戦極凌馬の短編集シリーズ (ロボ戦極凌馬)
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変態三人衆はダークライダー!?(ハイスクールD×D)
第01話 旨い珈琲が淹れられない



短編集置き場に移しました。内容は変わらないです!


 

 

 

 ━駒王学園━

 

 

 

 

 放課後、俺は親友二人と学園の敷地内にある芝生の上で座り込んでいた。天気は快晴で、雲一つもない青空の下で俺達三人はのんびりしていた。

 

 

「お~、部活がんばってんな。不味ッ!?」

 

「天気は快晴で、部活をするには最適な日だろう。……不味い」

 

「いやぁ、青春してるねぇ~。あっ、不味! これ不味いな!?」

 

「「いや、お前が淹れたんだろう」」

 

 

 青春を謳歌している生徒達を眺めながら、俺達は珈琲を飲む。

 だが、その淹れた珈琲が不味いせいで全てが台無しだ。まぁ、俺が淹れた珈琲なんですけど。

 

 

「相変わらず、一誠の淹れた珈琲は不味いよな」

 

「何をどうしたら、こんな不味い珈琲を淹れられるのか逆に気になる程だ」

 

「お前ら辛辣だなぁ。こう見えても、俺だって日々頑張ってるんだよ?」

 

 

 日々頑張っているけど、不味い珈琲しか淹れられない。一体どうなっているんだろうか? 自分でも不思議だ。

 そう言えば、自己紹介がまだだったな。俺の名前は兵藤一誠。駒王学園に通う、高等部二年生だ。

 

それで、俺の左隣に居る、眼鏡を掛けた知的なオーラを醸し出している黒髪の男子が元浜だ。

 

 

 又の名を───『サイボーグ元浜』

 

 

「おい、一誠。今、失礼な事を考えていないか?」

 

 

 なんて鋭い奴だ。流石は元浜だ。

 最後に、俺の右隣に居る、坊主頭で如何にも体育会系な雰囲気を出してるのが松田だ。

 

 

 又の名を────『筋肉バカ』

 

 

「なんだろう……馬鹿にされた様な気がすっけど、否定出来ないような」

 

 

 とまぁ、俺達三人は放課後を自由に過ごしているわけなんだが、さてどうするか……。

 

 

「やはり、ブレンドを変えてみるべきか……」

 

「なぁ、一誠。諦めるって選択肢は無いのか?」

 

「無いな」

 

「無いのか……」

 

「諦めろ松田。一誠は不味い珈琲しか淹れられないが、珈琲への愛と飽くなき探求は本物だ。不味いがな」

 

 

 元浜め、不味い不味いと言うとは。実際問題、不味いから仕方無いんだけれども。

 

 

 三人で仲良く話し合っていると、近くから騒ぎ声が聞こえた。俺達は「なんだ?」と思いながら声の聞こえた方を向くと、学年関係なく男女が群れを作っていた。

 

 

「お、おい! 見ろ! グレモリー先輩だぞ!」

 

「姫島先輩もだぜ!!」

 

「キャァァアアアアッ!! リアスお姉様と朱乃お姉様よ!!!」

 

「木場君~! 今日も格好いい!」

 

「ハァハァ! こ、小猫ちゃん! こっち向いて!」

 

 

 男女の視線の先には、『学園の二大お姉様』と呼ばれるアイドル的存在、血のような赤い長髪のリアス・グレモリー先輩と黒髪ポニーテールの姫島朱乃先輩の二人が妖麗な魅力を醸し出し、脇には『学園一のイケメン』と呼ばれている木場祐斗、小柄な身体つきで普段から表情を崩さないポーカーフェイスで『学園のマスコットアイドル』である塔城小猫の四人が歩いていた。

 

 

 この光景は、学園では珍しくはない。入学したら絶対に一度は見る光景だ。俺は逆に見飽きたけどな。

 

 

「やっぱりグレモリー先輩達か。先輩達も大変だろうな、毎日の様に騒がれて」

 

「うむ、全く喧しい連中だ」

 

「まぁ、良いじゃないの。俺達には関係無いことだしな」

 

 

 俺の言葉に松田と元浜は「そうだな」と頷く。

 

 その後、俺達は学園を出て途中で本屋やゲームセンターに寄り道して帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は、夜の19時。

 

 

 この町の外れに存在する廃墟になった工場。そんな工場の敷地内に二人の人物が居た。その二人は先程、学園で見た二大お姉様のリアス・グレモリーと姫島朱乃の二人である。

 

 

 何故、この二人が夜の廃工場に来ているのか。それは────はぐれ悪魔を討伐しに来たのである。

 

 

 この二人は、人間ではなく『悪魔』と呼ばれる種族であり、リアス・グレモリーはこの町の管理を任されているのだ。管理と言っても、今回の様にはぐれ悪魔が町に侵入したら、町の住民に被害が出ない内に始末したり等が主な仕事だ。

 

 

 今回、はぐれ悪魔が町に侵入したと大公の方から連絡が入り、こうした討伐しにきたのだが問題が発生したのだ。

 

 

「……はぐれ悪魔が討伐されているわね」

 

「その様ですわね……」

 

 

 そう、討伐対象のはぐれ悪魔が既に殺されていたのだ。その証拠に、討伐対象の頭部が血まみれでその場に残されていたのだ。

 

 

 実を言うと、この様な出来事は今回だけではない。リアス・グレモリーがこの町に派遣される前からも同じ事が起きていたのだ。

 

 

「一体何者なの? 二年前から調べてるけど、一向に正体が掴めないなんて……」

 

 

 リアス・グレモリーも馬鹿ではない。自分達以外にはぐれ悪魔を始末する者が居ると分かり、直ぐに調査を開始したのだ。だが、二年間も調査を続けてきたが何も掴めていないのが現状だ。姿・人数・武器・能力・実力、全てが不明なのだ。

 

 

「部長、そろそろ戻りましょう。手掛かりも見付かりませんし」

 

「……そうね。行きましょう」

 

 

 リアス・グレモリーは、右手に禍々しい魔力を溜めて、それをはぐれ悪魔の頭部に向けて放つ。放たれた魔力は命中し、頭部は綺麗サッパリに消滅していた。

 姫島朱乃は、リアス・グレモリーの後ろで転移用魔方陣を展開し、待機している。二人が魔方陣の中央に立つと、リアス・グレモリーは後ろを振り返り呟く。

 

 

「せめて、敵でない事を祈るわ」

 

 

 魔方陣が赤く輝き出し、二人は指定の場所に転移した。

 

 

 だが、グレモリー達は気付いていなかった。二人が工場に来てからずっと監視していた存在に。

 

 

『敵でない事を祈る……か。それはどうだかなぁ』

 

 

 その者は、ボロボロになった工場の屋根の上に座っていたが、スッと立ち上がる。月明かりに照らされて、その姿が露になった。

 

 

 全身をワインレッドのアンダースーツに身を包み、胸部装甲の中央には青緑の蛇の意匠。首回りにはパイプが二重に巻かれており、パイプの両端が胸部装甲と肩アーマーの間に来ている。両目を覆う蛇を模したバイザーを装着し、バイザーの一部がアンテナとして左頭部に付いている。更にはナニカの塔を彷彿させる角の様な物が頭部から生えていた。

 

 

 全体的に見ると、宇宙服にも見えなくもない。

 

 

『さぁて、俺も戻るとするか』

 

 

 赤き蛇─────ブラッドスタークは、機械的な黒い銃を取り出し、トリガーを引きながら腕を横に振るう。銃口から灰色の煙が発生し、スタークの全身を覆った。煙が晴れると、そこにスタークの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 




如何でしょうか?


