比企谷八幡のあり得ない六花生活 (生焼け肉)
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オーフェリア編
孤児院での出会い


いよいよ始まりました!

最初はシルヴィアだと思いました?

残念!!オーフェリアちゃんからでした!!


八幡side

 

ーーーリーゼルタニア・孤児院ーーー

 

 

比企谷父「八幡、お前はこの孤児院でお世話になる。1週間しかないから、シスターの言うことをちゃんと聞くんだぞ。」

 

八幡「お父さんたちは?」

 

比企谷父「俺たちは行くところがあるんだ。1人でも大丈夫か?」

 

八幡「うん、大丈夫。」

 

比企谷父「よし、良い子だ。」

 

 

……そんなのは子供を騙す為の建前だっていうのを僕は気付いていた。お父さんたちは妹の小町と一緒に観光を楽しみたいだけだ。今回はたまたま連れて来てくれたけど、大人しくさせるというのはお決まりのパターンだ。

 

 

シスター「では確かにお預かりしました。」

 

比企谷父「よろしくお願いします。八幡も良い子にするんだぞ。」

 

八幡「うん。」

 

 

ーーー孤児院内ーーー

 

 

シスター「あまり綺麗なところではないけど、自分の家だと思って使ってね。」

 

八幡「分かりました。」

 

 

その後はこの中の案内を一通りしてもらってから、植物園に行く事にした。

 

 

八幡「色んなのが咲いてるんだなぁ〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「………誰?」

 

八幡「……え?」

 

 

俺は気付かなかった。この中に人がいるなんて。そこに居たのは僕と同じくらいの身長と年齢の子で白い肌に白い長髪、赤い瞳をしていてウサギを連想させるような子だった。

 

 

八幡「え、えぇ〜っと……僕は比企谷八幡。今日から1週間お世話になるんだ。君は?」

 

???「………オーフェリア・ランドルーフェン。」

 

 

長い名前だなぁ……ちょっと覚え辛い。

 

 

八幡「うんと、ここで何してるの?」

 

オーフェリア「………お花にお水をあげてるの。」

 

八幡「そっかぁ〜……毎日やってるんだね。お花たちも喜んでるよ。」

 

オーフェリア「っ!………分かるの?」

 

八幡「分かるよ。だってお花たちが嬉しそうにしてるから。」

 

オーフェリア「………」

 

八幡「1人でやってるんでしょ?えらいね。」ナデナデ

 

オーフェリア「っ………」

 

 

オーフェリア(………初めて頭を撫でられた。落ち着く、それになんだか安心する………)

 

 

オーフェリア「………貴方、何歳?」

 

八幡「え?9歳だけど?」

 

オーフェリア「そう……私は8歳。だから貴方の事は『お兄さん』って呼ぶね。」

 

八幡「別にいいけど……」

 

オーフェリア「っ!やった!」パアァ!

 

 

………あれ?なんかさっきとテンションが違くない?

 

 

オーフェリア「お兄さんお兄さん!うん、やっぱり良い響き!ねぇ、お兄さんはお兄さんって呼ばれても平気?」

 

八幡「え?う、うん、平気だけど。」

 

オーフェリア「じゃあ私、これからはお兄さんって呼ぶね!なんか本当のお兄ちゃんが出来たみたいで凄く嬉しい♪」

 

八幡「そ、そう?」

 

オーフェリア「うん!あっ、お兄さん!私の部屋に行って本読もうよ!これでも私、難しい本を読むんだよ!」

 

 

ーーー孤児院・廊下ーーー

 

 

八幡「………」

 

オーフェリア「えへへ〜♪」ギュ-!

 

 

この子は何でこんなにもくっついてくるんだろう?妹の小町でもこんなにはくっついて来ない……本当に嬉しそうだな。

 

 

シスター「………あら?」

 

八幡「あっ、こんにちは。」

 

オーフェリア「………こんにちは。」

 

 

他人の前ではこうなんだ………後ろニ隠れてる上にいつの間にか腕も離してるし。

 

 

シスター「こんにちは、八幡くんにオーフェリアちゃん。2人はもう仲が良くなったのね。」ニコッ

 

八幡「難しい本を読ませてくれるって言われて見に行くことにしました。」

 

オーフェリア「………お兄さん、早く行く。」クイクイ

 

シスター「……お兄さん?」

 

八幡「僕の方が年上だからそう呼びたいって。じゃあ僕たち行きますので。」

 

 

………何だろう、シスターさんからの目がすごく暖かく感じたのは気のせいだと思いたい。

 

 

ーーーオーフェリアの部屋ーーー

 

 

オーフェリア「此処だよお兄さん!ここが私のお部屋だよ!」

 

八幡「………」

 

 

部屋の中は殺風景な感じだけど、決して何もないというわけではなかった。女の子らしい物も置いてあった。

 

 

八幡「………花が好きなんだね。」

 

オーフェリア「うん!大好き!お花はすごく素直で人の気持ちをすぐに理解出来るとても賢い植物なんだよ!元気な時は上を向いてるし、がっかりしてる時は下を向いてるの。」

 

八幡「へぇ〜!」

 

 

そんなこんなでこの孤児院で過ごす事1週間、とうとう日本に帰る日がやってきた。

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「やぁ〜だぁ〜!!もっとお兄さんと一緒にいたい〜!!」ギュ-!!

 

シスター「こらダメでしょオーフェリア!八幡くんも困ってるでしょ!」

 

オーフェリア「や〜!!」ギュ-!!

 

シスター「はぁ、困ったわね……他人には滅多に関わらないこの子が、八幡くんにはこんなに懐くなんて。」

 

 

………オーフェリアは僕が帰るって事を知るや否や、俺にしがみついて離れなくなってしまった。それもシスターがひっぺがそうとしてもビクともしないくらいに。すんごい馬鹿力だよ。

 

 

オーフェリア「うぅ〜!」キッ!!

 

 

………犬じゃないんだからシスターさんに向かって唸ったらダメだよ。

 

 

八幡「……じゃあオーフェリア、約束しよう。」

 

オーフェリア「……約束?」ギュ-!!

 

八幡「うん、約束。水上都市六花の事は知ってる?」

 

オーフェリア「………うん。」

 

八幡「そこのどこの学校でもいいから入学してもう1度会う事!高校1年生になった時がいいかな。どう?僕との約束、やってみない?」

 

オーフェリア「………お兄さん、絶対だからね?約束だよ?」

 

八幡「うん、約束。」

 

 

オーフェリアはそう言うと、ようやく離れてくれた。うん、少しだけ苦しかったから助かりました。

 

 

そして僕は車に乗って窓を開いた。

 

 

オーフェリア「お兄さん!約束だからね!約束破ったら針千本なんだからね!!」

 

八幡「うん、約束だよ。」

 

 

そして、僕は孤児院を後にした。後ろを見ると、ポツンと立っているオーフェリアがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「………お、兄……さん。」ポロポロ

 

 

そして月日は経ち6年後、俺は六花の界龍第七学院へと入学して六花へと向かった。

 

 

 

 

 

 




この作品でのオーフェリアの設定

・最初から白い肌に長髪。
・かなりの人見知り。
・八幡大好きっ子。
・運命論者から八幡信者に。

大体はこんな感じです。
何かあれば、遠慮なくどうぞ!



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再会

 

 

八幡side

 

 

あれから6年………やっとだ、やっと約束の場所に来られた。水上都市六花。しっかし日本とはまたエライ文明レベルの違いだな。六花が進み過ぎたんだろうな。まぁ6年っていっても何事も無く過ごして来たから、平凡っちゃあ平凡な学生生活だった。オーフェリアが約束を覚えてくれていれば、この六花の何処かにいるはずだ。

 

オーフェリアのあの容姿ならクインヴェールは楽勝だろうが、性格が合わない。レヴォルフは……まぁ聞くまでもないな。ガラードワースはもっとあり得ない。アルルカントも論外。界龍にも居なかったから……居るとすれば星導館だろうな。

 

 

よし、1回星導館に行ってみるか。

 

 

ーーー星導館学園ーーー

 

 

八幡「此処が星導館か……やっぱ界龍とは全く違うな。現代風だ。」

 

 

いや、別に界龍が古臭いって言ってる意味じゃないからね?

 

 

???「失礼、界龍第七学院の生徒が星導館学園に何か御用でしょうか?」

 

八幡「え?あ、あぁすみません。特に用事ってわけでもないんですが、ちょっとお尋ねしたい事があって。」

 

???「私に答えられる範囲でよろしければお答えしますよ。これでも生徒会副会長ですので。申し遅れました、私当学園の中等部3年のクローディア・エンフィールドと申します。」

 

八幡「エンフィールドさんね。俺は界龍の高等部1年の比企谷八幡です。」

 

クローディア「あら、年上の方だったのですね。これは失礼しました。」

 

八幡「別に気にしてませんので。それで聞きたい事なんですけど……」

 

クローディア「はい、何でしょう?後、敬語は使わなくてもいいですよ。」

 

八幡「そうさせてもらう。この学園にオーフェリア・ランドルーフェンっているか?俺の………まぁ妹みたいな存在なんだが。」

 

クローディア「………今誰と?」

 

八幡「聞き取れなかったか?オーフェリア・ランドルーフェンって言ったんだよ。」

 

 

まぁ最初は分からないよな。長い名前に家名だからな。俺も覚えるのには苦労……はあまりしてないな。

 

 

クローディア「………比企谷さん、そのお方は星導館にはいません。そのお方はレヴォルフ黒学院に所属しています。」

 

 

………は?

 

 

八幡「おいおい、何の冗談だ?」

 

クローディア「冗談ではございません。彼女は3年前からレヴォルフ黒学院に所属しております。学院に行ってみれば分かるでしょう。」

 

 

ーーー商業エリア・花畑ーーー

 

 

………結局あの後は、エンフィールドの話を受け流す状態で聞いていた。俺には信じられなかった。あのオーフェリアがレヴォルフに入った?しかも3年前に?俺は高校生になったらって言った。なのになんで3年も早く?

 

 

いや、それよりもオーフェリアに会わねぇと。事情を聞かないと収まらない。聞き間違いならいいんだが、それ以外に理由があるのならちゃんと聞きたい。

 

 

???「………やっぱりダメだわ。」

 

 

……すると、後ろから声が聞こえた。なんか聞いたことのあるような声だ。だが何でだ?さっきまで小さくだが咲いていた花が枯れている。いや、死んでいる?

 

 

???「………ここにはいられないわ。貴方たちを傷つけてしまうから。」

 

 

何を言ってるのかさっぱり分からなかった。傷つける?他にも誰かいるのか?でもこの辺りはあまり人が寄り付かない。なんでかは分からないけど。

 

 

八幡「………誰かいるの……っ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは黒の制服、所謂レヴォルフ黒学院の制服を着ている少女がいた。髪は長髪で後頭部辺りでポニーテール風に縛ってあり、両サイドに角のようなものをつけている。目は赤色で白い肌。

 

 

………オーフェリア・ランドルーフェンだ。容姿は昔と全く変わっていない。だが雰囲気がまるで別人だった。

 

 

オーフェリア「………誰?」

 

八幡「っ……俺が分からないのか?」

 

オーフェリア「………知ってるわけがないわ。貴方と私は今が初対面の筈よ。」

 

八幡「……6年前の事も忘れたっていうのかよ。」

 

オーフェリア「………何を言っているのか分からないけど、ナンパなら他所でやってちょうだい。貴方如きに構っていられる程、私は暇ではないわ。」

 

 

そう言ってオーフェリアは去って行った………何でだよ?何で覚えていないんだよ!約束しただろ!6年後に六花で会おうって!

 

 

………はぁ、今激昂しても意味ないな。今日はもう学院に戻ろう。

 

 

八幡side

 

オーフェリアside

 

 

………もうダメなのよね。私がこんな身体になってから、1度も生きた花に触れていない。触ろうとする瞬間に皆目の前で死んでしまう。

 

………私の周りには誰も居ない。誰も来ない。関わらない。でももういいわ、そういう運命なのだから。もう私は一生この身体でやって行く運命なんだわ。

 

 

オーフェリア「………でもあの男、誰なのかしら?」

 

 

………以前の私の事を知っているようだった。それに6年前って言ってたけど、私がフラウエンロープ系列の研究所に買い取られた事しかめぼしい記憶がないわ。他に何かあったかしら?

 

………それに彼は……私の側にいたというのに、平気な顔をしていた。

 

 

オーフェリア「………不思議な人だわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





オーフェリアは約束の事を忘れている?

まさかの展開に………


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忘れていた涙

 

 

オーフェリアside

 

 

………今日は変な夢を見たわ。昔リーゼルタニアで会った男の子の夢を見たわ。名前は……覚えてないけど、私はあの人の事を『お兄さん』と呼んでいたわ。それだけは覚えてる。でもそれだけ。あとは全く分からない。

 

………今日も私は触ることの出来ない花の前にいる。私が近づけば、花たちはどんどん死んでいく。こんな事望んでないのにどうしてこうなってしまったのだろう?でもこう思うだけ無駄ね。もう運命は覆せないもの。

 

 

八幡「………また会ったな。」

 

 

………昨日のナンパ男がまた来たわ。懲りないのね。

 

 

オーフェリア「………何をしに来たの?」

 

八幡「いや、別に。ただ、本当に俺のことを覚えていないのかな〜って思ってさ。」

 

オーフェリア「………貴方のことは知らないと昨日言ったはずよ。」

 

八幡「………そうか。」

 

オーフェリア「………私からも聞いていいかしら?」

 

八幡「何だ?」

 

オーフェリア「………貴方は私の近くにいて平気なの?何ともないのかしら?」

 

八幡「言ってる意味が分からないんだが?」

 

オーフェリア「………私の周りには毒がまき散らかっていてその周囲の人や植物に悪影響を及ぼすわ。この花を見てくれれば分かるわ。」

 

 

………あまり見せたくはないけど、そうした方が分かりやすいものね。

 

 

八幡「………辛いよな、大好きな花にも触れなくなっちまったなんて……辛いなんてもんじゃないか。」

 

 

っ………この男、どうして私が花好きだって知ってるの?

 

 

八幡「まぁ何でかは知らないが俺は平気だ。何ともない。けど、お前が覚えてないんならもうそれでいい。会えただけで俺はもう満足だ。」

 

オーフェリア「………なんの話をしてるの?」

 

八幡「いや、独り言だ。気にしないでくれ。居なくなる前に1つお願いがあるんだが、いいか?」

 

オーフェリア「………何?」

 

八幡「少しだけでいいから頭を撫でさせてはくれないか?」

 

 

………この男は何を言ってるの?

 

 

オーフェリア「………本気?」

 

八幡「あぁ。本気と書いてマジと読む。」

 

オーフェリア「………好きになさい。」

 

八幡「んじゃ、お言葉に甘えて。」

 

 

………そういうと彼は私の方に近づいて頭を撫でてきた……?何故?何故こんなにも心が暖かいのかしら?

 

 

八幡「お前は俺の事を忘れているから、改めて自己紹介な。俺は比企谷八幡だ。まぁよろしくな。」ナデナデ

 

 

ドクンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡(幼少期)『え、えぇ〜っと……僕は比企谷八幡。今日から1週間お世話になるんだ。君は?』

 

 

オーフェリア「っ!!」

 

 

……………え………本当に?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………お兄さん?

 

 

八幡「………じゃあな。」

 

オーフェリア「っ!!待って!」

 

八幡「ん?何だ?」

 

 

聞きたい……本当にお兄さんなのか聞きたい。でも怖い。もし違ったら?どうしたらいいか分からない。

 

 

八幡「……何だ?用がないなら行くぞ?」

 

オーフェリア「っ!貴方はお兄さんですか!?」

 

八幡「っ!………今、なんて?」

 

オーフェリア「あ、貴方は……お兄さん、ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………あぁ、そうだ。6年前にここで会おうって約束した。比企谷八幡だ。お前からはお兄さんって呼ばれてた。」

 

 

っ!!……あぁ、会えた……お兄さんに会えた!!

 

 

オーフェリア「………お兄さん!!」ダキッ!!

 

 

周りなんてどうでもいい。とにかく私はお兄さんに抱き着きたかった。思い出した、あの時の約束………何で忘れてたんだろう?あんなに大切な思い出だったのに。お兄さんは覚えててくれた。私に会うためにここまで来てくれた。それなのに……私は………

 

 

オーフェリア「……ごめんなさい。約束忘れてごめんなさい!!お兄さんの事も忘れてごめんなさい!!」ギュ-!!

 

八幡「もういい、こうして思い出してくれたんだ。俺は気にしてない。」

 

オーフェリア「で、でも……」ギュ-!!

 

八幡「もういいって言ってるだろ?それよりも今は泣け。この6年間、ずっと泣いてないんだろ?だから思いっきり泣いちまえ。花に触れなくなった事、俺のことを忘れていた事、約束を忘れていた事、俺と会えた事、約束を果たせた事、全部混ぜていいからもう泣け。」

 

オーフェリア「で、でも泣くなんて………」

 

八幡「俺の前でくらいは素直になれ。俺はお前のお兄さんなんだろ?お兄さんの前では素直になってもいいんだぞ?な?」ナデナデ

 

 

あぁ、さっきのナデナデ………気持ちいい。

 

 

そして私はそこから一気に感情が爆発して、人目も気にせずお兄さんに抱き締められながら泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリアsideout

 

八幡side

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「落ち着いたか?」ナデナデ

 

オーフェリア「………うん。」ギュ-

 

八幡「なら、そろそろ離れてくれると嬉しいんだが……離れてくれるか?」

 

オーフェリア「やー。」グリグリ

 

 

見事なまでに幼児退行してる。うん、可愛いから許す。でも考えて?ここ結構目立つよ?いや、人通りあまりないけど、通らないわけじゃないからね?さっきからチラチラ見られてるからね?そろそろ離してくれると嬉しいんだけどなーお兄さん。

 

………まぁそれは無理だからこのまま話すか。

 

 

八幡「………なぁオーフェリア、この6年間で何があったのか教えてくれ。あぁ、無理にとは言わないぞ?」ナデナデ

 

オーフェリア「………お兄さんにならお話する。お兄さんに隠し事したくないから。」

 

 

なんて素直で良い子なんだろう!

 

 

八幡「よし、じゃあ場所変えるか。俺の寮の部屋に来い。そこなら大丈夫だろう。」

 

オーフェリア「………いいの?」

 

八幡「あぁ、俺に任せろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





オーフェリアちゃん、お兄さんのこと思い出せて良かったよ!

本当に!!



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妹のためなら

 

 

八幡side

 

 

ーーー界龍第七学院ーーー

 

 

っと、着いた。入学2日目にして女の子を、それも序列1位を連れてきたなんて奴は初めてだろうな。だが、オーフェリアを連れてきたのはあくまで事情説明をしてもらうためだ。それに、今俺がレヴォルフに行ったらマズいからな。なら安全な界龍で聞いた方がいい。まぁ、他の生徒はかなり警戒するだろうが、俺から言えば大丈夫だろう。

 

 

オーフェリア「…お兄さん、本当に大丈夫なの?私毒が出てくるのにこの中に入っちゃって………」

 

八幡「あぁ。俺が俺とお前の周りに星辰力の壁を正方形に張る。そうすれば漏れ出ないと思う。」

 

オーフェリア「お兄さんは外にいなくてもいいの?」

 

八幡「ん?あぁ、大丈夫だ。だって今もその中にいるからな。界龍の入り口あたりで。今で平気だから多分大丈夫だろう。」

 

 

大丈夫じゃなかったら今頃、八幡の毒漬けになってるから。身体から紫色の液体出てきちゃってるから。

 

 

八幡「んじゃ入るか。確かパスポート作ってもらうんだよな。それから……」

 

 

俺は手順を何度か見直しながらパスポートを作ってオーフェリアを界龍に入れるようにした。

 

 

ーーー界龍第七学院ーーー

 

 

オーフェリア「わぁ…界龍の中ってこんな風になってるんだ。なんか面白い形の何かがいっぱいあるよ!」

 

八幡「そうか……オーフェリアは東洋文化を知らないんだよな。だったらこういうのは珍しいか。」

 

オーフェリア「うん!ヘンテコな形だね!」

 

 

いや、その言い方はちょっと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「比企谷くん、どういうつもり?」

 

???「八幡、僕からも同じ問いをします。」

 

???「これは放っておけないなー。」

 

 

まぁ、この学院にいて誰1人にも会わずに部屋に行くのは無理だよな。

 

目の前には雪ノ下雪乃の姉、雪ノ下陽乃に昨日知り合った虎峰とセシリーがいる。多分聞きたいのはオーフェリアの事だろう。

 

 

八幡「……言いたい事は分かりますが、今回は見逃してくれませんか?今はこいつの話を聞きたいので。」

 

虎峰「幾ら通行パスポートを発行したとしても他学園の、しかも序列1位であれば見過ごすわけにはいきません。それに、その相手が最悪の魔女【孤毒の魔女】であればなおのこと警戒が必要です。」

 

陽乃「そうだねぇ……虎峰くんの言う通り、事情を説明してもらわないとこの先には通せないかな。」

 

セシリー「事によっては比企谷諸共潰すことになるけどー?」

 

 

参ったなぁ……こりゃ通してくれそうにないぞ。俺とオーフェリアの関係は話してもいいが、それ以外の事は他人であるこいつらに話す道理はない。どうしたものか……

 

 

オーフェリア「……お兄さん、戻ろ?」クイクイ

 

八幡「っ…オーフェリア。」

 

オーフェリア「あの人たち、私を入れたくないみたいだから。だからお外でお話しよ?」

 

 

この子は本当に良い子だ……こんなに優しい子に育ってくれてお兄さん嬉しいよ………涙が出てくる。

 

 

八幡「分かった。じゃあお茶くらいは用意す「ね、ねぇ比企谷くん?」……何です雪ノ下さん?」

 

陽乃「その子って本当にレヴォルフの序列1位【孤毒の魔女】のオーフェリア・ランドルーフェンなんだよね?」

 

八幡「そうですが……それが何か?」

 

セシリー「なんか私たちの知ってる彼女とは全く違うイメージだなぁって思ってさー。」

 

虎峰「ぼ、僕もです。」

 

オーフェリア「お兄さん、早く行く。」クイクイ

 

八幡「あ、あぁ。」

 

陽乃「待ってくれるかなぁ?どうして比企谷くんと一緒にここに来たのか、理由を教えてくれてもいいんじゃないの?」

 

オーフェリア「………貴方たちには教えたくない。」

 

陽乃「へぇ……どうして?」

 

オーフェリア「信用出来ないから。後、目が……貴女たちの目が回りの人達の目と一緒だから。」

 

陽乃「……周りって?」

 

オーフェリア「……六花に住んでいる人たち。」

 

陽乃「その人達って一体どんな目をしてるのかな〜?」

 

オーフェリア「………私を化け物みたいに見る目。」

 

 

っ!

 

 

陽乃「それは当たり前なんじゃないかな?《王竜星武祭》であれだけの戦いをすればねぇ………誰が見てもあれは「少し黙れよ……」……っ!?」

 

オーフェリア「……お兄さん?」

 

八幡「悪かったなオーフェリア、もう少しお前のことも配慮すべきだった。外に行って話するか。こんな分からず屋共と話してても時間の無駄だ。」ポンポンッ

 

オーフェリア「え?あ、う、うん……」

 

 

外ならこいつらも口出しはしねぇだろ。

 

 

虎峰「聞き捨てなりませんね。誰が分からず屋共ですか?」

 

八幡「お前ら以外に誰がいる?《王竜星武祭》の戦いを見ただけでオーフェリアを悪人扱いか?随分と偉いんだな、界龍の冒頭の十二人様はよ。」

 

虎峰「なっ……」

 

八幡「なんか間違ってること言ったか?」

 

 

虎峰は何も言い返してこなかった……多分だが、正論をぶつけられて黙ってしまったのだと思う。

 

 

八幡「俺はそんな理由で人を悪人扱いしたり、化け物を見るような目をする奴と友人になった覚えはない。俺は俺の妹分をいじめる奴は許さない。」

 

オーフェリア「お兄さん………」

 

八幡「さて、外に行くか。俺外好きだから外で話したい気分なんだ。オーフェリア、ついてきてくれるか?」

 

オーフェリア「……うん、もちろん!」

 

 

俺たちは来た道を戻り、そのまま校門前の階段の端っこまで行く事にした。後ろで俺を見てる3人はもう知らん。あいつらがどう思っているかは知らんが、俺からはあの3人に関わることはないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっとアンチっぽくなっちゃいましたけど、アンチじゃないですから!


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オーフェリアの6年間

 

 

オーフェリアside

 

 

……あの後、私とお兄さんは界龍の校内から出て、校門前の階段の所に座っている。お兄さんは私のお話を聞くって言ってくれているけど、私はお兄さんの今後が心配。さっきの人たち、きっとお兄さんのお友だちだよ。私と話すよりも仲直りしてきた方が私はいいと思う。

 

 

オーフェリア「ねぇお兄さん、私とお話ししてくれるのは嬉しいんだけど、あの人たちと仲直りしてきた方がいいよ。お友だちなんでしょ?」

 

八幡「いや、俺はあいつらと仲直りするつもりはない。事情を知らないとはいえ、あの3人はお前の事を化け物扱いした。《王竜星武祭〉の戦い方がって理由だけでだ。俺はそんな奴らと友人になったつもりはない。よくいるだろ?人を見た目で判断する奴って。そいつらと同じみたいなもんだ。」

 

 

お兄さんはこう言ってるけど、本当に大丈夫かなぁ?

 

 

八幡「そんな事よりも、俺はお前の方が大切だ。何があったのか話を聞かせてくれないか?」

 

オーフェリア「お兄さんがいいって言うなら私も気にしないけど、仲直りはしてね?」

 

八幡「いやだから、俺は別に「してね?」…はい。」

 

オーフェリア「それじゃあお話するけど、気持ちのいいお話じゃないからね?」

 

八幡「分かってる、話してくれ。」

 

 

それから私はお兄さんと別れた後から今に至るまでの6年間をお兄さんに説明した。お兄さんは私から1度も目を離さずに聞いてくれた。

 

これまでの経緯を簡単に表すとこうなるよ。

 

 

・10歳にフラウエンロープ系列の研究所に借金代わりとして買い取られました。

 

・11歳に後天性星脈世代にする実験に成功。無尽蔵の星辰力に魔女としての能力も手に入れました。成功したけど研究所は壊滅。私も瀕死状態だった。

 

(でも、うまくコントロールが出来ないから周りに毒素を撒き散らしてしまう。だからお花にさわれなくなってしまった。)

 

 

・同じく11歳。目を覚ました時にはレヴォルフの運営母体、【ソルネージュ】の特殊部隊に引き取られて保護されていました。

 

・12歳にレヴォルフの生徒会長さんのディルク・エーベルヴァインさんに買い取られてレヴォルフ所属になりました。そこからは自由にさせてもらっています。

 

 

オーフェリア「……こんな所かな。これがお兄さんと出会う前までの私の人生。」

 

八幡「……壮絶だな。」

 

オーフェリア「そうだね。この身体になってからは何も出来なくなっちゃった。色んなことがしたいのになぁ……料理とかお花のお世話とか、本当に色々。」

 

八幡「………」

 

 

お兄さんが辛そうに私を見つめてる。お兄さんが辛そうにする理由なんてないのに……私のためにこんな顔をしてくれる。やっぱりお兄さんは優しいなぁ。

 

 

八幡「………なぁオーフェリア。お前の周囲に毒素を撒き散らしてしまう星辰力の事なんだが……俺にも手伝わせてくれないか?」

 

オーフェリア「気持ちは嬉しいけど、無理だよ。いろんな方法を試してみたけど、結局は今お兄さんがやってる星辰力の壁を張って守るのが1番効果的なんだ。でもそれを1日中やるわけにはいかないからダメだったんだ。だから今もどうするか調べてるんだけど……」

 

八幡「それを俺にも手伝わせて欲しいんだよ。俺が出来ることなら何でもやる。だから手伝わせてくれ。もしダメだっていうのなら、俺が自分でやるだけだ。」

 

オーフェリア「それって断っても意味がないって事だよね?」

 

八幡「ダメだって言われた時だ。その時は俺個人で調べるだけだ。」

 

オーフェリア「断る理由がないから私は勿論OKだよ。でも、ディルクさんがどういう反応をするか分からないから……」

 

八幡「あー……取り敢えずはそのディルクさんにあって認めてもらえればいいのか?」

 

オーフェリア「う、ううん!そういう事じゃなくて、ディルクさんって何考えてるかよく分からない時があるから。お兄さんの事を言ってどうなるのかなぁって。」

 

 

あの人って本当によく分からない時があるんだ。悪い人じゃないんだけど、私よりも色々考えてそうな人だから。

 

 

オーフェリア「でもありがとうお兄さん。手伝ってくれる事についてはディルクさんに相談してみるね。」

 

八幡「あぁ、頼む。」

 

 

よし!これでお兄さんと一緒にいられる時間が増えるかもっ♪頑張って説得しよっ!

 

 

八幡「気になるんだが、お前《王竜星武祭》でそんなにヤバい戦い方をしたのか?」

 

オーフェリア「私、星辰力の制御なんて出来ないから力任せにやったらああなっちゃったんだ……シルヴィアさん痛そうだった………」

 

 

八幡(あぁ……オーフェリアの良心が傷んでる。試合だから仕方ないと思うが、これがオーフェリアの本性だからなぁ……)

 

 

八幡「仕方ないだろう、試合とはいえお前は星辰力の制御法なんて知らないんだ。お前の心中を予想して言うが、手加減しないで力任せにするしかなかったんだろう?ならそれは仕方ないって思え。俺だって星辰力の制御を覚えたのはほんの半年前なんだ。」

 

オーフェリア「え!?半年前なの!?」

 

 

は、半年……最近だよ。

 

 

八幡「あぁ、見所があるって言って鍛えてもらってたんだ。けど、段階は何個かすっ飛ばしてるようなもんだ。」

 

オーフェリア「て、でもお兄さんはそれで使いこなしてるんだよね?」

 

八幡「まぁ教えてもらったのがあの人が初めてだからな。違和感なくやっている。」

 

オーフェリア「じゃあお兄さんって星辰力の使い方が凄く上手なんだ!」キラキラ!

 

 

八幡(……オーフェリアが眩しい。)

 

 

八幡「ま、まぁアレだ。今日はこのへんで帰って、会長に報告してくれ。コレ、俺のアドレスだから登録してメッセージでも飛ばしてくれ。」

 

 

お兄さんのメールアドレス………

 

 

オーフェリア「………電話番号は?」

 

八幡「え?」

 

オーフェリア「電話番号はくれないの?」

 

八幡「あ、あぁそうだな。番号もあった方が便利だよな。じゃあこれな、俺の電話番号。」

 

オーフェリア「うん、ありがとう!!」

 

 

その後はお兄さんと別れて学院に戻ってディルクさんに今日の事を報告しました。

 

でも、私の予想とは斜め上の答えが飛んできました。

 

 

 

 

 

 

 

 



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レヴォルフ訪問 ①


この話には極度なキャラ崩壊が含まれております。それでもよろしい方は画面を上にスライドするか、マウスキーのロールを下に回してください。



 

 

八幡side

 

 

はい、皆さんおはようございます。比企谷八幡です。さて、俺は今レヴォルフ黒学院の前まで来ています。この学院、見た目がもう刑務所だよ……何ここ?今朝だっていうのにライト照らされてんぞ?電気代無駄に消費してるだけじゃねぇか。

 

 

オーフェリア「あっ、お兄さん!おはよぉ〜!」トコトコッ

 

 

そんなレヴォルフの清涼剤、オーフェリアがお出迎えをしてくれている。うん、100点満点。文句なしです。

 

 

オーフェリア「来てくれたんだね!」ダキッ!

 

八幡「来ないわけがないだろ。昨日あんな電話よこした奴が何言ってんの?」

 

オーフェリア「えへへ〜♪」ニパァ!

 

 

……そう、俺がレヴォルフ黒学院に来た理由はオーフェリアの1本の電話が原因だった。

 

 

ーーー回想・昨日の晩ーーー

 

 

八幡「さて、もうそろそろ寝るか。明日も鍛錬したいしな。」

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

ん?オーフェリアから?連絡しろとは言ったが、今日することはないだろうに。

 

 

八幡「よぅオーフェリア、どうしたんだ?」

 

オーフェリア『お兄さんこんばんは!実はね、今さっき会長さんにお兄さんが協力してくれるってお話ししに言ってきたの!』

 

八幡「あぁ……それで?」

 

オーフェリア『なんかね、そしたらお兄さんに会いたいって。私にもよく分からないけど、そいつに伝えとけって。出来れば明日に時間取れないかな?』

 

八幡「もうそこまでこぎつけたのか?お前凄いな。」

 

オーフェリア『えへへ〜♪でも会長さんも珍しいよ!急に会いたいって言ったんだもん!私も関わりはある方だけど、今まで見たことない!それよりも、時間どう?』

 

八幡「俺は別に大丈夫だが……そっちは大丈夫なのか?会長は何かと忙しいんだろ?」

 

オーフェリア『ううん、会長さんはいつもペンを持ってカキカキしているだけで、見回りとかは副会長とか庶務とかに任せっきりなんだ。』

 

 

おい、それでいいのか生徒会長。

 

 

オーフェリア『だから会長さんの時間は大体空いてるの。お兄さんさえ予定が空いていれば明日にでも来てくれると嬉しいなぁ〜って。』

 

八幡「最後のはお前の願望だろ。まぁ明日は鍛錬くらいしか予定がなかったから構わない。何時頃行けばいい?」

 

オーフェリア『朝っ!』

 

 

それは君が俺と一緒にいる時間を増やしたいだけなのでは?なんか手に取るように分かるよ?お兄さん分かっちゃうからね?

 

 

八幡「分かった。じゃあ明日の10時頃にそっちの校門前に向かう。お出迎えはよろしくな。」

 

オーフェリア『は〜い♪じゃあお休みっ!』

 

 

最後に敬礼をしながら通信を切った。

 

 

ーーー回想終了ーーー

 

 

簡単に言うとこんなやり取りがあった。

 

因みに今はレヴォルフの校内に入って生徒会室に案内してもらっている。

 

 

オーフェリア「此処が生徒会室だよ。会長さ〜ん、お客さん連れてきたよ〜!」

 

 

???『………入れ。』

 

オーフェリア「入りま〜す!」

 

八幡「……失礼します。」

 

 

そこにいたのは赤い髪の毛に小太り気味の男がいた。特に気になるのは目つきの悪さだ。とても良い奴そうには見えない。

 

 

???「取り敢えず名前だけは言っておく。ディルク・エーベルヴァインだ。」

 

八幡「………比企谷八幡。」

 

ディルク「じゃあ早速だが始めるぞ。その前にオーフェリア、お前は下がれ。」

 

オーフェリア「えぇ〜何で!?」

 

ディルク「今からお前の話をするからだ。お前がいたんじゃ話しづらい。出て行け。」

 

オーフェリア「むぅ〜!お兄さんに手を出さないでね!」プンスカッ!

 

 

バタンッ!

 

 

オーフェリアはプリプリしながら出て行った。

 

 

ディルク「さて本題だ。テメェはオーフェリアを助けたいんだってな?」

 

八幡「あぁ、俺に出来る事なら何でも「無理だ。」っ!なんでそう言い切れる?」

 

ディルク「テメェに何が出来る?あいつの星辰力は異常だ。アレを抑える方法は現状で星辰力の壁を全方位に張ることだ。テメェも試したから分かってるとは思うがな。」

 

八幡「……あぁ。」

 

ディルク「それ以外に方法があると思ってるのか?」

 

八幡「何かしらの方法はあるはずだ。俺だって未熟だが魔術師だ。俺の能力で出来ることだってあるかもしれないだろ。」

 

ディルク「……能力は?」

 

八幡「………あまり他学園の奴には教えたくないが、協力してもらうためだ。影と幻を操る。」

 

ディルク「……聞いた俺がバカみたいだ。そんなみみっちい能力であいつを助けられるわけねぇだろうが。帰れ、時間の無駄だった。」

 

八幡「………絶対になんとかしてみせる!だから俺にも手伝わせてくれ!」

 

 

俺はその場で土下座をして頼んだ。

 

 

ディルク「………」

 

八幡「確かに俺の能力じゃオーフェリアを助けてやれないかもしれない。だが、あいつは俺にとって妹みたいな存在なんだ!困ってる妹がいたら助けたいって思うのが兄貴ってもんだ!だから頼む!俺にも協力させてくれ!見返りなんて望んでない!あいつがまた笑顔でいてくれるのなら、俺はそれだけでいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディルク「……頭をあげて下さい、比企谷さん。」

 

 

………え?

 

 

ディルク「貴方にそれだけの覚悟があるのでしたら、こちらも断るわけにはいきません。貴方のその力、どうか私達に貸してください。」

 

 

………え?あれ?さっきのあいつはどこ行った?え?二重人格?

 

 

ディルク「あぁ、説明し忘れていましたね。実は私の本来の姿はこちらでして。先程の設定はこの目を有効利用したものなんです。非常に身勝手ながら貴方を試させて頂きました。」

 

八幡「そ、それで俺はどうなんです?」

 

ディルク「えぇ、合格以上のお答えを頂きました。こちらからお願いしたいくらいです。それとこちらをお受け取りください。」

 

 

ディルクは端末を開くとそのまま俺にスライドして見せてきた。そこにはオーフェリアの所有契約書と書いてあった。

 

 

ディルク「それは貴方が持つのに相応しいと判断しました。昨日の彼女の報告を聞きましたが、とても嬉しそうに貴方の事を話すので、実際に会って話がしたいと思ったので、こうして来てもらった所存です。」

 

八幡「……なんかそっちの策略にはまった気分ですよ。」

 

ディルク「ははは……申し訳ない。時に比企谷さん、この学院の生徒を見てどう思いましたか?あぁ、話し方は先ほどのような感じで構いませんよ。」

 

八幡「あ、あぁ……実は此処の生徒にはオーフェリアとアンタ以外には会ってなくてな。」

 

ディルク「そうでしたか。世間では不良学院なんて呼ばれてはいますが、それは真っ赤な嘘なのです。私達とはそりが合わない学園、聖ガラードワース学園がデマを流しているから、噂に尾ひれがついたのでしょう。」

 

ディルク「実際には街のボランティアやゴミ拾い、子供達の教育などを率先して行っております。」

 

八幡「でも俺はレヴォルフが不良学院なんて聞いた事ないぞ。むしろ逆なんだが……そんでガラードワースが……不良というよりも、貴族の力を使って威張っているような奴らだっていう風に聞いたが?この街に来て1週間くらいだが、俺はそう聞いたぞ。」

 

ディルク「そうでしたか!それは嬉しいことを聞きました!比企谷さんさえよければ、この学院に是非いらしてください!歓迎しましょう!」

 

八幡「あ、あぁ。」

 

 

なんかさっきと性格が違い過ぎて戸惑っちまう。本当にこっちが本性なのか?逆にしか思えないんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ディルクの本性………違和感しかない。
あの目で敬語&礼儀正しい……ザ・違和感ですわ。



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レヴォルフ訪問 ②


今回もキャラ崩壊に注意です。




 

 

八幡side

 

 

しかしディルクの話を聞いていると、こいつは本当にこの学院の生徒を大切にしているっていうのが伝わってくる。ディルクの話では、この学院に在籍している生徒はなんらかの問題を抱えた生徒が多いみたいだ。虐待や人間不信、いじめ、単なる不良化、色々な生徒がいるが、ディルクはそれを上手くまとめ上げている。今年俺と一緒の学年や転校してきた奴らの教育や指導にも熱を入れているみたいだ。こういう奴は人間国宝レベルだろう。

 

 

ディルク「……比企谷さん、少し私事なのですが、質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

八幡「ん?あぁ構わないぞ。俺の答えられる範囲でよければな。」

 

ディルク「ではお言葉に甘えて。先程はウチの学院の生徒を見ていないから分からないとお答えになりましたが、私の説明等を聞いてこの学院の生徒を比企谷さん目線でどう思いましたか?」

 

 

こりゃまた答えづらい質問だな。大体の事情は聞いたが、悪い学院ではないというのが俺の感想だ。けど生徒がどうとかは分からんな……これも思ったことを言うか。

 

 

八幡「答えづらいが、やっぱ良い生徒が多いと思うぞ。そりゃ素行が悪い生徒も居るとは思うが、学院外ではボランティアに参加している生徒を見かけた事もあったしな。俺自身の感想では、ディルクの教育の賜物だと思ってる。」

 

ディルク「勿体無いお言葉です。でも嬉しいです。そう言って頂けると気持ちも楽になります。」

 

八幡「だがなんでそんな質問をしたんだ?」

 

ディルク「あぁ、すぐに分かります。」

 

 

 

 

すると突然、扉が勢いよく開いた。

 

 

???「ディルク、テメェ勝手に他学園の生徒を招き入れるなんてどういう事だ!?アァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディルク「……見ての通り、長く教育をしていてもこういう生徒がいるので。」

 

八幡「あぁ……納得した。」

 

???「無視してんじゃねーよ!何私を無視して他学園の奴と話してるんだよ!!」

 

ディルク「今は会談中ですよ。お静かにお願いします、ころな。」

 

 

ころなという女子生徒は、外見こそ優しそうで気弱そうなイメージだが、今の喋り方で分かったと思う。粗暴で口の悪い奴みたいだ。これが逆だったら違和感ないんだがな………

 

 

ころな「つーか誰だよこのどっからどう見ても冴えねぇ男は?こんな奴と話ししてなんになるんだよ?」

 

ディルク「失礼ですよ?口を慎みなさい。すみません比企谷さん、私の部下が失礼を……」

 

八幡「いや、気にしてないからお前も気にするな。それにこういう奴にはもう慣れた。」

 

 

千葉にもこういうバカタレがいたからな、喋らしておくのに限る。こいつ程口悪くはないけどな。

 

 

ころな「てかなんの話をしてたんだ?」

 

ディルク「オーフェリアさんの事についてです。彼も彼女の星辰力の抑制に協力してくれると申し出があったので、その面接を行い、その承認と所有権を彼に譲渡をしました。」

 

ころな「ほぉ〜ん……ってはぁ!!?所有権を譲渡ぉぉぉ!!!?お前何考えてんだよ!!?オーフェリアが幾らしたと思ってるんだよ!?5000万だぞ!?お前はこんな何処のウマの骨とも知らない男にタダで契約書を渡したっていうのか!!?」クワッ!!

 

ディルク「はい。」

 

ころな「はい。じゃねぇよ!!お前何考えてんだよ!!?こっちがマイナスじゃねぇか!!」

 

ディルク「貴女は何か勘違いをしているようなので教えますが、オーフェリアを買い取ったお金は私のプライベートマネーの物です。決してソルネージュから搾り取ったものではありません。それにもし搾り取ったとしても、その約半分は私が収めても言っていい金額ですが?貴女も知っているでしょう?私が投資家としても成功しているというのを。」

 

ころな「ぐっ……」

 

ディルク「なので、彼女の所有契約書をどうしようが私の自由です。それとも、私の代わりに貴方が投資をしてみますか?ならばこの席をお譲りしますよ?」

 

 

お、おぉう……5000万もしたのかよ。論破してるところも凄いが、そんだけの金使った奴の契約書をポンッと渡せるとこもすげぇな。

 

 

ころな「ちっ!もういい!」

 

 

ディルク「はぁ……比企谷さん、先程私がおっしゃった意味、お分かりになって頂けたでしょうか?」

 

八幡「……あぁ、よく分かった。」

 

 

そして俺はその後、やる事も言うことも無くなったので帰る事にした。勿論オーフェリアに連絡をしてから帰る予定だ。だって知らせないと拗ねるだろ、あいつ。

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

オーフェリア「お兄さぁ〜ん♪迎えに来たよ〜!」

 

八幡「おう、出迎えご苦労さん。じゃあ俺は学院に戻る。今日はありがとな。」

 

ディルク「はい、今日はありがとうございました。また有意義な時間を過ごしましょう。」

 

ころな「私は来ても知らねぇけどな。」フイッ

 

 

そして俺はレヴォルフの生徒会室を後にした。

 

 

オーフェリア「……どうだった、話し合いは?」

 

八幡「あぁ、割と順調に進んだ。ディルクにも認めてもらえたしな。それからお前の所有契約書ってのも貰った。だから俺がお前の主人になるのか?」

 

オーフェリア「じゃあ私、お兄さんの事はご主人様って呼んだ方がいい?」

 

八幡「やめろ、今まで通りの呼び方でいい。その方が俺としても嬉しい。」

 

オーフェリア「えへへ、私もだよお兄さん♪」

 

 

さて、これから忙しくなるな。オーフェリアの星辰力抑制に学院授業、鍛錬……色々とやることが増えたが、これも妹のためだ。出来るだけのことはしないとな。

 

 

八幡「此処でいい。んじゃオーフェリア、またな。俺は界龍で研究とか調べ物を優先する。何とかしてお前の星辰力を押さえ込んでやるからな。」

 

オーフェリア「ありがとうお兄さん。じゃあお兄さん、今日はゆっくり休んでね。疲れが溜まった状態で学校行ったら危ないんだからね!」

 

八幡「あぁ、分かった。それじゃあな。」

 

オーフェリア「うん、ばいばい!」

 

 

そして俺はレヴォルフ黒学院を去って自身の学院である、界龍第七学院へと帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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完成! ①

 

 

八幡side

 

 

俺とディルクが協力体制になってから早くも1ヶ月が経った。それからは色々あったもんだ。喋る刀に気に入られるわ、学院序列2位に決闘を挑まれるわで大変だった。刀は俺の相棒になったし序列2位の奴は勝ったから、どっちもいい結果だったから良かったんだけどな。いかんせん忙しかった。暫くは俺、休んでてもいいよね?

 

そう思った矢先、朗報があった。いや、出来ただな。ついにオーフェリアの力を抑制できるものが出来たかもしれないんだ。だからそれを今からレヴォルフに持って行くためディルクに相談しようと思っていたところだ。今端末開いて通信中だ。

 

 

八幡「そんじゃあ今から向かうな。取り敢えずはそこにオーフェリアを呼んでおいてくれ。」

 

ディルク『分かりました。ではお待ちしております。』

 

 

……さて、準備はもう出来てるし、後はレヴォルフに向かうだけだ。さっさと向かってオーフェリアを楽にさせてあげないとな。失敗したとしても、なんかの光明が出てきてくれればもっといいな。

 

 

八幡「さて、行くか。」

 

 

ーーー界龍・廊下ーーー

 

 

冬香「あら?お出掛けですか、八幡さん?」

 

八幡「どうも、まぁそんな所です。」

 

冬香「そうですか……では道中お気をつけ下さい。」

 

八幡「はい。あぁそれと冬香さん、1つ質問してもいいですか?」

 

冬香「はい、何でしょう?」

 

八幡「もし俺が今、この学院に【孤毒の魔女】を連れて来たら、貴方ならどうしますか?」

 

 

この質問は興味本位でもあるが、半分本気の質問でもある。1ヶ月前にオーフェリアを界龍に呼んで俺の部屋に招待したが、今の序列4位、6位、7位に邪魔されて入ることが出来なかった。警戒するのは当然だとは思うが、追い出すまでやらなくてもいいと思う。

 

 

冬香「……私なら、まずは師父に相談しますね。師父が入れてもいいと言うのであれば校内に入れます。自分自身の判断では決めかねますね。」

 

 

……成る程、1番上(序列や生徒会長的な存在に)に相談か。それは俺も盲点だったな。次からは星露に相談するか事にしよう。無理だって言われても安全な所を見せれば分かってくれるだろうしな。

 

 

八幡「……そうですか、少しホッとしました。追い出すなんて言われたらどうしようかと思ってました。」

 

冬香「追い出すのは学院に迷惑、排除すべき存在だと認識した時だと私は思っております。確かに彼女はそれだけの力を持っているかもしれませんが、彼女が力を行使するかどうかとはまた別の話ですので。」

 

 

………大人の対応だな。

 

 

八幡「……すみませんね、突然こんな質問をしてしまいまして。では。」

 

冬香「はい、お気をつけて。」

 

 

ーーーレヴォルフ・校門前ーーー

 

 

八幡「………なんでもう居るんだ?」

 

オーフェリア「だってお兄さんに早く会いたかったんだもん♪」ニパァ!

 

 

えぇ……なにその可愛い理由。嬉し過ぎるんだけど。

 

 

八幡「んじゃあさっさとディルクんところに向かおうぜ。早く試したいしな。」

 

オーフェリア「うん♪」

 

八幡「そういや、ディルクにはちゃんと此処にいるって言ったのか?」

 

オーフェリア「うん、言ってあるよ!」

 

八幡「ならいい。」

 

 

生徒会室に行く道中、俺はオーフェリアに腕を抱き着かれている状態だった為、側を通った奴は目を丸くしながら俺を凝視していた。最初は何でかは分からなかったが、オーフェリアは周りに毒素を撒き散らしているのを忘れていた。我ながら恥ずかしい。

 

 

ーーー生徒会室ーーー

 

 

八幡「失礼します。」

 

オーフェリア「お邪魔しまーす!」

 

ディルク「お待ちしていましたよ、比企谷さん。」

 

ころな「こっちはお前の為にいてやるんだ、感謝しろ。」

 

八幡「………ディルクには言ったがお前には集まってほしいなんて一言も頼んでない。それに、そういう態度をとる奴とは一緒にいたくない。部屋に戻っててもいいぞ。」

 

ころな「あぁっ!?テメェ何言って「ころなちゃん?あんまりうるさくするなら……めっ、だよ?」……分かったよ。」

 

 

オーフェリア、どうもね。

 

 

オーフェリア「えへへ〜お兄さんのナデナデ〜♪」

 

八幡「早速だが、出来るか?」ナデナデ

 

ディルク「はい、模擬戦場を1つ取ってあります。ご案内しましょう、こちらです。」

 

 

ーーー移動中ーーー

 

 

ディルク「それにしても比企谷さん、完成したとは言っておりましたが、随分お早いですね。」

 

八幡「詳しい事はまだ言えないが、オーフェリアの星辰力を、というよりも毒素を撒き散らさずに済む方法は見つけた。視点を変えてみて気付いたんだ。オーフェリアの星辰力を抑えるんじゃなくて、毒素をどうにかしてみたらどうだってな。」

 

ディルク「抑えるのを毒素に変えたというわけですね。成る程、お見事です。」

 

八幡「それは成功してから言おうな、まだ始まってもいないんだ。俺みたいな普通の星脈世代が試しても意味ないからぶっつけ本番しかないしな。」

 

オーフェリア「大丈夫!お兄さんが作ったものなら失敗する筈ないもん!」

 

 

余計なプレッシャーを与えないでっ!俺だってこういう物作りは初めてなんだから!

 

 

ころな「とりあえずはやってみなきゃ分かんねぇって事だろ?それさえやりゃあ後は成功か失敗ってだけだ。」

 

八幡「あぁ、お前はとりあえずオーフェリアと一緒に30分くらい模擬戦場で一緒に話でもしててくれ。星辰力の壁は解除しとくから安心してくれ。」

 

ころな「テメェ私に死ねってか!?さっきの仕返しってんならエゲツねぇからな!?」

 

オーフェリア「ころなちゃん大丈夫だよ。きっと麻痺毒くらいか身体から変な液体が出るくらいで済むから。」

 

ころな「全く大丈夫じゃねぇよ!!」

 

 

いいじゃねぇか減るもんじゃねぇんだしよ。減るのはお前の精神力だけだからいいだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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完成! ②

 

八幡side

 

 

………

 

 

八幡「んでお前、なんで検査室に居るんだ?」

 

ころな『テメェ本気だったのかよ!!そこに行くわけねぇだろうが!死ぬの私だぞ!』

 

八幡「うん、知ってる。」

 

ころな『テメェマジで嫌な性格してやがるな!』

 

 

君にだけは言われたくありません。

 

 

八幡「そんな事よりもテスト始めるぞ。テストは簡単だ。俺は今、星辰力に覆われたバリアの中にいて、その中には花束が2つ用意されている。1回目は1つの花束を床に置いたままにして、俺ともう1つの花束にバリアを張ったままにする。もう1つは放置状態だ。それでまずはオーフェリアの状態を確かめる。2回目に俺の作った校章をオーファリアにつけて同じ事をしてもらう。その状態で花が枯れていなければ成功だ。何か質問はあるか?」

 

オーフェリア「……ないよ。」

 

ディルク『私もありません。』

 

ころな『……ねぇよ。』

 

 

よし、じゃあ早速始めるか。

 

 

八幡「じゃあ始めるからな。オーフェリアは辛いだろうが、頑張ってくれ。」

 

 

俺は持っていた花束の1つを床に置いてその場を離れた。花束にはまだバリアを張った状態にしてある。

 

 

3……2……1……よし。

 

 

俺はバリアを解いてオーフェリアに指示を出す。

 

 

八幡「オーフェリア、花束に向かって歩いて行ってくれ。」

 

オーフェリア「う、うん。」

 

 

オーフェリアは徐々に花束へと近づく。それに伴い、花束の花はどんどん萎れていき、オーフェリアが触る前に枯れてしまった。

 

 

八幡「じゃあ次から本題だ。オーフェリア、その校章をいつもつけている部分につけれくれ。」

 

オーフェリア「うん。」

 

八幡「つけたな?じゃあその校章に触れてみてくれ。」

 

 

オーフェリアは言われるがままに交渉に触れた。すると、校章から黒い靄のようなものが現れた。

 

 

オーフェリア「えっ!?な、何!?」ビクッ!

 

八幡「大丈夫だオーフェリア、危害はない。」

 

 

黒い靄はオーフェリアを包むとすぐに消えて無くなった。何事もなかったかのように。

 

 

ディルク『………比企谷さん、これで本当に大丈夫なのですか?』

 

八幡「あぁ、その筈だ。じゃあテストを続けるぞ。オーフェリア、そのまま俺に向かってきてくれ。バリアは解くから大丈夫だ。」

 

オーフェリア「う、うん。」

 

 

俺はバリアを解いてその場に立ち尽くした。オーフェリアは着々と俺に近づくように歩き出した。さっきはこの辺りでもう萎れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、花はまだ枯れていなかった。それどころか萎れる様子も全くなかった。

 

 

ディルク『こ、これは……!』

 

 

ついにオーフェリアは俺の目の前まで来てしまった。それでも花は枯れていなかった。

 

 

オーフェリア「………」

 

八幡「持ってみるか?」

 

オーフェリア「………うん。」

 

 

俺はオーフェリアに花束を差し出した。オーフェリアは恐る恐るといった様子で花束に手を伸ばした。そして花束に手を添えて、俺はその花束をオーフェリアに持たせるように手を離した。

 

 

オーフェリアは6年ぶりに生きた花に触る事が出来た瞬間だった。

 

 

オーフェリア「……触れる……ちゃんと触れる。生きているお花に……生の息吹を吹いているお花に、ちゃんと……ちゃんと触れてる………」ポロポロ

 

八幡「………その花の名前と花言葉、オーフェリアなら分かるよな?」

 

オーフェリア「……真ん中に咲いているのはヘリクリサム。花言葉は『いつまでも続く喜び』『永遠の思い出』。それを囲っているのがカキツバタ。花言葉は『幸福は必ず訪れる』。周りに咲いてる白いのは胡蝶蘭で、花言葉は『幸福が飛んでくる』……だよね?」ポロポロ

 

八幡「あぁ……覚えてるか?この花全部、6年前のリーゼルタニアの温室でお前が育てていた花だ。やっと触る事が出来たな。」

 

オーフェリア「うん……うんっ!!」ポロポロ

 

 

するとオーフェリアは花束を投げると、俺に抱き着いてきた。

 

 

オーフェリア「お兄……さん、ありがとう……本当に……本当にありがとう!!うっ、うぅ!」ポロポロ

 

八幡「気にすんなよ。妹分を助けるのなんて兄貴分として当たり前だろ?良かったな。これで目一杯花に世話してやれるし、色んな花に触れるし、色んな事が出来るぞ。」ナデナデ

 

オーフェリア「ううぅ……グズッ、う、うぅっ!」ポロポロ

 

八幡「我慢なんてするな。この前と同じで泣きたい時は思いっきり泣けばいいんだよ。俺の前でくらいは素直になれって言ったろ?な?」ナデナデ

 

 

オーフェリア「うっ、うっ、うえぇぇぇぇんんん!!わああああぁぁぁぁんん!!」ポロポロ

 

 

オーフェリアは大粒の涙を流しながら大泣きした。それも外に聞こえるくらいの大きな声を上げながら。

 

 

だが、それもそうだ。もう2度と触る事が出来ないと思っていた生きている花に触る事が出来たのだ。こんなにも嬉しい事はないだろう。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

オーフェリアが泣き止んでからは人でも試してみた。ディルクと樫丸を立たせて実験してみた。結果は成功。毒の影響は全くなかった。

 

 

ディルク「比企谷さん、今回は本当におめでとうございます!貴方は私の悲願を成し遂げてくれました!これ以上の喜びはありません!」

 

八幡「いや、気にするな。それに1番嬉しいのはオーフェリアだ。やっと思い切り笑えるようになったんだ。これからは六花で学院生活を思う存分に楽しまないとな。」

 

ディルク「そうですね。比企谷さん、今回のお礼としてこちらをお受け取りください。」

 

八幡「いや、そんなの要らない。俺はただ協力したいって申し出ただけでお礼目当てなんかじゃない。」

 

ディルク「いえいえ、こうでもしないと私の気持ちが収まりません!どうかお受け取りください!」

 

八幡「……じゃあお言葉に甘え……て!?」

 

 

なんじゃこりゃ!?1…10…100……2000万!?

 

 

八幡「おい!?お前何考えてんの!?」

 

ディルク「いえいえ、それくらいの事はさせてください。それにご安心を。私は1ヶ月に3億は稼げますので。これはお小遣い程度だと思ってください。」

 

 

この金額をお小遣いだって思えるお前の頭が凄いよ、俺には無理だ。いや、一般人には到底理解出来ねぇし、金持ちしか分からんよ。

 

 

八幡「とりあえず俺は帰るわ。オーフェリアにはよろしく伝えておいてくれ。」

 

ディルク「はい、今後とも良い関係を築いて行きましょう。」

 

八幡「あぁ。オーフェリアがいる限りは大丈夫だとは思うけどな。」

 

 

軽い雑談を終えてから、俺は界龍へと帰還した。漸く俺は楽しい学院生活を送る事が出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア『お兄さん!今度の日曜日遊びに行こっ!もう1回デートッ♪』

 

 

……毎週の日曜日にオーフェリアからお出かけのおさ『デートのお誘い、だからね!』………デートのお誘いを受けている。

 

まぁ、オーフェリアが今を楽しく過ごせているのなら別に構わないけどな。

 

 

 

 

 

 

 




いや〜良かった!前作ではあまり接点がない状態でしたが、こんな風にオーフェリアが感情的だと来るものがありますね。



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お兄さんのおかげで


オーフェリア編の最終回です!


 

オーフェリアside

 

 

お兄さんから毒素を撒くのを打ち消す校章を貰ってから、もう1ヶ月が過ぎた。あれから私は色々な事をした。行った事のない商業エリアに行って、ご飯を食べたりお洋服を見たりお花屋さんでお花を見たりした。他にも私がやった事のない事をたくさん経験した。でもまだ私が怖い人は多いみたい。仕方ない事だけど、自分が異質のように見られるのはちょっぴり悲しい……

 

でも、そんな私にもお友達が出来ました!同じ学院のプリシラちゃんにイレーネ!学院外ではお兄さんと同じ学院のお姉さんの冬香さんと雪ノ下さん、同級生の(フー)くんとセシリー、星導館には幼馴染のユリス、クインヴェールには《王竜星武祭》の決勝で戦ったシルヴィアさん、学院外でもこんなにたくさんの友達が出来ました!

 

後は何があったかなぁ〜……報告する事は……あっ!そうそう!!私ね、序列1位だから1位用の部屋を貸してもらってるんだけど、そこに買ってきたお花を飾ってるんだよ!私が24時間いても全然枯れないの!!これってやっぱり凄いよね!この6年間で出来なかったことが今では当たり前のように出来る……それが何よりも嬉しい。これも全部お兄さんのおかげだよ。

 

 

そんなお兄さんは今、また物作りに励んでる。なんでかって言うと、私の毒消しの校章をアクセサリーに出来ないかって私が相談してみたら、よく分からないけどやる気が出ちゃったみたいなの。だから今は私の為にアクセサリーを製作中です!頑張って、お兄さん!

 

 

シルヴィア「あれ、オーフェリアちゃん?1人こんな所でどうしたの?」

 

 

後ろを振り向くと、栗色の長い髪に帽子を深くかぶった女の人が立っていた。私はもうこの人の正体を聞いてるから別に驚かない。

 

 

オーフェリア「シルヴィアさん!今日はこの辺りをお散歩してるんです♪まだ春だから風とか気持ち良くって♪」

 

シルヴィア「そっか。」

 

オーフェリア「そういうシルヴィアさんは?」

 

シルヴィア「私?私も似たようなものかな。この仕事をやっていると息抜きもしたくなってくるからね、リフレッシュ出来る合間があったらすぐにしないと、ガス欠になっちゃうからね。」

 

 

おぉ、流石は世界一の歌姫様!歌も一流だけど、考えている事も一流だ~!

 

 

シルヴィア「それでさオーフェリアちゃん、八幡くんを貸してよ〜。彼とっても良い人だから私も自然体でいられる数少ない人なんだよ〜。」

 

オーフェリア「うぅ〜お兄さんは私のじゃないですけど、あんまり他の女の人と関わって欲しくないのが私の本音なんです。お兄さん優しいから無意識に女の人落としてないか心配で………」

 

シルヴィア「あぁ〜それは分かるよ。八幡くんって天然の女誑しだと思うんだよね。あの目が特徴的だからあんまり人は寄り付かないとは思うけど、あの目が少しでも改善されちゃったら、彼の周りは女性で溢れるかもね。」

 

オーフェリア「うん!だから今の内にお兄さんが私の事をもっと好きになるように頑張らないと!」

 

シルヴィア「(オーフェリアちゃん、ちゃんと理解してるのかな?)そうだね、八幡くんを取られないようにしないとね!」

 

 

シルヴィアさんみたいにお兄さんの事を分かっている人ならいいけど、見た目だけで判断する人とお付き合いするのは絶対ダメだもん!私が許さないもん!

 

 

シルヴィア「オーフェリアちゃんは八幡くんとお付き合いしようとは思わないの?」

 

オーフェリア「お兄さんは確かに大好きですけど、お付き合いとか男女交際っていう風に考えると、ちょっと違うというか……私とお兄さんはなんか義兄妹みたいなのが一番合っているような気がします。」

 

 

シルヴィア(成る程、オーフェリアちゃんはそういう考えなのかぁ……)

 

 

オーフェリア「私はシルヴィアさんとお兄さんがお付き合いするのは全然構わないと思います。だってシルヴィアさんはお兄さんの事よく分かってるから。」

 

シルヴィア「あ、あはは……これは1本取られちゃったなぁ……気付いてたの?」

 

オーフェリア「シルヴィアさんのお兄さんの見る目が女のアレだったので!」フンスッ!

 

シルヴィア「そ、そうだったんだ///」

 

 

私、こう見えても意外と鋭いんですからね!趣味はお兄さんと同じで人間観察だから!

