SCP財団日本支部サイト████・通称幻想郷支部 (霜宮)
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ありえたかもしれない未来
20██年██月██日
「この度はえろうすいません」
これが彼らと私の初めての交流の一端であった。
私は今、SCP財団日本支部サイト████、通称幻想郷支部へ配属されている。
日本支部の中でもいたく特殊なサイトであるここは、たった数年前に設立された、まだ歴史の浅いサイトだ。サイト自体が機密指定らしく、このサイト勤務から外れるときはクラスD記憶処理を施されるらしい。更には殉職率も半端ではなく、フィールドエージェントに限ると40%を越すようだ。
その実、彼らとの初めての邂逅は、とても友好的なものでなかったと聞いている。
今でも協力関係にあるとはいえ、本部に設置され、幻想に押しつぶされることを拒否し続けている『スクラントン現実錨』が無ければ、幻想に住む住人は喜々としてこのサイトを潰しにかかるだろう。なにせ財団は、彼らを否定する集団のようなものなのだから。
配属初日に渡された資料によると、このサイトは特例的に本部と日本支部の二頭体制で運営なされているらしい。日本支部側のサイト管理官は「エージェント・カナヘビ」、本部側の管理官は「ジャック・ブライト」である。
これを見た瞬間、私はこのサイトから逃げ出したくなった。
そしてその予感は正しかったことを、この数分後に知ることとなる。
私のCクラス・フィールドエージェントとしての最初の任務は、屋根が半分吹き飛んだ、『紅魔館』という館に住む有力者への謝罪の付き添いという、何とも間の抜けた任務だった。
下手人はブライト博士らしい。畜生。
内容をかいつまむと、森の中の湖を歩いていた博士は、近くに居た妖精の喧嘩を買い、河童と呼ばれる種族から譲り受けたアノマリー(近々SCP-████に再分類予定)を使い、「弾幕ごっこ」と呼ばれる決闘を敢行。その余波で近くに位置していた紅魔館の屋根が吹き飛んだ、ということだった。
喜ぶべくは館の主がそれほど激怒していなかったということくらいか。月に上納予定のDクラスの数を増やすことで交渉は一致したようだ。
P.S.
驚くべきことに彼がこのような事を起こしたのはこれが初めてでないらしい。なぜあの博士がクビにならないのだろうか。私は疑問でしょうがない。
【本部により検閲済み】
【収容手順変更により機密文書に指定】
――――――――――――――――――
【通信ログ起動】
【通信開始】
”それで、現実錨はちゃんとおいてきたんやろな?”
”もちろん。”
”ならええわ。これでボクもアレに頭を下げた甲斐があったってもんや。”
”何処からが頭かわからないくせしてよく言うぜ。”
”(笑い声)”
”(笑い声)”
”さて、これで全部かいな。”
”竹林、人里、寺、山……オーケー、全部だ。”
”地下にはおかんでええのかい。”
”上がなくなれば引っ張られるらしい。”
”ならええな。”
”イエス。”
”結界の件はどないなっとるんや?”
”クレフがGOCとの協力を取り付けた。あの連中張り切ってたぜ。”
”そりゃ心強いもんやな。”
”まったく。”
”O5はなんて?”
”「実行できるのなら直ちに施行しろ」だと。”
”実行は。”
”一週間後。”
”了解。”
”幸運を。”
”あんさんもな。”
【通信終了】
Q.なんで終了させようとしたの?
