人は何故生きるのだろう、
人は何故死ぬのだろう。
そんな哲学的な答えを探すのにはもう飽きた。
戦場を彷徨い歩く、ふらふらと酔ったような状態で。
視界が揺れる、頭が痛い、現実と夢の区別もつかないまま、ただ歩くだけ。
人は何故愛を感じるのだろうか、人は何故愛さずにはいられないのだろうか。
そんな哲学的な答えを探すのはもうやめたのだ。
私は私、ただそれだけが真実である。
私は全てを諦めていた、ただ他者の幸せだけを考え続けた。
それだけが私の救いだったから、ずっとずっと考え続けた。
生きるか死ぬかの問題には答えを出さない、救えればそれでよかったから。
悲しいこともあったけど、喜びも必ず存在した。
そんな、ただただ過ぎていくだけの毎日だった。
ある日、戦場に出向いていると一枚の紙切れを見つけた。
戦いの真っ只中で、目の前に、それは忽然と現れた。
血飛沫が舞う中で、私はそれを掴む。
無防備だった私は当然斬りつけられる。
大した傷ではなかったが戦場から撤退し、いつもやってる様に野外病院へと足を運ぶことにした。
ほかの兵士の看護をし、色々落ち着いてからあの紙切れを見てみると、私宛ての招待状だった。
文面はこう書かれている。
『鳳凰院 赤麗(ほうおういん せきれい)様、
あなたは願いを叶えるチャンスを与えられました。戦場にいる誰よりも強く、誰よりも素晴らしいと思っているならば、ぜひいらしてください。どんな願いでも叶います。 シュレディンガー』
私は願いを叶えたかった、夢に見ていた願いが叶いそうだった。
その招待状は私を現実へと引き戻し、信念を覚醒させた。
私の大好きなあの人を奪った、シュレディンガー卿を許さない。
戦場だったから、そんなのは許される理由にはならない。
信念は復讐、シュレディンガー卿を殺す。
「トラスト・ラブー乙女の涙ー!」
傷を負った人達の身体を癒し、私は飛翔し戦場を去った。
赤染の天使、鳳凰院赤麗。
人々は彼女を天使と呼ぶ、その外見だけに惑わされて、その内面だけに惑わされて、全てを見ようとはしない。
偏った一部を見るだけで人は判断してしまう。
彼女の本質は自分勝手そのもの、しかし、それはとても美しい。
翼を撃たれた鳥のように彼女は踠く、心は涙のように儚い。
自分で自分を傷つけていることがわからぬまま、ずっと苦しんでいる。
純粋な心が彼女を苦しめていた。
あの招待状はその苦痛を和らげるための鎮痛剤にしかならない。
しかし、変わるための大きなきっかけにはなるだろう。
この招待状は13人に配られた、彼女と同じような心境のものばかりである。
確固たる信念を持ち、己の勝利を信じて疑わないもの達が、己の願いの為にただひたすら戦う物語が始まろうとしている。
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