果てなき夜で、貴方に愛を (毒蛇)
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首輪編
第一話 酒の所為にする奇術師


ゆゆゆにR-18全然ないじゃん! よしエロいの書こうの精神。


 ――酒という物がある。

 

 人類史において最古から存在している向精神薬であり、酒がもたらす酩酊は人を快楽に導く。

 ストレス発散の一つという認識ではあるが、迷惑行為や犯罪行為、嘔吐を招くというリスクもある。

 酒を飲み得られる酩酊は往々にして社会から忌避されがちで、基本的に俺もあまり飲まない。

 

「まあ、だから家で飲むんだけどな……」

 

 喉にわずかな苦みが滑り込む酒の味を堪能しながら、片手に持った缶を揺らした。

 

「――――」

 

 どこか脳がボンヤリとする感覚、酒という波に流されていると気分が向上していく。

 とはいえ、俺も中身はおじさん越えお爺さん未満の精神年齢ではあるが見た目は学生だ。

 もちろん酒の飲み過ぎは成長を妨げるという事は理解しており、墓参りぐらいでしか飲まない。

 

 根本的に未成年が飲んでは駄目だと言うが……俺は勇者だ。

 勇者とは危険を冒す生き物。つまり酒=危険という公式が出来る。

 すなわち勇者が飲むに相応しいという答えこそが正しいのだと頭脳が導いた。

 

「――――」

 

 未成年の俺が酒を飲むには、変装してどこか店で売っている物を買うというリスクを冒す。

 だから普段はあまり飲まないで貯蔵しているが、最近はあまり眠れずについ持ってきた。

 そこで見る夢は既に終わったことなのだが、それを未だに割り切る事が出来ていなかった。

 

「――ああ」

 

 気づけば空になった缶をテーブルに置き、震える両手で顔を覆っていた。

 こちらの世界で世話になっていた、数少ない信用できる両親が死んだ。死んでしまった。

 戦いの中で犠牲は付き物だと割り切っていたが、それでも時折酷い吐き気に苛まれる。

 

 まだ2月も経過していないのに、彼らの冷たい温度があの時触れた手のひらに残る。

 ここ最近安定していた己の精神も寝付けない所為か鬱になり気味と最悪の状態だ。

 

「……」

 

 先日、勇者たちの散華した供物は元に戻り、表面上は元通りに戻った。

 だが戦いの過程で一般人にも多くの死傷者が出てしまった。その中には両親もいた。

 

 一時期は荒れていた俺の家は既に掃除を終わらせ、壊した物も補充した。

 そうして再び元の生活に戻ったというのに、この家は随分と寒く感じ、また酒缶に手を伸ばす。

 

「――?」

 

 そんな時だった。

 家の玄関からチャイムが鳴り、来訪者がアポイントもなく訪れた事を俺は知った。

 だが今日は誰かが来る予定も、宅急便が届く予定もない。家族から便りも二度と来ない。

 

「―――っ」

 

 そんな事を思い、何故か目の前が熱い滴で歪む。

 申し訳ないが玄関の向こうにいる誰かには帰って貰おうと手で滴を拭い思っていると、

 

 ――ガチャリと扉が開く音がした。

 

 居留守をするべく声を潜めていたが、その音に思わず声を上げそうになる。

 聞き間違いかと思い、酒でわずかに酔い鈍い感覚ながらも耳に神経を集中させる。

 空き巣の可能性を考え咄嗟に武器を探したが、その考えはすぐに違う事に俺は気づかされた。

 

「亮ちゃ~ん、どこー?」

 

「なんだ、友奈か……、友奈?」

 

 結城友奈。家族以外にこの家の鍵を持っている世界で唯一の人物。

 俺が唯一自分の意志でこの少女を信じたいと思い、渡した鍵で家に入ってきたのだろう。

 だから、ただいまーと呼ぶ赤い髪の少女の声音に、安堵と明白し難い感情が混ざりながら、

 

「亮ちゃん、どこー?」

 

「ちょ、ちょっとま――」

 

「あ、亮ちゃん。ごめんね、心配できちゃ――」

 

 リビングに入ってきた友奈の声音が止まった原因は判っている。

 薄紅色の瞳が映す物。テーブルの上にある無造作に置かれたつまみと大量の酒、酒、酒。

 

「――――」

 

 この数秒にも満たない時間で俺の心臓は鼓動を止め、酔いが消えたような気がした。

 

 

 

 ---

 

 

 

「えっ、これは……なに?」

 

「――――」

 

 パチクリと目を瞬かせる友奈は目の前の状況が掴めていないらしい。

 一方で、何故一直線にリビングに来たのかと逃避していた頭脳がこれを好機と見たらしい。

 己が心配で来たらしい向かいに住む可憐な少女に対して、俺は適当な事を語ることにした。

 

「お酒……?」

 

「――に、似たパッケージのジュースだよ」

 

 思えば、彼女が来る時に酒を飲んでいた事はなかった。

 基本的に俺はあまり飲まないという事もあるのだが、いつもなら来てもすぐに隠せる自信がある。

 

「じゅ、ジュース? でも、この匂いって……」

 

「いや、違うって。最近は、子供でも気分優先で飲めるようにギリギリまで似せようとするメーカーが増えたんだと。甘酒みたいな感じのじゃなくて、なんかこう……、見た目にこだわる意識が高い人の需要が増えたらしいんだって。もちろん中身は普通のジュースなんよ!」

 

 しかし現在痴態を晒し、若干自分でも何を言っているか不安になる言い訳を口走っている。

 何が夜の奇術師か。酒の所為で普段は冷静なはずの頭が既に就寝してしまっているらしい。

 だが今更吐いた言葉は引き返せずに、真面目な顔でテーブル上に広がる証拠の説明をする。

 

「……ホントかな~?」

 

「本当さ」

 

 説明をしながら、ジト目を作る少女をソファに座らせる。

 そうして物は試しと、俺は可能な限り素早く口当たりが良く飲みやすい酒を作り、勧めた。

 やや疑惑の残る表情だが、素直な少女である友奈は差し出したグラスを恐る恐る手に取る。

 

「甘くて美味しい……!」

 

「――。だ、だろう?」

 

「これ、何ていうジュースなの?」

 

「カルーア・ミルクっていう牛乳が入ったジュースだよ」

 

「そうなんだ!」

 

 桃色の唇が触れ、徐々に中身が減っていくガラスのコップ。

 淡茶褐色のソレは、コーヒー・リキュールのカルーアを牛乳で割ったカクテルである。

 氷を入れたタンブラーを両手で持ち、小動物のように無邪気な笑顔で友奈は飲んでいく。

 

 そのほんわかとした光景を尻目に、本当にアルコールの度数が高い物を隠していく。

 バレているのか不明だが、ほんわか少女の眼を誤魔化しながら最低限の偽装を終わらせる。

 絶対バレてる! 諦めろ! と叫ぶ胸中を無視しながら、次のカクテルを友奈に持っていく。

 

「――あ、あの、亮ちゃん。その……」

 

「こっちも飲んでみて。多分口に合うと思うから」

 

「……本当だ!」

 

 適当に家にあった焼き菓子と、今度はカシスオレンジ等の甘めの物を追加していく。

 最初はやや警戒心があったらしいが、それでも飲みやすく彼女の舌には合ったらしい。

 普段飲むことがない分、不思議な味わいと、わずかな酒精が彼女の頬を緩ませていく。

 

「ねえ、りょうちゃん……」

 

「なんだい?」

 

 そうして多少状況が落ち着き、友奈がグラス二杯ほどカクテルを飲んだ頃。

 彼女の隣。一緒にソファに腰掛けて菓子と共に酒を飲んでいると、友奈の吐息がこぼれる。

 桃色の唇が俺の名前を呼び、そのいつもよりも舌足らずな甘い声音に背筋がゾクゾクする。

 

「今度、勇者部のみんなとも、こうしてパーティーしたいねぇ……」

 

「そうだね……」

 

 いつだったか、犬吠埼姉妹は酒成分がわずかに入っていたケーキ程度で盛大に酔っていた。

 妹は笑い上戸に、姉は泣き上戸という傍目から見る分には楽しませてくれる少女たちだ。

 絡まれると面倒だが、その時は夏凜に二人を押し付けて動画に収めたい。きっと楽しいだろう。

 

「――まあ、でもこうして友奈と二人だけっていうのも俺は好きだけどな」

 

「んへへ……私もだよ」

 

「……」

 

 素直な気持ちを吐露しながら、隣にいる可憐な少女の顔を窺う。

 緋色の少女は酒の所為か、先ほどよりも頬を朱色に染めながら無邪気な笑みを浮かべている。

 機嫌が良いのか、何が楽しいのかこちらにもたれかかりながら、スンスンと俺の匂いを嗅いでいる。

 

「ねえ、りょうちゃん」

 

「なに?」

 

 似たような会話が繰り返され、その度に甘いお酒を飲んでいく。

 他愛無い会話だったが、それでも友奈と二人だけの空間に心が麻痺しかけていた。

 そんな状態ながらも擬音を絡めずに、友奈は拙くも何かを俺に伝えようとしていた。

 

「りょうちゃんが悲しい顔していると、私も悲しくなるから……。だから、その、困った事があったら言ってね。なんでもするから」

 

 きっと今日この家に来たのは、俺の事を親身に心配してくれたのだろう。

 そう思うと心が温かくなるのを感じた。熱があるかのように薄紅の瞳を潤ませる少女。

 その優しさが心に沁み込み、心臓が早鐘のように鳴る中で、俺は感謝の気持ちを口にした。

 

「ん? 今、『なんでも』っていったね」

 

「ふぇ?」

 

「……それじゃあね~」

 

 ふと彼女の服装に俺は目を向けた。

 時々見る柔らかな桃色のカーディガンとプリーツスカート、黒のハイニーソという洋装。

 何となくスカートとニーソの間から覗かせている少女の健康的な柔肌を指の腹でそっとなぞる。

 

「そんなところ……ひゃう!?」

 

「――――」

 

「あっ」

 

 くすぐったそうに身をくねらせる少女を見ながら、無言で彼女の太ももに手を這わせる。

 健康的に引き締められた彼女のもも肉を手のひらで弄り、内ももにゆっくりと手を伸ばす。

 普段触られる事のない部分を触ると慌てて友奈は両脚を閉じて俺の片手を柔肌で封じ込める。

 

 慌てた表情の友奈をそっと抱き寄せると、力が入ったのか俺の手を挟んだ太ももを締め付ける。

 自分でも驚きの行動だが、きっと酒の所為だろう。そういう事にしておこう。そうしよう。

 

 この瞬間、俺は思考を放棄した。

 

「あのっ、りょうちゃん! 何を……あう……ッ」

 

「触りたいから触っているだけだけど……? 駄目なら抵抗してよ」

 

「そんな……あ……ッ」

 

「――友奈って抱き心地良くて、好きだよ」

 

「……ッ!」

 

 日常的に俺と友奈の距離感は密な為か、腕の中でモジモジとする少女の抵抗は少ない。

 ときおり友奈が朝に俺を起こす為に来る時があるが、布団の中に連れ込んだ時の感触は最高だ。

 友奈の柔肌と体温、匂いや反応は俺に活力と癒しを与え、気持ちが朗らかになる事は多い。

 

 友奈で遊ぶ……わけではなく、抱き心地の良い友奈の身体を弄っていく。

 抱き寄せた友奈の赤色の短めな髪をそっと撫でながら、彼女の後頭部に目を向ける。

 彼女の癖なのか、いつも作るショートポニーテールはわずかに左側に寄っているが、

 

「あ……っっ」

 

「あまじょっぱい」

 

 重要な所はそこではなく、ポニーテールにより露わになる彼女の魅力的な白いうなじだ。

 酒を飲み体温が上がったのか、それとも興奮しているのか、赤面する少女のうなじに汗が滲む。

 せっかくなので彼女の汗を舐めてみるべく舌を這わし、その行為に友奈から吐息がこぼれた。

 

「そんな……、なめ……ッ」

 

「ふ――」

 

「はひゅ……っ!」

 

 うなじや首筋を舐め、唾液で濡れた部分に息を吹きかけると、不意にビクリと腰を浮かせた。

 いつものソフトな触れ合いの延長で、ときおり寝ている時にも似たような事をした気がする。

 少しずつ敏感になっていると思っていたが、今ほどの反応は見た事が無く、狂喜に頬を緩める。

 

 自らに回された腕に縋るように力を込めて、荒い息で友奈は必死に俺の腕を握る。

 興奮の所為か心臓が少し痛くなるほどに鳴るのを感じながら、形の良い耳に口を近づける。

 耳まで赤くなる魅惑的な姿、抵抗は出来るはずだが、随分と抵抗の少ない赤面する少女に囁く。

 

「――友奈ちゃんは可愛いな」

 

「……っ」

 

「最高に綺麗で可憐な勇者だよ」

 

「あぅ……」

 

 囁き声の一つ一つに可愛らしい反応を示す少女。

 その姿に自分でもクツクツ……、と意地の悪い笑みを浮かべているのが分かった。

 同時に、先ほどの『なんでも』の内容を決めて、そのまま友奈に小さな声音で囁く。

 

「ねえ……友奈」

 

「にゃに……」

 

「パンツ見せて」

 

「えっ……」

 

「なんでもって言ったでしょ?」

 

 直球で欲望の塊のような要求を放つ俺に対して、薄紅の瞳を揺らし戸惑いの声を上げる。

 そっとお腹に手を這わして、目の前に立つように言うと、震えながら友奈は目の前に立った。

 下劣でもギルティでも何と言われようとも、今俺は友奈ちゃんに対する要求を貫こうと思う。

 

 友奈の言う、“なんでも”という勇者の言葉にいやらしい意味はなかったのだろう。

 当然、俺を心配してきてくれたのは解っている。だが俺は大丈夫だ。友奈がいる限り。

 

「頼むよ、友奈ちゃんのが見たいんだ」

 

「……ぅ」

 

 多分真面目な顔で要求する俺は、紳士の皮を辛うじて被る変態でしかない。

 否、男は変態である事が男なのだ。変態で何が悪い。変態でない男はもう人類ではない。

 

 この瞬間、変態というコマンドをキーに再起動した冴えた頭脳が確実にショーツを見る為の戦略を練りあげる。幼稚園で激しい運動をした際に見えた場合に対応する練習だとかなんとか。

 そんな卑劣で陳腐でつまらない姑息な考えを俺は捨てて、漢として向かい合い、口を開く。

 

「見せて」

 

「……ん」

 

「あ、待って」

 

 案外簡単に承諾され、スカートのファスナー部分に、赤面する友奈は手を掛ける。

 その行為に対して、欲望よりも小さな怒りが上回り、彼女の細い手を掴み無言で頭を横に振る。友奈は優しい天使のような少女ではあるが、残念ながら男のロマンを解っていないので丁寧に、丹念に、彼女に知識を植え付ける。

 

「たくし上げて」

 

「ほぇ……?」

 

「スカートを持ちあげて見せて」

 

「――! ……変態さんだね、りょうちゃんは」

 

 何故ここまでこだわるのか。変態だからといえばそうだが。

 彼女と一緒に過ごしていると無防備ゆえに自然とパンツが見える時は確かにある。

 だが、それは無邪気ゆえの行動に過ぎない。他に男がいた場合はそんな事は俺がさせないが。

 

 ――要するに俺は、友奈の意思でショーツを見せて欲しかった。

 

 真摯な想いが届いたのか。それとも普段の仲の良さか、酒の所為か。酒の所為にしよう。

 ともかくも、羞恥による涙を目尻に浮かべ、恥ずかし気な表情の中でスカートに手を掛ける。

 震えながらゆっくりと短い丈のスカートをたくし上げる友奈の表情を眼球に焼き付ける。

 目端に羞恥の涙を浮かべる友奈の姿は、どうしてこんなに心を揺さぶるのか。

 

「あんまりこっち、見ないでよ……」

 

「――――」

 

「うぅ……ッ」

 

 俺の視線が気になるのか、必死に目を合わせようとしない友奈。

 その表情を見ながら、スカートを両手でたくし上げ露わになる桃色の下着に目を移す。

 

 今までも似たような下着は見てきたが、恐らくだが新品のパンツを履いているのが判った。

 最近買ったばかりの小さなリボンが前についているタイプのショーツに思わず手を伸ばす。

 情欲の炎に突き動かされた指は、桃色の布地に浮かぶ小さな湿り気を帯びた部分に触れた。

 

「この染みはどうしたのかな?」

 

「あっ……!!」

 

 指で彼女の下着に浮かぶ染みを優しくなぞると、突然の刺激に友奈は腰を引かせる。

 粘りつきのある液体は明らかに尿ではなく、逃がさないと柔らかな桃尻を片手で掴み押さえる。

 そのまま友奈のショーツ越しに浮かぶ蜜口を弄り回す度に、指に生ぬるい愛液が付着する。

 

「ほら、腰引かしたら駄目だよ。許しません」

 

「まってまって! 本当に……、りょ……ぁ、ぁっ……ッ!!」

 

 嫌々と首を横に振り、己の股間に伸びる手を必死に友奈は取ろうとするが強行する。

 見せて貰ったお礼に気持ちよくしようという傲慢な気持ちで脚が震えだす友奈に囁く。

 

 クチュクチュとわざと水音を響かせる。

 秘部を包み込むように弄る俺の腕に触れ、いやいやと首を振る友奈の口端から涎が零れる。

 

「も、もう、ほんと……、だっ、でちゃ……!!」

 

 赤面し、瞳を潤ませる赤い髪の少女。

 少女の恥部を弄りながら、膣口の上、包皮に隠された肉粒を指で剥く。

 それだけで――、

 

「ぁぁ、ぁっ、ああぁ……ッッ!!」

 

 その瞬間、ビクリと身体を硬直させて、友奈は床に膝を付いた。

 両手で俺の肩を掴み、胸板に熱い吐息と滴を垂らしながら、その細い身体が崩れ落ちていく。

 男を情欲に燃えさせるような艶のある声を桃色の唇から出す友奈の背中をそっと抱きしめる。

 

「は――、あ……」

 

「感度良いね。……昨日も一人でこんな事してたの……?」

 

「――! ち、ちがっ……」

 

「友奈ちゃんはエッチだね」

 

「私は……」

 

 荒れた息が整うのを待ちながら、そっと友奈の乱れた髪を手で整える。

 そうして囁くように引っ掛けでそんな事を言うとどうやら当たりだったらしい。

 友奈の弱みも握ってはいるが、ストーカーのように四六時中監視しているわけではない。

 

「いいんだよ、我慢しなくて」

 

「……」

 

「俺の前でだけ、我慢しなくても良いんだよ」

 

「亮ちゃん……」

 

 未だに赤い顔で潤ませた瞳には俺が、俺だけが映り込んでいる。

 彼女も勇者である前に『普通』の女の子なのだ。普段から悪戯すればそうなるだろう。

 

 だから何も恥ずかしがる事はない。

 『俺の前でだけ』全てを曝け出して欲しいという想いは、一層深まる。

 

「好きだよ、友奈」

 

「――――」

 

 こちらを見上げる友奈の唇を指で塞ぎ、小さく微笑む。

 この世界の状況は相変わらず酷いままで相変わらず地獄の中の箱庭だ。

 だが俺には友奈がいる。彼女がいる限り俺は戦えるだろう。死ぬまで、死んでも。

 

「今日は、泊まっていくだろ?」

 

「ぁ、……うん」

 

 コクリと頷く友奈に、その言葉に俺は頬を吊り上げた。

 幸いにも既に週末に入り学校は休みで運よく今週は部活動もない。邪魔はない。

 何だかんだ中学生の男女が同じ屋根の下という状況だが、結城家は完全に黙認している。

 世間的に見れば加賀家は名家で実際に莫大な金はある為、嫁ぐ先としては安泰だろう。

 

 そんな事を思いながら、そっと友奈の力の抜けた身体をソファに預ける。

 最後に小さく指の腹で濡れた布地を撫でると、小さく吐息をこぼす友奈に目を向ける。

 

「とりあえず、友奈はここで休んでて……、それで」

 

「亮ちゃん」

 

「……ん?」

 

 

 

 

 

 

 

「――ずっと一緒にいようね」

 

 

 

 

 

 

 

 そう告げて、小首を傾げて柔らかく微笑む友奈に対して、俺は曖昧に笑い返すだけだった。

 まずはリビングの上にある酒類は処分してしまおうとそちらに意識を向けてしまっていた。

 だから、薄紅色の瞳に宿す感情を見る事は無かった。

 

 

 



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第二話 桜の少女と過ごす一時

 加賀家の朝食は基本的に洋食だ。和食ではない。

 隙あらば東郷が俺の家の朝食を和食にするべく家に来た事があるが美味しかった。

 だが和食には屈しない。朝は洋食なのは、俺がこの世界に生まれてから続けている事だからだ。

 

「だいたい朝はトーストと肉類、サラダや果物、後はコーヒーかココアだ」

 

「そうだね……、誰に言っているの?」

 

「独り言さ」

 

 確かに『白米』や『みそ汁』は日本人を構成する因子であると転生後も俺は思っている。

 だが単純に朝はそこまでお腹が減らず、どちらかというと昼にしっかりと俺は食べている。

 昼食はうどんの確率が高くなるのだが、それはこの肉体にUDON因子が宿るからだろう。

 

「それで、昼ご飯を友奈が作りたいって……?」

 

 最近の朝は、特に友奈がいる時はコーヒーではなく何となくココアを飲む。

 冬が近づきだした今日この頃。身体が温まる物を欲している為だろうかとカップを傾ける。

 

「うん!」

 

 思ったより熱いカップに息を吹き、少し冷まそうとする猫舌の俺を見ながら友奈は頷いた。

 今日は土曜日と特に忙しくなる要因はなく、また彼女も本日はここで過ごすらしい。

 

 要り様な物があるならば、即座にここから向かいにある結城家に徒歩2分で戻る事も出来る。

 ちなみに結城家の隣にある東郷家は追加で徒歩1分も掛からない為、東郷もたまに家に来る。

 そんな事を思い返しながらテーブルを挟み、まだ後ろ髪を結っていない友奈の顔を見つめる。幼さの残るあどけない顔立ちは俺の視線に気づくと眦を和らげ頬を緩めた。

 

「ちなみに何作るの?」

 

「秘密」

 

「……そうか」

 

「そうだよ!」

 

 デザートの柿をフォークで刺し、その甘味に頬を緩める友奈の姿に俺も穏やかに微笑む。

 これが樹だったらと思うと姉を即座に召喚しようと思ったが、目の前に座る友奈なら安心だ。

 彼女の作る料理や家事関係の熟練度は以前事故で片腕しか使えない俺自身が鍛えたのだから。

 

「期待しているぞ、弟子よ」

 

「任せてください、師匠!」

 

 いつかのノリでそんな事を言うと、にへらっとした笑みで友奈は頷いた。

 煌めく瞳を向けられながら、午前中はどうしようかと俺は脳内で今日やるべきことを浮かべた。

 

 

 

 

 +

 

 

 

 

「じゃあ、また後でね」

 

「おう」

 

 そう言って友奈は自分の家に帰って行った。

 朝、友奈と共に目覚めた俺は加賀家別邸で朝食を摂った後、一度彼女を家に帰す事にした。

 何かあったわけではなく、ただ忘れ物があるからと、にこやかに言う赤髪の少女を見送る。

 

 そうして彼女の姿が結城家に入り込むのを確認してから、そっと自宅に戻る。

 休日は主に食材の買い足しや掃除、洗濯と一人暮らし故に意外とやる事が多い。

 これに加えて時折、幼稚園で園児たちに劇を披露したりする時もあるが慣れとは恐ろしい。

 

「まずは洗濯して……、風呂掃除しよ」

 

 家だと自然と独り言が増える。この穏やかな生活もそろそろ4年目に突入する。

 俺が『加賀亮之佑』という男に転生を果たしてから、14年という時が経過しようとしていた。

 勇者部という部活動に所属しているが、世界の為に『勇者』としても戦うという第二の人生。

 

 退屈こそが嫌いな俺は、この非日常の日々が好きだった。

 ――失ったモノは大きすぎて、後ろを振り返る事が出来ないが。

 

「あとは……洗濯終わるのに時間あるし、掃除機で掃除かな……」

 

 一人で暮らすには大きすぎる家と、本家のデカい屋敷は加賀家の財産の一つだ。

 だが現状は持て余しているので、大赦にしばらく屋敷の管理をしてもらっている。

 加賀家は乃木家の分家である為か、本家の位置としては乃木家本家の近くにあるのが利点か。

 

「懐かしいな……」

 

『昔話に花を咲かせるには、少し早いんじゃないかな』

 

「――俺も結構年かな」

 

 一通りの家事を終わらせた俺に、唐突に囁く言葉に対して肩を竦める。

 午前中に全ての工程を終わらせると、わずかに疲れる程度の疲労感に俺は襲われた。

 洗濯物を干し終え、リビングにあるソファに沈むように座り込み、小さく息を吐いた。

 

『年というか、単純にキミが寂しがりなだけではないのかい……?』

 

「……ん~、俺に構ってくれるのかい? 構ってくれよ初代ちゃん」

 

『寝言は寝て言うといいよ』

 

「――は」

 

 冷たく囁く少女の声音に膝を叩き笑いながら、首に掛けているネックレスを手に取る。

 服から取り出された鈍く輝くチェーンの先、蒼色に輝く指輪から思念を通じて声が聞こえる。

 見つめると深淵に入り込みそうな不思議な魅力がある指輪に宿る存在、彼女が俺の共犯者だ。

 

「あいにく今日は、『勇者』は休みだ」

 

 今日は敵は来ない気がする。そんな戦闘を重ねて得た本能に身を委ねる。

 四六時中身に着けている指輪をハンカチで拭き磨きながら独り言を呟きソファに寝転ぶ。

 全国の専業主婦に敬意を表しながら、することも無いので俺は目を閉じ、早めの昼寝を始めることにした。

 

 

 

 

 +

 

 

 

 

「起きてー。亮ちゃん、起きてー」

 

「……んあ」

 

 その鈴音のような声音が耳元で囁かれ、ゆっくりと意識が眠気から乖離していく。

 抵抗する眠気と交戦した結果、辛うじて勝利する事ができ、瞼を開くとこちらを見下ろす少女。ぼんやりする意識の中、爛々と薄紅の目を輝かせる友奈は何が楽しいのか俺に微笑む。

 

「お昼ご飯、もうちょっとで出来るよ!」

 

「あー……」

 

 無邪気な笑顔を向けてくる友奈から視線を移し、壁に掛けられている時計に目を向ける。

 およそ2時間ほど経過したらしく、現在は午前の12時少し前と昼ご飯の時間帯であった。

 誰かが作ってくれるご飯というものはいつだって心を和ませるのだと思い、緩慢たる動きでキッチンに向かう。

 

「――――」

 

 私服姿にいつかプレゼントした赤いエプロンという様相で鼻歌まじりに料理する幼妻。

 漂う匂いと周囲の様子、使った食材などから、恐らく肉じゃがを作っているのだと理解する。

 既に最終工程に入ったらしく弱火で少し煮ているだけで、あと2分ほどで完成するだろう。

 

 完璧な姿に俺は背後で小さく頷いた。

 楽しそうに揺れ動く友奈のエプロン姿を見ながら思った。

 

 ――セクハラしようと。

 

 寝起きの所為か上手く頭が働かず、静かに幼妻の背後に近づく。

 とはいえ足音を隠しているわけではなく、すぐに俺が近づいてくるのに友奈は気づいた。

 

「……うん? どうし……わひゃ……ッ!」

 

「美味しそうだな~」

 

 充分に煮込まれたのを確認し、素早くコンロの火を消しながら友奈の胸を揉む。

 エプロンの隙間、服越しに感じられる少女の双丘をやんわりと手のひらで弄り感触を確かめる。今までも寝ている時に時々成長させてあげようと揉み、少しずつ成長を確かめている。

 

「いきなり……ッ、亮ちゃん! やめっ……あぅ……ッ」

 

「いや、だからつまみ食い」

 

「ちょ……んっ、お、怒るよ!」

 

「嫌なの?」

 

「――ぁ、だって、こんなの……」

 

 見た目で判る東郷ほどの巨乳ではないが、友奈のは形が良く普通くらいにはある大きさだ。

 痛みを与えない程度に優しく胸を揉まれる友奈は身をよじらせるだけで、明らかな抵抗はない。

 抵抗できるはずだが鍋を掻き混ぜる手を止めようとしない為、引き続き柔肌を堪能する。

 

「もう出来ているじゃん、美味しそうだよ友奈ちゃん」

 

「ひぅ……ッ! あ、あの、お尻に擦りつけないで……ッ」

 

「え~、何のことか分からないんよ」

 

 寝起きの為かズボン越しに起き上がる逸物を柔らかい臀部に押し付け擦る。

 凄まじい柔らかさのある桃尻は、以前東郷がお仕置に叩いた時よりも小刻みに揺れている。

 このまま続行したいところだったが、ふと俺は午前中に端末に届いた連絡の内容を思い出す。

 

「そういえば、1時くらいに東郷さんが家に来るから、早く食べないとね」

 

「あっ、東郷しゃん……、来るなら……ひぅ……直接は駄目だから……あッ!」

 

「東郷さんは昼ご飯は家で済ませるって」

 

「そうじゃなくて……ッ」

 

 そんな感じで昼ご飯の準備は終わり、二人で食べる事にした。

 寒くなり出したこの時期、そろそろコタツを出そうと思いながら、肉じゃがに舌鼓を打つ。

 至近距離で見るジャガイモは白い湯気を放ち、黄金色に近い色、仄かな香りが食欲を擽る。

 

 程良い甘さが口の中で広がり、思わず頬を緩めると友奈が此方を見ているのに気付いた。

 ふと似たような事が昔あったなと過去の出来事を思い出しながら味の感想を伝える。

 

「美味しい」

 

「――!」

 

「腕、上達したな、友奈」

 

「んへへ……結城友奈、頑張りました!」

 

 何の捻りもない言葉だったが想いは伝わったらしい。

 直後、華が咲いたような笑顔を見せる友奈と昼ご飯を食べ、それから食器を洗った。

 食器は俺がキチンと洗い、東郷が来るまでの時間はリビングで友奈を抱きしめていた。

 

 不思議と抵抗せず、エプロンを着たままの友奈は無言で俺に背中を預けている。

 先ほどの出来事の余韻が残っているのか、腕の中の彼女はほんのりと頬を赤く染めている。

 

「亮ちゃん、どうしたの……?」

 

「いや、友奈のエプロン姿が魅力的でさ……。さっきは悪かったよ、火の元は消してたけど」

 

「ううん。ねえ……」

 

 ソファに寝転がり抱き枕と化している友奈は頭を振り、わずかにこちらに目を向ける。

 自宅に帰り結い直したポニーテールが揺れ、白く眩しいうなじから甘い匂いが鼻腔を擽る。

 至近距離で見える薄紅の瞳を通して、俺の瞳が、血紅色の空虚な瞳が揺れているのが分かった。

 

「――もしかして亮ちゃんは、私がいなくて寂しかったの?」

 

「……ああ、寂しかったよ」

 

 場の空気というか、人の感情を読み取るのが上手い友奈だからそれを引き当てたのだろうか。

 勇者部に無くてはならないムードメーカー的な存在で、その笑顔には何度も救われた。

 

 一度散華の影響で彼女の意識が戻らなかった時は再び色盲になったような気分だった。

 病院で見舞う度に、東郷を殺して世界を壊して、最後には自分を殺そうと考えていた。

 そんな事を素直にその感情を隠さずに吐露すると、友奈は姿勢を変えてこちらに抱き着いた。

 

「そっか……」

 

「――――」

 

「なら、これからもずっと、ずっと私が傍にいるからね」

 

「……」

 

「あんまり他の人に変な事したら駄目だよ」

 

 そう友奈は言って、俺の背中に手を回して痛いくらいに抱きしめた。

 そのあまやかで至近距離から向けられる柔らかな声音と体温に意識が包み込まれそうになる。

 鼻腔を擽る友奈の匂いに何かが満たされていくのを感じながら、それでも辛うじて口を開く。

 

「はいはい……」

 

「はい、は一回だよ!」

 

「――、友奈ちゃんは柔らかいな~」

 

「ひゃ……ッ、待って……あっ、直接は……ッ」

 

「……東郷さんが来たら止めるかな」

 

 抱き着き俺の背中に手を回すので、代わりに俺は友奈の背中から下、柔らかな臀部に触れる。

 最早狙っていると思える短めのスカート内部に手を滑り込ませ、普段は晒されない部分を弄る。形が良く手触りの良い柔らかな桃尻に指を這わし、ショーツの中へと潜り込ませて柔らかな恥部に指の腹で触れる。

 

「んぁ……ッ」

 

 その瞬間、微かに嬌声を漏らし可愛い反応を見せる友奈に笑みをこぼす。

 恐らく羞恥に歪んだ顔を見ようと首を傾けると、友奈は必死に顔を隠し抵抗を行う。

 

 俺の胸板にグリグリと顔をうずめ、熱い吐息をもらしながら背中に回す両手に力を入れる。

 そんな強張る少女を落ち着かせようと意地の悪い笑みを浮かべながら、悪戯を続行する。

 

「――反応が可愛いもんな」

 

「……っ」

 

 服の襟、白い首筋のギリギリ見えるか見えないかの位置に吸う様にキスをする。

 同時に指先だけで判る穢れを知らない無垢な彼女の性器、濡れた膣口に薬指を挿入する。

 わずかな抵抗を擦り抜け侵入するが、締め付けによって第二関節で膣肉に阻まれてしまう。

 

「濡れてる」

 

「……ぅ……ッ」

 

 指の腹でその感触を確かめるように撫でていき、ときおりその状況を囁く。

 弛緩しだした身体を抱きしめながら何度も膣口を指で押し出すように擦り、出し入れする。

 無意識なのか浮き出す腰を力で押さえながら続けると静かな部屋に吐息と水音が響き渡る。

 

 自らの愛液で響く水音に、友奈が耳まで赤くするのは羞恥ゆえか。

 背筋を指でなぞると微かな嬌声と共にビクンと背筋を伸ばすのが分かった。

 

「――――」

 

「……ん……んぁ……いッ」

 

 手淫を続け友奈の脳に染み渡るように囁くと、数分ほどで更に膣口が痙攣し指を締め付けた。

 同時に愛液の分泌量が増えたのが指先の感覚で判ったので、手のひらに塗りたくり引き抜く。

 そうしてスカートから手を引き抜くと荒く息を吐く涙目の少女にその手を見せつける。

 

「ほら見てよ、友奈。こんなにエッチな糸を引いてるよ……。友奈の大事な処から」

 

「いや……ぁ、見せないでよ……」

 

 外気に晒され、俺の手のひらに大量に付着している透明な滴が照明に照らされている。

 呼吸を少しずつ整える友奈は、目の前で見せられる己の恥丘から漏れ出た愛液に目を瞑る。

 頑なに目を開けようとしない少女の様子に薄暗い快感を得ながら形の良い耳に小さく囁く。

 

「どんどん敏感になっているね、ちょっとしか触ってないのに、……いやらしいよ」

 

「――! だっ、だって亮ちゃんがいつも悪戯してくるから……」

 

「俺はそんなエッチな友奈、好きだけどね」

 

「――――」

 

 その瞬間の友奈の表情は、きっと、この世界で俺しか見る事が出来ないだろう。

 ただ言葉を伝え、伝わった友奈の薄紅の瞳に、あらゆる感情が波面のように揺らいでいく。

 その感情の奥を覗き込ませまいと友奈はギュッと瞼を閉じ、代わりに額を擦り合わせた。

 

「……」

 

 初代が語っていた“寂しがり屋”という俺への評価は間違ってはいない。よく解っている。

 だから、こんな自分に優しく笑顔を向けてくれる友奈の存在は絶対に離さない。自分の考えがどれだけ卑怯で矮小で罪深く、傲慢であるのかは理解し、今更だと小さく嗤った。

 

「俺は……」

 

 友奈の心を、友奈の身体を、俺に、『加賀亮之佑』という存在に溺れさせたいと、そう思う。

 絶対に離れていく事が無いように。

 

 

 

 +

 

 

 

 それから少し時間が経過し、玄関のチャイムが鳴ったのが聞こえた。

 先ほど連絡があった東郷なのだろうと時計を見ると、もう昼を過ぎ針が1時を指していた。

 友奈を抱き起こし、乱れて寝起きのようになった友奈の短めの髪を素早く整えていく。

 

「ほらっ、東郷さん来たよ」

 

「……ぅ、うん」

 

 そうして廊下の冷たい感触を足裏に感じながら、友奈を引き連れ玄関の扉を開ける。

 友奈とは別のベクトルで可憐な少女、艶のある長い黒髪を纏め肩から前に垂らした少女。

 勇者部の中で最も和が似合う、私服を着た国防系少女が扉を開けた俺を見上げて微笑む。

 

「こんにちは、友奈ちゃん、亮くん」

 

「やあ、いらっしゃい」

 

「――こんにちは、東郷さん!」

 

 濃緑の大きな瞳を煌めかせて、東郷は時間通りに俺の家に来た。

 東郷家は結城家の隣、結城家は加賀家別邸の向かいと言うとこの近さが解るだろうか。

 大赦による思惑によって俺がこの家に来て4年、東郷が引っ越してきて3年の歳月が経過した。

 

「風先輩も急よね。千羽鶴なんて」

 

「そうだよね。でも私たちなら大丈夫だよ!」

 

 何の依頼だったかは忘れたが、風が持ってきた依頼で千羽鶴を作る事になっていた。

 その通達をごめんねーと誤魔化し笑いを浮かべる風を夏凜が怒るという日常の光景。

 既に断る事が出来ないという状況下であると判明したのが2日前の木曜の放課後だった。

 

 そんなわけで先ほど、ご近所陣営で鶴を折ろうという連絡が東郷から来た。

 夏凜は用事があるらしいが、適当に貶し褒めるとなんだかんだで夕方から来る事になった。

 

 家に上がる東郷が持ってきた茶色の紙袋の中には無数の彩りのある大量の紙が入っている。

 それを確認していると、ふとこちらを見る東郷は小さく微笑みながらこんな事を言った。

 

「ふふっ……二人っていつも仲が良いわね」

 

「ん~? 友奈とは仲良くしているよ。……これ以上ないくらい」

 

「……?」

 

「も、もちろん東郷さんとも仲良いよ! ……ねっ!」

 

 思わず意味深な言い方になり、その意味が分からず世間話のつもりだった東郷は首を傾げる。

 唯一何かしらのニュアンスを感じたらしい友奈は俺の横腹を小さく小突き、笑顔を保つ。

 そんな友奈の反応に満足感を感じ、東郷が持ってきた紙袋から一枚だけ紙を手に取る。

 

「……亮くん。もしかして奇術?」

 

「まあ見てなよ」

 

 濃緑と薄紅の瞳が見つめる中、俺の手の中にある紙を彼女たちの目の前で握り締める。

 そして握り拳にもう一方の手を重ねた後、そっと拳を開くと手のひらに折り鶴があった。

 特に何てことない大道芸に純粋に驚く少女たちの反応に俺は小さく微笑み呟いた。

 

「――イッツ、カガワ☆イリュージョン」

 

 

 



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第三話 園子と過ごすとある一日

 ――眠りから目が覚める瞬間は、いつも唐突だ。

 

 眠気という魔手から逃れ乖離していく意識、水中から浮上するように目が覚める。

 カーテンで遮られた窓の隙間、そこから小さくこぼれる日光をしばらくぼんやりと眺める。

 未だに判然としない意識の中で習慣と化した行動、寝台近くの目覚まし時計に手を伸ばす。

 

「――6時か……」

 

 掠れた声で呟いた時間は、ギリギリ二度寝するかしないかという微妙な境界線。

 しかし、この布団の中の暖かさに身を委ね、二度寝すると朝ご飯が作れなくなる。

 時計の針から聞こえるカチカチという音に、布団との決死の別れと共に起きる事を決意する。

 

「ふあ」

 

 小さく欠伸をしながら上体を起こそうとし、ようやく俺は異変に気付く。

 寝台の上で髪の寝癖を弄りながら周囲を見渡すと、見慣れた自室の内装が飛び込んでくる。

 様々な本を規則的に収納した棚、テーブルの上に転がる器具、己がいつも使用する机と椅子。

 

「……ふあ」

 

 見慣れた光景だと思いながら、上体のみ起こした状態で静かに己の寝台に目を向ける。

 薄いシーツがわずかに乱れながら、温かい毛布に包まり俺の隣で寝ている少女が映り込む。

 薔薇が似合いそうな可憐な少女。稲穂を連想させる金色の長い髪の少女は小さく寝言を呟く。

 

「んへへ~」

 

「……」

 

 幸せそうな笑みを浮かべ、見ているだけで微笑ましく心が温まる少女の寝顔。

 彼女が、乃木園子が着ているゆったりとした外服はパジャマとしての機能性は良くないだろう。しかしこうして眺め続けると、やはりどんな服でも彼女なら似合うだろうと心底思いながら口端に透明な涎を垂らす少女を見下ろす。

 

「すやや~、……かきかき……」

 

 彼女、乃木園子と俺の関係としては、まず『乃木』が本家、『加賀』が分家となっている。

 この世界に生まれ出でて、両親と家庭教師以外で初めて普通に接する事の出来た最初の友達。

 そんな名家である彼女なら、家に無断で侵入する事も不可能ではないのだろう。多分だが。

 

「……むにゃ」

 

「まあ、不法侵入だけどね」

 

 こうして目を覚ますと、時々園子が一緒のベッドに寝ている時がある。

 当初は驚いたが、時々こうして隣にいると安堵感を覚えるのは、恐らく園子だからだろう。

 

「……ん、ぅ……」

 

 そんな事を思いながら、無言で侵入者の胸を揉んでいく。

 この4年で成長したのは身長だけではなく、仰向けになり自己主張する存在は中々大きい。

 

「あ……ん~、……ん……ッ」

 

「……ふむ」

 

 俺としては、東郷のような『ぼた餅級』の大きければ大きいほど好き、というわけではない。

 その人の形や肌の感触、感度や柔らかさの方が大事なので、誰でも良いわけではないのだ。

 園子との付き合いも長く、薄い服の上から胸を起きない程度に揉み終え、洗面所に向かう。

 

 自室を出て一階に降りてすぐの洗面所で顔を洗い、濡れた顔を鏡に映して己の顔を観察する。

 長くはない程度の黒髪、どこか気の抜けた顔つきと対照的に冷然と見据えた血紅色の双眸。

 以前の黒眼だった頃の名残はどこにもなく、それを誤魔化すようにぬるま湯を顔に浴びせる。

 

「――――」

 

 顔を洗い、寝癖を直し濡れた己の顔を見直しながら、『いつもの笑み』を作り鏡に映す。

 不自然さの無い、練習を積み重ねた愛想の良い穏やかな表情と顔色の擬態を確認する。

 

「よーしいいぞ。今日も一日頑張れ」

 

 そう一人鏡の前で呟き、タオルで顔を拭き両手を擦りながら息を吹き込む。

 最近手が異常に冷える時があり、自然と癖になってしまったが気にする程ではない。

 そうして一先ず歯を磨き終え、パジャマから服を着替えた俺はそのままキッチンに向かう。

 

 俺にとって、朝食はそこまで時間が掛かる物ではない。

 朝食は洋食であり、基本的に一人暮らしである為に、作るのにさほど時間は掛からない。

 友奈や園子が来る時があっても、彼女たちも多く食べるわけではないので問題はない。

 

「そろそろ、合鍵作らないとな……」

 

 お湯を沸かし、静かに湯気が昇る様子を見ながら、独り言を呟く。

 友奈とは異なり、合鍵ではない何かしらの手段で今日も園子はいつの間にか家に来た。

 それは別に不満はない。しかしこれだけ俺の家に彼女が来てくれるのなら渡すべきだろう。

 

 俺にとって、合鍵を渡すという行為はある意味を伴う。

 その人物が『加賀亮之佑』にとって心の底から信用出来るという意味だ。

 

「園子は信用できる」

 

 前世の経験により、人を信用出来ない俺は、人の弱みを掴まずにはいられない。

 常に相手の弱みを掴み、多くの情報を手に入れて優位に立たないと不安でしょうがないのだ。

 だが、園子とは長い付き合いだ。大赦によって引き離されていたが、今は関係も元に戻った。

 

「以前よりも、ベタベタになった気がするけどな」

 

 園子の肉体が動くようになった反動だろうか。

 溜め込まれた物を解放するように、一気に距離感を縮めてくるようになった。

 慣れつつあるが、不意打ちのような添い寝も彼女にとってはスキンシップの様な物なのだろう。

 

 白湯を湯呑みに注ぎ、冷ましながら飲むこと数分。

 少しずつ温まり出す身体を余所に、そろそろ園子を起こそうと静かに自室に向かう。

 

「……ん、かっきーは、……」

 

 扉を開け入ると、寝台の上で未だに園子は眠っていた。

 仰向けからうつ伏せの状態になり、俺が先ほどまで頭を預けていた枕に顔を乗せている。

 寝言を呟き夢の中で『俺』が出てきたのか、白い頬を枕に押し付け気持ち良さそうに眠り込んでしまう少女。

 

「かっきーは、枕じゃなくてここにいるんだよな……」

 

「……むにゅ……」

 

「園ちゃん、朝だよ……?」

 

 当たり前の事実を何となく口にしてしまうが、答える者はいない。

 ふと思いつきで端末で園子の寝顔を撮りながら、小声で呼びかけるが起きる事はない。

 完全に眠りこけた園子の無防備な姿を見ていると、なんとなく己が欲情しているのを感じた。

 

 そもそも人のベッドで勝手に寝ているのはどうなのだろうか。

 夜這いしている時点で襲われても仕方がないのだ。これは悪戯もといお仕置きが必要だろう。

 躊躇いなく布団を捲るとわずかに捲れ上がったスカートから覗く白い肌と下着に目を向ける。

 

 外気に晒された白い肌に触れると、モチモチとした吸い付くような肌が手のひらに広がる。

 肉厚な桃尻を手で弄り回しながら俺も寝台に寝転がり、園子の下着の細部まで観察していく。

 

 百合の花の刺繍が施されたどこか大人びた下着は彼女の色気を一段と高めている。

 薄紫の下着と園子らしい大胆さがスカートの中に広がっており、思わず小さく吐息をする。

 

「……ッ、……ぁ」

 

「――――」

 

 吐息にかすかな嬌声を上げる園子の呼吸を確認するが、規則的な呼吸は続き未だに寝ている。

 わずかに頬を朱に染め、夢の世界から目覚めない眠り姫の桃尻を枕にすると弾力が頬に広がる。

 

「――じゃあ悪戯、開始で」

 

 心臓が早鐘のように鳴る中で、それ以上にこの状況に対し興奮に頬が緩むのが分かった。

 そのまま、紫色のショーツ越しに指を沈み込ませ、その柔らかさと性器を指の腹で弄り回していく。

 

 出来る限り無言で、園子の反応を見ながらおよそ10分が経過した頃。

 

「……あぅ、……んッ」

 

「この柔らかさが良いな」

 

「んぁ……ッ」

 

 下着越しにやや強めで前後に擦っていくと、刺激が強いのか徐々にショーツが湿るのが分かる。

 熱い滴が少しずつ、着実に愛液が染みを作る光景を見つつ、自然と浮かび上がる臀部を顔面で、細い腰は手で押さえる。

 服の中の柔らかな腹に手を這わしながら、小さな突起を指の腹で擦りひたすらに弄る。

 無意識に身体をくねらせ寝ている園子が逃れられないように、俺は悪戯を続けた。

 

「んんッ……ッ!!」

 

「おっ?」

 

 集中して責め立てているからか、数回程下半身がビクンと小刻みに痙攣するのを確認する。

 無意識だろうが脚を閉じようと園子の両脚に力が入るが、俺の頭部を締め付けるだけだ。

 わずかな抵抗に薄い笑みを浮かべ、わざと水音を立てながら陰核部分を指で弄り回す。

 

「ほら、園ちゃん。気持ちいいね~、エッチだね~」

 

「かっ……んっ、……ッッッ!!」

 

 直後、下着の布地部分の染みが広がり、先ほどとは比較にならない量の分泌液が手を濡らす。

 寝ていながらもビクビクと下半身を痙攣させる園子、その愛液を少し考えた後、舐めとる。

 少ししょっぱさがありながら癖になりそうな味で、友奈とはわずかに味が異なると思った。

 

 ズボンの中で暴発しそうな逸物の衝動をどうやって処理するかと欲望に満ちつつも、ふと冷静な頭脳が俺にある事を気づかせる。

 脳内の警鐘に従い、未だ俺の寝台にうつ伏せで眠る園子を見る。

 乱れたシーツと彼女の衣服、就寝時よりわずかに荒い呼吸、俺の枕を握り締める園子の姿。

 

「ほう……?」

 

「…………」

 

 未だに眠っている園子は、俺の枕に顔をうずめ、両手でしがみついている。

 まるで顔を見せないように眠っているかのように、園子の耳は随分と赤く染まっていた。

 その姿に確信を抱き、押し倒すように園子の背中に圧し掛かり、小さな耳に囁きかける。

 

「あれ~、園子? もしかして起きているの……?」

 

「……っ、む、にゃ……」

 

「――寝ているのか」

 

 先ほどの悪戯での刺激で恐らく目覚めたのだろう。

 寧ろ目覚めない方が異常だろうと思いながら、園子の長い金色の髪の匂いが鼻腔を擽る。

 少し体重をかけ園子と身体を密着させる事に征服感を抱き、赤く染まる耳に口を近づける。

 

「園子は綺麗だな」

 

「……んッ」

 

「園子の髪って触るとサラサラしていて、今も昔も好きだよ」

 

「……ぁ」

 

「園子のふわふわしたマイペースな感じと時々見せる凛々しさが好きだよ」

 

「……ぅ……ッ」

 

 必死に顔を見せようとしない園子の形の良い耳。

 左側の耳を甘噛みし、小さな囁き声で可憐な幼馴染を褒めつつ、ピチャピチャと舌音を響かせる。

 耳は性感帯の1つであると聞いた事はあるが、園子はどうやら特に感度が良かったらしい。

 

「ふっ……あっ……」

 

「ふ――、園ちゃんは可愛いね」

 

「んくっ……!」

 

「園ちゃんの耳って、美味しい」

 

「……ッ」

 

 言葉の一つ一つにビクビクと園子は首筋を震わせる。

 だが、抵抗しようにも『寝ている』というポーズを取る以上、彼女は動けない。

 俺の身体を全身で受け止め、ただ無抵抗で俺の声が鼓膜に届けられるのを待つばかりだ。

 

「――――」

 

「…………」

 

「――――」

 

「……?」

 

「ふ――」

 

「ひゃあ……ッ!!」

 

 数秒程、無言で何もせず園子を見下ろすと、疑問に思ったのか少女は身じろぎする。

 わずかに顔を動かし此方に視線を向けようとする瞬間、時間差で再び園子の耳を甘噛みすると、背中を硬直させ普段聞くことのない大きな艶のある嬌声を彼女は部屋に響かせる。

 

 背後から抱き着き、少女の長い髪の毛に顔を埋める。

 少女特有の甘い香りとシャンプーが混ざり合った匂いが脳を震わせる。

 

「園子は可愛いね」

 

「……ッ」

 

「本当に寝てるの?」

 

 吐息を耳の奥に届かせ、唇に耳たぶのコリコリとした感触と園子の反応を俺は愉しむ。

 俺の声の振動が直に耳の奥に伝わる度にこぼれる艶のある園子の声が俺を興奮させていく。

 反り立った逸物は彼女の尻肉を叩き、無抵抗の彼女の下着を両手で少しずつ下ろしていく。

 

 クロッチ部分に僅かに透明な糸を引いた下着。

 そっと尻肉を割り拓くと、まだ未開拓の恥部と薄い茂みが外気に晒される。

 

「凄いエッチな匂いがするよ」

 

「っ」

 

「園子、起きてないの?」

 

「…………」

 

「じゃあ、このまま挿れちゃうよ……?」

 

「ひゃう……ッ」

 

「園子の顔、見せて」

 

「……ッ」

 

 園子の媚肉を擦るように怒張をしごく。

 彼女の身体を使った自慰にも等しい素股だが、気を抜くと挿入してしまいそうになる。

 

 ぬちゅ、ぬちゅと淫靡な音が静かな部屋に響く。

 それは彼女にも聞こえているようで、ぎゅっと枕を掴む拳に力が籠るのが見えた。

 

 園子は枕から頭を離さない。

 何かを拒否するように、両腕に力を入れて頑なにどんな表情かを絶対に見せようとしない。

 その姿に興奮し、先走りが彼女の薄毛を汚し、小さく彼女を喘がせる。

 

「ぁ、っ……、ッ」

 

「よーし、じゃあこのまま出しちゃうよ~」

 

「……ん、むにゅ……!」

 

「あ~、出る――」

 

「んんッ……!!」

 

 膣口よりも少し離れた尻肉に精液を吐き出し、桃色の臀部と恥部を白濁液が汚していく。

 明らかな嬌声を必死に枕で押し殺す園子の耳を甘噛みしながら、下着をそのまま戻す。愛液と精液をグチャグチャに掻き混ぜ染み込ませるように、ショーツの上から手で撫で回し、染み込ませる度にぐちょりと粘着質な音と匂いが漂う。

 

 そのまま少女の肉芽を精液を孕んだ下着で擦る。

 こしゅこしゅと擦ると浮かび上がる腰、しかし彼女は頑なに寝たふりを止めない。

 

「んっ、っ……、ァ、ぁ」

 

「ここ、裏側を擦られるの好きだよね」

 

「~~~!」

 

 呻き声を枕に押し込め、強制的に彼女を法悦の空に上らせる。

 然したる労力も掛からず彼女が軽く絶頂の余韻に浸るのを待たずに少女の自慰を手伝う。

 

「園子、寝ているの……?」

 

「……」

 

「そっか、まだ寝ているのか。それじゃ仕方ないね」

 

 ティッシュの箱を園子の隣に置き、乱れた彼女の衣服を元に戻す。

 表面上は布団を剥いだ前と同じ状態に戻しながら、最後に園子の耳の奥に響くように囁く。

 

「園ちゃん。10分後に朝食出来るから、それまでに起きろよ」

 

「…………」

 

「起きないと、また悪戯するから。……冷めた食べ物の恨みは恐ろしいからな。――ふ」

 

「あっ……ッ」

 

 そうして布団を彼女に被せ、俺は速攻で衣服を着直す。

 清々しい気分、賢者モードという神の状態になりながら、俺は朝食の準備の為に部屋を出た。

 きっと鏡を見たら、さぞかし良い笑みを浮かべていたに違いないだろうと思いながら。

 

 

 

 +

 

 

 

 幸い今日は友奈は家に来る事はなく、そろそろ8時になる頃に俺は朝食の準備を始めた。

 ベーコンエッグとサラダ、フライパンでチーズトーストを作っていると階段から音が聞こえた。ゆっくりと階段を下りてくる足音に、ちょうど出来上がった料理を皿に載せながら俺は話しかけた。

 

「おはよう」

 

「……おはよ~、かっきー。今日は良い天気だね」

 

「そうだね」

 

「何か手伝う~?」

 

「いや、座って待っててくれ、お嬢様」

 

「……うん」

 

 リビングのテーブルに完成した料理を持って行き、園子と二人で朝食を食べる。

 テーブルを挟み、朝だからかいつもよりも口数の少ない園子を見ながらデザートを食べる。

 チラリとこちらを見る園子の姿から、テレビで放送している最新のニュースに目を移す。

 

「かっきー美味しいんよ~」

 

「それは柿だよ」

 

『続いてのニュースです。――映画『うどんが前世』が、初週動員数1位を獲得しました』

 

「……なんて?」

 

「あっ、この映画凄いらしいね~」

 

「えぇ……」

 

 テレビに映るアナウンサーが真顔で凄まじいタイトル名を淡々と口にし唖然とする。

 そんな俺の反応の中で、両手を合わせて楽しそうに園子は最近人気の映画なのだと口にする。

 本当かよと思うも、俺の転生先のUDONへの執着度を考えれば不可解ではないのが恐ろしい。

 

 頭が痛くなりそうなタイトルだが、ニュースで上げるだけはあるらしい。

 なんでもこの四国を感動と笑いの渦に溢れさせ、社会現象を起こしているアニメ映画らしい。

 そんな事を会話の種に話していると、ふと少し躊躇いを見せながら園子が口を開いた。

 

「それでね、かっきー」

 

「――?」

 

「チケットがあるから一緒に行かない?」

 

「ああ、良いよ」

 

「……!」

 

 彼女からの誘いを断る理由はなかった。

 珍妙な映画のタイトルだろうとも、上目遣いで誘う園子の誘いを断るはずがなかった。

 先ほどの行為を微塵も感じさせない姿で、園子はふにゃりと柔和な笑みを浮かべる。

 

「わ~い! かっきーとデートだ~……!」

 

「はは……、エスコートはお任せ下さい。お嬢様」

 

 そんな感じで、俺は園子と一緒に面白いと評判の映画を観に行く事になった。

 楽しそうに嬉しそうに笑顔で俺と手を繋ぐ園子の姿に、俺は小さく微笑んだ。

 ニュースで紹介された映画はそれなりに面白く、その後は適当に町を歩いた後に別れた。

 

 そうして園子を見送り、家に帰った俺は本当に一人になった。

 風呂に入り、朝以来になる自室の扉を開けて周囲を見渡すが特に異変は見られない。

 わずかに乱れた薄青のシーツ、寝台に横たわり枕に頭を預けると、少女の残り香が鼻腔を擽る。

 

「今日は……」

 

 よく眠れそうだと思い、部屋の電気を俺は消した。

 

 

 

 +

 

 

 

 その次の日、平日になり勇者と言えども俺は学校に向かう。

 大変だからこそ、平時の日常もキチンと送ろうというのが勇者部の部長の言葉だ。

 良い言葉だが少しだけ面倒に感じる。だが確かに学校は色々と大事な研鑽の場だ。

 

「おはよう、亮くん」

 

「あっ、おはよう東郷さん」

 

 長い濡羽色と賞賛するべき黒髪を青いリボンで纏めた少女、東郷と玄関で会う。

 友奈を起こすのは東郷と話し合いの結果、なんだかんだでローテーションとなった。

 その結果この時間に起きている俺と早起きの東郷は朝に世間話をする程度の時間が増えた。

 

「東郷さん、あの映画見た?」

 

「映画?」

 

「『うどんが前世』っていう……」

 

「ああ、あの愛国心溢れる映画ね!」 

 

「え……?」

 

 起きているかの確認に来てくれるのは少し嬉しいがあまり隙は見せられない。

 ちょっと目を離した隙に朝食が和食に変わっていた事件がそれなりにあったりしたからだ。

 そんな東郷が結城家に友奈を起こしに行き、少々時間が経過した頃、二人が出てきた。

 

「おはよう亮ちゃん! 東郷さん!」

 

「おはよう友奈ちゃん」

 

「おはよう」

 

「…………」

 

 挨拶は基本なのでしっかりと少女に挨拶する。

 そんな俺に友奈は近づき、薄紅色の瞳をジッと向けてくる。

 

「友奈?」

 

「……ううん。行こう! 二人とも!」

 

 ――そうしてまた1日が始まる。

 

 

 



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第四話 あなたに私は絡みつく

 ちょうど学校に向かう準備を整えるとタイミング良く家のチャイムが鳴る。

 まるで見計らったように鳴る中で、カバンを持ち廊下を通り、扉を開けると目にする美少女。

 日に焼けていない白い肌を飾る深緑の瞳が印象的な少女は、俺と目が合うと微笑を浮かべる。

 

 濡羽色の長い髪は触りたいと思わせる絹糸の如く。

 その髪を束ねた青いリボンを後ろに垂らした外見は和人形の様な姿を思わせる。

 ――大和撫子とは彼女の為にあるのではないのか。

 

「おはよう、亮くん。褒めてくれるのは嬉しいけど、褒めすぎ」

 

 こうして気兼ねなく俺の家に来る数少ない親友、東郷美森の姿を目にして小さく頬を緩ませる。

 

「東郷さん、おはよ。今日はちょっと曇っているらしいな」

 

「そうね……。あっ、でも傘はいらないそうよ」

 

 結城家の左隣が東郷家、向かいが加賀家と大赦に仕組まれたご近所関係は良好だ。

 穏やかな微笑と黒髪が似合う少女と、太陽の如き笑顔が似合う赤い髪の少女とは仲が良い。

 そんな彼女たち――、正確に言うと向かいの少女の様子について最近少し気になる事がある。

 

 ご近所さんの東郷と二人、一日毎に交代で行っている朝に友奈を起こす役割。

 今日は俺が友奈を起こす為に、チャイムを鳴らして結城家の玄関より顔パスで入る。

 友奈だけでなく結城家とは既に4年以上の付き合いで彼女の両親とも良好な関係だ。

 

「おはようございます!」

 

 ご両親に挨拶をして二階に上がる。

 何度も訪れた事のある少女の部屋の扉を最低限小さくノックして、友奈の部屋に入り込む。

 二階の部屋にある友奈の自室はカーテンを閉めつつ小さな常夜灯は点灯している状態だ。そんな薄暗さが未だに残る部屋の床の硬さを足裏に感じながら無言で目的の場所に向かう。

 

「……友奈」

 

「ん、……」

 

 この部屋の主、寝台からわずかにはみ出ている布団に包まり昏々と眠り続ける少女。

 小さく呼びかけるとわずかに身じろぐ彼女だが反応は鈍く無防備に規則的な寝息を繰り返す。写真に収めたくなる可愛さだが、これが東郷ならばどこからかラッパを取り出し耳元で起床のファンファーレを鳴らすだろう。

 

「いや、そんな残酷な事、俺はしないけどね」

 

 真面目な少女だが優しさと厳しさを兼ね備えた起こし方は参考にはしたくはない。

 そもそもこんな無防備な少女を前にして基本的に悪戯をしない起こし方はあり得ない。

 そんな事を考えながら寝台の上で夢の世界にいるピンクのパジャマを着る少女の髪を撫でる。

 

「んにゃ……、ぁ……りょうちゃん?」

 

「――おはよ」

 

「ん……、はよぉ……」

 

 トロンとした寝ぼけ眼、薄紅色の瞳で俺を見上げる友奈は未だに寝ぼけている。

 そんな少女の柔らかな胸をそっと揉みつつ、完全に目覚める前に静かに布団を剥ぎ取る。

 寝起き故、後頭部の髪は結われておらず無造作な状態の友奈は緩慢とした動きで手を伸ばす。

 

「ん……?」

 

「亮ちゃ~ん……」

 

「どうした? ――おっと」

 

 白い両手が俺に伸ばされ、微弱な力で俺の身体を引っ張る。

 無論抵抗するつもりはなく彼女に引っ張られ、甘く、柔らかく、温かい寝台の上に身を横たえる。そうして彼女の寝台に引き込まれた俺は抱き枕の要領で腕を回され抱きしめられた。

 

「何、しているの?」

 

 スンスンと俺の首筋に形の良い鼻を触れさせ友奈は俺の匂いを嗅ぐ。

 こそばゆい感覚を堪えながら、親愛と友愛を込めた声音で友奈に話しかける。

 

「うーん……、においを……、擦り付け~」

 

「――?」

 

「ん~」

 

「……」

 

 ここ最近の異変。

 異様に肉体的なアプローチが、友奈から俺への積極的な触れ合いが増加した気がするのだ。

 以前までも彼女が無意識かどうかはともかく、友奈とは肌で触れ合う機会は多々あった。

 

「んー……」

 

「……」

 

 だから気のせいだと言えばそれだけの話なのかもしれない。

 ただ、以前よりも友奈が何となく、何かにつけて俺に抱き着いてくるようになった理由。

 その原因が判らずに、心のどこかで冷静に淡々と悩み考える自分がいる事に気づいていた。

 

「よしよーし。今日も学校だから起きようか」

 

「……もうちょっとだけ」

 

 だが個人的に友奈を甘やかさない理由はない。

 俺の首筋や胸板にまるで己の匂いを擦りつけるように彼女は吐息と赤い髪で擽り触れる。

 何となく園子としている悪戯に似ているなと、そんな事を思い出しながら彼女の名前を呼ぶ。

 

「……友奈」

 

「ん――」

 

「……」

 

 おずおずと手を少女の背中に回し力を入れると微かに吐息が乱れる。

 桃色の唇が俺の剥き出しの首筋に這わせるように触れる度に背筋がゾクゾクとする。

 更に薄い布越しに押し付けられる柔肌に、身体中が溶かされるような感覚に襲われていく。

 

「…………」

 

 このまま一緒に寝たくなるような、そんな気分になるのをグッと俺は堪えた。

 一人なら遅刻しても良いのだが、東郷も待っていることを思い出し彼女の耳元で囁く。

 子供をあやすように、親愛と友愛に満ちた声音でそっと友奈を起こすべく唇を震わせる。

 

「友奈、眠いだろうけど……ほら、起きないとね」

 

「……ぅ」

 

「友奈」

 

「……ぅ、う、うおぉーーっ!!」

 

 陽だまりのような温かさが腕の中で広がる中、その温かさに溺れず懸命に少女の名前を呼ぶ。

 3分ほど俺の身体に全身を密着させていた友奈だが、最後にギュッとハグを強めて薄目を開ける。

 薄紅色の瞳にいつもの快活さを宿し、最終的に声を出しながら身体を離して上体を起こした。

 

「おはよう、亮ちゃん。すぐに準備するから待ってて」

 

「……ああ」

 

「……」

 

「――?」

 

「ねえ、亮ちゃん。その……着替えるから、……ね?」

 

「俺は気にしないけど」

 

「私は気にするの!」

 

 淡い微笑みを浮かべたピンクのパジャマ姿の少女に言われ頷く。

 頷きながら、そのまま着替える姿を見ようとしたが、紳士な俺は部屋を出ることにした。

 

 声を大にして言えないような悪戯をし合う関係だが、それでも彼女の羞恥心は変わらず健在らしい。とはいえ恥ずかし気に喋る友奈の表情は、思わず悪戯したくなるような可愛さを俺は感じた。

 

 

 

 +

 

 

 

 そうして彼女が身支度を整え、制服姿の友奈と東郷と共に学校へと向かった。

 最近は少し寒くなってきたからかマスクをして学校に向かう人が多く見える。

 周囲の光景を見ていたのは俺だけではなく、同じく周りを見た東郷が心配気に口を開いた。

 

「友奈ちゃんも風邪には気をつけてね」

 

「うん! 東郷さんもね!」

 

「……」

 

「亮くんもね」

 

「ああ、お互い気をつけないとな」

 

 通い慣れた通学路のアスファルトの硬さを足裏に感じながら彼女たちと登校する。

 時間的に遅刻するという状況でもなく、また今日のお天気お姉さんは『曇り』だと微笑んでいた。

 晴れ過ぎず雨が降るというわけでもない穏やかな一日になってくれるだろうと思いたい。

 

 コートを着た俺たちはやがて校門を通り抜け、靴を履き替え、階段を上り教室へと向かう。

 今日もまた退屈な授業を聞くのだと思うと少し面倒に感じながら、友人たちに挨拶していく。

 

「おはよう、亮之佑くん」

 

「ああ、おはよう坂本さん……今日も寝癖が凄いな。直さないのか?」

 

「ポリシーなんで」

 

「そっか……、一世もおはよ」

 

「おはようございます、亮さん」

 

 多少癖があるが、彼ら彼女らとは以前から仲良くしている。

 神樹という神を崇拝する過程で消された萌えを愛する紳士や、人には言えない事を隠す淑女たち。普段はそれらを隠している愛すべき変態たちの弱みを握りつつ、その上で良好な関係を構築した。

 

 みんなキチンと挨拶を返してくれるのは本当に嬉しいと思う。

 生前では挨拶しただけで汚物を見るような目で見られ罵倒されたのが随分と昔に感じる。

 昔と言っても俺はまだ十数年ほどしか『加賀亮之佑』としての人生を歩んでいないのだが。

 

 そうして、今日は俺たちより先に学校に来ていた勇者部のメンバーにも挨拶する。

 朝早くからランニングしている真面目な少女、三好夏凜と適当な雑談をしていると、遅れてきたらしい少女が後ろから背中に指で触れるように、鈴音を思わせる穏やかな声音で挨拶をしてきた。

 

「おはよ~、かっきー」

 

「――園子もおはよう。眠そうだね」

 

「えへへ~、実は昨日凄い夢を見たんよ。……あっ、わっしーもにぼっしーもおはよ~」

 

「そのっち、もうすぐ授業なんだから、……今日は寝ちゃだめよ」

 

「分かっているよ~、……すやぁ……」

 

 授業前に寝てしまおうという魂胆なのか。

 東郷が真面目な顔で告げた矢先、コクリと頷き垂れた頭から髪が一房垂れる。

 稲穂のような黄金色の髪をふと無性に触りたくなるのは園子だからだろうか。

 

「……」

 

 とはいえ、俺も分別は弁える。

 一瞬ブルリと不気味に震える右手を握り締めると、ふと別の少女の声が背後から聞こえた。

 

「園ちゃん、おはよう!」

 

「……ん〜? ああ、寝ちゃってた~……ごめんねゆーゆ。おはよう、ゆーゆは今日も元気だね~」

 

 元気に挨拶をする友奈と園子。

 にへらっとした笑みを浮かべる友奈の表情に、寝台上での出来事は欠片も残ってはいない。

 そんな友奈の呼びかけに鼻提灯をパン!と割り、瞼を擦りながら園子は再び目覚めた。

 

「私は今日も元気だよ、園ちゃん! せっかくだから分けてあげるね! 元気! ベータ波!」

 

「おお、身体が温まるよ〜、ゆ~ゆ〜!」

 

「そ~の~ちゃ〜ん!」

 

 何か通じ合う物があるのか、二人はお互いの『愛称』を呼び合う。

 ニコニコ、ニコニコと何が楽しいのか、微笑ましい少女たちの姿が教室で展開される。

 その姿に目を向ける人が少ないのは、この平和な光景に慣れてしまったからなのだろうか。

 

 いずれにしても、彼女たち二人が仲良くしているのは嬉しい事だ。

 あれが演技であるとは思えず、俺の眼には本当に仲の良い関係にしか見えない。

 

「まあ、流石にそこまで疑えばキリはないだろうけど……」

 

「何が?」

 

 最近精神的に耄碌してきたのか、独り言を誰かに拾われる気がする。

 会話が成立した時点で独り言ではないかと、そんな事を思いながら一人の少女に眼を向ける。

 

「――。か~り~ん!」

 

「りょ~の~すけ、……って誰がやるか!!」

 

「ナイスツッコミ。朝からキレキレだね、大丈夫?」

 

「大丈夫よ」

 

 勇者部随一のツッコミの持ち主にして二刀流使いの少女は俺の言葉に低い声を上げる。

 こうした反応を返してくれるのが意外と嬉しくて、つい揶揄わずにはいられない少女だ。

 こんなやり取りはもう何回も繰り返し、理解しているのか小さく吐息する夏凜は口を開く。

 

「それにしても、この時期って本当にテストが面倒ね。ちなみに私たちの中でだと、一番不安なのは友奈なんじゃない?」

 

「ああ、いや、友奈なら大丈夫……のはずだ」

 

「いや、言い切りなさいよ」

 

「……あれ、夏凜。背が伸びた?」

 

「自由か! ……まぁでも、一昨日新しいサプリ買ったからかもね」

 

「ああ、見間違いのようだ」

 

「なんでよ!!」

 

 世界を守る勇者ではあるが、学生としての教育の義務を果たさなければならない。

 勇者の個人情報は漏れてはいないのだが、御役目として数日程この箱庭を留守にして外の世界で活動していれば、クラス内で気づく人もチラホラといるかもしれない。

 

 こういう時はゴールドタワーで訓練と学業を行う防人は色々と面倒が無いのが羨ましく感じる。疚しい事は無いが、天の神が去ったこの世界が安定するまでは優勢な状況とは呼べない。

 300年の神樹を中心とした教育のおかげで、目に見える敵はこの箱庭では見ていないのが救いか。いずれにせよ今は虎視眈々と勝利に向け大社側の準備が整うまで待つしかないのだ。

 

 そうして授業が開始して数時間。

 国語の授業で教科書を片手に聞いていた時、ふと友奈の席に目を向けた。

 

「……、ぼたも……、んっ……」

 

「……」

 

 確かにこの授業では生徒が当てられる事は滅多にない。

 加えて教師の一定音量での朗読は周囲を見る限り人を眠らせる力があるのだろう。

 そんな状況だが、唇から透明な涎を垂らし、ペンを片手に瞼を閉じた横顔は愛らしく感じる。

 

「――――」

 

 だが、先生の眼は誤魔化せても東郷の眼は誤魔化せなかったらしい。

 後方の席でわずかに形の良い眉を顰め、静かに怒りを溜めている姿からは目を背けた。

 

 

 

 +

 

 

 

 あれから数日が経過した。

 何か変わった事は特になく、ただ友奈や東郷が授業で解らなかった部分の復習を行ったり、時々高校に進学した風も顔を出してきたり、樹主導の新生勇者部としての活動を行った程度か。

 

「そんなわけで今日は、東郷さんの家で友奈と勉強をしているんだ」

 

「亮くん? 誰に説明しているの?」

 

「独り言さ」

 

「亮くんって、時々そのっちみたいな不思議な事を言うよね」

 

「『……ヘイわっしー! ぼた餅食べたいんよ~!』」

 

「――相変わらず凄い奇術ね」

 

 奇術師たる者、声帯模写程度は出来なければならない。

 変装技術含めてある人物に会う際、『大赦』の監視を潜り抜ける為に習得した技術の一つだ。

 園子の声や癖ならば模倣するのは容易だと、喉を震わせ園子の声を発して東郷を驚かせる。

 

「……。確かに、私も東郷さんのぼた餅食べたいな!」

 

「もう、二人ともしょうがないわね。……そう言うと思って用意しているわ」

 

「やったー!」

 

「手伝おうか?」

 

「ううん、大丈夫よ、ありがとう」

 

 壁に掛けられた時計を見ると、なるほど確かにおやつの時間とも言える時間帯だ。

 午前からみっちりと勉強をしてきたので(昼ご飯は御馳走になった)、そろそろ頃合いだろう。

 東郷は小型のコタツ布団から曲線美を描く白い脚を出し、襖を開けて静かにキッチンに向かった。

 

「ふう……」

 

「疲れたか?」

 

 彼女の後ろ姿が消え、足音が遠ざかっていくのが聞こえる中で吐息が一つ。

 目線の先にいるのはコタツに脚を入れ、先ほどまで勉強に凄まじい集中力を見せた少女。

 流石に長時間の集中は堪えたのだろうと思い、そう尋ねると友奈は小さく頭を横に振った。

 

「どうして、私たちは勉強をするのだろうか……」

 

「お、おう……」

 

 遠い眼で、そんな哲学に思えなくない事を聞いてきて思わず黙り込む。

 何故勉強をするのか。きっと答えは様々あるのだろう。良い学校に進学する為とか。頭を良くする為とか。中学生レベルならば一般常識だから人として学ぶ必要があるからだとか。

 

「まあ、これらは……、勉強っていうのは頭の訓練みたいな物だよ」

 

「訓練? あのダーってなって、エイヤーっていう?」

 

「そうだよ。例えばだけど、数字の計算が出来なければ売る人に騙されて、ぼた餅だって高い値段で買わされるかもしれない。――知識とは力だ。悪~い人に騙されないように、自分を守れるように、周囲の人を守れるように知識を増やし、頭を鍛える訓練をしているって感じかな」

 

「う~ん、でも商店街の人たちは悪い人には見えなかったけどな」

 

「……まあ、今のは極端な例だから。商店街の人は俺も好きだよ。それより――」

 

 そんな風に適当にお茶を濁しながらコタツから脚を出し、数歩移動して彼女の隣に座る。

 先ほどまでは彼女から見て右側の面に座っていたのだが、この行為に対して友奈は小さな疑問を瞳に宿す。

 こたつ布団に脚を入れ直しつつ、隣に座り彼女の体温を感じる程度に密着する中で、

 

「亮ちゃん……?」

 

「――どうやら頭を使い過ぎたらしいから、特別なマッサージをしてあげよう」

 

「えっ、なに……ぁ、わきゃ……ッ!」

 

 相変わらず無防備な少女の柔らかく軽い身体をそっと押し倒し、その柔肌をくすぐる。

 部屋の中だからか薄着の友奈の服の中に手を入れ、その温度と柔らかさと反応を楽しむ。

 絨毯を背中に、抵抗の薄い友奈は困った人を見るような表情でコロコロと笑みを浮かべる。

 

「……ほらほら」

 

「くすぐっ……、あひゃっ、あはっ、あははは――ッ!!」

 

「本当、すべすべな肌だな。どれ味を……」

 

「あっ、あははっ……、んひゅ、まって、そこ、……んひゃッ」

 

 逃げられないように片足を股に挟み込み、横腹や首筋、腋を指でマッサージしていく。

 当然押さえても多少はジタバタとする少女の身体はわずかに汗ばみ、動く度に服が捲れ乱れる。

 その結果、中の下着が露わになるのだが、くすぐられ悶える友奈に羞恥を感じる余裕はない。

 

 ジットリと汗ばむ首筋や耳たぶに軽く舌を這わせながら、無言でワシャワシャと指を動かす。

 弾力がありながらも滑らかさのある柔肌を指で掻き、円を描く度に笑い声がこぼれる。

 

「……」

 

「あははっ――、あっ、んっ……ッ」

 

 やがてグッタリとした友奈の桃色のスカートから覗く純白の下着と上気する乙女の柔肌。

 その姿を美しく感じつつ柔肌をくすぐる中、下着越しに性器や胸の突起にも遠慮なく触れていく。どこか乱暴だが確実に与えられる刺激に微かに嬌声を上げる口を友奈は慌てて押さえる。

 

「まっ、りょ、ちゃ……ここ東郷さんの家だから……、ん――ッ」

 

「……それが?」

 

「だって、やめ……、ぁ―――ッ」

 

「……こんなすぐにいやらしくなる姿を東郷さんが見たら、なんて言うんだろうね」

 

「ひゃう……ッ!」

 

 くすぐられたからか敏感になった肌を俺は弄り、漏れる声を友奈は両手で必死に抑える。だが体勢的にも力的にも不利であるのは友奈の方で、次第にトロンと薄紅色の瞳を潤ませていく。

 両手を口元に運び声を押し殺すが、俺が与える刺激に顔を赤くして小さな声を漏らす。

 

 顔を赤くし、親友がいつ戻ってくるか分からない状況で刺激は溜まり腰が浮かび始める。

 チュクチュクと純白の下着に己の愛液で音と染みを作る中、友奈は艶のある声だけは抑えるがやがて限界が来る――、

 

「――んんっ……ッ!! ……え」

 

「……」

 

 その直前のことだった。

 唐突にピタリと俺が悪戯を止めたことに友奈は心底不思議そうな顔をした。

 俺が無言で友奈の乱れた衣服を速攻で直すのを、スカート越しに股を押さえて呆然と見上げる。

 

 上気した顔には疑問が浮かんでいて。

 そして、かすかな情欲が瞳に宿っていて。

 

「――ぇ? なん……――」

 

「……うん? マッサージは終わりだよ。そろそろ東郷さん来るし」

 

「ぇ――――」

 

「どうしたの?」

 

「ぅ……、ぁ」

 

 どこか唖然とする少女に対して、にこやかに俺は対応する。

 感覚的には彼女が絶頂する直前くらいに決め手となる刺激を与えなかったつもりだ。

 脚をくねらし何かを言いたげな友奈に対して俺はきっと意地悪な表情をしていたのだろう。

 

「……勉強、一杯頑張ってもっと成績上がったら、友奈の望むこと、一杯、たくさん、してあげる」

 

「……っ」

 

 小さく、彼女にしか聞こえない程度の音量で呟き、その言葉に友奈の瞳が揺らいだ気がした。

 そんな彼女の下半身をコタツ布団で隠した数秒後に、此方に向かう廊下からの足音が聞こえた。

 

 襖を開けて部屋に入ってくるのは長い黒髪の少女、東郷だ。

 彼女は先ほどの言葉通り、両手にぼた餅が入った皿を載せたお盆を持ちテーブルに置く。

 

「おまたせ、二人とも。……さっき友奈ちゃんの笑い声が聞こえたけど、どうしたの? ……それにちょっと顔が赤いわ」

 

「――ぁ、えっと」

 

「ああ、休憩がてら樹と風先輩の面白い話を話したら思いの外、ツボに入ったらしくむせちゃってさ。……な?」

 

「――うん、そうだよ。心配かけてゴメンね、東郷さん。私は大丈夫だよ!」

 

「……? そう、それならいいのよ。……さてお待たせ、お茶とぼた餅よ」

 

「わ、わあ! 美味しそうだね! 東郷さんのぼた餅、私大好きだよ」

 

「ふふっ、一杯あるから遠慮せずに食べてね」

 

「わーい!」

 

 先ほどの悪戯でわずかに上気した顔と潤んだ瞳ながら、どうにか友奈は取り繕う。

 親友にだけは己の痴態は見せたくないのだろうと思うと、その姿に思わず含み笑いをしてしまう。下着を濡らしながら、そして今もこたつ布団の下で俺に弄られながら笑みを浮かべる少女。

 ――その姿は本当に、

 

「っ、……お、おいひいね」

 

 その健気な姿は本当に可愛らしく、何よりも愛おしい。

 東郷から受け取ったぼた餅の入った皿を取り、友奈の言葉に同意する形で俺は口を開いた。

 

「……本当に、美味しそうだ」

 

 

 



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第五話 連れ込まれるのは奇術師

「あれ、亮くん!」

 

 学校が終わり、今日は勇者部の活動もなかった為に解散した放課後の事だ。

 自宅に帰り制服から私服に着替え、御用達のスーパー諸々で買い物中に声を掛けられた。

 白を基調とした洋服の上から水色のビスチェを着る少女、長い黒髪と深緑色の瞳が特徴の少女だ。

 

「――東郷さん」

 

「こんにちは」

 

「ああ」

 

 振り返ると目に映り込む美少女。

 穏やかに柔和な笑みを浮かべ、こちらに近づいてくる少女も買い物の途中なのだろう。

 家から近場のスーパーという事もあり料理が得意な少女とこうして会う機会は多い。

 

「まあ、さっき会ったばかりなんだけどね」

 

「……ふふっ、そうね。あっ、でも挨拶は大事よ亮くん。勇者部六箇条一つ」

 

 そんな少女を揶揄するように頬を緩める。

 そうして、目の前の少女に微笑みと共に小さく注意をされる。

 

「――挨拶はきちんと、ね」

 

「そうよ」

 

「じゃあ、……こんにちは、東郷さん」

 

「はい、こんにちは、亮くん」

 

「……」

 

 子供に言い聞かせるような姿に思わず、はい先生!と言いたくなるのを抑える。

 生真面目で勤勉なお嬢様然とした少女だが、時折思い込みが激しく怒らせると怖い。

 脊髄反射で口を開く行為は控え、紳士らしくこの少女には別の話題を提供しようと口を開く。

 

「ところで、東郷さんは……夕飯の買い物?」

 

「ううん。夕御飯ではなくて明日の朝御飯に必要な物を揃えにね。亮くんの献立は……」

 

「加賀さんちは……、――さて、何でしょうか」

 

「むむっ!」

 

 いつもの笑みを浮かべ、人差し指を立てる俺をわずかにジト目で見る東郷。

 それから彼女と同じく籠に入れた食材を見て数秒ほど目を細めた聡明な少女は答えを出す。

 

「もしかして、……生姜焼きと、ほうれん草の胡麻和え?」

 

「あったりー」

 

 こんな風にスーパーで主夫トークをするのは楽しいひとときである。

 目の前の少女ともそろそろ3年目の付き合いであり、本人には言わないが親友とも呼べる関係。

 戦友として、友達として、これまで『色々』あったが、彼女との縁はこうして今も続いている。

 

 

 

 +

 

 

 

 そうしてお互いに買いたい物、買うべき物を購入しスーパーを出る。

 家の方向が同じで家自体もすぐ近く、仲も良いなら自然とこうなるのは必然とも言える。

 東郷自身も嫌がる素振りを見せず、変わらぬ微笑を俺との話の最中に何度も見せてくれる。

 

「そういえば、あの映画。二作目はあんまりだったらしいね」

 

「そうなの?」

 

「ああ、風の噂だけど。……東郷さんはまだ見てないの?」

 

「そうね。最近は忙しかったしね」

 

「じゃあ、今度一緒に見に行かない?」

 

「ええ、いいわよ」

 

 俺の誘いに小さく頷く東郷。

 以前ならば、こうして誘う度に「あ、逢引!?」等々といった反応も見る事が出来た。

 現在はすっかり慣れてしまったのか、俺にも友奈に対して接するような穏やかな態度が多い。

 そのことを少しだけ寂しく感じ、断られない事を嬉しく感じる複雑な感情を抱えていると、

 

「あらっ……?」

 

 それでも車椅子時代に比べると行動力が増した分クレイジーな行為も増えた少女。

 もう少し周りに相談をして欲しい突発的行動が多い少女は、俺の背後を見て驚きの声を上げた。

 その声音の方向、背後を振り返ると家の塀、少し視線を上にするとその驚愕の理由が判明した。

 

「猫か……」

 

 勇者部の活動の依頼の中に、“猫の里親探し”という物がある。

 そういう依頼を勇者部部長や仲間たちが見つけてくる度に飼い主への苛立ちが多少湧く。

 それは生き物を飼うなら自分のペットの管理ぐらいキチンとするべきだという考えからだ。

 

 もっとも、俺自身ペットを飼った事は前世でも今世でもない。

 見る分には可愛いと思わなくもないが、世話をしてまで欲しいという程でもない。

 そんな愛玩動物、もとい猫はやや背の高い木の上、折れそうな木の枝で丸くなっていた。

 

「……じゃあ、行こうか」

 

「えっ」

 

 その姿を一瞥し、買い物袋を持った右手に改めて力を入れ直す。

 特に面白い光景でもなかったので、黒髪の少女に呼びかけて立ち去ろうとすると服の袖部分を掴まれる。立ち止まり振り返ると、むぅ、と何か言いたげな顔をして俺と目を合わせてくる。

 じぃぃっと深緑色の瞳を半眼にして。

 

「……あの子猫、あんな所にいたら危ないんじゃないかしら」

 

「さあ」

 

「さあって……」

 

 何となくアレを見た瞬間にこうなる可能性は頭を過っていた。

 やや非難めいた深緑の視線に対して、肩を竦めて受け流しながらやや逡巡して口を開く。

 

「あの猫がどういう意図であれ、自分で登ったのなら大丈夫だろ」

 

「……でも、落ちたら怪我しちゃうんじゃ」

 

「……自業自得だろ」

 

「冷たいわね、例えばあの子猫が友奈ちゃんだったら?」

 

「まずそんな危ない事はさせない」

 

「確かに……、そうよね」

 

 確か猫は着地が得意な動物だと聞いた事がある。

 二階程度の高さから落ちても平気そうに見えても骨や内臓にダメージを負う可能性があるとも。いずれにせよ猫に自己責任が適用されるかは不明だが、あそこまで登らせた飼い主が悪い。

 それが自然の摂理という物だろう。

 

 野良猫なら知った事ではないが、チラリと見た拍子に首輪が付いているのを確認した。

 そして冷静な頭脳が目の前の少女を言い負かして猫を見捨てるべきだと先ほどから囁く。

 

 周囲に人影はなく梯子もなく、木に近い塀は脚を乗せ難い高い構造であり助けるのは困難だ。

 ちなみに俺は壁はともかく木を登る行為だけはどうしても出来ず、東郷もまたそれを知っている。

 だから当然――、

 

「私が……」

 

「駄目だ。間違いなく怪我をする」

 

「で、でも」

 

「俺は東郷さんが怪我する所なんて見たくない」

 

「………」

 

「下から絶対パンツ見るよ」

 

「………!」

 

「ガン見だよ、今日履いている色、全力で商店街に行って叫ぶから。フルネームで」

 

「そ、それはやめて!」

 

 だから、きっと東郷なら言うであろう言葉を俺は否定する。

 目の前の彼女は国防仮面として一時期様々な事をしており不可能ではないだろう。

 だが現在東郷が着ている私服はその時着用していた手や足を守る改造制服ですらないのだ。

 

 ふとこの状況が己の記憶を刺激する。

 それはいつだったか。とある公園のやや背の高い木の枝に猫がいたのを覚えている。

 その猫は当時、部活の依頼で探していた愛玩動物であり、どうしても回収する必要があった。

 

「……にゃ、す」

 

「え?」

 

 では、どうやって回収したのか。

 その答えは隣で見上げていた赤い髪の少女から与えられた盲点とも呼べる方法だ。

 

「東郷さん。あの猫、助けたいって?」

 

「え、ええ」

 

「良い手が一個あるんだけど」

 

「……それは?」

 

「肩車」

 

 

 

 ---

 

 

 

 少し説明すると、どうやら東郷もその時の話を覚えていたらしい。

 自分でも説明していて、お茶を啜りながら目の前の少女に語っていた事を思い出していた。

 正直に言って猫はどうでも良かったが、東郷が助けたいのならと最低限頭を働かせた結果である。

 

 薄情とか、冷たいと言われてもしょうがない。

 猫を助けても『弱み』を握れるわけではないのだから。

 

「それでやるんですかい、国防仮面?」

 

「……こ、国防仮面はやめて亮くん」

 

「あれ結構好きだったよ、憂国の戦士!!」

 

「……、もうっ!」

 

 結局、俺の提案に乗ったらしいやや顔を赤くした東郷は周囲を見渡す。

 周囲に人がいない事を確かめて、俺にしゃがむようにと手と此方に向ける視線で合図をする。

 モジモジとする動きをするスカートの少女、その足元に屈み少女を見上げ視線を合わせる。

 

「――どうぞ」

 

「亮くん? 分かっていると思うけど……、その、覗かないでね」

 

「分かってるよ」

 

 本当に?といわんばかりの視線を無視して頭を下げると視界にスカートの布が映る。

 同時に白く日に焼けていない白い両脚が両耳付近に揃うのを確認して、両手で太ももを掴む。

 直後、後頭部に広がる人肌の温かさと何やら良い香りと、吸い付くような弾力のある肌に襲われる。

 

「あっ、くッ……。髪がくすぐったいわ亮くん!」

 

「グエッ!! ……待って待って東郷さん。冗談抜きで力を抜いて!」

 

 持ち方が悪かったのだろう。

 俺が程よい太さの東郷の太ももに手を這わせると、くすぐったさに東郷は脚に力を入れる。

 彼女の股座に後頭部を潜らせてる側としては、内腿の滑々とした感触と圧迫感に呻かざるを得ない。

 

 ――太ももに圧迫されて死ぬ。

 紳士としてはその死因は一瞬悪くないと思ったが常識的な部分で頭を振る。

 そうしてそんな小さな行動の一つ一つが、少女の普段触れられる事のない部分を刺激する。

 

「……」

 

「きゃ……ッ! 待って亮くっ、んっ、あんまり頭を動かさないで……ッ!!」

 

「ああ、もうっ。おらっ――!」

 

「……んくっ……」

 

「ほらっ、しっかり掴まって」

 

「……ん」

 

 一先ず持ち上げてしまおうと一息に力を入れる。

 懸命に重くはないが少し安定しない少女の体を持ち上げようと俺は頭を上げる。

 瞬間、フニフニとした彼女の一際柔らかな部分を後頭部に感じながらも強引に肩車を成功させる。

 

 立ち上がると同時に東郷が俺の髪、頭に両手で触れる。

 そんな少女の安定を求める行為がくすぐったく感じられ静かに目を細める。

 

 視界の上部を狭めるスカートが邪魔で手で取り除き、ようやく吐息をつく。

 微妙に苦しく安定感が足りないのは、俺が動く度に両脚を狭めようとする東郷の所為か。

 彼女の股座の感触と白く柔らかい肌色が己の精神をも圧迫するような感覚の中で見上げる。

 

 何となく慣れてくると楽しくなってくるのは子供心だろうか。

 ふとこの状態でどこまで出来るかと思い、後頭部に感覚を集中させながら歩いてみる。

 

「……あッ! ……いっ、一度降ろして亮くん!」

 

「――えっ、なんで?」

 

「……ッ。いい、からちょっと首が擦れて……」

 

「――。ほらっ、さっさと猫を回収するよ。動かないで」

 

 首の可動領域が狭く、それでも上を見ようと頭を意識して動かす俺に東郷が声を掛ける。

 安全の為に両手で太ももをしっかりと掴み、腰を引こうとする東郷の下半身を全力で押さえつける。そんなやり取りをしていると、ふと東郷は安定の為か俺の黒髪を掴む両手にギュッと力を込める。

 

「ねえ、東郷さん。見えないから方向を教えて?」

 

「えっと、右に少し……あっ、ゆっくりね」

 

「……、こっち?」

 

「……っ! そう、ねっ」

 

 至近距離で小刻みに首付近を揺らしていると、密着しているからか反応が分かる。

 学校帰りで黒タイツは脱いだのだろう。首に感じるショーツが徐々に湿っていくのが分かった。

 時折首の浮き出た骨が陰部に擦れる度に下半身がビクリと動くのを感じ、小さく笑みを浮かべる。

 

「ん? 東郷さん、大丈夫?」

 

「……う、うん、大丈夫よ、亮くん。……ふっ、……もう、ちょっと左に一歩くらいかな……」

 

 わずかに丈が長いスカートが視界の上部で再び揺れ動く。

 彼女の甘い匂いと熱気に理性が削れるのを感じながらも懸命に猫の為に体を動かす。

 安定の為と言い彼女のしなやかな両脚を地面側に引っ張ると、両手で嬌声を押し殺すのが分かった。

 

「―――ぁ……ッ!!」

 

 それでもこの距離で聞こえないはずがない。

 両脚に一際力を入れ、やがて荒い息と共にゆっくりと弛緩させるのが肌を通して伝わってくる。

 

 残念だがスカートが視界を邪魔する為に東郷の表情を見る事は出来ない。

 だが自分でも驚く程にこの状況から生じる薄暗い快感が背筋をゾクゾクとさせるのが分かった。

 その湧き上がる情欲を押し隠し、表面上はなんてことないような口調で東郷に対して口を開く。

 

「……どう、猫は?」

 

「――――」

 

 返事はない。

 それは単純に返事への余裕がなく、この状況でもある事へ集中しているからだろう。

 初志貫徹。子猫が木の上で震えている所に少女は救いの手を差し伸べようとしているのだ。

 

 ――と、スカートの所為で上が見えない状況下で想像していた。

 真面目な彼女の事だからキチンとするだろうと思っているとようやく返事があった。

 

「子猫ちゃん、確保したわよ」

 

「おっ、やったね!」

 

「――それと亮くん。……あとでお仕置きね」

 

「……え、なんのこと?」

 

「亮くん」

 

「だから、一体どういう……」

 

「亮くん」

 

「……」

 

「亮くんは少し悪戯が過ぎるから……、日本男児らしく……調教を……」

 

 流石に3年も関係を構築すると表情や声の調子は関係ないらしい。

 友奈と同じくらい東郷とは仲良くしているつもりだが、その逆もまた然りのようだ。

 何かブツブツと恐ろし気な事を言っている東郷から逃げるか受け入れるかを考える俺だが、

 

「えっ……? ぃ……、いやあぁッ――!!」

 

「――は」

 

 唐突に俺に乗ったままの東郷が急にバランスを崩し慌てた。

 急な挙動に肩車の状態を保てず、せめて東郷が怪我を負うのだけは防ごうと身体を盾にする。

 転倒の瞬間、身体に圧し掛かる少女の身体を受け止めつつ、多少の痛みは奥歯を噛み我慢した。

 

「……いてて」

 

「うっ……」

 

 視界の端に毛玉が映る。

 それは先ほど東郷が助けたはずの子猫でしっかりと着地し、平然とした様子で立ち上がる。

 

「一体、何が……」

 

 あの場面で東郷がふざけるような少女ではない事は知っている。

 だから、彼女が驚くような理由があったはずなのだと猫と周囲に目を向ける。

 すると、触覚が二本ある誰もが嫌いそうな虫が猫の近くにいて、ここから離れていくのが分かった。

 

「……もう行きな」

 

 おおよその原因は理解し、こちらを見る猫に頬を吊り上げる。

 行為の意味は解らずとも小さく一鳴きした子猫は先ほどの虫を即座に咥えて走り去った。

 その様子を地面と少女に挟まれながら見届け、ゆっくりと上半身を起こし東郷に呼びかける。

 

「東郷さん」

 

「んっ……あ、あれ? 虫が……」

 

 こういうのはラッキースケベというのだろうか。

 転んだ体勢が良かったのだろう。スカートから晒された薄青色のショーツがモロに見える。

 ショーツのクロッチ部分に浮かぶ染みに触れながら呼びかけると、目を覚ましたらしい少女が動く。

 

「う……」

 

「えっ、あ……! ご、ごご、ごめんなさい亮くん!」

 

 突如ズボン越しとはいえ彼女から不意に与えられた己の逸物への刺激に小さく呻く。

 転んだ際に己の逸物付近にちょうど東郷の顔や手が当たるような位置故にだろう。

 そうして少女もまた、自分がした行為の意味を理解して赤面しながら慌てて立ち上がる。

 

「い、痛くなかった……?」

 

「えっ、あ、いや。こっちこそ粗末な物を……」

 

「粗末なんて……、亮くんのは、えっと、結構立派で……、その、えっと、あう……っ」

 

「どう立派だったの? 東郷さん」

 

「~~~!」

 

 そこに普段のおっとりとした姿はなく、赤面し慌てる姿だけがあった。

 肩車をしている最中から勃起していた逸物だったが、ここまで反応されると少し恥ずかしく思う。ただ両手で耳まで赤い顔を隠し、羞恥に悶える東郷の姿に何か湧き上がる物がある。

 

「うう~~、うっ? 亮くん、手から血が……」

 

「えっ? ……あっ、本当だ」

 

 内心で燃え上がる黒い何かを抑えていると、ふと東郷が声を上げた。

 その声の内容、己の手を見ると手のひらの部分からジワリと血が滲んでいるのが見えた。

 認識すると同時に生じた痛みに眉を寄せていると、今度は心配する様子で声を掛けられた。

 

「大変、消毒しないと!」

 

「いや、これくらい大丈夫だって」

 

「駄目よ! 大切な身体なのよ。細菌が身体に入り込んで悪化したら……ッ」

 

「――。心配してくれるんだ」

 

「当たり前よ!!」

 

「―――っ」

 

 そう言って悲しそうな顔をした東郷は地面に置いた俺と東郷の買い物袋を手に取る。

 同時に有無を言わさないと言わんばかりに、もう片方の手で俺の傷ついてない方の手を取る。

 そのまま引き摺るように帰り道を歩き、恐らく自宅を目指すべく無言のままに脚を急かせる。

 

「どこに……」

 

「私の家に。絶対に離さないから」

 

「――強引だなぁ……」

 

「亮くんの方が強引じゃない」

 

「いや、俺は紳士だから」

 

 さらに何か言おうかと考えて、その真剣な横顔に小さく口を閉じる。

 何となく、誰かに叱られるのが自分でも驚く程に己の心底に響いているのが分かった。

 そんな彼女の様子に対して何も言えずに黙り込み、彼女の家、東郷家に連れ込まれるのだった。

 

 

 



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第六話 運命の分岐路?

 彼女の柔らかな手に引かれ、無言のままに少女の自宅に連れ込まれる。

 チラリと純白の肌が美しい横顔は俯き、その表情は先ほどから艶のある黒色の前髪が隠す。

 どこかわずかに怒りを感じさせるような姿に、口を開いては閉じるという行為を繰り返す。

 

 かなり大きめの屋敷、その扉を東郷はポケットから銀色の鍵を取り出し開ける。

 今日は両親は仕事か何かだろうかと思いながら、バリアフリーの名残がある廊下を歩く。

 フローリングの手入れの行き届いた床板の感触を足裏で感じながら少女に手を引かれる。

 

「………」

 

「………」

 

 無言な空気にわずかに居心地が悪い中、やがて着いた東郷の自室。

 下は畳、以前誕生日プレゼントにあげた戦艦や歴史関係の本が入った本棚や寝台がある。

 彼女がいつも使用している机には、自身で組み立てたパソコンと小さな写真立てが置いてある。

 

 そこには、車椅子に座る東郷を友奈と俺で挟み込み笑って立っている写真が飾られていた。

 小学校を卒業し、讃州中学校の制服を初めて着用した時に彼女の両親が撮った物だ。

 当時貰った写真は今もアルバムに大切に仕舞っている事を思い出して小さく呟いた。

 

「懐かしいな」

 

「……え? ああ、本当ね」

 

「まだ、そんなに時間は経ってないはずなんだけどな」

 

「そうね……、本当だわ」

 

 そう思わせるだけの濃密な時間が流れた。

 初めて武器を取り、仲間と共に戦い、多くを失い、そして掴み取った明日。

 

「亮くん、座って」

 

 少しだけ過去を振り返り、しんみりとした自分に響く声音。

 いつまでも聞いていたいと思わせる少女の柔らかさの残る声が鼓膜を震わせる。

 ようやく東郷は手を離し、買い物袋を静かに置く中で、少女の声に従い寝台の近くに腰を下ろす。

 

 そんな従順で大人しくする俺を見下ろしてから、東郷は部屋を出る。

 走るように部屋を出て数秒。少女の部屋を漁る暇すらなく足音を立てて救急箱を抱えて持ってくる。

 

「擦りむいた手を見せて、亮くん」

 

「……、はい」

 

 鬼気迫る姿にコクコクと頷いて擦りむいた手を出す。

 転んだ程度であり感覚的に骨折はしていないが、見せた手のひらは赤黒い血で汚れ痛々しい。

 ここまで来る過程である程度血は止まっているが、垂れた血の滴は手首を伝い腕にまで伸びる。

 

「ああ、良いよ。自分で――」

 

「駄目よ」

 

「――――」

 

 自分で手当てするという声に被せるように東郷は口を開く。

 その言葉に譲る意志がない事を悟り、そのまま強気な彼女に手当てを施される。

 やがて、ガーゼの上から包帯を巻きすぎではないかと思う程にグルグルと巻かれ手当ては終わる。

 

「あ、ありがと……」

 

「亮くん」

 

「うぇ……?」

 

 一先ず処置が終わり、感謝を告げる。

 だが、東郷は治療したばかりの少年の手を引き、自身の豊満な肉体へと引き寄せた。

 その行動の意味が分からず目を白黒とさせてしまう俺だったが、太ももに頭をぶつけて理解する。

 

「――膝枕」

 

「亮くん、こういうの好きそうだから」

 

「えっ、いや~そうでも……」

 

「じゃあ止める……?」

 

「嘘だよ、好きだよ!」

 

「ふふっ……」

 

 何事も人は、男という生物はロマンを追い求める物だ。

 美少女に膝枕されるという状況、そのシチュエーションと実際の感触に鼓動が騒ぎ立てる。

 先ほど散々と言って良い程に顔を圧迫していた白く華奢な両脚は、今度は枕となっている。

 

 チラリと見上げると深緑の瞳が見下ろす。

 その小顔の下に見える豊満な曲線美と圧倒的な質量が自己主張をしている。

 

「……」

 

 膝上から東郷を見上げるのは中々に刺激的だという事を知った。

 少女の甘い匂いが鼻腔をくすぐり、慣れていない膝枕に落ち着かない様子の東郷の表情。

 それらの光景を視界に収めながら、落ち着く為に小さく吐息をし東郷に何のつもりかを聞く。

 

「それで、一体これは、どういう事でしょうか? 東郷さん」

 

 先ほどまではわずかに怒っていたはずだ。

 それが今は亮之佑の毛先を指先で弄り、楽し気にすら見える。

 そんな東郷の心理が解らず、単刀直入に口を開くと、東郷はわずかに逡巡した後に答えた。

 

「えっと、その……。亮くん」

 

「はい」

 

「私、怒っているから」

 

「えっと――」

 

 怒っていると、目の前の黒髪の少女は言う。

 ふとリボンで纏め垂らされている濡羽色の髪が何となく気になり手を伸ばす。

 ゆっくりとした動きで手を伸ばすが、怒られも抵抗もされず、すんなりと絹のような髪を触る。

 

「――さっきの事?」

 

「そうよ」

 

「……、悪かったよ。悪戯が過ぎました」

 

「ううん。こっちこそ結局お願いしたのは私だから。それに亮くんってたまに悪戯っ子になるから」

 

「……」

 

 それはそれで変な認識のされ方だと思う。

 誤解とも言えないのは自業自得だが、しかし特に後悔はしていない。

 そんな風に思っていると、東郷の目線が先ほどから包帯を巻いた手に向けられて、何となく察する。

 

「でもあの時……、私を庇って」

 

「――ああ。怪我なら気にしなくていいよ」

 

「……いくら虫が嫌いでも、バランスを崩したらどうなるかなんて分かるはずなのに。折角亮くんが手伝ってくれたのに、私は虫一匹手に触れただけでみっともなく……。こんなのじゃ私、いつまで経っても……」

 

「東郷さん」

 

 不必要に自分を責める東郷は小さく目尻に涙を浮かべる。

 そんな儚げで哀しげな様子の少女の名前を静かに呼び、目線を合わせる。

 

 結局、あの肩車はすぐに対応できていれば崩れる事も無かっただろう。

 やや暗めの表情、向けられた視線でようやく愚鈍な脳は状況を察して怠惰な身体に鞭を打つ。

 何を言うべきか。何を伝えるべきか。脳裏で螺旋を描きながら目の前の少女に言葉を告げる。

 

「東郷さんって、いっつも思い込み激しいよな」

 

「―――っ」

 

「自分がこうだって思ったら突っ走るし、その為なら犯罪ギリギリの事だってするし」

 

「う……ッ、そ、それは……」

 

 別れを惜しみながら膝から頭を離して膝立ちになり、向かい合うように視線を交差させる。

 そうして俺の放つ言葉の暴力に濃緑の瞳を揺らめかせて顔を俯かせてしまいそうになる東郷。

 実際に彼女が行った行為の一つでこの世界が終わり、全てが潰える可能性だって高かったのだ。

 だが――

 

「でも、そんな面倒臭い東郷さん、俺は好きだよ」

 

「――――」

 

「嫌いな人と、こんな長く傍に、一緒にいようと思うほど、俺は優しくはない」

 

「……うん」

 

 噛みしめるように、一言一言に魂を込めて東郷に告げる。

 そうして小さく微笑んだ俺は華奢で柔らかく温かな身体を抱きしめる。

 人よりも少しネガティブになりがちな少女の魂に届かせるように、身体を密に触れさせる。

 

 東郷とは『色々』とあった。言葉にせずとも一時期は仲が悪かった事もある。

 それでも東郷の行動の原因は、亮之佑や大切な仲間の為である事を知っている。

 

 何だかんだでその頃の怒りも既に過去に置いてきてしまったのだ。

 終わりよければ全て良し。そんな言葉がふと脳裏を過る中で、背中に回される少女の手。

 ポンポンと叩く音に少女の様子も元に戻った事を予感した俺は静かに彼女から離れようとして、

 

「亮くん」

 

「ん?」

 

「……その、えっと、ね」

 

 至近距離で、囁くような声音に鼓膜を震わせる。

 まだ何かあるのだろうかと、白い肌を朱色に染めた東郷と顔を合わせる。

 ジッと見つめるほどより顔を赤くする東郷はわずかに逡巡し、桃色の唇を震わせて告げた。

 

「お腹に、その、亮くんのが……、当たっているのよ」

 

「――――」

 

 気恥ずかしそうに小さな声で東郷は告げる。

 指摘を受けて、肩車の時ほどではないが勃起している逸物が少女の腹部に触れている事に気づく。

 血を流して興奮したからか、東郷を抱きしめたからか、彼女から漂う色香に身体が反応したのか。

 

 いずれにせよ言い逃れの出来ない状況に対し、しかし身体は正直だった。

 無言で抱きしめたまま、窮地を脱する為に思考する俺は突然の刺激に小さく驚く。

 ズボン越しとはいえその存在を主張する逸物を包み込むように優しく触れる細く白い指。

 

「亮くん」

 

「――――」

 

「いいのよ、無理をしないで」

 

 冷たい手を頬に添えられ、合わせられる深緑の瞳。

 恥ずかしそうに、それでも真っ直ぐに俺を見据えた瞳は、思わず溺れそうな美しさが宿っていた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 白く器具のように細い指が蛇のように這う感触。

 戸惑いがちに、探るように肉茎を少女の指が触れ、亀頭の先端から溢れる先走りがそれを汚す。

 

「――――」

 

 目の前の俺の逸物を顔を赤くしながら至近距離で顔を近づける東郷。

 両手でこねるように動かし、耳まで赤くする姿をじっくりと見下ろす。

 寝台に腰を下ろした東郷の前に立ち、掛かる吐息と与えられる刺激に思わず腹に力を入れる。

 

 わずかに場所を移動する際、不公平だからと東郷は上半身の服を脱いだ。

 下とお揃いらしい薄青のブラジャーは少女の豊かな双丘をしっかりと支え、たゆんと揺らす。

 異性に見られる事への羞恥に深緑の瞳を揺らし、東郷は切なげな吐息をしながら俺を見上げる。

 

「……これが……、亮くんの……、お……おっきぃ……わね」

 

「……比較対象でもあるの?」

 

「な、ないけどっ!」

 

「……っ」

 

「あっ、だ、大丈夫?」

 

 そんな風に東郷をからかうと、わずかに眉を顰めた東郷は両手に力を入れる。

 両手はぬらぬらと、先走りを潤滑油に肉茎をゆっくりとしごいた瞬間、声が漏れそうになる。

 情けないのであまり声を漏らさないように、不安そうな東郷の頭を陶器に触れるように撫でる。

 

「そう、そのくびれている所は指で輪を作るようにして……」

 

「――こ、こう?」

 

「ああ、そう良い感じ。こっちの手はもう少し速く上下に動かすと良いよ」

 

「ん……」

 

「顔、赤いよ」

 

「……! あんまり……、見ないで……」

 

 東郷は素直で教えた事はすぐに実行し吸収する。

 恐らくネットなどからの知識はあるが、やはり実際の行為は違うだろう。

 それでも『女』としての本能がコツのような物を掴ませ、細い手が搾るような姦淫を続ける。

 

 自慰ではなく他者にされる奉仕。

 ゆっくりとしごかれる中で、高まりつつある性感が俺の脳をチリチリと焼く。

 

 そんな中で暇な片手を東郷の背中、薄青色のブラのホックに回し外す。

 わずかな抵抗と共に外れた下着を上にずらすと、白い乳房と頂きにある突起が晒される。

 豊満な白い胸、その先端にある桜色の乳首は興奮によって硬く尖っているのが見え、頬を緩める。

 

 対する東郷は唐突に外れた下着、外気に晒された乳肉を咄嗟に腕で隠そうとする。

 その行為を是とせず低い声音で止めると東郷は熱に浮かされたような顔で俺を見る。

 

「あっ、み、見ないで!」

 

「――手を止めるな」

 

「……ぁ、ぅ……ッ!! りょ……くん、あっ、引っ張らない、でっ……ッ!!」

 

 下着を外され、片腕で隠そうとした自己主張する突起を指で引っ張ると少女はピンと背筋を伸ばす。

 そのまま二つの肉粒をねぶるようにこねり回すとたまらず東郷は甘く切ない悲鳴を上げる。

 それでも抵抗はなく、剛直から手を離さず果てさせんと顔を赤くしながらも懸命に手を動かす。

 

「うっ、あっ」

 

 時間が経過する程に徐々に上達する技量に俺は小さく呻く。

 双丘を潰れるほどに揉み掴み、やがて高まる射精感に逆らわず東郷の両手に吐き出す。

 びゅううっ、と勢い良く噴き出した白濁が、受け止めるように広げ被せられた手のひらを叩いた。

 

「―――ぁ……」

 

 その瞬間、手のひらに広がる粘液を、額に汗を掻きながら東郷は見つめた。

 淑やかに鎖骨を流れる小さな汗に張り付くような黒髪、滲むような女の香りが俺をくらくらさせる。

 どこか呆然と小さく吐息をしながら、手のひらの白濁を初めて見る果実のようにジッと見る。

 

「い、いっぱい出たわね……」

 

「――――」

 

 そう、彼女の唇は艶めかしく動く。

 

「亮くん、気持ち良かった……?」

 

「ああ」

 

「……亮くん?」

 

 そう告げる少女の汗が、首筋から鎖骨、艶やかな鎖骨から谷間へ伝う。

 

「――――」

 

「――――」

 

 数秒ほど深緑と血紅の瞳が無言で交差する。

 先に目を逸らし、近くにあったティッシュの箱から薄紙を数枚取り彼女の手を綺麗に拭う。

 吐き出した衝動と入れ替わりになるように、深淵から這い上がった冷静な頭脳が静かに囁く。

 

 ――されるままでいいのか。

 

「あっ、ありがとう……」

 

 拭い終え、両手を触れ合わせこちらを見上げる東郷。

 その姿に湧き続ける黒い何かは、ただ優しく奉仕してくれた少女に報いるべきだと告げる。

 血肉が騒ぎ立ち、心臓ががなり立てるように、本能がこのまま終わらせるなと震わせる。

 

 行う事は簡単だ。

 ただ後ろに、東郷が座る寝台に、彼女を身体ごと押し倒すだけだ。

 突然の行為に驚く少女の双丘がプルンと揺れるのを無視し、柔らかな頬に手を触れる。

 

「きゃっ……! ぁ……りょう、くん?」

 

「――してもらったからには、お礼はしないとな」

 

「そんな、別に、いい……ん―――」

 

 有無を言わさず俺は東郷の唇を塞いだ。

 大きな目を見開き、小さな唇はすぼまっていたが、ついばむようにキスを繰り返す。

 肩に伸ばされた手から次第に力が抜け、戸惑う呼気に先ほどの羞恥を帯び始める。

 

 東郷の唇はわずかに俺の唇よりも熱い。

 味わうようなキスにより、やがて力の抜けた唇に入口が出来る。

 肉厚な唇を挟むように、歯の硬い感触と歯茎の感触を舌で舐めていく。

 

 じゅぷっ、と唾液の音が厭らしく響く。

 壊れてしまいそうな肩を掴み、一度離れた唇に唾液がつぅ、と糸を引く。

 至近距離で見つめ合う中、首まで赤くした東郷は息を荒くし小さく震える。

 

「は―――、あ―――」

 

「東郷さん」

 

「―――な、に……」

 

「舌出して」

 

 俺の言葉に抵抗なく出した少女の舌を唇で挟み、吸うように舐める。

 ねっとりと舌を虐めるように東郷と口腔を交わらせ、唾液を馴染ませるように唇を舌でなぞる。

 口づけを繰り返し、お互いの鼓動を確かめるように俺は何度も何度も東郷の柔らかな唇を奪った。

 

 白く上気した肌、滑らかな鎖骨から徐々に手を下に這わしていく。

 ビクリと動く東郷の抵抗を封じるように、唐突に双丘の先端を甘噛みする。

 

「あっ……ッ! ああ……」

 

 瞬間、身体中に電気が奔ったかのように身体を浮かせる東郷。

 先ほどよりも優しく下乳に曲線を描くように手を這わすと少女は小さく吐息をする。

 その様子を見ながら、手で触れた反応を見て弱そうな部分を指先で、舌で、唇で愛でる。

 

「――――」

 

 改めて見下ろすと、現在東郷はスカートと靴下しか着けていない。

 臍に指を沈め、やがてせがむように唇を尖らせる東郷に再び口づけをする。

 途中離れると切なげな顔をする東郷に小さく微笑みながらスカートの中の布切れに触れる。

 

「濡れてる」

 

「―――ッ」

 

 意地の悪い笑みを浮かべ、あえて口にすると東郷は慌てて脚を閉じようとする。

 それを見越し、最初から股座に身体を差し込んでいた俺は閉じようとした内腿を甘噛みする。

 刺激を与え戸惑いと羞恥を帯びた東郷の表情、その隙を狙うようにショーツをするりと脱がせた。

 

 肩車の時の比でない程に興奮で濡れたクロッチ。

 人肌と少女の情欲の色香が残る下着を見せつけると顔を背け、取り返そうと手を伸ばす。

 当然後ろ手に回し戦利品を防衛する俺の胸板を小さく叩く東郷を無視し、彼女の秘部に触れる。

 

「ひあっ……ッ!!」

 

 黒色の茂みの生えそろったそこは熱く、絶えず愛液が溢れ濡れていた。

 桃色の筋を指で撫でると、どこにそんな力があるのかという程にピンと背中を伸ばした。

 

「まっ、待って亮くん。もう十分だからっっ……」

 

「――はは、そんな、遠慮しなくていいよ。流石、東郷さんだな」

 

「遠慮、じゃっ、なくてぇ……、あくぅ……ッ!!」

 

「東郷さんは可愛いなぁ……本当に」

 

 熱い柔肉を指で弄り、秘部に中指を入れると蠢くように膣肉が引き締める。

 密泉から湧き出る愛液を秘部に塗りたくり、指を曲げトントンと膣を押す様に刺激していく。

 その行為、与えられる快感に上半身を浮かせ、東郷は俺の髪を必死に掴み、確かな嬌声を上げる。

 

「……あ、ああっ」

 

「すんなり指が入るけど、一人で、いつも、こんな風にしているの……?」

 

「ちがっ、くっ、ああ……ッ」

 

 イヤイヤと赤面し首を振る東郷に羞恥を与えるべくグジュグジュと水音を立てる。

 そのまま秘部のやや上、硬い肉豆を指で摘まむと東郷はあられもない声を上げた。

 腰を限界まで浮かせると膣口が痙攣し、指を抜くと同時に勢いよく愛液が噴き出し手を濡らす。

 

「―――ぁ、ぅ……」

 

「――――」

 

 涎を口端からこぼし、東郷は普段は見せない弛緩させた表情を俺に晒す。

 そのままゆっくりと俺の頭から手を離し、いつも使うであろう寝台に身体を横たえるが、

 

「あむっ―――」

 

「んあっ!! ……えっ!? 亮くん? 待って、今はぁ……ッ!!」

 

 休ませる気などない奇術師は、引き続き誠意を込めて秘部への愛撫を続ける。

 両手で尻肉を揉みしだき、今度は唇で小さく痙攣を続ける肉粒を吸い舌で丹念に優しく虐める。

 

 滲む露を舐めとると熱く仄かな酸味を帯びている。

 肉豆の根本、重点的に女性の快楽器官をまるで玩具のように口腔で苛め奉仕を続ける。

 先ほどの肩車の時とは逆向きに健常な太腿が頭を挟むが、その程度では止まらず暴力的に愛液を啜り味わう。

 

「も、もういいから、亮くっ……あ……っ」

 

「ふ―――」

 

「んああぁあ……ッッッ!!」

 

 要望は聞かず、唾液で濡れた秘部に息を吹くと、ビクンと東郷は震えた。

 ポタリと滴が垂れ落ち、両脚が爪先まで伸ばされる反応を震えと共に楽しむ。

 そんな風に目線を東郷に向けつつも舌をまるで毒蛇のように這わせ、懸命に奉仕を行った。

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 それから、一回、二回、三回……と痙攣する東郷に、ようやく俺は秘部から口を離した。

 腕で口を拭い、完全に脱力しきった東郷の膣口、その入り口に逸物の亀頭を宛がう。

 

「東郷さん」

 

「あ―――」

 

「いい?」

 

「……うん」

 

 完全にお互いが興奮していた。

 だが、それでも脳裏をある事が過る。

 それは、神樹に選ばれる勇者は『無垢』でなくてはならないという事だ。

 

 厳密な定義を俺は知らないが、それでも『無垢』=処女だと考えていた。

 ある程度安定し始めた世界だがまだ勇者の力が必要だと、今までは悪戯だけにしていた。

 だから、悪戯はしても本番だけはしないというのが自分に課していたルールであったのだ。

 

「――――」

 

「……亮くん?」

 

「あ、いや……」

 

 そんな傲慢な頭脳と暴発寸前の情欲がせめぎ合う。

 落ち着くべきだと逸物を膣口からゆっくりと離すべく腰を引かせていく。

 やがて、今ならばまだ適当に素股で誤魔化せるだろうと唇を噛みしめ口を開き―――

 

「――いいのよ、亮くん」

 

「あ……?」

 

 ふわりと頬を撫でる感触に思考を奪われる。

 目を見開き見下ろす先、小さく微笑む少女の姿に目を奪われる。

 向き合う体勢の中で、引こうとする逸物を優しく指で掴む東郷は瞳を煌めかせて真っ直ぐに、

 

「私はね、亮くん。……亮くんなら、……ううん。初めては亮くんが良いな」

 

「――――」

 

「だから、お願い。亮くん」

 

「――ああ、任せろよ、東郷さん」

 

 そこまで女性に言われて断るわけがない。

 その言葉に導かれて胸中で沸き立つ歓喜の中で、俺は彼女を割り拓く。

 かすかに爪が背中に立てられるのを感じつつ、肉茎が膣内に入り締め付けられた。

 

「いっ……、ん―――」

 

 咄嗟に唇を交わし、少しでも痛みが減るように努力する。

 一気に最奥まで貫いた俺は指で乳首を愛撫し、唇で優しさのあるキスをする。

 

 ゆっくりと腰を動かすがそれでも痛いだろう。

 元より悪戯の延長であり己の快楽を貪るつもりはない。

 何よりも先ほどから痛い程にそそり立つ逸物は既に暴発寸前だった。

 

 その瞬間、息を抜くように肉茎を引き抜き、彼女の腹に俺は精を放った。

 赤色が混じった白い白濁が彼女の白い柔肌を汚し、確かに俺の証が注がれる。

 

 虚脱感に襲われる中、今度こそ冷静な頭脳が戻り息を吐く。

 ぐったりと意識を失ったらしい東郷を寝台に横たえ、彼女の腹部や秘部を清潔にする。

 穏やかに呼吸する東郷の裸体を丁寧に拭きながら服を着せていく過程で小さな悪戯をする。

 

 服に隠れ見えない分、風呂場に向かった時の反応が楽しみになる。

 中学校のスカート丈ギリギリに隠されたキス跡を見た東郷の表情を予想し微笑む。

 

 そうして部屋を訪れた時と同等に後片付けを終えた俺はそのまま立ち去ろうとし、止まった。

 外していた腕時計と薄青の戦利品をポケットに仕舞いこみながら、最後に東郷の頭を撫でる。

 

「……、すぅ……」

 

「さっきは嬉しかったよ、東郷さん。また明日」

 

「ん……」

 

「明日は黒タイツじゃなくて、靴下かハイニーソがいいな」

 

「……」

 

 一瞬目を開けた気がしたが、追及は止めて俺は部屋を出た。

 次に顔を合わせた時がわずかに気恥ずかしく、どんな顔をすれば良いのか分からなかった。

 

 結局明日の朝には顔を合わせるのだが。

 ギュッと目を閉じる東郷の額に小さく口づけをして部屋を出る。

 玄関の外に出て専用の道具で施錠し、それからしばし無心で俺は帰宅するのだった。

 

 

 





戦利品はしばし楽しんだ後、自宅のリビングにある神樹の神棚に祀られました。


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第七話 腕の中の甘い甘い花弁

 目覚めると朝の6時30分だった。

 

「――ふあ」

 

 眠気から乖離していく意識、重い目蓋を開けながらもしばし布団の暖かさに微睡む。

 何故目覚め直後の毛布の感触にはいつも抗い難い魔力があるのかと思いながら、やがて全身に血が巡り手足が温まるのを感じ、眠気を振り切り小さな欠伸と共に上半身を起こし着替え始めた。

 

「今日は、トーストと目玉焼きと肉団子でいいか……」

 

 着替え、素足のまま一階に降り洗面台の前で顔を洗い終える。

 小さく鏡の前で日課の行為をし着替えた後に、手早く朝ご飯の準備を始めた。

 

「…………」

 

 ふと無言のまま黙々と手慣れた動きで朝食を作りながら思い返す。

 肩車から始まる東郷との情事の、少女との秘め事の内容が脳裏を過ると即座に頭を振る。

 一人きりの空間で朝から思い出すには鮮明な出来事は、非常に男子的には良くはない。

 

 精神的な中身はともかくも若い身体は正直だ。

 フライパンで目玉焼きを作る時も起きたばかりの下半身は大きく膨らんでいる。

 白身に小さな穴ができ、フライ返しで黄身を割りながらも小さく深呼吸を繰り返し抑える。

 

「落ち着け、俺」

 

 精神年齢だけなら前世の歳を足しても既に40歳は超えているのだ。

 この記憶と生前から引き継いだ意識が無かったら猿のように一人で慰めていたかもしれない。

 

 決して慌てふためいてはいけない。

 こういう時こそ冷静になれるかどうかが非常に大事だと俺は思いながら、丁度良いタイミングで沸騰したお湯をマグカップに注ぎ、音を立てないように銀色のスプーンで丁寧に掻き混ぜる。

 

「――7時か」

 

 胡椒をかけた目玉焼きを、バターを塗ったトーストに載せて一先ず完成だ。

 空から少女が降ってきそうな朝飯をリビングに運び、壁に掛かった時計を見る。

 白い壁に掛けられた丸時計は針を刻み、朝食の準備が15分程で完了した事を告げていた。

 

「……いただきます」

 

 告げる相手はいないが何となく言わずにはいられず小さく呟く。

 最近は市販のココアパウダーを買ったからか、自然とコーヒーを飲む機会が減った。

 カフェインの抜け出た身体だが特に問題はなく、――寧ろ朝早くに目覚められるようになった。

 

 実際にコーヒーが身体に及ぼそう効果自体はあまり知らないが特に飲まずとも死にはしない。

 嗜好品ではあるが決して生活必需品という程でもないと感じる庶民派の俺は無言で咀嚼する。

 

 黙々と噛み、満腹感を得ながら、すぐに食べ終わり片付ける。

 食器を洗い終え、食後にチーズを一切れ齧りながらテレビの音声を聞き流す。

 

 そんな風に朝の和やかな時間を過ごしていると、7時30分頃ぴったりを狙うかのように玄関のチャイムを鳴らす音が客の訪問である事を知らせるべく役割を果たし、俺の鼓膜に響かせた。

 

「はい、はーい」

 

「あ……」

 

 玄関を開けると少女の姿が視界に入る。

 黒髪を青いリボンで纏めた美少女は、白い肌にわずかに朱を混ぜながら小さく笑みを浮かべる。

 その姿はある程度予想していたとはいえ、こうして目を合わせると少し気恥ずかしさを感じた。

 

 相手の姿を見ると、ふいに彼女の白い裸体と情事が脳裏を過る。

 それはこちらの顔を見て頬を赤く染めた東郷の様子を見るに同じ思いだったらしい。

 わずかな沈黙の中で、美しく長い艶のある黒髪に触れながらも東郷が先に口を開いた。

 

「……、ぉ、おはよう亮くん」

 

「――おはよう、東郷さん」

 

 そんな微妙な気まずさも、実際に話を始めると氷のように溶けるのを感じた。

 こうして見る限り、讃州中学校の制服を着た東郷は特に何かが変わった様子はない。

 いつもと変わらず親し気に、既に友奈を起こして外に出てくるのを待っている状態だという。

 

 そのまま戸締りをし、カバンを持ち東郷と共に外に出る。

 心なしか以前よりも全体的に艶のような魅力を感じるのは気のせいだろうか。

 

「東郷さん、その、大丈夫だった?」

 

「……うん、大丈夫よ」

 

 今日は黒タイツではなく、黒いソックスを東郷は履いている。

 その事には積極的な突っ込みを入れず、視線だけ向けながら漠然とした問いかけをする。

 俺の質問に対して大きな目を瞬かせながらも、やはり穏やかそうな表情は変わらない。

 

 思わず赤面するまで確かめたくなる感情を堪え、飛び出そうとする言葉を噛み締めていると、結城家の扉が開き淡紅色の髪に桜の髪留めとポニーテールを揺らしながら快活そうな少女が姿を見せる。

 

「おはよー! 亮ちゃん。改めて、東郷さんも!」

 

「おはよう、友奈ちゃん」

 

「ああ、おはよう」

 

 いつもの日常が始まる。

 このまま適当な雑談を交わしながら彼女たちと登校するのだろう。

 わずかな靄を抱えたまま、しかし告げる言葉すら見つからず彼女たちと歩いている時だった。

 

「そういえば東郷さん。今日はタイツじゃないんだね」

 

「……ええ、ちょっと、そういう気分だっただけよ友奈ちゃん」

 

「そっか、今のも似合うよ! ……あっ、ところでね―――」

 

 そうして友奈は別の話題を口にする。

 東郷のささやかな変化に対してそれ以上の言及はない。

 それでも何気ないその言葉に、一瞬ではあれどわずかに鼓動が高鳴るのを感じていた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 2日が経過した。

 ここ最近は勇者として、『外』での任務はまだない。

 テスト期間も終わり、再び部活が再始動し始めた頃、昼休みに友奈に呼ばれた。

 

 彼女たちとは仲が良いが、学校ではあまりベタベタしているつもりはない。

 学業を疎かにすれば自分が困るというのは、文字通り骨身に染みる程に痛感した。

 

 学生の本分はボランティアでもアルバイトでも部活でもない。勉強だ。

 生前はその意味も価値も理解できなかったが、一度死ぬとその大事さが解った。

 だから、この新しい人生では知識を増やすことも、考え続ける事も決して止めなかった。

 特に友奈に関しては傲慢ではあるが成績を下げて欲しくはないという強い思いがある。

 

 既に紳士達と仲良く昼ご飯を食べ終えた俺は了承して、彼女としばし行動を共にする。

 昼休みだからか男女の賑わいで騒がしく感じる廊下を歩き、やがて空き教室に二人で入る。

 

「それで、どうしたんだ?」

 

「うん、えっとね……」

 

 扉を閉め、念の為に窓側に移動してからようやく口を開く。

 改まって何かを言うような仲でもない。寧ろ相当に深い関係であると言える。

 聞かれたくない事ならば放課後にいくらでも話す時間も機会も友奈の為に作るのだが。

 

「その、今日……、全部のテスト、返ってきたじゃないですか」

 

「お、おう、そうだな」

 

 何故か敬語で今日の出来事、――正確には午前の授業の内容を友奈は口にする。

 上目遣いでこちらを見やる姿は思わず抱きしめたくなる程に可憐だが欲望を抑え同意する。

 

「今回は凄い高得点だったじゃないか」

 

「うん、園ちゃんや東郷さん、亮ちゃんがわかりやすく教えてくれたからだよ!」

 

「いや、結局は友奈の努力次第だったから……、良くやったよ」

 

 改めて口にすると快活な姿を見せる友奈だが再び何かを言いたげな顔をする。

 その姿をぼんやりと見ながら彼女の表情を見ていると、少し前の出来事だが思い出す事があった。

 

「……勉強、一杯頑張ってもっと成績上がったら」

 

「―――っ」

 

 その言葉に友奈はハッとした顔で此方を見上げる。

 いつの間にか教室の隅に彼女を追い込んでいると、少女の華奢な背中が壁にぶつかる。

 カマかけだったが今の反応から見て、今回友奈が呼んだ件はその事らしいのだと俺は察した。

 

 基本的に、友奈はあまり我儘を言わない少女だ。

 自分のことよりも他人を優先する節があり、それが魅力で短所でもある。

 これでも最近は些細なお願いなどは普段言わない分、可能な限り叶えようと思っているが、

 

「ちゃんと頑張ったからね……。ここで、たくさん、して欲しいの?」

 

「ち、ちがっ……ッ!!」

 

「違うの?」

 

「ぁ……、ぅ……」

 

 思わず揶揄うように、少女だけに解る言葉で尋ねると友奈は慌てて否定する。

 想像したのか、やや赤い顔の少女の顔横付近の壁に手を置きながら小さく微笑みかけると、友奈は挙動不審に薄紅の瞳を左右に動かし、薄桃色の唇を震わせながらしっかりと俺の顔を見上げる。

 

「亮ちゃんと約束したけど……、ちょっと内容を変えたいんだ!」

 

「うん」

 

「亮ちゃんと結婚生活をしたくて……」

 

「うん……、じゃあまずは指輪を買うか」

 

「あっ!! ちがっ、えっと違わなくて……」

 

 逆プロポーズを空き教室でされた俺は、その後友奈からたどたどしく説明を受けた。

 これまでの彼女との『悪戯』は、大体俺から友奈にするような物が実は非常に多かった。

 彼女の言い分を分かりやすく纏めると、いつもされるだけなのは悪いからとお礼をしたいらしい。

 

 与えられるだけではなく自らも与えたい。

 つまりは、マッサージや御飯を作るといった俺への日頃の恩返しをしたいのだという。

 それに付与して、彼女自身がそういう新婚ゴッコを所望しているらしいのだと凡そ察した。

 

「前にも似たような事をした気がする」

 

「うん、あの時は楽しかったね!」

 

 女の子の憧れの様な物なのだろうか。

 単純に一日中性的な事をして欲しいでも良かったが目の前の少女が言うはずもない。

 欲の無い少女だなと改めて思いつつも、仄紅色の瞳を見つめながら最後に聞き直す。

 

「そんな事でいいの?」

 

「そんな事がいいんだよ!」

 

「……分かった。可愛い友奈の頼みなら引き受けよう。今日の放課後からで良いか?」

 

「うん、ありがとう!」

 

 お礼を言われるのも変な気持ちになる。

 尽くされるよりも尽くしたいと口にする謙虚な少女の願いを叶えただけだ。

 それなのに、嬉しそうな顔をする友奈の愛らしい笑顔に思わず頬を緩めざるを得なかった。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 放課後。

 明日から連休を控えていた授業も既に終わり、俺は別宅に向かっていた。

 家の鍵を所持している友奈が先に向かい、『ゴッコ』の準備をしているので適当に時間を潰す。

 

 この世界にも存在していたコンビニで立ち読みしながら情報を収集する。

 それでも内容があまり入ってこないのは、新婚ゴッコが楽しみに感じているからだろうか。

 年甲斐もなくワクワクとする思いの中、数分ほどでもうすっかりと見慣れた家に到着する。

 

「――ただいま」

 

 鍵は開いていた。

 故に誰かが来ているのは確実だ。

 キチンと施錠し、見知った靴があるのを確認しながら廊下を歩いていく。

 

「……あっ、お帰り!」

 

 足音で認識したのか、キッチンの方から桜色のエプロンを着用した少女が顔を見せる。

 楽しそうにする姿を見せながら、目の前に歩いてきて小首を傾げて小さな口を開く。

 

「えっと……、ご飯にする? お風呂にする? それともマッサージ?」

 

「違う、そうじゃない」

 

「えっ」

 

 天然かワザとかは不明だが追及はしない。

 一先ずは目の前の少女とのゴッコに付き合おうと思う。

 せっかくなので、前回のゴッコ遊びの設定を引き継いで楽しむべく逡巡した後に口を開く。

 

「友奈」

 

「なーに?」

 

「お帰りのキスはどうした?」

 

「ふぇ……?」

 

「いつもしているじゃないか」

 

「し、し、してないよ!」

 

「友奈。俺たちは夫婦、そして友奈は俺の嫁、俺は友奈の旦那。後は……わかるな?」

 

「ぅ……ん」

 

 そう口にすると、ポニーテールの少女はわずかに頬を赤らめる。

 その姿を見ながらも此方からは積極的には動かず、彼女の動きを無言で待つ。

 己の羞恥の感情と戦っているであろう友奈はやがて決意を決めたのか両腕を俺の首に回す。

 

「ん、――――」

 

 唇が触れ合うだけの温かみのあるキス。

 視界一杯に映りこむ幼さの残る少女からの接吻。

 その行為に満たされるように、思わず腕を回しわずかに力を込める。

 

 背中に両腕を回すと、呼応するように首筋に回した友奈の腕が強まる。

 啄ばむように唇の形を、柔らかさを、暖かさを確かめるような接吻だ。

 水の中で溺れるような、それでいて極上の感覚がピリピリと脳裏を過る感覚が続く中で、

 

「っ」

 

「……! ……!」

 

 俺から先に唇を離す。

 その動きに震えるように酩酊したかのような薄紅の瞳に正気が戻る。

 数秒ほど小さく口を開けながらぼんやりとした少女は、やがて頬を真っ赤にして俯いた。

 

 その恥じらいが俺を幸福感と黒い感情に浸す。

 だが、これは前戯ですらないただのスキンシップのような物だ。

 全ての過程を壊し、今すぐに押し倒して己の怒張に従って少女を陵辱する事は出来ない。

 

「それで、何を作ったんだ……?」

 

「ぁ……、うんっとね……」

 

 なんて事ないような表情を作り話題を作る。

 そうして意識を逸らすと、わずかに瞳を揺らしながら少女は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 今回友奈が作ったのは肉ぶっかけうどんだった。

 非常に美味だったが、沈黙を恐れるかのように友奈が喋るのが印象的だった。

 その後、折角だからと友奈の得意なマッサージを頼む頃にはすっかり空気は元に戻っていた。

 

「ああ~、逝くんじゃ~」

 

「肩付近が、結構凝ってたよ」

 

 リビングにうつ伏せになる俺の腰付近に友奈は座っている。

 羽のように軽すぎる身体、その両腕から繰り広げられるマッサージが心身共に癒しを与える。

 自宅とはいえ情けない声を漏らさないようにしていると、気づくと施術は終わったらしい。

 

 立ち上がり両腕を頭上に上げると随分と軽く感じる。

 お礼を言いながら壁に掛けられた時計を見ると既に夜の8時を回っていた。

 そろそろお風呂の時間だと思いながら、スキンシップを図るべく友奈の背後に回り抱きしめる。

 

「……亮ちゃん? ……ふぁ」

 

 自然な動きで俺の両手は友奈の胸に宛がわれていた。

 はっと背後を取られた友奈が小さく吐息する中で、服の中に両手を伸ばし、

 

「ぁっ」

 

 もにゅ、と手のひらの中で友奈の胸が揉み潰れる。

 奇術で下着を剥いだ訳ではなく、最初からこの家で再会し抱き合った瞬間に確信していた。

 優しく揉むと小さな吐息をこぼし、きつく揉むとビクリと身体を震わせ目をぎゅっと閉じる。

 

 肌触りが良く、程よい大きさの柔肌を手のひらで下乳付近の線をなぞるように揉む。

 臍周りを片手の指で円を描くように撫で回し、もう片方で次第に硬度を持ち始める突起を弄り始める。

 根本付近を指で強めに擦ると、背中を俺の胸に預けるように抵抗も薄く、されるがままになる。

 

「ひっ、あっ……ッ」

 

 背後から抱きしめ感じる少女の身体の柔らかさと鼓動。

 友奈の髪から香る少女の匂いと確かな弾力を全身で味わうという行為。

 

「ぁぅ……!」

 

「――友奈の声、もっと聞かせて」

 

「まって、あっ、ひゃめ……」

 

 両脚を閉じ、赤い顔で俺が弄る度にひく、ひくっと小刻みに友奈は揺れる。

 肉粒を指で潰し、摘まむと見せる、俺に胸を揉まれるという羞恥の表情が俺を昂らせる。

 白い首筋に汗を滲ませ嬌声を上げる友奈への愛撫を続けると、やがてビクリと身を跳ねさせた。

 

「も、もうっ、本当にっ、あっ、ああぁあっ……ッッ!!」

 

 背筋をピンと伸ばした友奈が身体を弛緩させる。

 彼女の恥部には一切触れていないにも関わらず、友奈は口端から細い涎を垂らしている。

 どこかぼんやりとした表情をする友奈の赤らんだ耳に吐息をすると小さく身体を動かした。

 

「友奈」

 

「……ぁ」

 

「一緒に、お風呂入ろ。洗いっこ、しよ?」

 

 回りくどい言葉ではなく直球で話しかけると、俺の胸に身体を預けたままの友奈は顔を上げる。

 先ほどから細い両脚をすり合わせる姿は思わず悪戯したくなるが、今はまだ情欲の支配を拒む。

 やがて、言葉が脳に浸透したかのような時間が経過する中で、コクリと確かに友奈は頷いた。

 

「――先に、入ってて」

 

 

 



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第八話 雨音が響く蜜月

 深呼吸を繰り返す。

 吸って、吐いて、吸って、吐いて。

 肺に湯舟から立ち上る蒸気を取り込み、静かに吐き出す。

 

「――雨か」

 

 脱衣所で服を脱ぎ、加賀家のそれなりに広さのある風呂場の箱型の椅子に座る。

 円を描いた座り慣れた白い椅子に腰を掛けながら、長くはない髪を洗い終える。

 風呂場の窓、今は閉めているにも関わらず聞こえてくる雨音が心臓の鼓動を落ち着かせる。

 

「洗濯物、今日のうちにしておいて良かった……。――!」

 

 などと現実逃避がちに独り言を呟きながら石鹸をタオルに包み泡立てる。

 内心浮足立つ中で意識が風呂場の扉、その先の脱衣所に薄っすらと見える少女に気づく。

 足音と脱衣所の戸を開く音は聞き間違えようがない程に聞いたと言って良いだろう。

 

「…………」

 

 興奮にさざめく自身の心を静めながら、表面だけは辛うじて冷静な顔を意識する。

 念のため、風呂に備え付けられている鏡で確認しながら身体を強めにタオルで擦る。

 

「…………」

 

 しゅるっ、と衣服を脱ぐ音がわずかに聞こえる。

 かすかな衣擦れの音が、外の雨音を押し退けて聞こえる。

 その音が鼓膜を震わせると、まるで血管を巡る血の流れが加速したような気分になる。

 

 やがて。

 小さな足音が鳴る中でノブが回され、風呂場の扉が開くと俺は目を見開く。

 肌色の細い脚、曲線美を描く少女のくびれと、恥部から双丘を申し訳程度に隠すタオル。

 

「あっ、えっと」

 

 裸体を白く小さな布で隠す少女は、友奈は俺と目線が合うと薄紅色の瞳を下に逸らす。

 後ろ髪を解き、わずかに頬を赤く染めながら、恥ずかし気な表情で桜色の唇を震わせる。

 いつもの、先ほどまでの快活さが薄れたかのような姿に俺はいつもの笑みを浮かべる。

 

「友奈」

 

「……! 背中、流しにきたよ」

 

 一瞬小さな笑みを浮かべるが、俺の剛直を見て顔を真っ赤にして俯いた。

 その恥じらいに先ほどから反り上がる俺の剛直は新たな涎を垂らす。

 タオルで隠していない逸物を見て頬を赤く染める姿は初々しく可愛らしい。

 

「ああ、じゃあ頼むよ」

 

「う、うん」

 

 その反応一つ一つが、羞恥に悶える姿が愛らしい。

 タオルを友奈に渡すと、しばらくして背中に手のひらとタオルの感触が伝わる。

 話す事もなく無言の中で友奈の程良い力加減に人知れず力んでいた力が抜けるのを感じる。

 

 洗う相手の事を最大限に考えた両手。

 そのマッサージの応用を思わせる動きは思わず満足の吐息をしてしまう。

 それを見てか、赤面しながらも芝居がかった声音をする友奈は鏡面越しに俺と目を合わせる。

 

「――き、気持ちいいですか、お客さん」

 

「ええ、良い感じに。あっ今の所、もう少し強めで」

 

「はーい」

 

「……、うん。友奈にだったら毎日こうして欲しいくらいだよ」

 

「ありがとう、……えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな」

 

 それは友奈も同じだったらしく、ちょっとした茶番が出来るくらいには回復したらしい。

 声音の様子から多少の落ち着きが戻ったように感じられる中で、ふとタオルの動きが止まる。

 背中も万遍なく洗い終えたのだろう、無言で目の前の鏡越しに背後の少女の様子を見ていると、

 

「えっと、じゃ、じゃあ前とかも……?」

 

「いや、来る前に済ませたから」

 

「……そ、そっか」

 

 流石に初回からソープ嬢の真似事はさせられない。

 あまりに興奮させ過ぎて気絶されては大変であると思い、今回は多少の自重を行う。

 どのみち既に前の方は洗っているので、椅子から立ち上がり座るように促すべく振り返る。

 

「交代だ、俺が友奈の背中を洗う」

 

「えっ、でも……」

 

「洗いっこするって言っただろう?」

 

「……うん、じゃあ、お、お願いします……!」

 

 立ち上がり移動する瞬間、チラチラと逸物に視線を感じる。

 目線を向けると慌てて目を逸らすが頬を赤らめる姿は何者よりも煽情的だ。

 椅子に形の良い臀部を預け、滑らかな肢体をお湯で濡らしていく姿をすぐ近くから覗く。

 

 鏡越しに目を向けるが、恥ずかしいのか目を合わせようとしない。

 前を隠す柔らかい布地は湯を吸い、ぴたりと肌に張り付く事で卑猥さが増していく。

 そして目の前の白く手入れの行き届いた傷の無い背中に、どぐんと心臓が興奮に踊る。

 

「ひゃっ」

 

 俺の手がお湯で濡れた背中に触れる。

 タオルでは加減が分からない為、傷をつけないように手を泡立てて洗う。

 柔らかい感触は陶器のような儚さと感触で、俺の神経までもが敏感になる。

 

「力加減はどう……?」

 

「んっ……、ふくっ……ぅ……もう少し強くても……ぃ、良いよ」

 

 決して傷を付けないように、懸命に、愛撫するように背中を洗う。

 先ほど目の前の赤い髪の少女にされたマッサージのように手のひらで肌を滑らせる。

 背中から首筋、肩付近に泡を伸ばすように、緊張を解すようにして俺は手を伸ばしていく。

 

「気持ちいい?」

 

「ぁ、……うん、いいよ」

 

 既に背中だけではなく、背後から届く両腕と小さな手もしっかりと洗う。

 小さく吐息をする友奈の柔らかな弾力を確かめ、息遣いや心臓の鼓動から感じる快感。

 親愛を持って目の前の少女の艶やかな肌に密着するように触れ、優しく丁寧に洗っていく。

 

「……っ、……ぁ」

 

 そのまま、流れるように彼女に張り付く布を静かに捲ると、ぷるんと双丘が揺れる。

 背後から両手で胸を揉み、しかし抵抗はなく友奈は隠しきれない甘い吐息を漏らし始めた。

 

「あっ、前はだめ、だめだって……んっ」

 

 胸板と少女の背中を密着させ、友奈の心の鼓動が聞こえる中で泡に塗れた両手を動かす。

 部活動や勇者としての任務による無駄の少ない、しかし柔らかい少女の腹にも時折触れる。

 丁寧さを忘れず、臍も指で掻くように洗いながら、左の乳首を空いた指で摘まみ刺激する。

 

 硬さを主張し始める突起を玩具を遊ぶように大切に弄ると友奈は身をよじらせた。

 口を半開きにし、漏らす言葉や愛らしく思える蕩けた声を漏らし、ビクリと身体を震わせる。

 両手の手のひらの中でむにゅむにゅと形を変える胸は、視覚的な快感と幸福を俺にもたらす。

 

「ふあっ、ああっ……んッ!」

 

 次第に鏡越しに映る友奈の眼が酩酊したように虚ろになるのが見えた。

 呼吸を繰り返し、恥部のみを隠す布に透けた色が息を荒々しく吐く度に小さく揺れる。

 俺の欲望ははち切れんばかりだったが、それでも目の前の身体を洗うという使命を全うする。

 

「んぁ……ッ」

 

 友奈が小さく喘いだ。

 前に回り滑々の生足を手に取ると、友奈はもう十分だというように身体を揺らす。

 お湯で解れたのか、血の通った温かい脚の指先まで手のひらを這わせると小さく声を漏らす。

 

「もう……、もう……いいから」

 

「駄目だよ」

 

 泣きそうな抗議を無視し、下から上に、膝から脚の付け根へと手のひらを這わす。

 タオルで隠そうとする友奈の両手に触れ、下から顔を見上げるように優しく告げる。

 

「友奈、この手をどけて。……洗わないと」

 

「や……」

 

「さっき俺の見たでしょ、不公平だから、見せて」

 

「ぁぅ……!」

 

 消え入りそうな声を漏らす友奈の恥部を隠すタオルを取り上げる。

 隠そうとする仕草よりも電光石火の如く俺の指が動き、最も敏感な部分に触れる。

 

「んぁ……ッ!!」

 

 明らかに水ではない粘液が指先に触れる。

 秘裂から溢れ出している蜜液は確かな糸を帯びている。

 

「……、りょ……、ちゃ……!」

 

 名前を呼び、友奈は腰を引かせる。

 椅子に座りながら、俺の手から逃れるように脚を閉じようとする。

 

「ぁ、ぁぁ……っ!」

 

 逃がしはしない。

 臀部に手を回し、切なげな吐息を漏らす友奈の身体を引き寄せる。

 椅子が音を立てて物理的に恥部と顔が近くなる中で、乙女の柔肉に小さく息を吹く。

 

 既に濡れた恥部。

 少女の髪と同じ色の毛は薄く、秘裂からこぼれる愛蜜。

 その感触と手触りと友奈の反応全てが俺の理性を食い散らかしていく。

 

「ぅぁ、ぁぁ……!!」

 

 手のひらに収まる柔肉を弄り洗っていく。

 触れた瞬間、ビクンと友奈が跳ね、小さな悲鳴を上げた。

 濃い蜜が俺の手を汚す中で、更に採取するべく膣口の上付近に指を動かす。

 

「まって、りょうちゃ……、いみゃ……ぁああっ……ッッ!!」

 

 膣口の上部に位置する存在。

 女性だけが持ちうる快楽器官を手探りで見つける。

 包皮を剥き、隠れた肉粒は既に硬く、弾力を持つ突起を洗いながら刺激する。

 

「ひっ! はひゅ! あぅぁっ……!!」

 

 涎を垂らし、弓なりに背を反らす少女を責める。

 何度目かの絶頂で風呂場に響く少女の嬌声が俺を昂らせる。

 そのまま友奈の秘裂へと、指を泡と愛液に導かれるように水音と共に侵入させる。

 

 膣壁はきゅうきゅうと異物を締め付ける。

 指を動かす度にあられもない声を上げる友奈の香りが撒き散らされる。

 臍側の壁肉を押すように関節を曲げて洗うと、タイルに淫らな液が腿を伝い落ちていく。

 

 いやいやと首を振る友奈の両腕は俺の腕の動きを止めようと抵抗する。

 だが力の差で止められない乙女の柔肌は、次第に羞恥と確かな快楽で熱を帯びていく。

 逃げようと椅子から立ち上がるように腰を浮かす友奈の、愛液の垂れた尻肉に片手を回す。

 

「やだ、やだ! もうっ! あ、あっ、ああ……」

 

 形の良い小振りの臀部はぐにゃりと形を変え、それが更なる興奮を誘う。

 そのまま揉みしだきながら、着実な刺激を前後から泡と指で休まずに与え続ける。

 

「ぁぅっ、ぅっッッッ~~!!」

 

 暴れる脚に挟まれながら膣肉をしっかりと洗う。

 異性に余すところなく身体を洗われるという経験に少女の身体は敏感に反応する。

 やがて、一際濃厚で厭らしさのある蜜液が、プシャッと噴射するように俺の顔に浴びせられた。

 

「――――」

 

 無言で友奈の身体に付着する泡をシャワーで落としていく。

 白い泡が流れていき綺麗になった姿を視界に収めた俺は、震える友奈を立たせる。

 そのまま手を這わす度に全身をビクリとさせる赤い少女の秘裂に剛直の先端を押し付ける。

 

 その行為をぼんやりと見るだけの友奈。

 彼女に呼びかけると桜色の唇を震わせる。

 

「……はぇ? ……りょう、ちゃん?」

 

「ゆうな」

 

「――ぁ」

 

「友奈を抱いていいか?」

 

「――――」

 

 白い肌に赤みを差し、己の秘部の入口を押し開こうとする肉茎。

 愛液が亀頭をぬるりと濡らしていく中で、両腕を首に回す少女は静かに小さく頷く。

 その薄紅色の瞳には俺だけが映り込んでいて、その瞬間に俺は最奥まで彼女を貫いた。

 

「は、んっッ!」

 

 締め付けるような膣肉は熱と愛液で逸物を蕩けさせる。

 片足を持ち上げ、突き刺した怒張を迎えるように、うじゅうじゅと膣壁が搾る。

 その快感に目の前が白く霞む中で、抱きしめてくる友奈の唇を奪うように吸い付く。

 

「――んぅっ、ぁむ…………んッ」

 

「っ」

 

 貫いたまま、至近距離で口腔を交わす。

 その度に反応する膣肉がきゅうきゅうと逸物を締め付ける。

 味わう様に、長い睫を震わせていた瞼を開き、長い唇の接触の果てに友奈は口を開く。

 

「――は、あ……、りょうちゃん、動いて、いいよ」

 

「大丈夫か?」

 

「あんまり痛くないから、大丈夫だよ」

 

「……、分かった」

 

 ゆっくりとピストンを始める。

 抜くと中から蜜が溢れ、押し込むと再び膣が締め付ける。

 果てなき幸福と快感が波のように押し寄せる中で気遣うように腰を振る。

 

 ぱちゅ、ぱちゅ、と水音が響く。

 恥部同士を繋ぎ合わせ、求め合うように唇を合わせる。

 

「ぅ……くっ……んっ」

 

 少しずつ苦悶の表情が抜け、悦びの声を唇から漏らし始める友奈。

 持ち上げた脚、バランスを取る長い少女の脚は怒張を叩きつける度にがくがくと震える。

 

 口端から涎をこぼす友奈の膣が射精をねだる。

 だが、この時間を惜しむ俺の逸物は更にピストンを繰り返す。

 持ち上げた脚を引き、根本まで深々と差し込み亀頭が触れる最奥を遠慮なく擦る。

 

「ぁぁ、そ、れぁ……ッ」

 

「これが良いの?」

 

「ん、っ」

 

 ぎゅうっと首に回される腕に力が入る。

 俺の胸板で厭らしく形を変える胸は、先端の硬さを触らずとも教える。

 その反応に頬を緩め、このまま果てるまでピストンを繰り返そうとした時だった。

 

「ぃ、……!! りょうちゃん、待って、本当に、ストップストップ!」

 

「――?」

 

 最高の快楽の中で、冷や水のように待ったの声が掛かる。

 その声音は快感からの物ではなく、一緒にいるからこそ解る確かな焦りであった。

 事態に追いつけない脳から余分な血が抜け落ちていき、急速な勢いで冷静さを取り返す。

 

 やはり痛かったのだろうか。

 痛みを我慢して、今までの行為に付き合ってくれていたのだろうか。

 そんな思いが脳裏を巡り、全身から血が抜け落ちるような焦りに眼を見開く。

 

 時間がゆっくりと流れていく。

 細める唇が何かの発音を作る中で、神経が千切れるような痛みが心臓を貫く。

 だが、止まる事なく川のように時間は流れ、友奈は恥ずかし気に言った。確かに言った。

 

「その、と、トイレに行かせてくれない……?」

 

「………………………………………………トイレ」

 

「うん」

 

 その単語を無言で反芻する。

 目の前で淫らな声と息をこぼす少女が告げる場所は、人である以上行くのは仕方がない場所だ。

 ズルリと逸物を抜きながら、秘裂から垂れる愛液は重力に従い友奈の内腿を濡らしていく。

 

「……っ」

 

「おしっこに行きたいの?」

 

「……うん」

 

 尋ねると可愛らしく友奈はコクリと頷く。

 その瞬間、熱が噴き出すように血管を走り抜け、全身を燃やすのを感じた。

 冷え始めた身体の水滴を蒸発させ、なお残る感情は目の前の愛らしい少女に対しての怒りだ。

 

 やや短慮な欲望が、ある公式を脳内で淡々と組み立てていく。

 加賀亮之佑<トイレ、という安堵に代わり押し寄せる堪え難き屈辱の公式が出来上がる。

 生理的な物は仕方がないのは分かる。分かるのだが、それでも微妙な苛立ちを抑えられない。

 

「…………」

 

「亮ちゃん?」

 

 湧き上がる安堵を押し退け平然と自分を心配させる少女への罰を模索し、見つける。

 口にした事で意識したのだろう、わずかに内股になる友奈にいつもの笑みを浮かべる。

 

「ああ、分かった」

 

「じゃあ……」

 

「その前に少しだけ待ってね」

 

「え? ……んっ」

 

 後ろを向かせた友奈の秘裂に再び逸物を挿入する。

 遠慮などせず、ぷるりとした彼女の尻肉に腰を密着させながら椅子に座る。

 

「亮ちゃん……? あの、私……」

 

「いいから」

 

 この風呂場に椅子は一つしかない。

 元より身体を洗う為用の箱型の椅子に俺が座り、その上に友奈が座るという状態。

 根本まで深々と差し込まれた怒張が、少女の膣肉を再び味わい歓喜に震え屹立する。

 

 尻肉がむにゅりと形を変える感触。

 繋がった状態で背中と俺の前部分が密着する中で、俺はおもむろに彼女の両脚に触れ、

 

「――ここでしろ」

 

「……へ」

 

 ぐい、と俺は友奈を持ち上げた。

 子供の小用を促すように、両脚を持ち上げ、しかし剛直で貫いた姿勢だ。

 形の良い耳を甘噛みするように少女へと小さく囁く俺の声は、それでも風呂場に響く。

 

 繰り返して告げる。

 

「ここで、おしっこ、して」

 

「……え、やだ、やだよ!」

 

 理解に至ったのか友奈は赤面する。

 抵抗するべく動こうとするが、両脚を持たれ逸物に貫かれた少女は無力だった。

 動く度に膣肉が蠢き、丁度目の前にある鏡にはしっかりと恥部が繋がっているのが見える。

 

「ぅぁ……、ぁ、ひゃあ……ッ」

 

 腰を動かし一突き。

 それだけで友奈の蜜肉は快楽に震え、溢れる蜜がぽたりぽたりとタイルを濡らす。

 

「ほら、はやく」

 

「ぃぁ、ぁ、もぅ下ろして!」

 

 その望みは叶えられない。

 呻き、鳴き、動く度に、締め付けが一層増していく。

 

「友奈」

 

「ぁぅ……、ぃ、やだよ……」

 

「俺に見せて、頼むよ」

 

 いやいやと首を振る友奈。

 小さく少女の脚に振動を与え、揺らしながら胎を優しく擦る。

 これ以上ない羞恥に両手で顔を覆う友奈の耳を甘噛みしながら頼み込む。

 

 嬌声と吐息をこぼし、逸物を呑み込む蜜口からは絶えず愛液がこぼれる。

 これ以上促して、本当に怒って拒否するのならば止めざるを得ないと思いながら囁く。

 両手で友奈の秘裂のピンク色を開き、目の前の鏡面にその痴態を晒しながら耳を噛む。

 

「友奈のが見たいんだ、俺の嫁の、おしっこ、見せて」

 

「ぅ、ぅ……ぅっ……。ああぁっ……!!」

 

 透明な滴が溢れ出す。

 ダムが決壊するように、耐え切れない小水が小さな尿道から洪水のように音を立てる。

 ちょろろっ、と勢いよく弧を描きタイルに流れ落ち、鼻腔を擽る尿特有の匂いに歓喜が芽吹く。

 

「んっ、んっ、んぅぅ……っ。いやっ……、止まってよぉ……!!」

 

 我慢していたのか、それなりの量が尿道から出る。

 硬直させていた少女の身体が少しずつ弛緩していく中で、鏡に映る菊座がひくひくと動く。

 被虐の涙を浮かべ、自らの尿が奏でる厭らしい音に友奈は何度も首を振り現実を否定する。

 

「一杯でたね」

 

「……っくぁ、……は……ああ」

 

「可愛かったよ、友奈」

 

 やがて、勢いが衰え尿道から滴を残して終わる。

 両脚が力なくタイルに落ち、怒張に貫かれたままの少女は哀れなほどに顔を赤くする。

 その姿に嗜虐的な笑みを浮かべながら、シャワーから温水を出して排水溝に小水を流す。

 

「ここも洗わないとね」

 

「……!! まって、それ、つよッ……だめぇ……!」

 

 貝状の肉から漏れた液を温水が勢い良く刺激しながら流していく。

 肌が温水を弾きながら、秘部の肉粒をシャワーで洗うと途端に身体を硬直させる。

 股にシャワーを押し当て、指で丁寧に磨り潰すように洗うと友奈は敏感な反応を示す。

 

「あぐっ、い、いっ……ッッ!!」

 

 シャワーを止め、同時に怒張で貫きながら俺は立ち上がる。

 すぐ近くにあるお湯の張った湯舟に移動すると、その振動に少女は甘い悲鳴を上げる。

 

 軽い体を持ち上げ、湯舟に脚を入れる。

 そのまま荒々しく壁に手をつかせ、ただひたすらに蜜膣で怒張をしごく。

 

「はひゅ、あぅ、ああっ、あっ、ああっ~~ッッッ!!」

 

 よく濡れそぼった膣肉はピストンの度に痛い程に締まる。

 友奈は俺よりも先に何度も達し、ぱちゅぱちゅ、と淫らな音を響かせる。

 粗相を赦さないとばかりに目の前で厭らしく揺れる尻肉を叩き少女を貫き続ける。

 

「りょ、ちゃ……んっ! これ、や……!」

 

「何、が?」

 

「かっ、おが、みた……ッ!」

 

「――――」

 

 可愛らしい理由に、逸物を引き抜き対面する。

 情欲と快楽が混ざり合った表情を見せる友奈の顔、向き合い即座に怒張を押し込む。

 壁に背中を押し付け、何度も何度も飽きる事なくピストンを繰り返す。

 

 彼女の両脚が俺の腰に回される。

 そんな中でマグマのような射精感が湧き起こり、腰を上げ彼女を貫く。

 目を見開く友奈の唇を奪い、両手両脚で俺に抱き付く少女の最奥に白濁を吐き出した。

 

「くっうっ」

 

「ん、あ―――」

 

 吐き出すと同時に身体から抜け失われていく感覚。

 体力がごっそりと失われるのが分かり、意識を失いそうになるのを歯を食いしばり抑える。

 一つに繋がったまま沈む様に湯舟に座ると、二人分の体積に大量のお湯が溢れ出ていく。

 

 それを視界の端で捉えながら息を吐く。

 抱き着いたままの友奈は辛うじて意識を保ちながらも身体を弛緩させている。

 蕩けた表情をする少女の淡紅の髪を撫でながら、外から漏れ聞こえる雨音に耳を傾ける。

 

 お湯が疲れた身体を癒していく。

 相当量のカロリーが減る中で、ぼんやりとしていると少女の声が聞こえた。

 

「この傷って……」

 

 薄紅の瞳が向く先、己の胸板を見下ろす。

 指輪とチェーンは脱衣所で外した為に、少し心もとない気分の中での少女の視線。

 小さな指がその傷をなぞると擽ったさを感じて、ゆっくりと目を細めた。

 

 天の神との戦い。

 その少し前、神の一撃と死の味を被った俺の肉体は死の淵を彷徨った。

 目の前の少女を庇い、そして生まれた黒く醜い傷跡が、その後も変わらずにそこにあった。

 

「私の――」

 

「勲章だ」

 

 傷跡に触れる友奈に被せるように告げる。

 今まで見せる事の無かった傷跡。言えば、見せれば目の前の少女は絶対に気負う。

 だから、決して泣かせる事など無いように、何てこと無いように泣きそうな少女に笑いかける。

 

「これは、俺が好きな子を護り抜いたことの証だ。決して友奈の所為じゃない」

 

「……でも」

 

「それに男としては傷跡っていうのは中々に恰好良いから、大した事ないさ」

 

「――――」

 

「――これは、俺が友奈の勇者として戦った証だから、そんな顔しないでくれよ」

 

「――――」

 

「まあ、銭湯とかでは……、他の人をビビらせそ――」

 

「ん―――」

 

 唐突に少女の顔が近くなる。

 甘い甘い唇は、まるで白い雪のように切なく感じる。

 舌を交わらせるわけでもなく、ただ触れ合うような親愛に溢れたキスだ。

 

 何度も何度も繰り返した後、友奈は俯く。

 小さな唇をすぼめ、傷跡に慈しむように触れ合わせる行為を続けて少女は行う。

 赤い毛先が首筋を擽り、愛撫のような行為に息を吐く中で、最後に少女は俺の肩に頭を乗せる。

 

「亮ちゃん、ずっと一緒にいようね」

 

「――ああ」

 

 その囁きと共に、しばらくして寝息が聞こえる。

 すうすうと穏やかな表情を見せる少女は、涙を滲ませながら小さく微笑んでいた。

 

 雨音は止まない。

 だが、その言葉に最後の力が漲るのを感じた。

 このまま湯舟に沈みそうになる身体を起こし、眠れる少女と共に脱衣所に向かう。

 

 後処理を行い、意識の無い少女の柔らかい裸体を念入りに拭いておく。

 人形のような姿に興奮を感じながらも、辛うじてショーツとシャツのみを着せる。

 ブラジャーはきつそうなので付けず、準備を完了させてお姫様だっこで二階に上がる。

 

「――ふあ」

 

 そのまま少女と共に寝台に横たわると疲れが押し寄せる。

 隣で既に意識のない少女の横顔を見ると、不思議な気分に頬が緩まる。

 布団もキチンと掛けながら、残りの意識を抗わず手放すとそのまま眠りに誘われるのだった。

 

 

 




結論;友奈は可愛い


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第九話 微笑が眩しくて

 夢は見なかった。

 昏々と泥に浸かり沈み込むような静かな睡眠だった。

 揺蕩うような、川に延々と流されていくような眠気は、それでも時間が来ると乖離していく。

 

「――――」

 

 いっそこのまま目覚めなければいい。

 そんな欲求が意識の中で湧き上がりながらも、重い瞼を懸命に上げる。

 霧がかった視界でぼんやりとしながら布団の中、自らが何かを抱いているのに気づく。

 

「……ぁ?」

 

 弾力としっとりとした肌触りが手のひらに広がる。

 その感触に咄嗟に身体を動かそうとして、右腕が動かない事に俺は気づいた。

 右腕が封じられている原因は、俺の腕の上に柔らかい身体を乗せている少女のようだ。

 

「――――」

 

「……、んっ……」

 

 枕に頭を預け口端から小さく涎を垂らす赤い髪の乱れた少女。

 時折、此方の心臓に負担を掛けるかのように、朝目覚めると布団の中で彼女が寝ている事はあった。

 その時は主に私服や制服姿などだったが、無事な左手で布団を捲ると度を越えていると判明する。

 

 寝台に身体を預ける少女。

 その白い両脚は剥き出しで脚の付け根に薄桃色のショーツのみを履いているのが見える。

 上半身は黒いシャツではあるが、寝相が悪かったのだろうか捲れており白い乳房を晒している。

 

「……」

 

 己の頭は枕からずり落ち、ちょうど目の前に少女の双丘がある。

 桜色の先端が純白の果実の中でツンと上を向き、可憐ながら反抗するように主張をする。

 未だに少女と布団の暖かさに微睡む中で、本能に釣られて幼子のように先端を口に含む。

 

「……んッ」

 

 ただぼんやりと目の前の肉粒を唇で揉む。

 ころころと、唾液で馴染ませながら弄ると少女の身体が震える。

 

 布団の中で辛うじて動く左手で胸を揉む。

 むにゅ、と形を変えるマシュマロの如き双丘は、紛れもない母性の象徴である。

 ただ何も考えず、小さすぎず大きすぎない成長中の果実を優しく揉みながら先端を舌で転がす。

 

 飴を舐めるような優しさで上唇と舌で挟むと少しずつ先端が硬さを主張する。

 口を離し唾液で濡れた桜色の先端と乳輪に小さく吐息すると少女が小さな反応を見せる。

 

「――ふ」

 

「んんっ……」

 

 ふと顔を上げる。

 周囲を見渡し現在時刻を確かめようと目覚まし時計を探す。

 デジタルタイプの小さな時計は寝台のすぐ傍にあり、左手だけでもなんとか届いた。

 

 日頃の柔軟の大切さを知りつつ、時刻を確かめると朝の5時だった。

 カーテン越しに映る窓からは一切の光は無く、まだ日が昇っていないのが分かった。

 それだけを確認し、念の為と6時半にセットしていた目覚ましのアラームを切っておく。

 

 平日ではなく既に今日は休日である。

 用事は特になく、無理して早起きする必要はないだろう。

 どのみち、この至福とも呼べる時間を台無しにするつもりはない。

 

「……ぁ、……っ」

 

 寝汗を掻いているのか、わずかに甘くしょっぱい。

 ふにゃりと形を変える胸に吸い付き、独特の味わいがある少女の肌を吸う。

 徐々に友奈の吐息に熱が帯びるのを無視して俺は執拗に片方の乳首をコリコリと責め立てる。

 

 刺激を与えられる事によって漏れる少女の吐息が心地よい。

 薄暗い中でも分かる程度にほんのりと頬に朱を交らせる少女は目を開けない。

 

 眠っている故に抵抗はない。

 ただ刺激を与える度に逃げようとせず声を漏らすばかりだ。

 

「ん……ふッ」

 

 それでも身体が無意識に逃れようとしたのだろう。

 寝言を言いながら友奈は寝相を変えようと寝台の上を転がる。

 潜在的な意識が快楽を求めているのだろうか、此方に寝転がる友奈の身体は軽く熱い。

 

 ちょうど俺の身体に覆いかぶさるように少女の身体はうつ伏せとなる。

 その動きに一瞬息を止め、無言で少女の寝顔を見ていると何事もなく寝息が聞こえる。

 同時に解放された右腕はかすかな痺れが奔りながらも、ただ動かす事には問題はない。

 

「――――」

 

 改めて両腕で、白く、柔らかい少女の身体を抱きしめると全身が充足感に満たされる。

 未だ未覚醒の意識、黙々と悪戯をする中で己の逸物は甘い空気を読み取り眠ったままだ。

 眼を閉じ、己の両手に感じる少女の背中に手のひらを回して少女の甘い香りを楽しむ。

 

「……ん、むぅ……」

 

 紙一枚の隙間すら無い程に身体が重なる。

 それはただ身体と身体を寄せ合うようにお互いの肌で体温を交換するだけだ。

 

 少女が身動きする度に胸板に乗る少女の胸が潰れる。

 むにゅむにゅ、と柔らかさの中にある確かに主張する小さな突起を感じながら、

 

「……っっぁ……!!」

 

 自由となった両腕でやんわりと臀部を揉む。

 薄布に覆われた尻肉は布団に覆われて見えずとも確かなハリのある柔らかさだ。

 ちょうど両手を少女の体温で温めながら、意識が揺蕩う中で悪戯をするべく弄る。

 

「……ふ、……ぁ……っ」

 

 しっとりと汗ばむ尻肉を手のひらでこねながら弄り続ける。

 いつの間にか閉じていた瞼を開けると薄暗い中で少女の無防備な寝顔が見える。

 顔色は分からないが、寝息と共に上げる嬌声は俺の耳の鼓膜を優しい快楽に浸らせ震わせる。

 

「――?」

 

「……ぁぅ……んっ」

 

 ショーツ越しに秘裂をなぞると、蜜液による染みが出来ている事を指先で感じる。

 下着を引っ張り刺激を与えていると少女は俺の太ももに股を擦り付け小さく動き始めた。

 

 股に太ももを挟み、まるで自慰をしているように腰を動かす。

 寝ながらのただ焦らすような手姦では、友奈に天上へ至らせる刺激を与えなかった。

 その結果、無意識ながら絶頂を求めるかのようにうつ伏せで眠る少女はかすかに腰を動かす。

 

 自分よりも他人を優先する少女。

 それは優しく愛おしく、時には危険だが、それでも美しいと感じる。

 そんな少女も、こうして寝ている時は素直に己の快楽だけを求めているのだ。

 

 そんな少女を絶頂に導く為に、小さく脚を振動させる。

 強く押し付けるように少女は秘部を擦り付け、やがてビクン、と小さく震え止まった。

 

「……、……あ……ッッ!」

 

 太ももに感じる温かさ。

 決して小水を漏らしたわけではなく、ただ小さく果てただけ。

 だがソレを、寝ながらであれど、その行為をしたのは紛れもなく友奈自身だ。

 

 無言のまま友奈の下着に触れる。

 寝る前に履かせたショーツは蜜が溢れたような滴で濡らしていた。

 友奈の鼻息は乱れ、口端から垂れる小さな涎は俺のシャツを汚し、染みにしていく。

 

「……ん」

 

 鼻先を掠める匂いが俺を眠りに導く。

 何とも言えない達成感と充足感が泥のような眠りに誘う。

 

「……」

 

 少し眠ろう、と思った。

 二度寝になるが、目の前の少女を乱雑には退かせられない。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 次に目覚めた時には、胸に感じる圧迫感はなかった。

 

「……ゆう、な?」

 

 寝起きで掠れる声音。

 喉の奥が乾いたような声で周囲を見渡す。

 鼻腔をくすぐる甘い甘い残り香を残して、彼女は布団の中から消えていた。

 

「……」

 

 何となく口の周りがべたつく。

 それを拭い、布団を剥いで寝台から降り、念の為寝台の下を見るがいなかった。

 顔を上げ、寝台のすぐ傍にある目覚まし時計を手に取ると、既に時刻は朝の7時半だった。

 

「帰ったのかな……」

 

 そう口にするが、即座に首を振り否定する。

 そんな唐突に行方を眩ませる真似を、人を不安にさせる行為を、あの少女はしない。

 盲信ではなく、これまでの付き合いに基づいた彼女と過ごした経験が俺に冷静になれと囁く。

 

「――――」

 

 深呼吸すると新鮮な空気が肺に流れ、再び吐き出される。

 一先ず彼女の名残がある服から普段着に着替えて自室の扉を開ける。

 階段を伝い、二階から一階へと降りていくとキッチンの方から物音が聞こえた。

 

 調理をしているような音が響く。

 階段を降りる度に小さく軋む音を聞きながら音の方へと向かう。

 

「――ん? あっ!」

 

「……」

 

 快活な笑顔に迎えられる。

 フライ返しを手に持ち、恐らくは卵料理を作っているのだろう。

 奥のフライパンに見えるスクランブルエッグの香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。

 

「おはよー!」

 

「おはよう、……起こしてくれてよかったのに」

 

「ううん。ぐっすり眠ってたし……それに」

 

「それに?」

 

「あっ、えっと……それより勝手に食材使っちゃったけど……大丈夫だよね?」

 

「ああ、そんな事か。前にも言っただろ? 友奈なら変な遠慮はしなくていいって」

 

 陽だまりのような笑顔を浮かべる少女。

 友奈と話していると遅れて頭脳が稼働を開始する。

 ひとまず勧められるままに洗面台に向かい、顔を洗いながら日課の擬態の確認を行う。

 

「手伝う事はないか?」

 

「もう終わっちゃったよ!」

 

「流石、我が弟子」

 

「師匠が素晴らしかったのですよ」

 

 身内の茶番を繰り広げ、朝からノリの良い少女に近づく。

 風呂と寝ている間は外していたゴムで後ろの髪を結いポニーテールを作っている。

 見慣れた少女の髪型ではあるが、フリフリと誘うかの如く揺れ動く姿に俺は吸い寄せられる。

 

 友奈の現在の姿は、昨夜俺が着せた黒色のシャツと、昨日履いていたスカートだ。

 赤色のエプロンを着てテキパキと行動する姿は数年前の不出来な頃を思わせない成長ぶりである。

 

「あっ! 駄目だよ……」

 

「ちょっとだけ」

 

 そんな、今も変わらず可憐な少女の背後に屈みスカートを徐に捲る。

 その動きに対して咄嗟に隠そうとする左手を掴みながら、中の布切れを確認する。

 

 薄桃色のショーツではなく、似た色で苺柄の可愛らしいショーツだった。

 寝ながらの悪戯で濡れたままでは気持ち悪いから脱いだのだろうと思い離脱する。

 

「ゴメンゴメン」

 

「もう……。はい」

 

「ああ」

 

 頬を赤らめる少女は小さく怒る。

 ショーツの色を確認し満足した俺は謝りながら皿を運ぶ。

 もはや俺の腕など超越したのではないかと思う程に少女の料理は美味しく思う。

 

 基本的に自炊する故に誰かに食事を作ってもらう機会は少ない。

 その為か、こうして友奈や東郷、最近は園子に作って貰う料理は最高に美味しい。

 朝からこうした気持ちになれる事を、神棚から神樹に感謝の念を送りながらカップを傾ける。

 

「ご馳走様、片付けは俺がするから」

 

「うん」

 

 和やかな団欒。

 これこそが俺が欲していた時間だ。

 生前、死が引きずり出した他者への羨望と絶望、そして己への深い深い失望。

 

 ずっとこうしていたいと俺は思う。

 傲慢でも我儘でも、それを邪魔する障害は何であろうとも滅ぼそうと思う。

 少なくとも、それを可能とするだけの覚悟と力、知識、経験は磨いたつもりだ。

 

 きっと己の大切な人の為だったら世界だって滅ぼせそうだ。

 そう、比喩抜きで思考が至る部分に苦笑しながら、テーブルから立ち上がる。

 

「――――」

 

 食器を運び水につける。

 トーストの味も、ココアの味も、サラダも美味しかった。

 満足な吐息を吐きながら、ふと俺はある事を思い出して、慌てて二階の自室に駆け上がる。

 

 浮かれている場合ではないと頭脳が騒ぐ。

 その通りだと身体は自責の念と共に慌てて目的の物を探し出す。

 

「……?」

 

 部屋の中の机、鍵を掛けた引き出しからあるモノを取り出す。

 そして部屋を出た時、ふと下を見ると部屋の前に落ちていた長い金色の糸を見つけたが意識は向けず、特に気にする事なく赤い髪の少女がいるであろうリビングに俺は向かった。

 

「そんなにバタバタして、どうしたの……?」

 

「ああ、ちょっとな。これ飲んでくれ」

 

「何これ?」

 

「えっとだな……」

 

 コップに水を注ぎ小さな薬品と共に渡す。

 今更ながら、俺は昨日の出来事に多少なり頭に血が上っていたらしい。

 お風呂での少女との情事で、欲望に呑まれた俺は彼女の膣内に白濁を吐き出した。

 

 少女に渡した薬品は端的に言えば避妊薬だ。

 アフターピルとも呼ぶそれは、様々な事情によって大社より渡されていた。

 一応コンドーム等も揃えていたが、肝心な時に忘れてしまっていたと奥歯を噛みしめる。

 

 3日以内の服用で妊娠の確率を極限まで下げ、副作用も非常に少ない薬品だ。

 昨日、少女の膣内を指で掻きまわし精を出して一応綺麗にはしたが飲むべきだ。

 それらを理解しやすいように説明すると、理解した友奈は逡巡した後に口を開く。

 

「あっ……、大丈夫だよ。昨日は、その、大丈夫な日だったから」

 

「――それでもだ。昨日は悪かった、本当は俺が気づくべきだったから」

 

「……そんな事は」

 

「だが許可もなく……」

 

「――勇者パンチ」

 

 口を開こうとする頬、そこに軽い力で拳が触れる。

 柔らかい少女の拳から伝わる暖かさと、向けられる少女の微笑に口が動きを止める。

 思わず黙り込む俺の両頬を包み込むように友奈は手のひらを触れさせて微笑む。

 

「そんな事言ったら私だって悪いよ。だから両成敗、ね?」

 

「――――」

 

「亮ちゃんは心配性なんだよ。私が言うんだから大丈夫!」

 

「……友奈が楽観的なんだよ」

 

「そうかもね……、えへへ。……さて、結城友奈、一気飲みしまーす!」

 

 そう言うと、薬を含みごくごくと喉を鳴らして友奈は水を飲んだ。

 ジッと見ていると少女が片手に持つコップ一杯分の水がものの数秒で消えていく。

 ぷはーっと飲み干した友奈は可愛らしい笑顔を浮かべて、最後にこう言った。

 

「それにね、――私だって、そういう覚悟もしているんだよ?」

 

「――――」

 

 小首を傾げ、何てことないように少女は口にする。

 その瞳に浮かぶ感情に偽りが欠片もない事は、過ごした日数の長さが語っていた。

 

「……ところで。ねえ、亮ちゃん」

 

「……なんだ?」

 

「おはようのキスはしないの……?」

 

「――――」

 

 悪戯をする子供のような瞳と目が合う。

 楽しそうな、愛おしそうな、嬉しそうな視線を向けられ、数秒交錯する。

 そこに誰も邪魔する者はおらず、小さく心の鼓動が高鳴るのが分かった。

 

 その設定まだ続いているのかという言葉を呑み込む。

 薄紅色の瞳は美しく、椅子に座り俺を見上げる少女と数秒視線を合わせる。

 これも一種の我儘なのか、それとも空気を読んだのかは、残念ながら俺には判らなかった。

 

 ただ一つ判るのは――、

 

「目を閉じろ」

 

「ん―――」

 

 ――この少女を大事にしようという思いだけだった。

 

 

 



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第十話 嗚呼、罪深きお嬢様

 その日、俺はお願いがあると園子に頼み事をされていた。

 どうしても『俺に』して欲しい事があるのだと、金色の髪の少女は唇を震わせる。

 両手を胸の前に合わせて小首を傾げる可憐な少女の琥珀色の瞳がジッと俺に向けられる。

 

「頼み事……?」

 

「小説のシチュエーションでね……、ちょっと細部がよく分からないところがあって」

 

「珍しいな、園子にもそういう事があるのか」

 

「私をなんだと思っているの~」

 

「お嬢様だろ」

 

 目の前の金色の髪の少女、乃木園子とは長い付き合いだ。

 神樹館小学校以前の、お互い友達など誰もいない頃からの一番最初の友達。

 

 春を過ごし、夏を涼み、秋の紅葉を見て、冬には遊ぶ。長い長い時間を過ごした関係だ。

 その関係は様々な障害があってなお変わらず、――今は寧ろ発展していると言えるだろう。

 彼女からの小説のシチュエーションでの協力に関する頼みというのはそう珍しい事ではない。

 

「――――」

 

「だめ~……?」

 

 他の有象無象ならともかく他ならぬ園子からの頼みだ。

 彼女は俺を裏切らないという信頼、少女の事は無条件に信じている。

 

 だから俺はコクリと頷き、園子はほにゃりと笑顔を浮かべた。

 そうして次の休み、現在一人暮らしをしている園子の部屋に向かった。

 乃木家の家政婦が時々手伝いに来るが、最近は彼女自身で家事をこなす頻度が増えたらしい。

 

「いらっしゃいませ~」

 

「――やあ」

 

「こっちだよ」

 

 園子が借りている部屋は広い。

 明らかに一人で暮らすには広すぎると感じるが、金持ちを感じさせない作りだ。

 そうして、手入れの行き届いたリビングで和やかに少女と雑談をし、出された紅茶を飲んだ。

 

 飲んでしまった。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 んん、と言葉を発しない園子の呻きが骨を振動し鼓膜に直接響かせる。

 ついばむように唇を触れ合わせるだけだが、少女の唇の柔らかさが脳裏に染み渡る。

 そんな麻薬のような、吸い付くような温もりに、ただ静かに瞼を上げて俺は見上げる。

 

 雪のような肌。

 稲穂のような長い髪。

 紅桜を思わせる柔らかい唇。

 

「ん―――」

 

「――――」

 

 俺に馬乗りになった彼女の鼻息は荒く激しい。

 動く度に、マシュマロのような胸がぎゅむっと潰れる姿は視覚的な興奮をもたらす。

 身体をよじらせる度にチャリチャリと手錠に掛けられたチェーンの音が頭上から聞こえる。

 

 そんな音すらどこか遠く感じる程に。

 乃木園子という少女は俺に近く寄り添っている。

 

「ぅっ」

 

「は、ふっ」

 

 園子からの愛撫は無垢で無邪気だった。

 一度唇を離し、再び吸い付くように、求めるように唇を触れ合わせる。

 剥き出しになった俺の胸板を少女の長い髪がくすぐり、慈しむように手が鎖骨を撫でる。

 

「んっ……、んふっ……」

 

 唇から顎、耳、頬、首筋にキスの花を咲かせる。

 園子は指先でこりこりと俺の乳首を弄り、その言いようのない感覚に身体が震える。

 そんな俺の身体を楽しそうに、探索でもするかのように、園子は舌を這わせ舐めていく。

 

 ざらざらとした感触は鋭敏と化す己の肌に唾液を残す。

 汗を舐め取り、内側の骨をなぞるように舌を滑らせ、残る少女の唾液が空気に触れる。

 首筋にすんすんと鼻をすりつけ、舐める度に笑みを浮かべる園子は熱に浮かされた表情で、

 

「……っ」

 

「かっきーの味がする」

 

「ぁ……」

 

 少ししょっぱい、と耳を噛むように囁く。

 アイスを舌先で舐めとるような動きを、園子は何度も何度も何度も繰り返す。

 その感触の一つ一つに稚拙ながら、確かな快楽が蓄積され始め、与えられる快感に声が漏れる。

 

 深呼吸しようと息を吸えば鼻腔が園子の甘い香りで満たされる。

 己を見下ろす美麗な少女の雪肌は染みなどなく、触れる肌は絹の如き滑らかさだ。

 情欲的な状況で、一瞬の呼吸の中、俺は目の前の少女と会話をするべく唇を震わせる。

 

「まっ、園子」

 

「……どうしたの、かっきー?」

 

 どうしようも無い程に肌色が目に焼き付く。

 目の前で成長した肉体を見せる園子はショーツ以外何も身に着けてはいない。

 紫が好みなのか小さな花が刺繍してある下着は、秘部から溢れる蜜で染みが出来ている。

 

 雪色の乳房が動く度にぷるんと暴力的に揺れる。

 ツンと上を向く乳首は桜色で、見上げる俺の前に惜しげもなく晒されていた。

 ブラジャーすらなく、こうして見る分には東郷ほどではなくとも豊かに実っているのが分かる。

 思わず両手で揉みしだきたくなるような乳肉が目の前にある中、しかし両手が届くことはない。

 

 改めて己の恰好を見下ろすと、己もまた下着以外身に着けてはいない。

 ただ、この繰り返される口腔行為に否応なく逸物が目覚めているのは分かる。

 ときおり下着越しに盛り上がる逸物をチラリと見る園子は己の双丘を両手で持ち上げる。

 

「私も結構あるでしょ」

 

「――ああ」

 

「そう言えば今まで見せたことなかったもんね~。それよりかっきーも男の子だったからね、意外と重くて運ぶのが大変だったんよ」

 

「ここは……?」

 

「私の部屋だよ~」

 

 自分の部屋であると、園子は何てことないように言う。

 周囲を見て、今まで何度か訪れたことのある少女の自室、その寝台の上に俺と園子はいた。

 

 下着を付けているとはいえ、密室で裸の男女が肌を触れ合わせているという状況。

 だが、ベッドの端に手錠と鎖を用いた道具で俺の両手は拘束され自由はないに等しい。

 

 チャリチャリと腕を動かす度に小さく音が鳴る。

 俺の両手を拘束するソレは、内側が柔らかく手首を傷つけない構造であるのが分かった。

 そして寝台に寝転ぶ俺の腰付近に跨る園子はニコニコと楽しそうな笑みを浮かべている。

 

 それを再度認識して、園子の瞳を見る。

 琥珀色の瞳、そこに理性と情欲の光が宿っているのが見える。

 彼女は薄布に覆われた尻肉を俺の腰と怒張にわずかに触れるように擦りつけ小さく喘ぐ。

 

「ん―――」

 

「ま、まて、園子」

 

 何も言わず口腔行為を続けようとする園子から逃れるように俺は顔を背ける。

 ぷくぅと頬を膨らませる園子に対して、頭脳を動かしあくまで冷静に口を開く。

 

「二つだけだから」

 

「……仕方ないな~、特別だからね?」

 

 そうして俺の乳首を指で弄りながら俺の首筋を舌でなぞる。

 妖艶な笑みを浮かべる園子は頬を赤らめながらも確かな受け答えをする。

 繰り返される愛撫に身体に熱が奔る中で、その波に流されないように俺は吐息する。

 

「どうして、こんな――」

 

「私ね~、知っているんだ~」

 

 一つ目の質問をしようとすると先回りするように園子が口を開く。

 長い髪が重力に従い、簾の如く垂れ下がり俺と園子の顔をカーテンのように包む。

 ときおり形の良い耳に髪を掛ける姿は美しく見え、鼻先を触れ合わせるような状態の中で、

 

「かっきーはもう、ゆーゆとエッチしちゃったんでしょ?」

 

「あ……?」

 

「私、知ってるんだ~。それだけじゃなくて、わっしーとも……しちゃったよね?」

 

「……それ、は」

 

「ううん、駄目って言ってるわけじゃないよ。ただね、ふと、思ったんだ~」

 

「――――」

 

「どうして私には悪戯ばかりで、エッチしてくれないのかなって」

 

 至近距離で映る琥珀の瞳は目を逸らす事も安易な嘘を吐くことも許さない。

 寂寥と喜色とわずかな狂喜が宿る園子の琥珀色の瞳は、妖艶な笑みの中で問いかける。

 

「――――」

 

 確かに園子が俺の部屋に来て眠る時に、俺は幾度となく悪戯をした。

 貪るように、慈しむように、寝ている園子の身体を弄ぶが、挿入まではしなかった。

 素股といった際どい事は散々してきたが、その最後の一線だけは越えないようにしていた。

 

 ――言い訳はともかく、彼女の口ぶりから察するに少女は情報を得たのだろう。

 俺と友奈、東郷との情事を何かしらの手段で見るなり聞くなりして知ってしまったのだろう。

 目の前の少女はそれが出来る財力と行動力を備え合わせた存在であるのは俺がよく知っている。

 

 だから――、

 

「園子は、やきもち、焼いてたのか」

 

「うん」

 

 あっさりと、園子は当然とばかりに頷いた。

 そうして我慢できないとばかりに再び唇を交わらせた。

 今度のは濃厚に、唇だけではなく舌を使い口内を堪能するような動きだった。

 

 はむ、ちゅる、と唇の裏を舌が這い、歯茎の形を確かめるように口腔を繰り返す。

 俺の頭に両手を回し、それなりに大きい胸肉を押しつぶしながらねっとりと唾液を絡ませる。

 

 五分、十分が過ぎたのだろうか。

 膣よりも熱い舌と舌を絡み合わせ、疑似的な性交を行う。

 上に被さる園子は顔の角度を何度も変えて、美味しそうに唇をぴったりと密着させる。

 

 やがて、園子がトロンと瞳を潤ませながら唇を離す。

 つぅ、と糸がお互いの唇を結び珠となる瞬間、舌がちろりと覗き俺の唾液を舐めとる。

 その全ての行為が煽情的で、思わず息を呑むほどに、園子の表情は快楽に蕩けていた。

 

「ちなみに、かっきーの両手を拘束したのは、私も悪戯がしたかったから~。それに逃げられたくないし」

 

「――はは」

 

 チャリ、と手錠の鎖が音を鳴らす。

 指で外側に触れると判る冷たいソレは本物のようにも思える。

 乃木家ならば本物を用意する事も可能だろうと思いながら、錠穴に指を這わせる。

 

「俺に悪戯ね」

 

「そうだよ~」

 

 この状況から逃げる事は正直――不可能ではない。

 だが、この据え膳食わぬは男の恥という状況は、俺の薄暗い何かを高めるには充分だった。

 俺が小さく頬を緩めるのを見た園子もまた笑顔を浮かべ、鼻腔は彼女の陶酔の香りを感じ取る。

 

「いっぱい、私と、エッチ、しよ?」

 

「――悪いやつだな、園子は」

 

 熱に浮かされた表情には恋情しか浮かばない。

 繰り返される愛撫と口腔は垂れる涎を気にせず、交わうように唾液を交換する。

 求めるように園子の頬に差した朱は色濃くなり、潤む瞳には滲むような涙を浮かべる。

 

 キスの雨は胸板に下がり、やがて俺の下着に伸びる。

 脚に枷は付いてはおらず、トランクスに伸びた手はいとも容易く引きずりおろす。

 ぶるん、と液を飛ばし空気に晒される逸物は既に暴発しそうな程に反り立っている。

 

「……わぁ」

 

 ジッと至近距離で見る園子は、俺と逸物へと視線を交互に移す。

 俺が園子へ悪戯をしている時は頑なにその顔を見せなかった故の反応だろうか。

 驚くように、初めて見たような顔で、それでも大胆に肉茎を片手で掴み上下にしごく。

 

「ぅ、ぁ」

 

 思わず呻くように俺は吐息を漏らしていた。

 股の間で、両手で肉茎をしごき、んぁ、と開いた口腔に亀頭が沈み込む。

 ぬめる肉は俺の逸物を柔らかく包み込み、園子は頬肉での奉仕を始めた。

 

 おもむろに傘裏に唇を引っ掛ける園子。

 ぬちゅぬちゅと溢れ出す汁を舌先でねぶり、その快楽に思わず目を閉じる。

 幾度も繰り返される園子のわずかに拙さの残る奉仕に、己の荒く呻く息が耳朶に響く。

 

「んぷっ、ん………んむ、ぷはっ……」

 

「……ぅッ」

 

「そうだ、かっきー。こういうの好き?」

 

 瞼を上げ、口腔での奉仕を止めた園子は己の双丘に俺の怒張を挟み込む。

 亀頭から溢れる汁が雪色の肌を汚す中で、硬度を主張する桜色の乳首が肉茎を擦る。

 俗にいうパイズリを園子は行い、餅のような柔らかさに肉茎が包み込まれる快感を覚える。

 

「ああ、好きだよ。こういうの」

 

「そっか~」

 

 吐息を浴びせながら園子は白い柔肉を揺する。

 確かに気持ちよいが、見た目ほどに快楽へと結びつくわけではない。

 

 寧ろパイズリとは視覚的に楽しむという面が強いだろう。

 単純な話、女の子が己の逸物を挟み必死にしごくという光景を眼球に焼き付かせる物だ。

 それを何となく俺の表情から読み取ったのだろう、園子は挟みながら再び亀頭を頬張る。

 

「ぅ、ぎっ」

 

 じゅっ、じゅる、と俺の表情から弱点を読み取る。

 一心不乱に肉茎を吸う園子の動きは、射精を着実に促していく。

 そして、ちょうど下の歯が傘裏を擦った瞬間、爆発的な快感に思わず背筋を伸ばす。

 

「……っっ……!!」

 

 マグマが噴き出すような射精感。

 それが肉茎を伝い、亀頭から吐き出される大量の白濁は園子の口内へと注がれる。

 唇を細め、吸い付く頬肉へと注がれる精は一定のリズムと共に出され、その度に身体が震える。

 

「――ん、んくっ」

 

 両目を限界まで大きくした園子は喉を鳴らし、ごく、ごくっと呑み込む。

 少し離れた所にあるティッシュの箱には目を向けず、唇を舌で舐める園子はやがて子種を全部飲み干した。

 

「かっきーの味」

 

「――――」

 

「覚えちゃった」

 

 そう口にする園子はもじもじと腿を合わせ、腰から俺の顔付近に近づく。

 ショーツの花はすっかりと濡れそぼり、触れずとも判る秘裂から溢れる蜜が内腿に流れる。

 途中で園子は履いていたショーツを脱ぐと、つぅ、と糸が長い尾を引くのが興奮を誘った。

 

「かっきー」

 

「――――」

 

「私のも舐めて」

 

 恥ずかし気に、それでいて確かな興奮に顔を赤くする園子は秘部を俺に近づける。

 手錠で動けない俺の代わりに、濡れそぼる恥部を懇願するような表情で近づける。

 

 少女の髪色と同じ色の薄毛は滴に湿り、秘裂からは涎のように熱い蜜が垂れる。

 ゆっくりと近づいてくる園子の恥部の、情欲の香りで鼻腔を満たしながら口を開く。

 己への奉仕をして欲しいと、やや不安げな顔だった少女はわずかに安堵した表情で、

 

「―――あぁッッ!!」

 

 直後に、悲鳴のような嬌声を上げて俺の髪を両手で掴む。

 俺がした事は単純だ。両手は拘束され動かず、ただ少女を愉しませる為に奉仕する。

 舌で淫らな滴を舐め取り、存分に舐める俺の口腔での奉仕を園子は逃げずに享受する。

 

 こういう行為はネットか何かで知ったのだろう。

 小説のネタにするつもりなのかと、園子の反応を見ながら膣肉を貪るように舐める。

 ビクビクッと少女が身を仰け反らせ、少しの愛撫だけで口から切羽詰まった声が漏れる。

 

「ぁ、ぁっ……!」

 

 不思議な味わいだ。

 舐めても舐めても湧き出す泉、その源泉を這わすように舌で弄る。

 耳に響く園子の嬌声を聞きながら口での触診をしていると、その場所を見つけた。

 

 陰核。

 硬くなったソレはヒクヒクと動いている。

 それを唇をすぼめて、一息に捕食するように吸い付くと、

 

「ぁ、ふぅぁああッッ――!!」

 

 びくくっ、と口に押し付け、かすかに身を強張らせた園子は大きく息を吐いた。

 達したらしい少女は快楽に涙を滲ませながら、未だに奉仕を続ける俺の舌から逃れるように立ち上がり、腰を震わせながら既に復活を果たしていた怒張の上へと秘裂から涎をこぼしながら跨る。

 

 そして肉茎を指で掴み。

 秘裂に宛がいながらゆっくりと根本まで腰を下ろす。

 

「はぅっ、ぅ、っ~~~……ッッ!!」

 

「くっ……」

 

 結合部がはっきりと見える騎乗位を園子は取る。

 濡れに濡れた肉が怒張を包み込み、ぎゅうぎゅうと締め付ける。

 奥の奥から絶え間なく流れる蜜液は俺の肉茎を浸すかの如く結合部からこぼれる。

 

「……、っ、ぁ、繋がっちゃったね」

 

「―――っ」

 

 答えることなく、腰を揺する。

 軽く揺さぶるだけで園子は両手を胸板に付き、はしたない声を上げる。

 下から上に、彼女の一番良いところに届くように腰を使い、怒張を押し上げる。

 

 ぱんぱんと結合部がぶつかる度に音が弾ける。

 水音が響き、軽く突くだけで蜜が跳ね、園子の声音も変質していく。

 必死に優位に立とうとする園子は、ピストンに合わせるように腰を上げ下げする。

 

「っ……! ぅん! くっ、はぁ……ッ!」

 

 桃色の喘ぎ声と水音と濃厚な香りが俺を愉しませる。

 とうの昔に脳は快楽に溶け込み、奥歯を噛みしめながらピストンを繰り返す。

 

「ぁ……ァっ、かっきー……!」

 

「その、こ……!」

 

 奥の奥、子宮口に響かせるように亀頭でノックする。

 わずかでもタイミングが狂えば、園子の奥を抉るように攻め立てる。

 ぱちゅぱちゅと愛液が結合部から溢れる中で、俺は更に腰を園子に叩きつける。

 

 気を緩めば暴発しそうになる昂りの中、彼女の蜜壺をわざと音を立てて突く。

 一突きごとにぷるんと揺れる双丘、繰り返される激しさに聞いた事の無い声を園子は出す。

 

「ぁ、あっ、あぁっ……!!」

 

 赤面する園子は奥の奥に響く快楽に蕩けた表情をする。

 男を情欲に沸かせる喘ぎと、それでもなお怒張から逃れられずに悲鳴を上げる。

 無垢ゆえに味わった事の無い快楽を知り、いやいやと首を振る園子は絶頂の波に揉まれる。

 

「やぁ、ぁっ、ぁ……!!」

 

 そして――

 

「ぁ、ああ、あああァぁっ~~~……ッッッ!!」

 

 痙攣する少女は亀頭に刺激を与え、一斉に搾り取るように膣肉が震え締め付ける。

 これまでとは桁違いの刺激を受けて、俺も耐える事はせず、種汁を奥の奥に吐き出した。

 びゅ、びゅうぅと長く出された白濁を歓迎するように、少女の最奥が叩かれ震えるのが伝わった。

 

 荒い息の少女は脱力したように俺へともたれるように倒れる。

 未だに結合したまま、満足気な吐息をしながら、園子は俺の胸へと顔を寄せる。

 

「……あったかい」

 

「――――」

 

「かっきーは気持ち良かった……?」

 

「ああ」

 

「かっきーが私の中に入ってきちゃった……えへへ……」

 

 こぽりと結合部から肉茎に白濁が流れる。

 彼女の長い金髪が俺の首筋をくすぐりながら、少女は笑みを浮かべる。

 胎を撫でながらうっとりと微笑む園子の姿を俺も満足気に見下ろしながら、

 

 ――かちゃりと手錠が外れる音がした。

 

「園子」

 

「……は、……ぇ? なん、で」

 

 その音に顔を上げる園子はどこか呆然とする。

 唖然とする芸当を見せながら、胸板に寝転ぶ少女の両手に俺は手錠を掛ける。

 かちゃんという音がかすかに鳴ると共に、瞬きを繰り返す園子は呆然と俺を見上げる。

 

「どうやって、だって本物の……」

 

「俺は奇術師だ。この程度、造作もない」

 

「――――」

 

 絶句する裸の少女を無視して周囲に目を向ける。

 彼女の自室、机や棚などを見渡しても鍵は見当たらない。

 それはつまり、俺とは異なり園子は拘束から逃れる事は出来ないという事だ。

 

 どこに隠しているか以前に逃れられなくなった少女を見下ろす。

 呆けた表情とは裏腹に、こぽりと秘裂から溢れる白濁に言いようのない感情が溢れる。

 それは怒りのような、立場が変わった事による加虐心といった諸々のそれらを笑みに変える。

 

「かっきー……? ……んっ」

 

「園子は悪い子だな……」

 

「ぁ、っ……」

 

 双丘に浮かぶ二つの肉粒を摘まむ。

 たゆんと手のひらに潰れる少女の乳肉は、吸い付くような肌触りだ。

 絶頂したばかりで未だに敏感なのか、少女は小さく嬌声を漏らし首を振る。

 

 彼女の思いは果たされた。

 だが精を吐き出し、未だに残る情欲が続きを所望する。

 既に彼女の奥に吐き出してしまった。彼女がそれだけ求めているのならばしょうがない。

 

 これから行うのは反撃だ。

 ただされるがまま、というのは癪に障る。

 

 辱められたのだから、その倍は辱めなければ。むしろ辱めたい。

 俺は望む。彼女が、園子が被虐の涙を浮かべ、羞恥の表情と快楽に悶える事を。

 そして何よりも、目の前でおいたをした罪深きお嬢様にはキチンと罰を与えなければ。

 

 見下ろし、見上げる瞳が交錯する。

 何かを察したのか、トロンとした瞳をした園子に笑いかける。

 

「園子」

 

「――はい」

 

「悪い子には、いっぱい、お仕置きをしないとね」

 

 ――クツクツと笑い声が零れた。

 

 

 




結論:園子も可愛い


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第十一話 されど愛すべきお嬢様

 改めて俺は少女を見下ろす。

 寝台に転がる可憐な少女は、雪色の肌を皺が寄ったシーツの上に晒す。

 自分の掛けた罠、寝台の上付近にある手錠に両手を拘束された姿は、それすらも美麗だ。

 

 両手で隠す事も出来ず、脚を閉じ恥部を隠そうとする羞恥に顔を赤くした姿。

 数分前までの情事を証明するように、色濃く残る白濁が秘裂から垂れる姿に息を呑む。

 

「さて」

 

「……」

 

 こちらを見上げる園子。

 チャリチャリと手錠のチェーンを鳴らすが、少女の細腕では外れそうにはない。

 先ほど本物だと口走っていた言葉が真実ならば、本来は対象となる鍵が必要となる。

 

 いずれにせよ園子は逃れられない。

 今はその事実だけあれば十分だと、近くにあるティッシュの箱を取る。

 サンチョの形を模ったソレの背中と思わしき部分から覗く薄紙を数枚ほど手に取る。

 

 寝台に再び脚を踏み入れる。

 その挙動を逃さないようにジッと見上げる園子に小さく笑いかける。

 閉じた腿に手を這わせ目線を向けると、令嬢はふいっと顔を背けて小さく脚を開く。

 

「……んっ」

 

 開かれた両脚、脚の付け根にある秘裂から溢れる精を俺は拭う。

 ちょうど仰向けで寝台に横たわる園子、その恥部を丁寧に薄紙で液を拭き取っていく。

 指に紙を巻き付け、先ほど交じり合った膣口に再度侵入し、中も可能な限り綺麗にする。

 

 情欲の色香が残るソレをくしゃくしゃに丸め適当に置く。

 そうしてようやく二回戦の準備が完了し、頬を緩めながら園子の裸体に倒れ込む。

 ふにゅん、と双丘が俺の身体に潰れる感覚と共に、密に触れるように肌の距離を無くす。

 

「かっきー……?」

 

「……」

 

 園子の言葉に答えず、俺は身体を這わせて顔を少女の腋に近づける。

 腋毛などない、滑らかな肌に浮かぶ透明な汗を舌で舐めると少女は身をくねらせた。

 左の腋を指をこしょこしょと動かしくすぐりながら、舌と唇で愛撫するように皮膚に触れていく。

 

「あはは、んっ、くすぐったいよ~、かっきー」

 

 両手を手錠に拘束され、剥き出しになった白い腋。

 そこはかとない魅力を醸し出す肌と味を堪能するという甘い触れ合い。

 先ほどの運動で全体的に軽い汗を掻き、同時に少女の香りが鼻腔を満たしていく。

 

 そのまま舌を這わせながら、脇下を通り乳肉へと移動する。

 先ほどは触れず見上げるだけだった金色の少女の柔肉は、今ではこうして見下ろしている。

 真上から見下ろした園子の白い乳房はまるでつきたての餅のようにぷるんと震える。

 

「んく……ッ」

 

 すくうように手のひらで乳房を揉む。

 むにむにと揉みしだけば、声にならない羞恥と快楽の吐息。

 下乳の美しい曲線を舌でなぞり、唇で柔肉を挟み、吸うように小さく息を吹きかける。

 

 やぁ、と声が漏れる。

 目の前のまろやかな乳肉が俺を夢中にさせる。

 しばし狂ったように園子の乳房を揉みしだくと少女は気持ち良さそうな声を漏らす。

 

「ぁ……、っ……、かっ、きーは……」

 

「どうした?」

 

「かっきーは、私の、むね、好きなの~……?」

 

「好きだよ」

 

「ん、ん……」

 

 素肌を重ね、お腹とお腹を触れ合わせる。

 顔を園子の胸に沈ませ、まろやかな双丘の肌の柔らかさをこれでもかと堪能する。

 両手を拘束されたままの少女は与えられる刺激に身をよじらせるが、逃れる術はない。

 

 むにゅむにゅと上下に揉むと園子は首を反らせて感じる。

 園子の性格とは正反対に、桜色の乳首は硬く、反抗的にツンと上を向く。

 プリンの上に載るサクランボのような二つの肉粒を俺は親指と人差し指で摘まむ。

 

「ぁっ、それ、つよっ……ッ!!」

 

「うん? リクエストかな?」

 

「……ッ、ぁ、ち、ちぎゃ……ぁっ!」

 

 わざと潰すように乳首をこねり、強い刺激を園子の性感に与える。

 くりくり、と指の腹と時折舌で弄る愛撫は、園子の濡れた吐息と共に身体を震わせる。

 言葉とは裏腹に身体の反応が求めているので、指で根本を挟み唾液をまぶしてしごく。

 

「ぅ、っぁ……!」

 

 拘束された令嬢の唯一自由な白い脚が毒蛇の如く這いまわる。

 赤面する少女は涙を滲ませ、せわしなく動く両脚がシーツに新たな皺を作る。

 徐々に浮き上がる背筋の動きを感じながら、絶頂を促すべく俺は胸肉と突起を弄り続けた。

 

「ぁ、んっ、……んんッッ!!!」

 

 小刻みな呼吸を園子は繰り返す。

 胸だけで絶頂に至った令嬢は、すぐ近くであられもない声を出す。

 ちゃりちゃりと手錠を鳴らし胸を突き出すように弓なりに背を伸ばす金色の少女。

 

 その全てが俺を興奮させる。

 びくっ、びくっと身体を小さく震わせる少女の顔を見る。

 

 絶頂の波に流された園子の口端からは細い涎がこぼれ、荒い息を繰り返す。

 どこか遠くを見るように上気し、琥珀色の瞳を潤ませる園子の姿に思わず息を呑む。

 

「胸だけで、イッたの……?」

 

「っ」

 

 あえて口にする。

 ふい、と顔を背ける少女はいじらしく、隠せぬ表情は愛おしく感じる。

 整った顔に俺も顔を近づけようと動くと、むにゅんと胸板に双丘が潰れ、形を変える。

 

「今更だけど」

 

「……」

 

「園子は可愛いね」

 

「……!」

 

 指で薄紅の唇に触れ、透明な涎を拭う。

 頭を抱き寄せ、長い絹のような髪を傷を付けないように優しく梳く。

 極上の柔らかさを誇る唇は艶やかで、思わず唇を奪うように軽い接吻を繰り返す。

 

「んちゅ……、んふ……」

 

 わずかに離した唇を繋ぐ透明な糸。

 先ほどの行為を繰り返すように、位置を入れ替えてのキス。

 甘い甘い、優しさと愛おしさと切なさを混ぜ合わせた、そんな親愛の満ちたキスだ。

 

「ありがと~……、ねえ、かっきー」

 

「ん?」

 

「おしおきは……?」

 

 少女の瞳に宿るのは、嬉しさと困惑と、かすかな期待。

 琥珀色に浮かぶ少年の顔が悪戯っ子のような笑みを浮かべるのをジッと見上げる。

 ちゃらちゃらと鎖が鳴る中で、表情にわずかな余裕を取り戻した少女は小首を傾げる。

 

「なんだ園子、お前そんなに期待していたのか」

 

「……え~、違うよ~」

 

「いや、良いんだ。さっさとしない俺を許してくれ、園子様」

 

「かっきーがしたいだけじゃないの~……?」

 

「は――」

 

 首筋に強くキスをし、頭を撫でて寝台を降りる。

 部屋を出るつもりはなく少女の視線を背中に感じながら、素早く行動を起こす。

 情欲の熱が絶える前に準備を整えるべく、寝台の近くにある椅子に目を移す。

 

「園子、錠の鍵はどこだ?」

 

「ええっと、……机の引き出し、二番目の青いノートの七ページ目だよ~」

 

「そうか。……園子ってアイマスクとかって持ってる?」

 

「う~ん、私ってそういうの無くても寝られる人だから」

 

「分かった」

 

 一応厳重に隠していたらしいノートから鍵を回収する。

 その後、キチンと畳まれ並べられた俺の衣服を漁り、着けてきたネクタイを回収する。

 必要な物を揃え、後は開始するだけだと寝台に飛び込むように戻る俺を、園子は見上げる。

 

「もしかして、おしおきって目隠しの事?」

 

「まあ、あたり」

 

 赤色のネクタイを少女の目元に巻き付ける。

 多少不格好にも見えるが目隠しとしての機能は果たされている。

 小道具の用意の為に中断していた愛撫を再開し、本格的におしおきを開始する。

 

「……」

 

「かっきーってこういう趣味が……、んっ」

 

 視界が暗闇の中でも保たれる令嬢の余裕を崩すべく、無言で乳房を揉む。

 先ほどの余韻が残っている熱を帯びた乳肉を手のひらでこねり、突起を指で転がす。

 びくっと動く園子の姿を余所に小さな乳輪を甘く噛み、出来た歯形を舌で舐める。

 

 脚を、腹を、胸を、肌の温度を交換するように密に触れ合わせる。

 逸物と秘裂を擦り合わせながら互いの温度を味わうべく唇と唇を重ねる。

 んちゅ、んむ、と唾液を交換する淫らな口づけをする中で、くすぐるように園子に囁く。

 

「好きだよ、園子」

 

「……っ、わたしもだよ~」

 

 吐息と共に形の良い耳に声を送る。

 耳たぶを甘く噛み、骨を伝い鼓膜に直接響かせる。甘い甘い声音を。

 

「さっき、園子は可愛いって言ったけど、どこが可愛いか言ってなかったな」

 

「ぇ……?」

 

 乳房を揉みながら、口は少女の耳元へ。

 目を塞がれ、自然と神経は耳元へと集中する状況下で二人、俺は静かに愛を囁く。

 

「まず、園子の性格が好きだよ。ほにゃりとしていて、時々見せるしっかりとした芯の部分とか。……前にも言ったけどね」

 

「ん……」

 

「金色の髪はまるで稲穂のようで、いつまでも触りたいと思うくらい……綺麗だ」

 

 ちゅ、ちゅぷ、と耳元で言葉と交互に水音を鳴らす。

 鎖の音が鳴る中で、言葉の一つ一つに、吐息に、徐々に頬を赤くしていく。

 

「肌も綺麗で……雪のような白い肌は、こんな風に俺を興奮させるよ」

 

「……ぅ……っ」

 

 右耳を重点的に舌を這わし、ぴちゃぴちゃと淫らな音を鼓膜に響かせる。

 逃れるように顔を背けようとする園子の顔、小さく震える唇に再度唇を重ねる。

 どれだけ興奮しているかを教えるように、見えない少女の秘裂付近に怒張を擦り付ける。

 

「唇が柔らかくて好き」

 

「ぁ……ぅ……」

 

「一緒に居て、何気なく見せる園子の仕草が好きだよ」

 

「……、ぁぁ……ッ」

 

 ビクッと震え、首を反らす少女に囁く。

 疑似的な盲目を体験している少女、その耳を優しく舌で蹂躙する。

 ちゅ、ぴちゅ、とわざといやらしい水音を耳元で鳴らし、合間にそっと少女に囁く。

 

「園子の身体も好き。この首筋も、耳も、柔らかい胸も、お腹も、……ここも」

 

「……んッ、ぁっ……!」

 

 耳と舌での疑似的な性交の合間に、言葉での愛撫の間に、乳房を掴んでいた手は下へ。

 少女特有の柔らかで脂肪の少ないお腹を撫で、更に下、薄い毛が生えた濡れた秘裂に。

 既に溢れるかのように蜜壺からこぼれ出す蜜を指に絡めながら、湿った膣肉が指を迎える。

 

「――エッチな園子も好きだよ」

 

 少女との悪戯で、園子の特に感じる性感が耳であるのは知っている。

 目元が隠されながらも赤面する少女の息は甘く、荒く、俺を酷く興奮させる。

 だが、少女が時折聞かせた、悲鳴のような淫らで恥も外聞もない嬌声を聞きたい。

 

「声、抑えなくていいよ」

 

 おしおきはまだ始まったばかり。

 耳責めだけではつまらないと感情が囁く。

 どこを虐めるか。それは決めている。園子が最も感じる部分を――、

 

「……?」

 

「――――」

 

 一度、身体全体を少女の下半身に移動させる。

 程良い太さの少女の腿、それを両手で巻き付けるようにしっかりと掴む。

 続けて手を伸ばし、しっとりとした柔らかさを誇る尻肉を両手で抱える。

 

 その行為、見えないからこそ園子ですら理解できない。

 そんな少女も、一瞬の後に唐突な刺激で悲鳴を上げる。

 

「ああぁっ……!!」

 

 陰唇へのキス。

 触れるか触れないかのような口づけから、一息に愛液を啜るように俺は吸い取る。

 バキュームの様な吸い付きに、ぢゃりっと手錠の鎖の音と少女の声が鳴り響く。

 

 慌てたように園子は両脚をジタバタさせるが、既に対処済みだ。

 両腕で太腿を拘束し、少女の唇にするように、もしくはそれ以上の口腔奉仕を開始する。

 

「ひぅ、んぅ……!」

 

 頭を押さえようにも腕は動かせず、唯一自由な両脚は拘束された。

 金色の髪の少女、いやいやと首を振る目隠しされた令嬢は、集中的に快楽の波に揉まれる。

 背筋を伸ばし揺らす双丘、抗う事すら許されずただ震える少女の蜜肉を逃がさないとばかりに、

 

「ぅぁ、ぁぁ……、~~~~ッッ!!?」

 

 ――大きく口を開けて齧り付く。

 直後に身体を痙攣させ、園子は両脚をばたつかせる。

 びく、びくんっ、とこれまでで一番の絶頂を迎えたらしい少女の声が響く。

 

 口に含んだ少女の柔肉は何よりも美味しく思える。

 舌で溢れ出す濃厚な少女の蜜を舐め、膣へと舌を侵入させ暴れまわる。

 己の逸物のように奥までは届かないが、入り口付近の肉のひだの感触を味わう。

 

 舌という器官の限界まで。

 上を、下を、横を、熱い熱い膣肉を舐め弄り回す。

 その動きに連動するかのように、喘ぎ声を隠せず、園子の身体はのたうち回る。

 

「ふぁ……! それっ、だっ……ぁぁっ……!!」

 

 無論逃す事などしない。

 鼻をくすぐる柔らかい少女の薄毛の香りを嗅ぎながら舌と唇で奉仕を繰り返す。

 雌肉から滴り落ちる大量の滴が溢れだし、身体の奥から時折熱い水飛沫が顔に掛かる。

 

「ほんと……。ぅぁ……、ぁ、た――――ッ!? ……ッッ!!」

 

 秘裂を開き、キスの雨を注ぐ。

 目隠しをした上での、わざと下品な音を隠さないで行う口腔行為。

 じゅぶ、じゅぷ、と舌に濃厚で淫らな少女の味、全部は飲みきれずにシーツを汚し染みを作る。

 

 連続で、休ませないように、おしおきをする。

 快楽の波に集中的に揉みしだかれ、その度に痙攣と共に飛沫が顔に飛ぶ。

 

 念入りに、丹念に、丁寧に行う令嬢への奉仕。

 寝台と俺の身体に挟まれた少女の下半身は一手に快楽という快楽を引き受ける。

 溢れ続ける泉を舐め続けていると、いつの間にか両脚の動きが止んでいる事に気づく。

 

「―――は、―――ぁ」

 

 一度中断し、顔を上げて少女の姿を見る。

 呼吸は荒々しく、その度に双丘が上がり下がる。

 口を開き、涎が首筋を流れ、髪の毛が淫らにシーツの上を広がっている。

 

「……ふむ」

 

 どうやらおしおきを気に入ってくれたらしい。

 一体どんな表情をしているのか、ネクタイを剥いでジックリと見たくなる。

 だが今はまだおしおきの最中なのだと己を律し、唇を陰核に近づけて一息に吸う。

 

「……! ……!!」

 

 手錠の鎖の音が激しさを増し、押さえつけた脚に本気の力を感じる。

 園子の頭が左右に揺れる中で、ぴちゃりぴちゃりと愛液がシーツへと垂れ落ちる。

 わりと本気で暴れているのだと分かりながら、親指と人差し指で肉粒の根本を擦る。

 

「ぃぅううっっ!!?」

 

 直後にどこにそんな力が残っていたのかと思う程に身体を仰け反らせる。

 唾液と愛液を舌で包皮を剥いた陰核にまぶし、そのまま唇に含んでじゅるっと吸う。

 いくらでも溢れる少女の蜜を肉粒にソースのように垂らし、唇で下品な音を立てて吸う。

 

「くぅ……、ぁぁ……ッ、~~、~~~!!」

 

 赤くぷっくりとした肉粒を唇と上の歯で優しく吸いながら弄る。

 先ほどの園子との情熱的なキスよりも執拗で、粘着質で、丹念なキスを繰り返す。

 

 目という器官をなくし、耳だけに頼らざるを得ない状況でのディープキス。

 終わりを知る事は出来ず、抵抗する事も出来ず、逃れられない快楽という沼に浸かる。

 次第に濡れた陰核に小さく息を掛けるだけで、甘い甘い悲鳴を園子は上げる。

 

 やがて身体が求めるように少女の腰が浮き上がる。

 陰核を自ら差し出し、弄めてくれと言わんばかりに顔へと近付いてくる。

 身体は欲望に素直らしいと甘噛みをすると、一際濃厚な粘液が口の中に広がった。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 どれだけの時間が経過したのだろうか。

 不思議と令嬢への奉仕に熱中してしまったらしい。

 少女の趣味を感じさせる独特な目覚まし時計に目を向けると数十分が経過した事に気づく。

 

「……は、ぁぁっ……」

 

 息絶え絶えとなった少女の身体に汗が滲む。

 既に抵抗の無い内腿に歯形を付けるように甘噛みすると、ビクンと小さく身体が震える。

 どこを触ろうとも、きっと同じような反応を示す程に敏感となった少女の拘束を解く。

 

 がちゃんと手錠が外れる音と共に、ぱたりと手が寝台に落ちる。

 ネクタイを外すと、どこか遠くを見る少女は悦喜の笑みで口を小さく開けている。

 ぼんやりとする少女の瞳に少しずつ光が戻ってくるの見ながら、膣口に逸物を宛がい貫く。

 

「や、……まっれ、いま、は……」

 

 心の準備などはさせない。

 こちらも先ほどから暴発寸前とばかりに亀頭から汁が垂れ落ちていた。

 奥まで刺し込んだ逸物に膣壁は歓迎するように脈動し、搾り取るように締め付ける。

 

「ぁっ……!?」

 

「―――っ」

 

 湿った肉を割り拓いていく快感に思わず呻く。

 怒張が熱い滴に洗われ、震える柔肉に射精感を高められる。

 奥歯を噛みしめ、限界が訪れるのを必死に抑えながら俺は少女の身体に圧し掛かる。

 寝台に横たわる園子の身体を、少女の尻から下を浮かせるように持ち上げながら、

 

「ああっ!?」

 

 両脚を手で肩方向へと押しながら、真上から叩くようなピストンを開始する。

 ぱんぱんと暴力的に限界の近い射精を堪えながら少女の最奥へとプレスを繰り返す。

 

「ひぃあ!? やっ、かっきー……!」

 

 耳にキスをしながら少女を串刺しにする。

 何度も何度も串刺しにし、少女の両手が首に回されるのを感じると更に串刺しにする。

 ぱちゅぱちゅと愛液が結合部から飛沫となり飛び散る中、ピストンを繰り返す。

 

「かっきぃ……! かっきぃ……!」

 

 俗にいう種付けプレスという体位だが実際に行うと征服感を感じる。

 蕩け切った表情で、潤みきった瞳から涙を流し、渾名を呼びながら園子は嬉しそうに喘ぐ。

 首筋を吸うようにキスをし、少女の乳房を揉みしだくと、その度に快楽の悲鳴が聞こえた。

 

 ストロークが加速する。

 ぱんぱんぱんぱんと抽送を繰り返し、最後にぱちゅん、と根本まで叩くように押し込むと膣肉が痙攣する。

 媚肉が収縮し、俺の肩に指が食い込む中で、俺もまた意識が溶かされる感覚に襲われる。

 

「……ぐっ!」

 

「んん~~~っっ!!」

 

 少女の最奥に再び白濁を注ぎ込むと同時に、最後の一滴まで搾るように締め付けられる。

 両脚を腰に回した園子の動きに従い、奥の奥に精を注ぎ込んだ俺は猛烈な疲労感に襲われる。

 

「ん、……」

 

 虚脱感の中で、どこからともかく両腕を回す。

 呼吸を重ね、鼓動を重ね、身体を深く重ね合わせ、しばし静寂を保つ。

 息が整うのを待つように温もりに浸っていると、先に息が整った令嬢から声が掛かる。

 

「かっきー」

 

「うん?」

 

「きもち、よかった……」

 

「俺も、気持ち良かったよ」

 

「えへへ……」

 

 顔を動かし、少女の顔を見下ろす。

 頬を上気させたままの表情には笑みが浮かび、園子の細腕が背中に回る。

 

「かっきー」

 

「うん?」

 

「汗、いっぱい掻いちゃったね~」

 

「園子も、な」

 

「……そうだね~、……シャワーさ、一緒に浴びよ?」

 

「ああ」

 

 背中だけではなく、滲むような汗を全身に掻いている。

 放置して眠れば間違いなく風邪を引くだろうという予感と誘いに即座に頷く。

 それでも動けず、最低限の体力の回復と虚脱感からの回復を図っていると、

 

「かっきー」

 

「うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだよ」

 

 ちゅ、と唇に触れる感触。

 少ない単語で、甘く暗い声が吐息と共に胸をくすぐる。

 たったそれだけの言葉に、虚脱感の代わりに押し寄せる何かは逸物を刺激する。

 

 寝台から立ち上がり、腰が抜けたらしい少女をお姫様だっこする。

 手首にわずかに赤い跡を残しながら、愛おしそうな表情で手首に触れる令嬢。

 ポタリと秘裂から白濁を床に落とす園子を抱き抱え、浴場へと二人で向かう中で、

 

「俺もだよ」

 

 ――少女の言葉に応えるべく、耳元に囁いたのだった。

 

 

 



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第十二話 深い深い緑に溺れるように

 園子との情事が終わってから二日が経過した。

 あの後、俺と園子は普通にシャワーを浴び、身を寄せ合うようにして眠った。

 暖かさと充足感に満たされながら、次に目を覚ました時にはすっかり朝だった。

 

「……ぁ、おはよ~」

 

「おはよう、園子。起こしても良かったのに」

 

「それは勿体ないよ〜」

 

 起きた時に再び手錠を掛けられる事はなかった。

 隣に寝転がる少女は、大きな瞳を和らげて人差し指で俺の髪をくすぐる。

 園子の瞳に昨日のような狂喜はなく、わずかに照れ臭そうな笑顔を向けてきた。

 

 それから4日が経過した。

 園子に監禁されるという事もなく、普通に学生として過ごす日々。

 部活動という名のボランティア活動で人々に感謝され、友人たちと仲良く過ごす。

 

 前世では得る事が出来なかった、平凡で、温かみのある日常。

 最近は雨か曇りが多い今日この頃ながらも、学校生活には支障などない。

 その大切さを俺は教室の隅、窓の外の景色をぼんやりと見ながら感じていると、

 

「亮さん」

 

「……ん、どうした?」

 

 昼休みの喧騒の中で俺に話しかける声。

 やや低い声、振り返ると見知った紳士の一人である俺の友人が歩いてくる。

 制服を身に纏い、やや長い黒髪と鮮やかな瞳の奥に確かな知性を感じさせる少年。

 

 彼は俺の隣、教室の窓の縁に腰を預ける。

 その佇まいに無駄はなく、行為の一つ一つが洗練された動きとなっている。

 

「亮さん、――スク水ってどう思う?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 しかしながら、彼もまた俺に見初められた変態の一人だ。

 以前から、それこそ俺は友奈と同じ小学校に転入した時から友達作りをしていた。

 それは四年生までは、悲しいことに園子以外には友達が出来なかった教訓からだ。

 

 同時に俺は前世での苦しみを忘れずに、ある基準を設けて友人を選別する事にした。

 極力裏切られるリスクを減らすため、弱みを握れ、それでいて有能な人材を選んだ。

 そんな臆病とも言われかねない人脈作りだったが一定の成果は存在している。

 

 それはともかくだ。

 紳士の一人から唐突に振られた話題に戸惑いながらも考える。

 

「スク水か……、それってあの学校のプールで女子が着る奴だよな」

 

「当たり前だろ」

 

「それで、どう思うか……か」

 

 この学校、讃州中学校の体育の科目では選択に水泳か陸上の二つがある。

 暖かい季節になると生徒の意思で選択する事が出来る選択科目なのだが、やはり陸上よりも様々な理由で人気であると言うべきか、水泳を選択する人が多いというのが現状である。

 

「まあ、そうだな。学校指定でありながら、日々成長していく女性らしさを主張する曲線を主張させているのは一種の美なんじゃないかと思うが……」

 

「うんうん、そしてあのお尻の食い込みを直す時の仕草が堪らないんですよ」

 

「それで……自分の妹にでも着せるのか?」

 

「いえ、義姉に頼み込もうかと」

 

「はぁ」

 

「あれ、亮さん。いつになくテンション低いですね。夜の奇術師の名が泣きますよ」

 

「……おい、その名前で呼ぶんじゃない」

 

「最近は三刀流になったらしいっていうのは本当ですか?」

 

「次その話をしたら、お前のアレを暴露するぞ」

 

「それは止めてください」

 

 学校内どころか、この市内全域にすら広がりだした嬉しくない二つ名。

 噂に尾ひれが付き、都市伝説のような存在になりだした名前とは関わりたくない。

 小さく睨み付け真顔で隣の少年が口を閉ざしたのを確認しながら、再度俺は口を開く。

 

「……まあ、なんだ、スク水は確かに良いかな? とは思うけど、単純に俺はビキニとかの露出多めの方が好きだなって」

 

「――まあ亮さんってお腹フェチなところありますもんね」

 

「そう……かな」

 

 確かに少女の健康的なお腹の柔らかさや弾力、手触りは好きだと言える。

 それだけではなく、行為の最中に下腹部を撫で回し子宮に外から刺激も与えられる。

 ところが隣に佇む美麗な造形の少年は、会話を聞く限りスク水>ビキニという考えだ。

 

「そんなにスク水が良いのか?」

 

「例えば、水着っていうと温水プールとか海って印象じゃないですか」

 

「まあ、そうだな」

 

 確かに言われるとその通りだろう。

 夏になると平和ボケした箱庭の住人たちは浜辺を水着で海へと駆け走る。

 勇者部でも実際に海へ行った事があり、そういう印象は強いと感じられる。

 

「でも、想像してみて下さい、亮さん。家の風呂場で水着を着た少女を……」

 

「……ふむ」

 

「普通なら見る事すら出来ない、禁断の光景を……」

 

「……、――!」

 

 想像するまでもなかった。

 俺は紳士だが、いつの間にか固定概念に囚われていたのかもしれない。

 風呂場とは裸とタオルがセットと思い込んでいたが、それだけではないかもしれない。

 

 いつの間にか思い込みが激しくなっていたのかもしれない自分。

 この新しい人生の中で少しずつ初心が薄れ、環境に慣れてしまったのか。

 そんな俺に、紳士として大事な事を隣の優男はスク水という話題で示してくれたのだろう。

 

「ありがとう」

 

「いいえ、良いですよ、亮さん」

 

「じゃあこちらからも話題を提供しよう。――裸エプロンって着衣に入ると思うか?」

 

「いや、あれはもう着てないような物じゃないですか」

 

「だよなぁ、こういう制服で……、というのがやっぱり良いよな」

 

「まあ、そうですね……おっと、じゃあ失礼します」

 

「おお」

 

 紳士の雑談を終え、去っていく優男。

 教室から出ていく少年と入れ替わり、ツインテールの少女が近づいてくる。

 自信に満ち溢れた姿ながら、完成型勇者の少女は真っ直ぐにこちらに歩いてきた。

 

「どうした、夏凜?」

 

「私って今、風や東郷から料理習っているじゃない?」

 

 ここ最近、ようやく夏凜も自炊の道を進み始めた。

 以前から夏凜の食生活は偏りが見られていたが、最近は食生活にも気を使っている。

 もともと努力を惜しまない性格なのか、着々と上達していっている状況である。

 

「ああ、そうだな。俺も何か教えようか? というか、今度遊びに行っていいか?」

 

「いいわよ……っと、もうすぐ授業ね」

 

 そうこうしている内に昼休みは終わった。

 チャイムが鳴り響き、そそくさと自分の席に戻るとすぐに授業が始まった。

 午後の授業が進む中でふと東郷の方に視線を向けると、気づいたのか小さく微笑んだ。

 

 

 

 ---

 

 

 

 鼻歌が唄う人物の機嫌を教える。

 目の前の彼女はエプロンを着用し、黙々と調理をしている。

 

「――――」

 

 彼女を一言で称するならば、可愛いではなく美麗と称するべきだろう。

 純白の肌、形の良い耳を見せるように時折髪を指で上げる仕草は艶めかしい。

 

「……? 亮くん、味見する?」

 

 彼女が差し出したスプーンに載っているのは餡子だ。

 ぼた餅を構成する為の重要な要因であり、彼女が作るそれは一級品と言える。

 当然、躊躇う事などはせずに、味見をするべく口を開き甘味を舌で味わう。

 

「うん、甘さ控えめで美味しい。さすが東郷さん、これなら店も出せるかもな」

 

「もう……褒めすぎよ」

 

 満更でもなさそうな顔をする東郷。

 調理に戻る彼女から目を離し、俺は周囲を見渡す。

 

 ここは東郷家、加賀家別邸の向かいの隣にある大きな屋敷だ。

 唐突に俺は東郷のぼた餅を食べたいと思い、こっそりと頼み込むと快く了承してくれた。

 ぼた餅自体は俺も作れない訳ではないが、やはり食べ慣れた味を舌が求めていた。

 

 最初は手伝おうと進言したがやんわりと断られた。

 一応彼女なりのポリシーがあるのだろうと、仕方なしに彼女の手腕を観察していた。

 キッチンの隅で影となり、ただ息をするだけの存在と化した俺はジッと東郷を見ていた。

 

「はい、出来たわよ亮くん」

 

「……わーい」

 

 やがて完成したぼた餅をリビングに運び、東郷と二人で食べる穏やかな時間。

 手入れの行き届いた床は清潔さを保ち、家に住まう人物の性格を教えてくれる。

 

 何となく東郷の甘味に胃を支配されたような気分になりながらも称賛は止めない。

 彼女の作ったぼた餅は俺の心と胃袋を暖かく満たし、東郷は照れ臭そうな顔をしていた。

 食後、せめてもと食器は俺が片づけ、その後はゆったりと東郷と雑談を交わしていた。

 

 今日は一度も彼女の両親の顔を見てはいない。

 単純に仕事なのだろうと思っていると、チラチラと此方の顔を窺う東郷は、

 

「そういえば、今日はお父さんとお母さんが出掛けていてね……帰ってくるのが遅いの」

 

「……」

 

「ぁ、えっと、その、変な意味で言っているわけじゃなくて……」

 

「東郷さん」

 

 そろりと東郷の隣に腰掛け、手を重ねるとびくっと少女が震えた。

 少女の手を掴み、羽のように軽い少女の体を持ち上げ、俺の脚の間に座らせる。

 柔らかく甘い少女の背中が俺の胸板に当たり、唐突に近くなった距離の中で、

 

「そっか。今日は、誰もいないんだ」

 

「んっ……」

 

 交錯させていた両手をゆっくりと服の間から侵入させて豊かな膨らみに触れる。

 薄着でエプロン姿の少女は嫌がるように俺の手に手を重ねるが、それは抵抗ではない。

 スカートに皺が寄り、既に熱を帯びたような甘い少女のいやらしい体臭が鼻腔をくすぐる。

 

「誘っているの?」

 

「ち、ちがっ――、んくっ……」

 

 熱を帯びた白い首筋に唇で触れる。

 既に外していたブラのホック、服の中に侵入した手がブラをずらし双丘を揉む。

 沈み込むような感触が指に伝わりつつ、プリンのような感触をむにむにと楽しむ。

 

「ぁっ」

 

 普段は長い黒髪に隠された白いうなじが覗く。

 慈しむようにキスをすると顔を逸らして少女が喘いだ。

 

 雪のように白い肌は美しく、頬が赤らむのがはっきりと分かる。

 首筋に鼻を押し付け、少女の甘い匂いを嗅ぎながら、むにゅりと乳肉を手で包み込む。

 安易に乳首には触れず、強く揉みすぎずに優しく少女に感じさせないように揉みしだく。

 

「っ……」

 

 焦らされているのが分かるのだろう。

 もじもじと脚を擦り合わせ、その度に柔らかい尻肉がスカート越しに怒張を刺激する。

 甘い吐息を吐き、彼女は切なげに呻きながらも既に抵抗はなく逃げる事もしない。

 

「ぁ、はっ」

 

 形の良い豊かな胸は俺の手のひらで自在に形を変える。

 焦らすような愛撫を始めながら、既に勃起した怒張を臀部に押し付ける。

 片手で胸肉を弄り、もう片手で彼女の黒髪を梳きながら唇で首筋にキスを繰り返す。

 

「……っ、りょうくん……」

 

「キスしよっか」

 

「ん―――」

 

 熱に浮かされたような表情をする東郷の熱を帯びた唇に唇を重ねる。

 柔らかく、正面から見た彼女の深緑の瞳はトロンと内部まで熱が奔っているのが分かる。

 ただ触れるだけの行為、舌を入れる訳でもない、ただ相手に親愛を伝える為の接吻。

 

「ぁ、んんっ……、んふっ……ぁ……ッ!」

 

 餅のような乳肉は極上の柔らかさを誇り、軟骨のように硬度を帯びる乳首を指で摘まむ。

 キスの合間に片方の乳首だけを弄ると、骨を振動させるようにビクッと少女が震えた。

 玩具のように乳首を指先で弄ぶ度に目の前の少女の快楽の悲鳴が上がり俺を興奮させる。

 

「ッ」

 

 ふと東郷の手が俺の怒張に触れた。

 ズボン越しに大きさを確認するように上下に動かし、ジッパーを下ろそうとする。

 積極的な彼女は真面目で自分だけ奉仕されるのが嫌らしく、必死に反撃を試みる。

 

 しかし主導権は俺にある。

 寧ろ自分からジッパーを下ろし怒張を見せつけると、躊躇いながらも東郷が触れる。

 柔らかく、わずかに汗ばんだ手のひらに包み、前回の要領でやや強引にしごき始める。

 

 奥歯を噛み締めつつ、彼女を屈服させるべく次の一手を打つ。

 彼女の両脚をわずかに開き、スカートから覗かせる花柄のショーツをずらす。

 既に愛液が染み込み、更に奥の蜜壺から熱い滴が溢れている中で陰核を指で弄る。

 

「ぷ、ぁぁっ!」

 

 普段ならば聞けないであろう、はしたない声を少女は上げる。

 女なら感じるであろう快楽器官を指で弾き、自分が出した声に東郷は赤面を隠せない。

 

 お互いにお互いの性器を弄りあう。

 前回のでコツか何かを掴んだのか、東郷は俺の手を片手で押さえつつ肉茎をしごく。

 徐々に高まる射精感の中で俺は自分の人差し指の爪が短い事を確認し、挿入する。

 

「んっ」

 

 熱く濡れた肉が吸い付く感触。

 

「……ぁ!」

 

 にちゅ、と少女の奥に指を進ませると東郷の息遣いが変わった。

 狭い肉の通路をこじ開けて進むように熱い肉の中を指が進んでいく。

 その感覚に、少女は怒張をしごく事を忘れたようにわずかに息を止めたのが分かった。

 

 俺の指を包み込む膣はうねるように締まり、ぽたりと愛液が床に滴る。

 やがて呼吸を再開するように熱い吐息を漏らしながら、俺の肉茎を再度しごきだす中、

 

「ぃっっ、ああぁっ……!!」

 

「ッ」

 

 それは突然だった。

 挿入した指を曲げた瞬間、東郷の悲鳴と共に締まる膣肉。

 背筋を伸ばし、顔を逸らす少女は同時に痛い程に俺の怒張を握りしめる。

 

 突然に、少女は果てた。

 驚きながらも確認するように指を動かす。

 落ち着くように自らに言い聞かせ、先ほどの行為を再現するように指を動かす。

 

「んくっ……! んひゅ!」

 

 ぴちゃ、ぴちゃりと飛沫が俺のズボンを濡らす。

 奉仕を忘れた東郷の声とは裏腹に俺の指を呑み込む蜜壺からは更に蜜が溢れる。

 洪水のように後から後から湧き出す中で、俺は宝を発見した探検家の気持ちになっていた。

 

「ここか?」

 

「ンン、んあっ……!!」

 

 第二関節をゆっくりと曲げた指で近くの膣壁をこする。

 比喩ではなく跳ねるように体を仰け反らせる東郷はビクビクと痙攣する。

 蜜が噴き出す中でぎゅっと俺の腕を掴み、止めて嫌々と首を振りながら抵抗を試みる。

 

「ぅぅ~~~ッッ!!!」

 

 ささやかな少女の抵抗を無視し、少女を飛ばすべく指で膣壁をこすり続ける。

 蜜は少女が履いているショーツを濡らし、もはや下着としての機能を失わせる。

 じゅぷじゅぷと指を動かす度に溢れ出す愛液と、少女が聞かせる悲鳴は俺の鼓動を高める。

 

 先走り汁が東郷の細い指に絡まり、限界がいよいよと近づく。

 そんな中で気づくと俺は更なる快楽を与えるべく服越しに少女の双丘の先端を唇で噛んだ。

 

 その瞬間は同時だった。

 

「かっ、ぁ、~~~~~~っっっ!!!」

 

「づッ」

 

 ぷしゃっと小水のような飛沫が舞い、床を汚す。

 同時に東郷の手のひらが亀頭を包む中、感情を吐くように精を勢いよく出し脱力感に襲われる。

 

「~~~っ」

 

 息を吐き出すように、くたりと東郷は俺に体を預ける。

 だらしなく口端から細い涎を垂らし、真面目で聡明な少女らしからぬ淫らな姿を晒す。

 荒い呼吸で服越しで分かる程に胸の先端を尖らせ、甘くいやらしい雌の匂いを充満させる。

 

「東郷さん」

 

「ふぇ……、りょ、くん……」

 

 頬に手のひらで触れ、しばし呼びかける。

 絶頂の荒波に揉まれ続けた東郷は少しずつ呼吸を整えながらこちらを見上げる。

 流石に勇者として鍛えているだけあるのか回復も早く、ややジト目で俺に言う。

 

「……いじわる」

 

「そうか?」

 

「――――」

 

 彼女にしては不満げに小さな毒を放つ。

 相互に奉仕をしていたはずが、一方的に奉仕されたのが嫌なのか。

 それとも一人だけ羞恥と快楽による悲鳴を何度も何度も俺に聞かせたからか。

 

 獣欲が薄れ始めながら、至近距離で見つめ合う。

 少女の涎を舐めとるように口づけをしながら、ふと思い出す事があり口を開く。

 

「風呂に入りたいな」

 

「……そう言うと思って沸かしているわ」

 

 それは最初から期待していたのではないのだろうか。

 それを問いつめると何となく拗ねそうなので追及はせず、静かに耳元で囁いた。

 

「……今日って、スク水、家にある?」

 

「……」

 

 少女はコクリと頷いた。

 

 

 



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第十三話 淫らな音が耳に響く

 それを見た時、ある種の衝撃を俺は感じた。

 生前コスプレといった物は画面の向こうの世界であり、見る機会はなかった。

 ああいう人種の思考プロセスを理解できず、何も出来ない分際で批判するばかりだった。

 

 しかし、実際そういう現場に直面する時が来るとは人生何があるか分からない。

 死んでから初めてコスプレのような何かをお目にするなど過去の自分なら鼻で笑うだろう。

 いや、コスプレだと言うのならば勇者装束はどうなのかと逃避気味の思考状態の中で、

 

「どう……、かしら」

 

「おぇぁ」

 

「え?」

 

「……いや」

 

 既に東郷家の風呂場に移動し、その過程で少女は新たな装いを身に纏った。

 ゆったりとしたどこかお嬢様然とした洋服から、学校指定の青色に近い紺色の水着。

 恥ずかしそうに身じろぎするスク水を着用した女子中学生に、口角が下がる事がない。

 

「東郷さん」

 

「は、はい!」

 

 敬語になる程に緊張しているのか。

 風呂場の照明に照らされた東郷は、明らかに俺の視線を気にしているようだった。

 意図して中学生とは思えない体型の少女へと近づき、じっくりと舐めるように眺める。

 

 普段から感じるが、東郷の肌は他の少女よりも白い。

 それは普段日に当たっていない故か、肩紐のみで晒された肩と腕は雪原のように見える。

 首筋から流れる汗かは分からない水滴が暴力的なまでに深い谷間へと滑り落ちていく。

 

 何よりも目を引き付けるのは、彼女の豊かな双丘だろう。

 白い乳肉を覆い隠す水着、ゼッケンに書かれた『東郷』という字は大きさ故に歪んでいる。

 いまにもはち切れんばかりのソレは、男ならば即座に視線を切らなければ色々と危険だろう。

 

 何よりもスク水は密着性が高い。

 曲線美を描く双丘、その下の腹と腰のライン、臍の窪みが判る程にクッキリと浮かんでいる。

 股に食い込むような水着から惜しげもなく晒された白い太腿は程良い筋肉と脂が乗っている。

 

「その、これ去年のだから……、ちょっとサイズが厳しくて、今年も買わないといけないのよ」

 

「ああ、それでこんなパツパツに……」

 

 俺の視線から読んだ東郷は慌ててそんな言葉を告げる。

 風呂に入るからと長い黒髪は後頭部で上げられ、噛みつきたくなる様なうなじを晒している。

 いつだったか最初で最後に遭遇した、一度だけ見たことのある鷲尾須美を思わせる髪型である。

 

「なるほどね、いや似合うよ」

 

「本当?」

 

「ああ、本当に。語彙力の無い自分を殴りたくなるくらい、俺は今東郷さんにドキドキしてる」

 

「……っ」

 

 羞恥と喜色が入り混じった表情。

 それに呼応するように白い肌に分かりやすく朱が差す。

 頬に手を当て目を逸らし赤面する東郷は思わず抱きしめたくなる程の可愛さを感じさせる。

 

「亮くんは水練が出来なかったものね」

 

「まあね。今年も走るつもりだからな」

 

「駄目よ、苦手な物は克服……っ、し、ないと」

 

 風呂場で東郷と会話しながら俺は少女の腿をすりすりと撫でる。

 何気なくシャワーヘッドを取り温水を出す東郷の腿の艶やかな感触に自然と怒張がいきり立つ。

 温まりたいのか、腿に伝う愛液を隠したいのか、東郷は俺と自身の身体に温水を掛けていく。

 

「んっ……ん」

 

「まあ、そのうち何とかしようとは思っていたけどね」

 

 腿から臀部へと手を這わせる。

 爪で円を描くと小さく呻きながらも東郷は何とか会話を成立させようとする。

 

「そうだな……東郷さんって泳げるよね?」

 

「ええ、背泳ぎ以外は出来るようになったわ……、んッ」

 

「ならさ、今度泳ぎ方教えてよ」

 

 やはり体型に合わないからか、既に水着から尻肉がわずかにはみ出ていた。

 それが気になっているのか東郷は話しながらも時折手を伸ばし直そうとする。

 その何気ない行為すら俺を興奮させながら、はみ出た肉を指で撫でると、ん、と鼻息が漏れた。

 

「……ッ、いい、けど私の教えは厳しい……ぅ……わ、よッ」

 

「ああ、スパルタ結構だよ」

 

「……! ……亮くんは真面目だものね」

 

「勤勉でもある」

 

「自分で言わないの」

 

 はみ出た尻肉と布地に隠れた尻肉を境界線を縫うように手を這わしていく。

 お湯がスク水と肌に飛沫を立てながら、血行が良くなり仄かに赤くなる東郷の肉に触れる。

 大胆に齧り付くように、優しく愛しみを与えるように、緩急をつけながら少女の肉を味わう。

 

 少女に先ほどまでの余裕はなく、俺の肩に手を乗せる。

 無意識なのか尻を突き出している東郷、揉み上げた尻肉とずり上がる水着を片手で掴み、

 

「じゃあ、決まりだ」

 

「~~~ぁぁ……!!」

 

 ――グイッと上へと持ち上げた。

 口を開けた東郷から掠れた吐息が漏れる。

 

 恥丘を水着が擦り、上に引っ張る事で尻肉の全てが露わとなる。

 Tバックを思わせるような状態に身体を揺らし、目の前で『東郷』の字が歪む。

 ガクガクとする少女の膝を気遣い支える為に何度も何度も水着を擦るように持ち上げる。

 

「んひッ……ぅぁっ……」

 

 擦れているのが気持ち良いのか風呂場に声が漏れる。

 シャワーから流れる水飛沫の音の中で、その声がやけに響く気がした。

 

「ん、……ふっ」

 

 擦り上げる度に秘裂に刺激が与えられ腰から下をくねらせる。

 俺の背中に手を回しバランスを取ろうとする東郷。自然と豊かな胸元が胸板に触れ、潰れる。

 胸の膨らみは東郷のいやらしく淫らな吐息と嬌声の度に合わせて動き、俺の視線を吸い付ける。

 

 シャワーから流れる温水が水着を伝う中で、水着をずらし恥部に指で触れる。

 先ほどの愛撫込みで水ではない粘着性を帯び湿った秘裂をなぞるとピクッと腰を動かす。

 腰を引かせ、自然と豊かな双丘を俺に押し付ける中で、少女の肉粒周辺を指で弄り続ける。

 

「……ぁ、……ッ!!」

 

 くちゅくちゅ、と淫らな音がシャワーの水音の中で聞こえた気がした。

 鼻息を荒くし濃い朱を肌に差す東郷はもはや熱を帯びた瞳と甘い吐息を隠す事は出来ない。

 至近距離で聞こえる少女の甘い吐息と少女から漂う甘い香りに俺の口内が乾くのを感じた。

 

 シャワーヘッドを持つ手は震え、いつの間にか此方に密着するように東郷は俺に身を預けていた。

 己の淫液で濡れた水着の布地をじゅ、じゅっと何度も恥部に擦り付けられる快感に身を委ねる。

 

 我慢は限界に近い。

 この愛撫はお互いを高めるが、同時に痛いほどに興奮させる。

 怒張の先端から汁が落ち、東郷の密着した水着に硬くいきり立った逸物をグイッと押し付ける。

 

「東郷さん」

 

「ぁ……、亮、くん」

 

 蕩けた表情を眼球に焼き付けつつ、少女の名前を呼ぶ。

 荒々しさを隠せず少女が着る水着の肩紐を下に引っ張ると、ぷるんと双丘が姿を見せる。

 男の視線を引き付ける張りと形が良い白い乳肉はスク水からこぼれ落ち、思わず息を呑む。

 

 密着していた故に解放された乳肉と同時に仄かな熱気と淫らな匂いが俺の感覚を狂わす。

 柔らかさの中で徐々に硬さを主張し始める乳首は、男を知りながらも美しい桜色を誇る。 

 

「~~ッ」

 

 両手に代わり罰を与えるべく乳首を甘く噛む。

 こりこりとした硬さに唾液をまぶし、乳輪に歯形をつけるように甘噛みする。

 

「ふ……んふッ……ぁ」

 

 たっぷりと疑似性交を口腔で繰り返す。

 柔らかい舌の裏を舐め合い、甘い吐息と唾液をこぼしながら獣のように求めあう。

 目を潤ませた東郷の口はぬめり、相手の舌を溶かすように熱くいやらしく動く舌は何よりも猥らだ。

 

 時計の無い空間で、やがて口を離す。

 情熱的なまでの口づけにどれだけの時間が経過したかを忘れてしまう。

 顔を離し、無言で少女の身体を風呂場の壁に手を宛がわせ、尻を突き出させるように促す。

 

「っ」

 

 グイッと尻を上げる事にわずかに抵抗があるらしい。

 今更ながら羞恥に耳まで赤くする東郷の腰を引かせ、晒される尻肉にゆっくりと手を這わせる。

 

「東郷さん」

 

「……」

 

「鏡を見ろ」

 

「……!」

 

 移動させた場所、東郷家の風呂場にある備え付けの長方形の鏡の前に俺は彼女を立たせていた。

 よほど恥ずかしいのか、顔を背ける姿は先ほど淫らな声を至近距離で聞かせていた少女とは思えず、俺は突き出された恥部には未だ挿入せずに、じゅくじゅくと指で掻き混ぜるように虐める。

 

「……もうっ……ッ、……ッ!」

 

「駄目だよ」

 

「ぁぁ……ッッ!!」

 

 秘裂の上、包皮を捲り肉粒を弄る。

 必死に己の痴態を見ようとも認めようともしない少女をしばらく弄る。

 ガクガクと両腿を震わせ、膝を擦り付け崩れ落ちそうになるのを己の脚と手で防ぐ。

 

「ひぅ……っ!」

 

 パチンと尻肉を手で引っ叩く。

 それだけで少女は鳴き、ぷるんと片方の柔肉はいやらしく震える。

 白い肌に朱を差す肉を優しく手のひらで撫でながら、しかし冷たく東郷に告げる。

 

「東郷さん」

 

「やぁ……っ」

 

「そっか」

 

「ぁぐっ……!」

 

 もう片方の尻肉を叩く。

 ひくっと少女の喉が鳴り、もう一度叩いた患部を撫でながら陰核を優しく責め立てる。

 数分程絶頂の波の合間に少女の臀部を叩きながら、数回少女の名前を呼びつつ静かに囁く。

 

「東郷さん、鏡を見て」

 

 ゆっくりと少女は鏡に顔を向け、目を開いた。

 そこに映る光景、あまりにも淫らな少女の瞳に様々な感情が過る。

 

「ぁ……ぁ……」

 

 そこには。

 男に腰を振り、赤く腫れつつある白い臀部、ずれた水着は濡れた恥部を曝け出している。

 今この瞬間も形を変え揉まれる乳房は柔らかさを伝え、興奮に赤く染まる肌が水着から見える。

 

 どこか呆然と見る自らの顔は被虐の涙を浮かべつつも快楽に頬を緩めているのが見えた。

 上げていた長い黒髪はわずかに乱れ、白く朱の差した肌にどこかいやらしさを追加している。

 自らの股から水音を響かせ、先ほどの口づけの余韻に涎を残す少女の表情は彼女風に言えば、

 

「――はしたない」

 

「ぁ……!」

 

 その言葉が浸透するようにみるみる少女の目に羞恥の涙が浮かぶ。

 鏡の自分に嫌々と首を振る東郷は壁につけた手を震わせながらぎゅっと目を閉じる。

 

「東郷さんははしたないね。こんなにも感じて、濡らしてさ」

 

「い、じわる、しないで……」

 

「意地悪? どういう事?」

 

 そっと蜜裂に逸物を宛がう。

 事実を教えた俺に対して、意地悪とはどういう事なのだろうか。

 そこは感謝するべきだろうと、罰を下すべく少女の蜜裂に俺は一息に挿入した。

 

「ああっ!!」

 

 甘い甘い悲鳴が風呂場に響く。

 直後に背後から挿入された東郷は自分の体勢を気にして鏡から顔を背ける。

 

「待って、りょうくん! これっ、だめっ!」

 

「駄目じゃない」

 

 パチンと臀部を叩くと尻肉が震え、膣肉が引き締まる。

 蠢く様に膣壁が逸物を締め付け、一突きごとに鏡の前でぷるんぷるんと乳房が揺れる。

 ずちゃずちゃと結合部から愛液が泡立つ音が聞こえながら、逸物を下から突き立てる。

 

「かっ……、ぁっ……!」

 

「ほら、前見ろよ」

 

「や、らぁ……」

 

 ピストンの度に竿が最奥に届き、突き上げられた東郷はその度に仰け反る。

 腰骨を掴み、入り口まで引き戻し、再び最奥へと突き上げる動きをゆっくり繰り返す。

 少女の身体が、膣が逸物の味を覚えるように動かすと甘露が肉茎を伝い、床のタイルに落ちる。

 

 そうして少しずつピストンの速度を高めていく。

 ぱちゅぱちゅと淫らな音が響く中、羞恥に顔を赤らめる余裕すらなく少女は昇った。

 

「んぅぅっっ……!!」

 

 揺れる乳房、その先端が鏡に触れる。

 細腕で自身の身体を必死に支える為に、壁のタイルにつく手は震えている。

 だが、やがて限界が訪れたらしく、腕を床に下ろし四つん這いになる少女を構わず突き続ける。

 

「ぉっ……、亮くん、待って、こんな……ッ」

 

「……」

 

 少女の抗議を無視し、ピストンを繰り返す。

 床に手をついた代わりに彼女の片脚を持ち上げ、深く深く怒張を奥の奥へと押し付ける。

 ぱんぱんと肉がぶつかり、愛液が水飛沫のように結合部から噴き出す中で逸物で叩き続ける。

 

「あ、またっ……、ぁ、ぁっっ、……んんん~~~ッッ」

 

 徐々にピストンを早めると、途中で達したスク水少女。

 その痴態を楽しみながら後背位を続ける俺は休ませる気などなかった。

 

「東郷さん」

 

「~~んっ……、は……ぇ?」

 

「見てみなよ」

 

「……、……!」

 

 長い睫毛を震わせた東郷は再び顔を上げる。

 鏡に映り込む、スク水から乳房を出し犬のように四つん這いとなり、片脚を持ち上げられた姿。

 

「東郷さんは、可愛いね」

 

「……ぅぁ」

 

 己の痴態と、それを見て笑みを浮かべる少年が鏡に映る。

 その瞬間、それを認識した瞬間、かああっと分かり易い程に赤面した少女が映る。

 羞恥、喜色、わずかな自己嫌悪と幸福感と様々な表情が混ざり込んだ姿を鏡は見せる。

 

 四つん這いとなった少女の身体を持ち上げ、再びバックで怒張を叩きつける。

 ばちゅばちゅとピストンを繰り返すと東郷は抗議する間もなく、再び昇り詰める。

 

「……~~~ッッぁ!!!」

 

 腰骨をしっかり掴み、彼女の膣の締まりに射精感が否応なく高まる。

 何かを求めるような東郷の手は自らの腰に触れる俺の手に重なり、全身を震わせる。

 鏡に乳房と顔を押し付ける東郷に容赦せず、自らも果てる為に蜜壺でひたすらにしごく。

 

 その瞬間は唐突であった。

 

「づぁっ!」

 

「ぃ、ぁ、ぁぁ、~~~~ッッ!!」

 

 がくがくと東郷が絶頂に震える。

 ほぼ同時に、わずかに俺の方が先に精を吐き出す。

 

 びゅううっと濃厚な白濁が噴出した。

 その抜け出ていく勢いに奥歯を噛み締め、視界が白く染まり思わず目を閉じる。

 息を止め、心臓の鼓動の高鳴りが耳に響く中、先に荒い呼吸を少女が繰り返す。

 

「っ、ぁ~~、は……、ぁ~~」

 

 甘い甘い吐息のような呼吸。

 腰が抜けたように脱力する少女の軽い身体を持ち上げる。

 お姫様だっこしながら、自身へ脱力感が押し寄せる前に湯舟に浸かった。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

「――――」

 

 思わずほっと息を吐く。

 目の前で俺の胸板に背中を預ける東郷に腕を回すと、チラッと深緑が此方を見る。

 既に少女の体型に合わないスク水は脱がし、お互い全裸で湯舟に浸かっている。

 

「暖かくなってきたらさ、今年新しく開くプールに行かない?」

 

「……いいわよ、そこで水練に励むのね?」

 

「おお」

 

 どうやら覚えていたらしい。

 髪を湯舟に入れたくはないのか、髪を纏め上げている東郷の首筋に軽く口づけする。

 

「んっ……、確か亮くんは息継ぎが出来ないのよね」

 

「ああ、なんかこう……コツがつかめなくて」

 

「なら私がキチンと出来るようにするわね、大丈夫よ亮くん、私に任せて!」

 

 ちゅ、ちゅっと口づけしながら少女の乳房を持ち上げる。

 ずっしりとした重さの双丘を湯舟から手のひらですくい揉みしだく。

 手のひらでその感触を楽しみながら、仄かに赤い首筋と黒髪に鼻を近づける。

 

「そうだな、任せるよ。東郷さんのビキニ姿、もう一度見たいし」

 

「ふふっ……私、ビキニなんて言ってないわよ?」

 

「違うの?」

 

「……、ひ、秘密よ」

 

 彼女の反応から正解を引き当てたらしい。

 その光景を考えて、既に復活を果たし屹立している怒張を少女の臀部に擦り付ける。

 

「……ッ」

 

 湯舟の中、くすぐったそうにしながら俺の手に少女は触れる。

 白い肌に華が咲いたように口づけの痕を首筋に、背中に、俺は残していく。

 鼻腔一杯に東郷に香りを吸い込みながら少女の白く健康的な腿に手を這わせる。

 

 彼女はちらりと俺を見るともじもじと太腿を擦り合わせる。

 敏感なのか、這わす手に抵抗するように少女の手が触れ止めようとする。

 しょうがないので、今度は別の方向から攻めようと一度腿から手を戻す。

 

「この後、将棋でもしよっか」

 

「え? うん、いいわよ……ぁ」

 

 腿ではなく、代わりに胸に手を這わせる。

 指で押すと潰れるほど柔らかい肉粒が再び硬度を増していく。

 両手で少女の身体を抱きしめながら、優しく肉粒の根本を指で摩ると甘い喘ぎを漏らす。

 

「ふぁ……」

 

「……」

 

「……っ」

 

 手のひらで椀を作ってもこぼれる胸肉に触れながら至近距離で見つめ合う。

 この後の予定、一先ず片付けをしてから彼女と将棋をするつもりではある。

 だと言うのにお互いに湯舟から立ち上がろうとせず、ただ静かに見つめ合っている。

 

 その間も両手が乳房を揉み、乳首を摘まむ。

 白い肌からは赤みが消えず、熱を帯びたような深い深い緑の瞳に吸い寄せられる。

 

「ん―――」

 

「――――」

 

 風呂場から出るのは、もう少し先になりそうだった。

 

 

 



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第十四話 甘い菓子に種子を蒔く

 『溺れる』というのはこんな気持ちなのだろうか。

 快楽という水が全身に絡みつくように、後には心地良さだけが俺の心身に染み渡る。

 

「っ、……っ」

 

 湯舟のお湯と少女の色濃い香りにクラクラとする。

 ふと己の指を見ると長湯の所為か随分とふやけており皺が出来ていた。

 それは俺の身体を座椅子にして背中を預けている長い黒髪を上げた少女も同じか。

 

「東郷さん」

 

「亮、くん」

 

「……」

 

 頭を俺の肩に乗せる東郷との顔の距離は近い。

 完全に脱力したように身体を預けながら、東郷の深緑の瞳は俺に向けられている。

 更に顔を近づけると、薔薇色の唇を濡らす少女の浅く熱い呼気に俺はある事を思い口を開く。

 

「そろそろのぼせるから」

 

「――ん」

 

 唸るように応じながら東郷は動かない。動けないのだ。

 快楽を貪るような行為を繰り返し、その果てに腰に力が入らないのだと、緩々と首を振った。

 そんな彼女の白い肌にははっきりと長湯と情事に伴う朱色が仄かに、猥らに、色濃く残る。

 

 湯舟の中、背中を預けた壁から離れ、少女の背中と太腿付近に手を伸ばす。

 彼女が纏う物は何もなく、陶器のように滑らかな肌の感触は決して飽きることが無い。

 顔が近づき、目を閉じた東郷は何かを待つように顎を持ち上げ、俺の口づけを待っている。

 

 俗にいうお姫様抱っこの準備を整えながら、俺は少女の薄い唇と唇を重ね合わせた。

 そっと啄むような口づけは情欲を湧き上がらせる物ではなく、ただ深い親愛に溢れている。

 情欲を掻き立てるようなキスではなく、唇の柔らかさを知るようなキスを東郷の唇は繰り返す。

 

「っ―――」

 

「ん――、ぁ、は――」

 

 このままどこまでも『東郷美森に』溺れてしまいそうな感情を噛み締め抑える。

 唇を離し、せめて湯舟からの脱出の為に身体に力を入れ裸体の少女を持ち上げる。

 湯が滴り落ち、水音を響かせながら、随分と軽く感じる東郷の身体を抱き上げ脱衣所に向かう。

 

「……」

 

 風呂後の東郷は随分と無口に感じる。

 ただぼんやりと俺を見上げる東郷に小さく微笑みながら、一度少女の身体をマットに下ろす。

 壁に背中を預け脱力した様子で脚を伸ばす少女の身体をバスタオルで拭き、水気を取っていく。

 

「んっ」

 

 介抱というのだろうか。

 脱衣所の電灯に照らされ、くすぐったそうに目を細める東郷の肌は雪原の如く白い。

 勇者部で一番、雪のように淡く、透明で、美しいと感じる彼女の柔肌を拭いていく。

 

 首筋を優しく撫で、背中に手を添え、乳房を軽く揉む。

 彼女の裸体を傷を付けないように丁寧に拭きながら弄ると、東郷の唇から呼気が漏れる。

 

「ぁ……っ……」

 

 先ほどの愛撫と情事の痕を色濃く残した裸体。

 それを思い出したように身体に触れる度にビクリと小さく東郷は震える。

 切なげな表情でときおり熱い吐息をする東郷を見ながら、自身の身体も素早く拭き取る。

 

「自分で、拭くから……」

 

「駄目」

 

 程良く筋肉と薄い肉の乗った両脚を拭き、脚の付け根に手を伸ばす。

 湯に濡れた少女の髪色と同じ色の薄毛と恥丘をタオルが触れると呼吸と共に腹肉がピクリと動く。

 秘裂をなぞるように拭くと東郷はもどかしそうに呻き、強く拭くと首を仰け反らせた。

 

「ぁっ……やっ!」

 

 白い両手が妨害するように俺の手に触れる。

 遅すぎる抵抗、異性に余すことなく身体を拭かれる状況に東郷は目を閉じながら嫌々と首を振る。

 湯冷めにより肌が白くなりつつも、しっとり感のある少女の身体、尻肉を掴み再び持ち上げる。

 

「っ、待っ、~~……ッッ!!」

 

 風呂上がりの東郷の素肌はきめ細かく、まるでつきたての餅のような感触である。

 蜜壺からとめどなく溢れる蜜液をバスタオルが吸収しながら、膣口に指を挿入し臍側の膣壁を撫でるように動かすと、東郷は背を仰け反らせてガクガクと膝を震わせながらマットに座り込む。

 

「――じゃあ、行きましょうか。お姫様」

 

「……ぁ、うん」

 

 拭き終わり、荒い息を吐く東郷の身体を持ち上げる。

 抵抗などなく、容易く脱衣所の扉を開け俺は少女の裸体を抱えたまま外に出る。

 

「東郷さんのご両親、いないんだよね」

 

「――そうよ」

 

 東郷家の廊下を歩き、黙々と少女の自室へと向かう。

 全裸の男女が家の中を歩き回るという状況に東郷はぎゅっと目を閉じ胸板に頬を擦りつける。

 しばらく無言で自分の足音と自らの鼓動が聞こえる中で、やがて少女の自室に到着する。

 

「大丈夫? 疲れた?」

 

「ううん。大丈夫よ、亮くん」

 

「そっか、良かった。……あと三十秒で水を持ってくるから待ってて」

 

「……うん、待ってる。ずっと」

 

 見慣れた東郷の自室、畳を素足で歩く。

 その部屋にある少女がいつも寝ている寝台に部屋主を横たえさせる。

 了承を得ると同時に東郷の自室を飛び出し、可能な限りの速さで台所を過ぎ風呂場に向かう。

 

 二十秒で脱衣所と風呂場の情事の片付けと、脱いだ服を回収する。

 残りの十秒でキッチンに寄り、コップ一杯に水を入れて素早く移動する。

 我ながら素早い行動だと思いながら、長い黒髪の美少女が待つ自室に戻った。

 

「おかえり、亮くん」

 

「ただいま」

 

 先ほどまで人形の如く俺にされるがままだった東郷。

 枕で自らの豊満な裸体を辛うじて隠しつつ、戻った俺に少女は親愛の微笑を浮かべる。

 寝台の近くに回収した衣服を置き、コップを持って俺は上半身を起こした東郷の近くに寄る。

 

「お嬢様、お水をお持ちしました」

 

「ふふっ……、では飲ませて頂戴?」

 

「ははー」

 

 適当な茶番を混ぜつつ、少女の薄い唇にコップを近づけて、動きを止めた。

 寝台に腰掛ける少女は唐突に動きを止めた俺に、小首を傾げながら見上げる。

 コップの中の透明な液体を見て、ある発想を浮かべた俺は少しだけ水を口に含み近づく。

 

「えっと、りょ……、ん―――」

 

 その後に続く言葉は無かった。

 顎を持ち上げ、唇を重ね合わせ己が含んだ水を東郷に飲ませる。

 んくっんくっと少女の白い喉が鳴る中で、驚きに見開いた瞳はやがてうっとりと細められる。

 

 送られる水は少しだけ口端から垂れ、首筋へと流れる。

 頬に手を当て、天井へ向いた東郷の唇に再び水を含み唇を重ねる。何度も重ねる。

 んふ、んちゅと懸命に水分を補給する為に鼻息を荒くし、少女は猥らに唾液と水を飲みこむ。

 

 やがてコップ一杯分の水が無くなる。

 その頃にはこの給水という口腔行為に、お互いが息を荒くしていた。

 目元をとろんと緩ませた東郷から枕を取り上げ、ベッドに押し倒しながら首筋に顔を近づける。

 

「ぅン……ッ!」

 

 しっとりとした、雪原のように白い肌に唇を這わせる。

 その滑らかさと柔らかさ、かすかな体温にまるで吸血鬼のように一息に吸い付く。

 跡が残っても構わないとばかりに、寧ろこの少女に教え込むように強く強く吸い付いた。

 

「はぁ……ぁぁ……」

 

 風呂場で纏めていた長い髪は既に解かれている。

 しっとりと濡れた少女の長い髪の香りを吸い込み、ふと髪も拭いておくべきだったかなとやや場違いな事を考えながら、背を反らすように腹部を上下させる少女に口付けを繰り返す。

 

 改めて、ぷるんと震える双丘を持ち上げるように両手で揉む。

 既に先端がツンと硬さを主張し、極上のプリンのような生乳の感触を手のひらで確かめる。

 背中に手を回し、乳首を口に含みちゅぷちゅぷと愛撫の音を聞かせると、もぞもぞと脚が動く。

 

「やっ! ぅ……ふっ」

 

 背中に手を回された東郷は快楽から逃げられない。

 俺の頭を掴む少女の嬌声と、ちゅ、ちゅぷという愛撫の音だけが室内に響く。

 丹念に乳房を弄りながらチラリと少女の顔を見上げると、羞恥に涙を目端に浮かべていた。

 

「東郷さんの身体って綺麗だよね」

 

「ぇ……、ぁ、ありが……ンあぅ!」

 

 一方的な愛撫を俺は続ける。

 せっかくなので更に辱めたいと、手は腹よりも下へ動かす。

 程良く脂と筋肉の乗った腹を撫でながら、更に下、少女の薄毛を指先でさわさわと弄り回す。

 

「そこは、あんまり触らないで……」

 

「触り心地、良いよ。東郷さんの×××」

 

「―――ッ」

 

 わざと東郷が嫌いそうな淫語を囁く。

 その言葉が空気を伝い鼓膜に届くと、かああっと少女は赤面する。

 

 柔らかめの感触を指先で感じながら、少し下にある東郷の濡れた媚肉に触れる。

 それだけで、触れただけで、あられもない声を上げた少女は恥じらうように両手で口を押さえる。

 粘液性を帯びた少女の愛液を指先に絡めつつ、彼女の恥部にある小さな陰核を探り、見つける。

 

「ん、……ふくっ……」

 

「東郷さん、ここには俺しかいないんだから、声、我慢しなくていいんだよ」

 

 シーツに皺を作りながら、猥らな声を隠そうとする東郷。

 その行為が無意識に男の情欲を掻き立てている事に気付かない少女に、全ての抵抗が無意味である事を教える為に俺は恥部にある小さな包皮を剥き、指の腹でこするとビクッと身体を震わす。

 

「ひっ! ぃっ、ぁ」

 

 露出した肉の芽を爪と指の腹で軽く撫でる。

 忙しなく動く両脚を閉じないように股の間に脚を入れながら、指の腹で軽く潰す。

 

「ぃぁ、ぁっ、~~~ッッ!!!」

 

 ビクンと短く、しかし激しく東郷の腰が浮き上がる。

 今ので果てたらしく、激しい呼吸に合わせて少女の腹肉が上下する。

 口元を押さえていたはずの手はいつの間にかシーツをぎゅっと掴み、新たな皺を寄せている。

 

 ぷしっと新しい蜜が指に跳ね、愛液を指に絡めながら、腰に片手を回し固定する。

 寝台に仰向けとなった東郷の負担が少ない形で、さらに言えば快楽の全てを味わい楽しむ形で。

 東郷の身体の震えを感じながら更なる高みを目指し、肉粒を指先でぴっと弾く。弾く。弾く。

 

「……は、りょうくん、ぁ、ま、待って! ……ぁ、ぁかっ~~~、ぃぃっっ!!」

 

 再び短い悲鳴を東郷は上げる。

 今度は声を押し殺す事もなく、喜悦の悲鳴を俺に聞かせた。

 その甘い声音を聞かせた事へのご褒美として、顔を淫らな匂いのする秘部に近づける。

 

「可愛いよ、東郷さん」

 

「待って……は、りょ、も、もう、もう十分だから……」

 

「遠慮しなくて良いんだよ、東郷さん。せっかくだから一杯奉仕してあげる。……指と舌、どっちが良かったか教えてね」

 

「いや、ぁぁっ! ぁ、ああっ!」

 

 嫌々と首を振る東郷の秘部に顔を埋める。

 慌てたように上半身を起こし、ぷるんと乳房を揺らしながら両手で俺の頭を掴む。

 どこにそんな力を残していたのかと思いながら、今は東郷の淫声を聴きたいと媚肉を舌で犯す。

 

「んくっ! ぁ、また……、ぁ、ぁ……!!」

 

 ちゅぷちゅぷと噴き出す蜜が頬を叩く。

 俺の舌が貝肉を貪り、小さな粒を舌で根本から潰し、舐め、弄る度に嬌声が響く。響いた。

 両脚の腿が強めに俺の顔を挟みながら、そしてその力すら弱まるまで、俺は東郷に奉仕をする。

 

「~~~~、は、ぁ、ッッッ!!」

 

 部屋が暗くなるまで。

 少女の味を舌に教え込む。

 

 ――淫らな声音と水音が部屋に響く。

 

 その日は東郷の両親が帰宅する寸前まで。

 捕食するように、味わい尽くすように、俺は東郷に奉仕した。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 東郷とののぼせる程に長い長い湯浴みとマッサージから数日が経過していた。

 俺は以前約束していた、夏凜の家に遊びに行く約束を果たす為に彼女の部屋に来ていた。

 玄関より脚を踏み入れ、以前よりも多少本などが増えた程度の、一人暮らしの少女の部屋。

 

 まめに手入れの入ったフローリングの床の感触を踏みしめる。

 キチンと掃除も行い、衛生面もしっかりとしているのは素晴らしい事だ。

 同時に懸命に努力を惜しまない少女のトレーニング器具の多さは変わっていない事に苦笑する。

 

「――二月十四日は、にぼしの日らしいよ」

 

「誰が煮干しよ」

 

「言ってないから。夏凜、これお土産」

 

「……あ、ありがとう。別に気を遣わなくても良かったのに」

 

「いや、戦友との交友を深めるせっかくの機会だし。多分美味しいと思うから」

 

「そっか……うん。あっ、座ってて亮之佑。何か飲み物用意するから」

 

 そうしてゆったりとした部屋着を着用した夏凜はキッチンに向かった。

 その少女の後ろ姿を見ながら、俺は改めて戦友の、夏凜の、異性の部屋を見渡す。

 

「――――」

 

 特に何とも感じないのは夏凜だからだろうか。

 一応は異性だと言うのに、胸の鼓動を高鳴らせる物がないのは慣れた所為だろうか。

 もしもそうだったならば非常に残念であると肩を竦め、小さく含み笑いをしていると、

 

「――残念だ」

 

「何がよ?」

 

「いや……髪切った?」

 

「え、まあ少しだけね。よく気付いたわね」

 

「――直感ですかね」

 

 俺の独り言を聞きつけた少女が戻ってくる。

 彼女が両手に持つお盆、その上には先ほどの土産物と並々と液体が入ったコップ。

 それらをテーブルに下ろすのを手伝いながら、座った少女と適当な雑談を始めた。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 夏凜と言葉を交わす合間に、ふと少女の指が皿に伸びる事に目を付ける。

 その速度に渡した土産を気に入って貰えたのだと思うと、それを肯定する様に夏凜は口を開く。

 

「このお菓子。……香りが良いし、何より美味しいわね」

 

「ああ、それ手作り」

 

「へぇ……、あんたって結構凝り性よね」

 

「そんな……照れる」

 

「褒めて……、褒めているわね」

 

 ビスケットサンドが細い指に摘ままれ、瞬く間に薄紅の唇に吸い込まれる。

 フルーツブランデーに漬けたリンゴとヨーグルトを混ぜたクリームを挟んだサンド。

 夏凜の家に遊びに行く際に、事前に自作料理の試作として作ったお菓子は好評のようだ。

 

 最近少しだけ、自分の中で菓子を作るブームが到来している。

 酒を使用した菓子なのだが、風味をマイルドにし、保存性を上げるなどメリットは大きい。

 直接酒を飲むわけではなくアルコールの量も作成時に調整が利くため、ほろ酔いが限界だ。

 

 ――限界のはずなのだが。

 

「それで、なんだっけ」

 

「だから! どうして! わたしだけこんなにツッコミが多いのかってことよ!!」

 

「――うん」

 

 ほろ酔い程度ならば、適度に身体に溜まった疲れを落とす。

 気持ちよく、程良い酩酊状態を味わえるという菓子を片手に、ジュースが注がれたコップを傾ける。

 ごくごくっと喉を鳴らしながら美味しそうに飲む少女を見ながら、己も菓子を摘まみ咀嚼する。

 

「――ふむ、まあ、問題は無いと思うけど」

 

「ちょっと聞いてるの、亮之佑!」

 

「ああ、聞いてたよ。ならツッコミを止めたらいいじゃないか」

 

「そうしたら、勇者部にボケが飽和するでしょうが! 園子も東郷も、友奈も、あんたも! 樹はともかく……。こんなの明らかに比率が可笑しいじゃないッ!」

 

「はあ。東郷さんか……。知っている夏凜? 東郷さんってとっても可愛いよ」

 

「東郷は可愛いというか綺麗でしょ」

 

「まあ、そうだね。……夏凜は、凛々しい感じだよ」

 

「はいはい」

 

「おい、雑な相槌は止めろよ」

 

 カランとコップの中の氷が音を鳴らす。

 手のひらの中で聞こえた音に耳を傾けながら、薄い笑みで相槌を打つ。

 既に雑談を開始してからいつの間にか一時間が経過していく中で、持ってきた菓子が底をついた。

 

「はー、……なんか、暑いわね」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

 仄かに顔を赤くした少女は一息に上着を脱ぎ、パタパタと手で自身を扇ぐ。

 そんなに暑くはないのだがと思いつつ、それを余所に冷静な頭脳が原因を模索する。

 

「――――」

 

 既に空となった皿。

 先ほど、どこかの世界にある菓子を再現した物を土産に持ってきたのだったが。

 キチンと自分で味見をしたからこそ、ある程度の自信の中で持参した菓子だったが。

 

「酒成分、強過ぎたのか……それとも食べ過ぎが問題か……」

 

「何ブツブツ言ってんのよ」

 

「いや、何でもないよ。夏凜」

 

「そう? 大体、風も――――」

 

 上着を脱いだ事で露わになった、わずかに曲線を描く薄いシャツにふと視線を向ける。

 鎖骨、首筋、肩を剥き出しにし、熱さ故に仄かに滲んだ汗と少女の香りが鼻腔を擽る。

 そういえば夏凜も女性なのだと今更ながら認識すると、急に現状に対して危機感を感じた。

 

「――ん~」

 

「酔ってる?」

 

「酔ってないやよぉ!」

 

 向かい合っていたはずだが、いつの間にか隣に座っている無防備な少女。

 酩酊しているように瞳をトロンと潤ませた夏凜の、汗と、少女の甘い匂い。

 愚痴を溢すだけ溢して楽しそうな笑みを浮かべる夏凜の視線は、ふと俺の股間に向いた。

 

「……あれ、亮之佑。これって何よ?」

 

「何でしょうね」

 

 当たり前だが、夏凜も性的な知識があるらしい。

 耳まで顔を赤くしながらも、普段の反抗的な表情も怒りもない。

 ただ、少女の手が俺の履くスラックスの股間部分にゆっくりと伸びる。

 

「その、これって……」

 

「いや違うって、東郷さんとのアレがフラッシュバックした所為だから」

 

 わずかながら勃起した怒張の存在をスラックス越しに夏凜は見つめる。

 その無防備な姿、隣に座る小柄な彼女は少し前屈みになるだけでシャツの内側を無自覚に男へ晒す。

 首元が緩んだシャツからは汗ばんだ胸部と、それを包み込むスポーツタイプのブラジャーが覗き見れた。

 

「ぁ……、ぇ……おっきくなって」

 

「……そんなに見るなよ」

 

 俺の股間に小さく驚きの声を夏凜は漏らす。

 身体は素直だね、と下半身がレアなシーンを目撃した事と凝視される事で更に勃起する。

 顔を赤らめるのは乙女故か、驚き故か、判断に困りつつも俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「ほら、夏凜」

 

「ど、どうしたのよ……? ちょ、なんで目の前に……!?」

 

「負けたよ。まだまだ俺は修行が足りなかったらしい」

 

「ふぇ?」

 

 真面目な顔と真剣な声音の中、スラックス越しに存在を主張する怒張を見せつける。

 原因としては、記憶に生々しい東郷との情事と、夏凜の無防備な行動故にだろう。

 しかし、その程度で制御出来ず勃起してしまう己の逸物はまだまだ練度が不足していたらしい。

 

「そして、こうなったのは、夏凜の、所為だ」

 

「……わたしの」

 

 解りやすく、一言ずつ区切りながら座り込む少女に告げる。

 仄かに酩酊状態故か、抵抗の薄い夏凜の片手を取り、そっと股間に押し当てる。

 少女の手の感触と表情、高鳴る鼓動が自身に響く中で、夏凜は瞳を波面の如く揺らめかせる。

 

「――その、どうしたらいいの?」

 

 



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第十五話 道は決まる

 目の前の少女の顔は赤い。

 その瞳に宿るのは菓子による酩酊と、興味と、様々な感情である。

 刀を握り、大小あらゆる敵と戦う勇猛果敢な彼女も一人の少女という事なのだろう。

 

 スラックスを下ろし、中途半端にトランクスを下ろし逸物を外気に晒す。

 目の前の二刀流の剣士に見せつける竿は、無垢な少女に見せ付ける快感に既に反り立つ。

 肉茎を伝う透明な滴が待ちきれないとばかりに涎を垂らす姿を夏凜はジッと見つめる。

 

「そんなに珍しい?」

 

「珍しいっていうか……、こんなに大きくなったのなんて、見たことないし……」

 

「ほう」

 

 わずかに揶揄いの声音を込めた所為だろうか。

 ふいっと顔を逸らす少女はいつもよりも反発は少なく、寧ろ素直な様子を見せる。

 いつもこの様子であったらと思いつつも、正座する少女の柔らかい手を手に取る。

 

「じゃあ、握って」

 

「――こう?」

 

「ぉ……」

 

「え、大丈夫?」

 

「大丈夫。ほら、刀を握る感じで、……先っぽから出ている汁と一緒に擦って」

 

「ぅぅ……、なんかにゅるにゅるするし……、これで良いの?」

 

 普段よりも素直な少女は従順に俺の指示を聞く。

 責任感が強いからか、自分で決めた事は成し遂げようと片手で肉茎をしごく。

 俺の視線に耐えられないのか微妙に逸物から顔を逸らしつつもチラチラと視線を向ける。

 

 にちゅにちゅと小さな音を立てながら慣れぬ愛撫を夏凜は行う。

 ぎこちない動きで、己が行う行為と目の前の怒張に顔を赤くする少女は可愛らしく感じる。

 強く握りながらも、肉茎をしごき続ける夏凜の形の良い頭に俺はそっと手を伸ばした。

 

「ぇ……、な、何よ……」

 

「ん~、何となく。目の前にあったから」

 

「そ、そう……」

 

 そっと撫でると同時に、夏凜は上目遣いで視線を俺に向ける。

 小さく微笑むと、サッと視線を逸らしもじもじと脚を動かしながらも懸命に手を動かす。

 力強くもじれったさのある少女の動きに、射精感を求めるべく頭を撫でながら指示を出す。

 

「なかなか、出ないわね。これ」

 

「……夏凜、涎を垂らしてみて」

 

「へっ!? よ、涎?」

 

 自身が目の前の逸物を舐める姿を想像したのか、熱い吐息を夏凜は吐く。

 性知識自体はあるが、俺が口にするような内容は想像もした事が無かったらしい。

 俺の顔と涎を垂らし続ける逸物を交互に見る困惑した夏凜を見て加虐の笑みを浮かべる。

 

「勿論。……できない?」

 

「できるわよ! ……涎くらい余裕よ!」

 

 あからさまな挑発に簡単に少女は乗る。

 そう口にすると同時に自身の口をもごもごと動かし、小さく薄い唇を開ける。

 唇の間から舌を覗かせ、透明な唾液がつぅ、と糸を引きながらソースのように怒張に掛かる。

 

 わずかに生暖かい唾液と少女が見せる姿に射精感が高まる。

 コーティングされたそれを、どうとでもなれとばかりに夏凜は愛撫を続ける。

 普段は見せないギャップが可愛らしく感じつつも中々果てない事に少女の手を取る。

 

「こうするんだ」

 

「ぇ……、……!」

 

 怒張を握る少女の片手を俺は掴み、夏凜の手ごと荒々しくしごく。

 それは目の前の少女に見せ付けるある種の自慰であり、彼女を使い俺の怒張は高みを目指す。

 

 目の前に座り込む恥ずかしそうな表情の少女。

 薄いシャツから覗かせる肌は上気し、艶やかな汗が滲む。

 彼女の片手を使い、薄暗い興奮の中、俺は夢中で自慰に耽った。

 

「っ」

 

 びゅ、びゅう、という射精。

 軽い絶頂と共に少女の手のひらに白濁が吐き出される。

 

「……ぁ」

 

 その光景を至近距離で夏凜は見る。

 呆然と初めて男の精を見る少女の姿を、自身の眼球に焼き付ける。

 

「それ、舐めると健康に良いんだよ」

 

「そうなの?」

 

「タンパク質が入っているし。……そして舐めた分だけ胸が大きくなるぞ」

 

「……ぇ、本当に!?」

 

「ああ」

 

 ペロリと夏凜の舌の先端が白濁を舐め取る。

 だが少なかったのか、わずかに小首を傾げながら精をもう一度舌で味わう。

 その艶やかな薄紅の唇、白い喉が動くのを見ながら俺は夏凜の背後にゆっくりと回る。

 

「……変な味ね、これ。あんたの作ったお菓子の方が美味しいわよ」

 

「それはありがとう。気に入ってくれて何より……っと」

 

「えっ、ちょっ、ひゃっ!?」

 

 味の評価を下す夏凜の背中側から抱きしめる。

 有無を言わさず、驚く夏凜の身体は鍛錬をしているにも関わらず柔らかい。

 その感触、鼻をくすぐる髪の匂い、血の通った温かい肉体に俺の神経が過敏になる。

 

 ぎゅうっと毒蛇が獲物に巻き付くように腕を背後から回し力強く抱きしめた。

 俺の行為に一瞬きょとんとする夏凜だが、頬を朱に染めながら小さく抵抗する。

 

「や、やめなさいよ亮之佑! もう終わったでしょ……んッ!」

 

「何事にも報いをって言葉があってな。されるだけっていうのは俺は嫌だ」

 

「知らないわんくッ!」

 

 奇妙な悲鳴を上げる少女の身体を背後から弄る。

 薄いシャツと青色のホットパンツからすらりと伸びる白い肌が眩しく見える。

 抱きしめると分かる夏凜の華奢な身体、シャツの裾から侵入した指先が肌の柔らかさを堪能する。

 

「や、ぁ、やめなしゃぃ……よぉ……」

 

 バタバタと脚を動かす夏凜は、しかし激しい抵抗はない。

 世界の為に戦い続ける勇者とは思えない声を出す少女の背中が押し付けられ一層身体が密着する。

 

「……」

 

 少女の匂いを嗅ぎ、弾力のある柔らかさを感じ、鼓動と吐息を味わう少女の身体を抱く行為。

 それは決して性的な行為ではなくとも、この行為に伴う快感は性行為に近く似ている。

 

「……ぁっ」

 

 日課の鍛錬で引き締まった少女の柔肌を伝い、汗の滲むスポーツブラを少し捲り、薄い双丘に優しく触れる。

 シャツがその存在を隠しながらも、指先で感じる夏凜の柔らかさは確かな女性らしさを感じさせる。

 菓子とわずかな愛撫により夏凜の瞳は更に酩酊するように虚ろになりつつある。

 

「気持ちいい、夏凜?」

 

「わかんない……、ッ!」

 

 持ち上げるように薄い乳肉を手のひらで包み込む。

 同時に中指と人差し指で少女の乳首を挟むと、ビクリと身体を震わせる。

 コリコリと徐々に硬さを持ち始める肉粒に比例して夏凜の息に驚きと艶やかさが混じりだす。

 

「もしかして、夏凜。オナニーした事ない?」

 

「おな……?」

 

「自慰とも言うけども」

 

「……し、してないわよ! ……まっ、それ、強くされると……ッ!」

 

 優しい愛撫を続けると、やや息の荒い夏凜はもじもじと脚をくねらせる。

 嫌々と首を振り、力のない両手が生乳を弄り続ける俺の腕を押さえようとする。

 その脚の動きが目を引き、片手でそっとホットパンツのホックを外し、ジッパーを下ろす。

 

「……ぇ、ぁ、だめ、だめだって」

 

「夏凜、以前キミは樹と共に胸を大きくしようとしていた事があっただろ?」

 

「……?」

 

 羞恥心で顔を赤くし、薄く涙を浮かべる夏凜に話題を提供する。

 それは言い訳を作る材料であり、快楽を知らない少女への小さな揶揄いのような優しさだ。

 乳首を弄りつつ少しずつホットパンツを脱がせ、白のショーツが姿を見せる中で話しかける。

 

 実際に樹と夏凜が讃州中学校の身体測定を行う日が近づくと何かしらの行動をしていた。

 ――そうだったはずだと、やや曖昧な記憶が語り掛ける。

 

「なら、自慰はするべきだ。する事で女性ホルモンの分泌が促進され、成長していく。……いずれは東郷さんのようなダイナマイトボディにな」

 

「そうなの……? 東郷も……こういう事しているの……?」

 

「ああ、夜な夜な一人でこっそり激しくしているさ。だからあんなに大きくなったんだ。そういう話ってしないの?」

 

「……あんまりそういう話題には」

 

「夏凜、これは夏凜の為に言っているんだ。やり方を覚えれば、きっと今よりも大きくなるよ。勿論今も可愛いけど」

 

「かわいいとか、言うなぁ……」

 

 形の良い耳に吐息と共に言葉を囁く。

 その合間にスルリと膝下までホットパンツを脱がせ、小さな下着を外気に晒す。

 小さなピンクのリボンが付いたソレを隠そうとする仕草よりも早く俺の指が動く。

 

「っ」

 

 熱い息が漏れる。

 肌触りの良い下着に触れ、その敏感な部分に指の腹を当てる。

 此方に背中を預け弛緩させる少女の自慰の有無はともかくも、そこは既にしっとりと濡れていた。

 

「ぁぅ……!」

 

 小さく消え入りそうな声で呻く夏凜。

 その秘裂を覆う布地には染みがあり、水分を吸っていた。

 

「っ……! ぁぁ……」

 

 指が布地を少し擦るだけで夏凜は切なげな声を漏らした。

 すりすりと撫でるだけで染みが少しずつ広がっていくのならば、直接触ればどうなるのか。

 

「あぅぅっ……!」

 

「可愛いよ、夏凜」

 

 下着から直接貝状の肉に触れる。

 唇をぎゅっと噛み、異性に触られる経験など皆無だった少女は羞恥の涙を浮かべる。

 その反応が俺の鼓動を高め、自身の薄暗い感情が更に少女を探求するべきだと進言する。

 

「――――」

 

 良く濡れた柔肉。

 薄毛はなく、産毛が生えているだけの秘裂は隠す物は何もない。

 その幼さのある秘裂ながらも、夏凜の反応と感触は俺を夢中にさせた。

 

「ひぁ……ッ! ふっ……、そこ汚いからぁ……!」

 

「夏凜の身体に汚いところなんてないよ」

 

 貝状の肉を手のひらで揉み、一本秘裂からとろみのある蜜を流させる。

 マッサージするように指先で優しくほぐし、少しずつ上へと指先を這わせる。

 俺が求めている場所はすぐに見つかり、一瞬触れるだけでビクンと夏凜は身を跳ねさせた。

 

「ぷぁ、ぁ……はぁ……ッッ!!」

 

 ぎゅううっと両脚の腿が俺の手を締め付け動きを制限しようとする。

 その冷たさと張りのある、やや日に焼けた少女の肌を手の甲で感じながらも愛撫は続く。

 

 陰核。

 肉の芽。

 快楽器官。

 

 呼び方は何であれ、薄い皮に包まれた肉粒は処女でも感じるだろう。

 指の腹で周辺を撫でまわし、爪で包皮越しに肉粒を刺激し、時折上から押し潰す。

 人差し指と中指で交互に陰核を責め続けられ夏凜は口端から細い涎を垂らし声を漏らす。

 

「……ンッ!」

 

 俺の腕を掴む少女の手の力強さを無視して肉粒を弄る。

 硬度を持ち始める少女の乳首と陰核を静かに、確実に、執拗に責め続ける。

 

「! ……!」

 

 身をくねらせる夏凜の動きが激しさを増す。

 脚を動かし、どうにかして強い快感から逃れようと床を叩き、俺を興奮させる。

 

「まっ、出ちゃ……ッ、ぃ……」

 

「大丈夫、夏凜。出して良いんだよ」

 

 自分がちゃんといつもの笑顔を浮かべている自信がなかった。

 普段とは比べようもない程に異性に与えられる快感によがる少女の肉体。

 身体の内側から湧き上がる物を抑えようとする少女を昇らせようと、そっと包皮を剥いた。

 

「ひぃうッッ!!」

 

 昇った。

 首を仰け反らせ、震える夏凜。

 目をぎゅっと瞑り、俺の腕を掴み、小刻みに腰を震わせる。

 

「ひぁ、ぁ、~~~っ、待っ、今敏感で……ッッ!!」

 

 新しく湧き出た蜜液を指ですくう。

 新鮮で熱く淫らな液を剥き出しになった肉粒に塗し親指と人差し指で挟む。

 彼女を悦ばせる為に、ガクガクと腰を痙攣させる少女に快楽を教えるべく奉仕を続ける。

 

「~~、ぃぅ……ッ!?」

 

 逃れようと腰を床に叩きつけ、反面迎えるように愛液が下着の染みを増やす。

 俺を昂らせる夏凜の甘い甘い声、更に聴こうと指が少女を何度も何度も昇らせる。

 快楽の暴力を集中的に少女に教え込み、酒精と絶頂の荒波に体力を削った少女が眠るまで。

 

「……」

 

 そっと夏凜の淫液が付いた指を舐め取り味わう。

 慣れない行為に眠ってしまったのか、随分と穏やかな寝息を少女は立てる。

 服を着直し、片付けを行い、汚れた跡を拭い下着を剥ぎ着替えさせ、証拠の全てを抹消する。

 

 軽い身体をベッドに運び込み、ゆっくりと横たえさせる。

 わずかに乱れた髪を撫で、寝息を立てる少女の唇ではなく柔らかな頬にキスをする。

 そうして少女の部屋から出た俺は、衝動的な行為への若干の後悔と高鳴りを消すべく走った。

 

 家までひたすらに走った。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 夏凜の家から走ること、およそ十分。

 悶々としていた感情も下火になりつつある中で、ようやく俺は歩き出した。

 

『凄まじかったな、いたいけな少女を酔わせて手籠めにするなんて。流石は夜の奇術師』

 

 淡々と、しかし楽し気な声音が耳元で囁く。

 しかし振り向くことなどなく、吐息を吐きながら内からの声に答える。

 

「馬鹿言うな。そういうつもりは無かった。普通に菓子を食べて過ごすつもりだった」

 

『しかし、結果が全てだ』

 

「……ちょっと遊んだだけだ。それに俺はあいつから何も奪ってはいない」

 

『最低だな』

 

「知っているさ」

 

 冷たい声音に肩を竦めて自宅に向かう。

 幾度も見た加賀邸に辿り着き、玄関の扉に触れると自然と開いた。

 靴が礼儀正しく置かれ、何となく見た事のあるソレに誰がいるのかを察した。

 

「……ただいま」

 

 声に応える音は聞こえない。

 静寂のみが鼓膜に響く中で、小さく息を吐きながらリビングを目指す。

 照明は点いておらず周囲を見渡しても誰もいないことを確かめて再び廊下に出る。

 

 洗面所、トイレ、風呂場。

 その全ての扉を躊躇せず開け放ち確かめるがやはり誰もいない。

 

「……?」

 

 そうなると答えは絞られる。

 どこに彼女がいるのかを、自然と脚は階段を上り自室を目指す。

 

 自室のドアを開ける。

 綺麗に整頓された部屋だ。

 部屋主の性格が表れているのか、適度に整った家具とわずかなコーヒーの香りがする。

 

「……いた」

 

 部屋を歩き窓側の寝台に彼女はいた。

 赤い髪の快活そうな表情は鳴りを潜め、可愛らしい寝顔を見せる。

 無防備な少女は俺の寝台で眠りについており、すうすうと小さな寝息を立てる。

 

「……」

 

 その顔を見ると落ち着いた。

 理屈ではなく、ただ、なんとなく安堵した。

 そっと少女が眠る寝台に自身も横たわり、少女のあどけない寝顔を見る。

 

「ただいま、友奈」

 

 一体何をしていたのか。

 涎をわずかに垂らし、家主の寝台で一人何をしていたかを問いつめたい。

 きっと楽しいだろうと思いながら、しばらく俺は目を閉じ休むことにしたのだった。

 

 

 

 



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第十六話 もう放したくない

 身体に感じる違和感に、ふと意識が戻る。

 少女の身体を抱き枕に寝台に横たわっている中で、もぞもぞと少女が動くのを感じた。

 背中を向けて眠っていた赤い髪の少女が寝言を呟き、起き上がるのを俺は薄目で見ていた。

 

「……ん、はれ……? 四人目は?」

 

「……」

 

 わずかに髪が乱れた少女は何か夢を見ていたのか呆然としていた。

 寝ているからか解かれていた後ろ髪、何故か布団を剥いで自分の下半身を見る友奈に俺は声を掛けるかどうか悩み眠ったふりをしていると、赤毛の少女は少ししてから隣で寝ている俺の存在に気付いた。

 

「……りょ……ッ!」

 

「……、すぅ……」

 

「ぁ……寝てる」

 

 東郷からは演技派と言われる俺の寝たふり。

 それは寝起きの少女を欺く事など何一つ問題はなかった。

 起きるタイミングを見失いつつも、ふと小さな悪戯心に寝ているふりを続ける。

 

「……帰ってきてたんだ、亮ちゃん」

 

「……」

 

「寝顔、かわいいな」

 

 ぼそりと呟かれた一言にわずかに呼気が狂いかける。

 ジッと顔付近に感じる視線は柔らかく、髪の毛に触れる手は温かさに満ちている。

 そんな中で少女の声が徐々に近づきつつ、身体に密着してくる少女の香りが鼻腔をくすぐる。

 

「起きて……ないよね」

 

「……」

 

 唇に何か柔らかく瑞々しい物が触れる。

 それは押し付けるような口づけで、俺の髪と顎を両手で押さえた少女からの物であった。

 わずかに、ほんのわずかに薄目で目の前の光景を見ると、両目を閉じた幼顔が視界いっぱいに映る。

 

「――――」

 

「――っ」

 

 ぎこちなく重ね合わせただけの口づけ。

 それにどれだけの思いを込めたのかは目の前の少女にしか分からない。

 友奈の髪が重力に従い垂れ下がり、俺と少女を赤いヴェールの中の世界に招き入れる。

 

 ちゅ、ちゅっと少女から求めるキスに身体が反応する。

 熱い吐息と唾液が口腔を交わし、俺の唇を食べるように唇をわずかに動かす。

 

「……」

 

 ちゅ、ちゅと友奈は口づけを繰り返す。

 言葉は無く、徐々に粘り気のある水音を増していく。

 やがて満足したとばかりに離れる唇の間に出来る透明な糸が珠となり、舌で舐め取られる。

 

「……うりうり~」

 

 ふと己の身体に少女の柔肌が擦り付けられる。

 すんすんと犬が匂いを嗅ぐように俺の身体に顔を押し付ける友奈の行為。

 まるでマーキングのようだと思いながら、俺は少女に抱かれる人形として眠ったふりを続ける。

 

 そんな人形のシャツを友奈は静かに捲る。

 外気に触れる肌の感覚、臍や胸板をゆっくりと少女は見ながら俺の乳首を舐めた。

 ちゅう、ちゅうと母乳を吸い出すような行為は、慣れない感覚に思わず息を止める。

 

「……こんな感じだよね」

 

 何かを確かめるように、ざらついた舌の感触を乳首が感じ取る。

 唇で乳首を挟み込まれ、はむはむと甘噛みされながら、ばれないように我慢する。

 そうして楽しそうに悪戯する友奈はしばらく唇で愛撫を続けた後、胸板に頬を擦りつける。

 

 すりすりと頬肉が胸板に触れる。

 柔らかい髪の毛が、熱い吐息が肉体に少女を感じさせた。

 

「……」

 

「……ぁ」

 

 男の胸板に顔を埋める行為は楽しいのだろうか、とは思う。

 甘い甘い友奈の香りを肺一杯に吸い込み、柔肌の感触を服越しに感じていると、ゆっくりと友奈は身体を動かし、俺の身体の下腹部が、怒張が顔に当たる位置に移動するのが薄目に見えた。

 

「…………、いいよね」

 

 よくないと答える暇は無かった。

 中々起きない事に調子づいたのか、それとも興奮したのだろう。

 躊躇う様子ながらも大胆にスラックスのジッパーを下ろし、トランクスも下ろす。

 

 中途半端な性行為に続き、快活な少女の夜這いに既に怒張は屹立している。

 下着を友奈が下ろすと同時にぶるんと先走り汁が少女の頬に当たり、興奮の吐息が鈴口に触れる。

 反り立つ逸物をまじまじと見ている友奈の姿にわずかに息を止めつつ、少女の行動を観察する。

 

「これが……亮ちゃんのおちん……、私の……」

 

 ツン、と人差し指で友奈は肉茎に触れる。

 性行為においてじっくりと見る機会は無かったからだろうか。

 少女に見せ付けるという事に興奮し、大きくそびえ立つ怒張が無垢な少女の視界に収まる。

 

「――ん」

 

「……!」

 

 愛おし気に、徐に逸物に顔を近づけて友奈は亀頭に口付けした。

 ちゅ、ちゅと今までの行為ではしてこなかったフェラチオを眠っている間に少女は行う。

 そこには少女の瞳に浮かぶわずかな悪戯心と俺が眠っているという安心が、彼女を普段よりも大胆にさせていた。

 

 ちろちろと舌の先端が亀頭に触れ、鼻息がこそばゆく感じる。

 溢れ出す滴を丁寧に舐め取り、喉を鳴らす友奈の表情は前髪に隠されて見えない。

 

「不思議な味……」

 

 羞恥心はありながらも、年相応に少女も己を貫いた怒張に興味があるようだ。

 隠すことなく唇の柔らかさと吐息の熱さと唾液の感触を少女の愛撫により伝えられる。

 既に先端より滴がいくつも肉茎を伝うが、それを舌の先で舐め取る姿は薄目にも妖艶に映る。

 

 やがて少女は更に大胆になる。

 興奮に頬を朱色に染めながら普段の快活さが鳴りを潜めた少女はゆっくりと膝立ちになる。

 ごくりと生唾を呑むのが聞こえそうな少女が、これから何をしようとしているのか察しが付いた。

 

 薄目ながら改めて少女の姿を寝転がりながら見る。

 俺が帰宅した時には一人寝台で寝転び眠っていた少女。

 彼女が纏うのは紺色のワイシャツで、白い肌にミルク色の下着がチラチラと端から覗く。

 

 彼シャツという言葉が頭を過る。

 そんな俺を余所に目の前の少女は下着を脱ぎ、静かに腰の間に脚を付く。

 ゆっくりと、慎重に俺の怒張を掴み、ゆっくりと腰を下ろし照準を合わせようとする。

 

「……ぁ!」

 

 ぬめる秘裂が亀頭と口づけする。

 十分に濡れている膣口を鈴口と擦り合わせながら、既に欲望に支配された少女は必死である。

 額から汗を流し、ときおり此方を見ながら、幾度か失敗しながらも少女は照準を合わせる。

 

「……ぁ、入った……!」

 

「……」

 

 ちゅぷりと亀頭が膣口に呑み込まれる。

 入り口のきつさは変わらず、中の媚肉は熱くぬめり気を抜くと果てそうになる。

 少しずつ、少しずつ、精密な作業を行う少女に呑み込まれる肉茎が少し挿入され、

 

「……ぁぁ……ンッッ!!」

 

「……ッ」

 

 声を抑えながらも、友奈が小さく絶頂する。

 両脚をガクガクと震わせ、にちゅにちゅと愛液が蜜壺から湧き出し肉茎に垂れ落ちた。

 同時に雁首を肉壁が締め付ける快感に、遂に寝ているふりの我慢の限界が訪れた俺は、

 

「――ふん!!」

 

「ぁ……ぇっ、ァ」

 

 ――最奥まで貫いた。

 少女の腰を掴み、力の限りに彼女の身体を引き寄せ、ぱちゅんと腰と尻肉がぶつかる。

 必死に身体を支えていた両脚の支えは無くなり、余すことなく怒張は少女の奥の奥を叩く。

 

 一瞬呆然とした表情となった少女。

 哀れな少女に一秒遅れて快楽の荒波が理性を剥ぎ取り、女を晒した。

 

「ぁ、ぁ、~~~っっ!!!」

 

 甲高い声を上げた友奈はシーツを掴み、背筋をビクンと仰け反らせた。

 亀頭に当たる奥の感触を感じながら、痛い程に締め付ける媚肉に果てる事だけは堪える。

 奥歯を噛み締め、しかと見開いた己の眼で悪戯をしていた少女の姿を正確に捉える。

 

「おはよう、友奈」

 

「……んっ! りょ、んふっ……ッ!」

 

 臍側の膣肉を引き抜く際に雁首で引っ掛ける。

 熱く震える少女の媚肉を的確に逸物で激しく擦ると、少女は両手を俺の腹に置く。

 混乱と羞恥と快感を混ぜ合わせたような表情をする友奈に思考の機会を与えない。

 

 ぱちゅぱちゅと腰と尻肉が淫らな音を奏でる。

 少女の腰を掴み、彼女を持ち上げては再び貫くという行為の激しさに少女は震える。

 無理やりに、獣のような激しさに、騎乗位にて優位なはずの少女に余裕は一切無かった。

 

「あぅッ、ぁ!」

 

 ただ羞恥のヴェールは厚い。

 先ほどのようなあられもない声を上げるのを目の前の少女は恐れている。

 羞恥に涙を目端に浮かべながら、我慢に食い縛った歯の隙間から甘い声が漏れ出る。

 

「ほら、ここ。友奈の愛液で泡立っているよ」

 

「……んは、ち、ちが……ッ!!」

 

 嫌々と首を振る少女の顔は、ほんのりと朱色が混ざる。

 口端から細い唾液が垂れ、それを拭う事すら思考になく幾度も貫かれる。

 空気が混じりぐちゅ、ぐちゅ、と泡立つ蜜壺と肉茎の結合部は写真に残したい程に猥らだ。

 

「自分から挿れた癖に、……そんなに欲求不満だったの?」

 

「……! そんなわきゃっ……」

 

 柔らかい尻肉を掴み、ゆっくりとピストンをする。

 目の前の少女の甘い嬌声を聞く為にあえてスローで彼女の敏感な部分を怒張で擦る。

 否定の言葉を紡ぐ為に口を開こうとした少女は、嬌声を漏らそうとする己の口を慌てて閉じた。

 

「ねえ、友奈。夜這いは別に悪いわけじゃないけど」

 

 ピタリとピストンを止める。

 再び昇りそうな少女は一瞬だけ不満そうな顔をし、慌てて取り繕うような表情をする。

 無垢な少女を自分の女にしていく事に口角を吊り上げながら、荒い息をする少女を見上げる。

 

「……ぇ、な、何? 亮ちゃん」

 

「せっかくだからさ。自分で動いて」

 

「えっ」

 

「俺が起きなかったらさ。自分でしてたんでしょ? ……俺寝起きで疲れたからさ、ね?」

 

「…………うん」

 

 己の悪戯がばれた事への罪悪感からか神妙に友奈は頷く。

 ほぼ裸ワイシャツの少女は先ほどの動きを真似しようとぎこちなくも腰を動かす。

 

「……ッ」

 

 騎乗位という体位は女性側にも明確な性的な欲求が無ければ成り立たないと俺は考えている。

 普段は温厚で快活な少女が淫らな声で快感に吐息をし、腰を動かしている姿を目にする。

 ん、んふ、と鼻息を漏らし自身の膣の中で、友奈は怒張を使い贅沢な自慰を楽しんでいる。

 

「ぁ、ぁっ、はぁ」

 

 膣内でゆっくりと怒張が引き戻され、押し込まれる。

 奥の奥から蜜肉の間を何度も何度も動くのを逸物から感じながら、乱れる少女を見る。

 蕩けたような表情で自分がどう動くのが気持ちいいのかコツを掴み始めた動きをする友奈。

 

「――気持ちいい、友奈?」

 

「うん、ぁ……」

 

 少女の着ているシャツのボタンを一つ一つ丁寧に外していく。

 わずかに汗が染み込んだ紺色のシャツからは徐々に雪のような白い肌が姿を見せる。

 下にはブラジャーは無く、ぷるんと手のひらに包み込めそうな柔らかさの双丘がシャツから覗く。

 

 既に先端は硬くなり、桜色の乳首は上向きだ。

 彼女の乳房は少女が動く度に極上のプリンのように揺れ動き、自然と手が吸い寄せられる。

 まろやかな友奈の生乳の感触を感じながら乳首を指で摘まむと、きゅっと膣肉が締め付ける。

 

「期待してたの……?」

 

「……! ……」

 

「そっか」

 

 否定はされなかった。 

 その言葉に友奈は目を見開き、かああっと顔を赤くしながらそっと顔を背けた。

 彼女の行動だけで十分で、湧き上がる薄暗い感情が明確に笑みを浮かべたのが分かった。

 

「!? っぁぁ……!!」

 

 ならばその期待には応えよう。

 俺は静かに少女の柔らかな尻肉を掴み、肉茎を押し込むようにピストンを始める。

 挿入というよりも肉穴を擦り、彼女自身を玩具に荒々しく怒張をしごく感覚だ。

 

「ぁ、ぁ、あ、やあ……ッッ!」

 

 ずちゅずちゅと腰が尻肉を叩き、水音が響く。

 自分のペースに代わり荒々しい獣のペースに友奈はあっという間に余裕を失くす。

 全力で剛直を猛烈な勢いで突き上げる俺に対し、シーツを掴む友奈はソレに耐えられなかった。

 

 膣内は何度も震え、蜜肉は唇の肉よりも柔らかい。

 不埒な水音、我慢出来なくなった俺は本能に従い奥を突き続けた。

 

「んぁぁ、ぁぁッ……!!」

 

 ぎゅうっとシーツを掴む友奈の身体が跳ねる。

 恥じらいのある嬌声を聞きながら俺は白濁を吐き出し、刹那の快楽に浸った。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 ひゅ、はふと息の荒い友奈を抱き抱える。

 汗がシャツに染み込み、濃厚な彼女の匂いが鼻腔をくすぐる中で少女を寝かせる。

 怒張を挿入したまま少女を寝台の上に乗せて、俺はその上に圧し掛かった。

 

「……、あったかい」

 

「ただいま、友奈」

 

「おかえりー」

 

 とろんとした瞳で俺を見る友奈。

 薄紅色の瞳が俺を捉え、小さく微笑みながら背中に手を回す。

 シャツは乱れ、白い柔肌を覗かせる姿を見た者は、恐らくこの世のどこにもいないだろう。

 

「んッ……!」

 

 何となく少女の乳肉に触れる。

 雪のような肌、餅を思わせる驚きの柔らかさが手のひらに広がる。

 

 唾液で肉粒をまぶし、ふにふにとした弾力を唇で挟み込む。

 持ち上げるように、そっと手のひらでこねるように揉むと少女が小さく呟いた。

 

「亮ちゃんって、私の胸……好き? 大きい方が好き?」

 

「友奈の胸が好き」

 

「……そっか」

 

「前より、少し大きくなったと思うよ」

 

「本当!?」

 

「う、うん」

 

「やったー!」

 

 そう告げると、にへらっとした笑みを友奈は浮かべる。

 もしかして気にしていたのだろうかと少女の髪の毛に指で触れながらそんな事を思う。

 首筋を撫でるとくすぐったそうに笑うのでそのまま続けているとやんわりと手で止められる。

 

「……ねえ」

 

「ん?」

 

「ぎゅって……して」

 

「……」

 

「もっと強く」

 

 要望を叶えるべく俺は少女の柔肌を抱きしめる。

 俺よりも体温が高い友奈の肌は柔らかく仄かに甘い香りがする。

 背中に手を回し、力強く抱き締めると吐息と共に耳に囁き声が響いた。

 

「……これ、安心するね」

 

「これぐらい、いくらでもしてやるよ」

 

「――亮ちゃん」

 

「どうした?」

 

「亮ちゃん」

 

「ん?」

 

「すき」

 

「俺もだよ」

 

 額を触れ合わせる。

 腹を、腰を、接合部を密着させて、強く強く抱き締める。

 何者の介入も許さないとばかりに隙間などなく、お互いが腕を背後に回す。

 

「変な夢、見ちゃった」

 

「――悪夢か?」

 

「亮ちゃんがいなくなっちゃう夢とかも」

 

「――――」

 

 夢の中の俺はもしかしたら死んだのだろうか。

 そう尋ねようとした口を開けて、言葉はなく、小さな吐息と共に再び閉じた。

 夢は夢だと冷たい頭脳が囁き、何か気の利いた言葉を告げるべきだと心が囁く。

 

 至近距離にある幼顔の少女。

 今にも泣きそうな少女の頬を小さく撫でながら笑いかける。

 

「――だったらさ、放さないでくれよ」

 

「……えっ」

 

「こうやってさ。……俺は放す気なんかないよ」

 

「――――」

 

「夢は夢さ。俺はここにいる。友奈の隣にいるよ」

 

 ちゅ、ちゅと啄むような口づけをする。

 額を合わせ、薄紅色の瞳には優し気な笑みを浮かべる俺が映り込んだ。

 しばらくジッと友奈は俺を見ていたが、やがて瞼を閉じ、顎を上げて口づけを欲した。

 

「ん――」

 

 未だに挿入している怒張が再び力を取り戻すのを感じる。

 それは目の前の少女も解ったのか、両手、両脚を俺の背中や腰に回す。

 やがて、長い長い口づけの果てにつぅ、と透明な糸を口端に垂らしながら少女は言った。

 

「私は、……私も亮ちゃんを放さないから」

 

「ずっと?」

 

「ずっとだよ!」

 

 そう改めて口にした。

 そうして笑みを浮かべる少女は、相変わらず可憐であった。

 友奈の脚が腰を押し、膣の最奥へと復活した怒張をぎゅうっと押し付けさせる。

 

 ――ぐちゅりと結合部から淫音が聞こえた。

 

「亮ちゃん」

 

「――――」

 

 好きに動いて、と艶やかな唇が、快楽を望む言葉を鼓膜に響かせた。

 

 

 



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第十七話 今年も、桜を見に行こう

 パンッ、と空気を叩く音が鼓膜を震わせる。

 目の前で両手を合わせ、まるで神に拝むように少女が俺に頭を下げている。

 ぺこりという音が聞こえそうなソレは、どうやら『お願い』をする為の物らしい。

 

「明日までだから……!」

 

「東郷さんには……?」

 

「前回頼っちゃったから、連続では頼りにくくて……。ダメ……かな?」

 

 両手を擦り合わせ、上目遣いで見上げる薄紅色の瞳は潤んでいる。

 計画的ではなくとも、これだけで大半の男を堕とせそうな仕草に少女は気付かない。

 もしもこれを無意識ではなく意識的に行われたら、俺も生唾を呑み込むかもしれない。

 

「……」

 

 後頭部で揺れ動くポニーテールを見ながら、しばらく俺は思考を重ねる。

 帰宅途中の出来事で、周囲を見渡しても誰もいないのは運が良いと言えるのだろうか。

 

「珍しいな……。なんだかんだ、締め切り前に提出してたじゃないか」

 

「うん。その、私の中では既に提出した物だと思ってて……。ね? お願い、なんでもするから」

 

「…………、分かった」

 

「やったー、ありがとう!」

 

「……」

 

 大げさに両手を上げて笑顔で喜ぶ友奈の姿をジッと見る。

 制服姿の赤い髪の少女、幼さの残る柔和な笑みに釣られるように含み笑いをする。

 なんとなく首元の指輪を制服越しに指で触りながら少女と共に加賀邸へと向かうが、

 

「あ、待って。スーパー寄って行こう?」

 

「いいけど」

 

 自然と少女に手を引かれ、同じ歩幅で通い慣れたスーパーに方向を変えた。

 適当に少女の白いうなじを指先でなぞる悪戯を行うと、ひゃッという声が少女から漏れる。

 基本的に公の場では触れ合いはしない俺だが、周囲に人がいない為に軽い悪戯心に囚われる。

 

「んっ、くすぐったいよぉ亮ちゃん」

 

「ここか、ここがいいのか~」

 

「にゃ、やめてよ〜!」

 

 首筋を指の腹で撫でると小さな笑みを浮かべつつも身体をよじらせる。

 そんな風にじゃれ合い、スーパーに着くとピタリと悪戯を止めて、しばらく別れる。

 

「あれ、今日白菜安いっけ……ふーん、買おう」

 

 チラシには載っていなかった特売品等を見つけて喜ぶ。

 自炊の精神が染み付いているなと思いながら会計を済ませて再度合流する。

 彼女の持つ透明な袋の中にはお菓子や飲み物等が幾つか入っているのが見えた。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん!」

 

 打てば響くような返事。

 十分程歩き、加賀邸に辿り着き玄関を開けると、先に友奈が入り込む。

 その行動に微かな疑問を覚えたが、その真意を理解するのはわずか数秒後であった。

 

「おかえり!」

 

「……ただいま」

 

 可憐な華が咲き誇り、家主を出迎える。

 いつまでも飾っていたいと、自分だけの物にしたい華が。

 

 

 

 ---

 

 

 

 

「ほら、もう少しだ」

 

「うん」

 

 カリカリとペンが紙の上に字を形作る音が聞こえる。

 一つ一つの単語が集まり、意味を成す文章へと昇華していく音だけがリビングに響く。

 

「……」

 

「……」

 

 制服姿の少女、黒縁眼鏡を着用した友奈の瞳は心なしか凛々しく見えるのは錯覚か。

 俺が使っているからと伊達眼鏡を借りた少女の横顔を見ながら、ぽりぽりと菓子を啄む。

 

 基本的に友奈は集中力が高く、躓く場所のみを丁寧に教えれば手間が掛からない。

 だいぶ前になるが、テストで赤点を取った際に東郷から受けたお仕置きがトラウマらしい。

 スパンキングで揺れる白い尻肉が紅葉のように徐々に赤くなる様は今でも覚えている。

 

「……」

 

「……お仕置き」

 

「……!」

 

 ぼそりと呟き、わずかに反応した少女に小さく笑みを浮かべる。

 チラッと此方を見る友奈の視線を余所に、菓子を片手に進行状況を尋ねる事にする。

 

「どう?」

 

「あと一問だよ」

 

「解らなかったら遠慮せず聞いてね」

 

「うん、……ところでお仕置きって」

 

「独り言。眼鏡姿似合うよ、友奈」

 

「ありがとう、賢そうでしょ」

 

 くいっと人差し指で眼鏡のテンプルを持ち上げる姿はより可愛らしく見える。

 曖昧な笑みを浮かべながら、再び課題の用紙と格闘を進める少女に静かに近づく。

 夕飯の準備は終わり、教科書の内容も見飽きたので友奈が最後の問題を解くのを見守る。

 

 やがて五分程経過した後。

 復習も含めて、およそ二時間と少しの課題との闘いは無事終焉に導かれた。

 勝利を収めた友奈はう〜っと唸り声を上げながら、ゆっくりと腕を上に伸ばした。

 

「お疲れ様」

 

「やっと、終わったよー。……ありがとう、亮ちゃん」

 

「ん」

 

 手早く完成した課題をカバンに仕舞う友奈。

 告げられる感謝の言葉はじんわりと俺の心を温まらせるが、

 

「じゃあ、なんでも言う事、聞いて貰おうか」

 

「う、うん。……それで、なに……するの?」

 

 それはそれ、これはこれと俺は薄暗い笑みを少女に向ける。

 恐らくは彼女も理解した上で言ったのではないかと思うが、聞いてみないと不明だ。

 そんな事を思いながら黒縁眼鏡を取り上げ、ジッとこちらを見上げる少女と視線を交わらせる。

 

 広々としたリビング、絨毯の上の座布団に座る少女と何となしに見つめ合う。

 薄紅色の瞳は大きく見開かれ、俺と友奈はしばらく睨めっこをするようにお互いを見合う。

 何かしらの意図を込めたわけでもなく、ただ何となく顔を突き合わせて無言で見つめ続ける。

 

「……」

 

「……」

 

「……ぷわぁ」

 

「……っ、ふふ」

 

 一分が経過した後、適当な変顔を見せると小さく友奈は笑う。

 柔和な笑みを浮かべた少女は小首を傾げて隣に座る俺に飛びつき、抱き着いてくる。

 俺の頬に頬を擦りつける友奈は、楽しそうに俺の首裏にぎゅうっと両腕を回し力を込めてくる。

 

 そのまま友奈に押し倒され、絨毯の上で抱き着かれる。

 不快感などなく、寧ろ仄かな甘い香りと熱い吐息に俺の神経が安らぐのを感じる。

 リビングの天井の染みを数えながら、手持ち無沙汰な両手は躊躇う事はなく少女の臀部に触れる。

 

「ん……」

 

 見慣れた冬の制服、オフホワイトのプリーツワンピースとグレーのショートジャケットといった制服は変装の際に着たことがある。

 寒い場合、東郷のようにカーディガンを上に着用する事も出来る制服越しに柔らかな尻肉を揉む。

 手のひらが沈むような弾力のある柔肉を両手で揉みしだくと、首筋に熱い吐息が掛かる。

 

「ぁっ!」

 

 ぱんっ、と制服越しに臀部を叩く。

 

「や、や……! ぁ」

 

 荒々しく両手でこねるように揉むと小さな吐息が、叩くと甘い声を聴かせる。

 手の動きに合わせ友奈が喘ぎ、まろやかな弾力と合わせて俺の怒張を反り立たせる。

 

「ん……?」

 

「むぅ……」

 

 そうして尻肉を手のひらで味わっていると、首筋に何かが食い込む感覚。

 チラリと目を向けるとわずかに拗ねたような顔で、吸血鬼のように友奈が歯を立てている。

 少女の歯の感触を肌で感じ、熱い唾液と息に反抗的な意志を感じ、静かに話しかける。

 

「がおー」

 

「どうしたの?」

 

「ぁ、えっと、美味しそうだったから……?」

 

「そうなんだ」

 

「ぁ……んッ」

 

 友奈は友奈で俺を味わいたいらしい。

 あるいは、快楽から目を逸らそうとしているのかもしれない。

 どちらにしても俺も友奈を味わおうとスカートの中に両手を忍び込ませ、尻肉を割り開く。

 

「ぁっ、りょちゃ、開かないで、ふぁ!」

 

 スカートの中は外よりもわずかに熱く、俺の両手が弾力のある臀部に触れる。

 左右から手を入れ、秘部をこじ開けるように尻肉を開き、秘部の周囲に指を這わせる。

 マッサージをするように下着越しに秘部に触れると切なげな吐息を友奈は漏らした。

 

「ねえ、友奈」

 

「なに……?」

 

 そんな可憐で淫らな少女の形の良い耳に俺は囁く。

 先ほどの『なんでも』という言葉を安易に使う事の意味を教える為に。

 耳を傾け俺の言葉を聞いた友奈はわずかに疑問の顔をし、理解が及んだのか顔を赤くする。

 

「……え」

 

「なんでも、だろ? ほら、はやく」

 

「ぅ……うん」

 

 コクリと頷く友奈は、密着させた身体を離して絨毯の上にゆっくりと仰向けとなる。

 そして、後ろに開脚するように黒色のハイニーソに包まれた肉感ある太腿を持ち上げる。

 俺に見せ付けるように脚を肩付近にまで持ち上げて、自然とスカートから下着が露わになる。

 

「ん……」

 

「……」

 

 自らの恥部を突き出すように、頼まれたとはいえ異性に披露する。

 それはどれだけの羞恥が伴うのだろうか、顔を赤くし、わずかに瞳に涙を滲ませる少女。

 脚を持ち上げ、上下が一体化した制服は臍まで垂れ下がり、ピンク色の下着と尻肉が晒される。

 

 両手は脚を下げないように自ら内腿を抱えて俺へと見せ付ける。

 程良い筋肉と脂が乗った少女の肉と、おむつを替えるようなポーズをする少女の下着。

 羞恥の涙を浮かべ、それでも止めない健気な友奈のショーツには真新しい染みが浮かぶ。

 

 薄っすらと秘裂の形に浮かび上がる下着と、何よりも友奈の表情が俺を興奮させる。

 征服感すら得るような、巷ではまんぐり返しと呼ばれるソレを少女がする事に高鳴りを覚える。

 

「恥ずかしい……?」

 

「……ッ」

 

 敢えて口に出すとふいっと薄紅色の瞳を逸らす。

 すべすべの太腿と黒色のハイニーソで覆われた腿肉の間を手で這わせる。

 動かないようにと言いながら、先ほどの吸血鬼の真似をするように白い内腿に甘噛みをする。

 

「ぁ……、ぁッ」

 

 肉厚で弾力のある腿肉を確かめ、もう片方の肉も頬張る。

 捕食するように、摂取するように、メインディッシュの前の前菜を食べる。

 熱い吐息と共に歯が触れると、びくりと内腿を震わせる少女の下着は愛液が染み込んでいく。

 

 そうして既に湿った布切れに顔を近づける。

 メインディッシュを目前とし、どう調理しようかと思い肺一杯に匂いを嗅ぐ。

 

「……やっ、そんなところ、嗅がな、んぁ……ッ!」

 

 下着越しに秘部を指で撫でる。

 誘うように淫液で下着を濡らし、ゆっくりと、少しずつ速く上下に擦る。

 ちゅぷ、ちゅぷっと水音を聞かせる友奈は呼吸を乱しながら指での愛撫に身を委ねる。

 

「……ぁ、ぁ、ああっ……!!」

 

 昇った。

 わずかに激しく下着越しに擦ると、唐突に腰を震わせる。

 じんわりと広がる真新しく濃厚な愛液がもはや下着の役目を失くした布切れを濡らす。

 

 絶頂を味わった身体はわずかに弛緩し、自然とポーズが解け掛ける。

 そうはさせないと少女のくびれた腰を掴み、顔を近づけられるように持ち上げる。

 下着を剥ぎ取ると淫らな香りと女の愛液が糸を引き、薄い毛に珠を作る姿を視界に収める。

 

「友奈ちゃんの、美味しそうだね」

 

「はっぁ、……ぇ、ぁ、まって、今はあぁ……!!」

 

 我慢など出来なかった。

 引き留めようとする少女のか細い声音を無視して貝状の肉を口に含む。

 ばたばたと動く太腿を強引に掴み、じゅるるっと厭らしい音を立てて淫液を啜り飲む。

 

「んっ、ま……、ぁ、~~~ッ!!」

 

 蜜壺から溢れ出す蜜液を舌でがむしゃらに舐める。

 ひくひくと動く陰口を丹念に味わうと一際濃厚な液が頬に飛び散った。

 そっと脚を下ろすと、はッ、は、と呼吸を乱しながら友奈はぽうっとした表情で俺を見上げた。

 

 制服のスラックスをそそくさと脱ぎ、出した怒張は既に汁を垂らしている。

 未だに羞恥と興奮とかすかな期待を宿した瞳の友奈の身体をゆっくりと対面座位で貫く。

 幾度か重ねた事のあるとろとろの膣肉は、変わらず初々しい締まりで俺を迎え入れた。

 

 ゆっくりと少女を串刺しにすると、悦楽の朱を頬に差す。 

 その姿を見られるのが嫌なのか俺の背中に手を回し、顔を首に埋める。

 

「んぅ……!」

 

 ぱちん、という柔らかい音。

 白い尻に手を這わしながら、腿が薄い脂肪を叩く。

 奥の奥まで深く貫き、入り口付近まで引き戻す度に秘裂から生暖かい蜜がこぼれる。

 

 一瞬汚れる事を気にした俺は少女の制服を脱がす。

 同時にブラジャーを剥ぎ取り己も服を脱ぎ、裸での触れ合いを楽しむ。

 下半身がぴたりと結合し離れない中で、より密着させるべく少女の軽い身体を持ち上げる。

 

 俺が何をしようとしているのか気付いた少女は両脚を腰に回す。

 俗に言う駅弁という体位に切り替え、ぬるりと汗ばんだ腿と尻肉が触れ合う。

 

「ひゃぁ、ぁぁぁっ……ッッ!!」

 

 快楽に耐えられなくなったのか背筋を反らす友奈の奥に膣肉を擦るように叩きつける。

 秘裂から溢れる蜜液が肉茎へと垂れ落ちる中で、髪を揺らし少女は切なげな声を上げる。

 汗を流し、頬を朱に染め、口端から涎を垂らす光景に俺はリズミカルに少女を突き上げる。

 

「ぅぁ、ぁ、ぁ、~~~~、ひぁ……ッ!!」

 

 絶頂の波に揉まれた少女を更に追い込む。

 天国へと昇る少女の締め付けぬめる肉に怒張を突き立てる。

 揺れる乳房に噛みつき、抱きしめながら怒張の存在を少女の身体に徹底的に教え込む。

 

「ま、まって、ストップ、でちゃ、ぅ」

 

 いくらでも出して欲しい。

 少女が快楽に溺れ、俺に溺れて欲しい。

 ぴちゃぴちゃと絨毯に蜜液をこぼし、少しこの場を離れようと少女を抱えて歩き出す。

 

「ぁ、ぁっ、ぁっ……!!」

 

 歩く度に少女の蜜肉が蠢くのが怒張に伝わる。

 振り落とされないように両手両脚で抱き着く少女の肉に、ぱんぱんと肉が叩く。

 

「ぁ、もっ、だめ……、やぁぁっ……ッッッ!!!」

 

 リビングを抜け、廊下に辿り着いた瞬間に友奈が震える。

 同時に限界を超え、少女の奥へとこみ上げる物を全て吐き出す。

 

「はー……ぁ」

 

 白く視界が染まる中、濃厚な精液を最奥へと注いでいく。

 思わず倒れ込みそうな感覚に少女の身体を抱き寄せ堪えると、ふと気づく。

 結合部が妙に生暖かく、どこかで嗅いだ事のある少女の黄金水が臀部を伝い廊下に滴る。

 

「ご、ごめっ、止まらなくて……」

 

「……大丈夫だよ」

 

 しょわわ、と水音が鼓膜に伝わる。

 その音を作り出した快楽に決壊した少女は俺の肩に熱い吐息を掛ける。

 やがてぽたぽたと少女の尿が止まった中、涙ながらに謝罪する少女の身体を抱きしめて囁く。

 

「気持ち良かった?」

 

「……うん」

 

「そっか。ならいいんだ。……お風呂に入ろうか」

 

「うん」

 

 少女の生暖かい水を脚に感じながら口づけを交わす。

 申し訳なさと、羞恥と、後悔と、それ以上の興奮と満ち足りた吐息を漏らす少女。

 そのまま両手両脚で抱き着く少女を抱えて歩くと、ぐじゅぐじゅと結合部から淫音が聞こえた。

 

「……」

 

「する?」

 

「……」

 

「……ん」

 

 困った事に、吐き出したばかりの怒張はむくむくと少女の中で復活の兆しを見せる。

 怒張の動きに気付き、困ったような、嬉しそうな顔を見せる友奈もまだ体力はあるようだ。

 様々な想いを込めた言葉に頷き、風呂場に連れ込んだ俺はシャワーに濡れながら少女を抱いた。

 

 

 

 ---

 

 

 

 若さに任せた行動、その片付けを終え、少女と共に寝台に倒れ込む。

 そうして微睡みに、浅い眠りに誘われていると鈴音の声が子守歌のように聞こえた。

 

「今年も春が来たね」

 

「……ん」

 

 声の方向に目を向けると、此方に目を向ける少女。

 薄紅色の瞳と告げられた言葉に、ゆっくりと疲れた頭脳が働きだす。

 

「そうだな……、今年も、そんな時期だな」

 

「お花見、しようね」

 

「皆で?」

 

「うん、勇者部の皆で」

 

「まあ、風先輩は花より団子だろうけど」

 

「そうだね、夏凜ちゃんも、東郷さんも、園ちゃんも、樹ちゃんも、皆一緒に」

 

 少女の頭に手を伸ばす。

 さらさらとした手触り、艶のあるわずかに濡れた赤い髪の毛を手で触れる。

 他愛無い会話をする事が出来るのは、日常の合間の戦いで得られたご褒美だろう。

 

 前回の人生よりもはるかに濃密で、死に近しい旅路を歩いている。

 天の神は退けたけれども、それでも世界を取り返せた訳ではなく、寧ろこれからだ。

 

「そうだな、皆で行こうな」

 

「うん」

 

「――二人だけでも行こうな。……あの桜の木を見に」

 

「そうだね、今年も……来年も……」

 

 俺と友奈だけの思い出の桜を見に行こう。

 頭を撫でられて眠たそうな顔をする少女に笑い掛けるとコクリと頷く。

 幼げな顔で何かを求めるように細い腕を俺の身体に回し、ゆっくりと目を閉じる。

 

「……ぅん、ぜったいに」

 

「何時に起こして欲しい?」

 

「亮ちゃんと同じ時に」

 

「……分かったよ」

 

「お花見、場所、あるといいね……」

 

 抱き枕のように俺の身体を抱き、眠りという水に沈み始める少女。

 その無防備な表情を見せる事に絶大な信頼を感じ取りながら、眠るのを見届ける。

 

「……それなら、きっと、大丈夫だよ。友奈」

 

 とんとん、とお腹をリズミカルに叩きながら。

 子守歌のように、愛おし気に、狂おし気に、俺は囁いた。

 

 

「きっと、――死ぬまで、ずっと一緒にいるから」

 

 

 




『果てなき夜で、貴方に愛を』-完-   

ひとまず、ここで奇術師の淫らな日常話は終わりです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
感想、評価、心よりお待ちしております。


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【番外】白と、濃緑と、血紅だけが

 白いビキニが彼女の雪原のような白い肌によく映える。

 両手を後ろに回し、室内で水着を着用する少女はチラチラと己の姿を見る。

 ほんのりとした香りが漂う空間、どことなく妖艶な雰囲気を漂わせる照明の中、視線が交わる。

 

「その……似合うかしら」

 

「ああ、美しいと思うよ」

 

「……」

 

 湯舟に浸かるように、目の前の少女、東郷はそう告げると薄く頬を赤らめる。

 長く艶のある髪を上に纏め上げた姿は、普段は肩から下げている為に新鮮に感じる。

 以前に見たのは一緒にお風呂に入った時以来であろうかと、ジッと少女の姿を見る。

 

「……っ」

 

 一瞬のみ交わった濃緑の瞳は照れ臭そうに先に逸らされる。

 染みが無く、病的なまでの白さとかすかな羞恥が少女の黒髪と美しさを更に引き立てる。

 白い布地に覆われた豊かな双丘や臀部は、彼女が動く度に揺れ動き俺の視線を奪い取る。

 

 薄い脂肪と肉付きの良いお腹は程良く引き締まり、太腿もまた曲線美を描いている。

 ユリの花が刺繍された布切れ、少し気になるのか布からこぼれる尻肉を少女の指先が直す。

 『白』という清純さながら、どことなく女の色香が漂う姿ははっきり言って性的である。

 

「そ、そんなに……見ないで、亮くん」

 

「可愛いよ、東郷さん。可愛いよ」

 

「……もう」

 

 上から下へ、下から上へ飽きる事なく見続ける。

 そんな風に見ていたが、体躯を両手で隠し、恥じらいを示す少女に正気を取り戻す。

 既に稼働している怒張よりも、本日の目的の意味は何だったかと思い出し息を吐いた。

 

「ああ、写真撮影だったね」

 

「違うわよ、亮くん。……亮くんが整体してくれるって言うから……」

 

 ――肩が少し重いのよ。

 そんな言葉、眼の前の少女が何気なく呟いた言葉が切っ掛けであった。

 確かに重たそうな物をぶら下げていそうな少女の為に俺は何か出来ないかと思った。

 

 幸いにもマッサージに関しては自信があった。

 揉んであげられる親族はもう誰もいないけれども、紳士淑女や可憐な少女達がいる。

 彼ら彼女達を実験体にして着実に磨いたマッサージ技術は確かな物となったのである。

 

 第二の人生を送る中で、やはり勉強は素晴らしい物だと思った。

 武術と等しく、奇術と等しく、整体もまた学べば学ぶほどに上達していく。

 自宅の向かいに住んでいる少女や、金色の髪の少女が太鼓判を押すほどには努力した。

 

 その過程は省くがこうして今日東郷を誘ったのだ。

 熱心に口説き、自宅に連れ込み、白色の水着を着させマッサージの為に肌を露出させる。

 目の前の少女も何だかんだで水着を着用し、室内で肌に触れる事も既に許可を貰っている。

 

「そうだった……。今日の為に血行……いや結構勉強したんですよ、東郷さん」

 

「ふふ……聞いたわよ、ありがとう」

 

「いえいえ……。あ、ところでさっき出したハーブティーは飲んだ?」

 

「ええ、美味しかったわよ」

 

「それは良かった。……じゃあ、準備できてるから、そこにうつ伏せになって」

 

「うん」

 

 不思議な事に裸や下着のみの時よりも東郷の恥じらう姿は少ない。

 それはやはり、彼女の中にも水着姿は恥ずかしくないという考えがあるからなのだろうか。

 いずれにしても見飽きる事の無い彼女のビキニ姿を見ながら、後ろ手にドアの鍵を閉める。

 

 部屋の中での水着姿はほぼ下着と変わらない。

 無防備に肌を晒し、ハーブティーを飲んだ東郷はやはり白い。

 

 簡易型の寝台に専用のシーツを敷き、その上に東郷はうつ伏せとなる。

 茶色のシーツの上にむにゅんと豊かな彼女の双丘が潰れる様は、視覚的にも楽しませる。

 そんな彼女の背中も太腿も、腹も双丘も、首筋も、無防備に男の前に曝け出されている。

 

 自分が如何に性的なのか解らないのだろうか。

 理解しているのならば、自分はどれだけの信頼を寄せられているのだろうか。

 少女の肢体を見下ろしながら専用のオイルのボトルを手に取ると東郷が口を開いた。

 

「そういえば亮くん」

 

「ん? ああ、オイル垂らすけど最初はちょっと冷たいと思うよ」

 

「そうじゃなくて、もしかしてこの髪型好きなの?」

 

「――。ああ、えっと、そうやって纏めて上げている姿もうなじが見えて新鮮っていうのもあるし、いつものように肩から下げているのも、好きだよ」

 

「……そうなのね。分かったわ」

 

 お香が焚かれた部屋での少女へのマッサージ。

 市販のソレは霧状に噴き出し室内に広がり、充満していく。

 そんな空気の中で、それじゃあと口にしてオイルを少女の腰へと垂らしていく。

 

「ん……ッ! 冷たいわね」

 

「日焼け止めのオイルみたいな物だよ。すぐに慣れるよ……お客さん、リラックスですよ」

 

「うん、心頭滅却ね」

 

「……そうだね」

 

 白肌にオイルを垂らし、馴染ませるように手のひらで広げていく。

 丁寧に、丹念に、愛撫するように、少女の薄い脂肪の乗った背中を手のひらで触れていく。

 背中からわき腹にオイルに塗れた手を移動させていくと、ビクッと柔らかな身体を震わせる。

 

「……くすぐったい?」

 

「う、うん。ちょっとね、ひゃッ……!」

 

 背中から肩をやんわりと手のひらで円を描くように揉んでいく。

 柔肉は少女の年齢に似合わぬコリがわずかに存在し、解消するべくゆっくりと解していく。

 肩と首付近を程良い力でオイルマッサージを行うと、あ、と慣れぬ刺激に東郷が小さく呻く。

 

「痛いか?」

 

「ううん、気持ち良いよ。上手ね」

 

「ありがとう。……東郷さんの身体って綺麗だよね。どこかのモデルみたいで」

 

「そんな事、んふッ、ないわよ……ぁ」

 

 くびれのある細い腰から下、水着に覆われた臀部に軽く触れ、すぐに下へと向かう。

 一瞬チラリと此方を見る東郷の頬をわずかに朱が差し、俺と目線が合うと逸らされる。

 今更ながら恥ずかしいのか、それとも何かしらの思惑があったのか少女の耳が赤く染まる。

 

「あれ? どうしたのかな?」

 

「……う、ううん、なんでも。本格的なのね……っ」

 

「そうだよ。血行促進、むくみを取ってもっと美人になるんだよ」

 

「もう……りょうくんったら。そんなに褒めても何も出ない、んっ、出ないわよ」

 

 ムラが出ないようにオイルを惜しまずに少女の柔肌へと垂らし込む。

 弾力のある尻肉を包み込む白い布地はオイルを吸い込み、肌に薄く張り付いていく。

 叩きたくも、揉みしだきたくもなる豊満な柔肉の曲線を伝い、俺の両手は太腿へと流れる。

 

「東郷さんって冷え性だよね」

 

「……まあ、ぁっ……、そうね……、りょうくんもそうでしょ?」

 

「え?」

 

「時々両手を擦ったりしているじゃない」

 

「……よく見ていること」

 

 肉の付いた太腿と脹脛を両手で揉んでいく。

 噛みついて歯形を付けたくなるような白い少女の肌は徐々に慣れてきたのか震えは少ない。

 東郷が友奈を見ているように、俺のことも見ている事に思うことはあれど、足首へと手が移動する。

 

「足裏は一杯、ツボあるからね。ここもしっかりしないとね……」

 

「あっ、……んんっ、ふっ」

 

 恋人繋ぎをするように少女の足指と手の指を交わらせる。

 わずかに脚を開かせると、オイルに濡れた水着の布地が秘裂の形を浮かび上げていた。

 当の本人はそれどころではなく、親指で足裏を押す度に艶の入った声を押し殺していた。

 

 その恥じらいが薄暗い欲望を掻き立てる。

 その行為が男を呼び覚ます事に東郷は気付かない。

 

「……! ……ぅ……ッ」

 

 じんわりと熱を持つ少女の足裏を揉み解しながら、ふと尻肉に目を向ける。

 ツボを押されるという行為に慣れぬ故に、戸惑いながらも身体から余計な力が抜けていく少女の、うつ伏せになる東郷の尻肉はまるで叩いて欲しいと言わんばかりに俺の視線を吸い寄せる。

 

 引き寄せられるように、無防備に寝転がる東郷の尻肉は白い肌にわずかに朱が差していた。

 オイルが染み込んだ漬け込まれた肉は、薄っすらと透けた白い水着越しで揉まれるのを待つ。そしてそんな東郷の身体の期待に応えてあげようと、俺は両手を尻肉に沈ませる。

 

「ふッ!! ……ん、……くっ……。りょ、くん……」

 

「リンパが滞ってますね……、これは骨盤と一緒に和らげますね~」

 

 うつ伏せのまま東郷は声を漏らし、そのまま両手でシーツを掴む。

 

「そんなとこ……、ぁ、ぁッ……」

 

「は~い、動かないでね……、ここで動いたらまた最初からになりますよ」

 

「うひゅっ……!?」

 

 しっとりと濡れた尻肉は、汗とオイルで両手を滑らせながら乳肉とは異なる弾力を示す。

 もにゅん、と手のひらを吸い込むように水着の間から揉むと容易く形を変えていく。尻肉の谷間を押し広げ、菊座と秘裂を外気に晒し周囲の柔肉を指先で揉み解すと少女は嬌声を漏らす。

 

 オイルを垂らし、秘裂に触れるか触れない程度に指先で触りながら念入りに染み込ませていく。

 ここで水着を秘裂を擦るように引っ張れば、その数回の快感で少女が達してしまうだろうという直感はあった。しかし、今回俺が行おうとしているのは一応はマッサージであるのだ。

 

「東郷さん、気持ち良い……?」

 

「ふ……、ふっ……、ぅん……ッ!」

 

 しっかりと身体のコリを揉み解しながら東郷に問いかける。

 指の腹を柔肉に沈みこませると、ふっ、んふっ、と鼻息を荒くする少女が反応を示す。

 尻肉も程々に、わずかに弓なりになる少女の背中を撫でながら、俺は次の段階に入った。

 

「じゃあ、今度は仰向けになりましょうね~」

 

「……ぁ」

 

 うつ伏せで顔を伏せていた東郷の身体を仰向けにする。

 一瞬蕩けた表情であった少女は、俺に顔を覗かれた瞬間に慌てて元の表情を取り繕う。

 それでも口元のにやけは隠せず白いビキニからそれ以上に白い乳房がこぼれそうになっていた。

 

 オイルとマッサージにより、白い肌にはほんのりと甘い香りと薄い朱色が混ざっている。

 久方ぶりに感じる少女の顔を見下ろしながら湧き出す情欲が仰向けになった少女を抱き起こさせる。俺はそっと簡易寝台の上に乗り、起こした東郷の背後に回り抱きしめる。

 

「やっ!? ぁぁ……」

 

 腹と胸、どちらを先にするかを考えて、本能が先に乳房に手を出した。

 濡れた下着が手のひらに吸い付き、もにょりと握ると同時にオイルが少女の柔肌に浸透していく。その度に東郷は短く喘ぎ、双丘のマッサージをする俺の手首を掴み嫌々と首を振る。

 

「ん、んん……」

 

「ここも、しっかりと揉み解さないとね」

 

 勇者部随一の巨峰、豊かな母性の塊を持つ東郷の生乳を水着越しに揉んでいく。

 オイルとまろやかさが入り混じり、俺を夢中にさせる未知の物体へと進化させながら揉む。

 揉みながら背中の紐を解かずに水着の布地に指を侵入させ、ぷるりとする乳房を外気に晒す。

 

「っ!」

 

 既に乳首は硬さを主張する中で、悪い物を先端に追いやるようにして生乳を揉む。

 むにゅ、むにゅと乳房を上下に揉むと、首を逸らし気持ちよさそうな声を出して東郷は感じる。

 全身を預けるように背中とお腹を触れさせてこちらを見上げる東郷はそっと顎を上げる。

 

「……りょうくん、ここは……?」

 

「――――」

 

 答えるまでもなく唇を塞ぐ。

 目を閉じ、薄い唇を突き出す東郷に唇を重ねる。

 いいように自らの胸を弄ばれながら、全てを肯定するような東郷の瞳は酩酊したように虚ろだ。

 

 快楽を求めるように、獣のように唇を合わせる。

 舌の柔らかさを教えあうように下品な水音を室内に響かせる。

 

 ぴちゅ、ちゅぷ、と東郷が舌を動かす。

 ずちゅ、ぴちゅ、と応じるように舌を絡め取る。

 

 下品な口腔行為というマッサージを行いながら、オイルに塗れた手は少女の腹へと下る。

 生乳の下部分を片手で持ち上げ揉みしだきながら片手は無駄の少ない少女の腹肉を伝う。

 撫で回したくなる少女の腹を撫でまわし、そのまま俺の手は少女のボトムスを脱がし秘部へ。

 

「ぁ……、ぁ……ッ」

 

 何かを求めるような緑色の瞳は、様々な感情を瞬く間に消し去る。

 しとどに濡れた秘部を、媚肉を触られる事に照れ臭さを残した表情を至近距離で見つめる。

 唇を離し、交わった唾液が惜し気に珠を作る中でも、俺の指は熱く濡れた媚肉の中を進む。

 

「……」

 

 快楽に、俺に溺れた東郷の顔は、年相応の幼さがあった。

 そんな少女の媚肉は散々焦らされ続けたからか、いつもよりも貪欲にうねり指に吸い付く。

 

「……東郷さん」

 

「……りょ」

 

「ここから老廃物を一杯出す事で、もっと綺麗になれるよ」

 

「……! まっ……」

 

 指が膣肉の間を通り奥へと届く。

 彼女と交わり、弄び、散々悦ばせた場所へ。俺だけが知っている場所に。

 俺の指が気になるのか、これから何をされるのか、東郷のかすかな理性が制止を望むが止まらない。

 

 挿入した指を曲げ――

 

「~~~~~ッッッ!!!?」

 

 ぴちゃ、ぴちゃりと飛沫が噴き出す。

 本格的に膣のマッサージに入る寸前、わずかに曲げた指を捕食するように膣肉が震える。

 蓄積された絶頂の波が今更押し寄せたかのように東郷は背中を俺の胸に押し付けるが、

 

「ぷぁッ……ぁ!?」

 

 本格的に膣肉のマッサージを開始すると、東郷は鳴いて乱れた。

 しとどに濡れた花弁こそが少女の意思であるかのように俺の指を呑み込んだ口から蜜を漏らす。

 

 一体どれだけの蜜液を垂らすのだろうか。

 そんな風に感心すら抱きながら整体奉仕を続ける。

 

「んあっ!! ―――ッ!? っ……!!」

 

 指の第二関節を曲げ、指の腹でコリコリと壁を擦る。

 優しく、円を描くように、虐めるように、ぐりぐりと。

 

「まっ! とまっ!! ~~~~ッッ!!」

 

 よほど気持ち良いのか、蜜液が指をふやけさせんとばかりに噴き出す。

 痙攣し、腰を浮かせ弓なりになる東郷の身体を強引に男の腕力で抱きしめる。

 東郷の呼吸は荒れ、本気で逃げ出そうと力が籠るのを感じながら指先で膣壁を遊ぶ。

 

「来てる! 頭おかひくッ……、来てるから……ッ!! ~~、~~ッ!?」

 

「――“来てる”じゃなくて、“イってる”だろ? ほら言えよ、イクって」

 

「っ、ッ、~~っ!!」

 

 気付くと俺は久方振りに紳士の皮を捨て、玩具に夢中になるように膣壁を小突いた。

 小突いて、小突いて、撫でて、突いて、擦って、擦って、少女の快楽の手助けをする。

 

「ほら」

 

 ぐりぐり、ぐりぐりと、指の腹で小突く。

 

「ぃ、ぃ、~~ッ、ぃく、ぅぅッ……!!?」

 

 ぴゅううっと小水を思わせる飛沫が舞い、シーツに濃い染みを残す。

 断続的な絶頂の嵐に晒された少女は、雌の悦びを暴力的に身体へ教え込まれる。

 

「……ぁ、……ぅぁ……」

 

 不規則にびく、びくっと肢体を揺らす少女は遂に耐えられずに口を開ける。

 一筋の唾液をだらしなく垂らす彼女は一体どれだけの快楽を味わったのだろうか。

 呆け、だらしない表情が、清らかな物を汚す征服感が、俺の怒張を酷く刺激していく。

 

 全身の力を抜かし、俺に体重の全てを預ける少女。

 肩に感じるうなじの肉。ふわりと香る黒髪の、東郷の匂い。

 絶頂の波が少しずつ去りながら、その余韻に震える呼吸に我慢の限界が訪れる。

 

「……」

 

 膝立ちでスラックスを脱ぎ、出した怒張は目の前の食事を前に涎を垂らす。

 反り立つ逸物を見せつけるように少女の目の前に出し、にやりと笑い掛ける。

 涙目で俺を見上げる東郷の、瞳の奥にかすかな被虐の悦びを見つけた俺は静かに告げる。

 

「口も、マッサージしないとな……」

 

「……!」

 

 ぺちぺちと柔らかい頬を怒張で叩く。

 見下ろす俺が何を望んでいるのか、東郷の頬に差した朱も更に色濃い物になる。

 

「――――」

 

 んぁ、と開いた口腔に亀頭が沈み喉を鳴らす。

 少女の鼻息をこそばゆく感じながら、そういえば初めて少女にされた事に気付く。

 

 ぬめる舌がちろちろと傘裏を舐め、頬肉の柔らかさに俺は奥歯を噛み締めた。

 初めて行う東郷の口腔奉仕は拙くも、眼の前の少女がしている事実に胸が震えた。

 恐らくはネット上の動画か俺の奉仕の真似なのだろうか、そっと髪の乱れた東郷の頭を撫でる。

 

「もう、良いよ」

 

 そう告げると、何か勘違いしたのか上目遣いで東郷は俺を見上げる。

 かすかな不安が瞳に見え隠れし、何か告げるべきかを考えて正直に口を開こうと――

 

「あ、その……気持ち良くなかった……?」

 

「……、いや、上手かったと思うよ。初めて?」

 

「は、初めてよ! ……こんな口になんて。りょうくん以外でなんて……」

 

「ほう……?」

 

「あ、あの、りょうく、んッ……!」

 

 そっと少女の身体を押し倒した。

 ふにゅんと揺れる乳房、正常位になるようにやや強引に押し倒す。

 冷却するようにオイルを怒張に垂らし、心の準備を許さないまま、ぬめる蜜口を貫く。

 

 にちゅ、と淫らな音を立てて俺と東郷は繋がった。

 東郷は大きな瞳を見開き、雌の膣肉がはしたなく雄の怒張を包み込む。

 

「ぅぁ……ぁー」

 

 離さないとばかりに東郷の両脚が俺の腰に回される。

 挿入と同時に悦楽に浸る白い肉体が揺れる音と彼女の荒い息遣いが聞こえる。

 

 出る。

 出てしまう。

 

「―――ッ!」

 

 思った以上に限界が来ていた状況で、尻穴を引き締めピストンを行う。

 もはや一度出した方がいいのではないかとばかりの状況下で最奥を気合いで叩く。

 単純に男としての矜持、なけなしのプライドが蛮族の如き獰猛なピストンを繰り返す。

 

「あ! あッ! あぁッッ!!」

 

 下半身がとろけた肉と変化していく。

 視界が白く染まりつつある中で、一突きごとに快楽に溺れるのを感じる。

 もう数秒持たないと神経が悲鳴を上げつつある中で、せめてもの抵抗に乳首に噛みつく。

 

「――ひッ! ~~~〜〜ッッ!!!」

 

「おら、お薬、だッ」

 

 びゅううっと白濁が、精液が吐き出される。

 腰に回された両脚が力強く、最奥に流せとばかりに膣肉が狂喜に震える。

 秘裂から溢れさせながら子種を呑み込んだ膣が感謝するように亀頭に刺激を与え続ける。

 

 身体から何かを失いながらも、確かな充足感に満たされる。

 そっと力を抜かし、結合したまま、ゆっくりと俺はほぼ裸体の少女に倒れ込んだ。

 

「んッ……、大丈夫?」

 

「ああ、これで施術完了だ」

 

「……ふふっ」

 

 豊満な双丘は俺の胸板に潰され、彼女の吐息が唇に掛かる。

 ふわっと鼻をくすぐる黒髪の匂いは、わずかな汗と甘い少女の香りが漂う。

 そんな距離感、鼻先がくっつくような距離で俺と東郷は顔を合わせて向かい合う。

 

 ――深い緑の瞳。

 

「……」

 

「亮くん?」

 

 何となしに俺は彼女の髪を手で梳く。

 荒い息を整え徐々に虚ろな瞳に光が戻る東郷の瞳は。

 

「前から思ってたけどさ……」

 

「? うん」

 

「初めて見た時からさ。ずっと、東郷さんの瞳って凄く綺麗だなって」

 

「……!」

 

 深い深い緑色。いつか言いたいと思っていた言葉を。

 至近距離で見下ろす彼女の大きな瞳が広がり、わずかに唇を震わせる。

 何かを告げようと唇を開けて言葉を作ろうとして、結局東郷は唇を閉じた。

 

 後頭部に彼女の手のひらを感じ、そっと押される。

 近づいていく東郷の顔は雪原のように白く、薄い唇が求めるように窄められる。

 

「ん―――」

 

「――――」

 

 人に頭を撫でられるという行為に驚く。

 こんなにも愛おし気に撫でられるというのはどれぐらい久しぶりなのだろうか。

 啄むような柔らかい唇とのキスを繰り返し、そっと見上げる東郷は静かに口を開いた。

 

「ゆ、夕御飯」

 

「うん?」

 

「……夕御飯、何が食べたい……?」

 

「……え、あ、じゃあ……」

 

 夕御飯という言葉を東郷から聞いた俺はふとある事を思い出した。

 以前紳士と話をした際に、東郷とのスク水での情事をした際に思った事。

 至近距離で見上げ見下ろす中で、ほぼ裸体の少女に聞こえるような音量で俺は囁いた。

 

「じゃあね――、洋食にして貰おうか」

 

 

 




おっぱいよりも乳房の方がエロく感じる。


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【番外】彼女は求めている

 不調を訴える可憐な少女の声に集った近所陣。

 血紅色と濃緑色の瞳が見つめる先に存在するのは、ただ一人の少女。

 

「ぅ……ぁ」

 

 パジャマを着用し、寝台の上に座り込む可憐な赤毛の少女。

 肩にわずかに届かない程度の髪は透き通り、薄紅色の瞳は揺らめく。

 凝視するような視線に対し、怖気づいたように少女は僅かに顔を伏せる。

 

 少女の薄紅色の瞳に宿す羞恥と困惑。

 そしてそれ以上の感情の渦を瞳に宿らせる少女。

 必死に瞬きを繰り返すが、それでも消える事は無く、目尻に涙となり現れた。

 

「友奈ちゃん」

 

「……!」

 

 隠し事がバレた少女は、まるで叱られるのを恐れるような表情で。

 対してそんな少女に話し掛ける壮麗な黒髪の少女は穏やかに微笑んでいて。

 

「大丈夫よ。友奈ちゃん。大丈夫」

 

「……とう、ごうさん」

 

 目線を合わせる少女の濡羽色で艶やかな長髪は青色のリボンで纏められている。

 讃州中学校の見慣れた制服は彼女に良く似合い、最近履くようになった靴下とスカートの間から覗く白い素足は太陽の光など知らないとばかりの純白の輝きに、無言のままの少年の目を惹く。

 

「……大丈夫よ、友奈ちゃん」

 

 大丈夫と、東郷は繰り返す。

 少女の不安を鎮める為に、安心を与える為に、何度でも。

 

「私と、亮くんで何とかしてみせるから……ね?」

 

「……うん」

 

「ああ、任せてくれ。友奈」

 

 亮之佑と東郷は友奈に笑いかけた。

 そのまま、少女の寝台に二人で腰掛けながら徐々に距離を詰める。

 わずかに不安を残した少女、それでも少女は小さく笑みを浮かべて言った。

 

「優しく……してね」

 

 普段の太陽のような明るさは鳴りを潜めた、風邪を引いたような少女。

 しおらしさのある少女、友奈からの承諾の合図に亮之佑はニヤリと頷いた。

 

「大丈夫だよ、友奈。たとえ……生えても友奈は友奈さ」

 

「そうよ、友奈ちゃん」

 

 薄い生地が少女の肢体を包み込む。

 少女の髪色と似た色合いのパジャマ、正確には下半身に二人の視線は向けられる。

 一人はわずかに頬を赤らめながら、一人はわずかに加虐的に瞳を煌めかせながら。

 

「こういう時の為に、しっかり練習したから」

 

「ぇ……、それって、りょ―――」

 

「――――」

 

 友奈と東郷の唇が触れ合った。

 これ以上の言葉はいらないと拙いながらも東郷から友奈に口付けを行う。

 そのままゆっくりと寝台に押し倒す様は、確かに練習の成果は出ているかもしれない。

 

「まあ、興奮させれば十分だけどな」

 

 唾液と唾液を交換する濃密なキス。

 口端からわずかに唾液を垂らし、舌を動かす口腔行為が眼前で繰り広げられる。

 その様子を見ながら、亮之佑は友奈のパジャマの前を留めるボタンを外していく。

 

 白い肌とやや小振りながらも形の良い乳房が姿を現す。

 外気に晒された己の乳房に気付く友奈は頬に、首に、羞恥の朱色を差す。

 

「ぷはっ……、とうごう……さん」

 

「私たちに任せて、友奈ちゃん」

 

 亮之佑はゆっくりと友奈のパジャマのズボンに手を触れる。

 それに気づき、ゆるゆると首を振る友奈の抵抗を無視し、一思いにずり下ろした。

 

「あ……ッ!」

 

「……!」

 

「……うん」

 

 外気に晒された少女の秘部。

 下着ごとずり下ろした事で露わになった少女の秘部に亮之佑と東郷は目を向けた。

 途端、熱を持った友奈の肉体、隠そうとする手を掴み、二人でマジマジと見つめる。

 

 白く健康的な少女の腿肉。

 時間が許す限り撫で、舐め、触りたくなる友奈の太腿。

 その先、脚の付け根にある少女の、乙女の恥丘とも言える場所。

 

「これは!?」

 

「……もっと立派なのをよく見てるだろ?」

 

「……っ」

 

 驚愕の声を上げる東郷に軽くツッコむと小さく微笑まれた。

 東郷の微笑、ただしどこか冷たさを感じる笑みに亮之佑は思わず首を竦めた。

 

「――亮くん?」

 

「独り言ですよ、東郷さん。……それでいつから、こうなったんだっけ。友奈」

 

「私にもよくわからないの。気づいたらこうなっていて……」

 

 結論から言えば、生えていた。

 薄い恥毛、秘裂は健全ながら、陰核の代わりに反り立ち、存在感を示す存在が。

 睾丸はなく、まるで生えたという表現しか考えられないような怒張が生えていた。

 

 最近流行っているらしい奇病。

 対処法は既に存在しているが、それは薬物療法による物ではない。

 

「確か……一杯出してしまえば元に戻るのよね……」

 

「三回くらいかね」

 

「多分……」

 

「……顔赤いよ」

 

「もう!」

 

「いてっ」

 

 わずかに顔を赤くする少女による肘の一撃。

 それは的確に、吸い込まれるように亮之佑の脇腹にダメージを与えた。

 

 黙り込む少年を余所に、壊れ物に触れるように東郷は友奈の逸物に触れる。

 ビクンと動く少女の逸物からは既に先走り汁が肉茎を伝う中、潤滑油として東郷は指で掬う。

 にちゅ、にちゅと厭らしい音が、東郷がゆっくりと上下にしごく姿を友奈と共に見下ろす。

 

「ん……」

 

 ゆっくりと東郷の手が少女を上らせるべく動き始める。

 その動きと未知の快楽に呻く友奈の暖かな身体を、亮之佑は背中から抱きしめ、密着する。  

 

「……」

 

「……」

 

 密着した胸板と背中、友奈の心臓の音と匂いを感じながら亮之佑は口づけをする。

 頬に、首筋に、鎖骨に、汗を舐め取るように、乳房に指を這わしながら愛撫する。

 下から持ち上げるように乳肉の感触を手のひらで感じながら、時折乳首に触れる。

 

 淡いピンク色の乳輪に円を描き、思い出したように指で乳首を弄る。

 仰け反る首筋に優しく噛みつき涙目で批難する少女の柔らかい唇を何度も奪う。

 先ほどの東郷のようにディープではなく、唇の感触を、形を、確かめるような口付けだ。

 

 もっとも、東郷と亮之佑では口付けの仕方が違うだけで。

 徐々に深く深く、友奈の口内を味わうように、舌の裏を、歯茎を求める。

 それはさながら捕食のようで、どこか虚ろになる少女の瞳はわずかに細められる。

 

「んっ、ん……、ぷぁ、ん……、んあッ!!?」

 

 そうして口腔行為をしているとビクンと友奈は身体を震わせた。

 少女が嬌声を聞かせる原因、東郷がどこか慣れた手つきで弄る肉茎からは汁が垂れ落ちる。

 

「はぁ……っ」

 

「ふふっ……友奈ちゃん。出しちゃう?」

 

「それッ……! 先っぽ、弄っちゃ……ッ……あっ、ぁ……」

 

 高く短い少女の嬌声。

 友奈が漏らす甘い呼気に、淫魔の如き笑みを東郷は浮かべた。

 ぎゅっと亮之佑の腕を掴んだ友奈は小刻みに二度ほど跳ね、震える。

 

 海老の如く背を反らし、どこかに逃れようとする友奈の身体を亮之佑が押さえる。

 ちゅこちゅこと先端の亀頭を中心に肉茎を虐める東郷は友奈を絶頂に導く。

 

「っぅ、~~~ッッ!!」

 

 背筋を仰け反らし、瞼を閉じた友奈の蕩けた表情を至近距離で見届ける。

 友奈にとって初めての射精は、一体どれほどの快感なのか想像もつかない。

 友奈の白濁、それを自らの手のひらに残した東郷は満足気に少女に笑いかける。

 

「いっぱい、出たわね。友奈ちゃんの」

 

「……、……!」

 

 荒い息をする友奈、その逸物は萎えるという姿を見せない。

 それは若さ故か、それとも別の理由があるのかもしれないがどうでも良いことだ。

 親友二人に自らの痴態を見られた少女は息を整えながら、ふと亮之佑と目を合わせた。

 

 かああっと唐突に顔を赤くする少女。

 流石にこのシチュエーションは恥ずかしいのか、頬を更に赤くした。

 

「大丈夫か?」

 

「……うん、大丈夫」

 

「そうか」

 

 予想以上に見ているだけというのは興奮するものであった。

 普段ならば見る事などないであろう百合の花は、亮之佑的にグッと来た。

 だがこんなペースで本当に治るのかとも同時に思い、行動に出る事にした。

 

「あ、ぇ……?」

 

 細い腰を掴まれ、友奈は頓狂な声を漏らした。

 身を固くし、慌てて抵抗しようとするが、あまり意味はない。

 寝台から身を起こさせ、尻を突き出すように少女のふやけた身体を動かす。

 

「まっ……、今は」

 

 既に衣服を脱ぎ、反り立った怒張の先端が蜜口の入り口に触れる。

 男性器が友奈に生えようとも少女の秘裂からは甘い蜜が内腿に伝う事は変わりない。

 がっちりと掴んだ友奈の腰、ゆっくりと挿入し、少女の最奥まで一思いに怒張で貫いた。

 

「ふあぁあ……ッッ!!」

 

 にゅるるとぬめる媚肉が割り拓かれる感触。

 挿入の衝撃で、友奈は膝から崩れ落ちそうになる。

 だが腰をしっかりと掴んだ亮之佑により落ちる事はなく、きっちりと串刺しにする。

 

「っ、ぁ……ッ! ぁ……!!」

 

 恐らくは軽く達したのであろう友奈の声音。

 その顔は見る事は出来ずとも、ぬめる蜜肉が熱く肉茎を締め付ける。

 普段ならばこのまま少女を何度も昇らせるピストンをするのだが、今回は違う。

 

 上半身を崩れさせ、小さく揺らす怒張にシーツを掴む友奈は喘ぐ。

 そんな少女を寝台から起こし、優しく抱き締める一人の美少女がいた。

 黒髪に良く映える白い肌、制服を脱いだ東郷は友奈の視線に小さく微笑む。

 

「とうごう、さん」

 

「友奈ちゃん。……こういうのってどうかしら?」

 

 どこか余裕のある表情をした東郷は、友奈の反り立つ逸物を股の間に挟んだ。

 じっくりと友奈の顔を、表情を見つめる東郷は逸物を洗うようにゆっくりとしごく。

 

「それ……、だめ……ッ!」

 

「友奈ちゃんの、ビクビク動いてて可愛いわ」

 

「ぅあ……!!」

 

 呻き押し寄せる快感に友奈は悶える。

 前を東郷に、背後は亮之佑に責め立てられ、与えられる快楽。

 

 小刻みに腰を動かし、怒張の先端で奥を擦る。

 手持ち無沙汰な両手は友奈の双丘、汗ばむ少女の乳房に伸ばす。

 

 友奈の肩越しに覗く程良い大きさの乳房。

 乳首が触れ合うように東郷の豊満な乳房が触れ合い、厭らしく形を変える。

 

 むにゅんと少女達が作る極上の乳肉を視界に収める。

 生乳で出来た空間に伸ばした手、緊張したように硬くなった乳首を、ぴんと弾く。

 

「あっ」

 

「ん……」

 

 二つの肉粒を指先でこねる。

 同時に、小さく小刻みに動かす腰の動きが東郷を小さく呻かせる。

 

 強めに乳房を掴み、叩くように突き上げた。

 

「ぁああ……ッッ!!」

 

 涙混じりの悲鳴のような嬌声。

 同時に膣肉が締まり怒張を締め上げる。

 

 中の白濁を全て、少女の最奥に吐き出したくなる欲望に駆られる。

 欲望のままに東郷に抱き着き、喘ぐ友奈の蜜を掻き混ぜるような抽送。

 

「ぅあ、ぁっ、また、ぁ、でっ……!」

 

 よほど東郷の素股が気持ち良かったのか。

 それとも亮之佑のピストンか、どちらもか。どちらでもいい。

 

「ぅぁ、ぅぁぁ……っっ!!!」

 

「ぁ……ッ!」

 

 きつく両目を閉じ、上を向く友奈。

 抱きしめられる東郷は小さく声を漏らし深緑色の瞳を見開く。

 彼女達の反応、特に友奈の媚肉の感触で、再び少女は射精に至ったのだと判った。

 

 ――亮之佑はまだなのだが。

 

 たん、たん、と友奈の膝裏が亮之佑の腿を叩く。

 少女が繰り返す絶頂の波に揉まれようが止める事のない抽送を行う。

 

「ひっ! りょ……っ、今、つらい、かぁ……っっ!!」

 

「医療行為だから。我慢しなくていいんだよ、友奈」

 

「ぅ、くぁッッ!!」

 

 射精直後に両方を同時に攻められるのは辛いだろう。

 肉同士がぐちゅりと淫らな水音をたて、友奈は嫌々と首を振る。

 

「ぅ……ッッ! ぁぁ……!!」

 

 じゅぶ、じゅぶと蜜が跳ねる。

 生暖かい少女の蜜は、亮之佑の腿に滴り落ちる。

 

 陰核の代わりとなった逸物は東郷が慰め。

 元からある少女の膣は亮之佑が慰め、二人で一人を絶頂に導く。

 余裕のない呼吸をすぐ近くで感じながら、亮之佑はピストンの速度を上げた。

 

「ぁ! ッッ!!」

 

 もだえ苦しむような呻き。

 爪先をピンと伸ばし、腰を浮かせても逃げ場はない。

 

 そしてその時は訪れた。

 

「~~~~~!!!」

 

 言葉にならない強烈な絶頂。

 ぷしゃ、ぷしゃりと溢れる淫水が結合部を濡らす。

 同時に亮之佑も限界を迎え、少女の最奥に白濁を注ぎ込んだ。

 

 マグマのような射精感に従い、精を膣内に勢いよく噴き出す。

 熱く女の肉を濡らし、天に昇る解放感と共に友奈と東郷を抱きしめる。

 

「ぁ……ふ」

 

「お疲れ様、友奈ちゃん」

 

 ゆっくりと怒張を抜くと、ぱたたと白濁が垂れ落ちる。

 その動きにすら敏感に震える友奈、その内腿に精がゆっくりと垂れた。

 脱力する友奈の身体を亮之佑と東郷で抱え込み、静かに寝台に倒れ込んだ。

 

「……」

 

 吐息をしながら、友奈の秘部に目を向ける。

 疲れたのか、規則的な呼吸を繰り返し眠りについた少女の秘裂。

 こぽりと自身の精を注いだ事に充足感を感じつつ、その上にあった怒張に目を向けるが。

 

「ない……だと」

 

 あれだけ存在感を出していた男性器は姿を消していた。

 綺麗さっぱり姿を消し、ひくひくと動く秘裂の上、小さな肉粒があるばかりだ。

 

「ん……ぁ」

 

 思わず手を伸ばし指で陰核に触れると、友奈の吐息に甘さが混ざり込んだ。

 グミのような弾力のある肉粒をしばらく弄り、確かに無くなった事を亮之佑は確かめた。

 

「お疲れ様、亮くん」

 

「……東郷さんもね」

 

 ふと声を掛けられ、もう一人の少女の存在を思い出す。

 白い裸体、その股に付着している白濁は間違いなく先程の情事の証明だ。

 寝台に寝転がり、お互い無言のままジッと瞳を交錯していると東郷が起き上がった。

 

「……?」

 

「ねえ、亮くん」

 

 寝息を立てる半裸の友奈。

 その隣で寝転がる亮之佑にしなだれかかる東郷は頬を赤らめながら囁いた。

 

「さっき、友奈ちゃんと三人でしたじゃない?」

 

「……興奮した?」

 

「……友奈ちゃんのが、擦れて」

 

 亮之佑の耳元で甘く囁かれる少女の艶のある声。

 ふにゅん、と柔らかい乳房が胸板で形を変え、太腿に東郷の秘裂が触れる。

 柔らかな毛の感触と、熱く濡れた蜜液を擦り付け、その度に小さな吐息を東郷は零す。

 

「――しよ?」

 

「――――」

 

 躊躇う理由など無かった。

 据え膳食わぬは男の恥という言葉に従い、眼の前の美麗な少女の唇を――

 

 

 

---

 

 

 

「――っていう感じなんだけど」

 

 夕方の日差しが窓から入り込む。

 古い本の香りがする図書室で二人、何となく盛り上がった話をしていた。

 一体どこからそんな想像力が溢れるのかと思いながら、俺は久方振りに口を開いた。

 

「俺ってそんな野獣だっけ?」

 

「え~、違うの? がおーって感じだと思うよ、かっきーは」

 

「……」

 

 隣に座る金髪の少女の話に俺は小さく溜め息を吐いた。

 心当たりが無くもないが、流石にそんな『生える』展開は無いと思いたい。

 ともあれ、仮に彼女達にそんな事態が訪れようと切り捨てる気も見放す気も無いが。

 

 図書室の端、人気も無い場所で園子を抱き抱える。

 色々とあった結果、一日一回、三十秒ほど園子を抱きしめる事になった。

 ふわりと香る少女の匂い、柔らかい彼女の身体には幾度となくストレスが減るのを感じる。

 

「なあ、園子」

 

「何~……?」

 

「実は欲求不満だったりする?」

 

「ち、違うよ〜。ただ今度書く小説のネタなだけで――」

 

「今日、家、泊まる?」

 

「……」

 

 真面目な顔でそう尋ねると、パクパクと園子は口を開いた。

 金魚のように口を動かし、周囲を確かめるように辺りを見渡す。

 そうして金色の長い髪を肩から流し、わずかに頬を赤らめ、少女は小さく頷いた。 

 

 

 



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【番外】愛してる

「それじゃあ、お願いするわね」

 

 わずかに見上げる高さ、茶色の髪をした教師の言葉に亮之佑は頷いた。

 

「分かりました~」

 

「はい」

 

 隣では同じくコクリと頷いた金色の髪をした少女が書類の束を受け取っていた。

 そんな二人の返事に満足そうに頷いた教師は言う事は言ったとばかりに教室を立ち去った。

 

「じゃあ、行くか」

 

「うん」

 

 立ち去った教師、代わりに園子と亮之佑と、二人が両手で抱えた書類の束が残る。

 勇者部の依頼ではなく、教師に書類を準備室に運んでほしいという頼みに承諾したのである。

 

 帰ろうとした矢先に教師に頼み事をされた。

 正直一人だったならば、きっと断わったかもしれない。

 『偶然にも』近くにいた園子が瞬時に答えなければどうにかしてサボる口実を探しただろう。

 

「ねえ、かっきー」

 

「――。うん?」

 

 それでも、こんな雑用ですら園子とならば共に何かをするのは楽しいと感じた。

 一緒に歩き少女の顔を見る事などほんの少し前までは想像も出来なかったのだから。

 そんな都合の良い頭を振り、隣で同じく書類の束を抱える少女の声に亮之佑は目を向けた。

 

「昨日、夢を見たんだけどね~」

 

「また変な夢でもみたんだろ?」

 

「変じゃないよ〜」

 

 金鈴のような声音に耳を傾けながら亮之佑は周囲を見渡す。

 誰もいない。讃州中学校の廊下であるが、園子と亮之佑以外では人がいなかった。

 それなりに時間が経過した放課後、既に大半の学生は部活動か帰宅し、人影はほとんど無い。

 

 だからこそ、園子の声は余す事なく亮之佑の耳に届く。そうでなくても届かせるが。

 

「そういえば今日はまだハグして貰ってないね、かっきー」

 

「そうだっけ?」

 

「一日一ハグって言ったよ~。……キスもして貰ってないよ?」

 

「そっちは約束した覚えがないんだが」

 

「……これから行く準備室って、内側から鍵を掛けられるんだって~」

 

「駄目だ」

 

 チラリと亮之佑は園子に目を向けた。

 可憐な相貌、美少女と表現するべき少女は何かを期待するような眼差しを向けた。

 上目遣い。懇願するようなどこか庇護欲を誘う園子の瞳に亮之佑は小さく息を吐いた。

 

「その代わり、……家でだったら、好きなだけしていいから」

 

「……!」

 

 

 

 ---

 

 

 

 

 自宅のリビング、ソファに制服姿で寝転がる二人はゆっくりと向き合う。

 

「かっきー」

 

「そのちゃん」

 

 亮之佑は制服姿の少女を改めて見る。

 稲穂を思わせるような金色の髪は何度も触れたいと思わせる。

 帰宅し、そんな美麗な彼女が望んでいるであろう一ハグを実施しようと思い行動する。

 

 ――する前に悪戯心が芽生えた。

 

「くすぐって良い?」

 

「ぇ? きゃっ!」

 

 わずかに悲鳴を上げる園子の制服の隙間から直に脇腹を指の腹で摩る。

 わしゃわしゃと五つの指で蜘蛛のような動きをし、少女の柔らかい肌を堪能する。

 

「あはっ、あはは……っ!! かっきー、止めてよぉ」

 

 嫌々と首を振り、長い髪の毛を揺らしながら少女は笑みを浮かべる。

 どこか愛らしく、それでいて魅力的にも感じる少女の笑い声は新鮮に感じられた。

 

「ぅひゅ、うくくっ、アハハッ!! だ、駄目だよ~」

 

 くすぐられる少女というのは視覚的にも素敵な物がある。

 暴れる園子の動きによる制服の乱れで露わになる下着に包まれた双丘。

 紫のブラジャー越しに少女の白い乳房を揉みながら、指先は少女の腋をくすぐり続ける。

 

「んくっ、ふぁ! あはっ!」

 

 悶えるような表情で加虐心を煽るような少女の声にはわずかに熱が籠る。

 逃れる事のないように少女の身体をソファと自らの身体で挟み込みながら柔肌を弄る。

 

 脇腹を指先でなぞり、円を描くように。

 くびれのある薄い腰は痒い所を掻くように丹念に。

 少女の生乳を揉みながら、腋の窪みを執拗にくすぐる。

 

「わきっ、だめぇ!! ん、あははは……っっ!!」

 

 じたばたと暴れる少女の両脚が何度も亮之佑の腰に当たり、締め付ける。

 正常位のような体勢、決して逃げられないように少女の身体をひたすらにくすぐる。

 

「んはっ、ぁ……っ!」

 

 そうして少女と戯れながら十数分にも感じる時間の中で。

 ふと亮之佑は、赤い顔で笑う少女の形の良い耳にゆっくりと顔を近づけていった。

 触り心地の良い耳、彼女が亮之佑の寝台で寝る度に少しずつ虐めた耳に小さく吐息をした。

 

「んっ!」

 

 耳の感度は良好で、ビクンと身体全体が震えるのが判った。

 大きな目を見開き首を仰け反らせる園子の耳たぶを甘噛みし、再度息を吹きながらくすぐる。

 

「それっ、ん、んっ!!」

 

 どこか鼻息を荒くし、力強く亮之佑の腕を掴む園子は眉を顰める。

 園子の首筋、頬にキスを行い、その度に軽く皮膚を吸うと、ん、は、と少女は息を漏らす。

 くすぐられ暴れていた力は既に無く、ときおりビクンと園子は小さな振動を亮之佑に教えた。

 

「~~~~っっ!!」

 

「……」

 

 薄暗い部屋に男女の息遣いが響く。

 電気も点けず、カーテンの隙間から漏れた太陽の明かりが部屋を照らす。

 

「ん……んっ……ぁ」

 

 吐息を漏らす少女の唇を抉じ開け、何度目かの口腔行為を繰り返す。

 疑似的な性行為を愉しむように、涎を気にせず、人目を気にせず、獣のように行う。

 

「――――」

 

 思えば学校ではこういった事をしようと考えた事は無かった。

 それは大半が見つかる事に対するリスクを考慮していたからだろうか。

 どのみち家でならば何時間でも好きな事を好きなだけする事が出来るからだろう。

 

「ん……!」

 

 触れた太腿はしなやかで程良い肉と脂が乗っている。

 制服のスカートは短めで、ゆっくりと手を伸ばすだけで園子の臀部に届く。

 ふにゅんと滑らかな尻肉を手でこね広げるように弄ると少女の声に一層の熱が籠る。

 

「んぅぅ……、……っっ!!」

 

 漏れる嬌声、口を塞ぐような口付けを繰り返す。

 にちゅにちゅと唾液を交換し、相手の舌を吸い込む度にびくりと少女は身体を揺らす。

 亮之佑が強く抱いた腕の中で、亮之佑が少女の柔肌を弄る度に少女は何度も震えた。

 

「あ……」

 

 口を離し、糸を引く唾液が少女の薄紅色の唇を彩る。

 その間ずっと閉じていた瞼を開け、園子の琥珀色の瞳と目を合わせた。

 

「もっと……」

 

「……」

 

 言葉少なに告げられた少女の言葉。

 それは『もっと』口付けして欲しいという言葉なのか。

 それとも『もっと』抱きしめて欲しいという意味の言葉なのか。どちらもか。

 

 少女の腰を抱き、その柔らかさに亮之佑は震える。

 何度も口付けを繰り返し、その度に瞳を潤ませる姿は脳裏に、魂に刻まれる程に美しい。

 だからこそ、もっと少女が快楽に打ち震え、悦びを教え込み、離れないように溺れさせたい。

 

 スカートを脱がし、露わになった下着。

 少女の雪肌に似合う少し背伸びをしたような紫色のショーツに触れる。

 

「……ぁ、あんまり見ないで……」

 

 べっとりと濡れた感触。

 指先で光る蜜を見る亮之佑に園子は恥ずかし気に呟く。

 そこには見られる事に対する羞恥と情欲がごちゃ混ぜになっている姿があった。

 

「こんなところに、ほくろ」

 

「んっ」

 

「新発見だ」

 

 少女の無駄な脂肪の少ない腹肉を手のひらで撫で回し、再度少女の秘部に触れる。

 少女の恥部、染みの広がる部分に少し触れるだけで園子は腕を伸ばし止めようとする。

 

「ま、まって」

 

「待たない」

 

 雄の視線を惹き付ける少女の下着。

 情欲を示す女の匂いを嗅ぎながら布地の薄い下着を指先で弄り愛液の感触を確かめる。

 布越しに貝状の肉を弄り、少し愛撫するだけで園子の口からは切羽詰まった声が漏れた。

 

「ぁ、ぁ……っ!」

 

 甘い吐息、それを味わおうと亮之佑は再度園子の唇を奪う。

 くちゅくちゅと下着越しに聞こえる水音に聞こえない振りをするように園子はキスに応じる。

 どこか鼻息の荒い園子、じわと新しい染みが広がっていくのを感じながら指の腹で園子を弄る。

 

「ん、ん~~~っっ!! ……!!」

 

 ぎゅっとわずかに身を強張らせた園子は亮之佑の腕を強く握った。

 はふ、と吐息を漏らす少女、どこか虚ろな瞳をした園子の後頭部にそっと手を回す。

 さらりとした園子の長く綺麗な金色の髪の感触を手のひらに感じながら、幾度も唇を重ねる。

 

「ぁ、んふっ、ぅん……」

 

 深く、深く、求めるような口付け。

 蕩けた表情をする園子の身体を床から抱き起こし、背中と胸板を密着させる。

 制服越しですら分かる少女の柔肌は力強く抱き締めるとふひゅ、と声を漏らした。

 

「……痛かったか?」

 

「ううん」

 

 話す為にわずかに口付けを止めると、切なげな顔をする雌の表情が視界に映る。

 仄かに甘い匂いと汗を混ぜ合わせたフェロモンが雄をくすぐり、頬を赤らめた表情に息を呑む。

 

「園子は可愛いな」

 

「……!」

 

 何気なく呟いた言葉に少女は照れた。

 かああっと頬を朱に染める園子の新鮮な姿を見ながら制服の中に両手を滑り込ませる。

 触れるブラの感触、即座にずらすと露わになる白い柔肉に躊躇う事なく手のひらで触れる。

 

 制服の中でしっとりとした乳肉は亮之佑の手のひらの中で厭らしく形を変える。

 つきたての餅を思わせる園子の乳房の柔らかさをしばらく無言のままに揉みしだいた。

 

「ん……」

 

 声にならない羞恥と快楽の吐息。

 むにむにと揉むほどに園子の甘い息が漏れ、身をよじらせ小さく喘ぐ。

 

「……ぁっ」

 

 背後から抱き着いたからか自然と園子の頭は亮之佑の肩に乗る。

 さらさらとした金色の髪が耳をくすぐり、間近で熱を帯びた吐息が聞こえた。

 

「は……ぁっ!!」

 

 乳首を人差し指と親指でこねり、硬くなる突起を弄る。

 鼓膜を震わせる園子の唇を何度目かの口付けを行い、ペッティングを続ける。

 下着をずらし、蜜を垂らす膣口に亮之佑の指を挿入すると少女は小さく呻いた。

 

 熱く、ぬめる媚肉が指を引き締める。

 膣壁を擦る度にぷしっと花弁から淫液が噴き出す。

 

「ッ! ッッ!!」

 

 言葉にならない呻き。

 それは唇を塞いでいるからか、園子の腕が首に回る。

 だが亮之佑は手を止めない。慈しむように、憐れむように、少女の蜜壺をほじる。

 

「~~~~っっ!!!」

 

 何度目かの甘い悲鳴が響いた。

 徐々に動きが緩慢となる少女の媚肉を探求する手は止めない。

 じゅぷ、ちゅぷと蜜が手に跳ね、少女の涎がソファに染みを作る。

 

 淡々と、的確に、絶頂へと導く為に園子の身体を弄る。

 ディープなキスを繰り返す度に細い少女の脚がソファで何度もうねる。

 

「ぁ、また……ック……っっ!!!」

 

 自慰よりも気持ちよさそうに喘ぐ少女は達したらしい。

 絶頂の波に翻弄され、熱く小刻みな吐息は亮之佑の征服欲を満たした。

 亮之佑に抱かれて、丹念なディープキスに溶かされたような表情の少女を見下ろす。

 

「ぁっ、ぁっ……」

 

 半開きの唇を重ね、抉じ開けるように舌の柔らかさを堪能する。

 右手に感じる熱い雫が床に滴り落ちる中で、絶頂の余韻に浸る可憐な少女に囁いた。

 

「――――」

 

「――ぇ?」

 

「別に」

 

 聞き返すように見上げる園子の瞳。

 どこか疲れたような弱弱しい表情で真意を問う園子の唇をそっと塞ぐ。

 夜の帳が夕暮れの光を呑み込み、家の電気を点けなければ何も見えなくなるだろう。

 

「ねえ、かっきー。……もう一回言って?」

 

「ちょっと休んでなよ。夕ご飯食べたら続き、するから」

 

「……駄目?」

 

「……」

 

 それでも至近距離でなら相手の顔は見る事が出来た。

 ソファの上で脱力している半裸の美少女を抱きしめる。

 柔肌の感触、服越しとは異なる人の温度を確かめるように、抱きしめた。

 

 

 



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【番外】琥珀と血紅の交わり

 食事は日々の生活の活力だ。

 御飯を食べなければ頭は働かない程に重要な存在である。亮之佑の戦友の一人はかつてサプリや弁当生活と食事を疎かにしていたのだが、今ではその重要性を認識する程だ。

 

「今日はチキンカレーにしようと思う」 

 

 一人暮らしを行うと分かるが実家で暮らすよりも自由度は高くなる。

 同時に責任も付きまとうが、その辺りの諸々を差し引いてもこの解放感は堪らない。当然食事も自分で用意しなくてはならないが既に亮之佑にとっては慣れた物だ。

 

 最初の頃は外食も多かったが最近では随分と自炊が多くなった。

 その理由としては、亮之佑が通う中学校での弁当の見せ合いが楽しいからでもあるが――、

 

「――こんな感じだったな」

 

 料理自体は既に大半が完成している。

 早朝から準備を行う料理は亮之佑にとっては重要な事であった。

 加賀家秘伝のレシピ本という名のノートに時折目を向けながら鍋を掻き混ぜる。

 

「――――」

 

 特段料理を行う事が苦痛であるという訳ではない。寧ろ好きな部類だ。

 そっと周囲を見渡すとそれなりに大きな冷蔵庫や電子レンジ、新しく買ったフライパンが目に付く。元からあった調理器具に少し背伸びして買い足していった器具は自然と愛着が湧いてくる。

 

 料理は嫌いではない。

 ただ、自分で作る度に、『味』の差異を比べる度に亮之佑は自らの至らなさを自覚させられる事が多く、それは苦痛だった。

 

「――――」

 

 なんとなく首元にある指輪に指先が触れる。

 どことなく肌の温度を寄せ付けないような冷たさが心地良く感じた。

 

「くんかくんか~。良い匂い~」

 

 しばらく無言のままに食事の準備を進めていると少女の声音が聞こえた。

 穏やかな声音の持ち主、ふと背後から聞こえた柔らかな声音に亮之佑は力なく笑った。

 

「もう少しで出来るよ」

 

「ん~、何か手伝う?」

 

「いや、大丈夫だ。……服着替えたのか」

 

「え? うん。似合う?」

 

「もちろんさ、写真に収めたいくらい」

 

「かっきー、私の自撮り写真が欲しいの~……?」

 

「エッチな感じでよろしく」

 

 チラリと背後に目をやると少女は薄手のパーカーを羽織っていた。

 先ほどの行為の為に制服から着替えたのだろう、黒色のスカートから伸びる脚が白く映える。

 その視線に気づいたのか、わずかに頬を赤く染めながら園子は亮之佑の背中に抱き着いた。 

 

「おい、危ないぞ」

 

 背中に感じる猛烈な少女の柔らかさ。

 薄手のパーカーは前のチャックこそ閉じられているが確かな少女の肉丘の感触を伝える。

 

「……ダメ?」

 

 ふわりと少女の吐息が耳に掛かる。

 亮之佑の羽織ったエプロンと衣服、その間に園子は手を差し込み小さく囁く。

 

「……かっきーに抱き着いてたいけど、……ダメ?」

 

「……」

 

 甘えた声音は鼓膜を震わしそのまま溶かしてしまう程に甘く感じた。

 わずかに汗を掻いたのか、少女の体臭に混ざる香りは麻薬のようにクラクラと――、

 

「今、火扱ってるから。あぶないから……」

 

「……うん」

 

 それでも、もしもという言葉はある。

 亮之佑とて背後から抱き着く可憐で魅力的な園子の誘いは嬉しい。

 今すぐ押し倒して汗みずくで一日中何も考えず獣のように交わりたい。

 

 だというのに、台所の火や調理器具などが気にかかる。

 それらがもしも園子の白く美しい柔肌を傷つけたらと考えるとゾッとする。

 

「――――」

 

 そもそも、状況としては色々と逆なのではないのか。

 普通なら今抱きしめているのが亮之佑で、抱きしめられるのが園子となるのではないか。

 そんなどこか現実逃避とも偏りのある考えに支配されつつ、チラリと園子に目を向ける。

 

「……」

 

 琥珀色の瞳は亮之佑を映し出す。

 それは当然理解の色を示しながらも、どこか寂しそうで。 

 

「けどまあ、もう出来るし……少しだけな」

 

「……かっきー」

 

「少しだけ、な」

 

 弱火でコトコトと鍋の底を掻き混ぜる。

 丁寧に丁寧に、背中に少女の柔らかさと温かさを感じながら、掻き混ぜた。

 

 

 

 ---

 

 

 

 亮之佑が時折家でしている晩酌は、園子にもバレていた。

 サラダとチキンカレーを食べ、色々あり食後に甘めの酒を飲み談笑していた。 

 

「それでね、わっしーに飛び移った猫さんがね~、とっても可愛かったんよ」

 

「……」

 

「あの猫さんの里親が見つかった時はホッとしたな~」

 

「それは良かった。……ついでにその画像頂戴」

 

「いいよ~」

 

 先週の部活の時の話だ。

 東郷と園子、二人で猫を探した時は大変だったらしいと端末に撮った画像を見せてきた。

 その時亮之佑は別の依頼に取り組んでいたからか、彼女は息継ぎを惜しむように話をしていた。

 

 ふと壁に掛けられた時計に目をやると既に夜の八時を過ぎていた。

 普段は聞こえるであろう微細な針の音は鈴音の如き金色の少女の声に塗りつぶされている。

 

「この後、映画だね~」

 

「旧世紀の映画だっけ?」

 

「うん。えっと、確か題名が、美女と……野獣さん?」

 

「……まあ面白いんじゃないかな? たぶん」

 

 酒缶を片手に、亮之佑と園子はリビングのソファでくつろいでいた。

 食事は日々の活力に繋がる行為だ。それを疎かにする事は如何なる時もしてはならない。

 ――少なくとも亮之佑の両親が生きていた時に学んだ事であり、目の前でどこか満足気な表情をする少女を見て確信に至る。

 

「美味しかったか?」

 

「美味でした~」

 

「……そっか」

 

 そう告げる令嬢の言葉、園子の瞳に偽りは見られず、亮之佑は小さく息を吐いた。

 美味しいと言って貰える料理、楽しそうに微笑む少女達の為に勉強をした甲斐はあったのだろう。こんな事で良いのなら両親にももっと孝行出来ただろうに。

 

「ねえかっきー」

 

「どうした?」

 

「座っていい?」

 

「……?」

 

 陰鬱な気分に浸る亮之佑と対照的に穏やかに微笑む園子。

 ソファでくつろぐ亮之佑の正面に立ちジッと此方を見る琥珀色に目を奪われながらも、少女が告げた言葉の意味が分からず思わず首を傾げた。

 

「いいけど……、いや、一々聞かなくてもいいよ」

 

 親しき中にも礼儀あり、という言葉はこの世界にも存在している。

 だがしかし、それでも目の前の少女は基本的にそういった礼節は弁えている。

 

「う~んとね。へへっ……その言葉が聞きたかったんですよ、旦那ぁ」

 

「誰だ、お前は」

 

「園子だよぉ~」

 

「……酔った?」

 

「酔ってないッハー!」

 

 唐突に口調を変えながら園子はいそいそと亮之佑の両脚を開いた。

 特に抵抗もせずされるがままの亮之佑の股間に園子は座り込み体重を預けた。

 羽のように軽い少女の柔らかい下着がスラックスに触れる感触に、亮之佑は小さく息を吐いた。

 

 ふはーっと同じく息を吐く少女は空き缶を片手に背中を亮之佑の胸板に預ける。

 何を言うのかと思いながら、ふと窓を見ると濃いアジサイ色の闇が世界を覆っていた。

 

「ん……っ」

 

 なんとなく交差させた腕で少女を抱きしめる。

 この甘く柔らかい身体には無限の魔性が秘められている。

 

「ねえかっきー。……続き、しないの?」

 

「続き?」

 

 それは一体何の事だろうか。

 そう小首を傾げる亮之佑にわずかに目を大きく開く園子。

 

「だって……さっき、夕ご飯を……」

 

「……ふーん」

 

 珍しく口ごもる園子の身体の柔らかさに頬を緩めながら腕を肩から胸へと下ろしていく。

 忘れたわけではない。ただ目の前の少女が確かに求めているのだと分かり小さく笑みが浮かぶ。

 

「ぁ……」

 

 するすると腕を下ろし膨らみを目指す。

 パーカーから覗く園子の白い肌、同時にチャックを下げると柔らかさが直に伝わる。

 もにゅりと薄手のパーカー越しでも分かる園子の肉の双丘はじんわりと熱を手のひらに感じさせた。

 

「んっ」

 

 台所で抱き着かれた時には気づいていた。

 パーカーの下に園子は何も付けていない。制服と一緒に脱いだのだろう。

 プリンのような感触を楽しみながら、手のひらで遊ぶようにむにむにと上下に揉む。

 

「ふく……っ」

 

 乳首に一瞬触れる程度に、下乳の肉を持ち上げて捏ねるように揉む。

 その刺激に亮之佑の股に座る園子が前のめりになると、白いうなじが覗く。

 生え際にキスをすると小さく喘ぐ園子の声音には艶と熱が再び混ざりだした。

 

「っ……」

 

 もじもじと尻肉を動かす園子にも怒張の感触は伝わっているだろう。

 少女を女に変えた怒張の盛り上がりは小さな尻に熱を与えている事に気づかないはずがない。

 

 強く揉むわけでもなく、ただ浅く優しく揉む。

 低刺激なそれらに切なげに呻く園子は亮之佑の腕を掴む。

 背後を振り向く園子の琥珀色の瞳は熱に浮かされたように熱く潤んでいた。

 

「かっきー……」

 

 薄い唇を窄め、亮之佑の顔に近づこうとする園子。

 その小顔、薄紅色の唇が触れ合うのを阻止するように亮之佑は顔を背ける。

 

「ん? どうした?」

 

「……いじわる、しないで」

 

 ぱくぱくと金魚のように少女は口を開く。

 何かを求めるような表情はぼおっとしており酩酊したかのようだ。

 チャックを下ろし、再び半脱ぎのような状態にした園子のまろやかな乳房を揉む。

 

「……っ!」

 

 ピンク色の乳首は先端が上を向き、形の良い白い乳房に指が吸い付く。

 手のひらに収まる乳房は餅のように柔らかく、軟骨のような乳首は指で弾く度に快楽の悲鳴が上がった。

 無意識なのか意識しているのか、小振りな尻肉がスラックスと下着越しに擦り付けられる。

 

「意地悪? よく分からないよ、園子」

 

「ひぅ……っ」

 

 長い稲穂を思わせる金色の髪から覗く小さな耳に囁くとビクリと少女は首を竦める。

 スカートに皺を作る手には力が入り、少女が見せる被虐的な反応が亮之佑を愉しませる。

 

「んん……んくっ……!」

 

「ほら、どうして欲しいの?」

 

 甘く呻く少女を背後から抱きしめながら両手で弄る。

 自慰を初めてする乙女のようにゆっくりと胸肉を弄り、健康的な太腿に手を這わす。

 

「……ぅ」

 

 小さく喘ぐ少女はどこに触れても小さく身体を震わせる。

 すべすべの腿肉を手のひらで感じ取りながら、ふと思いつきで園子の手を取ってみる。

 

「園子」

 

「ん……かっきー……」

 

 細く白い少女の手だ。

 重ねてみると、亮之佑の手よりもわずかに小さい少女の手だ。

 その手を取り少女の下腹部に持っていき、秘裂を隠す下着に触れさせ静かに囁く。

 

「いつもどんな風に弄っているの?」

 

「あっ」

 

 くちゅり、と少女の下着は湿り気を帯びていた。

 履き替えたのか、どこか大人びた下着ではなく可愛さを感じる桜色の下着。

 真新しい染みを広げるように園子の細い指と共に下着越しに少女の秘裂を弄る。

 

「こんな感じ?」

 

 前かがみになろうとする園子の上半身を抱き寄せ、少女の秘部を摩る。

 円を描くように指の腹で摩り、秘裂の上にある小さな肉粒を柔らかな布越しに触れる。

 

「ちが……っ!! ……!!」

 

「毎日自分でしてないの?」

 

「ま、毎日じゃ……んぁ……か、かっきぃ……」

 

 わずかに眉を顰める園子の頭を亮之佑はそっと撫でる。

 絹のように柔らかな感触の髪、その感触に頬を緩めながら少女の唇に触れる。

 ふゆんと薄い唇に触れる亮之佑の指に何を思ったのか、園子の唇が小さく噛みつく。

 

「じゃあ、どうして欲しいの?」

 

 しとどに濡れた秘部を弄りながら亮之佑は園子に問いかける。

 羞恥か快感か、普段よりも素直さが足りない顔の赤い少女の口から要求を告げさせる。

 

「……」

 

 あぅ、と指を離した彼女は、小さく吐息を溢す。

 それから園子はしばらくして上目遣いで亮之佑に唇を差し出した。

 

「――キス、して」

 

 いつの間にかソファの上に園子を押し倒し、向かい合いながら、しかし離す事はなく口づけを交わす。唇と唇を重ね迎え入れるように差し出した舌同士を絡ませる。

 ちゅ、ぴちゅ、という下品な音が室内に響く中で園子の手は亮之佑のスラックスを下ろす。

 

 既に反り立った怒張からは先走り汁が垂れ落ち、少女の細い手が肉茎に触れる。

 もしも思いっきりしごいたらすぐに限界を迎えてしまうのは此方も同じであるのだ。

 だからこそ、園子の頬肉の柔らかさを舌先で味わいながら彼女の履く下着を摺り下ろす。

 

 上下左右に動き回り疲れを見せる舌には園子のエキスが染み込んでいる。

 唇を離すとどちらの唾液かも分からない程に混じり合った輝糸が小さく淫らな橋を作る。

 

「キスって……凄いね……」

 

「……」

 

 どこか恍惚な表情でポツリと呟く園子に亮之佑は答えない。

 無言のまま彼女を抱き上げ、細く薄い腰を抱え、心の準備を許さずぬめる肉沼を貫く。

 火傷する程に熱い膣内は怒張を迎え入れ、少女の最奥へと雄のペニスを呑み込む。

 

「あ、ふくっ……っ!!」

 

 にちゅ、と猥らな音と共に亮之佑と園子は繋がる。

 彼女の嬌声とお互いの息遣いだけが聞こえる中で亮之佑は奥歯を噛み締めた。

 今まで溜めた欲求、気を抜けばすぐに暴発してしまいそうになる中で亀頭で奥を擦る。

 

「ッ、ぅ、……っ、ぁ!!」

 

 首に腕を回し、白く長い脚を亮之佑の腰に巻き付ける。

 力強く少女が抱きしめる程に、強く膣壁が怒張から子種を搾り取らんと締め付ける。

 

 限界だった。

 園子との触れ合いで一度も果てなかったのが原因か。思った以上に限界が近い。

 だが一度も動かさずに果てる事だけは嫌なので、尻穴を引き締めて全力で突き上げる。

 

「ぁ……っ! んぅ、んぁあっッ!!」

 

 ぴんと背筋を伸ばし、快楽に喘ぐ園子を見る。

 暴発寸前の射精感を必死で堪え、彼女の揺れる双丘、桜色の乳首に噛り付いた。

 

「あッ! ~~~~ッ!!!」

 

 びくんと身体を硬直させ高みに上る園子。

 その姿を眼球に焼き付けながら、乳首を虐めたてる。

 

 赤子のようにじゅずっと吸っては離す。

 少女の乳首を亮之佑の唾液で汚し、荒々しく吸い尽くす。

 

「それっ!!? また……また……っ!!」

 

 じゅぷじゅぷと浅めのストロークを繰り返し射精に向けて腰を振る。

 男の腰に跨り必死に亮之佑の腕を掴む園子は嫌々と首を振り、苦しそうに嬉しそうに喘ぐ。

 振り下ろされないように、あるいは別の目的か、腰に回した脚は毒蛇のように絡みつき離さないという意思すら感じさせる。

 

「園ちゃん」

 

「……! だして……っ!」

 

 飛沫となった愛液がお互いの裸体を濡らし、あどけない少女を喘がせ犯す喜び。

 下半身の感覚すら薄れる中で、雄の本能に従い、腰を揺らし、雌穴を串刺しにし――、

 

「ぐ―――」

 

「~~~~……ぁッッ!!!!」

 

 体中から抜け出ていく感覚。

 甘い痺れと白く染まる視界の中で、確かに精液を注いでいく感覚に包まれる。

 

 強く抱きしめ、法悦に酔う園子の奥の奥。

 余すことなく最後の一滴まで注いだ亮之佑は、虚脱感と征服感に小さく息を吐いた。

 

 

 

 ---

 

 

 

「野獣さん」

 

 開口一番に園子が亮之佑に伝えた言葉がそれだった。

 裸のまま抱き合いながら、どこか非難めいた眼差しで園子は告げた。

 

「俺のどこが野獣だよ。ほら、テレビでちょうどやってるのが野獣っていうんだよ」

 

「かっきーは人の皮を被った獣だと思うんよ」

 

「男はみな、心に何かを秘めた獣なんだよ」

 

 何気に酷い事を言う園子を抱きしめ、BGMとして流していたテレビに目を向ける。

 既に3割程話が進んでいたが、歌ったり踊ったりしているという印象の方が強かった。

 

 それにしても、と亮之佑は無言のままで園子の姿を見る。

 金色の髪は情事の汗で濡れ、毛先は首筋に張り付いている。

 白い鎖骨はわずかに朱色に染まり、弄り、吸い、揉んだ乳房は張りを保つ。

 

 流れた少女の汗は臍に溜まり、薄く生えた陰毛には淫水が付着している。

 控え目にくびれのある腰と健康的なお腹は前かがみ故か僅かに白肉が集っている。

 そんな一切の遠慮のない野獣さんの視線から隠すように園子の手が秘部を隠した。

 

「……えっち」

 

 その仕草が男を興奮させる事を知らない少女。

 しかしながら幾ばくかの冷静さを取り返した亮之佑は口を開いた。

 

「というか、園子さんや」

 

「なーに? 野獣さん」

 

「今日は、もう、これで止める?」

 

「……ん~」

 

 敢えて主語は省き、区切るように告げる。

 下を見ると若さ故か、一度白濁を吐き出した程度ではすぐに回復の兆しを見せる怒張。

 

「……どこでするの?」

 

 数秒ほどの沈黙の後、囁くように彼女が告げた言葉は肯定と捉える事が出来た。

 『お預け』が効いたのか、自らの肉体に視線を向ける園子に対して囁くように答える。

 

「ベッドで」

 

「ん」

 

 それだけ伝えると、今更ながら恥ずかしいのか俯く園子。

 言葉少なに頷く彼女を立たせ、テレビの電源を切り、二人で二階に向かう。

 

 半裸の少女を連れて冷たい廊下を歩く。

 腕に摑まる園子はやけに静かで、さりとて何かを話す気にもなれずに歩くと、

 

「ぁ」

 

 小さく呻く園子に、亮之佑は脚を止めた。

 もしや何か機嫌を損ねたのか、怪我でもしたのかと彼女の表情を窺う。

 

「……かっきー」

 

「は、はい」

 

 薄いパーカーのみを着用する令嬢はどこか困った様子で内股になっていた。

 よくよく見ると、つぅ、と内股を伝う蜜と精液の混ざりあったそれは、ポタリと床に。

 

「……垂れてきちゃった」

 

「……」

 

「わっ!」

 

 無言のままに令嬢を抱き上げる。

 お姫様だっこされる形となった園子は静かに亮之佑を見上げる。

 

「園ちゃん」

 

「なあに? かっきー」

 

「今日は寝られると思うなよ」

 

「……うん!」

 

 亮之佑の首に手を回した園子は、どこか楽しそうに亮之佑に口づけをした。

 

 

 



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【番外】姉と奇術師の一幕

「最近どうよ?」

 

「……そうですね」

 

 曖昧で抽象的な言葉、それでいて使い古された言葉である。

 偶然スーパーでエンカウントを果たした大剣使いの少女、一歳年上となる少女に目を向ける。

 そっと彼女が持つスーパーの袋を取り上げ、彼女の歩幅に合わせながら俺は暫し考えてみる事にした。

 

「あ、ありがと」

 

「……ん」

 

 学校という物には生前良い記憶はない。

 『加賀亮之佑』へと至る前の、俺が腐っていた頃は、一度も楽しいとは思わなかった。その精神を軟弱と罵る者もいたし、上から目線でアレコレと指図を出す輩も多くいたのを覚えている。

 

 だからだろうか。こうして味わう事は二度となかったはずの学校は意外と悪い物ではなかった。好きな少女の制服姿を写真に収め色々な悪戯を行ったり、趣味で盛り上がれる有能な紳士淑女たちと遊んだりもした。これが楽しいかと聞かれると――楽しいと思える。

 

「――ああ、これが青春なんだな……と」

 

「……ん? まあ、いつも通りね」

 

「というか少し前にも部室に来ましたよね、先輩」

 

「まあね。……ほら、樹の凛々しい部長姿の方をアタシは見たいのよ!」

 

「しってる」

 

 元勇者部部長・名誉部長、犬吠埼風。

 讃州中学校を卒業し、晴れて高校生と化した彼女は声を高らかに告げる。

 年月が経過しようとも薄れる事のない妹愛の深さ、重さについては俺も良く知っている。

 

 それはかつて実妹、犬吠埼樹の声が散華した事が原因で怒りに呑まれ、大赦を潰すと決めた少女の決意の固さが語っていた。あの時の剣の重みは痺れる程に手のひらに残っている。命を懸けて、全てを敵に回しても、家族の為に戦おうとした少女の覚悟を俺は知っている。

 

「ところで亮之佑」

 

「はい?」

 

「せっかくだし、今日食べてかない?」

 

「ん……良いですね。風先輩のご飯、美味しいですから」

 

 卒業しても、俺と風の縁は途切れる事は無かった。

 高校生という色々と多感な時期であろう関わらず、明るく俺を食事に誘ってくれる。そういう優しい人であるのはそれなりに長い付き合いなので俺も分かっている。

 

「それにしても、最近少し寒くなってきたわね〜」

 

「そうですね……、こういう日は温かい物が良いと思うんですけど」

 

「へっへっへ……。旦那ぁ、そう言うと思って今日は鍋にするつもりなんですよ」

 

「鍋から締めのうどんね。凄く……良いと思います」

 

「でっしょ~? でもね、樹ったらすぐ太るだのなんだの言うのよ」

 

「……そこがまた可愛いんでしょ?」

 

「そう!!」

 

 適当な茶番を繰り広げながら俺と風は夕暮れの中を歩いていく。 

 本日は学校があるわけでも、部活があるわけでもない普通の休日だが夜の光が世界を覆う時間は日を追うごとに早くなりつつあった。

 

 どこか閑散とした寂しげな空気のある町を二人、同じ目的の場所へと歩いていく。

 そうしてしばらく談笑を交わしていると、ふと風に連れられてコンビニに入る事になった。

 

「何か買うんですか?」

 

「うどんで思い出しちゃって。『うどんまん』なる物が出たらしくてさ……」

 

「……なるほど」

 

 若干言葉を濁した風と暫し分かれた俺は店内を物色する事になった。

 彼女のライフワークに関して俺は口を出せる立場ではない。よく食べる彼女ではあるが、美味しい物を食べる事で心身共に充実したいという気持ちは分かる。もしくは食べる事でストレスを解消しているのか。

 

「考え過ぎかな」

 

 小さく首を振り思考を止める俺はなんとなく飲料コーナーに目を向ける。

 以前よりも頻度は減ったが、それでもなんとなく酒缶が置かれている場所に目を向けてしまう。酒を飲むことで得られる酩酊感。癖になる感覚ではあるが依存する事だけはしなかった。

 

 それは俺の周りに優しい彼女達がいてくれたおかげだろう。

 彼女達が共に笑い、泣き、一緒に歩んでくれたからこそ、幾度も俺は救われているのだ。

 酒よりも深く溺れ酷く依存しかけているという自覚がある。手放したくないと思っているのだ。

 

「――――」

 

 そんな事を考えていると、ふと俺はスラックスに入れた携帯端末が震えているのに気付いた。

 思考を止め、端末を取り出し画面に目を向けると園子から『NARUKO』経由でメッセージが届いていた。普段は家に来る頻度が多い分あまりツールを使わないので珍しく感じていると――、

 

『かっきーって実装されたら闇属性だと思うんよ』

 

「……?」

 

『きっと範囲系だと思うんだけど……かっきーはどう思う?』

 

「良いと思うよ……と」

 

 ――何を言っているのかよく分からないが、直感的に同意しておいた。

 そんな風に端末を弄っていると、ふと此方に近づいてくる人影を目端に捉える。

 先ほど分かれた風が買い物を済ませたのか、俺の元にゆっくりとした動きで近づいてくる。

 

「おまたせ、亮之佑。アンタは何か買わなくていいわけ?」

 

「いや、俺は風先輩を待ってたので」

 

「そっか。じゃあ、はい」

 

「……?」

 

 合流した風と一緒にコンビニから出ると空は既に暗くなっていた。

 小さく笑う風は小さな袋から白い物体を取り出し、俺に手渡してきた。

 小麦粉を捏ね合わせ、拳大の大きさにしたような柔らかいソレは程良い温度であった。

 

「これは?」

 

「アンタなら肉まんかなって。奢りよ、奢り!」

 

「……、ありがとうございます、風先輩」

 

 先輩と後輩の関係。

 今更断るわけにもいかず、そっと薄皮に包まれた饅頭状のソレに齧り付いた。

 ふわりとした生地、その中に包まれた肉の濃厚な味の調和に俺は静かに頬を緩めた。

 

 チラリと隣を見ると満足そうな顔で『うどんまん』なる物を食す風の姿を捉える。 

 表情を見る限り、名前から想像させる不味さは無いのかもしれないと俺はそんな事を思った。

 

 

 

 ---

 

 

 

「そういえば風先輩」

 

「んー?」

 

 今日の風はやけに抽象的だなと思いながら、隣に立つ少女に目を向ける。

 エプロンを身に着け、慣れた様子で野菜を切る姿は若妻を彷彿とさせる風が準備を終わらせるのを見てから、ふと俺は話題作りの為に口を開いた。

 

「高校に入って彼氏は出来ましたか?」

 

「ぶふっ」

 

 そんな事を尋ねると、唐突に風は漫画のワンシーンのように噴き出した。

 此方としては軽い世間話のつもりだったのだが、彼女にとっては中々に突っ込まれたくはない話題であったのだろうか。

 

「え、あ、ま、まあね。アタシくらいになると、もう女子力が溢れて大変よ!」

 

「……風先輩」

 

「まあアタシレベルだとね……、女子力が高すぎて男が寄ってこないのよ」

 

 彼女の女子力は遂に男を寄せ付けない程に強化されたのだろうか。

 そんな事を追及すれば泣き出されるか、小突かれるか、怒られるかの三択なのが目に見えたのでそれだけは止めておいた。

 

「男達は見る目がないんですね。こんなに料理も出来て優しくて素敵な人なのに」

 

「ちょっ、ちょっと」

 

 揶揄しているように聞こえるかもしれないが俺にとっては事実でしかない。

 個性的な部員たちを纏め上げた部長、そして今も活躍している人類の希望である勇者の一人。サバサバとした性格ながらも責任感は強く、一人で抱え込む姿はどこか東郷と似ている。

 

「絶対良いお嫁さんになれるのに。俺が紳士じゃなかったら食べちゃうところだった」

 

「食べっ!? 変な事を言うんじゃないわよ、もう……」

 

 絶妙に照れる風は、しかしどこか満更でも無いような表情を見せる。

 樹と毛色が似ている金色、東郷ほどではなくとも衣服の上から分かる双丘は豊満さを伝えている。外見も中身も十分なほどに彼女は女性である事を意識させる。

 

「アンタ、そんな感じで友奈とか東郷とか、乃木とかに手を出したんでしょ!」

 

「……そんな訳じゃないですよ」

 

「はいはい。まあアンタはしっかりしているし、あの子たちを泣かせたりはしないでしょ」

 

「……もちろん」

 

 風が言っているような事をした覚えはない。

 イチャイチャしていたら身体が勝手に動いてしまったのだ。後悔はない。

 ふと首筋にある指輪に触れようとする腕に口付けの跡を見つけ、無言で腕を後ろに回した。

 

「……」

 

「亮之佑って結構モテる方じゃないの?」

 

「いえ、そんな事はないです」

 

「えっ、そうだっけ? 前、ラブレターとか貰ってたじゃない」

 

「……まあ。でも知らない人に言い寄られても嬉しくはないので」

 

「なるほどね。あ、もう手伝いは大丈夫だから。テレビでも見てていいわよー」

 

「……」

 

 犬吠埼家の台所を取り締まる少女の言葉に俺は引き下がらざるを得ない。

 ――得ないのだが、何故だろう。軽くあしらわれた事に僅かな憤りを感じる。

 高校生になった事で精神的な優位でも得たつもりの少女は余裕ぶった表情で調理を進めている。

 

 こうも容易く、――彼女にとっては丁重に扱っているのだろうが、扱われるとあってないようなプライドを刺激される。具体的には何か悪戯をしたくなるのだが。

 

「……」

 

「よしっ!」

 

 とはいえ料理中の相手の邪魔をする気にもなれず、味付けに夢中な彼女を残し俺は台所から撤退する。リビングのソファに腰を下ろした俺はすることもなく黙ってテレビを点けた。

 

「……」

 

 このまま風に養われたらとんでもなく自堕落な人間になりそうだ。

 一瞬そんな事を思い、同時にそんな優しい姉がいる樹を俺は少しだけ羨ましく感じたのだった。

 

 

 




ついに犬吠埼姉妹に手を出す模様。男の明日はどちらだ!