A.O5が危険度判定を過剰評価したから
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レミリア・スカーレットとの会話ログ
「ゴホンゴホン、えー、これからサイト████管理官、ジャック・ブライトによるレミリア・スカーレット嬢へのインタビューを行います。」
「ねえ、それは必ずしないといけないの?知り合いの文屋を連想して腹が立つんだけど。」
「済まない、これもこちらの規則でね。」
「(溜息)まあいいわ、その程度で目くじら立てるのも莫迦らしいし。」
「我々とてこのような争いは望んじゃいない。ただ、外の世界の秩序を守りたいだけなのだよ。」
「外の世界に其処までの価値があるとでも?」
「あぁ、あるさ。少なくとも我々はそう考えている。貴方達化物がこの箱庭を守るように、我等凡人も、向こうの世界を守らねばならないのだよ。そう、貴様等のようなモノからな。」
(控えていたメイドがブライト博士の首にナイフを当てる)
(同時に護衛のエージェントが彼女らに法儀礼済み銃弾を込めた小銃を向ける)
「待て!ストップ!撃つな!……よし、よし、お前ら、銃を降ろせ、ゆっくりとだ、そう、俺は大丈夫だ、よし、そうだ。」
「……咲夜、下がりなさい。」
「済まない、うちの職員が。ちょっと今ピリピリしていてね。敏感になっているんだ。」
「そのような玩具で私達を倒せるとでも?」
「倒せはしない。が、痛手を与えること位はできると自負している。それは貴方方が一番感じていることじゃないか?」
「……呆れた。さて、本題に入りましょうか。」
「オーケー。この件についての落としどころとして、貴方方の要求は?」
「そうね……私達は吸血鬼だということは知っているわね?」
「勿論。」
「ここのルールのせいで、最近人間の生き血を飲む機会がめっきり減ってるのよ。だから、日に1リットル。月に30リットルの血液を貴方達に要求する。これでどう?」
「承知した。此方は月に40リットル、10人の職員をそちらへ引き渡すことを約束しようじゃないか。」
「……何だか拍子抜けね。もっと粘るのだと思ってたのだけど。」
「何、そのような条件でこことの平和が確約されるのならば、安い買い物さ。」
「まだ幻想郷の主は納得していないようだけど?」
「彼女へはまた再度出向いて交渉するさ。それに今この瞬間、首と胴が離れてないって事は我々が行動を起こすことに彼女もある程度は黙認してくれているのではないかな?」
(真っ二つに割れる机)
「そうでもないみたいよ?」
「そうだな、これで次の交渉先が決まったよ。」
「ご愁傷様。彼女、かなりの食わせ者よ?」
「知っているさ。此処へ来るときも散々無茶をしたものだ。」
「あらそう。」
「さて、そろそろお暇するか。契約内容の締結、及び履行はまた後日でいいかね?」
「勿論。我々は何時でも貴方方を歓迎するわ。”化物”博士?」
「仕事柄、それはまた褒め言葉にもなり得るのだよ、スカーレット嬢。ではまた。」
こんな真面目なブライト見たくなかった
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財団異変
赤い屋敷の前で、二人の人物が相対している。
一人は所謂中華服を着た、美少女と言っても差し支えない程の人物で、それに相対するは白衣の上に道着を着た、何とも奇妙な格好をしている男であった。
しかもその周りには、銃を持った軍人と思しき人物、日傘をさし、背中から羽を生やす幼女、更には紅白の巫女服を纏った少女が見物しており、近くには屋台が出ているのも見える。一目見ただけでは何が起こっているか分からない形相を呈している有様。
しかし、彼らはある一つの目的を以って此処、紅魔館前に集まっているのである。それは―――
「それでは第一回、収容異変を開催いたします!」
―――異変という名の興行の為であった。
“幻想郷は全てを受け入れる”
このスローガンの通り、遥か昔から今日に至るまで、幻想郷は西洋の洋館然り、信仰の薄くなった神社然り、様々なものを受け入れてきた。