 

 

オーフェリア「あっ!そういえばシルヴィアさんは大丈夫何ですか?私はお散歩だからいいですけど、息抜きに来たんですよね?」

 

シルヴィア「ふふふっ、大丈夫だよ。オーフェリアちゃんとお話する機会もあんまり無いから、こういう時間があるのって私にはありがたいんだ。充分息抜きになってるから大丈夫だよ。」ナデナデ

 

オーフェリア「えへへ〜良かったです♪」

 

 

その後は近くの喫茶店に入ってお兄さんの話で盛り上がった。でも楽しい時間っていうのはあっという間……シルヴィアさんは次のお仕事があるから2時間くらいでお開きになっちゃった。

 

私ももう少しだけお散歩したら、学院に帰ろっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……オーフェリア?」

 

オーフェリア「っ!あっ、お兄さん!!」

 

 

本当にお兄さんだ!!今日は会えないって思ってたのに思わぬ奇跡だよ♪

 

 

八幡「散歩か?」

 

オーフェリア「うん!お兄さんは?」

 

八幡「俺も似たようなもんだが、少し息抜きも兼ねてな。前に言ってたアクセサリーは大体20個は作ったから。」

 

オーフェリア「そんなに作ったの?別に2個とか3個とかで良かったのに。」

 

八幡「いや、ちょっとハマっちゃってな。変なところで熱が入っちまった。」

 

オーフェリア「あははっ!変なのっ!」

 

 

お兄さんってば本当に変なの!

 

 

八幡「………楽しんでるみたいだな。」

 

オーフェリア「勿論だよ。これも全部お兄さんのおかげ。お兄さんと此処でまた出会えてなかったら、私の人生はきっと真っ暗だった………でも、お兄さんは約束を守ってくれただけじゃなくて、私の毒まで消してくれた。あれはきっと人生で一番嬉しかった瞬間だと思う。」

 

八幡「……そうか。」

 

オーフェリア「……お兄さん。」

 

八幡「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「これからもずっとずっと仲良しでいようね、お兄さんっ♪」ニコッ!

 

 

 

 

 

 

 





オーフェリア編、これにて完結です!

いやぁラストが可愛らしい終わり方で良い!(自画自賛しちゃってるよ………)

さて、お次はどなたが来るのか?明日のお楽しみです!


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小苑編
肯定と自己紹介


 

 

八幡side

 

 

………俺は何を間違ってきたのだろう?あの依頼は問題があったとはいえ、遂行させたはずだ。なのに何故?なぜ俺は攻められなければならないんだ?やり方だって任せると言われた。お前らの事だからやり方はどうであれ、認めてくれると思っていた。なのに何故だ?なぜ俺だけこんなにも咎められなければならないんだ!

 

………はぁ、もう学校に行く意味すら分からない。罵倒罵声を浴びせられる毎日の学校にどうして行こうと思える?家に帰っても妹がうるさい。どこにも行き場なんて、居場所なんてないじゃないか。

 

 

八幡「………はぁ、ここで寝るか。」

 

 

別に誰も居ねぇからいいだろ。今の季節に外で寝たら風邪は確定だろうが、家に帰るよりはマシだ。

 

 

???「何をしているのです?」

 

八幡「………え?」

 

 

ベンチの上で眠ろうとした矢先に声を掛けられた。薄鈍色の髪に黒のコートを着ている。だが下を見ると青い布が見えた。恐らくはチャイナドレスだろう。20代前半だろうか、ドレスから覗く足はスラリと綺麗な形をしていて顔も整っていた。容姿端麗という奴だ。

 

 

???「ここで何をしているのです?」

 

 

あっ、そういや質問されていたんだった。でも、別に答える必要なんてない。答える意味もないしな。言ったところでどうにもならない。

 

 

八幡「………」

 

???「何か一言仰ってください。そうでなければ分かりません。」

 

八幡「……答える意味がないので。」

 

???「……成る程、そう来ましたか。なら私も此処で待たせていただきます。」

 

 

この人は何を言ってるんだ?まぁ5分もすれば居なくなるだろう。

 

 

ーーー5分ーーー

 

 

八幡「………」

 

???「………」

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

八幡「………」

 

???「………」

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「………」

 

???「………」

 

 

この人、本当に此処に居るつもりか?

 

 

八幡「あの……」

 

???「はい、何ですか?」

 

八幡「帰らないんですか?」

 

???「そんな状態の貴方を放って帰れと言うのですか?私にはそのような事は出来ません。」

 

八幡「見ず知らずの俺をなんでそこまで………」

 

???「……何故でしょうか?一目見て放っておけないと思ったんです。よろしければ、何があったのか教えてはくれませんか?」

 

 

………この人に奉仕部の依頼の顛末を教える義理なんてない。けど、自分が楽になれるんなら、口を滑らせてもいいよな。

 

 

八幡「………今から言うのは俺の単なる独り言です。聞きたければ聞いてください。」

 

 

それから俺は奉仕部で起きた出来事を独り言という程で説明した。彼女は徐々に頭を下げて俯くような姿勢になった。まぁ興味のない話をされたんじゃあこうなるか。

 

 

???「そんな事があったのですね。」

 

八幡「なんか、自分自身が何をやってきたんだろうって思えて……なんかもうバカらしくて。」

 

 

ベンチに座っていた女の人はその後は何も言わなくなってしまったが、再び口を開くとなぜかこんな事を言い出した。

 

 

???「身体を起こしてはくれませんか?」

 

 

意味が分からなかったが、起こしちゃいけないなんて事は別になかったので、素直に言う事を聞いた。

 

その瞬間、頭を優しく掴まれて引き寄せられた。引き寄せられた先には女の人の胸があった。それだけならまだ良かったが、女の人が着ているチャイナドレスは胸元が開いているデザインだった。

 

 

八幡「っ!!?」

 

???「大丈夫です。今この場所に貴方を軽蔑する人は誰1人としていません。貴方はよく頑張りました。褒められたやり方ではありませんが、依頼を遂行させる過程には入っていました。私は、貴方が褒められることはあれど、侮蔑され、屈辱を受ける事は絶対にありえないと思っております。ですが、言わせて下さい。ここまでよく頑張りましたね。貴方は立派です。今はその力の入った身体から力を抜いて、楽にしていても大丈夫ですよ。」

 

 

俺は言われた通りな、身体から力を抜いた。正直に言うと初対面の人にこれだけ心を許したのは初めてだ。俺は久しぶりに人肌というものに触れたと思う。それが顔に押し付けられた胸というのはあまり触れないでほしいが、女の人の鼓動が聞こえてくるので、俺は何だか余計に安心できた。この人なら大丈夫だ。理屈や理由はないが、確信があった。

 

 

八幡「………」

 

???「………」ナデナデ

 

 

頭を撫でられたのも久しぶりだ。というより、俺って頭を撫でられた時ってあったっけ?

 

俺は力を抜き過ぎたのか、その場で眠ってしまった。

 

 

???「……眠ってくれましたね。今の貴方を家に返すわけにはいきませんので、私の家まで運ばせて頂きます。」

 

 

ーーー???ーーー

 

 

八幡「………ん、んん?」

 

 

あれ?何処だ此処………中華風な内装だな。

 

 

???「お目覚めになりましたか?」

 

八幡「あっ……さっきの。」

 

???「そういえば私たちはまだお互いの自己紹介をしておりませんでしたね。では、改めまして。汪小苑と申します。」

 

八幡「……比企谷八幡です、よろしくお願いします。」

 

 

こうして奇妙な形ではあるが、俺と小苑さんはであった。

 

 

 

 

 

 





というわけで……小苑編でした!!

学生から離れて大人も入れてみました!



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義母と義息子

 

 

小苑side

 

 

彼、比企谷八幡さんと過ごすようになってから2週間が過ぎました。この期間で彼の事について分かったのは、彼自身がとても優秀である事。柔軟な思考力、思考をした後に迅速に動くことの出来る行動力と決断力、人の本質を見抜く事が出来る程の観察力と洞察力、これだけでも充分なくらいです。ですが彼の最も大きな美点は気配りの出来て優しいところです。

 

毎回の事なのですが、私と彼は一緒に買い物をします。その時は決まって八幡さんが荷物運びをして下るのです。もちろん私は何も言ってません。彼が無言で荷物を持ったのです。私は最初断ったのですが、彼は『力仕事なんて男のやる事ですから任せて下さい。』と言ってくれました。彼の不器用で分かりづらい所ではありますが、他人への思いやりは人一倍強い人だと思っております。

 

そしてもう1つ、彼は後天性の星脈世代である事が判明して、私の知りうる限りの武術と星仙術を教えています。この2つの才においても、彼は突出した才能を持っています。過去に1人だけいた私の弟子よりも遥かに上回る程の強大さです。これは来年が楽しみですね。

 

八幡さんは来年の4月から私の母校である、界龍第七学院へと転校予定です………いえ、転校します。このまま今の学校に行かせるわけにはいきませんからね。勿論、彼の家にも。私は彼を否定した学校や家族には八幡さんを絶対に会わせたくありません。八幡さんが……いえ、人があんな顔をするところを私はこの人生で見たことがありませんでした。その瞬間に思いました、もう2度とあんな顔にはさせないと。

 

そして私は彼と過ごして初めて思った事がありました。これが家族というものなのだと。

 

 

小苑「八幡さん、今日の鍛錬はどうでした?少しだけ難しくしてみたのですが……」

 

八幡「やっぱり俺はまだ星辰力の扱いが下手なんだな〜って思い知りました。大きな扱いは出来ても、細かい星辰力の使い方がまだまだで。明日も今日と一緒の鍛錬をしてもいいですか?出来るまでは次のステップには行きたくないって感じがして……」

 

小苑「向上心があるのは良いことですね。分かりました、明日も同じ鍛錬で構いません。それと、お身体の調子は大丈夫ですか?」

 

八幡「何ともありません。あるとしたら、小苑さんと1週間に1度だけやる組手くらいですね。自分の未熟さを思い知るのと、小苑さんの拳と蹴りの強さに悶絶するばかりです。」

 

小苑「ふふふ、私の前でよくそれが言えましたね。では今晩も一緒に寝ますか?それなら痛みもすぐに無くなりますよ?」

 

八幡「い、いや、それはちょっと……恥ずかしいので。」

 

小苑「おや?つれませんね、最初は受けてくれたではありませんか。」

 

八幡「あ、あの時は最初だったから知らなかっただけです。まさか一緒に寝るのが最善の方法だとは知らなかったんですから。」

 

 

皆さん、誤解しないで欲しいのですが、私と八幡さんは決して性行為を実行したわけではありません。ただ普通に寝ただけで私が八幡さんの身体に星辰力を流し込んで、体内の疲労や痛みなどといったストレスなどを除去しているのです。起きている場合でも効果はあるのですが、八幡さんも男の子なのでしょう、恥ずかしいようですね。あの時の八幡さんは1番可愛かったですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまり気分の良い質問ではありませんが、いつかは聞かなければいけない事、今聞いておいた方がいいですよね。

 

 

小苑「八幡さん、1つ質問をしてもよろしいですか?」

 

八幡「はい、何です?」

 

小苑「八幡さんは今の家に戻りたいですか?それとも此処で暮らしていきたいですか?」

 

八幡「………どういう意味です?」

 

小苑「そのまんまの意味です。今後生活する上ではどちらの環境で生活していきたいかを聞いています。家族とこれまで通り残りの半年間を過ごしていくか、私と共に半年間生活を共にするか、どちらが良いかを聞いています。」

 

 

私は現状、彼の身元保証人のようなもの。彼の心情次第では彼の家族へと返さなければいけなくなります。私は彼の母親でもなければ家族でもありません。言い方を変えるとただの他人ですからね。

 

 

八幡「そんな答え、決まってますよ。このまま小苑さんと暮らしていく方が何億倍もマシですよ。」

 

小苑「……理由をお聞きしても?」

 

八幡「そんなの簡単ですよ。逆に何で嫌いな奴らと一緒に生活しなくちゃいけないんですか?俺の家族は基本俺の事は放置してますからね。戻りたいなんて思う方が不思議ですよ。だったら……その、アレです。好きな人と一緒に生活した方がいいじゃないですか。」プイッ

 

 

彼は少し恥ずかしかったのか、顔を赤くして背けながらそう答えた。

 

その答えを聞いた私も、胸が少しだけキュッと締めつけられました。嫌な意味でではありません。とても嬉しかったからです。私も八幡さんと一緒に過ごす日々は気に入っています。なので、出来れば行ってほしくない、まだ一緒に暮らしていたいと思っていました。

 

 

八幡「それに……」

 

小苑「それに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なんか、初めてだったんですよ。こうやって隣で一緒に歩いたり、買い物をしたり、世間話をしてるを考えてたら、家族ってこんな感じなのかって。」

 

小苑「っ!」

 

 

………驚きました、八幡さんも私と同じ事を思っていたなんて。また嬉しさが増しました。

 

 

小苑「ふふ、私は良い義息子(むすこ)を持ちました。とても嬉しいです。」

 

八幡「俺も、良い義母(ははおや)を持ちました。悪くない気分です。」

 

小苑「素直じゃないですね。でもそれが八幡さんでもあります。」

 

 

軽い会話をしながら、私と八幡さんは今日も夕日が眩しい帰り道を通っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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何気ない家族話


今回は少し思いつきがなかったせいか、時間がかかってしまいました。




 

 

八幡side

 

 

………皆は思った事がないだろうか、楽しい時や幸せな時はあっという間だと。俺が小苑さんと一緒に過ごすようになってから4ヶ月か過ぎた。後1ヶ月くらいで俺は界龍第七学院へと転向する。そう、誰もが憧れる水上都市六花へと行けるのだ。

 

手続き自体はもう済ませてあるみたいで、後は簡単なものくらいだそうだ。気が早いかもしれないが、かなり楽しみだ。六花かぁ………早く行ってみたいものだ。

 

 

小苑「……考え事ですか?」

 

八幡「っ!な、なんで分かったんですか?」

 

小苑「ふふ、分かりますよ。八幡さんは顔に出やすいタイプみたいですから。」

 

 

………俺は考え事が顔に出やすいタイプなのか。けど、どんなのかは分からないよな?

 

 

小苑「今のは何かしたい時や何処かに行きたい時の顔ですね。」

 

八幡「………思いっきり出てるんですね。」

 

小苑「一体何を考えていたんですか?」

 

八幡「簡単な事です。早く六花に行きたいって思ってただけです。憧れでもありましたので。」

 

小苑「憧れですか……その頃の八幡さんはまだ非星脈世代ですよね?星脈世代になった今も変わりませんか?」

 

八幡「変わりませんよ。そう思ってるのは俺だけではありませんからね。どの学生も一度は足を踏み入れたいって思う所が水上都市なんですから。」

 

 

でもまさか、星脈世代になるとは思わなかったなぁ……ラノベでもあるが、そういう世界ってやっぱ能力が持ってるのが普通だろ?この世界でもそういう所あるから、なれた事に関してはすげぇ嬉しい。

 

 

小苑「ですが、憧れる気持ちは分かりますよ。私も小さい頃は六花に行きたいとずっと思っていましたから。」

 

八幡「小苑さんは界龍に在籍してた頃って有名だったんですよね?確か……【万有天羅】でしたっけ?」

 

小苑「はい。界龍第七学院の序列1位のみ与えられる称号なのですが、とある条件を満たさなければ受け継ぐ事はできません。私は2代目【万有天羅】として名乗っていました。今はちょうど3代目が継承していますね。」

 

八幡「じゃあ俺がなれるとしても4代目って事ですか……まぁそこまで高望みをするつもりはありませんが。」

 

小苑「ふふ♪私としては是非、八幡さんに4代目を継いでもらって私と同じ【三冠制覇】を成し遂げてもらいたいですね。【親子二代制覇】、八幡さんも良い響きだとは思いませんか?」

 

 

………うん、良い。結構そういうの好きだ。

 

 

八幡「良い響きだとは思いますが、俺にそこまで行けますかね?自信無いんですが………」

 

小苑「ふふふ、誰も自分がそうなるなんて想像してませんよ。私だってしてませんでしたから。でも八幡さんがその覚悟を決めたのであれば、道は険しくとも必ず成し遂げられると思いますよ。」

 

八幡「……やけに俺を信じますね?何故です?」

 

小苑「簡単です。子を信じない親が何処にいますか?私は貴方を信じてます。だからなれると確信していますから。」

 

 

なんて母親だ………でも、その言葉には説得力もあった。俺の目をまっすぐ捉えて逸らさなかった。真剣でもありつつ優しさに溢れた目を向けられている。

 

 

八幡「……母さんにそう言われたら、やっぱ自信が湧いてくるな。説得力のある言葉だしな。」

 

小苑「当たり前です。貴方は2代目【万有天羅】の1人息子なのですよ?ならば継ぐのは当たり前だとは思いませんか?」

 

八幡「えぇ〜なにその当たり前?ハードルどころか絶壁くらい高いじゃないですか。」

 

小苑「ふふっ♪八幡さんならきっと出来ますよ。私が保証します。」

 

八幡「俺なら絶壁も超えられると?」

 

小苑「はい。」

 

 

俺も高く見られたものだな。そんなふうに思ってもらえるなんて。けど4代目【万有天羅】になる為には、今継承している奴を倒さなきゃいけないんだよな?そしてその条件とやらも満たさなきゃ受け継ぐ事は出来ない……俺だけ難易度が高過ぎませんかね?

 

 

小苑「きっと、八幡さんが学院に入ったら色々な事が起きると思います。勿論、望んでいない事も起きる可能性だってあります。それを含めて思い切り楽しめばいいんです。きっと良い彼女さんだって出来ると思いますよ。」

 

八幡「はぁ……俺に彼女、か。それは1番あり得ないですね。こんな奴の、こんな目をした奴のどこに惚れる要素があるのか、俺だったら教えて欲しいですけどね。あっ、内面は無しの方向でですよ。」

 

小苑「それは暗に八幡さんには惚れる要素がどこにもないと言っているようなものですよ?それは自分を卑下し過ぎだと思いますよ。」

 

 

いやだってなぁ………どうやって自信を持てというんですか?今まで散々目の事で言われてきた俺にどう自信を持てと?

 

いや、これから行く場所はそういう常識が通用しないところみたいなものだけどさ。

 

 

小苑「八幡さんの彼女になるお方ですか……きっと心が清らかな方なんでしょうね。そうでなければ八幡さんの良さには気づきませんからね。まぁ、そのお方が八幡さんの事がどれくらい愛しているのかも、テストしますけど。」

 

八幡「本当に俺の母さんみたいな発言になってる……これ、どうしたらいいんだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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家族に

 

小苑side

 

 

皆さんこんにちは、小苑と申します。突然ですが、今私と八幡さんは比企谷家の前にいます。何故この場所にいるのかというと、八幡さんを正式にもらう為です。今の八幡さんはまだ高校生、親の管理下にあります。残り1年ではありますが、その権限を私が貰おうというわけです。元々八幡さんの事をぞんざいに扱っていたのです、すぐに手放してくれるでしょう。

 

 

小苑「準備はよろしいですか?」

 

八幡「いつでも。ちゃっちゃと済ませて早く行きましょう。もうここには戻ってきたくもないので。」

 

小苑「……分かりました、では押します。」

 

 

私はインターホンを鳴らした。その瞬間、八幡さんは後ろに並んでるコンクリートの後ろへと隠れた。

 

 

比企谷母「はい……どちら様でしょうか?」

 

小苑「比企谷様のお宅ですか?」

 

比企谷母「はい、そうですが……」

 

小苑「私は汪小苑と申します。今現在、八幡さんと共に衣食住を共にしている者です。」

 

比企谷母「っ!?八幡と!?息子は?息子は無事なのですか!?」

 

 

……この人は今更何を言っているのでしょう?散々八幡さんの事を放っておきながら、今になって心配だなんて。ですが、ここで気を昂ぶらせてはいけません。我慢です。

 

 

小苑「えぇ、元気に過ごしております。八幡さん、出てきても結構ですよ。」

 

八幡「はい。」

 

 

私の呼びかけに素直に応じる八幡さんは、コンクリートの壁から出てきた。

 

 

比企谷母「あぁ……八幡………」

 

 

八幡さんのお母様は八幡さんに近寄り、抱き締めようと動きました。ですが八幡さんがそれを制止しました。

 

 

八幡「悪いがそういうのやめてくれ。」

 

比企谷母「……え?」

 

八幡「無事を知らせるっていう目的もあるが、それが本題で来たわけじゃねぇんだ。」

 

小苑「んんっ。今回はお願い……というよりも今後の相談をしに参りました。」

 

 

そう言うとお母様は、安堵の顔から不安な顔になりました。それもそのはずです。突然自分の子供からこんな事を言われて不安に感じない親など居る筈がありませんからね。

 

 

ーーー比企谷家・居間ーーー

 

 

場所は変わって居間、此方には私と八幡さん、対面には比企谷一家全員が並んでいます。皆さんは八幡さんの方を不安そうに見ていますが、八幡さんは興味なさそうな顔をしています。

 

 

小苑「……私としては早速お話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

比企谷母「その前に少しだけ息子とお話をさせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

小苑「構いませんよ。親子の会話を邪魔する程無粋ではありませんので。」

 

 

比企谷母「………八幡、大丈夫だった?」

 

八幡「………あぁ、まぁな。」

 

比企谷母「小苑さんと暮らしていたってさっき聞いたけど、問題なく過ごせていた?」

 

八幡「………あぁ。」

 

小町「ちょっとお兄ちゃん、さっきから何その態度?お母さんに向かって「いいのよ、小町。」っ!お母さん!」

 

比企谷母「いいの……」

 

小町「お母さん……」

 

比企谷父「……八幡、小苑さんに迷惑は掛けていないか?負担になるようなことはしていないか?」

 

八幡「……俺はなんとも。そういうのは小苑さんに聞いてくれ。本人の方が説得力あるだろ。」

 

比企谷父「………」

 

 

八幡さんはもう見限っているのでしょうか、会話自体が物凄く素っ気ないですね。私と話している時とは大違いです。別人のようです。

 

 

八幡「もういいか?なら「ちょっと待って!」……なんだ小町?」

 

小町「今まで何で連絡しなかったの?皆心配してたんだよ!?雪乃さんも結衣さんも戸塚さんも沙希さんも中ニさんも!皆心配してたのに、何で誰にも連絡しなかったのさ!!?」

 

八幡「別に。携帯捨てたからだ。しなかったんじゃなくて出来なかったんだよ。これが答えだ。まぁあってもしなかったとは思うがな……小苑さん、話を進めて下さい。」

 

小苑「八幡さん、よろしいのですか?」

 

八幡「さっきも言ったでしょう?幾ら話したとしても、俺の気持ちはもう変わりませんよ。」

 

小苑「……分かりました。では本題へと進ませて頂きます。比企谷家長男である比企谷八幡さん、その子を私にくれませんか?」

 

比企谷一家「っ!!?」

 

 

やはり驚いていますね……

 

 

比企谷母「ど、どういう事ですか!?何故八幡を貴方に!!?」

 

小苑「……すみません、突然過ぎましたね。私と八幡さんの理由もございますので、しばらくはご静聴して下さい。」

 

 

その後は私が八幡さんの親権を譲って欲しい理由と八幡さんの思っている事を説明しました。ですが、私が説明しても、あまり納得はしていない様子ですね。特に妹さんは。

 

 

比企谷父「……理由は分かりました。ですが此方としても『はい分かりました。』と言うわけにはいきません。今後、私達も八幡にも気を配りながら接していきたいと思いますので、親権の譲渡はお断りします。」

 

小町「そ、そうです!!それにお兄ちゃんがそっちに行ったとしてもメリットなんて1つもないですよ!!ただ面倒なのが増えるだけです!!なら今まで通りウチにいた方が小苑さんの迷惑にならずに済みます!!」

 

 

………このお2人は八幡さんの事をまるで理解していませんね。気を配りながら接していく?そんなもの遅過ぎます。したところで八幡さんの心は開きません。面倒なのが増える?私は八幡さんと暮らしたこの4ヶ月で1度たりともそんな風に思った事はありません。むしろいて助かったと思っていた程です。

 

 

小苑「……お母様はどう思われているのですか?」

 

比企谷母「………私は、小苑さんに八幡を任せたいと思っています。」

 

比企谷父/小町「っ!!?」

 

 

これは意外ですね……てっきり断るものかと思っていましたが、賛成が出ましたか……

 

 

小町「な、何で!?」

 

比企谷母「八幡、あんたはこの4ヶ月小苑さんと暮らしていた方が幸せだったのよね?」

 

八幡「あぁ、断言する。」

 

比企谷母「そう……なら私はその後の人生を小苑さんに預ける事にするわ。小苑さんなら、八幡を幸せに出来る。」

 

小町「ち、ちょっと待ってよ!お母さんどうしちゃったのさ!?何で今日会ったばかりの人にお兄ちゃんを渡しちゃうのさ!?わけ分からないよ!!考え直してよ!!」

 

比企谷父「そうだ!八幡の事はこれからまたやり直していけばいいだろう!今は難しいが、いつかは心を開いてくれる!小苑さんの申し出だが、断るべきだ!俺たち家族の方が八幡の事を分かってる!だから「私だって!!」……っ!?」

 

比企谷母「私だって嫌よっ!八幡とは別れたくないわ!でも、気付いちゃったのよ!八幡が私達に対してもう興味がないって事に!!さっきの会話だって八幡は私達に1度も目を合わせなかったわ……そんな態度を取られているのに心を開いてもらえるなんて思っているのが酷く滑稽だわ。」

 

比企谷父「お前……」

 

比企谷母「もう遅いのよ……私達がどうしたって八幡にはもう届かないわ。なら八幡が望む事をしてあげるのが、親として最後にしてあげられる事だと私は思うわ。」

 

 

………少々心が痛みますが、これも八幡さんが望み、私が願った事でもあります。

 

 

比企谷母「小苑さん。旦那と娘が反対しても、私がサインをします。どうか八幡をよろしくお願いします。」

 

 

お母様は私に向かって座ったままではあるが、頭を下げてテーブルに額を合わせました。お母様にも八幡さんを思いやるだけの器はあったのですね。

 

それを出していればこのような事にはならなかったというのに……

 

 

小苑「………分かりました。では、手続きを致しましょう。八幡さん、少しの間席を外しますね。」

 

八幡「分かりました。」

 

 

私とお母様は書類にサインをする為に別室へと移る事にしました。あの2人が邪魔をしないとも限らないので、八幡さんに止めてもらっています。

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

小苑「お待たせしました、八幡さん。」

 

八幡「はい。」

 

小苑「これで今日から八幡さんは【比企谷】ではなく、【汪】になりました。名乗る時は【汪八幡】と名乗るのですよ。」

 

八幡「はい。」

 

小苑「では、私達はこれでお暇します。長い間お時間を頂き申し訳ございませんでした。」

 

比企谷母「いえ、とんでもございません。どうか八幡をよろしくお願いします。八幡も元気で。」

 

八幡「……あぁ。その……母ちゃんも元気で。」

 

比企谷母「っ!!!」

 

 

その言葉を最後に八幡さんは玄関の扉を閉め、私達は横浜にある我が家へと帰路についたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに八幡と小苑さんが本当の家族に!!



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ようこそ六花、初めまして新しい家


なんか今日は頭が冴えるな……昨日はあんなにダメだったのに。




 

 

八幡side

 

 

小苑「準備はよろしいですか、八幡?」

 

八幡「あぁ、もう済んだ。」

 

小苑「そうですか、では出発しましょうか。」

 

 

比企谷家との騒動から約1ヶ月が過ぎた。今は3月、卒業シーズンだが、俺にはそんな事どうでもよかった。総武高に思い残す事なんて何もない。むしろ消したいものが山程あるくらいだ。まぁそんな事は置いといて、俺とシャオ……母さんは横浜にある船着場へと向かっている。理由は当然の事だが、六花へ行く為だ。俺が界龍第七学院に転校するのと、母さんがあっちでも家を持ってるそうだからそちらに拠点を移すのだという。

 

まぁ俺の母さん、現役時代は【万有天羅】だった訳だからお金とかはかなり貰ってたんだろうが、家2つも維持できる程あるのかよ……それはそれで凄いと思った。何でもその家は友人に頼んで掃除とかをしてもらっているみたいで清潔に関しては問題ないと太鼓判を押していた。まぁその人がサボっていなければの話だが。

 

 

八幡「……母さん、六花はどんな場所なんだ?日本と比べてどれくらい差があるんだ?」

 

小苑「そうですね……文明レベルはとても違いますね。もし六花が現代だとするなら、日本は江戸かそれ以前の時代ですね。」

 

八幡「そ、そんなにあるのか……世界からしてみれば日本は先進国に見られているが、六花ってそんなに進んでるのか。」

 

小苑「基本的に六花は他国との交流があまりないので、時は流れていても時代遅れなどの影響はあまりないのです。むしろその先にいますから。」

 

 

改めて六花が規格外な場所だと思う俺でした。

 

 

小苑「八幡、六花に着いたら先ずは拠点となる家に向かいましょう。あちらにも家具はありますが、八幡だって物の場所や部屋など見ておきたいでしょう?」

 

八幡「それもそうだな……分かった、それから日用品とかを買いに行けばいいよな。界龍に行くのは六花の環境に慣れてからでも、充分に時間はあるし間に合うと思うしな。」

 

小苑「はい。それと言い忘れていましたが、六花では携帯等の機械端末は基本的に扱っておりません。扱っているのは主に煌式武装の測定をする時に使われる物だけですので、日常では手をかざすだけで端末が表示されます。こんな風に。」

 

 

母さんが胸の前辺りに手をかざすと、水色をした透明な画面が現れた。そこには今日の日付や気温、時間、方角や細かい内容が記されていた。

 

 

小苑「こんな風にするだけで出てきますので。八幡もやってみるといいですよ。因みに考えている事や調べたい事を頭で思い浮かべながら端末を開けば、短縮して開く事も出来ますよ。」

 

八幡「ああ。」

 

 

じゃあ物は試しだし、こんなのでいいか。

 

俺は六花のスーパーのお買い得品がないかどうかを思い浮かべながら端末を開いてみた。するとさっき母さんが出したようなのと似たような画面が出てきた。

 

 

八幡「おっ、出てきた。」

 

小苑「成功ですね……八幡、もう夕食の事を考えているのですか?」

 

八幡「そうじゃないが、母さんの作る料理は何もかも美味いから楽しみになっちまうんだよ。俺の嫌いなトマトさえもあんなに上手く作っちまうんだからよ。」

 

小苑「ふふふ、それはとても嬉しい事を聞きました。今晩も期待していてくださいね?」

 

八幡「言われなくても期待しますよ。勿論俺も手伝いますけどね。」

 

小苑「ふふ、敬語がまた出てますよ?」

 

八幡「あっ………まだ出ちゃうみたいだ。」

 

小苑「まだ抜けないみたいですね。」

 

 

母さんが敬語で話すからどうもつられる時があるんだよな。

 

 

ーーー六花ーーー

 

 

小苑「着きましたよ八幡。ようこそ、水上都市六花へ。またの名を学戦都市六花へ。」

 

八幡「此処が六花………」

 

 

正直、声が出なかった………すげぇ。なんていうか、本当に未来に来たような感覚だった。さっき母さんが言った通り、日本が時代遅れに感じる。

 

 

八幡「……どんな言葉を出していいか分からないくらい凄い所だな。」

 

小苑「此処へ最初に来た人は誰もがそんな反応をしました。私もその1人でしたからよく分かりますよ。」

 

八幡「俺はこれから此処で暮らしていくのか……」

 

 

俺、早速この街の文化についていけるか不安になって来た。大丈夫かな?

 

 

小苑「八幡、我が家へ向かいますよ。私の後について来てください。」

 

八幡「分かった。」

 

 

ーーー外縁居住区ーーー

 

 

ほう……なんか高層ビルとかスタジアムとかには驚いたが、家とかの外見は普通なんだな。家の中はどうなってるか分からないが、あまり変わってないだろう。

 

 

八幡「なんか少しだけホッとした。日本でも見慣れたものがあって良かったって思ってる。」

 

小苑「家並だけでも安心するものですからね。ですが八幡にはこれから初めてだらけが待っていますからね。早めに慣れるように頑張って下さいね。」

 

八幡「………善処していこう。」

 

 

何度か繰り返してやってるうちに慣れてくる……よな?そうだよね?

 

 

小苑「着きましたよ八幡、此処が今日から私たちの家となる場所です。」

 

八幡「おぉ……普通でよかった。」

 

小苑「ふふふ、おかしな八幡ですね。では鍵を開けましょうか。しっかり見て覚えてくださいね。」

 

 

母さんはなんかよく分からない暗号みたいな端末に指を押すと扉からカチャッと音がした。

 

 

小苑「今のが解錠方法と施錠方法です。扉の前でやれば表示されますので、お出かけする際は忘れずに施錠して下さいね。」

 

八幡「分かった。」

 

 

さて、新しい家とご対面だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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八幡、界龍入学

 

小苑side

 

 

八幡「んじゃ行ってくる。多分すぐに帰ってこれると思うから。」

 

小苑「はい。私も八幡の姿をしっかりカメラに収めますね。」スチャッ

 

 

……そういうのしてもらった事なんて一度もないが、やられたら恥ずかしいんだろうな。経験してないから分からないけど。

 

 

八幡「まぁ……程々にしてくれ。じゃあ、先に行ってるな。」

 

小苑「はい、いってらっしゃい。」

 

 

………こういうの、なんか良いな。

 

 

ーーー界龍第七学院ーーー

 

 

来るのは2度目だが、やっぱデケェな……とても学校とは思えないデカさだ。本当はどっかのお寺なんじゃねぇの?

 

 

「入学、または転校してきた者はこちらで名前の記入を済ませてから入ってください。」

 

 

おっ、あそこで済ませれば中に入れるみたいだな。よし、俺も早速済ませるか。

 

 

えぇ〜と……汪八幡っと。よし、行く「少しお待ち頂いてもよろしいですか?」………ありゃ?

 

 

八幡「はい?」

 

「この汪という字、ひょっとして貴方が2代目【万有天羅】のご子息なのですか?」

 

八幡「えぇ……まぁそうですけど。」

 

「そ、そうでしたか!ようこそいらっしゃいました!私は趙虎峰と申します。よろしくお願いします。」

 

八幡「ご、ご丁寧にありがとうございます。俺は……いえ、自分は汪八幡といいます。こちらこそよろしくお願いします。それと、普通に話しかけてくれると嬉しいです。特別扱いとかはされたくないので。」

 

虎峰「分かりました!なんだか貴方とは良き関係を築けそうです!僕の事は虎峰と呼んでください。」

 

八幡「俺の事は好きに呼んでくれて構わない。それじゃあまたな。」

 

虎峰「ではまた入学式で〜!」

 

 

あいつ……ボクっ娘って奴じゃないよな?なんか見た目女にしか見えないんだが。でも男なんだよな?

 

 

俺は目の前の冒頭の十二人の画面を開いて、さっきの人物のプロフィールを見ていた。そしたら男だった。

 

戸塚みたいな奴、まだ世の中に居たんだな。

 

 

ーーー入学式ーーー

 

 

「清く正しい学院生活を送り、友と共に切磋琢磨をしながら………」

 

 

長かった入学式も母体の幹部が喋り終えたら終わりだ。けど思ったのがただ1つ、この前も思ったがあの生徒会長、初等部の子だから威厳がない……この時くらい代理使えばいいのに。

 

 

けど、あれが序列1位で3代目の【万有天羅】なんだよな。俺がいずれ越えなきゃいけない相手。母さんの方に並べるようにならないとな。

 

 

ーーー教室ーーー

 

 

担任「以上で説明を終わります。皆さんはこの後自由に行動してもらって構いません。では解散です。」

 

 

大まかな内容は理解出来た。さて、じゃあ母さんの所に行くか。

 

 

虎峰「八幡!よろしければ一緒に鍛錬をしませんか?ちょうど相手を探していまして。八幡がどんな戦術で戦うのかも興味があるので。」

 

八幡「あぁ、悪いな。今日は母さんに早く帰るって言ってるんだ。だからまた今度にしてもらっていいか?」

 

虎峰「そうですか……なら仕方ありませんね。分かりました、ではまた「汪はおるかえ?」あし……し、師父!?」

 

 

あっ、チビッ子生徒会長だ。

 

 

星露「おぉ、おったわいおったわい。お主、今から妾と戦ってみる気は無いか?主の実力を知るにはちょうど良い機会だとは思うが?」

 

八幡「折角の誘いだが、今日は断らせてもらう。母さんとの約束があってな。」

 

星露「親孝行じゃのう。じゃが偶には親の言いつけを破ってみるのも、一興だとは思わんか?」

 

八幡「思わねぇよ。なんでやりたくもねぇ事をしなくちゃいけねぇんだよ。」

 

星露「つれんのう……まぁよいわ。ならばまた今度のう。妾は戻る「少しお話したいと思うのですが、よろしいですか?星露。」……ん?誰じ……っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑「どうも、数日ぶりですね。先程の入学式の答辞、お見事でしたよ。ところで今し方とても不愉快な言葉を聞いたのですが、聞き間違いでしょうか?私の大切な息子に向かって、『親の言いつけを破るのも一興。』などとふざけた言葉が聞こえたのですが?」ニッコリ

 

 

あっ……母さんがマジギレしてる。

 

 

星露「い、いやぁ……その、アレじゃ!こやつにも親離れというものや反抗期などを教えてやろうと思うてな。それで「星露。」……な、何じゃ?」アセアセ

 

小苑「私の大切な息子に変な事を吹き込まないで頂けますか?たとえ貴女でも許せない事だってあるんですよ?貴女だってまだ死にたくはないでしょう?」ニッコリ

 

星露「わ、分かったのじゃ!もう変な事は吹き込まんと約束する!」

 

小苑「理解が早くて助かります。では私と八幡はこれで失礼致します。皆さんも八幡と仲良くしてくださいね。」

 

 

そして母さんは俺の手を掴んで挨拶をすると、そのまま教室を出た。そしてそのまま学院を出たんだが、何でだろう?母さんがいつもより嬉しそうな顔をしているような気がする。

 

 

八幡「……か、母さん?なんか嬉しい事でもあったのか?」

 

小苑「ふふ。えぇ、ありましたよ。八幡の凛々しい姿が見られたのと、八幡にお友達が出来た事、それと……いえ、これは秘密です。」

 

八幡「そ、そうか……」

 

 

ま、まぁ聞かないでおこう。聞いても答えてはくれなさそうだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑(八幡と初めて手を繋げたのが1番嬉しかったです。)

 

 

 

 

 

 

 



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挨拶

 

 

小苑side

 

 

八幡が入学して早半年、八幡の周りには多くの友人達が集まるようにもなりました。さらには私の元弟子である暁彗が八幡と決闘をした事はまだ新しい出来事です。その決闘で勝利した八幡は序列2位と2つ名【夢幻月影】を授かりました。親としても誇らしいです。

 

さらには最近、何やら面白い事をしているようです。何でも八幡が界龍内の道場で教えをしているとか。見ているのは主に序列外の皆さんみたいですね。理由をお聞きした時は、『星露は基本自分の弟子しか見ないから。』だそうです。だから八幡は序列外の面倒を見ているのだと納得致しました。

 

 

こんなのはまだ序の口です。1番私が驚いたのは、私が街へ買い物に出かけた時、八幡が女性と一緒に街を歩いていたのです!隣にいた女性の特徴は帽子を被っていたので表情や顔などは見られませんでしたが、髪は栗色に近い長く伸ばした茶髪で、スタイルはとても良かったです。アイドルも狙えるでしょう。恐らくですがクインヴェールの生徒だとは思いますが、八幡に他学園との交流があるとは聞いた事がありません……とても気になります。

 

 

ま、まさかとは思いますが……か、彼女でも出来たのでしょうか?親の私に内緒で?

 

 

……い、いえ、八幡はそんな事をするようないけない子ではありません。きっと何か事情があるのでしょう。それに、息子であれどプライベートですから、あまり関わらないであげましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ですが気になります。

 

 

ーーー夕方ーーー

 

 

八幡「ただいま。」

 

小苑「お帰りなさい、八幡……あら、そちらの女性はどちら様ですか?」

 

 

この人は……この前八幡さんの隣を歩いていた女性ですね。

 

 

八幡「中で説明する。立ち話をするには多分長くなると思うから。」

 

小苑「分かりました。さ、どうぞお上りください。」

 

???「す、すみません、お邪魔します。」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「えっとだな、この人は「待って八幡くん、私から説明するよ。その方が分かりやすいと思うから。」……そうか?なら任せるが。」

 

???「んんっ。突然の訪問、申し訳ありません。今回こちらに来たのは私と息子さんの八幡さんとのご関係の事なのですが、まずは自己紹介から始めたいと思います。少し失礼します。」

 

 

女性の方は耳に手をあてがうと、髪の色が茶から紫へと変わり、美しかった髪色には妖艶さも増してより美しく見えました。

 

この方は……八幡、貴方はいつからこのような方とお知り合いになったのですか?まさか世界の歌姫、シルヴィア・リューネハイムさんだったなんて………

 

 

シルヴィア「お待たせ致しました。これが私の本来の姿です。クインヴェール女学園高等部2年のシルヴィア・リューネハイムと申します。いつも八幡くんとは仲良くさせて頂いています。」

 

小苑「これはご丁寧な挨拶をありがとうございます。私は汪小苑と申します、八幡の母です。いつも息子がお世話になっております。」

 

 

とてもご丁寧な挨拶、良い教育をされているのがよく分かります。ですが、それはそれ、これはこれです。少しだけカマをかけてみましょう。

 

 

小苑「それで、先程2人の関係と仰っていましたが、もしかして恋人同士だったりしますか?」

 

シルヴィア「えっ!?あ、い、いえ!私と八幡くんは、そ、その……えっと、()()お付き合いはしていません/////」

 

小苑「なるほど……シルヴィアさん、少しお耳を貸してください。」

 

シルヴィア「え?は、はい。」

 

 

念には念を。八幡には聞かれないようにしませんと。女性の会話ですからね。

 

私は私とシルヴィアさんの周りに障壁を張り、音や声を漏らさないようにした。

 

 

小苑「ではシルヴィアさんは息子の八幡と交際出来るのであれば、交際したいと?」

 

シルヴィア「な、何故そのような質問を!?」

 

小苑「ふふふ、先程『まだお付き合いはしていません。』と仰っていたではありませんか。つまりは交際願望があるという事になりますよ、あの答えは。」

 

シルヴィア「/////」カアァ…

 

 

ふふふ、とても可愛らしい反応をしますね。どうやらこのこの言っている事に嘘偽りはないみたいですね。

 

 

小苑「お待たせしました八幡。」

 

八幡「あぁ。それでだ、俺とシルヴィの関係なんだが、実は界龍に入学して1週間してから出会ったんだ。偶々街を歩いている時にナンパされていたのを助けてな。それからーーー」

 

 

それからは八幡とシルヴィアさんとの関係や出会いから今日に至るまでの経緯を聞きました。聞く限りでは、八幡はまだシルヴィアさんの事を友人としては好意を持っているようですが、女性としてはまだ見ていないようですね。シルヴィアさんは……聞くまでもないでしょうね。

 

 

八幡「……以上が俺達が出会いと今日までの出来事だ。」

 

小苑「……八幡、1つお聞きしてもいいですか?」

 

八幡「何だ?」

 

小苑「八幡はシルヴィアさんと一緒に居てどう感じましたか?誤魔化しはいりません。直感で答えてください。」

 

八幡「……母さんには劣るが、一緒に居て安心する。気分が落ち着く。もっと一緒にいたいとも思える。」

 

 

……なるほど、八幡はまだその域には達していないようですね。ですがシルヴィアさんが交際相手なら、私は構いません。むしろ賛成ですね。このような心の綺麗な方を彼女にするべきです。八幡は良い女性に出会いましたし、シルヴィアさんはよく私の息子に惚れました。どちらも偉いです。

 

 

小苑「なるほど……今日はとりあえず関係の説明なのでしょう?であれば堅苦しいお話はこれで終了です。」

 

 

すると2人は力が抜けたかのようにダラリと身体をリラックスさせた。

 

 

小苑「そうそう。これから夕食を作りますので、シルヴィアさんもよろしかったら食べていかれませんか?」

 

シルヴィア「あっ、でしたらお手伝いします!」

 

小苑「まぁ、よろしいのですか?ではお願いします。八幡さんはゆっくりしていてくださいね?今回は乙女だけがこのキッチンに入れるのです。」

 

八幡「は、はい……(なんか威圧されてないか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑「………八幡さんに振り向いてもらえるように頑張って下さいね。」

 

シルヴィア「っ!!」

 

小苑「八幡さんは手強いですよ?」

 

シルヴィア「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





挨拶は挨拶でもニュアンスが違うものなんですね。


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子の想い、親の想い

 

 

八幡side

 

 

……最近、やたらめったらシルヴィからのアプローチが激しい気がする。何でだ?俺何かしたか?ナンパから助けてその後は偶に出かける程度の仲になっただけだと思うんだが……分からんな。え、何?俺の事好きなの?………冗談です、調子に乗りました。けど、何でだろうな?

 

そういえばシルヴィからの誘いが増えたのは母さんにシルヴィを紹介した時だったな。まさか母さんがシルヴィに入れ知恵をしたか?……いや、でも母さんはそんな事をするような人じゃないし、するとも思えない。

 

 

それに母さんも夕食になったらシルヴィの事をよく聞いてくる。それも決まってシルヴィと出掛けた日にだ。いやまぁ、俺も母さんには伝えて出掛けてるから聞かれるのは当たり前だとは思ってるんだが、どうにもなぁ……

 

 

小苑「どうかしましたか、八幡?」

 

八幡「……なぁ母さん、変な事を聞いてもいいか?」

 

小苑「変な事?卑猥な事ですか?」

 

八幡「いや、そういう系じゃない。むしろ………本当になんて言っていいのか分からない。?系か?」

 

小苑「……よく分かりませんが、卑猥な話でないのであれば出来る限りのお答えはしますよ。」

 

八幡「じゃあ言うけど、シルヴィと何か企んでるか?」

 

 

まぁ母さんに限ってそんな事はないとは思うが、聞いてみるに越したことはないだろう。

 

 

小苑「シルヴィ…と言いますと、この前ウチにいらしたシルヴィア・リューネハイムさんの事ですか?」

 

八幡「あぁ。」

 

小苑「いいえ、この前初めてお会いしたのが最初で最後の邂逅ですよ。それに、何かを共同で計画したりする程親密な仲ではありませんが?」

 

八幡「やっぱそうか……けど、なんか最近シルヴィからの誘いが増えたというか、まぁ嫌じゃないから別にいいんだが……」

 

小苑「?煮え切らないお答えですが?」

 

八幡「……俺としてはシルヴィとの時間も大切には思ってるが、俺は今、親子との時間を大切にしたいと思ってる。折角本当の家族だって実感が出てきたんだ。この時間を有意義に過ごしたい。」

 

小苑「っ!……そ、そうですか。それを聞いて私は嬉しく思います。湯を沸かしてきますね。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

結局母さんは白か……まぁ当然だよな。

 

 

八幡sideout

 

小苑side

 

 

湯を沸かしに行くとは言いましたが、私が今向かっているのはお風呂場ではなく自室です。それは何故かというと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑「……ふふ、ふふふふ♪ふふふふふ♪まさか八幡からあんな事が聞けるなんて、私との時間を大切にしたいだなんて………それを聞いて喜ばない母親がどこにいましょうか?」ニヤニヤ

 

 

ベッドへ飛び込んで先程八幡に言われた事で絶賛悶絶中です。

 

 

小苑「全く八幡はいつの間にあんなにも親孝行な子になったのでしょうか?最初は買い物の荷物持ちから始まり、今では私との時間を大切にしたいだなんて……私を幸せ死にさせるおつもりなのでしょうか?」ニヤニヤ

 

小苑「あぁ……八幡は本当に良い子です。今時の子はこんな事思っても言ってはくれませんから。八幡には失礼ですが、先程のお言葉を録音しておけばよかったと強く思っております。」ニヤニヤ

 

小苑「ですが八幡も鋭くなりましたね。まさか私とシルヴィアさんが裏で繋がっているとまで予測するとは……でもまだ気づかれてはいない様子でした。私としては2人はとても相性が良いのでお付き合いすべきだと思うのですが、あぁ……先ほどの言葉のせいで今後も積極的に行くべきと進言すべきなのか、少し控えた方がいいと進言した方がいいのか迷ってしまいます。あぁ八幡、貴方は何故あのタイミングで母親にとって殺し文句のような事を言ってしまったのですか?」

 

 

全く八幡は本当に良い子ですね♪

 

 

小苑「さて、湯を沸かしに行かなくてはいけませんでしたね。もう少しだけ浸っていたいですが、長引くと変に思われます。」

 

 

その後私は湯を入れてから、再び居間へと戻りました。

 

 

八幡「あぁ、別に構わないが……仕事は大丈夫なのか?出掛けるのもいいが、あまり無理するなよ?」

 

シルヴィア『無理なんてしてないよ!八幡くんとデートするのに無理も何もないんだから!楽しみしかないよ♪』

 

 

おや、シルヴィアさんとの通信でしたか。

 

 

八幡「そ、そうか?ならいいんだが………」

 

シルヴィア『うん♪じゃあ今度の日曜日にね!楽しみにしてるからね〜♪』

 

 

そして通信は切れて画面を閉じた八幡。私も八幡が無理をしていないか少し心配です………っ!そうです、少しだけアレをやってみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュッ

 

 

八幡「ん?」

 

小苑「ふふ♪」

 

 

私が八幡にしてあげたのは、ただ後ろから抱き締めただけです。ですが八幡は座った状態なので、後頭部が私の胸の辺りにあります。ですがこれはこれで丁度いいのです。

 

 

小苑「八幡も疲れてはいませんか?シルヴィアさんの心配をされるのも良い事ですが、ご自分の身体も大切にしてくださいね?」

 

八幡「分かってるよ。ていうか、なんで抱き着いてるんだ?」

 

小苑「先程、嬉しい事を言ってくれたご褒美です。」

 

八幡「お釣りが来るくらいのご褒美だ。」

 

小苑「八幡は口がお上手ですね。」

 

 

八幡はやっぱり、私の自慢の息子ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ただの余談ですが、小苑さんのイメージがどうしても【艦隊これくしょん】の鹿島に見えてしまうんですよね。



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様子見?

 

 

八幡side

 

 

………どうも、比企谷から姓を変えました汪八幡です。さて、俺は今どうしたらいいか分からない状態にいる。もしよければ皆から助言を頂きたいと思っている。その理由をまず説明しよう。いや、説明は不要だな。俺の今の光景をただ言えばいいだけだからな。じゃあ目の前の光景を言うからしっかり聞いててくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の母さんが目の前にいる。

 

現在の居場所、俺の部屋のベッド。

 

 

これでもう分かってくれたよな?最近こういう事が多いのだ。いや、マジだからね?嘘じゃないよ?昨日寝る時には居なかったのに、朝起きたら一緒に寝てるっていつ入ってきたの?って思うくらいなんだから。それにこれだけじゃないんだよ、起きた出来事が。

 

食事をする時も前までなら向かい合って食べていたんだが、今は母さんが俺の隣で食べるようになって俺におかず食べさせる、所謂『あーん』をしてくるのだ。

 

番組を見ている時も、横に座るのは今まで通り。ここまではいいのだが、何故か肩をくっつけに来たり、俺の方に頭を乗せに来たりする。なんか今までやった事のない事をしてくるから、どうしていいか分からない。

 

最後にあまり言いたくないんだが、ここだけの話で教えておく。風呂でも背中を流すと言って乱入してきた事があった。勿論母さんはタオル1枚で来た。流石にこれは俺もヤバいからやめてもらったけどな。

 

 

というような感じでシルヴィにもそういう節があったんだが、母さんがなんだか……おかしいって感じではないが、暴走?いや、これも違うな……スキンシップか?まぁこれが一番近いな。スキンシップが少しだけ過剰になってきたような、ないようなって感じだ。

 

 

俺は特に嫌というわけではないが、母さんが何故こんな風にしているのか分からない。俺何かを誘発するような事言ったっけ?

 

 

※ピンポーン!

 

 

まぁ兎に角、少し様子見だな。いや、もう様子見は始まってるんだけどな。

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

シルヴィア「それでね!この前ゲームセンターに行ってたら、触り心地がとっても良いお肉のぬいぐるみがあったの!」

 

八幡「ほう……そうなのか。」

 

シルヴィア「でもそのクレーンゲーム難しくてさ……八幡くんも協力してくれないかな?」

 

八幡「俺はそんなにゲーセン行った事ねぇから、やり方くらいしか分からないぞ?」

 

シルヴィア「いいのいいの!いてくれるだけでも私は凄く嬉しいから♪」

 

 

それ、俺は手伝わなくていいって遠回しに言ってるの?

 

 

シルヴィア「お金は私が貸すから八幡くんにも手伝って欲しいなぁ〜。」

 

八幡「……分かったよ。だが期待なんてするなよ?俺マジで素人だから。」

 

シルヴィア「いいの!ほら行こっ!」グイグイッ

 

八幡「お、おぉ。」

 

 

今はシルヴィと出掛けて「デート、だからね♪」………デートをしている。シルヴィも仕事があるからそんなに頻繁に行けるというわけではないが、仕事が終わって六花に帰ってきたその週、または翌週の祝日には必ず誘ってくる。他に相手はいないのか?あるいは趣味とか。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー2時間後ーーー

 

 

シルヴィア「んんぅ〜〜はぁ〜〜!今日も遊んだなぁ〜すっごく楽しかったよ!」

 

八幡「そいつは何よりだ。お目当てのぬいぐるみもゲット出来たしな。しかしシルヴィ、お前他に誘う相手は居ないのか?あぁ、別に一緒にいるのが嫌というわけじゃないからな?ただの興味本位だ。」

 

シルヴィア「そんなの簡単だよ。私が八幡くんと一緒に過ごしたいからだよ♪私男の人のファンはとても多いけど、男の人のお友達って凄く少ないんだ。だから八幡くんともっと仲良くなりたいからなんだよ。」

 

 

シルヴィア(本当は仲良くなりたいからじゃなくて恋人になりたいからなんだけどね。)

 

 

シルヴィア「じゃあまたね、今日もありがとう♪またデートしようねっ♪」

 

八幡「あぁ。ていうかデートっていうのは覆らないのか?」

 

シルヴィア「うんっ♪」ニッコリ

 

 

物凄く良い笑顔だね、100点満点だよ。

 

 

ーーー汪家ーーー

 

 

さて、こっからだ。母さんの様子を伺うとするか。

 

 

八幡「ただいま〜ってあれ、靴がない。買い物にでも行ってるのか?」

 

 

まぁ取り敢えず晩飯の時間までまだあるし、もう少しゆっくりするか。もし晩飯の時間までに来なかったら、申し訳ないが自分で作るか。

 

 

八幡「けど、最近の母さんを見てて思うんだが、本当に2代目【万有天羅】なのか疑いたくなるくらいだ。俺が言うのもなんだが、普通に親バカっぽい感じがするんだよな。ラノベとかでもよく見たから何となくでしかないが、こんな風なんだな。」

 

八幡「実際、母さんって幾つなんだろう……なんか俺が母親って呼べる程、歳はまだそんなに行ってないよな?まだ20代後半だったり……するのか?母さん顔すげぇ整ってるから、色んな人に言い寄られそうだけどな。ナンパとかされた事ないのかな?」

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

八幡「……母さん帰ってこないから飯作っちまったけど大丈夫だよな?一応母さんの分も作ってあるから文句は言われないと思うが……まぁその時はその時だな。」

 

 

『ご飯を作るのは母親の仕事です!』とは言われそうだが、今は怒られない事を祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、小苑はというと………

 

 

小苑「それでですね、八幡は私との時間を大切に過ごしたいと言ってくれたのが何よりも嬉しくてですね!はぁ~……私には勿体無いくらいの息子です。」

 

星露「そ、そうか……」

 

 

3代目【万有天羅】に息子の自慢話をしていたという。

 

 

 





お知らせです。明日、明後日は仕事が一日中あるため、執筆をお休みします。2日間お待たせしてしまうことになりますが、よろしくお願いします。


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私の宝


お知らせします。昨日の前書きに記載した事なのですが、正確には13日と14日でした!今日は投稿できましたので投稿しました!

そして、小苑編最終話です!ではどうぞ!


 

 

小苑side

 

 

八幡と私が親子になってから早1年、今ではもう当たり前の風景になりつつある家の中での挨拶や他愛のない世間話、学院の話や武術についてお話するのがとても楽しいです。この風景にも慣れた頃に八幡から報告があり、なんとシルヴィアさんと交際するのを認めて欲しいと言ってきたのです!八幡にあれだけ想ってもらえるシルヴィアさんが羨ましく思えましたが、私も元々賛成でしたのですぐに承認しました。

 

それからシルヴィアさんは偶に家に来るようになり、家事などを手伝ってくれます。最初は不安でしたが彼女の家事能力はとても素晴らしいの一言です。料理もとても美味でしたし、掃除も小まめにして下さり、お洗濯物も許可を取ってから取り込んだりしまったりするのを手伝ってくれます。私が座っていると肩揉みもしてくれます。好感度を上げるためとも思いましたが、彼女はそんな事を考えるような人間には思えないですし、するような人でもありませんから大丈夫でしょう。

 

 

2人は今大学部の1年生。高等部の頃と違って時間割制ではなく、個人の受けたい授業に参加するという形式になっています。なので2人は互いに連絡を取り合って相談をしながら決めているそうです。時間が出来た日にはデートをしてシルヴィアさんを送るか、家で夕食を食べてから帰りを送るかのどちらかになっています。とても青春を謳歌しておられますね。

 

八幡も何だか忙しそうにしている時も見受けられますが、そんな時でも充実そうな、楽しんでいるような顔をしています。八幡のあのような顔を見られて良かったと思っています。そばで見ていても分かるのですが、八幡はシルヴィアさんと一緒にいる時には決まって優しい笑顔を作ります。ニッコリとは笑いませんが、シルヴィアさんもその笑顔を見て嬉しそうに笑います。2人の相性は私の見立て通り抜群のようですね。

 

 

そして今、何をしているのかというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑「いつもいつもすみませんシルヴィアさん、手伝わせてしまって。」

 

シルヴィア「いえ、気にしないでください。私が手伝いたくて手伝ってるんですから。それに、何もしないままでいるのはちょっと気が引けますし。」

 

小苑「ふふ、八幡も忙しくなければ手伝ってくれるのですが、最近は弟子達の鍛錬もあってか、鍛錬メニューを作るのにも時間を割いているみたいで。」

 

 

今は私と八幡の家で夕食を食べ終えたところです。八幡は今言った通り、弟子達の鍛錬メニューの作成をしていて、シルヴィアさんはデートの後で家に来て夕食を共にして今に至ります。

 

 

小苑「シルヴィアさん、洗い物まで手伝わなくてもいいですよ。後はゆっくりしていてください。来てくださる時にいつも手伝ってくれていますので、今日くらいは家の中でゆっくりおくつろぎください。もしよろしければ八幡のところに行っても構いませんしね。」

 

シルヴィア「八幡くんの邪魔はしたくないので、ここでゆっくりさせてもらいます。すみません。」

 

小苑「シルヴィアさん、今は謝罪の言葉は必要ありませんよ。それに、なんに対しての謝罪なのですか?ふふっ、さっ、ゆっくりしていて下さい。」

 

 

彼女は本当によく気配りが出来ます。ご両親の育て方が良かったのでしょうね。

 

 

シルヴィア「あっ、お義母様!さっきの料理のレシピなんですけど……」

 

小苑「あぁ、そういえば知りたかったのですね。こちらに記載してありますので、どうぞお持ちください。」

 

シルヴィア「あっ、ありがとうございます!」

 

 

そして時間は過ぎていき、シルヴィアさんもそろそろお帰りになる時間となりました。いつもなら八幡が送りに行くのですが、降りてこないという事はメニュー作りにのめり込み過ぎているということですね。

 

 

小苑「ではシルヴィアさん、私は八幡を呼んできますのでお帰りの準備を。そろそろお時間でしょう?」

 

シルヴィア「そうですね、じゃあお願いします。」

 

 

ーーー八幡の部屋ーーー

 

 

コンコンッ

 

 

小苑「八幡、シルヴィアさんを送る時間ですよ。聞こえましたら出てきてください。」

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………………

 

 

聞こえていないようですね、では私が。

 

 

小苑「では入りますよ。」

 

 

部屋に入ると、机の上で画面を開きながらメニュー作成をしている私の息子がいました。

 

 

小苑「八幡、時計を見てください。シルヴィアさんを学園まで送る時間ですよ。」ユサユサ

 

八幡「ん?おぉ、もうそんな時間になったのか……ありがとう母さん、送りに行ってくるわ。」

 

小苑「気をつけて行ってくださいね。」

 

 

ーーー20分後ーーー

 

 

20分もすれば八幡は帰ってきて、また作業に戻ります。八幡も教えるという難しさを理解したのでしょうね。ですが、八幡が師匠とは……ふふ、あまり合いませんね。

 

 

八幡「はぁ……やっと終わった。なんかもう固定メニューでも作って置いておきたいくらいだ。」

 

小苑「この曜日はこのメニューのみという作り方も悪くはありませんよ。八幡も張り切っているみたいですが、張り詰め過ぎでは身体に毒ですからね。」

 

八幡「あぁ、分かってる………そういえば、母さんと出会って家族になってからもう1年になるな。」

 

小苑「早いものですね。私も八幡と出会い、過ごしてきたことにより学ばされてきたものも数多くあります。それもこれも大切なものばかりです。」

 

八幡「俺も母さんと暮らして色んな事を学んだし、たくさん貰った。こんな沢山のものをくれた母さんには感謝してもしきれない。」

 

小苑「嬉しいですね………八幡。」

 

八幡「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑「貴方は私にとって一生の宝です。貴方は私のたった1人だけの息子なのですから。」

 

 

 

 

 

 





というわけで小苑編終了でございます!

いやぁ母性を擽られたり、可愛い母親姿を見せつけられましたね。

さて、次は誰がメインになるのか、15日をお楽しみにしていてください!


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冬香編
隠れ里



2日間お休みしてしてしまい、すみませんでした!

今日から新章【冬香編】のスタートです!

では、どうぞ!


