~と思っていたのが嘘みたいだ!

 

どうせならドラゴン○ールとかの世界に生まれ変わって、かめはめ波や舞空術を習って空を飛んでみたい! とか思ったりもするが……

 

(でも……ああいうバトル漫画の世界だと、主人公達と敵の戦いに巻き込まれて死んじゃったりしそうだしな……)

 

ごく普通の一般人である僕は、敵の攻撃に巻き込まれて簡単に死んでしまう……という自分の姿が簡単に想像できた。

 

(こういう普通のほうが危険もなくて安心できるし、よかったのかもしれない)

 

(しかし、漫画の世界に転生していたなんて……今まで夢にも思わなかったぞ)

 

(この世界は転生前と同じ、ごく普通の世界だと思ってたのに……)

 

(今日……僕はわたモテの登場人物達と話したのか……)

 

漫画好きなら誰しも、一度は漫画の世界に行ってみたいと思うことはあるだろう。

そして漫画のキャラと話したり、交流できたらどんなにいいか……

 

そして僕はその漫画の世界にいるのだ……そう思うとなんだか凄く楽しくなってきた。

こんなにも心が踊るような気持ちになったのは転生後で初めてだった。

 

(今日はちょっと混乱して、黒木さんとはまったく話せなかったからなぁ……)

 

(明日は黒木さんと話してみよう♪)

 

(あぁ~やばい! 明日の学校が凄く楽しみになってきた!)

 

二度目の高校生活はとても楽しくなりそうだと、僕の胸は高鳴っていた。




次回はもこっち視点…


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第二話

新入生であふれる校舎の前に一人の少女がいた。

 

彼女の名前は黒木智子。彼女はボッチだった……。だが本当の意味でボッチではない。

なぜなら彼女にも一人だけ友達がいるからだ。

だが残念なことに…唯一の友達であるゆうちゃんは、別の高校へと行ってしまった。

 

智子が新しく入学する高校に、智子の友達はいない。

同じ中学出身の人間もいるだろうが、彼女の友達はゆうちゃんという少女だけだからだ。

 

 

この高校において……智子はボッチだった。だが、それは高校初日だからだ。

中学の友達が別の高校へ行き、この学校に友達がいない人間は、智子以外にもいるはずだ。

有意義な高校生活を送るためには友達が必要だ。その友達を作る為の秘策を智子は用意していた。

 

いや、友達だけでない。彼氏だって出来るかもしれない!

なんといっても今日から自分は花の女子高生なのだ! …という期待が智子にはあった。

JKというのはそれだけで価値がある。女が一番モテる時期だといっても過言でないはずだ! 

智子はそう思っていた。ピチピチのJKなのだ、男の方からこっちによってくるはずだと。

 

(よしっ!)

 

心の中で気合を入れて、智子は自分の教室へと向かった。

教室に着いて中を確認したら、人が少なかった。

 

(早く来すぎたか? まぁ…いいか)

 

教室前に張り出された紙で自分の席を確認し、キョロキョロと周りを見渡しながら智子は自分の席に座った。

これから一年この教室の奴らと過ごすことになると思うと、期待もあるが不安もある。

 

(私と友達になれそうなのはいるか? できればゆうちゃんみたいなのがいるといいんだが……)

 

教室を見渡すが、まだ人が少なかったせいか、智子と気が合いそうな同級生はいなかった。

 

(まぁ……このまま大人しく待っとくか)

 

そのまま待っていると、教室にクラスメイト達が次々と入ってきて自分の席へと座っていった。

智子の周りの席はすべて埋まり、ソワソワと落ち着かない空気が漂う。

 

一瞬、周りの同級生に話しかけようかと思ったが、智子にとってそれはハードルが高すぎた。

いきなり見ず知らずの他人に話しかけても、上手く会話できる自信がまったくない。

 

そのまま大人しく座っていることにした。座ったまま、ぼ~っとしていると、一人の男子が教室に入ってくるのが目に入った。

 

その姿に……智子は一瞬、目を奪われた。

 

その男子は一言で言うならイケメンだ。イケメンとしか言いようがなかった。

芸能人クラスの容姿だった。もしくは二次元のイケメンキャラがそのまま出てきたようだ。

 

その男子はそのまま自分の席へと向かっていった。彼は自分の席に着くと、周りの席に座っていた同級生たちに…

 

「これからよろしくね」

 

と爽やかな笑顔で挨拶をしていた。そしてそのまま座って、周り人間達と自己紹介を始めておしゃべりに興じていた。

 

(あいつ……やべーな)

 

イケメンの席周辺は彼が来るまで静かなものだったが、彼が来たとたん、賑やかで和気あいあいとした空気が漂っている。

 

(もう見ただけで分かる。あれはもう……このクラスの上位カーストだな…)

 

学校生活ではスクールカーストというものがある。本来、同じ生徒という立場のはずなのに、生徒たちの間で上下関係みたいなものが自然と出来上がってくる。

上位の人間ほど楽しい学校生活を送れて、下位の人間は惨でつまらない学校生活になると智子はそう認識していた。

 

イケメン男子は容姿はもちろんのこと、初対面の人間に簡単に話しかけ、お喋りをするコミュ力もあった。これで上位カーストにならないわけがない…と智子は思った。

そのままイケメン男子を見ていると、近くの女子をナンパし始めた。

 

「ねぇ、岡田さん。僕たちどこかで会ったことある?www」

「えっ!?www い、いや…ないと思うけどwww」

「おいおいw 高校初日にナンパかよ~www」

 

イケメン男子の周辺からはすでにリア充オーラが漂っていた。

さっき知り合ったばっかりのハズなのに、リア充集団は女子を口説いたり、茶化したりしている。

 