そして彼らは、程度の差はあれど、元いた住民との摩擦を起こし、所謂「異変」と呼ばれる事象を起こしてきたのであった。
とはいえ、それらも含めて「幻想入り」、と呼ばれる程度にはこれらの異変は必ずと言っていいほど、ある一人の巫女、若しくはその協力者達により解決されてきた。
そしてその後に行われる宴会では、異変を起こした者、異変を解決した者、両方が共に騒ぎ、共に酒を飲み、そこで彼らの人となりを知り、「幻想郷」の一員となる、謂わば通過儀礼のようなものであった。
そしてほんの一ヶ月前、またもや新しい集団が幻想郷へ入ってきたのであった。
その名は「SCP財団」。
言わずと知れた彼らの天敵である。
彼らが幻想入りしてきた当初、住民の大部分(特に「畏れ」が生命線となる妖怪各位)は彼らに対して反発的であった。彼らに武力で持ってお帰り願う集団も出た程だ。
彼らは知っていたのだ。財団が科学で幻想を押し潰さんとする集団だということを。
だがこの騒動は次第に収束の一途を辿っていった。
彼らが考えていた収容プロトコルと幻想郷の住民の思惑が一致したからである。
財団はこの「幻想郷」の情報を外部に出したくない。幻想郷の住民は外の「現代社会」に押し潰されたくない。ならば幻想郷内外に向けて徹底的な情報統制を敷けばいい、という結論に至ったのである。
極稀に外の世界から「幻想入り」してくる一般市民は里に留まるか否かの選択をし、留まるならば外に関する最低限の記憶のみ処理し人里へ。外へ帰るならばAクラス記憶処理を施された後、財団職員と博霊の巫女両者の立ち会いの元、神社より外へ送り返すといったプロトコルが設立され、本部、日本支部、幻想郷管理者の3者が同意した事で本プロトコルは施行される運びとなった。
此処で全てが終わっておけばよかったのだが、そうは問屋が降ろさなかった。この幻想郷の「異変」たる風習を聞いた某博士が異変を起こそうと画策したのである。
その結果が、この「収容異変」であった。
当然ながら、財団職員は殆どが一般人である。空を飛んだり弾幕を撃ったりする事など、SCPの力を借りないとできない。当然その為だけにSCiPの使用許可なぞ降りるはずもない。悩みに悩んだ末、博士はあるSCPを見つけた。見つけてしまった。
SCP-710-JP-Jである。
「財団神拳」とも呼ばれるこれは、極めて科学的見地に富んだ拳法である。当然科学的に立証されたこの拳法が人間にできない通りは無く、日本支部は勿論、本部に於いてもその有用性が認められ、財団神拳の熟練した使い手だけを固めた機動部隊も編成されているといった噂まである程だ。
日本支部の職員は程度の差はあれ、財団神拳を皆が扱える。これでなら妖怪との対等な戦いができると考えた某博士は、本人の権限を用いてこの「収容異変」を引き起こしたのであった。
そしてその立役者であるジャック・ブライトは中華拳法の使い手、紅美鈴と一騎討ちに望んだのであった。
因みに全財団職員と全妖怪の大会戦を本人は望んでいたらしいが、エージェント・カナヘビにより此処までスケールダウンした。
それでも只の人間と妖怪の一騎討ちというのは物珍しいのか、かなりの人数が見物に来ているようだ。
「なあなあ霊夢、これどっちが勝つと思う?」
「そりゃ普通に考えたら美鈴だろうけど……あの男、なあんか引っ掛かるのよねぇ……」
「そりゃ普通に考えたら勝機がないとこんなことしないもんなぁ。」
「私としてはあの男に勝ってほしいところですがねぇ。明日の一面間違いなしですよ。」
「そりゃそうよ。下手したら人里の連中があっちに流れていくかもね。」
「それでは財団代表、ジャック・ブライト選手対幻想郷代表、紅美鈴選手による!ガチンコバトルを開催したいと思います!」
「おっ、始まるみたいだぜ?」
「早苗の奴……堂に入ってるわね……」
「それでは、レディー、ゴーッ!」
――――――――――――――――――
彼女、紅美鈴は柄にもなく緊張していた。それは偏に目の前にいる男の力量を測りかねているからであった。