 

 

ーーーーーー

 

 

ここは日本のとある隠れ里。日本地図にも載っていない場所であり、日本人であれど、その場所を知る者は誰もいない。その隠れ里に住む者達以外は。

 

その里に住む者たちはある特殊な力を持っていて、触れた瞬間に負傷者の傷を癒す血が流れていた。だがその血液は血族にしか効力を発揮せず、血族間のみで行われていた。それ故がためにこの隠れ里の人々は学生になると、里を出て世間を歩き、里のために秘術の発展と成るべく技術を調べ、婚約と共に里へと帰る。これがこの里での掟であった。子孫を残さなければ、一族は滅びの道へと辿ってしまうからである。

 

そしてこの里では決まって苗字に『梅』という文字がつく。特に代表的な里の幹部の苗字は【梅堂(ばいどう)】【梅宮(うめみや)】【大梅(だいばい)】【梅木(うめき)】そして【梅小路(うめのこうじ)】の5つがある。中でも【梅小路】は5家の中でも秀逸した才能を持った少女がいた。

 

 

名を『梅小路冬香』という。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「お兄様〜っ!早く早く〜!」

 

???「おい、そんなに急ぐなよ……危ないぞ。」

 

???「大丈夫ですよ〜!冬香は転んでも泣きませんから!少しは私の事も信じてください!八幡お兄様!」

 

八幡「はいはい、分かったよ。」

 

冬香「『はい』は1回です!」

 

 

1人の少女、梅小路冬香(5歳)

1人の少年、梅堂八幡(7歳)

 

この2人は里の中の同年代の中でも特に仲が良く、2人でよく遊んでいる事が多い。といっても、冬香が遊びたいと言って八幡がついて行っているだけなのだが……まぁそこは気にしなくてもいいだろう。

 

 

冬香「お兄様!私、今日お母様から【ぷらーな】というものの扱いを教えてもらったのです!見てもらってもいいですか?」

 

八幡「ほう、もう【星辰力】の扱いを教えてもらってるのか。分かった、じゃあやってみてくれ。」

 

冬香「はい!」

 

 

冬香も八幡の事を実の兄のように慕っており、いつしかついて歩くようになっていた。その様子は孤高な狼と従順な子犬といったところだろう。

 

 

冬香「あうぅ……上手く出来ませんでした。」

 

八幡「おばさんと一緒の時は出来たのか?」

 

冬香「はい、その時はすごく上手に出来ました。でも、なんで出来ないんでしょう?」

 

八幡「じゃあ次はこれでやってみろ。」

 

 

八幡は冬香の掌に人差し指を立てた。

 

 

冬香「これで、ですか?もう1度?」

 

八幡「あぁ、やってみろ。」

 

冬香「は、はい。」

 

 

もう1度星辰力を練り上げると、今度は八幡の指を立ててある場所から星辰力が溢れ出していた。

 

 

冬香「で、出来ました!お兄様、できましたよ!」

 

八幡「良かったな。最初は一点に集中できそうなものを置いてやれば上手く出来るぞ。慣れてきたら何もなしでやってみろ。」

 

冬香「はい、ありがとうございます!」

 

八幡「さて、じゃあ俺も少しだけ技を見せるか。」

 

 

八幡は一つの紙札を取り出して呪詛を唱えると、突然目の前から鬼の顔をした火が現れた。それを見た冬香は目を輝かせていた。

 

 

冬香「わぁ〜凄いです!」

 

八幡「これは妖怪の鬼火っていってな、こういう感じの札に星辰力を流し込んで、自分の中で何でもいいから知っている妖怪を思い浮かべたら出てくる。」

 

冬香「さすがはお兄様です!こんなに凄い事もできるのですね!」

 

八幡「ありがとな。けど、冬香はまだやるなよ。まだ星辰力の扱いに慣れてないからな。これをするのは扱いに慣れてからだ。」

 

冬香「はい、頑張ります!」

 

 

っと、こんな風にいつも兄妹のように過ごしている。こんな平和な日々が続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、ある日………

 

 

冬香「お兄様〜!こっちですよ〜!」

 

八幡「おい、あんまり行き過ぎるなよ。」

 

冬香「はい!………え?」

 

八幡「……おい、冬香?」

 

冬香「お、お兄様、外の人間がいます………」

 

八幡「っ!?本当か!?」

 

冬香「はい、でも怪我をしているみたいです。」

 

八幡「……冬香、此処で待っていてくれ。俺は治療出来そうな道具を持ってくる。」

 

冬香「は、はい!」

 

 

俺は迷い込んで気を失っている男を手当てしたのちに、里から離れた場所へと運んだ。勿論運んだのは八幡ではなく、八幡が呼んだ式神がである。

 

 

八幡「ふぅ、これで大丈夫だろう。」

 

冬香「ですがお兄様、よかったのですか?外の人間の治療や触れたりするのは里の掟に反します。もしお父様たちにバレたら………」

 

八幡「……ここには幸い誰も居ない。それにこんな所にまで来る人はそんなにいないし大丈夫だろ。それに俺がやったのは掟破りでも治療だぞ?外の人間でも傷ついているのに治療したらダメなのかって思う。」

 

冬香「……そう、ですよね。」

 

八幡「さて、もう帰ろう。母さんや父さんも心配する時間だろうし、何よりおじさんが怖いからな。怒らせないように早く冬香を届けないと!」

 

冬香「あっ、お兄様っ!待ってくださいよ〜!」

 

 

そして2人は里へと戻って行った。しかし、まだ2人は知らなかった。

 

たったこれだけの、人の傷を治療するという善意の行いが、あんな事に繋がるとは。

 



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掟破り

 

 

八幡side

 

 

……なんか今日は里の雰囲気が少しだけ違う。なんていうか、いつもより殺気立ってるというか、緊張が隠せていないというか、そんな感じである。今日は幹部の5家だけで幹部会議がある日だけど、ただそれだけだ。別に里全体が恐れるようなことは何もないと思うんだが……

 

八幡「父上、何だか里の様子がおかしいように思えるのですが……」

 

梅堂父「さぁな、俺にも分からない。けど確かに里の様子が変だな。こんな風になったのは俺も初めてだ。」

 

八幡「……母上はどう感じますか?」

 

梅堂母「私も初めてよ、こんなにピリピリした里は。」

 

 

やっぱり父上と母上も今までに里がこんな風に雰囲気が変わった事は無いみたいだ。何かあるのか?

 

 

梅堂父「さて、そろそろ総会だな。あぁ、お前達もな。今回は一族総出で出席せよとのお達しだからな。」

 

梅堂母「今までそんな事なかったのにどうしてかしら?」

 

梅堂父「分からない。だが重大な何かがあるのかもしれない。心の準備だけでもしておけよ、八幡。」

 

八幡「はい。」

 

 

俺がなんか準備をしても意味はないと思うが、まぁ俺も関係あるかもしれないしな。父上が言っていた通り、心の準備は整えておくか。

 

 

ーーー梅小路家・玄関ーーー

 

 

俺たち梅堂家は会議になると早く着く事が多い。俺も暇だからたまについて行く事があるのだが、その時は決まって他の家は誰も来ていない。父上が早く行き過ぎるからだろうか?

 

 

冬香「お兄様っ!ようこそおいで下さいました!おじ様とおば様もようこそ!」

 

梅堂父「お出迎えありがとうね、冬香ちゃん。」

 

梅堂母「お父様はいらっしゃる?挨拶に伺いたいのだけど……」

 

冬香「はい、いつもの場所で時間になるのを待っています。」

 

冬香「そう。八幡、私たちは梅小路殿に挨拶に行くから、冬香ちゃんと時間になるまで一緒に居てあげなさい。その方が退屈にならずに済むでしょう?」

 

八幡「分かりました。」

 

 

そう言って俺の両親はおじさんとおばさんの所に挨拶しに行った。

 

 

冬香「お兄様、今日はなんだか里の雰囲気が……」

 

八幡「あぁ、落ち着かないくらい殺気立ってる。こんな事初めてだって父上と母上も言ってた。」

 

冬香「……何が起こるというのでしょう?」

 

八幡「分からない。だから余計に恐ろしくも感じる。なんなのか分からないからな。」

 

 

そしてその後、他の幹部の家も到着してようやく幹部総会が開かれる事になった。

 

 

ーーー梅小路家・大広間ーーー

 

 

梅小路父「……では、会議を始めよう。まずは各家の報告から頼む。最初は梅堂。」

 

梅堂「はっ。今月は特に動きはございませんでした。梅小路に関する秘術も模索中ですが、未熟さもあり難航しています。息子の八幡も星辰力を覚えてきたので、少し手伝いをさせています。以上でごさいます。」

 

梅小路父「うむ、では次に梅宮。」

 

梅宮「はっ。当家も特に動きはございませんが、当主様、お1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

梅小路父「何だ?」

 

梅宮「なぜ里はこのような殺気で溢れているのでしょう?私を含め娘たちも大変不安に感じております。」

 

 

きっと誰もが聞きたくてしょうがなかった事だろう。当主様もなんか苦虫を噛んだような顔をしているし。

 

 

梅小路父「それについては後程説明しよう。今は報告会が先だ。」

 

梅宮「はっ、かしこまりました。では、報告の続きを致します。」

 

 

その後も他の家の当主の報告が続いて、当主様が各家に指示を出して会議の半分が終了した。

 

 

梅小路父「さて、皆も気になっているであろう、この里の殺気についてだ。この現象は先祖代々から梅小路家にしか伝われていない。故に他の家はこの現象を知らないというのが当たり前。この現象はこの里で住める者が里の掟を破った時に起きる現象だ。」

 

 

っ!!?

 

 

俺だけでなく、各当主も騒然としていた。それもそうである。この里では掟が絶対、今まで破った者なんて誰1人としていない。そう、()()()()

 

冬香は俺の事を心配そうに見ている。そうだ、この里の掟を破ったのは俺だ。あの時、村のすぐ近くに倒れていた男を治療した。その時に男の身体に触ったからだ。

 

 

梅小路父「此処に参列している者の中で里の掟破りに心当たりのある者は居るか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい、ご当主様。」

 

冬香「っ!!」

 

梅堂母「は、八幡っ!?」

 

梅小路父「ほう、梅堂の息子か……いつも娘が世話になっている。」

 

八幡「勿体なきお言葉です。」

 

梅小路父「それで?心当たりがあるのか?」

 

八幡「いえ、掟破りは私が致しました。」

 

 

また騒然と騒ぎ出した。

 

 

梅小路父「静まれ。それで、理由を聞こう。」

 

八幡「はい、実は当主様の御息女様である冬香様と遊びに行った時に………」

 

 

俺はあの時にあった出来事を包み隠さず正直に話した。あの時はバレなければいいと思っていたが、まさか掟破りをするとこんな事になるなんてな。これは正直に話すしかない。

 

 

八幡「……というのが、今回私が行った事の顛末です。その男の身体に触ったのは私だけ。冬香様は一切触れてはおりません。」

 

梅小路父「………」

 

梅堂父「と、当主様……」

 

梅小路父「事情は理解した。お主がした行為が善行である事も認める。だが、掟は掟だ。この事態を早々になんとかしなければならない。」

 

大梅「方法はないのですか?」

 

梅小路父「方法ならばある……だが、それをたった7歳にさせるというのは私には出来ん。」

 

大梅「一体、なんだと言うのです?」

 

 

全員が当主様の方を向いている。そりゃそうだ、誰だって気になっている事だ。

 

 

梅小路父「此処より北にある崖から飛び降り、自らを浄化すると共にこの村から出て行く事だ。あの崖は外の世界と繋がっている川と通じている。そしてその高さは1000m程だ。とても子供が生きていられる程の高さではない。」

 

梅小路父「もう1つが掟を破った者が山の祠へと行き、そこに祭られている神の生贄となる事だ。先祖からはこの方法しか教えられてはおらぬ。どちらも子供にさせるような事ではない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「当主様、自分は掟を破った身です。ご決断ください。このままにしておくとこの後この現象がどうなるか分かりません。」

 

梅小路父「しかしだ、お主は才気溢れる若者だ。未来ある若者を手にかけるなど、俺には………」

 

八幡「ならば俺自らが勝手に判断させて頂きます。私は崖から飛び降り、この里から出て行く事を宣言します!これ以上、俺なんかの為に当主様を困らせるわけにはいきません。」

 

梅堂父「お、おい八幡っ!」

 

八幡「今まで、お世話になりました!」ダッ!!

 

 

俺は周りを無視して当主様に挨拶をしてから、梅小路家の屋敷を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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義兄との辛すぎる別れ

 

 

冬香side

 

 

嫌……嫌です!!お兄様がこの里から消えるなんて!!お兄様と会えない絶対に嫌です!!絶対に引き止めます!だって、だってお兄様は何も悪い事はしてません!!外の人間を治療しただけ、たったそれだけです!それだけの事なのに里を出ていかなければならないなんておかしいです!

 

 

冬香「お兄様〜!!」

 

梅堂父「八幡、何処だー!!」

 

梅堂母「八幡ー!!」

 

 

里全体を探しても何処にも居ません。一体どこへ行ってしまったのでしょう?………っ!?まさかもう崖の所へ!?だとしたら一刻も早くお兄様を止めないと!!

 

 

ーーー里の外れ・鬼呼びの崖ーーー

 

 

冬香「お兄様〜!!お兄様〜!!」

 

 

この先はもうすぐ崖の筈です!この森を抜ければ、もしかしたらお兄様がっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「お兄様っ!!!」

 

八幡「………やっぱ1番は冬香か。」

 

冬香「お兄様、お考え直してください!!きっと他にも何か方法がある筈です!!お兄様、どうかお止めください!!」

 

八幡「もうそんな訳にもいかない。俺は一刻も早くこの状況をなんとかしたい。その為には掟を破った俺が自ら罪を浄化しなければ意味がない。お前も分かってるだろ?村の掟は絶対。破った者には罪の浄化を。先祖代々から伝わっている言葉だ。」

 

冬香「で、ですが……ですが!!」

 

八幡「………俺だって嫌だ。こんな形で里から出て行くなんて。けど、これしか方法がないんだ。分かってくれ。」

 

 

…………………………嫌、嫌です!絶対に嫌です!!何が何でもお兄様を里まで連れ戻します!!

 

 

梅堂父「八幡ー!!はちま……!!おい、そこで何をしている!?早くこっちに戻ってくるんだ!!」

 

 

後ろからは梅堂のおじ様だけでなく、梅小路家の分家の皆様もゾロゾロとやってきました。

 

 

八幡「父上、止めないで下さい。もう俺にはこれしか方法がありません。里のため、里に暮らす民のためにもこの状況は早くなんとかすべきだと思っています。ならば、梅小路家に代々伝わる方法でやるしかないでしょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梅小路父「何を言っても止まらぬか……ならば実力行使しかあるまい。急急如律令!!」

 

 

お父様はお札を取り出して訳の分からないような呪文を唱えた途端、そこから鬼が現れ、武士のような格好をしていました。

 

 

梅小路父「行けっ!八幡を捕らえるのだ!!」

 

鬼「グオオォォォォォ!」

 

八幡「不可視の壁よ、不可侵の領域を作り、我の障害と道を邪魔する者を防げ!」

 

 

お兄様が何かを唱えた。するとお父様が召喚した鬼が何かにぶつかり、動きが止まった。その後は鬼が前を刀で斬りつけるような仕草をしていましたが、壁のようなものが鬼の行く道を阻んでいました。

 

 

八幡「我が式よ、我が主命に従いて、指標を滅せよ!急急如律令。」

 

 

お兄様がまた呪文もを唱えると、今度はこの前私に見せてくれた鬼火を召喚しました。しかも今度は1体だけではありませんでした。その数は10体を超えていました。

 

 

梅小路父「なっ!?これだけの数の式神を1度に!?」

 

梅堂父「っ!当主様の式神が!」

 

 

お父様の式神が鬼火によって攻撃を受けています。お父様の式神も攻撃はしているようですが、流石に数の差が違い過ぎます。

 

 

梅小路父「くっ……戻れ、式神よ!………まさかここまで星辰力と陰陽術を使いこなしているとは……」

 

梅堂父「俺が教えた時はこんなに使いこなせてはいなかった筈なのに……いつの間に。」

 

梅堂母「感心している場合ですか!今は八幡を止める事を考えましょう!八幡、お願いだからこっちに戻って来て!」

 

八幡「それは聞けないです。もう、この手段しかないんですから。お願いですから、最後くらいは息子の願いも聞いてくださいよ。俺だってこんなお別れは嫌なんですから。」

 

梅堂母「なら「なら戻って一緒に他の方法を考えよう。なんて言わないでくださいよ?」っ!?」

 

八幡「何度も仰ったと思いますが、俺はもう、俺だけの為にこの里の迷惑にはなりたくありません。ならいっそのこと、この方法で終わらせるしかないでしょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「もう一思いに飛び降りさせてください。」

 

冬香「っ!!!ダメですお兄様!!」

 

 

鬼火が近くまで来ていますが、そんなの構っている暇はありません!!

 

 

八幡「手を出すな!!その子は傷つけるな!!」

 

冬香「っ!」

 

 

お兄様が叫んだ。その途端に鬼火は私から遠ざかり、距離を置きながら私を見ていた。チャンスだと思った私は前に走りました。ですが、それ以上前には進めませんでした。そう、透明な壁があったからです。私には叩くくらいしか考えられませんでした。

 

 

冬香「お兄様!!考え直してください!!飛び降りてはいけません!!お願いです!!」

 

八幡「……冬香。」

 

冬香「………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「最後の兄ちゃんの頼みくらい、聞いてはくれないか?頼む。」

 

 

そんな言葉を言われました。何で……何でそんな顔をしながら私にそんな酷いお願いをするのですか!?あんまりです!!そんな……そんな今にも泣きそうな顔をしながら、私にお願いをするのですか!?

 

 

八幡「………出来るなら、冬香と高校くらいまで一緒に居たかったな。」

 

冬香「お兄様!!ダメです!!お考え直しを!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「冬香、元気でな。」

 

 

そして、お兄様は私の目の前で崖から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ポロポロ

 

 

 

 

 

 

 

 





重い……重過ぎるよ………



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八幡がいなくなった後

冬香side

 

 

お兄様が飛び降りた………お兄様が死んでしまった………私は里の外の川まで見に行きましたが、お兄様が流れ着いた形跡はありませんでした………あれから私の見る世界は色を失いました。何色もない、白と黒の世界。赤も青も黄も緑も無い、ただの白黒の世界。お兄様がこの里とこの世界から去って2週間が過ぎましたが、今でも夢に出てきます、お兄様と楽しく過ごしていたあの日々……とても幸せな日々が。そして、それを切り裂くかのようにお兄様が崖から飛び降りる瞬間で目が覚めます。

 

人間は覚えていたくない、忘れたいと思う記憶程、強く頭の中に残り、記憶としてあり続けます。私のこの記憶は一生残ったままになるでしょう。お父様とお母様も私に気を使って優しくして下さいますが、私の中でお兄様という存在が失った事は、誰にも埋められない程大きな穴となっています。この穴は誰にも埋める事はできないでしょう。出来るとすれば………お兄様だけです。

 

 

冬香sideout

 

ーーーーーー

 

 

ーーー梅小路家・夕食ーーー

 

 

梅小路父「………」

 

梅小路母「………」

 

冬香「………」

 

 

梅小路家の食卓の様子なのだが、いつもなら会話も弾み、楽しみながら食事をしているのだが、八幡が崖から飛び降りてからは夕食には笑顔が消え失せ、暗く重苦しい空気が続いている。

 

 

冬香「………ご馳走様でした。」

 

梅小路母「……冬香、そんなに残して大丈夫なの?」

 

冬香「食欲が無くて……すみませんお母様。それと、梅小路家の秘術について模索したいので。」

 

梅小路母「そ、そう……頑張ってね。」

 

冬香「はい。では、失礼致します。」

 

 

冬香は挨拶をした後に戸を閉めて食事をする空間から去っていった。両親も分かっていた。今の冬香には喜怒哀楽の表情や感情が全て消え失せてしまっている。この2週間、冬香は遊ぶという事を一切しなくなり、その時間を全て梅小路家の秘術の研究に費やすようになってしまった。たった5歳の子供がである。大切な存在の喪失感や虚無感を忘れるには何かに没頭していなければすぐに思い出してしまうからであろう。

 

 

梅小路母「……当主様、何とかなりませんか?」

 

梅小路父「俺だって出来ればあの冬香を治してやりたいさ。だが、冬香の心にはすっかり大きな穴が開いてしまっている。俺たちでは埋めきれない程の大きな穴が。」

 

梅小路母「八幡くんが崖から飛び降りてからは、里の様子は落ち着きましたが、次は私たちの感情が不安定になっています。特に冬香と梅堂家が。」

 

梅小路父「あぁ……一人息子を失った辛さは耐え難いものだ。想像も出来ないくらい辛く苦しいに違いないだろう。掟とはいえ民を、しかも子供すら守れないとはな………俺は里の長失格だな。」

 

梅小路母「あなた………」

 

 

梅小路父(冬香には元に戻ってもらいたい。あの時のような笑顔の眩しい冬香に。だが、それが叶う事は限りなく不可能と言っても良いだろう。式を使って八幡くんに化けさせるか……いや、こんなのダメだ。八幡くんさえ居てくれれば、この状況を打破する事が出来るのに………)

 

梅小路母(最近は食事の量が減っただけでなく、会話の数も減りました。そして食事が終わると、決まって部屋に引きこもり、秘術の研究をしています。あの子だってまだ外で遊ぶ年頃、それなのに術の研究をしているなんて……見ているだけで心が苦しくなります。あぁ、誰かあの子を助けて……)

 

 

ーーー梅堂家ーーー

 

 

梅堂父「………母さん、また八幡にお供えか?」

 

梅堂母「え?……あ……そ、そうね!あの子は野菜のかき揚げが好物だったから。」

 

梅堂父「……そうだったな。八幡は母さんの作る揚げ物が好きだったからな、きっと喜ぶだろう。」

 

 

あれから梅堂家は八幡がいなくなった事により、機能しなくなっていた。梅小路の秘術についても当主から『落ち着くまでは研究は保留にしていい。好きに生活すると良い。』と言われていた為、今は2人揃って普通の生活をしている。

 

精神の安定にどのくらいの時間を有するかは不明だが、今の母親の様子を見る限りでは、まだまだ時間が必要なのが分かる。現在梅堂両親も農作業に没頭しており、出来る限りあの時の惨劇を思い出さないようにしている。

 

 

梅堂母「ねぇあなた、やっぱり……八幡は死んでしまったのかしら?」

 

梅堂父「………その話はしない方向にしようって決めただろう。どうしてそんな事を聞くんだ?」

 

梅堂母「だって……頭に浮かんでしまうのよ。もしかしたら八幡が生きているかもしれないって。あの子は賢い子だからもしかしたらって……」

 

梅堂父「……だからといってたったの7歳の子が大自然に逆らえるわけがない。八幡が仮に生きていたとしても、何らかの後遺症が残るだろう。俺だって八幡が生きているかもしれないって思いたいが、それを思うと余計に辛くなってしまう。だからもう考えるのはやめた。八幡は死んだ、もう帰ってくる事はない。そう思うしかない。」

 

梅堂母「………そうよね。」

 

 

2人も八幡の死を受け入れながらこれからの人生を歩んでいくのだろうが、息子の死というのはあまりにも残酷で心に大きな傷を残すものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして八幡がこの里から消えて8年が経った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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8年後の今


昨日はすみません!

最近仕事が忙しくて投稿する余裕がなくて………




 

 

冬香side

 

 

やはり難しいですね……梅小路家の秘術というものは。師父の助力もあって何とか復活の兆しには向いてきましたが、まだ完全には至っていません。里の皆様の為にも、私が頑張らなくてはいけませんね。ですが、少しだけ秘術の復活について良い方向に向いてきたのは報告できますね。私自身の力ではありませんが、それでもお父様に報告はするべきですね。

 

ですが………

 

 

冬香「流石にずっと1人でいるのは飽きてしまいます。少しだけ校内を散歩して来ましょう。」

 

 

ーーー界龍第七学院・校内ーーー

 

 

此処、界龍第七学院は今私が通っている学校です。事前に調べたのですが、アジア系の出身の方や武道を嗜んでいる方が多い学院です。中でもこの学院には【星仙術】という独自の万応素感応能力普遍化技術を持っています。

 

 

「あぁ、梅小路殿。お久しぶりです。」

 

「お久しぶりです。」

 

冬香「はい、ご無沙汰しております。」

 

 

私は当学院の序列4位、つまりは学院内で4番目に強い順位に立っています。なので年下の方たちからは挨拶を交わされるのが多いです。同世代の方達からはあまりそういうのはありませんね。ですが、その後輩の中にも才気溢れる男の子と女の子がいます。そして私の2つ歳上の方にも良く接して下さるお方がいます。

 

 

セシリー「あー!冬香さんじゃーん!珍しいですねー、表に出てきてるなんてー!」

 

虎峰「ご無沙汰しております、梅小路殿。」

 

陽乃「ひゃっはろー冬香ちゃん、元気してた?」

 

冬香「はい、ご無沙汰しております。セシリーさん、虎峰くん、陽乃様。」

 

 

ちょうど今現れましたね。最初に私に挨拶してくれた女性が私の1つ年下のセシリー・ウォンさんです。私と違い人当たりの良さそうな感じで、誰とでも仲良くなれる明るい子です。

 

2人目の男性が趙虎峰くんです。いつも丁寧な口調なので砕けた喋り方でもいいと言ったのですが、どうやらこれが標準みたいです。ですが彼は、ああ見えて男性なんですね。初めてお会いした時、私は女性だと思っていましたから驚きました。

 

最後に私に話しかけてくれた方は雪ノ下陽乃様です。高等部の2年生で学問に武芸、その他においても抜群と言ってもいいくらい優れたお方です。容姿も整っているので告白されるのも多いのでしょうね。

 

 

冬香「偶には私だって散歩をしたくなりますから。ずっと部屋に篭っていても意味はありませんからね。少しは体を動かさなければ鈍ってしまいますからね。」

 

陽乃「おっ?じゃあ久々に私と一戦やってみる?」

 

冬香「いえ、滅相もございません。私程度では陽乃様には勝てません。暇つぶしくらいにしかならないかと。」

 

陽乃「そんな事言わないの!一緒にやるから楽しいんじゃん!」

 

セシリー「そうですよー!久々に出てきたんですから少しくらい鍛錬して行きましょうよー!」

 

虎峰「無理強いはよくありません、と言いたいところですが、体ほぐしになら僕も付き合いますので。」

 

 

……こんな私にもこんな風に接して下さる皆様には感謝の言葉もありません。こんな風に弟や妹、姉を持った感じというのは里にいた頃から感じていましたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………無論、兄を持った気分も。

 

 

ーーー鍛錬場ーーー

 

 

鍛錬も一通り終了して少しだけ休んでいます。やはりというか、流石というべきですね。皆さんの成長速度はとても早いです。もしかしたら私はすぐに抜かれてしまうかもしれませんね。

 

 

セシリー「そういえばさー、もうすぐ入学式だよねー。どんな子が入って来るかなー?」

 

虎峰「僕はあまり興味ありませんが、師父なら自身を楽しませてくれそうな人を探しそうですね。」

 

セシリー「あーありそう。だって師父だからねー。」

 

陽乃「それで済ませられるから凄いよね、星露は。」

 

冬香「新入生、ですか………私もあまり興味はありませんね。入学式にも出席する予定はありませんので。」

 

セシリー「えぇー!?参加しましょうよー!もしかしたら良い出会いがあるかもしれないじゃないですかー!」

 

冬香「……何故入学式に出会いがあるのか疑問に思いますが、私が参加しても意味がないと思うので。」

 

虎峰「梅小路殿、セシリーはこう言ったらあまり身を引きませんから、ここは一度だけ参加されては?」

 

冬香「………分かりました。数少ない後輩、友人の頼みです。今回の入学式には出席しましょう。」

 

セシリー「いやったー!!」

 

 

そんなに嬉しい事でしょうか?

 

 

星露「虎峰や〜腹が減ったのじゃ〜!飯にするぞ〜……む?おぉ、お主もおったのかえ?梅小路よ。」

 

冬香「ご無沙汰しております、師父。」

 

星露「その呼び方はやめい。妾はお主を弟子に取った覚えはないわい……まぁそんな事より虎峰、飯じゃ〜。」

 

虎峰「分かりました師父!」

 

セシリー「こらこら虎峰ー、おねーさんを放っていくのかなー?」ダキッ

 

虎峰「なっ!?セシリー離してください!!」ジタバタッ!

 

陽乃「あっはは、虎峰くん相変わらず純情だねぇ〜。お姉さんも抱き着いてあげよっか?」

 

虎峰「それはやめて下さい!」ジタバタッ!

 

冬香「ふふふ、大変ですね。」

 

虎峰「そう思うなら助けて下さいよ!!」

 

 

今ではこんな風に暮らす毎日も悪くないと思っています。それでも私は、お兄様と一緒に過ごしたいと思っていますが………もう出来ないことを祈っても仕方のない事ですよね。

 

 

お兄様は………死んでしまったのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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貴方は?

 

 

冬香side

 

 

本日は界龍第七学院に新たな仲間を歓迎する入学式です。晴れやかな舞台でもあります。ですが、私は梅小路家の研究に勤しんでいるので、頻繁に参加しているわけではありません。なので参加するのはこれが2度目です。私が入学した時と、今現在で2回です。

 

そしてこれは初めてではないのですが、男性からの視線が私に集まることが多いのです。理由は理解しておりますが、改めてそういう目線を向けられると良い気分にはなりませんね。

 

 

セシリー「いやーやっぱり人気者だねー冬香さん!」ニヤリ

 

冬香「はぁ……なぜ私に目を向けるのか理解が出来ません。陽乃様の方がよっぽど……」

 

セシリー「そりゃあ冬香さんもナイスバディだからねー。それにー、陽姐と違って制服の露出がねー。思春期の男が見ない理由なんてないってー。」

 

冬香「私も普通の制服にした方がよろしいでしょうか?」

 

セシリー「いやいやーその方が似合ってるからそのままにしなよー。冬香さんが普通の制服にしたら……地味になるかセクシーになるかのどちらかしかないからさー。」

 

 

……恐らくセシリーさんが言っているのは、木派と水派の制服の事でしょう。確かに木派が来ている制服は漢服ですからね。水派の制服は……少し趣向が違いますが、胸元が開けていますからね。それに足も見えてしまいますから、今とあまり変わらないでしょうね。

 

 

冬香「……このままでいましょうか。その方が良さそうです。」

 

セシリー「そだねー。これ以上セクシーな冬香さんは見たくないかなぁー。男共絶対何人か倒れちゃうもんねー。」

 

 

はぁ……まぁいいです。ですが先程から気になっている視線が1つだけあります。その視線は探しては消えるの繰り返しで隠れるのが非常に上手な視線でした。ですが、その視線は私の胸を見ているようではなく私の顔を見ていて、なんだか……心が温まるような視線でした。

 

 

何故でしょう?こんな風に見てもらえたのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだお兄様以来の事です。

 

 

はぁ……私も未練がましいのでしょうか?いつまでもお兄様の事を忘れられないなんて………でもどうしても忘れる事が出来ません。幼い事に過ごしたあの日々、どれどけ幸せだったか……

 

でも、もう忘れなければいけませんよね。いつまでも縛られたままではお兄様に叱られてしまうかもしれませんし。

 

 

あぁ、またこの現象ですか………私、色覚に異常があるのか、偶に色が見えなくなる時があります。幼い頃はこれが何年も続いて入学してからは1〜2ヶ月に1回というくらいにまでなりましたが、あの時の事を思い出すと必ずこの現象が起きます。

 

 

早く治ってほし………え?

 

 

なぜあの人だけ色がハッキリしているのでしょう?それに温かい………あっ、此方を見ました………っ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そ、そんな………で、でも、あの時………確かに、崖から飛び降りて………でも、何で?え?あの髪、あの顔、あの目、それに……あの微笑みは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「…………お兄、様?」プルプル

 

 

………っ!!い、いえ!そんなはずはありません!お兄様は8年前のあの時に崖から飛び降りて死んだはずです!!あの人がお兄様なわけがありません!!他人の空似です!!

 

 

冬香「はぁ……はぁ……」

 

セシリー「……っ!冬香さんー?」

 

冬香「っ!す、すみません。何でしょうか?」

 

セシリー「いや、息荒かったですけど、大丈夫ですかー?休みます?」

 

冬香「い、いえ……大丈夫です。お気になさらず。」

 

 

いけません、今は入学式なんです。式典の邪魔をしてはなりませんね。

 

 

ーーー界龍・廊下ーーー

 

 

………どうしてもあの方が気になってしまいます。あの人は……私よりも2つ年上の人でしたね。だから……私が1年ですのであの人は3年の方ですね。

 

陽乃様にお聞きした方が早いでしょうか?いえ、お手を煩わせる訳にはいきませんね。

 

 

陽乃「あれ、冬香ちゃん?どしたの?此処は高等部3年の階だよ?」

 

冬香「は、陽乃様!いえ、大した事ではないのですが、少し気になる方がいまして………」

 

陽乃「おっ、それはもしや男かなぁ〜?」

 

冬香「ち、違います!男性である事には否定しませんが、そのような方ではありません!」

 

陽乃「はいはい分かったよ。それで、どんな人?特徴とかは分かる?」

 

 

ーーー2分後ーーー

 

 

冬香「……以上です。」

 

陽乃「ふむ……その男の子、きっと私のクラスだよ。見覚えがある特徴だからね。」

 

冬香「ほ、本当ですか!?」

 

陽乃「着いて来て、私のクラスまで案内するから。」

 

冬香「お願いします。」

 

 

ーーー教室ーーー

 

 

陽乃「今、親睦を深めてる最中でね。どんな武術をやっているのか〜とか、趣味とか特技とか色んな事を話してるよ。冬香ちゃんが言っていた彼は……あっ、あの人じゃないかな?」

 

 

………いました。白黒の世界にたった1人だけ色があった人に会えました。

 

 

陽乃「人付き合いが苦手なのか、あんまり話してくれないんだよね〜。それで冬香ちゃんは……ってあれ?」

 

 

一刻も早く確かめたい……この人がお兄様なのか、あるいは赤の他人なのか……陽乃様には申し訳ありませんが、ここからは1対1でお話がしたいのです。

 

 

 

 

 

 

 



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8年の

 

 

冬香side

 

 

目の前にいる男性、もしかしたら8年前に里の崖から落ちて死んでしまったお兄様かもしれない人。昔と比べて雰囲気は違いますが、面影はあります。ですが、聞くのにかなりの抵抗があります。いきなりお兄様と聞いたら周りの方々やこの人に迷惑がかかります。出来ればこの人をこの教室内から出して聞き出せれば………

 

 

冬香「あ、あのっ!少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

???「………」

 

 

目の前のお兄様かもしれない人は私の方へと顔を向けて、ジッと見つめてきました。

 

 

冬香「も、申し遅れました。私、当校の高等部1年の梅小路冬香と申します。よろしければお時間を頂きたく思います。場所を変えさせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

八幡「……あぁ、構わない。」

 

冬香「ありがとうございます。では、こちらについて来てください。」

 

 

誘い出しには成功です!場所は……無難に私の部屋にしましょう。あの部屋は学生はおろか、師父からも極力干渉しないようにお願いしておりますから。

 

今安全に2人でお話ができる場所といえば、この学院の校外か私の部屋くらいですからね。

 

 

ーーー冬香の部屋ーーー

 

 

冬香「どうぞ、お上がり下さい。」

 

八幡「失礼する。」

 

冬香「少し待っていてください、お茶とお茶請けを持ってきます。」

 

 

ーーー3分後ーーー

 

 

冬香「お待たせ致しました、どうぞ。」

 

八幡「あぁ、悪いな。」

 

冬香「いえ、気になさらないでください。」

 

八幡「それで、話とはなんだ?」

 

 

やはり単刀直入で聞きに来ますか……それもそうですよね、この人が別人の可能性だってあるんです。

 

 

冬香「はい、その前にお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?先程聞いていなかったものでして。」

 

八幡「あぁ、そうだったな。俺は比企谷八幡だ。」

 

 

比企谷……聞いた事がない苗字ですが、名前はお兄様と同じ『八幡』ですか。可能性はありますね。

 

 

冬香「では比企谷さん、お聞きしたい事があります。貴方は8年前までどこで過ごされていましたか?」

 

八幡「……いつもの自分自身の家だが?まだ小学なんだ、1人暮らしなんて出来んだろ。」

 

冬香「……では、星辰力はどこまで扱えますか?」

 

八幡「自分じゃ分からんな。何処までが上手か下手なのかの基準があるのか?」

 

冬香「難しいですね……細かい練り込みなどは得意なのですか?」

 

八幡「割と得意な方ではある。細かい作業は得意だからな。」

 

冬香「そうですか……では次に移ります。」

 

 

この後も比企谷さんとの質疑応答は続きました。彼も嫌な顔をせずに答えてくれたので、こちらとしてもやりやすかったのですが………どうやらお兄様ではない様子でした。

 

 

冬香「……ありがとうございました。」

 

八幡「なんか取り調べを受けている気分だった。」

 

冬香「申し訳ございません。どうしても確かめたい事がございましたので。」

 

八幡「……そうか。」

 

 

でも、これでハッキリしました。この人はお兄様ではありません。赤の他人でした。

 

 

冬香「貴重なお時間を頂いてしまい、申し訳ございませんでした。お聞きしたい事はもうございませんので、教室に戻って頂いても大丈夫です。」

 

八幡「なら俺からも聞きたい事があるのだが、いいか?」

 

冬香「はい、何でしょうか?」

 

八幡「星辰力の扱う為の初歩だ。不慣れな者が星辰力を出す時はどうすればいい?」

 

冬香「掌に指を置いてそこに意識を集中させる事です。そうすれば自然と星辰力が集まります。」

 

八幡「次だ。札を使って式を出す時にはどうすればいい?」

 

冬香「札に星辰力を流し込み、召喚する式をイメージする事です。」

 

八幡「……どっちも正解だな。」

 

冬香「あの、何故そのような当たり前の事を?」

 

八幡「この基礎をお前に教えたの、誰だと思ってるんだ?」

 

 

………………………………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………い、今、この人はなんて?この基礎を教えた?で、でもこれはお兄様から教えて………っ!!!

 

 

冬香「え……で、でも……今の質問……全部……」

 

八幡「………」

 

冬香「………お、お兄、様?」オズオズ…

 

八幡「やっとそう呼んでくれたか。ずっと他人行儀だったから呼ばれるまで待ってたんだがな……久しぶりだな、こんなに大きくなったのか……冬香。」

 

 

あぁ……同じです、あの時の優しい笑顔。私が幼い時に見たお兄様の優しい笑顔………

 

その瞬間、私の目から涙が落ちてきました。8年間枯れていた涙がお兄様との再会で再び湧き戻ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「お兄様ぁぁぁぁ!!!」ポロポロ

 

 

もう周りなんて構って要られません。目の前に死んだはずのお兄様が居るのです。そのお兄様が生きていた!!その存在を抱き締めずしてどうすれば良いのでしょうか!?

 

 

冬香「うううぅぅぅ!!わあああぁぁぁぁ!!!う、うぅっ、うぅ、うぅ……わああぁぁぁぁぁん!!!」ポロポロ

 

八幡「……お前には悲しい思いをさせちまったな、済まない。」ギュッ!

 

 

私の願いが叶った、1度でもいいからもう1度だけお兄様と会いたい。そして思い切り抱き締めてもらいたい………その願いが今、叶いました。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「……冬香、そろそろ離れてくれないか?」

 

冬香「……絶対に嫌です。私は8年もの間、ずっと1人だったのです。その8年分のお兄様を今感じているのです。離れたら最初からやり直しです。」

 

八幡「………そうか。」

 

 

お兄様にはご迷惑かもしれませんが、私には必要な事なのです。8年分のお兄様を今感じているのですから。

 

 

八幡「……この状態で聞くが、里は大丈夫か?あれから何ともないか?」

 

冬香「はい、何も起きてはおりません。お兄様が崖から飛び降りた翌日には異様な空気は消え、いつも通りの日常になっていました………人以外は。」

 

八幡「そうか、まぁそうだろうな。」

 

 

お兄様の声……昔とは違いますが、とても安心します。こうして心臓の鼓動を聞いているだけでも安らぎを感じます。お兄様は生きていた。こうして生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なぁ、離してはくれないのか?」

 

冬香「今、お兄様を8年分感じていますので。後7年と30日分です。」

 

八幡「1日分しか満足してねぇのかよ。」

 

 

当然です♪お兄様は至高なのですから♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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冬香の甘え

 

 

八幡side

 

 

冬香と奇跡の再会してから2時間後、漸く離れてくれた冬香だが、表情を見るからにまだまだ物足りない様子だった。だがそれも仕方ない、俺も自分の部屋に戻ってゆっくり休みたい。

 

 

八幡「比企谷八幡なんですけど、何処の部屋が俺の寮部屋ですか?」

 

「比企谷八幡さんですね……比企谷さんは北の最端でございます。こちら、ルームキーとなっています。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

 

それにしても冬香の奴、めちゃくちゃ美人になってたな。子供の頃は可愛い感じだったが、高校生になったら可愛いではなく、綺麗系に進化してやがる。しかも普通の綺麗じゃない。妖艶さがあって、妖しげな、惹き寄せられる魅力を感じる。嫌な言い方をしたら、少しエロい魅力があるって感じだ。

 

俺も冬香とは一緒にいてやりたいが、あまり長居し過ぎると怪しまれるからな。冬香に会うのは明日にして、俺も飯に行って風呂に入ってから寝るとするか。

 

 

さて、部屋ってどんな感じなんだろうな〜。

 

 

ガチャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「お帰りなさいませ、八幡お兄様。」

 

 

………………………え?

 

あ、あれ?俺って幻覚でも見てるのか?目の前にさっき別れたはずの俺の妹分、冬香が目の前にいるんだが?

 

 

冬香「お食事になさいますか?ご入浴になさいますか?それとももうお休みになさいますか?」ニコッ

 

 

………挨拶までしっかりしちゃってるよ。しかも何?あの笑顔、最高過ぎるんだけど。一先ず俺が言いたいのは……

 

 

八幡「冬香、俺は1人部屋だった筈だが?」

 

冬香「はい、そうでしたね。」

 

 

……皆聞いた?今の聞いた?今この子『でしたね。』って言ったよ。ハッキリと過去形使ったよ。

 

 

八幡「……何故此処に?自分の部屋に戻りなさい。」

 

冬香「あの部屋は返却しました。なのでお兄様の居るこの部屋を要望したところ、承諾してくれたのです。」

 

八幡「そ、そうなのか……」

 

 

おい!仕事して!何男女を同じ空間で衣食住を共にさせようとしてるの!?普通に考えてアブノーマルだからね!

 

 

冬香「それでお兄様、今後はどのようになさいますか?」

 

八幡「……じゃあ飯にでも行くか。作れれば作りたいんだが、生憎食材がないからな。今日は学食でいいだろう。」

 

冬香「かしこまりました。お兄様、ご案内致しますので共に行きましょう。」ダキッ!

 

八幡「なぜ抱き着く必要がある?」

 

冬香「……お兄様、私はあの程度の抱擁で満足したわけではございませんよ?本来であれば……よ、夜の営みでもしなければ決して満足はできません///その所をこうして抱き着く事によって我慢しているのです……少しは私の考えも汲んでください。」

 

 

………汲むしかないよね。少しマズい単語が入ってたもんね。うん、汲み取ろう。

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

………視線が痛い。俺何もやってないよね?なんで俺が睨まれなくちゃいけないわけ?それとさ冬香さん、腕離してぇ!貴方の物凄く柔らかい2つの感触が俺の腕にダメージを与え続けてる訳!頼むから食べる時は離してくれよ!

 

 

冬香「お兄様、お決まりになりましたら私に言ってください。私が注文して参ります。」

 

八幡「いや、何でだよ。俺も一緒に行くぞ。」

 

冬香「そ、それは私ともっと一緒に居たいと………嬉しいです、お兄様……///」ギュッ!

 

 

そういう意味じゃないから!俺も注文の仕方理解しないといけないと思っただけだから!それに、女にやらせて男が待ってるって最悪の絵面じゃん!

 

その後は一緒に食べるメニューを決めてから席に着いた。

 

 

2人「いただきます。」

 

 

やっぱり中華料理が多いな。流石は中国風な学院なだけはある。外装だけでなく内面も拘っているというわけか。

 

しかし、この学院には西洋人はいないのだろうか?アジア系の奴らは見ていれば殆どだが、西洋の人は見当たらない。やっぱガラードワースに行ってるとか?あの学園は名門校だからな。

 

 

冬香「あっ、お兄様。指先にソースが付いております。」

 

八幡「ん?あっ、本当だ。すまないな冬香。」

 

冬香「いえ、ではお手をお借りいたしますね……はむっ。」

 

 

……………………は?何だ、今の『はむっ』って?

 

 

冬香「くちゅ…にゅる、ちゅ〜……んっ……お兄様、舐め取りました。」

 

八幡「………普通に拭き取ろうと思ったんだが?」

 

冬香「それではソースが勿体無いです。なら舐めた方が味わえますから。」

 

 

あの……にしては指に付着している唾液が凄い輝いているんだけど?ソース舐め取って唾液残すの?

 

その後何もない……わけもなく、冬香が度々俺に食べさせようとしてくる。断ろうとも思ったのだが、その度に不安そうで悲しそうな顔をするから断れない……くそぅ!

 

 

ーーー部屋ーーー

 

 

………なんかドッと疲れた気がする。もう風呂に入って寝よう。明日から授業も始まるしな。

 

 

八幡「冬香、もう風呂沸かしてさっさと身体とか洗って寝よう。今日は少し疲れた。」

 

冬香「かしこまりました。ではこちらタオルです。既にお湯の準備は出来ておりますので、ゆっくりとごくつろぎ下さい。」

 

八幡「あぁ、ありがとな。」

 

 

その後は何もなく、入浴を済ませる事が出来た。冬香の事だから入ってくるんじゃないかとも思ったが、流石に考え過ぎたようだな。

 

 

八幡「冬香、この部屋にベッドは1つしかないからお前が使え。俺はソファで寝るから。」

 

冬香「いけません!何故お兄様がソファで私がベッドなのですか!?逆ならば納得致しますが、お兄様をソファで寝かせるなんて真似、私には絶対に出来ません!!」

 

八幡「けど俺はお前に風邪を引いて欲しくない。ならこの案は妥当だと思うが?」

 

冬香「お、お兄様……私の為に………なんてお優しい。やはり昔と変わっていません。とても優しいお兄様のままです。」

 

 

う、うん…ありがとね。そんなに過剰に反応しなくても大丈夫だからね?

 

 

冬香「ですが、お考え直してください。私はお兄様がベッドに寝るべきだと考えております!」

 

 

どうしたものか……冬香はこれを受け入れてはもらえなさそうだ。

 

 

冬香「っ!そうです!最も簡単な解決法がありました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……確かに簡単ではあるが、狭過ぎないか?」

 

冬香「いえ、この狭さが良いのです。お兄様とこの場所を共有できているこの狭さが、私には1番の幸福に感じております。」

 

 

結果、俺と冬香は一緒にベッドで寝る事になった。シングルだから一緒に寝るとやはり狭い。

 

 

冬香「こうやって一緒に寝るのも8年ぶりでしょうか。なんだかとても懐かしく思えます。そして……とても嬉しく思います。こうしてお兄様と2人で居られることが。」

 

八幡「………あぁ、俺も嬉しく思ってる。こんな風に寝るのも悪くはないな。」

 

 

軽い話をしてから俺たちは眠りについた。

 

だが俺は知らなかった。明日の授業がとんでもない事になるのを。

 

 

 

 

 

 

 



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2人の関係

 

 

八幡side

 

 

………あぁ、なんか久し振りに誰かと一緒に寝た気がするな。だが昔はこんな風に抱き枕にされた事はなかったと思う。俺は今、熟睡している冬香に抱き枕にされている。背は俺の方が高いから冬香が俺の胸に顔を埋めているような感じになっている。幸い、俺の両腕は巻き込まれていなかったから自由に動かせる。しかし本当に気持ちよさそうに眠るな……なんか微笑んでるし。

 

 

俺はもうこの時間から起きるように体内時計が出来ているが、少し早過ぎるか?今朝の6時なんだが……この状態じゃあ何もできない。

 

 

………仕方ない、冬香が起きるのを待つか。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

冬香「すぅ……すぅ……」

 

 

……起きる気配全くないな。それどころかこのまま寝たままなんじゃないかって思うくらいだ。だが、こんな風にこいつの寝顔を見るのも8年振りなんだよな。

 

 

冬香「……ん、んんっ……んぇ?」

 

八幡「起きたみたいだな。」

 

冬香「あぁ……お兄様、おはようございます。」

 

八幡「あぁ、おはようさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「………っ!!お、お兄様!!も、申し訳ございません!!だ、抱き着いていたなんて知らずに……」ガバッ!!

 

八幡「気にするな。それだけお前も人肌が恋しかったという事だろう。冬香、俺はいつも6時くらいに起きるんだが、お前はどのくらいだ?」

 

冬香「は、はい。私もそのくらいの時間に起きています。今日は少しだけ長くなってしまいましたが。」

 

八幡「そうか。とりあえず着替えて冬香がいつも食堂に行く時間に動くか。」

 

冬香「かしこまりました。」

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

ガヤガヤ……ザワザワ……

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「冬香、頼むから人前で腕に抱き着くのはやめてくれ、少し恥ずかしい。」

 

冬香「良いではありませんか。私達が強い絆で結ばれている証拠なのですから。」

 

八幡「あのなぁ……ん?」

 

 

シィ〜ン………

 

 

……朝からすんごい注目を集めちゃってるよ。俺はなるべく目立たないように学院生活を送りたいんだが、どうやらそれはもう叶わないらしい。昨日の時点でもう噂になっていたのだろう。転校してきた奴がこの学院の序列4位と慣れ慣れしくしているみたいな噂が。そして『お兄様』と呼ばせているっていう噂も流れてそう。

 

 

冬香「お兄様、朝食は何になさいましょうか?」

 

八幡「……日本料理でもあればそれにするんだが、界龍には日本料理がなさそうだな。」

 

冬香「そうですね……私は中等部からこの学院に在籍しておりますが、日本料理が出た事はありませんね。」

 

 

……要望に日本料理も出して欲しいって頼んでおくか。中国の料理も美味いが、朝から唐揚げとかは食べたくないしな。

 

 

ーーー高等部校舎・3年廊下ーーー

 

 

八幡「……冬香、お前は1年だろ?なんで俺についてくる?」

 

冬香「お兄様はご存じないのも無理はありませんね。私、もう大学部までの勉学を修了しておりまして、学院の勉学を受ける必要が無いんです。だから今までは自由にさせてもらっていました。」

 

八幡「それっていいのか?」

 

冬香「というわけなので、今までは空いた時間を梅小路家の秘術の研究に費やしていたのですが、今はお兄様と過ごす時間が何よりも大切なので、お兄様のクラスへ行き、一緒に授業を受けようと思っています。」

 

 

……今の説明、全く嘘に聞こえない。だって迷いが全く無いんだもん。この子、きっと本気だよ。本気でウチのクラスに来て授業受けるつもりだよ。

 

あぁ……だんだん俺の静寂が崩れていく。

 

 

ーーー教室前ーーー

 

 

あぁ、この扉が大きい門に見える……この一歩を踏み出すのってなんか怖い。

 

 

冬香「お兄様、早く参りましょう?」

 

八幡「あ、あぁ。」

 

 

俺は滅入るような思いを抱きながら、教室の扉に手を伸ばして横に開いた。開けた途端、外まで聞こえていた話し声が一気に無くなった。

 

 

冬香「お兄様の席は……あちらでしたね。では私もそちらの隣にもう1席用意致しますね。」

 

八幡「……あのさ、授業受けるのに俺の隣でいなきゃいけない理由ってあるの?」

 

冬香「勿論あります!私がお兄様と一緒に居たいからです!」

 

 

あぁ……もうここまで純粋な思いだと断れませんわ。

 

 

陽乃「冬香ちゃん、おはよう。」

 

冬香「あっ、陽乃様。おはようございます。」

 

陽乃「比企谷くんもおはよう。」

 

八幡「あ、あぁ…おはよう。」

 

 

……こりゃまた随分と端正な顔立ちの人だな。

 

 

陽乃「ちょっと聞きたいんだけどさ、冬香ちゃんと君の関係って何なの?冬香ちゃんの態度とか言動からしてただのお知り合いには思えないんだよねー。」

 

 

さて、どう答えたものか。下手なことは言えないな。俺が梅小路の分家だなんて。

 

 

冬香「その事ですか。簡単に申し上げますと、お兄様は私の全てです。私はお兄様に全てを捧げると決めています。私は幼き頃からお兄様と一緒にいましたが、ある日をきっかけにお兄様は私の前から消えました。その理由をお話しするつもりはありませんが、昨日8年ぶりにお兄様と再会出来ました。平たく言えば幼馴染みたいなものですが、私にとってお兄様は私の人生そのものであり、生きていく上で必要不可欠な存在とも言っていいでしょう。」

 

 

冬香………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それ、きっと返答ミスだと思う。

 

 

陽乃「えぇ〜と、つまり冬香ちゃんと比企谷くんは……よく分からないけど、恋人とか婚約者に近い関係、なのかな?」

 

 

 

教室は女の黄色い悲鳴と男の悲嘆な叫びが混じったかなりカオスな空間になってしまった。いやマジで何これ?これどうやって収集つければいいんだよ。俺知らんぞ?

 

 

 

冬香「こ、こここ恋人!?/////わ、私とお、おお兄様がですか!?そ、そのような関係ではご、ごごございません!!んんっ!さらに砕けて言えば、義兄妹のようなものです!/////」カアァ!!

 

 

教室内の生徒(それを最初から言えば良かったのに……)

 

陽乃(それに冬香ちゃん、その反応は比企谷くんと恋人になりたいって言ってるようなものだよ?)

 

 

八幡「まぁそういう訳だ、小さい頃によく遊んでてな。それで多少仲が良いんだ。」

 

 

教室内の生徒(いやアンタ等の行動は多少仲が良い奴らが取る行動ではない!!もう恋人だ!!)

 

 

そして予鈴が鳴ってHR(ホームルーム)が始まる時間となった。さて、界龍ではどんな授業をするのか楽しみだ。

 

あと冬香、隣に座るのはもういいけど手とかは握らなくてもいいから!

 

 

 

 

 

 

 

 



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ずっと一緒に……

 

 

冬香side

 

 

私がお兄様と再会してこの学院で過ごしてから、早くも半年が過ぎました。お兄様と過ごしたこの半年間は私にとって有意義な時間でした。いえ、有意義では片付けられない程、充実した半年間でした。お兄様がどう思っているかは私には分かりませんが、良い半年間を送れたと思っていたら幸いです。

 

私は半年に1度、里へ定時連絡を欠かさずに行なっているのですが、お兄様が生きていた事を報告しようかしないか迷っています。そうしたら里は大混乱でしょうから。あとでお兄様に報告ですね。

 

 

そんなお兄様ですが、この学院に転入して早々に当学院の序列2位に決闘を申し込まれ、戦う事になりました。その理由が『同じ師の弟子だから。』だそうです。当日の公式序列戦では、どちらも譲らない戦いで最後の最後でお兄様の流星闘技で暁彗さんを倒して、界龍の新しい序列2位になりました。私はとても鼻が高いです!

 

それからお兄様は序列2位の部屋を貸し出してもらい、その部屋に住んでいます。(当然私も一緒です。)そして最近、お兄様は多くの生徒に教えをするようになりました。なんでも、お兄様の戦いぶりを見て武術、剣術、星仙術、陰陽術の技術を向上させたいという生徒が増えたのです。

 

 

そのせいでお兄様もご多忙になられましたので、夕食などの準備も私がするようになりました。毎日ではありませんが、ほぼ毎日作っているので料理のスキルも上げられますね。私も鍛錬に参加する時がありますので、その時は学食で食べるようにしています。

 

 

あっ、今は授業中なので失礼しますね。

 

 

ーーー授業終了ーーー

 

 

教師「それでは今日の授業を終了します。明日も遅れないように!」

 

 

本日の授業も終わり、全生徒が荷物を纏めて帰る準備をしています。帰ると言っても寮の部屋に戻って荷物を置いてくるだけなのですけど。その後にお兄様との鍛錬の時間が来るのです。

 

 

冬香「お兄様、お荷物をお預かりします。」

 

八幡「あぁ、頼む。」

 

 

因みに私はお兄様が早く鍛錬をつけられるように、お兄様のお荷物は私が責任をもって部屋まで運ばせて頂いております。

 

 

陽乃「八幡く〜ん!一緒に道場行こっ!」ダキッ!!

 

八幡「うおっ!?おいやめろ雪ノ下、危ないだろ。」

 

陽乃「えぇ〜いいじゃん!どうせ八幡くんなら余裕で受け止められるでしょ?」

 

八幡「そういう問題じゃねぇよ。それと抱き着くな、離れろ。暑い。」

 

陽乃「じゃあ私の事名前で呼んでくれたらいいよ。前から言ってると思うけど、私の事は陽乃って呼んでって言ってるよね?」

 

八幡「はぁ……お前も懲りないな。分かったよ陽乃、これでいいのか?」

 

陽乃「よしっ!八幡くんからの名前呼び、頂きました♪これで一歩前進だね!」

 

八幡「何にだよ………」

 

 

………陽乃様、早くお兄様から離れてはくれないでしょうか?

 

 

陽乃「まぁこれ以上八幡くんにくっついていたら冬香ちゃんが怒っちゃうから離れるね……もう〜そんな顔で睨まないでよ〜。別に冬香ちゃんの彼氏を取ったりはしないからさ。」

 

冬香「陽乃様、何時も仰っているとは思いますが、私はお兄様と恋人同士ではありません。」

 

 

勿論、お兄様がそう望んでいるのであれば、私も喜んでそういうご関係になりたいとは思いますが……///

 

 

陽乃「もしもーし?冬香ちゃん?自分だけの世界に飛んで行かないで〜。お姉さん寂しいから〜。」

 

冬香「っ!も、申し訳ございません。ではお兄様、お先に失礼致します。後程道場で。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

この半年でお兄様を知らない者はこの学院でいなくなる程でした。流石はお兄様です。お兄様の実力も確かなのですが、教え方もお上手なので、1ヶ月前の序列戦では約4割の生徒が相手生徒に勝ったとか。

 

そしてさらに凄いのが、元々仲の悪かった木派と水派を対等の関係にさせてしまった事です。いがみ合っていた彼らが今では教え合うようになっているのです。これもお兄様が用いられた陰陽術のおかげなのでしょう。1つ下の後輩、虎峰くんもセシリーさんや黎兄妹のお2人に陰陽術を習っている代わりに簡単な武術を教えているのをよく目にします。これこそ師父の仰っていた【切磋琢磨】というものなのでしょう。

 

 

さて、私も早くお荷物を置いて、お兄様からの教えを受けなくては。

 

 

ーーー鍛錬終了後ーーー

 

 

八幡「それじゃあ今日の鍛錬は終了にする!風呂に入ったらちゃんと筋肉を揉みほぐしておけよ。今日は少しキツめにやったからな。じゃあ解散!」

 

 

「「「「「ありがとうございました!!」」」」」

 

 

冬香「お兄様、お疲れ様でした。タオルをどうぞ。」

 

八幡「あぁ。とはいっても、受け取る程の汗はかいてないけどな。」

 

冬香「そのようですね。ところでお兄様、今日は学食と私がお作りする夕食、どちらがいいですか?」

 

八幡「出来るなら冬香が作る夕食がいいが、お前も鍛錬で疲れているだろう?無理はしなくていいんだぞ?」

 

冬香「いえ、お兄様が食べたいと仰ってくれるのであれば全力でお作り致します!それに、お兄様からのその一言で疲れなど吹き飛びます!」

 

 

八幡(俺の一言で疲れ吹き飛ぶのか……凄いとは思うがそれはないだろ、絶対。)

 

 

八幡「分かった、じゃあお願いする。献立は任せる。」

 

冬香「はい!」

 

 

お兄様のためにも、美味しいお料理を作らなくては!

 

 

ーーー数十分後・八幡の部屋ーーー

 

 

八幡「おぉ……すげぇ美味そうだ。」

 

冬香「腕によりをかけて作りました。お口に合えばいいのですが……」

 

八幡「合わなくても全部食べる。お前が俺の為に作ってくれたんだ。食べないと作った本人に悪いだろ。」

 

 

お兄様……とても優しいといいますか、女心が分かっていると仰った方がいいのか分かりませんが、聞くと嬉しい事を平然と……だから私はお兄様に………

 

 

八幡「それじゃあ頂きます。」

 

冬香「……お兄様。」

 

八幡「ん?何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香「これからも、ずっと一緒にいましょうね。冬香との約束です。」

 

 

 

 

 

 

 





というわけで冬香編の終了です!!

いや〜良い兄妹愛が見られた気がします!



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小ネタ集 ①
閑話 ①


 

 

八幡side

 

 

八幡「皆さんこんにちは、比企谷八幡だ。さて、今回は前作『学戦都市の“元”ボッチ』の感想やメッセージの中でこのキャラとの絡みを出して欲しいとか、○○のその後が知りたいとかの公開をしたいと思う。今のところそんなにあるわけではないが、いくつかはあるので、この1話で伝えられるだけ伝えていこうと思う。」

 

シルヴィア「やっほ〜皆、シルヴィア・リューネハイムだよ。殆どの説明は今八幡くんがしてくれたけど、私たちを描いてくれている作者の力量じゃあ1話じゃあ終われないと思うから、皆暖かい目で見てあげてね♪」

 

生焼け肉「シルヴィアさん……なんか辛辣。」

 

シルヴィア「なら早く私と八幡くんの出会いも書いてよ!私すっごく楽しみにしてるんだから!」

 

生焼け肉「あぁ………はい。」ガクッ

 

八幡「んんっ!まぁそういうわけなんだが、メインの執筆は一時お休みして、前作と今作の小ネタとかを挟んで行くから、楽しみながら待っていてくれ。」

 

生焼け肉「決してネタ切れとかそういうのじゃないからね!ちゃんと出す女性キャラとかは決めてるからね!誰とは言わないけど!」

 

 

八幡/シルヴィア「それでは、どうぞ!」

 

 

八幡sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ〜懐かしいなぁ〜ようやく出てこれたよ〜!僕もずっと待ってたんだ!前作ではかなり活躍してたけど、声を出させてくれなかったからね〜……皆さんのご要望でこの度出る事になりました、【祢々切丸】だよ〜!!

 

 

祢々side

 

 

このお話は、八幡が序列2位になってすぐになった頃のお話……こんなエピソードがあったのは誰も知らない。

 

 

その秘話を今、解禁していくよ〜!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祢々『ねぇハッチー……暇〜。』

 

八幡「んなこと言われてもな……今日は休みなんだから仕方ねぇだろ。俺だって偶には身体を休めてぇんだよ。我慢してくれ。」

 

祢々『そんなこと言われてもさー!暇なものは暇なのぉー!最近ハッチーは拳法とか星仙術の鍛錬ばっかりやってるじゃん!腰にぶら下がってる僕がバカみたいじゃん!!』

 

八幡「いや、そこまで言うか?まぁでも確かに最近は剣を使った鍛錬はしてないからな。お前が退屈に思うのも仕方ねぇな。」

 

祢々『なんか退屈凌ぎないかなぁ〜……』

 

 

まぁ僕の退屈凌ぎっていっても、持ち主が剣で打ち合うだけなんだけどさ。

 

 

八幡「そういやお前って擬人化とか出来ないの?」

 

祢々『………ハッチーってバカ?』

 

八幡「なんで俺、聞いただけなのに貶されなきゃいけないんだ?俺なんか悪い事聞いたか?」

 

祢々『擬人化が出来るって分かってたら、こんな風に刀のままでいるわけないじゃん!!普通に出歩いて遊んでるよ!!』

 

八幡「あー……うん、そうだな。お前ってそういう性格だもんな。ゴメン、俺が悪かった。」

 

祢々『何で僕、こんな憐れみの感情を持たされながら謝罪されてるんだろう?』

 

 

なんか面白い事無いかなぁ〜………あっ!そうだ!!

 

 

祢々『ねぇねぇハッチーの旦那ァ?』

 

八幡「何だよ気持ち悪いな、急に変な喋り方しやがって。んで何だ?」

 

祢々『ハッチーが僕を刀掛けに置いてる時に時々よく聞くんだけど、最近なんか女の子とお話してない?それも他学園の生徒と。』

 

八幡「……なんでそんな事聞くんだ?」

 

祢々『だって気になるじゃん!!あのハッチーが女の子と会話してるって思ったら気になるじゃん!!ねーねー教えてよぉー!』

 

八幡「……大した相手じゃねぇよ。お前を握る前日に商業エリアで会った子だ。」

 

祢々『ほうほう……で?で?その子との関係は?』

 

八幡「関係って言われてもなぁ……友人でもねぇし、知り合いってくらいか?」

 

祢々『知り合い程度だったら、週に3〜4回も通信はしないと思うよ?それにハッチー気付いてないと思うけど、ハッチーの声もなんか上ずってるからね?』

 

八幡「何で分かる?」

 

祢々『分かるよ〜。だってハッチーが普段喋る時よりも、少しだけ声のトーンが高いんだもん!これは少なからず相手を意識しているって事だよ!』

 

 

ハッチーは結構分かりやすいからね〜!