次回の変態三人衆はダークライダー!?

第02話 赤き蛇vsはぐれ悪魔

次回もお楽しみに!


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第02話 赤き蛇vsはぐれ悪魔


短編集置き場に移しました。内容は変わらないです!


 

 

 

 

「それじゃあ、今日の授業はここまでとします。日直の方、号令を」

 

「起立、礼!」

 

『ありがとうございました!』

 

 

 日直の号令と共にクラス全員が担当の先生に礼をする。

 

 

 今日の授業は全て終わり、今から放課後となる。教室を見渡せば、仲の良い子同士が楽しそうに会話していたり、学校指定の鞄に筆記用具と教科書とノートを仕舞って帰宅の準備をする者や、これから部活動や委員会等に参加する者等、それぞれが行動を起こしている。

 

 

 そんな中、教室の一番後ろの窓際の席に座っている俺は、隣の席に座っている元浜の元へ寄る。松田は元浜の真ん前が席なので、椅子に座ったまま体だけをこちらに向けている。

 

 

「さぁ~て、今日もかったるい授業が終わった訳だが、二人はどうするよ?」

 

「俺は部活の助っ人に呼ばれてるから、そっちに行こうと思ってる」

 

「ふむ、俺は……む?」

 

 

 話していると、突然、元浜が言葉を途中で区切り、所持しているタブレットを操作し始めたのだ。数秒すると、元浜が他の生徒達に見えないように俺達だけに見せてきた。

 

 

 俺と松田はタブレットを注視する。画面にはこの町の地図が表示されており、地図のある一点にに赤い印が出来ていた。これの意味を察した俺と松田は、タブレットから元浜の顔に視線を変えた。

 

 

「おぉっと、はぐれか?」

 

「あぁ、その様だ」

 

 

 俺は小声で元浜に話し掛ける。タブレットが表示している赤い印は、はぐれ悪魔が侵入した事を意味している。

 

 すると、今度は松田が元浜に話し掛けた。

 

 

「場所は何処なんだ?」

 

 

 その言葉に、元浜は再びタブレットを操作し始める。そして……

 

 

「町外れにある、廃墟になった工場だな」

 

「ま~た、あそこか」

 

 

 この間も、あの工場に住み着いた奴がいたなと思い出す。はぐれ悪魔は、あぁ言った廃墟や森の中、人があまり居ない場所に住み着く傾向がある。

 

 

「にしても、相変わらず優秀だよな。元浜の『忍者プレイヤー』達ってさ」

 

「うむ、どうする? 忍者プレイヤーに始末する様に指示を出すか?」

 

「いや、俺が行こう」

 

 

 元浜が指示を出そうとするが、敢えて俺が行く事にする。

 

 

「何故だ? 忍者プレイヤーに任せた方が楽だぞ?」

 

「だろうな。勿論、理由はあるさ。お前の持ってるアレの完成には『死のデータ』が必要だろう?」

 

「ふむ、確かにそうだが……」

 

「だろ? それにお前、これから委員会があったよな? お前はそっちに参加しろ、データ集めは俺がやっておく」

 

「……すまない、助かる」

 

 

 そう言って、元浜は懐からある物を二つ取り出して俺に渡す。それは、中央の画面を挟むかの様にAボタンとBボタンが配置し、Aボタン側に二つの銃口、Bボタン側にチェーンソーの刃の様な物が付いた紫色のパッド型のゲーム機と、グリップガードとラベルが貼られた白いゲームカセットであった。

 

 

  それらを受け取った俺は、瞬時に懐に仕舞う。

 

 

「んじゃ、行ってくるわ。あぁ、念の為に忍者プレイヤー達に指示を送ってくれ。俺が着くまでに奴が工場から出ようとしたら殺して良いってよ」

 

「分かった」

 

「頑張れよ~」

 

 

 二人に見送られながら、俺は教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「この辺で良いか……」

 

 

 学校を出た後、人気の無い場所に移動した俺は、制服のポケットからスマホを取り出す。ただし、取り出したスマホは一般的な物とは少し違った。スマホにしては妙にゴツく、裏側には何かを装填出来るスロットと車輪の意匠がある。俺が開発したスマートフォン型ガジェット────『ビルドフォン』である。

 

 

 更に、ポケットから縁が黒でキャップのある『フルボトル』と呼ばれる小さなボトルを1本取り出す。取り出したライオンの意匠のある黄色のボトル『ライオンフルボトル』を手首のスナップを活かして数回振る。振った後、『シールディングキャップ』と呼ばれる蓋を正面に回す。ボトルをビルドフォンの『フルボトルスロット』に装填する。

 

 

【BUILD CHANGE!】

 

 

 ビルドフォンから音声が鳴ると、それを空中に投げる。ライオンフルボトルから送られてくる成分により、ビルドフォンは空中で複雑に変形・巨大化し、1台のバイクとなり地面に着地する。ガシャンと音を立てて着地したバイクは、黒をベースにカウル部に歯車が付けられており、後ろには肥大化したライオンフルボトルが固定されている。

 

 

 専用マシン────『マシンビルダー』である。

 

 

 マシンビルダーに跨がり、付属しているヘルメットを被りエンジンを起動させ、目的地である工場に向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 暫くすると、目的地に到着した。バイクから降りて、マシンビルダーを元のビルドフォンに戻してポケットに仕舞う。

 

 

 辺りを軽く見渡すが、人の気配は一切感じない。住宅街から距離があるから当然なんだが。少し歩くと、工場の出入り口らしき門が見えた。門は閉まってはいるがあちこち錆び付いており、見た感じでは門を開けた形跡はない。

 

 

 俺は、その場で軽く地面を蹴ると数m飛び上がり、そのまま門を飛び越えた。工場の敷地内に入ると、目の前に音もなくソレは現れた。

 

 

 現れたのは、全身を紺のメタリックと白をベースにオレンジのアクセントを効かせ、手足にはブレードが付いており、単眼で頭にハチマキを巻いた忍者の格好をした───『忍者プレイヤー』である。

 

 

 この忍者プレイヤーは、元浜の部下みたいな感じだ。忍者プレイヤーは結構な数が居て、駒王町全域に放っている。隠れてたり、侵入したはぐれ悪魔等を発見次第、俺達に報せてくれる役割を持っている。時には、忍者プレイヤー達にはぐれ悪魔の始末も任せている。

 

 

 俺は、出迎えてくれた忍者プレイヤーに話し掛けた。

 

 

「出迎えご苦労さん。奴はまだ中に居るか?」

 

「……」

 

 

 俺の質問に対し、無言で頷く。奴がまだ中に居るなら、さっさと用を済ませるとしよう。

 

 

 懐から二つの物を取り出す。左手には縁が銅色で白いコブラの意匠がある『コブラフルボトル』を、右手には黒をベースにした機械的な銃『トランスチームガン』を持つ。フルボトルを数回振った後にキャップを回し、それをトランスチームガンの銃身下部にある装填スロットにスライドさせる要領で装填する。

 

 

【COBRA!】

 

 

 装填すると、トランスチームガンから低い音声と不気味な待機音が鳴り響く。トランスチームガンを顔の近くにまで持っていき、自身を赤き蛇に変える言葉を告げる。

 