最初にこの男から「手合わせして欲しい」という提案を聞いたときには己の耳を疑った。人間と妖怪では、力に文字通り天と地ほどの差があるからである。
だが、今の現状はどうだ。彼は五体満足でそこに立っているではないか。唯の人間ではなかったのか。
試合が始まった後、彼女はまずジャブ程度に拳を放った。それだけでも人間程度なら軽く吹き飛ばせるであろう威力の筈であった。だが、その男は違った。
「共振パンチ!」
そう叫ぶとあろうことか真正面から拳を受け止めてきたのだ。まともに喰らえばミンチは免れないであろう威力の拳に。
誰しもが死んだと思っただろう。だが違った。
吹き飛ばされたのは美鈴の方であったのである。
「貴様に225Hzの拳を打ち込んだ。もっと本気を出していいんだぞ?」
訳が分からなかった。
――――――――――――――――――
「おぉっとこれは!何ということか!唯の人間であるはずのブライト選手が!美鈴選手を吹き飛ばしましたぁっ!番狂わせ!大番狂わせですっ!……ここで解説のエージェント・カナヘビさんに話をお聞きしましょう!カナヘビさん、これはどういった事なのでしょうか!」
「あぁー……これはな、共振パンチ言うて相手の固有振動数に合わせた振動を加えたパンチや。その気になれば何でも破壊できるで。それを自身が吹き飛んで相殺するって相手さんも中々手練や。……というかあんさん、結構ノリノリやな。」
「解説ありがとうございます!勿論!こんな機会ここへ来てなかなか無かったですからね!気合も入るってもんですよ!さて、カナヘビさんにはこれから解説をして頂きます!よろしくお願いします!」
「えぇ……ボクまだ帰れへんの?」
――――――――――――――――――
「はぁっ!」
突きを放つ。
「爆風キャンセリング!」
正拳突きから放たれた衝撃波で相殺される。
「とぉっ!」
蹴りを放つ。
「確率論的回避!」
あたかも蹴りが飛んでくる位置が分かっていたかのように回避される。
「えいやっ!」
拳を叩き込む。
「量子歩行!」
奇妙な歩き方をして、私の身体をすり抜ける。
今のところ、私は相手に攻撃をさせる暇を与えてはいない。然し、私の攻撃も相手に有効打を与えることは出来ていない。互いに一進一退の状況だ。
「お嬢ちゃん、なかなかやるな。俺に量子歩行を使わせたのは師範代と戦ったとき以来だよ。」
「そりゃどうも。でも出来れば一発でも私の攻撃に当たってくれると嬉しいんですけどね。」
「そりゃ無理な話だ。その拳に当たったら一発でミンチになっちまう。」
「では……そろそろ終わりにしましょう!」
「オーケー、こっちも奥義を使わせてもらおう!」
私は攻撃を確実に当てるため、自身の能力を使う事とした。「気を使う程度の能力」。それが私の持つ力だ。どんな攻撃をしようとも、その直後には必ずスキができる。気を読み、どこに攻撃が来るかを予想し、それをいなす。そこへ突きを入れ、動きを止め、止めを刺す。私の得意とする戦法だ。
「ミーム的影分身の術!」
彼が不思議な印を結んだかと思うと、途端に彼の姿が5つに増えた。なるほど。文字通り影分身の術か。しかし、
「私にそれは通用しないッ!」
一人ひとりの気を見ることで、どれが本物か位分かる。一番気を放出している彼に向かって、足を踏み込み、鳩尾に突きを放つ。
「クソっ、虎喰掌握!」
掌を握り、それをこちらに向けた……と思うとその中にドス黒い球体が浮かんでいた。それは強大な引力を持っており、鳩尾を狙っていた筈の突きが肋骨へとズレる。
「がフッ…摩擦熱切断手刀!」
恐らく肋骨が肺へ突き刺さったのだろう。血を吐いている。だが、手刀を押し付けられたかと思うと、高速で擦り付けられる。結果、途轍もない熱量を発し、内臓が焼かれた。頭が痛い。目が霞む。然し、妖怪と人間のタフネスの差だ。まだ我慢できる。
「致命傷は加えられませんでしたが……最早戦闘不能のはずです。降参しては?」
「ふはは……まだだ、まだ最後の奥義が残っている……」
