ベル君が歌舞鬼なのは間違っているだろうか? (不定鬼)
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ベル、オラリオに立つ

始まりは祖父から英雄の話を聞いた時だった。彼、ベル・クラネルはその英雄に憧れを持ち、幼いながらにどうすれば英雄になれるかと考え、結果強くなれば良いのではないかと結論を出した。そして、ベルは特訓を開始した。まず身体を鍛え、それで得た力に呑まれないために心を鍛え、そうしていつしかベルは『鬼』となった。『鬼』となってもベルの特訓は終わらなかった。彼は自身を極限まで鍛えるつもりだったのだ。しかし、彼の特訓中、彼の祖父がモンスターに襲われ死んでしまったことにより、ベルは冒険者になろうと思い立ちオラリオにやってきた。無論これも特訓の一環である。自分では気づけず、他人にしか見えない部分もあるのだ。

 

「さあて、どの【ファミリア】に入ろうかなぁ」

 

基本的に、冒険者になるには【ファミリア】に入るのが一般的である。【ファミリア】は結構数があるらしいので、どっかには入れるだろうと楽観視しながら、ベルは歩き出した。それが間違いであったと気付くのは、10軒目の【ファミリア】に門前払いをされた辺りだった。

 

「お前みてえな貧弱そうな奴がうちの【ファミリア】に入りてえだと?はっ!生憎とうちはお前みたいなのが入れるような弱小【ファミリア】じゃねえんだよ!」

 

大体こんな感じで門前払いを受け、今やその数は30に届きそうであった。残念なことに、彼は所謂細マッチョであり着痩せするタイプで、その上小柄な為、外見だけ見れば貧弱そのものだった。実力さえ見てくれるのであれば入団できると踏んでいるのだが、門前払いされるとなると実力云々ではどうしようもないのだ。

 

「はぁ〜どうしよう。【ファミリア】に入れなきゃ冒険者になれないよぉ。もういっそのことディスクアニマルと一緒に行けば入れてもらえるかなぁ」

 

ディスクアニマルというのは、ベルが特訓中に作り出した成仏しきれない動物の魂を宿した使い魔、もしくは式神の様なものである。普段は銀色のディスクの形をしており、『鬼』に変身するための変身音叉・音角の音で起動するため『鬼』であるベル以外には使役どころか起動すらできない。だからこそ、それを見せれば入団させてくれるのではないかと考えたのである。が、無闇矢鱈に力を見せれば面倒ごとになるのは目に見えている。とりあえず、腹が減ってきたベルはどうすれば【ファミリア】に入れるかは後回しにして、軽く食べれそうなものを探し始めた。

 

 

ベルはオラリオのある場所で衝撃を受けていた。ジャガ丸くんを売っている露店、そこに何故か神様がいたのだ。ベルは鍛えた末、気というものを感じ取れるようになり、ジャガ丸くんを売っている店員から神特有の気を感じ取ったのだ。

 

「ん?どうしたんだい?ボクの事をじっと見て」

 

あまりに見過ぎたせいか、神様がベルに話しかける。ベルは一瞬考え、これはいい機会だと思い目の前にいる神様の【ファミリア】に入ろうと思った。

 

「あ、あの、貴女、神様ですよね?」

 

「!!ボクが神様だって気づいてくれたのかい!?みんなボクがこんな姿だから神様だって気づいてくれなくてさ。それでなんだい?もしかしてボクの【ファミリア】に入りたいとかかな?」

 

「その通りです。僕はベル・クラネルと言います。神様、どうか僕を貴女の【ファミリア】に入れてください!」

 

「うぇえ!?冗談のつもりだったんだけどな。でも良いのかい?ボクがこんなナリだから【ファミリア】には団員が1人もいなんだけど……」

 

「問題ないです」

 

「うーん。そっか、じゃあちょっと待っていたまえ。ボクの仕事時間ももうすぐ終わるから、そしたら【ファミリア】入団の儀式をしようぜ!」

 

「はい!」

 

そう言って、ベルと神様は一旦別れたのだった。

 

 



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