 

 

八幡「……どうなんだろうな、俺自身その辺の事はよく分からん。好きになるってのもよく分かんねぇし。」

 

祢々『ハッチーは誰かを好きになった事ってないの?』

 

八幡「その感情がよく分からない。この気持ちが本当に好きなのかって判断していいのかもな。嫌いならよく分かるんだがな。」

 

祢々『でもさ、ハッチーはその子の事、どう思ってるの?ハッチーの心の中の全ては分からないけど、その子の事は一緒にいても悪い気持ちにはならないんじゃない?』

 

八幡「………あぁ、嫌いじゃない。むしろ……好き、なのかもしれない。」

 

祢々『おっ、来たね!来たねこれは!ついにハッチーにも春が!!』

 

八幡「何アホな事言ってんだよ。ったく、俺とあいつが釣り合うわけねぇだろ。」

 

祢々『へぇ……美人さんなの?』

 

八幡「世界の歌姫なんて呼ばれてるくらいだからな、絶世の美女だよ。」

 

祢々『ふぅ〜ん……でも僕はハッチーとなら仲良くやっていけそうだと思うけどなー。』

 

八幡「はいはい、お世辞をどうもありがとう。手入れしてやるからもうこの話はおしまいだ。」

 

祢々『やっはー!!ハッチーの手入れだー!!』

 

 

ハッチーの手入れは細かいところまで隅々やってくれるから気持ち良いんだよねー。ハッチーは本当にテクニシャンだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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閑話 ②

 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「というわけで、前作から出して欲しいキャラ2人目、行ってみるぞ。続いては……この人だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シオン「皆、久しぶりだ。八幡の式神のエリュシオン・C・タービンだ。シオンって呼ばれてる。要望があったから今日は俺の物語に付き合ってくれ。あまり面白いものではないけどな。じゃ、どうぞ。」

 

 

ーーーーーー

 

八幡side

 

 

しかし、冬香さんの使う式神ってのは本当に色んなのがいるんだな。妖怪ってのは陰陽術使ってれば誰だって知ってるが、あんなに悍ましいというか気持ち悪いのもいるんだな。なんか夢に出てきそうだ……

 

けど、式神かぁ………俺にはそういう自分に従ってくれる存在を獲得した事なかったな。流石に冬香さんが使役している式神は勘弁だが、やっぱ賢そうな奴とか強そうな奴がいいよな。けど、式神の対象って特にないからどうすればいいのか分からないんだよなぁ……妖怪でも人間でもいいわけだから。流石に死んだものとかはダメだけどな。

 

ん?妖怪はいいのかって?妖怪は別に死んだ人とかそういうものではないから大丈夫なんだ。

 

 

まぁ、探しててもいるもんじゃねぇからそのうち見つけるか。

 

 

八幡「さて、今日はどうするか……あの飯にやたらうるさい奴らが増えてから俺の部屋が急激に賑やかになったからな。早くどうにかしないとな。」

 

 

出ないと俺のオアシスがなくなってしまう。

 

 

ーーー散歩エリアーーー

 

 

八幡「買い物だけするつもりが、少し遠くまで来ちまったな。まぁいい、この辺りは散歩エリアだったからちょうどいい。少し歩いてから買い物に行くか。」

 

 

こうやってゆっくりするのも何だか久しぶりだ。最近は鍛錬とか教えとかで忙しかったからな。しかももうすぐ《王竜星武祭》だしな。俺は出場しないから別に関係ないが、シルヴィが出るから応援くらいはしないとな。

 

 

ガシャガシャッ!

 

 

ん?なんだ今の音?鉄の音?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは子供だったが、ただの子供ではなかった。身長は120〜130cmくらいで髪は青色で、右腕が生身ではなく、義手になっていた。しかも壊れているみたいだった。けどあれは……何だ?剣か?

 

 

八幡「おい、大丈夫か?」

 

???「っ!……なんだお前は?」

 

八幡「いや、なんだと言われてもな……それは俺の台詞なんだが?どっからどう見てもお前の方が怪しいだろ。」

 

???「………俺はエリュシオン・C・タービン。俗に言うサイボーグみたいなものだ、約身体の4分の1は。」

 

 

何だ?今の自己紹介になってない自己紹介は?まぁいいか。

 

 

八幡「俺は比企谷八幡だ。見たところ困ってそうに見えるが、大丈夫か?俺は機械とかそういうの得意じゃないから直すことはできないんだが……」

 

シオン「大丈夫だ。すぐに直るから。」

 

八幡「いや、そう言われても「集合修復、スタート。」………ん?」

 

 

タービンがそう唱えた途端、周りに散らばっていた金属部品が一斉に彼の右腕の義手に集まって一瞬で元通りになった。元の形知らないけどよ。

 

 

八幡「お前凄いな。」

 

シオン「別にこれくらい普通だ。それで、少し質問をしたい。ここは一体どこなんだ?」

 

 

シオンからの説明を聞くと、どうやらシオンは以前までの記憶がないみたいだった。身体の使い方や読み書き、言葉などは理解できているみたいだが、記憶のみが抜けているみたいだ。

 

 

シオン「……俺が何をしていた奴なのかも分からないとは……」

 

八幡「俺もこの六花の中で誰かが逃げ出したとかそういうのは聞いてないけどな……この六花も知らないんだろ?」

 

シオン「あぁ、初めて聞く。」

 

八幡「となると1人で出歩くのにも危険か……だが、だからといって俺の学院に寝泊まりをさせるわけにもいかないからな……どうしたもんか。」

 

シオン「いや、そこまでしてくれなくてもいい。俺は別に食事を摂らなくても3〜4日は耐えられる。」

 

八幡「その後は?」

 

シオン「………なんとかする。」

 

八幡「ダメだ、やっぱ放っておけない。でもどうするか………」

 

 

せめて誰か保護してくれそうな人でもいればなぁ……冬香さんの式神みたいに………式神?あっ、そうだ!

 

 

八幡「なぁ、お前俺の式神になる気はないか?」

 

シオン「式……なんだそれは?」

 

八幡「式神な。簡単に言えば俺が主人でお前が召使いみたいな関係だ。俺が衣食住を提供する代わりにお前は俺に従う。そんな感じだな。どうだ?」

 

シオン「………要するに、俺はお前に付き従えば今後の心配をする必要は無いということか?」

 

八幡「まぁ、そういう事だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シオン「分かった、お前の式神になろう。記憶がない今、無闇に行動するのは危険だからな、今はお前に付き従う事にしよう。」

 

八幡「成立だな。じゃあそこに立ってくれ。」

 

 

俺はタービンに向けて呪符を取り出して契約の呪文を唱えた。そしてタービンは正式に俺の式神となった。

 

 

八幡「これで契約完了だ。よろしくな、タービン。」

 

シオン「俺の事はシオンでいい。エリュシオンじゃあ長いからな。俺はお前をハチ兄って呼ぶ。これからよろしく頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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閑話 ③


この話も一応キャラ変注意です。




 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「とりあえず閑話の3人目だ。じゃあ俺は失礼する。会ったら絶対に閑話どころじゃなくなっちまうかもしれないからな。じゃあな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「今誰か通ったかい?まぁいい。なんで呼ばれたかは分からないけど、とりあえず自己紹介だね。俺は葉山隼人。元ガラードワース学園の序列10位だ。僕のこれまでの話をすればいいんだね?」

 

 

ーーーーーー

 

葉山side

 

 

俺の過去、それは輝かしいものだった。父親が弁護士、母親が病院の看護師をしている。そしてーーー

 

 

 

※本人の関係ない部分の過去話が長くなりそうなので、その部分は全カット致します。葉山氏に対しては大変申し訳なく思っておりません。(CV:八幡)

 

 

八幡「この辺りからだな、じゃあどうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は比企谷のせいで六花の名門校、聖ガラードワース学園を退学になっただけでなく、六花から永久追放される身となってしまったんだ。本来この場所にいるなのは比企谷だったはずなのに!!

 

……家に帰ったら中には誰も居なかった。後から聞いて分かった事なんだが、離婚してそれぞれの親元の所へ帰っていたらしい。俺も父さんと母さんの祖父祖母の家は行ったことがあるけど、今の俺にはそこまで行ける金がない。家にあった俺の金もそんなに無い。

 

だから両親のどちらかに会いに行くのは諦めた。だから俺は今居る家で過ごす事にした。取り敢えずは家の中にある食材とかをなんとか工面しながら過ごしていた。俺が追放されてからは何度もマスコミの奴らが来た。正直ウンザリしていたが、時が経つと共に消えて行った。

 

 

そして俺に、もう1度チャンスがやってきた。それは俺が追放されて5年後にシルヴィア・リューネハイムの引退ライブが行われる事になった。場所は横浜日産スタジアムでやるらしい。しかもそこに比企谷も参加するみたいだった。けど俺はチケットを買える程、金に余裕はない。だから断ったんだが、偽造チケットをくれると言ったから、その作戦に乗る事にした。横浜までの出費は痛いが、奴を倒せるのなら構わないと思った。

 

そして当日、俺は問題なくスタジアムを入ることが出来たんだが、案内された場所はなぜか真っ暗だった。中にも何十人か人が居たが、ライブ会場はこんなにも暗いはずではなかったと思う。

 

暫くして明かりが灯されると、俺は牢屋の中にいた。しかも観客席の目の前の位置に近い位置でだ。すぐ横にはシルヴィアさんと比企谷が立っていた。そしてシルヴィアさんは俺たちを犯罪者として逮捕させると言った。冗談じゃない!ここまで来てあいつに仕返しもできないまま逮捕だと?ふざけるな!!俺はガラードワースの序列10位だぞ!!

 

 

そう思った俺は逮捕しようとした警官を投げ飛ばしてステージにいる比企谷に決闘を申し込んだ。奴はこの場で不正できる道具は持って来ていないはずだ!だから俺の勝ちは必然だった。

 

 

そうだっだ筈なのに、俺は手も足も出なかった。しかもあいつに一撃も与えられなかっただけじゃなく、俺が食らっていた。それに、あいつの表情を思い出すたびに腹が立つ!!あいつは……あいつは俺が真剣に戦ってやっているのに、やる気のなさそうな表情をしていたんだ!!それに腹が立ったから俺は比企谷に向かって攻めまくった。だがその後から記憶が無い。目が覚めたら牢屋の中にいた。俺は逮捕されていた。後から聞いたら、あいつに顔面を蹴られていたみたいだ。その時の鼻は折れていたんだが、治療してくれたみたいだった。

 

 

後日、俺を含めた30人の偽造チケットを使った奴らは裁判所に向かい、罪を言い渡される事になっていた。もう決まっているみたいだった。

 

 

裁判長「判決を言い渡す!25名の者たちを有価証券偽造罪とし、懲役2年と処す!次に4名の有価証券偽造罪並びにその証券を作成した罪により、懲役5年に処す!最後に葉山隼人、有価証券偽造罪に加え、公務執行妨害、並びに非星脈世代への暴行により、仮釈放無しの終身刑とする!これにて閉廷!!」

 

 

………俺はこの裁判で一生牢屋生活が決まった。裁判でも聞かされていたが、シルヴィアさんが録音をしていたからだ。俺も承諾していたから、取り消しようがなかった。その後俺は長野の刑務所に搬送されて今に至る。

 

 

俺が刑務所に入った頃なんて酷く絡まれたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1「よぉクソガキ!なんだってオメェみたいな若い奴がムショん中に来たんだ?どんな悪さしたんだよ?」

 

2「聞いてやるなって!どうせロクでもねぇ事したんだよ!俺らと変わんねぇよ!」

 

「「「ギャハハハハ!!!」」」

 

 

全く最低な場所だ。品のない男共ばかりで女なんて1人もいない。楽しみなんて運動と食事くらいか。

 

 

葉山「……用がないなら行っていいか?」

 

2「ツレねぇな、兄ちゃん。此処に来たって事はなんかやったんだろ?俺達にも教えろよ!」

 

葉山「教えるつもりはないんだ。」

 

3「おいおい、いつまでもそんな態度だと俺らだって気分悪くなるってもんだ。んな刺々しい態度すんなよ。態度だけでも変えてくれや。」

 

葉山「………分かった。」

 

3「あぁ、そんだけだ。話したくなったら来てくれ。俺は一応聞いてやる。」

 

葉山「………」

 

 

俺は別に何もないままこの刑務所で過ごして10年が過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山「もうすぐ釈放なのか?」

 

2「あぁ、仮だけどよ。久しぶりに外の空気が吸えるぜ!まぁ、何したらいいか分かんねぇけどよ!」

 

3「普通に楽しんでくればいいんじゃねぇのか?」

 

2「それが分からねぇから困ってんだよ!」

 

1「葉山はどうなんだ?オメェずっと此処に居るけどよ、仮釈とかねぇのか?」

 

葉山「……俺は終身刑なんだ、仮釈なしの。だからずっとここが俺の家ってわけだ。」

 

3「おい、そりゃあ……」

 

1「何やらかしたらそんな風になるんだよ?」

 

葉山「別に……今となっちゃあどうでもいい事だ。ま、仮に仮釈出たとしても、俺はここの生活が気に入っちまったから出る気なんてねぇけどな。」

 

 

まぁ、これが今の俺ってわけだ。比企谷への復讐?んなもんとっくに忘れたよ。だって出られねぇんだから考えたって仕方ねぇだろ。なら俺はこの中で暮らしてた方がマシだからよ。

 

 

 

 

 

 





投獄中の葉山の言葉遣いの荒さが……囚人たちのが移ったかな?



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閑話 ④


今日は調子が出ない上にここまで時間がかかってしまいました………自分でも何を書いているんだかサッパリです。




 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「……取り敢えず最初の一言だけ言って、後はそいつに任せる事にする。4人目の登場だ、じゃあな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由比ヶ浜「ねぇ、今誰か通らなかった?私ここに呼ばれたんだけど………誰もいない。あれ?なにかなこの紙切れ………」

 

 

『とりあえず貴方の自己紹介と過去の出来事をお話してくれませんか?』

 

 

由比ヶ浜「何これ?まあいいや!やっはろー、私は由比ヶ浜結衣です!元星導館学園の生徒だよ!私の過去のを話せばいいんだよね?じゃあ高校時代の時の頃から話そうかなぁ………」

 

 

ーーーーーー

 

由比ヶ浜side

 

 

これは私がまだ高校1年生の頃の出来事、私は千葉の総武高校に通っていてーーー

 

 

※前回同様に長くなりそうなので、その部分は全部カットさせて頂きます。由比ヶ浜さんには大変申し訳なく思っておりません。(CV:八幡)

 

 

八幡「んじゃ、この辺りからスタートだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《王竜星武祭》の開催中にゆきのんからヒッキーと和解したって聞いてから、私の心の中にあったゆきのんとの友情とか何もかもが全部砕けた。だってそうじゃん!あんなにヒッキーを貶めようって言ってたのに、何で和解しちゃうわけ!?しかもゆきのんが謝ってだよ!?おかしいよ!謝るのはヒッキーの方なのに!!

 

でもその日から私はゆきのんとは一切話さなくなった。小町ちゃんとは半年前くらいから話さなくなっていたんだけど、多分だけどヒッキーが原因しているんだと思う。だって《鳳凰星武祭》の終わったその日にヒッキーから縁を切るって言われたんだもん。そりゃ傷つくよね………だから私はヒッキーを許さない!!

 

 

とは思ったものの、私1人じゃあ良い考えも作戦も思いつかなかったし、協力してくれそうな人も居なかった。それも少し考えれば当たり前の事だった。今、ヒッキーは凄く話題になってる人、そんな人を悪者扱いなんてしたら、叩かれるのなんて私に決まってる。だから私は色々考えた。影で何か出来ないかを……表の人間が使えないのなら裏の人間を使おうと思った。けど、協力してくれる人は居なかった。

 

私がヒッキーの名前を出すと、何も聞かなかった事にするとだけ言って、私の前から去っていくの。何で?ヒッキーのどこが怖いの?後から調べたんだけど、ヒッキーの2つ名は【万有天羅】になっていた。意味は私でも知っている。その2つ名を持っている者の自由を妨げてはならない。

 

 

ヒッキーの2つ名の意味とか恐ろしさを知ったのは、この時が初めて。何をどうしたらいいかなんて全く分からなかった。

 

 

その日からかな?ヒッキーの事で手を出すのをやめた頃は。だって作戦もないし、人もいないから、どんな風にヒッキーを陥れればいいのか分からないんだもん!

 

 

そして私が何も行動を起こさずに終わって、学園を卒業した。

 

卒業した私は某飲食店のホールで働いている。今ではヒッキーのことを思い出す事なんてほぼ無い。もうどうでもよくなったのかな?別にいいけどさ。

 

 

「由比ヶ浜さーん、6番テーブルのお客様の注文出来たよ〜!」

 

由比ヶ浜「はーい!」

 

 

今は夢中になれるものが増えたから何かに没頭するようなことはない。前まではヒッキーにどうやって復讐をするか考えていたと思うけど、今はこの仕事が楽しいからそんな事を考えることがなくなった。

 

 

でも、偶に見かける。私が仕事終わりに自分の家に帰る時に、ヒッキーとシルヴィアさんが仲良く手を繋ぎながら歩いているのを。2人の様子は遠目から見ても分かるくらい幸せそうな表情をしていた。私もヒッキーのあんな笑顔は初めて見た。最後に私に向けた顔は本当に敵意をむき出しにしている顔だったから。

 

可能性なんて微塵もないのに、ついつい期待してしまう。まだチャンスはあるんじゃないかって。でも自分に言い聞かせている。もう無理だと。あの頃には戻れない。何をどうやったとしても、私はもう変われない。あの3人でまた依頼を解決したいと思ってしまう………でも、そんなのはもう実現しない。

 

 

だから私もヒッキーに拘るのはもうやめた。これからは私の働いているお店の為に、頑張ろうって思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3人とのその後


閑話を出す前に1〜30で出したキャラクターのその後を書いてみました。

1つ1つ別物になっていますのでご安心を!


 

 

オーフェリアside

 

 

あぁ……まるで夢みたい。またお花に触れるようになれるなんて。もうダメだと思っていたのに、再会したお兄さんが全部なんとかしてくれた。会長さんにもお兄さんの事を話すと、良かったねって言ってくれる♪今の私は毎日が充実しています♪お花のお手入れをしたり、ご飯を作ったり、お出掛けをしたり、お散歩をしたり、お兄さんとデートをしたり(これがほとんど)して、今まで経験できなかった事を全部やろうという勢いで今を楽しんでます♪

 

 

オーフェリア「お兄さ〜ん、早く早く〜!」

 

八幡「分かったからそんなに急ぐな、転ぶぞ。UFOキャッチャーは逃げないから。」

 

オーフェリア「でも中身の景品は無くなってるかもしれないじゃん!天は急げって言うでしょ!それと同じだよ!」

 

八幡「善は急げ、な?……まぁそこまで言うのなら、俺も走ってやるよ。」

 

オーフェリア「えへへ〜ありがと♪」

 

 

お兄さんは私のやりたい事を全部やらせてくれる。勿論、危ない事はやらせてくれないけど、それでも私に色んな事をやらせてくれる。お兄さんって界龍の序列2位なんだけど、学院の中でお師匠さんみたいな事もやってるみたいなんだ。だから私も学院の授業が終わったら、界龍に行ってお兄さんにお稽古をつけてもらってるの。でも、星仙術と陰陽術って難しいね………

 

私たち《魔女》と《魔術師》は星辰力を媒介にして魔法という能力を使ってるけど、星仙術は同じく星辰力を媒介にするんだけど、魔法として使わないからそこが難しいの!私もう魔法として使うのに慣れちゃったから、意識して他の術を使おうとしてもすぐに魔法になっちゃうんだ………

 

 

陰陽術もお兄さんに教わってるんだけど、お札の呪文が難しくて……確か、きゅうきゅうよにつんりょう?だったかな?

 

 

※正しくは急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)です。

 

 

そう唱えてるんだけど、何にも出てこないんだ……私ってこの手の才能が皆無なのかな?でも、お兄さんは呪文はちゃんと唱えないと発動しないって言ってたから、もっと練習しないとって思ったの!私は諦めが悪い子だからもっと頑張る!

 

 

……まぁ私とお兄さんのお稽古の話はこれくらいにして、今を存分に楽しまなくちゃね♪あっ、私が欲しいぬいぐるみあった!!

 

 

オーフェリア FIN

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑side

 

 

月日が経つというのは早く感じるものですね。私と八幡が家族になってからもう4年が経ちました。こんなにも1日の経過が早いと感じたのはいつ振りでしょうか?八幡と過ごしていると、時間の経過があっという間に感じてしまいます。

 

息子の八幡は今や学院の序列1位の座を3代目【万有天羅】から勝ち取り、今は八幡が【万有天羅】を名乗っています。これで《親子二代【万有天羅】継承》を果たしましたね。さらにそれだけではなく、八幡は全星武祭をシーズン内に全て優勝した為【三冠制覇】を達成しました。私も現役に達成していますので、これも《親子二代【三冠制覇】達成》の大偉業をしました。母親として、とても誇らしいです。

 

 

八幡「母さん、荷物持つから。」

 

小苑「いつもすみません。」

 

八幡「いや、普通の事だろ。」

 

小苑「ふふ、そうでしたね。」

 

 

今は私と八幡の2人で食材を買いに来た帰りです。私たちがこのスーパーによく来るせいか、最初はなぜか夫婦と間違われました。いえ、八幡と夫婦というのは嫌というわけではありませんが、歳が離れ過ぎていますので。それに八幡にはシルヴィアさんという大切な恋人もいますから、そう言われるのはあまり良しとはしないでしょう。まぁ過去の話ですからね。更に付け加えると、まだシルヴィアさんとお付き合いする前のお話ですから。

 

 

小苑「八幡、学院は楽しいですか?」

 

八幡「あぁ、楽しく過ごしてる。あのチビをからかうのは楽しいな。」

 

小苑「楽しみ方に問題はあると思いますが、星露なら問題ないでしょう。」

 

八幡「あいつをからかうの、俺の楽しみになってきてな。反応見るのも楽しくなってきた。」

 

小苑「ふふっ、八幡はますます私に似てきましたね。星露をからかうのが楽しみだなんて。」

 

 

こんな風に毎日を過ごしています。八幡は本当によく出来た息子です。シルヴィアさんも家に遊びに来たり泊まりに来たりしますが、私のお手伝いなどをよくしてくれます。彼女もとても良い子ですね。

 

ふふっ、こんな生活が続いて欲しいという願いは贅沢過ぎますが、それだけ幸せだという証拠ですね。

 

 

小苑 FIN

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬香side

 

 

「それじゃあ今日の授業はここまで。ちゃんと予習しておくように。」

 

 

漸く授業が終わりました。すでに大学単位を取っている私にとっては簡単な授業でしたが、退屈ではありませんでした。それはお兄様の真剣な表情をずっと見ていられたからです。とても素敵でした。

 

ですがお兄様もご多忙な方です。いつまでも悦には浸っていられません。

 

 

冬香「お兄様、お荷物をお部屋まで運んでおきます。」

 

八幡「いつも悪いな。」

 

冬香「いえ、お兄様は今や学院の顔です。その顔であるお兄様のお役に立てるのなら、雑用でもこなしてみせます!」

 

八幡「いや、流石に自分のことは自分でやるからな?て言っても鞄運んでもらってるのは悪いとは思ってるが。」

 

冬香「そ、そう思うのでしたら、その……お部屋にお戻りになったら………」

 

八幡「……あぁ、分かったよ。」

 

 

ーーー鍛錬終了後ーーー

 

 

八幡「鍛錬終了!それぞれ帰る準備に移れ!」

 

 

「「「「「ありがとうございました!!」」」」」

 

 

冬香「お兄様、お疲れ様です。タオルをどうぞ。」

 

八幡「あぁ、すまない。」

 

 

これだけの生徒をお1人で教えている……私もお手伝いして差し上げたいところですが、お兄様のお教えに支障が出ては元も子もありません。歯痒いですが、私も自身の励みになるようにお兄様の鍛錬を受けています。

 

 

ーーー八幡と冬香の部屋ーーー

 

 

この部屋はお兄様と私の部屋となっており、学院側もそれで承諾を取っていた。当初はお兄様が反発していたのですが、誰もお兄様に賛同する方がいらっしゃらなかったので、このまま過ごす形になりました。

 

 

冬香「お兄様、夕食の用意は出来ておりますが、先にご入浴になさいますか?」

 

八幡「いや、先に飯にする。冬香の作る飯は美味いからな。」

 

冬香「そ、そんな事はございません。お兄様に比べたら私のなど………」

 

八幡「そんなこと言うな。お前の料理は本当に美味い。それに毎日違う料理作るから飽きないしな。」ナデナデ

 

 

……これが私の楽しみの1つ、お兄様から頭を撫でられる事です。昔されたようにお兄様の手はとても暖かく撫で方が優しく丁寧なので、すぐに逆らえなくなってしまいます。

 

 

八幡「少しは自分に自信を持て。お前の作る料理は美味い。これはさっきも言ったが、それだけ本当だという事だ。いいな?」

 

冬香「………はい、お兄様。」トロォ…

 

八幡「よし、じゃあ食べるか。」

 

冬香「はい!」

 

 

こんな風にお兄様と毎日楽しく過ごせたら、というのが冬香のたった1つの願いでございます。

 

 

冬香 FIN

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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なんだこりゃ?


緩和がネタ切れに………どうしましょう。


 

 

八幡side

 

 

八幡「……なぁ、ふと思ったんだけどよ。」

 

オーフェリア「ん?どうしたのお兄さん?」

 

小苑「どうしましたか?」

 

冬香「どうかなされましたか?」

 

八幡「母さんを除いたら、俺は一応オーフェリアと冬香の兄的な立場にあるって事だよな?」

 

オーフェリア「う〜ん……そうだよね、私もお兄さんの事は本当の兄のように思ってるし、お兄さんだからね!」

 

冬香「お兄様は私の兄同然のお方です!文武両方に優れ、お優しいお兄様なんですから、兄と呼ぶのは当然のことです!」

 

小苑「……のようですよ?」

 

八幡「茶化さないでくれ。まぁこれは別にどうでもいい事なんだが、お前達って呼び方を変える気は無いのか?」

 

2人「呼び方?」

 

八幡「あぁ。お前達が呼びやすいような呼び方って言うのか?オーフェリアだったら、『お兄さん』から『お兄ちゃん』って普通に変えるとか。」

 

冬香「お兄様は呼び方を変えて欲しいのですか?」

 

八幡「そういう訳ではないが、他の呼び方って出来るのかなって思ってな。特に冬香が。」

 

冬香「……そう言われると自信がありません。私は小さい頃からお兄様と呼んでいましたから。呼ぶ事は出来るかもしれませんが、実際そうしろと言われるときっと戸惑ってしまいます。」

 

オーフェリア「私は色んな呼び方出来るよ!」

 

八幡「じゃあオーフェリアが『お兄さん』以外で呼びやすいのは?」

 

オーフェリア「お兄ちゃんとにぃに!」ムンッ!

 

 

おぉ……これまた普通だが、最後のはなんか擽られるような感じだな。

 

 

小苑「可愛らしい呼び方ですね。オーフェリアさんならではといったところでしょう。どうですか、八幡?」

 

八幡「想像通りではあるが、にぃにってあまり聞かないから少し気になるな。試しに呼んでみてくれないか?」

 

オーフェリア「にぃに〜!」

 

 

………割と破壊力のある子の呼び方、うん!封印!これは俺の身が持たない!!

 

 

八幡「うん、やっぱ『お兄さん』だな。オーフェリアはそっちの方が合ってる。冬香はこれなら呼べるってのは決まったか?」

 

冬香「決めはしましたが、本当に呼ぶとなると抵抗があります。」

 

八幡「じゃあちょっと言ってみてくれ。」

 

冬香「はい。は、八幡お兄様。兄上様。兄様。これが私の精一杯です。」

 

 

………うん、これもなんだか予想通りですね。

 

 

小苑「もう少し砕けた感じにはできないのですか?軽いタッチで『兄さん』とかはいかがですか?」

 

冬香「い、いえ!敬愛するお兄様にそのようなお言葉を発するわけには参りません!!」

 

オーフェリア「冬香さん、1回呼んでみたら?」

 

冬香「え?」

 

オーフェリア「試しに『お兄ちゃん』って呼んでみてくださいよ!そしたら何か変わるかもしれませんよ!」

 

小苑「物は試しです。1度お呼びになってみては?」

 

冬香「……小苑様がそう仰るのなら1度だけ。」

 

 

なんかコソコソしてるが、乙女の会話は盗み聞きしない方がいいよな。

 

そう思っている間に冬香が近付いてきた。え?なんで冬香だけ?母さんとオーフェリアは?

 

 

八幡「冬香、なんであの2人だけあそこにいるんだ?」

 

冬香「た、たいした理由でありません!お……お………」

 

八幡「………お?」

 

冬香「……お、お兄ちゃん!!//////////」

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュッ!!

 

 

冬香「ふぇ!?え、えぇ!?お、お兄様!!?」アタフタ!

 

八幡「すまん。急に抱き締めたくなったからこうさせてくれ。」

 

冬香「は、はい……」

 

 

 

 

 

小苑「オーフェリアさん、自ら言った事なのですから邪魔をしてはいけませんよ?」

 

オーフェリア「うぅ〜!!」プルプル

 

 

 

 

冬香「あ、あの……お兄様?そろそろ………/////」カアァ

 

八幡「いや、まだだ。」

 

冬香「さ、左様ですか?」

 

 

冬香(や、やりました!まだお兄様に抱き締めてもらえます!オーフェリアさん、ありがとうございます。)

 

八幡(さっきの冬香、すげぇ可愛かったなぁ。)

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

冬香「お、お粗末様でした///」カアァ

 

八幡「いや、全くお粗末じゃない。ご馳走様でした。」

 

冬香「さ、左様ですか///」カアァ

 

オーフェリア「むぅ〜お兄さん!2人だけの雰囲気作らないでよ!ちゃんと私達もいるんだからね!」

 

小苑「その通りですよ?旦那様。」

 

 

…………は?

 

 

八幡「えっと、母さん?」

 

小苑「いいではありませんか。2人が妹であるなら、私は姉か妻という立場になるのが自然だと思いますよ?」

 

小苑「なので旦那様、オーフェリアと私にも構ってください。私達は旦那様に構ってもらえないと死んでしまうのです。」

 

オーフェリア「そうだよお兄さん!私達にも構って!でないと死んじゃうんだから!」

 

冬香「お、お兄様。その……よろしければ私にも構って頂けたら嬉しいです。」

 

 

あれ?なんか俺、いつの間にか大変な立場になってない?

 

 

八幡「お、おう……とりあえず落ち着け。俺は母さんの旦那さんじゃねぇし、お前達も構ってもらえなかったらくらいで死にはしないから。」

 

オーフェリア「死んじゃうもん!構ってもらえなかったらお兄さんと一緒に心中するんだもん!」

 

 

やめなさい!そんな言葉を使うんじゃありません!

 

 

 

 

 

 

 

 





みなさま、もしよろしければ何かネタをください………

出ないと僕、次の作品に手が出ちゃいそう………


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異世界の私たち

とりあえず今回はこんな感じで!




小苑side

 

 

皆様こんにちは、八幡の母の小苑です。さて、取り敢えずは挨拶は済ませましたね。今私は八幡のご学友(?)であるオーフェリアさんと冬香さんの3人とお話をしています。見た目の雰囲気とは違い、お2人は八幡の事になると前のめりになりながらお話をしてきてくれます。余程八幡の事を気に入っていると見受けられます。

 

 

※今回は3人のキャラを合わせてますが、本来は全く別の物語で進めています。苗字も今回だけ『比企谷』設定にします。

 

 

オーフェリア「へぇ〜……じゃあお兄さんがあんなに強いのは小苑さんの教え方が上手だったからなんですね!」

 

小苑「いえいえ、私の教えなんて普通に過ぎません。八幡の理解力が良かったのと、飲み込みが早かったからですよ。」

 

冬香「そうだとしても、自身の体の中にある星辰力の量の把握や扱い方に長けていないと難しいですからね。」

 

オーフェリア「それにお兄さんは魔法の具現化まで出来るんだから凄いよね〜。小苑さん、私にもお兄さんに教えたような技術、教えて下さい!」

 

小苑「構いませんよ。八幡にも漸く妹弟子が出来ましたね。」

 

オーフェリア「妹弟子……やった!」

 

 

こんな風に八幡を讃えながらお話をしてくれます。私としても気分が良いので、追い返す気にもなりませんね。元々ありませんが。

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

小苑「……おや、もう外が暗くなってきましたね。まだ明るい内にお帰りになった方がいいですよ。」

 

オーフェリア「もっとお話して居たかったですけど、しょうがないですよね。また今度にします!」

 

冬香「またお兄様のお話をさせてください。」

 

小苑「はい、お待ちしておりますよ。」

 

 

2人が玄関に向かって靴を履き、扉を開けたその瞬間、突然目の前が光で輝きました。

 

 

私たちは途端に目を瞑って眩むのを回避しましたが、目の前には信じられない方々が立っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと、私たちだったのです。

 

 

小苑「私?(儂?)」

 

オーフェリア「私?(………私?)

 

冬香「私?(私?)」

 

 

………どういう事でしょう?

 

 

とりあえず混乱すると思ったので、3人を家の中に入れました。勿論、家から出ようとした2人もです。

 

 

お互いに自分の事を教え合って分かったことは何点かありました。

 

1つ、言葉遣い

 

2つ、歴史の違い

 

3つ、八幡との接点や関係

 

 

他にもありますが、取り敢えずはこのくらいですね。

 

 

小苑「……成る程、そちらの八幡はお弟子さんなのですね。」

 

小苑(元)「うむ、そうとも言えよう。付け加えるなら儂の大切な息子でもある。例え姓が違ったとしても家族と同じじゃからのう。」

 

小苑「……確かにそうですね。そのお気持ち、よく分かります。」

 

 

オーフェリア「へぇ〜そっちのお兄さんも優しいんだ!」

 

オーフェリア(元)「………えぇ、私に色々な事を教えてくれたわ。八幡には本当に感謝しているわ。」

 

オーフェリア「……1回でいいからそっちのお兄さんに会ってみたいな〜。そしてお話してみたい!」

 

オーフェリア(元)「………私もそっちの八幡には興味があるわ。(気軽に撫でてくれるのかしら?だとしたらこの機会に……)」

 

 

冬香「そちらではお兄様は歳下なのですね。」

 

冬香(元)「はい。ですがそちらは年上のようですね。そちらの八幡様もさぞご立派な方なのでしょう。」

 

冬香「えぇそれはもう!もし許可が下りるのであれば、是非お会いして欲しいです!」

 

冬香(元)「ふふ、私も同じ気持ちです。貴方にも是非、こちらの八幡様と会ってもらいたいものです。」

 

 

………どうやら険悪にはなっていないようですね、何よりです。ですが、こんなにも違うものなのですね、異世界の私たちというのは。

 

 

私はジジ言葉を使い、オーフェリアさんは少々無口?いえ、冷静というべきでしょうか。冬香さんはあまり変わりはありませんが、大人っぽさがありますね。

 

そうなると息子の八幡も気になりますね。異世界の八幡はどんな風になっているのでしょう?私たちの世界の八幡とあまり変わりがなければいいのですが………

 

 

冬香(元)「そういえば、そちらの八幡様はお付き合いされている方はいらっしゃるのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………お付き合い?八幡が?誰と?

 

 

小苑「いえ、いませんが……まさかそちらの世界ではいらっしゃると?」

 

小苑(元)「うむ、おるぞ。名を言っては楽しみがなくなるから言わんでおくが、あやつら程六花でイチャイチャしている2人組はおらんじゃろうな。」

 

オーフェリア(元)「………少しは変わってほしいと思うわ、それと自重。」アキレ

 

冬香(元)「それでこそあの2人とも言えますから、私はなんとも言えませんが、とてもお似合いだと思います。」

 

 

オーフェリア「お、お兄さんに彼女………でも私はお兄さんはお兄さんだって思ってるから……でも、うぅ〜ん。」

 

冬香「あ、あちらのお兄様に恋人が………ど、どうしましょう?私にももしかしたらチャンスはあるかもしれないのでしょうか?で、ですがお相手はお兄様ですし……でも可能であれば………」

 

 

………段々お2人がお悩みの様子になって参りましたが、それ程気にする事でもないでしょうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小苑「それで、お付き合いされている方のお名前と学園の名前を教えて頂けますか?教えて頂けましたら、こちらでお調べしますので。」ズイッ!

 

小苑(元)「お主が1番気にしておるじゃろう……」ジト-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラの名前後についている(元)ですが、あれは前作の“元”ボッチの元から来ています。



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閑話 ⑤


とあるユーザー様のアンケート回答を頂きましたので、そちらを出させて頂きます。誠にありがとうございます。




 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「さて、今回は5人目だ。前回と前々回のように俺を恨んでいる奴じゃないから安心してくれ。いや、なんで読者を安心させてんだ?俺は………まぁいっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京華「はーちゃんありがとう!皆さんお久しぶりです、川崎京華、界龍の中等部1年生です!今回は私のエピソードを話していきます!はーちゃんあの時の美味しい鰻の蒲焼き、また作ってくれないかなぁ〜♪」

 

 

ーーーーーー

 

京華side

 

 

皆知ってると思うけど、私は凄く早い時期から界龍第七学院に入学しています。昔の事はよく覚えてないけど、私も六花に行きたかったから沙希お姉ちゃんに転びながらお願いしていたみたい……今考えるとちょっと恥ずかしい///

 

その事もあって、私は……確か4歳か5歳くらいに六花に来てそこの保育園に通う事になってたんだけど、はーちゃんに沙希お姉ちゃんがやっていた空手の動きを真似てパンチをしたら、何故か保育園の入園が取り消しになって界龍第七学院に入学する事になったの。しかも史上最年少で。今ではその理由は分かるんだけどね。

 

 

それからはいつも沙希お姉ちゃんと柚珠奈さんが遊んだり、お稽古をつけてくれたから、同年代の子の中ではそれなりには強い方だと思っている。まぁその時は同年代の子なんて1人もいなかったんだけどね。けど、ルーお姉ちゃんも私の相手を偶にしてくれたから界龍のお兄ちゃんお姉ちゃん達の実力の高さは小さかった私でもよく知ってる。

 

 

それから私は初等部に入ってお勉強やお稽古を積むようになったんだけど、どっちも簡単過ぎたの……だから、お試しにはーちゃんとお稽古してもらったんだけど、いつもやってるお稽古と違った。私達初等部がやっていたのは基礎中の基礎の動きを布の巻いてある木に当てる事だったんだけど、はーちゃんとやったのは本当に実践的な動きばかりだった。

 

まず木を使わなかった。はーちゃんが言うには『そこに木があると、もう目の前に敵がいる事になってしまうから。動きの予習なら構わないが、相手を想定しての鍛錬をするなら、絶対にしない方がいい。』って言ってた。その時の私にはよく分からなかったけど、今ならよく分かる。だってもう懐に入られてるって事だもんね。

 

目の前で動きの確認をした後は、はーちゃんの前でやる事になって、攻め方と防ぎ方の両方をやった。その時やってみて思ったのは、お兄さんの手が2つ以上あるように思えた。跳ね返しても次から次へと腕が伸びて来るんだもん。今となっては、はーちゃんの腕の回転率が速いって分かってるけどね。

 

 

こんな風にはーちゃんたちやお兄ちゃんお姉ちゃんたちと一緒にお稽古をしていたら、段々動きが見えるようになってきたの!だから私は決めました!初等部の3年生になったら、公式序列戦に挑んでみようって!私も凄く緊張する。だって相手は私よりもずっと大きい大人だもん。勿論沙希お姉ちゃんからも反対されたけど、私がやりたいって決めた事だから強く説得した。そしたらお姉ちゃんは渋々了承してくれた。

 

 

として当日。私は出場選手の待つステージに行く途中にはーちゃんに会って話をした。

 

 

八幡「けーちゃん、いよいよだな。」

 

京華「うん、やるだけやってみる。」

 

八幡「あぁ、今はまだそれでいい。だが、2つ言っておく。相手はお前よりもずっと年上で大きい奴だ。それに武術の鍛錬もかなり積んでいる。厳しい言い方をするが、けーちゃんの今までの鍛錬時間が塵同然なくらいにな。」

 

京華「っ……」

 

八幡「だが、だからといって諦めるなよ?自分の力を信じろ。でなければ勝てる試合も勝てなくなる。最後の最後まで自分を信じろよ。」

 

京華「う、うん。」

 

八幡「そしてもう1つ。京華(けいか)……もしもこの試合に勝ったら、お前はこの学院の看板を1つ背負う事になる。大袈裟に言ったが、序列上位になればなる程にその重みは増していく。お前に学院の看板を背負うというその覚悟はあるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、初めてはーちゃんが私の事を名前で呼んだ。それもあるけど、はーちゃんの雰囲気がいつもと違うから自然と背筋が伸びた。

 

 

京華「……はい、あります。やらせてください!」

 

八幡「………よし、なら俺は何も言わない。序列戦、頑張れよ。」

 

 

そしてはーちゃんがそのまま歩いて行ったんだけど、その時のはーちゃんの背中はとても大きく見えた。本当に界龍を背負っているかのように。あれが、この学院を代表するって意味なんだって初等部の私でも分かった。

 

そして私はその時初めて思った。はーちゃん……ううん、尊師に近づきたい。追いつきたい。ゆくゆくは追い抜きたいって。

 

 

その後の序列戦は小さい身体を活かしてスピード重視で戦った私の勝ちだったけど、とても疲れた。課題点がたくさんある戦いだったけど、たくさんの人達が褒めてくれた。『年上の人に勝つなんて凄い!』『動きが早くて見えなかった!』『見ていて身体が熱くなった。』なんて言う人も出てきて、同級生の子たちも私と鍛錬をするようになった。

 

 

今では中等部の1年で私の序列は46位。まだまだ下だけど、いつかは、あの八幡お兄ちゃんが辿り着いた序列1位になって5代目を継承するのが私の夢です。星武祭にも出たいとは思ってるけど、今は身体作りに専念しています。

 

 

「京華ちゃ〜ん!ほら早く早く〜!鍛錬始まってるよー!」

 

京華「うん、今行くねー!」

 

 

今友だちに呼ばれたから、私のお話はこれでおしまいね。私の夢にたどり着くまでの道はまだまだ遠いけど、諦めずに目指していきます!!

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、というわけで今回は中等部になった京華ちゃんのお話でした!!



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閑話 ⑥


今回もとあるユーザー様のご要望で書かせて頂きました。本当にありがとうございます。

そして何も思い浮かばない私、とても情けない………




 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「そんじゃあ6人目の登場だ。俺が六花生活をしてきた中で、この人のいない印象がないと言ってもいいくらい濃く残っている人だ。じゃあ、後は任せる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽乃「ひゃっはろー皆!六花パークの社長、雪ノ下陽乃だよ〜!さて、じゃあ今回は私の話をしてくね〜。あっ、因みに言っとくけど面白くないって思っても私のせいにしないでよ?じゃあ、行ってみよー♪」

 

 

ーーーーーー

 

陽乃side

 

 

私が界龍を卒業した後、私は早速《獅鷲星武祭》で勝ち取って手に入れた新開発エリアのパーク建築に力を入れた。元々このパークを作ろうと思ったのは、六花での楽しみは何も星武祭だけではないと、世間の人達に知ってもらう為。そもそも、六花には娯楽的要素なイベントが星武祭くらいしかない。いや、それしかない。だから私はパークを作ろうと思った。

 

設計図の元に建築は進められていて、私が卒業した頃には土台の部分はもう仕上がっていた。後はメインの部分を取り付けるのと、市場や試運転をして問題がなければいつでも運営可能になる。そしてパーク内にはお母さんが取締役を務めている雪ノ下建設が経営するホテルも建築される予定。だから泊まる場所にも苦労はさせない仕組みにしてあるんだよ!お姉さん凄いでしょ!

 

 

まぁ今の所はトントン拍子で進んでるけど、営業開始にはきっと1〜3年はかかる。その間に私のパーク内で『お店を開きたい!』とか『支部店を開きたい!』とか『是非我が社と契約して欲しい!』というオファーも多くあった。最後のは絶対お金目的だろうけどさ。

 

 

色んな事があったけど、特に何事もなく順調に建築は進んでいった。そしてシーズン最後の星武祭である《王竜星武祭》が開催される。私も端末で観戦する予定だった。でも、八幡くんからの突然の通信で開いてみると、目の前には『俺が合図を出すまでは何も喋るな。』と背中に影で書いてあった。端末にはお母さんもいだ事には驚いたけど、もっと驚いたのは八幡くんが話していた人物だ。

 

 

相手は雪乃ちゃんだった。

 

 

私とお母さんは雪乃ちゃんの言葉を静かに聞いていた。雪乃ちゃんは今までしてきた事を八幡くんに謝罪していた。八幡くんが合図を出して私たちも会話に混ぜてくれたけど、もちろん謝罪1つだけで許す程、私は甘くない。むしろ甘っちょろいと思ってる。そこで母さんがどれくらい本気なのかを試すように雪乃ちゃんに質問をした。雪ノ下家を除籍するのか、除籍した場合は姓はどうするのか、雪乃ちゃんはその答えを包み隠さずに堂々と答えた。自ら進んで除籍をする道を選び、新しい姓も『葉山』にするとまで言った。

 

この言葉には私もお母さんも本気だと思わざるを得なかった。そしてその日の夕食にお母さんと私、そして雪乃ちゃんの3人で食事をしようと約束をして通信を切った。私としては、漸く目を覚ましてくれてよかったと思っているけど、無駄にした時間も長過ぎると思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪ノ下母「久しぶりですね、雪乃。いえ、お昼に通信でお話しましたか。」

 

雪乃「はい。」

 

陽乃「雪乃ちゃん、別にもう敬語じゃなくていいよ。もう私達は雪乃ちゃんの事を敵だなんて思ってないから。まぁ八幡くんに迷惑をかけたら別だけどね。」

 

雪乃「そんな気は毛頭ないわ。私もあの後、彼とは関わらないつもりでいたのだけれど、『別に総武高といた頃の関係でいい。知り合い以上仲良し未満。』って言われたわ。」

 

陽乃「あっはは!八幡くんらしいね〜。」

 

雪乃「えぇ……姉さん、学院での彼はどんな感じなの?」

 

陽乃「そうだね〜……昔と比べるのもおこがましいくらい積極的になったよ。八幡くんと稽古した時なんて………もう激しくて体が動かなくなっちゃって……」

 

雪ノ下母「陽乃、少しはしたないですよ?」

 

陽乃「ゴメンゴメン!でも、それくらい変わったって事だよ。肉体的や精神的な強さにおいても彼は本当に強くなった。雪乃ちゃんも彼と稽古すれば分かるよ〜?」

 

雪乃「……そうね、少し頼んでみようかしら?」

 

 

あれれ〜?なんか本気になっちゃった?

 

 

陽乃「ま、まぁ?彼はもう彼女持ちだからいつ暇かは分からないけど、もう大学部だからある程度は自由にしてるんじゃないかな?多分だけどね。」

 

雪乃「そうね。私の学園でも単位を取っていればその科目は受けなくてもいい事になっているから、暇が出来たら彼にも鍛錬を頼む事にするわ。」

 

陽乃「そうするといいよ。さて、じゃあそろそろ食べよっか♪」

 

雪ノ下母「そうですね……さっ、2人とも。料理が冷めないうちに頂きましょう。」

 

 

その後は家族揃って楽しく談笑!……とまでは行かなかったけど、楽しく会話をする事は出来た。でも、家族がこんな形で揃えたのは嬉しかったよ。

 

 

その2年後には六花パークを開園させる事が出来て、今ではシーズン以外でも遊びに来てくれる六花の住人や観光客もたくさん居る。だから売り上げもうなぎ登りです!さすがはハルちゃんだね♪

 

さらに1年後、雪乃ちゃんは最後の《王竜星武祭》で優勝して、栄光を飾る事が出来ました♪最後のチャンスでよくやったね、雪乃ちゃん!

 

 

さすがは私の自慢の妹だよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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施術とある療法説明



最後は八幡とシルヴィア(もしかしたら他のキャラも出てくるかも?)のイチャイチャをご堪能下さい!




 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「どうだシルヴィ、気持ちいいか?」

 

シルヴィア「んん〜気持ち良いよぉ〜……やっぱり八幡くん上手〜♪」

 

八幡「お前な……少し溜め込み過ぎだぞ?ここなんてこうしたら……」

 

シルヴィア「んっ、んあっ♡………も、もぉ八幡くんってば……あんまり刺激しないで……」

 

八幡「でもこうしないと溜まる一方だ。今のうちに、な?」

 

シルヴィア「う、うん……優しくね?」

 

八幡「分かってるよ。優しく丁寧に気持ち良く、だろ?」

 

シルヴィア「うん/////」

 

 

六花のとあるエステサロン。八幡とシルヴィアはそこに訪れていた。何故かというと、シルヴィアのツアー遠征が終了して2人で休日デートを満喫していたのだが、シルヴィアの疲労がまだ抜けきれていないと判断した八幡が、エステを見つけて施術をすると言ったのだ。

 

それを聞いたシルヴィアは即答で「お願いします!」と答えた。おそらく、というよりも確実に八幡に施術をしてもらいたいからであろう。それと八幡に触られたい理由も少しあるのかもしれない。

 

 

シルヴィア「んっ……ふぅ〜……んんっ!はうぅ…あっ、んんぅ!はぁ……はぁ……」

 

八幡「やっぱり連続でライブやってるから背中結構凝ってるな。寝る前にストレッチでもしたら少しは緩和出来るんだぞ?したか?」

 

シルヴィア「し、してたよ……んっ!で、でもこん、な風に……んんっ、なるって事は……あんまり効果、出てない?」

 

八幡「少しは緩和されてはいるんだろうが、それにしては効き過ぎているからな。」

 

シルヴィア「そ、それは八幡くんが……テ、テクニシャンだから、だよぉ〜。」

 

 

それから数十分間は、誰とも分からない女性(シルヴィア)の美声(喘ぎ声)に耳を傾けている他の女性客もいた。施術している人が余程上手いと判断したのか、他の女性客も今の人(八幡)を指名する程になってしまっている。

 

 

シルヴィア「ふぅ〜ありがとう八幡くん。おぉ〜体が軽いよ〜♪さっきとは嘘みたいだよ!」ツヤツヤ

 

八幡「そいつは何よりだ。じゃあデートの続きに行くか。何処がいい?」

 

シルヴィア「うーん……少しお腹が空いてきちゃったからお昼にしない?私良いお店知ってるからさ!」

 

八幡「そうだな……よし、じゃあメシにするか。」

 

シルヴィア「うん!」

 

 

そして2人は仲良く手を繋ぎながら施術室から出たのだが、2人同時に出たのがいけなかった。

 

 

「え!?比企谷八幡さんにシルヴィア・リューネハイムさん!?もしかして中で施術してたのって………」

 

「あの、少し質問しても良いですか?」

 

八幡「は、はい?何ですか?」

 

「中でマッサージの施術をしていたのは、比企谷さんですか?それとも他の先生さんが?」

 

八幡「いえ、俺がですけど?」

 

 

すると急に他の女性客が一気に押し寄せてきた。

 

 

「では次は是非、私に施術をお願いします!」

 

「いえ、私にお願いします!」

 

「最近肩の凝りがひどくて……お願いできませんか、先生?」

 

 

何故か八幡を指名する人が殺到。八幡はこの店のスタッフというわけではないのだが、指名の嵐だった。

 

 

シルヴィア「んんっ!八幡くんは私とデート中なんです!それと、八幡くんのマッサージは私だけしか予約できないので失礼します!」

 

 

シルヴィアはそう宣言すると、女性客の包囲網を掻い潜ってお店を後にした。

 

 

ーーー六花・商業エリアーーー

 

 

八幡「悪いなシルヴィ。」

 

シルヴィア「ううん、気にしないで。半分私のせいでもあるから。でも八幡くんのマッサージって気持ち良いんだよね〜。誰かに習ったの?」

 

八幡「いや、独学だ。鍛錬しているうちに体が痛くなった時があってな。試しに調べたら血行が悪くなっていたり、凝りが酷かったりと凄かった。その時からだな、自分でストレッチするようにしたり、分身にマッサージしてもらったり、瀉血するようにもなったのは。」

 

シルヴィア「しゃけつ?」

 

八幡「今でこそされてはいないが、中世ヨーロッパ辺りで流行った治療法だ。今でいう血液採取に近いな。マッサージでは吸い玉としても使われている。少し話がそれだが、瀉血は主に体内の血液を有害物と一緒に外部に出して回復させるっていう考えの1つだ。実際に今でも日本では馬に施術している例もある。有害物と一緒に血を抜くからその血はどす黒かったり、ドロッとしている血が多い。それに、ひどい時は血塊(けっかい)の状態で出てくる事もある。」

 

シルヴィア「うわぁ………も、もしかして八幡くんはその状態だったの?」

 

八幡「あぁ。分身で試しに吸い玉でやってもらったら、結構汚い血が出てきた。それに血塊もあったな。けど抜いた後は体は凄い軽かった。さっきのシルヴィの反応が当たり前かもしれないが、やる前と後とではかなり違うもんだぞ、この治療。」

 

シルヴィア「でもこれやるのって勇気がいるよね……だって自分の血で現状が分かるんでしょ?それに健康か不健康だっていうのも。」

 

八幡「いや、確かにそれもあるが、あくまでも身体から有害物を取り除くのが目的だからな?血を見たり、健康状態を確認するのが目的じゃないからな?」

 

シルヴィア「分かってるけど、その治療法はやだからね!」

 

八幡「分かってるよ、俺だってシルヴィの身体には傷なんてつけたくない。だったら優しいマッサージをやって良い声を聞いている方がよっぽどマシだ。」

 

シルヴィア「………もう、八幡くんのエッチ///」ジトォ-

 

 

 

 

 

 

 

 





瀉血の説明についてはあってるかどうか分からない部分もあるので、そこまで触れないでいただけると嬉しいです。



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パーシヴァル編
とある伯爵家の執事とメイド(?)



皆様、お次の女性キャラはこのお方です!




 

 

八幡side

 

 

欧州にある1つの屋敷がある。その屋敷はとある伯爵家の屋敷が所有する1つであり、俺『比企谷八幡』はその屋敷に仕える執事の立場だ。俺の家系は代々、この地方の貴族達の執事として働いている。当然俺の親や祖父母、曾祖父母やその前もずっと仕えている。おかしいとは思ってるだろうが、俺の生まれは確かに日本だ。ただ祖先のしきたりからか分からないんだが、子供が結婚して子供が出来たら日本に帰国させて育てるという訳の分からない風習が出来てしまったのである。日本でもこの地方でも変わらないと思うが、なんか拘りみたいなのがあったんだろう。

 

 

そんなわけで今俺はある1人の新人の教育係に任命されている。その新人は覚えはいいんだが、いかんせん他人に対して興味がないというか無関心というか……それに、無表情なんだよ。俺には少しだけ心を開いてくれているのかどうか分からんが、話をしたりはする。けど他の人とは俺と同じ風には話さないな。そして今日も彼女と一緒に仕事を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「っと、そろそろ時間だ。行くぞパーシヴァル。」

 

パーシヴァル「はい、比企谷様。」

 

八幡「………前にも言ったと思うんだけど、その比企谷様ってやめてくれないか?俺は別にお前の主人じゃないんだぞ?」

 

パーシヴァル「……いえ、比企谷様はいつも丁寧に仕事を教えてくれます。これは私なりの誠意なのです。なのでそう呼ばせてください。」

 

八幡「……じゃあ俺の父親や母親が来たら何て呼ぶんだ?」

 

パーシヴァル「そもそも呼ぶ機会がございません。」

 

 

こいつは本当に動じないな………よし、ちょっと揺さぶるか。

 

 

八幡「それは何か?俺としか話したくないから他の人は眼中にないってか?」

 

パーシヴァル「眼中にない、というわけではありませんが、今のところ私が興味を持てる人物、というよりも気軽に話せる人物は比企谷様だけなので。」

 

八幡「もう少し話し相手を増やせよ……」

 

パーシヴァル「私には比企谷様がいれば充分なので、それ以外は特に話し相手は欲しくありません。」

 

八幡「そ、そうか……」

 

 

………こいつ、マジなのか?1番は主人だろうに。

 

 

ここだけの話、パーシヴァルは捨て子なのだ。両親が誰かも分からず、赤ん坊の頃にこの伯爵家の門前に放置かれていたとか。俺はその頃日本にいたから詳しい事は分からないんだけどな。最近になって給仕の仕事をしてもらう事が伯爵様からの命で決定したから俺が1から教えている。

 

けど、最近になって問題になってきたのは、パーシヴァルが俺と同じ格好をするから男なのか女なのか見分けがつかなくなってきたのだ。いや、胸元を見ればどちらか分かるかもしれないが、それは失礼というものだ。この屋敷に住んでいる者なら分かっているとは思うが、パーシヴァルって髪は短く切り揃えてあるし、顔もどちらかというと中性的な感じだ。故に、買い出しとかに行ったら必ず性別を聞かれるのだ。

 

しかもパーシヴァル自身もかなり落ち着いているためか、もっと男に見られやすい。メイド服を着ればいいのに、何故かそれを嫌がるのだ。理由は分からないが。だから執事服を着ている。稀にだけどいるよね?女なのにスカートではなくズボンにする人って。本当に稀だけど。

 

 

八幡「1週間前にもやったと思うが、今日はこの区画だ。窓ガラスの拭き掃除に花瓶の中の水の入れ替え、床に汚れがあったらとるように。」

 

パーシヴァル「はい。」

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

伯爵「ただいま、八幡にパーシヴァル。」

 

八幡「っ!これは旦那様、行く道を阻んでしまい申し訳ございません!」

 

伯爵「構わないよ。この屋敷を綺麗にしてくれているんだからね、それくらいの事で怒りはしないよ。パーシヴァルも仕事はどうだい?」

 

パーシヴァル「……まだ2週間なので、どうとも………ただ、少しだけ作業には慣れました。」

 

伯爵「そうか、それは良かったよ。それはそうと、2人共このところ働き詰めだろう?少し休みを取るといいよ。無理ばかりしていては身体に毒だからね。」

 

八幡「ありがたきお言葉なのですが、休暇を頂いてもする事がございませんので。街に行くにも、私共が自由に使える金銭は限られていますから、こうして屋敷の掃除をしていた方がまだ暇を潰せますので。」

 

伯爵「八幡、労働精神が高いのは良い事だけど、知らない内に体は悲鳴を上げていくんだよ?少しでも良いから身体を休めなさい。」

 

八幡「……失礼いたしました、旦那様。」

 

伯爵「分かってくれればいいんだよ。パーシヴァルも八幡と一緒の方が気分も楽だろう。お金は私が出してあげるから2人で街にでも出かけて来なさい。2人はまだ13歳なんだから、遊ぶことも覚えないとダメだよ?」

 

八幡「あ、ありがとうございます。」

 

パーシヴァル「………ありがとうございます。」

 

伯爵「うん。じゃあ僕は自室に戻るよ。君達も作業が済んだら休んで良いからね。」

 

2人「はい。」

 

 

旦那様はにこやかにそう言うと、奥へと向かった。あの人はとても良いお方だ。俺達執事だろうと平等に見てくれる。俺の先祖や父さんと母さんがこの人に、いやこの伯爵様の家系に仕えている意味がよく分かった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、というわけでパーシヴァル編でした!!

原作とは違い、欧州貴族の執事&メイド(?)からのスタートにしてみました!!


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2人の日常?

 

 

八幡side

 

 

今日の仕事も終えて、俺とパーシヴァルは宿舎に戻っている。今聞いたから分かると思うが、屋敷と宿舎は分かれている。俺たち下っ端の執事やメイドはこの宿舎で寝泊りをしている。一方で俺の父さんや母さんは旦那様とその奥様の付き人をしているから屋敷暮らしなのだ。簡単に言えば近衛みたいなものだ。だから基本、俺はパーシヴァルと寝泊りをしている。

 

おかしいとは思うが理由もある。この屋敷に10代で働いているのは俺とパーシヴァルただ2人だけだからだ。その中に30〜60辺りのお兄さんからおじさん、若しくはお姉さんからおばさんの間で暮らすとなると緊張してしまう。慣れたらどうって事ないんだろうが、そこは旦那様が気を利かせてくれた。まぁ、その時はあまり気にしていなかったが、今は思春期とかそういうのもあるから同室が女の子というのは意識してしまうものだ。

 

 

八幡「ふぅ……今日も疲れたな。」

 

パーシヴァル「そうですね。」

 

八幡「……そういや気になってたんだけど、パーシヴァルって将来なりたい事とかってあるのか?」

 

パーシヴァル「どうしたんですか、急に?」

 

八幡「いや、お前ずっとこの屋敷暮らしだろ?まぁ俺もなんだけどよ、なんかこれやってみたいっていうのはあるのか?」

 

パーシヴァル「将来、ですか………今まで考えた事もありませんでした。この屋敷で育ち、この屋敷で人生を終えるものだとばかり思っていましたので。」

 

八幡「いやいや、それは流石にないだろ。」

 

パーシヴァル「ですが、そうですね………少しニュアンスは違うと思いますが、学校へ行ってみたいと思います。」

 

八幡「学校?」

 

パーシヴァル「はい。私が知る限りではこの近辺にも学校というものはありますが、あまり生徒の数は多くない様子です。なので、一度でも良いので六花の学校に行ってみたいと思っています。」

 

八幡「六花かぁ……俺達の年ならまだ行けるだろうけど、学費とか払わないといけないからな〜。」

 

 

行けたとしても、観光くらいだろうな。まぁそんな暇なんてあるわけがないんだけどな。

 

 

パーシヴァル「はい、なのでそれは諦めています。私達は旦那様の身の回りのお世話をする事が業務ですから。」

 

八幡「そうだな……よし、じゃあ着替えて飯でも食いに行くか。」

 

パーシヴァル「そうですね。」

 

 

そしてパーシヴァルは執事服を脱ごうと服に手をかけている……俺も早く……って違う!!

 

待て待て待て待て!!