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【番外】それは甘い捕食のようで

 ――風の作った鍋は結論から言うならば絶品と呼べる物であった。

 言うなれば家庭料理においての母の味、食する事が安寧をもたらすような味わい。

 不思議と精神が、肉体が安らぎを得るような感覚にポツリと亮之佑は口を開いた。

 

「――美味しいです」

 

「それは良かったわ」

 

「お姉ちゃん、お皿取って」

 

「ほら、……あっ樹。ちゃんと白菜も食べなさいよ」

 

「うん」

 

 黙々と空になりつつある鍋を囲み話をするのは、亮之佑と風、樹である。

 友人と勉強をしていたという勤勉な犬吠埼妹は亮之佑がテレビを点けると同時に帰ってきたのだ。現勇者部部長と元勇者部部長の二人が揃った空間で、ただ一人の平部員は箸を動かす。

 

「――――」

 

 一人だけではない、誰かと共にする食事。

 その大切さを知っていて、彼女達の優しさを知っている。

 だからこそ、亮之佑は時々彼女達に対してある思いを抱いてしまいそうになる。

 

 すなわち、加賀亮之佑が同情されているのではないのか。

 この世界でも結局は独りとなった亮之佑に対し、哀れみで誘っているのではないか。

 テーブルを挟み食事をする彼女達がそんな風な思いを抱いているのかもしれないと。

 

「――――」

 

 妄想でしかない。

 実際に聞けば彼女達は首を横に振り否定するだろう。

 だが今更聞くというのも亮之佑にとっては中々に骨が折れ、勇気がいるだろう。

 

「――――」

 

 そんな事を考える亮之佑は小さく頭を振り思考を途絶えさせる。

 世界を救う為に共に戦う友人達にすら唐突にこんな後ろ向きな考えを抱く自分。

 結局中途半端に断る事も、話す事も出来ず、全てを自分の中に押し込めてしまう。

 

 情けなくて、情けなくて、涙が出そうだ。

 

 弱音を吐かず溜めこむ友奈に対してどうこう言える立場ではない。

 有象無象の他人ではなく、紛れもない友人に対してすら疑心を生じさせる己の性根。

 美味しい食事に無垢な笑みを浮かべる彼女達に浮かべるコレは、もはや病気でしかない。

 

「ほら、亮之佑もしっかり食べなさいよ」

 

「あ、どうも」

 

 自然な動きで小皿に鍋の具材をよそう風。

 いつも通りの笑みでソレを受け取る亮之佑は気分を変えようと口を開く。 

 

「なんか……」

 

「はい?」

 

 満腹感に囚われつつある思考の中で、ふと亮之佑は樹に声を掛けた。

 白菜に伸ばす箸を止める樹の姿を亮之佑は箸を動かすのを止めてジッと見つめる。

 

「あ、あの……何ですか、亮さん?」

 

「いやこっちだと出るの初めてじゃない? 部長」

 

「こっち……?」

 

 首付近で切り揃えた風と同じ髪色、瞳の色は性格は違えどやはり姉妹だと感じさせる。

 学校の紳士淑女間では小動物のようだという評価を付けられているとは気づかない彼女は亮之佑の戯言に対し、小首を傾げどこか困惑のある表情で瞳を揺らしている。

 

「そんな事よりも。樹、亮之佑も。もっと食べなさいよ」

 

「食べてるよぉ~」

 

 暖かな家庭の、暖かな団欒の空気というのは良い物である。

 月日を経ても尚、一度味わえば夢にまで出る度に渇望して止まない。

 それは世界でたった二人だけの家族が作り出す幻想のような光景であるからか。

 

「そういえば樹。歌の方はどう?」

 

「えっと、結構良いところまで行けたかなと思います。今は事務所側からの対応待ちで……」

 

「そっか。夢、順調に進んでいるね」

 

「はい! あっ、でもまだまだデビューには程遠いですから……」

 

 一度は失った少女の声音は僅かに内気さがあれど、どこかに芯の強さを感じさせる。

 かつてはこの世の全てに対し常に怯え続けるように姉の後ろに隠れてばかりだった少女は、あれから随分と成長したのだと亮之佑は改めて思う。

 

「あ!」

 

「――――」

 

 そんな生暖かい目を向ける亮之佑の顔を見返す樹は唐突に声を上げた。

 何かを思い出したような、痒い所に手が届いたような表情をする樹は唐突に立ち上がり風へと向き直る。

 

「お姉ちゃん!」

 

「ん?」

 

「ほら、あれ! 亮さんが次に来たらって……」

 

「……ああ!! あれね。あれなら確か冷凍の一番奥に……」

 

 あれ、これ、といった主語を省いた会話が通じるのは長い時を共に生きた証であろう。

 亮之佑ですら友奈や園子とは時々絶妙な齟齬が発生してしまうのだからと考えていると、テーブルを挟みよく似た色の二組の視線が亮之佑を見つめる。

 

 可愛らしい少女達に注目されるのは悪い気分ではない。

 寧ろもっと見ろとばかりにドヤ顔を晒す亮之佑の反応を平然と無視する風と樹。

 

「亮之佑、アイス食べる?」

 

「――。ええっと、じゃあいただき、ます?」

 

 事情が分からずとも、取り敢えずと小さく頷く亮之佑。

 その同意を待っていたかのように樹が素早く台所に向かい、十数秒後に戻ってきた。

 小さく微笑む樹の小さな手のひらに収まるようなカップサイズのアイスが三つ。

 

「いや~依頼してくれた人がさ、どうしてもっていうから受け取らざるを得なかったんだけど」

 

「わーお」

 

 風の背景語りを聞き流しながら亮之佑は樹から受け取ったソレを見つめる。

 容器はコンビニやスーパーで売っている普通のアイスであるのは間違いない。

 

「甘酒風味っていうからさ……、アンタなら余裕でしょ?」

 

「……ええ、まあ」

 

 甘酒如きで酔う人などいないだろう。あれはジュースだ。

 少なくとも亮之佑にとってはただのアイスにしか見えない。

 

「二人のは何味ですか?」

 

「アタシのはバニラで――」

 

「私のはチョコですね」

 

「――――」

 

 亮之佑はアイスが嫌いという訳ではない。寧ろ甘味に嫌いな物はない。

 嫌いな物と言うならばとろろではあるが、無理やり東郷に矯正された事は軽いトラウマだ。そんな訳で拒む理由なぞどこにも存在しておらず、カップの蓋を開ける亮之佑はふと風に笑いかけた。

 

「俺はともかく、風先輩はいいんですか?」

 

 小さく微笑む亮之佑の声音に悪意は込められていない。

 何よりもこの問いかけをした場合、目の前で快活に笑うブロンド髪の少女の答えは予測出来た。

 

「もちろん、別腹よ!」

 

 

 

 ---

 

 

 

「ぶっちゃけ、どうなのよ」

 

 アイスの後に締めのうどんを平らげつつも余裕の表情の風は唐突に口を開いた。

 既に満腹で離脱した樹はお風呂に入り十分、風と二人で片づけをしている時だった。

 

「……?」

 

 皿洗いを風が、皿拭きを亮之佑が担当しながら何気なく口にした風の言葉。

 妹ではない自分。それなりに風との付き合いはあると思うが流石に察せない。

 

「ほら、友奈とかと」

 

「……ああ」

 

 小さく眉を顰める亮之佑に対し補足するように風は告げる。

 女子という生き物は恋愛に対する関心が非常に高い物なのだろうと思う。本来ならば話す義務などもないが、隣に立つ少女は亮之佑に対し変に茶化す事もないだろう。

 

 とはいえ、自分で言うのもアレだが中々に無垢な少女に聞かせる話でもない。

 突き抜けた爛れた話ならば、己が契約を交わした悪魔にも苦笑されるのは必至だ。

 そんな訳でどんな風に話をするべきかと亮之佑が頭を捻っていると風が小さく呟いた。

 

「その、しちゃったんでしょ……?」

 

「……」

 

「キス、とか」

 

「……まあ」

 

「へ、へー……。凄いわね……」

 

 蛇口から流れる水の音が遠くに感じる。

 横目に見る少女の頬は僅かに赤らみ、どこか初々しさを感じさせる。

 とはいえやはり年頃なのか、他人の情事を聞く後ろめたさよりも好奇心の方が上らしい。

 

「それでど、どうでした……?」

 

「……」

 

 やけに食いついてくる少女。

 敬語になってまで聞きたい事なのかと若干呆れながらも付き合う事にする。

 

「……人の事よりも自分はどうなんですか? キスぐらい、しましたか?」

 

「うっ」

 

 カウンターのつもりはなかったが風にダメージが入ったらしい。

 僅かに水で濡れた手を胸元に寄せ苦しそうな顔をする風はわざとらしく呻く。

 

「いや、アタシはほら、女子力が高いからさ……」

 

「じゃあ、ちょっとしてみますか?」

 

「して……って、キッ、え、ええっ!?」

 

「その方が分かるかなって」

 

 キスの感想を聞かれても凄かったとしか言いようがない。

 自身の語彙力の低さを嘆きつつ悪戯心全開で亮之佑は風に近づく。

 

「アタシは別にっ、そういうのはいいかな~って、ねえ?」

 

「ほう」

 

「ほう、じゃなくて!」

 

 亮之佑が一歩近づくと風が一歩後退する。

 犬吠埼家のキッチンはそれなりに広めであるがやはり限りがある。

 さりげなく逃げ道を塞ぎながら、徐々に壁の隅に風を追い詰めながら話し掛ける。

 

「そんなに気になるなら少しだけ試してみようじゃないですか」

 

「試すって……」

 

「試すだけだから風先輩は初キスではないからセーフ」

 

「アタシは、その、別に、初めてってわけじゃ」

 

「違うの?」

 

「ぁ、ぅ……」

 

 壁際に追い詰められる風は、それでも微かな見栄を張る。

 それを一瞬で看破する亮之佑が浮かべる笑みは、まるで悪魔のようだった。

 年相応な表情の風は毒蛇に睨まれた小さな鼠のように小さく息を呑み亮之佑を見上げる。

 

「樹が、お風呂、上がってくるから」

 

「……」

 

 肝心な所で臆病になる少女。

 いわゆる壁ドンの姿勢、ビクリと身じろぎする風に亮之佑は徐々に体を近づける。

 顔を近づけると香る少女の匂い、それは悪戯の境を曖昧に変えかねない危険な物だ。

 

「風、先輩」

 

「だめ……」

 

 この家の主は現在、緊張した面持ちで亮之佑を見返している。

 仄かに紅潮させた頬は年頃の少女であり、同時に未熟な女を思わせる。

 

「風先輩って……可愛いですね」

 

「んっ……」

 

 唇を震わし、喉を鳴らす。

 本当に緊張しているのか、解してやろうとする手が制御を外れ彼女の首筋に伸びる。

 

「良いんですか」

 

「……」

 

 細く白い彼女の肌を指がなぞると、くすぐったさに小さく喉を引く風。

 灰色のシャツ、白色のスカート、薄茶色のタイツを着用した彼女をベルトの如く抱きしめていく。徐々に逃げられる機会が減る中で、それでも少女は逃げる事なくその時を待つようだった。

 

「良いんですか」

 

「……す」

 

 再度問いかける。

 俯き加減の少女の顎を持ち上げると、赤ら顔で潤んだ薄緑色の瞳の乙女が目に映る。

 しばし亮之佑と目を合わせ、しかし羞恥心からか、ふいと横を向く少女は小さく呟いた。

 

「……キス、だけだからね」

 

「――もちろん」

 

 悪戯のはずだったが同意を得た。

 なので躊躇う事なく、紳士らしく亮之佑は風の唇を奪う。

 

「ん……っ」

 

 風の下唇を自らの唇で挟み柔らかさを堪能する。

 上唇にも同じことを行い、大剣使いの熱く柔らかい唇との触れ合いを愉しむ。

 路上で行う恋人のように、ねちっこくない相手への親しみと慈しみに溢れた口づけだ。

 

「……! ……!」

 

 柔らかい少女の背中に回す亮之佑の腕に力が籠る。

 同時に風の後頭部を手のひらで優しく押さえながら口腔行為を続ける。

 初めての行為に戸惑い硬直する少女、何かに怯えるように亮之佑の肩を両手でぎゅっと掴む風は徐々にその力を抜いていく。

 

「……ふ、ンっ――」

 

 息の仕方が分からず溺れたように鼻で、口で、呼吸をする少女の唇を塞ぐ。

 犯すように、憐れむように、身を固くする少女の仕草に興奮を隠せない亮之佑は壁を背中にする少女を抱き寄せながらキスのみに没頭する。

 

「……っぁ」

 

 少しだけ開いた唇の間から舌を差し入れ、先端だけを触れ合わせる。

 下品に快楽を貪るようなものではなく、背徳感の中でひっそりと恋人が交わすような行為。

 そんな口腔行為を二度、三度と行う度に抱きしめた少女の身体が熱を帯びていくのを感じた。

 

「んぅ、ぅ……!」

 

 切なげな声音。

 少女の声に艶が入るのを感じながら、ふと亮之佑は後頭部に回した手を下へと動かし始めた。

 徐々に下へと、少女の衣服の感触を手のひらで味わいながら背中を伝い、腰、そして――

 

「ぁ……っ」

 

 もにゅりとスカートの中に忍び込み、風の尻肉を揉む。

 その瞬間、少女の身体がビクンと震えるのが抱きしめた亮之佑だからこそ分かった。

 力の抜けた身体に僅かに抵抗の力が籠るが、男の力には敵わず悦楽の悲鳴がこぼれる。

 

「あ、やっ!」

 

 ざらついたタイツと下着に包まれた風の柔肉は熱を手のひらに伝える。

 男のいやらしさを隠さない手つき、割り拓くように揉み、円を描くように愛撫をする。

 

「……ッ」

 

 ガクガクと震える少女の足、崩れ落ちそうになる風の身体を亮之佑は支える。

 少女の股下に足を差し込み、床に崩れ落ちるという結果を回避しつつ膝を押し込む。

 膝に感じる風の恥部は下着越しですら柔らかく、そして隠せない程に熱く湿っていた。

 

「ぁ! ぁ、ぁ!」

 

 口端から垂れ落ちる唾液。

 それは亮之佑の物か風の物か、混ざり合ったソレを判断する術はない。

 唇を汚し、しかし拭う事を忘れた透明な糸は珠へと変わり、少女の唇に付着する。

 

「ん……あっ」

 

 唇を離した風は、堪えきれないように吐息を漏らす。

 頬に朱を差す少女はどこか虚ろな表情で、奇術師によるキスと愛撫に小さく喘ぐ。

 

「も、ひゃめ……、いつき。あがっひゃうから……」

 

「声を出さなければいい」

 

 今更思い出したように抗議する少女の唇を塞ぐ。

 歯茎を、舌裏を舐め、同時にどう舌先を動かせば良いかを風に無言で教え込む。

 

「ふっ……、ん……」

 

 必死に声を出さないとする風の姿。

 それでもこぼれる姉の声を聴いたら妹はどんな顔をするのだろうか。

 そんな事を考えると否応でも興奮が高まる亮之佑はスカートを捲り秘部に手を伸ばす。

 

「んんっ!」

 

 形だけの抵抗を試みる風。

 だが片手で僅かにタイツを引き裂き、ぬめる下着にくちゅりと触れた途端ピタリと抵抗は止む。

 

「んあ……っ!」

 

 堪えきれず声を漏らす風に構わず亮之佑は下着越しに媚肉を弄る。

 直接ではない、覚えたての自慰のように、陰唇に張り付く下着越しに上下に摩る。

 高校生になった風が樹が寝た後にどんな風に自分を慰めるかを想像して動かしていく。

 

「……感度良いけど、もしかして自分で弄ってるの?」

 

「……!! ぅっ……ぅぅ……ッ!」

 

 囁くと耳まで赤くする風はぎゅっと亮之佑の肩を掴む。

 何かを堪えるように秘部に伸ばす腕を必死に掴む風は嫌々と首を振る。

 

 下着を膣内に押し込むように中指で上下に強く摩る。

 同時に親指が秘裂の上部を這いずりまわり、風の表情を元に陰核を探り当てる。

 

「あ! 待って、そこはっ!!」

 

 その瞬間の風の反応は劇的であった。

 目を見開き亮之佑の腕を掴む風は切羽詰まった様子で、声には焦燥が混ざっている。

 だからこそ普段は聞けない風の声を聴くべく、亮之佑は問答無用で陰核を押しつぶした。

 

「はぁっ! あくっ、んんっ!!」

 

 ぱたた、と床に蜜液が落ちるが指が止まることはない。

 次へ次へと溢れる少女の愛液と声に亮之佑は親指で肉粒を弄り続ける。

 そのままくちくちと秘部を粘着質に弄られる風はやがてあられもない声を上げた。

 

「あ……っ!! あたっ、もう……、あ、あぃ、いっ……ッッッ!!!」

 

 ぴんと背を反らし、ぎゅっと目を閉じる風は法悦の空を飛ぶ。

 硬直し、びくっ、びくっと全身を震わせる少女がゆっくりと床に座り込む。

 

「……」

 

 こんな声を出す風の姿は初めてだった。

 荒い息で口周りを唾液で汚した風は、人には見せられない恍惚の表情をしている。

 だからこそ亮之佑は無言のまま携帯端末を取り出しレンズでその姿を映し出し――撮った。

 

 一枚、二枚。

 画像として写し出される裂けたパンストから覗く白色の下着。

 スカートは捲れ、頬を上気させる姿は見る人が見れば何をしていたか即座に分かるだろう。

 

「……」

 

「ぁ……」

 

 一連の行為は無音だった。

 彼女の呼吸が戻る数秒の間で行われたが、被写体となった少女は気づいていた。

 

「キスはどうでしたか、先輩」

 

「……」

 

「先輩は可愛いから、単純に男が風先輩を放置する理由が思い付きません」

 

 返事はない。

 どこか疲れた顔で見上げる風に亮之佑は微笑む。

 それは悪魔の微笑とも、人を徹底的に堕とし込む奇術師としての笑みで。

 

「こんな事はもうしません」

 

「……」

 

「ええ、勿論。俺は約束とか契約はしっかり守るので。ただ――」

 

 この家で、唯一風にだけ聞こえるように髪の毛を払い亮之佑は囁く。

 クツクツと嗤いながら、無垢な少女を確実に堕とすような声音で、少女の形の良い耳に甘噛みをするように吐息と共に囁く。

 

「――もしもこの先がしたくなったら、言ってくださいね。一杯、凄いこと、してあげますから」

 

「……ぅ、ぁ」

 

 パクパクと口を開く風から頬の赤みは消えない。

 そんな風の乱れた衣服を直し、亮之佑は立ち上がる。

 

「そろそろ樹がお風呂から上がるでしょうし、俺は帰りますね」

 

「あ、えっと……」

 

「じゃあ、先輩。また今度」

 

「ん……っ」

 

 どこか呆然とする風の首筋に強めにキスをする。

 それは親愛なる先輩への悪戯でありながら、別れの合図でもあった。

 塩っぽい味の風の首筋から唇を離し亮之佑は風を置いてキッチンから出ていく。

 

「……」

 

 そうして出入口付近、廊下付近に滴り落ちる水滴を亮之佑は見つけた。

 風呂場へと点々と続く水滴は、まるで道しるべのようにここに誰がいたかを教えてくれて。

 

「……一人で何してるのかなぁ」

 

 どのみち今は風呂に入っているらしい妹の方には会えないだろう。

 そう考えて亮之佑は一人、見送りもなく玄関で靴を履き犬吠埼家を出るのだった。

 

 

 

 ---

 

 

 

 外は暗く、しかし幸いにも冴えた月が亮之佑を見下ろす。

 中途半端な行為をしたせいでスラックスの中の怒張が大変な事になっている。

 外で出す訳にもいかず性欲と熱を持て余しながら夜風に当たり、気まぐれに端末を開く。

 

「……スパルタよりはエッチな感じでお願いしたいんだけどな」

 

「でも、東郷さんって真面目で厳しいからなぁ」

 

 勇者部で使用している『NARUKO』経由で東郷から亮之佑にメールが届いていた。

 一体何事かと思い文面を覗き込むと、水練の日取りという内容に亮之佑は小さく息を吐いた。

 

 



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【番外】夏の前、水着の少女

 讃州市からやや離れた場所に存在する屋内プール施設。

 流水プールや温水プールなどそこそこ充実した設備がある。

 当然夏は人が多くなるが、時期的にまだ閑散期な為か人はあまり見られない。

  

「まあ、混んでたら絶対来ないけどな」

 

 新しく買った黒と赤の海パンのみの姿で俺は呟いた。

 広い施設、心をくすぐられるような遊具に目を向けながら数人の少女を待つ。

 何気なしにふと上を見上げると、雲の間から見える太陽の光にわずかに目を細める。

 

「……」

 

 女の着替えは長い。

 だが、同時にどんな物を着用してくるのかという期待を膨らませる時間になる。

 膨らむ期待と股間を沈め自販機から買ってきた飲料の蓋を開けては閉める行為に意識を向ける。

 

「お待たせー」

 

 そうして、やがて耳に届く聞き慣れた少女の声音。

 鈴音を思わせる快活なお向かいさんの声に亮之佑は目を向ける。

 

「どう……かな?」

 

「……」

 

 どこか照れ臭げな表情で歩いてくる少女。

 亮之佑に見せる為に園子や東郷と選んだという水着。彼女が選んだシンプルなビキニタイプは桜の模様、胸元や腰回りにはひらひらとしたピンク色のレースがあしらわれてる。

 

「可愛い」

 

「……! ありがと」

 

 はにかむような笑顔で告げる友奈の後ろから可憐な美少女達が続く。

 友奈の笑顔に吸い寄せられるようにして現れた東郷も慎み深くも大胆さのある水着姿だ。

 

「東郷さん」

 

「亮くん。今日は頑張ろうね」

 

「……なんでしたっけ」

 

「水練よ、忘れたの?」

 

「そうでした」

 

 とぼけつつも東郷の水着姿に目を向ける。

 薄青色のビキニには朝顔の模様が施され、まろび出そうな乳房の存在に目が吸い寄せられる。恐ろしい程に似合う人工的な水着は少女自身の雪肌をより際立たせる。

 

「綺麗だよ」

 

「も、もう……そういう事をさらっと言わないで」

 

 頬を赤らめる東郷は自らの柔肉が作る谷間を手で隠しながらも小さく微笑む。

 そうして準備体操を始めた友奈を追いかける東郷のまろやかな尻を目で追いかけると、東郷の後に続く一人の少女が浮き輪を持ちながら亮之佑の元へと歩いてくる。

 

「ヘイヘイ、かっきー!」

 

「園ちゃん」

 

「おまたせ~、……似合う?」

 

 ハイビスカスの髪飾りをつけ、長い金色の髪をポニーテールにした園子の姿。

 彼女もまた紫のビキニと白い双丘を揺らし、見事なくびれを姫君は見せつけてくる。

 

「似合うよ」

 

「んへへ~、どれくらい?」

 

 どこか悪戯っ子のように上目遣いをする園子はそんな言葉を放つ。

 どれくらいと聞かれるとどう答えるべきか悩むが、少し考えて形の良い園子の耳に囁く。

 

「そうだな。今すぐ――――……外で、――――、――――くらい」

 

「ほぇ……!?」

 

 顔を赤くする園子に俺はクツ……と小さく笑いかける。

 まさかこんな公共の場で淫らな言葉を囁かれると思わなかったのだろう。

 

「か、かっきぃ……」

 

「嘘じゃないよ」

 

「も~」

 

 浮き輪で赤めの顔を隠し耳を押さえつつも、細い少女の手が亮之佑の腕を掴む。

 小さな力ながらも逆らわずに金色の髪の少女に引っ張られて二人でゆっくりと歩きだす。

 

「今日はありがとうな。園子」

 

「ううん、かっきーの為だからね。というかほとんど『大社』の人たちがしてくれたんだ」

 

 広い施設には水の音が響くが人の姿はいない。否、俺と友奈と東郷と園子しかいない。

 合計四人。裏にスタッフの人間はいるかもしれないが『大社』の息が掛かった人間だろう。

 もともと乃木家が経営する施設で、更に勇者の事情に詳しいという身内のみの空間である。

 

 本来は俺と東郷だけで練習するつもりだった。

 ところがどこからか話が漏れたのか、せっかくだから皆で行こうという事になった。

 絵面的に泳げない少年に教える少女達みたいな構図だけはやめて欲しい男心があるのだが。

 

「……?」

 

「むふ~」

 

 そんな事を思っている時であった。

 くいっと肘を引かれ、目を向けると園子が小さく微笑む。

 

「かっきーがまだ泳げないなんてね~」

 

「……いやいや、園子、園ちゃんや。人間欠点の一つや二つある方が魅力的じゃないか?」

 

 出来過ぎというのは駄目だと思う。見ていてつまらないと感じさせる。

 全体的に近寄りがたい存在になると俺は思うが、その意見に対して園子は首を振る。

 

「自分で言うのはダメだよ」

 

「あ、はい」

 

「でも、かっきーは魅力的だよ」

 

 プールという施設。呼吸する度に鼻腔をくすぐる独特の匂い。

 閑散期とはいえ、一年中営業しているらしいこの施設は現在『勇者』の修練という名の慰安目的で借りられている。今後も続くであろう御役目で少しでも休息を与える為でもあるらしい。

 

「夏凜ちゃんや風先輩も来れば良かったのに……」

 

「確か防人の人たちの所に用事があるらしいって」

 

「風先輩は?」

 

「フーミン先輩は食べ過ぎでお腹壊しちゃってお休み、イッつんは歌のレッスンが被ったって」

 

「今回は運悪くタイミングが合わなかったのね」

 

 夏凜や樹はともかく、あの風が腹を壊すというのは珍しい。

 何かやけ食いを行う要因でもあったのか、それとも単純に食欲が高まったのか。

 

 いずれにせよ、彼女たちは今日のプールの目的は知らされている。

 彼女たちとはまたタイミングが合えば、それこそ旅館の時のような機会もあるだろう。

 そんな風にこの場にはいない仲間たちの事を思い出していると園子が静かに肩を叩いた。

 

「かっきー、かっきー」

 

「ん?」

 

「……あんまりフーミン先輩を揶揄ったら、怒るよ」

 

「…………若気の至りって、あ、いや、……まあよく分からないけど気を付けます」

 

「うん、泳ぐの頑張って~。私はゆーゆと遊ぶから」

 

 琥珀色の瞳は淀みなく、そして真っ直ぐに血紅色の瞳に向けられる。

 白く細い指でふに、と自らの薄い唇に触れる姿は、一体どういう意味なのだろう。

 深く考える事を止め、俺は準備運動もそこそこに逃げるように水面へと入り込むのだった。

 

 

 

 ---

 

 

 

 水の中は何も音がしない。

 静寂、ときおり自らの呼気が泡となる音と心音のみが全て。

 

「――――、……」

 

 少しずつ息が、肺が、身体が悲鳴を上げだす。

 それらを抑え込み、教えられた動きを模倣するべく身体を動かす。

 バタバタと傍目から見たらほとんど溺れているような無様な姿を、あと何度晒せば――

 

「はい、顔を上げて」

 

「は――」

 

 鈴音のような声音。

 穏やかさと声端に柔らかさを感じさせる少女の声を耳で拾い、顔を上げる。

 刹那、目の前に広がる肌色と数多の雑音が静寂を薄紙のように切り裂いていく。

 

「……随分と上手くなったわよ。亮くん」

 

「それ、どっ、はぁ……どうも」

 

 喘ぐように肺に酸素を送り込んでいく。

 二度、三度繰り返し、そうして此方を心配気な顔で見やる少女に笑いかける。

 

「先生が良かったんだよ。事前の勉強会も役にたった」

 

「そう……?」

 

「そうだよ。あの分厚い教科書は凄かった……」

 

「ふふ……ありがとう」

 

 水着の少女との特訓により俺は人並みには泳げるようになった。

 もともと息継ぎが出来なかったが、スパルタな指導により改善する事が出来た。

 お互い水の中で浮きながら、小首を傾げ此方を見やる東郷は薄い唇を震わせる。

 

「これで何かあっても大丈夫でしょ?」

 

「……たぶんね」

 

 とはいえ、人は溺れた時はどうしようもない。

 東郷のおかげで最低限泳ぐ事は出来るようになったが、付け焼刃のような物だ。

 その時にならなければ分からないが、今はただ自らの成長について喜ぶべきだろう。

 

「なるようになるよ」

 

「……そうね」

 

「さて、東郷さん」

 

「どうしたの?」

 

「俺、頑張ったよね」

 

「え、ええ」

 

「頑張った人には何か褒美があると次も頑張れると思うんよ」

 

 チラリと、どこか困惑する東郷の背後を見やる。

 楽しそうに泳いだり休んだり何かを話す友奈と園子とはそれなりの距離がある。

 

「亮くん……?」

 

「東郷さん」

 

「は、はい」

 

 真面目な顔を作り少女の名前を呼びかける。

 ピクリと動く東郷、その動きに呼応するように水着に包まれた乳房が小さく震える。

 本能が吸い寄せられる柔肉に目を向けると、視線を読み取った東郷がジト目になる。

 

「ちょっと、……触っていい?」

 

「……もう」

 

 我ながら馬鹿な問いかけだ。

 キョトンとする東郷は、やがて自らの身体を抱きつつ困った人を見るような表情をする。

 纏めた黒髪、その毛先を弄る少女はわずかに頬を赤らめつつも、やがてコクリと頷いた。

 

「少しだけね」

 

 そう言うと黒髪の少女は俺の手を取り自らの双丘へと導く。

 染みの無い、日に焼けることを知らない雪肌を見せる柔肉へ触れる事を少女は許す。

 

「ん……、ふふっ、くすぐったい」

 

「東郷さんってスタイル良いよね。モデルみたい」

 

「そんな、褒めても、んんっ……」

 

 ふに、と指が沈み込む。

 餅のような柔らかさが手のひらに広がり、同時に幸福感に包まれるのを感じた。

 

 水着からはみ出る肉の丘。

 その気になれば剥ぎ取れそうな布切れに守られている乳房を揉む。

 ふと下から乳肉を持ち上げるとズシリとした質感に俺は思わず口を開いた。

 

「やっぱり、普段は重かったりするの?」

 

「え、ええ。わりと結構肩とか凝るから……」

 

「また今度マッサージする? 友奈と一緒に」

 

「……その時はお願いね、亮くん」

 

 性的な行為ではなく、あくまで軽い触れ合いとして。

 風呂場ではなく公衆のプールで水着の少女の乳房を揉む。

 その行為はある種の実績を満たしたような、人知れぬ満足感を俺に与えた。

 

「……ロマンかな」

 

「亮くん?」

 

「いや、今日はありがとう、東郷さん。東郷さんのお陰で泳げるようになったと思う」

 

「よかったわね」

 

「うん、だからちゃんとお礼はするよ」

 

「お礼なんて、そんな」

 

 名残惜しいがそっと少女の双丘から手を剥がす。 

 柔らかさの残る手のひらを水につけながら俺は東郷に小さく笑いかける。

 

「さっ、二人の所に行こうか」

 

「ええ」

 

 ゆっくりと流れるように少女たちの元へと泳いでいく。

 疲れたのか、此方に気づき手を振る二人の少女はドーナツ型の浮き輪の穴に腰掛けるようにして座っていた。

 

「お疲れ様、亮ちゃん」

 

「見てたよ~」

 

 柔和な笑みを浮かべる園子と友奈。

 ぷかぷかと水の上に浮かぶ少女達はどこか虚ろな目をしていた。

 

「二人は何してたの?」

 

「ん~、ぼーっとしてた」

 

「園ちゃんとお喋りして、泳いで、……ぼーっとしてた」

 

「どんな話してたんだ?」

 

「……秘密だよ!」

 

 ねー、と弛緩した動きで確認を取る少女達。

 欠伸をする園子に呼応するように開く口を手で隠す友奈は東郷に目を向ける。

 

「ヒミツ……。私の知らないユウナチャン……」

 

「東郷さん」

 

「――はっ! ど、どうしたの? 友奈ちゃん」

 

「えっと、そろそろ帰らない? 今日は皆で亮ちゃんちでお泊り会するから」

 

「お泊り会だぜ~」

 

「そうだな……、今日はもう、終わりにしよっか」

 

 施設から見える外は太陽も傾き、日差しも和らいでいる。

 これ以上遅くなれば自宅に戻る頃には夜になっているかもしれない。

 なによりも少女たちの水着姿を堪能し、本来の目的である水泳能力も向上した。

 

「今度は皆で来ようね!」

 

 笑顔で告げる友奈の声を最後に俺たちはプールから上がる。

 水を含み重くなった水着から水が腿を伝う珍しい感覚の中で俺はふと思った。

 

 ――これから先も、こんな日常が続きますようにと。

  

 

 

 









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第十八話 果てなき夜に咲く華

 ハーレムという言葉がある。

 

 言葉の意味としては、一人の男性が多くの女性にモテる。

 または、沢山の女性に囲まれてモテモテの状態であるといった意味だ。

 かつて生きていた世界、辛い現実から逃れる為に見ていたWEB小説やアニメなどの創作物では、ほとんどの物が異常と言って良い程にチートな力でハーレムな展開ばかりであった。

 

 何故唐突にこんな事を考えているのか。

 自宅の自室、椅子に腰掛け、クッションの感触を背面に感じながら口を開く。

 

「ハーレム状態って俺的には5人以上だと思うんだよね」

 

「……はーれむ?」

 

 聞く人が聞けば「異議あり!」と答える人もいるかもしれない。

 既に2人以上に手を出していればハーレムだと言われたら欧米風に肩を竦めるしかない。この世界に欧米どころか外国が存在しているかすら不明ではあるのだが。

 

「そう、ハーレム。男なら一回は夢に見るであろうアレ」

 

「アレ、と言われても……」

 

「昔の祖国も大体ハーレム……一夫多妻制だったのは知ってるでしょ?」

 

「ええ、そうね」

 

「そういう事だよ」

 

「……つまり亮くんが言いたいのは、自分はその、はーれむ状態ではないってこと?」

 

「そうだよ」

 

「……ふーん」

 

「い、いや、独り言だから。気にしないで下さい。はい」

 

 そもそもいつの間に隣にいたのだろうか。

 園子といい、どうにも自らの意識を摺り抜ける術を黒髪の少女も持ち合わせているのか。

 気が付いたら背後にいた、みたいな展開になれば心臓が止まりかねないホラー展開だろう。

 

 もしくは自室とは言え、人が寝ている中でブツブツと独り言を呟く家主の方がホラー展開なのだろうか。椅子に腰掛け、先ほどから話に付き合ってくれた声の少女に目を向けた。

 恐るべきことに何の気配も感じさせずに俺の隣に立つ少女を座っている為に見上げる。

 

 何か言いたげな表情で此方を見やる銃使いの少女。

 銃は俺も使用するが、彼女程の遠距離においての狙撃力は持ち合わせてはいない。

 

「何考えているの? 亮くん」

 

「東郷さんの事」

 

「私?」

 

「どうすれば射撃の腕が上がるのかなって」

 

「そうね……弾道、風向き、射角もしっかり計算に入れるとか」

 

「……それって毎回してるの?」

 

「ふふっ……秘密」

 

 小さく口端を緩め、微笑む少女。

 濡羽色の長い黒髪とリボンが特徴の少女は、穏やかな濃緑の瞳を俺に向ける。

 薄青色のシルクのパジャマを着た彼女、東郷との静かな一時を邪魔する者はいない。

 

「……そのパジャマ似合うよ、可愛い」

 

「そう? ありがとう」

 

「選んだ男のセンスがいいね」

 

「それは亮くんでしょ」

 

 邪魔をする者はいない。

 既に加賀家でのお泊り会は終わりを迎えてる。

 壁に掛けられた時計の針は上を指しながら、忠実に役目を果たしている。

 

「もしかして起こしちゃった……?」

 

「ううん、少し寝付けなくて」

 

 友奈や東郷、園子といった美少女とのプール日和。

 その後、少女達とご飯を食べ適当に遊んでいると寝る時間になった。

 流石に自室の寝台に四人は手狭なので客間に布団を並べて寝て貰う事にした。

 

 ――そうするつもりだったが、それではお泊り会ではないと少女達に反発された。

 その結果、話し合いやゲームを行った末に、俺の自室には四人分の布団が敷かれている。

 当然布団があるだけではなく、ぐっすりと眠りこける可憐な少女達が無防備な寝顔を晒している。

 

 座り込んだ椅子、その背後の現状を改めて見ていると東郷が肩に触れてくる。

 マッサージをするように細い指が肩甲骨付近を内側に優しく押し込むように円を描く。

 肩を揉まれるというスキンシップを断る気にもならず、しばし東郷の好きなようにさせる。

 

「今日って、大赦が手配してくれたあの時の旅館みたいだったね」

 

「そうだな。あの時の東郷さんの怪談話、覚えてるよ」

 

「あれで皆の反応が癖になっちゃって……。ほら、亮くんの後ろにも白い着物を着た女の人が……なんて言ったらどうする? 亮くん」

 

「うーん? 俺の後ろにいるのはパジャマを着た可愛い女の子なんだが」

 

「……もう」

 

 冗談よ、と呟き微笑む少女。

 家の電気を点けず、カーテンの隙間から覗く月明りが彼女を照らす。

 白い雪肌に映える黒髪にふと触りたい欲求が湧きながら小さく息を吸い込む。

 

「――――」

 

 東郷との距離は近い。

 華のような、優しく甘やかな少女の香りが肺に入り込む。  

 

 旅館での思い出は随分と昔に感じるが、一年も経過していない出来事だ。

 それだけ現状が密な日々であるからなのだと再認識せざるを得ない。

 過去に思いを馳せるように目を細める少女は月明りが照らす中で小さく呟く。

 

「亮くん」

 

「うん?」

 

「……眠れないの?」

 

「少し、ね」

 

「ならα波を……」

 

「それは大丈夫」

 

 それを確かめる為にわざわざ起きてきたのだろうか。

 静かな部屋でカーテンの隙間から覗く月光が見下ろす中で二人は見合う。

 唯一の椅子に座る亮之佑を見下ろす東郷。

 

「いや、まあこれから寝ようと思ったんだよ」

 

「そうだったの? ……良かった」

 

「……」

 

「ところで、さっき隠したのって、何?」

 

「……ひ、秘密」

 

「大事な身体なんだから、労わらないと駄目よ」

 

 初めて東郷に飲酒がバレたのは随分前になるのだろうか。

 不審に思われたのか、窓から侵入してきた国防仮面の姿の少女にバレて説教を食らった。

 委員長タイプの少女の正論の数々は堪える物があったが、不法侵入の人間に言われたくはない。 

 

 とはいえ、東郷の言葉は正しい。

 だが健康の事ばかりを考えていると逆に悪化するかもしれない。

 そういえば東郷とは飲み交わした事が無かったと思い、ふとある事を考え口を開く。

 

「一杯だけなら寝付きが良くなるんだよ。知らなかったの、東郷さん?」

 

「……でも」

 

「ここに純米酒が一杯分あります。東郷さん好きでしょ?」

 

「今どこから……いえ、亮くんだもんね。あと、私は別に好きじゃ……」

 

 俺の手のひらに収まる小さなコップに透き通るような透明な液体。

 月明りを余すことなく通すような純度に東郷の目が引き寄せられる。

 

「東郷さん、日本酒嫌いなの?」

 

「それ、は……」

 

「これが飲めないなら、東郷さんは米と水で作られたこの酒の歴史を否定するんでしょ。それって生産したであろうこの国を否定するという事になるよね。東郷さんこの国が好きなのに、昔から受け継がれた伝統を否定するなんて――」

 

「飲むわ」

 

 煽ったつもりはなかった。

 ただ、こういう方向で言うならば誘いに乗るだろうとは思った。

 

 かくして、俺の手から渡された透明な液体をジッと見つめる東郷。

 祖国の酒を見つめる大和撫子の濃緑色の瞳には、罪悪感と不安と微かな好奇心が混ざり合う。

 真面目な少女だ。俺とは違い『後悔しない』という誓いの無い彼女は多少の抵抗があるのか。

 

「東郷さん」

 

「……な、なに?」

 

「俺が許すよ」

 

「ぇ……?」

 

 小さな罪悪感に囚われた無垢な少女。

 ならば言い訳を、逃げ道を、免罪符を。俺は嗤いながら彼女に囁きかける。

 

「もし何かあっても俺の責任だから、ね?」

 

「――――」

 

「少しくらい、悪い事をしたって良いんだよ」

 

「……少しくらい」

 

 ほう、と少女の息が吐かれる。

 ゆっくりとコップを薄い唇に触れ、両手で行儀良く純米酒を飲んでいく。

 くぴ、くぴと舐めるような動きは徐々に味を覚えたのかコップの中身を減らしていく。

 

「――美味しい」

 

 どこか現実味のない表情で東郷は呟く。

 空になったコップを受け取りながら少女の呟きに答える。

 

「……、一杯だけじゃ酔わないでしょ。甘酒みたいな物だよ」

 

「……そうね」

 

 ――ちなみにその甘酒で酔う人間もいるが、ややこしくなるので今は考えない。

 今は目の前で『悪い事』をした真面目な少女が浮かべる恍惚な表情に俺は小さく笑った。

 

「でも、あまり飲みすぎは駄目よ」

 

「ああ」

 

 まさかこんな深夜に起き出すとは思わなかった。

 純粋に心配をし、安堵の表情を見せる東郷に小さく笑い返しながら俺は頷く。

 ずっと立たせるのもどうかと思い椅子に座らせようとするが、少女は小さく首を振る。

 

 まだ眠れないらしい。

 残念ながらそれは俺もなのだが。

 ならばもう少しだけ他愛無い世間話に付き合って貰おう。

 

「色々、あったね」

 

「……そうね」

 

 色々。言葉にすれば簡単だが、多くの出来事があった。

 バーテックスと戦い、勇者として抗い、多くの人が死に、それでも前へ。

 これから先も戦いが終わる事は無い。人類は未だに神樹の庇護下で生きながらえている。

 

 天の神を退けても戦いは未だに続いている。

 だが、人類も現実を受け入れて少しずつ変化し続けている。

 ――だからといって決して『勝てる』という結末が用意されている訳ではないが。

 

 肩に感じる柔らかな少女の感触。

 俺の動きに対し、受け止めるように身体を触れ合わせる少女はゆっくりと手を伸ばす。

 いつの間にか冷えた俺の手を、冷え固まった身体を解すように細く白い手が包み込む。

 

「――――」

 

「ねえ、亮くん」

 

 声の方向に目を向ける。

 柔らかな声音、濃緑の瞳と至近距離で目が合う。

 

「これからも私、きっと亮くんにも迷惑をかける事があるかもしれない」

 

 囁くように、口説くように。

 長い黒髪を揺らす少女は俺を見下ろし、言葉を紡ぐ。

 

「でも、亮くんの傍にいたいという気持ちは誰よりも強いの。だから――」

 

 だから。

 だから、なんだ。

 

 教えてほしい。

 深い、深い、どこまでも透き通った濃緑色の瞳が、言葉が、俺に、何を――。

 

「だから、これからも傍にいてください。貴方の為に、心を尽くします」

 

 唐突にも感じられる東郷の言葉。

 孤独な夜だからこそ生まれた今後に対する不安。

 それを払拭するように、まるで少女の、愛の告白のような響きに震えて。

 

 ――否、愛の告白のような、ではない。それは、愛の告白であった。

 

「――――」

 

「亮くん」

 

 息を呑む。

 心の奥に溜まっている何かを消し去るような少女の言葉に。

 

「……暑い、わね」

 

 その言葉に何を返すべきか。

 先に目を逸らした東郷は、パジャマの襟を扇ぐ姿は、やけに扇情的に感じた。

 

 

 

 ---

 

 

 

 耳を澄ませば聞こえる二人の少女の寝息。

 無防備を晒し、時折寝言のような何かを呟く友奈と、サンチョに抱き着く園子。

 彼女達は経験上眠りは深い方であるが、自然睡眠である以上起きる可能性は高いが――、

 

「――――」

 

 今はそちらに顔を向ける余裕は、ない。

 ちゅぷ、ちゅぷと唾液と先走り汁を肉棒に擦り付け、ざらついた舌が肉茎を伝う。

 

「……っ」

 

 年頃の少女がいる部屋で半裸にされた少年が一人。

 剥き出しとなった怒張を熱い口内で、ぬるりと真新しい唾液が混ざり、舌が蠢く。

 

 耳に自らの長い髪を乗せる仕草に色気を感じさせる。

 熱い吐息、微かに腰を揺すると独特な刺激に思わず呻きかける。

 

「……!」

 

 大きな声は上げられない。

 陰嚢を撫でられ、肉茎を舌で舐められ、亀頭が薄く柔らかい唇と触れ合う。

 亮之佑との経験と自身で勉強したのか、丹念な奉仕は優しい絶頂へと誘おうとする。

 

「……こっち見て」

 

「……ッ」

 

 どこか挑発するように向けられる東郷の艶を含んだ眼差し。

 敷いた布団の上、亮之佑の股座に顔を埋める少女が咥えながら見上げる姿。

 汗を掻き、羞恥と興奮と喜悦を帯びた朱が雪肌に差しながらも雄の怒張を離さない。

 

 雄への奉仕を懸命に行う東郷の姿を撮りたくなるが、端末は手元にはない。

 かと言って取りに行く余裕もなく、そして目の前の少女がそれを許すことはないだろう。

 邪な思いが伝わったのか、少女はゆっくりと目を細める。

 

「――ぁ」

 

 にゅるん、と動いた舌が雁裏をなぞる。

 優しくねぶる東郷の動きは弱点を理解したように刺激を与え続ける。

 

「っ」

 

 びゅうっと長めの射精。

 日付が変わり最初の絶頂は程良い快感と微かな屈辱を感じた。

 僅かに苦し気な表情をする東郷、その喉奥に白濁を注がれるのを確認し、そっと離れる。

 

 白い喉が小さく膨らむ。

 こくん、と喉を動かし唇の精液を舐めとる東郷。

 

 ――その余裕のあるような表情が、微かに癪に障る。

 

「――――」

 

「ぁ……」

 

 パジャマを脱ぎ、惜しげもなく雪肌を晒す美少女。

 どこか得意気な表情を見せる東郷の細い両脚を掴み姿勢を変えさせる。

 自らは完全に背中を布団に倒し、抵抗の薄い東郷の軽い身体を上へと移動させる。

 

「……」

 

「……」

 

 仄暗い空間で血紅色の瞳と濃緑色の瞳が交錯する。

 興奮を感じさせる息遣い、目線だけで『勉強』したらしい東郷は目を逸らす。

 ――羞恥に目を逸らしはしたが興味はあるらしく、拒否するつもりはないようだ。

 

 亮之佑の両膝が東郷の顔を挟むのは変わらない。

 だが今度は向きが180度変わり、亮之佑の目の前には東郷の色づいた恥部が。

 

 一方的な奉仕から、シックスナインの姿勢へ。

 獣のような性交ではなく、純粋に『弄り合い』をするのは初めてであった。

 薄暗い暗闇、しかし慣れた視界の中で東郷の媚肉が、不浄の穴が目の前にある。

 

「……」

 

 電気のない状況でまじまじと東郷の恥部に指で触れる。

 至近距離で感じる『肉』の感触と、広げた粘膜は滴が腕へと滴り落ちる。

 白い太腿、少し叩くと察しの良い少女が大胆に足を広げる中、少女の探求を続ける。

 

 ――具体的には、指を膣穴に挿入して。

 

「ぁっ……、ゆび……ッ!」

 

「静かに」

 

 少女達が起きてしまう。

 そのスリルとリスクは少女も理解しているからか小さく息を呑む。

 

 挿入した中指を動かすと少女は小さく呻く。

 本来性器が入るべきそこは熱くぬめり、肉壁が怒張と思い強く締め付ける。

 

「んっ、ん、ん……っ」

 

 声を抑えた東郷の嬌声、しかしそれは絶頂に至る声ではない。

 気持ちいいのだろうが、ただ悪戯に性器を弄っているだけでは意味がない。

 このままでは奇術師としての名が泣くと思考を巡らせると――、

 

「っ」

 

 ふと下半身に感じる柔らかい違和感に気づく。

 パン生地に肉茎が包まれたような感触。少女の乳房が復活した怒張を包む。

 この『ゲーム』。単純に先に逝かせる為に東郷も自らの全てを使うつもりらしい。

 

「――――」

 

 その余裕を消してやる。

 現状を打破する為に、少女の尻肉を揉みながら指先を動かす。

 

「ぁ」

 

 中指を左右に動かし、人差し指も挿入する。

 浮き上がろうとする腰を無理やり片手で固定しながら、愛撫を始める。

 トントン、と指による疑似ピストンが直に膣へと振動を送り蜜液を噴き出させる。

 

「ぁ、ぁぁ、ぁっ!!」

 

 亮之佑の怒張を受け入れた秘部。

 それでもなお初々しさの残る花弁は蜜を垂らし、少女を喘がせる。

 

「くふっ、んっ、ん――」

 

 ぎゅううっと指を締め付ける膣。

 必死に声を押し殺し、東郷は亮之佑の怒張を刺激しようと手を動かす。

 くちゅくちゅ、じゅぷじゅぷと水気を含んだ厭らしい音が部屋の中に響く。

 

 だが余裕があるのは亮之佑の方だ。

 疑似ピストンを繰り返し、東郷に奉仕の余裕を無くさせるのは数分後だった。

 

「んん~~~~~ッッ!!!」

 

 びくん、と身体を痙攣させる東郷。

 絶頂してなお止める事のないピストンに戸惑いながらも、膣壁は存在しない子種を求める。

 

「――――」

 

 足りない、と思う。

 もっともっと目の前の少女を啼かせたいと思う。

 我慢出来ない程に、丹念に、丁寧に、東郷の理性を削り取りたい。

 

 なればこそ、中指を動かす。

 東郷の『弱点』を探すべく懸命に膣内を動かし探る。

 聞けば教えてくれるかもしれないが、それでは雄としての甲斐性に欠け――、

 

「ンっ!?」

 

「……?」

 

 ざらり、とした場所。

 偶然指の腹がそこに触れ、その感触に指を止めた瞬間、東郷の反応が劇的だった。

 

「ぇ……、まっ、て、そこ……だめ」

 

「……東郷さん」

 

 駄目と言われて止められるだろうか。

 

「声、我慢しないと起きちゃうよ」

 

 がちりと尻肉を掴む左手で東郷の腰を固定する。

 直感的な確信の中、少女のざらついた部位を指の腹でゆっくりと撫でた。

 

「ふ……ッッ!!?」

 

 少女の肌に鳥肌が浮かぶ。

 怒張への奉仕を忘れ、身を強張らせ必死に声を我慢する東郷。

 運良く見つけた少女の『弱点』に自然と笑みを浮かべざるを得ない。

 

「亮くっ、それ、らめっ……ッ」

 

「我慢」

 

 指を曲げる。

 押し当てるは『弱点』。抉るように、突くように。

 

「ン、んんんっっッ……!!!!」

 

 シーツに皺を作る程に掴む東郷は必死に声を我慢する。

 だが、身体はまるで欲するように前後に激しく腰が動く。

 快楽を求めるように、あるいは逃れるように動く腰を全力で押さえ込む。

 

「我慢だよ、東郷さん」

 

 ふ、ふ、と鼻息を荒くする東郷は目線だけで非難する。

 もはや我慢どころではないのか、恥辱の涙を浮かべながら首を振る。

 

「ンぅぅ、ンっ!」

 

 シーツを噛み、必死に手を亮之佑の腕に伸ばす。

 乱れた髪が雪肌に広がり、ぽたりと濃厚な愛液が垂れ落ちる。

 健気に我慢する姿は愛しく感じるが、東郷をもっと悦ばせてやりたい。

 

「ぁ……?!」

 

 くちゅくちゅと指をピストンさせる。

 だが今度は確実に『弱点』を擦るように疑似ピストンを繰り返す。

 本当のピストンではなく、しかし本気の愛撫に滴が亮之佑の顔を濡らしていく。

 

「~~~~~っ!!!?」

 

 ぷしゃりと小水のような蜜液が噴き出す。

 それでも指は止まらず、前後に腰を動かす東郷は再び法悦の空に上げられる。

 生まれたての鹿のようにガクガクと太腿を震わし、びくんと身体を痙攣させる。

 

「ぅ、ぁ……」

 

 息も絶え絶えの東郷。

 身体の力が抜けたのか、密着させてくる少女の秘部に顔を近づける。

 

「……凄い」

 

 ひくついた花弁の上、滴の付着した薄毛に鼻を埋める。

 手入れの必要のない薄い陰毛を撫で匂いを嗅ぐと酷く濃厚な淫臭が肺に広がる。

 

「ぇ……! そんな、とこ」

 

「凄いエッチな匂いだよ」

 

「……!! やめっ! か、嗅がないで!」

 

 かああっと赤面する東郷の目尻に涙が浮かぶ。

 逃れようする腰を押さえ、羞恥心を刺激しながらゆっくりと陰核に鼻先が触れる。

 

「こんなエッチな東郷さんには、もう一回、しないとね」

 

「も、もういいひゃらっ! 充分だから!!」

 

「駄目」

 

 今度は肉粒も添えて。

 右手の指を挿入しながら口を開く。

 薄い茂みの中でとろみのある液に浸ったクリトリスは食べてくれとばかりに震える。

 

 あーんと開いた口が弾力のある肉粒に噛みつく。

 同時に再び『弱点』を目指して指が膣へと侵入を開始する。

 

「ッ! ……っ!!」

 

 子供のように東郷は首を振る。

 嫌々と首を振り、飛びそうになる意識を唸る東郷は『弱点』と陰核で達した。

 

「ハァ……ハァ……ハァ―――」

 

 喘ぎ、恍惚な表情の東郷を身体から下ろす。

 息絶え絶えにうつ伏せになった東郷の裸体に抱き着く。

 

「わっしーって凄くエッチだね」

 

「そうだな」

 

 何気ない言葉に頷き、硬さの得た肉茎を挿入しようとし、気づく。

 固まる亮之佑の怒張をやや強めに掴む白い手は、一体、誰の手なのだろう――。

 

「――――」

 

 嗅いだ事のある匂い、聞き慣れた少女の声音だ。

 脱力し、乱れていた東郷が恐る恐る振り返り、大きく目を見開く。

 

 

「私も、混ぜて」

 

 

 夜は終わらない。

 果てなき夜は、終わる事を、知らない――。 

 



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第十九話 さあ、華を咲かせましょう

 不倫とは文化だ。

 何故だかそんな言葉が思い浮かぶ。

 

「――――」

 

 己の身体を這う白い手は蛇のようにうねり獲物を絡め捕食せんとする。

 柔らかく冷たい少女の手はいつの間にか発汗し熱を持つ身体を冷まし、覚ましていく。背中から胸板の感触を確かめるように、愛憎を確かめるように、ぬるりと絡みついた。

 

「あ―――」

 

 鼓動が自らの体内で響き渡る。

 ドクン、ドクンと血流を加速させ、心臓を震わせる音。

 その脈打つ鼓動を聞くことが出来るのは自らと、背後に密着する一人の少女だ。

 

「……みぃ~ちゃった~」

 

 楽し気に、無邪気を装い笑う少女。

 その表情は見る事は出来ず、自然と少女の声色に耳を傾けるしかない。

 鼻腔を擽るのは甘い、甘い果実を彷彿させる少女とシャンプーの香りだ。

 

 裸体の自らに対し、背後から抱き触れる金色の髪をした少女。

 首筋に噛み付く吸血鬼の如く首筋に顔を埋めようとする不思議な行動を余所に俺と東郷の反応は、まるで体内の時間が世界から掛け離れたようにひどく鈍い物であった。

 

 それは思考の停止ともいえる。

 何せ、初めて誰かに『情事』を見られたのだから。

 

「ぁ、あの、そ、そ、その……」

 

「わっしー」

 

 うつ伏せの状態から此方を振り向き硬直した状態であった東郷。

 少しずつ現状を把握し、深緑色の瞳には様々な感情を宿らせながら口を開こうとした。懸命に何かを紡ごうとする東郷らしくない拙い言葉は、しかし園子の言葉に被せられた。

 

「動いちゃだめだよ」

 

「……ッ」

 

「しー」

 

 雪肌に色濃い情事の跡を残す東郷に対し、薄い唇に指を当てて園子は告げる。

 小首を傾げる園子、俺の首に手を巻き付けながら唇に当てた指はある方向を示す。

 

「……すぅ、……」

 

 それは一人の少女だった。

 起きていれば向日葵の如き笑顔を見せ、一つ一つの仕草は何よりも愛らしい少女。

 毛布に包まりピンクのパジャマを着用する少女は少し離れた窓際で眠りこけている。

 

 うつ伏せ気味に枕に頬を擦り付ける友奈。

 すぅすぅと寝息を漏らす天使のような寝顔。

 

 ――本当に寝ているのだろうか。

 

 ふと俺はそんな疑問を抱いてしまう。

 今回の『お泊り会』では窓際から友奈、園子、東郷、俺といった順番で布団に眠る事になっていた。トランプやボードゲームなどの定番の遊びを行い、そして就寝という流れのはずだった。

 

 その後の東郷とのアレコレは、近くにいた園子には流石にバレたのだろう。

 音は出さないようにしてはいたが、寝床の位置的にも聞こえやすかったのだろう。

 薄暗闇の中、僅かに距離のある少女が寝ているかどうかを確かめようとする俺の視界を自然と塞ぐように抱き着いてくる園子は、どこか愉し気な声音で東郷に揶揄するように笑いかけた。

 

「むふ~、……それにしてもわっしー、すっごくエローイ声だったよ~」

 

「ぁ、ち、ちが……!!」

 

「わっしーはエロエロ大和撫子だね~」

 

「えろっ……!!!」

 

 笑顔で東郷に口撃を繰り出す園子。

 聞かれていた事に耳まで赤くする東郷の姿は薄暗闇の中でもはっきりと見えた。

 じんわりと羞恥の涙を大きな瞳に溜める東郷は、自らの中で何か革命が起きたのだろう。

 

「こんな辱め……もう……、わたひっ!」

 

「――させるかぁ!!」

 

 毛布を巻き付け、窓に走ろうとする機動力のある大和撫子。

 このままでは羞恥に耐え兼ね、窓を割り逃げるのではという予感。

 そんな非常識な事を……、いや前例がある、と思考が加速すると同時に抱き着く。

 

「きゃっ」

 

「わ~」

 

 小声で繰り広げられる逃走劇は僅か2秒で終了した。

 毛布を剥ぎ取り、裸体の少女を布団に押し倒し暴れる身体を押さえ込む。

 何も知らない第三者が見たら完全に誤解されるであろう構図がそこに出来上がった。

 

 音を出さないように暴れる少女は動く度に豊満な乳肉がぷるんぷるんと揺れる。

 勇者として鍛えられた少女の力は強い。だが勇者システムの無く、体力も使用した少女が二人の少年少女に容易く押さえ付けられてしまうのは、逃れようのない結果であった。

 

「わっしー」

 

「……ふふっ」

 

 やがて最後の力を出したのか脱力した東郷はどこか諦観を帯びた笑みを浮かべ、園子の静かな声音に口を閉じる東郷を余所に、俺は現状の打破を行うべく必死に頭を回していたが――、

 

「かっきー、さっきの話だけど」

 

「なんだ……?」

 

「あれれ~、聞いてなかったの?」

 

 考える暇は背後の少女が与えるつもりはないらしい。

 二人で東郷を押さえ込みながら、無駄に体力を消耗した俺は聞き返す。

 質問に質問で返す園子は、やがて出来の悪い子供に教えるように簡潔に告げた。

 

「私も、混ぜて~」

 

「――――」

 

 どうしても顔が見たくなった。

 少女が、園子が、琥珀色の瞳に何を浮かべて告げているのか。

 

 薄暗闇の中で見える少女の顔。

 見ていたらしい情事の熱に浮かされたように、生娘のように頬を赤らめながらも爛々と輝く琥珀色の瞳には喜悦を宿し、薄い唇は三日月のように緩く曲げられていた。

 

 俺に向けられる視線、そして無言のままでいる東郷に向ける視線。

 特に東郷に向ける視線は、どこか加虐性を帯びた捕食者の目にも見えた。

 あるいは、普段ならば寝ているだろう深夜帯に活動する者特有のテンションにも見えて。

 

「何が望みですか?」

 

「小説の資料」

 

「……」

 

「やってみたい事があるんだ~、えへへ」

 

「そのっち……?」

 

 深夜二時の出来事。

 英語の授業の如き堅い尋ね方に対し、先生よろしく明確に、簡潔に園子は答える。

 俺に片目を瞑る金髪の少女は、遠足前日の子供のような表情で、妖艶に微笑んだ。

 

 

 

 +

 

 

 

「ん……」

 

 熱くぬめる口内。

 舌と視線を絡め合わせ、頬肉を、舌裏を、歯茎を舐め、吸い、味わう。

 可憐な少女達との濃厚な口腔行為は何度繰り返しても慣れる事は決して無いだろう。

 

 吐息と唾液を交換する行為に多幸感を得る。

 求めて応じられた時、逆に求められた時に、甘い快楽が背筋を撫でる。

 

 多少の時間の経過により萎え掛けた肉棒は硬さを取り戻し反り立つ。

 温水と共にどこか煩雑に上下に動かす園子は艶のある視線を俺に向けてくる。

 贅沢な自慰に近い行為はやがて完全に復活したのを感じ、そっと柔らかい手を離す少女によって終わりを告げた。

 

「……」

 

「……」

 

 否、終わりなどではない。

 これからが始まりなのだ。

 

「ねえ、かっきー。似合う?」

 

「……ああ。園子によく似合うよ」

 

 繰り返される言葉。そこに偽りはない。

 昼間のプール。そこで着ていた水着を彼女達、東郷と園子は着用している。

 既に洗濯し、乾かしていた青色と紫色のビキニは少女達の肌に良く映える。

 

 多少生乾きだと思うのだが、やや強引に園子が提案した。

 どのみち水着とは濡れる為に存在しているのだからと。僅かに渋る東郷には園子から何かを囁くと同時に無言で着替えを行う姿が目に映った。

 

 因みに、何故か着替えだけは見ないようにと言われた。

 裸を見るのは良くても着替えるのを見るのは駄目という謎の乙女心に付き従い、自室を抜け出し現在に至る。

 

「まさか、また風呂場で水着とは」

 

「……また?」

 

「……!? 亮くん。わ、私のは似合う?」

 

「似合う似合う」

 

「ん~……?」

 

 何かを誤魔化そうとする東郷が園子から此方に視線を向ける。

 向けられる深い緑の瞳には当時の回想が、そして暴露だけはしないようにと懇願するように向けてくる視線から逃れるべく俺はそっと周囲を見渡した。

 

 木製の桶と、白い丸椅子が一つずつ。

 足裏に感じるのは緑やグレー等の落ち着いた色合いのタイルだ。

 

 加賀家の風呂場。

 紫のビキニを着用した園子とアサガオの模様の入ったビキニを着用した東郷。そして全裸の俺が深夜の風呂場で物理的に密着し合いながら暖かいシャワーを浴びていた。

 

 それなりの大きさの風呂場には、3人の少年少女が収まるには充分だろう。

 しかし、そんな事は知るかとばかりに柔肉が触れ合う感触に鼓動が高鳴る。

 

「それで、園子。どうするの?」

 

「えっとね、先にかっきー。ここ座って~」

 

「……お、おう」

 

 その言葉を受け、俺は素直に椅子に腰掛ける。

 座り込む俺の脚を広げ、東郷の手を引っ張る園子は右脚の付け根に座り、東郷を左脚の付け根に座らせた。ビキニに包まれた尻肉の感触と同時に人の重さに息を呑む。

 

 余談だが、こうしていると何となく体重が分かったりする。

 羽のように軽い彼女たちだが、やはり個人差は存在し、どちらが重いかも――、

 

「かっきー」

 

「亮くん」

 

 きゅっ、と両脇腹を抓られる。

 まさか顔に出ていたのだろうかと慌てて無表情を保つ。

 ついでに水着姿の彼女たちの腰回りに腕を伸ばし少女達の安定を保った。

 

「いや、風呂場で水着っていいなぁって」

 

「ふーん」

 

「両手に花の気分はどう~?」 

 

 二人の腿肉にぺちぺちと当たる怒張。

 自らを女に変えた肉棒を前に、東郷と園子は濃緑と琥珀色の瞳を交わす。

 触れ合いも程々に脚から降りる彼女達は怒張を前に大きく目を見開いた。

 

 何をするつもりなのか。

 何となくだが、園子の考えが紳士には分かった。

 

「あー」

 

「……ぁ、ぁー」

 

「……!」

 

 喉を鳴らし小さく口を開ける二人の少女。

 どこか積極的に、微かに羞恥を残し、それでも渦巻く快楽が上回ったとばかりにお湯と先走りが伝う怒張を東郷と園子は舌で、唇で、手で、懸命な奉仕を始める。

 

 右側に黒髪を纏めた美麗な少女。

 左側に金髪を後頭部で束ねた可憐な少女。

 これぞまさしく、両手に花という状態である。

 

 亀頭に口付けを繰り広げる少女達は、思い思いに性器を弄り始める。

 チラチラと此方を見る東郷が先走りを細い指先に絡め肉茎を上下にしごく度ににちゅにちゅと水音を立て、射精感を高めていく。

 

 陰嚢に手を伸ばす園子がやわやわと精液が作られる睾丸を手のひらで揉み解しながら、時折愛おしそうに雁裏を指先でなぞる度に電流が奔るように思わず背筋を伸ばす。

 此方の反応に目を細める園子は雁裏を、東郷は肉茎を指で、手で弄り続ける。

 

 時折チラリと互いを見やる深緑と琥珀色には様々な感情が渦を巻いている。

 しかし、瞳の奥に宿る感情を覗き込む前に瞬きを繰り返して隠してしまう。

 そして何よりも、徐々に高まる射精感に思考の変動を余儀なくされた。

 

「くっ……」

 

「我慢しなくていいんだよ~?」

 

「ええ、出して」

 

「が〜んばれ、が〜んばれ!」

 

 やけに息の合う少女たちの淫魔な猛攻。

 亀頭をごしごしと手のひらで洗われ、肉茎は容赦なくしごかれる。

 羞恥を置き去り、目の前の雄を呻かせようと花々は息を呑み奉仕を続ける。

 

「っ!!」

 

 耐えようとは思わなかった。

 抗う事こそ罪であるとばかりに、やがて視界が白く染まる。

 どぴゅ、どぴゅと白濁が肉茎を伝い正面にいた彼女たち目掛けて噴き出した。

 

 マグマの如き射精感と、確かな快楽。

 浅く呼吸と瞬きを繰り返す中で、自らの精液が年頃の少女たちの柔肌や艶のある髪に付着したこと、明確に彼女たちを汚したことに薄暗い快感が脳裏を過った。

 

「……わ~」

 

「……、ぁ、そのっち。こんなところにも付いてるわよ」

 

「えっ、どこ? わっしー取って~」

 

「はいはい」

 

「……」

 

 自らの指先や頬、白い谷間に付着した子種は、白い指先に掬い取られる。

 不思議な味という評価を頂きながらも、自らの白濁を舐め、指に絡め遊ぶ少女たちに何とも言えない気分にならざるを得なかった。

 

 個人的な話だが、俺は『される』よりも『したい』方だ。

 要するに少女たちに尽くされるのも好きだが、俺自身彼女たちに尽くして、啼かせて、喘がせて、悦ばせて、自らによって淫らな華が咲く様を眺めていたいのだ。

 

 ――という考えを見透かしたように、園子はゆっくりと立ち上がる。

 

「これで小説の資料になったのか?」

 

「ううん、これからだよ」

 

 微笑を浮かべて否定する園子はシャンプーや石鹸等が置かれたスペースに歩み寄る。その動きを東郷と二人で見ていると、いつの間に置いたのか身に覚えの無いピンク色の容器を手に取る水着の少女は金の髪を耳に掛けながら口を開いた。

 

「かっきー、これ何だと思う?」

 

「……?」

 

 拳二つ分程度の大きさの容器だ。

 それだけならば日焼け止めやオイルなどの可能性を浮かべるが、どこか禍々しいピンク色のソレは現在の状況において使用するであろうことを考えると――、

 

「ローション」

 

「ろっ!?」

 

「外れ~」

 

 俺の回答に顔を赤らめる東郷とは別に、ぶぶーっと否定する園子。

 想像豊かな東郷を素通りし、容器を持つ園子は無言でそれを俺に渡してきた。

 謎の容器の裏側、説明部分に目を通すと可憐な小説家の意図が紳士には理解出来た。

 

「園子、お前。……分かってるね」

 

「でしょ~」

 

「えっと、そのっち? それは……?」

 

 容器を返しながら告げると頷く園子。

 状況の把握に至らず僅かに眉を顰める東郷に俺は抱き着く。

 抱き枕にしたくなるような感触を抱きしめながら、園子に目を向けた。

 

「これはね~、性感を高めるジェルなんだ~」

 

「じぇる?」

 

「ん~、分かりやすく言うと、媚薬かな」

 

「媚薬……え」

 

「人体に害は無いから大丈夫だよ、わっしー。ちゃんと私たちが塗るからね~」

 

 蓋を開け、数回程押し出た液体を手のひらに載せた園子に絶句する東郷。

 手のひらを合わせて捏ねる園子から逃れようと東郷はもがくが動けない。

 流れを察知した俺は、くびれのある東郷の腰に腕を回し優しく拘束を行う。

 

「あの、亮くん……? 放してくれない?」

 

「東郷さん。俺さ……、今日、いや昨日水練ではお世話になったからさ……、キチンとお礼をしたいんだ。いっぱい気持ちよくさせたいなって」

 

「ぇ、え」

 

「わっしー、覚悟~」

 

 どのみち逃れる術などない。

 目には目を。歯には歯を。快楽には快楽を。

 

 

 

 +

 

 

 

「わっしーの肌、凄く綺麗だね~」

 

「そのっ、ち」

 

「ここ?」

 

「……んっ」

 

 園子の指がするりと水着の中に入り込む。

 アサガオの柄が入ったビキニの中で指が蠢く度に顔を赤らめる東郷は小さく呻く。

 園子自身の身体に東郷の上半身を横たわらせ、背後から少女の乳房をゆっくりと揉む。

 

 媚薬を生乳に染み込ませるように。

 敏感な少女を更に喘がせ、啼かせる為に。

 

 媚薬数回分をプッシュした手のひらで園子は東郷を虐める。

 どこか興奮した様子で乳房を揉みしだく園子は妖艶な笑みを浮かべて東郷の反応を確かめている。男の武骨な手ではなく女による繊細な手つきを俺はジッと見ていた。

 

「わっしーのおっぱい、本当におっきいね〜」

 

「そのっちだって、ぁん……大きい、じゃない」

 

「そうかな~? かっきーはどう思う?」

 

「俺はどっちも好きだよ」

 

 呻くように園子と会話をする東郷。

 それは会話を止めれば快楽に喘いでしまうからか。

 東郷の脚を開き、その間に入り込みくびれのある腰に触れながら百合の花を見やる。

 

 園子がゆっくりと東郷の水着に触れる。

 嫌々と首を振る少女を余所に、ずらされた水着からぷるんと乳房がまろびでる。

 白い肉の中で硬さを帯びたピンク色の乳首は上を向き、再び外気へと晒された。

 

「ああっ……っっ!!」

 

 びくん、と東郷は身体を震わす。

 一切の躊躇いなどなく尖った肉粒を園子は摘まみ、媚薬を塗り込む。

 

「はぁ、ぁ、っ、そのっ、待って、本当に……っ」

 

 乳首の先端から根本を指で擦る。

 それは自慰のような、遊びなどない最短で快楽を得る為の動きだ。

 唇を噛み、身体を丸めようとする東郷を許さないとばかりに園子は責め立てる。

 

「ぁ、ぁ、あぁ……っっ」

 

「ここでしょ?」

 

「……っっあ!!?」

 

 漏れる喘ぎ声は風呂場に響く。

 それはきっと同性だから分かる愛撫なのだろう。

 

 もじもじと脚をくねらせる東郷はあと一息で天国に飛ばされるだろう。

 胸を弄られ身体を震わせる少女の為に、俺もまたピンクの容器を手に取る。

 手のひらの透明な液体は微かに薔薇の香りがした。

 数回程容器から液体を取り出し、目の前でくねる少女の腰付近に塗り始める。

 

「……んっ、ぁ、ぁ!」

 

 園子のように水着の中に手を入れる。

 薄い茂みの感触と同時に媚肉に触れると東郷は腰を浮かせる。

 媚肉を割り拓き、熱い膣内に媚薬を塗り込むようにして指を動かしていく。

 

 襞の一つ一つに染み込ませるように。

 皺の一つ一つに馴染ませるように。

 少女の敏感な肉粒も余すことなく塗り込み、丹念に愛撫を続ける。

 

「~~~~~っ!!!」

 

 二人で東郷を喘がせ、悦ばせる。

 やがて、身体の奥を震わせるように東郷は上った。

 それは園子にも分かったらしく、驚いた直後に小さく笑みを浮かべた。

 

 荒い息をする東郷を俺はそっと立ち上がらせる。

 再び剥ぎ取り、ずり落ちた水着を余所に、風呂場の鏡面付近に手をつかせる。

 これから何をするか理解したのか、無言のまま大和撫子は尻肉を突き出した。

 

 それはいつかの情事の再来。

 ぬるりと怒張を挿入すると、待っていたとばかりに膣壁が締め付ける。

 尻肉と腿肉がぶつかり、ぱちゅりという音が風呂場に響き渡る。

 

「ぁ……っ」

 

 背後から少女を貫く体位は、本来相手の顔を見る事は出来ない。

 しかし、目の前に鏡がある状況においてはその限りではない。どれだけ相手が悦び、快楽に対してはしたない表情をしているのか余すことなく見ることが出来るからだ。

 

 肉厚の尻肉は、怒張を最奥まで叩くように突く度に形を変える。

 ぱんぱんと腰を揺する度に顔を赤くし喘ぐ東郷から甘い声音が幾度も零れる。

 薄い腰を掴み、目の前の白い背中が仄かに汗ばむのを見る中で獣のように腰を揺らす。

 

「ぁ、ぁ、っ、あっ、ああっ!!」

 

 ぱちゅぱちゅと水音を響かせ、お互いの吐息を聞きながら抽送を繰り返す。

 床石に水が垂れ落ち、どちらかの体液が東郷の細い脚を伝い流れていく。

 崩れ落ちないように腕を震わせながら、一突きごとにはしたない声を東郷は漏らした。

 

「すご……」

 

 チラリと鏡越しに園子を見やる。

 琥珀色の瞳は男女の営みをジッと見つめ、無意識のうちに指が水着の布地越しに秘裂に触れている。ゴクリと喉を鳴らし生娘のように顔を赤くし、他人の情事を覗き見る。

 

 ――そんなに見たいなら見せてやろう。

 

 全身に力を入れ、華奢な東郷の身体を抱き寄せる。

 胸板と背中が密着し、今にも崩れ落ちそうな身体を貫いたまま、少女の太腿を掴みながらゆっくりと持ち上げていく。鏡の前には、M字で開脚させられ全てを晒される東郷の姿があった。

 

 愛液に濡れ張り付く陰毛も、揺れる乳房も、濡れた媚肉も、泡立つ結合部も。

 もっと少女を啼かせ、悦び、華が咲く姿を、余さず園子にも見せようと。

 

「ほら、園ちゃん! 見て!」

 

「ひやっ!! やだ、やだ、そのっち、見ないで、ぇあっ……ッッ!!!」

 

「……!」

 

 鏡の中に、はしたない少女がいる。

 鏡の中には呆然と東郷を見やる園子と、自らの痴態が晒されている。

 それを理解した瞬間、羞恥の涙を浮かべる東郷の膣は痛い程に怒張を締め付けた。

 

 ぴちゃぴちゃとタイルに蜜液が落ちていく。

 恥辱の悲鳴を上げる東郷を抱えたまま、ゆっくりと腰を引く。

 ぬるりと白い泡が肉茎を伝い垂れ落ちる様を見ながら、パンッ、と奥に捻じ込む。

 

「ああああっ~~~~……っっ!!!?」

 

 重力と彼女自身の体重も用いて、一思いに最奥まで少女を貫く。

 直後全身を硬直させる東郷、その結合部からぷしっ、ぷしっと小水の如き蜜液が俺の腿肉を伝い床石に流れていく様を、小さく口を開けて耳まで赤くした園子が見続ける。

 

「はっ、ぁぁ、そこ、だめッ」

 

 臍側の膣壁を擦られるのが好きらしい。

 普段ならば当たらない部分を削るように亀頭と雁裏に意識を集中する。

 

「ひゃめっ……、っぁ……ッ」

 

 抽送を繰り返す度に白い泡が結合部から溢れ出す。

 一突きごとに嫌々と首を振る少女の膣からは濃厚な蜜が垂れ落ちる。

 腰を揺する度に一オクターブ高い悲鳴を聞かせ、たゆんたゆんと乳房が上下に揺れる。

 

 全ては鏡越しの出来事。

 しかし、彼女は瞬きを忘れたように扇情的な光景を見続ける。

 

 だからこそ、俺は止まらない。

 瞼を閉じても鮮明に焼き付き忘れられないように動き続ける。

 具体的には、法悦の空に上る東郷を地面には下ろさないように。

 

「~~~~、~~~っ、~~……ッ!!」

 

 媚薬のお陰か、もしくは東郷自身の体質なのか。

 ぱんぱんと肉を叩く度に鏡から目を背けるように東郷は首を反らした。

 熱い、熱い東郷の膣内。その突き当りを亀頭で擦ると淫らな声音が耳朶に響く。

 

 繰り返される法悦の空。

 耐えられないと言わんばかりに肢体を仰け反らす度に眼前の鏡が水飛沫で濡れる。

 

 再び鏡の縁を掴み、玩具のように貫かれる東郷。

 纏めた髪は解れ、むわりと広がる少女の香りが鼻腔を擽る。

 汗と雌の愛液が混ざり合った独特の匂いが、音が、雄を奮い立たせる。

 

「りょ……、く……」

 

 射精感が高まり限界が近くなる。

 それを体内で感じ取った東郷は荒く呼吸を続けながら告げる。

 

「顔……みたい」

 

「……!」

 

 ギリっと奥歯を食い縛り、少女との体位を変更する。

 限界寸前の怒張を引き抜き、背中を鏡に押し付け抱き着かせるような体勢にする。ふにゅんと胸板に潰れる乳肉を挟み込み、蕩けた表情の東郷と正面から向き直った。

 

「……っ」

 

「……!」

 

 深い、深い、潤んだ緑の瞳。

 喜悦と快楽に骨まで蕩けたような女の表情が眼球に焼き付く。

 

 だからだろうか。

 暴発寸前の怒張を再度受け入れる最奥へと叩きつける寸前に、

 

「……孕め、美森」

 

「……っ!!」

 

 思わず耳元で囁いた。

 本能が囁かずにはいられなかった。

 

 返事は無かった。ただ行動で示された。

 勢いよく噴き出す子種、白いソースを飲み干そうとする膣壁と共に東郷の長い脚が拘束具のように巻き付き爪が背中に刺さる中、少女は淫魔な獣のように左の首筋に噛み付く。

 

 爪痕を残し、自らとの行為を証明するように。

 或いは首に鎖を巻き付けるように、強く、強く、噛みついた。

 

「――――」

 

 痛みを感じつつも振り解く事はしなかった。

 寧ろ両脚に力を入れ、白濁の一滴まで少女の子宮に注ぎ込んだ。

 

「ぅ、ぁ」

 

 鏡に押し込むように精液を吐き出し、しばし余韻に浸る。

 その背後で、ぼたぼたと結合部から溢れ出す白濁が床石へと垂れ落ちていく。

 

「――――」

 

 その様子を。

 鏡越しに琥珀色の瞳がジッと見ているのが見えた。

 

 

 

 



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第二十話 夜の終わりに、鎖という華

 ぽたり、と水音が響く。

 それは瑞々しい肢体を伝い垂れる汗であり、受け入れた雄の精が零れた音だ。

 激しさのある情事に、至近距離で顔を合わせ熱い吐息を交わし見つめ合う二人の男女。

 

 豊満な乳房は男の胸板に厭らしく形を変える。

 眼前には、白い肌に朱色を奔らせた女の表情が。

 揺らめく深緑の瞳が自らを捉え、薄い桜色の唇が吐息と共に名前を呟く。

 

「……りょう」

 

「……?」

 

 余韻に浸る中で、小さく東郷に囁かれる。

 額が触れ合う至近距離で告げられる内容に耳を傾け、真剣な眼差しに頷き返す。

 怒張を抜き取り、媚肉から白濁を垂らしながらタイルに座り込む東郷を余所に、俺は無言のままでいる金色の髪の少女へと向き直った。

 

「園子」

 

「……なーに?」

 

 湯気か興奮か。

 仄かに顔を赤くする紫のビキニを纏った少女は内股で座り込んでいた。

 

「小説の資料にはなったか?」

 

「……うん、すっごく良いのが閃いたんよ」

 

「そっか」

 

「……」

 

 にへらっと笑みを浮かべる御令嬢。

 同時にチラチラと白濁と愛液に塗れた怒張に視線を向ける。

 

「あの媚薬さ、どこで買ったんだ?」

 

「えっと、通販でちょこちょこっと~。少しだけなのに凄かったでしょ?」

 

「……ああ、凄いよ。本当に」

 

 何せ、出したはずの怒張は既に回復の兆しを見せているのだから。

 そして何よりも使用する以前より想像以上に薄暗い快感が燃え上がっている。

 東郷よりも、間接的に粘液から吸収した俺の方が効果が高いのではと思うくらいに。

 

「……」

 

「どう、したの?」

 

「意外に効果、あるんだなって」

 

「ね~、凄いよね」

 

「自分で使った事はあるか?」

 

「うん、少しだけなら……」

 

「そっか」

 

 何気ない会話を少女と交わしていく。

 脚を擦り合わせ、艶のある吐息をしながら園子は、目の前で親しい男女の触れ合いを一人で見ていた少女は、恐らくではあるが健全な性欲を持て余しているのだろう。

 

「なあ、園子」

 

「ん~……?」

 

 この空間で唯一、余裕そうな表情を浮かべている少女。

 その表情を快楽で歪め、啼かせ、喘がせ、女という華を咲かせてみせたい。

 彼女の頭の中の『流れ』ならばきっと俺は見境なく園子と性行為を行うであろう。

 

 普段ならば、きっとそうだろう。

 だが今回は園子と俺の他に、もう一人。

 目には目を。歯には歯を。甘い快楽には蕩けた快楽を。

 

「……っち」

 

「へ……?」

 

 そういう『流れ』が仮に存在するのならば、破壊してみせよう。

 羞恥を煽られ、自らが絶頂する様を最後まで見られた少女と共に。

 

「そのっち」

 

「ぇ」

 

 気配は無かった。

 まるで空間を一瞬で移動したかのような機敏さ。

 濡れた黒髪は白い柔肉に張り付き、白濁と愛液が腿を伝う、深緑の瞳の少女。

 

 目を丸くする園子に俺はそっと背後から彼女を抱きしめる。

 痛みなど与えず、さりとて決して逃げ出す事が出来ないように。

 

「さっきは、よくもしてくれたわね……」

 

「わ、わ、わっしー……?」

 

 でも結構ノリノリだったよね、等と茶化してはいけない。

 男女の営みという秘め事をじっくりと見られ、あまつさえ園子に乳首を愛撫され、何度も絶頂し、一人だけ恥ずかしい所を散々見られた東郷の瞳は鈍い光で満ち溢れていた。

 

「さっきの……媚薬? あれって、譲って貰うって事は出来る?」

 

「……う、うん。気に入って貰えたなら、わっしーにあげるよ~」

 

「ありがとう、そのっち」

 

「えへへ~」

 

「……」

 

 美しき友情。

 僅かに強張った笑みを浮かべる少女と微笑を浮かべ続ける少女。

 

「そのっち」

 

「ん、何~……?」

 

 そう告げる東郷の手にはピンク色の容器が。

 聡明な少女はやり過ぎた事を悟ったのか、俺の腕の中で笑みを浮かべる。

 どこか諦観したような、こうなる事をある程度予測はしていたのであろう表情と共に。

 

「私だけ気持ちよくされるのって不公平だと思うのよ」

 

「……そんな事ないよ、わっしー。わっしーのエッチな声や表情を沢山見る事が出来て、私は満足かな~って思うんさ」

 

「ううん、そのっち。私ね、そのっちにも、一杯気持ちよくなって欲しいのよ」

 

「……わ、私は普通にする感じでいいかな~って。ねー、かっきー?」

 

「ふふっ」

 

「かっきー?」

 

 にこりと東郷は微笑む。

 その緑の瞳に宿るのは、やり過ぎた親友に対する怒りと年相応な感情だ。

 即ち、恥ずかしい所を散々見られたのだから、キチンと報復をしなくてはという思いが。

 

「か、かっきー」

 

「園ちゃん」

 

 腕の中で暴れる事なく、しかし僅かに現状に抗おうとする園子。

 最後に潤んだ瞳を向け甘い吐息で俺の愛称を呼ぶ少女に一言だけ告げる。

 

「園子のエッチな声が聴きたいな~」

 

「――――」

 

「遠慮しなくていいのよ、そのっち。……任せて」

 

 不思議な少女の全てを露わにしたい。

 黒髪の美少女を溶かし、啼かせ、喘がせ、噴かせ、悦ばせたように。

 愛おしい金色の髪の美少女もまた、何も考えられないくらいに咲かせてみたい。

 そんな事を考える中、容器を手に微笑む東郷は無言のまま手のひらにジェルを出していく。

 

「あの、わっしー。ちょっと出し過ぎじゃないかな~」

 

「意外に出にくいわね、これ」

 

「ひゃわ!?」

 

 容器の蓋を取る東郷。

 一切の躊躇いもなく、中身の液体全てが園子の身体に掛けられていく。

 瑞々しい肢体、白い肌に掛かる大量の液体を勿体ないと思うのは貧乏性か。

 

「そのっちの身体って、凄く……」

 

「す、すごく……?」

 

「……」

 

「ぁ……、ふくっ……!」

 

「動いちゃ駄目よ。抵抗したら吊るすわ」

 

 恐る恐るといった様子で尋ねる園子。

 その言葉に答えずに、マッサージをするように白い肌に塗り広げていく。

 少女の脚を押さえるように両太腿に座り込む東郷はどこか妖艶な笑みを浮かべる。

 

「亮くんも」

 

「あ、うん」

 

 どこか妖しい光を宿した濃緑の瞳を向けられる。

 頷く俺は観客である事を止め、華を咲かせる為の準備を始める。

 背後から抱き着く俺はそっと腕の拘束を解き、園子の左手を手に取る。

 

 掴んだ腕は柔らかく、瑞々しい肢体は噛り付きたいという欲求すら湧く。

 しなやかで程良く脂と筋肉の乗った少女の腕を手に取ると、完全に無防備になる腋に目が向く。綺麗な少女の腋に目が向かない訳がない。

 

 ――当然、腋をくすぐる。 

 

「あは、あははははっ……ッ!!」

 

 園子の滑々の腋をくすぐりながらも媚薬を塗り込む。

 蜘蛛のように、親指、人差し指、中指、薬指、小指を用いて蠢く。

 園子本人もくすぐられるとは思わなかったのか、慌てて腕を下ろそうとした。

 

「くひゅ、くっ、やめ……っ、あははははっ!!」

 

 大人びた紫色のビキニのみが彼女が着ている物だ。

 その部分以外は、少女の白い柔肌も、艶のある肢体も剥き出しのままだ。

 それらが如何に性的なのか理解していないのか。或いはそれを理解して俺に見せようとしているのか。いずれにしても園子の柔肌を堪能せずにはいられない。

 

「はふっ、あははっ、あ~、あっ、ほああ!?」

 

 軟体生物のように、身体をくねらせる。

 汗を肌に浮かべ、強制的に零れる笑い声には思わず頬が緩む。

 くねくねと厭らしく腰を動かし、指先より与えられる刺激に少女は悶えた。

 

 左の腋が終わったら右の腋を。

 右の腋が終わったら、左の脇腹を。

 首筋を、鎖骨を、脚を、臍を、東郷とくすぐるように塗り込む。

 

 上半身を俺が。

 下半身を東郷が。

 

 目配せしながら塗り込んでいく。

 ゆっくりと水着の布地の中も手のひらを滑らせていく。

 谷間が出来る程に豊かな園子の乳房と、僅かに硬さのある肉粒の感触が塗り込む手のひらに広がる。痴漢をしているような感覚で水着の隙間から少女の乳房を味わい、媚薬を染み込ませる。

 

 東郷より僅かに小振りな御椀型の乳房。

 しかし柔らかさは園子の方が上である、という比較基準がある故に抱ける思いの中で優しく柔肉を揉み解していく。

 

「はひゅ、んっ、……ぃ、ちょ、ちょっと、……ぁ」

 

 丹念に、丁寧に塗り込みながら園子の様子を窺う。

 最初は二人でのくすぐりに対し、悶えるだけの様子であった園子。

 しかし、時間が経過する程に少しずつ、園子の吐息に艶が籠り始めた。

 

「……」

 

「……そのっち、どう? 気持ち良い?」

 

「……うん」

 

 全裸の少年少女が二人。

 一人だけが水着を着ているのは不公平ではないのだろうか。

 そんな思いで、抵抗の薄い園子の紫色のビキニを剥き、白い女肉を拝む。

 

 外気に曝け出された園子の乳房。

 ぷるん、と震える極上のプリンのような乳房に一筋の滴が垂れる。

 

「んっ……」

 

 段々と口数を減らす園子。

 胸板に背中を預け、ゆっくりと目を細める少女はふと此方を見やる。

 いつの間にか潤んだ琥珀色の瞳に喜悦の色を宿し、顎を上げ、唇を窄める。

 

 それは意地悪な自らに拗ねたのか、キスを望んでいるのか。

 

 恐らくは後者なのだろう。

 乳房の感触を両手に感じながら、園子に顔を近づける。

 整った目鼻や眉、透き通った白い肌を伝う一筋の汗に目を奪われる。

 

「んっ!?」

 

 そんな時だった。

 大きく目を開く園子の反応に、下半身担当である東郷へ目を向け、

 

「おぉ……っ」

 

 その光景に呟かずにはいられなかった。

 いままで避けていたらしい恥部へ、ついに東郷の魔手が伸びていた。

 左腕を少女の腰部に回し、抱き着くような姿勢で水着の中の恥部へと手を入れている。

 

「……っ」

 

 ぎゅううっと俺の腕を園子は掴む。

 目を細め、熱い吐息を漏らす園子と同時に東郷による『責め』を見やる。

 

 水着の中に手を入れ、媚肉に触れているであろう東郷の指。

 隙間からは園子の髪色と同じ毛色の薄毛と、耳を澄ませば小さく聞こえる水音。

 そして手の中で反応する乳首と、至近距離で漏れる園子の淫魔な声音だ。

 

 浅い所がいいのか、臍側の膣壁がいいのか。

 初々しく、どこか大胆さを兼ねる同性からの愛撫に園子は息を呑む。

 小動物のように震える園子の紫の水着の中から、徐々に粘り気のある淫音へと変貌する水音が東郷の手より奏でられる光景は、感動すら覚える物であった。

 

「ふふっ、そのっちの……凄くぬるぬるしてる」

 

「……!」

 

 東郷の言葉責めに顔を赤らめる園子。

 同性とはいえ、同級生に弄られて濡れているという状況。

 どこか開き直り、妖艶な笑みを浮かべる少女は、一体誰を参考にしたのだろうか。

 

「……こうだったわね」

 

 何故かチラリと俺を見る深緑の瞳。

 やがて、するりと園子の身を包む最後の布切れが取り払われた。

 媚肉に細い指を吸わせ、遊ぶように薄い陰毛付近を親指で弄る東郷の姿に俺は目を離せず無言のまま少女の乳房を弄り、くすぐられ力の抜けた園子を見下ろすばかりだ。

 

「ぁ……!!」

 

「! このあたり……」

 

「ふくっ……」

 

 ぬぷぬぷとピストンをするように指が上下に動く。

 嫌々と首を振る園子の脚を抱くように、至近距離で恥部を見つめる少女。

 興奮し、意地になる東郷は、挿入した指を用いて絶頂の為の探索を続ける。

 

 東郷と園子の『良いところ』は場所が異なる。

 それなりのテクニックと経験と、運で導いた場所は簡単には見つけられない。

 だが、うら若き少女には疑似性交する指の動きでも十分に快感は得られた。

 

 んふ、ふぅ、と鼻息を荒くする園子。

 甘えるように胸板に髪や頬を擦りつける姿に、小さく頬を緩める。

 東郷の手伝いをしたいが、手は届かず、さりとて乳房から手を離せない。

 

「ぁ……」

 

 乳首を指先で弄ると喘ぐ園子の声が耳朶に響く。

 眼前の光景に、復活した怒張は園子の尻肉に硬さを教えつつ出番を待っている。

 

「んあ……っ!」

 

 突然、園子が嬌声を上げた。

 ビクン、と身体を硬直させる姿に東郷の方へと目を向ける。

 

「くりくり……」

 

「ふっ、……あっ、ぁ、ぁぁ……」

 

 園子の探求を行いながら、東郷は確実に絶頂の為に動いていた。

 自らの経験を元にしているのか、少女の髪色と同じ色の陰毛、薄毛の中から陰核を掘り出す。

 探索の合間に、女が確実に感じる快楽器官を虐めようと親指と人差し指で優しく摘まむ。

 

 園子の身体が震え、同時に脚がジタバタと動く。

 蛇のようにくねり動こうとする園子の腰と脚をがっしりと拘束し、愉しそうに東郷は捕食するように園子の恥部を弄り、絶頂に導こうと指先を動かしている。

 

 親指で陰核を潰し。

 人差し指で根本を擦られる。

 片方の指で媚肉と愛液と戯れる。

 

「……っ、ッッ」

 

 腕を掴む園子は必死に堪える。

 自らの行動の結果とはいえ、本当に親友に絶頂させられる。

 そこに発生する羞恥と、抱く快楽の強さとは一体どれほどなのか。

 

「わ、わっしー、ね、ね、もう……やめ」

 

「そのっち」

 

 誰にでも初めてはある。

 そして今、その初めてが達成されようとしていた。

 慈愛の笑みを浮かべる東郷は、優しく厭らしく、小さな肉粒をひたすらに擦った。

 

「逝って」

 

「っ、ッ、~~~~~っっっ!!!」

 

 言葉にならない悲鳴。

 ビクンと腰を浮かし全身を痙攣させる。

 しかし、上ったばかりの少女は、更なる追撃を受けた。

 

「~~~っ!! わっ、まって、いまは」

 

「もっとくりくりしようね……そのっち」

 

「ふくっ、ぃ……、ああぁぁっっ……!!?」

 

「そのっち、可愛い……」

 

「あひゅ、まって、少し、んん、わっしー、ィ~~~……っっ!!」

 

 くりくり、と言いながら東郷は陰核を弄る。

 剥きだされ震える肉粒を愉しそうに優しく指で撫でる。

 

 東郷は意外にテクニシャンだった。

 じゅぶじゅぶと猥らな水音を響かせ、自らの顔に掛かる飛沫を物ともせず、どこか目の据わった表情でお嬢様を狂わせる様は、もはや美しいとすら感じさせる物であった。

 

 可哀そうに。

 助けてあげたい。

 

 そんな思いで、喘ぎ涙を浮かべる御令嬢の唇と唇を重ねる。

 乳房を揉み、乳首を弄り、陰核を弄られ、恥部を解される園子。

 

 きっと媚薬の所為で身体の表面が敏感になってしまったのだろう。

 そろそろ洗い落とそうとシャワーヘッドを手に取ると、満足気な東郷がそっと立ち上がり、ぐったりと身体を弛緩させた園子に薄く微笑む。

 

 その光景を見て、ふと思う。

 機械が織りなす無機質な放水。

 それを直接恥部に当てて洗えば、少女は、一体、どう咲くのだろうか――。

 

「亮くん」

 

「うん……?」

 

「教えて欲しいの……」

 

 シャワーヘッドを手にする俺に、冴えた月光のような微笑みを浮かべる少女。

 酩酊したように、或いは捕食者の如く、加虐性を帯びた獣は、床石上で震える少女を見やる。

 豊満な乳房、谷間を流れる滴に目を向けながら、鈴音の如き声で俺に『お願い』を告げる。

 

「亮くんなら、もっと……」

 

 華は愛でる物だ。

 華は咲かせる物だ。

 愛という水を、慈悲という肥料を与え、初めて華は猥らに咲くのだ。

 

 片脚を東郷が。

 もう片方の脚と腰を俺が掴み固定する。

 分娩台のように無慈悲に脚を開かせ、恥部を曝け出す。

 

「!」

 

 息絶え絶えであった少女の意識が戻り、慌てて上体を起こそうとする。

 ぐぐっと腕に力を入れて抵抗する少女は致命的なまでに遅く、既に媚肉へと指が挿入される。

 女の細く柔らかい指ではなく、どこかゴツゴツとした硬い指先は、すぐにある場所に辿り着く。

 

「ぁ、まって、かっきー……そこ、本当に、だめなっ」

 

「東郷さん、見ててね」

 

「うん」

 

 強制的に上らされる事を予感する園子は腕を伸ばし俺の頭を掴む。

 初めて示す抵抗、それは繰り返す性交の中で見付けた園子の『弱点』に触れられる恐怖からか。或いは本当の意味で愛撫され、よがる様を親友に見られる事への危惧からなのか。

 

 どちらにせよ、遅いが。

 膣内の、ざらついた部分を、指で撫で――、

 

 

 

 +

 

 

 

 どれくらい時間が経過したのだろうか。

 仰向けにし、無理やり脚を開かせ、四つん這いにさせ、空へと上らせる。

 蕩かすように、恥も外聞もない声を上げさせて、少女を唯の雌へと変えていく。

 

「……、ぅぇぇ……」

 

 ただ、その過程がやり過ぎたのだろうか。

 あの園子が涙を浮かべる様に流石に心が痛み、口端が歪んだ。 

 

「……ぁぁ」

 

「そのっち」

 

「……っ」

 

「気持ち良かったでしょ?」

 

「……」

 

 黙り込む自らとは異なり、優し気に東郷が話しかける。

 大粒の涙を浮かべる少女は嗚咽しながらも、コクンと頷いた。

 その様子を見る黒髪の少女は安堵したように、続行させるよう俺に目線で訴えた。

 

「亮くん。もう一回」

 

「えっ、まって、もうイきたく……!」

 

 それから数回、無機質なシャワーと自らの指先と口が園子を絶頂に導いた。

 余裕の表情を無くし、腕の中で息絶え絶えの少女は涙ながらに哀れみを乞う。

 その姿は今すぐに押し倒し、ぐちょぐちょに犯したくなるが、下は体液塗れのタイルだ。

 

「……」

 

 向き合い、静かに挿入する。

 熱くぬめる膣内は子種を求めて締め付ける。

 

「は、ぁ……」

 

 どこか満足気に吐息をする園子。

 繋がり、彼女の重さを感じながら、俺はゆっくりと床石に身を横たえる。

 お互いに無言のまま、俺の身体に跨り貫かれた少女は腰を動かし白濁を望む。

 

 性交を望む者同士において成立する体位。

 ぱんぱんと尻肉と腿がぶつかる度に音を立てる。

 自ら腰を動かし、喘ぎながら、胸を揺らす少女。

 

 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、と。

 淫らな水音は、雄と雌が激しく動く結合部から生まれる。

 俺を捕食しているのか、それとも俺が捕食しているのか曖昧になる。

 

 見事な金髪が舞い、乳房が上下に舞う。

 汗と湯が少女の裸体を弾く中で、男女で異なる筋肉がぶつかりあう。

 

「……っ」

 

「かっきー、……かっきぃ」

 

 名前を呼ばれる度に自らもまた怒張を最奥に突き上げる。

 口端から涎を垂らし、此方を見下ろす瞳には確かな情欲が宿る。

 雄と雌の交尾。体力を振り絞る俺に、ふと腕を折り畳み園子はもたれかかる。

 

「かっきぃ」

 

「……」

 

 疲れたのか、胸肉を押しつぶしながら園子は顔を近づけてくる。

 カエルのように脚を開き、しなだれかかる可憐な少女は小さく囁いた。

 

「かっきーの……、私の中に、びゅーって、一杯出して」

 

「……っ」

 

 殺し文句とも言える言葉。 

 神経に電流を奔らせるような甘い、甘い声音だった。 

 お願いならば仕方ないとばかりに少女の尻肉を掴む。

 湧き上がる衝動に突き動かされ、ぐにゃりと形を変える柔肉を怒張に叩きつける。

 

「ンあ、っ、ぁ、ぁ!」

 

 玩具のように少女の腰を強引に動かし怒張をしごく。

 亀頭と雁裏に意識を集中させ、最高の快楽を貪るべく腰を揺する。

 絶頂を意識する御令嬢の子宮口に、懇願する物を注ごうと歯を食い縛る。

 

「っ」

 

「っっ」

 

 やがて、行為の果てにその時は訪れた。

 天上を目指し、樹海のように広がる精液が吐き出された。

 

「ぁぁぁ、っ、~~~~……!!!」

 

 身体から抜けていく感覚に酔いしれる。

 僅かに発生する倦怠感の中で、喜悦の声を上げる園子の唇が近づく。

 薄紅色の唇から覗く白い歯がゆっくりと俺の右の首筋を狙い、吸うように噛む。

 

 がりっと、血が滲む程に。

 同時に吸い付き、ざらつく舌の感触に、俺は思わず呻いた。

 

「……美味しいか?」

 

 何故か噛みつかれる。

 一体、東郷も、園子も、急にどうしたのだろうか。

 他人に噛み付く理由を理解できず、思わず冗談めいた風に目の前の少女に聞く。

 

「うん」

 

 真顔で、頷かれた。

 

 

 

 +

 

 

 

 時計を見る暇は無かった。

 媚薬の所為なのか、今宵は異常に身体の熱が収まらない。

 

 身体を洗われ、湧き上がる衝動のままに湯舟で東郷を犯すように抱く。

 疲れ気絶する東郷を自室に運び込み、残りの熱を全て、園子に注ぎ込んだ。

 いじらしく思い出の枕を抱き、盾のように抱える少女をうつ伏せにし、背後から挿入する。

 

 僅かにでも声を出せば、抽送ではなく、ひたすらに奥を擦り続けた。

 寝バックという体位だが、意外と園子(の身体)は気に入ったらしい。耳を甘噛みしながら抽送する度に尋常ではない程に膣内が蕩ける程に熱く、熱く、子種を求めた。

 

「……ふぅ、んぅ」

 

「……また声出したから、ぐりぐりしてやるよ」

 

「……ひぅッ」

 

「友奈が起きるだろ。声を出すな」

 

「や……ぁ」

 

 赤くする耳に言葉を囁き、腰を揺する。

 身体を痙攣させ、ビクンと硬直させようとも、ひたすらに擦る。

 しっとりとしたお腹を押し、陰核と子宮口と自らの怒張に刺激を与え、背後から犯す。

 

「~~~~!!」

 

 闇夜の中で行われる。

 金の髪、甘い香りのする首筋に顔を埋め、狂ったように腰を振る。

 時計を見る事は叶わず、ぐちょぐちょという猥音が聞こえる中で、新しい子種を吐き出す。

 

 叫び疲れ掠れた少女の声と鈍い肉の音にもやがて終わりは来る。

 吐き出せるだけ吐き出して、衣服を着せて、脱力感の中で、眠りについた。 

 

 

 

 +

 

 

 

「……」

 

 目を覚ます。

 カーテンの隙間から覗く僅かな光が、友奈の覚醒を促す。

 しばし天井を見つめるがゆっくりと上体を起こし、無言で周囲を見渡した。

 

 彼の自室だ。

 見慣れた家具、壁に掛けられた時計は八時を過ぎた事を教える。

 休日であって良かったとぼんやりする頭で、腕を伸ばし瞬きを繰り返す。

 

「……」

 

 瞼を擦り、小さく口を開く。

 乾いた口内に入り込む空気に舌を動かしながら少年に目を向ける。

 暑かったのか、シャツとトランクスだけという姿に僅かに頬を赤らめた。

 

「ん……」

 

 少年は酷い寝癖だった。

 髪を乾かすのを忘れたように黒い前髪が逆立っていた。

 僅かに眉を顰め、小さく唸る少年は悪夢でも見ているのだろうか。

 

 一体どんな夢なのだろうか。

 月の綺麗な草原で誰かとお茶会でもしているのだろうか。

 何故か思い浮かぶ妄想を切り捨てて、友奈は少年の周囲に目を向ける。

 

「……」

 

 彼の右隣りに眠る金色の髪の少女。

 彼が大事にしているサンチョの枕を抱きしめ、うつ伏せで眠りについている。

 金髪を広げ、まるで声を抑えるように顔を埋める少女の表情は確認出来ず、力むように両手で掴む白いシーツには皺が寄っている。

 

 暗闇の中で誰かに着させられたかのように前後逆のシャツと、下腹部を冷やさないように薄い毛布を掛けて眠る園子をジッと見つめる薄紅色の瞳はチラリと彼女の白い脚付近に向かう。

 彼女のパジャマが、丸まった花柄の下着(ショーツ)が、乱雑に散らばっていた。

 

「……」

 

 続いて、彼の左隣で眠る黒い髪の少女。

 珍しく友奈よりも眠りこけ、黒い髪を乱れさせ、無防備な寝顔を晒している。

 彼女もまた暑かったのだろうか、着るパジャマはボタンが外れ、雪肌のような素肌が覗く。

 

 珍しく寝相が悪かったのか、染みのあるシーツを握る彼女たち。

 昨日は水泳を行い、焼きそばパーティを行い、トランプをして一日中楽しく過ごしたからか、体力を消耗し疲れてしまっているのだろう。 

 

「……」

 

 すん、と鼻を鳴らす。

 窓もドアも閉められた部屋に漂う、なんとも言えない匂い。

 普段は嗅がない、しかしどこかで嗅いだような匂いに小さく眉を顰めた。

 

「……」

 

 無言のまま四つん這いで友奈は動く。

 園子の身体を踏まないように乗り越え、疲れたように眠る少年の元へ。

 見下ろす薄紅色の瞳は前髪に隠され何者にも、宿る色を見る事は出来ない。

 

 あーん、と口を開く。

 同時に小さな声で呟く。

 

「……絶対に」

 

 かりっ、と噛み付く。

 マーキングをするように、喉元に、口づけをするように、噛み付いた。

 

 ――首筋に、鎖のような華が、咲いた。 

 

 

 




+++
絶対に、離さない。
絶対に、赦さない。
絶対に、――――。

ヤンデレこそ至高。


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第二十一話 果てなき夜で、貴方に愛を

友奈ちゃんによるモノローグにて、終わり(二度目)


 ――あの日から随分と時間が経過した気がする。

 初めて加賀亮之佑と出会った日から、どれだけ時間が経過したのだろう。

 

 小学校の頃、向かいに引っ越して来た彼。

 インターホンを押し、初めて顔を見た時はなんて顔をしているのだと思った。

 今にも死んでしまいそうな、弱弱しい表情に張り付けた薄い笑みを覚えている。

 

 彼はあの年で既に独り暮らしをしていたのだ。

 小学校すら卒業していないにも関わらず、家の事情で彼はあの家に一人だった。

 そんな事情など分からず、ただ両親から同年代の友達が引っ越してくると聞いていただけ。

 無邪気に話しかけ、笑いかけると、彼も愛想笑いを浮かべるが目だけは笑っていなかった。

 

 それが何故か嫌だった。

 だから、誰にも話した事が無かった友奈だけの秘密を。

 押し花の為の花を探していた際に偶然見つけた桜を、彼にも見せたいと思った。

 

『――ありがとう』

 

 初めて見せてくれた微笑。

 作った物ではない。張り付けたような、仮面をつけたような愛想笑いではない。

 本物の、おおよそ同年代だとは思えないような少年が初めて浮かべた微笑みだった。

 

 少しドキドキしたが、それ以上に嬉しかった。

 自分の行った行いは間違いではなく、目の前の少年を助ける事が出来たのだから。

 

 彼は不思議な存在だった。

 奇術師、手品師、芸達者。

 紙を叩くとお金に変わり、ポケットからは花を出し、扇子からは水を出す。

 

 転校生という価値も含めクラスメイトにも珍しがられ、彼が溶け込むのは早かった。

 同年代の男の子と比べて随分と大人びており、男女問わず優しい人であった。

 そして、会う度に友奈に優しくし、慈しむように亮之佑は友奈に笑い掛けてくれた。

 

 揶揄われる事もあった。

 その度に亮之佑は嫌な顔一つせずに、淡々とクラスメイトを黙らせた。

 どれだけ彼が友奈を想っているのか、聞いている本人が悶える程に想いを語った。

 

 明るくて、優しくて、可愛くて、勇気があって、少しお馬鹿な少女。

 それが亮之佑にとっての友奈という少女への評価であった。

 

 彼はそれからもどんどん格好よくなっていった。

 頭が良い事は勿論、男女問わず優しく、エッチだけど看病は上手で、たまに口が悪いけど真面目な時に見せる真剣な顔は素敵で、辛い時には傍にいて寄り添ってくれた。

 

 彼との付き合いが続いたある日、彼は腕を折ってしまった。

 大した事ないと告げる彼の笑みは、いつか見た冷たく張り付けたような笑みだった。

 心配で不安だった。それ以上に心の中で湧き上がる感情が彼を助けたいと叫んでいた。

 

 初めて亮之佑と喧嘩した。

 世間一般で言う喧嘩とは言えなくとも、お互いの意志がぶつかったのは初めてだった。

 何よりも友奈にとって喧嘩をしてでも、空気を悪くしても助けたいと心から思った。

 

 空気というのは大事だ。

 喧嘩するよりは楽しく笑顔でいたい。

 時には自分が緩衝材となることで不和を無くす事に尽力した。

 ムードメーカーと呼ばれる事もあるが、友奈にとってその呼び名は相応しくはない。

 ただ、険悪な雰囲気や空気というのは酷く苦手で、そうならないように動いただけだ。

 

 粘って、粘って、彼の家に入り込んだ。

 根負けしたと苦笑する彼に、助かったと口にする彼に、胸が熱くなった。

 ぽかぽかするとか、太陽のような温かさという類の物ではなかった。もっとマグマが噴き出すような、熱く迸るような、ドロリとした言いようの無い物が胸を満たしていった。

 

 それから、東郷と出会い、風と出会い、樹に出会い、夏凜と出会い、――園子に出会った。

 バーテックスという人類の敵と戦いながらも、改めて手にした平和な一時は友奈の心に満ち溢れた。きっとこんな日々がいつまでも続くのだろうと、そう思って。

 

 

 

+

 

 

 

 ――私は悪い子だ。

 

 そんな事を思うようになったのはいつからだろうか。

 戦いが一段落して、次の戦いに備える為の準備期間の最中だった。

 彼とのスキンシップは多い方だったが、それでもある程度の一線は保っていた。

 ただそれは少しずつ、侵食していくように越えてしまった。その事に対して後悔はない。

 

 彼はモテる。亮之佑はモテる方だ。

 ただ、不思議と他の誰かと男女の仲にまでなる事だけはないという確信はあった。あったのだ。

 それは何故か。自惚れでなければ、亮之佑は友奈の事が好きであると思って。

 

 初めて彼に抱かれた時、妙に手慣れていると感じた。

 それは段々と過激になっていくスキンシップだけではない、勘とも呼べる何か。

 彼とそういう関係になって初めて、自分以外に彼が抱いた存在について察知出来た。

 

 彼はモテる。だがそれだけ。

 本当の意味で彼に最も近い女は限られている。

 その様子を見れば、何となくだが理解出来てしまった。

 同時に、心を過るドロリとした感情が、その思いを親友に向けた自分に嫌悪した。

 

 東郷が亮之佑に向ける目線。

 園子が亮之佑に向ける目線。

 

 深緑色の瞳に時折宿す喜悦。

 琥珀色の瞳に時折揺らす愉悦。

 

 それは、その眼差しは、鏡で見たことがあって。

 彼と行為をしているのだと感じて、理解して、明確に抱く思い。

 嫉妬という名の思いを胸に秘めて、そんな自分に、酷く、吐き気を覚えた。

 

 

 

+

 

    

 

 ぱちゅ、ぱちゅと水音が響く。

 自らの結合部と彼の肉棒が触れる度に下劣な音が響き、快楽に脳が震える。

 

 その度に自らの声とは思えない嬌声が飛び出る。

 両親にすら聞かせた事の無い声が喉から転がり出る度に、慌てて口を押さえる。

 その自らの反応を愉しんでいる彼はニヤリと嗤いながら友奈を虐めてくるのだ。

 

 何度も、何度も。

 何度達しても、飽きる事なく。

 

『友奈』

 

 耳元で囁かれる。

 その度に体中に浸透していく思い。

 腰を揺すられ、恥ずかしい声を上げさせられる度に自らが塗り替わっていく。

 

 耳朶を噛まれてあられもない声を上げる。

 首を反らすとうなじを甘噛みし、背中を反らすと胸に吸い付く。

 手慣れた動きで快楽を教わる度に、友奈の知らぬ『友奈』へと作り替えられていく。

 ただ、容易く辱められそれ以上の快楽に溺れる度にチクリと胸中を過る思いが一つ。

 経験する事で動きはより洗練される。ならばその経験は、一体、どこから得たのか。

 

 ――東郷さんとはどんな事をしたの?

 

 ――園ちゃんとはどういう風な事をしたの?

 

 胸の奥で湧き上がる感情。

 蓋をしてもなお何度も湧き上がる感情を呑み込み、唇を触れ合わせる。

 そうして彼と身体を重ねる度に、甘く、暗く、切ない気持ちに囚われる。

 

 恥ずかしい事を要求され、散々啼かされた。

 彼は基本的に紳士だと言い張るが、二人きりだと凄く変態だった。

 恥ずかしくなる程に身体は熱く、哀れなほどに顔を赤くし、厭らしい言葉を口にさせられる。

 

 首筋を噛み付かれ、腋を舐められて、乳房に噛み跡を付けられた。

 髪を撫でられ、お腹を頬ずりされ、恥毛の香りを嗅がれ、恥部から湧く蜜液を散々吸われた。

 その度にみっともない声を上げて身体を痙攣させて、はしたなく法悦の空に上げられた。

 

 そんな自分を見て悦ぶ彼に。

 恥ずかしくも、どこか嬉しくなる自分がいた。 

 

 陰核を指で弄られて、自らの奥を怒張で擦られる度に視界に光が奔る。

 喘ぎ、啼き、彼に与えられる快楽に絶頂を味わい、最奥を抉られる度に身体は仰け反る。

 溺れる自分。哀れにも藻掻く自分を引き摺り込む彼に、時間を忘れ、思考を手放す。

 

 抱かれる度に抱く考えは、その度に霧散していく。

 優しく、厭らしく、友奈の身体を探索するように優しく彼は身体に触れる。

 嫉妬も、嫌悪感も、優越感と快楽に塗り替えられていく。

 ――悪い子に変えられてしまう。

 

 否、もうなってしまったのだろう。

 亮之佑に、友奈は壊されてしまったのだろう。

 

 行為を重ねる度に。

 愛を深める度に、快楽は高まる。

 

「ぁ、ぁ、ぁぁ……ッ!!?」

 

 我慢は許されず、声を上げる。

 その度に血紅色の瞳に喜悦を混じらせる彼の姿に、言いようの知れない思いを抱く。

 彼の体温を、彼の吐息を、彼の汗の匂いを、彼の怒張を、この身体は記憶し覚えていく。

 

 それが酷く幸福に感じられて。

 間違っているという言葉は霧散して、蕩かされていく。 

 

『好きだよ』

 

 囁かれる度に狂いそうになる。

 情熱的に唇を交わし、指を絡め合わせ、彼の白濁を最奥で受け取る度に。

 不健全であったとしても、彼に求められている事が嬉しくて、狂いそうに、なる――

 

 

 

+

 

 

 

 裸で抱き合うと気持ちが良い。

 そんな事を思いながら、寝台の上で痺れにも似た甘い甘い一時を味わう。

 散々辱められ、はしたない声と粗相をし、何度も何度も彼は友奈の中に精を吐いた。

 

 どうやら彼は友奈を虐めるのが好きらしい。

 優し気な顔をしていとも容易く行われる行為を思い出し、僅かに顔が赤らむのを感じる。

 汗と汗が混じり合い、お互いの匂いが混じり合う様は、夢ではないことを友奈自身に教える。

 

 ふわふわ。

 ふわふわ。

 

「私も、混ぜて欲しかったな……、なんて」

 

 小さく呟く。

 大切な物を得て、快楽を知って、少しだけ我慢する事を忘れてしまったのかもしれない。

 無理やりにでも起こして欲しかったと、目の前で眠りこける彼の寝顔をジッと見つめる。

 

 いつだったか、友奈の事を勇気があると言っていた少年。

 そんな事はない。自分はいつだって怖がりで臆病な普通の少女でしかないのだ。

 

『貴方の為に、心を尽くします』

 

『私も混ぜて』

 

 だから、あの時。

 取られてしまうと、少しだけ彼女達に嫉妬した。

 暗闇の中で琥珀色の瞳が此方を見る感情に、深緑の少女の言葉に、僅かにひるんだ。

 タイミングを失ったと、そう言い訳をして、一人になった彼の部屋で自分を慰めるだけで。

 

 そんな自分に嫌悪した。

 そんな自分である事を、酷く、後悔した。

 

「――――」

 

 繋がったままの結合部。

 組み伏せるように腹が触れ合い、胸が触れ合い、一つの枕に顔を埋める。

 裸同士で抱き合って晒された彼の裸体には、いままでの戦いで残った傷跡と、痕が。

 

 首筋に三つの痕。

 薄れつつある歯形は、まるで首輪のような鎖を思わせる。

 三つの歯形、その正面に友奈は顔を近づけて、小さく口を開く。

 

 ぴたりと歯形が合った。

 当たり前だ。だって、友奈自身が付けたのだから。

 

「――――」

 

 彼はきっと友奈を悲しませないだろう。

 前例として、行動で示してくれた。それだけで十分だった。

 

『……それなら、きっと、大丈夫だよ、友奈』

 

 とんとん、とお腹をリズミカルに叩きながら。

 溺れ揺蕩う眠気の中で、子守唄のように語る彼の言葉を覚えている。

 

『きっと、――死ぬまで、ずっと一緒にいるから』

 

 嬉しく思った。

 ただ、少し嫌だとも思った。

 言葉の綾だったとしても、『きっと』なんて言って欲しくは無かった。

 

「ねえ、亮ちゃん」

 

「……」

 

 どこか疲れたように眠りにつく少年。

 その腕に抱かれ安心感と同時に、少しだけ勇気を得る。

 

「これから先も、ずっとずっと」

 

 貴方とお花見をしたい。

 大好きな貴方とこれからも過ごして生きたい。

 貴方に好きだと言われる度に、優しく微笑まれる度に、酷く胸が痛くなる。

 こんな思いを抱いてしまうのは彼が特別で、きっと最初で最後になる確信があった。

 ――それほどに、どうしようもない程に、彼を、亮之佑を求めてしまっている。

 

「――――」

 

 友奈は亮之佑の傍にいる。彼と愛し合っている。

 独り占めしたいという暗い感情がある事は否定出来ない。

 園子や東郷と愛し合っている事に対する嫉妬も少なくはない。

 

 ただ、それでどうこうなる訳ではない。

 友奈はきっと彼に壊されてしまったのだ。

 あの戦い、空から降る殺意の雨に。目の前で死にゆく彼の微笑に。

 

『――好きだよ』

 

 あの瞬間。

 恐ろしいと思う程に、狂いそうな程の熱い熱い愛を囁かれて。

 きっと、もう戻れない程に友奈は悪い子になってしまったのだ。

 

「――絶対に」

 

 子供らしい悪戯だ。

 独占欲とも呼べる感情が織りなす行為は、再び新しい噛み痕を彼に残す。

 それで何かを得られるという訳ではないが、それでも少しだけ満足感を得た。

 ふとカーテンもせずにいた窓からは、暗く果てない夜が地平線から侵食してきた。

 

「――絶対に放さないから」

 

 もう、きっとなんて言わせない。

 もう、躊躇なんてしたりはしないから。

 

 だから、私を放さないで。

 どうかずっと、私の傍にいて。

 

 彼の腕に抱かれて、彼への沢山の愛を抱いて、彼に全てを捧げる。

 いつもどこか寂しそうな彼に。友奈が与えられる物を全て。余すことなく。

 そうしてこの果てなき夜に、彼に愛を囁かれ、身に余る幸福に心を震わせながら囁くのだ。

 

 

 ――どうか、貴方に愛を、と。

 

 

 




ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
あまり仲違いが起きる事なく(亮之佑目線)こうして奇術師は三股野郎になりました。
夏凜? 風? あれは少し火遊びをしただけですので……。


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【番外】この想いが届きますように

友奈と亮くんが、ニャンニャンねちょねちょしているだけのお話。


 ――接吻という行為は魂を震わせる。

 その唇の、舌の柔らかさは、この世の物とは思えない程酷く柔らかい。

 生き物の如くうねり動く舌の熱さは、絡める度に吸い付き決して放そうとはしない。

 

 唇の裏を、歯茎を、頬の裏を、必死に舐める。

 舐めて分かる柔らかさを彼女の唾液の味と共に呑み込む。それだけではなく、ぬるりとする口内も、軟骨のような耳の柔らかさも、目端に浮かぶ涙の味も、独りだったならば決して味わう事は叶わなかっただろう。それは目の前の少女がいるから出来る行為に他ならない。

 

「は、ぁ、っ、……っ」

 

 息継ぎをせず泳ぐ人のように荒く呼吸をする薄紅色の髪の少女。

 雪肌の如き肌を朱色に染め、髪の色と同じ瞳は熱く潤み此方を見上げる。

 息が出来ない程に舌を絡め合ったからか、上半身裸の俺に抱かれる少女は小首を傾げる。

 

 続きはしないのか。もっとして欲しい。

 そう切望する声が熱と快楽で蕩けた眼差しに告げられて、再度唇を奪う。

 鼻息が触れる事を気にせず、少女もまた唇を甘噛みし、舌を絡め、頬肉の柔らかさを知る。

 

「すき」

 

 唇から零れる音。

 幾千の音楽よりも耳朶に優しく触れる声音が唇の隙間から零れる。

 何度塞ごうとも、何度奪い取ろうとも、それでも息を吸うことを惜しむように告げる。

 

「すき」

 

 甘い彼女の吐息と共に囁かれる。

 向日葵のような暖かな笑みではなく愛情と欲情に蕩けた女の表情をした友奈を愛おしく感じて小さく微笑むと、柔らかい女の腕が首に絡まり、喉の奥を震わして彼女は再び言葉を紡ぐ。

 

「すき」

 

 幾度も繰り返される言葉に、愛を囁かれる度に、身体が熱くなる。

 腹を触れさせ、脚を絡めさせ、何者も入れない距離であるにも関わらず、少女は愛おしげに、狂おしげに、何度も何度も同じ言葉で指一つ分も無い距離を埋めようとする。

 

「すき」

 

 否、同じ言葉などではない。

 紡ぎ、生み出す言葉の一つ一つに様々な感情が込められていて。

 そして、その言葉に答えようとするも再び彼女に唇を奪われ、微笑まれる。

 

「大好き、ご主人様」

 

「俺も大好きだよ、友奈」

 

 ――愛を囁かれる度に繰り返される。

 

 

 

 +

 

 

 

 発端は何かというと、他愛もない事だった。

 とある紳士から「亮さんならきっと……!」という言葉と共に教わった究極の一品。

 それは空に浮かぶ要塞島をも一撃で滅ぼさんばかりの強大な衝撃を俺に与えたのである。

 

「メイドビキニ……だと」

 

 なんだソレは。馬鹿か、いや天才か。

 メイド服とビキニを合体させたという物(猫耳カチューシャ付き)の存在は、何故か酷く自らの心を震わせた。まるで魂を分けた分身が忘れるなと言わんばかりに、酷く、心が震えた。

 

 即買だった。

 着せたい彼女のサイズは既に把握済みだった。

 あとは半分同棲している彼女の興味を引くなり誘導するなり様々な手を用いて着て貰った。

 

「その、ちょっと恥ずかしいけど……亮ちゃんがどうしてもっていうなら、ね?」

 

「――――」

 

「その、えっと、……変じゃ、にゃい?」

 

 感動だった。

 何故か涙が出そうだった。

 自分でも意味が分からない程に、心のどこかで歓喜の声を上げるのが分かった。

 

 猫耳の付いたホワイトブリムが彼女の頭部で存在感を主張する。

 首元のリボンがついた付け襟と黒色のビキニ、申し訳程度の白いフリル付きのエプロンが黒色のボトムスを隠し、思わず捲りたいという欲望を滾らせ、雄としての視線を惹きつける。

 追加で健康的な腿を包む黒色のニーソと完全装備のポニーテール少女の存在は、――神だ。

 

「今日から俺がご主人様だ」

 

「……ん」

 

 もじもじと恥ずかし気な様子の少女、しかし見やすいようにという配慮からか、手首にカフスをつけた細い腕は後ろに回され、全体的に肌色な少女のお腹や臍、ニーソから覗く脂の乗った太腿を見せつける。

 否、見せつけている訳ではない。計算ではない羞恥を帯びた天然の動き、それはもはや毒とも呼べる物だった。

 恥ずかし気な表情を浮かべる姿も相まって、その存在が一つの芸術とも呼べた。

 

「変じゃない。可愛いし似合ってる」

 

「えへへ……ありがとう!」

 

「写真撮っていい?」

 

「うん」

 

「東郷さんに送ってもいい?」

 

「恥ずかしいから駄目」

 

 取り敢えず全方位から携帯端末で彼女を撮影する事は忘れない。

 はにかむような友奈の笑顔は、戸惑いや照れを残しつつも可憐な物だった。

 ボトムスを覆うエプロンをぎゅっと掴む友奈に近づくと、ふとある事を思いつく。

 

「友奈」

 

「なに?」

 

「今着てるのはメイドビキニって言うんだ」

 

「そうなんだ!」

 

「だからね、友奈は今はメイドさんね。そして俺は友奈のご主人様」

 

「ご主人……様? もう酔ってるの? 大丈夫?」

 

「何をしている、友奈」

 

「ほぇ?」

 

「晩ご飯の準備はどうした? 俺が腹ペコだってのが分からないのか?」

 

「えぇぇっと……えと、申し訳ありません? 亮ちゃん様?」

 

「……」

 

 可愛らしく顎に指を当て小首を傾げる友奈の背後に無言で移動する。

 周りこもうとする俺に追随する少女の剥き出しの肩を掴み固定、背後に回った俺は友奈の両手をテーブルの縁に掴ませる。疑問符を浮かばせつつも従順に従うメイドは自然と黒いボトムスに包まれた臀部を突き出し――、

 

「ちっがう!!」

 

「ひゃわ!!?」

 

 ――柔らかい尻肉を手のひらで叩いた。

 パチンという音と共に揺れる臀部の柔らかさを堪能しつつも、悲鳴を上げるメイドにお仕置きをする。水着を食い込ませ剥き出しになる白肉は叩かれる度に小気味いい音を奏でる。

 

「ご主人様だろ?」

 

「でも亮ちゃ」

 

「スパンキンッッ!」

 

「んぁ……ッ、や、止めて、りょ、んんっ! ……ひゃめてよ、ご主人さま」

 

「よしよし、よく言えたな」

 

「んっ……!」

 

 小振りな尻を撫でると、軽くむくれた少女に手を叩かれる。

 微かに眉を顰める少女の背中は剥き出しで、裸でいるよりも性的に感じさせる。

 褌の如く食い込まされたボトムスを戻す友奈は、突然の暴行にそれなりにご立腹だった。

 

「もう……」

 

「悪い。けどな、俺、思ったんだ」

 

「何を?」

 

「好きな子にコスプレさせるのってさ、凄く興奮するなって。だからつい調子に乗っちゃって……ごめんな。こんな事……いや、だよな」

 

「ぇ……、う、ううん、そんな事無いよ! ちょっとびっくりしただけだからね!」

 

「そっか、じゃあ続けよっか」

 

「うん!」

 

 仲直りの秘訣は早く謝る事だ。

 自らが着用する衣装への羞恥も薄れたのか、にこにこと楽しそうに少女は両手を広げる。

 ハグを求めるいじらしい少女の姿に俺は笑みを浮かべ、メイドの少女と熱い抱擁を交わす。

 

「ん……っ」

 

「ぅ」

 

 剥き出しの背中を撫で上げるのと、俺の肩に少女が甘噛みするのは同時だった。

 お互い何となく流れのような物を理解していたが、実際に行われると苦笑物であった。

 薄紅色の瞳と視線を交わらせ、小さく笑みを浮かべながら少女の耳を愛撫するように囁く。

 

「ご飯の用意はしてあるかえ?」

 

「ふふっ、勿論ですよ。ご主人さま」

 

「ほう、今夜のディナーはなんぞや」

 

「豚汁風うどんでございます」

 

「掃除は?」

 

「既に終わっております!」

 

「……お酒は?」

 

「もう飲んでるよ、えへへ……」

 

 どこか蕩けた声の少女は煽るような眼差しを向ける。

 普段の明るさはそのままに、何処か小悪魔な雰囲気を醸すメイドの少女はテーブルの上にあったコップを手に取る。酒瓶が転がるのを目端にチビチビと飲む少女は楽しそうに笑う。

 

「ご主人さま~」

 

「ん?」

 

「こんな悪いメイドにお仕置きを……ね?」

 

 胸板をぺちぺちと小さな手で叩くメイドの少女。

 どこか揶揄うような、切望するような声音に俺は脳を働かせる。

 お仕置き。目の前の悪い少女が望むのはお仕置きだ。それもきっと、厭らしい物を。

 

「――――」

 

 このまま性行為に持ち込んでもいい。

 庭で彼女の羞恥を煽り、恥ずかしい言葉を言わせ、犯すように行為に及んでもいい。

 だが、それでは足りないとアルコールとメイドビキニによって高められた脳は否定する。ならばどうやって、目の前の少女という最高級のうどん玉の調理を大成功に導くべきなのか。

 そうしてふと、閃いた。

 

 

 

 +

 

 

 

 カッププリンほどの乳房はしっとりと濡れ、乳首はザクロの粒程に硬くなっている。

 手のひらに吸い付くような餅肌は、僅かな力を入れるだけでむにゅりと形を変える。

 上を向く乳頭を指先で捏ねると小さく喘ぐ少女の谷間に首筋から一筋の汗が流れ落ちた。

 

 脱衣所にて水着姿の少女を背後から抱き抱え、脚を開かせる。

 此方を見やる友奈の正面、倒れないように固定された携帯端末のレンズが僅かに光を反射する。一瞬様々な感情を入り混ぜた薄紅色は瞬きを繰り返し、少女は何度も息を吸い吐く。

 

 そうしている間も、俺の左手は少女の程良い大きさの乳房を。

 もう片方の手は少女のボトムスの中、熱く濡れる恥部を弄る。

 

「ぁっ、……りょうちゃん、そっちの毛は、あんまり弄らないで……」

 

「友奈の触り心地が良くて……、それと、ご主人様だ」

 

「ぁぅ……っ」

 

「引っこ抜いて良い?」

 

「だ、め、ぇっ」

 

「こんなくちゅくちゅ音しているけど、気持ち良いの?」

 

「……そんな、ことは」

 

「正直に」

 

「………、気持ち、いいです……」

 

「今なんで嘘ついたの?」

 

「ぅぅ……っ」

 

 直接見るには、白いエプロンと黒色のボトムスが少女の恥部を隠している。

 だが正面の携帯端末からは、ちょうどエプロンに隠されたボトムスの中で痴漢の如く少女の恥丘と薄い茂みを辱められている様が、余すことなく撮られている。

 横顔から窺える少女の赤い顔と痴態が撮影されている事こそがお仕置き――、

 

「じゃあ、友奈」

 

「うぅぅ~~っ」

 

 ――否、これはお仕置きではない。

 お仕置きはここからなのだと軽く肩を叩くと、ビクリと少女は俯く。

 胸板と背中をくっつけて、お互いの鼓動を確かめ合いながら俺は少女に囁く。

 

「……」

 

 強い、強い羞恥を感じている。

 酒を飲んでも誤魔化し切れないメイドの口は小さく不自然に開閉する。

 湯たんぽのように熱い少女の身体を抱きしめ、しっとりとする頬を擦り合わせる。

 

 止めるかと目線で聞くと、少女は緩々と首を振る。

 そうして俺の指に代わりおもむろに左手を右胸に、右手を下腹部へと伸ばす。

 今更自らの姿を隠そうというのか。否、動作は似ているが隠そうとする訳ではない。

 

 ん、と小さく吐息するメイドの少女。

 首元の独立したリボン付きの襟と腕に巻かれたフリルを除き、ビキニを外し既に露わになっていた乳房、乳頭付近を這う右手、白いエプロンをたくし上げ黒色のボトムスに添えた右手の甲が撫でるように動く。布地の上からでも彼女が何処に触れているのかは分かる。

 

 小さな突起。

 クリトリスと呼ばれる快楽器官に触れているのだ。

 薄く目を開く少女は、横目で俺を見る度に頬を更に色付かせる。多少被虐趣味がある彼女も、流石に自慰を見せる事には多少の抵抗と多大なる羞恥を感じているらしい。

 

 背中を、身体を椅子に座るように俺に預けているメイドの少女。

 瞳に恥辱の涙を浮かべつつも、坂を転がる球の如く、動かし始めた手は止まらない。

 終着点に向けて呼気に熱を帯びさせる少女は、最後に此方を見やり、目を閉じた。

 まるで戦場に向かう覚悟を決めたように。

 

「……、……」

 

 両脚をくねらせ、開き、閉じる。

 ベルトのようにくびれのある腰に手を回す俺は、目の前の光景に小さく息を呑んだ。

 

「……ぁ」

 

 自らの性感を知っている少女の動きは最適化されていた。

 臍を撫でも、腋を舐めもせず、腿を触りもせず、少女は両手を動かす。

 二つの肉粒を刺激し、自らを慰めようとする姿は普段の姿からは一切の想像が出来ない。

 

 乙女の秘密と言うが、その秘密を暴こうとしている。

 快活な少女の知られざる一面を背後から堂々と見る事に鼓動が高鳴る。

 

「っ、……ふっ」

 

 絶頂に導く気もない愛撫によって中途半端な熱を帯びていた身体。

 そこに自慰という燃料を注ぐことで真の熱を帯びた少女は蕩けた吐息を漏らす。

 親指と人差し指で布地の上から摩り、乳頭を弄る手は時折下乳付近を揉み形を変える。

 

「は、……、……ッ」

 

 脚を伸ばし、親指を蠢かせる。

 唇が動き、溜めた快楽が甘い嬌声を生み出す。

 ぎゅっと閉じた目は歪み、徐々にボトムスの上を摩る指の動きは加速し始めた。

 

「……ッ、……んっ」

 

 白く細い指が乳首を摘まむ。

 一度閉じた唇が再度開かれ、粘ついた唾液が上下の唇に糸を引き、吐息する。

 乳輪付近を円を描くように撫でたかと思うと、上を向く桜色の突起を指の腹で転がし弄る。

 

「んンっ、……ぁぁっ」

 

 汗ばみ始める白い背中、粘ついた呼気をする少女はゆっくりと姿勢を変える。

 体勢が悪いのか、それとも普段の自慰では座ってはしないだけなのか。そんな事を考えつつも少女の腰に巻いた腕を放し、同時に少女の下腹に張り付いたボトムスの紐を解く。

 

 するりと解け床に落ちるボトムスは、水着としても下着としても役目を果たせない程に少女の愛液で濡れていた。ほんの少しだけの手助けに目を閉じた少女は最早反応する事もなく自らの恥部を直接丹念に、丁寧に、執拗に弄る。

 その動きはガラス細工よりも繊細で自らの性感を理解しているからこそ出来る動きだ。

 

「はー、ぁ……ッ」

 

 ずるりと友奈の頭は胸板から腹部までずり落ちていく。

 まるで携帯端末に見せつけるように、或いは普段は寝台でしているからこそ身体を出来るだけ横たえて自慰に耽りたいのか。目を閉じ自らに集中するメイドの少女の恥部を時折隠そうとするエプロンを自らたくし上げながら俺は思考に浸り怒張を硬くする。

 

 ボトムスを下ろしたのだから、一緒にエプロンも外せばいい。

 何処からか合理性に欠けると非難する言葉が脳裏を過るが、小さく鼻で嗤った。

 嗤わざるを得ない。だって、この行為に合理性も何もない。在るのはただの変態性だけだ。

 

「んぅ……っ」

 

 スイッチが入ったように快楽に耽る少女はゆっくりと脚を広げる。

 乳房の尖った肉粒を弄りながらも下腹では親指と人差し指で懸命に陰核を刺激し続ける。

 左右の手は遠慮など忘れたように機械のように動かされ、肌に薄く汗を滲ませ、珠を作る。

 

「……ッ、ぁ……!」

 

 僅かに腰が浮かび上がる。

 頭を振り、柔らかい髪の毛が腹部をくすぐる。

 目に見えて絶頂への道筋が見えた時には、少女の吐息は病人のようだった。

 

「ぅ、ああぁ~~~~~ッッ!!」

 

 びくりと腰を震わせる。

 きつく目を閉じた少女の身が二度ほど跳ね、震える。

 硬直させた脚はやがてゆっくりと床を滑り、俺の脚に触れるように伸ばされた。

 

「はー、はー……」

 

 熱い吐息をする少女は、緩慢とした動きで身を起こす。

 震える腿を無視し、辛うじて息を整えようとする少女に俺はある物を渡す。

 疑問の表情で受け取る少女にスイッチを押させ、その器具の役割を説明する。

 

 囁かれる耳をくすぐったそうにする少女の顔は赤く染まる。

 蕩けた表情ながら戸惑いや呆れ、蔑み、悦びを混ぜたようなジト目が返される。

 返されるが、右手に持った器具は離そうとはせず、メイドの少女は――、

 

「は、ふ……っ」

 

 ――自慰を続ける。

 今度は手ではなく、無機質な道具を用いて。

 

 その道具は、所謂大人の玩具だ。

 とはいえ東郷が予習として見ている動画に登場する電気マッサージ器ではない。

 形状は己の怒張よりも細く小さく、しかしゴム状の突起が全身に付いた棒である。

 

 緑状のソレをゆっくりとメイドの少女は挿入していく。

 身体を起こし震える脚を広げ、自分の意志で携帯端末のレンズに見せつけるように。

 あ、ふ、と吐息を溢しピンク色の蜜口から垂れる愛液を潤滑油に、俺以外の物を挿入する。

 

「ぁ……っ、ぁー……」

 

 一度達した身体は火照り、どこまでも敏感になっている。

 膣壁はうねり、入り込んだ異物を歓迎するように卑猥に蠕動しているようだ。

 刺激に身体を丸めようとする姿をレンズが捉えているのを理解しながらも少女は動く。

 

 すっぽりと入り込んだ小型バイブ。

 その持ち手を右手で持ち、左手は再度右胸に伸ばす少女は背を預ける俺に体重を掛ける。

 これまでの挿入経験で自分の気持ち良い場所を理解しているらしいのか、臍側の膣を刺激しようと小型バイブをやや上部へと向ける。

 

 そうして、ゆっくりと右手を動かす。

 望む角度で、少女はゆっくりとストロークを始める。

 

 じゅぷじゅぷと水音を立てながら。

 押して戻す度に白く泡立った自らの蜜液を尻から床に垂らしながら。

 自分のペースで最高の自慰を行う少女の姿に、ふと何とも言えない気分になる。

 

 寝がえりをうつように少女は姿勢を変え、俺の胸板に柔らかい胸肉を潰れさせる。

 鼻息は荒く、口端から垂れる唾液を拭いもせず、甘く蕩けた表情を至近距離で見せつける。

 だが味わっているのは俺の怒張ではない。膣壁を刺激する無機質な道具の一つでしかない。そんな事で発生する独占欲に呆れを抱きつつ、少女の尻肉を揉みしだき、刺激を追加する。

 

「ひぅ……ッ!」

 

 彼女の好奇心は、遂にスイッチを押したらしい。

 微かに耳に届く振動音と共に、携帯端末に尻を振るような恰好の少女は嬌声を上げる。

 気遣う空気を忘れたとばかりに腰を揺らす少女の淫魔な姿に録画して良かったと思わせる。俺の胸板で乳首を擦り、自らの「弱点」となる部分をゴム状の棘で刺激しているのは、粘着質な水音から予測が付いた。

 少女の手は止まらず、機械のように絶頂をひたすらに目指す。

 

「っぁっ、ぁ、っ、……っ」

 

 盛りのついた犬のように熱い吐息が首筋に掛かる。

 汗を掻き、彼女の本来の香りと混ざり厭らしさを増す匂いは、酷く雄の本能を刺激する。

 チラリと此方を見て羞恥の涙を浮かべ、汗で髪の毛を張り付かせる雌は小さく口を開く。

 

「ご、ひゅじんさま……」

 

 汗でぬめる肢体。

 自らの匂いを擦り付けるように、俺の身体をも使い自慰をする少女はキスをねだる。

 

「もっと、ひて……」

 

「っ」

 

 答えずにはいられない少女のおねだり。

 上唇と下唇の間を唾液で糸を引く少女の唇を奪う。

 耳に届くにじゅにじゅと媚肉を出入りする機械の振動と、絶頂が近い事を感じさせる呼吸。

 

「ふ、はー、ぁー……、ぁ、ぁ!」

 

 乳房から離れた少女の手が俺の肩に掛かる。

 同時に、押し込んだバイブが少女の弱点を抉ったのだろう。

 

 友奈の全身がぴん、と張った。

 

「~~~~~~っっっ!!!」

 

 腰を浮かし、両脚を爪立たせ、メイドの少女は身を震わせる。

 ぷしゃぁっと恥部から絶頂の飛沫を床に噴き出した様子を携帯端末が捉えた。

 ぱくぱくと口を開き震える少女は身体を丸め、振動するバイブはずるりと床に抜け落ちた。

 

「……っ、ぁ、ぁあ……ぁ」

 

 汗の香気を漂わせ、訪れた快感に少女は長く長く呼吸を繰り返す。

 身体の震えが減る頃に、漸くといったばかりに法悦の空の快楽にメイドは浸ってる。

 

「ふぅ」

 

 実に素晴らしい物であった。少女へのお仕置きとしてはこれ以上はないくらいに。

 小声で感謝の言葉を耳元で囁くと、ふにゃふにゃとした言葉にならない返答が返ってくる。

 

「……」

 

 お仕置きは果たされた。

 ここからは、奉仕の時間だ。

 

「……ふぇ?」

 

 俺の胸板に顔を埋める少女を床に転がす。

 脱力していたからか、あっさりと床に肢体を広げるメイド少女は僅かに身を強張らせる。

 だが、何か行動するには彼女の動きは遅く、性欲の高まった俺の動きは何より速かった。

 

 床に転がる少女の脚を開かせる。

 痛い程に反り立つ怒張の先端を膣口に宛がうと、反射的に友奈は腰を浮かせた。

 少女が望む角度、悦ぶ場所は、機械よりも、彼女自身よりも分かっている。

 

「まっ」

 

 此方に手を伸ばす少女の手首を床に押さえつける。

 構う事なく斜め上へと貫くと、ぬめる膣肉を割り拓く感触が。

 

「ぁ、あ、入って、~~~~~っ!!」

 

 極上の感触が怒張を包み込む。

 友奈の膣内は熱く柔らかくぬめり、肉棒を蕩けさせんと締め付ける。

 悲鳴を上げる少女は身体を仰け反らせるが、きっちりと俺は根本まで挿入を果たした。

 

「ご主人さまの……、ぁっ!」

 

 自慰で達したばかりの膣に、反り立った怒張の不意打ち。

 甘く虚ろな表情は、強烈な挿入の衝撃で軽く達したであろうことの証明だ。

 頬に張り付き乱れた薄紅色の髪を撫でながら、仰け反らせた少女の乳房に手を伸ばす。

 

 白い乳房は、何度触っても肌に吸い付く。

 桜色の突起を摘まむと少女は悶え、背がしなる。

 

 ――再度奥まで少女を貫く。

 

「やぁぁぁ……っ!!?」

 

 悲鳴じみた嬌声を上げる少女の膣内は呆れる程に蕩けていた。

 そんな蜜壺に此方もまた怒張を溶かされそうだと、悠長な愛撫をしている暇を感じない程にお互いが酷く昂っている事を理解した。俺は蜜を掻き混ぜるように抽送をしながら乳房を荒々しく揉みしだく。右の乳首も左の乳首も指で弄り、何度も何度も突き上げる。

 

「ぁ、そこ……っ」

 

「気持ち良い?」

 

「きもひぃよぉ……」

 

「ここは?」

 

「だめ……っ! そこ、ごんごんしないで、ぇあっ!?」

 

 涙混じりの嬌声、開き続ける口から顎へと垂れる唾液。

 涙を浮かべ、切なげな表情をするメイドの少女は為すすべなく快楽の渦に呑み込まれる。

 釘打ち機のような一方的なピストンに思考を溶かされ、理性はぐちゃぐちゃにされていく。

 

「りょ、ちゃ……、ごしゅ、ん……、しゃま……っ、ッ、っ」

 

 少女の脚が濡れた床を滑る。

 締め付け、湧水が結合部から噴き出し、その度に甘く切ない声を上げる。

 だが何度絶頂に達しても指は彼女の突起を摘まみ、陰核を弄り、熱い肉棒で蜜壺をほじる。

 

「――――ッッ!! ぅ、ぅあああぁ……っ!!」

 

 聞いたことのないような甘い悲鳴を上げるメイド。

 嬌声の隙間から卑猥な音が結合部から漏れ、ピストンを加速させ、最奥に白濁を吐き出した。

 

 

「~~~~~~っっっ!!!」

 

 

 その瞬間、蕩けた少女の表情が眼球に焼き付いた。

 焼き付けながら、噴き出した種汁が媚肉を汚し、最奥に注いでいく。

 天国に上る解放感の中、喘ぎ、荒く息をする少女と口腔行為を繰り返す。

 

 舌と舌を絡め合わせ。

 唇と唇を重ね合い。

 

「ごしゅ、さま……」

 

「うん?」

 

「すき」

 

「俺もだよ」

 

「すーき」

 

「やーき」

 

「むぅ……! りょうちゃん!」

 

「ご主人様だろ? もう一回しようか」

 

「ぷあぁぁ……っ」

 

 彼女の、メイドの、友奈の囁く愛の言葉。

 ときおり身体に噛み痕を残し、「すき」という言葉を紡ぐ。何度も、何度も。

 「すき」という言葉が「しゅき」と変わるまで。身体の芯まで蕩け壊れるまで。

 少女は何度もお仕置きを望み、何度も何度も、いじらしく俺の子種を注いでと懇願し続けた。

 

 

 

 



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六股挑戦編
第二十二話 貴方を思うと胸が詰まる


 ――僅かに扉を開けると見える光景がある。

 部室で騒ぎ立てる少女達。友奈や東郷、樹と少女達が雑談をしている。

 可憐な少女達が笑顔を浮かべる中、無言の少女が目を向けるのは一組の少女達だ。

 

「こんなところに入り浸ってていい訳?」

 

 吐息をするように夏凜が風に告げている。

 呆れを隠す事なく、既に卒業したはずの少女に話し掛けている。

 風が卒業してからそれなりの日数は経過したはずだが、まるで卒業など無かったかのように勇者部部室に顔を出し樹の勇姿をカメラに収めようとする姿を捉える。

 

「――――」

 

 どこか皮肉屋を気取る夏凜。

 そんな彼女に揶揄うように、図星を突くように告げる風。

 

「あら~、もしかして寂しかったのかしら?」

 

「……まあ、少しはね」

 

「あら?」

 

 夏凜はツンデレであるのは間違いないだろう。

 ツンツンデレデレ。頬を赤らめ風から目を背ける夏凜に目を丸くする風。

 その光景は心を和ませ、小説の創作意欲を高め、何よりも――、

 

「にぼっしーは可愛いな~」

 

「――園ちゃんの方が可愛いよ」

 

 部室の扉で一人呟いた園子に声が掛かる。

 大声というよりかは耳元に囁くような声音の持ち主は見知った人物だ。

 彼の声が耳朶に響くだけで不思議と心音が高鳴り、頬が熱くなるのを感じた。

 

「メモしないの?」

 

「……しないよ~」

 

 背後から抱き着くように園子の耳元に少年の声が囁かれる。

 鼓膜を震わせ直接神経に介入するかのような声音には、どこか揶揄いの響きが含まれている。

 持っていたメモ帳を背後にいる少年の視線から逃れさせるように制服のポケットに忍ばせる。

 

「ふーん」

 

「それよりも、かっきー。部室に入らないの?」

 

「園ちゃんこそ」

 

「かっきーが入ったら私も行くよ」

 

「じゃあ、園ちゃんが入ったら俺も行くよ」

 

「あ~、真似っこだー!」

 

 制服越しに腹部に回された彼の腕にそっと触れてみる。

 何気ない一時に笑みを浮かべ、何でもない会話に安堵感を抱いて――、

 

「ねえ、園ちゃん」

 

「何~……?」

 

「さっき、チラッとメモの内容が見えたんだけどさ」

 

 

 

 +

 

 

 

 舌の感触とは不思議な物だ。

 触れれば触れる程にその柔らかさと甘さを感じ、ぬめり熱くなる様は生き物のようだ。

 逃れようとする小さな舌を捉え絡ませると、おずおずと絡ませてきては攻守が入れ替わる。

 

 頬の柔らかさを、舌の裏側の柔らかさを比較する。

 比較して今度は歯茎をなぞり、唇を重ね合わせ、貪るように味わう。

 

 ん、んっ、と鼻息がこそばゆい。

 苦し気に、切なげに、愛おし気に、溺れたように鼻息を荒くする彼女はそれでも口腔行為を止めない。唐突に始めた事に抗議を上げていた少女の手は、今では大人しく背中に回されている。

 

 沈んだ彼女を引き上げるように、そっと唇を離す。

 一瞬離れる唇を追いかけようとして、その行為に顔を赤くする彼女は慌てて唇を閉じる。

 架け橋となった唾液の糸がふと千切れ、少女の口端に珠を作る様を俺はジッと見ていた。

 

「……、きゅ、急に……」

 

「こうしたかったんだろ?」

 

「……今日はごーいんなかっきーだね~」

 

「――――」

 

「こんな壁に押し付けちゃって……ンッ、他の子とはしてないでしょ~」

 

「――――」

 

 何度唇を塞いでも少女は口を開く。

 何度でも塞いでほしいと、言葉に揶揄を含ませて薄紅色の唇を開く。

 どちらかの唾液を淫靡に舐めとる彼女は流し目で此方を見やり挑発するように小首を傾げる。

 

 確かに彼女の言う通りだ。

 こういった行為は普段学校では行わない。

 まして依頼で誰もいないとはいえ、勇者部の部室で密な触れ合いをする事などないのだ。

 

 誰かに見られるかもしれない。

 それで何かしらの弱みを握られるかもしれない。

 そういった小心者の思考が働き、基本的には家でしか行為には及ばなかった。

 

「……」

 

「ん、ふ……」

 

 それに何よりもタガが外れそうで嫌だった。

 そんな思いを見透かしたように園子は恍惚とした表情で唇を求めてくる。

 

 部室の壁に彼女の身体を押し付けて、片膝を制服のスカートから伸びた脚の付け根に捩じり込む。白色のニーソに包まれた少女の脚が時折暴れる事を気にせず、園子の手首を掴みながら強引に唇を重ねる。――そんな風にされるというメモの一文が、何故か俺を昂らせていた。

 

 何となしに園子の髪を撫でてみる。

 艶のある蜂蜜色の髪、この世界で初めて見た彼女の金髪こそ美の象徴である。

 ハーフアップの少女をしばらく撫で続けると、目を細めた少女が安堵の溜息を吐く。

 

「もっと」

 

「……こうですか」

 

「よろしいのじゃ~」

 

 手入れの施された少女の長い髪の毛に触れる。

 髪型を崩さないように、グシャグシャにしたくなる欲求を抑えつつ手を這わす。

 そうして彼女の髪を指で梳いていると、少女は俺の両頬を手のひらでそっと押さえる。

 

 今度は彼女から唇を重ねてきた。

 啄むように、親愛と優しさを感じさせるように唇を重ねられる。

 はふーと吐息する少女は、何度目かの口付けの後におずおずと口を開いた。

 

「妾は満足なんさ」

 

「だが俺は満足してない」

 

「……ねえ、かっきー。そろそろ脚を退かしてくれないかな~なんて」

 

「――――」

 

「……っ」

 

「もうちょっと」

 

 唇を離し、少女の小さな耳に唇を宛がうと少女は僅かに身体を震わせる。

 園子の体重を感じる膝に力を入れると少女の股の柔らかさと温かさが伝わってくる。

 何となしに膝を震わせると、腰を浮かせようとする少女の動きが目を向けずとも分かった。

 

「か、かっきー」

 

「園ちゃん、良い匂い」

 

「くすぐったいよぉ」

 

 ただ触れ合うだけの行為だ。

 愛撫とも言えない、少女の香りを楽しみ、彼女の身体に触れるだけの行為。

 髪を撫で、頬に口付けし、耳元で言葉を囁き、耳朶を甘噛みする。それだけの行為。

 

 目が合う。

 やや濡れた目と窄められた唇。

 何度目かのキスをし、ニーソとスカートの隙間から覗く腿に手を這わせる。

 

「触り方がいやらしいよ~」

 

「駄目?」

 

「……かっきーのえっち」

 

 膝を少女の脚の間から剥がし、壁に縫い付けていた彼女を解き放つ。

 弛緩した彼女の身体はゆっくりと俺にもたれかかり、首元に園子の頬が触れる。

 ぎゅうっと園子は力を籠めて俺の背中に腕を回すと同時に僅かに首元に痛みを覚える。

 

「……噛みつくなよ」

 

「がおー」

 

 ふわりと園子の髪が揺れ動き、少女の匂いが鼻腔を擽る。

 同時に、自らの首元に小さな噛み痕が出来た事を見ずとも悟った。

 抗議の意味も込めて少女の小振りの臀部を制服越しに揉みしだくと独特の弾力を感じる。

 

 むにゅりと形を変える尻肉は、少女が押し付けてくる双丘とは柔らかさが異なる。

 手のひらで広げ捏ねるようにして遊ぶ度に吐息する園子に、先ほどの言葉への反論をする。

 

「えっちなのはどっちだよ」

 

「……ぇ、ぁ!?」

 

「こんな紐なんて履いちゃって」

 

 違和感に気づいたのか、目を見開く園子を余所に俺は戦利品を手にする。

 レースと百合の花の装飾がされている紫色の聖布は僅かに染みと蜜液が付着していた。

 

「あっ、返して、えッ!!」

 

 臀部を叩くと肉が震えパチンと音が部室に響く。

 悲鳴を上げる園子を余所に、少女に抱き着いたまま何度かスパンキングを行う。

 そうして自らの手のひらで少女の身体が奏でる音を堪能した後に、少女の下着を弄ぶ。

 

「両方の色を揃えているのは流石だよ、園ちゃん」

 

「~~~~っ!!」

 

 右手に少女のショーツ、左手にはブラジャーを。

 東郷程ではないが睡眠によって育ったお嬢様の乳房を包み込むブラジャーを握りしめる。

 バタバタと暴れだす園子を押さえつつ、制服越しに感じる少女の生乳の感触を堪能する。

 

「今日はそのままで過ごしたら?」

 

「……かっきー」

 

「いつの間に取ったって? 俺を誰だと思っているんだい?」

 

「かっきー……?」

 

「そんな怖い顔しても返さないよ?」

 

「かっ……ひぅ!!」

 

 半眼で此方を見やり、手の中にある聖布を取り返そうとする少女の恥部に指を滑り込ませる。

 スカートの内部、少女の秘裂を隠す物は何もなく、人差し指を怒張の如く媚肉に味わわせる。

 

「ゆ、び……っ」

 

 慌てて両手で俺の手首を掴む園子。

 どこか焦りを見せる少女の白い首筋に齧り付くと悲鳴を上げる姿を俺は見やる。

 少女が悲鳴を上げる度、艶のある声を上げる度に人差し指を媚肉が締め付ける。

 

「抜いてよぉ……」

 

「いいよ」

 

「んっ……」

 

 ずりりと人差し指を第一関節部分まで抜き出し、再度押し込む。

 身を悶えさせる園子の全身から色濃い雌の香りが漂い、全身が熱を帯び始める。

 

「や、ぁ……、ぁっ」

 

 普段は雄の怒張を咥える為に存在する少女の恥部。

 今は指を咥えながら、上下に動かす疑似的なピストンに、溢れる蜜液が腿を伝う。

 途中人差し指よりも中指の方が好みだと媚肉が震え、返礼として少女の弱点を指先で弄る。

 

「ぁ、……ぁー……」

 

 ぱたぱたと部室の床に滴を垂らし、しかし少女への愛撫は止めない。

 耳まで赤くする彼女、親指で陰核を、中指で媚肉を愛でると喘ぐ少女は腿を震わせる。

 今にも床に座り込みそうになる少女を無理やり立たせながら、刺激を与える事を止めない。 

 

「気持ち良い……?」

 

「……うん」

 

「ん。じゃあ、続きは家でね」

 

「え」

 

 何を言っているのかと此方を見上げる園子に笑い掛けると同時に部室の扉が開く。

 ガラリという音と同時に、ただいまーというどこか倦怠感のある声音には聞き覚えがあった。

 

「おつかれ」

 

「あっ、お疲れ様です。亮さん」

 

「――――」

 

 扉を開け入ってきたのは樹だ。

 姉譲りの金髪、どこか小動物を連想させる姿なれども現勇者部部長である。肝心の姉は大分前に妹の勇姿を視界に収めた後、一足早めに自宅に帰っている。

 

 扉からは死角となる場所から顔だけ出して応対する。

 肩を揉む少女にお茶でも注ぐかと思うが、制服を掴む少女が一人。

 

「かっきー」

 

「それにしても樹。いや部長、依頼の方はどうでした?」

 

「け、敬語は止めてください。……えっと、皆喜んでくれましたよ」

 

「それは良かった」

 

「亮さんは何をしてたんですか?」

 

「うーん、つまみ食い」

 

「……?」

 

「かっきー」

 

 呼びかける園子を無視して俺は樹と会話する。

 微妙に不審がる樹だが、普段通りに接する俺に微笑を浮かべ、パイプ椅子に座る。

 

「そうだ、樹」

 

「はい?」

 

「タロットカードでさ、占ってみてよ」

 

「いいですよ。でも亮さんって大体死神しか出なくて――」

 

「■■■」

 

 承諾を得るのと、名前を呼ばれるのはほぼ同時であった。

 一瞬、誰に名前を呼ばれたのか認識出来ず、誰がその名前を呼んだかを理解して――、

 

「亮之佑」

 

 甘い花の香りが金色の髪と共に漂う。

 自分の名前を呼ぶ声、金鈴の声音で呼ばれるだけで酷く心を震わせる。

 園子の細い腕がゆるりと首に巻かれる。それはさながら獲物を狙う毒蛇の如く。

 

 顔は首の裏に乗り、表情は見えない。

 少し虐め過ぎたかもしれない。何か気の利いた言葉でも――、

 

「あとでね」

 

 ちゅっと園子の舌が俺の首裏を舐める。

 背後から抱き着き、奇跡的に樹にも気づかれない中、甘く暗い声が胸をくすぐる。

 少女の声は小さくて、甘やかに囁く声音は微毒のように、亮之佑だけに静かに届く。

 

 振り向けないから見えない。分からない。

 だから――、

 

 

「逃がさないよ」

 

 

 ――微笑を浮かべた女の瞳には、何が宿っていたのだろう。

 

 

 



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第二十三話 I could die for you

 乃木園子に名前と渾名どちらを呼ばれることが多いかで言えば、圧倒的に後者だ。

 名家のお嬢様でありながらも気さくさも兼ね合わせている彼女が付ける渾名は独特な物があるが、それでもそこまで仲良くない人間に対しては渾名すら付ける事はないから。

 

 要するに、彼女に渾名で呼ばれる事は嫌いではなかった。

 幼少期から何度も呼ばれ耳に染み付いた渾名を彼女から呼ばれると嬉しく思える。

 前世どころか今世でもこんなに長く渾名で呼ばれた経験などない。だからこそ月明りのような微笑を浮かべた彼女に呼ばれる度に、確かな親愛と信頼を感じていたのだ。

 

「……」

 

「……」

 

 そして現在、加賀家リビング、ソファ上にて。

 我が愛すべきお姫様は、無言のまま小説を読んでいた。

 

 記憶にある限り視力は悪くはなかったはずだが、黒縁の眼鏡を掛ける私服姿の少女。白色の縦セーターに黒色のプリーツスカートから伸びた素足、腰元には猫の枕が一つ。

 一枚絵として飾られてもおかしくはない一輪の花だが本日はわずかに刺々しい。

 

「制服から着替えたんですね……」

 

「…………」

 

「その……」

 

「亮之佑」

 

「――――」

 

 ぺらり、とページを捲る園子。

 此方を一瞥する事なくポツリと名前を呟く少女の声音が俺の耳朶に響く。

 違和感と珍しい声音に心音が高鳴りながらも、微笑を浮かべて俺は対応した。

 

「どうしたの?」

 

「……今日の夕ご飯は?」

 

「決めてないけど。……何か要望でも」

 

「……じゃあ焼き鳥かうどんがいいかな」

 

「あいあい」

 

「『分かりました、お嬢様』」

 

「……分かりましたわ、お嬢様」

 

 会話の度に名前を連呼する少女の心意は如何なるものなのか。

 自宅にいる為、神樹の神棚に奉納出来ずポケットの中で眠る聖布達の感触を確かめながらソファから立ち上がろうと脚に力を入れようとするも、園子に手を掴まれる。

 

「――――」

 

 柔らかい少女の手のひらと細い指が俺の手を絡めとる。

 特に力が籠っていないにも関わらず、園子の手に思わず俺は脚を止めた。

 

「……何?」

 

「……、えっと……、どれくらいで出来るのかな~って」

 

「そんなに時間は掛からないけど……、お腹減っているの? ぼたまんならあるけど」

 

「あれはちょっと……」

 

 ぼたまんとは、ぼた餅を白いパン生地で包んだ物だ。

 にくまんやピザまんの親戚のような物で、不思議な味わいを楽しめる。

 そんな神秘の食品を勧めるが、そっと首を横に振り断る少女はある方向を指で差す。

 

 部屋の隅に忽然と置かれた衣服。

 どこかで見た事のあるソレは、小説や漫画などで見る執事の燕尾服だ。

 いつの間に用意したのかと振り返り少女を見やるが、一瞬目が合った園子はそっと目を逸らし無言のまま着用するように促してくる。

 

 ――仕方がないので着替える。

 

「……ん? あれ、早着替え~……?」

 

「見ての通り」

 

「『見てのとおりです、お嬢様』」

 

「……見てのとおりです、お嬢様」 

 

「よきかな~」

 

 一瞬目を輝かせる少女は、しかしそっと明後日の方向を向く。

 その横顔を見ながら要望に応えるべくエプロンを着用し、キッチンに向かう。

 

 焼き鳥と言われるとタレや塩など、屋台で食べる物を想像するだろう。スーパーでも似たような物は売っているが、やはりキッチンがある以上自分で作りたい物である。

 幸いにも焼き鳥は数日前に仕込みはしているので本当に焼くだけなのだが。

 

 うどんに関しては、もはや第二の主食と言えるだろう。

 本日は蟹玉うどんに焼き鳥、ツナサラダにしようとしばらく黙々と準備を行いながら、俺は園子の態度の豹変具合について思考を巡らせていた。

 

「やっぱり、聖布を取った事だろうか……」

 

 しかし神樹に奉納している園子の聖布はそれなりにあったりする。

 今更怒ったりはしないはず、いや実はお気に入りだったとか……等と考えていると調理は既に終わりを迎え、皿をリビングに運ぶだけとなった。

 そうして、五分前ぐらいから壁から顔を覗かせて存在を主張する少女に振り返る。

 

「……じぃー」

 

「……手伝うか?」

 

「うん」

 

「熱いから気を付けて」

 

「うん」

 

 

 

 +

 

 

 

 食事の一時はあっという間であった。

 ただ普段と異なり、輪にかけておしとやかなお嬢様は無言のまま、──瞳を煌めかせつつも焼き鳥を頬張り、うどんを啜る行為を惚れ惚れする程に綺麗な動作で行った。

 どんな時でもお腹は減る物で皿の上の料理が消える頃には、むすりとしていた園子嬢の様子も通常時の状態へと戻り始めているのが見て取れた。 

 

「ご馳走さま、美味しかったよ」

 

「はいよ」

 

「片づけは私がやるんさ」

 

「いや、いいよ。園子は座ってて」

 

「……」

 

「……、じゃあ一緒にやるか」

 

「うん」

 

 キッチンで食器を洗い、隣の少女に渡す。

 金色の長い髪の毛を揺らし、受け取る少女は丁寧に水滴を拭き取っていく。

 そうして暫く無言で後片付けを行い、皿が少なくなった頃、ポツリと園子が口を開いた。

 

「亮之佑くん」

 

「何?」

 

「許して欲しい?」

 

 何を、か。当然彼女による名前呼びの事だろう。

 どこか気品のある佇まい、吐息と共に紡ぐ名前は一呼びごとに魂を震わせる。ただ彼女に名前で呼ばれるのは嬉しく思えると同時に、どこか酷く他人行儀に感じてしまう。

 だから彼女の問いかけに対し、俺は皿を拭きながら小さく頷いた。

 

「――まあ」

 

「……ふーん、そうなんだ~」

 

 改めて隣の少女を見ると、流し目で俺を見やる園子は揶揄うような声音を響かせる。ゆったりとした歩幅で俺を引き連れる園子はリビングのソファに再度腰掛ける。

 

「いいよ」

 

「え?」

 

「条件付きで許してあげる」

 

「条件?」

 

「うん」

 

 どこかの国の女王様的なオーラを醸し出す少女は俺に手招きをする。

 小首を傾げ、自らを抱くように腕を組む園子は胸を張って告げた。

 

「――揉んで?」

 

「よろこんで」

 

 柔らかくゆったりとしたセーター越しに園子の胸に手を伸ばす。

 胸を張る少女、しかしそんな行為をせずとも服越しに分かる程健やかに大きく成長しているであろう園子の乳房はやはり睡眠による賜物なのだろうか。寝る子は育つのだろう。

 

 持ち上げるようにして揉むと、制服から着替えたのかブラの感触が手のひらに伝わる。

 流石にノーブラの趣味は無かったのか、或いは型崩れ等を気にしていたのか、流石に真偽を問いかけるつもりはなく、今はただ少女の命じるままに胸を揉みしだく。

 

 服とブラジャー越しではあるがもちもちとした肌、柔らかい弾力と形の整った少女の乳房は容易く想像でき、流石に東郷程の大きさではないが、風に迫る程の大きさの美乳であり確かな母性を主張している。

 そんな感想を抱きつつ園子の双丘を楽しむが、ふと両手首を掴まれる。

 

「ち、違うよ~。肩、肩だよ」

 

 恥ずかし気に顔を赤らめる少女はそっと自らの乳房を揉みしだく俺の手を外し、自らの肩へと誘う。そのまま髪の毛を払いのけ、露わになる少女の肩に手を置かせた。

 

「あっ、そっちね。なんだよ、まぎらわしいな」

 

「いや~、『揉む』で即座に私のおっぱいを揉むかっきーもかっきーだよ~」

 

 胸を反らして偉そうに揉んでと言われると、つい目の前の果実に触れたくなる物だ。とはいえ、あくまでマッサージ的な意味合いなのだと互いの連携も取れた為、改めて少女の肩に乗せた手のひらに力を籠める事にした。

 

「そんなに凝っているの?」

 

「ん~……、少し身体が重いな~って」

 

「友奈に頼めば? 物凄く解してくれるよ」

 

「ゆーゆのは、うん、ちょっと凄すぎるから……」

 

 それは暗に俺のは大したことがないという意味なのだろうか。

 確かに俺のマッサージテクニックなど友奈の足元にすら及ばないだろう。だがそれでも器用さや大道芸に関しては僅かにプライドがある。何よりもマッサージに関してはある程度友奈自身から手解きを受けている。

 ついでに言うならば、ツボさえ押してしまえば何とかなるのだ。

 

「あー、お嬢様」

 

「なーに、カガスチャン?」

 

「要するに、園子様をマッサージしたり悦ばせれば許して貰えると」

 

「そうだねー、今日一日私の執事さんとしてずっとかな~」

 

「ずっと?」

 

「んー、肩だけじゃなくて、えっと……」

 

 既に時刻は夜の七時を少し経過した頃だ。

 ニュースでは近畿地方に脚を踏み入れたアナウンサーと防人のインタビューが放映されている。画面越しに見知った顔を見つけつつも、園子の肩を揉み始める。

 

「肩だけじゃなくて……、耳とか?」

 

「そうだね……、じゃあ全身をお願いしちゃおうかな~」

 

「じっくりねっとりとご奉仕?」

 

「言い方がいやらしいよ~、アルフレッド=カッキー」

 

「誰?」

 

 だが否定はしない園子は左右に小さく頭を振る。 

 

「シェフのおまかせで~」

 

「じゃあ朝までじっくりと」

 

「私、煮込まれるの~……?」

 

「トロトロに」

 

「ひゃぁ~」

 

 親指で園子の肩甲骨付近を押すと、ん、んふっ、と吐息する園子。指圧師を目指した記憶は無いが一時期身体のツボについてという書物に嵌った事がある。そうして磨いた腕は、時々訪れる安芸や隣人達を喜ばせる程度には成長している。

 

「そんなに凝っているか?」

 

「ん~、最近は少し忙しいからねー」

 

 あー、と声に出す少女の姿は夏に扇風機の前で佇む幼少期の頃を彷彿とさせる。

 懐かしい思い出に頬を緩めながら、首の付け根や背中、腕と静かに揉んでいく。

 

「そういえば、しばらく大社の方に行くんだっけ」

 

「そう~、私だけぇ~」

 

「明後日からだっけ」

 

「そうなんさ」

 

 身体を揺らす度に園子の絹の如き金髪が指をくすぐる。

 何だかんだ世間は公表された世界の真実にまだ収束しきれてはいない。政府や大社を批判する声、神樹を信じる声など、小さな芽が芽生え始めているのだ。

 そうした情勢であっても、乃木家という地位は役に立つ。加賀でも東郷でもなく知名度も高い乃木家である事に意味があるらしく園子はときおり大社に力を貸している。

 

「かきにうむを補充しないとね~」

 

「なんじゃそれ」

 

「あれれー知らないの?」

 

「知らないです」

 

 苦笑しながらソファに少女を横たえさせる。

 うつ伏せになる園子、顔を近づけて剥き出しの白い素足、足裏や足首、太腿をゆっくりと揉み解していく。親指で円を描くように乙女の柔肌をマッサージしながらツボを突くと園子が小さく呻いた。

 

「ん……」

 

「痛い?」

 

「ううん、良い感じだよ~、ぁ、ぁー……んっ」

 

 丁寧に、愚直に、少女にマッサージを行う。 

 園子を仰向けにし、脚を手で、指で揉み、撫でていくと無意識なのか意識的なのか蜂蜜のような甘い声音を少女は聞かせる。

 乙女の声音に徐々に艶が混ざるのを感じながら、しかし丹念にマッサージを続ける。

 

「……ふくっ!」

 

「――――」

 

「ん、んんっ」

 

 僅かにスカートの裾を捲り、脚の付け根を揉むと少女が声を上げる。

 ごほんと咳払いをする園子は自らの声を無かった事とし、赤い顔を腕で隠す。

 羞恥を隠そうとする少女、その姿を見ながら何となく細い腰に触れると――、

 

「! あ、あはは、くすぐったいよ~」

 

「――――」

 

 笑顔で軟体生物のように悶える姿に、ふと加虐心がくすぐられる。

 園子には今後も笑顔でいて貰おうと、マッサージついでにスキンシップを行うべく園子の背中と弾力のある太腿に両手を差し込む。

 

「……」

 

「あれれ、どうしたの……?」

 

 ソファに仰向けになる園子の身体を静かに抱き上げる。

 腕を顔から外し、瞳に疑問を宿す少女は自らの身体を抱き上げる俺を見上げる。

 

「落としたりはしないって」

 

「そこは心配してないよ〜」

 

 琥珀色の瞳を煌めかせ告げる園子に微笑を浮かべて、俺は彼女をゆっくりと絨毯に下ろす。

 蜂蜜を垂らしたように絨毯に広がる金髪、猫のように喉を鳴らす少女はジッと此方を見上げ、囁くように小声で問いかける。

 

「何するの?」

 

「スキンシップ」

 

「……沢山してると思うんだけどな~」

 

「どれだけ取っても足りないよ。そのにうむと交換しようかなって」

 

「何それ~」

 

「知らないのか? ゆなにうむ並みに大事な要素だぞ」

 

「ふふっ……」

 

 彼女との触れ合いで飽和する事も飽きる事もあり得ない。

 どれだけ会話をしても、どれだけ絆を紡いでも、どれだけ身体を触れ合わせても。

 とはいえマッサージの延長といえば微妙にはなるかもしれないが、笑い声を上げて悶える園子の姿というのは何故か、不思議と、嗜虐的な気分になってしまう。

 つまり――、

 

「園ちゃんが悪いんだよ」

 

「あははは……っ!! ああっ~!!」

 

 一切の遠慮なく絨毯に寝転がる少女、セーター越しに腋や首元を指先でくすぐると、横に首を振り笑みを浮かべる園子はバタバタと脚を動かし、笑い声を上げた。

 白い手で俺の腕を叩きながら、しかしくすぐりの拘束からは逃れられない。

 

「あはっ! やめっ、やめははは……っっ!!」

 

 暴れる園子を丁寧に押さえつけ、セーターの隙間から覗く脇腹を指でなぞると程良い脂と柔肉の感触が伝わってくる。その感触が好ましく蜘蛛が這うように五本の指先が柔肉を蹂躙し、少女の笑い声を奏でさせた。

 

「くひゅ! くっ、ぁ、はは、やめ……っ」

 

 細い腰を人差し指がラインをなぞり、中指が臍に円を描く。

 薬指は僅かに汗ばむ首筋を撫で上げ、小指は捲れたスカートから覗く脚の付け根を突く。

 黒色のスカートから覗くピンク色のショーツ越しに恥部を撫で、足裏をくすぐる。

 

「あははははっ……、あっ、はっ、も、もうやめ……」

 

 リビングに金鈴の笑い声が響き渡る。

 

「ぁ、っ、ん、あはは、ぁ……」

 

 少女の笑い声と暴れる音が響く。

 

「あっ、そこ、んっ! あはは、はひゅ……っ!」

 

 髪の毛が乱れ、衣服が擦れ、捲れる音が響く。

 しばらく無心で少女が笑い乱れる姿を視界に収め、押さえ、思わず哂って――、

 

 

 

 +

 

 

 

「……」

 

「――はっ!」

 

 ――どれだけ時間が経過したのか。

 耳朶を唇で挟んでいた俺は、ふと正気を取り戻した。

 

 埋めていた長い金髪から顔を覗かせ、痙攣したように震える少女を背後から抱きしめている事に気づいた俺は、慌ててわしゃわしゃと人を笑わせ続ける蜘蛛と化した自らの両手を人の手へと戻した。

 ひとまず目の前の惨状に一言。

 

「……」

 

「なんという事でしょう」

 

 ふにゃふにゃと呟く園子の声は小さく、言葉を成しているかすら不明だ。

 ぐったりと力の抜けた肢体、セーターはいつの間にかソファに丁寧に畳まれている。

 スカートは捲れあがり、スカートの裏地と同時に桜の刺繍を施したショーツが見える。

 

 ブラジャーの肩紐はずれ、激しい運動をしたかのように絨毯に倒れ伏した半裸の少女。

 昼頃に頂いた紫色の聖布と同系統らしく腰付近は紐のみだが、一体何が起きたのか紐が解けてしまっている。辛うじて恥部に張り付いているのは汗のおかげだろうかと、そっと結び直す。

 

「ぁ……ぅ……」

 

「――――」

 

 少女の身体を流れる汗が照明に反射し、呼吸で上下する臍に溜まっていく。

 激しい運動をした少女に僅かに触れると敏感肌なのかビクンと身体を震わせる。

 ――唐突に太腿を撫で上げてみる。

 

「ふぃ!?」

 

「一体どうしたんだ」

 

「……」

 

「一体どうしたんだ」

 

「……、かっきーはくすぐりフェチかもね~」

 

「――――」

 

「あと結構Sだよね」

 

「そんな事はないよ。園ちゃんの方がSだよ」

 

 どちらがS属性かなどどうでも良い。

 ただ少女が悦び、啼き、喘ぎ、咲く姿を見たいだけなのだ。

 

 半眼で見上げる少女に笑い掛けるが、ぐったりとした少女は僅かに頬を膨らませる。変態さんやケダモノだという罵倒を受けながら共に上体を起こすと少女は俺の首筋に小さく噛みつく。

 

「う~~」

 

「悪かったよ」

 

「また怒るよ?」

 

「偶には名前呼びも好きだよ」

 

「……もう」

 

 抱き着いてくる園子を拒絶せず、汗ばんだ少女の裸体を受け止める。

 そうして暫く触れ合っていると自らの現状に気づいたのか、慌てて少女は身体を離す。

 

「お風呂!」

 

「うん?」

 

「かっきーの所為で汗かいちゃった~。それに朝までコースなんでしょ?」

 

「……ああ」

 

 小首を傾げる園子の首筋にそっと唇を触れさせ、俺は頷く。

 

「あったまりたいな~」

 

「もう一回くすぐる? あったまるよ」

 

「それはちょっと……、まったりとしたいな~」

 

「じゃあ、まったりと風呂に入って、しよっか」

 

「――――」

 

 下着姿の少女は無言のまま此方を見上げる。

 どこか期待を宿すように、長い睫毛を震わせて、小さく頬を緩める。

 そうして小さな身体を抱き上げて風呂場へと向かう中で俺はふと立ち止まった。

 

「園子」

 

「なーに?」

 

「その下着、似合うよ」

 

「そう? 変じゃない?」

 

「似合うよ」

 

「……かっきー」

 

「うん?」

 

「――ありがとうね」

 

 

 

 +

 

 

 

 加賀家別宅の風呂場は、一般家庭の風呂場とそれほど変わりない。

 昔乃木家を訪れた際に入った温泉と見間違える程に広い浴室という訳でもないが、多少は広くそれなりに大きな湯舟に並々に注がれた乳白色のお湯から白い湯気が天井に昇っていく。

 

「はふ~」

 

「は〜」

 

 ばしゃんとお湯が溢れていく。

 二人分の男女が入り込んだ結果、溢れ出した湯水が床のタイルを流れていくのを一瞬勿体ないなと思いつつも、背中を反らし両手を上に上げて溜息をする少女に目を奪われた。

 んー、と声を出す園子は髪の毛がお湯に付くのを避ける為か、アップにしている。

 

「その髪型、良いね」

 

「これ~? ありがと~。……かっきーってさ」

 

「うん」

 

「長い髪の人が、こうやってアップにしてうなじとか見えるのにグッとくる人でしょ」

 

「……」

 

 そうだろうか。そうかもしれない。

 少なくとも東郷や園子と言った長髪の美少女が普段は下した髪の毛を纏めたりする姿に何かを感じるのは確かだ。普段の生活では見ない新鮮さもあるからかもしれない。

 園子の言葉に何と答えるかに窮していると、再び少女の口が開くのが先だった。

 

「それよりもお風呂に入ると、なんとなくあーって言いたくなるよね」

 

「まあ分かる。言う必要ないけど、よっこいしょっていう感じの」

 

「それそれ~」

 

 全身を包み込む暖かいお湯が細胞に染み渡るのを感じる。

 向かい合いながら乳白色の湯水を手で掬う園子の裸体は残念ながら乳房の上部分より下を見る事が出来ない。チラチラとピンク色の乳頭が見えるが、視線に気づいた少女がそっと腕で隠す。

 

「ん~……?」

 

「いや? 何も?」

 

「かっきー。目は口ほどに物を言うんよ、えっちー」

 

「かっきーをえっちーみたいに言わないでくれるかな? あれ? 逆?」

 

 長い髪をアップにした園子は自らの肩にお湯を手で掛けながら告げる。

 どこか揶揄うような口調で眦を和らげる少女はじりじりと此方に迫り寄る。

 白い裸体はお湯の所為か火照り、普段は見えないうなじも相まって色っぽく見える。

 

「ん」

 

「あ~、元気だね~。ん~?」

 

 此方ににじり寄る少女は手探りで反り立った怒張を探り当てる。

 滑らかな両手が湯舟の中、その手のひらが硬さと長さ、太さを確かめるように肉棒に触れる。僅かに残るぎこちなさは持ち前の積極性がカバーし、楽しそうに怒張を握る。

 

「私で興奮したの?」

 

「……ぅ」

 

「こんなに大きくしちゃって~」

 

 柔らかな手のひらで亀頭を撫で、細い指先が雁を擦る。

 ゆっくりと薬を塗り込むような丁寧さで、焦らすように肉棒を上下にしごく。

 四つん這いで肉棒を弄る少女は此方の反応を確かめながら奉仕行為を行う。

 

 ちゃぷちゃぷと水面に波を起こしながら、園子の身体が近づく。

 ジッと此方を見上げる琥珀色の瞳と数秒程見つめ合っていたが、先に目を逸らしたのは俺の方だった。ただ手持ち無沙汰の両手は目の前で浮かぶ二つの果実に伸ばされる。

 

「あ~、触っていいなんて言ってないよ」

 

「許可が必要だっけ」

 

「そうだよ~」

 

「許可を下さい」

 

「いいよ」

 

 この会話の間も既にもちもちの彼女の乳房に触っていたが問題はないらしい。

 ぬくぬくとした驚きのやわらかさと言えば良いのだろうか、パン生地とプリンの柔らかさが混ざり合ったような園子の乳肉は、たゆんたゆんと湯舟と手のひらの中で形を変える。

 ――いつまでも触っていたいと思わせる母性の塊だ。

 

「……」

 

「ん……」

 

 ちゃぷちゃぷと水の音だけが浴室に響く中、互いに無言で相手の身体を弄り合う。

 スキンシップと言えば過剰だが、愛撫と呼ぶにはどこか遊びとも呼べる物がある。例えば布団の心地良い柔らかさについ表面を撫でてしまうような、性行為的な意味合いはあまり含んでいない。

 少なくとも意識上ではそのつもりだったが、眼前の少女の様子はそうではないようだ。

 

「ほんと……ぁ、……かっきーって、っ、テクニシャンだね」

 

 少女の乳房を持ち上げるようにして手のひらで捏ねるように揉む。

 奉仕行為をしているからか、それとも愛撫とも呼べぬ行為に身体は悦んでいるのか、ザクロの実のように硬さを帯びる乳首をそっと指が触れると少女は呻き喘ぐ。

 

 吸い付く少女の柔肌に手を這わせ、薄いピンク色の乳輪を指でなぞり、園子の性格に反してツンと尖る乳頭は雄に触ってと言わんばかりに上を向いているのを確かめる。俯き、表情を隠す園子の様子と怒張を弄る手の勢いが衰えるのを感じながら、静かに乳輪をなぞる。

 硬さを帯びた乳首にだけは一貫して触れることをしない。

 

「ね……かっきー」

 

「――――」

 

 そうして少女の極上のプリンのような乳房を遊び、少女の蕩けた声をときおり聞きながら互いに触れ合っていると、焦らされる事に我慢を忘れたのか甘い吐息と共に少女が呼び掛ける。唇と唇が触れ合うような距離で、きめ細かな肌が見える距離で囁かれる。

 彼女の琥珀色の瞳に確かな熱を宿しているのが、この距離でも分かる。

 

「意地悪しないで」

 

「――――」

 

 懇願するような、慈悲を乞うような、雄を誑かす甘い声音。

 一瞬で身体がのぼせてしまいそうな少女の声は、熱い蜂蜜のように蕩けた物だ。

 いつの間にか湯舟の中で抱き合う形になると、少女の薄い尻肉が怒張を叩くのを感じた。

 

「かたいね~」

 

「ぐりぐりするなよ」

 

 位置が悪いのか怒張を尻肉で挟み込もうとする園子は湯舟の中でハグを求める。

 甘えん坊にジョブチェンジしたのか、豊かな双丘を俺の身体に押し付け、顔を首元に埋める少女の表情は窺うことは出来ない。

 ただ俺に出来ることは、滑らかな少女の背中を撫で抱きしめ返すことだけだ。

 

「――――」

 

「――――」

 

 湯舟の中で少女の両脚が腰に回されるのを感じる。

 下を見れば園子の髪の色と同じ薄毛が湯舟に揺れている様を見ることが出来るのだろうが、あいにく湯舟の色は乳白色で少女の上半身しか見る事は出来ない。

 放置すれば冷えてしまいそうな園子の肩に掬ったお湯を掛けると小さく囁かれる。

 

「……、もうちょっとだけこうしてて」

 

「……今日は甘えん坊なんだな」

 

 腹部と腹部を擦りつけ合い、胸板に乳房が潰れる。

 腰に両脚を回す彼女がどんな表情をしているのかは湯気で見ることは叶わない。

 ただ――、

 

「……そうだね、きっと私が一番甘えん坊だと思うよ」

 

「――――」

 

 ぎゅうっと抱きしめる園子への返答は、腕に力を籠めるだけで十分だった。

 頬を擦りつけてくる少女の柔肌を全身で味わい、しかし今日はこれで終わる事は無い。

 時折腰を浮かせる園子の媚肉と亀頭が擦れる度に、んっ、ん、と至近距離で自らの嬌声を耳元で囁く少女に、怒張ははち切れそうな程に膨張し痛い程に反り立っていく。

 

「……これ、気持ちいいね」

 

「……っ」

 

「今、ピクってした~」

 

 そんな風にして十分か、十五分か、正確に計れる物は自らの心音しか分からない状況で、園子が漸く身体を離した頃には随分と身体が温まり、絡む視線には熱が籠るのが分かった。

 互いに無言で、ただ何を行えば良いのか、何をしたら良いのかを察知した。

 

 何十回目かの素股を行って、漸く俺は園子を伴い立ち上がる。

 久方振りに湯舟から身体を出すと大量の滴がぱたぱたと滴り落ちる。

 それは園子も同じで、ただ白い肌に差す朱色が美しく思え、無言のまま少女を縁に座らせるとポツリと園子は自らの腹部に手を乗せながら尋ねる。

 

「……いれるの?」

 

「……」

 

 確認とも疑問とも思える声音に反射的に頷き返そうとして──はたと俺は止まる。

 このまま挿入すれば、挿入しただけで暴発寸前にまで高められた怒張では彼女を満足させる事など不可能だろう。いや芸達者兼奇術師以前に男としては避けたい事象だ。

 

 少し休憩を入れたいが、そんな事を口にすれば眼前の少女がその頭にある知識を総動員し、手なり腋なり口なり使い全力で射精させようとしてくる気がする。

 ――というような事を顔に出した訳ではないが園子は察知したらしい。

 

 ここぞとばかりに素股で暴発寸前の怒張から子種を搾り出そうと再度湯舟に身体を沈み込ませ俺の腰に張り付き、その小さな唇で亀頭に吸い付き舌が雁裏を舐め始める。

 頬の裏の柔らかさと園子の口内のぬめりが怒張を刺激し、思わず奥歯を噛み締める。

 

「あ、ちょっと」

 

「はっひ、らしてよ」

 

「くっ」

 

「らひて~」

 

 上目遣いで少女が口を動かすと舌のざらついた感触に思わず口ごもる。 

 少しずつ性技が上達している園子嬢は口腔奉仕も躊躇う事は無いらしい。

 出して出して~と懇願する少女に限界を感じ、咄嗟に少女の頭を掴んでしまう。

 

「んんっ!!」

 

 苦しそうに声を上げる少女の喉奥に噴水の如き勢いで精を注ぎ込む。

 目の前が白く染まりふらつきそうになるのを堪えながら、びゅううっと園子の喉に大量の白濁を流し込む。

 長い射精が終わり吐息する俺だが、咽る園子の姿に我に返り背中を摩る。

 

「……大丈夫か」

 

「げほっ……ぁー、うん、なんていうか凄い濃厚な、ねばっこい感じ……」

 

 ほんわかと告げる少女の唇には僅かに白い糸が引いている。

 吐き出す訳でもなく精液を飲み切った少女は目の前の怒張を撫でる余裕すら見せている。

 ――だが、そもそも今日は園子を癒し、悦ばせる時間ではなかったのか。

 

「私ばっかりよりもかっきーも楽しめたら、私も嬉しいな~って」

 

「……、……そっか、それじゃあ今度は俺の番だな」

 

 冷静になり冷え切った思考が自らを責め立てる。

 健気な少女を今度こそ悦ばせる為に俺は湯舟に沈んだ彼女の裸体を縁に座らせ、代わりに自らの身体を湯舟へと沈み込ませる。

 自然と裸体の少女の股座の前に座り込む事になり、その状態に羞恥を感じたのかそっと恥部を手で隠そうとする園子に俺は告げる。

 

「園ちゃん、見せて」

 

「……恥ずかしいんよ」

 

 口を尖らせて頬を赤らめる少女はそっと両脚を閉じようとする。

 そうして花園への道が途絶えようとするのだけは阻止するべく太腿を撫で、恥部を隠す手に顔を近づけ指を舌でそっと舐めとる。

 

「ん……っ」

 

「園ちゃん、今度は俺も園ちゃんに気持ち良くなって欲しいから、ね?」

 

「……こんなところ見せるの、かっきーだけだからね」

 

「知ってる」

 

「もぉ~」

 

 そうして少女は手を外してこんなところ――乙女の恥部を俺に見せる。

 そっと太腿に触れると理解したのか、今更ながら恥ずかしがる少女は、しかしゆっくりと脚を開き俺の顔をより自らの恥部へと近づかせる。

 

 陰唇は僅かに開き、薄い陰毛はお湯で張り付いている。

 その奥の媚肉や僅かに膨らんだ陰核も、目と鼻先の距離で見る機会はそうそうない。

 無言で少女の顔を見上げると、赤らんだ園子の顔は年相応に羞恥と喜色に富んでいた。

 

「――――」

 

 お上品に行うつもりはなかった。

 ケダモノのように、彼女が恥も外聞も忘れて悦ぶように奉仕をするつもりで。

 その事だけに専心する為に、わざと音を立てて貝状の肉に口を開けて吸い付いた。

 

「あっ!!」

 

 風呂場に響く園子の声。

 慌てて口を押さえる姿を目端に捉えながら的確に少女の媚肉を味わう。

 舌を媚肉に挿入し、同時に鼻先で薄毛に隠れたクリトリスを見つけ、丹念に擦ると少女の甘い声音を奏でるのに時間は掛からなかった。

 

「……ふ、……ぅ……」

 

 くちゅくちゅと水音が響き、声を抑えようとしても漏れる園子の声。

 水音が響く度に媚肉が蠢き、声が漏れる度に陰核はその硬さを増す。

 

「……ぁぁっ!! ぁ! ……ン!」

 

 穿るように園子の恥部を舌先で味わい、溢れる蜜液を陰核に擦りつける。

 そうして小さな肉粒を唇で挟み込む度に浴室に園子の嬌声が響き渡る。そうしてまた溢れる蜜液を舌で舐めとり、丁寧に陰核に擦りつけて――、一息に吸い付く。

 

「~~~~~~ぅぁ!!!」

 

 ビクンと腰を震わせ、首を仰け反らせる園子。

 ぎゅっと太腿は閉じられ俺の頭を締め付けんとする圧迫感が襲い掛かる。

 しかしその程度の事で止めるのだったら奇術師の看板は下ろさねばならないだろうと、無心のまま虐めてと主張する快楽器官、即ち陰核を唇の中で転がし、舌で突きまわる。

 

「ぁ、ぁ、ぁー、ぁっ……!」

 

 嫌々と首を振る園子を見上げ、もっとして欲しいのだと悟りしばらくの間クンニリングスでの奉仕を行い続ける。ときおり頬に掛かる少女の飛沫を舐めとり、後退しようとする少女の腰を腕で固定しながら丹念に舐め続けると、園子は限界とばかりに俺の頭を掴んだ。

 ――そろそろ本気で絶頂させて欲しいという合図として受け取る。

 

「ぷぁ……っっ!!?」

 

 鼻先に感じる園子の薄毛がこそばゆい。

 取り敢えず頬に擦り付けながら飴玉のように少女の陰核を唇で遊びつつ、ゆっくりと中指を少女の媚肉に挿入していき、経験に基づく彼女の「弱点」の場所を探り当てる。

 

 ぎゅっと俺の頭を掴む手に力を入れる園子だが、抗議の声はない。

 つまりは陰核と弱点を同時に責められる事に問題は無いということだと受け取り、指を鉤状に曲げ、僅かにざらついた肉壁を撫でる。

 

「あ、あ、やだ、やぁ、ぁぁ……、ん、ぅ……」

 

 腹部を曲げて屈む少女、俺の頭を抱えて団子状に丸まろうとする園子は意図せず俺の顔にふくよかな乳房を押し付ける。ぎゅむりと形を変える双丘の感触を愉しみながら、入り口付近と弱点の間をピストンするようにして指で花弁を掻き混ぜると、唐突にその時が来た。

 

「ぁ、ぃ、くっ、~~~!!」

 

 しょわわ、と俺の顔に噴き出す愛液は小水の如き弧を描き、湯舟に水音を立てる。

 ビクンと身体を痙攣させる園子は顔を俺の後頭部に埋め、悲鳴を押し殺そうとする。

 そんな少女の声を至近距離で聞く事になりつつも、少女を絶頂させた事に安堵し立ち上がる。これでお礼は行った。さてここからがスタートである。

 

「は、はー、 !! ……はふ、ぁ! かっきー!?」

 

 収縮を繰り返す媚肉に再度中指を挿入すると、慌てたように園子は声を上げる。

 珍しく取り乱す園子の様子を見ながら壁のタイルに少女の背中を押し当てて、もう一度「弱点」付近と陰核を片手の指で弄り始めると園子は必死で俺の手首を掴む。

 

「い、今は少し敏感だから~」

 

「もっとしてって?」

 

「ちがっ!! ひぁ!? あ……っっ!!」

 

 口端から涎を垂らし、しかし拭う事を忘れて抵抗する園子の手首と背中を背後の壁に押し当て媚肉に指を挿入する。奇しくも今日の部活動中に部室で行った股ドン、或いは壁ドンと似た状況ではあるが決定的に異なる点がある。

 それは――、

 

「いっぱい、イっていいんだよ」

 

「や、ぁぁ、ぁっ、また……!!」

 

 ぷしゃっと小さく噴き出す園子の愛液が腿を伝い湯舟に垂れ落ちる。

 濃厚な雌の香りが湯気に混ざりクラクラとする視界の中、自然と笑みを湛えて俺は園子を法悦の空へと送り出す。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も―――

 

「漏らしてもいいよ」

 

「ん、ん~~、んふっ、ん!! ん、んぁ、~~、~~~!!」

 

 彼女が俺に応えてくれるなら、その倍は応え返したい。

 喘ぎ咽る姿を視界に収め、熱に浮かされたような琥珀色の瞳が俺を映し出す限り。

 淫音が響き渡る中、顔を近づけると口付けを拒否するように僅かに少女は顔を背けた。

 

「ぁ、だめ……」

 

「どうして?」

 

「だって、さっき……んむ」

 

 そんな事を気にすると思われていたのは心外だ。

 顔を赤くする園子、重ねた唇はしっとりと柔らかい感触が伝わる。

 酩酊したような表情で虚ろな眼差しに、ただ一人の男だけを映し出す少女。

 

「ぁ、ぁ~……か、っきー」

 

 ぐちゅぐちゅと淫靡な水音が混ざり合った浴室に新たな水音が混ざる。

 視界が白く染まりだす中で、奉仕に夢中になる自らが長湯でのぼせる寸前だと気づかされたのは園子の一言からだった。

 

「ベッドで……ン、ひよ……」

 

「――ああ」

 

 このまま続けても良いがお互いに溺れてしまうだろう。

 一瞬、園子と二人ならそれもいいかもしれないという思考を振りかぶり、水分の摂取と復活した怒張で園子を悦ばせようと縁から湯舟に沈みかける彼女を抱き上げる。

 こんな時でも園子の身体は軽いなとふにゅふにゃの裸体を見下ろす。

 

「……っきー」

 

「ん?」

 

「喉渇いた……」

 

「何か飲みたい物は?」

 

「コーヒー牛乳とかは~……?」

 

「ミルクならさっき飲んでただろ」

 

「……」

 

 無言のまま俺の左脇腹を抓り手でぐりっとする園子。あまり面白くはなかったらしいので口を閉じる俺に対して、お姫様だっこされる彼女は小さく呟いた。

 

「あれは……別腹~」

 

 

 

 +

 

 

 

 獣の交尾というのは一体どういう物なのだろうか。

 ただ相手を孕ませる、子供を産ませる、その事だけに専心する事だと思う。

 互いを求め、身体を重ね、貪るように性に溺れ、ただ相手に、快楽に、溺れる事だと。

 

「~~~~!!」

 

 くぐもった声音が枕越しに聞こえる。

 何と言ったのか、髪の毛を払い形の良い耳の奥に吐息と共に問いかけると、途端に身体が硬直する反応に頬が緩むのは仕方がないのではなかろうか。

 

「耳、弱いね」

 

「! ……!!」

 

「俺に耳掃除されるの好きだもんね。……こんな風に」

 

「ぁ、……ッ!!」

 

 そっと耳朶を指で摘まみながら、縁をなぞるように舌で耳に触れる。

 ぎゅっと枕に顔を埋め、自らのあられもない声と表情を隠そうとする少女。

 両手で必死に枕を掴みサンチョの顔が僅かに歪んでいるにも関わらず、赤らんだ耳朶に甘噛みする度に更に歪んでしまう。

 

 ぎしりと寝台が軋む。

 パンパンと肉が肉とぶつかる音に一切の配慮も遠慮も感じられない。

 僅かに汗を滲ませる滑らかな背中に胸板を密着させ、ぴたりと彼女とくっつく。

 

「――――」

 

「あっ!? ぅ~~」

 

「園子」

 

「ん……! ぁ!」

 

 ぎしりと寝台が軋む。

 腰が臀部を叩く度にむにゅりとした弾力が返ってくる。

 ただの吐息を聞かせるだけで怒張を呑み込んだ媚肉が締め付け、反応を示す。

 耳が弱いのは彼女の特徴で、性感帯になるように悪戯や愛撫をしてきたのは俺だ。

 

 ぎしぎしと寝台が軋む。

 思い付きで彼女の首筋に吸血鬼の如く噛み付くと異様な締め付けが怒張を襲う。

 一番反応が良い事に疑問を抱きながら、肩や背中も甘噛みをして彼女の反応を愉しむ。

 

 ぎしりと寝台が軋む。

 汗と彼女の匂いが混ざる彼女の髪に顔を埋め、背後から彼女の裸体に圧し掛かるようにして緩急をつけて腰を振る。手のひらから溢れる無防備な彼女の生乳、乳首を親指と人差し指で丹念に擦り合わせながら彼女の最奥を臍側の肉を抉るような角度で激しく穿る。

 それが彼女の好みで、それが一番彼女を味わえて、それが一番彼女を悦ばせるから。

 

「こんな風にぎゅっとされて、ぱんぱんってされるの好きだもんね」

 

「ぁ、んん、くっ……、ん!」

 

「上から圧し掛かられて、こんな風に囁かれるだけで軽くイってるの……分かるよ」

 

「ぁ、ぁ、~~~!! ! ……!?」

 

 そろそろ新しいシーツを買うべきだろう。

 がむしゃらに園子を犯すように腰を彼女の臀部に叩きつける度に彼女は啼き声を上げる。その声が恥ずかしいのか枕に顔を埋めて声を抑えようとする。

 その行為が雄の本能を刺激し、ゆっくりとストロークを行いながら――、

 

「――――」

 

「……えっ、あ、やッッ!?」

 

「顔、見せろよ」

 

「や……」

 

「これで最後だから」

 

「や~!!」

 

 ふと枕を取り上げる。

 正常位に持ち込み顔を覗き込もうとすると、慌てて園子は琥珀色の瞳に快楽の涙を浮かべ赤く染まった顔を隠そうとして俺に抱き着き、ぎゅっと背中に腕を回した。

 

「今、……私の顔見たら、死んじゃうから」

 

「……ほう」

 

「かっきーが」

 

「あっそ」

 

「~~~、ぁ、っ、っ~~!!」

 

 無理やり少女の顔を見ようという案は仕方なしに断念して、ストロークに全力を注ぐ。

 何度目かの射精感が高まり、既に注いだ彼女の最奥に真新しい子種を吐き出そうと獣のように腰を振る。

 

 ぎしりと寝台が軋み、音が鳴りやむ。

 やがて女の膣内に、最奥に、何度目かの種汁を注ぎ込み、漸く俺は目を閉じた。

 

「――――」

 

「……すぅ………」

 

 彼女を抱き抱え、繋がったまま寝台に身体を横たえる。

 すや~っと既に寝落ちか気絶した少女の生乳に噛み痕を残しつつ、毛布を被る。

 チラリと見えた時計の針は、とっくに日付が変わっている事を淡々と示していた。

 

 

 



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第二十四話 鬼の居ぬ間に

 朝、ふと猛烈な違和感が右腕を襲っている事が原因で目が覚めた。

 押しても引いてもびくともしない事に、夢見心地の中でその原因を探ろうと重たい瞼を開いて視界を確保すると、ふと白いキャンバスに描かれた黄金の稲穂を幻想した。

 

「……」

 

「すや……」

 

 黄金の稲穂は少女の髪の毛であった。

 幻想は現実で、現実は俺の右腕を枕にした彼女の寝顔が視界に映りこむ。

 寝る前とは僅かに体勢が変わったのか、互いに一つの毛布に包まる脚やら何やらが絡まっているのが見ずとも感覚で理解する。そして左手は彼女の肩に触れているのを直接視界に収める。

 

 僅かに布団の外に出ていたからか、左手の指先が冷えている。

 それを認識し、急に寒気を覚えると同時に布団の中に戻し彼女の柔肌に押し当てると、小さく呻く少女の体温が僅かに左手に分け与えられていくのが分かった。

 

 何となく彼女の長い髪の毛先を指に巻いたり、脚に絡まる剥き出しの腿肉を擦り合わせたり、起こさない程度に少女の身体に近寄り抱きしめたりして、『幸福』という概念の理解に努める。

 偶然か少女も此方を抱き枕と認識したのか彼女の腕が俺の背中に回ると密着感が増す。

 

 ふかふかだ。

 園子の身体は、ふかふかだ。

 

 至近距離で園子の整った顔をじっと見つめつつ、これではしばらく起きれそうにない事に気づき苦笑する。園子を引き剥がす気にはなれない。

 彼女の柔らかくしっとりとした肌に触れながら、カーテンの隙間から覗く陽光に目を細める。

 

「最近、目覚ましよりも早く起きるな……」

 

「……くっき……縛って、……ころ……」

 

 余談だが、園子は意外と寝言が多い方だ。

 そうして暫く布団と少女の柔らかさに微睡みながら唯一自由な左手を園子の背中に回す。

 滑らかな背中の感触を手のひらに感じながら彼女を抱きしめ返すと少女は吐息を漏らす。

 

「――――」

 

「すぅ……んぅ……」

 

 長い睫毛が震える頻度も増えてきている。

 感覚と経験的に彼女が目覚めるまであとほんの僅かであろう。

 あどけない寝顔を見ながら、俺は右腕を彼女の枕にしてその時を待つ。

 

 彼女の第一声は何だろうか。

 朝チュンだね~か、おはよ~なのか。

 いずれにせよ薄い唇の隙間から紡ぐ金鈴の如き声音が、俺が今日最初に聞く声となるだろう。

 

「ん、ん~……」

 

「……」

 

 その琥珀色の瞳が自らを映すまで。

 布団の中で、ジッと彼女の傍で、その時を待った。

 

 

 

 +

 

 

 

「かくれんぼしよっ!!」

 

「いや子供か」

 

 満面の笑みを浮かべて挙手する友奈に半眼でツッコミを入れる夏凜。

 他にも東郷や樹といった面々が勇者部の部室に集合し、楽し気な会話をしている。

 風は流石に毎日部室に来る訳ではなく、園子は大社に出かけて既に二日が経過した。

 

 後頭部の髪の毛を揺らし友奈が告げる遊びの内容を知らない者は部室内にはいない。

 『かくれんぼ』とは如何に自らの気配を消しバーテックスから逃げ延びるかを想定した訓練であり、実際に防人でも行われたというのは有名な話だ。

 

「いやいや、聞いた事無いわよ!?」

 

「落ち着いて夏凜ちゃん」

 

 目端を吊り上げる夏凜を宥める東郷。

 実は本日の部活、その中心となる依頼が偶然何も無かったのである。

 そういった場合には自主的なごみ拾いやホームページの更新作業などがあるのだが――、

 

「しょうがないわね、友奈ちゃんは」

 

「友奈さんですからね」

 

 友奈の親友である東郷は微笑を浮かべて足回りのストレッチを始めている。

 かくれんぼにストレッチは果たして必要なのだろうか。怪我の可能性を低くするという観点から見れば重要なのかもしれない。別に走る訳ではないのだが。

 スカートから覗く黒色のタイツの光沢をぼんやりと見つめると、東郷が視線に気づく。

 

「ふふっ……どうしたの?」

 

「いや、なんでも」

 

 最近東郷の視線察知率が上昇している気がする。そしてその上で穏やかな微笑みを浮かべる心境について質問を投げ掛けたい。とは言え、流石に口に出すと此方が危うくなる気がするので、そっと彼女の曲線美から視線を逸らし別の事を考える。 

 

「なんでかくれんぼ?」

 

「えっ? うーん、偶には良いかなって!」

 

 外は寒く、普段ならば『鬼ごっこ』と言うだろうが友奈も自重したのだろうか。

 既に放課後、あまり騒がしくしなければそこまで問題は無いだろうと思い東郷を見習いストレッチをしながら、どこに隠れるかの候補を脳内にリストアップし始める。

 

「ねえ、夏凜ちゃん。駄目……かな?」

 

「……しょうがないわね」

 

「やったー! じゃあ、私が言い出しっぺだから、私が鬼ね! ……じゅーう、きゅーう」

 

「はやっ!?」

 

 毎回毎回ツッコミの為に声を上げる夏凜の律儀さから目を背け、既に部室を飛び出した東郷、樹の後を追いかける。背後から夏凜の気配を感じながらひたすらに早歩きを行う。

 因みに『かくれんぼ』のルールは地方ルールと勇者部用の特別ルールだ。校内で行う場合は部室がある階のみ(園子考案)、走らない(東郷考案)というシンプルな構成である。

 

「にーい、いーち、ぜろ! ……もういいね」

 

 足音を消し空き教室に隠れると、友奈の声が微かに聞こえる。

 どこかに隠れた東郷たちを探し出す友奈の足音を聞きながら、俺は再度部室に戻る。

 

「りょーちゃん、とーごーさん、かーりんちゃん、いーつきちゃん、どこかなー?」

 

 そっと部室の扉を閉めると声が遠ざかるのが聞こえる。

 暫く時間は稼げるだろう、そう思い安堵の吐息をすると同時に、背後の扉が開かれる。

 足音も無く突然開いた扉に振り向く余裕すらなく背後より何者かが背中に触れる。

 その感触に思わず息を止めて――、

 

「――――」

 

「亮くん、みっけ」

 

 見知った声音に吐息をする。

 もしも彼女が包丁を持っていたら刺されていたなという益体も無い思考を抱きつつも微笑を浮かべながら振り向くと、先ほどまでと何ら変わらない制服と上にカーディガンを着用した東郷の深緑色の瞳と目が合う。

 

「――――」

 

「どうしてって? 亮くんの考えている事くらい分かるわよ」

 

「まだなんも言ってない」

 

「でもそんな事を言いそうだったでしょ?」

 

「……」

 

 時々何を考えているのか分からなくなる少女は楽しそうな笑みを浮かべる。

 青いリボンが巻かれた長い黒髪を揺らす東郷は最初からこの部室に隠れるつもりなのだろうか。緊急用に隠れるつもりのロッカーは確保した為、余裕のつもりだったのが、東郷には既に悟られている可能性が高い。 

 

「どこに隠れるつもりだったの? 東郷さんは」

 

「そうね……天井とか」

 

「――――」

 

「冗談よ。例えばカーテンの裏とか、あとはロッカーかしら」

 

「まあ、妥当だよな」

 

 そんな雑談を交わしながら、手持ち無沙汰になった俺は東郷の挙動を目で追う。

 掃除用の道具などが入ったロッカーを背後に、周囲に人影が無いことを確認しながら東郷に近寄る。

 

「亮くん?」

 

「ハグしよ」

 

「えっと……、抱擁? 急にどうしたの?」

 

「人肌が恋しいなって。とうごにうむが欲しいのだ」

 

「あっ、ちょっと、もう……」

 

 正面から彼女を抱きしめると、驚くほどに身体が小さいと感じる。

 困惑したような口調で、それでも拒絶したり身体を離そうとはしないのは俺だからだろうか。

 細い腰に回した腕、正面から抱きしめると少女の柔らかさと温かさに、少し心が和む。

 

「亮くんは時々強引よね」

 

「……でも? そういうところが~」

 

「調子に乗らないの! ……少しだけよ」

 

 カーディガンと制服に包まれた彼女の肢体、衣服越しであろうとも抱きしめると分かる程に大きな双丘の感触が伝わってくる。艶のある濡羽色の髪の毛からは香料ではない彼女本来の香りが鼻腔をくすぐる。

 おずおずと背中に回された東郷の手は、ぽんぽんとリズム良く優しく叩く。

 

「……少し背、伸びたでしょ」

 

「そうか? 最近測ってないから。東郷さんこそ大きくなったでしょ」

 

「私はそんなには……」

 

「そんな東郷さんは実は最近少し食べ過ぎてしまい、気が付くと……冗談だって」

 

「次変な事言ったら、吊るすわ」

 

「分かったよ。もう言わない」

 

 特にお腹の防御力が増えた訳ではない東郷。

 どちらかと言えば、実は最近防御力が増したかなというのは風だったりするが、割愛。

 口を閉じ、代わりに背中に回した手をそっと下へ、スカート越しの臀部にそっと触れる。

 

「っ」

 

「……」

 

 小さく息を呑む東郷のスカートの生地を舐めるように撫でる。

 曲線美を描く尻肉、乳房とはまた異なる弾力が手のひらに伝わる。

 

「ぁ、ちょ……、いきなり……ッ」

 

「ちょっとだけだ」

 

 抗議の半眼を向ける東郷に小さく笑い掛けながら指を動かし尻肉を弄ぶ。

 困ったように肩を叩く少女を抱き寄せ、周囲に目を向けながら捏ねるように揉む。

 ロッカーを背中に、部室の扉を見ながら抱き寄せた東郷のスカート内部に手を忍ばせる。

 

「……っ」

 

 外部よりも僅かにむわりとした空間、そしてタイツに包まれた臀部を撫でる。

 円を描くようにして尻全体を撫でまわし、手に乗る少女の尻肉は程良い重みを伝える。

 少女の無意識に漏らす声を聴きながら痴漢をするかのように僅かにタイツを下ろす。

 

「ぁ!」

 

「……しー」

 

 僅かに腰を震わせる少女、その背中側から手を回しタイツの隙間から下着を撫でる。

 逆三角形の蜜処をなぞる俺の指の動きに合わせて抱いた少女の胸が上下し、結んだ唇から漏れるはずだった熱い呼気は声を隠すように鼻腔から漏れている。

 

「ぁ、んんっ……」

 

 そろそろ友奈が樹を見つけた頃だろう。

 時間的には厳しいが、もう少しこの少女を辱める為の悪戯はしたい。

 

「んん……!」

 

 指の腹で肉芽の付近を擦ると少女は背中に回した腕に力を籠めて快楽に耐える。

 徐々に湿り気を帯び始める下着の感触を指に感じると少女が僅かに顔を上げる。

 痴漢行為を行う俺に対して、せめてもの抵抗なのか唇や頬、首筋を東郷は愛撫してくる。

 

「ぁ、っ、やだ……」

 

 可愛らしい抵抗に応えるべく頬に口付けを行う。

 ふと深緑の瞳を、僅かに頬を赤く染めた少女の顔を見つめると恥ずかしそうに顔を伏せる。

 

「~~~~!」

 

 ちゅくちゅくと下着を少女の肉芽に擦り続けると、やがて少女は小さく身体を震わせた。

 ピクッと身体を震わせる少女、そして至近距離でこそ分かる微かな雌の匂い、軽く達したらしい東郷は溢れんばかりの双丘を俺に押し付けて呼吸を繰り返す。

 

 ぽたぽたと小さな滴が床に染みを作る。

 学校で絶頂の余韻に浸る女のはしたない痕を残す。

 

 そんな時だった。

 背後のロッカーで何かがぶつかった音がした。

 

「……!」

 

「な、なに?」

 

「……さあ? 猫とか」

 

「そんな訳……」

 

 ぼんやりとした表情の東郷だったが唐突な物音に我に返る。

 ここがどこなのか、それを認識したのか様々な表情をコロコロと作りながら俺から離れる。

 僅かに脱がしたタイツを元の位置に戻そうとスカートの中に手を入れる姿は何とも言い難い。

 

 羞恥の表情と怒りの表情を入れ替え、スカートの中のタイツの位置を調整する姿は額縁に収めたくなる。そんな時、廊下から聞こえた足音と声に、逃げ場を無くした俺と東郷は互いを見やる。

 逃げ場は最初から無かった。

 

「亮くん、あとでお仕置きね」

 

「授乳手コ……」

 

「吊るすわ」

 

「……さっき一人だけイった癖に」

 

「そ、それは……!」

 

「あー! 二人ともみっけ!」

 

「はぁっ、はぁっ……! 友奈さん、速いです……」

 

「――――」

 

 樹の手を引っ張り部室の扉を開けた友奈は満面の笑みを浮かべている。

 荒い呼吸をする樹は壁に手を付き、笑い掛ける友奈は此方に半眼を向ける東郷の後頭部しか見る事は叶わない。僅かに頬を赤らめる東郷は小さく咳をし、即座に友奈の方に振り返る。

 

「流石ね、友奈ちゃん」

 

「うーん、何となくここにいるかなって。ほら、犯人は現場に戻るって言うし!」

 

 ちなみに勇者部の『かくれんぼ』は見つかった人は鬼の仲間になるというルールがある。

 時間的な制約や面白さ等を追求した結果だが、四人の鬼に見つかっていないのはただ一人。

 

「夏凜ちゃんはどこ?」

 

 小首を傾げる友奈と樹。 

 さりげなく足元の滴を靴で隠す東郷を横目に、俺は友奈に無言で手招きをする。

 

「……?」

 

 とてとてと歩み寄る姿は子犬のように可愛らしい。

 命ずる主人に近寄るメイドの如く従順に俺に歩いてくる友奈の手を引き、背後のロッカーへ。

 

「……ぁ」

 

「東郷先輩?」

 

 何かを悟ったらしい東郷は顔を赤くし狼狽える。

 此方を見やりパクパクと口を開閉する様は金魚のようで、顔が徐々に赤く染まっていく。

 その様子に疑問を抱く樹に弁明の余裕が無いらしい少女を余所に友奈の薄紅色の瞳を見やる。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「ほんとに?」

 

「……」

 

「うん」

 

 暫く目線のみで友奈と会話。

 赤い髪の毛を揺らす友奈はそっとロッカーの扉に触れ、開ける。

 

「えへへ……。夏凜ちゃん、みーっけ!」

 

「――――」

 

 既に潜んでいた少女に、顔が不自然に赤い少女に、無邪気な笑顔で友奈は告げた。

 

 なお、夏凜の顔は赤く染まっていた。

 同じく、東郷の顔も赤く染まっていた。

 その後、俺は東郷にお仕置きをされた。

 

 

 

 + 

 

 

 

 ずるずると汁音が響く。

 麺を啜り、口内へと消えていく独特の食感、麺に含まれたスープが舌上で跳ね上がる。

 

「ん……うん」

 

 ずるずる、ずるずるという音が響く。

 それは自らが麺を啜る音であり、同時に隣の人物が奏でる音だ。

 カウンター席の椅子に座り、白い蒸気が顔に掛かるのも気にせずレンゲで黄金色のスープを掬う。レンゲにメンマとチャーシュー、麺、スープを入れ、ミニラーメンを作るのは珍しくはない。

 

 それは遊びのようだが遊びではない。

 美味しくなければそんな真似などする筈がなく、何度かレンゲを黄金色の泉から掬い口内に送る行為に夢中になる。少し味の濃さに舌が慣れてきたら水を飲む。そして麺を啜る。

 

「旨いわね」

 

「……ん」

 

 偶にはラーメンも悪くはない。

 若い身体は容易く麺も具も汁も味わい尽くし、胃の中に納まる。

 ほぼ同時に食べ終わったのか、ご馳走様と呟く少女はご満悦な様子だ。

 

「じゃあ、おっちゃん。二人分会計ね」

 

「えっ、いや、いいわよ」

 

「今回は布教したかったから良いよ。夏凜可愛いし」

 

「どんな理由よ……」

 

 基本的に節制を心がけるが、偶に何てことない店に足を踏み入れる。

 そうして昼ご飯にしようと決めた先で、美味い飯に巡り合えるのは少し嬉しい。

 ついでにこの感動を共有すべく親しい友人と一緒に食べに来て思い出を共有するとなお良い。

 

「ここの海老味噌ラーメン、美味かったでしょ?」

 

「……まあ、そうね。美味しかったわ」

 

「マスターお聞きになりましたか?」

 

「……また来てくれ」

 

「あ、……はい」

 

 白い手拭を頭に巻いた壮年の男性はサムズアップする。

 手品と同じく突き詰めるのは食事も同様で、この店に通い続けた結果、常連客になった。

 意外と波長が合い、偶に布教として友人を連れてくると喜んでくれる渋めの小父さまである。

 

 サムズアップを返し、引き戸を開けて外に出る。

 途端に冷風が首筋を撫でるが、ラーメンの効力により暫くは無効化されている。

 

「偶にはラーメンも良いだろ?」

 

「まあね。あとご馳走様」

 

「いえいえ」

 

 律儀にお礼を告げる夏凜と共に夜道を歩きだす。

 二人だけで。友奈も東郷も今頃は自宅にいるのだろう。今日はお泊りらしい。

 

「……で?」

 

「うん?」

 

 夜道を歩いていると、ふと夏凜が口を開く。

 いつもよりも声が小さく、僅かな震えが冷たい夜風に流される。

 

「……まあ、その、あんたがああいうのだってのは、分かってたけど」

 

「どういうのかな」

 

「変態よ、変態」

 

 ありがとうございます。

 罵倒する彼女に心の中で両手を合わせながら、ふと思った事を告げる。

 

「前から思っていたけど、夏凜って俺の事どう思っているの?」

 

「……は、はあ!?」

 

「いや、変な意味じゃなく、他己観察的な話だ」

 

 色恋沙汰は夏凜との間で発生する可能性などまず無いだろう。

 それは俺から夏凜への認識であり、夏凜もそう思っている。あくまで戦友だと。

 とはいえ、戦友の前に男女であり、そういう状況にも発展しかけているのだが。

 

「まあ、あんたって自信過剰でカッコつけ、ナルシスト、悪知恵の回る変態ってとこね」

 

「わあ、素敵な評価だこと」

 

「だけど」

 

「だけど?」

 

「――、あんたなら一文無しで路頭に彷徨っても、きっと何とかできると思えるわね」

 

「……それはどうも」

 

 反応に困る評価に眉をひそめる。

 詳しく聞きたいが彼女にとっては終わった話なのか、小さく頬を赤らめる夏凜は声を上げる。

 

「そ、それで!」

 

「はい」

 

「東郷にしてたヤツ、あれって」

 

「……ああ、マッサージね」

 

「そうそう、マッサージ。……マッサージ?」

 

「そうだよ。マッサージ」

 

「……ふーん」

 

 少女と横並びになって夜道を歩く。

 向かう先は、夏凜が住まう場所。加賀家への道は少し戻らなくてはならない。

 だが今日は戻ることは無いだろうという予感と、その的中は確かな物になりつつあった。

 

「夏凜もしたいの? 凄い解れるよ。あれよりも凄いのがあるよ」

 

「……そうなんだ」

 

「東郷さんにもした事ないような事とか……、あっでも、にぼしには無理か~」

 

「はあ!? 完成型勇者である私に無理な物とか無いから! 何でも来なさいよ!」

 

「じゃあ、する?」

 

「……」

 

「……どうする?」

 

「……」

 

 夜道を進む歩みは止まらない。

 ――引き返す事は結局しなかった。

 

 

 



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第二十五話 調理は丹念に

 鎖の擦れた音、硬質な金属が触れ合う。

 

 音の発生源は椅子からだ。少女が座る椅子。

 ぎちぎちと音を鳴らし、手首を拘束する鉛色の手錠は椅子の背もたれ付近に繋げられている。

 

「……っ」

 

 眉をひそめ、眉間に僅かな皺を寄せる少女。

 苦痛に歪む要因は無い。無垢な少女の細い両手首を包み込む手錠部分は金属製ではなく革製の玩具だ。どれだけ引っ張ろうとも拘束者の皮膚に傷を与える事は無く、それでいて拘束という役割を放棄する事も無く頑丈さは折り紙付きだ。

 

 では、一体どうして半眼で睨みつけられなくてはならないのだろうか。

 

「これのどこがマッサージよ!」

 

 絶叫する夏凜。鎖が動き、まるで首輪の無い犬畜生の如く此方に噛み付いてくる。

 だがその動きは途中で止まり、赤いリボンが巻かれたツインテールの先端が拘束された手に代わり此方に伸ばされるがそれでも届かない。

 半弧を描き宙を舞い、元の位置に戻る荒ぶる髪の毛を見ながら俺は静かに開口する。

 

「何でもするって言ったじゃん」

 

「……言ったけど、なんか違わない?」

 

「いや、これはハラ=セク式と言う旧世紀に伝わるマッサージ方法だ。ハグ式の上位に位置する『完成し選ばれた者』にしか受ける事が出来ないんだ、夏凜」

 

「え、そうなんだ……」

 

 少し嬉しそうな顔をする夏凜はちょろい。

 大体神世紀の人間は、絶対的な信仰対象がいるからか優しく人を信じやすい傾向にある。

 勇者に選抜される為の訓練や自主トレーニング、そういった事しかしてこなかった彼女は本当に無垢だ。

 

「良い姿だ、夏凜。これはお前にこそ相応しい」

 

「いや、やっぱり馬鹿にしてるわよね」

 

「まさか」

 

「……ほら、こんな悪趣味なのさっさと解きなさいよ、変態」

 

 あくまでも反抗的な意思を見せる夏凜に、やれやれと肩を竦める。

 少女の自室にあるバランスボールに座りながら、携帯端末を手に取る。

 

 蹴りでも入れようとするのか健康的な脚が此方に向けて伸ばされる。

 風と買い物に行った際に購入したらしいスカートから伸ばされた美脚が脛に当たる。

 

「おいおい、何を言ってるんだ夏凜。頭まで煮干しになったのか? さっき自分で言っていただろう。マッサージをして欲しいって」

 

 パシャリと一枚、携帯で少女の写真を撮り、フォルダに保存する。

 拘束されたツインテールの少女、上着を脱ぎブラウス一枚と蹴りを入れた際に僅かに捲れたスカートの裏地、健康的な太腿、鍛えられた二の腕が剥き出しという姿は扇情的にも思える。

 仮に夏凜を慕う男子辺りに売れば高値で売れるのは確実だろう。

 

「ちょっ、……撮るなぁ」

 

「……さて、じゃあマッサージを始めましょうか」

 

 携帯端末を置き、ポケットからマッサージの為の器具を手に取る。

 つまみの付いた棒状で先端は丸みを帯びた道具は正しくマッサージとして使われる。

 

「何よ、それ」

 

「ほう、夏凜ちゃんはご存じでない? ネットとかで有名なアレだ」

 

「あんまり見ないわよ。……あと、ちゃん付けすんな」

 

「そんな時間があるならトレーニング?」

 

「そうよ」

 

 つまみを小さく捻る。

 すると先端の丸い部分がブィィと小さく振動を始める。

 そうして振動部分をそっと少女の衣服越しに押し付けると、夏凜は小さく呻いた。

 

「ん……っ」

 

「どうですかね」

 

「別に……、ちょっと揺れるだけね」

 

 強がりではなく、実際にそんな物だというのが少女の口調より伝わる。

 微弱な振動、それも衣服越しでは何も解される事は無いだろう。下手をすればただくすぐったいだけだ。現に大したことがないと告げる少女は余裕の表情で此方を見上げる。

 そんな少女の顔を見ながら、俺は彼女のブラウスのボタンを外していく。

 

「まあ、そうだよな」

 

「――!? ちょっ、やめっ」

 

 抗議の声を上げ、手錠の金具を鳴らす少女を無視してブラウスの前面を開くと、夏凜らしいスポーツブラが目に映る。そっとずらすと大した抵抗もなく上にずれた下着は、少女の薄い胸を外気に晒した。少女の蹴りを躱し振動を薄い首筋に当てると気持ち良いのか、首を竦める少女に宛がう。

 

「ひゃぅ」

 

「夏凜の貧ぬー、可愛いよ」

 

「……ひ、貧乳って言うなぁ!」

 

 器具を宛がった方向とは逆に首を反らせる少女に比例して反らされる薄い胸。

 夏凜の柔らかな肌に指で触れると指が冷たかったのか少女は小さな悲鳴を上げる。

 

「きゃっ」

 

「可愛い声」

 

「んんっ……」

 

 夏凜の乳房は決して大きいとは口が裂けても言う事は出来ない。

 東郷以前に園子のような柔らかさも、友奈のような程良い美乳以前に小さく慎ましい。

 だが、それでも実際に触れると僅かに膨らみのある発展途上の乳房は柔らかさと、ぷわりと漂う甘いミルクのような香りは間違いなく母性の象徴である事を証明している。

 

「あれ? 夏凜、ちょっと乳首硬いよ?」

 

「ふくっ……ッ、っ、ふ、ふん! こんなの生理現象よ……ッ」

 

 少女の背後に回り、両手で抱きしめる。直接微弱な振動を乳頭に伝えつつも、手のひらに収まる慎ましい膨らみをゆっくりと揉む。微かに声を漏らす少女が動く度にチキチキと金具が擦れ、人差し指と親指で乳輪を撫でる度に呻く少女は僅かに背中を反らせる。

 

 徐々に口数を減らす夏凜の表情はマッサージ器具による振動の所為か、あるいは乳首を愛撫されるのが気持ち良いのか、声が漏れるのを抑えるように必死に口を噤んでいる。

 その抵抗も、丹念に少女の乳房を手のひらで捏ね、軟骨を思わせる乳首を指先で弾く度に無意味となる。

 

「やぁぁ……っ!! ぁ、ぁ」

 

 唇を噛みしめる夏凜の身体は意外と敏感だ。

 そこまでの愛撫はしてはいないが、それでもこうして感じている姿は演技ではない。貧乳の方が感度が高いと聞いた事があるがこういう事なのかと喜色の笑みを浮かべてしまう。

 

 微弱な振動を左の乳房、そして乳首に与えると身体をくねらせる。

 そうして余った右の乳房、ツンと尖った乳首には小さく口を開けて吸い付く。

 

「あっ!?」

 

 ビクンと少女の身体が弓なりになるが、吸い付く事を止めない。

 少女の乳首に吸い付き、ときおり噛り付くと面白い程に彼女は甘い反応を示した。

 

「こんなのッ、~~~んぅ!」

 

 じゅるっと音を立てて吸い付く。

 ちゅぱっと音を立てて乳首を離し、舐めるように再び吸い付く。

 夏凜の初めての授乳経験を奪い取り、更に左の乳首も同じように唾液で汚す。

 

 床を跳ねる少女の脚は行き場を失い、ときおり爪先までピンと伸ばされる。

 ひたすらに乳首のみを責め立てられる彼女は口端から垂らした唾液を拭う事も出来ずに首を仰け反らし、必死に声を抑えようと羞恥に顔を赤らめている。

 

「……気持ち良い?」

 

「……べ、つに、大したこと、ないわよ」

 

 ちゅぱっと乳首から口を離し尋ねると夏凜は鼻で笑い否定する。

 だが紅に染まったピンク色の乳頭を再度口に含み、舌と唇で愛撫すると甘い悲鳴を聞かせた。

 

「……ほれは?」

 

「ンぁっ! それでっ……しゃべるなぁ……!」

 

 眼前で拘束され強制的に授乳させられる少女。

 衣服はほぼ脱がされ、暴れた両脚によってスカートは捲れ、あられもない姿だ。

 そろそろ次のマッサージをご所望との事なので、少女のスカートを捲る。

  

「可愛いパンツだね」

 

「――! や、やだ、離しなぁぁっ……!!」

 

「濡れてるけど?」

 

「違うからぁ!」

 

 縞模様の入ったショーツ、クロッチ部分は既に湿り、指で触れずとも濡れているのが分かる。そんな自らの状態を指摘され顔を赤くする少女は必死に脚を閉じようとするが、股の間にはマッサージ器具を宛がう俺の手の方が速かった。

 

「やぁん!」

 

 可愛らしい悲鳴を上げる夏凜。

 その原因は下着越しに秘裂が振動を受けたからだろうか。下から上にピンポイントで振動部を宛がうと、振動から逃れようと身体を動かしジャラリと鎖を鳴らす姿は哀れみと雄の本能をくすぐるような必死さが伝わってくる。

 

「……気持ち良い?」

 

「……大した事ないわ」

 

「そうか、なら振動は最大にしてやろう」

 

「えっ、ちょ、ちょっと待って……」

 

 つまみを最大に回すとヴィィィという振動が持ち手にまで薄っすらと伝わる。

 これを恥部に宛がうと一体どうなるのだろうか。それは彼女の身体で確かめよう。

 

「ッッ!?」

 

 変化は劇的だった。

 腰を引かせようとする少女の秘裂を擦るように電マ器具を宛がうと、首を横に振る夏凜は身体を震わせる。どこにも逃れられない少女は振動という快楽を一身に受け自らの蜜液を下着に染み込ませる。

 

「ま、まって! や……、あ!?」

 

「効いてる効いてる」

 

 本気で暴れているらしい少女、しかし拘束具は華奢な少女の力を封じ込める。

 振動部分を下着越しに肉芽と大陰唇に宛がうと余裕を失くした少女は声を上げる。

 

「ちょっ、やめて! ねえ、これっ、まって!」

 

「……気持ち良い?」

 

「気持ちいいからぁ! ストップ!! ねえ!! ほんと、本当に……でちゃ……っ!!」

 

「素直な子が俺は一番好きなんよ」

 

「あ……ッッ! もっ、ゃ、とめぇ……」

 

 両脚をばたつかせ、絶頂に達するのだけは嫌だとばかりに抵抗する少女の片脚を腕と腰で固定する。僅かに椅子から腰を浮かせる少女、ぽたぽたと床に垂れ落ちる蜜液を求めるべく、縞模様の下着越しの花弁に念入りに器具を宛がう。  

 

 彼女が好きな陰唇周り、そして肉芽。

 丹念に、丁寧に、執拗に、花を愛でるように。

 

 嫌々と首を振り、マッサージを止めるように懇願する夏凜。

 その姿に先ほどまでの強気な姿は無く、ただの華奢な少女が愛撫に悶える。

 羞恥の涙を浮かべ、恥部に器具を押し付けると甘い悲鳴を聞かせる姿は美しい。

 

「止めて欲しいなら、ちゃんとお願いしないと」

 

「――――、……やめてくだしゃい」

 

「それだけ? 反抗的な態度とってごめんなさいは?」

 

「ごめんなさい!! やめてくださいっ!!」

 

「嫌です」

 

「ぇ、ぁ……!! だめ、ぁ……あッ、あぁぁっっっ!!!」

 

 ぷしゃぁあっという水音が部屋に響く。

 音の発生源、少女の下着の染みが広がり勢いよく噴き出す飛沫は床に湖を形作っていく。そうして花弁から噴き出した飛沫は押し付けられた振動によって撒き散らされ、少女は羞恥に喘ぎ声か泣き声か分からない悲鳴を上げる。

 

「お漏らしする程に気持ち良かった?」

 

「……いぅなぁ」

 

 少女の腿を伝い、椅子を濡らし垂れ落ちる小水。 

 一度器具の電源を切り、ぐったりとした様子の夏凜はもはや抵抗の気力が失せたのか羞恥の涙を浮かべ恥辱に顔を背けようとする。その姿は普段の様子からは想像も出来ない程に弱々しく、想像以上に可愛らしい。

 

「…………」

 

 大量の飛沫とむわりとした匂いは、眼前の拘束された少女によるものだ。

 それはともかくも、せっかくなのだからと夏凜の両腿を手で掴み取り、そっと少女の下着を脱がす。ぬちゃり、とクロッチと産毛しか生えていない未熟な恥部には淫靡な白い糸が橋を作り、思わず彼女の前で握った下着からは大量の滴が零れだす。

 

「――――」

 

「……」

 

「ぁ……!」

 

 握り絞った汁が指に付着したので見せつけるように口に含む。

 無菌なので問題は無いはずだが、驚愕と羞恥で掻き混ぜられたような表情を見せる夏凜の瞳の奥の感情はぐちゃぐちゃだ。スカートを脱がし、辛うじて脱げ掛けのスポブラと袖を通しているだけのブラウスのみとなった少女は何かを言いたげにパクパクと口を開いては閉じる。

 

 そっと縞模様の聖布を仕舞い、せめて綺麗にしようと閉じた脚を手で開かせる。

 無毛の恥丘を指でなぞるとビクッと身体を震わせる少女、漏らす程に気持ち良かった器具を使うも良し、指を使って啼かせ悦ばせるも良しだ。

 そうして気絶するまで絶頂させようと意気込む俺に、夏凜は小さく口を開いた。

 

「……さいよ」

 

「うん?」

 

 じゃらり、と手錠が鎖とぶつかり音を立てる。

 小さな、小さな声音だが、潤ませた瞳で此方を見やる少女の声に耳を傾ける。

 それは漏らさせられた事への罵倒か、マッサージという快楽を望む少女の声音か。

 

「――ここまできたなら、最後までしなさいよ」

 

「――――」

 

 行為を求める女の声だった。

 息を止め見上げると、此方を見下ろす拘束された少女と目が合う。

 羞恥と喜色と快楽を混ぜ合わせたような瞳、揺らす瞳の奥に宿す感情は確固たる物だ。

 

「……責任、取りなさいよ」

 

「夏凜」

 

「これ以上……言わせんな……」

 

「――――」

 

 彼女の言う責任の意味は、つまり最後までするという意味だろう。

 何も彼氏彼女になるという意味ではなく、一夜の過ちという意味合いでの。

 マッサージを行い、お漏らしをさせられ何度も絶頂の余韻に浸らされた少女の言葉。

 

「っ」

 

 反り立った怒張、散々ほぐしたからか奥まで挿入するのは意外と容易だった。

 ぬめる狭い膣内は初めての男を受け入れつつも、少女を僅かに呻かせる。

 

「ん……ッ! ……ぁ、あんまり、痛くないものね……んンっ!? ン、ん……っ」

 

 重ねた唇は柔らかく、彼女が一人の女の子であると再認識させられる。

 怒張をきつく締め付ける媚肉、対面で挿入したまま、せめてもの口腔行為で奉仕する。

 少女の舌を絡めとるように、『キス』という行為についてじっくりと教え込む。

 

 唇の触れ合いなんて上品な物ではない。

 頬の柔らかさを確かめ、舌の柔らかさを教え合い、下品な淫音を響かせるだけ。

 

 そんなキスを何度も繰り返す。

 目端に堪った涙が少女の頬を伝い、何度目かの口付けで離した唇から唾液が滴り落ちる。

 

「……初めてがおしっこの味なんてサイテーね」

 

「――――」

 

「でも」

 

「でも?」

 

「キスって、凄いのね……」

 

「経験になったろ?」

 

「ふん、……もう動いていいわよ」

 

 そう気丈に告げる夏凜のお腹を撫でながら、ゆっくりとストロークを行う。

 流石に初めてらしい少女の事を考えると、無茶な事は出来ないと考えるのは必然だろう。ならば当然、自らが射精に至るよりも彼女が少ない痛みで終わらせる事が大事だろうか。

 

 にじゅりと引き抜かれる肉棒。

 赤黒い怒張をゆっくりと差し込むと小さく呻く少女を抱き寄せる。

 

「ぁ……」

 

 仄かな汗と雌の匂いが混ざった香りが漂う中、再度肉粒を責める。

 

 ――今度は同時に。

 

「ぅ、あっ!?」

 

 処女でも自慰に使うであろう快楽器官。

 乳首を唇で噛み、恥部から僅かに上でザクロの実のように硬さを帯びた陰核を指で摘まむ。

 密着し再度唇を奪い取り、ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと抽送を繰り返す。

 

「ぁっ……ん、ゃっ、ぁん……!」

 

 徐々に艶の籠った声が少女の嬌声に加わる。

 男を誘う淫靡な声音、それを無意識のうちに彼女は俺に聞かせ始めた。

  

 もっと聴かせろと乳首を噛むとじゃらりと手錠の鎖が鳴る。

 ふと思い出し、電気マッサージ器具の振動を最大にした状態で陰核に宛がう。

 

「それッ、んんっっッ!! 〜〜~ッ!!」

 

「っ」

 

 唐突に怒張が媚肉に食いつかれる。

 膣奥から滲む熱い蜜を感じ取り、きゅううっと締め付けられると射精感が高まる。

  

 ぴちゃぴちゃと噴き出す飛沫が腿に掛かる。

 少女の臀部と椅子を濡らし、下の水たまりに蜜を溜めこませる。

 

「あっ、ぎゅってしちゃ……ダメぇ……っ! ンっ、んふッ……んぅぅ―――」

 

「ん―――」

 

 とん、とん、とスローペースで最奥をノックすること数分。

 拘束された少女の裸体を抱きしめ、抱擁と熱い口付けを行い、執拗に責め立てる。

 

「ぁっ、ひゃ、あ……! まら、イっ……ッ!」

 

 見開かれた少女の瞳、ぎしりと軋む椅子。

 飛沫となった愛液は機械によって淡々と、手によって丹念に飛び散る。

 釘を打つように腰を動かし、椅子に拘束したあどけない少女を汚す悦び。

 

 酩酊したように蕩けた表情を見せる少女の唇から舌を吸い出す。

 柔らかい舌を唇で吸い込み、されるがままに自らを差し出す少女は素直に快楽を享受する。

 

 にじゅにじゅと猥音を響かせ、トントンとストロークを繰り返す。

 そして――、

 

「ぁぁぁっっ―――!!!」

 

「っ」

 

 媚肉から怒張を抜き出すと勢いよく噴き出す白濁が夏凜の身体を汚し尽くした。

 無垢な少女の裸体、その下腹部に吐き出す中、白く染まる視界に暫く目を閉じ堪える。

 

「――――」

 

 立ち眩みに近い現象を乗り越えて目を開ける。

 ぼんやりとした表情の夏凜は、じっと自らの身体に付着した白濁を見つめていた。

 

 セーフだろう、そんな思考が一瞬過る。

 残念ながら時間を巻き戻るマシンも時計も持ち合わせてはいない。

 

 はふ、ひゅと息を切らした夏凜の拘束を解き、ぐったりとした少女を寝台に運ぶ。

 いつの間にか意識を失ったのか、寝息を聞かせる少女を横たわらせ、周囲を見やる。

 

「――まあ、なんとかなるさ」

 

 惨状とも呼べる部屋には淫靡な匂いや散乱した衣服、液体が混ざり合っている。

 立て掛けた端末を回収、まずは掃除を行うかと半ば現実逃避気味に衣服を着直した。

 

 

 





感想ありがとうございます。
ほんと、モチベーションと感想って大事ですねというのを再確認。


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第二十六話 たった一度の

「最近、お姉ちゃんの様子が変なんです」

 

 そう告げる少女の名は犬吠埼樹。

 短めな金髪を揺らし、眉を顰めて告げる少女がそう告げたのは、夏凜との行為から二日が経過した頃だった。

 

 姉御肌でありながら名誉部長である樹の姉――風の様子がおかしい。

 小動物を連想させながらも現勇者部部長として成長中の少女が告げる言葉。

 

 人間誰にでも悩み事の一つや二つあるだろう。

 それは当然、彼女の姉である風もしっかりと当て嵌まるだろう。

 

 特に風の場合、一人で抱え込み、溜め込んで爆発するタイプだ。

 意外と妹よりもメンタル面では心配だと思うのは、勇者の満開システムの代償の存在を知った時の風の行動が原因だろうか。仲間を想い家族を愛する少女は、闘いに巻き込んだ責任を一人で抱え込み、誰にも相談せずに爆発したのだ。

 

『大赦を……潰してやる……ッッ!!』

 

 激情を隻眼に湛え、怒気を隠す事なく暴れまわる風。

 あの光景は瞼の裏で鮮明に記憶している衝撃的な出来事の一つだ。

 

 流石にそこまでの事には至らないだろうと俺は当時の思い出を振り返りながら樹に問い掛ける。珍しく勇者部の面々ではなく亮之佑に相談との事で、場所をハンバーガーショップに移していた。

 うどんバーガーなる物があったが、本日は冒険をしないと決めた為に無視である。

 

 それはさておき、初めて会った頃とは比べ物にならない成長を樹は見せつけてくる。

 去年ならばきっとこうして二人だけで食事をする事など無かっただろうから。

 その行為から樹の俺への信頼を感じ取って――、

 

「ご指名ありがとうございますってな」

 

「えっ?」

 

「いや。それよりも、どう、変なんだ?」

 

 壁に耳あり障子に目あり、という言葉がある。

 相談というならば、普段行くうどん屋よりは知り合いに遭遇する可能性も低いだろう。

 

 包みを開くと茶色のバンズに挟まれたチーズやケチャップが覗く。

 それはチーズバーガーと呼ばれる代物であり、ボリュームに対して値段は安価だ。食べ過ぎは毒となり得るが、たまに食べる分には美味しいと思える実に不思議な食べ物である。

 

 乙女特有の心の準備が出来るまでは時間があるだろう。

 まろやかなチーズとトマトケチャップの酸味が舌上に広がる味わいを楽しみながら、そっと樹の方を見やると購入した商品には手を付けず、ジッと俺の方を見ていた。

 

「えっと……」

 

「……まあ落ち着きなよ。ちゃんと聞くからさ」

 

「は、はい」

 

 素直に頷き返す樹はポテトを手に取る。

 リスを連想させる食事姿を見ながら、暫く無言のまま食事を楽しむ。

 そうして互いに半分程食事を終えた頃に、ふと上目遣いをする樹は小さな唇を開いた。

 

「その、お姉ちゃんなんですけど、最近様子がおかしくて」

 

「ん」

 

 相槌を打つ。

 咀嚼しながらも、周囲の喧騒の中で、ただ一人の少女の声音に耳を傾ける。

 

「たまに遠い目をして、溜息をするんですよ、お姉ちゃん。はぁ……って」

 

「ん」

 

「どうしたの? って聞いてもなんでもないって……。御飯の量も普段より少ないし」

 

「――、でも二杯くらいでしょ」

 

「そうですけど……」

 

 樹がわざわざ亮之佑単体に相談をしてきた時点である程度の予想はしていた。

 そもそも相談事だというのならば、勇者部という自身が長となった部があるだろうと。

 私的な事であれ、あの個性豊かで才色兼備な彼女達なら笑顔で聞いてくれるはずだ。

 

 それがどうして亮之佑個人に相談なのか。

 亮之佑は自身の事をそこまで優れた人格者だとは考えていない。

 表面上は敵を作らないようにはしているが、それはあくまで保身の為だ。

 

 敵となり得るならば弱みを握り、脅す事は躊躇わない。

 家族、友人、財産。どんな人間でも生きている限り『弱み』という物はある。

 そんな事を考える亮之佑は間違いなく神樹を崇める優しい世界には相応しくない異物だ。

 だから――、

 

「どうして俺に?」

 

「あっ、えっと……」

 

 知らないふりをして、分からない表情を浮かべて、無垢なふりで問いかける。

 狼狽える樹の表情、視線、声の震えを観察し、自らの予想と一致するかを確かめる。

 

 泳ぐ彼女の瞳、それは時折亮之佑を見ていて。

 具体的には鼻の下付近をチラリと見る度に、姉譲りの瞳を揺らしていて。

 

「キス」

 

「――――」

 

「あー……」

 

 呟いた一言にピクリと反応する少女の姿に小さく吐息する。

 最近は忙しく忘れていたが、目の前の少女の姉とは少し『遊んだ』ことがある。

 

 火遊びとも悪戯とも、気まぐれとも言える。

 当時の『流れ』的に少し押した結果、思いもしない反応を示した少女もまた無垢な少女だったという事なのだろう。少し遊んだ結果、微毒が全身に広がるように、今頃になって『何か』が風に働きかけたのだろうか。

 

「そ、その……」

 

 挙動不審に目を泳がせる樹の小さな唇は震えてばかりだ。

 何かを思い出したのか頬を赤らめる様は、一輪の咲いた花を連想させる。

 

「樹」

 

「!」

 

「一度風先輩に会っていい? 多分解決できるよ」

 

「は、はい。勿論です」

 

「あ、でもその前に。買い物行っていい?」

 

 

 

 +

 

 

 

「はー……」

 

 溜息をする金髪の少女。

 長い金髪を黒色のシュシュで二つに纏め、首には白いチョーカーを付けた姿。

 窓辺に佇み、物憂げな表情を浮かべる姿は不思議な事に似合っていた。

 

「窓辺に佇むアタシって……、女子力高いわね……」

 

「――――」

 

「美少女、ここに極まれり」

 

 ボソリと呟く言葉に鼻で笑う。

 馬鹿にした訳ではない。ただ無性に笑いたくなっただけだ。

 

 風も美少女である事は間違いない。

 友奈とは異なる快活さと周囲を纏める力は確かな物である勇者部のリーダー。

 責任感も強く、家庭的と、チアリーダー姿で男子の目を奪い告白された事を何度も自慢しなければ、間違いなく風は『良い人』だ。

 

「お姉ちゃん」

 

「……樹、と!?」

 

 此方を見た瞬間、窓辺から床へと転げ落ちる風を見る樹。

 どこか残念そうな顔をしているのは気のせいだろう。

 

 風の部屋に入り込んだ樹と俺は出口であるドアを閉じる。

 樹には何とかすると告げただけで、何をするかは伝えていない。

 

「りょ、亮之佑!」

 

「あ、どうも。あれ~、どうしたんですか、先輩? そんなに驚いて」

 

「い、いや、だってアンタ」

 

 かぁぁっと顔を赤らめる風。

 それは窓辺で一人黄昏れていた姿を見られた事への羞恥か、或いは別の事か。

 私服らしきカジュアルな服装は、乙女を自称するだけあって非常に似合った装いだ。

 

 短めのスカートとパーカーはどこか讃州中学校の制服を連想させる。

 清楚感を漂わせる姿は遠目から見れば令嬢としても通じるのではないだろうか。

 

「ちょっ、やだ、もう……褒めすぎ」

 

 風とは以前の口付け以来、キチンと顔を合わせた事は無い。

 勇者部という接点が無ければ犬吠埼家との繋がりはたまに訪れる程度だ。

 その訪問もあれ以来無かったので、驚愕の理由としては頷く事も出来るだろう。

 

「まあまあ、落ち着いて」

 

「まあまあって……」

 

「まあまあ。ほら、これでも飲んで」

 

 ストレスの捌け口とは大事だ。

 どんな時でも塞ぎ込むと後々面倒な事になる事を知っている。

 その原因がどうであれ、対応方法は人生の中で磨いてきたのである。

 

「はいはい、お客さん。飲み物とお菓子はありますね~。ではこれより、出張版☆奇術、始まるよ~! これから二人を虜にしちゃうぜぇ」

 

「えっ、えっ? 何この展開」

 

「ほら、お姉ちゃん座って」

 

「う、うん」

 

「――イッツ、カガワ☆イリュージョン」 

  

 

 

 + 

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉんんんんっっっ……!!」

 

「あははははは……っっ!!」

 

 部屋には笑い声と泣き声が響いていた。

 この世界で地位の高い乃木家、その令嬢である園子を本気で感動させるレベルに昇華した奇術を目の当たりにした二人。たった二人の客なれども手を抜く事はせず、結果大盛況であった。

 

「凄すぎてよく分かんない、あっはっは……!!」

 

 小さな手でしかと甘酒の缶を手に持つ樹。此方が行う芸に関心を示しながら爆笑する姿は、普段の小動物然とした姿からは程遠い物である。

 甘酒で酔える少女は爆笑しながらも、しっかりと此方の芸に驚きを示す。

 

「今の、どこから水を出したんですか〜?」

 

「ヒミツ」

 

「……凄いわね、亮之佑」

 

「いえいえ」

 

「アタシなんて鳩の一羽も出せないから……ひっく」

 

「風先輩だって、やれば出来ますよ」

 

 犬吠埼姉妹の酒癖は驚くほどに対照的だ。

 泣き上戸と笑い上戸という姉と妹の興味関心を引く事に成功した為、奇術は終了とする。

 およそ三十分程の簡単な物だったが、姉妹の満足気な表情を見る限り大成功であるようだ。

 

 あくまで奇術は前座でしかない。

 前菜の前菜。僅かに生まれた溝を埋める為の切っ掛け。

 

「いや、そんな訳ないでしょ。無理だよぉぉ……っ」

 

「よしよし」

 

 獣の雄たけびを彷彿させる鳴き声で喚く風の隣に座る。

 何を思ったのか抱き着いてくる風の頭を撫でながら、ふと問い掛ける。

 

「最近どうです?」

 

「……何がよ」

 

「……」

 

「アンタの所為で、ちょっと寝つきが悪くなったわね。あと……」

 

 チラリと此方を見つめる風の吐息は熱い。

 どこか虚ろな瞳が見つめる先は俺の鼻先よりも僅かに下、唇だろうか。

  

「寝つきが悪い? 夜な夜な、何かしてるんですか?」

 

「し、してないわよ。変な事言うんじゃないわよ」

 

「そうですか……」

 

 どこか狼狽えた表情をする風は、俺から視線を外す。

 元々甘酒などに大したアルコールは入っていない。時間が経過すれば酔いは醒め、如何なる上戸も素面に戻るのは当然の摂理だ。

 姉が向ける視線は、寝台に寝転がる樹に向けられている。

 

「あの様子なら、そうそう起きないだろうな」

 

「……っ」

 

「ねえ、先輩。あの時の質問の答えが聞きたいのですけど」

 

 つるりとした太腿を撫でると、程良い脂と肉が乗った両脚が僅かに震える。

 小さな絨毯の上で二人。既に酔いは醒めたのか、しかし逃げる事の無い風に問い掛ける。

 

「あれよりもっと凄い事、しますか?」

 

「――――」

 

 空き缶が二つ転がる床には小さな麻袋がある。

 軽い袋にはナッツが一粒だけ残っており、静かに指で摘まみ、無言のまま差し出す。

 

「……」

 

 差し出されたナッツを唇で挟み、ぽりぽりと咀嚼する風。

 

「お酒の所為にも、出来ますよ。酔ったからって」

 

「……」

 

 ちゅく、と口に含んだ仕草は僅かに扇情的で、底知れぬ熱を感じさせる。

 差し出した指先は宙を漂い、何となしに少女の柔らかく厚い唇をなぞる。

 

 恋人と触れ合うかのように親愛を籠めた指先に、風は目を細める。

 そうして顔を背けようとする少女の動きを封じ込めるように頬に手を宛がう。

 

「……!」

 

「……しますか?」

 

 二度目の質問。

 ただ、その言葉は大幅に言葉が抜かれ、端的に少女の脳裏を駆け抜ける。

 徐々に狭まる互いの距離を邪魔する者は無く、やがて――、

 

 

 

「…………する」

  

 

 



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第二十七話 調子に乗り出す奇術師

 ――舌先がぬるりと絡みあう。

 

「は……ぁ……」

 

 にちゅ、にちゅ、と唾液が絡む音を響かせながら舌を絡ませる。

 覚束ない少女の舌を導くように、案内するように、丹念に味わう。

 

 丹念に、丁寧に、執拗に、粘着質に、少女の身体を解していく。

 奉仕をするように、怯み逃げようとする舌を強引に絡め取り、優しく吸いとる。

 

「ン……っ」

 

 否、するようにではない。それは紛れもなく奉仕であった。

 怖がる少女に甘い毒を注ぎ込むように、口腔奉仕を続けて教え込む。

 

 快楽という甘い甘い毒を浸透させられる――。

 

「……んっ、ぁふ………」

 

 繰り返されるキスにどこか虚ろな表情を浮かべる少女。

 愛し合っている訳でも無いキスはひどく淫靡で、ただ快楽を求める行為だ。

 

「ぅ……、ぁ、っ」

 

 可哀そうな程に顔を赤くした風。

 快楽を知り始め、それに溺れ始める女の息は荒く、目端に薄く涙を浮かべている。

 舌の感触を、柔らかさを、見下ろす少女に教え込む度に絨毯の上で哀れな程に息を荒くする風の姿に普段の面影はない。

 

 苦し気に息をする度に唇を塞ぐ。

 歯列をなぞり、唇を重ね合わせる度に絡んだ唾液が風の口端から垂れ落ちる。

 

 頬肉の柔らかさを。

 舌裏の柔らかさを。

 キスという行為を。

 

 一人では決して知ることの出来ない知識を植え付けていく。

 

「は、ぁっ……、ふ……、……っ」

 

 キスをした際の呼吸の仕方が分からずに鼻息を荒くする風。

 その姿に小さく笑みを浮かべ、抗議の声を上げられる前に薄い唇を奪い取る。

 

「ンんっ!! ……!」

 

 溺れ始めているのだ、彼女は。

 男に導かれて、唐突に快楽の海に落とされて、必死に息をしようと。

 溺れる者が藁を掴むように、もがくように俺の腕をぎゅっと掴む風は普段の姿からは想像もつかない程に可愛らしく、小動物を思わせる姿に樹の姿を連想させてしまう。

 

「可愛いよ、風」

 

「っ、……! ぁ、もうやめ――」

 

 せめて顔を背けようとする少女の横顔に唇を宛がうだけのキスをする。

 頬に、首筋に、鎖骨に、唇と少女の柔肌が触れる度にぴくっと身体を震わせる。何かを怖がるように腕を掴んでいた手からは少しずつ力が抜けていく。

 

 そうした反応を見ながら、ふと風に囁きかける。

 

「キスは好き?」

 

「そんな、ことは……」

 

「嘘」

 

「ひゃん……っっ!」

 

 つるりとした腿を撫で上げると聞いた事も無いような甘い悲鳴を漏らす風。無意識に漏らしたのか、数秒の時間を置き、頬を朱色に染めていく様は美しき紅葉を思い出させた。

 ただ撫でただけ。驚きと僅かな快楽を混ぜた悲鳴に少女の顔を見つめる。

 

「……い、今のは違うからっ! その、ほらっ、驚いただけっていうか」

 

「そうなんだ」

 

「いや、本当に!」

 

「恥ずかしいの?」

 

「は、恥ずかしいに……っ、んッ!」

 

 するりと腿から股の付け根へと手のひらが滑り込む。

 むわりとしたスカート内、僅かに汗ばんだ内腿と恥部を隠す下着に指先が触れる。

 

「っ」

 

 息を呑む風は咄嗟にスカート内に伸びた腕を掴む。

 随分と弱々しい力は非力な少女である事を理解させると同時に嗜虐心を煽らせる。

 だが、止めて欲しいなら、どうしてそんな羞恥の表情を浮かべて首を振るのだろう。

 

 指先が、中指が下着越しに恥部を撫でる。

 ぴくんと腰を動かす中、想像だけを頼りに下着を撫でるとぬるりとした感触が指先に伝わる。内股になり閉じようとする両脚を力で隙間を作り、ガラス細工を扱うように淫靡な蜜を吸った下着越しに恥丘を上下に擦る。

 

 すりすりと中指で撫でる度に熱い滴が染みを広げていく。

 ゆっくりとした動きで、貝肉を手のひらで揉むように愛撫をすると吐息に熱が混ざる。

 

 されるがままに抵抗の少ない少女を見下ろすと、薄く目を開いた風が此方を見上げる。

 腕で抱いた頭を僅かに上げ、羞恥の涙を浮かべながら、せめてもの抵抗に口火を切る。

 

「……変態」

 

「――――」

 

「随分とっ、手慣れてるじゃない……」

 

 時折漏れる嬌声を必死に隠し、それでも漏れる甘い声の合間に必死に虚勢を張る。

 それは見て分かる程度には薄い虚勢であって、今更ながら先輩としての威厳を保ちたいのか。その姿は数日前の夏凜を思い出させ、同時に比較対象を持つ自分自身に哂ってしまう。

 そんな俺に眉を顰める風を可愛がるように薄く笑い掛ける。

 

「……変態なのは風先輩ですよ。自分がどれだけ濡らしてるか、分かりますか?」

 

「―――!」

 

「ぬちゅぬちゅって音しているの、聞こえます?」

 

「……ッ、っ、ぁ」

 

 顔を赤らめた少女は事実を拒否するように薄く開いた目を再びぎゅっと閉じる。

 だが、目を閉じれば同時に聴覚の方が敏感になる物だ。姉妹と俺以外に音を出す存在は無く、ちゅくちゅくと淫靡な音を聞かせているのを自ら理解しただろう。

 

 ザクロの実のように硬さを帯びた肉芽を親指で撫でる。

 下着越しに感じる小さな肉粒は親指が触れるだけで少女を小さく喘がせる。

 じわりと下着に新しい染みが広がっていく様を指の腹で感じ取りながら囁く。

 

「先輩。可愛いね」

 

「……!」

 

 再び開かれた瞳は先ほどとは異なり、僅かな熱を孕んでいた。

 顎を持ち上げ、何かを告げようとする風の唇を塞ぐと、唐突に風が仰け反る。

 

「んッ――!! ぁ………」

 

 唇を離し、見つめた少女の顔は虚空を見上げパクパクと口を動かしている。

 どこか見覚えのあるその表情を見るに、軽く絶頂に達してしまったらしい。

 

 驚くほどに敏感な少女に絶頂のご褒美として口付けをする。

 そうして葡萄の皮を剥くように、力の抜けた風の身体から衣服を剥いでいく。

 

 スカートはそのまま、ただ上着を脱がせる。

 部屋着故にか薄い布地越しに人肌を感じながら、ボタンを一つずつ外していく。

 

「ぁ、ぁの……」

 

 抗議とも困惑の声音とも取れる風のか細い声を聴きながらボタンを外す。

 黒曜石を連想させる黒色のボタンを外していくと、むわりと風の素肌から甘い匂いが漂う。

 

「恥ずかしいからっ……、そ、そのっ、女子力的にもこの辺で十分かな~……って」

 

「そうですか? ここで止めたら女子力はマイナスになりますよ?」

 

「えっ、そんなに下がるの……?」

 

「恥ずかしいと思う程に女子力は上がります。さっきみたいに絶頂する程に上昇します」

 

「い、イってないからっ!!」

 

「……」

 

「ホントだから! っ、……アタシくらいになればあ、あんなもん余裕よ!」

 

 衣服の下には、薄黄色のブラジャーが見える。

 彼女の肌を包むのは薄いシャツとブラジャーのみと、雄を前に随分と無防備だ。

 上着の前面を半分程開き、薄黄色の下着は乳房を包んでいるが簡単に外れそうだ。

 

 まだ男の手が触れた事の無い無垢な領域。

 汗が僅かに肌に浮かび、ブラジャーと乳肉の間を伝う光景を暫く見つめる。

 衣服を脱がされ黙り込む少女を余所に、眼下の光景を目で愉しむと手で乳房に触れる。

 

 風の乳房は餅を連想させる程に柔らかくしっとりとしている。

 くしゃ、とブラの形が変わり、ずれたことで隠れていた雪肌の乳肉が露わになる。

 

「ゃ……っっ」

 

 桜色の突起は既に硬さを帯び、羞恥を感じた乳房はぷるると震えている。

 咄嗟に隠そうとしたのか胸元に伸びる少女の手を掴むと、風と目が合う。

 

「っ」

 

 ふい、と横を向く風の横顔は赤い。

 そんな彼女の反応を見ながら、確かめるように舌先で乳房を口に含んだ。

 

「ぁっ!」

 

 小さく声を上げる風、唇で乳首を優しく愛撫する。

 指で弄るのも良いが赤子がするように肉粒を唾液で濡らしながら舐める。

 上唇と下唇を擦り合わせ、間の乳首を挟み込むようにしごくと喘ぎ声が漏れる。

 

「ゃ、ぁ……それ、っ」

 

 東郷にも迫らんとばかりの双丘は手のひらにズシリと重みと柔らかさを伝える。

 やわやわと下乳を揉みながら乳首を舐め転がすと、風が泣きそうな目で俺を見つめる。

 

 もっと優しくして欲しいのか。

 或いは虐めて欲しいのか。

 

 きっと後者なのだろう。

 そう判断した俺は、風の身体を抱き上げる。

 

「えっ、ちょ、ちょっと……ッ!?」

 

 あれだけ食べているというのに驚くほどに軽い少女の身体。

 突然抱き上げる俺に視線を向ける風を寝台に横たえさせると少女は驚愕の表情を浮かべる。

 

 それは突然の紳士的な行為に対する物ではない。

 酩酊し、初めての性的行為による物で視界が狭まっていた自らと目の前の光景にだ。

 

「ぁ……」

 

 樹が寝ている。

 事実としてはそれだけだ。

 

「………」

 

 自らが使用する寝台で妹が寝ている。どこかズボラらしい樹、それに加えて甘酒の所為か、或いは奇術でテンションが上がったのか、少し前から姉の寝台で寝転がっている少女。瞼は震え僅かに不規則な寝息を立てる樹に風は息を呑む。

 その寝顔は僅かに赤らんでおり、今にも起きそうな――、

 

「んっ、んぅぅ……」

 

 自らの口を手で塞ぎ、嗚咽を、悲鳴を、嬌声を抑える姉。

 妹の手前である事を酩酊していたとは言え忘れた自らを恥じ、そして自らの状態に羞恥を抱く少女は抵抗を、――あまりにも遅い抵抗を行い、男の嗜虐心をくすぐった。

 

「……静かに」

 

「ッ~~~!!」

 

 力の無い腕が俺の胸板を叩く。

 嫌々と無言で首を振る風を無視し、スカートを捲り上げる。

 上下セットだったのか僅かに花柄の刺繍が施された薄黄色のショーツは、汗と花弁から滴る蜜液で張り付いていた。するりと下ろすと風の蜜は透明で、糸を引いていた。

 

「ぁ、ぁ……!」

 

 風は恥部よりも自らの赤らんだ顔を隠す。

 抵抗する素振りを見せながら、拒むふりをしながら、既に待ち構えている。

 

 そっと両脚を開くと少女の花弁は程良く濡れそぼっている。

 髪と似た毛色の陰毛が蜜液で恥丘に張り付き、開いた陰唇から濃厚な雌の香りが漂う。

 

 チラリと少女の顔を見るが声を隠そうと必死な姿が目に映る。

 声を抑える気満々の少女だが、そんな彼女の腿を掴み媚肉を覗き込むと小さく声を上げた。

 

「ぇ、ちょッ……!?」

 

 俺はひくつく風の媚肉に問答無用で吸い付いた。

 じゅるるっと下品な音を立てながら貝状の肉から蜜を啜ると、風は突然腰を浮かした。

 

「やぁぁっ……!! ん――、んん……っ」

 

 ぎゅっと掴んだ風の腿に力が入るのが分かった。

 大きな瞳を見開き、喜悦の悲鳴を漏らすも慌てて押し殺す。

 

 哀れな程に顔を赤くする風は声を出す事も抵抗をする事も出来ない。

 動けば、声を漏らせば、抵抗すれば、自らの痴態を樹に見られる事になるからだ。

 だから風は我慢するしかない。男の手で与えられる快楽の暴力に、ただ耐えるしか――、

 

「っふ! くっ、んッ―――!」

 

 妹の為なら姉は頑張れる。

 ならどれだけ頑張れるのか。教えてくれないかと思い、ゆっくりと肉芽に顔を近づけると、気配に気づいたのか必死に両脚を閉じようとする風は悲鳴にも似た喘ぎ声を漏らす。

 

「や……」

 

「声、我慢してね」

 

 涙をじわりと滲ませながら風は声を押し殺す。

 その姿に笑みを浮かべそうになりながら、俺の舌が貝肉に届く。

 

 鼻先が恥毛にくすぐられながら、丹念に愛撫を始める。

 貝肉を舐め、時々クリトリスを舐めて、丹念に、執拗に絶頂へ誘った。

 

 

 

 +

 

 

 淫らな水音が止んだ。

 

 姉としてのプライドを守るため、何度も絶頂に達しても彼女は大きな声を上げなかった。汗を滴らせ、湯気と熱を絡ませ、シーツに自らの蜜で大きな海を作ろうとも。

 

「あ……ぁ……」

 

 それでも既に限界なのだろう。十分程度の攻防だが終わりは近い。

 スラックスを脱ぎ、反り立った怒張を風に見せつける。頬を桜色に染め、しかし顔を隠す指の隙間からしっかりと怒張を見つめる姿は興味関心がある事の証明になるだろう。

 

「……!」

 

 対面座位で、先端が秘裂に沈む瞬間を風と共に見つめる。

 そして――、

 

「ぁ………ぁ、あ!」

 

 同時に肉芽を指で摘まみながら奥深くまで挿入する。

 ぬるりとした媚肉が怒張を受け入れるように、ぎゅっと締め付ける。

 

「んぅ……ッッ……んぁあっ!!!」

 

 クンニリングスで沈黙の舞を披露した風に体力は残されていない。

 僅かに余裕のある表情を見下ろしゆっくりとピストンを繰り返しながら、そのまま親指と人差し指で肉芽を弄ると恥も外聞も無く風はぐんと背を反らし、再び天国へ。

 

 幾度にわたる絶頂で思考を塗りつぶされ、首を仰け反らせる風へストロークしながら肉芽を弄り続ける。処女でも感じる快楽器官は彼女の普段の自慰に因る物か、簡単に少女を絶頂に導く。

 肉芽を潰す度に、熱く濡れた媚肉が怒張を締め付ける。

 

「ぁ、いッ、や……やりゃっ、ぁ、あぁぁッ!!」

 

 必死に声を抑える理性すら決壊し、嬌声を少女は寝台に響かせる。

 敏感になった風は奇術師のテクニックと肉芽への集中的な愛撫で絶頂の波に揉まれている。

 

 虚ろな瞳、我慢を忘れ、口端からは粘度の高い唾液がシーツに垂れる。

 いやらしさの増す雌の香りが室内に漂い、脛骨部と臀部がぶつかる音が響く。

 

 シーツが乱れる音、寝台が軋む音。

 嬌声を漏らす風の唇を塞ぎ、ストロークと同時にクリトリスを責める。

 やがて――、

 

「〜~~~~~ッッ!!!」

 

 怒張による物か、愛撫による物か、両方か。

 何度目かの絶頂に達し、締め付ける膣内から竿を引き抜く。

 せりあがる射精感に逆らわず、手で数回程しごくと白濁が風の白い腹に掛かる。

 

「っ」

 

 虚脱感と共に鮮明になる思考。

 そして僅かにぐったりとした風を余所に、たった今出した精液を指で掬う。

 

「――――」

 

「……」

 

「気づいてるよ」

 

「……え?」

 

 そうして眠る少女の、――眠ったふりをした樹の唇を指でなぞる。

 ぴくっと肩を震わせる樹、そして俺の言葉が聞こえたのか小さな声を漏らす風は慌てて隣の樹に目を向ける。風の健闘にも関わらず、結局自らの痴態が妹に見られていたのか。

 

 当たり前の事実だ。

 だって、こんな事をしていて起きないはずがない。

 

 否、そもそも少女が最初から眠っているという事実すら――、

 

「……いつき?」

 

「………」

 

 ――ぺろりと精液を塗った唇を舐めとる音がした。 

 

 

 



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第二十八話 塞翁が馬

 ちろちろと小さな舌が唇を舐める。

 味わうように、或いは未知の味に戸惑いと好奇心を覚えるように。

 目を閉じ、僅かに頬を赤らめた少女は、遠目から見れば寝ているように見える。

 

 だが、至近距離で見れば分かる。

 不規則な吐息、僅かに身体を震わせる姿、そしてそれは――、

 

「い、樹……」

 

「……」

 

 微かな震えを孕んだ姉の声が耳朶に届いた時、妹は薄く目を開く。

 情欲の熱にあてられて、姉の淫靡の声に誘われて、既に火照った少女の瞳。

 

 姉よりも短い髪の毛を揺らし、どこか気まずそうな表情を見せる樹。

 半裸の少女の隣で、散々姉の淫靡な声音を聞かされた気分はどんな物なのか。

 

「聞いてた……?」

 

「……うん」

 

「いつ、から」

 

「途中から、お姉ちゃんの苦しそうな声が……、えっと……」

 

「――――」

 

 寝台から立ち上がる力も無く横たわる風の傍で、樹は口を開く。

 姉の淫らな姿というのは、性的な経験の乏しい樹にとっては毒なのだろう。

 現に顔を紅潮させ、俺と姉の身体から目を背けている。

 

「気持ちよさそうな声、してたから……」

 

「これは、その」

 

 今更ながら弁解をしようとする風の白い腹を白濁が流れる。

 粘性を帯びた体液は咄嗟に上体を起こそうとした風の腹部からシーツに垂れる。衣服と髪を乱れさせ、精液と汗塗れの女の言葉では否定出来ない。

 何よりも、最も身近で寝たふりをした妹には、特に。

 だが――、

 

「ひゃっ!」

 

「ん~」

 

「ちょ、ちょっと……」

 

 樹の履いたスカートの中に手を滑り込ませ、腰に手を回すように下着に触れる。

 少女の喘ぎ声を、肉と肉がぶつかる音を、唾液を交換する音を、家族が女にされる姿を、最も近くで見聞きしていた樹の秘裂は下着越しでも分かる程に濡れていた。

 小柄な体型の彼女は風よりも軽く、此方を見て顔を赤らめる姿は風に似ていた。

 

「初めて見る?」

 

「……!」

 

「そんな訳ないよね、……前にも見てたしね」

 

「ち、ちがっ」

 

「エッチ」

 

「――――」

 

 起きなければ、何もしなかったのだ。

 精液を唇に塗って遊んだだけで、我慢していれば何もしなかったのに。

 目の前の餓えた男を前に、無垢な少女が何もされないと思っているのだろうか。

 

 言葉の意味を理解して目を見開く風を余所に、硬直する樹の衣服を脱がす。

 抵抗もなく薄緑の上着を、インナーを剥くと、滑らかな少女の素肌が曝け出される。

 

「お姉ちゃんと同じこと……したいでしょ」

 

「それは……」

 

「亮之佑。アンタ、何して――」

 

「はい、黙って」

 

「ゃんっ!?」

 

 細い体躯を包む純白の下着のみとなった妹の隣ではしたない声を上げる姉。

 程良く成熟した風の秘裂は先ほどまで男の物を咥えていたからか、俺の匂いの染み込んだ媚肉は簡単に俺の指に吸い付いた。   

 

 ぬちゅ、と淫靡な音が響き、樹は息を呑む。

 いきなり衣服を剥ぎ取られ、細身の白い肌を男の前に晒す少女は、それ以上に晒され、辱められ、快楽を教え込まれる自らの姉の姿を、大きな瞳を見開いて見ている。

 

「んっ、ゃ……やだっ、ぁん!」

 

 妹に手を出す男に抗議をしようとする姉の割れ目は、僅かな火照りを残していた。

 だが、消えかけの情欲の火に薪をくべるように指の腹で媚肉を撫でると、豊満な乳房がぷるぷると震え喉から喜悦を漏らす。

 

 その姿を、少女は見つめる。

 

「い、樹、見ないでぇ……! や!!」

 

「お姉ちゃん……」

 

 これからどこに飛ばされるのか、それを知った彼女は慌てて俺の腕を掴む。

 だが力の籠っていない弱々しい女性の手では、俺の愛撫を止める事は出来ない。

 嫌々と首を振り、新鮮な愛液を滴らせ、嬌声を隠そうとする姿は一言で言うと――、

 

「いやらしい先輩だよね」

 

「んんっッ! ま、ほんとにっ」

 

「樹ちゃん。しっかり見ててね」

 

 こうして複数の女性と『遊ぶ』と、身体の違いが分かるようになる。

 どこが性感帯か、どこを弄るとどんな声を上げるのか、経験を積むと不思議と分かるのだ。

 

「俺って最低だ……」

 

 自らの思考に一人呟きながら、風の媚肉の浅い部分を指の腹で撫でる。

 僅かに他の膣壁とは異なった感触を周囲の膣壁と共に弄ると、風は顔を赤くして首を振った。

 ふわりと俺の鼻をくすぐる長い金髪からは汗の匂いと雌の香りが漂う。

 

 にじゅにじゅという淫靡な水音。

 シーツに泉を作る姉の花弁と、悶える姉の赤らんだ顔。

 それらを交互に見つめ、時折肉棒をチラリと見やり、純白のショーツを手で押さえる樹。

 

 無意識なのか、淫靡な空気と雰囲気に惑わされたのか、細い指は下着越しに恥部に触れる。武骨な男の手ではなく自らの手で、自分のペースで自慰に耽る。俺の存在を忘れたかのように、法悦の空に上らせられる姉を見て樹は自慰をする。

 

 興奮しているのだ、樹は。

 今にも絶頂に達しそうな淫らな姉を見て。

 

 純白の下着を、クロッチを自らの愛液で汚し、染みで張り付いた秘裂を上下に摩る。

 自らソフトブラをずらし薄い乳房を露出させる。的確に自らが感じるように乳首のみを摘まみ、熱い吐息を漏らす樹は、この雄と雌の香りと音が漂う空間で酩酊状態を起こしているのだろう。

 

 普段ならば決してしない異性の前での少女の自慰。

 羞恥よりも自らの姉が辱められる様を見る事を優先する観客。そんな可愛らしい少女に応えるべく、情欲の炎を灯す為、俺は中指を鉤爪状に曲げた。

 

 それだけで――、

 

「んむぅぅう……ッッ!!」

 

 一匹の獣となった少女はきつく目を閉じ、背中を仰け反らした。

 ぷし、ぷしゅ、と噴き出した愛液が俺の腕に跳ね、風は妹の前で絶頂に達した。

 

「ぁ、ぁ……!」

 

「お姉ちゃ」

 

「樹」

 

「――――」

 

「おいで」

 

 ぴく、ぴく、と身体を痙攣させる風を見ながら俺は樹を手招きする。

 そうしてやっと自らがしてる事に気づき赤面、そして既に再起を遂げた怒張を見て耳まで赤くする様子は初々しさを感じさせる。

 

 顔を赤らめながらも四つん這いで俺の元に近寄る樹。

 陰茎に視線を感じながらも、そんな彼女を抱き寄せる。

 

「あ、あの、亮さんっ」

 

「うん?」

 

「その……、お姉ちゃんと同じことを……、ぉ、お願いします……」

 

「ん」

 

「優しく……してくださいね……」

 

 男優になった気分で頷き、気をやった風のすぐ隣に樹を転がす。

 姉の豊満な乳房、弾力のある尻肉とくびれた腰は成熟した女のソレだ。

 対して妹の乳房は薄く、尻肉も薄いが、くびれ始めた腰と石鹸のような肌は滑らかだ。

 

「樹、ぼた餅をもっと食べようね」

 

「ふぇ? 何の話ですか……?」

 

 横に並べる事で姉妹の身体の違いを確認したのは、男の中で自分だけではないのか。

 そんな事を妄想すると陰茎がピクッと震え、その様子を見た樹が小さく息を呑む。

 

「い、生き物みたいですね」

 

「触る?」

 

「じゃあ、えっと……」

 

「キスしながらにしよっか」

 

「ぁ……」

 

「お兄さんに任せて」

 

 

 

 +

 

 

 

 蕩けた表情に姉妹の共通点を見出す。

 隠れて見る程には興味があったのであろう『キス』という行為への反応だ。

 

 友達同士がするような軽い唇の触れ合いも。

 男女がするような下品な唾液の交換も。

 たった今、それらを全て経験していく少女は喜悦の嗚咽を漏らす。

 

 小さな少女の脳裏で描くような口付けも、赤面して見るような大人の映画で見る接吻も、実際に体験した感想は一体、どのような物だろう。

 

「わひゃら、……ないです」

 

 息継ぎの合間に、互いの唇を繋ぐ透明な糸を舐めながら尋ねると、樹はそう答えた。

 

 分からないと。

 

 顔を赤くして、小さな胸肉を優しく揉まれながら。

 先ほどまで肉棒を触っていた手で、必死に腕を掴みながら。

 

「ンっ……ぷぁ! はぁ、はぁっ、……ん――」

 

 必死に息継ぎをしようとする小柄な少女の身体を抱き、口腔行為を続ける。

 

 もう一度頬肉の柔らかさを教え、舌の絡め方を教え、仰け反らした首筋にもキスをする。

 いつの間にか虚ろな瞳となった樹の額に張り付いた前髪を払いのけ、耳をくすぐると小さく身体を震わせる。そんな小動物を可愛がる獣の気分で笑い掛ける。

 

 まるで恋人のように可愛がりながら。

 何度目かの大人のキスで、口端を伝う唾液に関心を向けなくなった少女。

 

 白い裸体は、口付けをした場所だけが赤らんでいる。

 ん、んふ、と荒い吐息をしながら、自分から舌を出す樹は突然目を閉じる。

 

「~~~~!!」

 

 様子を見るに小さく絶頂に達したのだ。

 耐えるように、或いは味わうように目を閉じる樹は腰を震わせる。

 

「ぁ、ゃ……!」

 

 水中から顔を出したように大きく息を吸ったのを見計らいながら、僅かに腰を揺すると小さく悲鳴を漏らした。自らが絶頂の余韻に浸っている中で恥部を擦られるのは刺激が強いのだろうか。

 

「……素股は好き?」

 

「す、また」

 

「これ。こうして擦るの」

 

「は、ぃ……、ッ」

 

 何度目かのキスで始めた素股。

 にじゅにじゅと恥部で猥音を響かせながらキスをする。

 亀頭が無毛の恥丘を擦る度に小さく身を震わせる少女と下品なキスをする。

 

「ん……ぁ、ぁ……!」

 

 腕を掴むと同時に小さく絶頂の余韻に浸る少女。

 何度目かの余韻に涙を浮かべながら、僅かに腰を浮かせる。

 そんな事を粘着質に繰り返し、ふと怒張の先端が一瞬、にゅるりと小さな膣口に入り込む。

 

「ッ」

 

 思わず息を呑む樹。

 何度目かの『事故』に、俺は何度目かの台詞を告げる。

 

「そろそろ良い?」

 

「……!」

 

「――――」

 

「……はい」

 

 何度目かの質問で、ようやく得た樹の肯定。

 和姦成立とばかりに樹の小さく狭い膣内に、奥の奥へ怒張を挿入する。

 

 蠢く肉壺の締め付けに奥歯を食い縛る。

 雄の肉棒の侵入に小さな雌肉が子種を求めて花弁から蜜が垂れる。

 

「は、ぁうっ!」

 

 緩慢な一突きで樹が意識を飛ばす。

 感度は姉よりも妹の方が高いという事を知りながらも、ゆっくりと腰を打ち付けると小動物は庇護を求めて、未知から逃れるように自らの姉に抱き着く。

 

「あ……ッ! おねえ、ちゃん……っ、おなかの……おくっ、ヘンだよぉ……!」

 

「っ、だいじょうぶよ……。お姉ちゃんがついてる、からっ………んぁッ!」

 

 樹を抱き寄せる腕は右手しか使用していない。

 残った左腕は姉の方を悦ばせる為に、彼女の恥部を弄り続けていた。

 

 互いの淫らな姿を見やり、喘ぎ、啼く姉妹。

 何度目かの空に男の手で上らされるのを恐怖し、怯み、期待する女達は空への旅の供を求めて互いの手を握り合い、豊満な乳房と薄い乳房が触れ合い形を崩す。

 風の乳房が餅のように形を変え、互いの硬い突起が触れ合い、姉妹は同時に呻き、背を反らす。

 

 どこか百合百合しい光景、だがそれは一人の男の手でもたらされている。

 指で、肉茎で、未知の快楽を教えられ、自らが女である事を身体で知らされるのだ。

 

 にじゅにじゅ、にちにち、と樹と風の秘裂から淫音が部屋に響く。

 鼻をくすぐる少女の甘い匂いと、雌汁と種汁が混ざり合った淫靡な空間に。

 

「おねっ、ぇ……ちゃっ」

 

「いつき………いつきぃ……、ンっ――」

 

「ん……っ! おねえひゃ……ふむっ……んんッ」

 

「ん、ぁ……いふ、ひ……っ、んっ……!」

 

 俺の存在を忘れたように互いを求めだす姉妹。

 少女達は目の前の薄い唇に、覚えたての知識を余す事なく披露する。

 全ては快楽の為、喜悦の悲鳴を上げ、唇を、乳房を、乳首を擦り合わせて慰め合う。

 

「そんなに抱き着いて、食べて欲しいのかな?」

 

 だが、その慰め合いに俺はいない。

 だから、それは二人だけの時にして欲しいとばかりに呼び掛けて噛み付く。

 

 あーんと口を開く。

 目の前には、白い乳肉と二つの肉粒。

 

「ひやぁっ!? ダメっ、吸っちゃ……ふあぁっ!!」

 

 赤らんだ乳首に吸い付く。

 ちゅぱちゅぱと赤子のようにどちらかの乳首を蹂躙し、吐息が自身の頭に響く。

 どちらかの悲鳴を聞きながら、竿を飲み込む少女の締め付けに下半身が蕩ける。

 

 びじ、びじゅ、と風の愛液が樹の腹部に掛かり、樹の臀部を俺の腿が叩く。

 三匹の獣は荒い息を聴かせながら互いの快楽を求め、やがてどこからともなく――、

 

「っ、……くッ!!」

 

「イっ、ぁ……あぁぁぁっっ!!」

 

「ゃ――、ぁ~~~~~ッ!!!」

 

 最後に子種を求める幼い花弁から怒張を抜き出し、吐精した。

 生まれたての白濁は行き先を求めて、絶頂に達する二人の恥部に飛び掛かった。

 

 風の陰毛に絡まる子種、樹の無毛の恥部に付着する白濁。

 びぐんっ、と跳ねた姉妹はそれらを交換するように互いの身体を擦り合わせる。

 精液の架け橋を作るように身体をぶつけあい、絶頂に達する様を、俺は見届けた。

 

 

 

 +

 

 

 

 姉妹との肉の祭りを行い、片づけ等諸々の事を済ませ自宅に帰る頃には、時刻は深夜を回っていた。近くのコンビニで買った栄養ドリンクを飲み、夜風に髪を揺らしながらテンションを下げていく。

 

「俺って最低だ」

 

 俺はドヤ顔でそう言った。

 遂に勇者部全員を抱いてしまった。

 快楽に無知な少女の身体を味わった自らに対する感想であった。

 

「――――」

 

 今後の事を思うと胸が膨らむ。

 夏凜や風、樹とのアレコレを考えると頬が緩む。

 夜空から見下ろす冴えた月ですら自らを祝福しているように思えた。

 

「ただいま」

 

 自宅の扉を開けて靴を脱ぐ。

 当たり前だが静かな廊下を歩いていき、階段を上る。

 そうして、自室の扉を開けて――、

 

「おかえり~」

 

「――――」

 

 園子だった。

 カーテンを閉めてないからか、月明りが少女の姿を照らし出す。

 金色の髪の毛が月明りに照らされて、その光景に思わず目を奪われる。

 

 それは一瞬の出来事だった。

 そして同時にそれは起きた。

 

「確保ー!」

 

「とぉー!」

 

「っ」

 

 唐突に床に倒される。

 背後からの一撃、死角から狙った二人分の重さと柔らかさを背中に感じ何事かと振り返ると、見慣れた顔が二人、東郷と友奈が呻きながら抱き着いてきた。

 

「何だよ」

 

「何だよ、じゃないよ。かっきー」

 

 ぐいっと顔を持ち上げられ、園子と顔を合わせて、息を呑む。

 どこか間延びした声音とは裏腹に、至近距離で見つめた少女の顔は、

 

「――浮気は駄目だよ」

 

 真顔だった。

 

 

 



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第二十九話 彼女は言った

 白い、白い月が亮之佑を照らしている。

 何もかも飲み込むような、あの世界よりも薄い闇夜を照らし出す冴えた月が無言で亮之佑を見下ろしている。だというのに、俺が見上げる先に月は見えない。

 

 見る方向を間違えている訳ではない。

 ただ、窓から見える丸い月と俺の間を阻む一輪の花が月光を隠しているからだ。

 

「――――」

 

 細い指が俺の顎に触れている。

 そっと持ち上げられた先に屈みこむ少女が一人。

 月より美しく、金髪は月明りを受けて、白皙の肌が照らされる。

 

 月光は隠されてなお、その薄光で彼女の金色の髪の毛を照らし、輝かせる。

 亮之佑を見下ろす少女の背後から滲み出る月光は、彼女を神々しく映えさせる。

 否、たとえ月明りが無くとも、彼女は、園子はいつだって――、

 

「その、ちゃん」

 

「――――」

 

 琥珀色の瞳が俺を見る。

 月を瞳に宿したような、穏やかで、静かな眼差しに俺を映し出す。

 

 視線が交錯する。

 何もかも見透かしたような眼差しで俺を見つめる園子は無言だ。

 一秒にも、十秒にも、ただ見つめ合うだけの時間の中、少女は小さく唇を開く。

 

 俺の呼び声には答えずに。

 先に目を逸らしたのは、彼女の方だった。 

 

「……わっしー、ゆーゆ」

 

「うん」

 

 背中に圧し掛かったままであった少女二人に園子が呼び掛ける。

 名前を呼び、反応する友奈と東郷は俺の腕を手に取る。特に縄や手錠で縛る事は無く、柔らかい布地に包まれたパン生地の如き双丘がふゆんと腕に触れる感触が伝わる。

 

 当たり前だが東郷の方が大きく、友奈はふわふわだ。

 それを悟られたのか、或いはわざとなのかチラリと此方を見る少女達。

 

「こっちだよ」

 

 指を絡ませて腕と豊かな双丘を当ててくる二輪の花。

 この手は振り解けないだろうとばかりにガッチリと掴まれながら、見慣れた自室を引き摺るようにして連行される。事前に打ち合わせでもしたような動きで俺は寝台に座らせられた。

 

 どこか異様な雰囲気に対し、ふと頭に腕を伸ばそうとしたが、拘束を解くことは出来ない。

 同じく正面に座り込み、此方を真正面から見つめる園子は僅かに眉を顰める。

 

「あー、今日って何かあったか? 誕生日とか、元旦とか」

 

「……違うよ」

 

 冗談めいた口調の俺に、琥珀色の双眸を向ける園子。

 時刻は既に真夜中と言っても良い時間帯だ。そんな時間に少女が三人、人の家でお泊り会をする可能性はあるとは思うが、それにしては家主に連絡の一つも無いのはおかしい。

 

「ねえ、かっきー」

 

「うん?」

 

「今日、どこ行ってたの?」

 

「どこって、まあ……ぶらぶらと、あっち行って、こっち行って」

 

 

「嘘」

 

 

「――――」

 

 軽々しい言葉はバッサリと切り捨てられる。

 微笑んだまま、少女はそっと腕を伸ばす。僅かに冷えた指先はひんやりと心地良く、頬を撫でられる度に少女からの優しさと親愛を感じた。

 だというのに――、

 

「……」

 

「……何が?」

 

 どこか冷え冷えとした眼差しが俺の居心地を悪くさせる。

 テストで赤点を取ったのを隠した子供を、あとで全てを知った親が叱る直前のような、そんな眼差しが。小首を傾げ、長い髪の毛を揺らし、穏やかに微笑む少女。

 

 一体、自分が何をしたのだろうか。

 久方振りに、とは言っても数日振りに顔を合わせた園子は、以前と変わりない。

 艶やかな髪の毛も、雪肌を思わす柔らかな肌も、長い睫毛も、琥珀色の瞳も――、

 

「――――」

 

 どこか普段よりも陰を宿した瞳。

 それはきっと月明りのみが照らす薄暗い深夜の自室だから。

 そう俺は思っていて。

 

「かっきーの事なら、私なんだって分かるんだから……」

 

 ポツリと呟く園子を見ながら、チラリと手を掴む少女を見やる。

 ゆったりとした私服を着た彼女達は、黙り込んだままジッと俺を見やる。

 普段の様子とは異なり、此方を見やる大きな瞳には光を見る事が出来ない。

 

 気のせいだと思っていた。

 自室に入ってから感じた悪寒を、気のせいだと、思いたかった。

 

 どこか普段と異なる異質な雰囲気。

 可憐な少女達に囲まれながら、俺は辛うじて呼吸を続ける。

 そうして正面を向くと、その行為の全てを観察でもしていたかのようにジッと俺を見つめる園子、その瞳に宿る感情を俺は読み取る事は出来なかった。

 

 ただ、ここで適当な回答は己の身を殺すと本能が告げていた。

 乾いた口内で舌を動かし、焦りを抑えて、正面に座り込む園子を見返す。

 

「私、知ってるよ」

 

「……何を?」

 

「かっきーから、他の女の匂いがする」

 

「――――」

 

 そう告げる園子は僅かに眉を顰め、腕を広げて首元に抱き着く。そのまま身体を押し付けてくるので園子に逆らわず背中を倒し、寝台に倒れ込む。手を掴んだままの友奈と東郷はしっかりと握ったままで、視界には金髪と左右に二人の少女が映りこむ。

 ぷわりと漂う甘い少女の香りが鼻腔をくすぐる中で、スンスンと鼻を鳴らす園子が見せる表情は虚無だった。東郷と友奈も何か言いたげながらも無言を保つ。

 

 

「浮気は駄目だよ」

 

 

 そう言いながら抱き着くように俺の首筋に顔を埋めて囁きかける園子。

 ここに至り、自らの状況を理解しながら俺は辛うじて頭を回し状況の打破を試みる。

 

 浮気。浮気と言ったか。

 浮気というのは、結婚後、妻以外の女性と性交渉を行う事であるが、この場合はどうなのだろうか。仮に全ての行いが目の前の少女にバレているとして何だというのだろうか。

 

 ……などと口に出したら三等分の奇術師にされるのは明白だろう。

 目のハイライトが消えたように見える少女達を相手に、俺は静かに口火を切った。

 

「よく分からないけど、夜も遅いし寝たいんですが」

 

「駄目」

 

 あくまで『知らない』というスタンスで対応する俺に対し、園子は首筋を舌で舐める。

 ぺろ、ぺろりと唾液を塗りたくるように、幸せそうな顔で俺の首筋を舐め続ける。

 全てを見透かしたように、否定を続ける俺に対し、薄い笑みを張り付けて園子は告げる。

 

 カチャン、という音が響く。

 金具が擦れた音と、手首に感じる僅かな異物感に俺は目を向ける。

 いつか見た事のある鎖の付いた手錠が俺の手首と寝台の端とを繋げていた。

 

「今度のはもっとしっかりした物だよ~」

 

「――――」

 

 たった今、俺は園子に監禁されたらしい。

 手錠を付けた相手、東郷の方を見ると深緑色の瞳を輝かせて薄く微笑んだ。

 

「これで安心ね」

 

「いや、安心じゃないから。外してよ、東郷さん」

 

「そのっちだけじゃなくて、私も亮くんを満足させられるよ?」

 

 どこか危うい光を宿し、園子と共に穏やかに微笑む少女に、俺は吐息する。

 既にどこか深い所に堕ちていたらしい東郷は右手を胸に抱きながら俺にもたれかかる。

 むにゅん、と腕を挟み込むパン生地のような柔らかさを感じながら、しかし今だけはその感触に感想を抱く暇は無い。

 

 美しい深海の如き瞳を俺に向けながら、東郷は俺の頬に口付けをする。

 柔らかくしっとりとした唇の柔らかさを頬に感じ、そこから伝わる確かな親愛に目を細めながら彼女の表情の変化に注目する。

 

 どこまでも穏やかな表情を浮かべている様は、まるで聖母のようだ。

 先ほどまでの無表情とは打って変わり、どこか安心したような優し気な笑みを浮かべて俺に笑い掛けてくる。――それは俺を捕らえる事に成功した余裕からか。

 

「一杯、すごい事、してあげられるから。だからもう、他の人と、こんな事しないで」

 

 区切るように、脳裏に届くように東郷の言葉が響く。

 ムニムニと服の上から主張する少女の双丘が腕に触れる度に形を変える。

 

「他の人……?」

 

「もう、亮くんったら。ふふっ」

 

 困った人を見るように東郷が俺の鼻を指でつついた。それがあまりに場違いな行動に思えて、俺の頭上をいくつもの疑問符が飛び交う。

 儚げに眦を下げて、慈しむように俺の頬にキスをする東郷は小さな声音で囁く。

 

「夏凜ちゃんや、風先輩の事よ」

 

「――――」

 

「わっしー、イッつんもだよ~」

 

「あら、そうね。流石そのっち」

 

「えへへー」

 

「――――」

 

 嬉しそうに笑みを浮かべる園子と褒める東郷の瞳はどこか濁っていた。

 少女三人と家主が占領する寝台の上では、話し合いではなく裁判が行われていた。

 弁護士はおらず、ただ裁判官と被告人がいる、あとは刑の内容を考えるだけの裁判だ。

 

「突然、なんてことは無いよ~」

 

「――――」

 

「かっきーは恰好良いし、優しいからね……」

 

「――――」

 

「多分、亮くんは火遊びだーって言うんだろうけど、駄目。浮気は男の甲斐性なんて言うけど、やっぱり駄目。……許さない」

 

 もう三人もいるんだから。

 そう告げる二人から目を逸らし、俺の左腕を抱きしめ続ける無言の一人に目を向ける。

 

 赤い髪の毛を揺らす少女は、薄紅色の瞳を輝かせて此方を見続ける。

 視線を合わせて数秒、にこにこと笑みを浮かべる友奈は俺の唇に触れる程度にキスをした。

 

「友奈……、お前もか」

 

「うん。夏凜ちゃんや樹ちゃん、風先輩にはちょっと悪戯しただけだもんね! 大丈夫だよ?」

 

「――――」

 

「でも、何回したの?」

 

「――――」

 

「ねえ」

 

 主語を省いた質問でありながら、友奈は自首を促してくる。

 ここまで来れば年貢の納め時だと、薄紅色の瞳を見つめながら俺は告げた。

 可能な限り最小の被害で済むように。

 

「……三回かな」

 

「……そっか。じゃあ、六回しないとね~」  

 

「えっ」

 

「私と~、ゆーゆと~、わっしー。一人六回ずつエッチしないとね」

 

「――――」

 

 瞬間、園子の言葉にバーテックスの一撃を受けた時よりも俺は呆けた。

 胸元に縋りつき、熱い吐息と雫の感触を感じて、園子との触れ合いで自分が必要とされているのだと実感した。だからこそ、目の前の少女の発言が本気だと感じられて――、

 

「あ、大丈夫だよ。乃木さんち特製ドリンクもあるから」

 

「楽しみね」

 

「――――」

 

 どうやら目の前の少女達は、頭のネジがどこかに行ってしまったのだろう。

 俺の衣服を脱がせ、自らの衣服を脱ぎ、下着姿になる少女達は改めて抱き着いてくる。

 

 右半身に東郷が。

 左半身に友奈が。

 胸板に園子が圧し掛かり、抱きしめてくる。

 

「亮くん。これから先も、貴方の為に心を尽くします」

 

 右耳に薄青色の下着のみを身に着けた東郷が囁きかける。

 

「かっきー。私を不安にさせないで」

 

 正面から紫の下着を身に着けた園子が囁きかける。

 

「亮ちゃん。ずっとずっと一緒だよ!」

 

 そして左耳に甘やかな声音で、ピンクの下着を身に着けた友奈が幸せそうな笑みで囁いたのだった。

 

 

 

 +

 

 

 

「はっ」

 

 瞼を開く。

 全身を包み込む倦怠感。

 

 滝のように流れる汗が頬を伝うのを気にせず、視界が鮮明となるのを少し待つ。

 ぼんやりとした意識の覚醒を促し、大きく呼吸をすると夜の匂いが鼻腔を擽る。

 

「――――」

 

 亮之佑が見上げる空は、闇夜が広がっている。

 この世全ての夜を混ぜ合わせた夜が、果てなき夜が広がっている。

 星々も、雲も、その夜の前には存在を赦されず、唯一大きな月が世界に色を与える。

 

 周囲を見渡すと広がる草原。

 頭上から時折降り注ぐ桜は枯れる事を知らない。

 

 亮之佑が伏せていたテーブルは白色で、隅には皿が置かれている。

 皿の上にはクッキーが、そしてひらひらと小さな桜の花が視界を舞う。

 ふと、中空を漂う花弁の舞に目を奪われて――、

 

「やっと起きたかい」

 

 その声音を知っている。

 恐らく、亮之佑が生きる世界で、彼だけがその存在を知っている。

 この世界の不条理に抗う為に契約した悪魔を、少女の事を忘れるはずがない。

 その名を、

 

「初、代」

 

「まだ血の巡りが悪いようだね」

 

 クツクツ、と嗤う少女は小首を傾げる。

 艶のある黒髪は肩付近で切り揃えられ、特徴的な血紅色の瞳をしている。

 亮之佑が突っ伏していたテーブル、その反対側の椅子に座っていた少女。

 

 彼女は言った。

 

「キミは腹上死しました」

 

「――――」

 

「なんてね」

 

「――――」

 

「まあ、座れよ。六股野郎」 

 

 

 



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第三十話 六股した男の分岐路

 ゆらゆらと風に吹かれてカンテラが揺れる。

 桜の大樹の一本の枝、そこに吊るされたカンテラが周囲を照らす。

 

 仄かな光が映し出すのは黒髪、血紅色の瞳をした美少女だ。

 喪服を連想させる黒い衣服は勇者服とは僅かに異なりながらも、その白皙の肌を際立たせている。黒、白、赤。シンプルな彩が彼女を作り、その色こそ彼女に相応しいとすら思わせる。

 

「……ああ、語弊があったね」

 

「――――」

 

「最初から座ってたか。申し訳ないが発言は取り消しだ。六股」

 

 どこか含みを持った言い方、その一声に頬が強張る。

 客観的な事実に、言い返しても毒にも薬にもならない。含んだ声音にはその行為を責める訳でも、行いの愚かさに憤怒する訳でも無い。

 ただ客観的に、眼前の事実に嘲笑を浮かべるだけだ。

 

 それはいつもの事だ。

 ただ、気になる事があるとすれば――、

 

「いつの間に」

 

「うん?」

 

「……いつの間に、来たんだ。ここに」

 

 彼女との、初代との契約。

 この隔絶世界には代々加賀家に伝わる指輪を通じて行き来する。

 契約内容は割愛するが、彼女は亮之佑を通じて世界を見る事を可能とし、亮之佑は彼女から戦う力とその知恵を借りる。そして定期的にこの世界で密談を行う。

 

 だが亮之佑にはこの世界を来訪した記憶が無い。

 指輪を使用した記憶も、使用に至るであろう動きも、動機も、時間も、記憶にない。

 

「どうなってる」

 

「――地獄の天国という言葉に聞き覚えは?」

 

「――――」 

 

 テーブルに肘を突き、髪の毛を掻き毟る亮之佑に初代は淡々とした口調で応じる。

 その平然とした態度を見やり、亮之佑は意識的に深呼吸を行う。

 慌てたところでどうにもならない。冷静に足らない脳味噌には酸素を送れ。

 

 ――大体、聞き覚えがあるかだと?

 

「……昔、誰かに聞いたな」

 

「目の前の美少女に聞いただろ?」

 

「美少女?」

 

「……そうだが?」

 

 亮之佑の挑発にもすまし顔で答える姿は正しく本物。

 自称美少女に違わぬ様相、挑発も皮肉も物ともせずに応じる黒髪の少女。

 神世紀の人間との付き合いでは行う事の無い皮肉の応酬は互いに慣れた物だ。だが、本日は契約相手と戯れに来たつもりはない。

 

 適当な雑談を行う前に聞くべき事がある。

 軽口を叩きながら、回転する頭は簡潔に答えを導く。

 

「お前が呼んだのか」

 

「そう。……そんな目で見るなよ。寧ろ感謝して欲しいところだったんだが」

 

 感謝。そう告げる初代。

 唐突にこの世界に召喚される理由に心当たりは無い。

 訝し気な顔を向ける亮之佑を、血紅色の瞳に映す少女は吐息する。

 

 小さく吐かれた息は頭上に舞う小さな花弁を幾度にも回転させる。

 くるくると錐揉み状に回転してテーブルに落ちる桜の花を見ながら初代は頷く。

 

「いくら若いと言っても、流石にギリギリだったね」

 

「は」

 

「神世紀始まって以来の腹上死になるところだったね」

 

「……、テクノブレイクって格好良いよな。服が破けそうな必殺技みたいで」

 

「酒池肉林と言えども、天罰が下ったんじゃないかな。肉体的に」

 

「神樹から?」

 

「――――」

 

 沈黙を選んだ初代の態度に、亮之佑は血紅色の瞳を細める。

 初代と同じ瞳、先祖返りとも満開の影響とも受け取れる瞳の色は元に戻る事は無い。 

 

「いや、……自業自得じゃないかな」

 

「――まあ」

 

「うん」

 

 二人、亮之佑と初代が正面から対峙し、お互いを見つめ合った。

 冷たさを孕んだ夜風が肌を撫で髪の毛を揺らす。冷風が六股を行った男の頭を冷やし、この貴重な時間に行うべき事を思い出させる。

 時間は貴重だ。この世界が現実よりも時の流れが遅くとも。

 

 彼女は、初代は無駄な事はしない。

 どれだけ毒舌家でも、クールを気取っていても、鼻で嗤おうとも、その行動には意味がある。

 

 だからこそ、表面的な会話は止めるべきだ。  

 この世で最も近しい他人である彼女に、躊躇も遠慮も不要なのだから。

 

「何が言いたい」

 

「遊びもいい加減にしないと、死ぬよ」

 

「――――」

 

「お腹を刺されて、弄ばれたと泣き叫ばれて、キミは死ぬ。六等分に引き裂かれて、この二度目の人生を女に刺されて、……とにかく痛みと苦しみを持って死ぬだろう」

 

「っ」

 

 どこか遠くを見るように、いつか辿る未来を見るように初代は告げる。

 まるで見てきたように、過去の誰かの経験を見てきたかのように、少女は告げる。

 

 脅しではない。忠告とも違う。

 これは予言だ。彼女が告げる言葉に亮之佑はひどく喉が渇くような感覚に襲われた。

 

 もしかして。

 もしかしなくとも、ここが人生の分岐路ではないのか。

 遊び人が死人になるのか、或いは別の道に向かう分岐点。

 

 決断を迫られているのだ。

 今、ここで、決断を下さなくては。

 

 面談の場のように、将棋で王手を決められた時のように。

 この世界で契約者が決断を行う事を、言外に亮之佑に迫っているのだ。

 

「女というのは時に『愛』という物のためになら、信念も性質も何もかも捨てて豹変する」

 

「――――」

 

「遊びたいのは……まあ、分からなくもない。だがその先の事も考えると良い」

 

「――俺、まだこんな歳だけど?」

 

「宗一朗のようにはなりたくないだろう?」

 

 眦を和らげて、桜色の唇を震わせて初代は告げる。

 その豊かな双丘に手を当て、長い睫毛に縁取られた瞳を揺らし、初代が語る実感の籠った言葉に亮之佑の心は酷く震えた。

 

 宗一朗の事は、亮之佑の父親の事は、尊敬している。

 その生き様は、いつか父親になるのだとしたら、こうなりたいと思えた。

 

 だが、どんな人間にも欠点はある。

 亮之佑の父親、いつか語られた若き頃の不倫と、その終わり。

 その未来に刻一刻と近づいていて、お前もそうなると、後悔すると初代に諭されて。

 

「……」

 

「まあ、キミの人生だ。好きにすると良い」

 

 そう締め括った少女はふと亮之佑に手を伸ばす。

 手袋をしていない初代の手は冷たく亮之佑の頬に触れる。手のひらから伝わる親愛に息を呑む亮之佑を余所に、初代は亮之佑の前髪に指を絡ませる。絡ませて、少女は目を細めて言った。

 

「だが、こんな下らない事でボクを失望させるなよ」

 

 黒色の少女が近づき、白い首筋からぷわりと砂糖菓子の香りが漂う。

 徐々に顔を近づけて、鏡で見慣れた色の瞳を向けられて、甘やかな声音で少女は囁く。

 巻き付けた細い指には亮之佑の黒髪と、見慣れない透明にも銀色にも見える――、

 

「――白髪になったら、そっくりだね」

 

  

 

 +

 

 

 

 意識の覚醒と共に途方もない倦怠感と疲労感に包まれる。

 まるで腹部に包丁を刺されて、そこから命という名の血液が抜け出たような疲労感はこれまで体験した事の無い類の物だ。重み、重み、重み、重い重い重い重い重い重い重い――、

 

「ぁ、ぁー、ぁ」

 

 自分が潰れるんじゃないか、脳裏に響く自身の危機的な状況下で必死に手足をばたつかせる。最低な気分だ。視界は薄暗いままで自分の状態も理解出来ず、緩慢な手足は動きが鈍い。

 枯れた喉を呻かせて、必死に掴み取った栄養ドリンクのような形状の瓶の蓋を開けて、飲み込む。

 

 ごく、ごく、と喉を鳴らして生きながらえる。

 身体全体に広がる充足感は、俺に周囲を見るという余裕を与えた。

 倦怠感は未だ絶えずとも呼吸を繰り返し、視界を暗闇に慣らそうとする中で、声が聞こえた。

 

「ぁ……?」

 

「んんぅ……」

 

「――――」

 

「……もう、私のだから……すやぁ」

 

 声が聞こえた。

 それも至近距離で、俺の胸元から声が聞こえた。

 俺の身体を寝台にしてうつ伏せで眠りこけ、寝言を漏らす少女に目を向ける。

 

「その、こ」

 

 自らの裸体を擦りつけて、どこか満足気な表情で眠る園子。

 脚を絡ませて、睡眠で育てたのであろう豊かな双丘がふにゅんと押し付けられている。リボンは解かれ、長い金髪は乱れており、少女の寝息が僅かにくすぐったい。

 

 薄暗い闇夜の中でも、僅かな月明りと闇に慣れた視界が極上の女体を映し出す。

 柔らかな乳房も、抱きしめると分かる薄いくびれた腰も、弾力のある尻肉も。

 この身体を味わい、好きにしたのだと思うと死に掛けの状態から回復する気がする。

 

「ああ……俺、生きてたのか」

 

 地獄を生き延びたらしい。

 快楽と、好意を持つ少女達による一方的な快楽地獄を。

 俺の首元を涎で汚しながらもごもごと寝言を呟く少女の金髪を撫でる。

 

 その姿を見ていると徐々に記憶が蘇る。

 少女の身体を味わい、散々に吸い尽くされてそう時間は経ってない。 

 

「ん……すぅ……」

 

「がっしり組み付いてやがる……」

 

 あどけない寝顔を見せ、寝息を立てる姿からは想像できない。

 先ほどまで淫らな声を上げ、愛液を滴らせ、騎乗位で子種を求めていた事など。

 喜色の笑みを浮かべ、他の女達と共に雄の種汁を搾ろうと自らの身体を使っていた事など。

 

 胸と胸を。

 腹と腹を。

 脚と脚を。

 

 無意識なのか、自らの恥丘を怒張に擦りつけ熱い吐息をする園子。

 僅かに身体を揺らし、むにゅん、むにゅりと乳房が形を変え、肉粒の硬さが伝わる。

 髪の毛を乱れさせ、至近距離で眠りこける少女の形の良い耳に俺は小さく囁いた。

 

「あんなの、どこで覚えたんだ」

 

「……ぁ、どーじんし~」

 

「初めて××した感想は?」

 

「……んぅ……事実は小説より奇なり~……すぅ……」

 

「おーけー、だが園子。俺は攻められるより攻めたい派だ」

 

 寝ている少女と会話しながら、やわやわと肉果を揉む。

 僅かに情欲の色香と熱を残した女体の布団で暖を取りながら寝台の周囲を見渡す。

 

「お、あった」

 

 恐ろしい程の倦怠感の中、辛うじて二本目のドリンクを見つけ蓋を取る。

 爽やかなレモンの風味と炭酸が混じり合った甘露は冷たく、粘りついた唾液ごと喉の奥へと流れ込んでいく。ゆっくりと時間を掛けて瓶を傾け、喉を鳴らす。

 

「――――」

 

 自らの生命が回復していく。

 そんな事を漠然と思いながら、暫く手の中で特製ドリンクの瓶を回す。

 

 途中からこのドリンクには助けられた。

 成分が書いていないが気にしてもしょうがない。独特の味わいは美味であり、この夜を乗り越える事が出来たのは純粋な若さと雄の矜持と、特製ドリンクの効果に他ならないのだから。

 

 ふと周囲の状況に目を向けて眉を顰める。

 どしりと俺の身体に覆いかぶさっている女体と、すぐ近くで寝息をたてている猥らな姿をした少女が二人。シーツは汗と体液が混ざり、鼻腔を擽る淫靡な匂いは女の愛液と男の精を掻き混ぜたような性行為を物語っている。

 

 肌と肌を触れ合わせ、暖かな人肌に吐息する。

 左右にいる少女達は、寝息をたてながらも俺に擦り寄ってきた。

 

「ん、……」

 

 左側で寝転がる東郷は此方を見るように横向きの状態だ。雪肌の如き肌を惜しげもなく晒し、寄せられた双丘が作る谷間には汗と体液が伝い、健康的な腹部と白濁と愛液の付着した黒色の薄毛と細い腿は、既に女性の身体として成熟している。

 年相応な寝顔を見せる彼女は、どこか安心したように寝息をたてている。

 

「東郷さんが一番エッチだなぁ」

 

 そんな東郷の腕には手錠が付けられ、両手は寝台の隅に伸ばされている。

 肌を傷つけないように革製ではあるが、眠るには邪魔そうなので外し抱き寄せる。

 

「友奈は……」

 

「……ぁ、む」

 

 最後に、腕や首筋に噛み痕を残した筆頭である少女、友奈に目を向ける。

 シーツに髪の毛を広げ、あどけない寝顔を見せる姿は天使の如く。健康的な腹部や美乳、腿肉を晒し、良い夢を見ているのか口元を緩めている。

 

「2人がいいなぁ……くちっ」

 

 暖房はつけてはいる。園子か東郷がつけたのだろう。

 とはいえ裸体を晒して眠るには肌寒い。右腕で友奈を抱き寄せると、嗅ぎなれたシャンプーと花の匂いが鼻腔を擽る。そうして少女三人と密に暖を取り、辛うじて動く手で毛布を被る。

 

「両手に花だ」

 

 倦怠感はともかく、頭の中は何処までも冷静だ。

 自分が行ってきた行動、それらを振り返り、俺は思う。

 

 後悔しない、その誓いを人生の指標としてきた。

 だが、それは欲望に素直になるという事ではないのだ。その場の雰囲気で女を抱いて、結果的に逆レイプまがいの事をさせる程度には、少女達を少なからず傷つけたのだから。

 

「俺って、……」

 

 最低だ。そう独り言を闇夜に呟こうとした時だった。

 俺の携帯端末にメールが届いたのか、僅かに通知の表示が視界に映りこむ。

 

 暗闇の中で僅かな光源となり得る携帯端末、その文明の利器の存在を忘れていた事を思い出し、手を伸ばし回収する事に成功する。

 

 メールを開く。

 夏凜からだった。

 

 薄暗闇に慣れた身としては突然の光量に目を細めるばかりだ。そうして十秒程目を細め漸く光に適応した視界で、俺はその文面を読み取った。

 

 ――今度また家に来ない?

 

 勘違いするなとか、違うからといった文を要約するとこうなる。

 夏凜は決して馬鹿ではない。少し前に性行為をした事を考えて、それでも家に呼ぶという事は同じ状況になるのは必然であろう。それはつまり、自惚れでなければ――、

 

「――――」

 

 携帯の電源を切った。

 光は途絶え、ブラックアウトした端末の画面には見慣れた男の顔が映りこむ。 

 見る者を惹きつける血紅色の瞳、母譲りの黒髪と、そして僅かに増えた白髪。

 

「あー……、寝るか。美容と健康の為に」

 

 既に時刻は美容どころか健康を損ねる時刻だが。

 クリアであった思考も、徐々に眠気に侵食され始めている。

 苦痛であった倦怠感は疲労感と混ざり合い、女体の体温と相まって瞼を重くする。

 

 たまには契約者の言葉を聞き入れても良いだろう。

 浮気して刺されるのはフィクションの中だけであって欲しいから。

 

 六股を達成した奇術師。

 今後増えるだろうか。増えたらただでは済まないだろうか。

 そんな性懲りもない欲望と思考が闇夜に溶け混ざり、意識すら掻き消える。

 

 鼻で呼吸すると、ぷわりと漂う少女達の色香。

 明日見る彼女達は、一体どんな顔をしているのだろうか。

 この監禁ごっこが終わっている事を祈って、俺は少女を抱きしめて眠り――、

 

 

 

「おやすみ」

 

 

 

 声が聞こえた。

 ぽつり、と静寂の夜に、少女の囁きを聞いた気がした。

 

 

 




六股挑戦編は以上でおわり。
ちなみに夏凜の誘いに乗れば、まあ昼ドラね。浮気はやっぱり駄目だね。
二股って聞くとサイテーってなるけど、三股とか六股ならおおっ! ってなる。
ここまでお読み頂きありがとうございました。気が向いたらリクエストとか番外とかひっそりと……。


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【番外】おゆゆゆ!

どん兵衛とゆゆゆがコラボしていた記念。


 抱きしめた東郷の身体は柔らかく、仄かな柔軟剤の香りが服から漂う。

 頭部に乗る二つの膨らみは確かな重さと共にむにゅりとした柔らかさが伝わってくる。

 

「よしよし……」

 

 後頭部を拙くも撫でる少女の手のひらは暖かく、眠気と懐かしさを覚える。

 腕を少女の背部に回すと、薄い布地越しに少女の柔らかい肉の感触が伝わる。

 

「お願い……」

 

「駄目」

 

 どうしてこんなにも柔らかいのだろうか。

 そんな女体の神秘に思考は働かず、しかし身体は少女を求める。

 抱き枕のように顔を押し付け、回した腕を放す事なく端的に告げる。

 

「お願い」

 

 子供が愛想を振りまき母親に玩具をせびるように『お願い』をする。

 可愛らしく、愛らしく、時には泣き叫ぶ事で周囲の目を引かせ、要望を叶える。

 子供とはそういう存在だ。だからこそ子供の真似はそれなりに効力があると確信するが、

 

「駄目よ」

 

 目の前の少女には通じる事はないらしい。

 それは抱きしめて懇願する自らが悪いのか。愛らしさが足りないのか。

 なればこそ、他人ではなく目の前の少女に通じそうな会話を試みる。

 

「『そんな事したら、東郷さんのこと嫌いになっちゃうよ!』」

 

「……ゆ、友奈ちゃんの声マネしても駄目。それに友奈ちゃんはそんな事言わないわ」

 

「すっごいエッチな事してあげる」

 

「それは亮くんがしたいだけでしょ」

 

「でもしたいでしょ?」

 

「……それは、その……、とにかくダメよ」

 

 抱きしめて告げる真摯な言葉は拒絶される。

 どこか柔らかい口調で、母親が子供を優しく叱るような声音で少女は告げる。

 

「――飲み過ぎは身体に悪いって言ったでしょ」

 

「俺はそんなに飲んでない」

 

 炬燵の熱を足裏に感じながら東郷の言葉に反論する。

 言葉にしなくては伝わらない事がある。相手なら分かってくれるだろう。

 そんな身勝手な期待をした結果、散々な目に遭うというのはよくある事だ。だからこそ、相手との綿密な会話の重要性を理解して、俺は懸命に抗議の声を上げる。

 

「飲酒禁止は横暴だ!」

 

「亮くん、未成年でしょ」

 

「――、中身は成人だから」

 

「何言ってるの?」

 

 真顔で尋ねる東郷に俺は言葉に詰まった。

 

 未成年は飲酒ダメ絶対。

 異世界だろうが、ハーレム気取っていてもダメ絶対。

 そんな事は知っているのだ。当たり前の事実だと思う。思うのだが――、

 

「なんで今更」

 

「今更じゃないわよ。ただ少しアルコール依存症の傾向があるから……」

 

 人は何かに依存して生きている。

 酒、ギャンブル、タバコ、ゲーム、男や女と様々だが、それでも何かに縋りつかなくては生きていく事など出来ないと思う。そうして縋りついて明日という名の未来に希望を見出す。

 

 だからこそ、少しくらいと考えてもおかしくはないだろう。

 多少、コッソリと呑むだけなのだ。それを病気などと一緒にされては困る。

 

「いや、そんな訳」

 

「亮くんの健康が心配だから……、ね?」

 

「俺は依存症じゃないから」

 

「もう亮くん一人だけの身体じゃないのよ?」

 

「――――」

 

 口論とも呼べない会話は東郷が手綱を握っていた。

 俺を管理すると言わんばかりの少女の態度に、しかし悪い気がしないのは何故か。

 

 鼻腔を擽る少女の匂い、頭を撫でる手のひらは確かな親愛を感じさせる。母性本能でも芽生えたかのような少女の行動に戸惑いを覚えつつも、彼女の女体の柔らかさに目を細める。

 枕とも違う独特な柔らかさと温かさ、そして東郷の指先が心地良くてこのままでは眠ってしまうという予感が俺を襲った。

 このまま東郷の胸元に赤子のように抱き着いて眠るのも良いが――、

 

「あいにく今日は、昼寝の予定は無いんでね」

 

「それ以前にまだお昼前よ?」

 

「俺レベルになればいつでも眠れるんだよ。園子に鍛えられた」

 

「睡眠って鍛えられるの……?」

 

 うつ伏せをやめ、仰向けになると東郷の深緑色の瞳と視線が交差する。

 その瞳には以前のような妖しげな光は見られず、穏やかに微笑む少女の姿が映りこむ。

 

 その、どこか余裕のある姿に僅かな苛立ちを覚えた。

 

「ぁ、ちょっと……」

 

 虫が木の幹を這うように、女体を顔を擦りつけるようにして這う。

 触れる部分全ては男と異なり柔らかさと丸みを帯び、ぷわりと漂う少女の甘やかな匂いはついつい肺に満たしたくなる。自らの体重で少女を床に押し倒すと抵抗は無く少女は薄く微笑む。

 

「そういうのは夜に、……んっ」

 

 衣服の布地が薄いのだろう、軽く触れるだけでも豊かな双丘の感触が手のひらに伝わる。

 上着の隙間から手を入れるとしっとりとした東郷の柔肌が心地良く、何となく撫で回したい感覚に囚われる。少女の上着を捲り、白い肌を指で蹂躙すると東郷は身体をくねらせ、笑った。

 

「ん、ふふっ、ぁ、あはは……ッ!」

 

「夜に、何かな?」

 

「や、ゃ、め、んッ、あはっ、―――!!」

 

 うら若き乙女に圧し掛かり、無防備な腹部をくすぐる。無駄な脂肪が少なく程良く引き締まった東郷の腹肉は笑い声を上げる度に収縮を繰り返し、視覚的にも楽しませる。

 

 しっとりとした隣人の柔肌を楽しみながら俺の手は腹部を駆けのぼり、双丘に到達する。

 ブラの感触、ホックを外すか考えて、手でずらし零れた乳房を手のひらで味わい、苛める。

 大きく、しかし下品さの無い淑女の乳房はこの目で見ずとも瞼の裏で思い返す事は容易い。

 

 しかしそれでも見たくなるのは雄の性なのだ。

 臍まで捲れていた上着を更に捲ると、薄青色のブラが捲れた肉果が男の目に晒される。

 

「ッ」

 

「……!」

 

 その瞬間の、東郷の表情に息を呑む。

 幾度となく肌を重ねたにも関わらず、羞恥の熱で頬を上気させる女の表情に。

 

「……」

 

「……する、の?」

 

「……何を?」

 

「その、あの……、――――」

 

 清純派の淑女の皮を被った少女は恥じらいを見せる。

 しかしながら夜這いをする積極性を持つ彼女だが、こういった羞恥心を煽られると弱いらしい。

 

「東郷さん、何をするの?」

 

「ん……っ」

 

 柔らかな乳房の中で、唯一反抗的な乳首を親指と人差し指で摘まむ。

 桜色の肉粒は持ち主の性格とは反対的で、「摘まんでみろ」とばかりに上を向いている。

 

 硬さを帯びた乳首をやんわりと指で擦る度に東郷は甘い吐息を漏らす。

 その度に少女の乳首はより硬さを増し、今度は「食べて下さい」と小さく震えるのだ。

 だから、唇を乳首に触れさせながら俺は質問を繰り返した。

 

「何を、するの?」

 

「……い、意地悪しないでよ」

 

 吐息がこそばゆいのか、それすら気持ち良いのか、腕を押さえていた少女の手には既に力は無い。抵抗の無い少女に残った物は、どうしようもなく雄を誑かせる極上の女体だけだ。

 

 上唇と下唇が乳首に触れるか触れないかの距離で東郷の回答を待つ。

 これは儀式のような物だ。少女がそういう意思表示をしたという事の証明であって、恥ずかしがる姿を愉しみ、羞恥を煽り、愛でたいという訳ではないのだ。

 

「……エッチ、しないの?」

 

「例えば? こんな事とか?」

 

「んぅ!」

  

 そっと仄かに血の味がする肉粒を口に含む。

 少女の肌は色白で、仄かに体温が上昇するだけで朱色が差す。

 そんな反応が見ているだけで楽しくて、嫌々と首を振る東郷の乳首を音を立てて吸う。

 

「ぁ、ァ、そんなに吸っても、でないからぁ……!」

 

 手のひらを俺の頬に触れ、口付けを止めさせようとする東郷。

 しかし紡ぐ言葉とは裏腹に、潤んだ瞳と上気させた肌は隠しようのない色気を醸し出す。

 自らを食べてくれと、そんな風な懇願にすら見えて、小さな抵抗をする東郷の衣服をこの場で剥いて美味しく食べてしまおうと――、

 

「東郷さーん、亮ちゃーん。お湯が沸いたよー」

 

「……ぁ」

 

 ふと部屋にその声が届いた。

 キッチンからの見知った声音は快活さと能天気さが伝わる。

 その声に、思考の一部が冷静さを取り戻し、ちゅぱっと乳首から口を放すと少女は喘いだ。

 

「ぅんっ!! ……!」

 

 慌てて声を抑える東郷を抱き起こす。随分と敏感になったのか、震える東郷の衣服の乱れを直しながらキッチンに向かうと向日葵の如き笑顔が俺と東郷を迎え入れた。

 

「お湯、沸いたよ? あれ……東郷さん、どうしたの?」

 

「う、ううん。なんでもないのよ、友奈ちゃん」

 

「そっか。……凄く楽しそうだったから、私も混ぜてね!」

 

「え、ええ。……それにしても『かっぷめん』は久しぶりね」

 

「たまに食べると美味しいよね。それにコラボだからね! 東郷さん!」

 

「コラボ……?」

 

 ニコニコと笑う友奈は明るい。

 ふりふりと後頭部で結んだ髪の毛が揺れる。しかし俺の目線はそこにはない。

 快活さを見せる友奈の頭部には見慣れない耳が、そして臀部付近には尻尾が生えていた。

 

 猫ではない。

 兎でもない。

 それは名前通り狐色をしていて――、

 

「……似合う、かな?」

 

「ええ、勿論。可愛いわ、友奈ちゃん」

 

「えへへ。ありがとう、東郷さん。東郷さんと園ちゃんの分もあるからね。あとで使おうね!」

 

「……使う?」

 

「おゆゆゆ!」

 

 キツネ耳と尻尾を付けた友奈は微笑を浮かべた。

 お湯が沸いたケトル、蓋の捲れた三つのカップ麺には『ど〇兵衛』と書かれている。

 天ぷらかき揚げうどんなのか、後乗せのかき揚げが既にカップ内に配置された状態だ。

 

 後乗せサクサク。

 しかし、友奈は先に入れる派だった。

 

 そんなカップ麺を前にして友奈はケトルを手に取る。

 そして俺と東郷をじぃぃっと見つめながら笑顔で言った。

 

「見てて!」

 

「あ、危ないわよ、友奈ちゃん」

 

「大丈夫! 任せて」

 

 嘗て料理をしていなかった頃の友奈ならば間違いなく撒き散らしただろう。

 カップにケトルでお湯を注ぐ友奈は、しかし視線は何故か此方を一心に見つめたままだ。

 

「友奈。危ないぞ」

 

「あっつ……」

 

「友奈ちゃん!!」

 

「ほらー!」

 

「ちょ、ちょっとお湯が跳ねただけだよ」

 

 即座に東郷がキッチンの蛇口を捻り、友奈の手を冷やす。

 有無を言わせぬ東郷の雰囲気に友奈は口を噤み、狐の尻尾は僅かに垂れ下がった。

 

「どうしてこんな事したの?」

 

「だって、そういうコラボで……」

 

「変な事言わないの! 危ない事しないで」

 

「そうだぞ」

 

 何故友奈がノールックお湯注ぎを決行したのか。

 頑なにコラボだからと言い張る友奈の行為がどれだけ難しいか。

 俺はケトルを手に取り、カップ内のかき揚げを取り出し、友奈と東郷を見て言った。

 

「友奈、東郷さん。手本を見せてやる」

 

 そんな思いを込めて二輪の花を見ながら、ケトルからお湯をカップ麺に注ぎ込む。

 これは教訓だ。安易にお湯という危険物を扱うと大変な事になるという事を。

 

「あっち」

 

 ――このあと滅茶苦茶怒られた。

 

 

 



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【番外】その夜、時間を忘れて愛し合った

 ――非常に唐突ではあるが。

 重ねた唇は、柔らかく、チョコの味がした。

 

「――――」

 

「ん……」

 

 ただ唇を押し当てただけの口付け。深夜に交わるような色濃さを残す口付けではなく、相手からの確かな親愛を知ることが出来る甘い言葉以上に柔らかな触れ合いだった。

 両頬に伝わる手のひらの感触、押し付けられて形を変える唇の形、熱い吐息が俺を擽る。

 

 それは一種の愛撫であった。

 悪戯ともとれる少し密な触れ合いは、少し長めに続く。

 

 薄眼で眼前の相手を見つめる。

 積極的に口付けをしてくる相手はどこか熱に浮かされた表情で唇を重ねる。

 

「ぷは~」

 

「どうしたよ……?」

 

「ん……したかったから」

 

 やがて触れるだけのキスに飽きたのか、或いは満足したのか。

 柔和な笑みを浮かべた少女は俺の唇を解放し、至近距離で瞳を見つめる。

 

 交錯する血紅色の瞳と琥珀色の瞳。

 互いの瞳の奥の感情を見下ろし、見上げる俺に園子は小首を傾げ言葉を紡ぐ。

 

「ねえ、ぎゅーってしてくれないの……?」

 

「……」

 

 爛々と輝く琥珀色の瞳には少年の顔が映し出されている。

 呆けた顔をする少年を見下ろしながら両腕を広げて抱擁を求める園子。

 

 重力に従い、垂れ下がる絹のような金色の長髪からは上品な甘さと少女の香りが漂う。

 俺の身体に遠慮なく馬乗りになるお嬢様の長い睫毛を見ながらゆっくりと手を動かし園子の背中に回すと、んぅ……とご満悦そうな吐息を漏らした。

 

「今日は甘えたがりな感じですか」

 

「そんな感じかな~、駄目?」

 

 駄目。そう告げれば彼女はどんな顔をするだろうか。

 一瞬そんな事が脳裏を過りながらも、猫のように甘える少女の髪の毛を手でどけて露わになる形の良い耳元に噛み付くように、囁くように、肯定の意味を込めて彼女の名前を呼んだ。

 

「園子」

 

「……!」

 

「いちいち、聞くなよ」

 

 抱きしめた園子の身体は細く、柔らかかった。

 少女の身体には筋肉が無いのかと思う程に、抱きしめると柔らかい女体は神秘の一つだ。リビングのソファ上での抱擁、背中に腕を回し、首に顔を埋める園子の表情を窺うことは出来ない。

 

「――――」

 

 抱擁を始めとした園子からの触れ合いは珍しい物ではない。

 年頃の少女にしては恥ずかしがったりする事も少なく、純粋に甘える事に戸惑いを覚えない。ふんわりとパンケーキのように柔らかく、母性を膨らませたような笑みを浮かべる園子は、このようにして人肌を求めて擦り寄る。

 

「すりすり~」

 

 ふわりと漂う園子の香りが鼻腔を擽る。

 絶対に離さないとばかりに強く抱きしめる少女の髪の毛から甘い匂いを嗅ぎ取る。テレビから聞こえる音声は遠く、視界の端を金色に彩るニットセーターを着た令嬢が漂わせる香りの正体。

 

「……今年はちゃんとかっきーにあげられそうだな~って」

 

「……園子からは久しぶりな気がするな」

 

「でしょう? 楽しみにしてた?」

 

「そりゃあ……キッチン占領してから漂うチョコの匂い、園子様直伝のお菓子なら期待ですよ」

 

「わ~、期待されちゃった~」

 

 そう告げる園子は長い睫毛を震わせ小さく囁く。

 大抵の事は大体なんとかなる万能系のお嬢様、園子は顔を上げてジッと俺を見つめる。

 

「食べたい?」

 

「園ちゃんを?」

 

「昨日も食べたでしょ~……? 寧ろ私がかっきーを食べちゃいたいな、がおーって」

 

 俺の股座に収まるようにすっぽりと小さな体躯を埋めた園子は手を伸ばす。

 指を丸めて動物の物真似のような動きをする少女はそのまま指を広げ、俺の頬に触れる。

 

「俺が食べられるのか」

 

「そうだよ」

 

 そのすべらかな指の感触を頬に感じながら眼前の美少女を見つめる。

 ふんわり、ぽわぽわな雰囲気とフレンドリーさを醸し出す金髪の少女はエプロン姿だ。

 丈の短いクリーム色の縦セーター、黒色のストッキングに包まれた少女の脚は曲線美を描く。

 

「私が、食べるの」

 

 ――白く綺麗な指だ。

 小説を書き、お菓子を作り、夕飯を作り、武器を握り、幸せをもたらす指が俺を擽る。

 

 その指先に敵意は無い。

 どこか愛おしさを感じるような指付きは、寧ろ心地よさすら感じさせた。

 

「……」

 

「……かっきー」

 

「うん?」

 

 園子との距離感は近い。

 パーソナルスペースは物凄く近く、こうして密な触れ合いは珍しくはない。

 かと言って空気が読めない訳ではなく、誰とでもこうして密着し合うような事はしない。

 

 男女として、異性としての間を考えるならば近すぎるだろう。

 特に性行為をした思春期の男女なら、こんな些細な触れ合いですら甘い毒になる。

 

 それは決して俺だけではない。

 健全な肉体には健全な性欲が宿る。それは当然、快楽の味を覚えた令嬢ですら――、

 

「……」 

 

「……ッ」

 

 頬を撫でていた園子の片手はいつの間にか俺の下腹部、膨らみを見せる股間に向かっていた。ズボン越しに勃起し始める男の肉棒の裏筋を舐めるように撫でる少女は静かに吐息をする。

 視線を交わす中で、互いの瞳に拒絶の色は無い。互いにこうなる事を理解し、望んでいる。

 

 ズボン越しに反り立ち始める肉茎を小さな手で擦り刺激する園子は、微笑を浮かべて俺を押し倒す。後頭部に感じる柔らかな感触に気を取られる前に、視界は白金に染まる。

 

「おっきくなってる……」

 

「……」

 

「ふふっ、この部屋……少し暑いね」

 

「園ちゃんだけじゃない?」

 

「……そういうこと言うんだ、へー」

 

 ゆっくりと上下に手を動かし、男の不思議な構造について呟く園子。何度も見ているだろう男の肉棒の反応に仄かに顔を赤らめながらも大胆にズボンを引きずり下ろし、外気に晒した。

 赤黒く脈打つ肉棒を躊躇いなく握る少女の指は細く、冷たく、力が籠められている。

 

「ッ」

 

「あー……むっ」

 

 小さな唇が亀頭とキスをする。

 ふにゅりと上唇と下唇の感触を感じ、思わず息を呑む。

 

 ぬぷ、ぬぷぷ、と大きく口を開いた園子の口内に誘われる昂った怒張。ぬるりとした唾液と歯の感触が亀頭を包み込み、柔らかくぬめる舌先が雁裏を舐め上げていく。

 チラリと此方を上目遣いで見上げる少女の鼻息が恥部を擽る口腔奉仕。味わうような舌の動きと自らの頭部を上下させ雁周りを刺激する姿はどこか慣れた物だ。

 

「ひもひい……?」

 

「ああ……良いよ」

 

 ちゅぱ、ちゅぱと啜るように怒張を頬張る園子の奉仕姿を目に焼き付ける。

 熱い吐息が肉棒を昂らせ、ぬめる唾液と僅かにざらついた舌、唇が吸い取るように締め付ける。第二の花弁とも言える園子の口内の感触は最高と言える。

 だが絶頂に達せるかと言えば、少しもどかしい。

 

「んぶっ! んんっ」

 

 軽く腰を揺すると苦しそうに園子は呻く。

 同時にチラリと此方を見上げる少女の批判的な目つきに興奮を覚える。

 ゆっくりと腰を揺する。歯茎、頬肉、歯と口腔の各部の感触に甘い刺激を貪る。

 

「っ」

 

 口端から漏れる唾液と愛液の混ざり物を舐めとる暇は無い。

 自らの唾液を肉茎に染み付かせ、にじゅり、にじゅりと手で扱く姿は厭らしい。

 

 優しく甘い奉仕だ。

 流し目で此方を見やる園子はどこか余裕の雰囲気を漂わせている。

 俺を食べると、そう宣言した通りに、まずは俺の子種を食べようしているのだ。

 

「――――」

 

 目の前の彼女が尽くしてくれる。

 それは凄まじい幸福であり、奉仕する彼女の姿を知っているのは自分だけという事実に心が震える。その震えが射精感へと繋がり、彼女の喉奥へと白濁を爆ぜようと――、

 

「んっ」

 

「……園子?」

 

 ちゅぱっ、と怒張が外気に晒される。

 少女の唇には唾液と愛液の混じったものが糸を引いていた。

 

「駄目だよ、かっきー」

 

「――――」

 

「無駄撃ちしたら、もったいないよ~」

 

 ぺろりと猫のように舌が唇を舐めとる。

 此方を見上げ挑発するように、誘惑するように、園子は立ち上がる。

 

「よいしょっと」

 

 ソファから立ち上がる園子。

 その後ろ姿を見つめ、その真意を視線のみで問い掛ける。

 

「別に止めたりしないよ。でも、汚しちゃいそうだからね……」

 

「……」

 

「かっきーも脱ぎ脱ぎしてね」

 

「……ん、ああ」

 

 暴発寸前の状況で『お預け』を与えられた俺は目の前でセーターを脱ぐ少女を見上げるばかりだったが、混乱と苛立ちの混ざる思考の中で辛うじて上着を脱ぐ。

 そうして一瞬だけ冷静になる事で、ふと思う事があった。

 

 ――俺は衣服以下なのか、と。

 

 汚れるのは嫌だ。それが衣服ならば当然だろう。

 非常に些細な事を考える自分はきっと器が小さいのだろう。

 

「今日は黒でーす。似合う?」

 

「背伸びしすぎ」

 

「む」

 

「冗談。綺麗だよ、ただ他の人の前では着ないで欲しいかな」

 

「かっきーの前でしか着ないよ~」

 

 恥ずかしいからね、そう呟く声を俺の聴力は拾う事に成功した。

 セーター越しですら隠せていない少女の乳房のライン。彼女が衣服を脱ぎ、残すはストッキングと黒色の下着だけだ。

 

 透き通る白い肌に映える黒色の下着には華の装飾が施されている。

 長い金色の髪の毛を揺らし、眼前で自らのストリップを見せつける園子はゆっくりと背中に手を回す。プチッとブラの留め具が外れる音がした。

 

 脱いだセーターの上にそっと置かれるブラジャー。

 ぷるんと雄の前に晒される白い柔肉は震え、伸ばした両手で掬うとしっとりと手に馴染んだ。

 

「ん……」

 

「脱がせる?」

 

「脱がせたい、でしょ?」

 

「そうとも言う」

 

 彼女の肌を纏う物はたったの二枚だ。

 ストッキングと薄い生地越しに見える黒色のショーツのみ。

 薄い腰を抱き寄せて、触れた下着は湿った感触。指には光る愛液。顔を赤らめる彼女。

 

 限界だった。

 下着と共にストッキングを膝下まで下ろすと透明な糸が少女の恥部と下着を繋いでいるのが見えた。むわりと漂う雌の香りが鼻腔を通じて脳裏に麻薬の如き痺れをもたらした。

 

「きゃっ!!?」

 

 思わず少女の恥部に顔を埋めても仕方がない。仕方が無いのだ。

 ぎんぎんに反り立ったままの怒張からは先走りが肉茎を伝い、思考が乱れる中で眼前にあるのは最高級のデザートなのだ。貪りたくなるのは当然だ。

 

「ちょ、ま、あっ、ん……ッ、ぁ、もう! 私が攻めるからぁ」

 

 恥毛を鼻に感じながら既に濡れそぼった花弁の蜜を啜ると、数回程身体を震わせた園子は顔を赤くしながら俺を押し倒す。ストッキングと下着を脱ぐ時間すら惜しいとばかりに全裸となった少女は先ほど振りの余裕の笑みを浮かべる。

 

「それじゃ……いっくよー!」

 

「お」

 

 仰向けで倒れた俺に馬乗り、園子は怒張を挿入させる。

 騎乗位と呼ばれる体位、にじゅん、と湿った肉を押し広げる感触に俺は思わず呻いた。

 

「ンンっっ!」

 

 締め付ける少女の肉壺は子種を求めて蠢く。

 どこか不慣れな動きで腰を動かす度に結合部からは泡立ったどちらかの愛液が垂れる。にゅじゅと雌肉が下品な音を立て、肉壁は驚く程に猥らに絡み、思わず飛ぶ。

 

「ぁ」

 

「ぅ、ぁ……!」

 

 抗う事すら許されず、少女に搾られる白濁。

 最奥に注ぐ感覚と同時に訪れる白く染まる意識は一瞬だった。

 

「……あれれ~? どうしたのかな~」

 

 細めた視界で最初に映りこんだのは得意気な顔をしている金髪の美少女だった。何をそんなに喜んでいるかは俺には分からない。だが、ひとまずやられっぱなしは嫌だ。

  

 ゆっくりと上体を起こし、俺を逝かせて喜ぶ少女。

 そんな可憐な少女を悦ばせるべく、男の尊厳を掛けて繋がったまま彼女を持ち上げる。

 

「うおおおぉぉ―――ッ!!」

 

「えっ、かっ、浮いて……ッ」

 

 こういう時、若い身体というのは便利だ。

 案外自分は負けず嫌いらしい、そんな思いと共に既に回復の兆しを感じさせる自らの怒張は硬さを少女の膣内で取り戻し始めていた。それを組体操の如く持ち上げられた園子も理解したのだろう。

 軽く腰を揺すると少女は一際甲高い声を上げた。

 

「ひぁぁっ!!?」

 

 普段と比べ挿入角度が異なるからだろう。

 下から斜め上を抉るように行われるピストンは少女の喘ぎ声を高くしていた。

 

「やっ! それっ、あ、ああっっ!?」

 

 普段刺激されない膣壁は彼女を悦ばせるらしい。

 大きく目を見開き、落ちないように首に腕を回す少女は、

 

「園ちゃんはっ、エッチだね……っ」

 

「ひぅ……ッ、ち、ちがっ」

 

「そんな情けない顔して何言ってんだ、よっ!!」

 

「あああっっ!! あ、ひぁッ……!!」

 

 快楽に目尻に涙を浮かべる園子の喘ぎ声が自らを昂らせる。

 もっと少女の声を聴きたいと、もっと啼かせたいと、もっと悦ばせたいと。

 湧き出す源泉に終わりは無く目の前の少女の臀部に叩きつけるように腰を揺する。

 

「ぃぃ、ぅう~~~っっ!!」

 

 びくびくと身体を震わせ、ぷしっと噴き出す小水が床で跳ねた。

 

「ま、まって……、今は駄目……」

 

 怒張の抜けた恥部からはドロリと白濁と愛液が姿を見せる。

 激しく呼吸をする少女は必死に絶頂の空から戻ろうと掴む手に力を籠める。

 

 しかし、そんな容易く帰す訳がない。

 ふとある事を思い出しながら、少女を床に寝転がす。

 

 フローリングでは駄目だ。彼女の身体に負担が掛かるし冷える。

 絨毯が敷かれた場所に汗だくの彼女を下ろし、狭い膣穴に亀頭を宛がう。

 

 愛液と精液でぬめり、膣壁が蠢く少女の花弁は精液を採取する為だけに生まれたのだろう。俺の子種を幾度となく受け、俺の怒張の形へとその姿を変え、厭らしく真新しい蜜液を臀部に垂らす。

 

「サンチョ先生」

 

「――――」

 

「どうして別名義で官能小説を投稿してたの?」

 

「……何の事か」

 

「ランキングトップだったね、おめでとう。あんなドスケベな妄想書いちゃって……園ちゃんって結構マゾだよね。あんな風に虐めて欲しいんだ」

 

「……べ、別の人じゃないかな?」

 

「『ちょっと乱暴にされても、自分が相手の物だと主張されてるようで少し嬉しくなる』」

 

「~~~!!」

 

「あんなバレバレなの書いちゃう、園ちゃんが好き」

 

「やぁん!」

 

 とあるWEB小説の金髪の令嬢が見た事のある少年と致す時のモノローグで語られたフレーズ。読めば気づかない訳がない。誰かの日記のような、しかし官能小説として高められた存在について問い掛けると少女は目を逸らした。

 絨毯に横たわらせた裸体の園子、汗と自らの愛液で透明な肌を汚す少女のくびれた腰を持ち上げてピストンを繰り返す。ぱちゅ、ぱちゅと一突きごとに淫水音が部屋に響く中で、少女は快楽の悲鳴を上げた。

 

 尻から下だけを下ろさない。

 柔らかな尻肉が腰を揺する度にむにゅりと弾力を伝える。

 

「あっ音、立てないでっ、ゃ! ……ィ、く、あっっ!!」

 

 唇を噛みしめて赤らんだ顔を細い腕で隠そうとする少女。

 薄い腰をがっしりと掴み、荒々しく玩具を扱う様に臍側の膣壁を擦るように腰を振ると少女の身体は跳ね、小水を思わせる水飛沫が俺の腹に掛かる。

 最奥から滲み出る熱い蜜を怒張は感じ取り、締め付けが性感を高める。

 

「やっ……まっ、て、いまは、……またっ」

 

「凄いね、園ちゃん。意地悪されて潮吹きしたの?」

 

「ち、ちがっ、……ん、んぅああっっ!?」

 

 にゅちゅ、にゅちゅと噴き出す少女の蜜は周囲に飛び散る。

 園子の両腕を掴みあらゆる抵抗を阻止し、腰を揺すると眼前で少女の肢体に汗が飛ぶ。

 

 ぐったりとした園子を抱き起こし、下から突き上げる。

 突き上げる度に桜色の乳首が上下に揺れ、白くまろやかな乳房も揺れた。

 

 何度もこの手で触れた餅状の肉は俺の手のひらに心地よく吸い付く。

 根本まで少女の腰を下ろし、突き上げながら園子の両胸を揉むと、その度に快楽の悲鳴を上げた。

 

「もっ、や、やらっ、あ……! んっ……ん」

 

 軟骨を思わせる少女の乳首を齧る。

 それだけで弓なりに反る少女は法悦の高みに上る。

 

「吸わなっ、んんっ、それ……はっ!」

 

 嫌々と首を振る園子を見ながら深いストロークを繰り返し、乳首を虐める。

 震える園子の両手が俺の首元を掴み、両脚はぎゅっと腰に回され、膣肉の締め付けが増す。

 

「ンっ、ん~……! ちょ、ひゃめ……!!」

 

 少女の何度目かの授乳経験を俺の唾液で更新する。

 ちゅぱ、ちゅぱっと吸っては離す度に苦しそうに、嬉しそうに園子は喘ぐ。

 

 そう告げる園子の腰は俺のストロークに合わさるようにゆっくりと動く。

 腰を突き上げ、赤子のように乳首を吸い、余った乳房を己の好きに揉む。

 仄かに血の味がする乳首を甘噛みし、飽きる事の無い少女の胸を揉み、再び訪れる射精感を下から打ち付けるようにピストンで昂らせる。

 

「イ、また、イクっ……!!」

 

「一緒に……!」

 

「ん……!」

 

 離れるどころか、自らの両脚を俺の腰に回すあどけない少女。

 先ほどまで俺の為にチョコを作っていた可憐な少女は猥らな声を上げ、俺に汚される。

 

 俺は園子を突き上げ、突き上げ、突き上げて。

 その時が来た。

 

「っ」

 

「ふわぁぁっっっ!!?」

 

 二度目の射精。

 びゅぶる、と濃厚な精液を眼前の少女に注ぎ込む感覚に襲われる。

 

 両脚でホールドしている園子に逃れる術はない。余す事なく最後の一滴まで奥の奥で受け取った少女は甘い悲鳴と共に身体を震わせた。

 白く染まる視界の中で辛うじて意識を保ちながら、甘い痺れに身を任せる。

 

「かっきー」

 

「……?」

 

「その作品読んだなら、最後にその少女が何て言ったか覚えてる?」

 

「なんて、言ったっけ」

 

 は、ふ、と息をする少女は両手脚を俺の身体に巻き付けながら囁きかける。

 至近距離で見つめる園子は長い睫毛を震わせ、憑き物が落ちたような微笑で告げた。

 

 

「愛してる。――私のかっきー」

 

 

 少女の唇は、甘く、チョコの味がした。

 

 

 



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【短編】ある日の朝、約束を

「かっきー」

 

「うん?」

 

「サンチョの真似やって~」

 

「スィ、ムーチョ(イケボ)」

 

「そっくり~!」

 

「ふふっ……」

 

 夢を見た。

 散々園子とイチャイチャして、一緒に眠ったからか。

 普段見る少女の姿よりも幼さの残る園子とゆったりと会話をしていた。

 

 僅かに背が縮み、此方に笑い掛ける顔。

 中学生になり再会した頃よりも前、一度別れた時よりも後の少女。

 

「かっきー」

 

「うん?」

 

「久しぶりって言ったらいいかな~……?」

 

「なんで自分で疑問に思ってんのさ」

 

「そんな気がして」

 

 長い髪の毛を揺らし、此方を見上げる少女。

 俺の思い出に残る様相と一致する姿は、俺の心を和やかな物にした。

 ゆらゆらと首を振る園子と共に上を見上げると、白く輝く月が一つ。

 

「――――」

 

 目の前の、俺の腕に抱かれたままの小さな少女。

 周囲を見渡すと、乃木家でよく遊んでいた廊下に俺は座っていた。

 

 どうしてここにいるのか。

 それは、夢だから。

 

「ねえ、かっきー。園子先輩とはどうしてるの?」

 

 ポツリと呟く声を聞き逃さない。

 青いリボンを付けた少女の背中を受け止めつつも苦笑する。

 

「昔と同じく、仲良くしてるよ」

 

「知ってる~」

 

「そっか」

 

「うん。だって私だもんね」

 

「ああ、園ちゃんだからな」

 

 ほにゃりと崩された少女の横顔を見下ろし、会話する。

 腕に抱いた仄かな暖かさに、思えば随分と支えられて来たものだ。

 

「『私』とはどんな感じ~……?」

 

「そうだな。エッチな事とかしてる感じ」

 

「へ、へ~、進んでるね~!」

 

 顔を赤らめる少女は初々しく耳まで朱色に染める。

 小学生相手に何を告げているのだろうかと俺は思いつつも、小さな耳に囁く。

 

「……園子」

 

「ひゃ!?」

 

「聞きたい? 夜な夜などんな事をしてるのか」

 

「……!」

 

 陶器のように滑らかな細い脚をそっと撫でる。

 抱きしめた腕を掴む少女、顔を赤らめつつも抵抗の色は薄い。

 際どい話題に関しては耐性が低いのか、そういえば昔はそういう話題は基本的にしなかったなと小さく唸る少女に大人げなく揶揄うと、数秒程の時間を経てゆっくりと首を横に振った。

 

「ううん、大丈夫」

 

「いいのか?」

 

「気になるけど……、そういうのは聞いちゃ駄目だと思うんよ」

 

「そっか」

 

 そう告げた園子は吐息と共に身体の体重を俺に預けた。

 ふわりと漂うミルクのような甘い香りが鼻腔を擽る中で、静かに少女は告げる。

 

「そんなエッチなかっきーだけど、今度は離さないでね」

 

「ああ」

 

「今度は私も離さないからね~」

 

 

 ――そんな夢を見た。

 

 

 

 +

 

 

 

 虚ろな眠りから目覚めると、此方をジッと見る瞳が視界に浮かんだ。

 毛布を捲り、今まさに入り込もうとしていた少女は、どこかばつが悪そうに苦笑した。

 

「えっと……」

 

「ん……」

 

「わ、わ!」

 

 琥珀色の瞳を揺らす少女、園子の手を引っ張ると、抵抗なく寝台に転がり込んだ。

 コテン、と寝転がる園子を抱きしめて素肌に手を伸ばし、暖かさを確かめる。

 

「くすぐったいよぉ……」

 

「静かに」

 

「ん……ッ」

 

 薄いシャツと下着のみを身に着けていた園子。

 先に起きていたのだろう少女を抱き捕らえて擽るように柔肌を堪能する。

 

「かっきー、駄目だよ〜」

 

「ぐへへ、何がダメなんだ~」

 

「ぁ、もう……」

 

 蛇が巻き付くように片手は乳房へ、もう片方は恥部へ。

 しっとりとした少女の肌、つい顔を埋めてしまうのも仕方ないだろう。 

 

 令嬢の恥部に伸びた手は太腿に挟まれ、独特な弾力を手のひらと甲に伝えられる。

 それでも肉の拘束に負けじと柔らかい生地のショーツ越しに恥肉を擦ると、少女は呻いた。

 

「昨日いっぱい、したでしょ~……」

 

「あと五分だけ」

 

 少女の柔肌を堪能しながら、手のひらで、鼻で、味わう。

 程良く脂が乗りつつも引き締められた腹筋は触り心地が良く、つい遊んでしまう。

 

「あ、朝御飯、作ったから、ね? 起きようね~かっきー」

 

「……」

 

 とはいえ、されるがままの園子ではない。

 何だかんだでしっかりしている少女は快楽の味を覚えながらも、溺れる事は無い。

 

「頑張れ~」

 

「園子。お前、眠くないのか?」

 

「うん? 今はそうでもないかな~。サンチョ先輩のおかげかな」

 

「先輩?」

 

「快眠だったんさ」

 

 少女が枕にしていた猫を想像させる枕。

 カバーに『YES』と書かれた枕について語る園子だが、その全容は見えない。

 

 薄く微笑む少女に手を引かれ、寝台から上体を起こす。

 ペタリと脚を下ろした床はひんやりと冷たく、夢心地だった意識を冷めさせる。

 抱きしめられながらも器用に俺を起こした彼女は、しかし男の腕力からは逃れられないのか、或いは逃れる気がないのか、透明な肌を至近距離で見せながら僅かに寝癖の付いた髪の毛を揺らす。

 

「ほら、冷めるよ」

 

「……」

 

「食材を無駄にはしないよね?」

 

 コテンと小首を傾げる園子は可愛らしい。

 だがその姿以上に、その問い掛けに対して俺は頷かずにはいられなかった。 

 

 園子がわざわざ作った朝御飯なのだ。

 そんな物を冷ますなど、吊るされても文句は言えないだろう。

 

「楽しみだな」

 

 白いワイシャツと黒色の下着を纏った金髪の少女。

 シャツの隙間から見せる白皙の肌を朝から堪能したいが、切り替えも重要だ。

 ニコニコと微笑む少女に手を引かれながら、俺はゆっくりと歩きだしたのだった。

 

「先に顔、洗ってくるよ」

 

「いってらっしゃーい」

 

 キッチンからの香ばしい匂いを肺に満たしながら朝の雑事を終える。

 既に皿までリビングに運ばせてしまった事を申し訳なく思いつつも、チーズトーストを一口。

 

「美味しい」

 

「えへへ」

 

「園子の淹れる紅茶は絶品だな」

 

「それほどでも~」

 

 笑顔の華を咲かせる少女。

 サラダと紅茶といった食事を暫く堪能しながら、俺はふと口を開いた。

 

「園子」

 

「ん~?」

 

「今年は花火、一緒にしような」

 

「――――」

 

「花火大会も一緒に行こうな」

 

「……覚えてたんだ」

 

「夢のお告げというか、まあ針千本も飲みたくはないしな」

 

 それは思い返すと随分と昔に感じる、少女と少年の約束だ。

 幾千の夜空の下、必ず叶えると誓った約束。あれからだいぶ時間は経過したが、

 

「……うん」

 

 此方を見る大きな瞳、瞬きを繰り返す少女は、やがて眦を和らげる。

 コトリと紅茶を置く少女は数秒程沈黙を保った後、ゆっくりと頭を縦に振った。

 

「じゃあ、延滞料金分は何して貰おうかな~」

 

「え」

 

「冗談だよ〜」

 

 そんな和やかな一時も、少しずつ騒がしさが増していく。

 朝食を終えた頃、玄関のドアが開く音と共に足音が此方に向かってくる。

 

「おっはよー!」

 

「おはよう、良い天気ね」

 

「ゆーゆ~、わっしー。おはよ」

 

「ん、おはよう」

 

 ドアを開けたのは友奈と東郷だった。

 それ以外で開ける事があるのは保護者ぐらいだが、早朝に来る事は少ない。

 向日葵のような笑顔と、微笑を浮かべる少女達が二人部屋に入るだけで騒がしさが増す。

 

「くんくん、これはチーズトーストの匂い!」

 

「あったり~! 流石だねぇ、ゆーゆは」

 

「えへへ、褒められた。……って園ちゃん、凄い恰好!」

 

「官能的ね、そのっち」

 

「照れるのだぜ~」

 

 少女が三人集まると少し騒がしい。だが、嫌いではない。

 赤い髪の毛を後頭部で纏めた快活な少女、穏やかな表情を浮かべる黒髪の少女。自らの服装に照れる金髪の少女。その女々しくも幸せな光景に俺は静かに吐息した。

 

「三人、ベッド、手錠……、ぅっ、頭が……」

 

「亮ちゃん、どうしたのー?」

 

「亮くん……?」

 

 何か黒い思い出が脳裏を過る。

 思い出してはいけない何かに、思わず頭を押さえる俺に歩み寄る東郷と友奈。

 

「いや、何か逆なんとか的な物が記憶をね……」 

 

 首筋に寒気。

 はっと振り返ると、笑みを浮かべる美少女達。

 しかし不思議かな。その柔らかな笑みからは僅かに冷気を感じた。

 

「……」

 

「……」

 

「どうした?」

 

「ぎゅー」

 

「……?」

 

 突如首筋に抱き着いてくる友奈、その様子を見下ろしながら俺の腕を掴む東郷。

 

「どうした?」

 

 二度目の質問。誰かを指名して問いかけた訳ではないが、友奈の代弁なのか東郷が答えた。

 

「ううん。ただ、少しシャワーを浴びてきたらどうかなって」

 

 散々性交したからか、それ特有の匂いがするのか。

 或いは東郷と友奈の鼻が良いのか、単純に近づいて分かったのか。

 首筋にマーキングするように甘噛みしようとする友奈を引き剥がそうとしながら問い掛ける。

 

「分かった……じゃあ――」

 

「せっかくだから、背中流すわね」

 

「私も!」

 

「え」

 

 突然の展開に目を白黒とする間に状況は進む。

 一体何がどうしたというのかと思う俺に、東郷は薄く笑い掛けた。

 深緑の瞳が爛々と映し出す視界には、何てことはない、男の首筋に出来たばかりの赤い痕――、

 

「大丈夫よ、亮くん。少しだけ天井を数えるだけだから」

 

「――――」

 

「そのっちと一緒に」

 

「頑張ってマッサージするね!」

 

「あれ~?」

 

 

 ――そんなある日の早朝。

 



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【番外】図書室にて、密やかな

アンケートで『大きいぼた餅』がトップだったので。
やっぱりそうだよね。唐突だけどローアングルで見上げるぼた餅が好き。


 勇者部の部活内容は多岐にわたる。

 

 初期の頃は道端や海岸のゴミ拾いといった物であったが、夏凜や園子の加入、また知名度の上昇に伴い、頼まれる依頼の量、質は変化していったのである。

 まあ、何が言いたいかというと――、

 

「こういう事もやるんだよね」

 

「静かにね、亮くん」

 

 ボソリと呟く俺に対して、僅かに眉をひそませる黒髪長髪の美少女。

 淫靡な唇は桜色、触れた指は色白で、静かにしなさいという仕草は心を擽る。

 

「……」

 

 鼻腔を擽るのは、どこか古びた紙の匂いだ。

 周囲を見渡すと棚、棚、棚。中にはぎっしりと本が詰まっている。

 

 それなりに量は多く、しかし実際に手に取られた数は少ないのだろう。

 花の青春時代、友達と遊んだりしたい年頃でファンタジー小説以外を手に取ろうとする人はあまりいない。借りる人はいても、わざわざ学校の、それも放課後の図書室に留まる人は少ない。

 

 唯一賑わうのはテスト前の期間であるが、その時期は既に過ぎている。

 そして大抵の学生は、残念ながらそんな時期であっても自宅で勉強をするのだ。

 必然、見渡す限りガランとした空間は思わず大声で笑い声でも上げたくなってしまう。

 

「人がいなくても、返却された本を戻したりしないといけないのよ?」

 

「いや、分かってるよ。依頼だからね」

 

 本当に? と言わんばかりの半眼を向ける東郷から目を逸らし、彼女の隣で周囲を見渡す。唯一の図書室の扉はぴっちりと閉まり、図書室には誰もいない。

 

 今回の依頼内容は、緊急の用で席を外す事になった図書委員の業務の代わりだ。

 東郷が告げたように、受付カウンターでの対応と返却本を棚に戻す程度の簡単なお仕事だ。

 

「東郷さんって本、読む?」

 

「えっ? ……そうね。結構読むわよ」

 

 東郷との距離は近い。

 硬い椅子に座り小首を傾げる制服姿の東郷の隣に拳一つ分空けて俺が座っている。

 図書室という場所だからか、小声で話しかけると此方に身体を寄せて、同じように小声で返答する東郷。

 

「プログラミングとか、歴史についてとか……、最近はお花についても勉強してるわ」

 

「多芸だね」

 

「亮くん程ではないわよ」

 

 銀鈴の如く微笑を浮かべて笑う東郷。

 その横顔を見ていると、ふと気づいたら手が少女の太腿に伸びていた。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「ん~」

 

 滑々とした黒色のタイツ越しに程良く脂の乗った少女の脚につい触れる。

 理由はない。そこに一年前まで動かなかった美少女の脚があるなら触りたくなるのだ。

 

 さわさわと変態の称号を授かりそうな怪しげな手の動き。

 いやらしさ以外に何も感じられない男の指先がスカートの裾の中と外を行き来する度に小さく息を呑む少女の深緑色の瞳は、驚愕と羞恥を混ぜ合わせた感情で揺らいでいる。

 

「んっ」

 

 くすぐったそうに脚を揺らす少女は、しかし抵抗は薄い。

 こうなる事が分かっていたかのようにほっそりとした手が俺の腕を掴むが、普段に比べて男の手を止められる程の力はない。

 

「りょ、亮くん」

 

 それでも口は素直ではない。

 僅かに潤み始めた深緑色の瞳は此方を見上げ、抗議の意味を込めて名前を呼ぶ。

 

「東郷さん」

 

「っ」

 

「静かにね」

 

 俺と東郷しかいない図書室。

 こんな状況で何もしないという方が失礼ではないのか。

 滑らかな化学繊維越しに内腿の弾力を手のひらで愉しむ。

 

 独特な弾力を手のひらに感じながら、味わうように片手は少女の手の制止を振り切り、スカート内部へと進んでいく。艶々した繊維は視覚的に楽しめるが、どうしても破りたくなるのは男の性だろうか。

 余った片手で無防備な尻を撫でた瞬間、はんッ、と彼女は艶めかしい息を吐く。

 

「だ、駄目よ。そういうのは帰ってから、ぁっ!」

 

 スカートに隠された少女の恥部に指が届く。

 黒いタイツと僅かに湿った下着越しに感じられる柔肉の感触が指の腹に伝わる。

 

「やめっ、ちょ、ちょっと……!」

 

 貝状の肉を薄い布越しに感じながら、悪戯をするように愛撫する。

 腰を引かせる少女は顔を僅かに羞恥と快楽に歪めつつ、僅かに湿った恥部を触らせる。

 

 制服越しに主張する双丘を揉むと、僅かにブラの感触が伝わる。

 この場で衣服を脱がせてしまおうかという考えが過るが、それはリスクが大きい。

 

 ワンピース型の制服、目の前の彼女はその上に学校指定のカーディガンを着ている。

 肩から垂らした艶のある黒髪は青色のリボンに巻かれ、手に取ると滑らかな感触が伝わる。

 

「東郷さん」

 

「は、はい」

 

「タイツ、破ってもいい?」

 

「だ、駄目よ」

 

「弁償するから」

 

「そういう問題じゃ、ッ、ここは学校よ、ゃ、っ」

 

 カウンターテーブルを背後に、椅子に座る東郷の股座に座り込む。

 俺の姿は東郷以外に見る事は叶わず、両手をスカート内部に忍ばせる男の侵攻を辛うじて止める東郷、タイツを脱がせようとするのを阻止せんとする姿は、つい意地悪したくなる。

 

 スカートの最奥にまで入り込んだ片手は、会話の合間も絶え間なく愛撫を続ける。

 愛撫と言っても、記憶の中にある眼前の少女の裸体を思い出し、クリトリス周辺を下着とタイツ越しに摩るだけだ。それでもじわりと指の腹に染みが広がるのが分かった。

 

「ぁ、っ、っ……!」

 

 円を描くようにスカートで隠された恥丘を撫でる。

 嫌々と首を振り抵抗するも、僅かに情欲の色香を醸し出し、熱い吐息を漏らす東郷。

 指を噛む唇はむにゅりと歪み、身体を丸め、俺の頭を掴んだ瞬間、ガラリと扉が開いた。

 

「!?」

 

 強張った東郷は椅子から僅かに立ち上がる。

 その隙を見逃さず、タイツを膝下まで脱がせる俺。

 

 どちらが卑怯で素早くて綿密に計算されていたのか。

 カウンターテーブルの下に隠れた行為は決して無駄では無かったのだ!

 

「ゃっ、ん、んんっ……」

 

「?」

 

 顔を赤らめて必死に誤魔化しの咳をする東郷。

 足音から恐らく女子生徒だと推測するが、俺の関心は最初から東郷にしかない。

 

 黒い薄皮に包まれた日光を知らぬ無垢な柔肌。

 ショーツごと剥ぎ取ってしまうミスは無く、無事膝下まで下ろしたタイツを戻そうとする東郷の手は空を切った。

 

「あの」

 

「は、はい!」

 

「えっと、この本があるかどうか知りたいのですが」

 

「……っ、そ、その本ですね」

 

 この程度の悪戯は大した事ではないらしい。

 慌てて接客スマイルを作る東郷をカウンター下から見上げる。

 

 ローアングル、と言えば良いのだろうか。

 制服越しに主張する豊かな双丘、既に熱を帯びたように瞳を揺らす東郷の姿、震える白皙の腿を手のひらで味わう度にビクリと腿を震わせる姿は、支配欲や独占欲を擽り離さなかった。

 

 スカートを捲る。

 

「っ」

 

「大丈夫ですか?」

 

「え、ええ……。少し体調不良気味でして……えっと、小説を書かれるんですね」

 

 捲れた制服のスカート、一瞬だけ見えた薄青色のショーツを眼球に焼き付ける。

 ごくごく自然に腿の付け根にまで手を這わせ、滑らかな腿肉に頬を擦りつけていた。

 

 会話を逸らそうとして、会話の種を植えてしまった東郷。

 足首まで下ろしたタイツに意味は無く、普段は晒されない艶めかしい腿の肌を爪で軽く突く。

 薄く頬を染める東郷はカウンターの下で俺の腕を掴む。

 

「私の最近の趣味でして……」

 

「素晴らしいですね。本でしたら窓側の、上から二番目の棚にあり、……ますよ」

 

 抵抗とも言えない手を摺り抜けて、小股の間に手を伸ばす。

 先ほどの悪戯でしっとりとした感触のある布地を指の腹で弄り円を描く。

 

「ありがとうございます」

 

「……」

 

 微笑を浮かべる東郷の身体に余裕はない。

 俺の頭を掴むも尻肉を揉まれ、カウンターの天板を挟み男に弄ばれる少女は静かに頷く。

 

 ちゅ、くちゅ、と俺にしか聞こえない水音。

 ひんやりとしていた白皙の腿は熱を帯び、手のひらに温もりを伝える。

 足音が受付カウンターから本棚の方に向かう音を聞きながら、そっと肉厚な腿肉に齧り付く。

 

「ん……ふぅ」

 

 咄嗟に指を噛んだのか、想像していた声は抑えられた。

 テーブルの縁を掴み、見知らぬ女生徒の前ではしたない声を上げるのだけは阻止した。その我慢強さに心の底から敬意を払いながらも、息をするように彼女のスカートの中を弄っている。

 

 穏やかな顔をしているが、熱い吐息と熱を帯びた瞳は隠せない。

 期待と羞恥と快楽を混ぜた美しい深緑色の瞳が俺を見下ろす姿は妖艶だった。

 自覚があるのかないのか椅子ではなく俺の手に尻を預け、腰から下をくねらせる。

 

 むにゅりと潰れる尻肉。

 上履きごと脱がせたタイツは片方の脚に引っ掛かるも東郷が気にする余地はない。

 

「東郷さん」

 

「んぁ……ぁぁ」

 

 にじゅりと薄布を濡らす恥部を指で弄る密かな遊び。

 学校の、図書室の、カウンターで行われる淫らな行為は、少しずつ加熱していく。

 もう一度彼女のスカートを持ち上げようとすると東郷は裾を手で押さえて首を振った。

 

「東郷さん」

 

「ゃ、ほんとに、だめ……」

 

「東郷さん」

 

「は、い」

 

「ここで見せて」

 

 ひくっと少女の喉が鳴る。

 静かに囁くと僅かな逡巡の後、東郷はゆっくりと制服のスカートを持ち上げた。

 

 むっちりとした白い腿を伝う甘露。

 恥部を隠す薄青色のショーツ、腰付近には薔薇の刺繍と白のレースが施されている。

 此方を見下ろす東郷は真面目だからか、臍の下付近までスカートをたくし上げてショーツの全体像を俺の前で曝け出した。その倒錯的な光景に俺は思わず息を呑んだ。

 

「これでいい?」

 

「……」

 

 少女の言葉には答えず、なおも執拗に彼女の恥部を弄ぶ。

 痛い程に反り立った己の怒張は今すぐに挿入したいとばかりに硬い。

 

「ぁ~~、っ!」

 

 いつまでもこの密やかな遊びをしても良い。

 座り込む事も叶わず、俺にされるがままの状態で、膝と膝がくっつきそうになる両脚を力で無理やり開かれ愛撫される東郷は必死に声を漏らさないように唇を噛みしめる。

 苦し気に、気持ち良さげに悶える姿は、酷く、はしたない。

 

「声、我慢してね」

 

「っ、っ、ぁ、っ―――」

 

 すりすりと柔らかく熱くなる恥部を撫で、クリトリスを探す。

 既に硬くなった肉芽を見つけるのは容易で、何となしに親指で押しつぶす。

 

「~~~~~!!!」

 

 瞬間、首を仰け反らし声なき悲鳴を東郷は上げた。

 遠慮なく快楽器官を指でなぶられ、咄嗟にカウンターの縁を掴んだ東郷はぎゅっと目を閉じた。

 静かな絶頂、ぷしゃ、ぷしゃりと愛液が手を伝い、彼女の腿を伝い、小さな蜜だまりを作る。

 

 全身を痙攣させた彼女は腰から下の力を喪ったように崩れ落ちた。

 これでは依頼を達成する事など不可能ではないか、仕方なしに東郷と俺は立ち位置を変えた。同時に絶頂の余韻に震える少女の前でズボンを下ろし怒張を見せつける。

 

「……? ……ぁ」

 

 旦那様へのご奉仕の精神は忘れていないらしい。

 何の躾かは忘れたが、熱に浮かされたような顔で東郷は反り立った肉棒を見つめる。

 

 朱色の差した白い肌に当たる亀頭。

 ぺちぺちと遊ぶように東郷の口元に宛がうと、小さな唇が吸い付いた。

 

 ちゅるり、と熱い舌が竿に絡みつく。

 乱れた髪の毛をかきあげて、己に課せられた奉仕を少女は行う。

 

 ぬめる舌先は雁裏を捉え、ちろちろと絶頂を促す為だけに蠕動する。

 快楽の壺は俺の射精感をあっという間に高めていき、今度は俺が眉を顰めた。

 どんどん上手くなる東郷の口腔行為に感嘆の吐息をしていると、チャイムが鳴った。

 

 下校のチャイムだ。

 部活動が終わりを告げ、良い子が皆、お家へ帰る時間だ。

 

 本を吟味していたのか、その存在を忘れていた女子生徒が本棚からカウンターへ歩み寄る。どこか樹と園子を混ぜたような大人しそうな少女は一冊の本を大事そうに抱え持っている。

 チャイムの音に釣られて選択をしたのか、目的の物を見つけられたのか。

 

「あ、あの……」

 

「貸出ですね」

 

「ひゃ、ひゃい」

 

 典型的なあがり症なのか、いつもの微笑で対応すると顔を赤らめる少女。

 一年生なのだろう、少し丈の長い制服に身を包んだ少女は僅かに周囲を見渡す。

 

「さっきの……」

 

「ああ、先ほどの担当でしたら――」

 

 僅かに理性が残っていたのかカウンターテーブルの下に潜んだ東郷が息を呑んだ。

 肉棒を咥えたまま此方を見上げる少女の不安げな視線を感じ取り、片手を彼女の頭に伸ばす。ふわりとした絹の柔らかさを連想させる艶のある黒髪を撫でながら俺は答えた。

 

「しゃぶってますよ」

 

「え?」

 

「ぃ……、いえ、体調が悪そうだったので帰りましたよ」

 

「そうだったんですね」

 

「っ、ぉ……げほん。失礼」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、うん。風邪が流行ってるから気を付けてね」

 

「っ、は、はい!」

 

 笑顔で話していると、急に熱を込めた口腔奉仕に剛直が限界を迎えた。

 どくっ、どくっとホットミルクが東郷の口内に噴き出される姿を思い浮かべながら、完璧な微笑を浮かべる。僅かに顔を赤らめた少女は小さく会釈して図書室を退出した。

 その後ろ姿が完全に見えなくなるのを見届けて、熱いエキスを嚥下する東郷を見下ろす。

 

 それなりの量だったのか、口端にこぼれた種汁を小さな舌が舐めとる。

 大切に、味わうように、奉仕した事を誇らない殊勝な態度に若き剛直は血流を取り戻す。

 

「東郷さん」

 

「……はい」

 

「立って」

 

 テーブルに手を付かせ、背中を向けさせるように東郷を立たせる。

 どさくさに紛れて外したブラを椅子に置き、制服のスカートを背後から豪快に捲るも東郷がそのことに言及する暇は無い。

 

「……っっっぁぁ!!!」

 

 ショーツをずらし貫かれた東郷は手で抑えきれない喘ぎ声を漏らした。

 部屋の扉から見えない位置で彼女の腰骨をしっかりと掴み、バックで犯す。

 

 鼠径部と臀部がぶつかる音が部屋に響く。

 にじゅ、にじゅと猥音が立つ度に東郷の白い腿を愛液が伝う。

 

 耳まで赤くした東郷は自らの袖を噛む。

 悔しげに、快楽に抵抗するかのように、嬌声を必死に隠そうとしている。

 

「ふっ、ぅ……、んん、ん……ッ」

 

 学校で行う行為は、普段よりも羞恥心が勝っているのだろう。

 それにしては先ほどは積極的にフェラチオをしていたが問い詰めるつもりはない。

 

 普段と違って声を上げられない分、膣壁は熱くぬめり子種を求めて蠕動する。

 ワンピース型の制服は腰まで捲れ上がり、くびれた腰を掴み、揺する度に肉棒が白い尻肉に食べられ、彼女の蜜液が履いたままのショーツを濡らしていく。

 

 普段の姿からは想像も出来ない光景。

 否、想像しても実行することは出来ない事を俺は東郷としていた。

 はしたない交尾に羞恥心を覚える暇もない彼女は、腰から手を離したら崩れ落ちそうだ。

 

「あッ!! ンっ、ゃ、うぅっ、んぅぅ……っ!」

 

 今度は彼女を背後から抱きしめるように、角度をつけて腰を振る。

 目の前の雌を孕ませようと制服越しに胸を揉みながら、吸い付く膣に身を任せた。

 

 ふと東郷の顔を見る。

 情欲に塗れて快楽に溺れた赤らんだ顔を背後から見つめる。

 

 目が合う。

 涙を浮かべた深緑色の瞳、震わせた桜色の唇を奪う。

 ピストンに任せた動きで互いが達するのは、それからすぐの事だった。

 

「あっ―――!」

 

 二度目の射精、濃厚な白濁を余す事なく最奥に注ぎ込む。

 奥歯を噛み締めながら、俺の腕の中で僅かに遅れて東郷は唇を開いた。

 

「―――!? ~~~~~~~ッッ!!!」

 

 少女の声は俺の手に抑えられ、腕の中で静かに全身を震わせた。

 虚ろな表情をした少女の口端から透明な糸が珠になり、制服に染みを作った。 

 

 

 

 

 

 帰り道、手を繋いだ東郷はしきりに周囲を見渡す。

 恥ずかし気にスカートを押さえる姿は扇情的である事を本人は理解していない。

 

 俺のポケットには黒いタイツと下着がセット。

 普段は晒されない白皙の腿をスカートから見せる少女は夕焼けに照らされる。

 

「ぁ」

 

「どうした?」

 

「……亮くん」

 

 夕暮れに照らされて、片手でスカートを押さえる少女は俺の耳元で囁く。

 

「……た、垂れてきちゃった」

 

「……」

 

 周囲を見渡し誰もいない事を確認。

 図書室でもないが、彼女の真似をして囁き返した。

 

 ――今日、家に来る?