 

「──蒸血」

 

【MIST MATCH!】

 

 

 トランスチームガンを下に向けた瞬間にトリガーを引きながら上に振るう。銃口から灰色の煙が放出し、俺の体を覆う。煙の中で赤銅色の発光が起こると、俺の体が変化していた。

 

 

【CO・CO・COBRA! COBRA!】

 

 

 全身をワインレッドのアンダースーツに身を包み、胸部装甲の中央には青緑の蛇の意匠。首回りにはパイプが二重に巻かれており、パイプの両端が胸部装甲と肩アーマーの間に来ている。両目を覆う蛇を模したバイザーを装着し、バイザーの一部がアンテナとして左頭部に付いていて、ナニカの塔を彷彿させる角の様な物が頭部から生えている。

 

 

【FIRE!】

 

 

 煙が晴れると、頭部の角とパイプの両端から白煙と赤と緑の花火が勢い良く噴出した。

 

 

 赤き蛇─────“ブラッドスターク” へと姿を変える。

 

 

『んんッ! さぁ~て、お仕事開始だ』

 

 

 ボイスチェンジャー機能で四、五十代のダンディな声に変えた俺は、はぐれ悪魔の気配を辿って歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 工場の敷地内にある開放的な倉庫に、はぐれ悪魔は居た。大きな鉤爪の様な足に、上半身が裸の悪魔である。

 

 昼寝をしていたはぐれ悪魔は、ふと、目を覚ます。何か気配を感じたのようで、眼を開けて顔を正面に向けると───

 

 

 

 

 

 ──────足が迫っていた。

 

 

 

 

 

『ヨイショォオオオオオッ!!』

 

「ぐわぁああああああああああッ!?」

 

 

 迫っていた足、ブラッドスタークの飛び蹴りがはぐれ悪魔の顔面に炸裂した。突然の攻撃にはぐれ悪魔は反応する事が出来ず、それを諸に喰らってしまい、倉庫の奥まで吹き飛んでしまう。

 

 

『ビンゴォ! 顔面ストライクだな。今のは中々良い蹴りだったと思うんだが……お前さんはどう思う?』

 

「きっ、貴様ぁああああ……!!」

 

 

 着地したスタークは、そのダンディな声で愉快そうにはぐれ悪魔に話し掛ける。逆にはぐれ悪魔はスタークの話し方が気に入らないらしく、怒りで歪ませた顔に片手を置きながら睨み付ける。

 

 

 そんな、機嫌が悪いはぐれ悪魔にスタークは更に言葉を掛ける。

 

 

『悪い悪い。丁度、俺の視界に昼寝してるマヌケが入ったもんでなぁ。良い的になると思って、つい蹴り込んじまった』

 

 

 謝る所か、余計火に油を注ぐという、とんでもない事を仕出かし始めた。これには、はぐれ悪魔も我慢の限界であった。

 

 

「貴様、どうやら死にたいらしいなぁ!」

 

『ホォ~、で? どうする?』

 

「お望み通り、殺してやるよぉおおおおおおッ!!!」

 

 

 はぐれ悪魔は戦闘体勢に入ると、その巨体からは想像出来ないスピードでスタークに接近し、その豪腕な右腕を振り抜いた。

 

 

 だが……

 

 

 

「なに!?」

 

 

 振り抜かれた右腕をスタークは片手で止めて見せた。そんな馬鹿な、と内心思いながら今度は左腕も使って何度も何度も攻撃するも、結果は変わらない。スタークは全ての攻撃を止め、時には弾いて防いでいた。

 

 

 ワンパターンな攻撃に飽きてきたのか、スタークは攻撃を防ぎつつ、戦闘中にも関わらず欠伸をする始末だ。

 

 

『おいおい、お前の足は飾りか? 腕だけで俺を倒せるとでも思ってるのか?』

 

 

 腕だけで、足を全く使わないはぐれ悪魔に問い掛ける。唯でさえ、攻撃が当たらない事でイライラしているはぐれ悪魔にとって、スタークの発言一つ一つが余計イライラを増長させる。

 

 

「うるせぇえええええッ!! いい加減くたばりやがれぇ!」

 

 

 大声を上げながら、巨大な鉤爪の足を勢い良く振り上げる。足を振り上げた瞬間、スタークはまるで蛇のような滑らかなスライディングではぐれ悪魔の下をすり抜けて背後に回った。

 

 

 何処からか赤いバルブの付いた片刃の剣『スチームブレード』を取り出したスタークは、はぐれ悪魔の後ろ足に向けてスチームブレードを横に一閃。切れ味が良いのか、足を難なくスパァッ! と切断した。

 

 

 更にもう1本、後の足を切断したことではぐれ悪魔はバランスを保てなくなり、倒れてしまう。何とかして前足だけで立ち上がろうとするが、はぐれ悪魔の頭上を飛び越えて背後から正面に移動したスタークによって前足も切断されてしまい、 立つことが出来なくなってしまった。

 

 

『所詮、図体がデカいだけの雑魚か……』

 

 

 右手のスチームブレードを弄びながら、あまりの呆気なさに落胆するスターク。スチームブレードを仕舞う代わりにトランスチームガンを右手に装備すると、変身に用いたコブラフルボトルを取り出して数回振るう。振ったボトルをスチームガンのスロットに装填した。

 

 

【COBRA!】

 

 

 スチームガンから音声が鳴ると同時に、銃口にエネルギーが充填し始める。

 

 

 スタークがこれから行うであろう事を察したはぐれ悪魔は、その醜い顔を恐怖に歪ませる。

 

 

「ま、待ってくれ!? いいい今すぐこの街を出ていく! だから、命だけは!?」

 

『足が無いのにどうやって移動するんだ?』

 

 

 そう言いながら、スチームガンの銃口をはぐれ悪魔の頭に照準を合わせると、スタークは左手をパーにした状態で腕を軽く上げ……

 

 

『Ciao!』

 

【STEAM BREAK! COBRA!】

 

 

 そう告げると、スチームガンのトリガーを引いた。スチームガンから放たれた紫色のエネルギー弾がはぐれ悪魔の頭部を吹き飛ばしたのだ。断末魔を上げることなく死亡したはぐれ悪魔。頭部があった部分からは噴水の如く出血している。

 

 

 スタークはスチームガンを仕舞い、懐から別の物を取り出す。

 

 

『さて、死のデータを回収するとするか』

 

 

 取り出したのは、元浜から預かった紫色のパッド型ゲーム機『ガシャコンバグヴァイザー』と、『DANGEROUS ZOMBIE』というラベルが貼られた白いゲームカセット『デンジャラスゾンビガシャット』の二つだった。

 

 

【ガシャット!】

 

 

 スタークは、持っていたガシャットをバグヴァイザーにセットして銃口をはぐれ悪魔の死体に向けると、バグヴァイザーのAボタンを押す。

 

 

 すると、セットしたガシャット内に蓄積していた『死のデータ』を死体に散布する。黒紫色の粒子が死体全体に行き渡ると、死体が黒紫色の粒子に分解された。

 

 

 それを確認したスタークは、粒子に向けてバグヴァイザーのBボタンを押した。粒子はバグヴァイザーの銃口に吸い込まれ、セットしたガシャットに蓄積されていく。

 

 

『データの回収完了。これでアイツも喜ぶだろ』

 

 

 満足そうにしながらバグヴァイザーを懐に戻すと、スタークの後ろに数人の忍者プレイヤーが音もなく現れた。

 

 

『んじゃ、後はよろしく頼むぜ』

 

 

 スタークの言葉に頷く忍者プレイヤー達。彼等はスターク達が戦闘した後、破損した壁や飛び散った血などを修復・掃除する役割も持っている。

 

 

 スタークは一番近くに居た忍者プレイヤーの肩をポンと叩くと、スチームガンを取り出して横に振るう。灰色の煙が彼を包み込むと、その場から離脱したのだった。

 

 

 

 

 




如何でしたか?