 

 

八幡「おいおい!俺がいるんだからまだ着替えるな!外に出させてくれ!」

 

パーシヴァル「………私は比企谷様なら構わないのですが?」

 

八幡「俺が構うんだよ!お前も少しは羞恥心を持て!」

 

 

そして俺は自室から出た。あいつ、偶にこういうとんでもない事をするんだよな。しかも俺だから問題ないとかって言い出すし。俺ってもしかして、異性として見られてないとか?それはそれで何かくるな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーシヴァル「……新しい下着の感想を聞きたかったのですが、残念です。彼にならと思ったのですが……」

 

 

ーーー食事室ーーー

 

 

はぁ〜………参った参った。まさか俺がいるのにも関わらずに着替えるとはな。まだ全て着ている状態だからよかった、これが上とか脱いでいたら……いや、やめておこう。

 

 

パーシヴァル「比企谷様、今日も美味しそうですね。」

 

八幡「あぁ、此処の料理人も良い人だ。俺たちの為にも食事を作ってくれるんだからな。」

 

パーシヴァル「感謝しなければなりませんね。」

 

???「良い心掛けですね、感心しますよ。」

 

 

俺たちに話しかけてきてくれたのは、この宿舎の代表をしている人で、名前はセバスチャン。本人はもう年だと言っているが、60歳を過ぎてあの身体はヤバ過ぎる。だって執事服から筋肉が隆起してるんだもん。

 

 

八幡「セバスチャン様、お疲れ様です。」

 

セバス「お疲れ様です。先程の会話を聞かせて頂きました。パーシヴァルの言う事は最もな事です。我々が無意識のうちに食しているこの料理も全て旦那様の料理を作っている料理人が作った物です。我々はこの料理をもっとありがたく食べなくてはいけませんね。」

 

パーシヴァル「はい、仰る通りです。」

 

セバス「時に八幡、貴方のご両親は旦那様と奥様の付き人をしているんでしたね?」

 

八幡「はい、その通りです。それが何か?」

 

セバス「いえ、前は仕事が休みの前日によく酒を交わしていましたからね。今ではお互いに随分忙しくなった身、あまり今までのような事が出来なくなってきましたからね。少し伝言を頼みたいのです。『今度また3人で飲んだくれましょう。』と。」

 

八幡「……分かりました、伝えておきます。」

 

セバス「よろしくお願いします。では、私は先に失礼します。」

 

 

俺に伝言を託してセバスチャン様は食事室を退室した。

 

 

八幡「……じゃ、俺達も食うか。」

 

パーシヴァル「そうですね、比企谷様。」

 

八幡「……なぁ、本当にその苗字に様ってやめてくれないか?本当にむず痒くて仕方ないんだ。」

 

パーシヴァル「では、なんとお呼びすればいいですか?」

 

八幡「いや、普通に比企谷とか名前呼びとかでいいだろ。」

 

パーシヴァル「……では、八幡……さん。」

 

八幡「……うん、まぁそれが無難か。」

 

パーシヴァル「しかし、まだ慣れませんね。」

 

八幡「そのうち慣れんだろ。」

 

 

やっと変えてくれたか……これでむず痒い思いをせずに済むな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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舞踏会の前準備


一気に時を超えました。




 

 

ーーーーーー

 

 

比企谷八幡とパーシヴァルが共に仕事をするようになってから約1年の歳月が経った。パーシヴァルが1人でも仕事をこなせるようになった頃、八幡は漸く指導係として外され、パーシヴァルは1人で作業をこなす事になった。そして2人は覚えも早いこともあってか、あっという間に清掃や挨拶、礼儀やその他の作法、料理、知識、剣術や槍術などといった武芸を次々とこなしていった。

 

そしていつの間にか2人は、伯爵家の守護統括隊長と副隊長に任命されていた。そう、自分たちよりも遥かに年上で歴も長い大人を差し置いてである。なので2人は今は給仕としてではなく、騎士として屋敷の中を警備している立場になっている。

 

 

そんな中、当家当主の伯爵から2人に話が持ち掛けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「舞踏会……ですか?」

 

伯爵「あぁ、今度の日曜日に開かれる事になっていてね。日頃この屋敷を守ってもらっているお礼として、君たちに是非参加してもらいたいんだ。」

 

八幡「……折角の申し出なのですが、私と副隊長が抜けては代理の者が居なくなってしまいます。勿論、部下を信用していないわけではないのですが……」

 

パーシヴァル「屋敷を守れないとなると、旦那様の衣食住に問題が生じてしまいます。」

 

伯爵夫人「その点は問題ありません。屋敷にはセバスチャンを残していきます。彼なら問題ないと思いませんか?守護統括隊長様?」

 

 

セバスチャンは60歳の年寄りだが、その分この屋敷にいる年月は誰よりも長く、地形や戦術なども数多く知っている。また本人も戦う事が出来る。組手では八幡とパーシヴァルが2人で掛かっても、未だに勝てたことがない程である。

 

 

八幡「それなら安心なのですが……」

 

比企谷父「八幡、時にそのような申し出を断る時は主人の気分を害するものだと思え。」

 

八幡「はっ、失礼致しました!」

 

伯爵「それで、一緒に来てくれるかな?」

 

八幡「その申し出、喜んでお引き受けさせて頂きます。」

 

パーシヴァル「隊長が行くのであれば、私も同行致します。その申し出、私もお受け致します。」

 

伯爵「引き受けてくれて嬉しいよ。」

 

伯爵夫人「私も嬉しく思います。それではタキシードとドレスの採寸をしなくてはなりませんね。八雲、明、お願いします。」

 

2人「畏まりました。」

 

 

八幡(た、タキシード!?)

 

パーシヴァル(……ドレス?)

 

 

八幡「だ、旦那様?我々が行くのは警護が目的ではないのですか?」

 

伯爵「ん?もちろんパーティのだよ?警護は主催者側がするから問題ないよ。」

 

比企谷父「行くぞ八幡、早く採寸をする。」

 

八幡「え?あ、ちょっ……」

 

比企谷母「パーシヴァルはこっちよ。当日に向けてしっかりコーディネートしてあげるわ。」

 

パーシヴァル「………私もタキシードではダメでしょうか?」

 

比企谷母「ダメよ。貴女も女の子なんだからそれに見合った服装にしないとダメ。」

 

 

こうして八幡とパーシヴァルは舞踏会へ参加する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なっちゃったのである。

 

 

八幡side

 

 

ーーー舞踏会当日ーーー

 

 

比企谷父「うん、中々様になってるぞ。」

 

八幡「こんな窮屈な服着たの初めてだ。執事服はもっと軽やかで余裕あったのに。」

 

比企谷父「そりゃ給仕をする奴が動きづらい格好をしてたら、出来るものも出来なくなるだろうに。」

 

八幡「それはそうだが……」

 

伯爵「似合っているじゃないか八幡。」

 

伯爵夫人「これで貴方も貴族ですね。」

 

八幡「あ、ありがとうございます。お世辞でも大変恐縮です。それから奥様、私などでは旦那様や奥様のようにはなれません。」

 

伯爵「お世辞じゃないよ。さて、あとはパーシヴァルだけど、これは待つしかないね。女性は準備に手間をかけるからね。紳士、騎士たるものは女性を待つのも己を磨く嗜みだよ。」

 

比企谷父「流石は旦那様でございます。」

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

少しの間会話をしながら待っていると、扉からノックの音が聞こえた。

 

 

比企谷母「失礼致します。旦那様、パーシヴァルの準備が出来ました。」

 

伯爵「ご苦労様。ん?パーシヴァルは何処だい?」

 

比企谷母「こちらに。」

 

パーシヴァル「し、失礼いたします///」

 

 

声と同時にパーシヴァルが入室してきたのだが、言葉が出なかった。目の前にいるのは本当にいつも俺の隣にいたパーシヴァルなのかと目を疑った。黒のロングスカートに青の方が露出したドレスを着ていて、腕には純白のロンググローブを履いていた。

 

 

伯爵「うんうん、パーシヴァルもよく似合っているよ。八幡くんも感想を言ってあげたらどうだい?君の副官がこんなに綺麗になったんだ。一言くらいかけてあげるべきだよ。」

 

パーシヴァル「だ、旦那様!私にそのようなお言葉は……」

 

八幡「あー……その、見違えた。なんつーか、すげぇ綺麗だ。」

 

パーシヴァル「っ!!あ、ありがとう……ございます/////」(カアァ)

 

 

おい!そこでもっと顔を赤くするなよ!俺も変に意識しちまうじゃねえか!

 

 

伯爵「さて、これで全員揃ったね。じゃあ早速向かおうか。紳士諸君はエスコートする女性を忘れないようにね。相手は言わなくても分かるよね?」

 

 

……相手くらいは分かるから、俺は無言でパーシヴァルに向けて手を差し伸ばした。

 

 

八幡「……今日のお前は副隊長ではなく、1人の淑女だからな。俺もその対応をさせてもらう。」

 

パーシヴァル「は、はい///」

 

 

パーシヴァルは俺が差し出した右手を左手で掴んだ。そしてそのまま俺がエスコートをする。当たり前の事だが、見知った仲だからこそ、今まで以上に恥ずかしく感じた。それと旦那様に奥様、そんな生暖かい目で見ないでください!父さんと母さんも初々しいとかそんな感情を込めた目で見るな!初めてだから仕方ないだろう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーシヴァル「八幡さんからのエスコート……か、顔が熱いです/////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





パーシヴァルの顔はラノベの表紙で見たから分かりますが、あの顔の赤面を想像したら、破壊力が凄まじかった。



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舞踏会 ①

前回書き忘れていましたが、パーシヴァルの服装は
『最弱無敗の神装機竜』のクルルシファー・エインフォルクのドレスです。




 

パーシヴァルside

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

……やはり落ち着きません。この格好もそうなのですが、一番の理由は八幡さんといるからです。いつもの服装ならいつも通りに出来るのですが、この格好で……しかも目の前で『綺麗』だなんて言われたら、意識してしまいます///

 

それに、八幡さんは気づいていないと思われますが、車の中でも手を繋いだままなのです///マナーとしては無礼のうちに入りますが、恥ずかしながら私はこの時間が少しでも長く続いて欲しいと思っております。なので街に出てからは赤信号が出ることばかりを祈るばかりです///

 

 

運転手「八幡様、パーシヴァル様、ご到着致しました。」

 

 

………なんで幸せな時間や楽しい時間というのは、こうもあっという間なのでしょう。

 

 

ーーー会場内ーーー

 

 

城内には問題なく入ることが出来ました。やはり侵入者を未然に防ぐためか、金属探知機やサーモカメラ、監視カメラや警備兵が多く配備、整備されていました。この会場内にも、恐らくは外にいた人たちよりは腕の立つ人たちなのでしょう。

 

私は今でこそこんな風に余裕を装っていますが、実際はそんなに余裕はありません。

 

 

八幡「……凄い場違いを感じるな。」

 

パーシヴァル「……そうですね。」

 

八幡「此処にいるのは殆どが爵位をお持ちになっている貴族の方々だ。粗相をしないようにとは思っているが、やはりなぁ………」

 

パーシヴァル「仕方のない事です。私たちは1年前までは給仕、今では騎士なのですから。貴族になりきれというのは無理があります。」

 

八幡「ま、それもそうだな。」

 

 

幾分かは気が楽になりました。やはり八幡さんと一緒だと気持ちも落ち着きます。八幡さんが大人びているからでしょうか?

 

しかし、旦那様に奥様、八幡さんのお父様とお母様はどちらに行かれたのでしょうか?先程からお姿が見えません。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

主催貴族「皆様、今宵は我が城にお集まり頂き、感謝申し上げる!今宵は好きなだけ飲み食いや会話を交え、満足のいく催しになる事を願っている!」

 

 

主催者様がそう仰ると、先程からいる皆様は会話を続ける方たち、食事をする方たち、ダンスをする者たちと別れています。

 

 

八幡「俺たちは……目立たないように食事でもするか。」

 

パーシヴァル「そうですね、それが賢明でしょう。」

 

 

私たちはそう決めて人の多い場所で食事をしていたのですが、何故か同年代の方たちから話しかけられるようになってきました。

 

 

1「見るからにお美しい……あなたのような美貌は初めてお見受けしました。」

 

2「私も貴女のような可憐な女性は初めてお会いしました。どうでしょう?私と一曲……」

 

3「何を仰いますか○○公。私がお誘う申し上げるところだったのですぞ?」

 

4「いやいや、皆さん分かっていない。彼女は俺と一曲するんだ。淑女(レディ)、お手をどうぞ。」

 

2「君はどさくさに紛れて何をしているんだね?私の邪魔をしないで頂きたい。」

 

 

………どうしましょう、断る機会を失ってしまいました。かといって切り抜けるのはほぼ不可能です。どうすれば………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「パーシヴァル。」

 

 

っ!!

 

 

パーシヴァル「……八幡さん。」

 

八幡「少しだけ踊らないか?少し身体を動かしたくなってな。(身動き取れないんだろう?早くこっちに来い。)」

 

パーシヴァル「は、はい!御一緒します!皆様、失礼いたします。」

 

 

私は私に詰め寄ってきた方たちに一礼をした後に八幡さんのところへと向かいました。後ろからはいくつもの視線がありましたが、今は八幡さんのお側にいたいので気にしません。

 

 

パーシヴァル「すみません八幡さん、どう切り抜けていいか分からなくて………」

 

八幡「そうだろうな。けど、これでお前も分かっただろう?お前にはそれだけ魅力がある。俺が綺麗だって言ったのも少しは分かっただろう?」

 

パーシヴァル「は、はい……よく理解できました///」

 

八幡「それじゃ、少しだけ踊るか。」

 

パーシヴァル「はい、八幡さん。」

 

 

そこからは、私と八幡さんで踊る事にしました。ああ言った以上、踊らないのは不自然ですからね。ですがいつの間にか皆様の目が私たちにだけ向けられていました。八幡さんが気づいているかどうかは分かりませんが、今踊っているのは私と八幡さんの1ペアだけでした。

 

 

「やはりお美しい……」

 

 

「綺麗な子ねぇ……誰のご息女かしら?」

 

 

「彼も中々……」

 

 

「とても息が合っている……お見事です。」

 

 

「あれくらい、俺にだって出来る。」

 

 

「中々素晴らしい踊りだね。」

 

 

 

 

八幡「なんか……目立っちまってるな///」

 

パーシヴァル「そ、そう…ですね……///」

 

八幡「そろそろ戻るか。と、言いたいところではあるが、今戻ったら……」

 

パーシヴァル「確実にまた踊らされますね。」

 

 

それは私も嫌だった。踊るのは構わないのですが、私は何故か八幡さん以外の男性と踊るのはあまり気が進みませんでした。

 

 

結局私たちはその1曲が終わるまで踊り続けました。その分疲労も溜まったので流石に私たちに一曲踊ろうと話しかける方たちはいませんでした。賛辞のお言葉は頂きましたけど。

 

 

「いやぁ実に素晴らしい踊りだった!お相手の殿方はともかく、踊られていた貴女は今宵の月明かりのように輝いていた!先程の儚げな笑顔がまた良かった!どうだろう?次は僕と踊っては頂けないかな?」

 

 

………この人とは踊りたくない、私は即座にそう思いました。八幡さんの事を卑下したお方とは踊りたくもない。

 

 

パーシヴァル「申し訳ありませんが、先程一曲分踊ってしまったので少し足が疲れてしまいまして……今日はもう踊らない事にしていますので。」

 

「ほう、足がお疲れですか!それはそれはお相手のリードがさぞかし無茶かつ無謀なものだったのだろう!私はそのような無茶なリードはしない!少しだけで良いのだ、私と踊ってはくれないだろうか?」

 

パーシヴァル「………お言葉ですが、彼はそのようなリードはしておりません。それに私は1曲分を踊ったから疲れたと申しました。彼を誹謗中傷するようなご発言はお止め下さい。」

 

八幡「………」

 

「貴女はとてもお優しい方のようだ。だが、このような男の気遣いなど無用だと思うが?何処からどう見ても平凡な顔をしている。むしろ貴族かどうかも怪しい。貴殿に問う。何処の出だ?爵位は?」

 

 

……マズイ事になりました。矛先が八幡さんに向けられてしまいました。八幡さんは涼しい顔をしていますが、返答次第では笑い者にされてしまいます。

 

どうすれば………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、絶体絶命(?)どうなるか!?


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舞踏会 ②

 

パーシヴァルside

 

 

どうしたらいいのでしょう………このままでは八幡さんのお顔に泥を塗ってしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「そんな事はこの場ではあまり関係ない事だと思うけど?◇◇伯爵のご子息殿。」

 

「何だね?私は今目の前の男と会話中なのだ、邪魔をしないでいただ……!?フ、フェアクロフ公爵殿!!?」

 

「その呼び方は僕には不要だよ。僕はまだ親の子に過ぎないんだからね、公爵と呼ばれるのは心外なんだ。それよりも、この催しの場で貴族出身かどうかの関係はあまりよろしい行為とは思えない。この場には純粋貴族ではない出身の方々も参加しておられる。彼らだけでなく、その方々に対しても失礼な物言いだと思われるよ?」

 

「そ、その通りですな!おっと、私はまだ挨拶が残っております故、失礼させてもらいます。」

 

 

伯爵様のご子息様がそう言うと、足早にこの場から立ち去ってしまった。

 

 

八幡「ありがとうございます。どう振り切れば良いか悩んでいたところを……」

 

「気にすることはないよ。僕はああいう性格の人があまり好きじゃないだけだからね。自分が受けたものでもないのに、それを着飾っているような気がしてね、どうしても性に合わないんだ。あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はアーネスト・フェアクロフ。公爵の出身だけど、あまり気にしないでほしい。今はこの催しに参加しているけど、聖ガラードワース学園に所属している高等部2年だよ。よろしくね。」

 

八幡「六花最強の剣士と謳われているあなたにお会いできるなんて光栄です。私は○○伯爵に仕えております、守護統括隊長の比企谷八幡といいます。隣にいるのが副官のパーシヴァルです。」

 

パーシヴァル「お会いできて光栄です。」(ペコ)

 

アーネスト「そんな堅苦しい挨拶はやめて欲しいんだけどね……でも、よろしく。けど……成る程、○○伯爵に仕えているのなら、その物動じない態度も納得出来る。あの方は僕が会ってきた貴族の中でも友好的に話せる人の1人だからね、そんな人に仕えている騎士と仲良く出来るのは嬉しいね。」

 

 

………なんというか、本当の貴族という感じの方です。しつこさや粘りさを感じさせない、一定の距離をとって話しています。旦那様以外にもこのような方もいらっしゃるのですね。

 

 

アーネスト「しかし、君たちのような才気溢れる存在をこのままにしておくのは少し勿体ない気がするよ。」

 

八幡「……どういう事です?」

 

アーネスト「僕はね、君たちをスカウトしたいと思ってるんだ。六花にある六学園の1つ、聖ガラードワース学園に。」

 

2人「っ!!?」

 

 

………驚きました。まさか初めて会った人に学園にスカウトするなんて。この人は私たちがどれほどの実力を持っているのかも知らないはず。そうにも関わらず私たちをスカウトしました。八幡さんなら理解出来るのですが、非才の私が行っていいものか………

 

 

アーネスト「勿論、○○伯爵殿には僕からも話は通しておくけど、少し考えておいて欲しい。その年で屋敷の守護統括の隊長と副隊長をする程なんだ、剣やその他の腕前も優秀だと僕は見込んでるよ。じゃあ失礼するね。」

 

 

フェアクロフ公爵様は一方的に話を終わらせて、そのまま立ち去ってしまった。恐らくは旦那様の所に行かれたのだと思われますが……

 

 

八幡「……まさかスカウトされるなんて思ってもみなかったな……しかもあの【聖騎士(ペンドラゴン)】から直々にオファーされるなんてな……」

 

パーシヴァル「恐らくですが、旦那様や奥様にもこの話はされるでしょうね。ですが、考えて欲しいと言われてもどうしたらいいのか分かりません。」

 

八幡「あぁ、全くだ。」

 

 

その後もパーティーは続きましたが、私たちは何事もなくパーティーを楽しむ事が出来ました。

 

そして帰りの車内では………

 

 

八幡「俺たちだけこんな良い思いをしてもよかったのかと思ってしまう。今更なんだけどな。」

 

パーシヴァル「少し罪悪感を感じてしまいますね///」

 

八幡「……顔が少し赤いが、疲れたか?」

 

パーシヴァル「そ、そうかもしれません///少し休めば治ると思います///」

 

 

帰りの車の中でも八幡さんはエスコートした際の手を離さず握ったままでいました。最後の最後で思わぬ形で嬉しさを手に入れることが出来ました。

 

 

ーーー屋敷内・庭園付近ーーー

 

 

伯爵「今日は楽しんでもらえたかな?」

 

八幡「はい、とても充実した1日になりました。」

 

パーシヴァル「私も八幡さんと同じ気持ちです。」

 

伯爵「そうか、それは良かったよ。そして私は君達2人の親睦がそこまで深くなった事に嬉しさと喜びを感じているよ。」

 

パーシヴァル「?それはどういう……っ!」

 

 

その時に私は気付きました。八幡さんはまだ私の手を握ったままでした。私は手を放したい衝動と放したくない衝動の2つにかられていました。

 

 

八幡「……あっ、あぁ悪い。」

 

パーシヴァル「い、いえ……///」

 

伯爵「どうやらこのパーティーに参加させて正解みたいだ。今日はゆっくり休むといいよ。明日も休みにしておくからね、しっかり休養を取ってからまたよろしく頼むよ。」

 

 

私たちが返事をする間も無く、旦那様は行ってしまいました。その後私たちは自分たちの部屋へと戻り、着替えを済ませてから眠りにつきました。

 

後日、ドレスを返しに奥様のお部屋へと向かったのですが、『それは貴女にあげるわ。貴方の為に採寸したものだもの。偶に貴方の隊長様に見せてあげなさい。』と笑いながら楽しそうに言いました。冗談なのか本気なのかまったくわかりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アーネストの貴族階級は僕の勘、または思いつきです。原作ではどの階級か分かりませんからね!



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決意の時

 

 

八幡side

 

 

あのパーティから1週間、俺たちの日常が漸く戻って来た。今となっては苦ではなくなった雑務処理に見回り、屋敷付近の偵察に騎士達との鍛錬。皆からすれば、1週間もすれば当たり前のように戻るとは思うが、俺にとってはパーシヴァルを見るたびにあのドレス姿が頭の中に過る為、1週間くらい直視できなかった。あいつは普通だろうが、俺にはかなり堪えた。

 

まぁ今となってはそれも平気になったから問題ない。パーシヴァルを見ても普通に接せられるようになった。そして今、俺は騎士団を集めて鍛錬中だ。もちろん全員ではない。全員集めたらこの屋敷の守りどうするって話になっちまうからな。鍛錬って言っだが、やり方は実戦形式だ。直接相手と戦っている形で鍛錬をしている。

 

 

そして俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーシヴァル「……参りました。」

 

八幡「………手はいるか?」

 

パーシヴァル「すみません、お借りします。」

 

 

パーシヴァルと鍛錬中だった。俺と互角に剣で戦えるのはこの屋敷の中ではパーシヴァルくらいだからな。

 

セバスチャン様?あの人は組手だから剣は使わない。剣には剣、拳には拳が常識だろう。

 

 

パーシヴァル「はぁ、やはり私程度ではまだ隊長には及びませんか……少し自信があったのですが。」

 

八幡「いや、少し危ない局面もあった。もしかしたら隊長交代もあり得るかもな。」

 

パーシヴァル「ご冗談はやめてください。今の守護統括の隊長は八幡さん以外に務まりません。この○○伯爵家の中で剣の腕が1番優れているのは八幡さんなのですから。」

 

 

実際にはパーシヴァルも俺に引けを取らないくらいの実力を持っているとは思うんだがなぁ……俺が降りると言ったらこいつもやめるって言って付いて来そうなんだよな……そこが怖い。

 

 

「失礼致します!守護統括隊長、比企谷八幡様!そしてその副官、パーシヴァル様!旦那様がお呼びです!至急、旦那様のお部屋に来るようにとの事です!」

 

八幡「?旦那様が?」

 

パーシヴァル「一体何の御用なのでしょうか?」

 

八幡「さぁ……とりあえず着替えて行くか。お前たちは鍛錬を続けろ。」

 

騎士達「はっ!!」

 

 

一体何の用なんだ?まだ1日の作業も終えていない段階で呼び出しなんて………また何かのパーティの参加とかか?それならちょっと遠慮したいんだが……まぁ、行ってみたら分かるか。

 

 

ーーー伯爵の部屋ーーー

 

 

コンコンッ

 

 

八幡「旦那様、守護統括隊長の比企谷八幡、ならびに副官のパーシヴァル、ただいま到着いたしました。」

 

伯爵『入っていいよ。』

 

八幡「はっ、失礼致します。」

 

パーシヴァル「失礼致します。」

 

 

旦那様のお部屋は何度か入った事はあるが、やはり煌びやかなお部屋だ。流石は貴族五代階級の3番目に位置するだけはある。

 

 

伯爵「よく来てくれたね。そして仕事中に済まなかった。」

 

八幡「いえ、旦那様のお呼びとあらば即座に。それで旦那様、私共にどのようなご用件でお呼びを?」

 

伯爵「うん、実はこの前のパーティでこんな話を持ちかけられてね、『比企谷八幡くんとミス・パーシヴァルをあのまま屋敷内の守備兵として留まらせておくのは非常に勿体ないです。それで提案なのですが、あの2人を聖ガラードワース学園に特待生として入学させたいと思っています。お2人にもこの話はさせて頂きましたので、○○伯爵様からもご検討とお2人へのご相談して頂くようお願い申し上げます。』という事なんだ。流石はフェアクロフ公爵様のご子息はよく人を見ておられる。君達をここまで高く評価して下さっている。」

 

 

……まさか本当に相談していたなんてな。いや、あの人が嘘をつくような人ではないから当然か。

 

 

伯爵「そこでどうだろう?君達は六花にある聖ガラードワース学園に入りたいという意思はあるかい?その意思があるのであれば、僕は君達をあの学園に送り出したいと考えている。公爵ご子息殿の言う通り、君達をこの屋敷内に置いておくのは勿体無いと私も思い知らされてね。2人の率直な意見を聞きたい。六花に行くか、ここに留まるか。」

 

 

………正直に言えば、俺は六花に行きたい。だが、俺には騎士としての務めもある。そう簡単にホイッと投げ捨てて六花に行くわけにもいかない。

 

 

パーシヴァル「私は………八幡さんが行くのであれば行こうと思っています。」

 

 

え、俺!?なんか知らないうちに俺に決定権が委ねられてる!?パーシヴァル!お前学校行きたいって言ってただろ!なんで俺に全部任せちゃうわけ!?

 

 

伯爵(どうやらパーシヴァルは八幡がいかないと意味がないと思っているみたいだね。でもパーシヴァルの事を考えれば当然だね。彼女は八幡の事が……おっと、これ以上は言わないでおこう。読まれたら大変だからね。)

 

パーシヴァル(学園に入ってみたいと思っていましたが、八幡さんと一緒でなければ学園生活を楽しめる気がしません。それに………い、いえ、やめておきましょう///)

 

 

伯爵「じゃあ八幡、君に決定権が委ねられたから女性の意見を無駄にしない決定を頼むよ。」

 

 

旦那様、パーシヴァルはどっちか答えてませんけど?答えてない上に俺に委ねましたけど!?そこについてはスルーですか!?それとパーシヴァル、お前はそんな目で俺を見るな!

 

 

まぁ、お前が俺に決定権を委ねた時点でもう答えなんて決まってるけどよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「旦那様、聖ガラードワース学園入学のお話、この比企谷八幡並びにパーシヴァル、入学を希望したいと思っております。」

 

 

すると旦那様は嬉しそうな表情を浮かべた。答えに満足しているような笑顔だった。パーシヴァルもその言葉を待ってましたと言わんばかりの笑みだった。

 

 

伯爵「そうかい!それは嬉しく思うよ。君たちの見聞を広める良い機会だと私も思っていたからね。よし、じゃあ早速手続きをしてフェアクロフ殿に連絡をしよう。2人共ご苦労だったね、もう行ってもいいよ。」

 

 

俺たちは退室の挨拶をした後に部屋から出た。その後は鍛錬をしてから1日の業務を終えて部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーシヴァル「あの、八幡さん。」

 

八幡「ん?」

 

パーシヴァル「学園に行くと言って下さり、ありがとうございました。」

 

八幡「気にすんな。お前だって学校に行ってみたいって言ってただろ?なら、その気持ちを汲んでやろうと思っただけだ。けど、なんでお前あの場で行きたいって言わなかったんだよ?」

 

パーシヴァル「それは……やはり八幡さんの意見から先にと思いましたので。結果的には八幡さんに決めてもらう事になってしまいましたが。」

 

八幡「そのことは気にしてないからもういい。明日も仕事あるから飯食って風呂入って寝よう。学園の事は暫くしたら旦那様からまた連絡が来るだろ。」

 

パーシヴァル「……そうですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーシヴァル「私の為にありがとうございます、八幡さん。」ボソッ

 

八幡「ん?なんか言ったか?」

 

パーシヴァル「いえ、何でもありません。早く着替えていきましょう。」

 

八幡「?あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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新副会長の2人

 

 

八幡side

 

 

俺達が六花の学園の1つ、聖ガラードワース学園の入学を決意してあれから3ヶ月、無事に俺とパーシヴァルは入学をする事が出来た。特待生という事でチヤホヤされる事もあったが、公式序列戦を全く申し込まない、鍛錬もしない、何もしない事が多かったからかいつの間にか雑魚扱いされるようになってしまった。(パーシヴァルには全くそんな様子はない。)

 

そんな様子に痺れを切らしたのか、会長は俺に公式序列戦をするようにと言ってきた。しかも冒頭の十二人とだ。いや無理ゲーだろ。何さ、冒頭の十二人と決闘って。なんでそんな事する必要があるのかと聞きたかったが、なんか無言の圧力があったから取り敢えずする事にした。相手を決めようと思った矢先、会長が相手をもう決めていた。その相手はこの学園の序列2位、【光翼の魔女(グロリアーラ)】の2つ名を持つレティシア・ブランシャールだった。何で序列2位と?

 

何とも出来レースな決闘だと思った。だって俺に負けろって言ってるようなもんだろ。そう思いながら当日の公式序列戦に挑んだんだが、意外にも簡単に倒せた。いやだってさ、あいつの剣とか光の翼がおバカみたいに真っ直ぐなんだもん。多少捻くれた攻撃もしてきたが、手数の少なさに驚いた。

 

そして俺は序列2位になって自動的に副会長になってしまった。そしてパーシヴァルも俺が決闘をするってどこからか聞きつけたのか、序列3位の【王槍(ロンゴミアンド)】と決闘をして勝利した。あのガタイ良い人に勝つなんてやるな。これでもっと女のファンが増えるな。

 

 

その事もあってパーシヴァルは序列3位、俺は序列2位へと一気に上がった。そして2つ名も決まり、

 

パーシヴァルが【優騎士(アグレスティア)

 

俺が【疾風騎士(パラディン)

 

という2つ名に決定した。いやいや、俺そんなに早い動きしながら攻撃してねぇよ。何だよ【疾風騎士】って?大層にも程があんだろ。

 

 

2つ名について抗議したが、呆気なく敗訴して終わった。その理由の1つがパーシヴァルが俺に念を押してまでそのままにするべきだと言ってきたからだ。俺に似合わねぇだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なんて思ってる内にもう2ヶ月か、時が経つのは早いもんだなぁ………」

 

レティシア「何を呑気な事を言っているんですか!ほら、今日の仕事のノルマが終わってないではありませんか!」

 

アーネスト「レティシア、その書類は「アーネストは黙っていて下さい!貴方は本当にもう!何でこうも雑務を怠るような事ばかりするのですか!もう少し副会長としての威厳を持ってください!」……あはは。」

 

八幡「……ブランシャール、1つ発言いいか?」

 

レティシア「何ですか?」

 

八幡「この書類、前倒しして処理してるだけだから。今日の分なんてもう3日前に終わらせてる。」

 

レティシア「…………………………え?」

 

 

目が点になってやがる。

 

 

八幡「する事がねぇから書類終わらせてたんだよ。そしたら今度は1週間後に済ませる筈の書類が俺のデスクに置かれてます。なにこれイジメ?お前いつもこんな量の書類片付けてるんだなって思ったら尊敬してきたわ。」

 

 

レティシア「そ、そうですの!?あ、ありがとうございます!副会長に就任してから短いですが、自身のやるべき事はしっかり果たせているようですね。(1週間分の書類を前倒しで!?私の頃でさえそんな事はありませんでしたわよ!?この方はどうなっていますの!?)」

 

レティシア「ア、アーネスト!比企谷八幡の書類ミスについて何か聞いていませんか!?」

 

アーネスト「特に何もないよ。それどころか彼の指摘には僕や母体幹部の方々も舌を巻く程だったよ。処理能力もそうだけど、効率の良さや配慮点なんかも細かに書かれているから助かっていると言われたくらいだよ。」

 

レティシア「そ、そうですか……(か、完璧過ぎる!!?強いだけでなく、書類整理や処理速度だけでなく、報告書も見やすくまとめてあるなんて……なんだか彼に全てにおいて負けた気分ですわ。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 

パーシヴァル「会長、八幡さん、ブランシャール様、ただいま戻りました。カーシュ様はまだお戻りになっていないようですね。」

 

アーネスト「彼の事だから、またケヴィンと揉めているんじゃないかな?」

 

八幡「仲が良いんだか悪いんだか分からん奴らですからね。」

 

レティシア「この生徒会室も少しは静かになりましたわね。少し賑やかな感じで放っておけないような方達でしたから……ですが、これで落ち着いて作業が出来るというものですわ。」

 

アーネスト「そんな風に言ってはいけないと言いたいところだけど、合っている部分もあるからね、追及はしないでおくよ。パーシヴァル、紅……比企谷くん、お願い出来るかな?」

 

八幡「……はい。パーシヴァル、紅茶を頼む。」

 

パーシヴァル「はい、八幡さん。」

 

 

なぜ今会長が俺に頼んだのかというと、パーシヴァルは俺以外に何かを頼まれるのに少し抵抗を感じるみたいだ。この前なんて同級生の少し偉そうな貴族の男に紅茶を淹れてこいと頼まれた(命令が正しいかもしれん)事があったんだが、今にも男の眉間に銃を撃ってもおかしくないような殺気が出てた。まぁ紅茶は淹れなかったけどな。だってその男逃げたし。

 

 

パーシヴァル「どうぞ、八幡さん。」

 

八幡「あぁ、ありがとな。」

 

パーシヴァル「いえ……」

 

 

………うん、やっぱパーシヴァルの淹れる紅茶は美味いな。旦那様からお借りした執務室で飲んだ時の紅茶からずっと思ってる。

 

 

パーシヴァル「あの、如何でしょうか?」

 

八幡「あぁ、美味い。やっぱりパーシヴァルは紅茶淹れるの上手いな。」

 

パーシヴァル「いえ、八幡さんには及びません///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーネスト「レティシア、君はどう見る?」ボソッ

 

レティシア「あの2人、本当に付き合っていないのでしょうか?パーシヴァルは比企谷八幡への思いをまるで隠せていませんわね。あの笑顔、私達には絶対に向けませんわよ?」ボソッ

 

アーネスト「そうだね。あの2人には早くくっついてもらいたいものだね。」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





因みにですが、レティシアが序列4位、ライオネルが序列5位になりました。

ケヴィンは序列6位に……ゴメンねケヴィン。



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人生最悪の日

 

 

八幡side

 

 

さて、どうしたもんかねぇ………この状況。

 

 

パーシヴァル「………」ゴゴゴゴゴ

 

アーネスト「あはは……」

 

レティシア「………」ヒヤアセ

 

ライオネル「比企谷、一体何をしたのだ?」アキレ

 

八幡「俺に聞くな、こっちが聞きたい。」セイザ

 

 

只今俺は生徒会室の床で正座をさせられている。そして正面にはパーシヴァルが無言+途轍もなく怒っている様子で立っている。いやいや何で?俺なんかやらかしたか?最近は特に何もしていなかったぞ?出かける回数とかも普通だし。何なら出掛ける時は茶葉がなくなった時に限る。

 

 

八幡「なぁパーシヴァル、そろそろ説明してくれないか?なんで俺は生徒会室に入ったらいきなり正座させられているんだ?」

 

パーシヴァル「……分かりませんか?」

 

八幡「分かってたらこんな質問しねぇよ。」

 

パーシヴァル「では説明致しましょう。八幡さん、昨日2人の女性とお出掛けしていましたね?時間はバラバラでしたが、2人はとても可愛らしくて綺麗な方でしたね?」

 

八幡「は?……あぁ、確かにそうだが、あれは別に予め約束していたわけじゃないし、偶々会ったから一緒に行動しただけだが?」

 

パーシヴァル「つまりお認めになるという事ですね?」

 

八幡「いや、まぁ……一緒に居たというのは嘘じゃないからな。こんな事で嘘言っても仕方ねぇだろ。」

 

アーネスト「ふむ……確かに今の説明だと比企谷くんが何か深刻な事をしたようには思えないけど?パーシヴァル、何かあったのかい?」

 

パーシヴァル「はい、会長。八幡さんが昨日一緒に居た女性の1人は、レヴォルフ黒学院の序列1位【孤毒の魔女】のオーフェリア・ランドルーフェンです。」

 

 

すると、この生徒会室の雰囲気が変わった。特に会長の目つきの鋭さが尋常じゃなかった。

 

 

アーネスト「………比企谷くん、どういう事かな?」

 

レティシア「そうですわ比企谷八幡!!他学園の、しかも我が校の敵といっても過言ではないレヴォルフの生徒と出掛けたというのですか!!?」

 

ライオネル「事によってはお前を許さんぞ。」

 

 

………何でレヴォルフに対してそこまで険悪になれるのかねぇ。俺にはサッパリだ。

 

 

八幡「言わないとダメですか?プライバシーの侵害だと思いますが?」

 

アーネスト「そうだね、それは否定しないよ。でも、だからと言ってレヴォルフの生徒と一緒にいた時点で僕たちも警戒しなくちゃいけないからね。しかも向こうは序列1位、こちらは序列2位で副会長をしているからね、もしも何か情報が漏らされていたら……君を拘束しなくちゃいけなくなる。」

 

 

目が本気だな、ありゃ………はぁ、仕方ない。オーフェリアに連絡するか。

 

俺は端末を開いてオーフェリアに通信を取った。そしてそのコールは1回もしないうちに繋がった。

 

 

オーフェリア『もしもし八幡お兄さん!!?昨日はどうもありがとう!!とても楽しかったよ!!』ニッコニコ!

 

八幡「いや、気にするな。楽しんでもらえたようで何よりだ。」

 

オーフェリア『八幡お兄さんがいたおかげで美味しい料理をいっぱい食べられたよ♪昨日は偶々だったけど、今度はお誘いしてね!待ってるから!』

 

八幡「あぁ、そうする。」

 

オーフェリア『ところでどうかしたの?急に連絡してくるなんて………』

 

八幡「あぁそうそう。オーフェリア、ちょっと昨日のことを聞きたくてな、どういう経緯で俺たちが出会ったのか教えてくれ。」

 

オーフェリア『……よく分からないけど、八幡お兄さんのためならお話しするね!』

 

 

それからオーフェリアは俺と合う前から出会った時、そして一緒に居てどう過ごしてどう解散したかまで丁寧に説明してくれた。

 

そして近くで見て聞いていた生徒会の連中も、口をあんぐり開けたまま固まっていた。

 

 

オーフェリア『……こんな感じの説明だけど、大丈夫かな?私ちゃんと説明出来てた?』

 

八幡「あぁ、助かった。済まなかったな、突然連絡したりして。」

 

オーフェリア『ううん、気にしてないから大丈夫♪あっ、遊びに行く約束、待ってるね〜♪』バイバ-イ!

 

 

嬉しそうに笑いながら、オーフェリアは通信を切った。さて、俺としてはかなり良い答えになったのではないかと思っている。レヴォルフだとしても、無害な奴はいると。

 

 

八幡「さて、1人目はこういう奴なんだ。分かってくれないか?」

 

パーシヴァル「………とても【孤毒の魔女】本人とは思えないのですが、嘘をついているようにも見えませんでしたので、信じる事に致します。」

 

 

なんとか信じてもらえたようだ………このまま無事に終われ……ないんだよなぁ。

 

 

パーシヴァル「では2人目の女性ですが、あの方は一体誰なのですか?」

 

八幡「それを教える事は出来ない。」

 

パーシヴァル「片方を拒否すると?」

 

八幡「そういう事だ。」

 

パーシヴァル「……早く言ってしまった方が楽になると思いますが?」

 

八幡「その人との約束でな、正体を誰にも言わないって約束だから、いくらお前でも教える事は出来ない。」

 

 

あいつの正体はたとえ誰であっても言うつもりはない。俺は約束を違えるような事は絶対にしない。約束も守れないような奴、信用も出来ないしな。

 

 

パーシヴァル「……その女性とはいつからご関係を?」

 

八幡「随分突っ掛かってくるな?何故そんなに拘る?」

 

パーシヴァル「特に理由はありません。」

 

八幡「それはアレか?俺の行動に一切の信用を持てないと解釈していいのか?」

 

パーシヴァル「そ、そういう事では……」

 

八幡「じゃあどういう事だ?俺が何かお前の気に触るような事をしたのなら謝るが、何も聞かされていない状態でいきなり正座させられて、昨日出掛けた時の女についてどう過ごしたかと一方的に尋問を受けている俺は気分が悪いんだが?それに理由もないのにそんな事を言う義理はないと思っている。」

 

八幡「それと、改めて言わせてもらうぞ。あの女性について言う事は何もない。気になるんだったら自分でなんとかしろ。」

 

4人「………」

 

 

………もう此処には居たくもない。先の仕事はもう終わらせてるんだ。抜けても問題ないだろう。

 

 

パーシヴァル「八幡さん、どちらへ?」

 

八幡「自分の部屋に戻る。とてもじゃないが、今は他の奴と話す気にはなれん。会長、すみませんが暫く生徒会への出席は控えさせて頂きます。では……」

 

パーシヴァル「待ってください、まだお話は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………うるせぇよ。」ギロッ

 

パーシヴァル「っ!!?」

 

八幡「俺に話かけんな。それに、今はお前の顔、特に見たくない。」

 

 

冷た過ぎる言葉かもしれないが、今の俺はその言葉を他人に掛けられるくらいにまで気分が悪いし腹も立っている。こんなにもイライラしたのは人生で初めてかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ここに来ての最悪な雰囲気に………

後2話で終わるのにどうするのさ!?



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3日後の心情

 

 

アーネストside

 

 

……まさかの事態になってしまったね。ここまで大事になってしまうなんて予想もしてなかったよ。あれから3日が過ぎたけど、比企谷くんは本当に生徒会室には来なくなってしまった。レティシアには無理強いはさせずとも何とか来るように促して欲しいとは言ったけど、3日続けて来ないという事は効果はなかったみたいだと受け取って欲しい。

 

でも影響はそれだけではなかった。その影響はこの原因を作ってしまった本人、パーシヴァルにも大きな傷を作っていた。授業や生徒会には参加しているんだけど、まるで生気を感じさせないような目をしている。僕も彼女を元気づけようとしたんだけど、元々彼女の事をよく知らない僕にはどうする事も出来なかった。

 

今も生徒会で作業をしているんだけど、10分に1度はもう1つの机を凝視している。その机は比企谷くんの席でパーシヴァルの隣の席でもある。パーシヴァルはその度に悲しそうで辛そうな、そして今にも泣き出しそうな顔をする。

 

 

レティシア「アーネスト、何とかなりませんの?私もうこの雰囲気で仕事をするのは耐えられませんわ。」

 

ライオネル「俺もその意見に同意だ。流石にこれ以上これが続くようだと問題になってくるぞ。」

 

アーネスト「そうなんだけどね……比企谷くんに話をしに行こうにもクラスに行けば姿はないし、寮に行けば居留守を使っているのか、はたまた本当に居ないのかで応答がない、通信を使おうにも使われていない状態が続いていてね、どうしようもないんだよ。」

 

 

本当に何も出来ない状態だよ。最初から八方塞がりだなんてね……参ったよ、本当に。僕としては早く仲直りをして欲しいところだけど、当の本人たちが直接会えないとなると、実現は相当に難しい。

 

本当に………参ったよ。

 

 

その後は生徒会も解散して各自鍛錬や寮に戻って行った。比企谷くん、パーシヴァルをどうにか出来るのは君だけなんだ、お願いだから授業の合間にでもいいからパーシヴァルと話をして欲しい。

 

 

アーネストsideout

 

パーシヴァルside

 

 

………あの最悪な日から3日。学園の教室では八幡さんと会いますが、それだけです。挨拶も交わさなければ会話もありません。当然八幡さんは目も合わせてくれません。会長やブランシャール様は時折私に紅茶を淹れてお話をして下さるのですが、今の私には何の意味もありません。私の為に慰めてくれたのでしょうが、お2人には申し訳なく思っています。

 

 

パーシヴァル「………」

 

 

今、私は体育座りをしながら寝具の上で壁にもたれかかりながら額を膝につけて顔を伏せています。私は今、非常に3日前の事を後悔しています。何故あんな事を八幡さんに聞いてしまったのか……酷く自分を責めました。八幡さんが誰と一緒にいようと私には関係のない話です。別に私と八幡さんはお付き合いしているわけでもありません。前のような隊長と副隊長の関係でもありません。今は学園の同級生という関係です。

 

他の方に比べたら親密な関係ではありますが、だからといって質問責めにしていい筈がありません。八幡さんの立場になって考えたら簡単に分かる事でした。

 

 

でも……でも、何もかも遅過ぎました。八幡さんは私に見向きもしてくれなくなりました。私は………どうすればいいのでしょうか?

 

こんなにも胸が張り裂けそうな思いをしたのは初めてです………心を開いている方からあんな言葉を投げかけられたら、こんなに痛いものなのですね。心臓に何かがグサッと刺さるような、締め付けられるような痛みがまだ残っています。

 

 

パーシヴァル「私は、どうしたら………」ツ-

 

 

そして私はその日、人生で初めて涙を流しました。

 

 

パーシヴァルsideout

 

八幡side

 

 

生徒会はどうなっただろうか、俺がいなくても機能はしているだろうとは思うが、やはり気にはなってくる。まぁブランシャールやカーシュがいるから問題はないだろう。会長にも少し迷惑はかけるが、俺も自分の部屋で書類まとめて処理してるから別に問題はないだろう。パーシヴァルの様子は……気にならないといったら嘘になるが、自分から確かめに行こうとは思わない。残酷な言い方をするが、俺に信用を持てない奴の心配をしても意味がない。

 

パーシヴァルからの目線は授業中とかにも感じているが、別にどうでもいい。屋敷にいた頃からの付き合いではあるが、だからといって贔屓するつもりなんて俺にはない。

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

ん?誰だ?

 

 

アーネスト『やぁ比企谷くん、今少しいいかい?』

 

八幡「会長?少し待ってください。」

 

 

俺は急いで扉のロックを解除して会長を部屋へと入れた。会長を椅子へと座らせた後、部屋に置いてあるティーバッグで作った紅茶と洋菓子を持って俺も席に座った。

 

 

八幡「すみません、こんなもてなしですが……」

 

アーネスト「いや、気にしていないよ。」

 

八幡「それで、何かありましたか?」

 

アーネスト「うん、パーシヴァルの事なんだけどね。」

 

八幡「………俺から関わる気はありませんよ。」

 

アーネスト「君ならそう言うだろうと思っていたよ。でも彼女の事を一番よく知っているのも君だから、彼女が1人で抱え込んでしまっている事にも気がついているんじゃないかい?」

 

八幡「……まぁ、一応はですけど。」

 

 

この人、どんだけ俺達の事を見てるんだよ。

 

 

アーネスト「君とパーシヴァルを除く生徒会役員で話し合ったんだけど、この状態が続くと僕達も気まずいからね、出来れば仲直りをしてもらいたいんだ。君の心情も理解しているつもりだよ。自分を疑うような人とはって思っていると。でも、そこをなんとかお願いしたいんだ。今日……というよりも最近のパーシヴァルは目元の隈が酷くなってきているから、睡眠や食事も碌に取れていない状態だと思うんだ。」

 

八幡「………」

 

アーネスト「比企谷くん、お願い出来ないかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁ……分かりました、俺からパーシヴァルに話してみます。ですが間違っても俺からは謝りませんからね?」

 

アーネスト「……できれば君からきっかけ作りをして欲しかったんだけど、引き受けてくれるだけでこちらとしてはありがたいよ。」

 

 

いや、貴方から頭を下げられたんじゃあ断るわけにもいきませんって。

 

 

 

 

 

 

 

 



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貴方の右腕

 

 

八幡side

 

 

あぁ〜………何ともアホらしい事だ。自分から距離を取った相手に自分から近づきに行くんだからな。いや、会長が頭を下げてまで頼んで来たから無下にするわけにもいかないから引き受けちまったけどよ、本当にバカみたいだよな。さて、このHRが終わったらもう放課後だから、終わり次第パーシヴァルの所に行くか。

 

 

「起立!気をつけ!礼!」

 

 

よし、終わったな。さて、いっちょやりますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……パーシヴァル。」

 

パーシヴァル「っ!………はい、何でしょう?」ピクッ!

 

八幡「少し話がしたいんだが、今いいか?」

 

パーシヴァル「…………す、すみません、生徒会がありますので。」

 

八幡「会長から時間を貰えるように許可は取ってある。お前と話したい。」

 

パーシヴァル「………」

 

 

全く俺に目を合わせないな………ていうかこいつ、本当に酷い隈だな……マジで寝てないのが分かる。肌もなんか前に比べると白いというか、会長の言っていた通り本当に生気がないというか………酷いという一言に限る。

 

 

八幡「因みに言っておくが、これは会長からの計らいでもある。あの人もこれ以上このままなのは見過ごせないみたいらしくてな。昨日俺に頭を下げて来た。それがなければ俺はお前の前には現れていない。」

 

パーシヴァル「………」

 

八幡「俺は別にどちらでも構わない。決めるのはお前だからな。」

 

パーシヴァル「………分かりました。では場所は私が選んでもいいですか?」

 

八幡「俺はどこでもいい、お前の好きな場所にしろ。」

 

パーシヴァル「ありがとうございます。」

 

 

どうにか俺はパーシヴァルを誘い出す事に成功した。だが、これからどうするかはパーシヴァル次第だ。俺が会長から言われたのはここまでだからな。自分から謝りに行こうとは思わん。

 

まぁ、話がしたいと振ったのは俺だから最初は俺から話してやるけどな。

 

 

ーーーカフェテリア・個室ーーー

 

 

八幡「………」

 

パーシヴァル「………」

 

八幡「………会長から聞いた。お前顔色悪過ぎるぞ、ちゃんと食べて寝てるのか?」

 

パーシヴァル「………」

 

八幡「まぁ答える義理なんてないから答えなくてもいいが、食事と睡眠くらいは取れ。」

 

パーシヴァル「………はい。」

 

 

………返事、したのか?全く聞こえなかった。まぁいいか、気を付けてくれるのならそれに越した事はない。

 

 

八幡「この際だ、お前からは何かあるか?」

 

パーシヴァル「………いえ、特に何も。」

 

八幡「……何か1つくらいはあるだろう。俺か気に食わないだとか、調子に乗っているとかでも構わん。何かあるだろう?言いたい事の1つや2つくらいは心の中に抱えているものだろう。」

 

パーシヴァル「………長くなりますが、お話ししてもよろしいでしょうか?」

 

八幡「聞くって言ったのは俺だからな、話は聞く。」

 

パーシヴァル「ありがとうございます………八幡さん、先日は……その、申し訳ございませんでした。八幡さんが誰と出掛けていようが私には関係のない事なのに、ついあんな事をしてしまいました。口では上手く言えないのですが、八幡さんと異性の誰かが一緒に行動しているのを見ると、思考が止まってついカッとなってしまうんです。それであの時……あんな事を………」

 

八幡「つまりはお前があんな行動を取ったのは、少ながらず俺にも責任はあるっていう事なのか?」

 

パーシヴァル「ち、違います!八幡さんは何も悪くありません!八幡さんの隣にいた女性に嫉妬していた私が悪いんです!八幡さんが悪い事は何1つありません!」

 

 

そんな事を言われてもな……今の説明を聞いた限りでは、俺にも責任はあるように思える。まぁ他学園の奴とつるむのはあまり良い行動とは言えないからな。特にレヴォルフの奴らとこの学園は相性最悪だから、今回の俺とオーフェリアの交流は火に油を注いでしまったようなものだ。

 

だが、そしたらパーシヴァルは俺と一緒に出掛けたかったって事なのか?さっき隣に居た異性に嫉妬していたって言っていたから、そうなのか?

 

 

八幡「パーシヴァル、お前は俺と一緒に出掛けたかったっていう解釈でいいのか?今のだと、お前は俺と一緒に出掛けたいとかそういう風に俺は捉えられたんだが……」

 

パーシヴァル「………はい。」

 

八幡「……なんか違ったか?」

 

パーシヴァル「い、いえ!そんな事はありません!」

 

八幡「本当か?まだ他に何か言いたい事があるんじゃないのか?」

 

パーシヴァル「………」

 

八幡「まぁ、言いたくないのなら別に言わなくても構わないけどよ。」

 

パーシヴァル「………これからは、その……今まで通りに接してもよろしいのでしょうか?」

 

八幡「……あぁ。それに、俺も謝らなくちゃいけねぇな。苛立っていたとはいえ、あんなこと言って済まなかった。」

 

パーシヴァル「い、いえ……八幡さんが頭を下げないでください!元を辿れば私が原因ですから。」

 

2人「………」

 

 

なんかさっきから謝ってばかりだな……パーシヴァルの奴。まぁこの話の流れからすれば当然っちゃあ当然だが、この流れを少し変えたいな。

 

 

八幡「なぁパーシヴァル。」

 

パーシヴァル「は、はい。」

 

八幡「少し目を瞑ってくれ。」

 

パーシヴァル「目を、ですか?」

 

八幡「あぁ。」

 

パーシヴァル「分かりました。」

 

 

パーシヴァルは不安げな様子を隠せずに目を瞑った。少しだけ強張っているが、後になったらこれも消えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

パーシヴァル「………え?」ナデナデ

 

 

俺はパーシヴァルの頭を撫でてやる事にした。今までこんなことやった事なんて1度もなかったからやり方なんてむちゃくちゃ下手だ。

 

だが目の前のパーシヴァルは顔を少し赤くしていたが、頭においてある手を退けようとはしなかった。むしろ気持ち良さそうにしているのかも?

 

 

いや、さっきの雰囲気とは全く別のニュアンスで気まずくなってない?

 

 

パーシヴァル「八幡さん。」

 

八幡「お、おう、何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーシヴァル「私はこれからも八幡さんのお側にいます。私は………貴方の右腕ですから。」ニコッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





パーシヴァル編、終了でございます!!

書いている途中で少しだけ眠気が襲って来ましたが、なんとか書き上げました!!

次のキャラクターは、アニメでも大活躍だったあのキャラです!



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綺凛編
2人の後継者


 

ーーーーーー

 

 

ーーー日本某所・道場ーーー

 

 

ここは日本でも有数の剣道・剣術を基とする道場。その道場から輩出された有名人も多く、数多くの師範代や免許皆伝を輩出している。そして今も尚、門下生の数は衰えを知らずに増え続けている。特にこの流派の宗家からの指導は突出しており、僅か13歳の男の子とと10歳の女の子が後継候補と言われる程でもある。

 

その剣術流派の名は………【刀藤流】である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師範代「もっと鋭く!型を出す時は僅かな乱れも許すな!」

 

師範代「甘い!それでは次の動きがまた崩れるぞ!」

 

師範代「48ある型の中でもこれは簡単な方だ!これが出来なければこの先の型を覚えるのは不可能だと思え!」

 

師範代「よし、本日はここまで!各自水分補給はこまめに取る事!では解散!」

 

 

ーーー更衣室ーーー

 

 

「あぁ〜やっと終わった〜!しかしあの先生の指導は確かだから段々コツがつかめて来た気がするよ。」

 

「ホントか?俺はまだ全然だ。筋肉を使うタイミングがまだ慣れない。」

 

「あれは仕方ねぇよ、俺だって難しいからな。」

 

「そんな時は、あの2人のあの動き見ようぜ!今日は丁度打ち合いの日だろ?」

 

「それは別にいいけどよ、俺たちが見ても参考にはならなくね?」

 

「いいんだよいいんだよ!見るだけでも勉強にはなんだろ。」

 

 

ーーー道場ーーー

 

 

「居るか?」

 

「いるいる!もう始まるんじゃないか?」

 

 

???「よろしくお願いします。」

 

???「よろしくお願いします。」

 

 

2人の子供は腰にあてがっていた竹刀を抜き正眼に構えた。

 

 

???「はぁっ!」

 

???「ふっ!」

 

 

そこから剣の打ち合いが始まり、どちらも刀藤流独自の剣技【連鶴】を繰り出していた。48もの型があるこの剣技を全て見切るのはほぼ不可能と呼ばれている。そしてこうも呼ばれている。

 

『連鶴に果てなし。』と。それ程までに繫ぎ手の数が無数なのであろう。

 

 

???「フッ!」

 

???「っ!?」

 

 

1人が持っている竹刀をもう1人に取られたため、試合はそこで終了した。

 

 

???「ありがとうございました。」

 

???「ありがとうございました。」

 

???「……また負けました。やっぱり八幡先輩は強いです。これで47連敗です。」

 

八幡「けどお前も腕を上げて来たな。少しヒヤッとした場面もあったぞ。隠れて型の練習してただろ、綺凛。」

 

綺凛「は、はい……実はそうです。」

 

八幡「はぁ……やっぱりか。あんまり無理するなよ?強くなりたいという気持ちは良いが、無理し過ぎて怪我でもしたら元も子もないんだからよ。」

 

綺凛「は、はい!肝に命じます。」

 

八幡「さて、俺も着替えて今日は帰る。おつか「あ、あの、八幡先輩!」ん?何だ?」

 

綺凛「この後、一緒に夕飯はどうですか?お母様も是非と言っていましたので。」

 

八幡「琴葉さんの作る料理は美味いからいいんだが、あの人ちょっとスキンシップが激しいんだよな………それにお前の祖母も。」

 

綺凛「すみません。いつも注意しているのですが、軽く受け流されてしまうんです。」

 

八幡「……まぁいい、俺も冗談だって分かってるから。けど今日はやめてもらおうか。」

 

 

ーーー刀藤家ーーー

 

 

琴葉「あら〜八幡くん、来てくれて嬉しいわ〜♪綺凛もちゃんと八幡くんにお誘いできたようね〜。八幡くんが来てくれなかったら、今夜のおかずは鰯だけだったかもしれなかったからよかったわ〜。」

 

八幡「いや、おかずが鰯だけって………幾ら何でも笑えませんって。もっと作りましょうよ。」

 

琴葉「だって八幡くんが来てくれた時じゃないと本気出せないんだもの〜。綺凛だって八幡くんがいつ来るかいつ来るかってソワソワしながら「あ、あぁーやめて下さいお母様!!」あら、ごめんなさい♪」

 

 

八幡(この人全然反省してないな。綺凛の奴翻弄されまくってんじゃねぇか。)

 

 

???「あら八幡さん、今日の夕食はこちらで?」

 

八幡「代志乃さん。はい、お誘いを受けましたので。」

 

代志乃「………まさか婚約の?」

 

八幡「さすがは親子って感じですね。茶目っ気たっぷりの冗談をありがとうございます。」

 

 

八幡(本当に親子だな。代志乃さんが琴葉さんを産んだのは納得できるが、琴葉さんが綺凛が産んだとは思えない。性格真逆だからな。)

 

 

代志乃「私は八幡さんが婿として来てくださるのなら、大歓迎いたしますのに………娘の何が不満なのです?」

 

八幡「いや娘関係ないですから。ただ単に俺にはまだそういう考えを持っていないというだけです。中学生に何を求めてるんですか………」

 

琴葉「良いじゃないの八幡くん、綺凛はかなりの優良物件だと思うわ。年はまだ10歳だけど、その割には育ってる所育ってるし、八幡くん好みの大人しめな性格だから、攻めたい時に攻められると思うわ。1度おっぱいでも揉んでみるといいわ!」

 

綺凛「おおおおおおお母様!!?ななな何を言うんですか!!?む、むむむむ胸を揉めだなんて!!わ、私はまだせ、成長期です!!/////」

 

琴葉「聞いた八幡くん?この子自分で成長期って言ってるわよ!これは自分から揉んでくださいと言っているようなものだわ!さぁ八幡くん、綺凛の胸を鷲掴みにして揉みしだいて来てもいいのよ!」

 

綺凛「お母様っ!!!!//////////」(ボシュー)

 

琴葉「うふふふふ♪」

 

代志乃「これなら刀藤の未来も安泰ね。」

 

八幡「いや何処がですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、というわけで次のキャラクターは刀藤綺凛さんです!

銀髪ロリ巨乳がメインになります!

次もお楽しみに!


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父親の提案


一昨日、昨日は投稿出来ずすみませんでした!!

1日中仕事がありまして………




 

 

綺凛side

 

 

はうぅ〜恥ずかしい思いをしました/////お母様は夕食の席でもあんな事を言って……お、思い出したくありません!!それに、八幡先輩の前であんな……む、胸を揉めだなんて……は、八幡先輩はそんな事をしない人だとは思っていますが……ううぅ〜/////

 

それに、大叔母様も大叔母様です!何故お母様を止めずにニコニコしながら見守っているのですか!それに、八幡先輩の話題になったらすぐに参加して来ますし……ですが、これが先輩を入れた刀藤家の食卓の風景でもあります。八幡先輩がご飯を食べに来る時のお母様と大叔母様はとても良い笑顔になります。まるで待ってましたと言っているような顔です。

 

お父様と伯父様は忙しいのでいつも食べる時間は別々なのですが、たまに食べる食事はいつも剣術の事ばかりです。私の構えや反省点は勿論ですが、良い所も褒めてくれます。

 

 

そして今、私と八幡先輩は珍しくお父様に呼ばれて個室に向かっています。私の父、刀藤誠二郎は私や門下生で私の兄弟子に当たる八幡先輩が身につけている刀藤流の宗家です。何故呼ばれたのかは分かりませんが、何やら大切な話かもしれません。

 

 

綺凛「八幡先輩は何か聞かされていますか?」

 

八幡「いや、俺もサッパリだ。こんな形の呼び出しなんて初めてじゃないか?いつもなら道場で話すのに。」

 

綺凛「そうですね。でも私達2人同時に呼ばれるのは今までになかった事じゃないですか?何時もなら1人ずつでしたし。」

 

八幡「……分からねぇな。まぁとりあえず師匠のところに行って話を聞くか。なんの話かは行ってみたら分かるだろうしな。」

 

 

………やっぱり八幡先輩はこういう時でもすごく落ち着いています。私は八幡先輩のこういう所が凄く羨ましく思います。竹刀や私の愛刀《千羽切》を持っている時、集中している時は落ち着いていられるのですが、何もしていない、1人でいる時に誰かから話しかけられると、すぐに慌ててしまう所があります。私が人見知りという理由もありますが、八幡さんのこういう所はやっぱり大人というか、達観していると感じます。

 

 

八幡「……どうした、綺凛?」

 

綺凛「っ!な、なんでもないです!」

 

八幡「そうか?ならいいが……」

 

 

………やっぱり羨ましいです。

 

 

ーーー刀藤家・当主の部屋ーーー

 

 

綺凛「お父様、刀藤綺凛並びに比企谷八幡、入ります。」

 

『入っていいよ。』

 

 

中に入るのは初めてではないのですが、やはり緊張はします。目の前にいるのは父とはいえ刀藤流宗家。下手なことは言わないでおきましょう。

 

 

誠二郎「よく来てくれたね2人共、今日の稽古もお疲れ様。」

 

八幡「いえ、今日は軽く動かした程度なので。」

 

綺凛「兄弟子の言う通りです。」

 

誠二郎「堅苦しい言葉遣いはよして欲しいんだけどなぁ……まぁいっか。さて、じゃあ本題に入ろうか。これからの方針についてね。」

 

八幡「少し待って下さい。刀藤家の問題なら俺を呼ぶ必要はないと思うんですが?」

 

誠二郎「それについても詳しく説明するよ。少なからず八幡くんを呼んだのは、今後それに関係する事なんだ。綺凛、今君は10歳だけどあと2年もすれば中学生になる。そこでなんだけど……綺凛、君は六花に行ってみる気はないかい?」

 

綺凛「………六花へ、ですか?」

 

誠二郎「うん。実のところを言うと、綺凛に教えてあげられる事がもうなくなりつつあってね。そこで、見聞を広める為にも六花の学園のどれか1つに入学して自分を鍛えてみたらどうかっていう提案だよ。八幡くんを呼んだのは、君が星導館学園に在籍しているからだよ。もし綺凛が星導館に決めたのなら、八幡くんは綺凛のフォローをしてあげてほしいんだ。」

 

誠二郎「まぁ綺凛が入学するとしても2年後の話だからそこまで焦る必要もないんだけど、伝えるなら早めにと思ってね。綺凛、少し考えておいてくれないかい?答えはすぐにとは言わないから。」

 

綺凛「は、はい。」

 

 

なんの話かと思いましたが、私のでしたか……少し安心しました。

 

 

八幡「あの、それだけなら俺をここに呼んだ意味が分からないのですが……」

 

誠二郎「あぁ、その事なら今から説明するよ。そうだね、これは僕にとっても重要な話だから聞いておいて欲しい…………八幡くん。」

 

八幡「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠二郎「我が家に綺凛の夫として婿にくる気はないかい?」

 

八幡「………………………は?」

 

綺凛「え、ええぇ!!?//////////」

 

誠二郎「僕も真剣に考えていてね。僕の後継者はずっと綺凛だと思っていたんだけど、八幡くんが来てからはそれも少し揺らいできてね。どうかな?我が家の家族の一員になる気はないかい?それなら僕も安心して君に今後を任せられるんだけどね〜。」

 

綺凛「お、おおおおお父様!!なんでそんな話を今するんですか!!?八幡先輩はまだ13歳ですし、私もまだ10歳です!!結婚なんて早過ぎます!!!//////////」

 

誠二郎「そうかい?今のうちに八幡くんは自分たちのだって唾をつけておかないと、取られてしまうかもしれないから一応言っておこうと思ったんだ。綺凛だって八幡くんが旦那だったら安心だろう?」

 

 

綺凛「………ほ、他の方に比べたら確かに安心できますが、それとこれとは話は別です!!六花の件は考えておきますので、失礼致します!!」

 

八幡「ちょっ、おい綺凛ーーー」

 

誠二郎「あっはは、中学生と小学生にはまだ刺激が強過ぎたかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





この綺凛編ではお父さん、刀藤誠二郎さんは捕まっていない設定にしました!喋りはオリジナルです。



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星導館へ

 

 

綺凛side

 

あれから2年が経ちました。時が経つのが早いと感じるのはこの事かもしれません。あれからは特に変わったことは起きず、平穏な日々を過ごして来ました。朝に稽古をしてそのあとに朝食を食べて学校へと通う。学校が終わった後は道場で稽古をしてから夕食、勉強、お風呂を済ませてから就寝につきます。私はこの生活サイクルが出来ているので苦にはなりませんでしたが、一時だけ別の期間がありました。

 

そう、八幡先輩が来てくれるからです。八幡先輩は六花の夏期休暇や冬期休暇を利用してこっちの刀藤家に来てくれるので、この生活サイクルは乱れてしまうのです。わ、悪い意味でではありませんからね!?理由はお話や稽古をしたいという類ですが、1番は一緒にいて落ち着くからでしょう。

 

そして何故八幡先輩が私たちの刀藤家に来てくれるのかというと、八幡先輩の家族が先輩を嫌っているからです。理由は簡単です。先輩が星脈世代だから。たったそれだけの理由で八幡先輩は家族から迫害され続けていました。私が知るのはこれくらいなのですが、他に理由があれば話してほしいと私は思っています。

 

 

さて、暗いお話はこれくらいにしておきます。今日は私、刀藤綺凛は星導館学園に入学します!