 

 暫く黙り込んだ東郷は、やがて深緑色の瞳を揺らした。

 まるで、言わなくても分かるだろうと言わんばかりに。

 

 

 

 +

 

 

 

 翌日、加賀家の朝食は和食になった。

 

 

 



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【番外】ごっこ遊び

前話の続き。


「あ、あら、お帰りなさい」

 

 玄関の扉を開けて声を掛けると反応してくれた少女が一人。

 長い黒髪は普段と異なりリボンに纏められず、エプロンを身に着けた彼女が歩み寄る。

 

 透き通るような色白の肌に良く映えた黒髪。

 若妻である彼女は、此方の視線に気づくと困り気に自らの頬に手を当てた。

 

「……そんなに見られると照れるわ、亮くん」

 

「旦那様だ」

 

「そうだったわね……あなた」

 

「ちなみにご主人様ではなくて、旦那様呼びね。ここ重要」

 

「ちょっとよく分からないけど……扉、閉めてくれない?」

 

「ああ」

 

 しっかりと扉を施錠する。

 靴を脱ぎ、改めて彼女の様相を見ると、その過激さに眩暈を覚えそうだった。

 

「……どこで覚えたんだ?」

 

「あなたが買った物じゃない」

 

「ほう……おい」

 

「はい」

 

「似合うぞ」

 

「……!」

 

 フリルの付いた白色のエプロンを身に纏う彼女。

 割烹着と迷う彼女に対して、洋服を薦める自分に合わせてくれたのだろう。

 だがエプロンはあくまで装飾品に過ぎないのだ。重要なのは着ている少女の裸体。

 

 ――裸エプロンの彼女についてだ。

 

 ジッと見られるのはやはり羞恥を覚えるのだろう。

 やや丈の短いエプロンが捲れる事を恐れるようにフリルの端を掴む東郷の姿は、非常に男心を擽る。ロマンと言えば分かるだろうか。

 己の恰好を恥じらいながらも、『旦那様』に見て貰う為に着替えたのだろう。

 その想いに答えなくてはならないと端末を取り出し、目の前の若妻を撮り始める。

 

「ちょっ、まって、撮るのは……」

 

「俺しか見ないから」

 

「……もう」

 

「ほら、ピース。ダブルピースでお願いします!」

 

「こう?」

 

「はーい! 良いですね。欲しがりません?」

 

「勝つまでは!」

 

 パシャリと一枚。掛け声は気にしない。

 羞恥に僅かに頬を染めながらも気前よくピースをする少女。

 小首を傾げつつも、廊下でエプロン一枚で微笑ダブルピース姿を納める。

 

 何だかんだ言いながらも甘い対応の多い東郷。 

 廊下を歩きキッチンに向かう後ろ姿、尻肉を手で隠す姿は可愛らしい。

 

 チラチラと此方を見る彼女の恥じらう横顔を見ながら、敢えて一歩後ろから東郷の背中を上から下までじっくりと見る。白皙の肌と艶のある濡羽色の髪の毛は美しく、黒髪から覗く形の良い肩甲骨から腰付近への女体美は艶めかしい物がある。

 

 芸術的な美しさがそこにあった。

 触れる事を躊躇うような、恐ろしくも未だ発展途上である美しき花の果肉。

 

「今日はどうでしたか?」

 

「ああ、仕事は順調だよ」

 

「そうでしたか。良かったわ、あなた」

 

「お前のおかげじゃよ」

 

「まあ、あなたったら……、今日も精のある物を作らないとね」

 

「お、そうか。いつもありがとう。何か俺にして欲しい事があったら言えよ」

 

「ふふっ……」

 

 楽しそうに微笑む東郷は、そっと尻を隠していた手をどける。

 何が楽しいのか、俺の荷物を手に取り、今度こそキッチンに向かおうとする。

 

「あっ、りょ、旦那様」

 

「うん?」

 

「ご飯にします? それともお風呂にします?」

 

 クルリと振り返り、どこか妖艶な笑みを浮かべた彼女はそう問い掛けた。

 たゆんと揺れる白い双丘は男の目を惹きつけ、エプロン越しに淫靡な存在感を放つ。

 

「それとも」

 

「……!」

 

 悪戯っ子のような表情で眦を和らげて、東郷は甘い声音で問い掛ける。

 

「私?」

 

「――――」

 

 それはまるで極上のプリンを俺の脳内で思い出させる。

 プッチンプリン。有名メーカーのプリンを思い出して欲しい。そう、プリンだ。

 地面を掘るように容器からスプーンで掬って食べるが、昔はご丁寧に皿に載せていた。更に落とした時、甘い香りを放ち、食べて下さいとばかりに揺れる動きが何故か脳裏を過る。

 

 少女の乳房が母性の塊だというのは嘘だ。

 だって、こんなにも厭らしく男の本能を掻き毟るのだから。

 

 それはともかく三択だ。

 お風呂でする? ご飯でする? 私でする?

 加賀亮之佑の耳を通じて翻訳された言語は多少おかしいが大体こんな感じだ。

 

 いずれにしても選ばないという答えは無い。

 むにゅりと揺れる東郷の乳房を見ながら必死に選択肢を考慮していると、

 

「えっと、それは勿論――」

 

「もう、……見過ぎよ。はいっ時間切れ」

 

「そんな!」

 

「そんな! じゃないよ、亮くん。時間切れです」

 

 ジッと見過ぎたからか、エプロンから覗く上乳と谷間を手で隠す東郷。

 しかしどこか満更でもなさそうな顔で、揶揄うように若妻はこんな事を言い出した。

 

「でもあなた、もしかして疲れてる? ……おっぱ、えっと、その、……揉む?」

 

「揉む」

 

 どこで覚えたのか。

 普段そんな事を友奈や園子が言えばはしたないと言う少女、しかし例外があったのだろう。彼女からのOPPAI揉む? というたゆんたゆんした素敵なお誘いを断るのは勇者として在り得ないのだ。

 

「ん……くすぐったい……」

 

 背後から抱き着くようにエプロンの隙間から直接乳房に触れる。

 先ほどから俺の目を惹きつけていた白い横乳は触れるとつきたての餅のように形を変える。しっとりとした柔肌は普段よりも熱を帯び、指に、手のひらに吸い付く。

 

 勇者部随一の巨乳の名は伊達ではない。

 掬いあげるようにして彼女の巨乳を持つとずしりとした重みが手に掛かる。

 

「凄い……ずっしりしてます」

 

「ふふっ、なーに、それ?」

 

 言葉を選ぼうにしても俺の脳内ではそれ以上の言葉は出なかった。

 汗ばんだ下乳の柔らかさは程良く、手のひらから今にも溢れんばかりである。

 

 機嫌良く微笑を浮かべる東郷の身体は仄かに暖かい。

 それは彼女の体温だけではなく、先ほどまで風呂にいたからか。

 背後から抱き着くと長い黒髪からぷわりとシャンプーの香りが漂う。

 

「やっぱり肩とか凝るでしょ」

 

「そうね……、っ」

 

 手のひら全体でマッサージをするように揉んでいく。

 愛撫とは異なる、どこか遊ぶようなマッサージに近い触れ方だ。

 どこかくすぐったそうに微笑む少女は小さく頷きながら、胸を揉む俺を引き連れて二階へと脚を進める。

 時刻は既に夕刻を過ぎ、夜も更けていた。

 

「東郷さん」

 

「何? 亮くん」

 

「新婚ごっこ、楽しかったよ」

 

「……」

 

 既に夕飯は食べ終えた。

 風呂は先ほど入り終えて、今は就寝間際。

 ふと思いついた新婚ごっこに意外にも東郷は乗り気だった。

 

 勇者部で培った演技力は凄まじく、彼女の行動一つ一つは真に迫る物ばかりであった。図書室での密かな遊びの事など無かったかのように、甲斐甲斐しく少し亭主関白気質のある旦那に尽くす良妻賢母な妻を演じていた。

 そんな遊びも終わりだと告げると、悲し気な表情を浮かべて東郷はゆるゆると首を振った。

 

「……私との関係はごっこ遊びだったの? 散々弄んで?」

 

「……え?」

 

「酷いわあなた! お腹の子供は私が育てるから。有無は言わせない」

 

「――――」

 

「それにもう名前は決めてるの……ふふっ」

 

 物憂げな表情で自らの腹部を撫でる若妻、東郷の顔には影が過る。

 どこか光の消えた瞳、暗闇に映る深緑色の海には確かな嫉妬が入り交ざっている。

 

「……」

 

「それにしてもどこの誰かしら。私の男を盗った泥棒猫は。……包丁とって来ないと、ね?」

 

「……」

 

「もしかして夏凜ちゃん? 風先輩かしら? あっ、それとも防人の子かな?」

 

 危うげな表情でくすくすと笑いだす東郷。

 悪寒を背中に感じつつも、浮気された若妻という役に酔っているのであろう東郷は随分と迫真の演技をしてくる。本当に演技なのだろうか。

 一体何が始まったのか、戦慄する俺の頬を撫でてくる東郷は小さく囁く。

 

「大丈夫よ、亮くん」

 

「……」

 

「また遊んだだけでしょ。そうでしょ? ねえ」

 

「……」

 

「何か言ってよ、亮くん」

 

「……」

 

「私を捨てないで……」

 

 何か変なスイッチが入ったらしい東郷を抱きしめる。

 傍から見れば浮気した夫と捨てられた情緒不安定気味な若妻の修羅場になるのだろうか。

 じわりと少女の目尻に浮かぶ涙を拭いつつも、まるで誤魔化すように唇を奪う。

 

「ん……ぅ」

 

「捨てたりしないさ」

 

 美少女を食らう屑男の気分で、細い東郷の体躯を撫でながら囁く。

 男を誘う柔肌は熱く、くびれた腰は十分に熟れた女である事を手のひらに教える。

 肩を掴む少女の力は弱く、顎を持ち上げるとゆっくりと目を閉じて唇を窄めた。

 

「は……ふ……」

 

 唾液を交換し、互いの舌の柔らかさを教え合う。

 どうしようもない程に下品な水音が部屋に響く中で、エプロンを引っ張る。

 薄布が谷間に挟まれ、内側に隠れた豊かな双丘を外気へと曝け出した。そんな事をしながらも粘着質に絡み合った舌先は熱く、少女の身体にまで熱を帯びさせていく。

 やがてそんな口腔行為にも一度終わりを迎えて、離した唇には唾液の糸が繋がれる。

 

「泣くなよ、東郷さん」

 

「……ぁ」

 

 やや情緒不安定な彼女の身体に快楽を与えながら小さく囁く。

 

「俺がそんな男に見えるか?」

 

「……うん」

 

「……。なら、しっかり捕まえててくれよ。こんな風に」

 

 個人的には否定して欲しいところである。

 しかし、涙する彼女にそんな事を言うことはできず、手を握る。

 指を絡め合い握った手に何かを感じたのか口付けの度に徐々に虚ろな眼差しになる。

 

「そうね……っ、ぁ」

 

 豊満な乳房を片手に揉み、赤子のように乳肉に吸い付く。

 汗と東郷特有の甘い香りが鼻腔を擽る中、吸い、揉む度に零れる東郷の嬌声。

 

 ちゅ、ちゅぱ、と赤子にしては下品な音を立てて東郷の乳肉を吸う。

 餅のような柔らかい白い果肉を好きにしながら、徐々に先端で硬くなる乳首に近づく。

 

「あ……っ!」

 

 羞恥と期待と快楽を混ぜ合わせた表情の東郷。

 その表情を尻目に俺は小さく口を開いて、彼女の何度目かの授乳経験を奪う。

 

「ぁー……、ッ、ひぁ!」

 

 こりこりとした桃色の肉粒を吸う度に切なげに呻く東郷。

 嫌々と首を振りながらも俺の頭に手を添える少女は無意識にか豊満な乳房に押し付けようとしている。その動きに応えるべく乳首を唇で挟み、引っ張るようにして離す。

 

「ひぅ!」

 

 唾液でテカる東郷の乳首、片方だけでは不自然なので、もう片方にも。

 

「ぁぁっ……! それっ、だめぇ……ッ!」

 

 白く無垢な少女の乳房は汚される。

 男の唾液に汚されて、自分の物だと主張するように噛み痕を付けられて。

 大きく、荒く息を吐き、乳首を愛撫する度に若妻は内股をくねらせた。

 

「好き? そこ」

 

 ぎゅっと俺の頭を掴み乳房に挟み込んだ東郷が尋ねる。

 夢中で母乳を吸おうとする俺を見下ろす蕩けた表情の少女に頷く。

 

 東郷の胸に溺れていた。

 

 とはいえ、彼女の胸に溺れるのは当然と言えよう。

 溺れない男は聖人だろう。或いは枯れたか。いずれにせよ彼女のぼた餅を味わいつつも、エプロンを捲りしとどに濡れた彼女の恥部へ。

 

「っ」

 

 ちゅく、と媚肉が指を押し返す。

 役に入っていたのか本音なのか、秘裂を弄る動きに気を取られた東郷を寝台に押し倒す。

 そういえば、目の前の女は思い込みが激しくネガティブになりやすく放置すれば切腹するような愉快な少女であったなと思う。

 下手な言葉は逆効果となる事を知ってる。故に行動あるのみ。

 

 えっ、と声を上げる東郷を無視して、寝台の端で彼女の腰を持ち上げる。

 細く白い両腿を掴み、何か行動を起こす前に、最も彼女を悦ばせる事の出来る体位へ。

 

 眼前に少女の恥部を。

 むちりとした腿を強引に掴み、腰を持ち上げるとエプロンが臍まで垂れ落ちる。

 隠す物が無くなった以上、当然俺の目の前には、彼女の恥部が全て曝け出された。

 

 薄い陰毛も、菊座も、秘裂も、全て。

 

「ま、待って、こんなの……」

 

「好きだろ? こういうの」

 

 かあああっと事態を把握した脳が彼女の顔を赤面させる間に俺は陰唇に口付けする。

 雌の香りを放つ薄毛に鼻を突っ込ませながら、彼女が何か抵抗を行う前に陰唇を可能な限り口に含み、じゅるるっと一息に啜り上げた。

 

「あ、~~~~~~~ッッッ!!!!」

 

 べちん、と両頬を叩く太腿。

 羞恥と恥辱と快楽を同時に浮かべた瞳からは涙が一筋。

 図書室で行為に及んだ時さながら、我慢をする事を忘れたようにガクッ、ガクリと絶頂を迎える。

 

 怒張に代わり舌を挿入する。

 上へ、下へ、左右へと、筋肉が許す限りに媚肉を舐める。 

 飼い主に尽くす忠犬のように、吸う度に溢れる東郷の味を味わっていく。

 

「だめっ、それッ、亮くん……ッッ、ぁぁっ!!」

 

 可哀そうな程に顔を赤くし、全てを曝け出される東郷。

 彼女の恥部は下品な音を立てて弄ばれ、閉じようとする脚は無理やり開かれる。

 

 舌で剥いたクリトリスに鼻を押し付けながら俺は東郷の媚肉にキスをする。

 上の口にするよりも激しく情熱的で下品なキスを。腰を持ち上げて東郷に見せつける。

 

「こんな格好……! ひっ、あ、あああぁッ!!」

 

 せめてM字開脚だけでも止めようと両脚に力を入れる少女。

 彼女を悦ばせる為に奉仕を続けながら、しかし気持ち良すぎたのか俺の頭を掴む東郷は少しでも快楽を逃がそうと浮かんだ腰をベッドに戻そうとする。

 そんな若妻を絶対に逃がさない。

 

「んひぅ!!?」

 

 クンニリングスを続けながらも、硬く主張するクリトリスに唇で触れる。 

 泉のように溢れる新鮮な淫液をピンク色の肉粒にソースの如く掛けながら吸い上げる。

 

「~~~~!!」

 

 ぺし、ぺし、と俺の頬を締め付けていた腿が僅かに開き、痙攣した。

 

「~~! ……! ひゃめ、ひゃめっ! それ、また、イッ……!!!」

 

 親鳥が雛鳥に餌を口移しするように、溢れた蜜液を肉粒に掛けて、一息に啜る。

 若妻が最も悦ぶ淫靡な器官を口内で蹂躙し、甘噛みし、吸い尽くす。

 

「ッ、っ、……っ!!」

 

 ぷしっ、ぷしゃっと時折噴き出す淫液は俺の顔に掛かり、重力に従い東郷を汚す。

 機能性の薄い白いエプロンを自らの愛液で濡らし、また自らの淫液で裸体を濡らしていく。

 

 

 それから十数分程、彼女へのご奉仕を続けた。

 溢れ出し、時折噴き出す彼女の淫液が彼女に掛かり汚れる様を、東郷が喘ぎ、絶頂に震える様を見届けた。波のように幾度となく押し寄せ続ける快楽の波に何度も少女は気をやった。

 

「ぁー……、はひゅ……」

 

 ベッドの上に乱れた黒髪、どこか呆けた表情でだらしなく股を開いている。

 普段の姿からは程遠いほどに淫らではしたない姿は、彼女の限界を示している。

 

「もお、……ひとおもいに……! は、ぁ」

 

 汗ばんだ身体、谷間を伝い臍に溜まる汗。

 むわりと漂う雌の香りに、既に怒張から先走り汁を垂れ流させていた。

 

 何かを考えさせる暇も、心の準備もさせない。

 そんな思いを抱き、白く艶めかしい腰を掴み、ぬめる肉沼を貫く。

 

「ひぃ、ぃっ、ぁ!」

 

 両目を見開き、上げた若妻の嬌声。

 肉の寝台に埋もれるように息絶え絶えの横たわる彼女との距離が近づくと、ゆっくりと蛇のように脚が俺の腰に絡みつき、ふしだらに膣が雄の肉棒を締め付ける。

 

「っ、ッ……!!」

 

 ふるると震える白い肢体。

 目の前で揺れる肉果に俺はかぶりつき、乳首を甘く齧る。

 

「はぐぅ……っ」

 

 身を捩らせ、シーツに涎を垂らす少女。

 どこにも逃れる事は出来ず、快楽に呼応し濡れた肉が怒張を締め付け、余裕を失くさせる。

 

 否、既に余裕などない。

 射精を待つだけの身体は獣のように目の前の雌を孕ませようと腰を打ち付ける。

 

「ぁっ、ァ、ぁ、んはっ、ぅ、ぁっぁ、あああっ!!」

 

 絶頂の階段を上る彼女は全身で俺に抱き着く。

 首に手を回した東郷、支えを求める少女に応えるべく怒張を叩きつけた。

 

「……あああっっっ!!!」

 

 意識が白く染まる中で、子種を彼女の子宮内に注ぐ感覚。

 絶頂と支配感が脳を叩く快楽に呻く中、至近距離で東郷の悲鳴の如き嬌声を耳にした。

 

 びゅるるっと最奥に注いだ白濁が膣内を逆行する。

 僅か数秒程遅れて結合部から愛液と混ざった淫泡が陰嚢を伝う。

 

 暫し部屋には二人の息が響く。

 噛み痕と吸い痕と、雌にされた印を刻まれた東郷が小さく唇を震わせた。

 

「……ね」

 

「……?」

 

 ぽつりと呟いた言葉。

 もごもごとした声は、正確な言葉として聞き取れない。

 目を向けると、うっとりとした顔をする少女がくすりと笑う。

 

「……いい?」

 

「……? ……、ああ」

 

 主語も何もない何かを求める声音。

 ただ、抱きしめた女の要求を無碍にするつもりも、一々尋ねる気力もなくて。

 

 直後に、鎖骨付近に痛みがあった。

 かりっと小さな歯が肉を齧る音と共に。

 

「……ふふっ」

 

 何が面白いのか。

 嬉しそうな、くすくすと笑う少女の頭が俺の横顔に触れる。

 吸血鬼のように自ら付けた小さな、小さな傷跡を舌先で舐めて消毒する東郷の髪の毛に顔を埋めると、汗とシャンプーと甘い甘い和菓子の香りが肺に広がった。

 

「――――」

 

 どっと疲れた。

 射精に伴う疲れと、敷かれた肉布団の温かさと柔らかさに目を閉じる。

 

 少しだけなら休憩しても良いだろう。

 どのみち、全身に巻き付いた柔らかい女の肢体が、離してはくれないのだから。

 

 

「――ずっと一緒よ、亮くん」

 

 

 囁き声は今度は聞こえた。

 普段とは異なる、知らない女の甘い声だった。

 愛おし気に囁くその声は骨を伝い、静かに脳を震わせた。

 

 

 



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【番外】結城友奈の味

熱烈なリクエスト要素あり。


「亮ちゃん、応援ありがとねー!」

 

「うん、ほら見てよ。友奈」

 

「あっ今日のだね。……わー! いっぱい撮れてるね!」

 

 にへらと相好を崩し、桜のような笑顔を向ける友奈。

 部活動の依頼で、ソフトボール部の助っ人として参加した彼女。 

 打って、走って、投げての八面六臂の活躍を納めた写真については後で東郷にトレードを申し込むつもりである。

 つまり交換用、保管用と、一種のカードみたいな扱いだ。

 

 これらの可憐で凛とした少女の写真に需要がある事を知ってる。

 当然無料ではない。交換条件として何かしらの希少価値のある写真を頂く。

 

 自撮り写真しかり。

 コスプレ指定写真しかり。

 コレクターとしてはコンプリートしたくなる。

 

「奇術師じゃなかったの?」

 

「それは殿堂入りしてるから。これは趣味よ」

 

 実際にマウンドに立ち、ボールを投げる彼女の姿に東郷も涎を垂らすだろう。

 殺し合った仲だ。そこら辺の有象無象よりも彼女の事は知っている。色々な意味で。

 

 ふわふわぼた餅。

 ぼた餅、たゆんたゆん。

 90は超えてる。何がとは言わないが。

 

 そんな妄想を脳内で展開していると、ふと友奈が口を開く。

 

「亮ちゃんって結構写真とか撮るよね」

 

「まあ、そうだな。何だかんだで時間って過ぎるの速いし」

 

「……?」

 

「もうすぐ友奈も中学生から高校生になるだろ?」

 

「うん」

 

「そしたら、今の友奈はもう見れないだろ。だから写真に残したい」

 

 時間が過ぎるのは早い。早過ぎるくらいだ。

 一見ゆっくりと進んでいるように見えていても、時間が止まる事はない。

 神樹という不可思議な存在があるが、そういう例外的な事は置いておいてだ。

 

「今の可愛い友奈も、これから先の可愛い友奈も覚えておきたい。いつか振り返る時に後悔しないように」

 

 だから写真を残す。

 友奈だけじゃない。園子や東郷、勇者部の、加賀亮之佑の軌跡を残す為に。

 

「……そっか」

 

「勿論エッチなのも撮るけど」

 

「台無しだよ。……ちなみに今日の私はどうだったの?」 

 

 人差し指を自らに差す友奈に、俺は小さく笑った。

 

「格好良かったよ」

 

「そう?」

 

「凛々しい感じ」

 

「えへへ……」

 

 夕暮れの帰り道を歩く。

 嬉しそうな表情で隣を歩く少女との距離は近い。 

 長袖、短パンといった体操服を着た友奈、そっと手を取ると柔らかな感触が手に伝わる。

 

 抵抗もなく握り返される友奈の手。

 振り切られる事はなく、少し気恥ずかしそうに少女は隣を歩く。

 

「今日、いっぱい汗かいちゃった……」

 

「あれだけ動けばね」

 

 汗一つかかず顔色も涼しいままで活躍する人など見ていて楽しいだろうか。

 そんな機械を見るよりも、人間らしく活動し、明るく元気な少女の方が素敵だ。

 

「帰ったらシャワー浴びないとねー!」

 

 長袖の襟を引っ張り、空気を衣服内に取り込もうとしているのだろう。

 パタパタと裾を引っ張る少女の白い鎖骨がチラリと見える。

 サイドテールにした髪の毛が尻尾のように揺れ、うなじが眩しい。

 

 指でなぞる。

 

「ひゃん!」

 

「……」

 

「えっ、ど、どうしたの?」

 

「蚊がいたような」

 

「そ、そうなんだ。でも、そんな季節だっけ?」

 

「そうだよー」

 

 タガが外れそうだった。

 触れ合いに自制というブレーキが作動しなくなってきている。

 触りたいからと、幼顔の少女のうなじに指で触る自分は周囲から見たら最悪だろう。

 今更ながら周囲を見渡し、誰もいない事に安堵しつつ自制を促そうとした。

 

「これは東郷さんの所為だな」

 

「東郷さん?」

 

「色気が最近凄い」

 

 あれだけ家でしかしないと決めていたのに。

 一度外で、学校で性行為をしてしまうと揺らぎそうになる。 

 見境なしに性行為を覚えたての大学生のように思考が性欲に呑まれてしまいそうだ。

 その先にあるのは甘く緩やかで退廃的な破滅の道しかない。

 

 そんな事になれば、きっと、後悔するだろうに。

 進んでしまいたいという思いがどこかにあった。

 

「ああいう淑女で清純ぶってるのが、潜在的に一番性欲を持て余してんだよ。エロい委員長キャラなんだよ。破廉恥って言ってる自分が一番破廉恥なパターンだって」

 

「エロ……、と、東郷さんはそんなんじゃないと思うよ? ただ大切な人に尽くそうとする人だよ」

 

「思想が過激だけどね」

 

 夕暮れの中で、共通の親友について語り合う。

 東郷美森という女についてだ。

 特徴は甘く、柔らかく、一緒に寝ると安眠が確約される最高の女だ。

 

 彼女については語り尽くせば日が巡る。

 だからほどほどにして、最終的に友奈の体操服姿に目が移る。

 

 不思議な物だった。

 それなりに見慣れたはずなのに。

 

「亮ちゃん」

 

「うん?」

 

 そんな不躾とも言える視線に彼女も察したらしい。

 ハーフパンツから覗かせた健康的な腿が夕暮れに染まって。

 制服とも私服とも異なる体操服を身に纏った友奈が小さく笑った。

 

「――どうしたいの?」

 

 

 

 +

 

 

 

 ぴちゅ、ぴちゃと水音が響く。

 その音が何かを考えて、いつの間にか濃厚な口付けを交わしている。

 

「ん、……まっ」

 

 眼前には愛おしい幼顔の少女。

 少しずつ大人へと変貌を遂げつつある柔らかい赤髪の少女だ。

 

 いつの間にかサイドテールが解かれ、長袖のジャージが床に落ちている。

 白いシャツと紺色の短パンを着た彼女を壁に押し付けて、キスをしていた。

 むにゅりと感じる感触は、さりげなく短パン越しに揉みしだいてる尻肉のソレだ。

 

「んっ、っ」

 

 薄い尻肉は独特の感触を手のひらに返す。

 目の前の少女の股間には己の脚を差し込み、膝を恥部に擦りつけている。

 少女の細い腕は拘束するように掴まれ、片手は白いシャツの中に既に入り込み、汗ばんでしっとりとしている腹部を撫でている。

 

 パン生地のように尻肉をこねくり回し、ぐにゅりと形を変える。

 体育の時間、部活動で激しく動く時に着用している衣服の上から、むにゅりと変わる。

 

 一体何が起きているのか。

 目の前の少女を脱衣所の壁に押し付けて、一体、自分は、何をしているのか。

 

「ん、ぅ、まっへ、っ」

 

 くぐもったか細い声は目の前の少女から発せられている。

 拘束するように動きを制限された友奈は、辛うじて左手で俺の胸板を押す。

 

 細い腕からは想像通りの力しか発揮されない。

 目の前の普通の女の子には俺に組み伏せられる程度の力しかない。

 

 嫌々と首を振る友奈。

 下ろした髪の毛から、首を振る度にふわりと汗と甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 

「シャワー……、ぁ、っ」

 

「浴びなくていいよ」

 

「よく……ないよぉ、ひぁ!?」

 

 羞恥か驚愕か、声を上げる友奈の首筋を舐める。

 くすぐったそうに声を漏らす少女は舐められる度に身体をくねらせ、小さく呻く。

 

「汗、かいてるから……」

 

「問題ない」

 

「ある、よぉ……」

 

 もじもじと身体を揺らし、膝に股が擦れる度に小さく吐息する友奈。

 普段の快活な姿からは想像できない蕩けた表情は、見ているだけで薄暗い何かを刺激する。

 

 もっと悦ばせたいと、もっと虐めたいと、そう思ってしまうのだ。

 体操服の中に忍ばせた手、程良く引き締まった腹筋を撫で回し、シャツに手を掛ける。

 

「万歳して」

 

「……ぅん」

 

 汗で濡れたのか、シャツにブラジャーが僅かに透ける。

 『透けブラ』というのは良き文化であると俺は思う。思春期少年の目を離さない素晴らしい物だ。後々拗らせた紳士を製造してきた事には違いない。俺は違うが。

 少し肉付きの良くなった肌は、普段とは異なりしっとりとした汗に塗れている。

 部活動に真摯に向き合った結果なのだろう。これを舐めなくて何とする。

 

 背中に手を回すとやはり汗が手のひらに付着する。

 汗を掻いている事は当然目の前の少女も理解しているのだろう。少し気まずそうな顔をする友奈の首筋を唇で舐めるように愛撫しながら、背中側からブラジャーのホックに手を伸ばす。

 

「ぁ」

 

 パチン、とホックを片手で外す。

 汗を吸った白シャツの中から、そっとピンク色のブラを抜き出す。

 それをまるで一等賞の賞状のように少女に見せると、小さく頬を膨らませた。

 

「……」

 

「いじわる」

 

「知ってる」

 

 ここは脱衣所だ。

 ならば、服を脱がせても問題はないだろう。

 加えて汗をかいた衣服を着たままだと、身体を冷やすだろう。

 

 頬を赤らめる姿は男を知らぬ生娘のようだ。

 脱ぐように目線で伝えると、渋々ながらも従順に薄いシャツを脱いだ。

 洗濯籠にくしゃりと落ちる白いシャツを視界の端に捉えつつ少女を視姦する。

 

 羞恥心を忘れてないのか、そっと乳房を手で隠す友奈。 

 鎖骨を伝う汗が形を変えた白い乳房へと流れる姿は、額縁に飾りたくなる。

 

 ――それはともかく、実に美味しそうだ。

 

「友奈」

 

「なーに?」

 

「腋舐めるね」

 

「え!?」

 

 要望ではなく、決定事項だった。

 柔らかな二の腕を掴み、上に持ち上げる。

 驚きの声を上げる友奈の反応を尻目に、腋に顔を近づけると少女の力が強まる。

 恥ずかしいのか、抵抗する少女に対してやや強引に薄い肌に甘く口付けする。

 

「ん! 待って亮ちゃん!! それ! 恥ずかしいっ」

 

「甘じょっぱいね、友奈ちゃんの汗」

 

「~~~~!」

 

「腕を下ろすな」

 

「ぅぅ……!」

 

 滑らかな肌は、しっとりと汗ばんでいる。

 くぼんだ腋を舌と唇で味わうと、濃厚な味わいが脳を痺れさせる。 

 

 塩辛いという訳ではない。

 僅かな酸味と癖になる程良い辛さ、スパイスのように混じる甘さが味覚を刺激する。

 

 中毒性のあるソースと同じだ。

 ソフトクリームを舐めるように、恥ずかしがる少女の腋の味は酷く甘美だ。

 

 ふと剥き出しの背中に興味が生まれる。

 汗と脂が浮き出た少女の柔肌、肩甲骨付近を噛み付くように舐める。

 美味だった。まるで麻薬のようにいつまでも舐めていたい、そう思わせる。

 そんな事を告げると、顔を赤らめた友奈は目尻に涙まで浮かべて、身体を震わした。

 

「も、もういいでしょ……? 舐めるのは、駄目だよぉ」

 

「くんかくんか」

 

「か、嗅ぐのも禁止!」

 

「腋を舐めなければいいの?」

 

「そういう問題じゃ――」

 

「隙あり!」

 

「ぷわっ!?」

 

 膝を揺すると振動が心地良いのか、熱い吐息を漏らす少女。

 ぷわりと漂う女と汗の香りにくらくらしながらも、鎖骨を伝う甘露を啜る。

 友奈の露は極上の甘美を舌上に伝えてくれた。ならば彼女が隠す柔肉はどんな味なのか。

 

 美乳を隠す腕を強引に剥がす。

 

「ぁ……」

 

 ぷるん、と乳房がまろびでる。

 彼女の性格とそっくりな柔らかい餅のような乳房。

 慎ましくも手のひらに収まる乳肉は、園子や東郷とはまた異なる感触だ。

 唯一俺に対して反抗的に上を向く乳首を指で摘まむと、甘い声を彼女は聞かせた。

 

「や、……! ! っふぃ……」

 

 円を描くように薄桃色の乳首を触る度に気持ちよさそうに声を漏らす。

 強引に壁に押し付けて、犯すように彼女の乳房を手のひらで味わっている。

 

「! やぁあ……っ!!」

 

 否、犯すように、ではない。 

 犯しているのだ。彼女の首筋を、鎖骨を舐め、羞恥心を煽り、辱めている。

 美しい薄紅色の瞳は快楽と羞恥で歪み、舐める度に確かな女の声を聞かせる。

 

 最高の音楽とは愛する女の嬌声なのか。

 いやらしく、男の情欲を誘う喘ぎ声は隠す事もなく、快楽に震える。

 もっと聞かせてくれとリクエストするように硬さを帯びた乳首を爪で弾いた。

 

「ぁぁぁ……っっ!!!」

 

 突然、敏感な彼女は俺の膝に体重を掛けた。

 尻肉と恥部の感触が濃紺のハーフパンツ越しに押し付けられるのを感じながら、絶頂の余韻に浸る少女の顔を見下ろす。

 ぷるるっと乳房を揺らし焦点の合わない瞳で虚空を見る友奈は不自然な呼吸を繰り返す。

 

「は、ふ……、ぁー」

 

「――――」

 

 そっと膝を彼女の股から外すと、ゆっくりと床に崩れ落ちていく。

 支えを失った少女は息を整えながら、形の良い眉を小さく顰めて呟いた。

 

「次、私がする……」

 

「ん?」

 

「私もする」

 

「お、おう」

 

 そう小さく呟いた友奈は、俺のズボンを下ろしに掛かる。

 散々辱められた報復か、単純に発情スイッチが押されたのか。

 いずれにしても、奉仕をしたいという殊勝な態度に俺はズボンを下ろした。

 

「わ……!」

 

 何度も見てきたにも関わらず、竿を見た途端に顔を赤らめる少女。

 既に反り立った怒張を目の当たりにし、小さく息を呑んだ友奈は、しかし止める事なく亀頭を口に含んだ。教え込んだ奉仕を殊勝に行う姿に今は無き猫耳とメイドビキニの姿を幻想する。

 今度また着て貰おうと思いながら、友奈の奉仕姿を見下ろす。

 

 半裸姿の少女。

 竿の根本を掴み、小さな口を開き、亀頭を呑み込む。

 にゅるりとした熱い口内の感触は少女の媚肉にも似た刺激をもたらす。

 

 薄眼でゆっくりと怒張を味わう友奈。

 上下に竿をしごきながら、舌と頬肉を行使して口腔奉仕を行う。

 積極的な行動は彼女らしく、日々猥らに成長していく姿は目を見張る物がある。

 

 続いてキスの雨。

 竿、陰嚢、亀頭、鈴口に、あらゆる場所に、俺の唇にするように降り注ぐ。

 柔らかい唇が情熱的に怒張に対して慈しむように触れていくのだ。

 

「ん、ちゅ」

 

「ぁ……」

 

 彼女からの愛が、熱烈なキスが繰り返される。

 やんわりと精子袋を手のひらで撫で回し、愛おし気に怒張を頬張る。

 

 舌が裏筋に絡みつき、ぬめる唾液が先走りと混ざる。

 自分の怒張に嫉妬してしまうのではないか、そんな思いすら抱かせる奉仕。

 メイドとして主人の下で培った奉仕精神は忘れていなかったらしい。

 

 艶やかな瞳には、情欲の炎が宿る。

 快楽に入り混じる薄紅色の眼差しは、ただ男を悦ばせるという一念だけ。

 ふと薄紅色の瞳が此方を見る。月のように静かで穏やかな欲情が宿っていた。

 

 一体だれが無垢な少女に教え込んだのだろうか。

 普段は決して見せない少女の、快楽に揺れる雌の色香にペニスが震える。

 

 既に血管がはち切れんばかりに勃起している。

 ほんの少しの刺激で暴発してしまいそうな程の甘い甘い奉仕によって。

 

「――――」

 

 小首を傾げて肉茎を握りしめる少女は妖艶に笑う。

 限界を見抜いていたのか、ゆっくりと友奈の舌が雁首を捉え、締め付けた。

 

「ぅ、ぁ……!」

  

 突然の事だった。

 視界がショートし、濃厚な白濁が友奈の口内に注がれる。

 思わず彼女の頭を掴むと、瞳を見開いた彼女はゴクッと喉を鳴らした。

 

「ん。む」

 

 友奈の喉が膨らみ、白濁を嚥下する。

 自らの身体に男の子種を取り込み、ごっくんと飲み干す。

 

 はふ、と吐息を漏らす。

 友奈の唇と鈴口の間にディープキスをしたような粘液の橋が架かる。

 

「亮ちゃん」

 

「……?」

 

 ペロリ、と赤い舌が最後に淫液の橋を舐めとる。

 

「美味しかったよ」

 

「――――」

 

 どこか淫靡な余裕の表情が癪に障った。

 ふと、この悪いメイドには罰を与えなくてはならないと思った。

 何の罰かは分からないが。

 

 

 

 +

 

 

 

 汗が流されていく。

 如雨露を思わせるシャワーヘッドから暖かい湯が裸体を叩いている。

 白い背中を伝う湯は不規則に肢体を流れ落ち、二人を繋ぐ怒張を濡らした。  

 

「くああっ!?」

 

 心地よい温度の湯は汗と少女の悲鳴を流した。 

 暴れようとする悪い子の腰を掴み、問答無用の挿入。

 にゅるり、と挿入を待ち望んでいたかのように濡れた雌肉は雄棒を受け入れた。

 

「やぅぅぅ……!」

 

 悲鳴を上げる友奈を俺は背後から犯していた。

 いわゆる立ちバック、媚肉の奥深くまで剛直は貫く。

 

「ぁぁぁぁっっっ……!!!?」

 

 一切の遠慮はしなかった。

 パンパンパン、と脛骨部が尻肉を叩く音を響かせるピストン。

 肉を叩く音をかき消すようにシャワーの水音が浴室に響く。

 

 友奈にしてみれば強引も良いところだろう。

 独りよがりで、優しさの欠片もないレイプのような物だ。

 

「ぁっ、ん、やぁぁ……ぁ!」

 

 にも関わらず、友奈の声は既にとろけ甘味が混ざっている。

 俺の腰の動きに合わせて稚拙ながらも腰を揺すり、震えている。

 お湯では隠す事の出来ないとろみのある潤滑油が次から次へと溢れていた。

 

 なんていやらしい子なのだろうか。

 歓喜に震える心音が疎ましく、普段とは異なる角度で肉壺を突く。

 

「ぁ!? ぁー……ンッ、ぃぅ……!」

 

 カリッと友奈の爪がタイルを引っ掻く。

 

「きゃう……ッ!! ぁ、りゃめ……ふあ、ぁっ、ぁ、ぁぁ~〜っ!」

 

 臍側の膣肉をこする。

 真上の子宮口を叩く。

 

 それだけで身体を硬直させて、容易く絶頂の余韻に浸る。

 じゅぶ、と亀頭が別の場所に当たる度に、友奈は気持ちよさそうに声を震わせた。

 

 文字通りに男の逸物を咥えてよがる姿に心が震えた。

 なんてはしたないんだと東郷の代わりに尻を手のひらで叩くと、ぶるりと片方の尻肉が湯を弾いた。んッ、と1オクターブ高い声を漏らした友奈の背中に涙のような軌道でお湯が伝う。

 

 背後から好き放題出来るのは良い物だ。

 支えを求めて掴んだ形の良い美乳を揉みしだける。

 剛直を抜き差しする度に尻肉の柔らかさが直に伝わってくる。

 まるで天使のような少女を、玩具のように背後から弄ぶことが出来る。

 

「ああ、本当に」

 

 立ちバックというのは悪くないなと思った。

 

「あ~、Sになっちゃう~。目覚めちゃう~」

 

「も、もう、なって、……っ、るよ、ぉっ!?」

 

「そういう事言うお口はこうしてやる! オラッ!!」

 

「まっへ、しょこっ、擦るのは、ぁぁ……!!」

 

 彼女が悦ぶ臍裏付近を丁寧に亀頭で擦ると、小刻みに震える友奈は内股になった。

 ぎゅううっと締め付ける膣肉は、彼女がいかなる絶頂に達したかを教える。

 

 シャワーから注ぐ小雨の如き湯は浴室に備え付けられた鏡を曇らせない。

 正しく背後から男のペニスで突かれて悦ぶ、悪い少女の姿を真に映し出す。

 鏡に押し付けると、むにゅんと潰れた乳房が餅のように広がり、少女は喘いだ。

 

「りょ、ちゃ……っ! わたし……っ」

 

 ぴくぴくと小刻みに達する友奈。

 その波が収まる前に腰を揺するため、彼女は絶え間ない絶頂にさらされていた。

 

「それっ、それ、しゅきっ! りょちゃ、すき……っ!」

 

 感極まったように薄紅色の瞳を揺らす少女が此方を向く。

 髪の毛を湯で張り付かせた少女とのキス、キス、そしてまた飛ぶ。

 

「ゃ……っ」

 

 円を描くように腰を揺すると、友奈は切羽詰まった声を上げる。

 

「ぃッ、ぁ、ぁ……!!」

 

 背中を反らし喘ぐ友奈を抱きしめて怒張を奥深くに擦り付ける。

 ここが誰の物であるかをマーキングするように、白濁を友奈の最奥に注ぐ。

 

 射精は長かった。

 びゅううっと吐き出される間、白く染まる意識を保つべく友奈を抱く。

 乳房を揉み、腹と背中がくっつく程に華奢な体躯を抱き、浮遊感に浸る。

 

「ぁ。ぁ」

 

 ガクガクと膝を震わせる友奈。

 倒れる事はない。ただ、抱きしめた腕の中で少女は法悦の空に飛んだ。

 

 シャワーを止めて椅子に座る。

 にゅじゅり、と結合部から淫音を響かせると友奈は此方に顔を向けた。

 

「……」

 

 薄紅色の瞳に涙が滲んでいた。

 その涙の理由はやりすぎたからか、或いは快楽による物か。

 

「ん」

 

 瞬きを繰り返す少女は、そっと尻肉を擦りつける。

 呼応するように貫いたままの剛直を刺激する締め付けが増す。

 

「あ、む」

 

 何かを伝えようと無言で腕を甘噛みする少女。

 その真意は、わざわざ口にせずとも伝わるという信頼からか。或いは。

 

「……もう一回したいの?」

 

「……」

 

 少しだけ伸びた艶のある髪の毛、隙間からチラリと目を向ける少女。

 注視しなくては分からない程に小さくコクリと頷く友奈はまるで別人のようだ。

 

「……――」

 

「ち、ちがっ」

 

 思わず淫語を呟いてしまっても仕方がない。

 もう足腰が立たない程に膝がガクガクなのに。

 それでも、まだ、苛められ足りないのだろうか。

 

 嗚呼、なんて――

 

「悪い子、だな」

 

「――――」

 

 上目遣いで俺を見つめる少女。

 僅かに目を見開き、その真意を探る前に、ゆるりと、笑った。

 

「……うん、そうだよ」

 

 むくりと陰茎に血が巡り、むくむくと膨らむ。

 その様子が分かったのだろう、えへ、と淫らで淑やかな吐息を漏らす少女。

 

「私、悪い子だから」

 

 くすくすと笑う姿に、俺を見つめる瞳に吸い寄せられて。

 

「いっぱい、お仕置きしてね」

 

 ――シャワーが再びお湯を流し始めた。

 

 

 



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第三十一話 私たちのかっきー

 乃木園子は覚えている。

 

 ――俺と友達になってくれませんか。

 

 そんな言葉から始まった。

 あの日、初めて加賀亮之佑と出会った日を。

 彼が園子にとって、人生で初めての友達となった日を。

 

 加賀家は乃木家の分家である。

 詳細は大赦によって消されたが、確固たる事実として受け継がれている。

 この四国、世界が一度天の神に滅ぼされて残った小さな箱庭を従える乃木家は名家中の名家だ。現大社において最も影響力及び発言力のある家であり、園子は名実共にお嬢様なのだ。

 

 周囲の子供からは腫物扱いだった。

 何も虐めを受けていた訳ではない。

  

 園子はふんわりふわふわで独特な空気が多いが、確固たる芯はある。

 実際に虐めを受けたら即座に行動を起こすだろうし、大人も黙ってはいない。

 

 園子としてはフランクに接しようと思っている。

 遠巻きに見られる状況を嫌だなと思いつつも、仕方ないと諦めていた。

 

 園子が悪い訳ではない。

 周囲の子供たちが悪い訳ではない。

 ただ、園子にはどうしようもなかったのだ。

 

 そんな周囲との壁が自然と出来た状況下で過ごす分家と本家の二人。

 二人には家とか、身分とか、そんな物は関係なかった。

 

『まあ、園ちゃんは不思議ちゃんなところがあるから』

 

『だから俺が他の友達の分まで一緒にいるよ。一緒に笑って、泣いて、楽しんで』

 

『うん』

 

『そういう思い出を二人でたくさん、作っていこうよ』

 

『……それってプロポーズ?』

 

『そ』

 

『わ~! かっきーにプロポーズされちゃった~。お婿さんだ!』

 

『婿入りなんだ』

 

『すや~』

 

 随分と昔の話だ。

 何回目かの乃木家でのお泊りで、亮之佑はそう言ってくれた。

 布団を並べて、でも大きい布団だから枕を並べていろんな事を話した。

 

 春に花見をして。

 夏にプールへ行き。

 秋は紅葉を楽しんで。

 冬は雪で一緒に遊んで。

 

『ねえ、かっきー。今日は何して遊ぼっか~』

 

『そうだな、だったら……』

 

 ずっと一緒にいられると思っていたのに。

 

 

 

 +

 

 

 

 明るく、普通で、()()()

 それが園子にとっての友奈という少女の印象だった。

 

『……こんにちは~』

 

 加賀家の別荘、元は乃木家が所有していた家だが、インターホンを押して、快活そうな笑顔を見た時、園子は一瞬何が起きているか分からなかった。

 否、分からない訳ではない。大赦を通じて、家の力を通じて知っていた。

 

 だが、百聞は一見に如かずとも言う。

 

『よお、いらっしゃい』

 

『やっほー! かっきー、来ちゃった』

 

『園ちゃん、いらっしゃい!』

 

『……ゆーゆ~』

 

 招かれる側だった。昔とは違って。

 そんな些細な事がささくれのように刺さった。

 

『ポッキーゲームでもする?』

 

『何故そのチョイス?』

 

『かっきー好きじゃなかったっけ?』

 

『風評被害!』

 

『あはは……』

 

『園子、夕ご飯食べてくだろ?』

 

『食べる~。かっきーのご飯だー!』

 

『……餅じゃないぞ?』

 

 亮之佑にとって近しい者として、友達として訪れて。

 偽りなき、経験に基づいた言葉を告げると、亮之佑は苦笑する。

 胸元を掻き毟るように手で押さえる仕草に懐かしさを感じながら彼の背中を見つめる。

 

 改めて見ると、数年ぶりの背中は大きくなった。

 リビングからキッチンを見る事ができ、彼のエプロン姿を見る。

 黒を基調としたエプロンを身に纏った少年は慣れた様子で器具を手に取る。

 

 ふと視線を上げた亮之佑と目が合い、そっと視線を外す。

 言いようの無い気恥ずかしさを感じながら、時折視線を向ける。

 そんな風にぼんやりとしていると、至近距離からの視線を感じた。

 

 友奈だった。

 薄紅色の瞳、そこに含まれる感情を読み取れず、咄嗟に声を出した。

 

『何、作るんだろうね~』

 

『うーん、肉うどん! じゃなくて……肉じゃがとか!』

 

『ほへぇ~ してその心は』

 

『心って程じゃないけど……、なんとなく、かなぁ。亮ちゃんならきっとこうするかなって!』

 

『……そっか』

 

 取り留めのない言葉を交わし合う。

 後で振り返って、何を語ったのか忘れてしまう程度に他愛の無い言葉。

 

『楽しみだねぇ……』

 

『だね、亮ちゃんのご飯美味しいからねー!』

 

 そう告げて立ち上がる友奈。

 薄紅色の瞳を輝かせ、身内が褒められたかのように笑顔を見せる少女。

 快活な笑顔に曇りは無く、機嫌の良さを伝えるようにサイドテールが揺れる。

 突如立ち上がった意味、向かう先を悟り、立ち上がろうとするのを赤い少女が制止した。

 

『あ、私も』

 

『ううん。園ちゃんは座ってて! すぐ終わるからー』

 

『……うん』

 

 お客様を座らせ、家主のもとへと向かう少女。

 ピンク色のエプロンを着用する少女は華やかな笑顔で亮之佑に笑い掛ける。

 

 親愛と友愛を混ぜた、桜のような可憐な笑顔を。

 小説風に言えば、こうなるだろうか。

 まるで恋する乙女の表情をしていた、と。

 

『――――』

 

 あれで付き合っていないらしい。

 あんな可愛らしく信頼を丸ごと預けたような笑顔に眩まない男はいないだろう。

 ビュォォォゥと風が吹きそうな空間だというのに、メモ帳を取り出す気にはなれなかった。

 

『――――』

 

 肩を並べて皿の盛り付けをする二人。

 互いへの理解が、一々言葉を告げずとも生まれる行動に齟齬は無い。

 

 まるで夫婦のように、番いのように寄り添う二人に。

 

 亮之佑の隣に自然といる友奈の姿を見て。

 

 お似合いの二人だと思ってしまって。

 

 園子は自分を初めて怖いと思った。

 

 

 

 

 ――私の居場所を取らないで。

 

 

 

 

 怖いと思って、自分に嫌悪を抱いて。

 あんな良い子に対して、自分の惨めさと醜さを知って。

 それでも身を引こうと思わなかったのは、一体、どうしてだろうか。

 

  

 

 +

 

 

   

 手の中で端末を回す。

 手のひらにフィットする程良い長方形のソレは、くるくると回る。

 中途半端に目ざめてしまった為、俺は目の前にあった端末で遊んでいた。

 

 そこに思考は関与しない。

 ただくるくると回る。

 そうして数回転して、突如小さく振動する。

 

「……」

 

 闇夜を僅かに照らす端末の光。

 照明を消して随分と経過したからか、その小さな光すら煩わしい。

 消してしまおうかと考えつつも、端末を起動する。

 

 送り主は身近な他人、お向かいさんのお隣さん。

 愛国心を秘めた女からの物である事を理解すると同時に内容を見る。

 

「ほう」

 

 思わず独り言を呟いた。

 端末に映されていたのは画像だ。

 

 場所は自室なのだろう。

 何度も訪れた事のある身近な場所を背景に彼女は映っていた。

 和室らしさを思わせる畳に正座で座る少女の姿だ。

 

 東郷との端末を通じた連絡で、返信が遅い事は殆どなかった。

 いつも見ているのではないのか、等と思い込んでしまう程の返信速度には素直に感心してしまう。そんな彼女も今回の返信には普段よりも時間が掛かったようだ。

 

 艶のある濡羽色の髪は風呂上がりなのか普段よりもしっとりとしている。

 朝顔を模した薄青色の和服という寝間着に身を包んだ東郷の姿は、まさしく大和撫子。

 ほんのりと朱色が差した白皙の肌に彼女の髪色は良く映えた。

  

 手を上にかざし自らを撮ったのだろう。

 僅かに強張った表情で、羞恥によりカメラから目線を外している。

 羞恥の原因は恐らく和服の胸元を緩め、自らの乳房、白く淫靡な谷間を写したからか。

 

 下品に全てを見せる訳ではない。 

 彼女が唯一見せている雪肌は、鎖骨と乳房の上半分だけだ。

 

 とはいえ、何もしなくては色素の薄いピンク色の乳首を画像に残すだろう。

 それに対してネットリテラシーを理解している彼女は、そっと手で乳房を隠している。

 むにゅりと形を変える白い肉果、普段よりも寄せられた事で生まれた谷間の魅力は、ジッと見続けたいと思わせる。

 自然と手ブラ姿を披露する彼女の顔は羞恥と喜色に富んでいた。

 

 ――どう?

 

 そんな一文を添えて送ってきた東郷。

 自らがはしたない事をしている自覚があるのだろうか。

 この画像を送ってきた彼女の心境を思うだけで興奮が止まらなくなりそうだった。

 

 一体、何て返信すれば良いか。

 少しだけ考えて、動きの鈍い頭を回して、書き込む。

 

 ――素敵! もっと見たい!

 

 纏めるとこの一言に集約するような内容。

 多々、懇切丁寧に、和服美人というエロス、そして東郷の自撮りへの感想。

 

 そんな内容を送りつけるが、既読は付かなかった。

 深夜三時。既に彼女も眠りについたのだろう。

 どれだけ東郷の自撮り写真に熱中していたのだろうか。

 どうやら、コレクター魂に火が点いてしまったらしい。

 

 たった一枚の写真に興奮を抱くとは、修行が足りないようだ。

 

「……ふぅ」

 

 こうなると衣装とか、揃えたくなる。

 貢ぎ物という訳ではないが、着せ替え人形で遊んでいるかのような気分になってしまう。当然だが東郷は決して俺の人形ではない。機嫌が悪くなる時もあるし、芸人魂を拗らせる時もある。

 

 この自撮り写真自体は初めてではない。

 一番最初の自撮り写真は、何故か国防仮面の衣装でポーズを撮っていた。

 意味が分からなかった。

 チェンジと書き込むと、二分後に家に侵入してきた。

 その事を思い出すと彼女の成長速度は著しいと言えるだろう。

 

「寝ないと……」

 

 明日はそれなりに早いのだ。

 用事がある。大事な用事が。

 遠足前日の子供ではあるまいし、瞼を下ろせば眠れるはずだ。

 

 そんな思いを脳裏に過らせ、寝がえりをうつ。

 目が合った。

 

「――――」

 

「……っ」

 

「……」

 

「……これは夢だ。夢、夢、夢」

 

「……ゆめ?」

 

 寝がえりをうった先、視界に映る金色の物体は小さく呟く。

 虚無を瞳に浮かべ、揺蕩う微睡みから抜け出せないような状態は、見覚えのある物だった。

 ようするに、二度寝する数秒程前の状態だ。

 

「そっか~、ゆめか~」

 

「そうそう」

 

「わっしーにエッチな写真を送らせて悦に浸るかっきーはいなかったんだね」

 

「いないいない」

 

「ふーん」

 

 彼女は寝台に横になりながら疑わしい者を見るような半眼を見せる。

 まるで浮気者を見るような視線を受け流しつつも、何となしに園子の姿を見る。

 

 乱れた長い髪の毛は稲穂を思わせる金色。

 すらりとした腿は程良く脂が乗り、くびれた腰から尻への魅惑的なラインが描かれる。

 健やかに成長した乳房は横向きになっている為に、むぎゅりと潰れて男の目を惹く。

 普段は衣服と下着で隠されている乙女の身体が無防備に曝け出されていた。

 

「……じゃあ、かっきーは何に興奮してるの?」

 

「ん?」

 

 不躾な目線を理解しているであろう園子は目線だけで告げる。

 その視線の先、履き直した下着越しに主張する雄の存在を審議に掛ける。

 

「なんだろうか……?」

 

「えっち」

 

「まだ何も言ってない」

 

「昨日あんなにしたのに、すぐ元気になるもんね~。ケダモノだよー」

 

 鈴音を思わせる声音を囁きながら、園子は枕に手を伸ばす。

 ピンク色の猫に紫のカバーを巻いたような枕、サンチョを手元に抱き寄せる。

 僅かにくたびれた思い入れのある枕も元の持ち主の頭を乗せて幸せだろう。横向きとなり此方を見ていた園子は何を思ったのか、そのままうつ伏せとなり、端正な顔を枕に埋めた。

 

「……ケダモノ」

 

「……」

 

「略してけっきーね」

 

「……」

 

「あ、今日はもう駄目だよ~。いっぱいしたんだから。明日ピクニックするんでしょ」

 

「……」

 

「おやふみぃ」

 

 時計を見ると時刻は三時半と、非常に微妙な時間帯を示していた。 

 起きていても仕方がない。それは分かる。

 

 ――それはともかくイラッとしたのと下半身の昂りは別である。

 

 眠ろうとする園子が被る毛布を剥ぐ。

 白い裸体、肉布団のように覆い被さると剛直が尻肉の間に挟まる。

 その感触が分かったのか、身体を硬直させた園子がチラリと俺を見上げる。

 

「かっきー」

 

「園ちゃん。今日はまだ、してない。もう昨日の話だ」

 

「……揚げ足」

 

「園ちゃんは寝てていいよ」

 

「ッ」

 

 園子の言葉に被せるように俺は告げる。

 最高の抱き枕、しっとりとした腹部と、彼女と俺の体重で潰れた乳房を揉む。

 極上の女体を抱き、金色の髪の毛に顔を埋めながら自撮り写真で昂った剛直を挿入する。

 

「ぁ、ぁぅ……」

 

 ぎゅううっと枕を掴む園子は嫌々と首を振る。

 そんな少女の媚肉は既に十分な程に濡れ、雄を最奥に受け入れた。

 

 胸板と背中、脚を絡め合わせて。

 にゅるりと挿入した剛直がこつんと子宮口にキスをする。

 これから何が起きるのか、聡明な彼女は抵抗をせず、ただ枕を掴むのみだ。

 そんな彼女がよく好む体位で、長い髪の毛を掻き分けて形の良い耳に囁く。

 

「寝てていいよ。……寝れるならな!」

 

「ひぁぁ……ッッ!!」

 

 

 

 +

 

 

 

 空は快晴だった。

 綺麗な青空、雲一つなく、暑くも寒くもない天気。

 

「ピクニック日和だね!」

 

「そうね、友奈ちゃん」

 

 笑顔を浮かべる友奈。

 微笑をたたえる東郷。

 

 たまには外でゆったりと過ごそうと提案した園子。

 ソレに便乗する恰好付けたい荷物持ちが一人。

 

「ふわぁ」

 

「どうしたの園ちゃん。寝不足?」

 

「そうなんよ~、かっきーが寝かせてくれなくて~」

 

「あー……」

 

 ジトっとした目を向ける彼女達から目を逸らし、東郷から荷物を受け取る。

 勇者部全員の予定だったが()()が入ったらしく、この四人でゆったりと過ごす予定である。

 

「なんか、結構重くない?」

 

「ふふっ。亮くんならこれぐらい食べるかなって」

 

「いや、俺も作ってるし。なんなら友奈も園子も」

 

「亮くんならこれぐらい食べるかなって」

 

「でも、これにぼた餅も追加でしょ?」

 

「亮くんならこれぐらい食べるかなって」

 

「食べちゃうね! ペロリだとも。男の胃袋に限界はねぇぜ!」

 

「亮くんも奇術師の前に日本男子だものね。そうよね!!」

 

 にこやかな微笑はまさに百合の花。

 選択肢は選べるが一択のみという少女は攻略には向かない。

 嵌る人には嵌る、そんな面白くも美しい大和撫子とふんわり少女二人を連れて家を出る。

 

「私、閉めるね~」

 

「おー」

 

 家を空けるという事は当然施錠は必要だ。

 どれだけ治安が良くても、しないという事は無い。

 そんな訳で言い出しっぺの園子に任せると彼女は鍵を取り出した。

 

 不思議なキャラクターのキーホルダーを付けた鍵だ。

 金色の合鍵をそっと撫でる金髪の少女の姿を見て、俺は静かに問い掛けた。

 

「園ちゃん」

 

「なに……?」

 

「――今、幸せか?」

 

 カチャンと施錠をして、少女は振り返る。

 ハーフアップにした髪の毛、リボンを揺らす園子は、笑った。

 

 薔薇のような笑みを、浮かべた。

 

「うん!」

 

 

 




ここまでお読み頂き、ありがとうございました。


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【番外】友奈ちゃんとマッサージ

 勇者部の中で誰が一番マッサージが上手いか。

 それを問われた時、真っ先に友奈だという声が多い。

 

『んっ、ふ……』

 

 相手を気遣う指先、指圧は固まった身体を解し、太陽の如き柔和な笑顔で身も心もふわふわにする。マッサージに不慣れな少女も人には見せられないような顔を見せ、聞かせられないような艶声を漏らさせる。

 それが友奈のマッサージである。

 

『あ……ッ』

 

『痛かった?』

 

『う、ううん。ちょっとびっくりしちゃって……』

 

『そっかー』

 

 友奈が見下ろす先には、薄着姿の東郷。

 簡易型の寝台に座る黒髪の美少女の肩を友奈が揉む度に、悩まし気な声を上げる。

 同級生が聞けば前屈みの姿勢になる事が約束されるような、甘い甘い艶声を。

 

『ひ、んっ……』

 

 男を誘うような声音は意図的な物ではない。

 寧ろ無意識に堪えきれずに漏らす吐息は、背後から肩を揉む友奈の頬を薄く赤らめさせる。

 それでも大切な親友の為に心を砕き、親愛と友愛を指先に注ぎ込み肩甲骨付近、首の後ろ付近を重点的に解し終える頃には、どこか虚ろな表情を浮かべた一人の少女がいた。 

 

『東郷さーん』

 

『……はぁ~』

 

 法悦の表情を浮かべる少女は幸せそうだった。

 そんな東郷の様子を見て、にこりと友奈は笑みを浮かべる。

 

『えへへ……今日はいっぱい、気持ちよくなってねー』

 

『いいのかな……こんなに』

 

『うん! いつも東郷さんにはお世話になってるから! 少しでもお礼が出来たらなって!』

 

『友奈ちゃん……』

 

 まるで我が子の成長に感激する母のように。

 顔を綻ばせる東郷の腕をおもむろに掴む友奈は人差し指を宛がい、薄く微笑む。

 

『ちっくん!!』

 

『はぁん……♡』

 

 指をピストルにして、見えない何かを注射する友奈。

 腕に何かを注入されたのか恍惚の表情を浮かべる頭国防の少女。

 そんな少女は快活な少女にあれよあれよと衣服を脱がせられ、寝台に横にされる。

 

『東郷さんの肌って、本当にきれいだねー』

 

『これは、その、普段外に出ないから……友奈ちゃんのお肌だって綺麗よ』

 

 下着姿のみとなった東郷を褒める友奈。

 満更でもなさそうに謙遜する東郷の肌は、白魚の鱗のように美しい。

 若さだけではなく、艶も張りもあり、何より染みの無い色白の肌は美そのものだ。

 

 純粋な眼差しに対し自らの身体を腕で抱く東郷、その体躯を包む下着は白を基調とした物だ。所々に黒色のレースやリボンといった物が施され、白皙の肌に良く似合っている。

 

『もしかして、亮ちゃんが買ったの?』

 

『……どうして?』

 

 そのどうしては、どうしてそう思ったのか、だろうか。

 或いは、どうして分かったのか、なのか。

 うつ伏せになり問い掛ける東郷に、自らの顎に指を当てた友奈は逡巡の末、答える。

 

『いままで見た事無かったからかな……?』

 

『……そっか。うん。これは、私が買った物よ? 可愛かったから』

 

『あっ、そうなんだ! えへへ、ごめんね。忘れて!』

 

『大丈夫よ、友奈ちゃん。勘違いは誰にでもあるわ』

 

『ありがとー! あと、うつ伏せになって、ブラも外してね』

 

『あ、うん』

 

 従順に友奈の言葉に従う東郷はうつ伏せとなる。

 瞬間、むにゅりと潰れる乳房はブラに包まれてなお、独特な弾力を寝台のマットレスに返す。ぼた餅の如く柔らかい乳圧を寝台に与えながら、手慣れた様子で背中のブラホックを外す東郷。

 

 その様子を見つめる友奈の姿も、また奇抜な物だ。

 猫耳カチューシャ、水着にエプロンと扇情的な姿は室内では見慣れない。

 片方は半裸、もう片方は特殊な衣装でありながら、しかし相手に恥じらう姿が足りないのは単純に他に見る者がいないからか、或いは自らの姿及び相手の姿を見た事があるからか――、

 

『友奈ちゃん』

 

『? なあに?』

 

『その格好、凄く良いわ』

 

『……そうかにゃ?』

 

『ぶはっ!!』

 

『東郷さん!? 鼻血! また出てるよ!!』

 

 暫くして流血騒動は収まり、改めて東郷はうつ伏せとなる。

 長い黒髪は美しいが邪魔になる為、後頭部で纏め上げ、白い背中を惜しげもなく晒す。

 

『少し冷たいよ』

 

『ん……、いつもより本格的なのね。亮くんみたい』

 

『亮ちゃんは凝り性だからねー。

 今回はハラセク式? でオイルも使うから脱いで貰ったのです!』

 

『ぁ、ぁ……ん、んんっ。友奈ちゃんに任せるわ』

 

『うん! 任せて』

 

 ピンク色の容器から蜂蜜色の液体を手のひらに載せて東郷の背中に塗る。

 同性が羨む白皙の肌は、友奈の手のひらに心地良い感触と滑らかさを伝える。

 

『あっ! ん、んん……』

 

 くすぐったいのか、タオルに顔を押し付ける東郷の声を聴きながら友奈は懸命に彼女の施術を行う。肩甲骨を円を描くように撫で回し、背骨をなぞるように上から下へとオイルを塗る。

 潰れた乳肉を指が微かに触れる度にピクッと身体が反応する事に友奈は気づいていた。

 乳房を撫でるように、腋、腕にもオイルを塗り、塗る度に東郷は熱い吐息を漏らす。

 

『東郷さん、結構敏感だよねー』

 

『……! そ、そうかも、ね。あんまりマッサージとか、ふっ、し、しないから』

 

『……気持ち良い?』

 

『…………うん』

 

『我慢しなくていいんだよ。声、出しても良いよ』

 

 声を漏らす度に噛もうとする少女の細い腕を取り上げる。

 丁寧に、丁寧に、程良く脂と筋肉のある東郷の白い腕をマッサージする。

 

『は、ぁ……』

 

『……』

 

 気持ち良さげな、どこか力の抜けた吐息を漏らす少女。

 そこには、普段の穏やかで、真面目で、面倒臭い姿は無い。

 優しい快楽に身も心も解され始めた年相応の少女が小さく呻くばかりだ。

 

 くびれた腰は友奈の手のひらにフィットし、白い素足には車椅子生活の名残は殆ど残っていない。独特の弾力がある腿の裏側を揉み解し、足裏マッサージをする頃には東郷は随分と解されて柔らかくなっていた。

 

『東郷さん』

 

『ん、友奈ちゃ……』

 

『次、仰向けになって欲しいんだけど……』

 

『あ、そうね。……そうよね』

 

『……あ、ごめんね。恥ずかしいならタオルで隠してね?』

 

 そうして渡した白色のタオルは、彼女の双丘を隠すには随分と薄く小さい。

 流石に多少の抵抗感があるのかそっと自らの乳房を薄布で隠す少女は仰向けとなる。血流が良くなったからか、ほんのりと朱色に染まった頬を見せる東郷は友奈が手に持つ物に気づいた。

 

『それって』

 

『これね、ホットなアイマスク! 東郷さんって結構パソコンも使うから。

 目もマッサージしたいなって。 ……ダメ、かな?』

 

『友奈ちゃん……、全然ダメじゃないわ。友奈ちゃんがしたい事ならなんだって問題ないよ』

 

『えへ、ありがとう。東郷さん』

 

 寝台の上で仰向けになっている黒髪の少女。

 ショーツ一枚のみ、身体を火照らせ、豊かな双丘は薄い布が隠すのみ。

 エメラルドを連想させる深緑色の瞳は、黒色のマスクで覆い隠されている。

 

『……』

 

『……』

 

『……良い香りね』

 

『えっ、……ああ、うん。エッチな気分になるお香だって』

 

『そうなのね。………今、なんて?』

 

『じゃあ、続きするねー!』

 

『友奈ちゃん?』

 

『あ、その前に……、もーいーよ、ご主人さま』

 

 

 

 +

 

 

 

「……」

 

 彼女の、友奈の合図を受けて俺は動き出す。

 ほのかに温かい純白のマスクを装備して、お香の香りではなく少女の香りを肺に送り、衣服を収納していた段ボール箱から身体を出す。そして友奈の直前の言葉に疑問を抱き、アイマスクに手を掛けようとする少女に話し掛ける。

 

「ご主人さま?」

 

「『……あっ、マスクは取らないでね。効果なくなっちゃうから!』」

 

「う、うん」

 

 友奈の声帯模写を行いながら、目線で驚きを伝える友奈からオイルの容器を受け取る。中身は園子印の特製のオイルである。効果はともかく彼女がお勧めする一品なら問題はないだろう。

 

「じゃあ、東郷さん。あんまり動かないでねー」

 

「ぁっっ」

 

 ぴくんっと身体を震わせ悶える東郷の姿を見下ろしながら、友奈と共にオイルマッサージを始める。雪肌の少女は体温が上がると分かりやすく身体を火照らせ、薄く朱色に肌を染め上げる。

 薄布で隠された乳房周辺を、布の内側に入り込む虫のような気分で触れていく。

 

「ん……っ」

 

「っ」

 

 熱を孕んだ吐息をする東郷を見て、静かに友奈が震える。

 蛇のように脚をマットレス上でくねらせ始める東郷にあてられたかのようにもじもじと自らの腿を擦り合わせ、チラリと俺の顔に視線を向ける。

 薄紅色の瞳、その中に宿る感情を読み解く前に瞬きと共に逃げられる。

 

「……気持ち良いでしょ?」

 

「……! !」

 

「タオル、邪魔だから取っちゃうね」

 

「ぁ……っ!」

 

 寝台、東郷を挟んで俺と向かい合う友奈は、そっとタオルを捲る。

 汗でテカる少女の白い果肉が震える姿に吐息して、息苦しさに気づく。

 マスクを畳み籠に戻して、淫靡な果実にそっと触れる。

 

「はーい、揉みますね」

 

「ん、ぁ……」

 

 むにゅんと手のひらで形を変える乳は餅よりも柔らかく、温かい。

 母性の塊を語る詐欺の塊、男を飽きさせない乳房を手のひらで、指先で味わう。

 

「っ、ぁ、ぁ……」

 

 しっとりとした柔肉、その先端で尖る乳首を指で弾くと音が零れる。

 いやらしく、愛おしく、心を震わせる女の声が俺の脳に浸透していく。

 

「これが……持つ者と持たざる者……」

 

「友奈も持ってるよ」

 

「あっ、ちょ、やぁん!」

 

「うむ、マーベラス」

 

「ん……っ」

 

 右手は東郷の右乳を、左手は黒水着に覆われた友奈の美乳に。

 ジッと此方を半眼で見る友奈、しかし逃げる事はなく俺の左手にされるがままだ。乳比べをする自分に対して、最低という念を抱く俺に小さく頬を膨らませる友奈も東郷の左乳を手にする。

 

 ――今回は二人で東郷をマッサージするのだ。

 

 そんな事をしている間も欠かさず乳首や下乳付近への愛撫を続ける。

 友奈もマッサージの経験を活かしているのか、或いは自らの自慰の経験からか、東郷を虐めている。俺が右乳を円を描くように揉むと、友奈は左乳を先端にかけて搾るように愛撫する。

 

 プリンを連想させるいやらしさの塊を二人で遊んで、愛撫する。

 喘ぎ、悶える少女の姿を二人で見下ろし、彼女の身体を弄ぶようにマッサージする。

 

 二人がかりでのマッサージには彼女も対抗する術も力もないのか。

 されるがままに、遊ばれるままに嫌々と首を振り、恥じらう声を聞かせる。

 オイルでテカる乳房、東郷の性格に反して反抗的に硬く尖る乳首に顔を近づける。

 

 あーんと口を開く。

 

 それを気配で感じ取ったのか、力の無い腕が俺たちを掴む。

 これから自分がどこに飛ばされるのか分かって、せめて藁をも掴むように。 

 

「まっれ、二人とも、しょれは駄目……!」

 

「あーむ」

 

「ぁ、ぁあああ……っっ!!」

 

 オイルには蜂蜜も混ざっているのか、仄かな血の味と薄塩、甘味が舌上で広がる。

 コリコリとした軟骨のような乳首を舌と唇で弄ぶ度に東郷は首を仰け反らせる。

 アイマスクの所為か普段よりも敏感に身体をくねらせて、はしたない声を上げる。

 

 母乳を求める赤子のように東郷の乳房を求める。

 ちゅぱちゅぱと友奈と双子となり、音を聞かせながら下品に授乳経験を覚えさせる。

 

 東郷の子供よりも先にぼた餅を啜る。

 それは甘美で、欲望と、快楽に塗れた味わいだった。

 

 視線を上げるともう一人の赤子が目に映る。否、メイドだ。俺のメイドだ。

 一心不乱に、どこか上品に東郷の乳房を味わう友奈とふと目が合う。

 興奮を隠せないように、東郷の声を聴きながらエプロンの下に隠された己の恥部を弄り慰める姿がいじらしい。

 トロンとした薄紅色の瞳、上気した頬は、普段よりも妖艶な姿だ。

 

「おいひぃよ……」

 

「……」

 

 ちゅぱ、と硬くなった乳首から離した唇を繋ぐ透明な糸。

 口が寂しいとばかりに唇を尖らせ此方を見る姿に、何を望んでいるかを理解する。

 

「ん……ごひゅじんさま」

 

 触れ合うだけのキス。

 それを褒美として、仕事の続きを促す。

 コクンと頷き、本来の職務を思い出したのか、やわやわと東郷の乳房を両手で揉む。

 

「ゆうなちゃん……?」

 

「んへへ、とーごーさん。気持ちいいでしょ? 気持ち良くなる事でデトックスが満開? するんだよー」

 

「でとっくしゅ?」

 

「そうだよー。老廃物が……こう、消えるんだよー。だから身体から力抜いてねー」

 

「はぅん……ん」

 

 形の良い耳元に至近距離で囁きかける友奈。

 催眠音声のような、心地よい桜の声音にだらしなく口を緩める東郷の身体は素直に快楽を受け入れる。ビクンと身体を小さく震わせる東郷の身体、乳房付近をメイドに任せながら、くびれた腰を撫で、下腹部へと向かう。

 

 くねらせた脚はマットレスの上のタオルを巻き込み皺を作っていた。

 友奈が催眠音声のような声音で東郷に話しかけ、ぼた餅を弄ぶ度に蛇のようにくねる。

 東郷の下半身には、ショーツが一枚のみだ。

 オイルを垂らしてはいないはずだが、汗と愛液でクロッチには明確な染みがあった。

 

 純白のショーツには前部分に黒色のリボンとレースが施されている。

 何というか、男受けしそうな、端的に言って俺好みの下着だった。

 

 そっと脱がしていくと彼女の恥部が露わになる。

 色白の肌とは真逆な薄く黒色の陰毛、下着との間に糸を引く大陰唇。

 

「ぁ、ぁひゅ、んん……っ」

 

 当然脱がされた事は目隠しをしていても気づいただろう。

 内股になり、ショーツを脱がされる事を阻止しようとしても止められない。

 露わになる乙女の恥部を指で撫でると、花弁は肉厚で柔らかく、濡れていた。

 

「んひっ……っ」

 

 大陰唇周りをなぞるように指で撫でて、十分にぬめる膣内に指を入れる。

 オイルを垂らすと薄毛が肌に張り付き指に絡みつき、蜜液と混ざりあう。

 ただ出し入れする度に、ぐちゅぐちゅと淫靡な音を聞かせる。

 

「とーごーさん。聞こえる? とーごーさんのエッチな音」

 

「ぁ、ぁぁ……、友奈ちゃん、聞いちゃダメ……!」

 

「こんなエッチではしたない音……、もっと聞きたいな」

 

「んんっ!!」

 

 くにくにと乳首を弄りながら、東郷に囁く友奈。

 普段の優しさは鳴りを潜め、自らの淫音に羞恥する東郷を見て、目を輝かせる。

 そんな彼女らが開いている扉からは目を背け、己の指を呑み込んだ東郷の肉壺に目を向ける。

 

「東郷さんの、凄いよ。入口がきつくて中がふわふわ。――今、ピクッてしたのが分かるよ」

 

「やだっ、やっ……! そういう事言わない……、ひぅ!!?」

 

 人差し指と中指が大和撫子の膣内に挿入される。

 指二本を呑み込み、トロリとした蜜液が新しく作られ、涎を垂らす。

 むわりと漂う雌の匂いが脳を揺さぶり、雄としての欲望を酷く昂らせていく。

 

 彼女が悦ぶ場所を知っている。

 指の第一関節部分を曲げて、熱く締め付ける膣壁を擦る。

 人差し指と中指で交互に揺するように擦ると、面白い程に反応を示す。

 

「ひ、ぁ、あぁ、ふぅ、やっ」

 

 ぐちゅぐちゅと下品な音が恥部から漏れ出す。

  

「や、あひっ、あッ!」

 

 腰を浮かせ、余裕のない声を漏らす東郷。

 腕と乳房を友奈が押さえ弄び、俺はひたすらに手マンに興じる。

 

「ああぁ……っ、らめっ、らめ……っ、イッ!!?」

 

 ぷしゅ、と手首にかかる愛液。

 ガクガクと腰を振りながら、言葉だけでの抵抗を試みる少女の身体は硬直する。

 ぎゅっとタオルを掴む東郷の手には力が籠り、口端から垂れる涎が染みを作る。

 

「ごー」

 

 何度も何度も指を曲げて、彼女の弱点を責める。

 

「よん」

 

 そんな中で友奈が東郷の耳に囁く。

 

「さん」

 

 弱点だけではなく、その周囲も弄る事で緩急をつける。

 

「にー」

 

 それは一体、何のカウントなのか。

 ただ、友奈のどこか楽しそうな表情を見ながら、更に膣壁を押す。

 

「いや、ひゃら……、やらぁ……ふぃっっ!!」

 

 ぴゅううっと小水を思わせる飛沫が俺の顔を汚す。

 

「いーち」

 

 びくっびくと東郷の身体が痙攣する。

 押さえた脚をばたつかせ、逃れようとする腰を押さえて、罰を与える。

 薄いサーモンピンク色の肉、その上付近にある小さな快楽器官を親指で――、

 

「ぜろ」

 

 ――押しつぶした。

 

「~~~~~!!!」

 

 ぷしゃ、ぷしゃりと愛液が腿を伝う。

 確認するまでもなく、彼女は飛んでしまったらしい。

 指を締め付ける膣壁を感じながら、俺は小さな肉粒を指で、舌で愛でる。

 

「ぜろ」

 

 チラリと視線を上げる。

 指先でコリコリと乳首を虐めながら、既に終わりを迎えたカウントをする友奈。

 ぜろ、と執拗に東郷に囁きながら性感を刺激し続けるメイドの姿は凄まじい。

 

「ぜろ」

 

「あ……ッ、あー……~~~~!!!」

 

 パクパクと金魚のように口を開閉する東郷。 

 そんな彼女の弱点を、膣壁を、クリトリスを、乳首を、乳房を、首筋を、耳穴を二人で蹂躙、もといマッサージする。法悦の空に彼女を上らせ続ける。絶頂から戻る事を赦さないとばかりに執拗に彼女の身体に快楽を教え込む。

 感謝を込めて、愛を込めて、強制的に絶頂に導かせる。

 

「ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ」

 

「ぎっ! ぁ、う、やべっ、ひゃめて……!」

 

「東郷さん、イって! いーっぱい、イって!」

 

「ぅあ……!!」

 

 びくびくと痙攣する東郷を余所に甘噛みするように耳元で囁くメイド。

 寝台に乗り込み、添い寝をするように東郷の脳内を言葉で蕩けさせる。

 そっと伸ばした手が彼女の目元を隠していたアイマスクを剥ぎ取る。 

 

「東郷さん」

 

「は、ぇ?」

 

 雌の表情とはこのことだろうか。

 漆黒の髪を振り乱し、股を広げ、瞳には熱を宿し、雄を誘う喘ぎ声を漏らす。

 

 なんて、はしたない女なのか。

 

「も、……ゆ、るひて……」

 

 息絶え絶えの女が懇願する。

 

「許しません」

 

 許す道理は無い。そもそも何を赦すのか。

 有無を言わさず彼女の脚を腕で支え、心の準備を許さず、ぬめる肉沼を貫く。

 ちゅぷんと猥らな音と共に俺と東郷は深く繋がる。

 

「ぷ、ぁぁ……!!」

 

 敗戦国の女のような無様な声を上げる少女。

 だが白い脚はゆっくりと俺の腰に巻き付き、膣が淑やかながらふしだらに雄の剛直を呑み込む。挿入した先、亀頭に当たる彼女の子供部屋は普段よりも降りてきていた。

 

「あたま、おかひく……」

 

「オラッ、孕め!!」

 

「ァ、ぁあ、あッ、や……っ!!」

 

 恍惚に浸る白い肉体。

 それを好き放題犯すように、ピストンを始める。

 

「ぁ、ァ、っ、……! ぁああッ!」

 

 弱弱しい抵抗を見せる東郷の両腕を掴み腰を揺する度にぷるん上下に揺れる果実。

 それに目敏く気づいた友奈は、あーんと口を開き噛み付くと嬌声が大きくなる。

 

「ぅぁ、ぁ、ぁっ、ぁ!!」

 

 脚を持ち上げて深く、根本まで密着する程に抽送を繰り返す。

 ぱちゅ、ぱちゅと結合部から白く泡立った蜜液が彼女の薄毛を濡らす。

 あっという間に下半身は射精を待つだけの肉となり、ピストンを加速させる。

 

 尻穴を引き締めて、奥歯を噛み締めて臍側の膣を怒張で擦る。

 一度の抽送の度に快楽で視界が白く染まる中で、メイドがゆるりと動く。オイルに塗れた東郷の裸体に絡みつくように腹と腹をくっつけて、手を結合部に伸ばす。

 友奈の手が目指す先は、少女のクリトリスだった。

 にこやかなメイドは遠慮なく肉粒を指で摘まみ、潰す。 

 

「や、ゆうなちゃ、りょ……、ぁ、ぁぁぁっっっ!!!」

 

 短い、悲鳴を思わせるオイル塗れの少女の嬌声。

 俺は溜まりに溜まった精子を吐き出し、吐き出し、吐き出す。

 どく、どくっと呑み込まれる白濁が少女の膣内を汚し、子宮を汚し、逆流する。

 

 白い飛沫が肉の花弁から噴き出す。

 数秒ほど遅れて、孕ませ汁がとろりと流れ落ちる。

 

「や、だめ……今ぬいたら」

 

 満足感と共に怒張を抜こうとした時だった。

 しょわわわ……と水音が部屋に響きだした。

 一体どこからと思い、数秒程遅れて俺の腹部が温かくなっていく事に気づいた。東郷の結合部、愛液と精液に塗れた剛直を洗おうと言わんばかりに黄金水が腿を伝う。

 

 素晴らしい光景、絶景を視界に収め、最後に彼女の顔を見る。

 

「ぅ、……ぅぅ」

 

 東郷は泣き出していた。

 両腕は掴まれ顔を隠す事も出来ず、頤を伝う涙を見せる。

 

 ――予想以上にマッサージが効き過ぎてしまったらしい。

 

 慌てて掴んでいた腕を解くと、ぐったりした東郷は恨みがましそうに俺と友奈を見上げた。

 

 

 

 +

 

 

 

 俺に背を向けて友奈の首元に顔を埋める黒髪の少女。

 寝台にて三人川の字で眠る中、頑なに俺の方を向こうとはしない。

 しかしながら寝台から降りようとすると俺の手を瞬時に掴む為、最終的に彼女を背中側から抱きしめ、正面から友奈が抱きしめるという東郷を抱き枕にする方針に落ち着いた。

 ふわりと髪の毛から漂う石鹸の香りは先ほど入った風呂の残り香だ。

 

 誠心誠意、■■生にもなってお漏らしした東郷を二人で隅々まで洗った。

 それなりに傷ついたらしい少女のメンタルを肉欲でケアすると、もう寝る時間だった。

 

「……」

 

「なんて?」

 

 ぼそぼそと友奈の首元で呟く東郷。

 何を言ったのか尋ねると、チラリと深緑色の瞳を向け、また前を向いた。

 

「なんでもない」

 

「あっそ」

 

 鬼畜、と聞こえたのは気のせいだろう。

 紳士からは程遠い言葉であり、俺には決して当てはまらない言葉だ。

 カチューシャを外し、しかし新しいメイドビキニに着替えただけの友奈は、どこか慈悲深い女神のような表情で東郷の頭を優しく撫でる。

 

「拗ねてる東郷さん。可愛い」

 

「それは分かる」

 

「ぅ~~~」

 

 幼児退行したかのような、否、年相応な姿を見せる東郷。

 そんな黒髪美少女を適度に揶揄いながら、ふと友奈が尋ねる。

 

「……気持ち良かったでしょ?」

 

「……うん」

 

「えへへ、良かったー。一杯デトックスしたもんね!」

 

「たぶんね、友奈。使い方違うような気がする……」

 

「ほえ?」

 

 薄暗闇の中でも顔を赤らめたのが分かる少女は今度は身体ごと此方を向く。

 きゅっと俺の服を掴む東郷は、エメラルドを彷彿させる瞳を此方に向けた。

 

「どうしてこんな……」

 

「それはね、東郷さんともっと仲良くなりたいって」

 

「……友奈ちゃんが?」

 

「うん。そうだよ」

 

 背中を向けた東郷に今度は友奈が後ろから抱き着く。

 パジャマではなくビキニメイドの姿は、心にまで奉仕の念に目覚めたのか。

 そんな事を思いながら、友奈の鈴音の声に耳を澄ませる。

 

「これから先、もっともっと、亮ちゃんとも、とーごーさんとも、園ちゃんとも、仲良くなりたいなって思って。だから――」

 

「――――」

 

「それに、普段お世話になってる東郷さんに、何か出来ないかなって」

 

「友奈ちゃん……」

 

 友奈の言葉を受けて、暫し黙り込む東郷。

 そのまま眠ってしまうのではないのかと思う程の沈黙の末に――、

 

「……ぎゅってして」

 

「え?」

 

 右を向き、左を向き、最後に仰向けとなる少女。

 

「友奈ちゃんとはこれからも、もっと仲良くなるよ。そのっちもね」

 

「東郷さん……」

 

「亮くんには責任とって貰うのは変わらないから」

 

「あ、はい」

 

「だから、ぎゅってして。三人で寝ましょう」

 

 何がだからなのか。

 取り敢えず寝る方向と決まった瞬間、眠気が押し寄せる。

 東郷を抱きしめると、ふんわりとした石鹸と東郷自身の香りが鼻腔を擽る。

 

「ぎゅー」

 

「ふふ」

 

「あ……、東郷さんのほくろ、こんなところにも発見」

 

「こら、もぞもぞしないの」

 

「ん? 東郷さんのほくろなら全身どこにあるか説明できるぞ。説明しようか……」

 

「待って亮くん。それは恥ずかしいから」

 

 

 

 +

 

 

 

 夜が更けていく。

 人肌で寒さを凌ぎ、布団を被って語り合う。

  

 そうして、また一夜が過ぎて、いく――。

 

 

 



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第三十二話 時には昔ばなしを

 夏と冬のどちらが好きかと言われると悩む。

 暑い夏と寒い冬、学生という身分から単純に考えると夏休みが長く、薄着率が高まる夏の方が良いのだろうか。或いはコタツに包まりたくなる冬だろうか。

 少なくともアイスが美味しいと感じる季節として夏は外せない。

 

「でも、冬の寒い時期にコタツに包まって食べるアイスって美味しいよね」

 

「それは分かる」

 

「でしょ~、それに今の時期だってアイスは美味しいんさ」

 

「つまりアイスは万能食に等しいと」

 

「そうだよ」

 

「なるほど」

 

 この議題は永遠に解き明かす事はできないだろう。

 皆違って皆いい。そんな話なのだ。

 

「そんな訳で」

 

「……?」

 

「かっきーのが食べたいな~」

 

 何かを期待した眼差しを向ける金髪の令嬢。

 ベンチに座り、此方を見る眼差しはキラキラと輝いている。彼女の瞳が向かう先、俺が持つ抹茶味のアイスクリームは僅かに溶け始め滑らかな表面に滴を垂らし始めていた。

 見ると彼女の持つアイスクリームは既にコーンの部分を残し大部分が消失している。

 

「かっきーって冷たい系の物ってあんまり駄目だよね」

 

「そうだな」

 

 どちらかと言えば冷たいうどんよりは温かいうどんが好きだ。

 たとえ夏であったとしても、冷たい物よりも温かい食べ物の方が好きだ。

 それを理解しているのは俺の両親と、世界で唯一の幼馴染だけである。

 だからこそ、目の前の幼馴染が何を言いたいのか察した。

 

「一口、食べたいな~」

 

 レモン味のアイスは彼女の舌上に溶かされ、残ったコーンも丁寧に食べる園子。

 チラチラとこれ見よがしに上目遣いで此方を見る姿に、断る選択肢は消えるだろう。

 

「……あげようか?」

 

「あー」

 

 一口、抹茶味のアイスクリームを食べながら問い掛ける。

 返答はなく、雛鳥のように小さな口を開けて待機姿勢を取る少女。

 白色のワンピースを纏った少女が顔を近づけて餌を待つ。

 そんな彼女に俺は――、

 

「……」

 

「あー」

 

「はい」

 

「あー?」

 

「あげたよ、腕を」

 

「…………」

 

「あれれ~、もしかして貰えると思った? 残念、ただではありませんよ」

 

 子供染みた悪戯だった。

 中身の年齢を知る者ならばドン引き不可避の行為だろう。

 とはいえ、見た目的には小学生なので可愛い悪戯で通用するだろう。実際中身の年齢等他人には知る由もない。俺の今の姿を見れば十中八九子供と言うだろう。

 

「…………」

 

「あー、美味しい。抹茶の渋い感じが美味しいですわ~」

 

 口を閉じ黙り込む少女を視界の端に捉えながらアイスを頬張る。

 隣の少女とは違い、熱い物とは対照的に冷たい物は何故か食べるのが遅い。

 ジッと此方を見る金髪の少女を目端に捉えながら周囲の様子を窺う。俺と園子が座っている場所はとある公園のベンチだ。休日の午後、何となしに二人で訪れた公園でやっていたアイスの屋台に脚を止めていた。

 

 休日だからか、平和な公園には子供や若いカップルが訪れている。

 梅雨が訪れる前の、春が過ぎた名残を楽しみながら外の空気を味わっているのだ。

 

「いいもん……、あの屋台買い占めるから……」

 

「いや、それは屋台の人も困るだろ……。冗談だから、ほら」

 

 少女の膨れた頬を突きながら、そっとアイスを捧げる。

 此方をジッと涙目で見続ける彼女は財布から取り出したカードを仕舞い小さな口で噛り付く。薄い唇を抹茶色に染め、ゆっくりと咀嚼する園子は膨れた頬を縮ませる。

 

「かっきーのあんぽんたん。意地悪しないでよぉ」

 

「ほら、好きな子にはついつい意地悪したくなる奴ですよ、園子様」

 

「そんな小学生みたいな事言うんだ~」

 

「いや、俺たち小学生な」

 

 穏やかな時間が流れる。

 後になって振り返ると、随分と平和で穏やかで閉鎖的な毎日だった。

 園子と遊んで、園子と食事を共にして、心を暖める緩やかな思い出を紡いでいく。

 

「かっきー、もう一口駄目?」

 

「買ってきたら?」

 

「かっきーのが食べたいな~」

 

「……しょうがないな」

 

 肩に掛かる重みが増す。

 ふわりと漂うミルクのような甘い少女の香りが鼻腔を擽る。

 軽い体重を掛けふにふにとした胸に俺の腕を抱くようにアイスを食べる園子との距離は近い。

 

「園子」

 

「あむ?」

 

「園子は無防備だから心配だな」

 

「心配?」

 

「ほら、男って狼だし園子みたいな可愛い子にベタベタされるとね、勘違いする人が増えると思うからさ」

 

「ん~」

 

 それなりに大きな一口で抹茶味のアイスを食べる園子と間接キスをしながら、ふと問い掛ける。見る見るうちに消失していくアイスを間に挟み、少女の丸く大きな瞳と向かい合う。

 

「私ってかっきーの前だとこんな風だけどいない時はちゃんとしてるよ」

 

 大きく口を開きつつも上品に食べる姿は、どこか気品すら感じさせる。

 

「そう? 蟻の行列ずっと見てたじゃん」

 

「あれは……働き蟻さんたちを見て大変そうだな~って」

 

「俺いなくても居眠りしてるじゃん」

 

「かっきーが私のスカート捲ろうとしてきた時は起きてるよ~」

 

「記憶にありませんね。……それより口についてるぞ」

 

「とって~」

 

 ティッシュで彼女の口元を拭い、頭を撫でると絹のような髪の感触が指に伝わる。

 青色のリボンで髪を纏めハーフアップにした髪は撫で続けたくなる魅力がある。毛の流れに沿って撫でる彼女の金髪は去る春を惜しむ木漏れ日に照らされて黄金の輝きを放っている。

 長い髪の毛を揺らし、園子は微笑を浮かべる。

 

「大丈夫だよ、かっきー。そんなに心配しなくても」

 

 ぽたりと溶けたアイスが指を伝って地面に落ちる。

 殆ど園子に食べて貰う形になったが食べきれなかったアイスが。

 

「私は」

 

 アイスの存在を一瞬忘れる程度には。

 

「かっきーの事、大好きだから」

 

 園子の笑顔は眩しかった。

 

 

 

 +

 

 

 

「……って」

 

「へー……良かったね」

 

「でしょ~。二人で食べたアイス美味しかったなぁ……」

 

「……」

 

「じゃあ、次ゆーゆのターンね」

 

「うん」

 

 どこか遠くに聞こえる声。

 ぼんやりとしていた意識は聞き慣れた少女達の声色に醒め始める。

 

「あれはね……亮ちゃんが私の部屋に初めて来た時の事だけど」

 

「うん」

 

「こう、すっごい事になったんだよ! なんとね!」

 

 背中側に感じる声は見知った2人だ。

 人との思い出話に花を咲かせる2人は仲良く囁き声で話をしている。

 時折興奮したように声を高くする以外は心地良さすら感じる少女達の鈴音の話し声だ。

 

「……すぅ」

 

 正面に見えるのは黒髪の美少女だ。

 ■■生にもなって粗相をした少女は心身共に疲れたのかぐっすりと眠っている。昨夜の羞恥と喜色に塗れた姿は瞼を閉じると鮮明に覚えており燻ぶった熱が再度湧き上がるのを感じた。

 そんな視線に晒されているにも関わらず無防備な寝顔を晒す東郷。

 

「ん……」

 

 規則正しい寝息を繰り返す少女、布団を捲ると肌色が眩しい。

 そういえば昨夜は風呂上がりに服も着させずに東郷を愉しませたのを思い出す。その所為で鬼畜と言われてしまったのだろうか。しかし待って欲しい、嫌がりながらも満更でなかったのは誰なのかと問い詰めたい所である。

 

「――でね、その時に食べたクリームぼた餅が美味しかったんだ」

 

「……ほへー、美味しそ~。いいなー」

 

「でしょー!」

 

 背後からの聞いた事のある話を耳にしながら俺は目の前の少女を見つめる。昨夜は抱きしめながら寝た為か彼女との距離は物理的に近い。肌の白さや眉の形、睫毛の長さ、容姿端麗な彼女の顔を見ながら、ふと手が動かない事に気づく。

 

「あっ、それにね、亮ちゃんが作ってくれたお粥ってすっごく美味しいんだよ! 知ってる?」

 

「知ってるよ〜」

 

 楽しそうに話をする友奈達に話しかけるといった無粋な真似はせず、布団の中で固定された腕を動かそうとする。見る事は出来ないが感触的には彼女の股に挟まれているのだろう。

 少女の薄毛と恥部、太腿の感触、布団と寝台の柔らかさが俺に多幸感を与える。

 

「ゃ、……んっ」

 

 東郷の股に挟まれた手を抜こうとするもくすぐったいのか肉の締め付けが増す。

 正しく押しても引いてもびくともしないが、感触と感度は最高だ。

 独特の感触を堪能しながら、しかし引き抜く事は出来ずどうするべきか頭を悩ませていると、

 

「ん……」

 

 睫毛を震わせ瞼を開く。

 深緑色の瞳と目があった。

 

「まだ夜だよ」

 

「……そう」

 

 体内時計的には早朝になるが、実質夜に等しいだろう。

 決して嘘ではない言葉を吐きながら、ぼんやりとした様子の東郷を見つめながら手を動かす。

 

「んぅ、それ、……もう」

 

 僅かに手を震わせると形の良い眉を顰める東郷は突如俺を抱き寄せる。

 等身大の抱き枕を抱きしめるように、ガラス細工に触れるように、寝ぼけ眼ながらも俺に全身で抱擁する彼女は甘えた声音を鼓膜に届ける。

 

「動いちゃだーめ」

 

「……」

 

「ふふっ」

 

 年相応の子供のような笑顔で東郷は抱き着く。

 蛇が絡みつくように俺の手を股で挟みながら脚を絡め、腹と腹を擦りつける。

 この部屋の誰よりも大きく柔らかな双丘を押し付けながら機嫌良く俺の背中を撫でる。

 よほど東郷は俺を寝かせたいらしい。

 

「そうね、2人とも忙しそうだし……たまには、ね?」

 

 美少女からのお誘いは断らないのが信条だ。

 余っていた片手で滑らかな背中を撫でながら俺は再び目を閉じる。

 

「あと亮くんってたまに寝言言うけどね……」

 

 キスでもするかの距離で、目を閉じた少年に東郷は囁く。

  

「私は愛人じゃないよ」

 

「!?」

 

「たまにボソッと言ってるけど……。ねえやっぱり起きて、ねえ」

 

 

  




東郷さんは愛人ポジが似合う。(偏見)


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After
【番外】ある夏の日


本編より数年後の園ちゃんとかっきーの汗だくエッチな話。


 ――蝉の鳴き声が聞こえる。

 

 冬が終われば春が来て。春が終われば夏が来る。

 当たり前の事実ではあるが、その当たり前には多くの人の行動が関わっている。

 

 そんな裏側を知っているからこそ、この時間のありがたさを俺は味わっていた。

 

「……園子」

 

「どうしたの~?」

 

 木の棒が付いたアイスを食べる令嬢は随分とだらけた姿をしている。

 ソファーに背中を預ける園子が着ている紫色を基調とした薄手のワンピースは金髪と白い肌に良く映え、年々増していく美しさと可愛らしさを主張している。

 そんな彼女は俺を見るとふわりと柔和な微笑を浮かべる。

 

「それ、何味?」

 

「シンプルにバニラだよ」

 

 しゃく、とアイスを割り口元をモゴモゴとする金髪の少女。

 よほど美味しいのか、隣に座る俺を余所にふにゃりと相好を崩しながら舌鼓を打つ。

 

『本日は環境に優しい取り組みをする環境週間です。神樹様に感謝し、冷房の温度を上げるか扇風機を使用するなどしましょう』

 

 ちょうどテレビでは天気予報と同時に『環境に優しくしよう』というスローガンを掲げた日である事を主張している。四国中にファンがいるだろう薄着のアナウンサーはにこやかな笑顔を見せながら扇子で顔を扇いでいる。

 環境週間とは言うが、四国以外の人類が滅んでいた土地は自然で溢れ、空気も美味しい。

 なにせ三百年も手付かずの状況で放置されたのだから。恐らくは少しでも電力を抑える事で神樹の消耗を抑えるという大社の目的があるのではないのか。

 

 そんな事を考えながら少し東郷に顔が似た彼女が短い髪の毛を風で揺らしながら手を振っている姿に目を細めていると、突然ニュース番組からアニメ番組へと切り替わった。

 可愛らしいアナウンサーの姿から二次元の女の子に変わるのを暫くの間見ながら、突如チャンネルが変わった事の原因と思わしき相手に目を向ける。

 

「園ちゃん。なんで今チャンネル変えたの?」

 

「ん~、なんとなく」

 

 俺をジッと見ていた彼女に問い掛けると目を逸らされる。

 手に持ったリモコンは彼女の手の中でクルクルと回されて背中に隠される。ふんす、と鼻息を吐き棒状のアイスを口に含む金髪少女の姿を目に収めながら、俺は別のリモコンを手に取る。

 

「――――」

 

 二十五度。

 リモコンの小型液晶に映る文字の中で最も大きく表示された数字だ。

 何の数字を意味するかは、ときおり頭頂部付近に当たる冷風が教えてくれる。

 

「かっきー、見て」

 

「……ん?」

 

「セクシーポーズ」

 

 手の中のリモコンを回していると隣からの声に目を向ける。

 何故か流し目で俺を見る少女は紫色のワンピースの裾を捲ると片脚を上げて際どい部分まで露出させる。滑々の肌は白皙の大理石を連想させ、色白の太腿は魅惑的な曲線美を描く。

 確かに園子の言うセクシーなポーズだ。

 遠慮なくジロジロと見つめていると、再度ハラリと薄布に色白の肌が隠される。

 

 思春期の男を惑わす色香を放つ金髪の少女は悪戯が成功したような笑顔を見せる。

 

「以上、現場からのサービスシーンでした~」

 

「もっと続行してくれて宜しいですよ」

 

「遠慮するでごわす」

 

 金鈴のような声音で男を揶揄う少女は何がしたいのか。

 単純に性欲を持て余しているのか、それとも何か別の意図があるのか。

 遠慮のない目線に対し、ニコニコと緩んだ笑みを浮かべる園子はアイスを頬張る。

 

 このまま何もしないのは癪に障る。

 ほとんどアイスを食べ終えている彼女を見て、ふわりと人工風で髪が揺れるのを見て。

 無言のままに小型リモコンを天井付近にある冷房状態のエアコンに向けた。

 

 ――ピッと軽快な音が鳴る。

 

 突如冷風が止まった事で怪訝な顔を向ける園子の視線が刺さる。

 

「かっきー? なんでエアコン止めたの?」

 

「なんとなく」

 

「……なんとなくだったら暑いから点けて欲しいな~って」

 

「世間では環境週間のようだし、ずっとエアコン点けているよりは健康的かなって。最近はあんまり運動していないし」

 

「……運動ね。夜のは?」

 

「あれは別。ほら、その映画で見る魔女みたいな服でも脱いだら? 箒じゃなくて俺に跨れよ」

 

「かっきーは箒じゃなくて猫役が良いなぁ」

 

「猫になったら喋れないぞ」

 

「それでも傍に居てくれるだけでも良いかなって」

 

 ――ポヤポヤとした表情で軽口を叩く少女も一時間が経過する頃には額に汗を浮かべていた。

 

 温度計は上昇し続け、室内はみるみるうちにムワリとした熱気に包まれる。

 シャツとハーフパンツという軽装の俺ですら背中を汗ばませる程に暑くなる。

 

『うどんパーンチッッ!!』

 

『説明しよう! うどんパンチとは四国の想いを乗せた必殺のパンチ! 相手は死ぬ!』

 

『ぐわあぁあああ!!』

 

 園子がハマったというアニメも中盤に差し掛かり、ヒーロー的な人の攻撃によって分かりやすい悪役に致命的なダメージを食らわせる。数人がかりでヒーロー役が一人の悪役を倒すというのは前世ならともかく今になって見ると眉を顰めざるを得ない。

 もっとも、今の俺がしかめっ面になるのはアニメではなく暑いからだろう。

 

「ねえ、点けないの……?」

 

「……点けません」

 

 形の良い眉を顰め、琥珀色の瞳に倦怠感を見せる園子に否定する。

 隣に座る彼女は至近距離から端麗な顔を向け、ジッと視線を向けつつも背中に隠したリモコンを奪おうと身体を密着させてくる。いつもなら喜ばしいが今は暑苦しくて仕方がない。  

 

「…………どうしても?」

 

「……どうしても」

 

「そっか。分かった」

 

「うん?」

 

「かっきーがそんなに私の裸を見たいんだって事。えっちーだもんね」

 

「ん? ……わっぷ!」

 

 そんな事を告げながらソファから立ち上がる園子を俺は呆然と見上げる。

 暑さで彼女の自意識が過剰になったようだと思っていると、汗を頬に伝わせる園子は紫色のワンピースを一息に脱ぎ、俺に投げつけた。

 バサッと俺の視界を奪う衣服に園子の残り香を感じながらも脇に置くと、金髪の令嬢は既に背中に手を回しブラのホックを外しているところだった。ワンピースと同色のリボンの装飾が付いた年相応の下着達は、彼女の汗ばんだ色白の肌から外されていく。

 

 ブラジャーを外すとプルンと揺れる双丘。

 ショーツを脱いで見せ付けるくびれと薄毛と女の秘裂。

 透き通るような肌を俺の前に晒す園子は顔を赤らめながら俺に近づく。

 

 少女から女と呼べる年頃になりつつある園子の成長著しい女体ストリップショーは恥じらいよりも暑さと俺に対する苛立ちが勝ったらしい。

 半眼で脱ぎ終えた彼女はソファに座る俺に対して正面から抱き着く攻撃を仕掛けた。

 

「あっつ!?」 

 

「むふー」

 

 嬉しいとか喜ばしい以上に、女体の熱に俺は呻いた。

 薄いシャツ越しに揉みごたえのある乳房がむにゅんと押しつぶされ、いやらしい脱衣劇に勃起した剛直を当てつけのように彼女の恥部が擦りつけ、より硬くしていく。

 腰に脚を回して俺に抱き着いてくる園子は驚くほどに柔らかく熱を持っていた。

 

「かっきーだってあっついよ……」

 

「いや、園子の方が熱いから。……というか邪魔。どいてよ、むっつり令嬢」

 

「むっつりじゃないもん。……かっきー汗臭い」

 

 むわりと汗と性臭を漂わせる園子の考えはおおよそ読めていた。 

 家主である俺からリモコンを奪うよりも俺の意志でエアコンを点けさせたいのだろう。 

 は、ふ、と熱い吐息を俺の首元で漏らす熱に浮かされたような少女の頬に汗が伝う。

 

「かっきーも脱ごうよ、シャツの色変わってるよ~」

 

「……そうだな」

 

 灰色のシャツは自分でも驚く程に汗で黒ずんでいた。

 園子が俺のシャツを脱がせようと身体を動かす度に柔らかい感触が俺の素肌に触れる。半裸になった俺の首に腕を回し、胸板に双丘が形を崩す程にしっかりと抱き着く少女は熱い吐息と汗を俺の肌にこぼす。

 白い裸体に長い金髪を汗で張り付かせながらも、しかし離れる事はしない彼女。

 

「……あついね~」

 

「……そうだな」

 

「かっきー。暑いのあんまり好きじゃないでしょ?」

 

「……そうだな」

 

「……ぁ、っ、でも我慢強いから熱中症になった事一回あったよね」

 

「あの時は園子に助けられたな」

 

 至近距離で見つめてくる園子の視線。

 暑いからエアコン点けろ、という意思が如実に込められている。

 下半身に血が巡り勃起した怒張を感じ取り薄い尻肉と恥部を上から押し付け、小さく喘ぎ声を漏らす少女は令嬢とは思えないはしたなさを露呈させる。

 

『くっ、ここまでか』

 

『お前はここで終わりだ!』

 

『……いや、まだだ』

 

『何!?』

 

『まだ、やれる!! 誰が第二形態までだと言った!!』

 

『馬鹿な!』

 

 柔らかさと熱を与える令嬢の攻撃に耐えながらテレビに目を向ける。

 意外としぶとい悪役も遂に観念する時が来たのか、爆殺される寸前である。そんな悪役に共感するように、正面からの大好きホールドという愛する金髪ふわふわ少女の攻撃に俺はぎしりと奥歯を食い縛る。 

 そんな意志を笑うかのように、首筋を熱くぬるりとした物が触れる。

 

「ちょ、園ちゃん。何してるの?」

 

「塩分補給」

 

「――――」

 

「かっきーって本当に美味しいなって」

 

 ぺろぺろと水を舐める犬のように吸い付き舐める園子の顔は赤い。

 額に汗を張り付かせ、全身を長距離走をしたように汗ばむ身体を同じく汗ばんだ俺の裸体に擦りつける。むにゅ、むにゅんと押し潰れる彼女の乳房で唯一硬くなっている乳首を擦り付ける度にピクッと身体を震わせる姿に鼓動が高鳴る。

 暑さで朦朧とする意識の中で、俺から塩分を摂取する少女に唇を奪われる。

 

 園子の唇はバニラ味だった。

 テレビの音が遠くに聞こえる中、積極的に口付けを求める彼女。

 俺の額に浮かぶ汗と髪の毛を指で拭う園子は、ボソリと俺だけに聞こえる声量で呟く。

 

「私を見て」

 

「見てるとも」

 

「私だけ、見て」

 

 どこか酩酊したような眼差しで俺を見つめる彼女は名残惜し気に身体を離す。

 許可なく離れようとする少女の背中に手を回すと、安心させるかのような微笑みと共に膝立ちで豊満と呼べる乳房を俺に差し出す。

 以前より一回り成長した双丘は汗でてらつき、薄いピンクの乳首は反抗的に上を向いている。

 鎖骨を伝う一滴の汗が寄せた谷間に小さな湖を作り出す。

 素晴らしくもいやらしい光景に目が釘付けになっていると、彼女は告げた。 

 

「……かっきーも塩分、摂って」

 

「……」 

 

 断れる筈がなかった。

 朦朧とする意識の中、身体は本能のままに少女の乳房にむしゃぶりつく。

 甘じょっぱい肉の果実は手に馴染み、揉む度にいやらしく形を変えていく。口の中で唯一硬い肉粒は飴玉のように舌上で転がすと、は、あ、と園子は熱い吐息をした。

 

「ぁ、ぁ、す、吸い過ぎだよ~。まだ出ないよ?」

 

「――――」

 

「ん、んっ、……んんッッ!!」

 

 俺の頭部を掴んで抗議する園子のくびれた腰を抱きしめ、尻肉を掴む。

 遠慮のない刺激に、咄嗟に逃れようとする彼女の身体を抱き貪るように授乳経験を奪う。

 ちゅぱ、ちゅぱと音を立てながら吸う度に腰を震わせる少女の華奢な体躯を抱きしめながら、同時に柔らかく熱い恥部に手が伸びる。

 貝状の肉は汗と愛液で濡れそぼり、触れた手に熱を伝える。

 

「んふっ、ぅぁ! 同時には駄目、駄目だってば! うひゅ!」

 

 挿入した指を膣壁が甘く締め付ける。

 そっと指を曲げて臍側の膣壁を撫でると真新しい愛液が俺の指を濡らす。 

 彼女だけを見て、一心不乱に彼女の乳房を、尻肉を、秘裂に愛撫を続ける。

 

「ぁ、ぁー……」

 

 ガクガクと膝を震えさせる彼女は限界だとばかりに首を振る。

 顔を赤く染め、口端から涎を垂らしながらトロンとした瞳を熱で潤ませる。

 互いに限界を悟り下着から剛直を見せると、俺は彼女を見上げて告げた。

 

「ほら、腰を下ろして」

 

「……ん」

 

 僅かな戸惑いの後、園子は従順に腰を下ろす。

 ぬぷぷ、と普段よりも遠慮がちに挿入されると、熱い膣が剛直を包み迎える。

 最初俺に抱き着いた姿勢よりも深く深く繋がった事を実感した俺は、彼女を突き上げる。

 

「ぁ……! ぉ、ぁぅ」

 

 本日は積極的な彼女は本能に突き動かされたのか、自ら腰をシェイクする。

 抽送する中で、挿入したまま動かされる腰の刺激に快楽が俺の脳を焼きかける。

   

「キス、キスして」

 

 ピストンの最中、園子が喘ぎながらおねだりをする。

 ん、と突き出した唇を奪いながらひたすらに腰を突き上げる。

 深く挿入した剛直、亀頭は彼女の最奥を叩きながら、たまらず絶頂に至る。

 

「ん、~~~~!!」

 

 ぎゅううっと俺を抱きしめ、声なき声を上げる園子。

 吐精の余韻に浸りながら、彼女の汗塗れの身体を抱きしめる。

 

 ――冷房を点けよう。

 

 今更ながらそんな事を思った。

 何故俺は園子と我慢大会をしているのだろうか、と馬鹿馬鹿しくなる。

 さっさと点けて、その前に彼女と風呂場で汗を流そうと考えだしていた時だった。

 

「は、はひ……」

 

 ふらり、と抱きしめていた彼女が立ち上がる。

 結合部からぬるん、と剛直が抜け白濁が逆流するが園子は気にも留めない。

 ゆっくりとした動きで台所に向かおうとしているが、腰に力が入らないのかふにゃりと四つん這いになり、ぷるんと尻を揺らした。

 

「み、水……」

 

 ゆっくりと這うように進む姿の園子。

 無意識に肉感的な尻を振り男を誘う光景に高鳴る鼓動と本能に従う。

 

「ん、え」

 

 再びの挿入。

 身体の危機だと本能が告げているのか。

 既に二発目が装填された剛直を挿入し、獣のように腰を振る。

 

「あ、あ~~~~っっっ!!!」

 

 ひたすらに快楽を貪る。

 いきり立つ竿を沈める肉穴として彼女をモノのように扱く。

 

 ぱんぱん、と肉を叩く。

 腰を揺する度に結合部からは精液と愛液がぐじゅり、ぐじゅりと猥音を響かせ、床に垂らす。

 

「ぁ、ぁ、ひぁぁ!?」

 

 掴みやすいくびれた腰を掴みピストンを続ける。

 彼女の悲鳴が途切れ、荒い吐息だけを漏らすようになった頃。

 ガクッと園子の上半身を支えていた腕が力を失い、彼女は床に身体を伏した。

 

 後ろから抱きしめて動物のように交尾する。

 身体の前面に両腕を回し、床に潰れた乳房を揉みながら余す事なく膣壁を擦る。

 

「~っっ、っ……、~~ッ!!」

 

 喘ぐ余裕すら失くし、首を振って限界を知らせる彼女。

 そんな園子の背中に腹をくっつける程に抱き着き返して蜜壺を無心に味わった。

 

 稲穂のような金髪から覗かせる耳を甘噛みしながら、ひたすらに腰を振り射精に至る。

 

「っ」

 

「ひっ、ぃ、ぁ~~~~ッッ!!!」

 

 先ほど彼女の子宮に吐精したばかりなのに、今度の射精は長かった。

 亀頭が子宮口を擦る度に、精液が膣内を跳ねる度に、令嬢は幾度となく身を震わせた。

 

 やがて俺たちはどちらともなく脱力した。

 

「はー、はー……、ふへへ」

 

 冷たいフローリングの床に抱き組み伏せられた少女。

 互いに汗と獣臭の混ざり合った暑苦しい環境下で疲労感を見せながら満足気に笑う園子を抱きしめる俺は、無言のままプリンのような柔らかい双丘を揉み始める。

 

「んっ、ま、待って、かっきー……」

 

 彼女の滑らかな肌を伝う汗を舐めると、自然と情欲が湧き上がる。

 頭が壊れたのか、生存本能が刺激されたのか、白い背中を伝う汗を舐めると、耳の奥で血の流れを感じた。ごくっと喉を鳴らす。

 

「きゅ、休憩しよう? ねっ?」

 

 黙らせるように性感帯である彼女の耳を舐めながら、ゆっくりと腰を振る。

 結合部からはにじゅりと水音が蒸した部屋に響き始める。

 

『うわぁぁあっっ!!』

 

『知ってるかヒーロー。正義の反対は正義なんだよ!』

 

 視界の隅で捉えたテレビ。

 ぼやけた視界では自らを正しいと思い込むヒーローが悪役に敗北していた。

 

 そんな悪役のように可憐な少女を組み伏せる。

 恥部に手を伸ばすとピストンを繰り返し泡立った結合部と精液の付着した陰毛の感触が手に伝わる。秘裂付近を手探りで探ると硬く小さな肉粒を見つける。

 

「……や、やら」

 

 言葉を失ったように口を開閉させ、懇願するように俺を見上げる園子。

 涙で濡らし被虐性を浮かべた琥珀色の瞳を見て、その姿に竿が痛い程にいきり立つ。

 

「あ、あ、あ……!」

 

 ――遠くで蝉の鳴き声が聞こえた。

 

 

 



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【番外】風鈴の音に耳を傾けて

本編より数年後の色々持て余した東郷さん。


 目を覚ますと目の前には美少女がいました。

 長い黒髪、深緑の瞳に親愛を映し、微笑を浮かべた美少女だ。

 

 見知った物よりも僅かに幼さの減った顔は彼女を絶世の美女へとたらしめる。

 纏めた髪の毛を後頭部で束ねた姿を下から眺めているだけで幸福感が胸中を占める。

 薄目を開けて見ていると、ジッと俺を見下ろす彼女はゆっくりと手を伸ばす。

 

 細い女の手が伸びる先は俺の頭部。

 白髪の増え始めた癖毛の黒髪を手櫛で梳くように、愛おし気な表情で頭を撫で続ける。

 薄眼を開けて目に映る光景と、後頭部に感じる感触から膝枕をされているのだと分かった。

 

「――――」

 

 徐々に視界一杯に彼女の顔が映りこみ、頬に柔らかな唇の感触を感じる。

 ちゅ、ちゅ、と寝ている事を良い事にキスの雨を降らせる彼女は瞼を下ろしていたが、やがて薄目で見上げている俺に気づいたのかほんのりと白雪の肌に朱色を差す。

 自らの行いを反省しているのか、或いは見られた事による羞恥か。

 

 やがて、ほっそりとした冷たい指先が俺の鼻をつまむ。

 途端に息が苦しくなったので目を見開き、黒髪の少女を軽く睨む。

 

「……何をするか」

 

「いつから見てたの」

 

「さっき」

 

「さっきって」

 

「股間をさわさわして、ゴクッて喉を鳴らしていたところ」

 

「……言ってくれたらいいのに」

 

 身に覚えがあるらしい。

 さっき起きたばかりです、とは言えない空気が出来上がってしまった。

 それ以前に、寝ている人の身体に何をしているのだろうとむっつり大和撫子を見上げる。

 

「随分、積極的だったね」

 

「……そ、そういう訳じゃ」

 

「――――」

 

「ただ、ほら、亮くんもお掃除や片付けで疲れているようだったから」

 

「……、俺も随分気を抜くようになったな」

 

 熱と羞恥に揺らす深緑の瞳を見上げながら、何となしに彼女の頬へ手を伸ばす。

 白皙の肌はプリンのような柔らかさと手のひらに吸い付くしっとりとした感触で、何度触れても飽きる事が無い。触れた肌の方の片目を閉じてされるがままになった東郷は被せるように俺の手の甲に手のひらを置く。

 ――縁側に飾った風鈴がチリン、と涼し気な音を鳴らす。

 

 あれほど暑いと感じていた夏の陽射しも和らぎを見せ、所々に白い雲が見える。

 縁側の廊下の冷たい感触を背中に感じながら、ふと庭に目を向ける。

 それなりに広く、武術の練習などで使う芝生は生えそろっている。家主の意向が反映された庭は赤毛の少女から貰った花の植木鉢がある他には物置小屋と塀のみと殺風景だ。

 

 ふと鼻腔をくすぐるのは夏の間に嗅ぎ慣れた蚊取り線香の煙の匂いだ。

 残暑過ぎたこの頃ではあるが、顔に感じる風はどこか生温い物がある。

 そんな風に、縁側、庭、天井と視線が泳ぎ、頭上の東郷、彼女の衣服に辿り着く。

 

「その格好、エロいな」

 

「そう? 好きそうだなって思って」

 

 後頭部には東郷の処女雪のように白く、健康的な腿肉の感触が直に伝わる。

 

「俺が?」

 

「他に誰がいるの?」

 

「東郷さん」

 

「そういう事言うと脱ぐからね」

 

 コスプレする美少女は好きだ。

 特に、好きな子が恥ずかしがりながらも着飾る姿は写真に収めたくなる。 

 揶揄うと小さく眉をひそめる彼女に謝ると、細い指が一本、二本と折り曲げていく。

 

「給仕服とか水着とか看護服とか、あと中国の脚が見える服とかこれでもかってぐらいに非国民な洋服ばかり着せようとしてくるじゃない。そういうのは私よりも友奈ちゃんの方が似合うでしょ?」

 

「でも、なんだかんだ言いながら着てくれる東郷さんの事も好きだよ。お陰で東郷さんフォルダが一杯増えた」

 

「もう……。ねえ、好きってもう一回言って」

 

「好きだ」

 

「もう一回」

 

「好きだ」

 

「もっと」

 

「好きだ。……これからも俺から離れるな。しっかりと捕まえててくれ」

 

「――うん。うん! 勿論よ。絶対離さないからね、亮之佑」

 

 唇に触れる彼女の唇は仄かに抹茶の味がした。

 和やかな雰囲気に包まれる中、彼女が着ている衣服に改めて目を向ける。

 それは衣服と言うにはあまりにも薄くいやらしさに満ち溢れた物だった。

 

 ベビードール。彼女の下着を上から見ていく。

 薄青色の下着、白く剥き出しの肩には豊満な双丘を支える柔らかな肩紐。彼女が男の視線に恥ずかし気に身体を動かすと、ゆさゆさと乳肉が目の前で揺れる。

 こぼれそうな乳が作る白く深い谷間が上から下まで惜しげもなく晒されている。

 

 透明な布地が彼女の程良く引き締まった腹筋とショーツに薄すぎるベールを作り、黒のリボンとフリルの付いたショーツからすらりと伸びた腿肉が俺専用の枕と化している。

 下着というにはいやらしさと清純さが混ざり合っていた。

 そんな風に上から下まで舐めるように東郷を見ながら総評を伝える。

 

「……勝負下着?」

 

「そ、そこまで気合を入れた訳じゃないんだけど……興奮した?」

 

「…………」

 

 謙虚な彼女だが視覚的な興奮だけでなく意識の覚醒に伴って生じる彼女の発情した雌の香りや熱を孕んだ眼差し、体温、柔らかさが俺を昂らせていく。

 彼女の質問。否、いやらしい誘いに応えるには言葉だけではあまりにも無粋だった。

 ゆっくりと立ち上がり、下着を下ろすと既に反り立った怒張が東郷の目の前に姿を見せる。先端から垂れた先走りが肉竿を伝う様をじっくりと顔を赤らめる彼女に見せつける。

 

「……っ、亮くん」

 

「ん?」

 

「今日は、せっかくだから胸でしよっか?」

 

「お願いします」

 

「ふふっ」

 

 目の前の肉棒が待ちきれずに先走りを白い肌に垂らす中で、彼女は乳房を持ち上げる。

 むにゅん、と質量感のある母性の塊が形を変える姿に思わず息を止める中、ゆっくりと見せつけるかのように谷間を寄せる。

 両手で押す度に互いの肉が潰れ合う中、反り立つ怒張を前に東郷は跪く。

 

「……いいよ」

 

「…………」

 

「ここに、挿れていいよ?」

 

 悪魔のような囁きだった。

 学校では多くの男子生徒たちの心を虜にしている美少女の、一人の男への淫靡な誘いの声音だった。

  

 絶対に気持ち良い、という予感があった。

 理性が崩壊するという忠告は上目遣いで見つめてくる女の熱い期待の視線に溶かされる。

 

 ――にゅるん、と白い谷間にペニスを突っ込んだ。

 

「……!」

 

 東郷の肩を掴み、下乳の谷間から根本まで挿入する。

 性器よりも柔らかく、ふわふわとしたソレは優しい締め付けで怒張を離さない。

 谷間に溜まった汗と自らの先走りを潤滑油に、豊乳の中で腰が勝手に動き出す。

 

 きめ細かな東郷の乳房は、極上という表現以外を許さない。

 彼女の疑似的な性器に脳を痺れさせられる中、俺は夢中で腰を振った。獣のように腰を振る俺の姿を見上げる東郷は何を思ったのか、ピストンの度に谷間から覗く剛直へ唾液を垂らす。

 透明な唾液と竿液が混ざり合い、乳肉の膣内は熱くぬめる。

 口端の唾液を舌で拭いとる東郷の淫らな姿に、俺は思わず揶揄うように口を開く。

 

「どこで覚えたんだ」

 

「……誰かさんが、そういう風に教えたじゃない」

 

「東郷さんはエッチだなぁ」

 

「そういうエッチな風にしたのは亮くんでしょ?」

 

 膣よりも柔らかく、熱く、いやらしい。

 男に都合の良い、良すぎると感じる淫魔すら羨むほどの性器で往復を繰り返した。

 

 にちゅ、にち、にちゅ、と淫靡で背徳的な音が周囲に響く。

 自らの唾液が剛直に絡みつき、乳房を蹂躙して自慰に使われている状況を目で、耳で味わう東郷は羞恥に耳まで赤く染めながらも健気に乳房を寄せている。

 

 にちゅん、にちゅんと怒張が乳房に吸い尽くされるような感覚。

 快楽を超えた至福が胸中を過る中、奥歯を食い縛り、限界まで射精感に抗う。

 

 熱く、硬さを増していくペニスの様子が乳房から伝わったのだろう。

 限界寸前の怒張を逃がさないと人工膣に締め付けが加わり、敢え無く決壊した。

 

「おっ!」

 

 びゅううぅっと勢いよく白濁が噴き出した。

 乳房の中で噴き出した雄のエキスは東郷の鎖骨を、頬を、そして髪を汚す。

 

「うにゃぁ!!」

 

 突然の射精。咄嗟に目を閉じて悲鳴を上げる少女。

 驚きと欲情で顔を赤くしながらも、濃厚な遺伝子のスープを浴びている東郷。

 

「熱っ、……、ふふっ。いっぱい出たわね」

 

 寄せて出来た肉壺を解くとドロリとした白濁が彼女の谷間から生まれる。

 孕ませ汁が彼女の下着を、白皙の肌を雄の匂いと汁で汚していく。

 熱く滾る竿を目の前に、東郷はとろりと表情を蕩けさせる。

 

「んっ、……凄いわね」

 

 味見をするように東郷は顔の精液をぺろりと舐めとる。

 赤い小さな舌にせっせと指で掬った精子を乗せる東郷。

 彼女の白雪の肌と濡羽色の長髪に、濁った精子は良く映えた。

 

 味わうように舌で精子を口に含む東郷は、ふと流し目で俺を見つめる。

 唇の残した精子の名残をペロリと舐めとる東郷は無言で迫り寄る。

 

「なんだよ」

 

「横になって、亮くん」

 

「え」

 

 まさか、これで終わりなのだろうか。

 そして横になって欲しいのは東郷の方なのだが。

 

 外でするには蚊の存在が邪魔で、塀で視線を遮っているとはいえ外の様子が見える廊下で、抗議するよりも早く、問答無用の東郷に押し倒される。

 俺を見下ろす彼女は優しい微笑とは裏腹に欲情に揺らいだ瞳を向ける。

 ゆっくりと、白濁で汚れたベビードールを俺の体躯を脚で挟みながら脱ぐ。

 

 ストリップショーのような見せつける脱衣ではない。

 だが男に媚びるような脱ぎ方ではなくとも、チラチラと外の方を気にしながら薄布を脱いでいく姿に萎えた剛直は力を取り戻す。

 縁側から見える外は明るく、耳を澄ませば蝉の鳴き声と人の声も聞こえるが――、

 

「ここなら、誰も見ないよ」

 

「……一応外じゃない?」

 

「東郷さんが騒がなければ大丈夫」

 

「なら、やっぱり私がするわね」

 

 俺に主導権を握らせると声を我慢出来る自信が無い。

 そう言外に告げる東郷は薄青のショーツを脱ぎ、淫魔すら羨む裸体を曝け出す。

 

「あ、あんまりジロジロと見ないで」

 

 夕暮れが近いとは言えども、陽射しは彼女の白雪の肌を照らす。

 日陰のある縁側で自らの裸体を晒す少女はゆっくりと雄の肉棒へと腰を下ろす。

 

 腿に愛液が伝うほどにトロトロの媚肉と亀頭がくちゅりとキスをする。

 呑み込まれるように亀頭が沈み、加減が分からないのか一息に根本まで突き込んでしまった。

 にちっ、と遅れて蜜壺から音が漏れる。

 

「あ、~~~っッ!?」

 

 ガクッと東郷の体勢が崩れ、前のめりになる。

 辛うじて俺の胸板に手を乗せてバランスを保つ東郷は荒い吐息を漏らす。

 

 騎乗位というのは互いに性交の意志が無いと成り立たない。

 東郷の膣はたった一回、釘打ちしただけで淫らで甘い蜜液が噴き出す。

 

「東郷さん」

 

「……ちょ、ちょっと待って」

 

 ぷるぷると目の前で揺れる乳房に手を伸ばす。

 つきたての餅のような双丘を揉みしだき、彼女の行為を見届ける。

 

 最奥まで貫いた剛直がゆっくりと引き抜かれる。

 怒張に絡みついた愛液が結合部から溢れ、淫らな水音と共に竿が姿を現す。

 

「ぁ! ……ぁ」

 

 ぎゅっと瞼を閉じた東郷は腰を動かす。

 自らの気持ち良い部分を雁が触れる度に媚肉が更に濡れ、嬌声が漏れる。

 本物の竿を使用した贅沢な自慰を堪能する彼女は一突きごとに膣を引き締める。

 

 黒髪を振り乱し、頬を伝う汗が俺に落ちるが気にならない。

 それ以上に快楽に耽り、前屈みで自ら脚を広げて腰を振る少女を見つめる。

 

 ずちゅ、と絡む媚肉から竿を抜く。

 にじゅん、と竿の根本まで亀頭が子宮口を叩く。

 は、ん、と熱い吐息を漏らす東郷は切なげな眼で俺を見下ろす。

 

 彼女の目線から要求を悟った俺は胸に添えた手で敏感な突起を二つ、刺激する。

 

「ん、ぁぁ……ッッ!!」

 

 きゅううっと竿を締め付ける感覚に歯を食い縛る。

 よく解れた媚肉が卑猥にひくつき、結合部から泡立った蜜液が鼠径部を伝う。

  

 ちゅく、ちゅく、とストロークと水音。

 制御下に置かれた、最高のリズムを刻んだ自慰。

 

「はー………あは……っ」

 

 いつの間にか胸板に置かれた腕から力が抜け、上体を起こした肩を掴む東郷。

 それでもゆっくりと一定速度で男根を味わい漏らされる喘ぎ声を耳元で聞く。

 ビキビキと血管が浮いていると感じている程の剛直は、絶頂に達する寸前でのお預けが続く。

 少女の一定速度の自慰は甘すぎて、達する事が難しいからだ。

 

「っ……!」

 

 至近距離で見る女の恍惚とした表情。

 汗の香気を漂わせ、解れ掛けの黒髪を乱れさせる東郷に撮影機材が無い事を惜しむ。

 かくっ、かくっと腰を振り、目尻に涙を浮かばせる程の快楽に悦ぶ女は両脚の爪先を立たせ、身を震わせながら顔を伏せる。

 

「ッ!! っ……っぁあ……!!」

 

 汗でぬめる肢体。

 肩を掴む手に力が籠る中、快楽に口をパクパクと開閉する。

 絶頂に達し、浅く長い呼吸を繰り返す女の表情を至近距離で見上げる。

 

「――――」

 

 素晴らしい光景だった。

 彼女も自慰に浸れて満足だろう。

 今までの淫靡な光景は鮮明に瞼の裏に焼き付いて離れないが、

 

「それはそれ、だ」

 

「へ……?」

 

 俺の昂りは消える事は無い。

 荒い息をする東郷の腰を掴み、軽い身体を持ち上げる。

 快楽の余韻に浸る彼女は僅かに身を硬くするが、抵抗には遅すぎる。

 

 廊下の外側、網戸越しに家の庭、外の光景が見える方向に身体を向ける。

 脚を開いて座り、膝の上に東郷を導く背面座位だ。

 

「や!?」

 

 反射的に腰を浮かせようとする東郷。

 そんな彼女のくびれた腰をガッチリと掴むと、先ほどまで彼女が好んでいた角度で、斜め上に挿入する。

 

「ぅ、あ!!!」

 

 脚を開かされ局部が丸出しになり、咄嗟に暴れる東郷。

 だが腰を掴まれた彼女には逃げる事は叶わず、しっかりと根本まで貫かれる。

 

「お……ッ、ぅぁ……!」

 

 彼女が好む角度での不意打ちの挿入。

 俺の肩に後頭部を置く彼女は身体を軽く震わせ、甘く虚ろな表情を浮かべている。

 東郷が悶える姿を外に宣伝するように乳房を握り、突き上げる。

 

「ひぁぁッッ!?」

 

 プシッと水音が廊下に響く。

 怒張を貪る結合部から新鮮な蜜が潮のように噴く。

 

「東郷さん」

 

「ま、っ……、ぁ、まって」

 

「声我慢しないと、誰かに聞かれるよ」

 

 彼女の息が整うのを待つよりも先に一息に腰を突き上げる。

 乳頭を刺激しながら腰を掴み、ちゅぷ、ちゅぷと蜜を掻き混ぜる抽送を始める。

 

「ひゃ、ら……、それ……ッッ!!」

 

 ようやく状況が東郷にも掴めたのか声を抑えようとする彼女。

 たゆんと豊満な胸を揺らし、汗でぬめる腰を掴んだ腕を掴もうとする東郷の手は獣のようなピストンに、必死に口を押さえる事に専念する。

 

「~~~ッッ! んん……っ!!」

 

 解れた黒髪を乱れさせた東郷は腰を浮かして逃げようとする。

 捕まえて、奥まで怒張を挿入するとガクッと背中を反らし、押さえた手越しに呻く。

 

「ッ! ………!!!」

 

 嫌々と首を振る彼女の乳房を掴み、硬い肉茎で蜜壺をほじる。

 汗を滴らせ、逃げようとする脚が濡れた床を滑る。

 必死で口を押さえる手のひら、指から漏れる甘い悲鳴が響く。

 

 肉が肉を叩き、ぴちぴちと音を立てる。

 獣欲に囚われ卑猥な結合音が響く中での断続的なピストン。

 たんたんたんと一定リズムで、最高の角度で突き上げる。

 同時に、彼女の大好きな恥部の肉粒と乳頭を指で摘まみ上げた。

 

「んん、ッ、ぁ、ぁ~~~~~~!!!!」

 

 手で抑えきれない程に漏れる声。強烈な絶頂。

 プシャッと結合部から甘露が噴き出し、床を濡らす。

 同時に俺も限界を迎え、東郷の最奥へと濃縮した白濁を勢いよく噴き出す。

 

 解放感と共に東郷の華奢な身体を抱きしめる。

 精液一滴すら余す事ない吐精。彼女の子宮に注ぎ、溢れた汚液が膣襞の一つ一つに染み込んでいく。

 たっぷりと余韻を味わうと、ゆっくりと竿を引き抜く。

 

 とろり、と白濁が結合部から垂れ、内腿を伝う。

 ゆっくりと流れる白濁の動きにすら東郷は反応し、震える。

 

「……は、ぁ」

 

 大きく吐息する東郷を抱きしめ、床に倒れる。

 汗と性臭を漂わせる女の後頭部が俺の肩に置かれる。

 抱き枕のように東郷を背後から抱きしめると、互いの頬がすり寄る。

 

 夕暮れはまだ終わりが見えなかった。

 夏の夕暮れは、未だに暑く、抱き合う熱で蕩けそうだった。

 

「…………」

 

「……あつい」

 

「……スイカ、切ってるけど食べる?」

 

「東郷さんを食べたい」

 

「…………」

 

「…………」

 

「声、我慢しなくて良い場所なら」

 

 ――チリン、と風鈴が揺れた。

 

 

 



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【番外】貴方の傍で笑いたい

数年後の友奈ちゃん。短め。


 ――ふと目を覚ます。

 

 ぼやけた視界、映る景色は薄暗い世界だ。

 度の合っていない眼鏡を掛けたような世界を映す瞳は、何度瞬きを繰り返しても終わらない。

 仕方なしに手で目元を擦ろうと血の巡りの悪い頭で思いながら、その重さに気づく。

 

「ん……」

 

 左半身に圧し掛かる柔らかい感触。

 すぅ、と規則正しい寝息に混じる寝言は言葉を成してはいない。

 それでも、その寝息の持ち主が誰なのか分からない筈が無いのだ。

 

 どれだけの付き合いか。

 年単位での思い出を共有する仲なのだ。

 

「――――」

 

 無言で目を擦ると鮮明になる世界。

 リビングのソファの上、暑さの減って来た夏の終わりが近い事を思い出す。

 頭に感じる感触は金髪の令嬢が置いて行ったとある生物を模した枕で、何気なく俺の頭にフィットした構造になっている。

 ふわふわとした令嬢の姿を脳内に浮かばせていると身体に乗った少女が身動ぎする。

 

「ぅ……ゆ?」

 

 赤い髪の毛を揺らし、パチリと開かれる薄紅色の瞳と目が合う。

 俺の肩に頭を乗せ、薄布に包まれた柔肌を無防備に見せながら、ぼんやりとした表情の彼女は俺の顔を至近距離で見つめている。

 口端から垂らした涎を拭う事に意識は向かず、呆けた様子で俺を見る。

 

「おはよう」

 

「……おはよー」

 

 朝の挨拶には随分と時間が遅かった。

 昼も幾分過ぎて、クーラーの代わりに点けた扇風機の風が定期的に彼女の髪の毛を揺らす。

 互いに寝起きの顔を見せる事に抵抗はなく、彼女は僅かにもたげた顔を再度肩に擦りつける。

 

 柔らかな頬の感触と、ふにふにとした柔肌。

 誘惑するように、マーキングするように己の肌を擦りつける友奈。

 唇から覗く小さな白い歯はそっと俺の肩に甘噛みし、微かな痛みと歯形を残す。

 

 犬のように今度はその痕を愛おし気に舌で這わせる姿は普段とは異なる厭らしさだ。

 やがて満足したのか熱い吐息を漏らす少女は小声で呟く。

 

「……よし」

 

「何がよし、だっての」

 

「わぁ!?」

 

 満足気な笑みを零す友奈に話しかけると驚かれる。 

 無意識だったのか恍惚な表情を浮かべていた友奈を抱きしめると、柔らかく温かな肌の感触が直に伝わる。

 一方は衣服を着ておらず、もう片方はどこか大人びた水着を着ている。

 

「今日はメイドじゃないのか」

 

「さっき洗濯したんですよ、ご主人様」

 

 彼女が着ている水着は俺が以前与えたメイド服とビキニが一体化した物ではない。カチューシャやシュシュも含めたメイドセット一式は彼女が告げたように洗濯中らしいが、彼女が新しく選んだ水着は可愛らしさと大人のエロスが混ざり合った品だ。

 

 ピンク色を基調とし、フリルや紐などの要所部分は黒色が多い。

 彼女が選んだにしてはどこか大人びたデザインに、俺は無言で目を細める。

 

「ねえ、どうかな?」

 

「うん、エロい」

 

「そうでしょ?」

 

「誰と買ったんだ」

 

「えっと、秘密。去年の水着が合わなくなっちゃって、二人で買いに行った時に選んで貰ったんだ~」

 

「園子だな」

 

「うん!」

 

 楽しそうに笑みを浮かべ、鈴音のような笑い声を上げる友奈。

 ポーズを決めているのか滑らかな腋を見せつけるように傾げた頭に手を置いて、ピンクと黒の布地に覆われた双丘の谷間を見せつける。

 触って欲しいのか、俺の手を取り豊かになった乳房に自ら宛がう。

 ならば、と遠慮なく両手で布地の間から直接餅のような感触の乳房を揉みしだく。

 

「ん……」

 

「また、ちょっと大きくなったな」

 

「えへへ……と、東郷さんには負けるけどね。あと園ちゃんにも」

 

「それって結構前だった気がするな。今日園ちゃんと比べて欲しいな~」

 

「え~」

 

 中学時代よりもやや豊満になったソレは十分に巨乳と呼べる。

 園子とほぼ同じ程度に成長した白皙の双丘はモチモチとした質感と柔らかさに多幸感を誘う。いつまでも揉んでいたいと思わせる飽きる事のない女の胸肉の性感帯付近を撫でる。

 

「似合うよ、友奈。でもなんで水着?」

 

「えっ、今日って一緒に海水浴に行く予定だったよね? でも……」

 

 言い淀む彼女の顔を見上げ、暫く無言となる空間。

 その空間に静寂はなく、やや遠くの方でパラパラとした雨音が鼓膜に届いた。

 

「雨、降ってるから」

 

「それは……仕方ない」

  

 ――小雨が降っていた。 

 窓の外はどんよりとした雲で、海水浴には向かないだろう。

 だから、こうして可愛らしい水着を着て健気にも見せてくれたのだ。

 

「海ならまた今度にしよう。なら、夕方に東郷さんと合流で良いんだよな?」

 

「そうだよ。今日花火大会だからね! ……ところで、亮ちゃんは服着ないの?」

 

「何? 恥ずかしいの? 俺のあられもない姿ならよく見てるだろ。それに友奈だって昼頃まで裸だったじゃん。ご主人様だけ裸にしやがって、おらっ、剥いてやる!」

 

「あれは亮ちゃんが離してくれなかったから……ぁ、ぁっ!」

 

「あ、そういう事言うんだ」

 

 敏感な肌の少女はあっという間に馬乗りの体勢を崩し、その身体を好きに弄ぶ。

 背中の紐を解かれまろびでる白い乳房、薄桃色の乳首に吸い付きながら、くすぐるような愛撫をする頃には俺の隣に横たわっていた。

 

「ゃ、ぁ! ぁ~~!!」

 

 猫のような甘い鳴き声を漏らしながら俺の隣に寝転がる友奈。

 はぁ、はー、と荒い吐息の合間に無言で俺に白い背中を向ける少女はチラリと目線だけを向ける。その視線に快楽を求めている事を悟ると、俺は彼女の背中に抱き着く。

 腹と背がくっつく程に抱きしめてボトムスの隙間から自分でも驚く程の正確さで挿入する。

 

「んぅぅぅ……!」

 

 甘い、甘い喘ぎ。

 じゅぷっという水音と共に竿が奥深くまで届く。

 抱き枕にするようにサイドポニーのうなじに顔を埋め、背後から乳房を鷲掴みする。

  

「ぅぅっっ!!」

 

 俺が意識を失う少し前まで快楽にのめり込んでいた友奈。

 背後から抱き着き、犯すように腰を揺する度にパクパクと金魚のように口を動かし、虚ろな目をした女の横顔を尻目に、彼女の柔らかい肩肉を甘噛みして小さくも確かな歯形を残す。

 燻ぶっていた熱は抽送を繰り返す度に、情欲の炎を彼女の瞳に浮かばせる。

 友奈の薄紅色の瞳に浮かぶ感情。

 自己嫌悪と高揚と興奮と喜悦を混ぜた涙混じりの瞳が俺を見る。

 

「これでまた、海には行けないな」

 

「んぁぁ、ぁ……!」

 

 友奈の片脚を持ち上げて、奥を、奥の奥を犯す。

 夏の暑さよりも熱く、ぬめる膣襞に締め付ける俺の形を覚えさせられた花弁は、ピストンの度ににちゅ、ぬちゅ、と淫猥な音が漏れ、ボトムスを汚す。

 すっかり虐められ慣れた硬い乳首を摘まむと背中を仰け反らせる。

 

 生乳を揉みながら空いた手は彼女の腹部へ。

 くびれた女の腰を撫でながら、右手は女の胎がある腹部へと進む。

 薄い陰毛が生えた秘部よりもやや上、女の胎の上にある腹部をそっと押す。

 

「ぁぅっ、それ、ぁ、~~っっ!」

 

「好きだろ?」

 

 玩具のように己の恥部を雄肉に貫かれる友奈。

 腹部を押され、外から女の胎を刺激されると蜜肉が俺の精子を求めて締まる。

 蠕動する膣襞は一突きごとに剛直への吸い付きを強め、俺は激しいピストンに身を置く。

 

 亀頭が子宮口に吸い付く。

 グリグリと亀頭で奥の奥を刺激すると結合部からはトロリと愛液が腿を垂れる。

 

「やっ、ぁ、ぁっ、ぁあッ!!」

 

 白い尻肉が脛骨部に当たり、パンパンと音を立てる。

 既に射精を待つだけの下半身となると、俺は彼女をギュッと抱きしめる。

 予期せぬほどあっさりと、その瞬間が訪れた。

 

「ぅぁっ!」

 

「~~~~~ッッ!!」

 

 濃厚なスープが彼女の奥へと噴き出す。

 震え、声なき叫びをあげる友奈を抱きしめて歯を食い縛る。

 どくどく、と幼顔の幼馴染を孕ませようと、少女を女にした剛直から大量の子種が膣襞の一つ一つに染み込んでいく。

 最後の一滴まで吐精した事を感じると、同時に吐息した。

 射精の余韻に息をする事すら忘れていたらしい。

 

「は―――、ふ――」

 

「ハァ……ハァ……! また、いっぱい出たね……」

 

 途端にムワリとした熱気が室内に漂っている事に気づく。

 扇風機でも掻き消せない、退廃的で淫靡な性臭が熱気と共にリビングに漂う。

 それに気づいたのか、モゾモゾと身体を動かす友奈がそっと立ち上がる。

 

「亮ちゃん。シャワー、借りるね」

 

「……」

 

 ドロリと恥部から零れる白濁を恥ずかしそうに抑えながら浴室へと向かう少女。中途半端に水着を脱がされ白濁を腿に伝わせながら浴室へと歩く白い裸体をジッと見ていると胸中を過る薄暗い感情。

 ペタペタと裸足で床を踏む度にぷるぷると震える尻肉に目を向ける。

 

「友奈」

 

「なーに?」

 

「一緒に入ろうか。そう、水道代節約の為に」

 

「……、節約の為なら仕方ないね!」

 

 ――じっくりと互いの身体を清めていると夕方になった。

 

 何となく時計を目にして、慌てて衣服を身に着ける。 

 性行為を覚えたての大学生のように爛れた日々を送るが支障はない。

 なんせ、夏休みなのだ。

 友奈も自分も律するところは律して勉強も部活も御役目も行っているつもりだが。

 

「いや、参ったな」

 

「東郷さんに怒られちゃうね」

 

「吊るされるな」

 

 少しだけ遅れかけている。

 待ち合わせ場所はすぐ近くなのだが。

 

「晴れたから、夜の花火大会は問題ないらしいって」

 

 小雨が過ぎ去った夕方。

 携帯端末を弄る友奈と玄関に向かう。

 

 雨は神樹の粋な計らいか夕方にはピタリと止み、花火大会は予告通りに開催されるらしい。

 今年も無事に行われるソレに、勇者部メンバーで遊びに行く予定だ。

 

「少し急いだ方が良いな。東郷さん達が待ってる」

 

「急がないといけなくなったのは誰のせいかな……?」

 

「誰だろうな、友奈だな」

 

「私~……?」

 

 半眼で俺を見る視線を受け流し、彼女の身体を押す。

 軽く柔らかい彼女と共に外に出ると、久方振りに感じる残暑と雨の残り香が鼻腔をくすぐる。

  

「本当に、晴れて良かった」

 

「そうだね……」

 

 チラリと彼女を見ると、笑みを浮かべる友奈。

 門扉の前に立ち、いつの間にか少しだけ背が伸びた少女と顔を合わせる。

 俺の顔を見上げて、ゆっくりと手を差し出す姿は、まるでダンスに誘うようで――、

 

「……行こう?」

 

 一緒に。

 

 親愛と友愛を感じさせる笑顔は、俺が最も見たかった物。

 夏の彩りを飾る彼女の笑顔は艶やかで。

 

「……ああ」

 

 ――俺は彼女の手を取って、二人で歩きだすのだった。

 

 

 




AFTER話は終わり。ちょうど50話なので完結です(何回目かの宣言)
宜しければ感想、評価などお願い致します。


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花結い 終わらぬ空編
第一話 それは別世界で


 ──映画の終わり方はどんなものが望ましいだろう。

 

 映画の終わり方は知りうる限りで二通りあると思う。

 一つ目はハッピーエンド。誰もが笑って誰もが幸せ。万々歳だ。

 二つ目はバッドエンド。登場する主役、最も共感を抱きやすい役者のバッドエンドは見るに堪えない。勿論、バッドエンドながらも作品全体を通して面白いと思う作品は多くある。

 

 俺は両方とも好きだが、結局はその作品が面白いか否かである。

 見終わった後で、この作品は素晴らしかったと、名作であると、その終わり方はともかく、心に深く残る作品に出合えた時は興奮が止まらない。

 有象無象の中で輝く作品に出合えた瞬間は決して忘れない。

 

 では。

 それでは。

 今、視界の先で広がる映画はどうだろうか。

 

『ん……、ぁ……、は』

 

『ん、ふ……もっと……』

 

 唇が重なる。くちゅっと水音。

 まるで蛇が絡み合うかのように、男女が唇を重ね合う。

 それなりに大きな液晶画面はねっとりとベッドの上で絡み合いを映し出す。

 

 興奮状態の彼らを止める者は、もう誰もいない。

 百二十分というそれなりの時間の中で外敵要因の全てを蹴散らしてく様を共に見届けたからだ。銃弾が飛び交い、ビルは倒壊し、車はよく爆発して、最後は熱い殴り合い。

 そんな熱くも刺激的な戦いの後に主人公とヒロインが結ばれるシーンへ。

 

 困難を乗り越えて、大きな危険を乗り越えた男女がベッドインするのは一種のお約束。

 そのお約束を知りながらも、それでもこの思いを口にせずにはいられない。

 

「この作品、濡れ場シーン多すぎ……」

 

 それなりに名作な方の作品であるとは思う。

 今まで見てきた作品において七割はヒロインと主人公の濡れ場のようなシーンを目撃することは往々にしてあり、もはや興奮よりも早く話を進めてくれと思う程度には見慣れた光景だ。

 それが悪い訳ではないが、二回も三回もそういうシーンが入ると微妙な面持ちになる。 

 

 残念ながらこの作品を作った監督が何を考えていたのかはもう分からない。

 何しろこの作品が作られたのは、もう三百年以上も前の事なのだから。

 

 自宅にあるそれなりに大きなテレビ。

 そこに映る映像から目を逸らし、同じく二時間の時を共に過ごした相手に目を向ける。

 

「────」

 

 肩に感じる柔らかく温かな感触。

 半口を開いたままのピンク色の物体は僅かに気まずそうにしながらも目を逸らすことはない。じぃっと見つめる双眸は映画のワンシーンを余すことなく捉え、その奥に宿る興味を隠せない。

 ピンク色の物体は角と羽を生やした牛のようだ。

 ──否、それはよく見ると彼女の精霊、牛鬼を模したパーカーを着た少女であった。

 

 少女は俺の肩に寄りかかり、静かに映像に目を向ける。

 ホットパンツから覗く健康的な太腿を擦り合わせ、真剣な眼差しを液晶画面に向ける。

 パーカーを被った少女の横顔を見つめると、ふと少女の眉が小さく寄せられる。その様子に何があったのかとチラリと横目に見た映像は終わりを迎えエンドロールが流れ始める。

 

「はぁ……」

 

 珍しく溜息をこぼした少女。

 その吐息は二時間という時間を無駄にしたことへの失望を含んだものかと僅かに身体を硬直させる俺を余所に、腕を天井に伸ばす彼女はようやく視線に気づいたかのように此方に目を向ける。 

 柔らかそうな衣服越しに膨らみを主張する彼女と目を合わせる。

 

 その瞬間、にっこりと太陽のような笑みを浮かべる少女。

 可愛らしい牛の角付きのフードからは薄紅色の髪と瞳を覗かせる。

 

「面白かったね!」

 

「お、そうだな」

 

「特にあの……ドッカーン!! って爆発するシーンとかビュンビュンって飛んだりするシーンとかすっごい迫力だったね!! ……途中はちょっとエッチだったけど」

 

「凄い興味深々そうだったけど」

 

「そ、そんなことはないよ」

 

 俺の腕を掴んでにこやかな笑顔を向ける彼女はとても朗らかだ。

 明朗快活な少女、その薄紅色の瞳には不満など一欠片も存在しないようだ。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「旧世紀のアメリカとか東京ってあんな感じなのかな?」

 

「そうだと思うよ。大体いつもどこかしらで世界の危機とか怪物とかと遭遇している。基本的にどこもかしこも滅んでいるけど友奈が行ったら大変なことになるよ」

 

「そうかな? ……確かに昔の人みたいに銃弾を拳で砕いたりとかは出来ないかも」

 

「いや、昔の人でもそんな事は出来ないんじゃないかな」

 

 楽しそうに柔和な笑みを浮かべる少女。

 俺の腕をその身に抱く彼女は、むにゅりと衣服越しに双丘の柔らかさを押し付ける。

 

「普段はこういうの見ないからね……凄く面白かったよー」

 

「まあ、面白かったけど」

 

「でしょう? あっちにいた時はこういう映画自体見る機会ってあんまり無かったから……。だから今日は一緒に見ることが出来て凄く嬉しかった!」

 

「────」

 

「また一緒に見ようね!」

 

「友奈は可愛いな」

 

「え?」

 

「じゃあ、次はホラー見よう。二人だけだとアレだからタイトルは告げずに何人か呼んで苦しみを分け合おう。風先輩は絶対に誘いたい」

 

「あはは……。たぶん吊るされると思うよ……」

 

 屈託のない笑顔が心に染み渡るようだ。

 薄紅の純粋な瞳を大きく開いて、眦を和らげる彼女の声色に頬が緩む。嘘を吐くのが下手な彼女からの賛辞は、明日を生きていく事への活力にすら成り得るのだ。

 そんな少女、結城友奈の笑顔を前に何となく頭に手を置きながら、その瞳を見つめ返す。

 

 まるでキスをするかのような距離感。

 元々俺の肩にもたれかかっていた彼女を抱き寄せると僅かに視線を左右に揺らす。 

 

「……も、もぉ~」

 

「牛?」

 

「今の似てた? もぉ~」

 

「かわいい」

 

「えへへ……ありがとう」

 

 楽しそうに牛の鳴き真似をする牛パーカーを着た少女。

 可愛らしいその姿を素直に褒めると、友奈はほんのりと頬を赤らめる。

 

「パジャマ用に買ったんだっけ?」

 

「家用かな。この前ね、ゆーゆに似合うから~って園ちゃんに貰ったんだ。今度何かのお礼をしなきゃね。あと、東郷さんに見せたら急に鼻血を出しちゃったんだけど、どうしたんだろう?」

 

「気にしなくて良いと思うよ」

 

 ピンク色の少女は自然な動作で抱き着いてくる。

 それが当たり前の態度で、男女の距離感など最初から無いかのように接する。

 子供がじゃれつくように笑みを浮かべながら抱擁を求めて、首筋に吐息を漏らす。

 

「ん……」

 

 頬が触れ合う。

 パーカーが捲れ上がりやや乱れた薄紅の髪の毛が露わになる。飛びつくように俺に抱き着いてくる友奈、その身体を両脚の間に挟み込むとそのまま自然と唇が重なった。

 まるで先ほど見たばかりの映画のシーンを再現するように。

 

「えへへ……ちょっと暑いね」

 

「……服脱いだら?」

 

「脱がして欲しいなぁ……なんて」

 

 甘えるのが上手くなった、そんな感想を抱く。

 瑞々しく柔らかい唇の感触を味わいながら、ちゅっと触れるだけのキスをする。

 

「ん、ぁ」

 

 両手で頬を挟む。

 パン生地のような柔らかな感触はいつまでも捏ね繰り回してしまいたくなるが、少し困ったような顔をしている彼女を放置する事は出来ず、どさくさに紛れて背後から抱きすくめる。

 

「……ぎゅーってして」

 

 腕を掴み、軽く首を動かし俺の耳にキスをした。

 脳を直接震わせるような甘い声音に俺は従わざるを得ない。

 

 彼女の要求を叶えながら、俺は彼女の解体作業を行う。

 牛のようなパーカー、前を留めるチャックをゆっくりと下ろしていく。

 

「ぁ」

 

 小さく声を漏らした友奈が身をよじらせる。

 下ろした髪の毛を揺らし、座椅子に身体を預けるような彼女の肉体はどこまでも柔らかく、衣服越しに触れた腹も胸も手が沈み込んでしまいそうだ。

 牛の衣服を剥いてくと、白い肌がゆっくりと露わになる。

 

「んっ」

 

 注がれる視線に羞恥を覚えた少女は小さく呻く。

 鎖骨、ブラジャーに包まれた双丘、臍、鼠径部と手足よりも僅かに白い肌。

 彼女を抱きしめたまま、俺は両手で下着越しに胸を揉む。

 

「ゃ、ん!」

 

 くしゃりと潰れるブラ越しの乳房。

 プリンのような質感は、ふわ、むにゅという弾力と柔らかさを楽しめる。

 

「もうすぐ春も終わりか。桜も散ってきたし……」

 

「……どこを見て言っているの」

 

 からかうように呟く友奈に、俺は無言のままピンクのブラを捲る。

 指の腹で硬くなりつつある乳首を擦り、きゅっと挟む。

 

「んぁ……、ん、ふっ」

 

 濡れた呼吸を繰り返す彼女の首筋に顔を埋めると、濃厚な友奈自身の香りがした。シャンプーと僅かな汗と彼女の甘い香りに思わず舌を這わせる。 

 ツンと尖った乳頭を指で弄りながら椀状の乳房を揉む。

 

「あむ」

 

 とろけたような表情には妖艶さが混じる。

 艶やかな唇をなぞるとパクリと指を捕食する彼女はそのまま咥え続ける。

 指から伝わるゾクゾクとした舌の感触と口内の熱さは言葉にし難い快感があった。指の腹を、爪を、関節を、疑似的な肉棒に奉仕するかのように舌先が動く。

 子種を吸い取ろうとばかりにちゅぅぅっと指先を吸引する唇は──、

 

「おいひい……。あぅっ!?」

 

 驚きの声を伴って開かれる。

 ホットパンツに包まれた下腹部、そこに空いた片手が侵入する。

 

「ゃ、くすぐった……っ! っは!」

 

 友奈の吐息は熱い。

 程よく脂の乗った下腹部、蛇のように下着の中に滑り込んだ手は少女の秘所を晒すことなく、ただ一方的に揉み解すように愛撫する。

 汗ばんだ恥骨、指先を僅かにくすぐる恥毛、その奥の花弁。

 

 貝状の肉を人差し指と中指で開いたり閉じる。

 彼女を抱き抱え乳房を揉みながら、忘れずに陰核を親指で愛でる。

 

 くりくりと硬度を増す肉粒を指に感じながらも愛撫を止めない。

 俺にされるがままの彼女は全身から甘く湿った匂いを漂わせ、脚をくねらせる。

 

 ホットパンツを脱がせずに、ただ指先の感覚だけで彼女を弄ぶ。

 トロトロに解されてきた少女は目元をとろんと潤ませながらも俺の頬に口づける。

 

 愛おし気な表情で俺の名前を呼ぶ。 

 秘裂から溢れる蜜液を陰核に擦り付ける度に内股をビクリと震わせる。

 淫らな熱を隠すことを諦めた肉体が、声が、視線が俺を惹きつける。

 そうして求めてくる彼女に応えたいと手は下腹部に置かれる。

 

「ぁ、っ……!? そ、それっ! ッ!」

 

 直接恥部に触れる訳ではない。

 掌でマッサージするかのように下腹部の奥にある子宮を外から刺激する。

 

「ぁっ、ぁっ!」

 

 振動を加えながらゆっくりと外から刺激を与える。

 甘く蕩けた友奈の声は外からのポルチオへの愛撫に厭らしく腰をくねらせる。

 

「んっ、ぅ、……!」

 

 明朗快活な姿とは程遠い快楽にのめり込む少女の姿。

 熱い身体を抱きながら、胸元の谷間を伝う汗を舐めとると程良い塩味。

 

「ぁ、ィ、く……!!」

 

 下腹部に置く手に重ねる掌。

 柔らかく熱い掌を感じながら彼女が静かに絶頂を味わったことを感じた。

 だが、それで終わる訳ではない。

 

「はい、気持ち良いねぇ。じゃあ、次イこうか~」

 

「ゃっ! ちょ、まだっ……! ぁっ、ぁ……!」

 

 外から子宮を揺らし、今度は恥部も一緒に刺激する。

 被虐の表情は俺の獣性への支配を容易にさせ、彼女を愉しませ悦ばせる。

 

 思うことはただ一つだ。

 友奈をもっともっと滅茶苦茶にして気持ちよくさせたい。

 

 

 

 そうして一時間ほど俺は彼女を悦ばせた。

 友奈の反応は見飽きることなく俺をひたすらに興奮させた。

 悲鳴を上げたり、俺の肩を叩いても、決して止まることは無かった。

 

「は……、はー……っ」

 

 息絶え絶えの彼女の身体は熱い。

 ホットパンツは既に脱がされ、クロッチを愛液で濡らしたショーツが片方の足首に絡みついている。下着を残して殆ど裸体を見せる彼女の恥部は愛液が光る。

 

 俺に背中を預けた友奈は頬を朱に染め、あられもない表情を浮かべている。

 普段は見られない彼女の顔を見下ろし、形の良い乳房を揉んでいると、ふと違和感。

 

「……私ばっかりされるのはズルい」

 

 自らの腹部を摩り、天国から帰ってきた友奈が呼吸を整える。

 彼女の痴態に反り立っていた肉棒を柔らかな手で掴む少女は四つん這いになっていた。

 

 膝まで下ろしたホットパンツ、乱れたパーカー、艶めかしい首筋。

 違和感の正体を探るべく本能の赴くままに視線をむける俺は気が付く。

 

 いつの間にかズボンも下着も脱がされていた。

 被虐的な反応に反り立っていた肉棒は柔らかな手に包み込まれている。

 にっこりとした笑みは、何故だろうか。少し怖く感じる。

 

「次、私の番ね」

 

「いや、良いよ。友奈が気持ちよくなる姿を見て堪能出来たし……」

 

「駄目だよー。一緒に気持ちよくなろうね! えいっ!」

 

 

 

 +

 

 

 

「風先輩もわりと唐突なんだよな。場所の変更って」

 

「うーん。でも午後には一回集まろうって言っていたし……。凄く重要な事だからって」

 

「そのことを思い出したが約束の一時間前で。余裕だろうと風呂場で洗い合いしてたら時間ギリギリで」

 

「あれは……! だって、変なところを触ってくるから!」

 

「いや、同じ風呂場で目の前に友奈のエッチな身体があったら触らない訳ないじゃん」

 

「開き直ったー!」

 

 それから本気になった彼女と泥沼化するプロレスごっこを繰り広げ、俺が二回友奈が五回ほど天国を見ることになった頃にスマホに連絡が届いたことに気が付いた。

 午後からは俺と少女が所属している部活の活動があることを思い出したのだ。

 

「そもそも議題って何だろうね」

 

「ほら、補習とか今後の勉強についてとかじゃない?」

 

「うっ……。べ、勉強は勘弁して欲しいのです」

 

「駄目です。折角だから満点をキッチリ取れるようになろうか。どのみち同じような範囲なんだから。このまま年を重ねたら誰だって点数取れるようになるって」

 

「東郷さんみたいなこと言ってるー」

 

「まあ、最悪戻ったら何もかも忘れてるかもしれないけど」

 

「……忘れないよ」

 

 勉強よりも遊んでいたいという気持ちはよく分かる。

 一応学生という身分である以上、一定以上の成績を取っておく方が色々と役立つ事を前世を通じて経験しているのだ。学力があるに越したことは無い。

 ただ、目を左右に泳がし始める彼女にそこまで強いるつもりは無い。あくまで俺は、だが。

 

「途中で猫に構ったりしなかったら余裕で間に合っただろうけど」

 

「でも猫ちゃんが木の枝に登って降りて来れなかったら誰だって助けるでしょ?」

 

「いや、助けないけど」

 

「……そういうのってツンデレって言うよね」

 

「俺には夏凜みたいな属性は付いてないから」

 

「最近の夏凜ちゃんはツンデレよりもツッコミ属性になったからねー」

 

 ちょうど指定された時間になりつつあった。

 ただ、それで泡を食って走ったところで車にでも轢かれたらどうする。俺の手を引いてくれる小さな手の持ち主に何かあったらこの国の、この世界への損失になり兼ねないだろう。

 

「本当に走らなくて良いの?」

 

「猫関連含めてもう連絡してるから大丈夫。このまま帰ろうか」

 

「だ、ダメだよ! そうやってさぼろうとしたら! 怒られちゃう」

 

「働きたくないもので」

 

「さっき私が猫ちゃんを助けようとするのを手伝ってくれたよね」

 

「無理に木登りとかすれば友奈が怪我する可能性の方が高かったからだ。肩車だって何度もしてるだろう。俺は太腿を堪能出来て、友奈は愛玩動物を助けられた。それだけじゃん」

 

 既に過ぎた話だ。

 目の前の少女が助けると決めた時点で彼女に甘い黒髪の少女を通じて先方には既に連絡済みだ。顔を上げると薄紅色の少女に似合う葉の付いた木々が風に揺れる。

 見上げる空は晴天と心地良い。どのみち遅れるのだから慌てても仕方がない。  

 

「でも、私を助けてくれたから」

 

「────」

 

「──ありがとうね、亮ちゃん」

 

 偽りの空の下で唯一輝く笑顔に、俺は頬を緩めるのだった。

 

 

 +

 

 

 

 世界は唐突にその在り方を変えた。

 空想が現実に。非日常が日常に。

 危険は常に傍にいて、足掻いた先で、神様に召喚される。

 

 失くした領地を、力を、多くの勇者と巫女と共に取り返す。

 そうして神の駒として戦って全てが終わったら元の世界に戻れるのだ。

 

 ──ただ、その終わりはまだ見えない。

 

 

 

 +

 

 

 

 神樹の中に俺の、加賀亮之佑の魂は取り込まれたらしい。

 離反した神を撃退する為とか、何かの予行演習だとか、よく分からないことの為に神樹の力によって作られた偽りの世界に送り込まれたらしい。

 

 呼び出した先で巫女が言った。

 行うことは単純明快。バーテックスと戦い、奪われた日本全土を奪還する。

 

 なんて面倒で身勝手なことか。

 やはり神には人の心が分からないのだ。これなら悪魔の方がまだ良い。

 

 一人だったら即座に諦めてゲーム盤を破壊する事に専念しただろう。

 ただ、それを見越したのか或いは俺自体はおまけなのか、見目麗しい多くの歴代勇者や巫女たちもまたこの謎の世界に送られ、同じ目的の為に召喚されてきたのだ。

 彼女たちはこの先に勢揃いしているだろう。 

 

 無人の讃州中学校、その内部にある家庭科準備室。

 三年以上は見慣れた少し傷のついた扉に手を掛けて、静かに引く。

 

 途端、此方を見る目の多さに身体が硬直する。 

 全員見知った、殆どが故人か違う時間に存在する、見慣れた顔だった。

 

「おっ、来たわね二人とも」「……まったくどこに行っていたのよ、友奈も亮之佑も」「……ふふっ、夏凜ちゃんってばさっきから心配そうな顔をしていたじゃない」「夏凜さんは素直じゃないですから」「かっきーもゆーゆも遅いよ~」「かっきー先輩こっちに座って~」「そのっち? 椅子なんてどこにも……ハッ、まさかまた亮之佑さんの太腿に乗ろうなんて! 破廉恥よ!」「アハハ……亮さんがいるとすぐに甘えん坊になるな園子は」「おーい、結城も亮之佑も遅いぞー何やってたんだ?」「タマっち先輩、あんまり詮索しちゃダメだよ」「……今日は……遅かったわね」「確かにそうだな。何かあったのか?」「何でも猫を助けていたら時間が掛かったそうですよ」「わ〜! 二人ともお疲れ様っ!」「見知らぬ猫を颯爽と助けるなんてアメイジーング!」「うたのん、ほら座って。狭いから」「……扉を開けた瞬間、何故か海の音が聞こえた」「つまりどういうことかにゃ? あっ、いや説明は大丈夫かな」「雀さんも今度木の上にいた猫を助けては如何ですか?」「えっ!? なんでこの場面で私に無茶ぶり!? そういうのはメブが担当するから私はちょっと……」「雀。このあとのトレーニング倍ね」「加賀城はいっつも一言余計……」「お二人とも怪我が無いようで本当に良かったです」

 

 怒涛の勢いで話しかけてくる少女たち。

 三人集まればどころではない。

 この空間に馴染みはしたがこうして硬直する事はたまにある。

 それは大量の異性という、美少女たちの空間に突撃することになる黒一点だからか。

 

「俺も女装すれば良いのか? つまりそういうことか?」

 

「何言っているの? ……遅れてごめんなさい。結城と加賀、ただいま到着しました!」

 

「うむ。ご苦労であった」

 

「それで風先輩。今日はどんな議題なんですか?」

 

 そんな会話をしながら、友奈は自然な動きで俺の手を引く。

 そこに複数の視線を感じながらも明朗快活な少女は手を離すことなく俺を引き入れる。

 ──まるで壊れ物を扱うように、優しく接してくれる。

 

「ふっふっふ……。今日は重要な議題。勇者部の今後を左右すると言って過言ではない!」

 

「それは一体どんな議題なんですか!」

 

「聞いて驚け、見て笑え! なんと、今回勇者部うどんを作る事に決定しました!」

 

「はい、勇者部そばが良いです!」

  

「ええいっ! そば組は黙っておれい!!」

 

「戦争よ! 戦争の始まりよ!」

 

 この異世界に来て新たに見知った関係の少女たち。

 見渡すと俺の事を敵対する視線は無く、そばVSうどんという仁義なき戦いに参戦していた。

 正直に言ってどっちでも良い。でも吊るされたくは無かった。

 

「友奈、亮之佑! アンタたちはどっち! まあ知っているけど!」

 

「それはもちろんうどんですよ。ねえ?」

 

「唐突だけど、今日はそばの気分なんですよ」

 

「はい、一票入りました! やはりそばこそグレートな存在よ!」

 

「やっぱりややこしくなるから、アンタは黙って!」

 

「というか両方作れば良いのでは?」

 

「あとは骨付鳥の気分」

 

「それならやっぱり雛だよな!」

 

「いや、骨付鳥は親の方が良いだろう!」

 

「ちょっと待って! 議題が進まないんだけど!?」

  

 前世から異世界に来たのだ。

 そこから更に見知らぬ異世界に来て少女たちと戯れる。ただそれだけ。

 

 ここがどこであってもやることは変わらない。

 戦いの果てにあるものがハッピーエンドになるように。

 この少女たちと、終わらない空の下で、どこまでも──。

 

 

 




お久しぶりです。ゆゆゆいのショートアニメがやってましたので。
友奈ちゃんカワイイヤッター!


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第二話 ゲーム好きの少女

 異世界、そこにあらゆる時代の勇者と巫女が集められた。

 俺という異物を除いて、全員が神樹に見初められた見目麗しい少女たち。

 

 彼女たちが呼ばれた理由は、神樹と対峙、並びに人間に興味が湧いた神への対応だ。

 もともと八百万の神と人々の想いの集合体とされている神樹、その内部で何かがあったのか、造反する神や中立を自称する神が反乱や面白半分に暴れているという。

 

 それらを分かりやすく可視化した世界。

 奪われた力は土地という形に姿を変えて、勇者たちは戦う事を強いられる。

 

 性格も容姿も良い少女たちはそれを了承した。

 それなりの時間を、それこそ召喚された人物全員の誕生日を祝う程度にはじっくりと時間を掛けて、絆を深めて、一致団結することで四国の奪還に成功したのだ。

 

「ただそれで終わりにならず、今度は日本全土の奪還となって」

 

「これ以上の人員を呼ぶ事はリソース的に厳しく、遂に満開や切り札を使う事になったと」

 

 讃州中学校勇者部部室。

 二十人以上の少女たちと少年が収まるには物理的にやや厳しくなってきた場所。

 

 ただ、そこには現在少女たちの大半がいなかった。

 テーブルを挟み、パイプ椅子に座り口を開くのは同じ髪色をした少年少女だけだ。

 コクリと頷いた黒髪の少女は口を開く。

 

「加えて、樹海化も以前までの物と異なったり、この世界の夜も唐突に長くなったりして……」

 

「敵もどんどん強くなると……」

 

「試されてますね」

 

 少年が見据える先にいるのは一人の巫女だ。

 白い肌に良く映える黒髪、おっとりとした表情は普段とは異なり僅かに引き締められている。

 右目の泣きぼくろと赤いリボン、豊かな双丘は制服越しに主張している少女。

 

 彼女の名は上里ひなた。

 最初に勇者部をこの異世界、神樹内部へと呼んだ巫女。

 

「……? どうしましたか?」

 

「いえ、ひなたさんは美人ですね。つい見惚れてしまいそうでした」

 

「ふふっ……照れますね、さらりとそういう事を言えるのは若葉ちゃんの血でしょうか?」

 

「そうかもですね。分家で血的にはあんまり入っていないと思いますけど」

 

「いえいえ、園子さんにとても似ていますよ」

 

 にこりと微笑む姿は思わず魅入る程度には美しい。

 大和撫子を連想させる少女の大人びた姿は、可憐な隣人を思い出させる。

 そんな事を思いつつ、気が付くと眼前の少女と視線が絡み合う。会話が途切れたことでなんとなく無言のままジッと見つめ、ゆっくりと白い頬に朱を差し始める彼女の姿を──、

 

「……うーん……それはあんまり良い風が吹かないな~」

 

 そんな空気を壊すような間延びした声音。

 パッと先に視線を逸らした巫女、彼女から声の発生源に目を向ける。

 目を伏せると、最初に目につくのは純金を溶かしたような金色の長髪だ。

 

「むにゃむにゃ……」

 

「なんだ寝言か」

 

「寝言、ですか?」

 

「そうだよ照り焼き~……」

 

 少年の腹部に頭を置き、ぐにゃりと身体を曲げて寝る少女。

 隣に座っていた少女は学校の部室で堂々と昼寝を決行し、可愛らしい寝顔を見せている。その愛らしい少女の体温を感じながら、制服のスカートを捲り悪戯したくなる気持ちに溢れる右手を彼女の耳元に置く。これで寝ても起きても話は聞こえない。

 

 端正な寝顔を見続けていると、思わず着やせした双丘に触れてしまいそうだ。

 顔を上げて此方を見る巫女に話を進めるように笑みを浮かべる。

 

「……っと、ごめんなさい。話の腰を折っちゃって」

 

「いえいえ。こちらこそ……凄く仲が良いんですね」

 

「ひなたさんにとっての若葉みたいなものですよ」

 

「それでも改めて見ると本当に園子さんと亮之佑さんは仲睦まじいです」

 

「あまり人前でこういう事はしたくないんですけどね。我らが部長がうるさいから」

 

 頬に手を当てる少女を見つめる黒髪の少年。

 見る者を惹きつける血紅色の双眸を僅かに細め、小さく笑みを浮かべる。

 

 敵が、バーテックスが現れると世界が樹木や草木に覆われた空間となる樹海化。

 そのうえで勇者たちが強力な力である満開や切り札、武技を駆使して戦う事など今更だ。それは互いの共通認識であり、その上で彼女が何かを告げようとしている事を理解する。

 

「それで?」

 

「ええ。この世界において、満開や切り札の使用は勇者たちに影響が及ばなかったのですが……」

 

「まさか……!」

 

 元いた世界、つまり神世紀300年においての満開システムは神に身体の一部を捧げる事で力を発揮するというものであった。

 そのシステムは秘匿され、結果的に惨劇に繋がった事を思い出す。

 脳裏を過るのは鬼と化した少女と、忘れられない悲鳴と怒号だ。

 思わず眉を顰める亮之佑を見てそれらを察したのか、ひなたは慌てて首を振る。

 

「あっ、い、いえ、人体機能の一部が損なわれる散華が発生する訳ではなくて。ただ戦闘において切り札などを多用する人の、特に一部の方に対して妙な副作用が見られるとの事で……」

 

「副作用?」

 

「この世界に干渉を始めた中立を謳う神様の力の余波なのか、神樹様ご自身に何か異常があったのかまでは判明していませんが……。その……」

 

 言い淀む巫女は目を伏せ、僅かに頬を赤らめる。 

 まるで告白でもしようとしているかのような、そんな態度を見せる豊満な双丘の持ち主。

 微妙な気まずさを覚えながらも、彼女の薄い唇が再度開かれるのを見つめる。

 

「……その、身体が熱っぽくなるとのことで。精神的なストレスを感じるとかじゃなくて、あくまで身体の方に満開や切り札の影響が表れているらしく」

 

「ほう」

 

「今はまだ深刻な影響という訳では無いですが、今後どうなるか分からないもので」

 

「ほうほう」

 

「亮之佑さんにケアをして貰うのは神樹様からの神託によるものもあります。もちろん私や巫女たちも出来る限りの事はしますが、亮之佑さんにも彼女たちの事を気に掛けて頂ければと──」

 

 

 

 +

 

 

 

 カーテンの隙間、開いた窓からは曇天が覗く。

 作られた広い空から雨がざあざあと降り注ぎ、アスファルトを黒く染める。

 

 窓を開ければ湿った土の香りが鼻腔をくすぐるだろう。

 ただ、少し風が強いので窓を開けると悲惨な事になるのは想像がついた。

 

「悪いけどカーテン、……閉めて貰えるかしら」

 

 部屋の主に言われる。

 仕方なしにと従順なペットの如くカーテンを完全に締め切ると室内は暗くなるが、一瞬の間をおいて天井の照明が点けられると、その明るさに思わず目を細める。

 

 天井から目を逸らしなんとなしに部屋を見渡す。

 黒色の棚、ベッド、カーペット、どこか落ち着いた色合いの家具類は個人的な好みと一致している。なんというか心が落ち着くのだ。

 

「まるで自分の部屋にいるかのような感覚」

 

「自分の部屋では無いのによくそんな風にくつろげるわね」

 

「マイカップを置くぐらいにはくつろいでるよ」

 

 呆れたような声音に肩を竦める。

 床に腰を下ろし、ついでに左方向に身体を傾けると柔らかな感触。

 

「邪魔よ。……くっつかないで」

 

「そんなこと言わないで下さいよ、先輩。もっと構って」

 

「……ならもっと画面に集中しなさい」

 

「二十連敗した後輩はもう格闘ゲーはしたくないのです。そんな訳でこのゲームをしましょう」

 

 手に持ち見せつけるのは携帯用ゲーム機だ。

 建築したり、戦闘したりするクラフトアクションゲームである。当然同じようにベッドの縁に背中を預ける彼女も熟知している。

 そんなゲーム機を見せる俺に対して、何を思ったのか彼女は小さく笑みを浮かべる。

 

「良いけど……罰ゲームで言っていた結城さんの姿に変装しないの? 加賀くん」

 

「……今は道具が無いので、今度どこかに行く時にしましょう。千景先輩」

 

 この世界での新たな出会いの一つ。

 西暦時代の勇者の一人、郡千景とはそれなりの付き合いになる。

 

 すらりと伸びた脚を包む黒いタイツ。 

 魅惑的な脚のラインの先にスカート、ゆったりとした衣服は黒を基調とした物。長く伸びた黒髪は絹のようにさらりと揺れ、少女特有の甘い香りを漂わせる。

 どこか既視感を覚える少女の姿を見ているとどこか呆れた眼差しを向けられる。

 

「……何?」

 

「千景先輩の髪って凄く綺麗だなって」

 

「……と、東郷さんや鷲尾さん程では……無いけど。……ありがとう」

 

 そっと目を逸らす彼女の目線は携帯ゲーム機へ。

 少し照れたような表情で、目を伏せてゲーム機の操作をする彼女の姿に俺も続く。

 

「いや、だから……くっつかないで」

 

「そんなツンツンしないで下さいよ先輩。触れ合うのって大事ですよ」

 

「……それなら乃木さんや結城さんでも」

 

「千景が良いんだよ」

 

「……そ、そう」

 

 加賀亮之佑として生きる二度目の人生でゲームをするとは思わなかった。

 別段嫌いであったという訳ではない。最初の人生では好んでエロの付いたノベルゲーや銃を持って敵の基地に侵入するゲームやモンスターを狩るゲームなど人並にしていた。

 ただ、二度目の人生ではそれらよりも自分が出来ることを増やす事が最優先だった。

 

 文武両道、新たな人生ではあらゆる事に全力で取り組んできた。

 そういった行為の先、受験や就職などの事を知ったからこそ、怠惰に遊んでいるだけという事だけはしたくは無かった。そんな事をした結果、再び後悔するなんて結末は嫌だったのだ。

 出来うる限り今後に役立つ生産性のある行為を続けて、それらが身に付くように努力してきた。

 だからこそ──、

 

「改めて何も考えずダラダラとするゲームってやっぱり楽しいんだよな」

 

「加賀くんは……あんまりゲームの才能ないけどね」

 

「楽しめたら勝ちなんですよツンデレ先輩。それにほら、建築とか農業とかちょっとしたアクション系はセンスありますよね?」

 

「まあ、……そうね。……あと私は三好さんのようにツンデレじゃないから……あなたの作った地下アジトを今から爆破しに行くわ」

 

「鬼ですか?」

 

「勇者よ。……座標は特定済み。破壊してあげるわ、跡形もなく」

 

 窓の外から聞こえる雨音が止む気配はない。

 この世界に召喚された西暦時代の勇者や拠点の遠い勇者や巫女たちは、大赦が用意した寄宿舎、一人につき一室と必要な物を与えられる。 

 彼女が住むこの場所もその一つだ。 

 

「そういえばこの寄宿舎も作ったんですよ。経験値が美味しかったです」

 

「こういうのは本当に器用ね。……立派な建物を破壊しても経験値を取得できるって知ってる?」 

 

「それの破壊はやめてくださいな」

 

「冗談よ。……それより、その『先輩呼び』はいつまで続けるつもり?」

 

 ゲームの画面内で彼女のアバターが地下に作成した基地に侵入してくる。

 華麗にトラップを退け、或いは破壊してゾンビやらを剣や弓で倒し的確に爆薬を設置していく。そんな惨殺現場から目を背けて彼女を見ると目が合った。

 黒曜石のような瞳は俺を捉え、しかし画面を見る事すらせずゲームを続ける少女。

 

 それだけの芸当が出来るのにどれだけの時間と情熱を注いだのか。

 そんな思いを抱きつつ小首を傾げる俺に半眼を見せ──、

 

「あなた、普段はそんな風に呼ばないじゃない」

 

 そう告げる少女は俺の一歳年上になる。本来はお姉さんキャラになるのだ。

 だが、部長である犬吠埼風と同じ年齢だと言われるとあまり実感が湧かない。 

 

「駄目でしたか?」

 

「駄目……ではないけど」

 

「先輩呼びする後輩というシチュエーションにグッとくる時があるというか。先輩って言ってくる後輩がいるってよくないですか? ギャルゲー前にしたでしょ?」

 

「……分からなくもないけど、普段通りに呼んで」

 

「分かりました、Cシャドウ」

 

「……あと今更あなたに敬語を使われるのは……なんか嫌だから」

 

「えー」

 

「やめなければ……、この宝箱も破壊するわ」

 

 嘆息と同時にゲーム機に目線を下ろす繊細な年上の少女。

 同じく画面に目を向けると暫くの間、無言でプレイを続ける。

 

 さああっと降る雨音と端末のボタンを押す音。

 肩付近に熱を感じながら、俺は無心のままゲームをする。

 

 娯楽、というよりも新たな趣味を作るのは楽しい。

 なによりもこの神樹が提供する停滞しがちな異世界では学年が変わることもなく暇になりがちだ。同じ範囲の勉強やテストは飽きて、真面目に聞く気になれず園子のように眠りそうになる。

 だから同じことを繰り返し続けるよりも、新たなことに挑戦する方が精神的にも良い。 

 

「……今日は意外としぶといわね」

 

「今日もだろ」

 

「その自信は……どこからくるの?」

 

 こうして大人しく俺の隣に座る彼女も最初はこうではなかった。

 基本的にツンツンしている少女も周囲の少女たちと接する事で徐々に態度も軟化していった。

 ゲームをすることで耳を塞ぐように現実逃避する、そんな千景という少女と仲良くなるのはそれなりに時間を要した。

 

 基本的に彼女は誰も傍に寄せ付けようとしないのだ。

 誰も信じられず、何を信じたら良いのか分からない。そんな姿を好ましく感じる。

 

「勝ちね」

 

 画面を見るとアバターが倒されたのか選択画面になっていた。

 すなわち敗北して、続きをするか、止めるかの選択肢が映し出される。

 このまま連敗するというのも如何な物かと考えて──、

 

「ん」

 

 小さな声。少女の声に耳を傾ける。

 黒タイツに包まれた腿肉はすらりと伸び、無駄な脂肪が少ない。

 これだけ近い距離で、気がついたら手が伸びてしまうのは仕方のない事だった。

 

「……」

 

 ジロリと俺を見る彼女は睨みつけるだけ。

 悲鳴を上げる訳でも、逃げ出す訳でもなく、自らの脚に置かれた手がそれ以上どこかに伸びないように自らの手で上から押さえつける。

 ほんのりと頬を赤らめて、少女は様々な感情を瞳に見せる。

 

「ちょ、ちょっと……!」

 

 誰かが聞き耳を立てている訳でもないというのに、千景は声を潜ませる。

 

「負けたからって……こういうのでうやむやにするのは駄目よ。ゲームのことはゲームで……」

 

「千景。ちょっと熱っぽいけど、身体は大丈夫?」

 

「────」

 

 小声で早口に何かを語ろうとする千景。

 その言葉を封殺するように、俺は彼女の名前を呼ぶ。

 

 腿に置かれた手をゆっくりと絡める。

 まるで恋人同士が触れ合うように指の一本一本を触れ撫でる。

 んっ、と千景の口から声が漏れる。

 

「前の戦闘で切り札を多く使っていたのは千景だから。そのケアをしないと」

 

「……大丈夫よ。……大丈夫だから」

 

 覗き込んだ瞳には羞恥の他に、僅かながら隠せない情欲の炎。

 瞳を通して奥に潜む感情を見られるのが嫌なのかそっぽを向く千景。

 

「んっ……だめ、よ」

 

「どうして?」

 

 俺は彼女を抱き寄せ、耳元でささやく。

 途端、電気でも走ったかのように千景が顔を逸らせた。

 

「こんな……だって……」

 

「──これはただの医療行為。その熱を抑える為だけの行為だから」

 

 仕方ないと思わせる建前作りに、熱い吐息。

 抱いた彼女の身体は細く、そして強く抱きしめるほどに熱くなる。

 艶やかな黒髪に鼻がくすぐられ、かぐわしい淫香が意識を甘く包み込む。

 

「ん……、ん……っ」

 

 強く抱きしめるごとに少女の抵抗は弱まる。

 俺の腕を引き剝がそうとする千景の手から力が抜けていく。

 

「我慢は毒だって、前にも言ったろ?」

 

「……ぁ」

 

 少しだけ抱擁を弱め、背中に回した手を耳へ。 

 くすぐったそうに口を噤む少女のつるつるした頬をなぞる。

 いつの間にかトロンとした眼差しで俺を見つめる少女は喉を鳴らす。

 

 ゆっくりと俺と千景の呼吸のリズムが重なっていく。

 その顔には相変わらず幾つかの感情が混ざり合い、意図が読み取りづらい。

 

「加賀くん……」

 

 そんな言葉を最後に俺は千景の顔に顔を寄せた。

 唇は彼女の方から押し付けられた。

  

 

 



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第三話 雨が降る日は

 しとしと、しとしと、という音が鼓膜に届く。

 ガラス窓を伝う雨粒の音がカーテン越しに聞こえる。

 

 曇天の空から降り注ぐ水滴が水溜まりに落ちる音。

 快適な部屋で聞く季節の変わり目に訪れた雨音がどこか遠くに聞こえる。降り続く雨音に空調の効いた部屋にも関わらず、目を閉じると湿った土の匂いが脳裏を過る。

 

「────」

 

 他に音らしい物は何もない。

 寄宿舎と言えども、世界的に重要な存在である勇者のいる場所だ。加えてゲームに没頭することの多い少女の部屋は大赦の計らいかしっかりとした防音処理が施されていた。

 だから雨音以外で聞こえるのは吐息と、少し早めの心の鼓動ぐらいだ。

 

「っ……!」

 

 抱擁し抱き寄せると押し殺したような吐息。

 ゆったりとした灰色のシャツと膝までのスカートを着用した勇者の身体は柔らかい。

 黒タイツに包まれた脚をぎゅっと閉じ、抱き寄せた身体はわずかに強張る。

 

「んっ」

 

 触れ合うだけのキスは数秒程度だった。

 気が付くと少女を抱いたまま背後のベッドに倒れ込む。

 柔らかな寝台は男女二人を受け止めて、微かに軋む音を立てる。

 

 少女の長い髪の毛はシーツに広がり、白い肌は湿り、顔は上気している。

 ただ緊張しているのか、千景の片手は俺の肩を軽く押し、もう片方の手は胸元に置かれる。

 距離を置こうとするには、随分と密着しているのだが。

 

「んっ……」

 

 戦いの後遺症である甘い疼きを瞳に見え隠れさせる。

 それを覗き込もうとする度に、ぷいと顔を背ける。

 顎を掴んでこちらに顔を向けさせると、瞼を閉じて感情の逡巡を押し隠す。

 

 キスをする。瞼を閉じて俺を見る千景。

 感情を逡巡させ瞳を見開くも、恥ずかしそうに睫毛を震わせる。

 

 借りた猫のように大人しい彼女。 

 これから自分がされることに羞恥を抱いているのか。

 或いは純粋に愛しの後輩に押し倒されたことに恐怖を覚え、緊張したのか。

 

「────」

 

 それは嫌だ。

 彼女に味わって欲しいのは忘れられないくらいの快楽だ。

 戦いで疲れた心に酷く効く中毒性の高い、そんな忘れられない甘い果実を食させたい。

 

 まずはキスのお返しだ。

 無防備な首筋を吸い付くようにキスをする。

 ほんのりと甘い香りを漂わせた白い肉は僅かにしょっぱい。

 

「あっ……ちょっ、んっ」

 

 子供が好きな子の関心を引く悪戯をするように。

 恋人が互いの愛を確かめるスキンシップをするように。

 

 ゆったりとしたシャツから覗く鎖骨をくすぐり、頬を撫でる。

 枕に頭を乗せた少女の絹のような黒髪を撫で、腰骨のラインをなぞる。顔を赤くする彼女を見下ろしながら灰色シャツを捲り、布地に隠れた腹部に手を入れるとくすぐるように肌に触れる。

 

「く、ふふっ……ゃっ……」

 

 くすぐったそうに頬を緩める千景の身体から硬さが徐々に消えていく。

 シーツに皺を寄せ脚をくねらせる彼女は俺の魔手から逃れようとするも、僅かに汗ばんだ柔肌を逃す訳もなく、程よく筋肉と脂の乗った少女の臍を撫でる。

 臍を指でなぞり、脇腹に『の』の字を描き、抗議の目線を向ける彼女の頬にキスをする。

 

「ぁ、ん、んっ」

 

 せめて声をあげまいと鼻息を荒くして長い睫毛を震わせる千景。 

 目端に涙を溜めてされるがままの姿は小動物のようだ。

 

「……!」

 

 浮かび上がる背中をなぞり、ブラホックを外し上にずらす。

 慌てたような表情でシャツごと俺の手を押さえようとする少女の抵抗をすり抜ける。

 やや硬いブラに包まれていた成長途中の双丘を揉む。むにゅ、むにゅとプリンのような感触を掌で味わう俺の手を彼女は必死に掴み可愛らしい抵抗を見せる。

  

「ゃ、ん……」

 

 灰色のシャツ一枚越しに僅かに主張する肉果。

 ブラの色も分からず、しかし汗ばむ生乳の感触と硬くなりつつある先端を好きに弄る。

 こりこりと乳首を刺激すると、俺の腕を掴む少女の力が抜け、入り、また抜ける。

 

 胸が好きなのか千景の吐息に甘い物が混ざり始める。 

 しっとりとした乳肉を揉みながら、乳首を指の腹で擦る。

 そうして彼女の反応を見ながらシャツを捲り上げようとして──、

 

「あっ、だ、だめ……」

 

 小さく喘ぎ始めていた千景がストップを掛ける。 

 行為の最中に良く発せられることの多い言葉だが意味合いは真逆な事が多い。なので気にせずに捲り上げようとするシャツを乳房の上から押さえつける彼女の力の強さに戸惑う。

 これまでとは異なる、弱々しくとも本気に近い拒絶を感じた。 

 

 滑らかな腹筋、下乳まで捲れ上がった肌を見せる千景。

 彼女はそこから上の肌は見せたくないとばかりに顔を強張らせ露出を拒む。

 思わず手を止めながらも露出した乳肉を甘噛みすると、んっ、と甘い吐息を漏らす。

  

 押さえられたシャツ越しに主張する乳首を布ごと口に含む。

 んん、と目を閉じた千景が軽くのけ反り、乳首を手で隠す。

 だから今度は白い乳房の下部を唇で啄むと、小さく喘ぐ千景の手は弱々しくなっていく。

 

「は、ふ……」

 

 散々遊ばれて捕食寸前の草食動物のように息絶え絶えの少女。

 今すぐにでも灰色の薄布と手を剝ぎ、その奥に隠された慎ましい乳房を晒すことは容易ではある。ただ、目に涙すら浮かべ、見ないでとばかりに首を振る姿に思わず口を開く。

 

「何が駄目なんだ?」

 

「ッ! や、やっぱり、……電気消してくれない?」

 

「どうして?」

 

「その……、傷があって……あまり人に見せられるものじゃ、ないから」

 

「…………」

 

「人に、加賀くんに見せるんだって思ったら、……怖くて」

 

 蚊の鳴くような声で千景が囁く。

 少女が告げる傷、それは彼女の胸元にあるという。

 どうしてそんな傷があるのか、千景が自ら語ろうとすることは無かったが、同じ時を共有する中で、なんとなくだが察する事があった。ただその原因については今は言及する時ではない。

 

「俺が気にしないって言っても?」

 

「……だ、だめ」

 

「なら、この傷は? 耳の方は良いの?」

 

「っ……!」

 

 さらりとした黒髪は指の隙間をするりと抜ける。 

 見知った大和撫子に負けず劣らずの黒髪からふわりと漂う甘い香り。

 長い髪の毛に隠された形の良い耳、少女の左耳には切り傷のようなザックリと何かで切ったような小さな痕があった。僅かに身を強張らせる千景の耳にキスをする。

 

「は」

 

 声にならない甘い吐息。 

 僅かに汗と少女特有の香りがする髪の毛に鼻先を押し付けながら耳の柔らかい肉を甘噛みする。コリコリとした軟骨部分も、耳朶も、噛んで、舐めて、吸って、柔らかくしていく。

 首の皮を張り、顔を背け逃れようとする彼女をどこまでも追いかけてキスをする。

 

「みみ、ひゃめて……」

 

 柔らかい身体を押さえつけて、赤らんだ耳に、首筋に口づけする。

 そっと歯形を立てて、優しく舐めて吸って何度も温かい首にキスをする。

 のけ反って見せる白い喉に甘噛みをして、汗ばむうなじを唇で吸い痕をつける。

 

「ゃ、ぁ、たべ、ないで……」

 

 トロリとアイスが溶けたような声音。

 甘く、快楽に溶かされ始め、涙すら浮かべる少女の声はそれでも拒絶ばかりだ。

 その原因がネガティブなことをつい考えてしまうのなら。

 いっそ、何も考えられないように、快楽という逃げ道を教えてあげなければ。

 

「千景が美味しいのが悪いから」

 

「ゃっ!」

 

 しっとりとした白い肉が俺の掌に吸い付く。

 シャツに隠された乳房を揉みながら、指の感覚のみで右胸上部辺りに確かな傷跡があることを指の腹でなぞりながら確認した。

 柔らかすぎず硬すぎない質感を肌で味わいながら、顔を寄せてキスを迫る。

 

「────」

 

 唇が触れるか触れないかの距離で、先に触れてきたのは千景の方だった。

 ちゅ、と触れるだけの瑞々しい唇の感触に初々しさを感じながら、強引に唇を割り拓く。

 

「ん、ぅ!?」

 

 ぬちゅ、ぬぷ、と唾液が交わる音を聞きながら舌が頬肉をなぞる。

 歯茎を、歯の形を舌で確かめながら少女の舌を絡め合わせる。  

 

「ぁ……」

 

 シャツの上から乳房を揉む俺の手を押さえようとする少女の手。

 唾液を嚥下する度に甘い嬌声を漏らしながら、目元をとろんと緩ませた千景の乳房を揉むと全身が痙攣するかのようにびくっびくと震えて見せた。

 にちゅにちゅと唾液を混ぜ合う下品な音を響かせて口腔行為を続ける。

 

「ぅぅんっ!!」

 

 甲高い声を上げて、俺の手を握る少女。 

 千景の口の端から溢れた唾液は枕に小さな水たまりを作っていた。

 小さな痙攣を繰り返す勇者の唾液を舐めとり、右端から左端まで吸い付いた唇の柔らかさを堪能しながら、シャツに隠れた乳首を指先で丹念に弾く。

 

「ゃ、ぁ……っ」

 

 切なげな千景の声を聞きながら、彼女の下腹部へと手を伸ばす。

 膝丈までのスカートから覗く、黒タイツに包まれた脚をシーツにくねらせている。つるつるとしたタイツの感触と生温かい少女の脚を撫でながら脚の付け根へと進む。

 

「ぇぅっ! そこは……ぁっ!」

 

 くちゅ、という水音と共に千景が喘ぐ。

 スカートの奥、少女の恥丘は薄布とタイツ越しでも濡れていた。

 柔らかな肉は指で押すだけで程良い弾力と確かな湿り気、そして漏れ聞こえる彼女の声を聞かせる。スカートを捲り上げ、黒い薄皮に包まれた白のショーツを目に焼き付ける。

 

 ピンク色のリボンがついた下着に顔を近づけながら、尻肉を掴み腰を上げさせる。

 羞恥混じりの吐息を聞きながらするりと下着を脱がす。ずり下ろしていくことで露わになる鼠径部、生えそろった恥毛、透明な糸を引く媚肉、色白な内腿。

 無言でジッと見つめると慌てて恥部を手で隠す千景は羞恥に赤らむ顔を伏せる。

 

「あ、あんまり見ないで……」

 

「もう濡れてるけど、そんなに気持ち良かった?」

 

「ち、ちがっ……!」

 

 指ごと千景の媚肉に吸い付く。 

 細い少女の指を舐め、隙間から覗く陰唇を舌先で開き、貝肉に挿入する。

 

「ぁぁっ!」

 

 俺の頭を掴む千景の喘ぎを聞きながら、キスをする。

 彼女の髪色と同じ黒色の陰毛が鼻先をくすぐりながら、やや酸っぱく仄かな甘い香りのある蜜をじゅるるっと音を立てて吸う。

 膝を立て、咄嗟に脚を閉じようとする腿を無視しながら下品な音と共に啜る。

 

「ふわぁっ!」

 

 震える恥部を俺の舌で犯す。

 腰を浮かせる彼女は自ら見せつけるように秘所を俺に差し出す。

 照明に照らされた少女の恥部を見ながら、陰唇を開くと千景は悲鳴を上げた。

 

「ちょっ、どこを見て……へ、ヘンタイ! ヘンタイっ!」

 

「綺麗だよ」

 

「~~~~!!」

 

 顔を赤らめ、屈辱とばかりに声を上げ、罵倒する千景。

 ピンク色の花弁からは一方的な愛撫に新鮮な蜜が漏れ出している。

 感想を告げ、返される彼女の罵倒に心外だとばかりに媚肉に問答無用で吸い付いた。

 

「やぁぁああっっ!! それっ、まっ……ぁぁっっっ!!」

 

 ぷしっと小さく蜜が跳ね、俺の頬を叩く。

 衣服の意味を成さない捲れ上がったスカートを揺らし、白い腹肉が上下する。

 軽く絶頂に達してしまったらしいが俺の愛撫は止まらない。

 

 恥部にある小さな肉芽。 

 トロリと溢れる蜜を人差し指と親指で掬い取り、左右から挟む。

 少女の愛液を塗りたくると指の腹で小さな包皮ごと擦る。

 

「ぁ、かっ、ぁ、待って!」

 

 快楽器官に触れると、パクパクと口を開く千景。 

 自分がこれから何をされるのかを理解し観念したのか瞼をぎゅっと閉じる姿を見ながら、肉の芽を爪の裏で撫でた後、指の腹で挟み込み、すりすりと軽く潰す。 

 

「まっ、ぁぁぁっっ!!」

 

 肉芽を潰すと溢れる蜜液を塗りたくる。

 愛液でコーティングした陰核を指の腹で擦ると、新鮮な蜜がシーツを濡らす。

 それを繰り返すと、淫らな水音と女の蕩けた悲鳴が部屋に響く。

 

「ぇぁっ、ぃ、ひぁっっ!! ~~、イくっ!!!」

 

 クンニリングスで敏感にさせられた彼女の性感帯を指で弄る。

 快楽のあまり腰を浮かせ、喜悦の悲鳴を上げる少女は法悦の空を見ることになった。

 

 絶頂に震える彼女は、汗と長い髪の毛を張り付かせる。

 白い腹を上下させて水中で溺れているかのように開いた唇に唾液が絡み、糸を引く。

 

 すっかりふにゃふにゃになった彼女。 

 千景の大好きな少女によるマッサージよりもふやけ、乱れた姿は他の男には見せられない。

 

 中途半端に脱がしたタイツはショーツと共に片足に絡みつく。 

 スカートは捲れ上がり、灰色のシャツは唾液や汗を含み、慎ましい乳房が揺れるのが分かる。

 目は焦点を結ばずとろけた表情の千景とキスをする。

 そのまま挿入する。

 

「ぅっ、ぇ?」

 

 正常位で、根本まで肉竿が飲み込まれる。 

 どこか呆然とした彼女に対して、快楽が襲い掛かったのは1秒後だ。

 

「ぁ、ぉ、ぐ、ぅ~~~~~っっっ!!」

 

 結合部からぷしゅっと蜜が噴き出る。 

 ぐんと背を反らし、天国へ再度送られる彼女を余所に俺は歯を食い縛る。

 絶頂に浸された彼女の媚肉は驚くほどに引き締まり、きゅっと怒張に吸い付く。

 

 互いの理性を削り合い、あるのはただ快楽への追求だ。

 かがくん、とふやけた声で甘えるように千景がキスを求める。 

 

「んっ、ん、ん!」

 

 その求めに応じて唇を奪い、両手首を掴みベッドに押し付ける。

 こつこつと鼠径部と鼠径部が触れ合う中で、円を描くように怒張を少女の秘められた場所へ突く度に、しっとりと水気を含んだ黒髪が周囲に広がる。

 にちゅにちゃ、という下品な音を結合部から聞かせながら、衝動に従い腰を振る。

 

「ふぁぁぁっ!!」

 

 喉を見せるように千景が背を反らした。

 にゅるると腰を引き、膣口の最奥へと腰を揺する。

 

 抽送を繰り返す度に俺にしがみつこうとする脚を震わせる。

 千景は嫌々と首を振り、振り乱した髪から甘い香りを撒き散らす。

 そんなに悦んでくれるならと、俺の手は結合部へ。

 

「まっ、まっへ……! それはダメ……!」

 

 様々なシロップが混ざり合い泡立った結合部。 

 白濁した愛液で濡れた恥毛に隠しきれていない肉芽を爪の裏で弾く。弾く。

 

「ぁぁぁぁあぁっっ!!!」

 

 歓喜の声を上げ、ぴんと両脚を伸ばす千景。

 収縮する膣にどうにか射精を堪えながら、圧し潰すように彼女に覆い被さる。

 

 いやとか、だめとか。

 千景はそんな拒絶の声を上げる一方で甘えるように抱き着いてくる。

 獣の衝動に腰を止めることなく俺はピストンを繰り返す。

 

 シーツが歪み、あられもない女の喘ぎ。

 ぱんぱんと肉が肉を叩く音と遠くに聞こえる雨音。

 

 唇を吸い唾液を啜る中で、彼女はまた甘い悲鳴を室内に響かせる。

 

「~~~っっ!!!」

 

 背中に爪を立て法悦の極致に至る千景。

 俺もまた、彼女の絶頂と共に少女の最奥へと子種を注ぐ。

 どくどくと吐き出した精子に媚肉は蠢き、飲み込んでいく。

 

「ぁ………は……」

 

 最後の一滴も余さず彼女の子宮へと注いだことを確認する。

 そのまま彼女に倒れ込み、ぎゅむりと潰れる乳房を感じながら、またキスをした。

 

 

 

 +

  

 

 

「はい、完成」

 

「……何、これ」

 

「三つ編みにしてみた」

 

「勝手に……私の髪型を変えないで」

 

 いつの間にか髪紐が解けていた黒髪。

 行為を終えて息絶え絶えの少女の身体を清めながら、髪型を変えてみた。

 後ろ髪を一つに纏め、肩付近に垂らした姿はなんとなく文学少女を連想させる。

 

「凄く似合うよ」

 

「……」

 

 そんな事を告げると自らの毛先を弄る千景はそっと目を伏せる。

 気に入ったのか三つ編みを解くことはせず、タイツを履きなおした脚を擦り合わせる少女は何を考えているのか無言のまま衣服を整えていく。

 シャツを着替えるからか此方を見ないでと告げる彼女に素直に従い窓の方へ目を向ける。   

 

 ざああっと耳を傾けずとも分かる強くなった雨音。

 このまま外に出れば酷いことになるというのは明白だろう。

 しゅるりと衣擦れを聞きながら今後の事を考えていると背後から声が聞こえる。

 

「……雨、酷いわね」

 

「ん? まあ……どうしようかね?」

 

「もう振り返っていいわよ」

 

 振り返ると殆ど事前状態の彼女がベッドに座っていた。

 違いは乱れたシーツと汗を吸ったシャツを丸めて背中に隠しているくらいか。

 ほんのりと頬が赤らんでいることには指摘しないでいると、先に少女が口を開く。

 

 おずおずと千景は言った。

 

「夕ご飯……食べていかない?」

 

 その言葉に部屋に置かれた目覚まし時計に目を向けると夕刻に近い。

 カーテンの隙間から覗く空は暗く、雨音だけが聞こえる。

 

「カップ麺も良いけど」

 

「そうじゃなくて……食堂の」

 

 こちらを見上げ揺れる黒瞳に少し珍しく思う。

 ぶっきらぼうで人見知りで無口なことの多い彼女から、夕食を誘われるとは。

 

「おすすめは?」

 

「……色々とあるわ。加賀くんの好きそうなのもあるから。知っているでしょう?」

 

「まあね。よし、行こう」

 

「あっ、ちょ、ちょっと……」

 

 多少の疲労と快楽の余韻を感じながら柔らかな千景の手を取る。

 空腹は感じていたので、有無は言わせずそのまま食堂へと向かうことにしたのだった。 

 

 

 



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第四話 雨上がりの空

 勇者たちの為に用意された寄宿舎。

 元々あったであろう施設を買い取り、勇者部の初期メンバーが召喚された頃から今後増える勇者や巫女の事を考慮して増築、改修を大赦が進めてきたのだろう。

 少女たちが暮らしていく分には快適極まりない空間になったと思う。

 

 一人一人の要望に添いつつ、割り当てられた部屋。

 必要な物も大赦がすぐに用意してくれる。

 食堂は無料で食べ放題、そして旨い。大浴場もシャワー室も清掃が行き届いている。

 掃除の必要もなく、買い出しの必要もなく、好きな事をしたいだけ出来る。

 

 かつての勇者たちに媚びを売るかのように、大赦プレゼンツ至れり尽くせりな環境に対して、やや過剰なのではと萎縮する者と、この世の誰にも出来ない特別な事が出来るのだからこれくらいは当然なのだろうと受け入れる者に別れた。

 俺としては後者の意見であり、貰える物はいくらでも貰う派である。

 

「当たり前とまでは言うつもりもないけれど、貰える物は貰って損はないわ」

 

「まあ、特別待遇に対してどうこう言う子も慣れただろうし」

 

「……政治家や芸能人にだって出来ない事を私たちはしている。これくらいは当然のことよ」

 

 この世界での少女たちの役割はバーテックスの撃退と領土の解放。

 撃破の度に金銭が生じる訳ではないが、毎月それなりの小遣いを与えられたり、豪華な食事や定期的に貸し切りの温泉旅館で過ごすことも出来る。

 勇者の機嫌を損ねたくないのか、或いは金品で大人しくなるならと懐柔するつもりか。

 

「西暦時代は……もっと多くの人たちから感謝されたわ」

 

「ふーん」

 

「神世紀時代だと隠蔽しているからか、そんな事は無いようだけど」

 

「隠蔽体質なのは仕方ないにしても過ごしやすさなら今の方がイージーだろうよ」

 

「……そうね。今の方が良いわね」

 

 そんな事を話しながら寄宿舎の談話室を歩く。

 夕刻も過ぎて既に食堂に向かったのか、或いは外食か、宿泊か。

 

 小綺麗な談話室には誰もいない。

 テレビの電源も消され、俺と千景の足音が響く中で遠くに雨音が聞こえる。

 寄宿舎は何度も来た事がある。目隠しをしても辿り着ける程では無いがどこに何があるのかは把握している。そんな訳で食堂の場所に向く脚が止まる筈が無いのだが。

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

 唐突に腕を引っ張られて立ち止まる。

 振り向くと、俯いた少女が長い黒髪に表情を隠している。

 

「どうした、千景? 幽霊でもいた?」

 

「そういうのは見なかったけど。その……、手!」

 

「手?」

 

「いつまで……繋いでいるつもり?」

 

 三つ編みを手で弄りながら指摘する千景の言葉。

 その言葉に、彼女を引っ張り続けていた左手に目を向ける。

 敵を屠る時に、鍛錬を行っている時に、死神を思わせる大鎌を武器として扱う彼女の掌は柔らかい。傷痕やマメなど努力の証が垣間見える少女の手を握り続けている事を忘れて彼女と話していた。

 

 それは彼女も一緒だと思っていたが、しっかりと意識していたらしい。

 食堂を目前に足を止める彼女に俺は笑い掛ける。

 

「握り甲斐があったもので」

 

「……そんな訳ないでしょう」

 

「千景の手はすべすべしていて好きだよ」

 

「──。……どうせ、他の子にもそういう事を言っている癖に」

 

「誰でもって訳じゃない」

 

「────」

 

 息を呑む彼女を見つめると、そっと目を逸らされる。

 ぐいぐいと手を引っ張る千景は無言のまま手を放したがっているようだ。

 無人の廊下でありながら、このまま異性と仲良しこよしで食堂に向かえばどうなるだろうか。

 間違いなく格好の的になり冷やかされる。そんなのは嫌だろう。

 

「逃げない?」

 

「犬じゃないんだから……逃げたりしないわ。向かう場所は一緒でしょ」

 

「しょうがないな~」

 

 ジロリと俺を睨みつける、恥ずかしがり屋な少女の為に仕方なく手を放す。

 彼女の熱が掌から無くなるのを感じながら、彼女の態度に対して悲し気な表情で呟く。

 

「……そんなに嫌でしたか?」

 

「あっ、いや、そうじゃなくて……」

 

「────」

 

「お、男の人とこんな風にするのが初めてで……驚いただけで。嫌、とかじゃ」

 

 内気な性格から捻くれたように見せる彼女だが根は素直で優しい。

 何だかんだで他人を思いやれる彼女だからこそ、勇者に見初められたのだろう。

 つまり──、

 

「先輩、かわいいって言われない?」 

 

 俺がそんな事を告げると千景は鋭く息を吸い、しかしその殆どを一秒後に吐き出した。

 そのまま、ふぃっと顔を背けると三つ編みにしたことで露出したうなじを見せながら、そそくさと食堂へ脚を進めた。

 

「揶揄わないで。……さっさと行くわよ、加賀くん」

 

 広々とした食堂にはそれなりに人がいる。

 大赦の関係者も利用する食堂には大人も何人か食事をしているのが見える。

 鼻腔をくすぐる香しい匂いに、さて何を選ぼうかと本日のメニューへと目を向ける。

 

「今日は……魚だな。白身魚定食だな」

 

「うどんじゃないのね」

 

「基本的にうどんは昼飯かおやつ的な立ち位置だから。基本の主食は米だろ」

 

「珍しいわね」

 

「そんな先輩は何に?」

 

「……お腹が空いたから、ガッツリとした物を。……しょうが焼き定食ね」

 

「うどんじゃないんかい」

 

 運動をすればエネルギーが減って腹が減る。

 人間である以上、当たり前の事実ではあるのだが疎かには出来ない。

 食事は日々の生活の活力なのだ。美味しい物を食べるだけで簡単に人は幸せになれるのだから。

 

 お盆に載せ、今度は俺が千景を連れて歩く。 

 それなりに混雑し始めている食堂内を歩き、座る場所として目星を付けていた場所へ。

 

「ここって空いてる?」

 

「ん? ああ、どうぞ……って、亮之佑じゃないか。来ていたのか。お、千景も一緒か!」

 

「……ええ」

 

 振り向かずとも、三つ編みにした黒髪の少女が眉を顰めるのが分かった。

 俺と千景が向かった先は、一人で寂しそうに食事をしていた金髪の少女のもとだ。西暦時代、丸亀城で四国を守っていた五人の勇者。そのリーダーをしており、風雲児などと呼ばれていた彼女の名は乃木若葉。

 

「……? 座らないのか?」

 

 その容姿に見惚れる者も多い。 

 長い金髪を後ろで束ねた髪型、育ちの良さと生真面目さが混ざり合った雰囲気は天然そうにも頑固そうにも見える。話しかけた俺に眦を下げつつも凛々しさを紫紺色の瞳に宿した少女。 

 そんな彼女は俺と、その一歩背後にいた千景、その髪へと目を向ける。

 

「千景、髪型変えたんだな。似合っているぞ」

 

「……ええ、ありがとう」

 

 その笑顔できっと少女の一人や二人は堕とせただろう。

 若葉の言葉に目を伏せる千景、その胸中を悟る前に彼女はそそくさと椅子に座る。

  

「美味しそうじゃないか」

 

「そっちは何を食べていたんだ?」

 

「ん」

 

「きつねうどんか。もっと七味を掛けた方がうまいぞ」

 

「あんな風に赤くするのはうどんへの冒涜だからな。歌野も怒っていたぞ。蕎麦もうどんも辛くすれば良い物じゃない。もっと素材の味を楽しむべきなのだと」

 

「冒涜ではない。日々の辛い事を飲み込み明日も生きる。そういう願掛けなんだ」

 

「そんな意味があったのか……!」

 

「今思いついた」

 

 脚を蹴られた。

 ムカついたがここでやり返すほど子供ではないので、大人しく箸を手に取る。 

 出来立てほやほやの白身魚のフライを齧ると、隣に座る千景も釣られて黙々と箸を動かす。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 冷めたご飯など誰も食べたくはない。

 食べながら話をするよりも、先に空腹を満たしたい。それが全員の意思だった。

 空腹が徐々に満たされ、満腹感に心を満たしつつある中で、喜色満面なご様子で上品に箸を動かし麺を啜る若葉を見る。

 滲み出る気品は、髪色的に身近にいる天然ふわふわ令嬢の姿を連想させる。

 

「髪色だけで連想するのもどうなんだろうな」

 

 俺はどれだけ園子のことが好きなのだろうか。

 この場にはいないお嬢様、乃木園子は目の前にいる若葉の子孫らしい。

 一応分家である俺も子孫になると思うのだが、その辺りは非常に曖昧かつ複雑らしい。文献は失われ、或いは大赦が隠しているのか、真実を知る者は既に死んでいる。

 色々と謎だらけなことに頭を悩ませ掛けて、そして俺は考えることを止める。

 

「ところで、今日は二人で何をしていたんだ?」

 

 食事に専念した矢先、殆ど食べ終わりつつある若葉が箸を置く。

 世間話も兼ねているのだろう、俺と千景を交互に見る彼女の疑念は当然だ。

 

「ゲームをちょっとね。作ったり壊したりする奴。あとは気持ちいい奴とか」

 

「ぶふっ!? ……ごほっ、ごほっ!!」

 

「大丈夫か千景? 私もよく千景とゲームはするから前者については知っているが後者の方は知らないな……。新作を買ってきたのか?」

 

「そそ。今のところ俺の勝ち。折角だし今度一緒にしない?」

 

「あの千景が負けるのか。なら今度……と、私もそろそろ狩りたい敵がいるんだ。その時は折角だから協力してくれ」

 

「3Pか」

 

「ちょっと、加賀くん……。あんまりふざけないで」

 

 そんな風に和気あいあいとした会話を繰り広げながら、俺は千景の背中を摩る。

 食事中にむせた彼女の背中を摩る度にブラホックの感触を掌に感じ、先ほどの色濃い情欲を思い出す。口元を押さえる千景は顔を赤らませジロリと俺を睨むだけで何も言わない。

 

「もう大丈夫か?」

 

「……あなたがそういう性格なのは知っているから」 

 

「半分冗談だよ」

 

「そういうところよ」

 

 どういうところなのかとタイツに包まれた腿を揉むと、ビクンと身体を震わせる。

 そんな千景の様子に気づくことなく、黙々と残りのうどんを食べ進めた若葉はポツリと呟く。

 

「いつの間にか、二人は随分と仲良くなったんだな」

 

「そう見える?」

 

「ああ、最近学校の方でも噂になっているような」

 

「そういう、つもりじゃ……」

 

「ところで若葉は夕飯もうどんなのか?」

 

「ん? そうだな。いつもという訳ではないが、朝も昼も夜も、明日も明後日もうどんをずっと食べ続けたい。そう思うのは四国の人間ならば当然のことだし、亮之佑もそうは思わないか?」

 

 この惑星の住人、というよりもこの世界の人々はうどんをこよなく愛している。

 何故そうなのかは俺にも分からない。加賀亮之佑として生まれた時からそうだったのだ。俺もうどんは好きではあるが毎日三食食べたいとまでは思わない。

 それは俺が前世の記憶を持っているからなのか。

 いずれにしても、彼女たちほどのうどん愛を持つことはきっと出来そうにないだろう。

 

「いや、それは亮之佑がうどんに対して真摯に向き合ってないからだ」

 

「最近は蕎麦も悪くないよねって思うようになったんだ」

 

「それは私に喧嘩を売っているのか?」

 

 うどんについて語り始める若葉に相槌を打つ。

 食堂の窓からは相も変わらず曇天が覗き、雨音が窓を濡らす。

 食事も終わり、血の繋がりがあるか不透明な少女の話を聞く。昼間頃までは降っていなかった雨雲は黒く、雨の止む気配はない。

 窓の外から眼前にいる金髪美少女に目を移しながら、手を動かす。

 

 黒いタイツに包まれた千景の太腿。

 スカートの中は僅かに熱く、美しい脚の内側に手を伸ばす。

 

「……っ」

 

「千景? どうかしたのか?」

 

「い、いえ……何も」

 

 身じろぎした千景はテーブルの下で俺の手首を掴む。

 俺はごく自然に腿の付け根まで手を這わせ、下着と肉の境目を軽く撫でる。

 

「そ、そういえば、鷲尾さんたちは遅いわね」

 

「確か小学生組は風さんのところで世話になるらしいと連絡があったぞ」

 

「……そ、そう」

 

 タイツ越しに腿に這わせていた手は完全に少女のスカートの中だ。 

 腿の付け根、恥丘をなぞる手をきゅっと腿が挟み、僅かに千景は眉根を寄せる。

 

「ところでひなたさんは? いつもベットリだろうに、反抗期?」

 

「違う。私とひなただってそこまで常に一緒という訳でもないさ。私にもプライベートはあるし、ひなたにだって大赦での御役目や巫女としての御役目がある。それに……」

 

「それに?」

 

「あっ、いや……気のせいかもしれなくてな」

 

「話してみなよ。悩んだら相談って言葉が勇者部にはあるんだから。ねえ、千景先輩」

 

「ええ……。っ、んんっ」

 

 先ほどの情事で履き直しただけの下着は既に湿っていた。

 タイツ越しに布切れを指の腹で押し続けると、しっとりとした感触を感じる。

 俺を横目に見る千景は耳を傾けるような仕草を見せて、頷き返す。

 

「その、だな。少し前に四国の奪還が完了しただろう? その後の方針を立て、我々の現在の目標は旧近畿地方の奪還を続けている最中だが……」

 

「ん、ぇっ、ええ……」

 

「最近ひなたからのスキンシップが妙に激しくなってきているように感じてな……」

 

「具体的には?」

 

 俺を止める手を放し、千景はテーブルのコップを手に取る。

 喉の調子が悪いとアピールするかのように、ごく、ごくっとコップを傾ける。

 そんな小細工を披露する少女、その恥丘を薄布ごしに一定のリズムで、押すように円を描く。

 

「ぐ、具体的にはか……。まあ、なんだ………触れ合いが凄いというか」

 

「……!」

 

「や、やっぱり私の気のせいだろう。うん、すまない。なんでもないんだ」

 

「ふーん」

 

 ぬちゅ、と俺と千景にしか聞こえない水音。

 爪でかりかりと秘裂を擦る度に熱っぽい吐息を漏らし始める千景は話を聞いているのか。

 数秒に一回ほど曖昧に首肯する千景は虚ろな目でテーブルを見下ろしていた。

 

 疑似的なピストンをするように指で執拗に恥丘を押す。

 不自然に思われることが無いように、若葉と会話をしながら薄布越しにある場所を探す。

 テーブルの下で腰を引かせようとする千景よりも早く、探り当てた肉芽を爪で押す。

 

「~~~ぁっ!」

 

 僅かに口を開けた千景の掠れた喘ぎ声。

 さすがにそれを聞き漏らすことはなく、若葉が形の良い眉を顰める。

 

「千景? どうかしたのか?」

 

「な、なんれも……ないから」

 

「そういえば今日はちょっと熱っぽいとか言っていたような」 

 

「確かに妙に顔が赤いな……。どれどれ」

 

「ちょっ、乃木さん!?」

 

 淫らな悲鳴を上げた千景の頬は確かに朱が差している。

 黒曜の瞳を虚ろながらも潤ませている表情は、どこか艶めかしさを見せる。

 そんな仲間の状態を見逃せないのか、若葉は心配そうに千景のおでこに手を当てる。

 俺も心配そうな顔を見せながら、中指と人差し指でそっと秘裂を押した。

 

「ぁ、……っは……!」

 

「うーん……。熱はなさそうだが……」

 

「ちがっ、本当に大丈夫だから。乃木さん」

 

「そうは言っても顔は赤らんでいるし、目も潤んでいて、なんというか……」

 

「……! ゃ、見ないで……」

 

「千景……?」

 

「~~~ッ」

 

「まあ風邪薬を飲んで早めに眠れば大丈夫だろう。俺が部屋まで連れていくよ」

 

「……そ、そうだな。私も何か飲み物とかを持っていくとしよう」

 

 俺は千景を支えながら立ち上がった。

 僅かに脚を震わせる少女は呼吸を乱しながらも、平静を保とうとする。

 その行為に意味があったのかは分からないが、若葉がそれ以上何か言うことは無かった。

 

 

 

 +

 

 

 

 千景の自室に戻り扉を閉めた瞬間、罵倒を浴びせられる。

 

「最低……、最低ッ!」

 

 壁に押し付けるように、俺は千景の身体を抱きしめる。

 くしゃりと衣服に皺が寄り、蜂蜜のような甘い香りを漂わせる少女は衣服越しに胸を揉むだけでやん、と甘い声を上げる。

 

「乃木さんにあんな顔を見られた……!」

 

「────」

 

「絶対に変だって……思われた」

 

「────」

 

「あなたの、あなたの所為で……!」

 

 目を潤ませながら睨む少女の眼力に力はない。

 睨みつける少女の唇は果実のように甘く、熱く蕩けそうだった。口腔行為を繰り返しながら、俺は彼女の手にスカートの裾を掴ませる。

 無言のまま彼女の言葉に反応することなく、耳元に囁く。

 

「自分で上げろ」

 

「……っ!」

 

 涙声を漏らしながらも彼女は俺の言葉に従い、スカートの裾をつまみ、持ち上げる。

 先ほどの悪戯で爪が引っ掛かったのか、黒タイツに出来た穴から覗く白くむっちりとした太腿、明らかに湿っていると分かる白い下着が視界に映り込む。

 自分で上げておいて流石に恥ずかしいのか、千景は顔を背ける。

 

 背けた顔、その顎を掴み無理やり此方を向かせると俺は口づける。

 粘りついた舌を絡め、下着越しに触れた媚肉はくちゅりと水音が響かせる。

 

「んっ……!」

 

 黒タイツを無理やりに破くと、ショーツをずらす。

 純白の下着は汗や蜜を吸ったことで黒色の恥毛を透かし、媚肉から溢れる新鮮な蜜が破けたタイツを伝い、床に垂れ落ちる。

 いやらしい姿を見せる彼女は自らスカートの中を見せ、俺は中指を媚肉へと挿入する。

   

「ぁ、ぁ……!」

 

 熱く濡れた瞳で俺を睨みながらも、どこか歓喜に近しい声を上げる。  

 被害者のように羞恥の涙を浮かべながら、部屋に響き始める淫らな水音の正体を知るとスカートをつまむ手を離した。

 

「んっ……んん」

 

 媚肉を割り拓き挿入した指で疑似ピストンをする。

 先ほど子種を味わったことが忘れられないのか、彼女の媚肉はきゅうっと締まり、抜き差しを繰り返す度に喘ぎ声を漏らす。

 膝をガクガクと震わせて、俺の肩を掴む千景はあられもない表情を見せる。

 

 喉を動かし、俺の指先の動きに不規則な呼吸を繰り返す。

 疑似的な肉棒でも気持ち良さはあるようで、腰を引かせては壁にぶつかる。

 

「ぁ、ぁぁっ、ゃ、だめ……」

 

 ちゅぷちゅぷと溢れる愛液は俺の手を汚す。

 嫌々と首を振りながら、しかし悦んでいる彼女の媚肉の中でザラザラとした部分を指で探り当てる。ビクッと震わせる身体に熱い首元に吸い付きながら指を曲げた。

 

「ぁぁぁっっっ……!!!」

 

 突如、千景の悲鳴と時を同じくして締め付ける膣肉。

 弱点と思わしき場所を中心に曲げた指でこりこりと肉壁をこする。

 

「やっ! んん~~~~っっ!!!」

 

 びくびくと千景が痙攣した。

 腰を前後に動かし、ぷしゃ、ぷしゃりと愛液が床に小さな染みを作った。

 

「声、他の人に聞こえちゃうかも」

 

「っ」

 

 俺の肩に自らの顔を押し付けるのと、膣壁を小突くのは同時だった。

 痛いほどに肩を掴む彼女、赤らんだ耳と揺れる黒髪に思わず鼻先を突っ込む。

 

「ぁぐっ、~~~っっ!!」

 

 汗に混じる千景のあまやかな香り。

 俺の指に合わせて俺の肩に噛みつく彼女の悲鳴は必死に堪えた物だった。

 小水を思わせる飛沫が膝を濡らし、腰砕けになったかのように俺に倒れ込んだ。 

 

 ぽたりと指から滴る花蜜。

 それを舐めとりながら、彼女をベッドに運ぶ。

 

「…………」

 

「もう一回する?」

 

 ぐったりとした千景は、恨みがましそうに俺を見上げる。

 睨んでいるのか、上目遣いをしているのか判断に迷う眼差しに獣欲を覚える。

 

 顔を赤らませ、瞳を潤ませ、先ほど作った三つ編みが解け掛けている。

 ビリビリに破けたタイツからは白い腿肉を覗かせて、たった今あなたに襲われたばかりですよとアピールする少女にタオルケットを掛ける。

 最っ低、と小さく呟く彼女はふいっと顔を背けた。

 

「……気持ち良かった?」

 

「……」

 

 俺の問いかけに数秒ほど硬直する彼女は、やがて小さく顎を引く。

 自分で何を言っているのか分からないほどふにゃふにゃになった少女の首肯に俺は頷き返す。

 

「それじゃあ、また来ますね」

 

「……帰るの?」

 

「ええ。続きはまた今度にしましょう。次は先輩の全部が見たいです」

 

「……あ、あなたの頭にはそういうことしか入ってないの?」

 

「可愛い子の前では男ってのはそういう物なんですよ」

 

「……本当にケダモノね」

 

 そう告げながら此方を向き身体を起こそうとする千景を止めて、抱き締める。

 慌てたような態度を見せる彼女は、硬直しながらもおずおずと背中に腕を回す。

 

「──温かいわね」

 

 人を抱きしめたことなど、今まで無かったかのような抱擁は僅かに力が入っていた。

 

「加賀くん。……またね」

   

 千景に別れを告げて部屋を出る。 

 窓から夜空を見上げると、雨は既に止んでいるようだった。

 

 途中で若葉と会うと少し顔が赤らんでいた。

 先ほどとは異なり少し挙動不審な様子を見せる彼女に挨拶をして、俺は帰宅するのだった。

 

 

 



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第五話 盛大な前振り

 ──勇者部の活動は多岐にわたる。

 

 ゴミ拾い、物の整理整頓、人や動物の捜索、園児との遊戯。

 他の人がやりたがらないことを率先して行う。だから勇者なのだと部の創設者は告げた。そんな勇者を名乗るに相応しい者たちの活動は、この異世界においても知名度が高まりつつあった。

 片手で数えられる元の世界と異なり二十数人。才色兼備な少女たちは人気者だ。

 

「風先輩。こんな依頼が届いたのですが……」

 

「うーん?」

 

 依頼は部長である犬吠埼風が持ってくるか、部室にあるパソコンに届く。

 勇者部のホームページを制作した黒髪の少女がそれらを閲覧し、振り分け、部長に問い合わせる。

 所属する人数が増えた分、多くの依頼を前に『なせば大抵なんとかなる!』というスーパー精神論で可憐な少女たちにタスクが割り振られるのだ。

 

「どれどれ……。ふむふむ、以前に行った幼稚園での劇とお遊戯会でのお手伝いと」

 

「はいはーい! 私がやりたいでーす!」

 

「私も私も! ぐんちゃんも一緒にしよ?」

 

「えっ!? ……た、高嶋さんが参加するなら」 

 

「ありがとう、ぐんちゃん!」

 

「……! え、ええ」

 

 最初に友奈が手を上げた。

 明朗快活、存在するだけで周囲に笑みと勇気をくれる少女に賛同する者たち。

 彼女の言葉に両手を叩いて応えるのは同じ髪色、同じ顔をした友奈に瓜二つの存在だ。高嶋友奈と呼ばれる彼女というドッペルゲンガーのような存在がこの世界にはいる。

 横に並ぶと髪色も身長も顔の造形すら瓜二つなのだが──、

 

「似ているけど他人なんだよなぁ……」

 

 初めて会った時には隠し子がいた説を疑ってみたものだ。

 ただ、見比べてみると僅かにだが差異が分かる。 

 性格や趣味といった物は異なりを見せ、過ごした年月が別人であると判断させる。

 

「……そんなに高嶋さんが気になるの?」

 

 ジックリと桜のような少女たちを見ていると声が掛かる。

 にこやかに部室の奥の方で話している友奈たちを見ていると話しかけてくる少女。

 

 勉強に専念するからといった理由で最近三つ編みにすることが増えた千景だ。友奈たちが二人で話しているところに入り込めなかったのか、或いは自ら引いたのか俺の近くに寄ってきた彼女は制服のスカートを揺らし、黒タイツに包まれた脚は曲線美を描く。 

 前髪から覗かせる黒曜の瞳はジロリと俺を見下ろす。

 

「友奈可愛いよね」

 

「……そうね。高嶋さんは最高よ……」

 

 讃州中学校とは異なる丸亀城の、西暦時代の制服に身を包んだ千景。

 半袖から伸びた白い腕で己を抱く彼女は、小さく首肯を見せると、唐突に腰を屈める。

 そうして俺の耳元にまで端正な顔を近づける千景は静かに囁く。

 

「高嶋さんには……変な事をしないで」

 

「──。千景先輩になら良いんですか?」

 

「……っ、とにかくあなたの大好きな結城さんはともかく高嶋さんはダメよ」

 

 半眼を見せる彼女は吐息が届くような距離で話す。

 その気になれば唇を奪える距離で、しかし高嶋友奈という少女の方が気掛かりなのだろう。恥ずかしがる素振りも見せずに高嶋に手を出したら殴殺するぞと態度と目つきで示してくる。

 

 西暦時代、千景が唯一心を開いたという高嶋。

 そんな彼女が他人に奪われてしまわないか、不安なのだろうか。

 

「────」

 

 そもそも、千景が俺に対してそんなことを考えることがおかしい。

 人を性獣か何かだと思っているのか。そう思っているならば安心して欲しい。  

 基本的には医療行為として結果的に性的な行為に至っているだけなのだ。

 ただ、それだけなのだ。

 

「先輩のことも好きですよ」

 

 私はケダモノではありません。オオカミではないですよ。

 そんな意思と共に彼女に告げる。少女の黒色の双眸を見つめると、瞬きを繰り返す千景はそっと目を逸らし、距離感に羞恥心を覚えたのか慌てて顔を耳元から離す。

 パタパタと手で仄かに赤らんだ顔を扇ぎだす千景は小さな声で呟く。

 

「……答えになってないわ」

 

「────」

 

「でも」

 

「でも?」

 

「……私は、あ、その、……ありがとう」

 

 唐突な言葉に反応する隙を与えないまま、千景は足早に部室の外へと向かう。

 顔を僅かに伏せ、逃げるように部室から去り行く彼女の姿に追いかけて後輩プレイに甘んじようかと考えていると、柔らかい口調ながらもどこか冷たさを感じる声が俺に掛けられた。

 

「ふふっ、最近郡さんと仲が良さそうね。亮くん」

 

 千景が閉めた扉から声の主へと目を向ける。

 パソコン作業を行っている少女、その近くに座っている俺。

 既に依頼の振り分けも終わったのだろう。

 キーボードから手を離し、俺に向けられる瞳は吸い寄せられるような深緑色だ。

 

「そう見える? 仲が良いのは良いことだろ?」

 

「そうね。こっちに来た最初の頃に比べたら今の方がずっと良いと思うけど」

 

「それがどうかしたの?」

 

「……ううん。亮くんは優し過ぎるから少し困っちゃうわねって」

 

 小首を傾げて肩に纏めた長い黒髪に青いリボンが良く映える。

 ふわりと漂う甘い和菓子の香り、制服越しに主張する双丘と柔和な笑みは男の目を惹きつける。クラスの、学園のマドンナに相応しい美貌と性格を持ち合わせた彼女、東郷美森はその手を伸ばす。 

 

 伸ばした先は彼女の座る椅子、その隣の椅子に腰掛けた俺の手だ。

 おずおずと、しかし離さないとばかりに細く柔らかい手が包み込む。

 

「ところでいつもより依頼の整理に時間が掛かっていたような気がしたんだけど」

 

「実は面白い小説のプロットが思い浮かんじゃって。少しメモ書きしちゃった」

 

「そっか」

 

「次回作は自信作! これを読んだ人は護国思想に染まりまくりよ!」

 

「……そっか」

 

 小説をよく書く園子に感化されたのか、東郷もそれなりに小説を書く。

 ネットの小説投稿サイトに載せられた彼女らしさ溢れる小説は長編の数々。

 国を護る若人を増やすため、先導するため、今日も彼女は筆を執るのだ。

 

「それで何だっけ。夕ご飯を東郷さんが作ってくれるって話だっけ?」

 

「水臭いことを言わないで。亮くんの為なら朝昼夜三食しっかり作る用意があるわ」

 

「和食だけ?」

 

「亮くんが望むなら……洋食も作るわ」

 

「なら洋食は一緒に作ろうか」

 

「それも良いのだけど、亮くんには最初から最後まで私が作った物を食べて欲しいかな」

 

 細く白い指が俺の指と絡まる。

 傷の無い柔らかな手は色白でずっと触れていたくなる。

 学校という場で、公に男女が触れ合うことの厳しい場で、ただ触っているだけの東郷の手は温かく、柔らかく、周囲の目から隠れるように肩を寄せ合い互いの指を絡め合う。

 

「亮くん……」

 

「東郷さん……」

 

 蕩けるような声色が鼓膜を震わせる。

 その甘い呼び声だけで、彼女の想いがどこにあるのか察する者は少なくない。 

 

 そんな青春色の秘密の行為を楽しみながら翡翠色の瞳をした少女──、絶世、あらゆるものを魅了してやまない至高の美貌の持ち主と見つめ合う。

 色白の頬を赤らめて、恋する乙女のように瞳を潤ませる東郷。

 その表情をさせているのが他ならない自分であるという、その事実に心が震えて。 

 

「──誤魔化すつもりはないの?」

 

 無感情に凍えた言葉と共に、きゅっと両手で手を包み込まれた。

 驚くほどに力の強い彼女の握力はいったいどこから湧いたのか、大きな瞳を見開く少女は上目遣いに俺を窺い、しかし逃がそうとはしない。

 

「──ぁ」

 

 僅かに高鳴る心臓の音が体内に響く。

 だが握られた物は手であって心臓ではない。その事実を噛み締めて俺は笑顔を浮かべる。

 こういう時の為に笑顔を浮かべる練習はしておくものだ。

 

「何が?」

 

「あんな分かりやすい態度を取っていたら誰だって気づくものよ。勇者部の大半の人はもう気づいているんじゃないかな」

 

「────」

 

「医療行為だもの。こんな風に身体が疼くのだから、仕方ないわよね」

 

「……東郷さんは鋭いなぁ」

 

「そうじゃないよ亮くん。ただあなたのことを良く見ているだけよ」

 

 楽しく手を振り合いながら、東郷は微笑を浮かべる。 

 並みの男ならそれだけで惚れてしまいそうな、柔和な笑みにぎこちなく首肯を返すだけだ。

 

「……」

 

 東郷は眦を和らげる。

 瞳に光を灯し、どこか安堵と余裕の笑みを浮かべる彼女に何かを告げようと口を開こうとする。そんな俺の行動よりも先に鋭い声音が届いた。

 

「お二人とも何をしているんですか!」

 

「須美ちゃん……」

 

 小首を傾げる東郷は困ったような表情を浮かべる。 

 そんな表情をさせる声の持ち主は、真面目さと頑固さを混ぜこぜにした若い声色、輝く翡翠の大きな瞳は俺と東郷を捉えて離さない。

 まるで東郷を小型化させたような少女は長い黒髪を後ろに纏めて、握り合う手に指を差す。

 

 ──否、まるで、ではない。

 彼女の名は鷲尾須美、彼女は東郷よりも年齢が少し若いだけの同一人物である。

 小学生時代の東郷を生き写しにした彼女は、

 

「部室で男の人と手なんて繋いで……は、破廉恥です!」

 

「須美ちゃん、それは違うわ。亮くんは私の婚約者だから肌を許すのよ!」

 

「それは……でも、他の人ともそういうことをする軟派な人なんて……」

 

「須美ちゃんは亮くんのこと嫌い?」

 

「嫌いじゃありません。ですけど……」

 

 まるで姑か、娘を嫁に貰われる父親のような態度を見せる須美。 

 言ってはなんだが、確かに女性関係ではあまり良い評価は貰える気はしない。

 

 他の時代から召喚され新しく加入してきたメンバー含めて、勇者部の面々とは大なり小なり良好な関係を構築出来ている。

 基本的に紳士的な態度でいるからか避けられることはない。

 普段からの努力もあって、彼女たちからの信頼は得ているのは間違いない。

 ただ、悲しいかな。女性関係に関してはあまり信用が足りていないのだ。

 

「完璧な存在なんていないわ。そういう少しダメなところも含めて私は亮くんが好きよ」

 

「好きゅっ!?」

 

「もし悪化したらまた調教するわ。夫の手綱を握る、それが妻の務めよ」

 

「…………」

 

「……せめて人前では止めて下さい。未来の私がこんな風になるなんて思われたくないですから」

 

 不穏な言葉、交わした覚えのない婚約。

 そんな自分同士の会話を前に、まだ残っている勇者部の面々は変わりない。

 

「また始まったにゃあ。いや~加賀っちはモテますなぁ」

 

「……海は全てに寛容だが、浮気はやはりダメか」

 

「まあ私たちの時代的にはね。今はどうか分からないけど、人口問題とか諸々も含めて多分大丈夫じゃないかな」

 

「雪花」

 

「棗さん?」

 

「この前、亮之佑の話をしていたら若葉が急に顔を赤くしたのだが何か心当たりは無いか?」

 

「うーん。無いけれども察しはつくというか」

 

「察し。つまり、海が関連している?」

 

「あの~雪花さん、棗さん。さっきから何の話をしているんですか?」

 

「なんでもない。勇者部の暗黙の了解という奴だ、ペロよ」

 

「そうそう、私たちもそろそろ部長から頂いた依頼を終わらせないとね」

 

 西暦組の一部の者たちからはやや遠巻きにされている現状。

 年単位での付き合いがあると、互いの性格や能力などは見えてくる。外から見ている分には面白いけど自分は関わり合いになりたくない、というスタンスの者も多く此方に手だけを振って部室の外へと脚を進める者もいるのだ。

 味方などいない。依頼の達成の為に消えてしまったのだ。

 

「……そうだ、二人ともこの依頼を頼めるかしら」

 

「ほう」

 

 ふと、我に返ったのか紙に記載された依頼書を見せてくる東郷。

 その切り替えに閉口する須美は小さな手で受け取り、紙面に目を向ける。

 

「買い出しですか」

 

「そう、簡単な依頼よ。二人で行ってきてくれる?」

 

「……良いですけど」

 

「あれ、須美。そんなに俺と一緒に行くのが嫌なのか? ……俺、悲しいよ」

 

「いやっ、あのっ、嫌とかでは……」

 

「そっか。嬉しいよ、ありがとう須美」

 

「ぁ……」

 

 悲し気な顔を見せて否定の素振りを見せたら笑顔。

 先ほど握っていた東郷よりもやや小さな手を取ると、須美はかああっと顔を赤くする。 

 握手に照れたのか、白磁の肌には朱色が差す中で、彼女はそっと俯く。

  

「あの、ふ、不束者ですが……よろしくお願いします」

 

 

 

 +

 

 

 

 他人の家の風呂場というのはいつ来ても新鮮な物である。

 言うなれば結婚した相手の実家、その風呂場にいる夫の気分だろうか。

 その風呂場の一角で美しい嫁と致した思い出に浸るのも夫ならばよくあることなのか。

 

 広々とした浴槽には並々とお湯が注がれて、どこか檜の香りが漂う。

 どこか高級感の漂う場所は白い蒸気が辺り一面に広がりつつあった。

 

「急に雨が降るなんて……」

 

 買い出しを終えた直後だった。

 現地解散する直前に振り出した雨に、転んだ須美と荷物を抱えて東郷の家に向かった。そのまま自宅へと帰ろうとしたら、東郷に止められて風呂場に入ることになった。

 

 濡れたのは俺だけではない。転んで泥だらけになった須美もだ。

 放置しておけば風邪をひいてしまうだろう。だが彼女は裸で入るのに抵抗があるという。

 

 ──背後で扉の開く音がした。

 

「あの、し、失礼します」

 

 振り返ると水着の少女がいた。

 純白の水着はスクール水着と呼ばれる類の物。

 無地の生地は彼女の白い肌によく映えており、僅かに既視感を覚える。

 

「……寒いから扉閉めて」

 

「は、はい」

 

「ちなみにその恰好は?」

 

「えっと、東郷さんが着ていくように……、仲良くしなさいって」

 

 前方の鏡には羞恥を帯びた表情で恥部や双丘を腕で守る少女。

 そんな彼女が着用しているのは、俺が以前東郷にプレゼントした水着だった。

 微妙にサイズが異なるのか、豊かな双丘でも僅かにぶかぶかなそれは通常よりも肌を露出させている。ちょっとしたハプニングで簡単に脱げてしまいそうな、そんな頼りなさを感じさせる。 

 

「……くちゅ!」

 

「早くこっちにおいで。風邪ひいちゃうよ?」

 

「あ、あのっ、亮之佑さん。なんで裸で……、水着を着るって」

 

「風呂場は裸になるのは当然だろ?」

 

 突っ立ったままの彼女はくしゃみをし、既に幾分身体が冷えていることを示している。

 彼女の愉快な質問に答えながらシャワーヘッドからお湯を勢いよく出して背後に浴びせかける。

 

「わっ!? わぷっ、ぷっ、ちょ、やめて……」

 

「ほらっ、温かいだろ?」

 

「あ、温かいですから。やめてください。もう、子供じゃないんですから。髪まで濡れちゃった……」

 

「さっきの雨で濡れていたじゃん」

 

「それとこれとは別です! ひあっ!? またお湯を……」

 

 溺れたような表情で腕で顔を守ると頬を膨らませる少女。 

 怒ったような、笑っているような声を上げる彼女はシャワー攻撃に対して、やや緊張感が解れたのかゆっくりと歩み寄ってくる。

 純白のスクール水着がお湯を含み、柔肌を透かし始めていることにも気づかずに。

  

 白色の生地は薄く彼女の色白の肌を透かす。

 俺に文句を告げている間も、豊かな双丘の先端も、臍の形も、秘所も。

 裸よりもいやらしい、自らはしたない姿になりつつある彼女は気づかない。

 

 異性の裸を前にしてそんなことに気づく余力がないのか。

 翡翠色の瞳を羞恥に揺らす少女の手元に、石鹸を差し出す。

 

「せっかくだし、洗ってよ」

 

「わ、私がですか?」

 

「背中が届かないんよ」

 

「嘘をつかないで下さい! ……大体、私はこれでも殿方の身体を洗うなんて初めてで──」

 

「東郷さんはしてくれたんだけどな。須美にはまだ早かったな、ごめん」

 

「………わ、分かりました。洗うだけですからね。それだけですよ! それだけですから!」

 

 

 




須美と■ちゃんはどうしてこんなに人気なのか。


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第六話 開花

 俺にとって他人と風呂に入るという経験はあまりない。

 たまに行く銭湯では見知らぬ相手、或いは友人と共に入ることはあるが毎日という訳ではない。これまでに家族やそれに類する親族と共に風呂に入ることがある程度だ。

 

「そのっちともこうしてお風呂に入ることあるんですか?」

 

「まあ、中なり小なり、イチャイチャしているよ」

 

「イチャ……亮之佑さんは少しそのっちに甘すぎです」

 

「そうか~?」

 

「そうです」

 

 おぼつかない、稚拙な手の動きに思わず息を止める。

 見知った少女と同じくも、記憶にある物より少し小さく、不慣れな手つきだ。

 

「ご、ごめんなさい。あの、痛かったですか?」

 

「いや、大丈夫。くすぐったかっただけだから。東郷さん(小)」

 

「東郷さん(小)ではありません。私は、鷲尾須美です」

 

 気恥ずかしそうに年上の男の肌を触る少女は、しかし確固たる意志を示す。

 タオルもスポンジも使わず、乙女の掌を使った洗体作業は遅々として進まない。鏡越しに見える彼女は俺の反応一つに、男の肌に触れる度に顔を赤らめ、羞恥に目を伏せる。

 

「一応、本人じゃん?」

 

「本人ではありますけど……あまり認めたくないというか」

 

 スポンジを使うことを申請する彼女に却下を出す。

 肌が敏感だからという理由を告げると、見知った少女よりもやや小さな手を泡に塗れさせた須美は恥ずかしがりながらも、その性格故に真面目な表情を浮かべ俺の背中を掌で擦る。

 そんな優しい彼女も、未来の自分という存在に対してあまり好意的ではないようだ。

 

「東郷さんの事、嫌いなの?」

 

「嫌いという訳では……」

 

 肩甲骨付近を細い指が触れる。

 鏡越しに覗く純白のスクール水着を着た少女と目が合う。

 幼さが多く残る顔、その翡翠の瞳は俺の知る東郷と殆ど同じ物だ。洗うように肩を揉む黒髪少女と鏡越しに目を合わせると、しばらく無言を保っていた彼女は小さな唇を開く。

 

「見ていて恥ずかしいです。あんな風に人前で男の人と触れ合っていたり、友奈さんに対して目が無くてすぐに暴走する。友奈さんとちょっとでも仲良くなるとすぐに嫉妬したり……」

 

「ふーん」

 

「ふーんって……」

 

 長い黒髪を後頭部で纏め、白い首筋を見せる須美。

 下半身に目を向けないように努めているからか、仄かに頬を赤らめたまま、しかし会話するだけの余力は残っているらしい。

 吐息と共にペタリと背中に置かれた掌は柔らかい。

 

「いや、確かに東郷さんは面倒臭いし、放置すると暗くなるし、嫉妬しやすいからね」

 

「む。私は面倒臭くなんてありません!」

 

 きゅっと額に皺を寄せ、上目遣いになるように睨みつける少女。

 そんな反応を見せる彼女の態度は、同じ場面ならば余裕を見せるだろう東郷とはやはり異なる。ただ容姿としては大小の差こそあれ間違いなく同一人物であるのは間違いない。  

 

「でも、そんな東郷さんのことが好きだよ」

 

「え、あ……」

 

「大和撫子なところも、滅茶苦茶に尽くしてくれるところも、エッチなところも、勤勉で努力家なところも、凝り性で器用で美味しい料理を作ってくれるところも。悪いところも良いところも全部含めて、俺は東郷さんのこと好きだよ」

 

「────」

 

「もちろん、須美のこともね」

 

「ふぇぇ!? ……あっ、ああ、あの、あり、ありがっ、……ございまひゅ」

 

 途端に目を左右に泳がし顔を赤らませる少女の反応は素直で可愛らしい。

 挙動不審な動きを見せる彼女を見ながら、背中に置いたままの少女の手を取る。そのまま身体の前面に柔らかな腕を引っ張ると、自然に須美の身体が俺の背中に密着する形になる。

 むにゅりと背中で潰れる乳肉の感触は記憶にある物よりやや小振りながらも豊かさは健在だ。

 

「次はこっちも洗おうね~」

 

「あ、あの……前はご自分で、ひゃう!?」

 

 背中に密着させた須美の身体はじんわりと熱を持つ。

 男の肌に触るということを意識したのか、再び硬直する彼女の手を使い身体を洗う。

 肩から覗く赤らんだ顔を鏡越しに見ながら、胸板、腹と触れる度にビクリと震える少女の反応を楽しむ。身体を洗うだけの作業をこんなにも楽しいと思うのは久しぶりの事だった。 

 

「須美の手、柔らかくて気持ち良いよ」

 

「うっ、くっ、ぅ~~っ」

 

 腹筋に触れると指先を硬直させ、小さな声を上げる。

 少女の手という最上級のスポンジは柔らかく、それでいて肌に良い。

 吐息と悲鳴に近い声を上げる須美の顔は背中越しにもじんわりと熱を持ち、身体を震わせる。

 

「お父さんとか、こんな感じで男の身体を洗ったことある?」

 

「あ、ありません! こんな風に洗うなんて……!」

 

「そっか。じゃあ、貴重な経験を得たな。もっと触ろうね」

 

「あわわわ……っっ!!」

 

 無垢な少女の手に男の身体というものを教える。

 泡に塗れた指の腹で、掌で、背中に密着させた須美に身体中を触れさせる。

 

 時折、そっと彼女の手首を離すと、おずおずと左右に手を動かす彼女は飲み込みが早いのか自らの両手で男の裸体を洗い、水着に包まれた双丘を無意識に押し付けて、俺を愉しませる。

 好奇心か、男への興味か、黒髪の少女は吐息と共に指を動かす。

 

「上手だよ。飲み込みが早いね」

 

「……」

 

「須美」

 

「……えっ、あ、ありがとうござい……ます?」

 

「俺の身体はどう?」

 

「そ、その、ごつごつしていて、温かくて……凄いと思います」

 

 顔を赤くして呻き声を上げる少女に話しかけるも、本人の頭は回っていないらしい。

 潰れる胸肉越しに高鳴る心の鼓動と、冷静さを欠いた須美の細い指先は何かを躊躇うように腹部と胸板の間を行き来する。

 そんな奥手な彼女の態度は予想済みで、俺は無言のまま身体を動かす。

 

「きゃっ!」

 

 可愛らしい悲鳴が浴室に響く。 

 少女の肌に触れた訳ではない。背丈や体格の差がありながらも懸命に自らの身体で奉仕を忘れない愛国少女の正面に身体を向ける、ただそれだけなのだ。

 肉棒は洗われることを切望し反り立つ姿を無垢な少女の瞳に焼き付ける。

 

「な……ぁっ、っ!」

 

 パクパクと金魚のように薄い唇を開閉させる。

 耳まで赤くして慌てて顔を背ける須美、その顎を掴み正面に向けさせる。

 かあああっと可哀想な程に朱に染まった顔の少女に雄竿を見せつけて一言、告げる。

 

「洗って」

 

「は、ぇ」

 

「ちゃんと洗わないとダメだろ? 隠してても興味津々なのは知ってるから」

 

「きょ、興味なんて……!」

 

「凄いチラチラ見てるじゃん」

 

「み、みみみ見てませんっ!!」

 

 薄目で此方を見る彼女が俺の言葉に誘導されて男根に目を向ける。

 腹から垂れる泡が肉棒を一部コーティングし、タイルに垂れ落ちていく。 

 後ろを向いて、赤らんだ顔を隠すように俯く白いスクール水着を着た彼女の手を握る。ビクリと小さく震える小動物のような少女の形の良い耳に安心させるように囁く。

 

「須美は良いのか? いずれ夫婦になる者同士、裸くらいは見慣れないと」

 

「ふう、ふ……?」

 

「そうだよ。ほら、両手を使って」

 

「……ぁ」

 

 泡に塗れた柔らかな手を怒張で包み込ませる。

 どこか熱に浮かされたような表情で、ゆっくりと上下に擦り始める少女。

 小さく呻きながらも、奉仕の精神は既に芽生えているらしい。

 

 ぎこちなさのある、おぼつかない手の動きで竿をしごく。

 本人としてはただ洗っているだけなのか、須美はさほど上手くない手淫を繰り返す。

 

「……」

 

 見知った、しかし記憶にある物よりも幼さが目立つ顔。

 鼻息を肉棒に吹き掛ける彼女は口数を減らし、甘いもどかしさだけが残る。

 

 反り立つ肉竿をしごき、亀頭を指で触る。

 小さく息を漏らす少女はぼんやりとした表情で、時折チラリと俺に目を向ける。

 

「須美」

 

「………はい」

 

「今、自分が何をしているか分かる?」

 

「……洗っています」

 

「何を?」

 

「……亮之佑さんの、その、大事なところを」

 

 純白の生地越しに柔らかな腹部が吐息と共に動く。

 自分がしていることを意識する彼女の首筋を湯の粒が伝う。

 

 肌に張り付いた水着は人前には見せられない。

 はあ、はあ、と呼吸を乱しつつも、怒張を拙く刺激する少女の白皙の肌は薄い生地越しに透けている。幼い顔に似合わず、豊かな双丘の形や薄いピンク色の先端も窮屈な生地の中で揺れ動く。

 

 いっそのこと全裸ならば、卑猥さは少なかっただろうか。

 奉仕することに夢中で羞恥から目を背ける彼女は自らの痴態に気づけない。美しい深緑の瞳は微かな情欲を孕み、俺の身体と顔にのみ交互に向けられていた。

 仄かに頬を赤らめながらも、奉仕に悦びを見出す姿は既視感を覚える。

 

「ぁ」

 

 何度目かの上目遣い、そして羞恥に目を伏せる。 

 そんな淑女のような態度にもどかしさを覚え、顎を掴み持ち上げる。 

 

「──! ………」

 

 見つめ合うと少女の唇がきゅっと結ばれる。 

 小さく喉を鳴らす彼女は瞳を数多の感情で揺らし、観念したように瞼を閉じた。

 

「……っ、……ん……」

 

 そっと唇を重ねる。

 甘いものが混じる鼻息。

 

 抱き寄せた身体は小さく、しかし胸板に押し付けられる双丘は豊かだ。 

 薄く開いた瞳は戸惑いと羞恥と淫熱が籠り、底知れぬ熱と闇を秘めた表情を浮かべている。 

 ──見慣れた、どこかで見たことのある表情だった。

 

「なあ、須美」

 

「なんれすかぁ……亮之佑さん」

 

 艶やかな唇を離し、酩酊したような眼差しを向ける須美に話しかける。 

 どこか呆けたような表情は、以前友奈たちが勇者部の少女たちにマッサージを行い、身体と意識をふにゃふにゃにさせられた時の物に似ている。

 

「風呂場で水着って変だからさ、脱ごうか」

 

「そうれすか……?」

 

「そうだよ。普段の疲れを落とす為には不要だからね。俺も裸だけど二人で裸になれば恥ずかしくないから」

 

「ん……。そうれすね……、わかりました」

 

 虚ろな表情を見せつつある彼女は首肯を見せると、自らの水着に手を掛ける。

 明らかに背丈が合っていない水着はゆるゆるで横から見ると雪肌の露出が多い。水を吸ったスクール水着は張り付いており、脱ぐのが大変そうだ。 

 これは手伝わなければと使命感を発揮した俺は、水着の肩紐を掴み下へ引っ張る。

 

「んっ、ぁ……っ!」

 

 葡萄の皮を剥くように、少女の上半身が裸になる。

 ぷるりと揺れ動く乳房は微細な汗が光で浮き、乳頭は僅かに硬く尖っている。

 

 そっと乳房を腕で隠そうとする須美の腰は既にくびれが見え始め、将来のスタイルの良さが見え隠れしている。そのまま水着を脱がしていき、下腹部、生え始めたばかりの恥毛と色素の薄い秘所、艶やかな太腿と生まれたままの姿を彼女は見せる。

 生まれたままの姿になった少女は、既に女性としての美しさといやらしさを兼ね備えていた。

 

「ほら、座って」

 

 秘所と胸元を隠すポーズをする少女の手を引く。

 椅子に座り、更に年端もいかない黒髪の少女を俺の膝の間に座らせる。

 

「あ、あの……当たって」

 

「ん~? ほら、須美も綺麗に洗おうね」

 

 小さな少女の声に耳を傾けることはない。

 大人しく肉椅子に座った須美を洗う為、俺の両手は既に泡に塗れていた。

 

「私は別に手ではなくても……ひゃあ!?」

 

「静かに」

 

 長い髪を纏めている須美は鏡越しに俺を一瞥する。

 つるりとした背中、薄い腰、弾力的な尻、そしてしっとりとした乳房。

 将来性が高い十代の少女の胸は思わず鷲掴みしてしまうのも仕方ないだろう。

 

「ゃん……、あ、あの……んっ」

 

 くすぐったがることも、笑いだすこともない、少女の反応。

 水風船のように柔らかい胸肉、その膨らみの先端付近を指の腹で撫でると少女は小さく息を漏らし、僅かに身体を強張らせる。

 鏡を前に脚を開かせるとその奥の媚肉が映り込み、羞恥に揺れる翡翠の瞳。

 

「やっぱり重かったりする?」

 

「えっ? そ、そうですね……。今みたいに凄く視線を感じたり、不便に感じたりします」

 

「クラスじゃ一番大きいだろ?」

 

「そうですけど……んッ、自分だけ成長が早いみたいで、あまり好きじゃないです」

 

「大は小を兼ねるという。今の台詞さ、今度樹に言ってみてよ」

 

「樹さんは……風さんを見ている限り大丈夫だと思いますよ。………ぁ」

 

 鏡の中で俺と目が合い、須美の頬が更に色づく。

 そっと目を逸らす彼女の肉体を後ろからそっと抱き締め、胸板を小さな背中に密着させる。

 乱れる須美の鼓動がよく聞こえ、押し付けた肉棒に尻肉が弾力を返す。

 

「ん……」

 

 小さく息を漏らす少女の柔肌を洗う度に羞恥と興奮の朱色が差す。

 乳房を洗い、腹部を洗い、鼠径部を伝い、少女の秘所へ。

 

「ぁっ」

 

 ぬめるその場所を指で撫でると須美の吐息が漏れ出す。

 浴室に声を響かせ、鏡に映る脚が曲がっては伸びる。

 

 きゅっと唇を結んだ少女の目が閉じられる。 

 太腿を閉じて秘所への侵入を阻み、それでも触れようとする腕を掴む。

 

「あ、あの……」

 

「ん~? ここも綺麗にしないとね~」

 

「ひぅっ……」

 

 当たり前だが東郷と須美では身体の成長も異なる。

 腕の細さ、双丘の大きさ、顔の幼さ、柔和さの足りない性格。

 

「ここをトントンってされるのが好きでしょ。知ってるよ」

 

「っ……ぁ……これ、ちがっ」

 

「こうやって洗うんだよ。ちゃんと覚えようね」

 

「や、や……! こんなのっ、しらない……!」

 

 たとえ記憶があっても無くても、身体は同一の物なのだ。

 そうして少女の未来にいるであろう東郷と身体を重ねた俺にとっては、須美自身よりも彼女の性感を、肉体が悦ぶ場所とその奉仕方法を知っているのは当然のことだ。

 

 秘所から溢れる蜜は徐々に増していた。 

 親指と人差し指で秘裂の縁を上下に動かし、小さな肉芽をくりくりと刺激する。

 

「は……っん……!!」

 

 僅かに背を反らし、結ばれた口が小さく開く。

 粘ついた唾液が唇に糸を引き、熱い呼気が湯舟の蒸気に混ざる。

 

 須美の上半身がぴくぴくと跳ねる中、指で乳首を挟みこねる。

 円を描き、突端をくりくりと刺激して、最後に指の腹で転がす。

 

「ここを触った後に、ここを押されるのが好きだよね」

 

「んあッッ……なんで、ぇ……っ!」

 

 切なげな表情、俺を見上げる翡翠の瞳には涙が浮かんでいる。

 腰が僅かに前後に動き、逃げるように或いは快楽を求めるように小さく震える。

 

 身体から力を抜き、俺の肩に少女の小さな頭が置かれる。 

 結った髪の甘い香りと冷たさを感じながら、絶え間なく陰核を刺激し続ける。

 

「ぁ、あ……っ、ぁ! ヤダっ……ダメぇ……!」

 

 俺の腕を掴む力は強い。

 首は赤らみ、拒絶するように小さく頭を振る。

 

「ゃ……ぁ……」

 

 虚像の須美と目が合う。

 泡に濡れた肌、自らの恥丘と胸の突起を背後にいる男に弄ばれる少女の痴態に、瞼を閉じるも切れ切れの吐息を至近距離で漏らす。

 全身が小刻みに震え、くちゅくちゅと淫水の音が聞かせながら陰核を弾く。

 

「~~~~~ッッッ!!!」

 

 閉じていた両脚は開かれるとタイルに爪先立ちとなった。

 身を震わせる須美の腰がかくっ、かくっと上下する。

 

「ぁ、は……」

 

 須美の吐息。

 俺の肩に頬ずりをし、身体を預けて法悦に浸る少女。

 甘い声と長く浅い呼吸を繰り返す姿は、俺の知る東郷と重なる。

 

 ノズルをひねり、シャワーヘッドからお湯を流す。

 湯雨が泡を流し排水口へと流れていく中で、絶頂の余韻に震える少女に囁く。

 

「……気持ち良かった?」

 

「…………」

 

 甘く虚ろな表情を浮かべている須美。

 雪肌を水の粒が流れていく中で、チラリと此方を見ると小さく頷く。

 

「……これ以上のエッチなこと、しちゃう?」

 

「………えっちな、こと」

 

 この年頃でも既に知識としてはあるのだろう。

 早熟なのか、それとも須美の知識が豊富なのか。

 

 脱力した彼女を抱きとめながら身体を洗いつつ、返事を求める。

 内股になる須美の恥部を指で弄び、湯気に包まれながら沈黙が裂かれるのを待つ。

 

「……」

 

 雨の中で解れる黒髪。

 須美は何かを呟いた。

 シャワーの音で聞こえず少女の口元に耳を傾けると、

 

 

「──亮くん」

 

 

 コンコン、と浴室の扉を叩く音がした。

 思わず黙り込む俺と須美を余所に、目の前の少女が成長した声が耳に届く。

 きゅっと俺の腕を掴む少女の肌は上気し、目元はとろんと蕩け、唇は柔らかく濡れている。

 

「少し長湯のようだけど、大丈夫?」

 

「ん。ああ、大丈夫だよ。もう少ししたら上がるところ」

 

「そう。なら、上がったらご飯にしましょう?」

 

 息を止める。

 足音が聞こえなくなるまで息を止めて、そっと吐く。

 

 シャワーのノズルを止める。

 湯雨が止み、乱れ濡れた髪をした少女と見つめ合う。

 

「……」

 

「……」

 

 どちらからともなく、俺たちは唇を寄せた。

 

 

 

 +

 

 

 

「美味しい?」

 

「ああ。東郷さんの作ったうどん、美味しいよ。美味すぎるっ!!」

 

「ふふっ、そう言って貰えると嬉しいわ」

 

 須美と湯舟に浸かり百秒。 

 何もなかったということにして浴室から出た俺と須美。

 

「隠し味は愛情です」

 

 両手でハートを作って見せる東郷の夕ご飯、プロ仕様のうどんだ。

 菊菜のおひたし、焦がしにんにくと唐辛子を入れたタレで炒めた豚肉と細部への拘りを感じる。実に美味なそれを食した後、少し眠くなってきたと小さく欠伸をした須美はそのまま東郷の部屋に連れて行かれる。きっと疲れたのだろう。

 時計を見ると夜も深まりつつある時間帯になっていた。

 

「東郷さんのご飯は本当に美味しいな。今度は俺も何か作るよ」

 

「良いのよ、そんな……。あなたが喜んでくれるだけで」

 

「何かないの? 出来る限り頑張るよ」

 

「そう?」

 

 思い返すと俺と須美でうどん以外の献立が微妙に異なっていた気がする。

 どれも美味しかったと語彙力の無い己を悔やみつつ、一つも残さずに食べ終えて。

 

「そういえば……食べたい物があるのだけど」

 

「ほう。美食家な東郷さんが食べたい物ですか。用意できるかな」

 

「美食家じゃないわ。それに、亮くんだからこそ用意出来ると思うから」

 

 普段よりも熱っぽく感じる俺の身体を抱くのは和服の似合う美少女。

 人目が無いからか、スキンシップの激しい彼女はどこか艶やかな眼差しを向ける。

 

「……」

 

「……」

 

 その視線は熱を帯びていて。

 気が付くと、身体の下腹部がじんわりと熱く感じた。

 

 

 



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第七話 見せるだけ、渡さない

 ──年頃の男女が一つ屋根の下で情事に励む。

 それを本来は妨害するであろう東郷の両親だが、大赦提供の夫婦旅行で家を空けている事は東郷の口から聞いている。あるいは、こういうことをするという事を理解しているから家を空けたのか。

 

 どのみち世界を裏から牛耳っているだろう組織が関わっていないとは思わない。

 こうして据え膳食わぬはと用意された舞台が偶然なのか、必然なのかは判断がつかない。

 だが、裏で大赦が動いているかどうかなど、目を潤ませた浴衣姿の少女を前に吹き飛ぶ。

 

「────」

 

 俺に抱擁をして、抱擁を求める東郷は唇を離そうとはしない。

 ついばむようなキスを繰り返し、些細な事など考えるなと唇を押し付ける。

 私を見ろと、私のことだけを考えろと、舌を絡ませる濃厚なキスをする。

 

「──ンっ、ふ………ぁ」

 

 彼女の着用している薄紫色の朝顔模様が施された浴衣の生地は柔らかい。

 その生地から覗く鎖骨は白く、触れる肌は柔らかく、瑞々しい唇を差し出す少女。さらりと揺れる黒髪は絹のようで、翡翠色の瞳は熱を孕ませながら一心に俺を見続ける。

 

「ん……」

 

 瞼を震わせて薄く開いた瞳。

 その奥に宿るのは薄暗い部屋の中でも隠せぬ女の情欲だ。俺を見つめる双眸は薄く開かれ、どこかへと行かないように俺の浴衣の端を小さく握る姿は、いじらしさと儚さがあった。

 キスの度に曖昧に薄く微笑む黒髪の少女に白磁の肌は良く映えた。

 

 両手で触れた少女の頬は柔らかい。

 餅肌は滑らかであり、ふにゅりと弾力を返す。

 

「ふふっ……どうしたの?」

 

「柔らかそうだなって。触っても?」

 

「もう触ってるじゃない。……いくらでも触っていいのよ」

 

 くすぐったそうに眦を和らげて、小首を傾げて告げる声音は柔らかい。

 愛おしさと嬉しさを混ぜ合わせた笑みが俺の手の中で咲く。もちもちとした肌を掌で楽しみ、自らの肌を無抵抗に男に弄ばれる少女と戯れる。

 彼女の自室、布団の上で正座を崩し、浴衣越しに俺の手に自らの手を重ねる東郷。

 さらりと垂れる黒髪が手の甲をくすぐる。

 

「くすぐったいわ……」

 

「凄いモチモチしてる」

 

「これでも日頃から努力を怠ってないから。……今日の手は冷たくないのね」

 

 身体の熱をそのままに、手を引かれ連れ込まれた先にある東郷の自室。

 見慣れた和洋折衷な部屋で、しかしベッドではなく畳の上に敷かれた布団は二組。

 

 一組は俺と東郷の尻に敷かれている。

 そしてもう一組の布団には黒髪の少女があどけない寝顔を見せていた。

 

「そんな顔しなくても、須美ちゃんなら起きないから。大丈夫」

 

「根拠は?」

 

「大丈夫」

 

 根拠は教えてくれないらしい。

 チラリと目を向けると、すやすやと眠る少女は腕を伸ばせば届く距離に横たわっている。

 夢を見ているのか、或いは深い睡魔に意識を刈り取られたのか瞼を開くことはない。

 浴衣越しに腹部が規則的に上下するのを確認したのは一瞬だった。

 

「んー……はむ──」

 

 薄暗闇に咲く絶世の美少女がそっと俺の手を取る。

 そうしておもむろに、しかし躊躇いなく人差し指をパクリと口に含んだ。

  

「っ」

 

 湿った口内は熱く、ぬめっている。

 チロチロと舌先が俺の指先を歓迎し、少女の歯がそっと指を噛む。

 甘噛み、少し痛いと思わせる絶妙な力加減に東郷の噛む力がどれほどか教えられる。程よい痛みが癖になりそうになりながら、左右に揺らすように動かす指に少女の鼻息がくすぐる。

 

「私の噛む力、覚えてね」

 

 指が蕩けそうな舌先に絡め捕られる。 

 東郷の口の中で、艶めかしい舌が蠢き、指を噛む力は痛く、気持ち良い。

 思わず息を飲みながら口内から引き抜くと、指に残った余熱に名残惜しさを覚える。

   

「────」

 

 たかが指、指だけでこれなのだ。

 チラリと俺の下腹部の膨らみに目を向けた東郷が、ほう、と熱い吐息を漏らす。

 一途に身も心も捧げんとする浴衣の少女は蕩けた女の表情をしていた。

 

「もう硬いね……」

 

「そうだな……」

 

「もっと気持ちよくしてあげるね」

 

 彼女は恭しく俺の前に屈みこむ。

 風呂の着替えに彼女が用意した紺色の浴衣は脱がしやすく、ぶるりと飛び出した硬い肉棒をうっとりと見つめる。

 散々焦らされ続けた剛直は萎えることを知らず隆々と反り立っている。

 

 くん、と亀頭に鼻を近づけ雄の香りを嗅ぐ行為。

 雄の香りを楽しみ、慎ましやかに口を開いた東郷は肉棒を頬張る。

 

「っ」

 

 太腿に手を置く彼女の口腔に怒張が沈む。

 ぬめる肉の感触は亀頭、傘裏、竿と唾液を馴染ませていく。酩酊したように目元を緩ませている彼女の頭が上下に動き、咄嗟に少女の頭を包むように手を添えた。

 さらりと揺れる黒髪の感触すら少女の奉仕の一つに思えた。

 

 ゆっくりと顔を前後させる東郷は、鼠径部に手を置く。

 ん、ふ、という少女の鼻息に、俺は東郷の頭を軽く撫でた。

 

 チラリと俺を見上げる翡翠の瞳に征服感を覚え、東郷の頬に差す朱色が色濃くなる。

 柔らかな髪の感触を感じながら、肉茎を吸う度に俺は思わず吐息を漏らした。

 

「んぷっ……ん、ちゅ……、亮くんの、美味しい」

 

 少女は唇を肉茎の至るところに降らせていた。 

 唾液と先走りで濡れた竿肉を手でしごき、丹念に亀頭を吸う。

 ちゅぽっと唇から離した怒張は東郷の頬を叩き、唾液と先走りの混ざり物が少女を汚す、そんな視界の暴力に思わず目を閉じると、俺自身の心の鼓動が聞こえた。

 

 置かれた掌に頭を押し付けるように黒髪を揺らし、東郷は愛おしむように口腔奉仕を続ける。舌先で竿裏を掬い上げ、腰を引かせようとすれば腿をつかみ、逃がすまいとする。

 陰嚢をやわやわと手で撫で、陶然とした表情で亀頭を頬張った。

 緩急のある刺激は俺の限界を見極めて、的確に俺の意識を消し飛ばす。

 

「くっ、ぅっ……!」

 

 身体の奥からあふれ出す快楽に奥歯を噛み締める。

 熱い精液が先端から迸り、東郷の口内へと注がれていく。

 

「んんっ──、ん………」

 

 少女の口内を、雄汁が汚していく。

 射精の衝動に思わず掴んだ頭に反応を示さず、東郷は瞼を閉じて嚥下する。

 こくんと喉を鳴らし、静かに、一滴も余すことなく飲み干していく。

 

 射精したての亀頭を舌で清め、唇で愛情を込めたキスを肉棒に捧げる。

 薄く目を開けた彼女は目だけでこう告げた。

 ──ごちそうさま、と。

 

「────」

 

 東郷に捕食されて、それでも己の怒張が萎える様子はない。

 食事に何かを盛ったのだろう、身体の奥の熱は未だに健在だ。

 どこかうっとりとした表情を見せる彼女の姿に肩を掴もうとして、逆に腕を掴まれる。

 

「今日は私が攻める日よ」

 

「そんな日があったっけ?」

 

「今作ったわ。いつも亮くんばかりでズルいから」

 

「東郷さんが悦ぶ姿を見たくて」

 

「いじわるしたいだけでしょ」

 

 彼女は力が強く、布団に押し倒されたのは俺の方だった。

 身体の背面に感じる布団の柔らかな感触、俺の腰に馬乗りになる少女は主人を押し倒した非礼を詫びるかのように目を伏せると自らの浴衣の帯をしゅるりと解いていく。

 

 薄青の浴衣、腰に巻かれた帯を少女はゆっくりと解く。

 街ですれ違えば百人中百人が振り向くであろう美少女が自ら浴衣を脱ぐ。

 

 紺色のそれを外し、前面が僅かにはだけると少女の肌が見える。

 東郷は下着を何も付けていなかった。

 浴衣の前面を僅かに開いたところで甘い匂いが鼻腔を擽った。

 

 カーテンのように浴衣が広がる中、雪肌の景色が視界に映る。

 白い鎖骨、薄い生地越しに主張していた乳房は丸みを帯びていた。

 曲線を描く細い腰と、程よく脂と肉の乗った腹部。

 下腹部に生える黒色の茂みと、その奥で薄く濡れた媚肉で肉棒を押し倒す少女。

 

「ん……は……っ」

 

 両脚を大きく広げた、はしたない姿。

 むっちりとした尻肉が俺の上で弾力と共に形を変える。

 上から押し付けられた媚肉は透明な滴を腿に垂らしながら肉棒に熱さを伝える。  

 

「……見て」

 

 自ら浴衣をはだけさせた少女を下から見上げる。

 思わずなだらかな東郷の乳房、その肉を下から持ち上げ生乳の感触を味わう。

 

「おっきい」

 

「……こんなの、重いだけで良いことなんてあまり無いのよ」

 

「俺を喜ばせるためにあるんだろ」

 

「そんなわけないでしょう……ばか」

 

 確かな質感と重量が掌に広がる。 

 すべすべの肌は汗で湿っていた。

 

「下着もあまり可愛いのが無いし。変に注目を浴びるし……」

 

「東郷さんが綺麗だからだよ」

 

「もう……、そんな風におだてても何も出ないわよ」

 

 白い果実、その先端は硬さを帯びていた。

 ゆっくりと乳首の周縁をなぞると東郷の口から切なげな吐息が漏れる。

 

 帯のほどけた浴衣はまだ肩に引っかかっている。

 豊かな乳房の下で腹部が収縮し、臍の辺りに汗が溜まっていく。

 

「ぁっ!」

 

 腰に乗る彼女が身動ぎする度に陰唇部と肉竿が擦れ合う。

 その刺激に喘いだ東郷は乳房を揺らし、俺の肩に手を置き小さく喘ぐ。

 

 自らの乳房を差し出すかのような姿勢に口を近づけ、乳房を吸う。

 汗とミルクの風味を舌で感じ取りながら、ちゅぱちゅぱと口に含む。

 

「は……ッ」

 

 赤子のように乳首を吸う。

 痕を残すように甘噛みをする。

 背筋をぴんと伸ばし、小さく身を震わせる東郷。

 

「ん、ん……!」

 

 もどかしそうに腰を前後させる度に新たな蜜で濡れた媚肉と亀頭が擦り合う。

 情熱的に、自らのペースで自慰に耽るように腰を揺すると彼女は甘い声を上げた。

 熱い吐息と共にゆっくりと腰の動きを加速させていく東郷と目を合わせると、自らの行いに羞恥を覚え顔を背けながらも、新鮮な蜜を溢れさせる蜜裂が肉棒を味わう。

 

「りょう、くん……」

 

 吐息と衣擦れ音と遠くに聞こえる小雨の音。

 小さく呻く女の呼び掛けに身体は熱と共に応える。

 

 怒張は少女の陰唇からの奉仕により反り立っていた。

 それを見下ろす少女、その翡翠色の瞳の奥には淫熱が揺らめいている。

 

 陶然とした表情を浮かべた彼女はゆっくりと俺に倒れ掛かる。

 きゅっと目を閉じた少女は鎖骨付近を唇で吸いながら、腰を前後に動かす。

 腰を両腿で挟み込みながら、汗を伝わせ、頭を振る。

 

「ぁ、ぁ、あぁぁ……!」

 

 糖度を増す声の持ち主は下にいる俺を忘れたかのようだ。

 髪を纏めるリボンを揺らし、恥丘を浅ましく肉棒に擦り続けて、

 

「ィ、ぅ~~~~ッッ!!」

 

 短く静かな嬌声。

 俺の肩に頭を預け、そのまま軽く肩を震わせる東郷。

 

 瞼の裏に見るのは法悦だろうか。

 俺にぴたりと身体を重ね、顔を蕩けさせた少女の顔に目を向け。

 少しだけ、なんとなしにその奥の方へ眼を動かす。

 

「────」

 

 須美が起きていた。

 あどけない顔は淫香に惑わされたかのように朱を差している。

 性行為に耽る俺と攻め立てる彼女を見るように此方に身体を向け、見開く翡翠の瞳。

 

 ──目が合った。

 

「……ぁ」

 

「……」

 

 少し悩んで、知らないふりをした。

 小さな観客に反応は返さず、乳房を押し付ける女の滑らかな背中を撫でると、愛おし気な表情で首筋に唇を押し付け、ゆっくりと上半身を起こす。

 

「んぅ……」

 

 少女がやや大胆に脚を開く。

 蜜が薄く流れる色づいた秘所に、肉棒の先端が触れた。

 

 ぬぷりと男根が少女の膣に飲み込まれていく。

 ゆっくりと、しかし止まることなくぬめる媚肉を割り拓く感触。

 

「っぁぁ……!」

 

 甘い悲鳴に東郷の身が揺れ、軽く背中を反らす。

 乳肉を揺らすも、快楽を逃がさないように細い腰を掴み、串刺しにする。

 

「ひ、ぅっ、ぁ、はっ……!」

 

 直前に絶頂に達した媚肉は貪欲さを増していた。 

 勝手に怒張を使われたことでこちらも随分と高まっている。

 

 今更淑やかにゆっくりと腰を振ろうとする大和撫子に、一気に腰を突き上げる。

 乳房を握り、甘く虚ろな表情を浮かべている少女の尻が軽く浮く。

 

「やぁぁぁあッッ───!!」

 

 部屋に響く涙混じりの嬌声。

 乱暴に乳頭を刺激し、快楽を得る為の一方的なピストンで思考を崩す。

 

「ゃっ、ま……ッ、私がっ……うごくって、ぁんっ! あッ、ぁ、はぁぁ……っ!!」

 

 唇の端から垂れる涎。 

 目を閉じ切なげな表情の女の横顔を、ジッと見つめる少女。

 

 どこかへと逃げようと腰を浮かせる。 

 涙を目端に浮かべる少女を捕まえて奥まで貫く。

 

「ゃ、ぁ……くぅぅっっ!!」

 

 甘い悲鳴を響かせて、しかし奉仕への喜びを忘れていないのか、濡れた髪を振り乱し、少女の腰が左右に揺すられる。その動きに蜜壺が肉竿から子種を搾ろうと引き締まる。 

 そんな彼女の抵抗に歯を食い縛り、腰を突き上げる。

 

「ぁ、ぅあぁ、ぁ……ッッ!! ぁぁっっ!!」

 

 じゅぶっ、じゅぷっと蜜が跳ねる。

 結合部からは淫らな水音を響かせて白濁した小さな泡が陰毛を濡らす。

 

 ぱんぱんと肉が肉を叩く。

 首を横に振り、絶頂が近いのか全身を小刻みに震わせる。

 

「りょ……くん。すき……」

 

 開かれた脚も伸びては曲がり、俺の腰を必死に挟み込む。

 俺は突き上げる動きを止めず彼女も自ら腰を振ることを止めない。

 獣の交尾、快楽を求めあいながら、一人の観客を前に互いの身体を貪り食う。

 

「すき……すき……」

 

 酩酊した瞳を揺らす東郷。

 余裕の無い呼吸の合間に告げる「すき」という言葉がふにゃふにゃになるまで。

 

「すき……りょうのすけ……」

 

 嗚咽に似た呼吸。

 涙を瞳に浮かべ、卑猥な結合音だけが大きくなる。

 しばらくして「すき」が「しゅき」になる頃に俺を抱く東郷の全身が強張った。

 

「~~~~ッッッ!!!」

 

 パクパクと開閉する東郷の唇を奪う。

 しょわわっと結合部を濡らす淫水が腿を伝う。

 肩に爪を立て、声も出ないほどの強烈な絶頂に、俺も限界を迎えた。

 

 白濁が勢いよく噴き出す。

 独特の弾力のある尻肉を掴み、最奥に押し付けた肉棒から子種を注ぐ。

 

 天にも昇る快感を覚えながら東郷を抱きしめる。

 どく、どくっと膣襞の一つ一つを精液が汚していく。

 

 たっぷりと余韻に浸り、ゆっくりと竿を抜く。

 ぐったりとした彼女を横にすると、媚肉からとろりと垂れる白濁を見届ける。

 東郷は俺の肩に顔を預け、満ち足りた呼吸を繰り返している。

 

 窓の外は随分と暗く雨音だけが小さく聞こえる。

 殆ど半裸に近い恰好で抱き合っているが、既に蒸し暑さを感じるこの季節ならこのまま寝ても問題ないだろう。

 

「────」

 

 目の前の黒髪に鼻先を突っ込みながら目は少し遠くに寝転がる観客に向ける。

 薄暗闇の中で赤らんだ顔は熱でもあるのか、ぎゅっと閉じた瞼は震えている。布団に横たわった少女の浴衣は僅かに乱れ、毛布の下で身体を小刻みに震わせて脚を曲げたり伸ばしている。

 薄く開いた目は潤み、口元が緩みかけてはきゅっと結ばれていた。

 

 異性に痴態を晒したくはなく、しかし身体は耐えられない。 

 甘く熱く濡れた吐息を漏らしながら、彼女は、須美は一人で慰めていた。

 

 可哀想に。

 一人で慰めるくらいならば、助けてあげよう。

 

「だめよ」

 

 そんなことを思う俺に、掛けられる声。 

 快楽に淀んだ呼気を、肩に頭部を乗せた東郷の呼吸を身近に感じる。

 

「……だめよ。そんなのだめ」

 

 くすぐるように耳元で囁き、胸板に豊かな肉果が押し付けられた。

 想像を絶する柔和な感触と同時に、少女が乳房を軽く揺さぶる。

 

「見るだけならともかく、触れるのは許さない」

 

「りょうのすけは、私の──」

 

「昔の人でも、『私』でも──」

 

 ぼそりぼそりぼそりと呟く独り言が耳元で囁かれる。

 

「私以外の女の子に関心を向けるくらいなら……」

 

 彼女は細い指を肉竿に巻き付けるように握る。

 ぐちゅっと吐精したての竿を握り、ゆっくりと上下にしごき始める。

 

「……全部、私の中に出して」

 

 俺を見つめる瞳は妖しげな翡翠色だった。

 抱きしめ、抱きしめられた白い身体は滑らかでひんやりとしていた。

 

 ──裸で寝ても問題ない、暑い夏が近づいていた。

 

  

 



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第八話 秘密のかくれんぼ

「へーい、かくれんぼしようぜ〜!!」

 

 全ては乃木園子、彼女のそんな言葉と共に始まった。 

 讃州中学校の廊下は走ってはならない、そんなどこの学校にも大なり小なり似通ったルールが存在するだろうが、実際には休み時間になると鬼ごっこをして衝突する事故は往々にしてある。

 

 衝突したら危ない。でもみんなで和気あいあいと遊びたい。ではどうするか。

 走らなければ良い。サーチ&デストロイだ。

 

「どこでするの?」

 

「もちろん、学校でするんさね~。範囲は校舎内のみで外には出ない。暑いからね。あと、かっきーもいるからトイレや更衣室は禁止。鍵の掛かった準備室とかもダメってことで~」

 

「わぁ~! 面白そう! やってみたいな!」

 

「……ふふっ、そうね友奈ちゃん。そう思って既に皆を呼んでいるわ」

 

「学校もお休みで人もいないからね~。勇者部の月次イベントは本気を出さねば!」

 

「園ちゃん、今日はガチなんだね!」

 

「ふっふっふ……。遊びだろうと本気出す。それが人生を楽しく生きるコツなのだぜ!」

 

「あんなことを言っているけど……、止めなくて良いの」

 

「まあ、今までの園子ズによるイベントに比べたら健全なものだろう……。それに、アレはもう何を言っても止まらない。そういうパターンだ」

 

「今日の若葉ちゃんは悟り若葉ちゃんですね」

 

「ん~、取り敢えずあんまり熱くなりすぎて怪我だけはしないようにね。部長との約束よ」

 

 そんなこんなで決行されるイベント。

 この異世界に呼び出されて構成人数だけは増えた勇者部、しかし部室は狭いままだ。

 日々、バーテックスとの闘いを繰り広げ、そして奪われた領土を取り戻す。そんな闘いの日々の中で互いを知り、普段の生活や交流を増やすことで、お互いの仲を深めていく。

 そういった催しを行うと決まったのは少女たちの性格を考えると自然だった。

 

 最近は園子がイベント係のようになった勇者部による勇者部の為だけの楽しいイベントは各々のバースデーパーティーに始まり、釣り、花火、山でキャンプ、海でバーベキュー、紅葉狩り、ハロウィン、雪合戦と飽きることなく様々な内容を繰り広げてきた。 

 そんな定期的に開催されるイベント、今回は『かくれんぼ』らしい。 

 

「せっかくだから、見つける側が見つけた人に対してなんでも好きなことを一つ実行出来るみたいな罰ゲームがあると盛り上がると思うんだよね~。ほら、わっしー、ゆーゆを捕まえた後のことを想像して……鼻血出し過ぎだよ~」

 

「千景さんはこういうの得意そうっスね!」

 

「……そうね、まあ、スニーキングはゲームでも得意よ」

 

「スニーキング? なんスかそれ! 響きからしてなんか格好良さそう!」

 

「今度一緒にしましょうか」

 

 制服が夏服になったとはいえ、勇者部の密集具合は凄まじい。

 可憐な少女たちで構成されている中に紛れた黒一点としてはちょっと動くだけで誰かと触れ合える環境を喜ぶべきだろうが、しかし暑さには勝てない。

 

「一応制限時間を設けるってのはどう? 九十分ぐらいで良いんじゃない?」

 

「良いんじゃありませんの? まあ? 私にとっては九十分でも数時間でも余裕ですが」

 

「弥勒さんの根拠の無い自信はどこから……」

 

 夏服から透けるブラ紐や二の腕が眩しく見える。

 ルールの詳細が明確化していくのは人数がいることと積極性が高いからか。支給された棒アイスを舐めることを口実に無言を保ち、少女たちの夏服姿をぼんやりと目を向け続ける。

 

「それにしても暑いな~。こういう時、シンプルなアイスのバニラ味はタマに食べると美味しいんだよな~」

 

「オレンジ味も良いよ! ……ん? あっ、棒の部分にあたりって書いてる! やったー!」

 

「おめでとう、ゆーゆ。ちなみにアイスの棒の部分であたりが出た人は隠れる方ね」

 

「そんな簡単に出る訳……あたり!?」

 

「いつの間にこんな小細工を……」

 

「乃木パワーで~す!」

 

 本日差し入れと称してアイスを持ち込んだのは園子の二名だ。

 驚愕に震える若葉に笑みを見せ、何故か俺にウインクを見せる彼女。可愛い。

 

 園子の何気ない仕草に高まる鼓動を鎮めるべくアイスを食べる。

 抹茶味のそれは舌の上でトロリと溶けて、ひんやりとした冷たさを身体に届ける。

 そうして余韻と共に僅かに齧った木の棒には薄くあたりの文字が残る。

 

「亮くんは私が見つけるわね」

 

「────」

 

 突然、ふにゅっと背中に感じる柔らかい感触。囁かれる甘い声音。

 その瞬間に思い出されるのは夜の情欲と女の喘ぎ声。意識して押し付けてくる硬いブラとシャツ越しの乳肉の柔らかさと声の甘さは体内のアイスを溶かすほどの淫熱を思い出させる。

 奥ゆかしい少女、東郷は人目を気にしたのか一瞬だけ俺の手を握り、耳元に囁く。

 

「私が見つけたら……」

 

 振り返り目に映るのは微笑を浮かべた大和撫子。

 百人中百人が振り返るような美貌の持ち主は、翡翠色の瞳に波紋を広げる。

 

「また、食べちゃうから」

 

「────」

 

「その逆も、ね」

 

「────」

 

「どこに隠れていても絶対に見つけるからね」

 

 すぐに離れる東郷。

 揺れる黒髪、背中に何かを言うべきかと悩むが、彼女は振り向くことなく手を上げる。

 何の文字も書かれていない木の棒は、彼女が捕食者になったことを示していた。

 

「……加賀くん」

 

「おっ、先輩じゃん」

 

「だから先輩って……もういいわ」

 

 本日一番身体が冷えた瞬間に声を掛けてくるのは訝し気な表情の千景だ。

 最近黒髪を見る時間も触る時間も増えた気がする。

 黒髪少女、その次も黒髪の少女、己の髪の大半は黒髪であるから親近感が湧いてくる。 

 

「どうしたんです? 俺がいないと寂しくなっちゃいましたか?」

 

「そんな訳……ないでしょ……。もうすぐゲームが始まるわよ」

 

 溜息交じりの言葉に周囲に目を向ける。

 千景の言葉通り、既に全員アイスを食べ終わり移動を開始していた。彼女が此方に見せた棒にはあたりと書かれており、仲間であるのが分かった。

 

「いや、かくれんぼに仲間も何もないんだろうけどさ」

 

「そうね。普通スニーキングミッションは一人でするものよ」

 

 ゲームと現実を混同しがちな少女。

 自他共に認める、昔は少し中二病だった黒髪の少女は余裕気な笑みを浮かべる。

 頼りになりそうな彼女ならばきっとこの戦いも生き残ることが出来るだろう。

 

「えっ、ぐんちゃん。一人で隠れるの?」

 

「たっ、高嶋さん!?」

 

 そんな彼女の元に迫りくる薄紅色の髪の少女。

 少しだけ悲しそうに眉を顰める少女、高嶋友奈の声に千景は目を見開く。

 

「たかひまっ、高嶋さん、違うのっ、これは……」

 

「私もあたりだったんだけど……一人で隠れるね。残念だなー」

 

「あ、あの……私も一緒に……」

 

「えっ、本当に!? やったー! ありがとうぐんちゃん! ぐんちゃんがいたら百人力だよ!」

 

「そ、そんなことは……」

 

 千景の意思など簡単に変えられてしまう少女の笑み。 

 頬に朱色を差し、困ったように目を逸らす千景の手を高嶋は掴む。

 

「あっ、りょーくんもあたり組だよね? 一緒に隠れる?」

 

 友奈に良く似た顔の少女がそんなことを告げた。 

 あっけないほどにあっさりと千景の心を絡め捕った少女に俺は少し考えて首を振る。

 

「ん、いや三人もいると見つかるから。それよりもう始まった?」

 

「ううん。十五分後に開始だよ」

 

「見つける組はどこからスタートするんだっけ?」

 

「えっと……どこだったかな?」

 

「……更衣室に見つける組が集まって、時間が経過したら探し始めるらしいわ」

 

 気が付くと部室には既に俺と高嶋と千景しかいなかった。

 俺が数秒ほど東郷と千景に関心を向けている間に戦いは既に始まっていたようだ。勇者部の部室はこんなに広かったのかと、少女たちの残り香を呼吸の度に肺に収めながら口を開く。

 

「ちなみに二人はどこに隠れる予定?」

 

「そうね……基本的には隠れないわ」

 

「というと?」

 

「敵が来る度に見つからないように移動する……そうして相手が既に調べた場所に潜伏ね」

 

 ルール上、隠れた場所から動いてはならないという訳ではない。

 移動の最中に見つかったらアウトというリスクがあるが意外と有効な気がする。

 

「ほぇー、ぐんちゃんの作戦ってすっごい本格的だね!」

 

「ありがとう高嶋さん。……加賀くんは?」

 

「秘密です」

 

「……どうせ考えていないとかでしょ。そこの段ボールにでも入ったら?」

 

「あはは……。それじゃありょーくん、またあとでね!」

 

 少しだけ不機嫌な表情を見せる千景を引き連れていく高嶋友奈。

 彼女たちの後ろ姿を見届けて、一人、俺は無人となった勇者部部室に残る。

 壁に掛けられた時計を見ると開始まで十分もない。

 

「────」

 

 このまま見つかっても良いが、それは園子的には興醒めだろう。

 たかが遊び、されど本気で遊ぶというのが俺と園子の昔からの暗黙的な了解だ。

 

 残り時間で隠れるとしたらどこが最適だろうか。

 大抵の場所は間違いなく他の勇者部の人間も思いつくだろう。

 

 俺は少しだけ考えて、部室にあるロッカーに隠れることにした。

 ここは部室を使用する者ほど物が中にあることを理解している為、覗き込むことは無いだろうと俺は判断した。残りの数分を掃除と片付け、そして偽装に使い、開始と同時に中に入る。

 

「灯台下暗し作戦、決行」

 

 埃臭さは特にはない。

 勇者部の清潔さは綺麗好きな少女たちによって隅々まで行き届いている。

 

 うす暗いがそれなりに広い物件。

 ロッカー扉上部には小さなスリットがあり光が中に入る。また扉の内側には正方形の鏡が備え付けられており、四六時中自分の顔を見ることが出来る。

 

「――――」

 

 加賀亮之佑として転生して十数年。

 この神樹の構築した異世界で過ごすこと数年。

 

 血紅色の瞳が特徴的な少年。

 白髪混じりの黒髪は僅かながら不規則なカールを見せる。生まれた瞬間から変わらないそれらをジッと見つめながら、時折思い出したように口端を緩めて笑顔の練習をする姿は不気味だ。

 無表情よりも笑顔のある方が接しやすいだろうと始めたトレーニングは続いている。

 

「……」

 

 そんな風に孤独に過ごすこと数分。

 ロッカー越しに僅かに部室の扉を開ける音が聞こえ、鏡の中の少年は目を細める。

 耳に意識を集中して、静かに、だが確実に此方に走り寄る音に無言で扉の取手を掴む。

 

「ここなら……、あ、あれ」

 

 なんということだろうか。

 作戦は何者かに筒抜けであったらしい。

 そんな驚愕と己の浅慮に対する失望を胸に、腕に力を籠める。

 

「こんなに重い訳が……まさか、誰かいるのか!」

 

 切羽詰まった声は扉越しにくぐもっており誰なのか判別が難しい。

 扉の先の相手と腕比べをしながら、俺は無言でロッカーに引き籠る。

 

「頼む、開けてくれ! 見つかりたくないんだ!」

 

 ドンドンと叩く音に数日前に見たゾンビ映画を思い出す。

 声を出すなと悪態を吐きたくなりながらも、耳を傾ける。

 

「ひなたに、見つかる訳にはいかないんだ! 頼む! なんでもするから入れてくれ!!」

 

「なんでもって言ったな」

 

 手を離すと、ガチャリと力強くこじ開けられるロッカーの扉。

 開けた先で急に開いたことと中にいた俺に呆然とした顔を向ける少女の腕を掴む。そのまま口を開くよりも先に少女を中へと引きずり込むと静かにロッカーの扉を閉じる。

 再び薄暗闇が広がるが、今度は少しだけ狭く、人肌の温かさを覚える。

 

「りょ、亮之佑!?」

 

「静かに」

 

 此方を認識した途端、暴れようとする少女を優しく抱き留める。

 長く煌びやかな金髪を後ろで纏めた髪型は、時折園子も真似ることのある独特な物。髪色は確かに子孫である園子と似てはいるが、頬を赤らめ釣り上げた眼差しはあまり似ていない。

 そんな刹那的な思考を切り捨てて暴れる彼女の動きを止める。

 

「はにゃっ!?」

 

 勇者部としてのリーダーが犬吠埼風ならば。

 勇者としてのリーダーは乃木若葉であるというのは恐らく誰もが認めている。それだけの戦闘力を裏付けする数多の戦闘経験は、少女の凛々しさにも反映されている。

 

 乃木若葉は男女問わずにモテる。

 誠実で悪いことは悪いと言える委員長タイプの少女だ。

 

「お、おい、どこを触って……耳、はっ……」

 

 そんな彼女の弱点である耳元を甘噛みしながら壁に押し付ける。 

 両脚の間に脚を挟み込み、抱いた腰は鍛錬の成果だろう、無駄な肉が少ない。

 

 こうして密着すると少女の汗の香りが鼻腔をくすぐる。

 追手から逃れる為に走っていたのだろうか、首筋にうっすらと汗が浮かぶ。首元にリボンの付いたサックスブルーのブラウスは汗を吸い、水色のブラと肌を透かしていることに彼女は気づいていない。

 

 その眼差しはキッと俺のみを睨みつける。

 反抗的な態度を前に、俺はもう片方の耳に吐息を吹き掛ける。

 

「こ、こんなことをして覚悟はひゃぁぁぁ……」

 

 普段から親友であるひなたに弄られ調教されているのだろう。

 耳を触るだけで面白いほど簡単に彼女は全身の力を抜く。股の間に押し付けた膝に柔らかい感触を覚えながら彼女が座り込まないように力を籠める。

 肩を叩く両手を掴むと勇者の力の無い少女はあっけないほど簡単に拘束された。

 

 そうして少女の耳に小さく静かにするように囁く。

 その数秒後のことだった。

 

「──若葉ちゃーん。どこに隠れているんですか〜?」

 

 余裕のある声色、その少女の声が近いことに気づくと紫紺の瞳が揺れる。

 既にゲームは始まっているのだ。理由は不明だが彼女が泡を食ってここに隠れる原因、その少女が勇者部部室に脚を踏み入れていた。

 それを理解したのだろう、俺と目を合わせる彼女の耳元に囁く。

 

「このまま突き出して見逃して貰おうかな?」

 

「……!」

 

「静かにしていて欲しい?」

 

 こくっと白い喉を鳴らすのが分かった。

 汗と少女自身の混ざった香りとロッカーに籠った熱気に頭がクラクラとする。

 

「……」

 

「なら、抵抗しないで」

 

 言葉にはせず、瞳に波紋を広げる少女。

 そっと顔を背ける若葉、その肩に顎を乗せて呼吸のみを繰り返す。ぎゅっと抱きしめた身体は華奢でありながら、それなりに豊かな乳房の存在を確信させる。

 押し付けてくる彼女自身は意識することなく気配を隠すことに専心していた。

 

「……」

 

「……」

 

 飲み物と時計を持ってきていなかったことを俺は悔やんだ。

 背中に伝う汗の存在を感じながら、長く感じる時間の果てに俺と若葉を見つけられなかったハンターは去ったらしい。

 僅かに聞こえる部室の扉を閉める音にどちらが溜息を吐いただろうか。

 ビクッと下半身を震わせる若葉が俺の耳に囁く。

 

「っ……あ、脚」

 

「何?」

 

「脚をどかしてくれ……」

 

「どうして?」

 

「どうしてって……い、いいから離れろ……」

 

「残念だけど狭いから」

 

「耳元で喋るな……後ろにスペースがあるだろ」

 

「ないよ」

 

「どう見てもあふぅぅぅ……!」

 

 赤らんだ耳に喋りかける度に身体を震わせる少女。

 ゆっくりと膝を揺すると、頬に差す朱色が濃くなる若武士の表情。

 俺の肩を叩いてくる少女の背中を撫でると、ぐっしょりと濡れたスクールシャツに張り付く髪。

 

「声出したら見つかるよ」

 

「誰のせいで……!」

 

「えっ、人の所為にするの? ここに入るときになんでもするって言ったよね」

 

「それはっ、亮之佑がいるとは、思わなくて」

 

「嘘吐いたの?」

 

「ちがっ、そうじゃ、ぁ……んんっ。こ、これ以上やったら怒るぞ!」

 

 ぐにっと押し付けた膝に僅かな湿り気を覚える。

 耳だけではなく顔まで赤くした彼女は怒気で震える小声を吐き、咳払いすると両脚の間に入り込んだ脚を下げようと手で押す。

 

「じゃあ、どうしてあんなにひなたさんから逃げていたの?」

 

「……捕まりたくないから」

 

「嘘だな。それだけならあんな切羽詰まって逃げたりはしないだろう」

 

「そういう訳では……」

 

 俺が彼女の髪に手を入れた。

 金色の毛髪は一本一本が滑らかで、手入れが行き届いている。

 

「ひなたさんからの罰ゲームって……エッチなのだろ」

 

「ちがっ、私とひなたはそういういかがわしい関係ではない! アレはただの医療行為だ」

 

「俺と千景がしているみたいな?」

 

「ああ」

 

「…………」

 

「…………──!!」

 

 静寂が広がり、震える吐息が狭いロッカーに響く。

 ゆっくりと自分が何を口にしたのかを理解した少女はみるみるうちに顔を赤くする。挙動不審気味に目を左右に泳がし、必死に目を合わせないようにする彼女。

 その姿は吐き出した言葉が真実であることを証明していて、

 

「やっぱりあの時見てたんだろ」

 

「あ、いや、ちがっ……卑怯だ!」

 

「どっちが。ああいうことを夜な夜な二人でしているんだろ? いやらしい女め」

 

「~~~~!!」

 

 俺の手首を掴む少女の力は強い。

 睨みつける紫紺の瞳には様々な感情や熱を過らせ、幾度も口を開閉させる。

 

「ちがっ、信じられないかもしれないが……ここ最近、戦闘後に時折身体が疼くんだ。それで、ひなたに相談して、何度かそういうことをして、その度に疼きが強くなって、だから──」

 

「見ろよ、若葉」

 

 慌てたように言い訳を口にする彼女の顎を掴み横を向かせる。 

 閉められたロッカーの扉、その内側に備え付けられた鏡には少年と少女が映る。

 

「あの日、俺と寄宿舎の廊下で話した時さ、気づいてないと思ったか?」

 

 シャツを汗ばんだ肌に吸い付かせ、赤らんだ顔。

 他人の情事を目の当たりにして興奮を覚えた、熱く濡れた瞳。

 

「あの時もこんないやらしい顔をしてたよ」

 

 若葉が目を逸らし、腰に回した俺の腕を掴んだ。

 俺は彼女を抱き寄せ、軽く耳を噛む。

 途端、若葉は顔を逸らした。

 

「ぁっ!」

 

 熱い吐息。

 ロッカーの空間に、少女のかぐわしい甘い香りが漂う。

 くすぶっていた淫熱が更なる熱と混じった淫香が俺を狂わせようとする。

 

「俺も疼きは治せる。ひなたさんよりも、たぶん、ずっと上手く」

 

 頬を撫でていた手を耳へ。

 軽く挟み、撫でるだけで若葉は身を竦ませた。

 スカートの奥、脚の付け根に押し込んだ膝は布切れ越しに確かな湿り気を覚えた。

 

 抱きすくめた若葉が、俺を間近で見つめた。

 睫毛の長い、意思の強い瞳。それが熱く潤んでいる。

 

「園子は……」

 

「ん?」

 

「いや──」

 

 若葉が何かを言いかけ、やめた。

 僅かに呼吸を乱した少女が批難するような目で俺を見上げた。

 

「亮之佑も、身体の疼きを治せる。そう聞いた」

 

「そう。ただの医療行為だって」

 

 言い訳を、建前を、口にする。

 許可を求めるように若葉は俺を見上げる。

 

 柔らかい頬を撫で指先が唇を突く。

 ふにゅりと瑞々しい唇が震え、その上を指が滑る。

 

 汗が伝う。  

 若葉の唾液に濡れた唇が、小さく動く。

 

「私は口が堅い。だから」

 

「……」

 

「──ひなたには、言わないでくれ」

 

 

 



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第九話 バニラと麦茶は秘密の味

 たとえばではあるが自分の子孫と会う機会があったとしよう。

 初めましてご先祖様、私はあなたの子孫ですよ。そう言われて信じるだろうか。

 机の中から未来のロボットと一緒に現れてそんな台詞を吐かない限り、普通は信じない。

 

「──今更ではあるが、私に子孫がいると言われてもなかなか実感は湧かないものだな」

 

 そんな状況に近しい少女が困ったように眉を顰めるのは仕方がない。

 金髪を纏め、紫紺の瞳を瞬かせる彼女の困惑と苦笑の混ざった表情。

 

「ええっ!? そんな……御先祖様が私たちを認知してくれない……」

 

「ちょっと待て。その言い方はなんか嫌なんだが」

 

「かっきー、わかちゃんがいじわるする~……うわ~ん!」

 

 背中に腕を回し唸り声を上げて俺に抱き着く園子。

 ふわりと漂う甘い香りとパンケーキよりも温かく柔らかい感触は心地よさを覚える。むにむにと押し付けられる園子の乳房の感触を前面に感じながら、静かに抱擁を返す。

 

 んふ、と満足気に吐息を溢す彼女の華奢な身体。

 どさくさに紛れて公共の場で園子の身体を堪能する。

 

「お、おい園子! 不純異性交遊だろ、そういうのは」

 

「そうよ、そのっち。離れなさい」

 

 部室で白昼堂々と行われる不純異性交遊。

 顔を赤くする若葉の援護を行う東郷に顔を向ける園子。

 

「違うよ? これはただのハグだよ~。わかちゃんには何に見えるの?」

 

「ただのスキンシップだよな。頭固すぎ~」

 

「くっ、こいつら……ッ!」

 

 眦を吊り上げて怒る彼女は本気で怒っている訳ではない。

 あらあら、うふふ、と薄い笑みを浮かべるひなたが若葉の横顔にスマホを向ける。

 慌てて顔を隠そうとする少女よりもパシャリと巫女が勇者の写真を撮った。

 

「お、おい、ひなた。何を撮って……」

 

「委員長気質を発揮した若葉ちゃんの写真ゲットです。それよりも認知してあげないのですか?」

 

「いやいや……ひなたもか」

 

「ふふっ、冗談ですよ」

 

「知っているとも」

 

 くすりと笑みを溢しながら告げる巫女の言葉に若葉は後頭部に手を回す。 

 楽しそう! 私も混ぜて! 勇者ハーグ! と俺と園子にハグを求める友奈、そこに続く東郷、夏凜、樹、風と旧勇者部メンバーにより始まる『おしくらまんじゅう』に頬を緩める。

 

「その、私の家のことではあるのだが……分家というのも珍しいなと」

 

「……亮之佑さんですか?」

 

「ん、ああ。記録を知ろうにも実家に帰るという事も出来ないからな。実は同じ時代の四国に私の知らない親戚がいるのかと思って、大赦に調べて貰えるように依頼したのだが……進捗は芳しくないらしい」

 

「何百年も前の情報ですから。不確定ではありますが若葉ちゃんの子孫から生まれたのではないのかとも言われているようです」

 

「大赦はその辺りの情報を一切出そうとはしない。隠しているのか分からないのかも不明だ」

 

 加賀家は乃木家の分家である、というのは公の事実だ。 

 少なくとも俺の両親はそうであると主張していた記憶はあり、乃木家にもそういった扱いをされている。不当な扱いという訳でもなく、この世界で再び交流を持った園子の両親との関係も良好で、次期後継者である園子との関係にも口を挟まれたことは無い。

 

 若葉やひなたの言うように過去に何があったかは不明だ。

 意図的に隠すように資料は閲覧が禁止され、実家にある物ですら既に検閲済みだ。

 

 ──大赦を潰す!

 そんな覚悟を持っていけば何かを知ることは出来るかもしれない。

 ただ、それを知ったからと言って何かが変わるとも思わない。

 

 知らなくて良いこともあるのだ。

 

「園ちゃん。俺っていらない子?」

 

「ううん。かっきーはいらない子じゃないよ。私が必要としているからね、ずっとね」

 

 ぎゅううっと締め付けるように抱擁する園子。

 そんな俺と園子を包むように抱き着いた友奈は太陽の如き笑顔を浮かべる。

 

「んー、難しいことはよく分からないけど、亮ちゃんは園ちゃんの家の親戚ってことで良いんじゃないかな? ほら、目元とか結構似ている気がするよ! ねっ、東郷さん」

 

「そうね、友奈ちゃんの言う通りよ。亮くんは……そのっちよ!」

 

 背後から友奈を抱きしめて髪に顔を埋める東郷は真面目な声音で肯定する。

 続く夏凜、風、樹の首肯と抱擁は、俺に前進も後退も倒れることも許さない。

 

「ああ、いや、変な誤解をさせたようで悪かったな。そんな重い感じになるとは……」

 

 チラリと視線を向けると苦笑する風雲児は此方に脚を向ける。 

 歩み寄る姿勢、雪が溶けたような微笑を浮かべる若葉は凛々しい面持ちで口を開く。

 

「園子、亮之佑。二人とも私の子孫だ」

 

「御先祖様~!」

 

「二人とも私が養ってみせるとも!」

 

「ふふっ、私と若葉ちゃん。二人で、ですよ」

 

 無言で凛々しい表情をスマホに収めるひなたがおしくらまんじゅうに加わる。 

 何か良いことを言ったみたいな表情をした若葉もまた肉塊に加わった。

 一人、また一人と女体の塊が膨れ上がっていく。

 

 そういう空気だった。

 そういう謎のノリがあった。

 まだエアコンが備わっていなかったというのもあるのだろう。

 

「────」

 

 あの日もこんな風に暑かった。

 この世界に来た頃の初々しかったあの頃を思い出す。

 もう何年前になるのか、あれはいつの出来事だったのか。

 

 同じ学年を、同じ時間を繰り返す。何度も繰り返す。

 春を夏を秋を冬を繰り返して、色んな思い出に埋もれていく。

 

 そんな日々だからか。

 こうして少しでも新しい刺激を求めようとするのは。

 

「ぁっ!」

 

 頬を伝う汗の不快さを打ち消す熱い呼気がロッカーに響く。 

 無意識に漏らしたであろう声に若葉自身が驚いたように唇をきゅっと結ぶ。

 此方を向く勇者の背後に回した背中、その両手はスカートを捲る。

 

「……っ」

 

 スカートの中というのはいつの時代も魅力的だ。

 声を上げることなく無言でスカートの裾を掴む彼女は焦りの表情を見せ、俺は素知らぬ顔で尻に伸ばした手を広げ、尻全体を揉む。

 下着の肌触りは艶めかしく、手に乗る尻肉は重みを感じさせる。

 

「んっ」

 

 真面目な彼女の性格とは異なり逆三角形の面積は少なく、装飾を指に感じる。

 秘裂側に伸びる両手は下着と汗で湿った肌の境目を確かめていく。 

 

 布越しに恥丘を指で登ると、中腹に汗とは違う湿り気を感じる。

 指の腹が触れると同時に若葉の胸が上下し、俺を睨む紫紺の瞳に波紋を広げる。

 

「ゃ、ぁ」

 

 くし、くしゅ、と濡れつつある下着を擦る度、喘ぎ声を押し殺す彼女。 

 力なく胸板を叩く手はシャツを掴み快楽に耐える。

 その努力を笑うように下着越しに肉芽を見つける指先で擦り付ける。

 

「ん、くっ」

 

 震える唇から溢れる筈の呼気は若葉の鼻腔から漏れる。

 嗚咽に似た甘い声が閉じた口から漏れる中、丹念に指で肉芽を擦り続けると、静かに少女は身体を小さく震わせた。

 

「ぁ、ィ……っっ!!」

 

 かく、かくっと小刻みに揺れる腰。

 ロッカーの中に広がる熱気とは別の女の淫臭と熱。

 俺の顔を見つめ、意識は虚空に向かった若葉の余韻に浸る顔を見つめる。

 

「ぁ……! ……!」

 

 端正な小顔としばらく見つめ合うと紫紺に光が戻る。

 理性の光が僅かに戻ると赤らんだ顔を背け、謎の弁解を行う。

 

「今のは、ちがっ、その……とにかく違うんだ……」

 

「凄い敏感だね。ひなたさんに一杯弄られた?」

 

 大きな瞳に涙を浮かべ、普段の凛々しさからは遠い。

 眉根を寄せ、腕の中で喜悦の表情を浮かべたことへの言い訳を必死に考えようとする姿に加虐心が刺激される。

 知らぬ間に口端から垂れた少女の涎を指に絡め、若葉の唇に塗る。

 

「良いんだよ、我慢しなくて」

 

「……ぁ」

 

「でも静かにね」

 

 ぷにぷと瑞々しい唇を指で触れ、頬を撫でる。

 華奢な若葉の身体を強く抱きしめ、濡れた唇を奪う。

 

 若葉との初めてのキスはバニラ味だった。

 くらくらとした熱気の中で唯一ひんやりとした少女の唾液。

 こちらを見上げた少女との口づけは先ほど食べたアイスよりも甘く、絡ませた舌は何よりも淫らだ。水分補給の為に歯茎や下裏に舌を這わせ、少女の唾液で唇を湿らせる。

 

 こくん、と若葉の喉が鳴る。

 唾液を飲んだのか、虚ろな目の少女が稚拙に口腔を交わらせる。

 唇を離すと銀色の糸が珠となり、ふっくらとした若葉の唇を彩る。

 

「ひなたさん以外とはしたこと無いの?」

 

「……こ、こういう事は普通は好きな相手以外とはしないだろう」

 

「若葉ちゃんは乙女で可愛いね。その理論だと俺も好きな人になっちゃった?」

 

「か、からかうな。そういう亮之佑こそ私のことが好き……なのか?」

 

「うん」

 

「うん!?」 

 

 くしゃりとブラウスに皺が寄り、浮かぶ汗が少女の肌を透かす。

 口腔行為を繰り返しながら、逃げようと艶めかしく揺れる腰を捕まえる。

 

 短めなスカートの中はロッカーよりもむわりとした熱気が漂う。

 ブラウスの胸元を上下させ、腰を引く若葉を追い、湿った恥部を指が這う。

 

「ん」

 

 むっちりとした生腿が俺の手を挟む。

 熱っぽい目と甘い吐息を漏らす若葉が恋人のごとく俺に身を預ける。

 

「ま、待ってくれ……」

 

「ん~?」

 

 小刻みに身体を震わす姿を見ながら、スカートに潜り込んだ手を動かす。

 抗議か降伏か必死に声を紡ごうとする若葉の柔らかな唇を奪い、ブラウス越しに胸を揉む。いつだったか若葉の双丘を高尾山などと評価して部室に吊るされた勇者のことを思い出す。

 しっとりとした腿肉の感触を感じながら濡れた下着越しに肉芽を擦り続ける。

 

「んぁ……ぁぁ……」

 

 くちゅ、くちゅと淫らな水音が響き、若葉の耳の朱色が色濃くなる。

 

「ほら見ろよ。下着からこんなに溢れて……」

 

「……っ」

 

「そんなに気持ち良かった?」

 

 ひくっと少女の喉が鳴る。 

 指に付着した愛液はロッカーのスリットから差す光に照らされる。

 顔の前に持って行ったそれを手で制する若葉は顔を背け、赤らんだ耳を見せる。

 

 形の良い耳元に息を吹き掛け、甘噛みする。

 一種の性感帯として若葉専属の巫女に調教されたのか、恥部と耳を弄るだけで鏡に映る彼女は首を反らし短く押し殺したような悲鳴を繰り返す。

 

 身悶える若葉の姿を見ながら、スカートを留めるホックを外す。

 薄暗いロッカー、その床にぱさりと落ちる布切れに、少女が短い悲鳴を上げる。

 

「ゃっ! み、見るな!」

 

 蜜に濡れた薄青色の下着と白い太腿が眩しく映る。

 膝と膝が触れ合うほどの内股になった彼女は咄嗟にブラウスの裾を下に引っ張る。

 羞恥に顔を赤らめ、中途半端に下着を隠そうとする姿は、俺の目を喜ばせる。 

 

 ブラウスから透けたブラとお揃いらしきショーツはピンクのリボンと小さな花の装飾が施されている。清楚さと可愛らしさを兼ね備えた下着はクロッチ部分が濡れている。

 よく見ると布切れでは吸いきれない滴が太腿を伝うのが見て取れた。

 

 スカートを拾わせることも、隠すこともさせない。

 左右に首を振り、備え付けの鏡からも俺からも目を逸らす彼女に頬が緩む。

 

「この下着可愛いじゃん。自分で買ったの?」

 

「……いや、ひなたが買ってきて。似合うからと」

 

「ちょっとエッチな奴じゃん」

 

「エ、エッチとか言うな! これくらい普通だ!」

 

「前に若葉が買った奴がボクサーパンツとか、変な柄物で怒られたもんね~」

 

「なんで知ってるんだ!? 見たのか!?」

 

「あっ、本当なんだ。下着のセンスも皆無なんて若葉ちゃんはエッチなのに残念だね~」

 

「ッ~~~!」

 

「戦う以外はポンコツ若葉ちゃんだね~。ざぁこ、ムッツリスケベ」

 

 なんとなしに煽ると突如暴れる彼女を背後から抱き締める。

 万力のごとき力で腕を掴む若葉を数分掛けてクリトリスを責め続ける。

 

「これからひなたさんとしたエッチな事全部上書きされちゃうね。ざぁこざぁこ、耳が性感帯」

 

「誰がポンコツだ! それとさっきからその口調は何なんだ! あふっ、んっ……」

 

 耳元で吐息と共に煽りを入れ、首筋の汗を舐めると嫌々と頭を振る若葉。

 揺れ動く長い髪の毛から漂う甘い淫臭にクラクラする中、彼女の抵抗を弱めるべく執拗に彼女の恥部を弄ると淫靡な音を漏らすショーツからぱたぱたと滴が床に落ちる。

 若葉は感情を混ざり合わせた瞳を歪め、喘ぎ、濡らし、悦ぶ。

 

「ぃぅぅっっ!!! も、もうひゃめ……」

 

 若葉の衣服を選ぶセンスは残念ながら壊滅的だ。 

 親友というよりも保護者に近い巫女に下着の購入から身の回りの世話、その全てを任せている。それだけではなく普段からあらゆる若葉の写真を撮られているのだ。

 そう考えると戦闘以外は巫女抜きで生きていけないように調教された若葉も哀れである。

 果たして彼女はこれから先、一人で生活していくことが出来るのだろうか。

 

「若葉と結婚したらもれなくひなたさんが口うるさい姑になりそう」

 

「なにを、言って……私と結婚するのか?」

 

「若葉と結婚する奴は幸せかもって話。あと、次暴れたら罰ゲームだから」

 

「だから耳元で囁くなと、っ、んっ! ……ぁ!」

 

 小さな悲鳴を上げる若葉、その胸元のボタンを空いた片手で開ける。

 第二、第三とボタンを外していくとそれなりに豊かな双丘と薄青色の下着が姿を現す。

 いやらしさを感じさせない程度の装飾に清楚感を覚える。

 

 ブラをずらすと現れる汗ばんだ白い乳房。

 滑らかな肌を指が這うと緊張したかのように身体を硬直させる。 

 

「んくっ……!」

 

 ミルク色の乳房をすくい上げると淫らな熱と確かな重さを感じた。

 ゆっくりと揉み、色素の薄い乳首を指で弄りながら、唇を重ねる。

 

 口以外での抵抗の無くなった彼女はされるがままだ。

 ブラを外され、乳房を揉まれ乳首を弄られる彼女が嫌々と首を振る。

 

 背後から抱いた若葉の身体は柔らかく全身から汗と共に甘い香りが鼻腔を擽る。

 ショーツの中に空いた手を伸ばすと汗ばんだ肌と恥毛の感触、そして蜜に濡れた秘裂。俺の手による柔肌侵攻に抵抗はなく、未だに絶頂の余韻に震える少女の肩に頭を置く。

 

「若葉」

 

 腰を引かせる少女の尻肉に怒張を押し付ける。

 ショーツの中で陰唇を割り拓き、肉粒を指で転がす度に甘い喘ぎ。

 

「鏡を見ろ」

 

「ぇ?」

 

 鏡に映り込むのは被虐的な涙を浮かべた金髪の美少女。

 首元の紅紫色のリボンは解れ、ブラウスは開き、揉まれる乳肉の上には外れたブラ。

 素肌を晒し、餅のような白色の乳房は男に弄ばれているのに、その表情は悦んでいる。

 

 確かな快楽に飲み込まれ、男を受け入れた雌の表情。

 自己嫌悪を覚え、羞恥を感じ、多幸感を味わった少女の表情に凛々しさは無い。

 

「ひなたさんが見たらどう思うんだろうな」

 

「ぁ……! ぁぁ……!」

 

 羞恥の涙を浮かべ鏡から顔を背ける若葉。

 

「や、やだ……」

 

 年相応の少女のように呻く彼女を背後から楽しむ。

 くちゅくちゅと淫靡な水音を出す花弁を指で執拗に愛でる。

 

 疑似的なピストンを蜜壺の浅いところで繰り返す。

 朱色に染まった顔を逸らし、嫌と口にする度に指を飲み込まんと膣が収縮する。

 散々絶頂に達した少女はあっけないほど簡単に昇り詰めた。

 

「ぁ、ぅぅ~~~~っっっ!!!」

 

 ぎゅむっと手の中で乳房が形を変える。

 首を反らし、蜜壺を弄り回す指を新鮮な蜜液が濡らす。

 腰から砕けるように態勢を崩した勇者を抱きかかえると、少女の脚が前に動く。

 

 決して広くはないロッカーの扉に爪先が当たる。

 ガンッという音が響き、軋んだ音と共に入る新鮮な空気が背筋を凍らす。

 

 扉が開いた。

 

「──ぁ」

 

「────」

 

 凄まじい反応速度で扉を掴み、すぐに密閉空間を作ったのは若葉だった。

 背中から触れて感じる少女の鼓動は高鳴りを覚え、腕の中で静かに震える。

 

 咄嗟に若葉の口を塞いだ掌には唇の感触と荒い鼻息。

 五秒、十秒と高鳴る心音が平常運転となるまで少女と静寂を保った。

 

 運よく周囲には誰もいなかったのか。

 萎えかけた怒張に血流を取り戻すべく、若葉の尻肉に擦り付ける。

 

「す、すまない」

 

 少しだけ申し訳なさそうな顔を俺に向ける彼女。

 上目遣いで告げる若葉に対して告げるべき文句は生まれず、代わりに扉を押す。

 

「え……」

 

 呆然と声を出す若葉の顔を照明が照らす。

 ロッカーの中よりは涼しく、しかしエアコンは停止させたのかそれなりの暑さの部室。

 薄青のショーツをずらし、我慢の限界に近いペニスの先端を媚肉に当てる。

 

「──今声を出したらひなたさんに見つかるから。声、我慢して」

 

 少女の制止の声を無視して一息に貫く。

 にじゅん、と貫かれた若葉は口元に手を当て、くぐもった喘ぎ声を上げた。

 肉竿が狭い肉を割り拓く感覚に奥歯を噛み締め、そのまま少女をバックで犯す。

 

「ぁぁっ! ──っ、く……ぁ」

 

 しっかりと腰を掴み、一歩前に出ると少女の身体がロッカーからはみ出す。

 白い尻肉がピストンの度にぷるりと揺れ、部室の床に滴を溢す。

 

「んッ……ふっ、〜〜〜っ!」

 

 竿が奥深くまで届いたと同時にクリトリスを指で弄る。 

 ぎゅっと目を閉じた若葉は必死に唇を噛み、ぷるぷると乳肉を揺らす。

 

 円を描くように腰を揺すり、乳房を揉む俺の手を若葉の手が掴む。

 ぽたりぽたりと甘露が神聖な勇者部の部室を汚す中、震えた少女の膝が床に付く。

 

 腰が砕けたように態勢を崩してしまった勇者を仰向けにする。

 ショーツを抜き取ると胸を上下させる少女が俺を見上げる。

 解け掛けた首元の紫のリボン、ボタンの外れたブラウスと靴下が唯一の衣服。

 長い金髪を床に広げた淫らな彼女は俺と視線を絡めると、口を噤み少しだけ脚を広げた。

 

「んぅぅっっ!!」

 

 広げた脚の付け根、薄く生えた陰毛の奥で覗く花弁を貫く。

 少女を抱き起こし、正常位で彼女を更に汚すべく獣のように蜜壺を奥まで抉る。

 

「ぁぅ、ぁ、ん、んっ、んんっ!」

 

 腰を前後させる度に感じる甘い声色が鼓膜ごと脳を震わせる。

 もっと聞きたいと、聞かせろと半脱ぎのブラからこぼれた白乳に歯を立てる。

 

 ふと思いつき、虚ろな目をした若葉の顔に取り出したスマホを見せる。

 

「……?」

 

 若葉の羞恥を煽るべくカメラアプリを起動し、パシャリと撮る。

 

「ぇ、ぁ? ぁ?」

 

 明らかに行為に及んでいる若葉の痴態がスマホに保存される。

 揺れる乳房も、薄く茂った金色の恥毛も、何もかも。

 瞳を濡らし、絶頂に蕩けた表情の若葉の顔を数枚ほど撮り、本人に見せる。

 

「見ろよ若葉。すごいエッチだ」

 

「なっ!?」

 

 慌てて伸ばした手を躱すとスマホを少し遠くの床へ転がす。

 涙目で睨みつける少女を組み伏せ、耳元で囁く。

 

「これひなたさんに見せたらどうなるんだろうな~」

 

「まっ、け、消せ!」

 

「うるさい」

  

「ふぁぁっ!!?」

 

 自らの乱れた姿を見せられた瞬間、きゅうっと媚肉が肉棒ごと引き締まる。

 淫行を保存したスマホに伸ばす少女の手を掴み揺れる乳肉に歯形を作る。

 一突きごとに蠕動する媚肉が締まりを強め、俺の子種を搾ろうとする。裸ワイシャツのような恰好をした若葉を抱いて、俺の腰は少女を孕ませようと勝手に動く。

 

 写真を貰ってよいかと耳元で囁く。

 嫌々と首を振る若葉が拒絶をする度にピストンと同時に肉芽を擦る。

 しばらくして諦めたように首肯する若葉の姿を確認すると獣のような抽送に身を任せる。

 

 言葉もなく、冷房すら点いていない部室で密着し合う。

 ひたすらにピストンと互いの身体を貪り合う獣と化した。

 

「……っ!」

 

 そしてその時はあっけなく来た。

 少女の最奥、そこに意識が白むほどに濃厚な白濁を注いだ。

 

「~〜〜~~~ッッッ!!!」

 

 両手、両足で俺に抱き着く彼女が首を振る。

 掴んだ肩に爪を立て、若葉は必死に粘ついた唇を俺の首筋に押し付けた。

 

 

 

 

 先ほど部室に来た誰かが部室のエアコンを停止させたのだろう。

 リモコンのスイッチを入れ、ふにゃふにゃに乱れた姿の若葉を壁に預ける。

 

 麦茶を入れた魔法瓶を口に付ける。

 ごくごくと飲めるコクのある麦茶は夏において欠かせない飲み物だろう。

 ただ飲み過ぎると夏だろうと腹を下すので、コップ一杯程度の量で我慢する。

 

 思った以上に汗を搔いていたからか非常に美味である。

 そんな自家製麦茶の入った魔法瓶を手に、此方を半眼で睨む少女の元へ。

 

「……てっきり、亮之佑一人で飲むのかと」

 

「俺がそんな薄情な人間だと思うのかね」

 

「少なくとも変態ではあるな」

 

「あっ、そういうこと言うんだ」

 

 汗だくで未だに胸を上下させる彼女の差し出した手を無視して、口に麦茶を含む。

 麦茶を貰えると思ったのだろうブラウス一枚と淫らな恰好の少女の手が空を切る。目端に呆然としながら、徐々に失望と怒りを表情に溢れ出そうとする若葉に顔を近づける。

 

「────」

 

 顎を持ち上げ、大きく見開かれる紫紺の瞳に見惚れる。 

 なにせ神に見初められるほどに美しい瞳なのだ。仕方のないことだ。

 

 自分を信じて、神を信じて、他人を信じられる。

 だから、こんな風に簡単に唇を奪うことが出来てしまうのだ。

 

「んっ……ん……」

 

 口端から僅かに麦色の液体がこぼれる。

 それに気を留めず若葉は口移しで麦茶を飲むと、コクンと喉を鳴らし嚥下する。

 

「──。ひなたの作った麦茶に負けず劣らずだな」

 

「あっそ」

 

 顔を背ける少女に謎の評価を貰った。

 二割ほどこぼしてしまったが、夏場は多めに持ってきている。

 無言で軽く睨む少女の声にそう告げると、湿ったばかりの唇を舐める若葉は告げた。

 

「分かってはいたが亮之佑はいじわるだな……」

 

「こんなに優しいのに」

 

「それに自信過剰でナルシストだ。このまえ千景が言っていた」

 

「まあ、俺は加賀亮之佑が好きだから言い当てたのは流石だな。……千景だけ?」

 

「いや……、この数年で殆どの勇者部女性陣が出した評価だ」

 

 毒舌に対して態度は柔らかい少女にその後も口移しで麦茶を飲ませる。

 若葉は物覚えが良く三回目の口移しでこぼすことなく飲み切った。

 未だに露出している雪色の乳房を揉むと、彼女は慌てて衣服を掻き集める。

 

 情事の痕を残した肌を隠すように制服を着直す若葉の着替えを見守る。

 髪紐が解けていたので少女の背後に回り込み、髪型をポニーテールにすると、俺は若葉の耳元に囁く。

 

「……これから先、部室に来る度に若葉は俺とエッチした事を思い出すんだなって」

 

 囁かれた耳を手で押さえて俺から距離を置くと、みるみるうちに顔を赤くする若葉。

 挙動不審気味に目線を左右に泳がす彼女の反応を楽しく思いながら、距離を詰める。

 

「やっぱり、いじわるじゃないか……」

 

 そんな風に若葉とじゃれ合いながら、ふと俺は思った。

 

「な、なんだ?」

 

「いや。そもそも……」

 

 ──そもそも、俺と若葉は何故隠れていたのだったか。

 

 その答えを思い出した時にはもう遅かった。

 

 

 



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第十話 秘密の契り直し

「そういえば、若葉が鰯のつみれと春キャベツの味噌汁が好きだと聞いたんだが」

 

「誰からだ?」

 

「風の噂で」

 

「ひなただな」

 

「ちなみに俺も作れる」

 

「……ほう」

 

 勇者部による勇者部の為の遊戯、かくれんぼ。

 見つかれば勝者による敗者への好きな罰ゲームを実行することが出来る。

 

 そんな楽しいゲームをしている最中に。

 一体、何をしていたのだろうか。

 

 軽い事後のように、小話に花を咲かせて水分補給などをしているから。

 ガラガラと勇者部部室の扉が開いた際に、あらゆる行動が遅れてしまったのだ。

 

「あれ……もしかして、見つけちゃいましたか?」

 

「……!」

 

 背後から掛けられた声に若葉が身体を強張らせる。パクパクと金魚のように口を開閉させる少女がほんの一瞬、チラリと紫紺の瞳を瞬かせて俺を見る。

 その眼差しに宿る色を読み取る間もなく少女は顔を声の方角に向け、ポニーテールを揺らす。

 

「す、すまない、ひなた! これは違うんだ!」

 

「若葉、お前……!」

 

 彼女の第一声は謝罪だった。実にスピーディーだった。

 俺は激怒した。いったい何が二人の秘密だ。

 

 若葉は真面目な少女だ。

 秘密と言ってもすぐ顔に出るし、何かを隠していることなどすぐにバレる。

 

 だから、少女の謝罪の一声に納得は出来ずとも理解だけならば出来た。 

 生真面目な委員長気質な乃木若葉。本当にふわふわした雲のような園子の先祖なのか、顔を合わせる度に疑問を覚える彼女の誠実な心が隠し事を良しとしなかったのか。

 それとも頭が上がらない程に知らないところで上下関係を叩きこまれたのか。

 いずれにしても、若葉の罪悪感混じりの声が部室に響く。

 

 そんな彼女と俺は、扉が開いた瞬間に全く別の行動を起こしていた。

 金髪の少女は振り向きざまに弁解を口にし、俺は傍にあったロッカーに張り付く。勇者部部室の扉を開けた人物が何者であれ、角度的に俺が存在するというのは物理的に見えない位置だ。

 一人だったならば、このまま気配を消して隠れ潜むことも出来ただろう。

 

 だが、ロッカーから身体の半分以上を出し、顔を見られたであろう若葉。

 今更行動を起こそうにも既に見られた可能性が高い少女はもう駄目だろう。或いは扉を開けた人物が同族、つまりは追手から隠れ逃げてきた味方の可能性に期待して──、

 

「あっ、若葉先輩!」

 

 鈴音のような心地よい声色。

 その少女の声には聞き覚えがあった。

 

「亜耶……か」

 

「はい」

 

 恐る恐ると声を掛ける若葉に応える少女は国土亜耶。

 同じ神世紀時代を生きる巫女、中学生になっても絵本で感動の涙を見せる、園子や友奈よりも純粋な少女である。サンタを今日まで変わらず信じている神樹好みの無垢な箱入り娘。

 勇者部の一部チームの間で人気マスコット的な存在にして、言動の一つ一つが聖女のようだ。

 

「亜耶だったのか……」

 

「そうですが……その、ひなた先輩じゃなくて私でごめんなさい」

 

「あっ、い、いや! 違うんだ。此方の一方的な勘違いだっただけで……」

 

 悲し気な表情を見せる少女に慌てる風雲児。

 肉体的な年齢差は俺や若葉と一歳しか変わらない少女は相変わらずピュアだ。エンジェルと巷で言われる程に無垢な性格の彼女は僅かに申し訳なさそうな顔を見せる。

 小動物のようなその表情は妹キャラである樹と似ている。

 そんな薄緑色の瞳を瞬かせる巫女はおずおずと上目遣いで口を開く。

 

「あの、若葉先輩」

 

「ん?」

 

「その、私が追手の一人ですから……見つけちゃいました」

 

「……あ、ああ。そうか、見つかってしまったな」

 

「はい……。あれ? 若葉先輩の髪型、ポニーテールに変えたんですか?」

 

「えっ? あ、ああ……暑いからな」

 

 乾いた笑い声を上げる若葉に愛くるしい笑顔を浮かべる亜耶。

 何者にも染まり切っていない白色のキャンバス、それが彼女だ。

 人の善意に染まり、他者を信じ、神樹に従う。悪意に触れた事も無いだろう。

 

 この神樹が管理する世界は前世の世界よりも優しさに満ちている。

 約300年の宗教教育により、基本的に本当に悪意のある人間が少ない。善行には善行を。恩は返す。他者を思いやる思考がこの世界の人間には根付いている。

 そんな世界だから、こうして俺が加賀亮之佑として生きてこられたのだが。

 

「──もうちょっと疑うということも覚えた方が良いのにな」

 

「……あれ? 亮之佑先輩も隠れていたんですか?」

 

「そうだよ。見つかっちゃったね」

 

「はい、見つけちゃいました」

 

「亮之佑……」

 

 呟く若葉の背後から、大きく目を見開く少女に顔を見せる。

 えへへ、とはにかむような無邪気で明るい表情は僅かに友奈を連想させた。

 

 これで俺と若葉は亜耶の罰ゲームを受けることになる。

 だが他人に罰を与えることなど恐れ多いと掃除を手伝う程度の物になるだろう。

 

 そんな打算混じりで少女の視界に映り込みながら若葉に背後から近づく。

 壁に掛けられた時計はゲーム開始から三十分を経過して一時間にも満たない。

 

「もう見つかったし、ここで自由にしていて良いよね?」

 

「そうですね。お二人とも追手になったのでここで待ち伏せするのが良いと思います」

 

 勇者部による『かくれんぼ』は見つかったら同じ追手となる。

 時間が経過するほど、隠れる側が不利となるシンプルなルールだ。

 

 だが、シンプルだからこそやる気を見せのが勇者部である。

 普段から部活で鍛えた力を使い、天井に張り付き、囮を使い、頭脳を駆使する。時間経過で増える敵に対して見事隠れ抜いた者に勇者部随一の忍者の称号が与えられるらしい。

 

「ちなみにまだ見つかっていない子って誰か分かる?」

 

「えっと……」

 

 年下の巫女が顎に指を当て、小首を傾げる。

 少女の目線が脳内を探るべく斜め上を向く中で、俺は手を伸ばす。

 

 ぺらりと捲ったスカートから覗く薄青の布切れに包まれた餅尻。

 情事の痕が色濃く残る柔肌は独特の弾力と、皺の寄った布に滲む蜜が特徴的だ。

 

「な……!」

 

 横目で見ると若葉が目を見開き、こくりと小さく息を呑むのが見えた。

 スカート奥から僅かに残った性臭の残滓が静かに鼻腔を擽る。

 

 むにゅりと尻肉を揉んだ瞬間、若葉は悲鳴も上げず口を引き締める。 

 紫紺が横目で俺を睨み、腕を掴むが無垢な少女の前では言葉も出ない。

 

「そうですね……。確か千景先輩と雪花先輩、夏凜先輩あたりが見つかってません」

 

「千景先輩はやりますね。あれ、友奈と園子ってどっちだっけ?」

 

 情欲を拭き取っただけの艶めかしい腿に伝う汗を指で掬う。

 俺の腕を残して垂れ下がったスカートの中で、指の腹で秘所を撫でる。

 ん、と身じろぎした若葉が俺の肩を掴み、亜耶の目線に慌てて笑みを浮かべる。

 

「若葉先輩? どうかしましたか?」

 

「い、いや……大丈夫だ」

 

 先ほどの行為で下着は湿ったままだった。

 布越しのしっとりとした感触と肉の柔らかさを指の腹で感じつつ、俺は秘所を押す。

 

「えっと、友奈先輩が隠れる側で……確か園子先輩が見つけていたと思います」

 

「それは……東郷が血の涙を流していそうだな」

 

「確かに」

 

 和やかに会話する若葉の生腿が恥丘をなぞる手を挟む。

 だが指の動きを止めることなく、こしゅこしゅと薄布越しに肉粒を擦り続ける。

 

「……っ、ゃ」

 

「ちなみに罰ゲームはどうするつもりなんだい?」

 

「罰ゲームですか?」

 

「ほら、捕まえた人が好きに出来るって奴」

 

「ああ……。えっと、そうですね。罰ゲームなんて可哀想ですし……」

 

「うん。俺もそう思うよ。若葉もそう思うよな?」

 

 長い睫毛に縁取られた瞳を伏せる若葉の尻を俺は思うさまに弄る。

 再度捲ったスカートを少女の薄青色の下着に挟ませ、尻肉を外気に晒す。

 揉み上げた肉と同時に肉芽を指で擦った。

 

「~~~ぁ! んんっ、……こほん」

 

 ぎゅうっと俺の肩を掴む若葉が顔を俯き、掠れた喘ぎを漏らす。 

 羞恥と喜悦を混ぜ合わせ、僅かに口を開く横顔は色濃い朱色が差す。

 

 先ほどまでの行為を身体が思い出したのか、粘り気を帯びた呼気を漏らし、必死に平常を保とうとする少女の両脚は膝を閉じ小刻みに震える。

 崩れ落ちそうになる彼女を抱くと俺の腕に熱が伝わる。

 

 先ほどの行為で敏感なままだったのか。

 あっけないほど簡単に絶頂に達し、弱弱しい身体を震わせる若葉はそれを認めようとはしない。胸を上下に膨らませ、赤らんだ顔を上げて無理に声を出す。

 

「亜耶、ちがっ……今のはしゃっくり、らかりゃ……」

 

 荒い息を吐く若葉は俺に身を預け、なんでもないように唇を震わせる。

 恋人のような距離とクリトリスを布越しに擦られる快感に浸る若葉の痴態に亜耶は頷く。

 

「わ……! そ、その、お二人はそういう関係だったんですね……!」

 

「ま、待て……これは──」

 

「そうだよ。大人の関係って奴」

 

 美少女が抱きしめられる光景と淫行の残り香に本能的に何かを察知したのか。

 ゆっくりと歩み寄ろうとする少女は仄かに頬を赤らめ、小股を押さえる。

 

「あ、あれ? 若葉先輩を見ていると何だかお股がムズムズして……?」

 

 身体はともかく精神は既に数年以上は時を刻んでいる。

 周囲がそういう情報を遮断しようとしても、本能的に分かるのだろう。

 

 モジモジと腿をすり寄せ、赤らんだ顔のまま若葉に目を向ける幼き巫女。 

 その視線を受ける勇者は弁解も抵抗も出来ず、俺にしがみ付き平常を保とうとする。

 

「亜耶ちゃん。このことを皆に秘密にするって約束出来るなら、良い事教えてあげる」

 

「わ、分かりました!」

 

 勤勉な巫女は顔を赤らめながらも小さく頷く。

 その態度に首肯を返し、ふやけている若葉を抱き上げると亜耶が目を輝かせる。

 

「お姫様だっこ……!」

 

「亜耶ちゃんも今度してあげよっか?」

 

「良いんですか?」

 

「良いよ~。あっ、誰か来ないかそこから見ていてくれるかな?」

 

「は、はい」

 

 少女を連れて、扉からは死角となる場所へ移動する。

 先ほどの行為を思い出すように、ロッカーに背中を預け、少女を背後から抱く。

 見張りとなった幼き観客が見守る中、伸ばした手が彼女の肢体を這い回る。

 

「ん、ゃっ!」

 

 凛々しさの欠片もない生娘のような反応。

 スカートを捲り、耳を甘噛みし、左胸を撫で、ばたつく脚の付け根に手を入れ、小股をなぞる。

 ふやけたような蕩けた表情は専属の巫女が夢中になるのも納得だ。

 

「なんでこんな……あ、亜耶、見るなっ、こんな私を!」

 

「見ないと駄目だよ。亜耶ちゃん」

 

 弱り果てた若葉を弄び、悦ばせ、なおも刺激し続ける。

 恥ずかしそうな声を上げる若葉が恥丘を手で隠そうとするが、俺は耳元に口を寄せ、囁く。

 

「──さっき、ひなたさんに言おうとしていたよね?」

 

「そ、それは……すまない。咄嗟に身体が」

 

「俺は言わないことを約束するんだから、若葉も秘密にしないと駄目だよね?」

 

「────」

 

「でも、さっきみたいにペラペラと喋ろうとするなら……」

 

「悪かった! 今度は言わない! 絶対ひなたに言わないからっ!」

 

「罰が終わるまで俺に逆らったら駄目です」

 

「そ、そんな……あっ」

 

 悪いことをした子供の言い聞かせるような口調。

 艶めかしい生腿をばたつかせるも、快楽に喘ぐ少女は必死に口を手で覆う。

 

「んぅぅぅ……!」

 

 こんな風に乱れた姿など見たことも、想像したこともなかった。

 男の手で弄ばれる凛々しき乙女の淫らな姿に、目を釘付けにさせられる巫女。

 

「なんだか苦しそうですよ? それに、私も若葉先輩を見ていると……」

 

「そうだね~。だからこうやって苦しみを和らげるんよ」

 

 シャツの中から汗ばむ乳房を揉む。

 もう片方の手は張り付いたショーツの中で、直接秘所を弄る。

 

 熱い吐息を漏らす彼女は指を鉤状にして口に含む。

 羞恥に潤んだ瞳は加虐心をそそり、見る者に興奮を与える。

 

 ショーツの中は水気を帯び、手には熱い滴と薄い陰毛が絡みつく。

 貝状の肉を掌全体で味わいながら、硬さを主張するクリトリスを指で弾く。

 

「……ッ! ッ! ぁ!」

 

 くちゅくちゅと水音を立てる秘所と悶える若葉の顔に亜耶の視線が刺さる。

 呼吸のような喘ぎは口の中で溶け、俺と亜耶にのみ届く。

 遊びの無い、最短で絶頂に誘う自慰、そのやり方を幼き巫女に見せる。

 

「亜耶ちゃんもムズムズしているんでしょ? ほら、真似してみて」

 

「……ん」

 

 呆然と膝立ちで見ていた巫女は素直に手を動かす。

 チラリと此方を見るのは羞恥を感じたからか、それ以上に興味と快感に惹かれたか。

 少女の手がゆっくりと己のスカートを捲り、程よく脂と肉の乗った腿を見せる。その付け根に覗く白い布切れに自ら触れると小さく震える。

 

「……! !? ッ!?」

 

 淫らな絶望を浮かべ、涙を零す若葉。

 ぽうっとした表情で亜耶がその痴態を眺め、手を動かす。

 

「よく見えないです……」

 

「え?」

 

 それは、天然による巫女の発言だったのだろう。

 或いは彼女自身に備わっていた少女も知らない何かの目覚めか。

 

「あ、えっと……亮之佑先輩が何をしているのか」

 

「そっかー、そうだよね~」

 

 彼女からはショーツの中でもぞもぞと指を動かしているだけに見えるだろう。

 

「じゃあ亜耶ちゃん。ちょっと若葉のパンツ、脱がせてみてくれるかな?」

 

「なっ!? い、いや、それは流石に──んむッ!! ンっ………ふッ、んぅぅ……!」

 

 小さくも絶頂の波に揉みくちゃにされていた若葉が反応を示す。

 金髪を額に張り付かせ、淫靡な姿を披露している彼女でも恥ずかしいのだろう。下着を掴み、拒絶しようとする少女の唇を奪い、巫女の前で大人のキスを見せつける。

 

 散々虐められた彼女の唾液は愛液より下品にとろけ、俺の舌に絡む。

 少しだけ積極的になった少女の舌が蠢き、唾液を交換する。

 耳を指でくすぐり、情熱的なキスを、若葉の唇を丹念に味わった。

  

 巫女の見守る中、ゆっくりと唇を離すと糸が伝う。

 もう好きにしてくれ。彼女の紫紺の瞳がそう告げていた。

 

「亜耶ちゃん」

 

「……はい、失礼します。若葉先輩」

 

「……っ」

 

 淫らな空気に酩酊したのか虚ろな目を見せる巫女が動く。

 勇者のサポートをする為、少しでも誰かの役に立つ事を目的とする彼女の小さな手がしゅるりと布切れに伸びる。

 抵抗はなく、亜耶にぶつけない為か、脚もばたつくことはない。

 目を逸らし諦めたように腰を浮かべる若葉から幼き少女が下着を脱がせ取る。

 

「凄い。若葉先輩、大人だ……!」

 

「え?」

 

「おけけだ」

 

「ッ……!」

 

 ジッと勇者の恥毛を見て、感心したように呟いた巫女の一言。

 思わず俺も秘裂付近に薄くも生え揃った金毛を見やり、開いた太腿を震わせる若葉。耳まで色濃い朱色に染まった彼女は、いったいどれだけの羞恥を覚えたのか。

 俺の首元に顔を埋める彼女に哀れみすら覚えてしまう。

 

「大人ってのは?」

 

「その……やっぱり防人の皆さんとか巫女の先輩方と比べて、私は全然生えてこなくて」

 

「そっか。そういうのは個人差だから。亜耶ちゃんもいずれ大人になれるよ。ねえ、若葉」

 

「こ、こんなの別に……。私よりもひなたの方が……」

 

「亜耶ちゃん。ここの豆みたいなのをクリクリすると良いよ」

 

「ぁっ!」

 

 もごもごと首元で喋る少女。その湿った媚肉が指を迎える。

 瞼をぎゅっと閉じ、俺の肩に頭を置く若葉に代わり、秘裂をまさぐり陰唇を開く。

 

「亜耶ちゃん。ほら、若葉の綺麗だろ? そしてここがクリトリス」

 

「クリ……」

 

 大きな丸い眼差し、純粋な薄緑の瞳が若葉の性器を見つめる。

 視線を感じたのか僅かに脚を閉じようとする少女の耳を甘噛みすると羞恥の涙を浮かべる若葉。二人で少女の秘所について語り合うと耐え難いとばかりに衣服越しに俺の身体に爪を立てる。

  

「んぁ……っ、ッ」

 

「こんな風におっぱいも弄ると良いんだよ。若葉は普段から夜な夜なこうやってるんだよね?」

 

「えっ!? そうだったんですか!?」

 

「し、してない……ふくぅっ!!」

 

「嘘を吐いたら駄目だろ? ほら、毎夜毎夜ひなたに調教して貰っているっていいなさい」

 

「してない……私はしてない……っ、ひなたが勝手に……」

 

「あの、亮之佑先輩。ひなた先輩に調教されているっていうのは?」

 

「憶測だったけど、この身体のエロさは親友によって育てられたという事だ」

 

「はあ……?」

 

 ブラウスの中でずらしたブラから覗く乳肉を揉む。

 しっとりとした餅肉と先端の果実を手で弄る度に生腿が床を這い、時折亜耶の腰に当たる。

 額に汗を浮かべ、荒い吐息を少女は漏らす。

 

「なんだか、すごく気持ちよさそう……」

 

「ほら、亜耶ちゃんも」

 

「は、はい」

 

 無邪気にスカートを捲り、覗き込むように純白の布切れ越しに秘所に巫女は触れる。 

 まだ恥じらいが足りないのか、或いは空気に飲まれたのか異性の前で堂々と恥部を弄る彼女を見ながら、ロッカーに入る前よりも従順となった若葉の淫らな声に耳を傾ける。

 

「『こんな上も下もよだれ垂らしちゃって……はしたないですよ、若葉ちゃん』」

 

「ひゃめろ……ひなたの声真似なんて……ぁぁっ、ぁ!!」

 

 薄い金色の陰毛から覗く肉芽を指の腹で撫でる度に喘ぐ少女の声。

 その痴態に頬を染めながらも、学び吸収する巫女は自らの秘所に手をやり、静かに目を閉じる。

 

「……ぁっ」

 

 形の良い眉を顰めるのは若葉だけでなく、亜耶もだ。

 出し慣れていない、戸惑いと好奇心を孕んだ少女の声音。

 同じ動きを模倣しようとしているのか、巫女は不規則に肢体を跳ねさせる。

 

 そんな真面目な巫女の為に俺は若葉を悦ばせる。

 新鮮な蜜を指で掬い、クリトリスにまぶし、親指と人差し指で擦る。

 

「亜耶ちゃん。こうすると良いよ」

 

「~~ッ!? っ、ぁっ! ま、待て!! それは本当に……ッ!」

 

「クリクリしましょうね~」

 

「ぁぁぁっっっ!!!」

 

 続く言葉は無くカクカクと唐突に腰を震わせる若葉。

 手の甲を噛み、指を口に含み、白い腿と勇者部の部室に蜜液を垂らし、はしたない声を上げる。

 いとも簡単に快楽の津波に飲まれる彼女の姿に、巫女も指の動きを速め始める。

 

「こう……ですか……? ぁ……ッ!」

 

 じわりと汗を浮かべた少女が自らの腕を脚に挟む。

 僅かに腰を引かせる亜耶の快楽に痺れ始める姿を眼球に焼き付けながら──、

 

「ぅぁ……くぅぅっ……っ、ッ、待って、りょうの……今、ひったばかりで……」

 

「勇者なら大丈夫。ほら、亜耶ちゃんの前だよ」

 

 溢れる愛液をクリトリスに擦り付ける。

 乳頭と同時に肉芽を弄り、快楽が溢れたように瞳から溢れる涙を指で拭い、媚肉へ。

 

 ぬちゅっと割り拓く感覚と同時に指の腹を腹側に向け、外と中から肉芽に刺激を与える。

 その快楽はよほどの物だったのか、首元に伏せていた若葉が最後の抵抗とばかりに恥丘を攻め立てる腕を必死に掴み、巫女の前にも関わらず恥も外聞も捨て、嫌々と首を振る。

 

「ぁ、ぁッ……なにかっ、なにかきちゃう……きちゃうっ!!」

 

「だ、ダメだ……また、く……ッッ!!」

 

 衣服の擦れる音と少女たちの荒い呼気。

 背を反らす若葉にとっての何度目かと巫女の初めてが重なる。

 

 ぷしゃっと水飛沫が手を濡らした。

 

「「~~~~ッッッ!!!」」

 

 言葉にならない少女の嬌声。

 悲鳴を上げれば誰かが来ると思ったのだろう。

 口を手で押さえ背中を反らす若葉と身体を丸める亜耶の身体が小さく震えていた。

 

 

 

「──今度、ちゃんと教えるね」

 

「ふぇ?」

 

 少女の愛液で汚れた床を拭く手が止まる。

 顔を上げると可憐さと幼さの同居した顔。

 

「さっきの講義。中途半端に齧ると危ないからさ。良かったら、しっかり教えるよ?」

 

「本当ですか! さっきの気持ちいい? ことを一杯学んだら芽吹先輩も喜んでくれると思いますか?」

 

「勿論。毎日ぐっすり眠れるようになるよ。……でも、しばらくは誰にも言ったら駄目だよ」

 

「どうしてですか?」

 

「ほら、芽吹たちを亜耶ちゃんが自ら悦ばせるには技量が足りないからね。ちゃんと俺のお墨付きを貰うまでは誰にも言ったら駄目だよ。修行なんだから」

 

「……修行。分かりました。よろしくお願いします」

 

「うん。いっぱい教えてあげる」

 

 少女の上目遣いは心がときめくこと間違いなし。

 もう少し肉体的に年を経っていたら骨抜きにされたかもしれない瞳。

 そんな素直な少女に笑みを浮かべると、ふと巫女の笑顔が曇る。

 

「あ……今、神樹様から神託があったのですがバーテックスが来るそうです」

 

 巫女の神託、敵の襲撃に関しては高い精度を誇る。

 亜耶の言葉通り、このあとすぐに敵が来るのだろう。

 

 部室の壁際で三角座りとなり、膝に顔を埋める少女に目を向ける。

 無防備な少女のスカートからは履き直したばかりのぐしょぐしょの下着が覗ける。

 乱れた衣服も直さず、廃人のような態度の彼女に亜耶も声を掛けかねていた。

 

 ボソリと俺に聞こえる程度の声で若葉が呟く。

 

「あんな乱暴な辱めを受けたのは初めてだ……」

 

「……ほら、いつまでも拗ねていないで」

 

「……」

 

「さっきの若葉。エッチで可愛かったよ」

 

 その言葉に若葉は顔を上げる。

 キッと俺を睨みつける金髪の勇者は此方と目が合うと、かああっと顔を赤らめる。

 明らかに先ほどの行為を意識しているのか、揶揄い少女を悶えさせる分にはともかく、このままでは戦闘どころではないだろうと、俺は彼女の立て直しを図る。

 

「でも気持ち良かったでしょ?」

 

「……」

 

 そう告げながら立たせると、きゅっと唇を結ぶ彼女は、小さく頷く。

 再び乱れた衣服や髪を整えている間、若葉は無言でされるがままだった。

 

「若葉」

 

「分かっている。すぐに切り替えるとも。ただ──」

 

 唇を重ねる。 

 樹海化警報がスマホから鳴り響く。

 

「────」

 

 大きく見開かれた瞳がゆっくりと閉じられる。

 おずおずと慣れない距離感を埋めるように、両腕が背中に巻き付けられる。

 

「無事に戦闘が終わったら」

 

 静かに唇を離して、脳に刻むようにゆっくりと告げる。 

 かき抱いた若葉の柔らかな頬にキスをして、額を重ねる。

 

「一生忘れられないくらい優しく、気持ちよくしてやる」

 

「────」

 

「だから、気を付けてね」

 

 薄く開いた瞳が揺れる。 

 世界が書き換わる瞬間が迫る中、若葉の回した腕に力が籠る。

 

 ──そうして俺は彼女を見送った。

 

 

 



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第十一話 罰ゲーム

「かっき〜」

 

「園ちゃん」

 

「疲れたぁ~」

 

 戦闘が終わると、園子が抱擁を求めてくる。

 制服越しに双丘が潰れていることに気付きながらも少女は全力で俺に抱き着く。

 笑みを浮かべ、甘えているところを見せつけるように抱きしめる彼女と俺の姿は見慣れた物だ。殆ど誰も気にすることなく、闘いの感想や今後の指標など雑談が始まる。

 

「かっきー先輩、私も~」

 

「お~、よしよし」

 

「んへへ……」

 

 見慣れた姿よりもやや小さい背格好の金髪少女。

 アルバムの写真から抜き出したような姿は、思い出の物と変わらない。

 

 成長すれば間違いなく誰もが羨む令嬢になるだろう、そんな小学生も真似をするようにハグを要求してくる。断られるとは微塵も思っていないような蜂蜜を溶かした笑み。

 可愛らしい彼女の求めに応じると、小さな園子を抱き上げてクルクルと回る。

 

「そーら、たかいたか〜い!」

 

 いつの年代の園子であろうとも笑顔を浮かべている姿に頬が緩む。

 最初の幼馴染にして最初の友達、加賀亮之佑の殆どの初めては彼女と共に経験したのだ。あの頃の乃木園子が目の前にいる。ただそれだけで胸中を言いようのない何かが過る。

 それらを押し殺して笑みを浮かべると、優しく抱きかかえる。

 

「怪我とか無いか?」

 

「うん。大丈夫だよ~」

 

 ふにゃふにゃな笑みを浮かべる園子(小)は満足したように離れると、そのまま同期の小学生に突撃する。

 チラチラ見ていた須美やもう一人の少女に抱き着く中で、背後の柔らかい感触は変わらない。

 

「ほら、大きい方のそのっちもいつまでそうしているの?」

 

「う~ん。むにゃむにゃ、あと5分~」

 

「もう、そのっちってば」

 

 首に腕を回し、抱き着いたまま眠る技術が身に付いたのか。ただの冗談か。

 そんな彼女のふわふわ発言に眉を顰めるのは、濡羽色の髪をリボンで纏めた少女だ。

 制服越しに主張する双丘の存在感は勇者の中でも随一。面白さも随一である。

 

「そうやって絶対起きないでしょう。………それにそういうのはここじゃなくても」

 

「な~に? わっしー」

 

「う、ううん。……ところで亮くんはどこに隠れていたの?」

 

「部室にいた」

 

「そんな!? 移動すらしていないなんて……! やっぱり最初から発信機を……ううん、ダメよね。あっ、でもやっぱり一番最初に見つけたかったわ」

 

 困ったような表情で頬に手を当てる姿は様になる大和撫子。

 公衆の面前で触れ合いを求める園子とは異なり、そっと手を小さく握る。

 

「亮くんだけじゃなく……友奈ちゃんまで先を越されて………くっ」

 

「えっ、なになにー? 東郷さん、私を呼んだ?」

 

 トテトテと歩み寄ってくるのは薄紅の髪と瞳の少女だ。

 サイドポニーテールをゆらゆらと揺らし、向日葵のような笑顔に誰もが惹きつけられる。

 

「ただいまのタッチー!」

 

「いえーい」

 

 笑顔でハイタッチを求めてくる少女。

 全体的に触れ合いの多い彼女たちに悪い気はしない。

 

「それでそれで? 何の話をしてたの?」

 

「ふっふっのふー……。ゆーゆにはこの後、私からの罰ゲームが待っていま〜す」

 

「友奈ちゃんに罰ゲームだなんて!!」

 

「わー、楽しそう!」

 

「ふっ……これからゆーゆにあーんな事とかこーんな事しちゃうぜぇ」

 

「きゃー!」

 

 顔芸を披露する東郷と異なり両手を合わせて楽し気な様子を見せる友奈。

 俺から離れ、女同士の絡み合いの光景に眦を和らげると、東郷に目を向ける。

 

 一瞬で視線に気づいた深緑の瞳。

 ぼやくように呟く声に俺は耳を傾ける。

 

「私のユウナチャンにあんな事やこんな事……」

 

「俺のだよ?」

 

「……私は?」

 

「俺のだよ」

 

「……よく聞こえなかったからもう一回」

 

「見つけられなかった罰に、今度は俺が食べるから」

 

「……!」

 

 少しだけ頬に朱色を見せる学園のマドンナがくすりと笑みを漏らす。

 奥ゆかしい白い手がそっと俺の指に絡みつき、きゅっと握られる。

 

「はいはーい、皆。お疲れ様」

 

 そうしていると、勇者部部長である風が両手を叩き周囲の目を集める。

 巫女組、勇者組と夏にも関わらず多くの少女たちが集った部室には隙間という物がない。周囲で同じように取り留めのない会話を繰り広げていた彼女たちが目を向ける。

 

「取り敢えずバーテックスも撃退したし、続きといきたいんだけど……」

 

 勇者部による催しは大抵がバーテックスの襲撃と被る。

 こういったことは珍しくなく、精霊の守護もあり、殆どは大事なく戻ってくる。

 そういうことで少女たちも平然とした様子で『かくれんぼ』の続きを開始する。

 

 とはいえ、残り時間はとっくに過ぎてしまった。

 優勝者は千景であり、目を合わせると微笑を浮かべたのが印象的だった。

 

「若葉ちゃん? 髪型変えたんですか?」

 

「えっ? あっ、うん。暑いからな……」

 

 ──若葉は最後まで俺と目を合わせようとはしなかった。

 

 

 

 +

 

 

 

 夏の夕方は、昼頃よりも多少は涼しさを増していく。

 それでも長髪の少女には少し熱いのか、後ろで纏め上げた彼女が吐息する。

 

「むふ~」

 

 安堵と満足気な溜息。

 

「くるしゅうないんよ」

 

「ありがとうございます。お嬢様」

 

「今日からゆーゆはメイド長に昇進さね」

 

「へへ……光栄でございます」

 

 髪を結った令嬢は水着を着ていた。

 紫色のビキニ、どこか煽情的な下着に等しいトップスやボトムスには細やかな飾り、腿に巻かれたシュシュが生腿の艶めかしさを強調している。

 泳ぐことではなく見せることを主目的とした水着は彼女に似合っていた。

 

「かっきー、どこを見てるのかな~……?」

 

 俺の視線を惹きつける彼女は自身の身体の魅力を理解しているようだ。

 チラリと見上げる琥珀の瞳には悪戯心と喜色を過らせている。

 

 園子は寝ていた。

 だが砂浜の上でも、海でも、プールでもない。

 

 ──加賀家別宅の、友奈の膝枕の上だ。

 

「ちょっとだけなら触ってもいいよ」

 

 横になると園子の乳肉が寄せられて深い谷間を作る。

 そんな白肉が紫色のビキニから覗いており、俺の手を誘う。

 

 ぬぷぷと沈み込む柔肉と程よい質感が指先に快感を覚えさせる。

 この谷間に怒張を挿入したらどうなるのか、人を揶揄するような眼差しを浮かべている園子の乳の谷間に指を出し入れしていると、声が掛けられる。

 

「亮ちゃん、ちょっとどいてくれる? あと園ちゃんも、動かないでね」

 

「うん」

 

 ニヤリと笑みを浮かべる園子の頬を撫でる友奈が横を向かせる。

 彼女もまた水着姿、黒色のビキニだが、エプロンを腰に巻き、ホワイトブリムの代わりに白色のハイビスカスを一輪だけ頭に咲かせている。

 どこか生地の面積が小さい水着は少女の肌の露出を強調させている中、既に適応したメイドが右手に持つのは綿棒、長い金色の髪から覗く形の良い耳、その黒穴へ。

 

「お嬢様、入れますね」

 

「んっ、ぁ」

 

 罰ゲームとして乃木園子のメイドになった友奈。

 彼女の耳掃除術に、ぴくぴくと園子の足指が震える。

 

 若葉も嵌った耳掃除。

 耳掃除に快楽を感じるのは令嬢も同じらしい。

 鼻歌混じりで綿棒を動かす友奈の指先一つで小さく声を上げる。

 

「ぁぁ……」

 

 へにゃりと頬を緩ませ、綿棒がくりくりと動く度に脚を伸ばす。

 綿棒の挿入を繰り返し耳垢を探る度に、声を押し殺して快楽の吐息を漏らす。

 

 そんな園子を聖母の笑みで見下ろすのは友奈だ。

 乃木家パワーで用意した衣服で着せ替え人形と化し様々な写真を撮られた彼女は最後にはビキニメイドとなって少女に仕える。

 既に全身マッサージを行い、耳掃除まで園子が堪能するのを俺は見届けていた。

 

「ふぅ……」

 

「ぁー……!」

 

「気持ち良い? 園ちゃん」

 

 立場上は上の園子が綿棒一つで弛緩させられる光景。

 愛撫とも言えない行為に彼女は喘ぎを押し殺し、綿棒の挿入に身体を強張らせ、抜くと弛緩。罰ゲームとして自らのメイドになるように告げた園子の声は男を惑わせる。

 

「んぅ……」

 

 右が終われば、左の耳を。

 虚ろな瞳から光の消えた園子に友奈は耳掃除を続ける。

 露出した白い背中がピクピクと震える彼女が、快楽の余韻に浸る令嬢に終わりが訪れた時、ふう、と小さな吐息を漏らしたのを見過ごさなかった。

 

「気持ち良かったよ〜……」

 

「えへへ……それなら良かったー!」

 

「今度わっしーにもしてあげたら? 泣いて喜ぶんさ」

 

「そうだね……」

 

 耳掃除を終えて上体を伸ばす園子。

 おもむろにメイドに近づく少女は友奈の腕を取ると後ろに引っ張る。

 

「そ、園ちゃん?」

 

「ゆーゆ」

 

「な、何? どうしたの?」

 

「……」

 

 ほう、と吐息する水着姿の園子は友奈をソファへ。

 おもむろにメイドを抱擁する彼女は、友奈の手首に手錠を掛ける。

 

「ほへ?」

 

 きょとんとした顔の友奈。

 対して無言を保つ園子はしっかりと両手首を拘束すると、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「今ね、ゆーゆに手錠を掛けたんだけど、どう思った?」

 

「えっと……」

 

 女主人に背後から抱きすくめられるメイド。

 彼女は戸惑い気味に俺を見やりながら、おずおずと答える。

 

「は、外して欲しいな~って」

 

「ダメ」

 

 ひゃんっと驚きと羞恥に塗れた声が漏れた。

 園子が黒い水着に包まれた友奈の乳房を両手で揉んでいた。

 

「あ、あの、園ちゃん。やめっ、ダメだよ……っ」

 

 はむりと友奈の耳に園子は噛みつく。

 嫌々と首を振るメイドの胸は、園子の手に合わせて形を変えていく。

 濃厚な女同士の絡み合いを前に俺は息を呑む。 

 

「さっきまで気持ち良くしてくれたお礼をしないとね~」

 

「んんっ……、そ、それなら大丈夫だよ」

 

「ダメだよ。ゆーゆが気持ち良くするのが今日の罰ゲームの主旨なんだからね~」

 

「そうだったの!?」

 

 驚いたように本来の主人に目を向けるメイドだが俺も初耳である。

 そうしている間にも園子の手がビキニをずらし、程よく実った胸がこぼれる瞬間を見届ける。友奈は生娘のように恥ずかしそうな声を上げて咄嗟に隠そうとするも、両手は後ろだ。

 

「ゆーゆはその衣装で時々かっきーにエッチなご奉仕とかしてるんだよね?」

 

「っ……! ど、どうだったかなぁ?」

 

「隠しても無駄だよ~」

 

 頬にキスをすると上気したように朱色に染まる。

 外れかけたビキニから覗く、ツンと上向いた乳房をゆっくりと揉みながら先端を執拗に指で刺激する少女は楽し気な笑みを浮かべる。

 

「ゃぁ……、なんで……んぁっ」

 

「ゆーゆは可愛いね……。わっしーが惚れちゃうのも分かるよ……」

 

「あ、やっ!」

 

 俺の目の前でメイドが令嬢に弄ばれる。

 耳を甘噛みし、左胸を揉んで、腰に巻いたエプロンの隙間に手を入れ、小股をなぞる。

 

「ほら、かっきーが見てるよ」

 

「んぅぅ……りょ……ちゃん」

 

 園子は物覚えが良い。ふわふわした天才肌だ。

 少女の両手がメイドを快楽に狂わせ、俺の目の前で乱れさせる。

 友奈ならたとえ両手が塞がっていても抵抗することだって出来ただろう。だが、相手は園子。姉妹のように背中から抱き着いて肢体を這い回る行為に喘ぐことしか出来ない。

 

「ゆーゆ、エッチだね……」

 

 パサリと白いエプロンが床に落ちる。

 園子がビキニのボトムスから手を抜き、テラテラと光る愛液に濡れた指を見せる。

 

「んゃっ……むぅっ!!」

 

 顔を赤らめる友奈の口に指を絡ませる園子。

 淫らな二人の姿に下腹部の衝動が収まらず、俺は静かに近づく。

 

「ほら、ゆーゆ。お家ではかっきーを、亮之佑を何て呼んでるの?」

 

「……ご主人様ぁ」

 

「そうだね。でも、今のゆーゆのご主人様は誰だったかな~……?」

 

 虚ろな眼差しのメイドに令嬢は躾を行う。

 拘束された友奈のボトムスを下げて、露わとなった秘所に手を入れる。

 少女の執拗な指責め、秘所をもぞもぞと動かしながら耳元に囁きかける。

 

「ゆーゆのご主人様は誰だっけ?」

 

「……その、ちゃんです」

 

「聞こえないんよ」

 

「ん、ぁぁっ!! くむぅっ!!」

 

「ゆーゆの硬くなってきたから、ここもクリクリしちゃうね~」

 

「ぃゃっ!」

 

 くちゅくちゅと水音が聞こえ始める中、園子は一切手を抜かない。

 首を振る友奈の髪からハイビスカスが床に落ちる中、弱っていく彼女を弄び、的確に悦ばせる園子が、その手の動きを止めることは決してない。

 

 恐らくは小説の題材通りの展開なのだろう、妙に目がキラキラとしている令嬢。

 口調は自分が書いているからなのか、或いは読んだことのある物を引用したのか。

 

「園ちゃん! 園ちゃんがご主人様です!」

 

「うん。その通りだよ。ご主人様を間違えないなんて良い子だね」

 

 ゆっくりと秘所から手を抜き、頭を撫でる園子は子供のように友奈をあやす。

 この光景を余すことなく東郷に送りたい。きっと鼻血を出して興奮するだろう。痛いほどに肉棒が勃起しており、しかし見開いた目を俺は逸らすことが出来ない。

 せめて少女の傍で、その痴態を余すことなく見届けなくてはならない。

 大きな瞳に涙を浮かべて主が誰かを理解させられたメイドに令嬢は微笑む。

 

「でも、答えるのが遅かったから……もっと気持ち良くさせちゃうね」

 

 ソファに置かれたクッション。

 園子はその下に隠していた『それ』を友奈の膣に挿入した。

 

「ぅ、ぇっ、ぇ───」

 

 ピンク色のそれは男根の玩具だ。

 通常の肉棒と異なり、竿にはビー玉に似た無数の突起がついている。

 それが友奈の膣襞の一つ一つを丁寧に刺激し、簡単に絶頂に達させる。

 

「ぃ、ゃっ!!!」

 

 ぷしっと噴き出る飛沫が園子の手を汚す。

 あっけない絶頂に背中を反らし、肢体が揺れる。

 

「ぁ、ぅぁっ……」

 

 よほど気持ち良かったのだろう。

 パクパクと口を動かす友奈の焦点の合わない瞳が天井を見上げる。

 

「ゆーゆ」

 

「やら……そのちゃん。これ、やら……」

 

「かっきー以外のおちんちんで気持ち良くなっちゃったね」

 

「ぁ、ぁ……」

 

 水の無い場所で跳ねる魚のように逃れようとする友奈を園子が犯す。

 女を虐め、悦ばせる道具を手に持つ令嬢はメイドに快楽の躾を行う。にちゅにちゅと手首のスナップを利かせて少女の蜜壺を玩具で抜き差しする。

 

「あああっっ!!!」

 

 軽い抜き差しだけで友奈が天国に昇る。

 びくびくと痙攣し、顔をのけ反らせるメイド。

 その身体を抱きながら、ふにふにと乳房を揉み、快楽に喘ぐ少女を見下ろす。

 

「りょうちゃん……! りょ、ちゃん……!! ぁぁっっ!!!」

 

 拘束された両手をばたつかせ、必死に閉じようとする脚。

 腰を浮かせて沈めて逃れようとする彼女の努力を、全て園子が台無しにする。

 

「ゃぁっ……またっ、またっ、イっっっ!!!」

 

 恥部を抜き差しする疑似肉棒には蜜が光り、愛液が腿を伝う。

 凶悪な突起になすすべもなく絶頂に浸された彼女は喉を鳴らす。海老のようにのけ反り、ぎゅっと閉じた目、震える太腿に光る滴は少女が法悦の空に昇ったことを示す。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 友奈の身体が痙攣する。

 じゅぷじゅぷと肉棒の抽送をしながら肉芽を弄ったからだ。

 

 的確に女の弱点を突かれた彼女には身をよじらせることしか出来ない。

 そんな彼女を哀れに思う俺は、目の前でぷるぷると揺れるプリンのような白乳に齧り付いた。

 

「ひぁっ!? ンンッ!!」

 

 乳肉を唇で吸い、先端を指で撫でる。

 友奈の内腿を舐めていた園子が口を離し、俺に目を向ける。

 

「かっきー」

 

 衣服越しに肉棒に触れる令嬢が場所を開ける。

 さりげなく俺の衣服を脱がし、反り立つ肉棒を見る琥珀の瞳は興奮に揺れ動き、ソファに転がる友奈の手首を拘束する手錠を外しに掛かる。

 拘束を外しても、抵抗も出来ないほどに弱った友奈はとろんとした目で俺を見上げる。

 

「ぁ……。りょうちゃん」

 

 にゅるるっと少女の膣から疑似肉棒をゆっくりと抜く。

 ぶどうのような突起には蜜液が糸を引いていき、吐息する友奈。

 ちゅぽっと先端が抜けると共にビクッと小さく震えるメイド。その花弁を指で開く園子は俺の竿を手に取り、媚肉へと宛がう。

 

「まって……今、敏感だから……やらぁ」

 

 熱くぬめる肉壺に一息に挿入する。

 ぬぷぷと膣襞が本物の肉棒に歓喜を上げるように蠕動する中、俺は吐息を漏らす。

 

「ぁぁ~~~ッッ!! ……か、ぁ、ァ……っ!」

 

 園子に散々弄ばれた肉襞は出来上がっていた。

 ぎゅうっと締め付けが増すのと同時に友奈が普段よりも身体を大きく跳ねさせて震え続ける。甘く蕩けた悲鳴を聞きながら、俺は射精衝動に従い、ひたすらに腰を振る。

 

「あんっ、ぁっ、ぁっ、あぁっ!! まっ、ひゃめっ……やぁぁぁっ!!」

 

「本当のご主人様は誰だ?」

 

「はぁ、ぁッ、りょ、りょうっ……ちゃん、です」

 

 身をのけ反らして達する友奈の唇に園子が襲い掛かる。

 ちゅっと友達同士がするようなバードキスと乳房を捏ね繰り回される彼女の膣が締まり、怒張から子種を吸い取らんとする。

 目尻に涙を浮かべて震える友奈に令嬢は微笑む。

 

「ンっ……。その、ちゃん……?」

 

「ゆーゆ。……いっぱい、気持ち良くなってね?」

 

 俺は友奈の両脚を掴んだまま、真上から打ち込むようにピストンをする。

 種付けするように密着しプレスされる友奈は苦しそうに喘ぐ。

 下に敷かれたタオルに愛液が飛び散り、反り立つ肉棒を抜き差しする度に白濁した泡が結合部からこぼれる。

 

「あひっ、ぁっ……ぁ───!」

 

 喘ぐことすらやめ、虚ろな目をする友奈の唇を奪う。

 あどけない半裸の少女を串刺しにして犯す悦びを味わいながら腰を振る。

 

 獣のように。人目も気にせず。

 何度も達した膣に釘打ちするように真上から肉棒を突き刺した。

 

「いぅぅぅっっっ!!!」

 

 意識が白く染まる中、濃厚な精液を注ぎこむ感覚だけが明確だ。

 友奈の奥の奥までしっかりと注ぎ込む快楽に呻く。  

 

 一滴も残さずに友奈に注いだ俺の目の前に、園子が顔を見せる。

 端正な顔がふらりと近づき、ちゅっ、ちゅっと唇を奪われる。

 

 ちゅ、ちゅっと唇を交わらせる令嬢の瞳には隠せぬ興奮と喜悦。

 目の前で開かれた情事に酔ったのか、友奈の秘裂から溢れる白濁のソースを指で掬い舐めとる彼女は艶やかな唇と男を惑わせる色香を振り撒く。

 

「次は……」

 

 ビキニから覗く谷間、乳肉を俺の胸板に擦り付ける。

 熱い呼気が鼻腔から漏れる少女の期待の眼差しに答えようと──、

 

「ひゃぅっ!?」

 

 突然奇声を上げる園子。

 その両手に突然、手錠が掛けられる。

 

 下手人は誰か。決まっている。

 令嬢のボトムスの中に手をいれ何かをしたメイドが薄く目を開く。

 

「友奈……」

 

 弱々しい瞳に強い意志を宿す彼女がゆっくりと上体を起こす。

 哀れなメイドの身体には無数のキス痕で赤みを帯びており、ずれたビキニから覗く胸はいやらしくもツンと尖っている。

 躾されたであろう身体は未だに絶頂の余韻に震えている。

 

「園ちゃん!」

 

「わっ!?」

 

 両手を前に拘束された園子、彼女を押し倒す友奈ごと俺は腕に抱く。

 俺の胸板に背中を預ける令嬢は余裕の笑みを崩すことなく、窘めるようにメイドに告げる。

 

「どうしたのかな、ゆーゆ? 良い子だから邪魔しないでね」

 

 いっぱい気持ち良くなったんだから、と口にする園子。

 顔を上げる友奈は目尻に涙を浮かべて、悔しそうな顔を見せる。

 

「良い子じゃない……」

 

「さっきはごめんね~。ゆーゆの反応がエッチで可愛かったからね」

 

「ぅぅ……」

 

「今はまだ罰ゲーム中なんだから、ほら、私のメイドなんだから手錠を外そうね?」

 

 ぐぬぬ、と悔しそうな顔を見せるメイド。

 身体に教え込まれた園子からの快楽が彼女の従順を押し付ける。

 

 友奈とて怒らない訳でも、悔しがらない訳でもない。

 園子に罰ゲームと称して良いように弄ばれた事に咄嗟に仕返しをしようとしているのだろう。そんな彼女の意思を尊重したいと思う俺は背後から園子を持ち上げた。

 

「うえ!?」

 

 園子は軽かった。 

 だから両脚を掴んで開脚させ、涙目のメイドの前に差し出すことくらいは出来た。

 俺の意図を察した園子は嫌々と首を振る中で、友奈に目を向ける。

 

「乃木さんの家には何事にも報いを……という言葉があってだな」

 

「か、かっきー!」

 

「今日の罰ゲームって園子が心も身体も気持ちよくなるって事だろ?」

 

「そんなこと言ってないよぉ」

 

「さっきの園ちゃんと友奈の絡みで俺は心がスッとした。なら、あとは身体の方だね」

 

「ちょ、ちょっと何を言っているのか分からないかな~」

 

 俺の肩と胸板に身体を預ける園子が振り向いて抗議する。

 苦笑いを浮かべている彼女は本気で友奈が何もしないと思っているのだろう。

 

 良い子の友奈は何もしないと。

 

「私は悪い子で、罰ゲームだけど園ちゃんのメイドなんだから……」

 

 友奈の手が水着に伸びる。

 園子の顔が強張る中で、メイドは宣言した。

 

「頑張って……お嬢様のこと、気持ち良くするから」

 

 

 



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第十二話 メイド×令嬢

いつも温かい感想・評価・誤字報告をありがとうございます。


 友奈が微笑んだ。その微笑に俺も微笑む。

 園子は唐突な笑みに戸惑いを隠せないように、強張った笑みを浮かべた。

 

「……ん、……っ!」

 

「ん~……?」

 

 びくっ、びくっと園子が身動ぎする。

 メイドの白魚のような手が、細い指が露出した肌を舐めるように撫でる。

 

「園ちゃんって、敏感だね。今のが気持ち良かったの?」

 

「……くすぐったかっただけだよ」

 

 生腿を指で這う度に、びくりと小さく震える令嬢。

 腹の上に拘束された両手を乗せ、艶やかな脚は膝裏を俺に掴まれて開かれている。大きく脚を開かせ、布切れ越しとはいえ秘所を差し出すような姿に彼女も羞恥を覚えているようだ。

 

 レースやアクセサリーの付いた紫のビキニは園子に良く似合う。

 そんな彼女がこれからメイドに乱れさせられる姿はもっと似合うだろう。

 

「ぁ……!」

 

 園子のビキニがずらされ、雪肌色の乳房がぷるりと揺れる。

 背後から覗くと、淡いピンクの乳頭は既に硬くなっていることが明らかになり、ジッと目を向ける。喉を鳴らし、開脚状態の園子の体温と僅かに高鳴る鼓動を胸板に感じる。

 

「もう硬いね。興奮してるんだ?」

 

「……ちがうよ~」

 

 首を振る園子の乳房を友奈が揉む。

 どこか小悪魔的な色気を漂わせる彼女は優しく肉果を揉み、先端を弄る。

 

「やっぱり園ちゃんのおっぱいって大きいねー! 私ももっと大きくなりたいな〜……」

 

「ん、んッ……!」

 

「ねえ? どうやったら大きくなったの?」

 

 無邪気に、或いは作為的に友奈が乳頭を指で責める。

 上に、下に、左に、右に、乳首を指で弾く。色白の肢体が小刻みに震える中、幼さの残るメイドは自らのずれたビキニを戻すことなく俺に見せるように自らの乳房と令嬢の乳房を擦り合わせる。

 抱き着くように密着する友奈は、園子の肩に顎を置き、その耳元に囁きかける。

 

「ねえ、聞いてる?」

 

「ッ! い、いっぱい眠る、とかじゃないかな……?」

 

「ふーん。前にね? 東郷さんに聞いたらぼた餅とかお米を食べることだって」

 

「わっしーは特別、かな〜? たぶん、そういう体質とかもあるだろうし……、ぁ」

 

「そうだよね〜」

 

「んッ……ぁっ!」

 

 園子の横顔、その目は潤み、口元が緩みかけてはきゅっと結ばれる。

 熱い吐息を漏らしながらも友奈との乳合わせに耐える園子は力なく微笑する。そんな中でも続く、少女たちの乳肉が触れ合い形を変える様を見ていると、友奈に声を掛けられる。

 

「亮ちゃんはやっぱり大きい胸の方が好きなの?」

 

「大事なのは大きさじゃない。誰の胸かどうかだろう」

 

 見知らぬ女よりも友奈や園子の胸に興味が生まれるのは当然だ。

 その結果、大きかったり小さかったりするだけ。みんな違ってみんな良い。

 

「えへへ……ありがとう。やっぱり優しいね」

 

 園子を挟み、にこりと笑みを浮かべる友奈。

 天使の如き微笑を浮かべる彼女の唇が一瞬だけ俺と重なる。

 

 そうして楽しそうな友奈の手先による淫靡なテクニックが披露される。

 

「ッ──! やッッ!」

 

 背中を反らそうとする令嬢の乳房に友奈は歯形を残して責める。

 ちゅぱ、ちゅぱっと乳首を口に含む少女が甘噛みする度に園子は痙攣する。

 

 首筋から漂う汗と女の香り。

 唾液の糸が唇と乳房に引かれ、その距離が無くなる度に強くなる匂い。

 カチャカチャと手錠の鎖が音を立てる中で、友奈の乳首責めが続く。

 

「ぅ、くっ、ん……ッッ!!」

 

 至近距離で見る園子の痴態に思わず喉を鳴らす。

 友奈に弄ばれ、何度か小さく絶頂に達した彼女は呼吸を荒げる。ぐったりと脱力し身体を預ける彼女が肩に頭を預けて俺を見上げる。

 琥珀の瞳に情欲を浮かばせて、無言の熱視線を俺に送る。

 

「……かっきぃ」

 

 メイドの面影もない半裸の少女に身体を熱くする少女。

 甘えたがりの彼女が爛れた視線だけで俺に挿入をねだっている。

 

 頬を触れ合わせ、薄い唇を何度か重ねて、甘く喉を鳴らす。

 ふわふわな少女の淫らな姿にボトムス越しに押し付ける肉棒が反り立つ。

 

 このまま園子を組み伏せ、思うままに抱いてやりたい。

 だが、料理と同じように今はまだその時ではない。

 

「友奈」

 

「んむ?」

 

 彼女の赤子よりも早く園子の授乳経験を堪能している友奈。

 メイドとしてのエプロンもホワイトブリムも無い。ただ令嬢に反逆することを志したメイドは女主の乳首からちゅぱっと唇を離して、上目遣いで俺を見る。

 助かったのか。一瞬ではあるが、そんな表情を浮かべた園子を俺は見逃さない。

 

 園子を開脚状態にさせたままソファから立ち、絨毯に座る。

 狭いソファではなく、もっと広い場所で彼女を虐めたい。

 

「上ばかりじゃなくて……」

 

「あっ……、うん! そうだね!」

 

 子犬のように主の指示に従う薄紅のメイド。

 嫌々と首を振る金髪ふわふわ令嬢のボトムスを脱がし、秘所を覗く。

 

 そこからはあっという間だった。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 園子が軟体生物のように身体を反らす。

 言葉にならない悲鳴は友奈により繊細の手つきによるものだ。

 

「あむ───」

 

「ぁぁっ!!?」

 

 クリトリスを唇で挟み、汚れることも気にせず、小刻みに顔を揺する。

 腰を引かせ嬌声を上げる園子、蜜が溢れ出る秘裂に指を入れた友奈が弱点を探る。

 

「ゃっ、く、ふっ、ッ!! お、おろしてぇ!!」

 

 汗を浮かべる園子の絶頂の頻度は少しずつ早くなっていく。

 僅かにたどたどしさのあった友奈の指先はより繊細に、的確に女の弱点を探る。ふわふわな薄金色の恥毛は蜜液で肌に張り付き、無防備に晒される肉芽にクリクリと指を這わせる。

 

「ぁ、ぁっ、ぁぁっ!!? ぅぁっっっ!!!」

 

 身体がまた小刻みに震える。

 汗と淫水の飛び散った肉付きの良い生腿を友奈が鼻歌混じりに甘噛み、歯形を作る。

 園子に出来ることは天を仰ぎ見て顔を赤らめ、淫らな悲鳴を上げることだけ。

 

「園ちゃんって美味しいね。可愛くて美人で頭も良くて……とっても敏感でエッチだもん。私が男の子だったらほっとかなかったなー。ね、亮ちゃん?」

 

「そうだろうな。あげないけど」

 

 既に開脚状態は解いている。

 だが、ぐったりとした園子は逃げることもせず、俺と友奈にされるがまま。

 此方に背中を預ける令嬢の乳房を背後から揉み、下腹部をメイドに弄られる。

 

「ひぁぁっ!?」

 

「ここが好きなの?」

 

「~~~!!」

 

 肉芽を指で弄りながら、挿入した中指の関節を曲げたのだろう。

 ちょうど気持ち良い弱点を掘り当てられた園子は背を伸ばし、友奈は笑みを浮かべた。無邪気に笑う彼女はマーキングのように新しく歯形を付けた内腿から唇を離す。

 言葉よりも身体の反応から弱点を聞き出す彼女は指を動かす。

 

「ここ? そっかあー! じゃあ、もっと気持ち良くしちゃうね!」

 

「ふぁ、あくっ、ひっ、ぁ……! だ、だめっっ!!」

 

 指が花弁から抜き差しする度にちゅぷちゅぷと蜜が溢れる。

 俺が声を掛ける必要もなく、友奈は園子の弱点を掘り当て、えいやと更に探る。

 

「まって、待ってよ、ゆーゆ……!」

 

「もしかして、ここが良いんじゃないかな?」

 

 全身に歯形を付けるつもりなのか、柔らかな腹部を甘噛みする彼女に恥骨付近を弄られる快感に腰を浮かせる園子の身体は熱く、呼吸は荒くなる。

 ぷるぷると震える乳肉を手で包み、悦ばされる雌の声を聞く。

  

「ぃぅぅぅっっっ!!!」

 

 ぷしっ、ぷしゃっと恥丘から飛沫が溢れる。

 熱い身体を震わせ、口端から涎を垂らして悦びの声を上げた園子。その姿に自らの手ではなく友奈の手によってふやけさせられる彼女への嗜虐心と僅かに支配欲が刺激される。

 

 ぐったりとした様子の園子は微動だにしない。

 崩れるように背中から滑り落ちる彼女は絨毯に黄金の髪を広げる。

 

 白い肌に汗を浮かべ、マーキングのように少女の肌のあちこちに歯形を覗かせる。

 ここまでの情事の痕をくっきりと残し、前髪を額に張り付かせ、豊かな乳房を上下させる彼女は乱れてもなお美しかった。

  

「ん」

 

 その姿に仄暗い興奮を覚えながら、俺は肉棒を彼女の裸体に擦り付ける。

 まるで玩具のように滑らかな腹部を摩り、脇に挟ませる。ただ一方的な快楽に浸り、先端から溢れる雄汁を令嬢の柔らかな肌に染み込ませていることに昂ぶる。

 人形のように端正な顔を赤らませ、亀頭が乳頭と擦れると僅かに歪ませる。

 

「……へんたい」

 

 自分の身体で何をしているのか、そんな風に琥珀の半眼で俺を見つめる。

 私のご主人様になんてことを言うのだと、あらゆる手管で友奈に喘がされる園子。

 硬い陰茎を頬に当てると、それでも何かを言おうとして開く口に含ませる。

 

「ん、ぷふっ……!」

 

 熱い口腔は唾液が粘りつき、竿をもてなす。

 頭を掴み、頬に擦り付けて奉仕を強要すると、園子は舌を使い始める。

 

「ん……むぅ」

 

 僅かにざらついた舌と頬肉が快感を呼ぶ。

 ゆっくりと左右に動かすと唾液が泡立ち、卑猥な音を立てる。

 

 園子の鼻息を感じながら、園子の舌が竿をねぶる。

 天井を見上げるように園子の顔を向けさせ、令嬢の口腔に竿をねじ込む。

 

「ン! ン~! ッ」

 

 苦しそうな令嬢の声はスパイスだ。

 ぷるりと揺れる乳肉を揉み、彼女の頬に陰嚢を押し付けて竿を頬張らせる。

 

 歯茎、歯、頬肉、舌裏を丹念に犯す。

 膣とは違う締め付けと熱さを肉竿で感じながら、ゆっくりと腰を揺する。

 

「ん、ぷぶっ……!」

 

 額に張り付いた前髪をかき上げ、絹のような髪を撫でる。

 目尻に涙を浮かべた琥珀の瞳を見下ろし、園子に怒張を咥えさせる。

 

 彼女が密かに自慢に思っている乳房を揉みしだく。

 令嬢の舌に男の味を教えて、玩具のように扱い贅沢な自慰に耽る。

 

 そんな時だった。

 

「ん、ぅっ!?」

 

 ぴんと園子が背中を伸ばすのを感じた。

 きゅっと閉じられる口、歯が竿に当たる感触に眉を顰める。

 

 かちゃかちゃ、と少女の手を結ぶ金属が音を立てる。

 唐突に身を強張らせる彼女が肉棒を吐き出そうとする原因を見渡すと、薄紅の髪に床に落としていたハイビスカスを再び差したメイドと目が合う。

 どこか面白くなさそうに瞳を揺らす彼女は、園子の陰唇を指でなぞる。

 

 休憩のつもりだったのか。少しの間、休ませていた指を動かし始める友奈。

 自分がどういう状態なのか思い出させるように小さな肉粒を指で弾く。

 

「んんぅ!」

 

 悲鳴は肉棒に押し殺され、唇の肉が竿を締め付ける。

 ちくちくと歯が竿を刺激する中、俺は友奈に目を向ける。

 

 ぎゅっと握られる園子の手を握り、乳房を潰すように揉む。

 ばたつく脚を気にすることなく、くびれた腰に腕を回して肉芽を弄る友奈。

 

「やっぱり園ちゃんの身体は綺麗だね。スタイルも良いし」

 

「友奈も綺麗だよ。食べちゃいたいくらい」

 

「えへへ……、ありがとう。あっ、そうだ!」

 

 何かを思いついたのか、彼女は園子の片脚を持ち上げる。

 淫汁に濡れた脚が開かれ、不浄の穴や開かれた媚肉が露わになる。

 そうして開かれた恥丘に対して、脚を持った友奈が近づいていくと下腹部を脚の付け根へ。ゆっくりと恥丘同士を近づけさせる彼女の行為に目を見開く。

 

「亮ちゃんが前に部室に置いたエッチな本で、こういうのがあったよね?」

 

「昔、エロ本への皆の反応を撮って遊んだアレか」

 

 そういうイベントが昔あった。というよりも自分で開催した。

 何をしているのかと思ったのかもしれないが、誰にでも若さに身を任せる時がある。

 ちなみに、一番意外な反応を見せたのは若葉で、撮られた事を知った彼女は烈火の如く怒った。

 

「あの本でこういうことをしてたなって……んッ!」

 

 本から知識を習得して賢くなった友奈。

 彼女の媚肉と脚を開かせた園子の媚肉が水音を立てて擦れ合う。

 

「ぷゆぅっ!?」

 

「ひあっ!? こ、これ……! 凄い……!」

 

 顔を赤らめる友奈が腰を左右に動かす。

 脚を交差させて園子に挿入するかのように秘所同士を擦り付け合う。

 

「んんっ! んぶっ!!」

 

「こんな簡単にっ……! ぁ、ぅ!」

 

 よほど気持ち良かったのか、肉棒を咥えた園子が快楽に呻く。

 そんな彼女の閉じようとする脚を肩に抱え、花弁同士を左右に擦り付ける。

 東郷が見たら「はしたないわ!」と叫びそうな淫靡な光景に脳を麻痺させられる。媚肉が擦れ、肉芽が触れ合う度にどちらかの雌の嬌声が奏でられる。

 

「ぁ、また、イく、ぅ……ッ!!」

 

「んぅぅっっっ!!」

 

 友奈と園子の愛液が媚肉と絡み合い、腿肉を伝う。

 女同士の絡み合いはよほど気持ち良いのか、むせ込む園子。

 

「ゆーゅ、ん! んっ……ッッ!!」

 

「その、ちゃん……!」

 

 艶めかしい脚に噛み痕を作り、無防備な秘所を友奈が責め立てる。

 ディープキスをするように陰唇と陰唇が左右に動き、蜜液を交換し、互いの肉の柔らかさと温かさに感じ入っている。

 激しい口腔行為において有利なのは手の自由な友奈だった。

 

「もっと……気持ち良く、なって」

 

 息絶え絶えになりながらも、園子の絶頂を気遣うメイド。

 呼吸を乱し、陰唇から蜜を垂らしながら、その気遣いを拒否する令嬢。

 

 手錠の金具が触れ合う音が激しさを増し、頭を揺らして竿を刺激する。

 だが、抵抗むなしく、友奈は園子の下腹部を撫でると肉芽に指を這わせる。大きな瞳を見開いて、声を上げようと少女の舌が俺の竿を襲った。

 

「ん、むぅぅっ!?」

 

 園子が友奈に弄ばれる。

 口も手も胸も性器も、俺と友奈に同時に犯されて無理やり気持ち良くさせられる。

 この世界で一番の名家のお嬢様である女の子、その身体を汚す悦びが俺を高める。

 

 気が付けば俺の腰は揺すられ、園子の口で快楽を貪る。

 頬肉が亀頭を擦り、歯の痛みと舌の柔らかさが射精感を刺激する。

 

 征服感と多幸感に視界が白むのを感じながら腰を振る。

 理性が剥がれ、女の身体を玩具のように俺と友奈で味わう。

 

 あっという間だった。

 

「く、ぅ……ッ」

 

 びゅううっと園子の喉へと衝動を解き放つ。

 濃厚なソースを味わわせ、俺はしばらくの間、目を閉じる。

 

「ぁ、あぁっっ!!」

 

「んぶッ!? んん〜~~~っっ!!」

 

 少女たちもまた、己の快楽に酔ったようだった。

 ぷしっ、ぷしゃっと重ねた花弁から噴き出し密着した腿を彼女らの淫水が伝う。

 

「…………」

 

 白い喉が小さく膨らむ。

 こくん、と白濁を飲み込み、瞼を閉じて園子が嚥下する。

 

「……ん」

 

 ほう、と吐息する彼女がおしゃぶりのように亀頭に吸い付く。

 手錠を外しても抵抗はなく、虚ろな眼差しで口端についた精液も余さず舌で舐め取る。

 

 豊満な乳肉を揉みながら、ゆっくりと園子の唇から引き抜く。

 唾液と精液でコーティングされた肉竿にキスする園子、その隣に友奈が転がる。

 

「園ちゃん」

 

「ふぇ……?」

 

「えい!」

 

「わ!? はわわっ!」

 

 仰向けになる友奈が園子を引っ張り上げる。

 されるがままの令嬢はメイドの上に覆い被さるように身を重ねる。ビキニの布切れが絡みついた状態の彼女たちはまるで正常位で交わろうとするカップルのように身体を重ねる。

 挿入するかのような態勢の園子と、脚を広げて受け入れる友奈。

 二人の秘所と尻穴が俺には全て丸見えだった。

 

 絡み合う肢体。二つの陰唇が重なり合い、愛液の伝う一つの膣となる。

 肉果がふにゅりと潰れ合い、絨毯に二人の薄紅と金色の髪が広がる。

 

「あは……」

 

「んっ」

 

 何が起きたのかを理解した園子の口元に艶めかしい笑みが浮かぶ。

 背中を見せる少女と異なり、仰向けで此方を見る彼女には羞恥と切なげな吐息を見せる。チラリと僅かに理性を取り戻した園子の琥珀の瞳には喜悦と雄としての期待が宿る。

 

 ──早く食べて。そう唇が動いて見えた。

 

「────」

 

 萎えかけた肉竿が凄まじい勢いで回復していくのを感じる。

 美しい少女たちが全てを晒して、俺に徹底的に捕食して欲しいらしい。

 

「ひゃっ!?」

 

 俺は無言のまま二人に覆い被さる。

 汗だらけの園子の背中が胸板に触れ、生暖かい体温を肌に感じる。

 

「んん……」

 

 二人分の体重が乗った友奈の目に宿る淫熱。

 握り締めた二人の手に俺の手を重ねながら、俺の肉竿が陰唇の隙間に挿入される。

 

「くっ」

 

 思わず呻くほどに濡れた陰唇が怒張に吸い付く。

 女の膣とは違う挿入感、蜜液が絡んだ生ぬるい媚肉に痺れに近い快楽を覚える。

 いやらしい水音が聞こえる中、奥へ進む肉竿の先が陰核に触れた。

 

「ぁっ」

 

「んっ」

 

 二人が甘い声を漏らすのを聞きながら怒張で最奥まで貫く。

 肉竿の根本に媚肉が吸い付き、亀頭に恥毛が絡みつく。素股ながらも密着した二人の陰唇が締め付け合い、腰をくねらせる度に竿を圧迫する感覚に俺は呻く。

 

 園子の口腔を白濁に染めたばかりだというのに、硬さを取り戻し始める肉竿。

 ゆっくりと抽送を始めると陰核が亀頭と擦れ合い、少女たちの手が握られる。 

 

「ぁっ! ぁ!」

 

「んっ……っ、ぁ!」

 

 徐々にピストンの速度を上げるにつれ反り立つ肉棒。

 友奈と園子に圧し掛かりながら、腰を揺する度に腿が少女の尻を叩く。下腹部を竿が通る度に汗と体液が滑りを良くし、にちゃにちゃと白い泡と音を立てる。

 

「ぁぁっ、これ……っ!」

 

「んんッ!」

 

 白い背中を見せる園子は首まで赤く染まり、友奈は蕩けた顔を見せる。

 彼女らの反応に肉棒は調子を戻し、滑らかな肌にピストンの勢いを間違える。

 

「ひゃぁぁっっ!!?」

 

 疑似膣から本物の膣ににゅるりと挿入される。

 驚愕と唐突な挿入に腰を浮かせる友奈が声を上げた。

 

「ぁぁ……! んくっ、ぁ……!」

 

 髪を振り乱し、俺と園子に圧し掛かられた友奈の姿。

 明朗快活な姿はどこにもなく、先ほど注いだ子種が猛獣のようなピストンの度に結合部から掻き出される。

 園子の背中に噛みついて塩味と甘味を味わい甘い声を聴きながら、腰を振る。

 

「ゃぁ……ッ、ッ ……!」

 

 濡れた柔肉が何度でも白濁を求めて蠕動する。

 きゅっと締め付ける肉に怒張を包み込まれ、快感に意識が白む。

 

「ぅぅ……」

 

 そうして悦ぶ俺と友奈にサンドイッチされた園子。

 どこか寂し気に、スリスリと無言で尻肉を押し付け、腰を上げる。

 

 チラリと俺を見る琥珀の瞳。

 肌に張り付いた金髪から覗く懇願と期待の色に、竿を引き抜く。

 

 僅かに口を開く花弁に、先端が飲み込まれる。

 その瞬間、園子はカクカクと腰を痙攣させたかと思うと、顔を伏せる。

 

「ィっ!? ~~~~っっ!!!」

 

 ただ挿入しただけで絶頂に達したらしい。

 蠕動する膣に搾り取られる肉竿はつぷと根本まで飲み込まれる。

 握り締めた手が解け、背中を反らせた彼女は友奈の上から滑り落ちる。

 

「あ……園ちゃん、大丈夫?」

 

「だ、だいじょう、ぶ、ぅぁ?」

 

 うつ伏せになっていた彼女をひっくり返して、身体を重ねる。

 正常位、メイドのすぐ隣で令嬢の最奥までしっかりと貫く。

 

「……ひ、ぁぁ……!」

 

 口端からこぼれる涎。

 俺の胸板で乳房が潰れ、行先を見失っていた手が肩を掴む。

 

「かっきー、まっ、て。おねがい……」

 

 言葉とは裏腹に艶めかしい脚が俺の腰に巻きつく。

 腰がくねり、亀頭が子宮口にこつんと触れ、首を反らせる。

 

「かっきぃ……! んっ」

 

 甘えた声を出す彼女と唇を重ねる。

 目尻に浮かぶ涙を拭い、俺の腰は彼女の望む場所を探り当てる。

 瞬く間に園子は背を反らし、声を上げた。

 

「んあぁっ!! やッ、あ、ぁ~~~ッ!!」

 

 長い髪を振り乱し、甘く淫らな香りが鼻腔をくすぐる。

 背中に爪を立て、キスをねだり、耐えられないとばかりに首元に噛みつく。

 それらの仕草一つ一つに応えるように、俺は彼女の白い肌に吸い付く。

 

 反らした首に吸い付く。

 嫌々と振る首筋に吸い付き、揺れる乳肉に噛みつく。

 

「ひ、ぁああっ! ぁ、ぁあ、ァっ、あ──!」

 

 蕩けた声音が俺の意識を白く染めていく。

 理性を削り、獣の本能を露呈させ、求めるままに貫く。

 

「ぁ、ぁぁぁっっっ……!!!」

 

「ぐっ……!」

 

 背中に回した腕が強まる。

 園子が先に、少し遅れて俺が絶頂に達する。

 先ほどよりも濃厚な雄汁が彼女の最も大切な場所を汚したのが分かった。

 

 一滴残らず、根本まで肉棒を押し込む。

 園子はそれを受け入れるように、ぎゅっと腰に回した腿に力を入れた。

 

「────」

 

 ぼうっとした顔で俺を見る園子。

 至近距離で見る琥珀の瞳、そこに映る男も同じように呆けていた。

 

「……んー」

 

「ん……」

 

 数度の瞬きの末、閉じられた瞼に、近づく唇と重ね合わせた。

 

 

 

 

 

 

「……ゆーゆ、さっきはごめんね~。ゆーゆが可愛かったから……」

 

「園ちゃん。私こそごめんね。ついうがーってなっちゃって。えへへ……」

 

 笑みを浮かべるふわふわな少女たち。

 白濁に汚れた竿を口で慰める彼女たちの表情は蕩けたままだ。

 

 友奈の瞳には喜悦が、園子の瞳には恍惚が。

 気が付くと俺は彼女たちを侍らせ、奉仕されていた。

 

「あっ! かっきーが起きた~」

 

「本当だ、おはよう! 良い朝だねっ!」

 

 ふにゃふにゃ、ふわふわ、とパンケーキのように甘い声。

 コクンと喉を鳴らして互いの口元を確認する彼女たちが俺に目を向ける。

 

 何かのスイッチを押したような、そんな眼差し。

 

「かっきー。お腹空いた~」

 

「えっ……。あ、そうだな。何か食べるか」

 

「じゃあねじゃあね! 私食べたいものがあるんだ!」

 

「おお~、それは何かな? 言ってごらんよゆーゆ!」

 

「うん! 亮ちゃんが食べたい!」

 

「へいへいゆ〜ゆ〜、ご飯にする? お風呂にする? それともかっきー?」

 

「りょーちゃん!」

 

「────」

 

 疲れたのだろう、身体から力が抜けていた。

 それでも奉仕された下半身に血が集まり、若さ故に回復の早い肉棒を彼女たちは茶番を披露しながら柔らかな手で思い思いに刺激する。

 陰嚢を揉み、肉竿を程よくしごき、亀頭に優しくキスをする。

 

 這いよる女たちは一糸まとわぬ姿だ。

 いずれも性臭を漂わせ、身体の至るところに情事の痕を見せる。

 しばらくの間、外で水着を着ることが難しいだろう。

 

「私が気持ち良くなったから」

 

「次はかっきーの番ね」

 

 どこかで見たような既視感に脳が痛みを訴える。

 即座に考えることを止めて、妖艶な微笑を浮かべる彼女たちを見上げる。

 

 いつの間にかベッドに運ばれたのか。

 ずっしりと身体に圧し掛かられ、胸板に二人の乳肉が潰れる。

 

 友奈が耳元で囁く。

 

「今日はいっぱい恥ずかしい事させられたから」

 

 園子が耳元で囁く。

 

「かっきーも気持ち良くしてあげる」

 

 それは予告だ。絶対に行うという犯行予告。

 此方をジッと見ながらも、柔らかく小さな手が握った雄棒から子種を搾り上げる。

 

「ぁ、ぁ──」

 

 赤い舌がペロリと首筋を舐めた。

 その感触に気が遠くなるのを感じ、俺は目を閉じるように意識を失った。 

 

 

 



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第十三話 メイド×令嬢→奇術師

 ──心地よい鼻歌が鼓膜を震わせる。

 

「よ~ごされた、よごされた、いっぱいかっきーによごされた~」

 

 人聞きの悪い言葉で歌詞を作る甘い声。

 ふわふわとした声は鼓膜だけではなく触れた肌ごしにも響く。

 

「ふぅ……」

 

「ん」

 

 背後から感じる吐息に、眉を顰めて瞼を開く。

 温かくプリンのように柔らかな感触を頭部に感じながら眼前の光景を見つめる。

 

「なに、をして」

 

「ん~……」

 

 肌色、金色、琥珀色。

 他の男では見ることも出来ない少女の一糸まとわぬ姿。

 辛うじて残っていたビキニは姿を無くし、髪を纏めていたリボンも無く、生まれたままの姿を見せる園子の瞳と視線が絡み合うと、ふわりと柔和な笑みを浮かべる。

 

「かっきーだけ寝かせたくないな~って」

 

「そうだよ、綺麗になってから寝ないと東郷さんに怒られちゃうよ?」

 

 正面の裸体を晒す少女に肯定するのは、背後にいるもう一人の少女。

 背後から抱き締めている少女は俺の背中で双丘を押し潰しながら、胸板に腕を這わせる。白い脚がタイルに伸び、内腿や恥骨が臀部に直に触れている感触。

 白い湯気が立ち上る浴室で俺は園子と友奈にサンドイッチにされていた。

 

「亮ちゃんって意外と軽いんだね」

 

 頬を触れ合わせる友奈が俺の耳元に口を寄せる。

 背後から友奈に抱かれ、スリスリと形の良い乳肉と突起が背中に触れる。

 そうして戯れる俺と友奈を正面から見つめる少女が、

 

「ゆーゆと私でよいしょよいしょって運んだんだよね〜」

 

「ねー!」

 

「──。転んだりしたら危ないから次からは起こすように」

 

 琥珀色の瞳が向かう先は、ぬめった肉竿。 

 足元に置かれた桶には湯が張られ、手に持つ彼女が俺の首から下に掛けていく。

 さあっと温かな湯が俺と背後の少女に掛けられ、じんわりと肌に熱を持つ。身体に付着していた誰かの愛液や何やらが流れていくのを感じながら彼女を見つめる。

 

「ん~」

 

 俺の言葉に曖昧に唸るだけの園子の手が怒張を優しくしごく。

 ちゅっと擦り上げ、すりすりと擦り下ろす。

 根本から亀頭まで細く白い手が竿裏を撫でると、上下にゆっくりとしごき始める。

 

「ぉっ」

 

 思わず声が出てしまう。

 それは令嬢の手の動きだけではない。

 

 背後から絡みつくように抱き着く薄紅色の髪の少女。

 胸板を這うような手つき、乳首を白魚のような指の腹で撫でたから。

 

「気持ちいい?」

 

 問いかけたのは友奈。

 微笑を浮かべ囁く姿が壁に設置された鏡に映る。

 

「気持ちいい?」

 

 問いかけたのは園子。

 白い指が絡みつき、眠っていた肉竿を大きくしていく。

 

「あんなに私の中に出しておいて、まだ大きくなるんだね」

 

「……ッ」

 

 呆れたような喜ぶような、聞き慣れない女の声音。

 肉棒をしごく手に羞恥はなく、好奇心に頬を緩ませる少女が半眼を見せる。そうして彼女の掌が俺の肉棒の太さや硬さを覚える間も、友奈の指先が胸板を這う。

 竿への刺激と同時に、乳首を人差し指と親指で挟み優しく擦られる。

 

「ぅ」

 

 なんとも言えない刺激。 

 指先の器用な少女が同性に愛撫するかのような手つき。

 突起をクリクリと刺激する友奈は俺の横顔を見やると唇を近づける。

 

「ぁむ」

 

「……!」

 

 耳が食べられた。 

 甘噛みするように、口内のぬめりと温かさが耳を覆い、ゾワゾワと背筋に電流が奔る。はふ、と吐息と共に耳の肉を唇で吸い付く少女の行為はディープなキスを連想させる。

 美味しそうに唇で耳の肉を食す彼女の吐息に鼓膜が震える。

 

「っ」

 

 若葉が悦びそうな耳への愛撫だ。

 そうしている間も、熱く滾るペニスへの刺激も襲い来る。

 耳が、乳首が、雄竿への刺激と共に調教開発されるような気分になりながら、幼さの残る薄紅色の少女から、自分の肉茎へと視線を下す。

 

 にちゅにちゅと溢れるカウパーに園子の指先が絡まる。

 友奈の行動を意に介さず、マイペースに雁を指で擦り続ける。

 

 楽しそうに肉竿から溢れる汁で手を汚す彼女。

 赤黒い怒張を白い指で触れ、裏筋を指の腹で根本から一撫で。

 

「ぅ、ぁ……っ!」

 

「これが気持ちいいんだ?」

 

 囁くような、独り言のような声も浴室では届く。

 自らが滾らさせた熱い竿に、園子がとろりと表情を蕩けさせる。

 

「……こんなに大きくなるんだね〜」

 

 男の味を知ったからこその表情。 

 俺の顔を見て、緩急をつけてしごく手は自慰よりも気持ち良さを覚える。ちゅこちゅこ、と水音を響かせ手を上下に動かす度にぷるりと揺れる白い乳肉。

 

「まだ出したらダメだよ」

 

 もどかしい苛立ちを生む園子の囁き。

 長い金髪を広げ、白い肌を晒しだす少女を改めて見やる。

  

 お湯を身体に浴び、首筋から伝う湯水が豊かな双丘から臍へと流れる。ビキニを失った乳房は少女が肉棒をしごく度にプルプルと震え、プリンのような柔らかさを主張する。

 興奮と喜悦に頬を赤らませる少女の恥丘は湯を吸った茂みが肌に張り付き、秘裂を覗かせる。

 タイル上に座り込む腿が左右に揺れる度に花弁が小さく開かれる。

 

「かっきー、見すぎだよ〜」

 

「園子の恥ずかしいところなんていっぱい見てきただろ」

 

「……エッチだ~」

 

 開いていた脚を僅かに閉じ、乳房に腕で隠そうとする少女を視姦する。

 羞恥心を思い出したのか、緩めていた頬の朱色を濃く染めて、半眼で睨みつける園子は反り立った肉棒をしごき、俺から理性を奪おうとする。 

 せめてもの抵抗にと、余裕の笑みを浮かべる園子へと手を伸ばす。

 

「んッ」

 

 伸ばした指先、ぽよっと弾力と柔らかさを返す肉果。

 指が沈み込む柔肌は下から持ち上げるとずっしりとした重量を掌に感じさせる。

 

 気を紛らわせる為に触れた女の肌は美で作られている。

 ぐにゃぐにゃと形を変える豊かな胸は何度揉んでも飽きることが無い。掌に余る乳房の先端は触れて欲しいとばかりにピンと立っている。

 

 そのまま腹部を撫で更に下へ。脚の付け根に覗く媚肉に指を宛がう。

 咥え足りないとばかりに花弁がちゅぷぷっと指を飲み込んでいく。

 

「ッ……! かっきー、さわりっこする? 昔、皆に秘密にしてこんなことしてたよね~」

 

「亮ちゃん。それ本当?」

 

「……記憶にないような、ッ!」

 

「ふふっ、出しちゃダメだよ~」

 

 俺の悪戯に片目を瞑る彼女は肉棒を握る手に力を籠める。 

 眠れる天才の指は容赦なく竿を掴み、限りなく膣に近い締め付けを再現する。

 その手が上下する度に白い泡がぐちゅぐちゅと淫音を立てて広がる。

 

「もう、でっ──!」

 

「ダ~メ」

 

 射精感に従う俺を許さないと、怒張を締め付ける少女の手。

 白い手がぎゅっと肉竿に隙間なく絡みつき、俺に射精を堪えさえる。

 

「我慢して、ね?」

 

 白濁を放つ管を指で押さえ、残酷な言葉を令嬢が囁く。

 そのままゆっくりと上下に動かし、絶望的な快楽が脳を焦がす。

 明らかに俺の反応を楽しんでいる園子の笑み、視界を掌が覆い隠す。 

 

「亮ちゃん。こっち向いて」

 

「──ぁ?」

 

 声に振り向く。友奈の顔。 

 幼さの残る端正な顔が視界一杯に広がり、唇を奪われる。

  

 にゅるりと少女の舌先が唇の隙間から入り込む。 

 頭を抱くように薄い乳房を押し付ける彼女とのディープキス。

 

「んっ……!」

 

 積極的に自らの舌で歯茎を舐め、舌を絡め合う彼女。

 薄く開かれた瞳がジッと俺を見つめ、唇の柔らかさを教えてくる。

 ちゅ、と垂れる唾液が唇から垂れ落ちるも、その厭らしさを誰も気に留めは──、

 

「お……っ」

 

 背後から抱擁される形で友奈とのキス。

 それを邪魔するかのように肉竿の雁を指先で刺激する少女。

 親指と人差し指で輪っかを作ると、遊びは終わりとばかりに集中的に責める。

 

「んぷ───ん、ふ……ッ、んンっ……」

 

 それでも邪魔しきれない、友奈との熱く深い口腔行為。

 もしかすると俺が行うよりも上手かもしれない彼女の舌先に目を細める。

 

 唇の隙間から入り込んだ舌に優しく蹂躙される。

 預けた身体を抱いて、熱烈なキスをしながら乳頭を弄る裸体の少女。

 普段サイドポニーテールを披露している髪は解かれ、サラリと湯を含んだ髪の毛が頬に触れる。丁寧に、丹念に料理をするように、友奈の抱擁とキスに精神が溶かされていく。

 

「──ぅっ!」

 

 少女が乳房を押し付ける程に密着し、胸板を撫でる。

 胸板を円で描き、不意打ちのように乳首に触れられて、呻く。

 

 長い睫毛に縁取られた瞼を瞬かせ、友奈の顔に笑みが広がる。

 胸板を掌で撫でながら、ときおり添える程度に指の側面が乳首に触れる。

 

「んふっ、ん~……」

 

 俺の反応が面白いのか、普段の被虐性は鳴りを潜めた彼女。

 垂れた薄紅の髪が俺の肌に触れ、楽しそうに唇を重ねる。

 

 普段弄んでいるメイドから弄ばれる主人。

 明朗快活で素直で優しい彼女が、俺を襲い辱めようとする構図。

 到底許されない、屈辱的な快楽が少しずつ俺の心と身体を蝕み始めていく。

 

「ぷはっ……! あは、女の子みたいでかわいいね……東郷さんみたい……」

  

 薄紅色の髪先から漂う友奈の匂いが鼻腔をくすぐる。

 熱病に浮かされたかのごとく少女の吐息が甘く乱れていく。

 

「ん!」

 

「……?」

 

「んー!」

 

「……俺から?」

 

「うん! ──んッ………んぅ……」

 

 俺から彼女へと唇を重ねるだけのキス。

 唇を挟み合い、柔らかさだけを確かめるキス。

 ぬるりと舌を絡め合わせ、唇を吸い、噛み、蕩け合う大人のキス。

 

 唾液で艶やかに光る唇が俺の顎を吸い、首筋を吸い、肌を吸う。

 さらさらと髪が肌に触れ、いつの間にか閉じた目を開くと、少女と目が合う。

 

「────」

 

「……すき」

 

 たったの二文字。

 それだけが、鼓膜を震わせ、脳に伝わり、鼓動を高める。

 

 このまま、いっそ、彼女と溶けてしまえたら。

 そんなことを思うほどの愛撫ともいえぬ触れ合いに意識が解れていく。

 

「かっきー」

 

 薄紅色の輝きに呑まれる中で聞こえる声音。

 ふわふわと掴みどころの無い少女の、甘えるような声がした。

 

「かっきー。こっち向いて……?」

 

 切なげで悲哀を誘うような声音。

 肉ソファの如き友奈の裸体に上半身を委ね、告げる言葉を封じるように唇を奪われながら、辛うじて顔を向けると園子が跪いていた。

 

 その両手は自らの乳房に。

 寄せられ、白く豊かな谷間が見えていた。

 

「ここに、挿れちゃうから」

 

「ぁ」

 

 それは絶対に気持ちいいだろう。

 その確信に、思わず息を呑む。

 

「ぐ、あっ!?」

 

 宣言通り、ぬぷぷっと白い谷間に肉棒が飲み込まれる。

 女々しい声を上げて、俺の腰がカクカクと勝手に揺れ出す。

 

 汗と湯と雄汁が潤滑油となり、園子の乳房が性器と化す。

 程よい締め付けと滑らかさは決して怒張を離さず、俺の脳を溶かす。

 

 ふわふわ、にゅるにゅる、と気持ち良さの塊。

 豊かな乳による新たな膣が優しく俺を受け入れ、射精を促す。

 

 至福とも呼ぶべき幸福感の中で、腰を浮かせ無言で達する。

 瞼を閉じ、一瞬意識を手放しかけて、園子の乳房に白濁を吐き出す。

 

「イっ──、あぁっ!!」

 

 金髪の少女を白濁で汚したことに暗い快感を覚えた。

 乳房では足らず、令嬢の顔や髪を汚した滴がぽたりと落ちるのを見届ける。

 

「……!」

 

 どこか呆然とする自らの裸体を男に汚された少女。

 ゆっくりと、それを自覚するように、指先で白濁した滴を指で掬いとる。

 

「すごい、いっぱい出たね……」

 

「わー! びゅっびゅって出たね」

 

 驚きで顔を赤くしながらも、園子は楽しそうに雄のエキスをペロリと舐める。

 処女雪の肌を更に色白に染められた彼女に背後の友奈が感嘆の声を上げる。

 

 そうして何を考えたのか、俺をそっとタイルの床に寝かせると、身体の上に友奈が圧し掛かる。ふるりと揺れる双丘、滑らかな腹部や内腿の全てを無邪気に見せる彼女の顔はペニスに向かう。

 彼女たちは俺の上で、射精したばかりの性器に顔を近づける。

 

 ふりふりと挑発するように振られる友奈の薄い臀部。

 筋肉のついた健康的な脚を開き、眼前に恥毛に濡れた媚肉を見せる。興奮にひくついた陰唇からとろりと透明な滴が腿を伝うのが見えた。

 

 くびれた腰を見せ、重力に下を向く友奈の乳の間から彼女たちを覗く。

 二人の勇者が互いの乳房を肌に当てながら、唇で俺の性器を舐め始めた。

 

 ペロペロとミルクを飲む猫のように、肌を汚した白濁を舐め取る。

 精液で汚れた肉竿を丁寧に舌で舐める彼女たちがにちゃにちゃと水音を立てる。

 

「はむ」

 

「あーむ」

 

 二人は肉竿にこびりついた精液をペロペロと舐めとる。

 竿肉に唇を這わせ、陰嚢を撫で、亀頭にキスをする。

 サービス精神に溢れた彼女たちの献身に、腰が僅かに浮き上がる。

 

「ゔッ……!!」

 

 先ほどよりも量が少ないが、勢いのある白濁が噴き出す。 

 きゃあっと楽しそうに悲鳴を上げる友奈と園子の顔を、乳房を汚す。

 

 彼女たちに奉仕されて果てる。最高の経験だ。

 間違いなくこの世界の誰も味わうことの出来ない快感だろう。

 

 素晴らしい夜だった。

 

「ゆーゆ」

 

「うん」

 

 そう思う俺を余所に、友奈と楽しく白濁を舐め合っていた園子が肉棒を掴む。

 何をするのか、それを問いかける間も無く、トロトロの媚肉に亀頭が沈む。

 にちゅっと音を漏らし、いともたやすく根元まで突き刺さる。

 

「ぅお!?」

 

「ぁぁっっ!!!」

 

 挿入した瞬間、園子の身が跳ねる。

 既に理性を削り、酩酊したような眼差しの少女の結合部から滴が噴き出す。

 

「ひ、ぁ、ぁぁ~~~ッ!!」

 

 かくかくと腰を揺らし、背中を反らす園子。

 顔を朱色に染め、開いた脚から覗く花弁が怒張を引き締める。

 

 騎乗位、腰に乗った彼女が崩れ落ちないように腹部に手を置く。

 引き締めた唇を震わせながらも、自ら腰を振る彼女たちは満足していなかったらしい。呆然と園子が乱れる姿を見ながら、チラリと俺を見る友奈が浮かせていた腰をゆっくりと下ろす。

 至近距離で見る彼女の陰唇がキスを求め、甘い香りが脳を狂わせる。

 

「────」

 

「ひゃぁあぁあっ!!?」

 

「んんんっっっ!!!」

 

 悲鳴を上げる少女たちにもはや構うことはない。

 欲望のままに、浮かんだ尻肉を掴み、陰唇と唇を重ね、ひたすらに腰を突き上げる。

 

 一突きごとに園子との結合部からはぐちゅぐちゅと水音を漏らす。

 雄肉に吸い付く媚肉は蕩けながらも、彼女は必死に俺の腰で騎乗を続ける。

 顔を見ることは出来ないが、上げる悲鳴と引き締める膣に想像はつく。

 

「それが、どうした……」

 

 もう腰が止まらないのだ。 

 その責任を取ってほしい。

 

「まっへ! これっ、ぁぅぅぅっっ!!」

 

 腰を下ろし自らの恥部を俺に押し付けた友奈の悲鳴。

 クンニリングスがお望みだろうと、餅のような尻肉を揉みながらキスをする。

 浮かび上がろうとする腰を無理やり掴み、陰唇に吸い付き水分を補給する。ぎゅっと腿が俺の顔を挟み込むと、薄毛を巻き込みながら肉芽に吸い付く。

 

「ぁぁっ、ダメ……、イく、イくっ、ッ!!」

 

 ぷしゃっと顔を濡らす潮を直接吸引すると友奈の身体が崩れ落ちる。

 余裕の無い呼気の園子の脚が腰を挟み、俺は射精に向けて腰を振る。

 

「ぁ、ゆーゆ!!? そこは……っ!」

 

「……そのちゃんも……イッて」

 

 肉の隙間と感触から友奈が彼女の肉粒を弄っているのが見えた。

 邪魔にならない程度にクリトリスを弄る指先に、園子の膣襞が蠕動する。

 

「「~~〜~~~~ッ!!」」

 

 新たな精液が彼女の最奥に注いだ。

 一滴も残さず注ぎ込み、俺は満足感と共に身体から力を抜いた。

 

 

 

 

 

 

 ざぶっと身体を揺らす度に浴槽からお湯がこぼれる。

 

「流石に三人だと狭いね」

 

「うん……。でも密着しているとなんか安心できるんよ」

 

「あっ、それ分かるー!」

 

「でしょー!」

 

 ちゃぷちゃぷと湯で遊ぶ友奈が脚を伸ばす。

 狭い湯舟の中で彼女の脚が俺にぶつかると律儀に謝る。

 

「私たちも随分と爛れちゃったね~」

 

 しみじみとそんなことを告げる園子は俺の股の間に座る。

 背中を預け、キス痕のついた剥き出しの白い肩に手で掬った湯を掛ける。

 

 健全かどうか、そんな話は既に遠い過去に置き去りにした。

 一つ屋根の下で、互いの裸体も性癖も知っている男女がする事など一つなのだから。

 

「でも、年齢的には問題ないよね」

 

「そうだね~。精神的にだけど」

 

「うん、精神的にね……ふふっ」

 

 くすくすと笑う少女たちは見た目よりも年を取っている。

 それこそ、もう結婚も、一緒に酒を飲むことが出来る程度に。

 

「ゆーゆ、大学生っていつもこんなことをしているんだぜ~」

 

「そうなの!? ……大学生って凄いんだね」

 

「講義が退屈だから、脳が退化しないように刺激を求めてエッチするんだって」

 

「嘘を吐くな、嘘を」

 

「てへっ」

 

 彼女たちの醸し出す柔らかな雰囲気に、思わず吐息する。

 吐いて、吸って、至近距離にいる園子の香りを肺に取り込む。

 

「かっきー」

 

「うん?」

 

「あと、何年。私たちはこの世界にいるんだろうね~」

 

「────」

 

 何気なく呟いた言葉に、俺は思わず黙り込む。

 乳房の下、腹部に腕を回すと長い髪の毛を一つに纏めた彼女が肩に頭を置く。

 瞳から覗かせる感情は瞬きと同時に消え、湯の中で静かに腕を掴む。

 

 神からの試練は終わりが見えない。

 四国の防衛を終えて、人を興味深く思った神からの試練。

 若葉を筆頭とする西暦組、防人組、巫女、神世紀の勇者がいてもなお、終わらない戦い。

 

 旧日本国土の解放は少しずつ進んでいることは知っている。

 だが、その速度は遅々としており、いつになったら終わるのか。

 

 いつまで俺は戦うことも出来ず、彼女たちを見守ることしか出来ないのか。

 いっそ、この茶番を続ける世界が、虚構の空を終わらせることが出来るなら──、

 

「大丈夫だよ」

 

「──ぁ」

 

 思考の渦を止めるような、友奈の声。

 いつの間にか脚の指を絡め合っていた彼女は柔和な笑みを浮かべ、立ち上がる。

 湯が跳ね、形の良い乳房がぷるりと揺れることも気にせず、友奈は高らかと告げる。

 

「難しいことは良く分からないけど……私たちは勇者部! どんな困難だって皆となら絶対に負けない! 何年掛かっても! そうでしょ?」

 

「ゆーゆ……」

 

「勇者部五箇条! なせば大抵なんとかなる! ……だよっ!」

 

「ゆーゆ。前、前隠して」

 

「えっ、あっ、……あわ、あわわわっ!!」

 

 浴槽にタオルは持ち込み禁止なのだ。

 園子の冷静な指摘に、慌てて友奈は双丘や恥部を腕で隠し、ざぶりと浴槽に沈む。

 ざあっと湯が流れ、乳房の上部分が見える程度にまで湯が減る。散々乱れ合う中だというのに、こういった場では羞恥心を残している彼女の姿に苦笑する。

 

「変なこと言っちゃってごめんね~。ゆーゆも、忘れて良いからね」

 

「うん。でも、園ちゃんも何かあったら相談してね」

 

「分かったよ~。……それよりもかっきー。今のゆーゆの裸で興奮したでしょ」

 

「どうしてそう思った?」

 

「今、ここがピクッてしたの、分かっちゃうんだよ~」

 

 パッと顔を明るくした園子の臀部が、俺の恥骨に押し付けられる。

 ちゃぷちゃぷと浴槽の湯が揺れ、反撃に彼女の豊かな白い乳房を揉む。

 

「そういえば明日、部活があったような……」

 

「もう明日じゃなくて今日だよ~。でも、全然眠くないんだよね」

 

「分かる! あ、あと、お腹減っちゃった。うー……、でも良いのかな。もう夜だし……」

 

「ふっふっふ……ミノさん直伝の焼きそば作りたいと思うけど食べたい人、この指と~まれ!」

 

「はい! 園ちゃんを食べちゃう!」

 

「わ~、ゆーゆに食べられちゃう~」

 

「がおー! ご飯を食べたら寝ちゃうぞ〜!」

 

「おー! 今日はもうエッチはしないよ~! ほら、かっきーも手を放して……」

 

「一応何かあっても大丈夫、東郷さんがきっと起こしに来てくれるから!」

 

「んっ……そうだよ、わっしーが起こしにくるんYO!」

 

 昼に部活、夕方にリビングで、深夜がこれだ。

 深夜テンションで食欲を満たし、性欲を満たして、裸のままで眠りにつく。

 

 そして、次の朝は当然のごとく誰も起きることは出来なかった。

 

 

 




こんな感じで責めたり責められたりする終わらない夏休み。


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第十四話 ささやかな変化

 ──サボりたい。

 

 学生に一度でもなった勤勉な者ならば分かるだろう。

 毎朝起きて、顔を洗って、朝食を食べて、登校する、その大変さを。晴れの日も、雨の日も、雪の日も、朝を迎え入れる度に睡魔と戦わなければいけない。

 当然サボってしまいたいと思うだろう。あと五分と言って二時間ぐらい惰眠を貪りたい。

 

「ダメよ」

 

 分かっているのだ。それでは駄目であることなど。

 後悔しないという誓いを、二度目の人生を始めた時に立てた。その誓いは今でもなお破られることなく、俺を誠実に、真面目に、勤勉で、優秀な人間へと作り上げていく。

 

 勉強は大事だ。努力は大事だ。

 それが出来て初めて、幸せを得ることが出来るのだから。

 だから──、

 

「今日は学校も休みなんだから寝かせて……」

 

「だ~め」

 

「サボっていいでしょ?」

 

「そんなことをする子は吊るします」

 

 掛けられる声音は優しく温かい。

 この世界で育ててくれた尊敬する母親に似た、東郷の声が聞こえる。

 

「学校は休みでも勇者部の活動があるでしょ?」

 

 開かれるカーテンから陽光が部屋を照らす。

 ついでとばかりに僅かに窓を開き、新鮮な隙間風が性臭を追い出す。

 

「んー……」

 

「サンチョ……ビ〜……ム」

 

「ほら、起きて……ぁ、っ!」

 

 背後の園子と、正面の友奈たちの寝言、そしてベッドの軋む音に薄く瞼を開く。

 一糸まとわぬ裸体を見せ、早朝の冷風に寒さを覚えたように身体を揺する園子が俺の背中に張り付くように腕を回し、双丘から腹部、恥骨までくっついていていることを身体で感じ取る。

 ゆっくりと寝台に横たわるように東郷の後ろ姿が目に映った。

 

「友奈ちゃん……」

 

「とうごう……さん」

 

「朝よ。起きて」

 

「……ん」

 

 起きて。いやだ。

 甘える声に、それを許容する声。

 友奈が引っ張ったのか、ベッドに横たわる東郷が彼女に抱擁される姿を正面に見る。

 

 豊かな双丘に顔を埋め、母親に縋るように抱き着く友奈。

 その姿にまんざらでもなさそうな顔で甘やかすように抱擁する彼女の黒髪が揺れる。

 

「もう、友奈ちゃんたら」

 

 ふわりと青色のリボンに結ばれた濡羽色の髪の毛が頬をくすぐる。四人が一度に横たわるとそこまで広くないベッドはあっという間にぎゅうぎゅう詰めになる。

 そんな拳一つ分も無い距離で、背中を向けている東郷に俺は抱き着き、密着する。

 

「えっ、あ、亮くん!?」

 

「むにゃむにゃ。食べられないよー」

 

 お決まりの寝言を口にして、友奈と二人で東郷をサンドイッチにする。

 素肌とは異なり、柔らかな生地が素肌に心地よさを与える。

 

「……起きてるでしょ」

 

「起きてないよ」

 

 んぅ、と呻く彼女の抵抗はない。

 処女雪のような肌を薄く朱色に染める彼女の髪に鼻を突っ込み、抱き締める。茶菓子を連想させる東郷の甘い香りを肺で満たしながら空いた手で柔らかな腹部を弄る。

 

「ちょっと」

 

「東郷さんは本当に抱き心地が最高だなって」

 

「もう……五分だけよ」

 

 嘆息する大和撫子中学生は仕方ないように、タイツに包まれた黒脚を俺の脚と絡める。その行為を許可が出たと判断して、豊かな双丘に手を伸ばすと彼女は友奈を無言で抱き寄せる。

 すぅ、すぅと二度寝を始める友奈の寝顔をジッと東郷が見続ける。

 

「東郷さんは友奈大好きだよね」

 

「好きよ。大好き」

 

 告げる言葉に迷いはない。

 当たり前の事実だと、フフンと振り返る横顔は誇らしげだ。そんな風に決め顔を見せる東郷に対して、むにゅりと双丘を背中に潰し男の胸板を抱く腕に力が籠るのを感じた。

 首筋に感じる甘い雲のような吐息が言葉と共に発せられる。

 

「わっしー。私は~……?」

 

「そのっちも好きよ」

 

「わっしーに今告白されちゃった~」

 

「こ、告白だなんて……!」

 

 いつの間に目覚めたのか、耳を甘噛みするかのような園子の言葉に翻弄される東郷を見ていると、可愛らしい寝顔を見せていた友奈が唸り始める。

 きゅっと形の良い眉をひそめ、力を貯めるかのように身体を丸め、一息に身体を起こす。

 

「うおーーーっ!!」

 

 一糸まとわぬ姿で朝の雄叫びを上げる友奈。

 陽光に照らされてキラキラと輝く薄紅色の髪と同じ瞳を見開き、笑みを浮かべる。

 

「ごめんね、東郷さん。もう大丈夫! おはよう!」

 

「……おはよう、友奈ちゃん」

 

 ピースサインを見せる明るい少女。

 その笑みに魅せられたような東郷を余所に、俺の視線に気づいた友奈は己の状態に気が付くと、やや照れくさそうな笑みを浮かべるとそっと腕で身体を隠す。

 

「支度、しないとね」

 

 

 

 

 

 

 眠っていた園子を起こし、友奈の羞恥を煽りながら朝の支度をする。

 朝食は和食が既に用意されており、店に並ぶ物よりも美味で温かかった。

 

「東郷さんの作るお味噌汁は本当に美味しいね。毎日でも食べたいくらい!」

 

「そ、そんな……。私のなんて……」

 

 味噌汁を啜り、煮物を食べる。

 バランスや健康を考えなさいと肉よりも野菜や魚が多い料理。

 男の一人暮らしで自炊と言えど、なんだかんだで自分の好きな物や友奈や園子が好みそうな物に比重が偏る為、東郷や風の家庭料理というのはありがたく思う。

 

「なにより、東郷さんの作ったご飯は美味しい。一生作って欲しい」

 

「あなた……」

 

 東郷が起こしに来てくれたからか、余裕のある登校だ。

 前世の俺ならば、わざわざ休日を無駄に消費してボランティア活動など鼻で笑っていただろう。それでも活動を友奈たちと共に続けてきて多少なりとも奉仕精神に目覚めたのだ。

 無駄なことなど無いのだと、俺は日々彼女たちから学んでいる。

 

 そんな俺たちが所属している勇者部で事件が起きた。

 

 勇者部部室の中心に少女たちが目を向ける。

 巫女が手を引いてきたのは、綺麗な金髪、前髪をパッツンに整えた髪型の少女。

 どこか凛々しさを感じさせる紫紺の瞳に動揺はない。明らかに制服ではない、黒色のシャツとズボンを着用した小学生程度の背丈をした少女に誰もが小首を傾げる。

 

 この子はいったい誰なのだ、と。

 

「……、もしかしてわかちゃん?」

 

「ご先祖様だ~!」

 

 いったい、その子供は誰なのか。

 飛躍した発想により、誰と誰の子供なのかという目線がいくつか俺に向けられていた中での、ふわふわと空気を読まない少女二人の言葉が発せられる。

 園子(中)と園子(小)の先祖は多数いるだろうが、この場合の相手は一人だ。

 

「そうだ! 私だ! 乃木若葉だ!」

 

「「「えええっっ!!?」」」

 

 明らかに園子(小)よりも僅かに幼く見える仮称乃木若葉。

 腕を組み、専属である巫女ひなたの隣にいる彼女は雰囲気も相まって親子にも見える。

 

「えっ、ちょっ、その子供って本当に若葉なの!?」

 

「いや、似てると思ったけど!」

 

「若葉さんがそんな!?」

 

「なんで!?」

 

「……幼児化の薬でも飲んだのかしら」

 

「てっきり若葉の隠し子だと思ってタマげたぞ!」

 

「球子さん?」

 

 仲間の幼児化、正確には小学生4年生程度への若返りと呼ぶべきか。

 幼い頃の若葉と言われればしっくりくるだろうが、今一つ怪しいところだ。事情を聴く前に、本物なのかどうかを確かめるべく、床に膝をつくと仮称若葉を呼ぶ。

 歩み寄ってくる庇護欲をそそられそうな容姿に嘆息しながら、耳元で小声で囁く。

 

「若葉」

 

「なんだ?」

 

「──元に戻ったらロッカーの次はどこでしよっか」

 

「……!」

 

 バッと耳を押さえて俺から離れ、ひなたの影に隠れる少女。

 かああっと耳まで赤らめていく姿、やや幼い言動はともかくもロッカーという共通の行為を行った場所への理解を示したことに本物らしさを感じながら、周囲の目線に肩を竦める。

 

「いや、本人認証だって。本物の可能性は高そうだ」

 

「あんたは本当に……」

 

「夏凜も本人認証する? はい、ここにサプリがあるけど何のサプリでしょうか」

 

「ビタミンEよ。完成型勇者を舐めないでよね」

 

 呆れたように嘆息する夏凜に同意する少女たち。

 見慣れぬ凛々しくも幼い少女に顔を赤らめる者やメモを取る者など反応は様々だ。

 

 ──ただ、今更子供の姿になった程度で動じる者は殆どいない。

 

「……昨日までは乃木さんが普通だったのを覚えているわ」

 

「今までは園子(大)だったのに(極小)くらいになったな」

 

「誰が園子(大)だ、誰が!」

 

「ご先祖様ちっちゃ~い!」

 

「こ、こらぁ! ひっつくな園子!」

 

 自分の子孫よりもやや小柄程度な体躯になった若葉。 

 ちょうど園子(小)と似た背格好の彼女たちは本当の姉妹のようだ。

 

 迷惑そうに見えて実は子孫とのスキンシップに少し頬を緩めている若葉、彼女の身体にいったい何が起きたのか、神樹から神託が来ていないのかと巫女組に視線が向けられる。

 その視線を感じ取り、コホンと小さく咳をするひなたが代表として唇を震わせる。

 

「実は、少し前に神樹様から神託がありまして」

 

 繰り返される樹海化。

 度重なるバーテックスとの戦闘や満開。

 

「それらの負荷の影響なのか、或いは中立神を始めとした別の神の仕業なのか神樹様に何かしらの悪影響が出たらしく……」

 

「ちょっと待って。若葉の身体ってちゃんと元に戻るんでしょ?」

 

「それは大丈夫です。元に戻るよう神樹様が直ちに働き掛けてくれると」

 

 風の言葉に首肯を見せるひなたに、安堵の表情を見せる少女たち。

 早速新しい玩具のように少女たちに可愛がられる若葉を余所に、正妻のような雰囲気を醸し出し続けるひなたに顔を向ける。

 

「この現象って今回だけ?」

 

「どう……なんでしょうか。何年も続く戦闘に神樹様も疲弊してきたことによる現象なのか。大赦の方でも調査中とのことです」

 

「ふーん」

 

「それよりも」

 

「うん?」

 

「……それよりも、若葉ちゃんと何を話してたんですか?」

 

「んー、今度一緒にデートしないかって」

 

「あらあら」

 

「……ひなたさんもどうですか?」

 

「まあまあ、両手に花ですね。……ふふっ」

 

 これだけの期間、バーテックスと戦ってきたのだ。

 神樹のリソースは決して無限ではない。満開といった強力な力や力を貸してくれる神々がいたとしても、神樹も疲弊し、内包世界に悪影響も出てきたのだろう。

 

「この世界が終わるのも近いのかもしれないな」

 

 思わずそんなことを思わずにはいられない。

 幼さが増した若葉を勇者部の皆で可愛がり、ひなたの追及を避けながら楽しく部活に挑む。夏も終わりが近く、やや涼しさを感じさせる日差しの中で依頼に取り組む。 

  

 人数が増えたことに比例して増加する知名度と依頼の質と数。

 ゴミ掃除から猫探し、部活動の助っ人とボランティア活動で忙しい。勇者部は本来七人だったが、数が増えたことで適した人材を割り振ることが出来るようになったのだ。

 

「……亮くんと一緒だとあっという間に終わったわね」

 

「東郷さんのパソコンスキルのお陰でサクサク進んだよ、ありがとう」

 

 本日の作業は事務系の内容だった。

 一人ではともかく、東郷という強い味方のお陰で早めに終われた。

 依頼内容はそれぞれ終了時間も異なる為、部室に戻り他の依頼を受けるか、帰宅する。

 

「若葉さん、何が原因でああなったと思う?」

 

「戦い過ぎとか、切り札の使用回数とか、色々あるだろうけど神のみぞ知ることかなって」

 

「……友奈ちゃんもあんな風に小さくならないかな?」

 

「東郷さん?」

 

「冗談よ」

 

 友奈や夏凜、若葉といった体育会系は基本的に部活動のサポートが多い。

 勇者として鍛えてきた力が存分に発揮される為、人気な彼女たちは引っ張りだこだ。

 

「友奈を待たなくて良かったの?」

 

「今日は夏凜ちゃんと一緒に帰るだろうし、さっき連絡が来たわ。そのっちは若葉さんたちとの買い物が長引いているって」

 

「ほほう。そんな東郷さんは将棋部の依頼があったような」

 

「それは来週ね。……今日は亮くんと一緒に帰りたかったから」

 

 チラリと横を見ると東郷の朱色の染まった横顔。 

 夕日が地平線に沈む、その最後の輝きが彼女を鮮やかに照らしている。

 

「少し前まではこの時間でもまだ明るかったのにね……」

 

 きゅっと握られた手に力が籠る。

 絡まった指は柔らかく、長い睫毛に縁取られた瞳は深緑に輝く。

 端麗な、美を凝縮したかのような白い横顔を、俺はジッと見つめる。

 

「……? どうしたの?」

 

「東郷さんは綺麗だな~って」

 

「……もう! そうやって揶揄わないの!」

 

 きゅっと握る手に力を籠める東郷は僅かに眉をひそめる。

 そんな可愛らしい彼女を連れて帰宅する途中で寄った小さな公園。ベンチや遊具などがある場所に子供の姿はなく寂静の空間が構築されている。

 

「ここって……」

 

「前に国防仮面を捕まえたところ」

 

「そうね、亮くんに無理やり捕まえられたわね。……国防活動も今は須美ちゃんや園子ちゃん、銀が引き継いでいるから最近はひっそりとしか活動出来ていないのよね」

 

 誰もいない街灯の点いた公園を二人で歩く。

 東郷の手を引いて、柔らかな芝の生えた場所へと進む。

 

「亮くん……?」

 

「誰もいないね」

 

「そ、そうね」

 

 目的の場所に到着し、疑問の声を上げる東郷。

 何かを感づいたのか抱いた腕の中でもじもじと太腿を擦り合わせる少女。胸板に手を置く彼女を見下ろす中、俺の手がそっとスカートの裾から中へ侵入し、大和撫子の尻へ伸びる。

 

「っ!」

 

 タイツ越しの下着の感触を指の腹で味わいながら、俺は東郷を見下ろす。

 敏感な彼女は俺が悪戯をするたびに唇をきゅっと結び、半眼を向ける。

 

 俺の腕を掴む手がぎゅっと握られる。

 嫌がる素振りはなく、尻に伸ばした手を広げると程良い重みを掌に感じさせる。

 

「んっ」

 

 俺の手の動きに合わせて東郷の胸が上下する。

 薄く開いた瞳に妖しい光を宿す女は鼻腔から微かに熱い空気を漏らす。

 

「……ここで?」

 

 確認を取るかのような言葉に手で答える。

 タイツ越しに下着をなぞり、秘裂を、肉芽付近を指の腹でなぞる。

 

「誰か見てるかも」

 

「……!」

 

 身を起こそうとするが、離れるのが嫌なのか東郷は俺の腕の中から逃れない。

 元の位置に戻る少女の下着が湿る生々しい感触を指に感じた。

 

「ぁっ」

 

 身悶えした東郷が喘ぎ声を押し殺したが僅かに口から漏れる。

 こしゅ、こしゅ、と濡れつつある下着を擦る中、爪先立ちする東郷は甘い声を口から漏らしながら、柔らかな唇で俺の頬や唇を愛撫する。

 

「~~~っ!!」

 

 肩を小さく震わせる少女。

 汗に混じる雌の匂いを嗅ぎながら少女を公園の芝に座らせる。

 軽く達した東郷は地面に敷かれた俺の上着に座り、絶頂の余韻に浸っていた。

 

「東郷さん」

 

「……少しだけよ」

 

 周囲は程よく草木が生え、虫の姿もない。

 熱っぽく瞳を潤ませた東郷に唇を重ねると、彼女は男を受け入れるかのような表情を見せ、柔らかく優しく情熱的なキスを返してくれた。 

 

 ダメ、とは言われなかった。

  



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第十五話 月は見えない

いつも感想ありがとうございます! 3期始まりましたよー! やったー! 