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第03話 一誠の仲間はヤベー奴


短編集置き場に移しました。内容は変わらないです!


 

 

 

 

 ふむ、遂に俺の視点か。馴れないが頑張るとしよう。

 

 

 改めて、俺の名前は元浜。一誠と同じ駒王学園高等部二年に所属している。不本意だが、同学年の者達から『サイボーグ元浜』と呼ばれている。確かに俺は感情をあまり顔に出さないし、物事を淡々とこなす事が多いが……まぁ、良いだろう。

 

 

 現在、俺は学園での委員会の仕事を終えて帰宅中だ。先程、一誠がはぐれ悪魔の討伐を終えたという報告が忍者プレイヤーから送られて来た。

 

 

 故に、死のデータを回収したであろう一誠からバグヴァイザー及びガシャットを受け取る為に俺は自身の『研究室』に向かっている。

 

 

 俺は途中、辺りに人が居ないことを確認すると路地裏に入る。路地裏の中央まで来ると、目と鼻の先にソレが出現した。

 

 

 ソレは、オーロラの様に緩やかに揺らいでいる『灰色の壁』だ。灰色の壁は、ゆっくりと俺に近付いて来ると、激突することなく体をすり抜けて行った。

 

 

 だが、壁がすり抜けると景色が一瞬で変化した。先程までの薄暗く狭い路地裏ではなく、灰色の空間がどこまでも続いており、目の前には1つの鉄製の扉があるだけ。

 

 

 そんな、怪しさ満載の扉を躊躇なく俺は開ける。扉の先には、複数の机の上にはパソコンが数台置かれており、壁際には大量の機材が置かれている。この部屋こそ、先程言った『研究室』だ。

 

 

 俺は中に入って扉を閉める。部屋を見渡すと、隅の方に申し訳程度に配置された休憩用のテーブルとソファが目に映る。そのソファに寛いでいる人物が一人居た。

 

 

『よぉ、邪魔してるぞ』

 

 

 血の様な真っ赤なスーツとアーマーを身に纏った───兵藤一誠こと、ブラッドスタークが愉快そうな声で話し掛けてきた。

 

 

 そんなスタークを見て、俺は溜め息を吐きながら返答した。

 

 

「別に勝手に入るのは構わないが、せめて元の姿に戻ったらどうだ?」

 

『ハハハッ、悪い悪い。すっかり忘れてたぜ』

 

 

 スタークは笑いながらそう言うと、頭の角とパイプから煙を噴出させる。煙が晴れると、駒王学園指定の制服を着た一誠がそこに居た。

 

 

 すると、一誠は懐に手を入れると……

 

 

「元浜、ホイッ!」

 

 

 懐から取り出した物を俺に投げてきた。俺はそれを落とさないようにキャッチする。全く、もう少し丁寧に扱って貰いたいものだ。

 

 

 一誠が投げ渡して来たのは、学校で俺が預けたガシャコンバグヴァイザーとデンジャラスゾンビガシャットだった。視線を一誠に戻して問い掛ける。

 

 

「うむ、確かに受け取った。データは回収出来たのか?」

 

「勿論だ。調べれば分かるぜ」

 

 

 確かにそうだな、と思いながら、バグヴァイザーにセットされたガシャットを引き抜く。

 

 

【ガッシューン!】

 

 

 引き抜いたガシャットを俺が普段使っているパソコンの横に置かれた専用の機材にセットする。すると、パソコンの画面にガシャット内に蓄積された死のデータに関するデータが次々と表示されていく。

 

 

 キーボードを操作すること数分、一誠が死のデータを回収した事が事実だと分かったので、操作を止める。

 

 

「ふむ、本当に回収したようだな。安心したぞ」

 

「だろ? 俺はちゃんと仕事を全うする男だからな。それで? 死のデータは充分溜まったか?」

 

「もう少しだ。後少しで、このガシャットはレベルX未知数に到達する」

 

「んじゃ、俺か松田のどっちかで模擬戦だな。そうすれば、一気に死のデータが溜まるぞ」

 

「同時に俺が死に掛ける事になるのか……」

 

 

 一誠か松田、どちらかと模擬戦する事を想像すると億劫になる。一誠は遊んだりする事があるからまだ良いが、松田は面倒だ。松田は戦闘に関して一切手加減をしない。過去に戦闘データが欲しい為、松田と模擬戦をした事がある。結果的にデータは充分と言って良い程集まったが、俺が死にそうになった。

 

 

「それは仕方ない事だろ? 強大な力にはデメリットが付き物だ。死に掛けるぐらいじゃ、まだ軽い方だ」

 

「それはそうなんだがな……」

 

 

 一誠の言っている事は最もな事なのだが……うむ、模擬戦は一誠にして貰う事にしよう。それが良い。

 

 

「そう言えば、松田はどうした?」

 

「松田なら夕飯を食べに行ったぞ」

 

 

 松田は部活の助っ人を終えた後に必ずご飯を食べに行っている。それは別に構わないのだが、アイツの食べる量は異常だ。何せ、20人以上の料理を平気で平らげるのだ。いずれ、アイツの胃袋を研究してみたいものだ。

 

 

「成る程、いつも通りか。所で、アレの研究はどこまでも進んでる?」

 

 

 一誠が再び問い掛けてくる。俺は右手の中指で眼鏡をクイッと軽く上げて答えた。

 

 

「7割、と言った所だな。完成まで時間が掛かる。申し訳ないがもう暫く借りることになる」

 

「壊さないでくれよぉ~? 大事な物だからな」

 

「そんなミスは犯さない。そこは安心してくれ」

 

「OK、お前を信頼してるからな。それに、コレを使うことは当分無いだろうし」

 

 

 一誠は懐からある物を取り出した。それは俺も何度か見たことがあり、一誠から預かっているアレには欠かせない重要な物だ。黒を主体に部分的に白色が入り、メーターの様な物が組み込まれ、起動スイッチと接続部分が赤色のガジェットだ。

 

 

 フッ、と一瞬だけ笑みを浮かべた一誠は懐に戻してソファから立ち上がった。恐らく帰るのだろう。

 

 

「バグヴァイザーは返したし、俺は帰るとしますか。珈琲を作らないといけないからな、Ciao!」

 

 

 そう告げると、一誠は部屋から出て行った。相変わらず自由な奴だ。俺は椅子に座り、パソコンと向き合うとキーボードを操作する。今日中に終わらせたい事が幾つかあるので、その作業に取り掛かる。

 

 

 その作業は、日付が変わるまだ続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 一誠と元浜が話し合っている一方、住宅街から少し離れた森の中に複数の人影があった。

 

 

 だが、それは少し異様な光景だった。何故なら、一人を中心に10人程の人間が倒れているのだ。倒れている者は全員、フード付きのローブを纏い、ローブの中は神父服を着ている。

 

 そして、倒れている者達の中心に居る人物は駒王学園の制服を着崩した坊主頭の男───松田である。

 