 

 

ーーー講堂・入学式ーーー

 

 

「節度を守り、学生として正しい生活を心掛けて下さい。さらにーーー」

 

 

……やっぱりどこの学園も理事長や校長の挨拶は長いです。少しだけ待ちくたびれました。私は早く八幡先輩と一緒に稽古をしたいのですが………そういえば私の伯父様は星導館学園の運営母体で働いていたんでした。少し立ち寄って挨拶するのもいいかもしれませんね。

 

 

ーーー入学式終了ーーー

 

 

「これにてHRを終了する。今日はゆっくり休んで明日から元気よく投稿するように。」

 

 

ガヤガヤ……

 

 

「この後どうする?」

 

「商業エリア気になるから行ってみねぇか?」

 

「やっぱりか!俺も気になってたんだよ!」

 

「んじゃ行こうぜ!」

 

 

「この後暇?なら学校探検しない?」

 

「あっ、それいいね!行こっか!」

 

「よしっ、決まり!じゃあ早速行こっか!」

 

 

一部の方々はもう溶け込んでいるみたいですね。私は人と話すのがあまり得意ではないので羨ましいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えぇ!?ええぇ!!?」

 

 

教室内生徒「「「???」」」

 

 

「ら、ら、ら、【雷閃】様ァァァァ!!?」

 

 

………【雷閃】?一体何でしょうか?それに今の方は様と言っていたので人なのでしょうか?

 

 

………って、えぇ!!?

 

 

八幡「よう綺凛。」

 

 

は、ははは八幡先輩!!?

 

 

綺凛「な、何で此処に!!?」

 

八幡「いや、お前がいるからに決まってるだろ。」

 

綺凛「ど、どうやって調べたんです?」

 

八幡「端末で。」

 

 

………そ、そうですよね、端末を使えばあっという間ですよね。

 

 

八幡「綺凛、この後予定が無いのなら、稽古を一緒にやらないか?模擬戦場の許可は取ってあるから久し振りに打ち合いをしたい。」

 

綺凛「ぜ、是非!よろしくお願いします!」

 

 

八幡先輩がいつもやっている稽古法、とても気になります。ここで少しでも八幡先輩の技術を得て行ければ!

 

 

ーーー廊下ーーー

 

 

綺凛「まさか来てくれるなんて思ってもみませんでした。」

 

八幡「暇だったからな、稽古しようにも1人だと退屈だから誘おうと思ってたんだ。それにほぼ座りっぱなしの状態だったろ?なら丁度いい運動になるだろ。」

 

綺凛「は、はい!」

 

 

その気遣い、すごく嬉しいです。早くも八幡先輩から学ぶところが出来ちゃいました。それと、さっきから気になっていた事を聞いてみましょう。

 

 

綺凛「あの、八幡先輩。さっきクラスの人から【雷閃】って呼ばれてませんでした?」

 

八幡「あぁ〜その事か。あれは俺の2つ名だ。綺凛とか師匠には言ってなかったが、俺、この学園の序列1位を任されていてな、一応この学園で最強って事になってるんだわ。」(シレー)

 

綺凛「最強!?1番強いって事ですか!?」

 

八幡「数字上はな。俺よりも強い序列外もいると思うから人前で最強だなんて言えないが、形上は俺が一番という事になっている。教えてもらったからといって師匠や琴葉さんに告げ口するなよ?帰省したら絶対うるさくなるから。」

 

綺凛「わ、分かりました……いつから序列1位に?」

 

八幡「中2の時だな。それから何回か挑まれたりしたが、諦めがついたのか知らんが最近は何もないな。多分次は新入生あたりが勝負をふっかけて来たりするかもな。」

 

綺凛「先輩なら余裕で勝てると思いますけど……」

 

八幡「俺の隣に超一流の腕を持つ剣士がいるんだけどなぁ………まさか恥ずかしくて自分から勝負を挑めないとか?」

 

綺凛「そ、そんな!超一流だなんて……私なんてまだまだですよ!八幡さんに比べたら米粒程度です!」

 

八幡「ふぅ……お前はもう少し自分に自信を持て。確かにお前は俺より少しだけ実力面で劣るが、それでも充分過ぎるくらいだと思うぞ?俺が女だったらお前に負けているだろうしな。」

 

 

自分に自信を……

 

 

八幡「今すぐには無理だろうが、もう少し自分の評価を上げてもいいんじゃないか?俺だってそれなりには強い、っていう評価を自分でつけてるからな。実際は知らんからなんとも言えねぇけどな。」

 

綺凛「……八幡先輩からそう言われると、少しだけ自信が持てます。これからも頑張りますので、よろしくお願いします!」

 

八幡「何をよろしくされるのかは分からないが、とりあえずは任された。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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自分の評価

 

 

八幡side

 

 

八幡「フッ!」

 

綺凛「ハァッ!」

 

八幡「甘い。」

 

綺凛「あうっ!?」

 

 

綺凛が星導館に入学して数日、まだ生活リズムが掴めていない中、俺と一緒に稽古をしている。無理してやる必要もないんだが、本人がやりたいと言っている以上止める理由もないから続けさせている。

 

入学する前も道場で稽古していたからか、基礎的な部分はもう完璧に出来ている。後は実戦での応用や自分なりのアレンジだな。綺凛はどうもそこが抜けているような気がする。今の打ち合いでだって、俺は基礎の動きに自分のアレンジを加えて綺凛から一本取った。

 

 

八幡「という感じだな。自分の流れに少しだけアレンジを加えてみろ。言っておくが、俺のを真似するなよ?してたらすぐに分かるからな。」

 

綺凛「はい!」

 

八幡「今日はここまでにするか。分かってるとは思うけど風呂上がりのマッサージを忘れるなよ?」

 

綺凛「はい、ありがとうございました。」

 

 

………綺凛がこの学園に入学してから、何故か俺の事を師匠扱いしているようなないような気がする。いや、別にそれが嫌だというわけではないんだが、少しこそばゆい感じがする。呼び方は普通だが扱いがなんか前と違うような気がする。俺って綺凛からすれば兄弟子の身分になるんだよね?

 

 

ーーー中庭ーーー

 

 

しっかし、春だねぇ〜。それなのに桜はない。刀藤家には1本だけ桜の木があったな。六花には桜の木ねぇのかな?もしかしたら花見という文化とかないのかも?

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

ん?誰だ?

 

 

???『やっほー八幡くん!元気にしてた?』

 

八幡「シルヴィか……どうしたんだ?急に通信なんて寄越して。」

 

シルヴィア『八幡くんの声が聴きたくなったから、って答えたら信じてくれる?』

 

八幡「裏がないかどうか尋問する。」

 

シルヴィア『相変わらずだなぁ。八幡くんもそろそろ私のこと信じてよ〜。私は君の事、結構気に入ってるんだよ。お付き合いをしてもいいくらい♪』

 

八幡「はいはい嬉しい嬉しい。で、なんか用?」

 

シルヴィア「もぉ〜適当に流しちゃってさ……んんっ、あのさ、明日からまたツアーに行くんだけど、その前に八幡くんと一緒に食事に行きたいなぁって思ったんだ。八幡くん、ご一緒してくれないかな?」

 

 

皆さん驚いているだろうが、俺は世界的アイドルのシルヴィア・リューネハイムと交流がある。出会いは些細なもんだが、なぜか気に入られてしまったみたいで、偶にこんな形で食事のお誘いが来たりする。

 

 

八幡「……分かった。じゃあ何時に何処集合だ?」

 

シルヴィア『じゃあ18時半に商業エリアの噴水の近くにしよっか。お洒落して来ても良いからね♪』

 

八幡「俺はそんな柄じゃねぇよ。取り敢えず了解だ。18時半には着くようにする。」

 

シルヴィア『オッケー♪じゃあまた後でね!』

 

八幡「あぁ。」

 

 

そして通信は切れた。けどシルヴィの奴も結構な物好きだよな、俺と食事がしたいだなんて。学園の奴らとかと一緒に行けばいいと思うんだが、なんで俺なんだ?

 

 

八幡「まぁいいか、早く部屋戻って支度しないとな。」

 

 

八幡sideout

 

綺凛side

 

 

また負けてしまいました……私はいつになったら八幡先輩から一本取れるようになるのでしょうか?今日だって取れなかったばかりか、アドバイスまでもらって終わりました。アドバイスをくれるということは、自分まだ伸び代があるという証拠だと、お父様や八幡先輩から教えられましたが、先輩やお父様の背中はまだまだ遠いと痛感しました。

 

……気になっていたのですが、私はこの学園でどのくらい通用するのでしょうか?先輩で1位ですから、私は……20番目くらいでしょうか?

 

少し気になります……八幡先輩に連絡してみましょう。それとあわよくば夕食も………

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

八幡『おう、どうした綺凛?突然連絡なんて。』

 

綺凛「あっ、お疲れ様です!えっと少しだけ気になったことがありまして、先輩から見て私はこの学園でどのくらい強いですか?」

 

八幡『………そうだな、少なくとも俺は冒頭の十二人の中には入れると思ってる。お前にはそれだけの力が備わっていると思う。剣の腕ならおそらく、俺と同じくらいだろうからな。そこにさっき言った自分のアレンジを加えたらもっと良くなると思う。』

 

 

八幡先輩は少し過大評価し過ぎだと思います。私が冒頭の十二人に入れる実力を持っているだなんて……それこそ先輩のような稽古を積まないと無理だと思います。

 

 

八幡『しかしなんで急にそんな事を聞くんだ?何かあったのか?』

 

綺凛「い、あえ!ただの興味本位です!私はこの学園でどのくらい強いのか気になっていましたので……先輩の実力なら序列1位も頷けますけど。」

 

八幡『なりたくてなったわけじゃないけどな。他に何かあるか?なければ切るが?』

 

綺凛「あっ、そうでした!八幡さん、もしよろしければ何ですけど、この後お食事でもどうかなっと思いまして……この後はご予定とかありますか?」

 

八幡『済まんな、今日は私用があって行けない。また今度誘ってくれ。』

 

綺凛「そ、そうですか……分かりました。」

 

八幡「済まないな、もう大丈夫か?』

 

綺凛「はい、ありがとうございました。」

 

八幡「気にするな。じゃあまた明日な。」

 

 

そして通信は切れました。少し残念ですが、今日は諦めましょう。今日は学食の……和食セットBにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 



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お食事デート

 

 

八幡side

 

 

ーーー18:00 商業エリア・噴水付近ーーー

 

 

少し早く着き過ぎたな……集合時間のまだ30分前だ。暇を持て余してんなぁ俺。こんな時本でもあれば便利なんだが、生憎持って来てはいない。普段から持ち歩く奴はいないと思う。にしてもこの時間はやっぱり人が多いな、仕事終わりの人や飯を食いに行く人、買い物をする人に夜遊びをしに行く人とかなりの人がいる。まぁこの時間にこのエリアを散歩する奴はいないとは思うけどな。

 

あぁ〜暇だよ〜。本当に本持って来ればよかった。なんかこんなところでただ座ってるだけの俺、すんごい場違いじゃね?異分子感がハンパないんだけど。流石に俺もこの場所で1人30分も待つのはキツイな。何か暇を潰せるものがあれば良いんだが……あぁ端末で見るニュースしか思い浮かばねぇ!しかもそれさっき見たから何にも面白みがないし!

 

 

「あ、あの〜……」

 

八幡「……え、俺ですか?」

 

「は、はい!星導館学園序列1位の比企谷八幡さんですよね!?握手とサイン貰ってもいいですか!?」

 

 

あぁー偶にいるのよねぇ……俺のサインを欲しがる奴。俺なんかのサインよりもガラードワースの【聖騎士】とかの方がよっぽど価値あると思うけどな。まぁ書くけどね。

 

 

八幡「どんな風に書いたらいいですか?」

 

「2つ名の【雷閃】を大きく書いてください!」

 

八幡「………はい、書けました。」

 

「あ、ありがとうございます!これからも頑張ってください!」

 

 

……あの子、星導館の子だな。あの手のやり口は大体分かる。やり口って言ったらちょっと悪っぽく聞こえてしまうからパターンで言い直すわ。1つ目は自分の部屋に飾る。2つ目はオークションに出す。3つ目もオークションだが、筆跡を真似して偽装を作ってオークションに出す。過去に例もあったから無いとは言えない。まぁ今回は名前を入れてくれとは言わなかったからオークションに出したらすぐに分かるけどな。

 

 

そしていつの間にか、俺の周りには人だかりが出来ていた。何故かというと、序列1位だという事が此処にいる人たちに広まってしまったからだ。いや、かなり前から広まってるんだけど、実物を見たことがないからって理由だろう。あの、これじゃあ身動きが取れないんだけど……皆さん、どいて下さる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「私が見ない間に随分人気者になったんだね?は・ち・ま・ん・く・ん♪」

 

 

………えぇ〜嘘だろぉ………おめぇそれで来ちゃうの?世界の歌姫のまんまで来ちゃったの?変装という名の化粧どうしたの!?

 

 

「え……嘘、も、もしかして……」

 

「シルヴィア・リューネハイムさん!!?」

 

「本物!!?嘘、何で!?」

 

 

ガヤガヤザワザワ……

 

 

シルヴィア「皆、私これからそこにいる八幡くんとデートなんだ。少し退けてもらえるかな?」

 

八幡「おい、誰と誰がデートだ。俺はお前と付き合ってないぞ。」

 

シルヴィア「えぇ〜じゃあ今から付き合おっか?」

 

八幡「そういう冗談はやめろ、周りや俺の心臓に悪いだろ。彼氏を選ぶならもっとイケメンを選びなさい。」

 

シルヴィア「八幡くんも充分イケメンだと思うんだけどなぁ〜自覚ないの?」

 

八幡「なんでイケメンを自覚しなくちゃいけねぇんだよ。ただのナルシストじゃねぇか。」

 

 

俺はそんな馬鹿野郎でもなければ自惚れ野郎でもありません。

 

 

シルヴィア「相変わらずだなぁ。こうしてお話してても良いけど、時間も勿体無いから行こっか!」(ギュッ)

 

 

キャアアアア!!

 

 

八幡「………なんで抱き着く?」

 

シルヴィア「いいでしょ?私と八幡くんだけのスキンシップだよ〜。八幡くんはご褒美に何をくれるのかな?」

 

八幡「………後でな。」

 

シルヴィア「それは期待していいって事かな?」

 

八幡「むしろ期待しない方がいい。」

 

シルヴィア「じゃあ期待して待ってまーす♪」

 

八幡「………」

 

 

俺は思った、綺凛と飯食いに行けばよかったと。

 

 

ーーー高級レストランーーー

 

 

八幡「こんな所予約してたのかよ……何、お前の外食っていつもこうなの?」

 

シルヴィア「そんな訳ないでしょ!毎日こんなの食べてたら舌が肥えちゃうよ。私だって普通の食事はするよ。というよりも殆ど普通の食事なんだから!」

 

八幡「だったら何で今日はこんな高級レストランを予約したんだよ………」

 

 

俺、普通のお店が良かったよ。

 

 

シルヴィア「それで八幡くん、新入生はどう?面白い子いた?」

 

八幡「俺の妹弟子が入って来た。中々の腕だから冒頭の十二人には軽々入れると思っている。」

 

シルヴィア「八幡くんの妹弟子かぁ……ねぇ、その子って可愛い?」

 

八幡「……まぁまだ中等部だからな、まだ可愛いの部類に入ってると思う。」

 

シルヴィア「そうじゃなくて、顔だよ顔!英語で言ったらフェイス!」

 

八幡「……可愛い方なんじゃないのか?あいつは割と整っている方だと思う。」

 

シルヴィア「むぅ〜じゃあ私は?可愛い?」

 

八幡「なんでそれを俺に聞くんだよ?わかりきった事だろう。」

 

シルヴィア「八幡くんの口から答えてもらってないから分からないもーん!」

 

八幡「はぁ………お前は可愛いというよりも、綺麗な方だと思う。」

 

シルヴィア「っ!………そ、そっか///」

 

八幡「何照れてんだよ。お前が言えって言ったんだろ。」

 

シルヴィア「い、いやぁ〜こういう言われ方をしたの初めてだったから。」

 

 

自分で仕掛けて自分で爆発してやがる。要は自爆だな。それに照れてるっていうのもあるが、顔にやけてるし。ていうか、にやけてる顔は可愛いんだな。能力だけでなく性格やかおまでばんのうかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あくまでもメインは綺凛ですのでそんなにイチャコラは出していない………はず。


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伯父の提案

 

 

綺凛side

 

 

綺凛「はうぅ……今日もダメでした。アレなら八幡先輩に届く思っていたのですが……」

 

八幡「いや、悪くはなかった。ただ、まだ荒削りだな。組み合わせ自体は良いバランスだったが、実際にやってまだ10回程度ってところか?」

 

綺凛「は、はい。この動きの組み合わせを身体に慣れさせるために少しだけ……でもそんなにやってないです。」

 

八幡「だろうな。まだ身体が追いついていないって感じだな。アレじゃあ剣に振られているような感じだ。操る側が操られる、剣士としてあってはならない姿の1つだ。」

 

 

……八幡先輩の言う事にはやっぱり重みがあります。お父様からアドバイスをもらう時もそうですが、根本的な所から注意をしてくれます。今回は使い慣れていない動きというよりも、刀に自分が振られているという表現を使って来ました。おそらく八幡先輩は私がこの動きだけでなく、完全にこの刀を、《千羽切》を完全に使いこなせと言っているんだと思いました。

 

 

八幡「分かっているとは思うが、俺たちが握っているのは真剣だ。煌式武装とも引けを取らない切れ味と鋭さを持っているが、使い手の腕前で幾らでも変わってくる。後、あの動きをする上でのアドバイスだ。お前も分かっているとは思うが、刀、所謂日本刀っていうのは切るように振りかぶるのではなく、刀身を引く事によって切れ味を増す武器だ。体重任せにやってみるというのも1つの手だ。」

 

綺凛「アドバイスありがとうございます。」

 

八幡「あぁ、じゃあ今日はここまでにするか。いつも芝生の上でやってるが、いいのか?」

 

綺凛「はい。八幡先輩と稽古出来るのなら何処だって私は大丈夫です。」

 

八幡「ならいいが、模擬戦場とかで稽古したくなったら言えよ。いつになるかは分からないが、取れるようにはするからよ。」

 

綺凛「はい!ありがとうございます!」

 

 

ーーー校内・廊下ーーー

 

 

八幡「さて、今日は何にするか……というより、久しぶりに自分の部屋で作るかな?」

 

綺凛「八幡先輩が羨ましいです、私料理をした事なくて……」

 

 

料理が出来る人は何を考えながら作っているんでしょうか?考え事をしながら料理をする事なんて出来るのでしょうか?

 

 

八幡「まぁ料理も剣と似てるからな。何度も練習しないと上達しないものだ。綺凛だったら最初はお握りから始めてみたらどうだ?アレなら比較的簡単だぞ。」

 

綺凛「どうやってやるのですか?」

 

八幡「水で手を濡らして白米を適量掴む。その後に掌で三角を作るように握る。これだけだ。これが難しかったら大小の茶碗を合わせて形を作ってから握るのもアリだし、水で手がふやけるのが嫌ならラップで包んで握るのもアリだ。」

 

 

色々な方法があるのですね………お握りを作るだけでもこんなに奥深いものなのですね。これに具を入れるとなるともっと難しそうです。

 

 

八幡「今日少しやってみるか?」

 

綺凛「い、いえ!今日は流石に……疲れている状態なのでお休みの日にでもお願いします。」

 

八幡「それもそうだな。分かった。」

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

綺凛「?伯父様からメールが来ました。『話があるから星導館の応接室まで来るように。後、八幡も連れて来い。』だそうです。」

 

八幡「なんだそりゃ?」

 

綺凛「私にも分かりません。」

 

 

なんなのかは分かりませんが、とりあえず向かいましょう。

 

 

ーーー応接室ーーー

 

 

綺凛「此処、みたいですね。」

 

八幡「あぁ。」

 

綺凛「伯父様、綺凛と八幡です。」

 

鋼一郎『入れ。』

 

 

中に入ると、茶色いスーツを着てソファーに座っている伯父様が居ました。

 

 

綺凛「それで伯父様、お話とはなんですか?」

 

鋼一郎「あぁ………お前たちは今後、私の指導の元に稽古を行い、今年の《鳳凰星武祭》に出てもらう。私が直々に教えてやる。」

 

 

えぇ!?《鳳凰星武祭》に!?

 

 

八幡「待ってください。綺凛はこの学園に入学したばかりです。いきなり星武祭に出させるなんて酷じゃないですか?」

 

鋼一郎「《鳳凰星武祭》までまだ3ヶ月以上ある。八幡、お前は3ヶ月あってもこの環境に慣れるのは不可能だと言いたいのか?」

 

八幡「いえ、そういうわけではありませんが……理由を聞かせて下さい。なぜ俺たちは望んでもいないのに星武祭に出なければならないのですか?」

 

鋼一郎「お前に話す事ではない。それに、言ったところで理解は出来まい。」

 

八幡「それなら俺は貴方には従いません。」

 

鋼一郎「何だと?私に従えないと言うのか?」

 

八幡「はい。理由も分からないのにいきなり《鳳凰星武祭》に出ろ何て言われても納得出来ません。ちゃんとした理由があるのならまだしも、一方的に言われてはいそうですかー分かりましたーって言う程、俺も綺凛もバカではありません。鋼一郎さん、理由は何ですか?」

 

 

伯父様と先輩が言い争っています……私はそんな中で萎縮してしまいっています。それに、八幡先輩のこんな顔は初めて見ます。機嫌が悪そうな、とても不愉快そうな顔をしています。

 

 

鋼一郎「さっきも言ったはずだ。お前たちには関係ない。」

 

八幡「どうしても、ですか?」

 

鋼一郎「ふん、ガキに言って分かることではない。」

 

八幡「……分かりました。ではもうお聞きするのはやめましょう。俺が代わりに答えますので。」

 

鋼一郎「……何?」

 

綺凛「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「貴方が俺たちを《鳳凰星武祭》に出させようとする目的、それは……星導館の運営母体《銀河》の幹部になる為でしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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家族の暖かさ

 

 

八幡side

 

 

八幡「貴方が俺たちを《鳳凰星武祭》に出させようとする目的、それは……星導館の運営母体《銀河》の幹部になる為でしょう?」

 

 

その瞬間、鋼一郎さんは驚いたように目を見開いたが、すぐに普通の表情に戻った。恐らく驚いたのを隠そうとしたのだろうが、もう手遅れだ。これで魂胆が分かった。要は自分がのし上がりたいから俺たちを利用したいだけだ。俺は兎も角、まさか身内に手を染めるなんてな………星導館だけに限らず、運営母体の幹部になっている連中は非人間的な奴等が多いってよく聞くが、それが本当なら鋼一郎さんは絶対になれないだろうな。

 

 

見たところ、この人の我欲、欲望、野心が強いからだ。予想だが、幹部の奴等に鋼一郎さんみたいな人はいないだろうな。

 

 

八幡「それで、どうなんです?俺の答えは正解なのか、不正解なのか、お答えしてもらってもいいですか?」

 

鋼一郎「ふん、不正解だ。」

 

八幡「虚勢張って嘘つくくらいなら正解って言った方がまだカッコ良かったですよ。俺には貴方が答えを言った瞬間に目を見開いたのがよく見えましたから。もしそれがなかったとしても、貴方は相当分かりやすい人だ。」

 

鋼一郎「……何故そう思う?」

 

八幡「普通に考えれば分かる事です。運営母体の幹部、聞こえは良いですが、中身は相当黒いと思いますしね。それこそ身内を使ってまでのし上がろうとする人の事なんて、考える暇なんてないくらいだと思いますよ。むしろ相手にされないと思いますけど?」

 

鋼一郎「黙れっ!!貴様に何が分かる!?家族から迫害されたような奴に、私の気持ちが分かるものか!!」

 

綺凛「お、伯父様!!」

 

 

漸く綺凛が声を挙げた。一応綺凛も俺が刀藤家に居候のような形で来た訳は形上では知ってるからな。俺が星脈世代だから、簡単ではあるがそれだけで片付けられるものではない。まぁ、この人がこういう思いをするのは俺も分からなくもないけどな。

 

 

八幡「………分かりますよ、貴方の気持ち。」

 

鋼一郎「何?」

 

八幡「俺だって貴方と同じだ。手に取るように分かる。“自分が星脈世代だったら”“人より特別な力を持っていたら”そういう風に思っていたでしょう?俺も貴方と同じで今までどれだけ“普通の人間が良い”とか“普通の人間になりたい”と思った事か。貴方はまだマシな方ですよ。星脈世代でなくとも居場所がある。刀藤家があります。それに比べて俺は何処にもありません。家に帰るだけで異物扱い、飯だって偶にしか食わせてもらえなかった。暴力だって日常でしたしね。そんな所に貴方は行きたいと思えますか?」

 

 

鋼一郎は固まっていた。いや、喋りたくとも喋れないのであろう。八幡の受けていた迫害の内容があまりにも凄絶なものだったからであろう。

 

 

八幡「血は繋がっていようと違う人種になって生まれた。人間ではなく星脈世代として。たったこれだけの事で俺の人生の半分は真っ黒に等しかった。けど、そんな時に誠二郎さんに出会った。」

 

八幡「あの時、俺は本当の意味で救われた。あったかい飯や風呂があって布団がある。そして何よりも、刀藤家の暖かさに救われた。家族ってのはこんなにもあったけぇものなんだって初めて思った。琴葉さんも俺の両親と同じ非星脈世代なのに、なんの躊躇いもせずに普通通り接してくれた。鋼一郎さん、貴方の両親や祖父母のいずれかに非星脈世代はいたと思います。その時の反応とかはどうでした?師匠だって貴方の弟だ、その弟はあなたを見下すようなことをしましたか?俺にはそんな事をするような一族には到底思えません。」

 

 

次第に鋼一郎さんは俯いていった。そして何かを思い出しているような、そんな仕草を取っているかのように何もせず、ただ俯いていた。

 

 

八幡「……鋼一郎さん、貴方はそんなあったかい家族の、自分の娘も同然の子を道具として扱えるんですか?」

 

鋼一郎「………」(プルプル)

 

綺凛「八幡先輩……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鋼一郎「……八幡、済まなかった。私は娘も同然の子を知らずに道具にする所だった。そしてお前にも酷いことを言った、済まない。」

 

八幡「……いえ、気にしなくていいですよ。俺は家族は大切にするべきだって本気で思ってたから、熱弁しちまっただけですから。」

 

鋼一郎「………綺凛も済まなかった。」

 

綺凛「い、いえ!私なんてただ居ただけみたいなものですから。」

 

鋼一郎「さっきの話だが、忘れてもらって構わない。もう行っていいぞ。」

 

 

さっきとはまるで別人だな。めちゃくちゃ良い人になってんじゃねぇかよ。

 

 

八幡「じゃあ行きますね……綺凛、行くぞ。」

 

綺凛「は、はい!」

 

鋼一郎「呼び出して済まなかった。良い学園生活を送ってくれ。」

 

 

そして俺たちは応接室から出て、廊下を歩いた。綺凛はまだ戸惑っているようだった。まぁ無理もないだろう。一瞬の出来事だったからな。

 

 

八幡「綺凛〜帰って来てるか?」

 

綺凛「は、はいっ!?」

 

八幡「声ものすごい裏返ってたな。飯食いに行こうぜ、ずっと話してたら腹減っちまった。」

 

綺凛「……はい、分かりました。」

 

 

そして俺たちは本日まだ行ってない夕食を食べるべく、食堂へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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リフレッシュをする為に

 

 

八幡side

 

 

綺凛が星導館に入ってから早くも2ヶ月が過ぎた。時が過ぎるというのはあっという間とはよく言ったもので、本当にすぐに過ぎてしまっている。俺もよくよく考えてみれば、優勝とか何も関係なしに綺凛と《鳳凰星武祭》に出ても良かったのかもって思ったしな。まぁもう参加申込期間過ぎたからエントリーなんて出来ないけどな。

 

あった出来事はこれだけではない。1ヶ月に1度ある公式序列戦では綺凛が序列2位【千見の盟主】に挑んで勝利して新2位になった。2つ名も【疾風迅雷】に決まり、刀藤家からは一応序列1位2位を輩出したという記録も出した。入学して2ヶ月で序列2位はヤバイな……俺も挑まれるまではずっと序列外だったし。

 

そんな新しい序列2位の綺凛だが、周りからの反応はというと実力を認めたという人もいれば、まだ認めていない人もいる。半分半分に分かれている状況だ。中等部1年の入学したばかりの奴が生意気だとか、序列1位に教えてもらっているからって調子に乗り過ぎだとか、様々な事を言われている。だが綺凛も成長していないわけではなかった。庇護欲を擽るような仕草をするいつものソワソワした綺凛がその時放った言葉は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺凛『入学したばかりというのも、八幡先輩に教えてもらっているというのも関係ありません!納得が出来ないのなら決闘だってお受け致します!ですが、私だって負けるつもりはありません!私の全てを持って向かってくる者を倒すだけです!』

 

 

あの綺凛がこんな大胆な事を言ったのだ。剣を持つと性格が変わるが、持たずにこの空気になるのは初めてだった。その後、その場から去って人目のない所ではかなりオロオロしていたけどな。けど、綺凛自身もかなり成長していると俺は思っている。

 

 

だがその言葉を発した場所がいけなかった。その場所は高等部の校舎だったからだ。そして今も……

 

 

???「刀藤!!俺と勝負しろ!!」

 

綺凛「うえぇ!?ま、またですか!?一昨日に決闘したマクフェイル先輩ですよね?」

 

レスター「負けっぱなしってのは性に合わねぇんだよ!いいから戦いやがれ!!」

 

綺凛「ええぇぇ!!?」

 

 

流石に俺も止めてやりたいが、あれは綺凛自身が言い出した事だ。俺も無闇に手は出せない。出してしまったら、また何かいちゃもんつけてくる奴がいるかもしれないからな。

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

漸く決闘目的の奴らを全て倒した綺凛はベンチで一休みしていた。今日は俺との模擬戦だったのだが、この様子じゃあ無理そうだな。

 

 

八幡「大変だな。」

 

綺凛「いえ……私があの場所で言ったのも少なからず影響していますので。それに私が力を示していけば、認めてくれる人も多くなるんじゃないかって思えるんです。」

 

八幡「そうだな……高等部の校舎だってお前の事で持ちきりだ。決闘に行くか行かないか、本当に中等部なのかとか、もう1つあるが、これは俺が言ったら変態みたいだから言わないでおく。」

 

綺凛「八幡先輩がそんな事を思っている人だとは思っていませんので、言っても大丈夫ですよ。恥ずかしいとは思いますけど。」

 

八幡「………じゃあお前を信じるぞ。本当にその部分は本物なのかってのも噂になってる。特に男連中のな。女も少なくはないが。」

 

綺凛「?何処の事でしょう?」

 

 

分からなくていい。君は純粋なままが一番だ。穢れなんて知らなくていいんだから。

 

 

八幡「それはそうと、今日はやめるか?最近は決闘ばかり続いてるからな、お前も休みたいだろう?」

 

綺凛「いえ、これくらい平気です。」

 

八幡「………いや、休むべきだな。2日は剣を握らない方がいい。少し危ないな。」

 

綺凛「どうして、ですか?」

 

八幡「真剣勝負を毎日のように受け続けているんだ。精神力や体力だけじゃない。削られているのは自身の身体もだ。それに、お前が刀を持っている時の手、震えてたろ。」

 

綺凛「っ!」

 

八幡「《千羽切》は比較的軽い刀だが、それで手が震えるってのは無理をしている証拠だ。少しは身体を休めた方がいい。幸い明日と明後日は土日だ。自分の趣味とかで気分を紛らわしたり、外出して息抜きでもしてくればいい。」

 

 

今の綺凛に必要なのは休養だ。流石にこの1週間連続の決闘は度が過ぎてる。少しやつれ気味だからな。兄貴分としてはこの状況は放って置けない。

 

 

綺凛「……そうですね、明日と明後日は休む事にします。土日は刀を持ちません。自分のやりたいことをしてみようと思います。」

 

八幡「ついでに言っておくが、技を考えるのも無しだからな。それやっちまったら刀が無性に使いたくなるから。」

 

綺凛「はうぅ〜八幡先輩は何で私の考えていることが分かるんですか?」

 

八幡「俺の経験だからだ。」

 

 

………言っていて少し恥ずかしいな。

 

 

八幡「まぁ兎に角だ。明日明後日は決闘なし、刀なし、これを心掛けろ。だからって必要以上に考え込んだりするなよ?リフレッシュ出来なくなるから。」

 

綺凛「はい、分かりました!」

 

 

本当に分かってくれたのなら良いんだけどな。俺もこれで刀握っちまったしな………お店の。

 

 

 

 

 

 

 





綺凛ちゃん、2位になってから忙しそう………


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1人旅

 

 

綺凛side

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

昨日、先輩から言われた通りに体を休ませるのと気分転換を兼ねて六花の街へと赴いています。私は入学してから八幡先輩との稽古や学業、部屋で過ごす、このサイクルが当たり前だったのでこの六花の街並みは来た時にしか触れていません。凄い活気です………毎日こんな風に賑わっているのでしょうか?

 

それにしても……いろんなお店が並んでます。飲食店や洋服店、お花屋さんにスーパーまであります。自分で炊事をする学生もいるからその為でしょうか?今は至福ですが、此処にいる殆どの人は学生か六花に住んでいる人たちですね。

 

さて、私も気になるお店から行ってみましょう!

 

 

ーーー武器屋ーーー

 

 

綺凛「刀……刀………あっ、ありました!どんなのがあるか楽しみですね。」

 

 

それにしても、武器屋さんなんてあったんですね、この六花に。煌式武装があるからてっきり無いのかと思いました。

 

 

綺凛「これは「小烏丸」のベースにした刀ですね。こっちは「獅子王」で、これは「姫鶴一文字」ですか……凄いです、どれも名刀をモチーフにして作られたオリジナルの刀になってます。」

 

 

他にも「正宗」「大典太」「三日月宗近」「童子切」「鬼丸国綱」「水神切兼光」「八丁念仏」「数珠丸」中でも驚いたのが日本の横綱とも言われている業物の太刀「大包平」でした。まさかこんな名刀までもアレンジしたものがあるとは思いもしませんでした。

 

 

「お嬢ちゃん凄いね、これだけの数の刀があるのに全部正確に当てられるなんて。余程刀について勉強してるんだね。」

 

綺凛「は、はい!私も剣術家の端くれですので、一通りの名刀や伝説なんかも調べたんです。私が持っているのは名刀をアレンジしたものではありませんけど。」

 

「そうなのかい?でも現代の業物だって負けてないと僕は思ってるけどね。先人たちが残してくれた技術を活かせるわけだから、その技術を惜しみなく使うことが出来るわけだからね、まぁ鍛治職人でもない僕が言えた事じゃないけどね。」

 

綺凛「………いえ、私もその通りだと思います。私の使っている刀藤流も先代の方々が考えなければこの流派は存在していませんから。だから私も先人たちに恥じない剣を振るい続けたいと思っています。」

 

 

そしていつかは八幡先輩を超えて、六花で一番の剣士になりたい。それくらいの目標が無かったら八幡先輩を追い抜くなんてことはできませんから。

 

 

「………凄いね、君。もしよかったら名前を教えてくれないかな?」

 

綺凛「は、はい。私は星導館学園中等部1年の刀藤綺凛です。一応序列2位です。」

 

「刀藤さんね。もし良かったらなんだけど、今度でいいから君の刀を見せてもらいたいんだ。いつでも良いから思い出した時にお願い出来ないかな?」

 

綺凛「はい、それはもちろん構いませんが……」

 

「ありがとう!それじゃあよろしく頼むよ!」

 

 

その後も色んな武器を見て回りましたが、やっぱり刀に目を引かれました。買いたいという気持ちにもなりましたが、そんなお金はありませんので見るだけにしました。

 

 

ーーー商業エリア・13:00ーーー

 

 

もう13時なのですか……刀を見ていただけなのにもう3時間も経過していました。こんなにも時間が過ぎるのが早いと感じたのは初めてです。そろそろ昼食にした方がいいですね。

 

ですが、私は1人で外食した事がありません。この場合どうすれば良いのでしょうか?八幡先輩をお誘いして一緒に行くというのは……い、いえ、八幡先輩にこんな事で迷惑は掛けられません!

 

ですがどうすれば良いのでしょうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あれ?綺凛じゃないか、どうかしたのかい?」

 

綺凛「え?……あっ、スバルさん!」

 

スバル「こんにちは、今日は比企谷先輩とは一緒じゃないんだね。ところで、こんな所でどうしたんだい?」

 

綺凛「えっと、実は………」

 

 

私が今話している人は、同じクラスの一条スバルさん。名前と口調は男の人みたいだけど、歴とした女子です。私が序列2位になった後、私のことを避けるようになったクラスメイトが殆どでしたが、スバルさんはそれを気にせず気兼ねなく私と会話をしてくれる数少ない友達の1人です。

 

 

スバル「あははは!1人で外出してきたのはいいけど、1人で外食をした事がないから戸惑っていたなんて……綺凛、君って面白いよ……」(プルプル)

 

綺凛「わ、笑わないで下さい!私だって恥ずかしいんです!」

 

スバル「ゴメンゴメン。でも、なんで1人で外出を?いつも一緒にいる比企谷先輩と行けば良かったのに……付き合ってるんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺凛「うぇっ!!?わ、わわわわ私と八幡先輩がですか!!?そ、そんなのあり得ないです!!八幡先輩だったら、わ、私なんかよりも、もっと綺麗な人とお付き合いすると思いますよ!!?」

 

スバル「(動揺し過ぎだよ……却って好きって言っているようなものだよ、それは。)そうかな?僕はお似合いだと思うけどなぁ……そういうの考えた事ないの?」

 

 

……考えた事なんて全くありません。だって今までは同じ師匠で教えを受ける兄弟子としか思っていませんでしたから。それ以外の感情なんて……考えた事もなかったです。

 

 

スバル「まぁ立ち話もアレだからお店に入ろうか。僕が行こうとしていたお店でいいかい?フレンチなんだけど、値段は安いからお得だと思ってね。」

 

綺凛「は、はい!是非!」

 

スバル「よし、じゃあ行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





当然のオリキャラです。無意識に頭の中が何を出そうか困っていたんでしょう。


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趣味は先輩と

 

 

綺凛side

 

 

スバル「それで?綺凛は何であんな所にいたんだい?お世辞にもあの場所は体を休められるようなお店はないと思うんだけど……」

 

綺凛「実は、武器屋という名前が目に入ってしまって、なんだか気になってしまったので入ってたんです。そしたら思いの外夢中になってしまって……3時間も入り浸っていました……」

 

スバル「さ、3時間!?君はあんな物騒な名前のお店に3時間も居たのかい!?耳を疑うよ。」

 

 

そ、そんなに異常でしょうか?私からしてみれば、面白いお店だと思うのですが……品揃えは良いし、店員さんも良い方だったので。

 

 

スバル「それでその後に僕と会って今に至ると?」

 

綺凛「はい、そうなります。」

 

スバル「………綺凛、僕から1つアドバイスを進言するよ。これは真剣に受け止めてほしい。」

 

 

な、何でしょう?スバルさんがこんな風になるのは授業を受けているときくらいです。私も真剣に聞かないといけませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スバル「君はもっと趣味や好きなものを増やすべきだ!」

 

綺凛「…………え?」

 

 

あまりにも予想斜め下の答えだったので、放心してしまいました。趣味や好きなものを増やす?

 

 

スバル「君の頭は刀だけで出来ているのかい!?何故リフレッシュするために外出して最初に入ったお店が武器屋なんだい!?君は戦いがそんなに好きなのかい!?」

 

綺凛「い、いえ、どちらかといえば嫌いな方で「ならもっと女の子らしい趣味でも見つける事を進言する!今のままだと比企谷先輩は振り向いてもらえないよ!もっと自分に女子力を身につけるべきだ!」な、何で八幡先輩が此処で出てくるんですか!!?」

 

スバル「君は知らないだろうから言っておくけど、比企谷先輩って結構モテてるんだよ?面倒見が良いからとかクールだからとかって理由でね。だから綺凛はその女子たちから目の敵にされているんだよ。」

 

綺凛「私、それ聞かされていないんですけど!?」

 

スバル「当たり前じゃないか、秘密にされてるんだから。」

 

綺凛「あの、スバルさんはどう思ってるんですか?」

 

スバル「僕かい?僕はそんな事どうでもいいよ。確かに比企谷先輩は憧れだけど、恋人にしたいって思うほどではないからね、僕にだってちゃんとタイプはいるんだから。」

 

 

………スバルさんは大人の人って感じがします。本当に私と同じ中等部なんでしょうか?見た目も何処と無く大人っぽいから本当は大学部辺りの人ではないでしょうか?と疑ってしまいます。

 

 

スバル「兎に角、君はもっと趣味を持つべきだと思うよ。今まであまり気にした事はなかったと思うけど、息抜きする時に趣味が無かったら、何をしていいか分からなくなるからね。」

 

綺凛「趣味、ですか………料理とか裁縫とかですか?」

 

スバル「方向は間違ってないけど、それだと必ずしもリフレッシュできるとは限らないでしょ?例えば………スイーツ巡りとかね。六花には色々なスイーツ店があるから先輩を誘って行ってみたらどうだい?」

 

 

スイーツ巡り……

 

 

スバル「カラオケも良いストレス発散になるよ。綺凛はあまり大きな声は出さないけど、カラオケは歌を歌わないといけないからね、ストレス発散も兼ねて先輩を誘ってデュエットでもしてみたらどうかな?」

 

 

カラオケ……

 

 

スバル「映画を見るのも良いね。スタジアムで見るのも良し、借りて部屋で見るのも良し、好きな映画を観れるから暇つぶしには良いと思うよ。先輩と相談してお互いに見たい映画を選んで一緒に見たらどうだい?」

 

 

映画鑑賞……

 

 

綺凛「あの、スバルさん。」

 

スバル「ん?何かな?」

 

綺凛「何で八幡先輩がいる前提で話してるんですか?これって趣味探しなんじゃ……」

 

スバル「おや?僕は『先輩』とは言ったけど『八幡先輩』と『比企谷先輩』とは一言も言ってないよ?あれれ〜?綺凛、もしかしてそうなのかい?」

 

綺凛「ち、ちちちちち違います!!!」

 

 

その後も私はスバルさんにからかわれ続けました。私は単純過ぎるのでしょうか?なんだかスバルさんの掌で転がされているような気がします。

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

スバル「いやぁ、今日は楽しかったよ。思いもよらない休日になったけど、とても充実した1日になったよ。」

 

綺凛「私はからかわれ続けたので………でも、いつもと違う過ごし方をしたので楽しかったです。」

 

スバル「そう言ってくれると僕も嬉しいよ。君とこういう風に話すのはあまり無いからね。僕でよければいつでもいつでも話しかけてほしい。君と話をすると何だか楽しい気分になるからね。」

 

綺凛「はい、約束です。」

 

スバル「うん、約束だよ。じゃあまた学園でね。」

 

 

そう言ってスバルさんは先に帰って行きました。さて、私ももう少しだけ回ってから帰る事にしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな時間まで出歩いたのは初めてです……でも、なんだか楽しかったです。

 

 

綺凛「また行ってみたいです。」

 

八幡「その様子だと、ちゃんとリフレッシュ出来たみたいだな。」

 

綺凛「は、八幡先輩!!」

 

八幡「よう、女子寮まで送るぞ。」

 

綺凛「い、いえ!お構いなく!!」

 

八幡「女子が1人で出歩くような時間じゃないからな、学園内とはいえ危険だ。」

 

綺凛「……じゃあ、お願いします。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………………

 

 

綺凛「あの、八幡先輩。」

 

八幡「ん?どうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綺凛「八幡先輩はスイーツ巡りとカラオケ、映画鑑賞、この中でどれが一番好きですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、綺凛編の終了です!!

なんだか気になる終わり方になりましたが、これもアリな終わり方だと思いました!

さて、次は誰をヒロインにしようかな?



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閑話 ②
研究者と技術者



さて、今回から閑話に入りますが、1話目から1作終わりの閑話を出しました。ただお作りしただけのものです。




 

 

ーーーーーー

 

 

此処は水上都市六花の学園の1つ、アルルカント・アカデミーの某施設内。この学園には5つの派閥に分かれている。

 

獅子派(フェロヴィアス)彫刻派(ピグマリオンズ)黒夫人派(ソネット)思想派(メセトラ)超人派(テノーリオ)

 

この5つによって派閥が分けられており、学園は統率されている。研究テーマは派閥ごとに異なっており、得意分野も異なっている。他の学園に比べて実力主義ではないものの、徹底した成果主義な校風で研究についての発言権はかなり強い。

 

研究クラスと実践クラスに分けられており、研究クラスの落星工学の技術力とかに知識力は世界トップクラスを誇っている。

 

 

なんか技術者、研究者の中には突出した存在が何人もいるのだ。これはその突出した才能を持っている技術者と研究者のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「失礼するぞ、少し訪ねたい。この文献に書かれてある内容、どうやったらこんな風に緻密で繊細かつ大胆な構築が想像出来て、さらには実行できたのだ!?」

 

???「んー……なんとなく。」

 

???「君はまたそれか……少しは私の質問に真面目に答えてもらいたいのだが?」

 

???「………」

 

???「今度は無視かい?」

 

 

部屋に訪問して来た褐色肌で切れ長の目をした金髪の女性はカミラ・パレート。学内最大派閥《獅子派》筆頭であり、煌式武装の開発を専門としている。

 

 

カミラ「もう1度聞くが「おーーーい!!!」……はぁ、ついに来てしまったか。」

 

???「ねぇねぇ!!この文献の自律式擬形体(パペット)どうやって作ったの!?身体に線は入ってないし、複雑な構造がないと思いきや機械的な部分も一切ない!!こんな自律式擬形体どうやって作ったの!?」

 

???「んー……なんとなく。」

 

 

???「そんなこと言わずに教えてよ〜!!私だって君みたいな頭が欲しいんだよ〜!」

 

 

部屋に突撃する勢いで飛んできた長い茶髪をポニーテールにした少女はエルネスタ・キューネ。《彫刻派》筆頭であり、専門の自律式擬形体の開発分野では最高峰の研究者である。

 

 

カミラ「おいエルネスタ、今は私が先だ。君は後にしてくれ。」

 

エルネスタ「えぇ〜何でさ!私は一刻も早くこの謎を知りたいの!教えてよ〜!」

 

???「失礼するよ、どういうことか説明してもらうよ?私が作り上げた最強の魔女であるオーフェリア・ランドルーフェンを元の状態に戻すなんてどういう了見だい?」

 

???「んー……なんとなく。」

 

???「君はまたそうやって……その技術があれば様々なことが可能になるというのに………」

 

 

少し怒気を含みながら部屋に入って来た緑色の髪をした女性はヒルダ・ジェーン・ローランズ。アカデミー創立以来の天才と呼ばれている《超人派》の天才技術者。星脈世代は人類の進化した姿であり、中でも魔女や魔術師といった能力者はその最たるものであるという思想を持っている。

 

 

ヒルダ「それで、どういうことか説明してもらえるんだろうね?」

 

カミラ「待て、彼には私が最初に質問していたのだ。優先順位は私だろう。」

 

エルネスタ「あーもう!メンドくさいなぁ!早く答えてよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「八幡(比企谷)(比企谷八幡)!!」」」

 

 

八幡「………頭から引っ張った、以上。」

 

 

そしてこの男、全派閥を合わせたとしても足りないくらいの頭脳と知識、技術、実力を兼ね備えたアルルカント・アカデミーが誇る研究者兼技術者兼母体のなんちゃって幹部の比企谷八幡である。

 

彼の性格は極めて気まぐれ。やりたい事に興味を持てばすぐ実行。興味がないものには手をつけない。そんな性格だった。常に気だるげなオーラを放っており、いつも自室のリクライニングに身を委ねながら考え事(?)をしている。

 

そして彼のPC画面は1つではなく、30機分の画面があり、そのどれも訳のわからない数式や部分構造、図形や計算式などが映し出されていた。

 

 

カミラ「同意するわけではないが、この2人の言う通りだ。いい加減君の技術を私に教えて欲しい。なぜそんなにも頑なに教えようとしないのだ?」

 

エルネスタ「そーだそーだ!教えろ〜!!」

 

ヒルダ「私に説明はしなくてもいいよ。君の技術なんてどうでもいいからね。」

 

 

そして、気怠げそうな雰囲気を隠さずに八幡はこう言った。

 

 

 

 

 

八幡「……じゃあ逆に聞くけどさ、お前ら人の知恵借りた作りもんして達成感あんの?」

 

 

この言葉に2人は何も言えなかった。それはそうだ、作ったとしてもその技術は他人から得たもの。自分自身が1から作り上げたものではないからだ。

 

 

八幡「じゃあ次はアンタな、あんな失敗作を元の状態に戻すのなんて俺には寝てても出来るぞ。簡単すぎて欠伸が出るくらいだ。」

 

ヒルダ「この……!」

 

八幡「もっと自分の頭に知識を蓄える事だな。まぁ、お前らに出来るとは思えないけどな。」

 

 

こんなダラけた奴に言われたら頭にくるのも当然だが、言い返せないのが現状だった。何故なら全て事実だからだ。

 

比企谷八幡にとっては本当に簡単な事なのだろう。アルルカントは彼の頭脳を称えてこう呼んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神の頭脳(ミョズニトニルン)】と。





以上、八幡が天才だったらというお話でした。

2つ名についてはただのパクリです。



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黒学院の一匹狼

 

 

ーーーーーー

 

 

六花南西部にある他の学園に比べて良いイメージの持てなさそうな学院がある。その名もレヴォルフ黒学院。

 

六花内の学園の中では一番の不良校としても有名であり、普段から素行が悪く、道端で喧嘩や決闘は当たり前、さらには自ら組織を率いている生徒や、マフィアに所属している生徒が殆ど。中には何処にも所属しない変わり者(世間ではまとも)も存在している。極めて女子の数も少なく、在籍している女子生徒は指で数えられるほどしかいない。

 

 

そのあまりの凶悪さから入学希望者は六花断トツの少なさである。だが向上心のある者や腕に自信のある者が集まりやすい為、チーム戦やタッグ戦には驚異的なまでに向かないものの、個人戦では確かな実績を収めている。そしてこの学院のもう1つの特徴は完璧と言っても過言ではない程の実力主義という事だ。

 

 

弱肉強食を体現したような学園でもあり、弱き者は強き者に従い、力なき組織は権力の強い組織へと下る。それがこの学院の当たり前でもあるのだ。学外の組織に加わっている生徒や実際にトップを張っている生徒もいる。

 

この学院にはルールや校則は無いに等しいので、同じく六学園の1つ、聖ガラードワース学園とは全く相性が良くない。一目合えば一触即発の雰囲気になるだろう。

 

 

だがこんな学院でも、誰もが恐れ、誰もが憧れ、誰もが畏敬の念を込める人物がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「お疲れ様です!!!」」」」」

 

???「んな挨拶いらねぇよ。てかオメェらを舎弟にした覚えはねぇぞ。さっさと散れ。」

 

「何言ってんスか兄貴!俺たちぁ兄貴について行きたくてついて来てんでさぁ!兄貴だって言ったでしょう!勝手にしろって!」

 

???「確かに言ったが、俺はオメェらを従えてるつもりはねぇ。あれは別について来いって意味じゃねぇよ。」

 

「そう言わねぇでくだせぇよ!今や兄貴はレヴォルフの生態系でトップなんでっせ!あのウゼェ豚野郎なんかよりも断然上なんですから!」

 

「それに、ほら!兄貴を持ち上げたら姉貴も喜びますんで!」

 

???「テメェらがしてぇだけじゃねぇか。」

 

 

そう、この学院の頭でもある存在、比企谷八幡はレヴォルフ黒学院の序列1位であり、どのグループにも属さず、一匹狼の存在だった。だが彼に関わったものは最後、2度と勝負に挑もうとする者はいなかった。それどころか、彼の舎弟に入りたいという者が増え続けているのだった。

 

 

???「………帰ったわ。」

 

「「「「「お疲れ様です、姉貴!!!」」」」」

 

八幡「おい、お前か?こいつらをけしかけたのは?」

 

オーフェリア「………何のことかしら?」

 

八幡「こいつらの中の1人がおだてりゃ俺が喜ぶってお前から聞いたって言ってたぞ、オーフェリア。」

 

 

彼女の名前はオーフェリア・ランドルーフェン。比企谷八幡が来る前はこの学院の序列1位だった人物。だが八幡に負けた事によって序列は2位になった。それ以降は八幡の側についていくようになり、今に至る。

 

 

オーフェリア「………違うの?」

 

八幡「何で舎弟でも何でもねぇ奴から世辞言われて喜ぶんだよ?俺は誰にでも尻尾振るバカな犬じゃねぇんだよ。」

 

 

???「ひ、比企谷さ〜ん!」

 

???「おう八幡、戻ったぜ!」

 

八幡「はぁ……何度も言ってんだろうが。此処はお前らの溜まり場じゃねえっつってんだろ。つかお前もかよ、ウルサイズ妹。」

 

プリシラ「あの……この場所、好きなので。」

 

イレーネ「なんだなんだ?こんな良い場所を独り占めしようってか?そりゃないんじゃねぇか?」

 

 

この2人は姉妹で、妹のプリシラ・ウルサイスと姉のイレーネ・ウルサイス。妹の方は優等生という感じでレヴォルフにいるような生徒ではないが、姉は如何にも戦闘狂という性格と粗暴さがある。姉妹でありながら対極の性格なのである。

 

 

八幡「つーかなんだよお前ら、此処に来るんじゃねぇよ帰れ。俺はテメェらを此処に招待した覚えはねぇぞ。」

 

「そんなこと言わねぇでくださいって!俺たちぁ兄貴の下につくべきだって思ったからここに居るんすから!側にいさせてくだせぇよ!」

 

オーフェリア「………私は八幡の側にずっといるから関係ないわ。」

 

イレーネ「ディルクの野郎のとこなんぞに戻る気はねぇからな!それに、あたしはここが気に入ってっからな!」

 

プリシラ「さっきも言いましたが、私はこの場所が好きなので、ここにいます!」

 

八幡「テメェらなぁ………」

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

八幡「……なんだテメェか、何の用だ?ローストポークでも奢ってくれんなら話聞いてやってもいいぞ、ディルク・エーベルヴァイン。」

 

ディルク『うるせぇ、勝手に喋ってんじゃねぇよ。取引だ。お前の「断る。」……何だと?』

 

八幡「なんで俺がテメェの口車に乗せられなきゃいけねぇんだよ?動くんだったらちゃんと四足歩行で餌でも探しながら自分で歩け。ご自慢の金と肉なら持ってんだろ?それで誰にでも頼めば良いだろ。」

 

ディルク『テメェ、話も聞かずに俺の誘いを断ってもいいのか?後悔する事になるかもしれねぇぞ?』

 

八幡「じゃあそん時は俺がお前にさらなる不幸を味あわせてやるよ。ブヒブヒ泣いても許してやらねぇからな?」

 

ディルク『……チッ。』

 

 

そしてディルクは何も言わず、舌打ちして通信を切った。これで理解したと思うが、今のレヴォルフの頂点に立っているのは比企谷八幡なのだ。誰にも彼には逆らえない。逆らったら最後、何も残らないというのを知っているからなのであろう。

 

 

八幡「………飲みもん買うか。」

 

 

だが、非常にマイペースな一面もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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映画予告?


大変申し訳ございません!

出す方を間違えてしまいました!!


 

ーーーーーー

 

 

この海に浮かぶ島の名は水上都市六花。世界各国から集められた生徒が覇と覇を競い合う場である。そしてこの都市には6つの学園が存在している。

 

 

綾斗『自分の成すべきことを果たすため、かな。』

 

ユリス『私は誰にも負けられないのだっ!!』

 

紗夜『本気で来い。』

 

綺凛「参りますっ!!』

 

クローディア『まさか、この子の能力を知らないわけじゃないでしょうに。』

 

 

不撓の象徴たる赤い蓮の花【赤蓮】。永遠に燃え盛る業火の花を表す学園。

 

【星導館学園】

 

 

アーネスト『面白い展開になって来たね。』

 

レティシア『それはどういう事?アーネスト。』

 

ライオネル『相変わらず口の軽い奴だ。』

 

ケヴィン『お前の頭が固すぎるんだよ。』

 

パーシヴァル『その辺にしてください。』

 

 

秩序の象徴たる太陽の輪【光輪】。規律と忠誠を重んじて、常に気高く高貴であれ。

 

聖ガラードワース学園

 

 

星露『ほっほー、楽しみじゃわい!!』

 

虎峰「師父!』

 

セシリー『相変わらずだねー虎峰はー。』

 

沈雲/沈華『星仙術の真髄を見せてあげるよ(わ)。」

 

 

帝王の象徴たる四神の長【黄龍】。帝王は負けを知らず今も尚、轟き続ける。

 

界龍第七学院

 

 

エルネスタ『………素晴らしい!』

 

カミラ『まさか、自ら成長を自覚したというのか!?』

 

アルディ『人間でいうところ、成長というものだと!』

 

リムシィ『だまれ愚鈍。』

 

 

叡智の象徴たるミネルバの使い【昏梟】。彼らの技術はまだ発展途上。その先にあるのは………

 

アルルカント・アカデミー

 

 

オーフェリア『………私の運命は誰にも変えられないわ。』

 

イレーネ『ありきたりだっつってんだよ!!』

 

プリシラ『お姉ちゃん!』

 

ディルク『テメェに話がある。』

 

 

覇道の象徴たる二本の剣【双剣】。誰が相手だろうが容赦なく潰す。それが俺たちーーー

 

レヴォルフ黒学院

 

 

トゥーリア『あたし達のライブを始めるよ!』

 

ミルシェ『私がリーダーなんだから仕切らないでよー!』

 

モニカ『やっぱり気にするのね。』

 

パイヴィ『………でも事実。』

 

マフレナ『落ち着いて下さ〜い!』

 

 

冀望の象徴たる名もなき女神【偶像】。名もなき女神が降り立ったのはこの都市唯一の女学園。

 

クインヴェール女学園

 

 

各学園が6つの端に学園を築いた事によって、この都市は六花と呼ばれるようになった。この六学園は毎年のようにこの六花内で争い合っている。

 

 

そして、この六花の法則に縛られない唯一の存在が2人だけいた。

 

界龍第七学院 比企谷八幡

 

クインヴェール女学園 シルヴィア・リューネハイム

 

 

この2人は六花の法則を無視して2人だけで行動をしている。その実力は六学園を合わせたとしても互角、またはそれ以上に渡り合えるものだった。

 

 

覇を競い合う戦いが今再び、始まる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや始まんねぇよ……何だこれ?」

 

「いえ、あの……映画のPV何ですが………」

 

八幡「映画?俺たちそんな事一言も聞いてねぇぞ?」

 

シルヴィア「そうだよ。『完成したから見てほしい。』って何のことか分からずに来たけど、まさか映画の話が勝手に進められていたなんて………』

 

八幡「ていうかなんだよ、俺たち2人の実力が六学園合わせても互角またはそれ以上って。無理だろ、俺からしてみればシルヴィがやられたら即終了だ。だって傷の手当てしたいし。」

 

シルヴィア「でも、なんで私たちに内緒でこの話を進めていたの?」

 

「いえ、あの……話は通すと言われたのでお任せしたのですが……界龍の生徒会長に。」

 

 

八幡(あんのチビが……もう2度と飯作ってやらん。)

 

シルヴィア(あっ、星露のご飯が無くなったね。)

 

 

八幡「はぁ……それで、企画はどれくらい進んでるんだ?撮影も始まってるとか?」

 

「えぇまぁそうなんですが……お2人の出るシーンはそれほど多くなくてですね、メインは六学園の生徒という事なので。」

 

シルヴィア「私たちもその六学園の生徒なんだけど?」

 

「あっ、失礼しました!えっと、お2人は映画の中では別次元の存在なので六学園の生徒という括りには入っていない設定になっているんです。」

 

 

八幡/シルヴィア(最早別次元扱い………)

 

 

「それと、六学園と戦うというシーンもないのでご安心下さい。あくまでも戦うのは六学園と六花外から攻めて来たロボットという設定なので。」

 

 

八幡(相手がロボットって………)

 

シルヴィア(もっと拘ろうよ………)

 

 

「今更ではありますが、映画出演の役、お願い出来ないでしょうか!?」

 

八幡「まぁ星露が勝手に受けちまったんだから仕方ねぇよな。契約金は半分だけもらう事にする。」

 

シルヴィア「うん、そうだね。私もそれでいいかな。」

 

「あ、あの……契約金が半分というのは?」

 

八幡「ん?星露から残りの半分をもらう。あいつが俺たちに伝えなかったのも、原因の1つでもあるからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星露「な、何故それだけの事で妾がそんな大金を払わねばならんのだ!?」

 

八幡「そもそもの原因はお前だろうが。勝手に契約しやがって。」

 

シルヴィア「そうだよ。私も聞いているうちに呆れちゃったよ。」

 

星露「ぐぬぬ………」

 

八幡「まぁいい。どの道お前にはもう飯を作ってやる気もないからな。金を払わない限りは。」

 

星露「よし、幾らじゃ!!?」

 

 

シルヴィア「星露………現金過ぎるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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もしも出会っていたら?