「そこまで言うのなら。」
「後悔するなよ……?……天殺!」
彼は立ち上がると、又もや謎の構えを、それも物凄い速さで繰り返す。
瞬間、背筋に氷柱を差し込まれたかの様な感覚を覚えた。
あれは不味い。完成させてはならない。考えるよりも早く、身体が動き出す。
「おりゃぁあっ!」
間合いを詰める。後3メートル。
「もう遅いッ!認識災害の構えッ!」
瞬間、脳裏に緋色の鳥が出現する。
その鳥は此方へ向かい、大口を開けている。ソレが噛み付くと、心の一部が抜け落ちたような気分になる。妖怪であるにも関わらず、純粋たる死への恐怖。多大な苦痛。「認識」災害とはそういう事か。
しかし。
然し。この鳥より。この認識災害より強いものを知っている。
この程度でへこたれていては主君に笑われてしまう。
門番たる者、強者でなくてはいけない。
屋敷の鍵で有る為に。
屋敷の壁で有る為に。
「……ぅぉおおおっ!」
今出せるすべての力を使った、全身全霊を掛けた一撃を放つ。
相手も限界だったのだろう。技を出す余裕もなく、掌底を受け止める。胴体が吹き飛び、上下に分離する。
「I'll be back.」
最後の力を振り絞ったのだ。彼はそう言い残すと静かに目を閉じた。
私も目を閉じ、好敵手に向かって祈りを捧げる。
「
――――――――――――――――――
「決まったああぁぁぁッ!美鈴選手の掌底が決まり!第一回!幻想郷ガチンコバトルの勝者は!紅美鈴選手に決まりましたあぁぁっ!」
「いやー、認識災害を自力で抜け出すたあ大したもんやなぁ。やっぱ妖怪だからやろか?」
「ちょっと!そこのカナヘビ!あんたんとこの奴が死んじゃってるけどいいの!?」
「大丈夫よ、あいつは。」
「吸血鬼!どこがよ!あんなん永琳でも治せないわよ!」
「うんにゃ、そこのお嬢さんの言う通りや。アイツの心配はせんでええよ。ありがとな。」
「せんでええよって……ん?あの男は?」
――――――――――――――――――
祈りを捧げ目を開けると、オレンジ色の服を着た見知らぬ男が遺体に屈み込んでいた……と思うと血の色のような、真っ赤な宝石を湛えたペンダントを手に取った。
彼も祈りを捧げるのかと思いきや、火事場泥棒は頂けない。ペンダントを取り返そうと、男に話しかけようとすると、その男が何かを放ってきた。何かの錠剤のようだ。
「そいつを飲むといい。どんな傷でもたちどころに治っちまうぜ?妖怪に効くかは知らんがな。」
勿論そんな怪しいモノを飲む気はない。男の真意を正そうとすると、スピーカーから怒鳴り声が聞こえてきた。
「あっコラブライト!勝手に500持ち出すな何度言うたら分かるんや!この前は二日酔いにつこうとったやろ!」
……ブライト?この男が?いや、目の前でブライトは死んだハズ。兄弟か何かか?
「今お前さんは俺をブライトの兄弟か何かだと思っているだろう?だが残念。本人だよ!」
……えっ?
「あー、その男なー、残機がえらい沢山あんねん。だからそいつも正真正銘本物のブライトやで。」
「I'll be backって言っただろ?」
「……返せ……」
「え?」
「あの時のしんみりした気持ちを返せえええぇぇぇ!」
「おっ、第2ラウンドか!いいぜ!奥義!波動関数拳!」
ふと周りを見ると、皆酒が入ったのかドンチャン騒ぎとなっていた。一角では妖怪と職員の試合も始まっている。
喧騒が聞こえ、酒瓶が飛び交い、弾幕が空を彩る。異変というより宴会となってしまったが、どちらも似たようなものだ。たまにはこんなのも悪くないだろう。
余裕が出来たら財団に「財団神拳」とやらを教わってもいいかもしれない。ブライト……いや、無限残機博士と殴り合いしながら、彼女はそう思った。
――――――――――――――――――
サイト████より日本支部へ 興行に拠るSCiPとの潤滑な交流の為追加予算を申請
却下。君たちは何を言っているんだ? -日本支部理事”獅子”
正直すまんかった
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