 

 松田は倒れている者達を見て、溜め息を吐きながら呟く。

 

 

「お前ら弱っちいな。それでも祓魔師エクソシストかよ? 食後の運動にもならなかったぜ」

 

 

 祓魔師エクソシスト───それが倒れている者達の総称である。祓魔師と言っても、彼等は教会から追放された『はぐれ祓魔師』なのだ。

 

 

 倒れ伏している祓魔師の一人が、残りの力を振り絞って松田に問い掛けた。

 

 

「な、なぜ……」

 

「ん?」

 

「なぜ……我々が……ここ…に居るのが……分かった?」

 

 

 それが祓魔師の疑問だった。彼等はとある理由でこの町に侵入したのだ。その際、この町の管理者であるリアス・グレモリーに気付かれない様、最大限の注意を払ってきた。お陰で、リアス・グレモリーに気付かれる事なく侵入でき、こうして仲間達と合流したのだが……。

 

 

 松田は、まるで最初から彼等がここに居る事を分かっているかのようにやって来て彼等を倒したのだ。

 

 

 そして、先程の祓魔師の発言に松田は答える。だが、彼の口から放たれたのは男の予想を遥かに越える解答だった。

 

 

「───勘」

 

「……は?」

 

「いやだから、勘だよ。第六感ってやつ。俺って昔から勘は良いんだよな。と言っても、遅かれ早かれ忍者プレイヤーに発見されてたと思うけどな」

 

「勘……だと?」

 

 

 そう、勘である。これには男も戸惑いを隠せない。松田は決して嘘は言っていない。実際、この森に来たのも「この森に何か居る」という勘からなのだ。

 

 

 松田の解答に祓魔師は何とも言えない感情に支配される。こんな男に、そんなデタラメな理由で我々は殺られたのか……と。そのまま、問い掛けた男はその場で力尽きてしまった。

 

 

 松田は、この事を一誠と元浜に報告しようとポケットに手を入れてスマホを取り出そうとするが、後ろから足音がすることに気付いた。

 

 

「おっ、まだ仲間が居たのか」

 

「貴様!よくも我々の同士を!」

 

「これ以上は見逃せん。ここで死んで貰うぞ!」

 

 

 後方から複数の祓魔師が現れ、両手に光の剣と銃を装備して戦闘態勢に入る。それを確認した松田は、嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

 

「俺と戦うことは別に構わないけど……ただ、これだけは言わせくれ」

 

 

 男達は「何だ?」と怪訝に思いながら耳を傾ける。

 

 

「───命乞いだけはするなよ。時間の無駄だからな」

 

 

 そう告げると、松田は祓魔師に向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたか?


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第04話 動き出す物語


短編集置き場に移しました。内容は変わらないです!


 

 

 

 

 あれから二日が経った。

 

 

 放課後、俺達は行き着けの店である『フルーツパーラー』に来ている。ここの店長とは仲が良く、中学の頃からお世話になっている店だ。

 

 

 この店の奥、硝子製のテーブルを挟むように配置されている2つのソファに俺達は座っている。1つには俺が、もう1つには松田と元浜が座っている。

 

 

 今は俺達以外に客が居ないから、話し合いをするには打ってつけだ。俺達は各々注文したパフェを食いながら話している。

 

 

 俺がリンゴパフェ、元浜がレモンパフェ、松田がブラッドオレンジパフェである。

 

 

「あれから二日か……元浜、連中の動きは?」

 

「忍者プレイヤーが常に見張っている。堕天使はこの町の廃墟になった教会を拠点にしているようだ」

 

 

 松田は俺の質問に淡々と答える。松田が始末したはぐれ祓魔師から吐かせた情報によると、連中は1体の堕天使に雇われたという事が判明した。

 

 

 雇い主の名前はレイナーレという女堕天使。昨日、三人の部下を引き連れて町に侵入したのを確認した。現在は元浜の忍者プレイヤーが見張っている。

 

 

 はぐれ祓魔師達は護衛として雇われたらしく、レイナーレの本当の目的が分からなかったのだが、ここで忍者プレイヤーが大活躍! 連中が拠点にしている教会に忍び込ませすると、奴らの目的が判明した。

 

 

 1つは、この町に居る神器を宿した人間の始末。もう1つは、この町にやって来るシスターに宿っている神器を奪うこと。

 

 

 マジで忍者プレイヤー優秀だわ。こんな簡単に情報が手に入るなんて。まぁ、連中がガバガバ過ぎるってのもあるんだけどさ。

 

 

 すると、黙々とパフェを食っていた松田が会話に入ってくる。

 

 

「それでどうするんだ? 今から教会に襲撃でもするのか? 俺は大賛成だぜ!」

 

「お前はただ暴れたいだけだろ。だが、松田の意見には俺も賛成する。奴らの狙いが分かった以上、待っている必要は無いと思う。被害が出る前に始末するべきだろう。データも手に入るだろうからな」

 

「いや元浜。お前、8割ぐらいはデータ収拾が目的だよな?」

 

「違う。9割だ」

 

「いや殆ど変わらねぇよ!」

 

 

 俺は二人の漫才みたいなやり取りをニヤニヤしながらパフェを食う。この二人のやり取りは見ていて面白い。小学生の頃から知り合いだが、全く飽きない。ホント、コイツらは最高だ。ベストマッチってやつかもな。

 

 

 正直、松田の意見には俺も賛成だ。元浜が言っていたが、狙いが分かった以上、ここで燻っている必要はない。

 

 

 それに、この町は一応、悪魔が管理している事になっている。その町に、勝手に侵入した時点で連中は只ではすまない。

 

 

 良し、ここは思いっきり行きますかね。

 

 

「じゃあ、連中の事は二人に任せるよ」

 

「ん? 一誠は一緒に来ねえのか?」

 

「俺は別にやることがあってな、今回は不参加だ。悪いな」

 

「ふむ、俺と松田だけでも特に問題はないが……何をする気だ?」

 

 

 元浜の質問に俺は笑みを浮かべて答える。

 

 

「なぁ~に、ちょっと面白い奴を見付けてな」

 

 

 俺の言葉に、二人は不思議そうに首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

「あ~、メンドクセェ」

 

 

 夜、暗くなった道を俺様はブツブツと愚痴を溢しながら歩いている。

 

 

 俺様の名前はフリード・セルゼン。今ははぐれだが、教会に居た時は周りから『天ッ才祓魔師』と呼ばれていた。

 

 

 ちなみに、一体何が面倒くさいのか。これから悪魔と契約してる人間をぶっ殺しに行く途中なんですがねぇ? これが面倒で面倒で。

 

 

 俺様はレイナーレって言う堕天使に護衛として雇われている訳なんだが、やれ買い物行ってこいだの。軽く掃除しろだの雑用を要求してくる。俺様は護衛として雇われた筈なんすけどねぇ。

 

 

 そんな訳で、朝からこき使われて疲れてるのよ俺は。んで、俺様と同じ様にレイナーレの姐さんに雇われた祓魔師に変わって貰おうと考えたが、他の祓魔師が行方不明なんで、拠点を手薄にしたくないから無理だと断られた。

 

 

 つーか、他の連中は何処をほっつき歩いてんだ? 姐さんの話によると100人程雇った筈なのに、20人しか集まって居ないらしい。

 

 

 まぁ、どーでも良いけどな。俺様は早く仕事を終わらせてベッドにダイブするとしましょうかねぇ!