昨日はすみません!一日中仕事だったので………

そして前回話のことなんですが、あれは本気ではありません。ですが、似たようなものは作ろうと考えております。六学園全てを巻き込んだ物語を描こうとは思っています。

劇場版………ではありませんが、長くなるのは間違いないです。

どうもお騒がせして申し訳ありません。

そして今回は前作の引退ライブ編でとある人物に出会っていたら?というIF物語を書きました。

では、どうぞ!




八幡side

 

 

まさかこんな日が来るとはな………もう帰らない、もう過ごすこともないと思っていた実家で過ごせる日々が来るなんてな。それも俺の彼女が一緒にいるというお釣りが出るくらいのオマケ付きでだ。さて、俺たちは今千葉の商店街辺りを歩いている。勿論の事だが周りからはかなり注目されている。それもそうだ、《王竜星武祭》を2連覇した世界の歌姫兼クインヴェール女学園序列1位に、自分で言うと自慢そうに聞こえちまうかもしれないが、シーズン全ての星武祭を制覇した界龍第七学院序列1位が肩を並べて歩いてるんだからな。

 

こうして2人で町並みを歩いているだけでも良いものだが、やはり何かしないと退屈になってくるものだ。だがこの辺りに暇を潰せそうなものはゲーセンとか公園の遊具くらいしかない。後は意外と駄菓子屋とか?

 

 

シルヴィア「♪〜♪〜……ん?ねぇねぇ八幡くん、あのお店に入ってみない?」

 

八幡「ん?あれはマスタードーナツか。懐かしいな……」

 

シルヴィア「八幡くん入ったことあるの?」

 

八幡「こっちにいる頃はよく行ってたな。新刊が出た本を読む時とかはここをよく使ってた。静かだし集中しやすいからな。家だとなんか落ち着かないからここでよくな。」

 

シルヴィア「そうなんだ〜。」

 

八幡「中は普通のドーナツ屋だ。飲み物やドーナツの種類も豊富だから味に飽きてきたら他のドーナツを食べるとか、飲み物でお口直しとかも出来るからな。」

 

シルヴィア「……なんか急に食べたくなって来たよ!八幡くん、3時のおやつにちょうどいいと思わない?」

 

八幡「ふっ……3時のおやつか。確かにちょうどいいな。よし、入るか。」

 

シルヴィア「お〜っ♪」

 

 

何年も見てるが、この笑顔はやはり良いものだ。

 

 

ーーーマスタードーナツ・店内ーーー

 

 

八幡「懐かしいな……この店内も。」

 

シルヴィア「落ち着いた感じだね。」

 

 

さて、俺はいつも頼んでいたものを取るか。シルヴィアはこの店初めてだろうからじっくり選ばせてやろう。なんせマスタードーナツは六花には無いからな。

 

 

シルヴィア「うぅん……どれも美味しそうだから迷っちゃうなぁ〜。でも本当に色んなのがあるんだ……うぅ〜目移りしちゃうよぉ〜!」

 

 

………面白いから暫く見ていよう。

 

 

そして注文も決まって会計に入ったはいいが、ここでもお決まりのパターンだ。ザ・フリーズという奴だ。俺たちが目の前にいると固まってしまうという俺たちの中での店員あるあるだ。もうこれが決まってきてんだよなぁ……

 

 

八幡「大分悩んでたな。」

 

シルヴィア「だってどれも美味しそうなんだもん!本当だったらお持ち帰りしたかったんだから!」

 

八幡「持ち帰る事もできるぞ。この店は店内・持ち帰り、どちらもOKな店だからな。」

 

シルヴィア「そっかぁ〜!じゃあ私、選ばなかった他の美味しそうなドーナツ、お持ち帰りで頼もっと!」

 

八幡「全部は選ぶなよ?」

 

シルヴィア「分かってるよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あれ?比企谷!!?」

 

 

ん?誰だ?

 

 

???「やっぱり比企谷じゃん!!超ナツいね!」

 

 

………まさかこいつと鉢合わせるなんてな。

 

 

八幡「……久しぶりだな、折本。」

 

かおり「おひさー!」

 

シルヴィア「八幡くん、この人は?」

 

八幡「あぁ、折本かおり。簡単に説明すると俺の中学ん頃の同級生だ。」

 

かおり「えっ!?もしかしてシルヴィア・リューネハイム!?何でここにいんの!?」

 

シルヴィア「それは隣にいる八幡くんの彼女だからだよ。大分前だけど、記者会見は見てなかった?」

 

かおり「見てたけど、まさか本当だったなんて……」

 

???「凄いね、本物のシルヴィアさんだよ。私生で見たの初めてだよ!」

 

 

今紹介されたが、隣にいる女子は中町千佳という名前らしい。それはさておき、なんか段々ギャラリーが増えて来たな……あまりこういう奴らは好きじゃないんだがな……特に後ろにいる男2人、こいつらも俺にとっては見知った奴らだ。

 

 

???「え、こいつあのナルガヤだろ?マジで付き合ってんの?」

 

???「嘘、マジかよ?俺てっきりまた告白してフラれてたのかと思ってたぜ!」

 

 

そう、俺が人を疑うようになった原因とも言える奴ら、永井と中島だ。

 

後から折本に聞いた話だが、こいつらは俺が折本に告白をした後に折本が相談したら、学校に俺が折本に告白したことをバラした張本人たちだ。まぁ今となっちゃあどうでもいいが、折本の奴はまだこいつらとつるんでんのかよ………別に構わねぇけど。

 

 

永井「おいナルガヤ、お前どうやって誑かしたんだよ?あんな目に遭ったのに何でこんな事ができんのか教えてくんない?俺告白なんてした事ないからさ〜。」

 

中島「あっ、俺にも頼むわ!」

 

八幡「………自分の思いをぶつけるだけだ。」

 

 

……俺は本心を言った。だから今の俺はいる。だからシルヴィとこうした関係を持てている。

 

 

永井「……ぶっ!!あっははははははは!!!おいおいおいおい、マジで言ってんのか!?お前それでフラれてんだよ?」

 

中島「そーそ!そんな事でシルヴィアちゃんがお前みたいな陰湿そうな奴なんかに惚れるわけないでしょ?たまたま会っただけだろ?どうせ?」

 

折本「ちょっと、言い過ぎだって!」

 

千佳「そうだよ、彼に謝りなよ!」

 

永井「へぇ?何で?事実を言っただけだろ?」

 

折本「そ、それは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「ねぇ八幡くん、君の前の高校もそうだけど、中学校も凄いんだね。」

 

八幡「………」

 

 

すると笑っていた2人と折本と中町さんが一斉にシルヴィの方を見た。

 

 

シルヴィア「私は初めて見たよ。人が勇気を振り絞って秘めた想いを伝えた言葉を、こんな風に笑う人がいたのを。八幡くんは昔から不憫な立場だったんだね。」

 

八幡「もう過ぎた事だからどうでもいいけどな。けど、確かにシルヴィの意見には同意だ。告白をバカにするような奴に出会ったのは俺も初めてだし、こんな風に蔑んだ笑いをしたやつも初めてだ。品格のない奴らだ。」

 

永井「んだとナルガヤ!!」

 

中島「やるかゴラァ!!?」

 

八幡「誰がやるか。此処は食事をする場所だ。暴れたいんだったら大学にでも公園にでも行け。まぁ、俺たちはこれで失礼するけどな。」

 

 

これ以上、シルヴィを不快にさせたくないしな。また今度来て持ち帰りにすればいいか。

 

さて、帰るとしまーーー

 

 

永井「待てやこのヤロー!!」

 

 

バコッ!!

 

 

折本「っ!!比企谷!!」

 

千佳「比企谷くん!!?」

 

 

俺は店を出ようとしたら、永井に殴られた。それ自体はどうでもいい。だが、シルヴィを不快にさせた事は後悔させてやらなくちゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ぶち殺すぞコラ。」

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

八幡がそう言った後に店の空気が一気に重くなり、永井と中島は八幡に睨みつけられている。2人はそれだけで震え上がっていた。それも全身ガクブル状態だった。

 

 

八幡「そんなに構って欲しいのか?なら少しだけ構ってやるよ。一方的にな。」

 

2人「…………」(ガクガクブルブル)

 

八幡「お前らが星脈世代、または俺が人間だったらお前らの顔面を迷わずぶん殴ってたところだ。星武憲章がある以上はそれが出来ねぇからこうして気だけで相手してやってる。掛かって来ないのか?」

 

2人「…………」(ガクガクブルブル)

 

 

はぁ……情けね、本当に男かよ。

 

 

八幡「まぁいいわ。会うことはないと思うが言っておくぞ。次こんな事してみろ、この程度の殺気じゃすまねぇからな、分かったかトサカ頭。」

 

 

2人は震えながらも首を上下に振った。

 

 

八幡「折本、お前にも1つ忠告しておいてやる。つるむ奴らはちゃんと選べ。こいつらと一緒にいても楽しいことなんてなんもねぇぞ?まぁ、それはお前次第だけどな。」

 

 

折本「比企谷……」

 

 

八幡「んじゃもう行くわ。あっ、お騒がせして申し訳ありませんでした。」

 

 

そして八幡とシルヴィアは店を出て行き、かおりと千佳も永井と中島を放って店から出た。何故なら、2人は八幡の殺気によって失禁してしまったからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




中学の八幡の告白は少しだけ私のアレンジを入れてます。

史実通りではございませんので、その辺はご了承ください。


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参観日 ①

 

シルヴィアside

 

 

皆さん、こんにちは。シルヴィア・リューネハイムです………あっ、間違えちゃった!えへへ、ごめんなさい。比企谷シルヴィアです。

 

現在34歳のおばさんになっちゃいました。でも周りの人たちはまだまだ若いって言ってくれたりするから、お世辞(本音で言われています)でも嬉しい気持ちになります♪

 

今の私は喫茶店【ランベリ】の副店主であり、八幡の妻です。子供にも恵まれて営業も順調だから毎日が楽しいです。でも偶に一部のスタッフの夫に対するスキンシップが激しいと感じているのは気のせいではないと思っています。

 

まぁそれも含めて楽しい毎日を送らせてもらっています。店主の八幡も此処が隠れ名店だと知られるようになってからは物凄い勢いで調理と盛り付けをしています。厨房は八幡くんがメインでやっているんだけど、私とオーフェリアさん、索冥が忙しい時に入ったりしています。他のスタッフは基本的にホールです。

 

 

そして今、私と八幡は界龍第七学院にやって来ています。理由はというと……息子の奏斗の参観日だから。初等部から確かな実力と才能を発揮してたった10歳で序列20位入りを果たしました。そしていつの間にか【天才】【神童】【天賦の才】と呼ばれるようになっていた。

 

 

今回はその息子の参観日を見に来ました。

 

 

八幡「懐かしい……と言っても、来てくれ来てくれって言われてるからちょいちょい行ってんだけどな。」

 

シルヴィア「もう非常勤講師みたいになってるよね。学院の様子を見に行ったりしていいんだよ?私たちに留守番任せて。」

 

八幡「店主がそんなことしちゃダメだろ。私情で休むなんてよ。」

 

 

お店を経営してからは真面目さが増したけど、気さくな感じも出てきた。面白いお話とかもしてくれるからね。

 

 

シルヴィア「そういえば八幡、奏斗のクラスはなんの授業か知ってる?」

 

八幡「実技科目だったが、界龍の実技=鍛錬だからな。実際一足早い放課後みたいなもんだ。」

 

 

それっていいのかな?ちゃんと授業終了の挨拶とかしてるのかな?

 

 

ーーー八天門場ーーー

 

 

八幡「さて、どんな様子かねぇ?」

 

シルヴィア「いつもどんな風に鍛錬しているのか、見せてもらおうかな。」

 

 

意外と鍛錬らしい鍛錬とかしていたりしてね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏斗「はぁっ!」

 

 

バキッ!!

 

 

………なんか私たちの息子、実験台にされてない?

 

 

???「これが君たちの知っている発勁の発展技、《発空勁》です。威力は勿論ですが、外側だけでなく内側にもダメージを与えられる技です。この技のポイントはーーー」

 

 

八幡「掌に星辰力を溜め込んで、触れたと同時に溜めていた星辰力を一気に掌から放出する。違ったか?虎峰先生さんよ?」

 

 

すると視線は一気に私たちの方へと向けられた。生徒の殆どは憧れと尊敬の眼差しに変わり、保護者の方々は……なんか少しだけ八幡に熱のある視線を向けていた。

 

 

虎峰「八幡、来ていたのですか!!」

 

八幡「あぁ、息子の参観日だからな。それよか授業を進めてくれ。今日の俺たちは子供の授業の様子を見に来た保護者なんだからな。」

 

 

そう言うと虎峰くんは慌てた様子もなく自然に身を翻して八幡の説明を改めて分かりやすく説明して、子供たちに教えていた。

 

 

虎峰「はい!それでは此処から自由行動に移ります。皆さんは好きに鍛錬をして下さい。友だちと組手をするも良し、技の確認をするも良し、イメージトレーニングをするも良し、この道場の中での鍛錬なら許可します。はい、では解散!」

 

 

虎峰くん、本当に教師みたい。落星式学の教師になったのは八幡から聞いていたけど、流石は元木派の統括者だね!武術に関しての説明は凄く上手。

 

……それよりも何で子供たちが私たちの方に寄って来てるのかな?私たち何もしてないよね?八幡くんは目立つようなことしたけどさ。

 

 

「ねぇねぇ!奏斗のお父さん!もう一回武術教えてよ!また演武見たい!」

 

「僕も僕も!」

 

「私も〜!師匠の演武見たーい!」

 

 

おぉ……八幡くんの人気っぷりってば凄い。

 

 

八幡「今はまだ授業中だろ?先生の言われた通りにしなさい。お母さんに残ってもいいって聞いて良いよって言ったら、おじさんがもう一回武術を見せてあげるからな。」

 

「「「はーい!!」」」

 

 

そして子供たちは解散して組手をする子もいれば、木に打ち込んでる子もいる。うん、ダラダラしている子はいなさそうだね。

 

 

虎峰「よく来てくれました、八幡。それに……シ、シルヴィアさん。」

 

八幡「だいぶマシになったな。」

 

シルヴィア「もうおばさんになったからじゃない?」

 

虎峰「そ、そんなことありません!!今も昔と変わらずお綺麗です!!」

 

シルヴィア「ふふっ、ありがとう。」

 

 

それからは他愛の無い昔話や今の話をしたり、他の保護者のお母さん方ともお話をした。それにしても、八幡に向ける視線の熱さ、私には分かるんだからね?八幡も分かっているから受け流してるけど、受けないようにね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪〜♪〜

 

 

あっ、予鈴鳴った。

 

 

虎峰「はい、皆さん集合です!集まって下さい!」

 

虎峰「それでは本日の授業はこれで終了になります!この後は放課後になります。帰る際は気をつけて帰って下さいね。では、挨拶をお願いします。」

 

「気を付け!さようなら!」

 

「「「さようなら!!」」」

 

虎峰「はい、さようなら。」

 

 

虎峰くん、初等部の担任を持ってたんだ………

 

 

奏斗「父さん!早く鍛錬つけてよ!」

 

「「「お願いします!!」」」

 

八幡「……あぁ、分かったよ。じゃあやろう「ならば妾と相手してはくれんか?八幡よ。」……星露。」

 

星露「久しいのう。此処でこうして会うのは半年振りかのう?」

 

八幡「何が久し振りだよ。お前よく俺の店に来てんだろうが。週に3回も来ておいて何が久し振りだ。」

 

星露「つれんのう。それよりも久し振りに妾と1つどうじゃ?そやつらの為にも、のう?」

 

八幡「皆覚えておくんだぞ。あのお姉ちゃんのやっている事を泥棒っていうんだからな。」

 

星露「コレ!!何を人聞きの悪いことを言うておる!!妾は純粋に後学のためにも妾たちの動きを見させようと思っただけじゃ!!」

 

 

本当は八幡と戦いたくて仕方ないくせに……子供の後学のためなんて嘘付いちゃってさ……

 

 

八幡「……なぁ、あのお姉ちゃんはああ言ってるが、皆はどうする?」

 

「師匠の動き見たい!」

 

「師匠戦って!」

 

「カッコいい技見せて!」

 

 

………以外にも皆ノリノリだった。

 

 

八幡「……良かったな星露、そういうわけだ。」

 

星露「楽しみじゃわい!この学院には妾についてこれる奴が少なくなってしもうたからのう……ついでにお主の腕も落ちてはおらんか見てやろうではないか。」

 

 

こうして、3代目VS4代目の緊急試合が行われる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんて参観日だよ………こんな参観日、あっていいのだろうか?


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参観日 ②

 

八幡side

 

 

何だって俺が星露と戦わなくちゃいけないんだか……生徒の後学のためっつってるが、本心は対等に戦える奴がいなくなったから戦わせろっ!みたいな感じだろうな。にしてもあいつ、やる気満々だよ……仙具持ってんじゃねぇかよ。ここには初等部もいるっていうのに大丈夫かよ。今の俺は【祢々切丸】を持ってねーってのによ。まぁいい、何か武器を借りるか。

 

 

八幡「すまない、誰か刀を持って来てくれ。あいつが武器を使っている中で格闘戦っていうのは分が悪すぎる。俺も武器が使いたい。」

 

「は、はい!只今!」

 

星露「よいのか八幡よ?それでは負けた時の言い訳ができんぞ?」

 

八幡「安心しろ、負けるのはお前だからな。」

 

星露「ほほう?」

 

 

さて、お手並み拝見してやろうか、3代目。

 

 

八幡sideout

 

シルヴィアside

 

 

あの2人、大丈夫だよね?なんか少しだけ気が高まっているような気がするけど………

 

 

奏斗「ねぇ母さん。」

 

シルヴィア「ん?どうかしたの?」

 

奏斗「父さんってどれくらい強いの?俺、稽古や鍛錬でしか父さんと手合わせした事ないから分からなくて……それにその時絶対手加減してるから。」

 

シルヴィア「……そっか、ならここでしっかり見ておくといいよ。お父さんがどれだけ強いかってところを。私から言えるのは2つだけ。1つ目は絶対に目を離さない事。2つ目は奏斗の想像を遥かに超えるくらいの実力者って事だよ。」

 

奏斗「………」

 

 

ふふふっ、集中してる。さて、この子の目に八幡はどう映るのかな?

 

 

シルヴィアsideout

 

奏斗side

 

 

準備が出来た段階で星露さんは父さんに決闘を申し込んで父さんがそれを受諾した。星露さんは如意棒みたいなのを構えていたけど、父さんは刀を鞘に入れたままの状態で手に持って立っているだけで何の構えも取っていなかった。これじゃあ父さんはやられちゃう。

 

だって星露さんは《王竜星武祭》を史上初の3連覇を達成した人。そんな相手に手加減で勝てるわけがない。

 

 

『Battle Start!』

 

 

試合開始の合図がなったと同時に星露さんは父さんに向かって突進して如意棒を伸ばして攻撃した。そのまま伸びる如意棒は父さんに目掛けて伸びていき、そのまま父さんの腹部に直撃した。

 

 

奏斗「父さんっ!!」

 

シルヴィア「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………この程度か?」

 

奏斗「っ!!」

 

 

モロに受けているはずなのに何で?確かに直撃しているはずなのに!?なんであんな風に涼しい顔をしていられるんだ!?

 

 

星露「流石、と言ったところじゃな。お主も大概化け物じゃのう。今の一撃、妾はかなり本気でやったつもりなんじゃがのう?」

 

八幡「だとしたら加減不足だな。まさかこんなもんで俺を倒せる、なんて思ってもいないだろ?」

 

星露「思ってはおらなんだが、まさかこれ程までに余裕の表情をされるとはのう……ちと痛いのう。」

 

八幡「残念がってる暇はねぇからな。こっからだぞ、本当の戦いってのはよ。」

 

 

そこからの戦いは目でも終えるくらいの速度で行われていたけど、2人の攻撃が激し過ぎて目が段々とついて行けてなくなってきた。

 

 

シルヴィア「どう?お父さん強いでしょ?」

 

奏斗「……ねぇ母さん。父さんって何者なの?あの星露さんに互角どころかそれ以上に渡り合ってる。それどころか………」

 

 

星露さんが押されてるようにも見える……

 

 

シルヴィア「うーん……この事は中等部になるまで隠しておこうって約束だったんだけど、今言っちゃうね。実は八幡……ううん、比企谷八幡っていうのは、この界龍第七学院史上で最強って言われている存在なんだよ。奏斗はさ、【神羅無双】って聞いた事ある?」

 

奏斗「っ!!それって界龍の2つ名の【万有天羅】を超える者にしか与えられないっていう伝説の!!?なんで母さんがそれを知ってるの!?」

 

シルヴィア「その2つ名を初めて継承、つまり初代【神羅無双】になったのが私の夫であり、貴方の父親の比企谷八幡だからだよ。」

 

 

そのことを聞いた途端、俺の頭は真っ白になった。そして目の前の試合と母さんの言葉に夢中になった。

 

 

シルヴィア「10年以上前かな。八幡が大学部の時に星露を倒してね、4代目【万有天羅】を継承したんだけど、男では初めてだから歴代の【万有天羅】全員が歴代最強って認めたからこの2つ名がついたの。まぁ当時は【万有天羅】のイメージが強かったんだけどね。」

 

奏斗「……じゃあ父さんは、今この六花の中で1番強い存在だっていう事?」

 

シルヴィア「そうだね。八幡が序列2位になってからは八幡が六花最強みたいになってたけどね。星露はまだ星武祭に出られる年じゃなかったから。それを含めても八幡はこの六花で1番強い存在なのは間違いないね。」

 

 

………俺は今まで父さんの事を料理が上手くて家族思いな、ちょっとだけ武術や星辰力、星仙術や陰陽術の扱いに詳しい人としか思ってなかった。けど、その正体がまさか歴代最強の称号を持っている人だったなんて………

 

でもそうだとしたら疑問がある。なんで学院側はこの事を俺に知らせなかったのか。

 

 

奏斗「何で学院は俺にその事を教えなかったの?幾ら父さんと母さんが内緒にしていたとしても、学院までは無理だよ!」

 

シルヴィア「ふふふっ♪奏斗、【万有天羅】の行動を妨げてはならない。聞いた事あるでしょ?奏斗が入学する前から八幡は星露にお願いしていたの。『中等部になるまでは、俺の事は伏せておいてくれ。』ってね。まぁこんな形で教える事になっちゃったけどね。けど、どう思う?自分の父親が最強の存在だって分かった気分は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏斗「なら俺は、その父さんも超えてみせるよ!父さんに出来たのなら俺にだって出来る!!だって俺は、【神羅無双】と母さんの息子だから!!」

 

シルヴィア「ふふっ、男の子ならそう来なくっちゃね!あっ、もう試合終わるみたいだね。」

 

 

ずっと見てたけど、父さんは星露さんの攻撃を最初の一撃以外は1度も受けていなかった。そして俺は初めて見た、星露さんが初めて膝をつくところと、父さんの圧倒的なまでの強者のオーラを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は息子目線で言ってみました。



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参観日 ③

 

 

八幡side

 

 

星露「はぁ……はぁ……まさかお主に一撃も与えられんとはのう………妾も老いたというわけか。」

 

八幡「バカ言うんじゃねぇよ。オメェまだピッチピチの20代じゃねぇかよ。まだ成長期だろうが。俺なんてもう30半ばのおっさんだぞ?」

 

星露「じゃがお主、鍛えておるな?」

 

八幡「あぁ。界龍を卒業した後も筋肉増強や脂肪をつけないためにな。お前の攻撃に関しては厨房で養われた目のおかげで一撃も食らわなかった。」

 

星露「……どういう事じゃ?妾がお主に負けた理由が厨房で料理していたから、とでも言うつもりかえ?」

 

八幡「店の厨房はある意味戦場だ。客に出す品をどれだけ早く出すか、どれだけ丁寧に仕上げることができるか、全ては俺たち料理人の腕にかかってる。何人もの客のオーダーを1人で捌いてりゃ嫌でも相手の動きが見えてくるってもんだ。」

 

 

星露の攻撃、実際ゆっくりに見えたしな。

 

 

星露「……なんじゃい、それなら妾は最初から負け試合を望んでいたみたいではないか。小っ恥ずかしいのう。」

 

八幡「いやいや、自ら負けを知っていて勝負を挑むという姿勢を後輩たちに見せられたじゃねぇか。良い後学になったんじゃないか?生徒もお前も。」

 

星露「そんな後学要らんわい!!」

 

 

星露(しかし、流石は妾たちが認めたほどの男じゃ。学生時代よりも遥かに強くなっておる。衰えるどころか進化しとるわい。小苑や麗蘭が見たらどう思うかのう?)

 

 

八幡「んじゃあ俺は家族ん所に行くわ。指示出しよろしく。」

 

星露「……まぁよいわい。皆の者、これがこの学園最強にして六花最強の男の実力じゃ!!妾が相手をしても一撃すら与えられんかった!!皆はこの男を指標にするがよい!自身の目標は大きければ大きい程、燃えるものじゃろ?これにて試合を終了する!各自行動に移るがよい、解散じゃ!」

 

 

………ちゃんと生徒を導けているようだな。

 

 

シルヴィア「八幡、お疲れ様。流石だったよ。」

 

八幡「あぁ、ありがとう。」

 

シルヴィア「それと、奏斗に喋っちゃった。八幡が最強だって事。ゴメンね、流石に隠しきれなくて。」

 

八幡「あー……まぁ仕方ねぇよ、星露が俺と戦いたいって言った時点でもうバレる確率なんて100%越えたようなもんだしな。それで奏斗、どうだった?俺の戦いぶりは?」

 

奏斗「……俺、父さんに色んな技術を教わった。勿論武術や星仙術だけじゃない。相手への思いやりや言葉遣いも教わった。けど、俺って父さんの優しい部分しか知らなかったんだなって思った。俺、自分でもう強いって思ってた。中学に入ったら冒頭の十二人に入って高等部にはもう【万有天羅】になれてるって思ってた。けど、父さんの試合を見て俺ってまだこの程度なんだなって思い知らされた。」

 

八幡「………そうか。確かに俺はお前に様々な事を教えて来た。だがそれは表面的なものだけだ。何故俺がそうしたか分かるか?」

 

奏斗「………ううん。」

 

八幡「全て教えちまったら、それは俺の技全てを教えたものになって、そこからの技術を伸ばそうとする努力をしなくなるかもしれないからだ。まぁそんな理由だ。中途半端な技術の方が、自分で研究してアレンジもしやすいだろ?さっきやった発空勁だって俺がアレンジして作った技なんだぜ?」

 

奏斗「じ、じゃあこの学院の生徒殆どが使っている武術や星仙術、陰陽術の元になってるのって………」

 

八幡「いや、それは俺じゃないと思うぞ。まぁ陰陽術はそうかもしれないけどな。」

 

 

いや〜でも、今でも木派の奴らは陰陽術を使えているんだな。うん、良かったわ。あの場凌ぎにならなくて。そんなつもりなかったが、今後使えなくなったらどうしようかと思ってたりしたからな。

 

 

八幡「さて、俺は少し飲み物買ってくる。」

 

 

八幡sideout

 

奏斗side

 

 

奏斗「………」

 

???「どーしたの?難しい顔しちゃってさ!」

 

奏斗「うわっ!?って京華先輩!いつも言ってるじゃないですか!驚かさないでくださいって!」

 

京華「えぇ〜いいでしょ別に?シルヴィアさん、お久しぶりです!」

 

 

後ろから俺に抱きついて来たのは川崎京華先輩。高等部の大先輩だ。

 

 

シルヴィア「久しぶりだね、京華ちゃん。元気にしてたかな?」

 

京華「はい、おかげさまで!それよりもどうしたの?はーちゃんの事?」

 

奏斗「はい……なんか父さんのことを知った途端、はるか遠い世界の人みたいな感じになっちゃって。俺、こんな人に追いつけるのかなって。」

 

京華「多分それ気の所為だよ。」

 

 

………………え?

 

 

京華「はーちゃんって強過ぎるからそう言われる事が多いんだけど、誰よりも皆に近い位置にいるんだから。だって遠過ぎる存在だったら、あんな風に話しかけられると思う?」

 

 

京華先輩の指をさした方向には父さんが親の人たちと楽しそうに話しをしている姿があった。

 

 

京華「私もね、はーちゃんから手解きを受けた事あるけど、やりにくいなんてことは一度もなかったよ。むしろ私に合わせたやり方をしてくれてやり易かったくらいだから。だから奏斗くんが思っている心配はしなくてもいいと思うよ。界龍の現序列2位の【青天霹靂(せいてんへきれき)】が言うんだから間違いありません!」

 

 

奏斗「………」

 

 

ーーー帰り道ーーー

 

 

シルヴィア「久しぶりの界龍、楽しかったよ。また参観日の日が決まったら教えてね、奏斗。」

 

奏斗「うん。」

 

八幡「さて、帰ったら何作るかな〜。今日は良い気分だからステーキにでもすっかな〜。いや、ハンバーグも良いな。もしかすると丼って手もあるな。」

 

シルヴィア「もう、お肉ばっかりじゃん。」

 

八幡「そういう気分なんだよ。」

 

シルヴィア「しょうがないお父さんだね。」

 

奏斗「父さん偶に食いしん坊だから。」

 

シルヴィア「そうだよね〜偶に食い意地はってるもんね。大人気ないくらい。」

 

八幡「匂いだけじゃお腹いっぱいにならない時もあるんだよ。いや、匂いで空腹満たされるわけじゃないんだけどさ。」

 

 

そうだ。俺の父さんはこんな人だ。俺たち家族のすぐ近くにいる。遠い存在なんかじゃない。

 

 

奏斗「とうさん!」

 

八幡「ん?何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏斗「今日は丼にしてよ!どっちが早く食べられるか競争だよ!」

 

八幡「おっ?俺に挑むってのか?俺に挑戦なんてまだ10年早いぞ?まぁ、やってやらなくもないけどな。」

 

奏斗「勝負してあげるって言ってるんだから受けてよ!それとも逃げる?」

 

八幡「あっ、こいつ!生意気な口聞きやがって!よっしゃ、いっちょ勝負だ!」

 

奏斗「うん!!」

 

シルヴィア「ふふふっ、じゃあ食後のデザートは私が作るね。」

 

2人「お願いします!なるべく胃に優しいものを!」

 

シルヴィア「はいはい。注文承りました。」

 

 

こんな父さんを持てて、俺は幸せだよ。でも、そしたら母さんはどうなんだろう?やっぱり凄い人だったのかな?今度聞いてみよっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




参観日はこれにて終了です!!

奏斗くんの成長も見られましたね!


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母親も?

お次はシルヴィアバージョンです!




シルヴィアside

 

 

今日は木曜日。私たちにとっては1日中暇になりつつある曜日である。何故かというと、木曜日は喫茶【ランベリ】の定休日だからである。だからお店の前にはちゃんと《CLOSE》の看板を下げてあるからお客さんは入ってこない。そして今日は界龍もお休みだから奏斗も家にいる。今日は折角の休みだから家で少しのんびりしたいって。まだ初等部なのに………遊びたい時期のはずなのに、どうしてこんなストイックになっちゃったんだろう?育て方間違えちゃった?でも元気に育ってくれたんだからいいよね。

 

あっ、言い忘れてたけど、家とお店の距離はだいぶ近いです。家がクインヴェール周辺だから、お店はクインヴェール側にある外縁居住区にある。だから歩いて2分くらいの距離。ものすごく楽チンだし、何かあった時にはすぐに駆けつける事ができる。近いって便利だよね。

 

さらに私たちの喫茶店、商業エリアのお店には並んでないから、知る人ぞ知る隠れた名店なのだ!これはお店との約束なんだけど、出来る限りこのお店の場所や評価はオフレコにしてもらってるんだ。私たちからしてみれば、お客さんが来てくれるのは嬉しいけど、あくまでも喫茶店だからそんなに多くの人数は入れないんだ。だから一部は完全予約制も受け付けてる。今となっては1ヶ月先まで予約されている状況です。とても喜ばしい事です。

 

 

そして今、私たちは何をしているのかというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人「ズズズズ〜………はぁ〜……」

 

八幡「やっぱ落ち着くには座りながらお茶を飲むに限るな。」

 

シルヴィア「そうだね〜。」

 

奏斗「うん。」

 

 

完全にお休み状態です。

 

 

シルヴィア「八幡、今月の売り上げノルマってもう達成してるの?私売上の日計計算は担当じゃないから分からないんだよ。」

 

八幡「あぁ、それなら1週間前に達成してるぞ〜。」

 

シルヴィア「おぉ〜凄いね。半月も経たずに目標達成だなんてね〜……やっぱり店主の腕が余程良いんだろうねぇ〜。」

 

八幡「何言ってやがる。お客に満足のいく接客をしているお前達のおかげだろ。」

 

シルヴィア「いやいや、八幡の料理の腕やリップサービスが良いから。」

 

八幡「美人に接客されるし、ニコニコされながらだよ。」

 

奏斗「はぁ……父さん、母さん、また始まったよ。褒め合いになって終わらなくなるパターン。俺からしてみればどっちもどっちだよ。」

 

八幡「そ、そうか……まぁ片方が欠けたら成り立たない仕事だからな。」

 

シルヴィア「そうだね。やっぱり八幡に厨房を任せて正解だよ。」

 

 

あまり気にしなくてもいい事だとは思うけど、いつも厨房を1人でこなしている八幡の仕事量は私たちホールの何倍もある。それを殆ど10分くらいで料理を完成させてお客さんに提供するから凄いスピードだよね。

 

 

奏斗「父さんって料理店を開くことが夢だったの?」

 

八幡「俺の、っていうよりも母さんのだな。学生の頃にそんな話になってから星武祭で優勝してこの店を設計した。そして俺たちが結婚して半年後にオープンだ。」

 

奏斗「へぇ〜。」

 

八幡「まぁ母さんの願いがあったからこそ、俺たちは今の家に住めてるわけだから、感謝しないとな。」

 

シルヴィア「もうやめてよ〜。なん年前の話?」

 

奏斗「ちょっと待って!今『母さんの願い』って言った?父さん?」

 

八幡「ん?あぁ、そうだが?」

 

奏斗「ていうことはもしかして……母さんも学生の頃は強かったとか?」

 

 

奏斗は私の方を見つめながら不安そうに聞いて来た。まぁ当然かな、私も教えてなかったしね。

 

 

シルヴィア「ふふっ♪じゃあ奏斗、シルヴィア・リューネハイムって調べてみて。私の昔の本名だから。」

 

 

すると奏斗はすぐに端末を開いて文字を打ち込んで検索した。とあるページを開いて来歴とかが出てくるサイトがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏斗「元クインヴェール女学園……序列、1位?」

 

シルヴィア「そっ。私もお父さんと同じで元々は学園で1番強かったんだぞ〜。」

 

奏斗「【戦律の魔女】……歌を媒介に様々な事象を起こす。その能力は《万能》であり、回復系以外ならば全ての能力に適応することが出来る。界龍の比企谷八幡が六花最強の男性なら、シルヴィア・リューネハイムは六花最強の女性だろう………」

 

シルヴィア「もう、あの頃は強い人がウジャウジャいたんだから最強なんてやめてほしいよ。八幡は最強の存在だからいいけどさ!」

 

八幡「ならクインヴェールに頼んでそういう称号作ってもらうか。勿論初代はシルヴィだからな。」

 

 

絶対にやめて!きっと恥ずかしくなるから!

 

 

奏斗「《王竜星武祭》を2連覇……母さんも強いんだ。あんまり想像つかないよ。」

 

シルヴィア「今はもう決闘なんてしないからね。でも今日みたいなお休みの日に、奏斗が学院に行ってる間はお父さんとよく身体を動かしているんだよ。勿論、模擬戦っていう形でね。」

 

 

でも八幡ってまだ成長期なんだよね。新しい技作って使ってくるし、憑霊だって2つの霊を組み合わせで使ってくるしさ。2つ出したら能力が半減するって言ってたのに、平気で使ってくるんだもん。まぁその方が私もやり甲斐があるからいいんだけどさ。

 

 

奏斗「でもこれ、最後の《王竜星武祭》なんだけど、父さんも優勝してるよ?どういう事?」

 

シルヴィア「あぁ〜懐かしい!それね、私たちが決勝で戦って同時に校章を壊したから結果が引き分けだったんだ。だから私たちが同率優勝だっ!って言ったら運営委員長が認めてくれたんだよ。だからその年の《王竜星武祭》は優勝者が2人いたんだよ。お父さんと私。」

 

 

また新たしい事実によって、奏斗の親に対する尊敬や憧憬はより一層強くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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守護霊たちの擬人化

 

 

索冥side

 

 

皆様、ご無沙汰しております。八幡様の守護霊をさせてもらっております、麒麟の索冥と申します。今は八幡様が経営しておられる喫茶店【ランベリ】のホールを担当させてもらっています。

 

何故霊体の私が自由に動かせる肉体を持っているのかと言いますと、八幡様がアルルカント・アカデミーに少し特殊な自律式擬形体を作成してもらい、そこに私たちの魂の一部を生成して作った玉を埋め込む事によって、自由に動かせる肉体を得たというわけです。さて、今回はその私たちの今をお話したいと思っております。

 

 

まずは私から致します。先程も仰いましたが、八幡様の経営しておられる喫茶店の一員としてホール担当をさせて頂いております。八幡様がお忙しい時は私も厨房に入ってお手伝いをする時もございますが、そんなに頻繁にはお手伝いする事はありません。何しろ八幡様がすぐに捌いてしまうからです。

 

八幡様には多大な感謝しなければなりません。私たちに居場所をくれただけでなく、自由に動かせる身体までお与え下さいました。流石は我らが主です。

 

 

※索冥の擬人化は《ハイスクールD×D》に出てくるロスヴァイセです。

 

 

索冥sideout

 

青龍side

 

 

久しいな。我は四神が1人、東方を守護する青龍という者だ。さて、我が今何をしているのかというと、八幡殿と同じでとある料理店のシェフを任されている。我にも分からぬが入った初日に注文の入った品を作って出し続ける作業をやり続けて1日を終えると、その店舗の代表者から『ウチのシェフになってくれ!!』と頼まれたのでする事になっている。

 

雑誌やテレビなどにも出る事がある故、少々大変な時もあるが、それも含めて楽しませてもらっている。八幡殿には感謝せねばなるまいな。

 

 

※青龍の擬人化は《食戟のソーマ》に出てくる遠月学園第1席の司瑛士です。

 

 

青龍sideout

 

白虎side

 

 

下々の者共に挨拶する気は無いが、一応は名乗っておくとしよう。俺は四神が1人、西方を守護する者である白虎という。覚えておくがいい。さて、今どうしているかだったな。俺は八幡から自由に動かせる身体を貰ってからは少し趣向の特殊な店で働いている。その店はアニマルセラピーを軸としているらしいが、効果が実際にあるのかどうかも効いているのかどうかも俺には分からん。

 

 

※えー……白虎くんは割と高評価です。

 

 

俺は気高く白い虎なのだが、この身体ではそうは見えないらしい。故に店では狼としてやっている。一匹狼という設定からか、常連客としか俺は触れ合わない。むしろ俺は見下すように接しているのだが、何故か相手は悦に浸っているような顔をしている。

 

まぁ俺としてはそれほど嫌というわけではないから続けていくが、やはり趣向は少し特殊なのは否定できんな。

 

 

※白虎の擬人化は《ダンジョンに出会いを求めているのは間違っているだろうか》に出てくるロキ・ファミリアの一級冒険者のベート・ローガです。

 

 

白虎sideout

 

玄武side

 

 

みんなぁ〜はろはろぉ〜。四神の1人でさむ〜い方向(北方)を守っている玄武だよぉ〜。気軽に玄ちゃんって呼んでね〜。

 

さて、僕の今を説明してあげるね〜。僕は今、お仕事らしいお仕事はしていないんだ〜。警備員をしてるの〜。所謂お家を守る人だね〜。マンちゃんとシルちゃんとカナくんが家に居ない時は僕がお留守番をしてるんだよぉ〜。こういうのを自宅警備員って言うんだよねぇ〜。

 

でも基本的にはお家で枕に頭を乗せながら眠っているだけなんだよね〜。だって結界張ってるから余程のことがない限りは入れないもぉ〜ん。

 

いやぁ〜でも、マンちゃんには感謝だよぉ〜。こんな風に眠れる感覚のある身体が欲しかったんだよぉ〜。

 

 

※玄武の擬人化は《インフィニット・ストラトス》に出てくるのほほんさん(布仏本音)です。

 

 

玄武sideout

 

朱雀side

 

 

よう!久しぶりだな!俺は朱雀ってんだ!南方を守護する四神の1人さ!

 

まぁ手短に説明するわ!俺が体を手に入れてからは、俺の火力を活かせる場所で働けねぇか探してたんだわ。けどよ、これがまた無くてよ………ちょっと途方に暮れていたら、なんか目の前にゴミ溜めがあったから憂さ晴らしに全部焼き払ったら、それを見てたおっさんが『ウチに来ないか!?』って言われたからそこにいる。ゴミを燃やす事によって電気を作る、火力発電って奴だな。

 

そこがまた良い場所でよ!ゴミたくさん出てくるもんだから燃やしたい放題なんだわ!だから会社的にも俺的にもWIN-WINな関係ってわけだ!

 

やっぱ旦那にはこの身体を作ってもらって感謝だぜ。今度俺が焼き鳥でも作ってやるか!

 

 

※朱雀の擬人化は《食戟のソーマ》に出てくる主人公の幸平創真です。

 

 

朱雀sideout

 

八咫烏side

 

 

拙僧、八咫烏と申す。主人に仕える霊が1人。今は拙僧が独自に開いている《彫刻・木彫》の店主である。

 

現代人にはあまり趣向が合わぬかもしれんが、そうでもなかったようだ。木彫りは今でも万人受けするようで、来客して購入していく者や、実際に彫って体験して持ち帰る者もいる。しかし、購入していく者は日本人や中国人などが多い。何故だろうか?私が彫っているのは熊や龍、般若や六学園全ての校章(これが一番売れている)などだ。

 

拙僧の技術をこうも活かせる事が叶うとは……改めて主人には感謝せねばなるまい。

 

 

※八咫烏の擬人化は《ぬらりひょんの孫》に出てくる三羽烏の長男の黒羽丸です。

 

 

八咫烏sideout

 

索冥side

 

 

以上にて紹介を終わります。尚、真神様は現世に赴く気は無いとのことでしたので、八幡様は専用の身体を作るということはなさいませんでした。

 

改めまして八幡様、本当にありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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どの時代にもいる輩

 

 

八幡side

 

 

さて、今日の開店準備ももうすぐ終わるな。しかし、従業員の連携が良いとこうも早く掃除や準備が終わるなんてな。改めてみなさんに感謝です、どうもありがとう。

 

今日の面子は俺、比企谷八幡とシルヴィ、オーフェリア、冬香が昼から晩まで、晩から営業終了までは俺、オーフェリア、パーシヴァルの組み合わせだ。オーフェリアとパーシヴァルの組み合わせは最初の頃は不安だったが、特に何も起きなかった。だって母校の相性がねぇ………最悪だから想像しちゃうじゃんか。

 

まぁそれは置いといて、そろそろ新メニューとかも考えたいんだよな〜。ウチで提供してないものが良いよな、やっぱり。だとすると………

 

 

シルヴィア「八幡、そろそろ開店するよ。準備お願いね。」

 

八幡「ん、分かった。」

 

 

考えるのは休憩時間になってからにするか。さて、最初は何が来る………っていうか少し騒がしいな。何だ?

 

 

ーーーホール・入り口前ーーー

 

 

八幡「シルヴィ、どうした?」

 

シルヴィア「あ、八幡、それがね……」

 

「君がここの店主、比企谷八幡かね?」

 

八幡「え?まぁそうですけど……どちら様ですか?」

 

「ほう……私を知らないとは、君は些か知識不足のようだね。料理界に名を連ねるのなら私、ガルボ・モレンティーロの名前を覚えておくのは常識だというのに。」

 

 

ずいぶん上から目線な人だ……しかも煽りに来たのなら帰ってくれよ。入り口に立たれると邪魔だ。

 

 

八幡「それで、ご用件は?」

 

ガルボ「まぁ待ちたまえ、あまり急かすようだと従業員にも笑われ「ご用件は?店を開店したからにはお客様にご迷惑はかけられない。ご用件があるのであればお話下さい。なければ回れ右してお引き取り下さい。」……君は礼儀もなっていないようだね。私に向かってそのような口を聞くとは……」

 

シルヴィア「横からすみません。私たちも料理人です。開店しているのにも関わらず、お客様におもてなしもできないまま帰らせるわけには行きません。店主は厨房を1人で行き来しております。その店主がこの場にいるという意味、ご理解してはくださらないでしょうか?」

 

 

シルヴィに頭を下げさせちまった……少し自分が情けなく思えてくる。

 

 

ガルボ「ふむ……こちらの女性は中々教育がされているようですな。どうでしょう?我が店のホールに来る気はありませんか?今なら良い値を払いましょう。」

 

シルヴィア「お言葉ですが、私はこのお店で仕事をしたいのです。せっかくの申出ですが、お断りさせて頂きます。申し訳ございません。」

 

ガルボ「そんな事を言わずに!我が店は六花を基点にして既に世界に7店舗のチェーン店を構えております。貴方の将来もお約束しますので。」

 

 

なかなかにしつこい奴だ。しかも俺の嫁さんだって知ってて言ってんのか?だとしたらこいつ性質悪過ぎるだろ。

 

 

オーフェリア「シルヴィアは八幡だけのものよ。そして八幡も然りだわ。貴方がどれだけ勧誘しても結果は同じよ。」

 

ガルボ「何だね君は?」

 

オーフェリア「此処のスタッフでホール担当をしている者よ。」

 

ガルボ「成る程、君たちも哀れだ。このような三流コックに雇われているなんてね、さぞかし給金は少ないのだろうね。それにどう考えても人が来るようには思えない。それに「早く要件を言ってくれませんかね?」……何?」

 

八幡「ウチの店を軽蔑する前に、そのよく回る舌で早く用件を言ってくれませんか?こっちも貴方の話を聞いていられる程暇じゃあないんですよ。後ろで待っているお客様が迷惑していますので。」

 

 

こいつを早く退かせてさっさと営業再開させねぇとな。

 

 

ガルボ「まぁいい、では用件を言おう。君、この店を私に売りたまえ。」

 

八幡「は?」

 

ガルボ「小さいがこの店は中々良い装飾に良い設備だ。ここなら我が店を構えるのにも苦労はしない。六花に2店舗構えるのは少しおかしな話だが、悪くはない。さぁ、こちらの権利委託書にサインを「テメェ……」な、何だね!?その反抗的な目は!?」

 

 

まさか決定事項みたいに言われるとはな……流石の俺もカチンと来たぞ。

 

 

八幡「ナメたこと言ってくれるじゃねぇか、この店を売れだ?誰がお前みたいな奴に売るかよ。」

 

ガルボ「な、なんて奴だ!おい、お前ら!この男をボコボコにしろ!」

 

八幡「無駄な事はしない方が身のためだぞ。一応言っておいだぞ。」

 

 

ボディーガードの2人は動くどころか、俺をボコボコにするという命令自体、遂行する気はなさそうだった。いや、無理だと悟っているようだった。

 

 

ガルボ「何故動かない!ええい、お前らに払う金はないぞ!早くやれ!」

 

八幡「おい。」

 

ガルボ「何だ!私は今取り込み中がっ!?」

 

八幡「いい加減にしろ。お前に、売る、店は、ねぇ、って言ってんだよ。分かったら早く出て行ってくれねぇか?これ以上迷惑掛けんだったら営業妨害で訴えんぞ?」

 

ガルボ「なんだその言い草は!?私が直々に来て勧誘して来たというのに!」

 

 

………虎威。

 

 

ガルボ「ヒィッ!!?」

 

八幡「誰がそんな事頼んだ?誰も頼んでねぇだろうが。最後に言っておくぞ。これ以上恥をかきたくなかったら、今すぐ店から出て行け。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡くん、お店まだかい?いつもより少し遅いようだけど……何かあったのかい?」

 

 

っ!

 

 

八幡「冬香、外でお待ちになられているお客様への対応を頼む。オーフェリアは急いでお冷やとおしぼりの準備を。シルヴィはこれが終わったら俺と一緒に厨房に来てくれ。注文が来たら大急ぎで作る。」

 

 

冬香「かしこまりました!」

 

オーフェリア「分かったわ。」

 

シルヴィア「了解。」

 

 

よし、これでいい。

 

 

八幡「というわけなので、もう出てってくれませんか?もし俺が貴方で営業中にこんな事やられたら迷惑でしょ?それともやってほしいですか?」

 

ガルボ「………ふ、ふん!今日はこれで帰らせてもらう。だがまた来るからな!」

 

 

そう言って帰って行った。もう来なくていい。

 

 

八幡「さて、お前ら準備だ。」

 

 

その後はなんともなく作業が進み、何事もなく(朝の一件以外は)1日を終えることができた。

 

もう2度と来るなと言えばよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ちょっと中途半端な終わり方ですが、続編ありますので。まぁ次回作はまた個々のキャラでの物語を出すんですけどね。



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シルヴィア編
プロが認める歌声


 

 

???side

 

 

その歌は私にとってとても衝撃的なものだった。他の人が聞いてどんな風に思ってるかどうかは分からないけど、私個人の意見では表現が出来ないくらい大胆であり繊細な歌声で、男性であるにも関わらず、低音と高音の使い分けがとても上手だった。初めて聴いた曲、それもただ見てみようと思ってタップして開いただけだったのに、私はこの曲に、ううん、この人に夢中になった。見た所私と同年代の男の子、それでこの歌唱力………凄かった。この人と1回だけでもいいから歌ってみたい。初めて私は他人と一緒に歌いたいと思った。

 

あっ、自己紹介がまだだったね。私はシルヴィア・リューネハイム。学園の中等部2年で序列1位です。一応アイドルと歌手の活動もしていて少しだけ周りから人気が出るようになって来ました。

 

 

※もう周りレベルではありません。世界的大フィーバーです。

 

 

そんな私でもこんな風に歌の動画を見たりするんだけど、カラオケとかで見るのはあまり参考にならないとばかり思っていた。でも今見ているのは明らかに違う。本人が歌っている歌よりも明らかに輝いているように見える。普通なら、ただマイクを持って歌っているだけに見えると思うけど、私にはその1つ1つの仕草に華があるように見える。この人の歌をもっと聞きたい……この人の歌をもっと見たい……

 

投稿者は………ottantamila(オッタンタミーラ)?どういう意味なんだろう?何処かの国の言葉かな?まぁそれは後で調べるとして……この人、他の歌も投稿してる。全部見てみよう!

 

 

………

 

 

 

………………

 

 

 

………………………………

 

 

シルヴィア「………すごい。どれも個性的なのに、全く違う曲とは思えない。それに何で、何でこんなに重層的なのに1つの曲に纏め上げられるの?」

 

???「……ィア、……ルヴィア、シルヴィア!」

 

シルヴィア「うわっ!?」

 

???「何してるのよ?もうとっくに休憩時間は過ぎてるのよ?」

 

シルヴィア「こ、ごめんなさいペトラさん!すぐに行きます!」

 

ペトラ「それはいいけど、何を見てたの?………動画投稿者がよくやっている『カラオケで歌っていみた』シリーズね。これを見て夢中になってたの?」

 

シルヴィア「その……この人の歌は他の人が歌っている歌よりも表現力とか歌唱力とかが凄くて……見てる私も心が躍るような歌だったんです。」

 

ペトラ「ふぅん。投稿者はottantamila……イタリア語で数字の80,000を表す言葉ね。貴方が夢中になるのだから少しは良い歌声をしているんでしょうね。私も少し見てみようかしら。」

 

シルヴィア「是非聞いてみてください!私も間違いなくオススメできます!」

 

 

そして私は今、次のツアーで歌う予定の曲の練習をしています。かなりの曲数があるから少し疲れるけど、大勢の人が喜んでくれるのなら、もっと歌いたい。この歌を皆に聞いて欲しい。

 

 

ーーー練習終了ーーー

 

 

シルヴィア「お疲れ様でしたー!!」

 

 

さて、今日のレッスンも終わったし、さっきの人が歌ってる曲をまた聞いてみよっと!

 

 

ペトラ「シルヴィア、少しいいかしら?さっき貴方がオススメしていた人の動画の事なのだけど………」

 

シルヴィア「?それがどうかしたんですか?」

 

ペトラ「彼の歌声……貴女が評価するのも分かるわ。圧倒的なセンス、抜群な表現力に歌唱力、そして何よりも歌ってる本人よりも上手いと思えてしまう程、彼の歌には輝きと華があるわ。私も聞いていて鳥肌が立ってしまったもの。正直、この動画を見て初めてこの子をスカウトしたいと思ったわ。」

 

 

ペトラさんも高評価!やっぱり間違いないよ!彼はすっごく歌が上手なんだ!でも、なんでこんな人が話題にならないんだろう?不思議。

 

 

ペトラ「ツアーから帰ったら彼の事を調べてみるわ。手がかりになりそうなのは、投稿者名くらいだからそこから逆算して色々と捜索してみるから、貴女も出来る限り情報を集めてちょうだい。」

 

シルヴィア「分かりました!」

 

 

学園に戻ったら、早速彼のことを調べないとね!でも、どこから調べようかな?投稿者名以外何も分からないからどうしようもないんだよなぁ………

 

 

シルヴィアsideout

 

???side

 

 

………あぁ〜今日も歌ったなぁ〜。えっと……え?これも1位?しかも全国配信決定?マジかよ……イかれてないよね?この機械1位出し過ぎじゃない?1位しか出ないんじゃないの?

 

けどまた配信されんのか……まぁ顔映らないようにしてるし、ネームも分かりづらいようにしてるからそう簡単に分からないとは思うけどよ。

 

 

「凄いじゃん八幡ー!またまた1位だよー!私がやっても絶対そこまで行けないよー!」

 

「ですが凄いですね。八幡にこんな特技があったなんて意外です。歌が上手なんですね。」

 

八幡「まぁ歌ってる時はなんも考えないで済むからな。歌いまくれば上手くなるもんだ。通い詰めにしてみたらどうだ?セシリー、虎峰。」

 

虎峰「悪くはありませんが、あくまでもお付き合いするときにだけご一緒します。鍛錬の時間を無駄にしたくないので。」

 

セシリー「あたしも上手くなりたいけど、そこまで興味はないかなー。それに八幡の聞いてる方が楽しいしねー。プロデビューすればー?」

 

八幡「冗談やめろよ。俺なんかが表に出たら一気に一蹴されるわ。1回出されて引退で終わりだよ。」

 

 

界龍第七学院 冒頭の十二人

 

序列7位 趙虎峰

 

序列6位 セシリー・ウォン

 

 

セシリー「いやいやー、だって序列2位がプロデビューするんだよー?絶対話題になるよー。」

 

 

序列2位 比企谷八幡

 

 

八幡「どうだろうな。まぁそれももしもの話だ。実際オファーなんて来ないだろうし、プロにもなる気は無いしな。さて、そろそろ帰るか。」

 

虎峰/セシリー「はい。(はーい。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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すれ違いの出会い

 

シルヴィアside

 

 

ツアーが終了して1週間、私とペトラさんは出来る限り、あのカラオケを歌っている人、ottantamila(オッタンタミーラ)の情報を集めた。その結果、以外にも身近にいたことが分かった。その場所は六花商業エリア北部にあるカラオケ店だった。私は早速そのカラオケ店に行ってみたんだけど、歌っているお客さんが多いからottantamilaがどの人か全く分からなかった。そしてそれ以前の問題があった。歌っているところを覗いたら完全に不審者だという事。これでは探すに探せられない。

 

もちろん私はそれだけで諦められる程、根性は弱くない。今日もカラオケに来て歌を歌って周囲の様子を探っている。それでも聞こえてくるのは、精々80〜88点の人たち、高くても92点の人だった。あの人の歌はもっと人の心を高ぶらせるような、もっと元気が出るような歌声だった。

 

 

シルヴィア「はぁ……あっ、空になっちゃった。もう一回補充してこよっと。」

 

 

ーーードリンクバーがある前ーーー

 

 

はぁ〜あ……この1週間、ずっとこのお店に来てるけど、めぼしい成果はゼロ。歌っているから練習にはなるけど、あの歌声が聞こえないって思うと少しだけ滅入ってしまう。

 

 

「いらっしゃいませ!あっ、今日も来てくれたんですね!嬉しいです!」

 

「えぇ、少しハマっちゃったので。」

 

「いつもの部屋でいいですか?」

 

「はい、お願いします。」

 

「はい!じゃあこちらコップとマイクです!フリータイムなのでごゆっくりどうぞー!」

 

 

へぇ〜学生さんなのにここの常連さんなんだ。でも何処かで見たことあるような……何だっけなぁ?うぅ〜ん……まぁいいや。飲み物持ったら部屋に戻ろっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も1位連発期待していますからね、ottantamilaさん?」

 

 

ーーー個室部屋ーーー

 

 

ペトラさんはこの六花にいるって言ってたけど、本当に居るのかな?1週間カラオケに来て様子とか見てたけど、何も変わった様子はないし、探知系魔法を使おうにも手かがりが少な過ぎるから使えない……いないのかな?でもペトラさんは嘘をつくような人じゃないし……何処にいるのかな?見当もつかないよ。

 

 

シルヴィア「……とりあえず歌おっかな。あっ、この曲あの人に抜かれてる。よぉ〜し!追い抜いてやるんだから!この歌は私が歌ってるんだから!」

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

シルヴィア「うんうん、上々だね!これで私が1位♪あと何回か歌ったら出ようかな。」

 

 

………

 

 

………………

 

 

………………………………

 

 

シルヴィア「んん〜あぁ〜終わった!じゃあ次でラスト……ってえぇ!?私の記録が抜かれてる!?しかもあの人に!?」

 

 

1位 ottantamila 96.821

 

2位 S.L.Q.S 96.227

 

 

シルヴィア「ふぅん……いいよ!とことん付き合ってあげるよ!まだまだ相手してあげるんだから!!」

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

シルヴィア「ふぅ……こ、これなら抜かせないでしょ!やっとでた点数なんだもんね!」

 

 

1位 S.L.Q.S 98.857

 

2位 ottantamila 98.688

 

 

僅差だけど、私だって本気を出せばこれくらい出せるもん!カラオケだけど、精密採点だから点数が上だったら勝ちなのだ!

 

 

シルヴィア「それにしても……喉乾いちゃったよ。歌い続けたから当然だけど、こんなにも熱く歌ったのはいつぶりだろうなぁ〜……っと、それよりも飲み物飲み物〜!」

 

 

あれならそう簡単には抜かせられないはず!さぁ、どう来るかな!?

 

 

シルヴィアsideout

 

八幡side

 

 

マジかよ……まだ食い下がってくるのか。30分間歌い続けてるが、もう喉がヤバい。飲み物無しでやってるが、流石にもう欲しくなって来た。にしても何だよ、この点差は。ほぼ0.2点差じゃねぇか、たった0.2点差で負けたなんてよ……

 

八幡「けど、まだ居たんだな。こんな風に1位を目指して歌ってくれる人……最近はそんな人いなかったからな。なんか少し嬉しいな。虎峰とセシリー連れて来た時は俺が1位だったんだけど、今は俺が2位………これは負けてられないな。」

 

八幡「その前に飲み物の補充に行くか。流石に喉がカラカラだ。喉が潤いを欲している。飲み物補充したら早速あの点数抜いてやる。」

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

シルヴィア「それにしても良い勝負してるよ。ここままなら1位守れるけど、相手もきっとまだまだ挑んでくるよね。こうなったら今日はottantamilaととことん勝負だね!よし、じゃあ飲み物は……」

 

八幡「まさかあんな点数出すなんてな……ウマすぎだろ、あのS.L.Q.Sって人。あの人を越えるためにも、喉を刺激するようなジュースは無しだな。じゃここは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人「オレンジジュースで行くか!(行こうか!)………え?」

 

 

八幡「あ、先にどうぞ。」

 

シルヴィア「す、すみません……オレンジジュースお好きなんですか?」

 

八幡「いや、まぁ……喉に刺激を与えたくないので。それに、負けられない戦いみたいなものをやっておりまして。」

 

シルヴィア「そ、そうなんですか………頑張って下さい。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

 

こうして2人の初邂逅はすれ違いという形で終わった。。

 

 

 

 

 

 

 



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初対面なのに

 

 

八幡side

 

 

………なんかS.L.Q.Sさんに対抗心を持ってカラオケでの得点争いをしてから1時間、もうこれ以上点数が動かなくなってしまった。いわば、俺の限界である。相手はどうか分からないが、俺はもうこれ以上の点数は取れそうにない。

 

 

1位 ottantamila(オッタンタミーラ) 99.500

 

1位 S.L.Q.S 99.500

 

3位 マティンニョン 94.255

 

 

30分近くやってお互いに点数が伸びなくなってこの状況である。にしても3位に5点差つけるって俺(たち)かなり歌いまくってたんだな。けどこのS.L.Q.S、なんか少し会ってみたいな。

 

まだ歌いたいところだが、喉を潤したとしてももう限界だ。今日はここまでにするか。出来ればこの特典を抜いてから帰りたかったが、流石にもうキツイ。

 

 

八幡「帰って飯の支度でもするか。」

 

 

ーーー受付前ーーー

 

 

八幡「あっ……」

 

シルヴィア「あっ、貴方はさっきの……」

 

八幡「どうも。」

 

シルヴィア「負けられない戦いには勝てました?」

 

八幡「いえ、それが引き負けみたいな形になってしまいまして……できれば勝ち越したかったんですが、もう喉が限界で。」

 

シルヴィア「へぇ〜なんか私と似てます!私も得点争いで1位と戦ってたんですけど、追い抜いては追い越されるの繰り返しだったんですよ。私ももう喉がカラカラのガラガラで歌えません。」

 

八幡「じゃあお互いに1位を獲るために戦ってたんですね。しかも相手も粘りながらですか……とことん似てますね。」

 

シルヴィア「もしかしたら私たちが同じ曲を歌っていたりして?」

 

八幡「ははっ、まさかですよ。」

 

シルヴィア「じゃあ試しに得点を言ってみましょうよ。私も覚えているので。」

 

八幡「分かりました。」

 

シルヴィア「せ〜ので言いますよ。せぇ〜の!」

 

2人「99.500点………あっ。」

 

 

えっ……マジで?

 

 

八幡「も、もしかして……S.L.Q.Sさんですか?」

 

シルヴィア「ottantamilaさん?」

 

 

えぇ〜じゃあ俺ってこんな近くにいる人と戦ってたのか?

 

 

シルヴィア「えぇ!?本当に!?ottantamilaさんなんですか!?やっと会えた!!」

 

八幡「え、えっと……俺ってそこまで有名ではないと思うんですけど………」

 

シルヴィア「実は私、貴方の動画を見て衝撃を受けちゃって!本人よりも大胆で表現的で、見ている人の心を惹きつけるような、そんな感じがしたんです!」

 

八幡「そ、そうですか……」

 

シルヴィア「あの、この後って時間空いてますか?もしよかったらお話がしたいなぁって思ってるんですが……」

 

八幡「え、えぇ、構いませんが……」

 

シルヴィア「やった♪」

 

 

これだけの事でこんなに喜ぶなんてな……それだけ嬉しかったのか?その後、俺たちは会計を済ませてからカラオケ店を後にした。

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

八幡「なんか人目につかない場所に来ましたけど、あまり聞かれたくない話とか?」

 

シルヴィア「そういうわけじゃないんですけど、ちょっと話しにくいというのもありますね。」

 

 

………何の話なんだ?