 耳を澄ませても蝉の音は聞こえない。

 地面に目を向けて、死骸すら見つからないのであれば、それはなんとなく夏の終わりが近いのだということを考えてしまう。

 季節は次々と変わりゆくというのに、年だけが変わらないのがいっそ滑稽ですらある。

 

「ん……」

 

 そんなことを考えながら女の髪に触れる。

 東郷の髪、濡羽色の手入れがされた髪の毛は絹のように上質な柔らかさと滑らかさだ。

 いつまでも触れていたいと思わせ、水のように指の間をすり抜けて柔肌に触れると、くすぐったく感じたのだろう、彼女は目を細めると俺の手に掌を重ねて肌を擦り付ける。

 

「あなたなら……、亮くんなら好きなだけ触っていていいのよ?」

 

「そう言って貰えると男冥利に尽きるけど、多分3日くらい離さないよ?」

 

「……3日で良いの?」

 

「じゃあ、ずっと」

 

「もっと」

 

「俺から離れるな」

 

「……はい」

 

 俺の身体を抱き、身をくねらせる東郷は淫靡な視線を向ける。

 ん、んぅ、と結んだ唇からこぼれる声が空気に溶けていく。もっと可愛げのある声を聞かせて欲しいと普段ならば押し倒すところだが、今いる場所が俺を戸惑わせる。

 

 普段は自分の家か抱く女の家か、兎にも角にも建物の中で行為に至る。

 壁と屋根に囲まれた場所ではない安全性の欠片も無い野外という環境は開放感と共に、誰かに見られるのではないのかという不安感も遅れて訪れる。

 

 草木の香りが鼻腔をくすぐる感覚。

 上着を敷いたとはいえ、開放感もリスクもあり過ぎるのではないのか。

 呼び起こされる理性が突発的に生じただけの獣性を抑え込み始め──、

 

「やめないで」

 

 ──東郷の深緑の瞳に見惚れるのは何度目だろうか。

 少女の輝きが薄れ、女の輝きを見せる深緑色。

 息を呑むほどに、魂が吸い取られるような美しい眼差しに俺の手が動く。

 

「んっ」

 

 男の目を惹く主張激しい少女の双丘。

 制服と下着ごと荒々しく乳房を揉みながら、首筋を唇で伝う。甘く塩辛い肌を舐めると小さく震える彼女は首を反らせると、ぎゅうっと俺の背中に回した腕に力を籠める。

 

「んぅ………んッ」

 

 痕にならない程度に首筋を吸う。

 はん、と嫌がるように首を振ると、黙らせるように唇を奪う。そのまま目を閉じ、唇を差し出した東郷に誘われるがまま唇を重ね、舌を絡め合う。

 

 ちゅ、ぴちゅ、と小さな水音が響く。

 外の音、車の音や草木、遠くで聞こえる人の足音や声、目の前の彼女に意識を向けるほどにそれらがどこか遠くに感じられる。

 制服に忍び込ませた手が彼女の柔らかい雪肌を弄る。

 

 甘い喘ぎを漏らす東郷の抵抗はなく、彼女は乳房を差し出す。

 フロントホックの下着だと小声で囁く東郷は、外での行為を予想していたのか。

 

 あっけないほど簡単にブラから乳房をこぼした俺は、躊躇うことなく揉む。

 指先に吸い付くような麗しい乳肉に触れている間、東郷は目を閉じる。

 

 カーディガンに包まれた夏服だから、乳房に触りやすかった。

 これで冬服ならば、彼女から制服を剥ぎ取り、夜空の下で下着姿にしていただろう。

 

「それともそういうことをしたかった?」

 

「ン、っぁ……揶揄わないで」

 

 ぷるりと熱を帯びた大きな乳房は汗ばみ、突起が微かに震えている。

 制服を脱がせることはせず、しかし彼女の乳房も乳輪も乳首の色も形も思い出すことは容易く、迷うことなく制服越しに乳肉を揉み、乳首を指先で優しく愛撫する。

 餅よりも柔らかい東郷の乳房を、乳首を指先で味わう度に彼女の吐息が漏れる。

 

 鷲掴みにしても手から溢れてしまう豊満な存在。

 母性の象徴を指に吸い付かせ、生乳を両手で味わう。

 

「んっ、んん……」

 

 東郷の乳房を揉みしだくと彼女は俺に身を委ねる。

 左右の指で乳首を優しく愛撫すると、瞳を潤ませて頬を赤らめる。

 

「そこ……」

 

「ん?」

 

「好きよね? ふふっ、そうよね。知ってる……」

 

 彼女の確信混じりの質問にコクコクと俺は頷く。

 そもそも否とは言わせない、肯定ありきの質問だった。

 幾度も自らの性器を挟み、赤子よりも吸い付いた乳房を狂ったように揉む。そんな姿を見る東郷は心地よさそうな顔を見せながら俺に身体を委ねる。

 俺は「東郷さん」と名前を呼びながらそっと彼女を立ち上がらせる。

 

「こっち」

 

「ぇ、ぁ……」

 

 戸惑うような彼女の手を引いて歩く。

 夕暮れが光を失う水平線、空は濃厚な闇色と小さく輝く星々が見える。

 公園に人影はなく、外れたブラが気になるのか、そっと胸元を押さえる東郷は情欲に頬を赤らませながら、俺に目線だけで問いかける。

 

「亮くん」

 

「ここでやめたりしないから」

 

 公園のベンチの裏側、ほどほどに大きな木の幹に彼女の手をつかせる。

 少女の白い手を木に触らせることに心が痛むが、外での性行為というリスクと面倒臭さが同居している以上、目を瞑る。

 家での行為のように、裸に剥き地べたに寝転がす訳にもいかない。

 

 木の幹に手をつかせ、尻を突き出すようなポーズをさせる。

 彼女の双丘は見事な豊かさだが、栄養は身体全体に行き渡っているのか、スカートから覗く尻肉は第二の乳房とも呼べる独特の弾力と大きさがある。 

 

「……」

 

 まるで屈服したかのように、俺に臀部を差し出す彼女。

 生足を出すことをあまりしない彼女の黒色のタイツに包まれた腿を撫でる。

 

「っ」

 

 一瞬だけ布越しに秘裂に触れると湿り気を帯びていた。 

 ピクッと身体を震わせた彼女が俺に顔を向けてくる中で、尻肉を撫で回す。僅かに内股になる彼女の下半身に跪くと、俺は恭しくスカートの奥、タイツと下着を掴み、ゆっくりと引き下ろす。

 

「ん………、は」

 

 彼女の吐息を耳にしながら、葡萄の皮を剥くように優しく撫でるようにスカートの中からタイツと下着をするすると下ろしていく。

 興奮に高鳴る鼓動、口内が渇きを覚える中で膝まで下ろす。

 薄青色の下着、恥部が触れていた部分には彼女の情欲の証が透明な糸を繋いでいる。

 

「ぁぁ……」

 

 性器が外気に触れたからか、ぶるりと震える少女。

 そっとスカートを捲り上げると彼女の内腿がきゅっと閉じられる。

 

 外で下半身を露出させた少女の桃尻が俺の目の前にあった。

 それどころか、まだ誰も知らない不浄の穴さえも。

 

 彼女の顔は見えない。

 そっと伏せた黒髪に顔を隠し、唯一見える耳は朱色に染まっている。

 己の状態を把握し、背後の男に自らの秘部の全てを曝け出しているのだ。

 

「全て?」

 

「な、なに……?」

 

 身を強張らせていた東郷が俺の独り言を拾う。

 チラリとこちらに向けられる横顔は羞恥に染まり、瞳を潤ませている。

 思わず抱きしめたくなる彼女に俺は更なる要求を行った。

 

「ぇ、ぁ……」

 

「…………」

 

「ほ、本当にするの?」

 

「────」

 

「……鬼畜」

 

 その要求を呑んだ彼女の朱色が濃くなるのが分かった。

 傷一つない膝には黒タイツとショーツが絡まり、内腿には蜜液が伝う。 

 

 白い恥部に黒色の茂みが薄く生え揃い、陰唇は花弁のようなピンク色だ。

 男の肉棒を受け入れる為の場所を、彼女の指先が自ら触れる。

 

「ふ、ぅっ」

 

 ピンと背を伸ばす東郷は濡れた指先で、陰唇の縁に触れる。

 確かな羞恥の吐息を漏らす彼女は、しかし従順に閉じられていた花弁を広げる。

 

 男に媚びるように自らの陰唇、その奥を指で広げて見せた。

 

「………うぅ」

 

 強い羞恥を感じているのだろう。

 国防を愛する少女の肉体は先ほどよりも熱を帯びる。くぱぁと開かれた陰唇から垂れ落ちる愛液が恥毛やショーツを濡らし、その奥にある小さな穴からは新鮮な蜜が生まれていた。

 ぷるぷると震える温かい肉体に愛おしい気持ちを持って顔を近づける。

 

「んぁっっ!!」

 

 甲高い悲鳴を自らの手で押さえる東郷。

 指で広げて差し出した蜜裂に口づけした俺は、彼女の指が離れても吸い付く。

 

 反射的に自らの口を押さえ、もう片方の手で俺の頭を掴むが、遅い。

 そもそも、この状況下で極上の身体という餌を前にして、獣が我慢する筈がない。

 

 本物の唇よりも情熱的に陰唇へとキスをする。

 もっちりとした尻肉を掴み、閉じようとする内腿を掴み、優しくキスを繰り返す。

 優しく、丁寧に、彼女が悦ぶクンニリングスを外で行い続ける。

 

「ンっ、ん、ふッ、んぅぅ……!」

 

 掌で押さえた口から漏れる喘ぎ声。

 柔らかい貝状の肉を舌で解し、その奥に舌を挿入する。

 

 上へ、下へ、右へ、左へ。

 執拗に舐めるほど身体が悦ぶのか奥から花の蜜が滲み出る。

 尻肉を割り拓き、鍛え上げた舌を自在に動かし、一思いに吸い上げた。

 

「くぅぅ……ッッッ!!!」

 

 がく、がくっと生まれたての小鹿のように東郷が脚を震わせる。  

 今にも崩れ落ちてしまいそうな絶頂を迎える中で、俺は雌肉にキスを続ける。

 

 彼女の脚の間に跪き、俺は東郷を悦ばせる。

 舌に淫液を絡ませながら、じゅる、じゅるっと水音と共に啜る。

 

 肉竿のように奥まで貫けないが浅く悦ぶ場所を舌で責める。

 白い尻肉を揉みしだき、包皮の剥けた肉芽ごとディープキスを続けると、舐めきれないほどに溢れる蜜液が腿を伝い、ショーツとタイツを濡らす。

 ふと顔を上げると、幹に手を置く彼女は頭を垂れていた。

 

「は……ぁ……」

 

 肩で息をする東郷の姿を認めながら、俺は再び陰唇とキスをする。

 脚を閉じようとする度に肉芽を指で弄ると、指を口に含み声を抑える彼女の限界は近い。陰唇とキスをしながらクリトリスを弄られるのが好きなのか、彼女の嬌声が手からこぼれる。

 

「ゃ! ぁぁっ!!」

 

 白い肌に汗が伝う。

 むわりと漂う雌臭を肺に満たしながら恥部から覗く肉芽に触れる。

 ビクッと身体を震わせる姿を見下ろしながら、くびれた白い腰に腕を回し、愛液に濡れたクリトリスを指の腹で転がすと彼女は静かに絶頂した。

 

「~~ッ!? ~~~~っ、い……ッ!!」

 

 必死に声を抑えながらも肢体が跳ねる姿に息を呑む。

 彼女の濃厚なエキス入りの唾液で舌を濡らしながら、彼女の奥から滲み出た愛液を肉芽にまぶすと、指の腹で円を描くように、乱雑に、繊細に弄る。

 

「ぅ……ぁぁ……!!」

 

 幹から手を離し、倒れそうになる彼女を抱える。

 乳房を揉み、空いた片手をクリトリスに添えて動かす。

 

「ま、まっへっ! ──ぁ、ぃッ……ンッ!!」

 

 プシッと滴が花弁から噴き出し、芝やタイツを濡らす。

 少女の朱色に染まった身体は熱く、髪を乱し、小刻みに震える姿を見せる。

 

「ふぇ………もう……ゆるひて……」

 

 俺に身体を預け、背後から抱かれる彼女が懇願する。

 大きな瞳の目尻に涙を浮かべ、熱い呼気と衣服の乱れた姿は目に毒だ。

 

「……」

 

 俺は何も言わず、東郷の頭を撫でる。

 しっとりと水気を含んだ長い黒髪。

 

 彼女を抱きすくめたまま、少しだけ前に向かって歩く。

 木陰から身体を出して近くにある公園のベンチの裏まで歩く。

 

「誰も来ないと良いね」

 

「ぇ」

 

 木の幹の次は、ベンチの背もたれに手を置かせる。

 先ほどのような草木も木もない視界には生え揃った芝や砂場、遊具が広がる。

 戸惑う彼女を抱きかかえ、白い腰を手で支え、ぬめる肉壺を怒張で貫く。

 

「ぁ……ぁ……!」

 

 にちゅ、と淫らな音と共に彼女と繋がる。

 その状況に1秒遅れた彼女は反射的に俺を振り払おうとするも、背後からの拘束を逃れる術はない。雄に羽交い絞めにされた雌の肉沼を再び貫く。

 

「ひ、ぁっ……!! あぁぁ……」

 

 ふるり、と震える白い肉体。

 蕩けた表情、艶やかな唇の端から透明な唾液が地面に落ちる。

 

「あっ、はぁ、あぁ、ぁ……っ!」

 

 ぬめる膣襞が肉棒を包み込む極上の感触。

 獣のようにパンパンと腰を振る度に尻肉が腿を叩く。

 

 夜風に当たりながら、立ちバックで彼女を犯す。

 性欲と所有欲を満たす快感が脳を痺れさせ、腰を振らせる。 

 

「んっっ! ぁう! あっ、んッ、ああっっ!」

 

 突き上げるようなピストンに喘ぐ東郷は俺の動きに応じる。

 くびれた腰をくねらせ、先端が異なる場所に当たると、酷く熱い呼気を吐く。

 

「は、ぁ……す、き」

 

「は……ッ、は───」

 

「しゅき……っ、りょうのすけ……」

 

「……っ!!」

 

 揺れる黒髪に鼻先を突っ込み、一突きごとに快楽に溺れる。

 心地よさそうに喘ぐ東郷が振り向き俺の唇を奪う。甘い唾液を啜りながら胸肉を揉み、スカートの内部に空いた手を伸ばし、雄竿を咥えた秘裂の縁にある肉芽を指で擦る。

 小刻みに震える東郷に俺は囁く。

 

「好きだ」

 

 その瞬間、蜜壺がぎゅううっと締まった。

 

「ぁ、っ……ぁぁぁっっっ!!!」

 

 短い悲鳴に近い東郷の嬌声。

 俺は濃厚な白濁を彼女の最奥へと吐き出し続ける。

 僅かに意識が酩酊する中で、一滴も残さず膣に飲み込ませた。

 

 

 

 

 

 

「学生らしいこと、しちゃったね」

 

「……学生らしい?」

 

「こういう場所で何も考えずにスリルを楽しむ、学生らしくない?」

 

 普通の学生ならば家での性行為など厳しいだろう。

 都合が悪ければ親がいるだろうし、仮にいなかった場合でも余裕をもって女との行為に浸るという機会も少ない。何よりもこの年齢ならばセックス以外のことなど考えられないだろう。

 そういう意味では、俺は東郷と楽しい青春の一ページを作ったとも言える。

 

「学生らしいって言うなら、友達とキャンプとか音楽とかじゃない?」

 

「キャンプも釣りもバーベキューもサバゲーもしたじゃん。音楽は方向性の違いで解散したし」

 

 永遠に学生をしている限り、青春の一ページが増えていく。

 増えて、増えて、一冊の大きな本になっても、未だに学生でいる。

 

「東郷さん…………美森」

 

「ふふっ……どうしたの、亮之佑?」

 

「呼んでみただけ」

 

「あら、いくらでも呼んで良いのよ」

 

 乱れた衣服を整える少女も中身は殆ど大人に近い。

 滲み出る色気は年々増しており、彼女の肌の色も、蜜の味も覚えた。

 

 つるりとした顎を持ち上げると深緑色の瞳に女の煌めきを見せる。

 首に腕を回されて、濡れた瞳を閉じると彼女と顔を近づける。

 

「ん──」

 

「────」

 

 唇が重なる。

 熱く柔らかい唇だ。

 

 ディープではない、情熱と確かな親愛を感じるキス。

 自分は今生きているのだと、そう実感させるような温かい接吻。

 

「……亮之佑」

 

 愛称ではない、名前呼び。

 信頼を感じさせる呼び方に彼女の背中に腕を回す。

 

 俺には分かった。

 彼女はまだ満足していない。

 

 外での中途半端な行為は彼女の胸中に情欲の火を灯したのか。

 月も見えない薄暗い夜は更なる深まりを見せ、静かな呼気が期待を見せる。

 幸いにもお互いの家は近くにある。そこで彼女を床なり寝台なりに組み伏せて、纏った衣服を一枚残らず剥いて、その白い肌をどこまでも汚してしまおう。

 そんな思いと共に唇を奪おうとして──、

 

「ぁ──」

 

 けたたましい音にビクリと身体が震える。

 声を上げた少女は拒絶ではなく戸惑いの声を上げた。

 

「……バーテックス、ね」

 

 整えられた制服から取り出したのは端末。

 普段から趣味で改造が施された彼女のスマホには、聞き慣れた忌まわしい警報音。

 

 ──樹海化警報に鼓動が高鳴る。

 

「おのれバーテックス……、逢引の邪魔を……ッ!」

 

 ギリッと奥歯を噛み締める彼女に数秒前までの妖艶さはない。

 勇者として溢れ出す衝動を抑えながらも、敵に向かう殺意は溢れんばかりだ。

 彼女の持つスマホに目を向ける俺に、東郷がちらと視線を向けた。

 

「東郷さん」

 

「大丈夫よ、亮くん。すぐに片づけてくるから」

 

「あ、うん」

 

 モチベーションが高いのは良いことだ。

 高すぎて困ることなど無いのだし、そもそも高すぎたとしても他の優秀な仲間が彼女を援護してくれるのは間違いない。西暦組や防人組の優秀さは彼女からよく聞かされている。

 ふんすふんす、と鼻息荒くやる気に溢れた少女の抱擁。

 汗を吸った黒髪は彼女特有の甘い香りを漂わせ、その優しさに息を呑む。

 

 抱きしめ返して瞬きをする。

 この世界に来てから、人肌を知ることが増えたと思う。

 

「と───」

 

 ふわり、と3回目の瞬きで少女が消えた。

 腕の中の少女が消えるのはいつも一瞬のことだが慣れそうにない喪失感だ。

 どれだけ強く抱きしめても、消えるなと強く思っても、後には何も残らない。

 

「────」

 

 自分だけが取り残されるのだ。 

 その度に俺は、加賀亮之佑は己の無力とこの世界を呪う。

 いったい、何のためにこの世界にいるのだろうかと、この瞬間にいつも思う。

 

 神樹が無垢な少女たちにのみ戦う力を与える。

 それはこの世界の絶対的なルールであり、決して例外はない。

 

 悪魔との契約で勇者になっていた男に、神樹がこの世界で力を与える訳がないのだ。

 そもそも自分のような中途半端な存在よりも優秀な少女たちが、それこそ召喚すればいくらでも呼ぶことが出来るのだから、元の世界のように戦う必要もない。

 加賀亮之佑はただ守られるだけの一般人である。

 

「……ぁ」

 

 掛けられていた人の重さが消えて、たたらを踏む。

 振り返ると、力不足を呪った自分以外誰もいない公園に静寂が広がる。

 

「……」

 

 ポツリと額が濡れる。腕が、鼻が、頬が濡れる。

 季節の変わり目に多い雨が降り始め地面を黒色に変えていく。

 月もない星のみの夜空は一転して曇天が支配していく。

 

 胸の奥のしこりは消えない。

 指に付けた指輪は何の反応も示さない。

 

「……」

 

 人肌で暖を取った熱が冷めていく。

 雨に熱を奪われながら、せめて熱を求めて俺は待つことにした。

 

 東郷が、彼女が、誰かが戻ってくるのを、待つ、ことにした。 

 

 

 



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第十六話 塗り絵の再開

 勇者部では知名度の上昇に伴う人員不足の問題が常にあった。

 神世紀時代の7人のみだった頃は無茶な量の依頼を持ってくる風を吊るす事も多かったが、神樹が形成したこの世界では様々な時代から美しい勇者や巫女が召喚され問題は解消した。

 召喚される勇者の中には勇者部の存在を疑問視する声もあったが今では立派な労働力だ。

 

 結果、勇者部の部室として割り振られている室内は肉詰め状態だ。

 全員が集まると身体を少し動かすだけで誰かしらと触れ合うほどに狭い。

 

 そうして人が集まるれば、些細なことが原因で言い合いになることもある。

 この世界で年月を送り精神が成熟したと言えども、少女の肉体に足を引っ張られるのか、

 

「うどんうどんうどん!」

 

「蕎麦蕎麦蕎麦!」

 

「ノー!」

 

 好物の話一つで大いに盛り上がれる少女たちの姿に俺は肩をすくめた。

 どちらの食べ物が優れているのか優劣を競いたがる者たちの語り合いは尽きない。

 

「パスタやラーメン、素麺よりもやはりうどんの方が優れているのは比べるまでもない!」

 

「いいえ! やはり蕎麦! 蕎麦こそが世界を救うのよ!」

 

 傍から見ている分には微笑ましい言い争いだ。どちらでも良い。

 勇者部の割合としては生まれた土地にもよるだろうが、うどんを好む人が多い。蕎麦派を主張する西暦時代の勇者の一人である白鳥歌野と、うどん派の代表として相対するのは乃木若葉だ。

 

「まったく、あの二人も飽きないわね……。ん? 何見てんのよ亮之佑」

 

「見たら悪いのか?」

 

「悪くはないけど……」

 

「美少女を見ることに理由がいる?」

 

「あ……あっそ。……悪いけど、今更そんな言葉で照れると思ったら大間違いだから」

 

「耳赤いぞ~」

 

「うっさい!」

 

 呆れた口調で呟く夏凜の言葉に、彼女たちの姿を遠目に見る。

 勇者部部室には他にも少女たちがいるのだが、西暦時代の少女たちによる『うどんと蕎麦はどっちが美味しいか』対決に加担することも目を向けることも今では殆どない。

 既に何年間もこの議論が語り尽くされ、枯渇してしまったからなのだろう。料理や部活の支援、時間の掛かる猫の捜索といった依頼の解決をするべく部室の外へと脚を向ける。

 

「はぁ~……小さい若葉さん、かわいいなぁ……」

 

「語り尽くせば日がまた昇る……二人のライバル関係にいつの間にか見知らぬ感情が芽生える……。ひょっとしてこれが恋? 二人の愛のロマンスが今、始まる……ビュオオオオウウ!!」

 

「始まってたまるか!」

 

 モゴモゴと口内で何かを呟く少女や、風を吹かせメモを取る少女に若葉の顔が向けられる。

 キラキラとした眼差し、大きな瞳に宿す感情を抱くふわふわ少女の世界には何者も踏み込めない。そんな独特の世界観を構築している個性豊かな少女たちを壁際から見つめる。

 

「でも~、ご先祖様もそんなこと言いながら歌野先輩とイチャイチャしてるでしょ?」

 

「だ、誰がイチャイチャなどしているか!」

 

 若葉が小さくなる現象は神樹が現在修正を行っているらしい。

 らしい、というのは神託が来たと告げる巫女組からの言葉によるものだからだ。

 神樹の言葉を聞くことも交信することも出来ないが数日中には元の身体に戻れると聞いて、勇者部の少女たちが喜んでいたのを覚えている。

 

「ヘイ! 亮之佑さんはどっち?」

 

「──あ?」

 

「あ、じゃなくて、蕎麦派かうどん派かって話よ」

 

 壁際でサプリをくれた自称完成型勇者と戯れていると話しかけられる。

 西暦時代、農業王を自称する長野県の諏訪で勇者をしていた少女。

 若葉と同じ時代、俺の前世と同じ、或いは似た時代から訪れたであろう彼女は会話にときおり英語を混ぜるという初めて観光に来た外国人のごとき不思議な口調を聞かせる。

 

 英語という言語自体、この世界では無用の長物となった代物だ。

 神樹の内部ではない元の世界には外国どころか四国の外に人などはいない。雑魚と揶揄される星屑に多くの人々はなすすべもなく捕食され、壁の外にあるのは地獄のような赤い世界。

 300年前から英語の勉強は変わらず続けているのは、壁の中の人間に希望を見せる為か。

 

「んお、そうだな……」

 

 歌野の英語混じりの会話に余所へ向かった思考を呼び戻す。

 蕎麦派の歌野とうどん派である若葉の端正な顔を見比べる。期待を見せる歌野の顔と、俺を見ると何かを思い出したかのようにそっと目を伏せる少女たちの反応に頭を動かす。  

 

「あらら? 若葉、どうかしたロッカー?」

 

「い、いや!? なんでもない! ……そ、それよりもビシッとうどん派だと言え!」

 

 どちらでも良い。そういった曖昧な解答が全てを敵に回すということは間違いない。

 この世界の住人は遺伝子組み換えでもされたのかという程にうどん狂いだ。

 うどんは主食、水を飲むようにうどんを食べる。蕎麦派は少数となるのは当然のことだ。

 

「俺はどっちも好きよ。辛いともっと良いけど」

 

「あんたは辛ければなんでも良いんでしょうが」

 

「失礼な」

 

 この世界は年越しうどんが主流だが、個人的には年越し蕎麦を食べもする。

 身体はうどんを欲する時もあるが前世の魂は蕎麦でも良いよねと相槌を打たせる。

 彼女たちのように優劣を争うという行為自体が無意味なのだ。そんなことは言い争う美少女たちを見ているだけの自分でも分かるのだ。

 当人たちの理解など既に及んでいることは間違いない。ならば何故──、

 

「ご先祖様と歌野先輩はね~……ああすることでしかイチャイチャできないんさ」

 

「悲しき愛情表現か」

 

「そうなんよ……。蕎麦とうどんを主張しあう二人の愛は年の差を超えて燃え広がっていくんよ」

 

「年の差って」

 

 ふわりと背中に抱き着いてくる柔らかさと温かさは忘れられない。

 その少女の香りも声も感触も、目を閉じたとしても間違えることはない。

 ブロンドヘアを青色のリボンで纏めハーフアップにし、前髪をパッツンに揃えた髪型。琥珀色の大きな瞳を創作意欲に輝かせ、片腕に猫のような枕を抱いた幼い少女。

 見知った顔立ちだというのに、背格好も浮かべる表情も少し幼い。

 

「園ちゃん」

 

 乃木園子だが乃木園子ではない。

 数年前の、俺と彼女が大赦や大人たちの都合で会えなくなった後の彼女。神樹館小学校の制服を着用した彼女に目を向けると、ふわふわとした笑みを浮かべる。

 瞳に信頼の色を滲ませて、目を奪われるような優しい声色で艶やかな唇を震わせる。

 

「かっきー先輩は依頼終わったの~? それともサボり?」

 

「依頼なら夏凜と終わらせてきたよ」

 

 この世界で長い年月を共にした間柄だ。

 贔屓目を引いたとしても、そのお嬢様然とした装いには芽生え始めた色気を感じる。

 

「園ちゃんはいつだって可愛いな」

 

「えへへ~……ありがとう、かっきー先輩」

 

「──、先輩はいらないよ。俺と園ちゃんの仲のだろ」

 

「先輩って属性をかっきーに付与できるのはこの私だけの特権だからね~。成長した私じゃ絶対に出来ないから、そう呼んじゃうんよ。私、かっきーの後輩してる~!」

 

 心地よい声色を響かせて俺の身体に抱擁する少女。

 ふわりと羽のように軽い身体を抱き返すと楽しそうにキャッキャッと笑みを浮かべる姿に心が洗われる気分になる。

 

「ちょっと待て! さっきから聞き捨てならないことを言うな! こらっ、乃木!」

 

「ぴええ~、ご先祖様が怒った~」

 

 激昂しやすい短気な少女の姿に悲鳴を上げる子孫の少女。

 歌野との蕎麦うどん対決を取りやめた若葉(小)は眦を釣り上げると、俺の背中に隠れて妄想を垂れ流す園子(小)を捕まえようと迫りくる。

 

「む、何だその手は……」

 

 そんな若葉の進撃を止めるべく俺は両手を広げる。

 背後にいる小さな少女を守る為にと立ちはだかる俺と若葉が対峙する。

 

「何だ亮之佑、私と戦るのかってああっ!?」

 

「高い高ーい! そして友奈直伝のハグ攻撃!」

 

「こ、こらっ、離れろぉ〜!」

 

「ハッハッハ!! 何だ若葉、俺と戦るのか?」

 

「くっ……!」

 

 堅物な少女は絡め手に弱い。

 それを体現するように、脇を掴み身体を持ち上げて抱擁すると乙女のような反応を示す。ブラウス越しに抱いた肌は柔らかく、程よい脂と肉が乗った身体は徐々に熱を帯びていく。

 そもそも普段よりも小さくなった身体で何をしようと言うのか。

 

「ああ!? ズルいです亮之佑さん! 私にも若葉さんを抱かせて下さい!」

 

「いや……あんずは何を言ってるんだ」

  

 正々堂々を謳う騎士道精神の塊のような若葉に友奈直伝のハグ攻撃。

 人肌で心を落ち着けながら、相手とのスキンシップを図るという技は神樹が見初めた無垢な少女たちには有効であることを俺は実体験を通して知っていた。

 

「ふぅー」

 

「はにゃぁぁ……。 ひゃめっ、耳は……!」

 

 大抵のことは吊るすだけで許してくれる少女の一人は耳が弱い。

 その怒りを鎮めるように、そっと息を吹き掛けるだけで首を反らせて逃れようとする。背中から抱き着いた園子の腕がきゅっと首を絞めるのを感じながらも公衆の面前で少女を鎮める。

 せっかくなので、ひなたが周囲に若葉との仲を見せつけるような耳への甘噛みを再現する。

 

「もっと広い心で笑って許さないとな? ダメだぞー」

 

「分かった! 分かったから……くぅ……、んっ」

 

「はわわ……!」

 

 呆然と見守る少女たちを余所に、俺は若葉と戯れる。

 おんぶ、というよりも首に腕を回して垂れ下がる園子が無言で力を強め、視界が少しずつ黒く染まっていくのを感じながらも若葉がへにゃあっと床に座り込むまで耳を弄ぶ。

 顔を赤らめ荒い呼気で目元に涙すら浮かべて俺を睨む若葉は可愛らしかった。

 

「……元に戻ったら覚えていろよ」

 

「きゃあ! こわ~い。というか園ちゃんはそろそろ首離して」

 

「あっ、えへへ……ごめんね」

 

 驚愕と畏怖の混じり合った視線を感じながらも風雲児の撃破に成功した。

 ふにゃふにゃになった彼女のフォローを考えていると、くいっと制服の袖を引く少女に気付く。

 

「……やりすぎよ」

 

「ぐんちゃん先輩」

 

「せめて呼び方くらいは統一して。……それと、あなたにちゃん付けされるのはちょっと……」

 

「冗談ですよ、千景先輩」

 

 半眼でジロリと俺を見上げるのは黒髪の少女。

 趣味のゲームの腕は高く、大鎌を使用する勇者は俺の行為を責める。

 

「もうすぐ上里さんが帰ってくるから、……ここから離れた方がいいわ」 

 

「ひなたさん怒るかな?」

  

「乃木さんが小さくなってから……随分と過保護になってたから」

 

「ああ……」

 

 ロリ武士という新たな属性を身に着けた若葉に専属の巫女は母性でも芽生えたのか。

 東郷が友奈に向ける目線以上に、些細な動きにカメラで写真を撮り、食事を共にし、風呂も共にして、普段以上に保護者の真似事をしているひなたが泣かされた若葉を見てどうするのか。

 

「ありがとう千景パイセン。今度部屋にクッキーでも持っていくよ」

 

「……え、ええ」

 

「──次こそは先輩の全部が見たいな」

 

「……っ」

 

「なんてね」

 

 感謝の意味を込めて1歳年上の先輩を抱擁し、部室を出る。

 旧世紀の外国ではハグやキスが挨拶なのだから何も問題は無いだろう。友奈が抱擁して良いのに、何故俺が抱擁してはならないのか。友奈風の女装をすれば良かったのだろうか。

 廊下を歩き数分ほど、そんな取り留めのないことを考えていると、

 

「亮之佑さーん? どこですかー?」

 

 と、背筋を凍らせるような声が遠くから聞こえた。

 誤魔化す為の論理武装も言い訳も吹き飛ぶような、恐ろしい声音。感情的になった女が何をするか分からないのは記憶にある東郷が証明している。

 こういった場合は、基本的に隠れ潜んで相手が冷静になるのを待つしかないのだ。

 

「逃げるか隠れるか、だ」

 

 そうなれば俺が行う次の手は隠れるか逃げるかの二択だ。

 自宅へ逃げ帰っても良いが、その道中に他の部員に捕まり部室に戻る未来が見える。そういう能力がある訳ではない。これまでの部活動を通してその可能性が高いと感じたのだ。

 では、どこへ隠れるべきかなのだが。

 

「亮之佑先輩!」

 

「天使!」

 

「天使? そうではなくこちらに隠れませんか?」

 

 近くの空き教室の扉が開き、ブロンド髪の少女が顔を見せる。 

 小さい若葉や園子に負けず劣らずの幼さのある彼女は心配そうな表情を顔に浮かべる。そんな手招きをする巫女の誘いに俺は頷く。

 

 普段は使われていない空き教室、その部屋の隅にある準備室に足を踏み入れる。

 教師も使用することの殆どない部屋は物が整理され、掃除が床にまで行き届いている。

 

 空き教室の準備室。

 二重の扉という隠れ家に僅かに安堵の嘆息をする俺に亜耶は静かに微笑む。

 

 神世紀時代、俺や友奈と同じ300年には勇者の他に防人と呼ばれる部隊が存在する。

 バーテックスを撃退するだけの勇者とは違い、壁の外での御役目に従事する少女たちの唯一の巫女が国土亜耶だ。サークルの人間にモテている姫と言えば分かるだろう。

 

「どうして?」

 

「ちょうど、学校側の依頼でこの部屋のお掃除をしていたので」

 

「あっ、いや、そうじゃなくて……」

 

 可愛らしく小首を傾げる亜耶に思わず苦笑する。

 慌てふためいて無様を晒していた自分を人のいない部屋に匿ってくれたのは──、

 

「……? なんとなく亮之佑先輩が困ってるようにみえたので」

 

「────」

 

「困っている人は放ってはおけません」

 

「────」

 

 その笑みの眩しさに俺は己を恥じた。

 罠ではないかと、少しでも疑念を抱いた自分の汚さに嫌悪感すら覚えそうになった。

 

「亜耶ちゃん、ありがとう。お礼に俺に出来ることだったらなんでもしてあげる」

 

「なんでも、ですか?」

 

 どこか天然気味な彼女の無垢な姿は出会った頃の友奈を思い出させる。

 不思議な親近感、もっと一緒にいたいと思わせる姿は防人の少女に人気なのも頷ける。

 

「ちなみに大丈夫ですとか、何もなかった場合は、なんやかんやで俺が死にます」

 

「ええっ!? わ、分かりました。えっと、そうですね……ううーん」

 

 うんうんと頭を働かせて悩む無欲な少女の姿に思わず頬を緩めて。

 やがて、パンと小さな両手を叩いた亜耶が明るい表情を見せた。

 

「あっ!」

 

「お金かな?」

 

「違います! その、……前に若葉先輩と一緒にした授業、あの続きをして欲しいです!」

 

 

 




おくれてごめーん。話が全然まとまらんかった。
若葉にするか、夏凜にするか、園子(小)にするか延々と悩んで亜耶ちゃんになった


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第十七話 知るということ

 防人たちのマスコットにしてサークルの姫のようなポジションにいる国土亜耶。

 彼女は驚くことに肉体年齢的には俺と1歳差しかないが、それ相応の知識がない。籠の中の鳥のように自由はなく大赦に必要な知識のみを与えられ、神樹のみを信じて生きてきた巫女だ。

 

 同じ巫女と言えば、上里ひなたを始めとした少女たちがいるがいずれも普通の少女だ。

 大人びた性格、スタイルの良い身体、多種多様な異なりを見せつつも無知ではない。

 

 西暦時代に神樹が見初めた乙女たちと亜耶の違いは何なのだろうか。

 恐らくは大赦の方針が違うのだろう。300年の時を経て、神樹を心の奥底から敬い、従順であり、敵意を抱かせず、都合の良い存在であれと生まれた時から育てられたのか。

 

「亜耶ちゃんはどうして亜耶ちゃんなの?」

 

「えっと……私の両親がそう名付けてくれたからだと思います……?」

 

 コテンと小首を傾げる姿は勇者部の中でも希少な天然純真の物だ。

 何故か友奈の顔が思い浮かぶのは会えぬ寂しさというよりも、同じ天然純真な存在だからか。

 

「はい、友奈先輩は本当に優しい人です」

 

「亜耶ちゃんも優しいよ」

 

「ありがとうございます。皆さんとっても優しいですよ。もちろん……」

 

「もちろん?」

 

「亮之佑先輩も」

 

「────」

 

 闇夜に見上げた美しい満月を思わせるような微笑。

 友奈の太陽のような温かい笑みとは異なる、しかし心を満たす言葉と笑みに息を呑む。

 嫌味、という訳ではないのだろう。それぐらいは分かる。彼女たちはそういう生き物だと。

 それでも、そんな無邪気で悪意のない優しい言葉に──、

 

「ありがとう」

 

「い、いえ……」

 

「防人サーに亜耶ちゃんがモテる理由が分かったよ」

 

「防人さー?」

 

「みんな亜耶ちゃんのことが好きってこと」

 

「……嬉しいです!」

 

 にこりと笑みを浮かべる亜耶のブロンドヘアを一房手に取る。

 空き教室の準備室、その床に胡坐で座る俺の股の間に入り込む形で彼女は座っていた。最初は教えを乞うのだからと床に正座して向かい合おうとする彼女を制してこの形をした。

 

 ちょこんと目の前に座る少女は甘いミルクのような香りを漂わせる。

 大人しい小動物のような姿は樹や園子(小)にも似ている。

 

 手に取った小さな白い手は柔らかく温かい。

 そうして彼女に触れる俺を少し不思議そうな顔で見つめる亜耶。握手したいのかと自らの手で俺の手を握る姿に苦笑しながらも、彼女からの依頼をどう対応するかを考える。

 

 ──性行為の授業の続きを行うという依頼を俺は受けることにした。

 

 以前、部室で乱れた若葉とふしだらな行為に励んでいたところを亜耶に見られた。

 性行為の意味を知らず、仲良く半裸でプロレスごっこをしていると勘違いしている彼女に、自慰の仕方を若葉という模範生を通じて伝授させたのだが──、

 

「その……あれから身体がムズムズすると教えて貰ったとおりにしようとしたのですが」

 

「うん」

 

「あんまり上手く出来なくて……」

 

 性知識に疎い少女の自慰事情が震える唇から発せられる。

 無邪気に若葉を羞恥責めするという才能を見せたことのある彼女だが、どこかたどたどしく告げる度に形の良い耳が朱色に染まる。

 

「あの時、みたいに……」

 

「気持ち良くない?」

 

「……そうなんです」

 

 その朱色は恥じらいや羞恥の類ではなかった。

 自らの自慰行為を語ることに対して僅かに羞恥を抱いているが、それ以上に教えてくれたことに対して不甲斐ない結果に終わった自らを恥じるように顔を伏せる少女。

 

「ごめんなさい。せっかく若葉先輩と一緒に教えて頂けたのに」

 

「────」

 

「これでは、芽吹先輩たちを気持ち良くしてあげることが出来ないです……」

 

 俺とは違い、どこまでも他人の為に行動が出来る少女の悲し気な囁き。 

 呟くような声音で、はらりと垂れる髪の毛が彼女の悲し気に彩られた横顔を隠す。

 その髪の毛を払いのけ、下がった顎を指で持ち上げて亜耶と目を合わせる。

 

「それぐらい良いんだよ。亜耶ちゃんの為なら若葉だって何度でも教えてくれるさ」

 

 そのままジッと見つめ合うと、亜耶は僅かに顎をあげて何かを待つ。

 背後から回した腕の中で見上げる彼女は濡れた唇から熱い呼気を感じた。

 

「亮之佑先輩……」

 

 幼さのある顔に顔を近づけて、鼻と鼻が触れるような距離になって。

 囁くように名前を呼ぶ年下の巫女は、一呼吸置いて上目遣いで告げる。

 

「……授業の続き、お願いします」

 

 先輩と後輩から先生と生徒の関係へ。

 温かく、しかしインモラルな言葉に彼女の頬に手を置く。少女漫画で見るような、優しく、甘く、少し強引なキスを前に仄かに頬が赤らむのを掌に感じた。

 

 ──唇を重ねた。

 

 最初は啄むように唇の端を唇で甘く噛み、少しずらして何度も繰り返す。

 優しく、壊さないようにつるつるの頬に手を添えて、首筋を撫で、顎を指先で撫でる。

 

「んっ……!」

 

 ──唇を重ねた。

 

 目線だけで促すと、おずおずと柔らかい唇を窄めて亜耶からキスをする。

 唇を重ねるのと重ねられる時の感触が異なることを知ったのか、薄く開いた少女の眼差しに官能の光が宿り始める。顔だけをこちらに向けていた亜耶の淡いキスは、より情熱的になるにつれて姿勢を変える。

 膝立ちになり俺と向かい合う彼女の唇は重ねる度にふにゅりと形を変える。

 

 ──唇を重ねた。

 

 一つ一つ確かめるように、模倣するように、盗むように、誰かに実践するために。

 勤勉で愚かで真面目な巫女は俺の首筋や頬を柔らかく小さな掌で撫で、感触を確かめる。

 

「ん……、ふぁ……」

 

 互いの肌の柔らかさ、熱を、感触を確かめ合う。

 艶やかな唇を指で撫で、僅かに唇で甘く噛まれると、そっと唇を奪う。

 猫のごとく身をよじらせる亜耶は唇を離す度に吐息を漏らすと、俺の肩に手を置く。

 

「亜耶」

 

「……はい」

 

「誰かを気持ち良くするには、まず自分が気持ち良いと感じないとね」

 

「自分が、ですか?」

 

「布教みたいな物だ。どうして相手が悦んでくれるのか自分で体験する。そして気持ち良さをお裾分けする」

 

「お裾分け……」

  

 性行為とは異なるキスによるスキンシップ。

 唇同士を繋いだ淫らな糸が珠となるとペロリと舐めとる制服姿の少女。その唇を指の腹で撫で、薄い首筋の肉を撫でると、くすぐったそうに声を漏らす。

 

「ゃ……ん……」

 

「大事なのは相手のことを知って、自分のことを伝えることだ」

 

「ぁ……ぁっ……」

 

「相手の体温を知って、肌の柔らかさを知って、鼓動を知って、どんな表情を見せるのか、どこを触ると悦ぶのか。この行為は相手の事をもっと深く知る行為なんだよ」

 

「────」

 

「そして同時に自分の事も教える。今から誰が気持ち良くしてくれるのかを」

 

 少女の手を取ると、恋人繋ぎをするかのように、指と指を絡める。

 1歳程度の差、樹と同い年の彼女の手は重ねると小さく、同時に柔らかさを知る。

 きゅっと握るのは亜耶、俺の手の感触を覚えようとする彼女の指を口元に近づける。

 

「ぁっ!」

 

 小さな指を口に含む。

 人差し指の先をそっと噛むと、顔を赤らませた幼き少女の身が震える。 

 

「ん……ぅ……」

 

 震える吐息に官能の甘みが混じる。

 大きな瞳を瞬かせる少女の制服に触れる。

 

 首筋を撫でながら茶色のカーディガンのボタンを外す。

 讃州中学の冬服と同じワンピースタイプの制服の上からそっと胸に手を当てる。

 柔らかい生地の上から巫女の薄くも柔らかい乳房の存在を掌に感じた。

 

「っ……」

 

 衣服の上から感じる乳房を守るブラの硬い感触がない。

 軽く手で円を描くと、幼い巫女の唇が開き、熱い呼気が漏れる。

 

「ん……っ……」

 

 じわりと少女の身体が熱を帯びていく。

 首の皮膚を吸い、呻く彼女の乳房を軽く揉む。

 

「────」

 

 胸に手を置く俺の手に亜耶の手が重なる。

 切なそうな表情にキスを求めていることを察した俺は、少女の唇を奪う。

 先ほどよりも一歩奥へと進むように、重ねた口腔は情熱的だった。

 

 幼い少女の唇を割り拓いて口腔へと侵入し、逃げる舌先と舌を絡める。

 甘い唾液を味わいながら、鼻息の荒い巫女とディープなキスをする。

 

 ちゅぷ、ちゅ、と唾液が絡む淫らな音に少女の肌の朱色が濃くなる。

 肩を掴む手は力を強め、強引な口腔行為にコツを掴んだのか、重なった唇の隙間から湿った喘ぎ声を聞かせつつも自ら舌を絡める。

 

 スカート部分の裾を掴み、引っ張り上げる。

 するすると持ち上げると彼女の下腹部を指先がなぞる。

 

「っ……」

 

 艶やかな太腿の奥に覗くショーツは苺柄。

 向けられる視線に恥じらいを覚えたように、小さく声を漏らした巫女が膝を閉じる。

 リボンの付いた可愛らしい下着を一瞬指が這うとくちゅっと湿り気を感じた。

 

「ぁっ……!」

 

 小さな刺激に敏感に反応した彼女は腰を引かせる。

 甘い香りとは僅かに異なる芳香が制服の中から漂わせ、それを追いかけるように無抵抗な彼女を脱がせていく。

 鼠径部を覗かせ、続けて亜耶の臍が覗くと柔らかな腹部を舐める。

 

「ひぅっ……」

 

 まるで狼に捕食される寸前の小動物のような反応。

 そう考えるのはあながち間違いではないのだろう。俺の予想通り、ワンピースタイプの制服を脱がせると乳房を包むピンク色のブラキャミソールが姿を見せた。

 

 白い肩から覗く薄いキャミソールは襟元から乳房を覗かせる。

 柔らかい乳房を包む薄い布はツンと硬くなった乳首の存在を微かに主張していた。

 

 膝立ちでブラキャミソールとショーツのみを残した巫女。

 厳密には靴下も履いているが、俺はその光景を楽しむとキャミソールの下から直接巫女の生乳を揉む。

 しっとりと僅かに汗ばんだ肌が掌に吸い付いた。

 

「ふ、んっ……!」

 

 キャミソールを脱がせると露わになるのは桜色の乳頭だ。

 ふにっとパンケーキのような幼い乳房を揉み、もう片方の乳房を舌で舐める。

 

「っ……ぁ……!」

 

 赤子のように巫女の乳房に吸い付きながら乳頭を指で愛撫する。

 薄い乳房を円を描くように揉みながら舌先で少女の突起を転がすと亜耶の身体が震えた。

 もぞもぞと脚をすり合わせる彼女の内腿を手でなぞる。

 

「そ、それ……っ」

 

 きゅっと閉じた口端から甘い嬌声を漏らす巫女は俺の頭を掴む。

 羞恥と罪悪感、与えられる快楽に瞳に感情と涙を浮かべる少女は汗を滲ませる。

 は、あ、と喘ぐ彼女の秘裂を湿った下着越しに擦り上げると、

 

「ぁっ! ぅぅッッ……!!」

 

 俺の頭を掴んだ巫女は身体を丸めるように小刻みに痙攣した。

 軽く絶頂したらしい亜耶の口端から溢れた唾液が床にポタリと落ちた。

 

 ガクガクと身体を震わせ、全ての快楽を味わうように目を閉じる少女を抱き寄せる。

 抱擁するように亜耶を座らせると彼女の呼吸が落ち着くのを待つ。

 

「い、今の……」

 

「気持ち良かった?」

 

「なんだか身体がふわふわします……」

 

「それを亜耶が防人の皆にしてあげるんだよ。じゃあ、もう一回しようね」

 

「ふぇ!?」

 

 俺を座椅子にするように背中を預ける彼女を背後から抱く。

 鼓動を高鳴らせる少女のくびれの少ない腰に手を置き、するりと下着をずり下ろす。

 亜耶の蜜は、色素の薄く産毛しかない恥部と糸を引いていた。

 

「ぁ! 恥ずかしいです……」

 

「そんなこと無いよ。綺麗だよ」

 

 素直に感情を口にする彼女は恥部を手で隠し、顔を伏せる。

 頬を桜色に染め、学校の誰も入らぬ部屋で肌を晒す少女の姿は可愛らしい。

 普段の可愛らしい子を虐めたいという気持ちよりも、純粋な優しく気持ち良くしてあげたいという気持ちが湧き上がる。

 

「俺は先生だもんな」

 

「亮之佑先輩?」

 

「ほら、亜耶。左手はおっぱいにね……で、右手はここに」

 

 オーソドックスな自慰の仕方を耳元に囁き、彼女に自慰を強要する。

 湯たんぽのように温かい身体を背後から抱き締め、胸板を小さな背中に密着させる。学校で淫らな行為を始めようとする幼き巫女の鼓動が聞こえた。

 

 やがて彼女の手が快楽を求めて動き始める。

 右胸に触れる指が先ほどの俺の動きを再現するように乳頭付近を這い、下腹に添えられた手がどこに触れるのが良いのかと一瞬悩まし気に止まった。

 そんな迷える後輩に優しい先輩が耳元で囁き、指で触れるべき場所を指す。

 

「……ここですか?」

 

「そうだよ。芽吹や弥勒さんも、若葉もそこを触ってるよ」

 

「芽吹先輩もですか! えっと……確か名前は──」

 

 幼く無垢な少女が発する淫語を聞くと不思議な気持ちになる。

 女の最も敏感な部位の正確な位置を亜耶に覚えさせると、恥毛の生えていないつるりとした肉丘を這う指先が自らの秘裂の縁をなぞっていきザクロのような小さな突起に触れ、ビクッと身体を震わせる。

 

 ん、と小さく吐息を漏らす亜耶は今度は目を閉じる。

 

 本能と与えられた知識で動く少女の自慰。

 最小限の動きで最大の快楽を得られるように、全身で最も敏感な突起を静かに、自分のペースで刺激する。

 口が閉じ、開く度に粘りついた唾液が唇に糸を引く。

 

「……っ、……ンッ、は……!」

 

 肌には微細な汗を浮かべ、少女の呼吸は乱れ始める。

 背中を預ける男の存在を忘れたように、絶え間なく肉粒を刺激し続ける。

 

 熱い吐息を漏らす彼女の脚は床に伸び、閉じ、開かれる。

 腰がひくひくと浮かび始め、表情には苦しさを滲ませる。

 

「ぁ……んんっ……!」

 

 クリトリスが気に入ったのか、巫女の指は一心不乱に肉芽を弄る。

 

「頭が真っ白になりそうだったらイくって言うんだよ」

 

「っあ、あ……! イっ、イきます……っ!」

 

 俺の言葉に素直に頷いた彼女の申告の直後だった。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 声にならない嬌声。

 亜耶の身体がビクッと跳ね、震える。

 二度、三度と小さな体躯を痙攣させ、俺の身体からずり落ちる少女の身体。

 

「は……ぁ~……」

 

 目尻の垂れた蕩けたような顔の亜耶。

 長い髪の毛を振り乱し、呼吸に合わせて薄い腹部を上下させる。

 

 恍惚な表情で口端から垂れた唾液を拭い、巫女を床に寝かせる。

 膝に下げられたショーツと靴下以外、白い肌を学校で晒す少女の脚を開かせると、透明な蜜を垂らす無毛の丘に顔を近づける。

 

「亜耶ちゃん」

 

「……りょうのすけ、せんぱい……?」

 

「こうするともっと気持ち良いから覚えてね」

 

「あっ! まっ、まってくださっ、そんなところ……んぁっ!!」

 

 自慰に浸っていた彼女の媚肉に俺は吸い付く。

 快楽から快楽へと続く目覚めに少女の陰唇から蜜液がこぼれる。

 

 巫女の身体は軽く尻肉を掴むと容易く持ち上がった。

 そのまま肉棒よりも先に貝肉を割り拓き、俺の舌が恥部を犯す。

 

「ゃぁっ!」

 

 喘ぐ亜耶の両腿が俺の頬に当たる。

 それを申し訳ないと思ったのか、脚が僅かに開かれると同時に陰唇とのキスをすると、長いブロンドヘアを揺らして少女は喘いだ。

 

「相手を気持ち良くさせたいなら自分の身体で覚えないとね」

 

「いぅっ、ぅん!!」

 

「きっと悦んでくれるよ」

 

 俺は下半身を持ち上げた亜耶の恥部に小さな陰核を見つけていた。

 陰毛のない丘に、刺激を受けた肉芽を包皮ごと指の腹で擦る。

 

「こんな風に大事なところを舐めたり、ここを指でクリクリすると~」

 

「ぁぁっ! ィっ、ぅ」

 

 少女の恥部を舐めながら硬くなった肉の芽を指の腹で撫でる。

 奥から溢れる蜜を啜ると同時に、小さな果実を爪で弾いた。

 

「ぁぁぁっっっ!!!」

 

 亜耶の腰が激しく上下し、声を上げて達した。

 がくりと脚の力が抜け、割り拓いた貝肉から小さく蜜が跳ねる。

 

「はーっ、はーっ……!」

 

「はい、授業はここまで。あとは毎日夜に自慰とかして自信がついたら芽吹に夜這いして良いと思うよ。たぶん夏凜並みにちょろいだろうから、亜耶ちゃんでもきっと大丈夫」

 

「────」

 

「何か困ったら手伝うから言ってね」

 

 虚空を見つめていた彼女に講義の終了を告げると腕を掴まれる。

 欲求不満は解消されなかったのか、快楽の波に涙を浮かべた瞳で俺を見る。

 

「私は……もっと、知りたいです」

 

「エッチなことを?」

 

「はい。相手のことを知って、自分のことを伝える……」

 

「それで?」

 

「今は…………亮之佑先輩のことを」

 

 そっと少女の小さな手がズボン越しに肉棒に触れる。

 雄の感触を掌で感じたのか小さく息を呑む彼女は目を逸らすことなく告げる。

 

「もっと知りたいです」

 

 

 

 

 

 

 対面座位で俺は彼女とキスをする。

 

「んん……っ!」

 

 怒張で貫いた瞬間、彼女はぎゅっと背中に回した腕に力を籠める。

 無垢だった少女の膣は二人で解したこともあり、よく濡れており、俺を受け入れた。

 

「亜耶ちゃん。キス上手くなったね」

 

「は、ぁ……、ありがとうございます……」

 

 唾液を馴染ませて味わうようにキスをする少女。

 亜耶の媚肉は狭く、きつく、ぎゅっと肉竿を締め付ける。

 

 肌に汗を浮かべた巫女が上半身を寄せ、ふにゅりと薄い胸を押し付ける。

 閉じていた瞼を開き、緑色の瞳に俺を映すと安心させるように笑みを浮かべる。

 

「ぅ、動いても……大丈夫ですから」

 

 ゆっくりと腰を動かし少女を貫く。

 にじゅっと結合部から濡れた音が聞こえる。

 

 スローペースで鼠径部を触れ合わせるように腰を動かす。

 技術を得たいのか、快楽を得たいのか、キスをねだる少女に対して滅茶苦茶に突き上げてやりたいという衝動を抑えると唇を重ねて彼女を串刺しにする。

 

「んっ! ん……ふッ……、んう……!」

 

 ゆっくりと腰を引き、真下から突く。

 とんとん、と未開の地に足跡を残しながら彼女の秘められた場所を犯す。

 

 首を反らす少女の未成熟な乳房に吸い付くと亜耶は俺の首をきつく抱く。

 力の抜けた身体を抱きながら、俺は射精衝動と理性の狭間の中で腰を揺する。

 

 五分、十分と、膣襞の一枚一枚を確かめるように、丁寧に、執拗に、紳士的に、抽送する度に少女の身体は熱を帯び、甘い香りをまき散らす。

 小さな身体を抱きしめて、俺はやがて少女の最奥に白濁を注ぎ込んだ。

 

 汚濁が無垢であった少女の最奥を汚していく感覚。

 一滴残らず、幼い膣襞を汚し、巫女の媚肉に吸わせていく。

 

「ぁ……は……!」

 

 自らの子宮に雄汁を注がれたのが分かったのだろう。

 緑色の瞳を見開き、背に爪を立てた彼女が感極まった声を漏らす。

 

「あぁぁ……」

 

 汗に濡れた身体を抱きしめ、俺たちは唇を重ねる。

 恋人のようで、快楽を求めるだけの授業の果てに、ただ抱き合った。

 

 やがて抜けた肉竿、結合部からは男の証がとろりと腿へと垂れる。

 意識を失ったのか俺の身体に抱き着いたままの彼女の心音に耳を傾け、少し休むことにした。

 

 

 



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第十八話 少女からの誘い

 ──人を背負う、その行為には意外と気を使うことが多い。

 

「あ、あの……大丈夫ですから」

 

「うん? いや、気にしなくて良いよ~」

 

 身体を揺らせば当然背負った相手にも振動が届き、最悪転ぶことがあれば共に怪我をする恐れすらある。注意を払い、散漫となる集中力を引き締めなければいけない行為だろう。

 何より意識の無い間に運ばれる、脚を怪我したといったどうしようもない例外を除いて、見知らぬ他人に背負われることをストレスや不快に思うことは当然だ。

 だからこそ、他人を背負うという行為にはそれなりの信頼関係が必要になる。

 

「それとも嫌だった?」

 

「あっ、嫌ということはないのですが……」

 

 吐息を漏らす俺の思考を堰き止めるように少女は言葉を発する。

 たどたどしく、どこか幼くも優し気な声色。首に回した腕と薄くも確かな柔らかさを伝える乳房が押し付けられ、背後から密着するように抱えた少女の体温と鼓動が伝わる。

 トクントクンと聞こえる心の鼓動が彼女が落ち着いていることを証明している。

 

「その……重くないでしょうか?」

 

 さらりと肩から髪の毛を垂らし、ふわりと甘い香りを漂わせる。

 

 ──どうして少女という生き物はこんなにも良い香りを放つのだろうか。 

 

 一瞬、どこか宇宙の彼方に向かいそうになった意識を保ちながら深呼吸を続ける。

 日が沈む速さが増した季節、陽光が地平線に消えそうな中で俺は視線を彼女に向ける。幼くも彼女もそういったデリケートで繊細な部分は気になるらしい。

 

「いや、全然。風先輩の方が重いから」

 

「それは……流石に風先輩に失礼ではないのでしょうか……?」

 

「風パイセンの体重は女子力で出来ているから、何も問題ないんだ。……問題、ないんだ」

 

「な、なるほど」

 

「それに亜耶ちゃんをおんぶしたかったから。……疲れただろう?」

 

「それは……」

 

 チラリと横を見ると夕日に映えるブロンドヘアに翡翠色の瞳の少女。

 大人の階段を上ったからか、無垢であった幼い顔に知識と経験を宿したように見える。

 

 ──この少女を俺が汚したのだ。

 

 そう考えると、仄暗い感情が首筋を撫でる。

 神樹を信仰する者を犯し、未知への快楽を教えさせた。

 自慰を覚え、性行為を覚え、その喜悦を他者に与える彼女をまだ無垢と呼べるのか。

 

 俺の言葉に彼女は瞬きを繰り返す。

 夕焼けに照らされる幼い巫女はやがて艶やかな唇を開くと、

 

「そうですね……。少しだけ疲れました……」

 

「なら、今日はぐっすりと眠って芽吹たちを悦ばせられるように修行しないとね」

 

「はい。今日はありがとうございました、亮之佑先輩」

 

「いいってことよ。……亜耶ちゃん、頑張ってね」

 

「はい!」

 

「あと、今日のことも秘密ね」

 

「……ふふっ、また秘密にすることが増えてしまいましたね」

 

 弟子、というほどではないが俺の教えを受けた巫女。

 素直に学んだ彼女は宣教師かウイルスのように他の勇者や巫女たちにも快楽を教えるのだ。

 そんな風に無垢な少女が減っていけば、神樹はどうするのだろうか。

 

「……亮之佑先輩?」

 

「うん?」

 

 思考の海に沈む俺を引き上げた巫女の言葉。

 彼女の言葉に顔を上げると、既に寄宿舎の玄関前に到着していた。

 

「ここで大丈夫ですよ」

 

 にこりと笑みを浮かべる少女が背中から下りる。

 柔らかな感触と温もりが消えていく感覚に眉をひそめそうになりながらも頷き返す。

 乱れた制服を直した彼女が地面に降り立つと、少し呆けた顔で周囲を見渡す。

 

 寄宿舎と言えども、別に乃木家のように愉快な遊具はない。

 少女の視線の先が人を探していると理解したのは、視線が重なってから。

 

「それにしても、ひなた先輩だけでなく誰にも見つかりませんでしたね」

 

「ああ。実は俺は忍者なんだ。だから誰にも見つからなかったのでござる」

 

「そうだったんですね! どんな術を使えるのですか?」

 

「誰にも見つからずに帰宅する術」

 

「凄いです!」

 

 そっと下腹部を撫でる制服姿の巫女は色気のある笑みを見せる。

 人の言葉に疑いを覚えないのか、或いは単純にスルーされただけなのか。それを確かめようと口を開く前に少し名残惜しそうな顔を見せる巫女が足早に寄宿舎に入っていった。

 

 

 

 その翌日のことだった。

 若葉に過保護な巫女の追撃に備えて勇者部を病欠することを考えていた俺は友奈に捕縛されて部室に来ていた。彼女の可愛らしい誘いを断ることなど出来る筈が無いのだ。

 

「……だ~れだ?」

 

 キャッキャッと快活な笑みを浮かべる少女たち。

 勇者部の部室で椅子に座った俺の目を背後から掌で塞ぐ少女の声。

  

 くすくすと笑う声は二人。 

 無防備な少女たちは抱き着くように自らの身体を押し付けて柔らかさを主張する。後頭部を抱くように当たる少女の乳房はふにふにと制服とブラ越しに柔らかさを伝える。

 

「────」

 

「分からない? 私だよ、私」

 

「違うよ。私だよ、私」

 

「…………」

 

「「誰だと思う?」」

 

 唐突だが、加賀亮之佑は勇者部の黒一点である。

 女性陣だけならば無防備になるところを男の目を気にしてスカートが捲れたりしないようにする程度には元々意識されている。

 共に時を過ごし、御役目を通じて多少の仲を深めることで友人にはなれる。だが、異性である以上、ある程度の距離感があった。その距離も行為をした者ほど無くなる傾向だが。

 

 ともかく勇者部の部室という場所で堂々と距離感を無視して触れ合う少女は一握りだ。人前で異性と触れることを遠慮する奥ゆかしい少女が多い中、彼女の接し方は過去も未来も変わらない。

 なにより、これだけ長く共にいて間違える筈がない。

 ふわりと漂う香りは嗅ぎなれた花の香り、耳に囁くその声は幾度も聞いたから。

 

「友奈」

 

「正解ですが……どっちの友奈でショー?」

 

「ゆ……高嶋さんが目を押さえつつ、友奈が声を発している」

 

「ファイナルうどぅん?」

 

「うどぅん」

 

「でれれれれん……正解! やったー!」

 

「おめでとー!」

 

 柔らかい掌が除かれ開かれる視界。

 桜のような笑顔を見せる薄紅色の少女たちは双子と見間違えるような容姿。生き別れの姉妹なのではないのかと囁かれることもあるほどにその顔も背格好も似ているのだ。

 そんな彼女たちが祝福するようにクルクルと俺の周囲を回る。

 

「凄いね、りょーくんは。私たちを間違えないなんて」

 

「凄いでしょ? 亮ちゃんは」

 

 手を繋いで笑みを浮かべる友奈。

 まるで自分のことのように笑みを浮かべる友奈。

 間違えなかったことを喜ぶようにそっと肩に手を置き、椅子に座る俺を見下ろすように薄紅色の瞳に信頼と愛情を宿した少女が頬を緩める。

 その姿に何か言うべきかと口を開く前に声が掛けられる。

 

「友奈ちゃん! 私も! 私も間違えないから!」

 

「はいはーい! 東郷さんにもしてあげるね」

 

 友奈と名前のつく少女には黒髪の人間が惚れる運命なのか。或いは逆なのか。

 掌の感触と背後からの抱擁に恍惚な笑みを浮かべる東郷はリボンに纏めた黒髪を揺らす。口端を緩め、形の良い耳元で囁かれると反対側に首を反らせる姿に何かのプレイかと考えてしまう。

 

「東郷さん。私はどっちの……」

 

「にー……いーち」

 

「結城ちゃん?」

 

「ぜろ」

 

「……ッ」

 

「ぜろ」

 

「……ん」

 

 仄かに朱色に染まる耳元に友奈が囁く。

 その姿に何かを察したのか、ゼロと囁く彼女にもう一人の友奈も続く。

 

「……ぜろ?」

 

「ぁ」

 

「ぜーろ」

 

「友奈ちゃん。それやめて……」

 

「ぜろぜろぜろ」

 

「ぁ、ぁ……」

 

 柔らかな手で少女の目を覆い、両耳に左右から囁きかける。

 ふぅ、と友奈が耳に吐息をして首を反らすと、高嶋がもう片方の耳に息を吹き掛ける。

 

「とーごーさん」

 

「「どっちが私?」」

 

「はぁぁぁん!!」

 

 ビクッと身体を震わせる少女に笑みを浮かべる少女たち。

 小刻みに痙攣する東郷はきゅっと脚を閉じると、恍惚な表情で鼻血を噴き出す。

 

「鼻血! 東郷さん、鼻血出ちゃってる!?」

 

「──。あら、本当ね」

 

 数秒ほど虚空を見つめていた彼女は指摘が入ると冷静に取り繕う。

 ティッシュで鼻を押さえる東郷の介抱を手伝う友奈ズの姿を見つめる。

 

「ところで結城ちゃん。ゼロって何の数字なの?」

 

「えっと……、あっ! ぐんちゃんも友奈でショーしよう?」

 

「ゆ、結城さん!?」

 

 高嶋の問いかけに逸らした眼差しが黒髪の少女を捉える。

 これ幸いとばかりに、明るい声音で話しかけられたぐんちゃん、もとい千景が驚きと指名を受けたことへの喜びを混ぜこぜにしたような表情を浮かべるのを見逃さなかった。

 

「ぐんちゃんには当てて欲しいなぁ」 

 

「高嶋さん……。任せて、必ず当てるわ……」

 

「ありがとー!」 

 

 友奈と瓜二つの少女の笑顔にコクコクと頷き返す千景。

 本日は長い髪の毛の一部を三つ編みにした彼女は友奈ズに囲まれて頬を緩める。クルクルと少女たちが回る中で、一瞬千景の黒色の瞳と視線が合うと彼女は僅かに口を開き、

 

「ぐんちゃん、目を閉じてね!」

 

「──え、ええ」

 

 肺の中の空気を抜くように薄い唇から呼気だけがこぼれる。

 友奈の柔らかい手に目元を包まれる千景の姿を見ながら、俺はおもむろに立ち上がる。

 

「じゃあ、どっちが……」

 

「『そうだ! せっかくだから、マッサージで判断して貰おうよ!』」

  

「!?」

 

 友奈の声帯模写を行うことは空気を吸うように簡単だ。

 遠巻きに眺めていた少女たちの目が見開かれるが何も口には出さない辺り、理解は早い。

 同じように共に時を過ごしてきた桜の似合う彼女は笑みを浮かべて首肯を見せる。

 

「うん! 疲れも取れて一石二鳥だね!」

 

「よーし! どじゃーんって感じでもみもみしちゃうねー」

 

「『がんばるぞー!』」

 

「はひゃぁん!? あっ、待ってたかひまさん……ゆうきさんも……」

 

 一人の友奈が目元を押さえながら、もう一方の友奈が千景を解す。

 少女のマッサージ技術はどんな人間も喘ぎ、昇天せざるを得ない至高の技だ。

 肩を揉み、頭皮を揉み、首筋を解し、肩甲骨付近を押し、腕を揉み、二人の友奈が交互に彼女の疲労を取ろうと奉仕するだけで千景の頬があっという間に緩み始める。

 

「もみもみー」

 

「もみもみー」

 

「ん……ぁっ……そこは……ゃめ」

 

 同年代の男が聞けば危うい気持ちになりかねない千景の喘ぎ声。

 彼氏や将来の男しか聞けないような官能的な声色に、本来ならば他の少女たちに追い出されているのかもしれないが、共に過ごした時と加賀亮之佑だからと許されている。

 あるいは諦観もあるのかもしれないが、誰かの邪魔もなく千景の背後でその嬌声を聴く。

 

「……ぁぁ」

 

「ぐんちゃん、ゲーム一杯してるから目元が疲れるもんね。一杯解しちゃうね!」

 

「んッ!」

 

 ぐっと指が制服越しに少女の肉を押す。

 溢れる快感に首を反らし、耐えられないように唇から声が漏れる。

 

 あまりの気持ち良さに記憶すら失う者がいるという友奈の絶技。

 もともと高嶋の方はそこまででも無かったらしいが、友奈の真似をしているうちに同レベルにまで昇華したというマッサージは千景に抵抗の一つも許さない。

 首を反らそうと背中を反らせようとも、等しく身体に快楽と疲労の低下を施す。

 

「ぐんちゃん、気持ちいい?」

 

「きもち……いいれす」

 

「良かったねー。それじゃあ、交代」

 

「も、もうだいじょうぶ……」

 

「お待たせ、ぐんちゃん。さっそく、もみもみー!」

 

「はぁぁ……!」

 

 友奈は別に本職の資格を取得している訳ではなかった筈だ。

 仮に取得していたとしても、ここまでの力を有しているのは何故なのか。

 

「愛よ。友奈ちゃんの愛が指先から伝わってきてるのよ!」

 

 真剣な表情で友奈たちを見守るのは大和撫子の少女。

 国を愛する彼女の言葉に首肯を見せる者も、それはおかしいとツッコむ者もいる中で、

 

「ぐんちゃんの肌ってとっても綺麗だね。頭皮もみもみー!」

 

「はひぁ……はひ……それらめぇ……」

 

「手足もすらっとしていてスタイルも良いよね! 勇者もみもみー!」

 

「ぁ……ぁー……」

 

 友奈の掌に包まれた少女の瞳は虚空を見ているのだろう。

 僅かに開いた唇を震わせて、昇天させ続けられる彼女の姿に部室の中の空気がジワリと熱を持つ。可憐な少女に身体を好き放題にされ嬌声を上げている千景をジッと見る者、脚を擦り合わせ頬を赤らめる者など、様々だが視線は一様に彼女たちに向けられる。

 

「ん……」

 

「……」

 

「友奈ちゃん。それくらいで……」

 

「ほえ? まだ終わってないからね! ちゃんと最後までやらないと!」

 

「ぁ、ぁっ、ぃっ……!」

 

 友奈のマッサージにより生まれる官能的な雰囲気。  

 チラチラと互いを見やる視線には僅かな熱を灯し始める少女たち。 

 

 その空気は少女たちの端末から鳴り響く警報音に破られた。

 

「……バーテックス!」

 

「そろそろ来るんじゃないかと思ってたけど……」

 

 樹海化警報。ハッと正気に戻ったように少女たちが口々に立ち上がる。

 頬を叩き気を引き締める彼女たちを余所に、解放された千景は荒い息で身体を震わせる。

 哀れな少女はふらふらと友奈たちから距離を取り、窓際に背中を預ける。

 白い頬を染める朱色と火照る身体が熱の行き先を失ったように少女の色気を醸し出す。

 

「……絶対に許さない。鏖殺するわ……」

 

 肉体とは裏腹に、その黒色の双眸は憎悪を宿している。 

 奥歯を噛み締めて、来る敵への苛立ちは高嶋との触れ合いが途中だったからか。

 何かしらフォローを入れようかと口を開くのと部室の扉が開くのは同時だった。

 

「待たせた! 乃木若葉、本日より戦線復帰する!」

 

 ガラリと扉を開け、少女たちの視線が金髪の少女に向けられる。

 吊り目、前髪パッツン姫カットの彼女はここ暫く背格好も性格も小さく子供のようだったが、中学生程度にまで戻っていた。

 背後に巫女を従えて見慣れた制服を着た少女が堂々と胸を張る。

 

「若葉ちゃん、おかえり!」

 

「凛々しい若葉ちゃんも素敵です」

 

「ご先祖様がおっきくなってる~」

 

「あぁ……。もう小さい若葉さんを見れないんですね……」

 

 直前までの空気は忘れられ、少女を受け入れるムードになる。

 勇者部の部長が犬吠埼風ならば、勇者としてのリーダーは乃木若葉だ。彼女がいるのといないのでは士気に関わるのだろう。そんな打算を抜きにしても彼女たちの喜びは大きかった。

 純粋で、素直で、優しい少女たちに若葉は囲まれる。

 

「──乃木さんは流石ね」

 

 その光景に卑屈な笑みを浮かべるのは千景だ。

 誰にでも慕われ、尊敬されて人気も高い。そんな若葉の有り様を羨ましいと感じている彼女の小声は隣にいた俺以外には届かない。

 羨望と嫉妬。僅かに暗い光を瞳に宿す彼女の腰にそっと手を添えるとビクッと震えた。

 

「ぁ……加賀くん?」

 

 背後に部室の壁、正面には少女たち。

 戦闘の為の樹海化が近づく僅かな時間に、俺は千景の臀部を撫でる。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

 制服のスカートの奥、黒色のタイツに包まれた内腿を手で這うと彼女がキッと睨みつける。

 熱の籠ったスカートの中は熱く、肢体は湿り気を帯びていた。

 

 慌てて口を噤んだ彼女は端正な顔を向けてくる。

 周囲の目を誤魔化す為になんでもないような表情を見せるも、背後で自らの恥部に伸びようとする手を掴もうと慌てて腕を伸ばす。

 

 はふ、と短く呼気を漏らす千景の身体は熱を帯びていた。 

 タイツ越しに少女の恥丘周辺を爪で擦るに留めて、そっと手を引っ込める。

 

「──先輩も魅力的ですよ」

 

「────」

 

「手を出しちゃうくらいに」

 

「……最低」

 

 男の視線から守るように自らを腕に抱く少女の瞳に暗い色は無い。

 スキンシップは効果があるのか、吊り上げていた眦を和らげる彼女は告げる。

 

「私も……」

 

「うん?」

 

「私も、あなたや乃木さんみたいに自分に自信が持てたらって。そう思っただけよ」

 

「────」

 

 別に自信がある訳ではない。

 どれだけ憧れても、憎み、嫌悪するほどに羨望を抱いても他人にはなれない。

 

 俺は加賀亮之佑という男にしかなれない。

 だからせめて、二度目の人生では死ぬまで後悔しないと大言を放つ自分を好きになれる、後から振り返って自分にも他人にも誇りに思える自分になるのだ。

 理想とする他人の姿を模倣出来ずとも、理想とする自分を目指すことは出来るから。

 

「……ありがとう」

 

 何も言えない自分にボソリと感謝の言葉を千景は呟く。

 長い睫毛に縁取られた目を伏せ、ふいっと端正な顔を僅かに背けていた彼女。

 

「あと……」

 

 樹海化の白光が世界を、部室を飲み込まんとする中でチラリと上目遣いをする千景が囁いた。

 

「……このあと、部屋に……きてくれる?」

 

 

 



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第十九話 誘いに応えて

嫌いなのと同じくらいに憧れて……好きだったという千景の最期の言葉
そして後になって曇る若葉ちゃん。いいよね


 樹海化が発生する直前、世界の時は止まる。

 神樹によって全ての時が止まり、樹海化時に街も人々も全てが木や根に変換される。それが元の世界での神樹の法則だったのだが、神樹が内包する世界では少し法則が変わる。

 

「……お茶をどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

 湯呑から立つ湯気から香ばしい香り。

 何度か息を吹き掛けて、恐る恐る口をつけるとほうじ茶の味。

 

「ひなたさんの入れたお茶は美味しいですね。心が和みますよ」

 

「あら、お上手ですね。ではこちらも……」

 

「これは?」

 

「以前受けた依頼者の方から勇者部の皆様へと、時々届く茶菓子です」

 

「ああ、また届いたんですか」

 

 勇者部はあくまでボランティア活動という名目の部活動だ。

 あくまで金銭を求めず、人が行おうとしないことを勇んで行う勇者の集まりの為、先方からの報酬などは基本的には部長である風が断りを入れる。

 だがそれでも断り切れず食材や菓子類などを感謝の気持ちとして受け取ることがある。

 

「食べて良いんですか?」

 

「ええ、あとで皆さんが帰ってきたらおやつに出そうと思ってまして」

 

 箱に入っていた菓子はチョコレートだった。

 葉や月などを模した高級感漂う菓子を一つ選び口に運ぶと広がる甘味と僅かな苦み。噛む前に舌の上で甘やかに溶けたチョコに仄かなラム酒の香りが鼻腔をくすぐる。 

 部室のメンバーには少し早そうな大人の味は、文句のつけようのない美味しさだ。

 

「いや、うちの美少女たちが文句を言う姿とか思いつかないけど」

 

「そうですね」

 

「ひなたさんも食べよう? 大人の味ですよ」

 

「私も先ほど一つ頂きましたから」

 

「……ひなたさんも食べよう? 一緒に食べるともっと美味しいよ」

 

「……では、もう一つ」

 

 慎ましくチョコ一つ分で満足したと告げる巫女に遠慮しないようにと勧める。

 チョコが嫌いなのかと思ったが、ひなたは白魚のような指先で細やかな装飾の施された茶色の菓子を一つ手に取り優雅に口に含むと頬を緩ませる。

 これが風ならば遠慮することなく空箱になるまで食べていただろうと考えながら見ていると、

 

「──美味しいですね」

 

 照れ笑いのようにはにかむ、スタイルの良い黒髪の巫女。

 西暦時代の勇者専属の巫女である上里ひなたと部室のテーブルで向かい合う。

 

 ──普通の人間には味わうことすら叶わない茶会の時間。

 本来ならば巫女であろうとも神樹に見初められた勇者以外の時間が止まる筈なのだが、この世界においては勇者と巫女に限りその制約から逃れることが出来るのだ。

 

 召喚されて戦えない事を知った時から始まった不思議な時間。

 勇者が戦いに行っている間、ただ待つことしか出来ない者だけの集い。

 寂寥に駆られ、焦りを飲み込み、己の無力を嘆き、傷を舐め合うかのように俺は巫女たちと時間を共にする。ある時はひなたと、ある時は亜耶と、ある時は巫女全員でと様々だ。

 

「若葉ちゃんは必ず帰ってくる。それを分かっているつもりなんです。それでも、ふとした時にどうしようもなく不安に駆られて、……こうして話をするだけでも気が紛れたりしますから。だから亮之佑さんには感謝しています」

 

「────」

 

「若葉ちゃんの前で不安そうな顔なんてしていられませんから」

 

 勇者を想う巫女のなんと健気なことか。

 不安を飲み込み、帰還する勇者たちを迎え入れる彼女はこの時間も大切だと告げる。巫女の仕事は戦闘中には無いが、それでも神樹の神託に耳を傾けて勇者を導く大事なお役目だ。

 人事を尽くして彼女たちの帰還を待つことがお役目の一つと言える。

 それに比べて──、

 

「俺は何なのって感じだけど」

 

「亮之佑さんの場合は神樹様がお認めになられたということではないのでしょうか」

 

 頬に手を当てて告げたひなたの言葉に力なく首を振る。  

 仮に神樹が認めたのならば、どうして勇者としての力を与えはしないのか。

 どうして、ただ見ているだけの存在に成り下がらなくてはならないのかと。

 

 どうして、どうして、どうしてと。

 そんな風に脳内で繰り返される疑問は何度目か。

 いつの間にか乾いた口内に甘さは残っておらず湯呑を傾けて温くなった茶を飲む。

 

「まあ、こうして女子会が出来るだけ良いのだけど」

 

「女子会……?」

 

「『ああ。ひなたとこうしてお茶をするのは楽しいからな』」

 

「若葉ちゃんボイス……! そういえば亮之佑さんは女装が趣味でしたね……。たまに結城さんや園子さんに変装して部室に来るほどに」

 

「可愛い子に変装するのって萌えなんですよ。一人だけ男子がいるよりは目立たないかなって」

 

「確かに目立たないかもしれないですが、それはそれで良いんですか?」

 

 決して女装が趣味という訳ではない。嗜む程度の物である。

 とある事情から女装を始めとした変装技能を本気で磨く必要があっただけなのだ。うっかり他人を惚れさせる程度には加賀亮之佑と同一人物であるという認識をさせないように努力しただけ。

 

「演じるのは得意なんだ」

 

 おっとりとした表情の少女は小首を傾げる。

 制服越しに主張する豊かな双丘は東郷にも劣らない。

 

 姿勢良く椅子に座る彼女は優雅に湯呑を傾ける。

 白い喉を覗かせ、上品に味を楽しむ少女を見ている間は静寂が広がる。数十名を抱えている筈の勇者部部室は俺と彼女以外に誰もおらず、数分前まで少女たちがいた痕跡はない。

 

「……女子会と呼ぶには二人きりですね」

 

「亜耶さんたちも買い出しの途中でしたからね」

 

 勇者部に所属する勇者は俺を除いて全員が戦闘中だ。

 以前は園子も巫女たちと同じく居残り組だったが現在は戦線に復帰している。ふわふわとした言葉と表情と身体で俺の心を和ませていた金髪令嬢の姿もなく、黒髪美人の巫女と居残りだ。

 なんとなしに見つめ合うと、眼前の巫女が小首を傾げる。

 

「……もしかしてこのまま私も襲われるんですか?」

 

「同意も見境もなしに襲ったりはしませんよ。……それとも、食べてしまっていいんですか?」

 

 少女の背丈は並んでみると意外にも小さいものだ。

 普段から若葉を尻に敷いている女房兼保護者のような存在も一人の乙女。神樹に見初められるだけのことはある端麗な小顔、その顎を指で持ち上げると白い頬が仄かに朱色に染まる。

 見つめ合い、そっと目を逸らした少女は俺の手首を掴み、ゆるりと首を振る。

 

「……冗談ですよ」

 

「そうですか。……ところで、私もというのは?」

 

「亮之佑さんがあのお役目を始めてから千景さんの態度が随分と変わりましたから。最初の頃は……その、特に亮之佑さんへの当たりが冷たかったので」

 

「ああ……昔は尖ってましたね。この前その頃の動画を見せたら凄く狼狽えてましたよ」

 

「あの、そういうことをされるのは……」

 

「冗談ですよ」

 

「……あまり揶揄うと怒りますよ」

 

 この世界に召喚されて出会った勇者の中で千景が一番男への警戒度が高かった。

 勇者になれるのか曖昧な異性の存在というのは彼女の中では胡散臭さや不信感を抱くには十分だったのか。友奈のフォローがあったとはいえ、当時の彼女との距離は非常に遠いものだった。

 

「その、千景さんの場合は少しご家庭の環境のこともあるでしょうから」

 

「気にしてませんよ。……人間って精神的な余裕が無いと周りを見ることも出来ないですから」

 

 環境というものはどうしようもないことの一つだ。

 親の性格、周囲の人間、暮らしている町の環境は変えることは難しい。

 自分がいくら変わろうと決意しても、周囲が脚を引っ張り貶めようとするから。考えることを抑制されて、戦おうにも周囲は敵だらけで、そんな状況下で力もない子供に何が出来るだろうか。 

 

 その点で言えば、俺が転生した先は最高の環境だった。

 経済的にも血筋的にも恵まれた家庭環境、好きな習い事を受けさせてくれる偉大な両親。

 友奈や園子を始めとした、他人に対して優しい人々が傍にいてくれた。

 神樹はともかく、西暦とは違い他人に対して優しい宗教国家で本当に良かった。

 

「もう一度あの世界に転生したら死んでたかも」

 

「てんせい?」

 

「独り言です。……そんなに分かりやすかったですか?」

 

「ええ、それはもう。女性はそういうのに敏感ですから勇者部の大半は察していますよ」

 

「そ、そうですか」

 

「ええ、本当に分かりやすいですから。例えば──」

 

「例えば?」

 

「──若葉ちゃんとか」

 

「────」 

 

 にこりと笑みを浮かべた巫女と視線を絡み合わせる。

 身長はやや低いひなたは顔を上げて、俺は見下ろして互いの顔を見合う。

  

「──、幼馴染ですもんね」

 

「親友ですから、ちょっとしたことでもすぐ分かるんです。若葉ちゃんって嘘が下手ですから。隠そうと必死になってチラチラと私を見るのが可愛いんですよ。……全部バレバレですのにね」

 

 俺の手を握り締める少女がにこりと微笑む。

 遠い戦場、今も戦っているであろう幼馴染に思いを馳せるかのように視線を虚空に向ける。その視線がゆっくりと下へと下がり、やがて俺の顔へとジッと向けられる。

 混ぜ合わさった感情が耐えきれないように巫女が俺を見つめる瞳を揺らす。

 

「怒ってませんよ」

 

 少女の笑みは穏やかで、しかし有無を言わせぬ圧があった。

 保護者気取りなのか、独占欲なのか、嫉妬なのか、俺の手を握る彼女の手は力強い。

 そのまま手首でもへし折らんとする彼女の手を押さえながら俺は必死に頭を回す。

 

「そ、そういえば、ひなたさんは若葉の写真とか撮ってましたよね」

 

「ええ、若葉ちゃんの写真なら、それはもう二十四時間撮り続けていたいくらいに」

 

「ほう」

 

「そんなこと、亮之佑さんなら知っている筈ですよね。もう数年の付き合いですし」

 

「……まあ、お察しの通り俺と若葉はもうエッチな治療をして……いたいいたい!! 手が取れる! 取れちゃう! 勇者の治療行為はひなたさんもしているんですよね? で、でもあんまり上手くいかなかったと」

 

「……まあ、そうですが。若葉ちゃんが言ったんですね。若葉ちゃんってばもう……あとで──」

 

 力強く手を握りブツブツと何かを呟くひなたを見ながら、空いた手で携帯端末を取り出す。

 電源を点けて、中にあるデータを検索して、とある少女との治療の画像を呼び出し、見せる。

 

「────」

 

 少女が息を呑むのが分かった。

 喉を鳴らし、ジッと視線を携帯端末に向ける少女に話しかける。

 

「若葉の治療をした時の画像を1枚だけプレゼントします」

 

 目の前の少女が親愛を捧げる少女の画像。

 俺が彼女を治療した時の、この部室内で本人から同意を得て撮った淫らな画像。長い髪の毛を振り乱し、汗を鎖骨に伝わせて、半脱ぎのブラウスと赤らんだ肌や蕩けた表情が情事を想像させる。

 乳房よりも上部分のみが映った若葉の画像をひなたは食い入るように見つめている。

 

「それあげますので、平にご容赦を」

 

「────」

 

 俺の言葉など耳に入らないと言うかのように、しかし手首を掴む力が和らぐ。

 さらりと肩から黒髪を流し、大きな瞳で親友の痴態を見る彼女は何を思うのか。

 

「……だけですか?」

 

「あ?」

 

「一枚だけですか? 撮ったのは」

 

 そっと手首から手を放した彼女は上目遣いで俺に尋ねる。

 薄い唇から熱い吐息を漏らすひなたは曖昧な笑みを浮かべる。

 怒気も喜びも含んだような不思議な微笑に俺は動じることなく笑みを返す。そっと腕を掴んでいた少女の手を外すとゆっくりとテーブルを回り込み、ひなたに近づく。

 携帯端末の画面をスライドさせて、彼女に見せる。

 

「ほら、これとかも個人的にお気に入りなんですよ」

 

「……!」

 

 ひなたが息を呑むような写真を幾つか見せる。

 巫女が何を言おうとも、若葉本人から許可を取った官能的な写真だ。

 半脱ぎの少女が床に組み伏せられて肉棒で貫かれたり、乳房も陰毛も乙女の大事な物を晒して、正常位でトロトロになるまでディープキスをして性行為に励む写真。

 

 華奢な巫女の隣に座り、一枚一枚丁寧に誰も知らない勇者の痴態を見せていく。

 宝物と呼ぶべき画像をこうして誰かと共有するのは初めてだった。ひなたの肩を抱き寄せて、ふわりと甘い香りを漂わせる彼女と顔を近づけて、ひそひそと小さな声で話を続ける。

 

「ひなたさんもこういう写真持ってるなら見せて下さいよ」

 

「わ、若葉ちゃんはこういう写真は嫌がって撮らせてくれなくて。あんまり……」

 

「ちなみにひなたさんだけですからね。こういう写真を見せたのは。これとかどうですか」

 

「そ、そうですね……。これなんかが一番トロトロ若葉ちゃんで良いですね」

 

「じゃあ、それをあげましょう」

 

「……ありがとうございます」

 

 怒気を鎮め、僅かな戸惑いよりも好奇心が勝ったのか、俺のコレクションに目を向ける少女。

 白い肌を朱色に染めながらも、ジッと若葉の痴態から目を離さない姿に頬が緩む。

 切り替えの早い彼女は何も告げず、ただ無言のままに若葉の画像を自らの端末に収める。

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

「……頂けるのは一枚だけですか?」

 

「他のも欲しいんですか? ん~、撮るの大変だったからなぁ。残りはトレードにしましょう」

 

「と、トレード?」

 

「本当にこういう写真を見せるのってひなたさんが初めてですから。だから特別ですよ」

 

「はあ。それでどんな写真を……?」

 

 少女との性行為をした証を誰かに見せることはまず無い。

 本来ならば撮影をした本人に見せて盛り上がるか一人で盛り上がる為の物だから。しかし、不思議なことに今日は茶飲みの仲であるひなたの言葉に応じようと思った。

 

「せっかくだから、ひなたさんの写真とか欲しいなぁ」

 

「わ、私のですか?」

 

「そうそう」

 

「……亮之佑さんのことですから、エッチなのですか?」

 

「そうであっても、そうじゃなくても良いですよ。ひなたさん美人だから目の保養になるから」

 

「分かりました」

 

「あとは若葉とのエッチな写真でも……おっと?」

 

「二人なら若葉ちゃんの裏アルバムも充実していくと思うんです」

 

「はあ」

 

「あと、参考までに若葉ちゃんとのえ、エッチな事とか聞かせて頂いてもいいでしょうか。私だって若葉ちゃんをあんな風にトロトロに気持ち良くさせたいんです!」

 

「あ、はい」

 

 腕で己の豊満な身体を抱き、半眼で俺を見ながらも、即決で承諾するひなた。

 若葉の写真を収めたアルバムを作りたいからか、或いは別の思惑があるのか。グイグイと顔を近づけてくる彼女の思考は官能的な未来に目を向けているようだった。

 

「なら、話だけではなくて実践の方が力が付きますよ。今なら無料で教えますよ」

 

「そ、そういうのは心の準備が出来てからで……。それにもう少し自力で頑張りたいので……」

 

 

 

 ひなたとの話の直後に戦いが終わったらしい。

 戦闘が終了したかどうかも巫女には分かるらしく、慌てたようにひなたが距離を取ると勇者部の部室に人が現れた。元の世界のように神樹を祀る場所限定ではなく、樹海化前にいた場所を指定して戻ってくることが出来るようになったのはこの世界特有の現象の一つだ。

 

「ただいまのハグー!」

 

「おかえり」

 

「うん!」

 

 ぎゅうっと抱擁する友奈は満面の笑みを浮かべている。

 身体に傷などなく、問題なかったと告げる彼女を抱き返す。

 

「若葉ちゃんも、おかえりなさい」

 

「ああ、ただいま。亮之佑に変なことはされなかったか?」

 

「いえ、何も。とても紳士的でしたよ。ねえ、亮之佑さん」

 

「そうですね」

 

 夫婦のように自然と抱擁し合う若葉とひなた。

 背格好の見慣れた風雲児の背中に目を向けながらも園子や東郷、勇者部のメンバーを抱きしめたり話しかけたりする。戦いから戻った勇者に対して、俺はいつもそうしている。

 

「皆さん、美味しいチョコがあるんですよ。おやつにどうぞ」

 

「……それはぼた餅よりも美味しいということですか」

 

「東郷、張り合おうとしないの」

 

 静寂など無かったかのように騒々しくなる部室。

 非日常を知っているからこそ、全力で日常を送ろうとする少女たち。

 

 本来ならばバーテックスとの戦闘があろうとも部活の依頼を行うのだが、本日は特に依頼もなく、自然と解散することになった。

 

「今日はこの後に東郷さんとデートするんだ」

 

「友奈ちゃんとデート……デート……!」

 

「わっしー、鼻血出てるよ~」

 

 世界を守る勇者とて少女たち。

 ずっと男とイチャイチャしている訳でもなく、女友達同士でショッピングに向かうこともある。

 

 彼女たちを見送って、俺が向かう先は寄宿舎だ。

 若葉や亜耶といった彼女たちが寝泊りしている場所は何度も訪れたことがある。

 

 世界を守る勇者や巫女のいる居場所としてはそこそこ豪華な場所。

 掃除の行き届いた廊下を歩くも、誰ともすれ違うことなく目的の場所に辿り着いた。

 

「──遅いわ、加賀くん」

 

 ノックをする前に扉が開かれる。

 長い黒髪をなびかせる制服姿の少女に手を引かれる。

 

 パタンと閉じた扉。

 電気を点けていないのか薄暗い部屋で、向かい合う少女の荒い呼気。

 

 目を閉じた端麗な千景の顔が近づく。

 壁に押し付けられ、目の前に迫る少女は薄暗い部屋でも分かる程に赤面している。

 

「その……」

 

 モジモジと黒いタイツを擦り合わせる少女は勢いに乗り切れなかったのか、身体ごと壁に俺を押し付けるも、その後の行動が思いつかないのか目を左右に泳がせていた。

 肩を掴んでいた手を握ると、助けを求めるような顔の少女に囁く。

 

「全部見せてくれる気になったんですか、先輩?」

 

「……」

 

 僅かに俯いた顔は数秒ほど経て、再度俺を見上げる。

 返す言葉は無く、ただ恋人のように指を絡めると爪先を伸ばした。

 

「ん──」

 

 唇が重なる。

 千景からするキスというのは珍しく、甘く柔らかい唇を押し付けてくる彼女を抱きしめる。静かに腕を背中に回す彼女は甘えるように身体を押し付けると唇を僅かに離した。

 

 味わうように舌が唇を舐める。

 

「キスって……甘いのね」

 

「────」

 

 上目遣いで呟いた千景の唇を、今度は俺が奪うことにした。

 

 

 



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第二十話 傷跡

 電気の点いていない薄暗い部屋。

 視界に制限の掛かる中、抱き寄せた少女の香りをいつもより濃く感じる。

 華奢な身体はキチンと食事をしているのかと心配になる、そんな少女の身体。

 

「んむッ──」

 

 奪った唇はしっとりと濡れており、仄かに甘いチョコとラム酒の香り。

 千景もひなたに勧められてチョコ菓子を口にしたのだろう。

 触れた頬は掌に収まり、柔らかな肌の感触と僅かに高めの体温が、胸に抱いた少女の存在を主張している。背中に預けた扉が僅かに軋む音を聞きながら、少女との口腔行為を愉しむ。

 

「ふっ、んッ、んぅ………!」

 

 呼吸の仕方が分からないようにときおり鼻息を荒くする千景。

 緊張したように唇を硬くする少女はやがて観念したように俺の舌を受け入れる。彼女から求めてくる稚拙ながらも優しいキスと強引で情熱的なキスを交互に繰り返し、舌と舌が絡み合う。

 

 ちゅ、ちゅぷ、と水音が部屋に響く。

 交換した唾液を小さく嚥下した彼女の眼差しがトロンと酩酊したように瞬きを繰り返す。

 その頃には剛直がズボン越しに主張し、抱き寄せた彼女の腹部を擦っていた。肉棒の存在を悟った千景が恥ずかしげに顔を背けると同時に、俺の片手が少女の臀部へと向かう。

 

「ぁ……ッ!」

 

 スカートを捲り上げ、黒タイツ越しに丸みを帯びた尻肉を撫でる。

 つやつやとした化学繊維の存在に思わず爪を立てると葡萄の皮のように引き裂く。

 その行為に身じろぎする千景の手が抗議するように俺の肩を強く握った。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「ん?」

 

「あなたがそうやって破くから替えが……ッ!」

 

 皮から覗いた白い肉と薄手のショーツは柔らかな手触りと淫靡な熱を持っていた。

 しっとりと汗ばんだ肌を指の腹でなぞり、抗議の声を上げる千景の恥部を下着越しに這うと爪先立ちになった。スカートの中で既に湿り気を帯びているショーツ越しに貝肉を弄ぶ。

 あ、あ、とパクパクと開閉する少女の上唇と下唇の間で唾液が糸を繋ぐ。

 

「なに?」

 

「だ、だからっ、こういうことをする度に破くのはひゃめへっ……んんッ!!」

 

 スカートの奥で指を動かすと千景の胸が俺の胸板にむにっと当たる。

 柔らかな下着越しに媚肉を指でもてなすと、少女は嬌声を上げて腰を引かせる。ゆっくりと上下に摩ると薄布から滲む淫液が潤滑油となって指を滑らせる。

 タイツではない、もちもちとした柔肌は触り甲斐があり、千景の頬が熱を帯びる。

 

「タイツって破く為にあると思うんだ。素足の方がエッチだし」

 

「そんな訳……ないでしょ。それに……素足はちょっと」

 

「弁償はあとでするから」

 

「んっ」

 

 まるで無理矢理犯すかのようにタイツを破いた男の言葉に半眼を向ける年上の少女。

 スカートの奥に隠れた柔肉を下着越しに指で触れると、彼女は軽く頭を振った。

 

「……ぁ、ぁ」

 

 誤魔化したことに追及はなく、少女の口からは喘ぎ声が漏れる。

 色も装飾も見ることの出来ないショーツ越しに滲む蜜液を指に絡ませて秘裂を擦る。

 

「っ……!」

 

 染みになった部分を指で押し上げると、千景は腿を擦り合わせる。

 淫熱の籠るスカート内で好き放題に指の腹で弄ると薄布越しに愛液が奥から溢れた。

 

「ゃ、ぁ」

 

 踵を浮かせて首を振る少女の唇を追いかける。

 追いつける程度に身じろぎする千景との口づけは唇が歯に当たるほどに強いキス、だが少女の少しだけ素直になった舌が明確に快楽を求めて動く。

 吸って、舐めて、甘噛みする間も、俺の指は下着越しの陰核を探る。

 

「キス、好き?」

 

「……ん」

 

 しなだれかかるように身体を俺に預ける千景。

 呼吸は熱く、目は虚ろと、迫る快感を受け入れようとしている。

 

 抱擁をねだるように背中に回した腕に、きつく彼女を抱いて応える。

 しがみつく彼女の、その唇を貪りながら指が肉芽を探り当てる。

 ──あとは簡単だった。

 

「ぅっ、ひぅっ! ……ぁっ、ぁ!」

 

 すりすりと下着越しに指の腹で擦るのが気に入ったらしい。

 千景の腰が俺から逃げるように揺れるのを気にすることなく、秘裂と肉芽をちゅぷちゅぷと水音を聞かせて指の腹で擦ると、ぴんと背筋が伸びる。

 絶頂が近いことを察した千景の顔が、端正な小顔が歪む瞬間を見届ける。

 

「ぁ、ゃ、くっ……!! ぁぁぁっっ!!!」

 

 下着を濡らす蜜が溢れ、手を挟む腿を伝う。

 千景は静かに立ったまま絶頂に浸り、小刻みに震えて、呆けたような顔を見せる。

 

「ハァ……ハァ………、はぁー……」

 

 荒い呼吸の少女が落ち着くのを待つ。

 ガクガクと膝を笑わせる少女を支えると彼女の吐息が胸板に掛かる。

 

「────」

 

「…………」

 

「──ぁ」

 

 すっかり上気していた千景の顔。

 彼女は慌てたように口端を伝った唾液を手で拭い、必死に表情を取り繕う。

 絶頂に達した時の雌臭も呆けた顔も既に晒した事を忘れようとするように目を伏せる。

 

「ち、ちがっ、今のはそういうのじゃ……」

 

「どういうの?」

 

「その……、あの…………言わせないで」

 

 顎を持ち上げて端正な顔を見つめる。

 頬を赤らめた少女の濡れた唇を奪うと、ゆっくりと彼女から舌を絡めてくる。

 力の抜けた身体を預けて、舌を絡め取り、吸いつき、甘えるように口腔を交わす。

 

「……」

 

 唇を離すと唾液の橋が架かり、千景は目を逸らす。

 気恥ずかしいのか、胸を重ねる彼女の鼓動は強く脈打っている。 

 

 千景の髪に鼻を突っ込むと汗と少女特有の香りが思考を蕩けさせる。

 そもそも、いつまで扉を背中にし続けるのかと彼女を連れてベッドに向かう。ゲームが多数用意された部屋は普段よりも片付けられているように感じる。

 もしもこの触れ合いを楽しみにしていたのではと思うと微笑ましく感じる。

 

 おぼつかない足取りの千景を寝台に座らせる。

 そのまま臙脂色のカーディガンとスクールブレザーを脱がせると、ブラウス姿の少女になる。

 

「はい、ぬぎぬぎしようね~」

 

「ま、待って……」

 

「ぐんちゃん先輩を裸に剥いてやるんよ~」

 

「だ、だめっ」

 

 言葉とは裏腹に抵抗の意思はない。

 ブラウスのボタンを一つ一つ外していくと白い鎖骨が覗く。

 手を握ろうとする少女の僅かな妨害を回避して三つ目のボタンを外すとブラジャーが姿を見せる。汗ばんでおりブラウス越しに透けていたブラはリボンの付いた薄ピンク色と可愛らしい。

 

「自分で買ったの?」

 

「高嶋さんが選んでくれたの。……可愛いでしょ?」

 

 ブラウスを寄せて肌を隠す彼女は恥ずかしげに、誇らしげに呟く。

 

「下着買いにいったんだ」

 

「ええ」

 

「高嶋さんにはどんなの買ったの?」

 

「それは……秘密よ」

 

「ふーん。もっと見たいなぁ~、隠さないで欲しいなぁ~」

 

 俺の手は自らを抱く少女の腕の間を通り、小山の頂を目指し、舐めるように下山する。片方の山を登山すると、下山させようとする腕の隙を潜り脇腹を撫でるとビクッと小さく肩を跳ねさせる。

 ブラ越しの乳房を手で触れながら緩急をつけて脇腹をくすぐるだけのスキンシップ。

 千景との攻防は数分ほど続き、やがて含むように笑う彼女は呟く。

 

「……わ、分かった、から」

 

 いったい、何が分かったというのか。

 唇を小さく噛むと、チラリと俺に視線を向ける。くしゃりとブラウスに皺を寄せるように己を抱いていた彼女は半眼で俺を睨みつけると覚悟を決めたように言葉の意味を示した。

 

「……」

 

 呼気に羞恥を混ぜた少女は寝台に座ったまま自らの衣服に手を伸ばす。

 制服のスカートを下ろすと、まるで強姦されたかのように破けた黒タイツと薄ピンク色のショーツがチラリと姿を現す。

 裸ワイシャツのような恰好は男の視線を惹きつけ、少女の肌の朱色が色濃くなった。

 

 眼前で繰り広げられる千景のストリップは止まらない。

 一瞬、自らのショーツを隠そうとする手は、そのまま黒タイツを掴む。

 

「ん」

 

 腰を浮かせてタイツに手をかけ、慣れた様子でするすると下げていく。

 千景の脱衣を手伝い薄い黒皮を脱がすと、白い腿とピンクの布切れ、白い腰が露わになる。

 

 自らブラウスに下着のみという恰好になった千景は煽情的な姿だ。

 裾を引っ張って股を隠そうとするが、中途半端に布地は足りていない。

 すらりと伸びた生足を晒す少女の恥部を隠す下着は湿り気を帯びて濃い色をしていた。

 

「下から脱ぐんですね」

 

「ぁ、あんまり……見ないで……」

 

 自らの身体に視線を惹きつけながら、それを否定する言葉を放つ少女。

 首まで赤くしながら、しかし勇者らしくブラウスの残りのボタンを一つ一つ外した。

 

 やがてブラウスがベッドに落ちて広がるが目を向けることはない。

 下着のみで肌を見せる千景という存在に目を離すことは出来なかった。

 

「………どう」

 

 小さな声、鈴音のような声で囁く千景。

 白い手を胸元に、下着に包まれた乳房の上付近を指で隠している。

 

 彼女の言葉の意味を掴みかねて瞬きする俺に何を思ったのか。

 ゆっくりと区切るように震える声音で下着姿を、──否、肌を見せる千景は言葉を紡ぐ。

 

「……どうですか。私の、身体」

 

「────」

 

 僅かに震え声の彼女が腕を下ろし、白い傷跡を見つける。

 鎖骨と乳房の間付近の、耳の傷と同じ切り傷のような跡が少女の肌に残っていた。

 

 処女雪の肌に映える黒髪を肩から流す千景は悲哀の表情を浮かべていた。

 肌を晒した男に、傷物であることを罵られるのか、揶揄されるのか。

 それを怖がるように、長い睫毛に縁取られた目を伏せて、ジッと俺の言葉を待つ。呼気一つ、仕草一つ逃さないように黒曜石のような瞳が揺れながらも俺を見据えて、

 

「エッチだ」

 

「──は」

 

 俺の言葉を脳内で反芻したのか、目を泳がせる少女。

 望んでいた言葉ではない、予想外の言葉だったのか咄嗟に己の身体を腕で抱く。

 

「へ」

 

 乳房を包むピンク色の下着。

 程よく引き締まった腹部とくびれのある白い腰肉が彼女の女を強調する。

 すらりと伸びた太腿に透明な滴が伝い、丸みを帯びた尻肉をショーツが包む。

 

 制服やタイツといった果皮を剥いて現れた女体という果実。 

 彼女との行為は中途半端に衣服を纏った状態で行うことが多かったが、

 

「もっと早くに剥いておくんだった」

 

「ひゃあっ!?」

  

 彼女からの言葉や行動よりも先に動く。

 ふかふかのベッドに半裸の少女を押し倒し、少女の傷跡に口づけをする。ピンクのブラごと乳房を揉みながらカップ部分から覗く傷跡に唇で吸い付き、舌で舐める。

 

「ぁ……! ゃ、ぁ……そうじゃ、なくて──」

 

「千景の身体は綺麗だよ。変なところも醜いところもない」

 

「ぁんっ!」

 

 セクハラでもするかのように下着ごと乳房を掴むと少女の身体がくねる。

 何かを言いたげだった少女の口から甘い吐息を漏らして今度は耳を赤らめる。

 

 甘い呼気が自らの官能を高める彼女の肌を抱く。

 汗の滲む背中を指で這うと、んぅ、と背筋を反らす少女のブラホックを外す。

 

「っ」

 

 下着の拘束が外れたことを察知して強張る身体。

 しかし、少女は背中に手を回し自らの下着に触れると慣れた様子で脱ぐ。

 白い乳房が露わになった。

 

 女の吐息を漏らす千景の乳房は決して大きくはない。

 肉棒を挟むことは難しいだろうが、しかし存在感のある美乳を一口頬張る。

 

 傷になど目もくれない。

 

「ひぅ……ぁぁ……」

 

 嬌声はあれども抵抗はない。

 乳肉は柔らかく、コーラルピンクの乳首は虐めて欲しいかのように硬さを帯びている。

 正直な千景の身体の望み通り俺は赤子のように、しかし下品に乳房に吸い付く。

 

「ふ、くぅ……!!」

 

 コリコリと舌先で乳首を舐り、乳を掌で揉む。

 呻く千景は喘ぎ、少し乱暴に乳首を舌の上で転がす。

 

「っ……ぁ、ぁ、あ!」

 

 プリンのような食感の乳肉とあまじょっぱい果実。

 授乳させられる千景が俺の頭を掴むも、力の抜けた手では引き剝がすことも叶わない。

 ただ、肌を晒した男に喘がされ、喜悦に導かれ、余すことなく捕食されるだけだ。

 

 乳房全体に唇をつけて歯形を立てる。

 もう片方の乳房も余すことなく唾液に濡らすように千景を味わう。

 

「ゃ、め……!」

 

 引っ張ると元の形に戻ろうとする弾力性。

 揺れる美乳に飽きることなく吸い付き、噛みつき、千景に悩ましい喘ぎを上げさせる。

 ときおりビクッと身体を硬直させて小刻みに震えるのを無視して捕食を続ける。

 

「そこ……ッ、ばかり……!」

 

 左右の乳肉を堪能していると千景の荒い吐息。

 蕩けたような表情の彼女の身体からは力が抜け、少女の腕を持つと容易く持ち上がる。白い腕の付け根には滑らかな窪み、手入れがされているのか或いは生えていないのか。

 疑問の投げかける訳でもなく少女の腋に顔を近づけると千景は何かを悟ったのか、「いやっ」と口にするも、

 

「あッ!!」

 

 千景の腋は甘くも塩辛かった。

 汗が溜まっていたのかむわりと淫臭を漂わせたそこは一種の性器のように独特の柔らかさで俺を迎え入れる。

 必死に腕を下ろそうとする彼女の手首を掴み、窪地に舌を這わせながら空いた手で乳房を弄る。

 

「そんな、とこ……っ、きたなっ……! ふぅん! ……ッ!」

 

「あまじょっぱいよ」

 

「やらっ、やぁっ……またッ、~~~~ッ!!」

 

 唾液と歯形で汚された美乳は捏ね繰り回されてパン生地のように柔らかい。

 従順に男の手に合わせて形を変え、千景の口から心地よい喘ぎを聞かせる楽器だ。口で腋肉を、手で乳房を、ズボンを脱いで露出させた怒張で腹肉を擦りながら千景という楽器を奏でる。

 密着する中で、俺の肩を掴むと身体を震わせて何度目かの絶頂に彼女が達した。

 

「ぁ……、ぁー……」

 

 呆けた顔で虚空を見つめる瞳。

 身体の至る所を味わい、唾液で汚した口を放すと、少女に肉竿を見せつける。

 

「……!」

 

 少女の瞳が怒張を認識し、まじまじと見つめる。

 意識が法悦から戻ってくる前に、猛る肉竿を千景の手に握らせる。

 

 これから自分の膣内に何が入るのかを教えると、法悦の余韻に浸ったままの千景は白魚のような細く冷たい指を怒張に絡める。

 少女の淫臭に堪え切れないように先端から溢れる涎を絡ませて、ゆっくりと上下に動かす。

 

「こんなに……おっきくて硬いのね……」

 

 ボソリと呟く千景は半眼を肉棒に向ける。

 根本から雁までをどこか乱雑に手でしごく彼女はあまり躊躇いが無い。

 

「その……、ゲームとかネットで見たから」

 

「エロゲーか」

 

「エロゲーを馬鹿にしないで。エロがいらないと言われる名作だっていっぱいあるから」

 

「……」

 

「勉強にもなるわ」

 

 耳年増だったのか、或いは行為後に勉強したのか。

 早口でゲームを説く彼女の指が竿肉に滑らせる快感は甘くも理性を削る。開き直ったのか、羞恥の限界点に達したのか、俺の表情を見て怒張を扱く千景はどこか暗い笑みを浮かべる。

 

「……ふぅん。これが気持ちいいのね……」

 

 自らを女にしたグロテスクな肉棒を顔を赤らめながら奉仕する彼女。

 目を細める千景はこれまで散々気持ち良くされたことへの感謝への気持ちを示したいのか。実物の肉棒を手で扱くことへの嫌悪感や羞恥心よりも眼前の男にも羞恥を抱かせたいという加虐心に染まった笑みを浮かべた。

 

「ククク……これがいいのね」

 

 デスクイーン千景の降臨である。

 

「……ッ」

 

 クイーンによる知識だけはあるが丁寧というほど繊細ではない手つき。

 羞恥心を誤魔化すように力強く肉棒を扱き、それが射精感を高ぶらせる。 

 

 彼女のこの姿を写真に収めたくなるが怒りだしそうなので自重しながらも、少女の肌を隠す最後の布切れに手を伸ばす。薄ピンク色のショーツはクロッチ部分を濃く染めており愛液を滲ませる。

 下着を脱がせると秘裂との間を透明な糸が繋ぎ、媚肉が露わになる。

 

 黒色の陰毛は薄く、滴が淫靡に光る。

 愛液をショーツに滴らせる媚肉は濡れそぼり、陰唇が僅かに口を開けている。

 

 指を挿入して気持ちの良い場所で指を曲げる。

 

「ぷえ……?」

 

 彼女の反撃を鎮めるように肉芽にも手を添えて。

 

「んぁ、ひ、ぁぁぁっっ……!」

 

 彼女の弱点であるクリトリスは包皮を剥かれて指の腹で擦られる。

 奥から溢れる蜜液を潤滑油に、彼女が悦んでいた膣襞を同時に触れると、蜜が噴く。

 

「ふくっ、ぁっ……ンっ、ぁぁ!!」

 

 思わず肉棒から手を放して俺の腕を掴むと同時に腰を浮かせる。

 指を挿入した膣が蠕動する中で、俺は気にせず指で媚肉をかき混ぜる。

 

「や!! ぁ、ま、まって……ィッッ!!」

 

 恥毛から覗くクリトリスを指の腹で擦る。

 媚肉の奥からしとどに溢れる愛液で濡れた指を曲げて手近な膣壁を擦る。

 

「まって! まっへ! あっ、んぅぅ……!!」

 

 小刻みに身体を震わせて、容易く絶頂に達する千景。

 彼女が戻る前に更に法悦に浸らせていくと大きな瞳から涙をこぼした。

 切羽詰まった形相で俺の腕を掴み、締まる膣肉を弄る指の動きを止めてくれと嫌々と首を振る。ベッドの上でシーツに皺を寄せる脚が伸びては曲げられる。

 

「今っ、だめ……らから……本当に……やめてくらひゃい」

 

「……分かったよ」

 

 ポロポロと涙を浮かべる少女に笑みを浮かべる。

 閉じそうになった脚を開かせて、媚肉に怒張の先端を宛がう。

 

「え……?」

 

 一息に貫くと、射精寸前の肉竿をぎゅむっと膣襞が包み込む。

 子種をせびるように蠕動する中で、圧し掛かるように抱く俺を千景は、

 

「ぁ、ぁああああっ!!!」

 

 シーツをぎゅうっと掴み、悲鳴のような嬌声を上げた。

 唇を噛み締めて、腹と腹を、胸板に胸を押し潰しながら正常位で彼女を抱く。

 吐精寸前の剛直は痛いほどに反り立ち、臍側の膣襞をぞりぞりとこすった。

 

「ぅぁ、ぁ、あっ!」

 

 獣のように腰を揺すると、にちゅにちゅと下品な水音と共に結合部が泡立つ。

 安堵した隙をついて恍惚に溺れた彼女は俺を押しのけることも出来ずに喘がされる。

 

「んんッ、んぁ、アっ、ぁあ……ッッ!!」

 

 両手首を手で拘束し、無心で腰を振った。

 一突き一突き思いを込めて千景を貫く。より深く。より気持ち良くなるように。

 

「ぁっ! ぁ、ぁ! ぁん!」

 

 全身を擦り合わせて、耳元で千景の甘い喘ぎを聞く。

 奥の奥まで雁を挿入して、膣襞をこするように引き抜くと結合部から蜜を噴き出す。たん、たんとピストンを繰り返す度に千景の太腿が腰に回りぎゅっと締まる。

 

「いぁっ! いっ! いくッ!!」

 

 激しい抽送の中で全身で抱き着く千景は無意識に雄を受け入れる。

 深く肉竿を受け止めて、口端から涎を垂らして、涙声で乱れ続ける。

 

 

「イけ」

 

「~~~~~ッッッ!!!」

 

 

 放尿したかのように、小水が結合部から溢れる。

 太腿を伝い、寝台を汚す中で全身を硬直させる千景は抱き着いたまま唇を開閉させる。

 俺もまた、少女の最奥を汚すように噴き出す白濁に目を閉じ、達成感に浸っていた。

 

「……ぁぁ」

 

 幾度も竿を吸っては離し、離しては吸う膣肉。

 一滴も残すことなく注ぎ込み、千景を抱いたままベッドの枕に顔を埋める。普段から使っているからか千景の香りがする枕と少し横に目を向けると、より濃厚な雌の香りを漂わせた女の顔。

 汗を吸った髪は三つ編みも髪留めも解けてシーツに広がっている。

 

「かわいい」

 

「……!」

 

「エッチだ」

 

「……ッ!」

 

 耳元で言葉を囁く度に、白濁を吐いた陰茎に膣肉がきゅっと吸い付き離れる。

 やめて、と口にする千景とは裏腹に身体は悦ぶ為、体力が回復するまで囁くことにした。

 

 

 

 

 

 腰砕けになったらしい。

 

「あ、あなたの所為よ。責任取って」

 

 汗だくで汚れ切った自らの身体を半眼で睨みつける千景。

 唾液と汗でドロドロになった彼女は拭かれることを嫌がり、そのまま衣服を着せることになった。羞恥心が追い付いたのか僅かに刺々しい言葉を放ちながら着せ替え人形になる彼女。

 

「最悪ね。べとべと……。流石にシャワー浴びないと」

 

「ふぅん」

 

「ふぅん、じゃないわ加賀くん。……こんなにして何か思わないの?」

 

「別に」

 

「最低ね。変態よ。サディスト」

 

 乳房には歯形が、手首や腰肉には赤い痕がついていた。

 情事で俺が彼女を悦ばせた際に付いた名残を残した彼女は精液に塗れた秘所に目を向けられた途端に慌てて手で隠す。

 

「普段はシャワーでしたっけ?」

 

「そうね」

 

「この時間でも大浴場使えましたよね」

 

「いつでも使えるらしいけど……それで?」

 

 交差する視線はキスをするかのように近づく。

 見つめ合うと徐々に頬を染める千景の瞳には僅かな情欲の炎が見えた。

 

 

 



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第二十一話 貸切

 様々な時代や異なる場所から召喚された勇者や巫女たちは寄宿舎に住むことになっている。

 神世紀時代の旧勇者部以外のほぼ全員が寄宿舎で寝食を共にするのだ。

 大赦にとっては300年前の勇者たちの存在は恐れ多いのか、或いは少しでも懐柔させて言う事を聞かせたいのか、彼女らに与えた寄宿舎は中々に豪華な施設である。

 

 バーテックスとの戦闘はいつ発生するのか巫女以外には予見不能だ。

 朝か昼か夜なのか。定期的に訓練なども行うことから大浴場は常に開かれている。大赦が用意したスタッフたちが定期的に清掃を行っておりいつでも入ることが出来るのだ。

 謙虚な少女たちはスタッフを手伝おうとするも断られ、最終的にこの環境を受け入れている。

 

「──私は……基本的にはシャワーで済ませるのだけど」

 

「はい」

 

「……ここはお風呂上がりに飲む牛乳が美味しいのよ」

 

「売ってるんですか?」

 

「あそこにある小さな冷蔵庫。あそこにコーヒー牛乳とかあるから……無料よ」

 

「勝手に飲んでいいと」

 

「ええ」

 

「最高かよ」

 

 この程度の特別待遇は勇者なのだからあっても良い筈だと主張する千景。

 友奈のような聖人ではない俺は彼女のその言葉に首肯を重ねると同時に口を開いた。

 

「でも、シャワーだけだと疲労があんまり抜けないんですよね」

 

「……そうでもないわ。たまに高嶋さんがマッサージしてくれるから」

 

「風呂に入ればいいのでは?」

 

 風呂は魂を洗濯する場所、そんな言葉をどこかで聞いた気がする。

 前世で一人暮らしをしていた時は掃除が面倒だからとシャワーで済ませていたこともあり、千景の言葉に理解は出来る。千景も同じ理由とは限らないが。

 

 男子禁制、女人専用の浴室という訳ではないが使用する人物が勇者部に所属する見知った少女たちである為か、銭湯にあるような広い脱衣所に芳香を鼻腔に感じる。

 見知った同年代の少女たちが普段から使っている風呂場なのだ。気のせいではない。

 並ぶ棚の一つ、そこに置かれている籠にタオルや着替えを置く千景は自らの衣服に手を置く。

 

「この時間帯は人がいない……穴場よ」

 

 奥ゆかしい先輩は他人と風呂に入ることをしないらしい。

 時刻は深夜帯に近く、少なくとも小学生は既に寝ている時間だろう。

 大半の少女たちも特に何も無ければ既に湯舟に浸かり終えているという。しゅるっと衣擦れ音を出しながら、ゆっくりと衣服を脱いでいく千景の白い背中を見て頷く。

 

「そうなんだ~。ちーちゃんは凄いね~」

 

「……ふん。ちーちゃんって呼ばないでくれる?」

 

 心なしか得意げな表情を見せる彼女は僅かに顔が赤らんだままだ。

 情欲の激しさが腰から抜けていないのか、おんぶは嫌だ、抱っこも嫌だと駄々を捏ねた彼女は俺の肩に手を置いてゆっくりと歩いてきたのだ。

 乱れた衣服を脱ぎ、再度肌を見せる彼女はジロリと俺を睨みつける。

 

「あと、あまり……見ないで」

 

「ふらふらしてるじゃないですか、先輩。手伝いますよ」

 

「触りたいだけでしょ……エッチ」

 

 女の大事な部分を全て俺に晒した彼女は、それはそれとして羞恥に肌を朱色に染める。

 罵倒する彼女を無視して、衣服や下着の脱衣を手伝うと抵抗はなく、十数分前まで散々よがり狂い、男に悦んでいた肌色が脱衣所の照明に艶やかに晒される。

 肌に残る噛み痕と肌に付着した体液は見る者が見れば何をしていたかは察するだろう。

 

「先輩」

 

「……なに? 後輩くん」

 

「このブラジャー、頂戴」

 

「……ダメよ」

 

 乳房を腕で隠す少女からピンクのブラをそっと奪い取る。

 ただの下着が欲しいのではない。美少女の可愛らしく、エッチな下着に胸が躍るものだ。

 裏地に付けられたタグに目を向けて、彼女の目の前で数値を声に出して暗記すると、羞恥とは異なる朱色に肌を染めた千景が襲い掛かってくる。

 ビンタを決めようと振りかぶった腕を搔い潜り、華奢な体躯を抱き寄せる。

 滑らかな背中を下から上へ指の腹でなぞり上げた。

 

「あんッ! ……!」

 

 身体は素直なのか、一瞬の刺激に女の喜悦が口からこぼれる。

 自らの嬌声に驚いたように、口元を手で押さえる彼女は出入口に目を向けた。

 

「……最低」

 

「清掃中の立て看板を置いてるので大丈夫。それよりこれ貰いますね」

 

「ダメよ。高嶋さんからのプレゼントなんだから」

 

「他のなら良いんですか? 大人っぽい黒のエッチなのとかありましたよね」

 

「なんでそれを…………、な、何に使うつもり?」

 

「神樹……様に捧げようかと」

 

「はあ?」

 

 想像とは違ったのか、一転して哀れみと蔑みの眼差しを彼女は見せる。

 食べ物や祈りではない特殊な物を神樹に捧げることで少しでも状況の改善に繋がるのではないのか、それにはやはり神樹が選んだ無垢な少女、その下着類が喜ばれるのではないのかと。

 そう告げると絶対零度の視線は和らぐも、不思議な物を見るような眼差しへと変貌した。

 園子とか、雲のようなふわふわした女の奇行を見る目をしていた。

 

 抱擁状態を解除しろと背中を叩く千景を解放する。

 彼女は薄い胸元を手で隠しながら俺に半眼を向けて、

 

「知能指数下がってるわよ」

 

「いや、でも、ロリコンウッドだし喜ぶよ」

 

「そんな訳ないでしょ……根拠はあるの?」

 

「前にひなたさんがそんなことを言っていたような」

 

「嘘ね」

 

 犯罪者を見るような目の千景は俺の手から生暖かい下着を取り上げると、衣類の中に隠す。

 緩慢とした動きで脱衣していく千景よりも素早く服を脱ぐ俺を忌々し気に見る彼女は小さな白いタオルで申し訳程度に己の身体を隠す。

 長い髪を纏めてアップにする彼女はこれ以上下着を触られないようにと俺の手を取る。

 

「……そんなに欲しいなら、考えてもいいけど」

 

 ボソボソと呟く千景に手を引かれて、浴室に入る。

 途端、むわりと漂う熱気と立ち昇る白い蒸気に思わず目を細める。

 

 以前に街の銭湯に勇者部で向かったことを思い出す。

 サウナがあり、泡風呂や薬風呂など一般家庭では味わえない広い湯舟の規模に近い。とはいえ、この人生で最も広くゴージャスな風呂が乃木家の実家にあったことも脳裏を過ぎった。

 鼻腔をくすぐるのは、身体をリラックスさせる香草だろうか。 

 

「走ると転ぶから……気を付けて」

 

 霧のような白い蒸気の中をつるりとしたタイルに気を付けて歩く。

 先ほどまで誰かが入っていたのだろう、その名残を感じさせる浴槽に思わず飛び込みたくなる童心を抑えると、複数ある丸椅子を手に取り壁に設置された鏡の前に座る。

 備え付けのシャンプーは当然のように女子が好みそうな見た目であることに苦笑する。

 

「シャンプーやボディーソープとかはそこにもあるのだけども自前で用意する人もいるわ……」

 

「誰?」

 

「秋原さんとか……藤森さんもね……」

 

「まあ、拘る人は多そうですからね。先輩は備え付けのでそんなに髪が綺麗なんですね」

 

「……え、ぅ、ぁ、あり、ありがとう」

 

 バルブを捻り、シャワーヘッドから溢れる湯水に汗が流れ落ちる。

 浴室に漂う香草と身体を流れる湯水に忘れていた疲労感が身体から浮き出ては流れていくような、そんな感覚に捕らわれる。

 隣に座る千景も肌を流れる湯雨に静かに吐息する。汚れた自らの身体が綺麗になっていくことに満足げな様子の彼女は小さく頬を緩めて、今更ながらチラリと俺に目を向ける。

 

「……慣れてるのね」

 

「何がですか?」

 

 ぱちゃぱちゃとタイルを叩く湯雨の音。

 湯水が毒蛇のように白い裸体を不規則に流れていく中での彼女の呟き声。

 隣にいなければ聞こえなかっただろう千景のか細い声音に耳を傾ける。

 

「やっぱり……他の子ともこういうことするの?」

 

「こういうこと、とは?」

 

「お風呂……一緒に入ったり、とか」

 

 小さな白いタオルが湯水を吸って女体に張り付き、肌色と黒色を透かす。

 チラリと俺の裸体を上から下へと視線を彷徨い怒張で止める少女。何事も無かったかのように目を逸らす千景の姿を鏡越しに捉える。

 

「まあ、しますよ」

 

「……ふぅん」

 

「ここでは千景先輩が初めてですが」

 

「……あっそ」

 

「なんですか? その返事は」

 

「別に。あなたの真似よ」

 

「俺はそんなこと言いませんよ」

 

 プイっと顔を背ける千景の肌を湯雨が伝う。

 慈雨の如き湯水は疲れた筋肉を解していき、自然と身体をリラックスさせる。湯水に吐息しながらも、チラリと半眼で俺を見ることはやめない彼女への態度に苦心する。

 他の女の話題を出したのが機嫌を損ねさせたのだろうか。

 

「あひゃん!?」

 

「はーい、お背中流しますねー」

 

「な、なに!?」

 

「後輩が先輩の身体を洗うのは当然ですよ」

 

 フォローをせねばと千景の背後に回り、泡に塗れた手で少女の肌を擦る。

 優しく、愛しい女を抱くように、両手で少女の肌を掌で撫でると、くすぐったかったのか、悲鳴と共に身をよじらせる。

 しかし勇者の姿にもなっていない彼女の力は弱く、撫で回す男の手から逃れられない。

 

「洗わなくていいかぁぅ!?」

 

 上から降り注ぐ湯雨に泡が流れていきながらも少女とのスキンシップを楽しむ。

 脇から始まり、腹部や背中は敏感なのか、或いは他人に洗われることが無いのか、怒りながらも強制的に笑い声を上げさせられる千景の細く白い脚がタイルに伸びる。

 

「先輩の肌は綺麗ですね」

 

「く、ふ、くぅ……んふっ!」

 

 親指、人差し指、中指、薬指、小指。

 蜘蛛のように這い回りながら執拗に乙女の柔肌を蹂躙すると鈴音のような笑い声が浴室に響く。開放感ある広い空間に、聞き慣れない千景の声を聞こうとシャワーのバルブを閉じる。

 

「やめっ、やめ……いい加減に……ふはっ、ぁっ、あははっ……」

 

 中指で下から上に肌を摩られるのが好きらしい。

 1オクターブほど跳ね上がる声色に緩急をつけて腹部を撫でる。

 滑らかな太腿を撫でて、丸みを帯びた尻肉を揉む。臍の窪みを指で撫でながら、腋の窪みを指で押すと楽しそうに、苦しそうに、彼女は笑い声を上げながら俺の身体をその手で叩いた。 

 

 丁寧に、執拗に、彼女の性感帯を探るように柔肌を楽しむ。

 これが先輩と後輩のスキンシップだと告げると嘘だと断言した千景を笑わせる。

 

「混浴ってこんな感じですよ」

 

「そんなわけ……ッ、く……こ、この……ふ、くくッ……!」

 

「あんまり騒ぐと人が来ますよ」

 

「誰の……っ、せいだと……!」

 

 次第に叩く力も弱まり荒い吐息と椅子から崩れ落ちた少女。

 硬いタイルではなく、俺の胸板に身体を預ける千景の肌は泡で所々が白い。唾液を始めとした体液は既に流れ落ち、歯形といった痕に目を瞑れば何も無かったと言い張ることが出来るだろう。

 

「先輩って身体とか洗って貰ったことないでしょ? 嘘だって断言しちゃだめですよ」

 

「…………分かったから、もうくすぐらないで」

 

「もっとして欲しい?」

 

「はぁー……はぁ……本当に怒るから」

 

 荒い吐息でようやく解放された身体を腕に抱く千景は唸り声を上げる。

 そんな彼女の猜疑心を解く為、木製の椅子ではなく肉椅子に身体を預けさせるように座らせ続ける俺は怒張を隠すどころか、臀部に押し付けながら真面目に身体を洗う。

 

 硬くなった陰茎は反り返り、振り返る千景の眼差しが俺を昂らせる。

 尻肉に挟まれた肉竿の存在を口にするべきか、チラチラと幾度も俺に目を向けて、

 

「……か、加賀くん」

 

「ん?」

 

「その、……当たってる」

 

「何が?」

 

「……アレよ」

 

「どれですか?」

 

「…………」

 

 ぉ、お、と何度か唇で発音するも、淫語を口にするのは恥ずかしいのか。

 楽しいスキンシップで体力を消耗した彼女は無言のまま従順に洗われる。

 手で柔肌を洗う俺を鏡越しに見る千景の視線。その視線に顔を上げる。

 

 重なる視線に逸らしたのは千景。

 彼女は何かを話したそうにしており、顔を見て少し待つとおずおずと口を開く。

 

「さっきの話って本当なの?」

 

「……混浴?」

 

「こんな風に洗いあうって……」

 

「まあ、人によるんじゃないですか?」

 

「そう……人に身体を洗って貰ったことなんてなかったから、よく分からなくて」

 

 背中を預けた千景の鼓動は密着した故か高鳴っているのが聞こえる。

 鎖骨付近、薄い乳房の上部にある傷をなぞる指に、

 

「何か言われるんじゃないかと思って」

 

「……」

 

 細い身体が僅かに震えるのが分かった。

 腹部を撫でながら少女の身体を背後から抱くと、強張りが少しずつ解れていく。

 

「加賀くんってイジメとか受けたことないでしょう?」

 

「いや、ありますね」

 

「……意外ね。あなたみたいな──」

 

「ここにいるのは俺が理想とする最強の自分ですから。昔は昔。まあ俺から言えるのはイジメをする奴はクソだな~っと。どうです? 一緒に報復合戦でもしますか? 虐殺キメちゃう?」

 

「……そうね、考えておくわ」

 

 あくまで前世の話だからと話すことはせず、彼女もまた聞くことはない。

 それは彼女の柔肌にある傷についても同じだ。

 互いに踏み込むことはせず、ただ察しと思いやりが無言を作り、話が終わる。

 

 話が終わって、ただ官能的な空気だけが残る。

 

「……ん」

 

 ボディソープの容器から新しい泡を掌になじませると、マッサージをする施術師のように千景の太腿から足首までを手で擦る。

 先ほどまでのじゃれ合いのような荒々しさのない、優しい触り方だ。

 程よく脂と肉の乗った腿肉を擦ると、少女は小さく喘いだ。

 

「ん、ぁ」

 

 きゅっと千景は自らの唇を閉じる。

 はぁ、はぁ、と熱い吐息を漏らす唇は何かを言いかけて、閉じる。

 潤み始めた瞳が俺を捉えるも、俺から彼女に話しかける言葉は他愛もない。 

 

「千景は肩から洗うんだ」

 

「そうね……あと普段はスポンジで洗う……。加賀くんもでしょ?」

 

「そうですが、でも手の方が肌が傷つかないですぜ姉御」

 

「あなたみたいな弟はちょっと……」

 

「…………」

 

「……ぁ、はっ」

 

 現実から目を逸らすような白々しい会話、そう千景も分かっているのだろう。

 切なげに喘いでいる彼女の身体は既に淫らな熱を帯びていた。

 

 ぴんと背を反らした千景の視線には咎める色と求めるような色が混ざり合う。

 いつの間にか小さな白いタオルは水を吸ってタイルに落ち、掌に収まるまろやかな乳房や既に硬いピンク色の乳首を優しく揉み刺激を与えるも、彼女は拒むことはしない。

 

 それが千景の望むことだからだ。

 

「気持ち良いですか?」

 

「……ん」

 

 恍惚とした吐息を漏らす千景は小さく頷く。

 上下に動く腹部を掌で撫で、鼠径部を指で伝い、女の花園へ。

 

「ここはいつもどうやって洗ってるんですか?」

 

「どうって……ちょ、引っ張らないで……ぁ、ぁぁ……!」

 

 年相応に生え揃った薄くも黒色の恥毛を泡で染める。

 毛並みに沿い、ゆっくりと進む指先はトロリと濡れた蜜裂と陰核を見つける。

 

「んっ!」

 

 陰核を擦られた少女が大きな声を上げる。

 指が、掌が無造作に貝肉を上から擦っただけだ。

 

「ぁっ! は、ぁんっ!」

 

 それを忘れないように媚肉と陰核を乱雑に上下に擦る。

 女の大事な部分を、陰唇を指で弄られる度に愛液が腿を伝い、甘い声を漏らす。

 

「んぅぅ……ッッ!」

 

 腰を浮かばせて酩酊する眼差し。

 唇を交わして会話は途切れ、くちゅくちゅと淫水の溢れる音だけが聞こえる。

 

「お」

 

 後輩として彼女の身体に奉仕している時だった。

 尻肉に肉竿を押し付け過ぎたのか、柔らかく細い指が怒張に絡みつく。

 せめてもの抵抗か、彼女は言葉もなく射精を促そうと、上下に肉棒を扱く。

 

「今、先輩を洗ってるんですが……」

 

「うるさい」

 

「────」

 

「私、ばかり……」

 

 乱雑に、力に任せて千景は怒張を扱く。

 互いの性器に指を這わせ、妖しく光る眼差しの彼女の呼吸は乱れる。

 

「こんなに硬くして……ひ、ぅっ……!」

 

 千景が身をよじらせ、腿が俺の手を挟み込む。

 口を離し、潤んだ瞳から溢れる涙が頬を伝い乳房に落ちる。震える乳房を揉み、にゅるりと陰唇に入る指を浅く差し入れする度に千景の身体が悦ぶ。

 俺の指が恥部や陰核を撫でると千景は嫌々と首を振る。

 

「だめ……だめだめ、だめっ!」

 

 これから何をされるのかを察した、切なげな少女の声色が鼓膜を震わせる。

 甘えるように、男に乞うように、肩を掴み絶頂を堪える女の表情に鼓動が高鳴る。

 

 肉芽をぞりぞりと指で擦り上げる。

 

「ィ、ぅぁぁぁッッッ!!!」

 

 とろみのある泉から噴き出す潮。

 背中を反らし、跳ねるように腰が動く千景は悲鳴を上げて怒張から手を離す。

 

 男の手から逃れようと千景は身体を持ち上げるもタイルに足を滑らせる。

 絶頂の最中だというのに、必死に男から逃れようとする彼女を背後から抱擁する。

 ぱくぱくと開閉する唇を奪うと、彼女の舌は理性を失ったように動く。

 

「ん、ん、む……」

 

 絶頂に昇らされた少女の身体が小刻みに震える。

 徐々に震えが収まりつつも、淫らな香りを振り撒く少女。

 

 ゆっくりとバルブを捻ると久方ぶりにシャワーヘッドから湯雨が降る。

 固定台からシャワーヘッドを外し、温かい湯で肌に付着した泡を流していく。

 

「……、ッ……」

 

 タイルに流れる泡に比例して朱色に染まった白い肌が露出していく。

 ぐったりとした身体を俺に預け、絶頂の余韻に浸る虚空を見つめる彼女を抱き上げる。

 

 そもそもここは浴室なのだ。いつまで身体を洗っているつもりか。

 すぐ背後には湯舟一杯の温かな湯が広がっている。

 独特な薬草の香りは不快ではなく、白い蒸気を湧かせる湯水への興味を惹き立たせる。

 

 軽い体重の千景はふにゃふにゃと口の中で呟いている。

 俺への罵倒か、更なる快楽のおねだりなのか。

 それなりに熱い浴槽に足を入れると、おおと思わず息を呑む。

 

「んん……」

 

 少女の裸体を湯舟にゆっくりと浸からせる。

 アップにした彼女の頭が沈まないように浴槽の縁に身体を置くと徐々に黒色の瞳に理性の光が戻りつつあるのが見て取れた。

 そんな彼女の顔の前に怒張を差し出す。

 

「……ぇ、ぁ」

 

 鼻息すら感じるような距離で、少女の瞳が俺と肉棒を交互に見た。

 幾度も唾液を交換した唇に、その口元に陰茎を添えた。

 

「……へんたい」

 

 屈辱と喜悦の混ざり合った表情で、千景は呟く。

 俺の顔を恨めしそうに睨みつける彼女の滑らかな頬を肉竿で叩く。

 何をしろと、詳細を口にせずとも彼女の脳内では既に理解が及んでいるらしい。怒りらしき感情を見せた深紅の勇者は大胆にも唇を亀頭に触れ合わせる。

 

「ぁ……む」

 

 従順に、淫らに、千景は男の怒張を口に入れる。

 亀頭部分を唇で咥えては離し、唇を重ねるとおもむろに雁首までを包み込む。

 

 千景のフェラチオは稚拙ながらも男を悦ばせようという努力が見て取れた。

 想像と知識によるものか、舌を絡め、唇を窄め、肉竿から子種を搾ろうとする。

 しかし歯が肉竿を擦り、どこか戸惑い気味な初々しさのある奉仕だ。

 

「ぅぇ……」

 

 カウパーを舌に絡める彼女は見下ろす俺の視線に目を伏せる。

 鼻息を肉竿の根本に感じながら、ずじゅ、ずぷと自らの奉仕による浅ましい水音に耳まで赤くする少女の姿に怒張はより硬さを増す。

 千景が快楽に悦ぶ姿に興奮を覚え、その本人に中途半端に手で扱かれていた肉竿は、稚拙な奉仕でも十分なほどに射精感を昂らせていく。

 

「……くッ!」

 

 無言で射精を求める千景の口腔奉仕。

 俺の腰に手を置く彼女の口内は熱くぬめる。

 ざらりとした舌先が雁裏を舐めた瞬間、咄嗟に腰を揺すった。

 

「……ぅ、お」

 

 滑らかな絹のような髪の毛を掴み、白濁を口内に注ぐ。

 熱い汚濁が歯裏や舌を汚し、意識が僅かに白く染まっていく。

 

「ん、ぶっ……」

 

 涙目の少女の唾液に濃厚な雄汁が絡まる。

 瞼を閉じる少女の口腔を性器のように汚す。

 征服感と快楽が混ぜこぜになり、天井を見上げて俺は白く甘い快楽に浸った。

 

「────」

 

 無言で怒張を咥えたままの彼女が腿を叩く。

 足元のおぼつかない俺は千景の頭を掴み、少しの間奉仕に専念した女を見下ろす。男の味に不快そうに顔を歪める彼女は口を開けば不味いと言い出しそうだ。鼻腔から漏れる呼気は荒く、呼吸が苦しくなってきたのだろう彼女に精液を味わわせながら選択を迫らせる。

 

 飲むのか、吐くのか。

 

「ぅ、ん……」

 

 やがて、観念したように白濁を嚥下する音が聞こえた。

 ごくっと喉を鳴らした千景がはっきりと体内に精液を取り込んだ音だ。

 

 ゆっくりと唾液と白濁の混ざり合った竿を口腔から引き抜く。

 少女の唇と鈴口には恋人が情熱的なキスをしたかのような淫らな糸が橋を作る。

 

「……よくこんなの飲めるわね」

 

 そう呟く彼女の表情は奉仕の末に雄汁を味わわされた屈辱と、俺を果てさせたことへの達成感が見え隠れしていた。先ほどよりも硬度が減り始めた怒張を興味深そうに見ると口元を指で拭う。

 そのままぼんやりと怒張を見ていた彼女は俺の視線に気づくと肉棒から目を逸らす。

 

「……座ったら?」

 

 湯舟に浸かる彼女の頭に手を置き怒張を見せ続けた状態から身体を動かす。

 膝まで使っていた湯舟に肩まで浸かると全身が弛緩していくのを感じる。

 

 虚脱感に浴槽に沈む俺は、千景の裸体を見下ろす。

 男に噛まれた乳房、くびれた細い腰や媚肉を視姦する。

 

「……見すぎよ」

 

「見せて欲しいですね」

 

「……いやよ」

 

「もっとエッチな声が聞きたいな」

 

「……恥ずかしいから」

 

 そっと恥部を手で隠す少女は湯舟の温度に上気したように頬が赤い。

 伸ばした少女の脚、その爪先が触れた肉竿がその刺激に僅かに奮い立つ。

 

 交わした視線。

 距離を近づくと、千景の伸ばした腕が俺の胸板に置かれる。

 

「だめ……」

 

 持ち上げた顎は白く細い。

 撫でた肌触りは心地よく、甘く切なげな声が女の口からこぼれた。

 許可と拒絶、相反する感情に先ほどまで雄竿を含んだ唇が震えて、

 

「──ぁ?」

 

 脱衣所の方で音が聞こえた。

 しゅるりと衣服を脱ぐ音は少し前に聞いた物と似ている。

 ただ脱ぎ方は違うのか、千景のように男の前で恥じらう物とは異なり、どこかで聞いたことのあるような鼻歌を歌いながら手早く衣服を脱いでいる人物の正体に脳を回す。

 何かしらのリアクションを取る前にガラリと脱衣所の扉が開く。

 

「おっふろー!」

 

 明朗快活、人の和を重んじる少女は開放感ある浴室で裸体で歩いてくる。

 小さなタオルを手に持ち、乳房も秘裂も堂々と見せる足取りは少しフラフラとしている。髪留めの無い髪は瞳と同じ薄紅色。タイルの上を歩く彼女の頬は僅かに上気していた。

 

 そんな彼女を見ていると彼女もまた此方に気が付く。

 屈託のない陽光の如き笑みに俺は思わず目を細めてしまう。

 振り向いてその姿を見た千景は石化したかのように硬直した。

 

「あれー、ぐんちゃん! りょーくんも! やっほー!」

 

「────」

 

 機嫌良さそうに手を振る彼女は、友奈だった。

 高嶋友奈だった。

 

  

 



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第二十二話 大浴場にて

 世の中には空気という物がある。

 物理的に吸わなければ死ぬ方ではなく、いわゆる雰囲気的な、読む方の空気だ。

 

 結城友奈は周囲の空気を読むことに長けていた。

 ふにゃふにゃとした柔らかい陽光のような笑みと無邪気さで周囲の和を作る彼女。

 誰かが傷つくことも、誰かが仲違いする光景も見たくはない。

 だからこそ、自分が緩衝材になることで人の仲を保とうとする自己犠牲の塊だ。

 

 彼女のその在り方は美しいと思うが、俺もそうありたいとは思わず、友奈にも自愛して欲しい。

 身を削り、心を砕き、それで生まれる絆など何の意味もない。そこで道化の真似をして介入しなければ崩壊する程度の絆など最初から存在しなくても問題ないだろうから。

 こういう考え方が神樹に嫌われる要因の一つなのかもしれない。

 他人に笑みを振り撒き、善意を装っても、性根というのは死んでも治らないのか。

 

 とはいえ、俺はそんな彼女が好きだ。

 誰かの為に行動出来て、無防備に下着をチラ見せしては隣人に怒られる友奈が俺は好きだ。

 天然で、優しくて、可愛くて、普通の少女の彼女が俺は好きなのだ。

 

 そんな彼女と顔も身体も似ている高嶋友奈。彼女は空気が読めるだろうか。

 間違いなく読めるだろう。同じく自己犠牲の塊で陰惨とした西暦時代の勇者たちの中でムードメーカーを担い周囲に気を使っていたことは若葉や高嶋の狂信者である千景から聞いている。 

 

 性格や趣味は異なれども、友奈族は空気を読むことに長けている。

 少なくともそれが俺が彼女たちに抱いている認識であった。

 

「おっふろおふろ~」

 

 結城友奈のように長い付き合いもねっとりとした深い付き合いもしていない少女。

 どこか意識して天然をしていそうな健康的で小悪魔系明朗快活な美少女、高嶋友奈。そこまで深い付き合いでなくとも、『友奈』である以上、思考はある程度トレース出来るつもりだ。

 

 もしも、勇者や巫女が普段使う大浴場で見知った男女が二人でいる場に出くわしたら。

 俺の知る彼女なら、愕然と固まった後で千景の弁解に耳も貸さずに脱衣所に戻っただろう。あわあわと驚きを露わにしてその気持ちを誰かに伝えるかもしれない。

 少なくともそのまま浴室に足を踏み入れるという選択肢を取る少女ではない筈なのだ。

 

「まあ、それが俺の知らない高嶋さんの知られざる一面だったって話かもしれないし」

 

「ほえ?」

 

「考えてみると友奈と比べて高嶋さんの中身をあんまり知らないなって」

 

「んー? 自己紹介してるけどね。そう言われると私もりょーくんの中身をあんまり知らないかも」

 

「高嶋さんはあんまり自分のことを話さないから。謎の女なんだよね」

 

「謎の女って恰好いいけど違うかな。私はね、他の人に自分のことを伝えるのって苦手なんだ」

 

 何かしらの異常を抱えた少女の外見は特に違和感はない。

 混浴風呂でもないのに、同年代の異性と裸体を晒して話していることが異常だろう。

 羞恥心を置き去りにしてきたことを除いて、浴室で軽快に話をする少女。異性の目を気にすることもなく、湯舟より立ち昇る白い蒸気で隠しきれない高嶋の裸体をジックリと見つめる。

 

 掌に収まる大きさの乳房は小さく揺れ、先端の乳首は薄いピンク色が覗く。

 柔肌は程よく鍛えられており、細い腰にはくびれと柔らかそうな臀部を揺らす。ふわりとした薄い陰毛と薄毛で隠せない秘裂と健康的な太腿と順に見下ろしていく。

 それらは小さな白タオルでは隠せておらず、彼女自身も隠そうとする素振りも見せない。

 赤らんだ顔で僅かに眉根を寄せる彼女は曖昧な笑みを浮かべるばかりだ。

 

「そんなにジッと見られても……私の身体って変だったりするのかな?」

 

「エッチで良いと思うよ。本当に友奈そっくりだね」

 

「アハハ……りょーくんもなんというか良いと思うよ! ぱおーんって感じで」

 

 硬直している千景の身体に小さな白タオルを乗せて、浴槽の縁に腰を下ろす。

 ぺたりぺたりと歩み寄る彼女は自らの裸体を隠すことなく、人を惹きつけるような優しい笑みを浮かべるも、遠慮することなく男の肌を薄紅色の瞳で見つめる。

 

 髪留めもリボンも浴室にまで持ち込む少女はいない。

 髪を下ろした彼女は判断材料が減り、完全に友奈と瓜二つだ。

 そんな彼女の柔和な笑みに衝撃の硬直が解けたのか、湯舟に浸かった千景が口を開く。

 

「ハッ! た、高嶋さん!!? あっ、えっと、これはちがっ、じゃなくて前! 前隠して!」

 

「ぐんちゃん?」

 

 硬直は解けても混乱は治っていなかった千景。

 大きな瞳は混乱したのかグルグルと回り、俺と高嶋を幾度も見ては小さな口を開閉させる。

 本来なら防御結界の役目を果たしていた清掃中の看板を突破して平然と浴室に入り込んできた高嶋に俺も混乱する筈だったが、浴槽内でオロオロとする千景に冷静さを取り戻していた。

 

「前? ここはお風呂だよー?」

 

「そういうことじゃ……」

 

「それよりもぐんちゃんと一緒にここのお風呂に入るのは初めてだね! りょーくんも一緒だ!」

 

「そうなの?」

 

「まあ……というか見過ぎよ」

 

 高嶋の裸体を見る俺を半眼で睨みつける千景。

 彼女の華奢な肩から湯水が流れ落ちる度に湯舟の水面に小さな波紋が広がる。彼女の柔らかそうな乳房をむにゅりと手で触れると、慌てたように千景は肌に触れる指を手で払い落とす。 

 

「そういえばぐんちゃんとりょーくんは何で一緒にお風呂に入っているの?」

 

「ぇ、ぁ……それは……あの」

 

 ペタペタとタイルを踏み締める高嶋は俺の隣、湯舟の縁に腰を下ろす。

 白い肌を見せる彼女の無邪気な問い掛けに息を詰まらす千景。彼女の目線から逃れるように俺を挟み湯舟に身体を沈めると、ぺちぺちと男の腿を叩き回答を任せようとする先輩の姿に口を開く。

 

「そりゃあ、この時間は混浴風呂になるからだよ」

 

「えっ? そうなんだ! 初めて知ったよー! でも他の子はいないね」

 

「貸切なんだ。ご存知ではない?」

 

「うん」

 

「なら、一つ賢くなったな。おめでとう」

 

「えへへ……ありがとう!」

 

 独特な薬草の香りがする浴室に年頃の男女。

 人肌を求めているのか、腿が密着するような距離で柔らかい笑みを浮かべる高嶋。

 髪留めもなく、髪を下ろした彼女の姿は結城友奈と見分けがつかないだろう。友奈と同じような距離感に思わず少女の無防備な胸元に手を伸ばすのは当然のことであった。

 

「ん……」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 揉まれた乳肉と同じ方の片目を瞑る高嶋の抵抗はない。

 代わりに声を上げたのは千景だが、彼女もまたこの状況下に混乱したままなのだろう。小タオルで自らの身体を隠しながら俺の腕を掴むもその眼差しはどこか弱々しい。

 

 混浴風呂であることに対して何か問題があるのだろうか。

 高嶋に触れたことなら、そもそも彼女がいつも通りに触れてくるのが悪い。

 

「どうしたの?」

 

「混浴ではこうやってスキンシップやマッサージをするものなんだ」

 

「そうなんだ~……じゃあね、私も! えいっ! ………わぁ〜、硬いね!」

 

 自らの胸を揉まれることに寛容な高嶋は俺の胸板に手を伸ばす。

 さらりと撫でられる掌は柔らかく、円を描くような触れ方に微かな快感を覚える。さわさわと男の身体に触れながら、性感を刺激するかのように俺の乳首を指の腹でときおり撫でる。

 無意識なのか、マッサージで培った手は相手に快感を与えようとしているのか。

 神が宿る手に乳首が硬くさせられながらも口を開く。 

 

「ところで高嶋さんは大丈夫?」

 

「何が~?」

 

「さっきまで何かしてた?」

 

「えっとね……ゲーム! この前ぐんちゃんと一緒に怪物を狩ったりするゲームで遊んでから、もっと上手くなりたくてゲームしてたんだ!」

 

「高嶋さん……」

 

「若葉ちゃんやヒナちゃんと一緒に食べたお菓子とか美味しかったなー」

 

「え……」

 

 千景の表情を晴れさせては曇らせる小悪魔テクニック。

 掌で踊らされる先輩の姿は小動物のようで、くすりと笑みを浮かべる高嶋の手は味わうかのように俺に絡みつく。

 俺の腹を、胸板を、腰を、マッサージするように触れていく。

 

「男の子って感じだよね」

 

「高嶋さんは女の子って感じ」

 

「えへへ、くすぐったいよー……ぁ、ん」

 

 剥き出しの乳房は呼吸に合わせて僅かに上下していた。

 他の勇者よりも慎ましく、形の良い、柔らかな高嶋の胸肉。

 隣に座る少女に肩を回して抱き寄せると白い乳肉を鷲掴みにして捏ね繰り回す。

 

「んッ……ぐんちゃんともこんな感じのマッサージをしてたの?」

 

「ち、ちが、ちがうのよ高嶋さん! 私と加賀くんはそういうのじゃなくて!」

 

「そうだよ。凄く悦んでくれたから。聞こえてたの?」

 

「うん。脱衣所にいた時にぐんちゃんの声がいっぱい聞こえたから。どうしたのかなーって。あんなエッチな声が出ちゃうくらい、りょーくんもマッサージが上手なんだね」

 

「エッチ……」

 

「高嶋さんこそ上手だよ」

 

「私なんてまだまだだよ。結城ちゃんの方が凄いもん」

 

「……なんで高嶋さんも加賀くんも……そんな平然としてるのよ」

 

 高嶋の口元には小さな笑みが浮かび、薄紅色の瞳が下を向く。

 萎えかけていた面影など既にない反り立った怒張に向けられる眼差しは羞恥よりも年頃の少女としての興味が勝り、柔らかな手が触れて良いかと鼠径部をそっと撫でて問いかける。

 無意識か、意識的にか、彼女の男を誘うような指の動きに鼓動が高鳴る。

 

「でもお風呂でマッサージする必要あるの?」

 

「バーテックスの戦闘で勇者に良くない物が溜まるだろう? それを濯ぐ為には浴室でマッサージして老廃物をデトックスするのが良いんだよ。風水的に」

 

「なるほど! それ、私にもしてくれる?」

 

「いいよ」

 

「たっ、高嶋さん!?」

 

 高嶋のような少女に迫られて勃起しない男はいないだろう。

 自然と顔が近づき、端正な顔は友奈顔。身近にいる少女と同じ顔だ。

 

「……ぁ」

 

 顎を持ち上げて見つめると、柔らかそうな唇が僅かに震える。

 とろんとした瞳は酩酊したように揺れ動き、熱い吐息が漏れる。柔らかい腿が密着し、湯舟の薬草の香りに混ざる高嶋の香りにはチョコとラム酒が混ざっていた。

 

「……」

 

 戸惑い気味に俺と高嶋を見つめる千景。

 彼女に見守られて、雰囲気が許すままにそっとゆっくりとキスをする。

 

「ンっ……!」

 

 親しい者がするような唇を合わせるだけのキス。

 されるがままの彼女は脱力したまま、瞼を閉じて唇を重ねる。

 

 唇の柔らかさを教わり、教える。

 口端から垂れる唾液を啜り、ゆっくりと絡めた舌が友奈の、高嶋の味を教える。

 視界の端で千景が食い入るように俺と高嶋のキスを見つめている。

 

「……っ、ん、ぅ……ん……」

 

 ふにふにと高嶋の乳房を揉みながら彼女を味わう。

 製菓だけではない甘さに覚えがあり、記憶を刺激する味がどこだったのかと高嶋の華奢な裸体を抱き寄せて頬肉の裏側を舌先で舐めると彼女は俺の手を握る。

 熟れた空気の充満した浴室にちゅぷ、ちゅぷりと唾液の絡む音が響く。

 

「……しちゃったね」

 

 ぺろりと赤い舌が唇を舐める。

 上気したような彼女は唾液を嚥下する音を混じらせて笑みを浮かべる。

 

「これがここでのマッサージの作法だから」

 

「そうなんだね」

 

「そんな訳ないでしょ……高嶋さん、こんな変態キス魔の言う事なんて真に受けたらダメよ」

 

「ほえ?」

 

「エッチな先輩は黙って下さい」

 

「な……! 別にエッチじゃ──」

 

 ブツブツと呟く黒髪の少女を視界の端に置き、ニコニコと笑みを浮かべる高嶋を見つめる。

 

「甘酒とか飲んだ?」

 

「うん。さっきね、ヒナちゃんが作ってくれたんだー。ぐんちゃんも後で一緒に飲みに行こうね」

 

「え、ええ……。あの、高嶋さん」

 

「なーに?」

 

「……もしかして、酔ってる?」

 

「よってないよ」

 

「…………」

 

 ふにゃふにゃとした笑みを千景に向けて赤面させる高嶋。

 どこか妖艶な空気を纏った彼女に口を開いた千景は言葉もなく閉じる。

 

 ──高嶋さん、酔ってない?

 

 俺に向けられる千景の視線を無視して、酩酊した眼差しの高嶋の手を取る。

 

「ほ~ら触ってみて、高嶋さん。気になるんでしょう?」

 

「……うん」

 

 男の身体にもたれかかり、男根に這いよる高嶋は積極的だ。

 友奈族特有の積極性を活かし、酒の勢いも相まって、彼女は肉竿を手で包み込む。

 

 しなだれかかるような体勢で彼女の細長い指が竿を愛撫する。

 滑らかな背中は白く、ふるりと揺れる高嶋の尻を片手でむにゅりと揉んだ。

 

「こんなにおちんちん腫れちゃってるけど大丈夫なの?」

 

「大丈夫じゃないよ。高嶋さんがエッチだからこうなっちゃったんだ。責任取って」

 

「ええ!? わ、私の所為なんだ……どうすればいいの?」

 

 無知を主張する高嶋に性知識を授けていく。

 かつて友奈に教えたように、純真無垢な少女に欲望に塗れた行為を教えることは背筋をゾクゾクとさせる。蔑みの目を向けてくる千景は口を開きつつも裸体を見られたくないのか無言を保つ。

 存在を消すかのように、肉棒を上下に扱く高嶋を上目遣いで見つめるばかりだ。

 

「これが気持ちいいの?」

 

「ああ」

 

「そっか……んッ……りょーくん、私のは別に触らなくて良いよ。ムズムズするから」

 

「お互いのムズムズを取るのがマッサージなんだ」

 

「あっ……そうなんだね」

 

 納得の眼差しで、ちゅこちゅこと根本から雁までを上下に手で扱く高嶋。

 肉棒に顔を近づけて這いよる彼女の尻肉を割り拓き、奥の秘裂を指の腹で刺激すると小さく喘ぐ高嶋の痴態を無言で見る千景に目を向ける。

 

「実は千景が上手いんだ」

 

「そうなの?」

 

「……え!? べ、べつにそういう訳じゃ……」

 

「それはもう凄いんだ。エッチなんだ」

 

「そんなに!? ぐんちゃんぐんちゃん! お手本見せてよ!」

 

「…………」

 

 無邪気とは恐ろしい。

 笑みを浮かべる高嶋に曖昧な笑みを浮かべる千景はキッと俺を睨む。余計な事を言うなと向けられる真紅の眼差しに小首を傾げ、高嶋の千景コールに渋々と湯舟から立ち上がる。

 浴槽の縁に腰を下ろし、温かな滴を滴らせる身体を俺に密着させると手を伸ばす。

 

「別に上手いわけじゃないわ……こんな感じで……」

 

「こう……?」

 

「千景はここから更に舐めてもくれた」

 

「ぶふっ!?」

 

「ホント!? すごいよぐんちゃん!」

 

「いやっ、ちがっ、あ、あなたね……!」

 

 顔を赤らめ上目遣いで睨む千景の細い指と高嶋の指が一つの肉棒を弄る。

 片方の手が竿を上下に扱き、もう片方の手が雁裏と亀頭をくすぐる。薄紅と黒、二人の勇者を侍らせて奉仕させていることへの征服感が俺を昂らせる。

 

「ぉ」

 

 俺の反応を楽しむように身体に抱き着く高嶋。

 呆れたような顔で、ペニスを扱く手は止めない千景。

 

「気持ちいい?」

 

「ほら高嶋さん。加賀くんが気持ちいいって」

 

「顔に書いてるね!」

 

 彼女たちが身体を揺らす度に薄くも美乳がふにゅりと揺れる。

 ときおり密着しては、その柔らかさや質感の微妙な違いが更なる情欲を煽る。

 

 彼女らの手は怒張に伸び、空いた手は俺の胸へ。

 唇がときおり肌に触れ、濡れた瞳から理性が流されていた。

 

 千景の力の籠った扱きと、それを見て真似する高嶋の絶妙な力加減。

 彼女らの手の中で陰茎は痛いほどに硬度を持ち、先走りを手に絡めてにゅるにゅるとした感触の中で甘い快楽に襲われる。

 苛立ち気味の千景はにたりと笑うと低い声色で俺にもたれかかる。

 アップにした長い黒髪からふわりと千景の香りが漂う。

 

「あら……? どうしたの加賀くん? まさかもうイっちゃうなんてことはないわよね?」

 

「くっ……、当たり前、だろ……」

 

「くふふっ……さっきまでの勢いはどうしたの? ねえ?」

 

「りょーくん、これが気持ち良いんだね」

 

 やわやわと陰嚢を揉む掌が精液を作らせる。

 高嶋の白い指が赤黒い肉竿に絡みつき、千景の指が亀頭を擦り続ける。

 

 自慰とは異なる女の手による不規則な上下の扱きに思わず呻く。

 そんな俺の痴態に笑みを深める千景は自らの胸肉を押し付けて顔を寄せる。

 

「ん……」

 

 ちゅっ、と触れた少女からのキス。

 興が乗ったのか、何かのスイッチが入った千景の唇は先ほどの白濁をしっかりと飲み込んだらしく不快な味もなく、吐息は熱病に侵されたように甘く乱れている。

 

「んー……、ンっ!」

 

 真似するように高嶋ともキスをする。

 淑やかな千景のキスと、初々しさのある高嶋のキス。

 千景と、高嶋と、交互に唇を重ねる度に俺を見つめる瞳がトロンと濡れる。

 

 このままあっけなく果ててしまいたい。

 そう思い始める心を余所に、両手が彼女たちの身体へと伸びる。

 

「ん、ゃ」

 

「ぁ、ふぁ……!」

 

 千景と高嶋の乳房を両手に収める。

 ふにふにとした柔らかさと、ふかふかとした質感、肌の張りや形、先端の乳首の色や敏感さがどれだけ違うのか彼女たちを比較して愉しむ。

 コリコリと乳首を弄ると眉をひそめて彼女たちは小さく喘ぐ。

 

「ん、ん……」

 

 俺の身体に自らの裸体を預けるようにしなだれかかる少女たち。

 黒と薄紅色の髪を揺らし、多幸感をもたらす勇者の乳房を揉み、背中を撫でて、互いの尻肉を揉むと、いつの間にか濡れていた媚肉を指で刺激する。

 雄を前にして濡れた雌肉は十分の湿り気を帯び、湯水と間違えないぬめりがあった。

 

 指に蜜液を絡めて軽い抽送をすると、喘ぎ声と共に薄い尻肉が振られる。

 絶頂を堪えるように目を閉じる高嶋と肩を震わせる千景の熱い瞳と視線を絡める。

 

「んぅ、っ……!」

 

「……ぁ、ッ」

 

 それでも肉棒から手を離さない彼女たちとの攻防は続く。

 互いに見つめ合い、触り合い、いやらしい水音を響かせ、意識すら快楽に溶け始める。 

 

「ぁ……む」

 

「ぁ、ぁー……」

 

 遂に業を煮やしたかのように、千景が亀頭と唇を重ねる。

 ざらりとした舌が亀頭を舐め、雁裏をなぞった。

 続く高嶋もまた啄むように性器に口づけをして、虚ろな目で射精を促す。

 

「うっ!」

 

 勢いよく白濁が噴き出した。

 千景と高嶋の顔を、髪を、乳房を汚す。

 高嶋は驚いたように雄の汚汁を浴び、千景は達成感と欲情で赤らむ頬を緩ます。

 

「いっぱい出たねー……! んっ、癖になりそうな変な味だ」

 

「……一応、タンパク質だから食べられるのよ。美味しくはないけど」

 

「へぇ〜、ぐんちゃんは物知りだね!」

 

「げっ、ゲームで知っただけだから……」

 

「それでも凄いよー。あっ、鼻についてるから取ってあげるね」

 

 怒張を挟んだ彼女たちは互いに付着した顔の白濁を指で取り舐め合う。

 無邪気に笑う高嶋と苦笑する千景の髪を撫でながら俺は静かに吐息した。 

 

 普段は少女たちを捕食して悦ぶ様に心と身体が悦んでいた。

 こんな風に少女たちに捕食されて悦ばされる機会はそう多くはない。

 

 刺激的で甘い夜だった。

 このまま三人仲良く湯舟に浸かり終わっても良いのではないのか。

 

「────」

 

 否、少女たちに弄ばれて、舐められたままで良い筈がない。

 眼前で精液を口に含む少女たちは可愛らしくもあり、忌々しくもある。

 

 加賀家の本家である乃木家にはある家訓がある。

 何事にも報いを。気持ち良くされたなら、もっと滅茶苦茶にするべきだ。

 

 さらりと黒髪と薄紅の髪を撫で、精液を咀嚼しながら俺を見上げた高嶋に囁く。 

 

「じゃあ、次は……俺の番ね」

 

 

 

 

 

 

 

 園子ですら難しかった高嶋友奈の調査は進む。

 

 高嶋家と結城家の友奈は身体の性感帯も殆ど一緒だった。

 捕食。肉を吸い、食らい、骨までしゃぶるように、奥から溢れる蜜を啜る。

 

「んくぅっ……! ぁぁぁっっ!!」

 

 愛らしい顔を喜悦に歪め、腰を浮かせる高嶋に余裕はない。

 見知らぬ快楽を教えられて、自分の身体に秘めた見知らぬ性感帯をこじ開ける。

 彼女が何を言おうとも、快楽の波に晒して、法悦の空へと昇らせる。

 

「またそれっ……! だめ、ダメぇ!! ……ぃぅッッ!!」

 

 柔らかく張りのある乳肉を揉み、引っ張ると戻ろうとする少女の乳房。

 噛み痕と唾液の痕が残った乳肉を両手で揉みながら、開かせた両脚の間に顔を埋め、一心不乱に媚肉に舌を沈めて動かすと見た事もない被虐の表情を浮かべる。

 涙を浮かべ絶頂に浸らせないでと懇願する姿は結城家の友奈と似ており、嗜虐心がそそられる。

 

「そんなとこ……きたない……ぁぁっ!!」

 

 あれから何分ほど経過しただろうか。 

 まろやかな乳房は両手に吸い付き、恥毛から覗くクリトリスは包皮が剥け、無防備な姿を舌でねぶる度に彼女は甘美な悲鳴と蜜を俺に捧げる。

 湯の味がした媚肉はすっかり柔らかくなり奥から溢れる高嶋の味で舌を染める。

 

「やだ……やだよぉ……またきちゃう……きちゃうよぉ……ッ!!」

 

 疑似肉棒として柔らかい舌で少女の媚肉を擦る。

 浴槽の縁で、いわゆるまんぐり返しと呼ばれる体勢にした少女の捕食を続ける中で、高嶋が俺の頭を掴み悲鳴を上げるがやめるつもりはない。

 肉芽の側面と根本を舌で虐められる度に彼女の身体は悦びに震えて蜜をあふれさせる。

 

「ちゃんと気持ちいいって言わないと」

 

「きもちいいからぁっ! もうじゅーぶんだからぁ……っ!! ぃ、ぁぁ……ッ!」

 

「あ、えっと……もうそれくらいで……」

 

「そこで見てろ」

 

「……ぁ」

 

 最初は酔った身体で抵抗していたが、その面影は既にない。

 彼女の呼吸は荒く、耳まで赤くなるほどの快楽の波に晒されて喘ぐだけだ。

 与えられる快楽を受け入れて、嬌声を上げて、恍惚に震える身体を女に変えられる。

 

 処女でも感じるクリトリスと媚肉の浅い部分が高嶋の好みだ。

 舌を限界まで動かして、鼻で陰核を擦り、身体の全てを使って高嶋を悦ばせる。

 

「ぁぅぅっっ!!」

 

 顔に噴きかかる粘液を舌に絡めて、俺は彼女の媚肉にキスを続ける。

 丁寧に、執拗に、紳士的に、情熱的に、高嶋が何を言っても決して奉仕をやめない。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 助けを求めた相手は赤らんだ顔で呆然と高嶋が絶頂に浸る姿を見つめるばかり。

 彼女の呼び声にオロオロと俺の腕を掴むも、俺が誠心誠意、高嶋に奉仕する姿を見届けた。

 

「はぁー……、はー……ぁぅ」

 

 十数分ほど奉仕し尽くしただろうか。

 だらしなく股を開き、荒い呼吸の度に乳房を上下させていた彼女は意識すら酩酊している。

 薄く目は虚空を見つめ、涎を口端から垂らす彼女も、高嶋を味わった俺も限界だ。

 

 限界まで反り立つ肉棒からは先走りが垂れ落ち、雌肉への射精を求めている。 

 一秒でも早く繋がり、余すことなく子種を注ぎたいと欲望が限界まで膨れ上がる。

 

 欲望の向かう先はヘロヘロになった高嶋友奈。

 結城友奈と容姿も性感帯も一緒な彼女の媚肉に亀頭を押し当てる。

 

「ま、待って」

 

 媚肉が僅かに亀頭を飲み込み、今にも彼女を貫かんとする一瞬だった。

 千景の柔らかな手が肉棒から高嶋を守るように媚肉を包み込む。

 目を向けると欲望に塗れた目をしていたのか、息を呑む千景は声を震わせて、

 

「そ、それは流石にダメよ」

 

 明朗快活な高嶋が雄に屈して快楽の波に飲まれる姿。

 それを止めることなく、彼女が絶頂する表情を、何度も気をやる姿を千景は見ていた。 

 今更になってどの口がと思うも、俺の胸板に手を置いて懇願するような眼差しで彼女は告げる。

 

「わ、私が……代わりにするから」

 

 柔らかい手が怒張に触れる。

 高嶋の代わりに自分がすると、以前告げていたことを実行するらしい。

 その精神は素晴らしいが、挿入を邪魔されたこともあり、少し考えて彼女に告げる。

 

「おねだりして。エッチな」

 

 そう告げられた千景は大きな瞳で俺を見ると顔を朱色に染める。 

 やや逡巡するように眉をひそめると、彼女はおもむろに肉棒を手に取り、自らの媚肉に宛がう。

 上目遣いで、喉を鳴らして、ぬめる媚肉と亀頭が触れ合う中で千景は懇願する。

 

「……挿れて」

 

「────」

 

「加賀くんの……硬いアレで……気持ち良くして下さい。お願い、します」

 

「ご主人様は誰?」

 

「加賀くんです。……ぁ」

 

 有無を言わさず俺は彼女を抱きかかえる。

 高嶋を見下ろすように、千景を背後から羽交い絞めにするとそのまま彼女を貫く。

 

「ん、ぁ……!」

 

 尻穴を締めて、熱くぬめる肉壺の最奥まで突く。

 湿った肉が怒張を飲み込み、白い肢体が高嶋の前で震える。

 

「ぁ、ぁ、ぁぁ……」

 

 ガクガクと震える少女の膝。

 膣が淑やかに怒張に絡みつきながら、肉棒を突き上げる度に嬌声を上げる。

 

「んッ、ぅ、んぅっ、ぁ、ぁぁっ!!」

 

 千景のむっちりとした尻がピストンの度に鼠径部を叩く。

 立ちバックで高嶋の前で千景を犯すと、肉壺は良く締まり、必死に声を抑えようとする彼女の嬌声が短く漏れる。

 

「んんっっ!!」

 

 解れた黒髪の隙間から覗かせる首筋に噛みつき乳房を揉みしだく。

 俺の腕を掴む彼女は臀部を押し当て、ピストンを心行くまで味わう。

 

 射精を待つだけの身体と化した状態で、やがて千景は高嶋の身体へと倒れ込む。

 力尽き倒れ込む彼女を、薄く目を開いた高嶋が受け止めた。

 ハッとした表情で千景が慌てたように俺に目を向けて、しかしピストンが止まることが無いことを知ると瞼を閉じて高嶋に抱き着くように顔を埋めた。

 

「ぐん、ちゃ……」

 

「へぁ、ゃ、たかひまひゃん……みにゃいでぇ……!」

 

 そうして絶頂に達する自らを隠そうとする千景の身体を無理やり起こす。

 涙と涎でぐちゃぐちゃな少女を背中から抱いて、高嶋の前で腰を振る。

 

「あッ、ぁ、あぁぁ~~~~ッッ!!!」

 

 必死に嬌声を堪えようとする健気な千景の絶頂。

 法悦に昇る彼女の最奥へ、俺は白く濃い欲望を注ぎ込んだ。

 

 溜まりに溜まった欲望は膣では飲み切れずにとろりと流れ落ち、高嶋の肌を汚す。

 高嶋の身体へと千景はゆっくりと倒れ込む。

 俺は千景の髪に顔を埋めて、しばらく目を閉じるのだった。

 

 

 




ぐんたかVSかっきーで風呂回の責めと受けの2話構成にするか悩んで、
1話に圧縮した結果、普段よりちょっと長くなった話


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第二十三話 目覚め、朝

 目覚めの瞬間はいつも、水面から顔を出すかのように唐突だ。

 睡魔から引き剝がされて現実を見ろと言わんばかりに覚醒へと導かれるのだ。

 それが良い夢でも、悪夢であっても、パチンと泡が割れるように意識が睡魔より乖離する。

 

「──?」

 

 寝言を呟く乾いた自らの声音が覚醒へと導く。

 焦点がゆっくりと合わさり、見知らぬ天井、見知らぬ部屋を知覚する。意識して呼吸すると自動で起動していた暖房の温かい空気が鼻孔から肺を膨らませる。

 二度、三度と、鼻呼吸を繰り返し、寝台と毛布の柔らかさに重い瞼を閉じて、

 

「ぁ、ぁー……?」

 

 四肢に血が巡らせて、瞼を閉じた裏側で意識と睡魔が戦う。

 二度寝をするか、健康的に目覚めてランニングにでも行うべきか。

 

 身体に異常はないか、拘束されていないか。意識と記憶は明白か。

 敵の襲撃を受けてはいないか。五感は正常か。声は聞こえるか。

 

 朝の習慣ともいえる自分自身への確認作業はこの世界に来てから続けている。

 眠っている間に樹海化が発生していないか、気が付いたら子供になっていたなどファンタジーな世界であることもあり、目覚めと同時に行われる点検作業は重要なのだ。

 それらを瞼の裏で進めて、自身に問題がないことに満足してから、改めて瞼を開ける。

 

 朝が始まる。

 

「東郷さんの髪が短くなった夢を見た……」

 

 東郷の髪が短くなり更に大人びたら、殆ど初代に近しい容姿になる。

 四国という箱庭で三百年。他人の空似なのかどこかで血が入ったのか。しかし所詮は夢の中の出来事であると頭を振り、欠伸と共に瞼を開けると黒髪が目に入った。

 シーツに広がる濡羽色の髪の千景があどけない寝顔を晒して寝息を立てている。

 

「すぅ………んん……」

 

 内気でツンデレな少女の幼い寝顔。

 身体を丸めるように眠っている彼女を包む毛布を捲ると、上半身は黒のシャツを着用し下半身がピンクの下着のみというラフな格好をしていた。

 薄い胸元に手を伸ばすとむにゅりと感じる柔らかな質感は彼女の乳房そのものだ。

 

「ん……さむ……」

 

 毛布を捲ったことで空気が入り込んだからか、千景は艶やかな腿をくねらせて自らを腕に抱く。

 曲線美を描く彼女の両腿の間に手を突っ込むと程よい弾力と生暖かさを覚える。キチンと食事を摂っているからか細くも肉と脂の乗った腿肉の感触と体温が手を温める。

 ゆっくりと両腿に挟んだ手を上下に抜き差しすると、彼女の形の良い眉がピクリと動く。

 

「んん……? ん~………たかしま、さん……」

 

 寝返りをうつ彼女は長い黒髪を広げ、ふわりと芳香を漂わせる。

 無意識に人肌を求めているのか背中を俺に預けた彼女は猫のように体を丸める。

 

「ダメ……かがくん…………こんなところで……」

 

 その姿に背後から抱きしめる。

 寝起きの人肌は心地よく、埋めた髪の毛は絹のように滑らかで少女の香りが肺に広がる。ふにふにと背後から乳房を揉みしだき、片方の手は恥部へ伸び、起こさない程度に女体を楽しむ。

 

「……ぁ……ふ、ぅん……」

 

 形の良い眉を僅かにひそめるも千景の覚醒は遅い。

 普段から夜遅くまでゲームの為に起きているからだろう、すべすべの内腿を手全体で堪能しながら下腹部を隠す唯一の布切れ越しに秘部を親指でコリコリと擦るも瞼が開かれることはない。

 それでも、ゆっくりと指で恥部を摩ると、長い睫毛に縁取られた瞼が僅かに震える。

 

『い、いいから! 自分で拭くから! そこは今敏感だからぁ……! ィ、ク……っ!!』

 

「ん……」

 

 昨夜の記憶が彼女から漂う淫靡な芳香とその姿に思い出す。

 湯舟に浸かってふやけた少女たちの肌を隅々まで拭いてあげたことを。

 

『ゃ、ぁ……もういいからぁ……タオルでクリクリしないでぇ……』

 

「っ」

 

『ん……水……? ありがと……口移しじゃなくていいから……んッ──』

 

「ぅ、ふぅん……」

 

『──ぷはっ!! はあ、はッ、は───、もう……好きにして……』

 

 湯冷めしないように少女二人の火照った身体を介抱して下着や衣服を最低限着せた。

 そのまま無抵抗の少女たちに水を飲ませて、千景の部屋にお持ち帰りしたのだ。夜遅い時間に誰かに遭遇することはなく、やや肌寒い中でキチンと布団と互いの人肌で眠りについたのだ。

 正しく朝チュン。事後と呼ぶべき状態で俺は眠る少女の身体を堪能する。

 

「んぅ…………そこ……らめ……」

 

 ふにふにと秘部を弄り、少女の白磁の肌に薄く朱色が差すのを見届ける。

 徐々に熱く荒い呼気と下着に広がる湿り気は、彼女の見る夢を喜悦に染め上げる。無防備な彼女のショーツの中に手を入れると柔らかい恥毛と蜜を滲ませる秘裂と肉芽を指に感じる。

 ゆっくり、ゆっくりと少女の性感帯を弄ぶように指で彼女の身体の変化を楽しむ。

 

 ゆっくりと。ゆっくりと。

 

「ぁ……ぁ、っ……」

 

 にちゅ、にちゅ、と布団の中で淫靡な水音が聞こえる。

 内腿を擦り、快楽から逃れるように腰を引かせる彼女を指で擦り続ける。

 

「は……ぁ、ぁぁ……」

 

 ゆっくりと。ゆっくりと。

 彼女の身体に背後からピタリと張り付いて、汗ばむ首筋をそっと甘噛みする。

 

「ふぅ、んッ……ぁっ……~~~~っっ!!」

 

 やがて、眠りながら身体を硬直させて少女は絶頂に達した。

 両腿を閉じると、身体をエビのように反らせた彼女の口端から垂れた涎がシーツに染みを作る。

 抵抗はなく、ただ快楽を享受するように千景は容易く夢の中で法悦に上った。ピクピクっと小刻みに震える彼女のショーツから手を引き抜き、赤らんだ千景の横顔を見下ろす。

 

「はぁ………はー……」

 

 口を小さく開閉させて、呼吸を整えようとする彼女は未だに目を覚まさない。

 ふと近くに転がっていた携帯端末を手に取り、眠り姫の顔を数枚ほど画像として収める。

 彼女の絶頂に浸る艶やかな表情を端末に収めたことで精神的な何かが満たされたのか、千景の身体をまさぐる手を放すと今度こそ起床しようと俺は身体を反対側へ向けた。

 

「────」

 

 友奈がいた。

 

 髪留めのない、髪を下した高嶋友奈は本当に結城友奈と見分けがつかない。

 乱れた髪を枕に広げ、あどけない寝顔で寝息を立てている姿は思わず抱擁せざるを得ない可憐さがあった。千景や東郷と友奈族への狂信者が生まれるのも納得の可愛さだ。

 水音が煩かったのか一瞬だけ開かれた瞳はぼんやりとしており、やがて再び瞼を閉じる。

 

「……ん」

 

 布団を捲ると白い身体が映り込む。

 辛うじて肌を包むのは彼女が最後に着用していた下着類のみだ。千景の肌と比べて高嶋の肌は明確な傷という物もなく下着のみを着せて千景の部屋まで運んだ。

 ふにゃふにゃ少女二人に衣服を着せるのは思った以上に重労働で妥協の必要性があった。

 

「高嶋さんもかわいいよ」

 

 下着姿の少女を抱きしめて薄紅色の髪に鼻を埋める。

 黒のリボンの付いたピンクのストライプ柄の可愛らしい下着は千景が選んだのだろう。ときおり制服のスカートから覗かせる青と白のストライプ柄ではない、少し背伸びをしたような下着だ。

 普段から高嶋のことを考えている千景が選んだそれは彼女にとても似合った。

 

「んゅ………はぐー……」

 

 寝ぼけているのか、口元を緩ませて瞼を震わせる彼女は俺の抱擁に応じる。

 ぎゅうっと抱きしめてくる彼女、その柔肌と体温に思わず安堵の吐息を漏らした。

 

「……友奈」

 

「ん」

 

 友奈族は心のオアシスと言っても過言ではない。

 結城家の少女を高嶋家の少女に重ねて、そこに少しの差異を感じて自己嫌悪に浸る。それ以上に、スリスリと首筋に顔を埋める彼女の抱擁に心が満たされていく。

 柔らかく、温かく、高鳴る彼女の鼓動に無言で目を閉じて、少女の尻肉に触れる。

 

「んっ……」

 

 ふにふにと独特の弾力のある彼女の臀部。

 尻肉を割り拓き、ぎゅむっと握ると少女は僅かに熱のある呼気を漏らす。

 

 三十秒。

 

 いつだったか、園子から聞いたことがある。

 異性とハグして三十秒が経過するとストレスが半分ほど無くなるらしいと。

 

 薄紅色の髪の毛をそっと撫でながら、それを実感する。

 人肌が、匂いが、無力で矮小な自分を許してくれると、そう感じて。

 

 告げられた訳ではない。

 荷物ではないのかと尋ねれば勇者部の人間はそんなことはないと否定するだろう。

 だが、他人の心の内は誰にも分からないものだ。何を考えているかなど神にも読めない。

 考えていることが分からなければいつ裏切るかも分からないのだ。

 

 裏切られるというのは恐ろしい。

 それまで築き上げた土台が全て崩れ転がり落ちていく、全身の血が抜けるような感覚。 

 愛憎は表裏一体とよく言ったものだ。

 力もなく、せめて次は裏切られないように、他人の弱みを握り支配しようと考えるのは仕方がない。関わる人間すべての弱みを握ることが出来たなら健やかに眠ることが出来るだろう。

 今度はきっと誰にも裏切らせないことに安堵を抱いて。

 

「────」

 

 一人でいるとき、そんなことが頭を過る。

 こんな中二病みたいな暗いことばかり考えているから勇者になれないのだろう。

 指に嵌めた指輪を撫でて、血の巡りをよくするように手首を揉んで思考をやめる。

 

 人肌は偉大だ。

 身近な者を抱くと心が癒されるから。

 

 浅く、低い呼吸を繰り返す高嶋をそっと抱き返して、手を放す。

 純粋で優しくて裏切らない少女のことを好ましく思いながらも、俺はそっと身体を起こす。

 

 千景の寝台は年頃の少年少女三人分を乗せて僅かに軋み音を立てていた。

 人肌で温まった名残を身体に感じながら、薄紅と黒の美少女を二人、高嶋と千景を寝台に横たえる。くんずほぐれつ、腕や足を絡めあうように抱き合わせて布団を掛けなおす。

 少女たちが目を覚ますという愚行を犯すことは奇術師の名に懸けてありえない。

 

 高嶋と抱かせた千景もきっと喜んでくれるだろう。

 床に散らばっていた衣服を着こみ、彼女たちの脱ぎ散らかした衣類を畳む。

 最後にすやすやと寝息を立てる彼女たちの寝顔を携帯端末で撮ると、俺は部屋を出たのだった。

 

 

 

 +

 

 

 

「はえー、千景の部屋に泊まったのか」

 

 寄宿舎の食堂は無料だ。

 大赦からの手厚いサポートにより様々なうどんの他に人気の定食もある。

 うどんは昼に食べるとして、朝はやはり洋食を食べるのが加賀家の習慣である。

 

「朝? もう昼に近いぞって、そうじゃなくて! ……えっ、やっぱり千景のマウンテンにアタックしちゃったのか!?」

 

「も、もう! タマっち先輩、朝からそういうのはダメだよ」

 

 寄宿舎には様々な時代から呼ばれた勇者や巫女が住んでいる。

 俺の眼前にいる少女たちは西暦時代の四国を守っていた初代勇者である。朝から寄宿舎にいるところを発見された俺は彼女らと共に朝食を摂ることになった。

 驚愕、そんな表情を浮かべる勇者に対して俺は首肯と同時にニヤリと笑う。

 

「アタックどころかダイビングまで決めちゃったぞ」

 

「そこまで!? ダイビングなんてタマですらあんずにしかしたことないのに!」 

 

「タマっち先輩!? りょ、亮之佑さんもあんまりそういうのは……」

 

「ほっほっほ。事実は小説より奇なりとはよく言うじゃろう? 杏の自室にある棚裏に隠してある官能小説や大好きなサンチョ先生直筆の官能小説並に凄いことをしてきておるぞ」 

 

「そ、そんなに……ハッ!」

 

「……まあ、あんずは……うん」

 

「ちょ、違うからねタマっち先輩! 違うから! 隠してないから!」

 

 背が低く腕白で落ち着きのない茶髪の勇者の名は土居球子。

 勇者部で少年のような言動をするキャンプの愛好家であり話がよく合う友人である。

 

 よくひなたや東郷に吊るされる球子の暴走を諌めるふんわりとしたミルキーブロンドヘアの勇者。

 スタイルの良い文学少女、伊予島杏は若葉たち丸亀組の軍師であり、この世界で園子に出会ってからは特に年下の少女たちに対してビュオオオウ!! と風を吹かせていくようになった。

 俺の好きな金髪ふわふわ令嬢の影響力はそれはもう物凄いのだ。

 

「まあ、ダイビングはちょっとしたジョークだよ。高嶋さんも一緒にいてゲームもしてたし、雪降ってたのもあるからそのまま泊まっただけだよ」

 

「確かに昨日は雪が積もったからな~。でも、あの千景の部屋に泊まったのは凄いと思うぞ」

 

「無理に帰らなくて正解だったと思いますよ。帰る途中で事故にあったりしたら大変ですから」

 

「夜になるのも随分と早くなったからなー」

 

「そもそも朝が来ない時もありますからね。出来るだけ固まって行動した方がいいんです」

 

 少女たちの言葉に相槌を打ちながら窓に目を向ける。

 陽光差す窓には雪が張り付き、積もった雪を少しずつ溶かしているようだった。

 夜が終われば日がまた昇る。当たり前に思える常識はこの世界では通じない。

 

 神樹の中にいる神々や中立神などの影響により、陽光が無い果てなき夜が続くことを杏は告げていた。それらはときおり現実世界でも発生し、混乱が生じることも度々あったのだ。

 

「まあ、雪ってのは溶けたら溶けたで足を滑らせるからな」

 

「なんだ、亮之佑は冬は苦手か? もうすぐサンタさんの来るクリスマスや大晦日、お正月とイベント盛沢山の季節が来て、さらに雪で遊べることの何が不満なんだ」

 

「いや、これでも昔は園ちゃんとカマクラとか作ったりしてたぞ」

 

「ほう。カマクラと言えば、銀たちが秘密基地の改築をしてるらしくてな──」

 

「あっ、そういえばなんだがこの前、夏凜も小さくなっただろう? それで小さくなるなら大きくなることもあるんじゃないかって──」

 

 和気藹々と情報を交換し、話をしている最中、球子の開いた口がふと閉じられる。

 その視線が向く先は、俺の隣でうつ伏せになって唸り声を上げる少女。

 彼女は最初からそこにいた。うどんを食べ終えて顔を伏せている彼女のどんよりオーラに誰も近づかず自然と空いていた場所で球子と杏は食事をして情報交換をしていたのだ。

 このどんより若葉ちゃんは球子曰く西暦時代でもよくあることだと告げていたが──、

 

「なあ、若葉もいい加減何があったか言いタマえ! 仮にもタマたちのリーダーなんだから昔の千景みたいにウジウジするんじゃない! また、ひなた関連なんだろう?」

 

「球子……仮にもと言ったか?」

 

「そこは気にしないでくれタマえ!」

 

 長い金髪を姫カットにした少女。

 丁寧に編み込まれた髪型は下ろされていた為、先ほど俺が見慣れた髪型へと戻した。髪の毛に触れている間、若葉はただ唸るばかりで抵抗することも無く、杏は無言で目を輝かせていた。

 

「勇者部五箇条! 悩んだら相談!」

 

「そうだな……実は」

 

 おずおずと、珍しく言い淀む若葉は口を開く。

 俺に目を向けて、杏や球子に目を向ける瞳は揺れ動き、艶やかな唇が震える。

 

「そういえば今日はひなたさんは一緒ではないんですね」

 

「……ッ」

 

「ああ、やっぱり」

 

 杏の何気ない言葉は若葉の態度に関係があったらしい。

 分かりやすく、顔を赤らめて目を泳がせる彼女の姿を肴にコーヒーを啜る。

 

「ひなたは……、いや昨日のことだ。じ、実は……昨日、ゲームをしていたんだ」

 

「……続けて」

 

「ああ、それで友奈も加わって千景に勝つ為の特訓をしていたんだ」

 

「ここまでは普通だな」

 

 球子と杏の三人で相槌を打ち、悩める女の言葉に耳を傾ける。

 昨夜は高嶋が告げた通りに若葉の部屋でゲームをしていたらしい。そうして楽しくゲームをしていた時にひなたが持ってきたお菓子を手にした時に何かが起きたらしい。

 

「確か……勇者部のお礼品だと言っていた……」

 

「あれを食べてから……その、なんだか身体がふわふわとして……」

 

 普段は堂々とそれなりにある胸を張り、明朗に言葉を発する若葉。

 その表情は現在にではなく、昨夜のことに思いを馳せているように虚空を見つめている。

 

「それで?」

 

「気が付けば……友奈が帰って……その、ひなたが……玩具で私を……」

 

「玩具?」

 

「うわぁあああっ!!」

 

「うーん。聞いているといつもの奴だと思うんだけどなぁ」

 

「冷静だね、タマっち先輩は」

 

「夫婦喧嘩は犬も食わぬという奴だろ。タマは詳しいんだ」

 

 若葉とひなたのことに関しては、やはり勇者として同期なのか理解のある少女たち。

 忘れたいほどに恥ずかしいことがあったのか、ブツブツと呟く彼女は再びテーブルに顔を伏せる。耳を傾けると「ひなたが……」とか「あれを私に……」と実に平和的な内容だ。 

 

「どこがだ! ハッ! ……亮之佑、お前がひなたに何か吹き込んだんじゃ……」

 

「まさか。俺は何もしてないけど、もしかして二人で大人の階段登っちゃった?」

 

「……ッ」

 

「えぇっ!? 本当なんですか!」

 

「い、いや、ちがっ……! た、鍛錬に行ってくる!! りょ、亮之佑も付き合え」

 

「えー、寒いから嫌です。階段なりどこなり勝手に駆け上がって下さい」

 

「さ、最初に階段を登らせたのはお前だろ!」

 

「えっ、若葉さん? 今の発言はどういう……」

 

「ぁ───、~~~~~ッッ!!」

 

 自爆してかあああっと赤面する少女の表情はいつだって美しい。

 ひなたではないが、ニコニコとポーカーフェイスをする園子のふと照れたりした表情を隙あらば携帯端末に収めては怒られるくらいには、少女の羞恥に赤らむ表情は好きだ。

 脳の処理が限界を超え食堂から走り去る彼女を見届けると向き合う少女たちの視線が刺さる。

 鈍感な少女と察する力のある少女の向けられる瞳の色は真逆だった。

 

「つまりどういうことなんだ?」

 

「タマっち先輩には早いかな。……亮之佑さんは流石ですね」

 

「照れるな。あっ、別に誰も彼もってことはないから安心して」

 

「それは……そうですね。この数年で理解したつもりです」

 

「ん〜?? さっきからあんずは何を言ってるんだ?」

 

「気にしないで」

 

 寄宿舎を訪れた回数はもう覚えてはいない。

 大半の勇者と巫女が住んでいる以上、足を運ぶ回数は必然と多くなる。

 その結果、こうして見目麗しい少女たちと部活動以外でも話すことは増え、信頼関係を構築しつつ、情報交換を進めることが出来るようになったのだ。

 

 もういくつ寝るとクリスマス。

 この世界に来てから何度目かの年越しが近づいていた。

 

「それにしても、二人はいつも一緒にいて本当の姉妹みたいだね」

 

「そ、そんな」

 

「照れるじゃないか~。1タマポイントをやろう。亮之佑だって結城や東郷、園子とよく一緒にいるじゃないか」

 

「俺レベルになるとプライベートな時間も必要になるんですよ」

 

「なるほど、倦怠期って奴か。というか一緒に暮らしているとかじゃなかったのか?」

 

「倦怠期って……違うと思うよタマっち先輩」

 

「いや……まだ同棲してるって段階ではないかな」

 

「まだ、なんだ……」

 

 友奈や東郷とも殆ど同棲しているような付き合いだ。

 あられもない姿を見たり見られたりもしているが、年中一緒という訳ではない。加賀家最後の血筋となっている俺とは違い、彼女らは自らの親との付き合いもあるのだ。 

 中身が既に中学生を超えていようとも、此方の都合で彼女たちを拘束するのも心苦しい。

 彼女たちにも予定があるのだ。あまり束縛するというのも良くないだろう。

 

「なにより今日は友奈が東郷の家にお泊りしてるから。邪魔するのはちょっと」

 

「本音は?」

 

「ずっと一緒にいたいかな」

 

「──そんな寂しがりなかっきーを、私が独り占めしちゃうんよ~」

 

 一瞬、俺を見る少女たちの驚いた顔が映り、視界が黒く染まる。

 柔らかい掌の感触と、優し気な、親愛の籠った声色が強張った身体を解す。

 

「……大赦の方で用事があるとかでいないんじゃなかったの?」

 

「そっこーで終わったんよ! 瞬殺! ズババババン! って感じで」

 

「いつからいたんだ?」

 

「ひみつ」

 

 耳元で囁く声が優しく鼓膜を伝い脳を震わせる。

 後頭部に感じる豊かな質感は彼女の余裕の表れであると同時に、小さな疑問を抱かせる。

 

「えっと……園子さんのお姉さんでしょうか?」

 

「ん?」

 

 言語化されていない疑問、それが形になる前に杏の震える言葉に眉をひそめる。

 乃木家の末裔である園子に姉妹はいないし聞いたことはない。家柄故に隠し子はいるかもしれないが、少なくとも背後にいる人物が園子の姉ということはあり得ないだろう。

 何故なら──、

 

「俺が園子を間違えることは無いからだ」

 

 振り返ると知らない少女がいた。

 否、知らない訳ではない。寧ろ知らないことは無いし、これから先も知っていきたい。

 親愛を、友愛を、確かな信頼に乗せて見つめてくる瞳に何度応えたいと思ったことか。

 

 加賀亮之佑が乃木園子を間違える筈がない。

 そうありたいと、そう思うことはただの傲慢でしかなかったのか。 

 

「──だ、誰……」

 

「そうか……知らぬか。では名乗りを上げようか!」

 

 背後にいた女の容姿は大学生くらいだろうか。

 少女、というにはやや大人びた表情を浮かべて、振り向いた俺の顔を見て破顔する。

 見慣れた姫カットはともかくも、背丈も体格も僅かに声すら違って聞こえる彼女は大学に行けばさぞモテるだろう美女だった。

 

「あなたのサンタクロースで~す!」

 

 金髪の美女は何故か赤と白を基調とした衣服と帽子を着ていた。

 ミニスカートなサンタクロースがやってきた。

 

 

 




ゆゆゆ三期の最終回は喪失感と寂寥感がたまらなかった…でも勇者は不滅なんだ。


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第二十四話 ふわふわサンタクロース

 食堂にて謎の美女が俺の隣にある椅子に腰を下ろし、当たり前のように俺の手を握る。

 大胆不敵なその行為を行った相手に顔を向けると目が合う。年上の美女に無言で微笑まれ胸がときめく俺を他所に、正面に座る杏や球子は戸惑いや警戒を見せたりと様々な反応を見せる。

 そんな表情を浮かべる少女たちに対しても安堵させるように微笑む美女は、

 

「も~、そんな警戒しなくても大丈夫。ちょっと大きくなっただけだから」

 

「園子先生……ですよね?」

 

「そうだぜあんずん。一体私を誰と間違えるつもりかな? 破門にしちゃうぞ?」

 

「ご、ごめんなさい。あの、その……凄く美人になってたもので。も、元々美人でしたが」

 

「これはぶっタマげたな! 本当に大きくなるとは!! しかもサンタでマウンテン!」

 

「えへへ……照れちゃうよ。あっ、お触りはご遠慮下さ~い」

 

 中とも小とも異なる第三の少女。否、もう少女と呼べない程度には大きく成長した彼女。

 赤を基調とするモコモコとしたサンタクロースの衣装を彼女は着用していた。赤い三角帽子を被る彼女は見慣れぬ色気を纏わせる。 

 赤色のミニスカートから覗く純白のハイニーソに包まれた白くも細い脚。

 スカートとハイニーソの間から露出した太腿に俺の手を握った少女の手が置かれる。

 

 園子(大)と呼ぶべきか悩む彼女は見た目はともかくも中身に変動は見られないのか。ジッと彼女の横顔を見る俺はいつの間にか吸い込まれるように琥珀色の瞳と見つめあっていた。

 フレンドリーな空気を醸し出す園子は数秒視線を絡ませると揶揄うように頬を緩める。

 

「かっきーからも何か言うことは無いのかな~? 惚れ直しました~とか」

 

「惚れ直すも何も……」

 

 パチンと片目を閉じてウインクしてくる令嬢。

 茶目っ気があり、気品と余裕を見せる彼女は小首を傾げると公衆の面前でキスをするかのような距離で端正な顔を近づける。色白の肌はきめ細かく、細く形の整った眉毛。長い睫毛に縁取られた瞼を開き俺を見つめる彼女こそを美女と呼ばず何と言うべきだろうか。

 

「ねえ?」

 

 この世界で二度目の生を受けてから、ありったけの初めてをくれた彼女。

 これから先、何があっても、死ぬまで彼女と出会えたことを誇りに思うだろう。

 園子のことは神樹館小学校に入学する前からの長い付き合いなのだ。一年程度しか知り得ていない三ノ輪銀や鷲尾須美よりも彼女のことを知っていると密かに思っていた。

 だから、またこうして新たな一面を知ることが出来たのは──、

 

「かっきー」

 

 男を勘違いさせるような、ふわふわとした掴みどころのない微笑。

 幾千と見てきた彼女のポーカーフェイス染みた笑顔の奥でいったい何を考えているのか。

 薄く艶やかな唇から、愛おし気に、幾万と呼んでくれる、彼女だけの俺への渾名で。

 

「あれれ? かっきー大丈夫? 少し顔が赤いかな? 風邪……かな?」

 

「────」

 

「さ、流石にそれは距離が近すぎるんじゃないか? 不純異性交遊って奴だぞー」

 

「不純じゃないから大丈夫だよ~タマ坊」

 

「ビュォォオオゥ!! 自らの手で小説を創造し、そして自らもまた小説の題材となる! これが永久機関にして至高! 流石です! 園子先生!!」

 

「あらら、いつものように額をごっつんこしちゃった~。てへっ」

 

「いつものように!? 少女漫画でしか見たことのないスキンシップ! さりげなくアピールすることで周囲の女たちへの牽制も同時に行っているということですか!? なんて恐ろしい……」

 

「あんずんに紹介するね。私のかっきーです。私がサンタならかっきーはトナカイの関係なんよ」

 

「わ、た、し、の!!? ……サンタとトナカイ……何かの隠喩表現?」

 

「おーい、あんず戻ってこーい。園子もあんまり揶揄うなよー」

 

 周囲の騒がしさに高鳴る鼓動が少し落ち着く。

 額を合わせて熱を測るあざとい行為をする園子の進化の先を垣間見てしまった。

 

「でも、この測り方ってかっきーが教えてくれたよね」

 

 上目遣いをする美女の目線にせがまれて、俺は手を動かす。

 サラリとした絹のような髪の毛を指で梳くとうっとりと目を細める園子。少し声が低くなったように感じる彼女の身体は普段抱擁した時よりもやや体格も背格好も異なり別人のようだ。

 くぅーんと掌に肌を擦り付ける彼女は笑みを浮かべたまま杏や球子に目を向ける。

 

「えへへ……ちなみに、もう大赦もこのことは把握済みで病院で検査も終わってるよ~」

 

「抜け目がないですね……」

 

「大体一週間くらいで元に戻るらしいんだけどね……ちょっと困ったことがあるんよ」

 

 俺の身体を確かめるようにさわさわと手で触れる彼女は携帯端末を取り出す。

 勇者に変身する為のアプリを起動しポチポチ指で触れるも、一切の反応を示さない。

 

「──と、まあこんな感じで勇者になれなくなっちゃった~」

 

「機械の故障とかじゃないのか?」

 

 と、そう言いながらもその線は殆ど無いだろう。

 隙あらば昼寝をして何を考えているか分からないふわふわした変な子あるいは不思議ちゃん扱いをされることの多い園子ではあるが、頭の回転は速く抜け目は無い。

 案の定、園子が頭を振ると被った赤い三角帽子の白いポンポンが揺れる。

  

「アプリの方は正常なんだけど、私の方が異常らしいんさ」

 

「続けて」

 

「ほら、勇者も巫女も前に比べたらいっぱい増えてきたでしょ? 戦いはまだまだ続くだろうけど神樹様の力も無限にある訳じゃないから、これは一種の省エネみたいな状態なんだと思うんだ」

 

「省エネ?」

 

「勇者アプリを使用出来ない年齢まで身体を成長させるとか」

 

「それは余計に力を使ってるんじゃ……」

 

「小さくするのはともかく元の世界に戻す方がリソースを使うとかじゃないのかな? この世界の身体って神樹様の中で作られている訳だから大きくするだけの方が都合がいいのかも。もしくはちょっと前の勇者を指定して戦わせていた時みたいに神様による試練かその余波とか」

 

「なんて傍迷惑な」

 

「神樹様は人間側の味方をしてくれるけど、目線も考え方も神様だからそういうものなんだよ~」

 

 今語ったのはあくまで推測の域を出ないことだと園子は続ける。

 既にひなたを始めとした巫女陣に連絡を行ったが神樹からは神託は無かったらしい。大赦は神樹以外の神からの試練か何かしらの影響を受けた結果ではないのかと考えているという。 

 成長した肉体に不具合や痛みがある訳でもないから園子的には問題も無いようだ。

 

 気が付いたら身体が小さくなっていた。

 事実は小説よりも奇なり。人が小さくなることも大きくなることも普通は大事件だろう。そもそも、あまりにも展開に脈絡がなさすぎると編集が騒ぎ立てそうだ。

 そんな現象を当たり前のように人々は受け入れているが、神の掌で転がされすぎではないのか。

 

「それがこの時代、神世紀という物ではないのでしょうか」

 

「ひなタン」

 

「こんにちは、お二人とも。聞いてはいましたが……園子さんは大きくなりましたね」

 

「うん。かっきーに育てて貰ってるから。……俺が大きくしてやるぜゲヘヘ〜って」

 

「まあ!」

 

 近所で世間話をする奥様方のように口元に手を当てて驚く巫女。

 いったい誰の物真似なのか、ニヤリと笑うサンタは背筋を伸ばした胸を張る。

 得意げな表情をする美女の豊満な双丘が赤色の上着越しにふるりと揺れるのが見て取れた。衣服越しに主張する乳房は彼女が密かに自慢に思っていた中学校時代よりも成長しているようだ。

 

 胸を張ってサンタは告げる。

 

「おかげさまでこんなに育ちました」

 

「いいな~タマもそんなに大きくなりたいな~、くれ! そのマウンテンくれ!」

 

「タマっち先輩は私が育てるから大丈夫だよ」

 

 この国で最上位に君臨する令嬢をもてなす為に俺は料理の腕を日々鍛えている。

 よく食べてよく眠る。実家で贅を尽くした料理に対して所詮は素人の男料理と粗末な物だろうが、彼女の身体がスクスクと立派に成長していることの要因の一つにはなっているだろう。

 

 園子もまた俺と同じように実家を出て一人暮らしをしているのだが、殆ど毎日のように俺の家に来る。随分と前に大赦内部での勢力争いから逃れる為に結城家向かいにある空き家に住むことになった経緯があるのだが、もともとは乃木家の別荘の一つである。

 

 一人娘が日々男の家に転がり込み一夜を過ごすことを乃木家は黙認しているどころか、肉体的に未成年である俺に代わり加賀家の実家の管理までしてくれている。

 そんな事情もある為、俺は彼女を出来る限り楽しませ悦ばせなくてはならないのだ。

 

「園子を愛でて育てるのは俺の義務だから」

 

「そんな義務は初めて聞いたかな。来年のお正月も少し本家に来てくれるくらいで十分だから~」

 

「お盆も、だろ?」

 

 ニコニコと笑みを浮かべる園子サンタ。

 大人になっても触れた肌は柔らかく自然と頬を捏ね繰り回すとコホンと咳が聞こえる。どこか気まずそうな少女たちとは対照的に余裕の表情を浮かべる巫女が頬に手を当てる。

 彼女の精神は目の前で男女がイチャイチャしていても揺らぐことは無かった。

 

「ふふっ、本当に仲が良いですね……私と若葉ちゃんみたいに。若葉ちゃんは公衆の面前でイチャイチャするのは恥ずかしがりますから少し羨ましいです」

 

「ひなタンにそう言って貰えると嬉しいな~」

 

「良かったね、園ちゃん」

 

「イエーイ!」

 

「……これでしばらくの間、園子さんは戦線離脱になりますね」

 

「前もそんな時期があったから慣れてるよ」

 

「そうでしたね。ご不便をおかけして申し訳ありません」

 

「大丈夫だって。園子がいなくてもタマ達がなんとでもしてみせるさ!」

 

「うん。頼りにしてるよ~」

 

 テーブルに置かれた茶菓子を手に取る園子を微笑まし気に目を細めるひなた。

 彼女にとっては不思議っ子の令嬢は親友の子孫で友人なのだ。普段から色々と気に掛けている巫女は「さて」と両手を軽く叩き周囲を見渡すと小さくもよく聞こえる声音で、

 

「ところで若葉ちゃんはどちらに?」

 

「あっちに行ったよ」

 

「ありがとうございます。ふふっ……逃がしませんよ」

 

「ヒエッ」

 

 丸亀組の面々が喉を鳴らすほどの笑みを浮かべた。

 その笑みは可愛らしいと同時に威圧感が強く、嘘を許さない物だ。

 嘘を吐くメリットも無く、誠実で紳士な俺は彼女の言葉に出来るだけ簡潔に答えた。 

 

「あ──! 今、私も若葉ちゃんの気配を感じました。あっちにいますね」

 

「なあ、ひなたは何を言ってるんだ?」

 

「……タマっち先輩、うどんが伸びちゃうから何も考えずに食べた方がいいよ。早く」

 

「それもそうだな!」

 

 下腹部を撫でて虚空を見つめた巫女はニコリと微笑む。

 正直者には優しく、表情の裏側すら見透かすような眼差しはたった一人の親友の為に向けられる。巫女パワーかヤベー何かが自爆して逃げ去った若葉の居場所を感じ取ったのか。

 スタイルも思考もヤベー姿は、容姿も相まって東郷と重なって見えた。

 

「それでは私は行きますね……あっ、そうそう。亮之佑さん?」

 

「どうしたの東郷さん? じゃなくてひなたさん」

 

「……? ちょっと耳を貸して下さい」

 

 うっかり東郷さんを発症した俺の耳元に端正な小顔を近づける巫女。

 スタイルの良さは男の目線を吸い寄せて、長い黒髪からは芳香を漂わせる。どこか情事の名残を感じさせる彼女の香りと髪を耳に掛ける仕草に鼓動が高鳴りを覚えて、

 

「今日の分、送りましたから。撮りたてですからよろしくお願いします」

 

 ふぅと吐息を耳穴に吹き掛ける巫女は妖艶な笑みと共に去る。

 彼女がこの後何をするのか、捕まった若葉の身に何が起きるのかは重要ではない。

 俺に抱き着く園子の豊満な身体と体温が思考を他所へと移させなかったから。

 

「今日の分って何?」

 

「──。最近は色んな思い出を脳にじゃなくて形として残すようになったんだ。人とか撮ってアルバムに残して後から見返す。ひなたさんとたまにデータを交換とかしてるんだ。これが楽しい」

 

「……ふぅ〜ん」

 

 園子の疑惑の眼差しが俺に送られる。

 むにゅ、むにゅりと赤い衣服越しに乳房を押し付けるサンタの半眼。

 意識して行っているのだろう、俺を見上げる彼女は静かに告げる。

 

「悪い子にサンタはこないんだよ」

 

「──、俺は良い子だから園ちゃんサンタは来たんだろ?」

 

「ん! ……かっきーは今年一年良い子にしてた?」

 

「勿論。なんたって去年は東郷サンタが、一昨年は友奈サンタが来てくれたから」

 

「わっしーは判定が甘いからな~。ゆーゆは言わずもがなだ~」

 

 テーブルの下、細くも筋肉のある腿を撫でるとビクッと震える園子。

 滑らかな乙女の肌は彼女に選ばれた者のみが触れることを許される。白い縁取りのされた赤いミニスカートから覗く太腿は生暖かくスカートの奥に手を伸ばして暖を取る。

 伸ばした指先、指の腹が布切れ越しに花園に触れた瞬間、立ち上がった園子。

 

「……っ」

 

「ん? どうかしたのか園子」

 

「──ううん。なんでもないよ。そういえば迎えの車を呼んでるから私たちは帰るね」

 

「もう暗くなってきたもんな。ところで結局なんでサンタコスをしてるんだ?」

 

 僅かに余裕の無くなった園子を見上げて告げる球子。

 彼女の言葉通り、本日は特にサンタのコスプレをするような特別な日ではない。

 クリスマスはもう間近に迫っているのだが──、

 

「ほら、クリスマスの日は恒例の幼稚園でのサンタさんをするでしょ? 夜は勇者部での健全なクリスマス会だからリハーサルも兼ねて着てみたかったんよ」

 

「確かにサンタの衣装を着る機会はあまり無いですからね……」

 

「うん。そ、それじゃあ二人とも、また来年〜」

 

「いやいやいや。年越しはまだだぞ~」

 

「あはは……」

 

 思ったよりもやや力の増したサンタは有無を言わさず俺を外に連れ出す。

 明るいと思っていた陽光は既に遠く、曇天の隙間から見慣れた闇夜が再び顔を出し始めていた。寄宿舎の外は寒く、吐息は白く染まり、ふるりと震える園子に上着を着せる。

 

「ありがとう……でも、さっきはビックリしたよ。エッチなんだから」

 

「そんな恰好をする方が悪い。……本当にそんな恰好で来たのか」

 

「一応コートは着てたんだけどね」

 

 寄宿舎にピタリと止まったままの高級リムジン。

 隣を歩くサンタクロースがこの国で最上位の令嬢なのだと認識させる光景に瞬きを繰り返す。

 

「あっ」

 

「どうした」

 

 自動で開かれた扉の前で彼女は止まる。

 忘れ物かと尋ねるも首を振る少女は瞳を煌めかせると手を伸ばす。

 自分の頭部に置いた掌が俺の頭に向かって発射されると着地、頭を撫でた。

 

「……えへへ。背、抜いちゃったね」

 

「…………。園ちゃんの癖に生意気だ」

 

「どういう意味かな~……? やん!」

 

 ぶうぶうと年に似合わぬブーイングをするサンタを車内に放り込む。

 さて寄宿舎に戻るか、と背を向ける俺の手を引っ張る彼女に乗せられて車は発進した。

 

 車窓から覗く世界はあっという間に流れていく。

 瞬きを繰り返す度にもうここまで来たのかと文明の利器の素晴らしさを思い知る。

 

「かっきーもいつか免許取ろうと思ってる?」

 

「まあ……」

 

 この肉体年齢でいる以上、そのいつかは来ることも無いだろう。

 いつか、終わりはくるかもしれないが、その終わりがいつかすら分からない。

 

「いつの日か取ってもいいかもしれない」

 

「そっか~」

 

 車窓に向けていた顔を車内に向ける。

 すぐ目の前に園子の顔があって、身体をのけ反らせる。

 後ずさりをしようにも、背後はドライバーシートで横は壁だ。広い車内の癖にその端に座る俺を追い込むように、サンタは細腕を伸ばして俺の逃げ場を塞いだ。

 

「今日ね、私がお夕飯を作ろうと思うんだ~」

 

「お嬢様がですか」

 

「お嬢様だけど焼きそば以外だって作れるようになったんよ」

 

「それは楽しみだ」

 

「骨付鳥は買ったけどね。かっきーの好きな親の方だよ」

 

「まあ、作れるようになるよりも、一緒にいてくれる方が俺は嬉しいな」

 

 ニコリと微笑む彼女、その視線に熱を感じる。

 さらりと金髪を肩から流れ落ちることに目も向けず園子は声を弾ませる。

 

「それでご飯を食べて一緒にお風呂に入って……」

 

 壁ドンしながら今後の予定を囁く彼女はふと口を閉じる。

 何かを見たのかと背後に目を向けるも、此方を見ろとばかりに顎を掴み前を見せられる。

 前屈みになると園子の谷間が覗き、数日後に多くの子供たちの性癖を拗らせるのは間違いないだろう肉体の成長が窺える。

 

「私、まだかっきーに何も言われてないなあ」

 

 身体に意識を向けた俺に掛けられる言葉に何のことかと記憶を探る。

 やがて園子が望む言葉、彼女が見せてきている物から望む言葉に気づいた。

 

「園ちゃん」

 

「なあに?」

 

「サンタのコスプレ、凄く似合うよ」

 

 途端、雪が解けるようにふわりとした笑みを浮かべる園子。

 言葉というのが何も言わずに相手に伝わると、そう思うのは傲慢だろう。

 どれだけ仲が良くても言葉にして初めて伝わることもあるのだから。

 

「────」

 

 園子の肌は白く、薄く朱色が差して照れるのが分かりやすかった。

 いつまでも初々しい彼女は俺の腕を手に取ると、自らの胸元へと押し付ける。

 

 むにゅりと柔らかい感触と、同時に鼓動が掌を伝う。

 どくん、どくん、と高鳴る鼓動が彼女の生を主張していた。

 

「──嬉しいなぁ」

 

 味わうように、そう呟く彼女に安堵と共に欲望が身体の奥から溢れ出る。

 衣服ごと乳房を掴むと、ん、と熱い吐息を漏らす彼女に囁く。

 

「園ちゃん。俺は紳士だけどオオカミも飼ってるんだ。あんまり挑発すると食べちゃうよ」

 

「わ~食べられちゃう~。……でもね、かっきー。私もね、いつまでも食べられるだけのウサギじゃないんだぜ? 何故なら今の私は大きくなって狩人になったから。絵本でもあるでしょう?」

 

 クリスマスの日もきっと素敵な日になるだろう。ただ、それはそれ。

 雪の降る、特に特別な日でもないけれども。

 今日という一日が、乃木園子というサンタクロースにいつまでも彩られる──、

 

「──悪いオオカミは狩人にやられちゃうって」

 

 ──耳元で囁く女の声にそう確信を抱いたのだった。

 

 

 




クリスマス過ぎちゃった…


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第二十五話 子守歌

 しんしんと降り積もる雪が窓の外から見える。

 雪掻きするほどではないが、それでも脚を滑らせかねない。

 雪が降って喜ぶのは子供だけであって、大半の人間はあまり喜ばないと俺は思う。会社に出勤する者も学校に登校する者も、空を見上げて溜息を吐くことになるのは変わらない。

 

「この雪も神樹……様が降らしてるのかな」

 

「もしくは、中立神やその他の神様かもしれないね~」

 

 天候を始めとした全てのことを神樹がなんとかしているのだ。

 人間のことが好きなのだろうかと、なら男も勇者にして欲しいと思う気持ちが衝突することは多々あるが人間を守ろうという意思とその行動には感謝せざるを得ない。

 約三百年の尽力が無ければ転生先であるこの世界の人類など既に滅んでいるだろうから。

 

「そうじゃなきゃ、園子にも会えなかったからな」

 

「運命感じちゃった? ……へくちっ!」

 

「ほら、そんな恰好してるから」

 

 俺と園子は家まで乃木家の車で送られた。隣に立つサンタの恰好をした女の血筋や家のことを考えると送迎を行うのは防犯のことも考えて当然なのだ。

 運転手に挨拶をして、去り行く車を後目に家に入る。外は冷え冷えとした寒さで、サンタのコスプレ程度の防寒では冷風を防ぐことも出来ず、金髪の女を凍えさせようとしていた。

 くしゃみをして震える彼女を家の中に入れるも暖房も何もついてない。

 

「かっきー、お風呂にする? ……お風呂にしない?」

 

「よし入ろう」

 

 幸い、事前に設定していた為か風呂は問題ないようだ。

 ブルブルと両腕で自らを抱くミニスカサンタを脱衣所に連れていく。背丈が俺よりも上になった美女の衣服を寒さに震える彼女から剝ぎ取り始めるとあわあわと慌てだした。

 何かを忘れていたらしく、ポンチョを脱がされたミニスカサンタが俺の腕を掴む。

 

「ゃ、まって……プレゼントが……サンタ服で贈りたいんだけど」

 

「園ちゃんが欲しい」

 

「──、去年もそんなこと言ったじゃん……」

 

「ほら早く脱いで。手足が冷たいじゃん。お腹もほら」

 

「やん! えっちだぁ〜!」

 

「ちょっと大人になった身体を見せて貰おうか」

 

「も~……」

 

 スカートのジッパーを下ろし、彼女から衣服を剥いていく。

 それを止めることもなく金髪の美女は寒さと羞恥に頬を朱色に染めながらも、俺に脱衣させる。

 

「自分で脱げよ」

 

「え~……でもかっきーって私の服を脱がせるの好きでしょう?」

 

 大人らしさを見せる為か装飾の凝った黒の下着類も脱がせる。曲線を描く彼女の明らかに成長した裸体をジックリと眺める暇はなく、反撃とばかりに彼女に衣服を脱がせられる。

 まずは温まろうと浴室に突撃する彼女を追って、ざぶりと湯舟に身体を沈めた。

 湯舟に浸かると浴槽から湯が溢れタイルを濡らす。

 

「はあ……」

 

 肺から息を抜くように吐息したのはどちらか。

 裸の少年と大人の女。好みで使用している入浴剤はハーブの香りを漂わせ、寒気に自然と力ませていた筋肉と意識が解されていくのを感じた。 

 食事や風呂といった生活で欠かせない物に俺は多少の金銭は掛けることにしていた。

 それでも乃木家実家の浴室のレベルには到底及ばないことを知っている。

 

「お金の使い方ってのは人それぞれだと思うんよ~」

 

「園ちゃんレベルだと特に考えることもないだろ?」

 

「まあ……これでもお嬢様ですから。でもね、かっきーと一緒に入るお風呂はどれだけお金を掛けたゴージャスなお風呂よりも最高なんよ」

 

「……そっか」

 

「うん、そう!」

 

 顎まで薄緑色の湯舟に沈ませる美女はふにゃふにゃとした表情を浮かべる。

 外の気温で冷えた身体がじんわりと熱を帯びていき、蕩けるような表情を見せる女は見知った姿の時よりもやや伸びた素足を湯舟の中で伸ばした。

 それなりに広い浴槽ではあるが、彼女の爪先が容易く俺の下腹部に触れる程度には狭い。 

 触れた感触に顔を上げると園子と視線が重なる。

 

「……こっち来て」

 

 湯舟の中で自らの腿を叩いて誘う美女。

 水面に波紋が広がり、浴槽で向かい合っていた彼女の言葉に従う。

 

「……」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべる長い髪を纏めた美女。

 その意図を理解して、彼女の両腿の間に座り込むとふかふかとした上質な枕を思わせる乳房の感触を後頭部に感じた。 

 尻に感じる女の裸体は成熟し、双丘の大きさが身体の成長を如実に物語る。

 

「んふ」

 

「っ」

 

 不気味に笑う彼女の態度は今に始まったことではない。 

 腕を前に回す彼女が、俺の肉茎を手で包み込み耳元で囁く。

 

「こうしていると私の方がお姉ちゃんみたいだ」

 

「園子お姉ちゃんって呼ぶ?」

 

「──、もう一回呼んで」

 

「園子お姉ちゃん」

 

「は〜い! ……フフッ、かっきーは私の弟ね」

 

 ゆっくりと竿を扱く彼女の手が、肉竿を反り立たせていく。

 白い乳房を俺の身体に押し付けて湯の中で手淫を続ける彼女は耳を甘噛みする。

 両腿が俺の体躯を挟み込み、尻肉に陰毛の感触を覚えさせる。園子は俺の胸板を片手で撫でながら空いた方の手で怒張を、白く細長い指で雁部分を刺激する。

 

 金髪をアップに纏めた美女に背後から抱かれる。

 彼女の股の間に収まる俺は彼女の悪戯に、思わず腿を掴んで抵抗する。

 

「……まあ見た目だけはそんな感じかも」

 

「あっ! そういうこと言うんだ。ふ~ん」

 

「いや、ほら、昔から俺の方がお兄ちゃんやってただろ? 誕生日的にも性格的にも。昔は凄い素直でどこに行くにも一緒だよ~ってついてきたのに」

 

「数か月だけでしょ? それにそんな過去のことは振り返らないのだ」

 

 程よくも容赦なく反り立つ怒張を扱く園子の手。

 背後から抱擁する園子の手の大きさも変わったのか、見知らぬ他人のような女の手が激しさを増す。身じろぎする度にしっとりとした乳房が形を変える。

 最高級の座椅子による奉仕機能は先走りを湯に溶かしていく。

 

「……もう我慢出来ない? お姉さんになった私に興奮しちゃう?」

 

「……い、いや」

 

「年上の方がお好みですか? ……ピクピクしちゃう身体は正直だ~」

 

 降参するのか、限界なのか。

 幾度も繰り返した女の手淫に気が付くと呼吸が乱れていた。

 体温が上昇し、高鳴る鼓動も密着している彼女には容易に把握出来ている。激しさを減らした園子の手に射精を管理される怒張はただ震えるばかりだ。

 高められる射精感に身を任せようとした瞬間──、

 

「なんちゃって」

 

「っ!?」

 

 痛いほどに勃起した肉棒から手が離される。

 ぴん、と指で雁を弾かれると情けない声が出てしまう。彼女の両手が俺の背中を押し、極上の肉椅子からの離脱を余儀なくされる。

 焦らされたことに対する僅かな苛立ちとその意図を探るべく、押し出された勢いに逆らうことなく浴槽の端に辿り着くと彼女の方へと振り返った。

 

「────」

 

 優美な裸体がそこにあった。

 浴槽から立ち上がり湯水を滴らせる女の裸体だ。

 

 眼前の裸体、湯の温もりでほんのり朱に染めた肌をジックリと見つめる。

 鎖骨を伝う湯が豊満な乳房の谷間を伝う。まろやかで薄い腰の肉は無駄な脂肪が少なく、彼女のスタイルの良さに寄与している。

 重力に従い垂れ落ちる湯が彼女の腹部から鼠径部を伝う。

 恥毛が湯水を吸い、彼女の大事な場所を濡らし、ぽたりぽたりと水面に落ちた。

 

 彼女の美麗な肢体を余すことなく見つめる。

 それを至近距離で感じ取っているであろう園子は自らの肌を隠すこともなく、それどころか見せつけるかのように手を後ろに回すとどこか自慢げに笑う。

 老若男女問わず見惚れるであろう端麗な顔立ちに、俺も思わず目線が釘付けになる。

 この世界で様々なことを体験してきた脳みそに、その裸体が確かに刻み込まれた。

 

 立ち上がった彼女は俺を見下ろす。

 優越感に似た眼差しで優美な裸体を惜しげもなく見せてくる。

 弾ける湯の粒とその肌が俺の視線を釘付けにし、視覚だけで興奮させる。

 

「……どう?」

 

 ぽたぽたと女の身体から落ちる湯の粒が浴槽の湯を叩く。

 園子の細い指が自らの肌を撫でるように、俺の視線を惹きつけながら自らの雪肌を指し示す。柔らかな乳房を撫で、腹部を這う彼女の端的な言葉に反応出来ない。

 どこか煽情的なポーズを決める美女。

 そんな俺を前にして、言葉を介さずとも全てを理解してるとばかりに園子は微笑む。

 

「……この身体を見たの、かっきーだけだよ」

 

「……、あっそ」

 

「そうだよ~」

 

 僅かに口元がだらしなく緩みかけ、慌てて平静を保つ。

 園子もそれを一々指摘することも揶揄うこともしない。

 お互いにその胸中は理解していたから、

 

「……座って」

 

 続く園子の言葉に無言で立ち上がり浴槽の縁に座る。

 園子は再び湯に身体を沈めながらも、雄茎の前に膝立ちとなる。

 

 微笑む園子は湯に浮かぶ白い胸を見せつけながら俺ににじり寄ると生暖かい水風船のような質感の乳房で怒張を挟み込んだ。

 男の前に跪く彼女は胸の谷間に怒張を挿入させ、その感触を楽しませる。

 

「ぅ」

 

 東郷並に成長した大人になった園子の乳房。

 それを味わうことが出来て嬉しいでしょう、そう目が告げている。

 

「────」

 

 小さく頷く俺に余裕の笑みを浮かべる女が奉仕を続ける。

 実際、園子ほどの美女を跪かせ乳房で奉仕させている状況はどうしようもないほどの征服感と快感に襲われていた。

 射精寸前の怒張を湯を潤滑油に乳房で挟むと上下させる園子。

 

 自分の乳肉に押し付けるように肉棒を掴み先端を擦らせる。

 軟肉越しに押し潰し、挟ませ、擦り、吐精衝動を高める。

 稚拙とは程遠い、俺を悦ばせる確かな技量を持つ彼女は嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「気持ちいい?」

 

「ハァ……ハァ……、くっ……!」

 

「そっか~……でも、出しちゃダメ」

 

 雄茎を乳房で刺激する彼女、しかしその奉仕では射精寸前の肉棒がギリギリ限界を超えないように加減されたものだ。

 どこか嗜虐的な眼差しで俺を見る彼女が俺の腰に手を回す。

 

「……私のこと好き?」

 

「ああ」

 

「なら、もっと言って」

 

「園ちゃんが好きだ」

 

「もっと!」

 

「好きだ!」

 

「もっと!!」

 

「好きだ!!」

 

 密着する女の頬に肉竿が当たる。

 それを淫らに見る眼差しに情欲を宿す彼女はちろりと舌で唇を舐める。

 肉棒を手に取り、鼻息と表情で喜悦を見せる園子が淫らに口を開いた。

 

「あ、ッ……!」

 

 遠慮なく、ぱくりと陰茎を口に含む。

 くぷぷ、と唾液の海に亀頭を沈める彼女は腿裏に腕を回す。

 

 歯が肉竿を擦り、頬肉を亀頭に擦りつける。

 陰茎の根本に熱い鼻息を吹き掛け、ゆっくりと上下に頭を動かす園子が唐突に口を開く。

 ぶるりと先走りが彼女の顔を汚すのも気にせず艶やかな唇を舐める園子が見上げる。

 

「もっと」

 

「そ……園ちゃんが好きだ」

 

「ん」

 

「好きだ」

 

 気が付くと腰を前後に揺らし、荒い呼気をしていた。

 アイスを舐めるように竿裏から先端まで舌を這わせた美女は妖艶な笑みと共に上目遣いをして催促する。

 ──誰が好きなの? と。

 

「園ちゃん」

 

 唾液を引く唇が怒張とキスをする。

 ビクリと震える竿肉を愛おしむように頬張り、ざらついた舌が絡みつく。

 男の前で膝をつき、くぷっ、ぢゅぷ、と性器をしゃぶる彼女は目線だけで問い掛けた。

 

 ──他の子よりも?

 

「他の、誰よりも……」

 

 園ちゃん、とうわ言のように繰り返す度に園子は口腔でもてなす。

 舌が適度に巻き付き、膣よりも的確に射精を促す。

 彼女のさらりとした髪を掴むと、園子は俺の脚に抱き着く。

 

「あぁっ!!」

 

「ンっ───! んッ……ん……っ」

 

 甘い快感が俺の脳を溶かし、射精する。

 白濁が園子の口を汚し、喉まで達する中、彼女は静かに吐精を受け止めていた。無意識に背後に下がろうとする俺の脚を抱く園子は竿から吸い出すように精液を飲み込む。

 嚥下する音を聞かせ、竿に残る白濁も舐めとる女は余裕の笑みを浮かべた。

 

「……私も好き」

 

 

 

 

 

 

 

 鼠径部が尻肉を叩く度にくぐもった喘ぎ声が周囲に広がる。

 ぱん、ぱん、と乱暴に、肉竿の根本まで押し付けるようなピストンが繰り返される度に子宮口と亀頭がキスをする。それほどまでの深い挿入に眼前の女は呻き、喘ぐ。喘がされる。

 

「うぁっ、あ゛ッ、あぁ、ああぁッッ!!」

 

 逃げ場を求めるように裸体の女がシーツを握る。

 最奥を擦られるのが好みなのか、反り立つ肉棒で女の奥の奥に擦り付け、膣襞を雁で擦る度に枕に顔を押し付けて悲鳴を漏らしていた。

 女が好むサンチョと呼ばれる枕、そのカバー部分には大きくYESと書かれている。

 

 枕カバーに新鮮な涎の痕を残しながら、彼女は自分が誰の女なのかを教えられる。

 自身の性感帯、弱点となる膣襞部分を背後から雄棒で抵抗も叶わず教え込まれる。

 

「フーッ……フーッ……!」

 

 ぎゅうっと片手で枕を握る女に覆い被さり、俺は腰を振る。

 打ち付ける度に揺れる尻肉が赤らみ、同時に響く淫音が耳に心地よい。

 

「ごめん……なひゃい……!! もぉ……ゆるひてぇ……んんっ!!」

 

 揺れる髪ごと園子の頭を抱き、もっちりとした尻を叩くように腰を振った。

 身体ごと支配するように、背後から抱き、身体を寝台に押し付けて、乱暴に絶頂させる。

 枕に埋めた顔が横を向き、蕩けた表情の彼女と唇を重ねる。

 

「ンっ、ん……ぷぁ、はッ、ぁ……あぁぁ……っ」

 

 甘ったるい喘ぎを漏らす女の声。

 恥部では園子の蜜と先走りが絡み、部屋中に卑猥な音を響かせる。

 背後から手を回し、寝台に潰れた乳房を揉みしだき、唾液を交換する。

 

 ピストンの度に彼女の踵がぺちんと俺の尻を叩く。

 抽送をやめて、女の最奥に亀頭を押し付けると、ぎゅうっと膣襞が怒張を締め付ける。

 

「やぁぁ……、しょれ……らめらからぁ……、んん……ッッ!」

 

 寝バックと呼ばれる体位。

 二度目の射精感は既に限界までせり上がり、それを堪えて彼女を悦ばす。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 何度目かの絶頂に達したのか、悲鳴を枕に押し付ける。

 胸を押し潰し、耳まで赤らんだ美女は涙で瞳を潤ませて膣肉を窄める。

 嫌々と首を振りながらも、身体は雄からの支配を悦ぶように膣を蠕動させた。

 

「ん、ふッ、んんっ、ん゛ッ! ん゛〜〜〜っっ!」

 

 濡れた肉のぶつかる音が響く。

 喘ぎ声を枕で抑える彼女の首筋に口づけし、打ち付ける腰の力を強める。

 此方の絶頂が近いことを理解したのか、枕に顔を押し付けて身を震わせる。

 

「んぅぅぅッッ!!!」

 

 再び湧き上がる白濁が、今度は彼女の内部を汚す。

 獣の交尾のような性交の果てにどく、どくっと最初の射精よりも濃厚な汚濁を注ぎ込む。そのまま彼女の膣襞の一つ一つまで汚していく感覚に目を閉じる。

 成長した美女の身体に圧し掛かり、余すことなく全ての精子を注ぎ込んだ。

 

 白く染まる意識が元に戻り始め、ゆっくりと肉竿を引き抜く。

 こぽりと結合部から流れ落ちた白濁と蜜の混ぜ物が恥毛とシーツを汚した。

 

「園ちゃん」

 

 チラリと此方に横顔を見せる美女の耳元で囁く。

 

「好きだ」

 

 小刻みに身体を震わせながらも、園子は小さく微笑む。

 余裕はなく、快楽に頬を染める姿は以前の彼女と差異は無かった。

 

 うつ伏せになっていた彼女を仰向けにする。

 ぷるんと乳房は揺れ、汗に濡れて上下する園子の腹部を撫でる。

 生まれたままの姿の彼女に俺が覆い被さると、彼女は小さく囁く。

 

「……私も、大好き」

 

 両手を俺に伸ばして、脚を広げて園子は俺を受け入れた。

 その証拠を身体中に残すべく、大人になった彼女の喘ぎ声を聞き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 むにゅ、と豊かな乳房が俺の顔を包む。

 絶世の美女、その身体と色香が脳を麻痺させて、少ししてから抱擁されたことに気づた。

 

「かっきー」

 

「ん……」

 

「よしよし……」

 

 成長した園子の裸体。

 寝台に横たわる彼女に押し付けられた柔肌の感触は枕の比ではない。

 彼女の力加減一つで形を変える質感は水風船のごとく、ずっしりとした餅のような乳房の中に余韻に浸る尖ったままの先端が俺の顔を僅かにくすぐる。

 

「ぁんっ、鼻息くすぐったいよぉ……」

 

「────」

 

「でも、離れるのはダーメ」

 

 息もせず眠れと告げる割には彼女の声色はあまやかなものだ。

 離れることを許さない、園子の言葉は柔らかく、しかし厳しい。

 

「よしよ~し」

 

 先ほどまで散々吸って揉んで好きにしていた乳房。

 上質な枕に顔を置かせ、赤子をあやすかのようにそっと俺の頭に手を置く。おずおずと、相手の機嫌を窺うように、ガラス細工に触るような手つきで彼女は俺の頭を撫でる。  

 

「いい子でちゅね~」

 

「ばぶー」

 

「おっきい赤ちゃんだ~」

 

「ちゃーん」

 

「ぁッ……、す、吸っても出ないよぉ……ッ」

 

 顔を左右に揺らし、乳首を口に含むと小さく震える美女。

 豊かな乳房を押し付けて、滑らかな腹部と腹部を合わせて、脚を絡ませる。中学生時代から実った汗ばんだ乳肉を口にすると困ったような顔を見せる園子。

 

 よほど仲の良い、深い関係でしかありえない全身を余さず使った園子との抱擁。

 満足気に吐息する彼女の腹部が上下し、あやすように俺の髪を撫でる。

 密着することで聞こえるゆっくりとした心の鼓動が俺に眠気を誘わせる。

 

「もう一回する?」

 

「ん……ねむい」

 

「うん。そうだね〜……焦らなくても明日だって……、ふあ~」

 

 欠伸をする園子に釣られて瞬きを繰り返す。

 酷く安堵してしまう空間、あと何度か瞬きをすれば自然と意識が落ちる、その予感があった。

 それでも瞼を閉じない俺を怪訝な表情で見る園子が口を開く。

 

「寝ないの?」

 

「園ちゃんが寝たら」

 

「それじゃあ競争だ~」

 

 ぽんぽんと子供をあやすように頭部を撫でる園子。

 母性本能が目覚めたのか、目元を緩ませる美女が静かに囁くように歌い始める。

 

「〜〜♪」

 

 どこかで聞いたことのある歌だった。酷く記憶を刺激する歌だ。

 眠気に抗い瞬きを繰り返す瞼の裏に幼い頃の記憶が過る。

 

 加賀家に生まれてまだ数年の頃。 

 園子と出会って、彼女が加賀家の実家によく訪れることが増えた頃。

 俺の母、綾香が寝かしつけようと口ずさんでいた子守歌。

 

「大丈夫」

 

 何が大丈夫と言うのだろうか。

 そう問いかけるも、全身を彼女に抱かれて言葉にならない。

 

「かっきーを一人になんてしないから」

 

「────」

 

「起きてもいないなんてことはないから、眠って大丈夫だよ」

 

 眠っている深夜帯にバーテックスの襲撃があったことがある。

 夜中に目が覚めて、誰もいなかった時の衝撃は忘れられない。

 そのことを彼女が告げているとしたら、

 

「ずっと一緒にいるから。安心して眠って」

 

 返す言葉は無かった。

 琥珀色の瞳に慈しみを込めて、普段の奇想天外な言動は鳴りを潜めて。

 絶世の美女は身体を、匂いを、言葉を、全てを使って俺の意識を塗り潰していく。

 

 痛みも不快感もなく、ただ静かに。

 彼女よりも先に俺は目を閉じた。 

 

 

 



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第二十六話 新年を迎えて

「こしちゃった……」

 

 小さなその声に瞼を開ける。 

 眠っていた訳ではなく、ただ瞼を閉じて肌に感じる温もりに甘えていただけ。

 自らの身体に圧し掛かる柔らかな温もり、その発生源に俺は無言で目を向けた。

 

 外は防寒具が無ければ凍えかねない深夜帯。

 一週間前ならサンタクロースが訪れたであろう良い子なら既に就寝している時間。寝台の上に敷かれた布団、その間で俺の身体の上に乗り自ら肉布団と化した彼女と目を合わせる。

 照明は点けておらず、闇夜に慣れた視界が互いの状況を映し出す。

 

「ん……」

 

 豊満な乳房を男の胸板に押し潰し吐息と鼓動を聞かせる美女。

 ときおり擦れ合う性器がにちにちと淫音を奏で、小さく嬌声をあげさせる。滑らかな色白の肌は瞼を閉じても脳裏で容易く再現が可能になるほど、触れて、見て、味わった。

 散々交わってまだ足りないと擦れる乳首の硬さは硬度を保ったままだ。

 

 ここ数日は、性行為を覚えたての学生のような日々を送っていた。 

 美女にくっつき、くっつかれていることを互いに良しとしていた年末。勇者部の部活動に取り組み、クリスマスは勇者部プレゼンツお疲れ様会を楽しみ、美味しい食事を楽しみ、女体を味わう。

 取り返せない青春を味わうように身体を貪り、貪られた。

 

「……越しちゃったんよ」

 

「何が?」

 

「年」

 

 再び呟く言葉に聞き返すと、静かに、端的に告げる美女。

 金髪の長い髪を裸体に広げ、凛々しさを見せる端正な顔に聞き返す。

 新年。その言葉にどこか悲し気な顔を見せる彼女から、机に置かれた時計に目を向ける。

 

 長針は上を向き短針が右上を向く。

 ほんの数分前に、新たな一年が始まった、そう言われてもしっくりこない。そう思いながらも、ほんのりと上気した柔肌を俺に押し付けて長い睫毛に縁取られた瞼を瞬かせる女に口を開く。

 

「……あけおめ」

 

「ことよろ~。急に身体が縮んでいくような……かっきー好みのお姉さんボディが……しょぼ〜ん」

 

「別に年上が好みって訳じゃないけど」

 

「あんなエッチなこといっぱいしておいて? 凄く激しかったな~。小説でしか聞かないような台詞を言わされて、恥ずかしいこともさせられて……もうお嫁にいけないから責任とって~」

 

「いくらでも取るから、それに園ちゃんもノリノリだったじゃん」

 

「でもエッチな写真もいっぱい撮ってたよね?」

 

「大人園ちゃんなんだから、ちゃんと撮らないと」

 

「……ひなタンみたいなこと言ってるよ~。かっきーも大きくなるか小さくなるかしたら一杯写真撮ってあげるからね~」

 

「俺はいいよ」

 

 金髪の美女は変わらぬ微笑を浮かべる。

 疲労感と充足感に満ちた彼女は僅かに汗ばんだ裸体の体温と柔らかさを直に俺の肌に伝えながら官能的な吐息を聞かせる。

 蠱惑的な脚を絡ませて、布団の中に亀のように引っ込めた頭を俺の胸板に置く。

 

「……かっきーの鼓動だぁ」

 

 心が病んでいそうな言葉を呟く園子。

 一週間前のクリスマス頃から今に至るまで彼女の身体は成長した大人の姿のままだ。

 シンデレラのように魔法が解ける時間が明言されておらず、神樹といった神々による影響であるのは間違いない為、彼女の姿が元に戻るのには多少の誤差があるのかもしれない。

 

「かっきーはこの身体の方がいい? それとも元の方がいい?」

 

「園ちゃんの身体がいい。大きいのも小さいのも全部園ちゃんだから。好き嫌いなんてしない」

 

「──、ふーん」

 

「照れた」

 

「照れてないよ」

 

「それにそのスケベボディも将来好き放題するから。俺がその身体になるように育てちゃう」

 

「最低だ~」

 

 ぷくっと膨らんだ餅のように頬を膨らませる美女。

 見た目の年を考えると似合わない行為だが、彼女がすると自然と似合ってしまう、掴みどころの無い幼馴染は俺の身体の上から降りると此方に顔を向ける形で横になる。

 

「かっきーの上で眠ると寝言が凄いから」

 

「そんな寝言言ってるか?」

 

「うん。色々言ってるけど揶揄ったりしないから安心して」

 

「ありがとう」

 

「代わりにお正月に獅子舞するからその時に手伝って~がぶがぶがぶっ!」

 

「ぐああっ!」

 

「悪い子はいねが~! 食べちゃうぞ~」

 

「それはなんか違う気がする」

 

 獅子舞のことはあまり分からない。

 ただ、園子のことは理解できるし、理解したいと思う。

 深夜テンションになりつつある園子が「私が獅子舞だ!」と告げて俺の肩に甘噛みする姿は可愛らしく、豊満で形の良い乳房を押し潰して襲い掛かってくる。

 掌からはみ出る大きさのそれを揉みながら暫くじゃれ合うと力尽きたように倒れる。

 

 無駄に体力を消耗して、いったい何をしているのか。

 餅のような柔肌を堪能しながら、結局覆い被さるように抱擁する園子の背中に腕を回した。

 

「福袋も買わないとね……」

 

「乃木家パワーでいくらでも買えるだろ?」

 

「みんなで買うのが大事なんよ。知ってるでしょ?」

 

「まあね」

 

 金では買えない物がある。思い出だ。

 園子はそれを非常に重要視しており、その思い出を乃木家所有のとある場所に形として残しているくらいに大事にしている。

 記憶が、思い出が人を形作る。

 彼女にとって、忘れられない思い出というのはそれだけ重要な物なのだ。

 

「ん……」

 

「寝なくていいの?」

 

「かっきーだってまた硬くしてるけど寝ちゃっていいの?」

 

 悪戯っ子のような笑みを浮かべた園子。

 老若男女問わず惚れさせそうな微笑で、自らの肢体を余すところなく見せつける彼女は腰を揺すると自らの性器と俺の性器を擦り合わせる。

 萎えることを知らないと反り立つ肉竿に触れる白魚の指が蜜壺に宛がう。

 

「ぁ……かっきー、こういうのを『ひめはじめ』って言うらしいよ」

 

「ひめ、はじめ」

 

「そう。……挿入するね」

 

 ぬぷぷ、と怒張を飲み込む美女の膣がきゅっと締め付ける。

 俺の上に馬乗りになる彼女は自らを貫く雄棒に淫靡な吐息を聞かせた。見下ろす女の喜悦に震える膣が根本まで怒張を飲み込み、俺は小さく呻いた。

 眠らせるつもりも、眠るつもりもないらしい。

 彼女の身体が元に戻る、その瞬間まで、限界まで精を貪るつもりなのか。

 

「かっきーを食べちゃう……」

 

 優位に立ちたい美女が俺の頬を撫でる。

 許可も求めず、否定は許さず、ただ唇と精を奪われる。

 

 そんな風にして俺と園子は年を越した。

 

 

 

 

 寝ぼけ眼で日の出を見て、乃木家本家に赴き挨拶を行う。

 それがここ数年の新年を迎えた第一日目の行動である。勇者部で日の出を見ることは恒例行事になりつつあり、家の事情などもある為、寄宿舎組などを除くと大半が参加する行事だ。

 すやすやと眠りこける彼女を寝かさないようにするのは骨が折れる。

 

「ねむ~い」

 

「わか~る」

 

 気が付くと園子は元の姿に戻っていた。瞬きする間に戻っていた。

 少しだけ惜しい気持ちはあれども、大半の感情は散々彼女を抱いて消失していた。その証拠となる肌色多めの写真を園子から隔離しながら、彼女の着替えを手伝う。

 

「ほら、頑張れ」

 

「ねむ~い。かっきーおんぶ~」

 

「駄目」

 

「誰かさんが眠らせてくれなかった所為じゃないかな~……?」

 

「どちらかというと眠らせようとしなかったのって園ちゃんだよね」

 

「すや~……」

 

 挨拶やら何やらで忙しく乃木家本家でそのまま泊まり、二日目を迎える。

 寝息を立てる園子、いつの間にか体格が戻っていた彼女は着せ替え人形のように俺に下着も衣服も着させて送迎車に詰め込まれる。

 勇者部がよく利用するショッピングモールで福袋を購入する為に目的地へと向かった。

 

 そこは既に戦場であった。

 主婦、学生問わず、開店数分前のショッピングモールには多くの人が並んでいた。その列の中に見知った少女たちがいるのが見えた。

 破裂寸前の風船。そう表現せざるを得ないピリピリとした空気に背負った園子も口を噤む。

 

「一体何が始まるんです?」

 

「──戦争よ」

 

 そう告げた勇者部部長、その隣には彼女の妹と見知らぬ女。

 腕を組み、こちらをジッと見る様相は凛々しさを感じさせる。ボーイッシュな雰囲気、ピリピリとする女たちの目線が心なしか和らぐ凛とした様相がその佇まいを際立たせる。

 

「……遅いじゃない」

 

 目を合わせてぶっきらぼうに告げる口調でおおよその理解に至る。

 髪型も体型も異なれば、もはや記憶にある人物とは別人とも言えるだろう。

 

「風先輩の恋人ですか?」

 

「は」

 

「はあ!?」

 

「どうも、初めまして。加賀亮之佑と言いまして、風の最初の男で──」

 

「ちょ、ちょっと、違うから! 私よ! 夏凜よ」

 

「知ってる」

 

「こいつ……!!」

 

「もうロリの片鱗全然ないじゃん」

 

「だ、誰がロリよ! 昨日からこの姿になってたのよ! 連絡見てないの!?」

 

「見たけど……」

 

「にぼっしーがイケメン過ぎて誰この人? ってなっちゃったんよ」

 

「あっ、そ、そう……ありがとう」

 

「……にぼっしーはにぼっしーだねぇ」

 

「どういう意味よ」

 

「夏凜ちゃん可愛い!」

 

「か、可愛いとか言うなぁ!」

 

 変化したのは見た目だけなのか。

 18歳程度に成長した夏凜をジックリと見ると気恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 友人の変わらぬ内面に頬を緩ませると、気まずそうな顔をする風がおずおずと口を開く。

 

「……あの、亮之佑? あんまり人前でそういうことを言うのはちょっと……」

 

「すみません。女子力の塊で麗しい風先輩に彼氏が出来たんだと思うと、昔の男面したいって口が勝手に動いちゃって。それよりも、もうすぐ宴が始まりますね」

 

「え、ええ、そうね。……軽く流されるのは癪だけど……アンタたちも並んだ方が良いわよ」

 

「そうですね。風先輩、頑張って下さい」

 

「任せなさい! 今年こそは蓄積した女子力で福袋をゲットしてみせるわよ!!」

 

「女子力?」

 

 知り合いがいたからといって列に割り込むことはしない。

 勇者部の知り合いたちに挨拶をしながら列の後ろに並ぶとそれは始まった。

 

「それではこれより開店します! 慌てず押さずに──」

 

 自動ドアが開き従業員が告げた言葉に誰が耳を傾けたのか。

 聞く耳持たず、欲する物すなわち福袋を求めて老若男女が走り出した。

 

「ああ!! お客様! どうか慌てず──」

 

「突撃よ! 突撃!!」

 

「この時の為に一年間ジムで鍛えた筋力で福袋を手にする!」

 

「「「福袋! 福袋!」」」

 

 排水溝に流れていく水のようにショッピングモールに流れ込む人を制しきれない従業員たちの苦悩は如何ほどか。所詮は他人事であるのでその惨状に目を背けて背中から園子を下ろす。

 園子(中)と共に傍観者面しながら、ゆっくりと脚を進める。

 人の多さに自然と手を握り、人が建物の中に飲み込まれていく様を見届ける。

 

「毎回思うけど、こういうのって欲しい物を直接買えば良くないか? 当たりがあるということは外れもある。金を出して馬鹿を見るよりもお金を貯めてちゃんと買うべきじゃないのか?」

 

「それがロマンじゃよ。当たっても当たらなくてもそのドキドキ感を楽しみたいのじゃ」

 

 園子は別に購入したい物はないらしい。

 このわちゃわちゃした宴を皆で楽しむことの方に集中している。

 ある種、達観しているともいえる彼女の横顔には明確な余裕が見て取れた。

 

「残り物には福があるって言うし~、なんだかんだで一個くらいは手に入ると思うよ~」

 

「──その通りですよ園子先輩~」

 

「むむっ、何奴か!」

 

「私だ!」

 

「私かー!」

 

 そんな園子のスタンスを理解している者がいる。

 同一人物である園子(小)である。勇者部小学生組の一人である彼女はトテトテと歩み寄ってくると俺にぎゅうっと抱き着き、園子(中)にふわふわとした笑みを見せる。

 サンチョ枕を抱いた可憐な少女は上目遣いで戦場への誘いを口にする。

 

「園子先輩、そろそろ私たちも一緒に戦場に行きませんか?」

 

「そのっちの頼みとあらば行こうじゃないか! ……かっきー、またあとでね」

 

「かっきー先輩は一緒に来ないの? 人に酔っちゃった?」

 

「折角だから俺は食品売り場に行こうかと。二人で行っておいで」

 

「主夫だ~」

 

「美味しい料理をいつもありがとう~」

 

 抱擁したり身体を擦り付けたりする園子ズ。

 周囲から見れば可憐な美少女姉妹を侍らせているプレイボーイだろう。ただ、こちらを見ている者は誰もおらず、そもそもここにいる人間の大半が福袋のみに関心を割いているのだ。

 事情を知らなければ姉妹で通る彼女たちがふわふわと福袋を目指して進む為に一度別れる。

 

「……亮之佑さん?」

 

「ひなたさん」

 

 食品コーナーに脚を進めていると、ひなたに出会った。

 休憩中なのか、備え付けのベンチに背筋を伸ばして座っている彼女は凛とした佇まいだ。既に手にしたらしき福袋を小脇に抱える彼女はふんわりとした笑みを見せる。

 

「休憩ですか?」

 

「ええ……若葉ちゃんのお手洗い待ちです」

 

「なるほど。戦利品もゲットしてホクホクですね」

 

「ええ、私の若葉ちゃんが頑張ってくれましたので。亮之佑さんはどちらに?」

 

「俺は食品売り場に行こうかと」

 

「そうでしたか。確かそちらの方で結城さんを見かけましたよ」

 

 今回の福袋狩りは勇者部総動員で参加している。

 当然、結城家の友奈やその隣人である東郷も参加しているのは知っていた。先ほど挨拶をしていたが人の波に攫われてから未だ遭遇していなかったのだ。

 

「そういえば、写真の方ですがどうでしょうか?」

 

 食品売り場に脚を向けた俺に思い出したようにひなたが告げる。

 妖艶な笑みを一瞬見せる彼女の言葉に、無言で携帯端末を取り出す。

 ひなたが告げる写真も当然あった。肌色多めの写真が。

 

「快楽に屈し掛ける若葉ちゃんの表情、あの写真は最高でしたぁ〜♡」

 

 うっとりと告げる巫女の自撮り写真。

 自らが慕う若葉の写真と交換する為に自らの身体を撮った写真を送ってくるようになった。最初は恥ずかしかったのか制服を捲り上げた下着姿や、若葉との普通のツーショットなどだった。

 ひなたは下着まで拘る女子なのだと、画像を通して教えてくれた。

 

 彼女が送信してくる卑猥な自撮り写真に対して俺は所持する若葉の写真を送る。

 露出度、構図、羞恥、それらを加算して若葉の写真を送るのだ。特に何かを告げている訳ではないが、淫らなほど、肌の露出が多いほどに彼女が望む勇者の淫靡な写真を与える。

 

 ひなたにはどんな写真を送れとは細かい指示はしていない。

 ただ、何度か繰り返す度に此方の意図を理解して、日を経るごとに彼女から送られる写真の内容は徐々に過激さを増していた。

 少しずつ下着だけではなく、その中に隠された部分を見せ始めた。

 

「あの……誰かに見せたりとかしないで下さいね」

 

「勿論、分かってますよ。あっ、この写真とか良かったです」

 

「……!」

 

 携帯端末に映った彼女の自撮り写真を見せる。

 ブラを外し晒された豊満な白い乳房、その先端だけは辛うじて指で隠しているが鏡越しに頬を染める上半身裸になった自らの写真。

 顔は隠され口元のみが見えているが親しい人物ならば看破されかねない際どい姿。

 それに目を向けた彼女は慌てたように無言で俺の腕を掴み周囲に目を向ける。

 

「……、ひ、人がいますから……!」

 

「こんなにノリノリで撮ってるのに恥ずかしがるんですか?」

 

「ノリノリなんて……私はただ若葉ちゃんの写真が欲しいだけで──」

 

「冗談ですよ。でもほら、この構図とか凄いですよ? 才能ありますよひなたさん」

 

「そっ、そんなことは……」

 

 ベンチに座るひなた、その隣に座り彼女にしか見えないように端末を見せる。

 目の前で彼女が好みそうな若葉の肌色写真を幾つかひなたに送り、小声で囁く。

 

「今送ったので、次のはもっと凄いのを期待してますね」

 

「……分かりました。……なんだか悪い取引をしているような気分ですね」

 

「そんなこと無いですよ。皆幸せになれる。あと、今度若葉誘ってどこかに遊びに行こうと思います。前にそういう話をしてたので」

 

「それってデートですか? “私の”、若葉ちゃんと?」

 

「名目はなんでも良いですが……ひなたさんに公認して頂けたら心強いですから」

 

「…………」

 

「その時に撮った凄い写真や動画で好きなのを進呈しますから」

 

「……若葉ちゃんのコーディネートは任せて下さい」

 

 

 

 ひなたと別れて食品売り場に向かう。

 それなりに人はいるが、大半の福袋は売れており残った福袋の取り合いを除けば比較的穏やかな場所ではあった。

 フラフラと歩きながら食材に目を向けていると試食コーナーで少女を見つける。

 

「友奈」

 

「あぁ……亮ちゃん……」

 

 やや苦しそうに笑みを浮かべる友奈。

 結城家の友奈はサイドポニーテールを揺らしていた。周囲には華奢な身体を肥えさせようと試食品を食べさせようとする善意が彼女を襲っていた。

 明確に否定の言葉を吐けない彼女は曖昧な笑みを浮かべて口に試食品を含む。

 

 あのまま放っておけば、きっと吐くまで食べるのだろう。

 

「……ほら、行こうか」

 

「あら、この子の彼氏さん? おひとついかが?」

 

「大丈夫です。間に合ってます」

 

 笑みを張り付けて試食を勧めてくる女性たちから友奈を連れ出す。

 手を引っ張られて、しかし抵抗しない彼女は手を握り返して無言のまま俺に従う。食品売り場から抜け出して適当なベンチに座ると彼女は小さく吐息した。

 

「……ありがとう亮ちゃん」

 

「NOならNOって言える女になろうね」

 

「アハハ……、嫌って訳じゃなかったんだけど」

 

「吐く?」

 

「……吐かないよ」

 

「甘酒買ったけど飲む? 吐く?」

 

「吐かないよ……飲む」

 

 上目遣いで俺を見る友奈は僅かに膨らんだ腹部を摩る。

 話を聞くと、他の友奈と共に食品売り場に向かっていたら、そのそっくりな容姿を販売員のおばさま方に珍しがられて試食品を食べさせて貰ったという。すると彼女達に食べっぷりを気に入られ、色々貰ってるうちに気が付けば一緒にいた子たちは散り散りになってしまっていたが、それでも友奈は試食を続けざるを得なかったらしい。

 食べるばかりで乾いた喉を甘酒で潤して、「ごちそうさま」と友奈は告げる。

 

「亮ちゃん」

 

「ん?」

 

「ぎゅー」

 

 突然俺の腕に抱き着く友奈。

 陽光のごとき輝く笑顔が彼女の美貌を引き上げていた。

 私服姿の彼女の体温と笑みに心癒されながらも、その意図を俺は探る。

 

「どうしたの?」

 

「もうすぐ冬休み終わっちゃうね」

 

「……そうだな」

 

 この世界で何度繰り返そうとも外見の年も学年も変わる訳ではない。

 永遠に大人になる訳でもなく、長期休暇のある学生の身分でいられるというのは楽である。

 数年も同じことをしていると一日中寝ていても困らない程度には勉学の理解度は高まるものだ。天才肌の園子はもちろん、幼少時に英才教育を施された身としてはほぼ学ぶことはない。

 とはいえ、そもそも勉強などしたくはないという者も当然いるので──、

 

「課題終わってないのか?」

 

「……うん。ダメ?」

 

 主語を省いた友奈の言葉、その中身を聞く必要はない。

 課題を解くのを手伝って欲しい。テストが近いから勉強を教えて欲しい。

 東郷を含めた近所付き合いでは珍しくない。元の世界では厳しさと優しさを混ぜた東郷と甘さ全開の俺による集中講義はよくあることだったのだ。

 何よりも──、

 

「優しく教えてあげる」

 

「えへへ……ありがとう! 亮ちゃん大好きー!」

 

「はいはい」

 

 ──友奈の頼みはあまり断りたくない。

 

 頼ってくれていると、そう実感するから。

 

 

 




感想、評価いつもありがとうございます。


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第二十七話 ご褒美

リクエスト要素入ってます


 ──学生の本分は勉強である。

 

 最初に誰が言い出したのか、大人たちが口を酸っぱくして告げる言葉だ。

 俺も前世の頃から忘れられないほどに聞いてきた。

 勉強すれば良い学校に通うことができ、より良い企業に就職出来る。前世では親や周囲の大人から言われてそういうものかと認識はしながらも真面目に勉強することは無かった。

 勉強に意味を見出せず、楽な方へとすぐ逃げたからだ。

 

 夢も目標もない。そんな人間がそもそも本気で勉強などするだろうか。 

 勉強も趣味も遊びも一度でも後悔することなくやりきったことなど無かった。

 そんな風に中途半端に生きて、何者にもなれず、何も成せず、後悔して俺は死んだ。

 

「──だから勉強は、勉強だけはちゃんとした方がいい」

 

 月並みなことしか言えないが、それが死んで初めて理解したことだった。

 無知故に痴態を晒し、弱者と蔑まれ、他者に媚びへつらい、何かを奪われる。

 知識とは武器だ。それらを未然に防ぐ武器を身に着けるだけではなく、いつか夢や目標が生まれた時に学力というハードルを越えやすくするのだから。

 

 もちろん、それを他者に強いるつもりはない。

 勉強をしたくなければしなくていい。俺はする。それだけの話だ。

 加賀亮之佑として第二の人生を送っているが、見ず知らずの誰かにまで世話を焼こうと思うほどお人好しや善人に転生したつもりはないのだ。

 勉強は別にしなくて良い。その行いの結果も受け入れるのなら、だが。

 

 ただし、見ず知らずではない者は別だ。

 関わり合いがあり、此方に親愛を向けてくれる人物の末路が悲惨であることは嫌だ。

 それを知っていながら放置することはきっと後悔するだろうから。

 偽善とか自己満足の類なのは十分に理解していたが、後悔は無かった。

 

「ここってどうやって解くの?」

 

「──、それは公式を使って……これは暗記して問題を繰り返し解くといいかも」

 

「うう~……難しいのです……」

 

「どこが分からない?」

 

「えっと…………わ、分からないところが分かりません……」

 

「あるある。じゃあ、最初からやろうか」

 

「……うん」

 

「落ち込まなくていいから」

 

「ぁぅ」

 

 机に突っ伏しそうになる少女の額を掌で押さえる。

 呻き声を上げる彼女が放り出しそうになる課題を手に取る。どこか申し訳なさそうな顔をする友奈の髪の毛を触らせて貰いながら、最初から説明を行う。

 くぅーんと俺の掌に頭を擦り付ける彼女は薄紅色の瞳を瞬かせ、小首を傾げる。

 

「私の髪、触って楽しい?」

 

「楽しい。いつでも触りたいくらい」

 

 学生には長期休暇と引き換えに相応の量の課題が与えられる。

 それをいつまでに対応するかは個人次第ではあるがこういった課題を対応する場合、ギリギリまで触らないか、毎日少しずつ行うか課題が手に入り次第すぐに終わらせるかの三択が大半だ。

 俺は後者だったが、前者である少女はうんうんと唸っては課題と向き合う。

 

「…………」

 

 天然で無防備な隙を見せることが多い友奈の端麗な横顔。

 勉強はあまり得意ではなくとも、その集中力は目を見張るものがある。

 幼顔にふと見せる凛々しさ、難しい問題に直面したのか、小首を傾げる度に揺れるサイドポニーテール。うなじが眩しく、薄紅色の髪は触れたくなるほどに艶やかだ。

 

「……むむ」

 

 小さく唸りながらも彼女の手は止まらない。

 こうして携帯端末のカメラで、その横顔を撮ろうとも気にすることなく、彼女は課題と対峙する。賢さが上がると称した伊達メガネを着けた友奈は課題を進めていた。

 分からないことがあれば俺に聞く。そして問題を解決する。それを繰り返す。

 

「最近、ひなた化が進んできた気がする」

 

 カメラで撮って思い出に残す。

 脳内メモリーではない、その一瞬を明確な形として残そうとすると若葉とひなたのような関係、カメラで相手を撮る事をライフワークとする道を進むことになるのだろう。

 その先駆者である巫女が今日も肌色の写真を送ってきた事は確認している。 

 昨日のソレは、風呂場で撮ったらしき彼女の裸体写真は珍しく修正が甘く、仄かに赤らんだ肌色だけではなくピンク色や黒色とやや際どい部分が見えている物だった。

 

「…………むむむ」

 

 艶やかな唇にペンの頭を宛がう少女に目を向ける。

 無意識なのかノック部分を唇で咥える彼女は回答までの過程が思い浮かんだらしい。

 無言のまま用紙に記入を行うカリカリという音だけが部屋に響いた。

 

「…………む?」

 

 他人に勉学を教える教師の真似事を俺はしていた。

 課題が分からなければどうすれば解けるのか、どう考えればいいのかを一緒に考える。かつて俺に指導した家庭教師も生徒の自主性を重んじ、まずは考えさせることをさせていた。

 それを真似ただけだったが、友奈は持ち前の集中力を発揮して以前よりも勉強は出来るようになったと感じた。彼女の隣で別のことを考える暇を持て余す程度に。

 

「…………」

 

 勉強に集中している友奈の邪魔をする訳にはいかない。

 手元にあるのは携帯端末で、先ほど撮った眼鏡友奈の写真を東郷に送る。

 1分もせずに返信が来た。ありがとう、と。そんな貴方が好きよ、とも。どれだけ好きなのかと面倒な人がしそうな質問をすると後で直接伝えに行くね、という返信がきた。

 

「……よし」

 

「休憩挟む?」

 

「ううん。まだ大丈夫」

 

 東郷の想いを確認していると、独り言にも満たない友奈の小声が鼓膜に届く。

 満足の出来栄えなのだろう。カリカリとペンを走らせるスピードがやや増したのを感じながら勇者部が活用しているSNSに目を向ける。

 課題が出来ていないのは決して友奈だけではない。

 

 同日、同時刻、同じような状況に陥っているのは小学生組や西暦組にも数名いるのだ。

 同時に課題という難敵に苦戦する彼女たちを見捨てない者も周囲で待機する。

 本日はそういう日だった。

 勇者部の中で補習者を出さない為に周囲の者が出来る限りのことをする日であった。

 

「なせば大抵なんとかなーるっ! できたー!」

 

 軽やかな声色に身体を起こす。

 暖房の効いた友奈の部屋は彼女の甘い香りと小物で満ちている。

 

「亮ちゃん、この眼鏡凄いね! なんか頭の中がバビュンってなったよ!」

 

「そっかー。でも、本当に凄いのは眼鏡じゃなくて友奈だからね」

 

「亮ちゃんの教え方が上手いからだよー。りょーちゃんかしこーい!」

 

「照れる」

 

 飼い主に褒めてーとせがむような彼女が浮かべる微笑み。

 薄紅色の髪に犬か狐耳を幻視しながら、頭を差し出す彼女の頭部に手を乗せる。ゆっくりと手櫛で髪の毛を梳くと眼鏡を外した友奈は無言で俺に抱き着く。

 そのまま、彼女が立ち向かった課題、その解答にしばらく目を向けて、 

 

「うん……問題ないね。お疲れ様です」

 

「やったー! 終わったぁー!」

 

「次はもっと早くやろうね」

 

「あ、うん……精進します」

 

 この世界で学生を、それも同じ学年を何度も繰り返している。

 数年も中学校の勉強をしていれば殆どの内容は嫌でも暗記してしまうものだが、誰もが意欲的に、積極的に勉強をしようとする訳ではないのだ。

 弾けるような笑みを見せた彼女は俺の手を握ると、上目遣いを見せる。

 

「あっ、そうだ! 亮ちゃん、ケーキは好きだよね?」

 

「うん? まあ、どっちかと言えば好きだけど……」

 

「じゃあ待ってて!」

 

 ドタバタと返事をする前に彼女は階段を降りていく。

 数秒遅れて扉が閉まり、俺は無言のまま主のいない部屋を見渡す。

 

 サンチョに似たキャラクターの枕を抱き上げると、鼻腔を友奈本人の香りが通り抜ける。

 何度も通い慣れた彼女の部屋、その寝台の下などを見ていると足音がした。

 

「ただいまー」

 

 お盆に載せた数枚の皿と白い小箱。

 パーカー、ショートパンツ、インナーシャツとゆったりとした部屋着を着る友奈は白い太腿と眩しい笑顔を見せながら、俺の隣に座ると課題に使用していた丸テーブルに白い小箱を置いた。

 モンブランとショートケーキと二つのケーキが中から姿を見せた。

 

「勉強教えてくれたから、そのお礼ってことで」

 

「いいの?」

 

「うん! 亮ちゃんと一緒に食べたかったから! あとは自分へのご褒美付き!」

 

「昨日もぼた餅食べてなかった?」

 

「あはは……」

 

 明朗快活、周囲を明るく照らす太陽のような彼女の言葉。

 友奈の誘い言葉に首肯を返し、同時に提案をする。

 

「半分ずつ食べ比べしない?」

 

「……する!」

 

 かくしてケーキはフォークにて分断される。

 モンブランとショートケーキを交互に食べて、その味を共有して幸福に浸る。

 ニコニコと笑みを浮かべる彼女との密着するように肩や脚を触れさせながら舌鼓を打つ。

 

 普段ケーキを食べる機会は少ない。

 甘味が嫌いという訳ではないが、しかし毎日食べたい訳でもない。

 特別な時に誰かと食べるから美味しいのだと、なんとなくそう思っていた。

 

「ん~どっちも美味しいね!」

 

 頬に手を当てて、喜色満面の笑みを見せる友奈。

 その裏表のない笑顔を見ていると心が洗われるかのようだった。

 

「亮ちゃんと食べるともっと美味しい!」

 

「───、友奈はそういうことをサラリと言うもんね」

 

「え? 何が?」

 

 にこやかに、人を惑わせる甘言を口にする友奈。

 ケーキの甘いクリームを口端に付けた彼女の何気ない一言に思わず息を止めた。照れることなく当たり前のような態度を見せる友奈にケーキの一欠片を刺したフォークを差し出す。

 

「いいの? じゃあ……あむ……、ん~! 美味しい!!」

 

 頬を緩めて目元を和らげて腕を振って、全身で『美味しい』を表現する姿。

 彼女の素直な姿勢は見習いたい。

 

「私からも、あーん」

 

 甘々な一時を俺は彼女と共に過ごす。

 ふわりと舌触りの良いスポンジとクリームの質感、そして視界に広がる少女の笑みに心が温まるのを感じた。食べて、食べさせて、ゆっくりと過ごす。

 

「昨日やってた課題はどうだった?」

 

「東郷さんが教えてくれたからちゃんと終わったよ! ご褒美のぼた餅美味しかったなぁ〜」

 

 口端にクリームをつけて友奈は昨日に思いを馳せる。

 優しいが厳しい東郷によりしっかりと課題は終わらせたらしい。パクリパクリと糖分を補給する彼女はあっという間にケーキを食べ終えてしまった。

 

「ふぅ……」

 

「あんまり食べるとまたダイエットすることになるぞ」

 

「そ、そんなに食べてないよー」

 

 少女の口端に付着したクリームをなんとなく指の腹で掬い取る。

 数秒ほど本人の前でそれを舐めるか、或いはティッシュに拭うかで悩む俺を他所に、気が付くと指先がとぷん、と少女の生暖かい口内に沈み込んでいた。

 爪の間や指の腹を懇切丁寧に舐める彼女のざらりとした舌の感触を味わう。

 

「……んっ」

 

 俺が見下ろす中で彼女は自らの口腔で疑似的な奉仕を行う。

 上目遣いを見せる友奈は薄っすらと頬に朱色を差し、男根から精液を求めるかのようにちゅうっと吸い付き、口から離さない。

 無意識なのか男を誘うような視線や仕草に下半身に熱が入る。

 

「……友奈。ケーキだけがご褒美なんて物足りないだろ?」

 

「ひゃぁん!?」

 

 彼女の薄く細い腰肉を掴むと、友奈は小さく悲鳴を上げる。 

 くすぐったかったそうに身をよじらせる友奈を背後の寝台に座らせると横から彼女を抱く。友奈の身体は柔らかくパーカー越しに柔肌をまさぐると、ふっくらとした膨らみに辿り着く。

 

「ゃぁ……」

  

 抵抗らしい抵抗もなく、自らの肌を好きにする男に身体を預ける。

 ブラを着けていなかったのか、衣服越しにむにゅむにゅと形を変える乳房を手で揉むと、呼気を乱れさせる彼女は僅かに形の良い眉をひそめた。

 細い腰や腹部を撫でながらシャツの中に掌を這わすと仄かな汗が肌に浮かんでいた。

 

「ぁ」

 

 友奈の肢体は熱を帯び始め、甘い体臭に僅かに汗といやらしさが混じる。

 華奢な身体を抱きしめ、両手で直接胸を愛撫する。

 コリコリと乳首を弄ると彼女はもどかしげな声を漏らし、俺に顔を近づけてくる。

 

 唇を重ねると甘いケーキの味がした。

 友奈の髪を指で梳き、乳房を直接揉みながら、キスをする。

 唇を始めとして、頬やうなじ、首筋や、耳にキスの雨を降らせながら囁く。

 

「おねだりはしないの?」

 

 こくり、と喉を鳴らす音が聞こえた。

 もじもじとショートパンツから覗く白い腿を擦り合わせて、友奈は俯く。

 やがて、解れた薄紅色の髪の毛から覗く大きな瞳が窺うように俺を見上げる。

 

「……もっと、いつもみたいに、して」

 

「────」

 

「おねがい」

 

 赤らんだ顔で期待の眼差しを浮かべた彼女。

 シンプルなおねだりを口にする友奈の頭を俺はそっと撫でて頷いた。

 

「んっ」

 

 室内用だからか、彼女が着ている部屋着は柔らかく脱がしやすい。

 ショートパンツを膝まで下ろすと可愛らしいピンクのショーツが露わになる。クロッチごと秘肉に触れると湿り気を帯びていた。

 ふにふにと染みを広げるように下着越しに秘裂を押すと彼女は腰をくねらせる。

 ベッドに寝転ばせた友奈の内腿を撫でると、するりと下着をずり下ろす。

 

「ぁっ……」

 

 僅かに羞恥の籠った声。

 鼠径部と、年相応に生え揃った柔らかな茂み。 

 そして、ショーツとの間に透明な糸を引く媚肉を晒したことに、彼女の恥ずかし気な声を聞く。

 彼女の秘められた場所は少しの愛撫だけで雌の香りを漂わせていた。

 湿った肉に許可もなく指を挿入する。

 

「んんっ!!」

 

 咄嗟に声を抑えたのはここが自宅だからだろう。

 先ほど友奈が咥えていた人差し指を、今度は狭く熱い膣が咥える。

 唇を噛んだ友奈の喘ぎは肉壁と連動するように淫らに蠕動する。

 

「は、ぁ……」

 

 友奈のベッドの上で、彼女を辱める。

 容易く濡れる敏感な花弁を指で動かしながら、その造形をジックリと眺める。

 

 天井の照明が彼女の柔肌を余すことなく照らしていた。

 薄い茂みから覗く陰核は容易く見つかり、指で擦ると友奈が腰を浮かせた。

 

「んぅっ!?」

 

 濡れた膣肉が指に吸い付く。

 貪欲にうねり、クリトリスを刺激するとトロリと涎を垂らす。

 

「ん、ぁ……っ」

 

 ピンクのショーツを片足に掛けたままの彼女に圧し掛かり、怒張に代わり人差し指が膣襞を捲り上げるように抽送を続ける。

 大きさも太さもないが、浅くも悦ぶ場所を指の腹で丹念に擦る。

 

「んん、ぁ、ぁ、やだっ……それやだっ……!」

 

 爪先立ちになる脚を見ながら、しかし指で弱い場所を突くのを辞めない。

 普段よりも声を抑えようと我慢する彼女、その身体は容易く限界に達する。

 

「ぁ、ィくっ、イくぅ~~~~ッッ!!」

 

 ぴくぴくっと小刻みに震えると秘裂から噴き出る愛液。

 彼女のベッドのシーツに染みを作り、小さく痙攣する身体を抱き、その腹部に顔を埋めると下半身に違和感を感じた。

 下に顔を向けると赤らんだ顔の友奈がズボンを脱がし、怒張を露出させていた。

 寝台に横たわったままの彼女が俺に目を向け、そして肉棒を見つめる。

 

 少女の淫らな姿に先走りを垂らす肉棒を柔らかな手で上下に扱く。

 慣れた様子で雁や裏筋を責める彼女は的確に此方の絶頂を狙う。

 

「は……む」

 

 ぬぷ、と生暖かい口内に怒張が沈んだ。

 逃がさないとばかりに腰に腕を回して肉棒を頬張る。

 

「ん……んぷっ」

 

 怒張を包み込む舌と頬肉の感触に思わず呻く。

 彼女からの仕返しのようなフェラチオは極上の快感を俺に与えた。

 

「むぷっ、んっ、んー……!」

 

 横になり奉仕を行う彼女は舌をゴシゴシと亀頭に擦りつける。

 頬肉、歯茎、舌と口腔の各部に竿を押し付け、僅かに苦しそうに呻く友奈はしかし自らの口を奉仕の道具としつつも竿をねぶることをやめない。

 それは自分だけが快楽に浸ることを良しとしないからか。

 

「ふ、ぅ……!」

 

 荒くなった彼女の鼻息が怒張の根本に吹きかかる。

 それは奉仕への興奮ではなく、自らの恥部をなぞる指への驚きだ。

 

 目の前にある恥部、それを指で這わせた瞬間、彼女の視線を感じた。

 だが俺は既に友奈の顔を見ることは無かった。見るべきは彼女の恥丘だった。

 彼女の陰核に無言のままキスをした。 

 

「ふわあ!?」

 

 ビクッと彼女の身体が震え、腰を掴む手に力が入る。

 自宅であるからか、声を抑えめな彼女は喉をひくつかせながらも肉棒を離さない。

 友奈が普段使っているベッドの上で、その本人とシックスナインのような体勢で互いの性器を弄り合う。優位に立とうと、快楽に沈ませようと、お互いの性器を舐めあう。

 横向きの楽な姿勢で怠惰と快楽を貪るように友奈を味わう。

 

「んんん……っっ!! んぅぅ……」

 

 彼女の大好きなクリトリスをひたすらに愛でる。

 

「──ッ!! ぅんっ!」

 

 正面から、側面から、根本から。

 唇で吸い出すように周囲の肉ごと口に含み、舌先で左右に揺らす。

 口に残るケーキの味で普段よりも甘い花弁をじゅるると下品な音を立てて啜る。

 

「ゃ、ぁぁ、~~~~~ッッ!!」

 

 後ろに引かせようとする腰を掴み、愛液を啜る。

 愛液が伝う内腿を甘噛みし、花弁に指を挿入して弱点を探る。

 友奈の好む肉壁を指の腹で擦り、陰核を擦り続けると蜜が噴き出した。

 

 いつの間にか奉仕の余裕が無いとばかりに小さな口から怒張を吐き出していた。

 法悦に上らされ、愛液をシーツに濡らし、彼女は自らの蜜を吸われ、喘がされる。

 

「りょ……ちゃ……ふっ、んぅぅっ……!」

 

 友奈が口を離しても、俺が口を離す訳ではない。

 柔らかな頬に怒張を押し付け、奉仕をやめたことに尻肉を叩く。

 ぷるりと揺れる尻肉を揉みながら、そのまま飽きるまで友奈を味わった。

 

「はー……はぁー……」

 

 十分ほど彼女に対して奉仕をし続けた。

 自宅であるからか、必死に声を抑えて、皺が出来るほどにシーツを握った彼女。

 

 口を離すと力尽きたように脚を寝台に広げる。

 身体を起こし、ぐったりとした様子の彼女の片足を持ち上げる。

 

 散々味わった花弁は涎を垂らし怒張を渇望していた。

 腹部を上下させて呼吸する彼女の脚を肩に掛けて、媚肉に先端を宛がう。

 ずぷぷ、と剛直が彼女の最奥まで貫く。

 

「ぁ、ぁぁ……!」

 

 すっかり俺の形を覚えた少女の肉穴。

 股を交差させ、性器を密着させた分、普段よりも奥に亀頭が擦れ、奥歯を噛み締める。

 

 ちゅぷ、とトロトロの粘液の中に挿入する感覚に静かに吐息する。

 熱く濡れた膣は既に出来上がっており、彼女も静かに身体を震わせる。背中を反らし、シャツを捲り上げこぼれた乳房をぷるりと揺らし、硬くなった乳首がシーツを擦る。

 涎を垂らし、快楽に浸る彼女はたった一突きでふるふると震えた。

 

「……ッ! ~~ッ!!」

 

 ぱん、と彼女の桃尻を叩き、松葉崩しと呼ばれる体位で突き上げる。

 

「あ……ぁっ、ぅぁ……」

 

 はッ、はッ、と口を開いて友奈は目を見開く。

 膣の奥を先端が擦り、円を描くようにピストンする度に蜜が結合部から溢れる。

 

「お、おくが……まっえ、らめ……やよ」

 

 呂律の回らない友奈は俺にされるがままだった。 

 一突きごとにぷるんと揺れる弾力のある尻肉と、ツンと上を向き震える乳首。

 彼女の身体は柔らかく、すらりと伸びた脚を肩に乗せて剛直の根本まで友奈を味わう。彼女もまた深いところまで俺を味わい、抽送の度に彼女は雌の喘ぎ声を聞かせる。

 

「ぅぁっ、ぁ、っ」

 

 既に下半身が射精を求めるだけの物になっていた。

 ぱん、ぱんと腰を打ち付けると友奈の顔がベッドに沈む。

 

「ぁっ、ぁ、は───」

 

 俺の鼠径部が彼女の尻を叩き、肉が波打つ。

 より深いところまで肉棒が突き刺さり、彼女の口が開く。

 蜜液がしぶき、シーツを掴む友奈の手に力が籠る。

 

「ゃ、ぅぁ、ぁぁっ!!」

 

 最後にザクロの実のように硬くなった肉芽を指で押し潰し、深く突いた。

 

「──ゃぁぁあっっっ!!!」

 

 ぎゅうっとびしょ濡れの膣が竿を締め付ける。

 薄れゆく意識の中で、身体の奥底から濃い白濁を放つ。

 

「ぁ、ぁぁ……」

 

 抱いた脚を下ろすとビクリと小刻みに痙攣を続ける。 

 髪を振り乱した彼女が絶頂と共にベッドの上で力尽きる姿に嗜虐の悦びを覚えた。

 上下する胸を汗が伝い、法悦に浸る友奈の表情に至福を感じる。

 

「んん……」

 

 繋がった状態のまま、彼女を正面から抱くように倒れ込む。

 寝台は二人分の男女の重みを軋むことなく受け止めた。

 

 ぼんやりと天井を見上げた友奈の瞳にゆっくりと光が戻り、視線が絡み合う。

 むにむにと乳房を揉むと、挿入したままの肉竿をきゅっと膣が包み込んだ。

 

「……りょーちゃん」

 

「ん? ご褒美もっと欲しいんだ?」

 

「……も、もう十分かな」

 

「遠慮しなくていい。友奈のお父さんお母さんが帰ってくるまで時間あるよ?」

 

「で、でも片付けとか……」

 

 戸惑い気味の言葉とは裏腹に彼女の腕が俺の背中に回る。

 そうしてしばらくの間、彼女のベッドの上で快楽を貪り合った。

 

 

 



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第二十八話 休憩

「──やあ、待ったかい?」

 

 それなりの人混みの中、その声が鼓膜に届く。

 カップルになったら如何にも言いそうな言葉だと、そんなことを思ったのは自分だけか。

 相手の、どこか棒読み気味な言葉に耳を傾けて、それに応じる言葉もまた感情が籠らない。

 

「ううん。今来たところ」

 

 スタイルの良い体躯をコートに包み、素材の良さを引き立てる少女が近づいてくる。

 此方に歩み寄る姿は凛としており、周囲の目を惹く容姿は神に見初められただけはある。

 男女問わず、やや女性の方を多く振り向かせるであろう端麗な小顔にはどこか張り付けたような余裕が見える。背筋を伸ばし、普段よりもやや大人びた衣服を着こなす彼女は長い金髪を揺らす。

 一歩分の距離を置いて、彼女と向かい合う。

 揃えた前髪から覗く大きく丸い瞳がジッと此方を窺うように見つめてくる。

 

「──。なんだ? 見惚れたか?」

 

「あっ、い、いや。そういう訳じゃ……」

 

「若葉は美人だから今日の服も凄い似合うよ」

 

「ん、ああ……、ありがとう。なんだか照れるな。亮之佑も、良いと思うぞ」

 

「ありがと」

 

 照れ臭そうに顔を背けるのは、西暦時代にブイブイ言わせていた風雲児。

 お世辞か、慌ててつけたような口ぶりに思わず苦笑するも、彼女の口調と普段の態度から、それが決して嘘偽りの類ではないことは既に見抜いていた。

 女剣士のような雰囲気と普段よりもやや大人びた衣服を着込む彼女。

 率直に褒められて、満更でもなさそうに頬を緩ませながらも、目線の先はやや不安定だ。

 

「そうじゃ、なくてだな」

 

「うん」

 

「き、君の方こそ似合っているな。まるで一輪の薔薇のようだ……」

 

「は?」

 

 美辞麗句で着飾った物言いは聞いているだけで虫唾が走る。

 僕の考えた最強の気障な男、それを体現したかのような台詞に思わず肺から息を抜く。

 詩人のような台詞を告げる彼女は俺の顔に目を向けず、その美少女の視線は自らの手元。

 ギッシリと書き込みがされたメモに、彼女の熱視線が注がれる。

 

「あー……そ、それじゃあ行こうか。僕のエスコートを受けてくれるかい? 愛しのハニー」

 

「────」

 

 怒りと羞恥と混乱と不安が綯交ぜになった表情を彼女は見せる。

 ハニーと呼ばれて、思わず息を止めた俺を目線を上げた若葉が見やる。

 クシャリと握りつぶされたメモを見下ろしながら、数秒ほど視線を絡ませた。

 

 ──俺と若葉はデートをしていた。

 

 始まりは勇者部からの依頼であった。

 最高のデートプランを作りたい。

 そんな、多感な年頃である中学生にとっては決して珍しいものではない依頼が勇者部に届いた。当然のように勇者部としては出来るだけ現実的な内容となるようにデートプランを練って部員より選ばれた数組が実際に実践を行い、レポートを作成することにした。

 ただ、問題は、誰と誰がカップル役を行うのかということだが──、 

 

「では、若葉ちゃんは……そうですね、亮之佑さんと」

 

「「「な!?」」」

 

 うふふ、と頬に手を当てる巫女の提案に勇者部は揺れた。

 一体何が起きたのかと、若葉を愛する一人の巫女に疑惑の目が向けられた。

 だが、それを予期していたかのように、口八丁手八丁な彼女により騒動は即座に鎮圧。

 いとも容易く、若葉とデートをするという行為は勇者部公認で成立したのだ。

 

「──分かったよ、ダーリン」

 

「ダッ!?」

 

「ダーリン・若葉」

 

 羞恥を瞳の色に絡める彼女はやはりどこかぎこちない。

 普段の凛々しさよりも状況に対する困惑が上回っているかのように、握り締めたメモ一つに翻弄される人形のようなチグハグな言動を見せていた。

 こんな言動を見せる彼女だが、ファンクラブが出来るほどに人気がある。 

 バレンタインでは、80個のチョコを貰った伝説を残し、その全てをひなたに管理させる少女だ。

 

「そもそも、なんで若葉がエスコートする感じになってる訳?」

 

「ん? それはこの台本に書かれているだろ?」

 

「ハニーっていうなら、若葉じゃないのか?」

 

「私がハニーな訳ないだろう? そういうのは柄じゃない」

 

 チラチラとメモという名の台本に目を向ける若葉。

 今回の依頼に対して、数組のカップルとそれらに合わせた台本が存在する。脚本家である少女たちが目一杯考えた『最高のデート』には乙女の願望が詰め込まれている。

 精神的にはとっくに中学生を超えていい歳した女が、いったい、何をしているのだろうか。

 

「──イケイケ若葉ちゃん最高です!」

 

「……配役、逆じゃないの?」

 

「乙女若葉ちゃんも良いですが、やっぱり鉄板であるイケメン若葉ちゃんが見たいですから。今回、亮之佑さんには女性役をして貰いましょう」

 

「どうしてこんなカップリングにしたのよ……」

 

 どこからか、落ち着いた声色、聞き覚えのある少女の声を耳が拾う。

 陰口や噂話を拾わんとする地獄耳は、少し離れつつも此方に視線を向ける存在を察知した。

 相手が此方を見ている時、既に此方は相手を捕捉しているのだ。

 明後日の方に目を向けた俺に、おずおずと男性役である若葉が話しかける。

 

「あっ、それで、だな……」

 

「緊張してる?」

 

「え? 別に緊張なんて……、いや、どうだろうか」

 

 監視及び、自らが作った台本の出来栄えを確認する必要があり興味本位ではないのだろう。

 遠くに隠れ、揺れ動く黒髪を目端に捉えながら若葉を見やる。

 彼女も今の自分が道化、或いは他人の糸に操られる存在であることを自覚しているのだろう。苦笑混じりに丁寧に結われたブロンド髪に手を置いて、俺の目を見て普段通りに告げた。 

 

「その、依頼とはいえ異性とデートする機会は無かったからな。今日はよろしく頼む」

 

「……。こちらこそ、ダーリン」

 

「いや、ダーリンはやめてくれ」

 

「その台本みたいに本格的にハニーをやって欲しいなら出来なくもないけど」

 

「……どういうことだ?」

 

「女装というか変装して、ひなた製台本の通りに行動しても良いと言ってる」

 

「ああ……コスプレか」

 

「はい。5点減点」

 

「え」

 

「不用意な一言で彼女の機嫌を損ねた。次コスプレって言ったら引っ叩くんよ」

 

「引っ叩く!?」

 

 本日はデート日和。化粧道具も変装道具もバッチリ用意している。

 この世界に来る前に加賀亮之佑以外の自分を演じる必要がある、そういう時期があった。その過程で見苦しさのない、どこに出しても恥ずかしくない変装技術を取得したのだ。

 決して宴会で見るような適当なお遊びではない。

 コツコツと日々磨いてきた、特技と呼べる代物なのだ。

 

「確かに今のは軽率だったな。すまない」

 

「……いや、こっちも面倒臭い彼女みたいなこと言って悪かった。千景とかひなたさんが言いそうだったかな?」

 

「いや、どうだろうか……。私は亮之佑がたまに見せる変装技術は凄いと思う。園子や結城にあんな風になりきり、あまつさえ周囲の人間を欺く術は私にはない。本当に凄い。尊敬している」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

「ああ」

 

「じゃあ、今日は女装してデートする? 千景になりきろうか?」

 

「……いや、それは大丈夫だ。今日は誰でもない、亮之佑と一緒に歩き回りたい」

 

「────」

 

「変装して誰かになりきる亮之佑じゃなくて、亮之佑本人とだ」

 

 そうして此方に手を差し出す彼女は男前だ。

 男女問わず惚れさせるような微笑を浮かべる若葉の手は小さく女性らしさを感じさせる。

 此方を見つめる端正な小顔に照れはなく、素面で他人を惑わせる言葉を放つ若葉。

 

「──。そうして何人の女を堕としてきたんだ?」

 

「なっ!? 人聞きの悪いことを言うな! それにどちらかと言えば……」

 

「冗談だ」

 

 彼女の手を取って歩き出す。

 ゆっくりと、讃州市からわざわざ離れた土地は見知らぬ場所が多い。

 

「ああっ!? あんな平然と手を握り合って!! 私の考えた台本で、私の若葉ちゃんが他の人と……なんでしょうこの気持ちは……」

 

 ──どこか遠くで声が聞こえた。

 

「ところで、どうして千景なんだ?」

 

「最近の業界では『わかちか』という言葉が流行ってるんだ」

 

「わか……なんだそれは?」

 

「なんでもない」

 

「? 亮之佑も園子のようにたまに突拍子もないことを言うな……よくわからん」

 

 兎にも角にも、こうしてデートが始まった。 

 事前に目を通した台本、若葉の言動に対する細かい言動を除けば、内容自体は普通だ。

 

「千景さん? わかちか、という言葉をご存知ですか?」

 

「し、知らないわよ」

 

 ──どこかで声が聞こえた。

 ただ、互いに振り返ることなく俺と若葉は道を歩き出す。

 讃州市ではない、彼女たち勇者の奮闘により解放された領域の一つ、若葉たちが当時活動していた丸亀市へと脚を踏み入れていた。

 柔らかく、温かい若葉の手を握りながら、彼女の思い出話に耳を傾け、脚を動かす。

 

「……ここでは誰も空を見て怯えることはないんだな」

 

 そう呟く彼女に、周囲の人間に目を向ける。

 空よりもスマホを見ている方が多い彼ら彼女たちも西暦時代は違ったのだろう。バーテックスが襲撃してきてから空に対して異常なほどに怯える人が増えたという。

 それを知らない俺と、知っている若葉。見ている光景は似て異なるのだろう。

 

「ところで、どうして丸亀市を選んだんだ?」

 

「うん?」

 

「いつも通り、讃州市でも良かったじゃないか。嫌という訳ではないが」

 

「うーん。なんとなく将来縁がありそうだったから?」

 

「なんだそれは」

 

 此方の口ぶりに真面目に答えるつもりがないのかと、僅かに眉を顰める若葉。

 雪は無くとも、未だに残る肌寒さに自然と肩を触れさせ合いながら、脚を進める。

 台本通りに多少土地勘のある若葉に行先を任せ、丸亀市を二人で歩く。 

 

「若葉たちのいた所ってあんまり知らないから。それに、今日は他の皆も讃州市でイチャイチャしているだろうからちょっと遠出したかった。鉢合わせするのも気まずいだろ?」

 

「まあ……そうだが」

 

 どこか不服そうな彼女の顔色を窺いながら、徒歩で目的地へと向かう。 

 台本では、今話題の映画『うどんマン』の最新作を見るため、映画館に向かうことになってる。

 

「それに今日は……若葉とイチャイチャしたかったから」

 

「なっ!? お、お前はよくそんなことを平然と言えるな!」

 

「若葉も大体こんな言動をしていないか?」

 

「私がそんなことを言うはずがないだろ!」

 

 数多の敵を退ける女騎士系女子も心は乙女。

 ぎゅっと握る手に力が籠り、頬を朱色に染める彼女は視線を泳がせる。 

 

「そっか……俺は今日、楽しみにしてたんだけどな。若葉とのデート。本人はそうじゃなかったらしいけど」

 

 若葉は男女問わず人気の少女だ。

 生前の頃の俺ならば手を握るどころか、こうして話をすることすらないだろう。

 高嶺の花。そう呼ぶに相応しい立場と実力、容姿を持ち得た少女だ。天然なところもあるが、常に誠実であろうとする姿は尊く美しい。ファンも多いが誰も若葉とデートすることは叶わず、ひなたという防御壁を突破しなければ本来ならば今日という日は迎えられないのだ。

 

「だから、今日は本当に楽しみだった。若葉は違ったらしいけど」

 

「二回も言うな、二回も」

 

 俺の嘆きをあしらう若葉は、しかしその手は離さない。

 彼女にしては珍しく、僅かに躊躇いを見せる彼女は律儀に返答を聞かせる。

 

「わ、私もだな……その、今日は……」

 

「うん」

 

「……私も楽しみだった」

 

「…………」

 

「に、ニヤニヤするな! 撮るな!」

 

 彼女の言葉にいつの間にか頬を緩めてしまったのだろう。

 背後からの視線を感じながらも、若葉の照れ顔を携帯端末で撮る。

 そのまま若葉大好きな巫女の端末に送るも、背後からの視線の圧は変わらなかった。

 

 

 

 中身と違い、見た目が変わらないというのは制限もあれば僅かながらの恩恵もある。

 映画のチケットが大人用ではなく、学生用の安価な料金で購入出来ることもその一つだ。

 

「む……」

 

「お手洗いはあそこだ」

 

「違う。良いのかと、そう思ってな」

 

 俺の気遣いを無視する彼女の視線は自らの手に持つチケットだ。

 隣り合う座席を予約しており、特に問題なく購入出来たそれを複雑そうな顔で見つめる。

 

「ほら、私たちは中身の年齢的に言えば、既に大人だろう?」

 

「まあR-18ウェルカムだな。何をしても問題ない年頃だと」

 

「その言い方はともかく、いつまでも本来の値段で購入せずに現状を甘んじて良いのかと、ふと思ってな」

 

 ペラペラと揺れるチケット。

 その紙面に記載された上映場所に移動しながら彼女は告げる。

 

「つまり私は立派な大人の女だから受付で微笑ましく見られようとも大人用のチケットを購入したいと。……気持ちは分からなくもないけど、この世界では見た目通りのまま年を取らないってだけなんだから深く考えるなって風先輩も言ってただろ?」

 

「……そうだな。すまない」

 

「謝らなくてもいいけど」

 

 見た目と中身の乖離は年々と増していくばかりだ。

 若葉のように精神年齢が上昇するに従い、中学生の身体との差異に違和感を覚え始める者も増え始めていた。

 いつまでたっても変化しないことに対して、無意識化で何かを感じているのかもしれない。

 当人ではない以上、気休めしか言うことは出来ないが、

 

「そういうのは気にしないとか、もしくは慣れるしかないんじゃないか?」

 

「慣れ、か」

 

「そう。自分の身体はこれなんだと。別に見知らぬ身体になった訳じゃないんだから」

 

 加賀亮之佑とは俺だ。前世の俺も俺だ。

 その違いは肉体が大半を占め、共通するのは同じ魂であること。

 ゲームのようにアバターに入り込む感覚は最初は違和感を覚えるかもしれないがいずれ慣れる物だ。そういう物なのだと、自らに適応して、慣れていくのが一番なのだ。

 

 そんな雑談をしながら、早めに座席を見つけて座る。

 柔らかな座席に座り、一呼吸すると若葉が此方に顔を向ける。

 映画館であり、静かにしなければならないという意識が働いているのか。

 耳元に顔を寄せてひそひそと話しかけてくる。

 

「ところで亮之佑は映画は結構見る方なのか?」

 

「ん~。まあ、それなりに家で見るかな。若葉は鍛錬しかしないだろ?」

 

「決めつけるな。私だって鍛錬以外にも……」

 

「鍛錬以外にも?」

 

「……色々だ!」

 

「なら、今日から映画鑑賞も趣味に入れようか」

 

 映画館の指定された場所は人気作なのか、それなりに人が多かった。

 上映時間が近づくに連れて自然と周囲のざわつきも減っていく。

 

「意外にクソ映画も多いけど、時々人生が変わるような神映画に出会うと最高なんよ」

 

「それなら、これはどっちなんだ?」

 

「それはまあ、見てのお楽しみですよ若葉さんや」

 

「ああ、楽しみだな」

 

 やがて、照明が消える。

 映画が始まった。

 

「────」

 

 ぼんやりと話題作である映画に目を向ける。

 派手なアクション、少々のお色気、度肝を抜く展開は目を奪われる。光と音の暴力、しかし不快にならない程度のそれらに意識を向けながら、ふと隣に座る金髪の美少女に目を向ける。

 

「……」

 

 ぽかん、と半口でスクリーンを見上げる端麗な小顔。

 薄暗い密室。スクリーンの中で構築される世界を、その紫紺の瞳に焼き付ける彼女を見ながら、視線を僅かに下げる。

 

「そういえば」

 

 ここまで、ずっと手を握ったままだった。

 そして今も変わらず手を握ったまま。

 恋人のようにねっとりと指を指を絡める握り方ではないが、握り潰すことのないように加減をしつつも離すことのないような力加減で若葉は俺と手を繋いでいた。

 じんわりとした熱をを掌に感じながら再度若葉に目を向けると、ふと目が合って──、

 

 

 

 

「面白かったな」

 

 ポツリと呟く若葉に、俺は目を向ける。

 映画の余韻を楽しむ彼女に掛ける言葉はなく、そもそも口は咀嚼に使われている。

 骨の部分を紙ナプキンで持ち、ホカホカの骨付鳥に噛みつく。

 

 香ばしい香りが鼻孔をくすぐり、肉汁が食欲を掻き立てる。

 骨付鳥には若鶏の肉を使った『ひな』と、親鶏の肉を使った『おや』がある。歯応えと噛むほどに滲む味が特徴の『おや』を互いに好むのは事前に理解していた。

 その為か、折角だからと若葉に誘われて骨付鳥の有名店に来ていた。

 

「まさか、他作品である筈のそばマンが加勢に来るとは」

 

「凄い展開だったな」

 

 とり飯と共に骨付鳥に舌鼓を打つ。

 暫く映画の感想を言い合い、腹を満たす。

 

「ふぅ……しかし、やはり骨付鳥はおやに限るな」

 

「そうだな」

 

「ふっ、流石に亮之佑は分かってるな」

 

 満足気に吐息を漏らす若葉。

 いつの間にか分厚いメモはコートに仕舞われていた。

 

「あまりガチガチに決めて行動するよりも、多少自然体な方がスムーズに行くだろう」

 

 と、彼女なりの結論を出していた。

 台本には従わない、自由を手にした若葉は清々しい笑みを浮かべていた。

 既にレポートに書く内容は、その脳裏に浮かんでいるのだろう。

 美食を美少女と共に味わう一時を過ごして、食事を終える。

 

「ところで、少し前にひなたさん達も帰ったしどうしようか?」

 

「うーん……」

 

 本日の勇者部の活動は同時に様々な場所で行われている。

 俺と若葉がデートしているように、他の場所でも他の少女たちがデートを楽しんでいる。何か問題が発生したら駆けつけ、問題なければ他のカップルの方に加勢することになっている。

 不服そうだったが、ひなたは私情よりも依頼の完遂を優先することにしたらしい。

 

 幾度も俺に写真を撮って送るようにと目配せをする巫女を不審の目で見る若葉を他所に、ひなたや千景は先に食事を終えて応援を要請する勇者たちの下へと向かったのだ。

 

「私たちも応援に行かなくて良かったのだろうか」

 

「それは本末転倒だろうし。残りの内容もキチンと行ってくれってひなたさんに釘を刺されたじゃん。小言も一杯貰ったじゃん」

 

「そうなのだが」

 

 誰の目も気にする必要はなく、俺と若葉は店を出てぶらりと道を歩く。

 ウィンドウショッピングや何やらと細かく指定された台本からは既に外れた行動をしていることは互いに理解しており、今更台本通りに行動し直すのもどうなのかと無言で視線を絡ませると、

 

「……そうだ。亮之佑」

 

「うん?」

 

「あ~……、私に何かして欲しいことはあるか?」

 

「どうした急に?」

 

 唐突に彼女はそんなことを告げた。

 映画を見る前とは一変した曇り空を見上げる彼女の意図を探ろうとして、

 

「その、今日は楽しかった。そのお礼というか、初デートの記念に何か一つ、言うことを聞いてやろうと思ったんだ! なんでもいいぞ」

 

 恐らく台本に記載されていたのだろう。

 何かしらデートの記念か何か、思い出に残る何かをするべきであると。

 それを思い出して、若葉なりに考えて告げたのだろう。なんでも、という言葉を添えて。

 

「うーん」

 

 とはいえ、唐突に言われた言葉に、咄嗟の返答が遅れる。

 流石に直接的な欲望を口にするのは憚られる状況ではある。

 しかし、ここで特にないからと断るというのも如何な物かと頭を回して、

 

「ん?」

 

「雨か」

 

 ポツリ、と鼻に当たった雨粒はこれから小雨が降ることを予感させた。

 事前に見ていた天気予報では雨の予定は無かったのだが、そんな予報など知らないとばかりにポツリポツリとアスファルトに黒いシミを作り始める。本降りが来そうな予感がした。

 

「取り合えずデートの定番で雨が止むまで休憩しよっか」

 

「そうだな」

 

「あそこにしよう」

 

「あそこは……──!」

 

 断られたところで特に困ることはない。

 視界に入った建物、それを指を差すと、その先に視線を向けた若葉が絶句する。

 

「ほ、本当に行くのか?」

 

「駄目か?」

 

「駄目というか……」

 

 大人が休憩に使うようなホテルがあった。

 その建物の雰囲気から、どういう場所なのかは素人目でも理解出来る。

 天然な言動をすることも多い若葉だが決して馬鹿ではなく、色々と察したのだろう。

 

「あそこは……その……良いのか?」

 

「大人なんだろ? 問題ないじゃん」

 

「…………」

 

「休憩するだけだから」

 

 かああっと顔を赤らみ、ジロリと半眼で睨む若葉と数秒ほど見つめ合う。

 揺れる紫紺の瞳、逡巡する感情に唇を震えさせる彼女の手を取る。

 やがて──、

 

「……あ、雨が止むまで、だからな」

 

 と、若葉はラブホテルに入ることを了承したのだった。

 

 

 



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第二十九話 雨が止むまで

 ──遠くから雨音が聞こえる。

 天気予報を嘲笑うかのごとく、本降りとなった雨は外にいたままなら濡れ鼠になっただろうことは想像に難くない。唐突な雨風から身を守る建物への感謝は金銭という形で支払った。

 後払いではなく、事前に料金を支払う形式だ。

 

 雨を嫌ってのことか、それとも別の要件か。

 既に殆どの部屋が埋まっており、ホテルを訪れた俺と若葉に選択の余地は無かった。

 

「そ、その、わざわざ中に入らなくても雨宿りするだけで良かったのでは?」

 

「風も強いし、若葉を濡らしたくはないから」

 

「……そ、そうか」

 

「こっちの年齢を確認してこなくて良かった。互いに大人に見えるってことだろう」

 

「……そう、だな」

 

 フロントで未成年の確認は特になかった。

 そういった確認の有無はインターネットのレビューや実際に訪問して判明する。特に下調べをした訳ではないが、若葉と俺二人分の幸運がこの結果を手繰り寄せたのだろう。

 もしくはこのホテルが大赦運営という可能性もあるが、過ぎたことを気にしても仕方ない。 

 問題なく、合法的に俺と若葉はラブホテルで休憩を取れるのだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 普段の凛々しさ全開の態度から一変、暗がりを彷徨う子犬のような態度の若葉。

 彼女の掌から伝わる熱と握る強さに思わず口を噤み、無言のまま指定された一室へと向かう。フロントで取得した鍵を持ち少女と部屋に向かう途中に会話は無かった。

 他の使用者と遭遇しないという幸運もあり、やがて指定の部屋の前に到着する。

 

「……おお」

 

 頑丈そうな扉を開けて少女を中に入れ、自らも室内へと入る。

 扉が閉まる音を背中に受け、耳朶に届いたのは少女の声音だ。

 驚愕と思わしき声色にチラリと少女に目を向けると、部屋の形状に対して物珍し気に目を向ける若葉。先ほどまで借りてきた猫のように大人しかったが、少し余裕を取り戻したようだ。

 

「意外と……、普通、だな」

 

 若葉が思わずと告げた言葉通り、その部屋は『普通』だった。

 小説で見かけるような分かりやすいピンクの装飾はない。床や天井と全体的に黒を基調とした部屋、柔らかそうなソファや設置された小物の一つ一つに確かなセンスを感じさせる。

 大人の落ち着いた雰囲気を醸し出す室内に、若葉の強張った手から力が抜けた。

 

「どういうのを想像したんだ?」

 

「なんと言えば良いだろうか。こう……もっと露骨な感じかと……」

 

「普通のホテルと違って、コスプレとか女子会とかで使う用も考慮して、最初からオシャレなデザインにしているんじゃないのか? 勇者部には寄宿舎があるから必要ないけど」

 

「そういうものなのか……」

 

「じゃあ、ほら、脱げよ」

 

「え!? もっ、もうか!?」

 

「コート。濡れただろう?」

 

「あ、ああ……コートか……。そ、そうだな。すまない」

 

「いや、こっちこそ……」

 

 一応納得したように唸る若葉にコートを脱ぐように告げる。

 過剰に反応する若葉の慌てように此方まで妙な反応をしてしまいそうだった。咄嗟に己の身体を抱くような仕草を見せた若葉から栗色のコートを脱がせ、ハンガーに掛ける。

 

 目を泳がせて自らの失言を悔いるように、白ニットとデニム姿を見せる若葉はフラフラとベッドに座り込んだ。大きな寝台は軋むことなく彼女を受け止める。

 普段に比べて、どこか落ち着きのない様子の若葉は俺と視線を絡めたかと思うと目を逸らす。

 

「ん? どうした? ん~?」

 

「いや、何でもない」

 

「疲れた?」

 

「──。余裕だ」

 

 ぶっきらぼうに告げる若葉はキョロキョロと周囲を見渡す。

 寝台に座る彼女を他所に、俺は部屋の探索を行う。

 センスの感じられるホテルの一室にはトイレと風呂が備え付けられていた。風呂の設定を行い、探索の過程で小棚に入ったマッサージ器具や皮手錠を見つける。

 まるで使用を推奨しているかのように、電池や鍵も一緒に入っていた。

 

「……て、テレビでも見るとするか」

 

 探索よりも休憩を選んだ若葉の声は静寂に包まれた部屋でよく聞こえた。

 密室で年頃の異性と二人きりという状況の先にある物は堅物な彼女でも理解出来るらしい。ボソボソと独り言を呟く若葉は手元にあったリモコンを手に取る。

 少しでも気を紛らわせようと思ったのだろう。

 手に取る長細い黒色のソレは、明らかに眼前のテレビを操作する物だと分かる。

 

「────」

 

 なんとなく探索していた手を止めて、俺は若葉の行動を見守った。

 リモコンのテレビに向けて、彼女はスイッチを押す。

 厭らしい嬌声が、淫らな水音が、卑猥な動画が部屋中に流れ始めた。

 

「なっ!? なな、なんだこれはぁぁ!!?」

 

 その瞬間、ベッドの上で跳ねた彼女は慌てふためく。

 咄嗟だったのだろう。声を出す間もなく、持ち前の反射神経で他のチャンネルに切り替えるも、その度に様々なシチュエーションの濡れ場が若葉に襲い掛かる。

 かああっと赤面する彼女は現状をどうにかしようとリモコンを弄り、

 

「き、消えない!? なぜだ!?」

 

 電池の問題か、リモコンが古いのか。

 ボタンを押す度にコロコロと変わる若葉の表情は見ていて飽きないものだったが、テレビに向かってリモコンを投げつけようと勢いよく振りかぶろうとする体勢になり止めに入る。

 

「おい! 離せ! アレは消さねばならない……!」

 

「物理的に消そうとするなって。こういうのは大抵、優しく押せば消えるんだよ、貸せ」

 

 羽交い絞め状態で涙目の彼女からリモコンを取り上げて、ボタンを押す。

 何度も押さず、一度だけ押して数秒ほど待つと、テレビは静かにブラックアウトした。プツ、と電源が切れ、静寂が広がる室内に、気まずそうに咳をする若葉は俺を上目遣いで見上げる。

 

「あ、ありがとう亮之佑。……だが勘違いするなよ。好き好んで見ていた訳ではないからな」

 

「別に見てても良いけど。そんなことよりも」

 

「本当に! 本当だからな!」

 

 あまり揶揄うと雨の中だろうと走って帰りかねない。

 恥辱に震える彼女の思考を切り替えさせようと、彼女の隣に座る。

 

「どうどう、落ち着いて」

 

「む。子ども扱いするな。心配せずとも既に落ち着いて……あっ!」

 

 ぎゅっと彼女を抱きしめる。

 僅かに強張る肢体を男の力で抑え込み、背中を撫で、ベッドに押し倒す。

 

 特に抵抗もなく、二人で寝台に倒れ込む。

 柔らかなシーツの感触と、若葉の柔らかさを抱いた身体で堪能する。背中を抱き、目の前にあった形の良い耳に軽く息を吹き込む。

 くすぐったそうに揺れる彼女は覆い被さる俺に困惑の声色を聞かせる。

 

「な、何を……」

 

「なんとなく」

 

「なんとなくだと言うなら、どいてくれ」

 

「そんな冷たいことを言うなよ……なら、そうだな。若葉とこのままイチャイチャしたいな。……嘘じゃないから、そんなに眉間に皺を寄せるなよ。ほら、くすぐって解してやろう」

 

「戯言を。大体そんなものは私には効かん。──ひぁぁ!? ま、待て耳はずるい……ん?」

 

「若葉?」

 

「今、何か……」

 

 くすぐりへの報復を実行しようと俺を睨む若葉の目線が変わる。

 宝石のような紫紺の瞳は部屋の壁の方へと向けられていた。無言になる彼女に続いて閉口すると静かになる部屋、視線を向けた壁の方から微かながらも明確な嬌声が聞こえてくる。

 耳を澄ませると聞こえてくるのは男女の営みのようだ。

 その官能的な悲鳴が、嗚咽が、嬌声が、ここがどこで、何をする場所なのかを自覚させる。

 

「ぁ……」

 

「…………」

 

「や、やっぱり帰ら──」

 

 僅かに髪の毛を巻き込んで、肉の薄い若葉の耳朶を甘噛みする。

 それを意識して身体を強張らせる彼女は、耳への不意打ちに甘い声を漏らして、

 

「ひぁ──ン……っ!」

 

 両手で口元を押さえて声を我慢しようとして見せた。 

 目線だけで止めろと告げる若葉の耳たぶに吐息を吹き付け、はむはむと噛む。

 唇で挟み、押し潰し、舌先で突くと若葉の頬が上気するのが分かった。

 

「ま、待て……亮之佑、待ってくれ……! ダメだから……んッ」

 

 ベッドに押し倒された彼女の声に羞恥は宿れど、明確な拒絶はない。

 長く艶めかしいブロンドの髪を手櫛で梳きながら耳肉を唇で味わっていると、悶えていた彼女は文句でも言おうとしたのか顔をこちらを振り向かせ、唇が一瞬だけ彼女の唇に触れた。

 

「……ぁ」

 

 至近距離で視線が絡まる。

 唇が触れたのは彼女も理解したのか、小さく声を発した若葉は潤む瞳を瞬かせる。

 

「────」

 

 普段の凛々しさが鳴りを潜め、見上げる紫紺に一人の男が映る。

 鼻が触れ合うような距離で、僅かに強張ったままの女体を抱く。

 白い喉を鳴らして、端正な顔に熱を過らせる若葉は俺の顔を見つめる。

 

「──何を待つって?」

 

「こ、心の準備をだな……」

 

「ここに来る前になんでもするって言ったよね?」

 

「あ、あれは……、ここに来たことで果たしただろう!」

 

「俺は提案しただけでお願いした訳じゃないから」

 

「みみ……っ、手、手を離せっ」

 

 柔らかな耳を指で撫でながら、若葉の顔と唇が近づいていく。

 程よい弾力のある唇を颯爽と奪い、自らの唇を押し付け、囁く。

 

「だから、若葉の『なんでも』を今から実行して貰うから」

 

 唇を下ろし、ちゅっと潤いのある唇と重ねる。

 僅かに開かれた唇から内部への道を舌でこじ開き、唾液を味わう。俺の肩を掴み、強張った若葉の身体から力が抜けるまで、瑞々しい唇と唇を重ねる。何度も重ねる。

 

「普通に言っても邪魔が入るか、逃げられるだろうから」

 

「……んぁ、ん……っ」

 

「前に言っただろう?」

 

 顔の角度を変え、徐々にキスを受け入れる若葉。

 強張っていた身体から力が抜け、背中にゆっくりと彼女の手が回る。

 唾液を奪い、与え、飲み、嚥下させ、若葉の香りに包まれながら、女を腕に抱く悦びを噛み締めて、濃厚に、情熱的になっていくキスを堪能する。

 キスの合間に言葉を重ねる度に、透明な唾液の糸が生まれる。

 

「一生忘れられないほど気持ちよくさせるって」

 

 蕩けたような顔で、濡れた瞳を瞬かせる。

 唇の隙間から甘い呼気を聞かせる彼女を強く抱く。

 その抱擁に応えるように、ゆっくりと若葉の腕が俺の背中に回される。

 

「……そういうのは自分が気持ちよくされたいものではないのか?」

 

「自分がされるよりも、若葉が気持ちよくなるところが見たいな」

 

「……変態め」

 

 互いの身体を知るように、抱擁を重ねる。

 互いの熱に縋るように、キスを求めあう。

 

「その……」

 

「ん?」

 

「……優しくしてくれると、助かる」

 

 遠まわしに了承した若葉の呼吸は浅く、熱い。 

 覆い被さっていた体勢から寝台に横たわり、恋人が甘え合うように唇を啄むようにキスをする。姫君を抱くような、優しいキスは途中で止めると彼女から唇を重ねてくる。

 

「ん……」

 

 はむ、と下唇を唇で挟むキスが好みか若葉は何度もキスを繰り返す。

 頬に手を添えて、淡いキスを求める彼女は強い抱擁と共に甘えた声を漏らす。

 

 セーターを脱がす。

 

 日々の鍛錬で鍛えられた少女の身体は白く、程よい筋肉が乗っている。

 薄い首に痕が残るように吸い付くと、首筋を反らす若葉は身を震わせる。

 

 薄緑のブラジャー、その上から覗く雪肌と柔らかな乳房。

 下着の上から乳肉を揉むと若葉は湿った吐息を漏らし、唇を噛み締める。

 

「ぁっ……! んっ、っ……!!」

 

 もしかしたら他の部屋に自分の喘ぎ声が聞こえてしまうかもしれない。

 そう考えても我慢出来ず、耐えられないように恥じらいのある嬌声が漏れる。

 

 デニムを脱がせる。

 上下の色を揃えて来たのか、薄緑にレースのあるショーツは若葉の選んだ物とは思えないほどに可愛らしく、クロッチ部分は小さな染みが見えた。

 陶器のような滑らかさのある腿は白く程よい筋肉が乗っている。

 

「は……ッ」

 

 若葉の鼠径部を手で撫でる。

 薄手のショーツは手触りが良く、濡れた恥部の形が掌に伝わる。

 淫らな温もりが手に伝わりながら手で恥丘を弄ると、若葉は顔を背ける。

 

「っ、ぷ……っ! んんっ───」

 

 そっぽを向いた若葉の頬に手を添えて、唇を奪う。

 酩酊したような眼差しで、肌を上気させる彼女の恥部を下着越しに擦ると、ちゅくちゅくと淫靡な水音が聞こえ始める。

 染みの広がる下着、蜜に濡れた指先で恥部を擦ると若葉が脚をくねらせる。

 

「ぁ、ぁっ、んあ……~~~ッ!!」

 

 耳まで赤らませた若葉はぎゅっと瞼を閉じて身体を硬直させた。

 下着の中で主張する陰核と媚肉を指で執拗に擦り続けると若葉はあっさりと絶頂に達した。

 キスしながら達した若葉は荒い呼気で胸を上下させ、呆けた表情を見せる。

 

「ぁ……はぁー……は……」

 

 ガクガクと腰を震わせる若葉、その下腹部を隠す布切れを俺は脱がす。

 するりと透明な糸がショーツと恥部の間を繋いでいるのを見つけながらも、その奥から覗く彼女の花園に目をジッと向ける。

 少女の秘所。以前より整えられた恥毛と、蜜を垂らす媚肉が外気に晒される。

 

「んっ……、見すぎじゃないか……? もしかして……何か変なのか?」

 

「いや。エッチだなって。亜耶ちゃんに見せつけるくらいにおけけとか綺麗だよ」

 

「っ!? あ、あれは亮之佑がさせたことだろう! 別に私が見せつけた訳では……」

 

 長く恥部を見ていたからか、やや不安げな表情を見せた若葉に曖昧な返事を返すと彼女の両足を持ち上げて貝肉に顔を近づける。

 薄く開かれたピンクの秘裂からは清く澄んだ蜜が滲む。

 

「こっ、こんな体勢は──んんぅぅっ!」

 

 じゅるるっと下品に音を立てて俺は若葉の媚肉に吸い付いた。

 閉じられる脚を無理やり開かせると、まんぐり返しと言われる体勢になるように腰を持ち上げる。揺れる尻肉と菊座、陰唇を割り開き、彼女の目の前で蜜を啜る。

 

「ゃぁぁ! ゃ、え、汚っ……ぅぁ……!!」

 

 流石の若葉も舌先で恥部を犯され、自らの味を知られるのは堪えるのか。

 だが、体勢的に力が入り難いのか秘所への愛撫を止めさせるのは難しく、腰を前後に揺する彼女は哀れなほどに顔を赤らめ、嬌声を漏らし、俺の頭を掴んで身を捩らせる。

 

「まて! これ、動けなっ……ゃぁ、ぁぁっ……!」

 

 愛液は雫を作り、白い腹部へと流れる。

 舌を限界まで挿入させて媚肉を穿りながら、陰毛に埋めた鼻で陰核を責める。

 髪色と同色の恥毛が放つ彼女の芳香に鼻孔を膨らませて、肉芽を鼻で擦ると彼女は悦んだ。

 甘さと酸味控え目な愛液を啜られながら泣き声に近い嬌声を漏らす若葉は、俺の献身にへこへこと腰を前後させて小刻みに絶頂に達し続ける。

 

「ああっ……! ッ……! ~~〜! ……あ、は……ッッ!!」

 

 奥から蜜を吸い上げると、若葉の膣は蠕動した。

 大きな瞳から涙をこぼす若葉は声を抑える余裕を無くし、快楽を味わう。

 腿肉は絶頂の度に震え、貝肉を舌で犯される度に脚の指がぎゅっと握られる。

 

「んぅっ! ゃあん!! も、もう十分らから! ぷぁっ!」

 

「────」

 

「亮之佑! 頼む! もうひゃめ……、ぁ、ぁぁ、また……、んぅ! ぅぅっ、くぅぅぅっっ!!!」

 

「────」

 

「はー……ぁっ、ぁ……亮之佑? 聞いてるのか? さっきから本当にっ、身体がおかしくなって……! 待ってくれ……な、なんでもするから……ぁ、ぁぁッ、また、イく……ッッ!!」

 

 普段は絶対に拝むことの出来ない勇者の淫らな姿。 

 手足をガクガクと震わせ、力の抜けた脚から離した手を肉芽に添える。

 性的快感を伴う奉仕を受けた若葉は、このあとに何をされるのかを理解して嫌々と首を振る。陰核に触れた瞬間、若葉の腿が俺の頭をぎゅっと挟む。

 どこに力が残っていたのか、俺はその反撃を我慢してクリトリスを指で弾く。

 

「っい、ふぁぁぁっっ!!?」

 

 指の腹で擦った。

 秘裂から溢れる蜜は陰毛を濡らし、蜜に塗れた陰核を指の腹で撫でる。

 

「は……ぁ……ぅ、ぁ、ぁぁ──」

 

 汗を浮かばせ、髪を乱れさせる少女。

 懇願するように首を激しく振る彼女の肉芽を押し潰す。

 

「~~~~~ッッッ!!!」

 

 ぷしゃっと跳ねる飛沫が俺の顔と彼女の腹部や顔を濡らす。

 大きな声を上げて、腰を激しく揺すった彼女は、また達した。

 

 恥部から噴き出した潮が自らを濡らす。

 呆然とした様子で小刻みに絶頂する若葉の腰を寝台に下ろすも、理性も意識も遠のいたのか、下着が引っ掛かったままの脚は開かれたままで、陰唇が小さく開閉しているのが見えた。

 法悦の空から戻るのは遅く、紫紺の瞳からは光が失われ、濡らしたシーツに横たわる彼女は腹部を上下させる。裸の下半身を俺の前に晒した若葉は快楽に震えていた。

 

 ブラジャーのホックを外す。

 

 最後の一枚、外された下着からはぷるりと乳房がこぼれる。

 ホカホカの乳房は白く、ツンと尖った桜色の乳首は硬く、男を惑わせる。掌に収まる乳肉は甘い香りと弾力を返し、モチモチとした質感と共にいやらしく形を変える。

 

 衣服を脱ぎ、脱力した若葉を下に正常位で繋がる。

 挿入と同時に少女の膣肉が締まり、きゅうっと怒張に吸い付く。

 

「……ぁ」

 

 トロトロの膣肉に怒張が包まれた瞬間、紫紺の瞳に光が灯る。

 彼女の胸肉を揉みながら、若葉が何かしらの反応を示す前に唇を奪う。

 

「んッ──、ぁむ…………んンっ……」

 

 ねっとりと唾液を絡めるキスを繰り返し、ゆっくりとピストンをする。

 何も言わずとも、舌と舌を絡め、口腔を味わう若葉は甘えるように唇を窄める。

 結合部は愛液と先走りが絡み合い、白濁とした泡がシーツを汚す。彼女の背中を抱き寄せ、胸肉を揉みながら、首を反らす若葉の耳を甘噛みする。

 

「……若葉」

 

「んっ……!」

 

「若葉の中、凄いトロトロだよ。気持ちいいんだ?」

 

「……いうなぁ」

 

 ひなたにも見せたことのないような、女のはしたない表情。

 彼女の腕が俺の首に回り、軽く腰を揺する度に鼠径部同士がぶつかる。

 

「ぁぁ……」

 

「じゃあ、もっと気持ちよくしちゃう?」

 

「……ンっ。気持ちいい……」

 

 口端から涎をこぼし、背を反らす。

 最奥まで突くと揺れる乳房を揉みながら、耳元で甘い言葉を囁き、耳朶を犯す。

 

「──孕め若葉。園子を産め」

 

「ぁ……あぁっ……!」

 

「イけ」

 

「ゃぁ……」

 

「イけ」

 

「~~~〜!」

 

 一突きごとにぎゅっと吸い付く膣襞。

 結合部からは下品な水音を発し、蜜を飛び散らせる。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと、執拗に彼女が好む場所を抽送する。

 俺の下半身は限界に達しており、強い射精衝動がこみ上げる。

 乳房を揉みしだき、最後の一突きと同時に彼女の最奥に擦りつけた。

 

「───! ──!」

 

 背中に爪を立て若葉の肢体が震える。

 本能によるものか、俺の腰に脚を絡みつかせ、絶頂に達する。

 蠕動する膣襞に導かれるように、俺もまた若葉の最奥で果てた。

 

「く……っ」

 

 どくどくと汚濁が彼女の媚肉に吸われる。

 意識が白く染まり、目の前の少女を強く抱きしめ、十数秒の快楽に浸った。

 

 

 

 

 

 乃木家の家訓に『何事にも報いを』という言葉がある。

 分家である加賀家にもその家訓は存在しており、俺もその言葉に恥じぬ生き方をしている。

 

「ふっふっふ……」

 

 本家の祖とも言える彼女の、若葉の暗い笑み。

 腿を伝う男の証を拭い休憩をしている間に、先ほどの出来事を思い返したのだろう。

 此方に這いよる裸体の少女はコロコロと表情を変えた後に、笑い出した。

 

 されたままでいいだろうか? ──否だ。

 辱められ、快楽を与えられたままで終わっていいだろうか? ──否だろう。

 

 言葉にはしていないが、そういう表情をしていた。

 報復思考に至った若葉は虚ろな眼差しにギラギラと光を灯し、俺の手を取る。

 逃がさないようにと、ぎゅっと優しく力を籠める若葉は小首を傾げる。

 

「……休憩はまだ終わってない。そうだろう?」

 

 雨音は耳を澄ませばまだ聞こえる。

 指定された休憩時間もまだまだ余裕がある。

 先ほどまで、散々淫らな姿を晒した癖に、鍛錬しているからか体力はまだあるようだ。

 

 ──先ほどの愛撫では満足できないらしい。

 

「……手加減は必要ないか」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「いや、何も。若葉は体力あるね」

 

「日々鍛錬を欠かさないからな。余裕だ」

 

「そっか。余裕か」

 

「ああ! 全然大したことはない」

 

「そっか。……そっかあ」

 

 勇者を束ねるリーダー、やや髪を乱れさせたままの彼女は笑みと共に告げる。

 自分が辱められたのだから同じくらいに辱めてやろう、感情的になった推定先祖である彼女は呼吸を整えた後に、体勢を変える。

 即ち、自らが上になるように覆い被さると吸い付いた痕の残った乳房が眼前で揺れる。

 回復力と体力に自信のある、エッチな身体をした若葉は俺の耳元で囁く。

 

「何事にも報いを。……次は私の番だ」

 

 普段の彼女ならば恥じらい胸元を隠すだろうが、身体中余すことなく見られ、辱められた以上、抱いた羞恥よりも眼前の男を辱めなければという感情が優先されたのだろう。

 目の前の男に負けたままでたまるかと少女が舌なめずりをする。

 さらりと長い金髪が肩からすだれのように垂れ下がり甘い香りを放つ。

 

「見ていろよ。絶対に気持ちよくしてみせるからな」

 

 チラリと男の怒張に目を向け、指を這わせる若葉。

 彼女が回復したように、此方の準備は既に万端であり怒張は反り立っていた。剛直に指を這わせる仕草は卑猥ではあるが、同時に不慣れさと稚拙さも見え隠れしていた。

 

「まずは……」

 

「まずはキスかな」

 

「……ちょうど私もそう思ったところだ」

 

 僅かな躊躇いを振り切るように、若葉は俺の頬に手を添えると瞼を閉じて唇を窄めた。

 

 

 



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第三十話 雨がやんでも

 乃木若葉という人物は男女問わず人気のある美少女である。

 才色兼備、文武両道な彼女に隙はない。否、特定の相手とコツが分かれば簡単に堕ちるようなチョロい女騎士みたいな少女だが、神に見初められた凛々しさと天然によるギャップが讃州中の一部女子たちを狂わせるのだ。

 同性だろうと関係ない。強引な策を打ってでも若葉とお茶をして、あわよくばその先へ。

 そうした想いで集った熱烈なファンクラブの対応はひなたが行っている。

 

「“私の”、若葉ちゃんにお友達が増えるのは大変喜ばしいことなのですが、若葉ちゃんの優しさのついつい勘違いしてしまう方が増えてきたので……」

 

 増えてきたからなんだと言うのか。いったい、何をしたのか。

 それは聞かずとも、知らずとも、後悔することはないだろう。

 

 いつかのお茶会。勇者たちの戦闘中にひなたが話題に出した若葉について。

 勘違いしないようにと周囲に若葉の正妻扱いされるひなたを勇者部でも恐れる者は多い。

 マネージャーなのか、保護者なのか、そんな巫女が愛する勇者に取り入る自分は──、

 

「さながら、間男になるのだろうか」

 

 多くの人に愛され、期待に応え、努力し、誠実であらんとする金髪の少女。

 その圧倒的な光に多くの人が吸い寄せられ、平伏し、そして嫉妬する影も生まれるのだろう。 

 そんな少女は白磁の肌に汗を浮かばせ、自らと男の体液で濡れた裸体を見せながら肉棒を扱く。愛液をコーディングした怒張は吐精後も相まって若葉の手の中で下品な水音を奏でる。

 

「何か言ったか?」

 

「いや、……ほら、また手が止まった」

 

「……その、音が、な」

 

 多くの人が、男に奉仕しようとする若葉の姿を知らず見ることもない。

 にじゅ、にちゅ、と淫音を聞く度に上下に扱く手の勢いが止まりかける。それを指摘する度に恥じらうかのように自らが奉仕する雄棒からは目を背けると、若葉は一心不乱に扱く。

 口数を減らし、肉棒を手での奉仕する彼女の姿に頬が緩む。

 

「俺の剣はどうだ? 普段使うのより握り甲斐あるだろう?」

 

「は?」

 

「うッ」

 

「──あっ! す、すまない。痛かったか?」

 

 膣や乳とは違う、彼女の掌による柔らかさと圧が怒張を包む。

 中途半端に聞きかじったような奉仕はやや乱雑に力が籠められ、適当に揶揄うだけで顔を羞恥で染め上げて握力に物を言わせようとする程度の稚拙な物だ。

 反り立つ肉棒の硬さも長さも、彼女が掌でそれらを覚える程度の時間は経過していた。

 

「なんで」

 

「ん?」

 

「……なんで出さないんだ」

 

 どこか不満気な表情を浮かべる若葉。 

 脳裏に思い浮かべた予想では既に俺は果てていたのだろう。最初は気恥ずかしそうに背けていた顔も時間経過と共に慣れてきたのか、何故なのかと忌々しそうな表情で肉棒を睨みつける。

 自分がこんなにも奉仕しているというのに、と言わんばかりだ。

 

「────」

 

 女性と違い男性は果てると一度リセットされる。

 絶頂に至った後に勃起しようと、二度目の絶頂は容易ではない筈だ。

 少なくとも俺にとっては出してすぐということもあり、若葉の奉仕がどれだけ優れた物であったとしても簡単には果てない状態であった。

 そんな男性的な事情を一から十まで説明する気にもなれなかった。

 形の良い眉をひそめ、早く果てろと俺と肉棒を交互に見上げる反抗的な紫紺の瞳に、

 

「次は口でするものだろ?」

 

「え? く、口でか!? ……それは、なんというか……」

 

「さっき俺がしたことの逆なのに、出来ないのか?」

 

 先ほどまで自らの最奥に子種を放った雄棒。

 それを目の前に突き出し、当たり前のように告げると、逡巡の果てに俺の股座に這いよる裸体の少女はおずおずと顔を近づける。

 さらりと垂れ下がる髪の毛が先に怒張に触れ、若葉は慌てて髪の毛を払った。

 

「これを……咥えるのか」

 

 俺の前に膝をつく彼女は思わずと言ったように呟く。

 濃厚な雄の香りを放つソレは臍にまで反り立つ。すんすん、と無意識に嗅ぐ若葉は髪を耳に掛けて、その小さな口を開くと、躊躇うことなく竿にキスをした。

 

「む、ぐ──」

 

 僅かに歯を立てながら亀頭に吸い付き、ゆっくりと竿を咥えていく。

 じわじわと根本に向かうように、濡れた肉竿を口に含んではチロチロと舌を動かす。

 淑やかで稚拙な口腔奉仕に上目遣いが加わる。

 

「ん、っ」

 

 手だけではなく口も使って、男に性的奉仕をしている。

 その事実が浸透するかのように、僅かに俺を睨む紫紺の瞳には屈辱と羞恥が綯交ぜとなる。見上げる反抗的な眼差しは俺の加虐心をくすぐり、思わず両手で彼女の頭を掴んだ。

 

「ん、……ふー……ふー……」

 

 睨むように目を細める若葉はたじろぐも、手を振りほどこうとはしない。

 怒張の根本に鼻息を吹き掛け、歯茎と頬肉が肉棒を味わうかのように動く。雁裏を舌で舐めながら竿を擦る歯の感触は、未熟さを感じさせながらも確かな奉仕だ。

 何よりも、若葉に奉仕されていることこそが最大の快感であった。

 

「ぁ、ぅく……」

 

 無意識に漏らした声に、若葉が腿を掴み赤黒い肉竿を頬張る。

 まるで勝機を見たかのように弱い場所を探して彼女の舌が竿を這う。

 濃厚な雄臭に酩酊したかのように亀頭を独り占めし、赤い舌に雄汁を染み込ませる若葉の姿が脳裏に刻み込まれるのを感じながら、寝台の上で跪く彼女の乳房を鷲掴みにする。

 

「んぶっ!?」

 

 それなりの大きさがある乳房を掌で包み、指で乳首を挟む。

 牛の乳を搾るようにクリクリと乳首を刺激すると身をくねらせて嫌がる素振りを見せるが、弄り、揉まれ、愛撫されると肌に更なる熱を帯びていく。

 餅のような質感は掌を楽しませ、彼女に甘い呼気を漏らさせる。

 

「んっ……っぐ!!」

 

 それでも肉棒から口を離さないのは意地なのか。

 目を伏せて奉仕に耽る若葉の乳肉を掌に乗せて乳首を弄ばれる度に若葉は口腔を変化させ、身を震わせた。

 乳房を好き放題されながら口腔奉仕をする若葉は腿をくねらせ、湿った呼気を漏らす。

 

 こくん、と先走りと唾液の混ざり物を若葉が嚥下する。

 顎が疲れたのか肉茎からその口が離れ、唾液がシーツに落ちた。

 

「しゃぶってどうだった?」

 

「……まずいな」

 

 その一言は予想出来て、思わず苦笑した。

 無造作に口元を手の甲で拭う彼女は瑞々しい唇を舌で舐め、

 

「……だが、まあ、バーテックスほどではないか」

 

「比較対象。味は慣れたら美味しいらしくタンパク質が含まれているから健康にも良いらしいよ。良薬は口に苦しと言う」

 

「薬……こんなのに慣れる気がしないな」

 

 

 

 

 

 乃木若葉は流鏑馬も出来る勇者だ。

 馬に乗るテクニックは一流なのだから、人間はもっと一流だろう。

 

「ふざけたことを言うなよ……」

 

 嚇怒に染めた朱色で羞恥を誤魔化すように怒気を見せる。

 寝台に仰向けで倒れた俺に跨ると、大きく脚を開いて自らの恥部を若葉は見せつける。腹部に手を置き、散々触った肉竿を手に取り、浮かばせた腰を自ら下ろしていく。

 既に彼女の中では情事をやめるという選択肢は無いのだ。

 

「ん……ふ……」

 

 ちゅぷ、と亀頭が恥部を擦れる。何度も挿入を失敗しては恥部を亀頭で擦らせる快感に身体を震わせる。気持ちよさそうに目を細めては何度目かの騎乗位に挑戦しようとする。

 湿った吐息を聞かせる若葉は、はしたなく脚を開いて雄を受け入れようとして──、

 

「あ……! ……み、見るな!」

 

 ふと肉棒を掴む手に力が籠る。

 余裕がない、屈辱と恥辱と喜悦に塗れたような表情を見られたくないかのように彼女は顔を背けた。そのまま挿入寸前だった肉棒から手を離し、背中を向ける。

 

「……顔を見ないでくれ」

 

 何か機嫌を損ねたのかと密かに焦る俺を他所に、背中を向けた若葉は腰を浮かせる。

 仰向けで寝転んだ状態の俺の肉棒を手に取る少女、その恥部が尻肉越しに覗けた。

 ぷるりと揺れる尻肉と恥毛、割れ目から垂れる蜜が亀頭をコーティングする中、若葉は顔を伏せて恥じらいを見せると、今度こそ自らの媚肉に挿入させて腰を下ろしていく。

 

「ンっ!」

 

「ぐあ……ッ」

 

 思わず声を上げたのは濡れた膣襞がぎゅううっと収縮したから。

 ぬぷぷ、とより深くまで肉竿が貫くほどに若葉の身体は震える。彼女の媚肉は怒張を待ち構えていたかのように肉茎を締め付け、精を搾り取ろうとしていた。

 膣襞が怒張に吸い付く中で、ゆっくりと根本まで若葉の腰が下ろされる。

 

「はぁっ……ぅ、んんっ……ふぁ……!」

 

 僅かに若葉の全体重が俺に乗り、互いに呼気を漏らす。

 鼠径部に乗る弾力のある尻肉が形を変え、彼女は髪を揺らすと、

 

「く、ぅぅ……」

 

 ぷるりと尻肉が揺らしながら腰を動かす。

 顔を隠して尻を隠さず。結合部はぐぷっちゅぶっと卑猥な水音を立て、繋がり抜かれる度に竿部分に泡立った蜜が絡むのが見えた。

 主導権を握りたくてたまらない彼女は必死に腰を浮かせては下ろす。

 

 根本までの挿入は最初の一度きり。

 竿の途中までを若葉は浅く味わう。

 

 にゅぷ、ぬちゅ、と出し入れする度に快楽は得られる。

 ただ、どこか快楽を味わい過ぎないように、過度な快楽を恐れているかのような遠慮がちな抽送は若葉がペースを掴み始めたところで腰を掴む。 

 

「お、おい!」

 

 邪魔をするなとばかりに若葉の腿が締め付けるように腰を挟む。

 恍惚に震える彼女の膣が生む快感に、ぱんッ、と俺の鼠径部が勇者の尻を叩く。

 

「ぅあ!? ま、まって──」

 

 艶めかしい背中に髪が張り付き、肩甲骨が動く。

 俺の突き上げに慌てたように若葉が腿を掴み、腰を浮かせる。

 それを追いかけるように、媚肉から抜けかけた竿がぬめる膣へ押し込まれる。

 