 

 

 目的の家に着き、俺様は人払いの結界を張る。さてさて、お仕事タイムですわぁ!

 

 

 勢い良く玄関を開け、中に侵入。猛スピードでリビングに駆け込む。

 

 

「どうも~! 天ッ才祓魔師のフリード・セルゼンでぇーす! 悪魔と契約している悪い子はあん…た……か…な……」

 

 

 ハイテンションで入室すると、リビングに居たのは事前に調べていたこの家の主ではなく、血の様な真っ赤なボディに青緑のバイザーを付けたナニカが、ソファに足を組ながら座っていた。

 

 

『よぉ、初めましてだな』

 

 

 俺様が固まっていると、すげぇダンディなお声で話し掛けてきた。

 

 

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!

 

 

 俺様は何年も戦っている故に、相手が格上か格下なのかの判別はある程度出来る。目の前の存在に対して頭の中で警報が鳴りまくっている。冷や汗が止まらない!

 

 

 マズイ! これはマジでヤバイ! どうする!?

 

 

「あ~、えっと、この家の主に用があるんすけど、ご在宅で?」

 

『生憎だが用事で今は居ない。残念だったな?』

 

「そ、そうっすか。いや~、残念ですわぁ~。日を改めてまた来ることにすんで、それじゃあ~」

 

 

 かなり無理があるが、なんとかこの場から逃げ出そうと一瞬だけ背を向けた瞬間……

 

 

「がっ!?」

 

 

 背中に何かが突き刺さった感覚がした。いや、突き刺さったぐらいなら問題はあまりない。問題なのは、体に力が入らなくなり、その場で倒れた事だ。

 

 

「あっ、がっ……!?」

 

『安心しろ、死にはしない。暫く動けなくなるだけだからなぁ』

 

 

 赤いナニカが俺様の側に近付いて来た。体に力が入らない為、視線だけを上に動かすと、奴の手にはナイフが握られていた。

 

 

『おやすみフリード・セルゼン。次に眼が覚めた時は珈琲を飲ませてやるよ』

 

 

 俺様の意識は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 いや~、上手く行ったねぇ。俺はフリード・セルゼンの背中に刺さっているナイフを抜き取る。このナイフには俺特製の毒を塗ってある。毒と言っても死にはしないから大丈夫。

 

 

 そう、俺が言っていた用事はこれである。松田が始末したはぐれ祓魔師からの情報の中に、この男の情報があったのだ。

 

 

 フリード・セルゼン、元ヴァチカン法王庁直属の祓魔師エクソシスト。13歳で祓魔師となった天才だ。ただ、悪魔だけでなく仕事仲間にすら手に掛け、数々の問題行動を起こした結果、異端認定された。

 

 

 良く今まで生きてたなと思うね。運が良いのだろうか?

 

 

 この男は使える、駒として、モルモットとしてな。元浜も喜ぶことだろう。

 

 

『さて、コイツを運ぶとするか』

 

 

 倒れているフリードを肩に担ぐ。あっ、この家の主は本当に出かけている。俺が勝手に不法侵入しただけだ。殺してはいないよ?

 

 

『フリード・セルゼン、お前には役に立って貰うぞ。あのボ・ト・ル・の完成の為にもな』

 

 

 フリードの眼が覚めたら、ネビュラガスを注入するとしよう。

 

 

『あの二人は上手く行ったか? 問題は無いと思うが……』

 

 

 俺は松田と元浜の方はどうなったかと考えながら、スチームガンから煙を放出して離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 夜の20時。

 

 

 俺と松田は、廃墟となった教会の裏の森の中に居る。ここは住宅街から少し距離がある為、辺りに一般人の気配は無い。

 

 

「松田よ、準備は良いか?」

 

「おうよ! 絶好調だぜ!」

 

 

 問題はないようだ。俺自身も異常はない。今回の戦い、戦闘データ及び死のデータを収拾・回収する。

 

 

 俺はピンクのレバーが取り付けられた黄緑のバックル『ゲーマドライバー』を取り出し、下腹部に押し当てる。

 

 

 すると、バックルからベルトが自動的に伸長し、固定される。

 

 

 ポケットから『MIGHTY ACTION X』というラベルが貼られた紫色のゲームカセット『プロトマイティアクションXガシャット』を右手に持ち、起動スイッチを押した。

 

 

【MIGHTY ACTION X!】

 

 

 音声が鳴ると、ガシャットに内蔵された装置が起動し『ゲームエリア』を展開、背後には紫色のゲーム画面が出現し、画面から複数の茶色のブロックがゲームエリア内に散らばる。

 

 

「グレード2、変身」

 

 

 右手を前に出し、ガシャットを半回転させて、ドライバーの中央よりのスロットに装填する。装填した瞬間、ピンクのレバーを展開した。

 

 

【ガシャット! ガッチャーン! LEVEL UP!】

 

 

 キャラが描かれた複数のパネルが俺の回りに出現し、目の前にきたパネルを左手でタッチする。タッチすると『Select!』という文字が浮かび上がり、他のパネルが弾け飛ぶと同時にドライバーから紫色のディスプレイが放出され、パネルとディスプレイが同時に体を通り抜ける。

 

 

【マイティジャンプ! マイティキック! マイティーアクショーン! エックス!】

 

 

 複数の紫のラインが走った黒のアンダースーツを身に纏い、背中には瞳がない顔が装着され、ギザギサの黒い頭部、胸部装甲にはコントローラーのボタンを模した管理モジュール『エクスコントローラー』が配置され、自身の残存体力を表示する『ライダーゲージ』が表示されている。

 

 

 黒き幻の夢─────“仮面ライダーゲンム”へと変身した。

 

 

 一方の松田は、水色・青・赤の三枚のメダルがセットされた円形のバックル『ポセイドンドライバー』を取り出し、下腹部に押し当てる。同じ様にベルトが伸長し、固定された。

 

 

「──変身」

 

【サメ! クジラ! オオカミウオ!】

 

 

 松田が言葉を告げると、ベルトから3つの紋章が浮かび上がった。それらが1つとなると松田の体に吸い込まれ、姿が変わった。

 

 

 黒のアンダースーツに鮫を模した鋭利な顔、鯨を模した青い鎧、オオカミウオの様な赤銅色の脚部。鎧の中心には鮫・鯨・オオカミウオの紋章が三角形で配置されている。

 

 

 未来からやって来た、海の力を支配する戦士────“仮面ライダーポセイドン”へと変身した。

 

 

 俺はパッド型武器の『ガシャコンバグヴァイザー』を、松田はオオカミウオを模した槍『ディーペストハープーン』をそれぞれ装備した。

 

 

 俺達は互いに顔を向き合い、軽く頷くと教会の方へと歩き始める。

 

 

 

 

 




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HSDD ━GOD SPEED HENTAI━
第1話 三人衆は高校生


短編集置き場に移しました。内容は変わらないです!


 

 

「あ~、彼女欲しぃ~」

 

「同感だぜ」

 

「やめろ、虚しくなる」

 

 

 今日の授業は全て終わり、今は放課後。学園にある広い庭、そこで俺達三人は横一列になって寝転がっている。四月特有のポカポカした陽気のせいか、時折、睡魔が襲ってくる。

 

 あっ、自己紹介がまだったな。俺は『兵藤一誠』。生まれ育った町『駒王町』に建てられている学校『駒王学園』の高等部に通う男子高校生だ。学年は二年。

 

 俺は今、親友二人と一緒にある事について話し合っている。それは日本中、いや、世界中の高校生が考え、悩み込んでしまうであろう事。

 

 そう、恋人が欲しいということだ!