その光景を見た智子は、羨ましいな……と思うことはなく、ただ単純に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(リア充死ね!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…と思った。

 

(つーかあのイケメン。絶対ヤリ○ンだわ)

(後先考えてなさそうな顔してるしな。たぶん女とピーーしまくって、妊娠させて中絶させる未来まで見えるわ)

 

外見と第一印象でクッソ失礼な妄想を働かせていた智子であった。

 

(まぁ……どうでもいいか。どうせ……あいつらと絡むこともないだろうしな)

 

あのリア充グループは明らかに智子とタイプが違う。同じクラスだが……絡むことは殆ど無いだろう。そう思った智子はリア充グループを観察するのをやめて、担任の教師が来るまでぼーっとしていた。

 

それからしばらくすると、担任の教師がやってきた。少し話をした後、入学式をするため体育館へと連れられる。

 

新入生代表の挨拶は驚くことに、同じクラスのイケメン男子だった。

思わず顔で選んだのか? と思う智子であった。

 

 

 

 

入学式が終わった後は、また教室に戻ってきた。そして現在…生徒達の自己紹介が始まっていた。

出席番号順から自己紹介が始まり、智子の順番が近づいてきた。

 

(よし……ここが勝負だ!)

 

智子は有意義な高校生活を送れるように、ある秘策を用意していた。

それは自己紹介で面白いことをしてウケをとること。自己紹介で面白いことすれば自然と…

 

(あ、この人面白いな! この人と友達になりたい! ていう人間が出てくるはずだ!)

 

…そう考えていた。中学校時代は友達が一人しかいなかった智子は、惨めな思いをすることがよくあった。

高校生活までそんな思いはしたくない。別にリア充ほど大量の友達が欲しいわけじゃない。

少しでいいのだ。惨めな高校生活にならないくらいの友達が欲しかった。

 

 

何も行動しなかったら……友達が一人もできず、中学時代よりも悲惨なことになるかもしれない。

そう考えた智子は自己紹介で、ギャグを披露することに決めたのだ。

 

(私の考えてきたネタなら、確実に爆笑なはず……最低でも数人はツボに入って笑うはずだ)

(もしかしたら、この自己紹介でクラスの人気者になれるかもしれない…)

 

智子の頭の中では漫画やアニメのように、華やかな高校生活を送っている自分の姿が想像されていた。

 

「それじゃあ、次~」

 

 

担任の声が教室に響く。いよいよ、智子の順番がやってきた。

クラスメイト達の注目が集まった中で、変わったことをするのは勇気がいるし、恥ずかしくもある。内気な智子にはキツイことだった。だが智子は勇気をだして、渾身のギャグを披露した。

 

予め用意しておいた、折り畳まれた長い紙を取り出す。そして、その紙をみんなに見えるように大きく広げ…

 

「黒木智子 趣味読書です 以上」

 

(決まった!)

(こんなに長い紙を用意しといて、こんなに短い自己紹介!)

(地味だけど面白いネタだぞ! 早く誰か突っ込め!)

 

智子は誰かがつっこむのを待っていた……だが誰もつっこまない。

周りを見渡してみると……誰も笑っていなかった……クスリともしていない。

 

シーンとした静寂が教室を支配している。

 

(あ、あれ……?)

 

智子が地味だが面白いと思った渾身のギャグは……誰も何の反応もしなかった。

担任の教師からもスルーされた。「それじゃあ次~」という担任の声が教室に響き……

智子の自己紹介は終わった。

 

(えっ……嘘だろ!?)

 

そのまま立ちすくんでいた智子だったが、一人の男子と目が合った。

その男子はあのイケメンだった。智子のことを「うわ~こいつありえねぇ~」という驚愕の表情で智子を見ていた。

 

その姿を見た智子は……心の中の何かが、ポッキリと折れるのを感じた。

さっきまで頭の中で思い描いていた、理想の高校生活がガラガラと崩れていく。

 

この自己紹介で今までとは何か変わるんじゃないかと期待した分、落胆も大きかった。

 

(はっ……はは……)

 

智子は目の前が真っ暗になるような感覚を味わいながら、俯き…崩れ落ちるように椅子に座った。

 

 

 

 

 

 

 

(やっちまったな……)

 

ホームルームが終わると、智子はトイレの個室に籠もっていた。

 

(まさか誰も反応しないとは……)

(めちゃくちゃ滑ってるような空気だったし……)

(やっぱり……普通の自己紹介しとけばよかった……)

 

便器に座りながら智子は先程の失敗を悔やんでいた。

だが……落ち込んでいた智子に、さらに追い打ちをかけるように外から声が聞こえてきた。

 

「自己紹介で盛大に滑ってるのいたね~www」

「あ~あの人ね~www」

「あれ頑張って準備したのかな~?www」

「ね~痛すぎて逆にかわいそうだったわ~www」

 

外から聞こえてくる言葉が智子の胸にグサグサと突き刺さる。それは智子のことを言ってるかどうかは分からなかった。だが智子にはまるで自分のことを言われてるような気がした。

 

 

 

 

学校が終わると、智子は陰気くさい足取りで家に帰った。

自分の部屋に帰ってくると、自然とため息が出た。

 

「はぁ……疲れた……」

 

部屋に置いてある鏡を見ると、そこには陰気な自分の顔が映っていた。

朝、登校する前に見た時は、新たな高校生活に希望を膨らませていた自分が映っていた。

だが……たった数時間で、その姿は消し飛んだ。

 

 

「あ~もう明日…学校行くの…だるい……行きたくない……」

 

高校初日から失敗し、これから惨めな灰色の高校生活を送るような気がして……智子は憂鬱だった。

 



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