「ゃぁぁっっ!!」

 

 一突きごとに。

 背中を向けた彼女の腕が何かを止めようと胸元に伸ばされる。

 

「はぅぅっ! やめっ、……ぁああ!!」

 

 一突きごとに。

 背中を向けて顔を隠したことを後悔するように俺の腕を少女の手が掴む。

 

「んんっ、ンくぅッ!!」

 

 耳まで朱色に染まった顔を伏せ、若葉は気をやった。

 結われた髪が解けて下ろされ、汗の粒が飛び、僅かにこちらを振り向く。

 目端に涙を浮かべ、絶頂に達することを求めながらも怯える少女の表情を見た。

 

「────」

 

「わっ!? な、何を……」

 

 上体を起こすと若葉を背後から抱いて二人同時に仰向けとなる。

 撞木反りと呼ばれる体位で、若葉の肢体を、体温を堪能する。

 

 天井を見上げて、全身に乗った彼女の体重を推測しながら、汗を吸い解けた金髪が幾条にも分かたれ、端正な横顔が俺の頬に触れあうほどに近づく。

 上を向いた乳房を好きに揉みながら、俺は彼女を突き上げた。

 

「ぃぅっ! ん、んっぁ、ひぁぁぁっっ!?」

 

 先程とは異なる角度で膣壁を抉られた若葉の喘ぎ声。

 悲鳴に近い嬌声を上げる彼女の乳房に片手を、もう片方の手は肉芽を探す。

 

 ぱくぱくと口を開閉させる若葉は快楽に顔を歪ませる。

 隠していた顔は羞恥と喜悦に歪み、凛々しさの欠片もなく背を反らす。

 

「は……ぁ、ふぐっ……ッ!」

 

 汗と甘い香りを放ち、若葉の快楽に乱れる姿。

 普段とは異なる膣襞を擦り上げながら、茂みから探り当てた陰核を擦る。

 

「~~~~ぁぁっっ!!!」

 

 喘ぎ声を上げた若葉は俺の上で荒々しく呼吸をする。

 絶頂から逃れようともがく柔らかな肢体を腕で押さえつけると、乱れる髪が俺の顔を叩き、雌臭が広がる。

 脚をばたつかせ、瞼を閉じる彼女の身体はのけ反り、ぷしっと潮を噴いた。

 

「ぅ、ぁ……ぁー……」

 

 小刻みに震え、恍惚とした若葉の顔が肩に乗る。

 上唇と下唇の間に唾液の橋が渡り、瞼を閉じて体重を預ける。

 

 膣の収縮と共に上下する乳房はツンと上向いている。

 射精を堪えた俺は彼女の拡縮する膣に愛撫されていた。

 

 とろけた表情の若葉が薄っすらと瞼を開けて、瞳を見せる。

 彼女を仰向けで乗せたまま、乳房を揉み、腹部を撫でまわし、恥毛を手でなぞる。細い腰をベルトのように抱き、貫いたまま唇を奪おうとすると若葉は少しだけ顔を背けキスを避けた。

 

「さっき……口で、したから」

 

 口腔奉仕を気にしているのか、唇を避けようとする若葉。

 彼女の気遣いを感じながらも俺は構わず唇を奪った。

 

「ん……」

 

 しっかりと飲み込んだからか、俺の味はしなかった。

 若葉の弾力のある唇を唇でなぞり、舌を這わせると、彼女も舌を絡め返す。

 トロトロになった表情を見ながら腰を突き上げるとキスが中断された。

 

「ぁっ! ぁぁっ、ぃぁっ!!」

 

 抵抗のない彼女は、与えられる快楽にただ悶えるだけ。

 最奥に子種が注がれるまで、スローピストンで膣内の弱点を穿られ弄ばれる。

 

 凛々しさの欠片も無い女の嬌声は上下の肉の粒を指で弄る度に聞こえる。

 トントン、と優しく竿を突き上げる度に、結合部からは生暖かい蜜が陰嚢を伝う。 

 優しく優しく、優しく抱いて、突き上げる。

 

「は……ッ、ぁ、はぁ……ッ」

 

 喘ぐ喉がのけ反り、剛直を甘く締め付ける膣に誤魔化しは効かない。

 ぷるりと揺れる乳房を好きに揉み、はしたない表情を見せる若葉の首筋を噛む。

 

「ぁぁ……、んんっ」

 

 甘じょっぱい若葉の肉に歯形を残し、唇で吸い付く。

 肩を、首筋を、うなじを、頬を、そして耳を甘噛みする。

 

「気持ちいい?」

 

「……ッ」

 

 角度を変えて突く。

 ぱんッ、と肉が尻とぶつかる度に彼女の耳元で囁き、犯す。

 

「気持ちいい?」

 

「ぅぁ! みみ……ひゃめ……きもちいいから……」

 

「どう気持ちいいの?」

 

「おなかが……りょうのすけの形になって……ぐりぐりしてぇ……」

 

 二度目の質問にただ首肯を返す彼女を突く。

 切なげな喘ぎ声を聞かせた若葉に三度目の質問は必要無かった。

 膣から理解させるように、ゆっくりと竿を引き抜くと、弱点を亀頭で擦る。

 

「俺は若葉が好きだけど、若葉は俺のこと好き?」

 

「──! ………」

 

「答えて」

 

「んんっ! ……すき、だ」

 

「聞こえない」

 

「ぁ! ……すきぃ、しゅ、き、だ……ぁんッ!」

 

「そっか。じゃあ、相思相愛だ。なら、若葉のこと、もっと教えてよ」

 

「わ、たしの……? なんで……」

 

「いいから」

 

 携帯端末を手に取るとおもむろに俺と彼女の自撮り写真を撮る。

 ついでに録画モードを起動。

 それを見て必死に腰を浮かせ逃げようとする少女の白い肢体を押さえつける。自分が撮られていることを察したのか、怒張を包む襞が蠕動し思わず呻き声を漏らした。

 

「ま、まてっ、撮るな! 消せぇ……っ!」 

 

「ちゃんと管理するから。……取り合えず、年齢とスリーサイズ教えて」

 

「……そんなこと言う訳ひぅ!? やめ……覚えてないから……ひなたなら多分、知って……」

 

「そんなにひなたさんに依存して恥ずかしくないの? 靴下も履けないって……」

 

「うる、さいっ……! 靴下ぐらい履ける……!」

 

「あっそう。なら、クリクリしようね~」

 

「んぅぅ……! ぁっ……それっ、ダメ……!」

 

「若葉の中、すっごいトロトロしてる」

 

「いうなぁ……、……ッ!」

 

「イきまくっている顔可愛いよ。ほら、カメラ見て」

 

「~~~~っっ!!」

 

 いや、とか。だめ、とか。

 そんな拒絶の言葉を聞く度に彼女を天国へと昇らせる。

 口を噤む度にツンと震える乳首や、硬くなった陰核を指で弄ぶ。

 ちゅぷちゅぷと耳を口で犯しながら、下腹部を押して中と外から子宮口に刺激を与えるとポロポロ、ポロポロと若葉の口から言葉が漏れる。

 彼女の身体のことから、自慰などの恥ずかしいことや隠していたことを聞き出す。

 

「よしよし……若葉も結構なスタイルですな。若ちゃんのスリーサイズゲットだぜ」

 

「変な呼び方をするな……。無駄に器用な測定をする前にいい加減に下ろせ……!」

 

「今下ろすと暴れそうだから。そんなに怒るなよ。こっちはトロトロの癖に」

 

「う、うるさい……ッ! ひぁぁ!!?」

 

「風雲児の抱き心地最高なんよ。 ……ここも触られると弱いんだ」

 

「……! ま、待て! 待ってくれ! まッ──、───!!」

 

 ──乃木若葉という少女を知っていく。

 

「……小学4年生の頃には……こんなことを聞いてどうしたいんだ?」

 

「休憩がてらなんとなく。別に嫌なら答えなくて良かったのに」

 

「答えなければお前が……そもそも、なんとなくで振る話題ではないだろ。ただのセクハラ……お、おい、そこを引っ張るなっ! ……ま、まて……耳とそこを弄るのはダメだ……」

 

「じゃあ、喉乾いたから水頂戴? 口移しで」

 

「……自分で飲めば良いだろ変態。というか、いい加減にこれを抜け……んッ」

 

「まあ、不器用で下手くそな若葉にはそもそも無理か」

 

「あまり私を馬鹿にするはにゃああぁ!? ふ、不意打ちはズルいぞ!」

 

「水飲ませて」

 

「……、ぐっ……し、仕方ないな」

 

 ──乃木若葉という少女を知っていく。

 

「じゃあ、ひなたさんと初めてキスしたのは、放課後に……空き教室で?」

 

「そうだ……。言ったから、もう……みみは、ひゃめてくれ……」

 

「本気にさせた若葉が悪いから。それで? 夜な夜なひなたの部屋で……? もうちょっと大きな声で……うんうん。ローターとか使うんだ? えっ、ひなたさんにも……エッチだね」

 

「ぅぅっっ!! 頼む、ひなたには言わないでくれ……!」

 

「それは若葉の態度次第だから。ところで、こういう玩具ってどう思う?」

 

「態度って……ぁぁ、奥をグリグリするな……分かった、分かったからっ!!」

 

 はーっ、はーっと荒い息を吐きながら若葉は果てる。

 甘い悲鳴を部屋中に響かせて、長い髪を振り乱す。

 

「若葉って、髪を下ろすと園ちゃんに似るよね。イった時の顔もそっくり」

 

 園子の面影を感じさせるから、こんなに加虐心を煽られるのか。

 もしくは、若葉に園子を重ねてしまったのか。

 それとも単純に反抗的な少女を屈服させたいと血肉が沸き立ったからか。

 汗と涙と体液でドロドロになった女の姿に鼓動を高鳴らせながら、

 

 ──乃木若葉という少女を知っていく。

 

「ほら……また若葉のナカがキュッとした」

 

「……ッ」

 

「隠そうとしても無駄だから。隠したからもう一回しようね」

 

「い、いやだ! また、アレが来るのは……! ぁ、ぁぁ……!! ──ッ!」

 

「いい加減、俺の形は覚えた?」

 

「おぼえ……からぁっっ!! ぅ、ぁ~~~~ッ!!」

 

 シーツを握る若葉の愛液はすっかりと白濁し、陰唇を伝い落ちる。

 唇を奪い唾液を啜りながら、様々な体位を変えて獣のように腰を振る。

 

 ──乃木若葉という少女を知っていく。

 

 携帯端末の前で背面駅弁、立ちバック、騎乗位。時々休憩と質問を記録した。

 彼女から許可を貰い様々な体位に臨み、若さと体力に物を言わせて獣のように貪り合う。

 

「寝バックも好きなんだ。動けないように手錠で拘束されてこんなに濡れちゃって……耳を弄られながらならなんでも良いの? こんなトロトロにして……」

 

「ちがっ! ちがう……、っぁ、ひぁ~~〜!!」

 

「こんな玩具で気持ちよくなるなんて……変態」

 

「──!」

 

 唾液を馴染ませ甘噛みした耳元に小声を流し込む。

 びくっと震えた若葉の肢体に熱が籠るのを確認すると、ゆっくりと腰を動かす。

 

 手錠で拘束された哀れな女に振動する玩具を与える。

 耳の穴を舌で穿られながら凹凸の付いた指サックで乳首や陰核を擦られるのが大層気に入った若葉。それを指摘して否定する彼女を責めながら戯れに玩具も使った。

 玩具の好みは言葉ではなく彼女の身体が教えてくれた。

 蕩けた表情を隠そうと枕に押し付ける若葉の尻を叩くと、パンと音が鳴る。

 

 ビクッと膣を収縮させた彼女に背後から圧し掛かり、長い髪ごと頭を抱く。

 赤らむ耳を甘噛みしながら、言葉を耳朶に響かせながら、ゆっくりと腰を揺する。

 

「もう漏らしたのか分からないくらいにシーツがびしょびしょ……中学生にもなって粗相しちゃダメだろ?」

 

「おまえが……! ンんッ!! と、とるなぁ……」

 

「イけ! イけ!」

 

「──ぁっ! ぁぁっっ!!」

 

 

 

 獣のように女体を貪り、快楽に浸し込む。

 イヤだ、イヤだ、とうわ言のように呟く少女の身体は与えられる快楽に悦びを示す。

 徐々に緩慢となる若葉を抱いて、湯を張ったバスタブの中で対面座位で愛し合う。

 

「悪かったよ。機嫌を直せって」

 

「…………」

 

「若葉が可愛いから少し強引にしちゃった。嫌だったならごめんな」

 

「……」

 

「……」

 

「……ぃ、いやじゃ……ない」

 

「そっか。じゃあ、仲直りのキスね」

 

「んむ──」

 

 酩酊したように、ただそれだけを呟く若葉。

 それを告げた褒美として唇を重ねながら、射精衝動に身を任せて貫く。

 

「キス、少し上手くなったな」

 

「はあっ……はあっ……、そ、そうか?」

 

 すっかり解れた若葉を抱くと、彼女は素直に全身で応じる。 

 腰に脚を回し、腕を背中に回し、無意識なのか自ら腰を揺すり快楽に耽る。

 

 涙と汗は既に流し、ふやけた顔を見せる若葉とディープキスをする。 

 コツを覚えたのか絡めた舌を器用に動かす彼女は虚ろな目をしていた。

 

「っ! ……っ!」

 

 じゃぷ、じゃぷと湯が跳ねる。 

 かき混ぜるようなピストンに胸板に押し付けられた乳房が潰れる。

 

「ぅぁあ! また! ぁ、ぁっ……あ!」

 

「っ……! 射精すぞ──」

 

 目尻に涙を浮かばせ若葉の爪が肩に食い込む。

 彼女の肉体が俺を求め、耳を甘噛みすると鼻を肩に押し付け甘い声を聞かせる。

 小細工も何もない、雄々しい抽送に互いを強く抱きしめ合う。

 

「くっ……ぁあああっっっ!!!」

 

 若葉の身体が二度跳ねた。

 恐らく同時に法悦の高みに上って、吐き出された白濁が彼女の大事な場所を汚した。

 

「っぁ……」

 

 余韻を十分に味わい尽くして、脱力した彼女は俺に身を預けた。 

 情欲や感情を全て吐き出した心境で、俺は暫くの間彼女と共に湯舟に浸かった。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「……覚えておけよ」

 

 帰りの電車の中で若葉が呟いた。

 ホテルの退室時間になるギリギリまで彼女と楽しい撮影会を繰り広げた。最後にはヤケクソなのかピースと強張った笑顔を見せた写真はきっと世界で一枚だけだろう。

 飲酒した訳ではないので本人も忘れることはなく、今日の出来事は最初から最後まで覚えている訳だが、それを口にすることは許さないとばかりに半眼で俺を睨みつける。

 

「あんなに乱れた若葉のことは絶対忘れないから」

 

「……うるさい。次は亮之佑のことをもっと教えて貰う」

 

「────」

 

「私ばかり知られるのは……ズルいだろう。お前は友奈みたいにあまり自分のことを話さないからな」

 

 電車の窓からは雨が止んだ世界が広がって見える。

 隣に座る少女に目を向けると、着込んだ衣服の中に隠された下着や色白の肌を思い出させる。露出は一切していないが、それがかえって先ほどの情事を鮮明にさせる。

 決してこちらを見ようとはしない若葉、その上着から覗く白い首に微かに赤い痕が覗いた。

 

 一言では表せない複雑な表情を浮かべた彼女の瞳には微かな敗北感が残っていた。

 ただ屈服したかというと、まだ折れ切ってはいない、そんな意思の強さを感じさせる。

 そんな横顔をジッと見ていると、根負けしたように若葉が俺に顔を向ける。

 

「──なら次は、どこに行こうか?」

 

「────」

 

 夕焼けに照らされた凛とした顔立ちと、睫毛の長い紫紺の瞳。

 無言で此方を見やる若葉、その膝に置いた手を再び握った。

 

「……つ、次は変なことはしないからな」

 

「そもそも今日も変なことはしてないからな」

 

「…………」

 

 ──たっぷりと数分ほどかけて、ゆっくりと指が絡みあっていった。

 

 

 



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第三十一話 必要なのだと分かっても

 ──帰りの電車に揺られている時だった。

 

「……そういえば、『わかちか』とは何だ? どういう意味なんだ?」

 

「随分と唐突だな」

 

「亮之佑や園子ほどではない。そもそも最初に言ったのは亮之佑だろう」

 

「……ああ、そうだっけ」

 

 凛々しい花のような少女の言葉に思い出す。

 周囲の目を誤魔化すように、コートのポケットに入れた手。

 剣タコのある柔らかくも鍛えられた少女の手を握りながら思い出す。彼女とのデート、雑談の合間に何となしに出した言葉を若葉は覚えていたようだ。

 車内のシートに座り、触れる肩に少女の体温と柔らかさを覚えながら口を開く。

 

「アレは園子や杏が言い出した造語で……」

 

「ん? 園子はともかく、杏もか? 随分と前から園子の影響を受け気味だったからあり得なくはないのか……、杏は園子のことを先生呼びしているしな」

 

「園子の影響は先祖である若葉の責任だから」

 

「いや待て、流石にそれを先祖の所為にするのはおかしいだろう……」

 

 呆れた声音で呟く若葉の主張は正しい。

 名前も顔も知らない子孫の責任など取る筈が無い。

 そもそも本来ならば顔も名前も知らない。だが、若葉は園子のことを知っている。

 知っているからには、そして自分の手が及ぶ範囲であるからには、真面目で委員長気質な彼女が告げる言葉は一つだ。

 

「なら、これ以上変な道を行かないように、しっかりと私が見張らねば」

 

「園子には俺がいるから大丈夫」

 

「心配だな。二人になると積極的に悪ノリしていたりするではないか」

 

「園子には俺という良い男がついているから何も問題ないって」

 

「……ふん」

 

 そう告げると、ふんす、と鼻で笑う乃木家先祖。

 初代勇者の一人である女騎士は子孫の男にまで口を挟みたいらしい。

 若葉から見れば俺は園子の相手としてはダメな男になるようだ。

 

 実際にこの世界に来てから衝動的な行為に耽ることは多くなった。神樹が創造した世界にいる影響か、勇者になれない影響か、別の要因によるものか。

 元の世界とは異なり、治療という名目で多くの乙女たちと少々爛れた関係を構築してきた。

 残念ながら声を大にして誠実な男ですとは言い難くなってしまっている状況だ。 

 それは若葉も理解してはいるのだろう、口調に苦笑が混じる。

 

「亮之佑も、一応は私の子孫にあたるんだよな……」

 

「そう、らしいけど。あんまり似てないよな」

 

「どこかで妙な血が混ざったのだろうか」

 

「……不満か?」

 

「あ、いや……園子の時も思ったが突然変異過ぎないかとな」

 

「園子は確かに。若葉にふわふわ成分は無さそうだし。身体はふわふわしてたけど」

 

「いや、園子というかお前も……ん? 今何か言ったか?」

 

「何も」

 

 加賀亮之佑は乃木家分家の長男である。

 神世紀300年のどこかで分岐したであろう家ではあるが、記録は消失しているという。

 大赦ならば保管はしているかもしれないが、見せるつもりはないのか。しかし、そうでありながらも加賀家が乃木家の分家であるのは今のところ保証されている。

 

 過去に何があったのか、それは神しか知らないのか。 

 或いは、以前ならば、こういう時に真っ先に聞く相手がいたのだが──、

 

「────」

 

「亮之佑?」

 

「いや、子孫だなんだって言われても別に髪の色も見た目も全然違うから意識したことって全然ないなって。若葉は俺に対してそんな風に意識したことはあるのか?」

 

 生まれた瞬間から髪の色がブロンドだったり、目の色が似ていれば納得したかもしれない。

 外見というのは大事だ。見た目で、直感的に理解出来るから。

 何よりも、彼女よりも明確に繋がりのある人物を知っているから。

 園子と違って、俺は若葉を先祖だと認識したことはあまりない。

 

「正直あまり無いが……、だが二人とも私の大事な子孫だ。それは間違いない」

 

「そう言いながらも普段から男として見ちゃったと……いたた」

 

「調子に乗るな」

 

 若葉は列車内で暴れたり声を上げたりすることは無い。良識ある女だ。

 精々が無言で俺の手を握り潰そうと力を込めてくる程度。コートのポケットの中で互いの手を握り合っていると、電車の速度がゆっくりと下がり始めるのが分かった。

 讃州市の駅に到着、それは即ち、若葉との疑似デートの終わりを意味していた。

 

「……着いたな」

 

「ん」

 

 電車が止まった。

 どこか寂寥感を滲ませるように若葉は呟いた。

 首肯を返しながら、彼女と共に電車を降りてゆっくりと駅を歩く。人の流れに沿うように、そして出入口直前で人のいない隅へ滑り込むように移動すると若葉に絆創膏を差し出す。

 

「ん? 怪我なんてしてないが?」

 

 コートから僅か覗く白い首筋。

 薄く痕の付いたソレは目敏い者なら察してしまう情事の証だ。その視線から隠し、邪推を防ぎ、虫に刺されたと誤魔化す為の手段として絆創膏を貼るのだ。

 そんなことを彼女に軽く説明すると、少し考えた若葉は顔を上げ目を閉じる。

 口づけを待つかのように、端正な顔を近づけて無防備を晒す若葉は艶やかな唇を開き、

 

「どの辺りか分からない。代わりに貼ってくれるか」

 

「はいよ」

 

「ん……」

 

 首筋に触れる指先に、長い睫毛に縁取られた瞼が揺れる。

 手間取ることなく貼り終えると、瞼が開かれ透き通った紫紺と視線を交わす。 

 

「亮之佑」

 

「うん?」

 

「──今日は楽しかった」

 

「……俺もだ」

 

 チラリと向けられる紫紺の瞳は和らぎ、端正な顔は見る者を惹きつける。

 穏やかに、凛々しさを忘れない彼女の姿に、ふと数十分前の淫らな姿を重ねた。

 

「今日の若葉はエッチだった。きっと帰っても忘れない」

 

「なっ!?」

 

「なんちゃって」

 

「……揶揄うな」

 

 一瞬、若葉の手を強く握り、ゆっくりと静かに離す。

 掌に残る熱と感触が残る中で、駅の出口に脚を向けると声が掛けられた。

 

「──若葉ちゃん」

 

「……む。ひなたか」

 

「おかえりなさい。少し遅かったですね」

 

「あ、ああ。……帰りの電車が雨で遅れてな」

 

「そうでしたか。……亮之佑さんもお疲れ様でした。うちの若葉ちゃんがお世話になりました」

 

「はい」

 

 疑似デートの最後には迎えがあった。

 既に夕暮れ。勇者部に所属する他の少女たちの活動も既に終えている時間帯だ。他の疑似デートの応援に千景と共に参加したひなたが駅まで迎えに来ることは不思議なことではない。

 若葉にはひなたが迎えに来た。そして俺には──、

 

「亮くん」

 

「──ぁ」

 

 耳に馴染む鈴音の声色。

 絹のような黒髪は青色のリボンが束ね、衣服では隠せないほどのスタイルの良さは周囲を歩く男たちの視線を惹きつける。 

 彼女はそれらを気にすることなく俺と若葉にその視線が向ける。

 

「若葉さん。今日は私の亮くんがお世話になりました……色々と」

 

「え? あっ、いや……」

 

「いえいえ、こちらこそ……私の若葉ちゃんがお世話になりました」

 

 唐突に僅かに頭を傾けて、保護者のような、或いは良妻の真似事をするかのように東郷は当然のような態度で若葉に感謝の言葉を告げた。

 困惑する若葉、彼女に代わり応対するのはひなただ。

 巫女もまた平然とした様子で互いに感謝の言葉を告げ、笑みを浮かべ合う。

 

「ひ、ひなた? どうかしたのか?」

 

「若葉ちゃん」

 

「おっ!?」

 

 穏やかな笑みを浮かべていた巫女、その姿に何か違和感を覚えたのかおずおずと若葉は口を開く。名前を呼ばれて振り向いたひなた、その顔に何を見たのか若葉は息を呑む。

 いったい、どんな顔をしているというのだろうか。

 

「亮くん」

 

「────」

 

「今日は楽しかった?」

 

 だが、俺には彼女たちの方を事細かく見ている時間は無かった。

 そもそも、そのやり取りすら、耳が機械的に拾うだけで視線は動かせない。

 東郷美森という女から目を逸らすことは許されないことだから。

 

「え? うん。楽しかったよ」

 

「そう。良かったね」

 

 するりと東郷が近寄る。

 ここが私の場所だと言わんばかりに、公衆の面前で腕に抱き着く。

 奥ゆかしさを捨てて、周囲に主張するかのように、豊満な胸で腕を挟む。その温かくも柔らかな感触と、向けられる笑顔は──、

 

「……」

 

 光のない深緑色の瞳を細めて、見る者を魅了させる笑みを浮かべる東郷。

 柔らかな拘束は、しかし絶対に外させないという強い意思によるものだ。

 

「若葉ちゃん? 首の絆創膏どうしたんですか?」

 

「え? ああ……これは、その、虫に刺されたから」

 

「へぇ……。虫、ですか。そうですか。その話、後でたっぷりと聞かせて下さい」

 

「……い、いや本当に虫に刺されたんだ!」

 

「ふ、ふふふ」

 

 仲睦まじい姿を見せる彼女たちはカップルのように腕を組む。

 小首を傾げて笑みを見せるひなたと、何かに怯えるような若葉の姿は印象的だ。

 

「それでは、亮之佑さんと東郷さん。今日はお疲れ様でした」

 

「ええ、若葉さんとひなたさんもお疲れ様です」

 

 クスクスと笑い合う二人。

 目を伏せて存在を希薄化させようとする若葉はチラリと此方を見る。

 

「ま、また会おう」

 

「ああ」

 

 生きていたら、そんな言葉が付いているかのような悲壮さを若葉は漂わせる。

 見送りの必要はないと告げるひなたに従い、俺と東郷は彼女たちを見送った。

 去り行く二人の背中を見ること数秒、首元に少女の鼻が当たる。

 

「それじゃあ、私たちも帰ろうか? 亮くん」

 

 

 

 

 

 

 

 するするとズボンが引き下ろされ、ソファへと寝転がされる。

 天を突くように反り立つ剛直が露わになった。

 微笑む東郷は既に衣服を脱ぎ、白く豊かな乳房を見せつける。

 

「──それで若葉さんと、してたんだ」

 

 膝枕。それも少女の生腿が俺の頭部を支える。

 タオルを敷き、その上に座る形で惜しげもなく裸体を見せる東郷は餅のような質感の乳房で俺の顔を抱いた。ふかふか、もちもちとした乳房に顔を挟まれ僅かに息苦しさを覚える。

 

「……正直に言えて偉いね、亮くん」

 

 吸い付くような餅肌、コリコリとした乳頭が顔面を覆う。

 程よい質量が顔面に圧し掛かり、甘い香りと柔らかな乳房に不思議な気分になる。

 

「吸っていいよ?」

 

 授乳。ピンク色の乳首に吸い付く自分を見下ろす彼女は羞恥と母性を混ぜ合わせたような表情を見せる。僅かな汗と甘い女の体臭、それらを嗅ぎながら出ることのない母乳を求める。

 ちゅ、と唇が乳頭に触れる度に東郷は心地よさそうな息を漏らす。

 片方の乳を吸い、もう片方の乳を揉むと頭の下で膝を擦り合わせて身をくねらせる。

 

「ふふ……赤ちゃんみたい」

 

 どこか得意げな表情を見せる東郷の手は怒張を扱く。

 自分の身体で、鉄のように硬くなった怒張を手にすると東郷の目には形容しがたい淫らな笑みが浮かぶ。

 揶揄され、下腹部に血液が集まる中で彼女の指が絡むとピクリと腰が動く。

 

「動いちゃだーめ」

 

 甘い声色で、教育するように指の一本一本が巧みに竿を刺激する。

 竿裏を爪で軽く撫で、雁周りを指の腹で撫でる。自然と漏れる声を抑える為、唇を噛む俺を見下ろす東郷は男の悦ばせる方を分かっていた。

 指だけではない。自らが履いていた生地の薄いショーツが肉竿に巻かれ、手と共に扱かれる。俺好みのリボンやレースの付いた薄青色の布切れに雄汁が染みを作るも、気にする様子はない。

 

「それで? 亮くんは若葉さんとどんなことをしてたの?」

 

 動いてはならない。

 それを分かりやすくしたのが手首の拘束だ。

 何を考えたのか、薄青色のブラジャーを器用に使って手錠のように拘束している。

 

 この程度の拘束は簡単に解ける。

 だが、それをするのは許されないらしい。

 

「前に部室で亮くんが男女の営みに関する漫画を置いていたでしょう? こういう奉仕の方法もあるのね」

 

 それは出来心だった。無垢な少女たちが集う部室。 

 そこにエッチな本を置いたら何が起きるのか。

 数冊ほど置いて、カメラも設置して、最終的には吊るされた出来事を懐かしそうに語る彼女は妖しい光を灯らせた翡翠の瞳を和らげながら、俺の唇に顔を寄せる。

 

「若葉さんとの逢引は楽しかった? そうよね。あんなに格好いい人だもの。亮くんが目を奪われるのも分かるわ。治療だけじゃなくて……一杯、したんでしょう?」

 

「んっ……」

 

「ううん。それは良いの。分かってる。亮くんは優しいから」

 

「……っ!」

 

 薄青の柔らかい下着で肉棒を扱かれながら、キスをする。

 柔らかなキス、唇を甘噛みし、絡ませる舌は情事を上書きするような上手さだ。

 

「私ね、多分、嫉妬してるし怒っているんだと思う。自分勝手でごめんね」

 

 肉体が少しずつ熱を帯びていく。 

 柔らかな少女の掌は慣れた様子で肉棒を扱き、角度や指の動きを変える。

 俺を翻弄するように亀頭を指で押し潰し、擦り、扱かれて吐精へと導かれる。

 

「仕方のないことだって分かっているけど、元の世界よりも許容しないといけないって。でも、やっぱり夫の不貞は見逃せないから……!」

 

「うぐっ! ……ッ、ぁ──」

 

「治療以外で変なことをしないように、またお仕置きしないと」

 

 白く艶めかしい脚から頭を上げることは許されない。

 見上げると質量のある下乳と乳頭、端正な顔という絶景で弄ばれる。

 若さ故の欲望を、他の女への視線を削ぐように、陰嚢を指で撫でて口を塞ぐ。

 

「ん、ぷっ……」

 

 ──若葉は今頃、ひなたとどうしているのだろうか。

 

 一瞬、意識が明後日の方向に向かったことを悟った黒髪の少女が舌の動きを強める。普段と違い強気のキスは舌を絡められながら頬肉や舌裏を味わわれる。

 くちゅくちゅと卑猥な音を口腔に立てながら、肉棒を扱く手に力が籠る。

 

「痕が付くのは嫌? 噛み痕が付くのは嫌?」

 

 東郷は俺の首筋に甘噛みして、皮膚をきつく吸う。

 質問への回答など求めてはいない。ただ、自分をマーキングするだけ。

 卑猥な吸血鬼は、淫魔のごとく精を搾ろうと怒張の扱きの速度を上げていく。

 

「ぐっ! くぅ……!!」

 

 東郷の指は竿を掴み、限りなく膣に近い締め付けを再現していた。

 絶妙な力加減は我慢を許さず、意識を白ませ、果てさせる。

 

 びゅうっと噴き出した白濁は東郷が巻き付けた彼女の下着を汚す。

 染みを作り、そこから溢れる汚濁は彼女の白魚の手をも濡らしていく。

 

「ぁ、あ、……!」

 

 射精が終わるまで、陰茎を東郷は強く握る。 

 ビクッビクッと震える剛直には目を向けず、キスをしながら吐精を受け入れる。

 数秒して、口を離すと、肉棒に巻き付けたショーツを外していく。

 

「うわぁ……凄い出たわね」

 

 クロッチ部分を白濁で汚された自らの下着。

 濡れた瞳で満足そうに俺に告げる東郷。 

 妖しい笑みを浮かべる彼女はそのまま白濁で汚れた怒張に顔を近づける。

 

「気持ちよかった?」

 

「あ、ああ」

 

「そう……」

 

 果てたから終わり。そんな訳が無かった。

 臍へと垂れ下がりかけた怒張、その先端に東郷の唇が触れる。

 俺の腹部に手を置き、鼻息が根本をくすぐり、眼前で乳房が揺れた。

 

「あッ」

 

 女のような声を上げたのは、果てて敏感だった怒張を頬張られたから。

 張り付いた白濁を舌が舐めとり、その刺激に思わず腰を引かせる。やわやわと陰嚢を手で揉みながら頭を前後に動かす彼女は子種を促す。

 

 腰を引かすも、肉棒に追いすがる彼女は何度も何度も顔を動かす。

 さらりとした髪を肩から流し、意識を飛ばした。

 

「あぁっ!」

 

 先ほどの射精、その残りがじゅるるっと音を立てて吸い出された。

 僅かながらも勢いのある子種が彼女の口腔を汚すのが分かった。

 濡羽色の頭を掴むも、東郷は決して雄竿から口を離すことはしない。隅々まで味わい尽くすかのように、舌で先端を弄り回し飽きるまで吸い付く。

 

「ん……おいしい」

 

 こくん、と東郷は嚥下する音を聞かせた。

 極上の料理を口にしたように、熱い吐息をしながら脱力する俺を抱く。

 

「よしよし……」

 

「ハァ、ハァ──、ぁぁ……」

 

「ごちそうさま」

 

「……」

 

 豊満な乳房に顔を沈め、谷間を伝う汗を舐めとる。

 淫靡な芳香は脳裏を白く染め上げ、甘美な刺激が脳を震わせる。

 耳元で囁く甘やかな言葉は、思わず瞼を閉じて余韻に浸らせた。

 

 

 

 

 

「夕ご飯、私が作るからゆっくりしてて」

 

「……ありがとう」

 

 ──別に珍しいことではなかった。

 

 東郷が重い女で、嫉妬しやすいことも。

 園子もふわふわしているが、意外と重いことも。

 友奈も普段は無防備で天然が多いけれど、それなりに嫉妬したりすることも。

  

 治療名目という大義名分など関係ない。

 嫉妬して、そのガス抜きとして玩具のように少女たちに精を搾り取られる。

 それは、この世界に来てから、何度も何度も繰り返されたことだ。

 

「……」

 

 しっとりと濡れた肢体。

 こちらに背を向け、ふるりと揺れる尻肉。

 彼女が手に取るのはアサガオの模様がついた可愛らしいエプロン。いつだったか、この世界で友奈が手縫いで作った渾身のエプロンは彼女のお気に入りだ。

 

 唯一といっていい衣服は全裸姿よりもいやらしい。

 エプロンとリボンだけの姿、横から覗く豊満な乳房は揉んで欲しいとばかりに揺れ動く。

 その姿を見せられて襲わないのは男ではないのだが、今の俺は反省している。

 

「……」

 

 幾度も繰り返されたことだ。

 挑発するようにチラリと流し目で此方を見る東郷の姿も。

 

「……」

 

 素足でペタリペタリと床を歩く少女。

 その後ろ姿を追いかけて、背後から抱き寄せると苦笑と冷たい言葉が返ってくる。

 

「今日はもうおあずけよ」

 

「……」

 

「駄目、だから……っ、ひぁん!」

 

 ぎゅむ、とエプロンごと乳房を揉む。

 独特の弾力のある尻肉に肉棒を突っ込みながら、怒っていますという雰囲気を見せる彼女にキスを迫る。顔を背ける少女の頬を突き、顎を持ち上げて唇を奪う。

 

「りょうく……ん」

 

「……」

 

「……離して。離しなさい」

 

 怒りを滲ませる東郷の唇は変わらず柔らかい。

 腰に回した腕に力を籠めると、困ったように呻く彼女は脱力する。

 

「……もう」

 

 仕方ない男だ、そんな表情で東郷は口づけを返してきた。

 くるりと俺と向き合うように身体を回すと、僅かに背を伸ばして唇を交わらせる。

 

 熱い吐息には諦観と喜悦と期待が混じり、白い顔が紅潮して──、

  

「東郷さーん! 園ちゃんからプレゼントが……って!? あ、ごめんね。お邪魔だったかな」

 

「ゆ、友奈ちゃん!? ち、違うの。これは──」

 

 

 



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第三十二話 台本通りの乱入

「──ま、待って! 友奈ちゃん!!」

 

 空気の読める女、曖昧な笑みを浮かべて立ち去ろうとする友奈。

 制服を着た彼女を捕まえるべく、尻で俺を押し退かす裸エプロンの人妻が機敏に追いかける。背中を見せた友奈に追いつくことなど東郷にとって1秒も掛からなかった。

 ぷるりと揺れる尻肉に目が吸い寄せられる内に、いつの間にか友奈は捕まっていた。

 

「わっ、東郷さんに捕まっちゃったー!」

 

「捕まえたわ。──もう離さない」

 

 きゃっきゃと無邪気に笑う友奈を背後から抱く東郷。

 華奢な外見の割に、東郷の腕力は女子の中では強い。車椅子時代の名残か、その腕力を惜しむことなく友奈を抱き締め逃がそうとはしない。

 片方が裸エプロンという状況を気にせず、彼女たちは平然と絡み合う。

 

「友奈ちゃん……」

 

「東郷さん……あったかくて柔らかいね」

 

「そんな、柔らかいなんて……友奈ちゃんこそ、友奈ちゃんで友奈ちゃん友奈ちゃん友奈ちゃん……」

 

 うなじに顔を埋める人妻、その腕に友奈の手が置かれる。

 聖母のような表情を浮かべる彼女は半裸の少女に引き留められた。

 

「でも、私行くね」

 

「駄目よ。行かせない……!」

 

「ううん。二人の邪魔はしたくないから……」

 

「邪魔なんて!! そんなことないよ、友奈ちゃん!! ……三人でしよ?」

 

「……いいの?」

 

「もちろんよ!」

 

 東郷の説得にやがて小さく頷く友奈。

 そして空気に溶け込むように入り込んできた薄紅色の少女は、ふふっと笑みを浮かべた。 

 

「三人で、しちゃおっか」

 

 逃げる素振りが無くなったのを感じ取ったのか。

 どこか名残惜しそうな顔を見せる人妻は抱擁する腕を解いた。

 くるり、と此方を振り向いた友奈は制服のスカートを広げ、東郷と俺に柔和な笑みを見せる。

 

「実はね、園ちゃんからプレゼントを貰ったんだー」

 

「そのっちから?」

 

「うん! これとか!」

 

「……こ、これは!! これは……何かしら」

 

「どれどれ……」

 

 戦慄の表情を見せる東郷の背後から、俺はそれを見る。

 紙袋に入っていたのは兎の耳を模したカチューシャだ。よく見るとカジノにいそうな肌の露出の多いバニーガールのコスプレが出来そうな衣装が数人分、一通りあるようだった。

 ピンク色のカチューシャを取り出し、頭部に着けた友奈は小首を傾げる。

 

「ぴょんぴょん!」

 

「友奈ちゃんがぴょぁぁぁああん!!」

 

 恍惚な表情を浮かべた東郷はふらりと身体を揺らす。

 抱き心地の良い女の身体を背後から抱く俺はエプロンの隙間から覗く乳肉を掌に収める。横から覗く純白の肉果はずっしりと掌に乗り、ツンと尖った乳首を指で弾くと身体を震わせる。

 

「ん、っ……」

 

「東郷さん? 大丈夫?」

 

「う、うん。友奈ちゃんが可愛くて急に動悸が。そのっちもやるわね」

 

「えへへ……。ありがとう。そうだ。東郷さんのもあるよ! 一緒につけよ?」

 

 東郷の嘘偽りのない賞賛に友奈は照れ臭そうな笑みを見せる。

 それを誤魔化すかのように、紙袋から青色のウサ耳カチューシャを取り出すと東郷に渡す。アサガオの装飾がされたソレを受け取った彼女はおもむろに頭部に付ける。

 

「ど、どう?」

 

「わぁー! 東郷さん可愛い!」

 

「ふふ、お揃いね。亮くん、どう……?」

 

「凄い可愛い」

 

「もう……! 亮くんのもあるからつける?」

 

「いや、俺は……」

 

「東郷さん! ぴょんぴょん!」

 

「ぴょ、ぴょん!」

 

「ぴょん!」

 

「ぴょん!!」

 

 恍惚な表情をした兎と無邪気な笑みを浮かべた兎。

 裸エプロンの少女と制服の少女の戯れはいつまでも続く。そう思われたが床をぴょんぴょんと飛んだ拍子に紙袋から転がり落ちる玩具に意識が向いた。

 ぴょんぴょんしていた二人もそれに大きな瞳を向け、見開く。

 

「ゆ、友奈ちゃん? それって……」

 

「これ? エッチな道具だって。こんな風にするらしいよ」

 

「なっ!? そのっぢぃぃい゛ぃ……! 友奈ちゃんになんてことを教えて……」

 

 少女の歯ぎしりを気にすることなく、友奈の手が床に伸びる。

 掴んだのは透けた黒色の双頭ディルド。睾丸はないU字型をした疑似肉棒を手にする彼女はそれを握ると装着するかのように自らの下腹部に宛がう。

 まるで怒張が生えたかのように東郷に見せつけるかのようで、

 

「お仕置きをしなくては……そろそろお灸をすえないと……って、友奈ちゃん?」

 

「──友奈くんだよ。東郷さん」

 

「え? ゆ、友奈……くん?」

 

「見てよ、東郷さん。東郷さんがエッチだから、僕こんなになっちゃった」

 

「ゆっ、ゆゆ、友奈くん!? そ、そんな……私の所為で……立派な男根が」

 

 それは黒く大きかった。冷たいゴムの塊は肉棒の形をしていた。

 グロテスクさは抑えられながらも、肉竿周りに凹凸が作られている。それをまるで元からあったかのように自らの下腹部に宛がう友奈の演技に東郷は頬を赤らめ身を震わせる。

 少女の疑似肉棒、その先端がエプロン越しに東郷の下腹部を擦る。

 

「東郷さん。僕のこれを大きくしたんだから、責任とって貰おうか」

 

「は、ひ」

 

 東郷が漏らした甘い呼気。

 挑発的で雄の微笑を見せた友奈に、陶然とした表情を浮かべた東郷。モジモジと太腿を摺り寄せる彼女の胸の突起が掌の中でより硬くなるのが分かった。

 

 

 

 

 白昼堂々と人妻の浮気が繰り広げられていた。

 

「ひぐっ!! んむっっっ!!」

 

 軋む寝台とシーツには染みが出来ていた。

 喘ぎ声を漏らし、東郷は気持ちよさそうに背を反らした。

 

 汚さないようにとエプロンは自ら脱ぎ、畳まれて隅に置かれている。

 シーツに広がる裸体と黒髪、友奈の持つ玩具が結合部から出し入れされる度にくちゅりと蜜が溢れる。結合部からは白い泡が立ち、黒色の剛直が抜かれる度に淫音が響く。

 甘い喘ぎ声は下腹部に血を巡らせ、揺れる乳房に目を奪われる。

 開かれた口唇が震え、疑似肉棒の抽送に合わせてだらしなく緩むのは裸体の女だ。

 

「東郷さん、気持ちよさそう」

 

「ゆうな……ちゃ……ぁ、ぁっ!!」

 

 エプロンの隣に、折り畳まれた讃州中学校の制服が並ぶ。

 ピンク色の可愛らしい下着のみとなった友奈の優し気な口調と裏腹に、東郷の恥部を犯す手の動きは激しく責め立てる。

 片手で東郷の秘所をディルドで犯し、もう片方の手で自らの恥部を弄る。

 

「っはっ、はーっ! ……ゆうなっ、くん……!」

 

「……っ、我慢しなくて良いよ東郷さん。もっと気持ちよくなって?」

 

 揺れる双丘に本物の肉棒が擦りつけられる。

 怒張に潰れ、亀頭と乳首が擦れる中で、友奈のディルドが媚肉を浅く出入りする。

 

「ひぁぁ……ちにゃぁ……んあっ!!?」

 

「ここをこうするとイイんだ……。東郷さんはエッチだね」

 

「ゆうなちゃ……くん……それ、らめ──んぐっ」

 

 腋も乳房も肉棒を擦りつけると、喘ぐ東郷の口に怒張を沈める。

 大好きな友奈に責められて法悦に緩んだ唇は、それでも男の剛直を頬張る。熱くぬめる口腔で肉棒を濡らしながら、豊満な乳房を揉む。

 淑やかな妻を気取るように夫の肉棒を咥えながら、間男の怒張を秘所で咥える。

 揺れる腹部に汗が浮かび、深緑の瞳が快楽に揺れる。

 

「んむっ、んっ、むー……っ、っ! ……!!」

 

 夫の剛直に舌を這わせる人妻に対して、間男である友奈が責める。

 彼女もまた東郷の乳房を揉みながら愛液に濡れた玩具を抽送させて秘裂から蜜を溢れさせる。

 浅く貫くディルドの動きに合わせて鼻息を荒くする東郷の目は既に虚ろだ。

 恍惚な表情で、時折腰をビクリと震わせる東郷の姿に友奈はクスリと笑みを浮かべる。ダブルディルド、その片方を掴む友奈は東郷の秘所を貫いては抽送し、的確に絶頂へと導く。

 

「東郷さん、気持ちいい?」

 

「はぷ……んむっ、もっ、ん……! んんっっ!!?」

 

「ここも好きなんだね。えいっ!」

 

「んぶっ! ぷっ、は……ッ! ぅぶっ……!!」

 

 友奈の責めが余程気持ちいいのか、東郷は口を窄めて怒張を吐き出そうとする。

 それを許さず俺は腰を揺すり、彼女の口腔を、時折立てられる歯の感触すら楽しむ。

 

 友奈の手捌き、色んな角度で東郷は弄ばれる。

 黒いディルドを挿入した結合部から、ぷしっと飛沫が飛ぶ。

 

「~~~~ッッ!!」

 

「わっ、また出た! 東郷さんは凄いね! さっきもお漏らししちゃったのに、まだ出るんだ〜」

 

「────」

  

 気のせいかもしれないが、友奈の笑みが俺を煽るように見えた。

 自分の方がテクニックは上だと。そんな風に見えて。

 

「ぷぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 腰を浮かせ、両脚の爪先を立てて東郷は身を震わせる。 

 かくかくっと腰を上下させる中でも、友奈は媚肉にディルドを押し込む。一定のリズムで、的確に彼女が望む膣襞を擦る度に、はしたなく開かれた脚が伸びる。

 

 翡翠の瞳に涙を浮かべて白磁の肌は興奮による朱へと染まる。

 嬌声と吐息を漏らし、汗で濡れた髪が振られ、リボンとカチューシャが寝台に落ちる。生まれたままの姿の少女、その豊満な女の身体を二人で犯して、貪るように食す。

 

「えいっ、えいっ!」

 

「く、むぅぅっ!!」

 

 淑やかさの欠片もない、下品な悲鳴。

 頭が左右に揺れ、歯と頬肉が交互に射精を促す。

 

 東郷の頭を膝に置き、乳頭を捏ね繰り回す。

 クリクリと肉粒を指の腹で擦り、少女の口に性器を捩じ込み乱暴に腰を振る。

 

「んぶぅッッ!!」

 

 友奈と共に東郷を犯す征服感。

 東郷美森という美しい存在を汚すことに、多幸感が高まり射精感が解き放たれる。

 少女の口腔から肉棒を引き抜き、柔らかな唇に押し付けるように白濁を吐き出すと、ぶびゅ、びゅるるっと彼女の唇や端正な顔、雪肌に映える黒髪を汚した。

 

「ぁ、~~~っ!!」

 

 東郷もまた、幾度目かの法悦に瞼を閉じて汚濁を受け入れる。

 一滴残らず彼女を自らの精液で汚し、俺はしばしの間の放心した。汚された少女は瞬きを繰り返すと当然のような顔をして唇で亀頭に吸い付き、残りの子種を吸い取ろうと奉仕の念を見せる。

 健気な妻の行為にも見えるが、それは間男の責めを無視したと解釈されたのだろう。

 

「む……東郷さん、私も挿れちゃうね……」

 

「ぁ、ぇ……?」

 

 淫らな親友を弄んでいた友奈もまた、その淫熱に侵されている。

 ブラホックを外し、秘所と透明な糸を繋ぐショーツを脱いだ彼女は東郷の片足を持ち上げる。脚を広げさせると、その根本である自らの飛沫で濡れた恥毛とディルドを咥えた秘所が晒される。

 

「凄い濡れてるねー……東郷さんのここ」

 

「っ……! あ、あんまり見ないで……」

 

 恥じらいに目を伏せる東郷に代わり、元気一杯の友奈が脚を広げる。

 彼女の陰唇が小さく開き、その奥のピンク色が覗くと同時にディルドの先端が宛がわれる。

 

 東郷の腰を掴み、自らの恥部に疑似肉棒を挿入する。

 にゅぷぷ、と黒色のディルドが少女たちの膣に飲み込まれた。

 顔を赤くして、息を止めて挿入したのか、大きく吐息する友奈は艶やかな笑みを見せる。

 

「ぁ、ぁぁ……は、入ったね。入ったよ東郷さん」

 

「……っ、りょ、くん以外の……友奈くんの男根が……ごめんなさいあなた──」

 

「ん、く……え、えい!」

 

「ふわぁぁあ!!?」

 

 ぬぷぷ、と濡れた友奈の恥部が怒張を飲み込む。

 正常位ともいえる体位で、友奈と自らの恥部を交互に見る東郷は呆然と呟く。虚ろな眼差しで自らの夫への謝罪を口にしながらも抗いがたい快楽に恥部からは新たな蜜を溢れさせる。

 

「ぉ……、あ、ぁっ、あー……!」

 

 口端から涎を垂らすも歯を食い縛る友奈は疑似肉棒を自らに受け入れるべく腰を打ち付ける。

 同時に東郷に挿入された方のディルドがより深い場所を貫き、彼女は目を剥いた。

 

「ぃ、ィく……っ!」

 

「……う、ぁ、ぁぇ? ぁ、ぁー……」

 

 友奈の抽送で絶頂に達したのか東郷の腰が蠕動し、シーツに新たな染みが広がる。

 その刺激によるものか、友奈の腰がかくっかくっと前後に動く。

 東郷のしなやかな脚を掴み、両目を閉じる友奈は身体を丸めて震える。

 

「……ぁー……ぁぁ……」

 

 挿入だけで彼女は静かに絶頂に達した。

 東郷の膣の蠕動が、ディルドが自らの気持ちいい部分を刺激したのか、友奈は甘い声を漏らしながらも絶頂の余韻に負けまいと蕩けた顔で虚空を見る東郷の薄い腰肉を掴む。

 勇者は根性、とそれを体現するように彼女は、

 

「亮ちゃん印の……え、えいやっ!」

 

「ふわぁああ!!?」

 

「んんぅっ!」

 

 友奈は腰を前後させて東郷に疑似肉棒を叩きつける。

 男の真似をするかのような、しかし女を悦ばせるような的確な動きだった。

 

「っは……ぁ……!」

 

「ゆ……な……!」

 

 互いに黒いディルドを飲み込んだ結合部から濃厚な蜜が溢れるのが分かった。

 理性を削るように意識を飛ばしかける友奈は陰唇で咥えた疑似肉棒で東郷を貫く。にじゅ、にちゅ、と淫音を聞かせながら二人は同時に全身を震わせる。

 

「とうご……さん!」

 

「ゆうなちゃ……っ! ゆうな!!」

 

 ある種の我慢比べのような、二人の性行為。 

 子種が出ることのない疑似肉棒で少女たちは汗を垂らして喘ぐ。二人の世界、どこまでも高鳴り、どこまでも蕩け合うように。

 互いの膣襞の蠕動と、ピストンと、息も絶え絶えの少女たち。

 ──そこに俺の居場所はないのか。

 

「はぇ……?」

 

「りょ、ちゃん……?」

 

 余裕のない男のように腰を振る友奈、その背後に俺は回る。

 汗ばむ少女の柔らかな裸体、背後から抱擁しながら、二人の世界に終焉をもたらす。

 

 俺はそっと彼女たちの恥部に手を伸ばす。

 友奈と東郷、髪色と同じ色の柔らかい恥毛に隠れていた陰核に指を宛がう。興奮と喜悦を覚えた肉芽は両方とも硬く、見つけるのは容易かった。

 きょとんとする友奈と、俺の腕を掴む東郷の姿は対照的で。

 

「ま、待って! 亮くぁぁああっっ!!」

 

「ひぁぁっっっ!!」

 

 乱暴に陰核を押し潰す。

 咄嗟に腰を引かせようとした友奈の尻が鼠径部に当たるも、彼女ごと東郷に向かって腰を振る。より深く、ディルドを飲み込んだ彼女たちはパクパクと口を開閉させる。

 背を反らし、脚を伸ばす少女たち、それを気にせず陰核を責め立てる。

 

「まって、まってぇぇ!!」

 

「待たない」

 

 咄嗟にディルドを引き抜こうとした友奈ごと東郷に向けて腰を振る。

 ぱんぱんと友奈の尻肉を鼠径部で叩き、蜜液で濡れた肉芽を指の腹で弄る。

 

「ぅぁああ!!」

 

「んん、んっ、ぁ~~~っっ!!!」

 

 逃げ場など与えず、ただ少女たちを悦ばせる。

 俺に背中を預け、限界に達する友奈。

 尻を何度も浮かせ、結合部から蜜を跳ねさせる東郷。

 

 彼女たちのクリトリスを等しく、甘く刺激すると先に友奈が限界に達した。

 

「ッ! っ、ゃぁぁ……!!」

 

 脱力したように、彼女は東郷の隣に倒れ掛かる。

 衝撃で少女たちの恥部から抜けた疑似肉棒に蜜と白い小さな泡が残る。仰向けで倒れ込んだ東郷と友奈は双丘を前後に動かし、喘ぐように呼吸を繰り返す。

 

 ベッドの上で仰向けになり裸体を晒すのは東郷と友奈。

 力なく寝台に脚を伸ばし、ひくついた陰唇とその奥を覗かせるはしたない姿。

 だらしなく開かれた脚の下には小さな水たまりが出来ていた。

 

 二人の淫靡な行為に、怒張は既に回復していた。

 重なり合った女の手が握られ、少女たちの口から切なげな吐息が漏れる。

 深緑と薄紅の瞳は反り立つ肉棒に向けられ、陰唇から涎を垂らす。

 

「────」

 

 並べて見ると、少女たちの差異が目につく。

 匂い、肌の柔らかさ、色、味と異なる所に目が向かうが共通点が多々ある。

 

「……ぁ」

 

 トロトロに蕩けた顔で男を求める。

 甘い嬌声と、挿入するだけで果てそうな膣はほかほかだった。

 

「ぁっ、あ、あぁっ、あ……!!」

 

 正常位で友奈に挿入すると俺の首に腕を回す友奈が軽く絶頂に達した。

 ぎゅうっと熱くぬめる膣襞が怒張全体を包み込んだ。 

 既に友奈の身体は熱く、膣奥からとろとろの蜜を溢れさせる。

 

 獣のように、ペースを考えず、相手を気持ちよくさせ快楽に耽る。

 ピストンの度に甘美な喘ぎ声を聞かせる友奈が肩に甘噛みする中、隣に寝そべり呼吸を整えようとする東郷を抱き寄せる。

 

「ん」

 

 空いた片手、抱き寄せられる東郷は何食わぬ顔で俺と友奈に擦り寄る。

 豊満な乳房を揺らしながら、邪魔にならないように友奈の乳首を指で弄る東郷。その恥部に指を這わせ挿入し、肉壁を撫でる。

 疑似肉棒を受け入れていた膣内は子種を受け入れる準備が万端だと言うかのようにトロトロに解れており、指を締め付ける。

 深緑の瞳を見開く彼女は、自らの状態を隠すように俺の唇を奪った。

 

「……んッ」

 

 白濁で黒髪の一部を染めた東郷とのキス。

 おあずけを喰らった彼女の瞳には僅かな不満と、苦笑が混じる。

 

 言葉を交わさずとも、指を抜かせまいと締め付ける膣にリズミカルに肉襞を突き上げると左右の耳から二人の声が甘く流れ込む。

 友奈を犯しながら、東郷を指で愛でる。

 

「ちゅー………ンっ」

 

 競うように友奈ともキスをする。東郷ともキスをする。

 腰をくねらせ、脚が絡みつく中で、密着した正常位で俺は友奈を貫く。

 

「ん、ぁ、ぁっ、しょこっ、きもひぃよお……!」

 

 彼女の気持ちいい場所を亀頭で擦り、そこを中心に抽送を繰り返す。

 あっという間に射精感が高まる中、小振りの乳房を胸板に押し付けて友奈は声を上げた。

 

「ぁ……! ……!」

 

 あられもない声音はどこまでも甘く染まる。

 涙をこぼし、蜜をこぼす友奈を深々と本物の肉棒で貫く。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

「っぁ……! はぁっ……!!」

 

 やがて三人同時に果てた。

 二人の痴態を目にしたからか、濃厚な精が友奈の奥に注がれた。

 

 どく、どくっと全身を弛緩させた友奈の膣奥に子種を注ぎ込むと彼女は満足気に吐息する。

 そのまま彼女に体重を預けて、少し休むと体勢を起こす。

 白濁に汚れた肉竿を清め、そして勃起させるのは東郷だ。

 

「んっ、ん……」

 

「……、あむ」

 

 間男に屈した人妻などいなかった。

 瞳でそう告げて、誤魔化すように舌や頬肉で剛直をもてなす東郷に続いて、ゆっくりと身体を起こした友奈も剛直への奉仕に動く。

 二人の女が、丹念に亀頭を、肉竿を、陰嚢を左右から触り吸い付き、回復させる。

 

「次は私ね」

 

 若さと少女たちの奉仕により、再び剛直が反り立つ。

 物欲しそうな顔と表情を見せる東郷は、濡れた瞳で抱擁と白濁を求める。

 

 東郷からも正常位で奥の奥へと子種をせがまれた。

 続いて友奈とも、東郷とも、色々な体位で、交互に。

 

 少女たちの子宮が一人の男の子種で満ちるまで。

 全身が多幸感に包まれながら、意識が白く薄れていくまで、俺は彼女たちを抱き続けた。

 

 

 

 

 

「あっ、起きちゃった?」

 

 夢すら見ない眠りから目を覚ます。 

 覚醒、身体の異常は感じられず、寝台で身を起こす。

 

 此方を見下ろすのはピンクのバニーガール姿をした少女。友奈だった。

 

「似合う?」

 

「うん」

 

「えへへ……ありがとう」

 

 くるりとその場で回る彼女。

 兎耳のカチューシャを身に着け、胸元が開き所々肌色を覗かせる衣装はカジノで見ることが出来そうなバニーガール姿だ。

 東郷が見れば鼻血必須の装備を友奈は平然と着こなしていたが──、

 

「東郷さんは?」

 

「東郷さんは──」

 

 

 

「私の友奈ちゃんに変なことを吹き込んでぇぇ……そのっちいいいい!!!」

 

「ひえええええ!!?」

 

 

 

 露出した肌を見せるバニー友奈が答える前に、少女の悲鳴が聞こえた。

 二人の声音は聞き覚えがあって、友奈の苦笑で何があったのかを悟った。

 

 清められた身体は最低限、下着類とズボンが着せられていた。

 それなりの時間休息していたのか、やや頭もスッキリとしている。

 

 耳を澄ませずとも聞こえる怒号と悲鳴、時折銃声や爆音。 

 悩ませる頭を柔らかな友奈の双丘に抱かれながらリビングへと向かう。

 

 途中水分補給して目的地に向かう頃には静寂が広がり、少女たちの話声が聞こえた。

 いったい、どういう話の流れになったのか。

 

「でもでも、わっしーだってゆーゆの演技に乗っかって楽しんでたでしょ? 台本も無かったのにアドリブ全開でノリノリだったじゃん。わっしーってばムッツリなんだから~」

 

「そ、それは……ちょっと待って。なんで知ってるの?」

 

「え? ……いや、勘だよ~」

 

「……そのっち」

 

「わ、わ、わっしー!? 無理やりはダメ……ああん! 剝かれちゃう~! わっしーにエッチなことされちゃ……、あ、ま、待って下着は流石に……! ひゃぁ!!」

 

 バニーガールを従えて向かった先には、薄青色のバニーガール姿になった東郷と、衣服と生地の薄い下着が散乱し、無理矢理着させられたのか紫色のバニーガールとなった園子が簀巻きにされていた。

 縄に巻かれた園子の隣には間男が人妻をチョメチョメするという台本が。

 

「……許しません」

 

「ひぇぇ……」

 

 琥珀色の視線が向かう先は、鬼の形相をした東郷が持つ黒色のディルド。

 敏い園子は東郷との付き合いも長く、そのぶっ飛んだ思考も理解できるのだろう。

 

「園ちゃん」

 

「ゆーゆぅ……」

 

「園ちゃん。園ちゃんのおかげで皆気持ちよくなれたから、お礼をしたいなって」

 

「あはは……、私はゆーゆとわっしーのくんずほぐれつな姿を見て創作意欲を刺激されたから大丈夫だよ。間に合ってるから~」

 

「一人だけ除け者はダメだよー!」

 

「そうよ! そのっちだけ……ズルいわ!」

 

「え~……かっきぃ……」

 

 床に転がる園子がどういう意図を持って、衣装や玩具を持ってきたのか。

 そんなことはどうでも良かった。どうでも、良くなった。

 割と本気で焦っている園子を見ていると加虐心が何故だかくすぐられる。

 

「園ちゃんも気持ちよくならないと、ね?」

 

「大丈夫。そのっちが持ってきたこれを使えば飛ぶわよ」

 

「ひぇぇ……」

 

「ぴょん!」

 

「ぴょんぴょん!!」

  

 ──バニーガールは人を狂わせる。

 

 そんな魅力があるかもしれないと、俺はふとそんなことを思ったのだ。

 

 

 



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第三十三話 偶然なんて物はない

「それでも大きくなりたいのーーー!!」

 

 響き渡る少女の声、それは部室の外にすら届く。

 言葉に込められた思いは一体どれほどのものか、叫んだ本人にしか理解できないだろう。深く、重く、魂に響かせるような少女の叫び声は、脚を止めてしまうほどの何かがあった。

 ──いったい、何が、そんなに大きくなりたいというのか。

 

「だ、大丈夫よ樹。私たちは中学生。サプリを飲んでしっかり眠れば大きくなるわよ!」

 

「ぅぅ……サプリだけだとダメだと思います」

 

「樹ちゃん、唐揚げとかが良いんだって。諦めたら駄目だよ……ほ、ほら、勇者部五箇条」

 

「みーちゃん? それ前にもしたけど効果が無かったって。野菜も摂らないと駄目よ」

 

「……うたのんには分からないよ!! この気持ちは!!」

 

「ワッツ!?」

 

「……私は別に……そんなに大きくなりたい訳じゃ。ぁ、でも高嶋さんや……くんも……」

 

 混沌とした空間が扉の先に広がっている。

 嘆きの声音は、伸ばした手が扉を開かせることを拒否させる。

 

 樹の望みが叶うかはともかく、身体的な特徴について笑い飛ばすことは出来ない。

 胸が小さい、身長が低い。そういった先天的な特徴を笑うことは最低であり、俺が樹に対して出来ることは曖昧な笑みを浮かべ何も聞かなかったことにするか、その薄い胸元を揉みほぐすことだけだ。後者は非難殺到だろうが。

 部室前で立ち尽くす俺を他所に、扉の先の集団を扇動するように一人の少女が口を開く。

 

「──ふむ。ペタ同士の慰め合いのなんと空しいことか。そんなことをしても山は育たないぞ?」

 

「ちょ、別に私は大きくなりたい訳じゃないわよ! 剣を振るのに胸なんて邪魔だし!」

 

「うんうん、そうだな。夏凜の言う通りだとも。……で、本音は?」

 

「ほ、本音も何もあるかー!! だ、大体球子の方が小さいでしょうが!」

 

「なんだとー!! 言ってはならないことを言ったな!」

 

 勇者部部室は今日も賑やかだ。

 少女たちが数人どころか十数人も集まると本当に騒がしい。

 

 讃州組だけだった頃とは違い、勇者部に加入する少女は随分と増えた。三百年という時代の中、神樹によって選ばれた少女たちの集団は如何なる男でも参加を躊躇いそうになるものだ。  

 加えて、美少女揃いの部員たちの中で唯一の黒一点ともなると気遣いは必須だ。

 

「そもそも大きくなっても良い事なんて殆どないのよ、樹ちゃん」

 

「そうよ! 東郷のなんて片方で1.5キロよ! 身体壊すだけよ!」

 

「お姉ちゃんも反対よ? 樹がそんな重たい物を背負って生きていくなんて、見ていられない!」

 

「ぅっ……ぅぅ……。それでも、それでも!! 大きくなりたーーーい!!!」

 

 それでも、という少女の叫びが部室の扉を震わせる。

 女性のデリケートな話題、そこに入っていくのは多少の勇気が必要だ。今更そんな物は必要ないのではと思うかもしれないが、親しき中にも礼儀ありである。

 こういった時は──、

 

「タイミングを見て入るのが一番だ」

 

 この異世界では時が幾度も繰り返されている。その中で、変わる物も変わらない物もある。

 いつまで経っても学生のまま精神だけが成長していく。若葉のように精神だけが成長していき、年を経る度に見た目との乖離に悩み始める者もいるのだ。

 そんな淑やかな彼女たちは、男という存在を気にしてこういった話題を中々出さない。

 

 大人になるということは我慢すること。

 精神年齢の上昇に伴い、鬱屈とした想いを溜め込み隠しているのではないのか。それを吐き出してやろうという建前で、少女は、勇者は立ち上がった。

 勇者部のムードメーカーの一人である土居球子がそれを発したのは何年前だったか。

 

「クックック……今こそテラロ・メガロの諸君に問おうではないか!! 君たちが抱えている者は冷たいペットボトルか? いいや! 温かく、柔らかく、尊い物に他ならない!」

 

「ええ……ええ!! その通りです球子さん! ビバーク!」

 

「登山部の魂を思い出したか銀! ビバークだ!!」

 

「とう!」

 

「ぁん! もう……銀ってば……」

 

「タマっち先輩! 恥ずかしいからやめてってば!」

 

「元気だね~、でも私も恥ずかしいからタマ坊にビバークはさせないよ~」

 

「いやあああ!? 女子力が吸い取られるぅぅぅ!!!」

 

 多種多様な勇者が存在すれば当然そんな勇者もいる。彼女たちがそういった淑やかさを吹き飛ばし、紳士らしさの欠片もない欲望とセクハラで彼女たちを翻弄するのだ。 

 巨乳率の高い少女たちの双丘を好きに揉む。最終的にお仕置きがあれども、本格的に厳罰が下らないのは我慢しがちな少女たちの感情を発散させる、そんな意図があるからなのだろう。

 

 日々の戦いにおいて鬱屈とした空気が続くよりも、こういった空気の入れ替えを彼女たちは意識的か無意識なのか、ムードメーカーとして機能しているのは、きっと間違いないのだ。

 そうでなければ、少女たちのマウンテンの話が定期的に出てくることはないのだ。

 だから──、

 

「だからこの話題が終わるまで、俺は扉の隙間から覗くのだ……」

 

「──いや、球子がそこまで考えているとは思えないが」

 

「わあ!」

 

 囁くような声音に思わず耳を押さえる。

 振り向くと、仕返しに成功して喜ぶ子供のような顔をした少女がいた。気配を消すのが上手くなったのか、或いは少女たちの戯れに意識を割き過ぎたのだろう。

 揃えられた前髪から覗く紫紺の瞳は他人の痴態を前に目を輝かせていた。 

 

「何の真似だ」

 

「いや、お前の真似だが。普段されっぱなしなのだから、こういう時にやり返さないとな」

 

 床に片膝を立て、捲れたスカートを気にせず脚を開いては悪戯を優先する風雲児。

 顔を下に向けると健康的で肉の乗った太腿と、その付け根に薄い緑色のショーツが覗ける。

 悪戯を優先した結果自らの状態に思考が行かないのは、鈍感さと天然によるものか。

 

 訓練で鍛えられた腿肉には、マーキングするように虫刺されのような痕が複数あった。

 若葉が選んだにしては可愛らしいリボンと柄付きのショーツにジッと目を向け続けると、凛々しさと男らしさのある彼女も羞恥を抱くのか、慌てたようにスカートの裾に手が置かれる。

 

「……? ……ぁ! じ、ジロジロと見るな、変態」

 

「自分で見せたんだろう? エッチなパンツだった」

 

「み、見せたつもりはない! え、エッチでもない! 普通のパンツだ!」

 

「いたっ! 暴力反対! イエス恥じらい! ノー暴力!!」

 

「まったく……」

 

「今更それくらいで怒るなよ。俺と若葉の仲だろう?」

 

「それとこれとは別だ」

 

 眉間に皺を寄せ、顔を僅かに朱に染めた若葉は俺の肩を叩く。

 勇者の戦衣を身に纏っていないが、常人にしてはやや力の籠った拳が肩を通じて身体に衝撃を与える。乃木若葉のラッキーパンチラ、その代償としては安い物ではないだろうか。

 ただ、友奈並に無防備なこともある彼女のパンチラ率は巫女がいないとそれなりに高いので、そこまで珍しい物ではないが。

 

「ん……それで球子の例の発作が始まったのか。何故部室に入らずこんな所にいたんだ?」

 

 赤らんだ顔を誤魔化すように咳をする若葉。

 下着どころか、恋人か夫しか知らないような所を見られ、知られている彼女。少しでもそういった話題を避けたいのか、露骨に話を逸らそうとする若葉を見ながら口を開く。

 

「登山部員たちの邪魔はしたくはないんだ」

 

「亮之佑の場合は寧ろ加勢する方だろう? 球子たちに名誉部員扱いされているじゃないか」

 

「あれは勝手に登山者扱いされているんだ。……まあ、登ったが」

 

「……こっちを見るな」

 

 半眼で此方を睨み、男の視線から身を守るように自らの身体を腕に抱く若葉。

 彼女の言葉通り、俺は球子や銀といった登山部の仲間扱いをされている。男の子っぽい性格の球子や銀たちと男子的なノリが噛みあうことがあるからか、彼女たちにはそういう認識をされている。

 認識をされているからといって、別に白昼堂々と乳房を揉んで回ることはしないが。

 

「それより、大丈夫だったか?」

 

「何がだ?」

 

「ほら……ひなたさんと帰った後」

 

「……ああ」

 

 そう尋ねると、揺れる紫紺の瞳は虚空を見つめ、薄く笑みを浮かべる。

 過去を思い出しているのか、諦観の笑みを浮かべるほどの物だったのか。

 よほど怖い目に合ったのか、女の嫉妬とは恐ろしいものだ。プルプルと震え始める少女に寄り添い、無人の廊下で彼女の身体を抱き寄せる。

 

「そうか……可哀そうに。散々エッチなお仕置きをされちゃって……」

 

「お、おい、抱き着くな。ひなたに気づかれたら──」

 

「三十秒だけハグをするとストレスが半減するんだって。これは科学的なアレコレで立証されているから合理的な行動だ。だから、黙って俺に抱かれろ」

 

「──、三十秒だけだからな」

 

 戸惑いの声音に拒絶はない。

 放課後の、誰も立ち寄らない部室前。柔らかく温かい身体は僅かに強張るも、僅かに力を入れて抱擁すると少しずつ肢体から力が抜けていく。

 やがて俺の肩に自らの顔を置く若葉は、乳房が胸板に触れる程度に密着する。

 

「少し、だけ」

 

 サラリとした金髪は絹のように指の間を抜けていく。

 ふわりと舞う数本の髪の毛すら甘い香りを漂わせている。

 

「ん」

 

 若葉の背中を手で上下すると息を呑むのが分かった。

 制服はやや硬いが女性らしい柔らかな感触と香りを感じる。形の良い耳を撫でる手を若葉が掴み「まて……」と小声でたしなめるも少女の柔肌を撫でる手は止まらない。

 指の腹で耳の穴をなぞると、小さく身体を震わせた若葉はキッと俺を睨みつける。

 

「どんなことをされたんだ? 教えて欲しいな」

 

「い、言う訳……んっ……」

 

 顔を背ける若葉、その耳元にキスをすると頬が朱に染まる。 

 体温と鼓動の高鳴りを覚えながら、紺色のスカートに手を入れると掌に下着に包まれた尻肉を感じる。下着と柔肌の境目をなぞり、若葉の鼠径部を手でなぞる。

 肌触りの良い下着越しに温もりが伝わり、熱を帯び始める少女は唇を噛む。

 

「ま、待て……亮之佑。今は別に……そもそも部室の前で……っ!」

 

「しー」

 

「……っ」

 

 言葉にして、改めて状況を理解する。

 放課後の誰もいないといっても、絶対に人が通らない保証はない。何よりも、すぐ目の前の勇者部の部室からは見知った少女たちの声が変わらずに聞こえる。

 小声で話をするのは、彼女の聡明な頭脳が状況を理解している証拠だ。

 

「その……他には、よく聞くのが……人に揉んでもらうとか」

 

 ひなたの声に若葉は目を大きく見開く。

 制服のブラウス越しに揉むとブラと乳房の感触を掌に感じる。部室の扉、その横の壁に若葉を押し付けながら、扉越しに聞こえた声の通りに少女の乳肉を揉む。

 端正な顔を横に振る若葉は、自らの手で口元を押さえて涙目で俺を睨む。

 

「ちょっと大きくなったか?」

 

「……そんなことはない、と思うが……、それよりもう十分だろ……? 第一、流石にこんなところでするのは、んッ、せ、せめて空き教室で……。わ、分かった、ひなたにされたことを言うから──」

 

 言葉は続かなかった。

 蜜の染みた下着越しに陰核を指で触れられると、声を漏らすまいと必死に口元を手で押さえる。

 

 彼女の言葉はもっともだった。

 いつ、人が通るのか分からない、不安定な場所でこんなことはしなかったのに。

 散々東郷たちに搾り取られて、若葉に手を出すほどの必要性もないのに。

 

 大胆になったと、考えれば良いのか。

 或いは見つかっても、また繰り返すだけだと、思っているのか。

 

「んっ……っ、イっ……~~~!!」

 

 爪先立ちになる若葉を追いかけるように、指先で恥毛に隠れていた陰核を捏ね繰り回すと若葉はあっさりと気をやった。

 ガクガクと脚を震わせながらも、しかし座り込むことはない。

 勇者のリーダーに相応しい、凛々しい姿を見せる彼女のスカートを捲る。数日前よりも敏感になったのか、透明な雫が腿を伝い、床に小さな水たまりを作る。

 

「ふっ……ペタたちよ。アレを忘れているんじゃないか?」

 

「アレ?」

 

「健康診断」

 

 少女たちはいくつになっても数字に拘りを抱く生き物だ。 

 少し太った、大きくなった。大きくなって、或いは減らして自分を良く見せたいという考えは理解出来る。だが、直前になってから行動しても変化はしにくいものだとも思う。

 わざわざ空気を壊すつもりはないので、ファスナーを下ろし反り立った怒張を恥部へ。

 

「ん……」

 

 声を出してバレることを恐れているのか。 

 口元を手で覆い、鼻息荒い若葉の腿を肉棒で擦る。

 

「いつだっけ? 確かもうすぐだったような」

 

「えっと……このあたりじゃない?」

 

「ああ……ここか! まだ予定表届いてないけど去年もこの辺りだった!」

 

 下着をずらし、ゆっくりと挿入する。

 ぬぷぷ、と熱く濡れた肉は容易く怒張を受け入れ、いつもよりも締め付ける。

 彼女の緊張が伝わるような蠕動と襞の一つ一つが剛直に絡みつく。

 

「ん……!! く、ぅ……ぁ、ん……っっ!」

 

 突き、抜く度に嘆息が出るような快感を彼女はもたらす。

 壁に背中を押し付けられた彼女の口端から漏れるのは熱い吐息だ。逃げることは許されず、頭ごと身体を抱かれた若葉は俺のピストンにされるがままだ。髪の毛からは汗と淫靡な芳香が漂う。

 

「はっ……ぁっ……」

 

 結んだ口から時折嬌声がこぼれる。

 口元に当てた手は下ろされ、俺の腕を掴み、喘ぎ声を嚙み殺す。

 

 必死に我慢しようと唇を震わせる若葉は助けを求めるように俺を見る。 

 背中に回した手は力強く、キスをねだる彼女の唇を唇で塞ぐ。

 

「んっ」

 

 口腔行為を通じて、たっぷりと唾液を交換し合う。

 互いの声を隠すように、水音を無人の廊下に響かせてキスをする。

 嫌がる仕草を見せながらも、前よりも上手に、協力的になった口づけは浮気の味がする。

 

 こくん、と唾液を飲んだ若葉が喉を鳴らした。

 とろん、と蕩けた顔の女は喜悦に甘い声音を聞かせる。

 

 扉越しに聞こえる少女たちの話題が変わり始めた頃に射精衝動が限界を迎えた。 

 このまま、彼女の奥へと注ぎ込むことを耳元に囁くと若葉の身体が震える。

 

「く、くちに……」

 

 膣内と口腔、どちらが良いのか。

 そんなことを尋ねると彼女は後者を選んだ。学校という環境で後処理のことや証拠隠滅を咄嗟に考えたのか、耳元で喘ぎ声を漏らす彼女は懇願する。

 

 ほかほかの肉壺から怒張を引き抜く。

 床に座り込み、震える彼女の顎を持ち上げ、肉棒を唇に擦り付ける。

 

 ぷっくりとした肉厚の唇に亀頭を宛がい、陰唇と同じように怒張を挿入する。 

 膣に劣らず熱くぬめる口腔に誘われ、そのまま白濁を吐き出す。

 

「~~~っっ!!」

 

 びゅうっと数度にわたり汚濁が彼女の口腔を犯す。

 大きく見開かれた瞳から涙が落ち、歯茎も舌も頬も汚れたのが分かる。何度か肩を震わせる若葉は噛みつくことも吐き出すこともせず、ただ静かに雄汁を受け入れる。

 鼻息を荒くする若葉の口に最後の一滴まで放った俺は怒張を引き抜く。

 

「……」

 

 無言の彼女の艶やかな唇は汚濁に濡れ、怒張の先端と白濁の糸を結ぶ。

 ぷつりと千切れた糸が珠になり若葉の唇に付着するのを見届ける。

 

 呆然と口元を押さえる彼女の再起動には少し時間がかかりそうだ。

 雄汁を飲むのか、それとも吐き出すのか、衣服を整えながら暫く見届けようと──、

 

「かっきー先輩?」

 

「────」

 

 この世に絶対はない。

 人が通らない時間ではあっても、絶対に人が通らない訳ではない。

 思わず息を止めた俺に近づいてくるのは、鈴音の声をした金髪の少女。

 

「園ちゃんか」

 

 中学生の方ではない。小学生の頃の園子は呼ばれるとほにゃりと笑みを浮かべる。

 無垢な彼女は何をしていたのか分からないのか、不思議そうに俺と若葉に視線を向ける。

 

「こんなところで何しているんですか?」

 

 あまりにも真っ当な質問に思わず息を呑む。

 小首を傾げて、部室に入る訳でもなくその近くで抱き合っていた男女の衣服が乱れている。敏い彼女は俺と若葉を見る幼い頬を染めて、玩具を見るようなキラキラとした眼差しを向けてくる。

 いったい、どう答えるべきか。今更ながら頭を回すも、良い答えが浮かばず──。

 

「……少し躓いてしまってな。ここで休憩していたんだ」

 

「休憩?」

 

「そうだ。だからなんでもないんだ」

 

「それならどうしてハグしているんですか……?」

 

「分かったな? 乃木。ひなたには、皆には内緒にしてくれ。頼む。なんでもするから」

 

「……分かりました~」

 

 ──ごくん、と若葉が喉を鳴らした。

 精液を嚥下して、苦々しい顔を見せながらも苦しい言い訳を口にする。

 力尽く、パワーに物を言わせて封殺した若葉に園子(小)の続く言葉はない。

 

 躓いた方の脚を見せる彼女の髪はやや乱れ、ブラウスから覗く赤らんだ肌と淫靡な香りは見る者が見れば理解するだろう。

 彼女自身も隠しきれているとは考えていないのか、或いは混乱で思考がそこまで至らないのか。

 僅かに震える腿からさりげなく蜜を拭い、なんでもないように若葉は立ち上がる。

 

「さて、では行こうか」

 

「あれれ、ご先祖様~。喉の調子も悪いの?」

 

「ん、んんっ。い、いや……昨日、……カラオケ。そう、亮之佑とカラオケに行ってな。つい熱唱してしまったんだ」

 

「若葉は声もいいからな。デュエットすると楽しいんだ」

 

「そっか~。かっきー先輩も上手いもんね。今度またカラオケに行きませんか?」

 

「も、もちろんだ」

 

「ありがとうございます~。あっ、そうだ! ご先祖様、これ飲みかけだけどいる?」

 

「うん? 蜂蜜の……ジュースか。頂こう」

 

 用意の良い園子(小)の差し出したペットボトル飲料を、腰に手を入れて飲みだす若葉。

 或いは浮気していた父を咎めず、弱みを握った娘に見えたのは気のせいか。

 休日の父親と娘のような関係を幻視する俺を他所に、ゴクゴクと飲む若葉は大きく吐息する。ニコニコと笑みを浮かべる園子は抱えたサンチョ枕を手にしながら頷く。

 

「私には少し苦かったので全部あげます~」

 

「……ああ。これは美味しいな。この程度なら苦い内には入らない」

 

「わ~大人だご先祖様~。……そんなに苦かったんですか?」

 

「ん、そうだな。まあ、飲めなくは……、………」

 

「口元も拭った方がいいですよ~。まだ白いのがついてますよ~」

 

「──、取れたか?」

 

「取れました~」

 

 さりげなく髪や衣服、下着を整える若葉に、園子は関心を向けない。

 直前に何をしていたのか、見た目が年下であろうと無知である訳ではない。察しと思いやり、そして見て見ぬふりをしているのだと感じて、俺もその演技に付き合う。

 

「それにしても」

 

 自分でも自制が効かなかったのは、いったい、どうしたものか。

 乃木若葉が襲いたくなるほどに興奮を覚えるほどの美少女であるのは明白ではあるが、それでも場所は弁えるべきだった。

 こんなバレるかバレないか、一歩手前の博打を行うようなことは以前まではしなかったのに。

 

 今日の行為だって、偶然園子(小)以外にバレなかったに過ぎないのだ。

 唐突な破滅願望が芽生えていたのか、もしくは──、

 

「……本気で自制しないとな」

 

「ところでかっきー先輩ってご先祖様のことが好きなんですか? ラブ~?」

 

「なっ!?」

 

「そうだよ。勿論、園ちゃんのことも好き。乃木家は皆大好き」

 

「そ、そうか……私も亮之佑のことは好きだ」

 

「私も好きです~。……かっきー先輩」

 

「ん?」

 

「耳、貸して下さい~」

 

 片手を口元に添える園子。

 若葉が部室の扉を開ける直前、腰を下ろし小さな園子に耳を貸すと、

 

「──貸し、一つね」

 

 いくつであろうとも、彼女は乃木園子なのだと実感するのだった。

 

 

 




筆が乃木家に取られがち。後悔はない


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第三十四話 交渉前夜

「失礼しま~す」

 

「あっ、園子ちゃん!」

 

「こんにちは友奈先輩! 乃木園子とかっきー先輩とご先祖様、入りま~す」

 

 ふわふわとした雰囲気をした少女の甘い声に視線が向けられる。

 雲のような掴みどころのない園子(小)は部室の扉を開け、入室を歓迎する声やそれどころではないとばかりの喧騒が俺たちを迎え入れる。

 女性同士で行われていた双丘の話は、園子(小)の後に入ってきた男の存在に気が付くと、慌てたように打ち切られようとしていた。

 

「た、球子さん。その話題はこの辺りで……」

 

 年数を経ても、異性の前で話をすることへの恥じらいを彼女たちは抱いている。

 そういった精神性も神樹に選ばれた一因なのかもしれない。

 

「ん? 何を硬い事を……いや、柔らかい事を言うんじゃない! タマはまだ話を──」

 

「煮干しチョップ!」

 

「効かん!! ……ペタの攻撃は全て無効化だぁ!!」

 

「ちょっと待ちなさいよ! 煮干しチョップって何!? 煮干しをそんな風に使うなあ!!」

 

「ツッコミそこぉ!?」

 

「ひゃあ!?」

 

「うおおお!! スゴいぞ球子さん!! ビバークだぁ!!」

 

「ふ……安心すると良い。名誉部員が今更来たところでタマの進撃は止まらない。亮之佑の前だろうが関係ない。そのペタはタマがメガロ……いや、テラロに育てさせタマえ」

 

「……ッ、ちょ、風、なんとかしなさいよ!」

 

「な、なんでアタシが……やめて、そんな卑猥な眼差しでアタシを見ないでー!!」

 

「ビバ……む、残念だが風は今回の対象外だからなー」

 

「それはそれでムカつく……!」

 

 淑やかな少女たちの男の目が無い女子高のような状態から一変。園子(小)が引き連れてきた俺と若葉を見て淑女を気取るつもりなのか、事態を収束させようと動き出す。

 そうはさせるものかと、近づいてくる少女たちの双丘に目を向け、あまつさえ直接攻撃を行う球子の暴走によってちょっとした戦闘が勃発していた。

 それらを気にする素振りも見せず、園子(小)は鼻歌混じりで俺の手を引く。

 

「ん? なんだか機嫌良さそうだけど何かあったのか、園子?」

 

「ミノさん! 久しぶり~」

 

「……いや、さっきまで一緒にいたんだけどな。良い昼寝スポットでも見つけたか?」

 

「ううん、違うよ〜」

 

 片手にピンクのサンチョ枕、片手に俺を抱いた園子(小)に話しかけるのは同学年の三ノ輪銀だ。隣には将来の姿が想像し易い少女、鷲尾須美が球子を警戒しながら近づいてくる。

 彼女たちは同い年であり、小学生の頃に離れ離れとなった期間に園子が作った友達だ。

 ──俺以外で、彼女が初めて作った同性の友達。

 

「園子は今日も亮さんにベッタリだな」

 

「えへへ、実はそうなんよ~。べた~」

 

「実はも何もないでしょう? はしたないから止めなさい。ほら、そのっち」

 

 ぎゅっと胸元に顔を押し付けて甘えるように腕を回す園子(小)。

 彼女特有の甘い香りが鼻孔をくすぐる中、西洋人形のような園子(小)の姿に眦を吊り上げるのは東郷の進化前である須美だ。

 長い黒髪をバレッタで纏める生真面目な彼女は不純異性交遊を許さない。

 たゆん、と豊満な双丘を押し上げるように腕で己を抱く須美を前に、

 

「これは不純じゃないから大丈夫だよ。ほら、大抵のことはどうでも良くなるハグ攻撃だ」

 

「ひゃあ!? ちょ、ちょっと……こんなの不純ですっ!」

 

「おっと、力強いハグ。でもこれだとビバークできない……」

 

「……むふ~」

 

 構って欲しそうにしていた須美と、明朗快活な銀。

 園子(小)ごと、彼女ら小学生組を抱き締めると柔肌と体温が衣服越しに伝わる。

 キャッキャと素直に抱擁を返す二人の少女に比べて、色白の肌を朱色に染めながらも仕方なさそうに抱き返す須美は東郷と比べると素直さがやや足りない。

 それでも抱擁されるがままなのは、彼女の好感度が低い物ではないと思わせる。

 年下の少女たちを抱き合う少年という、微笑ましい光景に少女たちは口々に色めき立つ。

 

「いいなぁ……あっ、亜耶ちゃん、ちょっとハグしても良い? ちょっとだけ」

 

「ハグ? うん! いいよ杏ちゃん」

 

「「駄目ーーっ!!」」

 

「……ロリコンね」

 

「いや、亮之佑はロリコンというよりも節操がないだけだろう」

 

「……確かに。あなたと意見が合うなんて奇遇ね、乃木さん」

 

 散々な言われようであるのを耳朶に捉えるも、今更気にすることはない。

 絵面はともかく、それなりに仲の良い少女たちと楽しく抱き合っているだけなのだ。その証拠に、彼女たちの進化系である美少女たちが近寄ってくる。

 さらりと腕に絡みつき、少女たちの抱擁を止めさせるように力が籠る。

 

「亮くん、私を可愛がってくれてありがとう」

 

「かっきー、私のこともハグする~?」

 

 むにむにと制服越しに豊かな乳房の感触を腕に感じながら、彼女たちの甘い声音に耳を傾ける。

 東郷と園子(中)はそれぞれ大きな瞳を向けると、俺に笑いかける。

 

「ハグする亮ちゃんに、私がハグ!」

 

「それじゃあ、結城ちゃんには私がハグ!」

 

「じゃ、じゃあ……高嶋さんには私が……、なーんて……」

 

「ほえ? どうしたのぐんちゃん?」

 

「あ……、な、なんでもないのよ高嶋さん!」

 

 背中には忍び寄る友奈が抱き着き、制服越しに柔肌を密着させる。 

 抱擁していた腕を解くとリリースされた少女たちは各々に好きな場所へと向かう。銀は面白半分に球子の加勢に、須美は逃げるように他の少女たちの下へ。

 そして園子(小)もまたどこかへ向かおうと──、

 

「あれれ? 園子先輩」

 

「どうしたの? そのっち」

 

「声、少しだけしゃがれていませんか?」

 

「──、この前わっしーやゆーゆ達とカラオケに行ったらテンション上がっちゃって。ついつい歌い過ぎると喉を使っちゃうんよ」

 

「あ〜、分かります~」

 

 さらりと園子(中)は息をするように嘘を吐いた。

 しかし真実から程遠いという訳でもない、そんな言葉。少し前にカラオケではないが、友奈と東郷によって声を上げさせられるという事態に陥ったのだ。

 結果的に園子は喉を酷使し、友奈と東郷は園子自身よりも彼女の身体に詳しくなったが、

 

「そうだったんですね~、あっ、のど飴を持ってたのであげますね」

 

「良いの? ありがと〜そのっち。明日、好きなお昼寝スポット空けておくからね」

 

「やったー!」

 

 俺は知っていた。彼女が嘘を吐いた理由を。

 堂々と友奈と東郷に弄ばれました、とは流石の園子でも言えないのだ。

 バニーガールの恰好をさせられて玩具と肉棒を交互に味わい尽くしましたと、声が枯れるまで恥ずかしいことを沢山しましたとは、数年前の自分には言えないだろう。

 激しい情事の痕を制服に隠して園子(中)は静かに微笑む。

 そんな彼女の心境に対して、ふわふわと笑う園子(小)は飴玉を差し出した。

 

 ──裏があれば表もある。

 というよりも腹芸が苦手で表しかない少女も当然勇者部には存在する。

 

「こんな……私が……」

 

「夏凜っ!」

 

「ふっふっふ。さて次のマウンテン、いやペタ平原は……」

 

「ひっ! 逃げろーー!!」

 

 自らの手でペタな少女の双丘をメガロにしたい。あわよくば東郷並に。

 相も変わらず狭い勇者部部室に逃げ場などなく、球子の欲望に塗れた暴走に少女たちが晒され、その両手に慎ましい乳房を揉まれていく。

 メガロよりもペタ、一人、また一人の双丘が球子の掌で揉み解されようとしていた。 

 

「隙ありー!!」

 

「千景!」

 

「の、乃木さん!?」

 

「むむ? この揉みごたえ……随分と柔らかい、高尾山にしては……というか下着ずれて──」

 

「ん……ッ、くっ、い、いい加減にしろー!!」

 

「ほぎゃー!!」

 

 やや艶めかしい声音が一瞬漏れるも、千景をかばった若葉が球子に制裁を下す。

 かくして、悪は成敗された。

 球子の暴走を止めた若葉だが、ブラウス越しとはいえ乳房を揉まれたからか腕で胸元を隠すと僅かに頬を朱色に染めている。何か球子が言いかけたが既に彼女は処刑され聞くことは出来ない。

 吊るされる球子を見上げていたひなたは、その眼差しを若葉に向ける。

 

「若葉ちゃん? どうかしましたか? もしかして具合でも……」

 

「え? い、いや、何も。……ひなたは無事か?」

 

「ええ、今回の標的はペタ……私は対象外のようでしたので」

 

「そ、そうか。今後もしお前が狙われるような時は、私が必ず守るからな。安心してくれ」

 

「まあ……若葉ちゃんたら」

 

「なに、当たり前のことを言ったまでだ」

 

 さらりと告げた若葉の言葉に、柔和な笑みを浮かべるひなた。

 頬に手を置き、恋する少女のように瞳を潤ませる巫女は言葉を続ける。

 

「……ところで、今日は遅かったですけど、何をしていたんですか?」

 

「────」

 

「今日は委員会でも、勇者部の依頼があった訳でもなかった気がするのですが……」

 

「え、あ──」

 

 ひなたは将来、浮気を許さない、きっと、夫を尻に敷く女になるだろう。

 息を呑んで咄嗟に俺に目を向けた若葉を叱咤したくなる気持ちを抑えながら、友奈や東郷に抱擁され、動きを制限された状態で彼女たちを見守る。

 もっとも、若葉の言い訳も、向けた視線や言動で彼女の視線を険しくさせるだけだったが。

 

「そういえば、少し髪が乱れてますね。ブラウスも少し……」

 

「ちがっ、違うんだ、ひなた!」

 

「何が違うんですか? 若葉ちゃん」

 

「──ひなた先輩~。ご先祖様はですね~」

 

 光の失せた眼差しで勇者を捉える巫女。

 何度目かの修羅場になるのかと、園子の持っていたサンチョ枕に顔を埋めながらどこか他人事のように彼女たちを見ていると、若葉の方に助け舟が入った。

 助け舟は稲穂のような金色で、ピリピリとした空気に平然と割って入る。

 

「よ、よせ、乃木!」

 

「私とかっきー先輩と一緒に遊んでくれたんです~。鬼ごっことか、激しい運動だったので髪の毛とか色々と乱れちゃって。ごめんなさい」

 

「そ、そうだったんですか。私、てっきり……」

 

「てっきり、なんですか~……?」

 

「……いいえ、ただの勘違いでした。園子ちゃん、ごめんなさい。これからも若葉ちゃんと一杯遊んであげて下さい」

 

「わーい! ありがとうございます、ひなた先輩」

 

 小さい子供とは、それだけで多少の不利を覆す。

 少なくとも園子(小)はそれを理解した上で、最適解の行動を取り、敏い巫女の性格まで読み、それ以上の言葉を続けさせようとはしなかったのだろう。

 どこか納得いかなそうなひなたに彼女は抱き着き、疑惑の言葉を呑み込ませる。

 力技にも近いが、それで抑えられたのだから凄い物だ。

 俺だったら、既に逃亡していただろう。

 

「園子ちゃん、凄いね!」

 

「そのっちはいくつになっても流石ね」

 

「いや~、それほどでも~」

 

「あっちのそのっちのことよ?」

 

「そのっちの物は私の物。私の物はそのっちの物~。私たちが園子なのだぜ」

 

 一連の流れを見ていた友奈が、園子(小)の行動を褒め称える。

 明朗快活に笑う友奈の姿に東郷はニッコリと笑みを浮かべる中で、園子(小)はチラリと俺を見やるとピースサインを見せた。平和最高という意味だろうか。

 

「いや、二個目か」

 

 貸しは二つになったというのが、園子(小)の主張なのだろう。

 此方としては頼んでいないから無しだと主張するつもりはない。別に修羅場になっても、きっとなんとかなるだろうと楽観的に対応していただけで──、

 

「少し気でも緩んだかな」

 

 この世界で戦うことも減って、女を抱く日々。

 出来るだけ以前と変わらないように気を付けていても、年月が少しずつ何かを変えてしまうものだ。この場合の何かは精神的な物で。

 前までは、もっとリスクとか、行動の結果とか、気を張り巡らせていた筈だ。

 それが最近はどうだろうか。

 

「────」

 

 今一度、気を引き締める時だろう。

 俺はそんなことを思うのだった。

 

 

 

 

 

 さて、そんなことを考える間にも携帯端末に連絡が届く。

 それは友人からの遊びの誘いだったり、勇者部の活動に関する内容だったり、見目麗しい少女たちの遊んでいる写真やメッセージが届いたりする。

 そして、そんなメッセージの合間に、ときおり届くのがとある少女の自撮り画像だ。

 

 上里ひなたは讃州中学校でも人気の少女だ。 

 大人びた雰囲気と豊満な身体、性格や人柄も良い。周囲の人間との関係の構築力は高く、あっという間に彼女に心酔するほどの友達を作ったほどだ。

 そんな彼女は、俺の携帯端末に自らの自撮り写真を送ってくる。

 

「今日は黒か」

 

 豊かな乳房の谷間と臍を覗かせたショーツを履いた巫女。ブラはつけていない。

 東郷並の双丘は自らの白い手で隠されつつも形の良さや大きさがはっきりと分かる。手で隠されている分、むにゅりと形を変えた乳房の柔らかさが画像から窺うことが出来るほどに。

 羞恥によるものか、肌は薄く朱色に染まり、長い睫毛に縁取られた瞼は伏せられていた。

 

 彼女の自撮りは段々と挑戦的な物になり始めていた。

 鑢で皮を削るように、少しずつ彼女の羞恥心を減らし、纏う衣服も減らして。

 

『どうですか?』

 

 そんなメッセージと共に写真は届く。

 風呂場や、トイレ、自室で、場所を変えて少しずつ肌色が増えていく。

 

 少しずつ、少しずつ、要求のハードルを上げていく。

 

 いったい、どうして、ひなたがこんなことをしているのか。

 全ては彼女が親愛を寄せる少女、乃木若葉の痴態を知り、それをアルバムに収めるためだ。巫女を前にした時ではない、男を前にして見せる若葉の写真や動画を彼女は欲している。

 欲しているからといって簡単に渡すほど、俺は善人でもお人好しでもなく、最終的に若葉の写真とひなたの写真を交換するという形でこの秘密の関係は始まったのだ。

 

『もっと見たい』

 

 そんなメッセージを返すと、少し遅れて画像が届く。

 乳房の頂き、それが指先で隠されているが、それ以外の乳房と薄ピンク色の乳輪を露出した画像を彼女は送ってくれた。

 全ては見せない。そんなひなたの意思を感じさせる画像だ。

 或いは焦らしたいのか、完全に一線を越えることへの抵抗なのか。

 

『下は脱がないの?』

 

 そんなセクハラド直球なメッセージを送る。

 よほど仲が良くなければ絶縁不可避な内容、晒されれば互いに大変なことになるトークだが、彼女はこの誰にも言えない秘密の関係を気に入り始めているかもしれない。

 文句や後ろ向きな発言は多いが、なんだかんだで送ってくれるようになってきた。

 ポーズや画角など、勉強でもしているのか、少しずつ洗練されている気がする。

 

『そんなに見たいんですか? こんな身体を』

 

 そんな主旨のメッセージが返され、適当にメッセージの交換をする。

 背が低いのに乳房は大きい、アンバランスな身体だとひなたは自嘲する。一部の人間が聞けば怒りそうな発言だが、本人にとっては大事なことなのだ。

 ともかくも、そんなことはないと、ひなたの身体が如何に美しい物かと若葉の画像も含めて交渉するようにメッセージを送り続けると、やがて画像が届く。

 

 メッセージはない。

 ただ添えられた画像は彼女の中のハードルを少しだけ下げたことを示しているかのようだった。

 

 膝下までショーツが下げられていた。

 自室のベッドの上で撮ったらしき画像、中途半端に下がった下着を見下ろすように色白で肉付きの良い内腿と鼠径部、そして恥毛が鮮明に映り込んでいた。

 彼女の陰毛はやや濃い目だが丁寧に整えられていた。その奥に覗く秘裂だけは見せないつもりなのか指が添えられ隠されているが、十分に男の劣情を誘う画像だった。

 

 普通ならよほど絆を重ねなければ、彼氏でも無ければ見ることの出来ない画像。

 若葉の為とはいえども、それを見せてくれる彼女の基準はあやふやで、中途半端な一線だけは守ろうとして、あやふやになってきたからこそ見ることが叶ったのだろう。

 

「────」

 

 修正がされていない同い年の少女の恥部を見せられ、数秒。

 指一本、見えないが故に妄想と情欲を掻き立てられる。

 

 ポルノ写真、そう言って違えない少女の自撮り写真。

 下腹部に血が集まるのを感じながら何と返信するかを模索していると、

 

「わー! エッチだ」

 

 耳に吐息を吹き掛けるように、友奈の声が鼓膜に掛かる。

 背後から抱き着き、ふわりと甘い香りを漂わせて無邪気な笑顔を彼女は見せる。無意識か意識的か、薄い生地越しに慎ましくも柔らかな乳房を背中に押し付ける。

 視界の端に薄紅色の髪が垂れ下がり、チラと見ると同色の大きな瞳。

 

「エッチなの見てる……」

 

 頬が触れるほどに顔を密着させた幼馴染はひなたの自撮り写真を見た。

 身体に僅かに熱を帯びさせて、柔らかい声音を僅かに硬くさせる。色々と友奈には性的なことを教えているが、他の女のポルノ画像はあまり好ましくないらしい。嫌悪というよりも興味と僅かながらの嫉妬を瞳に揺らがせながら彼女は呟く。

 

「亮ちゃん、そういうの見るんだ……ふーん」

 

「男ならみんな見てるよ」

 

「エッチな本とか? 部室に堂々と置いてたのは知っているけど……、そういうエッチな画像を見るのは……、こういうの自撮りって言うんでしょ? 私もする?」

 

「お願い」

 

 ジッとひなたの裸体を、ほんのりと頬を赤らめながら友奈は呟く。

 ちょうど下腹部を上から映しているからか、或いは直接的な肌色画像に僅かに気が動転したのか、身近にいる巫女であることには気づいていないようだ。

 そもそも、同性であってもマジマジと恥部や乳房を見ることも無いのか。よほど距離感が近いか、そういった関係にでもならなければ分からないものか。

 

「誰だと思う?」

 

「ほえ? えっと……そういう人のことは分からないけど……もしかして東郷さん? でも、ちょっと違うような……」

 

「──私を呼んだ? 友奈ちゃん」

 

「東郷さん!」

 

 ズシリと背中に掛かる重みが増す。

 俺に圧し掛かる友奈に当たり前のような顔で抱き着く東郷。背後から抱き着く彼女の名前を呼ぶ友奈に、東郷の翡翠の眼差しが和らぐ。

 同時にチラリと俺を、否、俺の持つ端末の画像に目を向けると、

 

「ふーん。亮くん。私たちがいて、そういうのを見るんだ…………浮気? もしかして自撮りが好きなの? 前から私たちの自慰とか見たり恥ずかしい所を撮ったりするの好きだものね? でも、それって私が送った物じゃないし、……誰の?」

 

 白魚のような指が俺の首元に伸びる。 

 心地よい滑らかさは、しかし首元の脈を測るように添えられる。

 嘘などお見通しだとばかりの態度に、俺は口を動かす。

 

「ひ、み、つ」

 

「消すね。……私のなら、いっぱい送ってあげるから」

 

「────」

 

「うん、分かってるよ。亮くんも男の子だもんね。ちょくちょくパソコンでそういうの見ているけど、ほら、やっぱり知らない女性じゃなくて私とか友奈ちゃんを見て欲しいし、友奈ちゃんに変な物は見せられないから」

 

「──ほら、自分の家でエッチなのを見るのは別にいいよね?」

 

「何言っているの? ここは、私たちの愛の巣でしょう? そんな女は必要ないよね」

 

 当たり前のように告げる東郷は、加賀家のリビングにいる。

 ぎゅうっと、豊満な双丘に俺を抱き寄せる彼女の深緑の瞳は嫉妬に揺れ、耳元に吹きかかる嘆息は自分たちを差し置いて、見知らぬ女の裸体を見ていることへの失望か。

 或いは、他の女ではなく自分だけを見て欲しい独占欲か。

 

「ごめんね、東郷さん。もっと、いっぱい、気持ちよくしてあげるから」

 

「ふふっ、ありがとう。でも、今日は私たちの番だから。……抵抗しないでね」

 

 

 

 

 

「あれ、東郷? なんか機嫌良さそうね」

 

「えっ? そうですか? そんなことは無いのですが……」

 

「あっ、うん。それじゃあ、皆も集まったから今日の部活を始めるわよー!」

 

 残念ながら東郷によって画像は削除された。

 画像の送り主や誰の物なのかは隠せたが精神的ダメージは大きい。

 見知らぬ黒髪美女よりも自分を見ろと、出会った頃の彼女ならば赤面と羞恥の沼に沈むような肌色の画像を友奈と東郷が送ってくれたが、悲しい物は悲しい。

 

「それで、今日は子猫の依頼と……あと、剣道部からの依頼があるわね」

 

 部長である風が本日の依頼を説明しているが周囲は騒がしい。

 少女たちにとってはバーテックスの襲撃よりも大事な、健康診断が迫りつつあった。顔をしかめて腕を摩る千景や、樹、サプリを無言で摂取し続ける夏凜など鬼気迫る状態だ。

 決して、数日前に始めた行動程度では無駄であると言ってはいけない。

 

「じゃあ、剣道部にはいつも通り若葉と夏凜と……って聞いてる?」

 

「き、聞いているわよ! ほら、カルシウムよ」

 

「いらんわ! まったく……、いい? もう一回説明するから……」

 

「…………」

 

 そんな彼女たちとは別にチラリと俺に向けられる視線があった。

 大人しそうな顔の、センター分けした烏羽色の髪に赤いリボンの少女だ。

 何かを告げたそうな視線に思考を巡らせて、

 

「じゃあ、杏と……ひなたと……亮之佑が図書室の本の整理ね」

 

 結局、若葉の画像を渡していないことを思い出したのだった。

 

 

 



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第三十五話 交渉中

 ──勇者部では様々な依頼を請け負う。

 労働力、もとい勇者を自称する容姿端麗な多種多用な性格と特技を持った美少女たちが、勇んでボランティアや雑用、手伝いをしてくれるのだから学校内外の人気は高い。

 容姿だけではなく、それこそ神が見初めた少女たちが率先して人の為になること、人が進んで行わないようなことを行う姿に尊敬や感謝の念を抱く者も多い。

 

「友奈ちゃんに手伝って貰っておいて文句なんて……絶対に言わせないわ!」

 

 と、鼻息荒く告げたことがあったのは東郷だ。

 しかし讃州中学校では、というよりも神世紀時代の人間の精神性は西暦とは違い、神を中心とした道徳教育が施されている。

 性格が穏やかで優しい子が多いからか、実際に東郷が出撃した回数は少ない。

 寧ろ、友奈に気安く触れる輩は許さないと暴走することの方が多い。

 

 そんな東郷を始めとした癖のあるメンバー、あらゆるタイプの美少女を含めた派遣会社勇者部、その代表である犬吠埼風は図書室の本の整理という依頼を受注した。

 メンバーは行きたい人か、彼女の目利きにより選ばれる。

 今回は後者であり、テンションの高い風は俺とひなたと杏に出向を命じる。

 

「ヨシ! 課長の亮之佑はじゃんじゃん出向して稼いで来なさーい! 女子力を稼ぐのよ!」

 

「お姉ちゃん、課長なのに出向させるの……? もしかして左遷しちゃうの?」

 

「甘いわね樹会長、使える人材は使うのよ。大丈夫、我が社はアットホームだから」

 

「私って会長なんだ……ちょっと待って、アットホームだから何なの?」

 

「樹、風のボケにいちいち細かくツッコんでちゃ日が暮れるわよ。……ちなみに私は部長ね」

 

「じゃあじゃあ私は……! えーと、私は……なんだろう? オーエルさん?」

 

「友奈ちゃんはそこにいるだけで十分! 働く必要なんてないよ。私が食べさせていくから」

 

「フーミン先輩! 私は~?」

 

「乃木は……我が社の株主ね。ほら、みんなも役職はもういいでしょ。行きなさい」

 

 学生らしい適当なノリは付き合いの長さか。

 敏腕社長により社員が次々と現場に向かわされる。

 

「ん? 球子、なんだその手は……なぜ此方に向けるんだ」

 

「いや、おっタマげというか、気づかない間に高尾山も少し成長していたのだなと。ビバークの時を思い返すと妙に柔らかかったような……冷静になるとブラが……ずれていたような……んー?」

 

「……っ、どうやらまだお仕置きが足りないようだな」

 

「い、いや、言ってみただけで、ぎゃーー!!」

 

「……乃木さんも土居さんもなにしているんだか」

 

「ぐんちゃーん! 一緒に行こうよ!」

 

「ええ、高嶋さん! その、……ちなみに高嶋さんも大きい方が……」

 

「ほえ?」

 

「な、なんでもない! ……はぁ、今日も筋肉痛になりそうね」

 

 口々に騒がしくしながら部室を出る少女たち。

 胸元を押さえてトイレに向かう少女や、折檻される少女。適度に触れ合う少女たち。

 素直で優しい彼女たちは依頼を解決するべくその美脚を進める。例外はなく俺も部室から外に出ようとする中で、突然風がニヤリと笑みを浮かべた。

 するりと俺の首に背後から腕を回す彼女の双丘がむにむにと触れた。

 

「……なんですかベタベタと。当たってますよ」

 

「なによー、今更アンタそんなの気にしないでしょ。年頃の男子じゃないんだし」

 

「ピチピチの男子ですが」

 

 警戒心なく風に抱き着かれるのは年月と信頼の積み重ねか。

 年頃の男ならば今の抱擁に乳房を押し付けられれば簡単に堕ちるだろう。

 そんな気安い身内に接するような態度を見せる風の行動に、しかし俺は冷静だった。彼女の体温や髪から漂う甘い香りを始め、制服に隠された身体の柔らかさに狼狽えたることはない。

 

 そもそも距離感ならばもっと近い少女たちがいるのだから驚くことはないのだ。

 鼻で笑う俺に、背後から抱き着く風はムムムと形の良い眉をひそめる。

 

 そんなやり取りをする中、このあと部長と部員の面談でもするのだろうかと周囲の女子たちは気を利かせたのだろう、狭い部室で何も言わず俺と風を避けて、次々と退出していく。

 此方を見て怖い顔をする東郷も園子に背中を押されて部室を出る。

 目が合った友奈もまたニコリと向日葵のような笑顔を見せて部室を出て行った。

 

「東郷の機嫌が物凄く良さそうだけど、昨日アンタたちナニかしてた訳?」

 

「……そういうこと聞くと女子力下がりますよ」

 

「ほら、あんな分かりやすい態度だと察するというか、思わず聞きたくなるじゃない」

 

「興味あるんですか?」

 

「え!? そういう訳じゃないけど……興味本位です、はい」

 

 部室において犬吠埼風とは対等、やや逆セクハラをしてくる先輩とその後輩という関係だ。

 先輩後輩という形式は一応守られてはいるが、年の差などほぼ無意味に近しい。

 何かと風は俺を気に掛けて犬吠埼家での夕ご飯の誘いをしてくれる。家庭的で料理上手な彼女の料理は年数を重ねるほどに美味となり、定期的に訪れる彼女の誘いは基本的には断らない。

 

「──まあ、冗談は置いておいて……アンタ今度ウチで食べて行きなさいよ。前からそれなりに空いたでしょ? 樹も寂しがっているし」

 

「この前千景や夏凜も行っただろうに。……俺がいないと駄目か」

 

「はいはい、そうね。それより好きな物を言いなさい。骨付き鳥も用意しておくから」

 

「社長! よっ、女子力の塊!」

 

「そうでしょー!」

 

 器の大きい彼女は時々勇者部の部員を食事に招くことが多い。

 決して俺を特別視しているという訳ではなく、夏凜や千景など一癖ある少女たちを名誉姉妹という扱いにして時々夕飯に招いていたりする。俺の場合は名誉姉弟だろうか。

 そんな素晴らしい人格の持ち主である風が意味なく性的なウザ絡みはしない。

 彼女の話を前座に、周囲に目を向ける彼女が声を潜める。

 

「それで……──ほら、そろそろ、また、ね?」

 

 耳元で囁く風の身体は僅かに熱を帯び吐息には淫熱が混じり込んでいる。 

 大剣使いである風もまた一人の勇者、敵バーテックスが押し寄せる度に戦闘に参加する。

 戦いは決して楽ではない。油断は出来ない。

 だから、時に満開や切り札を使用して、身体に淫熱が籠り始める。

 

「あと、樹もお願い」

 

「────」

 

「あの子、最近夜にしてるんだけど……あんまり効果ないようで。学校にいる時は普通なんだけどお風呂とかでしているっぽくて……。この前なんか玩具を買ったらしいんだけど、樹ったら無くしちゃったみたいで……私にバレていないかチラチラと気にしながら探しているのが可愛くてさー……、まあ部屋の掃除をしている時にアタシがベッドの隙間で見つけて机に戻したら怒っちゃって……でも、結局コソコソしているというか、必死に声を抑えるのが可愛くて──」

 

 「最近寝不足なのよ」と呟く姉は、可愛い可愛い自らの妹の性事情を暴露する。

 相槌を打つこと五分。妹について話す風のトークはしばらく続く。

 双丘の大きさどころか、身内ですら聞かれたくないような事を本人が聞いたら家出か憤死不可避な事を小声ながらも、可愛いを間に挟みつつ暴露していく姉は仄かに頬を赤らめる。

 

「それで……樹のためにも出来るだけ早めに来て欲しいんだけど、来れる?」

 

 戦闘において身体に熱や疼きが生じてもその程度は個人差があるらしい。

 満開や切り札の多用もそうだが、そうでなくとも性的治療が必要になる少女もいる。

 自慰で我慢出来る子もいるが、徐々に我慢が出来ずひなたに相談した結果、最終的に恥を忍んで俺に治療を求めるという、まさしく藁にも縋る少女もいる。

 治療頻度は低いが風や樹もそんな一人であり、姉の方は恥じらいはあれど順応は早かった。

 

「チアガール姿が見たいなぁ。風先輩の家で先輩のチアガール姿見たいなぁ。応援されたい」

 

「二回も言わなくてもいいから。……アンタもそういうの好きよね。どうせ友奈とか東郷とか乃木とかにコスプレさせて虐めて悦に浸ってるんでしょう?」

 

「そんなことはしませんよ~。──じゃあ、二人の治療に行くので。日付とかは携帯で」

 

「……うん」

 

 彼女たちの助けを拒否することはない。そんなことは出来ない。

 俺はそんな彼女たちに守られている立場なのだから、出来ることはしなくてはならないのだ。仕方のないことだと理解していても罪悪感と喜悦を見え隠れさせる風に俺は笑みを見せる。

 その日を想像したのか、僅かに頬を赤らめる風は小さく頷き口を開くと、

 

「──風先輩。依頼完了しました」

 

「と、東郷!? 流石に早くない!?」

 

「冗談です。話は聞いてました」

 

 部員のいなくなった部室に東郷が戻ってきた。

 長い睫毛に縁取られた深緑の瞳を俺と風に向ける。

 何気なく俺に触れ合う風に対してやや冷たい眼差しを向ける彼女は、

 

「風先輩、私の亮くんをよろしくお願いします。仕方のないことですけど……ほどほどに。それと少し近づき過ぎですので離れてくれますか?」

 

「え~、東郷だって亮之佑と普段からイチャついて……あ、分かったから。その顔止めて」

 

「亮くんもね」

 

「はい」

 

「はいって……」

 

 絹のような黒髪と白い肌、学校の誰もが振り向くような絶世の美少女。

 震える風を尻目に東郷が小声で「嫉妬させないで」と分かりやすく独占欲を俺に見せつけることが、口には出来ない昏い感情を胸中に過らせる。

 ぶるりと風と同時に震える俺の姿に東郷は僅かに首を傾げた。

 

「今の震えは東郷さんの可愛さに思わず。俺の嫁可愛いなって」

 

「あら、ありがとう。亮くん、ちょっと来て」

 

 有無は言わせない、そんな雰囲気を醸し出す東郷は笑み一つで年上の少女に首肯させる。彼女が如何にヤベー女であるのかを知っている風はそっと俺から身体を離す。

 何食わぬ顔で俺の手を一瞬だけ握り、見せつけるかのように俺に抱き着き豊満な乳房を押し付けた東郷は、風の目の前で柔らかな唇を重ねてくる。

 背中に回す力強い腕力に比べて、触れるだけのキスは柔らかい。

 数秒ほど経過した頃、ゆっくりと彼女から唇を離すと俺に見惚れる微笑を見せる。

 

「──今はこれだけ」

 

 今は。ならば後には何をしてくれるというのか。

 風に対してどこか得意げな顔をする東郷は両手でハートを形作る。

 ハート、つまり愛。これが愛なのか。

 愛の前には公衆の面前だろうと口づけも躊躇わない。

 

 車椅子時代よりも機動性と面白さとリミッターをぶっちぎった大和撫子。

 日頃、自制心が強いからか寝台の上では色々と凄い女。ストレスを発散させるかのように、全身で俺を求め、時に近しい親友とも愛を育む彼女。

 そんな彼女は大胆にも風に見せつけるようなキスと抱擁、そして小声で夜の約束をして満足したような顔を見せると、部室を飛び出し友奈を追いかけて走って行った。

 

「────」

 

「あ、じゃあ行ってきますね。加賀、出向しまーす」

 

 一連の出来事に半口開けて瞠目する風を置いて、俺は部室を出る。

 部室の外、何故か壁に張り付いて隠れていた夏凜と目が合う。まるで告白でもするかのように、顔を赤らめた彼女は乙女の表情で唇を震わせる。

 そんな夏凜の姿に依頼先へ向かう脚を止めて、少女の前に俺は立った。

 

「あ、あのさ亮之佑。今度さ……その……」

 

 潤んだ瞳を見せる夏凜、その顔近くの壁に手を叩きつける。

 ビクリと震える少女の顎を持ち上げて、俺は少女を見下ろす。

 

「ん……っ、なによ……こんなところで何するつもりよ……」

 

「そのくだりはもうやったんだ。猫耳ビキニメイドとか逆バニーガールセットをプレゼントするからそれ着て。夏凜は可愛いから似合うよ。今度ご主人様がキミの家に遊びに行くからよろしく」

 

「は!? ちょっ、ちがっ、いや、違ってないけど……! って誰がご主人様──」

 

「前に新調した水着でも可。じゃあねー」

 

「なんで知って……って、聞きなさいよーー!!」

 

 

 

 

 

 

 讃州中学校の図書室は今日も静かだ。

 学校の図書室に脚を踏み入れる機会などあまりない。生前を思い返しても、放課後にわざわざ行こうとも思わず古臭い本ではなく最新の書籍や漫画を求めて書店に向かっていた。

 この場所も、人が増える時はテスト前くらいだろうか。

 

 本日は本の整理の為に勇者部の貸し切り状態。

 文学少年少女もおらず、静寂と古い本の香りに静かに瞼を閉じる。

 

 瞼を閉じるとペラリとページを捲る音。

 本を棚に戻し、黙々と作業をするのは黒髪と金髪の少女だ。西暦時代の初代勇者とされる一人、伊予島杏と巫女である上里ひなただ。彼女たちは俺よりも早く来ており作業を進めている。

 

「……」

 

「……」

 

 ページを捲る音。

 黙々と本の整理作業を進め、暫く時間が経過していた。

 

 俺は誰とも会話をしていなかった。そもそも、誰も口を開かなかった。

 作業自体は難しいことではなく定期的に発生する依頼だ。

 

「……」

 

「……」

 

 ページを捲る音。

 あらかた作業を終えた俺は、無言のまま他の部員の背後に歩み寄る。

 思わず手に取り鼻を押し付けたくなるようなふわふわのミルキーブロンドの髪に色白の肌。病弱な令嬢という印象を持たせる彼女は一つの本を手に取り、背後から近づく俺の存在に目もくれない。

 

「……ふむ」

 

 無言でページを捲る彼女は自他共に認める文学少女。

 その横顔は真剣で、創作された世界に没頭する杏の集中力は凄まじい。

 

 文学を愛する彼女は園子のことを尊敬し、先生と呼んでいる。

 園子が書く小説、その内容に惚れ込み、彼女が作る独特の世界観に誘われた読者の一人。園子が書いた小説は俺も読んだことがあるが無言で読み耽る程度には面白いと思う。 

 周囲の棚に目を向けると殆ど整頓されており、途中で興味のある本を開いてしまったのだろう。

 

「────」

 

 なんとなく悪戯心を刺激される姿だ。

 図書室に置かれていた本なのだろうか古そうな紙面に少女の指が置かれる。

 いったい、どんな本を読んでいるのかと杏の背後から彼女の持つ本に目を向けると、

 

「……」

  

 欲望のままに快楽を女の膣に刷り込んでいる男。

 その行為中の状況を、感想を女に述べるように命令を下し。

 身動きの出来ない、自由の利かない体勢で女の身体も心も犯していく──。

 

「──官能小説か」

 

「……ひゃ!? むぐ──」

 

 真面目な顔で官能小説を読んでいた杏。

 背後から話しかけると驚く彼女の反応を読んで、悲鳴の零れる口元を掌で覆う。わずかに体勢の崩れかけた身体を背後から抱くと、やや熱を帯びた肢体が硬直する。

 ふわりと髪から漂う甘い香りと此方を振り向いた杏の顔が徐々に赤面していく。

 

 驚愕、焦燥、羞恥。様々な感情が瞳を揺らす彼女の唇は震える。

 何かしらの言い訳か、或いは驚かせたことへの文句か、艶のある柔らかな唇はいずれにしても俺の手に塞がれ、モゴモゴと動くばかりだ。

 勇者服を纏われると少女たちの誰にも勝てないが、素の状態の杏は腕に抱かれたまま柔らかく豊かな身体を揺らし、俺の腕を掴む力は驚くほどに弱弱しい。

 男に背後から襲われた状況に頭が追いついたのか涙を目端に浮かべ始めた杏に俺は囁く。

 

「騒いだら、杏が過激な官能小説を読んでも平然としている変態娘であることを皆にバラす」

 

「────」

 

「図書室ではお静かに。……分かった?」

 

 しー、と耳元に囁くとビクリと身体を強張らせる彼女は、やがて静かに頷く。

 口元に当てた手を外すと、小さく吐息する杏は半眼を俺に向ける。

 

「……驚かせないで下さい」

 

「ごめんね。そんな過激なのを読んでいるとは思わなかったから」

 

「こ、これは……たまたまここに置いてあっただけで……っ、別に興味があるとかじゃ──」

 

「このまえ、園子と似たようなことをしたよ」

 

「え」

 

 さらりと脅し文句を口にしたが、実行しないと杏は踏んでいるのだろう。

 要求した通りに小声で、怒りや焦燥、見られたことへの羞恥を綯交ぜにした眼差しは、手に持つ本に似たような体験を尊敬する先生と目の前の男がしているという言葉に白黒とさせる。

 本を持つ手に震えが生じるも、それを床に落とさないのは本を大切に思っているからか。

 ふわふわとした金髪から漂う甘い香りを嗅ぎながら、囁く。

 

「想像出来ない? でも杏の大好きな園子先生が、その本みたいにされるんだ」

 

「園子先生が……!? そんな激しいことを……」

 

「たまにエッチな小説も投稿しているだろう? 薄々気づいているだろうけど、あれは全部自分がされたことや実際に見た物を参考にしてるんだよ」

 

「全部……」

 

 想像してしまったのだろう。

 ゴクリと喉を鳴らし、園子が背後の男に女にされている情景を。

 

「そ、れは」

 

「裸に剥かれて、一杯気持ちよくさせられるんだ……後ろから突いたり、羽交い絞めにしたりして、抵抗出来ないようにして、どこが気持ちいいかを口にさせる」

 

「────」

 

「乱暴に胸を揉まれて、激しく犯されて……でもどうしようもない快楽に何度も何度も……」

 

 官能描写を口にして、片手で制服越しに豊満な乳房を揉む。

 囁かれる耳は赤く染まり、制服から覗く両脚をくねらせる。そんな風に触れられて、しかし逃げる訳でもない彼女のセーターの下、ブラウス越しに腹部を摩る。

 

「何度もイかされる」

 

「ん……ッ」

 

「ここに、俺の物を何度も注ぎ込むんだ。その度に囁くんだ」

 

「は……! ぁ……!」

 

「俺の物になれ」

 

「~~! んくっ!!」

 

 西暦組では遠距離射撃と頭脳を武器とする彼女は、しかし若葉に鍛えられているからか、無駄な脂肪は少ない。

 自らの身体を触られて、他の女の痴態を耳にする杏は抵抗することなく背中を俺に預ける。

 瞼を閉じて、自身の妄想力と俺に身を任せたのだろう。

 触れた腹部から電流が走ったように、一瞬杏の下腹部が震えたのが分かった。

 

「俺の物になれ」

 

「それ……、だめ……」

 

「俺の物になれ、杏」

 

「ん……ッ!! ぁ……っ!」

 

 振り向き「だめ」と小声で告げる杏の瞳は熱で潤んでいるも抵抗は少ない。

 されるがままの彼女の身体に手を這わし、スカートを捲る。

 白いタイツに包まれた純白のショーツは初々しさがあり、クロッチ部分が湿り気を帯びているのが見えた。むわりと中から漏れる雌の香りは、彼女の想像力の高さと感度の良さを如実に伝える。

 真顔で官能小説を読みながら、その身体は最初から淫熱を帯びていたらしい。

 

「白か」

 

「そ、それは……だめですから」

 

「何が駄目なんだ。こんなに濡らして。いけない女だ」

 

 白タイツとショーツ越しに恥部をなぞると水音を響かせながらビクッと杏の身体が震える。

 俺の腕を掴もうとした彼女はもたらされる絶頂の予感に自らの口元を押さえた。

 

「……! ~~!! ぁぁ……」

 

 浅い呼吸を繰り返す彼女は薄く瞼を開く。

 酩酊したような眼差しと、蕩けたような表情は、男を迎え入れようとする女の物だ。

 

「だらしない雌だな。もうイったのか」

 

「……ッ、そ、それは」

 

「──なんてね」

 

「ほえ?」

 

 簡単に悪い男に食べられそうな彼女は、俺の言葉に呆けた顔をする。

 このまま図書室の床に押し倒されても彼女は受け入れる。

 その確信があったが、俺は苦笑と共にすっかり熱を帯びた少女の身体を離す。

 顔を赤らめてパクパクと開閉する杏の口が言葉を紡ぐ前に、

 

「──これ以上が欲しい?」

 

「あ、え……? ──!」

 

 初々しさを見せる杏の頬に悪戯心と共に口づけをする。

 そうして、頬に手を当て赤面する少女から本を奪うと棚に戻す。

 

「いっぱい、凄いことしてあげる。色んなシチュも一緒にしてあげる」

 

「──ぁ」

 

「優しいのも、激しいのも。後悔はさせない」

 

「…………なら」

 

「おや、顔が少し赤いな。風邪かもしれない。残りは俺がするから今日は帰った方が良いよ」

 

「ぇ、あ……」

 

「そんな状態じゃ依頼どころじゃないだろう? 今日は帰った方が良いよ」

 

「……今日は」

 

「近い内に杏の部屋に遊びに行くから。いい?」

 

「……、分かりました。……その、待ってますね」

 

 気障な言動も無垢な少女にはすうっと効く。

 小さく頷く杏は、スカートを押さえふらふらと揺れる身体で出入口に向かう。

 その足音が遠ざかっていくのを確認すると、背後から声が掛けられる。

 

「──少し強引だったんじゃないですか?」

 

 やや背の低い少女の声音。

 清楚さを感じさせる雰囲気の少女に俺は振り返ると口を開く。

 

「でも、杏も悦んでくれていたので。あと官能小説を読んでいたから、つい」

 

「何がついですか。私の若葉ちゃんもそんなことはしませんよ」

 

「というのは建前で、前に切り札の後遺症の治療を恥ずかしがって頼めない子がいるって言ってたでしょう? 俺からすることで言い訳を作りやすくしました」

 

「……もしかして今思いつきませんでしたか?」

 

「俺って信用ないですか? これでも四国随一の奇術師ですが」

 

「だからこそと言うべきでしょうか。亮之佑さんと数年は過ごしましたから。普段なら信用してますがそっち方面となると……その……」

 

「酷い言い草だ」

 

 言外に女たらしだと告げる彼女に肩を竦めて、近づく。

 杏との一連の流れを見ていたのか、半眼で俺を見上げるひなたが半歩下がる。

 警戒するように腕に己を抱いて豊満な乳房を腕に乗せる巫女の背後には壁と、横には本棚しかない。あっという間に逃げ場を無くし、壁を叩くとビクリとするひなたは無言で俺を見続ける。

 

「な、何ですか? 杏さんみたいなことをするつもりですか? 叫びますよ」

 

「いや、ほら、昨日のことで謝りたくて」

 

「……まさかと思いますが二人だけになる為に杏さんにあんなことを? 亮之佑さんならもっと穏便に出来たと思いますよ。わざわざあんなことをしなくても」

 

「さっき言ったように治療的な面もあったけど……思ったより反応が可愛かったから」

 

「女の敵ですね」

 

 やや冷ややかな眼差しを受け、少女の背後の壁を叩いた腕を曲げる。

 肘を曲げて、やや小柄な少女に近づくと、戸惑うようにひなたは瞳を伏せる。

 

「昨日のことで謝ることなんてありませんよ。寧ろ謝るのは私の方ですね。……変でしたか?」

 

「変って?」

 

「その……胸とか、あそことか。大きさとか色とかもそうですよね、剃った方が良かったですか? いえ、以前にも若葉ちゃんにムチムチだとか太腿が太いとか濃いとかセクハラ親父みたいなことを言われましたし。こんな背は低い癖に胸だけは大きいアンバランスな体型で──」

 

「とんでもない!」

 

 返信一つで随分と大袈裟な反応をするものだと思ってはいけない。

 基本的にメールなどのやり取りは早いことを彼女は知っている。だが、丸一日放置されるという機会はこれまで無かったことと自らの恥部の写真を送ったタイミングだったこと。

 それらが絡み合い、ひなたに悲しい勘違いをさせてしまったのだろう。

 

「とってもエッチな身体で変なことは無いよ。ただ、昨日はちょっと返信を忘れて」

 

「……本当ですか?」

 

「不安にさせてごめん。若葉と似たようなことを言うけどひなたさんの身体は凄く女性的で綺麗だよ。何も変なところはない。じっくりと直接見たいくらい」

 

「────」

 

 ひなたの裸体は一つの美と呼んで良いくらいに美しかった。

 いずれも写真や動画による自撮りだが、乳房の大きさや色、腹部や、臀部、太腿の肉付きの良さや、髪色と同じ黒色の恥毛、チラチラと見え隠れする乳首や恥部は下半身に血を巡らせる。

 アンバランスと言うが、男目線としては東郷のような完璧な身体をしている。

 

「本当に中学生なのかなって思うくらい。凄く魅力的でエッチだよ」

 

「……あ、ありがとうございます。ただ、あんまりエッチと言われるのもちょっと」

 

「どうしろと」

 

「ふふ……冗談です」

 

 ひなたとそんなやり取りをしていると、徐々に強張っていた身体が柔らかくなるのが分かった。

 俺を見上げ、上目遣いを見せるひなたは小さく笑みを浮かべた。

 困ったように雪肌の頬を僅かに赤らめながらも、小さく咳をして話題を変えさせる。

 

「昨日は何があったんですか?」

 

「実はかくかくしかじかで」

 

「なるほど。それは単純に亮之佑さん側のミスですね」

 

「はは……、なのでひなたさんの自撮り写真、もう一回送ってくれませんか?」

 

「そうなりますよね……」

 

 壁ドンされる巫女は、僅かに目を伏せる。

 思考を纏めているのか、ひなたは手で自らを扇ぎ、僅かに赤らんだ肌を冷ます。

 

 上里ひなたという少女は強かな所がある。

 親切心で自らの卑猥な写真を送ってくれるかと言うと厳しいところだろう。

 彼女の肌色満載の動画や写真をもう一度取得するとなると、交換材料として若葉の痴態写真が必要になる。もしも交渉事になったら此方の損失である以上、不利な条件になるだろう。

 

 とはいえ、自宅ということで背後を許すのは仕方ないのではないだろうか。

 自宅という聖域で油断をしないことは難しい。確かに友奈や東郷のいない時にコッソリと見るべきであったのかもしれないが、思わず見たいという欲求が上回ってしまったのだ。

 誰にでもうっかりミスという物はあるのだ。

 

「……その、亮之佑さんは直接私の身体、見たいんですか?」

 

「……うん? そうですね」

 

 そんな俺の思考を切り裂くように、ひなたが俺の制服を掴む。

 目を向けると、目を伏せていた彼女の顔が徐々に赤らんでいく。

 いったい、何が起きるのかと見ていると、ひなたは上目遣いで俺を見る。

 

「……私とも、したいですか?」

 

「したいって?」

 

「先ほど杏さんにしていたみたいな……その、エッチなことです」

 

「したいな」

 

「…………でしたら、こうしませんか?」

 

 か細い声で、羞恥が混ざったような声色はやや高い物で。 

 

「今までと、そしてこれからの若葉ちゃんのエッチな画像や動画を全てくれるなら、……私のことを好きにして良いです。私の自撮りも全て差し上げます」

 

 そう提示して、どうしますか、と言う言葉には。

 俺ならば断わらないだろうという響きがあって。

 

「ひなた」

 

「はい」

 

「ここでする?」

 

「──私の部屋で。それと、優しくお願いします」

 

 若葉を犠牲に、ひなたを抱く。そんな交渉が成立した。

 成立の記念として図書室で奪った彼女の唇は、柔らかく、背徳の味がした。

 

 



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第三十六話 交渉後

かっきーの顔面パーツは血筋的に若葉のパーツがあったりなかったり。
ゆゆゆいの寄宿舎って各部屋に内風呂があったような気がする。どうだっけ?


 ──契約という存在に縁がある。

 

 そんなことをふと脳裏に過らせたのはいったいどうしてか。

 物々交換でもするように、少女の写真や画像を対価に他の少女を好きにする。口約束ながらも交わされたことの証明を、背徳の契約をするように唇を重ねたのは誰の真似だったのか。

 

「────」

 

 そんな感傷を脳の隅に置きながら、彼女から対価を貰うために巫女の自室に向かう。

 同世代の少女たちよりも精神と肉体共に成熟したひなたは静かに俺の隣を歩く。普段ならば、若葉のことを中心に雑談をする程度には仲が良い筈の彼女は随分と物静かな少女と化していた。

 

「緊張してる?」

 

「し、していません」

 

 茶化さないで欲しいと半眼で主張する少女。

 目元の泣きぼくろと赤いリボン、頭一つ分の差はある身長。こうして肩を並べて歩く機会は今までにもあったが、今日のひなたの纏う雰囲気はいつもと違うように見える。

 

「あっ、上里さん! 加賀くんも! また明日ー!」

 

「お疲れー」

 

「……はい、また明日」

 

 そんなことを考えるのは俺だけなのか。

 辛うじて残っていた生徒たちが平然と挨拶してくるのを前に、ひなたは愛想よく返事する。

 先ほどまで図書室で口づけをしたことなど感じさせない微かな微笑みすら混ぜて。

 

 キスは若葉と慣れているのだろう。

 経験を積み重ねた笑みは一人の女子生徒を素通りさせるも、少し先で立ち止まる。

 忘れ物だろうかと思う中で、その少女は振り返りひなたに目を向けると、

 

「あっ、乃木さんなら体育館に行ったよ」

 

「ふふ……はい、ありがとうございます」

 

「知ってたよね。でも、乃木さんのファンを名乗る人たちもいたから、一応ね」

 

「そうですか……前に解散させた筈ですがしぶといですね」

 

「え?」

 

「いえ、なんでも」

 

 生徒たちには若葉の正妻あるいはマネージャーと認識されているのか、思い出したように付け加えられる若葉情報に、巫女は静かに笑みを浮かべ、去る背中に手を振る。

 ひなたは自分のことを卑下することもあるが、外面と愛想の良さ、周囲の空気を読み人の絆を繋ぐことの出来る人間性は、男女問わず人気の存在であるのは間違いない。

 すれ違う少女たちから親しみの籠った挨拶と若葉報告は、学校を出るまで続いた。

 この学校にいる限り、若葉はひなたから逃げられないのだと哀れに思った。

 

「……学校だけではありませんよ」

 

「そうですか」

 

「はい」

 

 学校を出ると、再び口数を減らすひなたを連れて寄宿舎に向かう。

 大赦スタッフも基本的に勇者や巫女の住まうエリアに脚を踏み入れることはない。

 部活中なのか他の少女たちは見当たらず、足音と隣の少女の吐息が聞こえる。

 

「っ」

 

 無言で腰を抱き寄せる。

 ぴくっとひなたの肩が小さく跳ねる。

 

「あ、あの、部屋は、まだ……」

 

 頭一つ分小さい彼女の身体は柔らかく、少しだけ抵抗した。

 今更ながら危機感を覚えたのか上目遣いになるひなたの肢体に手を這わせる。

 

「ひなたさん」

 

「な、なんですか?」

 

「部屋に着いたら、ひなたさんを抱くから」

 

「────」

 

 歩きながら告げると俺の指がひなたの身体を這う。

 僅かに唇を震わせて何か言葉を発しようとする巫女を無視し、制服越しに腰を撫で、腹部をくすぐり、下から乳房を持ち上げる。

 きゅっと締められた唇から小さく吐息が漏れ、少女は俺から顔を背ける。

 

「……どうぞ」

 

 ずっしりとした質量と柔らかさは掌で形を変える。

 僅かに硬い感触はブラの存在を確かにさせる。画像で見た少女の乳房を下着ごと揉むと、顔を赤らめ息を漏らす彼女が身体を揺らす。

 無人の廊下で女を侍らせて、乳を、腹を、腰を手で触れる。

 抵抗の気配はなく、少しずつ柔らかな肢体が熱を帯びていくのが分かった。

 

「は、ぁ」

 

 ひなたの部屋についた。

 若葉が訪れることが多いのか、彼女の私物らしき物が散見している部屋。

 扉を閉めて、既に柔らかくなってきた巫女の唇に唇を重ねる。

 

「……!」

 

 何者の邪魔も無く、俺はひなたを抱き寄せ、瑞々しい唇の柔らかさを知る。

 力の弱い彼女が嫌がらない程度に抱き締めると、ひなたの手が俺の背中に回される。

 

「ん、ふっ………んん……」

 

 滑らかな頬を掌に置き、舌を口内に滑り込ませる。

 熱くぬめる少女の口内で俺の舌を絡め取るひなたの舌先。

 穏やかな姿とは異なるキスを知る女との情熱的で背徳的なキス。

 

 唇を唾液で濡らし、上品な甘さと香りを漂わせる。

 興奮に頬を仄かに上気させる彼女を前に、空いた手で尻肉を揉む。

 

「ぁん……っ」

 

 思わずと、甘い声を漏らしたひなたの臀部は想像通りに柔らかい。

 するりとスカートの中に滑らせ直接触れる尻肉は乳房とは違う弾力を返す。

 くしゃりとスカートに皺を寄らせ、しっとりとした尻肉を揉む。背後に下がろうとする彼女は俺の腕に抱かれ、今度は豊満な乳房を堂々と揉む。

 湿った喘ぎを漏らすひなたが熱に浮かされたように呟く。

 

「亮之佑、さん」

 

「どうしましたか?」

 

「ベッドで……っ、その、しませんか?」

 

 ひなたの提案に首肯し背中に回した腕を解き、俺から目を逸らした彼女と共にベッドに向かう。

 扉の前から寝台までの数歩、休憩とも呼べぬ移動時間は下腹部に血を巡らせる。

 目の前に餌があるのに「待て」をされた犬の気分でひなたと寝台まで向かうと、

 

「ん……しょ」

 

「────」

 

 ブレザーをハンガーに掛け、ベッドに腰を下ろす少女は覚悟を決めるように自らの衣服に触れる。

 茶色のセーターの裾をクロスさせた両手で掴むと豪快に持ち上げる。

 ブラウスの裾がスカートから捲れ上がり白い腹部がチラリと覗き、生地を一枚減らして存在を主張する豊満な乳房に思わず息を止めて目を向ける。

 自ら脱いだセーターを丁寧に畳み、寝台の隅に置く彼女が俺を見上げた。

 

「……では」

 

 ぷつ、と。

 ブラウスのボタンを一つ外していくひなた。

 俺に抱かれることを理解し、その覚悟があると無言で証明するように衣服の奥に隠れた雪肌と甘い匂いが、彼女の意思で解放されていく。

 少女の豊満な乳房、その下に黒のブラジャーが見える。

 

「っ……」

 

 どこか余裕の雰囲気を見せる彼女だが、その肌を薄く朱色に染めながらボタンを外していく際にはスカートから覗く脚がせわしなく動いていた。

 朱色のニーハイソックスに包まれた肉付きの良い両腿がくっついては離れる。

 

「……ぁ」

 

 と、ピタリと脚の動きが止まると、揺れ動くひなたの視線が一か所に留まる。

 それはひなたが無言のままブラウスのボタンを全て外し、丸みを帯びた乳房を自ら見せた時だ。従順に抱かれようとする女を前に怒張がズボン越しに主張しているのに気付いたのか。

 自分の身体に欲情していると理解した彼女は羞恥に顔を伏せる。

 

「あ、その……」

 

 性的行為は若葉で慣れたと思ったが、どこか初々しい。

 本当の意味で異性との交遊はないのか、半脱ぎのブラウスを着たひなたを前にして俺のすることは変わらない。

 雄の本能を刺激する甘い香りを漂わせる巫女の手を取ると自らの怒張に宛がう。

 ズボンの中で反り立つ怒張に触れさせられた少女の手がビクリと震える。

 

「これがひなたさんの中に入るんだよ」

 

「……かたいですね」

 

「それだけ?」

 

「大きい……って、何を言わせるんですかセクハラですよっ!」

 

 思わずと言ったように呟いた巫女は自らの発言に赤面する。

 誤魔化すように怒張から逸らした瞳は、俺が彼女の乳房に触れると見開かれる。

 

「んっ……!」

 

 俺の肉棒をズボン越しに彼女に触らせながら、片方の手でひなたの乳房を揉む。ブラウスとセーターに隠されていた乳肉はパン生地のように形を変えては元に戻る。

 黒色の下着は乳房を包むが、先ほどの抱擁と愛撫で少し上にずれていた。

 くしゃりとブラが形を変わり乳が露出するのを視覚で楽しみ、手で楽しむ。

 

「ぁっ……! ぅぅんっ」

 

 きめ細かなひなたの肌は掌に吸い付く。

 豊満な乳房にブラの下に滑り込んだ指がツンと硬くなった乳首を捉える。

 東郷や園子とも異なる乳房の質感と弾力にブラを更に捲りあげようと──、

 

「ん」

 

 ぱさりとシーツにブラウスが落ちる。

 また休憩でもしようというのかと目を向けると、首を振るひなたは両手を背中に回す。

 小さな音と共に黒色のブラジャーのホックが外され、乳房が露わになった。

 

 同学年の少女の乳房が。

 雪肌と乳輪は自撮り写真のままで、乳首は初めて目にする。

 

「……っ、あんまり……見ないで下さい」

 

「────」

 

「ひゃ!? んんッ……っ」

 

 呻くように呟くひなたの言葉を無視して、桜色の乳頭を指で転がす。

 呼吸に熱を帯びさせ、もぞもぞと脚を動かすひなたの上半身は裸だ。

 

 豊かな乳房とやや肉付きの良い白い腹部。 

 自撮り写真や動画では隠されていた乳首は既に硬い。

 隠そうとする腕を俺が掴むと、ひなたは泣きそうな目で俺を見る。

 

「どうかした?」

 

「ぁ……! ……その、もっと……強くしていいですよ……?」

 

 彼女の言葉に従い、ゆっくりとベッドに寝かせながら、乳房に吸い付いた。

 

「ぅぅんっっ!!」

 

 悲鳴のような嬌声に少女の全身が震える。

 聞き分けのない赤子のように乳房に下品な音を立てて吸い付き、乳首を舌で転がす。

 咄嗟に俺の頭を掴むひなたの両手を片手で掴み頭の上に置くと、ぷるぷると責めて欲しそうに揺れる乳房を唇と舌と歯で丹念にねぶる。

 やや汗ばんだ乳肉を愛撫すると、彼女は甘い嬌声を上げる。

 唇で乳頭を挟み込み、乱雑に首を振るとびくびくと腰を震わせる。

 

「ぁっ! だめ……っ、ぁっ、ぁぁっ!!」

 

 桜色に染まる乳肉に噛み痕や吸い痕をつけていく。

 プリンのような乳房を甘噛みすると背中を反らし腰を動かして逃げようとする。

 言葉少なに拒絶と甘い嬌声を漏らすひなたに、もう片方の乳も同じ目に合わせ、先ほどよりも丹念にねぶると口端から唾液が溢れシーツを濡らしていた。

 

 少女に添い寝するような体勢でひなたの横に寝転がる。

 上下に動く腹部を撫で、彼女が着用するスカートを脱がせる。

 

 レースとリボンの付いた下着はブラと同じ黒色。

 汗が滲む内腿はしっとりとしており、雪肌の先にある下着は恥部部分に染みが見える。

 

「ぁっ! んっ、ぁ」

 

 すりすりとクロッチ部分を指で擦る。

 指の腹で染みを広げるように陰唇の浅い部分を布越しで前後左右に擦る。

 

 にちにちと雌の下品な音が漏れる。

 その音が自らの物だと気づいたひなたは唇を結び、脚を閉じようとする。

 

「んふっ……う、くっ……!」

 

 左の乳房を口に含み、背中から回した手でもう片方の乳房を揉む。

 恥じらうように両脚を閉じる抵抗を気にせず、下着越しに秘裂を探る。

 水分を吸った生地とその奥の肉は柔らかく、ひなたの陰核を探り出し指で刺激した。

 

「んんんっっっ!!! っ……はぁぁ……」

 

 下着の張り付いた割れ目から愛液が滲む。

 喘ぐのが恥ずかしいのかひなたは唇を左右に噛むも、身体の硬直と震え、何よりも強くなった汗と雌の香りが少女の絶頂を物語った。

 

「気持ちよかったですか?」

 

「ハァ、ハァ──、……っ」

 

 荒い呼気の巫女に問い掛けるも無言が返ってくる。

 ならばもう一度と、淫液の滲む下着越しに指の腹で秘裂を穿り、肉芽を弾くと、ビクッと身を跳ねさせるひなたが荒く呼吸する。

 

「き、きもちっ……良いです」

 

「そうですか」

 

「ま……っ! ~~ッ! ンんっ!! ゆびっ、は、入って……ンっ!」

 

 普段から陰核や恥部の浅い所に触れているのだろう。

 下着越しに擦ると男の腕に抱かれたまま、指先一つでひなたは喜悦に悶えた。

 呆けた顔で虚ろな眼差しは、幾度も見たことのある雌の顔をしていた。

 

「ぁ、ぁ……っ、ッ!!」

 

 だらしない淫音を響かせ、俺の指を濡らす淫液。 

 濃厚な蜜が下着は割れ目の形に張り付き、その肢体から力が抜ける。

 

「はー……はー……! ……ぁ!」

 

 柔らかなベッドで蕩けた表情の巫女。

 それを見下ろし、その身体からハイニーソを脱がし、下着をずり下ろす。

 透明な愛液が糸を引き、恐らくは初めて異性の前で秘所を晒したことに羞恥の悲鳴を上げたひなたは咄嗟に片手を小股に置く。

 

「や、やっぱりまた今度──ひゃう!?」

 

 腰を引かせる彼女の恥部に顔を近づけ、柔らかな手ごと舌を這わせる。

 犬のように、秘所よりもひなたの指を丹念に舐めると少女が悶える。

 指の隙間から覗く茂みと媚肉がときおり舌先に触れると、指がずれていく。

 

 雄を楽しませるだけの抵抗の末に、彼女は唾液塗れの手を退かす。

 羞恥に顔を逸らし、閉じようとする脚を手で掴み、ひなたの秘所を覗く。

 

「ぁ、ぁぁ……」

 

 色白の肌にやや濃いめの陰毛としとどに濡れた媚肉。

 ひくひくと動くピンク色の小陰唇と肉芽は、花びらのように見える。

 自撮りでは隠していた箇所の全てを見られたことにひなたの口から羞恥が漏れる。

 

「くぅぅっ!?」

 

 肉芽を舌先で触れると、彼女はやや大げさに喘いだ。

 ぴんと背を伸ばし、俺の頭を掴むひなたの手に力が籠る。

 

 クンニリングスの気配を察知したのか、肉付きの良い両脚が俺の頭を挟む。

 そんなにして欲しいのかと、細い腰を掴みクリトリスにキスをすると、

 

「ぁんっ!! ぁぁっ!!」

 

 舌先が秘肉を味わい、甘酸っぱい蜜を啜ると腰を浮かせた。

 嫌々と首を振ると揺れ動く乳房を片手で揉み、恥毛に鼻を押し付け肉芽を弄る。

 唾液と愛液で塗れた肉芽を舌で転がし、媚肉から溢れる蜜を啜る。

 

「ぃぅっ……! ぁぁ……! ~~~ッッ!!」

 

 薄皮の剥けた肉芽に吸い付くと、ぷしっと媚肉から飛沫が顔に掛かる。

 嬌声をあげるひなたが背を反らし、そのまま崩れ落ちた。

 

 今度こそ、彼女は自らの身体を隠す余裕もなくなったのか。

 荒い呼吸を繰り返す度に揺れ動く乳房も、黒々とした陰毛も、太腿に愛液を垂らす媚肉も、自撮りという中途半端な焦らしで隠されていた乙女の裸体を目にして興奮と歓喜に心が揺れる。

 眼前の巫女の痴態に、俺の肉茎もまた興奮による硬度を得ていた。

 

「────」

 

 下着ごとズボンを下ろした。

 極上の料理を前にして、待ちきれないように涎をこぼす怒張。

 自らの寝台に横たわるひなたは虚ろな眼差しで雄棒を見上げる。

 

 太腿に擦りつけるとその熱さに驚いたのか、そっと脚が開かれる。

 もう動く気力もないように脱力する彼女に覆い被さり亀頭を膣口に添えると、ちゅるりと吸い込み、ぬめる膣肉が蠕動した。

 

「……ぁっ」

 

 ひなたの中は熱い。

 我慢していたこともあるが、挿入するだけで既に射精寸前に陥る。

 

「っふ……っ、ぁっ、っ!」

 

 獣のように衝動に従い腰を動かしても良かったが。

 優しくして欲しいという巫女の要望があったから。

 

「ぅん、ぁ、ぁ、ぁあ……!!」

 

 スローピストンで少女の膣内を肉棒で根本まで打ち付ける。

 彼女の嬌声の甘さを確かめて、ゆっくりと肉棒を抜くと腰を打ち付ける。

 

 優しく。

 

「ぁ! ……んっ、ふっ、っ」

 

 じゅぷっと下品な水音が結合部から漏れる。

 挿入した剛直を抜き差しする度に快楽に二人で悶える。

 膣襞を雁が擦る度に、亀頭で新しい場所を突く度に愛液が竿に絡みつく。

 

「ぷあっ!?」

 

 彼女を串刺しにして何度目か。

 軟体生物のような膣襞がぎゅうっと怒張を締め付ける。

 その感触と反応に、俺は経験に基づく確信と共に同じ場所に腰を打つ。

 

「は……っ……ぅんぁぁっ!!?」

 

 ひなたは目を見開き、声を上げた。

 咄嗟に腰を引かせようとする彼女を追いかけ腰を動かす。

 奥まで貫き、やや左上の方に雁裏を引っかけ、腰を引く。そして一突き。

 

「ぁあっ!」

 

 胸板に擦りつけた乳房がいやらしく形を変える。

 何度目かで弱点を掘り当ててから溢れる蜜が互いの陰毛に絡み合う。

 

「ぁ……はぁっ! んっ……ぅっ、ぁっ」

 

 雌の喘ぎに顔を赤らめるひなた。

 自分の口から漏れる自分の声が信じられないような表情で、新たな絶頂と子種の予感を本能で感じ取ったのか、両手が俺の背中に回される。

 しがみつくように汗ばむ裸体を押し付け怒張は深くまで沈み込む。

 

「こすれっ……っ、ぁっ!」

 

 恥毛が肉芽を擦っているのか、怒張を擦り付けると彼女は乱れる。

 背中に爪を立てるひなたの髪に手を伸ばし、赤いリボンを取る。

 

「ぁっ、ぁ、わかばちゃ──んンっ!! ん……むっ………んぅぅ……!」

 

 さらりと揺れ動く汗と雌の匂いが混じった黒髪。

 髪型は崩れ、涙を目端に浮かべた彼女が生まれたままの姿になった。

 熱い吐息を漏らし、熱病に浮かされたように特定の個人の名前を呟く唇に唇を重ねて、その口腔を味わうと雌肉がぎゅっと抜けそうになる怒張を引き留める。

 

「出しますよ」

 

 俺は腰を振った。

 彼女の最奥に子種を注ぐ為に。

 

 ぱんぱんと肉が肉を叩く音と。

 にじにじと結合部から淫音と泡を漏らして。

 

「ゃっ! ぉっ! ぁっ、あっ!!」

 

 逃がさないように小さな頭を腕に、身体を密着させる。

 ピストンの度に揺れる乳房、ツンと上向く乳首が擦れては少女が呻く。

 喘ぎ声か悲鳴か分からない下品な声を上げる彼女は脚をばたつかせる。

 

「~~! ……ぁ、ぁ、ぁ……ぁあぁああっっっ!!!」

 

 ぴんと背を反らし、両脚が腰に絡みつく。

 媚肉の蠕動をトリガーに、勢いよく白濁が巫女の膣を汚す。

 どくっ、どくっと濃厚なソースが注がれていく。

 

「ぁ……は」

 

 恍惚に震え、開かれた唇は唾液の橋が糸になる。

 意識は失ってはいないが、ひなたの眼差しは酩酊したように虚ろだ。

 

 絶頂の瞬間に全力で抱き着いたのか。

 徐々に肢体が脱力していくのを感じ取ると逆流した白濁が結合部からこぼれた。

 

 ゆっくりと身体を起こすと、ぐったりとした様子のひなた。

 息も絶え絶えな彼女の乳房は未だにツンと上を向いており、その乳房を手で揉む。

 若い身体は既に下半身に血を巡らせ始めている。

 

「────」

 

 雪肌を桜色に染め、淫臭を滲ませる彼女。

 ただ、その眼差しは虚ろで意識があるのか曖昧だ。

 このまま衣服を着替えさせようかと考えながら少女の陰核を指で擦る。

 

「んっ……」

 

 体力の消耗が激しいのか、喘ぎを口から漏らすだけの少女。

 ぐったりと寝台に身を預けだらしなく開かれた脚の下には愛液と精液が混ざる。

 

 年頃の少女がする姿としては如何な物かと携帯端末を構えて撮る。

 個人的な趣味であり誰にも見せることのないコレクションが追加された。

 同級生の無修正ポルノ画像の出来上がりである。

 

「わ~い、ひなたさんの初めての写真だ」

 

「……」

 

「ほら、見てくださいよ。修正のないエッチな……大丈夫ですか?」

 

「……」

 

 その後、体液を拭き取ったり、彼女の陰毛や乳房を吸ったり嗅いだり、目の前でショーツを裏返したり、スリーサイズを測ったりと奇行に及ぶも、彼女の反応はどこか鈍い物だった。

 口は半分ほど開かれ、その目は虚ろなまま。

 体力不足により中途半端に意識が残っているのか。

 このまま着替えさせて立ち去るか悩む反応に、俺は一つの手を思いつく。

 これでも駄目なら単純に疲労だろうと判断する為に──、

 

『ま、またこれを咥えろと言うのか!?』

 

「若葉ちゃん!!」

 

 巫女の隣に彼女が知らない若葉の秘蔵動画を置いた。

 若葉を犠牲に、少女は即座に意識を取り戻した。その瞳に光を灯して。 

 

『む、胸を使うだと? 私の胸はそんなことの為に使う訳では……くっ』

 

「若葉ちゃん……? あ、あれ、ここは………きゃ!」 

 

 身体を起こし状況を把握したのか手元のシーツを手繰り寄せる彼女。

 しかし、同時にその瞳は俺が渡した端末に吸い寄せられていく。

 

『なっ、誰が高尾山だ。球子みたいなことを……』

 

 動画内で男との性行為に励む姿をジックリとひなたに見られている。

 肉棒の前で服装も髪も乱れた彼女に奉仕を要求し、それを受け入れるシーンだ。

 本人が知れば憤死不可避か道連れにされかねないそれは彼女には薬として効いた。

 

『本当に撮るのか……待て、もう撮っているだと!? ……ちょ、耳はっ、ンっ──』

 

「……」

 

「……」

 

 食い入るように魅入る巫女の身体からシーツが落ちる。

 それを気にすることもなく一人の少女の痴態を目にする彼女は、

 

『ぁっ、その指の動きはもういいから……別に私の、む、胸を育てようとしなくていいっ! ……ァっ、ぅぁ、ふぅっ……調子に、のるなぁ……~~ッ!!』

 

 撮った人間は手慣れているのだろう、画面はぶれず少女が撮られる。

 羞恥に揺れる瞳も、ぎこちない奉仕の動きも、恥じらいながらも快楽を愉しむ姿を。

 凛々しい彼女からは想像出来ない淫らな姿を。

 

「ん」

 

 動画に映る熱は、二人の視聴者にも伝わる。

 ひなたが静かに脚をくねらせ、くすぶらせた熱に身体を揺らす。

 

「こ、こんな動画があったんですね……他にも」

 

 自らの身体の熱を誤魔化すように、初めてひなたが口を開く。

 乾いた笑みを浮かべて、顔を上げて、静かになる。

 

「──ぁ」

 

 若い身体は一人の少女の奉仕姿を思い出し血を巡らせていた。

 既に回復した反り立つ怒張は、顔を上げたひなたの頬を叩く。

 

『……それで頬を叩くな。分かったから……、……ぁ、ぁむ、っ』

 

「────」

 

 巫女は肉棒と少女を交互に見る。

 どちらも見て、動画で愛しい少女がしているのを見て。

 

 もう一度、その柔らかな頬を肉棒で優しく叩き。

 

「………………ぁむ」

 

 同じ経験を求めるように、キスをするように、巫女の唇が亀頭に吸い付き。

 

 ちゅぷりと奉仕を始めた。

 

 

 



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第三十七話 交渉は成立したから

 ──同学年の少女の部屋で、その本人に奉仕される。

 裸を晒したひなたが肉棒の前に屈み込む姿を、いったい、どれだけの同世代の少年少女が見た事があるのだろうか。同学年どころか他学年の間でも人気な彼女の下着すら見たことのない者が殆どだろう。

 卑猥な妄想や空想はするだろう。だが、実際に見た者は? 触れた者は?

 そんなことを口にすると俺を睨む彼女だが、怒張を咥えたままでは緊張感に欠ける。

 

「ひなたさんは綺麗だから。皆こんなことをしたいと思っているよ」

 

「……ッ、そんな」

 

「咥えろ」

 

「……ぅぷ」

 

 妄想でも空想でもない、確固たる現実。

 現実の世界かと言われると曖昧ではあるが。

  

 何かを言いたげな彼女が肉棒から口を離すも、その後頭部を掴んで怒張を咥えさせる。んむ、と声を上げる彼女は先ほどよりも肉棒を舌で理解したのか瞳を見開く。

 やや乱暴な行為に、しかし少女は肉竿を噛むことも吐き出すこともしない。

 従順に、手で触れる竿をなぞるように舌を這わせた彼女は鼻息を根本に吹き掛ける。

 

「んっ……む、っ」

 

 乱雑に黒のブラジャーやショーツが近くに丸まっている。

 彼女を着飾る衣服もリボンも、全ては寝台の上に置いてきた。

 

 目の前にいるのは生まれたままの姿をした美少女。

 白い肌と黒い髪、豊かな乳房も秘所も曝け出している。

 

「……っ」

 

 欲望の籠った視線に、思い出したように乳房を腕で隠そうとするも諦めたのか腕を降ろす。

 反り立つ肉棒にたじろいだ顔を伏せて、少女は淑やかに口腔奉仕に勤しむ。

 丁寧に、もしくは不慣れを誤魔化すように舌が茎に絡み、唇が雁を挟む。

 

 くぷ、くぷ、と唾液を絡めるひなた。

 亀頭を舌で味わう彼女の鼻息は荒く、唾液が口内で溜まったのか奉仕が止まる。

 

「いいぞ」

 

「……ん」

 

 小さく喉を鳴らして唾液と先走りを呑み込む。

 そして再び肉棒を頬張っては、頬肉と舌を使って俺をもてなす。

 鈴口から溢れる汁を舌で舐めとり、恥じらいを減らしつつある唇が窄められる。

 

 少しずつ、少しずつ、彼女の奉仕に俺は快楽を覚え始めていた。

 さらりと黒髪を撫でながら腰を前に振ると、喉奥へと向かったのか俺を見上げる瞳。

 どこか非難混じりの半眼を見せる巫女は鼻息で抗議しつつ、俺の腰を掴む。

 

「ん……!」

 

 少女の乳首を摘まむ。

 

「んぶっ!?」

 

 薄ピンクの乳頭を親指と人差し指で摘まみ引っ張る。

 硬さを帯びた乳首をコリコリと捏ねながら、彼女に奉仕を強いる。

 

 屈み込み、怒張の為に顔や腕を動かしては、乳房がたゆんと果実のように揺れ動く。

 雪肌は薄く朱色に染まり、掌に余る肉果はしっとりとしている。指の間から逃れようとする乳肉は水風船のようで、色合いや質感、大きさや重量などは東郷と似ているようで細部が異なる。

 母性の象徴というには男の本能を昂らせる乳房をゆっくりと揉む。

 

「このエッチな身体で若葉ともホニャホニャしているんですか?」

 

「……ぷはっ! 若葉ちゃんのことは今は……」

 

「ああ、これは失礼。この身体を好きにしている若葉が羨ましいと思いまして」

 

「羨ましいなんて。そんな……」

 

 ずっしりとした乳肉は揉む度にいやらしく形を変える。

 指に吸い付く乳房はどんな形になろうとも、丸みを帯びた母性の塊に戻る。

 乳房と乳首を手で楽しみながら、少女に口腔奉仕をさせること数分。

 

 ちゅぽ、と淫音を聞かせ口腔から肉棒を解放するひなた。

 唇と亀頭の間に掛かる透明な糸を無言で指で拭う彼女は誤魔化すように口を開く。

 

「ん……そんなに好きなんですか?」

 

 彼女の問い掛けに、俺は頷く。当たり前だ。

 性的趣向は様々ではあろうが乳房が嫌いな男などいる筈がないだろう。

 

「そ、そうですか」

 

「……どうしましたか? 続けて下さい」

 

「あ、その……顎が疲れてきたというものあるのですが」

 

 形の良い眉を顰めて、そう告げる彼女は視線を下げる。

 それは奉仕が不出来であることへの懺悔ではなく、

 

『ん……むっ……』 

 

 向けられた視線の先に携帯端末。

 裸の少女が一人の男に快楽を教えられ奉仕する映像が映る。

 

『……っ、はぁ……はぁ……ふ、ッ』

 

 やや汗ばみ、結われた髪の毛は乱れ、荒い呼気を漏らす。

 声を恥じらうように抑えて、カメラに対して目を伏せる金髪の少女。

 

『だ、誰かに見せたりしたら、分かっているだろうな』

 

『分かっているから早くしろ。こんなに漏らして』

 

『違う! これは…………汗だ!』

 

『そうか、汗か……だがあれだけはしたない声を出しておいて気持ち良くないとは言わせないぞ。何事にも報いを、と言うのなら……分かるな?』

 

『乃木の家訓をそんな風に使うな。くっ……こんなに硬くして……変態め』

 

『変態はどっちかな? これがもしひなたさんに見られればどうなるか』

 

『なっ! ひ、ひなたには言うな……言わないでくれ』

 

 手で顔を隠そうとして諦めたらしい美少女。

 携帯端末の動画では奉仕相手と何かを話しているが重要なのはそこではない。

 普段は見られない凛々しい少女の淫らな姿がそこにあった。

 

『こんな……っ、胸でするなど……! んっ……』

 

 文句を言いながらも胸と口で奉仕している姿は卑猥そのもの。

 数多のポルノ動画よりも、見知った美少女の淫靡な姿を収めたこの動画こそ価値がある。

 それはひなたも同意なのか勇者の痴態に目を向けると、自らの乳房に手を添えた。

 

「こういうのが……好きなんですよね」

 

 半眼を見せる少女の端正な顔の前で肉棒がぶるりと揺れる。

 無言の俺を目の当たりにし、彼女は膝立ちになり剛直に抱えた乳房を近づける。

 

 豊満な乳房、その谷間に反り立つ怒張が吸い込まれた。

 にゅぷ、と汗ばんだ肌はうるおいとぬめりがあり、一つの性器と化していた。

 気が付くと腰が動き、まろやかな乳房に包まれながら水音を立てて竿を扱く。

 

「ぁっ……!」

 

 ぷるりと揺れる肉果。

 膝立ちで男の竿を自らの乳房で受け止める彼女は俺の前に頭を垂れる。

 時折、熱い吐息が亀頭に吹きかかり、その刺激に思わず呻く。

 

 奉仕を受ける俺を上目遣いで見るひなた。

 彼女も先ほどの情事と奉仕に身体を火照らせているのか。

 揺れる黒髪を耳に掛ける少女は、おもむろに乳房を動かす。

 

『んっ……、こ、こんなのが良いのか。──ん? これが良いんだな……? そうか……!』

 

「気持ちいいですか?」

 

 画面に覗く金髪の少女は挟める程度の乳房で奉仕して。

 眼前で俺に跪く黒髪の少女は包み込める豊かな乳房で奉仕する。

 

 どちらも見様見真似で上下に乳房を動かす拙い動き。

 それは即ち、彼女たちにとって初めてのパイズリ、雄竿を胸で受け入れた最初の男になったということに鼓動が高鳴りを覚える。

 若葉ラーニングを受ける巫女は軟肉越しに亀頭に攻撃する。

 挟み、しごき、汗でぬめる肌に吸い付かれ、吐精衝動にひなたの頭を掴む。

 

「気持ちいいですか? 亮之佑さん」

 

「──ああ」

 

「ふふっ……、んっ───」

 

 ひなたは笑みを浮かべ、羞恥に勝る満足感と喜悦をチラリと見せる。

 言葉少なに呟き、髪に触れる俺に文句もなく、淫らに口を開く。

 俺の動きから射精寸前であることを悟ったのか、ぱくりと怒張を口へ。

 二度目のフェラチオは先ほどよりも熱く、的確に雁裏に吸い付く。

 

『ぇ、ぁ、ど、どうすれば……!』

 

『ほら、しっかり味わえよ』

 

『ぅ、ぁっ……!?』

 

 画面の中の勇者が射精を悟ったのか。

 咄嗟に顔を背けようとする彼女の髪を掴み、吐精に至る。

 動画では男の肉竿から勢い良く噴き出る白濁は若葉の口腔を汚すだけではなく、端正な顔を濡らし、艶と汗を含んだ金髪に染み込んでいく様子が映っている。

 男を受け入れる若葉の顔を、ひなたは目を閉じて見ていなかった。

 

「──ンんッ!? んぶっ……!」

 

 射精衝動が限界を超えた瞬間、俺は眼前の少女の頭部をがっちりと掴む。

 

「ぐっ、う──」

 

 動画内の出来事を繰り返すように、巫女で射精した。

 粘度のある白濁がひなたの口腔を汚し、舌や頬裏に染みていく。

 ぎゅっと瞼を閉じた彼女は、吐き出される精子を口内で受け止めていた。

 

 一滴残らず注ぎ込み、ゆっくりと竿を唇から引き抜く。

 滑らかな髪から手を離すと、白濁で汚れた唇をもごもごと動かすひなたが薄く開いた瞳で何かを求めているようだった。

 流石に、白濁を飲むのは抵抗があるのだろうと考えた俺はティッシュを探すも、

 

『んん……っ、これは、前のよりも……まずいな』

 

「────」

 

『まあ……癖になりそうな味だ』 

 

「──、ん」

 

 親愛を向ける少女のレビューに、巫女が喉を鳴らす。

 俺が見守る中で口内に残った精液を嚥下すると、吐息する。

 大きな瞳に涙を浮かべ、端正な眉をひそめるひなたは、それでも若葉と同じことをしたことに、同じ雄を味わえたことに誇りでも抱いているように薄く笑みを浮かべた。

 

「本当に……美味しくはないですね」

 

 

 

 

 

「若葉ちゃんは──こんな顔もするんですね」

 

 呟く少女の横顔に目を向ける。

 驚きというよりも、噛み締めるような彼女の視線は、

 

『ぁっ、ぁ、ぁ、っ……! ~~!!』

 

「……っ、んッ……」

 

『こんなっ……体勢で……ひゃめっ……ぁぁっ!!』

 

「……っっ!!」

 

 撞木反りの体勢であられもない若葉の動画に向けられる。

 時には鏡越しに、バックで、正面から、秘所の詳細すら鮮明に撮られていた。

 定点状態で、淫音を奏でる結合部と軋む寝台、乳房が揺れ、汗が飛ぶ。

 

 奥歯を食い縛って堪えようとするも耐えられないように嬌声が漏れる。

 長い金髪を揺らしては、必死に抵抗しようとする手足がシーツに皺を寄せる。

 

『まてっ、まへ……もうじゅうぶん……ひぁぁっ!』

 

 紫紺の瞳は屈辱と快楽で絡み合い涙を浮かべる。

 腰を突き上げられて肉棒が若葉を串刺しにする度に汗ばむ肢体が跳ねる。

 

『みみっ……どうじはッ……ぁ、ぅぁああ!!? ~~~~ッッ!!!』

 

 無意識のうちに甘えるような女の声を漏らす唇。

 艶やかな若葉の唇が背後の少年に奪われては形の良い耳を指でくすぐられる。虚ろな眼差しは徐々に本能を受け入れて、雄を求めて、快楽に自ら腰を動かして、結合部から蜜を噴き出す。

 踵を上げて、彼女が悦ぶ場所を触られて、身体を痙攣させる。

 

『……ひなたぁ』

 

「……若葉ちゃん」

 

 無意識のうちに口端から漏れた名前に反応するのは動画を見ていた巫女だ。

 俺の端末で秘蔵動画を、親友の絶頂に達する姿を余すことなくひなたは見ていた。

 親友の性行為に、自らの乳房を手で揉み恥部に怒張を擦らせて。

 

 ──ひなたは男と親友で最上級の自慰をしていた。

 

「そうするようにって、亮之佑さんが言ったじゃ……あっ、静かに」

 

『若葉』

 

『なんら……?』

 

『もしかしたらひなたさんが見ているかも』

 

『……は? お、おい! ……んぁぁっ!?』

 

『うぇーい、ひなたさーん見てるー? 若葉ちゃんこんなエッチな顔をしてるよ~』

 

『やめろ……こんな姿を……ひなた、違うんだこれはっ、ぁ、くっ、ぅぅぅ……!』

 

『ほら、ピースしろよ。平和は最高。キスもおまけだ』

 

「亮之佑さんには後でお話があります」

 

「待て。合意の上だ。よく見ろ、嫌がっているように見えるか? 自分で腰を擦りつけて──」

 

「静かに」

 

『はっ、ぁ、ぅ……! ひなッッ、ぁぁああぁあっっ……!!』

 

「……見てますよ、若葉ちゃん。あぁ……若葉ちゃん若葉ちゃん……! 私も、私も一緒に……っ」

 

『イ、ぅぅぅっっっ!!』

 

「……んんッ!!」

 

 鏡の前で、体位を変えながら金髪美少女と行為に耽る。

 顔が見えなくなるバックでの体位もカメラのおかげで良く見える。

 すっかりとふやけた彼女は一突きごとに唇を震わし、瞼を閉じて喘ぎ声を漏らす。

 

 若葉との楽しい性行為。

 虚ろな眼差しをする少女の動画に、巫女は自らの秘所を指で弄る。

 身体を震わせ軽い絶頂に達したことを誤魔化すように少女は口を開く。

 

「なんといいますか……園子さんにもこのようなことを?」

 

「俺は気持ちよくされるよりも気持ちよくしたい派だからね。こんな風に」

 

「あっ」

 

 ゆっくりと怒張を前後に動かす。

 挿入はしていないが、彼女の肉付きの良い腿と恥部を雄竿で擦る。汗と愛液が絡み、膣や手や唇とも違う独特の弾力と吸い付きは新たな快感を与える。

 寝台の上で若葉秘蔵動画を、ひなたと俺はそれぞれで愉しむ。

 

「ぁ……ん」

 

 ぱん、と鼠径部が彼女の尻肉を叩く。

 揺れる乳房を前に、思わず手に取っては肉粒をコリコリと擦る。

 

 熱のこもった身体は小さくも柔らかく、背後から抱かれる巫女。

 汗を吸った黒髪は乱れ、彼女も静かに秘所に手を伸ばす。

 くねらせた両腿が肉棒を締め付け、ゆっくりと絶頂への高みに上らせる。

 

 恋人のようにひなたを抱き締める。

 うなじにキスをして黒髪に鼻を突っ込むとひなたは身じろぎする。

 少女の恥部と腿で雄棒を扱く度に、彼女の口から情欲混じりの吐息が漏れた。

 寝転がったままの怠惰な行為の合間に言葉を交わす。

 

「ひなたさんって、抱き心地が良くて好きですよ」

 

「それって褒めているんですか? 遠まわしに太っていると?」

 

「そんなことはないよ」

 

「そぉ……ですか、ッ、ぁんっ!」

 

 白い喉を見せつけ、擦った秘所からにちにちと淫音を奏でる。

 恍惚の吐息を漏らすひなたを背後から抱き、俺はまったりと腰を揺する。

 

 手に持つ携帯端末を揺らし若葉の動画を見ながら、彼女は淑やかに腰をくねらせる。

 ふるり、と彼女の乳房が揺れ、男を誘う。

 他人の痴態に目を向けるひなたは自らの身体を雄の自慰行為の道具として差し出す。

 

「は、んっ」

 

 自慰はお互いに得意だからだろうか。

 俺とひなたは互いの身体を使って、自分のペースで快楽を求める。

 

 ゆっくり、ゆっくりと肉竿が彼女の秘部を擦る。

 角度を変えて肉芽を亀頭が擦る度に生じる刺激は優しくも確かだ。

 可愛らしい嬌声を聞かせ、縋りつくように媚肉が怒張に吸い付く。

 

「ぁ、ぁっ……! ふ、ぅぅ!」

 

 尻肉を押し付けてくる巫女の恥部に前から手を伸ばす。

 黒々と生え揃った陰毛を撫で、ザクロのような肉芽を指でそっと転がす。

 

「んっ……っっ!!」

 

 絶頂が近いのか、腿を擦り合わせ怒張を刺激する。

 瞼を閉じ、赤らむ肌を震わせて、俺の腕を掴む。

 

 絶頂に達する。その瞬間だった。

 

 

「──ひなたー?」

 

 

 虚ろな瞳に光が灯る。

 絶頂寸前の喜悦に晒されたまま、驚愕と焦燥に瞳が揺れた。

 

「……ぁぇ?」

 

「ひなたー、いるかー?」

 

 数秒の無言。息を呑むひなたに声が届く。

 咄嗟に端末を取り上げて電源を切った俺を他所に、彼女は慌てる。

 周囲にあった下着に手を伸ばして、返答内容にも頭を回して──、

 

「ぁ、ぇ、ぇっ?」

 

「ひなた? 開けるぞ?」

 

 普段はどこか余裕を見せる巫女。

 巫女組の中で最も精神年齢の高そうな彼女の動揺は傍目に見ている分には面白い。

 普段からひなたの部屋に入り浸っているのだろう。部屋主の言葉を待つことなくゆっくりとドアが開かれようとする。

 絶対的な危機に陥ろうとしていた。

 

「なにを笑って……あっ、若葉ちゃん! 入ってこないで下さい!!」

 

「……む。何故だ?」

 

「い、今は着替え中だからです」

 

 ベッドから身体を起こしたひなたは素早い動きでドアに張り付く。

 裸体の少女がドア越しに、若葉との会話を始める。

 

「着替え? それくらい今更だろう……」

 

「もう、若葉ちゃんってば! デリカシーというのは大事ですからね?」

 

「う……それはすまなかった。……ところで、私の声が聞こえてきた気がしたのだが」

 

「着替えながら若葉ちゃんの秘蔵動画を見ていただけですよ」

 

「……そうか。亮之佑といい、なんで私のことを撮りたがるんだ……」

 

「…………」

 

 此方に向ける背中から尻には淫らな汗が光り、乱れた黒髪が張り付く。

 肉付きの良い腿には蜜が垂れたまま、尻肉がふよんと揺れる。

 

 ドアが開けられないようにと両手でドアを押さえつけ、俺に対して誘うかのように尻を突き出すひなた。背中から尻へのラインは淫靡で、汗と蜜の絡んだ茂みや僅かに開く陰唇、柔らかくも弾力のある白い桃尻に目が向く。

 先ほどまで味わっていた尻に視線は釘付けとなり、自然と脚が彼女へと向かわせる。

 

「そ、それで、どうかしたんですか?」

 

「ああ。先ほど依頼の方が終わって汗も掻いたから食堂に行く前に風呂にでもと。折角だからひなたも一緒にどうかと思ってな」

 

「そうですね。私は──」

 

 無言で背後に立った影で、ひなたは俺に気づく。

 腰肉を掴み、尻肉に肉棒を擦りつけると聡明な少女は首を振る。

 今はそんなことをしている場合ではないと。無理だ。気づかれる。

 

 恐怖。快楽。拒絶。焦燥。

 あらゆる感情を見せる巫女の秘裂に亀頭を宛がう。

 

「ダメ、です………今は、本当にっ──」

 

 尻肉を割り開くほどに背後から密着して、貫く。

 散々怒張と触れ合った媚肉は容易く最奥まで吸い付いた。

 

「~~~~ぎッっ!!」

 

 咄嗟に手を口元に置いたひなた。

 膣は熱く痙攣し、首を反らして絶頂に達した。

 

「──! ……ッッ!!」

 

「ひ、ひなた? どうしたんだ? どこか具合でも……」

 

「ぁっ、んんっ……しゃ、しゃっくりが……先ほどから止まらなくて……」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ひゃ、はい……気にっ、しないで……~~ッッ!!」

 

 扉に爪を立てる彼女は震える唇を必死に紡ぐ。

 自らの痴態を見られたくも気づかれたくもないのだろう。雁裏を膣襞に引っかけながら腰を引くとガクガクと腿を震わせ今にも崩れ落ちそうになる巫女の腰に腕を回す。

 下を向く彼女の乳房がぷるりと揺れ、びくっと身体が跳ねる。

 

「──ぁ、ぁ……! ィ、クっ、んぅ──っ!!」

 

 喜悦混じりの嗚咽を手で押さえ、俺の腰に合わせてひなたも前後に揺れる。

 よく濡れた膣が肉棒を締め付ける巫女は唾液や汗をまき散らし、愛液をこぼす。

 此方を振り向く彼女は嫌々と首を振り、絶頂から舞い戻ることを求めてくる。

 そんな彼女を可愛く思い、俺はひなたをバックで犯す。

 

「ふぅッ、くぅっ、ンっ、──ッ!」

 

「ひなた? 今何か言ったか?」

 

「ぁ、ひえ、なんれも……お風呂に入るん、で……」

 

「ああ。そうなんだが……替えの靴下がどこにあるのか教えてくれないか?」

 

「……用意して、おきっ、ま……っ」

 

「そうか。いつもありがとう」

 

 親友への依存度の高い少女に呆れながらピストンの速度を上げる。

 ぱんぱんと尻肉を叩き、口元を押さえるひなたの手の甲に掌を置く。

 

「~~っ!! んふッ! んんっ~~~ッッ!!」

 

 言葉を無くし、ピストンの途中で達する巫女。

 鼠径部が彼女の尻を叩き、肉が波打つ。

 

「『ごめんなさい、若葉ちゃん。今、少し、忙しいので、あとで──』」

 

「ん、ああ。分かった」

 

「っ!!? わっ!! っ、ッ〜〜〜!!」

 

「『ええ、あとで』」

 

 ひなたに代わり声帯模写すると、巫女が首を振る。

 それに返事をして去り行く若葉の足音に耳を傾け、腰を打ち付ける。

 

 やがて足音すら聞こえなくなった時、彼女の両手を掴み引っ張る。

 前後に乳房を揺らし、押さえられた口からは悲鳴のような嬌声が漏れた。

 

「ぁっ! ゃぁぁああっっ!!!」

 

 熱くぬめる膣からは新鮮な蜜が淫音を奏で、少女の意識をすり減らす。

 俺もまた、獣欲に身を任せ、興奮と快楽に意識を塗り潰しながら腰を振る。

 

「ふ、っ、~~~~っっっ!!!」

 

 そして渾身の一突きと共に白濁を吐き出した。

 ぶるるっと白い裸体が震え、ひなたの膣襞が蠕動する。

 同時に、かくかくと身体を痙攣させるひなたは、ぷしっと飛沫をまき散らした。

 貫かれた花弁からは小水のような蜜が一度、二度とドアを汚す。

 

「……ぅ、ぁ」

 

 脱力しきった身体は俺の腕に抱かれて辛うじて立った状態だ。

 首を反らし、小さく呻いた巫女が後頭部を俺の鼻に当てる。

 

「……ぁ、ぁー」

 

 背が低く、体重の軽い彼女は容易く抱き上げられる。

 人形のようだと思いながら、最後の一押しに怒張を突き上げると快感に視界が白む。

 小刻みに身体を震わせ、法悦の空に昇るひなたは吐精する怒張に体重を預ける。びゅるるっと巫女の最奥を白濁に染め上げた肉棒がその役目を果たし結合部から抜ける。

 しっとりとした裸体に汗を浮かべ、秘所から子種がこぽりと垂れ落ちた。

 

「────」

 

 かくんと垂れ下がった頭部、黒髪から覗く横顔。

 瞼が閉じられ、乱れた髪から覗く表情が満足気に見えるのは自己満足か。唇から涎をこぼし、汗で髪の毛を張り付けた彼女は絶頂で体力が尽きたのか気を失ったように見える。

 

 少なくとも快楽を味わい、そして教えることは出来ただろうか。

 むにむにと変わらぬ弾力と柔らかさをもつ乳房を揉む俺はそんなことを思った。

 

 乳房も恥毛も秘所どころか菊座すら、女の全てをひなたは晒した。

 自撮り画像では得られない少女の肉付きの良い肌を堪能したとも言えるだろう。

 もはや、彼女が俺に隠す物は何もないのだ。

 

 少女の身体を清め衣服を着せるのはもう慣れた。

 征服感とも満足感にも近い感情を抱いて、俺はその場を後にして──、

 

 

 

 

「なんとなく嫌な予感がしたから戻ってきて見れば」

 

「────」

 

「私のひなたに何をしている…………亮之佑」

 

「────」

 

「治療云々はひなたから聞いているとも。だが、それとこれとは話が別だ! 言い訳無用! 覚悟!!」

 

 烈火のごとく怒る少女は普段の鈍感さは鳴りを潜めて。

 鉄拳制裁。言い訳は聞かない。お仕置きすると。

 巫女が最も親愛を寄せる勇者に、若葉に追われることとなった。

 

 

 



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第三十八話 青春追いかけっこ

アンケートサンクス!
いつも感想や評価ありがとうございます!


 ──子供の頃は後先考えずに廊下を走っていた。

 その先に何があるのか分からず、でも何とかなると適当で。

 

 なぜば大抵なんとかなる。そう無邪気に思っていたあの頃。

 前世の時代、勉強も将来も大学も会社も何とかなると信じていた時代。

 思考放棄とも、そもそも自分で考えたり調べたりする、そんな発想の無かった当時の俺も無邪気に鬼ごっこをしたりすることがあった。

 それでなんとかなる訳がない。

 『なんとかなる』とはそれ相応に努力や本気を見せた者だけが掴めるものだから。

 

 だから俺は何も考えずに走ったし、遊んだ。

 職員室など学生が入れない場所を除いた学校という施設全てを使用した追いかけっこ。小学校の世界は脚が速い者が全てであって、速くもなく、上達する努力もしなかった俺は鬼になると絶望的な展開になるので必死に走った。

 そんなことをしていれば、後先考えずに走って人にぶつかるのは当然だ。

 

 人にぶつかり、自分も転んで。

 それが問題視され俺がいた学校では鬼ごっこは出来なくなった。

 後悔と苦みのある思い出だったが、それでもかつての人生の中で本気で、必死だった。

 それからの人生は何となく手を抜いて、何となく生きて、怠惰に死んだ。

 

 子供の頃の鬼ごっこが一番人生の中で本気だったかもしれない。

 

「待てッ! 止まれッ!!」

 

「こわ~」

 

 何故、今になって思い出したのだろうか。

 あの頃の必死さを思い出すのは似た状況だったからか。

 あれから多少なり知識を蓄えた俺は、彼女に、若葉に追い掛け回されていた。

 

「一発殴らせろ!!」

 

「うへえ」

 

 いったい、どうしてこんなことになったのか。

 いったい、俺が何をしたというのだろうか。

 

 脳裏を過る数多の言葉。

 罵詈雑言、言い訳、それを口にするよりも走ることに力を向ける。

 

 上里ひなたを抱いた。

 サーチ&デストロイする気全開の顔真っ赤な風雲児に追いかけられるのはそれが原因だろう。ただ互いに同意の上であることは事実であり彼女もある程度は理解している。

 つまり若葉の感情的な問題だ。

 立ち止まって殴られるべきだろうか。否だ。

 殺意すら向けてくる若葉に降伏したら殴られるどころではないだろう。

 

「クソ……脳筋め」

 

「なんだと!」

 

「スカートが捲れてはしたないですわよ!」

 

「散々見ているだろ!」

 

 腕力に物を言わせて戦う勇者は多い。拳然り、大剣然り。

 その筆頭格の存在、女武者は端正な顔を歪め暴力を振るう為に近づいてくる。

 幸いにも、勇者服を纏って迫って来る暴挙はせず、素の状態で駆けてくる。

 

 この年齢の男女の差はあまりない。

 強いて言うならば普段の鍛錬の差で数秒先の未来が変わる。

 

「そんなに怒ったら美人が台無しだぞ」

 

「亮之佑──!!」

 

「オイオイ、俺と一緒にホニャホニャして園子を作ろうとした仲じゃないか。まだお風呂に入ってないんだろ? 汗だくじゃないか。一緒に入ろう」

 

「私が園子を産む訳じゃない!!」

 

「それはそうだろ。何言ってるんだ?」

 

「亮之佑ぇええええ──!!」

 

 頭に血の上った人間には何を言っても駄目だ。

 美少女に名前を呼ばれることに心が高鳴りを覚えなくも無いが、状況が悪い。

 肺の痛みは疲労で、高鳴る鼓動は決して恋心によるものではない。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 美少女との鬼ごっこを止める者はいない。

 勇者部の可憐な少女たちが帰って来るのは遅いのか、或いは外泊か。

 誰かと衝突する心配は無いが、彼女との体力勝負はやや俺が不利なようだ。

 

 角を曲がる時、人に当たる可能性を考慮してやや減速する俺。

 激情に身を任せ、鍛えられた身体を駆使して壁すら駆ける若葉。

 流石に友人とは言え不在の部屋に入ると後々面倒である以上、隠れる場所は限られる。

 若葉のお仕置きを受けていない理由は、

 

「喰らえ! 最高級うどん玉(袋入り)!!」

 

「むっ! うどんを捨てるとは……裏切り者めッ!!」

 

「袋入りだから……」

 

「私は知っているぞ! 去年の年越しに貴様が蕎麦を食べたことを!!」

 

「何故それを!?」

 

「園子が教えてくれたのだ」

 

 この世界の住人は殆どがうどん狂いだ。

 火に油を注ぐ行為だったが、彼女たちは空を舞ううどん玉を放置は出来ない。

 

 そんな風にして既に十分程度、若葉に対して走る、隠れるを繰り返している。

 頬を伝う汗を拭い、猟犬のように潜み隠れようとする俺を捕まえてお仕置きをする為に若葉も執念を見せる。寄宿舎という場所は彼女のホーム、更に言えば隠れる場所も少ない。

 外に出るのは容易いが自宅に到着するまで延々と追い掛けてきそうだ。

 

 シャツが背中に張り付き、全身から汗が噴き出るのが分かった。

 そろそろ他の少女たちも戻ってくるだろう。俺は選択を迫られていた。

 

「ハァ……やるな……だが、あまり、私を舐めるなよ」

 

 額に張り付いた前髪を上げる彼女はギラギラとした眼差しを見せる。

 ブラウスは汗で張り付き、淡い水色の下着が覗くが気にしている余裕はない。

 

「ふざけるなよ。暴力系ヒロインなんか誰も求めてないんだよ! 理不尽な暴力もツンデレもそうだ。小説やアニメならともかく現実でやられても嬉しくないんだよ!!」

 

「何の話だ! そもそも誰が暴力系ヒロインだ!」

 

「素直が一番なんだよ!」

 

「さっきから何の話をしているんだ!?」

 

「それ以上俺に近づいてみろ。裸にひん剥いて恥ずかしい目に遭わせてやる」

 

「脅しかそれは? 例え全裸になろうとも貴様を仕留めてみせるぞ、私は」

 

「若葉と杏がホニャホニャしていたことをひなたさんに言ってやるぅ!」

 

「そんなことはしていない!」

 

 誰も助けてはくれない。

 先ほど、杏が部屋から顔を覗かせたが俺と若葉を見て部屋に戻った。

 状況を察したのか、どこか残念そうな顔をしていたのは忘れない。

 

「どうだろう、若葉。そろそろ落ち着いただろうか?」

 

 放置しておけば延々と追い掛けて来る若葉に交渉の余地があるかを尋ねる。

 この十数分の間、必要のない汗を流し合った仲なのだ。きっと分かり合えるだろう。

 そんな俺の思考を嘲笑うように、頭を振る若葉の長い髪が揺れる。

 

「……いや? そろそろ本気を出させて貰おうか」

 

「……ッ」

 

 そろそろ覚悟を決めるしかないだろう。

 体術に持ち込めば、若葉相手でも勝つことが出来ると──、

 

「それよりも一つだけいいか?」

 

「どうした?」

 

「先ほど、ひなたの部屋から私の声が聞こえた気がしたのだが、……まさかと思うがあの時の動画をひなたに見せていたりしていないだろうな?」

 

「──、あの時のとは?」

 

「シただろう! 色々と、その……見せたのか?」

 

「いやあの時の声は若葉の真似を頼まれただけだから。本当だよ? 動画とか知らないんよ」

 

「何年もお前と過ごしていれば分かる。今、一瞬動揺しただろう」

 

「いや?」

 

「見せたんだな」

 

「違うって」

 

「……そうか」

 

「誤解だって。──俺を信じて」

 

「あの日に消しておくべきだったか」

 

 完全に光の消えた瞳。

 絶望、羞恥、諦観、屈辱、様々な感情を紫紺に見せる若葉。

 薄い笑みを浮かべた姿は自らの痴態が巫女に見られたことへの絶望故か。

 

 ──少なくとも全て見せたことは言えない。二人で愉しんだとも。

 

 これは流石に殴られた方が色々と解決するのではないのだろうか。

 そんなことを暑さでボンヤリとする頭で考えていると、

 

「ぅ……ぅ、っ」

 

「いや、ちゃうねん。事故なんだよ」

 

「…………ぅぅぅっっ」

 

 若葉は顔を伏せ、垂れた前髪で表情が隠される。

 ガクリと膝から崩れ落ち両手を床に置いた彼女の珍しい姿は良心が痛む。

 

 学校にいる若葉のファンが目を剥き俺に包丁を向けそうな姿の若葉に近づく。普段はどれだけ凛々しくともハメ撮りを見られたことにショックを隠せずに悲しむ姿は、若葉も一人の可憐な少女であると意識させる。

 これは一時休戦。そのまま有耶無耶に出来そうだ。

 そんなことを考えているとグルリと視界が回る。ズシリと腹に重い感触。

 

「へぶ!」

 

「ぅ……ふ、ふふ……捕まえた。練習した甲斐があったものだ」

 

 床の感触を背中で味わい、見上げると獲物を捕食せんとする狩人の姿。

 馬乗りになり、俺を見下ろす若葉は妖艶な笑みを浮かべる。

 艶やかな太腿はガッチリと腰を挟み込み、勝利の確信に少女は頬を緩める。

 

「……あー、その、俺のあられもない姿も見られたから」

 

「お前の写真もひなたに見せてやる」

 

「男の姿よりも若葉の方が悦ぶよ」

 

「うるさい! 観念しろ!!」

 

 暴力反対。そんなことも言ってはいられない。

 何事にも報いをと言うのなら、この暴力は受けるのが当然なのか。声を上げながら羞恥と混乱にグルグルと感情を渦巻かせ、目尻に涙を浮かべる彼女が拳を振り下ろした時だった。

 

「──あれれ、若葉ちゃん。りょーくん。何してるの?」

 

 拳が止まる、ことは無かった。

 一秒遅かった。若葉の一撃を俺は喰らってしまった。

 

「たかしぶ──ッ!」

 

「む? 友奈か」

 

 これに関しては仕方ないところはある。

 報いは受ける物。若葉とのホニャホニャ動画流出の件の代償としては安い物だ。

 一撃を受けることで丸く収まることもあるのだ。

 しかし、あろうことか若葉はそのまま二撃目を振り下ろそうとしてくるではないか。

 

「はあっ!!」

 

 気合の入った嚇怒の拳。それを受け止めたのは俺の顔面ではない。

 薄紅色の瞳と髪、ふわりと揺れる短いスカート。角度的に見えるピンクの下着。

 明朗快活。その場にいるだけで心が和む隣人と同じ顔と身体。双子疑惑のある少女。

 肉と肉がぶつかる音は若葉の拳を高嶋が掴んだから。

 

「待って待って若葉ちゃん! 暴力は駄目だよ」

 

「離せ友奈。この男は一度しっかりと言い聞かせなくては!」

 

「仲が良いのはいいけど、こんな場所でイチャイチャしたら皆に見られちゃうよ?」

 

「は? イチャイチャだと……? かくかくしかじかでもか!」

 

「うーん、よく分からないけれど……そんな汗だくになるまで一緒にいるのは仲が良い証拠だよ!」

 

「そんなことは……つめたっ!?」

 

 高嶋の笑顔に噛みつくように若葉は眉をひそめる。

 続けて反論するように口を開くも、高嶋が何かを首に宛がう。

 どこかで買ってきたのか、清涼飲料水らしきペットボトルは俺の頬にも宛がわれる。

 

 ひんやりとした感触に思わず吐息して、上に乗ったままの若葉を見上げる。

 やや残った怒りを瞳に映す彼女が何かを告げる前に、高嶋が更なる行動に出る。

 

「喧嘩りょーせーばい……勇者パンチ!」

 

 コツンと高嶋の両拳が俺と若葉の頭に置かれる。

 そのまま俺の上体を起こさせ、若葉を近づけさせて、高嶋自身も近づく。

 

「そして仲直りの勇者自撮り! ほら、若葉ちゃん。りょーくんもピースして」

 

 パシャリと一枚、彼女のスマホに撮られる。

 唖然とする若葉を他所に、高嶋はニコニコと笑みを浮かべたまま、

 

「ヒナちゃんに送信っと」

 

「なっ!?」

 

「これで仲直りで良いよね?」

 

「え、いや」

 

「良いよね?」

 

「…………分かった」

 

 フンスフンスと鼻息を荒くして顔を近づける高嶋に、遂に若葉は頷く。

 頷いて肯定したからか、小さく笑みをこぼした彼女は呟く。

 

「友奈は凄いな」

 

「え? 私? 私は何もしてないよー?」

 

「いや。そんなことは無いよ。流石だよ高嶋さん」

 

「えへへ……そうかな? 照れちゃう。ほら、二人ともシャワー浴びてきたら? そのままだったら風邪引いちゃうよ? いくらこんなに暑くてもね?」

 

「そうだな」

 

「若葉、悪かったよ。お詫びに背中を洗わせてくれ」

 

「いやこちらこそだ。背中は……なんか色々あって性的なことになりそうだから遠慮しよう」

 

「そういうなよ。反省したんだ。この気持ちを受け取って欲しい」

 

「いやいや、気持ちだけで──」

 

 ウフフアハハ。高嶋の介入により笑い合う俺と若葉は少し仲良くなった。

 額を伝う汗が目に入り、片目を閉じると嗅覚が少しだけ鋭くなった気がした。

 高嶋の薄紅色の柔らかい髪からはふわりと漂う甘酒の香り。

 艶やかな瞳は俺と若葉を映し、僅かに首筋に浮かぶ汗が彼女の香りと混ざる。

 

「高嶋さん。何か食べた?」

 

「え? うん! ヒナちゃんがすごーくおすすめしていたジュースとお菓子ね。皆で食べようと思ったんだけど、店員さんから試食を貰っちゃって……ヒック」

 

「まったく友奈は……夕ご飯もあるから食べ過ぎるなよ」

 

「はーい。あっ、そうだ! この後ね、ぐんちゃんと食べたりマッサージしたりするから、二人もシャワー浴びたらぐんちゃんの部屋に来て一緒に食べよ? モミモミしちゃうよー……ヒック」

 

「それは良いな! では、後で」

 

「うん! ……ヒック」

 

 俺と若葉は、妙に顔の赤らんだ高嶋を置いてその場を後にした。

 日差しが照り付けて暑かったのだろう。そう思った。

 

「高嶋さん」

 

「ん? なにー?」

 

「終わったら必ず行くから」

 

「うん! 待ってるよ、りょーくん」

 

 ひたすら走り続けてどこか意識を朦朧とさせながら。

 ただ隣の少女に謝罪の意味を込めた奉仕を行ってやろうと、仕返しの意味を込めて。

 

 

 



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第三十九話 お詫びシャワー

 ──シャワーを浴びる派か、風呂に入る派か。

 

 もしもそう聞かれたら生活状況や諸々で回答は変わるだろう。

 忙しい時や面倒臭いと感じた時を除いて、基本的に俺は湯舟に浸かる派だ。

 

 解放感と言うべきか。お湯に身体が溶けていくような感覚は心地よい。

 やはり疲れの取れ方が違う気がする。可愛らしい友奈の手によって生み出される可愛くないマッサージほどの効力は無いが、疲労を抜く為にも風呂には入りたいと思う。

 そんなことを考えていると、しゅるっと衣服を脱ぐ衣擦れ音に目を向ける。

 

「風呂は良いよな」

 

「ああ、同感だ」

 

「でも、ここは見ての通り浴室じゃない。密室に男女が二人だけだ」

 

「そうだな」

 

「悪かったよ。揶揄い過ぎた」

 

「……もう怒ってはいない。私と亮之佑の仲なんだろう? 問題ないとも」

 

「……」

 

「それに」

 

 怒っているともそうでもないとも捉えれる少女の態度。

 汗ばんだブラウスを脱いで、柔肌を見せる若葉がチラリと俺を見る。

 

「これからお詫びとやらをしてくれるんだろう?」

 

 汗を浮かべる彼女の艶めかしくも健康的な肌に目が向かう。

 紫紺の瞳を俺に向ける彼女はどういった心境の変化か。汗を吸ったブラを隠すように手を置く彼女は、しかしどこまでも真っ直ぐな瞳を向けられて思わず目を逸らした。

 神に見初められる少女は、いつだって眩しい。 

 眩しくて、自分との違いを見せつけれるのが辛いとも。

 

「あー……任せてくれ。若葉様」

 

「様はいらない」

 

「今日のことを忘れるくらい頑張りますよ。疑似友奈神拳を見せてやろう」

 

「待て、背中を流すだけだった筈だ。エッ……そういうことはしない筈だ」

 

「ここまで二人で来ておいてその言い訳は見苦しい」

 

「うるさい」

 

 寄宿舎に設置されたシャワー室は大浴場と異なり人気は少ない。

 プライバシーを考慮してかブースで囲まれ、外からは人がいることしか分からない。

 部屋に備え付けられた部屋風呂に入る者もいるらしいが、殆どの少女たちは大浴場を使用して汗と疲労を流す。シャワーよりも風呂の方がゆっくりと休めるだろうから。

 シャワー室の利用は主に防人組など訓練に励む少女たちが使用する程度だ。

 

 チラリと入口に目を向けた若葉が思い出したように口を開く。

 それは二人でシャワー室に入る前の出来事だ。

 

「芽吹や亜耶が先ほどまで使用していたようだったが、私たちとすれ違った時に何となく変な感じはしなかったか?」

 

「変な感じ?」

 

「こう……何と言えばいいか、距離感というか雰囲気というか……ううむ」

 

「──、同じ防人組なんだからおかしくないだろ。気にしすぎ」

 

「そうか? ……そうだな」

 

 たまに人が来るが、基本的には不人気なシャワー室。

 ここに来るのは人目を忍んで、そして人には言えないことをする事が多い。

 

「亮之佑」

 

 くるりと背中を向ける半裸の若葉が無言で髪の対応を要求する。

 さりげなく俺を使用する彼女の態度は遠慮がないが、俺も断る理由はない。美少女の髪を自由に出来る、それはある種の信頼表現のように感じたからだ。

 肌に張り付く髪に目を細める彼女に代わり金髪を後頭部で纏めながら、

 

「シャワーよりも風呂に浸かった方が良かったのでは? 鼻歌歌うくらいには風呂好きだろ?」

 

「ん。好きだが……亮之佑がいるから駄目だろう」

 

「その心は?」

 

「心も何も他の者もいる時間帯だからな。亮之佑も捕まりたくはないだろ?」

 

「相手にもよるだろうけど、きっと許してくれるさ。なんせ俺だから」

 

「自惚れ過ぎだ。そしてそんな事は私が許さん」

 

「おいおいおい嫉妬か? 参ったな。嬉しいんだが──」

 

「風紀的に駄目な話をしているんだ!」

 

 遭遇する少女によっては恐らくなんとかなる。そんなふわふわした自信。

 でもきっとなんとかなる気がする。関係を結んだ女子ならきっと。

 

 「まったく!」と自らの衣服に手を掛けながら風紀を語る若葉。羞恥とは異なる怒気で顔を真っ赤にする若葉には園子のようなふわふわ感が足りないと常々思う。

 「冗談なんよ」と園子ボイスで宥めても半眼で睨まれてしまうのだ。

 だから、上半身ブラジャーのみで手が止まっている彼女の背後から耳元に吐息する。

 

「ふー」

 

「……ひゃぁ!?」

 

「ほら、眉間に皺が寄っているぞ。手も止まっているから脱がせてあげよう」

 

「誰の……ッ、せいで……ッ! ひぁぁ……っ!」

 

 園子で駄目なら友奈直伝のスキンシップで。

 吐息された耳は、随分と調教されて敏感な性感帯へと変わっていた。

 ビクッと身体を硬直させる若葉に抱き着くと肢体の柔らかさを肌に感じる。

 

 胸板を汗ばむ白い背中に擦り付ける。

 スカートのファスナーを下ろすと、対抗心を抱いたのか若葉が俺の衣服に手を伸ばす。

 

「私ばかり脱がせようとするな! お前も脱げ!」

 

「きゃっ!」

 

 やや乱暴に衣服が脱がされていく。

 僅かに顔を赤くして、しかし男の肌を見ることに抵抗のない少女。

 乱雑にシャツを脱がせようとする彼女の手が僅かに止まる。

 

「……指輪?」

 

「ん? ああ……お守り。気にしないで」

 

 首から下げたチェーン。彼女の視線の先にあるのは指輪だ。

 青色の石、宝石の付いた指輪。俺を勇者とさせ、俺を俺たらしめる物。

 それに見覚えがあったのかまじまじと見つめる若葉の大きな瞳が瞬きを繰り返す。

 

「たしか、前は指につけていなかったか?」

 

「……学校は規則もあるから。それに、大切な物だからさ」

 

「────」

 

「てい!」

 

「ぁッ! ……急に触るな!」

 

 追及はさせない。聞かれても答えるつもりはない。

 逡巡した瞳と僅かに開かれた唇が疑問を形作るよりも先に手を出す。

 ブラの隙間から覗いた乳首を、指一本分だけ触れると彼女は怒って話を止めた。

 

「……まったく」

 

 甘い声をこぼした若葉は半眼で自らの胸元を抱くように隠す。

 ネックレスはそういう物と受け取ったのか追及はなかった。

 こちらからも語ることはなく、そして、そんなことよりも──、 

 

「若葉の身体ってエロいな。エッチだ」

 

「……!」

 

 まじまじと若葉の身体を見て俺は告げた。

 床に落ちたスカートと、露出した太腿と薄青の下着が目を引く。

 肉付きの良い腿肉と丸みを帯びた臀部を包む布切れは汗を吸い肌に張り付いていた。性的な目で見られていることを意識したのか、若葉は俺を睨み、視線を下腹部に移し顔を赤らめる。

 

「ふ、普通だ! お前こそなんでもう硬くしているんだ!」

 

「若葉の身体が魅力的だから。凄く綺麗だよ」

 

「~~~!! そっ、そういうのは別に良い! ひなたにでも………いや、ひなたには言うな」

 

 獣のような俺の吐息と羞恥と怒気の入り混じる若葉の吐息。

 耳を甘噛みする度に我慢出来ずに嬌声をこぼす彼女は尻肉を突き出し怒張を刺激する。怒りのピークは過ぎたのか、或いはこうした触れ合いを予期していたのか拳骨も肘も出ない。

 ただ「どうしてか」と尋ねると顔を伏せる若葉が無言で俺の背後からの抱擁を解いた。

 

「……ひなたには……ひなたには必要な時以外には手を出すな」

 

 はらりとブラ紐が落ち、彼女はさりげなく胸元に手を置く。

 

「……詫びでもなんでもこういうことがしたかったら」

 

 数秒手が止まるも、やがて背中に回した手がブラのホックを外した。

 ぷるりとこぼれた自らの乳房を隠すように少女は背中を向ける。

 

「──ひなたではなく、私としろ」

 

「────」

 

「返事は?」

 

「……はい」

 

「では、行くぞ」

 

 濡れたショーツを脱ぐ若葉はそっと恥毛ごと秘部を手で隠す。

 問いかけに答えることもなく、自分の言いたいことだけを告げてブースの奥へと向かう若葉。そそくさと棚に自らの衣服を入れた彼女は足早に奥へと向かう。

 無駄な脂肪の無い背中と尻を見せる彼女に、俺も衣服を脱いで追いかけた。

 こういう時の彼女には何を聞いても返答しないことを、俺は知っていた。

 

 小さく簡素な浴室は二人でもギリギリ問題ない程度の広さだ。

 橙色の照明が照らすのは、設置されたシャワーヘッドと壁鏡。

 扉を閉めると外界から隔たれた、ほどよく狭い空間が出来上がる。

 

「……ッ」

 

 鏡越しに目が合った若葉が目を逸らしシャワーのバルブをひねった。

 汗を流すお湯が流れるということはなく、さああっと霧のような水が降る。

 

「うわっ!?」

 

「す、すまない!! 大丈夫か──ぁっ!?」

 

 思わず目の前の少女に抱き着き、そのまま乳房を揉む。

 阻む物はなく、掌に収まるも十分な大きさの乳肉の感触が伝わる。

 

「……触っていいとは言っていないぞ」

 

「少し大きくなったか?」

 

「……測ってないからな。自分ではあまり分からないな」

 

「健康診断が楽しみだな」

 

「別に大きくても……」

 

「おっと。それ以上は貧乳組が黙ってはいないぞ」

 

 冷水も、徐々に湯雨へと変わっていく。

 暴れるほどの空間はなく、俺は彼女の生乳を両手で味わう。

 

「ん」

 

 温かい雨の影響か、脱力した若葉が背中を預ける。

 冷え始めていた汗が流されていく中、俺たちは少しずつ肌を密着させた。

 

 胸板と背中を、腿と腿を。反り立った怒張を股に挟んで。

 形の良い耳を指でなでながら、唇と唇を重ねて、静かに肉欲に溺れる。

 湯雨が肌を濡らしていく中、キスを繰り返す度に彼女の眦が和らいでいく。

 

 んちゅ、んむ、と情熱的な口づけを交わす。

 耳を弄る掌に頬を置く女勇者の顔は甘く蕩け始めている。

 

 乳房を揉み、無駄な脂肪の少ない腹部を撫でる。

 尻肉を鼠径部に押し付けて、太腿と陰唇が亀頭と擦り合う。

 そうしていると強張っていた少女の身体が弛緩してくる。

 

「亮之佑とすると……頭がふわふわしてくるな……」

 

「キスは好きか?」

 

「……」

 

 吐息する若葉の瞼が閉じられる。

 杏仁豆腐のような彼女の乳房を揉みしだく手に、彼女の手が添えられる。

 恋人のように身体を触れ合わせる中で、無言の若葉が手を動かす。

 

 シャワーヘッドの近くに備え付けられたボディーソープの容器。

 きゅっ、きゅっとバルブが閉められて、湯の雨が止む。湯に濡れた唇を舌で舐めとって濡れた瞳を俺に向ける。キスを繰り返した先に若葉のしおらしい姿があった。

 

「……好きだ」

 

 一言。呟いて目を伏せた若葉の顎を持ち上げて唇を奪う。

 思い出すように自らの舌を差し出した若葉を褒めるように髪を撫で、舌を絡める。

 下品な水音を遠くに聞きながら、ボディーソープの容器から出した液体を絡めた俺の手が彼女の肌を洗うようにあちこちを這う。

 

 他の誰よりも真面目に鍛錬している女勇者。

 それでもなお、その肢体の柔らかさは彼女が女だと理解させる。

 

 腋や鎖骨、腹部とスポンジではなく掌で洗う。

 乳房を揉むように洗って、

 

「……待て。私ばかり洗われるのは不公平だ」

 

「若葉様。今日のご奉仕は私がさせて頂きますので」

 

「ズルいだろ……そうやっていつもお前ばかりで、私にも洗わせろ。……こことかな」

 

「ぅっ」

 

「私でこんなにしたのか? ……ふふ、変態め」

 

 鼠径部をなぞる手に、彼女は対抗するように怒張を掴む。

 反り立った肉棒を躊躇うことなく手にする彼女は男を悦ばせる方法を理解しているのだろう。俺が教えた通りにちゅくちゅくと水音を立てて小刻みに前後に動かす。

 自分だけが気持ちよくなりたくない。させられたくない気持ちは分かる。

 薄く淫靡な笑みを浮かべる彼女の手淫に奥歯を食い縛り、俺も指を動かす。

 

 薄金色の恥毛を泡で絡め、指がしとどに濡れた恥部へ。

 若葉の手は裏筋を刺激するように程よく力を込める。

 

 片手で怒張を洗いながら空いた手で身体に付着した泡を使い俺の身体を洗い始める。

 胸板や腹部を洗う若葉の恥部は容易く俺の指を受け入れた。

 しばらくの間、二人で洗い合いながら程よい快楽に耽る。

 

「……」

 

「……ん」 

 

 指一本、膣の入り口付近で彼女の弱点を探る。

 探る指の動きに気づいたのか、怒張を前後する手に力が籠る。

 

「ぁ、ぁ……くっ、ぅ」

 

「ぬ、ぐっ」

 

 乳房を胸板で押し潰すほどに身体が押し付けられる。

 互いの荒い呼気を耳にしながら、いやらしい水音に昂り、射精感に力む。

 

「ぅぅっ、んんぁぁっっ……!!」

 

「ぐッ……!!」

 

 やがて視界が酩酊する。

 膣に包まれた指が締め付けれるのを感じながら、若葉の手を白濁が汚した。

 勢いは激しく、彼女の泡塗れの腹部を汚し、下腹部へと垂れていく。

 

 荒い息で互いの身体に抱き着き、絶頂の余韻に浸る。

 ゆっくりと高鳴る鼓動を落ち着かせていく。

 

「……ふー」

 

 眼前の少女に抱き着いて、両手で少女の尻肉を揉む。

 独特の弾力を掌に返す臀部を好きにしている俺に、若葉は小さく囁く。

 

「……その、だな」

 

「ん?」

 

「……もう一回するか?」

 

 シャンプーの匂いを纏わせて、女勇者が誘う。

 長い睫毛に縁取られた目を伏せながら、俺の肌に手を置いた。

 

 柔らかな尻肉を割り開き、指が菊座を通り膣口を軽くなぞる。

 湯ではない、彼女の蜜は更なる快楽を求めて、指に絡まる。

 

 怒張が若葉の下腹部の柔らかい肌を押すようにして、回復していく。

 雄の回復を肌で感じた彼女は小さく喉を震わせて、肢体を揺らす。

 

 するのか。しないのか。

 若葉を抱くのか。抱かないのか。

 答えなど既に決まっている。ただ──、

 

「若葉。まだ俺はお詫びをしていないから」

 

 ──シャワーのバルブを捻った。

 

 

 

 

 

 

 十数分ほど、俺は改めて若葉に奉仕した。

 これまでの非礼、揶揄い、セクハラの数々。

 

「いままで申し訳ありませんでした」

 

「────ッ!! ~~──ッ!!」

 

「えっ? 許さない? それは大変失礼を。もう一回しますね」

 

 湯雨が降る中で若葉の前に膝をつき、唇と、舌を、指を差し出す。

 全身全霊で、壁に背中を預ける若葉の脚を開かせて、舌先で彼女の雌穴を解す。

 

 何度も何度も彼女の肉芽に吸い付く。

 舌では届かない彼女の弱点を指で丹念に擦り、抽送する。

 

「ぅぁぁっ! ぁあッッ!! ぉッ……あ゛!!」

 

「これが好きですか。そうですか。もう一回しますね~」

 

「もういい……! もういいひゃら……ッッ!! ぁ、ぁぁっっ!!」

 

 若葉の蜜はいつの間にか白濁としており、陰唇から垂れる度にシャワーから流れる湯水によって流されていく。濃厚な口づけ、肌に張り付いた恥毛に鼻を押し付けて、幾度も奉仕を繰り返す。

 たまに小水のような愛液が顔を濡らすもすぐに流れ落ちていく。

 

 クリトリスだけでもGスポットだけでも駄目だ。

 同時に弄ることでようやく、彼女を咲かせることが出来る。

 

「ィっ……ひぁぁ……あひっ……っっ!!」

 

 ガクガクと震える腿が俺の頬を叩く。

 嫌とかやめろとか、そんなことを発していた口は、目の前の陰唇とキスをする内に甘く蕩けて、あられもない女の喘ぎへと変わっていった。

 奉仕の精神で彼女の恥部から溢れる蜜を啜っては穿る。

 

「ひぁっ! ぎッ、ぅ……」

 

 肩を掴む手が震える。

 垂れ下がった髪の一部が視界を狭め、顔を見上げる。

 

「ぁぇ……ぁー……」

 

 既に若葉の瞳から光が失われつつあった。 

 半分開かれた口からは嬌声を漏らして、涎が垂れ落ちる。

 

 頃合いだろうと、意識を酩酊させた女勇者を壁に手をつかせる。

 ゆっくりと彼女の膣口に怒張を宛がって、挿入すると若葉の声が響く。

 

「ゃ~~~!!」

 

 すっかりと涎を垂らしていた怒張を歓迎する膣内は、トロトロに蕩けていた。

 挿入の刺激だけで法悦に至った若葉を背後から抱き締めて腰を振る。

 

「ぁ、ぁっ、ぁあ、ああっっ……!!」

 

 深くまで貫いて、獣のような交尾をする。

 ただ杭を叩きつけるように、彼女の肉穴を貫く。

 

 パンパンと尻肉を鼠径部が叩き、俺と若葉は息を荒げて快楽に耽る。

 設置された壁鏡には、俺の両手に乳を揉まれた彼女の女の顔が映っていた。

 

 湯雨で唇を潤して、互いの唾液を啜って。

 のけ反る若葉に導かれるように、俺も彼女と共に果てた。

 

 若葉の最奥に、これでもかと精子が注がれる。

 お詫びの礼を言うように媚肉に白濁が吸い込まれ、飲み込まれる。

 

 虚ろな目をした若葉を抱いて、ゆっくりと床に座り込む。

 虚空を見て目を閉じた若葉に湯雨が降り注ぎ、膣口から白濁がこぽりと垂れ落ちる。行為の汚れが白濁と共に排水口に流れていくのを見ながら俺は数秒ほど瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 ひなたの様子を見に行きたい、そう告げる若葉と行動を別にする。

 体力は十分なのか行為の名残すら感じさせない様子の若葉は自らの親友が第一だった。

 

「友奈には埋め合わせをすると言っておいてくれ」

 

「律儀だな」

 

「当然だ」

 

 ひなたに関しては後処理は完璧である。

 それを若葉本人に伝えたのは事後であるが、それでも気になるようだ。

 あれからそれなりの時間も経過しているので既に起きてどこかに移動している可能性もあるだろうが、自分の目でどうしても確認したいらしい。

 上里ひなたは乃木若葉に大切に思われている。今更ながらの事実に思わず笑った。

 

「……なんだ」

 

「いや?」

 

 言外に揶揄いの念を抱いていることを理解したのか、半眼で俺を睨む少女。

 そんなことは何も考えていませんと頭を振って弁解するも大きな溜息を返された。

 俺の衣服の襟を掴み、若葉は自らの端正な顔を近づけて来る。

 もしや、大胆なキスを公衆の面前で行うつもりなのかと心の準備をすると、

 

「亮之佑」

 

「うん?」

 

「この世界はともかく、元の世界に帰っても園子を大切にしてくれ。私の宝を悲しませたら呪い殺す。ちゃんと責任を取るように」

 

 それは脅し文句か、今更になってようやく先祖の公認印を貰えたのか。

 いつか、いつの日か、元の世界に戻ったらの話。

 どうしてそんな話をしたのかは分からない。そういう気分だったのか。

 

「────」

 

 そうして去っていく若葉。

 その背中に何も言葉を掛けられなくて。

 

 園子のことは言われるまでもない。

 昨日も、今日も、明日も、彼女の隣を歩き続けるつもりだ。

 

「……だけど」

 

 だけど、他のことは、若葉の言葉は覚えていないだろうとも思う。

 だって覚えて戻ったら未来も過去も変わってしまうだろう。ぐちゃぐちゃだ。

 死んだ者は生き返るし、絶望の未来を辿った者も変わる。

 

 この世界から元の世界への記憶の持ち越しは正直期待していない。

 若葉と話をしたことも、身体を重ねたことも。他の皆のことも。

 

 忘れずに、元の世界に帰ることが出来たのなら。

 そんな都合の良いことが出来れば苦労しないから。

 

「──でも、あったらいいな」

 

 きっと友奈たちが何とかしてくれる。

 勇者の力も何もない一般人は、この世界が終わるまで退廃的に過ごすしかないから。

 

「────」

 

 暗くなろうとする思考を止めるように、日射が目に突き刺さる。

 汗を流してスッキリとはしたが、それでもやや暑いと感じる。

 もうすぐ夏がくるからか、寄宿舎の窓から覗く陽光の眩しさに思わず目を細める。

 

 若葉とは異なり、俺は約束は守る男だ。

 背中を向けて寄宿舎に戻ってきた少女たちに挨拶しながら歩く。

 

 遅刻は確定だろう。

 思っていたよりも遅れて千景の部屋に到着した俺はノックをする。

 

「あいてるよー」

 

 千景、ではなくて高嶋の声が聞こえた。

 明朗快活で、聞いているだけで元気になりそうな声音に扉を開ける。

 

「らめっ、たかひまさ……」

 

「クリクリして……大きくな~れ!」

 

「ふっ……ぅっ、ぁぁっ!!」

 

 扉を開けると千景の身が跳ねていた。

 まるで気をやったように、赤らんだ顔で身体を震わせる。

 

 黒髪を振り乱した少女を背後から抱くのは高嶋だ。

 淫靡な雰囲気を漂わせ、乱れた衣服に手を突っ込んでは、千景にあられもない声を上げさせる。

 衣服が脱がされて肌を晒した訳ではない。少女にとっては脱がせる必要もないだけで。

 

「これなら健康診断も間に合いそうだねー」

 

「……ぁ、ぁー……」

 

 なんてことない調子で、千景の衣服の中で高嶋は手を動かす。

 その度に、まごうことない嬌声を上げる千景に、高嶋はニコニコと笑うばかりだ。水分補給もしようね、と床に置いていたジュースの缶を口に含んで千景に口移しで飲ませる。

 

「ん──」

 

「んむ……」

 

 唇を重ねて、口端から垂れ落ちるジュース。

 ペロリと舐めとる高嶋の妖艶な笑みに、千景は恍惚な表情を浮かべる。

 

 嗅ぎなれた甘酒と淫臭は、二人が随分と仲良くなったことを理解させた。

 ぐったりとした千景を愛おしそうに腕に抱き、身体を弄る薄紅の少女が顔を上げる。

 

 薄紅と黒色。

 辛うじて意識のある少女と、楽しそうに笑う少女は、それぞれ俺に視線を向けた。

 

「ぁぇ? かがくん……?」

 

「りょーくん。いらっしゃーい!」

 

 背後で扉の閉まる音がした。

   

 

 



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第四十話 落下して始まる

 ──その冷たい目線に思わず俯いてしまいそうになる。

 

 懐疑的な眼差し。許されざる虚偽を前にして信じることを放棄した眼差し。

 受け入れることなど決してしないと、己の身体を抱くように腕を組み、此方に目を向ける。

 

 期待とも、失望とも違う眼差し。

 初対面ではない。否、少し前までは初対面で自己紹介だけは済ませた。

 

「男の勇者?」

 

 それで相手の猜疑心を解きほぐすには些か足りない。

 足りないどころか、大きな瞳に宿す冷たさが溶ける時は来ないかもしれない。

 

「確か……樹海化の時にはいなかった気がするな」

 

「そんなこともあるのか?」

 

「……男の人は、ちょっと……怖いです」

 

 珍獣を、興味深い物を見る好奇的な眼差しよりも懐疑的な眼差し。

 好意的とは言えないソレに思わず前世で蔑まれた思い出を思い出しそうになる。

 

「勇者に変身は? ……えっ、出来ない?」

 

 数年前の記憶を詳細に覚えている者などいないだろう。

 よほどの天才か、日記に書いていない限りは。

 それなりに頭は回る方だと自負してはいるが自分が何と言ったかは曖昧で、そして出来るだけ嫌な記憶は忘れようと努めているから。

 ただ、言葉の合間に携帯端末を握り締めていたのだけは覚えている。

 

 ──ギリギリと。

 

 握力で勇者になれるのならば、多分なっている。

 男とか女とか、そんな理由で神に決められるのは実に腹立たしいとも思う。ただ、それは決められる側の理屈であって神側が見目麗しい少女を選ぶのは納得だ。だって、俺でもそうする。

 

「────」

 

 いつかこんな日が来るとは思っていた。

 でも、こんな唐突に、今更守られるだけの存在になり下がるなんて。

 

 力も何もなくなって。

 明確に、この中で一番、足手纏いなのだと理解して。

 

「──何が、おかしいの」

 

 おかしいことなど何もない。いつも通りに笑っているだけ。

 どちらかと言えば死人が目の前に多く並んで喋っていることの方がおかしい。

 

 おかしい。おかしいのだ。

 明らかに、この異世界らしき世界はおかしいのだ。

 

 何が西暦時代だ。あの時代を、あの頃の事を今更俺の前に持ってくるな。

 俺は加賀亮之佑だというのに見知らぬ少女たちの言動が、匂いが、眼差しが思い出させる。

 

 自分が無力な人間であることを。

 少し努力した程度で調子に乗っているだけだと。

 勇者の力が何もなければ自分など──、

 

「わあ! その指輪綺麗だね! 私にも見せてくれる?」

 

 特別に高価な指輪という訳ではない。

 友人の富豪ならば、似たような物を幾千と用意出来るだろう。

 実際に指に嵌めた指輪、台座に載る青色の石は随分とくすんで見えて。

 

 彼女とも会えそうになくて。

 

「あっ、なるほど。そういう感じか」

 

「──くん?」

 

 夢なのだと理解した。

 

 力も、契約も、彼女もいない。何度呼び掛けても出てこない。会えない。

 こんなことはあり得ないから、つまり夢なのだ。

 

「夢なら何をしても良いよね」

 

「──ちゃん?」

 

「こんな無駄な時間を使うとか後悔しちゃうだろ? サクッと行こうか」

 

「え?」

 

 必死にフォローしようとする巫女を名乗る少女の説明を耳から流して。

 いつの間にか俺の前に立つ讃州中学校勇者部の背中から目を背けて。

 黒に染まり続ける空に共感を覚えながら、屋上に集った勇者集団から抜ける。

 

 この夢はいつになったら朝が来るのだろう。

 

 そんなことを思いながら、ふらふらと歩いていって。

 月もない闇夜から、少女たちから、夢から逃れる為に、

 

「死ねば夢は覚めるって定番だよな」

 

 屋上から飛び降りてみた。

 

「────!」

 

 背後の悲鳴を聞いても、後悔は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 少女が二人、絡みついている。

 互いを求めるかのように、艶めかしい肢体で肌を重ねている。

 興奮と羞恥に荒い呼気を漏らしながら、互いの肉と汗と鼓動に喉を鳴らす。

 

「ぁ、らめっ、らめっ! たかひまひゃ……!」

 

「ぐんちゃん。……エッチだね」

 

「ぁ、ぁぁん……ふわぁぁ……」

 

 否、絡みついているのは高嶋の方だ。

 和らいだ表情で、とろけた顔の千景の耳にあむりと噛みついている。

 

 ああ、と小さく声を上げる千景の口端から唾液が垂れる。

 乱れた衣服から肌を露出させ、モジモジと脚をくねらせる。

 

 千景の部屋で、その部屋主を好きに蹂躙する高嶋。

 仄かに赤らめた頬は緩み、千景の痴態を前に彼女は鈴音の笑みをこぼす。

 

「ぐんちゃんの声エッチだ。……りょーくんが聞いているよー」

 

「ん、ぅっ」

 

 高嶋の片手は千景の上着の中だ。

 裾から覗く白肌、皮膚を這う手が千景の乳房を捉えて、

 

「ぁんっ!」

 

 乳首を解されているのか、乳房ごとなのか。

 いずれにしても、少女の手が千景を男の前で辱めているのは事実だ。

 千景もされるがままではない。蕩けた顔で、ゆっくりと俺を見る瞳に光と微かな理性を取り戻して、慌てたように高嶋の手首を掴んで表面上は必死に抵抗していた。

 

「ぐんひゃん………おいひい」

 

「ゃっ、たかしまさ……ぁっ」

 

「おっぱい大きくするんでしょ? ほら、動いたらダーメ! もみもみ~」

 

「ほにゃぁぁ……」

 

 まるで吸血鬼のように耳や首筋を甘噛みする高嶋。

 微かな理性の灯も、あっという間に吹き消される千景。

 どこかで聞きつけたのか、或いは聞き出したのか、少女の身体を背後から抱きすくめ、片手を胸元に、もう片方の手が下腹部を優しく摩る。

 

「ただ揉むだけだと駄目だと思うんだ。……こっちも、ね?」

 

「ゃぁ……ぁ」

 

「ぐんちゃんが大きくしたいって言ってたよね? ほら、もうちょっとだから」

 

 部屋に充満する甘い香りは少女と淫らな行為による物。

 マッサージというには、少しだけ触れる部分が露骨過ぎた。

 

 少女たちの絡み合いを尻目に、空き缶を一つ手に取ると甘い香りが鼻孔をくすぐる。 

 この場にいる少女たちは見た目はともかく、中身は既に少女からやや乖離している。飲酒の一つや二つ問題ないだろう。

 そもそも市販の甘酒で酔うなど勇者部部長じゃあるまいし。

 もしかすると、酒に酔ったという名目で性的なことを行う大義名分にしたのではと思ったが、

 

「でも友奈族がそんなことはしないだろう」

 

「よってるよ~。あっ、それ飲んでも食べてもいいよ!」

 

「そっか、酔っているのか」

 

「うん!」

 

 酔っている高嶋の言葉に俺はテーブルの上に置かれた皿、そこに載る菓子に目を向ける。

 高嶋が皆で食べたいと言っていた少しオシャレな菓子類からは僅かにブランデーの香りがした。これが原因なのかもしれないと一つだけ口にしながら、

 

「んぅぅぅ……!」

 

 のけ反る千景が喘ぐ中、高嶋は耳を吸っては乳房を揉む。

 嫌々と首を振る千景の黒髪が揺れ動く度に、高嶋の笑みが深まる。

 

「だ、だめ」

 

「いいよ、ぐんちゃん。もう一回気持ちよくなって」

 

 目尻に涙を浮かべて両腿を擦り合わせる千景。

 俺が来る前に千景を弱らせた高嶋は耳元で囁く。

 

「りょーくんの前でね」

 

「──かが、くん……ぁ」

 

 とろんとした目の千景。

 その眼差しが俺を再度見た瞬間、理性が一瞬戻る。

 自らの痴態を隠すように動こうとする手首は高嶋に掴まれて、

 

「み、ないで……──っっ!!!」

 

 俺の目の前でビクッと身体を跳ねさせて千景は飛んだ。

 十数秒にわたって震え続けて、短い絶頂に浸った彼女は高嶋に背中を預ける。

 

「ぁ……ぁ~……」

 

「気持ちよかったね、ぐんちゃん!」

 

「ぁぇ……」

 

「これで少しはリンパ? も良い感じになったと思うよ!」

 

 笑顔で告げる高嶋は手元に置いた甘酒の缶を手に取る。

 休憩なのか、小さく喉を鳴らして飲むと千景の唇に自らの唇を重ねる。

 

 酩酊したような眼差しの千景は高嶋からの口移しを黙々と受け入れていた。

 どこで覚えたのか、虚ろな眼差しでぴちゃぴちゃと舌を絡めようとする浅ましい女の姿を見せる千景に肉棒が痛いほどに勃起していた。

 二人だけの空間に入り込む余地が果たしてあるのか。

 そんな思考を読み取ったのか、千景の唇を艶々にした高嶋が俺に目を向ける。

 

「えへへ……ほら、もうすぐ健康診断でしょ? それでね、ぐんちゃんが悩んでいるようだったからマッサージしてたんだー。……ところで若葉ちゃんは?」

 

「ひなたさんの様子が気になるって。多分来ないよ」

 

「そっか。じゃあ、りょーくんも手伝ってくれないかな?」

 

「いいよ」

 

「やったー! 後で私にもマッサージしてくれる?」

 

「勿論。喜んで」

 

「ありがとう! ……よいしょっと」

 

 ホカホカになった千景を抱きながら、高嶋は自らの衣服に手を掛ける。

 一枚上着を脱いで薄いキャミソールを見せる彼女は柔和な笑みを浮かべる。男の前で肌を見せる無防備な姿は信頼の表れなのか危機感の無さなのか。

 これは一度分からせた方が良いのかと悩む俺を、「おいでー」と彼女は手招きする。

 結城家の友奈とそっくりな少女は千景の衣服の中で手を動かし喘がせながら、

 

「ふー、……それにしても今日は暑いねー。りょーくんも脱いだら?」

 

「そうだね。脱いじゃう。あっ、ところで千景みたいに甘酒が飲みたいな」

 

「ジュース?」

 

 一瞬戸惑う彼女は上品にコップに注いだ甘酒のジュースを俺に渡す。

 並々に注がれたソレは冷たくて、飲めばきっと美味しいだろう。手に持ったコップを高嶋に返すときょとんとした顔で受け取る。そして酩酊したように揺れる薄紅色の瞳で俺を見て、何かを理解したように一口分だけ口に含んだ。

 ゆっくりと端正な小顔を近づけてくる高嶋と、静かに唇を重ねる。

 同じ顔をした少女とのキス、その唇の柔らかさと温かさは友奈そのもので。

 

「──しちゃったね」

 

 キスの味は甘酒。

 小首を傾げて蠱惑的な笑みを浮かべる高嶋は唇を舐める。

 

「結城ちゃんともこうしているんだよね」

 

 一口分だけの甘酒は、濃厚で背徳的な味がした。

 ディープでもなんでもない、彼女との触れるだけのキスは不思議と脳をクラクラとさせる。

 彼女の口腔を器とした甘酒は格別の味だ。

 自らの身体を弄られ好きに絶頂に浸され続ける千景がフニャフニャになるのも納得の味だ。

 

「もう一杯」

 

「たかひまひゃん………わらひも」

 

「うん! 良いよ」

 

 ベッドを背中にする高嶋と口腔行為に耽る。

 チョコとクッキーとブランデーと甘酒と。甘くて苦くて美味しくて。

 高嶋と唇を重ねて、千景とも唇を重ねて、三人で唇を重ねて、互いに味わう。

 

「ん……」

 

 キャミソール越しに高嶋の乳房を揉むと程良い弾力と柔らかさが掌に伝わる。

 ふにふにと揉むと眦を和らげて小さく声を漏らす高嶋が静かに俺の手を掴む。悪戯が過ぎたのかと思ったが、そうではないらしく彼女は僅かに首を振ると俺の手を千景の胸元に持っていく。

 

「まずは、ぐんちゃんをね。もっと気持ちよくしてリンパを良くしないとね」

 

「そうだな。リンパをアレしないと。大きくならないから」

 

 マッサージにリンパはつきものだ。

 それは俺と友奈を名乗る少女たちとの共通認識である。

 

 荒い呼気を繰り返す千景の上着を捲ると上下に動く柔らかな腹部が目に映る。

 そのまま、ゆっくりと捲り上げられて俺と高嶋の眼下に千景の乳房が露わとなる。高嶋に揉み解されたのだろうお椀型の乳肉は先端をツンと尖らせて呼吸の度にぷるりと震える。

 彼女の性感帯を知り尽くしたような手付きで高嶋が触れると、甘い声を漏らす千景。もう何をしても気持ち良いのだろう。抵抗はなく骨の髄まで快楽に溶かされるのを待つばかりだ。

 俺もまた、千景の腹部を撫でまわしながら、ふと疑問を口にする。 

 

「……ブラは?」

 

 まさか千景が部屋ではノーブラ派だったのか。

 そんな疑問は、ベッドにクシャリと丸まっている白色の下着で自己解消した。

 

「高嶋さん。リンパは全身まんべんなくやらないと効果が薄い」

 

「うん。だから私が上を。りょーくんが下をする感じだね」

 

「交代しても良い」

 

「まっへ……そんなの、そんなの……!」

 

「じゃあ、一緒にやろうよ!」

 

 千景をどうやって気持ちよくするか。

 胸元まで上着を捲り上げられた千景の乳房を二人で揉む。

 左右をの乳肉をそれぞれで好きに指で弄ぶと、千景は顔を逸らす。

 

「やめっ、ぁ、ゃ、ッッ~~!!」

 

 千景はあられもない声を上げる。

 乳房を揉みながら少女の腰肉を撫でて、少女の下腹部へ。

 

 スカートの中はむわりと熱気を帯び、黒タイツ越しに覗く下着は愛液で染みが出来ていた。さりげなく高嶋が千景の腰を浮かせてずるりとタイツごと下着を膝まで下ろす。

 鼠径部が覗き、ふわりとした陰毛が覗き、秘所が露わになる。

 

「ぁぁ……」

 

 隠そうと脚をくねらせる千景は高嶋に乳房を刺激されて呻き声を上げる。

 高嶋のマッサージ効果によるものか、少女の秘所は既にトロトロに濡れていた。

 

「こんなに濡れてるんだ」

 

「ああっ!? ま、まって、そこは……ッ!! ──!?」

 

「ぐんちゃん。こんなに気持ちよくなったの?」

 

 かああっと顔を赤くする千景に高嶋は笑みを浮かべる。

 それは少女の羞恥への笑みか、自身のマッサージに悦んでくれたことへか。

 

 いずれにしても、躊躇うことなく彼女は少女の恥部に指を這わす。

 黒々とした恥毛は薄く、毛並みを撫でるようにして高嶋は千景の蜜裂に指を入れた。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 千景が絶頂に達した。

 少女に秘所を弄られていることへの羞恥を抱く余裕もなく、飛んだ。

 

「ぁ、ぁぇ? ……っ、ぁぁっ! ぁん!」

 

「聞こえるぐんちゃん? こんなにエッチな音を出して。くちゅくちゅって」

 

「……ッ! ──ッ!!」 

 

 神の宿った手で、高嶋は千景を辱める。

 指を挿入し、膣襞を探り、恥骨付近で指を曲げたのか、千景は痙攣を見せる。

 

 黒タイツとショーツを脱がせ、片足に引っかけたままの少女に高嶋は容赦ない。

 むやみに恥部を指で解すだけではなく愛液で濡れた白い腿を撫でるなど緩急を入れる。ひくひくと動く陰唇をなぞり、肉芽を指で摘まんではそっと揺すった。

 千景がまた法悦の空へと昇る。

 

「いっぱい、気持ちよくなってね」

 

「ッ、ぁ、ぁぁぁっっっ……!!!」

 

 腰を浮かせる千景は手足に力を入れて暴れようとする。

 髪を振り乱し、開脚させられた脚を閉じようとして、無防備に晒した秘所を弄られる。

 

「ぐーんちゃん」

 

「ぁぁっ!? ふわぁぁっ……! ~~!!!」

 

「クリクリー」

 

 指先だけで千景を喘がせる高嶋は添い寝するように寄り添う。

 俺もまた彼女の隣で、乳房にしゃぶりついては乳首に吸い付いては舌で転がす。それを見た高嶋も、あーんと口を開いて空いた方の乳首を襲うと快楽にむせる千景が悲鳴に近い嬌声を上げた。

 

 千景の手が俺の肩を掴んで、もっととせがむ。

 喘ぎと羞恥を垂れ流す彼女は嫌々と言いながら喜悦に顔を歪ませる。

 

「ぁ、ぁっ……、……!」

 

 喘ぐことすら止めた千景は虚ろな瞳で身体を痙攣させる。

 蜜だけを垂らして、高嶋の指が執拗に乳首を刺激する度に千景はのけ反る。

 

「~~~~ッッッ!!!」

 

「わっ、すごーい!」

 

 千景の絶頂に高嶋が感嘆する。

 ぷしっ、ぷしゃっと潮を噴かせて腰を痙攣させる少女は脱力する。額に髪の毛を貼りつかせ、だらしなく脚を開いては陰唇から蜜を垂れ流す。

 むわりと全身から淫靡なフェロモンを醸し出して子種を求める姿に怒張が涎を垂らす。 

 

 これで食べない方が千景も悲しむだろう。

 ホカホカトロトロとなった千景の眼差しは僅かに焦点が合っていない。それならば肉棒で起こしてあげなければと、少女を抱き上げてベッドに横たわらせる。

 鼻水と涎を拭い、眠れる姫となった彼女を前にしてどうやって味わうかを俺は考える。

 

 優しく起こすか。激しく起こすか。

 胸元を上下させる千景を見下ろし頭を回す俺の腕が僅かに引っ張られる。

 

「……りょーくん」

 

 上目遣いで俺を見る友奈が、高嶋がいた。 

 短パンを脱いで露わになるピンクのショーツとキャミソール姿、片手で俺に触れ、もう片方の手が自らの下腹部へと伸びる。甘く切なげな吐息がこぼれ薄紅の瞳を揺らす。

 

「ぐんちゃんをね、マッサージしていると何だか身体が熱くなっちゃって」

 

「────」

 

 そう告げる高嶋が自らのキャミソールを捲し上げ、ショーツを指で下ろす。

 自ら肌を露出して、程よく鍛えられた腹部と柔らかな乳房が、薄く生えた恥毛が覗く。

 

 曝け出した乳房は呼気に合わせて僅かに上下していた。

 千景のように慎ましくも、みずみずしく、柔らかな高嶋の双丘。

 乳首はピンクに色付き、白色の乳房と共に俺の視線を引く。

 

「りょーくん」

 

 囁く高嶋の、友奈の秘所は愛液で下着を濡らしていた。

 直接的な言葉は避けながら、それでも彼女の全身が本音を語っていた。

 明朗快活な姿は鳴りを潜め、千景の淫欲に身体を震わせる。

 

「……結城ちゃんには秘密にするから」

 

 秘密。素敵な言葉だ。

 言葉を失った俺に力を与えたソレは、彼女を寝台に引き込ませる。

 

「ああ、そうだな」

 

 下着を脱がせて、恥部に怒張を宛がう。

 前戯の必要などないほどに高嶋の秘肉は濡れていた。

 

「マッサージするって言ったもんな」

 

「……ん」

 

 一息に彼女を貫く。

 結城友奈と違って、高嶋友奈の膣はぎゅうっと痛いほどに怒張を引き締める。

 

「んっ、ぁ!」

 

 白い乳房は薄塩味。あまじょっぱい。

 友奈の乳肉にしゃぶりついては乳首を吸う。

 

 殆ど友奈、同一人物のように思えて僅かな差異がある。

 例えば快楽への反応や愛液の味、少女の乳首を舌で転がす時の反応など。

 

「んっ、ゃ、あんっ!」

 

 それでも彼女の反応は友奈そのもので。

 ただ、目の前の少女は間違いなく高嶋の方であって。

 

 大きな瞳に涙を浮かべて、両腿で俺の腰を挟んでは喘ぎを漏らす。

 友奈と同じ弱点や、僅かに違う弱点、ゆっくりとピストンをする度に差異を愉しむ。

 

 髪紐を解き、さらりとした髪を手に取って、甘い体臭に唇を重ねる。 

 驚くほどに濡れている恥部はあっという間に雄棒を受け入れ、彼女を悦ばせる。

 

「んっ、ん、んっ……」

 

 身をよじらせて、友奈が悦ぶ所で嬌声を上げて。

 全身で俺に抱き着いては、汚らわしい怒張を奥深くまで飲み込む。

 

「ぁんっ!」

 

 見知った喘ぎ声を聞いて、亀頭を最奥へと届かせる。

 慎ましい乳房を円を描くように揉んでは濡れた唇を重ねては唾液を啜る。

 

「ぁ! ぁ、ぁあっ!」

 

 背に立つ爪に射精衝動を堪えて。

 リズミカルにピストンをする度に高嶋が受け止める。

 

「──ゆうな」

 

「ん……りょーくん」

 

 ちゅぷちゅぷと結合部から淫音を鳴らしながら俺は高嶋を食べる。

 新鮮な雌肉が怒張に吸い付いては、浅ましくも子種を求めて蠕動する。

 

 途中、ざらざらとした肉襞を見つけて亀頭で擦る。

 気持ちよいのか、ぎゅうっと怒張を締め付けては新鮮な蜜でシーツを濡らす。

 

 彼女もまた一人の女、それを下腹部で感じて腰が止まらない。 

 ただひたすらに高嶋が悦ぶところを亀頭で擦って、乳房ごと乳首を甘噛みする。

 

「ぁっ、ぁ、ん……!」

 

 背中に回した腕に力がこもる。

 寝台を背に、俺に押し潰された高嶋の肢体が小刻みに震えて、俺は種を噴き出す。

 勢いのある吐精は脱力感と征服感を伴わせ、彼女に倒れ込んだ。

 柔らかな乳房と抱擁感は、まさしく友奈と殆ど同じだった。

 

「……あったかい」

 

 彼女を押し倒して、それを受け入れた高嶋の顔がすぐ近くにあった。

 柔和な笑みは蠱惑的でもあって、俺を見る目をうっとりと細める。

 

「結城ちゃんに怒られるかな?」

 

 くすりと笑う女の姿に、射精したばかりの陰茎に刺激が走る。

 蠕動する膣襞に甘い快楽を覚えながら、友奈にしているように何度か唇を重ねる。

 

「ん……」

 

 ゆっくりと肉棒を抜き取ると、結合部からは行為の名残が垂れる。

 それを見ていると視線を感じて振り返る。

 

「────」

 

 隣で情事に励めば起きるものだろう。

 頬を赤らめて俺と高嶋の行為を見ていたのだろう千景。無意識なのか自らの恥部に手を伸ばしていた彼女と目が合って怒張が硬くなり始める。

 

「ぁ……、ち、ちがっ、これは……」

 

「ぐんちゃん」

 

「違うの高嶋さん! これは起きたら──んむぅッ!?」

 

 必死に言い訳を探そうとする千景の唇を塞いだのは高嶋だった。

 子種を腿に垂らしながら、母性を感じるような微笑を浮かべて千景と手と手を重ねる。

 チラリと俺を見る高嶋の気遣いに感謝して、今度こそ千景を食べることにした。

 

 自らが挿入される気配を感じ取った千景は今更ながらの羞恥で抵抗を試みる。

 高嶋とのキスで身体を弛緩させながらも、膣口に亀頭を宛がうと下半身を強張らせる。

 

「や、見ないでぇ! ゃんっ! ……!」

 

「ぐんちゃん」

 

「高嶋さん! 見ないでっ! こんな私を……! あ……」

 

 嫌々と首を振る千景の乳房と高嶋の乳房がぶつかり潰れる。

 ふにふにと触れ合う少女たちの乳肉と擦れる乳首に千景が小さく呻く。

 

 リズミカルに抽送を行う。

 少しだけ時間が経過して乾き始めた泉から新鮮な蜜が溢れ出す。

 片足を持ち上げて高嶋に見せつけるように腰を振ると、俺を睨んだり、悪態を口にしていた千景は少しずつ静かになっていく。

 

 肉芽を指で弄ると背を反らして目尻に涙を浮かべた。

 それでも高嶋を前に無意味な抵抗をしようと膣を引き締めるも逆効果だ。

 

「ぁっ! んはっ……! ひゃめっ……! ィくっっ……!!」

 

「ひあっ!? やんっ! んっ……!!」

 

「たかしまさっ……手、はなしてっ、こんな顔、みないで……ッ!! ゃあぁああっっ!!!」

 

 尻肉と乳房を揺らして、高嶋に両手を握られる千景に逃げ場はない。

 最奥に子種を注ぐ瞬間まで、快楽に悶える女の声と表情を高嶋に聞かせ、見せ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 一人の男の怒張を、二人で舐めあう。

 千景と高嶋、二人を跪かせて奉仕させていた。

 

「ん……ぷ」

 

「あむ……」

 

 高嶋は楽しそうに、千景は屈辱的な顔を浮かべて。

 顔はともかく、丹念に舌と唇を使って肉竿に吸い付いては上目遣いで見上げる千景。さらりとした黒髪を撫でると屈辱に満ちた顔をしながらも頬を緩める。

 身体は正直なのか、従順に怒張をしゃぶる千景の口端から唾液があふれる。

 

 千景は教えた通りに肉竿に奉仕する。

 高嶋は稚拙な手管を千景を見て修正、凄まじい勢いで奉仕力が上がった。

 

 くぽくぽと音を立てて亀頭に吸い付く千景の頬肉を亀頭で堪能して引き抜く。

 ぬるりと唾液で濡れた竿を二人の唇が挟み込み、陰嚢を高嶋に触れられる。

 

 高嶋と千景。

 ちょうど二人でキスするように竿の先端を舐めると白濁が噴き出す。

 

「ゃん……!」

 

「わわっ!?」

 

 彼女たちの柔らかな唇を汚すだけに留まらず、端正な小顔を白濁で濡らす。

 驚いたように息を止めた彼女たち、先に動いたのは高嶋で自らに付着した子種を指ですくっては口に含む。うんうんと小さく頷く高嶋は一言。

 

「そういえばアンちゃんに聞いたけど、これを塗ったり舐めるとおっぱいが大きくなるんだって」

 

「……そんなの迷信か何かで……まあ、高嶋さんが言うなら」

 

「じゃあ、やってみよっか。ぐんちゃん!」

 

「え、あ、あの……ひゃんっ!?」

 

 大胆にも子種を口にした高嶋が千景の胸元に顔を寄せる。

 すっかりと吸い尽くされて赤くなった乳房を、口に含んだ白濁を塗るように優しく舐める。

 ペロペロとミルクを舐める子犬のような高嶋の動きに千景は身を跳ねさせる。

 

「たかひまひゃん!? らめっ、それらめっ……」

 

 付着した子種を舐めとって、舌先で乳輪をなぞるように舌を這わせる。

 高嶋の舌先で、あっという間に淫熱に身体をくねらせる千景の口元に竿を近づける。

 

「これも舐めるといいよ」

 

「……ぁむ」

 

 チラリと俺を見る千景は亀頭をくぷりと飲み込んで、残った白濁を吸い出す。

 無言で舌先を雁裏に絡める千景の乳房に高嶋が吸い付く。

 

 吸って、吸い付かれて。

 復活した怒張で、ダメ押しだとばかりにもう一度千景を犯して。

 

 ──それからは性に爛れた大学生のように、ただ快楽を求めた。

 

 嫌々と言う千景を背面駅弁で犯しては、結合部を高嶋に見させて悦ばせた。

 「ぐんちゃんエッチだねー」とニコニコと笑みを浮かべてはぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる恥部、その肉芽を指や舌で弄んでは二人で気絶するまで怒張で千景を貫いて。

 

 「楽しそうだなー」と呟く高嶋の言葉にゾンビのように身体を震わせる千景も参加して、千景自身と同じ経験をさせられる高嶋はとても悦んでくれた。

 自分だけされるのは嫌だと、高嶋の恥部に唇を這わす千景はとてもにこやかだった。

 高嶋は大浴場での事も覚えていたらしく、何故か謝っては可愛らしい喘ぎ声を聞かせた。

 

 そんな風にして黒と薄紅と豊乳マッサージに明け暮れた。

 

「これで大きくなるといいね」

 

「…………そうね」

 

 健康診断の日。

 あれだけ快楽に耽った千景の双丘は僅かながら成長したらしい。

 無言でガッツポーズをしては貧乳組に対して、特に球子に対して余裕の表情をしていた。

 

「加賀くん。……ありがとう」

 

 微笑を浮かべる千景の眼差しは変態を見る目と共に信頼が見え隠れしていた。

 氷が溶けていくように、千景の熱のこもった眼差しに小さく息を呑んだ。

 

 そして俺は、どこから漏れたのか。

 千景と高嶋の豊乳マッサージの件が園子と東郷にバレた。

 

「これはギルティだよね、かっきー」

 

「ええ、有罪です。今すぐ洗脳、いえ教育をし直さないと」

 

「亮ちゃんどうかしたのー? ねえ」

 

 ニコニコと笑う彼女たちに縛られて、ジックリと搾り取られたのだった。

 

 ──そして季節がまた変わろうとしてた。 

 

 

 



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第四十一話 何度目かの夏

 ──俺は一度死んだ人間だ。

 それは世界中の誰が知らなくても、俺だけが知っていることだ。

 もう随分と前のことで、色褪せていることもあるけれども、間違いなく覚えている。

 

 何の因果か第二の人生を送ってはいるが間違いなく死んだ。そんな俺だがいわゆる天国や地獄といった死後の世界を知っている訳ではない。

 意識が薄れたと思ったら、次は赤子になっていた。

 

 もしかしたら記憶がないだけで神と対話したり天国に行ったのかも。

 実は何かしらのチートと呼ばれる優れた武器や能力をくれたのかも。

 手違いで死んでしまって別の異世界に飛ばされる話、そんな小説を読んだ覚えがある。

 

「確か杏から借りたんだっけ? 園子だっけ?」

 

 確かにこの身体は多少物覚えや器用さはある。

 とはいえ、怠けていたら何も身につかなかったのも事実だろう。

 加賀亮之佑の能力は間違いなく俺が鍛えた物で、それが自信にもなった。

 

 仮にそういった力があったとしても記憶にないので意味のないことだ。記憶がないのだから神が特典を授けてくれたかどうかも、死んだと言っても天国や地獄があるかも分からない。

 死んだと言っても死んだ先がどうなっているかは俺には分からない。

 もっと言えば──、

 

『あ・な・たのうしろよ』

 

 ──本当に幽霊がいるのかどうかは死んでみても分からなかった。

 

「「────ッ!!?」」 

 

 少女の悲鳴と共に腕を力強く掴むのは園子だ。

 やや隣では友奈の声が聞こえる。ブルブルと震える手で身体ごと抱き着く園子の双丘の感触と体温を感じ取りながら俺は無言で視線を前に向ける。

 

『ねえ? どうして? どうして浮気したのよぉおおああ!!』 

 

「……っ!」

 

 暗い密室で、大画面に映り込む黒髪の女が迫り来る。

 井戸から出てきた女は長い髪に顔を隠し、四つん這いとなって画面内を動き回る。ホラーに相応しい音楽が鼓膜を震わせぞわぞわと腕に鳥肌を立たせる。

 冷房の効き過ぎか、随分と身体が冷えてきたのを感じながら瞬きを繰り返す。

 

 所詮はフィクションだ。虚構だ。

 幽霊というのならそれに近い少女を知っている。一度口にして怒られたことも。

 

『くーるーきっとくるーきっとくるー』

 

「ひっ……」

 

『そばあぁぁああ──ッ!!』

 

「ッ──」

 

 本物に近い存在を知っているのに、虚構の存在に思わず息を呑む。

 悲鳴を超えて絶句し、無言で俺に抱き着く園子の体温が画面から目を逸らすことを食い止めていた。右腕を園子に貸して、空いた左手を劇場用の椅子に置くと周囲に目を向ける。

 

「────」

 

「お、お姉ちゃん……あ、あれ、また気絶……」

 

「……ッ」

 

「……!」

 

「ぅぅ……」

 

「む……」

 

「はわわ……」

 

 小さく悲鳴を漏らす者。気絶する者。

 少女たちが見せるリアクションは様々だがそれを理由に怒られることはない。

 他の観客たちも大体そんな状況で、周囲に対して注意をしている暇はない。

 

 シリーズ物の映画の続編が始まるから皆で見るんよ! と誰が言い始めたことか。日頃の行いが良いからか運良く並んでチケットを手に入れた俺たちは映画館に来ていた。

 せっかくだからと買ったポップコーンやらコーラやら準備していたが口にする暇はない。

 以前から続いていた作品のジャンルがまさかホラー物に変わるとは。

 

「──凉を取れていいわね」

 

 ぷるぷる震える友奈の手を握る東郷が小さく呟いた。

 暗闇の中、ホラー映画の光源が彼女の深緑の瞳をキラキラと反射させる。

 

 唯一余裕の表情を浮かべる東郷の美しい横顔。

 白い柔肌に青いリボンで纏めた黒髪が僅かに揺れ動く。

 悲鳴の一つも上げず微笑を浮かべて画面に目を向ける彼女は相も変わらず美しかった。何となしに東郷を見ていると、彼女の頬がほんのりと朱色に色付いていく。

 

 ホラーにエロは付き物だ。

 前作にはなかった濡れ場が序盤にあったが、また似た展開になったのか。

 美少女の横顔とちょっとしたエッチなシーン、どちらに注力するべきなのか。

 

 そんなことを考えていると、チラリと翡翠の瞳が映画から俺に向けられる。

 

 僅かに交錯する視線。

 彼女の人差し指が俺の頬を突くと、ゆっくりと前を向かせる。美少女から変わって目に映り込む幽霊にめった刺しにされるスプラッタなシーンは視界を通じて脳を狂わせそうだ。

 

「────」

 

 ──映画に集中しなさい。

 

 彼女の行動の意図は明白な物だろう。

 自分ではなく映画に目を向けさせながらも、空いていた左手の指の一本一本に絡みつくように東郷の白魚のような手に握られる。

 じんわりとした熱が彼女の掌から伝わってくる中で、俺は無言で握り続けた。

 

 握り続けた。

 

 

 

  

 

 

 

 続編の映画が思っていた内容と異なることはよくあることだ。

 大体は期待のハードルを越えられず、やっぱり一作目こそが最高だったなとなる。

 

「そもそも前作と内容が変わり過ぎでしょうが!? 絶対評価が大変なことになってるでしょ!」

 

「監督が変わったんじゃない?」

 

「うどん要素も殆どなくなっちゃったね」

 

「まさか蕎麦を食べただけであんな悲劇が起きるなんて。風評被害もいいところよ!」

 

 そう絶叫するのは勇者部部長の風だ。

 殆ど気絶して起きると同時に気絶するコンボを繰り広げていたホラー弱者の叫びに頷く少女が数人。シリーズ物の続編ということで跳ねあがった期待値に達しなかったと嘆くのが数人。

 

 名作もあれば迷作もある。

 本日は勇者部の部活も無かったこと、運良くチケットを手に入れたので映画を見に来ていた。

 何作も続いている作品なので勇者部全員が知っていて、なおかつ楽しめる筈だったが──、

 

「──まあ、こんな日も悪くない」

 

「わかちゃ~ん」

 

「そうだな。帰ってうどんを食べよう。きつねうどんだ」

 

 園子の頭を撫でるのは保護者面した少女、若葉だ。

 男女問わず、容姿に秀でて文武両道な彼女はさりげなく子孫を甘やかす。土日は大抵若葉やひなたと共に過ごすことの多い園子にとっては慣れたスキンシップなのか気にする様子はない。

 その周囲を囲むのは、勇者に見初められるだけの清らかな精神の少女たちだ。

 直前に見た映画が名作だろうとそうでなかろうと、そのことでどうこう言うことはない。

 

「よく遊んで、よく食べーる!」

 

「もう友奈ちゃんったら……」

 

「メッチャクチャ怖かったしよく分からない所もあったけど、皆と映画を観れて楽しかった!」

 

「子供か。……でも、そうね」

 

 学生らしく遊ぶ時は遊んで、美味しい物を食べる。

 少女たちが醸し出す和やかな雰囲気で、一日が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 季節が夏だからと言って世界に変動はない。

 表の世界はいつも通りに爛れていて、裏では一握りの少女たちが戦う。

 

 犠牲の上に成り立つ世界だが、その少女たちのケアは更に一握り。

 汗ばんだ熱い肌から熱を奪う為に俺は自らの唇を捧げる。

 

「……ん」

 

 淑やかに、ねっとりと舌が絡んで放さない。

 甘い唾液と舌が口腔を満たし、脳を眼前の少女で染めていく。 

 

「浮気防止しないと」

 

 唇を少しだけ離した黒髪の少女が吐息の掛かるような距離で囁く。

 深緑の瞳を妖艶に灯し、味わうように俺の胸板を撫でる。

 

 胸板を、鎖骨を、二の腕を、首筋を、脇腹を──。

 二本の腕でくすぐるような愛撫に俺も腕を伸ばす。

 

「んっ」

 

 処女雪のような白い肌も、幾度となく踏み荒らした。

 それでも男の足跡など無いと主張する白い乳肉はずっしりとした重さを掌に返す。

 

「いっぱい触って良いのよ」

 

 この肢体は、乳房は、髪の毛の一本から爪先まで貴方の物だ。

 掌からこぼれる豊満な乳肉を俺の手でいやらしく形を変えさせながら、そう目線で語る少女。むにゅりと形を変えては元に戻ろうとする弾力を楽しみ、乳首を手で愛撫する俺の真似をするように黒髪の少女は俺の乳首を指で愛撫する。

 指で弾いては、転がして、摘まんでは愛おしそうに撫でる。

 

 ぬちゅぬちゅと唾液と甘い果実の匂い。

 半裸の少女、自ら腹部まで水着を下ろして晒した白肌がジワリと熱を帯びていく。

 全身から男を誘う匂いが理性を狂わせ、鼓動が高鳴りを覚える。

 

「ぁ……」

 

 目の前の少女のさらりとした黒髪を手にとった時だった。

 雄を求める雌との口腔を邪魔するように、背後から怒張を無遠慮に掴まれる。

 

 ボトムの中に手を入れて、怒張を掴んだり擦られる刺激に思わず呻く。

 目の前の黒髪の少女の奇行っぷりは凄まじいが腕は二本だけだ。妖艶に笑みを浮かべては唾液を絡めた舌を差し出す彼女を前にして振り返ることは出来ない。

 

「忘れてたでしょ、私のこと」

 

 否、振り返る必要はない。

 むにむにと豊満な乳肉を背中に押し付けては耳を甘噛みする少女。

 耳穴から直接声を届かせるように、背後の少女の金髪が視界で揺れる。

 

 コリコリと乳首の存在を背中に伝えては、指先で的確に亀頭を擦る園子。

 ちゅぷちゅぷと耳を舐めたり吸ったりする彼女は揶揄うように笑う。

 

「両手に花だね」

 

「────」

 

 遠くから蝉の鳴き声が聞こえる。

 冷房もなく、僅かに開いた窓からは少女たちの声が聞こえる。

 

 園子の言葉に何も返さず、それを咎めるように怒張への責めが行われる。

 背中に密着しては自らの身体を擦り付ける園子を咎めるように、鷲掴みにした乳房を揉みしだくと甘い息遣いをする東郷が俺の身体に触れては唇を求める。

 前面の東郷と、背後の園子。両手にではないが彩りのある花たちに挟まれている。

 

 臀部に園子の恥部が押し付けられては、身じろぎする。

 桜色の突起を擦りつけて、指で弄ぶ度に東郷の身がくねる。

 

 園子の掌の中で肉棒が涎をこぼして、指先が亀頭と雁をこねる。

 膣とは違う手淫での蠕動に背筋を快感が伝っては陰茎を反り立たせる。

 

 やがて背後の彼女が俺のボトムスを下ろして怒張を出す。

 先走りで濡れた熱い性器が東郷の滑らかな腹部に触れると、

 

「亮くんの、熱いね……」

 

 恍惚の表情で見下ろし、頭を垂れては躊躇うことなく剛直に口づける。

 くぷぷ、と慣れた様子で当たり前のように奉仕を始める。

 そのことに俺が言及するよりも早く、背後の園子の掌が俺の頬に添えては振り向かせる。

 

「ん──」

 

 直前まで東郷とキスをしていた分、園子とキスをすると差異が分かる。

 ひたすらに唾液と舌を深くまで求めようとする東郷に対して、園子は啄むように唇を重ねる。肉竿への奉仕と同じく彼女たちの口という性器が俺に快楽をもたらす。

 

 陰茎を口に頬張っては頬肉に擦りつけて吸い付く東郷。

 唇と歯茎を甘えるように口腔で愛でて擦り付ける園子。

 

 示し合わせたように二人が夢中になって俺を求める。

 黒髪が上下する度に怒張を甘く蕩かして、金髪が唾液を啜っては脳を蕩かす。

 どこか満足気な表情を見せる園子は俺の頬を撫でて、数秒唇を離した。

 

「かっきーってさ」

 

「──?」

 

「スクール水着とビキニ、どっちが好きなの?」

 

 そんな問い掛けに思わずマジマジと園子を見る。

 半裸の少女、しかし全裸という訳ではない。膝立ちになる俺に媚びを売るかのように豊満な乳房を押し付けているも腰から股までは紺色のスクール水着が張り付いている。

 裏地が腰まで垂れ下がり上半身裸の状態は東郷も同じだ。

 二人をジックリと見てみると僅かながら色白の肌に日焼けの痕が目を引く。

 

「────」

 

 どちらが? 

 脳が絶頂に抗う為に逃避的に水着について考えさせる。

 

 そもそも、どうして二人に奉仕をさせているのか。

 浮気防止と言いながら子種を搾ろうとしてくる淫魔のような二人と。

 全身から汗が湧きだしそうな暑い密室で、そもそも何をして──。

 

「どっち?」

 

「そうだな。どちらかというとビキニだけど……二人とも美人だからスク水も良いと思うよ」

 

「──。かっきーってこういうこと言うもんね~、わっしー」

 

 照れ臭そうに微笑を見せる園子が東郷を見下ろす。

 俺の股に顔を埋めていた東郷は二人の視線を受けて顔を上げる。

 

「む?」

 

「……エッチな顔〜」

 

「んぷ──! そのっち!!」

 

 雄竿への奉仕で蕩けていた表情に園子が言及する。

 恥じらいを思い出したように怒張を口からこぼした東郷は雄汁で汚れた唇を手で隠すと、思わずとばかりに口を開いた園子を顔を赤らめながら睨む。

 肩を竦める園子が東郷から目を逸らし、限界寸前のように反り立つ肉竿に目を向ける。

 

「かっきー」

 

「ん」

 

「パンパンだね。……どっちとする?」

 

 細く白い園子の指が怒張の裏筋を根本から撫でる。

 小首を傾げて、小悪魔的に笑う半裸の彼女は思考の余裕を与えるつもりはないらしい。

 そして少女たちは選択の余地など最初から与えるつもりもなかった。

 

「ん……しょ」

 

 怒張の前に屈み込んでいた東郷が立ち上がる。

 ぷるりと豊満な乳房を揺らし、腹部まで下ろしていた水着に手を掛けて一息に下ろす。

 

 白い腹部からくびれた腰肉。

 鼠径部と黒い茂みと濡れた恥部と、少女の隠すべき物が露わになる。

  

 ──学校のプールの更衣室で全裸の東郷が俺の前にいた。

 

 丸まったスク水を床に置き、スリムベンチに横たわる。

 生まれたままの姿の彼女に引き寄せられ、背中を園子に押される。

 

「──」

 

「……!」

 

 考える余裕すら与えられず何を口走ったかまでは思考が至らなかった。

 ただ東郷が脚を開いては、自らの陰唇を僅かに開いていやらしい言葉を囁いた。小さな声音は子種を求める物で、雄の本能を刺激する。

 自ら開いたピンクの陰唇から透明な雫が垂れる。

 

「……お願い、亮くん」

 

 脳が焼け付きそうだった。

 東郷の腰肉を両手で持ち上げて、挿入する。

 

「く……ぁ」

 

 熱くとろけた媚肉が俺を迎え入れ、本能に腰を振らせる。

 怒張を奉仕するだけで水音を立てるほどに濡れた膣襞がぎゅっと締め付けた。

 

「りょう……くぅん……!」

 

 根本まで怒張を呑み込んだ東郷の甘い声に恥部を指で弄る。

 汗を吸った恥毛ごと硬くなった肉芽を指で擦る度に黒髪が乱れる。

 

 そのままスリムベンチで仰向けになる東郷を押し倒すように抱き着くと両脚が腰に絡みつく。腰を揺すり、美少女を喘がせて悦ばせる交尾に征服感を覚える。

 杭を打つようなピストンの度に乳房がぷるぷると震えて思わずかぶりつく。

 

「ッ──! ぁああっ……!」

 

 汗ばんだ肌を擦り合わせて交尾を愉しむ。

 生乳を口に含み、乳首を舌先で転がすと膣が反応する。

 言葉よりも分かりやすく東郷の膣肉が締まっては俺を求めて来る。

 

「んんっっ……!!!」

 

 ビクッと腰を浮かせて絶頂を迎えた少女が震える。

 媚肉が怒張に吸い付き、結合部からは淫水が床に垂れる。

 

「あ……っっ!」

 

 彼女の膣の蠕動に合わせて射精衝動が限界を迎えた。

 抵抗の叶わない快感に、普段ならば少女の最奥へと出す所だが、視界の端に金髪が揺れるのを捉える。俺の一瞬の挙動を見逃さなかったのか、園子が顔を結合部に近づける。

 

 仰向けとなった東郷の腹部に手を置いて、あーんと口を開く園子。

 東郷の膣から抜いた剛直から勢いよく噴き出す白濁が彼女の口内で弾ける。

 

「ぅぷッ──! ンっ、ん……んっ……」

 

 先端に吸い付いては喉を鳴らして白濁を嚥下する園子。

 それでも飲みきれないとばかりに口端から伝う白濁は東郷の下腹部に落ちた。

 

 

 

 

 

 

「園子ー! そっちは掃除終わったー?」

 

「うん! もうすぐで終わるよ~」

 

「手伝うー?」

 

「大丈夫だよ〜にぼっしー」

 

 男子更衣室の扉越しに夏凜と園子が会話する。

 なんてことない会話の最中も、気にすることないように東郷は白濁を口に含む。園子の端正な顔に付着した雄汁を指ですくっては舐めとる姿は下半身に血を巡らせる。

 

「そのっちはしなくて良いの?」

 

「流石にバレちゃうよ。それに昨日もしたから……」

 

 肌艶の良くなったような二人は満足気な笑みを見せる。

  

「わっしーのエッチな姿も見れたしね」

 

「もう! そのっちったら」

 

 身を清めて、改めてスクール水着を着直した二人。

 俺の腕を手に取って扉の向こうを指す彼女は笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、本番はあっちでしちゃう~? わっしーのエッチな身体も、エッチな表情も皆に見られちゃうね~」 

 

「そのっちぃ?」

 

「冗談だよ~。……そ、そんな怖い顔しないでよわっしー」

 

「冗談よ」

 

 ひとしきり冗談を交わした後、東郷が俺に目を向ける。

 大きな瞳に俺を映し、先ほどの情事を思い出させるようにさりげなく俺の身体に触り手を引く東郷と更衣室を出る。

 下腹部を撫でる東郷がこっそりと東郷が耳元に囁く。

 

「学校の水着じゃなくてビキニなら中に出したの?」

 

「……根に持つじゃん」

 

「わっしーの大きくなったからまた新しいの買わないとね~」

 

 扉を開けると昼前の光が差し込む。

 勇者部の少女たちがスクール水着に着替えた姿が勢揃いだった。艶やかな少女たちが見せるスクール水着姿は普段の制服姿とは異なるエロスを醸し出す。

 少女たちを見る俺を他所に、東郷が部長である風に報告する。

 

「風先輩。男子更衣室、清掃完了しました」

 

「はい、お疲れ。エッチな本とか無かった?」

 

「ありません!」

 

 体操服よりも水着の方が濡れても大丈夫だから。

 そんな言葉で始まった勇者部によるプール掃除。

 更衣室とは違い、勇者部の大半を導入して行われたプールはピカピカだ。

 

「しかしだな……これだけピカピカにしても実際に水を張る時まで入れないのは残念だぞ。掃除の後にプールに入って好きなだけマウンテンをビバークしたかったのに」

 

「タマっち先輩。流石に今日いきなり水を張る訳じゃ……今なんて?」

 

「う~ん! ピカピカになったプールを見るのは気持ちいいね!」

 

「ええ、そうね。高嶋さん」

 

 プロの業者顔負けの掃除力を発揮した勇者たち。

 一人欲望を感じる者がいるが、友奈族を始めとして依頼とはいえ普通の学生なら面倒臭がる雑務を勇んで行う彼女たちの行動は賞賛に値するが球子の言葉も理解できる。

 

「フーミン先輩~」

 

「ん? どったのよ乃木?」

 

「近所のプールなら開いてるって~。スク水が嫌って人もいるだろうから一度解散してその後に現地のプールで遊ぶっていうのはどう?」

 

 この暑い時期にプールが空くのだろうか。その疑問は発した相手を見て解決する。

 携帯を片手に金持ちパワーを遺憾なく発揮したらしき園子に何かを察した風は周囲を見渡す。

 

「あー……じゃあ乃木もこう言っていることだけど、このあとプールに行く人ー?」

 

「私は……別に」

 

「行こ! ぐんちゃん!!」

 

「行くわ」

 

 しゅばばっと手が上がっていく光景を見ながら東郷が園子に笑みを見せた。

 

「流石ね、そのっち」

 

「これくらいはね。頑張ったらやっぱり報われたいよね~。分かるんよ~」

 

「じゃあ、園子も報われないとな」

 

「え?」

 

「優しい子にはいっぱい俺は尽くしたいと思います」

 

「私も手伝うわ」

 

「……そういうつもりじゃなかったんだけどな~。しょうがないな~……えへへ」

 

 はにかむ園子と微笑をこぼす東郷。

 流石にスクール水着を着たまま行くつもりはない。

 一度着替えて自宅に帰る中で、俺の隣を歩く友奈はスカートを押さえて告げた。

 

「下着忘れちゃった……」

  

 

 



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第四十二話 お日様の当たる場所に

ゆゆゆいサービス終了するとのことです。
いつかは終わるのだろうなと思いながらも寂しいです。


 これまで幾度となく友奈について東郷と語る機会があった。

 結城友奈が如何に可愛らしい少女かというところから始まり、優しい性格や天然なところ、いざという時は頼もしいところなどエピソードを織り交ぜては東郷と語り合う。あの太陽のような存在にどれだけ救われたのかを。

 

 別に重い話ではない。彼女と過ごす中で培った思い出を共有するだけ。

 俺からは彼女が来る前の友奈の話を、東郷からは友奈と二人きりの時の話を。

 

「──でも友奈ちゃんって気が付くとスカートが捲れていたり脚を上げたり色々と無防備なところが多いのよね……亮くんもチラチラと見るだけであんまり注意はしないし」

 

「いや、周囲に人がいたらちゃんと直させるから」

 

「……やっぱり今からでも助平な精神は叩き直すべきかな?」

 

「東郷さんってそういう所厳しいよね。でも頼んだらコッソリ俺には見せてくれるから好き」

 

「ちゃ、茶化さないの!」

 

「ゔッ」

 

 隣人である東郷は照れると偶にだが急所を狙ってくることがある。

 その際は彼女の手刀を受けることも、回避と共に押し倒して反撃するなど対応は様々だ。そんな風に友奈を話題に、東郷の自室だったり加賀家別邸だったりでじゃれ合うことが多い。

 

 東郷が大好きな友奈の行動は確かに無防備なところが多い。 

 活発的故に生じるパンチラなど男を前にしても行動に隙が多い。誰隔てなく優しいから勘違いする人間も生まれてしまうのでその度に東郷と二人で守りを固めざるを得ない。

 学校のマドンナという訳ではないがその優しさは校内の少年少女を惑わせている。

 

「友奈可愛いからモテるよね。優しいしエッチで」

 

「エッチなのは余計だけどありがとう」

 

「でも誰にも渡さない」

 

「独占欲だ!」

 

「こんな面倒くさい男だけどよろしく」

 

「うん! ずっとよろしく!」

 

 苦笑と共に俺と雑談する友奈はスカートの裾をそっと押さえる。

 普段は捲れて中身の布切れが見えても、指摘されない限り大して気にしない彼女が見せる羞恥の表情は写真を撮りたくなるほどに可愛らしい。

 柔らかな頬を朱で染めて、スカートの布地に手を置く彼女は片手で自らを扇ぐ。

 

「それにしてもまだ暑いね。帰ったらシャワー浴びたいなー。アイスも食べたいね!」

 

「そうだな」

 

「何アイスが食べたい?」

 

「……抹茶とか?」

 

「渋いねー」

 

 普段通りの姿を見せる友奈の笑みは僅かにぎこちない。

 サイドに纏めた髪を揺らしては、昨日見たテレビの内容や学校で起きたこと、俺が見ていない知らない間に起きた友奈視点の話を登下校中に聞かせてくれる。

 それ自体は彼女と過ごす中でよくあることだったが、

 

「うんうん。それで?」

 

「それでね、昨日高嶋ちゃんに勧められた総合格闘技の番組で格好いいキックを見たんだ! えいっ、ていやーって一撃でズバン! って!」

 

「ハイキックか! 昨日見てなかったな~。ちょっとやって見せてよ」

 

「えっとねー…………ぁ、えへへ。今は駄目だよね」

 

 興奮したように拳や選手の口調を真似する友奈は当然のように脚を上げる。

 キックを再現するのはスカートだろうとお構いなしの無邪気な彼女だが本日は違う。上げかけた脚を下ろしては困ったように笑みを浮かべるだけだ。

 

 スカートから覗くのは彼女が好んで履くニーソックスに包まれた太腿。

 僅かに見える健康的な腿肉は生地が揺れる度に陽光に照らされる。

 

「……見すぎだよ」

 

 俺の手を握っては風除けにするかのように身体を近づける友奈。

 大きな瞳で俺を見上げては小さく頬を膨らませては欲望の視線を咎める。

 

「友奈がエッチだから」

 

「私はエッチじゃないよぉー」

 

「でも下半身スカートしか着てないじゃん。エッチじゃん」

 

「こ、声が大きいよ」

 

 人差し指を唇に触れさせて上目遣いをする少女は周囲を見渡す。

 一瞬不安げな顔をする彼女だが、周囲に人がいないことは確認している。ぎゅっと手を握る手に力が籠るのを感じながら下着を着ていない制服少女に目を向ける。

 

「今日の亮ちゃんは意地悪だ……!」

 

「いや俺はいつも友奈には優しいだろ。ところで制服の下に水着を着てきたのは去年もだったな」

 

「ぅぅ……面目ないです」

 

「去年はどうしたんだっけ?」

 

「えっと……園ちゃんに送って貰いました」

 

「さらに前の時は?」

 

「東郷さんに下着の替えを貰いました……」

 

「スケスケだったよね」

 

「楽しみにするのは良いけれど、後のことも考えなさいって怒られちゃったっけ」

 

 上目遣いで子犬のような庇護欲を誘う表情の友奈。

 尻尾があったならば下に垂れ下がっていただろう、あははと彼女は曖昧に笑う。

 暑いが甘えるように抱き着いてくると制服越しに控え目な乳房の存在を感じさせる。下着が無い分、むにゅりと形を変えたのが分かる柔らかさだ。

 彼女の肢体の柔らかさを肌で感じていると、半眼の彼女が小首を傾げる。

 

「その後って大体亮ちゃんにエッチな悪戯とかされたりしたんだよね」

 

「今ここでしよっか?」

 

「それはちょっと……恥ずかしいから」

 

 東郷も園子もプール掃除の後で少し用事があるらしい。

 このあとのプールの準備もあるのだろう、他の少女たちも忙しそうだった。

 

 いつも一緒に帰れるという訳でもないが彼女たちがいれば替えの下着なりの対応もあったかもしれない。先に家に行っててと見送ってくれた二人に事情を話すべきだったか。

 そう呟く俺に友奈はそんなことはないと首を振る。

 

「東郷さんや園ちゃんは頼りになるけど、なんでもかんでも頼っていたら駄目だと思うんだ」

 

「東郷さんなら喜びそうだけど」

 

「うーん……大丈夫、亮ちゃんもいるから安心できるもん。それにもうすぐお家だ!」

 

 さりげなく告げる言葉に滲ませる俺への信頼に思わず息を止める。

 今のような思わせぶりな発言で多くの少年少女たちを勘違いさせてきたのだろう。

 陽光に照らされる笑みを見せる彼女はスカートの裾から手を放して頷いた。

 

 下着が無くても問題ない。

 羞恥心を隠しているのか、或いは本当に慣れてきたのか。

 

「慣れてくると結構涼しいよ」

 

「痴女め」

 

「あー、そういうこと言うんだー!」

 

 慣れてきた頃が一番危ない。

 そういったのは誰だったか。

 

 讃州中学校を出てからそろそろ自宅が見えて来る距離。

 閑静な住宅が広がる中で、すれ違う人も随分と見なくなってきた頃だった。

 

 その突風はまさに神の悪戯のようなタイミングで起きた。

 神樹も見たかったのか、その悪戯な風は少女の制服を揺らしふわりとスカートを捲り上げる。

 

「……ぅぇ?」

 

 まず肌色が目に映った。

 スカートが捲れて露わになったのは下着ではない。

 

 ニーソックスに包まれ、そして隠された太腿の付け根から鼠径部まで。

 花弁のような秘裂とそれを隠しきれぬ陰毛が風に揺れる光景に目を見開く。

 学生であろうとそうでなかろうと乙女ならば簡単に晒してはならない秘所が、一秒程度も無い時間街中で確かに披露される。

 眼福とはこのことを言うのだろう。そしてこの神風は彼女の羞恥の限界を容易く超えた。

 

「~~~ッ!!」

 

 目に焼き付く一瞬は、友奈自身がスカートを手で下ろして終わる。

 顔に紅葉を散らした彼女は目尻に涙を浮かべて無言で悶えた。

 

「ぅぅ~~!」

 

「よしよし。他に人はいなかったから」

 

「……本当に? 見られてないかな?」

 

「俺は見たよ」

 

「わああ……ッ!」

 

 恥ずかしそうに身じろぎする女子学生をあやしながら歩みを進める。

 ポカポカと恥ずかしさを誤魔化すように胸元を軽く叩く友奈を連れて歩く。やがて友奈の自宅が視界に入る距離になると俺はごく自然に彼女の臀部に手を這わせる。

 

 ピクッと身体を震わせる友奈は周囲を見渡して、俺を見上げる。

 薄紅色の瞳に男を映して、逃げることもせず小声で呟く。

 

「……エッチ」

 

 程良い弾力のある尻肉には下着の質感はない。

 スカートの中に忍ばせた手はむわりとした熱気と共に汗ばむ尻肉を撫でると背筋を伸ばす彼女が眉根を寄せた。

 しっとりとした尻肉は独特の弾力を返す中、人差し指で恥丘に触れる。

 

「んっ」

 

 彼女の脚が止まる度に陰唇をなぞる。

 生々しい温かさと共に秘裂から滲む愛液がくちゅりと指先に絡んだ。

 

「……もう濡れてる」

 

「ゃ、ぁっ……」

 

 熱に浮かされたような吐息を漏らし始める友奈。

 陰唇を指で挟み込んでは恥丘をなぞる度に、彼女は無言で俺を見やる。

 腰を引かせる友奈を追いかけ、湿る恥部を指が這う。

 

「こんなに濡らして、下校中ずっと興奮してたの? 俺と話している間も?」

 

「ちがっ、違うもん……」

 

「友奈はエッチで悪い子だね」

 

「悪い、子……」

 

 地面のアスファルトに雫が落ちる。

 肉粒に僅かに触れると彼女は熱っぽい目で荒い息をする。

 

「……うん、そうだね。私、悪い子だ」

 

 結城家に到着する。

 人が通る気配はないから、彼女の耳元に囁く。

 

「たくし上げて」

 

 形の良い耳に顔を寄せるとふわりとした甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 彼女特有の香りと僅かな汗が混ざり合った匂いで肺を満たしながら告げる。

 

「たくし、上げて」

 

 ゆっくりと、区切って命じる。

 お願いではない。ただ主がメイドに何気なく命令するかのように。

 

「────」

 

 柔らかな唇が震えて、上目遣いをする瞳が見開かれる。

 大きな瞳を揺らしては周囲に見られることへの不安と喜悦に喉を鳴らす。ブラジャーもショーツも身につけず秘所を濡らすようなはしたない少女の手がスカートの裾を掴む。

 

「……ッ」

 

 チラリと周囲に目を向けて、やがて俺だけに見えるように角度を変えると、まるで舞台の幕が上がるように彼女のスカートが友奈自身の手で上げられる。

 短めの腰布が捲られてハイニーソから覗く太腿の肌色の面積を広げていく。

 健康的な脚は僅かに内股になろうとしては、妙なところで勇気を発揮したのか閉じようとする脚を控えめながらも外側へと開こうとする。

 

 は、ふ、と吐息しながらも手は止めない。

 興奮か羞恥かジワリと涙で瞳を滲ませながらも日に焼けていない肌を見せていく。

 

 さきほどの神風とは異なり、今度はジックリと。

 友奈自らが、命じられるままに、秘部を見せる。

 

 滑らかな太腿の内側には透明な雫が垂れ、鼠径部と恥部が再び姿を見せる。

 何か物欲しげに恥部を震わせては恥毛から覗く肉粒が触れて欲しそうに尖っては震える。人影はないものの、いつ人が通るか分からない公道で彼女の秘所は愛液で濡らしていた。

 ツンと肉粒を指で弄るとビクッと身体を硬直させ、引いた腰に追いすがる。

 

「~~ぁっ」

 

 敏感な部分を触れられて友奈が掠れた喘ぎを漏らす。

 頬に差した朱は色濃く、震えた腰肉を支えると淫らな熱を帯びていた。

 

「友奈」

 

「りょぅ……ちゃん」

 

 甘い声音は何度聞いても鼓膜を優しく震わせる。

 スカートを下ろして、薄く目を開いた友奈が甘い声で鳴く。

 他の人には見せられない男を求める顔をしていて、

 

「これ以上は遅くなるから、また後でね」

 

「──え」

 

 終わりを宣言すると、聞き間違えたと言わんばかりに少女が俺を見る。

 冗談だよね、と俺の腕に手を置くも、頭を振って友奈から一歩距離を取る。

 

「なん、え、なんで……」

 

「あんまり遅くなったら怒られるだろう? 人も来るかもしれないし」

 

「あ、えっと……」

 

 唖然と口を開ける彼女に背を向ける。

 彼女を愛でる手を止めて、密やかな遊びを終わらせる。

 

「またね」

 

 背後から強い視線を感じながらも、一歩進む。

 二歩、三歩と彼女との距離が生まれていきながら歩みを止めないで。

 

「──待ってよ」

 

 四歩目で俺の脚が止まった。

 否、止まったのではない。止められたのだ。

 抱き枕にするように、俺は友奈に背後から強く強く抱きしめられていた。遠慮もない抱擁は、失いかけた少女の熱と甘みに身体が震える。

 

「……そんなのずるいよ」

 

 縋るような、咎めるような言葉を友奈から聞く。

 以前だったらただ我慢して曖昧に笑うだけだった彼女から。

 

「待って」

 

 渇望するように、酷く求められていると感じさせる声音で。

 

「行かないで」

 

 他の誰でもない自分が求められていると。

 その吐息が、身体が、腕の力強さが、その眼差しが。

 

「どうして欲しいの?」

 

「……続き、してよ」

 

 続きの快楽を求めるということは。

 それを行える俺を求めていることと同義だから。

 

「────」

 

 ふにゅっと制服越しに乳房の存在を感じさせる。

 背中に身体の全面を押し付けて、柔らかく細い腕が俺の身体に触れる。

 

 無邪気さとも明朗快活とも程遠い彼女の吐息。

 肩に顎を乗せて、此方を振り向かないからと耳元に直接囁く。

 

「今ね」

 

 頬に触れた唇からは底知れぬ熱を感じさせる。

 俺を抱く腕が僅かに下がり、硬くなった下腹部に触れた。

 

「……お母さんとお父さん、家にいないから」

 

 

 

 

 

 

 友奈の身体は凄く柔らかい。

 肉体的な意味合いではどの少女たちも驚くほどに柔らかいのだが、彼女の場合は柔軟的な意味合いで凄く柔らかいのだ。柔軟に関しては勇者部で随一ではないだろうか。

 そんな彼女が片足を大きく広げて、I字になる。

 

「……」

 

 すっかりホカホカになった彼女の花弁が口を開けては涎を垂らす。

 今か今かと雄棒を待つように、むっちりとした太腿を上げていた。

 

 既に制服を脱いで身軽になった友奈の恥部に反り立つ勃起を押し付ける。

 にじゅりと水音を立てながら先端が媚肉と擦れる度に彼女を俺を見る。

 

 期待している。それだけは口に言わずとも分かった。

 やや虚ろな薄紅色の瞳は濡れ、羞恥よりも喜悦に身体を揺らす。

 

「ぁぅぅっっ……!」

 

 彼女の片足を肩に掛けて、腰を掴んで真下から突き上げる。

 ぬぷっと竿が根本まで入り込んでは、奥深くまで届いた。

 

「ひ、ゃぁっ……ッ!」

 

 一突きで達したのかぱくぱくと口を開けた友奈。

 虚空を見上げる彼女の入り口を怒張で抜き差しを繰り返す度に膣襞が蠕動する。奥の奥まで突く度に甘露が竿を伝うのが分かった。

 

「ひゃ、んぁ、ゃっ」

 

 甘い声をこぼす彼女の乳房を揉むと身体を震わせる。

 腰を引かせても、根本まで竿を押し込むと俺の腕の中で彼女は体勢を崩す。

 

 少女の最奥は俺専用であるかのように竿を呑み込み引き締まる。

 一突きごとに蠕動する肉穴は、膣襞の一つ一つが俺の子種をせびる。悪い子だと告げると、俺の意思を無視して締まりを強め、俺の腰を勝手に動かさせる。

 

「んんっ、ぁ、ぁっ、ぁあっ!」

 

 甘く蕩けた声音で友奈が抱擁を求める。

 鼠径部が彼女の腿を叩くと、結合部からいやらしい音が聞かせる。

 

 口端から涎を垂らして、頭を振る度に髪の毛から甘い芳香が漂う。

 彼女の自室で、部屋の壁に彼女を怒張で串刺しにしては腰を揺する。

 

「ぁぁ……! あっ! ぁんっ」

 

 ぱんぱんと肉を叩く音を聞かせながら、結合部に手を伸ばす。

 奥まで貫く度に新たな蜜が流れては恥毛に絡まる。生え揃った若草を指で撫でては硬さを帯びた肉粒を指で擦ると友奈の媚肉が精子を搾り取ろうと引き締まった。

 

「んっ、んんっ、ぃクッッ……!!」

 

 汗の粒を飛ばし背筋を反る友奈。

 最後の一突きに極上の快感が背筋を這い上がり、視界を白く染める。

 びゅうっと温かい汚濁で彼女の中を汚していく。

 

「ふわぁぁ……!」

 

 吐精に目を閉じると、子種を注がれる友奈の声に耳を傾ける。

 絶頂に身体を震わせながら、甘えた鳴き声でそっと胸に頬ずりをする。

 小動物の愛情表現なのかそっと甘噛みをしては、肩に歯形を残した。

 

 

 

 

 

 

「白髪増えたね」

 

 頭皮を自分ではない指が這う。

 マッサージも兼ねているのかトントンと指で押しながら髪の毛を撫でられる。自分以外の他人に髪を触られる感覚はなかなか慣れるものではない。

 

「若白髪って言うの? なんか格好良いね!」

 

「染めろとか言わないんだ?」

 

「え? 染めたりしなくても全然普通だよ」

 

「────」

 

「昔に比べたら確かに白いなーって思うこともあるけどいい感じだ! 亮ちゃんは亮ちゃんだよ」

 

「そうかな?」

 

「うん!」

 

 柔らかな掌が俺の頬を撫でる。

 壊れ物を扱うような手付きに優しさと愛おしさを感じさせる。まるで力をこめたら壊れてしまうかのような、絶妙な力加減。

 薄紅色の瞳はどこまでも俺を見つめていて。

 

「今から行ってもプールに間に合うかな?」

 

「遅刻は確定だろうな。ごめん」

 

「ううん。私こそだよ」

 

 ぎゅっと抱く枕にするように彼女の胸元に頭を抱かれる。

 ふにゅりとした感触と耳をすませば聞こえる鼓動に腕を伸ばす。滑らかな背中を抱き寄せて、彼女の胸元で目を閉じれば心地よく意識も、何もかも手放してしまえるのではと。

 彼女に抱かれていると、そんなことを思ってしまった。

 

「こうして亮ちゃんと抱き合っているとね……すっごく心がふわふわする」

 

 ゆっくりと身体を起こしてからも、お気に入りの人形を放さないかのように抱擁を続ける友奈。その裸体を手で這い、慎ましい母性の象徴を掌で揉み続けると、ゆっくりと衣服に手を伸ばす。

 事後感を漂わせる少女の着替え姿を見ながら一言。

 

「ブラを着け直す時の動きとか仕草がエッチだなって思う」

 

「……恥ずかしいからあんまり見ないでね」

 

 えへへ、と恥ずかしそうに笑いながら事後処理を始める少女と共に着替える。友奈に誘われて彼女の自室で行為に及んだ時間は短いようで長い気がする。

 ピンク色のブラを着け直そうと背中に手を回す彼女がなんてことないように告げる。

 

「亮ちゃんといると、あっという間に時間が過ぎちゃうね」

 

「エッチが上手いってこと?」

 

「気持ちいいのもそうだけど普段から一緒にいると楽しいってこと!」

 

「友奈はあれだよね。俺の心をキュンキュンさせるよね。もう一回する?」

 

「ひゃう!? ……もう、どこ触ってるの」

 

 素直な少女の笑顔を添えた一言は心を晴れさせる。

 無邪気な彼女を見ているだけで、この世界も悪くないのではと錯覚させる。

 

「あ」

 

 着替え途中だった友奈の困り声、その原因は見るまでも無かった。

 端末から響く樹海化警報、バーテックスが、敵は此方の事情も状況も考えずにやってくる。

 

 精神的な年齢をこの世界で積み重ねても学生の彼女たちは遊びたい。

 タイミング悪く訪れてきては、着替え途中で出撃したことだってあるらしい。脳筋の若葉は構わず戦闘を始めてひなたに怒られたこともあるが、敵は時間を考慮してくれる訳ではない。

 

「すぐに戻るね」

 

 行ってくるねとか。またねとかではない。

 友奈との挨拶はいつからか『戻る』という言葉に収束していった。

 まるで、こちらが置いて行かれることに対して何を考えているのかを分かっているように。

 

「うん」

 

 キスも抱擁もなくて瞬き一つで彼女は消える。

 幾度も感じる喪失感、その度に壊れそうな屈辱感と絶望感は長くは続かない。

 

 有言実行。

 友奈の言葉は咄嗟に吐かれた嘘ではない。

 

 すぐに戻る。それは必ず守られるだろう。

 それが破られる時は彼女が死ぬ時で、俺も死ぬ時だろう。

 

 10分か、15分か。

 もう少ししたら一人で帰ろうかと思い始める頃に、友奈の部屋の窓が開いた。

 

「──ただいま!」

 

「……おかえり。玄関はそこじゃないよ」

 

「えへへ、見逃して」

 

 結城家のベランダの窓から入ってくるのは東郷だけではない。

 怪我一つなく、向日葵のような笑顔で無力な存在に近づいてくる友奈。

 ピンクを基調とした勇者服を纏った彼女は、

 

「戦っている途中に話してたんだけど、これなら間に合うね! プール!」

 

 両腕をこちらに差し出す友奈は、俺が何かを言う前に抱擁する。

 そのまま脚を持ちあげて強制的にお姫様抱っこの体勢にする彼女に遅れて口を開く。

 

「ゆ、勇者の力の私的利用は駄目とか誰か言ってなかった?」

 

「……大丈夫!」

 

「なんでお姫様だっこ?」

 

「え? 私がしたいから! 亮ちゃんを抱きたい!」

 

 有無を言わせずに行動する姿はいったい誰に似たのか。

 窓辺から外へと連れ出そうとする彼女の拳は幾千の敵を滅ぼしてきたのに、俺を持ち上げる力加減は絶妙だった。

 首に腕を回すと、その薄紅色の瞳を俺に向けて、薄く微笑む。

 

「お疲れ、友奈。無事に帰ってきたので気持ちいいこと一杯してあげよう」

 

「うーん。それも嬉しいけど」

 

「けど?」

 

「……エッチなことだけじゃなくて、普通に遊びたいな。無理にエッチなことをしなくったって、私は亮ちゃんの前からいなくなったりしないから」

 

「────」

 

「約束するから。前にも言ったけど、自分のこと負担だなんて思わないで」

 

 口元に指を置きながら告げた友奈の言葉に閉口する。

 隙も無防備なところも多い彼女だが、それは目の前のことに全力だから。

 

 いつだって全力で、本気で。──常日頃から偽りなく生きている彼女の言葉だから。

 凛々しい姿を見せる彼女に外へと、お日様の当たる場所へと連れ出される。

 景色が移り変わる中で、変わらぬ彼女の顔から目を逸らして深呼吸する。

 

「……友奈」

 

「何?」

 

「せめておんぶにしてくれ」

 

「やだ! このまま行く! 落とさないから大丈夫!!」

 

「そこは心配してないよ」

 

 

 



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第四十三話 みんなでプール

 世のため、人のためになる事を進んで行える部活動が勇者部だ。

 ゴミ捨てや迷いネコを探したり、劇を披露したり。両手があれば足りる程度の人数で物理的に対応出来なかった依頼も、若葉や千景などの西暦組や亜耶といった防人組などの神が見初めた少女たちの加入により対応できるようになった。

 勇者らしく訓練だけしてれば良い。そう声高に告げる訓練大好き少女もいたが周囲の言動に感化された結果、今では立派な勇者部の戦力の一人である。

 

 ありがとう、そんな一言の為に彼女たちは依頼に真摯に取り組む。

 奉仕精神を育んで本気で他人の為に行動が出来る。

 そんな少女たちがいると前世の俺が聞いても鼻で笑っていただろう。

 

「まずこんなブラック企業ならぬ部活に入って、皆文句言わないのが凄いよな」

  

 気がついたら戦力の一人となった俺も決して他人事ではないため、ジャンプを繰り返しては車よりも速く移動をする奉仕精神の塊に言葉にならない衝動をぶつける。

 勇者服の隙間から慎ましくも掌に馴染む肌を弄ぶと、長くなったピンクの髪を風に揺らす友奈は頬を緩ませながらも、ぎゅうっと俺の身体を抱く腕に力を籠めて自らと密着させる。

 地面に着地すると僅かに眉根を寄せた少女がめっと叱る。

 

「もう、悪戯しちゃ駄目だよ。危ないからね」

 

「ああ、ごめん。友奈の横顔が凛々しくてつい」

 

「……もうすぐ着くから我慢してね」

 

「分かったよ、もうしないから」

 

「うん。ぎゅー……」

 

 再び地面を蹴って、周囲の景色を勇者が置き去りにしていく。

 弾丸のように跳びながら、彼女の腕の中から見る臨場感のある景色は流れ星のように通り過ぎていく。そんな景色よりも視界を上に向けて可憐な少女の横顔に目を向ける。

 

 首に腕を巻かれても微動だにしない少女の横顔。

 きめ細かな肌と確かな意思を宿した薄紅色の瞳は遠くへ向けられている。

 十数分前まで淫欲に溺れ、羞恥に涙を浮かべていた人物とは思えない彼女は普段を知れば知るほどに凛々しさと天然さでギャップ差が生まれる。

 こういう所で東郷の脳は鷲尾時代から甘く狂わされてしまったのだろう。

 正しく、無自覚の淫魔とも呼ぶべき彼女は俺を抱き上げたまま跳躍を繰り返す。

 

「……!」

 

 ジッと横顔を見ていたから、彼女が何かを口にする前に気づけた。

 友奈の大きな瞳が向けられる先、遠景でも分かる大きな建物が見えてきた。

 

 讃州市と丸亀市の中間ほどの距離にその建造物がある。

 瀬戸内海を一望することが出来るプールやスパを楽しめる施設だ。元々建物自体はバーテックスの襲撃を受けた際のシェルター及び勇者の拠点の一つとして作られていたという。

 星屑にコンクリートが嚙み砕けないとは思わないがひなた曰く霊的な処置が施されている拠点は、普段は市民のスパ施設として大赦に経営されている。

 

「凄いよね~。ジムとか旅館とか色々合体しちゃってるよ。かめやの三号店も入っている!」

 

「そうだな」

 

「赤嶺ちゃんも来ているといいね」

 

「──、ここってゾンビが来ても生きていけるようにをコンセプトにしたとかなんとか」

 

「そうなの!?」

 

「流石に冗談だけど数年前に乃木家主導で改装したらしいし、年々遊ぶ施設とか色々詰め込まれているから。最終的にはここで皆と遊んでうどんを食べてイチャイチャするんよ~って」

 

「アハハ! 園ちゃんらしいね」

 

 マイペースなお嬢様についての話をしていると、普段と比べて無人となった施設に脚を踏み入れる。俺を抱き上げた腕を下ろすことなく堂々と進む姿に思わず口を噤む。

 

 スパ施設を勇者部で使用する時は気を利かせてか、貸し切りで施設を使わせて貰うことが多い。

 最初は風を始めとした少女も遠慮していたが最近では年に数回ほど使用させて貰っている。無人の施設の中を勇者服で歩く友奈はクルクルと俺を抱いたまま、

 

「夏の勇者部五箇条! よく遊んでよく食べるー!」

 

 快活に告げる彼女の言葉には賛同しかない。

 普段は奉仕に専念する彼女たちにも休む場所は必要なのだ。蓄積された疲れを取る為に大赦が用意した貢物とも言えるのがこの施設だ。

 大赦という組織に貢がれる対象、友奈に抱かれたままの俺だったが、ふと彼女の頬に触れる。

 柔らかな頬は少しだけひんやりとしている。

 

「……もしかして寒かった?」

 

「え? うーん……ずっとジャンプしていたからかな。最近は急に暑かったり寒かったりコロコロ気温も変わるよねー。でも私は今日も元気だ!」

 

 友奈の告げる通り、バーテックスの影響か気温の変動も激しい。

 急に雪が降るほどではないが寒暖差で寝込む人も多いほどだ。スリスリと俺に頬ずりをして暖を取る友奈は元気な様相を見せ、その様子になんとなく襟を捲って彼女の肌を覗いて怒られる。

 相も変わらず傷一つない肌色と膨らみと先端を拝むと、半眼で耳元に囁かれた。

 

「……エッチなこと、したいの?」

 

「友奈とだったらいつでも」

 

「もう……」

 

「──いや、いつまでイチャついてんのよ」

 

 えへへ、と可愛らしい笑みをこぼす彼女を見上げていると声が掛かる。

 呆れ声に聞き覚えがあって、友奈と共に目を向けると水着の美少女。

 

「美っ!? きゅ、急になによ! というか何でお姫様抱っこされてんのよ!」

 

「え? 私がしたかったから亮ちゃんを抱いてるんだ! それよりも……」

 

 早口でツッコミを入れながら二人分の視線に身体をくねらせる夏凜。

 俺と友奈は一瞬視線を交わしながらも、彼女の肢体を舐めるように見る。

 

「な、なによぉ……」

 

 メイドビキニ。見覚えのある、黒を基調とした水着を夏凜は着ていた。

 健康的な太腿をスカートから覗かせ、白いエプロン付きの丈の短いスカートが辛うじてボトムスを隠す。リボンをあしらった付け襟に引き締まった腹部と慎ましい双丘を包むトップス、手首にはカフスをつけ、やや赤らんだ顔と頭頂部にはホワイトブリムが乗っている。

 普段のツインテールは誰かが弄ったのか編み込まれているという気合いの入りようだ。

 

 それらを見て、友奈と顔を見合わせて、代表して俺が口を開いた。

 

「夏凜ちゃんが可愛いなって」

 

「ねー」

 

「な!?」

 

「その恰好をするんだからご主人様って呼べよ」

 

「はあ!? 偉そうに、いい加減に友奈から降りなさいよ」

 

「わあ、ボトムスまで一緒だぁ……」

 

「ちょ、捲んなあ!」

 

 何でもないような態度で友奈が夏凜のスカートを捲る。

 彼女のショーツが覗く訳でも、恥丘が覗く訳でもなく、ピンクのリボンの付いた黒のボトムスが露わになり、目の前のメイドが慌ててスカートを下ろす。

 異性間でも顔を赤くして声を荒げる夏凜の事情については彼女の背後から伝わる。

 

「実は罰ゲームで着ることになりまして……」

 

「樹ちゃんも着てるの!?」

 

「樹は俺のこと、ご主人様って言うよな?」

 

「……ご、ご主人様っ」

 

「これだよ、これ。この従順さがたまらんのよ。ツンデレも見習って」

 

「馬鹿言わないで!」

 

 勇者部の妹、否、樹もまた普通の水着ではなくビキニメイドとして現れる。

 一瞬、メイドビキニが標準の水着になった世界に来たのかと脳内を弾けさせる俺の視線をくすぐったそうに樹は身体をくねらせる。

 罰ゲームと口にした彼女は恥ずかしそうにしながら俺の要求に答えつつも、

 

「駄目ですよ夏凜さん。負けたんだから皆のメイドにならないと」

 

「ぐっ」

 

「罰ゲームなんですから」

 

 年下に諫められた夏凜はぐぬぬ……と悔しそうな顔を見せながらも、上目遣いで俺と友奈を見上げる。羞恥か屈辱故か、その瞳に涙すら浮かべる姿は嗜虐心をそそる。

 友奈すら黙って(そして俺を抱いたまま)彼女の次の言葉に目を向ける。

 

「ご、ご主人、さまぁ……」

 

「夏凜ちゃん……可愛いね!」

 

「そうですよ夏凜さん。今日は完成型メイドとして皆に奉仕をしないと」

 

「……はい、メイド長」

 

「メイド長!?」

 

 気づかないうちに序列が出来上がっていた。

 違います誤解なんですと首を振る樹に頭を下げてはちょっとした報復に笑みをこぼす夏凜。一体何があったのかを聞くと、プールの匂いを漂わせる目の前の少女たちは俺と友奈が来る前に遊んでいた時のことを話しだす。

 

「流れるプールで泳いだり、波が出るプールで普通に遊んでたんだけど」

 

「いつの間にかチーム別でバレーや水鉄砲での撃ち合いをしたり」

 

「で、それだけじゃつまらないからって、負けたら罰ゲームとしてこんな格好して他の子の言いなりをすることになったのよ」

 

「二人とも凄く似合っているよ!」

 

「ありがとうございます……ところで、どうして友奈さんが亮さんを、……その、お姫様だっこしているんですか?」

 

「えっ? うーん、なんでだっけ?」

 

「しっかりしなさいよ」

 

 メイド二人に輝かしい笑みを見せる友奈は薄紅色の瞳で俺を見下ろす。

 なんとなくメイドビキニか普通の水着か選べと言外に告げられているような気がしたので、普通の水着でとアイコンタクトをする。

 

「アタシの妹にメイドの恰好なんて百年早いわぁあああ!! 女子力スマッシュ!!」

 

「甘い! 一閃っ、ひなたーーっ!!」

 

「若葉ちゃ〜ん♡」

 

「そんな破廉恥な物を着せたらひなたのムチムチ具合が皆に見られてしまうだろーー!!」

 

「若葉ちゃん?」

 

 バトルロワイアルなのか。

 或いは指定した者の水着を元に戻せるルールでもあるのか。ビーチバレーからいつの間にかドッチボールになったらしい白熱しているバトルを余所に友奈は俺を夏凜に渡す。

 

「夏凜ちゃん。亮ちゃんのこと持てる?」

 

「いや、なんでコイツを持たないといけないのよ」

 

「……あっ、流石に勇者にならないと亮ちゃんは持てないよね、ごめんね夏凜ちゃん」

 

「はあ? 馬鹿にしないで。これくらい余裕よ。……ッ! き、筋トレになるわね」

 

「じゃあ、私着替えてくるから!」

 

 文字通りの荷物扱い。勇者からメイドに俺が託され、ついでとばかりに頬にキスをされる。

 小悪魔のような笑みに喜色を見せて、衆人の中での行為でも堂々とした姿は勇者そのものだ。

 

「……まったく、しょうがないわね」

 

「いや、そろそろ下ろしていいぞ夏凜。おい無視するな」

 

「樹も持つ?」

 

「流石にそれは……」

 

 そろそろ下ろして欲しいがチョロ過ぎて心配になってくる夏凜の細腕に持ち上げられる。樹や敗北者の証たるメイドビキニを着た他の少女たちに見守られてプールに進む。

 普段から鍛えているからか、思ったよりも安定感のある夏凜に連れられる。

 友奈よりも薄い双丘をさらりと撫でると、無言でメイドが睨むも俺を放り出すことはしない。

 

「今凄い自然に触りましたね」

 

「樹。言葉にしなくていいの」

 

「俺と高嶋さんの手が千景の胸を少し大きくしたのは実証済みだよ、樹」

 

「……! そうでした。あ、あの、その手をお借りしても良いですか?」

 

「ちょっと待ちなさい! 何をする気よ」

 

「そこの茂みで一揉みする?」

 

「お願いします!」

 

 乳房を大きくする為ならなんでもします。

 そんな必死さを感じたのか夏凜は何も言わず、俺は樹の胸を揉む。

 姉を見る限り成長の可能性はあるが、いったい何が原因なのか夏凜と似たような絶壁具合だ。

 コリコリと乳首を指で擦られる度に肢体を揺らすメイドに話しかける。

 

「んっ……」

 

「ヘイヘイお嬢ちゃん、最近どうだい?」

 

「そうですね……お姉ちゃんのご飯を食べて、園子さんの真似をして寝る時間を増やしているんですけど……」

 

「別に胸なんて大きくたって邪魔よ……っ」

 

「夏凜さんだって揉んで貰っているじゃないですか……ぁっ」

 

「手持ち無沙汰なだけ……だからっ、んぁ!」

 

 とはいえ、本気で悩んでいる少女に対して笑うことなど出来ず、真面目な顔で合法的に彼女たちの胸を揉む。トップスごと柔らかな乳肉を揉みながら大きくなりますようにと祈りをささげた。

 これから樹の乳房が大きくなるかは誰にも分からない。

 恥ずかしがるどころか、無言で期待の目を俺に向けて来る彼女からそっと目を逸らした。

 

「──はい、本日の施術は終わり」

 

「ありがとうございました」

 

「ちょっと大きくなってきたと思うよ」

 

「本当ですか!?」

 

 水の流れる音と少女たちの喧騒が聞こえてくる。

 律儀にルールを守っては水着を着替えた彼女たちもノリは良いのか、或いは既にそれらが終わった後なのか、誰も何も言うことはない。

 

「友奈は着替えに行ったけど、亮之佑は着替えなくて良いの?」

 

「もう着替えてる」

 

「流石ね。これでいつでもプールに叩き落せるわ」

 

「……夏凜?」

 

「なによ」

 

「思ったよりも早くコスプレしたな。エッチだ」

 

「……ッ、これは、今日はそういうのじゃないわよ。エッチとか言うな!」

 

「じゃあいつまでその恰好でいるんだ? 夏凜の普通の水着姿も見たいな」

 

「あとで見せてあげるわよ。この後のリベンジマッチをした後でね。そのためにも亮之佑は私のダンベルになりなさい」

 

 メイドに筋トレ器具扱いをされたまま、プールの外縁部に出る。

 広々とした水面を泳ぐ少女や、バレーや水鉄砲で遊んでいる者、特に意味もなく水面にプカプカと浮いている少女や、そもそも水中に入ろうともせずに読書をしたりボードゲームをしたりと自由な空間が目に入る。

 いずれも、色とりどりの水着と肌を見せる可憐な少女たちだ。

 

「アルフレーッド! アルフレッドはおりませんの!」

 

 パラソルの下にピンクのビキニを着たブロンドヘアの美少女が声を上げていた。

 白い丸テーブル、白いチェア、白い陶器のティーポットとカップ、艶やかな唇をカップに触れさせてアイスティーを飲むのは事あるごとに名家の令嬢を強調する弥勒夕海子だ。

 お家復興という目的の為に防人で活躍していたという彼女は風や千景と同じく一年年上の少女。

 外見はお嬢様と呼べなくはないのに、色々と残念扱いされている少女だ。

 

「見られて減る物でもないですわ。私の身体は磨き上げられていますもの」

 

「昨日、必死になって身体洗ってたもんね」

 

「お黙りなさい」

 

「チュン助とゆみきちは仲良いね~」

 

 水着姿の彼女は普段から制服越しに存在を主張していた胸を張る。

 たゆんという音が聞こえるような双丘に舌打ちする音がどこかで聞こえた。豊満なそれを堂々と主張しながらも、周囲の視線など気にしないという態度でカップを傾ける夕海子は、

 

「あら……おかしいですわ。どうやら執事のアルフレッドはお休みでしたの」

 

「いや、弥勒さんの所の執事はいつも休みじゃない」

 

「メイドの小雀が何か言いましたか?」

 

「別に~」

 

 彼女は一人寂しく紅茶を啜っている訳ではない。

 丸テーブルを挟んで本物のお嬢様が座っている。いつものハーフアップの髪型にカラフルな桜の花の装飾が施された薄紫色のミニスカ付きビキニは、彼女の柔らかくも白磁の肌を映えさせる。

 防人組のやり取りに笑みをこぼしながらもメモに何かを書く園子はチラリと此方に目を向ける。

 

「そんな日もあるよ~。なら、今日は私の執事のカガフレッドを呼ぶんよ~」

 

 執事を呼ぶ柔らかい声がした。ついでに此方に、俺に向かって手を振っていた。

 普段は隠されている乳房も揺れ動き、少女の細い腰肉や太腿に思わず目が向かう。学生とは思えない色気を感じさせる存在に歯軋りする音が聞こえたが目は向けない。

 勇者部でも度々発生する胸部のぼた餅を持たざる組と持つ組の溝は深いのだ。

 

「紹介しよう。執事のカガフレッドとメイドのにぼっしー!」

 

「誰がメイドよ」

 

「ええ~、にぼっしーだったら私の専属にしちゃいたいくらいに可愛いんよ」

 

「なあっ!?」

 

「カガフレッド~、私アイス食べたいな~」

 

「それでしたらお嬢様。足元にあるクーラーボックスから高知名物アイスクリンをお取り下さい。夕海子様もどうぞ。ああ、もちろんお付きの方も」

 

「あらあらまあまあ! アイスクリンとはカガフレッドもやりますわね。では頂きましょうか」

 

「役に入り込むの早くない?」

 

「カガフレッド……今日も夫はいないから、今夜も寝室に来てくれる?」

 

「しかも不倫設定!?」

 

 見た目はアイスクリーム、専門的な分類ではかき氷に該当するスイーツ。

 高知に関しては正直に言って、鰹と千景くらいしか分からないが後悔はない。あーんと口を開けて待っている園子の口にアイスクリンを放り込んで、樹の口にも同じく放り込む。

 

「というか、なんで亮之佑さん夏凜さんにお姫様だっこされているの!?」

 

 俺も一口食べてみると独特のサクサクショリショリした食感を楽しむ。

 癖になりそうな味わいを楽しみながら、夏凜にも食べさせてみる。ほんのりと頬を赤くしながら、しかし両手は空いていないので仕方ないとばかりに開いた口にスプーンを入れて、

 

「関節キスだ」

 

「ぁ、ぁ、……ぬわぁああッ!!」

 

「カガフレッドーー!!」

 

 一言添えた結果、羞恥に顔を赤くしたメイドにプールへと投げ出された。

 貧乳を触るのは良くても間接キスは駄目らしい。水中に沈み込んでいくと深い底で人魚のようにヌルヌルと身体を動かしては、底にある貝殻の玩具を取っている少女と目が合った。

 日に焼けた健康的な肌と水泳技術は旧時代の沖縄県で培われた物。海を愛し、海に愛される勇者、古波蔵棗が急速接近してくる。

 海──否、プールの救助隊でもしているのか俺の背中を掴んでは浮上した。

 

「掴まれ」

 

 無言で腹筋を掴ませてプールの浅瀬、子供でも脚のつく場所に連れて行って貰った。

 

「ぷはぁ………ありがとうございます、棗さん」

 

「礼には及ばない。……前よりも泳げるようにはなったが深い所は厳しいからな」

 

「今度何か差し入れしますね」

 

 人を浅瀬に届けた少女は再びプールの深淵へ。

 彼女は陸上よりも水中の方が活き活きとしているのだ。今度何か海鮮料理を風と共に作って労おうとクールに素潜りを披露した棗の影が見えなくなると前を見る。

 浅い場所は流れるプールとなっており比較的若い少女たちが遊んでいる。

 

 キャッキャと戯れていた年下の少女たちはプールから浅瀬に出された俺に気づいた。

 最初に近寄ってきたのは園子(小)を始めとした小学生組だ。

 

「かっきー先輩だぁ〜! ハグ〜」

 

「おーい、亮之佑ー! 鬼ごっこに入るかー!」

 

「はいるー!」

 

「はぁ〜ん♡ みんな可愛いなぁもう……待ってー須美ちゃん!」

 

 若葉たちは未だに白熱したバトルを繰り広げている中で幼い少女たちの戯れに思わず眦が緩む。何がそんなに彼女たちを熱くさせているのかと思いながら年下の遊びに混ざる。

 決して熱量的に途中参加は出来そうにないからという訳ではない。

 なんとなく今日は平和な方で普通に遊びたかった。

 

 やっていることはシンプルで、水を掛け合って追いかけ合う。

 鬼ごっこの参加者は小学生組や中学一年生組が大半で構成されていた。可愛らしいワンピースやセパレートタイプの水着を着ている少女や背伸びをしてビキニを着た少女もいる。

 

「フハハ! ビバーク!!!」

 

「ひゃあん!? ……タマっち先輩あとで覚えといて。……待って須美ちゃ~ん」

 

「こっちに来ないでくださ〜い!」

 

 追い掛ける鬼は土居球子、続いて伊予島杏。

 タッチをされたら鬼になる為、追われる側も水鉄砲で抵抗を見せる。パシャパシャと浅瀬を走るのは足腰の運動にもなる中で、園子(小)が俺の背中に隠れる。

 

「ハァ……ハァ……えへへ、楽しいねかっきー」

 

「そうだな」

 

「こういう所に来るのはかっきーがいなくなる前までだったから」

 

 走り回ったのだろう荒い呼吸で俺に背後から抱き着く令嬢。

 既に成長を始めている少女の柔肌を腰に感じながら、隙あらば抱き着いたりハグを求めたりと甘えて来る彼女を俺は退けることは出来ない。

 今とはやや髪色の違う長い金髪を撫でながら、

 

「毎年二人っきりでこういう施設に来てたっけ」

 

「うん。……でも、皆ともこうして遊ぶのは楽しいな~って思うんよ」

 

「園ちゃんが楽しいと俺も嬉しいよ」

 

 うりうりと頭を擦り付けては子犬のように甘えてくる少女。

 このまま家にお持ち帰りしたくなるのは園子だからか。ロリコンになってしまったのか。

 

 自分の新たな可能性に慄く間にも俺と園子(小)は動く。

 何度か鬼の入れ替わりがある中で、遂に追われる側が鬼と共に此方に走ってくる。

 鬼に人気なのは須美、そしてセクハラに定評のある球子は怪しい手の動きをしていた。

 

「ヒャッハー! タッチって、うぁあああ!?」

 

「ふえ?」

 

 球子が転んだ。

 浅瀬とはいえ足場はやや不安定な場所だ。珍しくはない。

 その姿に皆で笑って、また追いかけっこをするだけの話だ。

 

 問題は球子が伸ばした指先にある。

 伸ばした手は辛うじて須美は回避したが、彼女の水着の紐に触れた。

 

 年上の少女たちの真似か、影響を受けたからか奥ゆかしい彼女もまたビキニの姿を披露していた。いずれ東郷になる少女の身体は小学生ながら大人顔負けのスタイルの良さだ。

 最初の頃は肌を隠すようにワンピースタイプの水着だったが、年を経るごとに少しずつ肌面積を増やしていたのだ。

 

 そんな彼女の未だ成長中である豊かな双丘を支えるトップスは背中で結び目が作られており、それを球子の指が解いた。

 白とネイビーブルーを基調としたビキニ、フリルがついた可愛らしい生地がずれる。

 

 葡萄の皮を剥くように、ぷるんと白い双丘と薄いピンクの先端が露わになった。

 ラッキースケベの降臨だ。

 球子はともかく須美が倒れると怪我をしてしまうかもしれない。悲鳴を上げる前に目の前で倒れ込もうとする彼女の前に腕を出すと、掌にむにゅりとした感触が伝わる。

 倒れ込むのを阻止して、体重の掛かった乳房が掌で潰れた。 

 

「きゃあああああぁーーーっ!!?」

 

 自身に何が起きたのか、誰に見られたのかを理解した須美の悲鳴は耳によく残った。

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜、もう夜になっちゃった!」

 

 そんな風なハプニングはあれども平和的に少女たちと遊んでいた。

 東郷と友奈と合流して一緒にウォータースライダーを満喫して、園子ズと一緒に浮き輪で休んだり、杏からどんな行為をして欲しいかの分厚い要望書を読んだりしていると、あっという間に時間が経過した。

 照明が灯り、空を見ると既に闇夜が広がっている。

 

「この不思議な空もすっかり慣れちゃったね」

 

 確かに彼女たちと過ごした時間はあっという間だったが時期的にはまだ明るい筈だ。この世界に来て、早めに訪れるようになった夜空に急かされるようにプールから上がる。

 

「楽しかったね!」

 

 園子と同じカラフルな桜の花柄のビキニを着た友奈や東郷。

 新調した水着が似合うことを告げると嬉しそうに微笑を見せる彼女たちと共にシャワーを浴びる。目線で洗ってと告げる少女らの肌の弾力と柔らかさを掌で感じていると、

 

「そういえばここは混浴も出来るんだよね、そのっち」

 

「うん、出来るよ~。水着が必要だけど私たちしかいないから。それに色んなお風呂があるから色々出来るよ。勿論、普通に裸で入れるスペースや個室もあるんよ~」

 

「至れり尽くせりね」

 

 思い出したように口を開いた東郷に首肯する園子。

 十分に遊んで生まれた健全な疲労のある身体にお風呂は最高だろう。年少組は流石に眠たそうな顔をしており、小さい方の園子は既に俺の背中で眠っている。

 

「流石に風紀を乱すようなことはしないし、させないからな。園子」

 

「冗談ですよ~」

 

「そうね。流石に年長者として見過ごせないわよ、乃木ぃ〜?」

 

「な、なんで私を見るんですかフーミン先輩。前に入った時は悦んでたじゃないですか~。それに今回は大赦から勇者様にって新しいお風呂も導入したらしいですよ。美白に良いとか~」 

 

「皆の者! 風呂じゃ! 冷えた身体を温めて女子力を回復させねば!!」

 

「ここまでされると、また大赦が何かを企んでいるんじゃないかって思うわね」

 

 ともあれ、年頃の少女たちにとって美肌効果とか美白とか毛穴の引き締まりとか、陰ながら努力しているそれらに効果があると分かったからにはシャワーで済ませる者はいない。

 プール後に冷えた身体を温めることくらいはするだろう。ついでに色々な風呂を試したり。

 

 風呂はいつだって開放的でなくてはならない。

 混浴に入ろうとも入らなくてもそれは個人の意思次第だ。

 

「────」

 

 プールから浴室に移動する水着美少女たちに囲まれながら。

 突き刺さる視線には何とも言えないねっとりとした熱を感じた。

 

  



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第四十四話 みんなでお風呂

 シャワーを浴びた後、勇者部の皆でプールから温泉へ移動する。

 ガラス状のドームから見える空は夜となっていて、しかしそれを今さら異常だと捉える者はいない。夜が来るのが早くなっただけ。言ってしまえばそれだけなのだ。

 変わらぬ空よりも視線を下げると水着に包まれた大小様々なビキニ尻に目を向ける。歩く度に揺れる尻肉を始め、滑らかな背中や、肉付きの良い太腿に視線が吸い込まれる。

 すぐにでもそれらの腰を捕まえてかぶりついてしまいたくなる。

 

「おっふろ~」

 

「おふろに一番乗りだー!」

 

「やっほー! ……わっ、す、すべるよぉ~」

 

 楽し気に笑みを浮かべてはしゃぐ友奈族を先頭に浴室へと移動する。

 何度かこの施設に来た事がある為、はしゃぎながらも迷うことはなくピンクのビキニを着た彼女たちは疲れなど見せず、快活な様子で勇者たちを導いていく。

 

「いや~、それにしても白熱したな! 水中バレーもタマには良いもんだな!」

 

「ああ。なんとか風さんに勝てて本当に良かった。千景との連携のお陰だ。ありがとう」

 

「……偶然良い位置に乃木さんがいただけで連携とかじゃ」

 

「そういえばここの炭酸風呂だったか、シュワシュワしているのが気持ちいいんだ。サウナも良い。どうだ千景、一緒に入らないか?」

 

「は? なんで私があなたなんかと……」

 

 彩ある水着を着た少女たちが口々に雑談を交わしながらもどこか楽しそうに、そして遊びの疲労感も滲ませて脚を進める。

 裸足のぺたぺたという音と少女たちの声を耳にしながら進む。

 素足から伝わるタイルの冷たさと、プールとは違う温泉の硫黄の香りにそっと目を閉じて──、

 

「亮くん」

 

「……東郷さん?」

 

 後方彼女面、否、彼氏面或いは保護者面なのか。

 キャッキャと楽しそうにしている友奈族をなんとも言えない生暖かい目で見ていた東郷は彼女たちを追いかける訳ではなく、俺の隣に歩み寄って来る。

 そのまま抱き着いてくるのではというような距離で辛うじて止まると彼女は小首を傾げる。

 リボンで纏められた黒髪の先端がくすぐるように俺の腰肉に触れた。

 思わず抱きしめたくなるほどに可憐な笑みを見せる東郷は、

 

「プール、楽しかったね」

 

「そうだね」

 

「……ふふっ」

 

「どうした?」

 

「ううん。こうして一緒にいるのが嬉しくて」

 

「俺も、東郷さんと一緒に遊べて凄く楽しかったよ。こんな美少女と遊んだなんて一生自慢できるし、きっと忘れないと思う」

 

「もう……そういうこと言っても何もでないよ」

 

 満更でもないような笑みをこぼす東郷は相も変わらず妖艶な女だ。

 艶を帯びている処女雪の肌には男の痕を残したくなる。

 薄い筋肉の乗った肢体は水に濡れ、鎖骨から双丘に、腹部に、腰から腿に、水滴が伝っていく。

 長い睫毛に縁取られた深緑の瞳はジッと俺を捉えては離さない。

 

 彼女の素足がタイルをペタリペタリと歩む度にトップスに包まれた双丘が揺れる。

 友奈や園子と一緒に新調したらしき、彩り豊かな桜の花が散りばめられた白いスカートは揺れ動き、鼠径部とスカートから微かに覗く薄青色のボトムスが彼女の肌によく馴染んでいる。

 それらを上から下まで舐めるように見ていると、

 

「……見るだけで良いの?」

 

「まあ、今はいいかな」

 

「……ふーん」

 

「……」

 

 自らの腹部を撫でて、挑発するように胸を突き出す東郷。

 学生ながら、既に大人の女性と変わらない女体は数多の男の視線を吸い寄せてきただろう。実際に視線を向けて直接指摘された回数は数知れない。

 学校の冷房が効きすぎるからと東郷は夏でもカーディガンを着用しているが、実際は視線やブラが透けることを気にしているからだ。

 そうして他の視線から隠されていた柔肌が俺の目の前にある。

 そんな俺の視線を前に、茶化すような口調で少女は囁いた。

 

「ねえ。亮くんの手、貸して?」

 

「え? 今はほら……両手は塞がってるから」

 

「片手だけ。少しで良いから。駄目?」

 

 俺は深く息を吸って、吐いた。

 此方の挙動一つ一つを観察するように東郷は目を細める。ゆっくりとした彼女の歩調に合わせて、視界の外に消えていく勇者たちを見送る。

 俺の両手は先ほどからたった一人の少女を背負う為に使われている。

 乃木園子。小学生時代の懐かしい姿の彼女は水着のままスヤスヤと寝息を立てている。そこまで重い訳では無いため仕方なしに片腕を差し出した。

 園子の存在など気にしてないのか、目もくれない東郷は緩やかに首を振った。

 

「そっちじゃないよ」

 

「え?」

 

「はやくして」

 

「……」

 

 面倒くさいなー。

 そんなことを言いだすと泥沼化するのは目に見えている。

 自罰的な所のある彼女は放置すると落ち込むか、泣き出す。

 

「あっ、ご、ごめんね。唐突だったよね……その、やっぱり忘れて」

 

「────」

 

「面倒臭かったよね。私って結構嫉妬深いというか、本当ならそんなに気にするようなことじゃないんだろうけど。でも、何と言うか他の子よりも自分だから余計に嫌だなってなっちゃって。亮くんが須美ちゃんの感触を覚えたままこの後を過ごすんだって思ったら、私……私っ……!!」

 

 瞳に薄暗い光を宿し目尻に涙を見せる東郷は緩やかに首を振る。

 こうなった彼女を前にすると、徹底抗戦か逆らわずに従うかの二択になる。今回は無言のまま指定された片方の腕を差し出すと、嬉しそうな顔をした東郷の手が絡みつく。

 細い白魚のような手が俺の指の一つ一つを愛おし気に触る。

 そのまま自らトップスを捲りむき出しにして自らの豊満な乳房を触らせる。

 

「えいっ」

 

 しっとりとした生暖かい水風船のような質感。

 照明に照らされた、他の勇者より豊かで、瑞々しい東郷の胸。

 それは先ほど事故により曝け出し偶然揉んでしまった須美の乳房の正統進化と言うべきか。形や大きさ、弾力や先端の色などまさに美と呼ぶべき母性の象徴があった。

 

 乳房の先端、ピンクの乳首を摘まませて、ぴくりと彼女が反応する。

 その目には何とも言えない様々な感情が渦巻いている。

 それを隠すように瞬きを繰り返し、そっと目を伏せるも、

 

「……どう?」

 

 俺の反応を確かめようとする翡翠の瞳に、返事代わりに掌全体で少女の乳房を揉む。

 指が生乳に沈み、乳首が擦れる度に東郷は睫毛を震わせる。

 そっと、自らの乳房を揉む男の手の甲に掌を重ねる。

 

「……っ」

 

 切なげな眼で、濡れた深緑の瞳で俺を見つめ続ける。

 何度も舌で舐めた唇が何かの言葉を紡ごうとして動きかけ、止まる。

 

 奥ゆかしくも公衆の面前でこんなことが出来る度胸もある彼女の乳首は硬さを帯びていく。

 甘く切なげな吐息が、東郷の口からこぼれた。

 とくんと彼女の心音が掌から伝わる。

 

「……こんな事されちゃうと、東郷さんのことしか考えられなくなっちゃうな」

 

 こんな事をしていると、片手が東郷の乳房の感触を覚えさせられてしまった。

 事故で揉んだ須美の乳房の感触が上書きされたことを伝える。

 いったい何の茶番だと言ってはいけない。

 これも関係を良好に保つ為の儀式みたいな物なのだ。

 

「……!」

 

 沈黙と共に、東郷が少しだけ嬉しそうな顔をする。

 細い腰を揺らしては至近距離で俺を見つめたまま、うっとりと目を細めた。

 学校では、否、他の誰にも見せないような艶やかな表情が視界に広がる。

 そのまま俺に抱き着くように胸肉を胸板で押し潰して口元に薄い笑みを浮かべる。ぷるんと揺れる乳房を押し付けて、俺の水着越しにそっと肉棒に触れると──、

 

「──くしゅん!」

 

 くしゃみと共にプルプルと震えるのはずっと背負っていた小さい方の園子。

 淫熱を宿らせた瞳を瞬かせ、俺から離れた東郷の両手が自らのトップスの位置を戻す。

 彼女がゴキブリと遭遇した時ほどの素早さを発揮する。

 同時にツンと尖った乳首が生地に擦れて小さく東郷が身震いし、園子(小)の瞼が開く。

 

「ふわぁ~……よく眠ったんよ~。あれ? かっきー先輩にわっしー先輩は何しているの?」

 

「え? 少し雑談を……」

 

「お風呂に入ってからでも出来るんじゃないですか〜? それにずっとここにいると風邪引いちゃいますよ。ミノさん達もう入っちゃったかな? かっきー先輩も行こうよ~」

 

 成長途中の柔肌を擦らせながら欠伸と共に彼女は口を開いた。

 寝ぼけ眼で背負っている俺の横顔と、僅かにトップスの位置がずれて下乳の一部がこぼれていた東郷をぼんやりと見る園子(小)は背中から滑り降りる。

 着衣の乱れについての指摘はなく、しかしその視線を避けるように少女の手を取る東郷が誤魔化すように告げる。

 

「そ、そうね! 身体も冷えちゃうから行きましょう園子ちゃん。銀ならすぐ見つかるわよ」

 

「わっしー先輩も入ろうぜ~」

 

「わ、私は……そうね」

 

「かっきー先輩もはやくはやく〜」

 

 ふわふわした少女の目が俺に向いた瞬間に、東郷は乱れた胸元を無言で直す。

 赤らんだ顔はまだ戻らず、よくよく見ると尖った乳首がトップス越しに主張して見えた。ふわぁと欠伸をする小さい方の園子は東郷に何となしに話しかける。

 

「わっしー先輩って……」

 

「どうしたの?」

 

「おっぱいが大きいからエッチな身体を持て余して欲求不満なんじゃないですか? ……ってこの前、風先輩が言ってましたよ~」

 

「……園子ちゃん。いくら胸が大きいからってそんなことは無いわよ。変な噂に惑わされたらダメ。あと(風先輩はお仕置きをするとして)他の子に広めたりしたら怒るからね」

 

「は~い」

 

 園子(小)の片手を東郷と俺でそれぞれ繋いで、今度こそ浴室に入る。

 俺と東郷が二人で乳繰り合っていたのを察知したのか空気を読んだのか女子の誰も呼びには来なかった。勇者部にはそういう暗黙の了解があると俺は思う。

 或いは何かあったのか。そんなに温泉が身体に染み渡ったのか。

 

 水着の美少女と共に滑り止め防止の加工がされたタイルを歩く。

 硫黄や塩の香りがする湯気は天井に吸い込まれていき、通路を抜けた先には公衆浴場があった。寄宿舎以上の面積は、大小様々な浴槽に分けられている。

 効能についての説明がされた看板が置かれた浴槽には並々と湯が張られているが、

 

「お風呂~」

 

「この辺りにはいないね」

 

 呼吸する度に温泉特有の匂いが肺に広がる。

 眼前の場所はプールの延長であり、騒がしいのは厳禁ではあるが男女共に入ることが出来るスペースとなっている。

 裸で静かにお風呂に入りたいのならば、少し歩くことになるが男女別になっている更衣室で水着を脱いで通常通りに温泉に浸かることも可能だ。

 

「貸切だから細かいことは言いっこなしだぜ~!」

 

「走らない!」

 

「ぴえ!?」

 

「人がいないからって湯舟に飛び込んじゃいけません!」

 

「あわわ……、わっしー先輩が怖いんよ」

 

 いつの間にかサンチョの浮き輪を持って無人の湯舟に飛び込もうとする園子(小)の首根っこを掴んだ真面目な東郷は椅子に座って自身と彼女の身体を洗い始める。

 壁に設置された鏡越しにジロリと此方を見る彼女に従って、俺も身体を洗った。

 どんな時でも東郷は真面目だ。真面目に水着の中までしっかりと身体を洗う。

 

「わっしー先輩」

 

「どうしたの園子ちゃん?」

 

「こういう時、男の子と隣になって身体を洗うのって、もっと恥ずかしがるとか嫌がるのかなってふと思ったんですよ~……」

 

「甘いわね園子ちゃん。そういう青い時代は須美ちゃんまで。私と亮くんはもっと先にいるのよ」

 

 小学生に対して得意げな顔を見せる巨乳の中学生。

 とはいえ、指摘されてからはトップスや特にボトムスの中を洗っている時に東郷を見ると恥ずかしがる素振りを見せたのは可愛らしかった。

 それを指摘すると顔を赤くしては俺の腿を叩いて無駄口を叩くなと無言の圧を掛けられた。

 

「わっしー先輩は身体だけでなくて色んなことが大人なんだってメモしないと~。あっ、かっきー先輩。いつもみたいに隅々まで洗って~? 園子先輩みたいにエッチなこともしていいから~」

 

「……亮くん? そんなことしてたの?」

 

「ほら親戚だから」

 

「答えになってないと思うよ。あと園子ちゃん、私も時々亮くんに洗って貰ったりしているのよ」

 

 ちなみに園子(小)は俺に見られることを気にするどころか、洗って欲しいと要求する。

 やや騒がしくなりつつも身体を洗い終えた後は、好きな浴槽を目指す。

 

「さて、それじゃあ皆は……多分サウナか泡風呂か酒風呂か檜風呂ね」

 

「全部じゃないですか~ひゃん! くすぐったい~」

 

「銀や須美ちゃんなら多分泡風呂じゃないかしら。広い方じゃなくて映画とか見ることの出来る個室の方よ」

 

 東郷の勘は当たった。

 泡風呂のスペースに脚を踏み入れると銀や球子が泡で遊びながら動画を見ていた。

 

「ミノさ~ん!」

 

「おっ、ソノか! 東郷も亮之佑も! なんだお前たち、随分遅かったな。東郷のマウンテンでビバークやダイビングしてたんだろう?」

 

「まあ、想像に任せる」

 

「おっほ〜! 大人だー! 須美もいつかこうなるのか……」

 

「もう銀ったら。普通に身体を洗ってただけよ」

 

「そ、そのマウンテンでか!?」

 

「……」

 

 手を振る園子(小)に気づいた銀と球子。

 吊るされそうになりながらも泡風呂で楽しそうにはしゃいでいた彼女たちに他の勇者たちについて聞くと、新設されたという個室がある方向を指さす。

 

「あっちで皆と新しい風呂に入ってたんだけど、タマ的には微妙だったな~」

 

「なんかプリンも出されたんですよ。それは美味しかったけど、新しいお風呂に入っているとなんか身体がムズムズしちゃって早めに上がったんです」

 

「ええ!? それって大丈夫なの?」

 

「アレルギーとかではないんですけど……」

 

「う~ん。でも害とかはなかったぞ。若葉とか風が率先して食べていたし他の皆もおやつとして食べてたからプリンに問題はないと思うぞ。あと単純にノリが若干面倒臭い感じがな」

 

「あ~、なんというかアタシたちには少し早いかな〜とか」

 

「……?」

 

 泡風呂に浸かって彼女たちと混浴がてら話を聞いてみた。

 東郷と戯れている間に、先に来ていた勇者たちはおやつとしてプリンや飲み物を貰ったらしい。甘味大好きな若葉は目を輝かせて、大食いの少女や普通の胃袋の少女も食べたらしい。

 いったい誰がと思ったが大赦の人からのサービスだという。

 その後は各々サウナや露天風呂など色々と楽しんで回っているというが、新しく作られた個室の風呂からはあまり少女たちが出ようとしないとか。

 

「ずっと同じ所にいるのも飽きちゃったんで、球子さんと一緒に出てきちゃったんですけど」

 

「タマには露天風呂か、もう上がってもいいかな」

 

「え~、二人とももっと遊ぼうよ~」

 

「風呂は遊ぶところじゃないぞ、園子」

 

 小さい園子は世話の慣れた銀がいれば大丈夫だろう。

 ひとまず何が起きているのか、考え込むように黙り込む大和撫子を連れて新しく設けられた酒風呂の個室へと向かう。

 

 滑らないようにと東郷をエスコートしながら扉を開けると薔薇のような香りが鼻孔をくすぐる。アロマだろうか、ずっと嗅いでいられるような香りが混ざった蒸気がふわりとかかる。

 むわりとした熱気に目を閉じて、薄目で蒸気の先の景色を見た。

 

「ほにゃららら~……」

 

「大きくな~れ、大きくな~れ」

 

「……海は、海は、どこだ」

 

「お姉ちゃんはズルいよぉ……私も大きくなりたいのに!」

 

 さりげなく俺の腕を豊かな胸に抱く東郷を連れて進むと少女たちがいた。

 酒風呂とは別に酒に浸かる風呂という訳ではない。

 ほんの少し酒を混ぜたお風呂というのが俺の認識だったが、

 

「な、なんで皆脱いでいるの?」

 

「東郷さんこそどうして水着なの? ここはお風呂だよ!」

 

 湯に浸かり過ぎたのか肌を朱色に染めて、暑そうにビキニを外そうとしている者。

 じゃれ合っているのかそれとも同性に襲われているのか胸を揉まれている少女と揉んでいる少女。猥談を平然と行って、混浴ということを忘れてトップスやボトムスを縁に置いている者。

 大半の少女は腹部や背中どころか生乳も臀部も曝け出して談笑していた。

 

 楽しそうな光景だが一応このスペースは混浴風呂だ。

 混浴とはいっても、男は一人。来なければ実質女子風呂なのだが、

 

「な、なにをしているんですか! 友奈ちゃんまで!」

 

「まあまあ、東郷さん落ち着いて。プリンがあったよ。口開けて」

 

「でもこんな異常な状態を放置なんてあーん……」

 

 甘味が大好きな少女たちが俺たちの為に残してくれたのだろう。

 瓶に入っていたプリンは甘く蕩けて容易く胃袋に到達する。湯舟に浸かった俺たちの身体に染み渡る冷たさと甘さに彼女の唇が震える。

 目の前の異常を置いておいて、湯舟の端で彼女と甘味を分け合う。

 怒声を出しそうな口をスプーンで封じると東郷は俺を上目遣いで見る。

 

「美味しい?」

 

「……おいしい」

 

「東郷さん。もっと食べて」

 

「うん。亮くんも食べて。はい、あーん……」

 

 ワイワイと騒いでは平然と肌色を見せる空間。

 俺と東郷を上気したような顔で迎え入れる少女が大半だ。一部まだ正気の少女もいるらしいが。

 

「ちょっ、棗さん。加賀っち来ちゃったから。水着水着!」

 

「ん? ここは風呂だ。海じゃないから脱いで良いんだ」

 

「よくないから! あっ、ちょっと、棗さん!? 脱げる! 脱げるから!」

 

「大丈夫だ。亮之佑は……紳士だ」

 

「自称ね。裏で皆がやっていることを知っているからって──結城っち?」

 

「せっちゃ〜ん! 一人になろうとしたら駄目だよ〜!」

 

「そうよ雪花。私もそんな時があったけどやっぱり皆といると良いものよ」

 

「みんなー! 夏凜ちゃんがデレたー!」

 

「結城っち!? 夏凜!? ほ、本当に脱げちゃ、ぁ、あっ」

 

「はーい脱ぎ脱ぎしようねー……わあ! せっちゃん肌綺麗ー!」

 

「本当ね、別に隠さなくても良いじゃない。みんな裸よ」

 

「……ぅっ、ぅ」

 

「まったく雪花ったら。友奈、マッサージして気持ちよくしてあげたら?」

 

「そうだね! えいっ、えいっ、やー!」

 

 いつだって少数とは多数に塗り潰される物だ。

 悪意のない少女の手が、いともたやすく北の大地の勇者、秋原雪花の裸体を曝け出す。

 意外にも豊さを見せる双丘や、勇者部随一のファッション能力のある彼女にしては整えていない恥毛や無垢な秘裂など、年相応な少女の綺麗な肌が照明に照らされる。

 

 羞恥の悲鳴と共に涙目で友人どころか異性に隅々まで見られた少女は、友奈のマッサージをトリガーにして逃避するように虚空に眼差しを向けた。

 石畳の上に何故か置かれているマットの上で、雪花は徐々に嬌声をこぼし始めていた。 

 その一連の流れに防人の一人、加賀城雀は叫んだ。

 

「ひええ!! 雪花さんが堕とされた……こんなのおかしいよ。皆おかしいよ!」

 

「雀先輩? 何がおかしいのですか?」

 

「あやや! 弥勒さんはパスしてメブぅ〜! お、お助けを! なんか凄くエッチな雰囲気が!! これ絶対アレだよね、なんか流されちゃってエッチなことしちゃうヤツ!」

 

「何言ってんのよ雀。ほら、さっさと脱ぐ」

 

「待ってよメブ! 亮之佑さんいるから! 男の人いるから! というか前隠して! バスタオルぐらい巻いてよ!! ちょっ、ちょおお脱がそうとしないでええええ!!」

 

「まったく雀さんたら浴室ですのよ? 隠すような恥ずかしい裸など弥勒家にはございませんわ! これだから小雀は……カガフレーーッド! 勤務時間外で申し訳ないのですが私の身体に変なところがないか見て下さいませんか!!」

 

「うーん。もっと脚を広げてー……変じゃないよ」

 

「そうでしょうとも! この弥勒夕海子、そのようなことは言われる前から分かってましたわ!」

 

「弥勒さん絶対正気に戻ったら悶え苦しむヤツだからソレ!」 

 

 バスタオルなど必要ない。何故ならば私の身体は弥勒家なのだから。

 そんな世迷言を告げながら俺に向けて一糸まとわぬ裸体を見せる夕海子と、ついでに芽吹。普段は隠されている恥部もしっかりと整えているのが湯気越しでもしっかりと捉えることが出来た。

 次から次へと少女たちの裸体を見ていくと、なんだか頭がクラクラしてくる。

 

 防人組は既に水着を脱いだのかスタイルの良い弥勒の乳房が揺れる度に舌打ちが聞こえた。

 音の出処に探そうとするも、大袈裟にリアクションする雀の声に搔き消される。

 

「わ、分かったから! せめてタオル! タオルを巻かせて!!」

 

「はあ? 湯舟にタオルを着けたらマナー違反でしょう! 今更亮之佑に裸を見せるくらい別に問題ないでしょう! 何年一緒にいると思ってるのよ」

 

「い、いや、それとこれとは別でしょう……」

 

「雀先輩……私のお師匠様が何かしちゃいましたか?」

 

「え? 師匠?」

 

「隙あり!」

 

「ふわああああ!!!?」

 

「まったく……お風呂から上がったら精神鍛練ね」

 

「そうですわ。何をそんなに恥ずかしがってますのよ。しょうがないですわね……カガフレッド〜! 雀さんのも見てあげてくださいましーー!」

 

「ちょっとよく見えないかな?」

 

「しょうがないわね……弥勒さん!」

 

「いきますわよ芽吹さん!」

 

「「せーの」」

 

「見ないでぇぇええええ!!! 脚広げさせないでぇぇえええ!!」

 

「二人に勝てる訳がありませんわ」

 

「亮之佑。これでどうかしら?」

 

「なんで二人ともそんなにノリノリな訳!?」

 

 いつだって少数とは多数に塗り潰される物だ。

 堂々と乳房も臀部も髪色と同色の恥毛も見せる防人組。豊かな乳房を揺らした疑似令嬢と共に防人組のリーダーは恥ずかしくない裸を俺に見せながら無情にも仲間を裸に剥く。

 抵抗の末路は、ご立腹の防人組リーダーと部下によって開脚からの恥部晒しだ。

 この空気に興奮は隠せないのか無垢な秘裂から透明な雫が垂れる。

 バタバタと脚を動かして逃れようとする雀の懸命な抵抗は、いい加減にしなさいと嚇怒に顔を赤くした防人リーダーによって終止符を打たれる。

 

「雀!」

 

「待って待って! 流石にそれは──!」

 

「ほら。皆もせっかくだから見てあげて!」

 

「~~~~っっ!!」

 

 普段から騒がしい少女も戦友たちの前で陰唇まで開かれると黙り込むらしい。

 おおっ! と悪ノリする少女たちに見られてはひたすらに悶える雀。

 

「あらあら? これは……雀さんは何に興奮されたんですの?」

 

「わぁぁぁあああっっ!!!」

 

 陰毛どころかピンク色の粘膜やその奥までもが晒された少女。

 やがて満足したとばかりに湯舟に下ろされる雀は顔を朱色に染めて蹲る。

 そして防人サークルの姫である亜耶は幼さの残る裸体にギャン泣きする雀を抱き寄せる。

 

「あやや……へへ、私汚されちゃったよ……」

 

「大丈夫ですよ雀先輩。ほら……他の方もされてますし……。そんなことよりも私、雀先輩のことももっと知りたいです」

 

「そうだね。都合よく忘れないでみんな今日のことを覚えて悶えてしまえ……あっ、でもそれだと私のことも覚えているから……ん? あやや? 何を言って──」

 

「芽吹先輩や弥勒先輩みたいに、どこが素直じゃないのか、どこが悦ぶのか、もっともっと雀先輩のことが知りたいです」

 

「────」

 

 淫熱と空気すら吸うだけで鼓動が高鳴りを覚えるような空間。

 よくよく周囲を見渡すと、こうなることを想定したように男性器を模した玩具やマット、何かの液体が入った容器など、明らかにそういうことをさせる場所なのではないのかと察する。

 個室に入るまで音など聞こえなかったのだから防音もしっかりしていることも根拠の一つだ。

 

 とはいえ、それらの玩具を最初に入ってきた勇者たちが気づかない訳がない。

 乱れる勇者を尻目に、大赦の人たちが置いて行ったのならば絵面としては面白いが、

 

「風先輩だけかと思ったけど酒成分かこの香りで酔っちゃったのね。……亮くん。なんだか私も身体が熱くなってきちゃった」

 

「そんな東郷さんはクールに彼女たちを観察しているのであった」

 

「そんな亮くんは他の子の何を見てどこを大きくしているの?」

 

「東郷さん」

 

「嘘吐き」

 

 ここにいる少女たちは二つに分かれている。

 自ら脱いだか、脱がされて戦友たちに見られて羞恥に悶えて肉体的に受け入れるかだ。

 殆ど全員が裸を見せては、酩酊したような言動で温泉を楽しむ。

 

 先ほどのプリンか、このお湯か、良い香りのするアロマか。

 そのどれもが戦闘の副作用に苦しむ少女たちの理性の枷を緩め、解き放つ大赦からの対応なのかもしれない。

 或いは大赦からの貢物をすり替えて少女たちを発情状態にさせた何者かの仕業か──、

 

「樹~。お姉ちゃんのおっぱい吸っても大きくならないって」

 

「ぅぅ~。だってだって!」

 

 涙目の妹を可愛がる姉。

 どこかインモラルな空気を漂わせる姉妹に東郷が近づく。

 

「風先輩」

 

「おっ、東郷遅かったじゃない。亮之佑とシてたんでしょ~ゲヘヘ」

 

「私が欲求不満の変態だと仰っていたそうですが、本当ですか?」

 

 下品な手の動きをする勇者部部長の姿はセクハラ親父と化していた。

 それを無視して尋ねる東郷に小首を傾げる風はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「そうだったかしら? でもほらそんなエロい身体をしていたら色々と持て余すんじゃないかと思いましてねゲヒヒ……ほら樹、お姉ちゃんよりももっと大きなおっぱいを吸わせて貰いな~」

 

「東郷先輩の胸を吸ったら大きくなれますか?」

 

「許しません。……風先輩は二度とそんなことが言えないようにお仕置きします。あと樹ちゃんは風先輩に毒されすぎよ」

 

「あう!」

 

 パチンとデコピンを樹の頭部に決める東郷。

 飲み食いし過ぎて泣き上戸からベロンベロンのおっさん状態であった風もそれには怒った。

 

「樹ぃぃぃ! 貴様東郷! 私の妹に何をするかぁー!! 者ども、かかれぇい!」

 

「イー! イー!」

 

「それでも私は……大きくなることを諦めたくありません!」

 

「……あっ、ちょっ、何を……ひゃあ!」

 

 勇者部最高上位者の命令に従うのはずっと無言でメモを取っていた園子だ。

 湯舟でブクブク言いながらも、少女たちの痴態を目に焼き付けてきた彼女はすぅっと背後から這い寄ると東郷のボトムスをずり下ろした。

 

 同時に襲い掛かる樹が敵を見たような顔でトップスを剥ぎ、揺れた巨乳を見て顔を歪める。

 ぷるりと揺れる乳房の先端から、恥丘に張り付く黒い陰毛から湯水が雫となり垂れ落ちる。

 色白の肌や豊かな乳房に比べてくびれた腰は抱き寄せたくなる。

 美とも卑猥さの塊とも言える彼女の裸体に息を呑み、舌打ちをする者は多数。

 

 その一瞬、間違いなくこの場の誰よりも視線を集めた少女の身体。

 ビキニで隠されることなく勇者部の前で露わになった東郷の裸体はこの場の誰よりも、

 

「大人だ~」

 

「……」

 

 亜耶の声を背後に聞きながら、僅かに頬を赤らむだけで動じない東郷。

 ボトムスをずり下げて戦友たちの前に下半身を露出させた悪戯っ子な園子に光の失せた深緑の瞳を向けると、風が追撃を命じる前に口を開く。

 

「そのっち」

 

「い、イー! イー!」

 

「そのっち」

 

「ぃ、ィー……」

 

「そのっち」

 

「…………」

 

「貴方、酔ってないでしょう? 私には分かるわ。風先輩も樹ちゃんも酔っているから仕方ないとして、それ以上風先輩の味方をするなら分かっているわよね? 前に亮くんの家で友奈ちゃんと私にいっぱい辱められた時のこと覚えている? あれ、今から皆の前でしようか? あんな淫らな姿を見たらみんなのそのっちを見る目が変わると思うけど──」

 

「……ハッ! 酔っていてなんのことか分からないけど私はいつだってわっしーの味方なんよ!」

 

 園子は正気に戻ったらしい。

 

「それでそのっち? どうしてそのっちは水着を着ているの?」

 

「え? ここは混浴風呂で……」

 

「脱いで」

 

「────」

 

 園子のビキニは誰にも邪魔されることなく彼女自身が脱ぐことになった。

 意図せず始まったストリップショーに風が吹き慣れない口笛を吹く。

 同時にどこからか巨乳に対する舌打ちも聞こえた。

 

「乃木の身体エッチねえ~。何よ顔真っ赤じゃないの~、ゲヒヒ」

 

「────」

 

 東郷に負けず劣らずの俺の幼馴染の裸体は東郷と並ぶほどに美しく淫らだ。

 俺だけでなく同性の前で全裸でいるのは流石に彼女も恥ずかしいのか。くびれた腰をくねらせてぷるりと豊満な乳肉と薄ピンクの乳首や生え揃った恥毛を腕でさり気なく隠そうとする。

 そんな恥じらいを東郷は許さず、無言で園子の腕を掴んでは下ろさせる。

 

「そのっち」

 

「ぅぅ……わっしー許して。悪戯心だったんよ」

 

「どうせこれも貴方の企みなんでしょ?」

 

「違うよぉ……これは私がしたことじゃないよぉ」

 

「……どちらにしても自信をもってそのっち。貴方の身体は素敵よ」

 

「グヘヘ……乃木も東郷もエロい身体をしておるのぉ。樹にちょっと分け与えてくれんか?」

 

「残念ですが風先輩。私もそのっちの身体も心も亮くんの物です」

 

「ほう? ちなみに夜はどっちが凄いのかね?」

 

「そのっちです。こんな隙あらば眠るような顔をしておいて色々──」

 

「わっしー!!」

 

 モジモジとする裸の令嬢に余裕はない。

 そんな彼女に掛けられるのは温かい声と下品な声と無垢な声だ。

 

「園ちゃん素敵! 頑張って!」

 

「乃木家の令嬢ならば当然恥ずかしがる必要のない身体! 胸を張りなさい!」

 

「園子先輩も大人な身体ですね! ……大人の人ってちゃんと整えてるんですか?」

 

「亜耶ちゃん? どこ見てるの? ほら今は雀を……」

 

「……も~〜! 恥ずかしいんよぉ~!」

 

 桜の装飾がされた紫を基調としたビキニを回収した東郷は上下セットで俺に渡す。

 湯水に濡れた脱ぎたての園子の水着だ。

 恥ずかしがる園子に返すことなく手の中で握り締めると、東郷が指示を出す。

 

「そのっち。私の胸に噛り付いている樹ちゃんをどうにかしてくれる?」

 

「おけまる~。……イッつんイッつん、おっぱいを吸っても大きくなるのは赤ちゃんだけなんよ」

 

「わぁあああん!!」

 

「……流石にここで風先輩は吊るせないから──亮くん、代わりにお仕置き頼めるかな?」

 

「あ、はい」

 

「そのっちは私を裏切ったからお仕置きね」

 

「え?」

 

「今日は楽しかったから誘ってくれたお礼も兼ねて友奈ちゃんほどじゃないけど悦ばせてあげる」

 

 欲求不満扱いをされたことがよっぽど腹に据えかねたのか、全裸を晒した彼女の目は冷たく、酔っ払い相手だろうと決して屈することはない覚悟を見せる。

 そうして代わりにお仕置きを依頼された俺は風の背後に回りこみ──、

 

「ちょっ、亮之佑!?」

 

「風先輩。東郷さんに変わってお仕置きよー」

 

 ざばあっと湯水を滴らせて彼女を持ち上げた。

 お仕置きと言われても、咄嗟に思いついたことはこんな事だった。

 

 湯水と飲料と食べ物を過分に含んだ身体は中々重い。

 それでも頼まれた以上は遂行しようと、両脚を掴んで開脚させた状態で持ち上げた。スタイルの良い彼女だが丸めた腹には僅かに肉が乗る。

 酔っぱらった状態でも恥部を曝け出すのは恥ずかしいのか脚をばたつかせる。

 

「下ろしなさい! こんな格好……っ」

 

「良い恰好ね。ふーん、風のそこって結構綺麗ね」

 

「み、見るなー!」

 

「棗さーん! 来てー!」

 

「呼ぶなー!」

 

 ボトムスを下ろして恥部を曝け出したのは風も一緒。

 マジマジと見られて恥ずかしがる彼女に平泳ぎで近づいてくるのは棗だ。

 

「棗さん。あの時は助けてくれてありがとう」

 

「礼は良い。それよりどうしたんだ? そろそろ上がろうと思ってたのだが」

 

「ううん。──何事にも報いを。ささやかだけどさっきのお礼を用意したよ」

 

「いや、礼は」

 

「受け取って欲しい」

 

 俺の肩と胸板に背中を預けた風が暴れるも、俺の腕から逃れることは出来ない。

 髪と同じ毛色の恥毛を張りつかせた恥部が棗の顔の位置になるように調整すると、何かに気づいたように目を見開く。

 小麦色の肌には当たり前のように水着はなく双丘も秘所も覗けるが、彼女は隠すよりも目の前の『お礼』に酩酊していた目を輝かせる。

 

「これは……アワビか……こっちはワカメのようだがこんな色をしていたか?」

 

「ちょっ、棗、待ってそれはダメだから!」

 

「これは風のか? 匂いは風のだが……いや風のワカメなのか? よく分からなくなってきたが亮之佑、要するにこれを食べて良いということなのか?」

 

「良いよ。歯を立てないようにね」

 

「ああ、ありがとう。喉が渇いてたんだ。プリンも良かったがやはり海の幸だな」

 

 手を合わせる棗を俺は見下ろしながら樹も呼ぶ。

 園子に現実を教えられて虚空を見ていた彼女は救いを求めて俺を見る。

 

「樹。最近学会で提唱されたんだけど色んな女の子の、特に巨乳の子で美人な子のここをペロペロしてエッチな汁を啜ると女性ホルモンがアレして巨乳になれるって」

 

「お姉ちゃん、ごめんね」

 

「待って! 今の理論なら別に東郷でも乃木でも弥勒でもいいでしょうが!」

 

「だってそんな恰好していたら……ねえ? ……今はお姉ちゃんが食べたいな」

 

 それから数分間、明確な嬌声が浴室に響いた。

 淫靡な光景を無垢な少女たちは目を皿にして眺め続ける。

 そうして、その熱が身体に帯びたかのように周囲の少女と羞恥と水着を脱ぎ捨てて、淫欲を解消する為に汗と湯水に濡れた女体を絡ませあう。

 俺は風を開脚状態で抱えたまま、そんな光景に興奮していた。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 じゅるるっと音を立てて風の愛液が啜られる。

 二人の少女が陰唇に舌を立てて、クリトリスを鼻で擦った。

 

「くぁ!? ぁひっ、ッッ!!」

 

 陰毛に鼻を埋めては舌で蜜裂を穿った棗に愛液が噴きかかった。

 交代で妹が俺の真似をするように人差し指を入れて関節を曲げると風は痙攣を見せる。

 

「んぁぁあああっっ!!!」

 

「……凄いわね」

 

 愛液で濡れた腿を夏凜と水都が舐め上げる。

 貧乳組は先ほどの学会の言葉を信じて一滴も残すまいと必死だ。

 雌に喘がされる風の身体は熱く、俺に口づけするキスは爛れている。ねっとりとした唾液を口端からこぼして、それを気にせず俺の舌に絡む。

 

「はぇ、ぁ、ぁひ……」

 

 十数分ほど乙女の花園を踏み荒らされた風が幾度となく絶頂に達した。

 ふにゃふにゃになった少女を湯舟に下ろすと、そのまま夏凜と棗が引き続き女体に絡む。

 

「あ、あのっ、亮さん」

 

「どうしたんだ? 樹」

 

「さっきの学説が本当なら……」

 

「行っておいで。きっと弥勒さん辺りなら断らない筈。あとは農業王も大きいから水都ちゃんと一緒ならなんとかなる筈。頑張って巨乳になろうね」

 

「はい!」

 

 姉を啜った妹は自身の胸部の為に、他の美少女の花蜜を啜りに向かった。

 そして俺は樹を追いかけることは出来なかった。

 

「りょうくぅん……」

 

「っ」

 

 園子のお仕置きを終えたのか、東郷が背後から俺のペニスを弄る。

 色白の指先が亀頭から先走りを擦り合わせ、怒張を赤黒く反り立たせる。

 

 ぴったりと背中から腰まで東郷の裸体がくっついていた。

 耳元に吹き掛けられる甘い吐息と硬さを帯びた乳首が擦られる感覚。

 しょりしょりと恥毛を擦りつけては、情欲の熱を帯びた東郷が挿入をねだる。

 

「────」

 

 風を抱えている途中からずっと東郷の愛撫を受け入れていたが限界が来ていた。

 

「亮くん……おねがぁい……」

 

 甘ったるい媚びた雌の声。

 普段の理性や凛々しさを捨てた少女が陰嚢を揉みながら子種を乞う。

 

 他の少女がいるとか、誰に見られるとかどうでも良い。

 興味津々な勇者や巫女の視線が肉棒に向けられるのを感じながら、東郷を湯舟の縁にあるマットに寝転がす。

 両手を広げて、雄を迎え入れるように広げた両脚が腰に絡みつく。

 すっかり出来上がった東郷の媚肉に怒張を宛がい、貫いた。

 

「ッ! ……!」

 

 快楽を超えた幸福感の中、俺は奥歯を噛み締めて腰を振った。

 何をしても喘ぐ東郷の唇を塞いで、揺れる乳房を揉んでピストンを繰り返した。

 

 ぐぽっと下品な音を立てる膣肉から竿を引き抜く。

 パンッ、と鼠径部同士が密着するほどに彼女と奥深くまで交わる。

 

「ふーッ、ふーッ……! ふ──ッ!」

 

 絹のような髪ごと頭を抱いて、一突き。

 豊かな胸が胸板に押し潰されていやらしく形を変える。

 

 色白の肌を快楽で染めた彼女は幾度も身をのけ反らせては達する。

 悲鳴のような喘ぎ声を上げて、腰をくねらせて、全身で俺を求める。

 

 そうして怒張を膣襞が締め付けても、俺の腰は止まらない。

 目の前の少女を犯して、汚して、俺の物にする為に腰を振る。

 

「ぐッッ!!」

 

 東郷の挑発から散々少女たちの淫らな舞を見てようやく。

 我慢していたからか濃厚な白濁のスープが彼女の最奥へと注がれた。

 

「ハァ、ハァ──、やっと……亮くんのが……」

 

 俺と東郷は絡まり合い、汗と湯に濡れた身体を擦り合わせる。

 射精の余韻を楽しみながら満足気な東郷の唇を重ねる。ねっとりと唾液を絡ませた情熱的な口づけに、萎えかけの怒張は収縮する膣に力を取り戻し始める。

 ゆっくりと腰を小刻みに動かして、余韻と共に得られる快楽に深緑の瞳が涙で揺れた。

 

 気がつくと手隙の少女たちが俺と東郷の営みを近くで見届けていた。

 特に結合部から溢れる精液に少女たちは言葉を失ったように黙り込んでいた。

 その無垢な眼球には男女の営みが刻まれたことだろう、代表して亜耶が口を開いた。

 

「……勉強になります」

 

「────」

 

 なんとなく照れ臭く感じて天井を見上げる。

 

 空は見えないが夜は深まっていくのは感じた。

 そしてまだしばらく湯舟から抜け出すこともないことを。

 何故ならば──、

 

「若葉とか……杏やひなたさん達の様子も見ないと」

 

 ここにはいないが多分、もしかしたら、みんなと同じ状態だろうから。

 理性の枷を解き放ち、好き放題している少女たちのようなことになっているなら。延々と女体同士を絡み合わせて終わりのない淫欲を解放しているだろうから。

 

 だから。

 

「──だから、ちゃんと助けてあげないと」

 

 

 



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第四十五話 許さないから

 ──ぐるぐる、ぐるぐると頭の中で言葉が渦巻いている。

 頭の中に重石のように言葉が引っ掛かっては取れない。

 

『────』

 

 肺が悲鳴を上げていた。 

 酸素を求めて呼吸をしようとするも馬乗りになられて上手く呼吸が出来ない。

 

 軽い身体に圧し掛かられて、両腕を膝に押さえられ身体の自由が奪われる。

 それでも逃れようともがく身体を泥で汚れた白い腕が肩を押さえる。

 そうして射殺さんとばかりに睨みつける瞳から溢れる涙に、ただ息を呑む。 

 

『ぁ、ぐ……』

 

 後悔を胸に抱きそうになるのは、いったい何度目のことだろうか。

 そんなことを考えたこと自体を後悔しかけて、考えることをやめる。

 そうでなければ、自身の根幹部分が取り返しのつかないことになりそうだから。

 

 すぐ目の前に、激情を堪えた瞳がある。

 大きく丸い瞳には涙を溢れさせながらも嚇怒に染まった少女。

 直後、よく通る澄んだ声色が降ってきた。

 

『かっきーの馬鹿!! なんでこんな──』

 

『────』

 

『こん、な……』

 

 ありったけの罵倒と心配を浴びせられる。

 重たいとか面倒臭いとかメンヘラ自己中とか、ふざけた言葉で。

 それでも無視しきれない言葉には、僅かながらも微かな自覚を覚えて。

 

 言い返そうにも馬乗りになられて呼吸が苦しくて。

 その激情が自分に向けられていることが分かっているから。

 

『──いい加減にしてよ』

 

 普段飄々とした捉えどころのない彼女が大きな瞳に堪えきれない涙と嗚咽をこぼす。

 ふわふわとしていた少女の根の部分、多分勇者部の誰よりも、出会った人間の誰よりもしっかりしていそうな彼女の青白い頬を伝うのは雨か涙か。

 衣服は薄汚れて、雨水を吸った布は下着や白い肌を透かして、冷えたであろう身体は卑猥さよりも痛ましさを覚える。

 彼女の身分を考えると、こんな場所にいるべきではない。

 もっと温かいお風呂と清潔なベッドで身体を休めるべきなのだ。

 

 ──こんなところまで追いかけてこなくていいのに。

 

 降り続いている雨は酷く冷たいというのに、彼女の涙は温かい。

 少女は雨と泥で汚れた掌を振り上げる。

 

『ここは現実なんだよ! 死んじゃったら!』

 

 ──いったい誰が彼女を泣かせたのか。

 分かっているとも。だが、それでも。

 

『死んじゃったら……もう会えないんだよ』

 

 ゆっくりと下ろされる手が静かに肩を掴む。

 泥と雨に汚れ濡れた金髪は俯く少女によって垂れ下がる。

 

『また明日、ってもう言えなくなるんだから……』

 

 その金髪の隙間から覗く空は暗く冷たい雨が降り続く。

 どこまでも広がる闇夜からも見捨てられた人間にそんな言葉が掛けられる。

 そんな言葉を掛ける価値など、もうどこにも残ってないのに。

 

『……現実な訳ないだろ。これは夢なんだよ、園子』

 

 彼女の言う通りにもしもここが現実だったなら全てが終わっただろう。

 今度こそ、この肉体に宿る記憶が消えてしまって、本当に全てが無に帰るのだろう。

 

 だがここは現実ではない。そうであってたまるか。

 そもそも、こんな夢など見ている時点で死んだも同然だ。

 

 力も、抗う術もなく、ただ守られるだけの存在になり下がるなど今更許容できるものか。

 手足をもがれて羽をむしられた虫のように、世界という子供に無邪気に命だけを与えられるなど緩やかな死でしかない。

 早いか遅いか。遅いほど苦しみが続くだけならば。

 

『夢じゃ……!』

 

『しったことか』

 

 苛立たし気に、悲し気に、呟く少女の言葉は続かない。

 問答を続けるには時間が無くて、その時間は馴染み深い存在が奪い去って。

 

『どけよ』

 

『嫌だよ』

 

 現実でも夢でも同じ樹海化警報。

 幾度も繰り返される問答に変化を見せた瞬間に少女の意識が逸れた。

 

 圧し掛かった存在を退かそうとして嫌々と首を振る少女に抱き着かれる。

 縋るように、金切り声を上げて外聞も何も捨てたかのような醜態を見せる少女に叫ばれる。力は殆ど互角だ。もっと身体が成長すれば無理やり退けることも出来ただろうが、戦闘訓練を受けた相手に出来たのは共に地面を転がることだけ。

 端正な顔を泥水で汚して、それでも離そうとしなくて。

 

『どうして死なせてくれないんだ!』

 

『かっきーが死んだら私も死ぬから!!』

 

『……ふん、ほら敵が来ましたよ頑張って下さいね園子様』

 

『………ふざけないでよ』

 

 思えば彼女とはあまり喧嘩をしたことが無かった。

 基本的には少女の我儘に仕方ないなと折れて、付き合っていたから。

 だから驚く。

 こんなにも彼女は、しつこいのだと。

 

『戦えるかどうかなんて関係ない……! 傍にいてよ! 一人で遠くに行こうとしないで!』

 

 警報を出す端末を煩わしいとばかりに投げ捨てた少女。

 何度も地面を転がって、雨と泥に汚れた彼女はそれでも美しかった。

 

『私、許さない。……あっちに戻っても絶対に許さないからね』

 

 その美に虚を突かれた一瞬で肩を掴まれ地面に押し倒される。

 痕が出来るほどに爪を食い込ませる濡れた少女と向き合う。

 至近距離で覗く琥珀色の瞳が、静かに、しかし確かに聞こえる声で言った。

 

『──命を粗末にして勝手に死んだら、私は……かっきーを許さないから』 

 

 反論は許されなかった。

 息を止めた俺に迫る少女の熱い唇の感触に目を見開く。

 

 情欲的でもなんでもないキス。

 噛みつくような口づけは、それでも温かく思わず息を止める。

 

 どちらの唇か滲む血の味がした。

 

 何が起きても離さないと、そんな意思を持って掴む腕は細くも力強い。

 柔らかくも冷たい乳房が胸板に潰れては彼女の鼓動が聞こえる。

 

 この温もりに甘えてはいけない。

 

 彼女に、園子に嫌われてまで死んで後悔しないだろうか。

 

 力も何も無いのなら、いったいどうしたらいいのだろうか。

 

 ──ぐるぐる、ぐるぐると頭の中で言葉が渦巻いている。

 

 

『──許さないから』

 

 

 静かに楔を打つように、果てなき夜の世界で、園子が告げる。

 冷たい雨の中で、戦う術も資格も無くした男なんかを求める声色に。

 揺れる血紅の瞳がゆっくりと閉じていくのが琥珀色の瞳に映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 浴室内には淫靡な空気が充満していた。

 呼吸する度にじんわりと熱が身体を循環し、肺に熱気が送られる。鼻孔をくすぐるのは甘い芳香と少女たちの混ざり合った香り。

 肺を萎えさせて膨らませて、手元にあった小瓶を取る。

 湯面にプカプカと浮かぶお盆の上、皿に置かれていたソレは嗅いだことのある匂いがした。

 

「ん……」

 

 口に含むと、甘くて僅かにフルーツの味がする清涼感。

 生温い甘酒は彼女たちが普段飲んでいるような物に比べて多少の度数が高め、僅かにほろ酔い可能な初心者向けの甘いお酒だ。

 

「くくっ」

 

 甘酒とかの誤魔化しが通用するとは思えない、本物の酩酊感に思わず笑みがこぼれる。

 誰だか分からないが禁酒した人間に対して挑発的とも言える行為だ。

 大赦か、或いは敵による行為なのか。

 脳をゆっくりと回しながらも胃袋に注がれる感覚に寝起きの喉を潤わせる。

 

 そう、寝起きだ。

 

「……おはよ~」

 

 無言で小瓶を声色の方角に傾けるとちゅっと少女の唇が吸い付く。

 思った以上に身近に、触れるか触れない程度の距離にいた裸の少女。彼女は艶やかな唇を僅かに動かすと、後頭部で纏めた金髪を揺らして喉を鳴らして小瓶の中身を減らしていく。

 

 視界の左側を占領する金色と肌色。

 穏やかな微笑を浮かべ、水面に微かな波紋を広げながら小瓶の中身を減らしていく。美味しそうに飲む少女がもう十分だと目線で告げる頃には三分の一ほどにまで無くなってしまった。

 

「ぷは~……生き返るんよ」

 

「あーあ、飲酒だ飲酒。先生に言ってやろ」

 

「フルーツジュースだよ~。もし何かあっても同罪だからね」

 

 ちゅっと唇を舐めては、少女がしなだれかかる。

 湯にほんのりと赤らんだ肢体には水着もタオルもなく、当たり前のように俺の隣に腰を下ろして肩に頭を乗せる。豊満な乳房が彼女の挙動に合わせて浮いては沈む。

 自身の胸部を見られていることに対して園子は静かに苦笑して太腿に触れる。

 

「どうした?」

 

「ん? 珍しい物を見たな~って」

 

「俺のあられもない姿なら何度も見てるだろ?」

 

「そうじゃなくて、こんなところで寝るのは自慢じゃないけど私くらいだから~。三分くらい眠ってたから湯舟に顔を沈めないように支えてたんよ。えっへん」

 

「それはありがとう」

 

「……溺死は嫌でしょ?」

 

 小首を傾げる琥珀色の瞳。

 湯舟の中で、彼女のくびれた腰肉に腕を回すと園子の肢体が寄りかかる。滑らかな太腿が俺の腿肉に擦りついて爪先がそっと足の甲に触れた。

 ちゃぽっと湯に濡れた手を出して、俺の頬をそっと撫でる。

 そうして何もかも見透かすような琥珀色の瞳を向けては、

 

「ちょっとだけ寝てたから、もう少しでかっきーが溺れ死ぬところだったんさ」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして。……悪夢でも見た?」

 

「どうして?」

 

「そんな顔してたんよ」

 

「──、夢の内容なんて忘れた」

 

 彼女の体重が身体に乗り、心地よい。

 桜色の乳輪と先端ごと柔らかな乳房を手にすると掌の中で弾力を返す。すっかりと揉み解された乳肉の餅のようなまろやかな感触は何物にも代え難い。

 たわわな果肉の先端を指で捏ねながら至近距離で瞳を見つめる。

 

「──けど」

 

「……けど?」

 

「園ちゃんに愛されてるなって思った」

 

 額に張り付いていた前髪を除ける。

 形の良い眉と濡れた瞳は左右を泳いで、小さく口元を緩める。

 

「……これが愛?」

 

「さあ?」

 

 愛の定義を聞かれても分からない。

 哲学者になった覚えはなく、しかしそれでも思うことは一つだけ。

 

「でも園ちゃんを手放したくはないかな」

 

「私もかっきーのことは手放したくないな~……ずっと」

 

「俺にこんなことを考えさせた責任を取ってくれ」

 

「かっきーこそ責任を取ってよ」

 

 俺の太腿に手を置いて、園子は身を乗り出す。

 金色の髪が垂れ、暗くなる視界で端正な小顔が広がる。

 

「相思相愛だな。ビュオオって風が吹いた?」

 

「……吹かないよ」

 

「園子?」

 

 戸惑いがちに「亮之佑」と少女は名前を口の中で呟く。

 渾名の時よりも小声のソレは目の前にいたから聞こえる程度の声量で。

 照れたような表情で、様々な感情を過らせる園子の姿に言葉を呑み込む。

 

「────」

 

 どこへも逃がさないと濡れた掌を俺の頬に添えて。

 湯水に濡れ温まった柔らかな身体が身体の前面に触れる。

 その感触を忘れさせる程に、とろけているような女の唇と唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まろやかな園子の身体を肌で感じる。

 揉み慣れた乳房は指に吸い付き、甘い声を耳に聞かせる。

 

「そのちゃーん」

 

「ぁん、ぁ、ゆ~ゆ」

 

「あっ、お邪魔だった?」

 

「ううん、かっきーのいつものアレ」

 

「そっか! じゃあ、私もぎゅー!」

 

 全身で抱擁する園子の隣に友奈がやって来る。

 湯とは違う、温かくも柔らかい抱擁は言葉にし難い満足感を得る。

 このまま沈むように眠ってしまいたい、そう思える美少女たちの親愛に満ちた抱擁。

 

「だっこっこ〜!」

 

 愛おしいと感じる少女たちの抱擁からしか得られない物がある。

 そのままジッとしていると柔らかい肢体を通じて、精神的な何かが回復していく。

 

「──ユナニウムとソノニウムをチャージ完了」

 

「何それ~」

 

「宇宙に唯一無二の元素で摂取すると凄いことになるんだ。学会で提唱されてる」

 

 実際に水着もない生まれたままの姿の二人に抱かれていると精神的な安定を得られる。

 何かが心の中に満たされるのを感じて左右で柔らかさや大きさが微妙に異なる尻肉を揉むと俺の首や背中に手を回す少女たちはさらりと怒張に触れては悪戯するように軽く上下に擦る。

 腹部を押し付けて乳房を押し潰すほどに強い抱擁と、至近距離での濡れた瞳。

 いつもなら、そのまま行為が始まるのだが、ふと視線を泳がす。

 

 全身から親愛を感じさせる友奈が来た方向には浴槽の縁で仰向けの少女。

 湯気があるとはいえ、隠しきれるほどではない裸体は乳房から恥丘まで曝け出し、ゆっくりと上下する腹部に濡れた怒張の玩具を添えられた状態で秋原雪花は目を閉じていた。

 視線の移動に追いかけた先の景色を共有した友奈が「ああ」と思い出したように告げる。

 

「せっちゃんね、すっごくエッチだったよ! 声とか! 園ちゃん見てた?」

 

「うん、見てたし聞いてたよ~。……あんなサイズの物を入れてエッチな動画みたいに気絶させるまで悦ばせられるゆーゆは流石なんよ。無自覚な鬼畜だぜ~」

 

「えっ、そうかな? とっても喜んでたよ! それに夏凜ちゃんも手伝ってくれたからね! ……あとは皆にせっちゃんのエッチなところを沢山見て貰ったり触って貰ったのが良かったのかも!」 

 

 脚を広げ事後のような状態となった雪花の隣に座るのは夏凜だ。

 ビキニメイドの水着が着崩れたあられもない姿を見せながら、声が聞こえたのか小さく手を振って見せる。視線を感じ取ったのか、そっと薄い胸元に手を添えながらも、ここは任せろとばかり脚で湯水を蹴る。

 その振動で、ゆっくりと小さな盆に飲食物が流れて来る。

 定期的にどこからか、湯面に飲食物の皿が入った盆が流れて来るのも、この快楽の沼から抜け出せない要因の一つなのかもしれない。

 

「夏凜ちゃーん! せっちゃんの様子見るの交代ー!」

 

「ちょっ、私は別に……脱がせようとするなぁあああー!」

 

 メイドの少女を定義するのは衣服だろうか。

 彼女を定義していた物が脱がされて、裸の少女が一人笑顔で押し付けられる。

 薄い胸が肌に触れながらも、周囲の雰囲気と水分補給で飲んだ酒によるものか、ツンデレめいた台詞を吐きながらもチラチラと怒張に目を向ける元メイド。

 代わりに自己犠牲の塊である天使友奈が気絶した勇者の介抱に向かうが、

 

「……結城。雪花の方は任せておけ」

 

「わわっ! 棗さん! あ、風先輩も」

 

「…………」

 

「気絶しちゃってる」

 

 友奈が交代するのかと思われたが、盆の一つを持った棗が湯舟の中から現れた。

 小麦色の健康的な肌を一切隠すことなどせず、乳房から薄い恥毛まで堂々と見せながら、気絶する雪花の隣に虚ろな目をする風を横たえる。

 裸体の少女たちを横たえると、上から下までの差異がよく分かる。

 散々好き放題されたのか、脚を広げて寝転がる風はぐったりと身を横たえている。

 彼女の胸は未だにツンと張っているが無数のキス痕で薄く赤みを帯びていた。

 どこか満足げな表情にも見える風や雪花の唇を何でもない様子で奪う棗は盆に置かれた小瓶の中身を口移しで飲ませていく。隣では園子が防水メモに何かを書き込んでいた。

 

「大魔王様であるフーミン先輩とその右腕であるアッキー……勇者なっちの手によって彼女たちの戦いは終焉に導かれる。倒される二人。気絶し動けない二人の衣服は乱暴に剥かれて露出した肌! 欲望! それは何者も勝てないのだ! おもむろに肌に触れる度に露骨になっていく指先。介在する良心はエロスによって失われる! そう、既になっちの欲望は止まらないのだ。彼女たちが見せ、聞かせる女の反応にマウンテンを登頂していたなっちの指先が快楽を身体で求める大魔王たちのワカメをなぞり、そしてその奥へと──……ビュォォォオオオオゥ!!!」

 

 ハアハア言いながら何か独り言を告げる園子。

 言葉にし難い表情をする夏凜には酒の入った小瓶を勧める。

 友奈は戻ってきては、俺の背中にジャンプして抱き着いた。

 

「大丈夫なんよ。これはただの妄想~。ちゃんと名前とかは変えるから」

 

「あ、うん。……これさっきから飲んでるけど結構美味しいわね」

 

「はい、にぼっしー共犯! 捕まる時は一緒だぜ~!」

 

「はあ!?」

 

 加わった女体がむにゅむにゅと潰れたり押し潰されたりしながら甘い刺激をもたらす。

 与えられた食べ物は、先ほどから身体に活力を与えて来る。──主に下腹部に。

 

 人肌と湯水の温かさと共に身体に帯びる熱と酒。

 くらくら、くらくらと頭の中が回るような感覚に、しかし身体は正直な反応を示す。

 

「……ほら、にぼっしーも」

 

「ん……なによ硬いじゃない。こんなに大きくして変態なご主人様ね」

 

「まあ! 私の夫に手を出すとは泥棒猫め!!」

 

「いや触らせておいてそれ!?」

 

 反り立つ肉棒がにちゅにちゅと少女の手で扱かれる。

 平然そうな顔をしながらも、反応を窺うように俺を見る少女たちを腕に抱きながら歩みを進める。ノリノリでメイドの真似事を続ける夏凜と自然体で令嬢をする園子。

 背後からは首筋を甘噛みしながら、前面に手を回す友奈。

 

「ぁっ……んっ、っ」

 

「ちょ、どこ触ってんのよぉ……」

 

 吸い付く尻肉を撫でて、その奥の陰唇を指で弄る。

 湯水ではないとろりとした液体を指で絡めては秘肉に差し入れする。

 

「んんっ……!」

 

 ちゅぷっと指に吸い付く膣肉を指で擦る度に、少女が小さく呻く。

 太腿を閉じようとする夏凜の脚の付け根に手を差し入れ、刺激し弄ぶ。

 

「はぁ……ぁ……」

 

「んゃ……ひぅっ……」

 

 まとわりつく女体を両腕にしながら一歩進む。

 歩きながら左右の少女たちの締まりを指で味わう。

 雰囲気か飲み物か食べ物か。いずれにしても高鳴る鼓動が彼女たちの絶頂を求めて身体を突き動かす。嫌々と首を振りながらも甘い声を漏らす夏凜と、可愛らしい喘ぎと共に受け入れる園子。

 

「ゃぁ……!」

 

「ぁ、ぁぁ……だ、ダメ!」

 

 左右の蜜穴の中身は熱くて、ぬめる膣肉を指で愛撫する度に喘ぎ声を聞かせる。

 とろんとした目の園子と夏凜の媚肉の中を挿入しては、指を折り曲げて擦る。

 

「んむ!? ん──」

 

 見せかけの抵抗に熱を帯びた夏凜の唇を奪うと、俺の頬にキスする園子。

 ピンと背筋を伸ばして、俺の肩に手を置いて、最初に夏凜が、数秒遅れて園子が達した。

 

「……ぃッ! ~~ッ!!」

 

「……ぁぁあっ!」

 

 ぽたぽたと湯水に雫をこぼし、二人は身体を跳ねさせて震えていた。

 やがて呼吸を取り戻した彼女たちは荒い呼吸を繰り返しては虚ろな目を薄く開く。俺は彼女たちの桃尻を掴み、締め付ける媚肉の中で指を動かしたまま目の前の光景に目を向ける。

 それは。

 

「……ひゃめてあややぁ……もうイきたくないイきたくないよぉ」

 

「おい楠、弥勒! 俺だけでなくしずくにまでこんなっ──んくっ!」

 

「仲間外れはいけませんから」

 

「そうよ、現にしずくは喜んでたじゃない。だから次はシズクの番」

 

 それは。

 

「みーちゃん! ウェイト! 指止めて……そんなところ舐めちゃ……みんなも見ないで!」

 

「ご、ごめんねうたのん。でも私も大きくなりたいから許して。うたのんのエッチな汁を飲めば大きくなれるって学会で提唱されたらしいから! だからもっと脚を開いて!」

 

「そんな訳ないでしょ!? ……ぁ、ぁ、カミング! みーちゃ……ほ、本当に……ィっ……!」

 

 それは。

 

「ひなたさん。……前から思ってたんですがなんだか私の亮くんと距離が近くありません? 亮之佑さん亮之佑さんって……ヒック」

 

「んむっ、んんっ! そ、それの何がいけないんですか! 樹ちゃんもそんなところ舐めたら駄目ですから! みなさんそろそろ上がって下さい! 正気に戻って……」

 

「ひなたさん、そんなこと言ってこんなに濡れて……」

 

「そこは若葉ちゃんと……ああっ!!?」

 

 それは公開処刑が行われていた。

 乳房が潰れ合い、少女の大事な処を曝け出され無数の手と目と舌をもって柔肌を蹂躙する。

 同性どころか異性の目に隅々まで見られる痴態、ボトムスをずり下ろされ、トップスを剥かれ、秘所に指を入れられ、あられもない姿で喘がされる少女たちの目と目が合う。

 声にならない羞恥の絶叫に身体を暴れさせるも周囲の少女たちが押さえ込む。

 彼女たちの羞恥心は周囲の喜悦に塗り潰されていく。

 

「ゃだっ、ぁ……みられて……」

 

「みないで……」

 

 嫌がる少女たちの抗議の声に耳を傾けず、無数の手が肢体に這い寄る。

 胸元を隠そうとする両手は掴まれ、耳を舐められ、唇を奪われる。

 

「ほら、イって雀」

 

「ぁぁぁっっ……!! ぁひっ、ぁ、ぁー……」

 

「雀先輩? ……気絶しちゃいました」

 

「ふう……見た? 亮之佑。亜耶ちゃんほどじゃないけどこれくらいなら余裕よ」

 

「はあ? 芽吹ってば前に散々泣かされた癖に調子に乗るんじゃないわよ」

 

「な、泣いてない! 夏凜こそあの時漏らしてたじゃない!」

 

「も、漏らす訳ないでしょ!? 記憶捏造してんじゃないわよ! パパパパ呼んでた癖に!」

 

「なっ!? いいわ……だったら勝負よ! 他の子を先に気持ちよくさせた方が勝ちで!」

 

「余裕だわ。友奈から教わったゴットハンドを見せてやるわよ!」

 

 左では加賀城雀や山伏しずくが亜耶を筆頭に全身を弄られ嬌声を上げている。

 右では白鳥歌野が藤森水都にボトムスを下ろされクンニリングスを受けていた。巫女に傷をつける訳にもいかず処理の甘い茂みに鼻を埋め全力で刺激される歌野と目が合った。

 目が合って、自分の身体が見られていることを認識した彼女の腕は自らの裸体を隠そうとするも夏凜によって手首を掴まれ、身をくねらせる。

 顔を赤くする少女のぷるりと揺れる乳房は芽吹が手に取り、

 

「なに恥ずかしがってんのよ歌野。ここまできたら一連托生でしょ」

 

「そ、それとこれとは別で……亮之佑さん出来ればこっちを見ないで──」

 

「うたのん! こんな時に誰と話してるの! もっとエッチな汁を出してよ」

 

「そ、そこで喋らないでみーちゃん!」

 

「嘘だよ。だってこんなに……加賀さん、ほら見て、濡れてるよね?」

 

「えっ? 本当だー! 農業王エチエチじゃん。声可愛い」

 

「~~~ッッ!!」

 

 浴槽の縁、公開処刑の対象となる少女たちは横に並んで辱められる。

 正気を保っている方が悪なのか、ホカホカの身体は熱を帯びる彼女たちの両手は少女たちの腕を掴み、可愛らしい反応と嗜虐心をくすぐらせるだけでしかない。

 赤くした顔を逸らした歌野の唇をメイド夏凜が奪っては、小瓶の中身を飲ませていく。

 陸に上げられた魚のように徐々に弱っていく少女の姿を茂みから覗く専属の巫女がわななく。

 

「三好さん? 何を──」

 

「水分補給すると出やすくなるでしょ?」

 

「そっか……うたのん! 飲んで! いっぱい飲んで!!」

 

「俺も指入れていい?」

 

「だ、だめ! ……んやっ!」

 

 歌野やひなたの肌を撫でる手に加わる。

 ビクッと裸体を震わせて、双丘から腹部をなぞって恥丘を指で這う。色白な肌や健康的な肌、指先一つで顔を赤らめては甘い声を漏らす彼女たちの湯水に濡れた恥部は簡単に指が入る。

 陰唇を割り開いて、ピンク色の肉が覗く花弁に指を挿入させてそっと膣襞を押す。

 

 既に多くの少女たちに弄られた秘部は濡れ、押す度に歌野の声が漏れる。

 可哀そうなほどに顔を赤くして、堪えようとした声は結ばれた唇からこぼれる。

 

「だめ……だめ」

 

「うたのん……私以外にはそんな顔するんだ」

 

「ぁんっ! ……ゃ、ちがっ、これは……ッ!!」

 

 少女たちが快楽に喘ぐ度、ぱちゃ、ぱちゃと浅い水が跳ねる。

 湯舟に沈みかけては浮上して、周囲の少女たちが戯れでその肢体を弄んでは湯水を跳ねさせる。プカプカと浮かぶ乳房を揉まれ、舐められ、甘噛みされ、吸い尽くされる。ピンと脚を伸ばしては背筋をのけ反る巫女の姿に勇者は微笑む。

 秘所に伸ばされた指は小刻みに動き、弱り果てた少女を悦ばせ続ける。

 

「──それで、若葉ちゃんがどうしたの? ヒナちゃん。ねえ」

 

「ンぁああっ!! ぁ、それだめぇええっっ……! ぁぁっ……!!」

 

 弱り果てた勇者も巫女も等しく同性の少女たちに性感を弄ばれる。

 身体で教えられる彼女たちの絶頂に悶える顔も仕草も皆に見られる。そして、肉欲の混じった視線は怒張にも向けられる。怒張をさりげなく触る園子は、正面のひなたの蜜穴に怒張を近づける。 

 数人がかりで開かれた巫女の秘所への挿入にひなたは慌てたように首を振る。

 

「りょ、亮之佑さん!? ……やっ! 見られて……!!」

 

 ひなたの言葉通り、皆の目も気にせずに彼女の肉穴に挿入する。

 熱く濡れた膣襞は出来上がっており、顔を逸らした巫女は腰を挟む両脚に力を入れた。

 

 ぬぷぷっと熱く甘い肉壺。 

 背筋を反らし大きな瞳を見開く彼女を前に、思わず俺は吐息を漏らした。

 

「ふ、ぁ、ぁ……ッッ!!!」

 

 パクパクと口を開閉させる少女が身体を跳ねる。

 涙すら浮かべた瞳を逸らす姿に、東郷や友奈が彼女の乳房や性感帯と思わしき場所に触れていく。ぱちゃぱちゃと湯舟の湯を揺らして腰を振ると彼女の膣はきゅううっと締まる。

 皆に見守られながら、腰肉を掴んで腰を揺する度にひなたは喘ぎを漏らす。

 

「ゃ……ぁ……!」

 

 虚ろな目で天井を見上げて喘ぐひなた。

 湯舟の中で突き上げる度に湯水が弾け、乳房が揺れる。

 

 快楽の沼では常識など通用しない。

 最も理性を保ったままの巫女など周囲の勇者によって辱められるのみだ。

 

 前後に揺れる乳房を揉む手や、乳首を摘まむ手。

 ピストンを邪魔しない程度に恥毛を弄り、肉芽を押し潰す指。

 白い肌を甘噛みされ、身体をのけ反らせ震えるひなたを皆で味わう。

 

「んんぅぅ~~~~ッッ!!」

 

 甘く蕩けた喘ぎ。必死に呼吸しようとする巫女の唇が少女に奪われる。

 順番に巫女を快楽の沼に沈められては、その震えが俺の身体にまで伝わる。

 同年代の少女たちに熱くなった膣は締まり、俺もまた腰を振る。

 射精衝動は高まり、勢いよくピストンを続けた。

 

「──ひゃぁぁああッッッ!!」

 

 やがて、目の前が白むほどの悦楽の中、白濁を注ぎ込む。

 びゅううっと噴き出す精子が巫女の最奥を汚していく感覚に暫く酔いしれる。

 

「……ふぅ」

 

 吐精を完了してゆっくりと怒張を引き抜く。

 群がる少女たちは思い思いに俺の怒張や唇に吸い付き、甘く媚びを売る。

 

 学会では少女の蜜だけではなく雄汁も巨乳化には効果があると提唱したらしい。肉芽や濃いめの陰毛を弄って遊んでいた樹や、雀やシズクを屈服させた亜耶が仲良く白濁を啜り合っていた。 

 

 呆然としているひなたには口移しで酒が注がれ、俺の口にも東郷が有無を言わせず柔らかな身体を擦り付けながら口移しで酒を飲ませようとしてくる。

 亀頭に吸い付く友奈の頭を撫でながら、ふと周囲を見渡す。

 夜が深まり始める中、理性の外れる快楽の沼は止まることを知らない。

 

「ちょっと涼んでくる」

 

 他の少女たちも恐らく淫欲に塗れた淫魔の如き状態になっているのだろう。

 そんな考えを抱いて口にしたひなたは真面目で理性が高かったのだろう。その結果、散々な目に遭いぐったりとした巫女を連れて休憩という名目で個室を出る。

 水着は回収できたが、ツンと張った胸やキス痕で薄く赤みのある肢体に着せるにはまだ甘い痺れが残っているようで全裸のままだ。

 肉付きの良い彼女の腰を抱き他のスペースを回ってみる。

 

「その、助けて頂いたのは嬉しいのですが……もう少し早めに助けてくれると」

 

「あの人数差で俺頑張りましたよ。ほら、その証拠にそんな満足したような顔しちゃって」

 

「し、してません。あんまり此方を見ないで下さい」

 

 蕩けていた表情の名残を見せるひなたの顔を見る。

 ふいっと顔を逸らす巫女の顔を追いかけると更に顔を背ける。

 面白いのでそのまま追撃をと考えたが、そろそろ怒りそうなので脚を進める。

 

「……若葉ちゃんならもっと早く助けてくれました」

 

「いや若葉の場合はむしろ取り込まれている方だろ。嬉々としてひなたさんのエッチな身体を好き放題にしているだろうよ」

 

「それは別に良いのですが、その時は私がお仕置きします。あとエッチじゃありません」

 

 貸し切りである為、他に人の気配はない。

 人がいるとしたらそれは勇者部がいるということだが、先ほどまでいた銀や球子といった姿は見当たらない。既に風呂に浸かるのに飽きて外に出て行ったのだろう。

 二人で耳を澄ませ快楽に浸かった頭を必死に回しながら大浴場を回る。

 

「恐らくサウナか露天風呂あたりでしょうか?」

 

「どっちから先に行きます?」

 

 肉付きの良い太腿を撫で、尻肉を掴む。

 ビクッと身体を震わせる巫女がもの言いたげな顔で俺に目を向ける。

 

「露天風呂で」

 

「その心は」

 

「……眺めが良いので勇者部では人気の場所ですよ」

 

 むっちりとした臀部から濡れた恥丘を指で這う。

 散々少女たちに苦しめられた肉体は喜悦に弱く、簡単に濡れる。

 

「あ、あの……っ」

 

「どうしたんですか? ほら行きますよ」

 

「じ、自分で歩けますから……ひぅ!?」

 