 

 男子なら彼女が、女子なら彼氏が欲しいと思っている筈! いや、一部例外があるかもしれないけどさ。

 兎に角、俺達は彼女が欲しいと常々思っている。思っているのだが……。

 

 

「つーか俺達、彼女を作りたくても作れないからなぁ」

 

 

 考え込んでいると、俺の左隣に居る坊主頭の男子『松田』がそう呟いた。

 

 

「松田よ、話を根本から否定しないでくれ」

 

「でも、事実じゃん?」

 

「まぁ、確かに事実だが……」

 

 

 松田の呟きに反応したのは、俺の右隣に居る人間を掛けたメガn……じゃなくて、眼鏡を掛けた黒髪の男子『元浜』だった。

 

 

「おい一誠。今、俺に対して失礼な事を考えただろう?」

 

 

 コイツ、なんて鋭さだ……! 流石は、テストで学年一位をキープし続ける程の頭脳を持つ男だ。その優秀さは伊達じゃないな! とまぁ、おふざけはここまでにして話を元に戻すとしよう。松田が言った事は事実だ。俺達は、とある理由で彼女を作れない。別に絶対に作れない訳じゃないけど、ちょっと難しいんだよな。

 

 さて、その理由はまた別の機会に話すとして、次は何のテーマについて話し合うか。

 

 

「松田のせいで彼女欲しいのテーマが終わっちまったし、ボーイズトークへと洒落込もうぜ!」

 

「いや、ボーイズトークってなんだよ。初耳だぞ」

 

「ボーイズはガールズトーク同様、恋話で行く」

 

「一誠よ、先程のトーク内容とあまり変わらない気がするが?」

 

「気にするな元浜。はい、好きな人又は気になる子が居る人~」

 

「「……」」

 

「いやトーク終わっちゃうんだけど!?」

 

 

 嘘だろ!? この二人、気になる子すら居ないの? 男として大丈夫なのか? ちょっと心配になってきた。

 

 

「おいおい、お前らマジか?気になる子すら居ないの? まさか、お前らソッチ系?」

 

「違うわこの野郎! とんでもない勘違いすんな!」

 

「全くだ。そう言う一誠は、誰か気になる女子は居ないのか?」

 

 

 俺の発言に驚いたのか、二人はガバッ! っと、凄い勢いで上半身を起き上がらせ反論してくる。俺も二人の様に起き上がる。俺が気になる人? そりゃあ、気になる人の一人や……二人……。

 

 

「……すまん、居ないわ」

 

「「居ないのかよッ!!」」

 

 

 お、オカシイナァ~。自分から話を振っておいてあれだけど、気になる子が居ねぇや。駒王学園って、元々は女子校だから男子より女子の比率が高いし、女子も美少女が多いんだよね。なのに、気になる女子が一人も居ないなんて……!

 

 

「あれだな……彼女欲しい云々の前に、先ずは気になる子を見付けないとな」

 

「そうだな」

 

「うむ」

 

 

 三人揃って「ハァ~」と溜め息を付く。なんだか、本当に虚しくなって来た。

 

 

 

「……帰るか」

 

「だな」

 

「その意見に賛成だ」

 

 

 満場一致のようだから、俺達は行動に移す。その場に立ち上がり、制服に少し付いた草をはたき落とし、枕代わりにしていた学校指定の鞄を手に持ち、校門に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は、20時。

 

 数時間前までは、綺麗な茜色に染まっていた空は黒く染まり、夕陽の代わりに満月が夜空に上がっている。町の駅周辺は、夕方に比べれば人通りは少ないが、それでも会社帰りのサラリーマンや部活やバイト等で帰りが遅くなった学生がちらほらと居る。

 

 その町の中心地からかなり離れた場所には工場が存在する。工場と言っても、今は機能していない。数年前に工場内で起きた事故により廃墟となってしまったのだ。

 

 そんな、誰も居ない筈の工場の敷地内で人ではないナニカが走る。体は人よりも大きく、人の足を肥大化させたような4本の足、筋肉の盛り上がった二本の腕、側頭部から生えた2本の角を持っている。

 

 ナニカ────『はぐれ悪魔』と呼ばれる存在は、息を切らしながら走り続ける。まるで、何かから逃げているかの様に。

 

 

(クソクソクソクソッ!! 何なんだアイツ等は!?)

 

 

 はぐれ悪魔の言う『アイツ等』、それが必死に走り続ける理由である。このはぐれ悪魔には、他に二体の仲間が存在したのだが、その姿は見当たらない。

 

 それも当然だろう。何故なら、既に殺されてしまったのだから。

 

 仲間が一瞬で殺られてしまったのを目の当たりにしたはぐれ悪魔は、心の底から恐怖した。

 故に、何としてでも生き延びる為に走り続けている。この工場から、自分を追って来ているであろう者達から。

 

 

(ハァ、ハァッ!! 後少しだ……! 後少しで!!)

 

 

 後少しで工場から脱出出来る、そんな考えが頭を過った、その時だった。

 

 

「ガァッ!!??」

 

 

 一発の銃声が鳴り響いた瞬間、はぐれ悪魔の足に激痛が走った。あまりの痛みに、走り続けていた足を止めてしまう。確認してみると、左側の前足と後ろ足に穴が開いており、そこから血が止めどなく流れていた。恐らく、後ろ足に命中した弾丸が貫通し、そのまま前足も貫いたのだろう。

 

 顔を苦痛に歪ませながら、はぐれ悪魔は後ろを向いた。否、向いてしまった。

 

 

「ひぃッ!?」

 

 

 はぐれ悪魔の目に映ったのは、それぞれ金・銀・銅のアーマーを纏った仮面の戦士だった。この三人こそ、はぐれ悪魔の言っていた『アイツ等』なのである。

 

 発砲した銃を下ろす銅色の戦士。銃を下ろしたのと同時に、はぐれ悪魔に向かって歩き出す三人の戦士。

 

 このままだと殺される。脳がそう理解し途端、はぐれ悪魔の全身が震え出した。死んでいった仲間達のように自分も殺られる。そんな恐怖が、はぐれ悪魔を支配していく。

 

 

「チク……ショウ……! チクショウォォォォォォォォォッ!!!」

 

 

 雄叫びを上げながら、三人の戦士に向かって走り出した。どうせ死ぬのなら、せめて奴等に一撃を与えたい。

 

 言わば、最後の足掻きだ。

 

 持ち前の強靭な腕を振り絞り、狙いを定める。狙うは金の戦士……だが。

 

 

 

 【HYPER CLOCK UP(ハイパークロックアップ)!】

 

 

 

 そんな電子音声が響くと、金の戦士が消えたと同時にはぐれ悪魔が爆散し、大きな炎となって消滅した。

 はぐれ悪魔が消滅した後も、金の戦士は姿を現さず、金の戦士を追うように銀と銅の戦士もいつの間にか居なくなっていた。

 

 ただ、最後のはぐれ悪魔が爆散した場所には、一輪の青い薔薇が残されていたのだった。

 

 

 

 

 

 




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やめて下さい、北崎さん(ハイスクールD×D)
三人衆と北崎さん



皆様、お久しぶりです!
今回、リハビリを兼ねて『やめて下さい、北崎さん』シリーズを始めました。

※この作品に登場する北崎さんは、一応オリ主扱いになっており、555本編の北崎さんよりかはマイルドになっております。
更に、オルフェノク等に関してオリジナル設定になっています。



 

 

 

 時刻は、16時15分。

 時間帯的に考えると、殆どの学校が既に放課後を向かえており、多くの学生が部活や委員会に勤しんだり、帰路に着く者や友人達と何処かに寄り道するなど、様々な行動を取る。

 

 そんな中、"駒王町"と呼ばれる町に建てられている学校───駒王学園高等部の屋上では、三人の男子が三角形を作るような形で座って居る。その内の二人が真剣な顔付きと眼差しで向き合っていた。

 

 

「一誠、本気なのか?」

 

「あぁ……」

 

 

 件の二人、坊主頭で如何にも体育会系の男子と顔立ちの整った短めの茶髪の男子生徒は真剣だった。彼らは闘志を剥き出しにしており、今にも戦いが始まりそうな空気となっている。

 もう一人の眼鏡を掛けた知的そうな雰囲気をした男子は、そんな二人を見守るかの様に何も言わず、時折、右手の中指で眼鏡をクイッと軽く上げながら静かに待つ。

 

 暫く無言が続くと、その静寂を破るかの様に坊主頭の男子『松田』が口を開いた。

 

 

「一誠、お前の意思が強い事は分かった。お前がそれで良いって言うなら、俺は止めない。だが、これだけは言わせてくれ。その選択の先にあるのは……後悔だけだぞ」

 

「ご忠告どうも。だけど、俺の考えは変わらねぇ。俺の行く道は、俺が決めるんだ」

 

 

 松田の言い分に対して、そう返した茶髪の男子『兵藤一誠』の意思は強いようだ。今の彼には、誰の言葉も通じない。一誠の返答に対して松田は「そうか」と頷くだけで、それ以上の言葉は出なかった。

 

 再び訪れる静寂。春特有の暖かなそよ風が彼らの頬を優しく撫でる。

 

 そして、この静寂を破るために一誠が動き出す。

 

 

「行くぞ、松田!」

 

「来い、一誠!」

 

 

 目にも止まらぬ早さで繰り出された一誠の左手が松田の元に伸び、そして───────

 

 

「これで上がりだぁ! まつだぁぁああああああああああ!!!」

 

「クッソォオオオッ!! 負けたぁぁぁああああああ!!??」

 

 

 ──松田の左手にある二枚のカードの内の一枚を引き抜いた一誠は、自分の持っていた一枚のカードと一緒に山積みになっているカードの上に勢い良く叩き付けた。松田は、手元に残った『JOKER』と書かれたカードを持ったまま項垂れる。

 

 そう、彼らがやっていたのはトランプを使ったカードゲーム───

 

 

 

 

 

 ────ババ抜きである。

 

 

 

 

 勝負が終わった所で、今まで静観していた眼鏡を掛けて知的な雰囲気を纏っている黒髪短髪の男子『元浜』は腕を組ながら二人に話し掛けた。

 

 

「やっと終わったか。待ちくたびれたぞ」

 

「いやぁ、悪いな元浜。待たせちまって。以外と松田が持ち堪えたもんだからさ」

 

「クソッ、俺の作戦に引っ掛からないとは……!」

 

「松田よ、流石にあれに引っ掛かる奴は居ないと思うが?」

 

 

 三人は和気相合と先程のトランプによる勝負について話し始める。松田は、自分の作戦が全く効果無しだったとことに関してブツブツと言いながら山になっているトランプをかき集める。勝負に勝った一誠と元浜は笑みを浮かべながら話し合う。暇を持て余した彼らは、屋上で神経衰弱・七並べ・大富豪・ポーカー・ババ抜き等を遊んでいたのだ。 

 

 

「ほい、一誠。トランプ返すぜ」

 

「おう」

 

 

 トランプを専用のカードケースに収納し終えた松田は、持ち主である一誠に手渡し、一誠はそれを自身の鞄の中へと仕舞う。それを確認した元浜が、そろそろ帰るとしようと言い、二人もそれに賛同した。

 三人は屋上から出ると、階段を使って降りて行く。途中、部活や委員会などで残っていた知り合いの生徒と数名出くわした、軽く挨拶を交わすだけで三人は下駄箱がある一階へと足を進めて行く。

 

 すると、一誠がそう言えば、と何かを思い出し、歩きながら二人に話し掛ける。

 

 

「放課後になってから"アイツ"の姿を見てないんだけどさ、お前らは何処に居るか知ってるか?」

 

「いや、俺も見てないな。元浜はどうだ?」

 

「何処に居るかは知らんな。一応、屋上に行く時に電話したが出なかったぞ」

 

 

 一誠の口から放たれた"アイツ"とは、特定の人物を指している。その人物は、一誠達のクラスメイトであると同時に中学時代からの友人でもあるのだ。

 どうやら、三人はその友人の姿を放課後から見てないことが気になっているようだ。

 

 

「う~ん、まぁアイツのことだからどっかで昼寝でもしてるんだろうけどさ」

 

「若しくは、先に帰ったんじゃねえの?」

 

「それは有り得る。奴は気紛れな部分があるからな」

 

 

 話ながら一階の下駄箱があるフロアまでやって来た三人は、それぞれ自分の外靴を取り出し、履いていた上履きを下駄箱に入れた、その時だった。

 

 

「へぇ、僕のことを良く理解してるんだねぇ」

 

『ギァアアアアアアアアアアアアッ!!?』

 

 

 突然、後ろから声を掛けられた。

 

 

「大袈裟だなぁ、三人ともビックリし過ぎだよ」

 

「ききき、北崎ッ!? 急に後ろから現れるなといつも言ってるだろう!?」

 

「え~? だって、元浜君の反応が面白いからさぁ」

 

「こっちは心臓に悪いがな!」

 

 

 音も気配も無しに後ろから声を掛けた人物は、三人と同じ駒王学園高等部の鞄と制服を少し着崩しており、癖のある黒髪と整った顔立ちのしたミステリアスな雰囲気を纏った男子生徒だった。

 彼こそが、一誠達が話していた件の人物であり、その名を『北崎玲(きたざきれい)』と言う。

 

 

「北崎、お前何処に行ってたんだ?」

 

「保健室のベッドで休んでたんだ。あそこ、基本的に人が来ないから静かなんだよねぇ」

 

「保健室を仮眠室として使うなよ……」

 

 

 保健室を仮眠室扱いしている北崎に対して苦笑いする一誠。松田と元浜もどこか呆れている様子だ。北崎に至っては、笑みを浮かべながら話している辺り、全く反省していなければ罪悪感も感じていない。

 

 

「ねぇ、三人共これから帰るんでしょ? 僕も帰るから一緒に行こうよ」

 

 

 そう言って、外靴に履き替えた北崎は三人を待つことなく歩き出した。

 

 

「ちょっ、少しは待てよ北崎!」

 

「俺達を置いていくな!」

 

「はぁ、相変わらずマイペースな奴だ」

 

 

 愚痴を溢しつつ、一誠達も外靴に履き替えて北崎を追うようにして走り出した。

 

 

 




如何でしたか?

北崎さんの下の名前が不明だったので、勝手に付けさせて頂きました。
今回、北崎さんは少ししか登場していないので、次回は彼をメインにしたいと思っています!

次回もお楽しみに!感想待っています!


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