 彼女の身体を弄りながらゆっくりと露天風呂のスペースに移動する。

 一歩進む度に乳房を揺らす巫女は顔を真っ赤にして、秘所への指の挿入を許す。

 

 荒い息を手で隠す。媚肉は更に濡れ指に吸い付く。

 歩行速度の遅い彼女の乳房を揉んではポタポタと垂れる雫を指に絡めて動かす。止まりそうになる度に無理やり歩かせては嬌声を漏らさせる。

 

「……ハァ、はぁ、ぁ」

 

 ひなたの肢体には汗が滲んでいた。

 止まりそうな脚は、膣襞を指で押す度に進ませる。

 俺の顔を見る度に乳房を揉んでは乳首を指で捏ね繰り回す。

 

「どう……して……」

 

「満足してないんでしょ?」

 

「それは……ちがっ」

 

 少しずつ、少しずつ、歩みが遅くなっていく。

 ゆっくりと指を曲げて膣襞を押す度に、小刻みに巫女が絶頂する。せめてもの抵抗なのかすべすべの手で怒張を上下に扱く。

 互いの大事な部分を手で触り合いながら進む。

 目的地が遠目に見えて来る頃には、巫女の唇から涎がこぼれた。

 

「気持ち良かったです!! よかった……からぁ……っ」

 

「……」

 

「本当ですから! なんで……やめてっ、ぁ、……っ」

 

「……」

 

「ぃ、ぃ、──ッ!! 〜〜〜ッッ!!」

 

 最後には公共スペースで彼女は崩れ落ちるほどの絶頂を迎えた。

 ぷしっと小水を噴いては不規則に肢体が跳ねる。

 荒い呼吸をする巫女の恥部から指を引き抜いて目的の場所に到着する。

 

「………若葉ちゃんよりも強引な人ですね」

 

「お嫌い?」

 

「…………」

 

 呼吸を整える巫女の小言は耳から通り抜ける。

 この施設の露天風呂は内側からでは外を確認出来ないように壁が設置されている。

 水着を履き直してからガララッとガラス扉を開けると、室内よりも冷たい空気が肌を撫で瀬戸内海の海の香りが僅かに鼻孔を擽ると同時に、声が聞こえてきた。

 

「────」

 

「──!」

 

「──!!」

 

「~~ッ!!」

 

 聞き覚えのある艶のある声に近づいていく。

 暗い空は相も変わらず、掃除のされている濡れた石畳を進む。

 何かを察したのか、無言になった巫女の手を取って、ゆっくりと脚を進める。

 

 視線を遮る柵は高めで苔むした岩と木々が広がっていた。

 湯気を放つ石造りの湯に、肌色が二つ。

 

「須美ちゃん、須美ちゃん!! 須美……ちゃ……へへ、気持ちいい?」

 

「ちにゃ……ちにゃぁ〜〜……」

 

 湯舟に水着がぷかりと浮いていた。

 浴槽の縁では、少女たちが裸で絡み合っていた。

 

 

 



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第四十六話 ぼたもち・ぼたもち・ぼたもち

ゆゆゆい終わっちゃいましたね


 普段は真面目で委員長気質な黒髪少女が頬を緩め、恍惚な表情を晒している。虚空を見上げる瞳に色はなく涎が垂れた唇はときおり何かを口走っている。

 後頭部に纏められた黒髪を僅かに乱れさせた少女はその裸体を好きに弄ばれていた。

 

「ちにゃぁ~……」

 

 時折ビクッと年齢にそぐわぬ豊満な胸を揺らす黒髪の少女。

 その姿にほんのりと頬を赤らめながら満足そうに笑うミルキーブロンドヘアの少女。

 

「気持ちいい? そうだよね、結城さんのマッサージを見様見真似でやってみただけだけど……須美ちゃんの身体ってこんなに敏感になってたんだ。こんなのもう誰がマッサージをしてもちにゃるんじゃないかな」

 

 真面目そうな口調で無垢な少女の身体に触れる少女。

 鷲尾須美。東郷の進化前の姿をした彼女は、淫らな微笑を浮かべた少女、伊予島杏によるマッサージをその身に受けていた。

 互いに裸で。

 恍惚な表情をした須美の柔肌を杏は思う存分に撫でまわしていた。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

 荒い呼気を漏らしながら須美の肢体に触れていく杏。

 湯の中に見える彼女らの裸体、角度の問題で杏の背中と尻が見えていた。

 ぷるりと白い乳房が揺れ、肢体が絡む度に水面を叩く。

 マッサージと称しては無垢な黒髪少女の裸体を夢中になって上から下まで指で触れていく。

 

「須美ちゃん、こっち向いて」

 

「ん──」

 

「やん! 可愛いんだからぁ〜! 大丈夫だよ~、そんな期待したような顔をしなくても」

 

「あふ……ぁ……ふぁぁ……」

 

 くちゅくちゅと水音が聞こえては、ときおり二人の白肉が重なる。 

 ミルキーブロンドのウェーブがかった髪を垂らし仰向けの須美の上に重なる少女。

 尻肉が震え、色白の腿が動く度に湯水が跳ね水面に波を立てる。

 裸で抱き合っては淫靡な雰囲気を醸し出しては荒い吐息を漏らす二人。押し倒された須美は闇夜を見上げ、ランタンの光に照らされた杏の横顔は朱色に染まりつつも期待に胸を膨らませている。

 

「これは…………手遅れですね」

 

 そう、ひなたが口にするのも無理はなかった。

 百合空間、二人だけの卑猥な世界が構築されていた。

 

「いつかするだろうなと思ってました」

 

 身内が犯罪者になった時に口にしそうな台詞を口にする巫女は俺の手を借りてゆっくりと浴槽に脚を入れる。ちゃぷっと程良い温かさの湯水を腰まで浸からせると思わず吐息がこぼれる。

 先ほどまで別の温泉を楽しんでいたが、それはそれだ。

 同じように深い吐息をするひなたはチラリと俺に目を向ける。

 

「せっかくですし先に少し浸かりますか。さっきの酒風呂からお菓子とか持ってきましたよ」

 

「いつの間に……いえ、そうではなく。目的を忘れてませんか?」

 

「イチャエロしてる少女たちを肴にひなたさんみたいな美少女とお風呂を楽しむことでは?」

 

「……趣味が悪いですよ。……亮之佑さんはそこで休んでてもいいです。先に私から巫女としての立場の前に、純粋に一人の友人として一言言っておきたいので」

 

 そう言って、俺の掴んだ手をやんわり解いてそっと湯舟に沈める巫女。

 酒風呂とは違う、匂いや温度などに身体を弛緩させる俺に滑らかな背中を見せるひなた。

 彼女が進む先には須美の股に手を入れては耳元で何かを囁いている杏。

 ネチネチと東郷への成長前の肉体を弄っている少女へと水着姿の巫女は歩みを進める。解けていた長い黒髪を風呂に浸かる為に後頭部に纏めながらゆっくりと杏の背後に気配を消して近づく。

 

「はひゅ、しょこ……ふはぁあぁ……っ!」

 

「うん、そうだね。気持ちいいよね」

 

 えへへと可愛らしい笑みをこぼしながらも変態的な手つきで少女を弄ぶ杏。

 脚を広げさせては卑猥な手つきで柔肌に触れる。

 アレが本当にマッサージなのだとしても、およそ巨乳ロリを性的に喘がせる変態なお姉さんという犯罪的な絵面は擁護しようがない。

 

「ここ、こんなにしちゃって……あ~あ、いけないんだ♡」

 

 いずれにしても背後に無言で立つ巫女も巨乳ロリを弄ぶ勇者の顔も見えない。

 角度的に見えるのは、丸みを帯びた柔らかそうなひなたの水着に包まれた尻肉で、いったい何をするつもりなのかとぼんやりと見ていると巫女はその手を振り上げて、

 

「──いけないのは杏さんです!」

 

「はにゃ!?」

 

 直後、ひなたが杏の臀部を叩いた。

 ばちーんと叩かれた白肉は弾み、思わず背中を反らす杏の胸が上下に揺れた。

 

「え、ぁえ? ひなたさん!? いきなり……」

 

「はあっ!」

 

「へぁっ!?」

 

「園子さんに変な影響を受けただけに留まらず、須美ちゃんに手を出すなんていけません! ロリコンのような思わせぶりな言動をしながらも最後の一線だけは越えないと信じてたのに!!」

 

「ひゃん!!」

 

 右の尻肉が叩かれたら左の尻肉も差し出せ。バランスが悪いから。

 かつての偉人が似たような言葉を発していたような気がしたが、散々に酒を飲んでは女を抱いて回ったからか脳味噌がそんな感じの言葉だったよと修正を放棄する。

 ひなたの尻叩きはそれほどに衝撃的で、杏の左右の尻肉には紅葉が散った。

 

「杏さん! いつからそんな小さい子に手を出す変態に! 若葉ちゃんと共に戦う勇者がそんな変態になってどうするのですか! 亮之佑さんじゃあるまいし!」

 

「おい」

 

「やん! ちがっ、これはマッ……指圧マッサージです! お尻を叩くのやめて下さい!!」

 

「そんな言い訳が通用すると思いますか!」

 

「ひゃぁああ!!」

 

 杏の叫びが夜空に響く。

 瀬戸内海の潮風がふと鼻孔をくすぐり、俺はゆっくりと巫女に迫る。

 

 仰向けの須美に覆い被さり、倒れ込んだ杏の突き出された尻肉。

 酔いを醒ます為か、須美に手を出したことへのお仕置きか、勇者のサポートが仕事らしい巫女だが殆ど若葉専属なひなたも仕事はするらしい。

 ペチンパチンと巫女の尻叩きで杏の柔らかい肉が須美の上で潰れていく。

 

「ゃ、んっ……!」

 

「誰がムチムチですか!」

 

「言って、なぁっ……ん!」

 

 すっかり蕩けた須美の上で、尻を叩かれる杏が「あぁ……」と呻き声を漏らす。

 苦しそうな表情を横顔から覗けたが、単純に臀部からくる痛みだけではない。その証拠に、彼女の白く肉付きの良い腿には透明な雫が垂れ落ちていくのが見えた。

 何かに目覚めつつあるのか、それとも先ほどのマッサージで発情したのか。

 いずれにしても肩から下を湯舟に沈めたまま、俺は彼女たちに近づいていく。

 

「まっへ……まっへくらさい」

 

「須美ちゃん?」

 

「わたしが……杏さんにお願いしたんです。身体が熱くて……その……変な気分になったので、そしたらマッサージをしてくれて」

 

「……そうだったんですね」

 

「それで、一緒に大人になろうねって……杏さんが言って」

 

「……す、須美ちゃん!? もうちょっとマッサージしよっか!」

 

「ちにゃ!?」

 

「杏さん? ……今のは?」

 

「あ、えへへ……あの、ほら! 私たちもいい歳でお酒とか飲んじゃって酔っちゃった勢いで……」

 

「杏さん!」

 

「いたぁっ!?」

 

 このまま見学していても良いが、珍しく吊るす訳ではなく尻叩きというお仕置きをしている巫女も正常な状態ではないのかもしれない。

 そういえば、少女たちに隠すべき場所を晒され弄ばれた時に口移しで色々と飲んでいたことが原因なのではないかと考えながらひなたの背後に移動する。

 誰に見せることを考えていたのか、彼女の肉付きの良いスタイルを拝める事が出来る水色のビキニ水着はやや大人びた装飾がされている。肌面積もやや広めと刺激的である。

 少し攻めてみたい年頃なのか、ボトムスの両サイドは紐だ。

 

「……」

 

 ちょうちょ結びされた紐は引っ張ってみたくなる。

 そんな子供の悪戯心に刺激されて躊躇うことなく紐を引っ張る。

 

 単純に飾りな可能性も考慮していたが、思った以上に大胆なチョイスだったらしい。

 解けた紐、残ったボトムスは重力に従い垂れ下がる。

 ぽよんと目の前に現れたのは独特の弾力のある臀部だ。

 

「ぇ? ぁっ」

 

 違和感を覚えたのか一歩後ろに下がった巫女の尻が顔に当たる。

 弾力のある尻肉を顔で感じながら、前に回した手で彼女の恥部に触れる。湯水に濡れた黒色の恥毛から覗く媚肉は先ほどの刺激で濡れそぼっていた。

 思わず腰を引かせる巫女が振り返る挙動をする直前に立ち上がる。

 

「なにを……んむっ──」

 

 柔らかなひなたの唇を奪う。

 絡めた舌と口腔からは甘い酒の味。強張った少女の身体を羽交い絞めにするように抱き着いては剛直を陰唇に擦らせる。

 着け直したトップスをずらし手に余る胸肉を揉んで、口づけを行う。

 

「きゅうにっ、ん、っ、……! ゃっ……ぁん」

 

 脚を閉じた彼女の腿肉と陰唇を肉穴として扱う一方的な行為だ。

 少女たちに弄ばれ柔らかくなった乳肉を揉んでは、強張った身体が弛緩するまで彼女の口内をねっとりと舌で味わい唾液を啜る。

 鼠径部で尻肉を叩かれながら素股をすることになった彼女は言葉も態度も呑み込んで、弛緩させた身体をときおり震えさせる。

 亀頭がクリトリスと媚肉を擦る度に交わした唇から甘い呼気を漏らす。

 

 唇を重ねて舌を絡める。

 歯茎をなぞり頬裏の柔らかさを舌で感じ唾液を交換する。

 腰をくねらせて秘所同士を擦り合わせる少女の瞳はいつしか淫熱に揺れていた。

 

「んっ、ぁ、ぁっ! ぅ、ぁ~~ッ!」

 

 俺の腕を掴んで小刻みに震える巫女。

 大きな瞳には酒の酩酊と喜悦が混ざり合い、離した唇からは透明な糸が橋を作る。

 荒い吐息を繰り返し豊満な乳房を上下させる彼女に囁く。

 

「お仕置きはそれくらいで」

 

「……そう、ですね」

 

 見事な乳房が揺れ、ツンと尖った乳首は硬い。

 白い背中に汗が伝い、素股で限界まで反り立った愛液塗れの怒張を引き抜く。

 

 ひなたから離れ、彼女の蜜でコーティングされた肉棒に視線を感じる。

 仰向けの須美と彼女に覆い被さりながらも首だけは此方に向けていた杏。同年代の男女の素股をその瞳に焼き付けた彼女たちの瞳には健全な性欲が見え隠れしている。

 

「ぁっ」

 

「んっ」

 

 少女たちの乳房はいずれも豊満だ。この場にいる誰もが男を惑わせる巨乳の持ち主。白い肌をほんのりと朱に染めて、触れた乳房越しに鼓動が伝わる。

 須美の口から切なげな吐息が漏れ、杏の喉が小さく鳴るのが見えた。

 重なっていた二人の陰唇は無意識に擦り合ったのか小さな泡が立つ。

 須美の身体に覆い被さる杏を横に寝転がせると乳房が潰れるほどに密着させて抱き合った状態の杏と須美が俺の顔と肉棒を交互に見ては顔を赤くする。

 どこか初々しさを見せる少女たちに両手を伸ばすと、ふかりとした乳房の質感が掌に返る。

 

「ゃ、ぁ」

 

 仰向けになり横に流れつつも豊かな双丘はいずれも大きく形が良い。

 白い肌に細い腰、薄く生えた黒と金の茂みが絡み合い、陰唇が小さく震える。

 

「ぁ……」

 

 さらりと杏の赤らんだ尻を撫でる。

 湯水に濡れた臀部を優しく触れては、ゆっくりと片足を開かせる。

 ぬいぐるみを抱くように須美を横に置いた彼女は、

 

「す、するんですね」

 

「……」

 

「その……要望書に書いた通りが良かったなぁ……なんて」

 

「……」

 

 『景色の良いホテルで壁ドンされ、くすぐりイチャイチャしながら独占欲を見せる男とポッキーゲームしている最中に唇を奪われ、優しさとSっぽさのあるハードだったりラブラブだったりなエッチで忘れられない一夜を過ごしたい』という妄想の詰め合わせのセットは流石に厳しい。

 そういうのは小説だけにして欲しい。

 あわあわと目を回しながらもしっかりと男の裸体を見ている杏から渡された要望書への感想は泣かれたりしたくないので口にはしない。

 ただ静かに微笑して端正な杏の顔に近づくと、

 

「杏」

 

「は、はい」

 

「……抱かせろ」

 

「ぁ、ぁっ、ひゃ、ひゃい……お願いします」

 

 顔を赤くした少女のミルキーブロンドの髪をさらりと撫でる。

 一瞬、怒張に触れたり触れなかったりする乙女の手の感触に苛立ちと嗜虐心に駆られて、彼女の手の甲に手を重ねて肉棒を掴ませる。

 ビクッと身体を震わせるも好奇心が勝ったのか実物の雄竿に触れる。

 

「……すごい」

 

 色々と脳を回した結果、三文字に集約したらしい。

 じっくりと雄竿を掌で感じ取らせてから無駄な肉の少ない下腹部をぺちぺちと叩く。挿入したらどこまで入るのか恥骨から陰毛を擦る竿肉と先端の長さを肌で感じた少女が息を呑む。

 そうして、ゆっくりと濡れた膣口へと宛がう。

 

「ッ……ぁ、ァ!」

 

 広げさせた脚が閉じ、下に敷かれたタオルをぎゅっと掴む。

 僅かに腰を浮かせ豊満な乳房を揺らす杏の花弁を貫く。

 髪を揺らし乳房が上下し、熱く濡れた恥部はきつく怒張を締め付ける。張りがありやや硬さのある乳房を揉みながら先端を指で擦る。

 

「ひぐっ! ぁっ、ぁ、んんッ」

 

 ゆっくりとしたピストンで彼女の肌に汗が光る。

 荒げた息を唇ごと塞いでは、思い出したように乳房に吸い付く。

 

「は、んっ」

 

 彼女の可憐な嬌声に甘い熱が籠り始めるのに時間は掛からなかった。

 スローで抽送を続け、結合部から小さな水音を響かせる杏の媚肉は雄竿に吸い付く。杏は小動物のように身体を丸め首や顔を赤くする。

 ピストンの度に声に含む湿り気で判断していく。

 彼女の知らない弱点を雁で擦ると、腰が艶めかしくくねった。

 締め付けが増す中で入口から最奥までゆっくりとストロークする。

 

「おくっ、おくにぃ……、ォ!」

 

 腰を浮かせ、蜜が跳ね、膣が吸い付く。

 薄く目を開ける杏は生の乳房を揺らし、俺の腰に脚を巻きつける。

 

「それ……すき、です」

 

「杏……」

 

「ん! ぁ、んッ、んん、ぁ、ふぁ……」

 

 甘えるような可愛らしい嬌声。

 行為の最中は奥ゆかしい彼女は甘いキスが好みなのか、はむはむと唇を挟むキスをしてくる杏に応えながら、ふと目線を隣に向ける。

 

 本来ならば、蕩けつつある杏の横で寝転がっている筈だった黒髪の少女は、その身体の熱が冷めないようにと巫女の手によって淫熱を高められていた。

 俺の邪魔をしないように僅かに距離を取り、須美の肢体に手を添える。

 小さな東郷の秘所に指を入れ、豊かな乳房に口づけをするひなた。

 

「ふふ……若葉ちゃんにしかしないと思いましたが……これはこれで良いかもしれませんね」

 

「は、ぇ、ひなたさ……ひゃめて……」

 

「こんなに濡らしておいてやめてだなんて……素直になったらどうですか? 須美ちゃん」

 

「あっ! あっ! あっ!!」

 

「須美ちゃん。いいえ、東郷さん。私が亮之佑さんに近づいて何か問題ありますか?」

 

「にゃにを……くあっ!?」

 

「東郷さんこそいつも亮くん亮くんってベタベタと……。普段人にそういうことをしないように釘を刺しておきながら、この前部室ではしたないことをしていたの知ってるんですよ?」

 

「私じゃにゃぃ……」

 

「この前は挿入したまま部室での会議をやり過ごそうとしてましたよね。エッチな本や動画と違って皆さん気づいてましたよ。それも込みで興奮されてたんでしょうね。こんなふうに……っ!」

 

「ひぁぁ……ッ!!」

 

 先ほど東郷に辱められたことを思い出すかのように指先は激しく動く。

 既に敏感になった身体に巫女の責め苦は堪えるのか。

 可哀そうなほどに顔を赤くした須美に、暗い笑みを見せて指を動かす巫女。楽しそうだ。

 

「しら、ない……あぁっ!」

 

 ぷるぷると乳房を揺らして、閉じようとする脚を巫女に無理やり開かれる。

 風にそよぐ薄い恥毛を撫でる白魚の指が肉芽を擦り、秘部に挿入する指が抽送を続ける。

 ちゅぷちゅぷと水音を立てて、イヤイヤと巫女の腕を掴む勇者は喘ぐ。髪を揺らし彼女特有の香りを巻き散らす少女は涙を滲ませた深緑の瞳を此方に向ける。視線が絡み合った。

 

「……み、見ないでっ、亮之佑さん……!」

 

「イク時はちゃんと『イク』って言いましょうね? そうじゃないとまだクリクリしちゃいますよ?」

 

「……ぃ、ィ、イク……っ」

 

 唇をきゅっと噛み締めて、目を閉じる。

 奇しくもそれは絶頂に達しようとする杏と一緒で。

 

「「ぁぁあああっっっ!!!」」

 

 須美と同時に果てた杏の媚肉は驚くほどに締まり怒張を吸う。

 円を描くように腰を揺すると結合部から濡れた音が聞こえる。今まで見たことのないような恍惚な表情のままで杏はされるがままだ。

 目は焦点を結ばず、口の端から涎が垂れる。

 

「ぁっ、んっ、ふ……っ、んぅ………──ぷはっ!」

 

 乳肉を揉まれながらキスを求める勇者。

 ふわふわな髪を振り乱し、甘い香りを巻き散らす。

 

 そんな淫らな彼女に乱暴に腰を揺すりたくなる衝動を抑えつつ、少女の恥部へと指を這わせる。透き通るような肌に伝う汗は恥毛に付着する。

 髪と同じ毛色の柔らかな陰毛を指で撫でると羞恥の籠った呻き声を聞かせる。

 頬を紅潮させる杏は、もじもじと落ち着かなさそうに腰を動かした。

 

「あ、その、そこはあんまり……汚いですから」

 

「杏の身体に汚いところはないよ。髪の毛みたいにすごく柔らかい」

 

「そんな……、うぅ……恥ずかしい……」

 

「凄く綺麗だよ」

 

「……もう……揶揄わないで下さい」

 

「ここ、よく触ってるでしょ?」

 

「そんなことは……え? あ、ま、待って──」

 

 普段から一人で弄っていたと思われるクリトリス。 

 水気を吸った恥毛から覗く肉芽は硬く、まるで指で弄られるのを待つように震えていた。

 自らのどこを弄られようとしているのか、頭の回る彼女は息を呑み、上目遣いで俺を見る中で、親指と人差し指で摘まんでは擦る。

 

「く、ぁぁあああっ!!?」

 

 甲高い声で、杏が背を反らした。

 処女でも感じる器官への刺激は彼女に声を上げさせる。

 

 同時にこれまでで一番感じていた膣襞付近を中心に怒張で突き上げる。

 

「ひぁ、ぁあっ! やあぁっ!」

 

 腰に巻かれた脚からは力が抜け、口からは涙混じりの吐息が漏れる。

 感じ入っているのか涙を流す杏が腰を引かせようとするので、深く雄竿が入るように抽送と肉芽への刺激を続ける度に甘い香りが巻き散る。

 

 あられもない女の喘ぎ声。

 隣から聞こえる少女の声と同時に響く水音。

 

 一突き毎に息を荒げる。

 妄想ではない性行為を身体で味わう白い肢体を組み伏せたまま、俺はひたすらに肉穴を抜き差しする。

 あぁぁ、と背中を反らす杏はぎゅっと唇を噛む。

 

「っ」

 

 最後の一突きをする。

 甘い悲鳴が露天風呂に響いた。

 

「ぁぁああああっっっ!!!!」

 

 創作ではなない本物の白濁が勇者の最奥を汚す。

 どくっどくっと精子が彼女の媚肉に飲み込まれ、飲み込めないソースは逆流して結合部から垂れ落ちた。

 ちらりと見下ろすと荒い呼気で肢体に力のない少女。

 

「……ぁー」

 

 はぁー、はぁーと胸を放り出し脚を広げた姿は普段の彼女ならば絶対にしないだろう。

 性行為を味わい尽くして、雄竿を抜いた恥部から白濁を垂らしながらもどこか満足気な顔で虚空を見上げ続ける彼女の意識は法悦の空へ。

 暫く戻ってくるのに時間は掛かるだろうと隣に目を向ける。

 

 サポートのつもりなのか、隣で須美を責めていたひなたは順調に彼女を淫らに咲かせていた。

 手慣れた様子で少女の恥部に自らの恥部を擦り合わせ、互いの貝肉で蜜を絡み合わせている。じゅぷじゅぷと下品な水音と共に少女たちの媚肉から愛液と共に垂れ落ちる。

 

「あんっ! ゃ、あッ!」

 

「……! ん……!!」

 

 脚を広げ、まるで犯すようにひなたの腰が揺れる。

 情欲に濡れた吐息を漏らしながらも、少女の無垢な陰唇を白濁と愛液混じりの恥部で濃厚で深いキスを繰り返す。ぐぽっぐぽっと結合部からこぼれる白い泡が少女たちの黒色の陰毛を濡らす。

 

「……!! く、ぁ……!!」

 

 ビクッビクッと身体を震わせる須美はもはや喘ぎ声すらなく、巫女に犯されていた。

 腰を振るというよりは、擦りつけるように肉と肉が擦れ合い黒髪は揺れ、乳房も揺れた。

 

「須美ちゃん、気持ちいいですか? ……これが大人になるということですよ?」

 

「……ッ、ぅぁ……!」

 

「ふふ……指も二本入るようになって、舌を入れられると悦ぶのは若葉ちゃんみたいで可愛かったですよ。ほら、ちゃんと『イク』って言いましょうね?」

 

「…………ィ、く」

 

「女の子だけでもこんなに気持ちよくなれる……それを覚えておいてください」

 

「~~~~~!!」

 

 余裕のある表情で、涙目で赤らんだ顔の少女を見下ろす。

 返事も叶わず、しょわっと小水の如き飛沫が貝肉から溢れた。大人の身体と同等の豊満な身体は経験で勝る少女によって快楽を教えられ、法悦の空を幾度も舞い続ける。

 

「……!」

 

 それを満足気に見守る巫女が俺に目配せした。

 恥部の間を蜜の糸が出来ながらも、満ち足りた身体はむわりと淫臭を漂わせる。無言で触れて来るひなたの肢体は熱く、艶めかな唇からは酒の匂いがした。

 白い裸体が闇夜の中でランタンに照らされる。

 目を細め、唇を舐める仕草は艶やかな少女は指でそっと竿を撫でた。

 

 ──須美ちゃんが食べ頃ですよ。

 妖艶な雰囲気を醸し出す少女が目線で語る。

 

「────」

 

 眼前の少女たちの肉の宴を前に肉竿は力を取り戻していた。

 

 無言で彼女と場所を入れ替える。

 目の前にはトロトロになった黒髪の少女、その濡れた瞳が懇願するように俺を見る。

 

「……亮之佑、さん」

 

「須美。──今から須美を食べるね」

 

「……! ……優しくして下さいね」

 

 巫女によって濡らされた花弁を貫くと、それでもなお怒張をきつく締め付ける。

 東郷に比べるとやや軽い身体を抱擁するように抱き上げると、俺の首に腕を回して切なげに喘いだ。見慣れた大きさよりもやや小ぶりの乳房がむにゅんと胸板で潰れる。

 顔を赤く染め、俺に全身で抱き着く彼女の爪が肩に食い込む。

 

「ぁ、あっ……! あ──!」

 

 東郷と肉体的に同じ存在なのは理解している。

 悦ぶ場所は同じで、喘ぐ声の高さは随分とそっくりだった。

 

「んっ、ゃ、あぁっ……! ンっ、んッ──」

 

 肉竿に縋りつく肉穴から蜜が太腿へと垂れる。

 繋がったまま唇を交わすと、貪るようにキスを求める。

 

「は、ぁぁ……やっと………」

 

 涙に濡れた瞳で、須美が恍惚の吐息を漏らした。

 白い肢体を揺らし、生の乳房を押し付け、膣が蠕動する。

 

 ゆっくりとした抽送の度に、俺の脳が焼かれていくのを感じる。

 周囲には女の匂いが満ち溢れ、喘ぎと水音が響く。

 

「ぁ……っ!」

 

 いつかお気に入りになる角度で突くと、彼女は喘いだ。

 いつか懇願することになる膣襞を雁で擦ると嬌声を漏らした。

 

「りょう……のすけ、さぁん……!」

 

 普段の理性的な姿は抜け落ちた少女の甘い声音。

 俺にしがみつく脚からはすっかりと力が抜け、俺の腕と肉棒に支えられた状態の須美の肢体が震える。

 吐息する唇を奪っては、差し出される舌を絡めて抽送すると媚肉が締まる。

 

「ふぅッ……んぐっ、んぅぅっ!」

 

 突き上げる度に須美の尻肉が揺れた。 

 蜜が飛び散り、ぴんと少女の両脚が伸びた。

 

「ぁぁ! ぁっ! イクっ……イきますっっ!!」

 

 巫女に告げるように調教された彼女の宣言通り。

 俺にしがみつく須美の媚肉全体がうねった。

 

「あぁ~~~~ッッ!!」

 

 甘えるような嬌声が耳朶に響く。 

 二度目の吐精の勢いは変わらず、最奥へと注がれていくのは目の前の須美の表情の変化が物語っていた。

 天国へと果てた少女を浴槽の縁に座らせる。

 怒張を抜き取る。こぽりと陰唇から垂れる白濁が行為を物語り、目を合わせてもその瞳はどこか遠くの喜悦に浸っているように虚ろだった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

「はぁ〜……」

 

 スタイルの良い金髪と黒髪の少女を左右に並べる。

 ぷるりとした乳房は汗に濡れ、桜色の乳首はツンと尖ったままだ。

 無意識に腹部を撫でる彼女らの鼠径部を汗と湯水が伝い、陰唇からは白濁が落ち、浴槽の縁を汚した。満足感を覚える光景が広がっていた。

 

「ふふ……凄いですね。見ているだけで孕んでしまいそう」

 

 くすりと笑みを浮かべて耳元で囁く巫女。

 かつて勇者だった男に豊満な乳房を押し当てて甘い香りを漂わせる。

 

「────」

 

「……しますか?」

 

 そんな挑発的な上目遣いに少女たちを見下ろす。

 俺は無言で、愛液と白濁で濡れた肉棒を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 三人の乳房で怒張が扱かれる。

 両手で生乳を寄せて谷間を作っては肉棒を上手に挟み込む者も、それを見様見真似で行う者も唾液を亀頭に巻き付けて乳房で扱く者も。等しく征服欲と程よい快楽に脳がしびれる。

 三者三様のやり方で雄竿に奉仕する巨乳少女たち、そうして復活した怒張を恐る恐る咥えたのは杏だった。

 小説でよく舐めているシーンがあるとかで要望書にもあった。

 変態的な要望だったが口にはせず、杏の口の中で淑やかな舌の奉仕を受ける。

 

 くぷくぷと亀頭を咥えて頭を上下に動かす少女。

 左右の少女たちは髪を好きに撫でられながら陰嚢を思い思いに舐めたり揉む。

 

「んぶっっ!!?」

 

 丁寧とは聞こえが良いが羞恥を感じさせる奉仕に思わず喉奥に怒張を突っ込む。

 妙なじれったさに苛立ちを覚えてしまったからだ。

 ふわふわとした髪を掴んで口腔に無理やり肉竿を揺すると歯が擦れて彼女は激しくむせ込んだ。先走り汁を口からこぼして手で口元を覆う杏の背中をひなたは摩る。

 

「駄目ですよ亮之佑さん。そんな乱暴にしては」

 

「い、いえ……私が要望したことだったので。今のは37ページの内容の再現ですね?」

 

「ん? ああ、もちろん。味わってくれて何よりだよ杏くん」

 

「え?」

 

「その、フェラチオはともかくイラマチオって思ったよりも苦しいんですね。嗅いだことのない匂いで……でも、こう……亮之佑さんから俺の女にしてやる! って感じが伝わってきました!!」

 

「……え?」

 

「でも小説と違って現実だと苦しかったですね……あっ、ピカーンと閃きました!」

 

 抗議の声を上げる巫女に感謝する勇者。

 背中を摩る手を止めたひなたの手を目を輝かせた杏が掴む。

 

「ひなたさんなら最後まで出来るんじゃありませんか? 須美ちゃんを手玉に取っていた時といい、なんだか先ほどから余裕な感じの……デキる夜の女のオーラを感じます! 若葉さんと夜な夜なエッチをしながら昼間にはコッソリと亮之佑さんで夜の腕を磨いたんですか?」

 

「……! それって不倫なんじゃないんですか!? 浮気ですか!?」

 

「浮気パワーですね!」

 

「ちがっ、違います! 亮之佑さんとはそういう……」

 

「あっ、そうだ! 須美ちゃんも『あの』東郷さんの素質があるからイラマチオも笑って我慢出来ると思うよ!」

 

「いらまっ……ひ、ひなたさんなら出来ます! 私たちに手本を見せて下さい」

 

「須美ちゃん!?」

 

 気がついたら二対一で巫女の口腔で怒張を扱くことになった。

 一人だけ余裕のある表情をしていたのも事実で、仰向けにした端正な少女の顔に陰嚢を押し付けて肉竿を喉奥に押し込む。

 ぴんと脚を伸ばす彼女の乳房を揉みながら喉奥を突く。

 

「んぶっ! ん゛! おぶッ!」

 

 苦しそうな声でむせるひなたの立てた歯が肉茎を擦る。

 硬質な歯の痛みと唾液の絡んだ柔らかさが竿を襲う。

 左右に頭を振り、独特の刺激が俺の射精を促す。歯が当たり、頬肉がぶつかる感触は膣穴とも異なる快感をもたらし、思わず腰を振らせる。

 

「んふっ………んんッ!!」

 

 少女の鼻を陰嚢で叩くピストンに俺は獣欲に駆られる。

 涙目で悲鳴を肉棒に押し潰される姿は清楚からは程遠く、呼吸を乱して怒張を吐き出そうと脚を伸ばしては暴れる姿。

 バシャバシャと湯水が跳ね飛び、身をのけ反らせる。

 見学していた少女たちが仰向けの巫女の裸体を押さえた。

 

「ンっ! んぷ──! ん゛っ………ぉぇ!」

 

 ビクッと巫女が痙攣した。

 無言で、しかしどこか愉しそうな光を瞳に宿したミルキーブロンドの少女は赤らんだ顔で凌辱される巫女を見る勇者に目線で何かを促す。

 アイコンタクトはロリとロリコンの間で行われ、二人の手がひなたの秘所へ。

 

「わあ……」

 

「どうしたの? 須美ちゃん」

 

「その、凄く……凄いです」

 

 思わずといったように須美が呟く。

 しとどに濡れた陰唇をおずおずと指で挿入する彼女と大胆に挿入しては荒い呼気で弄る杏。

 苦しさを快楽で塗り潰そうとしたのだろうか。

 無邪気に恥部を同性に弄られる彼女が俺の腿を叩いて暴れる。

 

「興味津々って感じだね」

 

「ええ!? あ、いや、その……他の人のここはあんまり見ないですから」

 

「須美ちゃんもこんな感じだよ。うーん、でもひなたさんのは結構……あ、ほら、ここのザラザラしているトコロじゃないかな。須美ちゃんもいつもしているみたいにやってみて?」

 

「し、してません!」

 

「もう……ここまでしておいて~、あ~んも~可愛いんだから♡」

 

「ンンッ! ン~~~ッッ!!」

 

 しかし三対一には勝てない。

 閉じようとした肉付きの良い腿を開かされ、愛液が垂れるどころか噴き出す。

 

 楽しそうに創作に魂を奪われた少女と官能的な空気に支配された少女は生贄となった少女で思い思いに楽しむ。

 やり返しているのかペチペチとひなたの尻肉を揉むように叩いて笑みを浮かべる杏と乙女の秘所に興味津々の須美。彼女たちの行為が気持ちいいのかひなたの口腔が怒張を締め付ける。

 

「ィゥッッ!!!」

 

「……」

 

「須美ちゃん、今ひなたさんのことエッチだって思ったでしょ」

 

「……く、苦しそうだなって思っただけです……!」

 

「……んっ、そっか……」

 

 口を犯されるひなたを見下ろしながら、その横で杏と須美は自らの陰核に指をやる。

 荒い呼気に乳房を揺らしながらも、同時に巫女の恥部への刺激も忘れない。

 

 ぴちゃぴちゃと陰唇から溢れ、顔を陰嚢で押し潰す抽送に奥歯を噛み締める。

 上里ひなたという存在を汚すことに罪悪感と支配欲と薄暗い色々な物が混ざり合い、俺の鼓動と射精衝動を限界まで導く。

 直前に女体を弄る少女たちの生乳を揉んで呼びつける。

 意図を理解している彼女たちはひなたの顔近くにまで端正な顔を近づける。

 

 その瞬間が訪れた。

 

「ぐッ!」

 

「~~~~っっ!!!」

 

 ひなたの口から押し出されるように唾液でコーティングされた怒張。

 喉奥ではなく、三人の少女たちの顔へと精液を吐き出して、俺はしばらく放心する。

 

 しょわわわと小水の如き飛沫がひなたの花弁から噴き出して少女たちの指を汚す。倒れ込みそうな身体を彼女たちの頭を掴んで堪える。

 三人の顔が白濁で化粧されて、同時に見せる表情は様々だった。

 

「……こんな味なんですね」

 

 官能的に舌なめずりする杏。

 真似するように指ですくっては白濁を舐める須美と、

 

「…………」

 

 白濁と涎と涙で端正な顔をぐちゃぐちゃにしたひなた。

 肉竿で頬を叩いても反応せず、完全に気絶してしまったようだった。

 浴槽の縁に裸体を横たえながら呼吸や鼓動を確認する。

 

「あ、あの……」

 

 少しやり過ぎてしまったことを反省する俺におずおずと掛けられる声。

 目を向けると、もじもじと身体を揺らし、目の前でぷるぷると乳を揺らす杏。

 

「その、ですね」

 

 告白でもするかのように妙に歯切れの悪い彼女の視線は揺れ動く。

 揺れて、揺れて、視線はときおり雄竿へと向かう。

 

 白濁で汚れた怒張へ。

 

「……杏」

 

「は、はい」

 

 呆然と虚空を見上げ続けるひなたの隣に座り、軽く脚を開く。

 少女の手を引いて、汚れた肉竿の前に座らせるとおもむろに頬を竿で叩く。

 驚いたように雄竿で叩かれた頬に手を置く杏に、

 

「あ、な……」

 

「──汚れたから掃除しろ。丹念にな」

 

「────」

 

「命令だ」

 

 微妙に口元を歪ませては笑みを隠そうとする少女。

 しかし、そんなことでは彼女の性癖も変態性も隠すことなど叶わない。

 そしてそれを知らない須美だけが正常な反応を示す。

 

「亮之佑さん、いったい何を……」

 

「──分かりました」

 

 やがて杏はとろりと笑みをこぼした。

 脳内にある要望書の後半にある欲望。

 恥ずかしいからと読んだ後は廃棄された彼女の心の奥底にある望み。

 それが要望通りに通ったことに、そしてそれを実践できることへの喜びを示した。

 

「……ぁむ」

 

 それは上手なフェラチオではなかった。

 読んだ小説の真似をするような稚拙さの残る奉仕。

 

「その、下手なのは許して下さい」

 

「駄目だ。今すぐ上手くなれ。……その乳も使ってな」

 

「……はい。失礼します」

 

 耳に柔らかな髪をかけて白濁をちゅるると舌と唇で拭っては喉を鳴らす。

 はあ、と恍惚な表情で喜びを露わにする少女を呆然とする須美と共に見下ろす。

 

 気絶したままのひなたと疲れたような表情をする須美。

 彼女たちを抱き寄せ、杏に好きに奉仕させながら、少しだけ目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 せっかくなのでと、露天風呂で写真を撮った。

 何を撮るつもりだったのか、木桶の中にあったひなたのスマホ端末で。

 半眼の須美が自らの身体を抱きながら、犯罪的な行為をしている巫女に目を向ける。

 

「いつの間に……」

 

「ウエーイ! 細かいことは気にせず皆見て! うどんでピース!」

 

「ピース!」

 

「ぴ、ぴーす」

 

「須美は俺にもっとくっついて」

 

「ぁ、ちょ、ちょっと……誰かに見せたりしないで下さいね」

 

 右から杏と須美、俺とひなたが密着して並んでいる。

 ネット上に流れれば大変なことになりそうな裸体、乳房から恥毛、秘所まで余すことなく映した自撮り写真を彼女の端末に収める。

 酔いが冷めた頃には後悔していそうな恥ずかしい写真をジッと見る。

 同じように覗き込むのは撮った後に体力を使い果たしたのか、ふらふらの勇者と巫女。

 

「見てひなたさん。良い感じに夜景に合わせて撮れた……これでアルバムも増えるよ!」

 

「……そう、ですね」

 

「さりげなく杏さんの胸を揉んでますね」

 

「亮之佑さん……」

 

「ん? 撮り直し? ひなたさんのもちゃんと揉んでるよ?」

 

「いえ、そうではなく……お願いが」

 

 ひなたの端末から俺の端末に送っていると、彼女から頼まれる。

 

「若葉ちゃんの……浴室限定の艶やかな写真をこれで……。自撮りならいくらでも送ります……私は既に限界が……誰かさんに乱暴されて、こんな身体ではもう若葉ちゃんのあんな姿やこんな姿を撮れない……ッ! それはもうこの国の、いいえこの世界の損失!!」

 

「────」

 

「どうか……どうかぁ……がくり」

 

「あの、ひなたさんなら私たちで介抱しますから、行って下さい」

 

「二人とも……」

 

 ここは私たちに任せて先に行け。

 そんな格好良い台詞を艶々の杏たちから送られる。

 

「でもこんな場所に放置するのはちょっと……」

 

 流石に少し疲れたのだが、NOと言って後悔したくはない。

 かといって二人だけに任せるのも如何なものかと、フニャフニャになったひなたを抱き抱えて須美と杏を連れて露天風呂から施設内へと戻る。

 俺はサウナに向かう前に、酒風呂で戯れていた勇者部の少女たちに彼女らを預けるべく脚を進めた。

 

 



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第四十七話 寄り道したから

 ──正直に言って、サウナは好きではない。

 

 男同士で集っては我慢大会を勝手に行っているシーンを漫画やアニメなどで見たことがあるが、身体を休めに来た温泉でわざわざ身体に苦痛を感じさせる行動など起こしたくはない。

 恐らく同学年の男子とサウナで競うことがあったら程々で切り上げるだろう。

 

「でもこの前、クラスの男子たちと一緒にサウナに行ったって言わなかった?」

 

「付き合いって大事だから。実際には暑すぎず寒すぎない感じが好ましい」

 

「んー……まだ食べられるけど腹八分目でストップするみたいな?」

 

「そうそう、何事も程々なのが大事。だから散々酒飲んだ身体でサウナは行くなよ?」

 

「うん! ぎゅー」

 

「そのハグは?」

 

「分かったのぎゅー!」

 

 きゃっきゃっと楽しそうに笑みをこぼす少女と熱く抱擁を交わす。

 人肌で暖を取る。そうすると心の何かが満ちていくのが分かるのだ。

 叶うのならば、ずっと友奈に抱き締められていたい。

 

「勇者……ハーグ!」

 

 柔らかな肢体に纏う物は何もなく、胸板に柔らかい乳房が押し付けられる。

 下ろした薄紅色の髪からは彼女特有の甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 

 天使の如き微笑を見せる友奈の隣に、気がつくと無言で立つ黒髪ロングの巨乳美少女がいた。裸体を隠すこともせずに深緑の瞳を光らせては上目遣いをする東郷はジッと此方を見続ける。

 いったい何用かと目で問い掛けるも彼女の柔らかな唇は結ばれたままだ。

 無言で豊かな双丘を腕で寄せて深い谷間を見せたりとアピールする彼女に俺は口を開く。

 

「東郷さん……抱かせろ」

 

「……っ! 亮くんっていつも強引よね」

 

「────」

 

「そんなところも好きよ」

 

 言わせたがりな大和撫子の肉付きの良い柔らかな身体を抱き寄せる。 

 満足気な吐息を漏らす少女の抱擁を受けながらそっと尻肉を揉むと、甘えるように喉を鳴らして恥部を腿に擦り付ける。左右で揺れるそれぞれの尻肉を掌で撫でると少女たちは呻く。

 お返しとばかりに俺の手を取る東郷が両腕で寄せた自身の乳房に手を挟ませる。

 ふかふかな餅のような感触と視覚的な快楽に目を奪われると、東郷はクスリと笑みを浮かべた。

 

「……挟むのは手だけで良いの?」

 

「いったい何を挟むんですか?」

 

「質問に質問で返さない」

 

 そんな風にじゃれ合いながらも触れ合う指先がほのかに情欲を刺激する。しかし、そのまま性器を弄り合う訳でもなく抱擁で人肌で温もりを得るとゆっくりと身体を離す。

 友奈や東郷と裸のまま抱き合っていたいが、目的を忘れてはいない。

 

「……それじゃあ、そろそろ」

 

「ええ」

 

 ──ひなたや杏、須美たちを引き渡す為に酒風呂に戻ってきたのだ。

 

「何よしっかりすることしてるんじゃない~」

 

「こ、これはちがっ、ふひゃん!? どこを触ってるんですか!?」

 

 既に酩酊しきった少女たちに蹂躙されている彼女たちの姿が視界の端で覗けたが目を逸らす。

 思わず加わりたくなってしまうあられもない表情や声に背を向ける。

 

 その先でも少女たちが絡みついては嬌声や喘ぎ声を個室に響かせ周囲の勇者を刺激している。せめて喘ぎ声は抑えようと唇を結ぶ抵抗も、見ている側の加虐を誘うスパイスに過ぎない。

 我慢などされると、どうしても喘がせたくなるものだ。

 やがて、ちゅくちゅくと淫音が聞こえては普段は聞かない甘い声が周囲に響き渡る。 

 

「ぐっ、ぅ、んッ……」

 

「は、ぁぎッ、ぁん……」

 

「お二人とも凄く我慢強いですね!」

 

「私が……夏凜なんかにぃ……負ける訳がない……ッ!」

 

「それはぁ……こっちの台詞……ッ!」

 

「流石は芽吹先輩と夏凜先輩! 私も頑張らなくては……皆さんも手伝って下さい!」

 

「ま、待って! それ以上はッッ!!?」

 

「ンンんッッ!!?」

 

 何があったのか、芽吹と夏凜が秘所に怒張の玩具を咥えさせられて、巫女たちの手で絶頂へと昇らされようとしている。

 絶頂の我慢対決なのだろうが、周囲の少女たちもノリノリで二人を果てさせようとしていた。

 

 半口開けて涎をこぼしては、乳房を揺らして喜悦に浸る彼女たち。

 この世界はいつの間にか弱肉強食となったのか。

 

 とはいえ、既に目的は達成したのだ。俺には関係のないことだ。

 本能を刺激する罠から目を逸らしては入口へと進む。

 

「アハハ……死なば諸共って言うし、もうどうにでもなーれ!!」

 

「えーい! 酒じゃ女じゃ!! じゃんじゃん持ってこーい!! 女子力の稼ぎ時よ!!」

 

「メブぅ~……よくもさっきはあんな恥ずかしい目に……今なら何をしても許されるよね!」

 

「雀は後でもう一度訓練してあげる」

 

「ひぃ!?」

 

 辱められた少女たちの逆襲。

 ──それをいったい誰が目を逸らすことができようか。

 攻めるだけの立場が一転、今度は自らの身体を弄ばれる姿は振り返ざるを得ない。

 

 肢体を手に取り、恥部や乳肉を口にしては理性の枷が外れたまま愉悦する少女たち。露天風呂で何をしていたのかを追及されては黙秘を貫く少女を、玩具で貫いては口を割らせようとする少女。

 そこには理性など既に無かった。あらゆる枷が外れて肉欲に翻弄される女たちが肉欲の宴を披露している光景が眼球に焼き付いていく。

 この世の天国のような光景だが、明日になって思い出さないことを祈るばかりだ。

 

「あら? お一人ですの?」

 

 そうして立ち止まってしまった瞬間から俺の運命は決まってしまったのか。

 雌同士による神秘に目を奪われた哀れな雄に声を掛けるのは、防人組で随一なスタイルの少女。

 

 たゆんと揺れる双丘と長い髪の毛。

 くびれた腰と整えた恥毛、薄く上気した肌は男を惑わせるには十分だろう。周囲にはよく残念な子扱いをされている美少女は揺れる胸を張る。

 自らの身体に恥ずべきことなどないと隠す行為など一切せず、むしろ見せつけるかのように自らの身体に手を這わせる彼女は、流し目で俺の顔を見てはチラと下腹部に視線を落とす。

 

「カガフレッドは先ほどもハグをされてましたよね? お好きなんですの?」

 

「……癒しって奴ですよお嬢様。これがないと死んでしまうんです」

 

「まあ! 甘えん坊ですのね……そういうことでしたら、園子さんの執事ではあれど普段からお世話になっている以上、わたくしのパーフェクトなボディで癒される至福の時を与えましょう!」

 

「なるほど、ありがとうございます。弥勒さん……いいえ夕海子お嬢様」

 

「ええ……ええ! 本物のお嬢様ですわよ〜!! 流石にカガフレッドは分かってますわね……いえ、今は就業時間外でしたわね亮之佑さん。私とのハグがそんなにしたいとは……いくらでもしてあげますわ!」

 

 酒が入っても入らなくても、彼女はチョロい。基本的に勇者部はチョロい娘が多いが。

 似非令嬢である弥勒夕海子の堂々とした全裸抱擁は力強かった。

 

「ん……ご立派なアレが硬いですわね。わたくしのボディで興奮されたんですの?」

 

「そうなんですよ~。夕海子お嬢様の身体が素晴らしくて。ほら、ハグなんですからちゃんと挟んで下さい」

 

「まあ当然ですわね……こうですの?」

 

 スタイル抜群で東郷にも劣らない豊満な乳房を胸板に押し潰しては滑らかな背中や腰肉、いつの間にか反り立っていた怒張を柔らかな太腿と恥部が包み込む。

 柔らかさと甘い香りに思わず尻肉を掴んでは腰が揺れ、濡れた花弁を擦る肉棒が肉芽や恥毛に先走りを染み込ませ、ときおり媚肉を割り開いては奥へと入り込んでしまう。

 ビクッと身体を震わし、思わず腰を引かせようとする彼女の尻肉を掴んでは、

 

「は、ぁぁあっっ! い、今入って………あ、また……」

 

「男女間でのハグはこういうものですが知らなかったんですか?」

 

「ぁんっ……当然知って……んんッ、っ……ますわ」

 

 事故の為にゆっくりと抜いては蜜壺の入り口で怒張を扱いては、また事故が起きる。

 は、あん、と荒い吐息を漏らす少女が身じろぎをして爪先立ちになる。

 

 そうしても抱擁を解くことはせず、彼女の身体で肉竿を扱く。

 反り立つ怒張に絡む愛液は潤滑油となって夕海子の秘肉を割り開く。

 にゅぷにゅぷと水音を奏でていると、いつの間にか先端だけでなく肉竿の根本までずっぽりと入り込んでしまう。

 その頃には彼女の身体はすっかり熱を帯びていた。は、んと耳元で喘ぐ似非令嬢は少しだけいやらしさの増した手つきで俺の尻を撫でながら心にもないことを呟く。

 

「ぬ、抜いて下さいまし……」

 

「おっけー」

 

「へぁぁああッッ!!? そ、そっちの抜くじゃ……」

 

「弥勒さん、そんなことを知ってるんですか? そういえば以前部室に置いたエロ本、なんだかんだで雀としっかり読んでましたね」

 

「ちがっ、ぬ、抜きなさいカガフレッド!」

 

「黙れ! オラッ!」

 

「ッあ! んあぁっ! んッ!!」

 

 パンパンと恥骨が肉を叩くほどに怒張を彼女の蜜壺で扱く。

 酒風呂の空間に長くいた夕海子の身体は最初から熱く、この展開を期待していたように膣襞が怒張を締め付けては蜜液が溢れる。

 誰の声よりも水音よりも響く抽送に、彼女は天を仰いだまま、腰をくねらせる。

 結合部からは涙があふれ、浅ましくも肉茎を味わう媚肉がうねった。

 

「ひぁぁ~~~~ッッッ!!!」

 

 ガクガクと膝が震えては湯水に濡れるタイルに崩れ落ちる少女。

 にゅぷっと怒張が抜けた結合部からは飛沫が跳ねる。

 海老のように背筋を反らしては、パクパクと開いた口から涎を垂らし法悦に浸る少女の恥部に手を添える。陰毛を這う指で肉芽を摘まんでは根本から先端まで弄ぶ。

 

「っ! ぎっ、ぁ、あぁひっ……ッ!!」

 

 休む暇など与えず指のみで俺は夕海子に快楽を授ける。

 閉じようとする片足を掴んでは開き、爪を立てて掴む彼女のクリトリスと媚肉を指でひたすらに責め立てる。乱雑に指で洗うように動かすと奥からぴちゃぴちゃと淫水が飛び散る。

 

「あぇ!? ぁぁあっっ! だ、誰か助けっ……!! んぁああッっ!!」

 

 ぷるぷると前後に揺れる双丘にかぶりつく。

 東郷ともひなたとも違う乳房を口に含んでは赤子のように乳首を舌で転がす。

 

「──! ッ──!! ~~~ッッ!!!」

 

 しょわっ、ぷしゃっと勢いよく蜜がタイルに跳ねる。 

 やがて言葉が出なくなるほどの絶頂を迎えた疑似令嬢は皆の前で天国を見る。

 

 豊満な乳房を揺らしては、小さな突起一つで二度三度と絶頂に浸り続けた女の顔を皆で見守る。

 涎と鼻水と涙と、開いた口から舌を垂らして人前には見せられない顔だ。

 ビクッと身体を震わせて法悦に浸る彼女を見送り、落ち着いた頃に足首から手を離すと脚を閉じて恥部を隠すように丸まる似非令嬢に目を向ける勇者はいない。 

 

 視線が突き刺さる中、反り立つ怒張を見せつける俺は両手を広げる。

 いったいどういうつもりなのかと全裸の少女たちが身構える中で、

 

「あれは……ハグタイムだ~」

 

「知ってるの私?」

 

「全裸でかっきーに抱き着いて皆の前でホニャホニャするとおっぱいが大きくなって疲労軽減、美肌効果、女子力向上、満開の副作用軽減、服のセンスも良くなるというハグの時間なんよ」

 

「な、なんだってー!」

 

「これが私のかっきーの秘められし力……鼻が高いぜ……後方婚約者面するんよ」

 

 いつも通りにふわふわとした園子たちの会話は個室に響く。

 唯一普段と変わらない態度の彼女らはちゃぷちゃぷと湯水で遊びながら口を開く。

 

 妄言を吐くなと怒る者はこの場にはおらず、いるのは判断力の低下した少女だけ。理性など失われて久しい勇者たちは自らの手で喘がせていた獲物を捨てて此方に視線を向ける。

 僅かな静寂の末に、諏訪で活躍した勇者とその巫女が動く。

 

「……! うたのん行くよ!」

 

「み、みーちゃん一人で……」

 

「それは恥ずかしいし……うたのんの服のセンスも良くして貰って……何より身体の負担も減って欲しいから……ね? 一緒にイこ?」

 

「みーちゃん……オッケーよ。……亮之佑さん、お願いします」

 

「う~ん。やだ」

 

「な、なんでですか!? 弥勒さんは良くて……」

 

「言い方がちょっと気に入らない。もっとやる気にさせる言い方で」

 

「……え、えっと……抱いて下さい!」

 

「ハグミー! プリーズ!!」

 

「農業王だけもう一声」

 

「えぇっ!? ……ふぁ、ふぁ、ファックミー!」

 

 そうして今度は彼女たちと抱擁を交わす。

 裸である為に凹凸や肌色などは隠すことも出来ず、キスや肉竿に触れたり恥部や双丘を触らせる彼女たちなりのホニャホニャを味わう。

 羞恥の基準が良く分からない農業コンビは歌野の方が初々しさがあった。

 

 じゃれあうような絡みでも既に出来上がった身体は肉欲に正直だ。

 あっという間に遠慮を知らない鼻息を肌に吹き掛け、乳首を舐めては肉棒を手で上下に扱く。やや余裕を見せる巫女と僅かに羞恥を残す勇者の目はいずれも虚ろなものだ。

 爛れた肉欲の前に等しく雌と化した少女たちを抱き寄せる。

 

 彼女らの秘部は既に濡れており、簡単に挿入出来た。

 

「あ、あの……はいって、ぁ、ぁぁっ!」

 

 ぬぷぷと肉を割り開いては軽く抽送する。

 目の前で挿入された歌野の表情に子供のようにむくれる巫女も同じように貫く。

 貫いてはキスをして交代。貫いてはキスをして交代。

 少女たちの膣内の狭さや気持ち良さを口にすると顔を赤くする少女に口づけする。

 

「んふっ、ンっ………ぁふ……っ」

 

 唇がふやけるほどに濃厚なキスをするだけで驚くほどに蕩けた表情を見せる。

 乳房はうっすらと赤みを帯び、艶めかしい肌からは汗が伝い、少女の吐息が荒くなる。

 

「歌野は可愛いな」

 

「な、ぁ」

 

「気持ちいいことはちゃんと気持ちいいって言わないと」

 

「はッ、はひ……っっ」

 

 素直な少女は快楽もまた素直に受け入れる。

 乳房を揉まれ、恥部を怒張で穿られては可愛らしい喘ぎ声を漏らす。

 その声をもっと聞こうと、交互にしていた挿入を勇者で固定して腰を叩きつける。

 そうして俺が彼女らの反応を愉しんでいると、

 

「さっきはよくもやってくれたわね亮之佑ぇ……女子力をよこしなさい!」

 

「にゃははっ、加賀っちは凄いなー……せっかくだから私もご利益貰っちゃお」

 

 前後左右から酒と雰囲気に酔った女体、自暴自棄になった女体がそれぞれ絡みつく。

 背中に感じる乳房と鎖骨や腹部を撫でる少女の掌に身体を弄ばれる。ぬめる肉壺を怒張で扱く俺の耳を甘噛みしては、乳首を指で転がし、唇を奪うようにキスをしていく。

 

 思い思いに男を味わっては、荒い吐息で俺が果てるのを見守る。

 少女を相手にするように乳首を指で弄られながら肌を甘噛みされ刺激が奔る。

 

「ぁ、あっ、あッ!」

 

 いきり立つ竿が射精感が高まる。

 抽送の速度が高まり絶頂を悟った歌野に『女』の表情が浮かんだ。

 

「あっ……! ぅ、っぁっ!」

 

 荒い呼吸で俺の胸板に自ら乳房を押し潰し、果てたばかりの彼女の顎に一筋の涎が流れた。

 その顔をジッと見ていられるほど、俺は暇ではなかった。

 周囲には蛇のように俺の腿や腹部を撫でる手に身体が甘い刺激を覚え、腹筋をなぞり、首筋を舐める瞳が加虐に揺れていた。

 俺を女のように喘がせて気持ちよくさせたいという感情が瞳に過る彼女らから目を逸らす。

 

「されてばかりっていうのはねぇ……」

 

「単純にSっ気があるけど、気持ちいいのは事実だし……」

 

「でも、やられっぱなしなのもね……」

 

「なに目逸らしてんのよ。酒池肉林で良い身分よね」

 

 くりり、と乳首が転がされ思わず呻く。 

 俺の反応に楽し気な吐息を漏らすのが聞こえた。

 

 理由などなんでも良かったのだろう。

 少女たちと同じく俺の事も辱めたい彼女たちに俺は身体を揺らすも、纏わりついた少女たちが離れることはない。寧ろ攻め時だとばかりに抱き着いては遠慮などなく触れて舐めて俺の反応を愉しむ。

 

 ぺろ、と誰かの舌が耳を舐めた。

 陰茎の根本を擦られ、ビクンと腰が跳ねた。

 

「くっ……」

 

「今の可愛い」

 

 ──気がつけば、俺は彼女たちに凌辱されようとしていた。

 少女たちを食べながら、他の少女たちに食べられようとしている。

 

 そこから逃れるように、膝を震わせて床に滑り落ちてタイルに仰向けとなった歌野の腰を掴んだ俺は覆い被さるようにピストンをする。

 背中や腰肉に纏わりつく手や乳房の感触を感じながら、あられもない喘ぎ声をまき散らす歌野の涙に濡れた顔を目にしながらより奥まで深く貫く。

 追い掛けるように俺の背中に、風の、雪花の、更に誰かの豊満な乳が乗る。

 

「ああ! あっ、ぁ、ぁ、ぁ……!」

 

 周囲の愛撫を受け入れて無心で腰を振る。 

 ツンと先端が尖った歌野の乳房がぷるると震えては水都が噛みつく。

 

「やぁぁぁっっっ……!!!」

 

 ぎゅううっと締め付ける膣に搾られるように白濁が噴き出す。

 半分ほど歌野の最奥に吐き出しながらも膣襞をめくるように引き抜いた肉竿が新鮮なソースを彼女の下腹部に掛ける。

 絶頂の余韻に思わず目を閉じると暗闇の中で耳元に囁かれる。

 

「……凄いわね」

 

 目を開くと小刻みに痙攣する歌野に群がる少女たち。 

 ツンと張った胸に雪花が吸い付き、白い肌に掛かった蜜と雄汁の混ざった白濁を舐めたり、指ですくっては舐める普乳組。

 さりげなく高嶋が汚れた肉竿を舐めては綺麗にしようと舌を動かす。

 

「ぅ、ぁ」

 

「きもひい?」

 

「ほら、こっちを向きなさい。──ん」

 

 座りそうになる俺の背中を乳房で受け止める風に唇を奪われる。

 どろりとした甘酒と唾液が喉を潤し嚥下する。

 それを見た少女たちは妖艶な笑みを浮かべてしなだれかかる。

 

「あむ」

 

「んむ……ちゅ」

 

 ちゅるると亀頭に吸い付く高嶋と、肉竿にキスする友奈。

 両手で彼女たちの髪を撫でると目尻を和らげては競うように吸い付く。

 さらりとした髪が太腿を優しくくすぐり、双子と間違えるような可憐な少女たちに肉竿を丁寧に奉仕される。互いに目線を合わせる友奈と高嶋はおもむろにそれぞれの乳房で肉棒を挟み込む。

 亀頭の半分にそれぞれの唇が吸い付いては俺に上目遣いをする。

 

「「こういうの好きでしょ?」」

 

 背後と横には一糸まとわぬ美少女たちが羞恥を捨てて俺の身体を愛でようと触れて来る。

 普段の鬱憤を晴らすかの如く、キスをせがみ、生乳を押し付けて、欲望を爆発させる。

 

 ──俺は捕食されようとしていた。

 

 色んな少女に抱き着かれ、吸い付かれ、舐められ、啜られる。

 荒い呼吸が自分の物なのか他の少女の物なのか、意識の境界が曖昧になっていく。

 

 寄り道をしてしまったことが敗因だったのか。

 魅力的な身体をした少女たちとの距離が近すぎたからか。

 

 今更考えたところで仕方がない。

 若葉の恥ずかしい写真を撮る為にと授けられたひなたのスマホが手から滑り落ちる。

 目を閉じてこのまま他の少女たちに捕食されることを受け入れようと──、

 

「ところで園子先輩~」

 

「どうしたのそのっち~」

 

「さっきのハグタイムなんだけど、実は最近友奈先輩や高嶋先輩みたいな友奈族と抱き合いながらホニャホニャすると滅茶苦茶に効果を発揮するって学会が提唱したんだって~」

 

「「ほえ?」」

 

 ちゅぽっと肉竿から唇を離した友奈族。

 目を丸くした裸体の彼女らを舐めるような視線が這う。

 

「特に神樹様と一番相性が良い友奈先輩たちから摂取できるユナニウム……それこそが鍵……」

 

「なるほど。しかしそのっち……どうやって摂取すれば良いのじゃ?」

 

「それは勿論……ペロペロするんよ!!」

 

「ヒャッハー!! 皆もゆーゆペロペロだぜ!!」

 

 獣のような視線に晒される友奈や高嶋はプルプルと震える。

 『いったいどうなっちゃうの?』そんな顔をしている彼女の顎を指で持ち上げるのは風だ。

 

「風先輩?」

 

「友奈……アンタの顔、よくよく見なくても可愛いわね。ちょっと吸わせなさい」

 

「ええ!?」

 

「あ、あのっ、高嶋さん!」

 

「い、樹ちゃん?」

 

「舐めさせて下さい!」

 

「や、や、ダメだよそんな場所……汚いひゃうん!?」

 

 奪われる唇。舐められる肌。

 薄紅の髪に鼻を突っ込まれ慎ましくも柔らかな双丘は先端ごと吸い付かれる。

 臍には舌先を、腿肉は内から外まで甘噛みされて、恥毛を撫でられ、貝肉ごと蜜を吸われる。

 

 獲物に喰らいつく獣たちに友奈が襲われる。

 巨乳を、女子力を、センス諸々を、快楽を求めた結果、友奈は少女たちに群がられる。

 

 喘がされる彼女を生贄に俺は少女たちから脱することに成功した。

 ふと園子たちを見るとサムズアップを返し、同じように少女たちの凌辱から解放されて膝をガクガクとさせるひなたから拾っておいたのだろうスマホを渡される。

 

「今度こそお願いしますね」

 

 ドヤ顔で友奈を生贄にして俺を脱出させた園子の背後に迫る東郷の存在を目線で伝えながら、彼女らの戦いには目をくれず、今度こそ寄り道もせずに酒風呂の個室を飛び出したのだ。

 

 

 

 

 

 

「ん…………のぎ、さん」

 

「はぁ……はぁ……千景……」

 

 結論から言うと、求めていた少女たちはサウナにはいなかった。

 それは当然のことかもしれない。彼女たちのことを放置して露天風呂や酒風呂で過ごしていた時間は少なくない。

 我慢強い若葉はともかく、そもそも千景は既に浴室から出て行ってもおかしくはない。

 

「ふふ……」

 

「なにを笑って……ぁっ!」

 

「いや、千景は可愛いなと思ってな」

 

「……あ、あなたに褒められても嬉しくないわ……って!!?」

 

「千景はプリンほど甘くないな」

 

「……っ、どこ舐めてるのよ変態! 舐めないでってば! ……この!」

 

「あまじょっぱいな」

 

「くぅぅ~~~!!」

 

 或いは単純に一人になる若葉を放置出来なかったのか。

 ツンデレだと言われがちな千景も彼女に付き合っていたのだろう。サウナから水風呂、外気浴と行っていたのか。実際にどうだったのかは本人たちに聞いてみないと分からない。

 分からないことだらけだ。きっと撮り損ねた面白い絡みがあったに違いない。

 

 そう思うと構えたスマホが僅かに揺れ動く。

 

「カメラマン……失格だな」

 

 若葉と千景、二人が酒風呂に来なかったのは運が良かったからか。

 対抗心を燃やした千景と熱いサウナ我慢大会を二人で行っていたからか。いずれにしても、既にサウナ部屋を出ていたらしい彼女らは近くの個室風呂で休んでいた。

 何があったのか、若葉が千景を押し倒しては互いの脚をくねらせている。

 

 転がる無数の小瓶はプリンだろうか。濃厚な甘い香りと酒気が僅かに漂う。

 同時に周囲に漂うのは絡み合う雌と蜜の香りだ。

 はあ、はあ、と荒い呼気をしている若葉の周囲に散らばっているのは彼女の水着だ。すのこの床に仰向けで倒れ込む千景に覆い被さる若葉は異様な雰囲気を醸し出している。

 長い金髪が垂れ下がり、ベールのように二人の表情を覆い隠す。

 

「────」

 

「──」

 

「~~~!!」

 

 キスでもしているような距離で、ボソボソと喋る彼女らの会話は聞き取れない。

 いつの間にか着させられていたのだろう、布面積が広めのメイドビキニを着用していた千景が若葉に襲われ組み伏せられているような構図がカメラに映り込む。

 

「……、……」

 

 悪態を吐きながら満更でもないような表情を千景の横顔から覗けるのは気のせいか。

 いずれにしてもプリンで酔う女はプレイボーイになるようだ。

 何かを話していた若葉が微笑を見せては、千景の頬がほんのりと色付く。

 

「乃木、さん……っ」

 

 布地をずらされて露出した肌に唇を這わせて、胸元に残る傷跡ごと舐める若葉が一言。

 顔を赤くしては叩こうとする彼女のカフスをつけた両手首を若葉が掴んで押さえつける。

 

「千景……」

 

 新しい主人に一から調教されるメイドのように、涙目の千景は嫌々と首を振る。

 ずらされたトップスにぷるりと揺れる乳房を押し潰すのは若葉の双丘。

 

 抵抗する千景に苛立ったのか、僅かに歯を立ててはビクリと身体を硬直させる。

 ジワリと涙を浮かべる千景を見下ろす若葉はやや赤らんだ顔で、

 

「──私はお前が好きだ」

 

「────」 

 

「もっと仲良くしたいのに、千景は私にいつも怒ってばかりだな……。私を嫌っている千景とどうしたら仲良くなれるのかとひなたに聞いて何故か怒られたりしたな」

 

「乃木さん……私は……あなたのんむっ──!?」

 

 ちゅぷ、ちゅぷ、と粘りついた水音が響く。

 熱を帯びた肉体が密着し唇を重ね合う。ひなたで慣れたのか、もごもごと頬裏を舌がなぞっては舌を絡ませる姿は官能そのものだ。

 汗が伝う肌が彼女らをふしだらに煌めかせ、千景の身体がくねる。

 

 長い時間が、あるいは短い時間が流れる。

 頬の色付いた千景が受け入れるように若葉と舌を絡ませる。

 

 互いに酩酊したような瞳で、黒髪が床に広がる。

 興奮と羞恥が混ざり合ったような朱色が肌に差す。

 

「ぁ、っ……!」

 

「思ったんだ。ひなたと同じようにこういうことをするのが一番仲良くなれるんじゃないかって」

 

「乃木さっ……ダメ……」

 

「確かに本当ならダメなことなのだろうが……不思議と今日はなんでも出来る気がするんだ」

 

 酔っ払い特有の理論を振りかざし、メイド少女を剥いては喰らう。

 ザクロの実のような乳首が擦れ合いギュッと目を閉じた千景にキスをする若葉。

 

「こういう時、千景はそんな顔をするんだな……前にも見た気がするな」

 

「……ンッ、ぁァ……」

 

 涙目でされるがままの千景のボトムスの中に入り込んでいた指が水音を聞かせる。

 くちゅ、と恥毛を這う若葉の細い指がクリトリスを探り当て、恥部を指の腹で刺激しているのだろう。腰が僅かに浮いて、閉じた目の形が歪む。

 脚が曲がっては伸び、切なげな表情で顔を若葉から逸らす。

 

「千景の声も可愛いな。気持ちいいのか?」

 

「……うるさい」

 

 ん、と小さな吐息を漏らし、千景は長い睫毛に縁取られた瞼を開く。

 薄く開かれた瞳に、スマホを構えている俺の姿が映る。

 

 目が合った。

 

「…………!!!」

 

 その瞬間の千景の表情に、思わず頬が緩むのを感じた。

 余すことなく若葉と千景の情事が撮られていることは分かったのだろう。

 

 慌てたように脚を閉じて若葉を突き飛ばそうと千景は身体をくねらせる。

 その反応に秘所に触れていた若葉が何かを感じたのか、僅かに暗い笑みを浮かべる。

 

「のっ、の、乃木さんっ! どいて!!」

 

「ここが良いんだな」

 

「そうじゃ──ぅぁッ!」

 

 本気で暴れようとする千景の両手は若葉の片手で拘束されたままだ。

 鍛錬の成果か、常人よりも力の強い若葉は、唐突に暴れ始めた千景の強硬な表情に、羞恥か弱点を見つけられたことへの焦りであると判断したらしい。

 ボトムス越しに手が動いては、その度に千景の上半身が跳ねる。

 

「……見られてっ……ぁ……!」

 

「ん? ひなたも悦んでくれたからな。こういうのは得意なんだ」

 

「ば、か……やめて……」

 

「千景と仲良くなりたいからな。やめないぞ」

 

「加賀くんが見てるからっ!」

 

「関係ない。千景が私を好きになってくれるまで、私はやめない」

 

「……酔っ払い! このっ!」

 

「いたっ、噛もうとするな」

 

「加賀くんも見てないでこっちに……っ」

 

「…………」

 

「ねえ!」

 

「千景ぇ! 私を見ろ!!」

 

「ひぁっ!!」

 

 酔った人間には何を言っても通じない。カメラマンが反応する訳もない。

 メイドが何を言っても主人によって調教されるのみだ。

 そして俺は股間を膨らませ、女体による淫舞に魅入り、記録するだけだ。

 

 そんな事実を拒絶するように千景は唇を結び、頭が振られる。

 ささやかな抵抗。それはただ悪戯に少女のやる気に火を点けるだけだ。鍛えた指先で改めて火照った肉体を弄られて喘ぐ千景に、若葉は満足気に頷く。

 

 自分以外の媚肉を解すのはひなたが鍛えたのか。

 或いは彼女の才能が開花したのか、確かに千景の背が反る。

 

「ぁっ……ゃぁァ……!」

 

 誰が見ても誤魔化せないほどに感じ入っている千景。

 痴態を俺に見られ、若葉に見られ、録画されている状況で、何度も指が出し入れされているのだろう秘所からはにち、にち、と音が響く。

 

「ダメ……ダメっっ……!!」

 

 途切れ途切れの吐息。

 結んだ唇から涎が顎を伝い、瞳から涙がこぼれた。

 

「~~~~~~~ッッッ!!!!」

 

 千景が身を震わせた。

 かくっかくっと腰が上下して黒髪を乱す。

 

「ひ、ぁぁぁっっ!!」

 

 追撃したのか絶頂に浸る千景のボトムスの中で若葉の指がうごめく。

 甘く虚ろな表情を浮かべさせられた彼女の悲鳴に思わず喉を鳴らす。

 俺に犯されている時の千景の顔が、表情が、カメラに映り込む。

 

 甘い甘露が千景のボトムスに染みを作る。

 ゆっくりと指を引き抜く若葉、その動きにすら千景は震える。

 

 無言で自らの手に付着した千景の蜜を本人に見せる若葉。

 放心した千景は緩慢な動きで顔を逸らす。

 ぽたりと蜜が垂れ落ちる手を彼女の腹部に置いた彼女が顔を上げる。

 

「……亮之佑」 

 

「若葉」

 

 真面目な表情をする若葉、その瞳の奥は僅かに焦点があってない。

 身を震わせた千景の下腹部に手を置く彼女は言い訳の一つもしなかった。

 

 前髪に張り付いた髪をかき上げる若葉とジッと見つめ合う。

 やがて俺は、土産として持ってきたプリンの小瓶を差し出した。

 

「──俺もまぜて」

 

 

 



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第四十八話 人肌

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 出会った時から若葉と千景は仲が悪かった。

 俺の目から見て、より正確に言うならば千景が一方的に若葉を嫌いだと態度を見せ、天然と鈍感さといった小説の主人公のような態度を見せるのが若葉だ。

 とはいえ明らかに険悪な関係という訳ではない。少なくともこの世界では。

 

「ツンデレなんよ~!」

 

「べ、別にあなたの事なんか好きじゃないんだから! にぼっしーも前に言ってた台詞!」

 

「はあ!? 言ってないわよ! ……言ってない筈よね?」

 

「小説とか漫画ならともかく現実でツンデレムーブは俺はあんまり……」

 

「かっきーもたまにツンデレみたいなことしてない?」

 

「俺はいつも素直な人間だよ」

 

 好意の裏返しなど、分かるものか。

 行動や態度の裏側に想いを秘めていても吐かれた言葉が全てだ。現実は漫画のように相手の気持ちをモノローグとして見ることなど出来ないのだから。

 言葉のナイフは簡単に精神に傷をつけ、寝ても覚めても治ることはない。

 

「だからツンデレムーブする奴は総じてデレデレにさせたいと思います。ツンなんてさせない」

 

「なんでこっちを見てんのよ! ……み、見るな触るなぁ」

 

「にぼっしーはツンデレなのが良いんよ~」

 

「うん! 夏凜ちゃんは可愛い!」

 

「友奈……」

 

「ぐんちゃんだってツンデレ可愛いよ!」

 

「高嶋さん……ありがとう。でも、私はツンデレじゃないわ」

 

「あれー!?」

 

 勇者部内で一風を巻き起こしたツンデレムーブ。

 いつだったか忘れたけれど、そんな会話があったことが脳裏を過る。

 ツンデレ扱いをされて不本意な千景は、言動や態度こそ若葉に対して冷たさがあるが、一緒にゲームをしたり、空き教室でひっそりと膝枕をしていた事を俺は知っている。

 良い感じの雰囲気になる度にひなたや高嶋の目のハイライトがオフになることも。

 

 そんな彼女たちが目の前で触れあっている。

 俺はカメラを構えながら状況を口にした。

 

「千景先輩と若葉がホニャホニャしてました、と」

 

「ちょ……まさか撮って……け、消しなさい!」

 

「『ひなた、見ているか? すまない。私は千景を選ぶ。ホニャホニャする姿を見て欲しい』」

 

 脳が壊れそうなナレーションを付け加える。

 暴れる千景の肢体を弄ぶ若葉は何故かカメラに向けてドヤ顔をしていた。メイドの生地が乱れ、白い肌が露わになった千景に覆い被さる彼女はにへらと笑う。

 仄かに上気した頬と僅かに焦点の合わない顔を此方に向ける若葉。

 

「亮之佑。千景がさっき私のことを好きだと言ってくれたんだ」

 

「……ッ」

 

「ほう」

 

「い、言ってないわ」

 

 素直になれないと結局自分が損をする。

 それでも自分を貫く人は存在するが、今はもう少し素直さが欲しい。

 分かりやすいツンを見せる千景が顔を背けて、俺と若葉は顔を合わせる。

 

「さっき言ってくれたんだ」

 

「うん、さっき聞いたから」

 

「本当なんだ!」

 

「わ、分かったから」

 

「信じてないだろ! あの千景がデレたんだ! 私に!」

 

「ちょ、やめて乃木さん!」

 

 顔を突き合わせて、どちらかというと若葉から顔を近づけては睨まれる。

 ほんのりと頬を朱色に染めるのは興奮か、吐息には甘い香りと酒精が混じり、大きな瞳には何故か涙を見せつつ懇願してくる顔の良い少女。

 少し面倒臭いなと感じても、多少のことは流せるのだから美少女はお得だ。

 

 若葉に馬乗りになられ、両手すら拘束される千景は悶えるばかりだ。

 正気度の低い彼女を説得すること数分、若葉を退かせて俺が千景の上に覆い被さる。

 

「いや……待って。加賀くんもどいてくれる?」

 

「千景先輩。ここで退くことがない展開であるのは色々としてきたゲームで分かりませんか?」

 

「……ッ」

 

「やっぱりこれ美味しいな」

 

 甘味大好きな少女は目を輝かせては土産のプリンに柔和な笑みを浮かべる。

 普段の凛々しさとは皆無な可愛らしい少女の横顔。

 丁寧にスプーンですくってはニマニマと笑みを見せる彼女の端正な顔をスマホで撮る。年相応な姿は普段の姿と相まって確かにファンがいるのも納得だと思わせる。

 

 そんなことを思いながらスマホを下に向けると半眼で見上げる千景。

 ツンと尖った乳首ごと乳房を掌で僅かに触れるとピクッと上半身が小さく震える。

 

「ぐんちゃんも可愛いよ」

 

「ぐんちゃんって呼ばないで……撮らないで……ダメよ加賀くん」

 

「千景。可愛いぞ」

 

「うるさいわよ乃木さん」

 

「……亮之佑。これでもさっきまでは凄く素直だったんだ。一緒に風呂に入って洗いっことか色々なことをしたんだ。お前が入ってきた途端にこれだ」

 

「これか」

 

「これだ」

 

「俺は悪くないぞ」

 

 百合に挟まろうとしたのが悪だというのなら、俺は喜んで悪になろう。

 単純に素直になれない彼女は人の目があると素直な態度を維持出来ないのか、或いは長くツンデレムーブをしてきた事で癖になったのか。見下ろすと視線から逃れるように目を背ける。

 

「勝手なこと言わないで……」

 

「そんなツンなところは解しましょうね~」

 

「ぁっ、くぅっ……」

 

 謎の余裕を表情に見せる若葉を余所に、俺は千景の身体で愉しむ。

 僅かに汗ばんだ腹部を撫でて、そのまま脇腹をくすぐると千景は身をよじらせて笑みを見せる。

 蜘蛛のように指を動かして滑らかな肌を好きに動かすと髪も振り乱して喜ぶ。

 

「ふっ……くっ……ふふ」

 

「千景先輩が悦んでる姿を見ると俺もストレスが減るんよ」

 

「別に……ふくっ、ぁはは……!」

 

「綺麗な身体ですね」

 

 滑らかな肌を指の腹でなぞってはメイドの衣服を脱がせていく。

 柔らかく暖かな千景の腿が行儀悪く俺を叩くので、引き千切るようにエプロンごと短いスカートを奪い取る。葡萄の皮を剥くように白い肌と黒色のボトムスが覗くと千景は手で隠そうとする。

 

 ほんのりと朱色が差し僅かに雌の香りを漂わせる彼女は白い肌をくねらせる。

 抵抗はしないのかと見下ろすと、黒い瞳が揺れ動き、目を伏せる。

 

「別に……抵抗しても悦ぶだけでしょ? ……変態」

 

「ふーん……若葉。スマホ持ってて」

 

「ん? 撮ればいいんだな」

 

「そう」

 

「あー友奈見ているか? 千景が今凄くエッチなことになっていてな──」

 

「ちがっ、たかしっ、乃木さん!」

 

 プリンでご満悦な表情の若葉はカメラを向けながら語り始める。

 普段の凛々しさが溶けている彼女の横顔はどちらかというと園子要素を感じさせる。

 ふわふわとした雰囲気で微笑すら見せる若葉はカメラを千景に向ける。明確に自らの痴態が撮られていることに硬くなった肌は、俺の指先が奔る度に柔らかくなっていく。

 

 千景をくすぐる。

 

「ちょ……あ、あはは……ゃ、は」

 

 布地ごと恥部に顔を埋めようとすると足蹴にする少女。

 顔面に突き刺さる千景の脚を掴んだ俺は、彼女の脚の指を舐めながら今度は足裏のマッサージを強行する。ひぁ、と足指の間に舌を這わせて足裏のツボを指で押すと悲鳴が上がる。

 背中か肩と違い、脚の裏のマッサージは痛いと主張する人は多い。

 

「い、いたっ!? やめっ、ぁああっ!! ひ……ぁぁ……」

 

 グリグリと千景の脚をマッサージする度に悶える少女。

 あられもない姿と嬌声か悲鳴か判断に迷うような声を漏らす彼女は、

 

「か、顔を蹴ったのは謝るからぁぁっっ……ぐ、ぎっ、ひあッ……!」

 

「硬いですねお客様。せっかくの美脚が勿体ないですよ。いえ、蹴られたことは怒ってませんが片足のみですと効果が薄いので両脚で気持ちよくなるまでしましょうか。疑似友奈神拳!」

 

「気持ちいい! 気持ちいいから!! ひゃめてっ、ぁぁあっっ!!」

 

「そうですか……気持ちいいのでしたらもっと続けますね。おや、染みが広がってますね」

 

「ぁぁああ~~~~ッ!!」

 

「亮之佑のその口調は誰なんだ?」

 

 悲鳴を上げる半裸のツンデレメイドの両脚を持ち上げる。

 仰向けとなったままの彼女の両脚を頭の方に持っていき、ボトムス越しに恥部が顔の前に露わとなる。黒色の生地でも分かる染みができており、俺は布地ごと割れ目に吸い付き、啜った。

 

「ふぁぁぁっっ……!」

 

 ビクンと千景の身体が跳ねる。

 美乳を揉みながら恥部をボトムスごと口に含む。

 しっとりとした乳肉を揉みながら、彼女の湿った喘ぎを耳にする。

 

「千景は喘ぎ声がエッチだな」

 

「っ……っ」

 

 スマホを向けて、カメラ越しに乱れる千景。

 なんとなしに呟いた若葉の言葉に、唇を結んで我慢しようとする少女。

 そんな千景のいじらしい抵抗も、ボトムスを脱がせて恥部を虐めるまでだった。

 

「は、ぁンっ!」

 

 若葉に弄ばれ、そして俺にくすぐられ、マッサージされ、舐められた千景は腰を浮かせて涙混じりの瞳を揺らす。

 透明な蜜を流しむわりと雌臭を漂わせる千景の秘所。

 震える陰唇を舌先で割り開き、恥部を犯す。

 

「んっ!」

 

 千景の腿肉が俺の頬を叩く。

 じゅるるっと下品な音を立てて蜜に吸い付くと媚肉が蠕動し、悲鳴を上げて腰を浮かせる彼女の尻肉を掴んでは、彼女の薄い陰毛に隠れきれてないクリトリスの包皮を剥き、指の腹でこする。

 

「~~! んんんっっっ!!」 

 

 軽く絶頂に達したのか下腹部を震わせる千景の蜜を啜る。

 溢れる新鮮な蜜を啜っては陰核に塗して指先で丹念に擦る。

 

「ぅ、ぁぁ……! それ、ダメ……ッ!!」

 

 白い脚をピンと伸ばして大きな声を上げる。

 若葉の存在を忘却したように、喘ぐ千景の恥部に指を挿入する。

 

「あひっ! ゆびっ……」

 

 陰核を弄られるのは今日は舌の方が好みらしい。

 恥毛に鼻を埋めては陰核のみを唇に含んで舌で転がす。

 若葉によるあらゆる刺激を押し流すように、逃げようとする千景の腰肉を掴んでは、恥部に挿入した指先で彼女の弱点をひたすらに擦り続けた。

 

「ぁぁっ! ぅ、ぁぁあああっっ!!!」

 

 ぷしっと蜜が跳ね、飛び散る。

 肌に汗が伝い、首を振り水気を含んだ黒髪が乱れ広がった。

 

「はぁぁ……はぁ……」

 

 ぬるりと媚肉から指を抜く。

 虚空を見上げる彼女は色っぽい呼気を繰り返す。

 

「っ……かが、くん」

 

 すっかりホカホカになった千景は艶めかしい両脚を開いたままだ。

 甘えるように上目遣いで、ひくひくと動く陰唇と恥毛と、乙女の秘所を露わにする。

 言葉はなく、千景に覆い被さり密着するように繋がる。

 

「ぁ、ぁ、ぁあ!」

 

 ぬぷりと先端が秘裂に沈むと千景の唇が開く。

 上唇と下唇に透明な糸が繋ぎ、最奥まで飲み込むと背を反らした。

 

「……ッッッ!!!」

 

 静かに千景は絶頂に達した。 

 挿入と同時に果てた彼女の膣はぎゅううっと肉竿を締め付ける。

 千景の吐息と喘ぎ声は俺の耳元に吹きかかる。

 

 彼女の身体を押し倒し、乳房が胸板で潰れるほどに密着する。

 亀頭は媚肉の最奥まで届き、脳が快楽に染まる。

 自然と腰が動いて、とろみのある泉に竿が沈み、その度に彼女の肢体がくねる。

 

「ゃ! ぁっ……」

 

 千景の手が俺の背中に回る。

 膣肉は射精を求め、肉竿はそれに応えようと鼓動を高める。

 

「っぁ! ぁ、ぁ、あ!」

 

 結合部からは下品な水音を奏で、縋るように互いの身体にしがみつく。

 周囲のことを忘れたような喘ぎを漏らし、いつの間にか彼女の脚が俺の腰に巻き付く。

 

「かが、くぅん……っ!!」

 

 耳を甘噛みすると締め付ける媚肉。

 両脚に力をこめて、俺と深く繋がろうとする千景。

 

「んぁぁ……ぁー……」

 

 虚ろな眼差し。とろけた表情。

 取り繕う暇もなく、ただ快楽に悦ぶ千景の顔。

 

 至近距離に若葉の視線を感じるが振り返る暇はない。

 言葉を交わす余裕もない千景のだらしない顔をスマホで撮影しているのか、反り立った怒張が彼女の雌穴を貫く姿に息を呑んでいるのか。

 一人だけの観客のことを忘れた千景の身体は熱く濡れる。

 苦し気な表情をしながらも薄く笑みを見せる彼女の唇から吐息がこぼれた。

 

 涎の垂れた唇を奪う。

 そして、そのまま一線を越える。

 

「……んんっ!!」

 

 釘を打つように肉壺の最奥を叩いた怒張から注がれる白濁。

 俺に押し潰されたままの千景の肢体がビクッと跳ねては吐精を受け入れる。

 

「────」

 

 目を閉じて射精の充足感を覚えつつ、一滴残さず千景の中へ注ぐ。

 彼女の体温を全身で感じながら、重いと言われる前に身体を起こす。

 

 上体を起こし仰向けとなったままの千景を見下ろす。

 汗で黒髪を肌に張り付かせ、目は虚ろ、口端からは涎が垂れている。

 

 白濁を垂らす秘所の上に肉竿を置いては目の前の光景に満足感を覚える。

 引き抜いた竿で陰唇を叩くと、飲みきれないとばかりに白濁が溢れ落ちた。

 

「その……すごいな」

 

 思わずとばかりに呟かれた声に目を向ける。

 忠実に千景に向けてスマホを向けていた若葉と目が合う。

 

 目の前で行われた痴態に頬を上気させ、片手が秘所に触れたまま。

 それを隠すこともせず、気づいて欲しいとばかりに視線が向けられる。

 

 興奮と寂しさと期待。

 

「……亮之佑」

 

「どうしたんだ、若葉」

 

 普段の彼女ならば千景のように取り繕ったり言い訳をしたかもしれない。

 あまり羞恥を誘うような言動をすると、顔を赤くして怒ったり。

 

 目の前にいるビキニの少女は子犬のような表情で俺を見る。

 興奮と寂しさと期待。紫紺の瞳を揺らしては遠慮がちに呟く。

 

「──私とはしないのか?」

 

 どこかすねたようにスマホを置く少女。

 そんな態度をいじらしいと感じるのは酒精成分が入っているからか。どこか幼さのある態度でチラチラと俺を見てはやがて下を向く彼女の姿は、普段よりも園子に重なるところがあった。

 

「若葉」

 

「……なんだ」

 

「……しようか」

 

「…………ん」

 

 ほんのりと熱を持つ若葉の頬に触れる。

 彼女の柔肌に掌が吸い付き、僅かに目を細める若葉が手の甲に無言で手を置く。

 しっとりと濡れた金髪が手を掠めくすぐったく感じていると、やがて彼女が顔を上げる。

 

 恥ずかしがっているようにも、抱きしめて欲しそうにも、喜んでいるようにも見える。

 様々な感情を見え隠れさせる若葉の唇を奪うと、その肢体を硬直させたがすぐに力を抜いて俺に応じた。ふに、と押し返すように柔らかい唇が押し付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 抑制された枷が外れたのだろうか。

 周囲の目や理性、普段から自分を律しようとする者ほど解放されると凄まじい。

 

「うっ」

 

 にゅぷぷ、と若葉の肉壺が貪欲に陰茎を飲み込んだ。

 ゆっくりと腰を下ろしては、しかし躊躇うことなく奥まで挿入させた若葉は俺の腰の上で吐息を漏らすと見下ろす瞳を和らげる。

 自らが腰を振ることによって得られる快感とは違う、独特な快感に奥歯を噛む。

 

「ぁ……ん……」

 

 ぬるる、と最奥まで入り込んだ肉竿を抜いていく。

 肉付きの良い両脚を開き、結合部から若葉の蜜で濡れた俺の竿が姿を見せ、

 

「ぁ、ぁああっっ!!」

 

 勢いよく腰を下ろして竿を根本まで飲み込む。

 ぷるんと乳房を揺らす彼女が達して顔を背ける。

 

「ぅ、ぁぁ……ふっ、くっ……は……!」

 

 余裕のない喘ぎに壊れたような笑みが混ざる。

 理性の先にある快楽で獣になった者だけが見せるような自然とこぼれた笑みだ。媚肉を蠕動させ口端から涎を垂らしながらも、彼女は腰を動かす。

 

「は……ぁっ、ぁッ……!」

 

 にゅぷ、ちゅぷっと媚肉が竿を飲み込んでは吸い付く。

 腰を下ろす度に、乱れた金の髪が宙を舞い、全身から汗を滲ませる。

 

 男に騎乗する若葉は喜悦に白い肢体をくねらせ喘ぎながら快楽に悶える。

 羞恥よりも快楽を、涙を流しながら俺の反応を愉しむように腰を左右に動かす若葉。

 

「はぁ……はぁ……ぁ……!」

 

 小刻みに痙攣しながらも媚肉で肉竿を咥え続ける少女。

 解けた髪が揺れ動いては、唇を噛んでは尻肉を太腿に叩きつける。

 

「~~~~っっ!!」

 

 彼女の内腿が腰を締め付け、頭を反らせる。

 陰毛が絡み合った結合部は下品な水音を聞かせ、泡立った互いの体液が絡み合う。

 

 ぬぷんと肉竿が彼女の媚肉から抜ける。

 無言で竿を掴む若葉は当たり前のように自ら雄竿を受け入れる。

 涙で顔を濡らした彼女は俺を果てさせたいのだろうか、既に何度か達したにも関わらずいつまでも子種を搾り取ろうと膣を引き締める。

 

「……まだ、まだ」

 

 気がつくと彼女に両手を握られていた。

 ぎゅっと柔らかい少女の手をした若葉と指を一本一本絡ませて。

 

「っぐ」

 

 甘い香りと金髪の視界に重なるのは黒髪だ。

 白い裸体に映える長い黒髪に、唇を奪われてはさらりと乳首を指で擦られる。

 

 大きな瞳を和らげては蠢く舌で口腔を蹂躙する千景。 

 俺の乳首を攻めながら唇を奪う彼女は片手を自らの下腹部に伸ばしている。

 

 欠片ほどの理性と恥じらいを覚えている顔。

 それ以上に官能的な刺激に魅入られた雌の顔。

 

 千景と目が合う度に慈母のような笑みと小悪魔のような笑みを見せてくる。

 

「ぅ、ぁっ!」

 

 視界が酩酊する。 

 腰を上に突き上げては、若葉の腰を下ろしたタイミングと合致する。

 

「~~~ッッ!! ぁ……ッ」

 

 飛沫が肌に散った。

 喘ぎつつも腰を上下に動かす若葉の抵抗が続く中、俺は腰を揺する。

 

「ぅぁあぁっ!! ぁぁあっ!」

 

 切羽詰まった声を漏らす彼女と手を握り合う。

 痛いほどに握り締められながら、獣のように腰を動かす。

 

「わかば──ッ!」

 

「ハ……ぁ、りょうのすけぇ!」

 

 俺の肉が若葉を叩き、若葉の肉が俺を叩く。

 汗と涙に濡れた彼女が胸元に倒れ込み、受け入れると同時に亀頭が最奥を小突く。

 

「ぁ~~~~っっっ!!!」

 

 噴き出す白濁を膣は搾るように蠢き、俺は衝動に任せて腰を振り続ける。

 衝動的なピストンは一突きごとに脳に快楽を送り届ける。

 射精に視界が白く染まりながらも同時に腰を動かす。

 震える若葉の声は甲高く、目を見開いては意識を飛ばしていた。

 

「ぁ……は……」

 

 余韻を味わう若葉のしっとりとした乳房が胸板で擦れる。

 ずるりと怒張を抜き、呼気を整えようとする若葉の乳房を揉む。ツンと尖った生乳を掌に収め口に含みながら、千景の肢体にも手を伸ばす。

 十代の少女の未発達な部分を残しながらも、女を見せつつある裸体を楽しむ。

 

「んッ、ん──」

 

 若葉と千景に圧し掛かられたまま、交互にキスをする。 

 少女たちの白い腹が腹と重なり、乳首を男の肌で擦らせながら、腿肉で白濁と愛液に汚れた肉竿を刺激する。

 示し合わせたように千景の脚と若葉の脚が左右で肉棒を挟み込む。

 

 手とも口とも違う刺激。

 若さと美少女二人からの愛撫は下腹部への血を巡らせる。

 

「……変態」

 

「二人の生足が気持ち良くて」

 

「言い方。……そんなに好きなら勝手に触ってなさい」

 

「いや……分かるぞ亮之佑。ひなたの素足での膝枕はムチムチのすべすべで思わず頬ずりがしたくなるほど気持ちがいい。千景の脚はそれだけ魅力的ということだろう?」

 

「そう! もちろん若葉の生足も気持ちいいよ」

 

「ん、あー……される側になって思うが……まあ、悪い気分ではないな。変態だが」

 

「あなたたち二人とも変態よ」

 

「千景もだろ」

 

 肌で雄を感じた千景が半眼で見下ろし、キスをする。

 太腿で情欲を感じ取る若葉が理解しつつも呆れた眼差しを見せながら、キスをする。

 手持ち無沙汰な両手は彼女たちの尻肉を撫でては恥部へ挿入する。

 

「ん!」

 

「っ」

 

 ビクッと身体を硬直させる若葉と千景。

 その汚濁を掻きだすように彼女らの膣襞を指で押すと、甘えるように身体を擦り付ける。

 

 は、ふ、と甘い吐息。

 キスをする。キスをする。三人でキスをする。

 

「乃木さんの舌……甘いわね」

 

「千景の舌は柔らかいな。もっと味わっていたい」

 

「……っ」

 

 三人で顔を突き合わせて、キスをする。

 舌を絡め合うキスも唇を触れ合わせるだけのキスも、俺と若葉がして、俺と千景がして、若葉と千景もする。

 首筋に指を這わせては、ふと千景が若葉に囁く。

 

「乃木さんって耳、弱いのよね」

 

「……そ、それがどうしたんだ?」

 

「……ふふ」

 

 それからはツンもデレも忘れて肉欲のみを追求した。

 快楽のみを求める雌と雄がただ互いの身体だけを求める。

 

 同時に自らへの快楽だけでなく、勇者部らしく他者へ奉仕を忘れずに。

 指でも舌でも乳房でも、自分の全てを使った相手への甲斐甲斐しい奉仕の心で。

 

 ──思いつく限りのことを相手の身体に求めた。

 

「ぁ、みみ……ひゃめ……ぁ、ぁあぁっ!!」

 

 千景はされたことへの仕返しに若葉の耳を舐めながら果てるまで秘所を弄った。

 俺はもう片方の耳を亀頭で扱いては、その金髪と顔を白濁で汚した。

 

 ──思いつく限りのことを相手の身体に求めた。

 

「ん、んぷっ……んッ! ん!!」

 

 何事にも報いをと。辱められたことへの報復として若葉が千景をのけ反らせる。

 彼女の脚を開いては躊躇うことなく白濁混じりの愛液を啜りとる。

 喘ぐ千景の腋肉で扱いていた怒張はそのまま彼女へと咥えさせて、口を汚し、鼻を汚す。

 汗を帯びた黒髪にまで汚濁がかかり、それを見て面倒臭そうにも嬉しそうにも複雑な表情を見せる千景は抗議するように丹念に肉竿に吸い付き、僅かに歯を立てた。

 

 ──思いつく限りのことを相手の身体に求めた。

 

「ほら……まだ出したらダメよ」

 

「我慢出来るよな亮之佑」

 

 柔らかな掌が肉棒を包み込む。

 遠慮など知らないとばかりに上下に扱かれる。

 

 涎を垂らす怒張を見続ける少女たち。

 我慢、と言われて素直に従う俺が許されるのは彼女らの生乳を揉むことだけ。

 

 最近成長を見せつつある若葉の双丘と千景の双丘。

 比べることが出来る立場に感謝しながらも、扱く手の緩急が加わり呻き声を上げる。

 

「我慢よ加賀くん」

 

「そうだぞ」

 

 雄竿を若葉と千景の手が包む。

 ただ射精させようという手の動きに俺は二人の肩を掴む。

 俺の顔を見て、ニヤリと笑った千景と若葉が頷いた。

 

「ぐ……ぁぁっ!」

 

 屈辱的な射精は快感と共に彼女たちの身体を汚した。

 

「加賀くん……可愛い」

 

「そんな顔をするのか……フフ、撮ったぞ」

 

「…………」

 

 白濁で汚されながらも少女たちは果てる自分の姿に笑みを見せるばかりだった。

 

 ──思いつく限りのことを相手の身体に求めた。

 

「……こんなのが良いとはな」

  

 千景と若葉の身体が密着する。

 抱擁よりもぴったりと、千景の薄い双丘と若葉の双丘が重なる。

 肉果が潰れ、黒と金の長髪が白い裸体に広がる。

 下腹部すら密着する仲の良い二人の乳房の間に俺は死ぬほど腰を叩きつける。

 

 むにむにと形を変えては戻ろうとする母性の象徴と硬さを主張する乳首。 

 大小、柔らかさの異なるあどけない少女たちの乳首が亀頭と擦れ合う度に誰かが呻く。

 自然と千景と若葉が手を重ね、きゅっと握った。

 

「千景……」

 

「乃木さん……」

 

「ちょっと二人ともこうして」

 

「「え」」

 

 紆余曲折を経てリクエストに彼女らは応えた。

 仰向けの若葉が脚を曲げ、千景が挿入するような姿勢で覆い被さる。

 二人の蜜裂と陰毛、尻穴が丸見えとなった。

 

「ぁん!」

 

「ゃあ!!」

 

 若葉と千景の陰唇が重なる場所。そこを俺は貫く。

 ひたすらに腰を振って、亀頭で陰核を擦っては目の前の尻を叩く。

 

「ひゃあん!!」

 

「んっ」

 

 千景の白い尻に赤い痕を残しながら腰を振る。

 ぬちゅぬちゅと水音が二人の下腹部に響き、若葉と千景の喘ぎ声が混ざる。

 先ほどの太腿で連携技でも習得したのか二人が身体を密着させ肉竿を圧迫した。

 

「ぐぅっ!!」

 

 何度目かの射精にも関わらず白濁が噴き出す。

 彼女らの下腹部を汚濁で染め、俺はそのまま千景の背中に倒れ込む。

 

 重いからと退かされながら俺は充足感に溜息をこぼす。 

 良い夜だったと。

 このままシャワーを浴びて布団で眠れば良い夢も見られそうだと。

 千景の胸元に顔を埋めると、遠慮がちに頭を撫でられる。

 

「ほら加賀くん。起きて……」

 

「あと5分だけ……」

 

「駄目よ……私たちをこんな風にした責任を取って」

 

「ぁ」

 

 下腹部への違和感。

 ちゅるるっと怒張に吸い付く若葉は舌先で亀頭に絡みつき白濁を嚥下する。

 ごくんと飲む彼女は満足気に手で口元を拭うと、逃がさないとばかりに俺の手を取る。

 

「それで加賀くん」

 

「亮之佑……次はどうする?」

 

「寝かせると思った?」

 

「ああ……今夜は寝かさないぞ」

 

「────」

 

 だが終わらない。

 白濁と愛液と涙と汗で身体を汚しながらも、美しい二人に迫られる。

 淫欲に頬を染め、邪魔をする者はなく理性を解放した瞳でジッと俺を見る。

 

 美しい瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶が曖昧だ。

 シャワーを浴びながら行為に及び、少しずつ風呂場からの脱出を試みた気がする。

 それから──、

 

「……?」

 

 柔らかい何かに包み込まれていた。

 目を開いた筈なのに暗い空間は、時間の経過と共に理解に及ぶ。

 

 旅館の一室のようだった。

 遊んでいたアミューズメント施設が用意している宿泊用の一室だ。

 

 畳が広がる場所には布団が並ばれて、見知った少女たちが寝転がっている。

 裸体な者、下着を着けた者、衣服を身に着けている者は恐らく殆どいない。

 

 大赦スタッフか誰かが行ったのか浴衣が柔肌の上から着せられて毛布が掛けられていた。さらには一つの布団を占領するように抱き着き合う少女たちも多い。

 あれならば風邪をひくことはないだろう。

 

 針音のしない時計は深夜を過ぎて早朝に近い時刻を指す。

 上体を起こそうとして、誰かに抱き着かれたままなのに気づいた。

 

「すぅ……」

 

「ん……」

 

 抱き着いていたのは若葉と、そして千景もだった。

 縫いぐるみを抱くように腕に力を籠めるのが若葉で、人肌を得るようにただ抱き着いているのが千景だ。脚に絡みつくのはどちらの脚か、上から下まで密着していた。

 

「ん~……」

 

 上体を起こそうとすると唸り声を上げる少女たち。

 あれだけの行為に及びながらも、その寝顔はあどけない。

 

 無理をすると起きてしまうだろう。

 そして起きたならこの現状を目にするだろう。

 そして他の少女たちが目を覚まして──、

 

「────」

 

 髪を下ろした二人に挟まれたまま、思考を止めて目を閉じる。

 柔らかい布団の感触と柔らかい二人の体温に、早くも微睡みを覚える。

 

 ──異性同士で抱き合うとストレスが半分に減るんよ。

 

 いつだったかそんな言葉を聞いてから抱擁が好きになった。

 するのもされるのも。

 ストレスが減るからというだけではない。

 女に抱かれていると心が落ち着くから。

 

 母性でも求めているのかもしれない。

 幼稚だと笑われるかもしれない。

 何かを、心が求めていて、抱擁の間は満たされている、そんな気がする。

 

 無意識に腕に力を籠めると若葉が擦りついてくる。

 意外にも豊満な乳房を押し付けて甘えるように抱き着いてくる。

 ぎゅうっと。端正な寝顔はいつの間にか額が張り付くほどに近い。

 

 ふに、と唇が触れた。

 

「────」

 

 どのみち慌ててもどうにもならない時はあるのだ。

 次に目を覚ませば二日酔いか何かの反動で忘れているかもしれない。

 全ては次の自分に任せよう。

 今は──、

 

「────」

 

 今は、この人肌が何よりも心地よかった。  

 

 

 




多分あと数話ぐらいで花結い編も終わりかも


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第四十九話 見た目は些細なこと

 水中から顔を出すように目を覚ますも、すぐに瞼を閉じる。

 呼吸して鼻孔をくすぐる甘い香りと柔らかい感触が顔に触れる。柔らかく温かい感触に思わず顔を押し付けながら余韻に浸ると緩やかに意識が覚醒していくのを感じる。

 緩慢としつつも回り始める脳と意識は暗闇の中、満場一致で睡眠を選んだ。

 

「すやぁ……」

 

 寝起きの布団の柔らかさと温もりは格別なのだ。

 あと五分とふかふかの何かに顔を埋め動かしながら二度寝を決断する。

 昨夜の淫舞は流石に疲れたのか、疲労感も相まって極上の布団に意識を溶け込ましていく。

 目を閉じていると耳が周囲の少女たちの声を拾った。

 

「あっ、今絶対起きた! 起きたわよね風」

 

「むにゃむにゃ……」

 

「亮之佑……なのよね」

 

 昨日の出来事を覚えているかどうかは置いておき、声を掛けてくる美少女たち。

 どこか不安げな様相は此方が昨日の内容を覚えているのかどうか、そしてその時に自分がどういった対応をするかを決めかねているような、そんな顔に見える。

 

 片目のみを僅かに開いて薄暗い視界に捉えたのは此方を見下ろしている夏凜や風といった勇者部の面々だ。白い肌に浴衣が似合うも寝起きなのかやや乱れた浴衣からは下着が覗いている。

 大人びた黄色のブラと機能性を重視した紺のスポーツブラ。

 夏凜はともかく、意外と風のガードは硬い認識なのだが、誰にでも無防備な時はあるのだろう。

 浴衣から谷間を覗かせながら、しかしそちらを気に掛けることなく風が口を開く。

 

「……りょ、亮之佑なのよね。弟とかじゃなくて」

 

「……?」

 

 と、四つん這いになって見下ろして来る彼女の言葉に眉を顰めるも寝ていることを思い出し可愛い寝顔を見せつつも、風の言葉の意味を睡魔に沈む脳で考えてみた。

 もしかして、酒の影響でまだ寝ぼけているのかもしれない。

 そんな事を考えながら俺はようやく周囲の状況を薄目で見る。この状況下でもしっかりと睡魔に自らを預けて寝顔を見せる若葉のふかふかな双丘を顔に、背中には千景の柔らかな肌と、サンドイッチ状態だった。

 

「ふわぁ……二人ともどうしたの~? 朝からお盛んだね~」

 

「あっ、園子……って下着ぐらいつけなさいよ」

 

「……乃木、これどう思う?」

 

「どうって、かっきーがわかちかに挟まれて修羅場不可避な──」

 

 園子も絶句するほどの修羅場になるのだろうか。

 言い訳不可避、特定の誰かに見られたら大変なことになりそうだ。

 思った以上に密着しているのか、ピクリとも動かせぬ身体、若葉と千景は俺を間に挟み込んで抱きしめ合った状態だった。

 せめてどうにか動かせないかと肢体に力を入れて、

 

「……かっきー?」

 

「────」

 

 筆舌とし難い違和感を感じた。

 二度寝どころではないと目を開いてむにゃむにゃと寝言を聞かせる若葉の頬に手を置く。

 はむりと指を甘噛みする若葉。

 柔らかい頬と温かさを感じると同時に、俺自身の手の大きさを確認する。

 

 ほんの数時間前までもう少し長く大きかった手や腕の長さが違っていた。

 ぺたぺたと首や顔に触れて、そもそも着ていた浴衣が大きいことに気づいた。

 

「これは……!」

 

 声に出してみて気づく違和感。

 否、周囲の視線やこれまでの出来事、直感が自分の身に起きたことを気づかせるも、それを口にすることに躊躇を覚える。

 だって今までは勇者や巫女にのみ起きていた筈の現象だから。

 

「んぅ……朝から騒がしいわね」

 

「……小雀でも騒いでますの?」

 

「ふわぁ……、……!」

 

「あ、あれ? なんで裸に……」

 

「友奈ちゃん? 私、友奈ちゃんと一緒にこんな格好で……」

 

「えへへ……東郷さんあったか〜い……もう五分だけ……」

 

 そうしているうちに騒がしかったのか、周囲の少女たちも目を覚まし始める。

 照明を点けておらず、あられもない姿に辛うじて浴衣のみを着けたような少女たちの起床は連鎖するように他の少女たちの覚醒を促していく。

 欠伸をする者。下着どころか何も着ていないことに気づき毛布で隠す者。

 乳房や恥毛をチラリと見せつつも気にせず欠伸する者。無言で赤面し周囲に目を向ける者。

 そそくさと自分の下着を探して此方に目を向けもしない者。

 スマホで誰かが絡み合う動画を目にして暗い笑みを見せる者。すやすやと眠り続ける者。

 

 目覚めの朝がやってきた。

 

「……ふぁ……もう朝? なんで私、乃木さんと抱き合ってるの……は、離れて」

 

「んぷ……なんだ千景か……」

 

 若葉も千景も目を覚ました。

 そうして周囲の声を耳にして、自らの身体で挟み込んだ俺に目を向けた。

 

「……加賀くん……?」

 

「ん? 何かいつもと違うような……」

 

 寝起きながらどこか信じられないような顔を見せる者たち。

 

 そして。

 

「かっきー!!」

 

「お」

 

 どん、と身体に感じる衝撃。

 抱き着かれたのだと気づいた時には甘い香りと長い金髪が舞う。

 

「園ちゃん?」

 

 身体は彼女の衝突を受け止めきれずに背後に倒れ込む。

 それを誰かに受け止めて貰いながらも、俺は目の前の彼女に目を向ける。乱れた浴衣に白い肌、力強く抱き締める少女は唯一俺の知らない時代から来た乃木園子。

 

「かっきーだ……かっきーかっきーかっきー!」

 

「お、おい乃木。急に……」

 

「私の、私のかっきーだ!」

 

 その言葉に、胸元に擦り付けていた顔を上げた瞳に映る姿に認めざるを得なかった。

 将来美人になるであろう、幼さの残る園子の大きな瞳に映る少年。

 そこに揺れているのは、黒髪黒目の勇者でもなんでもない、ただの子供がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は加賀亮之佑が好きだ。

 自分が好きだ。

 ナルシストだと言われることもあるが、それでも自分自身を愛している。

 

 想像するのは常に最強の自分だ。

 ああなりたい、こうなりたいと思い描いた先に理想の自分が出来上がる。

 前世で死んでしまって、二度目の人生で思い誓ったことは後悔しないということ。それを成し遂げる為には偉大な両親から授かった才能に頼るだけではなく努力の必要がある。

 

 怠惰であって良い筈がないのだ。

 もしも前世と同じような展開に遭遇した時に努力不足で対応出来ないなんてことが無いように。出来ることを増やして、将来のことも考えて、考え尽くして。

 ない頭で作り上げた最強の自分なのだ。

 俺が生まれた瞬間からひたすらに磨き上げてきた宝石なのだ。

 

 それでも第二の人生を歩んで後悔したことがあるし、宝石を嫌いになりかけたこともある。

 そもそも後悔をしないという事など不可能なのだ。選択などどちらを選んでも後悔はしてしまうもので、前世からの経験があってもどうにもならないことはある。

 口にしてしまえば挫けてしまいそうだったから。

 一度でも口にしてしまえば、誓いが破れてしまうと思ったから。

 

「────」

 

 ジッと鏡を見る。

 幼さの残る顔。艶やかな黒髪。

 

 この世界に来る前、本当の意味でこの世界の真実も知らなかった頃を思い出す。

 前世の嫌なことも忘れ始め、ぬるま湯に浸かり両親や園子と離れ離れになって後悔した時期。

 

 まだ満開の代償で瞳の色が変質する前の頃だ。

 白髪が増える前の黒髪、血紅色でない瞳を見る時が来るとは思わなかった。

 幼き日の加賀亮之佑。その姿に覚えるのは懐かしさよりも、喪失感だった。

 

『──これは契約だ』

 

 昏い瞳には欠片ほどの血紅色は何もない。

 まるで溶けてなくなってしまったように、無機質な漆黒が見返してくる。

 

 ──もう勇者だった名残すら消えてしまった。

 

 なら、ここにいるのはいったい誰なんだろう。

 考えれば考えるほど根幹部分が崩れていくのを感じる。

 

「……やはりバーテックスとの戦闘の影響か中立神やそれに連なる神による影響なのでしょう」

 

「今まで私たちに起きてた子供になったり大人になったりする現象が亮ちゃんにも発生したってこと?」

 

「はい。恐らくは……」

 

「でも亮之佑は今まで戦ったりしてないだろ? どうしてなんだ?」

 

「そこまでは……神樹様からも神託はなくて」

 

「私たちの例を考えればそのうち治るってことなんだろう?」

 

 少女たちの会話を俺は聞く。

 真剣な顔をした彼女らを見ながらぼんやりと頭を回す。

 

 今まで子供の姿になったり大人の姿になったりした少女たち。

 元に戻る保証もなかったのに彼女たちは明るく元気だ。闇夜に瞬き続ける一番星。これから先どんなことがあったって決して折れない芯の強さを俺は羨ましいとも妬ましいとも思う。

 

 芯の強さとは、努力でどうにか出来るとは思えない。

 どれだけ外見や特技を磨き、出来ることを増やしても性根は簡単には変えられない。

 

 不安だ。

 心配だ。

 

 もう勇者であった面影も何もないのにどうしてこんな仕打ちを受けなくてはならないのか。

 ぐるぐる、ぐるぐると頭の中で昏い感情が渦巻いていく。 

 言葉にはし難い、口には出来ない感情が、肩に、頭に、身体に圧し掛かっていく。

 

 自然と視線は下へと下がって俯きそうになって、

 

「──そんな顔しないで」

 

 耳元で囁く声。

 ぎゅうっと身体を包み込む温かさに思わず息を呑む。

 

 背後から回される手。背中に感じる柔らかさ。

 滑らかな髪が頬をくすぐり、耳朶に響くは鈴音の声色。

 

「そんな顔しなくても大丈夫だよ」

 

 根拠も何もない。だが、いつだってその声は勇気をくれる。

 落ち着かせるように、優しく頭を撫でる彼女の体温に瞬きを繰り返す。椅子に座る少女のスカートから伸びる健康的な脚。黒ニーソに包まれた太腿の上に座らされて背後から抱かれる。

 根拠などない。それでも信じたくなる声の持ち主。

 

「友奈」

 

「うん!」

 

 僅かに声が震えた。

 それを気にすることなく、抱く腕に力を込めて結城友奈は応える。

 

「大丈夫だよ亮ちゃん」

 

 ぎゅーっと口にしながらぬいぐるみにするように友奈は全身で俺を抱く。

 背中から感じる柔らかさに、自然と強張っていた肢体が解れるのを感じた。いつの間にか緊張していた身体を解きほぐすように彼女の指や吐息や匂いに目を上げる。

 

「亮ちゃんは一人じゃないよ! みんながいる!」

 

「────」

 

「私もいる!」

 

 太陽のような眩しい笑みは決して真似出来ない純粋さがある。

 髪を撫でられて頬ずりされながら、俺はみんなを見る。

 制服を着た美少女たち、可憐な花々が見返していた。

 

 安堵させるような表情で俺を見る。

 敵を見るような、部外者を見るような目ではない。

 純粋に俺を心配してくれているのだと反発なく理解出来る眼差し。

 一人の勇者部の仲間として、男として、俺を、加賀亮之佑を見ている。

 

「そうだぞ亮之佑! 小さくなったからって私とおまえの関係は変わらないぞ」

 

「ええ……小さくても加賀くんよ」

 

「おねショタから始まる物語も良いですよね」

 

「なんていうか弟が急遽出来たみたいだな! でも中身は同じか」

 

「ふふ……そんなに怖がらなくて良いんですよ」

 

「私もなでなでさせてー!」

 

「まあ……これだけの仲間がいるのだから怯える必要なんてないわ。ねえ雀?」

 

「あっはい……みんなあんな事しておいてスルーする感じなんだ。もしかして私だけ覚えてる?」

 

「おーほっほっほ! カガフレッドが小さくなろうともこの弥勒夕海子、それでどうこうするほど安い女ではありませんわよ! 舐めないで下さいまし!」

 

「いや舐められてたのは弥勒さん……すみません黙ってますチュンチュン」

 

「亮之佑先輩は亮之佑先輩です。あっ、でも少し目線が近くなりましたね!」

 

「んー……へへ、見た目が変わっても亮さんは亮さんっスよ」

 

「そうです! 私でよければ……ハ、ハグしちゃいます」

 

「樹がやる気を見せてる!? ……なんてね、悩んだら相談よ。今更見た目が変わったくらいで亮之佑のことをどうこう言う人なんてこの中にはいないわよ、安心しなさい」

 

「ふん……当然じゃない。あんたはアレよ、男のプライドか何かしらないけど変なところで本心を隠そうとするんじゃないわよ。友奈みたいになるわよ」

 

「夏凜ちゃん。それってどういう意味?」

 

 みんなが口々にそう言ってくれる。

 西暦組も防人組も年少組も、不安を胸中に押し隠す俺を憚ってくれた。

 きっと他に何か言いたいこともあったのかもしれない。

 それを些事だと投げ捨てて目の前で困った人を助ける姿は、正しく勇者だ。

 心の弱った人にとって、彼女たちは神に見初められた存在なのだと、そう強く実感させる。

 

「ティッシュはいるかい?」

 

「泣いてないけど」

 

「心が泣いてるんよ~……私には分かるよ。おいでかっきー」

 

「おいでって……」

 

「エッチなことしちゃう?」

 

「ちょっと、ここ部室よ! そういうことする場所じゃないでしょ」

 

「……」

 

 芽吹の吐いた言葉はあまりに強かったのか、無言で顔を背ける少女が数人。

 それを誤魔化すように気がつくとぬいぐるみのように彼女たちに好き放題された。

 抱きしめて、頭を撫でて、大胆に頬にキスをしたりして騒いだり。

 

「東郷さん……?」

 

「ハァ……ハァー……な、なに? 亮くん」

 

「……東郷お姉ちゃん? 身体熱いけど大丈夫?」

 

「おねえ──」

 

「東郷。鼻血」

 

 小さく喉を鳴らす東郷の熱を持った身体は柔らかいが、なんとも言えない危険性を感じさせられる。制服越しに彼女の鼓動を感じつつもその高鳴りを耳にする。

 さらりと腹部を撫でたり耳に唇を一瞬触れさせたり、どこか虚ろな眼差しで愛撫に近いことを始めた辺りで、何かを感じ取った周囲の少女たちに引き剥がされそうになる。

 我が子を抱く母のように必死に抵抗する東郷も友奈に諭されるとあっけない。

 

「東郷さん」

 

「ハッ! 友奈ちゃん……私は……亮くんの可愛らしさに……いったい何が」

 

「おーい東郷、涎を拭きなさい。ついでにカメラも置いて」

 

「大人しくみんなに抱かれる亮くん……いいわね」

 

「ほら、次交代だ」

 

「ただいま十分待ちです~」

 

 思い思いにお姉さん力、もしくは母性に類する何かを発揮する少女たち。

 お姉ちゃんと呼ばれるのが良いのか、その胸元に抱き寄せては柔らかさと温かさを教えてくれる。慎ましい胸元や豊かな胸元も、そっと顔を埋めても誰も何も言わない。

 それどころか眦を下げて頭を撫でる西暦組や勇者部の面々に思わず黙り込む。

 

「ヘイ、ハグ!」

 

「ほ、抱擁ぐらいは……まあ」

 

「須美ー、なに恥ずかしがってんだよ」

 

「べ、別に恥ずかしがってる訳じゃ……」

 

 年下組とは背丈は変わらない。

 ニコニコと友奈に見守られながら須美や銀とも抱擁を経て。

 

「わかちゃん知ってる? この時のかっきーの背は私よりも小さかったんよ~」

 

「ほう……なんだか私とひなたを思い出すな」

 

「若葉ちゃん……ポッ」

 

 自慢げに語る園子(中)の言葉を耳にしながら、園子(小)とも熱烈な抱擁をした。

 すりすりと頬ずりをする彼女は思い出すように柔らかな口調で当時を語る。

 遠い目をする須美や銀が一言、思い出し笑いを見せる。

 

「そのっちは何かと『かっきーが……』って話をしてくるから」

 

「須美が嫉妬したりして、いったいどんな奴なのかって二人で話してたこともあったな」

 

「え~、写真見せなかったっけ?」

 

 小さな姫が揶揄われては僅かに頬を膨らませる。

 指で突くと萎む頬は柔らかく、その仕草の一つ一つが過去を思い出させる。微笑を見せる園子とくるりくるりとその場でダンスをするように抱き合い続けた。

 

 

 

 

 

 少しだけ心が軽くなった。

 もしも一人で突っ走っていたらどこかで耐えられなかったかもしれない。

 

「ここがかっきーのハウスね」

 

「もともとは園ちゃんの家の別荘の一つらしいけど」

 

「なら私とかっきーのハウスなんよ。愛の巣って奴~……?」

 

 小さくなってからは園子(小)との密着時間が増えた。

 昔は殆ど毎日ずっと一緒にいたから問題ないのだが、そのことに対して嫉妬を見せたりする者はいなかった。聞いたところでは俺のことに関して少女たちの間で色々と話があったらしい。

 自らの薄い胸を撫でおろして、その瞳を俺に向けて微笑む。

 

「今日は誰も来ないから~、二人だけだって〜」

 

「そっか」

 

「今日もかっきーの作るご飯が食べたいな~」

 

「鍋焼きうどんとか如何ですか?」

 

「美味しそう~」

 

 背格好の大きさに関わらず、元の世界では中学校に進学する前から一人暮らしをしていた。生活自体は問題ない筈なのだが、お節介焼きな少女たちは毎日誰かが料理を片手にやって来る。

 まるで一人にしては大変なことになると言わんばかりだ。

 

 元々このくらいの歳にはやっていたことなのにと思いつつも相応のお礼は身体でしてきた。

 与えられるだけの関係なんて嫌だから。

 最近はそんな状態だったのだが、本日は誰も来ないらしい。

 

「だから今日は私がかっきーを貸し切りにしちゃうんよ」

 

「園ちゃんの為ならいつだって俺は貸し切りになるよ」

 

 サンチョの枕を抱いた彼女を連れて階段を上がる。

 自室の扉を開けては、寝台に二人で座り込む。

 

 るんるんと鼻歌を歌わんばかりに機嫌の良さそうな園子。

 彼女の柔らかな手と手を繋いでいると、昔を思い出す。

 隣にいる少女とは、いつでもどこでも出会った時から一緒だった。本家と分家、そんな垣根も越えて最初の友達となって、色んな思い出と時間を共有してきた。

 

「……昔はいつだって貸し切りだったのにね」

 

「────」

 

「でも、私のかっきーがこんなに良い男だぜ~って皆に知って貰えて鼻が高いんよ」

 

「そのちゃん」

 

 呟く彼女に返す言葉を考える間もなく、そっと押し倒される。

 枕に頭を置いて見上げる俺から目を離して、ベッドの隅に置かれたやや古いサンチョ枕を手に取る園子。愛おしむように古い枕を撫でる彼女はどこか妖艶な表情を見せる。

 

「そして~……今日はお泊りセットも持ってきてるから安全安心!」

 

「今日は、じゃなくて今日も、だろ?」

 

「迷惑だった?」

 

「まさか」

 

 元の位置に古いサンチョ枕を置いては俺の腰の上で両手を広げる園子。

 

「かっきーのご飯もお腹一杯食べちゃうぜー! かっきーのご飯とわっしーのぼた餅が将来の私に繋がるのだ!」

 

「そのちゃん」

 

「それで……それで……」

 

 ゆっくりと仰向けの俺に重なるように園子は倒れ込む。

 長い髪の毛から覗く耳は朱色に染まり、その頭を撫でると小さく震える。

 その震えが無くなるまで抱きしめると、耳元で彼女は囁く。

 

「かっきー」

 

「うん?」

 

「……エッチしよ?」

 

 照明が消える。カーテンを閉めた薄暗い部屋で。

 内緒話をするように、顔を近づける園子が瞳だけを輝かせる。

 

 昔ならば、そのまま一緒に抱き合って眠っただろう。

 あの頃よりも少しだけ大人になった俺と彼女は、唇を交わして、音もなく指を絡めた。

 

 

 




今年もありがとうございました! 皆さんの温かい感想に感謝です


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第五十話 愛憎の色

 乃木園子とは長い、本当に長い付き合いだ。

 勇者部よりも、東郷よりも、友奈よりも、時間を共にしてきた。

 

 第二の人生で初めて手にした友達への思い入れは深く、彼女にとっても俺という存在は物珍しく親しんでくれたのだろう。殆ど毎日一緒で、春も夏も秋も冬も共に過ごしてきた。

 前世ではいなかった幼馴染の令嬢と多くの事を共有した。

 

 容姿端麗ながらも常に不思議な行動をする彼女に興味の種は尽きなかった。

 彼女の両親ですら不安視していた園子の奇行についていけたのは俺だけ。

 そんな謎の自尊心と共に日々腕を磨いては奇術を披露していた。

 あの頃必死に努力していたのも、園子に見て欲しい、喜んで欲しいという思いが確かにあったからだ。

 

「ずっと一緒にいたいな~」

 

 園子は名家である乃木家の令嬢だ。

 俺は乃木家の分家、両家の間柄は悪い訳ではないが、子供の純粋な想いは続かない。

 権力や神樹、子供では太刀打ち出来ない理不尽で俺と園子は引き剥がされた。

 

 再会したのは数年後だった。

 だから初めて園子(小)と出会った時は驚いた。

 

『かっきーが大きくなってる! かっきーがかっきー先輩になっちゃった!』

 

 アルバムにない、記憶にもない姿。 

 鷲尾須美や三ノ輪銀だけが知る、俺の知らない園子。

 別に大きく変わった訳ではない。

 少し身長が伸びたとか、身体的な成長のことを言うのではない。

 

『わっしー!』

 

『ミノさ〜ん!』

 

 俺の知らない表情で園子は友達の名を呼ぶ。

 年相応の少女として同性の少女と親し気に遊ぶ姿は、無邪気に笑って、気ままに眠って、変わらず天才肌なのは変わらず、しかし俺とだけ遊んでいた彼女とは違って見えた。

 

『かっきー先輩!』

 

 彼女はいつも俺のことを「先輩」という敬称を付けて呼んでいた。

 

 その事に少しだけ壁を感じた。

 あの頃のように甘えるし、抱き着いてくるし、笑みも見せてくれる。

 でも、彼女にとっての「かっきー」は俺ではないのだと感じていた。

 

 小さい事を気にするなと言われるかもしれない。

 他人にとっては鼻で笑うような、凄くどうでもよい、些細な事だろう。

 

「……私ね……かっきーを私のかっきーじゃないって思ってたんよ」

 

「────」

 

「ごめんね」

 

 初々しさの残る口づけは柔らかさとフルーツの味がした。

 纏った衣を脱ぎ、一糸まとわぬ肢体が露わになる。

 

 彼女の裸体は幾度も見た筈なのに、美しさに目が惹かれる。

 将来の希望が明るい乳房から曲線を描く美尻、生えかけの恥毛とすらりとした腿。

 白い肌にブロンドヘアがさらりと揺れ動き、自然と息を呑む。

 

 ──いつだって彼女は俺の目を奪う。

 

 硬直する俺を他所に、少女の動きに躊躇いはない。

 大胆に、こちらの思考も感情も気にすることなく、しかし繊細な動きで距離を縮める。

 

「────」

 

「────」

 

 もともと密着しているに等しい距離すらなくなった。

 甘いミルクのような体臭が鼻孔をくすぐる中で、唇を重ねる。

 ふに、と柔らかな唇が触れ合うだけの友愛を感じさせるキスの合間に、

 

「ちょっと懐かしい見た目ってだけなのに、我ながら現金だよね」

 

「園ちゃん」

 

「かっきーはかっきーなんだから」

 

「────」

 

 吐息と共に少女の声を聞いた。

 遠い目で懺悔するように呟く園子の頬に掌を当てる。

 向かい合った状態で、彼女は俺を見下ろした。

 

 彼女の長い髪の毛を指で梳きながら、焦点が合うのを待つ。 

 きめ細かな肌、柔らかな頬を指で突いていると、話題を変えるように目を逸らされる。

 小さく口を開くと、タイミングが良いのか悪いのか滑らかな腹部が小さく音を鳴らす。

 ほんのりと頬を染めながら、形の良い眉を園子は顰める。

 

「お腹減ったんよ」

 

「……クッキーあるよ」

 

「やった~。ちょっと休憩しよっか」

 

「早くない?」

 

 マイペースな彼女にはいつだって振り回される。

 思わず弛緩させられる園子に頬を緩めては、菓子を差し出す。

 指で摘まんだクッキーを、それが当たり前だと言わんばかりの態度で雛鳥のように口を開けて待つ彼女に食べさせる。

 目を輝かせる園子は小さく頷いて咀嚼する。

 

「うん、美味しい。かっきーのクッキーだ〜」

 

「────」

 

「かっきーのクッキーだ〜」

 

「ふふっ、爆笑必至だね」

 

「本当にすっごく美味しいよ? ちょっと大人な感じで紅茶か……ううん、コーヒーとかが欲しくなるような味わい。わっしーのぼた餅と同じくらい美味しいけど、どこで作り方を覚えたの?」

 

「……秘密。もっと食べて大きくなれ」

 

 お袋の味でも故郷の味という訳でもない。

 前世で唯一覚えていたレシピという訳でもない。

 この世界でもどこでもない、俺だけが知っている味は、唐突に食べたくなって再現した。紆余曲折を経て作った味は少しは近づけただろうか。

 そんなことを思いながら彼女の頭を撫でると、園子は追及をやめる。

 

「いつか教えてね」

 

「……ああ」

 

 薄暗い部屋で僅かに開かれたカーテンの隙間が光源だ。

 室内は吐息と汗と、生暖かい空気で充満している。

 桜色の唇にクッキーを運び届けると指にその艶やかな唇が吸い付く。

 

 美味しそうに食べる彼女はジッと俺に目を向ける。

 何かを言いたげなその眼差しは、やがて言葉として放たれた。

 

「かっきーはその姿は嫌いなの?」

 

「それは……」

 

「私は好きだよ。大好き。またこうして会えたから分かる。見た目とか力があるとか無いとか関係ないんよ。いつだって私を想ってくれてるかっきーが私は好きだから」

 

「────」

 

「どんなかっきーだってその時の私が、過去の私が、今も、明日も、ず~っと愛してるから」

 

「────」

 

「だから泣かないで」

 

「泣いてないって」

 

「泣いてるよ~……ずっと泣いていて」

 

「────」

 

「ずっと誰かの名前を呼んでるもの」

 

 もう喋らなくていいからと、小さな唇を奪う。

 処女雪に触れるような口づけは、やがて舌が絡みつく。

 

 ──どこかコーヒーの風味がするキスだった。

 

 ちゅう、ちゅうと吸い付くように唇が肌に触れる。

 胸板と薄い胸肉を擦り合わせ、じゃれるように耳や首筋、乳首に吸い付いては甘い刺激に身をくねらせ、呻く。

 キスの雨が降る。髪に、頬に、唇に。

 俺の反応を確かめるような素振りを見せる園子の背中を撫でる。

 

「ひゃぁ!」

 

 滑らかな肌を指で撫で上げると彼女の背が跳ねた。

 あと数年もあれば、みずみずしい肉果になるだろう乳肉を揉み解す。

 掌に収まるサイズを揉みながら彼女の切なげな表情を視界に収める。

 

「ぁ……っ」

 

 小さな喘ぎ声を漏らしながらも自らの胸元に彼女は俺を抱き寄せる。

 俺もまた園子の細い腰を抱き寄せて、下腹部を重ねる。

 挿入はせず、彼女の秘部で怒張を擦らせる。

 俺の上に跨った園子は思い出すように腰を動かして、

 

「こんな感じだよね……んっ」

 

「無理しなくて良いよ」

 

「無理なんかじゃない……あ、あれ?」

 

「────」

 

「入らない……んっ……」

 

 ん、ふ、と少女の息遣いが響く。

 掴んだ肉棒を自らの秘所に宛がうも中々入らない。

 腰をくねらせて、怒張を逃がす度に熱い吐息を漏らす園子。

 色付いた陰唇は熱く濡れ、肉棒を愛液で光らせる。

 

「んん……っ……ぁ……んっ、ン」

 

 いつの間にか彼女は素股に方針を変えていた。

 恥ずかしそうに腰を動かし、彼女は赤らんだ顔で荒い呼気を漏らす。

 俺も腰を動かし吸い付く媚肉に剛直を擦らせる。

 にちにちと濡れた媚肉が竿を上下し、新鮮な蜜液がシーツに垂れた。

 

 快楽を求めた結果、揺れ動く腰。

 幼さの残る表情に確かな女を見せながら、揺れる瞳が俺を誘う。

 

 小さな肉芽が亀頭に擦れる度に確かな嬌声。

 徐々に甘く蕩けた表情に変わる少女は再度自らの腰を持ち上げる。

 

 細い指が肉竿を掴んで、自らの秘所へと先端を触れさせる。

 ゆっくりと園子の蜜肉を怒張が貫いていった。

 

「ぅ、ァ、ああっ──!!」

 

 園子が声を上げて大きく瞳を見開く。

 俺の肩に爪を立て、結合したことに喜びの涙を流す。

 

 怒張に吸い付く肉壺の締め付け。

 柔らかな唇を噛み締める彼女は繋がったまま、俺の上に倒れ込む。

 繋がることに力を使い果たしたのか、彼女は静かに耳元で囁く。

 

「……かっきー」

 

「うん?」

 

「あと、任せていい?」

 

「勿論」

 

 ぐるりと体勢を入れ替える。

 園子を下に、俺が彼女に覆い被さる形だ。

 

 サンチョの枕に彼女の頭を乗せるとジッと俺を見上げる瞳。

 揺れ動く瞳は、一瞬でも恥部から怒張を抜くことを許さない。

 その眼差しは中途半端な行為は絶対に許さないと告げていて、

 

「園ちゃん、ハグしようぜ」

 

「……ん~」

 

 強張った身体を解すように全身で抱擁する。

 やや汗ばんだ少女の身体から力が抜けるまで耳や唇にキスをする。

 ふわりとした髪の毛が頬をくすぐり、甘い香りが肺を満たす。

 

「昔……こんなことしなかった?」

 

「流石にここまでじゃなかったけど。あれだろ? 一緒にお風呂に入った時とか」

 

「一緒に洗いっこしたりとか? 楽しかったな~」

 

「よく覚えてるな」

 

「忘れないよ」

 

 園子の掌が俺の頬に添えられる。

 美女の片鱗を既に見え隠れさせる彼女の瞳は俺を見上げる。

 乳房と胸板が擦れ合い、上下に動く腹部を重ね、結合部で繋がる。

 

 髪の毛を触り合い、肌を重ねる。

 指を握り、唇を重ねて、互いの体温を確かめる。

 

 腰を動かしている訳でもないのに、不思議と快感があった。

 性行為を覚えたての学生が貪欲に求める末に得られるのではない。頭の先から爪先まで全て、余すことなく、互いのことを知っているからこそ得られる快感だ。

 ──甘い微熱が身体に熱を灯す。

 

「……動いていいよ」

 

 汗が張り付いた前髪を払いながら彼女は言った。

 此方を安堵させるような微笑を浮かべて、小首を傾げる。

 

「いくよ、園ちゃん」

 

 そっと、肌を手でなでる。

 園子の肢体は汗で僅かに濡れ、絹のように滑らかだ。

 慎ましく育ち切っていない胸は揉む俺の手を楽しませ、ふわふわな弾力を返す。

 

「ぁっ」

 

 園子が喘いだ。

 それを皮切りに、ゆっくりと腰を動かす。

 

 初々しい締まりで俺を迎え入れる膣肉。

 少女は俺の背中に手を回し、首元に顔を埋める。

 

「んぅ……っ!」

 

 ぱちん、と肉が肉を叩く音。

 苦し気な呻き声に喜悦が入り混じるのを聞きながら、一突き。

 

「あっ、ぁ、やぁぁっ」

 

 俺の腰肉を彼女の滑らかな太腿が叩く。

 いつの間にかよく濡れほぐされた膣が甘く俺を受け入れる。

 

「それっ……」

 

 激しいピストンをせずとも満足感はあった。

 ゆっくりと腰を回して未来で悦んでいた角度や位置を剛直で刺激するだけで、園子の初々しさのある反応と媚肉の感触を味わう。

 

「ぁ……それ、気持ちいい……っ」

 

 俺に覆い被さられた園子の両脚が俺の腰に回る。

 小さな身体は程良い弾力で俺を押し返しながら色付いていく。

 

「かっきぃ……」

 

 全身で密着したままゆっくりと腰を動かす。

 園子は俺の背中に手を置いて、薄闇の中で甘い声を漏らす。

 

 互いの吐息がよく聞こえる。

 互いの鼓動がよく聞こえる。

 

「ハァ、ハァ……そのちゃん……」

 

「好き……だいすき……かっきぃ……!」

 

 薄暗い部屋で聞こえるのは結合部の淫音だ。

 にゅぷにゅぷと粘膜が擦れ、互いの体液が絡み合う。

 

「ひ、ぁ……んっ!」

 

 怒張を呑み込んだ媚肉は熱く、貪欲さを増していく。

 左右の手で乳房ごと乳頭を刺激しながら、腰を突き上げる。

 

「んっ……ぁ……はっ……!」

 

 甘く爛れた少女の喘ぎ。

 密着した結合部はぬめり、新たな蜜が怒張を濡らす。

 

 男を知った女体が熱を帯び、子種を求めて蠕動する。

 長い時間をかけて、ゆっくりと動かしていた腰を一気に打ち込む。

 

「ンン~~~~っっっ!!!」

 

 視界が白く酩酊する。

 電流のような快楽が脳を震わせては瞼を閉じた。

 

 解き放った白濁は園子の膣が飲み込み、全身で抱擁する手足が俺を締め付ける。きゅうっと媚肉が締め付け、汚濁の一滴一滴に膣が敏感に反応する。

 荒い吐息を漏らす彼女を抱き締めてゆっくりと肉棒を突き上げる。

 

「はぁっ……はぁっ………ふぇ? ぁ、ぇ、出したんじゃ……!?」

 

 射精に至った怒張は僅かに柔らかくなる。

 それでも彼女の中から抜くことをせず、ゆっくりと腰を動かす。

 

「ゃ、あッ」

 

 俺は片手を陰部の肉粒に添えた。

 徐々に俺の知る女の呻きと反応を見せ始める。

 

「それっ……だめだめだめッ……ぅあッッ!」

 

 両脚を伸ばした脚がシーツに皺を作る。

 長い髪の毛に隠れた耳を甘噛みしては、陰核を弄り肉壺を穿る。

 

「ぁひっ……! ぃぅッ……!!」

 

 ぴんと爪先が立ち、背を反らせる。

 開いたままの口から涎が落ちるのを見ながら、俺は腰を動かす。

 

 少女を押し倒し、覆い被さったまま深くまで貫く。

 

「ふぁぁあっっ……!」

 

 ぶるりと肢体を揺らす園子の乳房を口に含む。

 汗に濡れた乳房は甘じょっぱく、あられもない声が響く。

 

 結合部から抜くことをせず、ゆっくりと抜き差しを続ける。

 園子の喜悦に歪む顔を見下ろしながら、ゆっくりと、ゆっくりと。

 何分でも、何十分でもスローピストンは続けることが出来た。

 

 正常位から側位、寝バックと体勢を変えながらまったりと行う。

 見た目が違っていても、やはり彼女は乃木園子で、悦ぶ体位も、悦ぶ性感帯も、全てが同じだった。助けを乞うような悲鳴を聞かせながらも身体は熱く雄を受け入れる。

 すっかり蕩けた顔になった頃に、口づけを交わした。

 淫熱に浮かされた少女は、されるがままで快楽に溺れる。

 

「あぁ~~~~ッッッ!!!」

 

 園子の腰が大きく跳ね、媚肉が収縮し俺の意識を溶かす。

 夢か現実か曖昧になるような快感に、何度目かの白濁が噴き出す。

 

「……ぁ……は」

 

 鼓動を重ね、腕を回し合って、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は俺だ。俺が加賀亮之佑だ。

 戦うことが出来なくても、見た目が幼くなっても。

 それでも俺を好きだと言ってくれる少女がいる。

  

 すやすやと眠りこける少女の裸体に毛布をかける。

 安堵したように眠る彼女との行為が、言葉が、教えてくれた。

 

 考えすぎだった。

 自分で自分を縛り付けていた。

 言ってしまえばそれだけだったのかもしれない。

 

 少女を抱いている時は心が満たされていた。

 母性に飢えていたとも、戦えない自分を肯定して肉欲で慰めて欲しかったのかもしれない。そして今は、園子を抱いたからか、不安定な精神も随分とマシになった。

 

「現金なのは俺の方だろうな」

 

 快楽の果てに得られるのは虚脱感。

 ぐっすりと眠りに耽る園子とは別に俺は目を開いたままだった。

 現実と夢の境目にいるような、曖昧な意識の中で、

 

「──人間なんてそんなものさ」

 

 独り言のつもりだった。

 誰かに言葉を返して欲しかった訳ではなかった。

 

 視界の端に映り込む白い手。

 テーブルの皿にある残っていたクッキーを摘まんでは上品に口にする誰か。

 

「──そういえば、その歳くらいの頃だったね。初めてキミと顔を合わせたのは」

 

 月明りがカーテンの隙間から差し込む。

 さく、と音を立てて菓子を口にする少女。

 

 肩まで伸びた闇夜を切り取ったような黒髪と、白磁の肌。

 曲線美を描く肢体を包み込む黒色のワンピース。

 その美貌と共に長い睫毛に縁取られた瞼は菓子を嚥下すると共に開かれる。

 

「うん、ボクほどではないが悪くない。今後も研鑽を積むといい」

 

「────」

 

 忘れもしない血紅色の瞳だった。

 鼓膜を揺さぶる声音も、見た目の美も、血紅の輝きが全てを奪う。

 

 声も出なかった。出し方を忘れてしまったようだった。

 自分は夢でも見ているのか。ついに頭がおかしくなってしまったのか。

 身体を心を魂すら硬直してしまった、そんな気分だった。

 

 ──その輝きを何度憎悪して、何度愛おしいと思っただろうか。

 

 この世のものとは思えない美少女がいた。

 身に纏う黒と白と紅は彼女の為にあるのだと、そう思わせる少女がいた。

 

  

 



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第五十一話 加賀亮之佑と初代

 夢か現実なのか。区別がつかなかった。

 薄暗い闇の中に差す一筋の光がただ一人の少女を照らす。

 

 白皙の肌に黒色の衣服。

 シンプルな装いながらも少女の美しさが心を焼く。

 絶世の美少女と語るに相応しい存在だ。出会った時から変わらない。老いることも、子供になる訳でもない、あの頃と変わらない姿で少女は佇んでいた。

 ただ一つだけ違和感があるとすれば、

 

「あの世界以外でこんな風に顔を合わせるのは新鮮だね」

 

「……っ」

 

 思うことは一緒だったのか肩を竦める少女。

 俺と目の前の少女が出会う先は現実ではない。誰も知らない指輪の世界だ。

 夜と月が支配する世界であって、この家の部屋ではなかった。

 

 彼女からの願いを果たす為に力と知恵を貸して貰う関係は誰にも語らず悟らせなかった。共犯者と呼べる関係には取り繕う必要も神経を割く必要などなかった。

 適当に皮肉を言って、格好つけて、揶揄われるような楽な関係だった。

 

 いつまでたっても無言を貫く俺に彼女は小首を傾げる。

 俺が呼び、彼女が名乗る『初代』という少女は一歩、此方に近づく。

 一歩、一歩近づいてくる彼女の背丈は頭一つ分の差があった。

 

「……久しぶりだね。ああ、言っておくけど不法侵入という訳じゃないよ。この世界でボクがキミを認識できたり出来なかったりしてどうにもならなかったけど、ずっと──」

 

「────」

 

「ずっとキミの傍にいたよ」

 

「────」

 

「大変だったね」

 

 色々なことがあった。本当にたくさんのことがあったのだ。

 此方を気遣うような言葉もリップサービスかもしれない。真実なんて分からない。

 分からないことだらけだ。子供になった頭では判断もあやふやだ。

 

「──初代」

 

 夢か現実なのか。区別がつかなかった。

 だから、勢いよく彼女の、細い、身体を抱き締める。

 

「……っ」

 

 細くて柔らかくて熱い身体が僅かに身じろぎする。

 抵抗することも突き飛ばされることもなく、背中に手を回される。

 無言で頭を触れ合わせる少女と体温を分かち合う。

 

 少し、落ち着いた。

 

「……俺は」

 

 すうう、と息を吸う。

 甘い香りだけではない、不思議な香りは心地よく脳に血を巡らせる。

 

 夢か現実なのか。区別がつかなかったけれど。

 抱きしめた柔らかさと鼓動が、俺に正解を教えてくれた。

 

 すっと言葉が出た。

 

「お前に逢いたかった」

 

「それは嬉しいが……力が欲しいからだろ?」

 

「それも……ある」

 

 否定はしなかった。

 力が欲しかった。知恵も欲しかった。足りない物は全て欲しかった。

 前世の経験や知識があって努力したからとて、ただの一般人と勇者では大きな隔たりがある。俺の浅知恵など神の前では何の影響も与えられない。

 ただの一般人に不可能なことを、当たり前のように勇者たちは覆す。

 

 だから、八つ当たりでもするかのように勇者を抱いてきた。 

 当然のように神が見初めた巫女も。麗しい少女たちを女に変えた。

 そんな暗い感情で抱かれた少女たちは、それでも変わらず接してくれてるが。

 

「力が欲しかった。足りない知恵も欲しかった」

 

 薄い生地越しに主張する豊かな双丘に埋めた顔を上げる。

 どこか退廃的な色気を漂わせる魔貌の少女。

 感情の見えない端正な小顔と髪の毛の隙間から覗く瞳に目を向ける。

 血紅色の瞳には黒色の少年を映していた。

 

「キミにはどちらも足りないね」

 

「そうだな」

 

「ボクがいないとただの一般人だね」

 

「……ああ」

 

 飾らない言葉に否定は出来ない。

 立つ腹もなく笑みを浮かべる俺の首肯に、初代は瞬きを繰り返す。

 

 無力な俺は誰かに縋って生きていくことしか出来ない。

 力もない。知恵もない。散々行使してきておいて、いざ使えなくなった途端に無力感に苛まれて生きてきたのだ。

 

『かっきーが死んだら、私許さないから』

 

 その言葉が楔となって命を繋ぎとめていた。

 ただ生きているだけの屍のようだと、そう思い続けていた。

 

『どんなかっきーだってその時の私が、過去の私が、今も、明日もず~っと愛してるから』

 

 でも、違った。

 力がなくても、知恵がなくても、俺を求めてくれる存在がいた。

 果てしない夜空に輝く星のように、今の俺を肯定し、照らしてくれる。

 

 それは園子だけじゃない。

 今まで、俺に言葉をかけた全員が、同じようなことを言ってくれた。

 

 強いも、賢いも、関係ない。

 加賀亮之佑が必要なのだと、彼女たちは態度で、言葉で、身体で、魂で示して。

 

「だからあとはお前なんだ。初代」

 

「……どうして?」

 

「力も、知恵もなくても良いんだってみんなに教えて貰った。頭のスッキリした俺がどうしたいのかを考えたら、単純にお前に逢いたいと思った」

 

「────」

 

「力も知恵も貸してくれなくても、ただ初代に逢いたかった」

 

 俺の発言に瞑目する初代は腕に力をこめる。

 ゆっくりと寝台に腰を下ろすと、初代は自身の髪に指を通す。

 

「……そう素直に言われると照れるね」

 

 視線を逸らし、どこか照れ臭そうに囁く。

 その姿に胸を高鳴りを覚えるも、茶化すような真似はしない。

 彼女に抱かれたまま、続く言葉に耳を傾ける。

 

「この世界ではボクの望みは叶わない。無駄に力を使う訳にはいかない。仮に契約をし直してもキミはただの一般人として、この世界が滅ぶのを見続けるしかない」

 

「────」

 

「キミが傍観者で良いと言うなら、そういう選択もあるだろうね」

 

「──初代」

 

「それでキミは後悔するんじゃないか? 後悔しないという誓いに反するんじゃないかい?」

 

「後悔は……」

 

 後悔ならしてきた。いっぱい、後悔した。

 口にはしなかっただけで、後悔した時は多い。

 

 それでも後悔した先で出会えた者もいる。

 素晴らしい少女たちと時間と記憶を共にしてきたのだ。

 

「この世界で若葉や千景……ひなたさんや小さい頃の園ちゃん、防人の皆にも出会えた。色々あったけど仲良くはなれたと思う」

 

「肉体関係も結べたからね」

 

「茶化すなよ。だから、後悔することはあっても、それで後悔はしないと思う」

 

「……キミも少し変わっちゃったね。沢山の女性を抱いてきたからかな?」 

 

 片目を閉じてからかうような口調の初代は指を鳴らして見せた。

 いつの間にか、少女の手の中には銃があった。

 

 拳銃だ。柔らかな少女の手に似つかわしくない黒色の自動式は見たことがある。彼女の力を借りて行使できる武器の一つだ。

 勇者たちの可憐さの欠片もない、無駄を削ぎ落した拳銃を俺の額に向ける。

 

「……本当ならこれでキミを救おうかと思った」

 

「殺して救うというのは哲学か何かで?」

 

「この世界では魂に戻るだけで実際に死ぬ訳じゃない」

 

「────」

 

「死ねば確実にこの世界から解放される。嫌ならボクが解放しようかと思ったが」

 

「────」

 

「優しさとボクからの温情で銃弾一発分だけの契約にしてあげよう」

 

「温情とは」

 

「どのみちこの世界も永くはない。いずれは終わる世界なのは間違いないから、残りの休暇も楽しむといい」

 

「……分かった。その契約でよろしく」

 

「即断即決してくれるキミは好きだよ」

 

「そうするようにいつも言っていたのは初代だろ」

 

 ふっと拳銃を掌から消した少女に目を向ける。

 話は終わったとばかりに菓子を手にする少女の色白の肌が月光に照らす姿を目にしながら、ふと思い出したことを呟く。

 

「そもそも……なんで今頃出てきたんだ?」

 

「ああ、それはキミが勇者や巫女を抱いて、その精神を僅かながら狂わせた事がきっかけかな」

 

「え」

 

 ふんす、と鼻息荒く語り始める少女。

 生前は優秀な頭脳で神学や呪術なども修めていたのだろう。ペラペラ、ペラペラと噛むことなく述べられる専門用語も含めた言葉の数々に幼くなった頭を回す。

 

「──つまり処女性も神聖性も損ねた勇者や巫女に反感を抱く神もいる。ボクはこういう力を研究して使ってきたから神に嫌われていたのだけど、神樹も周囲の神とのいざこざによって生まれた隙間からこうしてキミとの再接続に成功したということさ」

 

「なるほど」

 

「キミ自体の行動は小さいが、その影響が少しずつ他に影響を与え、そして神をも動かし、ボクを呼び出した。これは凄いことだよ」

 

 そんな風に言われると心がくすぐられる気がした。

 幼くなったことで精神まで変質してしまっているのか。

 頭の中まで軽くなってしまったかもしれない。

 

「流石は俺ってところか」

 

「そして流石はボクというところだ」

 

 ゆっくりとしなだれかかる彼女の重さに、俺は倒れ込む。

 柔らかな寝台、広がるシーツの上に寝転がる幼気な子供を見下ろす魔女。

 

「それでずっと見ていたんだが……キミ調子に乗ってないか?」

 

「ほう?」

 

「あれだけの少女を抱いて従えてハーレム気取り。見ている側としては思うところがあるな」

 

 確かにハーレムは男の夢である。

 両手に女を侍らせ、股に女の顔を突っ込ませることを夢見ていた身としては、実際に味わってみると苦労もある。

 調整をミスすると複数人に抵抗も出来ずに襲われるのだ。

 そして、女性というのは色々と察する力が強く、誰が誰と関係を結んだのか、それを踏まえて関係性の再構築や機嫌を取ったりと、勇者部内で男一人の身としては色々と心苦しくなる。

 

 夢と現実は違った。

 そんなことを声高に主張しようとするも、言葉を喉に詰まらせた。

 

 クツクツと笑う彼女は自らの衣類に触れていた。

 瞬く間に消失した黒いワンピースから覗くのは純白の肌だ。

 

 黒い布地の下には何も身に着けてはいなかった。

 鎖骨も、豊満な双丘も、色素の薄い先端も、臍から細い腰肉と薄い恥毛が隠せぬ秘所も、月光だけが静かに白い女体を照らし出す。

 柔らかく、滑らかな肌を隠すこともせずに俺を見下ろす。

 

 俺もまたその裸体を目を逸らすことなく見続ける。

 眼球に焼き付けつつも、しかし赤面などはせず、俺の反応に初代は目を細める。

 

「思うところって?」

 

「……とぼけるなよ。どれだけ器用さを磨いても最初から女を喘がせられる訳じゃない。そんな技術を誰に教えて貰ったのか。ちょっと離れただけで忘れたのかな?」

 

「誰だっけ?」

 

「そうか……残念だ。精神的にキミを男にしたのは誰だったのか思い出させてあげよう」

 

 一人で本を見て出来ることならともかく、相手がいないと出来ない事はどうにもならない。

 

「童貞を捨てたいと言っていたのは誰だったのか……女を喘がせたいと……」

 

「ああ……ああ、思い出した! この身体になってから物忘れが酷くてさ」

 

 健全な身体には健全な精神も、性欲も宿る。

 そして常日頃から一緒にいる相手には何もかもを知られている。

 

 いつそんな関係になったかは思い出したくはない。

 揶揄われて、誘いに乗って、色々あって、精神的に大人になった。

 肉体に反映される訳ではないので、最初は慣れるのに時間がかかったけど。

 

 にじり寄る少女が動く度にベッドが僅かに軋む。

 迫り来る黒い少女の近くで、僅かに金髪の少女が身じろぐ。

 

「ほら、園ちゃんもいるし……」

 

「声くらい我慢出来るだろ? ……思うんだ。ボクが授けた技術で他の少女が喘いでいる姿を見ていると」

 

「興奮した?」

 

「なんとなく苛立つ」

 

 小柄な身体では逃げることなど叶わない。 

 否、眼前の一糸まとわぬ美少女を前にして逃れる必要があるだろうか。

 

 柔らかな寝台に背中を預け、眠りこけている金髪の少女の近くで黒髪の少女に覆い被さられる。

 腹部が、脚が重なる。初代と目が合う。

 しっとりとした柔らかい肉果が俺の手の上でこぼれる。

 狩人は誰なのか。少女らしからぬ艶美な舌なめずり。

 

「──少し眩しいね」

 

 僅かな月明りすらカーテンが閉められ、本当の闇夜が広がった。

 

 

 

 

 

 

 ぴくりと俺は瞼を震わせて目を開く。

 ドアが開いた音、客人が入ってきた気配に身体を起こした。

 

「むにゃむにゃ……」

 

 寝言を漏らす園子は変わらず可愛らしい寝顔を見せていた。

 倦怠感を感じながらも、俺は彼女の耳元に囁く。

 

「園ちゃん。昨日も今日も明日の俺も園ちゃんのことを愛してるよ」

 

「むふ~……」

 

 ちゅっと頬に口づけをして寝台から立ち上がる。

 サンチョ枕と毛布に包み込まれた園子を置いて、周囲を見渡す。

 初代はいなかった。影も形もなかった。 

 

 夢か現実か。その事について考えるよりも身体が動いた。 

 客人は合鍵を持っているにも関わらず、律儀にも玄関で待っていた。

 

「りょーちゃん!」

 

「おはよ~だぜ」

 

「おはよう亮くん」

 

 可憐な笑顔を見せる少女たち。

 親愛と友愛を感じさせる笑みを見せる彼女たちはこの家によく来る。手土産というよりも朝ご飯を一緒に食べようというのか、手荷物が多い。

 

「私がお世話になったからね~。お礼をしないとだ」

 

 園子(小)へのお礼だと園子(中)が呟く。

 不思議な発言だが意味は理解できるので首肯だけ返す。

 

「おっきくなってる!」

 

 心に不純物を抱えてそうな人なら勘違いしそうな発言をする友奈はグルグルと俺の回りを歩いては、最終的に抱擁と共にくんくんと匂いを嗅ぐ。

 まるで犬のような挙動をする友奈に慈母の笑みを見せる東郷が口を開く。

 

「元に戻ったのね、亮くん」

 

「ん? 本当だ……」

 

 言われて気づいた。

 身体の大きさが元に戻っていた。

 

 最悪ずっと小さい状態という可能性も考えていたが、そこまで世界は冷たくはなかったらしい。概ね他の少女たちが小さくなっていた期間より多少長かった程度か。

 もしくは昨夜の出来事が原因なのだろうかと頭を回す俺に、

 

「今気づいたの? もしかして寝ぼけてる?」

 

 喜びと共にどこか残念そうな顔を東郷は見せる。

 東郷は唇を湿らせ、深緑の瞳で俺の頭から爪先まで見ながら──、

 

「それで、後ろの方について説明して貰える?」

 

「────」

 

 背後を振り返ると、黒髪を濡らした少女がいた。

 シャワーでも浴びていたのか、浴室のドアを閉める彼女は貸した覚えのないワイシャツを身に着けていた。男の欲望を理解しているような恰好で、シャツから伸ばした白い脚を動かす。

 

「ん?」

 

「わわっ、美人さんだ」

 

「……誰?」

 

「ふーん。私分かっちゃったかも……」

 

 背後に向けていた視線を元に戻す。

 女特有の嗅覚なのか瞳からハイライトを消した少女たちがいた。

 

「かっきーのそっちの評価は高いと思う?」

 

「確かにあんなことやこんなこと、あること無いこと噂されたりするが、それでも普段からちゃんと紳士をしているから浮気とかそういうアレじゃないから」

 

 そうしている間にも背後から少女が無言でやってくる。

 思わず身構える少女たちに対して余裕のある言動を見せる黒い少女。

 

「やあ」

 

「あ、……おはようございます」

 

「失礼ですが亮くんとはどんな関係ですか?」

 

 親し気な挨拶に思わず敬語を返す友奈に代わり、東郷が攻め込む。

 躊躇うことも空気を読むこともせず、果敢に進む姿は眩しい。

 

 寝起きであったからか頭が回らない。

 昨夜の出来事が現実ならば、搾られてしまったのは脳味噌もではないのかと現実逃避を始めようとする俺を他所に、東郷からの問い掛けに初代は深紅色の瞳で見つめ返す。

 

「関係か……」

 

 顎に指をおき、可愛らしく小首を傾げる初代。

 その聡明な頭脳は既に現状を理解しているのだろう、チラリと目を俺に向ける。

 今更ながら彼女との身長の差が無くなったことで元の大きさに戻れたことを実感しながら、彼女が現状を変えてくれることを祈って、

 

「ボクと彼の関係は……」

 

 共犯者だと彼女は口にしなかった。

 言葉ではなく、行動で少女は関係を示した。

 

 唇が重なった。

 

 一瞬の出来事に誰も動くことは出来なかった。

 硬直する少女たちの前で、柔らかな唇を俺は味わう。

 

「こういう関係だ。──ボクが一番彼のことを知っている」

 

 やがて、触れた唇を離して彼女はそう宣言した。

 不敵な笑みと共に、首からチェーンで下げた指輪が微かに熱を帯びた。

 

「────」

 

 いつか彼女たちが出会う日がきたらどうなるのだろうかと空想したことがある。

 友奈や園子が初代に出会ったらどんな反応をするだろうかと。

 

 現実的に会うことなど無いと思っていたが、この世界なら可能らしい。

 それにしても、もう少し良い出会い方というのはなかったのか。

 

 玄関に置かれた小さな鏡。

 それに目を向ける少年の血紅色の瞳が窓越しに空を見上げる。

 

 ──心地の良い晴天がどこまでも広がって見えた。

 

 

 




ここまでお読み頂きありがとうございました。
一区切りつきましたので花結い 終わらぬ空編 おわりです。
合計100話突破しましたのは読者の皆様のお陰です。
気が向いたら今後は蛇足番外編として書くかリクエストなど書いてみたいと思います

あとで話と関係あったりなかったりするあとがき書くかもです


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番外蛇足編
【番外】ウサギの夢


感想・誤字報告・評価ありがとうございます。励みになってます。


 吸って、吐いて、肺に空気を取り込んで。

 生暖かい空気を吐き出しては、周囲を見渡す。

 

「学校か」

 

 讃州中学校。見覚えのある場所にいた。

 日々勉学に勤しみ、宿題面倒くさいねと言い合い、昨日見たSNSの内容を友人と語り合い、気になるあの子とイチャイチャして、早く大人になりたいと漠然と考える現実を知らない若人たちが通っている場所だ。

 人生二週目であっても通わざるを得ない学校である。

 もう始業式から修了式までのセットを何回行っただろうか。

 

 ふとした時に考えては憂鬱になりそうな頭を振る。

 周囲を見渡すと目に映るのは変わらぬ校舎。まるで今この瞬間から意識が始まったかのように、少し前に自分が何をしていたのか曖昧な状態で、立ち止まった廊下からは陽光が窓から差す。

 暑くもなく寒くもない、そんな季節であるのを肌で感じた。

 そんな風に物思いに耽る俺に声を掛けてくるクラスメイトたち。

 

「あっ、おはよう亮さん!」

 

「おはよう加賀くん!」

 

 学校である以上、俺以外にも生徒は多数いる。

 無論、勇者部の見目麗しい少女だけではない。顔面偏差値の高いクラスメイトや、オタク趣味を隠しながらも日々努力し続ける顔面偏差値の高い友人たち。高い声、低い声、可愛らしい声が挨拶を送ってくれる。その一つ一つに丁寧に返す。

 挨拶は勇者部五箇条にも書かれている程に重要な行為だ。

 社会人、前世でも重要な基礎的なスキルなのだ。

 

「おはよー」

 

 笑顔で挨拶を返しながら、クラスメイトや後輩たちに目を向ける。

 何故か彼ら彼女らは、一人残らず笑顔で露出の高いコスプレで登校してきた。

 

 ──誰もが『逆バニー』と呼ばれている衣装に身を包んでいた。

 

「うーん。タマげたな!」

 

 西暦時代のワンパク勇者ではないが、口にしてしまうのも無理はないだろう。

 セクシーな衣装として有名なバニースーツはご存じだろうか。肩紐のないハイレグタイプのレオタードと兎耳のヘアバンド、カフス、襟付きの蝶ネクタイという恰好だ。布地は股間から胸元まで、肩や腕、脚は露出することになり、男の目を惹く古き良き衣装だ。

 逆バニーはその真逆で肩や腕、脚は布地やタイツで覆われている一方、股間から胸元まで全てが丸出しとなる。全てだ。下品と言えば下品だが、最初に考えた人は天才だと思う。

 思わず自分の頬を思いっきりビンタしてみて現実かどうかを疑うくらいには素晴らしいと思う。

 

「みんな、その恰好についてどう思う?」

 

「どうって……制服だなって」

 

「……そっか。良いよね制服って。今しか着られないから」

 

 ──今度は世界に置き去りにされてしまったのかもしれない。

 『逆バニーが当たり前の学校に転生したが興奮してももう遅い』という世界への異世界転生を疑ってみたが、そんな簡単に転生などしないだろう。そんな簡単にトラックに轢かれてたまるか。

 明らかに異常事態だと理解しながら、俺は現状に対して指を鳴らして結論づけた。

 

「これはアレだ。夢オチのパターンだな」

 

 だって、世界はそんなに俺に優しい訳がないのだから。

 嫌な確信を得ながらも、もしくは日々頑張っている俺に対してどこかの神様が恵みをもたらしたのかとも思う。そんな神が中立神の中にいたのならその神に魂を売りかねないだろう。

 もしくはエッチな方面でのバーテックスの襲撃の可能性も考えられるが、わざわざそんな回りくどい真似をする必要があるのだろうか。常識改変が可能ならば殆ど確定で敗北は必須だろう。前座として勇者にグヘヘな展開をするつもりなら混ぜて欲しい。

 ──という訳で夢なのだろうと考えて、俺は肩の力を抜くことにした。

 

「メイドビキニ……神樹の恵み……うっ、頭が……ちょっと失礼」

 

「ええっ!? だ、大丈夫?」

 

「ほら朝って眠いから目覚ましに。ところでもう少しキミのことを見ていて良いかな? ──うん、ありがとう」

 

 真顔で己にビンタをする俺を不思議な目で見つめるクラスメイトの女子たちの頭から爪先までを一人残らず確認する。乳房の大きさから乳輪の色、肉付きから陰毛の生え広がり、秘所の色まで、年頃の少女が秘めていたいであろう箇所に目を向ける。

 誰一人隠すこともせず、そのことに違和感を覚えてないことを確認する。

 友人はいるが男には目を向けない。衣装について男女平等にする必要は感じなかったから。

 念のためにとみんなで笑顔のダブルピースで写真を撮り終えると、感謝の意を示しながら教室を出た俺は部室に脚を進めた。

 なんとなく誰かはいるだろうという勘は当たった。

 

「あら? カガフレッドじゃありませんの?」

 

「第一勇者発見」

 

 村人ならぬ勇者に遭遇した。

 白い丸テーブルに同色の椅子。狭い勇者部部室にそれらを持ってきてティータイムを開こうとしていたのだろうか、手伝っただろう勇者たちが数人ほど椅子に座り談笑していた。

 弥勒夕海子、郡千景、犬吠埼風の一歳年上の少女たちだ。

 いずれも自身のあられもない状況に疑問も抱かず、カツオのたたきを口にしている。

 恐らくは夕海子が家庭科室か寄宿舎で作ったのだろうソレを風が貪り食う。

 

「うーん、なんか違うんだよな」

 

「あら? カツオはお嫌いですの?」

 

「いや、乳を出しても恥ずかしがらないと慣れてきそうで」

 

「相変わらず何を言っているんだか……。確かにお茶会でカツオのたたきはどうかと思うけど……加賀くんの分もあるわよ。一緒にどう?」

 

「早く食べないとアタシが食べちゃうわよ~? 女子力の高い女に胃袋の限界が無いってこと見せてやるわよ!」

 

 年上の少女だけの集まりに歓迎されながら椅子に座る。

 口数少ない千景も、頬一杯に頬張る風も、優雅に紅茶のカップを傾ける夕海子も、逆バニーの姿であるにも関わらず自然体だ。視界に異常があるのではないのかと風の腹部を摘まんでみる。

 むにっと柔らかい感触の代償に無言の腹パンを貰った俺は無言でテーブルに顔を伏せた。

 

「乙女のお腹になに触ってんのよ!」

 

「うごごご……」

 

「何してるのよ……犬吠埼さんのお腹を摘まむなんて……」

 

「ハア!? 摘まめるほどある訳ないでしょ!」

 

「だって……」

 

「だっても何もないでしょう?」

 

 乳房を放り出している少女が腹を摘ままれて顔を赤くするとは思わないだろう。少女特有の繊細な感情によるものなのか、掃除機のようにカツオを咀嚼していく風を横目に見ていると、目の前にカツオが一切れ差し出される。

 

「まったくカガフレッドは……あれほど女心と秋の空と言いましたのに。大体わたくしの茶会に入っておきながら一口も食べないなんて執事らしからぬ行為ですわよ」

 

「その言葉ってこういう風に使うんだっけ? ならお嬢様が食べさせて下さい」

 

「カガフレッドは甘えん坊ですわね。しょうがないですわね。この弥勒夕海子自らが食べさせてあげましょう。光栄に思うと良いですわ」

 

 茶会の主自らが箸で差し出した新鮮なカツオのたたきを口にする。

 ゆっくりと咀嚼し一息入れる俺を見る千景がボソリと呟く。

 

「二人はどういう関係なの?」

 

「そうですわね……余所の家の執事がときおり弥勒家に応援に来てくれる。……そう、最初はあのクッキーから、カガフレッドが作ってくれた菓子からわたくしとの関係が始まったのですわ」

 

 懐かしいですわね、と遠い目で虚空を見る夕海子。

 彼女の脳裏には当時の記憶が蘇っているのか、箸を止める夕海子から千景に目を移す。

 ゲームではなく箸を手に取る黒髪の少女は俺の視線に気づく。食べさせて、と上目遣いをすると気持ち悪いモノを見たような顔をしながら、箸でカツオのたたきを突き出すように差し出す。

 

「当時アルフレッドの仕事がお休みでわたくしが一人であった時……園子さんの執事であった亮之佑さん、いえカガフレッドにお茶会の手伝いをして貰いましたの」

 

「……美味しい? 加賀くん」

 

「おいちー! 千景先輩に食べさせて貰えるとよりおいちー!!」

 

「……気持ち悪いから止めて」

 

「あの、わたくしの話を聞いてますの? ここから涙あり笑いありの冒険譚に繋がるんですの」

 

「え、ええ……聞いてるわ。B級映画みたいな話?」

 

「映画にありがちな執事とお嬢様の濡れ場もあるよ」

 

「濡れ……ッ!」

 

「要するに色々あって、確か事あるごとに亮之佑を執事認定してパシってるってだけでしょ? 千景が嫉妬するほどの話じゃないわよ」

 

「別に嫉妬しているとかじゃ……!」

 

 美少女に食べさせて貰いながら小腹を満たす。

 そもそも、何故部室でカツオのたたきを食べているのかは些事でしかない。

 

 ややポッコリとした腹を撫でる風がニヤリと笑みを見せながら千景を揶揄い、虚飾の令嬢は聴衆の有無にかかわらず楽し気に余所の執事との馴れ初めを語らい続ける。

 脚本に過剰な演出が加わり原型のない話だったが、俺と夕海子の関係は特別ではない。防人組である亜耶から夏凜と繋がる形でリーダーである芽吹を経由する形で知り合った。

 そこからはゆっくりと彼女のポンコツな所も良い所も知っていっただけ。それだけだ。

 

「千景が人の過去に興味を抱くなんて、あの頃からは変わったわね。もちろん良い意味でよ」

 

「犬吠埼さん……」

 

 勇者部部長は伊達ではない。

 どれだけの個性豊かな少女たちを束ねてきたのか。暴食暴飲もその過程で発生する無意識のストレスの解消なのかもしれないと思うと、愛おしいとすら感じる。

 単純に食べるのが好きなだけなのかもしれないが。

 風の言葉一つに僅かに俯く千景のタイツに包まれた腿を撫でる。

 

「……加賀くん?」

 

「触らせて」

 

「……好きにしたら」

 

 太くはないが柔らかい腿肉は黒色の化学繊維に包まれている。

 爪が引っ掛かれば容易く裂けるだろう、柔らかなタイツに包まれた脚の付け根に手を伸ばすとピクリと身体を震わせる千景は大きな瞳で俺を見る。何かを言いたげな唇を彼女たちの目の前で塞ぐと、千景の身体に熱を帯びていく。

 奥ゆかしいいつもの彼女に公衆の面前で行えば、恥ずかしがって突き飛ばす場面だ。それが今はどうだろうか。あっという間に蕩けた表情で唇を重ねて男に肌を触れさせてる。

 

「──んむっ、ぷ……ん。もっと触って……」

 

「どこを?」

 

「……言わせないでよ、変態。……ここ、よ」

 

 慎ましい千景の胸肉を掌で揉みながら彼女たちを観察する。

 怒張を柔らかい掌で包む発情した千景、エロを肴に残りのカツオを平らげた風と、誰も聞いてない話を口にし続けた夕海子がジッと俺に目を向けては口を開いた。

 

「積極的ですわね」

 

「何よ亮之佑。欲求不満なら早く言いなさいよ。可愛い後輩のために一枚脱いであげるわ」

 

「まったく、しょうがないですわね。風さんはシたいだけじゃないですの?」

 

「え~……バレちゃった?」

 

 一枚脱いだら全裸確定のほぼ全裸の少女たちが椅子から立ち、近づいてくる。

 部室での行為への不快感を露わにする訳でも、突然千景とキスをして激しいスキンシップをしたことへの苦言でもない。 

 男女の営みが当然であり、そのことに何ら疑問を抱いてないような口調だ。

 

 食欲の次は性欲か。

 自然と反り立つ肉棒に揶揄の目を向けながらも風は俺の股の間に屈み込む。何ら躊躇うことなく先端を口に含んでは、一度離して豊かな双丘で挟み込む。

 

「ほれほれ~、こういうのが好きじゃろ?」

 

「執事を労うのも弥勒の務め。さあ、わたくしのパーフェクトボディを好きにすると良いですわ!」

 

 ニヤニヤと笑みを見せながら積極的に自らの身体で奉仕する風。

 当たり前だと言わんばかりに自らの乳房を俺の顔に押し当てる夕海子。

 

 形や柔らかさの異なる豊かな双丘を顔と怒張で味わいながら、左右の千景と夕海子の秘所に指を挿入する。ショーツなどの隠す物などなく晒される陰毛を撫で、濡れた媚肉がそれぞれ指に吸い付いては蜜をこぼす。

 硬度を増す乳首を肌に擦らせて切なげに吐息をこぼす彼女らの恥部を、指でかき混ぜるように抽送を繰り返す。

 太腿が震え、床に雫を垂らして、最初に崩れ落ちたのは夕海子だった。

 

「ぁッ……ィく……っ!!」

 

 挿入した指から逃れるように小刻みに震える腰を引かせる。

 そのまま膝から座り込む夕海子に続いて、俺に抱き着くように千景が倒れ込む。

 

「……ッッ!! ~~~ぁぁっ!!」

 

 腰を逃がすことはせず俺の肩を掴んだ千景は絶頂に震える。

 きゅうっと膣襞が指を締め付け、結合部からは新鮮な蜜液が腿を伝う。長い黒髪を垂れ下げたまま虚ろな目をした千景は口端から涎が垂れるのも構わず余韻に浸る。

 やがて、何かを言うまでもなく彼女らは肉竿や陰嚢に舌を這わせ奉仕を続ける。

 むわりと周囲に淫臭を漂わせて雌の顔を見せる彼女らを前に、さてどうしようかと思考していると、ガラリと背後の扉が開いてひなたが入ってきた。

 

「……こんにちは。愉しそうですね」

 

「ひなたさん」

 

 巫女である上里ひなた。彼女なら或いは。

 僅かながら希望が差したかと思ったが、続く言葉で気のせいだったと悟った。

 

「──私も混ぜて頂けますか?」

 

「んむっ……ほら見てひなた。アタシの舌テクでこんなになったのよ」

 

「まあ、それは凄いですね。流石風さん!」

 

「これが女子力よ」

 

 口腔奉仕で反り立った怒張が風の頬を叩く。

 血管が浮き出るほどに硬くなった肉竿に視線が刺さる中、風の言葉に両手を叩く巫女の背後から続々と若葉や高嶋、夏凜や芽吹といった少女たちが部室に入ってくる。

 彼女らはいずれも逆バニーの姿で、上から下まで隠すことなく平然としていた。

 その姿に絶望を感じるも俺は屈することなく話しかける。

 

「ひなたさん」

 

「どうしましたか? 亮之佑さん」

 

「何か変だと思わない?」

 

「変……ですか?」

 

 可愛らしく小首を傾げる巫女。

 ふるりと豊満な乳房を揺らす彼女は形の良い眉をひそめるも正解には至らない。

 

「例えばどういった事が変とかありますか?」

 

「ほら、この状況とか」

 

「……変ですか? ……若葉ちゃんは何か思い至りますか?」

 

「いや? 強いて言えば弥勒さんのカツオパーティーとかだろうか?」

 

「どういう意味ですの!?」

 

 確かに部室で行為に至ることは決して珍しいことではない。だがここまで堂々とすることはない。隠れながらする方がスリルはあるし、秘密を分かち合う快感があったのだ。

 それが今はどうだろうか。誰もかれもが平然と部室での行為を当たり前だと思っているのだ。

 都合の良い夢だと言えばそれまでだろう。

 ただ、違うのだ。これが俺の作った夢ならば、そうではない筈だ。

 

「どれだけ裸よりも恥ずかしい恰好をしていても、恥ずかしがらない姿はエロさが半減してしまうんだよ。恥じらう姿が無くて堂々とされるとなんか……悲しい」

 

「はあ……」

 

「その割には勃起しているじゃないか」

 

「若葉だってそのつもりがないのにエッチなことをされたら濡れるだろ?」

 

「ぬ、濡れるとか言うなあ!」

 

 俺を囲むようにあられもない姿をしたバニーたちが並び立つ。いずれも平然とした様子で乳房を隠すことも恥部を隠すこともせず、恥ずかしがることもしない。それが不満だった。

 これでは少し特殊なプレイをしているだけではないか。

 男子の少し難しい精神的な事情だ。思いの丈を語った後には少女の困り顔が残った。

 

「その……少し考え過ぎではないのでしょうか?」

 

「ひなたさん?」

 

「おかしいことなんて何もありませんよ。特に神託があった訳でもありません。今日も一日平和で……そして亮之佑さんから子種を頂く。いつもの毎日です」

 

「ほう」

 

 何やらおかしなことを平然と告げる巫女に、俺は眉を顰める。

 なんて都合が良いのだ。最高ではないか。どこかの神が遂に俺に忖度してくれたのか。

 そもそも考え過ぎだっただけなのか。

 頭がグルグルと回転を始める中で、明確な答えを導き出すように慈愛の笑みを見せるひなたは、俺の目の前にまで来ると優しく触れる程度の口づけを唇にする。

 そのままおもむろに部室の床に仰向けで寝転がると、

 

「どうかあまり考え過ぎずに」

 

 長い黒髪が床に散り、豊満な乳房が横に広がる。

 肉付きの良い脚を大きく広げて、自らの手で恥部を開いて見せた。

 

「私にお慈悲を」

 

 白磁の頬に薄く朱色を差し、妖艶な笑みで男を誘う巫女は子種をせびる。

 これのどこが巫女なのか。娼婦と言っても間違いではないだろう淫靡な雰囲気を醸し出す女の恥部は自ら慰めていたのか、よほど雄が欲しいのか透明な愛液が大陰唇からとろりと垂れる。

 やや濃いめの陰毛から覗く媚肉から漂う雌臭に、雄竿から先走り汁が彼女の下腹部に落ちた。

 は、あ、と汚濁一滴で熱い吐息を漏らす彼女は両手を広げて、男を誘う。

 

「ぁ、ぁぁああっ……ッッ!!」

 

 誘いに乗って彼女を抱く。

 抱き心地の良い身体に覆い被さり、彼女の最奥まで腰を落とす。ぬぷぷ、と媚肉を割り開く感覚と挿入と同時に蠕動する膣襞が怒張に吸い付く。

 

「ぃ、ぅ~~~ッ!!」

 

 唇から舌を垂らし、だらしない顔で法悦に上ったひなた。

 彼女の身体が小刻みに震えるのを気にせず、俺は物を扱うように腰を叩きつける。背を反らし素直に快楽を享受するひなたの気持ち良い場所を雁で擦る度に腰に回った腿が締め付ける。

 全身で雄竿に、性行為に悦びを露わにする逆バニー巫女だったが、

 

「ぁひ!? ……ぁ、ぁれ、ここは」

 

 一突き。

 ぷるりと揺れ動く乳房を硬度を帯びた乳首ごと吸い付くと嬌声をこぼす。

 

「ぁッ! ンンッ……あ、あの、なんでこんな……ふぁぁっ!!?」

 

 大きな瞳に涙を浮かべ瞬きを繰り返すひなた。

 肉竿を呑み込みながら、周囲に顔を向けて表情を変えていく。

 

「部室? えっ、皆さんその恰好……!?」

 

 焦燥、驚愕、羞恥、喜悦。

 掌に余るまろやかな乳房を揉みながら、彼女の体温が上昇していくのを肌で感じ取る。その彼女の表情に何かが満たされるのを感じながら腰を揺する。

 

「いやッ! ぁっ、ま、待って下さっ……ふっ、ぅぅん!!」

 

「待たない! オラッ、恥じらうんだよ! そんな男を誘うような恰好しやがって」

 

「誘って、んん、なんか……ぁぁッ!! せめて人のいない場所でぁぁん!!」

 

「エッチな身体しやがって! ひなたさんが悪いんだから責任取れ! イけ! 孕め!」

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 ぱんぱんと肉が肉を叩く音と共に結合部で淫液が絡む下品な水音が部室に響く。

 咄嗟に絶頂から逃れようとするひなたは俺の胸板に腕を伸ばして逃げようとするが、肉棒の貫かれた非力な少女の力では退かすことなど叶わない。

 真っ赤な顔で背中をのけ反らせる巫女は、その両腕を周囲の勇者に掴まれる。

 

「ほら駄目よ上里さん。加賀くんが困ってるでしょ?」

 

「千景さん!?」

 

「気持ち良いなら我慢しない方が良いよ、ヒナちゃん」

 

「友奈さん!?」

 

「ちゃんとみんなで見ていてあげるから」

 

「……! いやッ! 見ないで!! ゃぁっ、ぁぁぁっっ!!?」

 

 勇者部のみんなにあられもない姿を見られる。

 学校の生徒たちに見られながらではないだけ良かったのか。意識が変質したのか、部員の中で唯一恥ずかしがりながら喘がされ絶頂に達するひなたをみんなで見下ろす。

 普段の大人びた姿はどこにもなく、幼い悲鳴を上げる巫女。

 

 腕を押さえられ揺れる乳房。

 ばたつく脚と共に抽送の度に水音を奏でる。

 嫌々と首を振って長い髪を揺らすひなたの顔は赤らみ、汗と涙で汚れる。

 

「……このまま廊下に出てみる? 体調悪いようだから他の子にも見てもらう?」

 

「やめて下さい! そんなのっ……」

 

「でもさっきまでその胸も陰毛も全部同級生や先輩後輩、先生に笑顔で見せながら学校にいたんだよ?」

 

「え……」

 

「どうしたのヒナちゃん。制服がどうかしたの?」

 

「制服……っ、ぁ、腰、動くのやめっ……」

 

「さっきから締め付けが酷くて腰が止まらないんですよ。ひなたさんの所為ですよ」

 

「ちがっ、別に私は……若葉ちゃん!?」

 

 パシャっという音が耳朶に響く。

 二人で目を向けると、スマホを向けていた若葉が可愛らしい笑みを見せる。驚愕と羞恥の色濃い表情にカメラを向ける彼女は悪戯心が芽生えたのか、親友の痴態を撮った画像を見せる。

 幸いにも胸板と双丘が潰れるほど密着しており、彼女の表情がメインの画像だったが、

 

「ふふっ……ひなたもこんな顔をするんな。身体は素直という奴か」

 

「……若葉ちゃん。その画像を今すぐ消さないと後でゃんっ、ぁ、ぁぁっ……!」

 

「後でどうしたんだ? もっと撮れば良いんだな」

 

「若葉。写真よりもちゃんと動画で撮るのよ。声もあればエロいわよ」

 

「なるほど、流石風さんだ。ひなた、もっとエロい声を聞かせてくれ。頑張れ亮之佑!」

 

 嬉々としてカメラマンをする若葉。

 撮影に協力する周囲の女子と、ひなたの親友に応援を貰った俺もまた密着していた上体を起こす。柔らかい腰肉を掴んでは彼女の身体の全貌がカメラに映るようにする。

 乳首のみを的確に弄る少女たち。俺の背中に乳房を押し付ける高嶋は邪魔をしない程度にとひなたの生え揃った恥毛に覗く陰核を指で弄る。

 夏凜や芽吹は何が楽しいのか俺の耳や乳首を弄っては無言で射精を促す。

 

「ぁ、ぁ……! ィく──ぅ!!」

 

 俺もまた射精衝動に導かれるままにピストンを加速する。

 腰を浮かせて鼠径部を叩きつける度にひなたの尻肉が揺れ動く。

 

「ぁっ! ぁぁああっっ!!」

 

 汗と甘い体臭を巻き散らすバニー巫女は言葉少なく喘がされる。 

 背中を反らせ腰を浮かせる彼女の結合部からは潮が噴きひなた自身を濡らす中で、俺は衝動を放った。痙攣する肉体の最奥に肉棒を押し付けて白濁を注ぎこむ快感に目を閉じる。

 一滴残らずひなたの膣襞一枚一枚に刷り込むような感覚。

 高鳴る鼓動を抑えながら、肉棒を引き抜くと逆流した汚濁が愛液と共に床に垂れ落ちた。

 

「はぁー……ぁぁ……」

 

 掴まれていた腕を床に置き荒い呼気を繰り返す巫女。

 震える身体を起こそうとして失敗する彼女を抱き起すと、涙に濡れた瞳に光が灯る。

 

「……説明をして頂けますか? 亮之佑さん」

 

 明らかに正気な顔をしていた。明らかに怒っていた。

 慧眼は確かにこちらも同じ状態であることを察し、胸元を腕で隠し半眼で俺を見る。

 

「なんでこんな恰好をして……皆さんも誰も疑問に思わない。これは……」

 

 性行為に及びながらも頭を回す余裕があったらしい。

 そんな姿に心配に思ったのだろう。乳房を押し付け髪の毛が肌に触れるほどに近づく若葉がひなたを見ながら周囲のみんなに告げる。

 

「今日のひなたは一筋縄ではいかないようだから、もう一度してはどうだろうか?」

 

「さんせー!」

 

「ぁ、ぇ……」

 

  

 

 

 

 

 背面駅弁で、撞木反りの体位で、巫女の身体をみんなで好き放題にした。

 巫女の必死の抵抗に笑みを見せつつも羞恥に揺れる彼女をみんなで愉しむ。正常が異常で、異常が正常なのだということを、彼女の聡明な頭脳と身体が理解するのに時間は掛からなかった。

 全身から芳香を漂わせながら、怒る気力も無くしたひなたは全身を俺に預ける。首筋に頭を置く彼女は天井を見上げながら遠い目で俺の知る話を耳にした。

 

「……そういうことですか」

 

 腰砕けになったひなたはされるがままだった。

 腹部や乳房を撫でられ、恥毛を弄られながら、俺の言葉に耳を傾ける。秘所から垂れる白濁は啜って綺麗にすることに疑問を抱かない親友に目を向ける。

 

「ぁっ、若葉ちゃん……そこを弄られると濡れちゃうので」

 

「ああ、凄く綺麗だったからな。見惚れてたんだ」

 

「そんな風に言っても撮った物は消しますからね」

 

「ん? 何故だ。こんなに美しいんだ、きっとみんなも喜ぶぞ」

 

「……もういいです」

 

 どこか拗ねたように告げるひなたは、俺という肉椅子に身体を預ける。

 先ほど一緒に廊下まで出て現状を把握し、羞恥心を振り切った巫女は小さく唸りながら、

 

「……恐らく明晰夢か、他の神による仕業かは分かりません。ただ私が目覚めたのは亮之佑さんとの……その……シている最中、特に……」

 

「イっちゃった時?」

 

「……確証はないです。もしかしたら夢が覚めるまでこの世界のアダムとイブになるかもしれませんね。私たち」

 

「恥ずかしがるひなたさんは最高だったよ」

 

「恥ずかしがらせようとする亮之佑さんは最低でした。もし起きて覚えていたらお仕置きですから」

 

 結局分からないことだらけだ。

 彼女の端正な顔を見ながら、ひなたを抱いた上半身を起こす。

 

 ぴょんぴょんしている発情したウサギたちは次の番を待っている。

 その中の一人にひなたは呼びかける。

 

「若葉ちゃん!」

 

「うん? ああ……私の番か」

 

「ええ。あっ、ただ若葉ちゃんは力が強いですから拘束させて頂きますね」

 

「拘束? そんなものが無くても私は」

 

「いいえ、どうしても必要ですから。先ほどの分をお返しさせて下さい」

 

「……ひなたがそれでいいなら」

 

 スマホではなく本格的なカメラを構える巫女に首肯する勇者。

 もしかしたら挿入するか絶頂すれば元に戻るのかもしれない。確証はない。ひなたが特別なのかもしれない。

 なによりも、散々乳房も秘所も晒した場所で元の意識に戻るのが良いことだろうか。

 今からやろうとしていることは、ただ全員を羞恥の地獄に落とすだけかもしれない。

 

「全員を元に戻したら夢も覚めるかもしれませんね」

 

「散々ヤって元に戻んないかも」

 

「その時はその時です」

 

「ならその時はひなたさんに耳掃除をして欲しいな」

 

 ──それならそれで、きっと愉しいだろう。

 

 

 



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【番外】チョコの前日

誤字報告、感想、評価にはいつも感謝です


「へくちっ」

 

 という可愛らしい音に目を向けたのは浴室の扉を後ろ手に閉めた直後だった。

 ハーフアップの長い金髪を下ろし、一糸纏わぬ姿を見せる少女。乃木園子はこちらの視線を意に介さず、将来の成長も約束された豊かな乳房をくしゃみの反動で揺らしながら口元を覆う。

 

「ふ……ばくちっ!」

 

「ばくち?」

 

 ビクッと肩を震わせる彼女は小さなタオルで前面を辛うじて隠すも、くしゃみの衝撃でタオルが捲れて白い肌が露わになる。

 ずずっと鼻を啜る彼女は自らの乳房や恥部を見られることよりも重要なことがあるらしい。

 くしゃみを揶揄われたと思ったのか、ほんのりと頬に桜を咲かせながら柔らかな尻で俺を押し退けようとする。背後にいた身としては臀部に押し退けられるのも長年一緒にいることで培った予想の範囲内ではあったので、園子の腰肉を掴んでは鼠径部を叩きつけてみた。

 

「ひゃぁ! ……もぉ~、エッチだぁ」

 

「オラッ!」

 

「あんあ~ん」

 

 ぱんぱんと肉が肉を叩く音が響く。風呂場だからよく響く。

 肉棒を挿入した訳ではない。おふざけで女子同士が性交を再現するかのように彼女の柔らかな尻肉を恥骨を押し付けるようにピストンすると、彼女もまたふざけて喘ぎ声をわざとらしく漏らす。

 どこか艶のある声は何度も男根を味わっただけはあり、迫真の演技だ。勘違いされかねない園子の嬌声と押し付けた肉棒に血が巡り始めると、ガチャリと背後のドアが開いた。

 

「園子っ! こんなところで何を始めているんだ!!」

 

「ナニだぜ~」

 

 なんちゃって交尾の音に顔を赤くする少女が入り込んでくる。園子のふざけた回答に羞恥ではない朱色を顔に差す彼女、乃木若葉は小さなタオルで自らの裸体を隠しながら後ろ手に扉を閉める。

 風の一つでも吹けば彼女が隠すものが全て露わになりそうな小さなタオルだ。俺の視線に胸元から下げるタオルを掴む若葉の手に力がこもるが、そもそも一緒に入らないという選択肢はないらしい。

 キッと此方を見て説教の一つでもするかのように開かれかけた唇が僅かに震える。

 

「……はっくち!」

 

 肢体が震えタオルが揺れ動く。

 チラリと覗く鼠径部や腹部に目を向けると「何を見ている!」と顔を赤くして眉を吊り上げる若葉。流石に理不尽ではないかと思う直後に彼女の二発目のくしゃみ。

 今度は下乳とその下が全て覗けたことに俺は神樹と契約している魔女に感謝した。

 

「────」

 

 くしゃみに長い髪を揺らす彼女を見ていると、釣られて鼻がムズムズとする。 

 我慢できそうにない生理的な現象、咄嗟に腕で口元を覆いくしゃみをした。

 

「びゃくしゅ!」

 

「……びゃくしゅ~……ひゃん!」

 

 くしゃみの直後、下腹部に視線が集まったのは気のせいだろう。

 ひとまずは揶揄う園子の尻肉を掴む。

 しっとりとした軟肉を揉みながら前にと進ませる。逆らうことなく園子が押されるままに進んだ先に、浴槽がある。風呂ふたを外すとたっぷりの湯が視界に入り、むわりと湯気が浴室に広がる。

 無言になった園子が湯舟に浸かり、向かい合う形で俺も素早く浸かる。

 

「「ふわぁ~……」」

 

 そんな吐息が思わず漏れてしまうのも無理はない。

 ざあぁ、と湯が浴槽からあふれ排水口に流れていくのも気にせず全身を弛緩させる。じんわりと手足の先から温まっていく感覚は一日の疲れを浄化していくかのようだった。

 湯舟の縁に後頭部とタオルを置き目線を上げると、若葉と目が合う。

 

「……亮之佑。ちょっと詰めてくれ」

 

「え~……どうぞ。あっ、タオルはお湯に浸けるなよ。よく見るタオルを巻いたまま入るみたいなのはマナー違反だからな。我が家では変な湯気もレーザーも仕事はさせない」

 

「何を言っているか分からないな……まあ見られて恥ずかしがる仲ではないが」

 

「いや、恥じらいは持っていてくれ。ずっと」

 

「どうしろと」

 

 湯舟にタオルを持ち込んではならない。

 そんな家ルールを適用させると真面目な彼女は恥ずかしがりながらも受け入れた。即ち、自らタオルを取り裸体を見せる彼女はそっと腕で胸元を隠しながら場所を開けて欲しいと懇願した。

 やれやれ仕方ないなと場所を譲ると、勢いよく湯舟に浸かる若葉によって跳ねる飛沫が目に入った。思わず目を閉じて抗議しようとする俺に届くのは機嫌の良い若葉の声だ。

 

「ふんふ~ん。あぁ~、生き返るな……」

 

「ね~……」

 

 それなりに広い湯舟でも、年頃の男女が三人も入るとやや狭い。

 構造的に一人はどちらかに座ることになり、先に入った俺と園子に続く形で湯舟に浸かった若葉は背中を向ける方向を俺に決めたようだった。

 俺の股の間に座り吐息する彼女の後頭部は鼻に触れるかどうかの距離だ。そっと若葉の髪の毛に鼻を埋め若葉吸いをしている俺に構うことなく、気持ちよさそうな顔を見せる若葉は同じように蕩けている園子に話しかける。

 

「それにしても、この時期にまた雪が降るとは……」

 

「ちょっとだけど積もるとは思わなかったんよ」

 

「私もだ。一応天気予報は見ていたのだがな」

 

 雪の降る日に美少女と風呂に入る。

 ある種の贅沢ではあるが、いつもよりもふわふわとしている彼女たちは、まずは身体の奥まで温かくなることに精神を持っていかれていた。いつの間にか押し付けていた鼻を押し潰す勢いで若葉がしなだれかかる。

 まるで座椅子にでも座るように俺に背中を預ける若葉はチラリと視線を此方に向ける。

 

「ところで園子……この入浴剤は凄いな」

 

「でしょ~。チョコレート風呂なんよ」

 

「飲めるのか?」

 

「一応飲めるとは思うけど、飲む用じゃなかったかな」

 

「問題ない」

 

 何がどう問題ないというのか。

 園子が声を掛ける前に行動力のある彼女は顎まで湯舟に浸かる。さりげなく俺の腿に手を置き、これまた無意識なのか無駄な脂肪のない尻肉を肉棒に押し付けては、ずずっと湯を啜った。

 俺と園子が見守る中、数秒後鎖骨まで肌を湯より出した彼女は唇を尖らせる。

 

「……うん、まあ悪くはない」

 

「……どんな味ですか?」

 

 恐る恐る尋ねてみると、僅かに唇を吊り上げた若葉がニヒルな笑みを見せる。

 

「──チョコに園子と亮之佑の味がしたな」

 

「変態だ~!! ひなタンに伝えないと。私とかっきーの入ったお風呂の残り汁でうどんを食べていたって! ひなターン!」

 

「ご、誤解だ! そういうのは私よりも亮之佑がするだろ!」

 

「俺がそんな変態行為をする訳がないだろ。何を言ってるんだ」

 

「あはは、そうだね~」

 

 ふわふわを超えて菩薩のような笑みを見せる園子の脚が俺の腿に乗る。

 足指を動かして脇腹をくすぐろうとする彼女の足首を掴むと足裏をくすぐりながら、改めて浴槽に張られた湯水に目を向ける。

 チョコレート風呂という入浴剤の通り、チョコレート色の湯は甘い香りが鼻孔をくすぐる。実際に大量の板チョコを溶かした訳ではないからか湯自体はさらりとしている。

 

「良い香りなんよ~」

 

「ああ。それにしても、バレンタインの前日に使っても良かったのか?」

 

「明日は忙しいだろうから、景気付けに使ってみようぜ! って感じでかっきーにお願いしたんよ」

 

「そうなのか」

 

 手で掬い湯水に紫紺の瞳を向ける若葉に園子が営業トークよろしく話を続ける。

 

「ポリフェノール。チョコレートに含まれている成分は美容にとっても良いんだって。血行促進したりダイエット効果もあるらしくて。あとは入浴した後にリンパマッサージをするとさらに美容に効果があるんですよお客さん!」

 

「誰がお客さんだ。……風さんが喜びそうだな」

 

「これは確か商店街の景品で大量に貰ったものだからフーミン先輩も使ってるんじゃないかな? フーミン先輩だけじゃなくて年頃の若い女子にとって美肌、美容っていうのは命に匹敵するんよ。わかちゃんはちゃんとお肌の手入れしてる?」

 

「ん? まあ……」

 

「ひなタンに任せっきりなのは駄目だよ~」

 

「わ、分かってる! そういうのは一人でもちゃんとしているとも」

 

 慌てたような若葉の回答にはあ、と吐息で返事する園子。

 端正な横顔を見せる彼女は小首を傾けながら若葉と背後の俺に目を向ける。

 

「ねえ、わかちゃん」

 

「ん~」

 

「……今年は何もしないよ?」

 

「本当か?」

 

 ──園子の言葉に若葉が半眼を向ける。

 脳筋気味な彼女にしては眦を吊り上げることもなく、どちらかというと湯舟と俺という肉椅子で身体だけでなく顔の表情すら溶かされた状態の若葉だったが。

 

「だってわざわざこんな雪の降る日にもかっきーのハウスに来ちゃうなんて、私ってよっぽど信用ないの?」

 

 悲し気に眉をひそめ、涙目を見せる園子に息を呑む若葉。

 数秒ほど意思の安定に時間を掛けたのか、首を振って彼女は、

 

「……ッ。い、いや、確かに去年は比較的大人しい方だったが、乃木と共謀して引っ掻き回していただろ。だから今回は乃木にはひなたを、園子には私が前日から近くにいることで被害を食い止めるために今日はお邪魔しているんだ」

 

「え~、被害なんてないよ、ラブだよラブ。3つだけしか渡せないチョコを誰にプレゼントするか、その過程で生まれるラブストーリー。風が吹き荒れ大地が震える、そして湧き上がる小説意欲!! ビュォォォオオオ!!」

 

 大きな瞳に星を煌めかせる園子が湯を肌から弾かせながら立ち上がる。

 感情が高ぶったのだろう、特に自らの肌を隠すこともしない彼女の裸体を見ている俺の鼻をのけ反った若葉の纏められた髪がぶつかる。

 咄嗟に浮かせた腰を若葉が再び下ろすと尻肉に肉棒が挟まった。

 

「ん……ッ」

 

「……っ」

 

「どうしたのわかちゃん?」

 

「い、いやなにも。園子の傍にずっといると言ったんだ」

 

「あ~ん、照れますな~。わかちゃんのファンが聞いたら歓喜なんよ」

 

 端正な若葉の横顔は風呂の熱かほんのりと朱色が差す。

 位置が悪いのか異物感が強いのか、自ら挟んだ肉竿をどうにかしようと腰を左右に動かす。流石に肉椅子を続けるのは厳しいと感じる初々しい刺激に俺は彼女の細い腰を掴む。

 無駄な脂肪が少ない腹筋が僅かに浮かぶ腹部を撫でながら恥部に手を這わせる。

 

「わ、私が傍にいたいのは園子だ。他の誰でもない」

 

「……」

 

「明日が終わるまで私は園子から目を離さないぞ」

 

「…………うん」

 

 照れたように若葉から目を逸らす園子は小さく笑みを浮かべる。

 発した言葉に偽りはなく、発した若葉も当たり前のように告げるイケメン力に令嬢も思わず揺らいでしまったのだろうか。猛烈に不安になる手が続く彼女の言葉を封じるべく鼠径部を伝い、陰唇に指を這わせると息を呑んだのが肌で分かった。

 湯にたゆたう陰毛を指に絡め、熱く柔らかい秘裂を指で開く。

 

「んっ」

 

「……嬉しいけど、かっきーとエッチなことをしながらだと効果は半減かな~」

 

「い、いや、これはだな……」

 

 小さく笑みをこぼしながら園子が目線を下げる。

 ほんのりと頬に桜を散らせながらも、背後の俺と互いの恥部を触り合いながらの言葉では園子をときめかせるには足らなかったらしい。

 ビクッと肢体を震わせる若葉は誤魔化すように咳をしながら俺に半眼を向ける。

 

「セクハラはやめてくれ、亮之佑」

 

「どちらかというと若葉から始めたからな」

 

「いや! あれは事故だった」

 

「わかちゃん積極的だね~。ひなタンの前だと大人しいって聞くのに」

 

「なっ!?」

 

「玩具であんなことやこんなことをされてるんでしょ?」

 

「……亮之佑!!」

 

「違うよ俺じゃないよ、何も言ってないよ、信じて」

 

 目の前で先祖と自分の男が互いの肌を重ねているのを菩薩のような顔で見る園子。

 自らの乳房を手で寄せて作った谷間に湯水を貯めて遊ぶ彼女の言葉に閻魔のような顔を向ける若葉。他人の秘密をベラベラ喋る趣味はないので、園子が自らひなたから聞き出したのだろう。もしくは自らの夜事情を園子に聞かせたかったのかもしれない。

 ということを細かく語るよりも、短期気味な若葉の耳元に吐息と甘噛みにより力づくで落ち着かせた方が良さそうだと実践する。

 

「待て……みみっ……ひぁっ、ぁ、ふぁぁっ……」

 

 すっかり性感帯となった耳を舌で這いながら僅かに歯を立てる。

 首を振る若葉の耳に吸い付きながら、もっちりとした彼女の乳房を両手で持ち上げる。餅のような質感をした若葉の乳房は柔らかく指が吸い付く。

 僅かに力を入れると形が崩れるも元に戻る弾力があった。自らの尻肉で雄竿を刺激していた自覚があったのか、ツンと尖った乳首は上を向き、園子の伸ばした指が摘まんだ。

 

「わかちゃん乳首かた〜い。興奮してるの?」

 

「……くっ」

 

「私と平然とした顔をしながらかっきーとエッチなことして興奮してたんだ。ひなターン! 私のご先祖様変態になっちゃったんよ~!」

 

「し、してないっ! これは生理的な現象だ! 園子のだって!」

 

「やぁん!」

 

「ふ……ふふっ、どうした園子。こんなに硬くして……私と後ろの変態がホニャホニャしているのを見て興奮していたんだろ!」

 

「え~……そうかな? そうかも~」

 

 ブロンドヘアの少女たちが互いの乳房を揉み合う。

 キャッキャウフフと百合百合しい光景は男の目を惹くも、目の前の白い肢体に這わせる手は若葉から吐息を漏らさせる。

 

「わかちゃん、人に見せられないような顔をしてるね」

 

「~~ッ、う、うるさい。園子と亮之佑しかいないから良いんだ! 園子こそ」

 

「ゃん……ッ!」

 

 揶揄う園子に遂に手を出す若葉。

 狭い湯舟の中での攻防は先祖の方に軍配が上がり、園子の秘所へと彼女の指が伸びる。湯水の中で園子の手が若葉の腕を掴むも、既に遅かったらしい。

 んっ、と声を漏らす園子に対してニヤリと笑みを浮かべる若葉。いったい何をするつもりなのかと耳攻めを止める俺に若葉の声が届く。

 

「──こんなに濡れてるじゃないか。見ていただけなのに」

 

「……お湯だよ。早く抜いてよ~」

 

「園子のここは熱くて柔らかいな。それに……手入れもしっかりしてる。サラサラしていてひなたより薄くて触り心地も良い。これは亮之佑も喜ぶな」

 

「はンッ……わか、ちゃん、ちょっと……!」

 

「ん? どうした園子?」

 

「ぁ……指、動かすの……止めて貰えるかなぁ……っ」

 

「……」

 

「……っ、ほ、本当に濡れちゃうから」

 

「……」

 

 沈黙が流れた。

 嫌な沈黙ではない。見ている分には思わず喉を鳴らす程度には香ばしさがある。

 湯水に波紋が広がった。若葉の腕が動く度に広がる波紋は園子の白い裸体に触れては消える。

 たまに園子が湯水の中で若葉の腕を掴み、時折肢体を震わせる。

 

「……かっきぃ」

 

 少女たちの淫熱漂う沈黙は、やがて園子が破った。

 小さく震えた彼女は大きな瞳に涙を浮かべて俺の名を呼ぶ。

 

 腰をくねらせる園子に夢中になったように若葉の腕が動く。

 切なげな喘ぎと共に聞かされる名前に怒張が痛いほどにいきり立つ。

 

 園子と若葉を二人だけの密室に放り込んで『〇〇しないと出られない』という条件で観察すれば誰が主導権を握るのかが分かった。よく分かった。

 紫紺の瞳に攻撃的な色情を浮かべる若葉の乳房を揉んで振り向かせる。

 

「ん……」

 

 唇を奪われた彼女は抵抗の意思を示す。

 顔を背ける訳ではない、寧ろ上等だとばかりに舌を絡めてくる。以前よりも濃厚で情熱的な口づけを、子孫の前で頬肉を舐め、涎を絡ませる。

 嫌がる素振りもなく、どこか艶やかな表情を見せる若葉。気のせいでなければ紫紺の瞳から輝きが失せているように感じられるも、気にせず立ち上がらせる。

 

 ザバッと湯水を弾く白い肌はほんのりと朱色に染まる。 

 ぽたぽたと雫を垂らしながら、彼女は俺の誘導に従い、園子の背後にあるタイルに両手をつく。

 

 園子が顔を合わせるような形で何をするのか悟ったらしい若葉は自ら尻を突き出す。

 俺はおもむろに若葉の尻を掴み、後背位で貫く。

 

「ォッ……ぁぁあああっ!!」

 

 ガリッとタイルに爪を立てる若葉の臀筋にぶつけるように抽送を始める。

 ぱん、ぱん、ぱん、と。園子の目の前で若葉を後ろから犯す悦びに震える。

 

「……! っ! おっ!」

 

 臀筋が締まり、膣が肉竿を締め付ける。

 竿を吸っては離し、吸っては離す。

 一突き一突きに魂を込めて打ち込むと彼女の最奥に振動が伝わった。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 気をやったのだろう、滑らかな背中がのけ反る。

 結合部から飛ぶ飛沫が湯面に波紋を作る。

 

 ずるりと壁に置いた手が滑り、園子の肩に若葉の手が置かれる。

 膝を震わせながら、しかし意地があるのか崩れ落ちることだけは堪えようとする若葉の膣襞を雁で捲るようにピストンを繰り返す。

 

「ぁ、ぁ、あ……!」

 

「わかちゃん……」

 

「その、こっ、みるなっ……」

 

 熱に浮かされたように喘ぐ若葉の顔を見上げる園子。

 艶めかしい嬌声と彼女の媚肉の蠕動で高まる射精感に俺は従う。

 

 射精しそう。しない。しそう。しない。

 脳裏で葛藤する。それは吸い付くような臀部を腿にぶつける若葉の存在だ。

 

「ぐっ、ィくっ……ぅ」

 

 媚肉を濡らしながらも負けてないとばかりに膣を引き締める少女。浅ましい膣の吸い付きは先に俺が達しかける。

 ぐにぐにと弾力ある乳房を揉み唇を交わし合う強敵に奥歯を噛み締めて抽送の速度を増す。

 同時に彼女の秘部を手で弄り、陰核を見つける。

 湯を含んだ恥毛に隠れたソコを指の腹で摩ると、彼女は確かに感じた。

 

「ぁぁぁっっっ!!」

 

 無心で腰を振る俺に合わせて若葉は揺れる。

 金の残像を視界に残し、髪と乳房を揺らし彼女は淫靡な舞を見せる。プシッと飛沫が結合部から噴き出し風呂の水量を僅かに増やす。

 

 勝った、と誰に言うまでもない悦び。

 涙目でプルプルと震える女騎士のコスプレが似合いそうな若葉の横顔を見ながら優越感に浸ったのも束の間、道連れと言わんばかりに膣が引き締まる。

 

「ぅ」

 

 その刺激に、遂に達した。

 僅かに若葉の温かい膣奥に白濁を注ぎながらも、昂った剛直はズルリと抜ける。

 

 しまった、と思った。

 このままでは湯を汚すだろうと。本能的な射精衝動を堪えようとするも数秒も持たない。ビクビクと震える若葉を抱き締める俺を救ったのは、園子だった。

 

 肉の布団と呼ぶべき感触が肉竿を包んだ。

 ふわり、とまるで予測していたかのように園子の二つの乳房が肉竿を挟む。 

 

「っ」

 

 その瞬間、噴き出した白濁が園子の乳房を濡らした。

 乳房を汚し、そして更に飛び散ろうとする精液が彼女の顔を汚すのも構わず、園子は口を開いて亀頭に吸い付く。

 

「っ、ぐ」

 

 それは搾り取るような、竿を奮い立たせるようなフェラチオではない。

 ただ甲斐甲斐しく残った白濁を吸い出し茎を清める奉仕だ。

 ちゅううっと白濁を吸い取り、園子はゴクンと嚥下した。

 

「ごちそうさま」

 

 ゆっくりと若葉を抱いたまま湯舟に浸かる俺を抱き寄せて見せる園子の艶やかな笑みは、思わず目を閉じて身を任せるほどに包容力があった。

 

 

 

 

 

 

 

「長湯でしたね」

 

「……寒かったからな」

 

「いえいえ、悪いとかではなくてとても楽しそうな声が聞こえていたもので」

 

「……ち、違うんだひなた!」

 

「何が違うんですか?」

 

 一軒家に二世帯で住むとこうなるのだろうか。

 ぼんやりとそんなことを思いながら、意味深な目線を向けてくるひなたに対して言葉を紡いでいく若葉を見守る。そんな俺の服の袖を引っ張る園子(小)に目を向ける。

 

「パパ〜、あれってどういうこと?」

 

「あれはね、夫婦喧嘩って奴だよ。関わっちゃ駄目だからうどんを食べて寝なさい」

 

「はーい」

 

「そうだよ私。そろそろイチャイチャを始めるパターンになってベッドがギシギシするんよ。風が吹くどころか嵐が吹き荒れて私たちが生まれちゃうんよ」

 

「大変だ~」

 

「生まれない! しないから!」

 

「聞いてますか若葉ちゃん!!」

 

 この世界に来て、少し落ち着いてきた頃だった。

 せっかくの先祖と子孫なのだからと、週末に一緒に食事を始めたことをきっかけに二人の園子、若葉、ひなたと過ごす時間を作ることになった。

 それは今も変わらず、時に寄宿舎、時に乃木家本家、時に加賀家別宅と場所を変えながらも食事を作っては時間を共有している。

 自炊する時は俺かひなた、もしくは一緒に作り、残りの面子が美味しそうに食べてくれる。

 

「まったく、バレンタイン前日で園子ズの隔離も兼ねて一緒に来たらとんだ目にあった……」

 

 ズルズルとうどんを啜る若葉のぼやきに耳を傾ける。

 食事を終えた後は、乙女たちの楽しいチョコレート作りが再開するらしい。加賀家別宅のキッチンも換気扇を回しながらも甘い香りが鼻孔を僅かにくすぐる。

 

 イベント行事大好きな勇者部だ。

 可愛い友奈や東郷を始め、可憐な美少女たちが家庭科室や自宅のキッチンでチョコを作っているのだろう。毎年貰えるのは嬉しいが、それを当然だと思わないように彼女たちを可愛がりたいと自らを戒める俺を他所に、園子(小)がうどんの汁を飲みながら告げる。

 

「最近かっきーとひなた先輩、凄く仲が良いよね~」

 

「ぶふッ!!?」

 

 なんてことない様子で爆弾を落とす彼女に咽る若葉の背中を摩りながら、チラとひなたと目が合う。抱き心地の良い身体の持ち主は微笑を見せながら、

 

「そうですね。昔よりも仲は良くなったと思いますよ。勿論園子さんたちとも。……それにしてもどうして急にそんなことを思ったんですか?」

 

「うーん……変な夢を見たんです~」

 

「夢?」

 

「なんて言うんでしたっけ……バニーガールみたいな恰好をしたひなた先輩とかっきー先輩がホニャホニャしていたような」

 

「……!」

 

「学校で教卓の前で裸になってホニャホニャしていたり……公開不倫? あとご先祖様をみんなの前で二人で滅茶苦茶にしていたような……」

 

「なっ!? ひなた、それは本当か! そんな破廉恥なことをか!? ひなたの綺麗な身体を衆目に晒したのか亮之佑がぁッ!!」

 

「ヒィ!」

 

 家庭崩壊待ったなしの爆弾発言に顔を赤くする若葉。

 ふわふわ少女の夢は、しかし核心に迫っていた。この世界はたまに一部の人間を除いて認識が書き換わる日があるのだ。その唯一の人間である巫女に目を向けるも、サッと目を逸らされる。

 あくまで穏やかな笑みを見せるひなたは、微笑を園子(小)に見せ続ける。

 

「し、してません。夢ですよ夢。ねぇ園子ちゃん?」

 

「……そういえば私も見たような気がする~」

 

 夢は夢だ。証拠はない。

 記憶だけが一部の人間に残るが相談は難しいだろう。

 

 変態と間違われかねない世界で愉しんでいるなど、勇者部のメンバーに言ったところでどうにもならない。だから、現状は情報が集まるまでは秘密にしているのだ。

 

「ほら、チョコ作りがあるんだろ? その続きは小説を書いて読ませてくれよ」

 

「……うん」

 

 園子(小)の夢の話はそれきりだった。

 食事を終えた後、男は禁制となったキッチンから離れ、部屋に向かう。

 

 手伝いを断られ手持ち無沙汰な俺を呼び止めたのは自身のスマホだ。

 手に取り電源を入れると、下の階でチョコを作っているであろう巫女からだ。

 

 俺個人宛に送られてきたのは自撮り写真だ。

 逆バニーの姿で鏡の前で撮ったらしき画像が眼球に焼き付く。

 思春期の男子だったら、多分、死ぬまで忘れられない画像が。

 

 隠すべき場所は、全てが晒されていた。

 普段使いの下着も、大人びた下着も着けていない女の全てが映っていた。

 

 乳房の大きさも形も、先端の色から髪色と同じ毛色の陰毛と、片手で僅かに開かれた陰唇と、男を興奮させる為だけに作られたような下品極まりない姿は、確かに俺を興奮させた。

 数秒、数十秒はジッと見ていた俺はメッセージに気づいた。 

 

『またホニャホニャしましょうね』

 

 それは夢での話か、此方での話か。

 直接聞きに行く訳にも行かず、俺はただその画像を見続けるのだった。

  

 

 




思ったより前回のが高評価だったんよ。やっぱり羞恥って大事だね


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【番外】認識の外

誤字報告、感想、評価にはいつも感謝です


 ──認識一つで世界の在り方は変わる。

 

 当たり前だと思っていたことも、そうするべきことだと言われていたことも、認識が変われば前提条件が変わる。当たり前が変わる。

 常識というものは決して不変の存在ではないのだと俺はこの世界で教わった。

 今目の前にある真実など、いともたやすく変わってしまうのだと。

 それを容易とする『神』という上位存在を相手にする度に自分の矮小さを知り、海を前にした時のように抱いた悩みも努力もちっぽけなものでしかないのだと思い知らされてしまう。

 

 強大さに怯えて諦めてしまうべきだろうか、と考えた時もある。

 前世の自分だったらそうなっていたかもしれない。だが、諦めた先を、その末路を知っているから。神というよく分からない存在を知りながらも俺は悩みを抱き続け、努力も怠らない。

 

「……甘い香りがするわね」

 

 思わずとばかりに呟かれた言葉が鼓膜を震わせる。

 遠くにいても良く聞こえる声は、思ったよりも至近距離から。

 鈴音の美声の持ち主は、誰もが振り返るような長い黒髪と白磁の美貌の持ち主、東郷美森だ。絹のような艶のある黒髪を揺らし、目を向けると彼女はすぐ傍で呟く。

 

「甘い香りがするわね」

 

「聞こえてる」

 

 無防備な端正な顔はきめ細かく、思わず無遠慮に触れたくなってしまう。

 流石に親しき中にも礼儀ありということで、男女の距離感としては大いに問題がありそうだが、彼女にとってはそうではないらしい。

 くんくんと浮気を疑うかのように小鼻を動かし深緑色の瞳を瞬かせる少女は学校の、教室の、他のクラスメイトがいるにも関わらず俺の身体に白魚の如き指の腹を這わせる。

 

 親愛を瞳に宿す美少女の触診を衆目の中でされるのは悪い気はしないが、彼女のような学園のマドンナがしていると注目度は跳ね上がる。

 だが東郷にとっては有象無象の視線など関係ないらしい。

 

「チョコの匂いじゃないかな?」

 

「女の……ううん、これはチョコね。それと亮くんの匂い」

 

 東郷犬はリボンに纏められた髪を尻尾のように揺らしては俺の匂いを嗅ぐ。字面にするとヤベー奴でしかないのだが、顔面偏差値の高さはそれを是としてしまう。

 俺としても他人ではなく彼女だからと、段々と身体を預けてくる東郷の柔らかな身体を抱き留めながら、静かに彼女の髪の毛に鼻を埋めて呼吸する。

 

「そういえば、私があげた『私』……ちゃんと食べてくれた?」

 

「食べたよ。ちょっと猟奇的な絵面だから誰にも見せられないけど」

 

「ふふっ……知ってる」

 

 バレンタインの日は過酷だった。

 風は吹き、乙女たちが荒ぶるイベント行事だったが、勇者部唯一の黒一点という立場では否応なしに巻き込まれてしまった。義理や本命、大小はあれど勇者部の少女たちから貰えるのは中々嬉しいが、処理が大変だ。

 食べたら運動するをひたすら繰り返す毎日を暫く続けなければいけない。

 甘い物は好きだが限度はある。

 

 とはいえ、予算や健康面での兼ね合いで女子たちの話し合いが行われたらしく、同じ部員で唯一の異性だからといって無理にチョコを贈っても贈らなくても良いことになった。

 だが、見栄や女子特有の何かがあるのだろう、毎年全員から大なり小なり貰えている。

 それ自体はありがたいことで、イベント大好きな彼女たちにはキチンとお礼をしている。

 ちなみに勇者部でない少女からもチョコは貰えるのだが、逐一管理しようとする者や勝手に挨拶をする者が出現してきたことで貰える数は減ってきている。

 

 そんな現状で、大和撫子は毎年非常に凝ったプレゼントをくれる。

 今回はチョコで作られた東郷フィギュアだった。

 相当に計算と技術が必要だっただろう。衣服は難しかったのか此方の好みに合わせてきたのか、髪の毛や軟肉の曲線美が描かれた裸体像は現実の彼女と殆ど変わりなく、一歩間違えればナルシスト呼ばわりされないチョコを俺は食べることになった。

 

 俺は字面に違うことなく東郷を食べたのだ。とても美味しかった。

 

「小さい東郷さんはチョコとナッツとふんわりぼた餅の香りがしたけど……どういうレシピで作ったの?」

 

「秘密よ。でも、あえて隠し味だけを言うなら……愛よ」

 

「愛、か」

 

 目の下に薄い隈を見せながらも、両手でハートを作る彼女に愛おしさを感じる。

 客観的に見れば少しヤベー奴が作ったヤベー奴を食べたヤベー奴の構図だが、そんなことはどうでも良かった。他人の評価や目線を気にしていたら人生を楽しくは生きられないから。

 

 さらりとした髪が俺の肌をくすぐる。

 吐息を俺の首筋に吹き掛けて東郷は指を這わせる。甘い香りと体温、肢体の柔らかさがダイレクトに肌に伝わると東郷は静かに目を細める。

 やがて東郷は見る者全てを魂の虜にするかのような笑みを見せた。

 

「────」

 

 男を知った女が見せる妖艶な笑み。

 甘い体臭と柔らかな肢体と共に雄の視線を釘付けにする微笑に息を呑む。高鳴る鼓動は血を巡らせ、自然と反り立つ肉棒が目の前の少女の掌に包み込まれ、上下に扱かれる。

 

「はっ……!」

 

 下ろされた下着から露出する怒張の先走りを指に絡める東郷。

 雄に奉仕するのが当然のような顔をしている彼女は下着姿だった。

 

「もうぴょんぴょんしてるのね」

 

 花の刺繍がされた薄い水色のブラとショーツ。そして黒タイツ。

 更衣室でもない、いつもの教室で東郷はウサギの耳を模したカチューシャを揺らす。

 

 可愛らしく、そして卑猥な格好の東郷。

 いますぐ押し倒して本能に身を任せたくなるほどに半裸の彼女は卑猥だった。

 

 水色のブラに包まれた乳房は僅かに汗ばみ、気づいたら両手が伸ばされる。硬いワイヤーと生地越しに感じさせる乳房を揉むと東郷は切なげな表情で唇を窄める。

 長い睫毛に縁取られた瞼を閉じて、キスをねだる東郷に応えながら周囲を見渡す。

 

 学校の教室。

 周囲には男女問わず友人も知り合いもいる。昼休みも終わりが見え始め、そろそろ授業が始まるのだろう、早めに入ってきた生真面目な先生は教卓で教材を置いている。

 

 普通の学園風景だ。ただ退屈な時間になるとは思えなかった。

 何故なら、俺の眼前に広がる人は全員が下着姿にバニーカチューシャを着けていたから。

 

 色とりどりの光景だった。

 白い下着を着用している者が多いが、リボンや装飾部分に拘りがあるのだろう。もしくは見られることなど想定していないのかボクサーパンツやスポーツブラの少女もいる。

 可愛らしい年相応な下着の着用が目立つ中、大人びた下着の着用者も一部いる。

 

 彼女たちはタイツやニーソ、靴下を履いているが制服を着用していない。平然とした顔で話をしながら、見栄張りかサイズが合わないのかブラから乳首を覗かせながら過ごしているクラスメイトの慎ましい双丘からそっと目を逸らす。

 

 日々のストレスによるものか、真面目な顔をしている若い女教師が秘所も乳頭も全てを曝け出す下着を着ている姿は僅かに興奮を覚える。

 本当ならば、一人だけでも下着姿で教室に過ごしている時点で騒ぎの一つがあるのだろう。個人的には歓迎だが、騒ぎ立てる人間とはいつの時代も多い。

 だが誰もそれを疑問と思わず、声も上げず、こうして教室で東郷と行為に及んでも誰も関心を向けない。

 

「ほら、見なさい園子、友奈」

 

「ん? どうしたの夏凜ちゃん」

 

「わっしーとかっきーがイチャイチャしてるね」

 

「教室であんなイチャイチャしてバカップルよね。行かなくて良いの?」

 

「正妻の余裕って奴なんよ。……それよりにぼっしーこそイチャイチャしに行かなくていいの? 寂しがり屋のにぼっしー!」

 

「は、ハア!? するわけないでしょ! 変な呼び方するな!」

 

「やん、ツンデレ~」

 

「夏凜ちゃん。なら一緒に行こうよ!」

 

 と言った程度で、この教室にいる同学年の勇者の反応は変わらない。

 ピンク色の下着を着た友奈、やや面積の少ない攻めた紫色の下着の園子、勇者部員と選んだのか友奈の着用する下着よりもやや赤色の下着を着用した夏凜が俺と東郷に視線を向ける。

 

 笑みを見せる二人と、どこか恥ずかし気な夏凜。

 三人の宝石のような瞳と視線を絡ませる前に、東郷の片手が俺の顔の向きを変える。

 ──私だけを見て。

 そう目線で伝えてくる彼女は恥ずかしがることもなくブラ越しに乳肉を揉ませる。

 

「──ん、ぷ」

 

 東郷の情熱的な口腔と共に彼女の手が肉棒を扱く。

 男が悦ぶ手の強さは乱雑なだけではなく、確かに射精衝動を解き放とうという意思を感じさせる。しなだれかかる彼女の滑らかな肌と体温が甘い快感をもたらす。

 

 彼女の腰肉に手を回すとくすぐったそうに身体を揺らすのを見ながら、背中に手を這わせる。

 滑らかな白磁の肌を撫でまわしながらブラホックを外すと、たゆんと乳房が零れ落ちる。つきたての餅のような東郷の乳肉はきめ細かくしっとりとしていた。

 

 汗の芳香を放つ東郷の身体は熱を帯び、指で転がす乳首は硬度を増す。

 互いの吐息は荒くなり、呼気が乳頭に触れると東郷が小さく身を震わせる。思わず目の前のぼた餅にかぶりつき、吸い付き、震える乳房に薄っすらと歯形を残す。

 

「ゃ……ぁ」

 

 くしゃりと俺の髪を掴んで身悶える東郷は自らの乳房に俺の顔を押し付けて嬌声を漏らす。ぷるぷるともう片方の乳が痕を残して欲しいとばかりに震えているように見え、俺はそちらにも自らの存在を残すと白い首を反らして東郷は喘ぐ。

 この身体が誰のものなのか。子供のような独占欲と支配欲が彼女の処女雪のような肌に痕を残しながら乳房に吸い付くと、顔を赤らめながら愛おし気に俺の髪を撫でる。

 

「ぁん……そんなに吸っても出ないわよ?」

 

「赤ちゃんみたいだね」

 

「ばぶ~」

 

「もう……みんなも揶揄わないの」

 

 小気味よい笑い声と視線に囲まれる。

 クラスメイトの少年少女たちの視線を時折感じながら、東郷と触れ合う。

 

 机に彼女のブラジャーを置きながら、乳房を晒す少女に目を向ける。

 教室でタイツとショーツを残すのみとなった東郷は細い脚をくねらせる。口元を手で覆いながら、俺が掴んだショーツがタイツごと下ろされるのを無言で見下ろす。

 

 ゆっくりと引き下ろすと白い鼠径部と恥毛、秘所と内腿と露わになっていく。

 糸を引く東郷の蜜、クロッチに愛液の染みを残す東郷はじれったそうに膝まで下ろされたタイツを自ら足元から引き抜く。

 

「東郷さん。綺麗だ」

 

「ありがとう……そんなに見られると照れちゃうわね」

 

 学校で全裸になった人はそんなにいないだろう。

 少なくとも、昼間に堂々と裸体を晒して、互いの性器を弄り合うなど。

 

 これを夢と呼ばずなんと呼ぶのか。

 

「亮くん。相舐め……しよっか。小さい時でも喜んでくれたよね」

 

 横文字を避けて彼女は上品に奉仕を望む。

 仰向けに寝そべらせた俺に、四つん這いとなって東郷は頭部から下腹部に向かって進む。やがて、シックスナインと呼ばれる体位となった。

 

「────」

 

 目の前には東郷の媚肉があった。

 黒色の陰毛から覗くサーモンピンク色の貝肉は蜜液が滲む。

 

 むわりと淫臭を漂わせながら、彼女の媚肉がゆっくりと近づいてくる。同時に先ほどから手で扱く肉棒は涎を垂らし限界に近づく。

 東郷の鼻息が先端に触れたのを感じながら、そして亀頭が彼女の舌にねぶられた。

 

「ぅっ!」

 

 乳房を腹の上で押し潰し、東郷は雁を唇で吸い付きながら舌を這わせる。東郷の柔らかい髪の毛先が太腿をくすぐり、彼女の舌で清められた肉竿からは新たな涎が少女の手を汚す。

 俺の鼠径部に手を置いてはちゅこ、ちゅこ、と肉竿を扱く東郷の刺激に身を任せた。

 

 東郷の奉仕による射精に目を閉じる。

 吐精中も構わず竿を扱く東郷から与えられる快感に目を閉じる。

 

「みにゃ!?」

 

「わあ!? 夏凜ちゃん大丈夫?」

 

「いっぱい出たねぇ~」

 

「口っ、口に入っちゃった……! べとべとする……って友奈!?」

 

「んむ……夏凜ちゃんと亮ちゃんの味がする……。あっ、動いたら駄目だよ」

 

「駄目ってそんな……ど、どこ触ってふわぁぁ!」

 

「おお……メモメモ~」

 

 少女の子宮でもなく口腔でもない外に勢いよく白濁が噴き出る。

 いつの間にか肉竿を近くで見ていたらしい夏凜は自らの顔を汚した白濁に悲鳴を上げた。嫌そうな顔をしている夏凜にかかった白濁を友奈が舐めとる光景を視界の端に捉えながら、東郷は雄竿に勃起を促す。

 

「んっ……はぁ〜……まだ出来るよね?」

 

 汚れた肉竿に頬ずりしながら東郷は囁く。

 射精したての竿に触れる東郷の頬の柔らかさに思わず呻く。

 

「んっ!」

 

 このまま奉仕されるがままで良いのか。

 一方的な愛撫に快楽に沈みかけた俺は目の前の媚肉に目を向ける。キチンと手入れがされた薄い恥毛は柔らかく、ぴっちりと閉じた陰唇をジックリと確認した俺は舌を伸ばす。

 陰唇を舌で割り開き、貝肉に挿入と同時に蜜液を啜る。

 悲鳴を上げる東郷の腰を掴んで陰唇と唇を密着させると、今度は俺の番だとばかりに舌で東郷の恥部を犯す。

 

「ぁぁっ!? ひぅぅ……ま、負けないわよ亮くん」

 

 喘ぐ東郷だが、涎を俺の剛直に垂らすと再び奉仕を始めた。

 ごぷ、ごぷ、と下品な水音を立てながら頭を上下に動かす。

 

「んぶっ!? んんっ、んむっ、ぷっ……!!」

 

 彼女が上の体勢だとやや不利な状況だった。

 体勢を入れ替えようと思ったが、入れ替えたら敗北するのを悟っているのか、脚を震わせながらも東郷は俺に覆い被さる。

 

「ぁぁっ! ぁぁ! イくッッ!!」

 

 脚を広げて陰唇ごと愛液を啜り、陰核を舌で弄る。

 媚肉が蠕動し噴き出す蜜は俺の顔に跳ね、陰毛を濡らす。

 白い腹肉を上下させ、乳頭ごと乳房を肌に擦らせ東郷は乱れる。

 

「ぅっ!」

 

 彼女は喘ぐ。

 それでも一度離した肉竿を自らの口腔に咥え、貪欲に呑み込む。

 唾液を絡ませ、熱心に精液を搾り取ろうと俺の竿を締め付けた。膣とは違う快感に呻かされる俺は、両手と舌で無防備な東郷の恥部に快楽を授ける。

 

 音も周囲の目も気にしない。

 東郷の口腔がひたすらに俺の肉茎を刺激する。

 俺の舌が東郷の媚肉を舐め、指で陰核を刺激する。

 

 認識の狂った世界でも変わらず互いを慰め合う。

 

 

 

 

 

 

 ──少女たちが正気に戻る条件がよく分からない。

 

 ただ恥ずかしがらせれば良いという訳ではないらしい。

 それはひなたとの実験と称した変態プレイの数々で証明してきた。それを受けた少女たちは記憶に残らず、巫女であるひなたは衆目に晒されながら逆バニーの姿で羞恥に悶える夢が続く。

 

 色々と条件を変えてみたが、神が行ったらしき常識改変という力の前には人間は無力な存在なのかもしれない。ひなたの認識が現実の物と同一になったのはどこかの神様が夢に一人取り残された俺を憐れんでくれたからなのか。

 このままアダムとイブごっこを夢の中で続けることになるのだろうか。

 

 そんなことを脳の隅で考えながら、目の前の大和撫子を学友の前で貫く。

 もう昼休みは終わり、授業が始まっていた。

 

「りょうくん! りょう、くんッ!」

 

 互いの鼠径部が触れ合い、東郷の腰が動く。

 少女の脚は俺の腰に絡みつき、俺にしか見せないはしたない表情を教室で浮かべながら駅弁の体位で俺に貫かれる。

 愛液が教室の床を汚し、俺は反り立つ肉棒で円を描くように突き上げる。

 

「ぁぁぁっっ!!」

 

 随分と敏感になった東郷はあられもない声で教室に響かせる。

 声にはいやらしさが、目は焦点が合わず、口端から涎が垂れる。

 

 りょうくぅん、と甘い声で東郷はキスをねだる。

 キスを求めながら同時に法悦をも求める。

 

「~~~~ぅぁッッ!!」

 

 背中に汗を流しながら、俺に抱き着く東郷は身を震わせる。

 授業中に行為をしてクラスメイトたちの前で絶頂に達したことを現実の東郷が知ればどうなるのだろうかと思いながら、滅茶苦茶に彼女を突きあげる。

 

「ふわぁああっっ……!! ぇぁっ!」

 

 背中を反らし、噛み痕の残った白い胸肉を揺らす。

 尻肉と腿がぶつかり合い、ピストンの度に東郷からは甘い呼気と喘ぎが漏れる。

 

「──それと、ここテストに出るから注意ね」

 

 授業中の間、俺はずっと東郷の身体を貪っていた。

 東郷を気になっている男子生徒の前、女子生徒の前、友奈の前、夏凜の前、園子の前、机と机の間を歩いて、教卓の前でみんなに彼女との行為を見せつけたりするも、誰も何も言わず、何も起こらなかった。

 ただ、俺に貫かれた少女の絶頂の感覚が短くなっていっただけだった。

 

「ぁ、ぁ、あっ」

 

 結合部から溢れる愛液が教室の床を汚す。

 既に何度か東郷の口腔と膣に白濁を呑み込まれたにも関わらず、それでもまだ子種をねだる彼女の膣に応えるべく、東郷の机に二人で寝転がる。

 隣の机の友奈がペンを手回ししながらチラリと目を此方に向ける。

 

「っ」

 

 額に汗を浮かべながら、東郷を机に組み伏せながら杭を打ち付けるように肉穴を叩きつける。

 途中、チャイムの音を耳にして、遂に授業時間全てを東郷に捧げたことを知りながら、目の前であられもない喘ぎ声と結合部で愛液と白濁を混ぜ合わせる音を教室中に聞かせる。

 

「それでは本日はここまで。日直は……三好さんね」

 

「はい。……起立」

 

 日直は夏凜だったらしい。

 東郷との交尾とキスに夢中になりながら、周囲の生徒が立ち上がるのを視界の端で捉える。授業の始まりと終わりは日直の号令の下、生徒全員で教師への礼と神樹への挨拶が行われるのだ。

 涙混じりの深緑の瞳が快楽に歪み、溢れた涙が頬を伝うのを見下ろす。

 美人は何をしても美人なのだと思いながら、陰嚢が何度も彼女の尻を叩く中、泡立つ愛液と白濁の混じり物がこぽりと陰唇を伝い、机に垂れ落ちた。

 

「ぁ、ぁ、また……んんッ!」

 

 窓の方向に向かって生徒全員が手を合わせる。

 日頃の感謝を。一日を無事に過ごせていることを。偽りであっても変わらない日々が続いていけるように。数多の願いと感謝を神樹が創った壁に向かって行い、授業が終わる。

 

「礼。神樹様に……拝」

 

 その直後だった。

 

「ぃっ……!」

 

 爪を立てる東郷は大きく瞳を見開く。

 豊満な乳房を揺らし、挙動不審気味に周囲に目を向ける彼女の膣が引き締まる。

 

「だ、だめっ! りょうくんっ! これいやッ!!」

 

 大きな絶頂に達しようとしていたのか、それにしては少し様子がおかしい。

 チラリと横を見ると端正な横顔を汗と涙で汚しながら、嫌々と抵抗をする東郷。

 それにしては身体は熱く、膣は引き締まり、数回ピストンすれば法悦に浸りそうな蕩けた彼女の身体は、もっともっと雄を教えて欲しいと主張している。

 

 少女の両腕に力はなく爪を立てるのが精々な東郷自身が悦ぶ膣襞を雁で擦る。

 「いや」とか「だめ」と弱々しい声を上げながら法悦に至ろうとする東郷を貫くと抵抗を忘れてあられもない声を響かせる。

 

「なんッ、ぅぅ~~ッッ!! ぁ、ぁっ!」

 

 今更ながら喘ぎ声を隠そうと唇を結ぶ東郷。

 その可愛らしい抵抗を、ぷるぷると震える乳房に吸い付き、ピストンを早めると崩れ落ちた。

 

「ぁぁぁああああっっっ!!!」

 

 東郷の甘い悲鳴が教室中に響く。

 彼女に導かれるまま、俺は何度目かの子種を最奥へと注ぎ込む。

 

 抵抗する東郷への膣内射精は、俺に極楽を味わわせる。

 雄肉は彼女の膣襞に広がり、精子が彼女の媚肉に吸われ飲み込まれる。

 

「ぁ~~!! ぁ、ぁー……」

 

 ビクッビクッと小刻みに痙攣する東郷の身体を抱いて目を閉じる。

 抱き心地の良い彼女の裸体を人のいる教室で抱く感覚は周囲への自慢と支配欲と独占欲と様々な感情が脳裏を過り、全てを快感で押し流す。

 

 あとは夢の終わりを待つだけ。

 光を失い虚空を見上げる東郷に唇を近づける。当たり前のように口腔を交わらせる少女の髪を撫でていると、声が掛けられた。

 

「ちょ、ちょっと……どうなっているのよ……!」

 

「──あ?」

 

「流石に他の子がいる教室で白昼堂々そういうことするなんて退学じゃないの!? いや誰も何も言わないから良いのか……いや駄目でしょ!! そもそもなんで私も皆も下着姿なのよ!? なんでウサギのカチューシャつけてんのよ!!」

 

「────」

 

 恥ずかしそうに自らの下着ごと胸元や下腹部に手を置く夏凜。

 その瞳には羞恥を宿し、異性の生徒からの視線から逃れようと俺の影に隠れようとする彼女は「なんで」と誰も言わなかったことを口にする。チラリと結合部や俺の胸元、荒い呼気を落ち着かせようとする東郷に目を向ける夏凜は周囲を見渡す。

 

「……もしかしてバーテックスの仕業?」

 

「夏凜ちゃん? どうしたの?」

 

「友奈! 目を覚まして! 私たちこんなところで下着姿よ! ほら隠して!」

 

「わわっ!?」

 

「園子! あんたなんて下着履いてるのよ!? スケスケじゃない!」

 

「え~普通だよ~」

 

「どこがよ!」

 

 俺の知る世界ならしていそうな乙女の反応。

 安心と安定のツッコミに、思わずホッコリとする。

 机に置かれていた逆バニーの衣装の一部で友奈の白い肌を隠そうとする夏凜の後ろ姿をぼんやりと見ていると、がしっと細い脚が腰に巻き付く。

 

「……そんなのどうでもいいよ」

 

 はあ、はあ、と荒い呼気で東郷が俺を見上げる。

 繋がったままの肉竿を屹立させようとする締め付けに奥歯を噛み締める中、腹筋に力を入れて上体を起こした東郷は背中に腕を回し力強く抱き締める。

 

「亮くぅん……」

 

「東郷さん?」

 

「ふふ……ふふふふ……亮くぅん、責任取ってくれるんだよね? こんな公衆の面前で色んな男の子たちに肌を見られちゃったんだもの……取ってくれるんだよね?」

 

 ここで「嫌だけど?」と言った瞬間に首の肉を噛みちぎられる予感がした。

 「結構ノリノリで自分から行為を見せつけてなかった?」と言えば首の骨を折り、その上で自害しそうな雰囲気を全身から醸し出していた。

 

 全身でイエス以外の回答は許さないという彼女が、しかし明確な暴力で同意を得ようとしないのは、これまでの付き合いに基づいた俺の答えが既に分かっているからだろう。

 そして、その答えを言葉で、きちんと、耳にしたいという意思を眼前の瞳に感じた。

 コツンと額を合わせて、唇が重なる距離で互いを見合う。

 両手両足と肉壺で俺をホールドする彼女はジッと言葉を待ち望む。

 

「もちろん。俺が嘘吐いたことあった?」

 

「うん」

 

「……」

 

「だから日本男児らしく言葉じゃなくて行動で示して」

 

 ボソボソと囁く学園のマドンナは唇を窄めてキスをねだる。

 さりげなく胸元を隠すように俺の胸板に押し付けて密着しながら抱擁を続ける彼女は笑みを見せる。同時に逃がさないとばかりに全身で彼女は俺の拘束を続けながら、

 

「とりあえず状況を説明してくれる?」

 

「は、はい」

 

「亮之佑。私にもお願い。私は東郷のように甘くはないわよ」

 

「はい」

 

 夢の中で仲間たちに説明を始めようとした。

 少しだけ心強さを覚える俺の耳に、教室から出ようとした教師の声が届く。

 

「──次の授業は保健体育ですから、日直は準備をお願いします」

 

 

 




番外って言うけど話が続く感じなんよ


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【番外】異物混入

誤字報告に圧倒的感謝


 前世で保健体育のことを思い出す時、なんとも言えない恥ずかしさを覚えたことがある。それは恐らく自身が思春期であったことも含めて、周囲の同学年の男女と共に自分の身体や子作りについての講義を聞くのが恥ずかしいとなんとなく感じたからだ。

 

 生々しい、というべきか。先生に指名されて教科書に記載されている内容を読むだけで、意味もなく周囲の生徒と顔を合わせることがあった気がした。

 今思えば勿体ないことをしたと思う。自身の育ち切らない感情に支配され同年代の少女たちの反応をもっと楽しむべきだったと後悔している。

 

 そういった授業に対する反応は、前世も今も変わりない。

 とはいえ、神樹教育の効果はそういった地味な所にも及んでいるのか、「あいつ、子供の作り方を朗読してる! エロだわ!」みたいな揶揄を表立ってしようとする者はいない。

 表立って他人を馬鹿にする者は殆どおらず、またそういった学生については多少の体罰が許されるようになった先生の教育対象であり、彼ら彼女らが解放される頃には従順な生徒が出来上がるのがこの世界だ。

 

「──で、保健体育って何する訳?」

 

「えっ? にぼっしー知らないの? 日直なのに?」

 

「……園子は知っている訳?」

 

「知らな~い……ぁあんッ! ポロりしちゃう! 脱げちゃうよ~」

 

 授業が終わり僅かな休憩時間。

 子供の頃は十数分程度の休み時間で外に行ってグラウンドを駆け回り、サッカーや鬼ごっこをしてチャイムと同時に戻ってくるという謎のバイタリティがあった。

 今も出来るとは思うが、積極的には外出を避けたい俺の腿に座るのは園子や友奈だ。彼女たちも貴重な時間はゆっくりと過ごしたいらしい。

 

「午後はどうしても眠くなっちゃう」

 

「お日様が気持ちいいもんね~」

 

「ね~」

 

 どんな世界でも二人はふわふわな雰囲気を崩さない。

 俺を椅子にして座る彼女たちの現実世界との差異など、制服姿か下着姿かという違いだろうか。柔らかな下着に包まれた尻肉が身じろぎの度に形を変えるのを直に太腿で感じる。

 貧乏ゆすりをしてみると無言で抗議するように二人の両腿が俺の腿を挟み込み、密着した布越しに秘所の生暖かさを感じさせる。

 そんなことをしている見目麗しい少女とその椅子に注目が集まる。

 

「かっきーは眠くならない?」

 

「眠くない」

 

「昨日も夜更かししてたのに私よりも早起きなのは凄いよね!」

 

「私も~、朝起きて気づいたら(パジャマを)脱がされて(朝ご飯を)ゴックンさせられたんよ~」

 

 周囲へのアピールなのか、もしくは天然か。

 結構な頻度で、周囲の目を気にすることなく俺とのスキンシップを行う彼女たちの存在は男子からは畏敬と嫉妬を、女子からはなんとも言えない熱の籠った視線を貰う。

 

 だが慣れ故か、或いは別の何かがあるのか直接何か言われることはない。

 今更他者の評価や目線で人生観を変えることはないが、注目を集める身として何かしておこうかと友奈と園子の背中を撫でる。

 滑らかな肌に掌が吸い付き、下から上に撫で上げるとピンと背筋を伸ばした。

 

「ひゃ!?」

 

「んッ!」

 

 背後からのボディタッチに彼女たちは腰を上げることはせず俺の手を受け入れる。その手の悪戯を許容し、ブラジャーのホックを外すと掌サイズの友奈の乳房と、掌からやや余る園子の乳房がカップからこぼれる。

 躊躇うことなく左右でそれぞれの乳肉の柔らかさと体温を揉みながら味わう。

 餅のような質感やプリンのような質感の比較を行う俺の肩を掴む友奈と園子。

 

「ぁ……もう……かっきー駄目だよぉ」

 

「ひゃッ……んっ……ぁ」

 

 あ、ん、と吐息を漏らす彼女たちは逃げることなく自らの乳房を揉まれ、雪肌にほのかに朱色を差す。内腿を擦り合わせる友奈と園子はさりげなく俺の下腹部に手を這わす。

 そのまま床に押し倒して今にも3人でホニャホニャしそうな光景に、

 

「あんたたちは相変わらずよね」

 

 と、その姿を半眼で見るのは夏凜だ。

 正気に戻った、と主張する彼女は下着姿が恥ずかしいからと慌てて着替えを探す。気の利いた東郷から渡された体操服を手にした夏凜は更衣室や空き室に行くこともなく、すぐ目の前で生着替えを実行していた。

 人並みに羞恥心のある彼女だったが、衣類を身に纏い安心したように片目を瞑る。

 

「……というかあんたも説明したらどうなの?」

 

「さっき説明したじゃないですか。その完成型の頭脳で理解したんだろ?」

 

「ま、まあね。当然よ、バッチリ理解しているわ! ……というか、説明しながら二人の胸を揉むのはやめなさいよ。一応真面目な話をしているんだから……いや吸えば良いという話じゃなくてちょいちょちょい!!? 他の男子もいるんだから脱がせんな!」

 

「夏凜ちゃん、もしかして友奈ちゃんの胸を揉みたいってこと?」

 

「東郷はちょっと黙ってくれる!?」

 

「ほえ? 夏凜ちゃん……私のおっぱい触りたいんだ? ふーん」

 

「えっ、ぁ、いや……」

 

「揉みたくないってこと!? 友奈ちゃんの慎ましくも可愛らしい胸を!」

 

「にぼっしーはわっしーのおっぱいが揉みたいんだよ~」

 

「なんてこと!? でもごめんなさい、私の身体は髪の毛から爪先まで亮くんのモノだから……」

 

「揉むかあ!!」

 

 今まで誰もツッコミを入れようとはしなかった状況。

 そんな中で律儀に声を張り上げる夏凜は赤面した表情を誤魔化すように告げる。

 

「友奈も園子もほかの皆も下着姿になってそれを恥ずかしいとも思わない。そんな風に……その、えっ、エッチなことをしても誰もなんとも言わないのは変だというのは十分に分かったわ」

 

「……にぼっしー、私とかっきーがこんなことしていたら変だって思うんだ~?」

 

「夏凜ちゃん。私、悲しいな。私たちが亮ちゃんとホニャホニャしない程度にイチャイチャするのはよくあることなのに」

 

「うぐっ……と、東郷はどうなのよ」

 

 二対一の戦いは劣勢だと完成型の頭脳が悟ったのか。

 話題を振られた東郷は小首を傾げる。美人は何をしても美人だと世界の心理を悟る俺の頭を撫でる彼女は慈母の如き表情を浮かべる。既に情事の痕は処理され、水色の下着を着け直している東郷は俺の後ろに立つ。

 体操服を勧める夏凜を無視した東郷は堂々と下着姿を晒しながら豊満な胸元を後頭部に当てる。谷間を腕で寄せずっしりと重い乳房を押し付ける彼女は、腕を俺の首に回す。

 

「そうね……亮くんが私と責任を取ってくれる以上、ここが夢でも別世界でも良いのだけど」

 

「それで良い訳?」

 

「友奈ちゃんがいて、そのっちもいて、勇者部も……勿論夏凜ちゃんもいる。問題ないわ」

 

「──それは」

 

「……ふぅ」

 

「ん」

 

 吐息を耳に吹き掛ける東郷は俺の反応に笑みをこぼす。

 先ほどと変わらず下着姿の東郷から俺に視線を移す夏凜は呟く。

 

「亮之佑。そのうちあんたは刺されるわ」

 

「まさか」

 

「亮くんは私が守るから大丈夫よ。話を戻すけど……ひなたさんも正気に戻っているのなら私との共通点として巫女であることが関係するのかなって思ったんだけど……」

 

「私は勇者で巫女適正はないわよ? 亮之佑はどう思う?」

 

「下着って普段隠されているからエロい訳で。捲れるスカートがある訳でも透けるカットシャツを着ている訳でもない現状って実質水着だよね。だから最初は興奮したけど今は別に……って思う」

 

「いや、聞いてないんだけど!」

 

「強いて言うなら水着よりも下着の方が生活感というかその人のセンスを感じるというか……生地が透けていて肌が見えるのがエロいと思わない? 夏凜もエッチだったし」

 

「え、エッチとか言うなあ!」 

 

 というように知恵を寄せ集めようにも情報は足りない。

 そもそも情報を集める手がかりも可能性も神の思うがまま。最悪法則性なんてものは何もなく、神の気紛れで遊ばれているのかもしれない。

 そうなれば最早お手上げだろう。

 かぶりを振る夏凜が腕で下着を隠しながら唇を窄める。

 

「……それで、ひなたの方に異変はなかったの?」

 

「さっき確認したけど特に異変はないって。授業が終わって夢がまだ続いていたら集合出来るだろうけど」

 

「そんなまどろっこしいことせず今からでも──」

 

「あっ、チャイムだ」

 

「お昼寝タイムだ~」

 

「園子、あんたさっきも寝ていたでしょ」

 

 学校という場所は制約が多い。

 遊び場ではなく勉強をする為の場所なのだから当然かもしれない。その制約の一つはチャイムが鳴ったら自分の席に座り教師を待って、次の授業を行わなければならないということだ。

 ガララッと扉が開くと同時に無言で少女たちが自分の席に移動する。

 

「……亮くん」

 

「ん?」

 

 その数秒程度の時間。

 深瞳の少女に呼びかけられる。優しさと親愛を感じさせる声に振り返ると、衆目の中、他のクラスメイトの視線が他を向く中で、東郷は大胆に自らのブラジャーを上に引っ張ると同時に、ショーツの前面を指で引っ張り、その奥の肌を見せる。

 

 ぷるりと震える豊満な乳房。

 程良い脂肪の乗った下腹部と鼠径部、整えられた黒の恥毛に覗く媚肉。

 

「────」

 

 思わず目を奪われる。

 ある程度は拭い取ったのだろうが、手を伸ばせば届く距離にいる彼女のソコは雄の白濁が僅かに残っていた。

 むわりと淫臭を漂わせる彼女は自らが既に雄のモノであると無言で示す。

 陰毛に絡まる白濁を。最奥から逆流しクロッチの裏側を汚す子種を。誇らしげに、気恥ずかしそうに、嬉し気に、慈しみと母性と雌を混ぜたような表情を見せる女は一言告げる。

 

「帰ったら……」

 

 続く言葉はいらなかった。

 言葉よりも鮮明に、放課後の大和撫子との予定が構築されていく。

 

 乱暴に、優しく、東郷美森を抱く。

 衆目も親友の目もなく、ベッドの上で着ている物全てを剥いだ上で、彼女を抱く。

 声を我慢することもせず、背中をのけ反らせ、シーツに皺を作り、長い髪を振り乱し、恥も外聞もなく汗を巻き散らし、屈服させるように滅茶苦茶に抱き、唇を交わし、愛の言葉で鼓膜を震わせて、壊れるような快楽を教え込みたい。

 一瞬脳裏を過るいずれ訪れる妄想は俺の背筋に電流を奔らせる。

 

 ──私はあなた無しでは生きられない。

 そんな、言外に告げる彼女の控え目なアピールは、的確に俺の何かをくすぐった。

 

 ブルリと震える。

 それは求められることへの渇望か。極上の雌に応えたい雄の矜持か。或いはそれら全てを計算し掌で踊らされていたのだとしても、それはそれで後悔はしないと思えた。

 

「滅茶苦茶にするから」

 

「……っ、うん」

 

 手を伸ばす。 

 下腹部の、子宮に掌を置くと少女が小さく震える。

 

 言葉少なに自席に戻る東郷。

 切り替えの出来る少女は授業が始まると同時にキリリと黒板に目を向ける。

 そんな優等生の彼女の澄ました顔を見ると、「この教室で彼女を抱きました!」と全力で叫びたくなる俺は破滅願望の持ち主か、東郷美森という存在に脳味噌を破壊されたかもしれない。

 

 ガラリと音を立てて教室の扉が開く。

 眼鏡を掛けた女教師は正気に戻った者なら思わず二度見するような下品な穴開き下着を身に着けて歩いてくる。

 

「起立。礼。神樹様に……拝」

 

 日直の号令で、クラスの生徒たちは授業の最初と最後に教師と神樹に感謝を示す。そして授業が始まるが、俺の場合は何か見えない力が働いているらしい。

 何回も聞いて授業の内容への理解度もテストの点数も既にカンストしてしまった以上、聞いていて退屈な俺はおもむろに立ち上がる。

 そのまま近くの席に座る友奈の頭を撫で、髪の毛を指先で弄ると視線を感じた。

 

「いや、なにしてんのよ……」

 

「三好さん? 聞いていますか?」

 

「は、はい! えっ、あれ? 私だけ?」

 

 夏凜だ。

 授業中に立ち上がり、友奈の席に移動して彼女に堂々と触れる俺を信じられない眼差しで見ていた。勇者とも違うバカを見るような視線に思わず肩を竦める。

 

 ──あれが常識的な反応なのだ。

 

 ホックの外れたブラジャーを上げて少女の乳房を揉む。

 友奈を立ち上がらせて彼女の椅子に座ってから俺の膝の上に座らせる。そのままおもむろにショーツに手を入れて柔らかな恥毛と秘所を指で弄る。

 

「……ん」

 

 チラリと俺を見る友奈と静かにキスをする。

 音を立てず、恥部から水音を僅かに聞かせながら、ほんのりと頬を赤らめる彼女は俺に背中を預けながら眠そうな目を擦り授業に耳を傾ける。

 一連の流れに声を上げない夏凜と東郷だが、適応力のある東郷とは違い夏凜は顔の表情と時折此方を見ていた反応で教師に怒られていた。

 

「それで三好さん。その服はどうしたのですか?」

 

「えっ、どうって……着替えましたが」

 

「脱ぎなさい」

 

「は?」

 

「学校でそんなものを着て良いと思っているのですか!!」

 

「い、いやいや……おかしいですよ。だって体操服じゃ」

 

「制服を着なさい! もしくは体操服でもいいですから! いつからそんな物を着る不良生徒になったんですか!」

 

「えぇ……」

 

 今更教師が声を上げた程度で委縮する夏凜ではない。

 多少ビクッと身を強張らせ目を白黒とさせるが、それはどちらかというと眼鏡を掛けた下着姿の教師の発言への驚愕によるものだろう。

 

 現在の夏凜は体操服姿だ。つまり着用していることになる筈だが、この世界で『体操服』というのは現在夏凜が着ている白の半袖シャツと紺色の短パンではなく別の物で、元々のソレは不良が着ている何かに見えるらしい。

 では、何が制服で、何が体操服なのかと言うと、今回の世界ではどうやら『下着姿=制服』であり、『体操服=バニーガール』の衣装になるそうだ。逆バニーの姿はどちらになるのかと思ったが恐らくは制服扱いになるのだろう。

 そんな非常識な理論を常識の戻った人間に語ったところで、

 

「いやふざけんな!」

 

 眉を逆立て怒るのも当然だろう。

 しかし、郷に入っては郷に従えという言葉があり、そして一人間程度では世界に、神の意向に逆らうなど、何が起きるのか分からない。

 

「まったく……三好さん、それはともかく教壇に来てくれる?」

 

「え? あ、はい」

 

 小さく吐息する女教師は両手を叩いて夏凜を呼ぶ。

 眉をひそめながらも素直に従う彼女は教壇に脚を進め、クラスの視線を集める。

 何か問題でも解かされるのかと夏凜は思ったのだろう。俺も思った。

 

 その直後だった。

 

「不良に鉄槌を!」

 

「……ぇ」

 

 黒板に背を向けて立つ彼女の身体が固まったかと思うと、背後に立つ女教師が彼女のハーフパンツに手を掛け、一息に引き摺り下ろしたのだ。

 膝下まで下がった可愛らしいショーツが短パンの裏地で染みのついたクロッチの裏側を晒し、目線を上げると白い無地のシャツの大きさではギリギリ隠せていない夏凜の秘所が丸見えだった。

 生えかけの陰毛や恥部に周囲の視線が刺さる。

 学校で少女が晒してはいけない場所が丸見えだった。

 

「は、ぇ」

 

 約1秒。夏凜が混乱していた時間だった。

 わあ、と思わず息を呑む東郷の呼気を耳にしながら夏凜の顔が朱色に染まる前に女教師の手が電光石火の如く動く。

 いつの間に持っていたのかバニーガールの衣装を取り出す教師と違い、緩慢に視線を下ろした夏凜は自らの下半身の惨状と周囲の視線に脳が理解したらしい。

 

「きゃあああっ!? ななな、なにしてんのよ!」

 

「日直なのですから早く着替えなさい!」

 

「脱がせようとするなあ! ……ぅぅっっ!! 見るなぁ!」

 

 するりとシャツすら脱がされ上半身をブラジャーのみとした彼女はかああっと顔を赤くする。

 同年代の女子だけでなく男子すらいる学校の教室。午後の眠い時間に寝ぼけ眼を擦る生徒もいる中で、何事かと視線を向ける生徒たちに見られる夏凜。

 

 恐らく周囲の視線に性欲は宿ってはいなかっただろう。

 間違いなく美少女の一人である彼女の痴態を目にして喉の一つも鳴らさない男子生徒などいるだろうか。彼ら彼女らにとっては何か騒いでいるなという認識だ。

 

 あの視線の意味は、単純に物珍しさが込められているのだろう。

 そうでなければセクハラまがいなことをした女教師は解雇不可避であるし、周囲の男子たちは歓喜に叫び、女子はその男子たちを見て「ちょっと男子ー!」と叫ぶだろう。

 だがこの世界において、そんなことは一切ないらしい。

 

 それこそ全裸になろうとも本当の意味で認識はされないからダメージは無いのだ。

 ──ということを語ったところで、見られた当人としては「はいそうですか」とすぐに納得は出来ないのも事実だ。

 

「ぅぐぐッッ!! 力つよッ! 離しなさいよ、フンヌラア!!」

 

 どれだけ恥ずかしかったのだろうか。女教師に負けず劣らず電光石火で短パンを引き上げようとするも手が滑ったのか赤と白の年相応な柄が入ったショーツのみを手にした。慌てて引き上げるも今度は女教師の妨害で恥部に布地が食い込まされる。

 ピクッと肢体を身じろぎさせる彼女は薄く目尻に涙を浮かべる。

 

「んんっ! ちょっ……止めなさいよ! あんた教師でしょうが。……さては人に化けたバーテックス!? いや赤嶺友奈?」

 

「────」

 

「なんとか言いなさいよ……ふわぁあ!? やっ、それ止めなさい……ぁっ」

 

 無言で脱がせようとする女教師との攻防は夏凜が劣勢だった。

 ぐいぐいと秘所をショーツで弄られ、徐々に身体に熱を帯びていくのが見て取れた。ショーツを引っ張る力に緩急を入れて夏凜を弄る女教師は隙を見たのか、すかさずブラホックを外す。

 

「ぁぁあぁあああ!?」

 

 ブラジャーを脱がせられ、ぷるりと小振りな乳房が露わになった。

 体勢を崩し、咄嗟に胸元を手で覆う夏凜を読んでいたように、今度こそ少女のショーツは女教師の手によって恥部から透明な糸を引きながら引き摺り下ろされた。

 

 完成型勇者が全裸の哀れな少女になった瞬間だ。

 

 一瞬で顔を真っ赤にした全裸娘が教室に出来上がった。

 だが、それで終わることはない。その小麦色の健康的な肌を覆い隠すように黒色のバニーガールの衣装が夏凜の抵抗を無視して着させられる。

 

「あ、あれ、なんで身体が動かないのよ! ちょっ、やめ、やめなさいよ」 

 

 あっという間だった。

 瞬きをすると逆バニーではない、普通のバニーガールの恰好をしていた夏凜は女教師に解放されると同時にへなへなと崩れ落ちる。

 

「こんな……こんなのって……」

 

 頭に乗せた兎耳が垂れ下がる。

 黒色の網タイツ、肩紐のないハイレグタイプの衣装とカフス、蝶ネクタイ。夜のお店にいそうなバニー衣装はバスト上部分が捲れ、桜色の乳頭が覗く。

 完成型勇者の敗北。生徒は先生には勝てないということをクラスメイトの前で分からされた夏凜は乳首が丸見えの状況に気づかずに床に膝と手を置いて項垂れる。

 

 流石に精神的なダメージが残ってしまったのか。

 周囲は特に何も気にせず夏凜から黒板に目を移しノートに中身を移していく中、俺は片手を上げて女教師の目を惹く。

 

「先生! 夏凜さんが体調悪そうなので保健室へ連れていきます!!」

 

「うむ、許可する! では諸君、授業の続きをしようか。残りは私の身体で教えてやる!」

 

 いったい、どんな授業になるのか。

 現実の体操服から別世界基準の体操服(バニー衣装)になった彼女の肩を貸し、東郷の心配そうな視線に問題ないとアイコンタクトをして教室を出た。

 

 授業中だからか、廊下は静かなものだ。

 たまに見回りの先生が乳首丸見えの夏凜と俺を見るが、特に何も言うことはない。

 

「……これって夢?」

 

「……」

 

「夢よね」

 

 分からされたのがよほどショックだったのか。

 捲れたバストを戻そうともせず光のない瞳で虚空を見る夏凜と共にやがて保健室に辿り着く。

 ガララっと音を立てて開けると漂うのはアルコールの匂いだ。

 

 清潔感を感じさせる白を基調としたやや広め部屋。

 ガラス引き戸の棚には薬品などが見え、教師が座るべき机には誰もいない。右手にはピンク色のカーテンが仕切りを作り、隙間からは誰かが寝ているのだろうベッドが軋む音が聞こえる。

 

「怪我人ですか?」

 

「あ、はい。そうなんです。心を少し」

 

 ピンク色のナース服を着た高嶋がカーテンを開けて近づいてくる。

 清楚な衣服は彼女によく似合っているが、ウサギのカチューシャは少し邪魔に感じた。

 

 近づいてくる彼女の背後、チラリと見えたベッドに寝転がるのは杏、千景といった西暦組の少女だが、その前には玩具片手に膝立ちで彼女らを見下ろすひなたが一瞬見えた。

 珍しく若葉がいなかったが特に気にすることなく、同じ光景に目を剥いている夏凜の腰に手を回し、天使の如き笑みを見せるナースに告げる。

 

「実はかくかくしかじかで」

 

「なるほどー。なら一番奥のベッドが空いているので使ってね!」

 

 チックンと俺の腕に指で元気を注入する高嶋。元気が出た。

 はむ、とバニーガールとなった夏凜の腕を甘噛みする彼女に導かれる。

 

「弥勒先輩……もっと脚を広げて下さい」

 

「こうですの? こんな格好、あなた方以外には見せられませんわ……」

 

「じゃあ、挿入しますね。芽吹先輩はもう少し待っていてくださいね」

 

 カーテン越しのシルエット。

 腰に何か肉棒のような何かを着けた小兎に人には聞かせられない声を上げる兎たち。公共の場所であることを理解しているのか必死に声を抑えるも、肉が肉を叩く音と時折漏れる喘ぎ声に、防人サーとその姫がいることを確信した。

 

「この世界……いったい何なのよ……」

 

「夢だよ。夏凜」

 

 他の住人を無視してシングルサイズのベッドに座ると夏凜がボソリと呟く。

 白色のシーツは彼女が座ると同時に僅かに皺を寄せ、一息吐いて胸元の惨状に気づいて腕で隠す彼女は、しばらく黙り込むと俺の肩に身を寄せる。

 頬をくすぐる少女の髪から甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 

「亮之佑」

 

「どうした」

 

「私、みんなに、裸見られちゃった。胸も……あそこも全部」

 

「誰も覚えてないよ」

 

「あんな恥ずかしい目にあわされちゃった」

 

「俺がもっと恥ずかしい目にあわせてやる」

 

「なにそれ。……というかさっき亜耶とかいなかった? ──んむぅッ!?」

 

 面倒臭いので唇を奪う。

 肢体を強張らせる夏凜も、舌を絡め、頬裏を舐められ、ねっとりとした情熱的な口腔行為をし続けると、ぼんやりとした表情を浮かばせる。

 唇を離すと透明な糸が橋を繋ぎ、その繋がりが切れる前に寝台に押し倒す。

 顔を赤らめて、ぎゅっと瞼を閉じる彼女の耳元に囁く。

 

「なに、を」

 

「すまなかった。もっと辱められる前に俺がなんとかすべきだった。でも、どうしても、夏凜が恥ずかしがる姿が、綺麗な身体を見たいという欲求で動けなかった。ごめんな」

 

「……ッ、べ、べつに……あんなの完成型勇者の私にとって大したことじゃないわよ。亮之佑が変態なのは今に始まったことじゃないし別にいい──んんッ」

 

 唇を重ねる。

 今度は彼女から舌を絡めては、熱を宿した瞳を瞬かせる。

 

「──ありがとう。やっぱり夏凜は優しいな」

 

「……う、うるさいわね。するなら早くしなさいよ」

 

「何をするって?」

 

 ドスッと肩に拳をぶつけ、プイッと顔を背ける夏凜。

 そちらに顔を向けると今度は反対側に少女は顔を向ける。それを二度三度と繰り返せば普通に怒るだろうと思い、悪戯心をグッと自制する。

 背けた方の頬にキスを落とし、慌てたように顔を向ける少女の唇を奪う。長く、甘い口腔行為の果てに、しおらしくなった夏凜に俺は告げる。

 

「夏凜。俺が忘れさせてやる。恥ずかしいことも嫌な夢も全部」

 

 目を伏せ、小麦色の肌に熱を帯びさせる夏凜。

 腹部に押し付けられた雄の存在に身じろぐ彼女は負け惜しみのように呟いた。

 

「……ふん。精々、期待してあげる」

 

 

 




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【番外】保健室にて

 少女たちの甘え方は様々だ。

 迷うことなく抱擁をしてきたり、急に手を繋いでは上目遣いで嫌がっていないかを窺ったり、吐いた言葉とは裏腹に多少強引に抱き締めるのが正解だったり。

 

「ん……っ」

 

 そして目の前の少女、三好夏凜の甘え方は意外にも素直な物だ。

 人前では気を張りがちな彼女も、カーテンという仕切り一つで抵抗もなくキスを受け入れる。恐らく教室の衆人観衆で同じことをしても受け入れるという予感はあるが、同時に終わった後に照れ隠しで暴力を振るいそうだと思った。

 だから人目のない場所で、お姫様を抱くように、いっぱい甘やかす。

 

「やぁ………んむ……っ」

 

 とろんとした眼差しで俺を見る夏凜。

 期待には応えられたのか、肩紐のないバニー衣装のバスト上部から捲れて覗く乳房を揉んでも赤面の反撃は訪れない。やや起伏の乏しい乳は柔らかく、ツンと尖った乳首を指の腹で擦ると小さく喘ぐ彼女は無抵抗で俺にされるがままだ。

 円を描くように乳首を指で弄りながら、黒い衣装越しに少女の恥部を指で刺激する。生地越しに感じる柔らかな感触は少女の秘所であり、上下に摩ると太腿をくねらせる。

 

 網目状の黒タイツに覆われた健康的な太腿がシーツに伸びる。

 あぁ、と喘ぐ彼女の腹部を下から上に手で撫でると背筋を反らして声を漏らす。

 

「はぁんん……ッ!」

 

 普段なら絶対に漏らさない甘い女の声。

 自身の声を耳にしたからか、肢体に熱を帯びる夏凜はぎゅっと唇を結ぶ。

 だが、そんなことをしたらどうしても喘がせたいという嗜虐心をそそることを彼女は理解していないのか。俺は無言で乳房ごと乳首を口に含む。

 

「あんっ!! 今のはぁ、ち、ちがっ」

 

「────」

 

「……っ、ふ、ん……ぁ、ッッ、ぅ」

 

 口元を手で覆い、飴玉のように転がされる乳首からの快感に声を押し殺す少女。周囲の状況を理解しているのだろう。大小問わず聞き覚えのある嬌声に自らも参加したくはないという羞恥心と理性が見て取れた。

 俺はそれが嫌だった。つまりまだ彼女には余裕があって、俺のテクニックでは彼女から淑女を気取ろうとする理性を剥ぎ取れていないということに他ならないから。

 

 乳首と唇、彼女の柔らかな部分に交互にキスをしながら、俺の空いた手が少女の太腿の付け根に伸びる。タイツの化学繊維の艶々とした感触を掌で味わいながらそれを引き裂く。

 黒い皮を破くと肉付きの良い柔肌が露わになる。

 

「破くなぁ………んむッ」

 

 僅かに身体を強張らせる夏凜だが、何度かの舌を絡ませるキスで脱力したのを確認すると下腹部を覆う黒色のレオタード生地を横にずらす。

 

「ぁ……」

 

 甘えた声で抗議する仰向けになった夏凜の横に座り上半身にキスの雨を降らし、下腹部は唯一の生地をずらされて露わになった少女の秘所を手で弄る。

 生えかけの陰毛とぴちりと閉じた陰唇は、年頃の乙女が隠したい所だ。何度同じ時を繰り返しても基本的に学生の彼女に、衆目環境での全裸晒しは堪えたろう。

 労う意味も込めて、やや汗ばんだ媚肉を指で撫でると、ゆっくりと指を挿入する。

 

「ん、ぁぁ………亮之佑のが……入ってくる……っ」

 

「夏凜のここ、綺麗だね」

 

「あ、ありが──んぁっ!?」

 

 様々な刺激や快楽は彼女の肉壺から新鮮な蜜を垂らす。

 指を呑み込んだ花弁は彼女の声に応じて収縮すると同時に、膣襞がきゅっと締め付けを強める。ぬぷぷ、と指で割り開いていくと夏凜の腰が浮かび上がる。

 

「ん、んんっ……」

 

 健康的な肌に薄く朱色を差す彼女が熱い吐息を漏らす。

 大きな瞳を見開いては、自らの媚肉を弄る俺の腕を掴んでは不安気な表情を見せる。その不安は絶頂への恐怖か、味わったことがある故に帰ってこられないことを危惧しているのか。いずれにしてもそんな思考も俺は吹き飛ばすつもりで指を曲げる。

 彼女が悦ぶ膣襞のポイントで、弱点で、指を曲げて摩った。

 

「ぷぁぁあっ!!?」

 

 簡単に彼女は達した。

 ちょろい肉体は快楽に脆弱で、驚愕混じりの声が保健室に響く。一瞬、ピタリと他の少女たちの声が止まった気がするがそれを察して口を噤む余裕は今の夏凜にはない。

 指先一つで、結んだ唇を震わせて、あられもない声と蜜と芳香を巻き散らす。

 

「ぁぁぁっっ! そ、それっ、んんんっっ!!」

 

 脚の指を丸めて、二度三度と腰が浮かぶ。

 浮かぶ腰がシーツに沈んでは、シーツを掴む指に力を入れて、また腰が浮く。

 

「やっ、だめぇえええっっ!!! イっぐぅうッ!!!」

 

 彼女は面白いほどに絶頂に達した。

 花弁からは蜜を溢れさせ、時には勢いよく飛沫が腕を濡らす。それでも指の動きは繊細に、大胆に、執拗に、粘着質に、少女から女の悲鳴を引き出させ脳に快楽を叩きこむ。

 

「んぁあああッッ!!!」

 

 暴れるなと尖った乳首に噛みつくと腰が浮く。

 逃げるなと媚肉の悦ぶ場所を指で摩ると首を反らせる。

 唇を奪い、舌を絡め唾液を啜ると腕の中で小刻みに痙攣を繰り返す。

 新鮮な蜜が肉の泉から湧き出るので、それを陰核に塗りたくっては指で弄ると腰が浮く。

 

 それをただ何度も飽きるまで続ける。何度も、何度も。

 そして戯れに果実の皮を剥くように抵抗の弱くなった少女のバニー衣装を脱がせ、引き千切っていく。小麦色の健康的な肌と日に焼けていない部分の白い肌には汗が伝う。やがて夏凜が身に着けているのは、腕のカフスと蝶ネクタイとウサギ耳のカチューシャだけとなった。

 薄く割れた腹部を上下に動かして荒い呼気を繰り返す彼女を見下ろす。

 

「夏凜ちゃん」

 

「ぁぇ……?」

 

 すっかりと呆けた顔には羞恥も理性もない。

 ただ何度も法悦の空へと上らされ、戻ることを許されなかった結果、髪を肌に張り付かせ、むわりと雌臭を周囲に漂わせる夏凜の陰唇の縁を指でなぞる。

 

「ここに挿れたいんだけど、どうしたら良かったんだっけ?」

 

「──、………」

 

 返事は無かった。

 ただ、彼女は無言のまま行動で返事をしてきた。

 

「……ん」

 

 身体を起こし、皺の寄った寝台に顔を向ける夏凜は腰を上げる。

 滑らかな背中と白い尻肉を俺に見せるように寝台の上で四つん這いになる。

 そして。

 

「……ほら」

 

 恥ずかしがるように、或いは無意識に男を誘うかのようにくびれた腰を振る彼女は引き締まった臀部を俺に見せつけるように突き出し、閉じていた脚を自ら広げる。

 濡れそぼった秘所と菊座を見せながら、そして味わったことがある故に後ろから肉竿を挿入し易いように腰の高さを微調整する少女。

 

「──こうすればいいんでしょ」

 

 内腿を伝う透明な雫がシーツを汚す。

 滑らかな背中には汗が浮き、髪から覗く耳が赤い。

 

「ふーん、夏凜は後ろから滅茶苦茶に突いて欲しいんだ?」

 

「う、うるさいわね。こうしないと私がするまで手とか口で言うこと聞かせようとする癖に」

 

「そんな記憶はないな」

 

「はあ!?」

 

「うるさい」

 

「んんッ!」

 

 ぱん、と臀部を叩くと揺れる尻肉。

 普段から鍛えているからか無駄な脂肪のない臀部は、しかし女子特有の柔らかさと弾力があり思わず二度三度と掌で叩くと唸り声が聞こえてくる。

 髪を揺らしながらも体勢は崩さない彼女は涙で滲む瞳を俺に向けて睨みつける。

 

「いいから、はやくしなさいよ……」

 

 乱暴な行為には目を瞑り、男が挿入し易いように脚を広げる。素直に俺の教えを受けて卑猥な方向でも完成型を目指す彼女は悪態を吐きながら子種をせびる。

 そのギャップに俺は反り立つ怒張から垂れる涎を彼女の内腿で拭い恥部に宛がう。

 にちにち、と亀頭と媚肉が吸い付く度に粘着質な音が鼓膜に響く。陰唇から新鮮な蜜液が肉竿の先端をコーティングしながら、雁が入るまで割り開いては抜く。

 

 結合部からは卑猥な水音が聞こえる。

 まだ奥まで挿入すらしていないのに、彼女は耐えられないように小さく背中を震わせる。

 

「……んっっ、ぁ」

 

 ふー、ふー、と顔を枕に伏せる夏凜の荒い呼気。

 その一呼吸ごとに少女の浅い部分を抜き差しする俺に乙女の大事な場所を弄ばれていることが気に入らなかったのか、顔を向けて文句を告げようとした瞬間に、

 

「じ、焦らしてないでさっさと──」

 

 一息に奥まで貫く。

 

「──オッ!!?」

 

 何が起きたのか分からない。

 そんな表情をする夏凜の身体は躊躇うことなく素直に絶頂に達した。媚肉が怒張に吸い付き、俺の形を覚えていた肉壺は襞の一つ一つが絡みつく。

 温かくぬめる肉沼に沈み込んだ怒張に、数秒遅れて理解が追いついた夏凜の下半身は小刻みに揺れ動き、シーツを掴む手に力が籠る。

 

「ォぁ? ぁぇ……ッ」

 

 顔を伏せ、ダンゴ虫のように身体を丸めようとする彼女の腰を掴む俺は腰を揺する。

 

「ァぎっ、はぁああっ! ぁひっ!」

 

 彼女の内腿と俺の太腿がぶつかる。

 菊座をきゅっと締める尻肉を掴み発情した犬のように乱暴に腰を振る度に少女はあられもない声を漏らし、最奥を突かれ喘がされる。

 

「ゃんっ、ぁっ、ぁぁっ! ぃぅ……ッ!」

 

 乱暴に雄竿を最奥へと突き、雁で膣襞を擦るように引き抜く。

 一枚一枚の襞、特に彼女が女の声を上げる場所を重点的にピストンしていくと、前に前に這うように逃げようとする夏凜。当然逃がさないと少女の腰を掴んでは引っ張り、屈服させるように腰を叩きつけると背中をのけ反らせた。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 ぷしっとシーツを濡らす飛沫が結合部から噴き出す。

 小水に見間違えるような勢いは俺の腿を濡らし、法悦の空へと昇る少女の後ろ姿を見届ける。

 奉仕されるのも良いが、やはり奉仕することで少女が悦んでいる姿を見たい。自分の腕が、肉棒が、テクニックが、神に見初められた少女を快楽に染め上げることに、乙女の園を暴き汚濁で取返しのつかない色に染め上げる以上の快楽が脳を震わせる。

 

 こんなことを考えているのだ。勇者部の極一部でサディスト扱いをされるのも仕方ないことだろう。それを改めるつもりはないが。

 背後から膝立ちで羽交い絞めし、汗と愛液で濡れた陰核の皮を剥き、露出した肉芽を指先で虐める度に愛液でシーツに染みを作り、一人の雌へと生まれ変わる様を見届ける。

 

「ひぁぁああああっっっ!!!」

 

 クリクリと陰核の根本から先端までを指の腹で擦る。

 硬い肉粒を上下左右、リズミカルに指で押し潰し、最後に爪で弾く。

 

「んひッ!? それっ、それっ、だめぇええっっ!!」

 

 汗ばんだ背中を抱き、慎ましい乳房を掌で揉む。

 陰核だけではなく乳首を指で弄る度に怒張を締め付ける。

 

「──ォぉッ、ぁぇ」

 

 乳房が小さい方が感度が良い。

 いつだったか勇者部の誰かがそんなことを言ったような気がしたが、ここまで乱れていれば、もう何をしても気持ち良いのかもしれない。

 

「どっちが気持ちいい?」

 

「わかんないっ……どっちもっ! あたまおかしくなるっ!」

 

 肌に髪を張りつかせる夏凜は悲鳴のような嬌声を上げる度に怒張の締め付けを強くし、クリトリスへの攻めで口端から涎をこぼす。

 背筋だけでなく、首を反らし、虚空を見上げる彼女の唇から舌を垂らし法悦の空で絶頂に舞い続ける表情に勇者と思える要素は欠片もない。

 ただ強がって、強がるばかりに快楽の沼に沈められた哀れな少女がいた。

 

 普段の姿からは随分と遠くなった姿を哀れに思う。

 一人の勇者から女を引きずりだしたことに満足感を抱きながら、せめてもの責任として少女の脳と身体にありったけの快楽を与えるべく、乳頭と陰核への攻めを行う。

 

 どちらも既に硬さを帯びた肉粒は指の腹に潰れる。

 汗に塗れた乳首と蜜液で濡れた陰核を指で転がすと面白いほどに暴れる。

 

「んぁぁああ……ッッ!!」

 

 全力の反抗だが幾度かの絶頂で足腰に力が入らないのか。

 背後の下賤な男を振りほどくことは出来ず、悪戯に身体を弄ばれ、自らの弱い所を指先一つで穿り、摘ままれ、挟まれ、転がされる度に声が枯れるまで少女の嬌声が響く。

 

「イッく! イっぐぅぅっ!! ──!! ぁぁっ~~~~!!!」

 

 ぷしっ、ぷしっと結合部から小水が勢いよく噴く。

 一度腰の動きを止めると、汗の浮かんだ額に髪の毛を張りつかせた夏凜の顔が力なく項垂れる。時折腰をビクッと震わせる彼女を背後から抱き、その顔に目を向ける。

 

「……エッチな顔」

 

「…………」

 

 きっと家族ですら見たことのない絶頂に浸る夏凜の顔。

 遠くを見つめる双眸、だらしなく歪んだ口端から涎が垂れる。

 

 思わず呟いた俺の言葉を否定する言葉もなく、少女はゆっくりと顔を上げる。

 光の消えた瞳で俺を捉える彼女は、上目遣いでキスを求める。

 

「ん…………ちゅーして……」

 

「……」

 

「んむ──」

 

 膝立ちになった俺と夏凜は唇と結合部で水音を奏でる。

 今にも崩れ落ちそうな夏凜の乳房を揉み、後ろから彼女の臀部を鼠径部で叩くようにピストンをする。相手に快楽を与えるだけでなく自分が達するように速度を上げる。

 

 軋むベッド。

 高鳴る鼓動と眼前には行為に夢中になった少女。

 

「もっと……それ、してぇ!」

 

 普段の彼女が聞けば驚き赤面するような甘い媚びた声。

 そのことに関して問い続けると照れ隠しで殴りかかってくることを理解しているので、俺は夏凜の腕を掴み、後ろから肉棒を突き上げては唇を重ねる。

 

「ぁっ、ぁ、ぁぁっ」

 

 髪を振り、可愛らしい嬌声を周囲に漏らす。

 独特な弾力のある臀部を鼠径部が押し潰す度に愛液と汗がシーツを汚す。時折ビクンと背筋を反らす度に肉竿を引き締めながら目尻から涙を頬に伝う夏凜は乱れる。

 

 交尾をするように、ただ激しく腰を揺する。

 腕を掴まれ、子種を注がれるのを待つだけの彼女は無意識のうちに腰を振ってはより深い快楽を求める。理性をかなぐり捨てた夏凜の喘ぎ声に導かれ奥歯に食い縛る。

 

「うぐっ」

 

「んぁぁああッッッ──!!」

 

 勢い良く白濁が噴き出す。

 射精の絶頂に目を閉じながら背筋を反らす彼女の肌に密着しながら、彼女の奥の奥を汚す。極上の快感に意識が溶けそうになりながら腕に抱いた少女の膣奥に一滴残らず注ぐ。

 

 ぎゅううっと膣襞が肉竿を締め付けて白濁が吸われ、飲み込まれる。

 荒い呼気と鼓動がどちらのものか、背中と胸板を密着させ目を閉じると分からなくなる。汗ばんだ彼女の髪の毛に鼻を突っ込むとゆっくりと呼吸を続ける。

 

「すぅー……はぁー……」

 

「……ッ、なに、嗅いでんのよぉ……変態」

 

「汗臭いなって。夏凜ちゃんの体臭がなんかエッチだなって」

 

「は、はあ!? き、キモッ! さっさと離れなさいよ」

 

「すぅー嫌だ、絶対にすぅー離れない! おっぱい小さいのに下はちゃんと生えてて夏凜ちゃん可愛いよ腋ペロペロ~。敏感でくそちょろ夏凜吸い最高なんよ~」

 

「いやぁああっ!! 離れなさいよぉ……待っ、今敏感だからそこは──」

 

「オラッ! イけ! 絶頂の余韻でもう一回イけ!」

 

「誰が……く、ぅっ、~~!」

 

 嗅がれたことか、汗か、発言が問題か。

 背後の男から離れようと身をくねらせ、俺の手に震わされる彼女の結合部からゆっくりと怒張が抜けると、逆流した白濁のソースが蜜液と共に内腿を伝い、咄嗟に夏凜が手で隠す。

 その感触に僅かに形の良い眉をひそめると、ジロリと半眼で俺を睨む夏凜。

 

「うわ……出し過ぎよ……」

 

「夏凜の膣内が気持ち良くて」

 

「……ッ、あ、あっそう。まあ完成型勇者だし? それぐらいは当然よね!」

 

 自分の身体の気持ち良さにも自信があるのか。

 まだ混乱しているのか妙なことを口走る彼女の前に立ち上がると肉棒を見せる。

 

「……なに見せてんのよ」

 

 愛液と白濁で汚れた肉竿を彼女の鼻先に突きつける。

 すん、と汚濁塗れの怒張の匂いを嗅いで赤面する彼女は既に何をしたら良いのか理解している。頬に張り付いた髪を鬱陶しそうに耳にかけると、小さな口を開ける。

 

「ぁー……ん」

 

 汚れを自らの口で清める勇者。

 ちゅぷ、ちゅぷ、と稚拙ながらも舌と唾液を怒張に絡め、夏凜が射精後の肉棒への感謝の奉仕をする。鼠径部に鼻息を吹き掛けながらゆっくりと頭を上下させて亀頭から竿まで吸い付く。

 

「んむ……んぷっ………まず」

 

「ッ……ちゃんとお掃除覚えていて偉いねー。夏凜、上手だよー」

 

「……っ」

 

「照れるのは良いけど噛むなよ?」

 

「へれふぇない!」

 

 少女は上目遣いで奉仕に専念する。

 奉仕の合間に口内に溜まった唾液と汚濁を嚥下する夏凜。

 やがて唾液でコーティングされた竿の根本まで、舌で舐める彼女の頭を撫でる。

 従順に、以前俺が教えた通りに、自称完成型勇者は奉仕を続ける。

 それから少し時間が経過した時だった。

 

「……?」

 

 学校の保健室、その奥にあるベッド。

 他にも寝台はいくつかあるが現在は使用中だ。いずれもピンク色のカーテンで仕切りが作られているが、今はその隙間からいくつかの視線を感じた。

 興味津々とばかりに、野次馬根性剥き出しで少女たちが俺と夏凜を見ていた。

 

「んぶ!? だ、誰?」

 

 僅かに遅れて視線に気づいたのか、竿を口から吐き出す夏凜。

 恥部を隠していた手で俺を庇うように、乳房を隠していた片手は枕に伸ばす。モフモフの武器を手にした彼女は数秒前まで家族にすら見せられない顔を晒していたとは思えないほどに、その横顔に凛々しさを見せる。

 ナチュラルに守られていることに心の乙女をキュンとさせながら、片手に持った枕が野次馬に射出されるのを防ぐ為、夏凜の腕をそっと掴む。

 

「ちょっと今は……」

 

「大丈夫。ほら出ておいで」

 

 俺の優しい声音が通じたのかゆっくりとカーテンが開かれる。

 覗いていた大きな瞳は見知った少女、国土亜耶と楠芽吹。好奇心に駆られたのだろう、可愛らしい姫とサークルのリーダーは乱れた下着を隠さず、カチューシャのウサギ耳を垂れ下げる。

 

「あ、ごめんなさい。……その、声が大きくて気になっちゃって」

 

「ええ、夏凜の声が大きい所為で驚いた亜耶ちゃんの神樹が弥勒さんの大切な所に当たって大変なことになったのよ」

 

 ぴらりと芽吹がカーテンを捲る。

 白いシーツは薄汚れ、仰向けガニ股全裸開脚でダブルピースをした状態のまま気絶している弥勒夕海子の姿は犯されでもしたのだろうか。恐る恐る夏凜が目を向けた先にある亜耶が腰に生やした黒々とした怒張の玩具によるものだろう。

 少し得意げな表情で手に持ったスマホで既に撮ったらしい夕海子の醜態画像を俺のスマホに送っては笑みを見せる可憐な亜耶の姿に、傍にいる芽吹はニッコリと笑みを浮かべる。

 

「えっ……それでああなったの……?」

 

「ふふっ、そうよ夏凜。弥勒さんは亜耶ちゃんのでこうなったのよ」

 

 それは大きく、硬く、大量のイボ付きの反り立った黒い肉棒だ。

 乙女の愛液を吸った怒張は異様な存在感を放っている。

 腰にベルトを巻き自らの恥部に挿入することで固定するのだろう、無垢な少女から無理やり女を引きずり出すような疑似肉棒の雁をそっと撫でる芽吹は自慢するように夏凜に告げる。

 

 唖然とする夏凜を尻目に、疑似令嬢の尊厳を破壊されたような惨状を些事だと言わんばかりな態度で芽吹がカーテンを閉じる。

 気まずそうな顔で亜耶が言葉を続ける。

 

「……それで一息ついた所で、あんなに声を出している夏凜先輩といったいどんなことをしているのかなってお二人の行為を見てみたくなっちゃって」

 

「ええ、私も気になって。どんなプレイをしているのかと。ごめんなさい」

 

「わ、私はそんなに声を出してないわよ」

 

 ──特に誰も夕海子を気にすることなく話が続く。

 交互に話す防人サーの言葉は夏凜に届いたのかプルプルと震えだす少女の耳が、頬が赤らんでいく。自分のあられもない声に苦言を呈されるのはどんな気分だろうか。

 

「あー……こちらこそごめん。俺もついつい夏凜を気持ちよくさせ過ぎちゃって」

 

「はい、お師匠様の気持ちはよく分かります! 自分の手で大好きな人の身体に触れて、誰にも見せたことのないエッチな顔を見せてもらったり、声を聞くと凄く気分が良いですよね!」

 

「……亜耶? 今何か……ねえ亮之佑。亜耶に何したのよ」

 

 俺の首を絞めようとする夏凜と掴み合う。

 くすくすと笑う亜耶の背後にはいつの間にいたのかひなたもいる。

 

「何やら楽しそうなことを話してますね」

 

「ひなた先輩は終わりましたか?」

 

 当たり前のように下着姿の彼女は機嫌良さそうにピコピコとウサギ耳を揺らす。

 彼女の水色の下着には返り血のように愛液が所々に付着し、性的な玩具を武器のように両手で持っている。

 乙女の蜜液を吸ったベルト付きのエグイ形をした疑似肉棒と電気マッサージ器具を持つ巫女は静まり返った背後を横目で見る。

 

「ええ、滞りなく。実験は失敗、千景さんも杏さんも、私ではダメでしたね」

 

「発情したウサギさんみたいでしたね」

 

「ふふ……亜耶さんも上手いことを言いますね」

 

 そんな歴戦の猛者のような姿に息を呑む夏凜。

 恐る恐ると言った様子で彼女と共に夕海子を挟んだベッドに目を向けた。

 

「……ぁぁ」

 

 思わず夏凜が呻くような惨状が広がっていた。

 歴戦の猛者に無垢な勇者が叶う筈もない。ましてゲームと本を嗜む知識だけは豊かな少女たちでは経験豊富なウサギ巫女に勝てる可能性などなかった。

 

「な、なにしてんのよ。こんな……無理やり」

 

「いいえ、夏凜さん。二人とも大変悦んでくれました」

 

 裸体を晒し仰向けに倒れた杏と、横向きに倒れた裸体の千景。

 ぐしゃぐしゃに濡れ汚れたシーツで時折ビクリと身体を震わせる彼女たち。暴れたのだろう長い髪をシーツに散らしブラジャーやショーツは体液を吸って丸まり、隅に転がっている。

 

「…………ぁ、ぁ」

 

 特に杏の方は愛液か汗かも分からないほどに全身を汚し、あられもない姿を晒している。まるで八つ当たりでもされたかのように噛み痕のついた乳房を呼気の度に上下させる彼女の姿は強姦にでもあったかのようだったが、ひなたはなんでもないような表情で夏凜の肩を掴む。

 

「……ひ、ひなた?」

 

「ええ、夏凜さん。お疲れ様です。お願いがありまして」

 

「な、なに?」

 

「夏凜さんがどうして戻ったのか。中立神の気紛れなのか何かしらの条件があるのか、調べさせて貰えませんか? もしかしたら千景さんや杏さんのように一時的に戻ってしまうだけの可能性も考えて、今すぐに。掃除の時間が終わって放課後になる前に」

 

「えっ、ぁ、うん……い、いや、まっ──」

 

「ありがとうございます! 掃除の時間も少ないですが夏凜さんなら問題はないですね」

 

 その迫力ある笑みに思わずとばかりに頷いた夏凜。

 そして自分の末路が想像ついたのだろう、慌てて断ろうとする彼女の腹部に巫女が何かを押し当て、ビクッと身体を震わせる夏凜。

 

「ん……ッ」

 

「……流石亮之佑さんですね。もうこんなに夏凜さんを悦ばせたんですね。これなら──」

 

「ひなた先輩、私も手伝います」

 

「ありがとうございます亜耶さん」

 

 ヴウウンと振動するマッサージ器具は下腹部越しに子宮を揺らす。

 咄嗟に腰を引かせるも寝台に腰を下ろした彼女は目を白黒とさせて俺とひなたに目を向ける。

 

「夏凜さん。大丈夫です。貴方がどれだけの醜態を晒してもきっと忘れてしまう。それが夢なのですから」

 

「ヒッ」

 

「だから、せっかくだから──壊れるくらいに楽しんでしまいましょう?」

 

 笑みを見せるひなたに固まる夏凜。

 それを尻目にいつの間にか傍に来た芽吹が俺を睨みつける。亜耶と先ほどまでしていたのだろうか、僅かに下乳を見せる形でずれていた白色の下着を元の位置に戻し、ウサギ耳で俺の肩を叩く。

 

「亮之佑」

 

「芽吹? どうしたの? そんなゴブリンを見るような顔をして」

 

「夏凜のことはひなたと亜耶ちゃんに任せて。あなたは私と交尾する。それでいいわね?」

 

「ふーん」

 

「何よ。夏凜と違って私は手強いわよ? 亜耶ちゃんと修練を積んだもの。今度は負けないわよ」

 

「負けたらなんでも一つ言うことを聞くなら」

 

「余裕ね。私は夏凜と違ってやられっぱなしじゃないわよ」

 

「だって夏凜! 頑張ってー」

 

「頑張ってじゃなくてちょっとは助けなさいよおおおお!!」

 

 キーンコーンカーンコーン、と遠くでチャイムが鳴るのが聞こえた。

 




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【番外】防人サークル

 『防人』と呼ばれる数十人の少女たちで構成されている部隊がある。

 男という例外はなく、全員が無垢な少女。勇者部の友奈や園子たちと違い、何らかの理由で神樹に勇者として選ばれなかった少女たちを大赦が集め、反攻作戦の為の布石として現実世界で活躍していたと聞いている。

 

 その部隊、防人の少女全員をこの異世界に呼ぶことを神樹はしなかった。

 リソースの問題か、何か別に問題があったのか。巫女に聞くと恐らくは前者とのことだったが、いずれにしても防人部隊からは代表として数人の少女たちが召喚された。

 

 巫女である国土亜耶とリーダーである楠芽吹を中心としたメンバーである。性格は誰にでも優しく天使扱いされる亜耶と、それに癒されながら戦う防人。

 何故だがその姿を見ていると、大学にいる可愛い姫とそれを祭り上げてはチヤホヤするオタクサークルという構図を思い描いてしまうのだ。

 

 理由は分からない。

 前世での何かが彼女たちに妙なフィルターを掛けてしまったのかもしれない。

 

 そんな防人サークル、俺の中でのみ呼んでいる防人サーたちはいつの間にか不健全なサークルになってしまった。いわゆるヤリサー。それも姫が部員に性的にちょっかいを出す類のだ。そして基本的に姫の上目遣いマシマシでのお願いに断る術はない。

 

「……一緒にベッドに入っても良いですか?」

 

「いいけど、その変な道具は何? 亜耶ちゃん」

 

「身体の奥を解し、戦闘の時の疲労や満開の副作用を減らす為に購入した道具です。どうしても皆さんに気持ちよくなって貰いたくて! ……マッサージ受けてくれませんか?」

 

「亜耶ちゃん……! もちろんよ。せっかくだから後で雀や弥勒さん達にもどうかしら?」

 

「わあ! ありがとうございます芽吹先輩! 頑張りますので愉しんで下さいね」

 

「ええ、亜耶ちゃんがしてくれるんだもの。楽しみよ」

 

 天使はいつの間にか堕天していた。堕天使アヤとなっていた。

 純白の羽は黒く染まり、清楚な衣服の下には蠱惑的な下着が肌を彩る。その大きな双眸に覗く感情は人への奉仕とそれにより人が悦ぶ姿への仄暗い喜悦だ。

 それに気づかされたのは、純真無垢な眼差しで亜耶が持っていた玩具の使い方を身体で教えて貰った後だった。それも防人サークルのメンバー全員が亜耶に教わった後だ。

 

 亜耶から防人への奉仕は決して無駄ではない。

 満開の副作用である身体への熱はある程度解消されたという。

 

 同時に姫によるサークルクラッシャーは以前までの防人の関係を壊した。淫熱を持ち、快楽を貪り、淫欲の解消の為に一夜を過ごす。我慢は毒で、隠すことは悪となった。

 姫である亜耶の前では、バーテックスという化け物と戦う歴戦の防人たちも、ただその手腕に転がされ喘がされ啼かされるだけの女だった。

 同時に、自分の中の新たな一面を仲間たちと共有し、防人の、勇者の結束は深まった。

 

「えへへ、いっぱい悦んで貰えて何よりです。私も頑張った甲斐がありました」

 

「……ねえ、亜耶ちゃん」

 

「はい?」

 

「亜耶ちゃんは、その、……こういうのって誰かに教えて貰ったの?」

 

「こういうの?」

 

「あっ、えっと…………エッ、エッチなことよ」

 

 まさか独学で習得した訳ではあるまい。

 あの向日葵のような暖かな笑顔の裏側で、少女の中に眠る女を引き摺り出すような暴力的な快楽の技術を身に着けていたなんて。想像も出来なかったから。

 

 乱れた寝台の上で、裸体をシーツで隠す芽吹は問い掛ける。歴戦の技術を持つ彼女に経験人数を尋ねる男のような弱々しい声で問う芽吹に対して亜耶は笑みを見せる。

 その蠱惑的な微笑みは誰かを連想させる。身近な誰かを。

 小首を傾げていた少女は蠱惑的な微笑を浮かべて彼女の疑問を解消した。

 

「お師匠様に沢山教えて貰いました。芽吹先輩が悦んで貰えてうれしいです。……沢山、私も道具の使い方や気持ちいいことを教えて貰いましたから。少しでもお役に立てて良かったです」

 

「──師匠」

 

「芽吹先輩や弥勒先輩、雀先輩、しずく先輩やシズク先輩にもお裾分け出来て良かったです。こんな気持ちいいこと、知らないなんて損ですから。でも皆さんやっぱり可愛かったです。弥勒先輩はお胸と声が大きいですし、しずく先輩もシズク先輩もどちらもお尻が弱くて、雀先輩はあんなに騒いでいたのにいざという時は無言で──」

 

「お師匠様の、名前は?」

 

「それは………秘密です」

 

「亮之佑ぇぇええええええッッ──!!」

 

 激昂する芽吹は最低限の衣服と武器で走り出す。鬼を宿した顔は見る者をわななかせ、道を譲り、その激情の向かう相手に同情と憐憫を向けるだろう。

 勇者部という乙女の園。見目麗しい少女たちが集う花園にいる雄は一匹だけだ。亜耶という天使に他の男子を近づけさせることなど防人サーは許さない。

 性的な知識が豊富で、亜耶に近しい師匠を名乗る男に芽吹は心当たりがあった。

 

 やがて壁ドンされて問い詰められた男は告げた。

 

「真実は……私が亜耶のお師匠様だ」

 

「死ねぇえええええ!!」

 

 戦いがあった。

 合意の上であったと弁明しても聞く耳を持たない。防人の戦衣を着用することはしないが木刀片手に眉間に皺を寄せて、亜耶と性行為に及んだ代償を払わせようとしてきた。

 

 だが防人の姫を汚した男は無抵抗でやられるつもりはない。

 当然だ。楠芽吹は別に亜耶の彼氏という訳でもないのだから。奪うも何も国土亜耶は誰の物でもない。ツンデレ暴力少女という枠は夏凜だけで十分なのだ。

 

 結論だけ言うと、芽吹は戦いに負けた。

 勇者の力も使えない相手に負けることなど無い。そんな驕りがあったのかもしれない。そうは思わずとも欠片程度には油断をしていたかもしれなかった。

 

 防戦一方で暴力に屈せず言葉巧みに誘導し、少女たちの身体を速やかに屈服させた。弟子に快楽を教えることが出来て、その師匠に出来ない筈がない。敗因は快楽という深淵をどれだけ覗き込んでいるのか。その薄暗い沼にどれだけ自らの精神を沈めたかだ。

 

 防人サーのメンバーは無垢だった。無垢だから簡単に汚れ敗北の味を教わった。弟子と師匠での性的コンボは大半の防人を快楽という沼に沈めることに成功した。

 唯一、諦めなかったのは芽吹だけだった。

 

「私はぁ……負けて、なぁい……っ!」

 

 ベッドの上での戦いで、芽吹に何度も「負けた」と宣言させた。時には夏凜の前でも。だが、心は夏凜ほどチョロくない芽吹は何度も挑んできた。何度も何度も。

 そして戦いの果てには友情が生まれ、絆が生まれるのだ。勇者との絆は決して戦場だけで育まれるものではない。ベッドの上から始まる絆もきっとあるという話だ。

 

 

 

 

 

 

 

「──そして今に至るって訳よ」

 

「別に絆を育むとか格好いいことはないでしょう。私たちはそういう仲ではないわ」

 

「セフレ?」

 

「噛むのと殴るのどちらが良い?」

 

 そう告げる芽吹は勘違いするなと鋭い眼差しを向ける。

 時代が違えば女騎士の一人として活躍したかもしれない。どことなく性質が若葉と似ている彼女が着用しているのはブレストプレートでも甲冑でもない。

 自ら脱いで俺の顔に投げつけられたホカホカの下着を手に取る。

 

 純白のブラジャーには最低限の飾りしかない。大赦支給のシンプルで前後を判明させる為の小さなリボンのついたショーツは彼女自身の下着への無頓着さが見て取れる。

 無駄を嫌い、効率を追求する姿勢は嫌いではないが遊び心は欲しい。

 裏返してみようとする俺から下着を奪い、隣のベッドに投げる芽吹に言葉を投げる。

 

「ちょっとだけ互いの身体を使う仲?」

 

「は? 違うわよ、亮之佑。私はただあなたに負けたくないだけ」

 

 あくまで勝負をする仲。

 意味の分からない仲だが、若葉と同じ騎士とか武士の精神を持つ少女との関係もそれなりに長く続いている。一緒にゲームで城を始めとした建造物や街を創り、そして飽きたら爆撃で木端微塵。マジ切れする彼女と何度も戦い、何度も仲直りした。

 勇者部の友人として普通に遊んで、普通に性行為で勝負をする仲だ。

 芽吹が勝利を勝ち取るまで勝負は続けられるのだろう。

 

「あなたお得意の前戯は別にいいから、早く挿れなさい」

 

「寧ろ前戯の方が本番じゃないか? ああ、そっか。いつも挿入前にフニャフニャにされるもんな。それも亜耶の前で。夏凜もいる。あんな情けなく泣いちゃう姿なんて嫌だよね」

 

「はあ!? 違うわよ! 泣いてないし、そもそも勝負は挿入してからよ」

 

 寝台の上で仰向けになる俺の腰に跨る芽吹。

 一糸まとわぬ姿となった彼女は、先ほどまで亜耶と交わっていたのだろう、日焼けした肌と日に焼けていない胸や腹部などの白い肌に薄い桜色を差し、僅かに汗を浮かべている。

 下腹部に倒れる怒張に上下に擦り付けられる媚肉からは蜜が溢れる。にちゅ、にじゅ、と前戯の必要の無さを説く彼女は確かに必要な無いほどに濡れている。

 

 その腰の動きは男の怒張を身体で知り、玩具や他の少女で試した経験に基づいたものだ。俺の顔を見下ろして雁裏や裏筋を陰唇で擦る度に小さく眉をひそめる芽吹が唇を舐める。

 眼前の男は獲物であり、自分こそが狩人なのだという舌なめずりを見せる。

 

「亮之佑。弥勒さんを見た? 私はああはならなかったけど、亜耶ちゃんのテクニックはどんどん上達している。私たちを本気で気持ちよくしようっていうのが分かるのよ」

 

「それは良かった」

 

「もうあなたよりも上なんじゃない?」

 

 揶揄うような口調で俺を見下ろす芽吹。

 見上げ、彼女の肢体に目を向ける。

 

 自ら動いて揺れる乳房は僅かに掌から余る程度の起伏がある。若葉並にはあるだろう、腰の上の彼女を支えるように両手で芽吹の乳肉を揉む。

 餅のような質感と共に果実の種のような乳首が掌をくすぐる。指が肌に沈み、桜色の乳輪を指の腹で撫でては乳首を摘まむとビクッと身体を震わせる。身近な親戚で比較しながら、乳肉の質感や大きさ、感度を味わうように握るように揉む。

 

 視線は鎖骨を通り下腹部を上下する。

 遠慮のない視線に、僅かに唇を結ぶも直後に不敵な笑みを見せる芽吹。

 

「んっ……その程度?」

 

 極力感じている姿を見せるつもりはないらしい。

 亜耶以外で乱れることは敗北という認識なのか。

 

 俺の乳首を指で弄りながら、やがて彼女は腰を浮かせる。

 素股で反り立った怒張を掴み芽吹は自らの恥部に宛がう。薄い筋の入った腹筋とくびれた腰を惜しげなく見せながら、汗と愛液が絡む陰毛から覗く花弁が亀頭にキスをする。

 僅かに口を開いた陰唇がそのまま亀頭を呑み込む。

 

「は、ぁ」

 

「っ」

 

 ぬぷぷ、と肉を割り開く感触と共に襞が竿に絡みつく。

 芽吹と繋がる。

 

 感じていないという表情を芽吹は維持したままだ。汗を肌に浮かべ、俺に乳房を揉まれながら根本まで剛直を呑み込み、俺の腰を太腿がぎゅっと挟み込む。

 それらを大したことがないと強がる姿は、夏凜と似ていると思って、

 

「んぁあああっっ!!?」

 

「か、夏凜?」

 

 思わずとばかりに俺と芽吹の視線が横に向かう。

 今、俺と芽吹は先ほどまで夏凜と行為をしていた寝台、その隣のベッドに移動していた。

 ガニ股無様絶頂を迎えた夕海子を千景や杏のいる隣のベッドに運び、後は任せてと高嶋が看護という名の愛撫をする中で、俺は芽吹とベッドの上で戦っていた。

 そして、夏凜は絶頂で身体を動かすことも出来ず、巫女に囲まれていたのだが。

 

「ぅぁ、はひっ、ぁ、ぁっ」

 

「夏凜!? 嘘でしょ! もっと頑張りなさいよ! それでも完成型勇者なの!?」

 

「う、うるしゃい……っ! 芽吹こそ余裕が無い癖に冷静ぶってぅッ!?」

 

「まだ喋る余裕があるので、もっと腰を動かしますね!」

 

 驚愕で媚肉が竿を締め付ける中で、隣に目を向けると完成型勇者が少女二人に好き放題に犯されていた。シーツを握り、背中をのけ反らせる夏凜の腰を掴む巫女は腰に巻いたディルドで少女を貫く。ぱんぱんと乾いた音を響かせて、俺の食べ残しを余すことなく喰らい尽くす。

 

 亜耶とひなた、二人の巫女が思い思いに勇者を攻め立てる。

 ぴん、と夏凜の両脚が伸びる。

 

「ぁ、っ、ぉぅ?」

 

「ここが気持ち良いんですね? えいっ! えいっ!」

 

「亜耶さんの腰使い良いですねぇ。ふふっ……亮之佑さんを思い出して濡れてしまいそう。夏凜さん、自分の子宮が降りてきているのが分かりますか? こうして外から刺激すると……今、腰を逃がそうとしましたね? お仕置きですよ?」

 

「待ってひなた! それっ、なんかおかしくなるヤツだからぁ!」

 

「おかしくなんてありませんよ? これがここの常識です」

 

「~~~~っっ!!」

 

「さあ! もっとイって!」

 

 夏凜の下腹部に電気マッサージの器具を押し当てるひなた。

 同じく夏凜を貫く疑似肉棒を装着した亜耶は汗を身体に伝わせながらヘコヘコ腰を動かす。子種を吐き出すことはなく全ては物真似だ。それを理解できない夏凜の身体は悦んで黒々とした肉棒を締め付けて、あられもない喘ぎ声を巻き散らす。

 漏らしたかのような小水が巫女たちを汚すも、誰も気にする様子はない。

 

「ぁ、ゃ、だめっ、はなしっ、ぅぁぁああっっ!!」

 

「今イきましたね? ここで振動を最大にすると凄いんですよ?」

 

「ぁぁあああっっっ!! ぁ────!!」

 

 少女二人に辱められる夏凜の姿は視覚越しに満足感をもたらす。

 涙を流し、巫女に花蜜を噴き出す姿に肉棒が反り立つ。それが分かったのだろう、半眼で見下ろす芽吹が「変態」と口にしながら腰を揺する。

 起伏を伝う汗が臍に溜まり腰を動かす度に雫が飛ぶ。何も問題ないという表情を浮かべ、先ほど夕海子と共に乱れていたことを端正な顔からは微塵も感じさせない。

 

「んっ……」

 

 ぬるる、と芽吹が腰を浮かせると襞が竿に吸い付く。

 ぬぷぷ、と芽吹が腰を沈めると雁に媚肉が酷く絡みつく。

 ようやく本物の雄竿に逢えたことに歓喜するように、締め付けが増す。

 

「はっ、ぁ……」

 

 きゅっと唇を結んで自分のペースで腰を振る。

 結合部からは隣の少女に負けず劣らずの下品な水音を聞かせながら、俺を果てさせようとくびれた腰を左右に振り、締め付けを強める。

 

「ほら……さっさと……イきなさいよ」

 

 自分のペースで腰を振り、竿を呑み込む花弁。

 だが、どこか快楽に怯えるように、浅い挿入を繰り返す芽吹の表情は変わらない。無意識のうちかバレないと思っているのか。俺を果てさせたいならもっと早いピストンで、もっと奥まで怒張を受け入れなければ終わりは見えない。

 

 手伝ってやろう。

 そんなことを思い彼女の細い腰を掴むと、肉竿で根本まで突き上げる。

 

「あンッ!?」

 

 芽吹は口を押さえたが、女らしい悲鳴は耳朶に響いた。

 俺のペースになりつつあることを悟ったのか、倒れ込むように顔を近づけてきてはキスを求める。主導権を握らせるつもりはないのだろう。

 端正な顔には眼前の男に感じたことに羞恥を感じているのか頬に薄い朱色を差し、それを隠すように俺の頬に両手を添えると、物語のエンディングのようなキスを落とす。

 

 王子にされる姫のような気分で芽吹とキスを重ねる。

 彼女からの口づけは唇を重ねるようなものから、徐々に熱を帯びた情熱的な口づけへと変化していく。息と止め鼓動が聞こえるように密着して舌を絡める。

 口蓋を這う舌の侵入を許し、頬肉と歯茎をなぞる動きは誰かを相手にしなければ得られない経験によるものだ。亜耶で経験を積んだことを惜しげもなく教えてくれる。

 

「んっ、んむ……っ、んぅ………」

 

 情熱的に俺とのキスを求める芽吹のもっちりとした尻を掴んでは腰を突き上げる。パンパンと肉が肉を叩く音を響かせると、羞恥の呼気を漏らす彼女が音を誤魔化すように舌を絡め、その合間に小さく喘ぎ声を漏らす。

 

「ぁっ、……んんッ………んぅ! ん……ッ!」

 

 至近距離で響く少女の熱の籠った吐息。

 むにゅりと押し付けられる乳房は胸板に潰れ形を変える。

 

「はぁ……はぁ……ッ、……降参っ、しなさいよ……!」

 

「────」

 

 新たな蜜が結合部から溢れて腿を濡らす。

 媚肉が窄まり、生き物のように蠕動しては竿に吸い付く。

 

「そっちこそ降参したら?」

 

「っ……! ふーッ、ふーッ……ンっ──」

 

 返答はなく、唇が重なる。

 腰を挟む腿の力が強まり、グリグリと腰を押し付けて抵抗を続ける。

 

 震える唇を舌で割り開くと奥から喘ぎ声が漏れてくる。

 鉄仮面をつけたような表情は奥から源泉が湧きだすように快楽に歪む。

 

 抽送が激しくなるにつれて、肩を掴んだ手が強まり、遂に芽吹は唇を重ねていられないほどに大きな喘ぎ声を漏らし始めた。

 気づけば俺は彼女を逃がさないとばかりに強く抱き一心不乱に肉棒を突き上げる。

 

 夢中になって肉沼を穿る。

 快楽の電流が背筋を奔り、そして白濁がせり上がるのが分かった。

 

「はぁぁっ、あッ、くっ……うぅ……っ! ~~~~ッ!!!」

 

 表情を隠すように俺の耳元に顔を押し付ける芽吹。

 ぶるぶると身を震わせ、吐き出される白濁を彼女の膣が呑み込み、吸い付く。美少女を汚し、射精に至る快楽は俺の視界を白く染め、意識を薄めさせる。

 

 息を止め十数秒。

 吐精を終えて、荒く呼吸する俺と同じく押し付けられる乳房越しに鼓動を高鳴らせる芽吹がゆっくりと顔を上げる。

 ずずっと鼻水を啜りながら、目尻に浮かんだ涙を指で拭い告げる。

 

「亮之佑。……今回は引き分けということで良い?」

 

「ああ、そうだな」

 

「ふふ……引き分けなんて初めてね」

 

「芽吹も上手くなったな。凄いきゅうきゅうと締め付けて」

 

「そ、そうかしら。……べ、別に締め付けたくてそうした訳じゃないわよ」

 

 汗みずくの彼女の背中を撫でて、未だに肉竿を締め付ける快楽に身を任せる。

 どこか得意げな彼女の乳房の掌で揉みしだき、ゆっくりと唇を重ねる。

 

「誰かっ、ゃっ、ぁ……」

 

「ふふっ……気持ちいいですか?」

 

「もうっ、イぎたくっ……んぁぁあっ!!」

 

 隣から聞こえてくる夏凜の悲鳴のような喘ぎ声。

 同性に喘がされ、羞恥と屈辱に乱れる声に耳を傾けていると下半身に血が巡る。その存在感を肌で感じ取っただろう、生まれたままの姿の芽吹が身じろぐ。

 

「夏凜……凄い声ね。流石亜耶ちゃん」

 

「そうだな」

 

 ぐるりと体勢を変える。

 今度は芽吹に覆い被さるように俺が彼女を見下ろす。

 やや上気した頬に手を添えて、表情を隠せないように密着すると恥毛が絡み、鼠径部同士が密着し、子種を注いだ最奥に亀頭がぶつかるのを感じ取った。

 

「じゃあ二回戦目、始めようか」

 

 そう告げると大きな瞳を瞬かせる芽吹。

 キッと睨んでは宣言するように亜耶のいる寝台の方に顔を向ける。

 

「……ふん、負けないわよ。亜耶ちゃん、見ててね」

 

 ──その余裕が崩れ去ったのは掃除の時間が終わる数分前だった。

 二人分の疑似肉棒を経験した夏凜を横に、亜耶とひなたと共に見下ろす中で、勇者部でもトップクラスの女優としての演技力を持つ彼女の表情を快楽で攻め落とす。

 

「いやっ、芽吹見ないでぇッ!」

 

「夏凜こそっ、こっちを見ないでよぉ……っ!」

 

「夏凜先輩、芽吹先輩。お二人とも仲良しなのにどうしてそんなことを言うんですか?」

 

「亜耶さん。これがツンデレという奴ですよ」

 

「身体は正直だなっていうアレですね! でも私はもっとお二人には仲良くなって欲しいと思います」

 

「なら、この玩具は如何ですか? これなら二人に着ければもっと仲良く──」

 

 終わりの時間が訪れようとしていた。

 夏凜を悦ばせながらも、もっと二人を愉しませ、そして研究しようとする熱心な巫女たちから目を逸らしながら、キッと俺に涙に濡れた瞳を芽吹は向け、肩に爪を立てる。

 

「……くっ、亮之佑ッ、私は、負けた訳じゃっ、んッ、ぁっ、あぁッ……!」

 

 敗北宣言だけは決してしない。その意思だけは伝わった。

 正常位でどこにも逃がさないように俺は彼女の最奥を何度も突くようにピストンを続ける。

 首筋や胸元にキス痕を残し、屈辱と喜悦の感情を隠す仮面を剥ぎ取られた芽吹が赤面したまま俺を睨み続け、亜耶の見る中で何度も何度も鳴き声を上げ続けた。

 

 

 




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【番外】桜吹雪が舞う

 ちゅぱ、ちゅぱ、と赤子のように吸い付く。

 既に硬い乳首を唇で挟み、舌先でねぶる。柔らかな肢体は触れれば触れるほど男を惑わせる。母性の象徴とうそぶく乳房を手で揉むと下腹部に血が巡るのを感じる。

 

 瞼を閉じたまま唾液を乳首に絡めては吸い付く。

 赤子のような、だが赤子はしない性感帯をくすぐるような吸い方に時折母体が身じろぐ。その身体に顔を埋める俺は柔らかな乳房を枕にしながら指と唇で口寂しさを誤魔化す。

 ばぶーと赤子に帰る勢いで乳首に吸い付き、舌先で根本から先端まで弄る。

 そうしていると、甘い果実のように熟れた白い肉はぷるりと震えた。

 

「~~~ぁぁ!」

 

 僅かに背中を反らせる少女の柔肌から汗が飛ぶ。

 しっとりとした肌に汗を浮かべる少女の乳房に顔を埋め、本能に従うように腰を打ち付ける。夢と現実、二つの境目にある眠気に心地よさを覚えつつも、自らの怒張を締め付ける感触に駆け引きもなく、ひたすらに腰を振り続ける。

 それは性行為ではなく相手のことも考えない特殊な自慰に過ぎない。ただその乱雑な動きでも女の膣は引き締まり、確かな嬌声を漏らし続ける。

 

「ぁ……っ、ぁん」

 

 腰を打ち付ける音は布団越しにくぐもって聞こえる。

 元より眠気と快楽を夢見心地の中で味わう俺は思考の介入もなく、ただ衝動に身を任せた。

 

「……ぐっ」

 

「~~~~ッッ!!」

 

 背筋を奔り、下腹部を伝い、解き放たれた快感。

 電流のように迸る快楽にぎゅっと目を閉じて、乳房を揉む手に力を入れる。掌の中で元の形に戻ろうとする弾力と温かさを感じながら、吐精後の脱力感に睡魔に身を任せる。

 眼前の女体を抱きながら、意識が途切れる寸前に今の状況に対する疑問が脳裏を過った。

 パチン、とシャボン玉が割れるかのように意識がはっきりする。

 

「…………あれ?」

 

 今はいつで、どういう状況だっけ? 硬い乳首を舌で転がしながらゆっくりと頭を回す。

 寝起きで混乱する頭で衝動的に口を開くのを抑えながら顔を上げる。布団を被っていたのか、全身を覆う布団を跳ね除けると、ぐったりとした少女と隣であられもない恰好で眠る少女たち。 

 

「……ぅぁー」

 

「……すぅ……すぅ……むふふ」

 

 いずれも可愛らしい寝顔を見せる少女たち。

 夢から目覚めたのだろう。遅れて思い出すのは昨夜の出来事だ。

 

 週末は若葉と園子ズ、そしてひなたの四人と血の繋がりや肉体的な関係の近さを考慮して、関係性を深める為に定期的に開いているお泊り会をしていたのだ。寄宿舎や乃木家の本家、実質的に別邸である俺が住む家で定期的に交流を深めている。

 既に何十回と開かれた恒例行事だ。この世界が終わらない限り続くだろう。

 

 一人だけ男がいるのは慣れたからと、反論する少女は誰もいない。嬉々として仲の良い少女たちの間に挟まりサンドイッチにされるか、挟もうとする少女たちを食べてしまうかという催しへと変貌しているのは暗黙の了解となっている。

 

 委員長気質な若葉ですら何も言わず、互いに知らないふりで行為に及ぶ。

 たとえ見られても御役目の達成の為。満開の副作用を治す為と言い張りながら肉棒を頬張り、恥部から花蜜を吸い出され、蕩けるまで腰を打ち付けて夜を過ごす。

 

 そもそも、性を知った年頃の少女と同じ屋根の下という環境で何も起きない筈がないのだ。紳士とは? という話題に移行するかもしれないが今は置いておこう。

 餌を前に「待て」など出来るものか。

 

 最初は健全だったのが、いつの間にか欲望が入り混じり、それが当たり前となったお泊り。

 今回もまた、可憐な少女たちはいずれ訪れる夜を理解しながら楽しく夕飯を食べて──、

 

「ぁ……」

 

「んぅ……。……」

 

 ほんのりと頬を桜色に染め、意識のないまま乱れた衣服から肌を露出させた姿は、いっそ裸姿よりも見る者の性衝動を掻き立てる。

 目線を下ろすと、ひなたの双丘が視界に収まる。

 

 掌には収まりきらないサイズだ。心に秘めていた母性を求めて、ブラジャーごとパジャマを捲り、白い乳房に歯形と唾液で痕を付け、眠れる巫女の身体を震わせたのか。

 そこまで俺は欲求不満だったのだろうか。もしくはひなたの秘められし母性に身体が本能レベルで求めてしまったのか。まさか半分意識を飛ばしたまま行為をするとは思わなかった。

 ようやく舐めていた乳首を離すと、その衝撃で身じろぐ巫女は吐息を漏らす。

 

「はぁ……ぁ、んん……」

 

 ツンと尖った乳首ごと横に流れた乳房を揺らし、悩まし気な声を聞かせるひなた。

 熱の籠った吐息を漏らしながら仰向けで寝息を立てるひなたに俺は抱きついていた。眠っているのか意識を失っているのか、いずれにしても肉付きの良い身体は抱き心地が良く、亀頭を下腹部に擦りつけると甘い痺れに小さく呻く。

 

「ぉ……ぉぉ……」

 

 外から子宮を肉棒で押し付けて圧迫すると、パジャマ代わりの短パンと黒のショーツが足首に引っ掛かったままのひなたの脚がピンと伸びた。

 亀頭から伝わる少女の震えが、巫女が小刻みな絶頂に達したまま寝ていることを教えた。

 もしも夢を見ているなら、きっと卑猥な夢なのだろう。

 

「うわ、ひなたさんエロ過ぎ。すっかり胸弱くなっちゃったね」

 

「────」

 

 遠慮なく彼女の裸体を舐めるように上から下に見ていく。

 呼吸の度に上下に動く乳房は、その柔らかさを知っていても手が吸い寄せられる。

 様々な体液を吸った陰毛と、恥部から垂れる白濁が目につき、隠蔽工作を始めようとティッシュを手に取る俺だが、ひなたの隣で眠っている園子の姿に手を止める。

 

「あれ? 園ちゃん? ごめん気づかなかった」

 

「むにゃぁ……いいんよぉ……」

 

 涎を垂らした彼女は横向きで眠っているようだ。普段着用している鳥のパジャマを布団の中で脱ぎ散らし、これまた脱ぎ掛けだったのだろうか、腕に通しただけのブラジャーは機能を発揮せず深い谷間には汗と体液が見え隠れする。

 ショーツは履き直そうという努力の跡が見られるも微妙にずり落ちて鼠径部と金色の恥毛が覗いている。下着の隙間から覗く陰唇からはとろりと白いソースが垂れ生地を汚していた。

 染みのついたシーツはぐしゃぐしゃで、昨夜の激しさを物語る。

 

「いったい誰がこんなことを……」

 

「むにゃ……かっきー……」

 

 艶やかな吐息を漏らすひなたの身体を清潔にし、その過程で何度か眠ったままの巫女の身体を指で悦ばせて寝ているのか気絶したのか分からない状態にした後、園子の方の対応に取り掛かる。

 コソコソと処理しようとする俺を咎めるように少女たちの寝言が襲う。

 

「……すぅー……かっきーのエッチ! 変たむぐぐ──」

 

 慌てて口元を手で押さえると、犬のように掌を舌が這う。

 生温い独特の感触がくすぐったくなりながら、ゆっくりと口元から手を下ろす。

 

「……なんちゃって……むにゃぁ」

 

 園子の寝言に反応するように周囲の若葉や園子(小)も寝言を呟く。

 

「んぅ……それはおかしいだろぉ。何がピョンだ……ふざけるなぁ」

 

「かっきー先輩の……大きいんよぉ。はわわ……ひなた先輩がご先祖様の前でそんな凄いことを……三人でするんだぁ……ええっ、ご先祖様はご先祖様でファンクラブの皆の目を覚まさせようと学校で凄いことしちゃっている……すゃぁ……わっしーメモはどこぉ……あぁん、お尻に書いちゃダメぇ……」

 

 寝言の激しい少女たちに誰も反応せず寝息を立てる。

 余程疲れていたのか、或いは暑いのか当たり前のようにパジャマを吹き飛ばして乱れた下着のみの裸体を互いを抱き合うようにして隠す若葉と園子(小)。身じろぎする度に二人の乳房が形を変えるのは視覚への暴力だと、記録の為に端末を構えると若葉が園子(小)の抱く力を強める。

 

 脚を絡め、もごもごと子孫の頭に突っ込んだ口元を動かす若葉の目は閉じられたままだ。若葉の抱き枕になり、やや苦しそうな顔をする園子(小)にそろそろ目覚めそうな予感を覚え、俺は可能な限りの証拠隠滅を図る。

 やがて表面上はパジャマを着た少女たちが出来上がり、満足した俺は布団に戻る。

 その過程で撮った画像を見ながら、

 

「はあ、エッチな光景。……でも仕方ないよな? こんな狼がいるところにぞろぞろと入り込んで、食べられるのを覚悟の上としか思わないよな」

 

「そうよね。なんだかんだ亮くんが異性に好かれるのは誇らしいし、私の夫の魅力が他の子にも伝わるのは嬉しいけど、でも少し嫌な気分になっちゃうのは仕方ないよね。そして暴走する夫の手綱を握り立派な日本男児に導くのはやっぱり妻の役目よね」

 

「────」

 

 もぞもぞ、と布団の中で返事があった。

 腹部まで掛けていた布団が人一人分の重さと体温と柔らかさを持ち始める。

 別に返事を期待して吐いた言葉ではなかったが思ったよりも至近距離からの声に息を呑む。腰元に密着しそのままずるずると這い寄ってくる相手の存在は無視できない。

 観念して仰向けで寝転がると俺の布団が膨らみ、ぬっと黒髪の少女が顔を見せる。

 

「おはよう、亮くん。今日も会えて嬉しいわ」

 

「おはよう、東郷さん。今日も東郷さんの声が聞けて嬉しい」

 

「ありがとう。……こっちの亮くんも元気ね? もう朝よ?」

 

「いや、寧ろ朝だからこそなんだけど」

 

「そうよね。する?」

 

「いや、いいよ」

 

「……私の身体に飽きたの? 他の子とはするのに?」

 

「そんなことはないよ。今はこうして抱き合うだけで十分なんだよ東郷さん」

 

「そんなこと言っても騙されません」

 

 さらりとした絹のような黒髪が俺の肌をくすぐる。

 目線が「抱きしめて」と告げており両腕を腰に回してリボンに纏められた黒髪を弄る。

 

「ん……」

 

 薄い布地越しに感じる重量のある乳房が胸板に押し付けられながらも、至近距離で見つめて来る彼女の深緑の瞳から俺は目を逸らせないでいた。

 薄暗い部屋で、至近距離で見つめ合うと、ちゅっと唇を奪われる。

 なんでもないような顔で東郷にキスをされた。

 

「……ふふっ、亮くんをぎゅうっとすると身体が温まるのよね」

 

「そんな湯たんぽみたいな」

 

「似たような物よ。……でも、他の女の匂いがするのは減点」

 

「はい」

 

「あとでお仕置きね」

 

 とりあえずお仕置きをするのは東郷の中で決定事項らしい。

 彼女の中にはそんな基準が出来上がっている。いや、分かっているのだ。治療の為とはいえ他の女に手を出す駄目な男なのだと。お仕置きで済ませて貰っているのだから感謝しなくては。

 俺の胸板に豊かな双丘を押し付けて、脚を絡めて俺を見る東郷と視線を交わす。

 

「東郷さん。いつもありがとう。東郷さんが傍にいてくれるお陰で今日も良い一日を過ごせると思う。一生死ぬまでこんなだらしない俺と一緒にいて下さい」

 

「こちらこそよ。亮くんと出会えたお陰で毎日が楽しいから。ちゃんと手綱もここも握るから覚悟してね」

 

 いつの間に布団の中にいたのか。そんな質問は野暮だろう。

 東郷美森だから。神出鬼没の彼女に侵入出来ない場所はないのだ。衣服越しに質量のある乳房を押し付ける彼女は端正な顔を首筋に擦り付ける。

 周囲の少女たちには一切目もくれず、吸い寄せられそうな美しい瞳を瞬かせては、ジッと俺だけを見つめる。やがて見せた微笑は額縁に残したくなる程に美しい。

 さらりと流れる絹の如き黒髪が俺の肌を撫で、甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 俺の上に乗ったまま、東郷は口を開く。

 

「ご飯、食べる?」

 

「作ってくれたの?」

 

「うん。友奈ちゃんと」

 

 すっと布団の中が盛り上がる。

 もぞもぞと柔らかな何かが蠢いて、布団から薄紅色の少女がひょこっと顔を出す。

 

「おはよー、亮ちゃん」

 

「おはよう」

 

 ずしっと少女二人分の重さが身体に覆い被さる。

 不快感はなく、布団とは別種の柔らかさと温もりは俺の安心感を与える。世界で一つだけの極上布団は誰にもあげるつもりはない。片腕分、友奈の背中に回して抱き締めると小さく喉を鳴らす。 

 くぅんと甘えるように首筋に頬を擦り付けては、小さく甘噛みする。

 

 そんな風に隣人たちと抱き合っていると囁かれる。

 

「ご飯の前に先にシャワー浴びてきたら?」

 

「友奈、一緒に入る?」

 

「えー? うーん……東郷さん、一緒に入る?」

 

「そうね……今日の行事が終わったら、ね?」

 

「うん! という訳で亮ちゃん行ってきてー」

 

 さらりと肉棒を手で触りながら、シャワーを浴びるように急かす少女たち。

 チラチラと下半身に目線を向けながらも本格的に熱が籠らないのはある種の余裕によるものか。怒張を撫でる手は慈しみを感じるが、段々と肉竿を掴む手に力が籠り始める。何事かと思いながら少女たちを見ると、周囲の少女たちを見る瞳から光が消えていた。

 身の危険を感じ、彼女らの機嫌が変わる前に俺は脱衣所に逃げ込んだ。

 

 誰かの乱入を期待したが特にはなく、シャワーを浴びてスッキリした俺は東郷たちに起こされた若葉や園子たちと朝食を食べる。

 東郷の作った朝食は和食であり、煮物が絶品だった。大勢で食べる食事の楽しさを彼女たちに教わりながら、舌鼓を打つと同時に東郷たちの食事作法の綺麗さで目を潤す。

 

「う~ん!! 美味しいよ東郷さん!」

 

「ええ、とても美味しいです。若葉ちゃんはどうですか?」

 

「……むぐっ? ああ、美味しいぞ。お代わりだ」

 

 可憐な美少女たちと食事を共にする。

 ある種の事業として成り立つのではないかとぼんやりと考える俺だったが、食器を片付け、寄宿舎組にスキンシップをして見送る頃にはそんな些事は忘れていた。

 

 ──今日は勇者部で集まる日なのだ。

 

「──それで、初代は行かなくていいのか?」

 

「家族の方も一緒にとか気遣われるのは面倒だ。それに見飽きているからね。単純に人が多いところは苦手で花粉症のコンボで決まりだ。お土産だけ期待している」

 

 加賀家に突如芽生えた謎の親族。

 姉枠か妹枠か、その魅惑的な肢体をワイシャツ一枚で隠す黒髪の少女は瞳を瞬かせる。小さく欠伸をしては東郷が残したタッパーに入った煮物と俺が作った料理を口にする。

 こういう恰好が好きだろう? という顔を向ける彼女から目を逸らしながら、初代という存在が当たり前のように実在する現実に少しずつ心が追いついてくるのを感じた。

 

 彼女の映る背景が違うだけで、初代という女の彩りは変わる。

 コーヒーを啜らず食事を摂るという絵面だけで元の世界の俺に自慢出来るだろう。記録しようとスマホを向けるとマナー違反だと箸で目を突こうとする彼女から逃れる。

 機嫌を損ねる前にと、我が家の女王様から距離を取り、尋ねる。

 

「お土産だけど……焼き鳥とか? ジャンボ焼き鳥とか美味しいよね。どう?」

 

「期待、している、だ。半身」

 

 区切るように同じ回答。

 恐らく何を選んでも文句を言うが最後には残さず食べる旨の回答だと俺は思っている。

 流し目で俺を見ながら男を惑わすような蠱惑的な笑みをこぼす少女は起伏に富んだ胸元に手を当てながらチラリと壁の方に目を向ける。

 シャツから伸びた艶やかな白い脚を組み、カップを俺に向けて、

 

「ボクが大好きでついつい構いたくなるのは分かるけど、それで遅刻すると困るのはキミだからね」

 

「俺は遅刻とか欠勤とか不真面目からは程遠い男だから。食べたら食器シンクに浸けておいて。あと今日の風呂当番は初代だから」

 

「分かった分かった。……今日は雨らしいけど傘を持っていかなくていいのかい?」

 

「そのお天気お姉さんの言葉はあんまり当たらないことで有名だから」

 

 ふうん、とテレビに目を向ける少女に背を向けて家を出る。

 雨が降るような不安定な時期は脱しただろう。それに降っても小雨程度だ。念のために折り畳み傘も常備しているので、問題はない。

 

 待ち合わせ場所に走ると少女たちが待っていた。

 

「ごめんごめん! 待った?」

 

「ううん、今来たところ!」

 

 デートのような応対をするのは友奈。その隣で佇むのは東郷だ。

 薄青を基調としたスカートとタイツを着用した令嬢のような装いをした東郷と、彼女らしさのあるピンクのパーカーと紅色のミニワンピースを着用した友奈。彼女らに出迎えられる俺は歩み寄る。

 

「……わっ」

 

 突風が吹いた。

 春一番だろうか。友奈のスカートがぶわりと捲り上がると、ハイニーソに包まれた腿の付け根に桜の刺繍が施されたショーツが露わになった。

 慌ててスカートを手で押さえる友奈はほんのりと頬を赤らめて俺を見る。

 

「今日はもう桜を見ちゃったし帰る?」

 

「帰らないよー!」

 

「ふふっ……亮くん。あんまり友奈ちゃんを揶揄ったらダメよ」

 

「東郷さんなら良いんですか?」

 

「……えいっ」

 

 周囲に目を向けた東郷はそっとスカートの前面をたくし上げる。

 風による事故ではない。少女自らの意思でスカートが捲り上がった。黒のタイツに包まれるのは薄青色のショーツだ。やや薄い生地は肌色やらが透けて見える。

 誰も人がいなければ大胆になれるのか、彼女は何でもないような顔でショーツを見せつけてスカートを下ろす。ドヤ顔を向ける東郷を賞賛するのは友奈だ。

 

「大胆だね東郷さん。勝負パンツ?」

 

「それは秘密よ。ほら、行きましょう」

 

「うん!」

 

 ゆるりと頬を緩めて友奈は笑みをこぼす。

 桜の髪飾りをつけた薄紅色の髪を揺らして友奈は笑う。風が吹き、桜吹雪が舞う中で、ふわりと彼女のスカートが捲れ上がる。今度は東郷がスカートを押さえる。

 

「わわっ、また……」

 

「着替えに戻る?」

 

「……ううん。行こう! お花見に!! 東郷さんが押さえてくれるから!」

 

「じゃあ、東郷さんのは俺が押さえる!」

 

「もう……」

 

 季節は巡る。

 夢を見た一日も幾度も経れば季節が変わる。冬が過ぎて春になり、桜が舞う季節がまたやってきた。既に桜を見る客が屋台に並び人混みが出来ていた。

 勇者部もこういった行事に目が無い。既に場所を取り、屋台に並んで楽しんでいる。

 見知った仲間たちが俺たちに気づいたのか手を振っていた。

 

 既に酔っぱらっているのも、笑っているのもいる。

 料理をそれぞれで作ってきて屋台の料理を食べて桜を楽しむ、そんな一日。

 

 何もかも忘れて、俺は彼女たちと楽しんだのだった。

 

 



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【番外】お姉ちゃん

 桜舞う季節。

 時折吹く風が木々を揺らし、花弁が青空に吹き荒れては薄着の少女たちの衣服を揺らす。そっとスカートに手を置く少女たちは甘酒の缶を手に和やかな表情で花見を楽しんでいた。

 

「ぷっはー! 甘酒の炭酸割り美味しいわね! お代わりー!」

 

「まあ、美味しいけど。おっさん臭いわよ、風」

 

「何よぉ、今日は無礼講よ! 何も問題ないでしょぉぉおお!!」

 

「アハハ! お姉ちゃんまた泣いちゃった」

 

 穏やかな陽光の程良い温かさに思わず目を細める。

 座ったシート越しの芝生の柔らかさと暖かな気候は、気を抜いたら睡魔を呼び寄せるかのようだった。特定の少女たちに目を向けると眠気よりも花見や料理への興奮が勝っており、目を輝かせて満喫していた。

 

 年相応に焼き鳥や焼きそばの屋台で購入した物を頬張っては食事を楽しむ少女たち。

 花より団子という言葉がある。個人的には球子や銀といった団子組だ。一年に一度咲く花々は確かに美しい。咲き誇った桜は道路の間を一面ピンク色に染め上げて、見る者の記憶に残る。

 ──残るが、毎日見ていると飽きてくるのだ。隣の美少女や目の前の食事に関心が向かってしまうのは俺の精神的な問題なのだろうか。

 

「という心境なんですが、花より団子派の人はカップを掲げて~!」

 

「「「乾杯!」」」

 

「ふっ、意外なところでお子ちゃまですわねカガフレッドは。では、皆さま! この花々を見る為に集った方はこのカップを掲げて下さいまし!」

 

「「「…………」」」

 

「乾杯は!?」

 

「あっ、ごめんなさい弥勒先輩。か、乾杯……」

 

「良いのよ亜耶ちゃん。無理しなくて。乾杯」

 

「……なんですのこの気持ち。わたくしも団子派に鞍替えを考え始めるか悩みますわよ」

 

「ご機嫌よう弥勒さん。団子派にようこそ。おや、あんまり飲んでませんね。どうぞ」

 

「おっとっと……。これはこれは、流石カガフレッド。お酌も上手ですわ」

 

「良い飲みですねお嬢様。ささっ、もう一杯」

 

「まったく仕方ありませんわね……」

 

「これ甘酒だよね? 度数詐欺じゃない?」

 

「お黙りなさい小雀」

 

 料理上手な少女たちの持参料理を箸で突きながら、甘酒を飲む。

 ほんのりと頬を赤らめながら甘酒でほろ酔いする疑似令嬢のカップが空になる度に注ぐ。適当な雑談と焼き鳥数本分で上機嫌に脳の回転を遅くしていく夕海子は、時間が経過するほどに多少のスキンシップを笑って許してくれるようになる。

 

「弥勒さんって乳首綺麗だよね。すっかり敏感になっちゃって」

 

「んっ……これくらいは当然ですわ。普段からお手入れは欠かしてませんもの」

 

「お手入れに欠かせない物は?」

 

「そうですわね……鰹でしょうか。毎日食べるのが健康に良いですわよ」

 

「なるほど、ところで俺の鰹についてですがどうですか?」

 

「鰹ほどではありませんが立派ですわよ。私の執事をしているだけはあります」

 

「──かっきーは私の執事だよ、ゆみきち~……間違えないでね?」

 

「は、はい」

 

 本物の令嬢の言葉に首を竦める疑似令嬢。

 笑みを見せて焼きそばの屋台に向かい東郷と一緒に食事を楽しむ園子の後ろ姿に、露骨にホッとしたような表情を見せる夕海子は俺の怒張を握り直しては上下に扱く。

 周囲からの目線を誤魔化すように俺と夕海子の下腹部には毛布が掛けられている。

 

「ん……」

 

 雁部分が気に入ったのか白い指先が凹凸部分を擦る。

 肉竿を掌で覆いながら先走りを指に絡め、しゅっしゅと手で動かす。味わうかのように肉棒を掴む手の強弱を変えては、チラリと俺の顔を見る夕海子。

 

 俺もまた、彼女の膝まで下ろした下着と共に陽光に照らされた恥部を見下ろす。風に揺れる恥毛と愛液で濡れた秘所を露出している状況に、恥ずかしそうに毛布で下腹部を隠す彼女は誤魔化すように甘酒の缶に口をつける。

 あるかも分からないアルコールに頼る少女の秘部に手を這わせながら、

 

「ここの毛も揃えてるんですか? 前はもっと乱雑でしたけど。男を知ってからお手入れを始めたんですか?」

 

「──ぶふっ!?」

 

 むせる夕海子。

 ティッシュで少女の口元を拭い背中を摩ると、目元に涙を見せながら睨みつけてくる。

 

「……、気のせいでは? 弥勒たるもの以前からキチンと整えてましたわ。整えてないのは芽吹さんくらいですわ! ジャングルですわよ。……カガフレッドは前から思ってましたけど、やっぱりそういうフェチですの? 完全に剃るよりも生えている方が好みだと風の噂で聞きましたが」

 

「おい。どこの風だ、それ」

 

「あっ、待って下さいまし! 指、ダメッ……」

 

「こんなぐちょぐちょに濡らして、いやらしい音まで……他の人に気づかれますよお嬢様」

 

「ぅ、ぁ……~~~~ッッ!!」

 

 桜の木の下で、花より団子。団子より女体。

 抵抗は少なく夕海子は豊満な乳房を俺に押し付けると顔を肩に埋めた。ビクッと小刻みに震える少女の肩を掴み顔を見ると、呆けた女の表情を見せる夕海子に囁く。 

 

「もっと静かにイって下さいよ、はしたないですよ」

 

「……ぁ、ぁー」

 

 桜の木を陰に行われた犯行。

 公衆の面前で、周囲の目線が桜に向かう中で疑似令嬢は絶頂に達した。衣服の中でずれたブラジャーからこぼれた胸肉を揉みながら、膝まで下ろした地味目なショーツを履かせる。

 彼女が余韻から戻るにはもう少し時間が掛かるだろう。

 桜を誰もが注視する中で、俺と夕海子に近づいてくるのは鬼の表情を宿した芽吹だ。

 

 嚇怒の表情でこれから戦闘でも始めるような雰囲気。

 彼女は素手だが、思わず警戒する俺の姿を気にすることなく芽吹は夕海子に目を向ける。

 

「亮之佑。ちょっと弥勒さん連れてくわね」

 

「どうぞ」

 

「ほら、弥勒さん……あっちで訓練ね」

 

「ふにゃ……はれ? 芽吹さん? どうされましたの?」

 

「そう、みっちり訓練を望むのね。……雀も来なさい!」

 

「とばっちりじゃない!?」 

 

「ちゃっかり見ていたんでしょ! 発言も訂正しない! ツッコミをしない雀なんて雀じゃないわ!」

 

「いやだって最中にそれは空気が読めないどころじゃ……。そ、それにメブだって……ああ、睨まないでってば」 

 

 夕海子を担ぎ上げる芽吹と付き従う雀。

 花見の途中だというのに、鍛錬をする精神は真面目か。或いはこの場を離れる言い訳か。恐らくは前者なのだろうと判断していると芽吹の脚が止まる。

 キッと吊り上げた目で俺を見る彼女は、数秒もせずに目を逸らす。

 

「亮之佑」

 

「ん?」

 

「……私もちゃんと整えてるから変な勘違いしないでよ。見たことあるでしょうけど」

 

 変な勘違いって? と揶揄えばこの場が大変なことになるのは想像に難くない。

 鍛錬を好む真面目な彼女も年頃の乙女なのだと認識して俺は笑みを返した。気持ち悪い笑みだったのか、目を合わせようとしない芽吹は今度こそ夕海子を抱え、雀を従えて去って行った。

 

 花見はこの程度のハプニングでは終わらない。勇者部は場慣れしているのだ。

 慣れ過ぎて、甘酒程度で酔った少女たちの姿にまたかと周囲の少女たちは呆れ顔を向ける。此方に背中を向けて壁でも作っていたかのような囲いを解いては、何でもないような顔で話を続ける。

 

「……風さんは止めなくて良いのか? 遂に木に向かって話し始めたぞ」

 

「夏凜が止めるでしょ。何のためのツッコミ役だと思っているんだ」

 

「少なくともこの時の為ではないとは思う」

 

「んん? 今アタシのことで何か言った~? どうせアタシなんて、アタシなんてぇぇ」

 

「ちょっと風。そろそろ周囲の目がアレなことになっているから止めなさむぐぅ!!?」

 

 何度目かの乾杯と共に空を見上げる。

 青い空と白い雲はどこまでも広がり、周囲を見渡すと勇者部だけではなく様々な人たちが集まっては飲んで食べて騒いでいる。誰も彼もが楽しそうだった。

 

「あっ、夏凜ちゃんが風先輩と接吻しているわ。撮らないと」

 

「わあ、本当だ! 大胆だね!」

 

「アレはドレインキスだ。フーミン先輩からの口づけは相手から女子力を奪うとされている。一度でも吸われれば、相手の女子力は枯渇してしまうのだ……」

 

「──んむぅうう!!? ぷはっ、こ、こんなところで盛るなぁ……」

 

「フーミン先輩と、にぼっしーの熱いキス! これはみんなでキスコールだ!!」

 

「「「キース! キース!」」」

 

「だ、誰がするかぁ!!」

 

 勇者部の日常風景に皆は笑って受け入れる。

 多少の口づけなど、少女たちにとってはもう可愛いだけのものだ。いつまでも初々しさが残る純真な夏凜は顔を赤くしては俺たちを睨みつけ、その間に風が棗に唇を奪われていた。

 泣き上戸な風を黙らせるイケメン勇者は静かに少女の耳元で囁く。

 

「これで良いのか?」

 

「……あ、あ、うん」

 

「風?」

 

「……なんでもないわ。ちょっと酔いが醒めただけよ」

 

「ビュゥォオオオオ!! フーミン先輩の酔いを醒ます男が降臨! 彼氏であるにぼっしーの隙をついての愛のキスが公衆の面前で炸裂なんよ! これが浮気だ! イエーイ! 見てる? かっきー!」

 

「事実は小説よりも奇なんよ、な展開がキター!!」

 

「園子! そんな風を吹かせるな! さっきからなんだそのテンションは、落ち着け! 出来ないなら私が落ち着かせてやる!」

 

「いいえ若葉さん。この風は絶やしてはならないのです。園子先生を止めるなら私の屍を超えてから行って下さい」

 

「杏!?」

 

 それなりに騒がしいが、此方のメンバーも一部騒がしいので言い合いっこなしだ。料理と花を楽しむ組と、花に見向きもせず料理を頬張る少女で本日の勇者部は構成されている。

 

「んふふ……りょーさぁん」

 

 そんな状況下、艶やかな声でほんのりと頬を赤くした少女が近づいてくる。

 小動物のような小柄な体躯はスイスイと若葉や千景の間を通り、園子や、芽吹たちが密集する中をぶつかることなく擦り抜けてくる。

 勇者部の人数もそれなりの数だ。どこかの施設に行くなら団体様扱いになる。現在も結構な美少女たちの群れに注目が集まっている中、俺に近づく少女が頬を膨らませる。

 

「どうせ小さいですよーだ。小さいから擦り抜けだって余裕ですよ。東郷パイセンみたいに引っ掛かる物もないですから……」

 

「よーだって。大丈夫だよ、樹。ちゃんと需要はあるから」

 

「なんのですか〜!? アハハハハ!」

 

 ケラケラと小気味よく笑い声をあげる樹。

 背中を向けて小振りな尻を向けたかと思うと勢い良く俺の膝に座った。臀部の柔らかさと共に座る少女の椅子となった俺は胸板に背中を預ける彼女の顔を見下ろす。

 短めのブロンドヘアの少女は笑い上戸で、その可憐さよりも多少面倒だなという思いが胸中を過る。甘えるように身体をくっつけて鼻歌を歌う樹を背後から抱きながら周囲を見渡す。

 

「ふふ……友奈ちゃん。可愛い」

 

「東郷さんの手、あったかいな。えへへ、ぎゅー」

 

 慈母のような表情をした東郷の膝枕で頭を撫でられて緩んだ表情を見せる友奈。カップルのように触れ合う友奈や東郷以外にも似たような光景は広がっている。

 あちこちでピンク色の世界観が構築されている。親愛よりの友情の色は桜色だ。

 

「ぐーんちゃん!」

 

「はわわ……たかひまひゃん……」

 

「……若葉ちゃん!」

 

「ま、待て……こんなところで耳掃除は……ふわぁぁ……」

 

「……うたのん!」

 

「えっ、そういう感じなの、みーちゃん!?」

 

 思わず嫉妬してしまうような仲睦まじい様子を見せる少女たち。

 膝枕が流行なのか、美少女の膝で愉しんでいる美少女たちの姿は目の保養だ。

 その合間についでだと言わんばかりにマッサージを施され顔を伏せる須美の背中を友奈たちの片手が触れていく。トントンと。指の腹で背中を押していく。

 

「ちにゃ……ちにゃぁ~……」

 

 ビクッビクッとしていた須美の肢体がやがて動かなくなるのを見守る。

 そうしていると、俺の膝の上で身じろぐ樹が小さく声を漏らす。

 

「ん……絶対触ると思っていました」

 

「嫌?」

 

「アハハっ、嫌なら離れていますよぉ」

 

「樹ちゃん触り放題だ~」

 

「えっち過ぎるのはぁ……ダ〜メ、ですからね?」

 

 なんとなく樹の髪を撫でていると少女が俺の身体に擦り寄る。

 人恋しいのか子犬のような小動物は細い太腿に手を添えてスカートの中に滑り込ませても、くぅんと鳴くだけで寧ろ俺の掌に頭を押し付ける。

 やがて満足したのか、膝から降りた少女は太腿で俺の手を挟み進行を食い止める。

 

「平和ですねぇ」

 

「そうだね。このままずっと続けばいいのに」

 

 平和とは続かないものだというのはこの場にいる誰もが知っている。

 だからこそと言うべきか、巫女と勇者のセットや勇者同士のイチャイチャにメモを取っている園子ズや追従する杏、少女たちは春の陽気を身体に浴びて、休息を目一杯に味わう。

 また次の戦いに備えるように。悔いがないように。

 

「ん……っ、ところで私が作った料理は食べないんですか?」

 

「……え?」

 

 ふわふわな樹の髪の毛を撫でるのを止める。

 上目遣いで俺の腕を掴んだ彼女はそんな一言を告げた。

 

「今日はもうお腹一杯なんだ。いつもみたいに若葉に食べて貰いなさい」

 

「それもいいですけど……男の胃袋の限界はないぜ! って、前に言っていませんでしたか?」

 

「過去は振り返らないんだ」

 

 不思議なことがある。

 樹の料理は以前よりも向上した。だが見た目は紫色が主体の何かになりがちだ。勇者部にテロを巻き起こしたことのある少女として、東郷と風、ひなたの特別授業を受けたこともある。

 その結果、見た目も良くなり料理上手となった年もある。

 しかし、定期的に料理の見た目だけは何故かリセットされてしまうのだ。

 

 神の悪戯か、何かの超常現象なのかもしれない。

 だが、そんなことは本人にとってはたまったものではないだろう。

 紫の何かが入った皿を手にする樹は儚げな笑みで小さく呟く。

 

「私って料理の才能、無いんですかね……」

 

「……樹。そんなことないよ。あーんで食べさせて欲しいな」

 

「亮さん……」

 

「他の子たちも樹の手料理食べたいって言ってたから食べさせてくれよ。俺との約束だ」

 

「……はい!」

 

 この世界では、俺は樹に料理については特に何も教えてこなかった。味見役だけだ。俺よりも料理上手な女子メンバーが大量にいるのでわざわざ出しゃばる必要もない。

 味見役については何故か樹が若葉を指名することが多く、その若葉に一緒に味見役をと頼まれて地獄への片道切符を握ったことのある記憶を思い出し脳と舌を震える。

 

 そんなことを考えている間にも、紫色の物体を乗せたスプーンが近づいてくる。

 

「はい、あーん」

 

「……あーん」

 

 それでも妹キャラからのあーんは逆らう術などない。

 幸いにして、樹の料理に関しては定期的に少女たちが鍛えているので問題は──。

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたら眠っていたらしい。

 夢か現実か、覚醒直後のぼんやりとした状態で周囲に目を向ける。何故か俺を見下ろしながらオロオロとしている少女たちを見上げながら枕に顔を埋める。

 何故か少しお腹が痛く全体的な倦怠感に襲われていた。それ自体は寝起き直後によるものだろうと気にすることなく、顔を埋めた枕は程良い弾力を返し、漂う甘い香りで肺を満たす。

 顔を押し付けていると生身の人間の腹部であるのが分かった。

 若葉の腹部だった。

 

「ん……起きたか」

 

「すやぁ」

 

「起きているわね」

 

 瞼を閉じると頬を突かれる。

 怒りではなく呆れを含んだ声色に薄目を開けると眼前に金髪の少女がいた。見知った少女だ。今日の朝まで隣で寝ていた若葉だが、記憶の中の姿よりも見た目が少し幼かった。

 その胸元はいつの間にか慎ましく触れてみても萎んだままだ。

 まさか夢なのかと乳首を当てるように指先で突くと、柔らかさと共に指を掴まれる。

 

「いたっ、いたた……」

 

「きゅ、急に触る奴がいるか!」

 

「わあ、顔真っ赤。そんなに怒るなよ、もしかして乳首に当たった」

 

「当たってない!」

 

 小さくなっても力は同じ。

 細腕からは考えられないほどの力で胸元から手を引き離した若葉。上体を起こしほんのりと頬に桜を散らせながら小さく睨みつける姿は可愛らしい。

 視界の端で高速移動しながらカメラを向け回る巫女、ひなたの姿も納得だ。

 黙っていれば西洋人形として売れていたに違いない。精巧なガラス細工を思わせる容姿と滑らかな肌は、本来なら見ることも叶わない少女の幼い姿そのものだ。

 

 そんな風にジッと見ていると、手を離した若葉がプイッと顔を背ける。

 そもそもいつの間に小さくなってしまったのか、そんなことを考える俺に声が掛かる。

 

「……起きて早々に人の胸を触るなんて、やっぱり加賀くんね」

 

「ぐんちゃん」

 

「ぐんちゃんって呼ばないで」

 

 小さくなった千景が半眼を向けてくる。

 年は同じ程度か。将来的な美人が確約されているような小学生高学年程度の見た目をした千景の周囲には高嶋や球子が抱きついたり興味深そうに顔を近づける。

 

「ぐーんちゃん」

 

「どうしたの? 高嶋さん」

 

「ぐーん……」

 

「土居さん、それで呼ばないで」

 

「こわっ」

 

 睨みつける千景の頭を撫でる球子。

 されるがままの状態、人形みたいな彼女の頬に俺も触れてみる。すべすべの瑞々しい肌は弾力を指に返し、さらりとした髪の毛を指に絡める俺の動作をジッと見る千景。

 

「……楽しい?」

 

「楽しいよ。千景先輩を触っていると楽しい」

 

「そう……加賀くんも座って」

 

 素直に彼女の正面に座り込むと幼女と化した千景が近づいてくる。

 恐る恐るペットに触るかのような指先は恐らく頬を突こうとしているのだろう。俺の動作を真似しようとする千景にペットの恐ろしさを教えようと思い、パクリと指を口に含む。

 

「ひゃあ!?」

 

 可愛らしい悲鳴と共に顔を赤くして、俺の頭を叩く千景。

 その手を掴んで、爪や指の腹を舌先で舐め回す。少女の恥部に快感をもたらすような舌の動きに何かを気づいたのか、頬を上気させる千景は抵抗を減らしていく。

 

「TPOを弁えなさい! 女子力パンチ!」

 

「あぶっ!?」

 

 ドスッと的確なパンチが脇腹を抉った。

 思わず口を開いてしまった俺に仁王立ちするのは小さくなった風だ。樹並に薄くなった胸を張る風は、勇者部の部長として拳で公衆の面前という状況を身体に教えてくれた。

 とはいえ、それでもやや混乱している俺を背後から抱き締める友奈に動きを止められると園子が話しかける。指さした先にあるのは空になった皿だ。

 

「イッつんの料理が進化したんよ~。食べた人は小さくなっちゃうんよ」

 

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

「もう……なんでもありね」

 

 唾液に塗れた指を何気なく唇に触れさせる千景を見ていると、ぼおっとした顔の彼女は俺の視線に気づいては慌てたような顔でハンカチで指を拭った。

 若葉だけでなく、千景の様子もカメラに収めていたらしきひなたと目が合うと苦笑を見せつつも指を上に差した。

 釣られて上を見上げると、いつの間にか曇天が広がっていた。

 

「皆さんが小さくなったのもありますが……そろそろ天気も悪くなってきましたので今日は解散にしましょう」

 

 樹の魔法の料理が原因かはともかく幼くなった少女は多い。

 防人組を除いて、全体の半分が小さくなっていた。

 

「うおー! 球子さん、小さくなりましたね!」

 

「銀~。タマよりデカくなったからって気安いぞ~。先輩と呼びタマえ!」

 

「もうタマっち先輩、あんまり変なこと言ってたら……どこ見てるの?」

 

「ううむ。見上げるマウンテンも良きものかな」

 

「もう!」

 

 状況が悪化する前に解散となった。

 素早く道具を片付けて、家に帰る頃には不運なことに僅かに小雨となった。

 

「濡れちゃったねー!」

 

 明るく告げる友奈は俺の手を引く。

 見上げる少女の背丈は普段よりも高く、珍しく思う。

 

「……お風呂に入らないと風邪引いちゃうね」

 

「もう沸かしてるんじゃない? 先に入って来たら?」

 

「駄目よ。亮くんが風邪引いちゃうわ」

 

「でも東郷さん──」

 

 同じように俺の手を引く東郷の手が僅かに力を増す。

 水で濡れた黒髪から覗く深緑色の瞳がジッと俺を見下ろす。

 

「亮くん」

 

「な、なに?」

 

「その姿になったら私たちのこと、なんて呼ぶんだっけ?」

 

「────」

 

 それは、初めて小さくなった時のことだった。

 ふざけて呼んだら、思った以上に喜ばれて、彼女たちの何かをくすぐった言葉。

 

「──お姉ちゃん」

 

「────」

 

 ぶるり、と少女たちの肢体が震えた。

 素早く口元を手で覆っていた東郷はやがて鼻血で汚れた手を下ろす。

 隣を見ると友奈ですら、口元をによによと動かしては笑みをこぼす。不気味とも可憐とも捉えることの出来る彼女らは、やがて代表して東郷が告げた。

 

「うん! お姉ちゃんたちと一緒にお風呂に入りましょう?」

 

「……」

 

「有無は言わせない」

 

 

 



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【番外】二人の姉

いつも感想評価ありがとうございます。誤字報告にも感謝を


 突然だが、俺は一人っ子だ。

 兄弟も姉妹もいない。可能性があったのは遠い過去だ。

 

 もしも姉妹や兄弟がいたなら、ふとそんなことを考えることがある。

 過程の話など意味が無いと切り捨てるのは止めて、妄想や空想に頭を働かせるのは生きている中で自然のことだろう。もしくは最も身近にいるふわふわ令嬢に影響を受けてしまったのか。

 いずれにしても一人っ子なら欲しいと思うことだってあるだろう。

 一緒にゲームしたり遊んだり、他人には言えないことを共有したり。

 

 ただ、実際には相性や諸々もあって良いとは限らないらしい。

 片方が優れていれば片方が怠惰になったり、片方だけ親が愛情を注いでもう片方が捻くれてサスペンス映画のような展開が始まったり、結局はその家庭環境次第のようだ。

 現実は犬吠埼姉妹のように仲睦まじい姿を見せて姉妹丼を食べさせてくれることも、その出来栄えを撮らせてくれることもないのだ。現実は無情だ。

 だから、俺は多くは望まない。

 

「俺に優しくして甘やかしてくれるエッチな姉が欲しいです」

 

 妹ではダメだ。兄として恰好付けたくなる。

 犬吠埼樹という小動物系後輩や、国土亜耶という肉体関係ありの弟子兼防人サーの姫、鷲尾須美や乃木園子(小)という小学生組に甘えるのはなんだかダメな気がする。

 

「素の状態で赤ん坊のように滅茶苦茶甘えたい。ひなたに甘える若葉のように」

 

 何もかも忘れて泥沼に沈むように。

 甘やかして、優しくして、愛して欲しい。抱き締めて欲しい。

 

 ふわっとした理屈のような何かだが、強いて言うなら好き嫌いの話だろうか。

 どちらも好みではあるけれど、強いて言えば優しい姉の方が良いよね! という話。

 

「付け加えるなら義理の姉がいいな」

 

「どうして?」

 

「実姉はなんかコンプライアンスとかうるさいから。義理だからこそ出来る展開があると思うんだ。血が繋がっていると興奮しなかったりしそうだし」

 

「うーん……よく分からないけど、亮ちゃんは私がお姉ちゃんで嬉しい?」

 

「うん! 嬉しいよ、友奈お姉ちゃん!」

 

 腰元に抱き着くと帰って来るのは拒絶ではなく甘い抱擁だ。

 よしよしと頭を撫でながら下腹部に顔を押し付ける俺にくすぐったさを感じるのか腰肉をくねらせる友奈は笑みをこぼしサイドポニーを揺らす。

 一等星の如き笑顔は輝きを増し、見る者を魅了する。この笑みにどれだけの男が惑わされたか。

 

「……お姉ちゃん。よーし! 私は亮ちゃんのお姉ちゃんになるー!!」

 

 彼女の中で何かスイッチが入ったようだ。

 無邪気な笑顔で俺に抱き着く彼女を見上げる。

 

「友奈?」

 

「亮ちゃん。私のこと呼び捨てで呼んだらダメだよ。お姉ちゃんなんだから。めっ!」

 

 小さく頬を膨らませる彼女は、めっと俺の額を指で差す。可愛い。

 硬直する俺を人形のように抱き締める彼女は親愛を瞳に宿し、義弟のシャツを脱がせながら愛おしくてたまらないという表情で抱擁を繰り返す。

 素肌で少女に抱かれると柔らかな衣服越しに友奈の体温と柔らかさが伝わる。

 弟というよりも抱き枕のような気分だが、彼女の精一杯の姉を肌で味わう。

 

「……こんな感じ?」

 

「う、うん。流石友奈お姉ちゃんだね」

 

「えへへ……ぎゅーってしちゃう!」

 

「ぎゅーってされちゃった!」

 

 彼女の演じる姉に、今すぐ弟になりたいという気持ちを強くする。

 ふかふかな彼女の肌を感じながら抱擁を返し頬擦りする。

 そのまま友奈が着ていたワンピースの中に潜り込む。

 ピンクのショーツと健康的な腹部、乳房を包むピンクのブラジャーを見上げると、甘い香りが鼻孔をくすぐる。いつまでも見上げていたい光景だが彼女と共に行うべき目的がある。

 

「お姉ちゃん」

 

「ん~?」

 

「お風呂に入らなくて良いの?」

 

「あっ、そうだった! ごめんね、風邪引いちゃうね」

 

 しゅるりと髪留めと髪ゴムを解く友奈。

 脱衣所で躊躇いなく衣服を脱ごうとする姿に声を掛ける。

 

「お姉ちゃんの着替え手伝うよ」

 

「えっ、大丈夫だよ。亮ちゃんこそ一人で脱げる?」

 

「うん!」

 

「そっか、偉いね〜!」

 

「それでお姉ちゃんの着替えを手伝いたいなー」

 

「うーん……じゃあね、これ脱がせて」

 

 おねだりをすると、友奈の太腿からニーソを脱がせる大役を授かった。

 放置すればどこまでも甘やかされて駄目人間になってしまいそうだなと思いながら黒色の布地を白磁の腿から下ろすと肉付きの良い白い腿が姿を見せる。

 

 思わずジッと見ている間にも、ブラジャーを外して乳房を揺らし、続けてショーツを下ろそうとして動きを止めると、思いついたような顔で俺を見下ろす。

 薄く頬を赤らめる彼女は「はい」と俺の手をショーツのウエスト部分に引っかけさせる。

 導かれるまま、ゆっくりと引き下ろす。

 ピンクのショーツを膝まで下ろし、顔を上げると彼女の秘所が露わになる。

 

「おお~」

 

「……っ、亮ちゃんも脱いで」

 

 最後の一枚を俺に脱がせ下腹部に視線を向け続けると、彼女はぶるりと震える。

 そっと恥部を隠すように手を置くと、片手で俺の衣服に手を掛ける。

 友奈は何てことないような顔で俺の衣服を脱がせ、反り立った肉棒に目を向け、俺の顔を見る彼女は表面上は特に気にした様子を見せず俺の手を引く。手の力はやや強かった。

 

 温泉で体に巻くような長く大きなバスタオルではない、乳房から恥部をギリギリ隠せるか微妙な薄い白いタオルを前面で隠し、脱衣所のドアを開ける。

 横から見ると歩く度にタオルの隙間から白い肌が覗く。

 滑らかな背中は白く、揺れる尻肉を隠す物は何もない。思わず触れた尻肉はしっとりとしており、ひゃあ! という悲鳴と共に半眼で俺を見下ろす少女。

 

「お姉ちゃんのお尻が柔らかそうだったから」

 

「も~、ダメだよ」

 

 友奈に本当の弟がいれば、きっと性癖を拗らせてしまっただろう。

 

「……亮くん、私とは手を繋がなくて良いの?」

 

「いつも繋いでいるでしょ、東郷さん」

 

 脱衣所のドアを開けると、湯気の立つ湯舟と裸体の美少女が一人。

 浴室用のすのこの床、その上に置かれた椅子に座り待ち構えていた東郷がすすっと音も立てずに近づいてくる。ぷるりと揺れ動く豊満な乳房は湯気で隠せず、白い裸体と黒の纏められた髪は鷲尾須美の将来の姿そのものだ。

 そんな彼女は友奈に手を引かれる俺の言葉にサッと顔色を変える。

 

「……東郷さん? 私の弟は……亮くんはそんなこと言わない! 言わないわ!」

 

「あわわ……東郷さん落ち着いてよー! ストップストップ!!」

 

「軟派な漢になんて絶対にさせません。亮くんは私のお婿さんにします!」

 

「わあ! 設定がドジャーンってなっちゃった!」

 

 ヒステリックな感じの姉。怒りか何かの感情で彼女が震えると、豊満な乳房も程良く引き締まった腹部やくびれも、髪色と同じ濡羽色の恥毛や滑らかな腿に湯水が伝う。

 実弟である俺と義理の姉である友奈という設定。細かい部分はその都度コロコロと変わるが、俺が小さくなる時に少女たちの中に秘めた姉としての何かが目覚めてしまったのか。

 その演技の果てに到達した俺の姉である東郷と、ストッパーな義姉の友奈。

 

「もー、東郷さんダメだよ! 落ち着いて、えいっ!」

 

「はぁぁああん! 友奈ちゃん駄目ッ! ぁふんっ、ぁひっ!?」

 

 その暴走は神の指と呼ぶに相応しい友奈の愛撫で止められる。

 神の如き指先に裸体をくねらせ喘がされる東郷はビクビクっと身悶える。実弟の前で、慣れた様子の義姉の指が実姉の秘所を弄り、恍惚な表情を見せてしまう。

 

 姉が義姉に襲われ犯されていた。

 

 あっけなく腰砕けになった東郷に友奈は追い打ちを掛ける。

 ぬるりと東郷の秘所に指を出し入れする友奈の囁きに白い脚をピンと伸ばす。

 

「ぁんッ! らめっ、友奈ちゃっ、亮くんの前で……ひゃんっ!」

 

「亮ちゃんも反抗期の時が来たんだよ」

 

「ぁ、ぁぁ、んッ、んんっ、だ、だめっ、だめだめっ……!!」

 

「落ち着いて」

 

「ぉッ!!?」

 

 ツンと尖った先端ごと友奈に乳房を甘噛みされる東郷。感じ入る表情を隠そうとする度に、友奈の両手は東郷の恥部に伸びる。指を恥部に挿入しながら陰毛から覗く陰核を指で弄る。

 顔を赤くしながら、実弟の前で秘所を晒して小刻みに震える東郷。

 

「ほら、東郷さん」

 

「……ん」

 

 必死に脚を閉じようとする彼女は友奈に何事か囁かれて、自ら脚を開いてはしたない姿を実弟に見せつける。

 とろりと垂れる透明な雫を指に絡める友奈はどこか得意げな表情で東郷に見せつけると、羞恥に揺れる瞳に涙を浮かべながらも友奈の指の動きを止める素振りはない。

 

「友奈ちゃん……」

 

「気持ち良かったね東郷さん。こんなに敏感になっちゃって……はしたないねー」

 

「……ッ」 

 

 せめてもの抵抗か指を丸めて口に含む東郷の耳元に半眼の友奈が囁く。

 

「亮ちゃんは普段はちゃんと美森お姉ちゃんって呼んでいるよ。ちょっと反抗期なだけだよ」

 

「うん……ごめんね美森お姉ちゃん」

 

「亮、くん」

 

「反抗期を治すにはお姉ちゃんといっぱいイチャイチャしないとね!」

 

「ぃ、ゃぁ……」

 

「東郷さんも亮ちゃんの手で気持ちよくなりたいんだって」

 

「なら友奈お姉ちゃんと一緒に気持ちよくすればいいんだよ!」

 

「そうだね!」

 

「駄目っ! 駄目よ! 姉弟でこんなっ、イグッ! ~~~~っ!!!」

 

「アハハ! えっちなお汁がいっぱいだー!」

 

「ぅぁあぁああ────!!?」

 

 様々な感情で目を回す東郷は言葉すら定まらない。

 上の口からは涎を垂れ流し、下の口からは蜜か小水か悩む程度の体液で汚れている。お湯で身体を温めては、二人で東郷の身体を楽しむ。「止めて」とか「ダメ」という言葉がぐちゃぐちゃになって、言葉にならない悲鳴を上げて絶頂に達する東郷の姿に友奈と二人で笑みを浮かべる。

 

「らめっ、おかひ……もう……ゆうにゃ……」

 

「とーごーさんってエッチだね」

 

 ここから東郷が逆転し友奈を悦ばせるか、それともただ犯されるがままなのはその時次第だ。もしくは園子が乱入するか、それを待ち構えてふわふわしている余裕の表情を涙で汚すのも一興だ。

 「鬼畜なんよ~」と語る脳内園子に言われると、本体の行方を絡み合う姉たちに聞いてみる。

 

「あれ? 園ちゃん……長女の園子お姉ちゃんはどうしたの?」

 

「なんだっけ……。確か『かっきーの服を持って来るんよ! ヒャア! 着せ替えかっきーだぜ~!』って言ってたからすぐに来るよー! もしくはもうリビングにいるのかも?」

 

「はぁー……ぁ、前は……亮くん逃げようとしたから……入念に準備してそうね」

 

「前みたいに女の子の服がメインかな! すっごく楽しみだね!」

 

「はぁ……はぁ……ふぅ。……あの時は確かそのっちが着ていた服を着せなかったっけ?」

 

「そうだったね! あれ、でも東郷さんも昔の服を着せていたような……?」

 

「……そんなことはしてないわ」

 

「あれー? そうだっけ?」

 

 荒い吐息を繰り返し恍惚な表情を浮かべた東郷の裸体に湯水を掛ける。湯水を弾く肌、しかし肌寒さは無くなったであろう彼女は荒い呼気を繰り返しながら、俺と友奈を見上げる。

 鼻歌混じりの友奈は俺を自らの股間に座らせてボディーソープの容器を手に取る。

 

「あっ、亮ちゃんダメなんだー、美森お姉ちゃんのエッチな姿で興奮してるんだー!」

 

 悪戯心満載な表情で耳元で囁く友奈。

 壁面の鏡越しに蠱惑的な笑みを見せる彼女と目を合わせては、背中や腰を泡に塗れた形の良い乳房と滑らかな肌や生えかけの恥毛で、抱き着くように洗われる。

 

「そんなダメな亮ちゃんは私が洗わなきゃね」

 

「そ、そんなの……」

 

「ふぅー」

 

「ん……」

 

 胸板や腹筋を彼女の手が這う。耳には吐息を。

 東郷の痴態で反り立った怒張を友奈の手が包み込むと、ゆっくりと上下に扱く。雁裏を指先で撫で上げ、雁を弄るように上下で扱くとあっけないほどに射精感が込み上げる。

 横たわる姉の前で、絶頂に達しようとする中、それを許す友奈の声が鼓膜を震わせた。

 

「いいよ……どこに出したい?」

 

「美森、お姉ちゃんに……っ!」

 

「いいわよ、出して」

 

「ぅぁぁあ……!!」

 

 びゅうっと白濁が噴水のように跳んだ。 

 東郷の豊満な乳房を白いソースでコーティングし、汚された本人は指で汚濁を拭う。

 

「……ふふっ、温かいわね」

 

 吐精の快感に目を閉じる俺に、友奈が射精中の怒張を扱く。乱暴に、繊細な手つきで上下に扱く度に快感が電流の如く脳を焼く。

 一滴残らず白濁が床や東郷に飛び散る様を見た友奈は慈母のような表情で怒張を撫でる。

 

「びゅーって一杯出て気持ち良かったね」

 

「……ハァ……ハァ……ハァ」

 

「東郷さんも汚しちゃったね……気持ち良かった?」

 

 重ねた言葉に無言で頷くと美少女二人の笑顔が返って来る。

 

「なら私も洗ってあげる」

 

「サンドイッチだー!」

 

 友奈と東郷に挟まれて身体を洗われる。

 優し気な顔をした少女たちの乳房や肢体で愛撫するように俺に触れる。彼女たちの裸体で洗われ、血が下腹部に巡る肉棒の存在に東郷が下腹部で悟ったような顔を見せる。

 はむ、と唇を甘噛みしながら彼女はそっと肉竿を撫でる。

 

「二人とも。そろそろ身体が冷えるから……」

 

「あっ、うん。入ろっか」

 

 シャワーを浴びて、湯舟に浸かるとちゃぽっと水音。

 全身に感じる温かな水と、背後に感じる友奈の柔肌。正面には東郷が穏やかな表情で俺を見つめる。白い鎖骨をほんのりと朱色に染めて、湯に乳肉を浮かべる彼女は無言で近づいてくる。

 

「亮ちゃーん」

 

「……」

 

「どうしたの? お姉ちゃんたち」

 

「……お姉ちゃんって響きは凄く気分が良くなるわね」

 

「ねー」

 

「ちなみに俺の中で東郷さんは次女、友奈は三女って設定ね」

 

「私が次女?」

 

 正面の東郷。背後の友奈。

 むにゅりと彼女たちの乳房を押し付けられながら至福に浸る。交代制なのか友奈に背中から抱き締められた後は背中を押され、東郷に正面から抱き締められる。彼女の柔らかな肢体を肌に感じながら、湯舟の中で東郷の下腹部に反り立った逸物を押し付ける。

 

 それを気にする様子もなく友奈と時折雑談をする東郷。

 たまにボールのようにパスされる俺。

 パスされた先で、俺は友奈の乳房に顔を埋め乳首を唇で挟む。

 

「ん……お姉ちゃんのおっぱい、美味しい?」

 

「美味しい!」

 

 ちゅぱちゅぱと桜色の乳首を唇で味わう。 

 薄く血の味がするような、果実を舌で転がして、唇に挟んで引っ張る。お椀型の友奈に乳房は俺の口の動きに合わせて揺れ動き、引っ張られてはぷるりと揺れる。

 多少力を入れても形はまるで崩れず、男の本能に訴えかける。

 

「っ」

 

 揉んだり吸ったり甘えることの出来る肉果。

 こうして好き放題出来るのは、彼女らが明確な好意を示してくれるから。

 

「亮くん……私のは吸わないの?」

 

「ちゃーん!」

 

「もう……赤ちゃんみたい」

 

「ばぶー」

 

 姉の豊満な乳房に吸い付く。義姉の乳房に甘噛みする。

 ミルクのような芳香を漂わせ、際限なく甘やかし骨抜きにしようとする少女たちは浴槽の中で密着するように自らの身体を押し付ける。

 彼女たちの下腹部や手が遠慮なく肉棒を弄り、俺の顔を見る友奈と東郷は笑みを見せる。

 

「えへへ……また硬くなったね」

 

「そうね。私と友奈ちゃん、どっちで興奮したの?」

 

「東郷さん?」

 

「友奈ちゃん?」

 

 餅のような質感の友奈の乳房を揉みながら、両耳をそれぞれ二人の少女の舌に犯される。背中から臀部まで密着する東郷の裸体を感じ、乳首を東郷に弄られ、怒張は友奈の秘部に擦られる。

 

「あむ……」

 

 我慢出来ないかのように、首筋に甘噛みする友奈。

 ちろりと、赤い舌を這わせて首筋を舐める東郷。

 

「ふふっ……亮くんってこんなにも美味しいのね。私の弟なのに、こんなに身体が熱くなっちゃう……ごめんね亮くん、貴方の姉は姉の前にただの女だったのよ!」

 

 臀部を擦るのはノリノリで語る少女の柔らかな恥毛と熱い恥部。

 はあ、と熱い吐息をうなじに零す東郷の興奮に、怒張が一層反り立つ。

 

 ふ、ふー、ふー、と鼻息が触れ合う。

 どちらからともなく、唇を触れ合わせる。

 

 背後にいた東郷は俺の左側に、友奈は俺の右側に移動する。

 両手に花、なんてことないような顔で俺の手を取る彼女らは自らの乳房に誘導させては、鷲掴みにされ揉みしだかれ、つねり、弾かれるのを悦び喘ぎ声を聞かせる。

 

 口腔行為を繰り返す。

 柑橘系の味がする少女の舌に自らの舌を絡まれ吸い付かれる。

 東郷の舌が絡まって、友奈の舌に舌を奪われる。唾液を啜られ、歯肉を舌先でなぞられ、至近距離で覗かれる薄紅色の瞳と深緑の瞳と視線を交わらせる。

 

 左右の女の乳房を揉む手をゆっくりと下に這わせる。

 起伏のある肌を撫で、滑らかな腹部を、くびれた腰に手を這わせる。

 

 既に完成された裸体と、成長途上の裸体。

 いずれにしても馴れ馴れしく粘着質に触れると少女たちは小さく呼気を漏らす。やがて、両手は彼女たちの下腹部を伝い、湯に揺蕩う恥毛を伝い、二人の秘裂に触れる。

 小さな肉粒を指の腹で弾き、熱い肉にゆっくりと指を挿入する。

 

「……ぁ」

 

「んっ……」

 

 二人の女に、姉の膣に指を挿入すると達成感のような快感に襲われる。

 クラスのアイドルとマドンナを両手に抱き、一度に二人を味わう至福。興奮で肉竿は痛いほどに反り立ち、俺を昂らせていく。

 

 ゆっくりと指を出し入れすると、きゅっと膣が指を締め付ける。

 僅かに逃げようとする腰は寧ろ押し付けるように密着し、俺の指の動きに合わせて自慰をするかのように腰を振る。

 

「ぁっ、っ……!」

 

「は、ぁ……ん!」 

 

 二人の歓喜を物語るように生暖かい膣はぬめりを増し、艶めかしく揺れる少女。

 されるがままの姉ではなく、弟の雄竿を左右の手がそれぞれ扱き、撫でる。陰嚢や竿を根本から弄られ、限界を感じた俺は湯舟から立ち上がる。

 

 ざぶりと立ち上がった肉竿は丁度二人の美少女の顔の目の前だった。

 僅かに驚いたような顔で怒張を見る彼女らは互いに目配せすると愛おし気に竿に口づけをした。肉棒を挟んでキスでもするかのように、左右から少女たちの唇が竿を含む。

 

「ん……えへへ……東郷さんとキスしてるみたい」

 

「……みたいじゃなくて、するのよ、友奈ちゃん」

 

「わわっ! 東郷さ──ンっ、ぷ……んむ……」

 

 時折奉仕を忘れて、目の前で姉同士の唇が絡み合う。

 その度に肉竿でそっと頬に宛がうと、頬擦りする実姉が竿全体を口に含み吸い上げる。

 気持ちよくなってねと陰嚢を口にする義姉はくぷくぷと顔を前後に動かす。

 

 アイスを舐めるように、ざらついた舌で剛直を舐めあう少女たち。

 溶ける筈もない肉竿に唇や舌で口腔奉仕をする彼女たちは先走りの混ざった唾液を嚥下する。ごくっと喉を鳴らし、息遣いを聞かせながら下品に竿を口に含む奉仕を見せる。

 

 姉の舌が雁をなぞり亀頭に吸い付く。

 義姉の唇が根本からキスを始め、鈴口に至るまで自らの痕を残す。

 

 親友であり戦友な彼女たちは互いの動きを理解しているのか。

 一人の奉仕を上回る二人の奉仕は確かな快感を俺に与えた。時折、愛嬌のように口腔に入り損ねた竿が叱るように彼女らの頬を叩くが、その刺激すら俺の射精感を高めた。

 

 じゅるるっと勢いよく東郷の口腔が俺の竿から子種を啜ろうとする。

 咄嗟に逃げようとする腰を彼女らの腕が回り、俺は二人の頭を掴んで堪える。

 

「ぐっ……くっ」

 

 ゆっくりと彼女の唇が亀頭から僅かに離れる。透明な糸が艶やかな唇と橋を繋ぎ、ぺろりと舌が舐めとる。その淫靡な姿に感情を抱く前に俺の竿に絡みつく友奈の手。

 止める間の無い手淫。

 呼吸を整えることも許さない彼女の手淫は一気に快感の針を振り切る。

 

「ぅっ、ぁ、あぁ……!!」

 

 此方のことなど一切考えない、抵抗の許されない快感に種汁が先端から勢いよく飛び出した。一気に白む意識の中、震える俺の背中に友奈が回り込み、リズミカルに手淫を続ける。

 吐き出された子種は湯舟に落ちることはなく、待ち構えた東郷の口内に着弾する。

 

 手の動きに合わせて噴き出す汚濁によろめく俺は東郷の頭に手を置く。

 踏ん張る俺から残りの子種を奪おうと吸い付く彼女はごくっと喉を鳴らす。

 

 ぷはぁ、と満足気な顔を見せる東郷が舌なめずりをする。

 一息吐く俺の背中を後ろから抱く友奈の腕がやがて解け、その気配に背後を見る。

 

 浴槽の縁に腰を下ろすと開脚して秘所を見せる薄紅色の義姉。

 彼女は義弟に濡れた恥部を見せるだけにとどまらず、自らの指で陰唇に触れると、

 

「……その、私にも……ダメかな?」

 

 ぬめるピンク色の肉を、自ら陰唇を開いて見せる。

 まだ出来るよねという信頼と確かな性欲に熱を持った身体が俺を招く。

 

 

 

 

 腰を振る。腰を振る。

 ぱつん、と強い一撃で根本まで竿が飲み込まれ、強い快感に襲われる。

 

「ぁっ……あ……っ!」

 

 一方的に快感を押し付けるような交わり。

 濡れ肉をほじり、濡れ竿を啜り、互いに快楽を味わう。

 

「ぁん!」

 

 甘い声音が響く。

 バターのように蕩けた媚肉を鉄のように硬化した棒で貫く。 

 

 不出来な弟の雄竿の一突きに、甘い声と香りを巻き散らす義姉は女の顔を見せ、より深くまで入るように片脚を腰に回す。

 脳が焦げ付きそうになる快感に目の前の乳房に噛みついては吸い付く。

 

「ぁぁ~~~~ッッ!!」

 

 ぎゅぅぅっと膣襞が雁に絡みつき、奥歯を噛み締める。

 身体は小さくなっても、女を悦ばせたいという思いは変わらない。どれだけ甘やかしてくれても、奉仕をしてくれても、どこまでも女の本性を剥き出しにして快楽に沈めてやりたくなる。

 

「ひッ──!!」

 

 竿がぐんと反り、普段とは違う膣の、彼女の悦ぶ場所を突く。

 小さくなったからか、怒張の制御が効かず、しかし運良く友奈の甘い鳴き声と共に膣を引き締めさせた新たな弱点をひたすらに攻め立てる。

 

「りょ……ちゃ……!」

 

 目尻に涙を浮かべ感極まった表情で雄を受け入れる。

 弟を拒絶しない甘い義姉と淫音を奏でながら、背中を反らせる。

 

「ふぁぁぁ……!!!」

 

 ぷし、ぷし、と水音と共に絶頂を迎える友奈。

 大きくしなった怒張の先端から白濁が噴き出す。

 

「……! ……!? ……!」

 

 ビクッ、ビクッと小刻みに震える義姉。

 弟の白濁に絶頂に達する少女の瞳には光がなく、口端から涎を垂らし虚空を見上げる。逆流した白濁が恥部から垂れようとも、上り詰めた意識は法悦からの帰還が遅れているようだった。

 ちゃぽっと力尽きた片脚が湯舟に沈むも、白濁を注がれた恥部を晒す友奈を見下ろしていると、ぐいっと引っ張られる。 

 

 力強い腕は東郷の物で、彼女は腕で挟んだ乳房の谷間を見せつける。

 魅惑的な曲線を描く乳肉が作る深い谷間はきっと挿入しただけで気持ちいいだろう。想像と経験に息を呑む俺に微笑んだままの東郷はゆっくりと乳房を近づける。

 

 ぬぷぷ……と肉竿が入り込み思わず吐息する。

 想像以上の快感に思わず腰を揺すっては姉の奉仕に情けなく息を荒げる。

 

 にゅぷ、ぬぷ、と友奈と愛液と白濁が潤滑油となって肌を滑る。

 膣とは違う独特の締め付けと柔らかさは東郷を犯し征服しているという快感と支配欲で脳を刺激する。こりっと乳首が亀頭を擦る中、若さと東郷の奉仕で怒張は回復を果たす。

 

 やがて乳での奉仕を止めた東郷は背中を向けて、浴室の縁に手を置く。

 ぷるりと白い尻が俺の竿に押し付けられ、くちゅりと濡れた陰唇が亀頭に触れる。思わず一歩下がり友奈に受け止められた俺の手が東郷の尻肉を割り開くと、窄める菊座と濡れた秘所が目に映る。

 僅かに横から彼女を見ると果実のように垂れる白い乳房が揺れ動いていた。

 

 乙女が隠すべき場所の全てを見られた東郷は更に挿入しやすいようにと脚を広げ、水分を含んだ恥毛と僅かに開いた恥部からぽたぽたと落ちる雫が湯に波紋を広げる様を見せつける。

 どこまでも男を興奮させる術を得ているかのような深緑の視線。

 そんな光景に震える俺に、懺悔するように東郷が濡れた瞳を向ける。

 

「……こんなふしだらなお姉ちゃんを許して。亮くん」

 

 どこまでが演技なのか。

 彼女はどこまでも俺を昂らせ、虜にしようとする。

 

 実弟に欲情する姉の媚肉は容易く肉竿を呑み込む。

 歓喜に締め付ける膣はいつも味わっていると言わんばかりに俺の形に合わせて収縮する。

 

「ふ、ぁ……」

 

 湯に濡れた脚が動きやすいように僅かに開く。

 滑らかな背中は興奮による熱で熱く、舌を這わせると汗と湯の味がした。

 

 興奮をもたらす東郷の味を舌に含ませながら片手で乳房を揉む。

 手に余る大きなぼた餅は重力によって垂れ下がり、ずっしりとした重さだ。もっちりとした乳房をぎゅっと揉み、乳首を指で弄るときゅっと膣が引き締まる。

 

「許さない」

 

「ん……それ駄目……っ、はぁっ!」

 

 脂が僅かに乗った腹を撫でまわし、陰核に指を這わせる。

 ビクッと強張る彼女はこれから先のことが過ったのか、荒い呼気で肩を上下させる。

 

「美森お姉ちゃんがこんなにエッチなんて。お仕置きだ」

 

 ちゅく、と濡れた音と共に、姉が震えた。

 

「は……だ、だめ……! ぁ、ぁ、ぁああっ~~~ッッ!!?」

 

 顔は見えないが、指先に絡む舌がだらしなく垂れ下がっていた。

 抽送の度にぶるりと乳房が揺れ、哀れに喘ぐ膣を雁がぞりぞりと擦る。

 

 弟の肉竿に興奮する姉へのお仕置きだ。遠慮なんていらない。

 遠慮なく、ぱんぱんと腰を振る。女の喘ぎが浴室に響く。

 結合部から潮を噴き、ガクガクと膝が笑う。

 

「ィぅッ!? 待っ! ──んぁあああああっっっ!!!」

 

 喘ぎ、鳴き、許しを乞う姉の穴を思う存分に味わい、俺は何度目かの吐精に至った。

 

 

 

 気がつくと俺は二人の姉の乳房に奉仕されていた。

 程良い大きさの乳房と豊満な乳房が絡み合い、一つの性器と化していた。

 

 やがて俺は射精に至る。

 きゃあ! と悦ぶ少女たち。

 

 ぷつんと糸が切れたようにゆっくりと湯舟に沈む。

 意識も沈んでいく俺を、彼女たちは自らの胸元に抱き続けた。

 

 

 



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【番外】優しく抱き締めて

誤字報告に感謝を


「はぁぁ……かっきー可愛いんよ~。溜息が出ちゃう。これが私の弟なんだぜ~」

 

「私のだよー」

 

「いいえ、私のです」

 

 脱がされて着替えさせられる。

 機械化されたかのようにスムーズに脱がされ、着させられ、脱がされる。

 この流れを止めないコツは抵抗しないことだ。

 あられもない姿を見慣れた少女たちにとって男の着替えなどなんてことはない。今更顔を赤面させて「きゃっ!」と言いながら目元を覆った指の隙間からジッと見る生娘のようなことはせず、見開いた双眸で俺のあられもない姿を捉える。

 

 指で目も隠さず笑みすら見せながら彼女たちは堂々と俺を見る。そして撮る。

 着替えの途中から終わりまでパシャパシャとカメラのシャッター音が響く中、両手を合わせて目を輝かせる令嬢、園子の表情は輝きに満ち満ちている。

 長い金髪を揺らし、キラキラと輝く瞳に俺を映す少女は目尻を下げる。

 

「これで弟じゃなくて妹になっちゃったんよ!」

 

「亮くん! ……ううん、亮ちゃんね。……亮ちゃん、亮ちゃんね。ふふっ、友奈ちゃんと同じ呼び方ね。あっ、目線こっちにお願いしまーす……亮ちゃん」

 

 風呂上がり。当たり前のように園子が待機していた。

 親愛を感じさせる優しい抱擁。ガラス細工を抱くような園子の抱擁は好きだ。大事にされていると、愛されていると思えるから。

 こんな風に抱き締められると何もかもどうでもよくなってしまう。

 気を抜くと泣き出しそうになるのは何故だろうか。

 

「園ちゃん……」

 

「お姉ちゃんだよ。園子お姉ちゃん。略して?」

 

「園ちゃん!」

 

「そうだよ、かっきー。大正解だ~……かっきーの大好きな園子なんよ!」

 

 この抱擁はまるで沼のようだ。

 温かく、目を閉じた果て無き底に沈み込んでいく感覚。

 言葉を必要としない温かさに、心も身体も沼に沈み、溶け込んでいく。

 おまけに鼓膜を震わせる彼女の囁き声が肢体から力を抜けさせる。そうして脱力したところを、慈母のような眼差しを時折見せる園子の抱擁が強まる。

 

「ぅ、ん……」

 

「甘えん坊のかっきーはお持ち帰りしちゃうから。……拒否権は認めない」

 

 そんな柔らかな彼女の肌と体温に精神をふわふわしている間に加賀家別宅の客室に連れていかれる。普段誰も使用しない客間だが俺を着せ替えるためか部屋の中身は一変していた。

 衣裳部屋のように女性物の衣服が並んでいた。奥ゆかしい俺のことを考えて高級な服屋に連れていくのではなく、商品だけを持ってきたのだろう。或いは元々持っていた衣服かもしれない。

 

「亮く……ちゃん、こっち見て?」

 

「……」

 

「良い! 良いよ亮ちゃん! 最高よ! ああっ! これは……最高の亮ちゃんよ! 亮之佑よ!」

 

 子供になった途端、とりあえず女装させて写真に撮って思い出を作ろうとするのは、撮られる側にとっては面倒でしかないが、撮る側の鼻血を出してまで喜ぶ顔に何も言えなくなる。

 そんなに喜ぶの? こんなことで? 仕方ないなーの精神だ。

 若葉や千景、ひなたや杏にハメ撮りを頼んだ時もなんだかんだで承諾し、あられもない姿を撮らせてくれた彼女らの心境はこんな感じだったのだろうか。

 

「でも千景とかは自分の動画を見せたら抵抗激しくなったし」

 

「ちーちゃんのは照れ隠しでしょ? 元の世界に戻ったら残らないと思うけどわざわざエッチな写真や動画を撮らせてくれるんだから感謝だね。モテるね、かっきー」

 

「……なんか棘がある言い方だねお姉ちゃん」

 

「亮ちゃ……くん。また、そんな物を撮ってたのね。そのっち、次はこの布面積の少ない物はどう? この制服も良いわね。水兵帽も被せましょう!」

 

「ふっふっふ……わっしーもお目が高いぜ。ゆーゆは着せたい服とかある?」

 

「ほえっ? えっとなんだっけ? 誰が一番エッチな写真を撮れるかだっけ?」

 

「それならわっしーだよ~。かっきーに着せたい服はある? って話」

 

「あっ、うん。それなら……これとか?」

 

「たかしーの精霊を模したパーカーとは良きセンスですなぁ……かっきー!」

 

「はいはい」

 

「『はい』は一回よ、亮くん」

 

「……はーい」

 

 ちょっとイラっとしたのは内心に秘める。

 彼女たちも楽しそうだ。元々女が3人、男が1人の状況下で勝てる要素は殆どない。ここは黙って人柱になり少女たちを楽しませることが今後の円満の秘訣になるのだ。

 サービス精神旺盛に口元に手を当てて、ウインクの一つでも決めると歓声が上がる。

 

「きゃるーん」

 

「ああっ! いけない! そんなところまで脱いだら駄目よ、駄目駄目……!」

 

 一人の少年を三人の年上の姉が囲んでは脱がせて遊ぶ。

 対象の性別が逆でなくても、事案ではないのだろうかと脳の隅でそんなことを思う。

 

「えへへ……可愛い。りょーちゃーん。こっち向いて!」

 

「くぅーん」

 

 東郷の真似か携帯端末を向けて目線を要求する少女。

 精一杯の愛嬌を振りまいて彼女を喜ばせると、園子が半眼を向ける。

 

「かっきーってあざとい系の娘を真似するのが好きだよね。そういう子が好みなの?」

 

「好みは目の前のお姉ちゃんなんよ!」

 

「あっ、人の真似した~。いけないんだ〜、先生に言ってやろ~」

 

 楽しそうに人の女装姿を眼球に焼き付け、抱き着き、物理的に記録に残す女たち。

 ボーイッシュから令嬢の妹風まで着せ替えしてはポーズと笑みを見せる俺の姿を、鼻血を出し荒い呼気を漏らしながらローアングルでカメラに収める東郷。

 無邪気に笑って「似合うよ!」と明るく声を掛けてくれる友奈。

 ノリノリでスカートの裾を翻してクルリと回る俺。パシャリとシャッター音。

 二人の姉に挟まれたブロンドヘアの令嬢はふわふわとした微笑みで額の汗を拭う。

 

「ふぅ……満足した〜……。かっきー、これで最後だから!」

 

「最後ってさっきも聞いたんだけど」

 

「お願い、かっきぃ……」

 

「もー、お姉ちゃんは仕方ないね! 次の服持ってこーい!」

 

「かっきーがちょろくて心配になっちゃう」

 

「普通は嫌がるものだと思ったけど……流石亮くんね。ならこれとかどうかしら?」

 

 屈んで同じ目線になる園子からの甘えた声。

 潤んだ瞳を揺らしながら、甘えた声で愛称を口にする令嬢の願いを断るのは至難の業だ。最終的にドレスやパーカー、着物と、色々と経て、最後にサンチョの着ぐるみに落ち着いた。

 

「かわいい! 勇者〜もふもふー!」

 

「これこれ~、この抱き心地なんよ~」

 

「ふかふかだよー! とーごーさんも抱っこしたら? 凄いよ」

 

「ごくり。それじゃあ失礼して……こっ、これは……!」

 

 ピンクを基調とした猫、サンチョの恰好をした俺を抱き締める少女たち。

 左右と前、意外にも薄手の生地ごとに彼女たちの柔肌を感じる。ぎゅうっと抱きしめられる力強さは少女たちごとに僅かに異なり、腕の力の強さや吐息、香りといった差異を楽しむ。

 彼女たちは着せ替えた俺で楽しみ、俺は彼女たちの温もりを肌で味わう。

 

 これが姉弟の関係なのだ。間違いない。

 

 お茶を啜りながら、やいのやいのと撮った写真で楽しむ乙女たち。

 ここから更に他の勇者たちに拡散していくと思うと、その反応が楽しみだった。

 

「他の子に見られたらちょっとは恥ずかしがるかなって思ったけど、良いの?」

 

「自分の幼い姿とトレードで他の娘たちのロリなコスプレ姿も見れるんならお得じゃん。変装のコツは恥ずかしがらないこと。想像するのは常に最強の自分だよ」

 

「そうなの? よーし、私も最強になるぞー!」

 

「そんなのかっきーくらいだよ~」

 

「園ちゃんはスカート捲りの訓練だ。恥ずかしがらなくなれば最強だぁ!!」

 

「ひゃあ!?」

 

 有言実行。スカート捲りは小さい子供だから許される特権だ。

 ふわふわ令嬢の下着は男を惑わせる為だけに作られたような下着だった。

 薄い紫の生地で恥丘が透け、恥毛や秘裂の始まりが見える。ウエスト部分は紐で、辛うじて秘所を隠す生地の面積は随分と少なく、薔薇の模様が付いた僅かな装飾がいやらしさを強調する。

 

 明らかに大人のショーツにはふわふわなど欠片も無く、見る者が見れば衝撃を受けるだろう。隙が多いように見えてスカートのガードが高い園子の下着がこんな煽情的だとは誰も思わない。

 こんな下着を履くのかと同級生が見たら脳が壊れてしまうのではないのか。

 

 脚の付け根まで露出した肌。

 僅か1秒程度だったが、園子の手が素早くスカートを下ろす。

 焦った顔は徐々に熱を帯び始め、チラリと周囲を見渡す。

 

「……!」

 

「わー! 園ちゃんの凄くエッチだね!」

 

「あ、アハハッ! ……恥ずかしいなぁもぉ~。……かっきーこっちにおいで? お仕置きするから。わっしーは今の撮ったでしょ? 消そうね」

 

「破廉恥で大胆ねそのっち。最高画質で保存したわ」

 

「お、怒るよ、がお~!」

 

 園子は笑顔で俺を捕まえにかかる。

 予想よりも俺を掴む腕の力が強いのは、彼女の羞恥心の表れか。それを誤魔化すように自らスカートをたくし上げて網のように広げると、自らの恥部と腿とスカートの生地で俺を捕まえる。

 

 薄暗い視界で、太腿に挟まれ、むわりと漂う雌の濃い香り。

 陸に上がった魚のように、園子の尻肉を掴んでは鼻先で恥部を生地越しに刺激する。ピチピチと跳ねる魚と漁師の戦いは、力の差で漁師に軍配が上がった。

 

「かっきーは動くの禁止ね。すぐエッチなことをしようとするんだから」

 

「お姉ちゃんが可愛いんだもん」

 

「可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、それで許すと思ったら大間違いなんよ~」

 

 やがて捕まった俺は、園子の腿の上で大人しく彼女たちが撮った写真に目を向ける。

 スカート越しに程良い太さと肉付きの良い腿の感触を尻で味わい、背中を彼女に預ける。普通の椅子とは違う、世界で一つしかない高級な肉椅子だ。

 衣服越しに豊かな双丘を後頭部に感じながらサンチョ枕の代わりとして抱き締められる。

 

「かっきー、これ見て」

 

「あー……皆も大変そうだな」

 

「そう? 凄く楽しそうだよ!」

 

 弟の拘束椅子を身体で実践していた園子は携帯端末を見せる。

 若葉たち小さくなった者たちはそれぞれランドセルを背負っていたり、スク水だったり、好き放題されたのか光の消えた目で薄い笑みやピースサインを浮かべている。

 周囲では輝かしい笑みを見せる姉たちがピースしている。きっと良い思い出になっただろう。

 

「すやぁ……」

 

 気がつくと俺を抱き締めたまま、園子は眠っていた。

 相も変わらず、雲のように捉えどころのない彼女だが、雲は離れずに傍にいる。

 

 否、──傍にいてくれている、と言うべきか。

 優秀な彼女ならそれこそ一人でなんだって出来るだろう。そんな園子の隣にいるに相応しい男として後悔することない選択と努力を積み重ねていきたいと思う。

 

 その一歩として、彼女にされるがままという選択を選ぶ。

 腹部に回された腕に手を置いて体重を預けると、腕の力が僅かに強くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

「お風呂上がりのミルクは骨に沁みるんよ~」

 

 ぬぷぷと肉竿が飲み込まれる。

 肉襞を割り拓き、先端から根本まで余すことなく吸い付かれる快感に思わず奥歯を噛み締める俺を、彼女は妖艶な笑みを共に見下ろす。その瞳にあるのは、眼前の雄の子種への渇望。

 

「かっきー。ミルク、飲みたいな~」

 

「ぅあ、は……っ、ぁッ」

 

「出して」

 

 そんな冗談とも揶揄とも取れる声音。

 いずれでもなく本気なのは、ちゅうっと締め付ける膣襞が告げていた。

 

「っ……! んッ、ぷ……ふッ──」

 

 返事など求めず、彼女に、園子に唇を奪われる。

 彼女の中では既に自分の腹にミルクを収めるのは決定事項なのだ。

 その儀式として唾液と舌を絡め合う濃厚なキスが密着したまま行われる。

 

 彼女はきっちりと俺に釘を打つように腰を下ろし、両脚で腰を挟み込んでいた。ディープキスの後に見せる艶美な笑みは日常生活では決して見ることが出来ない魔性を秘めている。

 キスを止めて、密着した上体を起こす全裸の少女が視界に収まる。

 女として完成しつつある肢体。豊満な乳房は風呂上り故か、ほんのりと汗ばんでいる。先端のツンと上を向いた薄ピンクに思わず両手が吸い寄せられる。

 

「んっ」

 

 餅のように指に沈み込む。

 ぴんと乳首を指で弾くと腰が浮く。

 腹部を僅かに反らせ、美しい円弧を描く美乳が俺の手中で震える。

 

「ぁっ、ん……ぁ、ぁ、ぁっ、ダメッ!」

 

 乳房の谷間から覗く少女の端麗な顔。 

 長い金髪を振り乱し、甘く蕩けた表情で喜悦に震える。その度に肉竿から搾り取ろうと淫液を結合部から漏らし、脚を広げて竿に貫かれた赤い恥肉を見せる。

 突き上げると甘い声を上げ、乳房を揉むとあられもない声を漏らし、乳首を擦ると背中を丸め、媚肉が歓喜の悲鳴を漏らす。赤らめた頬に口端から涎を垂らして感じ入る少女の姿に息を呑む。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 正しく艶美そのものを体現しているかのようだった。

 俺の着せ替えよりも眼前の女の咲き誇る姿を撮った方が遥かに有意義だろうと思って。

 

「そんな、ぁ、なっ、ぃぃんよ……ぁぁあっ、っぁあぁああっ!!!」

 

 嫌々と首を振り否定の文言を唱えるも、自ら振る腰の強さは寧ろ増すばかり。

 俺が彼女を味わっているように見えるが、実際は逆だ。

 園子が俺を食べている。余すことなくじっくりと食べようとしている。陰嚢が脚の付け根にぶつかるまで腰を落とし、艶やかな両脚を大きく広げて、ぐりぐりと腰を左右に動かす。

 時折のけ反らせた首筋に汗を浮かべ、膣で絶頂の余韻に耽りながら更に腰を揺する。

 

 捕食しているのか捕食されているのか分からなかった。

 唯一分かるのは、幼気な少年を裸にして、全裸の美少女に犯されていることだけ。

 

「かっきぃ……もっとぉ……」

 

 淫らで甘い勇者。

 普段は掴みどころのない彼女の確かな女の姿。

 そんな女に耳元で囁かれる。「もっと」と。

 

「あんっ!! ぁ、ぁっ、ひぅっ!」

 

 突き上げる度に悦ぶ園子。

 無心で腰を振る度に肉音が響く。ぐぽっ、と下品な淫音が漏れるも恥ずかしがるどころか、自らの嬌声で音を上書きする。

 ぷるんと乳房を揺らして涙すら流す少女は乱れることの悦びを身体で表現していた。

 

「ぅぁ、っ……! んんんっっっ……!!」

 

 俺の両手を掴んだまま絶頂に達する少女。

 ふるる、ふるる、と痙攣した彼女はすぐに戻ってくる。

 

 本能のまま園子は腰を揺する。

 半分法悦に浸り、やや定まらない焦点。

 理性も羞恥もかなぐり捨てた女は、すっかり乱れた髪を汗で濡らす。

 

「ふっ、はっ、ぁ、ぁ、ひぁぁっ……!」

 

 涙を流し快楽に流される園子。

 互いを貪り合いながら、遂に彼女は密着するように覆い被さる。

 

 水風船のような乳房が胸板でむにゅりと形を変える。 

 普段とは逆に犯されるように、彼女は腰を押し付け、乱れる。

 

 全身から汗を流し、長い髪から汗と淫気なオーラを巻き散らす。

 俺もまた、ただ目の前の女に全てを注ぐつもりで腰を突き上げる。

 

「ハァ……ハァ………、んむ……ッ」

 

 至近距離で園子の潤んだ瞳と視線を重ねる。

 やがて唇を重ねながら、俺たちは獣のように交尾する。

 陰毛が絡み合うほどに恥骨を擦り合わせ、休む暇なく互いを貪る。

 

 俺は腰を突き上げて彼女は腰を打ち付ける。

 それをひたすらに繰り返して。

 瞬間、ぎゅっと膣が蠕動する感覚があった。

 

「ぅぐっ……!」

 

「ぁ、ぁっ、ぁぁあっ、~~~~!!!」

 

 脳汁が神経を伝い白濁として彼女に吐き出される。

 噴水のように彼女に打ち付ける子種を、園子は目を閉じて受け入れる。ごくごくと彼女の膣が白ソースを呑み込み、一滴も残さず搾り取ろうと締め付ける。

 

「はぁ……美味しいんよ〜」

 

 淫らな華を咲かせた少女の吐息。

 くるりと胸板に指で円を描きながら、汗みずくの身体を重ねる。

 

「園ちゃん。これが姉なんだね」

 

「……うん、そうだよ」

 

 僅かに間を置いて園子は肯定する。

 さらりとした髪が頬をくすぐり、ふと視線を隣に向ける。

 

「むにゃ……とーごーさん布団ふかふかぁ……」

 

「友奈ちゃん……駄目よ、そんなところ触っちゃ……」

 

 抱き合うように寝入る少女たち。

 今頃夢の中で二人楽しく遊んでいるのだろう。

 

 寝顔を見ている俺の頬に添えられる手。

 正面に目を向けると、見目麗しい少女の顔。

 

 僅かに視線を下げると目に映るのは魅惑的な柔肌。

 豊かな胸元からくびれた腰まで一切無駄のない女の裸体。蠱惑的な肢体を密着させ、艶のある長い髪をシーツに広げる女に甘い香りと親愛を向けられる。

 

「かっきー、そろそろ寝る? もう1回する?」

 

「……寝よっか、お姉ちゃん。ぎゅって抱き締めて。泣いてしまうくらいに優しく」

 

「……今日のかっきーはナイーブだね~。大丈夫だよ、また元に戻るから」

 

「────」

 

「大丈夫、大丈夫だよ。何があっても今度は必ず傍にいるから。よ~しよ~し良い子だよ〜」

 

「……わァ……ぁ」

 

「かっきー泣いちゃった」

 

「ええっ!? 亮ちゃん大丈夫!? おっぱい揉む? ぎゅーってする?」

 

「亮くんを泣かせたのは誰!? ちょっと行ってくるわね!」

 

「わわっ! 2人とも起きてたんだね~。かっきーも情緒不安定な子だから、人肌が最も薬になるんよ。3人でぎゅーってするのが一番だからね。今こそ私とわっしーとゆーゆの力を一つに!」

 

「「「ぎゅーーー」」」

 

 ──これが『お姉ちゃん』なのか。

 だとしたら、やっぱり姉も義姉も欲しいと思う。

 

 甘やかされてエッチなことをして抱き締められる。

 愛していると、その仕草や態度から分かるような抱擁に目を閉じる。

 

 抱擁されて、何故か溢れる涙を拭われた。

 頭を撫でられて優しい子守唄に鼓膜を震わされる。

 目の前の乳房の谷間に顔を埋めて、甘い香りと共に穏やかな鼓動に呼気を合わせる。

 代金は精を搾取されるだけ。

 

 やがて訪れるのは、果て無き底に沈み込んでいく感覚。

 言葉を必要としない温かさに、心も身体も骨の髄まで溶け込んでいく。

 

 今夜はもう夢だって見なくなるくらいに。

 

 

 




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【番外】貴方に尽くされる

リクエスト要素を含んでます


「ぅ……わぁ……」

 

「よしよし、泣きたい時に泣くのが一番だよ~」

 

「うわぁん! 亮ちゃんが泣いちゃったよー! ぅぅ……ぐすっ……ハグ……」

 

「……良いのよ亮くん。何も我慢しなくて」

 

 何故だか涙が出る。原因は分からない。

 人肌に安堵したのか、優しい言葉に幼い身体が反応してしまったのか。

 昔はもっと自分のことを血も涙もない人間だと思っていた。感動的だと好評の映画を見ても鼻で笑って感動しない俺って凄いと一人で調子に乗っていた時期が懐かしい。

 今ならきっとマシな反応をしたかもしれない。

 

「ぅぅ……面倒臭くてごめんね……こんな俺を見捨てないで園ちゃん」

 

「絶対に見捨てないから」

 

「本当?」

 

「うん。見捨てないんよ、約束」

 

 思ったよりも俺の心は弱いらしい。一度でも精神的に来るともう駄目だと思うのは前世からの悪癖なのだろうか。それとも身体が小さくなると心も弱くなるのか。

 いずれにしても意識したら駄目だった。

 醜態を晒しても、金髪の美少女の胸元に抱かれ、背中から包み込むように抱き締められて、頭を撫でられて、共感されて、触れる肌から人肌と優しさを感じて、ただ涙を流していく。

 

 メンタルを鍛えることが出来るのなら、身体よりも先に鍛えるべきだったのかもしれない。

 だが、現実にメンタルを、精神を鍛えるのはどうやったら良いのか。元の状態でも分からなかったのに、小さくなった頭脳では頭の中をぐちゃぐちゃにすることしか出来ない。

 

「ぅぅ……東郷さん……友奈ぁ、こんな軟弱なショタを見捨てないで……」

 

「ええ、勿論よ。小さくなって疲れているのよ亮くんは。大丈夫よ、ずっと傍にいる」

 

「私も離れないよ! ずーっと一緒だよ!」

 

「ゆうにゃ……東郷しゃん……。なら、抱いてくれる? 涙が枯れるまで優しく」

 

 泣いている人を笑う少女はいない。馬鹿にする者もいない。

 真剣で、慈愛を含んだ眼差しにどれだけ救われただろうか。

 

「うん、元気をいっぱい送るね!」

 

「α波も送るわね」

 

 俺を見捨てない存在がいることに心の底から安堵し、感謝する。

 彼女らなら見捨てないという打算で言わせたという思考が良心を突く。泣くということがアピールになるのではないかと暗いことを考える。

 どんどん暗い方向に進もうとする思考を止めるように目元に掌を置かれた。

 

「かっきー、もう何も考えないで一緒に寝よう?」

 

「…………」

 

「どんな夢を見たって、一緒にいるから」

 

 今日の俺はもう駄目なので、『加賀亮之佑』は閉店だと瞼を閉じる。

 だから代わりに──ここで一つ、以前に小さくなった時の頃の思い出に耽る。

 

 意識が沈むまで。明日の自分にバトンを繋ぐまで。 

 

 

 

 +

 

 

 

 この世界に来てから、少女たちが幼児化したり大人化するようになった。魂が神樹に取り込まれ、更には過去の勇者や巫女までもが召喚された世界なのだから、今更驚くことではない。

 そう斜に構えていられたのは、自分の身が小さくなるまでだったが。

 

「かっきーを勇者部の弟に認定します~」

 

「うむ、これがその証明書だ。皆で作ったんだ。私たちはお前の……亮之佑の姉だからな。何があっても助けてみせる。これから私たちのことはお姉ちゃんと呼ぶんだぞ」

 

「園子お姉ちゃん、若葉ねえ……、お姉ちゃんたち!」

 

 小さくなったから暗いことばかり考える俺を、光属性の少女たちが癒してくれる。

 だから、ウジウジ考えることはしない。

 小さくなった俺を少女たちは姉として肉体的に精神的に優しくしてくれるのだから。

 普段から幼稚園で劇をしたり遊んだりする彼女たちは子供の扱いを熟知しており、小さくなった手足では家事も不便だろうと優しい彼女たちが交代で手助けしてくれるようになった。

 

 心の中でデリバリー勇者、もしくは通い妻と呼んでいるのは秘密だ。

 そんな中、小さくなり目線が近くなったからか小学生組との触れ合いが増えた。

 

「やっぱりこうして目線が近いのはなんだか新鮮ッスね」

 

「そうね……亮之佑さん……くん?」

 

「そうだよ須美」

 

「かっきーはかっきーだよぉ~」

 

 小さくなってもやることは変わらない。

 普段は後輩の少女たちとの距離感が狂いながらも、園子(小)を背中に背負い、東郷の進化元である鷲尾須美を可愛がり、三ノ輪銀とも戯れる。

 たまに犬吠埼樹や国土亜耶を姉と呼んではぶるりと身体を震わせる日々。

 普段妹扱いされているからか、何かが琴線に触れるのだろう。事あるごとに姉として張り切る少女たちの姿は可愛らしいものがあり、周囲の少女たちと共に見守っている。

 

「須美ちゃんペロペロ! こんなエッチな身体して全国の小学生に謝れ!」

 

「きゃあ!!」

 

「なんだこのぼた餅は!? そうか、昔はまだ硬かったっげぼっ!!?」

 

 既に豊かな肢体を震わせ顔を真っ赤にする須美。

 平手で俺の頬を叩き、揉まれた胸元を隠すように己の身体を抱く姿は新鮮だ。額縁に収めておきたい程に可愛らしく、可能な限り須美の関心を引きたいと思うのは精神が若返ったからか。

 「いたた」と痛そうに頬に手を当てて膝をつく俺が悲しそうにすると、軽蔑に少しだけ後悔を混じらせたような表情を見せる須美は神世紀の令嬢なだけあってちょろい。

 このまま成長してしまえば、ろくでもない男に引っ掛かってしまいそうな予感がした。

 

「うう……痛い、痛いよぉ」

 

「かっきーの自業自得だよね。怪我も無いのにどこが痛いの?」

 

 やや冷たい園子の視線もまた新鮮さがある。

 

「心が。須美にぎゅってされてチューもしてくれないと治らない~」

 

「ええ!? し、しないわよ!」

 

「じゃあ、私がするね~。……わっしーにセクハラしちゃ駄目だよのハグ~」

 

「園ちゃ〜ん……いたっ、つねるのは禁止だろ」

 

「かっきーって私にそういうのはしないよね」

 

 ぎゅううっと園子(小)からの背後からの抱擁。

 将来豊満になる発展途上の乳房の感触と、甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 

「ならアタシも。亮さん、小さくなったからって須美にセクハラしちゃダメだぞ。甘えたくなったり……その、エッチなことをしたくなったら大きい方の須美としような~。あっ、胸の話じゃなくて背丈の方だぞ。マウンテンはどっちも大きいもんな!」

 

「銀~」

 

 姉後肌なところを見せる彼女は叱りながらも抱擁してくる。

 よしよしと俺の頭を撫でる銀と、愛称を告げながら甘える園子に背中から抱かれた俺を、少し離れたところから見続ける須美。

 大好きな二人を取られたことが不安なのか、深緑の瞳を揺らすと一歩近づいてくる。

 

「う~」

 

 唸りながら一歩踏み出すと、あとは勢いそのままに近づいてくる。

 飛びつくように須美が正面から抱き着いてくる。思った以上の衝撃だったが背中に控えた園子と二人で衝撃を吸収すると、須美を抱き締め返す。

 むにゅんと豊かな双丘が胸元で潰れるほどに彼女は密着してくる。

 赤らんだ顔を誤魔化すように首筋に顔を押し付ける須美は唸り声を上げながら、

 

「東郷さんとどれだけ仲が良くても、婚前交渉なんて駄目ですっ……」

 

「え~? 温泉に行ったり互いに裸を見せあったりエッチもしたのに今更だよ~……? ミノさん見て~かっきーの前だから、わっしーかまととぶってるよ~」

 

「ち、ちがっ! そんなこと言ったらそのっちだって!」

 

「私が私を捧げる相手は世界でかっきーしかいないから」

 

「そ、そんなの……私だって……」

 

「……いや~、園子と須美にとモテますな亮さん」

 

「銀! 私はそういうのじゃ……!」

 

「分かっているって」

 

 むむむ……と俺を挟んで園子と須美が見合うのをムードメーカーである銀が笑って空気を変えようとする。イケメンな彼女は笑みを見せながらも須美と園子の髪を撫でる。

 

「両手に花ということで。おっ、亮さんの家に着いた! ほら、二人とも帰るよ」

 

 園子と須美ごと俺を抱く銀。

 その包容力と浮かべた向日葵のような笑みに少女たちは黙り込む。スリスリと頬を擦り付ける園子と深緑の瞳を揺らして俺に抱き着く須美はやがて離れる。

 

「あー……泊まってく?」

 

「残念なんスけど、樹さんとか亜耶さん含めた年少組でパジャマパーティーをするんですよね。だから……また今度ということで! なっ、須美。園子」

 

「うん、ごめんね~。代わりに私のかっきーにアイラブユー」

 

 上目遣いで俺を見る園子(小)はお詫びなのか、ちゅっと頬に口づけする。

 えへへ、と僅かに赤らんだ顔を持参したサンチョ枕で隠すとそそくさと背中を向けて立ち去る。その愛おしい背中を見送りながら、無言で立ち去ろうとする黒髪の少女を呼び止める。

 

「須美」

 

「な、なんですか」

 

「今日はごめんね。不快な思いさせちゃって。もうしないから」

 

「────」

 

「またね」

 

 黒髪の少女に背中を向ける。

 門扉を開けて立ち去ろうとすると、背後から少女が近づいてくる。「待って!」と俺の手を掴む須美は目を泳がせながらも、呼び止めたことの弁明をしようとしているのか唇を震わせる。

 

「嫌、とかじゃなかったですから……ただ驚いただけで」

 

「──本当に?」

 

「ほ、本当よ。それだけで……──んむっ!?」

 

 可愛らしさが溢れて衝動が抑えられなかった。

 ピンク色の唇に唇を重ねる。背中を抱き寄せて強張る肢体が柔らかくなるまで唇を重ねる。ディープではない、淡い思い出を作るような触れるだけのキスは数秒で済んだ。

 拒絶するような手から力が抜けて受け入れるように肩を掴む。

 

「嬉しいよ、須美」

 

「……っ、ぁ」

 

 ゆっくりと唇を離すと、蕩けた表情の少女がいた。

 白い頬に朱色を差し、小さく喉を鳴らすと、そっと目を逸らす。

 衣服越しに豊満な胸元を揉むと吐息を荒くしながらも抵抗はない。きっと、今すぐ家に連れ込んでも、彼女は抵抗もせず生まれたままの姿にされて、最後には自ら脚を広げて雄を受け入れる。

 

「亮之佑、さん」

 

 これからそんな展開になるのだろうと、彼女の揺れた瞳は理解していた。

 既に心は受け入れているからか、逃げることもせず、されるがままだ。

 

「須美」

 

「は、い」

 

 迷子の子犬のような顔で俺を見る少女。

 キス一つで虚ろな表情を見せる須美の耳元で甘く囁く。

 

「……また今度ね。次に会った時に滅茶苦茶エッチなことしようね」

 

「────」

 

「約束」

 

「やく、そく」

 

 パッと耳元を押さえては顔に熱を帯びていく須美。

 何を想像したのか、今にも倒れ込みそうな所に銀や園子が戻って来る。

 

「おーい、須美。遅いぞ」

 

「……ぁっ、う、うん! 今、行くからー!」

 

 チラリと俺を見るも何も言わない少女。

 ウインクの一つでもして見せると、挙動不審気味に顔を背ける少女の顔は耳まで赤い。足早に立ち去る須美に笑みを見せたまま、3人の背中が見えなくなるまで見送った。

 

「さて、ただいまー」

 

 須美の反応をひとしきり楽しんで帰宅。

 触れ合ってみると、鷲尾須美は東郷美森とは別の存在なのだと理解する。

 キッチンから漂う良い香りに足早に廊下を渡る。

 

「あら、おかえり」

 

 風がいた。エプロン姿の風がいた。

 

「ご飯にする? お風呂にする? それともア・タ・シ?」

 

「ご飯が良いです」

 

「つれないわねー。ほら、せっかく裸エプロンにしたのに」

 

「その恰好でちょっと応援して貰って良いですか?」

 

「……こう? フレー! フレー! 亮之佑!」

 

 東郷ほどではなくても起伏に富んだ乳肉がエプロン越しに揺れる。

 横から覗く肌は確かに肌色で、揺れる臀部が男を挑発する。まるで新婚生活が始まった直後の新妻がしていそうな恰好だ。

 男ならこんな格好をすれば悦ぶだろうという風の思惑が透けて見える。

 

「この格好嫌い?」

 

「好きでござる」

 

 エプロンを捲り上げて、臍から下腹部まで見せられると頷かざるを得ない。

 残念ながら本能に逆らうことは出来ないのだ。俺の反応に満足そうに笑みを見せる上下共にブロンドヘアの風に手を引かれ、リビングまで連れて行かれる。

 

「今日は……そっか、樹はパジャマパーティーでしたっけ?」

 

「そうなのよ。一人でご飯を作っても味気ないし、そういえば私の弟は今何しているのかしらって。樹と違って掃除もしっかりしているし全然すること無かったわ」

 

「もう姉っていうかオカンとかそんなところに片足突っ込んでますよ。あと、今日は小学生組と遊んでましたよ。とても健全に。須美がとても可愛かった」

 

「ロリコン? いや、見た目的は子供だからセーフね。……アタシのお尻を触る手は子供らしくないけど」

 

「叩き甲斐がありそうなお尻だなって。悪戯っ子はこんなもんですよ」

 

「口の多い弟ね、そうやって須美をたぶらかして遊んでたんでしょ。東郷に言いつけるわよ……ほら、さっさと手を洗ってきなさい。今日は沢山作ったわよ」

 

「子供ボディだから胃袋的に遠慮して下さいね」

 

 姉というよりも母役の風の後ろ姿に涙がほろり。

 女子力はいったいどこにいってしまったのか。

 身体の大きさ一つで左右される脆弱な精神だけは悟られまいとティッシュで顔を隠す。普段から樹に食べさせて自らの豊満なボディにしているであろう料理に舌鼓を打つ。

 

 うどんオンリーかと思ったがそんなことはない。

 天ぷらやカツとガッツリとした物を始め、うどんや骨付き鳥と俺の好みを網羅しつつ、胡麻和えや煮物など健康を考えた地味な一品まである。量と質を揃えた料理は、心の奥底まで温める。

 

「七味は少しだけよ、味覚が馬鹿になっちゃうから。さ、どんどん食べなさい。お代わりもあるわよ」

 

「あの、風先輩」

 

「お、ね、え、ちゃ、ん」

 

「……風お姉ちゃん。とても美味しいし思わず嫁に欲しくなっちゃうのだけど……ちょっと量が多いかなって。残りは明日にして良い? タッパーに入れて良いですか?」

 

「まったくしょうがないわねぇ。大丈夫よ、明日の分も既に作っているから」

 

 呆れ顔を見せながら、掃除機のような勢いで料理を喰らう風。

 ズゾゾ……と食べる彼女に負けまいと食べるが当たり前のように敗北を味わう。競っている訳ではないが、豪快な健啖家ぷりを発揮した彼女は満足気な吐息を漏らす。

 

「美味しかったわね。亮之佑的にはやっぱり骨付き鳥が一番だった?」

 

「風先輩が作ってくれた事実が一番ですよ」

 

「もう……姉を口説こうなんてシスコンなんだから。お風呂の準備も出来ているわよ。家主なんだからさっさと入ってきなさい」

 

「はーい」

 

「素直ね」

 

 満更でもないような顔で浴室に送り出される。

 風の子供になったら何不自由なく過ごせて、我儘の多い甘えん坊の駄目な子になってしまうだろう。樹が朝起きられないのもその辺りが原因かもしれない。

 こんなに甘やかされると、駄目な男になってしまうという危機感を覚える。

 それほどに風という女は尽くしてくれる。

 

「はあ……」

 

 ざぶ、と湯水が浴槽から溢れていく。

 

「身体が戻ったらみんなにお礼参りしないとなぁ」

 

 まさか身体が小さくなった程度でこんなに反応が変わるとは思わなかった。

 単純にショタコンな少女が多いという訳でもないが、普段の鬱憤を晴らすかの如く、お姉ちゃんと呼ばせては幼気な少年の身体を弄る少女たちには必ず受けたことは返そうと思う。

 主に身体で。彼女たちが悦んでくれるように。

 

 一番風呂を楽しみながら、ゆっくりと浴槽から上がる。

 身体を洗おうと椅子に座った瞬間を狙うように、脱衣所の扉が開く。

 

「たのもー! 背中を洗いに来たわよー!」

 

「きゃあ!」

 

「何よ変な悲鳴を上げて。お姉ちゃんに隅々まで洗わせなさいよ、グヘヘ……」

 

 全裸の風が入ってきた。

 もともと裸エプロンの姿だったから脱ぐのも容易いのだろう。バスタオルを身体に巻く訳でも、小さなタオルで身体を隠す訳でもない。堂々と風呂に入って来る。

 

「うっふーん? 見たければ見ても良いのよん?」

 

 そう挑発しながら豊満な胸元に手を這わせ、ノリノリでポーズを取る。

 自然と視線を誘導される形で、彼女の裸体に目を向ける。揺れ動く乳房は女子力の塊。やや防御力の高そうな腹部は柔らかく、鼠径部から生え揃った恥毛と肉付きの良い太腿と上から下まで舐めるように見る。

 淫欲混じりの熱視線を感じ取ったのか、さりげなく胸元に手を置く彼女は苦笑を見せる。

 

「えっ、遠慮ないわね相変わらず……。まあ、女子力が高すぎるのも考え物ねー」

 

 自分で考えたセクシーポーズだろうか、ウインクをしながら片手を胸元から腹部に這わせる彼女はシャワーヘッドを手に取り、片手にボディーソープの容器を手にする。

 

「じゃあ、洗うわね」

 

 タオル代わりに泡塗れの自らの肢体で俺の身体を洗う。

 柔らかな若草を俺の身体に擦りつけながら、やや先端が硬くなった乳房で俺の背中や腕を挟むように洗う。

 

「……っ」

 

 ビクッと風の下腹部が震える。

 俺の指を自らの肉壺に招き入れる彼女は無言で挿入を求める。同時に指先が肉棒に絡みつき、泡で滑る竿を上下に扱く。

 

「んっ……壺洗いって言うんでしょ? こういうのって」

 

 人差し指、薬指と来て、一番長い中指を挿入されるのが風の好みだった。

 ぬぷ、と愛液で濡れた恥部が指を受け入れて、ぬめる膣内を割り拓かれては的確に弱点を指の腹で擦る。

 

「ぁっ……! やるわねぇ……っ」

 

 きゅっと膣が指を締め付けるも、不敵な笑みを見せる風は跪く。

 彼女の目の前には彼女の手淫で反り立った肉棒が。

 俺の目の前には腕で挟むように寄せて生まれた乳房の谷間が。

 

「ここ、挿れなさいよ」

 

「……!」

 

「お姉ちゃんのおっぱい、気持ちいいわよ?」

 

 言われずとも、風の肩を掴み、挿入する。

 にゅぷぷ、と泡と先走りが潤滑油となり、俺の腰はあっという間に揺れ動く。

 

「んッ……ふふふっ、アタシの女子力を味わうがいいっ……!」

 

 何を言っているかよく分からないが風の乳房は極上だった。

 締め過ぎず、怒張を悦ばせる程度になるように寄せる。気がつくとピストンをするように腰を動かして、風の乳房の最奥まで怒張を突き立てる。

 

 俺の怒張は豊乳の中でピストンを繰り返す。

 膣よりも柔らかく、滑らかな感触に包まれながらひたすらに往復を繰り返す。

 

「はぁ……はぁ………気持ちいい……」

 

 思わず溜息がこぼれる。

 極上の乳肉を好き放題に肉竿で突き立てながら至福に浸る。

 

 脳汁が神経を伝い、白濁として彼女の乳房を汚す。

 その未来の光景が脳裏を過り、実際にその時が訪れた。

 

「ぅ、あぁッ……!」

 

 乳肉と乳首が肉竿を刺激する。

 先輩の乳房に情けない声を上げながら射精する。まとまった量の白濁が勢いよく噴き出す。吐精の瞬間を狙ったように乳を寄せて搾り出す風が蠱惑的な笑みを見せた。

 

「ぁー……」

 

 ゆっくりと見せつけるように。

 風の唇が開くと、赤い舌が怒張に絡みつき、飲み込む。

 

「っあ!? ちょ、まってっ、まだ……あぁっ!」

 

 射精直後の敏感な時を狙って、彼女の舌が俺をねぶる。

 僅かに頬を窄め、ちゅううっと吸い付き、残りの白濁を呑み込む。

 

 風の頭に手を置き腰を引かせるも、雁に唇を重ねて小刻みに顔を振る。そんな悪戯めいた行為でも性感を刺激して、短い射精に至った。

 先ほどよりは少ない子種が飛び出し、彼女の胃袋に収まる。

 コクン、と喉を鳴らし嚥下したことを聞かせる彼女は俺を抱き締める。

 

「ご馳走様」

 

 耳元で囁く。

 

「続きはベッドでしましょう?」

 

 

 

 女に搾られる幸福と屈辱で頭がおかしくなりそうだった。

 ベッドに連れ込まれる。

 互いに着る物はなく、風の片足を抱きながら、最奥に向けて腰を揺する。

 

「ぁ、んふっ、っ!」

 

 幼気な少年を虐めたからか、膣肉は随分と蕩けていた。

 淫らな表情を浮かべ、額に髪の毛を張りつかせた彼女は俺を受け入れる。挑発すれば乗って来ることを理解して、犯される所まで想定しているかのような表情。

 

 苛立ちを覚える。

 その余裕を壊すように、犯すように、腰を打ち付ける。

 

「ぁんっ! 亮之佑ぇ……すき」

 

「ふぅ、せんぱい……っ!」

 

 脚を広げ、恥骨が擦れ合うほどに密着してはピストンを繰り返す。 

 肉竿の根本まで挿入して抜く。

 

 挿入する。叩きつける。抜く。

 壊れるまで、この肉壺に欲望を押し付けるのだろう。

 

 思考を止めて、犬のように荒げた声で腰を揺する。

 ぷるりと揺れ動く乳房と共に、シーツを握る姉が全身を震わせる。眼前に揺れる乳肉と臀部、恥毛を探って陰核を指で擦る。

 

「ハァ、ハァ、ハァ──! イく……っ!!」

 

「ゃんっ! ぁっ、ぁ……だめっ」

 

 生意気な姉の最奥に俺は精液を放った。

 のけ反る彼女の恥部に根本まで怒張を押し付ける。

 

「~~~~ッ!!」

 

 掴んだ風の脚から手を放して深呼吸する。

 目を閉じて、女に吐精した快感に震える。風もまた荒い呼気を繰り返しながらも、仰向けになり両手を広げる。

 当たり前のような顔で雄竿を受け入れようと脚を俺の腰に巻き付ける。

 気がついたら俺が彼女に抱き着くように密着させていた。

 

「ほら……おいで」

 

 ぬぷぷ、と風の肉に沈んでいく。

 食欲も性欲も旺盛なのか。彼女は言葉少なに俺を求める。

 「好き」という言葉を吐いて、俺が時折「好き」を返すだけで全身を震わせ悦びを露わにする健気さに幾度となく彼女の最奥に白濁を放ち続ける。

 

 唇を重ねる。たまに空気を求めて唇が離れる。

 その度に好きを積み重ねていく。

 

「好きですよ、風お姉ちゃん」

 

「ぁっ、ぁん……私も、すきぃ……」

 

 彼女からの「好き」が「しゅき」になって。

 言葉の意味が分からないほどにぐちゃぐちゃになって。

 それでも、風の両脚は俺の腰に巻き付く力を弱めることはなかった。

 

 

 




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【番外】二度寝の末路

 最近は不思議と夢は見ない。

 よほど疲れているのか、もしくは別の要因か。最近よく眠れると噂の飲料水を購入したからかもしれないが人体の構造などそこまで詳しくはない。

 目を閉じて、次に目を開けた時には朝になっている。身体の体内時計がキッチリと同じ時間帯に目覚めを促してくれるのだ。

 

「────」

 

 朝、目覚めると状況を確認する。

 自身の状況、周囲の状況に変化がないかの確認は、これまでの経験に基づいて構成された俺だけの習慣だ。何を馬鹿なと思うかもしれないが、身体が幼児化したり、逆に大人になったり、樹海という異世界に放り出されることもあるのだ。

 何が出来るか分からなくてもパニックにならない程度の備えはしたい。

 

「ふあ──」

 

 手足の痺れや思考の鈍化が無いことを確認。

 欠伸を漏らしながら、掌に僅かに違和感を覚えて目を向ける。

 

 柔らかい手と握り合っていた。

 視線を上に上げていくと、手を握るのは桜色の少女。

 

「んゆ……」

 

 結城友奈。いつの間にか彼女と手を繋いで寝ていたようだ。

 薄紅色の髪が乱れ、ピンク色のパジャマを着た少女は無防備な寝顔を見せる。薄い胸元をゆっくりと上下させた彼女は可愛らしい寝息を立てて、きゅっと俺の手を握り続ける。

 口端から涎を垂らした彼女は幸せそうな笑みを見せる。

 少女の寝顔をジッと見ながら思うことは一つだ。

 

「天使じゃん」

 

「すぅ……ん……」

 

 勇者部ではよく天使というワードが飛び交う。

 比喩表現ではあるが、防人サーにとっての国土亜耶のような存在が勇者部には多い。

 

 クール系から妹系、女騎士系から巫女まで様々な属性が集う中でも、純真無垢で天然な少女の存在はもはや国宝と言ってよい。誰にでも優しい彼女に勘違いする男も多く、そんな友奈を守ろうと周囲には少女を慕う美少女たちが壁となるほどだ。

 当然、それでも男たちは友奈の魅力に惑わされる。

 優しく明るい天使には誰だって夢中だ。

 そして俺自身もいつからだったか、そんな結城家の友奈に──、

 

「……ん、にゅ」

 

 じんわりと彼女の掌から熱が伝わる。

 柔らかく温かい彼女の熱、それが俺の心身の疲労を和らげる。起こさない程度にそっと彼女の慎ましい胸元をパジャマ越しに撫でまわしたり、その奥に隠れた肌に触れるなど、細心の注意を払って友奈の体温を僅かに上昇させる。

 そんな風に彼女に触れると、疲労は回復、憂鬱な気持ちも吹き飛んだ。

 

「おまけに身体まで元に戻ってる」

 

 身体の小ささ、それに紐づいていた不安定な感情の揺らぎが消えていた。彼女の純真無垢で一生懸命でひたむきで優しくて天真爛漫な姿、言動、仕草が俺に元気を与えてくれたのだ。

 にぎにぎ、と初々しい恋人のように指を絡めて少女の手の感触を楽しむ。数多のバーテックスを屠った彼女の手は柔らかい少女の手だ。指先は昨日までは彼女の方が大きかったのに、今は少し此方の大きさが上回っている。

 

「結城友奈は万能薬である。論文は出さずに我が家の家宝にしなくては……」

 

「……ん」

 

「家宝にするということは自分でメンテナンスしないと。ほら、気持ちいいね~」

 

「……ふ、ぅん」

 

 万能薬を堪能していると、くちゅ、と少女の秘所から水音がしてくる。

 僅かに上気した頬と熱の籠った吐息が彼女の女の目覚めを予兆させた。だからこそ、やや湿り気を帯びた指先をショーツから引き抜いて、彼女に触れるのを止める。

 代わりにその端正な寝顔をぼんやりと見続ける。

 穏やかな表情に戻りつつあったら、また、彼女の柔肌を指先で弄る。

 

「……っ、ッ」

 

 普段は無邪気で、時に凛々しい友奈が、夢と現実の狭間で甘い快楽に浸っている。

 学校の誰も、両親すらも知らない少女が浮かべる蕩けた表情を俺は独占していた。

 

「────」

 

 友奈にはいつも与えられて貰ってばかりで悪いなと感じる。

 無料の物は貰えば嬉しいが、無償の物は貰ったら少し罪悪感を覚える。与えられるだけでは不公平だ。貰い続けるだけの状況を良しとしてそれが当たり前なのだと勘違いしかねない。

 そのつもりは毛頭ないが、やはり与え合う関係こそ不公平さを少しでも減らせるだろう。友奈から与えられる物に返せることの釣り合いが取れるかは別として。

 

「……んー……ゃぁ」

 

 天使の寝顔が僅かに歪み肢体が小さく震えるのを見ながら、ゆっくりと手を握る。

 「~~~~ぅぁ」と言葉にならない寝言を呟いて、手を握り返してくれる彼女に僅かな衝撃と沢山の安堵を覚える。

 ただ傍にいてくれる。それだけが俺の心を確かに癒してくれるから。

 

「──友奈」

 

「……ぅん?」

 

 名前を呼ぶと、僅かに瞼が震え、開かれる。

 枕に頭を横に置いた彼女の瞳がぼんやりと虚空を漂い、俺を捉える。「亮ちゃん」と呟く友奈は寝ぼけ眼ながらも微笑を浮かべると背中にゆっくりと腕を回す。

 彼女にはまだ子供に見えるのか。それとも今の状態でも子供扱いなのか。

 

「……りょーちゃん、一緒に寝よう?」

 

 ふわりと漂う少女の甘い香り。

 彼女の柔らかな口調で発せられる俺の名前に親愛が籠る。

 パジャマ越しの肢体と密着する肢体の熱が俺に眠気をもたらす。

 

「うん。もう一回、俺の名前を呼んで」

 

「りょーちゃん? 寝ている時にエッチな悪戯したら駄目だよ?」

 

「バレちゃった? ごめん、友奈が可愛くて。そんな友奈にちゃん付けで呼ばれるの好きだなって思ったところ」

 

「えー……なら、ずっと呼ぶね。これから先も何度だって……ふわぁ」

 

 天使のようなことを告げながらも、小さな欠伸と共に目尻に涙を浮かべる友奈。

 少し早起きしてしまったのかもしれない。

 だが今の時間はこれから彼女と共に二度寝をする為に消費される。既に俺はそのつもりであって、本能的に友奈セラピーでの癒しを求めているのかもしれない。

 

 心地よい眠気、時計を見ると起きるには少し早い時間。

 背後で眠る園子の抱擁を受けながら、友奈を抱いて。

 

「……東郷さんは?」

 

「ここよ」

 

 すっと友奈の布団から顔を出す東郷。

 お茶目な彼女は友奈の胸元に後頭部を埋め、俺を見つめる。

 

「おはよう。素敵な朝ね」

 

「……おはよう。東郷さんと挨拶出来たから素敵な朝だよ」

 

 そう告げるとふわりと笑みを見せる彼女が俺の胸元に顔を埋める。率先して友奈と俺に挟まる彼女は豊満な胸元を俺に押し付けながら甘い吐息を肌に漏らす。

 

 おもむろに友奈に触れた指を手に取ると東郷の唇が触れる。

 そうして満足したような表情で、俺の肉毛布となった彼女は眦を和らげると、

 

「二度寝したら朝ご飯よ。もちろん和食」

 

「楽しみだ。東郷さんの和食は美味しいから」

 

「もう……そんなに褒めても何も出ないわよ。そういうのは夜から……」

 

 すりすりと東郷の足指が俺の足指と絡みつく。

 胸元で頬擦りする東郷の頭に友奈の顎が乗る。くんくん、と親友の髪に鼻を突っ込み薄く開いた眼差しで状況を確認した友奈。東郷を腕で挟んだまま俺の手を掴む彼女は寝息を立てる。

 

「とーごーさん……いい匂い……」

 

「……かっきー。楽しそうだね~」

 

「起きてたの?」

 

「すやぁ……」

 

「なんだ、寝てたのか」

 

「……むにゃ……いっぱい撫でて~」

 

「良いよ~」

 

 振り返り、ふわふわな少女の寝言に頷く。

 触れているこちらまで蕩けてしまいそうな、プリンのような質感の胸元を撫でると、くすぐったそうに笑みをこぼす園子が身を揺する。

 

「……やぁん、胸じゃなくて頭の方だよ~。えっちーだぁ」

 

 僅かに瞼を開いていた園子と目が合うと、きゅっと瞼を閉じる。

 「ふわ」と小さく欠伸を漏らすと、パジャマのボタンが外れ、露わになっていた胸元が見え隠れする少女。所々に吸い付いたような痕が白い肌に残っているのは気にしない様子だ。

 俺を至近距離でジッと見る園子はやがて頬を緩めると呟く。

 

「……元に戻って良かったね」

 

 すりすりと離れた距離を埋めるように俺の身体に胸元から足先まで密着してくる。

 俺の胸元に下着に包まれた乳房を押し付けるように抱擁を強める。露出した太腿が俺の脚に絡みつき、彼女の体温とやや乱れた髪の毛から漂う甘い香りが鼓動の高鳴りと多幸感を強める。

 

 少女たちに挟まれる。

 左右を友奈と園子に。僅かに上に圧し掛かる形で東郷に。

 この時間を至福だと捉えるのは深緑の瞳も同じなのか。

 

「……ん」

 

 慈母のような微笑を見せる東郷にキスをされて。

 互いに密着し合ったまま、俺たちは二度寝を堪能したのだった。

 

 

 

 + 

 

 

 

「……園ちゃんは小説のネタってどうしているの?」

 

「う~ん。急に閃いたり、あとは普段の出来事からインスピレーションが湧いたりかな。もしかして書きたいの?」

 

「あっ、ううん。園ちゃんが書いていたお話、前に見たけど面白かったなーって」

 

「友奈ちゃん! 私のは?」

 

「東郷さんのは……凄く、こう……大和戦艦な感じだったよー! 国防万歳!」

 

「まあ!」

 

 友奈の褒めているのか褒めていないのか。判断に迷う中、東郷は迷わず前者で捉える。

 微笑を浮かべる園子は何も語らず、ただ俺の胸元に指を這わせたり、脚を絡める。

 

「亮くんも読んでくれた?」

 

「うん。東郷さんらしさが出ていてよかったよ」

 

 あくまで趣味の範囲内なのだ。

 自分の思想をネットの海に晒したところで困る訳でもないのだ。

 

「そういえばこの前の部活でね、三丁目の子猫ちゃん見つけてさー」

 

「トラスケだっけ?」

 

「うん。にゃあにゃあって言いながら木の上にいたから夏凜ちゃんがシュバッて感じで回収して。ちょっと爪で引っかかれたけど格好良かったなー」

 

 東郷の髪の毛を手櫛で整えながら友奈が呟く。

 二度寝の合間に思いついたような雑談で時間を埋め、幸福を味わう。

 なんでもない一時を、少女たちと語らいながら、平和な時を過ごす。

 

「はわわ~」

 

 ぎゅうっと抱擁されて、抱き返す。

 挟まる東郷を三人で押し潰すように抱き合いながら、なんでもない雑談を続ける。

 

「やっぱり二度寝は最高なんよ~。こうしてダラダラと何にも考えないでゆーゆやわっしー、かっきーと気兼ねなくゴロゴロする……」

 

「うん。でも東郷さん朝は結構厳しいから、いつもならラッパで私たちを起こしそうだね。亮ちゃんはエッチなことするだけで起こそうとしないし」

 

「だからわっしー布団を私たちで挟み込む必要があるんよ」

 

「ちょっ、二人とも……もう」

 

 満更でもない東郷は自らの豊かな肢体を少女にもみくちゃにされる。

 温かく柔らかいと評判の東郷布団だ。一度味わえば病みつき間違いなしだ。俺も便乗しては彼女の衣服と下着に隠されていた豊かな乳房、布団と評された乳肉を掌で楽しむ。

 

 もっちりとした質感と僅かに汗ばんだ肌。 

 指先に沈んでは押し返す弾力と、やや硬さを帯びた乳首を指で弄る。

 

 円を描くように乳房の付け根から持ち上げては指の腹で乳首をすりすりと擦ると、身動ぎする少女は熱い視線を俺に向けては媚びるような表情で吐息する。

 

「ゃ……駄目よ、そんなの」

 

「駄目なの? 本当に?」

 

「…………ん」

 

 ツンと尖った先端を指先で弾く。

 小さく悲鳴を上げる東郷は、慌てたような表情で俺と友奈の間から抜け出そうとする。しかし、寝ぼけ眼で東郷の身体を弄る友奈は楽しそうな表情を見せる。

 

「東郷さんのここ、凄く濡れてるねー」

 

「いやっ! 友奈ちゃん、そこは……ぁん!」

 

「わっしー……期待してたんだ~?」

 

「……そのっち!」

 

 布団の中、俺から見ることは出来ないが、友奈の両手は東郷の下腹部へと伸びていた。ビクンッと肢体を震わせて大きな目を見開いた彼女は白磁の肌を朱色に染めると胸元を隠した両手で友奈の腕を捕まえようとする。

 そんな彼女の腕を俺が掴むと嫌々と首を振っては涙に濡れた瞳を揺らす。

 

「……あっ! っ、ぅ」

 

 小刻みな震え。耳を澄ませると僅かな水音。

 陸に跳ねた魚のように暴れた両脚も、あっという間に弱々しくなる。友奈にされるがまま、友奈の指先一つで震える哀れな東郷の乳房に唇を這わせ、噛みつくと背中を反らせる。

 

「わっしー、どっちが気持ちいいの?」

 

「どっちぃ……? ぁ、ぁん! どっちなんて……!」

 

 そんな東郷の痴態を俺と共に眺める園子。

 彼女の間延びした言葉は、東郷が確かな快楽で震えていることを悟っていた。そして隠せているとも思っていない黒髪の美少女は震え声で答える。

 

「……ごめんね亮くん。私、友奈ちゃんの方が……ンッ!」

 

「東郷さん、気持ちいいね? クリクリされるのがやっぱり好きなんだ」

 

「うん、しゅき! しゅきよ友奈ちゃん!」

 

「だって。かっきー、頑張れ~」

 

 するりと俺のズボンを下ろしてペニスを露出させる園子。

 東郷の痴態で興奮した怒張を背後から指で撫でながら、心地良いリズムで扱く。背中に園子を感じながら寝ぼけ眼で大和撫子の身体を、反応を堪能する。

 

「ぁ、はぁんっ、ゃ、だめっ!! ──!!」

 

 友奈が微笑を浮かべた直後だった。

 俺の首筋に顔を埋めた東郷の肢体が硬直する。

 直後、雌特有の芳香を漏らし、枕に長い黒髪を広げる。

 してやったりといった顔の友奈が目元を腕で隠す東郷の毛布を剥ぐ。いつの間にか衣服を剥かれ、辛うじて衣服だけが纏わりついた少女が仰向きで荒い呼吸をしていた。

 

「わっしーがホカホカなんよ~」

 

 園子の言葉通り、少女は既に出来上がっていた。 

 いつでも子種を受け入れられるように、揺れる乳房から伝う汗が臍に流れ、滑らかな太腿に伝う愛液と、雫の付着した恥毛から覗く花弁が僅かに開く。

 

 ──食べて下さい。

 

 言葉もなしに身体で主張する東郷の裸体に反り立つ剛直を園子が握る。

 ゆっくりと誘導するように、亀頭を彼女の恥部に宛がう。友奈と園子の指がそれぞれ左右の花弁を開き、東郷が受け入れるような表情を見せると雄を招き入れるように僅かに脚を開く。

 

「ぁあああああっっっ!!!」

 

 獣の交尾にベッドが軋む。

 釘を打つようなピストンに普段は聞かせない喘ぎ声を巻き散らす少女。

 

 最奥を亀頭が突く。 

 引き抜く時の雁裏が彼女の弱点を擦る。

 

 互いの体液を潤滑油に、少女の悲鳴と自らの鼓動、犬のような俺の吐息をBGMとして荒々しく腰を振る様を薄紅の少女と金色の少女がほのかに顔を赤らめながら見守る。

 

「イクっ、ィゥッ……! ……!!」

 

 シーツに染みが増えた。

 虚ろな眼差しで溢れた涙が頬を伝いながら、絶頂に震える裸体。

 そこに追い打ちを掛けるように怒張で抽送を繰り返すと悦ぶように肢体は震え、結合部からは潮が噴き出す。密着しては唇を重ね、揺れ動く魅惑的な胸元を自らの手に収め、欲望のままに犯す。

 

 膣は蠕動を続け、周囲の目も気にせず声を漏らす東郷。

 互いの呼吸は早くなり、軋むベッドの音もリズミカルになる。

 腰の動きだけでぐりぐりとするだけで、普段は聞かせない声を上げた。

 

「ぷああああっ!!?」

 

「っ」

 

 背筋を電流が奔るような快楽。

 溜まった白濁を吐き出すように、俺は東郷の最奥に吐精する。

 

「ぅ、ぁ……」

 

 濁った精液が最奥を叩き、媚肉に呑み込まれる間、俺は東郷を抱き締め続ける。

 小さく痙攣を繰り返す東郷の動きもやがて鎮まりそのまま余韻に浸る。

 

 甘えたように俺に頬ずりする東郷。

 汗ばみながら、注がれた子種に満足したように吐息をこぼす彼女はビクッと硬直する。

 

「……東郷さん、気持ちよさそうだったね」

 

「そうだね~。欲求不満だったのかも」

 

「ち、ちがっ、これは! だって、こんなこと……ぅん!」

 

 僅かに萎えかけた肉棒で怒張を突くと声が漏れる。

 暫くの間、弱点を弄られ続けた彼女のはしたなさを周囲に見せつける。

 

「りょ、亮くん、待って……朝ご飯食べてないから」

 

 虚ろな眼差しに理性が灯る。

 むにゅりと豊満な胸元を揉みしだかれながら、その深緑色の視線を俺と友奈と園子と、結合部に向かわせる。

 

「大丈夫だよ、東郷さん」

 

 不安げな彼女の表情を和らげるように笑みを見せる。

 染み一つない柔らかな頬を撫でると、友奈や園子にも目を向ける。

 

「ちゃんと二人ともするから。……その前に今度は後ろ向きでしよっか。ほら、立って。欲求不満は病気の元なんだから、ちゃんと治ったことを見て貰わないと」

 

「東郷さんがどんな顔をするのか楽しみだなぁー!」

 

「カメラ、どこだっけ~」

 

「ゃ、ぁ、ぁ……」

 

 仰向けで俺たちを見上げる東郷は恐怖と喜悦の表情を浮かべる。

 ようやく肉棒を引き抜いた結合部からは、とろりと白濁が流れ落ちた。

 笑みを見せる俺たちに、東郷はぶるりと身を震わせていた。

 

 

 

 

「それで、遅刻した訳ね」

 

「…………」

 

 簀巻きで吊るされながら呆れた口調で告げられる。

 ぷらん、と揺れる中、語る言葉もない俺は黙り込む。

 俺が悪いんだよ……と主張したが、三人娘は別の場所で説教されているらしい。快楽にのめり込んで日常生活に影響が出ていたのも事実なので素直に従っていた。

 

「別にそういうことをするなとは言ってない。……私たちには必要だからな」

 

「ええ、でも犬吠埼さんの言うように普段の生活を疎かにしては駄目よ」

 

 やや上から見下ろす景色には勇者部の少女たち。何故か眼鏡を掛けて、髪を纏めた美少女たちは、これまた何故か黒のスーツに身を包んでいた。

 薄い黒タイツに包まれた脚を組んでは主に俺を見上げる千景や若葉。若葉の姿をカメラに収めるひなた。眼鏡のフレームを指で持ち上げる彼女たちは互いの目線を絡ませる。

 

「うちの生徒も爛れてしまったな、千景」

 

「ええ、これでは我が校の風紀が乱れてしまうわね乃木さん。そうよね上里さん。……いいえ、上里学園長」

 

「勿論。今後そうならないようにお仕置きが必要ですね」

 

 そう言いながら、いったい何の茶番か、楽しそうに女教師たちは問題児を見上げるのだった。

 

 

 




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【番外】お仕置き

僅かにリクエスト要素があります


 ──とりあえず一言告げてみた。

 

「せんせ~、これは体罰ですよ」

 

「うるさい」

 

 前世では俺の知る限り教師から生徒への暴力は禁止になりつつあった。だが、時代も世界も変われば環境も異なるというもので、神世紀時代は教師から生徒への多少の体罰は許されている。

 とはいえ、簀巻きにして天井から吊るすなど多少の領域は超えているだろう。

 遅刻したからとしても、こんな横暴は許されるものではない。

 そんな主張をしてみるも──、

 

「亮之佑、私たちは勇者部だ。仲間だ」

 

「うん?」

 

「その仲間が遅刻をした。それは別に良い。誰にだって遅刻する時はある。だが、問題はホニャホニャしていて遅れたということだ! それはお前だけの問題じゃなく所属する勇者部への信用とかにも繋がる。この爛れ始めた生活を身内で解決できるならするべきだ。そうは思わないか?」

 

「──、一応、遅刻理由は別の内容にして……はい」

 

「はいじゃないが。前にも爛れていた時期があったが同じような返事を聞いた気がするな?」

 

「……くぅ~ん。わかちゃんが怖い~。同じ血筋でもふわふわな園ちゃんに会いたいんよ~」

 

「園子の真似をするな! それに園子は優しいがなんでもかんでも肯定する訳ではないだろ。普段だったら私と同じことを言うぞ」

 

 ぷらん、と吊り上げられたまま特に言い返すことも出来ない状態だった。

 まるで子供を叱る親のように眉間に皺を寄せて説教をする若葉、腰に両手を置いてキッと凛々しい眼差しで俺を見上げる彼女に神妙な顔を向けるひなたが首肯で続く。

 

 熟年の夫婦のように寄り添う彼女たちは出来の悪い息子を、しかし愛の籠った態度を見せる。仲間というだけでここまで他人に寄り添うことが出来る彼女たちの言葉が正しいのは分かっている。

 言われずとも分かっているのだ。規則正しく生活するべきなのは。

 それでも──、毛布を手放せない子供のように人肌が恋しくなる。なってしまう。

 

「誰にでもそんな日があるよね、パパ」

 

「誰がパパだ。どうみても先生にしか見えないだろ」

 

「まあまあ、若葉ちゃん。本人も反省したようですし……先ほど結城さんたちも反省したとの連絡もありましたので……そろそろ」

 

 女教師の恰好をした美少女たち。

 その恰好に対してツッコミを入れるのは俺の役目ではない。

 中身の年齢を考えると既に就職していてもおかしくはない程度にはこの世界で過ごした年月の積み重ねはある。だが実際に彼女たちも学生から教師に就職した訳ではないだろう。

 

「いや、あの『反省しています』という顔は表面だけだ。私には分かる。そうだろ、千景」

 

「えっ? ええ……そう、ね」

 

 恐らく若葉は体育の教師、千景は国語の教師だろうか。

 遠くを見る俺を揺らして酔わせようとする虐待教師、若葉の言葉に曖昧に頷く千景は眼鏡越しに大きな瞳を瞬かせる。

 

「揺らされると酔うから止めて──」

 

「話を誤魔化すな!」

 

「……くぅ~ん」

 

「若葉ちゃん、頭ごなしは駄目ですよ」

 

 飴と鞭のように叱る若葉とフォローを入れるひなた。

 背後には、無言のまま呆れ顔だけは見せる千景が佇む。

 子供の躾けをする夫と、それを優しく諭す妻と出来の悪い弟を見守る姉という光景を幻視する中、俺は本当の子供のような声で応じることにした。

 

「……若葉ねえ、千景おねーちゃん。そろそろ下ろしてくれると嬉しいな。疲れちゃったよ」

 

 出来るだけ悲しそうに。

 子供に戻っていた時のように。

 

 ショタをしていた時のような表情と声色で呼びかけると、僅かながら戸惑いと罪悪感が少女たちの瞳に宿るのを俺は見逃さなかった。

 子供の姿の方が色々と甘くなることを俺は経験で知っていた。

 そんな俺を、ジロリと見上げていた若葉が騙されないとばかりに強張った表情で告げる。

 

「……もうお前は小さくないだろ」

 

「そんな! ちょっと歳をとったら弟じゃないなんて酷いよ若葉ねえ! この前だってホラー映画を見た後、ひなたには内緒で一緒に寝るだけって枕を持ってやってきて、怖さを誤魔化す為とか何か言いながら無垢なショタに夜這いをした癖に! 人のことを説教出来る立場か!」

 

「それは秘密だと……ッ! いや、そもそも破廉恥なことなど……何もしてない!」

 

「へえ……。亮之佑さん、その話あとで……」

 

「違うんだひなた! 本当なんだ! この男の言葉に惑わされるな!」

 

 まるで浮気がバレた夫のように、両手を振ってひなたに目を向ける若葉。

 女教師たちは一枚岩の関係ではないのか、あっけないほどに瓦解していく。問い詰められる若葉とその反応を楽しみながらも恐怖を感じる笑みを見せるひなた。

 唯一此方に視線を、半眼を向けたままなのは千景だけだ。

 視線を絡ませていると小さく吐息を漏らした彼女が吊り上げた縄に手を掛ける。

 

「……乃木さんも普段はあんな態度なのに、そういうことはしているのね」

 

 ゆっくりと、慣れた様子で千景は、簀巻きにされた俺を床に下ろす。

 乃木若葉はムッツリスケベだと鼻で笑いながら、クールな態度を見せ自分は違うと言外に主張する千景に対し、追い詰められた若葉も諦めまいと眼鏡越しに紫紺の輝きを見せる。

 

「い、いや、千景だってこの前体育倉庫でホニャホニャしていただろう!」

 

「は、はあ!? し、していないわよ」

 

「縄跳びを使ってあんな破廉恥な漫画みたいなことを亮之佑にさせていたのを私は見た。この前も、『私で童貞を捨てた気分はどう?』なんて千景の声を壁越しに聞いたぞ!」

 

「~~~!! 見てたのね! 最ッ低!」

 

「えっ、では……そういうプレイを……?」

 

「違うわ上里さん。単純にそういう事故があっただけで誤解よ。寄宿舎のは……ゲームのボイスが少し大きかっただけよ。次からは気を付けるわ」

 

「いや、あれは間違いなく千景の声だったわっぷ!?」

 

「気のせいよ!」

 

 それはどこの演劇で行われるのだろうか。

 余裕のあった表情を一変させ、赤面で若葉を睨みつける千景が解いた縄を投げつける。顔に投げつけられるも体育教師らしく顔と手で縄を受け取った若葉は手際よく縄を纏める。

 

 きっと、あの縄はまた別の誰かを縛るのだろう。

 縄から解放されながらも床に芋虫のように転がる俺は騒がしい彼女たちを見上げる。

 改めて彼女たちを見てみると、身に纏うのは白シャツと黒ジャケット、膝丈のタイトスカートだ。長い脚は黒いタイツに包まれ、それぞれ別色のフレームの伊達メガネをしている。髪型もそれに合わせて少しだけ大人らしさを出す為に纏められていた。

 ローアングルと普段とは違う角度というのもあるのだろう。普段よりも大人びた雰囲気が彼女たちから感じられた。

 

「それで、亮之佑さん」

 

 恐らくこの場で一番地位があるのだろう、ひなたが俺に声を掛ける。

 二人に言い争いを意に介さず、俺の顔の前に膝を下ろす。

 

 腰を下ろし、千景と若葉に背中を向ける彼女。見上げるとひなたの黒タイツに包まれた太腿とタイトスカートの際どい部分が視界に広がる。

 その視線を楽しむように僅かに脚を広げ、両腿の間の空間に隠された薄黒の皮に包まれた下着を見せようとする。

 

「……何色に見えますか?」

 

「白?」

 

「それは昨日のです」

 

「黒?」

 

「……うーん、惜しいですね。答えは教えてあげません。お仕置きを受けない悪い生徒には見せませんよ?」

 

 顎を指で持ち上げる教師と目が合う。

 艶美な太腿を見せる彼女は、くすりと笑みを見せる。

 

「……なんて、こういう衣装もお好きなんでしたよね?」

 

「そうですね。ひなた先生」

 

 こしょこしょと耳元で囁くのは巫女に相応しくない妖艶な笑みを見せる少女。普段の自撮りでどこまでの角度なら見えないのかを研究しているのだろう。ガードの甘い友奈や若葉がやればパンチラどころかパンモロもあり得た。

 ギリギリのところで彼女の下着を見ることは叶わなかった。

 残念そうに唸る俺に、淑やかさのある上品な微笑を見せるひなたを余所に立ち上がる。

 

「ではお仕置きを受けるということで……」

 

 女教師の慈悲深い声に耳を傾けず俺は逃げ出す。

 吊るされて説教されて傷ついた心を回復させる為に脱兎の如く出口に向かう。

 一刻も早い友奈セラピーが必要だった。

 

「逃げたわ!」

 

「いや問題ない、この展開は予想していた。球子!」

 

 脱走を予期していたのか若葉の叫びに開いたままの扉に人が立つ。

 小柄な茶髪の少女が、不敵な笑い声を上げて両手を広げる。

 

「待ちタマえ亮之佑ぇ! お前の悪事も今日まで──んむっ!?」

 

 それは事故だった。

 目の前に人がいれば衝突するのは必然だろう。

 

 ちゅっ、と唇が球子の柔らかな唇と触れた。

 幸い歯がぶつかることもなく、友達同士がするような触れる程度の口づけだ。

 

 やや体勢を崩し気味で向かっていたこともあるのだろう。丁度良い位置に少女が立ちはだかったのもそうだ。全ては事故でハプニングで、それだけの話だ。

 急に止まるも勢いは殺せず、彼女とキスをしただけ。

 誰が悪いのか。少なくとも俺ではなく扉の前に立った球子だろう。

 ハプニングを好む人間はハプニングを受ける側になることを想定しなければ。

 

「……! っ」

 

 数秒。しかし俺から唇は離さない。

 事故の勢いを殺す為とはいえ、球子の認識が追いつくまで唇を重ねる。教師陣とは異なり制服を着た球子の身体は強張り、急激に熱を帯びていくのが分かった。

 唇を僅かに啄むと、呆然とした表情に朱色が混ざる。

 

「──ぷはっ」

 

 慌てて唇を離す球子。その瞳には様々な感情が過るのが見て取れた。

 その初々しさに思わず頬が緩む。

 俺としては唇が重なった程度で、事故だと主張できた。

 だが、熱を帯びる球子の身体とは裏腹に、彼女自身の反応は随分と鈍いものだった。

 

「ぁ……ぇ?」

 

「ん? どうしたの?」

 

「あっ、いや、今……」

 

「今?」

 

「────」

 

 ゆっくりと唇に指を触れて、俺を見る。

 背後から迫る女教師たちも立ち止まり、戸惑うように視線を向ける。

 決定的な一言は、球子の隣、ドアの影に隠れていたのだろう、ふわふわの髪をした杏が頬を朱色に染めながら「わぁ〜!」と黄色い歓声を上げて告げた。

 

「タマっち先輩と亮之佑さんがき、キ、……キスしちゃった!? うっかりの事故から始まる恋の予感。遂に男の人を知ってしまうタマっち先輩……。園子先生の為にもメモを取らないと」

 

「……!! き、キス……」

 

「そしてそのまま男の人を知って……、でもタマっち先輩は純粋なままでいて欲しい……って、タマっち先輩!?」

 

「……ぅ、ぁ」

 

 指摘された瞬間、かああっと球子の顔が赤らんでいく。

 下から上に急激に朱色を帯びていき、ボフンと音を立てては目を回す。慌てて杏に支えられる球子の初々しい反応を微笑ましく思う。

 普段は男勝りな様子でも、所詮は無垢な少女。キスの一つで可愛らしいものだ。

 

「俺という存在はあまりにも罪深いな、そうだろ?」

 

「──余罪、追加だな」

 

「──不純異性交遊。現行犯でギルティね」

 

 背後の少女たちもそんな時代があったことを思い出すと同時に。

 ミシリ、と肩を掴む少女手に力が籠る。 

 

「──逃がしませんよ」

 

 耳元で囁かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は教師に押し倒されていた。

 こんな現場、見つかったら捕まるのは生徒を食べようとする教師だ。それも三人。

 

「何か勘違いしているようだけど」

 

「お仕置きなのだから問題ないだろ? 生徒に教師が指導する、当たり前のことだ」

 

「ほら、動いたら駄目ですよ」

 

 三人の美人教師に組み伏せられる。

 ベッドの上、気づけば保健室の一角を占領する形で俺は彼女たちからお仕置きを受けることになっていた。

 制服とは異なるジャケット、その質感越しの女体の柔らかさが伝わる。毒蛇のように脚に絡みつくタイツに包まれた脚のつるりとした感触が性感を高めていく。

 

 高鳴る鼓動を誤魔化すように口を結ぶが、胸板に頭を置き、ブラウス越しの乳房を押し付けるひなたが全てを理解していると言いたげな様子で妖艶な笑みを見せる。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ねえ? 千景先生、若葉先生」

 

 賢い彼女は返事など求めていない。

 鼓動の高鳴り、呼吸の速度、目の動き、それらから相手の思考を割り出す巫女は今は教師として同僚に語り掛ける。

 臍から上を密着させる彼女の柔肌は直接触れた訳でもないのに俺は小さく呻いていた。

 

 下品に豊満な胸元で肉棒を挟み込んだり、雄の目を惹くようにいやらしく形を変える訳でもない。ただ、露出させた胸板にブラウス越しに双丘を押し当てているだけだ。

 生地越しに伝わる彼女の胸元はブラジャーを着けていないのか、乳肉の感触を味わいながら目に見えない存在を過去に見た記憶で補完する。

 形の良い乳肉の白さと、その先端のピンク色は記憶の中で鮮やかなままだ。

 

「ん……っ」

 

 すりすりと淫行に及ぶ女教師。

 彼女の熱の籠った吐息と、艶やかな唇。揺れる瞳。

 

「ひなた、さん」

 

 口づけをされる。

 

「……先生、ですよ」

 

 キスの合間に告げられると、舌の裏側までしっかりと指導を受ける。

 特別派手なことをした訳でもないのに露出した下腹部は既に屹立しており、そこに熱い視線を向ける若葉と千景が触れたそうな表情を見せながらも、そこを避けるように手が肌を撫でる。

 焦らすような愛撫と共に、怒張への興味を隠せない少女たち。

 チラリと互いに目を向ける彼女たちは、やがてその手で肉竿に触れた。

 

「ぅっ……」

 

 思わず呻く俺を見上げる女教師たちは熱いのかジャケットを脱いでは汗で肌が張り付いたブラウス姿を見せると、思い思いに涎を垂らす怒張に視線を下げる。

 

「熱いわね」

 

「ああ、それに硬い……こんなことで興奮しているのか」

 

「変態」

 

 蔑みと憐れみと喜悦を混ぜた視線で、口元を僅かに歪める。

 視界を巫女の端麗な顔で埋まると同時に、ちゅっと亀頭にどちらかの唇が触れる感触があった。更に追い打ちを掛けるようにどちらかの指先が雁裏と弱い部分を弄り続ける。

 ひなたで埋められた視界に変わり、肉竿に触れる指の感触と触れ方で千景と判断する。

 もにゅもにゅと陰嚢を弄るのは若葉の方だろう。

 

「ほらっ、乃木先生。また出てきたわよ」

 

「……んむっ」

 

 ぬぷぷ、と怒張の先端が生暖かい沼に浸かる。

 柔らかい唇と僅かに擦れた歯、鈴口から垂れた先走りを舐めとる舌の感触が背筋をゾクリとさせる。鼻息が鼠径部に吹きかかり、フェラチオに励む若葉の姿が目に入る。

 男に奉仕する若葉の姿を間近で見る千景は、ゆっくりと竿を上下に扱く。

 

「生徒の味はどう? 背徳の味がする?」

 

「やはりというか、苦いが悪くない。亮之佑の味だが……これが背徳の味なのか」

 

「……意味わかって言ってる?」

 

「……千景先生もどうだ? 背徳の味」

 

 ゴシゴシと上下に扱く速度を上げて、射精に至るギリギリを見抜いては思わず腰を引かせる俺に挑発的な視線を向ける千景が若葉と交代するように口腔奉仕を始める。

 代わりに若葉のたどたどしい手淫が絶妙な快感をもたらす。

 

「んっ!」

 

「男の人でも乳首が硬くなるんですね……」

 

「──ぷはっ、上里先生。意外と彼もそういうのが弱いかもしれないわよ」

 

「ほう? なら私も……」

 

 女教師たちによる一人の生徒へのお仕置き。

 セクハラを超えた淫行に、ただ俺は情けない声を漏らし、ビクリと震わせた肢体を少女たちが押さえつける。ひなたに唇を奪われて、若葉からは普段の自慰をトレースするように乳首を指の腹で転がされ、千景と共に肉竿を弄られる。

 普段から鍛えているだけあり、三人の力には勝てなかった。

 俺は彼女たちに犯され、汚され、射精衝動を解き放とうとしていた。

 

「乃木さん、駄目よ。それじゃあ強すぎ」

 

「え?」

 

「それじゃあ罰にならないでしょ? ゆっくりと……」

 

「こ、こうか?」

 

「そしてまた強くする。ここに指を添えて寸止めをする」

 

「こうか!」

 

 鈴口を親指で蓋をして、手を止める。

 それだけで情けなく快感の天井を漂う俺の顔を女教師たちが覗き込む。

 

「~~~~ッ!」

 

「ほら、見て。あの顔……。女の子みたいな顔してる」

 

「ふふっ……可愛らしいですよ」

 

「ああ、そうだな」

 

 溜飲が下がり表情を緩める若葉の手に、千景の手が重なる。 

 雄汁で汚れた二人がチラリと互いに目を向けると、肉竿を強く扱き始める。

 

 二人の教師の手でカウパーが泡立ち、下品な水音を立てる。

 膝を曲げ、脚を伸ばす俺は酩酊感と共に更なる天井に上り詰めた。

 

「あ───ッッ!!」

 

 視界が白く染まる。

 ひなたの手を掴み、背中を反らす。

 マグマが奥底から吹き上げるような激しい射精。

 

「うわっ!?」

 

「こんなに出る物なのね……」

 

「亮之佑さん、凄く気持ちよさそうですね」

 

 若葉と千景の手を汚した白濁がシーツに散る。

 真上に飛び、下腹部にまで飛んだ子種を指で舐めとる若葉が頷く。

 

「濃いな」

 

「本当。凄い味……」

 

 頷く千景が白濁が付着した眼鏡を取る。

 ちろりと赤い舌を唇から覗かせて、興奮に瞳を宿す。

 

「ハァー……はぁ……」

 

 汗を流し、俺は法悦に浸る。

 目尻には涙が浮かび、それほどの快感を味わっていたのだと実感する。そうしてただ呼吸を繰り返すだけの俺の前で、ひなたが自らのブラウスのボタンを外し、乳房を露出させる。

 ぷるりとこぼれた乳房は記憶のそれと違わず、美しく卑猥な母性の塊をしていた。信じられないことにそれを見ただけで俺の陰茎は再びを力を取り戻そうとしていた。

 

「亮之佑さん。気持ち良かったですか?」

 

 よしよしと身体が小さかった時と変わらない態度でひなたに頭を撫でられる。多少の揶揄も含んではいたのかもしれないが、それ以上の親愛を感じて悪い気はしない。

 生徒を愛でる女教師は俺の髪の毛を指で気が済むまで弄ぶ。

 

「それでは実践の時間ですよ、私の生徒さん」

 

 吐息混じりに耳元に囁いたひなたは妖艶な笑みと共にタイトスカートに手を掛ける。

 たくし上げる手には躊躇はなく、黒タイツと共に隠されていた秘所が露わになる。

 彼女はショーツを着用していなかった。黒色のタイツに包まれていたのは肉付きの良い太腿とその付け根、タイツの繊維の隙間から僅かにはみ出た黒色の陰毛に隠しきれない濡れそぼった秘裂が透けて見えた。

 

「……お二人とも、私だけにこんなことをさせるつもりですか?」

 

「い、いや……」

 

「しょうがないわね……」

 

 彼女の行動に、僅かに遅れて若葉、千景と続く。

 まるで相談でもしていたかのように、片手で豪快に丈の短いスカートをたくし上げる若葉。鍛えられた腿の付け根、水色の下着がタイツ越しに湿り気を帯びているのが見て取れた。

 ジッと見ているとほんのりと頬を赤らめた彼女の下着の染みが僅かに広がったように見えた。

 

「……っ」

 

 羞恥を誤魔化すように目線を逸らした千景も自らスカートをたくし上げる。

 両手でスカートの裾に触れるとゆっくりと。

 露わになるのは黒タイツに包まれた両脚、そして黒のショーツだ。ピンクのリボンと何かの刺繍が入った下着は気合が入っているのか。俺の視線を受けて、僅かに内股になる千景、スカートの生地を持つ手の微かな震えを俺は見逃さない。

 まるで商品のように横に並ぶ彼女たち、真ん中に立つひなたが告げる。

 

「罰は終わりましたから、次は亮之佑さんの番ですよ。……どなたにしますか?」 

 

 

 




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【番外】実習

アンケートありがとうございました。


 三人の少女が、女教師が自らのスカートをたくし上げて並んでいる。

 恥じらいに差はあれども、纏った色香の濃さは同じ。

 淫行教師たちを前にして俺は本能のままに手を伸ばす。

 

「ん……」

 

 さらりと若葉の頬を撫でると、片目を閉じた彼女は頬を掌に置くように受け入れる。

 柔らかな頬が指に吸い付き、少女の柔肌を堪能しながら、若葉の唇に親指で触れる。ふにふにとした感触を楽しんでいると、「あーん」と口を開いた彼女に指を甘噛みされる。

 俺の指に僅かに立てた歯の感触と、絡みつく唾液にゾクリと背筋に電流が奔る。

 

 半眼で俺を睨む若葉。

 彼女の耳を中指でくすぐると、鼻息が荒くなる。

 

「……ぁっ、なにをする」

 

「なんとなく」

 

「遊ばずに真面目にやれ」

 

「真面目にエッチなことをして欲しいんですか? 若葉せんせー?」

 

「……っ」

 

 目を逸らす若葉の歯に僅かに力が籠る。

 その紫紺の瞳を揺らしながらも、顔を逸らすことは彼女の頬に置いた手が許さない。堅物の、真面目ぶった少女の口から、はっきりと何をしたいのかを聞き出す。

 分かっているのだろう。彼女が求めているのはこんな児戯に等しい愛撫ではない。

 もっと激しく、快楽を貪るような交尾を求めているのは分かっている。

 キスをするような至近距離で、端麗な顔、揺れる瞳に呼びかける。せんせー、と。

 

「こんな風にじゅぽじゅぽって、下のお口で生徒とシたいんじゃありませんか、若葉せんせー? 生徒とこんなはしたないことをしたいなんて先生失格ですね」

 

「……嚙み切ってやろうか」

 

「冗談ですよ。保健体育の実習なんですからおかしいことなんてありませんよ」

 

「────」

 

「素直になれよ。自分の生徒にぐちゃぐちゃにして下さいって」

 

 指を僅かに前後させて、唾液に濡れた指で彼女の口腔を楽しむ。

 やがて口内で溜まった唾液を嚥下する若葉は数秒ほど無言だったが、彼女の体温は確かに上昇しているのが分かった。

 水色の下着には一切触れず、彼女の口内を指で弄る。

 ただ、口腔を弄るだけなのに、少女は内腿をくねらせて呼気に熱を帯びる。

 

 スカートを掴む若葉の手が震える姿は、欠片も教師には見えなかった。生徒の言葉や態度で、あっけなく快楽に屈する寸前の一人の女にしか見えなかった。

 柔らかな頬を撫でて、涙目の彼女が何を口にするのかを少しだけ待つ。

 

「わ、私は……」

 

「──乃木さんとするの?」

 

「千景?」

 

 若葉の言葉に被せるように問いかけるのは千景だ。

 どこか残念そうにタイトスカートを下ろそうとする前に、俺は空いた片手を伸ばす。ギリギリ間に合った片手が触れるのはタイツ越しの黒のショーツだ。

 

「んッ!」

 

 むにっと恥部の柔らかな質感と共に湿り気を指の腹に感じる。

 その染みの範囲を広げるように小刻みに指を震わせては恥部を上下に擦る。

 

「ぁっ、ちょっと……ダメ……」

 

 僅かに拒絶染みた態度を見せる千景だが、指に押し付けるように僅かに腰を動かす。そのことに俺は何も言わず生地越しに硬さを帯びた肉芽と花弁を指で刺激する。

 僅かにタイツが破け、その隙間から薄皮一枚分近づいた秘所を弄ると、んんっ、と千景の甘い声が漏れ、恥じるように唇を結ぶ彼女が切なげに首を振る。

 淫臭をスーツに纏わせる彼女は俺の指の動きに合わせて腰を前後に動かし呻く。陰核が擦れる快感が好きなのか、重点的に指で攻める度に生地の染みが増えていく。

 

「……ぁ、ぁ」

 

 こしゅ、こしゅと下着を擦る音に少しずつ水音が混じる。

 俺の腕を掴む彼女は生徒のセクハラに耐える教師のようにただジッと耐えては絶頂の嵐に備えようとしていた。

 眼鏡の奥に覗く瞳が瞼に覆われて、形の良い眉が快感に歪んでいる。

 

「まっ、待って加賀くん……指が……それっ、ダメだから」

 

「────」

 

「ぁ、んぁ!」

 

 下着の繊維越しに触れられる快感と振動、それだけで彼女の吐息が甘くなる。

 消え入りそうな声で俺の名前を連呼する千景は、きゅっと腿を閉じる。抵抗空しく生徒に法悦の空を昇らされた教師は蒸れたストッキングに濃厚な愛液の匂いが混じった。

 ビクッ、ビクッと女教師が余韻に浸る。

 透明な蜜が黒ショーツから滲み、女教師の荒い呼気が室内に響く。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 熱を持つ体躯を揺らす二人に向けていた視線を正面に戻す。

 一人だけ放置されていても、彼女は、ひなたは健気に生徒を待っていた。

 改めて見ると彼女だけ随分とあられもない恰好をしていた。

 ブラウスの前面がはだけ豊満な乳房が露出し、自ら捲り上げたタイトスカートから覗くタイツの下には何もない。陰毛で隠しきれない秘所からは、透明な雫が溢れては腿を濡らす。

 

 恥部に亀頭で擦りつけると、にちっと粘りついた水音が聞こえた。

 タイツの滑らかな化学繊維の質感に快感を得ながら、薄皮を挟んだ秘部から滴る愛液で肉竿をコーティングする。

 は、ぁ、と小さく喘ぎ声を漏らすひなたは上目遣いを見せる。

 

「私をご指名ですか?」

 

「するのか。ひなたと亮之佑が……!」

 

 ぺっ、と俺の指を吐いた若葉。

 様々な感情を見せる彼女の視線は俺とひなたを交互に向けられる。

 驚愕と喜悦と興奮と僅かな嫉妬を見え隠れさせる瞳にひなたは瞼を下ろす。まるで浮気現場を目撃したかのような反応に、「大袈裟ね」と復帰した千景が溜息と共に呟く。

 

「別に今までもシていたでしょ? ……この前なんて乃木さんが寝ている隣でわざわざ」

 

「ち、千景さん!」

 

「なんでもないわ」

 

「……そうか。いや、まあ、そうなんだが……何か複雑な気分だ」

 

 自分の思考内に意識を割いていたのだろう。千景の呟きに反応せず若葉がうんうんと唸り声を上げる。長年共に過ごした家族と言ってよい親友と男を共にする状況に思う所があるのか、彼女の思考をせき止めるように、俺はひなたを寝台に押し倒す。

 保健室のベッドがぎしりと音を立て、二人分の体重を受け入れる。続く千景が座ると再び軋み、やや遅れてベッドに膝立ちになる若葉の体重に更に軋む。

 

「ほら、若葉せんせー。お前の女が自分の生徒に抱かれる姿を見ているといい」

 

「若葉ちゃん……!」

 

「え? ……いや、別にひなたは私の女という訳じゃ」

 

「……若葉ちゃん? 愛憎は表裏一体なんですよ」

 

「えっ、えっ!?」

 

 あられもない姿で瞳から光を消して若葉を見上げるひなた。

 それは犯された姿にも見えなくはないが、そんな思考を掻き消すほどの言葉に出来ない冷気を感じ鳥肌を覚える。

 同じく何かを感じ取った千景が俺の背後に回り薄い胸元を押し付ける。

 汗を流す若葉、睨むひなた。もしや修羅場展開かと思われたその時だった。

 

「若葉さん、此方のメモを読み上げて!」

 

「待て、杏。今までどこに隠れていた」

 

「そんなことよりも早く! 空気を読んで!」

 

「……あ、ああ」

 

 一応、他の人に見られることを防ぐために閉じていたカーテンがシャッと開き、メモを手にした杏が入ってくる。彼女は教師姿ではなく、いつもの学生服のままだった。

 恐らくは聞いていたのだろう、ほんのりと頬を赤らめたまま勢いで乱入し、目を白黒とさせる若葉の脳が混乱する隙間を突くようにメモの一部を千切って渡す。

 助け舟だと、杏の乱入にスカートを下ろすより先に脳が紙面の文言を口にさせた。

 

「そ、そんな、ひなたがー。私以外の男に身体をー……だが、なんだこの鼓動の高鳴りはー。……まさか私は妻が他の男としている姿を見て興奮する変態だったのかー…………杏!」

 

「ひい!?」

 

「どこから見ていたんだ! 場合によっては……」

 

「と、隣でタマっち先輩の介抱をしていたんです! 覗きとかでは……」

 

「乃木せんせー。怒っちゃダメですよ」

 

「亮之佑。お前は──んむっ!? ンっ、は……」

 

 短気な女教師を宥めるのはキスが役に立つ。

 生徒の前で見せつけるように若葉の唇を奪いながら耳をくすぐる。ジッと見上げるひなたと至近距離の千景の視線を受けながら、若葉の肢体がふやけるのを待つ。

 はわわ……と初々しく顔を赤らめながらもメモをする杏の前で濃厚な口づけをすると、必死に逃れようと顔を背ける若葉が声を上げる。

 

「ぷはっ、こんなことで誤魔化されると──ちゅっ、んっ、ん……」

 

 俺が許したのは最低限の呼吸だけで抗議の声ではない。

 それを告げるように、杏の前で舌を絡め、歯茎をなぞり、口端から垂れる涎を気にする暇すらない程の情熱的なキスを若葉とする。

 B級映画のラストのような、金髪の女教師との口づけ。

 徐々に、徐々に、俺の肩を叩く彼女の拳が弱まり、肩を掴んで、遂には舌を絡め合う。

 

「はぁ……、はぁ……、悪い生徒だなお前は……んっ──」

 

 何度かの唾液交換で、鬼神のような怒り顔も徐々に人に戻って来る。

 それを見計らい、若葉のスカートのファスナーを下ろす。

 

 すとんとスカートが床に落ちる。

 突き出された若葉の尻を、千景の指が触れては軽く揉む。

 

「今日は生徒指導の一環でしょう、乃木先生。加賀くんと愉しんでいる内にもう忘れたの? 伊予島さんが来てもおかしいことは何もない。そうよね、加賀くん?」

 

「……そうだったか?」

 

「ええ、伊予島さんが見学に来る日だったわ」

 

「……そう、だったな。すまない、杏」

 

「でも、伊予島さんもあとでお仕置きね」

 

「そうですね。覗き見は駄目ですよ?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 彼女たちが楽し気に話し、俺は若葉と情熱的にキスを楽しむ。

 やがて口端から涎を垂らす若葉が虚ろな表情で唇を近づけるだけでキスをするようになった。

 抵抗の意思を無くした彼女のブラウスのボタンを外していくと、白い肌と水色のブラが露わになる。くしゃりとブラが崩れながら柔らかな乳を揉むと若葉が小さく震える。

 

「ぁ……」

 

 ブラホックも外すとツンと尖った乳首と程良い大きさの乳房が露わになる。

 餅のような質感は園子に近しい物があり、反抗的な乳首に吸い付くと少女が嬌声を漏らす。

 荒い呼気で顔を腕で隠す若葉の乳房を揉みながら、俺はひなたと視線を合わせる。

 

「……どうぞ」

 

 裸よりも恥ずかしい恰好で、彼女は男を迎える。

 俺だけではなく他の少女たちに無言で見られるのは恥ずかしいのか目を逸らしながらも、雄を受け入れる為に両脚を自ら掴むと脚を広げて秘所を俺の前に曝け出す。

 

 黒のストッキングを破くと白磁の肌に黒の陰毛とピンクの秘所を目にする。

 むわりとした淫臭を漂わせる恥毛と濡れた恥部を前にした俺は、無言で先端を宛がう。

 

「……ぁ」

 

 ぬぷりと肉を割り拓く。

 とろけた彼女の蜜が俺の怒張を受け入れる。

 

「ぅぁぁぁ……ッッ!!」

 

 挿入の瞬間に飛沫が飛び散る。

 感極まった声は、俺が彼女の腰を掴み突き上げると嬌声に変わる。

 

「ぁんっ! ぁ、ぁあっ!」

 

 釘を打つように彼女に怒張を打ち付ける。

 ぱんぱんと肉を叩く音を立てながら、眼前で揺れる乳房を揉み、腰を揺する。

 

「ぁ、ぁ、ぁ!」

 

 とろとろの肉壺は奥から新鮮な蜜が抽送の度にあふれる。

 シーツを汚しながら雄汁と絡んでは結合部で泡となる。その度に下品な水音が響き、顔を赤らめる杏の手が自らのスカートの中に伸びるのを目端に捉える。

 極上の膣を味わう俺は、貪欲に彼女を貪り、ピストンの速度を上げる。

 

「ぅぁっ、ひっ、ぁっ」

 

 生徒を指導していた女の膣は既に熱く、ひなたの嬌声が響く。

 互いの下半身が濡れ、シーツを握る彼女の乳房に甘噛みをすると、背を反らす彼女が大きく目を見開き、殆ど同時に俺とひなたは果てた。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

「ぐっ!」

 

 濃厚な白濁を彼女に注ぐ。

 女教師の中に吐き出される生徒のソースは思ったよりも多かった。ひなたという女教師に俺の肉体は本能を刺激されていたのか、濃厚な雄汁が結合部から垂れ落ちる。

 肉竿を抜き、弛緩した彼女の手を掴む若葉と、ひなたの痴態を目にした千景。

 特に千景は何か言いたげな眼差しでひなたを……その乳房を凝視していた。呼吸と共に揺れ動く双丘を見る千景は無意識なのか自らの胸元に手を置く。

 

「……加賀くんも大きい方がいいのよね?」

 

「微乳も普乳も好きです、千景せんせー。……それで次、いいですか?」

 

 

 

 

 

 

 二人の少女の恥部を並べるのは絶景だった。

 タイトスカートを脱がせ、自らの意思でショーツごとタイツを膝まで下ろさせる。そうして二人をベッドの上に四つん這いにさせ尻を突き出させる。

 前人未踏の絶景が広がっていた。

 乃木若葉と郡千景の恥部から陰毛、果ては菊座に至る全てを見ることが出来た。メモを忘れ唖然とする杏を余所に、俺は少女二人に気づかれないようにカメラに絶景を収める。

 

 臀部というマウンテン、山頂から麓の茂みまで保存して、ひなたと杏のスマホに送りつける。

 ビクッとする杏に俺が笑いかけると、戸惑った顔で彼女は何故かスカートをたくし上げる。お礼を要求していると思われたのだろうか、白色のタイツと純白の下着を膝まで下ろした彼女は自慰に耽っていたのだろう、自らの秘所を静かに見せた。

 

 戦友たちの痴態を生で見て、濡れた恥部。

 ミルキーブロンドのアンダーヘアに雫を絡め、内腿には愛液の糸が橋を作る。

 ほんのりと頬を赤らめて、興奮と喜悦で濡れた瞳が俺を見る。

 

 続けて、と声に出さずに口にするとゆっくりと少女の細い指が陰核を擦り始める。

 そんなことをしているとは知らず、顔を伏せたままの少女たちが不満気な声を漏らす。

 

「……いつまで、こんなことをしていればいいんだ」

 

「まだ……ふぅむ」

 

「ぁっ」

 

「千景せんせーの方が、感度が良いですね。濡れ具合は両方とも同じくらいで……千景せんせーのここはサラサラしていて、若葉せんせーの方は結構……昨日、自慰とかしましたか?」

 

「し、していない! 変なことを口にするな!」

 

「……若葉ちゃんは昨日、確か……」

 

「ひなたぁ!?」

 

「乃木さんはしていたわ」

 

「していない! 本当だ!」

 

 恥部に挿入した指の締め付け具合は少女ごとに異なる。

 彼女たちの悦ぶ場所を指で穿り弄る。

 右手で千景を、左手で若葉を。それぞれの秘所に指を挿入しては、ざらついた部分を探し、指の腹で摩る。息遣いが変わり、腰を浮かせる互いの陰唇からは愛液が滲み、それぞれの髪色と同じ毛色の恥毛を濡らす。千景の方は陰毛が吸いきれず、毛先からポタリとシーツに垂れる。

 

「ぁっ……ッ」

 

「ぅ、っ、……!」

 

 少女たちは、特に千景は自らが感じ入る姿を若葉に見られることを恥じる。

 だからこそ俺は重点的に千景の媚肉を弄る指を臍側に曲げる。

 

「ッ、……ァッ!!」

 

「千景?」

 

「イってない! イってないからっ……!」

 

 赤面しては尻を振る千景。

 若葉の方はゆっくりと性感を高めるように執拗な指使いだ。千景とは違い、彼女が我慢出来るギリギリまで弱点を弄っては法悦の空には上らせない。

 代わりに、千景が否定する度に、俺の指が彼女を喘がせ、尻を振らせ、絶頂に浸す。

 

「千景……」

 

「違うわ乃木さん、私はこんな……簡単にイったりなんて……────!!」

 

 ひなたも若葉も杏もただ待ち続ける。

 俺の指使いで喘がされる千景が認める瞬間を。

 

「ッ、っ、……いつまで、続けるのよ」

 

「千景せんせーがもうイったことを認めたら」

 

「……っ、ぁ、ぁ、っ!! …………ぃ、イったわ」

 

「えっ、なんだって?」

 

「イきました! ……これでいい?」

 

「ふーん……」

 

「まっ、待って……指っ、そこだけッ、ぁ、ぁぁ……」

 

 ブラウスだけ辛うじて着用している千景はシーツに顔を伏せ尻を上げた姿で、絶頂に達する。腿から垂れる愛液が膝下に下ろしたタイツとショーツを濡らし、その光景に杏が息を呑む。

 くちゅくちゅ、と響く水音が部屋中に響く。

 

「……誰が脚を閉じていいって言ったの?」

 

「……」

 

「うん、偉いね千景せんせー」

 

「このサディスト……っ!」

 

「────」

 

「やぁっ! ぁっ、まってっ、ぁあっ!!」

 

 閉じようとする千景の内腿を撫でるとビクリと震えて再び脚を開く。

 良い子だよと独特の弾力がある臀部を撫でると、もうやめてくれと尻肉が震える。

 その姿を可愛らしく感じ千景の陰核を指で弄り彼女の嬌声に耳を傾ける。

 一方で、若葉の秘所を弄る指の動きを変則させると、真新しい快楽を彼女にもたらす。

 

「ぅ、ぅく」

 

「若葉せんせーは我慢できて偉いですねー。ひなたせんせーの前だからですか?」

 

「……うるさいッ」

 

 若葉の尻を叩くと良い音がした。

 ビクッと揺れる臀部を撫でるとひなたが若葉の乳房を優しく揉む。

 

「若葉ちゃん。我慢ですよ我慢」

 

「ぅぅぅ~~~~ッッ」

 

「若葉ちゃんの我慢する顔、可愛いですよ」

 

「か、からかうなぁ」

 

 膝まで下ろしたタイツとショーツ以外は全裸となった若葉。顔を赤くする彼女はひなたの上で四つん這いになるポーズで、訪れることのない絶頂を我慢し続けていた。

 親友が果てるのを我慢する姿を見上げるひなたの口端が僅かに歪むのを見なかったことにして、俺はゆっくりと指を動かす。絶対に果てさせない意思で彼女の限界ギリギリを見定めては指で彼女の恥部に疑似的なピストンを続ける。

 

「……っ、りょ、のすけ」

 

「なんですか?」

 

「私が、悪かったから……もう許してくれ」

 

「……」

 

 チラリと俺を見る彼女は涙で瞳を濡らし、膝を震わせる。

 愛液が俺の手から滴り落ちては淫臭を撒き散らす。若葉の恥部は俺の指の動きに蠕動し、硬くなった陰核を愛液で濡らしては、本能のままに雄を求める。

 涙に濡れた若葉の表情が園子の乱れた姿と重なり、鼓動が高鳴る。

 

「……ひなたせんせー」

 

「……そうですね、もういいですよ」

 

 彼女と目配せすると、ひなたが若葉を抱き寄せる。

 互いの乳房が潰れるほどに密着しては、若葉の背中に腕を回すひなたが微笑む。その眼差しは俺の反り立つ肉棒を捉える。

 巫女にホールドされた勇者に俺は圧し掛かり、先端を若葉の臀部に宛がう。

 

「ぅぁぁぁっっ!!!」

 

 鼠径部で臀部を叩き、やや乱暴にピストンする。

 俺とひなたにプレスされた若葉は、ただ絶頂に浸り、快楽の天井に上り詰める。ひなたというベッドで寝バックを受ける彼女は起き上がろうという抵抗も許されない。

 

「若葉ちゃん、気持ち良くなっていいんですよ」

 

「みみっ、はぁ、ぁぁ、ふわぁああっっ!!」

 

 ひなたに耳を舐められ、俺に怒張で膣を穿られる。

 彼女が好む膣襞を雁で擦り上げ、ひなたの舌と指が彼女の脳を狂わせる。ぎゅううっと膣が引き締まり、俺もまた彼女の空いている方の耳に舌を差し入れる。

 

「良いんですよ、若葉ちゃん。抵抗しないで」

 

「イけ、若葉」

 

「イって下さい、若葉ちゃん。……イって!」

 

「~~~~ッッ!! ────!!! ぅぁぁあああっっ!!!」

 

 二度、三度と若葉の下腹部が震える。

 痙攣する若葉の耳を甘噛みしては、搾り取ろうとする膣圧に抗うも、吐精に至った。心地よい快感と共に、園子の先祖の子宮に子種を注ぐ。

 数秒ほど目を閉じて、若葉の髪の毛に鼻を埋め鼓動が落ち着くのを待つ。

 

「……ふう」

 

 ゆっくりと上体を起こし、ピクリともしない若葉を抱くひなたを見下ろす。

 次に視線を横に向けると俺を半眼で見る千景。

 

「まるで性欲の権化ね。まだ萎えないの?」

 

「千景せんせーを満足させるまでは」

 

「……ふぅん。てっきり乃木さんと上里さんに夢中で忘れたかと思ったわ」

 

 でも、と続ける彼女は髪をかき上げる。

 白濁と若葉の愛液で濡れた怒張に目を向けては、ちゅっと先端にキスする。

 

「……なら、満足させてね、加賀くん」

 

 

 

 

 

 

 

 千景は淑やかに触れ合いを求めてきた。

 甘えるような、肌と肌を擦り合わせて暖を取るかのように柔肌を密着させる。普段ならば気に入ったエッチなゲームのシチュエーションの模倣を恥ずかしがりながら依頼してきたりする彼女。その内容は、甘いものから、SMな内容や少々過激な物など様々だ。

 若葉が壁越しに聞いた台詞も、千景がノリノリでやっていたシチュの一つだ。

 

「ん……っ、加賀くん……」

 

 そんな彼女は、今日は甘いものを好むらしい。

 もしくは横たわっているとはいえ、ひなたや若葉がいること、また見学している杏がいることを意識に置いているのか、特殊プレイではない純粋なイチャエロを求める。

 初々しい恋人のように、唇を啄むキスをせがんでは待ちきれずに自らの唇で俺の唇を奪う姿は、生徒を自室に招き入れて性行為の補習をする女教師のようだ。

 

「んちゅ……ん、んむっ」

 

 既に挿入した怒張を膣が引き締める。

 対面座位で、ブラウス一枚の千景は俺の腰に両脚を回す。タイツは脱ぎ捨てて、眼鏡も捨てた彼女は白い生地から覗く慎ましい乳房を俺の胸板に押し付ける。

 コリコリと尖った先端が俺の乳首と擦れ合い、甘い吐息をキスの合間に漏らす。濡れた瞳に俺を映し、キスを楽しむように瞼を閉じては上と下の唇で俺を味わう。

 

「……ぁっ」

 

 むにゅっと乳房を掌に収める。

 柔らかく形の良い母性の塊はしっとりと指に吸い付く。ピンク色の乳首を指で挟みゆっくりと擦る度に腰を左右にくねらせる彼女は小さな嬌声を漏らす。

 ふにふにとプリンのような柔らかさが掌に広がる。

 僅かに力を入れると、髪紐の解けた黒髪を揺らす千景が目を細める。

 

「……私の、触っていて楽しい? ……この中で一番大きくないけど」

 

「楽しいですよ。千景吸いしますね」

 

「……んっ」

 

 僅かに血の味がする乳頭。

 ほんのりと塩味がして、そのまま滑るように腋を舐めると小さな悲鳴を上げる。

 

「どこを舐めてっ、ひぁぁっっ!!」

 

 滑らかな背中を指で下から上に撫でるとビクッと肢体を震わせる。

 同じように、今度は臍から胸元を撫でるときゅっと怒張が締まる。

 

「ふぁっ……っ、やめっ、それ、くすぐったいからっ」

 

「千景せんせー、敏感ですね。そんな気持ちよさそうな顔して」

 

「……恥ずかしいから……見ないで」

 

 かぷりと首筋に甘噛み。

 キスの度に、膣がきゅっと竿を締める。

 それを誤魔化すように顔を俺の首筋に押し付けると耳元で囁く。

 

「加賀くん」

 

「なんですか?」

 

「……もう、好きに動いていいわよ」

 

 許可を得てゆっくりと彼女の腰を掴む。

 千景ごとベッドに倒れ込んでは、ゆっくりと腰を揺する。

 

 指を鉤状に曲げては口に含む少女は喘ぎ声を押し殺す。

 代わりに肉竿を締め付けて、奥を突かれる度にとろりとした蜜を垂らす。

 

「ぁ、ぁ、ぁっ、ぅあっ!」

 

 ぱんぱん、とリズムよくピストンする。

 鼠径部を擦り合わせ、陰毛が肌を擦り、竿の根本まで挿入し、先端で子宮口にキスをする。引き抜く時には彼女の悦ぶ場所を雁裏でしっかりと擦り上げると嬌声が漏れる。

 艶やかな唇が震え、瞳を揺らす千景が小さく呟く。

 

「……キス、して」

 

 甘える彼女の求めに応じると、腰に絡む脚に力が入る。

 無言で膣内射精を求める彼女と濃厚な口づけをしながら、ただ腰を動かす。

 

「ぐっ、ぅっ」

 

 限界が近い。射精寸前だった。

 薄い胸元を揺らし、汗で髪を肌に張り付ける彼女の嬌声が響く。甘い女の声が鼓膜を震わせ、本能を刺激し、限界まで反り立った肉棒が少女を貫く。

 にじゅん、と彼女の良い場所を突くと、千景の瞳が大きく見開かれる。

 

「千景っ、このまま……ッ」

 

「ええ……いいわよ。いっぱい、だして──!」

 

 少しして、白濁を彼女の最奥に注ぐ。

 満足感と密着と抱擁とキスによる多幸感で視界を白く染めながら、彼女の頭を首筋に抱く。鼓動の度に彼女の膣襞が精子を呑み込み、互いの鼓動を重ねた。

 

「はぁ……ぁ、っ」

 

 未だに怒張を締め付けては小刻みに痙攣する少女。 

 ブラウス一枚で乱れた髪は、女教師よりもずっと見慣れた姿だった。

 

「そっちの方が似合いますよ、先輩」

 

「どういう意味よ。別にその場のノリで着ていただけで……ってちょっと!」

 

 荒く呼吸を繰り返す千景を抱き起こす。

 抗議の声を上げる彼女の乳房を揉みしだき、ベッドの縁に手を突かせる。何をしようとしているのか言葉にせずとも察したのか、そっと脚を広げる千景の足元に白濁が滴る。

 挿入されたことが分かる故に、自ら角度を調整するように尻を突き出す千景が呆れ顔に対して、僅かな期待と喜悦を混ぜた声音で「加賀くん」と呼ぶ。

 

「……まだ、するの?」

 

「先輩を満足させたくて」

 

 くびれた腰を撫でて、汗ばむ鼠径部、汗を吸った恥毛を撫でる。

 その奥に隠れた肉芽を弄ると膝を震わせる少女、その媚肉に雄竿の先端を宛がう。

 俺の返答に、千景が何かを呟いた。

 それが何かを聞く前に、ぐっと臀部を押し付けられる。

 

 さらりと黒髪が背中から流れ落ちる。

 甘く淫らな千景の吐息が、淫気を帯びた温い空気に混じる。

 髪から覗く耳が赤く染まっていた。

 

「……好きにしたら」

 

 

 

 彼女の言葉通り、俺は好きにした。

 罰を与えて貰って許されたのだから、千景を様々な体位で辱め、悦ばせる。

 

「ばか……意地悪、ばっかり……っ」

 

 途中からひなたが参加してくる頃にはふにゃふにゃになった千景から巫女に乗り換えて、今度こそ孕ませるように若葉の前で貫く。

 少し耐性が出来たのか、今度は若葉もひなたを悦ばせる為に手を貸してくれた。

 

「わかばちゃんっ! ダメっ、らめっ、ぁあああっっ!!」

 

 親友と男の手で絶頂に達するひなた。肢体から力を抜いた彼女を仰向けに、千景の前で、ひなたの豊満な胸肉で怒張を挟ませ奉仕させた時の彼女の表情は忘れられない。

 巨乳憎し、と巫女の乳房を揉む千景は、その後の若葉を辱めることに一番乗り気だった。巫女も加勢して、俺そっちのけでどちらがより若葉を気持ち良くさせられるか大会を開催していた。

 

「以前、亮之佑に男の悦ばせ方を教えて貰ったんだが……千景は出来ないのか?」

 

「若葉ちゃん、それはいけません!」

 

「ひなたほどではないが、こうして胸で挟むのは……あっ。そうか……すまない」

 

「〜〜ッ! 乃木若葉ァァ……!!」

 

「千景先輩だって頑張れば出来るんだぞ」

 

「え?」

 

「……私だって出来るわよ」

 

「そ、そうだったのか! すまん千景、失礼な事を言って」

 

 最後に、若葉の乳肉で怒張を奉仕させた時の千景の表情はもっと忘れられなかった。

 そして──。

 

「……それで、伊予島さんも?」

 

「ヒィ!」

 

「……流石にここまで見られたからには、ネ?」

 

「悪役みたいなことを言い出したぞ」

 

 流石に勇者というだけあって、普段から鍛えているからか体力がある。

 締まる裸体を惜しげもなく晒す若葉や、ぐったりとしたひなた、ブラウス一枚から裸体を覗かせる千景も俺に賛同するのか怪しげな笑みを見せる。

 ガクガクブルブルと哀れな小動物は、しかし淫気な空間に漏らす吐息は熱い。

 

「メモは没収だな」

 

「録音もしているなんて……今の聞いた? 乃木さんの声、随分とエッチね」

 

「いや、私よりも千景の方が凄い声だな。聞いていて変な気分になる」

 

「……ッ、変態。これは削除ね」

 

「コホン。さて、勉強熱心な杏さん」

 

 女教師の威厳を保とうとするも、いくら険しい表情でも全裸では厳しい。

 だから、服を着るか、生徒の制服その全てを剥ぎ取って裸体を曝け出すか、女教師たちは後者を選んだ。球子の眠るベッド、その隣で杏を全裸に剥いた。

 ミルキーブロンドの長髪がシーツに広がり、甘い香りが広がる。

 

「ぁんっ!」

 

「ふふっ……返事は結構ですが……球子さんが起きてしまいますよ?」

 

「……!! フッ──、んっ、っ」

 

 くり、とひなたの指が杏の肉粒を摘まむ。

 むにゅ、と千景の手が杏の豊満な乳房を揉み、ツンと尖った乳首を指で摘まむ。

 

「勉強熱心なのはとても良いことですので私たちから特別に実習形式で教えようかと。……これなら、メモも録音も必要なく、杏さんの身体で直接覚えられますよ」

 

「そんなの……別に……ッ、若葉さんっ、指っ、それっ、イクッ……ッ!!」

 

 ビクッと小刻みに腰を動かす杏。

 絶頂に達する吐息を漏らす彼女に構わず、若葉の指が杏の媚肉にピストンを繰り返す。脱がせた時点で既にトロトロに濡れていた肉壺は若武者の指を容易く受け入れていた。

 ピンと脚を伸ばしては、ぎゅっと膝を曲げる。

 は、あ、と呼気を乱す杏の、ふわりと揺れる恥毛をひなたの指が撫でる。

 

「~~~~ッ!」

 

 杏の腰が跳ねる。

 ゆっくりと若葉の人差し指と中指が少女の花弁から引き抜かれる。ぴゅっと飛沫がシーツに散り、教師に教わる杏の涙に濡れた瞳が俺を捉える。

 僅かに理性の戻った瞳、閉じようとする脚を若葉が掴むと、観念したように脱力する。

 

「……ぁ、ぁ」

 

「大丈夫ですよ、杏さん。実習形式なんですから」

 

「大丈夫って……」

 

「……本当は杏さんもこうなることを望んでいたんですよね?」

 

「……ッ、それは」

 

 視線を誘導するひなた、その視線の先には俺の肉棒。

 杏の前に座ると、小さく息を呑む杏の頭を巫女は慈愛の眼差しで撫でる。

 

「あっ、亮之佑さん……先生方も……」

 

 亀頭を彼女の恥部に宛がうと、にちゅ、と粘膜が擦れ合う。

 は、は、と不規則に呼吸する杏が俺と怒張を交互に見る。

 

「私にも、……いっぱい教えて下さい」

 

 淫らな露が俺の怒張を伝う。求めるように伸びる片手に手を重ねる。

 ──そして、俺は三人の女教師と共に一人の生徒を溶かし尽くした。

 

 

 




誤字報告ありがとうございます。
感想、評価頂けると嬉しいです。……西暦組推しが意外と多いのかな?


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【番外】悪い子

 加賀亮之佑の朝は早い。

 パチクリと目を開けると時計を確認、天気を確認して着替える。

 歯を磨いて、顔を洗って笑顔の練習をしたら、外に出る。

 

 薄暗くも遠くの地平線には陽光が覗く。

 家の外に人影はない。それどころか目に付く場所には誰もいない。

 ゆっくりと鼻孔から肺に入れる空気は冷たい。朝特有の清涼感がある空気を吸って吐いて、肺の中の空気を入れ替える。並行して柔軟や屈伸などで準備運動をする。

 

「ジャージ、買ってよかったな」

 

 新しい衣服を買うとなんとなく予定も無いのに着て歩きたくなる。

 ついでに可愛い勇者部の誰かと楽しく遊べれば青春の一ページに刻まれること間違いなしだ。

 そんな心境だが、今回はキチンと事前に決めていた予定だ。

 

 準備運動を終えた後、俺はゆっくりと歩き始める。

 アスファルトを踏み締めるとしっかりとした感触が足裏に伝わる。腕を振り、呼吸を一定に、徐々にウォーキングからランニングへと移行する。

 

「ふっ、ふっ……!」

 

 静寂に自分の足音が響く。

 無言で走る度に、自分の吐息と足音だけが嫌に響く。

 

 街灯はまだ点灯したままだが、いずれ必要なくなるだろう。

 空はうす暗く、太陽が世界を照らすにはまだ時間が必要だ。

 

 大通りすら車の一台も通らない光景は早朝か深夜でしか見ることが出来ない。

 まるで世界に自分だけが取り残されたような、そんな光景。

 どこか特別感のあるこの光景は、俺が気に入っている光景の一つだ。

 ただウォーキングとジョギングを交互にするには、世界はあまりにも静か過ぎた。だが樹のように歌い出す訳にもいかず俺はポケットからイヤホンを取り出す。

 耳に装着したイヤホン、スマホの端末からお気に入りの音楽を流し、再び走り出す。

 

 目的は体力の向上。走るルートは決めていない。

 坂路があるようなところを積極的に走るようにはしているが、天候や気分で道を変える。

 

 今は一人だが有明浜の方向に向かうと定期的に夏凜や防人組に遭遇する。

 寄宿舎方面に向かえば、若葉たちが朝から鍛錬をしている光景を見ることが出来るだろう。

 朝が遅いのは勇者部の中でも一握りだけだ。

 

「今日は……こっちだな」

 

 気分で目端に捉えた無人の細道に入る。

 子猫が俺を見つけて去り行くのを尻目に細道を抜ける。

 やがて寄宿舎のある方向に向かっていくと、同じようにジョギングしている人を見つけた。

 

 追い抜くのもなんとなく気まずい。だから一定のペースを保ちながら追い続ける。そうしているとクールダウンなのかゆっくりとウォーキングに移行し始めた。

 その後ろ姿、揺れる薄紅色の髪に確信を抱いた俺は先ほどよりも速度を上げる。

 

「高嶋さん」

 

「……えっ?」

 

 声を掛けると立ち止まり、振り返る少女。

 黒のキャップに同色のシャツ、白のハーフパンツからすらりとした腿を覗かせた恰好の高嶋友奈。早朝から同じように走っていたのだろう、額に汗を浮かべる彼女は俺に気がつくとパッと笑顔を浮かべ駆け寄る姿は、なんとなく主人を見つけた子犬を連想させた。

 

 結城友奈にそっくりな彼女の太陽の如き笑顔に俺は思わず目を細める。

 彼女に似ているだけあって、或いは友奈が高嶋に似ているのか、否、大事なのはそこではない。双子と間違えかねない彼女の笑みは今日も無邪気で可愛らしい。

 

「りょーくん! おはよー!」

 

「おはよう、高嶋さん。今日も眩しいね」

 

「えー? 日差しはそこまででもないかな……」

 

 空を見上げる高嶋は額をリストバンドで汗を拭う。

 キャップを被り直した彼女は屈託のない笑みで俺を見上げる。

 

「……熱そうだね。ほら、まだ飲んでないお茶だから飲んで飲んで」

 

「えっ、でもりょーくんに悪いよ」

 

「高嶋さんに飲んで貰える方がお茶も喜ぶから」

 

「あはは……それじゃあ、一口だけね。ありがとうりょーくん!」

 

 渡した水のペットボトルを素直に両手で受け取る高嶋。

 ぷるぷるとした唇をちゅっと飲み口につけ、両手でゆっくりとペットボトルを傾ける。

 両目を閉じて、彼女はこくこくと喉を鳴らす。

 律儀に一口分で済ませようとすると俺は「もう一口!」とボトルを持つ手を掴む。薄紅色の瞳が俺を映し、困ったような顔をしながらも手を下ろすことなくペットボトルの中身を嚥下していく。

 結局半分以上飲んだ彼女が「ん~」と唸り出した頃に手を離す。

 

「ぷはっ! ……ごめんね、いっぱい飲んじゃった」

 

「そこでごめんねって言える高嶋さんは天使だなって思うよ。蹴りの一つくらいあるかと」

 

「えーそんなことしないよ! りょーくん、私をなんだと思っているの?」

 

「アハハ! そうだよね! 友奈族最高なんよ。プロテインバー持っているけどいる?」

 

「それはいいかな。……赤嶺ちゃんに渡したら喜ぶんじゃないかな」

 

 友奈族以外なら大なり小なり無理やり飲まされることに文句の一つも言うだろう。

 飲まされたことよりも、その後の会話で僅かに拗ねたような表情を見せる高嶋の可愛らしさは今すぐ写真を撮って保存したいほどだ。その後、「美味しかったよ!」とふわふわとした笑みと共に感想を告げて返されるペットボトルに口をつける。

 清涼感のある水はなんだか少し特別な味わいがした。

 俺がペットボトルに口をつけると、高嶋が無言で見てくる。特に口元に視線を感じた。

 

「どうしたの?」

 

「ほえ? ……う、ううん。なんでもない」

 

「そう。一緒に走らない?」

 

「う、うん、良いよ」

 

「……今の間接キスだったね」

 

「……っ」

 

「なーんて」

 

「……もう」

 

 イヤホンを外し、僅かに頬を赤らめる彼女と並走する。

 俺よりも早く起きていたのか、既に結構な距離を走っていそうな高嶋は黙々とランニングを続ける。少し速度が速く、俺も負けてはいられないと彼女の隣を走る。

 

 競争ではない。ただ一緒にそれなりの速度で走るだけだ。

 アスファルトを蹴る足音と、互いの吐息が静寂の朝に響く。

 

「……いつから走ってたの?」

 

「……1時間くらい前かな」

 

 音楽の代わりに高嶋の声音に鼓膜を集中させる。

 吐息と共に漏らす言葉には僅かな震えがある。

 続いて、躊躇うような素振りで俺の顔をチラリと見る高嶋が、

 

「……りょーくん」

 

「悩みがあるなら聞くよ」

 

「……最近のぐんちゃんはね、みんなと仲良くなって凄く嬉しいんだ」

 

 しばらく彼女と走った先、偶然辿り着いた名も知らぬ公園で脚を止める。

 荒い鼓動が治まるのを待ちながら、おずおずと上目遣いを見せる高嶋に目を向ける。

 小さな公園に設置された滑り台、足元には砂、誰も訪れないような廃れた公園は周囲を木々に囲まれている。

 隔絶された世界のようで僅かにテンションが上がるが、それを隠し心配気な顔を見せる。

 

「それで? ……寂しくなっちゃった?」

 

「……うーん、それもあるかな。若葉ちゃんやアンちゃん、ヒナちゃん、タマちゃん……みんなとぐんちゃんが仲良くなっていって私は嬉しいけど、でもちょっと寂しいなって。それに、なんだか、ぐんちゃんだけじゃなくてみんなともちょっと距離が出来た気がして……」

 

「仲間外れみたいになって嫌なの?」

 

「そうだね。……うん、そうだ。でも、あんまりこういうことを言ったらぐんちゃんにもみんなにも迷惑が掛かるから、それにせっかくみんなが仲良くなったのに私だけ我儘を言うなんて……変なこと言ってごめんね、りょーくんも忘れて」

 

「高嶋さんは奥ゆかしいもんね。ムードメーカーなのは友奈族の……友奈と似てるよ」

 

 滑り台の斜面に座った彼女は切なげに笑う。

 高嶋は誰かに胸の内を語りたかったのだろう。それも出来ないからせめて少しでも胸中の思いを発散するように朝の早い内からひたすらに走っていたのかもしれない。

 誰かを傷つけるよりも、自分の身体を傷つけた方が健全なのもあるからか。

 

「そんなに考えてないよー。眠れなくて走りたくなっただけだよ」

 

「じゃあ天性の才能だ。凄いよ高嶋さん。高嶋様ー!」

 

「えへへ……褒め過ぎだよ」

 

 俺は階段を上り滑り台の頂上に立つ。面白みのない住宅街しか視界には収まらず、そのまま斜面を滑り降りると彼女の背後から抱き着く。

 高嶋は嫌がる素振りを見せず、これ幸いと下腹部を臀部に押し付ける。

 両脚で高嶋を挟むと、こてん、と頭を肩に置く彼女は恋人のように俺に身体を預ける。くぅーんと子犬のように身を寄せる姿は相応の信用を得られた故の甘えを感じた。

 目に見えない犬耳が柔らかな髪から覗いた気がした。

 

「……千景がみんなと仲良くなったのは俺とエッチしたからだよ」

 

 ビクッと抱いた肢体が震えた。

 振り向こうとする彼女の身体を背後から強く抱き締める。

 薄紅色の髪に鼻を突っ込むと、漂う汗と彼女の芳香で呼吸をする。シャツ越しに彼女の胸元を揉みながら耳元で囁くと首筋に唇を落とす。健康的な肌に浮かぶ汗は甘じょっぱい。

 

「……それは」

 

「悪いことだって?」

 

「────」

 

「でも、高嶋さんも悪いことしているよね。……お酒の所為にしないとぐんちゃんとも俺ともエッチできないもんね」

 

 ん、は、と彼女の熱い吐息が震えた。

 見下ろすとシャツの隙間から覗く鎖骨と水色のスポーツブラ。

 シャツを捲り上げ、やや冷たい白い腹部を撫でるとしっとりとした肌が掌に吸い付く。身じろぐ高嶋の乳房をスポーツブラごと揉みしだくと彼女の鼓動の高鳴りが背中から伝わる。

 

「わ、私は……」

 

「いいんだよ。みんな悪いことをしているのに自分だけその輪に入れないのは嫌だよね。だから、──高嶋さんも悪いことしよう? 悪い子になってみんなの輪に入っちゃおう?」

 

「ひゃう!?」

 

 はむ、と耳を甘噛みする。

 背後からぎゅううっと強く抱き締めると伸ばしていた脚を折り畳み、三角座りをする少女が小さく呻く。力強い抱擁への苦情というよりも抱かれることへの安堵感と羞恥を混ぜた呻き声。

 素面のまま、異性に抱かれ、身体を触れられることに今更ながら恥ずかしくなったのか。

 

「一緒に悪い子になろう? みんながしていることなんだから」

 

 言葉を重ねる。言い訳も与える。

 臀部に肉竿を押し付けて、ハーフパンツのウエスト部分を僅かに捲る。水色の縞模様のショーツをチラリと見ながら、彼女の秘肉を覆い隠す布地ごと指で押す。

 むにゅむにゅと独特の弾力と汗が染みた布越しに彼女の貝肉を弄る。

 

「ゃ……は、ぁっ!」

 

 指でカリカリと上下に掻くと高嶋の腰が浮く。

 両脚で彼女を挟み直すと、余裕のない勇者の唇を奪う。

 

 瑞々しい唇を啄み、彼女の舌に舌を絡める。

 強く抱き締めながら乳房を揉むと、にじゅっと下腹部から水音が響く。執拗に秘所を指で責め立てるとじわりとクロッチ部分の染みを広げ、彼女の口端から涎が垂れ落ちる。

 ゃぁ、と子供のような嬌声を聞かせる彼女に、もう一度問い掛ける。

 

「悪い子になろう?」

 

「……どうしたら」

 

 スポーツブラ越しに硬くなりつつある乳首を指で弄る。

 唇を離した直後の三度目の問い掛け。ぼんやりとした眼差しの高嶋は唇の間を繋いだ透明な糸を気にすることなく、ゆっくりと唇を震わせる。

 

「……どうしたら、いいの?」

 

 彼女は迷える子羊のような顔で俺の腕を掴む。

 だから俺は牧師として、彼女を導く。

 

 

 

 

 

 

 滑り台を降りて、彼女の腰を抱いて少し歩く。

 公園の隅、木々に覆われて周囲からは見え難い、しかし完全に見えない訳ではない位置で高嶋を解放する。シャツと髪を肌に張り付かせる彼女はどこか事後に似た雰囲気を漂わせる。

 もじもじと白い腿をくねらせて、上目遣いで俺を見る少女は雰囲気に流される。

 

「ん……」

 

 無言のまま高嶋は自らのハーフパンツのウエスト部分を掴む。

 数秒の躊躇い、そしてゆっくりと下ろすと水色のショーツが露わになる。

 脚から抜き取り俺に渡した彼女は、愛液と汗で濡れた縞模様のショーツを露出させる。キャップとシャツを着た彼女は下半身だけ下着という不揃いな姿で内腿を擦り合わせる。

 

「何しているの? 続けて」

 

「や、やっぱり……」

 

「続けて」

 

「……」

 

 涙目の彼女は緩慢とした動きで下着を掴む。

 覚悟を決めているのか閉じた瞼が震え、しかし変わらず下着のウエスト部分を掴んだまま硬直する彼女に露骨な溜息を吐く。

 するとビクッと震える高嶋はやや躊躇しつつも下着を膝までずり下ろす。秘所と下着の裏地に糸が引き、外気に晒されたからか下腹部を震わせる彼女の片足を持ち上げて下着を抜き取った。

 必死にシャツで秘所を隠そうとしながら高嶋は周囲に目を向ける。

 

「や、やっぱり……やめ──」

 

「悪い子になるんでしょ?」

 

 掴んだ下着を生暖かく淫臭が漂う。

 取り返そうと片手を伸ばす彼女を避けてはポケットに仕舞う。

 ハーフパンツを畳んで、高嶋の背後に回り込み抱き着くとそのまま一緒に倒れ込む。

 

「きゃっ!」

 

 シャツが捲れ上がり露出する下半身。

 少女の白く眩しい内腿から、雫がちらついた茂みと愛液で滲む秘裂。芝生の上で薄い陽光に照らされた彼女の下腹部から臍までの全てが外気に晒される。

 ぶるりと震える高嶋の体躯に腕を回し半裸の彼女に囁く。

 

「ぅ、ぁ……!」

 

「じゃあ、しーしーしようね。神樹様も喜ぶから」

 

 少女の膝裏を掴んで両脚を広げさせる。

 嫌々と首を振る彼女の身体は熱く、閉じようとする脚の力は強い。

 

「ちゃんと広げて……それに早くしないと誰か来るかも」

 

「ぅぅぅ……っ」

 

 瞳に薄く涙を浮かべる高嶋、彼女は従順にも俺の言葉に従う。

 細い指はピンクの陰唇の縁に触れると自らの最奥を外で曝け出すように左右の陰唇を割り拓く。上から見下ろす彼女の花弁はひくひくと動き、それを伝えると高嶋は顔を横に向ける。

 外で見る彼女の鼠径部、薄い陰毛が風に揺れ、透明な雫が花弁から垂れる。

 綺麗な華からは新鮮な蜜が溢れ、包皮の剥けた肉芽が陽光に照らされる。

 

「……こんなのやだよぉ」

 

「悪い子になるんでしょ? ほら」

 

「ぁ、っ、揺らさないで……」

 

「我慢しないの」

 

 俺は高嶋に公園で露出と放尿を強いていた。

 悪い子になるならこれ以上の悪事はない。人気のない公園で脚を広げ自ら痴態を晒す。

 そう、犬だ。まるで、犬のように──。

 

「犬」

 

「え?」

 

「犬」

 

「りょーくん?」

 

「犬」

 

「……」

 

 俺を見る高嶋の表情には困惑、そして数秒ほど遅れて理解したように瞳を見開く。

 直後に訪れる羞恥と葛藤、開いた脚から無駄な力が抜けて、しっとりとした肢体に新たな熱を帯びていく。荒い呼気を繰り返す彼女は小さく呟く。

 

「……ワン」

 

 直後、弧を描く小水が木の根元に掛けられる。

 しょわわ……と細い指で開いた花弁の小さな穴から飛沫が芝生を、木を濡らす。

 

「……! ──!」

 

 水音を奏でる間、高嶋は無言を貫いた。

 可哀そうなほどに顔を赤くして、彼女は良い子を捨てていく。悪い子になっていく彼女は口元を緩め、外で小水を漏らしたことへの罪悪感と同時に気持ちよさそうな顔をしていた。

 

「だめだよぉ……こんなのだめなのに……」

 

「あーあ、さっき飲んだ分、全部出ちゃうね~」

 

「ぅぅぅっ……! 見ないでよぉ……」

 

「神樹様! 見ていますか! お供え物です! 受け取って下さい!!」

 

「りょーくん! 声っ、大きいからっ、やだっ……んっ」

 

「気持ちいい?」

 

「……ん」

 

 勢いは徐々に弱まる。

 ぽたぽたと雫が芝生に染みこむのを確認しながら、再び少女の顔を見る。

 下半身丸出しで恍惚な表情をした彼女は、薄い笑みを浮かべた。

 背徳を味わった少女は小さく笑い声を上げる。

 

「ぁはは……りょーくん。これで私、悪い子になっちゃった?」

 

「……ああ、悪い子だな。悪い子にはお仕置きを与えないと」

 

「……お仕置きは部屋でして欲しいなぁ」

 

 陽光は先ほどよりも強くなっていく。

 一筋の風か薄紅の髪を揺らし、俺の頬をくすぐった。

 

 

 




感想、評価貰えると嬉しいです。
誤字報告いつもありがとうございます。


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【番外】お仕置きの順番

 汗だくの少女が涙目で羞恥に身悶える。

 その姿に笑みを見せる時、大抵少女たちからは変態扱いをされる。

 鬼畜とか、ケダモノとか、虐めて悦に浸る男など、言われようのない誹謗中傷を騒ぎ立てる少女たちにはその通りのことをしてきた。だから否定はしない。

 

「高嶋さん可愛いよ。高嶋さん」

 

「んっ……ぁっ」

 

 普段は明朗快活、その姿に黒髪の少女たちが惹かれていく。彼女たちにとって、否、俺にとっても友奈というのは特別な存在だ。正しく太陽のような存在なのだ。

 そんな陽光の如き天使が、俺の手によって淫らな表情で甘い声音を漏らす。

 天使を堕天させ、女としての悦びをその身に教える背徳的な快感は抗い難い物だ。

 

「ほ~ら、これで綺麗になったね~。あとは洗い落とすだけだよ~」

 

「は、ふ……」

 

 白い泡が彼女の裸体の所々に付着している。

 ぎゅうっと腕を掴んでいた手からは力が抜け、抵抗するように閉じられていた両脚は観念したかのように大きく開かれている。普段の彼女の努力の賜物だろう、可動域の広い高嶋の柔らかな身体はとても洗いやすかった。

 

 汗の溜まりやすい胸の下、つるりとした腋。

 いずれも手を這わせ、臍を洗い、鼠径部から足裏まで隅々を洗った。

 

「お客様。痒い所はございませんか? ……なんて」

 

 Tシャツを脱がされ、ブラも、キャップも髪紐も取り上げた高嶋の抵抗はない。

 生まれたままの姿は正しく友奈。こうして蕩けた表情は見慣れたものと似ている。タイルの上で泡塗れの裸体を晒しながら、辛うじて頭だけは俺の太腿に乗せられた高嶋。

 は、あ、と熱い吐息を漏らす彼女の端麗な容貌に怒張を押し付ける。

 ぺちりと間抜けな音と共に肉棒で彼女の頬を叩くと、先走り汁がその白い肌を汚す。

 

 柔らかな唇に亀頭を押し当てると、こそばゆい呼気を吹き掛ける彼女はチラリと俺を見上げるとアイスを舐めるかのように先端を口に含み、舌先を亀頭に絡める。

 

「ん、む……」

 

「美味しい?」

 

「……んぶっ……ちゅ……、……変な味」

 

「みんな、そう言うんだよ。でもみんな最後には美味しいって言うんだ」

 

 そう告げると上目遣いで俺を見る少女の唇から肉棒がこぼれる。

 

「ぷはっ……誰が言ったの?」

 

「若葉とか……千景とか……ひなたさんとか……あんな顔しておいてエッチだと思わない?」

 

「……ん」

 

「あんな清楚面している子が実はエッチでしたとか興奮しない?」

 

「……そうだね」

 

「なんか今呆れましたか? お客様。もう一回洗いましょうか?」

 

「ゃぁん! 呆れてないよぉ」

 

 ──俺は高嶋を寄宿舎の、大浴場に連れてきていた。

 大浴場は、大赦が用意したスタッフたちによってバーテックスとの戦いがいつ行われても身を清められるように定期的に掃除されている。

 だから朝に水垢離する巫女や自主トレする勇者はできるだけ汚さないように使っている。

 

 当然、ここに住んでいる高嶋もランニングの後に入るつもりだったのだろう。

 それが乱入した俺によって予定は崩れ去る。

 名も知らぬ公園で悪い子になった彼女から着替えを取り上げて大浴場に突撃。

 いいよ、と言う彼女を押し切って、汗に濡れた柔らかな肢体を手で洗う。くすぐったそうにしていた彼女も大浴場までついてきた俺にこうなることを理解していたのだろう。

 抵抗もなく呼気を乱し、柔らかな肌に熱を帯びさせながら、お仕置きを受け入れる。

 

「さっきから洗っているのに、ここだけ泡が流れちゃうな~。また洗わないと」

 

「ぁっ、んっ、も、もういいから」

 

「駄目だよ、これはお仕置きなんだから。ちゃんと洗わないと」

 

 少女の身体で触れていない所はない。

 ボディーソープで濡らした両手で友奈そっくりの身体を丁寧に揉み解す。特に汚れていたのは乙女の大事な場所。茂みを撫で、僅かに開いた陰唇を指で上下に撫でるとビクリと下腹部が震える。

 包皮から剥けたクリトリスは硬く尖っていた。

 指の腹で肉芽を撫でまわし、陰唇の縁をなぞると彼女と目が合う。

 

 熱く濡れた瞳が俺を見る。

 俺の指先が陰核に触れると、彼女の息が止まり、肢体が強張る。彼女の目の前で指を鉤爪状に曲げて何かを掻くように指先を動かす。意味は高嶋の身体がよく分かっていたのか下腹部が震える。

 快楽への不安と恐怖、知ってしまった背徳と快楽に脚を閉じようとする。

 

「また、カリカリしましょうね」

 

「ひぁっ!? それっ、ヤダッ……! ぅんっ! はぅっ」

 

「先ほど悦んでおりましたよね、お客様。我慢はいけませんよ」

 

「ぁぁぁっっ……!」

 

 少女の秘所、一本筋の入った貝肉を指で上下に擦る。

 いつも優しく朗らかな彼女に似つかわしくないツンとした肉芽を根本から扱く。上下左右に、丁寧に執拗に粘着質に、少女の快楽器官を弄ると粘りついた吐息を漏らす。

 腰を浮かせる彼女の肉芽をどこまでも追い掛けて、天国に追いやる。

 

「我慢しないで。イって」

 

 カリカリ、カリカリと。少女は指先一つで達する。

 

「~~~~ッ!!」

 

 しょわっと僅かな水音と共に彼女の両脚がビクンと震える。

 ぎゅっと高嶋が目を閉じると同時に壁面に備え付けられた鏡が濡れる。ピンクの花弁から蜜が何度かに分けて噴き出す。肉粒だけでなく秘裂を上下に弄るだけでも飛沫でタイルや壁を汚す。

 法悦の空に押し付けるように、蜜に指を濡らしながら秘所を弄ると彼女の嬌声が響く。

 大浴場に響く高嶋の声に耳を傾けて、静寂が広がる頃に高嶋を見下ろす。

 

「……ぁ、ぁぁー……。……りょーくん? ぅぇ? ぁ、ぁっ、待って! やらっ!」

 

 虚空を見上げる高嶋の瞳に光が戻るのを確認すると同時に指を二本、奥まで挿入する。

 一度は清めた筈の高嶋の媚肉はぬめりと熱を帯び、彼女に似合わぬ粘着質な愛液が指に絡みつく。まるで逃がさないとばかりの主張に、分かったよと指を軽く抽送させる。

 その途端、言葉にならない悲鳴を上げる高嶋は背中を反らし、ぷるりと胸を揺らす。

 

「ほら、見て。二本も入っちゃった」

 

「ぅぅっ……ゃぁ……ぁんっ! 指っ、動かさないでッ、ぁっ、ぁ!」

 

 杏仁豆腐のような乳房を揉みながら、薄い唇に怒張を挿入。

 口腔のぬめりと舌のざらついた感触に背筋がゾクリとしながら挿入した指を折り曲げる。高嶋は反射的に俺の怒張を吐き出そうと咽る。

 

「高嶋さんの胸、凄く柔らかいね。いつまでも揉んでいられそう」

 

「んぶぅっ……ッ!」

 

「ん? なんて言っているの? ちゃんとしゃぶって」

 

 ピンと伸ばした脚がタイルで滑る。

 涙目の彼女が怒張を吐こうとする度に、その蜜壺を指でほじり、臍側に指を折り曲げる。

 

「んんぅぅっ……ッッ!!」

 

 甘い嬌声を漏らす高嶋は俺にされるがままだ。

 抵抗の意思もなく、柔らかな身体を俺に預け、絶頂に達する。法悦に浸る少女の顔を見下ろして、呼吸の度に上下に揺れる乳肉を揉む。

 程良い大きさのお椀型、ツンとした桜色の乳首を指で挟むと、彼女の歯が肉竿を擦った。

 

「んむっ!? ぷぁっ……んぅっ……」

 

 彼女の三つの肉粒を丁寧に指で洗う。

 特に陰唇の上にある、小さな肉芽を指の腹で好きに撫でる度に、嫌だ嫌だとばかりに腕を太腿で挟み込む。肉付きの良い健康的な腿は泡の滑りもあり、前後に手を動かすのが容易だった。

 疑似素股に近い状態で、彼女の腿の締め付けを手で味わいながら媚肉を擦る。

 怒張を口端から涎と共に抜き出すと、彼女は酷く媚びた声を聞かせる。

 

「んゃぁ……だめだよぉ……」

 

「指を挿れた方がいいの?」

 

「だめ……それ、気持ちいいから……」

 

「エッチだね、高嶋さん。またしーしーする? 今度はぐんちゃんに見て貰う?」

 

「ゃぁ……」

 

 トロンとした眼差しで彼女は徐々に快楽を受け入れる。

 軟体生物のように、ぐにゃりとした彼女は体重を俺に預ける。赤子がおしゃぶりを求めるように、ちゅうっと肉竿を吸いながら、与えられる快楽に身体をビクリと跳ねつかせる。

 

「高嶋さん、蛸の真似したら許してあげる」

 

「……どうやるの?」

 

「分からない。粘着質に抱き着くとかすればいいんじゃないか。若葉にしてあげたら喜ぶよ。じゃあ、洗い流すね」

 

「……それで若葉ちゃんが喜ぶのかな?」

 

「今度蛸の吸盤の玩具貸してあげる。それを着けて背後から抱きつけば若葉の可愛い声が聞けるんよ。ただ逃走ルートを用意しないとマジでしつこいから注意ね」

 

「……りょーくんって女の子にいじわるしてる時が一番いい笑顔しているね」

 

 喘ぎ声の合間に、高嶋がそう呟いた。

 

 

 

「本当にね」

 

「……あんな人が勇者様なのですか。郡様が、あんな人のアレを……は、入ったのですか?」

 

「その…………えっと、悪い人ではないのよ。へ、変な想像しないで」

 

「も、申し訳ありません! 郡様と朝風呂だけでなくその、夜の事情まで教えて頂けるなんて」

 

「アハハ……それで杏ちゃんも手を出されていて……球子も?」

 

「いえ、まだですが……ここにいる人はもう、その……」

 

「で、でも東郷さんや園子さんを呼べばお仕置きしてくれるから。もう呼んだんだよね!?」

 

「はー……こんな少女漫画よりも爛れた凄い世界があったのね。みんな大人ねー! 流れでアタシと花本ちゃんもシちゃったりなんて……と、ところで乃木ちゃんの可愛い声について詳しく!」

 

「ふふっ……特別ですよ? そちらは見るだけでもお役目としては果たせますよ」

 

 

 

 何か声が聞こえた気がした。

 だが、大浴場なのだ。声の一つも聞こえるだろうと背後からの視線を無視する。

 今は軟体生物よろしくふにゃふにゃの泡塗れの高嶋を洗うことに専心しなければならない。唾液に塗れた肉竿を高嶋の頬に置くと、シャワーヘッドを手に取る。

 

「ハッハッハ。喰らえ、可愛い子を虐めたくなる小学生男子の心理に基づいたシャワー攻撃!」

 

「あ~、あったか~い」

 

 シャワーの栓を回す。

 さああっと小雨のような湯水も、更に栓を回すと水圧が増す。くぅーんと気持ちよさそうに鳴き声を聞かせる少女の肌は水を弾き、タイルに泡が流れ落ちていくと艶やかな裸体が露わになる。

 そのままシャワーヘッドを彼女の腋や乳房など洗い残しが無いようにお湯を浴びせ──、

 

「ひゃぅん!」

 

 少女の鼠径部、脚の付け根に直に当てる。

 シャワーの刺激を肉芽と恥部で味わう彼女は腰をくねらせる。

 

「それっ、それダメだよぉ! ……ぁっ、んっ!」

 

 俺の手に持つシャワーヘッドの角度を変える度に腰が揺れ動く。

 特に陰核に重点的にシャワーの湯を浴びせると嬌声を漏らす彼女は、ぎゅっと俺の腰を掴む。上下にシャワーヘッドを動かす度にぷるりと尻肉を揺らして腰を逃がそうとする。

 シャワーヘッドを押し付けて、栓を捻り水圧を強めると、彼女はピクピクと小刻みに達する。

 

「りょーくっ、~~~~ッ!! ……んぁ、イくっ……!!」

 

 あぁぁ、と喘ぎ声を巻き散らした高嶋が大きくのけ反った。

 湯を弾く乳房が揺れ動き、ぎゅっと閉じた瞼から涙がこぼれる。

 

「……」

 

 かくん、と全身を脱力させた高嶋は俺に身体を預けて溜息を吐く。

 何とも言えない満足感と共にシャワーの栓を閉じる。

 全身から白い湯気を漂わせる少女は哀れな小動物のように小刻みに震えている。薄い陰毛が張り付いたピンク色の恥部は汚れ一つなく、体液の全てが排水口へと流れて行った。

 

「……えへへ」

 

 どこか満足そうな吐息を肉竿に吹き掛ける高嶋。

 さらりとした髪で俺の太腿をくすぐり、ぼんやりとした眼差しで怒張を見つめる。

 ゆっくりと淫熱を薄紅色の瞳に宿していく彼女は、はにかむように微笑を浮かべると照れ隠しのように屹立した肉棒にキスをした。

 

 ちゅ、ちゅっとキスの雨を降らせる。

 根本から肉竿、亀頭と、俺に上目遣いを見せながら奉仕する。

 

「ぁむ……んっ」

 

 柔らかな唇とざらついた舌の感触。

 まるでアイスを舐めるかのような態度でちゅうっと吸い付く。

 

 法悦に浸ろうとも彼女の奉仕の心は失われない。

 薄紅の髪を手で梳かし、乳房を揉みながら彼女の口腔行為を見下ろす。この場にカメラや端末があれば、性行為など知らなそうな少女の裏側を残せたことだけが心惜しい。

 せめて眼球にこの光景を焼き付けようと、湯に濡れた髪を撫でる。

 竿を唇で挟み込み、主人に奉仕する彼女の頭部に犬耳が見えた気がした。

 

「犬」

 

「……わんわん」

 

 柔らかな頬を撫で、顎を指でくすぐる。

 口内で雄汁混じりに唾液をこくんと飲みこんで返事をした高嶋を抱き上げる。

 

 シャワーで火照った身体とはいえ、そのままタイルをベッドに、俺の太腿を枕にしていれば風邪も引くだろう。柔らかく軽い体重はほぼ結城家の友奈と同じくらいだろうか。

 ペタペタとタイルを歩きながら転ばないように細心の注意を払う。

 

「お嬢様、運びますよ」

 

「わんわん!」

 

 お姫様抱っこで彼女を連れて湯舟に向かう。

 大浴場の湯舟には少女の観客たちがいた。湯舟に浸かりながら年相応の乳房を手で隠す者。余裕の表情で湯舟の縁に腰を掛け豊満な乳房を俺に見せつける肉付きの良い巫女。状況に流され逃げることも出来ず雄の竿に目を向けては恥ずかしそうに笑う者。

 いずれの視線も、様々な感情を含みつつ反り立った怒張に向けられる。

 

 そんな中、唯一澄ました顔で湯舟に浸かる千景の前に立つ。

 他の人の目もあるのだろう、竿を見せつけられた黒髪の勇者は鬱陶しそうな顔をしたので、その頬を怒張で優しく引っ叩く。

 肉棒でビンタされた彼女は僅かに呆然とするも、すぐに俺の太腿にビンタを返した。

 

「……いきなり何するのよ」

 

「こういうの好きかなって」

 

「ゲームのしすぎじゃない?」

 

「どの口が」

 

 股間への一撃ではないところに優しさを、神樹に勇者として選ばれた素質を知る。それはそれとして、ペチン! と大浴場に響く音だけはあって、それなりのダメージを受けた俺は千景の隣で豚を見るような蔑んだ目をした全裸の眼鏡巫女に目を向ける。

 今更ながら胸元を手で隠す全裸の巫女たちに、俺は一言だけ告げる。

 

「こんなクールぶっているが、実はこの中で千景が一番フェラや手で扱くのが上手い」

 

「えっ」

 

「は、花本さん! この男の戯言だから。気にしないで」

 

「千景イズむっつり。……この数日後、自分を慕う巫女の前で盛大に乱れ、自分の淫らさで巫女の脳を破壊することになるとはこの時の千景は思いもしていなかった……いたっ!」

 

 腹部への無言の千景パンチは重たい物だった。

 身体に受けたダメージを高嶋のやわらかボディを抱くことでなんとか中和する。マシュマロのような乳房をやわやわと揉みしだくと甘えるような唸り声を漏らす少女。

 高嶋を湯舟の縁に仰向けで寝転がせると、空気を読めて思いやりのある天使は喜悦混じりの微笑を浮かべて、自ら脚を開いてひくついた媚肉を俺に見せつける。

 ジッとその光景を目にしながら、

 

「千景先輩。この光景、どこかで見覚えは?」

 

「…………別に。高嶋さんと同意の上なら何も言うことは無いわよ変態。それより、これ以上花本さんの前で変なことを言ったら……分かるわね加賀くぅん……?」

 

「ふえ~、高嶋さん、ぐんちゃんが怖いよ~。七人御先で俺を逆レイプしてその後勢い余って西暦組にも手を出すんだ~。一人ハーレム出来るぐんちゃん怖いよ~。よしよしして高嶋さん」

 

「…………本当にしてもいいのよ」

 

 突き刺さるような絶対零度の視線を背中に感じながら高嶋に囁く。

 杏仁豆腐のような薄い胸元を両手で揉み解すと、彼女はぼんやりとした顔で俺に手を伸ばす。

 

「……ふえ? ん……よしよし」

 

 喜悦に満ち足りながらも、俺を慈しむ高嶋。

 友奈族の優しさに心を癒しながら、俺は子犬のように彼女の掌に頭を擦り付ける。

 

「えへへ、わんわんだー」

 

「くぅーん」

 

「ぐんちゃんを困らせたら駄目だよー」

 

「わん!」

 

「アハハ……くすぐったいよぉ~。……お手!」

 

「わん!」

 

「た、高嶋さん。それ私も……」

 

「え?」

 

「な、……なんでもないわ」

 

「えへへ。……なーんて。後でねっ、ぁっ、そんなところ舐めちゃダメだよー」

 

「……!」

 

 鳴き声を発しながら天使の如き飼い主の肌を舐める。

 舌先を柔肌に這わせ、ピカピカに磨かれた少女の健康的な肌、臍を舐め、滑らかでくびれがある腰肉を唇で甘噛みしながら撫で回す。ひゃうん、と悲鳴を上げる彼女の腰肉を掴むと怒張の先端を媚肉に押し当てる。

 くすぐったそうに体躯をくねらせた高嶋は下腹部に目を向けると、蠱惑的な笑みを見せる。

 両手を広げて、目の前の雄を心から受け入れるという態度を示した。

 

「ん……いいよ」

 

「────」

 

「……ぁ」

 

 ぬぷぷ、と肉を割り拓いていく。

 大きな瞳を見開く高嶋の膣襞が竿に絡みつく。ぬめる膣内は熱く、奥まで挿入した怒張を締め付ける。目尻に溜まった涙をタイルにこぼす彼女は自らの手を結合部に伸ばす。

 

「りょーくんの……また、結城ちゃんに内緒にしないとね」

 

 僅かに頭を上げて、繋がったことを確認する。

 根本まで雄竿を呑み込んだのを見た高嶋の吐息は薄暗い喜悦を感じさせる。

 

 ゆっくりと腰を動かす。

 奥を亀頭で突く度に、新鮮な蜜が跳ねる音がした。

 

「んぁっ! ぁっ、ぁ」

 

 少女の下腹部、恥毛を撫でて恥骨からやや上の肌を手で押す。

 自らの怒張に外部からの圧迫感と、同時に肉壺の蠕動に腰を揺する。

 

 ぱん、ぱん、ぱんと。

 彼女は嬌声を漏らし慎ましい乳房を抽送の度に揺らす。

 

「はぁ、ぁ、ぁ……ッ!」

 

 甘く蕩けた表情。無意識のうちに腰に絡む両脚。

 少女は涙を流し快楽を受け入れては、淫液を掻き混ぜられる度に悦びの声を上げる。

 

「ゃぁ……! だめッ、ぁぁぁっっ!!」

 

 俺はひたすらに抽送を続ける。

 一定リズムで彼女の狭い肉穴を穿る度に怒張を締め付ける肉壺。

 俺の形となった肉壺は、確かに彼女が雌であることの証明だ。

 

 淫香を漂わせ、少女たちの視線を集める彼女の余裕の無い喘ぎ声。

 無言で近づいてくる巫女と勇者に見守られ、高嶋は何度目かの絶頂に達した。 

 

「んんっ、ぁ、ぁんっ! んふっ、ぁ、ぁぁっ!」

 

 タイルを滑る高嶋の手が宙を切り、自らの口に押し込むようにして喘ぎを堪える。

 背中をのけ反らせては、ぷしっと奥から新鮮で温かい蜜を漏らす。

 涙でぐしゃぐしゃになった顔をよく見ようと顔を近づけると、唇を奪われる。

 

 にじゅ、にじゅっと舌を絡ませる大人のキス。

 快楽に呑まれた女の喉が肉杭に突かれる度に喘ぎが漏れる。

 

「ぅぁぁぁ~~~ッッ!!」

 

 華奢な身体は更に数度の抽送で跳ねる。

 俺は構わず欲望を押し付けて、にじゅりと愛液と先走りを結合部で泡立てる。

 

「……ッく、だ、め……でちゃう」

 

 嫌々と首を振る高嶋が唇を震わせる。

 白い肢体をくねらせ、薄紅の髪を乱し、涙で顔を濡らす。

 直後、俺は一気に腰を奥に打ち込んだ。

 

「……ッぁああっ!!」

 

 視界が白く染まり、酩酊する。 

 絶頂に達する膣が蠕動し、吐き出す白濁を呑み込んでいく。

 ぐったりとする高嶋は瞼を閉じる。

 はあ、と溜息を吐くと、こぽりと結合部から白濁が垂れ落ちるのを巫女たちに見せつけ、それを隠そうと近づいてきた千景を腕に抱くように捕まえる。

 

「……何よ、節操無し」

 

 キッと睨みつける少女の瞳。

 しばらく見つめ合うと、その態度が軟化し、目を逸らす。

 

「さっきちょっとした喧嘩しちゃったから仲直りしようと思って」

 

「別に……喧嘩ってほどじゃ……」

 

「なら、仲直りってことでいい?」

 

「どうせ……、したいだけでしょ?」

 

「千景先輩とだったら、いつでもしたいですよ」

 

「……はいはい」

 

 射精直後の肉竿、その先端が彼女の下腹部に当たる。

 硬い怒張の感触を肌で感じたのか身じろぐ少女も逃げもせず、怒りもせず、俺の腕に抱かれたままだ。抵抗のつもりか、プイっと顔を背けつつもチラリと俺を見る千景の両手が雄竿を包む。

 男に言い寄られて、腕に抱かれて、仕方ないという表情を見せて予防線を張る。

 

「……まあ私は……加賀くんと違って、そもそもこういう行為自体そんなに好きじゃ──」

 

 

 

 この箱庭でも、少しずつ変わることがある。

 新入りの巫女が少し前に加入した。

 文字通り無垢な彼女たちも、今では爛れた世界に適応しつつある。

 

「んぶっ……んんっ!? んぷ……ふー……!」

 

 黒髪を掴んで、その喉奥に雄竿を突き刺す。

 涙を流す少女は実に苦し気だ。

 

 それなのに慎ましい乳房にはツンと尖った先端が震え、恥毛には少女の愛液が光る。

 仰向けの千景の股間には彼女を慕う巫女が跪いて、その蜜を吸う。

 

「郡様……郡様郡様郡様の……」

 

「んんんっっ──!!」

 

 狂ったように黒色の陰毛に鼻を埋め、陰唇とディープキスをする巫女。

 彼女とは大した付き合いではないが千景を大事にしていることだけは分かった。それが少し変質して、彼女を悦ばせる為に全霊を注いでいるだけだ。

 淫欲の空気に呑まれてしまった巫女を尻目に、腰を揺する。

 

「おぶっ、ぉぇ……ぅぶ」

 

 嗚咽を漏らす千景の喉奥に吐精する。

 白濁は一滴も残さず彼女に嚥下させる。

 

 怒張を唇から抜き取ると、千景の顔はぐしゃぐしゃになっていた。

 汗と涙と白濁で汚れ、虚空を見上げる瞳。意識を失ったまま鼻から小さな鼻提灯を膨らませ収縮させるのは、呼吸が続いている証拠だ。

 

「高嶋さんとお揃いだね」

 

「…………」

 

 限界を迎えたのか、恥部から弧を描く小水で下腹部を自ら作った水溜まりに濡らす。

 それを正気を失った巫女が悦んで啜る。

 俺は気にせず、艶やかな髪の毛で竿の汚れを拭い、黒い髪に汚濁を絡ませる。

 

 そこまでして、倒れ込む。

 疲労感と多幸感で身体が満ち溢れ、肉付きの良い巫女の太腿に顔を埋める。

 

「……いつから犬になったんですか? バター犬ですか?」

 

「……わん」

 

「せめて人語で話して下さい」

 

 若葉の親友、むちむちとした肢体は枕としても最高だ。

 見上げると豊かな乳房で顔の一部を隠したひなたの呆れ顔が目に映る。

 

「……私ともしますか?」

 

 悪戯っぽく微笑を見せる彼女は俺の髪を撫でながら囁く。

 

「でも、残念。友奈さんへのお仕置きをしたように、おいたが過ぎた亮之佑さんにもお仕置きの番が回ってきました。もう少しで来るそうですから──ぁっ」

 

 順番が回ってきたのだと、少女は語る。

 こんなことがバレたら確かにお仕置きは受けるのだろうと理解はしていた。

 だけど。

 

「だけど、連絡したのって……ひなたさんだよね」

 

「はい、私です。今頃、鬼のような顔で向かって来ている筈で……ぁっ!」

 

 淫靡な笑みを見せる黒髪の巫女はわざと俺を刺激する。

 軽く肩に手を置いただけで、滑らかなタイルの上に敷いていたタオルにコロリと倒れるように背中を預ける。閉じた脚に俺の手を置かせ、自らのむちりとした太腿の独特の弾力と柔らかさを堪能させる。

 並の男なら、この艶やかな太腿だけで達するだろう。

 

「いつ連絡したの? どうせブラフでしょ? 俺には分かるよ。これからひなたさんの痴態を入ってきたばかりの巫女に見せて、その脳を壊すことになるんだって」

 

「……本当にそう思いますか?」

 

 ぷるりと揺れた乳房が横に流れ、手で開いた両脚から覗く恥部から愛液を滲ませる。

 黒々とした茂みは湯水を含み肌に張り付く。

 その下にある秘裂からは、先ほどの情事に興奮したのか僅かに開いた口から蜜液が垂れる。

 むわりと淫臭を漂わせるひなたは、大事な秘所を見られながらも笑みを浮かべる。

 

 彼女の味方はいない。

 ぐったりとした勇者と自らを慰めるか、情事を前に顔を赤くするだけの巫女しかいない。

 それでも、ひなたは淫靡に余裕ぶった表情で、俺を誘うかのように媚びた声で囁く。

 

「ふふっ……良いんですか子犬さん? 私にお仕置きをしていて。逃げなくて良いんですか?」

 

 甘い声は正しく毒だ。

 脳に浸透しては、正常の判断を狂わせる。

 

 酷く挑発的な少女の言葉、その眼差しは静かに語る。

 貴方は逃げない、と。諦観と共に目の前の餌を最後まで味わい尽くす犬なのだと。

 ある種の信頼と喜悦を瞳に宿した巫女。

 ──彼女は雄犬に秘所を貪られ喘がされるまで、確信の笑みを見せ続けていた。

 

 

 



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【番外】鳴き声

アンケートありがとうございました。
読者の半分が心の中にかっきーを飼っていると。


 季節は巡る。だが、世界が変わることはない。

 神樹に守られて常に不変であり続ける世界。たまに勇者や巫女が増え、敵の顔ぶれが変わるだけで、神樹が構成した世界で生きていく現状は変わらない。

 

 朝起きて、昼を学校で過ごして、夜に少女と夢を見る。そんな少し爛れた日々を送る。

 それを繰り返して何年経過したかを考えることもなくなった。

 少なくとも肉体的に成人した年数までは数えたが、それ以降に意味を感じなくなった。

 

 いずれ終わる世界。

 後ろ向きでその日を待つよりも、前向きで日々を生きようと少しは思えたから。

 

 この世界に来て、少女たちとの関係性は多少親密になっただろうか。

 過ごす時間が長くなればなるほど、共に交わした言葉が増えるほど、思い出を共にするほど、忘れられない一夜を共にするほどに、無垢な乙女たちの精神は変わっていったように感じる。

 見た目が変わらなくても、その眼差しに、仕草に、態度に大人びた物を見るようになった。

 

 だが、神樹に見初められただけはある少女だ。

 少し男を知って、精神年齢が変わったとて、何もかもが変貌する訳ではない。 

 人の為に勇んで行動する勇者の在り方は変わらない。

 明るく、笑顔で、周囲の人を幸せにしようと出来るだけ頑張ろうとする姿勢もだ。

 

 ──そんな勇者たちを抱く日々もまた変わらない。

 

 

 

「寝ているの?」

 

「ん……」

 

 勇者たちの変貌の切っ掛けは、男との肉体関係だろうか。

 それとも加賀亮之佑と出会ったことだろうか。

 満開の後遺症による少女たちの性的欲求の解消、それを言い訳に、快楽という底の無い沼地に脚を踏み入れて少しずつ沈んで、もう言い訳を口にせずとも身体を重ねるようになった。

 嫌悪感も、戸惑いも、恐怖も、快楽という果実を味わって変わったようだった。

 

「気持ちいい?」

 

「はっ……ぁぁ……」

 

 目の前の少女も抗う姿勢を見せながらも、以前とは比べ物にならない程に弱々しい。

 変わらぬ世界で最も近しい他人である勇者部たちと彼女は快楽を共有している。ただの友人ではない。死線を潜り抜け、果て無き夜を共に過ごし、互いの肉体の味を知るまでに至った。

 

 雄と交わること。

 仲間と共に味わったその秘密を忘れられずに、誰にも見られずにひっそりと味わった快楽を忘れられずに、今日も少女は自らの肌を見られることを許容した。

 

「別に……誰でもいい訳じゃないですから……」

 

「寝ていないの?」

 

「ぁ……っ! ……すぅ……すぅ……んッ!」

 

 とろけた寝顔を見せる少女は媚びた甘い声を寝息と共に聞かせる。

 や、あ、と嬌声を漏らしながら、露出した乳房、その先端を指で摘ままれ、くりくりと弄られる度に可愛らしい嬌声を聞かせる少女に征服欲と加虐心を煽られる。

 わざと此方の情欲を沸き立たせるかのように甘えた声で、ツンと尖った乳首を好き放題させているのかと考えながら豊満な乳房を揉みしだく。

 誘っているのかと耳元で囁いて、嫌々と否定する度に乳首を擦ると背中が反る。

 

 白い喉に汗を浮かべる少女の唇に唇を重ねる。

 餅のような質感を両方の掌全体で味わいながら、少女の喉を指でなぞる。

 

「んんんッッ……!!」

 

 艶やかな唇から覗く舌先。

 ぬめり、柔らかな舌に舌を絡めては裏側の柔らかさとざらついた質感を味わう。唾液を絡め合い啜る音を少女に聞かせながら、口端から垂れる涎に構わず濃厚な口づけをする。

 

「ん……っ、ぁ、ぁふっ、ひぁ……!!」

 

 僅かに汗ばんでいる少女の乳肉を揉み解す。

 むにゅむにゅと乳房を揉みしだき、少女の性感を刺激する。俺の手に余る程の肉果を好きに揉み、弾力と柔らかさを楽しむ。曲線美を描いた乳房を根本から先端へと手を這わせ、桜色の乳頭を指先で撫でる度に、ビクッと硬くなっては震える。

 

 豊かな乳房は熱を帯びており、つきたての餅のように柔らかい。

 白い餅を手にしながら乳輪の縁を指でなぞる。

 掌に収まる少女の乳肉にピンク色の乳頭の感度は高く、刺激の度に身動ぎする彼女のあられもない声が、揉む手と、摘まむ指の力を強くする。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 ビクッと肢体を震わせ、小さく口を結ぶ。

 形の良い眉を寄せて、瞼を閉じた彼女は小刻みに痙攣した。

 

「ふ、ゎ……」

 

「乳首だけで気持ちよくなっちゃったね」

 

「ごめんなしゃ……」

 

「寝ているんじゃないの?」

 

「…………すぅ」

 

 ちゅっと唇を重ね、口端から垂れた唾液を舐めとる。

 見下ろす少女の瞳は虚空を見上げ、その眼差しは快楽で濡れていたが、チラリと俺を見るときゅっと瞼を下ろす。長い睫毛に縁取られた瞼は小さく震えていた。

 

 一度顔を上げて、更には上体を起こす。

 敷かれた布団の上で眠る少女。寝間着として浴衣を選んでいたのだろう、黒地にピンクの桜模様を散りばめた和風の浴衣は腰紐を解かれ、中の果実を曝け出していた。

 布団の上で、浴衣の上で、少女が目を閉じている。

 白磁の肌は薄っすらと朱色に染まり、悩まし気に漏れる吐息に唇が震える。

 

 起伏に富んだ胸元は仰向けでも、男の手で揉まれても、形を保ったままだ。

 いくら揉んで形を変えても元に戻る姿は、下腹部に血を巡らせる。手で、口で、肉棒で、その柔肌を汚し、自分色に染めることで、その美を自分の物にしたいという本能が背筋を奔る。

 

 視線をゆっくりと下げていく。

 無駄な脂の少ない普段から鍛えられた腹筋と、くびれた薄い腰肉。

 下腹部を守る薄青色の下着は生地が薄い。恥毛や恥部は色も形も丸見えで、生地面積も小さい。明らかに男を意識したような作りは、彼女の普段の清楚さからはあまりにもかけ離れている。

 淑やかで、普段見ている姿よりもやや肉感的な少女が目を閉じていた。

 

「……はしたない」

 

 聞こえたのだろう、頬の朱色が色濃く染まる。

 普段よりも幼さやあどけなさが消えた、少女よりも女に近くなった顔立ち。可愛さよりも美しさが強くなったのは顔だけではない。より豊かに、より丸みを帯びた肢体もだ。

 視線を感じ取っているのだろう、舐めるように見続けると、少女の呼気が荒くなった。

 病人のような吐息を漏らし、乳頭を硬くし、ショーツの生地の染みを広げる。

 

「濡れてる。何もしていないのに、糸引いてる」

 

「……っ」

 

「もっと、見たいな。……隠さないで見せて」

 

「……ぅぅ」

 

「エッチな声も聞かせてよ」

 

 そう囁くと、反抗的になり、きゅっと唇を結ぶ少女に唇を重ねる。

 

 開いたままの太腿を恥じらうように静かに閉じようとするも、両脚の間に座り防ぐ。

 艶やかな黒髪少女の雪肌に手を置く。

 それだけで観念したかのようにゆっくりと股を開いていく。

 目を閉じながら、朱色に染まった端麗な顔を横に向け、薄青色のショーツ越しに透ける恥部を自ら脚を開いて見せたことに礼を告げる。

 

「ありがとう」

 

「……っ」

 

 少女の絹のような黒髪は触り心地が良い。

 黒髪を纏める碧色のバレッタはない。水のように掬った手から髪の毛が零れ落ちる。掬う度にふわりと漂う甘い香りに、中毒性と、全身の細胞が雌を犯す予兆を感じて震える。

 

「綺麗だよ。すごく綺麗だ」

 

「……!」

 

 形の良い耳元で囁くと、触れた肌がピクリと震える。

 触れた少女の太腿は掌に吸いつくような感触が心地よい。

 

「寝てるの?」

 

「……すぅ……すぅ」

 

「そっか。残念だな」

 

 深緑の瞳は宝石のようだ。しっとりとした肌に指が吸い付く。

 いつまでも触っていたい。白い肌の至る所に自分の痕を残したい。

 名前を呼んで、豊かな乳房を揉んで、そんなことを囁き続けると、耳が朱色に染まっていく。

 

「ぁっ……はっ……」

 

 囁く度に身悶える少女が唯一着けた下着は先ほどよりも肌に張り付いて、恥丘が生地越しに浮かぶ。思わず恥丘を指でなぞると淫液が生地に滲み、指に付着する。

 こしゅこしゅと秘裂を指で擦ると、彼女の乳房が目に映る。

 

「ん……は……ふぁっ……」

 

 まるで食べて欲しいとばかりに少女の緊張に合わせて、乳肉がぷるりと揺れる。

 杏仁豆腐に乗るザクロの実に吐息を吹き掛けると、少女が小さく息を呑む。

 何をされるのか、今俺が何をしようとしているのか、自ら瞼を閉じた彼女は想像しか出来ずに緊張しているようだったが、肢体はすっかり解れて熱くなっていた。

 

「……ぁー」

 

 ビクリと震える少女の乳首に吐息を吹き掛ける。

 口を開けて、今から食べるぞと予告すると僅かに身体を強張らせた。

 

「あむ」

 

「……っあッ!」

 

 赤子のように母性の象徴を口に含む。

 コリコリとした肉粒は唇で挟み込むとグミのように弾力があった。ぎゅっとシーツを掴む少女の谷間に垂れてきた汗も舐めとると「ひぅ」と身じろぐ。

 その合間に空いた手で片方の乳房を揉みながら、乳頭を指先で弄り続ける。

 

「ふっ……ぅん」

 

 カリカリと指先で擦る。

 

「……ぃ、ぁ……っ!」

 

 乳輪をなぞって、根本から先端に掛けて優しく扱く。

 

「は──、ぁぁ……」

 

 両方の乳房を寄せて乳首を同時に吸い付く。

 

「っぁあああっっ……!!」

 

 上体を反らして悲鳴のような嬌声を上げる少女。

 快楽に酔いしれ、伸ばした脚の爪先をピンと硬直させる彼女は、荒い呼吸を繰り返すと白い脚を蛇のようにくねらせ、シーツに皺を作った。

 

「ぁぁぁっっっ!!」

 

 わざと強めに乳首をこねり、高まった性感を刺激する。

 白い柔肉を好きに揉みながら、唾液で濡らした乳首で遊ぶ。仰向けで横に流れる乳房を手ですくうように持つとずっしりとした質量に驚きながら、下乳部分を甘噛みする。

 しっとりとした柔肉は薄い塩味がした。バランスが悪いからと、もう片方も甘噛みすると彼女も身体を震わせて悦んでくれた。

 肉粒は赤く色づき、目の前の彼女はあられもない声で喘いでいた。

 

「っ、……ァ、……っ!」

 

 やがて俺が解放すると、彼女はぐったりとした様子で荒い呼吸を繰り返す。

 乳首で絶頂に達した少女は、どうとでもなれと言わんばかりに、唾液塗れで朱色に染まった柔らかな胸を曝け出していた。

 僅かに薄く開いた眼差しは気絶しているのか絶頂に浸っているのか判断に迷う。

 全身からむわりと漂わせる淫臭は、普段の清楚な姿からは程遠く、淫らで、淫靡で、蠱惑的で、魅惑的で、これこそが彼女の本当の姿なのだと理解させる。

 

 しばらくの間、呼吸を繰り返す黒髪少女の腹部を枕に、美麗な容貌を見つめる。

 すりすりと頬ずりしながら、へそを舐めると、僅かに瞼を開けて覗く深緑の瞳と目が合った。小さく微笑む姿は慈母のようで、自らを辱める雄を受け入れるように静かに瞼を閉じた。

 

 ──味わって食べて下さい。

 無言だったが俺には彼女の態度がそう言っているように聞こえた。

 

 この姿を保存しなくていつ保存するのだろうか。

 乳房だけでも、何度目かの恍惚に身を震わせる少女のショーツのウエスト部分を掴む。

 

 殆ど履いていないような薄い生地だったが、無言で腰を上げた彼女の協力で最後の一枚をするりと抜き取ることが出来た。薄い生地と秘所に愛液で橋を架けていることを語ると、ん、と白い頬を朱色に染める少女が恥じらいの声を聞かせる。

 

 薄い生地を取っ払うと、きゅっと肉感たっぷりの腿が思い出したように両腿を閉じる。まるで構って欲しいかのような見せかけの抵抗は俺の性感を高める。

 頬を吊り上げて、恥部に顔を寄せると鼻孔一杯に少女の香りを楽しむ。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 黒々とした陰毛に鼻を埋めて、ひくついた花弁に口づけをした。

 少女が息を止めるのに合わせて鼻の粘膜に沁みる雌の香りを楽しむ。俺の顔を太腿で挟む彼女は寝ているという意思を表明しながらも、遂に俺の顔や頭に手を伸ばす。

 

「ゃっ! そんなところ嗅いじゃ……ぅぁっ!」

 

「すぅー……はぁー……すぅー!!」

 

「ぅぅぅっ!!」

 

 乙女の花園で深呼吸を繰り返す度に、彼女の体温の上昇を感じ取る。

 ぐりぐりと茂みの中で鼻先を揺すると陰核にぶつかり、ビクリと少女が震える。

 

「はぅっ」

 

 舌先に絡む濃厚な蜜はとろみを帯びている。

 じゅるるっと下品な音を立てると、俺の顔を挟む白い肉に力が入る。

 

 僅かに腰が浮かぶが俺の顔が媚肉から離れることはない。

 露出した貝肉の香りを楽しみながら、周囲の茂みごと陰核を口に含む。ぶるりと震えた反応から今日は指の方が悦ぶことを悟った俺は自らの指に陰核の刺激を任せ、舌で貝肉に挿入する。

 

「はっ……ハッ……」

 

 犬のような吐息で、肌に汗を浮かべる少女の陰唇と熱烈なキスをする。

 俺の髪を掴む手に力が入る。

 切羽詰まった声を上げる彼女の陰核を指で弄りながら、舌で疑似挿入を続けると飛沫が顔に飛ぶ。あっという間に顔を愛液で濡らしながら、可能な限り奥から溢れる蜜を掻き出す。

 

「んぅぅぅっっっ……!!」

 

 徐々に力を弱める肉付きの良い脚を手で開くと、媚肉と顔を密着させるほどに愛液を啜る。

 腰を浮かせ、大きく痙攣。二度、三度と腰を震わせては、雫が内腿に垂れた。

 

 淑やかに絶頂に達した少女。

 口端から涎を垂らし、恍惚な表情を隠すように腕で顔を隠す少女。

 

 滑らかな腋に思わず顔を近づけて舌で舐めると、雌と甘酸っぱさと僅かな塩辛さを堪能出来た。咄嗟に腋を閉じようとする彼女の二の腕を掴みながらペロペロと舐めると、小さく笑い声を漏らしながら、好きに遊ばれることを許容する。

 満足した頃にはぐったりと脱力した少女を俺は見下ろす。

 

 様々な味わいを唾液と共に飲み干しながら、敷いた浴衣の上で裸体を見せる彼女の脚を開かせる。まるで人形にポーズを取らせるように、両脚を開脚させて秘所を曝け出す。

 柔らかな彼女の手を掴み、少女の指を陰唇の縁まで誘導させると自ら開かせた。

 

「……ッ!」

 

 外気に晒される媚肉に小さく震える少女。

 ピンク色の襞や、奥でひくついている肉は、女体の神秘を感じさせる。

 教本に載ってもおかしくはない。どれだけはしたなくて、どれだけ美しい身体なのかを、彼女に自ら奥まで見せる姿勢を維持させたまま、乳房を揉みながら俺は耳元で囁く。

 

「この姿を後世にまで残したいな~。駄目?」

 

「…………だっ──」

 

 拒否は認めない。

 ズボンを脱いで露出した肉竿を媚肉に擦りつけながらキスをする。

 可愛らしい声で擦り合わせるのを楽しむ彼女とたっぷりと口づけをして、何回か同じ質問をして、三回目で「……私のはしたない姿を撮って下さい」という回答を貰った俺はふと思いつく。

 

 少女の机に置かれた制服を取りに行く。

 急遽用意された高校の制服と、学生証を二つ手に取る。

 

 付着した少女の柔らかな甘い香りに癒されながら、彼女のブラとショーツも回収しながら、一つ目の学生証に目を向ける。

 普段見ている少女が少し歳をとっている、今とは程遠い真面目な顔写真が映っている。

 律儀に姿勢を保ったままの少女の腹部を撫でる。

 そっと、畳んだ制服と、生暖かい下着を少女の横に置く。

 

 最後に彼女の下腹部に学生証を乗せて、彼女の顔と恥部が分かるように端末で写真を撮る。

 笑顔で、彼女は流出したら人生が終わりそうな写真を撮らせてくれた。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと保存するから」

 

 端末にはくっきりと奥まで覗いた秘所と少女自身の学生証が映っている。

 学生証に載る真面目な顔と、雄を前にした雌の顔の違いを楽しむことが出来る。

 

「安心してね。──須美ちゃん」

 

 学生証には『鷲尾須美』と書かれている。

 中学生の東郷美森よりも数年ほど成長した須美の裸体を余すことなく保存する。ついでに東郷本人の学生証を下腹部に乗せて一緒に撮る。同一人物だから差分を楽しめるのだ。

 流石に抗議レベルなのか、半眼で俺を睨む彼女は小さく頬を膨らませる。

 

「……東郷さんと毎晩こんなことをしているんですか」

 

「前にも見たでしょう? イチャイチャしたり、ちょっと激しかったりするんよ。それより寝ているんじゃなかったの?」

 

「…………激しくされたので起きました」

 

 肉体年齢は上だが精神年齢は下の少女が口を開く。

 ただ、ある程度は一致している筈の身体を俺に隠すこともしない。

 

 より豊かさに富んだ胸肉。

 より丸みと柔らかさを帯びた白磁の肌。

 やや濃さの増した恥毛と、赤く色づいた恥部。

 

 変わらない艶のある黒髪と、より女に近づいた少女の容貌。

 少女と女の境目が女に傾きつつある姿。

 それでも中身は小学生の鷲尾須美であって、東郷美森ではない。

 

「でも、これから二人ともこの身体になるんだな」

 

 布団の上に広がった浴衣と、その上で全裸となっている須美(高)。

 その隣の布団には同じように色違いの浴衣をはだけて胸と恥部を露出した東郷がぐったりとしている。見知った姿だが、絹のような黒髪は雄の子種で汚れ、その胸元は雄に蹂躙された痕を残し、ふわりとした陰毛は白濁で固まり、秘所からは汚濁が垂れる。

 口紅のように白濁で濡れた唇を時折舐める東郷の意識は未だに法悦に昇ったままだ。

 

「あれだけエッチな声を上げても気づかないなんて……自分はエッチだと思わない?」

 

「……っ」

 

「俺は好きだけどね」

 

「…………私はエッ……助平ではありませんが、亮之佑さんが私たちに責任を取ってくれるなら、……もう何も言わないですから、いくらでも東郷さんとして下さい。部室でも教室でも皆の前でも……どこでも好きにしたらいいじゃないですか」

 

「拗ねない拗ねない。二人は同じ人なのに須美ちゃんはツンツンして可愛いね」

 

「……なんですか」

 

「俺はね、須美ちゃんともシたいなって。こういう、エッチな、こと」

 

「…………あっ、えっと、わ、私も…………あ! 今笑いましたね!?」

 

「ごめんごめん。揶揄い過ぎたよ。須美ちゃんが可愛くて。すみません、須美先輩」

 

「許しません! 亮之佑さん」

 

「その姿なら亮くんだな。二人きりの時だけでもいいから」

 

 ペチンと枕にしていたサンチョ枕を俺の胸板に叩きつける須美。

 普段よりも大人びた顔立ちを赤くして、枕で顔を隠しながらそっと脚を開く。

 

「……亮くん」

 

「可愛い」

 

「もう!」

 

「ごめんって」

 

「……どうしても、許して欲しかったら……」

 

 濡れた瞳を俺の屹立した肉棒に向ける。

 見たこと自体を恥じるように、そっと逸らした彼女は、片手で貝肉を開く。

 

「許して欲しかったら……、亮之佑さんので、最後まで……シて下さい」

 

 

 

 

 身体だけ先輩となった女と正常位でピストンする。

 抽送を繰り返す度に、肉襞が蠕動し、あられもない声を巻き散らす。

 

「ひッ! ぁぁっ!」

 

 最奥を肉竿が貫く。

 須美の秘められた最奥に挿入の衝撃が伝わる。

 

「ぁっ、ぁぁあっ!!」

 

 彼女に逃げ場などなく、抽送の度に須美は髪を振り乱す。

 そもそも逃がすつもりなどないと、腹と腹が触れ合うほどに密着する。ぴたんと彼女の腿が俺の脇腹を叩き、胸板に潰れた乳房がパン生地のように形を変える。

 

 柔らかな乳房と、コリコリとした乳首が胸板を擦りながら、ピストンを速める。

 蕩けた表情の須美。結合部からは愛液と先走りの泡が垂れる。

 

「ぐっ」

 

「ぁ、あ、だめ……」

 

 きゅううっと膣襞が肉棒を引き締める。

 男を惑わせる、色香を帯びた声音を鼓膜に響かせる須美の肉体がもたらす快楽は俺の射精衝動を限界まで高めていた。既に奥歯を噛み締め、腰を動かすだけの機械と化している。

 

 目の焦点は合わず、口端からは粘度の高い涎を垂らす。

 それでも可能な限り脚を広げる須美は、本能と身体で俺を求める。

 

「ぁ、ぁ、あ……!」

 

 潰れた乳房が揺れ動き、幾度も絶頂に達する彼女の膣の蠕動が続く。

 いつでも子種を注いで下さい。そう告げている気がして、俺は滅茶苦茶に突く。

 

「ぅあぁ! ひっ……ぃぁッ!! ぁぁ……!!」

 

 既に暴発寸前。

 淫らな女は喘ぎ混じりの悲鳴を上げる。

 背中に爪を立て、大きな瞳から涙があふれる。

 

 シーツが歪み、互いの体液が絡み合う音を響かせる。

 ぱんぱんと肉が肉を叩く音を聞きながら、唇を重ねて。

 

「ぁぁあああっっっ……!!!」

 

 法悦に至った彼女に導かれ、共に果てた。

 彼女の最奥に要望通りに白濁を一滴残さず注ぎ、その快楽に視界が白く染まる。膣襞の一枚一枚に精子が吸われ、飲み込まれていく。

 

「……あったかい。ふふ……」

 

 いつの時代でも、彼女の身体は俺の子種を悦んでくれる。

 

 

 

 名前を呼ばれる。

 一人は親愛と柔らかさを声に含んで。

 もう一人もまたそれ以上の親愛を感じさせるが、どこか不機嫌だ。

 

「「亮くん」」

 

 良妻賢母な女も人目のないところでは高級娼婦となる。

 そんなことを口にすればただでは済まないが、実際に彼女たちは淑やかに奉仕を行う。

 勇者部の理念を体現し、加えて自らの主人を理解した行動は、少女たちを姉妹と見間違えるほどに一致していた。──否、同一人物だから考えることは一緒なのか。

 

 にゅるりと四つの白い乳肉が一本の肉棒を包み込む。 

 柔らかく温かい質感と共に少女たちの唾液を潤滑油に肉竿がコーティングされる。

 

 当たり前のような顔で、にじゅにじゅと自らの唾液を絡めた音を響かせながら、白く豊満な乳房はピンクの乳首と合わせて、主に視覚的に俺に快感をもたらす。

 分かりやすく彼女たちに性的奉仕をさせている。

 その状況に目の前の二人への征服感と多幸感を強める。

 

「須美」

 

「はい♡」

 

「東郷さん」

 

「……」

 

 瞳にハートでも浮かんでいそうな程に従順となった須美。

 東郷の姉と明言しても受け入れるだろう外見。乳房も東郷よりも豊かで、蠱惑的な笑みは雄に媚びる雌が見せる物だ。気持ちいいかと目線で語る彼女の頭を撫でると小さく鳴く。

 中身は東郷よりも幼く、御しやすかった。

 

「東郷さん?」

 

「……つーん」

 

 それに対して、「私、怒っているんです」と主張をする東郷。

 須美のように小さく頬を膨らませ、乳房で奉仕しながらも、僅かに顔を背ける姿は、この場で二人を並べると東郷の方が妹だと判断してしまう程に幼く、可愛らしい反応だ。

 今の須美ほどではないが、豊かな乳肉を手にするとチラリと俺を見る。

 

「私だけ……。いつの間にか須美ちゃんに亮くん呼びさせているし……それは私の呼び方で──」

 

 何かを呟く東郷の面倒臭いオーラは実体化しそうだった。

 乙女の感情の機敏まで詳しくは無いが、何となく求めていることを口にする。

 

「……美森」

 

「もう一回。愛を込めて呼んで」

 

「美森」

 

「……もう一声。亭主関白な感じで」

 

「愛しているぞ、俺の美森。一生傍にいて抱かせろ」

 

「はいっ……私もよ、亮之佑♡ 言われなくても一生、死ぬまで、死んだ後もいますから」

 

「……死んだ後も?」

 

「何か?」

 

「いいえ」

 

 名前一つで機嫌をコロコロと変える彼女は寄せる乳圧を強める。

 柔らかな口調だが、ハートでも語尾に付きそうな程に甘い声音を俺に聞かせる。

 

「亮之佑が私たちにして欲しいこと、なんでも言って良いのよ?」

 

 須美は無言だが同意であることを乳圧を強めて示す。

 ならばと彼女たちに指示すると、俺は仰向けで布団の上に倒れ込む。

 

 肉竿は痛いほどに反り立つ。

 それを今度は少女たちの媚肉で挟み込み、腰の動きで上下に扱き出す。

 

 須美と東郷が大きく脚を広げて濡れた媚肉を擦り合わせる。

 怒張を挟み、二人で密着させる姿は、彼女たちの普段の姿からは想像出来ない。

 

 思い出したかのように僅かに羞恥を見せながらも彼女たちは指示を遂行する。

 自らが極上の性玩具であると。唯一無二の存在であると。

 

「ん……んっ……んぁ!」

 

「これ……擦れてッ……あぁっ!」

  

 荒い吐息を漏らし、両手でシーツを掴んでは、腰を突き上げる。

 グリグリと腰を押し付けて、乳房を、臀部を揺らしながら、疑似的な肉穴を作って疑似的な性行為を俺にさせる。陰核が亀頭と擦れる度に嬌声を漏らしながらも健気に秘裂を擦り合わせる。

 左右から響く少女たちの喘ぎ声。

 

 本当に挿入している訳ではない。

 俺は彼女たちの媚肉を使って自慰をして、彼女たちは俺の肉棒で自慰をする。

 慣れた様子で腰を動かす東郷と、どこかぎこちなさがありながらも一生懸命な須美の花弁から溢れる蜜が肉竿を濡らし新たな潤滑油となる。

 にゅぷん、にゅぷん、と少女たちの媚肉から顔を出す怒張が震える。

 

「ぐっ……!!」

 

 噴水のように上に噴き出した白濁は彼女たちの下腹部を汚した。

 その様子に既に虚ろな眼差しをした須美と、瞳に理性と淫欲を共存させた東郷が蠱惑的に微笑む。自らに課せられた指示を達成したという主人への悦びによる物だろうか。

 

 吐精によって眠気が押し寄せてくる。

 それを見て、ティッシュで子種を拭う彼女らは自らを毛布だとばかりに左右に倒れ込んでくる。豊満な胸元を胸板に押し潰す彼女らの臀部を両手で好きに揉む。

 少女たちは俺に抱き着いて、

 

「気持ち良かったですか?」

 

「ああ」

 

「ねえ、亮之佑。……もう終わりなの?」

 

 顔を引き寄せて、ちゅっと愛らしいキス。

 乱れた黒髪、ほんのりと赤らんだ頬、美しい深緑の瞳は吸い込まれるかのよう。

 

 少女はもう卒業したのだと、唇を小さく舐める二人。

 安っぽい挑発に聞こえた言葉に、むくりと情欲が鎌首をもたげた。

 

 ──遠くに聞こえる蝉よりも、目の前の女たちの鳴き声をもっと聞きたくなった。

 

 

 




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【番外】たこ焼きパーティー

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 暑い季節がやってきた。

 学校も夏休み。楽しい長期休暇の始まりだ。

 

「宿題? もう終わっているんよ~」

 

「私も! 今終わったー! 新記録だよ、とーごーさん!」

 

「……ふふっ、お疲れ様。やったわね、友奈ちゃん。はい、これ」

 

「わー! ぼた餅味のアイスだー! ありがとう!」

 

 自分たちを普通の学生だと言うつもりはない。

 何度も同じ年齢を繰り返していれば、対応する授業の内容など覚えてしまう。長期休暇の際に発生する宿題は覚えてしまい、もはや勉強というよりも手を動かす作業感が強い。

 勉強が苦手な子も、それだけの時間と周囲に優しく教えてくれる友達がいればなんとかなる。優秀な頭脳を持つ友達の園子と東郷に教わった友奈はアイスを楽しみ、園子は俺に顔を近づける。

 

「お疲れ」

 

「ん~」

 

 手を出すと、子犬か、あるいは気紛れな猫のように彼女は頭を差し出す。

 スリスリと擦りつけて甘えられると悪い気はしない。それだけの親愛を確かに感じられるからだ。稲穂の如き金髪に手櫛を通し、そっと頭を撫でる。

 目を細めた園子は、俺の飲みかけの麦茶を取り上げ、コップの中身を飲み干した。

 

「ずっと終わらない夏休みっていうのもどうかと思うけどね~」

 

「そのっち」

 

「そういう意味では私たちは毎日が夏休みだぜ、わっしー。好きなことを目一杯して、忘れられない思い出を刻んで、好きな人とイチャイチャして……繋がったり。この毎日が私は楽しいよ~。忘れたくないな~って思うんよ。ね、かっきー」

 

 同意を求める園子の頭を撫でる。

 普段からふわふわとした掴みどころの無い態度が多い彼女だが、それでも色々と考えている園子の中に確かな芯があるのを俺は分かっていた。

 甘えるように俺の腕を自らに巻き付かせる少女に囁く。

 

「俺は園子の後ろで腕を組んで後方彼氏面しているよ」

 

「え~、後ろじゃ嫌だよ。隣にいて」

 

「二人ともアイス溶けちゃうよ。はい、園ちゃん。あーん」

 

「あ~ん……。んんッ! ゆーゆが食べさせてくれると更に美味しいんよ。はい、ゆーゆにも!」

 

「あーん! ……ん~、美味しい! 皆で食べるアイスは美味しいね! 東郷さんも!」

 

「えっ、ええ……あ、あーん」

 

「美味しい?」

 

「うん! とっても美味しいわ友奈ちゃん」

 

 少女たちが戯れる姿を間近で見るのは心が和む。

 園子とのやり取りをジッと見ていた東郷、その表情の裏側を理解していたのだろう、笑顔の友奈によって差し出されたスプーン一つで東郷も笑みを見せた。 

 

 頬を緩ませて美味しそうに親友からのアイスを口にする東郷。ジッと見ていると深緑の瞳と交錯する。瞬きを繰り返す彼女は俺の口元にスプーンを差し出す。

 そして、誰もが魅了される慈母のような微笑みと共に甘い声を聞かせる。

 

「はい。あーん」

 

「……あーん」

 

 舌の上に広がる冷たさ。

 宇治金時味のアイスは程良い甘みと満足感をもたらす。

 

「美味しい?」

 

 此方の心情を窺うかのように上目遣いを見せる東郷。

 コクコクと頷くと、額縁に残したくなるような笑みと共に、精神的な余裕と穏やかさが垣間見えた。何が来ようとも狼狽えることはない、そんな自信すら感じさせる。

 

「これが正妻の余裕よ」

 

「わっしー。はい、あーん」

 

「あーん………んっ」

 

 冷房の効いた部屋。

 薄着の私服の少女たちとアイスを食べる、そんな時間。

 

 彼女たちはそれなりに肌が見える服を着用しているが、露出は多くない。

 どこか背伸びしていると感じていた衣服も本人たちの成長で年相応に思わせる。

 

 あどけなさが少し減って、少女から女へとバランスが傾きつつある姿。

 大人びているが、大人ではない、少女。

 普段見慣れた姿が中学生程度。そして今目の前にいる少女たちはそれよりも少し成長している。普段一緒にいる期間が長いから、細かな変化がよく分かった。

 そうして彼女たちを見ていると薄紅色の少女がからかい混じりの笑みを見せる。

 

「あっ、亮ちゃんの目がエッチだー!」

 

「……そういう言いがかりは止めようじゃないか」

 

「……見ないの?」

 

「見る! そして触る!」

 

「やぁん!」

 

 柔らかな肢体、抱きしめた身体は身じろぎ、髪から甘い香りが漂う。

 服の中に手を突っ込み、柔肌をくすぐると少女の笑い声が部屋に響く。

 

「亮くん、友奈ちゃん。二人とも騒がしくしたらご近所迷惑よ」

 

「大丈夫だよ~。防音はバッチリ~。わっしーとこんなことをしても問題ないんよ」

 

「ちょっ……そのっち……んっ」

 

「わっしー柔らか~い」

 

 神々の遊び心だろうか。

 勇者部や巫女の外見が、ある日は幼くなり、ある日は成長した姿を見せた。

 それが今回も発生したのだ。今回は成長する方向で。

 

 より淫靡に、より蠱惑的に、より魅惑的に。

 精神に肉体が少しだけ追いついたからか、少女たちのからかいと触れ合いが増す。普段からスキンシップは多い関係だが、隙を見せると俺の雄としての本能をくすぐってくる。

 薄着で肌の露出も増える時期であるのも含めて、密着度が増してきた。

 

 見目麗しい少女たち。

 金と薄紅と黒の花。長い前髪から覗く大きな瞳は輝きを伴って俺を見る。

 期待を、喜悦を、からかいを含んだ眼差しに誘導されて視線を下ろす。

 

 手に持った器にはアイス。オーソドックスなバニラ味だ。

 先ほどから糖分の補給としてせっせと口に運んでいたスプーンを止める。

 

「…………」

 

 そんな雛鳥みたいな顔をしないで欲しい。

 三口分、少女たちにあーんで献上。

 同時に他の味のアイスを差し出され、楽しむ。

 

 

 

 ──俺たちは園子の住むマンションに来ていた。

 駅前のマンション。お嬢様が住むに相応しい高層階に招かれる。

 

「これが園ちゃんのハウス……」

 

「ゆーゆも変な言葉を覚えちゃったね~。私のハウスには前にも来たよね~」

 

「えへへ……なんちゃって」

 

 ──という挨拶をしたのが数時間前。

 普段は加賀邸に入り浸っているからと、園子から招待された。

 招待客は旧勇者部。讃州中学校の初期メンバーのみだ。

 

「皆が一斉に大きくなっちゃうんだもんね。ビックリだよ!」

 

「夏凜ちゃんとか風先輩も樹ちゃんもみーんな大きくなったんだってね」

 

「ひなタンたちは小さくなったり大きくなったりしているって。せっかくだから皆で女子会するらしいよ」

 

「私たちも女子会?」

 

「かっきーがいるんよ~。でもかっきーも女の子みたいなものだからセーフ?」

 

「うん!」

 

「うん、じゃないんだが」

 

 唯一女たちの間に挟まれる黒一点。

 百合の間に挟まっても許されるようになった俺は、今日も園子と友奈の間に挟まる。園子お手製の焼きそばを食べて、アイスを食べて、宿題を終わらせる。

 主に俺と園子と東郷による手厚いサポートを友奈にしていたが、今年はついに必要なくなった。

 

 園子と東郷が教えて、俺はサンチョ枕を抱き締めて少女たちを見守る。

 美少女の絡みに目の保養と、合間に手元の携帯端末を弄る。

 

 同じ時間帯、寄宿舎の方では西暦組や防人組も似たような催しをしている。

 彼女たちは園子が言ったように、肉体が成長した者、または縮んだ者もいるらしい。先ほど、すっかり自撮りに目覚めたのか下着姿と裸体を浴室の鏡で撮っている黒髪の美女の画像が届いた。

 ひなただ。年齢は大学生程度だろうか。隣には同じ年齢の若葉が全裸で映っていた。

 

 成長した巫女は更なる美しさを肉体に宿していた。

 より豊かな乳房と、柔らかそうな肢体、やや濃いめの恥毛と自ら開いたピンクの恥部。

 それを鏡越しに見せる彼女は、男を悦ばせるような薄暗い笑みを見せていた。自分の身体の価値を理解した上で、それを隠すところなどないとばかりに俺に送りつけて来たのだ。

 

 今なら何をしても襲われないと思っているのか、恥部と顔が入った画像や、どういう説得をしたのか恥ずかしがる若葉との全裸自撮り、耳を弄られて蕩けた表情の若葉の画像などが届く。

 挑発のつもりか、性行為をするように若葉がひなたの腰に鼠径部を叩きつける動画も送ってきた。

 肉体の変化によるものか、精神と肉体の年齢が一致したからか解放感による悪ノリが酷い。

 明日になれば後悔して消すだろうなと思いながら保存していく。

 

 若葉は、その身体を蠱惑的な物へと成長させていた。

 実り豊かな肉果と、くびれた腰肉には無駄な脂肪がない。

 艶やかな白い腿の奥に髪色と同じ色の恥毛と恥部を覗かせる。

 

 二人ともすっかり大人の女だった。

 添えられたメッセージには、防人組も結構な数が大人になっているらしい。自分たちと彼女たち以外は普段の状態か幼児化しているのが殆どであると。

 

「……ふーん」

 

 もっと送って! と要望を出すと若葉から連絡が来た。「消せ」と一言のみ。

 「二人同時に抱かせてくれたら考える」と返信、返答を待ちながら自撮りする彼女たちの鏡越しに映る幼い少女たちを見る。農業王とその巫女が縮んだ姿で湯を楽しんでいた。

 まるで子沢山の家族が銭湯に来たような光景だなと思いながら、俺は顔を上げる。

 

「私は! 宿題を一人で終わらせた! ドーン!」

 

「偉いわ、友奈ちゃん! 流石よ!! 友奈ちゃん天才!!」

 

 東郷一人が友奈を構い倒し、俺は園子を構う。

 当然のように俺の股座に腰を下ろして椅子扱いする園子、普段よりも大きくなった体躯を抱き締めて二人で友奈と東郷を見守る。サンチョ枕を抱き締める彼女を抱きながらサラリと衣服の隙間から手を伸ばす。

 目標は彼女たちにバレずにどこまで令嬢を悦ばせるかだが。

 

「最初からバレていると思うよ~……んっ」

 

「じゃあ、普通に揉むか」

 

「セクハラ~。ちゃっかりブラを外しちゃうし。……あーあ、かっきーにくっついたら暑くなってきちゃった」

 

「じゃあ離れる?」

 

「……ん~、ちょっとだけだよ」

 

 柔らかな肌が手のひらに吸い付く。

 何だかんだで俺に甘い少女は暑いと言いながら、俺に甘えるように背中を預ける。ふわりとした甘い香りに先ほど食べたアイスの香りが混じる。普段よりも成長した顔つきと肢体はより魅惑的となり、俺の手を離さない。

 もっちりとした質感の生乳は服の下で、俺の両手に揉まれる。

 手のひらに余るほどの園子の乳肉を揉む度に、小さな嬌声を漏らしながらも普段通りの態度を見せる園子は臀部を怒張に擦りつける。

 

「胸、前より大きくなったね」 

 

「成長期なのと、誰かさんに夜な夜な揉まれているからかも~」

 

 からかい混じりの笑みを浮かべた横顔。

 睡眠と普段からの運動が彼女の乳房をより豊満な物へと育てたようだ。柔らかな乳肉を手のひらに載せるとずっしりとした重さ。服越しで見えずとも、少女の乳輪を指で円を描きながら、先端を軽く弄ると、無言の吐息に熱を帯びていく。

 

「ぁ……っ、ん」

 

 やや冷たい腹部を撫でると、小さく喉を鳴らす。下腹部を撫でて、その奥の子宮を押す腕を彼女の手が掴む。何か言いたげな横顔に顔を近づけると耳元に園子が囁いてくる。

 

「かっきー、ステイ」

 

「えー」

 

「……これ以上は駄目だよ。……濡れちゃうから」

 

「それはもっとしてってこと?」

 

「私はわっしーみたいな前振り芸人じゃないよ。もうすぐフーミン先輩たちが来てパーティーするんだから。……めってする~?」

 

「して」

 

「……めっ!」

 

 聞き分けのない子供を諭すような口調で園子は告げる。

 彼女の言葉に惜しみながら乳首を指で弾くと少女の下腹部が僅かに震える。

 

「別のパーティーになるんじゃないか?」

 

「それはかっきー次第なんよ」

 

 だから今は我慢。

 これから楽しいことが始まるのだから、我慢して。

 白磁の肌にほんのりと朱色を差しながら琥珀色の瞳が俺を捉える。欲望を抑えられない猿扱いに精神的なダメージを受けながら、俺は彼女の乳房を何度か揉んで止める。

 今度はシャツの中で下腹部を指で押すに留める。

 

「待って、かっきー。それもダメ……。身体、奥が変になるから」

 

「あれもダメ。これもダメって。園ちゃんは我儘だね」

 

「あっ!」

 

 トントンと下腹部を押すと、友奈と東郷に気づかれる嬌声を漏らした園子。

 振り返る友奈がからかい混じりの笑みを園子に見せる。

 

「あれ? 園ちゃん。今の声って気持ち良くなっちゃった? エッチだったね」

 

「友奈ちゃん、そのっちは敏感なのよ。覚えているでしょう?」

 

「~~~ッ!!」

 

 ぷくっと頬を膨らませた園子を可愛いと友奈が胸元に抱き寄せる。

 東郷にやり過ぎだと簀巻きにされる俺の耳にインターホンの音が届く。同じ音を聞いた園子が俺から腰を上げて逃げるように玄関に向かった。

 

「乃木ー、来たわよ」

 

「お邪魔します」

 

「は~い。いらっしゃい」

 

「あの、園子。これ、お土産……」

 

「わ~! にぼっしーありがとうだぜ〜!」

 

 園子のマンションに入ってくる三人の少女たち。

 犬吠埼姉妹。夏凜。三人とも普段見慣れた姿よりも幾分成長して見える。それはどこか大人びた私服を着用しているのも一つの要因だろう。

 俺に膝枕をしている東郷と挨拶をする彼女たちをローアングルで見上げると、何事もないような顔で俺を見下ろして挨拶してくる。

 

「亮之佑~。乃木にセクハラして怒らせたんですって? どんなエグイことしたのよ?」

 

「してませんよ。眼鏡似合ってますね。先輩の女子力が眩しいです」

 

「この褒め上手め。このこの~」

 

 からかい混じりの笑みを浮かべた風。

 何故か眼鏡を掛けて才女アピールしてくる彼女を適当におだてる。

 

「見て下さい。これでもちょっとは成長したんです」

 

「……ちょっと触らせてくれるかな? 差異を確認しようかと」

 

 慎ましい胸元を背筋を伸ばして主張する樹。

 髪が伸びた影響か、どこか穏やかな雰囲気を見せる。

 口角を上げて優しく微笑むと、躊躇いがちながら大胆にも上着を脱ごうとする少女。姉と連れて来た友人に止められて、何故か蹴られた。 

 

「…………何よ」

 

「パンツ見えてる」

 

「なっ!? ……い、いや、スカートじゃないわよ。嘘言わないで! 見なさいよ、ほらっ!」

 

「風先輩のコーディネートだな。ショートパンツの隙間から見え──ぐほっ!!」

 

「夏凜ちゃん、亮くんはボールじゃないのよ。蹴らないで。ところで亮くん、夏凜ちゃんの下着はどうだった?」

 

「ちょっ、東郷!?」

 

「可愛い感じのピンクだった。勝負パンツかもしれない。エッチだった」

 

「ああ……アレね。あれは確かに亮くんを意識しているわ」

 

「エッチとか言うなぁ!!」

 

 肉体の成長に伴い、あどけない顔立ちからどこか中性的になった夏凜。

 ボーイッシュな格好と、髪型は風によるイメチェンだろう。女子高に放り込めば、今の夏凜なら他の少女たちにお姉さまと呼ばれるだろう。或いは王子様だろうか。

 

「あれ? でもよく思い返すと履いてなかったような?」

 

「ええっ!? それじゃあ夏凜ちゃんは痴女ってこと?」

 

「は、履いているわよ!」

 

「じゃあ見せて」

 

「なんでよ!」

 

「……履いているんでしょう? なら見せてよ。自分がノーパンのエッチな子じゃないですって証明してくれよ」

 

「そ、それは……」

 

 俺の頭を撫でる東郷がわざとらしく驚いたような声を発する。

 熟年夫婦のように互いの性格を理解しているからこそのやり取り。

 案の定、夏凜は冷静さを保てずに顔を赤くする。見た目は変わろうとも中身は見知った夏凜であることに安堵と加虐心を覚える。

 東郷と俺に見つめられた夏凜は狼狽え、涙目になる。

 慌てふためく彼女は自らのショートパンツのウエスト部分に手を掛ける。

 

「わ、わかったわよ──」

 

「か〜り〜ん〜ちゃ〜ん!」

 

「ゆ、友奈!?」

 

 それを妨害するかのように、背後から友奈が抱き着く。

 驚く夏凜を抱く友奈を東郷がジッと見る中、太陽のような笑みを見せた友奈が夏凜の下腹部に手を伸ばす。

 

「ひゃっ! ちょっ、どこに手を……んッ!」

 

「履いてるよ! みんな! 今日の夏凜ちゃんパンツ履いてる!」

 

「普段履いてないみたいに言うなぁ!!」

 

 紆余曲折はあるが、こうしてメンバー全員が集まった。

 

 

 

 少女たちとのパーティータイム。

 当たり前の事だと思っていても、振り返った時にどれだけ掛け替えのない思い出になるのか分かっているから、俺はいつだって後悔しないように行動する。

 

「たこ焼きパーティーって去年ぶりじゃない?」

 

「そう? 昨日の今日に感じる」

 

「タコパは何回やっても良いから。今日は鍋パとどっちにするか真剣に悩んだんよ」

 

「流石に鍋は暑くない?」

 

「暑い時に冷房の効いた所で熱い鍋を食べる! それが良い!」

 

「まあ……素麺とかじゃ味気ないわね」

 

「あら、素麺も調理次第よ。ねえ、風先輩?」

 

 仲良さげに雑談を交わしながら手早く準備を進める。

 こういった7人での料理関係の場合、誰かが言い出した訳ではないが4人と3人に別れる。風と東郷のチームで別れて行うことが多いことに特に文句は無い。

 暗黙の了解か、固定メンバーとならないように席が変わったりするが、東郷は友奈の隣にいることが多い。その事に対して誰かが何かを言うことも無い。

 

 普段から思い出を分かち合う仲間たち、彼女たちと食事を共にする。

 一部に嫁に欲しくなるほどに料理上手なメンバーもいるが、一つのテーブルで二つに分けて簡単に作ることが出来る料理を楽しむ。

 たこ焼き以外にも簡単にいくつか作ると料理が上手い東郷と風がキッチンを借りる。

 残りの人員は二つのたこ焼き器を囲み調理を始める。

 

「くるくる~」

 

 たこ焼き器は既に用意され、着火済み。

 生地に、たこを入れ、天かすを入れ、それぞれ各自で用意した物を入れる。

 

「友奈ちゃん、何を入れたの?」

 

「カニカマを入れたよー!」

 

「変わり種ね、流石友奈ちゃん」

 

「褒められちゃった。亮ちゃんはー?」

 

 ふわふわとした可愛らしい笑顔で友奈が俺を見る。

 今すぐに抱き締めたくなる愛嬌を振りまく彼女に笑みを見せる。

 

「明太子チーズ」

 

「ああ……」

 

「ああ、じゃない。なんだよ夏凜、お前はどうせ煮干しだろ」

 

「そうだけど! ……どうせ辛いのマシマシでしょう?」

 

「美味しいよ。えっ、完成型なのにまさか食べられないとか? ごめんな、誰にでも苦手な物はあるよね」

 

「全然余裕よ! 馬鹿にしないで。……樹は何にしたの?」

 

「私はですね、トマトにしました」

 

「美味しそうじゃない。良いセンスよ」

 

「実はネットで調べたんです。美味しそうだって思って」

 

「はーい! サイドメニューおあがりよ! 誰か運んで~」

 

「はーい」

 

「わー! 風先輩の唐揚げだ!」

 

「茶色ね……」

 

「夏凜ちゃん、サラダもあるわよ。亮くん運んでくれる?」

 

 料理上級者たちが簡単な料理を終わらせる。

 空いた席に座り、そしてたこ焼きの焼き加減に目を光らせる。

 

「アンタたち、去年より上手に焼けているじゃない。去年は途中でお好み焼きになったのに。うう……妹の成長を目の当たりにして……誰かティッシュある?」

 

「ふっふーん。私たちは成長するんです。ねえ、友奈さん」

 

「そうですよ風先輩! 成長です! 成長!」

 

 それぞれの好みで楽しくたこ焼きの具材を決める。

 余計な気遣いも必要ない、既に男女の関係となった彼女たちも変な遠慮はない。薄着で、どこか肌の露出が多めな衣服の少女たち。大人びているが、まだ大人ではない彼女たちはどこか普段と異なる雰囲気を醸し出す。

 肩が触れ合う程度に密着する。

 冷房が効いた園子の家のリビングだが、それだけ近いと彼女らの香りが気になる。

 

「夏凜」

 

「何?」

 

「香水つけてる?」

 

「……夏休みだからね。変?」

 

「いや、いい香りだなって」

 

「ふーん」

 

 テーブルに肘をつく夏凜が俺を見る。

 流し目で、食事をしているからか、ほんのりと身体に熱を帯びている。髪型が変わり、隣から見ると慎ましい胸元も以前よりも育っているように見える。

 彼女の成長。それを身近で見ながら渡されたコップを傾ける。

 味に違和感。コップの中身に目を向ける。

 

「園子」

 

「……私たちって、もう大人だよね~」

 

「まあ、そうだな。……これって」

 

「ジュースだよ」

 

 渡してきた園子の微笑に、視線を下げる。

 コップの中身。甘酒ではない。もっと明確に甘い果汁酒だ。

 ──だが、彼女がジュースと言うのなら、そうなのだろう。

 

「かっきー」

 

「ん?」

 

「みんなと食べるご飯はやっぱり美味しいんよ~」

 

「園ちゃんが楽しいのを見ていると、俺も嬉しくなるよ」

 

「本当~? えへへ……嬉しいなぁ……。みんな~これが私のかっきーだよ~。格好いいよ~。大好きだよ~」

 

「良かったわね、園子。急に甘くないのが食べたくなってきたわね。亮之佑、あんたのたこ焼き一個頂戴。……うん、美味しいわね」

 

 隣に座る夏凜が俺の太腿に手を置く。

 何でもないような顔で、俺が作ったたこ焼きを口にして笑みを見せる。どこか大人びた視線で俺を見る彼女のように、熱を帯びた視線が多数。

 トクトクとコップにジュースを注いで俺に渡す東郷に促され、一口飲む。

 隣に座り、顔を寄せて微笑みを向けて来る東郷は上機嫌な様子だ。

 

「……美味しい?」

 

「あ、ああ」

 

「良かったね。……はい」

 

 酔わせたいのか、少しでも減る度に東郷が注ぐ。

 随分と久しぶりに摂取する飲料に、少しずつ身体が熱くなる。

 

 たこ焼きを、サイドメニューも食べて、ぐびりと飲む。

 風が一番よく食べ、負けじと他の少女たちも手を動かす。食べて、飲む。コップに注ぐ酒の量が増える。そうして徐々に口数が減り始めた頃、ほんのりと頬を朱色に染めた少女が呟く。

 

「熱くなってきちゃった」

 

「じゃあ脱げば良いんじゃない?」

 

「そうだねー。夏凜ちゃんも脱ごっか!」

 

「……まあ、一枚くらいなら? 暑いしね」

 

「もう一枚ぐらいガバッといきなさいよ。どうせこの後のことなんて分かるでしょう? 何年一緒にいると思っているのよ?」

 

「うるさいわね……ほら」

 

「イエーイ! 夏凜のストリップよ!」

 

「おっさんみたいな反応するな! まだ上着しか脱いでないでしょうが」

 

 冷房は効いている。だが、熱いものを食べたから熱いと感じるのも分かる。

 今更衣服の一枚を脱がれた程度で狼狽するような仲でもない。

 どこか妖艶な雰囲気を見せる少女たちは、食べて、飲んで、触れる。

 

 そしてたこ焼きが無くなった頃だった。

 

「それじゃあ、次は私たちが変わり種を入れるね」

 

「おけまる~。なら次のたこ焼きが出来るまでゲームしようぜ〜」

 

「何するの?」

 

「王様ゲーム! エッチな感じの~」

 

 園子の声に拒否も恥ずかしがる声も無かった。

 仕方ないなー、という満更でもない顔は、ほんのりと頬を赤らませていた。

 

 

 



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【番外】旧友との王様ゲーム

 ──王様、だーれだ。

 

「俺が王様ー!! はい! アイム! キング!!」

 

「テンション高……」

 

「はい、そこのクールぶってるボーイッシュ! いいのかそういうこと言って。男水着チャレンジさせてやるから番号言えよ!」

 

「嫌よ。そういうのは樹でしょう」

 

 王様ゲームが始まった。

 割り箸に1から6の数字と『王様』と書かれた7つを王様がシャッフルした手の中から抜き取る。初回は言い出しっぺである園子の手の中から各々が割り箸を抜き取っていく。

 初回、「王様だーれだ」という掛け声と共に俺が名乗りを上げたのだったが──、

 

「夏凜さぁん? それはどういう意味ですか? 私も今の身体なら男だって見られませんよ!」

 

「樹ぃー! 脱がなくて良いから! あと私はちゃんと女の子だって分かってるわ!」

 

「それはお姉ちゃんだからだよー!! ……ちょっと、どこ触ってるの~! キャハハ!!」

 

「ほれほれ、どれぐらい成長したか見てやろうか~」

 

「ゃん! 普通にセクハラだよぉ〜!」

 

 甘い甘い果汁酒(ジュース)を飲んだことで、園子が一人暮らしをしている広々としたリビングは、どこか淫靡な空気を漂わせ、すぐにでも性行為が始まる寸前の爛れた雰囲気があった。

 それを気にしないで笑った園子に急かされる。

 俺に顔を寄せ、親しみを感じさせる笑みを見せる園子は勝者のように俺の腕を天に突き上げる。

 

「王様~! 王様の命令は絶対ですぞ〜! どうぞご命令を!」

 

「うむ」

 

 今回はエッチな感じの王様ゲームと園子直々に宣言した。

 そして、この場にいる女たちは全員が合意済みだ。

 表面上の態度は素直でもツンツンしていても、このゲームの先にある行為への理解を示している。そうでなければそもそも王様ゲームに否定的な発言も出ただろう。

 

「そうだな、命令だが……」

 

 そのつもりになれば『王様』特権で、自分以外の女を全裸にして尻を突き出させた状態で壁に並べることも出来る。それが王様だ。俺が王様だ。

 下々の者も文句は言えども最終的に受け入れて、王の子種を媚びた声で求めるだろう。

 

 そこまでの未来を予想した俺は、敢えて余裕の表情を浮かべる。

 ──最初は簡単な命令の方が良いだろう。と考えながら玉座ならぬ、リビングにあった椅子から立ち上がり、少女たちの前でポーズを決めて宣言する。

 

「1から6まで全員が王様に密着ハグと好きなところにチューだ」

 

 王様の発言に、下々の女たちは顔を見合わせる。

 

「思ったよりも可愛いこと言い出したわね。というか二つだけどいい訳?」

 

「おけまる~。勇者部ルールを適用しま~す」

 

「……そんな命令しなくてもいつもしているのに」

 

「寂しがり屋よね」

 

「夏凜ちゃんみたいにね」

 

「ハァ!?」

 

「なーんて! 夏凜ちゃん、怒っちゃった? ごめんね。お詫びにハグしょう?」

 

「別に怒ってなんか……東郷、そんな目で見ないで」

 

 散々な言われように王様()は黙り込んでしまった。

 ちょっとだけ、もっと過激な物にするべきだったかと後悔する俺を入れ替わりで熱烈な抱擁する少女たち。

 そのやり方は様々だ。

 

 床に押し倒されて乳房を押し付けるように抱擁される。

 壁に押し付けられて熱烈に抱擁される。

 椅子に座らされて脚を絡ませて抱擁される。

 触れ合う少女たちの肢体は既に熱を帯びつつあった。

 

 キスの方法もそれぞれ違う。

 恥じらうように唇を啄む。友達同士でするように唇を甘噛みする。

 濃厚で情熱的な口腔行為を始めて、周囲に見せつける者。

 ……“好きな場所に”キスと命令を出したが、面白いことに全員が唇に唇を重ねた。

 

 やがて妖艶な笑みを見せる少女たちに迫られる。

 

「それで王様? どれが良かったですか?」

 

「うーん。2位が椅子に座りながらで、1位は床に押し倒しながらかな」

 

「やったー! 私だー!」

 

「おめでとう友奈ちゃん」

 

「なお、今日の気分なのでランキングは変動します」

 

 俺が精神的ダメージを抱擁で回復する頃には、口寂しそうに艶めかしい唇を舐める少女たちに見つめられていた。その中心で笑顔の花を咲かせる友奈はピョンピョンと跳ねる。

 その愛らしさに周囲も和やかな雰囲気へと変わった。

 途中でたこ焼きを食べ、果汁酒(ジュース)を飲みながらゲームは続く。

 

 ──王様、だーれだ。

 

「東郷かー。あれでしょ、どうせ英語禁止とかそういうの」

 

「そういうの、前にもした気がする。……いつだったかなぁ」

 

「王様は私。……ふふっ、それじゃあ友奈ちゃん。何番か教えて?」

 

「それ反則よ」

 

「──というのは冗談で。破廉恥な命令よね、なら……王様が命令するわ! 1番は下着をここで脱いで異性に渡せ! そして他の番号の人は1番をくすぐり辱めよ!!」

 

「エグいの来たわね」

 

 ポーズを決めながら新たなる王様は異性に下着を渡すように宣言した。

 その内容は俺にも利益がある。俺以外は全員が異性であり、成長した女たちの下着はまだコレクションはしていないからだ。

 

「亮之佑の可能性だってあるでしょう?」

 

「ええ。……それで、一人だけ下着を脱ぐのは誰かしら?」

 

 暗く、悪党のような表情で高笑いする東郷に周囲が見渡す。

 その笑みが凍り付いたのは、彼女の親友が呆然とした顔で呟いた時だった。

 

「……私だ」

 

「…………えっ、友奈ちゃん!? 嘘よ! てっきり風先輩だと……命令は無し! 無し無し!!」

 

「なんでアタシ!? ……友奈、王様の命令は絶対よ。脱ぎなさい。ここで、今すぐ」

 

「いいのよ友奈ちゃん。あっちで脱いできて!」

 

「……うん。私、脱ぐね」

 

 恥ずかしそうに宣言しながら、周囲を見渡す友奈。

 青ざめる東郷に切なげに微笑む薄紅色の女は自らの上着の中に手を入れてモゾモゾと動く。だが上手く脱げなかったのか上着を脱いでブラジャーを見せる。

 ピンクのブラを着用した友奈を周囲が囃し立て、王様が青筋を浮かべる。

 友奈コールを受ける本人はあどけなさが残る顔に羞恥で朱色に染まっていく。ゆっくりと背中に手を回し、ホックが外れる音に周囲が沸き立つ。

 

「ピンク好きよね~」

 

「ゆ・う・な! ゆ・う・な!」

 

「ああ……私はなんてことを……うああああっ!!!」

 

 精神崩壊する王様の隣で、遂に彼女は自らのブラジャーを外して見せる。

 外れるカップから覗く白い乳房。その先端の桜色が揺れた。

 

 拍手喝采。東郷に頬を赤らめながらも慈母の如き笑顔を見せた友奈は「……見ないで」と小声で言いながらスカートの中に手を伸ばす。

 スカートを巻き込み、太腿を覗かせながらピンク色のショーツ、そのウエスト部分を掴む。

 ゆっくりと膝までショーツを下ろし、両脚から引き抜く。

 そして自ら脱いだ下着を畳むと、まるで告白するような態度で俺に差し出す。

 

「あ、あのね……亮ちゃん。これ、私の……だから」

 

「私の……何? いつ、誰が、着用していた何?」

 

「え、えっと……下着だよ。私が、今着けていた下着。……はい」

 

 恥ずかしそうに笑いながら友奈が俺に下着を渡す。

 丁寧に畳まれたピンク色の布地は遠目から見ればハンカチのようだ。ホカホカで、彼女の香りがするブラジャーは可愛らしいリボンが装飾され、この感動を共有する為に、ブラジャーの紐部分とショーツのウエスト部分を掴んで広げる。

 悲鳴を上げる友奈に対して、少女たちはピンク色の下着に目を向ける。

 

「やっぱり友奈は清楚系よね。男を知らない振りして、実は裏で……って奴」

 

「お姉ちゃん……。でも友奈さんのは可愛いですね」

 

「というか、もう濡れ……んんっ、友奈らしい下着ね」

 

「ぅぅぅ……恥ずかしい」

 

「友奈ぢゃん……ごべっ……ごべんねぇ……!」

 

 親友の下着を脱がせる命令を出した王様は涙を流して懺悔する。

 その耳元で、「許さない」と友奈の声を真似て囁く園子に震えていた。

 

 ショーツのクロッチ部分に見える染みには誰も何も言わなかった。

 湿り気を帯びた染みは彼女が既にこのゲームに悦びを見出した証拠だ。

 

「さて、王様からはまだ命令が残っていたな。くすぐらなければ」

 

「そうね。王様の命令だものね」

 

「夏凜、顔が笑っているぞ」

 

 ふええ、と今にも泣きだしそうな少女を囲み、押し倒す。

 皆の綺麗な両手をワキワキと動かして、大人に近づいた友奈を一斉にくすぐる。その姿は純真無垢で明朗快活な少女を凌辱せんと笑みを浮かべた男たちの姿にも見えた。

 

「ひゃぁぁあっ!! ぁ、あはは! やだっ、ぁん! アハハハッ!! ダメェ!!」

 

 身悶える友奈の肢体を押さえつけて、多数の手が彼女を汚す。

 普段よりも豊かな乳房を園子が笑いながら揉みしだく。滑らかな腋とくびれた腰肉を夏凜と樹が蜘蛛のように手を這わせる。

 風がスカートを捲り俺と二人で健康的な太腿と、その付け根を視姦しながらくすぐる。

 露出した恥部を指で開き、挿入して弄る度に嬌声と悲鳴が交互に漏れ出す。

 

「東郷さぁん!! とーごーしゃん!! くふっ、あはは!! あんっ! ひぁっ!」

 

「ゆーゆのぼた餅、柔らかいな~。綺麗なピンクで、しっとりしているのにフワフワ~」

 

「友奈さんもおっぱい、大きくなるんですね。……こんなスタイル良くて、エッチで……えいっ!」

 

「あははッ! やめっ、くすぐったいよぉ……んっ、ぁ……そこダメっ……」

 

「友奈ももう大人の身体ね。……ここも綺麗ね~? それともここが感じるのかあ? 濡れてるぞ~?」

 

「すっかり敏感だな。みんなに可愛がって貰って感じているもんな」

 

「ちがっ、違うよぉ……あははは!!」

 

 大人の身体を全員で味わい尽くす。

 乳房を揉み、性感帯をくすぐり、茂みを指で撫でまわし、太腿に手を這わす。

 とろりと垂れる少女の蜜は俺が丁寧に舐め取る度に、彼女は笑い、喘いだ。

 

「かっきー、大人の玩具があるんだけど使う?」

 

「園ちゃん。俺たちは王様の命令でくすぐっているんだ。それで道具を隠しているなんてバレたら王様に怒られるだろう? 最初から本気でヤれって。……エグいの持ってきて」

 

「は~い!」

 

「ゃぁぁぁっっ!!」

 

 そして園子が持ってきた玩具を身じろぐ友奈の傍に置く。

 イボの生えた電動疑似肉棒、マッサージ用の器具。その他動画で見たことのある数々の玩具。

 

 園子がそれらを持っていることに口を出す者はいない。

 代わりに武器のようにそれらを持って、蛇のように身体をくねらせる友奈に使う。

 

「ぁっ! んんっ、ふぁっ!? あはは……!」

 

 くすぐられて敏感になっている友奈が笑い、喘ぐ。

 柔らかい脚を広げて、園子に疑似肉棒を挿入されてスイッチを押される。

 ウィーンと音を立てる肉棒でピストンの真似をしながら、風が友奈の陰核を吸引器で遊ぶ。ツンと尖った乳房や下腹部には樹と夏凜がマッサージ器具を宛がう。

 

「ひゃあああっ!!! ~~~ッ!! ぁぁぁっっ!!」

 

 結城友奈が仲間たちの手によって汚されていく。

 それを東郷は一人、呆然と見ていた。命令は撤回出来ない。王自身でも。

 静かに下腹部に手を伸ばし、首を振って涙を流す。

 

「ぁっ……だ、だめ、イくっ……んッッ!!」

 

 二度、三度と友奈の腰が跳ねる。

 くしゃくしゃにした顔には涙が浮かび、水分補給だと果汁酒を口移しで飲ませる。やがて一際大きな絶頂に達したと言わんばかりに小水を巻き散らした友奈に全員が満足気に笑った。

 

 友奈の凌辱を至近距離で見ていた王様は、自らの下腹部に手を伸ばしていた。

 親友の痴態を見届けて、自らを慰めていた王様は友奈に謝罪する。

 

「友奈ちゃん……。ごめん、ごめんね。東郷美森、腹を切って心から詫びます」

 

 刃物を取り上げて、彼女の切腹を全員で防いだ。

 

 ──王様、だーれだ。

 

 王様は夏凜となった。

 指定した数字の人の衣服にコインを入れて、同じく別の番号の人が探るというエッチなゲームを提示した。今回は東郷の衣服を樹が剥いて探っていたのだが──。

 

「────」

 

「マ、マグロ……」

 

 樹が困惑するのは当然だろう。

 既に彼女の手によって東郷の衣服は脱がされ、白磁の肌は少女たちに晒されている。つい先ほど、ブラジャーを樹自身の手で取り払い、その豊満な乳房を揉みながら鬼のような形相を見せていた樹だったが、その怒りが困惑に変わるほどに東郷は無反応だった。

 虚空を見上げる東郷の深緑の瞳に、光は無かった。

 後悔で静かに涙を流す姿は脱がされる姿と相まって、路地裏で犯されたのかと勘違いさせる。

 

「…………」

 

「えっと、続けた方が良いのかな?」

 

「勿論」

 

 樹以外は、東郷の姿を奇行だと片付けて気にしていない。俺も全く気にしてなかった。

 既に上裸の東郷だったが、それでは可哀そうだと狐耳のカチューシャが付けられ、勇者部全員にその乳房の谷間に「ビバーク!」と顔を埋められる。

 谷間の匂いを嗅ぎながら、両手で生乳を味わう至福を皆で堪能した。

 

「──ぷはっ。いや~、東郷って本当、エロいわね」

 

「……そうね」

 

「このおっぱいで夜な夜な亮之佑に揉まれて喘いでるんでしょうね。どうなのよ亮之佑、毎日挟ませたり吸ったりして楽しんでいるんでしょう? どこが大和撫子だ! この淫魔が! 責任取って孕め! とか言ってるんでしょう? 東郷もノリノリで答えてるのが目に浮かぶわ」

 

「えー、どうかな~?」

 

「どうせもっと凄いことして、それを撮っているんでしょ〜? アンタの鬼畜コレクション趣味は知っているけど、そろそろアタシたちにも見せなさいよ。このメンバーなら大丈夫でしょう?」

 

「……しょうがないな~。俺の東郷さんのエッチな動画(編集済み)見たい人いる? 1人100億円な。東郷さんだけだと可哀そうだからこの場にいる全員のを見よっか」

 

「わ、私のはいいわよ」

 

「遠慮するな。皆、とんでもない破廉恥な存在だってのが分かるよう作ったから満足度は高いぞ」

 

 食べながらの動画鑑賞で少女たちは興奮する。

 戦友の濡れ場の数々に口数少なくなる彼女たちの姿に俺も興奮した。

 

 そして一通り見終えた後、王様の命令である東郷の衣服に隠されたコインを探す為に、遂に東郷のショーツも脱がされた。もはやそこにしかないのだと樹も躊躇いは無かった。

 ノリノリの風と夏凜が東郷の両脚を開き、全員で覗き込む。

 

 下着の下には黒々とした茂みと、その奥で蠢いてみえたピンクの花弁からは透明な愛液が垂れていた。樹が「失礼します」と真剣な顔で女が隠せる最後の場所を開いて探す。

 戦友たちに促され陰唇を開き、奥のピンク色の粘膜を覗きこむも、東郷は無反応だ。

 順番に指や舌でコインを探す中、友奈が東郷の乙女の花園に顔を近づける。

 

「友奈ちゃ……ごめ……ごめんね……」

 

「……東郷さん」

 

 樹が俺の指導を受けながら乳首を指で弄りながらも、東郷は涙を流すのみ。

 本当はコインなんてどうでも良かった。最初の上着を脱がせた時にテーブルの下に転がって行ったのを俺は見ていた。他に見た人もいたかもしれないが、誰も手を止めなかった。

 そして東郷も止めることをしなかった。

 これが罰なのだとばかりに、自らの裸体を俺たちに捧げ、辱められていたのだ。

 

 深緑の瞳は虚空を見上げ、俺の膝に頭を乗せた彼女は謝罪を呟き続ける。

 首を振る度に以前よりも短くなった髪の毛を揺らす中、仰向けで横に流れながらも形の整った乳房を、園子は疑似肉棒を挟ませて遊ぶ。

 俺もまた、その豊満な乳房を揉みながら、東郷の唇を奪い、舌を絡める。

 

「……あえ? 友奈ちゃんの味?」

 

 唾液に友奈の蜜がまだ残っていたのか。

 友奈エキスに深緑の瞳に光が灯るも、同時に与えられた快感にも反応を示した。

 

「ぷぁあああっ!!? イぅッ……! ぇぁっ! あひぅっ!」

 

 浮かび上がる東郷の腰には友奈が纏わりついている。

 先ほどまでずっと無言だった彼女は、親友の恥部に指を挿入して水音を奏でる。マグロ状態から一変、釣れた魚のように跳ねては喘がされる東郷に群がる少女たち。

 呆け続けている間も貯まり続けた快感が、たった今爆発を起こし、快楽の連鎖が続く。

 

「んッ、ぃあっ、イクっ、イクイクっ……ゆうなっ、らめッ!! ふぐぅ!? おっ!」

 

 両手を押さえつけられ揺れる乳房を俺が揉む。

 少女たちに広げられた両脚、開いた恥部に友奈が微笑む。

 東郷の恥部に挿入した指を動かしながら、

 

「……イって、東郷さん。皆の前で」

 

「あ! ああっ! ~~~~ッッ!!」

 

 しょわっ、しょわっと小水のような潮が噴いた。

 戦友たちの数の前に、笑みを見せた友奈の神の如き手の動きに敗北した。

 

「ぁ、ぁ……」

 

「……凄い。動画でも見たけど、こんなエッチなのね……」

 

「東郷ってやっぱりエッチね……亮之佑の嫁を自称するだけはあるわ。完敗よ」

 

「……ハァ……ハァ、待ってみんな……動画って?」

 

「それより東郷さん。もう一回イこう? 大丈夫、皆も手伝ってくれるから! えいっ!」

 

「ま、待ってみんな。今は、ちょっと敏感で。脚、離して──」

 

「えいっ! えいっ!!」

 

「ふわぁあっ!! だめだめ出ちゃ──んぅぅッッ!!」

 

 小悪魔が二度目の絶頂に達して、感じ入る姿を旧友たちに見せつけて三度目。ようやく解放された時にはグッタリとした様子の東郷だったが、全裸で俺に抱き着く彼女は甘い吐息で囁く。

 みんなの前で色々と漏らして羞恥のリミッターが外れたのか。

 周囲の声など気にせずに大和撫子(淫魔)の顔を見せた東郷が自ら恥部を開き、雄に媚びる。

 

「挿入してぇ……亮くんの矛がココに欲しいです……」

 

 犯して下さい。滅茶苦茶にして下さい。

 立派な肉棒で思いっきり突っ込んで、壊して。

 友奈を辱めた王様を裸に剥いて、みんなの前で辱めて、貴方の子種で孕ませて。

 全身から淫臭を漂わせ、甘く媚びた声音で東郷が子種を求めてくる姿は、俺を酷く興奮させる。

 

 その姿はまるで麻薬だ。

 彼女の懇願に、心の奥底から屈服させて男を教えたくなる。

 スリスリとズボンを脱がせた肉棒に頬を擦り付ける東郷に笑みを見せる。反り立つ怒張は東郷だけではなくて、周囲の少女たちの目線も吸い寄せていた。

 淫熱を宿した瞳に逆らえそうになかった。

 このまま王様ゲームを終わらせて、ただの男女の情事が始まる──。

 

「駄目だよ、東郷さん」

 

「……友奈ちゃん」

 

 それを止めたのは友奈だった。

 小悪魔的な笑みで東郷の肌に指を這わせ少女の下腹部を震わせる。

 

「王様ゲームをしているんだから。次の王様次第だよ? ……めっ!」

 

「ハァァアン!! ……ごめんなさい! ごめんなさい友奈ちゃん」

 

「うーん。だめっ、許さない。我慢してー!」

 

 ──王様、だーれだ。

 ようやく可愛らしい笑みを友奈が見せて、頬に肉棒を擦り付けながらも休んでいる東郷も含めてゲームが再スタートした。

 これで再び東郷が選ばれれば目も当てられないが、神樹は見ているらしい。

 

「アタシが王様よ。皆の衆、ここに女子力の為の国家を宣言するわ! その為の礎として……そうね、3番と4番。乃木が持ってきた玩具でエッチしなさい。上と下の唇で濃厚なチューよ!!」

 

「王様万歳! 王様万歳!!」

 

 風はノリノリだった。泣き上戸を超えた女子力完全体となっていた。

 3番と4番の抗議を聞いたところで「王様の命令は絶対!」と一切受け付けない。それどころか王様に逆らったということで番号以外の者にも手伝わせる。

 ──その過程で俺と東郷は何故か免除された。

 

「亮之佑は東郷を満足させ、東郷は亮之佑を満足させるのじゃ。これこそが円環なり……」

 

「「風王様万歳! 風王様万歳!!」」

 

「アーハッハッハ!! このジュース最高!! ソーダで割ると上手い!! これが至福。これが王様よ! ……ほら、早く脱ぎなさいよ。余を満足させるのじゃ~」

 

「ぐっ、覚えてなさいよ。風」

 

「あの感じは記憶を無くす酔い方ですよ……諦めてシましょうか、夏凜さん。優しくして下さい」

 

「あ、うん……完成型勇者の私が樹の初めてを優しく奪ってあげる! 忘れられない一夜にしてみせるわ」

 

「饒舌ですね。……でも、私の初めては亮さんですよ」

 

「……知ってる。私もよ」

 

「ほらー、早くして。余を楽しませなさいよ!」

 

「……樹、あとで王様になったら一緒に風をシバきましょう」

 

「……はい!」

 

 友奈と園子、風に見守られ、夏凜と樹が裸体を絡め合う。

 強要される百合の花。互いに慎ましくも以前よりも成長が見られる乳房を潰し合い、腹部を密着させ、生え揃った恥毛を絡め合い、濡れた恥部を擦り合う。

 荒い呼気を漏らしながら、互いに嫌悪はなく、唇を重ね合う女たち。

 

「ぁっ……い、樹っ……腰、それっ、奥に入って……ダメ……ぁっ!!」

 

「ぅんっ、……ぁ、ぁっ、か、夏凜さん……可愛い……」

 

 二人の花弁を繋ぐのは互いの淫靡な花蜜だけではない。

 園子が提供した疑似肉棒。ローション塗れの二人は徐々に快楽に染まり、周囲の目も気にせずに互いの最奥へと挿入し合った肉棒を膣で咥えて腰を揺する。

 ぱんぱんと肉が肉を叩く音はどこか遠慮がちで初々しさがあった。

 その初々しさも、徐々に少女たちの目の色が変わるにつれて変貌する。

 

「いつきぃ……もっと、奥を……ぁぁっ! ぁん!」

 

「こう、ですか? 夏凜さん、チューしましょうか……?」

 

「うん……。チューする……ん──」

 

 ぬぽん、と夏凜の媚肉から疑似肉棒が抜ける。

 樹に繋がったままの肉棒は夏凜の愛液で濡れ、樹の勝利を示していたが、ブロンドヘアの少女の瞳には野獣の如き興奮があった。

 

「夏凜さん。……お尻向けて下さい」

 

「ぁ、ぁ……」

 

「早く」

 

「……は、い」

 

 屈服したように四つん這いになる夏凜。

 そのボーイッシュに覆い被さるように、自らの媚肉より生やした怒張で、夏凜を貫く。先ほどよりもピストンを速くする樹と喘がされる夏凜。

 動画か何かで見たのか、薄い尻を叩き夏凜を鳴かせる樹の背中に、園子が頷く。

 

「なるほど。イッつんとにぼっしーだとこうなるんだ~。概ね私の予想通りなんよ」

 

「私の妹、意外と肉食だった」

 

「あっ、見るなぁ、見るなぁ……ッ!! ぉぉ……ッ!?」

 

 ──最高だな。王様ゲーム。

 少女たちの新たな一面を知りながら、俺は東郷と唇を重ねる。

 互いに全裸で、汗でぬめる肢体を絡め合いながら、怒張で最奥まで突く。

 正常位で、陰嚢が密着するほどに亀頭で奥を小突き回し、雁で彼女の弱点を擦り上げる。嬌声を上げて、虐めてとばかりに揺れる乳房を揉みしだきながら舌を絡め合う。

 

「あんっ! ぁぁっ、りょー……くぅん!! ひぁ……奥、すご……」

 

「どこをどうして欲しい?」

 

「あなたのっ……逞しい矛で……私の奥を滅茶苦茶に──」

 

 高級娼婦は隠語を口にして、俺の怒張から涎を垂らさせる。

 東郷はどこまでも俺を昂らせ、煽り、凌辱への渇望を高める。ここまで俺の理性を狂わせるのは初代を除いて、きっと東郷だけだろう。

 なんていやらしい女だ。お仕置きをしなくては。孕ませてやりたい。

 涙を流しながら笑みを浮かべる東郷の頬に手を宛がうと、彼女は頬を摺り寄せる。

 

「なに笑ってんだよ」

 

「──ハァ、ぁ……幸せで、滅茶苦茶にされるとっ、亮くんに愛されるって、分かるからっ……!」

 

 夏凜たちを尻目に、俺はこれが本当の抽送だとばかりに腰を振る。

 濡れそぼった媚肉は玩具ではない雄の怒張を締め付ける東郷の瞳は快楽に染まる。壊れたかのように浮かべた笑みからはどんな楽器でも奏でられない女の喘ぎ声が漏れる。

 許してと。犯してと。壊してと。俺をどこまでも馬鹿にする。

 乳首を捏ね繰り回すとオクターブ上がるも、既に東郷の身体は俺の全てを受け入れている。

 

「許してぇっ! だめになるっ! こわれりゅっ!!」

 

「────」

 

「やっ、それっ、毛が擦れて……」

 

 まるで抵抗するかのように俺の腰に回した両脚で俺を締め付ける。

 グリグリと奥を亀頭で擦りつけると、涙を流した彼女が両脚の拘束を緩める。

 

「だめだめっ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ──!!」

 

 その直後を狙って、ピストンの速度を上げた。

 結合部からは彼女の愛液が先走りと絡んだ泡が垂れる。

 

「ゃぁぁぁっ!! イぅッ! らめっ……また、イくぅ……ぁっ、……!」

 

 時折虚空を見上げる度に、媚肉が蠢いて子種を搾り取ろうとする。

 まだだと限界ギリギリまで竿を引き抜いて、一息に最奥まで腰を打ち付けると、海老のように背中をのけ反らせた東郷は壊れたように髪を振り乱す。

 切羽詰まった声。俺の肩を掴む手に力が入る。

 

「ぁぁぁああっっっ!!!」

 

「イけ」

 

「──!! ……オッ!? ……ぉぉ゛……ぅ、ぁ」

 

 ビクンビクンと震える哀れな女。

 既に目が虚ろで、口の端から涎が垂れる。

 少女の最奥を白濁で汚しながら、片手では足りない法悦に昇り続けた結果だ。

 

「ゃぁ……ぁ」

 

 ちゅぱっと唇から離した乳首は硬く尖っている。

 髪は汗で乱れ、先ほどまでよりも濃い淫香を漂わせる東郷と視線を交錯させる。

 

「……愛してる」

 

 自然と彼女が発した言葉に、キスで応える。

 映画ならばこれで完結しただろうが、王様ゲームは続く。

 

 ──王様、だーれだ。

 

「俺だー!!」

 

「亮ちゃん様だ!」

 

 何故か嬉しそうに笑みを見せる友奈。可愛い。

 愛らしい笑みで俺に抱き着く友奈の隣で佇む東郷は余裕の笑みだ。既に一人だけどこか満足気な表情で、満ち足りた眼差しで俺を見る黒髪の女。

 既に半分のメンバーが裸体を晒している中で、俺は命令を告げる。

 

「仕切り直しだ。加賀亮之佑が命じる」

 

「何そのポーズ」

 

「──全員、水着になれ!! 室内でエロい水着になれ!! 着る内容については、王様である俺が……1番と2番……風と東郷の意見を元に決定する! 異論は認めん!」

 

 用意は出来ていると園子は月光のような笑みを見せる。

 同時に、心を抉るような言葉のナイフを無邪気に振るった。

 

「なんか普通だね」

 

「……、園子は紐ビキニだから。もしくは絆創膏三点セット。何も隠させないから」

 

「……そんな水着ないよ~」

 

「亮くん、探してくるわね。この顔は『ある』顔よ」

 

「あれ~……?」

 

 東郷は頼もしい笑みで少女たちを引き連れて行った。

 何故か俺が待つ流れになっていたが、気にせずその後に続いた。

 

 

 




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誤字報告ありがとうございます。……続きます。


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【番外】旧友との淫らな王様ゲーム

ちょっと長いです


 普段身体を重ねて、獣のように性行為をしている彼女たちにも乙女回路はある。全裸を見ている俺であっても、水着姿に着替える姿を覗き見されるのは嫌らしい。

 以前は集団で着替えている中に俺がいても問題なかったのだが……気分の問題なのだろう。次があれば女性陣が嬉々として俺を更衣室に連れ込むに違いない。

 

 仕方なく風と一緒にみんなの水着を指定すると、部屋の外で女たちの水着姿を待つ。

 十五分程度だろうか、扉が開く。

 

「お待たせー!」

 

「い、イエーイ!」

 

 友奈と園子。二人は布面積の少ないビキニ姿だ。

 少女たちは可愛らしい笑顔を見せ、水着姿を披露する。

 

 友奈にはビキニメイドの恰好をさせていた。

 トップスは小さく乳輪以外の乳房部分が殆ど露わになっていた。鼠径部のみ隠す小さなエプロンは正面から見ていると履いていないかのようだ。

 後ろを振り向かせると、殆ど紐のボトムスで薄い臀部が丸見え。頭部の白いカチューシャだけが、彼女をメイドと認識させるも、主人を性的に苛立たせる物でしかなかった。

 

「あ、アハハ……さすがに恥ずかしいかな」

 

 園子に関しては、俺の命令通りに紐ビキニを着ていた。

 恥ずかしそうに小さく呻きながら俺に上目遣いする令嬢は殆ど全裸に近い。紫のトップスは辛うじて先端を隠しているが、それ以外の乳房全体の形が露わとなっている。

 徒歩の度にぷるりと乳房を揺らす彼女だが、そっと下腹部に手を宛がったままだ。

 

「園ちゃん。見せて」

 

「ぅぅ……」

 

「見せて」

 

 肉付きの良い太腿をもじもじとくねらせる園子は、僅かな躊躇いの後で手を退かす。

 くびれた腰肉には細い紐が通り、薄く小さいボトムスでは彼女の秘所を隠せていない。彼女の髪色と同色の恥毛が生地からはみ出ている。陰唇は隠しきれず、柔らかそうな貝肉が露出していた。

 

「今どんな気持ち?」

 

「……ん」

 

 視線を向ける俺から園子は顔を背ける。

 媚肉に生地が食い込んだ格好で海に連れて行けば大変なことになるだろう。あるいはこの狭い世界で痴女という称号を得て一年を過ごすのか。

 少女の恥毛を指で引っ張りながら、彼女が如何に卑猥な姿かを耳元で囁く。

 すると、彼女は大きな瞳に羞恥の涙を浮かべながら俺に告げた。

 

「だって……かっきーは剃らない方が好きなんでしょう? 私をエッチな目に合わせて恥ずかしがっている姿を見て愉しんでいるんでしょう? えっちだもんね~」

 

「そんな涙目になって虚勢を張らなくて良いよ」

 

「ぁっ!」

 

 ボトムスを臍の方向に引っ張ると、恥部に深く食い込む。

 グイグイと何度も引っ張り俺をからかったことを後悔するように可愛らしい嬌声を漏らす園子。同時に俺は園子の隣で佇むメイドの乳房を揉む。

 このまま本番に至ろうかという時に奥の部屋から女たちが顔を見せる。

 

「もう始めてんの? 乃木も友奈も早いわよー」

 

「あ、あの……本当に男物の水着だけで……」

 

「王様の命令でしょう? 大丈夫、似合っているわ」

 

「それ褒めているんですか!?」

 

 夏凜の水着はスク水だ。多少窮屈そうだったが着ることには問題ないようで堂々としている。だが、夏凜本人は気づいていないのか、彼女の柔肌は余すことなく透けていた。

 生意気にも尖った乳首や肌に張り付いた恥毛、ぴちりと閉じた恥部など丸見えだった。

 風に目を向けると、ニコリと気持ちの良い笑みを返してくれた。

 他の皆にも目を向けると、誰も指摘していないと頷き、仁王立ちの夏凜に目を向ける。

 

「……何よ?」

 

「夏凜は可愛いね。完成型のポーズを決めて? 撮るから」

 

「は、はあ!? 急に何よ……ちょっ、撮るなぁ!」

 

 樹の方は俺が以前使っていた海パンのみで、胸元を手で隠していた。

 俺たちの視線を向けられた樹は、顔を真っ赤にしながら顔を逸らす。だが、そんな態度は時間稼ぎにもならないということを彼女も理解しており、渋々と言った様子で手を下ろした。

 

「……おお」

 

「おおって何ですか」

 

 半眼で俺を睨む樹の乳房は僅かながら起伏があった。

 慎ましい胸元はともかく、全体的にスレンダーになった樹の体型を見る。

 手のひらで包みこむと弾力を返す彼女の乳肉は柔らかく温かい。昔の友奈や園子の慎ましかった頃の乳房を思い出しながら揉み、ビクリと震える彼女を背中から抱き締める。

 

「あ、あの、亮さん? どうしてそんな優しい顔で私の胸を揉むんですか?」

 

「ん~? なんでだろうね?」

 

 ウエストを締めていた紐を解き、そっとボトムスの中に手を入れる。柔らかい毛と貝肉を弄ぶ度に樹の艶のある声が漏れ、一人の女が眦を吊り上げてやってくる。

 

「コラー! 樹に何してんのよ! 発情が早いのよ!!」

 

「ぅぅ……お姉ちゃんがこんな水着を着せたんだよ? 怒るくらいなら着せないでよぉ」

 

「似合うわよ、樹。亮之佑のお手つきが早すぎなのよ。妹の成長をみんなに見せようと思ったのに、ぐちょぐちょにされる所だったじゃない」

 

「……そんな簡単にぐちょぐちょになんてならないもん」

 

 黄色のチアガールを連想させるビキニ。

 ショートパレオから覗く太腿は年相応の色香を漂わせる。更に豊かになった乳房がぷるんと揺れ動き、やや面積の小さいトップスからは乳首が見えそうだった。

 俺の視線に気づいた風は、むにゅりと腕で谷間を作りながら、からかうように告げる。

 

「これが女子力よん」

 

「なんか一人だけ露出少なくない?」

 

「アタシレベルだと露出を減らしても男の目を惹くのよ。亮之佑もそうでしょ?」

 

 より女子力が増した風。

 ぷるりと揺れ動く豊かな胸を見て、舌打ちした樹を見ながら友奈が手を上げる。

 

「あの、風先輩。樹ちゃんの成長は私たちも確認しました。……大きくなったと思います」

 

「そうね」

 

「ええ。成長したと思います」

 

「……ですって。良かったわね樹」

 

「フォローが心に沁みるよぉ〜! 夏凜さんは大して変わってない癖にぃぃ!!」

 

「なあ!?」

 

「友奈さんのも揉ませてよぉ……いっそ亮さんのもぉ……」

 

「ほーら、俺の胸筋の方が大きいよ~」

 

「わぁああん!!」

 

 泣きながら夏凜のボトムスごと乳房を揉む樹。

 困惑した様子で樹の腕を掴みながらも、胸を揉まれる夏凜は顔を赤くする。いくつになろうと勇者部の妹である樹の機嫌を取る為に自らの胸を揉ませる友奈は、部屋の奥を見る。

 

「……とーごーさん? 出てこないの?」

 

 出るタイミングを失ったか、恥ずかしいのか。東郷は部屋から出てこなかった。

 チラリと黒髪が見えている中で、風が口元を手で覆い笑いを堪える様子が気になった。

 

「ほ、ほら、東郷。早く来なさいよ。王様命令でしょう?」

 

「……流石にこれは恥辱どころか切腹モノよ」

 

「そんなことないよ~、わっしーはどんな水着も可愛いんさ。似合うんよ」

 

「そんな筈は無いわ! こんな祖国を裏切るような水着なんて……」

 

 口々に女たちが東郷を励ます。

 似合っていると、可愛らしいと、その度に東郷は否定するも、時間が経過する程に徐々に尖っていた声に柔らかみを帯びていくのが分かった。

 夏凜に肘で腹を突かれて、声を上げる。

 

「東郷さん。水着姿を見せてくれ」

 

「…………亮くんがそこまで言うなら」

 

 それでもまだ少し嫌そうな声を含みながら、部屋から出てくる東郷。

 赤と青と白の星条旗、その模様が入ったビキニ姿は、彼女のダイナマイトボディによくフィットしていた。薄い生地が二枚程度で女の印象がグルリと変わることに驚く。

 プライベートビーチで男を誘惑していそうな洋物ビッチとなった東郷。艶やかで光沢の入った黒髪は清楚だった頃の名残のように揺れる。

 白い頬を小さく膨らませて、自らの不機嫌さをアピールする元大和撫子。

 

「プリーズ!」

 

「さ、撮影は許可しないわ」

 

 携帯端末を向けて彼女を撮ると慌てたように目元を手で覆い隠す。

 皆で褒め称えたからか、やや満更ではない様子の東郷に、

 

「ぶふぅ!」

 

 風が吹き出した。

 どこか緊張感のある空気。

 誰もが洋物ビッチになり掛けの東郷に気を遣おうとする中での事だ。恐らくは事故だったのだろう。笑ってはいけないと言われて何故か笑うような事故だった。

 

「アハハハ!! 東郷っ、アンタ、本当に最高よっ……!」

 

「────」

 

「あー……笑った笑った。ああ、ごめんね東郷。新鮮でとても似合っているわ」

 

「────」

 

「やっぱりスタイルが良いっていうのもあるんでしょうね。あー……今の東郷見ているとぼた餅よりもアレが食べたくなってくるわね」

 

「あれ、とは?」

 

「ハンバーガーよ! そろそろおやつの時間だし……乃木、頼まない? ポテトとコーラで乾杯しましょう! ……ふっ、ふふっ……いや、本当にごめん、東郷。笑っちゃって──」

 

 

 

 ──王様、だーれだ。

 

 半分脅迫に近い形で風の番号が晒された。王様は樹だったが、何故だろうか、酷く怯えた顔で王様を辞退した樹は、後継者として東郷を指名した。

 能面となった洋物被れのビキニを着た東郷は、指示を出す。

 

「ひゃ……んっ、ゆうなぁ……そのこも……だめ……」

 

「夏凜ちゃんって、ここも弱いんだよねー」

 

「にぼっしー弱すぎ~」

 

「うるさっ……、ぁんっ! そこ、だめぇ!!」

 

 夏凜を友奈と園子が辱める。

 汗で透けたスク水をずらし、あるいは直接玩具で弄ばれる夏凜。

 涙を流し、許しを乞いながら、女二人の手で絶頂に達する。

 

「りょうさんッ! りょうさぁんッ!」

 

 パンパンと肉棒を突き上げる度に媚肉が締め付ける。

 女たちの絡みを見ながら、駅弁と呼ばれる体位で怒張を突き上げると悲鳴のような嬌声を上げて俺の肩を掴む。口端から涎を垂らす樹は肉棒を引き抜く際に、雁が膣襞を擦る度に悦ぶ。

 

 キスの度に蕩けた顔となった樹は媚肉から涎を垂らす。

 肉棒を何度も突いては引き抜いてを繰り返すと、性玩具として俺の自慰に貢献する。

 

「おらッ、射精すぞ樹っ!」

 

「きて……くださいッ……ぁぁああっっ!!」

 

 辱める者と辱められる者たち。

 樹も夏凜も友奈も園子も、いずれもある空間からは目を逸らしていた。

 

 ──ぐぽっ、くぽっと下品な水音が響いていた。

 

「まっへ、とうごう……悪かったから、ゆるしてぇ……!」

 

「命乞いなど聞き飽きました。風先輩は抵抗しないで下さい。……二度とふざけたことを言えないように、風先輩の思想を作り変えます。誰が洋物ビッチかぁあああ!!」

 

「ひぁああああっっ……!! 言ってないからぁ……ふわぁあっ!!」

 

 目を向けると、嫌々と首を振る風の顔に自らの潮が掛かった。

 両脚を開かされた風、尻を天井に向け両脚を床に近づける、いわゆるまんぐり返しという体勢を東郷に強いられていた。

 ショートパレオが捲れ上がり、露出したボトムスはずらされ花園が露わになっていた。腹部が丸まり、トップスを外された乳房はぷるぷると揺れ動き、風が何度目かの絶頂に達した。

 

「ぁ、ぁぁ……ふっ、くッ……イクッ……!!」

 

 濃く生え揃った大人の恥毛には泡が付着し、恥部には黒く太く硬い疑似肉棒が根本まで飲み込まれていた。東郷が怖い顔で風を絶頂させる。

 鬼となった東郷が淫らな技術の全てを駆使して、本気で、一人の女を堕とそうとしていた。

 

 イボが竿中に生えた玩具だったが、風は激しい方が好みのようだった。

 東郷の顔に飛沫が掛かるも、笑みを浮かべるばかりの黒髪の美女は気にした様子もなく、風の恥部からゆっくりと疑似肉棒を引き抜いていく。

 

「気持ちいいですね、風先輩。亮くんの形をちゃんと覚えているんですね」

 

「ぉ、おお……ッ」

 

「もっと壊れて」

 

 ねらねらと白い愛液で濡れた黒色の肉棒を限界ギリギリまで引き抜くと、的確に最も悦ぶコースを選択して釘を打つように勢いよく怒張を奥まで挿入する。 

 パン、パンと東郷の手のひらが一部、風の尻を叩き、陰唇を叩く。

 

「ぁん! ぁぁ、あっ、あーーッッ!!」

 

 高級娼婦としての力を十全に発揮して、勇者部の部長を堕とす。

 閉じようとする脚を開いては、最奥までの肉棒のピストンを繰り返した。

 

「むりっ、むりだかりゃ……ダメ、イッ、クゥ……!!!」

 

「…………」

 

「~~~~ッッ!!」

 

 東郷の極太肉棒の衝撃でぐんっと腰を浮かせる。

 海老のように反った風は柔らかな腹を丸めて、小水を自らに掛けた。

 

 その淫靡な光景は、視覚を通じて俺に快感を伝える。

 ピストンには勢いが増し、東郷に絶頂を教えられた風の妹の最奥に同じように怒張を打ち付ける。濡れそぼった媚肉は狭くも怒張を受け入れて蠕動する。

 

「ぁ、ぁ、っ、あっ!!」

 

 樹の腰を掴んで、太腿に臀部が当たるほどに腰を揺する。

 パンパンと肉が肉を叩く音を周囲に聞かせ、酩酊したような顔の樹と唇を交わして、最奥へと白濁を注ぎ込む。

 

「お、ぁ………」

 

 ビクンと下腹部を震わせる樹。

 だらしなく口から舌を垂らした顔は、東郷に絶頂させられた風に似ている。狭い膣内にマグマのように熱い白濁を注ぎ込みながら、ゆっくりと姉の隣に下ろす。

 

「ハァ……ハァ……、おねえちゃん……。とうごう、せんぱい……お姉ちゃんを許してあげて下さい」

 

 一滴も残さずに、膣襞が吸い取るのを感じながら、樹の命乞いを聞く。

 東郷の能面だった表情には、少しずつだったが祖国を愛する人間の表情へと戻りつつあった。

 樹の媚肉から抜き取った汚れた怒張を風の僅かにはみ出た腹部で拭い取る。風の豊満な乳房を揉みながら東郷を見ていると、小さく溜息を吐いた。

 

「……分かったわ、樹ちゃん」

 

「──ッ!!」

 

 東郷は風を貫いたままの疑似肉棒を一息に引き抜く。

 弱点を擦ったのか、気絶した風が震えながら潮を巻き散らす。

 

「……次は無いから」

 

 冷たい視線で風を見下ろしながら東郷は風の胸元に疑似肉棒を置く。

 おもむろに星条旗柄のビキニを脱ぎ捨てて全裸となった。

 

 惜しげもなく裸体を晒しながら俺に抱き着く彼女に、周囲は畏怖の視線を向けた。屈み込み当然のように肉竿を咥えて綺麗にしていく。

 そのまま肉棒を胸元で挟み込み、優しい笑みを東郷は見せた。

 無言で東郷の乳房を揉む俺に、友奈が変わらない笑みを見せる。

 

「次、行ってみよー! ……これで最後ってことで」

 

 

 

 ──王様、だーれだ。

 

 注文した品が届いたのだと、インターホンが鳴る。

 周囲の女たちは手を離せそうにないので、俺が応対することにした。背後から聞こえる女の甘い声と機械音を気にせずに、インターホンの画面から配達員を確認して招き入れる。

 

「こんにちは、ウードゥンイーツです! お待たせしました……」

 

 背中には大きなリュックサック。

 短パンから覗く肉付きの良い太腿、薄いノースリーブには汗で肌が張り付き豊かな胸元が見え隠れする。帽子から覗く薄紅色の髪に、小麦色の肌。

 大きな瞳は見開かれ、元気の良い挨拶を告げた口元が固まる。

 

「赤嶺ちゃん」

 

「……住所変わったのかと思ったよ。引越し?」

 

「まあ、そんなところ。それでどうしたの? またデリヘル? 今回はいくら?」

 

「変なこと言わないで、亮之佑くん……アレが見えてるから服を着てよ」

 

 赤嶺友奈。この世界で出会った第三の友奈だ。

 敵になったり味方になったり、思わせぶりな言動の多い友奈族の一人。高嶋友奈や結城友奈との違いは性格や肌の色を除けば、その豊かな乳房だろう。

 

 先ほどまで淑やかな少女たちと愉しいことをしていた興奮は、再び怒張を反り立たせていた。耳を澄ませば少女の艶やかな声が遠くから時折聞こえてきていた。

 肉棒の存在感に赤嶺はチラ見しながら、誤魔化すように俺を睨む。

 

「普通、服を着てから応対するよね。裸族って奴?」

 

「エッチなことをする時に服を着ないだろう? 赤嶺ちゃんもだったよね」

 

「……あれは事故だよ。忘れてって言ったでしょ。その調子でレンちに言ってないよね?」

 

「それは赤嶺ちゃん次第かな」

 

「……サイテー」

 

 半眼で睨む彼女は俺の発言に、下腹部からそっと目を逸らす。

 小麦色の肌では恥ずかしがっているのかどうか判断が難しい。だが今更警戒したように身体を抱きながら僅かながら距離を取る彼女の前でパンツを履いて近づく。

 

「例の物は?」

 

「買ってきた。ハンバーガーセットの為に私を呼ぶとかどうなの? パシリだよね?」

 

「筋トレにはなったろ? ジムに籠るのも飽きただろうし、ちゃんと赤嶺ちゃんの分のポテトも買ってるから。プロテインもあるよ」

 

「プロテイン? ……どうせ亮之佑くんのアレを咥えさせるとかそういうのでしょう?」

 

「なんで知っているの?」

 

「前に自分でさせたんでしょう!? 極上のプロテインを飲ませてやるとかって! あれ、未だに夢に見るんだから!」

 

「夢を見るくらいに俺が好きなんだな……まあまあ、落ち着いて。実際にオンリーワンなプロテインなんだから。あれから明らかに筋肉の質が変わったよ」

 

「えっ、本当?」

 

 長い年月を積み重ねると大抵は男女の関係になる。

 男女の間には友情よりも淫欲が積み重なって、強制的に男女の仲となるのは例外ではない。

 距離を詰めて、赤嶺のくびれた腰を抱き寄せながら尋ねる。

 

「今日はチートデイだったろう? 赤嶺ちゃんの相棒もうるさくない日だった筈だ」

 

「なんで知っているの……。あ、あれ、もしかしてレンちと連絡取り合ってる?」

 

「秘密」

 

 風が告げていたハンバーガーとポテトとコーラ。

 それを赤嶺に頼んで持って来て貰った。赤嶺はバイトをしている訳ではない。ただトレーニングとして自転車で走って来たのだ。

 床にリュックサックを置いて取り出した袋を貰い、お金を渡す。

 筋肉を痛めつけるのが好きな潜在的Mの少女にポテトの入った箱を渡す。

 

「あ、ありがとう。……あー」

 

 冷たい視線を向けていた相手に、雛鳥のように口を開ける赤嶺。

 不健康の塊を口元に数本押し入れると、満足気に笑みを見せる。全身を震わせて喜びを見せる赤嶺の姿には思わず目尻を和らげて、即座に唇にポテトを押し付ける。

 

「ん~! この味が良いよね! こう……ポテトって感じ──んむっ」

 

 柔らかな唇に指が触れる。

 ぺろりと赤い舌が唇を舐め取り、ちゅっと指の腹も舐める。暑かったのだろう、赤嶺の頬を伝う汗を俺が指で拭って舐めとるとあまじょっぱい味がした。

 

「あ、あれ? 今何かした?」

 

「いや、何も。ほら、コーラも飲んで」

 

「──んんっ!」

 

 容器に入った炭酸飲料を少女に飲ませる。

 しょっぱいものと甘いものを交互に摂取させる。

 

「ぷはっ! もう良いよ、ありがとう」

 

 仕事が完了したことに安堵したのか、赤嶺は吐息を漏らしながら汗ばんだシャツの胸元を引っ張る。ブラに包まれた乳房近辺の肌は日焼け跡と褐色の素肌で僅かな差が見える。

 

「あ~、ここ涼しい~。……というかいつまで抱き着いているわけ?」

 

「まあまあ」

 

「まあまあ、じゃないんだよね……んっ」

 

 暑い空間から、冷房の効いた空間に来たからだろう。

 パタパタとシャツの胸元を引っ張りながら俺を挑発する赤嶺に抱き着きながら、抵抗の少ない彼女の乳房をブラ越しに静かに持ち上げる。

 友奈族にあるまじき豊満な乳房は何度見ても驚きを隠せない。実はパットではないのかと、ブラホックを外して揉みしだくと、身じろぐ赤嶺が俺をからかう。

 

「……お客さん、これはセクハラですよ」

 

「こんなエッチな匂いを漂わせて、俺を誘ったのは赤嶺ちゃんだろ? 責任取れよ。レビューを最低値にしてある事無い事書いてやるぞ」

 

「うわ~、最低な客だよ。……本当にやってないよね」

 

「俺が呼ぶのはジム友の赤嶺ちゃんだけだよ」

 

「……ふーん」

 

 首を伝う汗が鎖骨を伝う。

 俺から目を逸らす赤嶺の片手が肉棒に触れる。

 顔を背ける彼女の肌は熱く、吐息は僅かに震える中、静かに怒張を握る。

 

「あっつ……。ま、まあ、レビューの為で……運動後にプロテインは必要だから……」

 

「そうだね。これも事故だよ」

 

 言い訳を始める赤嶺も友奈族だった。

 汗ばんだノースリーブの裾から手を伸ばして、緩んだブラの隙間から豊満な双丘を揉む。

 ピンクの先端をきゅっと指で挟むとビクッと身体を震わせる赤嶺。

 

「あ、んむ……っ、ん──」

 

 ポテトの味がする赤嶺の唇に舌を押し込む。

 僅かに開いた唇から舌を入れ、逃げようとする舌に絡めると、強張った身体から力が抜けていく。しっとりとした太腿を撫でながら短パンの中に手を入れる。

 友奈族の中でクールタイプな赤嶺という印象だが、腕の中の彼女は随分と大人しい。

 

「ぁ、ぇ、……りょ……んふ……っ」

 

 口端から涎が垂れる。

 とろんとした女の表情は、赤嶺の友人は見たこともないだろう。

 むわりと熱を持つ赤嶺の短パンとショーツの中に手を這わす。肌に張り付いた恥毛とぴちりと閉じた恥部は生温い蜜液が滲んでいた。

 

「ふっ、ぅんっ……だ、ダメ……ダメだからっ」

 

「ちゃんと筋トレして、今食べた分を解消しないと駄目だよ」

 

 涙目で嫌々と首を振る彼女。

 指で陰唇を開くと、ビクリと身体を震わせる。愛液を指に絡めながら、彼女が悦ぶ指の動きで恥部を弄り続けると腰を引かせる。

 くちくち、と粘りついた水音を聞かせながら、指で彼女を弄り続ける。

 

「ぁっ! ……!! ……ッ!!」

 

 必死に赤嶺は自らの声を押し殺した。

 下腹部を中心に何度か痙攣する彼女から甘くも卑猥な匂いが漂う。ぎゅっと目を閉じて数分程度で達した赤嶺は深呼吸を繰り返すと、涙混じりの目で俺を睨む。

 

「ぁん……はぁ……」

 

「入口責められるの、本当に弱いね。こんなよわよわなのに、前は敵だったなんて信じられない」

 

「……うるさい、変態」

 

 プイッと顔を背ける赤嶺の首筋にキスをする。

 紳士的な行為に俺を睨みつけて口を開こうとする赤嶺が驚愕に染まる。

 

「やらっ! ゃぁああっ!! イくっ!! ~~~ッッ!!」

 

 玄関にまで響く女の声に、ビクリと身体を震わせる。

 

「な、なに!?」

 

「気にしないで。王様ゲームの途中なんだ」

 

「は? 王様……隠語?」

 

 廊下にまで届く女の悲鳴混じりの嬌声。

 すぐに戻るつもりで開いた扉からは、見知った戦友たちの甘くも嗜虐心に満ちた声と、無機質な機械音と水音と、肉を叩くような音に赤嶺が息を呑む。

 

「あ、あの声って……」

 

「エッチな動画を流しているだけだよ、赤嶺ちゃん」

 

「亮之──」

 

 ひゅっと彼女が息を止めた。

 ずり下がった短パンから覗く鍛えられた下腹部に怒張を押し付ける。彼女の肌は汗ばみながらもやや冷たく、肉棒で擦りつけると僅かに肌が沈む。

 ここまですると、赤嶺は抵抗もなく俺を受け入れるように瞳を揺らす。

 

「あ……」

 

 ぐりっ、ぐりっと怒張を秘裂に押し当てる。

 怒張の熱が下腹部に広がるように、じんわりと熱を帯びていく。

 

「あ、あの、私シャワーとか浴びてなくて……」

 

「赤嶺ちゃん、今日はお疲れ様。帰っていいよ」

 

「ふえ?」

 

 目を丸くする赤嶺にキスをする。

 先走りを彼女の恥部で拭い、赤嶺のリュックサックを背負わせ、帽子を被せる。

 

「ごめんね~。もう戻らないと。何かあったらまたよろしく」

 

「え、あ……」

 

「少しでも残念だって思ったら、今度寄宿舎に行った時にお礼するから歓迎してね。友奈族特典で男女一緒じゃないとできない最高の筋トレとプロテインをプレゼントするから」

 

「ちょ、ちょっと……」

 

 少女の衣服を整えて、玄関から外へと出す。

 外れたブラホック以外は、訪れた時と殆ど同じ状態になった赤嶺。

 文句を言うべく開いた唇に唇を重ねながら十数秒、情熱的にキスをする。唇を離すと、とろんとした表情を浮かべた赤嶺に俺は笑みを見せた。

 

「エッチな自撮り写真付きで連絡くれたら、その時はすぐ行くから~。じゃあね」

 

 彼女が正気に戻る前に静かに扉を閉じる。床に落とした袋類を拾い上げながら、俺はリビングへと向かう。

 袋のガサガサ音を聞かせながら、淫臭漂う空間へと戻った。

 

「遅かったじゃない」

 

「もう準備出来ているわよ」

 

「頑張りました!」

 

「ふふ……我が国が作った技術は凄いわね」

 

 笑みを浮かべ、玩具を置いて、笑いかけてくる女たち。

 恭しく俺からハンバーガーが入った袋を受け取る友奈が優しく笑い掛ける。

 

「遅かったね?」

 

 ちゅっと唇に触れる程度のキスをする友奈。

 抱き着いて、柔らかな乳房を胸板に押し付ける彼女は上目遣いを見せる。すりすりと裸体を擦り付けて、幸せそうな笑顔を見せる友奈を抱き返す。

 杏仁豆腐のような乳肉を揉みながら、何のことか首を傾げた。

 

「そう? それより、園ちゃんはどう?」

 

「うん! 皆で頑張ったよ!」

 

 王様である夏凜の命令。

 それは自分がされたことへの報復もあったのだろう、指定した番号を全員で襲うことだった。運良く俺は回避出来たが、その少女の本日の運では回避することが出来なかった。

 

 女たちに囲まれて園子が転がっていた。

 

「ぁ、ぁー……」

 

 紐ビキニは彼女の局部を隠す役割を何一つ果たせていなかった。汗を滴らせ、額に髪の毛を貼りつかせて震える彼女の周囲には濡れた玩具が転がる。

 複数の疑似肉棒、電気マッサージ器具、団子状の器具や、小さなローターなど。

 

 脚を大きく広げて覗ける乙女の花園は、俺が来る寸前まで何かを咥えていたかのように、ピンク色の粘膜が蠢いていた。

 小水を漏らしたように、下腹部に水溜まりが出来上がり、園子は時折小さく震える。

 

「あっ、そうだ! 亮ちゃん、見てー! 園ちゃん凄いんだよー!」

 

 ニコリと笑みを見せる友奈は手袋をつける。

 ただの手袋ではない。タコの脚のような触手にビッシリとイボが付いている。ぐっ、ぱっ、と手を開いたり閉じたりする友奈に園子は反応を示した。

 その目は潤み、緩んだ口元をなんとか結ぼうとしていた。

 

「……ゆ、……ゆ、だめ、……もうそれっ、やめへ……」

 

「でも、これが好きでしょう? ゴシゴシーってされるの。皆の前でお漏らししちゃうくらいに気持ち良かったもんねー!」

 

「ゃぁ……!」

 

 阿吽の呼吸で東郷が園子の脚を開く。

 風が園子の乳房を揉みながら乳首を刺激し、樹と夏凜は手を押さえる。

 唯一逃げられそうな腰を揺らす園子は赤い顔で涙目を見せる。とろんとした眼差しに僅かながら正気の光を宿していたが、それも友奈の愛撫が始まるまでだった。

 そっと園子の恥部に、手袋を付けた友奈の手のひらが乗る。

 

「ゴシゴシー! ゴシゴシー!!」

 

「ぅぁぁあああっっ!!? やめっ、ひぃ、ぁぁッ!!」

 

 色白の肢体が小刻みに震える。

 友奈は一切の手加減をしなかった。

 

 上下左右に、園子の媚肉を友奈は擦る。

 マッサージをするように蜜裂を指で擦り、弱点を攻め立てた。

 

「っっ……っ、おッ!!?」

 

 愛液で顔を汚した友奈は肉芽も擦る範囲に含める。

 必死に快楽から逃れようとする園子の乳首を、犬吠埼姉妹が指で弾く。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 また、園子は絶頂に達した。

 もう空気に触れるだけでも絶頂に達するのではと思わせる速度で、園子は飛ぶ。

 

 雪の双丘では樹が激しく、風は優しく、左右の乳首を指でなぞり、吸い付く。

 園子の両手は姉妹と握り合いながら、ぷるんと乳房を揺らす。

 

「……ッ! やぁ~~!!」

 

 いともあっけなく、園子が気をやる。

 その哀れな姿を見ても他の勇者たちは一切手を抜かない。

 

「そのっちは本当に可愛いわね」

 

「わっしーダメだよぉ……それダメ……」

 

 下腹部にマッサージ器具を押し付ける東郷が微笑を見せる。

 淫靡な光景、園子が快楽に喘ぐ度に、怒張が反り立つのを感じる。

 

「あなた」

 

 俺の肉棒に口づけ、東郷が場所を空けてくれた。

 樹と風が恭しく屈み、怒張に左右から口づけた。

 夏凜は俺の背中から抱き着いては、俺の乳首を指先で愛撫する。

 

「だめっ、だめだよぉ……」

 

「早く挿れてあげたら?」

 

「んんぅぅ~~~ッ!! ゆっ、ゆぅ……ごしごしダメぇ……!」

 

「ここ? ほら」

 

「やっ、……イくっ!!」

 

「気持ちいいね~。もう三回目だよ? あれ四回だっけ?」

 

「ふ……っ、く……」

 

 からかうような口調で夏凜に耳元で囁かれる。

 慎ましい胸元を背中に押し付けて、必死に逃げようとする園子の膣から蜜をほじくり出して、媚肉を擦る友奈の姿。

 

「亮ちゃん、もういいよー!」

 

 秘所から手を抜いた友奈は俺に笑みを見せる。園子は腰を震わせながら逃げようと四つん這いで俺から距離を取る。

 夏凜と友奈が交互に俺の竿を口に含み、唾液でコーティングする。そして、ぷるんと尻肉を揺らす園子を捕まえて数人がかりで開いた蜜穴に、俺は腰を近づけた。

 

「だめっ、だめだよぉ、かっきぃ……!」

 

 切羽詰まった表情で園子が首を振った。

 乳牛のように、垂れ下がった乳房を揺らしながら、懇願する。

 

 哀れな少女が、複数人の少女に弄ばれている構図。

 雄に捧げ物をする儀式のようだったが、捧げ物である園子本人の目は違った。

 余裕があった。

 涙目で憐れみを誘うような表情だったが、尻を揺らして俺を挑発していた。

 

「やらよぉ……絶対、今……おかしくなっちゃうんよぉ~」

 

「────」

 

「かっきぃ……ひゃめ──」

 

 蕩けた肉壺。

 熱く濡れた媚肉に挿入する中、俺は思わず溜息すら漏らした。

 

「……ッ!」

 

 極上の一突き。

 くびれた腰肉を掴んで、挿入と同時に奥歯を食い縛る。

 勇者たちに育てられた園子の肉襞は出来上がっていた。

 

 ──あとは美味しく食べるだけだった。

 

「うぁぁあ~~~~ッッ!! ……ッ!? ッ!!」

 

 果てていない筈なのに思考が白く染まる。

 大きく身体を跳ねさせ、震え続ける園子の甘い喘ぎに、腰を振った。

 

「やらっ……このっ、体勢っ……!!」

 

 獣のような交尾に園子が床に頭を擦りつける。

 

 怒張を引き抜いた瞬間に、噴き出す蜜が床を濡らした。

 抵抗のつもりか俺の腹部を押す園子の両手を引っ張りながら、鼠径部を臀部に叩きつける。

 身をのけ反らせる園子と同時に、プシャッと飛沫が散る。

 

「ゃぁぁぁ……!」

 

 絶頂の震えが俺の身体にまで伝わってくる。

 乱れた髪から覗く園子は涙を流しながら、開いた唇から舌を垂らしていた。

 

 彼女の両手を風と樹が掴み、俺は園子の口に手を入れる。

 ぬめる舌を指で捕まえ、強引に立たせながら後背位で突き上げる。

 

「あーん」

 

 という声がしたと同時に、友奈と東郷の唇が園子の左右の乳首を襲う。

 ガクガクと膝を震わせる園子が倒れないように、正面の夏凜が園子を押さえながら、肉芽にマッサージ器具を押し付ける。

 

「りゃめっ……ぁ、ぁ、っ、ッ!!」

 

 ぎゅううっと膣が生き物のように引き締まり、俺もピストンを加速する。

 俺の指ごと噛み締めた園子が、激しい痙攣を見せた。

 

「ッ!? ッ、ぅ、ッ~~~~!!!」

 

 園子を突き上げたと同時に、溜め込んだ精子が噴き出す。

 どくっ、どくっと注ぎ込む子種に、女の最奥が歓喜に震えるのが分かった。

 

 完全に脱力した園子を抱きながら一滴残らず吐き出す。

 ずるりと結合部から怒張を抜くと樹と風が競うように竿にキスをする。園子の愛液と白濁混じりの肉竿を舐める彼女らに、夏凜も割り込むように亀頭を咥える。

 

「……お役目お疲れ様。立派よ、あなた」

 

 労うように囁いて、東郷が俺に抱き着く。

 豊かな胸肉に腕を挟み、ちゅっと唇を奪う東郷からグラスを渡される。

 冷えた麦茶。

 倒れ込む園子を仰向けにしながら、麦茶を口に含んでいく。

 

「ぁぇ? ……りょーのすけくん?」

 

「園子。飲んで」

 

「……ん~」

 

 こぽりと蜜裂から白濁をこぼす園子を見下ろす。

 意図を悟った彼女は、躊躇いなく艶めかしい唇を小さく開く。

 

 口移しで麦茶を飲ませる。

 園子は口端から幾らかこぼしながらも、コクンと小さく喉を鳴らして嚥下する。髪を乱し、汗と涙でぐちゃぐちゃになった顔を俺に向けながら、従順に飲んでいく。

 その間に、肌を密着させ、汗で濡れた脚を開かせて、蜜裂に怒張を宛がう。

 

「んむっ!? ま、まっへ……今、イったばかりで……」

 

「飲め」

 

 ホカホカの膣内は俺を歓迎するように締め付けた。

 その期待に応えるように、釘を打つように竿を打ち付ける。パン、と腰を下ろす度に結合部の隙間から彼女の体液と合わさった白濁が漏れた。

 

「あああっっ!!? ダメッ、ィゥッ、~~~~ッッ!!!」

 

 追撃のピストンに彼女の嗚咽混じりの嬌声が響く。

 言葉にもならない、悲鳴を上げる。

 正常位で逃げ場のない彼女を俺は滅茶苦茶に突いた。

 

 噛み痕を至る所に残し、揺れる乳房を揉みしだく。

 肩に爪を立てる抵抗も意味をなさず、新鮮な子種を注ぎ込むまでピストンを続ける。

 

「……ッ! ……っ、……」

 

 二度目の射精は注ぎ終わるのに時間が掛かった。

 園子の悲鳴も無く、完全に脱力した状態で虚空を見上げていた。

 

「寝るな」

 

「ぎっ!?」

 

 引き抜こうとする竿に肉襞が絡みつく。

 何度か逆に押し込んで、一息に引き抜くと快感と共に腹に熱い小水が掛かった。

 彼女の痙攣に合わせて小水が弧を汚れた怒張を綺麗にしていく。

 

「園ちゃん、そんなに脱水したら死んじゃうよ。ほら、もう一回麦茶飲ませてあげるから起きて」

 

「ぅ、ゃぁ……」

 

「……園ちゃんは可愛いなぁ……ん?」

 

 気がつくと水着を捨てた全裸の女たちに囲まれていた。

 友奈、夏凜、樹、風、東郷。

 至近距離の一糸まとわぬ姿に、園子の小水を浴びた怒張に血が巡る。

 

「……王様は元気ね」

 

 呆れたような風の口調に手元を見る。

 『王様』と書かれた棒は、汗で字が僅かに滲んでいた。

 

 妃のように俺の背中にツンとした乳首ごと豊満な乳房を押し付ける東郷。

 むにゅり、と柔和な感触が背を這い上がる。

 

「いいのよ、あなた。今日だけは特別よ」

 

 甘く媚びを売るような声で東郷は囁く。

 既に息を吹き返した怒張に指を這わせながら、耳に吐息を吹き掛ける。

 

「そのっちのように、壊れるほどの慈悲をみんなにあげて……」

 

 グラスの中の氷がカランと音を立てた。

 

 

 




いつも誤字報告、感想をありがとうございます。励みになってます。


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【番外】旧友とのゲームを終えるまで

 ボーイッシュでスリムな女と肉付きの良い女のサンドイッチ。

 いずれも一糸まとわぬ姿だ。

 彼女たちは抱き合い、手を握り合い、乳房を押し潰し、貝肉を擦り合わせる。

 

「んあっ!」

 

 パン、と音を立てて腰を揺する。

 ぬめる肉壺の反応と声が、確認せずともどちらを貫いたのかを明瞭にする。

 

「ぁ、ん……」

 

「ん、ふっ……っ」

 

 二人の勇者の裸体は小さく震えていた。

 王様ゲームで高められた彼女たちは男の剛直一本にされるがままだ。

 仰向けの風に正常位の体位で覆い被さる夏凜。ぴったりと二人の陰唇が重なる。更にその背中に抱き着くように、俺が彼女たちに覆い被さり、発情した犬のように腰を振った。

 

 重なり合っていた陰唇からは涎が垂れる。

 菊座すら晒す夏凜の割り拓いた尻肉を叩くと、彼女は良く鳴いた。

 

「ちょっ……んはッ!? ゃ……ぁ……どこに、指を……ッ」

 

「……んっ、ふっ」

 

 仰向けの風が腰をくねらせる。

 淫靡な眼差しで俺を求め、下腹部を夏凜に押し付け竿を圧迫する。夏凜が自ら腰を上げて、蜜穴から抜けた怒張は、滑るようにして風の媚肉を貫き、一息に奥まで深々と挿入した。

 

「はぁっ……ッ! やっぱり本物は……ッ、ちがぁっ、ぁぁっ!!」

 

 ぶるる、と風が絶頂に震えた。

 甘い声と達した表情を見せながら、風の膣肉が激しく蠕動した。

 

「はっ……。はぁー……!」

 

 俺は二人に覆い被さり、女たちの膣から剛直が抜ける度に、もう一人の女を貫き腰を振る。

 夏凜が尻を浮かせ、風は腰を跳ねて、二人は感極まったように声を漏らす。

 同時に二人の女の膣の感触と嬌声を比較できる状況に、俺は無我夢中で腰を振った。

 

 彼女たちは手を繋ぎ合わせ、大小の乳房を擦り合わせ、汗を弾く。

 互いの恥毛が擦れ合うほどに貝肉を密着させ、男を悦ばせる浅ましい姿。相互に挿入を繰り返し、互いの弱点を穿られる度にあられもない声を互いの耳元で漏らす。

 

「ひっ、ぁぁあっ!! あっ、ぁっ! ……ぁっ!!」

 

「あっ、そこっ、きもちいいっ、んぁぁっっ!!!」

 

 腰を打ち付ける。

 風の媚肉が咥えて嬌声を上げる。

 夏凜の媚肉を突いて蜜液を噴かせる。

 

 互いが快楽から逃れようとすれば、どちらかが抱き着いて防ぐ。

 淫らな熱を分かち合う二人は熱い視線を俺に向ける。

 肉棒を打ち込む度に、余すことなく淫欲の声を奏でさせられ、蜜が飛び、涙を流す。

 

 俺はさらに腰の動きを変える。

 どちらでもない、彼女たちが作る貝肉の合間に怒張を滑り込ませる。

 

 夏凜と風の陰唇が重なり合う場所。

 本来の膣とは違うが、女体が絡み合う事による締め付けと、濡れた陰唇同士による竿への吸い付きが新鮮な快楽を呼んだ。

 それを見計らったように彼女たちの下腹部の密着が強まる。

 ぎゅっと竿を締め付ける柔肌に、汗と愛液と先走りが潤滑油となった。

 

 竿を押し込むと、亀頭がクリトリスを擦ったのか、彼女たちは甘い声を漏らす。

 風が脚をピンと伸ばして絶頂。夏凜も続く。

 

「ぅわぁああっっ!!」

 

「~~~~ッッ!!」

 

 剛直で彼女たちを交互に貫き、俺もまた二人の下腹部で達する。

 噴き出す白濁は女たちの媚肉を汚し、恥毛を汚し、二人の下腹部に広がった。濡れた柔肌が竿を押し潰し、汗と精液を女体でサンドイッチしたまま、彼女たちは荒い呼吸を整えようとしていた。

 俺もまた深呼吸を繰り返して、吐精の衝動を抑えていると──、

 

「亮くん。お疲れ様」

 

「……東郷さん」

 

「友奈ちゃんから飲み物を貰ってね」

 

 優し気に笑う東郷に手を引かれる。

 大和撫子に目線を誘導され、俺を見上げる友奈を見下ろす。

 

「あ……えっと……」

 

 全裸の友奈は仰向けで、きゅっと太腿を閉じていた。

 恥ずかし気な表情を浮かべ、目を泳がさせている。ツンと尖った乳首の載った慎ましい乳房を見せ、程よく脂の乗った腹部を揺らし、太腿の付け根から恥部にかけて液体が溜まっていた。

 まるで湖のようだと思う俺に耳元で東郷が囁く。

 

「水分補給しないと駄目よ? 味見したけど美味しかったから亮くんも飲んでみて」

 

 卑猥な誘いを口にする東郷が友奈に頷く。

 思い出したかのようにメイドのカチューシャが乗った頭部を揺らす友奈。

 

「りょーちゃん様ぁ、その……飲んで欲しいなぁ……なんて……あっ!」

 

 驚きと喜びの声が聞こえる中で、俺は彼女の湖、友奈湖に顔を沈めた。

 水中で揺蕩う陰毛を見ながら、羞恥に震える友奈の太腿を掴み、ずずずっと音を立てて飲んでいく。甘酸っぱい味わいは果汁酒だろう、友奈自身のエキスも入って甘美な味わいだ。

 

「美味しいよ、友奈ちゃん!」

 

「あっ、そんなところまで舐めちゃ……ぅんッ! ぁっ、舌、入って……」

 

 器を一通り舐めて、恥部から溢れる蜜液まで飲み取る。

 喘ぐ友奈を見ながら飲む一杯に感謝し、ちゅっと陰核にキス。

 ビクリと小さく震える少女の陰唇を指で弄り、余裕の微笑を見せていた東郷にも目を向ける。全裸の彼女は俺の視線を受けると、仕方ない人ね……と言いたげな表情でアヒル座りをする。

 

「はい。良いわよ」

 

「何も言ってないよ」

 

「私で飲みたいんでしょ? 亮くんのことならなんでも分かるわ。分かりたいと思うの」

 

 そう言葉を続けると東郷は果汁酒の缶を手に取る。

 躊躇いの無い手つきで、トクトクと自らの太腿の付け根に液体を注ぐ。

 白い女体を器に透明な液体の中で、黒々とした陰毛が揺蕩う。ほんのりと色付いた花弁から混じる愛液が、世界で唯一の酒と化す。

 

「飲まないの?」

 

 俺を見る彼女は興奮と喜悦に笑みを見せる。

 その一言で竿が熱を帯び、硬度を増すのが分かった。

 

 彼女も雄の変化を見ていた。

 自分の挙動と身体が明確に男を悦ばせる事に幸福だとばかりに上裸を揺らす。

 

「……ふふっ、酔っちゃいそう。早く飲んで……?」

 

 東郷に屈み込み、太腿に手を置いて、俺は彼女の身体で酒を味わう。

 

「ん……」

 

 ちゅっと腿に唇を這わせる。

 犬のように、器に広がる酒を舌で舐め、下品な音と共に啜る。

 

 東郷の白く滑らかな肌に舌を這わせる。

 顔を左右に動かし、彼女の恥部を丹念に舐める。

 

「やんっ! ……っ」

 

 東郷のわかめ酒は美味だった。

 僅かな汗を感じる甘み。独特の味わいは雌の味として舌に沁み込む。

 

 これならいくらでも啜っていられる。

 そう思いながら、肉の器の中身が空になると、東郷の片足を掴んで持ち上げる。

 従順に従う東郷は自らの脚を大きく広げる。流石に恥ずかしいのか、陰毛の張り付いた恥部、僅かにピンクの粘膜を覗かせる陰唇を俺が見る間、彼女は頬を赤らめていた。

 

「友奈。東郷さんのここ、どう思う?」

 

「ほえ?」

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「うーん。綺麗だなぁって。あとは……エッチ?」

 

「同意見だ」

 

「もう……」

 

 太腿を伝う透明な雫は酒か愛液か判断に迷う。太腿に唇を押し付けて判断し、丹念に舐めとる。何度も舐めていると、同じく虐めて欲しいとばかりに陰核が硬くなるのが見えた。

 要望通り陰核を舐め上げる度に、ビクリと乳房を震わせる姿は、加虐心をくすぐる。

 

「っ……あっ、んぁぁああっ!」

 

 酒ではない極上の甘露を啜ると身を震わせる大和撫子。

 さて、どうやって料理しようか……と考える。そんな中、ジッと俺と東郷を見ていた友奈は、素早く俺を押し倒した。

 

「んしょ……えへ、ごめんね、りょーちゃん様。もう我慢できないや。えいっ!」

 

 俺の腰を跨ぎ、剛直を掴んで自らに宛がう。

 ぬぷぷ、と生暖かい肉が俺の怒張を包み込み蠕動する膣襞に鼓動が高鳴る。

 

「ん、ぁっ! ぁ、あ……!」

 

 挿入と同時に友奈はビクリと身体を跳ねた。

 目尻に涙を浮かべ、ぷるりと乳房を揺らしながら、腰を動かす。

 

 肉竿を締め付ける膣襞。

 俺の腰に手を置いて、腰を打ち付け、深く咥えこむ。

 

「あっ、ぁ、いくッ、イク……ッ! 〜〜〜ッ!!」

 

 首を振りながら友奈が達した。

 額に汗を浮かべ、きゅっと瞼を閉じながらも、俺から子種を搾ろうと腰を動かす。

 

 その懸命な奉仕を見ていると、視界を東郷の下腹部に奪われる。

 ゆっくりと顔に近づいてくる蜜穴は花蜜が漏れていた。

 

 至近距離でマジマジと彼女の秘所を見る。

 媚肉から覗く粘膜。視線を上に上げて、豊かな乳房に隠れた東郷の顔を見る。

 

「亮くん……私にもご褒美が欲しいな」

 

 うっとりと目を潤ませた東郷は顔に触れるか触れないかの地点で、俺を待っていた。

 呼吸に合わせて東郷の白い腹肉が上下するのが見えた。よくよく見ると深緑の瞳は酩酊しているように揺れ動いている。それなりの量を飲んだのだろう。

 きっと明日には忘れていそうだ。そう思いながら陰唇に唇を重ね、中の身を味わう。

 

「ひゃうん! ぁっ、あっ!」

 

 東郷からのおねだりに唇で答えると、完全に東郷が腰を下ろす。

 柔らかく、温かく、瑞々しい媚肉に舌を這わせ、陰核と蜜液を口腔奉仕で楽しむ。

 舌の上で転がすと東郷の太腿が俺の頭を挟み、甲高い声で幾度も震えた。

 恥毛に鼻を埋め、一心不乱に彼女を悦ばせる事に全力だった。

 

「ゃ、あっ! あぐッ! ……っ!!」

 

 同時に友奈の腰を掴み、自らの腰を突き上げる。

 奉仕精神のメイドには主人としての褒美を与えなければ。

 

 東郷の裸体で友奈は見えないが、どういう反応かは見なくても分かった。

 彼女の嬌声と膣の締め付け、何年の付き合いだと思っているのか。

 

 突き上げる度に絶頂に浸る友奈を楽しむ。

 顔を密着させ、舌先で何度も東郷の媚肉を味わう。

 

「あっ、だ、だめ……イきます……っ」

 

 宣言と同時に達する東郷。

 その愛液を舐め取り、逸り立つ怒張を友奈が味わう。

 

 俺が絶頂するまで、淫らな水音は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

「園ちゃん」

 

「……かっきぃ~」

 

 優しい表情で、甘い声で、笑い掛けて来る。

 親愛を、友愛を、愛を感じさせる姿は、自然と頬を緩ませる。

 

「どうしたの?」

 

「どこに行ったのかなって。探してた」

 

「かっきー、私のこと好き過ぎでしょ~」

 

「そうだよ。知らなかったのか?」

 

「…………知ってる」

 

 園子は浴室にいた。

 珍しく三つ編みにした彼女は、ふにゃりと笑う。柔らかな香りが僅かにする色とりどりの薔薇を浮かべた浴槽。そこに身体を浸かる園子は薔薇を取る。

 温泉成分を含んでいると思わしき湯水が少女の鎖骨を伝う。

 艶やかな肢体を伸ばし、豊かな乳房が湯水に浮いていた彼女は手招きする。

 

「運動の後はケアしないとね~」

 

「一人で入ってたのか?」

 

「みんな、かっきーに寝かされただろうし。お風呂入った方がスヤスヤ眠りやすいんよ」

 

 軽く掛け湯して、浴槽に浸かる。

 じわりと湯水と熱が身体に伝わり小さく吐息を漏らす。

 ススス……と隣に近づいてくる園子の白い首筋が浴室の照明に照らされる。

 

 その綺麗さに思わず首筋に舌を這わせると、「きゃあ」という悲鳴と共に俺の肩を叩く。

 小さく頬を膨らませる彼女は、柔らかな肩を俺の肩に触れて体重を預ける。

 コテンと頭を俺の肩に置くと、

 

「どう?」

 

「似合うよ」

 

 髪型の話だ。主語は省いたが通じた。

 機嫌よく髪を揺らす彼女は上目遣いで媚びたような甘い声で囁く。

 

「わざわざ髪型変えて、豪華なお風呂に一人で入ってた訳?」

 

「かっきーを待ってたんよ。そろそろ来るだろうな~って」

 

「俺のこと、好き過ぎだろ」

 

「そうだよ。大好き。言葉では言い表せないぐらいに、好き」

 

 恥ずかしがる様子もなく、むしろドヤ顔で園子は告げる。

 むにゅりと豊かな乳房を押し当てる彼女は俺の陰茎に手を添える。普段の見慣れた中学生時代の姿から一変、もう殆ど大人の身体となった女の裸体はより美が増していた。

 大きな乳房が崩れるほどに密着する園子の太腿が俺の腿に触れる。くびれた腰肉を抱き寄せると、淫欲混じりの甘い呼気を漏らす園子の瞳には熱が灯っていた。

 

「……ん」

 

「んっ……」

 

 ちゅっと唇を重ねる。

 言葉はいらない。ただキスをしたいからする。

 それが俺と園子の関係だった。

 

 コリコリと彼女の乳首と俺の乳首が擦れ合う。

 甘く淫らな園子の吐息。

 悪戯が成功したかのような笑みで、俺の首筋に、乳首に、キスをする。

 

 いつの間にか俺の腰の上に乗った彼女は貝肉を陰茎に擦りつける。

 それでも挿入するつもりはないのか、ゆっくりと腰を動かしながら、俺に美乳を見せつけ、その谷間に顔を押し付ける。その動きに抗うことなく乳肉を甘噛みし、両手で好きに揉みしだく。

 

 プリンのような柔らかさ、餅のような質感。

 デザートを混ぜ合わせた魔性の乳房に、夢中になって吸い付き、噛みつき、痕を残す。

 

「ぁん! ……ふふっ。私の大きいでしょ? 好きだもんね~? ぎゅーってしてあげる」

 

 緩めた表情に淫靡さを見せる彼女が俺の頭を腕に抱く。

 薔薇の湯に濡れた乳房を口に含み、肉粒を舌で転がしながら、手で揉む。血が巡り反り立つ肉棒を園子はゆっくりと腰を揺すって自らの恥部に擦りつける。

 

「んむ」

 

 なんとなく彼女の柔らかな頬に手を置いて、唇を指で撫でる。

 ぱくりと当たり前のように口に含む園子はフェラチオの真似をするかのように、頭を上下に動かし、俺の人差し指を舌でねぶる。棒付きの飴を舐めるように唇で指を噛みながら俺を見つめる。

 琥珀色の、美しい瞳と視線を交わしながら、互いの身体を弄り合う。

 

「んっ、ッ……!」

 

 浴槽の中で身体が温まるまで、男と女が交わう。

 性器の挿入はない。それでもある種の満足と興奮と快感に俺の脳が甘く蕩ける。

 少しずつ園子の腰の動きが激しくなり、小さく震える。

 

「は、あ……」

 

 見つめ合う。

 唇を重ねる。

 乳房を揉む。乳首を弄られる。

 

 ざばりと園子が立ち上がる。

 ぽたぽたと雫が湯面に垂れ落ちる水音。

 眼前には、完成された女の裸体があった。

 

 ぷるりと揺れ動く乳房とツンと尖ったピンクの先端。

 白い肌は薄っすらと朱色に染まり、臍を伝う雫が下へと垂れ落ちる。

 上げた視線をゆっくりと下げる。目の前には髪色に近くやや濃いめの恥毛は湯を吸って肌に貼りつき、色付いた媚肉を片手で淑やかに開く。

 ぽたぽたと奥から溢れる液体は、明らかに湯でないことを彼女は目の前で見せてくれた。

 

「それで……どうしよっか?」

 

 熱に浮かされたような顔で園子が告げる。

 興奮気味の声には、期待と喜悦が混ざっていた。

 

 

 

 園子の寝室はサンチョ枕を始めとしたグッズが多い。

 彼女らしいファンシーな物が多い寝室だ。

 

 園子の匂いが溢れる部屋。

 いつも寝ているだろう彼女のベッドの上で、互いの性器を舐め合う。

 

 俺の肉棒を咥える園子が上。

 彼女の媚肉から水分補給する俺は下だ。

 いわゆるシックスナインという体勢で互いの成熟した秘所を味わう。

 

「ぁ、くっ」

 

 俺の鼠径部に圧し掛かる乳房が形を変えながら、園子が呻くような嬌声を上げる。刀のように硬く屹立した肉棒が少女の頬を叩き、先端から雫が飛ばす。

 小さく吐息を漏らしながら園子が肉竿に頬ずりする。

 その感触を竿で感じながら、じゅるるっ、ずじゅっ、と下品な水音を立てて俺は園子を味わう。

 

 園子の口腔奉仕は上質だった。

 物覚えの早い彼女らしい、奉仕は俺の限界ギリギリを攻めていた。

 寸止めの戦いでもするつもりなのだろうか。俺は彼女の誘いを断った。

 あくまで俺は獣のように、ひたすらに彼女の媚肉と陰核を舌と唇で奉仕して愛液を啜る。彼女が何度限界に達しようとも尻肉を離さず、肌越しに彼女の震えを感じ取った。

 

「ひぅぅぅっっ!! んっ……んぷッ──」

 

 再度咥えて、陰嚢を揉む園子。

 チラリと目線を向けると、重力で垂れ下がった乳房で挟み込み、亀頭に吸い付く。

 

 きゅっと腹部が縮む。

 柔らかな恥毛ごと貝肉を口に含み、園子の菊座に指を入れる。

 

「ッ! う、くっ、んん……っ!! ……まふぇないよ〜」

 

 懸命に怒張を頬張る園子は俺の動きにも止まらない。

 彼女の蜜裂に直接唇を重ねて蜜液を啜ると膝が震える。それでも園子は諦めず、浅ましい水音を立てながら、猛烈な吸い付きに俺は白濁を噴き出した。

 

「~~~~っ!!」

 

 ちゅるるっと尿道の中身をも吸い出されそうになる。

 柔らかな髪が俺の肌をくすぐり、根本まで飲み込んで精を呑み込む。

 

 せめてもの抵抗に彼女の蜜裂に口を押し付け、陰核を唇で弄る。

 音もなく溢れ、跳ねた蜜が俺の顔を濡らし、園子の尻がビクリと震えた。

 

「ん、ぶ……喉に絡むんよ……」

 

 何度か竿から口を離すが、しかし園子は何度も咥える。

 喉を鳴らし、コクンと嚥下する。

 美味しそうに精を味わって、汚れた竿を丹念に舐めとった。

 

「……」

 

 俺を見て唇を舐める園子。

 舌なめずりと共に俺の怒張を握る。

 

「元気にな〜れ」

 

 俺の上から降りた彼女は、寝台の上で仰向けになる俺に屈み込む。

 奉仕するとばかりに、乳房で怒張を挟み込んで視覚的な興奮をもたらす。独特の感触に肉棒が包み込まれ、俺に上目遣いで奉仕する園子の姿に確かな興奮を覚える。

 

「凄いビクビクってする……普段よりも大きいかっきーのを挿れたらどうなっちゃうかな?」

 

「さあ、壊れるんじゃない? ぐちゃぐちゃにしちゃうね」

 

「そうなったら責任取ってよね~」

 

 戦闘態勢となった怒張に、ちゅっとキスをすると園子はうつ伏せで倒れ込む。

 『YES』と書かれたサンチョの枕に顔を埋め、僅かに脚を開いて、チラリと俺を見る。

 唇が弱々しくも淫らに動く。

 

「……いつもより激しく」

 

 肉欲混じりの可愛らしいおねだりは、尻肉を振って行われた。

 俺はそれに応えて、彼女に圧し掛かる。背中と胸板を密着させ、少女のさらりとした金髪を撫でて頭を押さえつける。そのまま陰嚢が太腿の付け根に触れるほど、深く挿入する。

 

「……ぁ、ぁぁ」

 

 喜悦の吐息。

 強い雄に組み伏せられて、頭を押さえつけられ、屈服させられる。

 それを望むような体勢でぶるりと震える園子は髪の毛を振り乱し、喘ぐ。

 

「んぁ! ぁ、あぁっ!!」

 

 華奢な肉体は何度も跳ねた。

 快楽から逃れるように浮いた腰に、怒張を打ち付ける。

 何度も何度も俺は彼女を味わい、園子の暗い欲望を満たす。

 

「んんんっ!?」

 

 かき混ぜるように腰を動かす。

 膣襞は蠕動し、ちゅぷちゅぷと水音が結合部から響く。

 

 ぱんぱんと鼠径部で彼女の臀部を叩き、園子が「待って」と口にした。

 俺は待たなかった。獣のように彼女を貪るとピンと脚を伸ばす。

 枕に伏せた顔をチラリと俺に向けて、唇を窄める園子。その意図を読み取り、貪るように唇を重ねながら腰を打ち付ける。パンパンと鼠径部で尻を叩くとビクリと身体をのけ反らせる。

 

「ぁぁ~~~~!!!」

 

 また園子が嫌々と首を振って達した。

 それに合わせるように、ピストンを繰り返す。

 

「まっへ! まっへよ、こうさん……ぁぁッ!!」

 

 俺の身体から垂れる汗を彼女に沁み込ませるように密着する。

 顔をのけ反り、喉を見せる園子の口に指を突っ込み、舌を捕まえる。ざらりとした舌に指を絡め口内を凌辱する。耳を甘噛みし、彼女の弱点を肉竿で擦りつけると本気の力で逃れようと暴れる。

 

 だが、男女の力の差は年齢を経る度に変わる。

 無理やり彼女を押さえつけると枕でくぐもった喘ぎ声が漏れる。

 玩具を扱うように、一気に腰を押し込む。

 

「ぁ、ぁぁあああっっ!! ……うぁあああ~~~~っっ!!!」

 

「ぐっ、ぅ」

 

 視界が酩酊する。

 意識が白く染まる中で、彼女の最奥に子種を注ぎ込む。

 

 きゅっと尻肉が締まり、膣襞が白濁を呑み込んでいく。

 

「は、ぁ……」

 

「ん……」

 

 汗まみれの身体同士を密着させ、俺たちは互いの顔を見て唇を重ねる。

 ちゅっ、ちゅっと恋人のように唇を合わせると、園子が囁く。

 

「……収まった?」

 

「おかげさまで」

 

「起きたらもう一回しよ? ……さっき皆の前でした乱暴なエッチ、凄かったな~。次は正面から抱き合ってしよ? ……ほら、かっきー。それはそれとして、ぎゅ〜ってして良いよ」

 

 腕を背中に回し抱き合って、身体を重ねる。

 その事に、どうしようもないほどの幸福を感じながら、俺は眠りに落ちた。

 

 

 




王様ゲームの話は終わりです
感想、評価、誤字報告ありがとうございます。


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【番外】伝染する熱

 少女の作った料理を口にする。

 家庭料理、一つ一つのオカズには愛すら感じる美味しさ。誰が作ったのかが分かる味は、思わず頬を緩めてしまう。俺をジッと見つめて何かを待つ少女に首肯を返した。

 

「美味しい」

 

「良かったー! 東郷さんと一緒に作ったからいっぱい食べてね」

 

「……この肉じゃがは友奈が作った?」

 

「わっ、せいかーい!! 凄いねー!」

 

 まるで花が咲いたような笑顔。

 思わず抱きしめてしまうと困ったような嬉しそうな顔で彼女は笑う。

 ポンポンと背中を叩くと彼女は優し気な声で俺の耳に囁く。

 

「そんなに強く抱き締めなくても、どこにもいかないよ?」

 

 ぎゅーっと抱き締め返される。

 そのままスリスリと頬を押し付けて、目を閉じると鼻孔に漂う甘い香りで肺を満たす。するとどうだろうか。身体の中の細胞が歓喜に震え、脳味噌が溶けていく感覚があった。

 柔肌から伝わる体温、穏やかな鼓動、甘い吐息と抱擁に安心感を覚える。

 

「よしよ〜し。子守唄歌う?」

 

 抱き締め返す。そして今日もまた確信に至る。

 ──これは麻薬だ。この甘美な味わいが間違いなく、俺を狂わせるのだ。

 

「ワ……ァ……」

 

「な、泣いちゃった……」

 

「最近の亮くんは友奈ちゃんに抱かれると泣いちゃうのよ」

 

「いやいやそんなことある筈が……なあ?」

 

「まあ人それぞれですから……それに泣き出すのって結構前からじゃ……」

 

「アハハ……よーし、亮ちゃん口開けてー。あーん」

 

「……! 友奈ちゃん。私にも──」

 

 大赦が用意した寄宿舎の食堂。

 勇者や巫女が主に使う食堂には他にも少女が多い。うどん、蕎麦、ラーメン……麺類の好みは様々な彼女たちだが、それ以外の定食も当然食べる。

 ……一部は水を飲むようにうどんもセットで頼む子もいるが。

 

 この食堂は俺も利用するが、今日は珍しいことに弁当持参である。

 自作ではない。なんと友奈と東郷が作ってくれたのだ。

 

 とても嬉しい。

 だが、手間ではないのかと躊躇する俺の内心を読むように東郷は俺の腿を撫でる。

 彼女は優雅な所作で自作の弁当を口にしながら、

 

「良いのよ。お昼ご飯を食べたら寄宿舎から皆で商店街に行くつもりだったから。何より、亮くんに食べて欲しかったから作っちゃった♡」

 

「東郷さん……友奈……すき……」

 

「私とも抱擁する? もっと凄い事は夜じゃないと駄目だけど」

 

「……する」

 

「分かったわ。おいで亮くん」

 

「……先ほどから亮之佑先輩は何をしているんですか?」

 

「見ちゃ駄目よ、亜耶ちゃん。アレはもう手遅れよ」

 

 ふかふかの東郷の身体を堪能しながら、彼女たちの優しさに鼓動が高鳴る。

 まるで介護されているかのようだった。

 二人の間に座る俺は、彼女たちの手製の弁当に再び箸を付ける。

 

「確か……本屋だっけ? あと、服とか。えーと、誰と行くんだっけ?」

 

「うん! えっと……ヒナちゃん達やアンちゃん、せっちゃんに……あと、みんな!」

 

「今年もまた旅館にお泊りするでしょう? 女の子は色々準備があるのよ」

 

 精神的にはもう女の子という年齢ではないという茶化しはいらないだろう。

 彼女たちが楽しければそれで良いのだ。

 笑みを見せて黙々と弁当を口にする俺に、隣に座る友奈は何を思ったのか箸を止める。

 

「亮ちゃん、本当に大丈夫? 私の……おっぱい揉む?」

 

「もむ……」

 

「おおい!? 公衆の面前だゾ。流石にビバークは止めタマえ!」

 

「……球子や銀もビバークしてるじゃん。まあ食後にするよ」

 

「あれは同性だから許されるのであって亮之佑がするのは、その、なんか違うだろ!」

 

「同性がするのも駄目よ、球子さん。こういうのは特別な人とじゃないと」

 

 誰もが見惚れそうな艶のある笑顔を見せる東郷。

 その顔に何を見たのか怯えたような表情を球子は浮かべた。丁度正面にいる球子と曖昧に笑う銀は、今日のショッピングには行くつもりはないらしい。

 勇者部の少女たちは、俺が見ている限り仲良しだが、毎回大人数で移動する訳ではない。趣味や考えの合う者同士で休日に行動する事もある。

 

「若葉ちゃんは行かないんですね」

 

 巫女のひなたの言葉にうどんを啜る手を止める若葉。

 チラリと俺を見る彼女は呆れと苦笑を混ぜた口元を拭くと頷く。

 

「ああ、芽吹や夏凜、歌野たちと楽しい訓練だ」

 

「楽しいんですか……?」

 

「汗を流すのは気持ちいいぞ。亮之佑もどうだ?」

 

「夜のプロレスかデートの誘いなら乗るぞ、ワカバーン」

 

「なんだその呼び方は。……まあ、あれも汗は流せるが……こんな昼間に破廉恥な事を言うな」

 

「じゃあカラオケは? 破廉恥じゃないだろ?」

 

「まあ、それなら……」

 

「若葉ちゃん?」

 

「違うぞ、ひなた」

 

「まだ何も言ってませんよ。そのカラオケ、私も行きたいですね……亮之佑さん」

 

 別のテーブルでは遠慮がちに千景が口を開く。

 

「花本さん。一緒にショッピングに行かない? と言ってもゲーム屋中心になるけど」

 

「……! よろしいので……いえ、行きます!! どこまでもついていきます郡様!」

 

「ぐんちゃんが人を誘うなんて……。……なーんてね、アンちゃんは本屋で何買うの?」

 

「新作の小説が出たのでそれを……」

 

「……エッチな本?」

 

「ぶふっ!?」

 

 周囲のテーブルも盛り上がる。

 昼の時間には、見目麗しい少女たちが集まって食事を摂る事が多い。全員が知り合いであり、それなり以上の長い付き合いを共にしている。

 互いのあられもない姿を知っている以上、一人の男が入り込んだところで騒ぐ者はいない。

 

「見ろよワカバーン、ぐんちゃん先輩が人を誘ってらぁ。成長したな」

 

「ああ。……だがその呼び方は定着させないぞ」

 

「ぐんちゃんって呼ばないで、加賀くん。あと……その……今日花本さん達と買い物に行って何か面白いゲームがあったら……また部屋で一緒にしましょう……?」

 

「いいよー。でも今度カラオケにも一緒に行こうぜ」

 

「……まあ、いいけど」

 

「郡様がカラオケ……!?」

 

 ほんのりと頬を赤らめて、上目遣いで俺を誘う千景。

 はわわ……と何かを察したような表情で眼鏡の巫女が千景の横顔を見る。

 

「うん、美味しいな」

 

 そして俺はまた弁当を食べ始める。

 

 俺の視界に映る少女たちの裸体は鮮明に詳細まで記憶している。それは彼女たちもだろう。俺という存在が彼女たちの仲を家族のような関係に至らせた、などと自惚れた事を言うつもりは無い。

 家族なんて高尚な物ではない。爛れた肉体関係で作られた繋がりだ。

 だが同じ肉竿を味わった者同士、通じる物があるかもしれない。

 正しく──、

 

「竿姉妹か」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「いや……一口だけならオカズを交換しても良いぞ。愛妻弁当を自慢したい気分なんだ。……東郷さん、友奈、ダメかな?」

 

「愛妻……良いわよ」

 

「良いよ! みんなで食べるともっと美味しいね!」

 

 それにしても、彼女たちが作ってくれた弁当は美味しい。

 その美味しさを伝える為に、目の前にいる球子と銀に分け与えるのもやぶさかではない。東郷と友奈の許可を貰って、一口分だけ球子と銀の定食のオカズを交換する。

 

「あっ、やっぱり須美の味……でもちょっと違うのは東郷さんの味ですね」

 

「愛が違うのよ、銀」

 

 両手でハートを作り、ポワワ……と何かの光線を打つ仕草を見せる東郷。

 ノリ良く受け取った彼女は苦しそうに呻きながら、俺を見る。

 

「東郷さんの愛が重い……」

 

 そのやり取りを尻目に球子は咀嚼しながら頷く。

 

「ふむ……美味いな。これが愛か。どれ、こちらからは野菜を進呈しよう」

 

「食べないと大きくなれないぞ」

 

「それはマウンテンの話か? 身長の話か?」

 

 肩を竦めて明確な回答を拒否する。

 マウンテンの殆ど無い組は気にせず食事を進めた。

 

 

 

 

 

「亮之佑ーっ」

 

「どうした、球子?」

 

 食事を終えた頃だった。

 ショッピング組は外へ、訓練組は海岸に向かい、俺は球子や銀と雑談をしていた。食堂ではなく、彼女たちが普段寝泊まりしている寄宿舎、銀の部屋で俺の携帯端末を囲む。

 

「ついに見る時が来たか……」

 

「色んなビバーク動画を撮って保存しているんですよね? 千景さんとか若葉さんとかの!」

 

「ほっほっほ、気になるかな?」

 

「はい! 大人の関係って感じがして」

 

 男子生徒のノリで彼女たちは猥談に近い内容の話をしてくる。

 女性たちの猥談はかなりエグイと聞いていたが、彼女たちは無垢でありながら同性の胸元を登頂し、セクハラをする姿は、男側に近しい魂を感じた。

 ようするに、他の少女たちと違い、そこまで気を使わなくても良かった。

 

「もちろん、女性に対する礼儀は忘れないから安心してくれ。球子、銀」

 

「お、おう」

 

 チラリと互いを見る少女たち。

 照れ臭そうに笑い合う彼女たちは満更でもない様子だ。

 

「それじゃあ、再生するぞ~」

 

 やんちゃ坊主にも見えるがその中には確かな乙女を見せる少女。コクリとコップの中のジュースを何度も飲む球子に苦笑しながら、彼女たちに見せる動画のピックアップを開始する。

 やがてこれだと決めて動画を再生する。

 俺の両隣に座る球子と銀は、これからAVを見る男子生徒のように真剣な様子だ。

 

『りょーちゃん』

 

「ん?」

 

 薄紅色の髪からはふわりと甘い香りが漂うかのようだ。

 桜の髪飾りと、可愛らしい笑顔が特徴的な少女が映る。

 

『りょーちゃん! しゅきー!』

 

『俺も好きだよ』

 

「うわ……亮之佑。その笑い方は止めた方が良いと思うゾ」

 

「なんだよ」

 

 画面越しに映る少女、親愛を瞳に宿した友奈はえへへ、と笑う。

 能天気と周囲には言われているが、はっきり言って節穴だと思う。こうして彼女と共に過ごしているだけで、何気ない仕草や、はにかんだ笑み、さりげない触れ合いに心が和むのだ。

 防人サーが亜耶に依存するように、俺もまた友奈を欲し、求めているのだ。

 

『いつもお疲れ様! えっとね……その……何を言おうかな……や、やっぱり撮るのやめない?』

 

 隙の多い所も、天然な所も、自分よりも他人を優先する所も。

 ちょっと拗ねると頬を膨らませるのも、俺にはキチンと不満を口にしてくれるのも。

 ふとした時に見せる凛々しい表情や行動も、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に夢を見てくれる所も。

 良い所も悪い所も含めて、俺は友奈が好きだった。

 

『えへへ……りょーちゃんといるとお腹のココがね、ぎゅーってなるんだ。あっ、押しちゃ……』

 

 結城友奈といると心が洗われるようだ。

 洗われて、溶けていく。その笑顔に溶かされるのだ。

 

「それが友奈ちゃんの魅力よ!」

 

 東郷が背後から声を掛ける。

 忘れ物でもあったのか。驚く球子や銀に微笑を見せると、俺の身体をさらりと抱いて自らの乳房を押し付ける東郷。

 俺にのみ熱を帯びた深緑の瞳を向けると、当たり前のように口づけを交わす。

 そのまま銀の頭を撫でると、俺に頷く。

 

「……ほどほどにね。行ってくるわ」

 

 東郷が去った後、俺を揶揄うように球子は笑みを浮かべ、銀も便乗する。

 今更、東郷の行動に対して誰かがツッコミを入れることなど無いのだ。

 

「ただの結城とのイチャイチャ動画じゃないか? マウンテンは!?」

 

「えー! こんなにラブラブな感じなのに園子さんや東郷さんに手を出してるんスか!?」

 

「二人とも俺の妻みたいなものだから」

 

「じゃあ、風や……夏凜……若葉や千景……ひなたは?」

 

「セフ……身体だけの……あー、男女の関係かな?」

 

「とんでもない男がいたぞ。……で、東郷も行ったことだしカモフラージュは十分だろう? 誰からでも良いから、早く見せタマえ」

 

「はい、球子さん。犯罪ですね、証拠を掴む為に他の動画もお願いします!」

 

 世界は変わらなくても、人の精神は少しずつ変わっていく。

 無垢だった少女が男を知って女に変わるように、セクハラ止まりで性に対しては無防備な乙女もまた、健全な性欲を見せるようになった。

 それは、満開の後遺症でもあり、周囲の隠せぬ淫気に釣られたからか。

 以前の彼女たちなら笑って誤魔化して、有耶無耶にして解散していた筈だった。今は、好奇心に抗えず、無意識に警戒していた深淵に自ら脚を踏み入れようとしていた。

 

「……ほら、もっと近づいてごらん」

 

 素直に身を寄せ合う彼女たち。

 薄着で無防備な少女たちは隙間から乳首が見えている事にも気づかない。

 

「ほら球子、銀。この子は誰だと思う?」

 

 やや低い音量で流れ出す喘ぎ声。

 流れ出す動画よりも、俺は彼女たちの表情に注目した。

 

「ん、んー……こんなに深々と入るんだな……」

 

「え、えー。わぁ……、千景さんとか? それともひなたさん?」

 

「……千景はもっと太腿が細いから……東郷か? ひなたじゃないか?」

 

「ま、まさか弥勒さんとか?」

 

「い、いや、……でも、そう言われるとそんな気が……いや若葉か?」

 

 赤らめた顔でチラチラと動画と互いの顔を見る少女たち。

 モジモジと内腿を摺り寄せて、健全な性欲に身体に熱を帯びていく。

 

 見知らぬ友人の痴態、首から下の裸体とアップになる結合部。

 にじゅりと泡立つ恥部と下品な水音に、一オクターブ高くなる喘ぎ声。

 

 先ほどまで一緒に食事をしていた誰かの痴態。

 官能小説や動画に見える見知らぬ誰かではない、見知った友人の揺れる肢体と絶頂の姿。

 生々しい女の姿に、球子も銀も黙り込む。

 

「ん? 二人増えたぞ」

 

「四人でシたんですか? 凄いっスね……! 園子から鬼畜と言われるだけはあります!」

 

 動画は度々変わる。

 顔は映さず、代わりに乳房や恥部が汗と愛液で濡れた姿をさらけ出す。正常位や後背位、カメラマンの協力で後背位や背面駅弁などの時にはキチンと正面から女の淫らな姿を映し出す。

 そして、顔が映った。

 

「……あんず?」

 

「え……須美? 園子?」

 

 パンパンと肉棒で突き上げられる少女。 

 呆然と呟いた球子の声に反応するかのように動画の中で杏が呟いた。

 

『ぁっ、ぁ……ィゥッ……タマっち先輩、きいてっ……ァンッ!!』

 

 ビクビクと肢体を痙攣させ、結合部からは潮を噴く。

 だらしなく身体を震わせる恥部に屈み込むように、裸体の須美が跪く。

 

『須美ちゃっ……それっ、ダメっ、ダメ──ッ!!』

 

『そのっち、ここよね?』

 

『うん。ほら、あーんってして』

 

『……あーん』

 

『ギッ~~~~っっ!!!』

 

 のけ反る杏の唇を奪うのは動画上の俺だ。

 頬を膨らませ、激しく舌を絡めている姿を食い入るように球子は見つめる。

 閉じようとする杏の両脚を大きく広げ、肉竿に貫かれた恥部を犬のように舐める全裸の須美と園子の姿を呆然と見る銀。

 

「なんで……二人とも……」

 

『銀、聞いて』

 

『ミノさんだけなんだよ~。かっきー先輩とコレをしてないのは』

 

 銀の言葉に反応するように彼女たちの視線が画面越しに銀を捉える。

 きゅっと杏の乳首と陰核を小さな指で弄り、喘ぎ声と小水を漏らさせる少女たち。息絶え絶えの様子で杏が顔を上げるとまるで球子を見つめるように諭す。

 蕩け切った甘い声だったが、必死で球子に何かを伝えようとしていた。

 

『満開の後遺症で、二人が全然シてないから心配で……。我慢しないで、銀ちゃん、タマっち先輩』

 

 言葉の合間にも杏が園子と須美に弄ばれる。

 男に抱き抱えられ、最奥を貫かれながらもメッセージを届ける。

 

『こんなにも……ぁっ、満たされるから……ぁぁああッ!!』

 

 涙を浮かべ法悦から無理やり意識を取り戻す杏。

 勇者のような姿だが、二人の淫魔によってあっけなく空へと昇らされる。

 

『す、須美ちゃ……っ! まって、いま喋っているところだからぁ……!』

 

『もう十分に伝わっていると思いますから嫌です。銀、見てる? いい加減に治療の一つもちゃんと受けなさい! 私たちがシているのも気づいているでしょう!』

 

『一肌どころか全部脱いじゃっているからね~。ちゃんと届くと良いなぁ』

 

『そこは亮之佑さんを信用してるわ。ひゃぅん!? そのっち、何を……』

 

『イエ~イ、ミノさん見てる~? かっきー先輩とエッチしてるんよ~』

 

 ようやく下ろされた杏の恥部からは白濁が垂れる。

 それを指で掬う園子が須美の口元に運ぶ。そのまま杏の裸体に倒れ込み肉竿に二人で吸い付く。カメラを意識しているのか、淑やかに肉竿を舐める須美と、愛おし気に亀頭にキスをする園子。

 動画の中の園子は須美と手を繋ぎ、剛直に頬ずりしながら画面に目を向ける。

 

『かっきー先輩……今見ているって事はもう二人ともエッチしているんでしょ~? そういう雰囲気になっちゃったらお手の物だもんね~。……やっちゃえかっきー先輩!』

 

『俺を過信し過ぎだろ……ほら、しゃぶれ』

 

『んぷッ!? ──んむむ』

 

 画面越しに映る聡明な眼差し。

 肉棒を咥えながらも流石は園子だった。背丈の大きさなど関係ない。

 

 実際に動画の途中からそういう雰囲気になっていた。

 園子の言葉は、少女たちには届いていなかった。

 

「んッ!! っ、ぁ……! ……これが……亮さんの……ほっ、ホントに入っちゃった……!」

 

 小さく喘ぐ銀。

 最初に女になったのは、彼女だった。

 

 怒張をきつく締め付ける媚肉。

 濡れてはいても揺する度に俺の手を強く握る。

 

「ぁ……それっ、気持ちいい……」

 

 小さな陰核を指で弄る。

 無毛の恥部は撫でやすく、指で転がし押し潰す度に、彼女の声が少しずつ甘くなっていく。ゆっくり、ゆっくりと呼吸をするようなピストンで銀の媚肉を画面で見た肉棒で抽送する。

 

「んむっ、んっ………んん……っ」

 

 その間、球子は俺のキスの虜だった。

 ずっと気づいていたのだ。

 以前のキス事故以来、彼女の眼差しには僅かながら男を見る者の色を含んでいたから。

 

「球子。キス、好き?」

 

「うぁ……頭がフワフワする……そりゃあみんな、チューする訳だなぁ」

 

 そう言いながら俺に衣服を脱がされる球子。

 キャミソールに短パンというラフな格好は脱がせやすく、生まれたままの姿にするのには片手で十分だった。ヘアゴムを外し髪を下ろした球子は涙混じりの瞳を濡らしてキスをせがむ。

 

 慎ましい乳房をゆっくりと手のひらで捏ねながら、口腔行為に耽る。

 舌の裏側の、頬裏の柔らかさを教え、舌を絡ませながら自らの手で秘所や乳頭を触らせる。キスと自慰で蕩けた表情を見せる球子を横目に、小さく感じ入る彼女の陰核と乳首を重点的に弄る。

 

「あっ、あのっ、亮さん。……アタシ、もう大丈夫ですから……」

 

「何がだい?」

 

「痛くなくなってきたので……ァっ、動いても……いいですよ」

 

「そう? じゃあゆっくり動くからね」

 

 球子とキスを楽しんで、銀の初々しい膣を愉しむ。

 スローピストンとクリトリスを弄り、銀の反応を見ながら徐々に射精衝動を高めていく。銀の隣には動画内で俺に犯されている園子と須美の姿を見せると、きゅっと怒張を締め付ける。

 携帯端末から響く女たちの感じ入った喘ぎ声。水音。

 感化されるように、目の前の少女たちの身体もより熱くなる。

 

 自分が気持ち良くなるよりも相手の事を。

 愛撫を重ねて、銀ともキスを交わす。

 優しく、姫様を抱くように、優しく、気持ち良くする。

 

「銀、可愛いよ、銀」

 

「んッ……は、ァっ、これ……りょう……さぁん……! あ……ッ!!」

 

 誠心誠意の愛撫の末に、俺は射精に至る。

 どくっどくっと狭い肉壺に俺の証が注ぎ込まれる。

 

 お腹を撫でる銀はそのままゆっくりと瞼を閉じる。

 小さく寝息を立てる彼女の身を綺麗にしながら、

 

「球子も可愛いね……杏に負けないくらい」

 

「うるさぃ……ふぁ! そんな取り繕った言葉であんずは騙せても、タマは騙せないからな……!」

 

 言葉だけの反抗的な彼女だが、その秘所は濡れている。

 先ほどから挿入した一本の指を咥える媚肉、茂みの殆ど生えていない秘所は濡れていた。小さな肉芽を擦ると、あられもない声を上げた球子は口を噤み、無言のまま銀の隣に寝転がる。

 

「一夜の過ちってヤツだから……はやくしタマえ……」

 

 彼女の言葉に従って、俺は球子を貫く。

 媚肉に締め付けられる剛直でゆっくりと抽送する。

 

「ん、ぁ……!! くぅぅ……っっ!」 

 

 涙に濡れた顔を腕で隠す彼女の乳首や陰核を指で弄る。

 きゅっと膣が引き締まる中、銀の愛液と球子の愛液を潤滑油に剛直でトントンと最奥を貫く。

 

 腰に脚が回り、尻肉が締まる。

 彼女の乳首を弄り、唇を啄むように重ねる。

 

 あまり長く続けるべきではないだろう。

 痛みを感じないように愛撫やキスで誤魔化すのも限界はある。

 

「馬鹿にするな……タマはぜんぜんっ、痛くないぞ……」

 

「へー」

 

「だからっ、そんなにタマに……優しくするなぁ……!」

 

「じゃあ、もっとキスしよっか」

 

「んむ──」

 

 ゆっくりと腰を動かすと球子の声に甘い物が混じる。

 強張った身体が解れ、角度や勢いを変えて剛直で彼女を味わう。

 激しさは無いが、球子を知ることができる満足感があった。

 

「やっ、ぁ、ぅ、んん……っ、んぅ……!」

 

 声を出すのは恥ずかしいらしい。

 球子の甘い喘ぎが性感を刺激する。

 

 数十分ほど小さな身体を堪能して、白濁を吐き出した。

 少女の最奥に人生で初めての男の子種が注がれて、小さく震える。

 

「ぁぁ~~〜ッ!!」

 

 恍惚に浸る球子。

 その裸体を抱き締めて、眠り始めるまで心音を重ねる。

 

「………」

 

 見下ろすと、二人の少女が目を閉じていた。

 薄い胸元を上下させて、あられもない姿で、秘所からは白濁が垂れていた。

 

 小さく吐息を漏らし、彼女たちの着替えと介抱をする。

 銀はベッドに、球子は彼女の自室のベッドに送り届けて、俺は帰ることにした。

 

 

 




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【番外】奇行と骨付鳥

 同世代の同性とも遊ぶ事はあるが、勇者部の美少女たちと遊ぶのは楽しい。

 他の一般人では正確に覚えていられない一年、その中で忘れられない一日を共に作り、共に進む事ができるからだ。

 それでも最近はマンネリ化していると考えた俺はピッカーンと閃いた。

 

「それで急にどうし……んむ──!?」

 

 早速だが、今日も楽しく思い出を作ろうと思う。

 必要なのは購入してきた様々なフルーツ味の飴玉だ。思い出作りに必要なルールは簡単。

 飴玉を口に含んで、生意気な事を口にする勇者や巫女に口腔行為で与える。拒絶している間は好きに彼女たちの身体を弄り、自らの口に飴玉を受け入れるまで悪戯を続ける。

 なお、気分によっては悪戯を続けても良い。

 

「そんなっ、げーむじゃっ、まっ、きゅうに……」

 

 ミルキーブロンドの長髪を手に取りながら、伊予島杏の唇を奪う。

 レモン味の飴玉は彼女の柔らかな舌を転がり、口端から唾液が垂れる。細い両手首を片手で持ち上げて拘束、ブラウスから覗く乳房を揉みながら、片膝をスカート奥の恥部に押し付ける。

 

 何故、こんなことを思いついたのか。

 自分でも分からない。ただ、純粋に刺激的な事をしたいと思った。

 多分、後で吊るされるか殴られるだろう。

 

「んっ、ふっ……あっ、はぁ……さいへっ……ッ!」

 

 柔らかな唇を啄まれた杏は既に飴玉を受け入れている。

 ブラから解放された片乳を手のひらに収めながら、ゆっくりと乳首を弄る。同時にスカートの奥で布越しに湿った秘所を膝で揺すると、きゅっと内腿を閉じる。

 

 傍目からは俺が杏を襲っていると見えるだろう。

 ただ、飴玉を口で渡すついでにちょっと悪戯をしているだけなのに。

 

「~~~~ッッ!! ……! は、ぁ、おっ!」

 

 飴玉の大きさが口内で随分と小さくなってしまった頃。

 俺は杏の恥部に指を挿入していた。

 締め付ける媚肉からは蜜液が垂れ落ちる中、絶頂に達する杏を見下ろす。

 

 自室で本に囲まれながら、男に遊びと称して法悦に昇らされる。

 蕩けた眼差しと、震える睫毛。

 ブラからこぼれた乳房、ツンと尖ったピンクの乳首、大きく開いた脚。衣服の乱れた杏は、俺と唇を重ねて、肉壺の弱点を指で弄られ続ける。

 

「それっ、きもち……ぁ、あッ、イク、イクッ……!」

 

 スカートを捲り上げ、大きく開いた両脚を震わせて腰を浮かせ、乳房を揺らす。

 淫臭を漂わせる杏の陰核を柔らかな陰毛と共に指で愛でると、彼女は嫌々と首を振る。左手を陰核に、右手を彼女の肉壺の悦ぶ場所に置いてそれぞれを弄ると拒絶が強まる。

 

「だめ、だめっ、両方はだめっ、だめっ──!! あああっっ!!」

 

 彼女の膣内で指を曲げ、ぞりりと擦る。

 魚のように杏の身が跳ねた。

 陰核を親指で押し潰し、膣襞を指で擦ると小水を噴いた。

 床や、自身の肌や恥毛を濡らす姿に、俺は締め付ける膣を無視して、指を動かす。

 

「ぅああああっっっ!!」

 

 温厚な彼女に似合わず、激しく腰を跳ねさせる。

 指ピストンで、ビクンと腰を前後に動かす。

 

「ダメッ、あっ、ああっ、またイクッ!」

 

 あられもない悲鳴と共にピンを背中を反らす彼女は数度痙攣を繰り返す。荒々しい呼気を繰り返す彼女の尻が俺の膝に落ち、徐々に落ち着くのを見届ける。

 

「はぁー……ハァ…………強引ですね」

 

 愛液で濡れた手を彼女の頬に宛がうと、少女は安心したように目を閉じる。

 彼女をベッドに寝かせ、白の清楚なショーツ、ついでに穏やかな顔と蜜液で濡れそぼった秘所が映るように携帯端末に収める。

 その途中、指で陰唇を割り開くと、トロリと愛液が奥から垂れた。

 妙な興奮と共に杏の自室から廊下に出て、次の少女を探す。幸い、標的はすぐに見つけた。

 

「さーてお次は……おっ?」

 

「ハロー、亮之佑さん。ちょうど良かった」

 

「農業王」

 

 『農業王』と大きく書かれた白のシャツを着た少女と出くわす。

 白鳥歌野。諏訪で勇者をやっていた少女だ。農作業をしていたのだろう土の匂いがした。

 

「この前作ってくれたそば、美味しかったよ」

 

「それはグレートね。そろそろ蕎麦党に本格的に鞍替えしない? 私は七味の量にどうこう言わないから。今ならこの大根も付けて──んむっ!?」

 

 出会い頭にキスをする。

 硬直する彼女の頬に手を置いて、優しく唇を重ねる。ゆっくりと背中をなでると農作業をしていたからか汗ばむシャツが手のひらに付着する。そのまま弄るとブラホックを見つけて外す。

 

「……ん!? きゅっ、急に大胆むぐッ!」

 

 密着した乳肉の揺れ率が上昇するのを確認する。

 あくまで紳士的に唇を重ね合わせ、目を白黒とさせる間に唇の隙間から舌を入れる。

 

「ん、りょ、っ、まっ……! ……!」

 

 ドサッと大根が地面に落ちた。

 俺は自らの男根を彼女の下腹部に押し付けながら彼女の口腔に飴玉を差し出す。逃げ出さないようにと尻を掴んでいた手を外し、歌野が飴玉を口に含むと離れる。

 唇同士を繋ぐ透明な糸を歌野は虚ろな目で見ながら、

 

「い、今のは……」

 

「何味?」

 

「えっ、いやっ、え?」

 

「何味だった?」

 

 唖然とした顔の歌野は見ていると笑ってしまいそうだった。

 ニッコリと笑みを見せながら落ち着かせるように、重ねて問い掛ける。やがて、ころんと口の中で飴玉を動かす歌野はゆっくりと呟く。

 

「……メロン?」

 

「正解~。じゃあ、そういうことで」

 

「えっ? えっ?」

 

「挨拶ってこと。欧米じゃよくあるだろ?」

 

「エッ!? いや、流石にこんな感じじゃ……あれぇ……?」

 

 いつものなんちゃって英語を使う余裕も無い歌野に背中を向けて歩き出す。

 挨拶という名目と勢いで大抵の勇者はいけそうだなという実感と共に次の標的を探す。

 

 それから俺は鷲尾須美、乃木園子(小)をそれぞれ別の場所で見つけて飴玉をあげた。

 須美は恍惚とした表情を見せ、園子(小)はいくつかの飴玉を溶けるまでねだった。

 その後、寄宿舎を歩いていると呆けた声が聞こえた。

 

「「あ~」」

 

「これは良いな」

 

「だねー!」

 

 と、談話室に設置されていた扇風機で遊ぶ少女二人を発見した。

 少女の名は高嶋友奈、そして乃木若葉だ。

 男がいない時の女子高のようなノリで制服のスカートをたくし上げる彼女たちは風を下腹部に感じて遊んでいた。暑さも随分と収まってきた今日この頃だったが、女子は蒸れなどの問題もあるのだろう。

 俺は無言の優しい眼差しでカメラに収める。

 

 高嶋は可愛らしいピンク色のショーツだった。

 

「だが若葉は何も穿いておらず、恍惚な表情を浮かべるとおもむろに手を……」

 

「穿いてる! 見ろ! ふざけた事を言うなよ!」

 

 顔を真っ赤にしてスカートを臍までたくし上げる若葉。

 堂々と水色のショーツを見せつける彼女は、高嶋に制止される。

 

「わ、若葉ちゃん、そんなにスカート捲っちゃダメだよ!」

 

 動画にしておいて良かったと思いながら携帯端末を仕舞い込む。

 俺を睨む若葉は高嶋の言葉に頭を振る。

 

「この男とはもう今更だろう。互いに見る所まで見て、……こ、子作りまでしているのだから今更……」

 

「あまーい! ぼた餅以上に甘いぞ、ワカバーン。ちょっとエッチなショーツを穿いて俺を意識してるエチエチワカバーンよ……おっと、暴力は止めようぜ。平和主義に乾杯しよう、ハッハッハ!!」

 

「放せ友奈。夏に頭をやられた亮之佑を地獄に出荷してやる」

 

「だ、ダメだよぉ」

 

 顔を片手で掴んで粉砕しようとする若葉を高嶋が抑える。

 普段から鍛えているだけあって、高嶋の拘束を抜け出せない若葉に俺は正面から抱き着く。

 

「おい、なんの……んむッ!?」

 

「……わあ」

 

 そして唇を重ねる。

 今度はグレープ味の飴玉は思ったよりも抵抗なく若葉の口腔に送り込まれる。

 サラリとした髪を撫でると、彼女の鼻息が荒くなる。

 

「…………」

 

 ほんのりと赤らんだ耳の若葉は無言で俺の腕を掴む。

 ぎゅっと力強く掴む彼女は言葉とは裏腹に欲求不満だったのか、俺の尻を掴む。

 

 荒い呼気で俺を掴む若葉と情熱的なキスをする。

 高嶋ごと抱き締めて、硬くなった怒張を若葉の下着越しに秘所に擦りつける。

 

「んっ、ッ……! ……っ」

 

「……欲求不満若葉ちゃん? もう濡れてるよ?」

 

「……う、うるさい。生理的な……ぁん! ……ッ」

 

 動かす指先からくちゅっと水音が響く。

 唇を離すと混ざり合った唾液が淫靡な橋を作る。それが途切れる前に、誤魔化すように男らしく俺の唇を奪う若葉。甘い香りと遠慮の無い姿勢になんとなく心地よさを覚える。

 図々しさへの苛立ちは無く、遠い親戚からの触れ合いへの楽しさが勝る。

 

「ぁっ、ん、っ」

 

 甘えるような声と、トロンとした表情。

 耳をくすぐる手に顔を押し当てる若葉は媚びるような瞳を揺らす。何食わぬ顔で俺の肉棒の先端に自らの媚肉を擦り当てて小さく震える。

 

「ん、んむ──」

 

 コクンと唾液を嚥下する若葉。

 ガリッと飴玉をかじる彼女の行動に、俺は動きを止める。

 

「……かじっちゃう派か~」

 

「えっ、ダメだったか?」

 

「そんな事はないけど。高嶋さん、チューしよ?」

 

「良いけど……私、お邪魔なんじゃ……──んっ」

 

 口ではそう言いながらも便乗するつもりの悪い子。

 ちゅっと恋人がするようなキスと共に、リンゴ味の飴玉を舐めさせる。当たり前のように口腔に俺の飴玉を受け取る高嶋は嬉しそうに笑う。

 

「……えへへ、ありがとー。リンゴ味だ!」

 

「見ろ、若葉。これだ」

 

「ど、どれだ? おい、溜息を吐くな。あることないこと園子に言うぞ。東郷と結城にもだ」

 

「その時はひなたさんに言うから冷戦な。それはそれとして、高嶋さんは可愛いね。頭撫でて良い?」

 

「ほえ? うん! 良いよー」

 

 ふわふわな薄紅色の髪を撫でる。

 天使のような柔和な笑みを見せる高嶋は若葉を挟んで俺にキスする。その合間にも、俺はズボン越しに怒張の先端を若葉の秘裂へ上下に擦りつける。

 

「今日は唐突にごめんね、高嶋さん」

 

「ううん。りょーくんに会えて嬉しかったし、若葉ちゃんのりょーくんに甘える所を見れて良かったなーって。仲良いよね〜」

 

「ち、違うぞ友奈。これはそういうのではなくてだな……」

 

「どういうのー?」

 

「んッ……これは亮之佑のハグ症候群を解消する訓練なんだ」

 

「そっかー。若葉ちゃんは賢いね」

 

「ば、馬鹿にしてないか?」

 

 分かっていながら、小首を傾げる高嶋。

 戦闘で満開、もしくは前衛で多く活躍する者ほど、後遺症で性感が疼く事が多い。その解消の為に俺の家に泊まってきた背景もあったからか、昔よりも若葉との距離は縮んだ気がした。

 俺が高嶋を撫でて高嶋が若葉を撫でる。

 困ったような表情を浮かべる若葉は何故か俺の頭を撫でた。柔らかで細い指が頭皮を撫で、髪の毛に指が絡む。楽しそうに笑みを見せる若葉が俺を見る。

 

「亮之佑は結構甘えん坊な気質があるな」

 

「それは若葉もだろ。高嶋さん、ちょっと手伝って」

 

「うん、いいよ!」

 

 若葉を羽交い絞めする高嶋。

 弱々しい態度の若葉はその拘束を解くつもりもなく、自らの下着の隙間から俺の指の挿入を受け入れる。

 少しの触れ合いでも熱く濡れた媚肉は彼女の心境の変化を指すかのようだ。

 

「あっ、友奈……耳は……」

 

「こしょこしょーってしてあげる」

 

「ぁ、ぁっ、甘噛みするのはひぁぁああっっ……」

 

 性感帯として作り変えられた耳への刺激で、彼女の膣が指を締め付ける。

 茂みを撫でながら陰核を指で弄り、指で上下にピストンする度に、若葉の甘い吐息と嬌声を二人で聞き届ける。高嶋はブラウス越しに若葉の乳房を揉み、俺は若葉の秘所を弄る。

 

「若葉ちゃんって……可愛いねー」

 

 何かを含んだ言い方に、若葉がビクリと震える。

 耳をくすぐられ、何も言えない彼女の花蜜が俺の指を汚し、床に垂れる。

 

 ピストンの速度を速める。

 涙で濡れた若葉の手が俺の尻を強く掴む。

 

「あっ、そこは……」

 

 若葉の弱点、膣内のザラザラした場所の位置など既に把握済みだ。

 陰核と同時に攻める。高嶋は静かに笑みを浮かべながらいつの間にかブラの隙間から覗く乳首を擦り合わせる。

 

「ぁ、ぁぁっ、まっ、イく……イク!! ぁああああっっ!! ……ッぁあッ!!?」

 

 思いもよらぬ共同作業は、若葉の身体が何度か強く震えた時に終わった。絶頂に達した若葉だが、高嶋が追い打ちを掛ける。

 耳元を甘噛みすると嬌声を漏らして床に座り込む。

 

「若葉。ほら、パンツを俺に渡して、舐めて」

 

 袋から飴玉を取り出して唇に咥える。

 俺の言葉に従い、従順に自らのショーツを脱いで恥ずかしそうに渡してくる若葉は、唇に咥えた飴玉を無視して、俺のズボンに手を掛ける。

 

「これで良いだろ。そうだな……次は私の番だな」

 

「そっちじゃなくて、飴、飴をだな」

 

「えっ、飴? なんで……いや、よく喋れるな」

 

「奇術師だから」

 

 戸惑いながらも若葉は従順に唇で受け取る。

 

「……甘いな」

 

「ヨシ。じゃあ味わえよ。バイバイ」

 

「いや、ちょっと待て」

 

 背中を向けて立ち去ろうとする俺の腕を若葉が掴む。

 

「どうした? 今週も泊まるんだろ? それともカラオケの件か? 手マンカラオケ……ゲフンゲフン、若葉の歌声は楽しみだが……」

 

「そうではなくて……その、しないのか?」

 

「しない。でも下着は貰う。次に会うまでに一人でシてて。バイバイ」

 

 あえての突き放し。

 とりあえず若葉は放置で良いだろう。その間の期間でより性感も高まる。

 そんな思考で、迷い人のような顔をした若葉の唇を奪い、静かに胸肉を揉む。ついでに高嶋の乳房も揉み、その場を去る。

 

 その数秒後に、俺は背後から襲われた。

 

「亮之佑。……私ばかりがされるのはやはり不公平だ」

 

 そう言って強い力で俺を物陰に連れ込んだ若葉。

 俺を仰向けで押し倒し、ズボンを脱がせると反り立つ怒張を握る。

 

 にやりと笑う邪悪な気配。

 

「くっ……」

 

 俺の両手を片手で掴んだ若葉に怒張を扱かれ、情けない声を漏らす。

 それを見て笑う若葉は暗い笑みを見せながらしゅっしゅっと的確なリズムで限界を超えさせられる。奥歯を噛み締める余裕もなく迫る射精感に身体が強張る。

 

「ま、待て。分かった、調子に乗ったのは謝るから……」

 

「……美味しそうだな」

 

 半眼で俺を睨む若葉は口を開く。

 口内に覗く小さくなった飴玉を見せ、頬裏を亀頭に押し付けて上目遣いで吸い付く。

 

「あ、うぐっ……ッ!!」

 

 それが決め手だった。

 視界が酩酊し、白濁が噴き出す。

 

 液体が彼女の口内で跳ね汚すも、若葉はゴクリと飲み込んでいく。

 もともと昂っていた物を若葉に余すことなく嚥下され、彼女は笑う。

 

「何事にも報いを。今日のは甘くて美味しかったぞ。……今回は引き分けだな、亮之佑」

 

 してやったり、そんな表情を浮かべた顔に俺は苛立った。

 次に出会う時には、必ずどちらが上か理解させる事を誓う俺に、機嫌良く若葉が飴玉を渡した。口移しなのは俺の真似だろうか。

 俺に顔を近づけて、優しく微笑む若葉に口を歪める。

 

「……次に会うのが楽しみだな亮之佑。それで私に園子を産ませられるのか?」

 

「生意気だな。俺で処女を捨てた癖に」

 

「その発言は強すぎる」

 

 捨て台詞を吐いて、思わず飴玉を噛み砕いてしまった。

 引き分けと語る若葉が選んだ味はグレープフルーツの味だった。

 

「あっ」

 

 と、俺を押し倒していた若葉が固まる。

 同時に頭上に影が生まれ、上を見る。

 

 ひなただった。

 上から見上げる双丘から見える端正な小顔。

 無表情の彼女の目に映るのは、乱れた着衣の若葉に押し倒された俺の姿。

 

 俺は叫ぶ。

 

「一緒に園子を作ろうって襲われたー!!」

 

「ち、ちがっ、いや、合ってるがひなた、誤解なんだ!」

 

 

 

 若葉はひなたに連れられ、俺もひなたに呼ばれた東郷と園子に怒られ、搾られ、飴玉も取り上げられた数日後の事だ。

 

 地元の市に新しくできた骨付鳥専門店の支店。

 俺は千景と二人で食べに来ていた。骨付鳥とは鶏のモモ肉を骨付きのまま焼き上げた料理。丸亀市のご当地グルメの骨付鳥は県内でも多くの人からの人気を勝ち取っている。

 

 その多くの人の中には俺も入っている。

 好物の一つなのだ。

 地元に新しい店ができたなら行かない筈が無かった。

 

「……なら、一人で来たら良いんじゃないの?」

 

「まあ男一人で黙々と食べるのも良いけど、折角だから誰か可愛い子と一緒がいいなって」

 

「それなら……高嶋さんとか乃木さんとか……他にも誘えば来る人がいるでしょ。飴玉で釣れば来るんじゃないの?」

 

 飴玉の件は勇者部に知れ渡っていた。

 女性陣には偶に起きる男の奇行として受け止められていた。伊達に長い付き合いではない。

 

「いや~、千景先輩しか思いつかなかったな。最近二人であんまり話してなかったし」

 

「……そう? そう、ね」

 

「千景先輩可愛いよ。好き。ペロペロしたい」

 

「……あっそう」

 

 そっぽを向きながら、付いて来てくれる彼女は知っている人が見れば変わったと思う。

 同い年に間違われがちだが年上属性を持っている千景は、以前ならば間違いなく断っていただろう。人は変わる物なのだと感じさせる。

 

 店内は賑わっていた。

 小奇麗で清潔感のある室内のテーブル席で彼女と向かい合う。

 メニューを見て、店員に注文し、料理が運ばれてきた。

 

 見た目だけでも食欲をそそる骨付鳥。

 骨の部分を紙ナプキンで掴み持ち上げると、その重量感に思わず喉を鳴らした。

 

「それで……何かあるんじゃないの?」

 

 男らしくガブリッと骨付鳥にかぶりつく。山賊か海賊が豪快に肉に喰らいつき噛み千切る気分だったが、容姿端麗な美少女がいる手前、ある程度は上品に口と手を動かす。

 絶妙な歯ごたえと共に鼻孔をくすぐる香ばしい匂い。

 口の中で広がる肉汁に頬を緩める。

 

 骨付鳥の魅力を知ったのはいつの時だったか。

 生前は存在すら知らなかった。あの頃はうどんもそんなに好きではなかった。嫌いという訳でもない。ただラーメンや蕎麦の方がなんとなく好きだった。

 それが生きていく中で、他の人に触れる中で好物に変わった。

 この骨付鳥もそうだ。

 

「ねえ」

 

「ん? どうしたのちーちゃん」

 

「ちーちゃんって……そんな、その、呼び方は止めて」

 

 少し妙な挙動で呼び方を否定する千景。

「……美味しいわね」と俺の豪快っぷりに釣られてかぶりついた千景は気に入った様子だ。

 小さな口元をモゴモゴと動かしながら咀嚼する彼女は半眼を見せる。

 

「聞いてなかったようだからもう一度言うけど……何か私に用があって、この店で二人だけになったんじゃないの?」

 

「いや? 無いけど」

 

「え?」

 

 きょとんとする千景を余所に俺は食事を進める。

 

「純粋に、千景先輩と一緒にご飯が食べたかったから」

 

「……、……それだけ?」

 

「うん」

 

「うんって」

 

「おかしなことじゃないだろ。骨付鳥の美味しさを広めたい。それが身近な人ならもっと良いだろ。ところで、千景先輩は『ひな』を選んだけどどうして?」

 

「えっ? ……そうね、柔らかくて美味しいから」

 

「そっか。高嶋さんは? ……『私はどっちも大好きだよ! 『おや』も『ひな』も美味しくて最高! あっ、でもぐんちゃんが食べる『ひな』美味しそうだなぁ……。一口だけ交換しない?』」

 

「高嶋さん、ここにはいないわよ。……一人で声真似しないで」

 

「くぅーん」

 

 ぷっ、と噴き出す音。

 口元をナプキンで押さえて、ふ、ふ、と小さく声を漏らす少女。ふるふると黒髪を揺らしては眦を和らげる千景は、手に持った骨付鳥をかじる。

 

「……でも、そうね。……あなたと一緒に食べるのは、悪い気持ちはしないわ」

 

 と言って、彼女は微笑を浮かべた。

 

 

 

 

 

 自然と千景の手を握っても解かれる事は無かった。

 俺のしつこさに辟易したのか、もしくは完全に俺を受け入れたのか。

 

「別に……そんなに手を繋ぎたければ好きにすれば」

 

 ツンとした態度で俺から目を逸らす千景。

 きゅっと僅かに握る手に力をいれながら歩道を歩く。

 

「じゃあ、好きにする」

 

「……っ、ちょっと、外よ」

 

 彼女の履いたスカート越しに臀部を揉む。

 独特の弾力と共に、慌てた彼女が俺の手を叩き落とす。スカートから伸びた黒タイツに包まれた脚が小さく震え、形ばかりの拒絶を見せる。

 

 千景に目を向けると、顔を背ける少女の耳が赤い。

 本当に……最初に出会った頃と比べると随分と丸くなったと思う。

 

「じゃあ部屋に行って良い? ゲームするんでしょ?」

 

「……まあ」

 

 ボソボソと呟く彼女だが、上目遣いで俺を見る。

 潤んだ瞳、薄く朱色が差した肌と艶のある黒髪を揺らす少女は何かを期待していた。すりすりと指先を絡める千景が落ち着きのない様相を見せる。

 

「加賀くん……ゲームはするけど……」

 

 いつの間にか寄宿舎にまで戻って来ていた。

 自然と手を離す千景だが、腕を伸ばせば抱き締められる距離に彼女は留まる。

 

 艶やかな唇。長い睫毛が震える。

 彼女は緊張した面持ちにも、誘っているようにも見えた。

 

「その、何か……して欲しい事とか、ある?」

 

「えっ、急にどうした?」

 

 発情した雌のような表情を見せながら、誤魔化すような話題の提示。

 思わず抱き締めて、有無を言わさずに雄を身体に教えたくなるようないじらしさと初々しさを彼女は見せる。俺と目が合い、千景の頬が増々色付く。

 

 ベッドの上では歴戦の戦士である俺は、初々しい態度に今更動じない。

 だが、見つめ合っていると何故か無性に恥ずかしさを覚えてくる。

 

「今日の食事……連れて行ってくれて嬉しかったから。何か、したいと思って」

 

「ふーん?」

 

「……なんでもいいわ」

 

 一歩、千景が俺に近づく。

 それなりに大きな一歩で、縋るように俺の手に触れる千景の淫靡な眼差し。あらゆるゲーム、ネットに誰よりも触れているからこそ、『なんでも』という言葉の意味は重い筈だ。

 友奈や若葉のような子が『なんでも』と口にするのは意外と多い。その度に『なんでも』の重さを理解して貰ったが、千景の口から聞く事は非常に少ない。

 

「なんでもは……なんでもよ」

 

 少女らしからぬ陶然とした笑み。

 理解した上で、俺を煽り、誘い、その根底に俺への『お返し』をしたがっている。

 

 肩もみのような奉仕ではない。

 漫画、ゲームのような物で見る爛れた奉仕のお返しを彼女はしたがっているように見えた。

 

「そうだな……」

 

 ただ純粋に抱かせろでは面白くない。

 自撮りを送って欲しいというのはひなたと被る。耳かきはお願いしても良いがなんとなく主旨から外れそうだ。せっかく千景が仄暗い方向へのやる気を見せているのだから、より良い物を。

 

 普段は着ない服で、普段はしない場所でも良い。

 だかそれも何か違うなと考えて、頭を回して、俺は千景にある『お返し』を口にした。

 

 

 




アンケートありがとうございました。
千景のちょっとエッチな短編を書きました。完結済みです。
https://syosetu.org/novel/326519/
他にも以前千景の可哀そうな話
https://syosetu.org/novel/185138/
若葉のくっ殺マッサージ話
https://syosetu.org/novel/242410/ も完結済みなのでついでに紹介。


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【番外】彼女のやり方

 自室で服を脱ぐ彼女は無言だった。

 

「……」

 

 上着を脱いだ彼女がスカートのホックに触れるのを止める。

 

「……?」

 

 ほんのり赤らんだ千景の視線を受けながら、スカートを捲る。

 黒いタイツを着用した彼女のショーツは見られる事を考慮したのか、どこか大人っぽい黒の布地に花の装飾がされていた。高嶋ではない誰か、恐らくは勇者部のファッションリーダーの雪花と選んだのだろう。

 捲られたスカートを下ろそうとする彼女に首を振って、タイツを破く。

 

「あなたねえ! そうやって破くから替えが無くなるのよ!」

 

 捲ったことよりも破いたことに怒られた。

 怒りか羞恥か、頬に朱を差す彼女はスカートを脱ぐ。そのままショーツごとタイツを脱ぐ千景に、土産用としてタイツを要求すると、ショーツごと投げつけてきた。

 

「乱暴なのは駄目だよ、千景」

 

「……っ、うるさいわね。あなたも早く脱ぎなさいよ。……するんでしょ?」

 

 最後の一枚であるブラを床に落とす。

 羞恥を誤魔化すように俺の衣服を脱がす千景の顎を持ち上げる。

 彼女は顔が良かった。

 

「……誰にでも言ってる癖に」

 

 端正な顔と、前髪から覗く瞳は半眼でジッと俺を見つめる。

 キスでもするような距離感で彼女を壁に追い詰めた俺は無言で壁を叩く。ドン、と低く響く音に僅かに怯えたような顔を見せる彼女に、言葉にしてはならない暗い感情が覗く。

 当の本人はなんでもないような顔を見せて、俺を睨みつける。

 そんな顔をされると、まるで俺が千景を脅しているような気分になってしまう。

 

 違うよね、と。脅してないと確認の為に俺は彼女に囁く。

 

「千景」

 

「……」

 

「『なんでも』するって言ったよね。ならまずは、『なんでも』を百回に増やしてくれ」

 

「……そ、そういうズルいのは駄目よ、加賀くん。一つだけよ」

 

「ふぅーん?」

 

「だ、だめよ」

 

 ぺしっと俺の手を叩き落とす黒髪の彼女。

 絹のような手触りの良い髪の毛先が俺の手をくすぐる。

 

「えー、『なんでも』って言ったじゃん」

 

「それは……私にできる範囲で」

 

「じゃあ──」

 

 俺は彼女にお願いを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 自身のベッドに座る千景は静かだった。

 正面に三脚で設置されたカメラを認め、僅かに眉をひそめる。

 白い肢体をくねらせて、片手を胸に、片手を下腹に置いて隠す。

 

 急に裸を見られたかのような仕草。

 実際に彼女は全裸で、床に座った俺はベッドの縁に手を置いて見守る。そして丁度目の前にある白い脚を手に取り、足指を見下ろし、おもむろに脚の甲にキスをする。

 ほのかに石鹸の香りがした。

 俺が脚を持ちあげたことで見え隠れする貝肉を千景は手で覆う。

 それでも、チラリと見える軟肉や恥毛がとてもセクシーだ。

 狙ってやっているのなら、将来娼婦になれるだろう。

 

 所々隠しきれずに見えるが指摘はしない。

 本気で見せないつもりでいる。そんな考えをしている者はここにはいないから。

 

 慎ましい白い乳房はしっとりと濡れている。

 黒髪は水分を含み光沢があり、柔肌には僅かに残った湯の粒が残る。

 

「髪の毛全部下ろしたぐんちゃん、可愛いね」

 

「……ありがとう」

 

「じゃあ、始めて」

 

「……」

 

 一糸まとわぬ裸体、髪留めの一つもなく下ろした千景は脚を閉じて顔を逸らす。

 どこを見ているのだと脚の爪先を舐めると、ビクッと身体を硬直させた彼女が様々な感情を混ぜたような表情を浮かべる。

 

「ちょっと……汚いから」

 

「ぐんちゃんペロペロ~。準備するからってお風呂に入った味がする~」

 

「気持ち悪い……ヘンタイ」

 

 驚愕、嫌悪、それから強い羞恥。

 磨かれた白い肉体に、胸に、首に、頬に、薄く朱色を差していく。

 

「早くしてよ」

 

「…………急かさないで。する、から」

 

 俺を見る瞳は熱に揺れる。

 身を捩らせ、裸体を隠そうと縮こまる千景だが、瞼を閉じると局部を隠す手を動かす。

 

「ん……っ」

 

 きゅっと閉じた瞼の裏側で何を妄想しているのか。

 徐々に荒くなる呼気と、動く指先。

 

「は、あ……んんッ……」

 

 彼女の自慰は無駄な前戯をしない。

 片手で乳首を弄り、もう片方の手で貝肉に潜む真珠を捏ねくり回す。

 指を動かし貝肉全体を覆うと、小さな水音が聞こえ始める。にちにちと粘着質な音に合わせて千景の脚がシーツに伸び始める。

 

 千景の上半身がぴくぴくと震える。

 白い指が円を描くように乳頭を撫で、人差し指で先端を撫でる。

 

「ンッ……ふっ……」

 

 粘りついた唾液が唇の上下に糸を引き、甘い呼気を吐く。

 

「……ぁっ! ふぅっ……」

 

 下腹では硬くなる肉粒を一心不乱に指で弄る。

 俺の事を忘れたように自慰に熱中する彼女は喘ぎ声を漏らしながらも、人差し指と中指で陰核を刺激し続ける。

 ゆっくりとベッドに寝転がりながら自慰に耽る彼女に、俺は指一本触れず下腹部に血を巡らせて、その瞬間を見届ける。

 

「――!! ふぁっ……!!」

 

 ビクンと身体を震わせる。

 滑らかな太腿で自らの腕を挟み、軽く絶頂に達する。その頂を物足りないとばかりに、肉芽を弄る指で強く押し潰すと、身体を丸めて呻くような嬌声が響く。

 やや乱暴に乳房を揉みしだく彼女は背中をのけ反らせる。

 

「う、ぁぁぁっっっ!! ……ぃっ……く……!!」

 

 俺の目の前に千景は足を伸ばし、きゅっと足の指を丸めて、俺の顔に触れた。

 二度ほど跳ねた千景はやがて弛緩し、ゆっくりと目を開ける。

 先程と違い、淫靡な雰囲気を纏い、恥部から滲む蜜液を腿裏に光らせる姿は艶やかだった。

 

 トロンとした表情。

 虚ろな瞳。唾液で濡れた唇は何かを求めて震える。

 

「あ………かがくぅん……っ」

 

 甘い声音が鼓膜を震わせる。

 どこか媚びたような声は、まるで俺が襲うのを待っているかのようだ。

 

 襲って下さい。

 食べて下さい。

 

 そんな声が聞こえた。

 お腹が減ったと肉欲に飢えた剛直から涎が垂れる。出番はまだかと既に限界まで反り立つ怒張は、しかし出番は無かった。

 俺はある物を彼女の柔らかな手に持たせる。

 黒髪を垂らす千景は蕩けた顔のまま、渡された疑似肉棒を握る。

 

 俺の剛直ほどの大きさはない肉棒を模した玩具だ。

 やや細長い黒色のディルドは小さなイボと雁を模した部位が付いている。

 

 千景はそれを自らの顔の前に持って来た。

 しげしげと玩具を見る彼女は、何気ない顔で自らの頬に疑似肉棒を宛がう。本物の肉棒に擦り付けるように柔らかな白い頬を黒々とした玩具に押し当てる。

 普段されている事を思い出すように、怒張の熱さを感じ取っているようだった。

 

 肉棒の硬さを、太さを、熱さを確かめるように頬擦りを彼女はする。

 だが、あれは玩具であって熱を出す仕様はない。淫熱の揺らめく瞳越しに本物を再現しているのか、薄い微笑みを黒い玩具に見せて、小さくキスをした。

 本物以上に愛おし気に唇を肉竿に落とす。

 

「んっ……ちゅ……」

 

 ──チラリと俺に挑発的な視線を向けた。

 びきり、と怒張の血管が浮かぶのを感じた。

 

「ん……むっ……」

 

 いつかの行為を再現するように、あるいは知らない誰かにするように柔らかな唇が擬似肉棒に触れる。

 ちゅっと雁部分に、竿に、キスをする。

 その度淫熱に濡れる瞳で俺を見る。

 

 どうした? とは問わない。

 千景も何も言わず玩具で一人遊び、俺はそれを見届ける。

 

「……こんなに入るのね」

 

 肉棒を、千景は下腹部に置く。

 柔らかな黒の茂みの上、臍からやや下に置かれた竿に蠱惑的な笑みを浮かべる。

 その期待と喜悦に満ちた表情に、先端から先走りが伝う。

 俺に見せつけるようにゆっくりと千景は片足を開き、花弁を見せつける。

 濡れそぼった肉の恥丘からは愛液が垂れる。

 

「……っ、……」

 

 恥じらうような吐息とは裏腹に、片方の指で僅かに奥が見えていた陰唇を開く。

 ピンクの粘膜と、呼気に合わせて収縮する小さな孔からは透明な愛液が溢れた。

 淫らな光の筋を作る媚肉に、ディルドの先端を宛がう。

 

「ぁ……いれ、ます……」

 

 ピクンと小さく震えた彼女は一瞬俺を見て小さく呟く。

 まるで許可を求めるようで、俺は静かに頷いた。

 その反応に、千景は俺以外の肉棒の先端で円を描くように媚肉を弄り、挿入した。

 

 ぬぷりと太く長い肉棒が少女の膣に呑み込まれていく。

 ディルドを奥へと挿入する間、虚ろな瞳に淫熱だけが宿る彼女は、自らのペースで甘い衝撃に震えながら悦びの声を聞かせる。

 

「ぁ、……ぅ、ふっ……はー……」

 

 荒い呼気で、艶めいた笑みでディルドを掴む千景。

 羞恥よりも快楽の方が勝ったのか、彼女が先ほどよりも開いた脚の付け根には深々と挿入されたディルドが僅かにひくつく。

 

「これ……すご……っ」

 

 玩具如きで喘ぎを漏らす彼女がゆっくりとディルドを動かす。

 紛い物の肉竿で額に髪の毛を張りつかせる姿に、何とも言えない苛立ちが募る。これは独占欲なのか、見知らぬ肉棒に千景が悦んでいることへの不満か、征服欲が刺激されたのか。

 いずれにしても肉棒は痛いほどに反り立つ中、千景は俺を気にせず自慰を楽しむ。

 

「んっ……は……」

 

 千景は肉棒を出し入れする。

 黒い竿には感じ入っている証拠として白い泡が付着する。引き抜き、挿入する度ににじゅ、にちゅっと下品で粘着質な水音が聞こえる。

 

「っぁ、ぁぁ……! ァ、んっ」

 

 片手で陰核を押し潰しながら、ディルドが媚肉を出し入れする。

 やや臍の上側を向くように肉棒の角度を変えて、ひたすらに手を動かす。

 白い肌に汗を滲ませる彼女は大きく脚を開いて怒張で自らの恥部を攻めたてる。

 

「ふっ……んんッ……い……く」

 

 両足の爪先を立たせ、腰を浮かす。

 目を閉じて、俺を忘れた彼女は快楽器官である陰核を指で弄りながら、俺以外の肉棒を自らに突き立てる。

 

「ぁ、く、んん〜〜〜〜ッ!!!」

 

 ビクンと震えた腰がそのままベッドに落ちる。

 奥深くに突き立てた玩具は彼女の膣の蠕動で押し出され、白く濁った愛液混じりの竿が覗く。

 

「は、くっ……」

 

 絶頂に達したと思ったが千景は更に駄目押しするつもりなのか、抜けかけた竿を掴み、数回ほど強引に出し入れする。

 これ以上ない痴態を見られたことで羞恥を超えて開き直ったのか。

 指の爪で乳首を刺激する激しい愛撫を始める。

 

 全身が震え、ディルドを抜き差しする音が媚肉から響く。

 開かれた脚がぴんと伸びては曲がり、俺の身体に足裏がぶつかった。奥歯を食い縛っているのか、結んだ唇の隙間から声が漏れた。

 

「んんっっっ……!!」

 

 ピクピクと小さく痙攣する千景はシーツを掴み、荒い呼吸を繰り返す。

 

「はぁー……ハァー……ハァ……!」

 

 結合部からはずるりと玩具が抜け落ち、泡立った愛液が滴り落ちる。

 赤らんだ顔を腕で隠し、開いた花弁の孔を収縮させる姿は事後に似た光景だった。

 俺以外の肉棒で感じ入る姿は満足感と共に、剛直を酷く苛立せる。

 ──独占欲と加虐心が刺激されていると、認めざるを得なかった。

 

「エッチだったよ、千景。撮らせてくれてありがとう」

 

 お礼の言葉に、彼女はモゴモゴとよく聞こえない返答をした。

 俺はそれを聞き返す事はしなかった。

 千景の片足を持ちあげて、糸の引いた恥部の入り口に本物の肉棒の先端を添える。

 

「ぇ!? ま、まって……今、イッて……」

 

 横たわったまま身体を強張らせた彼女だが、既に俺は彼女の腰肉を掴む。

 どういった角度で、どこを突くのが悦ぶかを教えてくれたディルドと同じ角度で貫く。

 

「ひぅ、ぁぁッ!!?」

 

 悲鳴を上げてのけ反る千景。

 身を揺らす彼女だが、きっちりと捕まえて、ぬぷぷと雄竿で雌肉を割り拓く。

 開かせた片脚の裏腿が俺の肌に密着するまで彼女を串刺しにし、少女が好んでいた角度で、悦んでいた弱点をいきり立った剛直で叩きつける。

 

「お……っ、だ……めぇ……!!」

 

 挿入で達したらしき彼女は虚ろな表情を浮かべる。

 開いた唇から舌を覗かせ、かくっと腰を上下させるも肉棒が抜けることはない。

 玩具とは違い、彼女の媚肉が悦びに蠕動しようとも勝手に抜け落ちる未来は存在せず、女の締め付けが悪戯に雄竿をより太く、硬くしていく。

 

「ひゃめ……らめぇ……」

 

 慎ましい乳房を揉むと、疑似的な性行為で火照った柔肌が吸い付く。

 ツンと尖った先端を彼女の真似をしてやや強めに爪と指で弄る。

 

「ひ、ァッ……」

 

 悲鳴じみた嬌声に、媚肉が締まる。

 偽物も本物も等しく貪欲な雌肉に呆れた本物の剛直で彼女を突き上げる。

 先ほど千景が自分で楽しんでいた膣襞を擦り上げる。

 パンパンと根本まで竿を押し込んで、にじゅにじゅと蜜を掻き混ぜる。

 

「ぁああぁっ!! ……ぅぁっ!? ゃぁ……!!」

 

 首をのけ反らせる彼女の尻が太腿にぶつかる。

 独特の弾力がある尻肉が揺れ、思わず手で叩く。

 

「あんッ! ぁぁっ、ごめ……なさ……っっ!!」

 

 何を謝っているのか。

 瞳から涙を流して、顎から涎を垂らす女。

 黒髪を何度も振り乱しては、淫臭と甘い香りを巻き散らして男を惑わせる彼女が、一体、何を謝ることがあるのだろうか。

 

「ぁ~~~~ッッ!! いッ……くぅッ!!!」

 

 跳ねた汁がシーツに広がる。

 尻を叩くと、薄くも形の良い乳肉を揺らす。

 乳首を摘まんで捏ね繰り回すと、背中を反らして尻を振る。

 

 まるで嬌声という音色を雄に聞かせる楽器だ。

 奏者の手によって、首を振る千景は嫌々と声を上げる。

 

「ぃあっ! もっ、……ゆるひてッ……くらさい!!」

 

 シーツを握り締めて、俺から離れようと逃げる千景。

 いったい、どこに行こうというのか。

 捕まえて最奥まで怒張で突き立てる。助けを乞うような悲鳴を上げる千景を宥めながら、俺は片手を胸に、もう片方を茂みに置く。

 

 硬い乳首を愛で、薄く生えた陰毛を撫で、同時に陰核を指で押し潰す。

 当然、彼女が大好きな場所を肉棒でほじりながら先端で擦りつける。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 彼女らしからぬ悲鳴が響き渡った。

 部屋の外にも聞こえたのではないだろうか。

 

「ゃぁああっっ!! ふ、ぅっ、──!! ……っ!!」

 

 結合部から潮が噴きだす。

 痙攣と同時に、髪を振り乱す彼女はまるで強姦されているようだ。

 

 先ほどのマイペースに行われた自慰とは様相が違う。

 こんな涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしてはいなかった。何が違うのかを考えながら大好きな突起を愛で続け、彼女をよがらせる。

 

「ああ、そっか。千景先輩」

 

 これはただの独りよがりだ。

 ただの強姦のような行為で無理やり彼女に雌である事を理解させているのだ。側位の体勢を変えて、正常位に持ち込み、腹と腹を、胸と胸を密着させる。

 ぐりぐりと肉棒を押し付けると開いた唇から涎が垂れ落ちる。

 

「俺のことは好き?」

 

 緩くピストンしながら聞く。

 俺を押し退けようとして肩を押すが力で逃れられないのが分かったからか、顔を逸らして唇を噤む。頬を掴んで振り向かせ唇を奪うと緩慢とした動きで舌を差し出す。

 ぴちゃぴちゃと口腔で水音を響かせながら、再度問い掛ける。

 

「俺のことは好き?」

 

 なんてことない質問に、きゅっと媚肉が締まるが彼女は答えない。

 

「っっ……」

 

 今更羞恥を感じているかのような赤らんだ顔を見せる千景。

 いくら唇を重ねても口を割らない。そんな態度が見えた。

 可愛らしいが答えを聞きたいので、緩やかにしていたピストンを強める。

 

「オラッ、はっきり言え!」

 

「ぁっ、しゅきっ、ぅぅっ……! す、きです……ッ!」

 

 強めに乳房を両手で揉み、突き上げる。

 

「ぁぁああッッ!! すきぃ、……しゅきですからッ!」

 

 左右の粒を弾く。

 両脚が放った言葉を裏付けるように腰に巻き付く。

 

「強引にされて嫌だった?」

 

「いや……じゃ、ないからぁ」

 

「じゃあ、和姦だね。いっぱいイチャイチャしようね」

 

 合意の上で、俺と千景は性行為をしている。

 そう宣言させた所でどうした、という話ではあるが、決して玩具一つに対して独占欲や支配欲を刺激されていない証明にはなっただろう。

 ずぐん、と硬い亀頭が最奥を小突く。

 

「ぅああっっ!! ぁぁっ!!」

 

 天国に昇り、震える千景の頭を抱く。

 全身から汗を滲みだし、乱れ濡れた髪を撫で、抽送を続ける。

 

「んっ! ぁっ! ぁ、ぁんッ!! ぁぁっ!!」

 

「好きって言って」

 

「かがっ、くぅん……ぁっ、ッ、ぅ、しゅき……」

 

「亮之佑くん、好きと言え」

 

 首筋に口づけ、肉を吸う。

 赤い痕を残す彼女は、白い肢体をくねらせる。

 

「りょうのっ……すけ、くぅん……!」

 

 甘い、甘い声音と濡れた瞳に理性を溶かす。

 すっかり乱れた黒髪を振り乱し、涙を流す彼女に抽送を続ける。

 

「ぅぇ……ぁ、ぅき……」

 

 喘ぐ口に指に手を入れて、赤い舌を人差し指と親指で捉える。

 ざらついた質感と唾液に濡れた彼女の舌が蠢き、唾液の糸が珠となる。彼女の耳に甘噛みしながら腰を打ち込む。

 水音が響く。肉を叩く音がリズムよく響く。

 

 彼女の瞳は虚空を見つめている。

 舌を指先に絡め取られた口からは喘ぎが漏れる。

 

 俺はひたすらに腰を揺する。

 その瞬間、彼女の媚肉がぎゅうっと締め付けを増し、千景の手が俺の手と重なる。

 

「ぁ、っ、ぁっ、ぁああ~~~~~っっ!!」

 

 視界が白く染まる。

 耳元で声を上げる千景の最奥へ子種を注ぎ込む。びゅううっと放たれた白濁を彼女の膣が飲み込み、千景は全身で俺に抱き着く。

 

「ぁ、は……」

 

「ふ……」

 

 汗まみれの身体を重ね合わせ、どちらともなく唇を重ねる。

 ゆっくりと腰を動かして余韻に耽る。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、千景の事が好きな巫女である花本を呼んだ。

 千景を間に挟み、ゲームをしている中、俺は一方的に敗北していた。

 

「乃木さん以下ね」

 

 あまり戦闘系のゲームは向いていないのかもしれない。

 努力の果てに奇術師と呼んで貰うに至ったが、この世界ではどれだけ努力を重ねても戦闘系のゲームは下手くそだった。

 東郷や芽吹とコツコツ巨大な都市や戦艦、城を作ったり、畑を耕すようなゲームと違い、格闘するようなゲームでは全然勝てなかった。

 俺をサンドバッグにして加虐の笑みを見せる千景の耳元に囁く。

 

「花本さんに言おうか悩んでる」

 

「……何を?」

 

「花本さんが来る直前までベッドの上で本物と偽物を当てるまで潮噴かされて泣いてたのに、何事もなかったように振る舞っている郡様は可愛いと思う? って」

 

 聞こえていたらしい花本はぶるりと小さく震えた。

 

 その後、一勝だけできた。

 代わりに千景に部屋を追い出された。

 




親にすら見せない美少女の行為を見るってのがいいんよ
感想、誤字報告いつもありがとうございます!


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【番外】ある週末の出来事

感想、誤字報告いつも感謝なんよ!


 今年もこたつを出す時期が来た。

 寒い寒いと電源を入れて、脚を入れると誰かの脚とぶつかる。

 サンチョの枕を置いて、近くには友奈人形と東郷人形を配置する。

 

「可愛いんよ〜」

 

「前の誕生日に貰ったんだ。何回目だったっけ」

 

 うんうんと考えて諦める。

 いずれにしても可愛らしい少女たちからの大切なプレゼントだ。結城友奈と東郷美森の制服姿がデフォルメされた人形。ひっくり返すとショーツまで見える。

 やや口の開いた緩んだ顔の友奈人形は抱き心地が良い。

 須美成分を思わせる、やや現実よりも幼い顔の東郷人形は「会いたいよ」とか「抱かせろ」と深夜の時間帯にボソボソと囁くと不思議な事に窓から東郷本人が訪ねて来るアイテムだ。

 面白いことに、着物姿やメイド姿、バニー姿など指定すると何故か着て来る。

 それを指摘すると決まって彼女はこう告げるのだ。「偶然よ」と。

 

「もしかして盗聴……?」

 

「東郷さんは自分の夫にそんなことはしないよ」

 

「寧ろわっしーが一番……ううん。そういうプレイなんだろうから何も言わないよ。ちなみに私はあんまり束縛とかしないよ~」

 

 ニュッとこたつから顔を出すと俺の隣で寝転がる少女の言葉を聞き流す。

 琥珀色の瞳は構って欲しい子猫のように和らいでいる。

 猫じゃらしのように顔の前に指を差し出すと「にゃあー」と猫語を聞かせながら口に咥えようとしてくる。俺の人差し指は園子キャットの唇に触れるかどうかの大立ち回りをさせられる。

 

「ぁぅっ!」

 

 ツンと額を突くときゅっと目を閉じて倒れ込む少女。

 抱いていた友奈・東郷人形をサンチョ枕に寝かせると、彼女に追撃する。

 金髪の長い髪の毛をリボンで結んだ令嬢、園子に覆い被さると特に意味もなく少女の上着を捲る。白い肌と臍が露出し、その奥には可愛らしいピンクのブラジャーに包まれた乳房が覗く。

 

「ゃあんっ! かっきーに襲われる~……ぃやぁはははッッ!!」

 

 甘ったるい声で俺を挑発した令嬢をくすぐる。

 柔らかな肌をわしゃわしゃと蜘蛛のように指を這わせて肌を味わう。いやんいやんと首を振って笑いながら悶える彼女を見ていると心が和む。

 嫌々と首を振って笑いながら髪を振り乱す度に、芳香が鼻孔をくすぐる。

 

 涙を浮かべて笑みを浮かべる園子。

 柔らかな肢体に触れながら、俺は彼女を求めて、上着の中に顔を入れる。上着の中の世界は薄暗くも、柔らかく、温かく、より濃厚で甘い香りが満ちている。

 

「ぁッ! 舐めちゃだめだよ~」

 

 腹肉を舐めると薄っすらと塩味。

 花の装飾がされたブラジャーから覗く白い生乳に目を向ける。

 吸い込まれるように、気がついたら顔を埋めていた。甘い声を上げる彼女の腋は僅かに湿り、指を這わせると面白いほどに身体をくねらせた。

 

「ハァ……ハァ……いきなりくすぐるのは止めてよぉ……」

 

 上着越しに俺の頭を抱く園子。

 顔に触れる乳房は弾力と柔らかさを持って俺を受け入れる。

 最高級のこたつだ。俺だけの、俺専用の園子こたつ。

 

「俺はここに住む」

 

「ええ~……それはちょっと」

 

 十分ほど、園子の中で温もりに包まれていただろうか。

 顔に痕が残りそうなので、ブラジャーを外してぷるりと露出した生乳を顔の枕とする。薄暗くも甘い香りに頭がクラクラしながら、彼女の乳首を唇に含んで転がす。 

 心は赤子だ。誰よりも先に園子の子供としてツンとした先端を味わう。

 それを肯定するように上着越しに俺の頭を撫でては優しい声音を園子は聞かせる。

 

「かっきー、本当におっぱい好きだねぇ……私のおっぱい、好き?」

 

「うん……」

 

「赤ちゃんみたいだね~……んっ、エッチな赤ちゃんじゃないかな?」

 

「ばぶー」

 

「……おっぱいだけ好きなの? 身体だけの関係?」

 

「園子の事も好きだよ。中身もちゃんと」

 

 ちゅぱちゅぱと乳首ごと乳肉を口に含んで味わう。

 コリコリとする硬いザクロのような実を甘噛みする度に園子が小さく声を漏らす。密着したことで彼女の身体が感じ入るのがよく分かった。

 少女の平均よりも大きい、恐らく睡眠で培った乳房を好き放題にする。

 それは普段不思議な存在ながらも、その美貌とスタイルを知る男子学生の夢を現実にしている事への興奮と満足感、そして園子の俺に向ける媚びた声が体内の血を巡らせる。

 結果、肉棒の先端からは雌を食べたいと涎を垂らし、少女の肌に硬さと熱を教える。

 

「……あたってる~」

 

 柔らかく、細くも肉の乗った太腿に剛直を擦りつける。

 まるでマーキングするように、雄竿を押し付けると柔肌が沈む。

 対抗するように頬擦りする乳房がムニュムニュと形を変えながら、肉沼のように温かく沈み込んでいく。その世界一の弾力と柔らかさは極上の枕が自らだと主張していた。

 そんなに頑張ってアピールしなくても大丈夫だと、もう片方の乳首も甘噛みする。

 嬌声を上げ、ぷるりと乳房が揺れる。

 

「ぁ……ッ、ぁっ……」

 

「園ちゃんって本当にエッチな身体してるね」

 

「……かっきーに色んな悪戯されたからだよ。責任取らないと許さないよ~」

 

 仰向けで寝転ぶ園子の上着の中で、彼女の赤子を経験する。

 出るかもしれないと母乳を求めて乳房を枕に乳首を弄る。彼女に密着したまま味わうだけの怠惰な時間を過ごしていると声を掛けられた。

 園子ではない。ふわふわ・不思議ちゃんさを感じさせない、女騎士のような、ゴブリンに快楽堕ちさせられる事前状態のような声に聞き覚えがあった。

 

「……いつまでそうしているつもりだ」

 

「ぁんっ、わかちゃん……、ぅ、ッ……ぃく~~ッ!!」

 

 自らの隣で不純異性に及ぶ事への怒気と呆れに園子の柔肌が強張る。

 そのまま驚いた彼女は、俺の授乳に耐えられずに絶頂した。

 

「~~ッ、──わ」

 

「ん? 園子?」

 

 小さく絶頂したのを悟られまいと園子が応対するも上手くいかない。

 蕩けた表情を誤魔化す園子に代わり、俺が若葉の対応を行う。

 

「誰ぞ、ゴブリンを呼べ! 四国の女騎士若葉がいるぞ!」

 

「誰が女騎士だ! ……ちなみに女王はひなたか?」

 

 上着に隠れた俺に視線を浴びせるのは、極上の抱き枕である園子の先祖である若葉だ。俺の後頭部に置く手に力を入れ絶頂の余韻を誤魔化す園子を肌で感じ取りながら、上着から顔を出す。

 両手は園子の飽くなき乳房を揉み、乳首を弄りながら、若葉に目を向ける。

  

「どうかしたのか?」

 

「『どうかしたのか?』ではないのだが。いつまでそうしているつもりだ」

 

「若葉。これが腹枕だ。この辺りをゆっくりと押すと……」

 

「か、かっきー、あんまりそこを押すのは……ひぁッ!? お、おかしくなるからぁ……」

 

「こうやって頬擦りすると楽しいんだ」

 

 肌の触れ合いをする俺と園子を見下ろす若葉。

 一応は俺の先祖でもあるという彼女だが、あまり意識してはいない。それは若葉側もであり、なんなら一緒に園子を作ろうと頭のおかしい事を言い出す始末だ。

 

「そ、それは亮之佑から言ってきた事だろう! 捏造するな!」

 

「こわ~、最近の若者はキレるの早すぎだろ」

 

「本当にそれ……ダメッ……っっ!! ~~~~ッッ!!!」

 

 ゆっくりと顔を上着の中、乳房の元に埋まり直す。

 園子の乳房を揉みしだきながら、乳首を転がしていると既に温かい園子の肉体が小刻みに震える。いくら揉んでも揉み足りない。園子の不思議な乳房で遊びながら若葉に尋ねる。

 

「もしかして若葉もこうして欲しいの?」

 

「いや……そういう訳ではないが」

 

「……んっ、そ、そう言いながら自分がされる事を想像して震えるわかちゃんだった……」

 

「なっ!? 変な事を言うな園子ぉ!」

 

 挑発し過ぎてしまったのか、風雲児が襲い掛かってきた。

 

「んひゃっ、わ、わ、わかちゃんに襲われてる~、ひなターン! ひなターン!!」

 

 上着を首元まで捲り上げる若葉と目が合う。

 急に光の当たる世界に戻った俺は目を細め、若葉の攻撃を許す。乳房を揉み、腋をくすぐり、腹を撫で回す。普段は出さない大声は悲鳴混じりで心地よい。

 上裸を晒した園子の、下腹部を隠す衣服を脱がせて恥部を集中攻撃する。

 

「こんなに濡らしちゃって……」

 

「そこ……舐めちゃ……ひぁッ!? ぃぅ……ッ!!」

 

 若葉とタッグを組んで園子で遊び続ける。

 上半身と唇を奪う王子様ムーブを若葉が繰り広げ、陰唇を割り拓いて蜜液を下品に啜るゲスムーブを俺がする。若葉もノリノリで園子の片足を開かせて俺のアシストをする。

 太腿を手で掴みながら、トロトロに濡れた貝肉に舌を挿入して、雌汁を啜る。

 

 躊躇いなく子孫を襲う彼女は暗黒騎士に等しい外道だ。ツンと揺れ動く乳首を的確に弄りながら、園子の唇を奪う。美少女同士のキスに俺の心の何かが満たされるのを感じた。

 同時になんとも言えない嫉妬心に導かれ園子の陰核を舌で弾く。

 

「ほう……園子はそんな顔をしてイクのか」

 

「やだぁ、わかちゃん見ないでぇ……」

 

 二人に遊ばれる少女の抵抗は弱々しくなる。

 しばらく遊び、ひなたを呼ぶ園子の声が随分と甘く蕩ける嬌声に変わった頃だった。

 

「もう若葉ちゃんったら……あんまり園子さんを泣かせたら同じ目に合わせますよ?」

 

「わ、分かった」

 

「ひっ、ぐすっ……酷いよぉ……いっぱい辱められたんよぉ~」

 

 タイミングを見計らったように若葉を止める声が掛けられた。

 救世主となったひなたに抱き着く園子。

 乱れた着衣の彼女は、エプロンを身に着けた巫女に顔を埋める。庇護欲と罪悪感と小さな加虐心を誘う声音に慌てたように若葉が誤解だと叫ぶ。

 

「ちょっとしたスキンシップだ!」

 

「自分の子孫に手を出して亮之佑さんと共に園子さんを泣かせるのがスキンシップ。そうですか。これは……お仕置きが必要ですね」

 

「ぐすっ……最近のわかちゃん、ひなタンに叱って欲しくて私にエッチな事いっぱいしてくるんよ……。まるでエッチな自撮りを特定の人に流し続ける人みたいに私に構って欲しいんだ……ぅぅ……私の身体はどんどんエッチになっていくんだ。……かっきー舐めるの止めてよ、匂いも嗅がないで……またイっちゃうからっ……かっきー、まって、ステイ! すてっ……っ、ぁ、本当に、ぅ、いくッ、ぁあ~~~~ッッ!!」

 

「……若葉ちゃんにはお仕置きです!」

 

「待ってくれひなた! 流石にこいつらの前で耳かきはっひゃぁぁあっっ!!」

 

 公開処刑として俺と園子の前で耳かきをされる若葉。

 まるで夏凜が芽吹と絶頂の回数を競っている時のような、あるいは樹が自らの乳房のサイズが大きくなったのを知った時のような、他人には見せられない恍惚な表情を浮かべる。

 そんな若葉の顔を撮るのは園子……の小学生時代の園子(小)だ。

 園子(中)を弄る間、仰向けでずっと俺の肉竿を咥えていた。おしゃぶりのように先端を舐めていた彼女は先祖に向けていた携帯端末を下ろすと、ちゅぱっと唇を離す。

 

「かっきー先輩も園子先輩をいっぱい泣かせたよね~」

 

「そうだよそのっち。私たちもかっきーにお仕置きをしないとだ」

 

「「そいや~」」

 

「ちょっ、待っ……くふッ、あははははッ!!」

 

 小さいのと、中くらいの園子に襲われる。

 くすぐりながら、同時に怒張を手で扱いて刺激してくる彼女はそのまま俺の剛直を蜜壺に挿入させていた。

 大きく脚を広げて結合部を俺に見せ、馬乗りとなって搾り取ろうとする園子(中)。

 上下の唇にキスと指でトロトロになる園子(小)。

 重力に垂れ下がる肉果を咥え、俺は園子ハーレムを楽しみながら隣に目を向ける。

 

「あへ……はえ……」

 

「ふふ……ここ、ですか?」

 

「やめ、ひなたっ……」

 

「こんなに腰を浮かせちゃって……良いですよ? イって下さい」

 

「ぁぁああっっ!!」

 

 隣では勇者が巫女に遊ばれていた。

 乃木という苗字は屈服する者の称号なのか。あんなにもだらしない表情で口端からは涎を垂らす勇者。瑞々しい唇が巫女の唇に奪われ、若葉の頬裏で何かが蠢めく。

 少女たちの絡み合った唾液は、口端から床に垂れ落ちる。

 

「ぁ……ぇ」

 

 若葉の焦点の合わない眼差しと視線が合うも、彼女の意識は既に法悦の空にあった。

 いつの間にか衣服を脱がされ、双丘に手を置く巫女の片手が若葉の恥部に触れる。

 

「~~~~ッッッ!!!」

 

 あの若葉が。勇者のリーダーとして凛々しくも美しい女が。

 こんなにも容易く、艶美な笑みを浮かべた巫女に、ひなたに絶頂させられるとは。

 

 裸体に剥かれた若葉に慈母のように優しく微笑むひなた。

 

 いつの間にか耳の穴ではなく、金の茂みが生い茂る恥部に指が挿入されていた。

 幾度も出し入れされては、若葉のあられもない声を響かせて、腰が上下に震えた。

 背中をのけ反らし、ぷるりと乳房を揺らす。

 思わず伸ばした手は園子に絡め取られ、肉竿もまた膣襞に搾られる。

 

「ぁ、あぁあっ!! ひなっ、たぁっ!!」

 

「良いですよ、イって」

 

「ひ、なぁっっっ……!!!」

 

 少女の腰が跳ね、巫女の名前が呼ばれる度にひなたは微笑む。

 長い黒髪が若葉の蜜液で濡れても、淫靡な表情で若葉の陰核を弄り、恥部を指で辱め続ける。カラオケでも聞かないような悲鳴、涙声、大声が部屋中に響き渡った。

 

 

 少し時間が経過した。

 園子たちの最奥に濃厚な雄汁を注ぎ込み、お姫様二人を抱き締める。静まり返った園子ズは俺の肉布団として寝息を立てていた。

 射精で酩酊する意識の中、開いた視界には絡み合う少女たちが映る。

 ビクンと巫女の指で若葉の背中が反り、その瞳には光が無かった。

 

「ふぅ……」

 

「────」

 

 極上の女に吐精した至福を吐き出すように吐息する巫女。

 淫靡な笑顔を俺に向けた彼女は揶揄うような口調で告げた。 

 

「……亮之佑さんの真似ですよ」

 

「似てないな」

 

「そうですか? そうかもしれませんね」

 

 親友の愛液で肌と黒髪を濡らした巫女はクツクツと笑みを浮かべる。

 リビングに残ったのは俺とひなた。

 残りの金髪美少女たちは皆、仲良く裸体を晒し寝息を立てている。

 念の為にと若葉の乳房を揉んで反応を確かめる俺を見るひなたは、親友の脚を掴んで広げる。

 

「私の指でこんなになったんですよ? ……凄く食べ頃です。今、膣内に出してしまったら本当に孕んでしまうかも」

 

 巫女は勇者の陰唇を躊躇なく開いた。

 外気に晒されたピンクの粘膜からは泡混じりの愛液が滴る。陰毛の色合いやピンクの襞、陰唇の見た目などなんとなく先祖と子孫が似ているように感じられた。

 先祖と子孫の秘所を並べて見ながら、巫女と視線を合わせる。

 

「……どうしますか?」

 

「そうだな……」

 

 俺を試すような眼差しには喜悦が宿る。

 どうするか、という質問が何を指すのか互いに理解が及んでいる事を、俺とひなたは視線を交わして把握する。無言で、静かに、共通の認識で動く。

 スヤスヤと寝息を立てる園子ズを横に置いて立ち上がる。

 ひなたもまた、静かに若葉を床に置いて、俺の元に近づいてくる。

 

「……」

 

 こうして向かい合うと、ひなたの背丈が気になる。

 彼女の方が小さく、自然と上目遣いになる巫女はおもむろに自らの衣服に手を置く。この後の展開、俺が何を望み、自分がどうしようとしているのかを考慮した結果だろうか。

 

「以前から、満開や切り札の後遺症を治療する御役目を亮之佑さんは行っていますけど、最近巫女に新しい神託がありまして」

 

 しゅるりとボタンを外していき、肌を露出させる。

 

「治療を行う方にも、後遺症のある勇者の熱が僅かながら伝染している傾向があると……」

 

 ですから、と呟く声はか細い。

 その言葉の内容が正しいか、そうでないか、俺には分からない。

 

「……ですから、その熱を解消するのも巫女の御役目になりました」

 

「ふぅん?」

 

「他の勇者たちの迷惑にならず、悟られないように……っ」

 

 巫女を抱き寄せる。

 黒髪が美しく、色白の肌、黒のブラジャー越しでも分かる豊満な乳房。

 肉付きの良い柔肌、背中に腕を回すとビクリと震える少女の熱と淫臭。

 

「は……」

 

 驚きを含んだ声。

 彼女の下腹部に剛直を突き立てる。

 肉竿を押し付けると彼女の肌の柔らかさと程良い熱を感じる。逆に言えば、彼女は今、俺の肉棒の硬さ、熱さ、長さを肌で感じ取っている。

 俺を見上げる瞳に熱い感情が過る。肌に朱色を差す。

 

「……せめて、ベッドで」

 

「お風呂がいいな」

 

「そう言いながら、なんで若葉ちゃんの隣に押し倒したんですか……?」

 

 無防備に寝息を立てる若葉の乳房を揉みながら、ひなたのスカートを脱がす。

 彼女自身の協力もあり、俺が脱がせると、あっという間に下着姿に。

 黒の装飾とフリルの付いた下着には、局部を晒す穴が付いていた。

 

「これ、さっき送ってきた自撮りの奴じゃん」

 

 すぐ近くに自身の携帯端末を置く。液晶に映るのは艶美な下着姿を披露する巫女の姿だ。

 その下着の局部を隠す役割は放棄されていた。

 ただ、男を惑わす下着は女の大事な部分を的確に見せつける。

 鏡の前で手で顔を隠しながらも、しかし乳首も、恥毛も、恥部も、そこに小さく見えるほくろすら鮮明に撮られた画像を見せると、静かに目を逸らした巫女。

 

「毎日毎日送り付けられてイライラしてたんだ。こんな脚を開いて……自分の身体がエッチなの知っててやってるんだ~。エッチな巫女だよね」

 

「……」

 

「さっきお手洗いに行くって言って、これが送られた時からさ」

 

「……」

 

「どうやってひなたさんを抱き潰そうかってずっと考えてた」

 

「……っ」

 

「ひなたさんの事、一杯考えてたよ。……下着も脱ごうか」

 

 彼女は無抵抗で裸体を俺の前に晒した。

 きゅっと乳首を摘まむと既に硬く、開かせた脚から覗く花弁は濡れていた。

 前戯の必要が無いような、まるで自分で弄っていたかのような濡れ具合。

 

「若葉を虐めて、興奮で濡らしたのか」

 

「……秘密です」

 

 そっと花弁に肉棒の先端を宛がう。

 ぬぷぷ、とあっけないほどに雄竿を受け入れ、最奥まで挿入した。

 ん、あ、と甘く蕩けた声を聞きながら巫女の乳房を揉み始めた時だった。

 

「ん、ぅ……」

 

 一人の少女が、若葉が起きようとしていた。

 

「……ッ!!」

 

 ハッと巫女は息を呑み、膣が怒張を締め付ける。

 まるで浮気がバレたかのような、夫にどんな言い訳をしたら良いのか、頭を回している表情だ。こんな所で行為をしようとするのだ。バレるリスクは当然ある。

 その管理ができないほど、彼女も興奮していたのか。

 危機的な状況に人妻の膣は締まる。

 

「……──」

 

 僅かな時間の末、彼女は自らの口に手を置いた。

 俺を退かす事などできない。起きようとする若葉をどうにかするのは難しい。

 

 無言で焦るひなたを見下ろす。

 親友に見せたくないという顔色。

 濡れた瞳。熱い身体。柔らかで豊満な乳房。

 黒く濃い陰毛。噛みつきたくなる肉付きの良い脚。怒張を呑み込んだ熱く濡れた媚肉。

 

 俺と二人でいた状況を隠したいという、気の早いひなたの行動は、俺を刺激した。

 

 何もしないつもりだった、と言えば嘘になる。

 だが、そんな挑発のような行動をされると応えたくなる。

 

 締め付ける膣に応えるように、ゆっくりと限界まで竿を抜いて、奥に叩きつける。

 ぬちゅ、と粘りついた行為の音がいやらしく響いた。

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 目の前の巫女が絶頂した。

 大きく瞳を見開き、精一杯竿を締め付け、身体を痙攣させる。

 悲鳴は無く、涙を滲んだ眼差しは天井を見続け、二度、三度と震える。

 法悦を見ながら、ひなたは俺の背中に腕を回して密着する。

 きゅうっと竿に膣襞が吸い付き、子種をせびる。同時に音を立てさせまいと肌を密着させる。

 恥毛が絡み、肉棒の根本まで入る。

 

「ふっ……ぅ」

 

 荒い呼吸を手で抑える巫女。

 豊満な乳房と先端を胸板に擦り付け、目線で声を出さないようにと懇願してくる。

 

「……なんでもしますから」

 

 人を惑わせる甘言を口にするひなた。

 だから親友に痴態がバレないようにと。首を振るひなたの髪を撫で、リボンを解く。

 静かに微笑みを見せると、彼女の身体の強張りと膣の締まりが解れた。

 

 笑みを見せながら大きく息を吸う。そして、

 

「わか──」

 

 隣の金髪勇者を呼ぼうとする。直後唇を奪われる。

 カツンと歯が当たった。その衝撃を忘れさせるように、柔らかな唇が俺の唇に重なる。

 涙目で俺を睨みつけるひなたに、背筋に電流が奔るような快感を覚える。

 黙らせるように強引に頬を掴んでキスをする巫女に必死さを感じた。

 緊張と焦りで剛直を締める中、俺は抗うように腰を円を描くように結合部に擦り付ける。

 

「あっ……は──」

 

 気持ち良いのか、俺の形になった恥部を蠕動させる。開いた唇は涎が透明な橋を作る。

 グリグリと怒張を巫女に味わわせる。

 抽送の音を恐れる彼女の弱点に向けて先端を擦り付けると愛液が結合部から垂れ落ちる。

 

「ひぁッ……んっ、ふっ……」

 

 にじゅ、にちゅ、と淫液が泡立つ音。

 涙で滲む瞳は虚空を見据え、口端から涎を垂らしながら、音を隠そうとする。

 ビクンと腰が跳ねた。

 

「──! っっ……!」

 

 俺の腰に絡む脚の拘束が緩んだ。

 そこを狙い、俺は腰を揺すり彼女の性感を攻めたてる。

 

「あんッ!! ──ッ、っ」

 

 雄竿に確かに喘いだ彼女が顔を逸らす。

 指を鉤爪のように丸め口に含むひなた。よほど見られたくも聞かれたくもないのだろう、不倫を必死に隠そうとする妻を連想して竿が膨らむ。

 若葉の泣く写真は平然と撮る彼女は、しかしその逆は嫌がる。それは何故か? 本質的に俺と同じ、即ちSの気質を兼ね備えていると考えていた。

 だから、携帯端末でひなたの顔を撮ると、酷く肉壺が締まった。

 Sの気質がある人は攻めは強いが、攻められるのは弱いのだ。

 

「────!! っ、ッ、んッ〜〜!!」

 

 一突き。絶頂に達した。

 頭を抱き、寝息を立て始めた若葉の隣でひなたを楽しむ。余すことなく快楽を受け止める少女は顔を朱に染めながら脱力する。

 あと何回かで彼女の全身を使った拘束が解ける。その確信に至りかけた時だった。

 

「ベッドで……しませんか……?」

 

 少女の懇願が鼓膜を震わす。

 彼女の濡れた瞳が理性を削る。

 

「ベッドで……キスしながら、亮之佑さんの逞しいモノで、私の奥を沢山、壊れるまで突いて下さい。満足するまで、いっぱい、私の自撮りで怒らせてしまった分だけ、なんでもしますから」

 

 だから、ここから離れてと目で告げる。

 俺好みの甘く媚びた態度と言葉だった。しばらく考えた俺はゆっくりと彼女を抱いたまま身体を起こす。汗を肌に浮かべた彼女が小さく吐息する。

 それは自分の要望が叶った事への僅かな油断だ。

 自ら肢体の拘束を緩めるひなたに口づけしながら、彼女の身体を持ち上げる。

 

「えっ」

 

 抜けかけた剛直で彼女を貫く。

 結合部にひなたの体重が乗る。肉棒に貫かれた彼女が目を見開き「かはっ」と息を吐く。

 駅弁の体位で俺は立ち上がる。

 

「ひ、あ……」

 

 ぺしん、とひなたの尻を叩く。

 

「はぁん!」

 

 独特の弾力が手のひらに返る。

 柔らかく、大きく温かい、落ちないようにと俺の肩を掴む巫女の尻肉を割り開き、歩き出す。

 

「あ、あのっ」

 

「落とさないから大丈夫」

 

「そ、そういう事では……!」

 

「軽いから大丈夫だよ」

 

 思ったよりひなたは軽かった。

 口にすればどうなるか分からないので無言の俺に抱きつくひなたを抱え、階段を上る。

 

「ゆ、ゆっくり……っ」

 

「まさかこんなことでイッたりしないよね?」

 

「……当たり前じゃ──ひッ!?」

 

 一段一段、階段を上る度に俺の肩を掴む力が強まる。

 七段目で「待って」と告げたのでペースを上げた。

 最後の段で結合部から潮を噴くほど、彼女は無言のまま深く達した。抵抗のつもりか肩に噛みついてきたのでその場で足踏みをして肩から口を離すまで続けた。

 

「~~~~ッッッ!!? ぁぁああっっ──!!!」

 

 髪を振り乱し「許して」などと言い始めたのでその場で更に絶頂するまで上下に揺らす。

 背中を反らして床に倒れ込んだ彼女の乳房に噛みつき、結合部を見せつけ腰を振る。

 射精など絶対にしない意思で、ただ彼女の弱点を擦り続けた。AV動画に出演する数多の男優のように、ただ目の前の女を喘がせて快楽を叩きつける。

 今度こそ悲鳴のような声を我慢できずに巫女は小水を漏らした。

 

 しばらく声を隠せなくなった巫女を床で犯した。

 やがて満足した俺は、自分の部屋にグッタリとしたひなたを連れ込んだのだった。

 

 

 



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【番外】ポッキーと猫

いつも感想と誤字報告ありがとうございます。励みになってます。


 ポッキーゲームを最初に考えた人は誰なのだろう。

 わざわざ自分で調べようとは思わないが、王様ゲームのように異性と触れ合える機会を生み出した天才的な頭脳は園子に匹敵するに違いない。

 時代を経てもなお愛される製品で、今日俺たちは遊んでいた。

 

「ん……っ──」

 

 ポリポリと、──否、凄まじい勢いでポッキーを喰らう唇。

 瑞々しい唇だ。触れたら柔らかく、熱く、蕩けてしまいそうになる。吸い込まれるようにポッキーは上唇と下唇の間に消えていく。

 そして、その時がきた。

 

「んんんっっっ!!!?」

 

 ちゅうっと唇が重なった。

 硬直する一方の頬を掴んで逃げ場を奪い、唇に重なる。

 僅か数秒程度の出来事で、ゆっくりと唇が離れる彼女たちの間には透明な唾液の糸。呆然と口元に指を置く少女の瞳には困惑と衝撃があった。

 きっと、悪戯心で始めた事だったのだろう。

 多少なりの羞恥や、なんだかんだで止めると予想していたのだろう。

 

 だが現実は違う。

 少女は、伊予島杏は躊躇うことなく土居球子の唇を奪った。

 

「な、ななな……ッ!!?」

 

 驚愕する球子。理解が追いつくように顔が赤面していく。

 対して杏。彼女はなんでもないような顔で唇を舐め取ると既に視線も意識も彼女には向けていなかった。普段の彼女の態度を考えるとやや眉をひそめざるを得ないが、ふわふわな髪を揺らす杏の視線の先を見ると納得しかなかった。

 

「……ッ」

 

「ん〜……」

 

 須美と亜耶のポッキーゲーム。

 彼女たちは互いに躊躇し、あるいは遠慮せずその距離を詰めていく。杏は大きな瞳を見開いて、彼女たちの遊戯を見守る。だらしなく頬を緩め、口端から涎を垂らす様は不審者そのものだ。

 

「た、垂らしてませ──んんっ!!?」

 

 唇を奪う。柔らかな二の腕を掴んで強引に唇を奪う。

 ちゅっとキスをして離れると僅かに呆けた顔をした杏が俺を見上げる。さらりと揉んだ乳房は豊満さと柔らかさを俺の手のひらに伝える。

 ん、と小さく声を漏らす杏は俺と少女たちを交互に見る。

 このまま俺とポッキーゲームをするか、その瞳に押し倒せば消えそうな迷いが見えた。

 見つめ合うとほんのりと頬を赤らめる彼女は選択したように口を開く。

 

「あ、あの……私とも──」

 

「はい、アウトォー!!」

 

 デデーンと口で効果音を鳴らしながら俺と杏の間に入り込む風。

 勇者部部長として不純異性交遊など許さないと言うのだろう。

 

「ちっがーーーう!! ポッキーゲームと言ってるだろうに! なんで誰も普通に遊ばないのよ!!」

 

 それは彼女の魂の叫びだった。

 大赦を滅ぼすという声音の響きを凌駕する、そんな血を吐くような絶叫。

 どうしてこうなった。そう伝わってくる風の切実な思いを前に、彼女の両手を掴む。ポッキーを一本ずつ持つ風からそれらを取り上げると褐色の少女、古波蔵棗に引き渡す。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「大人しくしろ、風。今日は口づけをする日……覚えた」

 

「だからちがーう!! どさくさに紛れて亮之佑はアタシの胸を揉むなー!!」

 

 制服越しの風の胸は揉みごたえがある。

 だが怒られたので、仕方ないとばかりに唇を奪う。僅か数秒程度、舌は絡ませない親愛を感じさせるキスですら、風は麻薬を吸ったヤベー人のように顔を赤面させふらつく。

 

「ま、待って……」

 

「待たない」

 

 乙女のような反応をする風の唇を勇ましく棗は奪う。

 その勇ましさは正しく勇者。周囲に漂うビュォォオオオウという暴風を感じながら周囲を見渡す。

 

 ──誰もかれもが発情期のように唇を重ねていた。

 ポッキーゲームという建前と共に女子高のノリで唇を重ねて、次第に本気になっていく。

 

「は、んむ……うえ、さとさん……」

 

「……ふふっ、千景さんもこうして見ると可愛いですね」

 

 床に押し倒された千景とポッキーゲームをするのは巫女だ。

 既にふやけて消えたポッキーを探してひなたと共に互いの口腔を舌で探し合う。両手を絡め合い、捲れたスカートから覗くショーツに膝を擦り付けて、甘い吐息と共に唇を重ねる。

 

「ポッキー見つかりませんねぇ……おや? 千景さん? その顔はどうしたんですか?」

 

「は、ぁ……っ、……だめ、見ないでぇ……」

 

「こんなにトロトロになるなんて……。ほら、ゲームなのにこんなに濡れてますよ? ……そうですね、折角なので切り札の後遺症も治しましょうか。任せて下さい」

 

「ダメ……ぁ……たかしましゃ……かがくぅん……」

 

 甘く蕩けた声でひなたを誘う千景。

 その被虐心をくすぐるような声音にひなたの身体がぶるりと震えた。しゅるりと千景の衣服が脱がされ、周囲に淫靡な雰囲気が漂う。捕食者の顔をひなたは見せていた。

 いただきます、とひなたは千景の耳元で囁いた。

 肌を晒し、巫女に食べられる勇者の姿を俺に雇われた銀が端末片手に震える。

 

 媚薬が気化して部屋中に漂っているのかもしれない。

 だが、俺にとってそんな事は些事だった。明るい友奈の声が思考を切り捨てさせる。

 

「須美ちゃーん! 私ともしよーよ! ポッキーゲーム!」

 

「ゆ、友奈さん。それはちょっと……。うぅ……もう着替えたい」

 

「えい!」

 

「ちにゃあ……っ!」

 

 友奈と須美はこの空間で唯一猫耳と水着姿だった。

 とはいえ、須美の方は殆ど生地が外れており、ツンと尖った乳首は周囲に見られている。

 尻尾に付いた鈴が鳴る度に、友奈は可愛い鳴き声を上げながら須美を弄る。トントンと腰を指で突き、刺激を与えると口端から涎を垂らした須美が「おッ!?」と声を上げて身体を震わせる。

 

「あれ、須美ちゃん? ……えいっ!」

 

「ひぁぁッッ!!?」

 

「眠ったふりは駄目だよー」

 

「やだ、おかしくなる……ちにゃ、ちにゃぁ……」

 

 二度、三度と須美の声を楽器と勘違いした友奈は自らの猫耳をピコピコと動かす。

 やがて動かなくなった楽器を弄り回しながら、俺に呼び掛ける。

 

「りょーちゃーん。もう一回須美ちゃんを起こしてー!」

 

「いいよ。ほら須美、何度気絶しても起こしてあげるから」

 

「ん……んむ……は、ぁ……りょ、のすけ、さん?」

 

「おはよー須美ちゃん! もう一回にゃんにゃんなポッキーゲームだ!」

 

「にゃあー!! ……ち、ちにゃぁ……」

 

 須美の身体はもう駄目だ。友奈族によって散々人体実験ならぬマッサージを受け続けた結果、どこに行っても恥ずかしくない性感帯塗れの少女となってしまった。

 僅かに指で突くだけで「ちにゃ」と鳴き出す彼女の唇にポッキーを挟んで友奈は遊ぶ。

 あっという間にふにゃふにゃとなった須美を人形のように友奈は抱きつく。唇を弄ばれ虚空を見上げる東郷の進化元を見下ろす俺は、高嶋に目を向ける。

 ひなたと千景のポッキーゲームに対して彼女が反応していないのは理由があった。

 

「んんっ……ふっ、むっ、ん……」

 

 盛る少女たちの中心。友奈同士の口づけを少女たちが盛り上げていた。

 一人は高嶋友奈。結城家の友奈に瓜二つな彼女は楽し気に、蠱惑的に、魅惑的なキスを少女にする。壊れ物を大切に扱うような、それでいて味わい尽くすような情熱的な口づけは一人の少女を溶かしていく。

 弱々しい抵抗をする手を掴まれて、濃厚な口づけをする合間に少女が声を漏らす。

 

「ぁ、まって高嶋先輩……も、もう……ポッキー食べたじゃん……んっ」

 

 少女は赤嶺友奈だった。

 褐色、巨乳の彼女はいつの間にか制服を脱がされていた。筋肉質な肌を覗かせ、ショーツに膝を押し付けられ、唇を奪われる姿は、敗北した敵兵を何故だか連想させてしまう。

 蕩けた眼差しに淫靡に高嶋が微笑む。

 

「赤嶺ちゃんの唇、美味しいなー……なんちゃって」

 

「は、ぁ……分かったから、離れて……」

 

「えー駄目だよぉ。ほら、皆も赤嶺ちゃんとチューしたいって」

 

 ニコニコと笑みを浮かべる高嶋の肩を掴むのは芽吹だ。

 真剣な表情を見せる彼女は、赤嶺の腹筋を撫で回しながら呟く。

 

「やはり……美しい筋肉ね」

 

「……でしょう? これでも自慢に思ってて──」

 

「もっと見せなさい。ほら、全部脱ぐ!」

 

 流れるように赤嶺は芽吹に唇を奪われる。

 肌を撫で回し、ビクリと震える褐色巨乳の乳房を背後から揉むのは樹だ。この世全ての巨乳を憎む彼女は、友奈族でありながら友奈の巨乳の可能性を明かした彼女のブラを剥ぎ取る。

 流れるようにショーツも脱がせ、生まれたままの姿を晒す赤嶺を少女たちが囲む。

 

「赤嶺の筋肉凄いわね……んっ」

 

「ナイスマッスルね……んむッ」

 

 赤嶺は少女たちに輪姦されていた。

 日常の挨拶をするように唇を奪われて、乳房を揉まれ、恥毛を撫でられ、恥部に指まで挿入される。面白半分で少女たちに乙女の秘所を晒され弄ばれる彼女はやがて喘がされる。

 

「ぁっ、ま、待って……」

 

「ほら、そんなに力入れないで。亜耶ちゃんが見てるでしょ」

 

「にゃはは……赤嶺も諦めた方が色々と楽だよ」

 

「勇者ぁ……キッス~!!」

 

「~~~~ッッ!! ぁぁあああっっ!!!」

 

 勇者部の少女たちに囲まれて、唇を奪われながら、赤嶺は達した。

 ぷるりと揺れ動く褐色の乳房。ツンとした乳首を巫女たちが弄り、陰核を亜耶が指で摘まんで遊ぶ。優し気な笑みで、あられもない声を上げさせられる赤嶺の痴態を皆で見届ける。

 

「ご、ごめんなさィ……、試練とか言って敵対してごめんなさッ……!! 他の子より胸が大きくて……立派な身体で……ごめんなさっ……」

 

「馬鹿にした! 胸が小さいことを今馬鹿にした! 夏凜さん、玩具も使いましょう!」

 

「そうね……どこに置いたかしら……。ほら、沢山あるわよ」

 

「~~~~ッッ!! ぅぁあ~~ッッ!! ──っ!!」

 

 二度、三度と痙攣する肢体を皆で拘束して、更に攻め立てる少女たち。

 純粋無垢だから加減を知らないのだろう。喘ぎ声に鳴き声が混ざるのを聞きながら、俺は若葉の背中に手を回して唇を奪い、奪われる。さらりとした髪の毛が手に心地よい。

 

「これで赤嶺も正式な勇者部の一員だな」

 

 ぷはっと俺の唇から唇を離した若葉が決め顔を見せる。

 いつの間にか勇者部の間で暗黙の了解となっているのが、皆の恥ずかしい姿を共有すれば結束がより深まるという物だ。ただでさえ変わらない世界で、変わらない友人、変わらない先生、変わらない時間の中で唯一同じ時間を過ごす少女たちとの仲は下手な家族よりも深い。

 

 だから。

 赤嶺を勇者部に引き入れるなら。否、新人が勇者部に馴染む為には。

 

「辱めても仕方ないよね」

 

「……ん、おい、どこを見てる亮之佑」

 

「いや、猫を見せてあげるって言ったらホイホイ着いてきた赤嶺にさ、俺のゆうにゃと部室で飼ってるちにゃちにゃ言う新種の猫を見せた時の顔は凄かったなって。やっぱり床で牛乳の入った皿を舐める姿が良かったんだろうな。リアリティの勝利、無抵抗で確保された時の顔は凄かったよ」

 

「そうか。亮之佑、喋るよりも私とキスをしろ」

 

「──。今日は強引だね。強引若葉ちゃんだ」

 

「お前の変な影響を受けたんだろう」

 

 頬を掴まれて正面を向かされる。

 若葉の端正な美貌。頬を薄っすらと朱色に染めた彼女は静かに俺と唇を重ねる。

 白昼堂々の行為、躊躇いなどなく、しかし僅かな羞恥心を見せながら俺と口づけする。背中に腕を回し、熱烈な抱擁を彼女と楽しむ。

 すらりとした太腿を撫で、ショーツ越しに包まれた臀部を揉み身体を重ねる。

 性行為の寸前にただ悪戯に身体を擦り合わせる行為だったが、不思議と多幸感を覚える。

 

「私を見ろ」

 

「あ、ああ。……もしかして欲求不満?」

 

 恐らくは彼女から求めてきていることが原因だろうか。

 唇を重ね、愛おし気に俺を抱き締め、布越しに下腹部を擦りつける若葉に囁く。

 否定も肯定もしない若葉は、見開いた瞳に熱を灯す。

 

「ひなたさんと千景が抱き合って唇を交わしているけど良いの?」

 

「良いのって……いや、私とひなたは別に──んむぅっ、ん……」

 

 デリカシー皆無な若葉の唇を奪いながら、スカートの奥に隠れた秘所も弄る。負けじと俺の剛直を扱く若葉に「俺の剣はどうだ」と囁くと赤らんだ顔で「硬い……」と呟き返してくる。

 そんな俺と若葉に囁く声があった。

 

「ご先祖様がセクハラされてるけど喜んでる……。普通にイチャイチャしてるんよ」

 

「なんだかんだでかっきーってわかちゃんに一番懐いているから。隙あらばわかちゃんに何かしてるでしょ? なつき度は高いからそろそろ進化するんじゃないかな~?」

 

 と、勝手に語るのは園子ズだ。

 彼女たちは俺と若葉の情熱的な口づけを見ながらも態度を変えず、手を動かす。

 

「クッ……友奈だけに恥ずかしい思いはさせないわ」

 

「ご先祖様、お供しますわー!」

 

 弥勒家の少女たちもまた他の少女たちとの楽しいポッキーゲームに興じている。脱がされ、共にスタイルの良い裸体を晒しながら、貧乳組の舌打ちの回数に貢献している。

 夕海子の方は良くも悪くもいつも通りだった。対して、群がる巫女や慎ましい胸元の勇者たちに辱められる度に弥勒家の先祖の方が静かになっていく。

 普段の自信に満ち溢れ、余裕がありプライドの高い姿はなく、しおらしい。

 自らブロマイドを配ろうとする様子は連想できず、寧ろ足を大きく広げられて子孫と共に写真を撮られ、咄嗟に手で顔を隠そうとする姿は弥勒家の淑女からはかけ離れていた。

 

「この弥勒が……こんな……ッ」

 

「ご先祖様。お気を確かに……」

 

「ん……夕海子……」

 

 先祖と子孫の交わりにビュオオオウと風が吹く。

 豊かな乳房を押し潰し合い、涙と喜悦に飲まれた瞳を閉じて唇を交わす。周囲では雀を始めとした少女たちに乳房を揉まれ、腰を撫でられ、恥部を弄られる。

 秘所に挿入したポッキーを食べて、そのまま陰唇とキスを交わす少女もいる。

 

「は……ぁ……レンちぃ……」

 

「友、奈……」

 

 互いに伸ばされた手が触れる事はない。

 他の勇者たちと指を絡め合い、唇を奪われて、やがて瞳からは光が消える。

 俺は彼女たちを見ながら小さく呻く。

 肉棒に触れる若葉の指に先走り汁が絡む。

 二人の新たな勇者、敵であり味方であった少女と彼女の盟友でありライバルである少女を前に屹立する剛直が扱かれる。モジモジと腿をくねらせながら、俺の怒張に手淫する若葉は、その後も静かに従順に奉仕し続ける。

 

「じゃーん!」

 

「いや、なにそれ」

 

「りょーくんの真似。覚悟してね赤嶺ちゃん!」

 

 チラリと赤嶺の方を見ると少女の恥部に疑似肉棒を添える高嶋。

 興奮した男のように白い肌を薄く朱色に染めながらも、腰に巻かれ自らの秘所を貫き固定された黒々強い肉棒に小さな悲鳴を上げる赤嶺。だが、俺は知っている。その眼差しには僅かながら興味が見え隠れしている事を。

 

「若葉、知ってるか? エッチも運動の一種だ。普段は鍛えられない筋肉が鍛えられる」

 

「それはどこだ?」

 

「膣周りの筋肉だ。身体の中から男の肉棒を受け入れ、精液を呑み込む事でリンパが満開する」

 

「満開……?」

 

「そうだ。それで身体中の血液が解され、美肌効果、便秘改善、吹き出物もストレスも完全解消。仲間の結束も深まるとされる、まさに完全運動な筋トレよ」

 

「なんだと!? そんな効果があったのか。……確かに言われてみれば」

 

 若葉も結構ノリの良い女に成長してきた。

 流石に天然な反応ではないだろう。純度100%の紛れもない嘘だ。もしかしたら本当に効果はあるのかもしれない。そんな事を若葉と抱き合いながら話していると夕海子の先祖、弥勒蓮華は笑った。

 

「フッ。フフ……弥勒としたことが生娘のように取り乱してしまったわ。待たせたわね、亮之佑」

 

「いや、レンちは生娘だよ」

 

「黙りなさい友奈。高嶋、もっと腰の動きを強めて」

 

 自らの脚に触れていたいくつかの手を払いのけ、俺を見上げる蓮華。

 肉付きの良い太腿を自ら大きく開き、俺と若葉に秘所を見せつける。

 整えた黒の陰毛に覗くピンク色の恥部は濡れていた。そこを若葉と見続け、ひそひそ話をするように若葉の耳元に片手を置いて息を吹き込む。

 小さく笑みを浮かべた若葉の反応に蓮華はやや赤らんだ顔を見せる。気丈な態度で、崩れかけていた自信と余裕を表情に浮かべ直していたが、大きく開いた太腿は僅かに震えていた。

 

「弥勒が受けて立つわ。逃げも隠れもしない。この弥勒を孕ませてみなさい!」

 

「さっすが、ご先祖様ですわ!」

 

「ほら、弥勒さん。そこ退いてよ、このデカい尻めっ」

 

「ひゃぅん!?」

 

 何を思ったのか雀が夕海子の尻を叩く。

 ぷるんと乳を揺らし声を上げた彼女は雀に反撃を仕掛ける。

 そのまま仲良く亜耶と芽吹、しずく(シズク)の手によって下の口で大きな黒いポッキーゲームをさせられるが、俺には関係のない事だった。

 

「一緒に夕海子を作ろうな」

 

「フッ。亮之佑と子作りをしても夕海子にはならないわ」

 

 至極当然の事を決め顔で告げる蓮華。

 何故か、若葉がそっと顔を逸らした。

 こっちを見るなと若葉に蓮華の方に顔を向けさせられる。黒髪からは汗と雌の芳香を漂わせ、僅かに強張った肢体は、唇を交わらせる度に柔らかく解れていく。

 豊かな乳房は東郷やひなたのように豊満であり、しかしまた別の質感がある。

 揉み解しながら、ツンと尖った乳首を指で擦り合わせ、肉棒を恥部に宛がう。

 

「前戯などいいからっ……ァ……さっさとしなさい」

 

「分かってないな。前戯は大事だ。場合によっては挿入よりも。何故かって? 感じ入る女の姿が見たいからさ」

 

「自分の物で満足させる自信が無いだけでしょう」

 

 雄棒に貫かれ、女となった蓮華は小さな喘ぎを漏らす。

 散々、他の少女たちとポッキーゲームを繰り広げ、身体を弄ばれたのだ。密着すると伝わる鼓動の速さと、熱と、柔らかさ。

 

「は、ぁ──」 

 

 パンと突くと蓮華は顔を逸らした。

 横に顔を背け、乳房が揺れ動く彼女の唇を無理やり奪う。

 

 やや拒絶気味な唇を割り拓き、ざらついた舌と舌を絡め合う。鼻息が荒く、呼吸の仕方が分からないように震える肢体に密着しながら怒張を膣に擦りつける。

 俺の形となっていく蓮華の膣襞は蠕動し、確かな快感をもたらす。

 

「と、当然よ。弥勒は、膣内どころか全てが完璧なのだからァッ……っ」

 

 褒めると喜び、膣が僅かに締まる。

 突く度に確かな反応を示し、自信のある表情に喜悦を浮かべる。

 剛直を味わわせる度に角度を変え、そして何度目かの抽送で弱点を掘り当てる。

 

「んんッ!! ……ふっ、んっ……」

 

 喘ぎ声だけは上げない。聞かせないとする蓮華の唇を重ねる。

 少しずつ、周囲の目線を忘れて嬌声を聞かせ始める横で、赤嶺が高嶋に犯されていた。

 

「アハッ! もっと腰を動かしてよ赤嶺ちゃん。筋トレだよー?」

 

「こんな……筋トレじゃ、ぁんっ! ぁ、ぁああっ──!!」

 

 小刻みな腰の動きで赤嶺が弄ばれる。

 同じ顔をした少女に手も足も出ず、好き放題に高嶋に喘がされていた。結城家と違い高嶋家の友奈は小悪魔的な笑みを浮かべて赤嶺の尻を撫でて、叩く。

 

「……ッ! ……は……ぁぁ……」

 

「あー! 分かっちゃった! なーんて、ココだ! えいっ、えいっ!!」

 

「まっ、まって高嶋先ぱっ、~~~~ッッ!! あッ! やら、ぁ……」

 

「イッちゃえ! イッちゃえ!」

 

 ビクンと背中を反らして潮を噴いた赤嶺に高嶋はやったーと無邪気に笑う。

 流石に友奈族、女の身体を支配して、その両手で容易く絶頂に導く。

 女神のような笑みで赤嶺の身体を本人よりも理解したように赤嶺の性感を弄り、大声を上げさせ、床に愛液を垂らす。四つん這いで逃げようとする赤嶺をバックで犯す高嶋と目が合う。

 

「弥勒としている時はッ……たとえ友奈であってもこっちを見なさい……!」

 

 それは、女としての矜持か。

 突然頬に手を置かれ、蓮華と顔を合わせると今度は彼女から唇を重ね合わせる。胸板に乳房を擦りつけ、自らが最高の女体だと主張するように膣襞が蠕動する。

 

「ぅん、ぁ、ひぁ……」

 

 じゅぷじゅぷと結合部から下品な水音が響く。

 余裕の表情を崩すように剛直を彼女に突き立てる。ぺちっ、と太腿が俺の腰を叩き、より深くまで竿が彼女を貫く。

 目端で赤嶺を貫く高嶋と競争するようにピストンを続ける。

 

「弥勒はっ……敗北など……こんなドSなだけの変態に……っ」

 

「レン、ち……私……もう……」

 

 涙で濡れた瞳がきゅっと瞼を閉じる。

 頬を涙が伝う中、その時がきた。

 

「ぅぁあああっっ!!!」

 

 瑞々しくも唾液で濡れた唇を奪い、そして俺は最奥に汚濁を注ぎ込む。赤嶺に再び伸ばされかけた手を握り締めて、絶頂に感じ入る蓮華の顔を見下ろす。

 全身を震わせる彼女の膣襞がゴクゴクと雄汁を呑み込みのを感じながら蓮華に倒れ込む。

 重いと悪態吐く彼女の媚肉に怒張を擦りつけ、乳首を舌で転がし、乳房を揉んで、蓮華に敗北感と余韻で更なる法悦を教え込みながら、赤嶺に目をやる。

 

「高嶋ちゃん。こーたいだよ!」

 

「うん、いいよ!」

 

「は、ぁ、ま……待って、イったばかりだから」

 

「勇者ぁ……ピストン!!」

 

「あああぁぁあ……イクっ、イグッ……! 奥っ、ダメ……ぁ……!」

 

 頭を垂れ、結城家の友奈にパンパンと音を立てて犯される赤嶺。

 余裕も理性も剥かれ、ただ同じ顔の少女に雌とされていく彼女の周囲では同じく太く逞しいポッキーを装着した少女たちが待ち構えていた。

 

「ちょっと亮之佑、終わったなら交代して。亜耶ちゃんも蓮華とポッキーゲームするから」

 

「分かったよ」

 

 虚脱感を感じながら芽吹に急かされ、剛直を抜く。

 こぽりと白濁が媚肉から垂れ落ちるのを見ながら、彼女の恥毛で竿を拭う。

 黒々とした陰毛に白濁が付着しコントラストを生み出す。見ろ、これが芸術だと、隣で疑似肉棒を既に装備していた亜耶に告げると馬鹿を言うなと芽吹に襲われる。

 

「亮之佑の性癖に亜耶ちゃんを巻き込まないで。ほら、ポッキーゲームよ。今日は負けないから」

 

 俺を押し倒し、騎乗位でゲームを始める芽吹を余所に、亜耶がおずおずと話しかける。

 

「あ、あの……蓮華先輩。私ともポッキーゲームしてくれますか?」

 

 年上のお姉さんに対してエッチなお願いを要望するショタのような態度に、お姉さんも何か母性的な物を感じたのか。白濁を指で拭う蓮華はフッと笑って自ら媚肉を割り拓く。

 

「来なさい、亜耶。弥勒をそんな玩具で満足させられるとは思わないことね」

 

「……はい。分かりました、私も持てる限りの全てを使って、満足させます」

 

 亜耶は腰に巻かれた疑似肉棒で蓮華とゲームを始める。

 彼女は俺と出会った頃よりも、随分と成長していて、俺はただ弥勒の痴態を動画に収めるカメラマンとして残り時間を過ごすことになった。自分よりも年下に喘がされるってどんな気分だと煽ると涙混じりの目で睨む蓮華に亜耶がお仕置きをした。

 そして。

 最後に一巡して満足した勇者部の少女たちの代表として友奈が両手を広げ歓迎の意を示した。

 

「──ようこそ、勇者部へ!!」

 

 このイかれた淫らな部活動に哀れな少女が追加された。

 赤嶺と蓮華の他に、彼女達と共に御役目を果たしていた桐生静という巫女も加入した。ただ俺が何かするよりも先に巫女たちに群がられていた。それを最後に意識を赤嶺や蓮華に向けて、気がつくと静は全裸で床に転がっていた。

 彼女たちの下着は貰って神棚に飾って神樹様に捧げた。

 きっと喜んでいるだろう。

 

 

 

 

 

 新人歓迎会を終えて自宅に帰る。

 友奈は園子とお泊り会だ。何故か隣ではなく俺の背後にいる東郷は、黒髪をなびかせて深緑の瞳を瞬かせて、そのまま家の中にまで当たり前のような顔で入ってくる。

 

「……? 妻が自宅に帰ってくるのは当然でしょう?」

 

「ああ、それもそうだ。そういえば今年もまた旅館に行く季節だな」

 

「そうね」

 

 そのまま俺に見せつけるように制服を脱ぐ。

 スタイルの良い身体。清楚さを感じさせる薄青の下着は彼女の雪肌に映える。有無を言わせぬ迫力で下着姿になった彼女はよくよく見ると尻尾が生えている。

 リボンの付いた黒猫の尻尾だ。

 さらには同色の猫耳が付いたカチューシャを髪に装着する。

 

「にゃあ」

 

 大きな猫がいた。

 そこはもう気にすることではない。多分、須美が猫として俺や友奈、勇者部の皆に可愛がられていたから、自分も猫になっていっぱい可愛がられたい。そんなところだろう。

 よくある事で、夫として妻の嫉妬を解消するのも仕事の一つだ。

 

「おいでー」

 

「にゃん!」

 

 鳴き声と共に俺に抱き着いてくる猫。

 たまに東郷はこうして頭がおかしくなる時があるが気にしない。

 

「ミルク飲む? ほーら、皿に入れたから床に這いつくばってぺロペロするんだよ~」

 

「…………亮くん」

 

 少しギアを入れ過ぎただろうか。彼女は床に置いた皿には見向きもしない。

 珍しく真面目な顔で俺を見る東郷はミルクよりも抱擁を選ぶ。

 ふわりと漂う甘い香りと、押し付けられる柔肌が俺の性感を高める。

 

「東郷さん。お願い聞いて貰っていい?」

 

「にゃあに?」

 

「今日はもう東郷さんとずっとイチャイチャしたいな。……イチャイチャさせろ」

 

「亮くんの望みなら仕方ないわね。……私も、いちゃいちゃ、したかったから……今日は帰らない。帰さないで」

 

 すりすりと頬を擦り付ける黒猫は「にゃあ」と鳴く。

 もしも飼い猫がいたらこんな感じなのだろう。腿に垂れた尻尾を掴むとピクリと腰が浮かぶ。

 ブラ越しに乳房を揉み、左右から押して谷間を作って、指を入れて遊んでいると、東郷が囁く。

 

「巫女が一番亮くんの汚れを払えるなら……勇者の力もある私が最適でしょう?」

 

 ひなたが話したのだろう。

 ハイブリッドな東郷は自分こそが相応しいと主張する。

 同じ黒髪で巨乳でも、肉付きと家事力があって、人妻よりも、幼い自分よりも、夫に尽くす自分の方が良いよね? 光の消えた深緑の瞳は否定など許さないとばかりに唇が重なる寸前まで顔を近づけ賛意を求める。

 頷き首肯を返すと笑みを浮かべた東郷がどこからか首輪とリードを取り出す。

 

「いっぱいイジメて、いっぱい優しくして、いっぱい愛して。亮くんじゃないと満足できないように壊して?」

 

 赤い首輪だ。それを俺に渡した東郷はあざとく「にゃあ」と鳴く。

 

「東郷さん。おかしいよね」

 

「何が?」

 

 この状況が? それとも他の子を選ぶの?

 即座に危険色と理性の色をピコンピコンと点滅させる破滅の猫に、俺は告げる。

 

「猫が衣服を着てるなんておかしいだろ? 脱げ」

 

 その言葉にトロリと猫は表情を崩した。

 ペロリと舌なめずりをする彼女に、俺は首輪をつけた。

 



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【番外】ただ東郷さんとイチャイチャする話

いつも感想と誤字報告ありがとうございます!


 俺は今まで動物を飼おうと思ったことはない。

 学業や部活動、初代の世話、他にもやりたいことがある以上、人間語の通じない気ままな犬猫を飼うつもりは無かった。一時的に触れ合うだけならそういう店で発散すれば良いから。

 生き物を飼うとは面倒な事なのだ。

 これから先も犬や猫を飼うことはないのだろうと思う。

 だから。

 

「ほら、脱ごうね……」

 

「にゃあ」

 

 こうして自分から猫になる人を定期的に可愛がれるのは喜ばしい状況だった。

 背中に手を回し、ブラホックを外した東郷からホカホカの水色ブラを受け取る。眼前にぷるりと揺れる乳房とピンク色の乳首が俺を挑発するように震える。

 しっとりとした乳肉は薄っすらと汗ばみ、甘い体臭が俺の鼻孔をくすぐる。

 色白の肌。ツンと尖った乳首。肩から下がる黒髪。

 俺を見る瞳には淫熱を帯び、薄っすらと肌を朱色に染めていく。

 

「……」

 

 彼女はゆっくりと屈む。

 ショーツのウエスト部分に手を掛けた少女が俺をチラリと見る。

 羞恥と喜悦を含んだ瞳を細める彼女は、ゆっくりと見せつけるようにショーツを脱ぐ。最初に鼠径部、そして黒い恥毛と秘所が露わになる。

 隠すことなく無言で俺にショーツを手渡す猫は一鳴きする。

 学生とは思えないスタイルの良さと完成された女の身体を彼女は見せる。

 

「ん……」

 

 隠すような恥ずかしい身体はしていない。

 そう暗に主張するかのように、自らの腹部を撫で、白い膨らみを弧に沿って手で這う姿はいやらしい。これまでの情事と、これから先の行為が脳裏を過り、自然と下腹部に血が巡る。

 

 唯一東郷が着用しているのは黒猫のカチューシャとリード付きの首輪と尻尾。

 全裸を晒す彼女は何も言われずとも秘所を隠さずに両手を下げたままだ。彼女を侍らせた俺はクロッチ部分が僅かに湿ったショーツを握り、ブラをマスクのように口元に宛がう。

 そのまま、しばらく東郷の裸体をじっくりと見ながら、リードを引っ張る。

 紐一つで僅かに前屈みになる彼女の乳房がぷるりと揺れる。引っ張られた勢いで東郷は一歩前に脚を出し薄い茂みから光る媚肉が覗く。

 

「ほう? これはこれは……もう濡れてるのか。期待しているのかね?」

 

「……っ、これは」

 

「隠すな」

 

 咄嗟に乙女の花園を手で隠そうとする東郷を睨む。

 硬直した彼女は、渋々と両手を後ろに回し、内腿と秘所の間を伝う透明な雫と糸を見せる。

 それをじっくりと見た俺は、無言で少女の恥部に指を這わせる。くちゅり。恥部が俺の指を招き入れ、いやらしい水音が聞こえると彼女の肌はより色濃い朱色に染まる。

 

「東郷さんは本当にはしたないな」

 

「……ぅぅ」

 

「厭らしい雌猫が……躾の時間だ」

 

「ぁぁ……旦那様」

 

「違う。猫が旦那様とか言うな」

 

「にゃあ」

 

 ゆっくりと指を動かす。僅かに腰を引かせる度にリードを引っ張ると東郷は苦し気に啼く。黒髪から覗く深緑の瞳に薄く涙を浮かべた東郷は、媚肉に挿入した指を動かされる度に小さく喘ぐ。

 ぷるぷると豊満な乳房を揺らしながら、熱い吐息を漏らす少女を俺は見る。

 至近距離で見つめ合い、俺は彼女の頬に手を置く。

 無言でスリスリと俺の手のひらに自らの頬を擦り付ける彼女は愛らしい。形の良い眉、長い睫毛、きめ細かな肌は処女雪のよう。瑞々しい唇はいつだって奪いたくなる。

 ──東郷を見る度に美人だな、といつも思う。

 

「……ふふ」

 

 俺の胸中を読み解いたように、ほんのりと頬を赤らめながら微笑む子猫。

 さらりと手に触れる彼女の纏まった髪から甘い香りが漂う。彼女の香りで肺を満たしながらも、俺は彼女をあまり調子に乗らせないようにと床に置いた小皿を指差す。

 

「どうしたの東郷さん。……喉渇いたでしょう? ミルク飲んで」

 

「……にゃ、にゃあ」

 

 ゆっくりと彼女は這いつくばる。

 当たり前のように俺のズボンのチャックを下ろそうとする彼女の頬をそっと叩く。DVされたかのように頬に手を置いて俺を見上げる東郷。

 そんな彼女の頭を優しく撫でると混乱したような顔を彼女は見せた。

 

「痛くしてごめんね東郷さん。でも指示が違うよね。ミルクは床に置いたよ」

 

「……あ、ごめんなさ……」

 

「猫」

 

 彼女は頭を下げる。

 重力に負け垂れ下がる豊満な乳房を潰し、乳首を床に擦りつけた彼女は、自らの菊座に挿入したらしい尻尾を振る。指でなぞりたくなる背中は色白で、独特の弾力のある尻を彼女は振る。

 もう彼女は人ではない。俺の飼い猫である東郷美森なのだ。

 

「お前は俺のモノだ」

 

「……ッ」

 

 耳元で囁くと小さく頬を緩める黒猫。

 さらりと垂れ下がった黒髪を揺らしながら、彼女は小皿に顔を近づける。ゆっくりと人の尊厳を捨てる彼女の動きを補助するように東郷の尻を揉む。

 背後に回り、柔らかい尻肉を手で揉みしだくと腰を振る。

 その動きを無視した俺は彼女の尻を割り拓く。開いた陰唇から蜜液が床に伝った。

 

 ぶるりと少女の下腹部が震える。

 

「……ぇ」

 

 ちろりと開いた口から赤い舌が覗く。

 自らの秘所を隅々まで見られながらも、僅かな躊躇いを捨てて、彼女は獣へと戻る。

 ぺちゃ、ぺちゃと舌を動かして生温かいミルクを舐める。猫らしく味わって飲む東郷の髪を撫でると、ごろごろと喉を鳴らす彼女が上目遣いで俺を見る。

 

「良い子だよ東郷さん」

 

 一瞬だけ顔を上げた東郷の顎を掴み、その柔らかな唇に唇を重ねる。

 ふにゅっと唇を交わらせると、再び這いつくばらせる。

 

「……にゃあ」

 

 彼女は一鳴きして再びミルクを舐める。

 背中を撫で、くびれた腰肉に触れる。しっとりとした肌は手のひらに吸い付き、いつまでも触りたいと思わせる。その欲望に逆らわず腰から尻肉の境目をトントンとリズム良く叩いていく。

 まるでマッサージのような尻尾近くへの軽い刺激に、徐々に腰を浮かせる東郷。

 

「おっ……おっ……ぉぉっ……オッ!?」

 

 ミルクが顎を伝う。ぽたりと床に垂れる。

 だらしなく舌を垂らした東郷は、その深緑の瞳を虚空に向けて喘ぐ。だが彼女は主人である俺への平伏した姿勢を崩さない。

 やがて雌猫の矜持か下腹部を震わせ、四つん這いのまま静かに絶頂に達した。

 

「っぐ……ぅ、ぁ、ぁっ~~~~ッッ!!」

 

 黒髪の奥を覗き込むと、光を失った深緑色の瞳。

 恍惚さと共にどこか退廃的な美しさがそこにはあった。

 ぷるぷると震える臀部を撫でながら、食事を彼女に勧める。荒い呼吸を浮かべた彼女は豊満な乳房を俺の手のひらに差し出し、同時に腰をトントンと叩かれる度に跳ねながら食事を楽しむ。

 柔らかいぼた餅のような感触を手のひらで俺は楽しむ。 

 

「今回も哺乳瓶の方が良かったかな? やっぱり猫ちゃんなんだから皿の方が良いよね」

 

「にゃあ」

 

「そう。なら哺乳瓶は赤ちゃんプレイの時にね」

 

「にゃふー」

 

「須美にはこんな痴態見せないよ。今度こそ壊れちゃうだろうし」

 

「ちにゃあ」

 

「そうだね。だから友奈に調教……ちにゃ猫にして貰うんだ」

 

 ──決して東郷を馬鹿にしてはいけない。

 彼女も普段から勇者部の為に心を砕き活動しているのだ。勇者として、時に巫女として、親友として、あらゆる要望に応える才色兼備な大和撫子でありながら俺専属の高級娼婦をしている。

 それでもやはりただ一人の女で、胸中に何かしら溜め込むこともあるのだ。

 親友である友奈と悪い部分が似ている。

 だから満開の副作用の治療とは別に、こうしてストレスを発散させる。余計な思考や行動をさせる前に、心と身体が溶けるように、トロトロに東郷を甘やかす必要があった。

 

「東郷さんは偉いね~、立派だよ~。大好きだよ東郷さん」

 

「にゃ……ち、にゃ」

 

「今日も生きてて偉いよ。おっぱい大きくて素敵。本当におもしれー女。いつも綺麗な目だなって思うよ。いっぱい精液で汚したくなる綺麗な黒髪を触らせてくれてありがとう。好き。面倒くさくて思想が危うい所も好き。俺に尽くそうとしてくれるところが好きスキスキスキ……愛してる」

 

「はぇ、ぁぇ……ィく……」

 

「子宮降りてきたね。ほら、お腹押すからイって?」

 

「……ふわぁ」

 

「スキスキスキスキスキスキ……」

 

「はわぁ……んっ、ぅ」

 

 ミルクの後には甘やかす。

 よく飲めたねと。可愛いよと。好きだよと。リードを引っ張り遠くに行かないように抱き寄せて耳元で囁く。くちゅくちゅと熱く濡れた秘所を指で弄りながら、軽い絶頂の余韻を与え続ける。

 外から子宮を刺激するように仰向けにして下腹部を撫で回す。

 

「ぁ、……ぃく………甘いのがぁ……トントンってぇ……!」

 

 徐々に虚空を見るような瞳が須美に似てくる東郷と唇を重ねる。

 スリスリと太腿を寄せる彼女の腿を俺は撫で回し、その肉の質感を楽しむ。

 いつも黒いタイツに包まれた脚は柔らかく、普段スカートから覗く腿肉をこの手で好きにできることに喜びを感じる。しっとりとした内腿を撫で、思い出したように恥部を弄り続ける。

 恥毛を指に絡め、貝肉を指で弄り、開き、上下左右に擦り合わせると少女は啼く。

 

「スキ」

 

「ぁ……ッ、は、ぁ」

 

 秘部に潜む陰核の皮を剥いて、指で弄りながら「スキ」と口にすると、東郷の口端から涎が垂れ落ちる。仰向けでも殆ど形の崩れない乳房を甘噛みしながら、彼女の法悦に浸る顔を見下ろす。

 

「んぅ……ん、ふ……は、へへ……りょーくん……さっきからイくのっ、止まらにゃい……」

 

「我慢しないで。いっぱい気持ち良くなって」

 

「にゃ、にゃぁ……ぁ、イっ……」

 

 きゅっと俺の腕を掴む彼女の頬を涙が伝う。は、あ、と開いた唇に唾液の糸が伝う。

 甘いミルクの味が、いつまでも口づけを止めさせない。

 舌を絡ませ、頬の裏を舐め、歯茎に舌を這わせる。ぴちゃぴちゃと下品な水音を響かせ、唾液を垂らしながらも、淫熱を瞳に宿した彼女は乳房を押し付けて口腔行為に尻尾を振る。

 

 片手を自らの恥部に這わせながら、恍惚とした表情で唇を重ねる。

 俺の指を締め付ける媚肉が締め付けを増す。

 彼女は、自らのはしたなさを厭わずに媚びるように懇願する。

 

「はぁ……亮くんの……子種が欲しい……にゃ」

 

「駄目だよ。いつから飼い主にそんな要望を出せる立場になったの?」

 

「そんにゃぁ……」

 

 猫の要望を聞くのは飼い主だろうか。

 違う、それはあくまで気紛れによる物だ。猫は所詮はペットだ。愛玩動物だ。人間の都合で首輪を嵌められ、衣食を与える対価に自らの欲求を解消する存在だ。

 柔らかい乳房と尻肉を揉みながら、彼女に四つん這いを強いる。

 チリンと首輪の鈴が鳴った。

 

「ほら歩け。散歩だ」

 

「にゃん!」

 

 膝に膝当て、手にはグローブを付けて歩かせる。

 トコトコと四足歩行する東郷は尻肉を揺らし、恥部と愛液で滴る恥毛を俺に見せる。は、あ、と熱い吐息を漏らしながら廊下を歩く東郷のリードを掴み、彼女の動向を見守る。

 歩行の度にぷるぷると揺らす乳房に目が吸い寄せられそうになりながら、気が向いた時にリードを引っ張る。

 体勢を崩した東郷が「ゃん」と悲鳴を上げ、その柔らかな肉を床に広げる。

 

「どうした? 早く起きろ」

 

「意地悪……」

 

「猫が人の言葉を喋るのか?」

 

「……にゃあ」 

 

 その後も何度かリードを引っ張り、猫の不評を買う。

 何度かぷるぷると震える尻肉に苛立ちが募り、ペチンと叩く。

 赤らむ白い肉。何をしたら躾になるのかと考えて四つん這いにさせた東郷の内腿に「正」の字を絶頂の回数分だけ書いていく。途中垂れる愛液に字が滲んだ。

 それでは我慢ができず心を鬼にして、垂れ下がった尻尾を引っ張る。

 

「ぁえッ!? だ、ダメ……それはダメよっ」

 

 僅かに抜けた尻尾の感触が癖になるのか、尻尾を抜かせまいと東郷が人語を発する。彼女にも譲れない物があるのだと猫の尻尾の先端を再び挿入するとしばらく腰を震わせた。

 何度か尻尾の先端を抜き差しすると、少女は潮を噴いた。

 

「ぅ……ぁ、ぁ……~~! ~~ッ!!」

 

「ほら、行くよ」

 

 基本的に俺は猫を家の中で飼う。逃げる可能性を考えて外には出さない。

 ドロドロに溶かして飼い主がいなくては生きていけないと理解させてから、外に出すか検討する程度だ。そして、今日は検討の末に、庭に連れ出す。

 

「…………っ」

 

「どうしたの? あっ、友奈の家が見えるね。……東郷さんの家も」

 

「……にゃぁ」

 

「ん? 外は怖いの?」

 

「うにゃ……」

 

「そっかぁ。じゃあ、肌寒いし庭だけにしよっか。ほら、歩いて」

 

 家で飼っていた反動か、怯えたように震える東郷。

 にゃあ、にゃあ、と小声になった彼女は友奈の家から目を逸らす。まるで親友に合わせる顔が無いと言いたげな彼女だが手遅れだと俺は言いたい。

 

 しばらくの間、俺は彼女と庭を散歩する。

 夜風が身体に心地よい。俺のやや前を四足歩行する東郷の尻がぷるりと震える。

 

「東郷さん。遊ぼうか」

 

 と言って、俺はフリスビーを取り出す。

 

「それは……ちょっと」

 

 円盤状の玩具を投げると、彼女は庭の茂みを駆ける。

 野生に戻った彼女は口で咥えたフリスビーを俺に持ってくる。ご褒美と称して頭を撫で、柔らかな頬を撫で回し、端正な顔を覗き込みながら、ツンと尖った乳首を弄る。

 

「わん!」

 

「猫ね。ほら、もう一回だ!」

 

 両手で掴む度に乳房が揺れ動く。

 夜に猫のコスプレをした全裸の女がいたら通報不可避だろうか。

 汗を掻き、健全に身体を動かす姿を見ながら、しばらくの間戯れる。

 

「ん?」

 

 ふと少女の動きが鈍くなり、そして震えていることに気づいた。

 怪我ではない。その震えは殆ど全裸で庭を歩き回らされる事への不安と快感だけではない何かだろうと推測した俺は東郷に告げる。

 

「……ここでしたら?」

 

 ぶんぶんと頭を振る度に少女の黒髪が揺れ動く。

 今更恥じらうような顔で乙女を見せる彼女に内心苛立ちを覚える。この顔は俺が褒美と称してもお仕置きと称しても、何をしても悦ぶ女の顔だった。

 

「ひにゃッ!?」

 

 ぺちん、と尻肉を叩くと彼女は啼いた。

 慌てたように口元を手で宛がう東郷の媚肉に指を挿入する。熱く濡れたそこは、いつだって雄竿と子種を待ち構えるように指に吸い付き蠕動する。

 そんな雌肉の動きを無視して、へそ側に指を曲げてトントンと指の腹で押す。

 

「だ、だめっ……お手洗いに行かせて……亮くぅん……」

 

 東郷の息遣いが変わった。

 汗を浮かべた猫は、焦る表情で俺に懇願する。尻尾を振って、媚びを売るかのような甘い声音で、上目遣いを見せて、あざとく男の衝動を操作しようとしていた。

 恐ろしい女だった。並の男なら仕方なく彼女を人に戻していただろう。

 だが、俺は違う。彼女の望みなど叶えてあげない。

 

「きゃっ! ちょ、ちょっと……」

 

 俺は裸体の彼女のリードを引っ張ると、背後から彼女の両脚を掴んで持ち上げる。

 力に物を言わせて背面駅弁の体位に持ち込むと、さしもの彼女も暴れ出す。当然だろう、自らの生活圏で全裸を晒している状態で、なおかつ庭から公道の前に移動しようとするのは彼女でも危機感を覚えるのだろう。

 無理やり脚を開かせて、息を呑む東郷の耳元に囁く。

 

「誰かが来る前に早くしろ」

 

「や、ぁ……」

 

 嫌々と首を振る東郷。

 豊かな乳房よりも、濡れた茂みやピンクの陰唇よりも、涙と様々な感情でぐしゃぐしゃになった顔を自宅や友奈の家から隠すように手で隠す。

 その抵抗も「隠すな」という言葉に従順に腕を下ろす。

 

「はッ、はっ……は、ァ……」

 

 荒く不規則な呼吸を彼女は繰り返す。

 汗で前髪が額に張り付く。

 鼓動の高鳴りが背中から伝わる中、夜風に彼女の裸体がぶるりと震えた。

 

「あっ、友奈! ……『えっ、東郷さん!? どうして裸なの?』」

 

「ええっ!? ゆ、友奈ちゃん、これは違うのよ! これは……」

 

「『ヘンタイっ、そんなに濡らして興奮してるの?』」

 

「う、ぁ……ちが、違うのよ……亮くん! 離してっ!!」

 

 友奈の声帯模写はこういう時にも使える。

 彼女の背後から声が掛けられたと思ったのか、結構本気で暴れる東郷に囁く。

 

「嘘だよ」

 

「……ぅ、うぅ……亮くんのバカ。絶対許さない……」

 

 明らかに安心したような東郷は唇をわななかせる。

 そして全てを諦めたかのように、俺に背中を預けて脱力する。

 

「……もう、ダメぇ……聞かないでぇ……!」

 

 小声で、俺にそう告げる東郷の頬を涙が伝った。

 

「……っ、……ぁ、………ぁぁ」

 

 水音が夜の住宅街に響いた。

 しょわわ……と道路の排水溝に弧を描く。暗闇の中でも東郷の可哀そうな程に赤らんだ顔が見えた。涙を流し、恍惚とした顔で、罪悪感と良心を小水と共に流していった。

 

 

 

 

 

 

「もう! 恥ずかしかったんだから」

 

「ごめんって。俺も調子に乗ったよ。許して東郷さん」

 

「むぅ……」

 

 ぷくーっと風船のように頬が膨らむ。

 須美のような機嫌の損ね方、どこか幼さのある怒り方は浴槽に浸かる俺の股の間で後頭部をゴンゴンと肩にぶつけるという可愛らしくも地味に痛い物だ。

 やがて満足した彼女の尻肉が俺の竿を挟み込みながら、後頭部を肩に預ける。

 

「獣ね、本当に。──でも好き。愛してるって感情は亮くんで知ったわ」

 

 そんな甘酸っぱい言葉を俺の耳元で囁く東郷。

 ゆっくりと腰を浮かせた彼女は誰の許可も求めずに、自らの雌穴に俺を受け入れる。

 

「は、ぁ……私の胸、そんなに揉んで……また大きくなっちゃう」

 

 湯に浮かぶ乳房を揉むも、彼女は甘え声を漏らすばかり。

 もう、と怒っているのか揉んで欲しいのか判断に困る声で、ゆっくりと腰を揺する。優しく突き上げてと目で語ってくるので、要望通りに一つ一つ丁寧に腰を突き上げる。

 

「ぁ、んっ……ひぁ………ァんっ……」

 

 多幸感を多分に含んだような声と表情で、俺に体重を預ける東郷。

 ちゃぷりと湯から浮かんだ片手が俺の頬を自らの顔に近づかせる。急速に近づく彼女の端正な顔はいつ見ても見惚れる程に美しい。色白できめ細かい肌は照明に優しく照らされる。

 

「悪いって思うなら、優しく口づけして。愛しているって分かるような口づけを」

 

 彼女が満足するまで俺は何度もやり直しをさせられた。

 俺に跨り、自ら腰を揺する彼女に合わせて突き上げる。同時に湯の中で揺蕩う黒々とした陰毛を指で弄りながら、ザクロのように硬くなった肉芽を指で挟み擦る。

 

「ぁっ………それっ……イっちゃう……」

 

 自己申告してくれる彼女はビクビクと身体を跳ねる。

 背中をのけ反らせる東郷に合わせて俺もまた身体を反る。浴室に響く甘い嬌声を聞きながら豊満な乳房を揉み、彼女の唇から舌を指で引っ張り出す。

 唾液で濡れた舌は柔らかく、俺の人差し指と親指にざらついた感触をもたらす。

 

「舌、出して」

 

「……ぁぇ」

 

 従順に俺に舌を差し出す彼女と舌を絡め合う。

 トロンとした表情で、先ほどの行為を水に流してくれるように、片方の手で乳首を、もう片方の手で肉芽を弄りながら、雄竿で彼女が満足するまで突き続ける。

 

「3……」

 

「亮くん?」

 

 背面座位でしながら、東郷の耳元でカウントをする。

 そのカウントに何を想像し、思い出したのか、きゅっと膣襞が竿に吸い付いた。

 

「そ、それって……」

 

「2……1……」

 

 赤らむ耳に甘噛みしながら、囁く。

 

「ゼロ。ゼロゼロゼロ……」

 

「~~っ、~~ッ!! ぅァっ!!」

 

 きゅっと乳首を摘まみながら怒張で突く。

 「ゼロ」と口にしながら、我慢をするなとばかりに東郷の身体を弄り回すと、素直に彼女の身体は法悦の空に昇った。きゅうきゅうと締め付けを増していく中で、悶え喘ぎ続ける東郷の最奥に何度目かの「ゼロ」と同時に子種を注ぎ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 喉が渇いた。

 下着も着けず、浴衣を羽織っただけの彼女が俺の言葉に近づいてくる。ほんのりと石鹸の香りを漂わせたホカホカの東郷は健気にも水を入れたコップを手に持っていた。

 俺に渡すも飲まないようにと告げる。

 いったい何をするつもりなのかと思っていると彼女は自らの豊満な胸肉を手で寄せる。

 アヒル座りで、魅惑的な深い谷間を作った東郷が目を細める。

 

「どうぞ」

 

 注げということだろう、遠慮なくコップを傾ける。

 とくとくと注がれる水は谷間に池を作る。ごくりと喉を鳴らした俺は吸い寄せられるように顔を近づけ、まるで小皿に舌を這わせる猫のように水を味わい舐める。

 

「ん……ッ、……美味しい?」

 

 舌先が東郷の乳肉を擦る。

 小さく喘ぐ彼女は悦びと揶揄いを混ぜた声で俺に呼び掛ける。

 

「にゃあ」

 

「可愛いわ亮くん。いっぱい飲んでね」

 

 ぺちゃぺちゃと顔を埋めて舌を這わせる。

 先ほどのやり返しなのだろうか、特に屈辱とは思わず彼女の乳肉に時折甘噛みしながら水分を補給する。ぷるぷると乳房を震わせる東郷は慈悲深い女神のような顔をしていた。 

 舌で谷間をほじる度に柔らかい感触が舌を包む。その感触が楽しくて何度も繰り返すと下乳から水滴が垂れ落ちる。

 それを追いかけて、腹部を舐め取り、そのまま押し倒す。垂れ落ちた水滴を探しながら、温まった東郷の肌に舌を這わせ、彼女の秘所に口を開けて吸い付く。

 

「んぁぁあっっ!!」

 

 俺の頭を掴んで声を上げる東郷の恥部は濡れていた。

 先ほどの性行為では満足できないのか、柔らかな秘肉を舌で味わう。

 

「ひぁっ、ぁあっ、はぁん!!」

 

 俺の両手は現在東郷の乳房を揉むのに忙しい。

 喘ぐ東郷はそんな俺に気遣い、自らの陰唇を指で開く。とろりと奥から愛液を滴らせながら俺に啜られることに悦びの声を上げる。もっと聞かせろと鼻先を恥毛に埋め、舌を奥まで挿入して蜜液を啜り続ける。

 やがて、ぐったりとした東郷はふにゃふにゃとよく分からない言葉を発する。

 

「私も、喉が渇いたにゃ……なんて」

 

 啼く彼女は俺に抱き着き、そのまま俺を押し倒す。

 当たり前のような顔で陰嚢を手で揉み、赤黒い陰茎を頬張った。

 竿に浮かぶ血管を舌が這い、唾液で口内を満たした彼女は奉仕を始めた。

 風呂のような口内に俺は小さく呻く。

 丁寧に、喉奥まで咥える東郷の姿はしゃぶりながら言葉を発する。

 

「んぷ………こっひのきぶんらっは?」

 

 小首を傾げて、ちゅぱっと亀頭から口を離した東郷。

 むにゅっと柔らかく温かい餅のような乳房が硬く反り立つ肉棒を挟む。あーんと再び咥える東郷は頬裏に亀頭を擦り、時折上目遣いを俺に見せて支配欲を刺激する。

 歯の当たらない熟知した動きに、俺は彼女は頭を撫でる。

 ごろごろと猫のように喉を鳴らした東郷は黒髪を俺の手に押し付け、何よりも愛おしむように口腔奉仕を続けようとする。

 

「喉が渇いた」

 

「えっ? なら、もう一回……」

 

 彼女を押し倒す。きゃあ、とわざとらしい声を上げる東郷の脚を開かせる。

 垂れた水は恥毛を伝い、秘所を濡らしていた。水か愛液か分からないソコに俺は顔を突っ込み、硬くなった陰核を唇で吸うと、肉の泉からあふれる水を飲む。

 

「……ッ、ぁ」

 

 肉付きの良い太腿が顔を挟みこみ、俺の手は腿を撫で回す。

 そしてひたすらに水分を補給して彼女の口腔に吐精する。望むまま黒髪をも汚して、また水分補給する。今度はその乳房に。そしてまた一緒にシャワーを浴びて……。

 

 

 

 

 

 

 

 ぱんぱん、ぱんぱんと肉を叩く音。

 ずじゅ、ずちゅ、にちゅと時折混ざる水の音。

 ベッドの上で四つん這いになった彼女は自らの意思で腰を浮かせて主人に尽くした。

 俺はただ腰を振り、何をしても悦ぶ熱を帯びた身体を絶頂に導く。

 

「ぁ、あっあ、あっ!」

 

 ぱん、と竿を奥まで突く。

 くびれた腰を掴み、正常位では得られない角度で膣をえぐると東郷はシーツを握り締める。ピストンの度に尻が波打ち、嫌々と首を振りながら身を震わせる。

 

 衝動的に尻を叩くと悲鳴と共にのけ反る。

 赤らんだ頬と、処女雪のような背中を見下ろしながら、彼女の限界を待つ。

 

「いうっ、ぃぁっ! ゃぁ……! ぁっ、やだっ、やっ……ぁぁああっ!!」

 

 ぎゅうっと膣が竿を味わい尽くし、ベッドに崩れ落ちる東郷。

 自らを肘で支える力も失ったのか乳房を押し潰した彼女はベッドに倒れ込む。ちゅぽんと抜けた竿肉を余所に、ビクビクと小刻みに痙攣する東郷に俺は覆い被さる。

 

「ぇ……ま、待って……今挿入したら……」

 

「啼けよ」

 

「にゃあ………にゃぁにゃぁ……」

 

「飼い主がペットの言うことを聞く訳ないだろ」

 

「りょっ……ぉっ──!?」

 

 確かに大変なことになった。

 彼女の言葉通り、寝バックの体勢で快感を逃がさないように腰を落とす。あまりに暴力的な快感だったのか咄嗟に身体を起こそうとする東郷の頭を掴み、無理やり組み伏せる。

 

「孕め」

 

「やっ! あぁっ────!!!!」

 

 ぺつん、ぺつん、と俺の尻を叩く東郷の足裏。

 背中と胸板を密着するほどにくっついた俺は、彼女の首元に甘噛みして汗を舐め取る。

 そして、俺は彼女が何を言おうと、暴れようとも、力の限り無理やり絶頂させた。

 

「やだっ! またイク……ッ、いぁぁああっっ!! ~~〜〜ッ!!!」

 

 

 

 

 薄い光に目を開ける。

 ベッドに俺は寝転んでいた。風邪を引かないようにか毛布を掛けられ、隣で静かにノートパソコンを操作している東郷の横顔を俺はぼんやりと見ていた。

 乱れた髪をそのままに、ブラインドタッチで凄まじい勢いで何かを書いている彼女は、視線を感じたのか俺に目を向ける。

 

「ごめんなさい、うるさかった?」

 

「いや……旅のしおり?」

 

「うん。今回は別の旅館に行くって言ってたでしょ? だから……須美ちゃんと一緒に作ってるのよ」

 

 チラリと覗き込むと数百ページに渡ってギッシリと書き込まれている旅のしおり。そこに彼女は嬉々として追加で何かを書いている。

 石橋を叩いて渡るよりも、壊して自分で作って渡るのが好きな彼女は、今度勇者部の慰安として向かう旅館や周辺情報を書き記していた。そこに歴史やら何やらが加わり辞書となっていた。

 

 裸体の上から毛布を羽織る東郷は俺の肌を撫でる。

 よほど楽しみなのだろう。彼女の瞳はキラキラとしていて、もう何を言っても聞かないのだろうなという諦観を抱かせる。もしかしたら園子か友奈なら止められるかもしれない。

 

「いや、俺にも止められないことはないよ。エッチな方法だけど」

 

「まだするつもりなの?」

 

「お望みなら」

 

 子供のように小さく頬を膨らませ、東郷は俺の頬を突く。

 パタンとノートパソコンを閉じると、スリスリと肌を擦り合わせてくる。「にゃん」と一鳴きする東郷の首元には首輪の痕があり、そっと手で触れると俺の手の甲に自らの手のひらを重ねる。

 長い睫毛に縁取られた瞳を東郷は俺に向けながら、

 

「……──」

 

 口の中で何かを東郷が呟いた。

 どうしたのかと乳房を揉みながら耳を傾けると、囁かれる。

 

「亮くんと一緒にいると時間があっという間ね」

 

 自らの乳房を俺の手のひらに預けた東郷はそんなことを告げた。

 返す言葉もなく、ちゅっと唇を重ねると、今度は彼女から襲ってきた。

 もう猫はやめたらしい。

 人として、女として俺と性行為をして、いつの間にか睡魔に襲われる。

 

「あっ……雪……」

 

 カーテンの隙間から白い粉がチラリと覗く。

 

「本当だ」

 

「もう寝ましょうか」

 

 薄闇に覗く深緑の瞳が俺を見ると、静かに瞼を閉じて俺を抱き締める。ガラス細工を扱うように、壊れないように、優しく抱き締めてくる彼女をぎゅっと抱き返す。

 

「~~♪ 〜〜〜♪」

 

 園子に何か吹き込まれたのか。東郷は囁くように子守唄代わりに歌い出す。

 前から思っていたが、彼女の声はとても美しい鈴音のようで、何も言わずに目を閉じる。今度彼女にカラオケに行こうと寝言気味に告げると、何故か軍歌を子守唄として歌い始める。

 

「いや眠れるか!」

 

「もう……我儘ね。なら──」

 

 布団を被り、俺に覆い被さる東郷。

 一糸まとわぬ裸体を俺に見せる彼女は、ゴロンと俺の横に仰向けになる。一体どうしたのかと思う俺に両手を広げる彼女は優し気な笑みを浮かべて抱擁を求める。

 彼女の無言の要求に従い、密着するように抱擁する。

 豊満な乳房が俺の胸板に潰れ、恥毛が肌を擦り、秘部が俺の肉棒に吸い付く。

 

「──もう一回、ね。好きにして良いよ?」

 

 耳元で艶やかな声色で囁く東郷に肉棒が屹立する。

 あ、と呟く彼女はトロリと嬉しそうな顔を見せた。

 反り立つ剛直の存在を肌で感じる彼女の瞳は闇夜の中で淫欲に輝く。

 

「手首を掴んで動けなくして、胸や首にいっぱい口づけの痕を残して、亮くんのモノだって刻み込んで? いつもみたいに激しく、優しくして、びゅーびゅーって私の膣内に射精して……あなた無しで生きられないように、壊して?」

 

 その誘いに、布団の中で二人、包まりながら繋がる。

 より深くに誘うように、東郷の両脚が俺の腰に巻き付き、腕が背中に回る。

 

「は、ぁ……」

 

 彼女の嬌声こそが真の子守唄だった。

 俺は身体に伝わる人肌で、自然と眠くなるまで温もりを貪った。



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【番外】サンタカラオケ

いつも感想と誤字報告ありがとうございます。励みになってます。


 くるり、と少女が振り返る。

 西洋人形のような美貌の少女が軽い口調で告げる。

 

「かっきー先輩、チューしよ~」

 

「どうした急に。良いけど」

 

「んむ──」

 

 ちゅっと柔らかく瑞々しい唇を奪う。

 小さな体躯を抱いて、トロンとした表情になるまで、満足するまで唇を重ねる。あわわ……と驚愕する周囲を差し置いて、唇を離した園子(小)が見た目にそぐわぬ淫靡な笑みを見せる。

 えへへ、と幸せそうに笑う彼女はいつだって可愛らしい。

 

「まるで妖精のようだ」

 

「え~……そんな褒められると……ポッ」

 

 ほんのりと頬を赤らめる園子に心が和む。

 普段から持ち歩いているサンチョ枕をぎゅっと抱き締めて彼女は微笑む。

 いつの時代の園子も俺を癒してくれる。

 俺の視界に入るように移動してジッと見てくる園子(中)から目を逸らし、キャッキャと楽しそうにはしゃぐ園子(小)の髪を撫でて、くすぐり弄ぶ。

 俺に抱き着いてゴロゴロと鳴く小さい園子はまるで子猫のようだ。

 

「やぁん~……かっきーせんぱぁ~い」

 

「……にゃ、にゃあ」

 

「わっしーも構って欲しいって」

 

「構ってなんて……言ってないけど」

 

「須美。おいで」

 

 園子(小)と遊ぶと鳴き声と共に俺の衣服を引っ張る黒髪の少女。

 擦り寄ってくる須美を力強く抱き寄せ、トントンと腰を叩く。

 

「ぁ……」

 

 友奈族に開発された性感はそんな些細な刺激ですら彼女に快楽をもたらす。

 東郷の進化前、無垢な少女の唇を奪うと、抵抗もなく静かに震える。

 一瞬の口づけを唇と、首筋にしていくと、ほんのりと白い肌が赤らむ。

 

「……そんな、だ、ダメです亮之佑さん。こんな……ところでなんて……」

 

「ここでじゃなかったら良いの? まだ明るいのに?」

 

「……意地悪」

 

 年の割に豊かな乳房を俺の胸に押し付ける須美が抱き着く。

 大きな瞳でジッと俺を見る東郷の視線を無視して、膝の上に置いた二人を交互に弄ぶ。

 

「……ロリコン」

 

 須美と園子(小)で遊んでいると声を掛けられる。

 嫉妬したのだろう。ボソッと呟く千景が素通りしていく。

 TPOを考えると部室で行う事では無かったのだろう。そんな大事なことを教えてくれる先輩に感謝を込めて、再度通りかかった時にスカートの中に手を突っ込み、尻を揉む。

 タイツ越しの臀部は生温かく、黒い薄皮に包まれた尻肉は独特の弾力と質感、そして新鮮な少女の悲鳴を俺にもたらしてくれる。

 

「きゃっ!? ……こ、このッ!」

 

「……恐れを知らないなー、あれがビバークの秘訣か。どれタマも……」

 

「ゃん! ……球子さぁん? 杏さんと共にお仕置きです」

 

「なんで私も!? えっ、待って下さい。そのマッサージ器具をどうするつもりで……」

 

 連鎖するように騒がしくなる外野を無視して、園子(小)の頭を撫でる。

 さらさらとした絹のような髪、むふーと満足そうに俺に抱き着く彼女は告げる。

 

「もうすぐクリスマスだね~」

 

「そうだね」

 

「今年もサンタさん、来てくれるよね?」

 

「勿論。良い子にしている子には来てくれるよ。エッチで従順な子は特にね」

 

「亮之佑。乃木に変な事を教えるな」

 

「例えば若葉も反抗的に見えて俺には従順だからサンタは来るよ。ほらワカバーンのスカートの丈、短いだろ? あんなエッチな太腿を晒させているように指示を出したのは俺なんだ」

 

「ご先祖様エッチ過ぎだよ~」

 

「亮之佑一回表に出ろ! あとこれは元からだ!」

 

 と、言いながらも若葉は顔を真っ赤にしてスカートの裾を弄る。

 

「わかちゃんがこわーい。はわわ……」

 

 ぎゅっと園子(小)を抱いて若葉の攻撃に耐えていると、亜耶や芽吹の視線を感じる。それだけではなくトテトテと近づいてくる友奈が俺の頭を抱き抱える。

 明朗快活な彼女はむにゅっと自らの胸肉を押し付けるも気にした様子は見せない。

 

「サンタさん! 今年も来るよね?」

 

「勿論だよ! 良い子にはやってくる。シャンシャンって言いながらやってくるよー!」

 

「ふっ、今年のサンタはカツオのたたきを枕元に置いていくと予言しますわ」

 

「あっ、その予言は外れる奴だ」

 

 友奈、赤嶺と可愛らしい発言が続き、夕海子の面白い発言に雀がツッコミを入れる。

 そっと夕海子のスカートを捲ると赤と緑の紐パンツと気合が入っている。何故かドヤ顔を見せる彼女は常に毎日が勝負パンツだとばかりの態度で俺に向き直る。

 スケスケの生地からブロンドの恥毛と恥部が全て丸見えだった。

 そのまま指で秘裂に触れるとビクッと震えた彼女はそっと俺の腕を掴み止めた。

 お触りはNGだったようだ。

 

「んッ! こ、今年のサンタは誰が……いえ、言うのは無粋ですわね。頑張って下さいましカガフレッド」

 

「いや、なんでも良いけどよ……弥勒、スカート捲られてるぞ」

 

「シズクさん。相手は亮之佑さんですから寧ろ世界で一番見せつけても問題ない相手ですわよ」

 

「ふっ、流石は夕海子。なら弥勒も勝負パンツを見せる時……行くわよ友奈」

 

「ちょ、ちょっと……今日のは可愛くないから!」

 

「なら脱ぎなさい」

 

「待って待って!? 本気で!? ……わぁああっ!!」

 

 サンタクロース。今年も奴がやってくる。

 シャンシャンと鈴の音を鳴らし、雪が降る夜に人知れず子どもにプレゼントを置いていく。

 だが無垢な少女どころか、雄棒を知った女たちにサンタクロースは来るのか。俺は今年もサンタとなって寒い夜にコソ泥の真似事をしなくてはならないのか。

 ……などと言ったら目の前の少女たちに無言の私刑を受けることは想像に難くない。

 少女たちは何歳になろうと、ナニを経験しようと少女たちなのだ。

 

 だから今年もやるのだ。

 サンタクロース。アイアムサンタクロース。

 正体を知ろうと年々威力と精度が高まってきた罠を潜り抜けて、スヤスヤと眠る幼い少女の枕元に物品を置かなくては。

 赤嶺の地味なショーツを受け取った俺はそんな決意を抱く。

 その決意のまま下着を裏返そうとすると、下半身丸出しの赤嶺が本気で奪い返しに来た。

 

 

 

「……ってことがあったんだけど」

 

「~~ッ! ぁあぁっっ!! そこで喋らないで下さっ……」

 

 ミニスカサンタのコスチュームを着た少女が俺の言葉を遮る。

 先ほどまで歌を歌っていたサンタ眼鏡少女だが、その普段見せるクールな姿など皆無であり、サンタ服は丈が短く、薄い乳房の下乳が見えている。スカートから覗く恥部は濡れそぼり、陰唇と唇を重ねながら、俺は語る。

 涎のような、透明な愛液は甘酸っぱく、新鮮な味わいだ。

 

「ぅぅぅ~~~っ!!」

 

 千景が大好きな巫女の蜜液を啜ると悲鳴を上げるのは、花本美佳。

 ガクガクと膝を揺らし、年相応に生え揃った陰毛は愛液で濡れ、使い込まれていない無垢な花園は俺の指が奥から新鮮な蜜を噴かせる。

 最初は嫌な顔でパンツを見せるような稀有な表情を見せてくれた彼女も、陰核を甘噛みされながら媚肉を指でほじくられ、自らの弱点を弄られるのは嬉しいのだろう。

 恥毛を引っ張り、じゅるるっと音を聞かせるように啜ると巫女は涙を流して悦ぶ。

 

「かが、さまぁ……ッ、も、もうっ、ぅぁっ!! ……だめ」

 

 俺の頭を掴み、腰を引かせようとする巫女の恥部に顔を押し付ける。

 行為に慣れない無垢な少女を舐め、嗅ぎ、辱め、味わう。

 ずれた眼鏡越しに覗く瞳は快楽に濡れ、開いた口から垂れた涎が俺の顔に落ちた。内腿を震わせ、前屈みで俺を掴んで崩れ落ちるのを防ぐ美佳の耳元に俺は囁く。

 

「ほら歌えよ。郡様が見てるだろ」

 

「ひぁっ!! ……郡様ぁ……こんな痴態を見せてしまい、申し訳……ぁ、ぁ、ぁあっ」

 

 巫女の痴態を正面から見届けるのは千景だ。

 彼女もまたアダルト動画で見るような、布面積の少ないサンタ服を着ている。

 

 周囲に目を向ける。

 それなりの調度品が置かれた部屋だ。

 大きなベッドと枕元には玩具や避妊具。他には机やテレビ、シャワー室やトイレがある。カラオケ用の器材も置かれており、美佳の手に持つマイクには電源が入っている。

 だが、そのマイクを持つ手は自らの秘所に置かれ、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を聞かせる。

 テレビに映る楽曲の歌詞が流れる中、美佳は歌よりも喘ぎ声を聞かせ続け、彼女の上半身、年相応の大きさの乳房を弄るひなたは困ったような顔をしていた。

 

「花本さん。気持ちいいのは分かりますけど、歌わないと罰ゲームですよ?」

 

「ぁ、ぁ……っ、くっ────」

 

 健康的で弧を描く立派な下乳を赤い服から覗かせるひなた。

 ちょこんと綺麗な黒髪にはサンタ帽を乗せ、非常に短い丈のスカートを揺らす。涙と鼻水でぐしゃぐしゃの美佳に絡みつくように脚を絡ませると捲れ上がったスカートからは肌色が覗く。

 穿いてなどいない。髪色と同じ毛色のふわりとした恥毛と僅かに濡れた恥部。肉付きの良い太腿の奥を覗き込みながら、俺は自らの怒張が更にいきり立つと同時に程良い快感を覚える。

 

「俺のマイクだ。もっと丹念にしゃぶるか、最近成長してきて剣を振るのに邪魔だと思いつつある胸で俺の剣……いやビックなマイクを挟むか、美佳の代わりに歌え」

 

「握り潰すぞ」

 

 俺の怒張を口腔と乳房で奉仕するのはサンタコスの若葉だ。

 立った状態の美佳の恥部に顔を付ける俺は正座のような体勢で脚を開いている。その股の間に顔を埋めるようにうつ伏せになる彼女は怒りのままに鼻息を吹き掛ける。

 俺を睨みつけながらも涎を亀頭に垂らし手で扱く若葉は、既に娼婦としてやっていける手管がある。全世界にデビューした暁にはその全てを仕込んだのが俺だと声高に自慢できるだろう。

 

「する訳ないだろう。馬鹿か」

 

「しかし若葉のエッチな画像や動画が流出したら……」

 

「お前を殺して私も死ぬ」

 

「おっと、過激な発言じゃない。ほら、そのおっぱいは何の為にあるんだ」

 

「……少なくともこんなことの為にある訳では……揉むな、大きくなるだろ」

 

 と、言いながらも最近発育が進みがちだと密かに悩む乳房で俺の肉棒を挟む若葉。餅のような質感は園子に似ており、さわさわと頭を撫でるとしゃぶりながら睨まれる。

 気安く触るなと頬裏の肉で亀頭を扱く俺は呻いて見せると、彼女は少し機嫌を戻した。

 

 美佳の弱点を探り弄びながら、若葉に奉仕をさせる。

 そして、若葉の乳房に無言で目を細めた千景は何かを振り切るような顔で美佳に近づく。唯一ほっそりとした脚を黒タイツでコーティングした千景は俺に破かれたいのだろう。

 本人に言えば否定するだろう装いのサンタコス千景は、おもむろに美佳の顎を指で持ち上げる。

 

「こ、郡様……」

 

「歌わないなら、こうしてあげるわ……花本さん」

 

 少女漫画に出るような強引なキスで千景は美佳の唇を奪う。

 美少女同士の絡み、特に千景大好きな美佳は、驚愕の後に熱に浮かされたような表情と共に、媚肉を蠕動させる。指に吸い付きここだと主張する弱点部分を指の腹で摩る。

 

「~~~~ッッ!! ぅぁ……ッ! こおりっ、さまぁ……」

 

「ふふっ……良いのよ花本さん。もっと気持ち良くなって」

 

「……よろしいの、ですか……?」

 

「ええ、我慢しないで」

 

「──ぁ」

 

 その言葉に決壊したのか、ぷしゃっと飛沫が俺と若葉にかかった。

 膝をガクガクと震わせる美佳はついにマイクを落として崩れ落ちた。

 追い打ちとばかりの千景の情熱的な口づけに、美佳は法悦の空に意識を飛ばした。

 

「ぁぁああああっっっ!!!」

 

 二度、三度と腰を浮かせて美佳を絶頂に誘う。

 聞いたことの無い、悲鳴のような嬌声が彼女からこぼれた。

 もう戻って来れないように、全員で美佳の性感を弄り続けると曲の音楽が終わった。

 

「……これは、4位ですね」

 

 カラオケの液晶画面には最低点数が表示されていた。

 美佳の痴態を見届けるとゆっくりと若葉の口から肉棒を引き抜く。若葉の口腔という鞘から解き放たれた雄棒を、ぐったりとした美佳の秘所に宛がい、貫き、腰を振り始めた。

 

 

 

 ──ラブホテルのカラオケを俺たちは楽しんでいた。

 

 以前から一緒に行こうと誘い、今年の夜もサンタを信じる無垢な子にプレゼントを贈る為の作戦会議も兼ねて、千景、若葉、ひなた、そして美佳と共にラブホテルに来た。

 ホテルに来た彼女たちの反応は様々だ。恥ずかしがる者。慣れた様子の者。

 

「普通のカラオケ屋で大人数だと目立つからね」

 

「ここも目立つのでは?」

 

 疑問に思う美佳をスルーして、俺は彼女たちにサンタ服に着替えさせる。

 相手もそういうつもりで来ているのだろう、気合の入ったエッチで可愛らしい、あるいは大人びた勝負下着を見せつけるようにその場で着替えてくれた。

 

「これ……丈が短くてブラが見えますね。脱ぎましょう」

 

 俺の前で躊躇いなく下着を脱ぎ出すひなたに、美佳が目を剥いた。

 

「ええっ!?」

 

「花本さん。私が脱いで囮になるから、その隙に下着を脱いで」

 

「そんな! それでは郡様があんな男の邪な目に晒されて……」

 

「良いのよ花本さん。今日は花本さんにもいっぱい愉しんで貰いたいもの」

 

「……郡様」

 

「普段『加賀様』とか呼んでるのになんて言い草なんだ」

 

 ちなみに俺も当日を想定してサンタ服に着替える。

 そして少女たちとサンタ服を着た状態でカラオケを始める。

 

「これは神樹様が考案した儀式で、エッチな悪戯に耐えながら高得点を出さないといけないカラオケなんだ。点数が一番高い人にはご褒美を。点数が低い者には罰ゲーム」

 

「……聞いたことがありません」

 

「そうだろう。だってこれは乃木家に伝わる秘伝の儀式なんだから」

 

「いや、聞いたことないが」

 

「乃木家に伝わっていると私は園子さんたちから聞いてます。時代を経て作られた儀式なのでしょう」

 

「ひなた!?」

 

 ともかくも、歌う人をその他の連中で悪戯するカラオケが始まった。

 一曲ごとに交代し、既に三巡目の時には少女たちの身体は熱くなっていた。

 

「神世紀時代の人たちは私たちの時代の曲をあまり歌わないけど……」

 

「亮之佑さんはよく歌いますよね」

 

「そうだね。まあ、歌は時代を超えるんだよ」

 

 そして俺は緊張の解れてきた美佳から堕とすことにした。

 他の少女たちも考えることは一緒だった。

 俺は少女たちの艶やかながらも懸命に頑張る歌声を楽しむ。そしてその声に嗚咽を混じらせ、喘がせ、歌うことよりも快楽を求めて屈する姿をみんなで楽しむ時間が始まった。

 

 

 

「オラッ、膣内に射精すぞ……っ!」

 

「ぁ、ぁっ、だめッ、こおりっ、さまぁ……んんぅ……いくッ……イクイク……ッ!!!」

 

 美佳の肉壺に俺の怒張の形を覚えさせながらピストンを続ける。

 甘い喘ぎ声を聞きながら、キスをして彼女が悦ぶ場所を亀頭で擦る。千景を求めて伸ばした手が力尽きた頃、巫女の最奥を白濁で汚した。

 虚脱感と共に達成感を覚えながら、虚空を見上げる美佳の恥部から竿を引き抜いた。

 

「美佳。大丈夫?」

 

「……大丈夫そうに……見えますか………こんなことされて」

 

「なら……俺から贈り物をあげる」

 

 途中から俺と美佳以外はカラオケに戻っていた。

 ひなたの歌声を聞き、その声がときおり嬌声に変わったり静かになったりするのを聞きながら、美佳の鼻先にある物を見せる。長く癖の無い綺麗な黒髪と、やや縮れた毛と見る人が見れば即座に手から叩き落す代物を、美佳はジッと見てから俺を見る。

 

「……よろしいのでしょうか」

 

 その目には理解があった。

 千景の上と下の毛セットだと視力と嗅覚で感じ取ったのだろう。

 本人が見れば流石にドン引きかもしれないが、当の本人はひなたの恥部に振動する玩具や疑似肉棒を押し当て、貫き、妨害することに嗜虐的な悦びを見出し気づいてもいない。

 チラリと見た若葉がそっと目を逸らす。何も言わない彼女は成長した。

 

「俺が許す」

 

「ありがとうございます……!」

 

 思ったよりも喜んでくれた美佳とキスをする。

 ……あげておいてなんだが、いやそもそも許可する権利も無いのだが、喜ぶ美佳はどうするのだろうか。

 まさか食べるのだろうか。

 

「家宝にします」

 

「あー……普通だな。神棚に捧げると効力が増すよ」

 

「何のですか。……んっ」

 

 来年の彼女の誕生日には彼女の毛を使った千景人形をあげようと俺は決めた。

 はむはむと唇を甘噛みする彼女は、稚拙ながらも最後のキスでは自ら動いてくれた。

 

「は、ぁ……」

 

 その間も、千景と若葉の責めにひなたは既に息絶え絶えだった。

 曲の一番目すら厳しいのか、若葉の凛々しくも雄々しい手の動き、そして千景の復讐心でも抱いたかのような、辱めてやるとばかりの粘着質な責めに陥落していた。

 だがギリギリ最下位だけは免れ、千景は小さく舌打ちしていた。持たざる者と持つ者。その間の淀んだ空気を空気の読めない若葉が楽し気に笑う。

 

「じゃあ、次は千景だな。千景の歌を聞かせてくれ。私は全力で千景をイかせるから」

 

「郡様、デュエットしましょう! それなら問題ない筈です」

 

「花本さん、待って。問題ないって何が……?」

 

 千景の歌声は普段聞かないこともあり、怒張の回復も兼ねて聞いていた。

 普通に恥ずかしそうにしながらも、歌う千景の肌を合法的に触れる美佳にひなたが玩具を渡す。俺にも手伝えとばかりに若葉が肩にブルブルと震える玩具を置く。

 目を向けると黒々とした震える疑似肉棒の玩具だ。

 

「亮之佑のよりも立派じゃないか?」

 

 笑みを浮かべながら耳元に告げる若葉に笑みを返す。

 

「あとで教えてやるよ」

 

 そんなことを言い、若葉の尻を直に揉みながら千景に近づく。

 悪戯が来るのが分かったのか、歌いながら顔を強張らせる千景に回り込む。スカートを脱がせようとすると片手で抵抗する千景のサンタ服の上着に若葉は手を突っ込む。

 

「む……千景の乳首、勃ってるな」

 

「なっ!? 乃木さん、変なことを……ひゃん!?」

 

「ふふっ……私がいるのも忘れないで下さいね。さっきのお返しをしますから」

 

 するりとスカートを捲り上げ下腹部を露出させる。

 ショーツは穿いていない。既にこの状況を見越していた彼女は恥部の上に直接タイツを身に着けていた。むわりとした芳香と化学繊維越しに覗く千景の恥毛と濡れたピンクの恥部は卑猥だった。

 俺を興奮させる千景の笑みには確信的な物があった。こうすれば俺が悦ぶという薄暗くも男を知った女の笑み。

 その余裕に苛立ちを覚えた俺はタイツを無理やり破る。

 黒い薄皮から覗く白い肌に甘噛みすると、若葉の頭を掴む千景が俺を睨む。

 

「……絶対やると思った」

 

「若葉。千景の太腿って甘くて噛み応えがあるんだぜ」

 

「なんだと!?」

 

「しっとりとしていて瑞々しいんよ。ヨシヨシも甘噛みしてみて」

 

「……失礼します、郡様!」

 

 しばらくの間、俺たちは千景を捕食した。

 彼女が何を言おうと、罵倒しようとも、全身の肉を甘噛みする。

 千景の腿肉を唾液と噛み痕で汚す頃には、千景は息絶え絶えで歌うどころではなかった。

 ぺろりと舌なめずりをした若葉が優しく微笑む。

 

「千景、ナイス太腿だったぞ。肉付きはひなたほどではないが」

 

「若葉ちゃ〜ん……?」

 

「いや待て、違うんだ!」

 

 ぐったりとした千景はまるで路地裏で複数人に乱暴されたような恰好だ。

 赤い服が捲れ上がりツンとした乳首が覗き、下腹部は破れたタイツと歯形の付いた太腿には愛液が伝う。

 外気に晒した千景の恥部を、俺は少女たちと共にマジマジと見る。隠そうとするように両脚をくねらせる千景の背後に回り、自ら椅子となり彼女たちに向けて脚を開かせる。

 無言で顔を背ける千景の涙に濡れた瞳と目が合う。

 

「……変態」

 

 ちゅっと唇を交わすと、フォローするように美佳が呟く。

 

「郡様のここ、綺麗です。手入れもしていて……その、色とかも……」

 

「……ぁ、ありがと……花本さんのも綺麗よ」

 

「い、いえ、私のなんて全然……」

 

「ちょっと見せあってよ」

 

「……黙って。ちょ、ちょっとそこを指で……ぁっ、ぁんっ、わかっ、たからっ……」

 

 しばらくの間、少女たちの間で性器を見せ合う。

 俺という男を無視して、いや楽しませるように、少女たちは自らの脚を開いて恥部を見合う。

 そこには同性の秘所を見ることへの気恥ずかしさと興味、喜悦があった。

 それらを誤魔化すように千景はもう一度曲を流そうとする。

 

「はぁん! ひぅっ、ぁ……」

 

「腹の肉は……しょっぱいな」

 

 あむ、と腹肉を甘噛みするのは若葉だ。

 信じられないとばかりの表情を浮かべた千景は考えられる限りの罵倒をしようと息を吸って。

 

「──失礼します」

 

「きゃっ! 花本さん!? まっ、そこはッ、だめぇ……」

 

 千景の花園に、ひなた指導の下、美佳が顔を埋める。

 中途半端な愛撫などなく、陰核を集中的に唇で挟み込んだ美佳の頭を千景が掴もうとする手をひなたが掴む。

 

「ほら、千景さん。ちゃんと歌って下さいね」

 

 歌えるならな。そんな嗜虐的な思いを瞳に滲ませた巫女は若葉と共に脚を開かせる。

 そして、千景の椅子となった俺に目線を向け、笑う。

 手伝って下さい。無言の要求に俺は千景の乳房を弄り出す。

 

「頑張れ、千景」

 

「……うるさい」

 

「花本さん。千景さんはこうすると簡単にイっちゃうんですよ」

 

 人差し指と中指を曲げて卑猥な動きを見せるひなた。

 それを模倣するように美佳が従い、赤らむ千景は俺の拘束の中で叫ぶ。

 

「う、上里さん! 変な事を花本さんに吹き込まないで!」

 

「……こうですか」

 

「上手いですね。では、次は……」

 

「だ、だめ、花本さ──~~~~ッ!!」

 

 結局、千景は歌えなかった。

 ひなた指導の美佳の口腔奉仕と指の挿入は、千景を悦ばせた。腰を浮かせる度に力づくで快楽を逃がさないように抱き締めて喘がせる。歌よりも喘ぎ声をマイクに吹き込んで、マイクよりも黒々とした肉棒を挿入され、美佳に弱点を把握され尽くした時点で歌うことを放棄した。

 

「ゃぁあああッッ!!! ぃッ、イく……ッ!!」

 

「……ふふっ、ね? 花本さん。千景さんを絶頂させるのは簡単でしょう?」

 

「郡様を……私が……?」

 

「おめでとうございます。これで真なる千景ニストに花本さんはなれましたね」

 

 泣き声混じりの嬌声を上げるサンタは美佳の顔を自らの愛液で濡らした。

 呆然とした美佳だったが、何かに覚醒したかのように慈母のような笑みを見せると、もう一度とばかりに愛液を啜り続けた。

 

 

 

「さて、私の番だが……正面からとはな」

 

 歌う若葉の前に俺は立つ。彼女にはもはや小細工など不要だ。

 赤らんだ顔でひなた、千景、そして美佳の責めに耐えながら歌う彼女に俺は立ったまま抱きつき、そのまま腰を揺すって反り立った怒張で最奥を貫く。

 

「──な、ぁ」

 

 歌声が止まり、パクパクと口を開く若葉の唇を奪う。

 一瞬だけの触れ合いなのでルール違反ではない。歌うように腰を揺すりながら促すと彼女は歌い出す。だがピストンの度にどこか声に震えが混じる。

 トロトロに濡れた肉壺は、女たちの責めに柔らかくなり雄竿に蠕動して悦ぶ。

 尻肉を掴み、腰を叩きつけると、目の前の彼女が喘いだ。

 

「ぁ……っ、ふっ……きゃんっ!」

 

 歌おうと息を吸った瞬間に腰を打ち付ける。

 声を出した瞬間に怒張を擦り付けると、甘い声がマイクを伝い部屋に響く。

 

「~~~~ッ!! りょうの、すけぇ……」

 

「エッチな声してるじゃん。この声、着信音に設定するね」

 

「若葉ちゃん。歌って下さい」

 

 赤面した若葉は俺を睨みつけ、俺は彼女の片足を持ち上げて怒張を押し込む。

 きゅうきゅうと媚肉が俺の肉竿を締め付け、声を上げる度に締め付けが増す。その快感に思わず腰を揺すると、やはり震え声に嬌声が混じる若葉の反応に周囲の少女たちも続く。

 

「あんっ! ぁ……ぁ」

 

「若葉ちゃん。耳、触りますよ」

 

「……んっ、ぁんッ……」

 

「我慢ですよ、我慢。若葉ちゃんは勇者なんですから我慢できますよね」

 

「あたり……っ、前だ!」

 

「なら、歌って下さい。歌って、エッチな声を聞かせて……」

 

 蕩けきった顔はひなたが若葉の耳に舌を這わせたからだ。ひなたに促され、若葉の片方の耳を美佳が舐め、ひなたもまた耳元で何か言葉を流し込む。

 瞳を虚ろにしながらも彼女が歌い続けるのは勇者の矜持だろう。

 決して負けはしないと根性を見せる若葉の陰核に千景は指を這わせる。

 

「……ここ、でしょう?」

 

「ま、待て──」

 

 ブロンドの恥毛を撫で、そこに隠れた皮を剥く。

 小さな肉芽を外気に晒した千景は、若葉の背後から指で陰核を挟みこみ、同時に後ろへ逃げないように回り込む。

 若葉の腰肉を掴み、乳房が胸板に潰れるほどに密着した状態で、耳と陰核を刺激されながら俺の抽送を受けた若葉はマイクを掴んだ手を握り締めた。

 

「ふぁ……ィっ……んっ~~~~!! やっ、離れっ……ぁ、ぁ……」

 

 緩んだ手からマイクを奪い取る。

 ベッドに押し倒す。密着した若葉の腰肉を掴んで腰を振る度に彼女は声を上げる。

 雄竿には抗えないとばかりに、若葉の媚肉は酷く蠕動した。

 ぷるぷると乳房を揺らし、勇者の矜持など忘れたように雌の声で嬌声を聞かせ、結合部から小水と濁った泡で濡らす。身を捩らせ、快楽に歪んだ若葉の脚が俺の腰に回る。

 

「──孕め、若葉」

 

「うッ、くっ……わかっ……たから」

 

「『俺と結婚して俺の子供を産みます』と言え」

 

「ぐぅっ……このっ、男は……ッ」

 

 円を描くように腰を揺すると、若葉の口は随分と軽くなった。

 パンパン、と太腿が臀部に当たりながら、激しく彼女と結合部を擦り合わせる。獣のように交尾をする度に、若葉は髪を乱し、自らも腰を動かしてタイミングを合わせる。

 幾度か喘がせた頃、吐息混じりのサンタは観念したように耳元に囁いた。

 

「……亮之佑と結婚して……はッ、ぁ……子供も産みます……」

 

「良いだろう。ならば孕めッ!! メリークリスマス!!」

 

 ひなた、千景、美佳に見守られ、俺は若葉に密着したまま白濁を注ぎ込んだ。

 

「……ぅぁぁぁッッ!!」

 

 俺の背中に回した手が爪を立てる。

 涙で濡れた瞳を揺らし、唇を交わす。腰を滑らかな太腿が挟み込む。

 

 にじゅ、と濁った水音と共に結合部を擦り合わせる。

 噴き出る汚濁は若葉という勇者のリーダー、その最も大事な最奥を汚し膣襞に飲み込まれた。

 

「つ、ぎ……は」

 

 耳元で蕩けた声の若葉が囁く。

 子種の催促かと思ったが、カラオケを続けるつもりらしい。

 

「お前を、絶対に負かしてやる」

 

 ふと周囲を見渡すと、やられっぱなしは嫌だとばかりに少女たちが目を輝かせた。

 

 

 

 その後、また一緒に行こうねと皆で約束した。

 作戦会議など忘れて、その日はただカラオケで女たちと遊んだだけだった。



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【番外】少し遅れたプレゼント

「友奈、東郷さん」

 

 俺は少女二人を呼ぶ。

 可憐で美麗な少女二人、薄紅と黒の髪の少女たちは大きな瞳をぱちくりと瞬かせると、何かを悟ったように優しい笑みを浮かべて、両手を広げる。

 

「んー……良いよー! りょーちゃん、おいでー!」

 

「もう……しょうがない旦那様ね」

 

 少女たちはぎゅっと強い抱擁をしてくる。

 柔らかく、温かい感触。そして仄かに香る甘い少女の匂い。彼女たちの背中に回した腕を僅かに下げて、東郷と友奈の尻肉を揉む。

 ふるる、と身動ぎ、自らの身体を押し付けるように彼女たちは密着する。

 首筋や頬に親愛を感じさせる甘噛みとキスを友奈と東郷はしてくれた。

 やがて俺が彼女たちの背中を叩いて、ゆっくりと離れよう……として彼女たちに襲われる。

 

「がおー!」

 

 と、どこからか持ち出したサンタ衣装で着飾った少女たちと性交を楽しむ。

 彼女たちと用意した料理を食べて、女の柔肉を肌で味わった。

 

「えへへ……頑張ってね」

 

「亮くんならできるよ! 頑張って!」

 

 ベッドの上で寝転がるご近所の美少女たちに応援されて、俺は衣装を身に纏う。

 

 

 

 それからしばらくして寄宿舎に到着する。

 雪の降る夜だった。

 身体は彼女たちの熱を帯び、心は鼓動を高鳴らせ、やる気に満ちている。

 身に纏うのは赤い装束、赤い帽子、ブーツ。今から俺はサンタクロースとなるのだ。

 

「アイ、アム、サンタクロース」

 

「いいえ、違いますわ」

 

「何奴!?」

 

「フッ……わたくし、と言えば分かりますわね?」

 

「こんな寒い夜に二人ともテンション高いね」

 

 俺の宣言を否定するのは、ミニスカサンタの衣装とサンタ帽を着用した少女たち。

 プレゼントが入っているのだろう白い袋を床に置くと、艶めかしい生足やタイツに包まれた足を短いスカートから晒す彼女たちが俺の隣に並び立つ。

 

 戦隊ヒーローのように隣に立つ少女たちに視線を向ける。

 ファッションリーダー雪花によるデザインだろうか。

 肩を出した赤と白の衣装、やや開いた胸元から豊かな膨らみによる谷間が見えるサンタと、衣服の隙間からチラリと薄い乳房が見えるサンタ、ピンクの先端まで全てが見える無防備なサンタもいた。

 

 寄宿舎とはいえ露出度が高いのは俺を誘っているのか、身内しかいないからだろう。

 思わずその谷間に手を突っ込みたくなるが、グッと堪える。

 視線を感じて胸元を手で庇う少女と、逆に胸を張る少女は口々に目的を口にする。

 

「芽吹さん、国土さん、ご先祖様と赤嶺さんにプレゼントを贈りますわ」

 

「高嶋さんに……ついでに乃木さんと土居さん、伊予島さん……それと花本さんに」

 

「私は歌野さん、水都さんと……泊まりに来ている夏凜さんたち。ふ、不安過ぎる……」

 

「私は三ノ輪、乃木、鷲尾……」

 

「にゃはは……それで私は棗さんと静さん、リリと柚木ね」

 

「俺たちサンタ戦隊……いや、サンタ小隊の結束がある限り、誰にも捕まることはない」

 

 夕海子、千景、雀、しずく、雪花、そして俺。

 今年のサンタ小隊の構成メンバーはこんな感じだ。

 

「私の担当……乃木がいるけど、加賀じゃなくて良いの?」

 

「去年やったからね。しずくにやって欲しいな」

 

「人数的に加賀くんだけサボりじゃないの?」

 

 と、半眼を向けてからかってくるのは千景だ。

 少し前に散々俺に啼かされたミニスカサンタの恰好で迫ってくる。

 

「今年の俺は社長に認められてリーダー職に昇格したんだ。何かあった時のフォローに回るんよ。ちなみに友奈と東郷さんには既にやったんだ。あとは残りの少女にプレゼントしに行くから。……ああ、安心したまえ、君たちの枕元には既にプレゼントを置いている。帰ってから楽しみにすると良い」

 

「不法侵入だし偉そうね。……いえ、ありがとう」

 

「対価にそれぞれの下着を貰った……冗談だって。下着より本体が欲しいな……」

 

「ちょっと……ダメよ……他の人が見てるから……」

 

「子種をプレゼントにする? 特別な一夜をどうかな?」

 

 スルッとタイツ越しに秘所に触れながら耳元に囁くと千景が震える。

 白けたような顔をするしずくや、興味のありそうな雀や雪花も捕まえて、彼女たちのスカートを捲るとショーツ越しの股に手を突っ込んで温める。

 

 口では嫌がりながらも寒いのか離れようとしない少女たちの身体はじんわりと熱を帯びていた。

 雪花と口腔を交わしながら、指先をシズクに変わった少女の恥部で温める。

 そのまま性行為を覚えたての学生のように指で濡れた媚肉を擦り合わせていると、一人の少女が声を上げて腕を掴むのは夕海子だ。彼女は俺の肉棒をズボン越しに撫でると、

 

「ほらほら、時間が押してますし、そういうのは後でもできますわよ」

 

「弥勒さん珍しく良い事言うじゃん」

 

 慌てたように、理性を瞳に宿した少女たちは俺から距離を取る。

 その中で俺の腕に抱かれたのはしずく……いやシズクの方だ。

 

「お、おい、離れろ!」

 

 一人遅れたシズクの恥部で指をトントンと摩ると彼女は必死で抵抗した。他の少女に見られまいと顔を隠そうとするも、何を考えたのか雪花と千景に腕を掴まれる。

 二重人格であろうとも、彼女の身体は一つで性感帯は変わらない。どれだけ不良のように悪ぶっていても、俺にとっては可愛い子猫のように鳴かせるのは容易だ。

 くちゅくちゅと水音が響き、シズクは耳まで赤くして悶える。

 

「ま、待てっ……だ、ダメだ……イクイクッ……ぅううッッ!!」

 

 爪先を伸ばし、腰を引かせようとする少女の快楽に浸った顔を皆で見届けた。

 きゅうっと膣で指を締め付けながら、俺の腕の中で絶頂に達するシズク。

 トロンとした表情を見せまいと、逃げるようにしずくに切り替えた少女は荒い呼気を整える。媚肉から引き抜いた指には愛液が付着しており、彼女に見せると恥ずかしそうに眼を逸らした。

 

「……さっ、シズクさんも済みましたし、残りは後にしましょう!」

 

「なんで弥勒さんが仕切っているのさ」

 

 破れたタイツはそのままにスカートを調整する。ずり下げられた上着を上げて乳房を隠し、ずれたショーツの位置を戻して、濡れた口元を拭う。

 慣れた様子で衣服を整える彼女たちを見て、ふと俺は思う。

 

 いつの間にか勇者部も怠惰で色欲に溺れた少女たちが増えてしまった。

 過ぎ去る年月は見た目以外の所で成長を及ぼし、男と交わることに抵抗を無くし、停滞した日々を壊すような甘く気持ちの良い刺激を求めて、嬉々として行為を愉しむ。

 無知な少女も善意で誘われて、なし崩し的に男を知っていく。

 それはウイルスのように、時間を経て不快感もなく少女たちに広まっていく。

 

「加賀っち。せっかくだから後で五人だけのお疲れ様会をしよっか」

 

「……それは、まあ……」

 

「良いんじゃない?」

 

 チラチラと見合う少女たち。

 中身は立派なレディーな彼女たちは健全な性欲を持て余す。

 

 そんな発情サンタたちだが、今回の任務は勇者部のメンバーが選んだプレゼントを各部員に贈ることだ。

 中身がどんな物であろうとも外側は学生、数十人にそれぞれ贈るのは金銭的な差も出るので、勇者部として部長と一部メンバーが案を出した物を纏めてプレゼントする。

 それ以外で個人的に贈るのも全然アリだ。

 俺は彼女たち全員に日々のお礼や身体を重ねたことへのお礼も含めたプレゼントを贈っている。それが夜の続く世界で彼女たちと円満に身体を重ねる毎日の為に必要な気遣いなのだ。

 

 毎年の恒例行事であり、メンバーは基本的にサンタを信じる者以外でくじ引きだ。

 純粋無垢な少女たちは今もサンタを信じている。

 朝起きた時に友人たちからのプレゼントだけでなく、勇者部サンタからの贈り物を喜ぶ。

 だから、今年もその思いを守るのだ。それが勇者……いやサンタクロースなのだ。

 

「毎年、サンタを知りたいからって罠を設置するのは止めて欲しい」

 

「そうだね。でも、しずくなら罠を乗り越えられるよ」

 

「うん。私もシズクも、エッチな本が置かれてもスルーできるから」

 

「それは凄いな」

 

 去年のサンタは薄いエッチな本が置かれた巨大ネズミ捕りに引っ掛かったのだ。

 なんとか逃げおおせたが、サンタを信じない勇者部員たちは事態を重く捉え、今年からは少女たちの増員を決定した。

 いつもなら俺を含めて三人程度なのだが、今回からはリスク分散で三人が追加された。

 俺は殆ど仕事が無くなってしまい、それをクールな美貌のしずくに指摘された。

 

「加賀サンタも引退だね。今までありがとう。あとは私たちに任せて」

 

「そんな事を言うしずくもシズクにはエッチなプレゼントをしてやろう。この一人ハーレムめ」

 

「ああん?」

 

 やる気を見せるしずくに俺が微笑むと、シズクが一瞬顔を出して睨む。

 二重人格な彼女だが俺はどちらも可愛がっている。シズクに投げキッスをすると心底気持ち悪そうな顔を見せる。

 更に彼女が悦ぶ卑猥な手の動きを見せると、何も言わずにしずくに切り替わった。

 

「……加賀の上半身は信用しているけど下半身は信用できないって。あとその手の動きは止めて」

 

 スン、と無表情な彼女は何を思い出したのか自らを守るように腕を組んだ。

 それを見た雀が小声で夕海子に囁くも、周囲は静かなので聞こえている。

 

「……なんか亮之佑さんってしずくには妙に優しいよね」

 

「確かに。防人組の中では国土さん並に紳士ですわよね」

 

「優しい? 妙ね……それなりに鬼畜に見えたのだけども」

 

「俺は皆に対して紳士だけど?」

 

 ジロリと睨むとヒィッと怯える雀。

 命だけはとチュンチュン鳴く彼女に笑みを見せながら、彼女たちと円陣を組む。

 既に時間は夜だ。

 小さい少女たちは夢に誘われ、鍛錬大好き少女たちもまたスヤスヤな時間だ。

 

「皆、必ず生きてまたあの場所に帰ろう。今夜のお疲れ様会の会場は取ってあるからな」

 

「……ラーメン食べたい。夜中にラーメンをみんなで」

 

「背徳ですわね」

 

「ああ。この戦場を駆けた先に戦友と食べる食事は、きっと格別な味だろう」

 

 しずくの言葉に賛意を示すと、雀が軽くツッコミを入れる。

 

「またまた亮之佑さんってばそんな大袈裟な~」

 

「芽吹の所は気配で目覚める場合があるから……優秀なサンタである弥勒さんに任せたぞ」

 

「人選大丈夫?」

 

「お黙りなさい小雀。ええ、お任せを……必ずや例のアレを枕元に置いてみせますわ」

 

 自信はある夕海子なら失敗しても怒られ難いだろう。

 他の精鋭たちは大なり小なりやる気はあり、今宵のサンタ活動も成功の兆しが見える。

 

「では、行こう! メリークリスマス!」

 

「「「「「メリークリスマス!!」」」」」

 

 そんなノリと掛け声でサンタの戦いが始まった。

 廊下を音を立てずに進む少女たち。その中で少しだけ出るのが遅れた千景が俺の背後に触れて、耳元で囁く。

 欲求不満なのか、サンタの衣装越しに慎ましい乳房がふにゅっと押し付けられる。

 

「あんなこと言ったけど、この時間にやっている店ってあるの? ……自作?」

 

「カップ麺なら。最近発売されたのをみんなで食べよう」

 

「それで納得して貰えると良いわね」

 

「不満だったらもっと良い物を啜らせてやろう。それを皆で分け合って貰おうか」

 

「それって……」

 

「千景もよく喜んで食べてるだろう?」

 

 腰を叩くと何かを悟ったらしい思春期少女は顔を赤らめて睨んでくる。

 

「……最低。それに喜んで飲んではいないわ。ただ加賀くんが望むから……」

 

 ドンと俺の背中を叩いた千景は、俺の首に何かを巻いて彼女たちの後を追う。

 ホカホカのソレはいつの間にか破いていた彼女の黒タイツだった。そろそろ替えも無くなっただろうと思いつつ、汗ばんだ蒸れ蒸れのタイツをマスクにした俺はある場所を目指した。

 

 寄宿舎のとある一室。

 そこは最近召喚された巫女が使用し、そして今日は他の巫女たちも来ている。

 既にひなたと美佳の二人がサンタをサポートするトナカイとして活動している筈だ。俺の想像通りに部屋の扉には鍵が掛からず、その隙間からは聞き慣れない少女の喘ぎ声が聞こえた。

 

「ぁ、だ、ダメよ上里ちゃん、花本ちゃん……! アタシってほら、男の子が好きだし? 服着てってば! ぁ、……っ、ねえ、ほ、本当にもう……」

 

「ふふ……良いんですよ安芸さん。我慢なんかしなくて」

 

「前に言っていたじゃないですか安芸先輩。青春イベントしたいって」

 

「これは……ちがッ、ふっ、んっ……麻雀とか……」

 

「それはちょっと……」

 

 少女たちの絡みを聞いているだけで血が下半身を巡る。

 今まさに、無垢な少女が辱められている場面だった。無音で扉を開けて入り込む。

 

 安芸真鈴。昔、俺に色々と勉強を教えてくれた安芸先生と同じ苗字だが、おそらく先祖では無いだろう。安芸先生の胸は大きかった。スタイルも良かった。くたびれたOLのような雰囲気もあった。

 対して真鈴は良くも悪くも普通だった。

 だが、恥じらい、俺から裸体を隠そうとする反応は俺を昂らせた。

 彼女は少女たちよりも先に俺に気づいて動いたが、少女たちは抵抗と受け取ったようだ。

 布面積の小さいトナカイの装いをした巫女二人に衣服を脱がされ、両手首を縛られて、両脚を広げさせられているが、陰核を弄られ、更には陰唇を指で広げられた。

 

「安芸先輩の、綺麗ですよ」

 

「~~~~ッッ」

 

 悲鳴を上げようとした唇を、美佳が奪った。

 薄い乳房を美佳に弄られ、言葉にならない悲鳴を真鈴は上げる。そんな中、年相応に肉のついた腰肉を掴んだひなたは脚を広げさせ恥部に挿入した指を弄る。

 既に濡れそぼった恥部にひなたが淫靡な笑みを浮かべる。

 

「これで良いですね。準備は整いました」

 

「ッ! ……っ! ぁっ……!!!」

 

 ビクンと腰が跳ねた。

 脚を伸ばし、目をきゅっと閉じた彼女は果てた。

 よほどショックだったのか両脚を開いたまま彼女は気を失った。その様子を見て真鈴の濡れた媚肉から指を引き抜いて拭き取るひなたは、後ろを振り向いて笑った。

 

「あっ、来ましたねサンタさん。少し摘まみますか?」

 

 と、皿に載ったフレンチトーストを一口分にして差し出す。

 俺は彼女にあーんをされ、無言で彼女の指ごと口にした。

 ひなたの手作りであるのは、結構な頻度で彼女の料理を食べているから一口かじっただけで分かった。既に反り立った怒張も栄養を補給できたと悦びを示し、肉竿でひなたの頬を優しく摩る。

 荒い呼吸で同年代に絶頂させられた真鈴の意識が戻るまで、美佳の目の前に肉竿を差し出す。

 

「……ぁー」

 

 彼女も年頃の少女。

 千景がプレイしている大半のゲームをしている都合上、エロゲーもプレイする。そして千景がこれまで俺としてきた奉仕行為の数々も、ひなた経由か自撮りと引き換えに得た動画で知っている。

 そして千景本人は知らないが、千景との行為で美佳からのリクエストに応えたハメ撮り動画を与える代わりに、対価と称して普通に俺と行為に及ぶようになった。

 動画で見た千景の真似をするように、美佳は亀頭をアイスを舐めるように舌で撫でる。

 

「大好きな郡様はそんな舌使いだったっけ?」

 

「くっ……」

 

 数回ほど身体を重ねたが、彼女の奉仕は実に稚拙だった。

 奉仕と呼ぶにはやや嫌そうな顔だったが、それが癖になりそうだった。

 ぺちん、と眼鏡ごと顔を怒張で軽く叩くと無言でキレたかのように拳を握り、そっとひなたに止められる。躾として彼女の喉奥に剛直を挿入し玩具のように扱う。

 

「ぅ……ぅぷ……ぉえ……」

 

「が、頑張って下さい花本さん」

 

「ひなたさん、代わる?」

 

「花本さん、頑張って!」

 

 俺に乳房を揉ませながらも苦しそうな美佳を応援するひなた。

 絡みつく唾液と、嗚咽を漏らしながら抵抗する美佳。

 涙と唾液を垂らしつつも、程よく噛みつく歯が竿を擦る。荒い鼻息を根本に吹き掛け、さらりとした髪の毛ごと頭を掴んで腰を揺すると徐々に虚ろな瞳になっていく。

 

 その間に見切りをつけたのか、ひなたは美佳から目を逸らすと真鈴の恥部を指で弄りながら、どこが弱かったか俺に引継をする。

 濃い目の陰毛を撫で、硬くなった陰核とやや赤くなった陰唇を開いて教えてくれる。

 彼女レベルに達すると普段夜な夜な一人でどこを弄って気持ち良くなるのかが分かるらしい。乳首を指で突くひなたから、彼女の夜の乙女事情を聞いていると、真鈴の意識が戻り始める。

 

「ぁぇ? ここは……」

 

 美佳の頭を掴んで腰を振り、彼女の顔に射精した頃だった。

 少女の眼鏡ごと汚された美佳が呆然とした顔を見せる。

 髪、鼻、頬を汚し、透明なレンズにぷるぷるとした新鮮な白濁が載っていた。彼女の反応を気にもせず、俺は美佳の唇で亀頭に付着した白濁を拭っていると真鈴は乙女の悲鳴を上げた。

 

「きゃぁああむぐっ──!!」

 

 咄嗟にひなたが手で口を塞ぐ。

 そのまま催眠でも掛けるような声音で真鈴に告げる。

 

「な、なんで加賀ちゃんが!? ま、待ってっ、見ないで……!」

 

「分からないんですか? そもそも以前に見ていましたよね。今回は安芸さんの番というだけですよ。痛くないように私と花本さんでいっぱい解して、気持ち良くして、特別な夜に身体を重ねる。これが青春イベントでは?」

 

「た、爛れてるー!! 青春じゃなくて大人イベント! 全部見られてるから!?」

 

「殆ど延長上にあるから問題ありません」

 

 さあ、と俺の怒張を掴んだひなたが彼女に挿入を求める。

 トナカイの指示に従い、前戯の必要が無いほどに熱い身体で濡れた真鈴に密着するサンタだが、混乱の中にある真鈴に言わねばならないことがあった。

 

「ちょっ、ちょ……マジ、マジで……!?」

 

「落ち着いて真鈴さん」

 

「いや、でも裸で……ぁんッ! ……ま、まって、ヤダ……今、敏感で……」

 

 柔らかく濡れた媚肉に怒張を擦らせて現実を教える。

 何度か腰を揺すって、素股の良さを彼女に知って貰いつつ喘ぎ声を上げさせる。

 

「メリークリスマス。今年は子種をプレゼントだ」

 

「……本当にするの? 大人の階段上るの? ……せ、せめてキスとか……」

 

 そんな乙女的なことをもにょもにょと小声で告げる真鈴と唇を重ねる。

 強張った身体がキスの良さを知るまで、丹念に逃げようとする舌を重ね、拭うことを諦めるほどに唾液を絡ませ、歯茎や頬裏、舌裏を舐め取る。

 唇の間に糸が引くほど、情熱的な口づけをしながら剛直を真鈴の媚肉に擦りつける。

 

「……拒否しないなら挿れちゃいますね」

 

 啄むようなキス。本気になれば顔を背けて拒絶する位は容易い。

 だが真鈴なそうはしなかった。諦めたのか受け入れたのか、よくぬめる媚肉を剛直が割り拓く間、赤らんだ顔でキスと密着を求めた。

 ツンと尖った乳首が俺の胸板に擦れ、ゆっくりと脚が腰に回った。

 

「う……ぇ? ぁ……はぁ……ぁん……」

 

 スローピストンでキスをする。

 虚ろな表情で、ひなたと美佳のサポートを得た真鈴は、俺の剛直に馴染んでいく。トントンとひなたから教わった弱点を亀頭で擦り付け、押し付ける。

 横から、前からピストンの度に弱点を抉り、彼女に悦びを教える。

 

「はっ、……んっ、ぁ」

 

 涙声に近い嬌声。

 背中に爪を立て、濡れた媚肉が奥まで竿を受け入れる度に蠕動する。

 

「んっ、ぁっ、やぁ……」

 

 蕩け始めた声は性交を知った女の物だ。

 俺の動き一つであられもない声を上げる度に、俺の中で暗い快感が背筋を奔る。

 男に生まれたこと、雄であることが、誰よりも幸福に感じられる。

 

「ん、んっ、ぁンッ、はぁ……ぁあっ!!」

 

 声を抑えるのを忘れたように、段々と真鈴の声が高くなる。

 これまで交流する中で聞いてきた声とは違う、聞いたことのない大きな声で彼女は乱れる。身をよじらせ、突き上げる度に媚肉から新鮮な蜜を垂らし、彼女から様々な物が散る。

 甘い香り。甘い汁。甘い声。

 

「……真鈴さん」

 

「あッ、ぁ、ぁ、あぁ、ぁぁあっ……!!」

 

 目の前で女に作り変えられる先輩を、呆然とした様子で美佳は見ていた。

 そんなことに目もくれず、彼女は浅ましく淫らになっていく。本能か自らの肌を擦りつけて密着し、より足を広げて体温を分かち合う。

 じゅぷ、じゅぷと結合部からは下品な音が響く。

 

 絶対に逃がさないと種付けするような体勢で腰を振る。

 安芸先生のことを思い出しながら、真鈴を無心に味わう。

 

「んんぅぅぅっっ!!!」

 

 真鈴の腰がビクンと跳ね、合わせるように吐精する。

 マグマが噴き出すかの如く、溢れ出す白濁が少女の最奥を汚す。

 息を整えていく。

 別の誰かのことを考えながら雄脈の鼓動に合わせて彼女を抱き締める。罪悪感を押し潰す汚濁が彼女の膣内に広がっていくのを肌で感じ取る。

 

「は、ふ……」

 

 余韻に浸る真鈴の吐息。

 全てを受け入れたような諦観の吐息を聞きながら、俺は身体を起こす。

 

 携帯端末に連絡が入る。ミッションはおおむね成功したらしい。

 だが、夕海子が何かミスをしたのか、サンタの正体を知りたいという芽吹に襲われ逃げている最中らしい。「今年こそはサンタを捕まえて……むっ、動きが違う!?」などと言いながら攻撃を受けているという詳細な連絡を受けた。

 

「もう行ってしまうんですか?」

 

 と、ひなたに迫られた俺は残りのフレンチトーストを食べて彼女とキスをする。

 

「俺はサンタクロースだからな」

 

 そう告げて颯爽と戦友を救うべく行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「それで?」

 

「まあ、……余裕よ。その後は戦友たちと楽しくラーメン食べて」

 

「乱交という訳か。やるじゃないか。完全に好き放題して最低だな」

 

 と、呆れた口調で告げるのは初代だ。

 どてらを着て、ミカンをコタツに座って食べる姿は元居た世界ならレアだが、この世界ならもう見慣れつつある物だった。

 

「また見惚れたかい?」

 

「言ってろよ」

 

 そんな光景をキッチンから見ながら作る料理がたった今完成した。

 

「という訳で鍋が完成だ」

 

 年末年始は大抵の少女たちが家族と共に過ごしている。

 寄宿舎組は別だが今年の俺は家にいる。

 一人ではない。

 

「ところで半身」

 

「あん?」

 

「渡し忘れていた」

 

 コタツに座った俺に、初代は包装された長細い箱を渡した。

 リボンが付いたソレを見ながら、これは何かと目線で問い掛ける。すると彼女はおもむろにコタツからサンタ帽を取り出して頭に乗せる。

 

「メリークリスマス。……ああ、ほら、当日は帰ってこなかったから仕方がないという奴だ」

 

 時期としては少し遅れている。もう年末だ。

 いや、文句など無い。やや重たいソレを握って感謝を告げると彼女は食べ始めた。

 俺も食べ始め、たまに彼女の皿によそっていると、ふと思った。

 

「なんて言うか、今年は……いや、今年も……楽しかったよ」

 

 そう言うと初代は小さく笑ってお代わりを要求した。

 締めはうどんだった。




いつも感想や誤字報告ありがとうございます。
おかげさまで、気づいたらこの回で作品の文字数が100万字到達です。読んでくれている皆さん、本当にありがとう。
今年の投稿は終わり。来年も続くと良いなぁ……。


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【番外】新年の初麺類は蕎麦だった

いつも感想、誤字報告、評価ありがとうございます。


 突然だったが、笑顔の友奈が飛びついてきた。

 

「友奈」

 

「えへへ……抱っこっこー」

 

 触れ合うだけで精神的な疲れが減っていく。

 笑顔の彼女はいつだって太陽のように明るく俺を癒してくれる。薄紅色の髪をふわりと揺らし幼さの覗く顔に笑みを浮かべ、親愛を感じさせる抱擁をしてくる。

 友奈に抱き着き、彼女の元気の源を探るべく、彼女の制服を弄る。

 

「ひゃん! あっ、ここ学校だよ……ゃん」

 

 口ではそう言いながらも、彼女の制服には下着の感触を感じない。

 むにゅっとした柔らかい乳房を感じながら、ワンピースタイプの制服、そのスカートの中に手を伸ばし、少女の媚肉を手で弄る。

 薄い茂みと濡れた恥部を手に、友奈の熱い吐息を耳にしながら、乳房を揉む。

 

「もうすっかりエッチな子になっちゃって。……どうする? お腹を押して気持ち良くなっちゃう?」

 

「アレは駄目だよぉ……お腹がキュッてなっておかしくなっちゃうから……」

 

「どうしようかな」

 

「あ〜、意地悪だー。……あっ、ゆ、指っ、入れちゃダメぇ……」

 

 そんな風に友奈とイチャイチャしていると、廊下を走ってくる少女。

 

「風紀を乱すなー!」

 

 風だった。

 ピィーッ! と笛を吹きながら廊下を猛ダッシュする姿に何となく指パッチンした。

 風の制服が吹き飛び、自らが風紀を乱す存在へと変化した。

 

「……え?」

 

 いきなり何が起きたのか分からない。

 そんな顔をした風と目が合った。

 俺もよく分からなかったが、理解したことがある。

 これは夢だ。それを直感で理解しながら、彼女の姿を頭から足の爪先にかけて見ていく。

 

 風の首元のチョーカーは無事だった。

 その下、東郷程ではないが豊かな乳房が揺れ動き、寒さ故かピンクの乳首がツンと尖っていた。視線を下に向けるとやや肉付きの良い腹部と腰肉から恥部、濃い目の恥毛と晒されている。

 唯一布要素があるのは、彼女の肉付きの良い太腿を包む白いニーソックスだけだ。

 ……全体的にやや肉が付いただろうか。

 

「先輩、正月はいっぱい食べましたか?」

 

「新年の女子力補給には必要な事で……って!? な、なによこれはぁ!?」

 

 俺と平然と話す彼女は小さく震え、そして気づく。

 乙女のような悲鳴に近い声に驚愕を混ぜて、しゃがみ込む。

 腕で乳房を隠すも、横乳と尻肉が見える現状は卑猥そのものだ。

 

 その悲鳴に周囲の学生たちは見るがその視線には欲望よりも悲鳴を上げたことで何があったのかという興味の色が強い。しかし、このままでは風が晒しものだ。

 

「風先輩、隠しちゃ駄目ですよ! 亮ちゃん手伝って」

 

「なんでよ!? 友奈っ、乙女のピンチだから離しなさい!」

 

「嫌です!」

 

 と告げる友奈が無理やり風を羽交い絞めにして立ち上がらせようとする。

 当然彼女が隠したい物が周囲に露わになり、赤面する少女は悲鳴を上げる。

 ぷるんと揺れ動く乳房に視線が集まっているのに気付いた風は必死に腕で隠そうとする。同時に恥部を隠すように腿をくねらせて煽情的な姿を見せる。

 辛うじて恥毛と尻以外は隠すことに成功した風が友奈に叫ぶ。

 

「やめっ、ねえ! 友奈っ! 本当に見えちゃいけない奴だからぁ……!」

 

「嫌です!」

 

「わぁあああああっ!!」

 

 全力で暴れる風に恥ずかし固めを決めながら俺を見る友奈。

 仕方なしにと俺は指パッチンで風にチアリーダーの衣装を着用させた。

 何故そんな能力が備わったのか。……それは夢だからだ!

 

「えっ、えっ!? いや、今アタシ裸だったんじゃ……」

 

「何言ってるんですか? 白昼夢でも見たんでしょう」

 

 そう言いながら俺は風を抱き起した。

 俺の腕の中で、周囲の目を気にするように風は俺から距離を取ろうとする。

 

「あ、ありがとう。でもあんまりお腹を撫でないで欲しいわね……」

 

「柔らかくて俺は好きですよ!」

 

「正月だから! 仕方がないの!」

 

 安心させるように風を立たせる。

 震える肢体を抱いて、腹を撫で回しながらチアリーダーのスカートを掴む。そのまま捲り上げると何も穿いていない下半身を周囲に見せつけた。

 ほんの数秒程度だったが、慌てて自らのスカートを下ろす風は、

 

「ちょ、ちょっと……何してんのよ!!」

 

「なんだこのヒラヒラした奴は! 捲らせろ!」

 

「犬か何かかーッ!! 指を入れるなー!」

 

 学生たちは俺と風が絡んでいることに大して興味は無いようだ。

 乙女の秘所を晒したというのに、思春期少年たちは「なんだ勇者部か」とスルーしていく。それに気づいた風が落ち着くのを見届けて、今度はスカートを脱がすとダッシュで逃げる。

 

「アタシのスカート! だ、誰かぁー!」

 

「待てぇーい! りょーくん、逮捕だー!」

 

 心を童心に帰していると、笛を吹きながら俺を追いかけるのは高嶋だ。

 トレンチコートを着て警官のコスプレをした彼女が走ってくる中、捕まらないように逃げる。

 

「あっ、雪花ー!」

 

 廊下を走り、高嶋警部と鬼ごっこをしていると雪花を見つけた。

 白いカチューシャをつけた淡い茶髪に眼鏡の彼女こそファッションリーダーという称号があるにも関わらず、風のようにノーパンノーブラチアリーダーの恰好でもない普通の制服だ。

 

 なんてつまらない恰好だ。俺は許せずに指パッチンする。

 雪花の服が弾け飛んだ。

 彼女は公衆の面前で全裸を晒し、遅れて彼女は自身の惨状に気づく。

 

「きゃあああ!!?」

 

 可愛らしい悲鳴を上げ、咄嗟に腕で胸元を覆う雪花。

 風の時とは違い、眼鏡以外の全てが消し飛び全裸となった少女は同じようにしゃがみ込む。

 

「雪花! 大丈夫か!」

 

 俺は彼女に駆け寄ろうとして転ぶ。

 しゃがんでいた彼女を押し倒し、同時に掴んだ脚を大きく広げる。

 今のは事故による物だから仕方がないのだ。

 

「ぎっ……!!」

 

 内腿を掴み左右に広げた俺の目の前には、彼女の秘所があった。

 未使用に近い色合いの恥部、整えられた髪色と同じ陰毛が俺の鼻息で揺れる。いわゆるまんぐり返しと呼ばれる体勢にされた雪花が悲鳴を上げるのは仕方がないだろう。

 脚を大きく開き僅かに開いた陰唇が小さく震える。

 

「ちょっ、待って、隠させて……!」

 

「任せて~」

 

 焦りと羞恥で涙を浮かべた雪花の目を眼鏡ごと指で隠すのは園子だ。

 何も見えないようにと、気遣いの心で彼女の眼鏡にべっとりと指紋を残すふわふわお嬢様を見て、俺はなんとなく指パッチンをする。

 スパァン、と園子の制服が弾け飛ぶが、彼女の下着は残った。

 

「馬鹿な!?」

 

「むふふ~、残念でした~」

 

 と、俺に笑い掛ける園子の下着は紫色のフリルで装飾の施された物だ。

 乳首や恥毛部分の布地がかなり薄く、ドヤ顔を見せている彼女は肌を晒している。

 今度は少し周囲の反応が沸き立ち、色白の肌が薄っすらと朱色に染まった。

 

 俺は園子の背中に自らの上着を掛けて、抱き着く。

 ふわりと漂う甘い芳香、抱いて分かる柔らかな肢体に、思わず伸びた手は園子の乳房を揉む。パン生地のような感触にもっと揉みたいとブラホックを外すのを彼女は無言で受け入れる。

 ん、と小さく呻く園子が俺に顔を向けて後頭部を擦り付けて来る。

 俺の手を握り締める彼女は、起き上がった雪花にぐわしと乳房を掴まれた。

 

「痛い〜痛いよアッキー。おっぱいを揉むならかっきーみたいに優しく~」

 

「私の眼鏡を汚したなぁ!! というか、加賀っちもさあ! あんな……」

 

「アイタタタ……」

 

 全裸よりも眼鏡が汚される方が問題らしい。

 乳房を揉まれる園子に対し、雪花のアイアンクローを喰らった俺の耳に声が届く。

 

「逮捕ー! りょーくんをエッチな事をした罪で逮捕するー!」

 

「高嶋警部、あなたはどうして男装なんかを?」

 

「ドキッ! ……そ、そんなことなんて……」

 

 パチン、と指パッチンをすると高嶋の服が弾け飛ぶ。

 ピンク色の下着は吹き飛び、慎ましくもスタイルの良い裸体が露わになった。

 

「そんな……高嶋警部が……女性だったなんて」

 

 何故かスカートだけ穿き忘れた千景がタイツに包まれたショーツと臀部を周囲に見せる中、高嶋は止まらない。

 明るい場所で見る高嶋の裸体を周囲が見守る中、咄嗟に隠そうとする腕を振って高嶋は走る。

 俺は彼女の抱擁を回避して千景に迫る。

 

「えっ、な、なによ加賀くん……ぁっ!」

 

 ショーツごとタイツを脱がし、抵抗するよりも早く彼女の下半身を丸裸にして、尻を叩き、携帯端末で千景の痴態を撮ってから逃げ去る。

 夜の奇術師にとってそれぐらいは余裕なのだ。背後で悲鳴と怒号が響き渡る。

 

「っ……、に、逃がさなーい!!」

 

 涙目になった高嶋は全裸にも関わらず、俺に走り近づく。

 僅かに揺れる乳房を隠すこともせず、彼女は飛びついてくる。

 むにゅっと生乳を俺に押し付けて恥部を俺の脚に擦り付ける。俺の指が咄嗟に彼女の媚肉を撫でて陰核を擦ると、小さく喘ぐ。

 

 追いついた園子に手を握られ、もう片方を高嶋の恥部を弄るのに使った俺は動けない。

 手首に彼女の持つ手錠を掛けられた。

 そのまま全身で抱きついてくる高嶋に耳元で叫ばれた。

 

「逮捕ーっ!!」

 

 同時に雪花や千景、風、友奈に衣服を剥ぎ取られ──、

 

 

 

 

 

 

「っていう夢を見たんだ」

 

「ワオ。それって欲求不満ってことじゃない?」

 

 俺の家、そのキッチンで蕎麦を作る歌野に夢の内容を語る。

 自作だと言う蕎麦を茹で上げるのを見ながら、彼女を告げる。

 

 室内で暖かいからか、歌野は随分とラフな格好だ。

 すらりとした太腿を短パンから見せ、薄手のシャツを着ている。薄っすらと黄色のブラが透けて見える歌野はまるで同棲中の彼女のような気安い態度を見せる。

 珍しくファッション性のある衣服だが男の家に来るには随分と不用心だ。それを教えるべく小振りな尻を揉むと、ペッと手を叩き落とされる。

 

「セッ……ほら、あれじゃない? みんなとレッツパーリーしたからじゃないの?」

 

「それって結構前で年末は大人しかった筈だ」

 

「もしかして単純にエッチなことがしたいんじゃない?」

 

「そうかも。……歌野とそういうことがしたいなって言ったらどうする?」

 

「……困るわね」

 

 新年早々にやって来た歌野はそんなことを言って笑った。

 サバサバとした態度は女友達特有の物で、俺を異性として見ていないと態度で主張している。まるで球子や銀のように悪ノリするかのようだが言葉の端々に恥じらいが見えた。

 

「という訳で、亮之佑さんのスケベなドリームを聞いている間に完成よ」

 

 リビングのテーブル、椅子に座る俺の前に出されるのは歌野が作った信州そばだ。

 

「確認だけど、まだ誰も亮之佑さんハウスには来ていないのよね?」

 

「ああ、一着だ」

 

「それは嬉しいわね。……さっ、食べて頂戴。おっと七味は後でね」

 

「どうして?」

 

「だって、いつものように掛けると七味のテイストしかしないでしょう?」

 

 辛い物が好きなだけなのだ。

 しかし彼女の言葉はもっともなので俺は黙って舌鼓を打つ。するると入る麺に箸を止めず、無心で食べ続ける。

 

 ──新年が始まり、一番最初にやってきたのは何と歌野だった。

 彼女は自作の蕎麦を俺に食べさせたいという聖者もビックリな言動で蕎麦を調理してくれた。

 いったいどういうつもりかと思いながらも、俺のエプロンで料理していた歌野の作った蕎麦は美味しかった。

 黙々と食べる中、それを頬杖を突き見る彼女だったが、途中で俺に寄ってくる。

 

「亮之佑さん。こっち見てくれる?」

 

「……?」

 

「はい、チーズ」

 

 パシャリと一枚。歌野と蕎麦を食べる俺という構図で撮られる。

 どこか満足気に笑う彼女はとても良い笑顔でその画像を俺に見せつけた。

 

「亮之佑さんが今年最初に食べた麺類はうどんではなく蕎麦。それを勇者部の皆に見せつける! 年明け蕎麦を勇者部の皆にアピールする宣伝材料よ!」

 

 楽しそうに密着し、胸元を押し付ける歌野は意識せずに行っているのか。

 

「ハッピーニューイヤーギフトって奴よ!」

 

「ふーん? ……それって、あとで勇者部の皆に見せるんだ」

 

「ええ。そうよ」

 

「歌野さん。肖像権って知っているかい? 俺は結構、高いんだ」

 

 蕎麦を食べ終えた俺は立ち上がる。

 結局、一度も七味を使わず食べた蕎麦は美味しかった。だが、それはそれとして無防備な格好で、わざわざ自作料理までしてくる女にそういった真似をされると──、

 

「ギブアンドテイク。蕎麦だけじゃ駄目」

 

 壁に歌野を追い詰めた俺は彼女に迫る。

 ドンと壁を叩き、華奢な肩を掴むと小さく震える彼女は上目遣いを見せる。

 

「駄目ならどうすれば……?」

 

「俺を撮って良いのは、俺に撮られても良い奴だけだ」

 

 少女の顎を掴み持ち上げる。

 端正な顔は僅かに上気し、動揺と覚悟のある瞳が俺を見据える。僅かに硬くなった下腹部を彼女の短パン越しに恥骨に押し付けると小さく息を呑む。

 それで歌野も理解したのかみるみるうちに顔を赤くする。

 

「……そういうつもりで家に来たんだろ? 俺に、抱かれに」

 

「ち、ちがっ、蕎麦の為に……」

 

 その為だけに水都にも黙って俺の家に来た歌野の耳元に囁く。

 

「今年初めてが歌野なら、若葉も悔しがるんじゃないか? 若葉だけじゃない、うどん党の皆も。今年の蕎麦党は他の党よりも一歩先を行くぞ」

 

 ビクッと震える歌野の肢体が熱を帯び始める。

 顔を背ける少女のオリーブグリーンの髪を撫でると、抵抗するように俺の胸板を押す歌野。

 しかし勇者システムを起動させた訳でもなく、農業をしている程度の少女の力では退かすことは叶わない。程よく鍛えられた脚を撫でると肌が手のひらに吸い付く。

 

「……お腹に……人参が……」

 

「本当にそうかな?」

 

 ちゅっと耳にキスをする。

 手でその部位を隠す歌野の頬にキスをすると身体が身じろぐ。ぐりっと反り立つ怒張を彼女の下腹部に押し付け、荒く吐息を漏らす歌野の唇を奪う。

 

「────」

 

 長く、短く、一瞬のキスだ。

 唇を重ね合わせ、ほんの一瞬だけ衣服越しに乳房を揉む。

 短パンの隙間から怒張を押し付けると下着越しに恥部が亀頭に擦れる。

 

「んっ……」

 

 俺の胸板を押す力が徐々に弱まり、やがて胸板と乳房が衣服越しに密着する。観念したかのように、もう一度キスをすると歌野の抵抗は表面上の物すら一切なく受け入れる。

 西暦組でも強い勇者の一人である歌野も、快楽には弱い少女だった。

 短パンの隙間から下着に包まれた臀部を揉むと、驚いたように声を上げる彼女の舌を俺の舌が捉える。されるがままの彼女の口腔を俺の舌で蹂躙するほど、目の前の瞳から理性が削れていく。

 やがて、行為に対する罪悪感から逃れるように、歌野は目を伏せる。

 

「蕎麦の為だから……、ギブアンドテイクの関係ってことで」

 

「そうだね。歌野は俺に蕎麦と身体と写真を、俺は歌野に写真と初蕎麦を」

 

「……それって対等なのかしら?」

 

「勿論」

 

「……亮之佑さん」

 

「何?」

 

「…………その、せめてベッドで……ね?」

 

「じゃあ、ベッドで撮るね」

 

 俺は彼女を寝室に連れて行く。

 腰に手を置いて無抵抗でついてくる彼女は無言のままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 散らばる下着は黄色だった。

 やや可憐な装飾が施されたブラとショーツは誰かと選んだのだろう。野菜にしか興味が無いのかと思っていた時期もあったが、遂に男根に目覚めたのかと感動した。

 

「ん、ぁっ……っ……」

 

 ベッドのシーツに皺を寄せ、歌野が嬌声を上げる。

 薄暗い密室。

 生娘のような声音を漏らす彼女は、初々しさと共に媚肉を蠕動させる。突き上げる竿に合わせて少女が揺れ動き、あられもない声を上げた。

 歌野の肉壺は剛直の根本までみっちりと受け入れ、締め付けていた。

 

「ぁんっ……! ひ、……ぁ」

 

 歌野が自ら動く度に乳房が揺れ動く。

 上下にぷるりと揺れる肉果は色白で、自らの嬌声に驚いたように口を手で塞ぐ。それでも身体は正直で、先ほどから自分が悦ぶ場所に亀頭を擦りつけては小さく喘ぐ。

 

「んっ、っ……! ……!!」

 

 鼻息荒く、雄竿を締め付ける雌肉は熱くぬめる。

 自ら腰を動かす彼女は恨みがましい目で俺を見下ろすと、身体を震わせる。

 

「す、ストップ! ウェイト! ま、まって……ぁ~~~ッ!!」

 

 俺の腹に手を置き、歌野の下腹部が震える。

 虚空を見つめる少女の口端から涎が垂れる中、俺は彼女の腰を掴んで怒張を突き上げる。

 

「ふわあああっ!!? ぁ、ひッ!」

 

「……」

 

「ゆっくりっ! ゆっくりするって……ッ!! はっ、あっ!!」

 

 歌野の尻肉が俺の腿にぶつかる。

 にじゅ、と水音が響き、吐息に甘い声を聞かせる彼女の結合部を擦り合わせる。

 愛液と先走り汁が絡み合い白い泡が結合部を汚す。ビクンっと逃げるように腰を反らした歌野の恥部から僅かに飛沫が散った。

 

「~~~~ッ!! ッ! ッ!!」

 

 悲鳴のような嬌声を部屋中に撒き散らす。

 むわりと充満する雌臭と共に、倒れ込んだ歌野の媚肉から怒張が抜ける。

 

「……あっ、そ、ソーリー……なんて」

 

「今度はこっちにお尻を向けて座ろうか」

 

「えっ、あっ……はい」

 

 ベッドの上での歌野は俺にされるがままだった。

 俺は優しい笑みを心がけ、彼女をリードするように抱く。やや稚拙ながらも腰を前後させ、普段の農作業で鍛えた膣を引き締める歌野を俺は見上げる。

 滑らかな背中は汗が浮かび、自ら腰を動かし快楽を味わう姿は珍しい物だ。

 そっと彼女の艶やかな姿をカメラに収めながら、優しく尻肉を叩き、彼女を背中から抱き締めるとベッドに倒れ込む。

 

「りょ、亮之佑、さん……?」

 

 繋がったまま、歌野の乳房を手にする。

 年相応な物よりもやや大きめな乳房は球子ならなんと称するだろうか。しっとりとした生乳は俺の手のひらに吸い付き、ツンと尖った桜色の乳首は俺の指を誘う。

 

「や、ぁ……んむっ──」

 

 親指と人差し指で彼女の乳首を弄る。

 根本を摩り、優しく揉む度に熱を帯びた吐息を漏らす。瑞々しい唇を重ね、丁寧に舌を絡め合うと、きゅうっと媚肉が怒張を締め付け、愛液が竿を伝う。

 ……どんな味だろうか?

 知的好奇心に駆られた俺は、僅かに体勢を変え乳首に吸い付く。

 

「やっ! ちょっ、吸っても出ない……」

 

 彼女の授乳経験を奪いながら、やや血の味がする肉粒を舌で転がす。

 赤子のように唇で乳首を吸いつつ、味わったらもう片方の乳首も同様に。

 

「んッ……、ベイビー……みたいね」

 

「ばぶー!」

 

「んぁッ!?」

 

 小刻みに肉棒を突き上げると、歌野の背中がのけ反る。

 揺れる乳房を掴み、柔らかな唇を啄みながら、俺の手は彼女の下腹部に伸びる。

 

「ンッ……あ、そこは……」

 

 尻肉を押し付け腰を揺らす歌野に再度剛直を突き上げて黙らせる。

 トロンとした表情で言葉少なに喘ぐだけの少女となった彼女と自撮り写真を撮り終えると、再度ゆっくりと彼女の腹部を撫でては鼠径部へと這う。

 整えられた茂みを指で弄り、やがて陰核を爪で突く。

 

「ひっ!? ぁ、ぁっ、……まってっ、そこは駄目な──」

 

 乳肉を揉みながら、肉芽を指で挟み込む。

 

「ぁ──!!!」

 

 歌野の言葉通りだった。

 ビクンと腰を跳ねるとシーツを濡らすほどの潮を彼女は噴いた。思わず竿が抜け、新鮮で温かい彼女の蜜を身体で感じながら、俺はすぐに亀頭を秘所に宛がう。

 

「ぅぁッ! ぁっ、だめっ、だめえ!」

 

 乳首と陰核を弄るのは彼女も夜な夜なしているのか。

 やや大げさにも思えるような反応を声と膣で感じながら、俺は腰を揺する。

 

「はっ、あっ、あっ、あ!! イクイク……っ! イクッ!!」

 

 振り乱す髪からは汗と歌野の香りが漂う。

 喘ぐ声は普段とは異なる喘ぎ慣れない女の声。鼠径部とぶつかり合う尻肉と柔らかな陰毛を濡らす愛液が俺の怒張を加速させる。

 

 柔らかくなった乳房を揉みしだき、少女の唇を奪って唾液を交換する。

 キスの凄さを教え、舌裏の柔らかさや頬裏に舌を誘導させて、悦ばせる。

 

「これっ……ハァ……すき……ッ」

 

 額に髪を張りつかせ、喘ぎ声に混じりながら、告げた歌野に微笑む。

 頬を赤らませる彼女と唇を重ね、白濁を注ぎ込んだ。

 

「はぁ……ん……」

 

 どこか気怠そうな吐息に満足気な余韻を残し。

 俺の上で汚濁を受け入れる歌野と目を合わせる。男を受け入れた女の目、それは今まで多くの無垢な少女たちが見せてきた物に似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、トレードってことね」

 

「ああ、交換ね」

 

 無言で下着を着用しようとする後ろ姿に、今度はキチンと撮影の為に彼女を抱いて。

 俺と歌野は互いが求めている物を合意を得て交換した。

 

「若葉や皆が嵌るのも分かるわね。……でも私は農業の方が良いわ。身体を動かして汗を掻く方が健全で気持ち良いもの!」

 

 爽やかな笑顔に俺も笑みを返す。

 

「なら偶には不健全なことも一緒にしようね、これも身体を動かすから」

 

「んー……まあ、考えておくわ」

 

 ぽり、と頬を掻いて返答を濁した歌野はきっと満足してくれたのだろう。

 俺の差し出した怒張を、特に嫌がることなくノリノリで咥えて奉仕をする。くぷ、と音を立てる口腔奉仕をする歌野の姿に支配欲が刺激される。

 決して上手い訳では無いが、白鳥歌野にフェラチオをさせた事実に脳が震えた。

 携帯端末を向けると、歌野は手で目元を隠す。

 

「ノー! こんなところ撮らないでってば」

 

「ごめん。歌野が可愛いからつい……」

 

「むぅ……そう褒められると悪い気はしないわ」

 

 しゃぶりながら上目遣いをする彼女はそっと唇から亀頭を解放する。

 そして俺が教えた通りに、軽く乳房で挟み、普段土を弄る手で肉棒を弄り扱く。

 

「へぇー、こんな雑に扱っても大丈夫なのね」

 

 吐精には至らず、俺もまた彼女の喉奥に怒張を突き立てるような鬼畜な所業はしない。それでも先走りと愛液と白濁混じりの唾液を嚥下する歌野をジッと見下ろす。

 小声で「変なテイストね」と感想を告げる少女の胸を俺が揉んでいると、

 

「ぷは……そうだ、みんなに広めないと」

 

 気に入ったのかアイスを舐めるように竿に舌を這わせた歌野が思い出したように呟く。

 彼女はおもむろに携帯端末を取り出すと、

 

「亮之佑さんの初麺類は蕎麦でした、と」

 

 蕎麦を食べる俺とピースサインを見せる歌野。

 その仲睦まじい画像を勇者部のグループチャットに載せ、直後に大いに荒れた。

 

「んー……あっ」

 

「どうした?」

 

 珍しく青い顔をする血の気の引いた歌野に声を掛ける。

 

「間違えて……亮之佑さんが送ってきた……その、エッチな方も貼っちゃった」

 

 慌てて彼女の端末の液晶を見ると、俺に密着する全裸の歌野が白濁と汗に汚れた笑顔のピースサインの画像が載っていた。それに対する彼女たちの文章の数々に、そっと削除する。

 

「とりあえず、もう一回しよっか」

 

「……ちょ、ちょっとくらいなハードなエッチも受け付けているわよ」

 

 ──俺はその後すぐに駆け付けたうどん党に歌野と共に襲われることになった。



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【番外】ただ園子とイチャイチャする話

感想、誤字報告、評価ありがとうございます。


「かっきーってさ」

 

 開口一番、園子は告げる。

 

「お酒、好きだよね」

 

「昔の話だよ。今は禁酒してる」

 

「なら、こういうお酒も好きでしょ〜? わっしーから聞いてるよ」

 

「東郷さんにはお仕置きだな。友奈に突撃させて人には言えないエッチな目に遭わせよう」

 

「鬼畜だ~。……それ、私もやるね」

 

 話を聞いているようで聞いていない、彼女の主張に目を向ける。

 全裸の園子が俺を見上げていた。

 丁寧に衣服を畳み、ブラとショーツを見せるように一番上に置かれている。他の少女よりも豊かな乳房をアピールするように園子は両腕を絡めて谷間を見せつける。

 

 肉付きの良い裸体を晒した園子は正座からやや足を崩した座り方をしていた。

 髪色と同じ毛色の陰毛を見せつつ、秘所だけは隠すようにピチリと腿を閉じた彼女は何かの容器を傾け、自らの窪みに注いでいく。透明な液体は鼠径部を伝い、陰毛を沈めるほどに大きな湖が作られる。

 冷たかったのか、小さく震えた彼女は唐突に告げる。

 

「飲んで」

 

「え?」

 

「飲んで。犬のようにペロペロして。命令。早くして」

 

 命令口調の彼女は心なしか冷たい目を見せている。

 嫌な顔でパンツを見せるような顔をして、女王のような態度で俺を従わせようとしている。欠片も俺が逆らうとは思っていない姿に、そして俺もまた従う。

 

「ははー」

 

 平伏し、四つん這いになって彼女に近づく。

 蔑んだような視線を受けながら、俺は犬となって彼女の股に顔を埋める。

 

「こらっ……どこを舐めているの? ここだよ」

 

 舌を腿に這わせるとお叱りを受ける。

 目も頭も悪い駄犬を叱る女王は、自らが作った湖の水を飲めと命令する。

 

「わ、わん!」

 

「よしよし、良い子だよ~」

 

 園子のエキスで満たされた湖は薄っすらと塩と甘酒の味がした。

 どこか甘酸っぱいのは彼女の愛液か、恥毛で出汁が取れたのか。少女の尻肉を揉みながら一心不乱になって水を飲んでいくと、頭に覆い被さるように乳房が圧し掛かる。

 ずっしりとした質感。パン生地のようなそれが俺の後頭部を押し潰す。

 頭を上げることなど許さない。

 お前は器が綺麗になるまで犬のように舐め続けろ、という女王の意思を感じた。

 

「ぁっ……」

 

 ときおり聞こえる彼女の喘ぎを聞きながら、水を飲み干し、器を舐める。

 丁寧に、肌に舌を這わせ、水分を吸った恥毛に吸い付き、舌を恥部に擦りつける。

 

「ん、ん……っ」

 

 俺の頭を抱き抱えた園子は生乳を押し付ける。

 高鳴る鼓動を俺に聞かせ、犬のような奉仕を、丹念な奉仕を求める。

 

「も、もう良いかな〜」

 

「わん!」

 

「……じゃあ、お風呂に入ろっかな。あれ? 犬が服なんて……って脱ぐの早いね」

 

「わん!!」

 

 園子エキスを飲んで屹立した剛直を彼女に見せつける。

 気恥ずかし気ながらも自分に興奮したという証明に僅かに頬を緩める少女の頬に擦り付けると、どこか愛おし気に頬を押し付けて手で握る。

 

「もう……興奮して駄目な犬さんだね~。……でも、待て!」

 

「わふ?」

 

「あっ、だめっ、ダメだよ~、待て! ステイ! ひゃぁ!」

 

 犬の我慢は長続きはしない。

 目の前の裸体に圧し掛かっては、彼女が作った器以外を舐める。

 

「わんわんお」

 

「ゃ、ぁっ、ははっ……! くすっぐったいよぉ……」

 

 首筋や腋、抵抗する手や腕を舐め、腹を、太腿には噛みつき、脚の指を一本一本舐める。

 さりげなく乳房を揉み、ツンと尖った乳首を弄りながら舐めると彼女は笑って喘ぐ。

 

「アハハっ! ……ぁっ、ふぅ、……はー……ぁあっ」

 

 犬に負ける主人など主人ではない。

 下剋上によって、無理やり脚を開かされた園子の肉芽を指で弄る。脚を片方掴んだまま、鼻歌混じりで陰核を弄り続けると彼女の息の仕方が変わった。

 絶頂に至る女が見せる寸前の吐息、そこから数秒も掛からなかった。

 

「ぁっ、そこ……だ、だめっ、ぇ──!!」

 

 ビクン、と小さく跳ねる。

 女王の性感は随分と快楽に弱く、簡単に達するようになった。

 床に崩れ落ちる園子は、涙の滲んだ瞳で俺を見上げると呟く。

 

「……犬の癖に」

 

 

 

 

 

 

 

 ちゃぷ、と湯を指で弾くと飛沫が少女の肌に載る。

 色白の肌が薄っすらと朱色に染まるのは湯の温かさだろう。俺の脚の間に座る少女は楽し気に笑みをこぼしては背中を胸板に擦りつける。

 

「今年も、もうすぐ慰安の時期ですな~」

 

 ブロンドヘアを纏め、首筋を覗かせる園子の言葉に俺は頷く。ふわふわとした言動は湯に溶けたのか、彼女の顎を指でくすぐるとゴロゴロと喉を鳴らす。

 

「今回は別の旅館なんだっけ?」

 

「そうなんよ。今年の旅館は別の場所、というより新しく建てた奴なんさ」

 

 と告げる園子の態度に、彼女の思惑が絡んでいるのを悟る。

 しかし、俺は彼女に何も言わない。

 園子に甘いと他者に言われると言い返せないが、死んだ人間のいる世界で思い出を作りたいという彼女の思いは尊い物だ。できるだけ尊重したいと思っている。

 

「何より園ちゃんは可愛いから、いっぱい甘やかしたい」

 

「は~、かっきーに甘やかされて溶けちゃうんよ~」

 

 鈴音のような笑みが優しく鼓膜を震わせる。

 柔らかな頬を肌に押し付けて、琥珀色の瞳が親愛を見せる。ややしっとりとした髪が肌をくすぐる彼女は尻肉を怒張に押し付ける。

 

 全裸の園子と湯を楽しむ。

 柑橘類の香りがする湯と熱を帯びた乙女の柔肌との触れ合いが俺を癒すのだ。ぐっと背筋を反らして顔を俺に向ける園子、その乳房が湯から浮かぶ。

 目が合う。

 やや濡れた瞳と、何かを求めるように窄めた唇。

 それを無視して俺は問い掛ける。

 

「今年はどうするつもりなんだ?」

 

「うーん。そうだね〜、新人さんの歓迎会とお風呂とご飯、ゆーゆ達のマッサージをして……ゆーゆ達もちゃんと癒して……あと皆でカジノとかしたいな~って」

 

「園ちゃんも癒さないとね」

 

「今、されてるよ~」

 

 湯の中で園子の上体に触れる。

 無駄な脂肪が少ないが、柔らかい。

 まろやかな腹を撫で回し、へその窪みに指を入れながら、園子の首に腕を回す。

 

「かっきーって」

 

「うん?」

 

「お腹に脂肪がついている子が好きなの?」

 

「ほどほどが良いかな。痩せすぎず太すぎず、……園ちゃんはこのまま順当に成長して欲しいな」

 

 そう告げると園子は俺の腕に甘噛みをした。

 吸血鬼のように歯を当てる彼女の腋を指でくすぐる。コロコロと笑う彼女はまだ余裕を見せる中、わしゃわしゃと指の腹で滑らかな腋をくすぐると熱い吐息を漏らし身じろぐ。

 ハァ、と吐息を吐く彼女が頬を押し付ける。

 切なげな呼気を聞かせる園子の背が震え、臀部で怒張を押し潰す。

 

「……もう一個あった」

 

「それは?」

 

「……エッチしたい。かっきーと、いっぱいエッチしたい」

 

 俺の手はしばらく園子の腹で遊ぶ。

 指で摘まめるほど脂の無い腹肉を撫で回し、少女の頬と頬を合わせる。至近距離で目を合わせ、唇を触れ合わせると園子の方から啄むようなキスを求めてくる。

 はむ、と唇を甘噛みする彼女の甘く熱い瞳は俺を捉え、離した唇の間に糸を引く。

 

「きっと、皆とエッチするんだろうなって思うから、今の内にかっきーを味わいたいなって。この胸の高鳴りを皆にもお裾分けしたい。……()()かっきーはこんなに凄いんだって自慢しちゃいたいなって思うんだ」

 

 湯の中で園子の手が俺の太腿を撫で、陰嚢を這う。

 男を惑わせるような白魚の指は鼠径部を這うように動き、怒張を優しく包む。その硬さを、太さを、長さを実感するように膣とも違う絶妙な締め付けを指でする園子は軽く身を揺する。

 

「……今、重いって思った?」

 

「そんな園ちゃんが──」

 

 まろやかな腹肉を撫でながら、手を動かす。

 肌を撫でながら進んだ先には豊かな山があり、少し強く肉を揉む。

 

「好きだよ」

 

「……っ」

 

 生乳を揉むと指先が突起に触れた。

 ぁ、と霞のような嬌声に、やや乱暴にピンクの乳頭を左右の親指と人差し指でこねる。

 園子の背が跳ね、きゅっと目を閉じた瞼が震える。

 

「んっ、ぁ」

 

 漏れた声には、これ以上の会話を続けることへの恥じらいがあった。

 弄ることへの同意と抱かれることへの期待を混ぜたような吐息に、俺は口を噤む。

 身動ぎする園子は剛直が邪魔なのか、座る位置を変えようと尻を揺する。意図的か意識的か俺の性感を刺激するように尻肉で挟み込む彼女は横目で俺を蠱惑的に挑発する。

 そういうことをするのかと、俺は彼女の乳房を弄る。

 

 しっとりとした生乳を両手で持ち上げると、ずっしりとした重みが広がる。

 手のひらに沈む肉果を揉み、パン生地をこねるように全体を押し潰す。

 俺の意思に従順に形を変える柔肉と、少女から漂う芳香が、雄を昂らせる。

 

「……かた~い」

 

 甘ったるい、雄に媚びるような甘い囁き。

 長い睫毛を震わせ、俺に体重を預ける彼女の髪の香り。

 

「ぁぁっ……!!」

 

 喘ぎ声。

 からかうような少女を理解させる一線を、粒で指を転がして越える。

 湯の中で腿を擦り合わせ、縮こまりかける少女に無理やり迫ると背後から乳房を揉みしだき、ザクロの実のような乳首を人差し指の腹でひたすらに愛でる。

 

「はっ、ぁ」

 

 待てをされた犬のような荒い呼気が近くから聞こえる。

 興奮と熱を帯びた身体が、荒々しくも雄々しい剛直を求めているのが分かった。

 

「ひゃっ! ぁんっ!!」

 

 カリッと爪で乳首を弄る。

 シールを剥すような動きに園子は何度も跳ね、あられもない声を周囲に響かせる。腰を浮かせてはコリコリと乳頭の根本を爪で掻く度に唇を噛む彼女はやがて大きく腰を跳ねた。

 

「かっ……ぁ……っ、ぁ~~~ッ!!」

 

 涙を溜めた少女の瞳は法悦を味わった女の色をしていた。

 熱病に浮かされた病人のような彼女はゆっくりと俺に預けた身体を起こすと、そのまま体勢を変える。

 ぐりぐりと無言の抗議をするように陰部に尻肉を擦りつけていた彼女は、今度は自らの媚肉に怒張を擦りつける。ワカメのように湯の中でたゆたう陰毛が亀頭をくすぐる中、膝立ちで俺と向かい合う。

 目の前には豊かな乳房、揺れる肉に載るのは小さくもツンと上を向いた乳首。

 

「……ん」

 

 早く食べて、そう聞こえた。

 だから、あーんと口を開くと食べやすいように彼女から密着してくる。秘裂を剛直に擦り付ける彼女は食べやすいように母性の象徴を近づけて来る。

 

「……んクッ!!」

 

 仄かに桜色をした乳房を口に含む。

 肉粒を同時に舌で転がし、歯でそっと擦る。

 

「……ふっ、んっ……」

 

 短い喘ぎの中、園子は俺の髪を掴む。

 亀頭に媚肉を擦りつけながら、自らの乳房を押し付ける。喜悦に歪んだ笑みを浮かべ、口端から涎を垂らしながらも抗えぬ悦楽が俺に愛撫を要求させる。

 それに応えるべく、酷く敏感な乳首を吸う。

 

「…………ぁ、くぅ……」

 

 腹を丸め、しかし快楽を惜しむように生乳の形が変わるほどに俺に押し付ける彼女は小さく腰を揺する。

 ヘコヘコと性行為に慣れぬ大学生のような腰の動きで俺の剛直を刺激する。

 秘裂が亀頭を幾度も擦っては挿入をギリギリで避ける。

 焦らすような動きに、園子の唾液を舐め取っては、もう片方の乳首に絡めて吸った。

 

「はっ……は……」

 

 するっと脚を僅かに広げた園子の媚肉が亀頭に吸い付く。

 湯水の中で柔らかく解れた蜜壺は雄の先端を躊躇いなく受け付ける。慌てたように媚肉が亀頭を締め付け、苦しそうに吐息を繰り返す園子は俺の肩を掴んで事故を防ぐ。

 

「──ぉ……!!!」

 

 そんな事故、起こさない方が無理だ。

 園子の柔らかくもくびれた腰肉を掴んで根本まで串刺しにした。

 

「……ぁ、ぁ」

 

 ぬぷっと肉を割り拓き、奥の奥まで突き刺さる感触を剛直全体で味わう。

 彼女の顔を見ると、パクパクと金魚のように開閉し、その度に媚肉が蠕動する。拡縮する媚肉が剛直を追い出そうとするが、少女の体重と腰を掴んだ俺の手が簡単には許さない。

 

「~~~~ッッ!!」

 

 数秒遅れて、身体が理解したらしい。

 園子の全身が硬直し、がくんと彼女の腰が大きく跳ねた。

 言葉にならない悲鳴を上げて、やがて俺に倒れ込み弛緩する様は、絶頂を味わった時の物だ。

 

「ぁ、ぁぁぁぁっっ……!!」

 

 甘い衝撃と歓喜に震える園子が落ち着くまで少し待つ。

 ばかぁ、と呟く涙声混じりの声に思わず腰を揺すると、彼女は狂おしそうに喘いだ。

 

「ちょっと……待ってよ……、ぬいてっ……ずるいよぉ……」

 

 甘い声音でそう呟く園子の声に腰肉から手を離す。

 んぅ、と蕩けた嬌声を聞かせる彼女は涎で濡れた口元を手で拭いながら、ゆっくりと腰を上げる。ぬぷぷ、と湯の中で竿を肉壺から抜く園子の姿に思わず腰を掴む。

 

「ひッ!? ぅぁ……ッ!!」

 

 ぐぽっと湯水が結合部の隙間から入り、彼女は大きな瞳を見開く。

 わななく彼女が俺の肩を掴んで荒く呼吸する中で、小刻みに腰を揺する。

 

「かっ、きぃ……まって……とまってぇ……イくぅ……」

 

 ちゃぷちゃぷと水面に飛沫が跳ねる。

 乳肉が俺の胸板や顔に当たり、先端が擦れる。

 

 形勢を逆転させようと膝を起こそうとする度に腰を揺すって座らせる。肉椅子に座らせ、最奥まで深く突き上げる度に嬌声を上げる園子の淫らな姿は愛おしさを覚える。

 もっと聞かせろと乳房に噛みつくと、

 

「~~~~ッッ!!!」

 

 両腿が俺の腰をぎゅうっと挟み、膣が怒張を締め付ける。

 天井を見上げる園子の表情が緩み、虚空を見る半眼からは理性の光が薄れる。濡れた髪の毛を肌に張りつかせ、法悦の空に昇る悦びに身体を痙攣させる。

 

 園子は、ふわふわしている不思議系の少女に見えて芯がしっかりしている。

 それを自分の手で、身体の奥から滅茶苦茶にして、自分の腕の中で絶頂に達させる。そのことに至高の悦びを感じ、独占欲と支配欲が刺激される。

 乃木園子という身体と魂に自分を認知させ、最も大事な場所に受け入れさせる。

 

「おくっ……ぐりぐりってぇ……ッ!」

 

 自ら腰を左右に動かして、本能のままに怒張を貪る。

 ただの女として、身体で俺を誘う彼女は全身から芳香を漂わせる。瑞々しい唇から舌を出した園子は濡れた瞳で濃厚なキスを求めた。

 

「──んむぅ……っ、んッ……ぁふ、は……ぷぁ」

 

 乳首を指で弄りながら乳房を片手で揉む。

 湯を掻き混ぜるように、弧を描いて竿を突き上げる。

 

「ぅぁっ……あぁ……っ」

 

 湯の中でのゆっくりとした抽送。

 速度は遅いが一突きで奥深くまで刺さる怒張の角度を変える。敏い彼女は無言で自らが感じるように腰の位置を調整し、俺は斜め上方に媚肉を突き上げる。

 

「ふわぁぁぁあああっ!!」

 

 膝が曲がり、甲高い声が響く。

 それを今さら恥じらうように上体を反らした園子が片手で口元を覆う。

 赤らんだ顔で俺を睨む涙目の彼女に微笑むと、反攻的な態度で膣を締め付けた。仕方なしにゆっくりと竿を引き抜きながら、彼女の腰を掴んで湯から浮上する。

 

 ざばりと少女の腰を掴んだまま浴槽から立ち上がる。

 身体の柔らかい彼女に背後のタイルに手を置かせ、脚を広げさせる。

 

「ん……」

 

 ぬぷ、と竿を肉壺が受け入れる。

 カリカリとタイルを爪で掻く音がした。

 少女の後頭部がタイルを叩き、眼前で豊満な乳房が揺れ動く。

 

「は……ぁ……」

 

 タイルを引っかく爪は何かを書いていた。

 文字か、絵か、抗議か、少女の弱点を亀頭で小突き、擦る度に蜘蛛のように指を動かして、喜悦に歪んだ顔も隠さずにあられもない声を上げる。

 

 相手の反応を探るような抽送はいくらでも続けられそうだった。

 湯から出した裸体、その濡れた肌が僅かに乾き始める頃に幾度目の口づけをする。

 

 何もかもを投げ捨てたような、退廃的で淫らな口づけ。

 動物よりもはしたなく、本能のままに貪る唇の重ね合いと浅ましく絡み合う舌。

 

「──は」

 

 笑ったのはどちらが先か。

 淫熱に浮かされたような表情の女は両手を俺の首の後ろへ。

 繋がったまま、腰に肉付きの良い太腿を絡みつかせ、背中に文字を書く。

 

 ベッド、と書いていた。

 

 移動して欲しいらしい。

 了解しましたと、姫君の首筋と乳頭にキスを降らしながら、浴室から寝室へ向かう。途中、バスタオルで彼女の裸体を拭くとゴロゴロと喉を鳴らす。

 

「ほら、かっきーも拭いて~」

 

 園子の柔らかな手が俺の裸体に触れる。

 ぽんぽん、と優しく胸板を叩き、腕を叩き、腹筋をなぞり、下腹部に触れる。濡れた怒張をタオルで拭きながら、ぎゅっと手で扱く彼女は俺の表情を窺う。

 快楽を知る女の甘い表情を見せて、さりげなく乳房を胸板に擦りつける。

 

「……ん~」

 

 すりすりと、互いの乳首を擦り合わせる。

 硬い乳頭が擦れ、小さく吐息する園子の背中を拭き、下腹部に手を這わす。

 

「ぁっ、……そこは優しくして」

 

「こう?」

 

「……こうしてみる?」

 

 ふにゅん、と眼前で生乳を押し潰す光景を見せてくれる園子が俺のタオルを剛直に置く。反り立ち主張の激しい竿に置かれたタオルを彼女は股に挟む。

 独特の弾力が竿を圧迫する。

 少女の恥毛が照明に輝き、陰唇が竿に密着するのを感じる中、

 

「動いて」

 

 頬に手を置いて、少女は囁く。

 長い睫毛、瞬きの合間に見せる淫靡な光を宿した瞳で、囁く。

 

「動いて」

 

 重ねて、囁く。

 言葉が鼓膜を震わし、俺は園子の尻を掴んで腰を揺する。

 

「っぁ……」

 

 布一枚を挟んで擦れる互いの秘所。

 背中に腕を回す園子の髪に鼻を突っ込み、素股を味わう。脱衣所の壁に彼女を押し付けて、まるで強姦でもするように激しく肉竿を擦りつける。

 は、あ、と荒い犬のような呼気を互いに聞かせながら、唇を奪い合う。

 

「──ん、ふ。激しいんよ……まるで動物の交尾みたいだ」

 

 舌を絡ませ、息をするのを惜しむように少女は俺を挑発する。

 まるで、ではなく自分と交尾をしろと。本能のままに自分を犯し、腰を打ち付け、組み伏せて男女の力の差を教えて、子種を孕むまで注げと、身体で告げていた。

 

「行こうか」

 

「あ……うん」

 

 少女の肩を抱き寄せ、自室のベッドに彼女を誘う。

 無言で俺の肩に頭を置いた園子は、仰向けで寝転がる。どこかを隠す訳でもなく両手足を広げた彼女は惜しげもなく裸体を見せつける。

 

「おいで、かっきー……──きゃっ!」

 

 倒れ込むように彼女に抱き着く。

 そのまま、怒張を最奥へと挿入する。

 盛りの付いた猿のような行動に流石に彼女も苦言を口にする。

 

「……も~、いきなりすぎだよぉ〜」

 

「ごめんごめん。ほら、俺の分かるだろ?」

 

「うん。……あっ、待って……」

 

 何かに焦ったように俺の胸板に手を置く園子に体重を掛けていく。

 根本まで飲み込んだ膣、その最奥に亀頭を押し付けると、膣襞が蠕動する。慌てたような顔の園子に笑い掛けると抵抗しようとする少女の手首を掴んで、彼女に体重を預ける。

 

「……ぁ……イっ……ぐ……」

 

 それだけで彼女は簡単に達した。

 荒い呼吸を繰り返し、俺の形を覚えた媚肉を蠕動させた彼女は柔らかく温かい乳房を揺らし、首を反らして小刻みに震える。

 

「もうすっかり膣内でイく癖ついたね」

 

「ちがっ、違うよぉ……」

 

 甘い声で否定する園子に怒張を突き下ろし、喘がせる。

 必死に腕を動かして抵抗する様を楽しみながら子宮を押し潰すように抱き着く。

 太腿で必死に俺の腰を叩き、媚肉で怒張を締め付ける彼女に笑みを見せる。

 

「かっ……ちょっ……も、もう……ッ!」

 

「深イキしようね~」

 

「やだっ、やぁ……今、イってる……ぅ~~~~」

 

 普段ふわふわした彼女の媚肉はすっかりと解されていた。

 雄の味を知り、普段からの調教で堕ちた身体は雄竿一つに屈する。剛直を悦ばせるように媚肉を締め付け、ベッドのシーツを握る園子は背中をのけ反らせた。

 

「イッ! ……ぐ……ぅぅっ……」

 

「おら、大好きな奥を思いっきり押し潰してやるよ」

 

「……っ」

 

「自分のここが誰のモノなのか、しっかりと噛み締めろ」

 

 赤くなった耳元に囁くと彼女は悦んで膣を引き締める。

 だらしなく歪んだ口元から涎と嬌声を垂らし、アクセントのような抵抗を見せながら、俺のピストンを受け入れる。

 

「ぁ、っ、あっ!」

 

 やがて訪れた射精に意識が白く染まる。

 彼女の髪を指で梳かし、頭を抱きながら根本まで怒張を擦りつける。結合部からは聞くに堪えない下品で粘着質な音を聞かせながら、白濁が彼女の最奥を汚す感覚に酔い痴れる。

 トロンとした眼差しで身体を痙攣させる園子の唇を奪うと、彼女は自ら舌を絡めてくる。

 虚ろな眼差しで、荒い吐息で、凛々しさも奇想天外な態度も鳴りを潜め、女としての表情で汚濁を受け入れる。

 

「……ッ…………」

 

 ゆっくりと竿を引き抜くと、秘所からは白濁が垂れ落ちた。

 その様に満足感とも征服感とも呼べる感情が沸き上がり、静かに唇を重ねる。

 

「……もう」

 

 フーッ、と大きく呼吸を繰り返す園子が呟く。

 腕を顔に置きながら、腕から見せる目に疲労を見せる。

 

「……お腹空いた」

 

「何か、作ろうか」

 

「ん……」

 

 そう言いながら彼女は俺に抱き着いてきて、しばらくの間離さなかった。



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【番外】授業と教材は秘密の内容

感想、評価、誤字報告ありがとうございます。


 新たな年となった。

 ……もう、あまり意味を感じない新しい年だ。見上げたところで変わらぬ空が俺を見下ろし続ける。夜になるのが早くなった世界でも学校は変わらず続く。

 皆は知らないバーテックスや神との戦いに俺は変わらず関与はできない。

 いてもいなくても変わらない存在、それが俺なのだ。

 

「……そんな卑屈にならなくても良いだろ。亮之佑は十分に手伝ってくれてる」

 

 と、優しくフォローを入れてくれるのは勇者の若葉だ。

 凛々しい横顔、紫紺の瞳に俺を捉える彼女は恥ずかし気も無く告げる。

 

「いつもいてくれて助かるぞ。これからも傍にいて欲しい」

 

「────」

 

「……何か言ってくれないか?」

 

「ワカバーン、しゅき」

 

「そうか」

 

「いや、そうかって……」

 

「知っているとも」

 

 こういった主人公のような挙動をするのが乃木若葉だ。息を吐くように園子(中)を誑かし、ひなたをクレイジー巫女とし、千景にツンデレムーブをさせるエッチな女。

 更にはこの世界に来てからはファンクラブなんて物ができる魔性っぷり。昼は剣を持ち夜は剣を咥える勇者である若葉は、今日もひなたに整えて貰った長い金髪をなびかせる。

 

「ん? 今日は亮之佑にやって貰ったと思うが?」

 

「そうだっけ?」

 

「ああ、よくできていると思うぞ」

 

 くるり、と俺の前で一回転して後ろ姿も見せてくれる。若葉がよく見せる髪型はたまに園子の髪を弄って、『若葉とひなたごっこ』を楽しんで怒られる程度には思い入れのある物だった。

 なびいた金髪はふわりと甘い香りが漂う。

 その容姿端麗な姿に俺は思う。

 世の中はやはり顔、雰囲気、性格、清潔感が全てなのだと。

 どれだけ鍛えていても、ふとした仕草や匂い、柔らかさは女であると理解させる。

 

「……あまり変に褒めるな」

 

「──と言いつつ満更でもない若葉だった」

 

「止めろ」

 

 ぐいっと肘で脇腹を突かれた俺は僅かに距離を取る。

 元々くっついていたような距離を拳一つ分ほど取ると少し肌寒く感じる。

 

「あー、若葉の服の中に手を突っ込みたい」

 

「亮之佑はたまに頭のおかしいことを言うな……人はいないが、するなよ?」

 

「この冷え切った手を短パンの中に突っ込んで暖を取りたい。上着の隙間からブラを見上げて若葉の高尾山で手を温めたい……」

 

 そんなことを言うと、引いたように一歩距離を取る若葉。

 彼女の服装は体操服だ。長袖のジャージと同色のハーフパンツだが、陰影がはっきりと分かる膨らみがジャージ越しに主張し、すらりと伸びた素足がハーフパンツから覗く。 

 俺の視線に身動ぎする彼女は半眼を見せる。

 

「……変態が」

 

「ところで今日のブラは何色?」

 

 無言で若葉は俺の尻を蹴る。

 ベシッと布団を叩いたような音が無人の廊下に響く。

 

「こんなこと、以前の私なら……」

 

 羞恥か怒りか僅かに頬を赤らめた彼女はボソッと呟く。

 そのまま黙り込んだ若葉が手に持つのは重めの備品が入った段ボールだ。

 

「地味に備品が重いな」

 

 できるだけ困っている人を助ける。嫌なことを勇んで行う部活動。

 それは学校が休みの時でも、半日で終わりの時でも変わらない。あと数日もせず勇者部の慰安旅行があろうとも世界は変わらず、依頼は発生する。そして勇者部に休みはない。

 

「私が持とうか?」

 

 からかうような口調の若葉に俺は少し考えて返答した。

 

「ひなたさんに怒られるから駄目」

 

「怒られなければ良いのか?」

 

 学校の教師に頼まれた備品をしっかりと抱え直す。

 運搬依頼として勇者部に舞い込んだ物であり、目的地である体育倉庫に到着する。

 扉は既に開けられ、俺と若葉に手を振るのは微笑を浮かべる国土亜耶だ。

 

「亜耶。ありがとう」

 

「これくらいしかできないですが……」

 

 ふるふると首を振る少女もまた体操服を着用している。

 こちらはジャージとロングパンツという完全防寒だ。

 

「寒かった?」

 

「あっ、そうですね……少しだけ」

 

 その言葉を裏付けるように握った彼女の手は少し冷たくなっていた。

 にぎにぎと亜耶の小さな手を握り締めていると、若葉の手刀が俺と亜耶を引き裂く。いったい何のつもりかと若葉を見ると、イケメンフェイスの彼女は亜耶の手を握り締める。

 

「あまりむやみにこの男に肌を許すな。大丈夫だ、そういうのは私が対応しておくから」

 

「若葉先輩……」

 

 まるで悪い人に捕まるなと指導を受けている構図に俺は納得いかない。

 制服では汚れ、また動きづらいという理由だが普段とは違う彼女らの装いは、俺の脳に刺激を与える。そそくさと備品を指定された棚に置くとおもむろに携帯端末を取り出す。

 

「はい、チーズと」

 

「ちょっ!?」

 

 パシャリと一枚。

 被写体には驚いた様子の若葉と、にこやかに笑みを見せる亜耶。まるで幾千のオタクを相手にしたアイドルのような幼くも可憐で蠱惑的な美貌は、防人サークルを堕とした凄みがある。

 ほんの数秒も無かったがピースサインすらしているのは余裕の表れか。

 出会った頃から随分と成長した姿に俺が涙を見せると、

 

「亮之佑先輩、急に写真を撮ると困る人もいますから許可を取った方が良いですよ」

 

 めっ、とやんちゃな子供を嗜めるような口調で亜耶が告げる。

 この態度で芽吹たちが堕ちたのかと思うと、なんともいえない気分になる。

 

「ごめん……二人とも可愛くてつい……。記録に残したくてさ……駄目、だったかな?」

 

 悲し気な顔を作って亜耶に問い掛ける。

 

「えっ、い、いえ、そんな……全然、撮って大丈夫です」

 

「ありがとう、亜耶ちゃん」

 

 予想通りの反応を示してくれる亜耶に微笑みながら若葉に視線を向ける。

 半眼で俺を見ていた彼女は溜息を吐きながら、俺の携帯端末を向ける。サッとピースサインを作る俺を、僅か一秒遅れて写真を撮った若葉は形の良い眉を僅かに逆立たせた。

 

「流石の反応だな」

 

「今のは……というか俺の携帯返して」

 

「ひなたも最近は更に撮影の腕を上げてきているからな。ほら、亮之佑も私の……()()()写真とか撮るだろう? されるだけでは嫌だからな、私も撮ることにした」

 

 つまり若葉とひなたが二人でシている時は、あの携帯端末に卑猥な動画や写真が保存されている可能性があるのか。

 それを指摘すると、顔を赤くして「そんなことをするか!」と掴みかかってくる。

 しばらくの間、学校の床で柔道を楽しむ俺たちを亜耶がクスクスと笑う。

 

「お二人とも、とっても楽しそうですね!」

 

 屈託のない笑顔でそう告げる亜耶は思い出したように俺の手を取る。

 学校の床で半脱ぎ状態にさせられながらも若葉の耳を甘噛みと指でくすぐることで無力化していた俺は彼女を見上げる。

 

「……そろそろ、また教えて欲しいです。お師匠様」

 

「ふむ」

 

 どこか真剣そうな眼差しで俺を見下ろす亜耶。

 体操服を着用した可愛らしい姿だが、瞳に宿すのは確かな意思だ。誰かの役に立ちたい、その為に技術を習得したい……そんな思惑を感じさせる。

 この変わらぬ世界で快楽はまさに劇薬だ。

 あれだけ無垢で可憐で凛々しい少女たちもいつの間にか男を知って女となった。

 

 目の前の彼女もまた、女としての矜持を僅かに見え隠れさせる。

 それだけの月日が繰り返される中でも蓄積されたのだと感慨深さを覚えながら若葉の耳に舌を這わせる。ぶるりと震える若葉は赤らんだ顔で身を震わせた。

 フニャフニャになるようにひなたが仕込んだのだろう。耳を軽く弄るだけで彼女は快楽を感じる身体となってしまった。

 

「ぁ……も、もう良いだろ。はなせぇ……」

 

「あむ」

 

「くぅん! は……ゃ……だめ……」

 

 弱々しい姿を見せる若葉を強く抱き締める。

 柔らかく、温かく、良い匂いがする少女は俺の腕の中で耳の甘噛みを止めた後も、しばらくの間身体を弛緩させていた。

 若葉の髪に鼻先を突っ込み、匂いを嗅ぎながら俺は真剣な顔を亜耶に見せる。

 目の前の出来事に何一つ動じない亜耶は俺を見返す。

 

「亜耶」

 

「はい」

 

「もう教えることは何もない。弟子は師匠を超える物だ」

 

「そんな! ……私はまだ亮之佑先輩に教わりたいことがいっぱい……」

 

「大丈夫。これから先、その純真さを忘れずに防人サー以外の少女にも手を出していけば、いつか俺を超えるのは間違いない」

 

「防人サー……芽吹先輩たち以外の人のことも、もっといっぱい知れば良いのでしょうか?」

 

「そうだよ。例えば……亜耶ちゃんを良くない目で見ている杏とか……ひなたさんもいいね!」

 

「良くない?」

 

「ああ。実は亜耶ちゃんに拘束されて滅茶苦茶に辱めて欲しいと思っているんだ」

 

「そうなんですか!?」

 

 赤らんだ顔で「適当言うな」と呟く若葉の口元を手で塞ぐ。

 どこか不安そうな亜耶の頭を撫でて、優しく抱き締めると亜耶は僅かな身動ぎを見せ、おずおずと背中に腕を回す。

 白磁の肌に薄く朱色を差した彼女にそっと口づけをする。

 

「でも、どうしてもって言うなら特別な授業をしようか? ちょうど良い教材がいるからさ」

 

「……若葉先輩、ご教授ください」 

 

 亜耶の中でも研修を続ける中で若葉を教材と認識しているのか。

 躊躇いなく教えを乞う亜耶の態度に、息を呑む若葉の体温が上がるのを感じ取る。俺と亜耶の視線を受けた教材は目を逸らしながらも、誤魔化すような怒気を俺にぶつける。

 ドスッと拳が胸板を叩く。

 

「……新年の蕎麦の件、私はまだ許してないからな」

 

「それは……他の皆さんも怒っていましたね」

 

 呆れつつも苦笑を混ぜたような亜耶の言葉に俺は思う。

 異性と触れ合う中で面倒だなと感じる時がある。彼女たちに「たかが麺類」と言ってはいけない。

 複数人で襲い掛かっては俺と歌野を引き剥がし、俺にうどん派であると宣言させた面倒な少女たち、その一人に優しく微笑む。

 

「俺はうどん派です」

 

 と言った俺から目を逸らし、亜耶を見る。

 好奇心旺盛な巫女の純真さのある眼差し、たまに友奈が見せるような微笑ましい視線が眩しいとばかりに若葉は紫紺の瞳を瞬かせ、静かに細める。

 

「……少しだけだからな」

 

 どすっと俺の腹に拳を突きつける若葉は静かに合意を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 何度も日々を繰り返していると学校で行為に及んでない場所は無くなる。

 屋上、部室、保健室、体育倉庫、廊下、ロッカー、準備室、プールや更衣室、普段使っている教室など実に様々だ。

 夢でも現実でも、痺れるリスクに脳を燃やし、見つかるかもしれないという背徳感が背筋に電流を奔らせる。……いつの間にか破滅願望でも抱いてしまったのか。

 

「昔はもっとリスクとか考えていたのにな。これが老いか」

 

「老い、ですか?」

 

「そうだよ亜耶ちゃん。解消するにはエッチなことをするのが一番なんだ」

 

「そうなんですね、勉強になります」

 

 危険を孕んだ状況で美少女を犯して自分色に汚す。

 それは果てなき夜でこれ以上ない快楽だ。

 酒、煙草、セックス。

 学生ゆえに二つは禁止だが、年若い少女たちの中に放り込まれた黒一点と思い出と感情を共にして何も起きない筈が無い。無垢な少女と言っても淫欲に乱れることも当然ある。

 

 目の前の若葉ですらそうだ。

 柔らかく瑞々しい唇を奪うと、どこか慣れた様子で主導権を奪い返そうとする。

 

「ふっ……ん……、はむ……ンんっ」

 

 空き教室。

 この時間は誰も来ない。目に見える世界には俺と若葉と、亜耶だけだ。

 目を伏せながらも俺と唇を重ねる若葉、啄むように上唇と下唇で互いの唇を甘噛みする度に、意識を目の前の存在にのみ向けていくのが分かった。

 

「……んん……っ、っ……」

 

 俺の両頬に手のひらを宛がい、若葉から唇を重ねる。

 映画の最後に見るような情熱的でロマンティックな口づけ。長い睫毛を震わせ、ちゅ、ちゅっと唇を重ね、離して、再び重ねる。

 

 ジャージ越しに触れていると違和感に気づく。

 いや、もともと薄っすらと気づいていたが指摘しなかったことなのだが。キスをしながら若葉のジャージ、そのファスナーを下げていく。

 指定の白いシャツを彼女は着用していなかった。汗ばんだ白い肌と水色の下着、むわりと漂う雌の香りが鼻孔をくすぐる。どこか恥ずかしそうに耳を赤らめる若葉は誤魔化すように呟く。

 

「暑かったから着ていない……それだけだ」

 

「ふぅん?」

 

「ん……」

 

 温もりのある肌、無駄な脂肪の無い腹部を撫で回す。ピクッと身動ぎする若葉は薄く目を開いて、俺の胸板に手を置くがそれ以上の抵抗はない。

 は、あ、と荒い吐息はこれから起こる事への理解と期待と合意を含んだ物だ。さらりとした長い金髪を撫でると、若葉はからかうように俺を見つめる。

 

「さっきから人の髪を触って楽しいか?」

 

「楽しいよ。若葉の長い髪、俺は好きだし。ずっと触っていたいと思う」

 

「……よくスラスラと言えるな」

 

 絹のような髪を指で梳き、形の良い耳をくすぐる。

 呆れた口調で、しかし満更でもないような顔で俺の手に髪を、頬を、耳を、身体を委ねる若葉。既に熱を帯びるしっとりとした柔肌を撫でながら彼女の下着を見る。

 水色の、可愛らしいレースの付いたブラは、彼女にしては男を意識したような下着だ。

 

「悪いか?」

 

「可愛い」

 

「……ひなたと選んだんだ」

 

「俺の為にか」

 

「自惚れるなよ。……前のは窮屈になったんだ。お陰で刀を握る時に邪魔で仕方がない」

 

「俺の刀を握っていれば良いだろ」

 

 舌打ちされた。

 その反抗的な態度を黙らせる為にブラを上に捲り上げる。ぷるん、と揺れる白い肉果と共に桜色の乳首を目の当たりにして、思わずかぶりつく。

 

「きゃあ!」

 

 頭を叩かれながらも、ほんのりと塩味のする乳房を口にする。

 同時にもう片方の生乳を揉んで手を温める。

 手のひらに収まるが最近成長してきたと噂の若葉の乳房は柔らかい。パンケーキのような柔らかさと質感と共に俺の手に合わせて形を変えるいやらしさもある。

 飴玉のように乳首を舌で弄り続けると、小さく彼女は震えて軽い絶頂に達したのが分かった。

 

「は……ぁ」

 

「イッた?」

 

「…………いや? 全然っ、まったく……というか、そういうことを聞くな」

 

 爪で乳頭をカリカリと掻くと少女の喘ぎが漏れる。

 彼女に抱き、ツンと尖った乳首を指で弄り続ける俺の下腹部は、先ほどから甘い快感と刺激を受けて涎を垂らしていた。俺の下腹部に顔を埋めている亜耶の髪が太腿を撫でる。

 そっと口元を手で拭った亜耶は自らの頬に反り立つ逸物を擦り付ける。愛おしいという表現のつもりか、俺が教えた通りに柔らかな頬に先走りを染みこませる彼女は上目遣いを見せた。

 

「ん……ぷっ……、亮之佑先輩の……恵方巻みたいに太いです……」

 

「……そんなに大した物ではないだろ」

 

「その大した物ではない剣でヒィヒィ言っているのは誰かな?」

 

「わ、私ではないぞ。……剣とか言うな!」

 

 引き続き口腔奉仕するのは亜耶だ。

 小さな口で一生懸命に怒張を頬張る姿は頭を撫でたくなる健気さだ。ざらりとした小さな舌が雁に絡みつき、アイスを舐めるように唇と舌で亀頭に吸い付く。

 上目遣いを見せて、ちゅぱちゅぱと肉竿をしゃぶる姿は健気で愛らしい。少女の口内で硬くなる怒張を僅かに前後に動かしながら、俺は若葉の乳房を揉みしだく。

 

「……っ、あっ……」

 

 抗議の声は、俺の手が彼女のハーフパンツの中に入ったからだ。

 ハーフパンツの中、ショーツらしき布地は僅かに湿り気を帯びている。秘裂部分を爪でカリカリと上下に擦ると、その範囲が広がり若葉の息遣いが荒くなる。

 

 亜耶のさらさらとした髪を撫でながら、彼女の口内で贅沢に竿を唾液でコーティングする。合間に若葉からキスをさせ、濃厚な口腔行為をしながら乳房を揉み、乳首を指で好きに弄る。

 赤らんだ顔、俺を見る瞳は熱に浮かされた病人のように揺れる。

 

「亜耶」

 

「ふぁい?」

 

 肉棒を頬張る亜耶に、俺は試練を課す。

 嫌がる若葉の背後からキスと抱擁、胸を揉んで拘束する間に、亜耶が彼女のハーフパンツを膝下までずり下ろし、水色のショーツをゆっくりと脱がす。「わ」と小さく声を上げた亜耶と俺は彼女の下着のクロッチ部分と恥部を繋ぐ透明な糸を目にした。

 それを若葉に伝えると、ぎゅっと目を閉じて恥辱に震えていた。

 

「……亜耶?」

 

 そのまま彼女の秘所をジッと見る亜耶に若葉が声を掛ける。

 僅かに強張った若葉の秘所に、亜耶が無言で指を挿入する。

 

「……んッ!?」

 

「あっ、い、痛かったですか?」

 

「だ、大丈夫だ」

 

 亜耶が微笑を浮かべて若葉の恥部を指で弄る。

 俺はそれを見下ろしながら、若葉の反応を楽しみつつ、乳房を揉み、唇を奪う。荒い呼気の若葉は年下の後輩に乙女の花園を見られ、更には指で弄られる状況を受け入れているようにみえる。

 諦観と快楽に流されたのか自ら舌を差し出す始末だ。

 

「ここですか?」

 

 その間も、亜耶の学習は進む。

 くちゅ、と水音を響かせながら若葉の膣内を指で探索する。そっと弱点を逃がし隠そうと腰を引かせる若葉を押し留めながら、硬い乳首を指と指で押し潰す。

 

「……ぁ」

 

「ここですか? ……ん? 芽吹先輩タイプですね」

 

 と、亜耶は何か呟くと膣を弄る指を引き抜く。

 先ほどまでは人差し指だったが、今度は中指と薬指だ。

 

「その、若葉先輩はもう結構濡れているので二本でも大丈夫ですよね?」

 

「よ、余裕だ」

 

「はい! では、失礼します」

 

 さり気なく濡れていると言われて顔を赤らめる若葉だが、亜耶は既に若葉の顔を見ていない。少女の茂みに隠れた陰核を指で弄りつつ、指を挿入する。

 しばらくして、若葉の息遣いが明確に変わった。

 

「…………ふっ、く」

 

「……えい!」

 

「んぁ! ぁっ!!」

 

 膝が震えた。はッ、は、と犬のような吐息。

 どこか蠱惑的な笑みを浮かべた亜耶の手の動きで、若葉の腰が跳ねた。

 

「ぅあ!? あっ、ぁんっ……~~~~ッッ!!」

 

 しょわっと飛沫が亜耶の顔に飛んだ。

 腰を逃がしても追い続ける亜耶の指に、腰を揺する若葉はあられもない声を上げる。年下の前からみっともなく逃れようとする若葉を羽交い絞めして、唇を奪う。

 強引に作った静寂は、亜耶が若葉の秘所に顔を近づけて破られた。

 

「……んむっ、ん~~ッ!!」

 

 踵が浮き上がり、若葉の手が俺の腕を握り締める。

 腰を引かせようとするのを阻止して、寧ろ亜耶の眼前に恥部が来るように腰を押し付ける。チラリと俺を見た亜耶は素股するように媚肉を擦り現れた俺の怒張の先端に感謝のキスをして、再び若葉を味わうことに全霊を注ぐ。

 芽吹や夕海子たち防人サークルを相手に培った愛撫力は若葉にも通用した。

 恥毛や愛液で汚れた亜耶は構わずに指や口で悦ばせる。

 

「ふっ、んっ、ッッ……!! ──!!」

 

 その奉仕の念は伝わったのか、鼻息荒い若葉が俺の腕に爪を立てる。

 ちゅぷ、ちゅぱ、と小動物が水を飲むような音と共に、かくかくっと若葉の腰が揺れた。ぎゅっと握っていた手から力が抜け、覗き込んだ瞳には理性の光が消えていた。

 

「……はー……っ……まて、あや……」

 

「ここ、硬くなったので一緒に弄っちゃいますね」

 

 陰核を舐め、吸い、ねぶる。

 媚肉は弱点を指で弄る。同時の奉仕は若葉の腰を大きく跳ねさせた。

 

「ひ、ぁぁ~~~~ッッ!!! ぁああ……ッ!!」

 

 若葉は立ったままの絶頂の余韻に浸る。

 恍惚な表情は法悦の空に昇ったままで、口端からは涎が垂れている。すっかりと柔らかく俺の手に吸い付く乳房を揉みながら、立ち上がった亜耶と視線を合わせる。

 濡れたハンカチを渡し、顔を拭いた亜耶は料理人の顔をしていた。

 与えられた食材に調理を施し、最高の料理となるような丹念な愛撫は何も言うことはない。ふやけたような顔とホカホカになった身体をした若葉は食べ頃だった。

 

 小さく舌を出した亜耶は小悪魔のような笑みを見せた。

 静かに交わした唇は若葉の蜜液と亜耶の唾液が混ざった味だった。

 

「カーテン、開けて」

 

「はい」

 

 従順に俺の指示に従う亜耶がカーテンを開く。

 一人分の隙間、窓から覗く景色は学校の校庭が覗ける。

 

 若葉はジャージを着ているが、ブラは上にずらし、ショーツもハーフパンツも下げた姿だ。まるで無理やり犯されたような恰好をした彼女の背中を押し、上半身を冷えたガラス窓にぺたりと密着させた。

 

「なっ! んっ……! 待て、これは流石に他の生徒や先生が……」

 

「騒いだら見つかるかもね」

 

 愛撫を受けた乳首が冷えたガラスに触れた反応。

 びくりと震える若葉の尻をそっと撫でると、挿入しやすいように腰を浮かせる。どの角度が男が挿入しやすいのか、実際に何度も背後から貫かれたからできる体勢で若葉は脚を開く。

 

 視線を下げ、濡れた恥部を見る。

 亜耶の愛撫は気持ち良かったのか内腿を伝う蜜液が床に垂れ落ちる。

 

 尻を突き出した体勢の若葉の陰唇に、濡れた怒張を添える。

 ゆっくりと雄竿を呑み込んでいく度に甘い痺れが俺と若葉を襲う。

 

「ぁっ……んんっ……」

 

 若葉はガラス窓に頬を押し付け、呼気でガラス窓を曇らせる。

 最奥部を貫くのは容易だった。

 ぱん、と鼠径部が臀部を叩き、熟れた媚肉が怒張を締め付ける。

 

「ッ!」

 

 いつもよりも締め付けが強い。

 それを指摘しながら、亜耶に携帯端末を渡すと無言で撮影を始める。

 

「うる、さ……ぁっ」

 

 ゆっくりと怒張を引き抜いていく。

 雁が膣襞を擦り、若葉がだらしなく喘ぐ中、再び根本まで挿入する。

 

「ぁ、ぁぁ……」

 

 恍惚の喘ぎ。

 俺は若葉の腰を掴み、ピストンを始める。

 徐々に速度を上げていくと、窓に押し付けた金髪が乱れ、ジャージの背中が揺れる。

 

「ンッ……ぁっ! ぁっあぁ」

 

 抑えていた嬌声と、肉が肉を叩く音が空き教室に響く。

 ガクガクと膝が震え崩れ落ちそうになる若葉の恥部から怒張が抜ける。ぷしっと潮が噴き、床を濡らす。窓から若葉が離れ、乳房を濡らした唾液や汗がガラスを汚しているのが見えた。

 

 再び奥まで貫く。

 今度は彼女の両手を引っ張りピストンを続けると、背中をのけ反らせる。

 窓から離れ、そして押し付ける度に形を変える乳房が窓ガラスに広がった。汚れを彼女の生乳で拭うようにピストンを続けると若葉がチラリと俺を見る。

 涙に濡れた瞳に亜耶が撮影していることに気づくと膣を引き締める。亜耶に伸ばそうとした腕は俺に掴まれ、やがて諦めたように俺にされるがまま犯された。

 

「まっ、かっ、ぁ────」

 

 むにゅっと乳房が窓ガラスを押し潰し、子宮口まで亀頭を押し付ける。淫熱に浮かされた表情がガラスに映り、吐息の度に曇っては晴れるを繰り返す。

 若葉の腹を掴み、ふらりと窓から離れた瞬間、若葉の腰が大きく跳ねた。

 

 ぎゅううっと膣が怒張を締め付け、俺の意識が弾ける。

 白濁が彼女の最奥に広がり、媚肉が収縮する。

 

「~~ッ!! っっっぁ!! あぁ~~~ッッ!!」

 

 結合部を擦りつけ、若葉に密着する。

 すっかり曇ったガラスから離し、口づけを交わす。

 

 彼女から積極的に求めるキスは濃厚な物だった。

 普段の理性を取っ払った本能と淫欲のみの浅ましい舌の絡ませ合い。

 

 俺はそのまま彼女を空き教室の机に寝転がせる。

 仰向けで倒れこんだ若葉はあられもない姿を晒し、僅かに開いた脚に愛液と白濁の混ざり物を伝わせる。確かに自分の物になった証明と荒い吐息で俺を見上げる情欲の炎を宿した瞳に、無言の誘いを受けた。

 そこに気を利かせた亜耶が若葉に倒れ込む。

 ジャージのファスナーを下ろし、薄い乳房を見せつつ、ロングパンツとショーツを脱いで無毛の恥部を見せる亜耶。覆い被さる亜耶に戸惑ったような若葉は口を開く。

 

「あ、亜耶?」

 

「こうすると悦んでくれますよ?」

 

「……」

 

 少女たちの乳房が潰れ合い、若葉の腕がゆっくりと亜耶の背中に回る。

 腹と腹が密着し、重なり合った陰唇がひくつき、白濁が僅かに滴る。どちらかに挿入しても、サンドイッチをしても良い。自らが料理に加わることで最高のディナーを提供する巫女。

 

「────」

 

 亜耶と若葉。

 二人の視線が俺に向けられる。

 自分を選べ、とはどちらも言わない。

 

 ただ、俺に全てを預けた。

 

 

 

 

 

 気づいたら俺と亜耶は若葉を二人で貪っていた。

 いつの間にか調達した疑似肉棒を亜耶は装着して若葉と繋がっていた。俺の肉棒は若葉の口内に収まり子種を流し込んでいた。ぐったりとした様子の若葉だが掴んだ乳房からは鼓動が伝わり、薄目で俺を睨みつつも竿を舐める姿に、未だに体力が残っていることに気づく。

 

「──あ、は」

 

 汗だくの亜耶は若葉の腰を掴み、ブルブルと震えていた。

 まるで初めて吐精したような絶頂に俺は声を掛けた。

 

「……卒業おめでとう」

 

「ありがとう、ございます」

 

「…………次は、私の番だからな……亜耶」

 

「は、はい。よろしくお願いします」

 

「若葉、マジで体力おばけじゃん」

 

「鍛え方が違うからな」

 

 そんなことを言っていると疲れたのか、すぅっと意識が遠のいていく。

 目の前の裸体に倒れ込むと、亜耶や若葉の声を聞きながら目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ……何やってんのよ」

 

 声が聞こえて目を開ける。

 まるで幽霊でも見たような、今にも吐きそうな顔をした少女が俺を見下ろしていた。制服姿でしゃがみこみ、スカートから黄色のショーツが見えるのも構わずに俺を抱き起すのは風だ。

 

「どうやら寝ていたらしい」

 

「乃木じゃないんだし止めなさいよ……風邪ひいたら悲しむわよ」

 

 周囲を見渡すと既に夜となった学校だ。

 電気は点灯しているが、消せば暗くなるのは間違いない。

 

「……」

 

 夢なのか。

 手足に痺れはなく、頭も動く。

 どこか心配そうな顔を見せる風に遠慮なく抱き着きながら俺は頭を回す。

 

「風先輩」

 

「なによ? ほら、帰るわよ」

 

「その前に夜の学校、探索しましょうか。全裸で」

 

「絶っっっ対、嫌!」

 

 



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【番外】慰安旅行

感想、評価、誤字報告ありがとうございます。


 そして、慰安旅行当日。

 勇者部所属の少女たちは、豪華そうなホテルを見上げていた。

 

「でっか……」

 

「ほ、本当にここであってんの?」

 

 震え声の夏凜、そのツインテールの毛先に触る。サラリとした髪の毛を手にするとぺしっと叩かれる。怒気はなく呆れたような顔で俺を見る夏凜に声を掛けるのは園子だ。

 さりげなく俺の脇腹をきゅっとつねると、

 

「うん、合ってるよ。今年は新しくオープンしたホテルにしました~、和室もあるんよ」

 

「流石ね、そのっち。分かってるわね」

 

「お世話になっている旅館は今、改装期間中だったからね。仕方ないって奴なんよ」

 

 ふわふわとした態度で、俺の背中に抱き着く園子。

 首に腕を回し、柔らかな私服越しに豊かな双丘を押し付けて、耳元に吐息する彼女は確信犯か。楽しそうな声音を聞かせる園子は俺の肩に顎を乗せると、周囲の少女たちに目を向ける。

 

「そもそもホテル自体貸し切りにしたから大丈夫だぜ、にぼっしー」

 

「……大丈夫って?」

 

「ここは私の家が出資していて、大赦スタッフも働いているから、何があっても大丈夫ってこと。みんなで鬼ごっことかムフフなこととか、どこで何をしても叱られないよ~」

 

「それって園ちゃん凄いってこと!? 園ちゃんすごーい! これが策略なんよ~」

 

「それほどでも~……それって私の真似? そっくりだぜ~」

 

 純粋に褒め称える友奈に笑みを見せる園子がハイタッチをする。

 俺を挟むように抱き合う二人、正面の友奈は全身で抱擁して柔らかさを伝え、園子は背中から抱き着いて乳房の形が分かるほどに密着する。……どうやらブラジャーを着用していないのか、形を変える乳を押し付け、甘い体臭を俺に擦りつける園子は準備万端の様子だ。

 

「……唖然失笑。これが乃木家の力……流石は若葉さんの子孫だね」

 

 豪華そうなホテルを見上げるのは小柄な少女だ。

 少し赤みがかったブロンドヘア、樹のような小動物感がある人形のような小顔。どこか儚げで神秘的な雰囲気を醸し出す美少女も名家の力には動揺を隠せない。

 少女は、芙蓉・リリエンソール・友奈を名乗る勇者部に加入した新人だ。

 

「それより、あんな風に公衆の面前でイチャついているカップルたちをどう思う?」

 

「豪放磊落。私たちは時代も次元も超越した先にいるんだ。郷に入っては郷に従えって奴だよ。大体彼氏彼女の関係に口を出すのは野暮ってものさ。柚木君もまだまだだね……。それに私たちの時代から何百年も経った若葉さんの子孫だよ? 一夫多妻制に作り変えているかも」

 

「……そういう物かな」

 

 もう一人の、どこか気だるげな新人は柚木友奈。

 黒髪、長身でありスタイルも良い。

 二人合わせてみると、身長差もあり凸凹コンビのような関係に見える彼女たちは、最近この世界に召喚されただけあってフレッシュさがあった。

 ……昔の自分たちもあんな感じだったのかと思うと、懐かしさを感じる。

 

「そういえばあの頃の俺はこうして二人に抱かれるとドキドキしてたっけ。今では抱いて貰ってもそれが当たり前だなんて思ってしまう。二人が傍にいるのが当然だって考えてしまうんだ」

 

「あわわ……亮ちゃんが暗くなっちゃう……」

 

「ハグパワーが足りない! ヘイ、わっしー! ハグハグかっきー!」

 

「もう……仕方ないわね。α波を込めた特別な抱擁をしてあげる。……しっかりしてあなた」

 

 特別なハグを受けた俺は息を吹き返す。

 ついでに東郷に腰をトントンと押されて勝手に起動した肉棒が友奈の下腹部を押す。ピクッと身じろいだ友奈のスカートの中に手を入れ、柔らかな尻を周囲に見えないように揉む。

 や、ぁ、と甘い吐息を漏らす友奈は上目遣いを見せる。

 周囲を見渡して、隙を突くように触れる程度のキスを俺にする彼女は妖艶な笑みを浮かべた。

 

「……そういうのはあとでしよう? 園ちゃんや東郷さんともね」

 

「そうだよ~……あとでかっきー好みのエッチなことしてあげるから」

 

「他の子では満足できないように再調教するわね」

 

 肉欲を理性で封じた俺は、しかし身体がおぼつかない。

 新人のまばゆいオーラに目が眩んでしまったのか、東郷の肩と友奈の肩を借りたフラフラの俺は手の感覚すら曖昧だ。近くにある友奈と東郷の乳房をそれぞれ揉んでいると、声を掛けられる。

 

「遊んでいる場合か。というか、いつまで外にいるつもりだ」

 

 気がついたら勇者部の部員たちは既にホテルの中に入って行った。

 三十人はいる女子たち。完全に団体客扱いだ。流石に全員が少女のままだと何かしら問題があったかもしれないが、神樹が見ていたのかタイミングが良かった。

 

「若葉」

 

「わかちゃんが大っきい~」

 

「ゆ、柚木君。若葉さんだ……」

 

「変なことをするなよリリ。フリとかじゃないからな」

 

 和装の妙齢な女だ。確かな膨らみは以前よりも明確で、刀こそ持っていないもののどこか厳格な雰囲気を見せている若葉だ。

 二十代程度だろうか、俺よりも背丈がやや高い彼女に園子が飛びつく。

 ビクともしない彼女に東郷と友奈の肩と乳を借りた俺は、若葉の身体に顔面から突撃する。

 

 むにゅっとした柔らかな感触は明らかに大きくもふかふかとしている。

 俺の顔を優しく受け止め、しかし微塵も揺るがない体幹はどれだけ鍛えたのか。

 

「……ふ、久しぶりに背を完全に抜いたな。よしよし」

 

 どこか余裕すら感じる表情で俺の頭を撫でる若葉。

 背後から近づいてくるのは、同じく二十代くらいには成長したひなただ。あらあらと頬に手を置く彼女も年上のオーラを漂わせて、俺に流し目を見せる。

 

「行きませんか?」

 

「あ、はい」

 

 若葉やひなただけではない、何人かの少女が大人となっていた。

 召喚されて日が浅い勇者たちが目を白黒させるのは当然だろうが、古参を気取っている俺にとってはなんのその。こっちは何年も前から男女の付き合いなのだ。

 

「ホテルにこのメンバーで行くって……凄い卑猥に感じる。パーティーが別の意味に──」

 

 ドゴッ!! と若葉からの腹パンを喰らった。

 続く言葉はなく、オゲェと再起不能にさせられたところを、若葉に米俵のように担ぎ上げられた。クラクラとする視界の中で、垂れた涎をハンカチで拭きとるひなたに卑しく微笑まれた。

 

「よし、行くぞ」

 

 山賊お持ち帰りコース確定となった俺を若葉は容赦なく連れ回し、誰よりも早く駆け抜けて、他の少女たちよりも先に目的地に辿り着いた。

 

 

 

 

 

「えー……それでは勇者部も時代を超えた勇者や巫女たちとの交流を始めて10年を超えました。バーテックスや造反神との戦い、その過程で色んな意味で仲を深めてきましたが」

 

「お姉ちゃん? スラスラ読めているけど、もう酔ってる?」

 

「素面だけど!? ええい、もう良い! とにかくアレよ! 勇者部に繁栄あれ! 飲んで食って騒いで、盛大に楽しもうぞ!!」

 

 パーティーの開催宣言、勇者部お疲れ様会は風の開催宣言で始まった。

 普段よりも歳を経た風は何故か号泣、今年こそはキチンと最後までやらせてあげようと用意した原稿を引き千切り、泣いて喚いて妹をドン引きさせる所業を披露した。

 そんな奇行は今更……新人以外は気にしない。

 

「うっひょー! これ、本当に全部食べちゃって良いんスか?」

 

「タマはもう食べちゃっているゾ!」

 

 花より団子。

 事前にドレスで着飾った少女たちにとって、なんか長ったらしいだけの話など耳にも残らない。聴覚よりも視覚の暴力である料理の数々に関心が奪われるのは当然のことだ。

 テーブルには当たり前のように果汁酒がジュースですけど? といった具合で堂々と置かれていた。新人たちはともかく、ここで長く戦ってきた戦友たちは皆、二十代も半分を過ぎたからだろう。

 皆、精神年齢的には大人なのだ。合法的な大人なのだ。

 

「はぁー!? いくつになってもアタシは花の女子中学生ですけどー!?」

 

「お姉ちゃん、ステイ! ステイ!! 夏凜さーん、手伝ってー!!」

 

「しょうがないわね。ほら、最年長起きなさい。パンツ見えてるわよ」

 

「最年長とか言うなァ!! それにアンタの地味パンよりは女子力高いわよ!」

 

「ハア!!?? ふざけんじゃないわよ! 今日のはちゃんとした──」

 

 かく言う俺も風の話よりも料理の方に夢中だった。

 ひなたや東郷、その他美少女たちに着飾られ、髪型も変えられ、満足気な表情でパーティー会場に送り出された俺をチラチラ見る新入り少女たちに微笑を見せながら食事を楽しむ。

 普段の努力の甲斐があったか、照れたように目を背ける少女たち。

 

 さて。

 テーブルに載るのは和食、洋食、中華、その他色々。

 魂に宿る子供心が全てのメニューを制覇しろと叫んでいるのが分かる。

 

「バイキング形式か」

 

「亮くん、お野菜も食べないと駄目よ。はい」

 

「ママー! 胃袋が緑色になって食べられなくなっちゃうよ!」

 

「日本男児の胃袋に限界なんてありません」

 

 正妻か保護者を気取る(本人に言えばキレられるので言わない)東郷から皿にどっさりと載せられる野菜たち。ささっと食べては骨付き鳥を始めとした肉、揚げ物、その他茶色のゴテゴテした物を胃袋に詰め込んでいく。

 ……合間合間にわんこそばの要領で野菜を与えられるときつくなってくる。

 

「と、ところで友奈が東郷さんに何か食べて欲しいって言ってたよ」

 

「ええ!? 友奈ちゃんが!? こうしちゃいられないわ! 須美ちゃん、後をお願い」

 

「任せて下さい。東郷さんの旦那様の体重は私が死守します」

 

「ふふ……お願いね」

 

「人をデブのように……。おい須美、なんだその胸元は、俺よりも大きくないかな? 管理しないとな」

 

 ドレスの隙間から乳房を揉みしだく。

 しっとりとした肉は柔らかく、コリコリと乳首を爪で擦るとビクッと須美が震える。かああっと顔を赤くした須美は乳首を硬くするも俺を睨みつけて、止めるように手を叩く。

 

「きゃあ! 助平行為は禁止ですっ!」

 

「……須美の胸を触らせてくれたら、もっと野菜を食べられるんよ」

 

「そ、そんなわけ」

 

「お願い、須美。少しだけ食べさせて。少しだけ、ね?」

 

 くいっと顎を持ち上げて、耳元で囁く。

 少女の身体が熱を持ち、見つめた瞳には様々な感情が過る。小さく唇を開閉させた須美はプイッと顔を背けて目だけを俺に向ける。

 いかにも怒ってます! という顔を作った須美は、

 

「……他の人から隠してくれるなら少しだけ。それと! 野菜も! ちゃんと食べて下さい!!」

 

「はーい」

 

「まったく世話の──ッ……!! ぁっ……」

 

 反撃するように須美からも身体を大事にしろと野菜を盛られる。人の目を避けて、彼女の豊満な肉果を揉みしだきながら野菜を食べさせて貰う。

 身を震わせながら、逃げることなく野菜を盛り続ける彼女に俺は食事の管理を、俺は須美の絶頂の管理をすることになった。

 

「約束通り、誰にも気づかずに気持ち良くしたよ。須美」

 

「ちにゃぁ……」

 

「ああ、でも……杏はこっち見てるな。……介抱して貰うように言っておくね」

 

 やがて小さな身体に余るほどの絶頂を味わせて「ちにゃぁ」以外の言葉を須美が言えないようになってから、俺は杏を手招きする。

 可憐に着飾った杏の髪を一房手に取って、柔らかな頬を撫でる。手に付着していた須美の愛液を唇に塗ると、それが何かを即座に理解した彼女がぶるりと震えた。

 

「杏。須美をお願いできる?」

 

「ひゃい」

 

「あんまり変なことしたらお仕置きね。こんなところで辱められたくはないよね?」

 

「……っ」

 

「ちゃんとやったらご褒美をあげるから」

 

 想像力豊かな杏は面白いほど顔を赤らめて、下腹部を手で押さえた。

 俺は須美を置いて、野菜を詰め込んだ胃袋の残った部分で料理を楽しんだ。

 

 

 

 

 

「はい、とーごーさん。口を開けて?」

 

「ぁ、……あーん」

 

「アメリカンドッグ、美味しい?」

 

「……うん」

 

「良かったー! じゃあ、こっちも食べて? あれれ? 東郷さん、これってなんて言うのかな? 忘れちゃった」

 

「……びっ、ビッグダブル……チーズバーガー」

 

「こっちは?」

 

「……ポテト」

 

「そうだった! ごめんねー、うっかりだ! はい、あーん」

 

「……あーん」

 

 ……あとで聞いたが、東郷は友奈からアメリカンドッグやハンバーガー、フライドポテトやチキンなどを沢山食べさせて貰ったと言う。

 涙を流して喜んでたから一杯食べて貰ったと友奈はニコニコと笑っていた。

 

 

 

 

 

 やがて復活した須美を少女たちの元に送り出し、杏に()()をして、孤独のグルメを楽しむ。

 

「んほ~、七味がたまんねぇや! 辛すぎる!」

 

 胃もたれしない。無限に食べられる。若い身体はやはり最高だ。

 ガブガブむしゃむしゃと豪快に、しかし不快にならない程度に上品に肉を食べる。目端で何故か対抗意識を燃やした風が夏凜を煽り、その夏凜が芽吹を煽り、芽吹が……というように大食い大会が勝手に始まっていた。

 ボテ腹になろうとも止めない彼女たちを見て、新人たちはドン引きしていた。

 

「まさに暴飲暴食……勇者の食欲は無限なのか」

 

「リリ、アレは近づいたらいけない部類だ」

 

「そうだね。……柚木君。アレ……」

 

「うわっ、赤っ……味覚大丈夫か?」

 

「前からだよ、アレは。出会った時から酷かったよ」

 

 芙蓉と柚木に声を掛ける少女がいた。

 

「亮之佑くんは辛いのが好きなんだってさ。この前、私が鶏むね肉で美味しく調理してあげたら勝手に唐辛子を掛けたんだよ。味にメリハリがつくとかなんとか言ってさ……美味しかったけどね」

 

 赤と黒の大人びたドレスを着た褐色の少女。

 見慣れた友奈顔にあるまじき巨乳は隣で焼きそばを啜っていた球子を咽させる程に大きく立派だ。「でっか……エッチ過ぎでしょ……」と絶句する銀の隣では、二人の態度に呆れる杏(肌が妙に艶々している)が世話焼き女房の如く、野菜を彼女たちの皿に載せていく。

 歩行の度にぷるんぷるんと震える乳房。

 背中と胸元の空いた、大胆なドレスを着こなす赤嶺友奈。

 

「────」

 

 チラリと流し目で俺を見る赤嶺。

 まるで誘っているような視線を向けてくるが、今の俺は食事に夢中。性欲を押さえつけるのはいつだって食欲と理性と決まっているのだ。

 そんな俺から視線を外し、芙蓉と柚木に赤嶺は先輩風を吹かせる。

 

 あの二人の前で赤嶺を辱めたいな~、と下種な思考が浮かぶ。

 そんなことを口にすれば鬼畜とかケダモノとか言われてしまうので、グッと飲み込む。

 

「ところで遠慮しないで食べてる二人とも? 私も今日はチートデーなんだ。食べるぞー!」

 

「あ、うん。……ただ、何と言うか、他の人たちに対して私たちは召喚されたばかりで……少し気後れしてしまって」

 

「大丈夫ですよ〜柚木先輩。パーティーが終わる頃にはみんなも〜っと仲良くなれるんよ」

 

「それより友奈。チートデーとはなんでも好きなだけという訳ではないのよ?」

 

「え〜、そんなこと言わないでよレンちー」

 

 隣にいる園子(小)のふわふわ笑みと、その後にチートデーであろうとも食事の監視をする蓮華(妙に生地が薄いスケスケ紫ドレス姿)と赤嶺のやり取りが新人たちの緊張を解きほぐしていった。

 

「……二人が気になるの?」

 

「ぐんちゃん」

 

「……、……今、凄く当然の顔で呼んだけど、ぐんちゃんって呼ばないで」

 

 ──などと言いながら、きっとこのやり取りを楽しんでいるであろう千景。

 彼女も親友である高嶋と同じピンクのドレス……ではなく黒と赤を基調としたドレスだ。

 身体のラインが明確に浮き出る、彼女の勇者服に似た大人びたドレス姿を見ていると、

 

「その……変かしら」

 

 チラリと俺を見る千景。

 

「凄く似合うな」

 

「そう……ありがとう」

 

「君と熱い夜を過ごしたい」

 

「……他の子にも言っているんでしょう?」

 

「千景が最初だ」

 

「──ふーん」

 

 ツン、とした顔で上目遣いを千景は見せる。

 俺の頭から爪先まで遠慮なくジロジロと見ると妖艶な笑みを浮かべる。

 

「あなたこそ、スーツ似合うじゃない。悪い男って感じね」

 

「ありがとう。千景にそう言って貰えると着飾った甲斐があったよ」

 

 やや頬を赤らめた千景は、一歩近づいてくる。

 

「どういたしまして……。その、……このドレス、なんだけど……」

 

 俺の手が彼女の肩に置かれても逃げる真似はせず、千景の甘い香りが漂う距離に近づく。

 抱き着くような距離感で千景はどこか熱を帯びたような表情を見せる。

 

「……あなたに見て欲しくて選んだの」

 

 僅かに震えた唇からは、確かな意思が伝わってきた。

 

「……似合うよ」

 

 腰を撫でて、そっと臀部に手を這う。

 独特な弾力がある柔肌は、触れる度に小さな吐息を千景は漏らす。

 他の同級生と比べて控えめな双丘はドレス越しに揉むと柔らかさが伝わる。小さく喉を鳴らした彼女は、俺の胸板をそっと押して距離を取ると赤らんだ顔を逸らす。

 

「……分かったから」

 

「何が?」

 

「シたいんでしょう? ……いいわよ。夜は長いのだし。……しばらく大変でしょうけど期待してるわ、加賀くん」

 

 大人びたドレスの効果か、年上のオーラを見せた千景はそっと他の少女たちの話に加わる。以前は一人で部屋の隅でゲームをしていた少女が変わった物だ。

 後方保護者目線で頷いていると、声を掛けられる。

 

「りょーちゃん、何してるのー?」

 

 どこか甘ったるく舌ったらずな声音。

 振り返ると、ワインレッドで大人びたドレスを着た少女が近づいてくる。漂う雰囲気は大人に近くも、挙動は元気そのもので結城友奈その人であるのが分かった。

 

「やあ、驚いた。元からだけど、今日は凄く美人だ。大人の女って感じがする」

 

 褒めると、目をぱちくりと瞬かせてはにかんで笑う友奈。

 手を後ろに回して、上目遣いで俺を見つめる彼女は元気丸出しとばかりに目を輝かせる。

 

「えへへ……ありがとう。亮ちゃんは……ホストさん? みたいでカッコいいね!」

 

「そう? みんなが好き勝手に弄ったからだね。気に入った?」

 

「うん!」

 

 純粋な眼差しが眩しい。

 露出は少なくとも彼女を普段よりも大人に近づける衣装、とても似合うドレスを着用した友奈の手を引く。

 軽快ながらオシャレな音楽、サプライズなのか樹の歌に場が盛り上がり始める。

 

「……私、踊ったことないよ?」

 

「盆踊りはできる?」

 

「ほえ?」

 

 質問に質問で返した俺に友奈は目を丸くする。

 うーん、と少しだけ目を逸らした彼女は苦笑いを浮かべる。

 

「できるけど……流石に違うと思うな?」

 

「親戚みたいな物だ。大丈夫。リードするから、俺の手を離さないで」

 

「ぎゅーって? うん、それなら得意!」

 

 全幅の信頼を預けるような瞳を輝かせて、弾けるような笑みを見せる友奈。まるで全てを飲み込む大空のような微笑みで俺の手を握る。見た目の快活さとは裏腹に、ガラス細工を握るような繊細な力加減が手のひらに伝わる。

 とても大事にしてくれるのが分かるのだ。

 その親愛が心地よく、失いたくないと思わせる。

 

「絶対、離さないから」

 

 音楽が室内に響く中で、俺と友奈は踊る。踊る。踊る。

 別に上手いとか下手とか競う訳ではない。誰かの目を気にして踊るような会でもない。空気と雰囲気と踊る俺と友奈を見て、互いの手を取り合う少女たち。

 それを目端で捉えながら目の前の彼女と視線を交わす。

 

 互いの息遣い。触れ合う体温。

 ぎゅっと握った手と視線で何をしようとしているのか何となく意思疎通が可能になる。

 眦を上げていた彼女は音楽に合わせて、くるりと回る。

 

「緊張してる?」

 

「……ちょっとね、でも……慣れてきたよ」

 

 糸に引かれる人形のように、従順に、逆らわずに、俺に導かれる。

 こう? と視線で訴えかける彼女の手を取り、細い腰肉に手を添える。運動センス抜群な彼女はスポンジのように吸収し、身体の強張りを和らげていく。

 

「────」

 

 ふ、と友奈が吐息を漏らした。

 眦を下げて、桜の精と見間違えるほどの彼女の舞姿は多くの視線を惹きつける。だが、その視線に彼女が応えることはない。

 薄紅色の瞳はどこまでも、俺だけを見ていた。

 ぎこちない踊りは、花弁のような軽やかさを持った舞へと変わった。

 

 

 

 

 

 

 勇者部の慰安旅行は始まったばかりだ。

 食べて、遊んで、踊る。

 普段は人が面倒くさがることを勇んで行う部活動というか美少女たちの集まり。彼女たちと男女の仲になりながらも、ゴミ掃除をしたり、保育園で演劇をしたりと忙しい。

 だからこそ、羽目を外してどこまでもはっちゃける必要があるのだ。

 

「次は……13番!!」

 

「リーチよ! リーチ!!」

 

「なんで15番は出ないのよ!」

 

「むむむ……」

 

 食べて、歌って、踊って、やがて勇者部メンバーによる特技を披露していく。

 居合斬りをする女もいれば、いつの間に習得したのか弾き語りをする少女もいた。俺も手品を披露して場を盛り上げることに貢献した。ちなみに特技披露は強制参加ではない。

 徐々に上がっていくボルテージ。

 どこか余所余所しい、場違いなのではと遠慮していた新人たちも楽しんでいるようだった。

 

「あと一つだよ、柚木君!」

 

「私もだ……」

 

 今はビンゴゲーム大会だった。

 食事を適当に(盆踊りをしてお腹が減ったからと、むしゃむしゃと食べている健啖家な少女もいるが)取りつつ、それぞれの席に座った少女たちに声を張り上げるのは樹と亜耶だ。

 何故かバニーガールの恰好をした彼女たちは楽し気にショーを盛り上げる。

 

「なんでバニースーツに着替えているんだ?」

 

「次はカジノでしょう? だから先にドレスから着替えたのよ」

 

「なるほど。ところで、バニーガールってあの捲れそうで捲れない胸元が良いよね?」

 

 パットとボーンが入っており胸元部分を締め付ける構造なので手動でなければ簡単には捲れない。しかし、微妙にサイズが合っていないのかチラリと薄い乳房に潜む桜色の乳頭が俺の目にはチラチラと見えた。

 同意を求めて隣の席に座る芽吹に声を掛けると、ふっ、とニヒルに笑った。

 

「甘いわね……。衣装の胸部分だけではなくて小振りなお尻も、細い太腿も全てが可愛いわ」

 

「ふぅん? ずっとドレスって訳でもないし、亜耶と似たバニースーツもあった筈だよ。お揃いの衣装に着替えてきたら?」

 

「そうなの? なら……ってセクハラよ。触るのは止めなさい」

 

「ちょっと大きくなった?」

 

「髪切った? のノリでする質問じゃないわよ。……まあ、以前よりも剣が振り辛くなったわね」

 

「若葉現象じゃん」

 

「はあ? んっ……いつまで揉むのよ」

 

 芽吹は半眼を見せ、胸元に触れた手を払い落とす。代わりにスカートの裾を捲り、太腿を撫でるとビクッと震えた彼女は静かに睨むだけだ。目立たなければ良いらしい。

 周囲は気づいておらず、顔を近づけてくる芽吹が小声で告げる。

 

「そういうのは後でってみんなで決めてたでしょう? 今は新人を歓迎する時間よ。そういう大人なパーティーは日が沈んでからって」

 

「分かってるよ」

 

「この旅行であなたを負かすのは夏凜ではなくて私……私たちだってことを今度こそ証明してみせるから。楽しみに待ってなさい」

 

「そう言って、今年もみんなの前で泣かせてやるよ」

 

 さらりと巻き添えを喰らった防人たち。

 怒るならリーダーに怒って欲しい。滑らかな内腿を撫でると僅かに身じろぐ芽吹は僅かに頬を赤らめながら視線を檀上に向ける。内腿を伝い、奥にある布切れ越しに恥部に触れると僅かな湿り気を帯びており、そっと腕を掴まれる。

 

「それ以上するならこっちも時間と場所を無視して本気になるわよ」

 

 目を向けると首を振る。

 これ以上のお触りは厳禁らしい。

 

「それにしても、亜耶ちゃん……あんなにぴょんぴょんとはしゃいじゃって……」

 

 亜耶を称える防人サーのリーダー、芽吹は自分だけは分かっているという顔を見せる。若芽色のドレスを着用した芽吹だけではなく防人組は大体同じような顔をしていた。

 ちなみに樹の方は、彼女の姉が食べながら泣いて喜んでいた。

 

「それじゃあ……亜耶ちゃん。次、回して」

 

「うん」

 

 商店街の福引きで見かけるような赤い多角形の箱、抽選器を亜耶は回す。「うんしょ」という掛け声と共にガラガラと音を立てて回転する抽選器からカラフルな玉が一つ転がり出る。

 

「タマもあれ回したいぞー!」

 

「……タマだけに」

 

 子供心をくすぐられ叫ぶ球子に、ボソリと呟く千景。

 そんなギャラリーに愛想よく笑う亜耶は、玉に書かれた番号を読み上げる。

 

「46番です!」

 

「おっ!」

 

「キター!! 本当にきちゃったよ、柚木君!!」

 

「あ、ああ……」

 

 どうやらビンゴゲームで一番乗りの少女が出たらしい。

 拍手と共に、亜耶からの優し気な笑みと言葉が送られる。

 

「おめでとうございます! えっと……リリ先輩に柚木先輩、赤嶺先輩ですね! 一番の人はあちらの不思議な鏡? 窓……がついた部屋で……」

 

 二つの手が上がる。

 

「はいはーい!」

 

「私たちが! 本気の本気で」

 

「全力の全開で! 昇天して戻って来られないような!!」

 

「気持ち良いマッサージしちゃいます!!」

 

 結城友奈と高嶋友奈だった。

 

 

 




今話のワインレッドドレス友奈の姿は
結城友奈は勇者である BUNBUN Illustrations から参考にしてます。


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【番外】新人歓迎会

ちょっと長いです。


「──つまり、この世界では変身……勇者となって戦った時に副作用が発生すると」

 

「ええ。その予防接種をリリさん達にして頂こうかと。もちろん、ここにいらっしゃる方……当然私もですが一人も欠けずにシていますよ。お揃いになれますね」

 

「……それがマッサージ?」

 

「ええ」

 

 と、語るひなたに「タイム!」と声を上げる柚木と芙蓉が作戦会議を始める。

 

「一知半解だけど、あのひなたさんの言葉に柚木君は逆らえるのかい?」

 

「……そういうことを言うな」

 

「落ち着こう柚木君。知行合一、こういうのは実践あるのみさ」

 

 妙齢な美女であるひなたとは何かの因縁があるのか。

 俺に背中を向けて、うふふ……と艶やかに微笑んでいるであろう巫女に何故だかガクガクブルブルと震えている柚木と芙蓉の友奈たち。

 

「なんでも元いた時代で何かあったと聞きました」

 

 思考に耽る俺に、ひょこっと顔を見せる亜耶。

 頭に乗せたウサギ耳のカチューシャはよく似合う。上目遣いを見せるあざとい彼女を追いかけてくるのは勇者部の妹である樹だ。彼女もまたウサギとなっていた。

 

「似合いますか?」

 

「とても似合うよ。凄く可愛らしい」

 

「あぅぅ……ストレートに効きます……」

 

 小動物の雰囲気を醸し出す樹はぺしぺしとウサギ耳を俺にぶつける。ほんのりと頬を赤らめる樹と楽し気に笑う亜耶を抱き上げる。

 

「確保」

 

「捕まっちゃいましたね……んっ」

 

 少し困ったような顔で俺の頬に口づけをする亜耶に樹は目を丸くする。

 当然のようにするキスに、少し考えた樹が空いている頬に唇を押し付ける。特に何も言っていないのに、勇者部の勇者と巫女はここまで爛れてしまったのだ。

 やれやれ、といった態度でバニー少女たちの胸元に手を伸ばす。ふにゅっと慎ましくも僅かながらの存在感を主張する柔肉を指で弄っていると彼女たちは小さく喘ぐ。

 

「メブー! あややが亮之佑さんにお持ち帰りされようとしてるー!」

 

「なに!? そんなことはさせない!!」

 

 そんな風に防人組と遊んでいると、柚木と芙蓉、そして赤嶺はひなたと友奈たちの誘導でパーティー会場の隅に設けられた部屋に入り込む。

 壁となる部分はガラスであり、中の様子が丸見えだ。どこか真面目そうな顔をしたひなたと、途中で入室した蓮華が身振り手振りで説得しているが、少女たちは時折視線を此方に向ける。

 

「……確か、こちらからは見えない……ようで普通に見えているただのガラス窓なのよね」

 

「確か、マジックミラー? とか言うんだったな」

 

「本物はこちらからは見えない筈よ。だからアレは擬きよ。あちら側は見えるけどこちら側は何も見えていないという演技を求められている。そういう訓練の時間ね」

 

「知っているのか、千景?」

 

「た、たまたま聞く機会があっただけよ」

 

 という大人の若葉と千景の会話を耳にする。

 

「……というか蓮華さんが入って行ったんだけど、誰も何も言わないの?」

 

「甘いですわね雀さん。……ご先祖様ですわよ? それだけで十分ですわ」

 

「説得力!」

 

 他の少女や大人になった女たちと食事を楽しみつつも、彼女たちが入った室内に目を向ける。

 やや広々とした空間、中心には簡易的なベッドが三台置かれている。

 お香を焚いているのか、煙が薄っすらと立ち上り、それを指摘した柚木にひなたが何かを答えているのが見える。更には此方に指を差す柚木に対して、不思議そうな顔をするひなたがおもむろにドレスを脱ぎ始める。

 顔面を赤くした柚木と芙蓉が止めて、ガラス越しに俺を指差す。

 

「人を指差したらいけないんよ~」

 

「あー、かっきーが私の真似した~」

 

 きゃっきゃと園子と戯れる俺の態度に見えていないと判断したのか、ストリップを強行する巫女を止めることはできない芙蓉たち。

 当たり前のような顔でドレスを脱ぐ蓮華にも、微塵の照れが無い。

 

「おお……!」

 

 ぷるん、と音が聞こえそうな乳房が露出する。

 巨乳を晒しながら、そのまま当然のような顔で裸体を晒すひなたに少女たちが騒めく。

 他の少女たちよりも歳を経た分だけ相応に女に成長した柔らかな肌とスタイルの良さは男女問わずに目が惹きつけられる。蓮華も続き、ひなたに負けず劣らずのスタイルを見せつける。

 

「ワオ! 流石ひなたさんね。マーベラスなストリップよ」

 

「わ、私だったらできなかった……」

 

「みーちゃんならできるわ!」

 

「できるできない以前にやりたくないよ!?」

 

「……わ、私は、郡様の為なら、この公衆の面前であろうとも……」

 

「やらなくていいから。……本当に」

 

 褒める歌野に、色んな意味で自らとの差を痛感する水都。

 思わず自らの胸元を撫でる美佳と困惑する千景と苦笑いの真鈴。

 

「というか、蓮華ちゃんも演技派ね」

 

「見て下さいませー! アレが私のご先祖様ですわよー!」

 

「先祖の裸を嬉々として見せようとする子孫がいる件について」

 

 演技か素かはともかく、ひなたに続いて当然のような顔で全裸になる蓮華。

 腕を組み、仁王立ちする様はエロスとカッコよさがある。ひなたほどではないが大きな双丘を揺らす様をガラス越しに見た球子と銀が崩れ落ちる。

 ……こんな感じの勇者部だが、全員がガラス内にいる少女たちにバレないようにキチンと平静を装っているのが年の功を感じさせる。

 

「ぱいんぱいん……アレはもうマウンテンではない」

 

「た、球子さん。アレはいったい何ですか?」

 

「アレは……宇宙だ」

 

「ぽよんぽよん……ぱいぱい銀河……いや宇宙!?」

 

「これが宇宙の真実だった……ならタマが登っていたマウンテンはどこに……」

 

 まるで宇宙の全てを知ったような顔でブツブツ言い出す球子。

 それに引きずられるように何かを悟り出す銀から目を逸らすと隣には若葉。

 

「……まったく、あれではお仕置きはできないな。それより亮之佑、ひなたなんだが……いい身体をしていないか?」

 

「おっさんかな? ……まあ、そうだね。けど、若葉もひなたさんくらいに良い身体しているよ」

 

「……そういうのはいらない。だが──ほら好きにすると良い」

 

「こ、これは……! 年上の包容力だと!!? 若葉お姉ちゃん!」

 

「ふっ……堕ちたな」

 

 和装でバッチリと決め込んだ若葉が自らの胸元に俺を誘う。

 色香と威厳を兼ね備え佇む美女を前に俺は敗北の味を思い知らされる。

 それ以前に妙齢若葉の思った以上に強い力に抵抗はせず、掴まれた俺は彼女の双丘に後頭部を押し付けて、料理片手に見守る。

 

 二人の黒髪美少女&美女が全裸になった上での説得が成功したのか、誘われた少女三人も脱ぎ出す。ただのガラスの前で。俺たちの前で全てを脱ぎ出す。

 柚木、芙蓉、赤嶺のストリップショーだ。

 ドレス、下に着ていた下着から彼女たちの好みが、更にはその下に隠された肢体、柔らかそうな乳房や恥毛の生え具合など、まるでショーケースに並ぶ商品のように差が一目瞭然だった。

 チラチラと恥ずかしそうな顔で俺や他の勇者部に尻を向けていたが、ガラスの近くに設置されたスクリーンからは彼女たちの正面や下からの姿が丸見えだった。

 

「まるで盗撮だな」

 

「あむ……んむ……亮之佑はどう思う?」

 

「大、小、巨って感じ」

 

「そうよね。アタシの方が大きいわよね」

 

「そんな話だっけ?」

 

 ばくばくばくばく……と掃除機のように食事を貪る風に素直に答える。

 目の前のガラスが見えていないという説明を受けながらも、どこか恥ずかしがりながらドレスを脱いで肌を晒していく彼女たちの姿に「若いわね」と風がにやける。

 

「以前、風があのマッサージを受けた時、脱ぎ方が男前だったな」

 

「は、ハア!? そんな訳ないでしょうが! もっと女子力ある脱ぎ方してたわよ!」

 

「だが、ガラス扉に押し付けられて、私たちに全てを晒した時の風は──」

 

「きーこーえーなーい!!」

 

 思い出すように風へ声を掛ける棗に赤面する風が否定する。

 そうしている間に施術師らしき制服に着替えた友奈たちが笑顔で簡易ベッドに彼女たちを手招きする。入れ替わるように全裸のひなたと蓮華がドヤ顔でパーティー会場に戻って来た。

 ……普通に全裸で外に出た彼女たちに、芙蓉たちが気に掛ける余裕は無かったようだ。

 

「待たせたわね。英雄の帰還よ!」

 

 わあ、と騒ぐ少女たち。

 そっと胸元を隠すひなたに羽衣を着せる若葉と、わっしょいわっしょいと全裸で胴上げされる蓮華を見ながら、ガラス窓がついただけの部屋に近づいていく。

 俺の出番が近いことに気づいた少女たちは何故か尻を撫でたり叩いてくる。

 普通にセクハラだが、俺が指摘してもどの口がと言われるだけだ。

 

「ひなたさん。お疲れ様です」

 

「亮之佑さん……場は整えました。今は友奈さんたちが頑張ってます」

 

「はい。見えてます」

 

 普段見るよりも豊かな乳房、くびれた腰肉に肉付きの良い太腿や臀部。当たり前のように手が伸びてひなたの乳房を揉みしだく。

 少女ではなく、一人の大人の女となったひなたの身体を俺は見つめて触れる。

 甘い吐息を漏らすひなたは俺の下腹部に熱い瞳を向けながらも、

 

「ぁっ……私ではなくて、赤嶺さんたちの方でっ……」

 

「亮之佑」

 

「いや、若葉さ。目の前にこんな良い身体した女がいたら手を出さない方が失礼だろ?」

 

「それは……そうかもな」

 

「……亮之佑さん? 若葉ちゃん? 良い身体ってどういう意味ですか?」

 

 ゴゴゴ……と笑顔に圧を強めるひなた。

 何かを思い出したのかブルリと震える若葉に対して、俺は平然と彼女の肌に触れる。芙蓉達と違って俺たちに見られている意識があったのか、豊満な乳にツンと揺れる乳首が俺の手に吸い付く。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「今は友奈たちが頑張っているから俺の出番はまだですよ。それに良い身体ってのは太っているとか変な意味ではありませんよ。……今すぐに抱き潰してしまいたくなる、そんなエッチな身体ってことです」

 

「……褒めているようには聞こえませんけど」

 

 そう言いながらも、俺に乳房を揉まれる事を許容するひなた。

 ズボン越しに反り立っている肉棒にそっと手を置いて、満足気な吐息を漏らす。

 さり気なく周囲から巫女を隠す若葉の協力の元、ひなたの肌を撫で回す。柔らかな腹部を手でなぞり、つるりとした脇腹を指で伝い、やや濃い目の恥毛を指で絡める。

 

「もう濡れているんですか? みんなに見られて興奮したんだ?」

 

「……っ」

 

 大人の恥毛に隠れた秘所は濡れそぼっていた。

 にちゅ、と若葉が少し顔を赤らめる水音を、ひなたは恥じらって見せる。

 

「あっ、指が……んっ、ふわっ……だ、だめです」

 

「……」

 

「ふっ……あっ、そ、そこ……」

 

 挿入した指を締め付ける膣襞。

 きゅうっと雄竿をいやらしく求める女の肉は熱くぬめる。視線を上げると、蕩けたようなひなたの女の顔。涙を目に溜めて、雄の本能を刺激するような淫臭に思わず口元が緩む。

 可能なら、このまま彼女の最奥に怒張を突っ込んでしまいたい。

 

「若葉とセットで味わいたい」

 

「おい、聞こえているぞ。見境なしか」

 

「あっ、若葉ちゃん……こんな……ごめっ、~~ッ!!」

 

 指先一つで軽い絶頂に達するひなたの手を若葉はぎゅっと握る。

 顔を俯かせて、ビクッと小刻みに震える巫女は濡れた瞳を俺に向ける。

 

「ゆ、友奈さんたちの所へ……ハァ……ッ……」

 

 小さく喉を鳴らした巫女は意思の光を瞳に宿す。

 

「は、早く指を抜いて下さい……、これ以上は……本当に……」

 

「じゃあ、今夜しますか?」

 

 俺の問い掛けに、ひなたはきゅっと唇を結ぶ。

 色気を漂わせる巫女は胸元を寄せて、静かに囁く。

 

「……新人歓迎会が終わるまでは我慢して下さい。そしたら、好きなだけ……ッ」

 

 彼女の鼻息は荒かった。

 奪った唇は柔らかく、あわわ……と挙動不審に震える若葉の前でひなたと口づけを交わす。そのまま彼女の膣内で指を動かして無言の絶頂ギリギリ寸前まで弄り続ける。

 

「……は……ぁ」

 

「終わったら楽しみにしていて下さいね」

 

 柔らかくなった雌肉からは返事がない。

 代わりに濡れた秘所から僅かに飛沫を床に散らして、赤らんだ顔で小さく頷く。大人の身体に対して可愛らしい反応に本能を刺激されて、俺は何度かひなたの乳房を揉み続ける。

 

「んっ、っ、……あ、あの」

 

「返事は?」

 

「……は、はい」

 

 コンコン、と窓を叩く音。合図だ。

 俺は立ち上がると少女たちの視線に背中を向けてガラス窓のついた部屋に入る。

 

 扉を開けるとむわりとした雌臭がお香の香りに混ざり広がる。

 同時に防音仕様であった部屋から少女たちの艶やかな声が響く。

 

「は~い、リリちゃんのここもすっかりトロトロで気持ち良いね~」

 

「まっ、まっへくれ、結城君! これがっ、予防接種なんてっ……!」

 

「予防接種だよ?」

 

「そんなっ、訳がっ……ぁん! ぁっ、ぁぁっ!!」

 

「動いちゃダ〜メ」

 

 まず視界に入るのは友奈だった。

 濡れるからか純白のビキニ姿になった彼女は、裸体になった芙蓉を好きに弄っていた。友奈神拳ならぬマッサージ力は他人の追随を許さない。オイルでテカった小柄な裸体は友奈の手が触れる度にビクッと小刻みに震え続ける。

 どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた少女も友奈の手で心も身体も剥かれ、年相応の姿で寝転がっていた。俺の存在に気づかずに内腿をくねらせて荒い呼気を漏らす。

 

「わ、私……、私は……」

 

「いいんだよリリちゃん。我慢しないで」

 

「ぁ、ぁっ」

 

「でも、動いたから。もう一回最初からになっちゃった」

 

「それは……」

 

 俺を見て蠱惑的な笑みを浮かべる友奈が片手を上げる。

 簡易ベッドで、潰れたカエルのような恰好で仰向けにされた芙蓉はアイマスクとして乗せられたタオルだけが掛けられている。

 色白の薄い乳房、ツンと上を向く乳首を友奈はくすぐりながら手を振り下ろす。

 

「ひっ! ぃっ……くっ!!」

 

 ぱん、と恥部を友奈の手が叩く。

 無毛の陰唇に触れた途端、芙蓉の腰が浮き、喘ぎが漏れる。

 

「えいっ!」

 

「~~ッ! ぁっ……!!」

 

「我慢はぁ~、ダメッ!!」

 

「~~~~ッッ!! ぅぁああっっ!!!」

 

 は、あ、と甘く熱い吐息で喜悦を隠せない芙蓉の無毛の恥部を友奈がペチペチと叩く。

 二度、三度と続き、四度目でガクンッと腰が幾度も跳ねた。じわじわと簡易ベッドに敷かれたタオルに染みが広がり、何も言えない芙蓉の唇を友奈が奪い取る。

 逃げるように腰を揺らす芙蓉の秘所からは蜜液が垂れる。

 五回目で絶頂に達したのか、勢いよく腰が跳ね、芙蓉の悲鳴と共に潮を噴いた。

 

「わー……! いっぱい出たね! リリちゃん凄いよ!」

 

「えぁ……は──、くち、びる……」

 

「もっとちゅーしよ? 好きでしょ? こうやってくちゅくちゅしながらするの!」

 

「……うん」

 

 全ての抵抗を余さず奪った友奈は俺に妖しく微笑む。

 既に準備はできている。

 前戯は私が好きにして楽しんだから、あとは食べるだけだよ? と無言で笑みを見せ続ける友奈は、ホカホカとなった芙蓉の身体の肉粒を見せつけるように弄り続け、秘所を指で開いて見せる。

 ピンク色の媚肉から蜜液が滴り落ちて簡易ベッドの染みを増やした。

 

 ──俺が遊んでいる間に、友奈によって芙蓉は堕とされたらしい。

 

「柚木ちゃんはもっと声、出して良いんだよ?」

 

「ッ、ふっ……」

 

「えい」

 

「んぁッ!? ぁ、ぁっ~~~ッ!!」

 

「我慢は毒だよ~? こんなに濡れちゃって」

 

「ぬ、濡れてなんて──」

 

「振り向こうとしたらダメって言ったよね?」

 

「ぅぁ~~~ッッ!!? 指っ、ゆびぃ……ッ!!」

 

 と、小悪魔のような挙動と態度と凶悪な指の動きで柚木に声を上げさせるのは高嶋だ。

 彼女も友奈と同じく純白のビキニ姿だ。

 簡易ベッドの上で四つん這いにさせ、ベッドに耳まで赤くなった少女の脚を広げさせた高嶋は俺を見て淫靡な笑みを浮かべる。アスリートのような裸体をした柚木の恥部が丸見えだった。

 髪色と同じ黒の陰毛は濃く、オイルと愛液が絡んでいる。

 未処理の恥毛に隠れた花園は僅かに開かれ、照明に照らされた蜜が滲む。ぷるぷると震える度に同級生よりもやや大きめな乳房が揺れ動き、ザクロの実のような乳首がシーツを擦る。

 

「あれれ?」

 

 妖しい手つきで柚木の乳房を揉みながら遠慮なく秘部を触る高嶋。

 俺に見せつけるように、くぱぁと陰唇を開いて最奥を見せる彼女は辱めるように声を上げる。

 

「エッチなお汁がいっぱい出てるよ? ……普段からシてないとこうはならないよー!」

 

「ち、ちがっ……!! ひッ──!?」

 

「ほら、指だってもう二本も入っちゃった! さっきは一本だけだったのにね。……動かすね」

 

「ぁっ、ま、まって……そこは……」

 

「待たないよー」

 

 楽し気に柚木を虐める高嶋は指で恥部を弄る。

 くちゅくちゅ、と誤魔化しの利かない水音をわざと響かせながら、神に等しい指先で柚木の腰を震わせる。白く濁った愛液が高嶋の指や柚木の恥毛に絡みつく姿は淫靡に尽きる。

 

「柚木ちゃんのお豆さんはちょっと大きいねー。いつも弄っているのかな? 同時に弄っちゃう!」

 

「ぅぁぁああっっ!!!」

 

 高嶋の指が恥部や陰核を弄る。

 楽し気に弄ばれた柚木が腰を跳ね、しょわっという水音と共に滴が散る。

 

「わぁ! また出たねー! よーし、予防接種の前にいっぱい出しちゃうぞー!」

 

「も、もう……待って、やだ、やぁ……」

 

 同じような言葉を繰り返す柚木は、俺に尻を向けた四つん這い状態を崩さない。

 いや、崩せないのか。高嶋に事前に何かを言いつけられたのか、犬のように尻を振って秘所を見せつけたまま、絶頂に歪んだ顔を簡易ベッドに押し付けて羞恥を押し殺していた。

 よく見ると柚木の臀部は叩かれたのか赤くなっていた。

 その箇所を慈しむように撫でる高嶋は、震える柚木の調教を進める。

 

 友奈も高嶋も思い思いに『友奈』と名前の付いた少女を辱める。

 疲労が取れるようにと優しさを込めて、その手腕を発揮する。

 時間は彼女たちに味方をしており、最初はガラス越しで否定的だった柚木や芙蓉が自ら恥部を差し出す程度の理性を削ぎ落す手腕は見事な物だった。

 ……これ、俺はいるのだろうか?

 

「いるよー!」

 

「りょーくん大事! お医者さんだもん! ほらっ、患者さんがそこに……」

 

 左右の簡易ベッドで遊ばれている少女たちから中心の簡易ベッドに視線を移す。

 全裸の褐色少女。髪留めを失い散乱する髪の毛。

 仰向けで放り出した乳房はやや形を崩しながらも張りと大きさを主張する。プリンの上に載るサクランボのような乳首は硬く、荒い呼気の度にぷるぷると震える。

 

「ぁひ……ぅあ……」

 

 涎を垂らし、恍惚とした表情で目から光を失った状態の赤嶺。

 全身をオイルでテカらせた状態の彼女は、どれだけ水分を補給したのかと思う程度には下のシーツを濡らす程の絶頂の痕跡を見せていた。

 薄い恥毛に覗く陰唇は時折小さく口を開き、奥から新鮮な蜜を垂らし続ける。

 

 既に食べ頃なのは、完全に弱点を把握された状態で友奈と高嶋にマッサージをされたからだろう。たまに身体を起こそうとして腰を浮かせる度に、小さく痙攣している彼女の意識はまだ法悦の空にあるのだろう。

 本気も本気。友奈と高嶋がいれば勇者部の全員をこの状態にできるのだ。

 

「二人とも凄いよ」

 

「えへへ」

 

「それほどでもないよー」

 

「……あえ? いま、声が……」

 

「おとこの声? えっ、……あ、あの、もしかして……」

 

「「はーい、もう一回天国にイっちゃえ!!」」

 

「「ふわぁぁああああっっ!!!」」

 

 理性なんて物はあっけないほどに消し飛ばされる。

 場合によっては小水を撒き散らし、親にも友人にも見せたことも聞かせたこともないような痴態を曝け出される少女たちに正常な判断などできない。

 もう大人しく雄竿を待つだけの存在へと変貌していた。

 

 やがて、ぐったりとした様子の女が三人、簡易ベッドに転がっていた。

 まるで犯され捨てられた事後のように、オイルで裸体をテカらせて、甘い呼気と淫臭を漂わせて小刻みに下腹部を震わせる。薄く瞼を開いた瞳にはいずれも理性の光が失われている。

 今なら何をしても問題は無いだろう。

 満足感と達成感を顔に浮かべる友奈と高嶋が俺の左右に並び立ち、抱き着いてくる。

 

「お待たせー!」

 

「どの子からするの?」

 

 問われた俺は少し悩む。

 赤嶺の口内に怒張を含ませ、彼女の陰核を指で扱きながら少女二人を見下ろす。さり気なく赤嶺の両手首を押さえた友奈と高嶋の助力で、僅かに抵抗しようとした赤嶺の身体に絶頂を教える。

 

「ぅ、ぷ………はッ、んぶ……っ」

 

 赤嶺の唾液でコーティングされた怒張を引き抜く。

 少女たちのあられもない姿と、彼女の口腔奉仕と締め付けに限界まで反り立つ肉棒に、高嶋が顔を赤らませて竿肉を柔らかな手のひらで包み込む。

 

「……硬くて大きいね。柚木ちゃんはともかく、リリちゃんは入らないんじゃない?」

 

「じゃあ、リリから」

 

「言うと思った。……じゃあ、私たちも脱ぐから亮ちゃんも脱いで?」

 

「……なんで?」

 

「裸で抱き合うと気持ちいいから!」

 

 自らのビキニを外して裸体になる友奈は俺の衣服を脱がせる。

 高嶋もまたすぐに水着を脱いで興奮に柔肌を朱色に染めた肌を見せる。そのまま躊躇いなくオイルに濡れた手で更に肉棒や陰嚢をマッサージする少女たちの乳房を揉む。

 むにゅむにゅ、と慎ましくも柔らかい感触は、いくら揉んでも飽きることはない。

 

 ん、や、と甘い呼気を漏らす彼女たちはコロコロと笑みをこぼす。

 そのまま互いにアイコンタクトをする双子のような少女たちは芙蓉を抱き起す。パワーのある彼女たちが腕を肩に回させて、脚を広げさせる。

 解された身体、脚を広げさせられた芙蓉の恥部が晒される。陰唇やピンク色の媚肉、更にはその奥の襞までもが見えた。

 友奈に押されて濡れた秘所を押し付ける。

 高嶋が芙蓉のアイマスクを取ると、細めていた芙蓉の目が大きく見開かれる。

 

「……ふえ? えっ、ぁ、ちょっと……りょっ、りょ!?」

 

 ずん、と抵抗なく奥まで肉棒を突き上げる。

 ぬめる膣内は狭い。小さな肉穴全体で竿を締め付ける。男を認識したことで羞恥心と理性を取り戻し掛ける芙蓉を駅弁と呼ばれる体位で貫き、更に唇も奪う。

 

「んむっ……ふぅ……ん……」

 

 柔らかく小さな唇を蹂躙し、濃厚なキスとは何かを教える。

 友奈ともしていたからか芙蓉は順応していく。

 結合部から腿を伝う熱い小水と締め付けが俺のピストンを徐々に速めていく。

 

「はっ……ぁっ、はじめてはっ、いたいって聞いてたのにぃ……!」

 

「っ……!」

 

「あ、脚、とどかなぁっ! ……おぐっ、……お、かしく、なるッ……!!」

 

「んっ──、ん……ふッ………ぷはっ──」

 

「き、キス……こんな……ふわふわする……ッ、ぅ……」

 

 ぱん、ぱん、とまるで性玩具のように芙蓉の穴で怒張を扱く。

 同時に芙蓉を気持ち良くする為に、スローピストンで突き上げる。

 彼女が悦ぶ場所を亀頭で刺激しながら唇を奪い、小振りの尻を掴み、白濁を吐き出すまで俺は芙蓉の媚肉を竿で楽しんだ。下腹部を濡らす芙蓉の恍惚とした表情を見下ろす。

 

「……ぅ、ゆず、き……くぅん……んむ──」

 

 光の失せた瞳で、気に入ったらしき口づけを交わす。

 無毛の恥部に根本まで押し込んだ怒張を引き抜くと恥部から白濁が垂れ落ちる。

 すかさず高嶋が汚れた肉棒を口に含んで掃除する。

 新鮮な唾液と舌での丹念な奉仕は肉竿を再起動させ、その合間に淫熱が下がらないようにと柚木に快楽を教えている友奈に手招きされる。

 

「リリ……! ま、待ってくれ、これは予防接種じゃ……」

 

「予防接種だよ? ちっくん!」

 

 高嶋の可愛らしい掛け声に、可愛くない赤黒い雄竿を柚木に挿入する。

 芙蓉と違い、狭くない膣内は彼女のささやかな抵抗とは裏腹によく濡れており、程良い締め付けが怒張を包み込む。

 

「くぅ……っ、っ」

 

 友奈の神に等しい施術で処女でも感じる程に蕩けた柚木。

 どこかクールな様相の多い彼女は、どこか混乱した様子で竿を受け入れる。友奈に片脚を開かされ、側位の状態で俺を受け入れる柚木の目の前にはマジックミラーを模した普通のガラス窓。

 此方を見る少女や女たちは俺や柚木を見て、何かを口にしているようだ。

 

「誰もこっちには気づいてないねー」

 

 と、白々しい友奈の言葉に何を感じたか、竿の締め付けが増す。

 

「……っ、ぅぁ?」

 

「そもそも、それどころじゃないよね。亮ちゃんのおちんちん、凄いからねー?」

 

 大きめな乳房を手にして、俺はスローピストンを楽しむ。

 未処理の恥毛を指でくすぐり、陰核を弄る友奈の指示の下、柚木が弱いとされる箇所を重点的に亀頭で突きまわす。恥ずかしそうに喘ぐ柚木の媚肉を俺は味わう。

 

「柚木くん……」

 

「み、見ないでくれっ、リリ……ッ!」

 

 マジックミラーの光景から目を背け、駄目押しとばかりに恥部を弄られ、高嶋に絶頂させられている芙蓉から顔を背ける柚木。

 自らもまた、俺の腰使いと友奈の指使いでトロトロな表情にさせられていた。

 

「わぁ、凄いエッチな顔だね」

 

「……ッ」

 

 外れたアイマスク、お香とマッサージで理性を蕩けさせた全裸の少女が一番最初に隠したのは顔だった。

 喘がされる顔を手で隠し、顔を背ける。代償として揺れる乳房を友奈の手に預け、俺に下腹部を曝け出し、最奥まで蹂躙される。

 

「……っ、んっ、……、ぁん!」

 

 声を押し殺し、代わりに膣襞が幾度も蠕動する。

 新鮮な蜜が潤滑油となり、雄竿のピストンをやや速めさせる。

 

「もうイくの? ……うん。我慢しないで」

 

「あくっ……ふっ、ぅ……」

 

 きゅっと唇を噛み締める柚木は、優し気な口調で的確に性感帯を弄る友奈に可愛がられる。乳肉を撫で、ツンと硬くなった乳首を弄り、そっと顔を隠す腕を取り除く。

 

「──ぁッ! 〜〜〜っ!!」

 

 涙に滲んだ瞳をぎゅっと閉じて柚木は静かに深い絶頂に達した。

 締め付けられる少女の誘惑に逆らわず、新品の最奥へと汚濁を注いで汚す。陰嚢を内腿に押し付け、肉棒の根本まで恥骨に密着させて、びゅううっと白濁のソースを味わさせる。

 

「…………は、ぁ」

 

 満足とも諦観とも取れる柚木の溜息。

 余韻が残る中、ぐりぐりと媚肉に竿を擦りつけると、何度も小刻みに震えた。掴んだ脚を離すと、ゆっくりと淑やかに脚を閉じる黒髪の少女。閉じた脚の間から覗く恥部からはゆっくりと白濁が垂れ落ちる。

 

「……リリちゃん、軽いねー」

 

 倒れ込んだ柚木。同じ簡易ベッドに「よいしょ」と芙蓉を添える高嶋。俺が柚木と行為に及んでいる間も少女の淫熱を絶やさないようにと喜悦の薪を、性感マッサージで芙蓉の身体を蕩けさせ続けていた。

 戯れで使用していた振動する玩具や小型の疑似肉棒を外して、小刻みに痙攣する芙蓉は高嶋にされるがままの状態で、もはや身体を動かす気力も無いようだった。

 あられもない姿となった芙蓉と柚木。

 キスでもするように荒い呼気で顔を近づけさせられる彼女たちの唇に亀頭を挟ませる。

 

「ん……ちゅ」

 

「はむ……っ……」

 

 雄汁と雌汁で汚れた竿を、二人分の唇に挟ませて拭わせる。

 理性の色など消え失せ、ただ与えられる餌を啜るように少女たちは竿を味わう。二人の稚拙な奉仕とも呼べぬソレは不慣れで下手だった。だが、快感とは直接的な物ばかりではない。入部したばかりの新人の無垢な身体を抱き、奉仕させる。

 少女たちの、花も恥じらう乙女が守りたい物を全て自分が散らした事実が、最も雄竿を奮い起こした。

 

「……こ、こんな……傲然屹立……!」

 

「うわ……本当にこうして大きくなるのか……」

 

 徐々に、どこか開き直ったように、あるいは諦観とも現実逃避とも言えるような呟き。柚木と芙蓉に無理やり唇を竿に捧げさせ、眼前で反り立つ肉棒を拝ませる。

 目が離せないとばかりの少女たちの無垢な脳に雄竿を刻ませると、俺は移動する。

 

「ふーん。……で、私にも予防接種するんだ? 女の子を泣かせてきたソレで?」

 

 からかうように、どこかクールな相貌で俺を見上げるのは赤嶺だ。

 その態度とは裏腹に晒した裸体は友奈と高嶋によってホカホカに蕩けさせられている。まるでキャンキャンと吠える子犬のようだと俺は笑った。

 

「……っ、二人に殆どさせて自分は王様気取り?」

 

 などと俺を怒らせようと挑発する赤嶺は簡易ベッドの上で仰向けで寝転がっている。

 豊かな双丘を呼吸の度に震わせ、準備万端とばかりに恥部は濡れている。恥毛を肌に張り付かせ、激しい運動をしたように汗を伝わせる身体。

 

「もー、駄目だよ。そんなに悪ぶったら」

 

「さっき亮ちゃんとエッチしたいって言ってたのに、夏凜ちゃんみたいなツンデレさんになっちゃったの?」

 

「……言ってないよ。二人の耳がおかしいだけだよ」

 

 ぷんぷん、と可愛らしく怒る友奈たちに、悪役っぽく笑う赤嶺。

 そんな彼女の両脚を開かせて、俺は種付けをするように腰を下ろす。

 

「ァ! くっ……。こ、こんなの別に大きいだけで」

 

「イかない?」

 

「当たり前だね。そんなエッチな漫画みたいな……」

 

 肉を割り拓く。前戯の必要もないほどに濡れた赤嶺の肉壺。

 俺は一切の遠慮もせずに、ピストンを始める。

 続く言葉はなく、赤嶺は唇をぎゅっと引き締める。

 

 入口は狭く、しかし奥に行くほどに柔らかく、膣襞が亀頭を擦る。

 濡れた媚肉は自らの悦ぶ場所を串刺しにされてあっけなく結合部から蜜が漏れる。

 

「~~ッ!!」

 

 妖しく光る瞳は、電流が奔ったように大きく見開かれる。

 蠕動する肉壺が竿を締め付けて、必死に子種を求める浅ましい姿に俺は慈悲を与える為に、ピストンを加速する。

 

「あっ、ん、んぅ……!!」

 

 腰を浮かせる度に腰を下ろす。

 奥深くまで竿を押し付けて汗を浮かべる赤嶺の乳房を胸板に擦りつける。硬くなった乳首が擦れて首をのけ反る赤嶺の唇を奪いながら、腰を振る。

 

「ぅぁぁ……ッ、ま、まっへ──んむッ……」

 

 瑞々しい唇をこじ開けて、舌を無理やり絡ませる。

 ディープキス、唾液を下品な音と共に絡ませながら、口端から垂れるのも構わずに歯茎や舌裏に舌を這わせる。

 彼女の興奮が膣の蠕動と共に伝わって来た。

 俺の腰肉を叩く内腿、背中に回る手、喘ぎ声と甘い体臭。

 

「ひぁぁ……!!」

 

 ぐん、と背中を反らした。

 ぷるんと乳房を揺らす赤嶺。その豊満な乳を口に含みながら、俺は腰を振る。

 

「くっ、ま、また……」

 

「赤嶺ちゃん」

 

 唇を離し、しかし唾液の糸ができる程度の密接な距離で見つめ合う。

 赤い瞳には興奮と、途中で止めたことへの不満と疑問が浮かぶ。

 

「な、なに?」

 

「大好きな亮之佑くんには完敗です、と言え」

 

「……っ、まだ負けてないもんっ!」

 

 絶頂に達するのは何度目だろうか。

 柚木や芙蓉にはしていた遠慮を、俺は赤嶺にはしなかった。自らの更なる絶頂に俺の胸板を押して逃げようとする中、それを跳ねのけるように抽送する。

 

「~~~~ッッ!! ぅぁぁああっっ!!」

 

 俺の背中に爪を立てる。

 

「んぁっ!!」

 

 腰が艶めかしくくねり、蜜が跳ねる。

 目をきつく閉じ、法悦に浸りながらも続ける彼女の抵抗に負けたように俺は身体を離す。

 

「えっ、……ぁ、くっ……」

 

 連続絶頂が堪えたのか、背中を向けて簡易ベッドから飛び降りる。

 そのまま逃げようとするが、膝が震える彼女は近くの窓ガラスに手を置く。

 窓からは勇者部のみんなが見えた。

 期待や呆れ、色んな感情が向けられているのに赤嶺も気づいたのか硬直する。その隙を狙って俺は赤嶺を羽交い絞めにする。

 

「ちょっ、ちょっと離してこの鬼畜! 女の子を侍らせて泣かせて喜ぶサディスト!」

 

「名誉棄損でお仕置きだ」

 

 再び少女と繋がり背面立位に持ち込むのは、今のフラフラの赤嶺なら容易だった。

 嫌々と首を振る赤嶺に再度肉棒を突き上げる。

 

「みんなに見てもらおっか」

 

「……! い、いやだ、レンち、シズ先輩っ、みんな、見ないで……ッ」

 

 マジックミラーの先には彼女の大好きな蓮華もいた。こちらに加わろうとして、周囲に押さえられている全裸蓮華は、周囲の百戦錬磨の性豪たちに同じように抱かれ、絶頂に達せられていた。

 ついでにとばかりに、面白くない冗談で逃げようとする静も巫女たちにヤられてた。

 彼女たちは口を開閉させて、こちらに何かを訴えていた。

 

「イく時は一緒だって。仲良いね」

 

「……絶対、言ってないからっ……!!」

 

 ずん、と突き上げると乳房が揺れる。

 髪色と同じ色の恥毛も、引き抜く竿に伝う愛液も何もかもを勇者部の少女に見せつけられる赤嶺は狂ったように首を振っては肉竿を締め付ける。

 突き上げると、「かはっ」と息を吐いた赤嶺の結合部から蜜が跳ねる。

 

「ぁ、あっ! ぁあっ!!」

 

 浅ましく肉竿に食いつき、吸い付き、味わう姿をみんなはどう思っているのか。

 ぐぽっ、ぐちゅっとピストンの度に下品な水音を響かせる赤嶺が震える。

 

 絶頂が近い。

 それを悟った俺は抽送の速度を上げて、ひたすらに腰を突き上げる。

 

「やだやだやだぁ……っ!」

 

 身体を硬直させ、ふるると乳房を揺らす。

 抵抗する赤嶺をマジックミラーに押し付けると、むにゅっと乳房が潰れた。「おおっ!」と勇者部の中で一部声が上がったのを聞きながら、俺は最後のストロークを加速させる。

 

「ぁー……っぁ……だ、だめ……」

 

 竿を最奥で咥えたまま、媚肉全体がうねる。

 その瞬間、俺は赤嶺の下腹部もミラーに押し付け、背後から抱き締める。

 

「~~~~ぁぁああああっっ!!」

 

 のけ反る彼女を抱いて、吐精する。

 しょわぁああ、と噴き出す小水がミラーを濡らす音が響く。震える赤嶺を抱き、吐き出される白濁が彼女の膣襞に飲み込まれる感覚に意識を委ねる。

 汗ばんだ赤嶺の後頭部に鼻を突っ込み、彼女の匂いを嗅ぎながら一滴残らず注ぎ込む。

 

「……ん」

 

 振り向かせる。唇を奪う。

 重なった唇は熱かった。

 

 

 

 

 それから、少しして予防接種が終わった。

 裸どころか喘ぎ、のけ反り、潮や小水を噴かされ、女の全てを見られた新人たち。そして二人分の負担を背負い、潰れたカエルのようになった赤嶺。

 マジックミラーの外では面白かったとばかりに拍手喝采の勇者たちと次の準備に移る者たち。

 

 全裸の友奈と高嶋が俺に抱き着く。

 程良い大きさ、柔らかい乳房を揉む俺に妖しく微笑む。

 そして、俺に抱き着いたままの友奈と高嶋は、少女たちに手を差し伸べた。

 

「「ようこそ! 勇者部へ!!」」




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【番外】友奈は続くよ

 楽しい楽しいパーティーの幕開けである。

 柚木、芙蓉、赤嶺。『友奈』と名のついた少女たちを、結城家と高嶋家の友奈で性的に成敗。女としての快楽を教えられ、みんなの前で喘ぎ、啼き、絶頂した姿を晒した。

 きっと恥ずかしいだろう。我に返ったら枕に顔を埋めて悶えるかもしれない。

 それでも身体に植え付けられた快楽は二度と忘れられないだろう。

 やはり友奈。結城家も高嶋家も最高の仕事をしてくれる。

 

「友奈、マッサージのやりがいは何ですか?」

 

「ほえ?」

 

 窓ガラスの設置された個室から出てきた俺は、会場にあったマイクを差し出す。わっ、と驚いたように声を出す薄紅色の少女は瞬きを繰り返して状況を理解する。

 白ビキニを着け直そうと背中に手を回していた結城家の友奈は楽し気に答える。代償に慎ましい乳房が露わになるが、彼女は気にせず俺に笑みと可愛らしい乳房を見せる。

 

「えっと、やっぱり気持ちいいって喜んで貰えると嬉しいです!」

 

「そうですか。俺も友奈が喜んでいるのを見ると嬉しいよ」

 

「えへへ……。私もね? 亮ちゃんが喜ぶと嬉しいよ! ……あれ? これって凄いよね。私が喜ぶと亮ちゃんが喜んで、亮ちゃんが喜ぶと私は嬉しい! これって、そーしそーあい? ってことだよね!」

 

 弾けるような喜び方は、どんなに凍り付いた心でも溶けてしまいそうな程に温かい。思わず頬を緩めてしまうのは友奈の力だろう。視界の端では東郷もにっこりだった。

 そんな俺の太陽、友奈に思わず手を伸ばして乳房を揉んでみる。まろやかな質感、ツンと硬くなった乳頭は少女たちへのマッサージに興奮したからだろうか。

 水風船のような感触の乳房は触れるだけで溶けてしまいそうな柔らかさだ。年相応に慎ましくも形の良い乳房は俺の手の強さに応じて変化する。

 

「ん……」

 

 俺の目の前で大人しく自らの乳房を差し出す友奈。

 従順な様子を見せ、甘く熱い呼気を漏らす彼女は濡れた瞳に喜悦を見せる。揉みしだく俺の手にそっと手のひらを置く彼女は媚びたような視線を向け、俺の手をそっと自らの下腹部に誘導する。

 ボトムスの中、薄い恥毛と濡れた恥部に触れて欲しいと無言で主張する。

 その態度に俺は彼女の媚肉にゆっくりと指を挿入する。

 くちゅ、と小さな水音は俺と友奈に確かに聞こえたのか、彼女は緩々と首を振る。

 

「ぁ……だ、ダメだよぉ……」

 

「友奈。イく時はちゃんと言うんだよ」

 

「や、ぁ……」

 

 頬を赤らめて瞳を濡らした友奈の顔を見ながら、俺は少女の媚肉を指で弄る。

 蠕動する雌肉は雄竿と間違えて指を締め付ける。は、あ、と絶頂に達する息遣いで、焦らさないでと懇願するような顔に、俺の指が彼女の悦ぶ場所に到達する。

 少しざらついた猫の舌のような感触。

 

「ひぁ! ぁ、そこっ……イク……ッ!」

 

 びくっと友奈は背を反らす。

 俺の肩を掴み、身を跳ねる友奈は指をフック状にした按摩で昇りつめた。

 

「~~~ッ!! ぅぁ! ああ……っ!!」

 

 踵が浮き、膝が震える。

 赤らんだ顔を俺の首筋に押し付けて絶頂に達する。

 荒い呼吸を繰り返す彼女に、中指でごしごしと悦ぶ場所を擦り続けると更に達した。

 

「ひっ、ぁ、ぁ……ッ! ふ、ゃ、ぁ……んむっ──」

 

 ゆっくりと唇を重ねると、俺の頬に手を当てた友奈が自ら舌を絡め始める。

 すっかり淫らになってしまった彼女と戯れていた時だった。

 

「ハァ……ハァ……こんなのは違う……」

 

 別方向から聞こえた声に目を向ける。

 マッサージ部屋から出された全裸の友奈たち。

 パーティー会場の白いテーブルに料理のように並べられた全裸の少女たちの内、赤嶺と芙蓉は虚ろな眼差しで呆けたような顔をしていた。

 二人に対して、テーブルクロスで身体を隠しながら起きようとしているのは、

 

「柚木」

 

「何がマッサージだ。こ、こんなの……ただの性的なぁあああッ!!?」

 

「もー、柚木ちゃん。そんなこと言ったらダメだよ?」

 

 可愛らしくも神が宿ったような手で柚木に悲鳴を上げさせるのは白ビキニを着け直した高嶋だ。

 俺が腕に抱いた結城家の友奈と瓜二つの容姿に、柚木に見せる表情は小悪魔のソレだ。

 悦びを与え、羞恥に震わせ、法悦へと至らせる。

 どことなくあざとくも、しかしそれが許される可憐さで、柚木の体躯を隠すテーブルクロスを剥ぎ取る。悲鳴を上げる柚木の乳房がぷるりと震え、脚が伸びる。

 

 力は戻っていないのか抵抗は弱々しく、高嶋に肌を許す柚木。

 胸を隠そうとする腕を掴んで頭上で拘束。

 脚を閉じようとする彼女の脚の間に入り込んだ高嶋に、慌てたように懇願する。

 

「まっ、待ってくれ!」

 

「ダメだよー」

 

 東郷を天然で悶えさせるのが結城家なら、どこか打算が入った養殖で相手を喜ばすのが高嶋家の友奈だと俺は考えている。

 白濁が溢れる恥部に指を挿入した高嶋は笑顔で少女の秘所を弄る。

 

「まだまだ元気だったんだ! それじゃあ、もう少しだけ皆の前でマッサージしよっか! ……それともまたお尻ぺんぺんしながら気持ち良くなっちゃう?」

 

「ヒッ!」

 

「あっ、じゃあ私もやるー!」

 

 キャッキャと無邪気な友奈が加わり、目の前で柚木が食べられていく。

 俺を涙目で睨みつけ、何かを周囲の少女たちに発しようとしていた少女は、今度はガラス窓越しではない痴態を晒す予感に身体を震わせる。

 胸元を隠そうとした腕を掴み、内腿を撫でる高嶋が妖しく笑った。

 

「ま、待って!」

 

「待たないよ? 悦んでいたし、お尻が真っ赤になるまでぺんぺんしながら気持ち良くなっちゃおー! その前にクリクリしながらイくのみんなの前で見て貰おうね」

 

「じゃあ私は……柚木ちゃんのお胸を揉むね。もみもみー」

 

「ひゃぁああああん!!?」

 

 スポーツをしているらしく、夏凜や若葉のように無駄な脂肪の少ない裸体。張りのある乳房を結城の友奈が優しく揉み、くりくりと先端を指先で弄る。

 綺麗な爪で乳首を擦る度に甘い声を上げる柚木の秘所に指を挿入する高嶋。

 荒い呼気を漏らす柚木の手が高嶋の腕を掴むが、彼女は止まらない。

 外から見ていると高嶋の小悪魔のような笑みしか見えないが、それでも指を動かして柚木の弱点をほじくり、弄り、ピンク色の媚肉から蜜液と白濁を掻き出す。

 

「わわっ、りょーくんの出てきちゃった。戻して……嫌なの? うーん、じゃあ出しちゃおっか!」

 

「んっ……ぅっ、ぁんっ、~~~ッ!! ぅぁッ!!」

 

 くちゅくちゅと水音が響く。

 赤面し、腰を浮かせる無垢な少女に抵抗の術はなく高嶋の言いなりだった。

 

「んー……ここだ!」

 

「あんっ! ゃ、は、ぅん!」

 

 面白がって友奈が乳首を咥える。

 あむ、と可愛らしく唇に含んで、腹筋を指でなぞって乳房を揉む。

 

「全部出しちゃえ!」

 

 掻き出すように秘所から高嶋の指が引き抜かれる。

 

「~~~~ッッ!! ぁぁぁああっっ!!」

 

 一瞬遅れて、柚木の秘所から噴き出す飛沫。テーブルクロスを汚すのは彼女の愛液だけではなく、先ほど注ぎ込んだ汚濁もだった。

 よほど気持ち良かったのか。二度、三度と腰を跳ねる少女。

 法悦に至ったことで目の前が白くなったのか、きゅっと瞼を閉じて顔を背ける柚木の花弁は収縮を繰り返し、小さく蜜を噴き出す。

 男がいることも忘れ、乳房も恥毛お恥部も曝け出した彼女に隠す気力はない。

 

 続けて二人の友奈は愉しそうに少女の身体を弄ぶ。

 

「ゃ、ぁっ、ふわぁ……!」

 

 友奈が乳首と陰核を苛め抜いて。

 

「ぁ、ぁぁっ、ぁぁああっっ!!」

 

 高嶋が自ら見つけた柚木の悦ぶ場所を指で擦る。

 逃げようと四つん這いになる柚木の尻を叩いては、お仕置きと称して指で潮を噴かせる。悲鳴を上げてテーブルクロスを濡らす少女の尻は赤く、叩かれる度に尻を上げてるように調教させられる。

 

「うんうん。この角度だから忘れたらダメだよー?」

 

 ちょうど背後から怒張を挿入しやすい角度だ。

 ……と思っているとトテトテとやってきた園子(小)が小箱を高嶋に差し出す。「どうぞ~」と渡された箱の中身は凹凸のついた疑似肉棒だ。

 振り返り、目を見開いた柚木の尻を高嶋はペチンと叩く。

 

「や、やだ……かはっ──~~~~ッッ!!!」

 

 叩かれ突き出した臀部を撫でて脚を開かせると、疑似肉棒を挿入する高嶋。

 慈しむような顔で、俺の腰使いを再現するような力加減と角度で抽送すると、荒い呼気と共に喘ぎ声と淫らな体臭を撒き散らす柚木の姿に、周囲も視線を注ぐ。

 

「も、ほんとにッ……いぅぅッッ!!」

 

「もう出ちゃったの? ……もう一回しよっか!」

 

「やら……やら……それ、とめて……ぁんっ! ぁ、ぁっ! また……ッ!!」

 

 ──それから十数分が経過した頃。

 高嶋と友奈が飽きるまで、少女はみんなの前で辱められ、気を失った。

 

 涎を垂らし、虚無を見上げる柚木に既に意識はない。ひくつく媚肉からは産卵するようにゆっくりと疑似肉棒が落ちた。

 すぐ近くのテーブルで一つの料理のように並ぶ芙蓉と同じく、許容できないだけの快楽に意識が飛ばされてしまったのだろう。反抗的にツンと尖った乳首ごとやや大きな乳房を揉みしだくも反応はない。

 少女たちの舞にたまらず怒張だけ参加させ、口腔奉仕させた柚木の口内と唇は白濁で汚れており、口端からは唾液と汚濁が垂れ落ちていた。

 

 ついでとばかりに芙蓉の薄い双丘を揉むというより撫でる。

 そのまま流れで高嶋、友奈の乳房と揉んでいく。

 

「んっ!」

 

「あっ、エッチだ!」

 

 反応を示す彼女たちは、俺が触れることに抵抗も拒絶もしなかった。

 キャッキャとはしゃいで、甘い吐息で俺の加虐心をくすぐる。天然でやっているのか、計算しているのか、妖しい笑みを浮かべて近づいてくる彼女たちは俺の手を取る。

 肌に吸い付くような生乳を揉んで歩き、一定の鼓動を確認して、そのまま赤嶺の乳房を揉む。

 

「……っ」

 

 友奈族にあるまじき豊満で褐色の乳房を手にしながら、そっと腋をくすぐる。

 きゅっと唇を結んだ赤嶺を見下ろしながら、滑らかな腋を蜘蛛のように指で弄る。何かを察したように高嶋と友奈も近づいてきては手足を拘束する。

 

「……、……ん」

 

 小麦色の素肌は赤らんでいるのかどうかが分かり難い。

 ただ、じわりと肌が汗ばみ、脇腹を撫で回し、脇に舌を這わせる度に、長い睫毛に縁取られた瞼と口元がぴくぴくと震える。

 少女の茂みを掻き分け、秘所を弄りながら赤嶺の鎖骨を爪で這わせる。

 

「ん、くふっ……」

 

 鼻息が荒くなり、仰向けの乳房が揺れる。

 テーブルクロスを掴む手に力が入り、口元を震わせる赤嶺を見て、声を上げる。

 

「寝ていると思う人ー!」

 

 周囲で見守る少女たちの中で一人だけ手が上がった。

 バニーガールとなった国土亜耶だ。

 自分だけであることに「ほえ?」と目を丸くした純真無垢防人サーの姫巫女は不思議そうな顔をして周囲を見渡す。

 

「眠っていませんか?」

 

「……すぅ、……す、う……」

 

 亜耶の言葉に赤嶺の寝息が続く。

 腹筋を指でなぞり、腹部を撫で回す。ゆっくりと床に彼女を下ろした上で、そっと両手首を拘束。異変を悟りながらも寝息を立てる赤嶺を興味本位で見下ろす野次馬少女たち。

 

 通りがかった防人サーの姫はともかく、樹以外にも増員された杏バニーと水都バニーがゲームを主導している。

 友奈ズの交わりよりもゲームに夢中なクールな美少女&美女たちはルーレットやカード、ボードゲームを楽しんでいた。特に千景は大人げなく無双しており、大人若葉といい勝負な様子だ。

 背後霊のように若葉の背中に密着する着物を着たひなたがチラリと俺に目を向ける。

 

「ちなみに優勝者は亮之佑さんと皆さんの前で濃厚なエッチをします。他の順位の人はそれぞれ指定した衣装に着替えて貰います」

 

「はあ!? 聞いていないのだけど」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。……二人きりではダメか?」

 

「うーん……。要相談で。ちなみに棄権、あるいは負けた場合はペナルティ。イってしまうまでエッチなお仕置きを受けて貰います」

 

「……どっちもエッチじゃない」

 

「お二人とも仲が良いですから同率一位でもいいですよ?」

 

「絶対に嫌!」

 

「大丈夫だよ~二人とも。もし勝った時に運営側が負けたら……」

 

「負けたら?」

 

「今、バニーガールの子は全員……こっちの逆バニー衣装を着て貰うんだぜぇ!! フゥ〜! 勇者カジノのオーナー特権で絶対なんよ~!」

 

「ええ!?」

 

 対して、乳首を引っ張ると反射的に手が出た赤嶺の手を舐める俺の周りには、妖しい雰囲気と笑みを見せる妖艶な少女たち。

 赤嶺の乳房で怒張を挟み込み、先走りを顔に擦り付ける俺を友奈たちが引っ張る。友奈が赤嶺の脚を開かせ、赤嶺の乳房で扱いて硬くなった怒張を秘裂に宛がう。

 

「……ッ」

 

 亀頭が陰核を擦り、唾液と先走りが陰毛を濡らす。

 元々オイル塗れだった彼女の陰唇を開くと、透明な愛液が亀頭を濡らす。

 にじゅにじゅ、と蜜液と絡めながら擦り、一息に挿入する。

 

「……ぅ、ぁぁ」

 

 喘ぐような呻きで、怒張を締め付ける膣。

 膣襞が絡み、強く締め付けるのは普段から筋トレに勤しんでいるからだろうか。

 無言で続きを求める観客たちに、元気っ子たちは手をワキワキと動かす。

 

「よーし! 勇者ぁ……こちょこちょ~!!」

 

「ふっ、くっ、アッハッハッハ──!! 待って! 起きてるっ、起きてるから!!」

 

 赤嶺の足裏を彼女たちはくすぐる。

 たまらず目覚めた赤嶺に密着して、ピストンを開始する。

 

「くふっ、あひっ、……や、ヤるなら真面目にやってよ!」

 

 怒っているのか泣いているのか混乱したように俺の背中を叩く赤嶺。

 豊満な乳房を胸板で押し潰し、腹と腹を重ね合わせ、怒張の根本まで受け入れた雌肉はバターのように蕩けて雄を迎え入れる。

 

「……ぅ、ぁ、……は、ぁ」

 

 褐色の肌に汗を浮かべ、甘く爛れた嬌声を聞かせる。

 他の少女と違い、ガラス越しに痴態を見られただけではなく、他の少女の痴態を傍で見聞きした上で、再び犯される。

 男なら既に射精しているであろう快楽に、赤嶺の膣は熱くなっていた。

 

 笑い声と喘ぎを混ぜた赤嶺の唇を奪う。

 柔らかく瑞々しい唇に唇を重ね、種付けするように腰を落とす。

 

 ぱんぱんと肉を叩く音に、遠くから少女たちの声が聞こえる。

 歓声や悲鳴、ゲームの音などがどこか遠くの出来事のように聞こえながら、絶頂を意識した腰の動きで身体を重ねる。

 

「ん、んっ──、んむっ!! んふっ!! ッ……!!」

 

 脚を開き、背中に腕を回して俺を受け入れる赤嶺。

 舌も肉棒も受け入れて、濡れた下半身を押し付けては俺の下半身を濡らす。

 ぱちゅ、ぱちゅ、と肉音に水音が混ざる。

 

「ぅ、ぅ、ぅっ……んんっ……!!」

 

 背中に爪を立て、きゅっと身体が強張った。

 彼女の内腿が腰を叩き、殆ど同時に果てた。

 

「んぅぅぅうううっっっ!!!」

 

「くっ……!!」

 

 吐き出した精は濃厚だった。

 赤嶺の中に改めて放たれる精液が膣を叩き、彼女は何度か小刻みに震える。

 

 

 

 

 ゆっくりと全身を弛緩させた赤嶺にぐりぐりと竿を押し付ける。

 

「……というか重いから退いてよ。……んっ、抜いてってば──ンむっ!」

 

 唇を塞ぐ。

 ぶつくさと小言を放つ唇を奪うと、睨みつける瞳を揺らして瞼を閉じる。

 受け入れるように、雄汁を呑み込んだ膣襞が挿入したままの怒張を甘く締め付ける。

 

「んんッ………ぷはぁっ! ……亮之佑くんはアレだよね。こういうのだけは上手いよね」

 

「それはもっとして欲しいってこと?」

 

「ウザ……んっ──」

 

 汗だくの褐色の柔肌を押し付け、綺麗に割れた腹筋を擦りつけ、甘い吐息を聞かせる。

 唇を離すと、とろんとした表情で悪態を吐きながらもキスをねだり出す。

 

 髪を指で梳きながら唇を重ねる。

 回復していく怒張を抜かず、そのまま腰を密着させて押し付ける。

 

「ねえ、まさかだけど……まだするつもり?」

 

「赤嶺ちゃんでもユナニウムは摂れるからさ」

 

「はあ? そういうのは結城ちゃんとしたらいいじゃん」

 

 至近距離で半眼を見せる赤嶺と頬を触れ合わせる。

 豊満な乳を揉み、少女の膣内で肉棒が硬さを取り戻すのを感じながら、なんて答えようかと考えていると少し離れた空間で歓声が聞こえた。

 ただの性行為に興味ないのか、周囲にいた少女たちはゲームに参加しに行った。

 柚木と芙蓉は、気に入ったのか友奈と高嶋、そして東郷がどこかに連れて行った。きっと更なる調教、もしくはマッサージを施しているのだろう。

 

 俺は悪態を吐く赤嶺と唇を重ねて、肉棒を膣内で擦りつける。

 すっかり俺の形に馴染んだことを告げると、やや噛みつくようなキスで締め付けを増す。

 

「……弥勒を放置して、いつまでそうしているつもり?」

 

 唇を重ね、怒張を擦り続けて甘い快楽に浸っていると、ふと声を掛けられる。

 呆れたような声音に顔を上げ、赤嶺が慌てたように身じろぐ。咄嗟に体重を預けて彼女を拘束する中、赤嶺が声を上げる。

 

「れ、レンち!? ふ、服は?」

 

 逆バニーガールの姿となった蓮華がいた。

 腕を組み、豊かな乳房を晒した彼女はくびれた腰も風になびく恥毛も隠すことなく堂々としている。仁王立ちする彼女は俺の視線にも隠すことなく、寧ろ見せつけるように胸を張ると、ぷるりと揺れた。

 何一つ秘所を隠せていない恰好に唖然とした様子の赤嶺に、小さく蓮華が笑う。

 

「友奈。そんな小さいことをまだ気にしているの?」

 

「小さくないよ!」

 

「ふっ、……弥勒の時間は金の如し。いつまでも乳繰り合っている二人を呼ぶ為にわざわひゃぅん!?」

 

 黒い恥毛を引っ張り、秘所に指を挿し込む。

 にゅぷ、と濡れ場に興奮していたのか滑るように挿入できた指に蓮華は可憐な悲鳴を上げた。慌てて距離を取ろうとする前に、俺は指をフック状に曲げる。

 勇者に変身する前の少女パワーでは俺からは離れられない。

 

「や、ちょっ、離しなさい……あんッ!!」

 

「赤嶺ちゃん。時間のようだ」

 

「うん。さっさと行って他の子も辱めて来たら? あと、レンちは離してあげて」

 

「そんなこと言うなら赤嶺ちゃんも締め付けるの止めて欲しいな」

 

「し、してないよ!」

 

 どこか冷たい眼差しで俺を見る赤嶺が怒ったように膣を締め付ける。赤嶺の要求に従い、蓮華を解放すると赤らんだ顔で恥部を手で覆い距離を取って俺を睨みつける。

 その視線に笑いながら、赤嶺の頬を撫で、告げる。

 

「最後に赤嶺ちゃんからキスして」

 

「えっ!?」

 

 先ほどまで散々唇を合わせていた癖に彼女は戸惑ったように目を逸らす。

 少女の体温が僅かに上昇した気がした。

 「うぅ〜」とか「ぁー」とか唸り声を上げて俺を見上げる赤嶺は今更ながら恥ずかしがっていた。目を泳がせる端正な友奈顔を見下ろしていると、

 

「わ、分かったから。──目を閉じて」

 

 覚悟を決めたように、俺の頬に手を置いて唇を重ねた。




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【番外】カジノの妖精

いつも感想や誤字報告に感謝であります!


「では、ルールを説明します!」

 

「うおっ!? 唐突!」

 

「はい! いつだって物事は唐突なんです!!」

 

「どうしよう。テンションが高いよ……ついていけるかな?」

 

 カンペを手に語り始めるのは逆バニーの衣装を着た亜耶だ。

 俺を取り囲み、恥ずかしそうにしている巫女組と樹は全員が逆バニーの恰好をしている。薄く、慎ましい乳房を腕で隠し、生え掛けの薄い茂みや無毛の恥丘をもう片方の腕で隠す少女たち。

 

「き、気を付け。オーナーの旦那様に礼」

 

 亜耶の号令で、樹、水都、真鈴、美佳が俺の前で商品のように横へと並ぶ。

 彼女たちはやや躊躇うように両手を後ろに回す。すると、恥毛の広がりや濃さ、乳首や乳輪の色や大きさ、赤面度合いや恥部の濡れ具合まで一目瞭然となった。

 俺と目が合うと顔の朱色を濃くして顔を背ける少女たち。ツンとした乳首を曝け出しつつ、せめて秘所だけはと薄い恥毛と密着させた内腿で隠そうとする仕草が雄としての興奮を誘う。

 

「あら? 礼の仕方を間違えていませんか?」

 

「……っ」

 

 亜耶の言葉に、何があったのか従う巫女たち。

 ゆっくりと脚を広げて頭を下げる。

 床を見ると、何人かの少女の恥部からぽたりと何かの滴が垂れ落ちるのが見えた。

 

 視線を上げる。すると礼によって重力に垂れ下がる乳房の大きさが分かる。いずれも年相応の乳房や恥部で、豊満で色香のある大人ボディも見たくなってくる。

 それはそれとして、ビックリする位に従順な巫女たちだ。そう告げると亜耶が笑って頷く。

 

「頑張りました」

 

「偉いね。ちなみに濡れている子が既にいるのはどうして?」

 

「それは……その、ゲームに負けたので玩具で自分を慰める罰ゲームをしたからですね。美佳先輩と真鈴先輩は凄かったですよ。互いを弄り合って、でもエッチな声を上げていたのは真鈴先輩の方で──」

 

「ちょ、ちょっと国土ちゃん、それ以上は待って!」

 

「……?」

 

 ジロジロと見続けていると、かああっと首や耳まで赤くなる姿に満足感すら覚える。むわりと漂う甘い香りには既に雌の発情した芳香が混ざる。

 美佳や真鈴の内腿を伝う透明な雫を指ですくうと、彼女たちは静かに目を伏せる。

 

「ここまで皆さんを導くことができたのは、亮之佑先輩の教えの賜物です」

 

「ハハッ……こいつめ~」

 

 愛想の良い笑顔で謙遜する亜耶。

 さらりとした髪越しに頭を撫でると、子犬か子猫のように手のひらに頭を擦り付ける。このあざとさと小悪魔が混ざり合った上目遣いに脳を焼かれた者が多いのだろう。

 ちなみに、その集団の名を防人サークルと言う。

 頭を撫でると共に、亜耶の薄くも柔らかい乳房と無毛の媚肉を指に吸い付かせる。ツルツルの幼き恥丘は意外と珍しく花弁も陰核も曝け出しており、触り心地は良い。

 

「触り心地と言えば、ひなたさんは? あと、須美と俺の東郷さんは?」

 

「……何が『と言えば』なの?」

 

 とツッコミを入れる水都の控え目ながらもツンとした乳首を弄っていると、亜耶が答える。

 

「その三人は全員殿堂入りで、特にひなた先輩と後で遅れて来る東郷先輩は運営側に回ると園子先輩……オーナーからの指示がありました。ちなみに静先輩は蓮華先輩が赤嶺先輩の下に連れて行きました。亮之佑先輩のサポートを行うのは私たちですが人手不足なので後で運営側に戻る予定です」

 

 5人の少女たちが俺の手足となるらしい。

 それは嬉しいのだが……。

 

「じゃあ、今って誰が場を繋いでいるの?」

 

「園子先輩とひなた先輩ですね」

 

「二人だけなら、もう裸に剥かれていそう」

 

 乳首を弄られ続け、快楽から逃げようとする水都を捕まえる。床に仰向けにさせて無理やり陰唇と唇を重ねる。「ひゃあ!」と悲鳴を上げる少女が嬌声を漏らし、ふにゃふにゃになる姿を他の巫女たちが見下ろす。

 恥部を舐められ、喘ぐ水都が腰を幾度も跳ねる。

 

「ゃ……ぁ……」

 

 俺の顔を締め付ける太腿が弛緩する。虚空を見上げて腰を跳ねる水都の姿に絶頂に達したことを悟った。しかし、まだ頑張れる筈だ。

 陰核を指で押し潰すと、どこに力があったのか本気で暴れ出す。

 だが俺の拘束は振りほどけず、太腿を掴んで恥部に顔を埋める俺の頭を掴んで喘ぐしかない水都は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして喜悦に浸る。

 

「ぁぁっ!? そ、れ……ぃぅぅっっ!!」

 

「凄い敏感だね、水都ちゃん」

 

「ま、まって! もっ、もうイった! イったからァッ!! ~~~ぅぁっ!!」

 

 俺の指に押し潰され、擦り潰され、背中を反らして身体を跳ねる。

 満足するまで水都の身体で遊んでいると無言で彼女たちが見てくる。どうしたのかと見返すと真鈴が身じろぐ。「あはは……」と乾いた笑いで彼女は身体をくねらせて自らの身体を隠そうとする。

 少女の痴態に興奮したのか、薄い恥毛越しに濡れた秘所が照明に光って見えた。視線を悟ったのか、サッと下腹部を手で隠そうとする真鈴は「あー」と話を逸らす。

 

「その、上里ちゃんは元からだったけど今は完全に大人の身体よね。中身も伴って女性って感じで……あ、あと、亮之佑ちゃんはあんまり見ないで貰える? は、恥ずかしいから……っ」

 

「安芸先輩。加賀様にその発言は逆効果ですよ。手は下ろして堂々としている方が……、ッ!」

 

「そ、それは流石に……」

 

 色白の肌に薄っすらと朱色を差す姿は可愛らしい。

 恥じらう姿には、思わずニッコリと笑みが浮かび下腹部に血が巡る。天国から帰って来られず潰れたカエルとなった水都を寝かせ巫女に近づく。

 半眼で俺を見上げる眼鏡の巫女、美佳の腰を抱き寄せるとビクッと身体を硬直させる。無言の美佳の唇は奪いたくなるほどに瑞々しく、彼女たちの前で唇を重ね、ピンクの乳首を爪で掻く。

 は、ん、と甘い息遣いで俺を見上げる眼鏡の巫女は唇を震わせる。

 

「んむ……んちゅ……いきなり……」

 

「美佳の唇があんまり美味しそうだったから」

 

「……意味が分かりません」

 

「もう一回していい?」

 

「……」

 

 プイッと赤らんだ顔を背ける姿は、ツン成分が多かった頃の千景に似ている。他にも俺の腕の中から逃れようとはせずに、雄を受け入れることも。

 太腿に押し付けた彼女の恥部は熱く濡れ、ふわりとした恥毛が俺の下腹部をくすぐる。

 

「さっきより濡れてるじゃん。エッチな巫女だな」

 

「た、ただの生理現象です……ぁっ!」

 

 首筋に口づけしながら肉棒を媚肉に擦りつけると、荒い呼気を漏らす。

 モチモチとした尻肉を揉みながら、彼女の言い訳のような言葉に耳を傾ける。

 

「い、言っておきますが、私はただ郡様が悦ぶ姿を見たいので、優先的に対応して頂けるように、このような下品な格好で奉仕をするだけですから」

 

「なら撮るね」

 

「話を聞いていましたか?」

 

 嫌がるように顔を手で隠す美佳に携帯端末のカメラを向ける。

 千景はさせてくれた、と耳元に囁くと、しばらくしてから手を下げた。甘い香りを漂わせる首筋を甘噛みし、尻肉を割り拓くと陰唇に指を這わせる。

 

 片足を持ち上げて美佳の陰唇に肉棒を擦りつける。

 先走りと蜜液を潤滑油に素股を堪能する。

 

「は……ぁ……んっ」

 

 口数少なく快楽を味わう美佳は俺の肩に手を置く。

 唇を震わせ、喘ぎを押し殺す彼女の雌肉に亀頭が入りそうになっては抜く。そのまま陰核を亀頭で擦るように腰を揺すって彼女の反応を楽しんでいると樹が近づいてくる。

 

「し、失礼します」

 

 美佳の愛液と先走りで汚れた俺の肉棒の前にしゃがみ込む樹。

 ふわふわの短いブロンドヘアを撫でると、少し躊躇いながらも「あむ」と亀頭を唇と触れ合わせつつ呑み込んでいく。

 

「俺のマイクはどうだい?」

 

「……ふぇくはらです」

 

 少し肉竿に歯を立てる樹の舌に肉竿を擦りつけながら、真鈴を抱き寄せる。小さく息を呑む真鈴の下腹部を触りながら、左右の手で少女たちの乳房を揉む。

 美佳と真鈴の慎ましい乳房をそれぞれ好きに揉んでいく。そのまま美佳と真鈴の脚を開かせると、秘所を俺の身体に擦りつけさせる。

 

「……っ」

 

「あ、ぁっ、ぁ……」

 

 熱く濡れた媚肉と共に恥毛のこそばゆい感覚を感じながら、少女たちの尻を軽く掴む。

 優等生な彼女たちは、睨み、あるいは涙目を見せるという違いはあれども巫女になれる知能を十全に発揮し、男を悦ばせる為に腰を動かし自らの媚肉を擦りつける。

 は、あ、と甘い吐息を漏らす彼女たちは俺の身体で自慰に耽るようだった。そのまま樹と交代し、互いの陰唇で肉棒を挟み込むように少女たちは腰を上下に動かして奉仕する。

 

「ふっ……ん」

 

「こんな、っ、変態みたいな……」

 

「でも真鈴さんの方が濡れてるよ? 誤差程度だけど。興奮してるんだね」

 

「ちっ、ちがっ、違うよ! そ、そんな訳ないじゃん!」

 

「……安芸先輩はこういうの興味があるんですよ。夜な夜なコッソリとしていてうるさいんです」

 

「ちょっと!? 花本ちゃん!」

 

 赤面して離れようとする真鈴の腰を掴んで奉仕を続行させる。

 首を振り嫌がるふりをする彼女の媚肉からは愛液が滴っていた。

 

「ほら、真鈴さん頑張って。美佳はあとで千景と一緒に抱いてあげるから頑張って奉仕して」

 

 ぺちん、と尻を叩くと至近距離で俺を見つめる半眼の美佳。

 どこか反抗的な態度に頷きながら、俺は真鈴と美佳の二人の肩を掴んで膝立ちさせる。

 反り立つ肉棒を二人に向ける。竿を見せつけて、そっと目を逸らす彼女たちが怒張を見るまで互いの頬に擦り付ける。

 やがてマジマジと竿肉を見つめる少女たちに告げる。

 

「何かすることは?」

 

「こ、これってフェラチオって奴よね、花本ちゃん」

 

「私に聞かないで下さい……ぁー」

 

「ぅ、く……」

 

「ん……ぁむ」

 

 最初に美佳から竿をキスをして、真鈴が続く。

 大人しく肉竿や亀頭を二人で奉仕を始める。亀頭にキスをする美佳は千景の真似をするように、恥ずかしそうに竿に唇を這わせる真鈴は美佳の動きを模倣するように。

 従順な巫女二人の頭を撫でながら、

 

「出すぞ。ちゃんと飲めよ」

 

「んぅ……ッ!? んぶっ、んん……ゲホッ……」

 

 グイっと竿を突き上げると美佳の頬が膨らみ、咽る。

 目尻に涙を浮かべた彼女に笑みを見せながらゆっくりと腰を動かす。途中、少しだけホッとしたような顔を見せる真鈴の唇を美佳が奪うと、口内の白濁を無理やり飲ませる。

 

「んんっ!? ちょっと……ん、やだ……」

 

 有無を言わさずに美佳が真鈴の唇を奪う。

 生娘のように顔を赤くして身体を硬くする少女を抱き寄せて唇を重ね、舌を絡ませ、白濁を味わさせる。羞恥を孕んだ瞳が徐々に虚ろになり、キスを求めるだけの姿になるのを見ながら、白濁を共有する少女たちの頭を撫でる。

 そのまま肉竿を差し出し、二人で仲良くしゃぶらせる。

 

 そんな中、休憩するように座って見ている樹に亜耶が声を掛ける。

 

「ねぇ、樹ちゃん」

 

「亜耶ちゃん……?」

 

「暇そうなら、さっき亮之佑先輩がやった触り合いっこをしない?」

 

 真鈴と美佳に構っていると、亜耶と樹が遊び出す。

 主に発情した亜耶と一人で慰めていた樹がシックスナインの体勢で秘所を弄り合う。樹が下、亜耶が上で、終始亜耶による小さな舌が樹を蹂躙していく。

 

「んっ、んふっ……ぁぁあっ~~~ッ!!」

 

 発情したウサギたちが秘所を弄り合い、舌や指での技量で果てさせる。

 トロンとした表情で妖しい眼差しを見せる亜耶に秘所に指を挿入されて、水音を立てている樹は為すすべもなく絶頂させられていた。

 

「ぁ、っ、だ、だめぇ……イ、イっちゃ……っ!! んぅあッ!?」

 

「あむ……んっ……」

 

「イクッ! イクイクッ!! お……ッ!! あやちゃ……ッ!!」

 

 樹の恥部に顔を埋めた亜耶は無言で攻め立てる。

 手を動かして、彼女が感じる場所を的確に弄り、同時に陰核も指の腹で押し潰す。いとも容易く喘がされる少女の顔に恥部を押し付ける亜耶。

 

「だめっ……だめらから……」

 

「駄目じゃないよ樹ちゃん。いーっぱい気持ち良くなって?」

 

「~~ッ! ぅぁっ!!」

 

 小悪魔染みた笑みで、樹を絶頂させる。

 涙を流し、見開いた瞳には快楽以外を考えられない彼女に、まるで赤子をあやすような手つきで亜耶は微笑む。ガクン! と大きく腰が跳ね、弧を描く小水が亜耶を濡らした。

 潮を浴びた彼女は恍惚な表情で、更に樹を攻め続ける。舌なめずりをする亜耶は既にあの頃の無垢な姿はない。小悪魔として覚醒した彼女は同い年の少女だろうとお構いなしだ。

 それを見ていた美佳と真鈴が肉竿を舐めながらポツリと一言呟く。

 

「凄いわね……」

 

「……人は見かけによりませんね」

 

 これは亜耶に負ける。何に負けるかは分からないが男として敗北する訳にはいかない。直感的に感じ取った俺は本気を出す。

 二人分の唾液でコーティングされた竿は準備万端。寝転がり、反り立つ逸物を見せつけると無言で美佳に挿入を促す。

 

「……っ」

 

 俺の腰に跨り、少し前まで無垢だった恥部を見せる彼女は俺の怒張を手に取ると秘所に宛がう。ピクッと腰を引かせるも俺の視線を受けて、ゆっくりと挿入していく。

 

「ぁ……ぅ……」

 

 ぬぷぷ、と肉を割り拓くような感触と共に、美佳の嗚咽がこぼれる。

 初々しく締め付け、赤面した顔で俺を見下ろす彼女は、何を言う事もなく腰を上下に動かす。ゆっくりと抜こうとする度に彼女の腰を掴んで一息に貫く。

 

「ぷわぁああっっ!?」

 

 ぷしっと軽く小水を噴いた彼女に同じ動きを促す。

 俺を見る眼差しには喜悦と共に恐怖を宿し、しかし身体は従順に従う。

 

「自分の気持ちいい所を俺の物で擦るんだ。できるな?」

 

「あ、はい……」

 

 ぱちゅ、ぱちゅ、と濡れた肉音が響く。

 口元を手で押さえながら、脚を大きく開いた美佳が腰を上下させる。稚拙な動きで怒張を抜き差しする度に、ぬるりとした蜜が竿に絡まる。

 

「ぅ……く……ふっ……」

 

 ゆっくりと彼女は竿を引き抜く。結合部から露わになる竿からは新鮮な蜜が伝う。虚ろな表情で俺を見る美佳は荒く呼吸を繰り返し、

 

「くっ、ふ、ん……ぁ、ぁ──」

 

 自らの自重で竿を最奥へと挿入しようとする。

 「ぁー」と半開きになった口から涎が垂れ、俺の腹部に手を置いて小刻みに痙攣する。中途半端に挿入された怒張は苛立ちを覚えてより硬くなる。身体のストレスに俺は腰を突き上げる。

 

「お゛ッ!!? お……ほぇ……」

 

 頭を振った美佳の眼鏡が顔から外れて落ちた。

 根本まで呑み込んだ美佳の雌穴はよく引き締まり、結合部からは新鮮な蜜と泡立った雌汁が陰毛を汚し肌に張り付く。

 ぱくぱく、と開閉する口からは喘ぎを漏らす美佳を見ながら、俺は腰を突き上げ続ける。

 

「や、まっ、だめぇ!! ……ぁっ、ぁぁっ!!」

 

 俺から降りることも叶わず、貫かれた美佳は男の玩具として鳴き続ける。

 その光景を、戦慄したような顔で見る真鈴。

 薄い身体を恐怖で震わせる彼女と、樹を気絶させた亜耶を手招きして、騎乗位を堪能する美佳の左右で膝立ちをさせる。俺は左右の手を、特に人差し指と中指を差し出すと二人に告げる。

 

「……何をしたらいいか分かるね?」

 

 真鈴と亜耶の膣内は俺の指を簡単に受け入れた。

 きゅうっと締め付ける媚肉は初々しさに関係なく、雄を求めて蠕動する。代わりに挿入した指先一つ、いや二つを受け入れて熱い蜜と喘ぎを垂れ流すだけだ。

 腰を突き上げ、指を動かす。

 左右の少女の弱点、媚肉の中に潜むざらついた場所を掘り当てて、指の腹で擦ると息遣いが変わった。

 

「ゃ、ぁ、ぁん……」

 

「は……これッ……もぅ、ぃく……ぅ」

 

 俺の腰が激しく美佳を攻め立てる。

 頭を振り、理性をかなぐり捨てた巫女もタイミングを合わせるように腰を振る。

 

「ぁっ、ぁ、ぁっ、はんッ」

 

「ぃぅっ……ぅうッ……っ!」

 

「ッん……あぁっ……!」

 

 泡混じりの愛液を垂れ流し、乱暴に弱点を擦る俺の指にビクッと震える亜耶と真鈴が背を反らす。指越しに伝わる体温、嬌声が身体に響く。

 眼鏡を落とした美佳は涙を流し、熱く濡れた吐息を漏らす。

 

 三人を同時に自分の好きにしていた。

 俺の指、怒張に合わせて楽器のような嬌声を上げる少女たちは白い肢体をくねらせ、左右に揺れ、髪を振り乱し、甘い香りを撒き散らす。

 俺たちは快感を追求する。

 彼女たちもまた巫女という御役目を忘れて、本来の女の役目を果たし、堪能する。

 

 ぱんぱん、と下から突き上げる。

 くちゅくちゅ、と指が高速で動き逃げようとする腰を追いかける。二つの音は混じり合うほどに激しさを増す。

 両手が濡れ、下腹部に伝わる弾力と共に俺の怒張が美佳の最奥を刺激する。

 

「くぁ……っ!」

 

 唇を結び、バランスを求めて左右の少女たちに触れる。

 その瞬間に俺の指が少女二人の陰核を押す。

 

「ぁっぁっあぁッ!」

 

「ふわっ!?」

 

 濡れた陰唇から噴き出す滴が指を伝って腕まで垂れる。やり返すようにバランスを取ろうとする膝立ち二人が美佳の肩を掴み、竿をより深くまで押し込む。

 

「かはッ──ぁああっっ!!?」

 

 ぎゅっと瞼を閉じた美佳が髪を振り乱す。

 甘い声が三人分。

 指と腰を動かして、ひたすらに快楽を求め、意識が白く染まっていく。

 

「────!!」

「……! ……!!」

「~~~!!」

 

 入り乱れた声が混ざり、射精衝動が限界に達する。

 

「ぐぅっ……!!」

 

 どくどくどく、と溜め込まれた白濁が美佳の最奥へと注ぎ込まれる。噴き出す汚濁の熱に彼女の身体は震え、俺の意識すら白く染まる。

 

「っぁ……!」

 

「ん、っ……!」

 

 絶頂に震える俺の手は真鈴と亜耶の陰核に指をやり、刺激で天国を見せていた。

 上と下の唇から涎を流す亜耶と、恍惚の表情で潮を噴く真鈴。

 

「ぁ、は……」

 

 壊れたように笑う美佳がぺたりと全身を預けて来る。

 追随するように、亜耶と真鈴も抱き着いてきた。みんな、柔らかくも慎ましい乳房を押し付けて、熱に浮かされたように唇を重ね合わせた。

 

「亮之佑先輩……」

 

「ん? どうしたんだい、亜耶ちゃん。物足りない?」

 

「そうですね……。真鈴先輩にもしないんですか?」

 

「イッ!? えっ、いや……もう十分かなぁって」

 

「……いえ、安芸先輩は満足していません。あと国土さんも。キチンと加賀様の精を受け入れて初めて巫女としての御役目を果たしたと言えるでしょう」

 

「ちょっと、何を言っているの!?」

 

 俺の胸板に顔を埋めていた美佳の援護もあり、俺は亜耶と美佳と共に真鈴を満足させた。その後、亜耶にも師弟の上下関係を理解させて、子種を注ぎ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 気持ち良すぎて真鈴が漏らした床の清掃や、復活した樹や水都も含めて、一緒にみんなでホテルのシャワーを浴びて身体を清めると、それなりに時間が掛かった。

 

「では、ルールを説明します」

 

「どうぞ」

 

 亜耶を抱き締めて、カジノに向かう。

 ぞろぞろとついてくる巫女たち。汚れた逆バニーを脱ぎ、各々の可愛らしくも男を意識したような下着姿で闊歩する。先ほど抱いたのに、それでも恥ずかしいのか、下着を手で隠そうとする。

 

「いや、さっきの恰好よりマシかもしれないけどさ……逆にこれもさ……」

 

「隠せるだけ良いのでは? というより、その下着、随分攻めてませんか?」

 

「えっ、本当だ! こんな……」

 

「ち、ちち、違うってば!」

 

 下着姿でうろつく少女たちを見ながら、亜耶と樹の頭を撫でる。

 

「裸よりも下着姿の方がエッチだよね」

 

「そうだね……」

 

 ちょうど撫でやすい位置にいる彼女たちは手を繋ぎ、先ほど蹂躙し、された関係を忘れたように笑い合っていた。

 

「話を戻しますけど、亮之佑先輩には妖精さんになって貰います」

 

「フェアリーってこと?」

 

「なんで英語で言ったの?」

 

 結局シャワー室で肉棒を突っ込まれた水都を見ると、ビクッと身体を震わせて美佳の背後に隠れる。ジッと見続けていると両手を広げて庇う美佳と見つめ合う。

 白の清純な下着姿の美佳の身体に所々見える口づけの痕を見て、「もう一回する?」と聞くと先ほどの情事を思い出したのか顔を赤くして軽く睨まれた。

 俺の白濁が残っているであろう剥き出しの腹部を撫でると、手で払い落とされる。

 

「……国土さん。話の続きを」

 

「は、はい」

 

 扉を開ける。煌びやかなカジノは思ったよりもうるさくない。ルーレットを回す勇者や、スロットゲームや、何故かあるアーケードマシンで遊ぶ勇者たち。

 

「いや、アーケードマシンはないだろ」

 

 亜耶が提示したルールはシンプルだった。

 他の少女たちは俺と、俺が行うあらゆる悪戯に反応を示さない。もしも反応を示したら大幅に減点。ペナルティーが発生するらしい。

 

「ペナルティー……罰ゲームの内容はオーナーと……えーあい? が決めたエッチな内容を私たち運営側が行います。もちろん亮之佑先輩も参加していいですよ」

 

 既にゲームは始まり、ポイント制で順位が設けられる。

 定期的に時間が経過すると、順位に応じた衣装に着替えさせられるらしい。また、ゲームとは別に対戦ゲームなどで敗北した場合も減点されるという。

 2位以下は何かのペナルティー。もしも1位になれたら……。

 

「三十分だけ亮之佑先輩とホテルの一室で二人っきりの権利が得られます」

 

「ふむ……」

 

「ポイント数や要望に応じて、時間の延長や運営側から誰かが手を貸すことも可能です」

 

 園子が用意したであろうカジノには、本格的なカード系は無いようだ。人数的な問題や難しさを考慮して、人狼やトランプのダウトを行っている。

 また、スクリーンに表示された対戦ゲームは人気だ。寧ろそちらの方が盛り上がっている。

 

「ああいう殴ったりするゲームはちょっと怖くて……」

 

「可愛いね。でもほらマッチョなおじさんだけでなくて、ふわふわしたキャラクターとかもいるよ」

 

「あっ、本当ですね!」

 

 アーケードゲームもあり対戦している少女たちが敗北に声を上げるのが聞こえる。亜耶の説明では彼女たちも既にルール説明を受けたらしい。入場した時だけは注目を集めた気がしたが特に気にせず遊んでいる。

 これから彼女たちにセクハラをしていく。

 そう意識した途端、身体中の細胞が歓喜するのを感じた。

 

「俺は妖精!」

 

「はい!」

 

 おもむろにアーケードゲームに専念していた千景に近づく。

 緊張したのか硬直する彼女のドレスのスカート部分を捲り上げる。咄嗟に手で押さえる千景に亜耶が告げる。

 

「今みたいな妖精さんの邪魔をするのは減点ですね」

 

 カキカキと背後の下着少女たちがメモする。

 息を呑む千景の体温が上がるのを感じ、同時に手で押さえる抵抗が消える。

 

 捲り上げる。

 

「亜耶ちゃん見て。黒だ」

 

「……っ」

 

「本当ですね。それにおけけが……薄っすらと透けていて……大人ですね」

 

「……ッ!」

 

 ドレスの中、黒のやや大人びた下着。

 装飾がされたレースが入ったショーツと、視線にもじもじと震える太腿。見上げると、アーケードマシンに顔を向け続ける千景の顔がみるみる赤らんでいく。

 

「随分エッチなの穿いているね。ちょっと透けてるし……期待しているんだ?」

 

 太腿を撫で、布越しに秘所に触れる。

 そのままゆっくりとショーツを下ろしていく。咄嗟に止めようとした千景の手が亜耶の視線に固まる中、徐々に黒の恥毛が露わになり、むわりと雌臭が漂う。

 捲り上げた千景の秘所を亜耶と二人で覗き込み、彼女に聞こえる程度の声量で話す。

 

「亜耶ちゃん的にはさ」

 

「はい?」

 

「黒髪族の中で千景はどれぐらいエッチだと思う? ここが濃い子がエッチらしいからひなたさんや東郷さんは当然として、芽吹並かな? ほら、触ってみて」

 

 千景の細く白い太腿に頬ずりしながら、亜耶の手を取る。

 ゆっくりと目の前の少女の下腹部に手を置かせると、千景が震える。

 

「やっ……」

 

「ん?」

 

「……ッ」

 

「失礼します」

 

 亜耶に千景の秘所を触らせる。

 ぷるぷると震える千景を余所に、ショーツをずらし恥丘を撫でる亜耶が真面目な顔を見せる。恥毛をくすぐり、やや濡れた恥部を指で這う亜耶は純粋そうな顔で、容赦なく陰唇を指で開く。

 

「ぁ……」

 

「あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「えっと……千景先輩は連勝中でしたから……ここが濡れるようなエッチな罰ゲームはしていなかったのですが……どうしてなんでしょう?」

 

「敏感なんだよ。ほら、見て。あんな澄ました顔して簡単にイくように俺が調教したから」

 

「なるほど! 俺の女……って奴ですね!」

 

「ぐっ……」

 

 とろりと奥から垂れる蜜を見上げながら亜耶は口を開く。

 

「ええっと……ここは整えていますから分かりませんけど、エッチな度合いで言えば……多分、蓮華先輩くらいでしょうか。以前、友奈先輩たちにマッサージをされた時や、その……気持ち良くなった時や漏らした時の反応が似ていましたから」

 

「あー……芽吹以上蓮華と同等のエッチさだってさ、ぐんちゃん?」

 

「……ッ!」

 

「ぐんちゃんはエッチだねぇ~。亜耶ちゃんも言ってあげたら?」

 

「その……大人ですね」

 

「……フー……フー……殺す……」

 

「あれ、何か聞こえた?」

 

「いいえ? 多分、ゲームの音じゃないでしょうか」

 

 少し引っ張り、彼女の恥毛を指で触りながら囁く。秘裂に触れるかどうかのタッチをするも、千景は俺に目をくれずにアーケードマシンに顔を向け続ける。

 恥毛が露出する程度にずり下ろしたショーツをそのままに、耳元に囁く。

 

「……一位を目指して頑張ってね。ぐちゃぐちゃに抱いてあげるから」

 

「……ん」

 

 身体は小さく震えた。小声の返事に、亜耶は特にリアクションはしない。

 ついでとばかりにドレス越しに乳房を揉み、美佳の顔を窺う。大好きな勇者の軽い痴態と羞恥を見ていた美佳は磨き直した眼鏡を光らせてサムズアップを見せる。

 合格だった。

 こんな感じで他の子にもセクハラ……いや悪戯をしていこうと思う。

 

「その前に……」

 

 千景のアーケードマシン、その反対側で対戦している相手に近づく。

 悲惨な状況だった。スコアはボロ負け、裸体の上から、背中から腰まで露出したセーターという奇抜なファッションをしているのは園子だ。

 

「園ちゃん~!」

 

「うひゃっ!?」

 

 背後から近づいて抱き着く。

 柔らかい身体、やや大きめのセーターの隙間から手を入れて乳房を揉む。一秒で繰り広げた行為に園子は悲鳴を上げるも、周りは反応しない。

 

「んっ、ん……」

 

 園子の乳房は柔らかく、しっとりとしている。

 手のひらが吸い付き、指がどこまでも沈んでいく。髪の毛に鼻を突っ込みながら乳首を指で弄りつつ、パン生地のような生乳を捏ね繰り回す。

 

「はー……園子のおっぱいはいつまでも揉んでいたい」

 

「も~……エッチだよ〜」

 

「……これってアウトじゃない?」

 

 振り返る園子、その親愛を宿した瞳の美しさに見惚れる。

 だが、ゲーム中の現状だ。審判、というよりも運営側である亜耶に確認をするも、俺の頬に手を置いて園子は自身に目を向けさせる。

 

「私も運営、というよりオーナーなんよ? オーナー権限で許されるんよ」

 

 ちゅっと唇を重ねる。

 唇が触れるだけ、それでも視界に広がる、少し恥ずかしそうに、照れ臭そうに笑う園子は快感とは別の何かを抱かせる。

 独占欲や支配欲が混ざった黒くドロドロとしたソレを誤魔化すように園子の乳房を揉みしだく。

 

「ぁっ、ゃんっ。かっきーのエッチな手つきでまた大きくなっちゃうんよ~」

 

「大きくなぁ〜れ……無視しなくていいの?」

 

「んぅ……たとえ……ゲームでも……」

 

 くすぐったそうに笑う園子の瞳の奥で何かがチラついた。

 笑みを見せながらも、当たり前のような態度で彼女は口を開く。

 

 

「私がかっきーを無視する訳ないでしょう?」

 

 

 その言葉に。

 身体中の何かが沸き立った。

 

「────」

 

「あれ? もしかして興奮しちゃった? そんなに大きくしちゃって……きゃっ!」

 

 尻を突き出させると、抵抗するように園子は手を後ろに伸ばす。

 

「んっ、ちょっ、今、ちーちゃんと勝負中だから……ッ、ぁ、ぁぁ、だめぇ~~~ッ!! ゃ、ぁん……は……。ぁぁ……もう~強引なんよ……。あっあっ、だめだめっ……ゃぁああっっ!!」

 

 ──少し時間を掛けて園子を無理やり絶頂させる。

 嫌がる彼女の身体を弄って、喘がせて、雄を求めさせるのはとても簡単だった。腰どころか尻まで露出するほどに伸びたセーターを着た園子とカジノで行為に耽る。

 

「ひゃら……みんなぁ……みないで……」

 

 セーターを捲り上げて、黄金の恥毛と雄に貫かれた結合部を周囲に見せつける。周囲の少女たちは楽し気に遊んでいるも、先ほどよりはやや静かになっていた。

 室内を漂う軽快なBGMが、園子の喘ぎ声をなんとか隠そうとしていた。

 

 ゲームは既に園子の敗北だった。

 セクハラされていても、千景は強かった。

 敗北の字を表示させる液晶に手を置く園子の背後から俺は自らの雄を解放する。ゲーム中だというのに、園子を喘がせて、その最奥に自らを刻み込みたくなった。

 やがてぐったりとした園子の結合部から抜けた雄竿の後に、白濁がこぼれ落ちた。

 ……そんな俺たちをアーケードマシンから顔を覗かせる千景が亜耶を見る。

 

「あれってズルくない?」

 

「オーナーだから良いんです。代わりにランキング圏外ですから」

 

「……そう。流石は園子さん。策士ね」

 

 そんな話が薄っすらと聞こえながら、俺は園子を起こす。

 白濁を亜耶が持って来た園子のスケスケ紫ショーツで蓋をさせると、園子が蕩けて甘えた声を聞かせる。

 

「かっきぃ……私たち運営は前のゲームで勇者たちに負けちゃってこんな格好をしているんよ。このままだと私たち運営チームがみんなの前でエッチなことをさせられちゃうんよ……だから、どうにかしてみんなを負かしてポイントを巻き上げて欲しいなぁ〜」

 

 媚びを売るような声で、自らの乳房を押し付ける園子に俺は告げた。

 綺麗なピンク色の乳首を爪で掻く俺は、彼女の要望に頷いた。

 

「よーし、妖精の力を見せつけちゃうぞ!」

 

 楽しいゲームの開幕である。

 



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【番外】悪戯の成果

いつも誤字報告感想評価に感謝であります


「俺は妖精だー!!」

 

「はい!!」

 

「元気だね~。……もう私のおっぱい揉むのは良いんじゃない?」

 

 伸びきったセーターを谷間に挟み、露出した園子の乳房を好きに揉む。カリカリと乳首を指で擦ると背中を預け、甘く爛れた匂いを漂わせる彼女の濡れた瞳が俺を見つめる。

 は、んッ、と小さく喘ぐ彼女の生乳は俺の手にすっかりと馴染む。突きたての餅のような質感は俺を楽しませ、硬く尖った乳頭を刺激する度に彼女は尻肉を俺の鼠径部に押し付ける。

 下から持ち上げるように乳肉を弄び、手で揺らして遊ぶ。汗と甘い香りが漂う金髪に鼻を埋め、首筋を舐めるとあまじょっぱい味がした。

 

「舐めちゃ駄目だよぉ……んっ……」

 

「このまま食べちゃうね」

 

 ピン、と爪で乳首を弾くと園子は背中を反らす。

 

「んっ、あっ、は……だめだよ、かっきぃ……あんっ! ……も、もう!」

 

 ドン、と柔らかな尻で俺の下腹部を押し、自ら距離を取る。

 胸元を腕で隠し、やや威圧的な笑顔を見せる園子が俺を見上げる。

 

「私が大好きなのは十分に分かったから、妖精さんになって。はい、これ」

 

「え~、もっと……駄目か?」

 

「ダ〜メ。これ以上はゲームが崩壊しちゃうからね~。私を足腰立たなくなる位に恥ずかしい目に合わせたいケダモノさんは一度始めたら止まらないもの。枕に頭を押し付けて後ろから力尽くで乱暴して……動けない状態で無理やり気持ち良くさせて……ゴホン、そういうのは後でね?」

 

 小説を書いているだけあって、想像力のたくましい彼女はスラスラ続いた口を閉じる。

 期待しているのなら、要望通りに乱暴にしてやろう。

 その決意で視線を向けると園子に目を逸らされる。そんな中、驚いたように目を丸くしていた亜耶が、伸びきったセーターのみの園子に近づいて囁く。

 

「……園子先輩のさっきのお言葉、そんなに凄い力があったんですね」

 

「かっきーのことは私が一番理解しているんよ。エッヘン」

 

 豊満な胸を張り、仕事をしろという笑みで園子は衣服を渡してくる。

 最後に一揉みだけしてその場で着替えると、少女たちは無言で見てくる。下着姿や半裸姿の少女たちの眼差しは雄の裸を見ることへの期待と喜悦、それと──、

 

「ふっ、ふふ……」

 

「くっ……」

 

「みなさん、笑っちゃダメですよ……!」

 

 運営組の少女たちがクスクスと笑う。

 着替え終え、自ら道化になった者への無垢なる笑い声が響く。全体的に白と黄色のタイツでできた妖精の恰好、あとは星のステッキを手に持ち、ポーズを取る。

 

「妖精、見参!」

 

「ぷっ! あははははっ!」

 

 竿役としての機能を果たす為か、下腹部にはチャックがついている。

 センス的に園子がデザインしたのだろうか、可愛らしさとファンタジーが融合した妖精に俺はなっていた。

 周囲を見渡すと一瞬目が合ったが慌てて逸らす者。笑って失点した者がそれなりにいた。

 運営側の少女たちは俺の行動に無言でサムズアップしてくる。

 ……真面目にゲームをしている者はあとにして、今笑った連中から悪戯をすることを決めた。顔は見ているから間違えることはないだろう。

 

「ちなみにここにいない子は?」

 

「負けて裸に剥かれた子とかカジノに興味ない子は先にお風呂に行ったんよ~。あとはゆーゆ達の性感マッサージコーナーとか……」

 

「逃がしたか。いや、俺の意思は友奈たちが受け継いでくれる……」

 

「うん。かっきーの鬼畜な意思は、ゆーゆやわっしーがやってくれるよと思うよ」

 

 現在は下着姿になった彼女たちだが、改めて周囲に目を向けると、ゲームをしている勇者たちの大半は殆ど裸に近い格好をしている。

 カラフルで大人な装飾は、俺に見られることを意識した下着姿だろう。

 運営側も頑張って衣服を剥ぎ取ったのだろう。

 

「脱衣麻雀、脱衣野球拳は盛り上がったよ」

 

「呼べよ、俺を!」

 

「だってぇ……かっきー、ゆーゆ達に夢中だったし~」

 

 確か、順位に応じた衣服を着るのがルールだったが、原型が無いほどに肌を露出している者や、ペナルティなのか、振動する機械を下腹部や恥部に挿入して赤面している少女もいた。

 既に亜耶と園子以外の運営組はゲームの運営の方に戻った。下着姿のみの巫女たちだが、このままでは裸に剥かれるだけでは済まない状況に追いやられるのだろう。

 個人的にはそれでも良いと思うのだが、与えられた役目はこなさなければ。

 俺の後についてくる園子と亜耶に尋ねる。

 

「それでアレはどうして着けているの?」

 

「負けた時の罰ゲームとして、くじで選んだエッチな道具を着用して再度ゲームに挑戦して頂いてます。皆さんが亮之佑先輩ほどエッチなことが上手ではないので、道具を使ってます」

 

 そう言って亜耶が何かのスイッチを渡してくる。

 ピンク色の小さな機械、無邪気で愛らしい笑顔を見せる亜耶の頭を撫でながらボタンを押す。

 

「──かはッ!? ぁ、っ、なんで今動いて……ゃ、ぁ、ぁぁっ! ぃくッ! っ、ぅぅ~~ッ!!」

 

 突然、一人の少女が崩れ落ちた。

 床に小さな水たまりを作り、ゲームに集中できなくなった夏凜の尻尾がブルブルと震えているのが見えた。ボタンを連打すると夏凜はゲームどころではなくなったのか、ビクンと腰を跳ねて口元を押さえた。

 一瞬静まり返る空間には無機質な機械音が夏凜の下腹部から響く。

 

「ぅぁぁ~~~ッ!!! とまっ、とまらなっ……!! また、イク……ッ!!」

 

 少女が絶頂しようがスイッチは止めてない。

 何度か夏凜が機械で達する姿を見届けてから、スイッチを止める……と見せかけて押す。

 

「んっ! ちょっと……遊ぶなぁ……」

 

 狐耳と震える尻尾、局部のみをギリギリ隠している水着は生地が薄く乳首も秘所も丸見えだ。

 片手でボトムスを押さえるも、垂れる愛液が床に広がる。

 

「ぁぁぁっっ!! ~~~~ッッ!!!」

 

「凄いね、にぼっしー……欲求不満だったのかな?」

 

「園ちゃんもあんな風にしちゃおうか?」

 

「……二人きりの時にね」

 

 手に持ったカードを落とし、手札を晒した夏凜は口元を押さえて何度も身体を痙攣させる。やがて落ち着いてきたのか、必死に呼吸を繰り返す。

 生まれたての鹿のように膝を震わせた夏凜は涙目でこちらを睨みつけて、……笑った。

 

「このっ、……ぶふっ!! 何よ、あの恰好は!!」

 

「はい、上がりです。では私は次の相手を……」

 

「ああっ!?」

 

 悲鳴を上げる夏凜に目もくれず、忙しそうにテーブルから立ち去るのは須美だ。彼女も運営側なのか猫耳カチューシャに、裸ワイシャツという可愛らしい格好をしている。

 既に乳房を晒して時間が経過したのか、特に恥ずかしがる様子もない。

 なんてことだと駆け寄り豊満な乳房を揉むと、悲鳴を上げて俺を叩く。はしたない女だと、乳首をつねり弄ると、我慢していたのかあっけないほど簡単に絶頂に達したのか、膝から崩れ落ちた。

 

「は……わ、わらひ……まだ、やることが……」

 

「頑張って偉いね、須美ちゃん。ご褒美にチューしながら手でくちゅくちゅするからね」

 

「ゃ……そんなことしたらお腹の奥が変に……んむ──!? んっ、ぁっ、だ、だめっ! 銀やそのっちが見て……んふっ──、はむっ、ちゅ──!!」

 

 結った髪の毛が解け、口づけをする度に、抵抗は弱くなっていく。幼げな顔に雌を見せ、東郷に負けぬ色香と芳香を漂わせる須美と唇を重ねる。

 柔らかく小さな身体を抱き締めて、生えかけの恥毛と恥部を指で弄る。

 

「ちゃんと二人にも見えるように脚を広げて」

 

「でも……」

 

「んー?」

 

「……はい」

 

 顔を赤くし、親友に見せる顔が無いように顔を背けた須美の頭を撫でる。

 

「良い子だね。じゃあ、もう一回気持ち良くなろっか」

 

「はひ……」

 

 東郷の進化前だけあって、弱点を完全に把握している以上、彼女が俺の手を振り払うことも逃れることもできない。虚ろと理性の境界を反復横跳びする瞳を覗き込む。

 ぐぽ、ぐちゅ、と秘所から聞こえる水音を恥じらうように須美は顔を赤らめ、目を逸らす。

 

「今、イったでしょ?」

 

「……ッ」

 

「気持ち良いなら、ちゃんと言わないと駄目だろ?」

 

「ぅあっ!? だ、だめっ!」

 

「駄目じゃないよ?」

 

「~~~ッ、きも、ちいいです……はッ、あンっ!! ぁあっ!」

 

 陰核を指でつまみ、根元からゆっくりと扱くと少女は涙を頬に伝う。

 乳首の方が好きなのか唇で挟み込み、陰核と一緒に弄ると簡単に達する。視界の端で園子(小)と銀が目を皿のようにして親友の痴態をジッと見ていた。

 

「はひ、ごめんなしゃい……きもひっ、いいれしゅからぁ……」

 

「はしたなくて、ごめんなさいは?」

 

「……は、はしたなくて、ごめんなしゃ……あっ! ぅぁっ! だ、だめッ、またっ……ぃ、イきましゅ……っ! ぅぁぁぁっ!!! ~~~ッ!!」

 

 初々しく柔らかい恥部の弱点を、折り曲げた指で触れる。

 途端、法悦の空に昇った須美が俺の妖精服を掴んで叫ぶ。しょわっと何度か飛沫が噴いて、太腿を濡らす彼女は甘い吐息と共に背中をのけ反らせる。

 虚空を見上げる少女の瞳に理性はなく、半端に開いた唇からは涎が垂れ落ちる。

 

「かっきー、味方に悪戯したら駄目だよ~。ほら、リトルわっしー起きて」

 

「ちにゃ!?」

 

「次はあんずん達のテーブルだよ~。ミトりんが裸にされてエッチな目に遭っているから援軍に向かうんよ!」

 

「ぅぅぅ……ッ!」

 

 園子に促され、腰をビクッと跳ねる須美がふらふらと次のテーブルに移動する。

 一方、夏凜もピンクローターの刺激でふやけていた状態だったが、芽吹に尻を叩かれて起こされる。尻ビンタ一発で立ち直る前衛組、その一人は尻を手で庇い芽吹を睨む。

 

「どこ叩いてんのよ、楠芽吹!」

 

「それより、何をやっているの三好夏凜! そんな玩具で!」

 

「ちがっ、今のは油断して……って、しつこっ……んんっ!!」

 

 スイッチの強弱を最大にした状態で放置すると夏凜は怒りながら絶頂に達した。

 随分とちょろい身体になってしまったと思う。

 同じ思いなのか、蔑むように夏凜を見る芽吹はメイドビキニの恰好だが、下腹部を隠すのは生地の少ない白いショーツのみ。夏凜と違い恥部の中に挿入しているのは疑似肉棒のようだ。

 黒の恥毛が丸見え、怒張を呑み込んだ媚肉や陰核すら薄い生地で見える意味のない下着だったが、俺に至近距離で見られながらも芽吹は腕を組んで耐えていた。

 

「濡れてるじゃん」

 

「……ん──」

 

 知らない、見えないふりを続ける芽吹の唇を奪いながら、

 

「……亜耶ちゃん」

 

「……」

 

 無言でスイッチを渡してくる亜耶に代わり強弱を最大にしておく。途端振動する疑似怒張は上下にピストンを始め、芽吹の顔色と息遣いが変わった。

 

「──!!! ふぁ……あやちゃ……そんな奴に渡しちゃ……らめ……」

 

 腰を浮かせる芽吹の恥部を犯す疑似肉棒はショーツに固定されたまま、彼女の弱点を自動で突き上げて果てさせる。

 しかし絶頂に達したことを認めたくないのか、きゅっと唇を結んでいる芽吹の隙を突き、

 

「やったー! め、メブに勝った!」

 

 雀が両手を上げて喜ぶ。

 

「……雀」

 

「ヒィッ!! い、いや勝ちは勝ちだから……ねっ?」

 

 ノーパンブラあり白衣に聴診器という特殊な格好をした彼女は俺の視線に気づく。

 慌てて下腹部を隠す盾使いから無意識に同意を求められたがスルーして拍手する。減点しなかった優しい亜耶の笑みに気を取られた雀に近づくと瞬く間にブラを抜き取る。

 可愛らしい黄色のブラジャーは温かく、汗で裏側が湿っていた。

 

「可愛い奴だね。せっかくだから貰うね」

 

「ちょっ、それ気に入っている奴だから! ……というか、今のどうやって取ったの!?」

 

「雀先輩。それは流石にアウトです!」

 

「……あ」

 

 ホイッスルを吹いた亜耶によって硬直する雀。天井に突き出したレッドカードは退場の証だろうか、近づいてきた運営組に脱がされた彼女は恥ずかしそうにカジノを去って行った。

 諦めの良い少女だったが、同時に諦めの悪い少女もいる。

 

「ま、まらっ、まけて……! 亜耶ちゃん! こ、これっ、取ったら駄目なの?」

 

「駄目です! えっと……私とゲームを続けますか?」

 

 芽吹は諦めが悪い。それは戦いの場では良いことだろう。

 だが、この場での勝負は既に決着がついた。他のテーブルに移動するより先にすることがある。

 俺はおもむろに芽吹に近づく。

 ビクッと警戒するように身体を硬直させる彼女の下腹部に抱き着く。鍛えられた腹筋に頬ずりしながら、ショーツ越しに疑似怒張を掴む。

 

「んぁっ!? は、ぁ、……!」

 

 何をする気かと見下ろす芽吹と目が合い、笑みを見せる。

 俺は肉棒を持って角度を調整する。それだけで芽吹の息遣いが変わった。

 

「くっ……ふっ、ぅ……」

 

 疑似怒張の動きに合わせて俺も手を動かす。

 くぷっ、くちゅ、と水音に合わせリズミカルなピストンを再現すると、テーブルに手を置いた芽吹が俺に目を向けようとして必死に堪える。

 

「では、須美ちゃんに代わって私がゲームマスターを担当しますね」

 

「あ……まっ……ぉ、っ、ほっ……」

 

 ゲームは終始亜耶が有利に進んだ。

 楽しそうに笑う亜耶、途中から受け入れたように絶頂に震えながらもカードゲームに挑む芽吹だったが、俺と肉棒の動きには耐えられず、約五分ほどで床に崩れ落ちた。

 

「私の勝ちですね、芽吹先輩!」

 

「わかったから……私の負けで良いから……これ……」

 

 汗と涙でぐちゃぐちゃになった芽吹を見下ろす。

 鍛錬をしても快楽には勝てなかった防人リーダーの末路を、サークルの姫として見下ろす亜耶は俺に無言でお願いする。

 それを受けた俺は、彼女を床にまんぐり返しの体勢にして黒い肉棒を突き落とす。すれ違った弥勒夕海子(ノーパンミニスカポリス)が思わず近づいて来て携帯端末を向ける。

 流石は頭の良く男を理解している似非令嬢は、俺の視線に気づくと「逮捕ですわー」と言いながら俺の顔の前でスカートをたくし上げてくすんだ金色の恥毛と濡れた恥部、そして敗北したのか『正』が複数書かれた下腹部を見せつける。

 

「ほおーら、こういうのが好きなんでしょう? カガフレッドは……本当に変態ですわねぇ……」

 

「弥勒先輩? ゲームのルールを忘れましたか?」

 

「えっ? ……もちろん覚えてますわよー! ……しかし弥勒家の子女である以上、減点など恐れていては何も行動できませんわ! ポイントを捨てここで攻めるべきだと私の魂が言ってますの!」

 

 鼻に恥毛を押し付ける夕海子に俺の下腹部は痛いほどに反り立ち、しかし俺の手は絶えず芽吹を絶頂させる為に効率的に動き続ける。

 襲ってこないのを良い事に、嗜虐的な表情でスカートの中を見せる夕海子。

 あとで絶対に鳴かせることを決意しながら、目の前の恥部にそっと口づけする。

 

「芽吹先輩……イッて下さい」

 

「ゃ、ぁ、だめ……っ、だめぇええええッ!!!」

 

 やがて、何度も芽吹は痙攣する。

 背筋を反らし、涙が滲んだ瞳は見下ろす亜耶の先、空を見上げる。ショーツごと疑似肉棒を引き抜いた途端、潮が勢いよく噴き出す。

 

「ぁぁ~~~ッ!! ぅ、ぁぁ……! ぉ……」

 

 自らの顔や胸に潮を噴きかけるように彼女は達する。

 尻を震わせ、陰毛を濡らし、くぱっと僅かに開いた赤い花弁が収縮するのが見えた。

 

「はぁーッ、はぁーッ……!」

 

 思わず目の前にある生意気に揺れる尻を叩く。

 睨みつけてくる彼女の陰核を恥毛ごと指でつまむと、その僅かな抵抗すら霧散する。

 

 陰核と恥部を舌や手で虐めだすと、彼女は暴れたが無理やり押さえこむ。

 やがて少女の身体から力が抜ける。床にはいつの間にか芽吹の愛液が広がっていた。ゴトン、と頭を床に押し付ける芽吹を愛おし気に見つめる亜耶は、慈悲深い女神のような様相を見せる。

 

「妖精さん、ありがとうございます。ここは私に任せて次に行って下さい」

 

「あ、はい」

 

 この後芽吹がどうなるかは知らない。

 きっと亜耶なりの方法で愛するのだろう。

 それよりも俺は妖精として行動しよう。逃げた先で、棗(チャイナドレス)と全裸でツイスターゲームをしている夕海子をひたすらに辱め、自らの愛液と白濁の海に沈めてから行動を再開する。

 

 ──芽吹と夏凜の悪戯に比べると、他の少女たちは軽い悪戯だった。

 

「えっ……頭? なんかポカポカする……」

 

「ん……くっ……」

 

 銀の頭を撫で、しずくとシズクはそれぞれ優しく薄い乳房と乳首のみで甘い絶頂を教え込む。園子(小)にはくすぐりと共に恥部を指で弄り、特殊な快楽を下腹部に与えた。

 

「銀、しずく……ソノ……そんな」

 

「いや、アタシは頭を撫でられただけなんですけどね」

 

「球子さんの番ですよ。早くして下さい」

 

「なんだ澄ました顔して……このけしからんマウンテンめ!」

 

「ぁっ! ……減点です!」

 

 冷静を装う須美(勝ったのか着物を着ていたので、はだけさせた)と球子(局部絆創膏三点セット)が揃ったテーブル席は途中で棄権してポイントを放棄する者が大半だった。

 一応生き残っているのは銀(ウエディングドレス)と杏(制服のスカートとはだけたブラウスのみ、下着はなし)の状況だ。

 ゲームに集中できているのは悪戯を受けた須美のみで、他の少女たちは周囲をうろつく妖精に気が取られてそれどころではない。

 

「ふざけた格好だと思ったけど、それも込みのデザイン……! 見た目で笑わせて油断させた所に亮之佑さんのいつもの手管で集中力を削ぐ……流石は園子先生!」

 

「あんずゥ!! 感心しているだけじゃ……──んむっ!?」

 

「おっと、チューが入った──!! これは球子さんも絶対絶命か!」

 

 俺の胸板を叩く球子と皆の前で大人のキスを交わす。

 途端に体温が上昇したように顔中を赤くした球子と唾液を交換し、舌を絡ませ、その勢いで慎ましい乳房でツンと尖った乳首を爪でカリカリと掻く。

 やがて、大人しく俺の腕に抱かれた彼女の身体が硬直し、小さく震えたところで口を離す。

 

「降参してくれると嬉しいな」

 

 耳元で甘く囁く。

 あ、あ……! と俺から離れて耳を押さえる球子に笑い掛ける。

 

「〜〜ッ!! あ、あーもう!! 銀、風呂、行くぞ! 風呂ー!」

 

「は、はい! じゃあ、須美。アタシたちは先行ってるからな」

 

「ええ。私も杏さんを倒して行くから」

 

「言ったね須美ちゃん? じゃあ……もし須美ちゃんが負けたら──」

 

「私は負けません。……妖精がついていますので」

 

 妖精がやったことは単純だった。

 周囲の痴態をゲームをしながらきっちり見ていたムッツリスケベな杏を立たせ、背後から怒張を挿入したのだ。

 

「おッ──!?」

 

 乳房を隠していた腕を引っ張ると、ぷるんと白い乳房が揺れ動く。

 ツンと尖った乳首が震え、驚愕に見開いた杏の瞳を須美が覗き込む。

 

「いつまでも、ちにゃられるだけの私ではないんです」

 

「あ、あぁ……!」

 

 可能なら一枚一枚、少女たちの衣服を脱がせ、下着を脱がせ、羞恥に震え歪む表情をカメラに収めたかった。

 一人に時間を掛けると他の少女たちに食べられてしまう。

 そんなことを思いながら杏を見る。既に衣類の大半を失った杏の恥部は愛撫など必要ないほどに濡れ、最奥まで怒張を受け入れ、愛液を滴らせる。

 

「ゃ、ぁっ、まって……きゃん!」

 

 スカートを脱がせ、杏を羽交い絞めにする。

 須美の目の前で怒張を突き上げ、ピストンを速める。

 

「ぅあっ! はっ、ぁんっ! ……ぃ、いきなり挿れるなんて……くッ、ふわぁ!!」

 

「なんのことですか? パスなら私が遊戯を続けますね」

 

 俺は杏をゲームに集中させなかった。

 ゲームよりももっと楽しく気持ちの良い物を身体に教え込ませる。柔らかく細い身体を抱き締め、豊満な乳房を揉み、肉棒を彼女の悦ぶ所に突き立てる。

 

「すみちゃっ……みないでぇ!! ふぁあッ……!! イクぅうッッ!!」

 

「杏さん? どうしたんですか? そんなに……はしたない声をあげて」

 

「~~~~ッ!!!」

 

 踵を上げ、背中をのけ反る杏に答える術はない。

 言葉にならない嬌声を上げさせられ、ジッと静かに見上げる須美の顔に結合部から愛液が掛かる。瞳の焦点がおぼつかない杏を見る須美がおもむろに立ち上がる。

 

「棄権するんですか?」

 

「ぅ、ぅぁ……ぃ」

 

「そうですか。分かりました」

 

 須美の手がゆっくりと杏の下腹部に伸びる。

 自身が優位に立ち、そして目の前に弱々しい雌がいることを理解した捕食者のような眼差しで、須美の白魚のような指が杏の薄い恥毛をくすぐり、陰核に触れる。

 

「へ、須美ちゃん……?」

 

「杏さんのことは……前から一度、ちにゃらせたいと思っていたんです」

 

 俺と視線を絡ませる須美の妖しい微笑は、東郷に随分と似ていた。

 何かの才能の片鱗を見せた須美と共に杏を辱める。両脚を持ち上げて突き上げる俺に微笑んで、跪いて結合部に、特に陰核に唇を這わせる淫靡な光景に怒張が射精衝動に襲われた。

 

「だ、だめ……そこは──ッ!!」

 

 結果として、須美の姿と締め付けが増す杏の媚肉の蠕動に、俺は汚濁を吐き出す。

 

「は────ぁぇ……」

 

 汗まみれで肌に髪の毛を張りつかせた杏をテーブルに下ろす。

 柔らかい乳房を揉み、結合部から抜いた怒張を丁寧に口腔奉仕する須美は随分と従順な雌となっていた。小さな東郷の頭を撫でると猫なで声で俺に告げる。

 

「その……杏さんは私に任せて下さい。あと、その杖を貸して下さい」

 

 ちゅぱ、と汚濁と杏の愛液で濡れた竿を自らの唾液でコーティングし直した須美が上目遣いを見せて甘える。

 頷き、喜ぶ須美に星のついたステッキを貸すと二つに割る。

 中からは電気マッサージ器具やエグい凹凸のついた疑似肉棒が出てくる。

 

「これは妖精さんには必要ありませんよね」

 

 そう言って、須美は他の運営組の力を借りて全裸の杏をどこかに連れて行った。

 されるがままなのは、須美自身もストレスが溜まっていたのだろうか。いずれにしても、須美の才能の研磨剤としてこれから杏は天国を見続けることになるのだろう。

 

「須美、……俺の力が必要なら言ってくれ」

 

 声が届いたかは分からない。

 でも、届いていると直感的に分かった。

 

「さて……」

 

「それで、あとは私たちですか?」

 

 ゲームは棄権が続いた影響で、いつの間にか頂上決戦が行われていた。

 若葉(大人)と千景による対戦ゲームだ。亜耶が少し苦手だと言っていた殴り合いや剣や魔法で相手をしばき倒すゲームだ。数回のセットで多く勝った方の勝ちというルールで、意外にも接戦という状況だった。

 

「この為に若葉ちゃんと特訓したんです」

 

 と語るのは最後に残った巫女であるひなた(大人)だ。

 彼女はきっとナース衣装だったのだろう。辛うじて頭に乗るピンクのナース帽で判断できたのだが、それをおまけに感じる衝撃があった。

 

「エッロ……」

 

 思わず溜息と共に呟く俺に、淫らな笑みを浮かべるひなた。

 普段見る身体よりも成長した肉感的な肌、色艶のあるきめ細かな肌は処女雪を連想させる。黒髪に映える色白の肌、豊満な乳房と乳首、くびれた腰肉、そして下腹部。

 生え揃い整えられた黒の陰毛、そしてピンクの恥部。

 いずれもが完璧なバランスで整い、女として磨き上げられた極上の女体があった。

 

 太腿を包むのは黒の網タイツ。

 そして、何も隠せてはいない黒のガータベルト。

 ショーツを穿かず、ただ悪戯に男の情欲を誘うような卑猥な姿。淑やかに、しかし大胆さのある恰好で女としての大事な所を俺に曝け出していた。

 

「こういうのが好きだろうなと思いまして。……どうですか?」

 

「今すぐ抱きたい」

 

「ふふ……照れますね」

 

 そう答えると、ほんのりと頬を上気させる巫女。

 そっと俺の手をおもむろに取り、そっと下腹部に宛がう。しょり、と指をくすぐる黒の茂み。そして既に濡れそぼった恥部から滲む愛液が指に絡みつき、女の興奮を物語る。

 しなだれかかるように俺に寄りかかり、いつもより大人のひなたは媚びるように囁く。

 

「……私も、思ったよりも……興奮してます」

 

 喉を鳴らしたのはどちらか。

 見つめ合い、いつの間にか俺の肉竿を優しく扱く巫女は淑やかに微笑む。

 

「でも、それは……後のお楽しみにしますね。一番か二番かの違いですから」

 

「そうなの?」

 

「今の時点で一位と二位……どのみち亮之佑さんの時間は私たちが貰うつもりです」

 

「モテモテで辛いよ。──んっ」

 

 朱紅の唇といつの間にか唇が重なる。

 成長したひなたは随分と積極的で、より豊満となった乳房が俺に胸板で潰れる。妖艶で色気溢れる彼女の瞳が、唇が、鎖骨が、身体中から漂う色香が抱いて欲しいと懇願しているようだった。

 

「────」

 

 今すぐ、滅茶苦茶にしてやりたかった。

 でも、それよりも妖精としてやるべきことがあった。

 

「ぐちゃぐちゃに犯してやるからな……」

 

「ふふ……楽しみです。一人だと抱き潰されそうですから若葉ちゃんと一緒に……」

 

 いつの間にか反り立つ怒張から先走りが期待に垂れる。

 柔らかい下腹部を擦り、肉棒の熱に感じ入ったようにひなたは熱い吐息を漏らす。

 

「よし、勝った!」

 

「くっ……次よ」

 

 さて、ひなたを抱くよりも先にすることがある。

 対戦ゲームに全神経を割いている千景と若葉(大人)への悪戯問題だ。反射神経が尋常ではない彼女たちは無敗だったのか、何も露出していない。

 千景は先ほどの真紅と黒の勇者服を連想させるドレス。

 若葉(大人)は激しく動いていたのか胸元が乱れているも、青を基調とした着物姿のままだ。

 

「ん……」

 

 試しに若葉の豊満な乳房を揉んでみるも殆ど反応がない。

 以前よりも明らかに大きくなったソレは高尾山の質量でも高さでもない。球子も認める立派なマウンテン、大人の乳房だったが、着物の隙間から揉み、乳首を弄っても反応が鈍い。

 ……滅茶苦茶に集中しているのか、快感に喘ぐことすらなかった。

 それどころか、邪魔とばかりに俺に肘鉄を喰らわせてきた。

 

「うぅ……」

 

「大丈夫ですか?」

 

「心が痛い……」

 

 ひなたに支えられ、一度退散。

 ならば、あとは千景の方だが、負けず嫌いな彼女も顔を硬直させたまま、大きな目を動かす機械と化していた。若葉よりも慎ましい乳房をドレス越しに揉んでもあまり反応は無い。

 唇を奪っても噛みついて、すぐに視線をゲーム画面にのみ向ける。

 

「よし、私の勝ちね」

 

「……やるな。だが、次で勝てる」

 

「減らず口を」

 

「……ひなたさ~ん」

 

「よしよし」

 

 意気消沈する俺を優しく抱き締めるのはひなただ。

 憐れむように、慈しむように、乳房を押し付けて抱き締める。

 

「中途半端な悪戯ではなく、亮之佑さんなら邪魔は余裕でしょうけど……」

 

「……いや、見守ろう。この真剣勝負を邪魔する奴は妖精ではない」

 

 妖精にできることはもうない。

 衣装を脱ぎ捨てて、俺の腹部や肉竿を触るひなたの肌と触れ合う。ゲームに熱中している女たちよりも、もっと楽しいことがあるでしょう? そう語り掛ける女の瞳と見つめ合う。

 

「どちらが優勝しても運営側の有利な状況は揺らぎません。亮之佑さんがポイントを取り返してくれたからです。少しゆっくりと待ちましょうか」

 

 赤い唇が弧を描く。

 ゆっくりと唇を交わし、性行為とも呼べぬ触れ合いをする。

 

「……くっ」

 

「やった……!」

 

 唇を交わし、互いの秘所を手で弄り合う。

 空いた手で彼女の豊満な乳房を揉むと、悪戯っ子のような笑みで俺の乳首を弄る。

 

「逆転だぞ!」

 

「……ッ!! まだよ!」 

 

 唇を重ね、髪の毛を指で愛で、肉棒と恥部を擦り合う。

 弾力のある尻肉を掴み、片足を持ち上げて互いの顔を見つめ合う。

 

「遂に最終決戦か」

 

「御託はいいわ。勝負よ」

 

 ぬるりと亀頭が何度か雌穴に滑り込む。

 その度に抜き取って、どこか不満気な顔をする巫女と唇を重ねる。

 ぽとり、とひなたの頭からナース帽が落ちた時、決着がついた。

 

「……勝った」

 

「ああ……私の負けだ」

 

 どうやら千景が勝ったらしい。

 満足気に笑い合う少女と女を目端で捉えると、視線で目の前の巫女と意思を確かめる。ちゅ、と重ねた唇を離し、待ちきれずに半ばまで挿入していた肉竿をゆっくりと抜き取る。

 

「私たちは後で、ですね。三十分後から一時間未満。二人で温泉か布団で待っていますよ。……それとも私だけにしますか?」

 

「……」

 

「やっぱり駄目です。……壊されちゃいそうですから」

 

 最後にそっと唇を重ねる。

 そうして妙齢のひなたに背中を押された俺は、千景に近づく。

 

「あっ、加賀くん……。なんでもう勃起して……」

 

 ゲームで汗を掻いたのか、背中の開いたドレスを指で這い、手を握り、唇を奪う。

 

「んむッ、ん………っ、ぷはっ! えっ、あっ……」

 

 どこか驚いたように目を白黒とさせる千景に見せつけるようにひなたが鍵を見せ、俺に渡す。

 ホテルの鍵、誰も入ってこない密室だ。

 

「時間になったら電話が鳴りますよ。では……ごゆっくり」

 

 そう言って若葉を連れて立ち去るノーパンガータベルト巫女の後ろ姿、その尻を見つめる。同じように呆然と見ていたドレス姿の千景と目が合うと、初々しい処女のように顔を赤らめていく。

 そっと手に握らせた熱い怒張を汚らわしそうに離して、

 

「ち、ちがっ……別に、加賀くんとそういうことをしたくて勝った訳じゃ……」

 

「……」

 

「そう、これは乃木さんとの戦いの場でもあるし、ゲームである以上、絶対に負けたくなかったから……決して、あなたと……その……」

 

「千景」

 

「ひゃう!?」

 

 抱き寄せて、見つめ合う。

 渡された鍵を実感させるように、千景の手にゆっくりと握らせる。

 赤らんだ顔の少女、徐々に現実を理解したように熱くなっていく身体を抱いて告げる。

 

「抱かせろ」

 

「あ…………、……はい」

 

 端的な言葉に、小さく頷いた。

 

 ゆっくりと無人の廊下を歩く。

 会話は無かった。ただ初めてラブホテルに来た恋人のように、無言で手を握って。

 扉の前で目を伏せた千景が、小さく告げる。

 

「……やさしくして、ください」

 

 そうして俺は千景をホテルの部屋にお持ち帰りした。



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【番外】密室にて

感想、評価、誤字報告ありがとうございます!


 ホテルの部屋は穏やかな雰囲気を漂わせていた。

 大人の雰囲気と言うべきか、ベッドとテーブル、椅子にテレビ、そしてソファをオレンジ色の照明が照らしている。

 

「……良い匂いね」

 

 ベッドに二人で座る。

 千景の言葉に周囲を見渡すと、アロマの心地よい香りを漂わせるランプが壁に設置されていた。少女の腰に腕を回すとビクッと身動ぎする彼女が俺に目を向ける。

 無言で少女の手を握ると、ほのかに少女の体温が上昇するのを感じる。黒と紅、少女の勇者服を連想させるドレス越しの肢体は柔らかく、長い黒髪からは女の体臭を漂わせる。

 静かに千景の胸元に顔を寄せる。

 顔で感じる柔らかい感触と共に「ちょっと……」と俺の頭を掴む半眼の少女に呟く。

 

「ぐんちゃんの方が良い匂いだよ」

 

「うわ……変態」

 

 俺の言葉に罵倒で返しながらも、僅かに頬を緩ませる千景。

 周囲には誰もいない。茶化す者も、カメラで撮る者も、誰も。俺を見る千景の瞳は照明に揺れ動き、そっと両頬に置いた手はしっとりもちもちしている。

 見つめ合い、まるで犬とスキンシップを図るように頬を撫でる。

 

「んにゅ……にゃにを……?」

 

「なんかイチャイチャしたいなって」

 

「イチャイチャって……というかぐんちゃんってむにゅふ──」

 

 犬に、ペットにするような感じで少女の頬をわしゃわしゃと撫で回す。しっとりとした柔らかな頬と手をくすぐる絹のような黒髪は俺を楽しませる。

 千景は目を細めて、くぅーんと俺の手に頬擦りする。

 しばらくの間、むにむに、と千景の顔で遊び、少し満足して手の動きを止める。

 子供のような悪戯に上目遣いをする千景は、しかし俺を叱ることもなく、無言のまま自らの頬に宛がわれた手に重ねるように手を置く。

 

「あったかいわね」

 

 露出した鎖骨に唇を置くと、くすぐったそうに彼女は小さく笑う。

 息を抜くように、緊張を捨てるように、俺の身体にしなだれかかり、これからの行為が同意であるという証明のように、頬に唇を宛がう。

 ちゅ、と柔らかな唇が触れる。

 頬に触れた唇が、やがて俺の唇に遠慮がちに触れ、次第に積極的になっていく。

 

「ん──はむっ……っ……」

 

 俺の胸板に手を置いて、少女の唇が重なる。

 長い睫毛に縁取られた瞼から覗く瞳は喜悦に揺れ動き、官能を味わうような恍惚とした表情は、男を知った女にしかできないものだ。

 

「は、ちゅ……んふ……」

 

 薄い乳房をドレス越しに押し付け、ゆっくりと首に腕を回す。

 いつまでも味わっていたいとばかりに、身体は素直な千景は法悦を求めて唇を重ねて、慎ましい態度で男に求める。

 

「今日は素直だね、ぐんちゃん先輩」

 

「……別に。加賀くんとの時間もあまり無いでしょう?」

 

 面倒になったのか、あるいは認めたのか、一々訂正していた呼び方への指摘すら惜しいとばかりに初々しい恋人のような口づけをする千景が、自らのドレスに触れる。

 しゅるりと黒と紅の生地が下へと流れ落ちていき、白い肌が覗く。

 やや上気したように薄っすらと朱色に染まった柔肌、鎖骨から黒のレースと装飾がされた大人びたブラジャーに包まれた乳房、腰肉と臍まで露わになって、

 

「……っ」

 

 俺の視線に僅かに恥じらいつつも、ベッドから降りて立ち上がる。

 腰肉で留められていたドレスは抵抗を失い、しゅるりと床に落ちて、広がる。恥ずかしそうに目を逸らした千景は黒のブラジャーとショーツという恰好で、手持ち無沙汰な両手を後ろに回す。

 

「いつものタイツが無いのは残念だな」

 

「どれだけ破きたいのよ。……いい加減にしなさいよね、もう本当に替えが無くて」

 

「その時は俺が買うから。デニールは好きにして良いよね」

 

「……好きにしなさい。今日は破れなくて残念ね」

 

「良いよ。代わりに自分で残りの物を全て脱いで」

 

「……っ、言うと思ったわ」

 

 羞恥を誤魔化すように、呆れたような口調で溜息を漏らす。

 僅かに朱に染まった肌を晒す彼女は、俺の目の前でゆっくりと背中に腕を回す。小さな金属音と共に黒のブラジャーが緩み、双丘と下着の間に隙間が生まれる。

 無言で、目を伏せた千景は自らブラジャーを外し、慎ましい乳房を見せた。

 

「……」

 

 白い肌、頬を赤らめる少女よりも薄い桜色をした乳首が俺の目の前にある。

 ツンと上を向いた乳頭は既に硬くなっているのか、吐息を掛けるとビクッと震えた千景に睨みつけられる。

 隠すような腕の動きで、薄い胸肉が寄せられ谷間ができる。

 

「可愛いね」

 

「……うるさい」

 

 涙目で目を逸らした千景からブラジャーを奪い取りながら、ストリップショーを促す。それを見ながら少女のブラジャーで口元をマスクすると、汗と雌と少女の香りにクラクラする。

 散々抱かれているというのに、ショーツのウエスト部分に指を引っかけた姿勢のまま、数秒ほど固まった千景はゆっくりと下ろしていく。

 色白の下腹部、恥丘と黒の茂み、そして花弁とクロッチ部分には淫らな糸が引いていた。

 

「……っは」

 

 ぶるり、と少女が震えた。

 湿った吐息を漏らし、俺の手が彼女のヘアゴムを取り上げて、生まれたままの姿となった千景をベッドに寝転がらせる。

 

「俺を誘ってみろ」

 

「えっ……?」

 

「自分でこれなら誘えると思うエロいポーズをしてみろ」

 

 こいつ……! という目線で俺を睨む千景にそれ以上の抵抗はない。

 あらゆるゲームを堪能した少女だ。他の勇者部よりも、男が悦ぶ知識は間違いなく豊富だ。一緒にプレイしていたのだから分かるのだ。

 艶やかな黒髪をベッドに広げ、仰向けで俺を見る千景は顎に手を置く。

 

「か、加賀くん……」

 

「なに?」

 

「……っ」

 

 やがて、そっと目を逸らした少女は脚を広げる。

 俺によく見えるように。

 M字開脚をして、恥毛も、恥部も、菊座すら見せつける彼女は更に自らの陰唇に指を這わせる。

 ふるる、と身を震わせた勇者はゆっくりと陰唇を左右に開く。

 

「──ください」

 

 もう耐えられないとばかりに、奥から透明な愛液が垂れ落ちる。

 ぬらぬらと光る恥部を見せつけながら、泣きそうな目で俺を見上げる。俺が向けた携帯端末のカメラから目を逸らし、唇を震わせる。

 

「優しく、抱いて……ください……」

 

「────」

 

 その懇願が琴線に触った。

 背筋を昇るような電流が奔り、怒張が限界まで反り立つ。犯さなければ、孕まさなければ、雄として彼女が自らの雌であることを理解させなければ。

 もはや使命感すら感じる衝撃で震える俺を、半眼で千景は見上げる。

 

「……こういうの好きでしょ?」

 

 少女は確信犯だった。

 男を手玉に取る悪女そのものだった。くちゅ、と自らの指で媚肉を弄り、目元をとろんと緩ませる。ゆっくりと自慰に移行するように、指を恥部に浅く出し入れして挑発する。

 

「早く……抱いて……」

 

 甘ったるい、媚びるような声に俺は誘われた。

 俺はベッドに飛び込み、千景に覆い被さる。

 もぞもぞと脚が動く少女を組み伏せると、うっすらと汗を帯びた乳房に勢いよく吸い付く。

 

「ぃひゥッ!?」

 

 甲高い声を上げ、千景は俺の髪を掴んだ。

 杏仁豆腐のような乳房を舌先で舐めながら、下部をなぞりつつ少女の乳首を指で弄ぶ。

 小振りの乳房をねぶると、僅かに俺の後頭部を自らに押し付けるような動きを見せるが、俺はソフトに触れるにとどまる。

 

 優しく、丹念に味わう。

 桜色の乳頭は既に硬くなり、舌の上で転がすとビクッと震えた。

 

「ぁっ! ぁんっ……」

 

 時折柔らかい乳房から、滑らかな腋を舐める。

 じゅるる、と下品な音を立てて彼女に聞かせる。甘じょっぱいと口にして、羞恥を掻き立てられる千景は甘い嬌声を漏らす。

 

「ん、ふ……」

 

 少女の柔らかな下腹部を亀頭で擦る。

 先走りで少女の肌を汚し、熱い肉棒で肌越しに子宮を刺激すると、俺の頭に回した腕を強める。

 同時に乳首を舐めながら、空いた方の乳房を手で揉む。

 は、あ、と甘い呼気で腰を浮かせる千景の腕が俺の頭を離れて、そっと肉棒に触れる。

 

「硬いわね……」

 

 俺の耳元に口を寄せ、ぼそっと千景が呟いた。

 鼻息が耳をくすぐる中、彼女の親指が雁を刺激する。細い指が竿に絡みつき、まるで蛇のように執拗に締め付ける。

 膣とは違った刺激に呻くと、俺の唇を奪う千景と目が合う。

 

 ──生意気だ。

 

「ふふふっ……ちょ、ちょっとズルい……もぉ……」

 

 わしゃわしゃと脇腹をくすぐると竿から手を離して悶える少女。笑いながら見上げる千景に、俺は乳首への愛撫を強める。

 カリカリ、と爪で乳首を引っかくと、彼女は切なげに首を振る。

 

「そこばかり……もっと強く……は、ぁぁ……」

 

「優しくって言っただろ?」

 

「……言ったけど、ぁっ、っ……」

 

 腹部を上下させ、シーツを掴む千景は唇を噛む。

 潤んだ瞳で、はぁーっ、と荒い息を吐くと小さく呟く。

 

「も、もう良いから……」

 

「何が良いの? 挿入して欲しいの?」

 

「……」

 

 コク、と頷く千景に俺は笑みを見せる。

 少女の顔に反り立った怒張を見せつける。自らを女にする竿を唇に近づけると、千景は当然のような顔でゆっくりと口づけし、温かい口内に招き入れる。

 千景の唇はとろけるような感触だ。

 上目遣いを見せる千景は、鼻息を根本に吹き掛けながら俺の肉棒に口腔奉仕する。

 

「んンッ……ぅぷっ……んふ……」

 

 舌で。頬肉で。唇で。唾液で。

 持てる全てで肉竿に口腔奉仕する少女は、先走り混じりの唾液を嚥下する。

 舌が竿裏を撫で、じゅぽ、じゅぽっと水音が激しさを増す。徐々に激しく上下する千景の頭部が征服感を刺激する。

 

「んぷっ……んむ……ちゅ……」

 

 そっと頭に手を置くと、少女は従順に口内から竿を解放する。

 千景の唾液でコーティングされた怒張を、少女はどこか満足気な表情で見つめていた。ちゅ、と亀頭に唇を触れさせ「どうだった?」と言わんばかりの笑みで俺を見つめてくる千景に、

 

「……次は俺の番ね」

 

「えっ?」

 

 俺の指は彼女が求める場所をなぞり始める。

 黒の恥毛が汗や愛液で張り付いた恥丘。

 俺を求める、熱く狭い穴の縁をなぞり、親指の腹を陰核に。

 

「まっ! ぁっ! それだめっ!」

 

 優しく陰核の上を行き来すると、彼女は唇を結んだ。

 

「んっ、……ぅっ~~ッッ!!」

 

 あっけないほど簡単に気をやった千景は静かに余韻に浸る。

 少女の黒髪で怒張を扱いていた俺は、彼女の達した顔を見下ろし、十秒ほどしてから、体勢を変える。

 

「優しく、か……」

 

 呼吸を整えようとする千景の乳首を執拗に弄る。

 根本から先まで乳頭を指で愛でながら、問い掛ける。

 

「っは……ぁ……っ……!」

 

 すっかり乱れた千景の身体は熱く、怒張が恥部を擦る度に、ビクッと小刻みに震える。

 俺を見上げることを恥じらうように腕で顔を隠した彼女は、

 

「こ、このまま……顔が見えるように……」

 

 囁くような要望と共に唇を結ぶ。

 恐らく嬌声を隠そうとしているのだろう。無駄な抵抗なのに。

 あるいはそれを見た俺を昂らせようと考えているのなら策士だ。にじゅ、と媚肉を割り拓き、怒張を押し付けて挿入する。

 

「ふっ……ぁ……」

 

 腕を掴み、目を見開いた千景の顔を見下ろす。

 両腕を片手で掴み、空いた手で乳首を弄る。正常位で彼女を貫くと、膣襞が竿を締め付ける。

 狭い肉壺だ。

 だが、関係ないと抽送を始める。狙う場所は決まっていた。

 少女が、千景が悦ぶ場所を、乳首を弄りながら、臍の裏側の肉襞を硬くなった亀頭で擦る。

 

「んんんっっっ!!!?」

 

 その瞬間、千景の腰が前後に跳ねた。

 まるで生き物になったような激しい動きだが、それを押し潰すように怒張を叩きつける。

 

「お゛ッ!?」

 

 腰が跳ね、蜜が飛ぶ。

 普段なら荒々しく腰を振り、誰の物かを身体に叩き込むのだが、俺は優しいのだ。

 

「~~!! だ、だめっ!」

 

「嫌だ」

 

「ゃ……、ま、まって! そこ、そこをされると……わたし、ほんとうに──」

 

 わななく唇から涎を垂らす千景に微笑む。

 暴れようとする少女を優しく抱き締めて、

 

「ぁ、ぁっ、ぁあっ!?」

 

 ゆっくりと肉竿を引き抜いていく。膣から外気に晒される竿にはねっとりと雌汁が泡立ち白濁となった物が絡みつく。

 その際にも竿が千景の弱点となる膣襞を擦り、引き抜く程に蜜が溢れ出す。

 

「だめっ、だめぇっ……!」

 

 大きく目を見開いて、俺の腰を太腿で叩き、本能に抗えずに腰を前後に揺らす千景に抱き着く。

 

「はーっ、はー……」

 

 荒い呼気で俺の胸板に手を置く千景の奥へと竿を挿入する。

 ゆっくりと、肉竿を挿入し、体重を掛けていく。

 絶頂に達する確信があるのだろう。嫌々と首を振っては俺の背中を力なく叩く手が、ぱたぱたと腰を叩く太腿がピンと強張る。

 

「っ、ッ、~~~~ッ!!!」

 

 貫かれただけで絶頂。

 何度か腰が跳ね、小さく「イクッ」と呟いた千景は限界に達した。

 

「ふっ!? そこ、も、もうっ! んぁぁっ!!」

 

 ぐりぐりと亀頭で奥を小突き、思い出したように彼女の悦ぶ場所を竿全体で擦りつける。

 恍惚の表情で、肉竿を締め付ける千景が再び法悦の空を飛ぶ。

 のけ反り、首と顎を見せる少女を無視して、優しく、抽送を続けると俺の胸板を押し退けて逃げようとする。

 

「あっ、もっ、もっ、ゃ……ぅぁっ、ぁぁっ、ぅぁああああッ!!」

 

 絶頂が怖いのだろう。

 普段は出さない大声を上げて、電気ショックを浴びたかのように身を跳ねさせる。

 頬を涙が伝い、暴れる彼女を押さえて、膣を穿る。

 

「──!! んぁあっ! っは……!!」

 

 彼女の膣が俺の形になるように少しだけ抽送を止めては、思い出したように亀頭で最奥まで押し込む。

 根本まで挿入する時にも、引き抜く際にも彼女の気持ち良い場所を刺激することを忘れない。

 

「んっ、だめっ……かがっ、くぅん……っ」

 

「亮之佑君と言え」

 

「……りょ、りょうのすけ、くん」

 

「俺のこと好き?」

 

「……ッ」

 

 ひたすらに千景のあられもない声に、執拗にピストンを続ける。

 言葉の一つも素直に口にできない少女の口を割らせる為に、最奥に怒張を突き立てる。

 

「オラッ! 好きと言え!」

 

「んぁっ!? ぁ、す、すき、しゅきぃ……」

 

 抱き締められた彼女に、その後も天国と地上を行き来させる。

 遂に泣き出した少女の顔が俺の首元に押し付けられ、脱力した身体は既にふやけきっていた。

 

「も、もうむり……むりです……ずっとイって……ゆるひて……ぁ、ぁー……」

 

 千景の目は虚ろだった。

 汗だくの柔肌を俺に擦りつけ、甘い呼気を耳朶に聞かせる。竿を引き抜く度に蜜を噴き、全身から芳香を漂わせる少女の身体はいつでも孕む準備ができているようだった。

 

「いっそ、ひといきに……」

 

 もはや何をしても肉体が絶頂に達する。

 口がだらしなく開き、大きく脚を広げ伸ばした少女。

 

 彼女の膣は最高に熱く、俺の性感を限界まで昂らせていた。これ以上優しくすると長くはもたないだろう。

 上体を起こし、千景を見下ろす。ぺちゅんと濡れた鼠径部がぶつかり、愛液が陰毛を濡らす。

 

「……はぁー……んっ、もっと……強く……」

 

 ぐいっと千景の腰肉を掴む。

 まるで玩具のように千景の媚肉に怒張を押し付ける。ベルトのように彼女の腰を掴む手に、千景の手が重なる。

 

「はっ、ぁ、ぁ、あ……!」

 

 ぱんぱん、と肉を叩く音が響く。

 小さな乳房が揺れ動き、千景は感じ入るように目を閉じて喘ぐ。

 

「んはっ! ぁっ、んっ……!」

 

 少女ではなく、己の望むペース。

 激しい速度でのピストンはあっという間に俺と千景を高みに連れて行った。

 

「……あああっっっ!!!」

 

「……っ!」

 

 たっぷりと彼女の最も貴い場所を汚濁で汚していく。

 征服欲、支配欲、その他の雄としての悦びを満たしながら、千景に身を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 電話が鳴り、千景の動きがピタッと止まった。

 淫欲に満たされた笑みと嬌声を自らの手で抑えて、俺の上で固まる。同時に膣を引き締める彼女に奥歯を食い縛りながら受話器を取る。

 

『お楽しみの最中ですか?』

 

「そうだね」

 

『ふふっ……もしかしてこの会話もプレイに組み込んだり?』

 

「どっちだと思う?」

 

『……教えて貰えますか?』

 

「駄目」

 

『それは困りましたね』

 

 どこか甘ったるい声に聡明さを感じさせる。

 目を細めると、耳朶に響く女の声だ。巫女の、ひなたの声。受話器の奥、ひなたの近くからは水音と共に他の女の間延びした声が聞こえる。

 ざぶり、という湯を跳ねる音と共に鼻歌混じりの声が聞こえた。

 

『あ~……亮之佑はまだって?』

 

『しっ、ですよ、若葉ちゃん。静かにして下さい。凄い事しますよ?』

 

『す、すまない』

 

『もう……もしもし? まだ繋がってますか? ……いえ、変な意味ではなく』

 

『ひなた?』

 

 受話器を耳に宛がう俺は、千景を見上げる。

 赤らんだ顔、濡れた瞳には理性の光を宿し始め、自らの乱れ具合を自覚し始める。

 俺に馬乗りとなって騎乗位をしていた腰は前後に動き、自ら生み出す官能に浸っていたが、その動きを止め、口元を手で押さえ赤面した彼女と見つめ合う。

 

「……ふーっ……ふーっ……」

 

 ぐり、と少女の腰肉を掴み肉竿を擦りつける。

 僅かに息を止め、嫌々と首を振る千景は俺を睨む。

 

「んっ……やめて……」

 

 口元を押さえた少女の手が震える。

 鼻息は荒く、しかし絶頂に達する寸前だった膣は蠕動を続ける。きゅうっと締め付ける雌穴の刺激は千景の我慢の証明だ。

 他の少女に聞かれたくないのか、ゆっくりと口に置いた手を離し、俺の胸板に置く。

 

「ん……」

 

 頭を垂れ、黒髪が俺の頬をくすぐる。

 汗と雌臭が混ざった毛先が揺れ動き、荒い呼気の彼女がゆっくりと腰を上げるのが見えた。

 ぬぷぷ、と白濁と愛液が混ざり合った怒張が姿を現していく。

 

「は、ぁ……」

 

『亮之佑さん?』

 

「あ、うん。先に二人でよろしくやってて」

 

『よろしくなんて……もう、亮之佑さんってば私と若葉ちゃんを誤解していますよ?』

 

「というと?」

 

『もう、してますよ』

 

『ひ、ひなた……ちょっ、そこは──』

 

『ふふっ、若葉ちゃんのココはすっかり大人ですね。もう……こんなに大きくなっちゃって……我慢しなくて良いんですよ? あれ? 若葉ちゃん? これは何ですか?』

 

『くっ……』

 

「内容について詳しく」

 

『えー……若葉ちゃんどうしますか? ……ふむふむ。あっ、若葉ちゃんったらもう……早く来てくれたら教えるかもしれませんよ? んっ、そんなところ……ぁん! もう……えいっ!』

 

『ふわぁああっ!! ……ハァ……ハァ……、亮之佑……ひなたは凄いぞ』

 

「知ってる」

 

 内腿や結合部には透明な糸が橋を作っていた。

 千景は徐々に怒張を引き抜き一度仕切り直そうとしていた。受話器を首と頭で固定しながら、頑張る千景の腰を掴んで、思いっきり腰を突き上げる。

 

「アンッ──!!」

 

 ビクッと身体を丸め、口からはっきりと嬌声が漏れた。

 俺を睨みつけ、慌てて緩んだ口元を手で押さえようとして、──逆に少女の両手首を押さえる。涙目で睨み、無言で嫌々と首を振る千景は、あまりにも俺の被虐心をくすぐってしまった。

 パン、と鼠径部がぶつかる勢いで怒張を突き上げた。

 

「ぃひ!!?」

 

 背筋をのけ反らせ、ぷしっと潮が散った。

 

「ィっ、ぁぁ、ぁあああっ──~~~~ッ!!!」

 

 硬く結んだ唇が緩み、絶頂に達したことを認める声が響く。

 

「……ふ、っ……! ……! ──!」

 

 俺に手を掴まれ、怒張に貫かれたままの少女は天国に昇る。海老のように反った背中がゆっくりと戻る千景だが、瞳は虚空を見つめ、濡れた唇からは涎が垂れ落ちた。

 失禁か愛液か、じわじわと温かい物が結合部からシーツに垂れ落ちる。恥毛は愛液を吸って縮れ、竿を咥えた花弁からは愛液がどんどん溢れていた。

 

「……は、っ、ぁ……」

 

 意識すら軽く飛んでしまったのだろう。ゆっくりと俺に抱き着くように倒れ込む彼女を受け止める。ビクッ、ビクッと震える少女の腰は理性の欠片もなく、下品に左右に動かして更なる天国を味わっていた。

 もっちりとした尻肉を掴み、怒張を押し付けて喜悦を少女の最奥に刻み付けていると、電話の先にいる少女が呆れたような声で聞いてくる。

 

『……大丈夫ですか?』

 

「ああ、もうイくよ。色んな意味で」

 

『下ネタですか? ……いえ、なんでもありません。楽しみにしています』

 

『今の千景の声か? その……凄いな』

 

『若葉ちゃんも凄い声を出せますよね? デリカシーですよ?』

 

『いや、正直に言ってひなたの方が……待て、待て! 亮之佑助け──』

 

 通話の切れた受話器を置く。

 少ししてから意識を取り戻した千景は記憶が残っていたのか、顔を赤くして怒られる。

 

「あ、貴方ね……! こ、これからどんな顔して上里さんや乃木さんに会えば……ちょ、ちょっと……うやむやになんてっ、ぁッ、ぁぁ、ぁあぁっ!!」

 

 ペチン、と尻を叩いて膣を締めさせる。

 喘ぎ声を聞かせたことについて追及される前に突き上げる速度を速める。浮かせようとする尻を掴んで、最奥をひたすらに小突き続けた。

 

「止めなさっ……んんぅ~~ッ!!」

 

 しばらくの間、女の声と水音と肉を叩く音だけが室内に響いた。

 数分ほどで、千景の中で白濁が噴いた。

 

「っ……」

 

 重たい少女の肉体がのしかかってくる。

 黒髪が垂れ、俺の視界を暗くする。

 

「……」

 

 少しだけ唇を重ねる。「亮之佑くん」と戸惑いがちに呟く千景を見上げるも、彼女から続く言葉はなく、代わりに唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 チラリと背後に目を向けると千景はシーツを巻いて寝ていた。

 部屋を出て、バスローブを巻いて、事前に指定された部屋に向かう。

 

 そこは和室だった。

 畳の香りが良く、広々としていて、静かだった。

 ここで寝てくれとばかりに布団が敷かれ、二人分の衣服があった。丁寧に畳まれて、それぞれ黒と水色の大人びた下着が置かれていた。

 下着にはまるで見るという確信があったのか、メモ用紙が挟まれていた。丁寧に矢印と共にハートマークが記載されていた。

 

「……」

 

 耳を澄ませると矢印方向から水音が聞こえた。

 ゆっくりと部屋の端に向かい、窓を開けると涼しい風が頬を撫でる。両脇を壁で囲まれ、正面から外の海が見えるバルコニー、木の床を数歩行くと、目が合った。

 

「広い風呂も良いが、少人数でこじんまりした場所も風情があって良いと思わないか? 亮之佑」

 

 湯水に蕩けた声で名前を呼ばれる。

 

「家族風呂って感じがする」

 

 脚を濡らす湯水。

 隅に置かれたランタンが、周囲を柔らかな光で照らす。

 

「確かに」

 

 やや広め、とはいえ銭湯ほど大きくは無い木製の浴槽。黒の大理石の縁には小さな木桶が置かれている。手招きされて近づくと、妙齢の金髪美女が微笑む。

 器用に頭に白いタオルを乗せ、真っ直ぐな眼差しで俺の全身を見る。

 

「まあ、その、色々としているが、家族みたいなものだろ?」

 

「……若ちゃん。残りの家族はどうしたの?」

 

「この時間なら、他二人は既に寝ているだろう。夜も遅いからな。……大人の時間という奴だな」

 

 はにかむような微笑と共に、桶の中に入っていた小さなぼた餅を取り出す。一口サイズのぼた餅を爪楊枝で突き刺して俺に向けてくる。

 食べると、モチモチの質感と餡子の甘さが身体に染み渡る。

 

「東郷さんじゃないな?」

 

「……二人で作ったんだ。美味しいか?」

 

 柔らかな声で尋ねられて、否定の声を上げることなどできるものか。

 静かに首肯をすると、金髪の美女は優しく微笑む。この笑み一つでどれだけの者を堕とせるのだろうか。俺を大好きな園子すらドキドキさせる悪魔の笑みだ。

 

「園子はやらないからな」

 

「なんの話だ」

 

 きっと多くの初恋相手だったであろう若葉は裸体を浴槽に沈めながらも、ぷかりと豊満な乳房が浮くのが見えた。大きな胸は湯に浮く、そんな真実を若葉は教えてくれる。

 

「若葉ちゃん、張り切ってましたからね」

 

「ひ、ひなた! それは言わないと!」

 

「こういうのは言った方が喜ばれますよ」

 

 クス、と小さく笑う声。

 親愛を滲ませる声音は浴槽の縁から。浴槽の真ん中に座る若葉の隣から人一人分の隙間を空けて、浴槽の角の縁に座る黒髪の美女。

 隠すような物は何もなく、ひなたは豊満な乳房や尻肉を見せる。ぱたた、と手で自らを扇ぎ、朱色に染まった柔肌を彼女は見せる。

 

 チラリと俺の下腹部に目を向ける巫女は妖しい笑みを浮かべる。

 

「もう元気になりましたね?」

 

「思ったより即効性があるな。……もう一つ食べると良い。夜は長いんだからな」

 

「若葉ちゃん。本気ですね」

 

「茶化すな。……ひなたこそ」

 

「……ほら、ここには大人しかいませんから。さっきも話した通り察して下さい、若葉ちゃん」

 

 何か仕込んでいそうなぼた餅の皿が入った桶を見せる若葉は浴槽から上がる。

 ざばり、と濡れた裸体。形の良い大きな乳房や、薄く朱色に染まった鎖骨、くびれた腰肉や引き締まった腹筋、湯を含み肌に張り付くくすんだ金の恥毛と順番に視線を向ける。

 対して、チラリと俺の下腹部を見た若葉はぶるりと震えながらも、目を逸らさない。

 

「ん? どうかしたか? 遠慮するな、私たちの仲だろう?」

 

 隠すこともせず、腰に腕を置く若葉は大人の微笑を浮かべる。

 その視線を掻い潜り、自らの乳房を片方持ち上げて見せるひなた。

 

「ええ、その通りです」

 

 大人の若葉よりも更に豊満な乳房、尖頭が挑発するようにぷるんと揺れた。

 ゆっくりと立ち上がり、肉付きの良い身体の全てを見せる巫女の手が自らの下腹部に伸びる。湯で肌に張り付いた黒の恥毛を通る指が媚肉に触れる。

 ピンク色の花弁は卑しく光り、水音が聞こえるようだった。

 

「亮之佑。そんなところに突っ立っていないで一緒に入ろう。今なら、私が直々に身体を洗ってやるぞ?」

 

「亮之佑さん、風邪を引きますよ? ……早く来て下さい。せっかくなので、私も丁寧に御奉仕しますね。若葉ちゃんと一緒に……ね?」

 

 若葉もひなたも普段に比べて成長した裸体を惜しげもなく俺に見せる。

 大人の女、妙齢の美女二人が、互いの間に挟まるように空間を開けて、浴槽に手招きした。

 

 どうしようもない程に肉棒が反り立っていく。

 色香と芳香を漂わせる魅惑的な女二人の誘いに頭がクラクラする。まるで酔ってしまったような気分だった。

 だが、まずは風呂だ。美女二人との風呂を堪能しなければ。

 その後で犯し尽くしてやる。

 

 その思いで、ゆっくりと脚を進めていく。



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