 

 

シルヴィア「はい、到着!すみません、こんな場所まで付き合わせちゃって。」

 

八幡「いえ、別に。」

 

シルヴィア「じゃあ自己紹介から行きますね。でもその前に1つだけ約束して下さい。今この場所で見たのは他の人には言わないって事を。」

 

八幡「俺にはそういう人はいませんから。友人がいないというわけではありませんけど。」

 

シルヴィア「ふふっ、じゃあ私から。」

 

 

彼女は着けていたヘッドホンに手をあてがうと、髪の色が変わって雰囲気も別人になった。その人物は誰もが知っている有名人だった。

 

 

八幡「……シルヴィア・リューネハイム。」

 

シルヴィア「そっ、これが私の本当の姿。シルヴィア・リューネハイムです。クインヴェール女学園中等部2年の序列1位をやっていまーす!」

 

 

……驚いたな、まさか世界の歌姫だったなんてな。こりゃ差をつけられないわけだ。

 

 

八幡「じゃあ俺ですね、比企谷八幡です。界龍第七学院中等部2年の序列2位です。」

 

シルヴィア「あっ!だからottantamilaなんだね!名前を化けさせたって事なんだ!」

 

八幡「まぁ、そんな感じです。」

 

シルヴィア「しかも序列2位……星露の1番弟子を倒したとんでもない転入生だって凄く有名だよ!まさかそんな人が歌も上手だなんて驚いたよ!」

 

八幡「俺もですよ。まさか相手が世界の歌姫だったなんて思いもしませんから。」

 

シルヴィア「確かにね〜!あぁ、敬語はいいよ。それに同い年だからね。」

 

八幡「そうさせてもらう。」

 

 

その後はいろいろな話をした。どうやったらそんな歌声が出せるのかとか、表現が出来るのかとか質問攻めにあったが、悪い気はしなかった。純粋な気持ちで聞いて来てるからかもな。

 

 

シルヴィア「凄く有意義な話だったよ!君から言われると何だか説得力があるから信じられるよ。」

 

八幡「世界の歌姫にアドバイスなんて、滅多にない事だな。これは友人に自慢でもするか。」

 

シルヴィア「もう!さっき約束したでしょ!」

 

八幡「分かってるよ。誰にも言わない。」

 

シルヴィア「ふふっ、じゃあ今日はどうもありがとうね。それと、これからもよろしく♪」

 

 

するとシルヴィは俺に手を伸ばして来た。まぁ挨拶みたいなものだからな。

 

 

八幡「あぁ、よろしく。」

 

 

そして俺もその手を握った。

 

 

ドクンッ!

 

 

っ!何だ?今の?

 

 

シルヴィア(え?何?この気持ち?)

 

 

2人((手を離したくない?))

 

 

俺とシルヴィは手を握ってその手を見つめたまま動かなかった。というよりも動けなかった。今日初対面でほんの数十分しか話していない人との別れがどうも嫌だった。

 

 

不思議な感覚だった……だが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、俺から手を離して帰るように促した。彼女も少しだけ意外そうな感じの雰囲気を出していたが、俺にもよく分からなかった。

 

 

2人((何だったんだ?[ろう?]あの時の気持ち……))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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一緒にいると

 

 

シルヴィアside

 

 

八幡くんと出会ってから1日が過ぎた。何故か昨日の八幡くんと別れてから、八幡君のことばかりを考えてしまう。自分でも分からない。こんなの初めてだった。八幡くんは今何をしているのか、またカラオケに行っているのか、それとも学院にいるのか、考えても無駄だとは分かっているけど、考えてしまう。彼が今どうしているのかを。

 

 

シルヴィア「………」(ボー)

 

「………シルヴィアさん?」

 

シルヴィア「……えっ?な、何?どうかした?」

 

「いえ、なんか今日は随分ボーっとしてるなぁって。何かあったんですか?」

 

シルヴィア「えっと……さ、最近面白いカラオケ動画を見て、それを脳内再生していたんだよ。」

 

「へぇ〜シルヴィアさんがそんな風に思える人がいるんですね。上手いんですか?」

 

シルヴィア「うん、凄く上手!よければ君も聞いてみるといいよ。ottantamilaって名前で探せば見つかると思うよ。」

 

「はい、今度見てみます!」

 

 

ふぅ、なんとか誤魔化せた。咄嗟に八幡くんの歌を思い出せてよかったよ。多分思い出せてなかったらあたふたしてたかもしれないし。

 

 

………カラオケに行こうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ううん、カラオケに行こう!

 

 

ーーーカラオケーーー

 

 

……つい来ちゃったけど、別に歌いたい気分というわけではない。ただ、もしかしたら八幡くんが来ているかもしれないという期待で足を進めてしまった。でも、もしいたとしてもそこには入れないよね。だって1人で入ってるんだもんね。私ってばお茶目なミスをしちゃったよ。

 

 

シルヴィア「はぁ……私なにやってるんだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「シルヴィ?」

 

 

っ!!

 

 

後ろから私のアダ名で呼んでくれたのは、今私が会いたくてたまらなかった人物、比企谷八幡くんがいた。

 

 

シルヴィア「……八幡くん。」

 

八幡「………歌いに来たのか?」

 

シルヴィア「ううん。なんかね、八幡くんはどうしてるかなぁって思ったら、ここに来ちゃったんだ。八幡くんは?歌いに来たの?」

 

八幡「いや、実はというと俺も同じような感じでな。お前のことを考えていたら此処に来てしまったって感じだ。」

 

シルヴィア「そ、そうなんだ……」

 

 

八幡くんが私の事を考えて……ちょっと嬉しい。

 

 

シルヴィア「じゃあ八幡くんは今フリーなんだよね?」

 

八幡「ん?あぁ、そうだが?」

 

シルヴィア「じゃあさ、今日私に残りの時間をもらえないかな?少しだけデートしない?」

 

 

………っ!?わ、私は何を言ってるの!?デ、デート!?そんな恋人みたいに言っても八幡くんが困惑するだけなのに!

 

 

八幡「……あぁ、いいぞ。」

 

シルヴィア「っ!!ホ、ホント!?本当にっ!?」

 

八幡「あぁ、嘘はつかない。俺ももうやることがなかったし、お前と一緒にいるのも退屈しなさそうだからな。」

 

シルヴィア「やった♪」(グッ!)

 

 

やった!八幡くんと一緒にデート出来る!今日の6時くらいまでは私が八幡くんを独り占めだよ!

 

 

シルヴィア「ねぇね!何処行こっか?」

 

八幡「それについてなんだが、俺はまだこの街に疎い。出来れば案内がてらシルヴィのお勧めできる場所を教えてもらえるなら嬉しい。」

 

シルヴィア「任せてよ!とっておきのお店やお気に入りの場所まで案内してあげるから!」(ダキッ!)

 

八幡「……何で腕に抱き着くんだ?」

 

シルヴィア「いいでしょ?これはデートなんだから、彼氏彼女っぽくしないとねっ♪」

 

 

わー言っちゃった!!(≧∇≦)

 

 

八幡「……じゃあ、案内してくれ。」

 

シルヴィア「うん♪」

 

 

そこからの八幡くんとのデートは、今まで過ごして来た楽しい時間、幸せな時間よりも遥かに超える幸福な時間だった。ただただ幸せだった。なんでかは分からないけど、八幡くんと一緒にいると、胸がポカポカした。

 

 

シルヴィア「んん〜!どうだった?一応私のおすすめスポットは一通り回ったんだけど……」

 

八幡「何処も良い場所だった。今後何かあったら使わせてもらうかもな。」

 

シルヴィア「うん、その時は是非使ってよ!きっと良い気分転換になるから!」

 

八幡「次の……ってもう暗いな。」

 

シルヴィア「……そうだね、もう終わりかな。」

 

 

もう終わりかぁ………やっぱり楽しい時間ってあっという間に過ぎちゃうんだなぁ。

 

 

シルヴィア「……ねぇ、次はいつ会えるかな?」

 

八幡「え?」

 

シルヴィア「なんかね、すぐに会いたくなっちゃうんだ。変かもしれないけど、昨日から今日の八幡くんに会うまではずっと君のことを考えてたんだ。だからさ……今度はいつ、暇になりそう?」

 

八幡「あー……それは俺に分からん。暇な日ってのは突然だからな、いつになるかは約束出来ない。」

 

シルヴィア「そっか……」

 

 

残念だなぁ。次いつ会えるのかも分からないなんて……寂しいよ。

 

 

八幡「あー……もしよければなんだが、番号とアドレスを教えようか?」

 

シルヴィア「っ!!うん、教えて!!」

 

 

私は今まで以上に食い気味に掛かっていったも思う。それだけ嬉しかった。これで八幡くんといつでもお話ができる。そう思うと、また胸がポカポカして来た。

 

その後はウキウキ気分になりながら学園に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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思わぬ出会い

 

シルヴィアside

 

 

シルヴィア「♪〜♪〜」

 

 

皆さんこんにちは、シルヴィア・リューネハイムです。私は今、生徒会室で雑務を行なっております。あっ、言い忘れていたけど、こう見えても私、副会長なんです!来年は中等部3年になるんだけど、秋の選挙になったら会長は確実だって今の会長さんから言われてるんだ。クインヴェールでは生徒会長を選挙で決めてるんだ。私は今の会長がまだ続けても大丈夫だとは思ってるけど、やっぱりアイドル稼業との両立は少しだけ難しいみたい。それを私に押し付ける会長さんも少しだけ悪い人だよね。何事も経験だっていうけどさ。

 

 

会長「……シルヴィア、何か良いことでもあったの?」

 

シルヴィア「え?どうしてですか?」

 

会計「だってシルヴィアさん、ずっと鼻歌歌ってましたよ?しかも凄く嬉しそうに。」

 

シルヴィア「そ、そうなの?な、なんか恥ずかしいなぁ///」

 

会長「それでシルヴィア、一体何があったの?誰にも言わないから教えなさいよ。」

 

シルヴィア「いくら会長の頼みでもこれは秘密です!誰にも教えません!」

 

庶務「……もっと気になります。」

 

副会長「そうだよ!教えてよ〜!」

 

シルヴィア「ふふ、ダーメ!でも、そうだなぁ……もし私との1対1の決闘に勝てたら教えてあげるけど?」

 

会長「貴女ねぇ……勝てるわけないじゃない。今のクインヴェールの冒頭の十二人はほぼ中等部が占めてるんだから。しかも貴女は序列1位、相手にも出来ないわよ。」

 

シルヴィア「じゃあ諦めて下さい。」

 

副会長「うぅ〜気になるよぉ〜!」

 

庶務「……もしかして、男?」

 

会計「もう!そんなわけないでしょ!シルヴィアさんが男性とお付き合いなんて。もし知られたらニュースどころじゃ済まされませんよ。」

 

 

………付き合う、かぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会長「はい、今日のノルマは終了!作業している子はキリの良いところでストップしていいわよ。明日もあるからよろしくね。」

 

副会長/会計/庶務「はい!(はーい!)(……はい。)」

 

シルヴィア「はい。」

 

 

ふぅ、今日の雑務も終わりっと。今日は歌のレッスンがないからなぁ……何をしようかなぁ?

 

あっ、そういえば商業エリアに新しくオープンしたスイーツ店があったっけ?そこに行ってみようかな?それに、そろそろシャンプーも無くなりそうだからパックも買っておこっと!

 

 

シルヴィア「よし、そうと決まれば出発♪」

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

ナンパ1「いいじゃねえかよ、ちょっとくらい。お茶するだけだって。」

 

ナンパ2「そーそ。時間なんてとらせねえって。すぐ終わるって。」

 

 

はぁ……最悪だよ。まさかレヴォルフの生徒に絡まれるなんて。しかもまだついてくる……

 

 

シルヴィア「もうーさっきから断ってるでしょ。なんでそうしつこいかなー。」

 

ナンパ1「そう言わずにさー、なっ?」

 

ナンパ「いいじゃんちょっとくらいさ〜。」

 

シルヴィア「だ・か・ら!嫌だって言ってるでしょ!」

 

ナンパ1「ちょっとだけだって!いいじゃねえか。」

 

ナンパ2「頼むよー、いい加減「おい、あんたら。」……あ?なんだテメェ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ………八幡くん。

 

 

八幡「さっきからうるせんだよ。そこの女の子迷惑してんじゃねえか。」

 

ナンパ1「はぁ?お前には関係ねーだろうが!さっさとどっか行けよ!!」

 

八幡「お前らがどっか行くなら俺も行ってやるよ。」

 

ナンパ2「アッタマ来た!コイツッ!!お前からミンチにしてやるよっ!!」

 

 

すると1人が煌式武装を持って八幡くんに攻撃しようとした。

 

だめ……八幡くんがやられちゃう!

 

 

シルヴィア「危ない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも八幡くんはいとも簡単に2人の攻撃を受け流しながら攻撃をしていた。そうだ、八幡くんって序列2位だったんだ。

 

 

八幡「まだやんのか?次は目玉いくぞ?」

 

ナンパ1「ひ、ひぃぃ!!」

 

八幡「懲りたならさっさとそいつ連れてどっか行けよ。目障りだ。この女の子には2度と手出すなよ?」

 

ナンパ1「ご、ごめんなさーい!!!」

 

ナンパ2「………」(ズルズル)

 

 

………カッコいい/////

 

 

八幡「大丈夫か、シルヴィ?」

 

シルヴィア「え、あ、うん!ありがとう八幡くん。」

 

八幡「お前また1人か。友達いないのか?」

 

シルヴィア「失礼しちゃうな〜もうっ!ちゃんといるよ!今日は1人なの!」

 

八幡「いや、俺お前が1人でいるところしか見た事ないから。」

 

 

あっ、そういえばそうだ。

 

 

シルヴィア「ところでさ、今暇かな?今私が行こうと思ってたスイーツ店にご一緒しない?お礼に今なら全品タダだよ?」

 

八幡「なんか女に代金を払わせるっていうのはちょっと抵抗感じるんだよなぁ。割り勘で許してくれないか?」

 

シルヴィア「うぅ〜ん……いいよ。それでも私が多く払いますからね!出ないとお礼にならないもん!」

 

八幡「そういうもんか?」

 

 

そういうものです!

 

 

ーーースイーツ店ーーー

 

 

シルヴィア「さぁ、晩御飯に影響しない限りで好きなものを選ぼう!」

 

八幡「メニュー豊富だな。」

 

 

悩むなぁ……まさかこんなにあるとは思わなかったよ。どれも美味しそうだし……あっ、そうだ!

 

 

シルヴィア「八幡くん、何か決まった?」

 

八幡「絶賛お悩み中だ。まぁ候補は決まったが……」

 

シルヴィア「じゃあさ、私が片方それを頼むからさ、八幡君はもう片方を頼んでよ!そしたら両方食べられるでしょ?」

 

八幡「けど、シルヴィも食べたいものがあるんじゃないか?」

 

シルヴィア「……コンプリートしてみたくなっちゃって。」

 

八幡「………まずはこの2品から始めよう。」

 

 

ありがとう八幡くん。

 

 

その後は注文したスイーツをお喋りしながらゆっくり食べました。会計は勿論私ではなく、八幡くんが払ってしまったので、後で料金の7割を八幡くんのお財布の中にキッチリ入れました。まぁ六花は電子マネーなんだけどね。

 

 

 

 

 




中等部2年のシルヴィアは副会長扱いにしてます。

それと今日の話ですが、見覚えのある方は前作を読み漁ってみてください。そこに応えがあります。



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オススメの商品の香り

 

 

八幡side

 

 

シルヴィア「もう!八幡くんってば!どうして先にお金払っちゃうかなぁ!割り勘にしようって言ったのに!」

 

八幡「済まん。やっぱりなんか気が引けてな。」

 

シルヴィア「……その気持ちはありがたいけど、この場合では使わないようにっ!」

 

八幡「……分かったよ。」

 

 

さて、じゃあそろそろ本命の買い物に行くか。

 

 

八幡「じゃあ俺は買い物があるから、これで失礼する。またな。」

 

シルヴィア「ちょっと待って!お買い物って何買うの?」

 

八幡「シャンプーとボディーソープが切れててな、それを買いに来たんだ。前に使っていた奴のだったんだが、もう切れそうだから新しいのを買いに来た。」

 

シルヴィア「へぇ〜私と一緒!私もシャンプーが切れそうだったから買いに来たんだ!一緒に行こうよ!」

 

八幡「……まぁ断る理由もないからな。いいぞ、じゃあ行くか。」

 

 

シルヴィア(やった♪まさか目的が同じだったなんて!思わぬ奇跡だね♪一緒に居られる時間が伸びてすごくラッキーだよ♪)

 

 

……何故だ?なんかシルヴィ機嫌が一気に良くなったような………気のせい、ではないな。

 

 

ーーー店内ーーー

 

 

シルヴィア「そういえば、前の人が使っている人のを使ってるって言ってたけど、八幡くんは何か好みの匂いとかはあるの?」

 

八幡「特にそういう拘りはないな。使えればいいって思ってるから。」

 

シルヴィア「もうちょっと意識した方がいいよ?見えない所も気を配らないと。体質とかは?」

 

八幡「それもない。アレルギーも特にない。」

 

シルヴィア「じゃあ一番好きな香りは?」

 

八幡「そうだなぁ……柑橘系だな。というよりも、他になんの匂いがあるかよく分からんからな。」

 

シルヴィア「いろんな香りがあるんだよ。簡単なので言うと、柑橘系の香りはフルーティって括りに入っているの。ローズはフローラルで、他にも色々あるんだ。因みに私の好みも八幡くんと同じで柑橘系だよ。」

 

 

そう言ってシルヴィが手に取ったのは、オレンジ色のボトルだった。

 

 

シルヴィア「これが私の使っているボディソープだよ。因みにこれと同じメーカーでシャンプーもあるんだよ。これがそのシャンプー!」

 

 

後に取ったのはブルーのボトルだった。

 

 

八幡「それ、高過ぎたりしないよな?一応言っておくが、あまり高いのは無しだぞ?」

 

シルヴィア「大丈夫!この2つは私がまだ無名だった頃からある商品なんだから。値段もお手頃だよ。」

 

八幡「ふむ……ならそれにするか。見た所、確かに値段も良さそうだしな。」

 

シルヴィア「八幡くんって本当に拘りとかないの?パッと見てぱっと決めちゃったら面白くないよ。」

 

八幡「なぜ面白さをお求めに?シルヴィの紹介もあるから確かだと思ったんだが……」

 

シルヴィア「私を信じてくれるのは嬉しいけど、香りとか気にしないの?」

 

八幡「だって此処にはサンプルなさそうだしな。使用者の意見が1番だろ。」

 

 

シルヴィア(……よしっ!ちょっとからかってみようかな!)

 

 

シルヴィア「じゃあさ、私の髪の匂いを嗅いでみてよ!同じシャンプーを使ってるからさ!」

 

八幡「いや、それは流石に……人目もあるだろ。」

 

シルヴィア「そんなのいいから!すぐやればすぐに済むんだから!ほら!カムヒヤー!」

 

 

なんか楽しそうってのもあるが、嬉しそうにもしてないか?

 

 

八幡「じゃあ少しだけな。」

 

シルヴィア「うん!どーぞ♪」

 

 

そう言うとシルヴィは帽子を取って俺に背を向けた。この仕草だけでも柑橘系の良い香りが広がる。

 

 

八幡「じゃあ、失礼して……」

 

シルヴィア「はーい。」

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

八幡はシルヴィアを肩に手を置き、そのまま自分の方へと引き寄せた。

 

 

シルヴィア(ほほぉ〜中々大胆だねぇ。他の人には後ろから抱いているように見えるだろ………抱いている!?い、今の私たちってそう見えてる!?)

 

 

八幡はシルヴィアの心情など読み取れるはずもなく、そのまま鼻をシルヴィアの後頭部へと近づけて髪の匂いを嗅いだ。

 

 

シルヴィア「っ!」

 

八幡「っ!?だ、大丈夫か?」

 

シルヴィア「う、うん大丈夫!続けて!」

 

 

シルヴィア(ごめんなさい嘘です!全然大丈夫じゃありません!心臓がバクバク言ってます!//////)

 

 

そんな事も知らずに八幡はシルヴィアの髪の匂いを嗅いでいる。

 

 

八幡(ヤベェ……メチャメチャ良い匂いだ。変態みたいだがこのままずっと嗅いでても飽きないくらいだ。)

 

シルヴィア(うぅ〜八幡くんまだぁ〜?/////)

 

 

ーーー2分後ーーー

 

 

シルヴィア(うううぅぅ〜〜流石に長過ぎ!!もうダメッ!!)

 

 

シルヴィア「は、八幡くん!もうおしまい!流石に長過ぎるよ!/////」

 

八幡「え?あ、あぁ悪い。そんなに長い時間嗅いでいたのか?」

 

シルヴィア「………2分/////」

 

八幡「………悪い。良い匂いすぎて夢中になってた。シャンプーもボディソープもこれにするわ。」

 

 

八幡自身も体験したからか、即決だった。

 

 

店員「いらっしゃい、お嬢さん。いつもありがとね。でも、店内でああいうのはちょっと控えてくれないかな?彼氏に自分が使っているのを勧めたいのは分かるけど、他のお客様もいるから、ね?」

 

シルヴィア「〜!!/////」

 

 

ここで思わぬ爆弾を落としていった店員。この言葉にシルヴィアは顔を再び真っ赤に染めた。

 

 

店員「彼氏くんもお願いね。」

 

八幡「いや、まだ彼氏じゃ……」

 

 

店員(ふぅん……まだ、ねぇ?)

 

 

シルヴィア「は、八幡くん、早くいこっ!」

 

八幡「お、おう。」

 

店員「ありがとうございましたー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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自覚する想い

 

 

シルヴィアside

 

 

シルヴィア「………」

 

 

何だろう……イマイチ調子が上がらない。肉体的疲労とか精神的疲労は何もない。けどなんか調子が良くない。なんかモヤモヤするっていうかドロドロするっていうか、表現もよく分からないけどそれ以上にどうしたらいいのか分からない。歌を歌いたい気分でもないし、作詞する気分でもない。飲食する程お腹も減ってないし、運動したいという欲求もなければ、眠りたいという欲求もない。したい事だって特にない。

 

 

シルヴィア「何だろうなぁ……この胸がモヤモヤする感じは。どうすれば治るんだろう?」

 

 

別に嫌というわけじゃないけど、少し落ち着かない。ずっとこのままでは私も流石に嫌だから誰かに相談してみようかな?こういう時はカウンセラーがいいかな?

 

 

ちょっとだけカウンセリングしてもらおうかな。

 

 

ーーーカウンセリング室ーーー

 

 

シルヴィア「失礼します。浅葱先生はいますか?」

 

浅葱「あら、シルヴィアさんじゃない。貴女がこんな所に来るなんて意外だわ。どうかしたの?」

 

 

クインヴェール女学園所属のメンタルカウンセリング教師をしている白羽浅葱(しらはあさぎ)先生。見た目は少しギャルっぽい感じの人だけど、内面はとても良い先生。金髪の長い髪を後頭部で縛っていて、耳にはターコイズブルーのピアスをしている。スタイルも良いからかなりの男性から言い寄られているという噂もある。まぁ、単なる噂だから私は信じてないけどね。

 

 

シルヴィア「はい。実は………」

 

 

私は自分でも正体不明の胸のモヤモヤについて説明をした。自分でもどう表現すればいいか分からないから、伝わってるかどうか不安だけど、出来るだけ分かりやすいようには伝えられたと思う。

 

 

シルヴィア「……ていうわけなんです。」

 

浅葱「成る程ね……これだけだとまだ『コレだっ!』っていう確証のもてる材料が無いかな……じゃあ私がいくつか質問するから、シルヴィアさんはそれに答えて。」

 

シルヴィア「はい、分かりました。」

 

 

それから浅葱先生の質問が続いたけど、特に難しいという内容はなかった。まだ途中なんだけど、何か引っかかったような感じは私も先生も感じてはいなかったみたい。

 

 

浅葱「……はい、じゃあ次の質問に行くわよ。貴女は今、恋をしていますか?」

 

 

………してないよね?だって好きな人いないもん。

 

え?何?私何か変な事言った?だって本当の事を言ってるんだからいいでしょ?

 

 

シルヴィア「NO」

 

浅葱「NOと答えた人の質問ルート。もし貴女が気になっている人が自分ではない異性と一緒に居たら気分は良い?悪い?」

 

 

私の気になっている人………誰だろう?八幡くんと最近話す機会が増えたから八幡くんで少し想像してみようかな。

 

 

ーーー妄想中〜〜〜妄想終了ーーー

 

 

………うん、なんか嫌。ううん、凄く嫌だ。八幡くんが他の異性と一緒にいるのはすごく嫌。

 

 

シルヴィア「悪い。」

 

浅葱「(来たわ!此処が攻め所ね!)その隣が自分だったら気分は良い?悪い?」

 

 

そりゃさっきの想像で自分のもやってみたからすぐに答えられるよ。

 

 

シルヴィア「良い。」

 

浅葱「貴女はその異性のことをもっと知りたい?」

 

シルヴィア「イエス。」

 

浅葱「貴女はその異性に自分のことをもっとよく見て欲しいと思っている?」

 

シルヴィア「イエス。」

 

浅葱「最後の質問よ、貴女がもし、その異性と付き合っていたら気分は良い?悪い?」

 

 

八幡くんと?付き合えたら………うん、悪いはずがない。いい気分にしかなれないと思う。

 

 

シルヴィア「良い。」

 

浅葱「……はい、終了。質問の結果だけど……」

 

シルヴィア「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅葱「シルヴィアさん、貴女ちゃんと恋をしてるじゃない。でも無自覚だったみたいね。」

 

 

………え?私が、恋?

 

 

シルヴィア「私が恋をしているんですか?」

 

浅葱「えぇ。誰を想像したかは分からないけど、他の異性といたら気分が悪い、自分だったら気分が良い、もっと相手のことを知りたいし自分をもっとよく見て欲しい、これだけでも充分だけど、最後のが決め手ね。付き合っていたら気分が良い。少しずるいことを言うけど、この気分が良いというのは、幸せな気持ちになるっていう置き換えでもあるの。」

 

シルヴィア「………」

 

浅葱「つまり貴女は立派に恋する乙女って事よ。まぁ、だからといってあなたの胸のモヤモヤが無くなるかどうかは分からないけどね。

 

 

私が、八幡君に恋………何だろう?この胸にスーッと浸透していくような、しかも自分でもそれを抵抗しようなんて思わないくらい気持ち良く心の中に染み渡っていく。鼓動が打つ度にその気持ちは強くなっていく。更に、更に強く。そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンッ!!

 

 

あぁ……これだ、これだったんだ。私の胸のモヤモヤは。私は八幡くんが好き。大好き。この気持ちが分からなかったからモヤモヤしていたんだ。今なら分かる。だって、モヤモヤが消えて凄く良い気分なんだもん。

 

 

………伝えたい。今すぐにでもこの気持ちを伝えたい。八幡くんに大好きって伝えたい!

 

 

浅葱「……その様子だと自分の中でも納得出来たみたいね。」

 

シルヴィア「はい。モヤモヤが消えて今はすごく気分が良いんです!そして今思うんです。この想いをその人に伝えたい……大好きって言いたいって。」

 

浅葱「ふふ、青春ね。カウンセリングが上手くいって良かったわ。これで貴女も大丈夫ね。また何か困ったら来て。待ってるから。だけど、彼氏自慢に来るのはやめてね。」

 

シルヴィア「先生にだって、きっといい彼氏が出来ます!だって先生凄く良い人ですから!」

 

 

こうして私は、比企谷八幡という1人の男の子へ向ける思いを恋心だということを知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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シルヴィアのデート&告白大作戦! ①

 

シルヴィアside

 

 

シルヴィア「♪〜♪〜」

 

 

皆さんこんにちは!シルヴィア・リューネハイムです!3日前に浅葱先生の診断で私は八幡くんに恋をしていることが分かってからは、八幡くんにどうアタックしようか考える日々が続きました。そして昨日、ようやく思いついて今その準備をしているところです。その準備は何かというと………お弁当です!

 

世間では、男の子のハートを掴むにはまず胃袋からって言うから、私もその定石に乗っ取ってお弁当を作っています。勿論この事は八幡君には内緒です。昨日の夜に八幡くんに連絡してデートできないかって思い切って誘ってみたら、八幡くんもOKしてくれたから、当日(今日)の朝に張り切って作っている最中なんだ!

 

 

シルヴィア「ふふふっ♪八幡君美味しいって言ってくれるかな?言ってくれたら良いなぁ〜♪」

 

 

お弁当の中身だけど、私は和食を作ったことないから多くのおかずは作れないけど、サンドイッチを主軸にした洋風のお弁当なら出来るからそれを作ってるんだ。サンドイッチの中身は卵にレタスとトマト、ハムエッグなんかも作ったんだ。他にも唐揚げやポテトサラダ、この前頑張って覚えた卵焼き、あったかいスープも作ってあります!デザートにはプリンを作ってみました!

 

少し多めに作ってあるから足りないことはないと思う。でも、今日のデート楽しみだなぁ……でもそれ以上に緊張もする。今日の夕方に八幡くんに告白をしようと思ってます!これも世間では言われてるけど、女は度胸!当たって砕けろ!みたいな感じでね。流石に砕けたくはないけど、それくらいの覚悟でいかなきゃ成功なんてしないもんね。

 

 

シルヴィア「よし!準備万端!時間まで1時間くらいあるけど、どうしようかなぁ?もう行っちゃおうか?それともちょっとゆっくりしようか?」

 

 

あぁ〜落ち着かない!でも早く八幡くんに会いたいでもでも会ったら会ったで緊張するし……うぅ〜///

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

「マジかよ、本物だ………」

 

「え?何で何で!?」

 

「本物のシルヴィア・リューネハイム?」

 

「写真撮ってもらおうよ!」

 

「やめとけって!なんか待ち合わせしてるっぽいだろ!」

 

 

………やっぱり街の皆の視線が凄い。これだけの人が私を見てるって事なんだよね。でも今日はそんな目線は気にせずに、八幡くんと思いっきりデートを楽しまなくちゃ!

 

 

八幡「………お前、その姿で待ってたのか?」

 

 

っ!あぁ、この声、生で聴くのは1ヶ月ぶりかなぁ?大好きな人の声を直接聞けるのはやっぱり格別だなぁ。

 

 

シルヴィア「うん。今日は君とこの姿でお出かけしたかったから。だめだったかな?」

 

八幡「いや、俺は別に構わないんだが……シルヴィはいいのか?1日中人目に晒されることになるぞ?」

 

シルヴィア「もう、それをいうなら八幡くんもでしょ?世界の歌姫の隣に立って歩くんだから、ね?」

 

八幡「……確かにそうかもな。俺が1番痛い目を見るかもしれないな。」

 

 

こんな軽口を叩けるくらいにまで仲良くはなれてる。後は八幡くんに嫌われない程度に近づけることが出来れば、距離はグンと縮まるはず!

 

 

シルヴィア「じゃあ行こっか♪」(テ ギュッ!)

 

八幡「お、おう……」

 

 

八幡(やけに機嫌が良いな……俺と会う前に何かいいことでもあったのか?)

 

 

ーーーカラオケーーー

 

 

八幡「カラオケ?なんでこんな所を?」

 

シルヴィア「よく考えたらさ、私たちってお互いの歌声を披露したことなかったじゃない?だから改めて歌を披露するのも悪くないかなって思ったんだ。」

 

八幡「……確かにそうだな。じゃあ披露がてら勝負とでも行くか。」

 

シルヴィア「望むところだよ!」

 

 

そして私たちは店内に入って受付に行ったんだけど、その受け付けの人が固まったままになっちゃったんだ。どうしてだろう?

 

 

ーーーカラオケルームーーー

 

 

シルヴィア「変な人だったね、私達を見た途端に固まっちゃってさ。」

 

八幡「そりゃそうだろ。だって目の前にいるのは世界の歌姫なんだぞ?そりゃ固まるわ。」

 

シルヴィア「あっ、変装してないこと忘れてた!」

 

八幡「お前ってたまに抜けてるよな。」

 

シルヴィア「むぅ〜!私そんなに抜けてないもん!いつもはちゃんとしてるもん!」

 

八幡「なら、今は抜けてるんだな?まぁそれはそれで嬉しいけどな。」

 

シルヴィア「どういう事?からかい甲斐があるから?」

 

八幡「いんや。それくらい俺……なのかは分からんが、心を開けてるってことだからな。普通だったら他人が側にいたら気なんて抜かないだろ。」

 

 

………えへへ♪八幡くんどうもありがとう♪

 

 

シルヴィア「そうだね!私って八幡くんにはすごく心を開けているのかも♪だからこんな風に楽しくお話ができるんだと思う!」

 

八幡「そういう風に思ってくれているなら俺も嬉しい。さて、じゃあ先行はどっちにする?」

 

シルヴィア「じゃあハンデとして私から歌ってあげるよ!プロの腕を見せてあげるんだから!」

 

八幡「分かった。この前の歌では負けちまったからな、今回は勝たせてもらう。」

 

 

えへへ……やっぱり楽しいなぁ、八幡くんと居るのは。これがそうなんだよね?幸せな気分っていうのは、だよね?浅葱先生。

 

 

八幡「じゃあ何歌う?」

 

シルヴィア「うーん……それじゃあさ!」

 

 

この時間がずっと続いたら良いのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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シルヴィアのデート&告白大作戦! ②

 

 

八幡side

 

 

八幡「………」

 

シルヴィア「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デデーン!!

 

95.447点

 

 

シルヴィア「いやったぁ〜!!」

 

八幡「ま、負けた……」

 

 

ほんの……ほんの0.004点差で負けた………

 

 

シルヴィア「いやぁ〜ギリギリだったよぉ〜!よしっ!これで私の勝ち越しだねっ!」

 

八幡「くっ……5戦1勝2敗2分か。今度は絶対勝ってやる。」

 

シルヴィア「ふふ〜ん、次も勝つからね!」

 

 

俺たちはカラオケに入ってから2人だけの対戦をしていた。ルールは簡単だ。どちらがより高い点数を取れるかで勝負していた。特に罰ゲームとかも設定していなかったから、楽しくカラオケとゲームをすることができた。

 

にしても………

 

 

シルヴィア「まさか私と対等に戦える人がいるとは……世界も広いねぇ〜。」

 

 

………何言ってるのか分からんが、嬉しそうにしているところ、すげぇ可愛い。

 

 

シルヴィア「………八幡くん?」

 

八幡「ん?何だ?」

 

シルヴィア「えっと……何だ、は私のセリフでして……なんで私の頭を撫でてるの?」

 

八幡「ん?……あっ。」

 

 

俺無意識に撫でてたのかよ!?

 

 

八幡「あ、いや……悪かった、無意識だった。すぐにどけ「ううん!このままでいいよ!むしろ撫で続けていいよ!」お、おう……分かった。」

 

 

シルヴィア(思いがけないご褒美を貰っちゃったよ♪八幡くんのナデナデ気持ち良いなぁ〜……寝ちゃわないように注意しないといけないレベルだよ〜。)

 

 

その後は歌を歌うこともなくのんびりと過ごしていた。電話が来て部屋から出て代金を払ってからカラオケを後にした。

 

 

ーーー散歩通路ーーー

 

 

シルヴィア「いやぁ〜歌ったねぇ!そのせいもあってかお腹空いちゃったね!」

 

八幡「そうだな。この辺に何か……「あ、あのさ八幡くん!」……ん?どうした?」

 

シルヴィア「え、えぇ〜っと、私ね、お弁当作って来たんだ!良かったら食べてくれないかな?」

 

 

………え?今なんて?

 

 

八幡「……シルヴィ、俺の聞き間違いでなければ、お前今お弁当を作って来たって言わなかったか?」

 

シルヴィア「う、うん、そうだよ。だから、八幡くんに食べ待て欲しいなぁって思って……///」

 

 

……マジ?俺今まで1度も異性から弁当を作ってもらったことねぇよ?しかも手作り弁当なんて食べるの何年振りだ?多分俺が小学生6年の運動会ぐらいだぞ?そっから手作りなんて作ってもらったことねぇぞ?いや、まぁ中学からは六花暮らしだから当たり前だけど。

 

 

シルヴィア「は、八幡くん!返事してくれないと困るよ!食べてくれるの?それとも嫌?」

 

八幡「食べるに決まってる!全部残さず食べる!」

 

シルヴィア「ホ、ホント?」

 

八幡「おう、嘘は言わない!あっ、でもシルヴィも一緒に食べてくれよ?でなきゃ気まずいから。」

 

 

俺1人でシルヴィの弁当を食べるなんて……無理だ、シルヴィが腹ペコで犬みたいな目をしておねだりしてくるかもしんないし。

 

 

シルヴィア「大丈夫だよ、私も一緒に食べるから。じゃあちょうどベンチがあるからあそこで食べようよ。」

 

八幡「あぁ。」

 

 

俺とシルヴィは近くにあるベンチまで移動して、シルヴィが持っているランチボックスの蓋を開けた。そこには、すげぇ美味そうなサンドイッチや唐揚げなどが入っていた。

 

 

八幡「おぉ〜!」

 

シルヴィア「お口に合えばいいんどけど……とりあえず食べてみて。」

 

八幡「あぁ、じゃあ早速……」

 

 

これはハムエッグか……こんなのまで作れるなんてな。シルヴィってなんでもできるんじゃないか?

 

 

八幡「じゃあいただきます。」

 

シルヴィア「召し上がれ。」

 

八幡「あむっ……」(モグモグ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

う、美味い!!

 

 

ハムは表面を薄く焼いていて、卵もスクランブル状にして胡椒をまぶしているからちょうどいい味になってる!しかも中身にレタスまで隠していたのか……これには驚いた。さらにパンも食パンではなく、サンドイッチ用のパンを使っているから、より風味も増している!

 

 

シルヴィア「え、えぇ〜と……八幡くん?ど、どうかな?美味しい?」

 

八幡「………シルヴィ。」

 

シルヴィア「な、何?」

 

八幡「………毎日味噌汁を作ってくれ。」

 

シルヴィア「…………え!!?ま、毎日!?/////」

 

 

シルヴィア(え!!?な、なに今の!?ま、毎日って言ったよね!?もしかして……こ、告白!?で、でも八幡くんの無意識かもしれないからね!で、でも本心だってら嬉しいし!うぅ〜/////)

 

 

八幡「……あっ、いや、すまん!忘れてくれ。すげぇ美味かったもんだから、つい口走っちまった。」

 

シルヴィア「な、何だ……驚かさないでよ(私は本気でもいいんだけどさ。)でも良かった、お口にあったみたいで。」

 

八幡「あぁ、すげぇ美味い。これなら何個食ってもいけそうな気がする。」

 

シルヴィア「沢山あるからどうぞ♪水筒の中に温かいスープも入れてあるから、飲みたくなったら言って、注ぐから。」

 

八幡「あぁ、ありがとな。」

 

 

なんて気配りの出来る奴なんだ……シルヴィと結婚できる男は幸せもんだな。家庭に入ったら絶対幸せだろうに。

 

 

うわ、この唐揚げもめっちゃ美味い。

 

 

その後八幡は、お弁当を食べる前に言った通り、全て残さず食べて完食した。それを見ていたシルヴィは、八幡のすごく美味しそうに食べる姿を見て、とてつもなく嬉しそうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





もう付き合っちまえー!


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シルヴィアのデート&告白大作戦! ③

 

 

シルヴィアside

 

 

八幡「ふぅ〜ご馳走様でした。」

 

シルヴィア「はい、お粗末様でした♪」

 

 

凄いや八幡くん!本当に全部食べちゃったよ。それにあんなにも美味しそうに食べてくれたから、私もすごく嬉しい♪

 

 

八幡「いやぁマジで美味かった。なんでこんなに美味いの作れるんだ?教えて欲しいくらいだ。」

 

シルヴィア「ふふっ、内緒だよ〜。とっておきを使ってるからね。どの具材よりも美味しく仕上げられる私特製の調味料を入れてるからね。」

 

八幡「そんなのあるのか………」

 

 

そんなのないよ〜。だってその調味料は無色透明で触れられないものなんだからね。感じ取るしか方法はないのだ!

 

 

八幡「けど本当に美味かった。マジで毎日作って欲しいくらいだ。」

 

シルヴィア「そんなに美味しかった?そこまで言われるとなんか胡散臭くなってくるよ。」

 

八幡「いやいや本当だって。俺の中では三つ星なんだからよ。いや、もう最高最強最上級だ。」

 

シルヴィア「す、すごい評価だ……」

 

 

私も自分で味見はしたけど、そこまで言う程美味しいかな?普段よりも気合い入れて作ったから少しは良い出来だとは思ってるけど……

 

 

八幡「……こんな風にのんびりするの、なんか久しぶりな気がするな。いつもは鍛錬とかで界龍に篭りっきりだから外に出るなんて料理の材料買いに行くときくらいだからな。」

 

シルヴィア「八幡くんも料理するの?」

 

八幡「人並み程度だけどな。シルヴィ程美味いのは作れない。もっと練習しないといけないな。」

 

シルヴィア「私でよければ教えてあげるよ?」

 

八幡「本当か?そりゃ助かる。けど料理する場所がなぁ……シルヴィは女子校だから無理だし、出来るとしたら俺の部屋くらいしかないな……」

 

 

っ!!八幡くんのお部屋で料理を教える!これは仲良くなれるチャンスだね!!

 

 

シルヴィア「私は八幡くんの部屋でもいいよ。作るテーマさえ決めてくれれば、アシストできるから。」

 

八幡「いいのか?俺としては嬉しいが……」

 

シルヴィア「うん、勿論。」

 

八幡「……じゃあいつか、俺のために料理教室を頼むな。勿論、費用は払う。」

 

 

そんなの要らないよ!私は八幡くんと一緒に居られるだけでいいんだからね♪

 

 

ーーー夕方ーーー

 

 

その後は色んな所を見て回ったり、遊んだりした。洋服屋さんに行ったり、アクセサリーを見たり、ゲームセンターに行ってダンスゲームをしたり、UFOキャッチャーをしたりした。プリクラもあったんだけど、八幡くんは写真を撮る、取られるのがあまり好きじゃないみたいだから諦めました。

 

 

シルヴィア「楽しかったね!」

 

八幡「あぁ、俺も久々に充実した1日を過ごせた。基本休みの日も鍛錬だったからな、たまにはこういう日を入れてみるか。」

 

シルヴィア「そうしなよ。ずっと鍛錬だといつか身体が壊れちゃうよ?リフレッシュも大事だよ。」

 

 

溜めすぎは身体にも良くないんだからね!

 

 

八幡「じゃあシルヴィ、今日はありがとな。また暇な日があったらいつでも連絡してくれ。じゃあ「八幡くん、ちょっといいかな?」……どうした?」

 

シルヴィア「ちょっと話したい事があって……もうちょっとだけ時間をもらってもいいかな?」

 

八幡「あぁ、別に構わない。」

 

シルヴィア「ありがとう。ちょっとだけ場所を変えよっか。」

 

 

ーーーとあるビルの屋上ーーー

 

 

八幡「……人目につくとマズイのか?」

 

シルヴィア「うん、少し困る事だね。」

 

八幡「そうか……で、何だ?」

 

シルヴィア「うん………いきなりだけど、私は君の事が、比企谷八幡くんの事が好きです。付き合ってください!」

 

八幡「っ!!?」

 

 

言った……どっちに転んだとしても構わない。今の私の全てを伝える。

 

 

八幡「……本当にいきなりだな。」

 

シルヴィア「うん、ゴメンね。八幡くんとはそんなに会った回数とか、話した事は多くはないんだけど、君との時間は私にとって凄く暖かい時間だった。胸の締め付けをスッと解いてくれるような暖かさだった。一目惚れ……なんだと思う。そんな君の暖かいところに……ううん、貴方の全てに惚れました。私と……付き合ってください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が八幡くんに告白をしてから2ヶ月後、私は次のツアーの発表がある為、テレビ出演することになった。今度のツアーは米国ツアーになった。私にとっても初めての場所だから、少し気合が入ってる。

 

 

「今度の米国ツアーですが、意気込みとかはありますか?」

 

シルヴィア「はい。初めての地でのツアーなので、頑張りたいと思っています。後、英語の間違いとかも気をつけないといけないので、その辺もしっかりしていきたいと思ってます。」

 

 

「今までとは違う、かなりの長旅でのツアーになりますが、そこの所はどうでしょう?」

 

シルヴィア「六花を長く離れるのは寂しいですが、帰った時に良い気分でお疲れ様でした〜!って言えるようなツアーにしていきたいです。」

 

「最後の質問ですが今回の新曲、今までのシルヴィアさんとはかなり違った方向性の歌になっていると思うのですが、その辺りはどの方向性に向けて作った曲なのでしょうか?」

 

 

ふふっ、そんなの決まってるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「私が1番愛している彼氏のために作った曲です。一直線の愛を伝えるために作った曲です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、シルヴィア編終了でございます!!
いやぁ〜最後にピッタリなキャラクターです!!

この後は、僕が前から書こうと思っていたのを書こうと思っています。前作のIFみたいなものです。



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閑話 ③
どの時代にもいる輩 ②


 

八幡side

 

 

さて、今日も張り切って仕事するか。

 

 

プリシラ「比企谷さん、今日は1人でも大丈夫なんですか?日曜日なのに厨房がお1人だと辛いのでは?」

 

八幡「大丈夫だ。昼頃にオーフェリアが来てくれるから、それまでになんとか耐えればいいだけだ。困った時には索冥もいるからなんとかなる。」

 

索冥「八幡様の頼りに応えられるように尽力を尽くします。」

 

冬香「私も困った時には頼って下さい。できる限りのサポートを致します。」

 

八幡「あぁ、頼む。」

 

 

ガチャッ

 

 

ん?誰だ?まだ開店時間でもないのに。

 

 

ガルボ「景気はどうかね?比企谷八幡。」

 

 

………こいつまたか。

 

 

ガルボ「さて、今一度先日言ったこの店の所有権、私に売る気になったのだろう?」

 

八幡「なってませんよ。なぜ売る前提に話を進めてるんですか。それと、店はまだ開店前なので勝手に入ってこないでくれませんか?」

 

ガルボ「細かい事をネチネチと言っていては経営なんて出来ないですぞ?」

 

 

こいつマジでめんどくせぇな……何でこんなにもウチに突っ掛かってくるんだよ。

 

 

八幡「聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 

ガルボ「三流料理人ごときに答える義理はないが、特別に答えてやろうではないか。何だね?」

 

八幡「何で此処を執拗に狙うんです?」

 

ガルボ「何を聞くかと思えば……そんな事とはね。君の理解力の無さに苦しむよ。そんな理由、金になるからに決まっているじゃないか。それ以外何があるというのだね?」

 

 

………決まりだ。絶対この店はやらねぇ。

 

 

八幡「そうですか、じゃあ答えはもっと固まりましたね。あんたに売るものなんてここには1つもない。お引き取りを。」

 

ガルボ「君という男は何故そうもバカなんだろうねぇ?私に所有権を渡せばいいだけの話なのに……」

 

プリシラ「お言葉ですが、私も貴方のような人にこのお店は渡したくありません!」

 

冬香「プリシラさんに同意です。私もこのお店は絶対に渡しません。このお店は八幡様とシルヴィア様のものなのですから。」

 

索冥「八幡様の望まぬ事は私も望みません。」

 

 

……良いスタッフを持ったものだ。

 

 

ガルボ「君たちもかね?店主ならお引取りを願うが、君たちは容姿が良い。ウチに来ると言うのなら特別に雇おうと思っている。どうかね?私の店に……」

 

プリシラ/冬香/索冥「行きません!(お断りします。)(断固拒否します。)」

 

 

即答……しかも言い終わる前にかよ。よほど嫌いなんだろうな。俺も嫌い。

 

 

ガルボ「どうしても売る気がないのなら、一層の事料理対決でもどうかね?」

 

八幡「料理対決?」

 

ガルボ「ルールは互いに一品出せばいいだけのことだ。審査員は3人。審査員はどちらの品が美味であり優れていたかを選んでもらう。勝った方の願いを聞き入れる。」

 

 

ほう……料理対決、か。面白そうだな。

 

 

八幡「それはいいですけど、あなたの願いって何ですか?」

 

ガルボ「勿論、この店の所有権と店主を除くスタッフの引き取りだ。当然だろう?不出来な者は捨て、優秀な者はスカウトする。定石だろう?」

 

八幡「ならウチもそれなりの願いを出させてもらいますからね?俺の願いは……そうですね、貴方の店に不満を持っている人がいればその人を解雇させる事ですね。後は……」

 

索冥「八幡様。私からお1つ提案なのですが、支店の1つを私たちの所有権にするというのは如何でしょう?あちらは私たちの店をもらうと言っているのです。ならば私たちも1つの店をかけなければおかしいというものです。」

 

八幡「……一理あるな。よし、それで行こう。聞いてくれましたね?」

 

ガルボ「良かろう。何れにせよ勝利は私に決まっているがね。では料理対決の日時は1週間後としよう。それまでにその頭で何を作るかを決めておくがいい!では、失礼するよ。」

 

 

そう言ってあの男は去って行った。やっと出てってくれたか。さて……

 

 

八幡「やっと開店できるな。よし、準備をしよう。」

 

プリシラ「全く動じてませんね。まぁ、それが比企谷さんというお方でもありますけど。」

 

冬香「それでこそ比企谷八幡というお方でしょう。あの程度の人では八幡様の敵ではありません。あの方も料理人なのでしょうが、何年も厨房に立っていないのでしょう。八幡様の前であんな事を口にするなんて……」

 

プリシラ「どういう事です?」

 

冬香「料理対決の日になれば分かります。」

 

索冥「八幡様、あのお方が通った道は全て清掃致しました。いつでも開店できます。」

 

八幡「よし、じゃあ開店するぞ。今日はちょうど良い時間だからすぐに始められる!お客様を待たせるなよ!」

 

3人「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「それで料理勝負を受けたんだね?」

 

八幡「まぁな。だから来週は店を臨時休業させる事になる。来てくれる人には申し訳ないけどな。」

 

シルヴィア「まぁ仕方ないよね。頑張ってね、八幡。貴方の腕に私たちも掛かってるんだから。」

 

八幡「問題ない。俺があんな奴に負けるかよ。なんなら奴らの得意分野で勝ってやるよ。」

 

 

シルヴィア(八幡くん、相手の心を折る気満々だよ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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どの時代にもいる輩 ③


この話で輩シリーズは終わりです。


 

 

八幡side

 

 

……よし、包丁よし、エプロンよし、後は……無いよな。さて、じゃあ会場に向かいますか。

 

 

シルヴィア『八幡、準備出来た?お迎え来てるよ〜。』

 

八幡「あぁ、丁度出来たから今行く。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「って、お前らも行くのか?」

 

オーフェリア「当然よ八幡。私たちのシェフをバカにしたのだから、あのデブのアホ顔を見ないと気が済まないわ。」

 

冬香「八幡様の華麗な技であの贅肉を溜めに溜めたプライドだけのジジ様に一泡でも二泡でも吹かせてください。」

 

パーシヴァル「私はその場にいなかったので分かりませんが、聞くからに不愉快な方なのは分かりました。比企谷様、下賎なプライド豚の調理をお願いします。」

 

柚陽「私もどんな方なのか分かりませんが、比企谷先輩のベストを尽くして、ブタみたいな人を倒してください!」

 

プリシラ「私たちのお店をバカにしたあの………名前忘れましたけど、その人を後悔させてやってください!」

 

 

うおぉ………こいつら容赦ねぇな。まさかここまで言うとはな。まぁ、それも当然っちゃ当然か。

 

 

シルヴィア「八幡、頑張ってね。今言うのもおかしいけどさ。」

 

八幡「そうだな、お前らも会場行くからここにいるんだもんな。着いてから言っても大丈夫だから。」

 

 

俺も大概酷い奴みたいだ。

 

 

ーーー会場ーーー

 

 

会場っていっても、相手の店なんだよな。割と豪華な外装だな。でも商業エリアにあるから客足は鈍そうだな。店構える場所間違えたろ。絶対六花が1番売上低いだろ。

 

 

ガルボ「ふんっ!逃げずに来たみたいだな、比企谷八幡!紹介しよう!我が店が誇る屈指の料理人だ!君ごときでは到底及ばない位置にいる!」

 

 

いきなりうるせぇな……ていうかあの料理人、あぁ……そういう事か。貴方も嫌なんでしょうね。

 

 

「……どうも、今日はよろしくお願いします。」

 

八幡「こちらこそ………苦労されていらっしゃるんですね。」

 

「分かってくださいますか?」

 

 

分かるよ……ああいう奴って無茶振り何回もしてそうだから。

 

 

審査員「ではこれより、○○店のオーナー、ガルボ・モレンティーロ氏と【喫茶 ランベリ】のオーナー、比企谷八幡氏の料理対決を行います。ジャンルは自由です。私たちがより美味な方に評価しますのでそのつもりで。」

 

 

ガルボ「お嬢様方はこちらの椅子にお座り下さい。」

 

シルヴィア「そちらの椅子ってそちら側の椅子ですよね?」

 

ガルボ「はい、そうですが?」

 

シルヴィア「でしたらお断りさせていただきます。私たちは店主の勝利を信じておりますので。」

 

ガルボ「立ったままではお辛いでしょうに。遠慮なさらず「いいって言ってるはずよ。貴方は人の言った言葉も理解できないのかしら?」……ふん、貴様のような無礼な奴には言っていない!」

 

 

オーフェリア(………腹立たしいわ。)

 

 

審査員「それでは調理……開始!!」

 

 

そして俺と相手の料理人は一斉に調理を開始した。

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

ガルボ「ご覧下さい、彼の手際の良さ!あれぞまさしく本物の料理人と呼べるでしょう!」

 

 

シルヴィア(確かに手際は良い。センスも凄く良いものを持ってる。長年の技術だね。でも……それなら八幡だって負けてない。)

 

 

ガルボ「それに比べて、三流料理人の彼の調理は見るに堪えないもの「静かにしてもらえませんか?」……はい?」

 

シルヴィア「気が散ります。実況する必要はありませんので、静かにして下さい。調理している方たちの迷惑です。」

 

ガルボ「ふむ……貴女の言う通りですな。これは失礼。」

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

審査員「そこまで!では○○店のシェフから皿を出してください。」

 

「はい、ビーフシチューです。」

 

 

………やっぱりただのビーフシチューじゃないな。ただのビーフシチューじゃ、こんなに匂いが掻き立つわけがない。

 

 

審査員2「ほほう……このシチュー、ガルニチュール(付け合わせ)に燻製ベーコンを使っているね。」

 

「はい、シチューのスパイスにはクローブと黒胡椒を混ぜています。マティニョンも加えて、メインの牛肉のテール肉にはセージ、ナツメグ、ローリエをまぶして、隠し味に黒糖を混ぜています。そしてガルニチュールにはマッシュルームと小玉ねぎのグラッセ、そして燻製ベーコンには熟成塩漬けに5日間、丸一日風に当たらせて乾燥させた後に5時間の間燻し続けました。」

 

審査員3「ほほぉ〜それだけの手間をかけたのならば、この香りも納得だ。では、一口………」

 

 

審査員がスプーンで掬い、一口食べた。

 

 

審査員1「おぉ……シチューには白味噌も使っている。それに、テール肉のとろみともよく混ざり合っている。」

 

審査員3「それだけじゃない。燻製ベーコンによって味も引き立っている。流石の腕といったところだろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

……俺も食ってみたいな。

 

 

「あっ、まだ残っていますので、よろしければ比企谷さんも後でどうぞ。」

 

 

………この人、めっちゃ良い人だ。

 

 

審査員1「では次に【喫茶 ランベリ】の比企谷八幡、お願いします。」

 

 

八幡「どうぞ。鹿肉のローストです。」

 

 

審査員2「な、なんだこれは!?」

 

 

そこにあったのは鹿肉料理なのだが、鹿肉2切れに別のソースが2種類それぞれにかかっている料理だった。

 

 

八幡「右側がソースポワヴラードです。胡椒と鹿のガラなどを元に作ったソースです。左側がソースポラヴラード・ベリーです。材料はブルーベリー、赤スグリ、ブラックベリー、そしてカシスリキュール、赤ワイン、ブルーベリービネガー、ラズベリージャムを加えて作っています。ご存知だと思いますが、ポワヴラードはフランス語でコショウという意味のポワヴルから来ています。なのでピリッとくる舌触りが淡白な鹿肉に重層感を与えてくれます。どうぞ、お召し上がりください。」

 

審査員1「では……っ!ナイフの重みだけで肉が切れた!?なんて柔らかさだ……!」

 

 

そして俺の料理を一口食べた。

 

 

審査員一同「………」

 

ガルボ「な、何だ?何故固まっている?」

 

審査員3「香ばしくも、さっぱりとした赤身肉の肉汁が溢れてくる!」

 

審査員2「これが先ほどの火入れの効果というわけか!」

 

審査員1「だが、それ以上に恐ろしいのが、このソースだ!ポラヴラードは兎も角、ベリーは何種類もの果実とジャム、ヴィネガーを使っているのに、全く味が崩れていない!1つの工程を無駄にしただけでも、その味が全て台無しになるというのに……なんという神業だ。」

 

ガルボ「バ、バカな……!!」

 

 

審査員1「では、これにて審査を終了する!これより結果発表に移ります!より美味だと思った方の皿にコインを置いてください。」

 

 

チャリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

審査員1「では、料理人及び、関係者の方々は目をお開きください。」

 

 

そして八幡は目の前の皿に注目した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その皿には3枚のコインが置かれていた。

 

 

審査員1「勝者は比企谷八幡!!よってこの料理対決の勝者は、比企谷八幡!!」

 

ガルボ「な、なにぃ〜!!?」

 

 

八幡は無事に料理対決を勝利で収めた。

 

 

ーーーーーー

 

八幡side

 

 

俺は皆から祝福を貰っていた。皆俺が勝つのが当たり前みたいな言い方だったが、内心ヒヤヒヤしてたんだぞ?

 

 

「比企谷さん。」

 

八幡「あぁ、○○シェフ。お疲れ様です、よろしければどうぞ。俺の料理です。」

 

「ありがとうございます。僕の料理もどうぞ食べてください。勿論、皆さんもよければ。」

 

ガルボ「何を言っているのだ貴様は!!無様に負けおって!!審査員から1つもコインをもらえてはいないではないか!!手加減していたのではないか!!?」

 

「いえ、僕の全力を尽くしました。ですが、それよりも遥か上に比企谷さんがいたのです。僕の腕では足元にも及びませんでした。」

 

ガルボ「何をのうのうと感想を述べているのだ!!この役立たずめ!!」

 

 

………この野郎。

 

 

八幡「おい、そこまで言うんだったら、今すぐ料理を出してみろ。」

 

ガルボ「何だ?勝ったからといって調子に「黙れ。勝負に巻き込んでおいて、なんだ役立たずってのは?あ?気楽なもんだな?」ヒ、ヒィッ!!」

 

八幡「だったらお前はこの○○シェフ以上の皿を出せるんだよな?そこまででかい口叩けんだったらよ、俺よりも良い皿を出してみろよ。今すぐ調理台に立って審査員全員の舌をお前の料理で唸らせてみろよ。そうしたら俺の負けを認めてやるよ。」

 

 

そして俺はメタボ男をつかんでいた手を離して、調理場へと押しやった。

 

 

八幡「そもそもテメェから仕掛けて来たんだ。お前が料理しないとな?」

 

ガルボ「い、いや、私は本場を離れて「そんな言い訳が効くのかよ?元は料理人だろ?だったら知ってるはずだぞ?一皿作るのにどれだけ神経を使うのかをな。自分で戦う気なんか最初からねぇのに、他人を巻き込んで勝負なんざ仕掛けるんじゃねぇよ。」………」

 

 

そして男は何も言わなくなってしまった。

 

 

八幡「じゃあ約束通り、この職場を辞めたい奴を解雇させるのと、この六花のお前の店の所有権、貰うからな。嫌だとは言わせねぇぞ?お前も承諾したんだからな。」

 

 

そして俺たちはこの店から去ろうとすると……さっきのシェフが俺に寄って来た。

 

 

「あの、ありがとうございました。全力で勝負して頂いて。」

 

八幡「いいんですよ。貴方は良い料理人だ、俺よりも。」

 

「あの六花の生きる伝説、比企谷八幡さんにそう言って頂けるなんて光栄です。」

 

ガルボ「い、生きる伝説?まて、何の事だ?」

 

「ご存知ないんですか?この人は学生時代にシーズン中の星武祭を全制覇した伝説の人、元界龍第七学院の4代目【万有天羅】とも名高い人物、比企谷八幡さんです。そして副店主の比企谷シルヴィアさん、旧名シルヴィア・リューネハイムさん。スタッフも同時代で星武祭で活躍した有名人ばかりなんですよ。本当に知らないのですか?」

 

 

そしてデブ男は開いた口を閉じることはなく、そのままアホヅラになったままだった。

 

こうして、俺たちの料理対決は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





なんか今日は指が動く日(頭もよく働く日)だったので、随分書いちゃいました!



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料理対決後


前作の料理は【食戟のソーマ】に出てくる美作昴が作ったビーフシチューと、司瑛士が作った2つの表情を見せる鹿のローストを丸パクリしたものです。自分、料理にはそこまで詳しくないので。



 

八幡side

 

 

さて、今日の営業を始める前に少しだけあの料理対決の後日談を話すとしよう。

 

 

あの後、あのオーナー、ガルボだったか?その男の店で働いていて、辞めたいという希望のある奴がいたらすぐに解雇するというメールを一斉送信した。当然だが有給消化等もあるから。その結果、7支店ある従業員90名に対し、退職希望者は30名もいた。およそ3割もの従業員が不満を持っていたという事になる。

 

あの時のシェフもその中に含まれていて、理由を聞いてみると、主な理由が『前オーナーと変わってから店での仕事が窮屈になった。』『新作を出せとか、上から態度の物言いが気に食わない。』が主な理由だった。当然の事ながらこの30名はその会社から退職した。しかもその殆どが前オーナー時代から働いていた古参のメンバーだった。残っているのは中堅メンバーや新人同然のスタッフだけだった。

 

これにガルボは俺に抗議をして来た。幾ら何でも古参メンバーを殆ど失うのはこちらの戦力が大幅に減るから、踏み留まってもらえないかと。いや、そんなの俺に言われても知らねぇし。お前だって承諾したろ、何勝手なこと言ってんだって思ったよ。ウチの従業員たちの事も掻っ攫おうとした奴が何言ってんだよ。

 

 

そして六花にある支店の1つを貰ったわけだが、実際もらったところでどうするかなんて決めてなかったからどうするか分からん。そしたらとある人が、その場所の所有権を譲って欲しいと言われて、数字の単位が億まで出されて交渉された。俺が持っててもしょうがねぇって思ったからその店の所有権はその人に渡した。どんな職業をしている人が分からないから人柄で見るしかなかったが、悪い人じゃなさそうだった。

 

 

そして元働いていた従業員達だが、まだ有給消化があるから会社に勤めている形だが、全員制服を返して自由にしている。店にも出ていないようだった。そんな彼らに俺は新しい職場を用意することにした。一応世界に7支店もの店で10〜20年近く働いていたんだ、即戦力になるに違いないと思った。

 

その職場は六花のホテル・エルナトのレストラン給仕とシェフだ。彼等ならきっとやっていけるだろうと思って推薦を促して、やってくれる人にはそこへ行ってもいいと言っておいた。料理関係はもういいという人には別の道があるだろうし、これ以上は何も言わないでおこうと思った。

 

ガルボの店の6店舗だが、主戦力となりうるシェフと給仕が居なくなった事により、作業スピードや連携もうまく取れず、お客様に出す品を大幅に遅れて出す結果となり、遅過ぎてもう我慢出来ないと言って店から出て行ってしまうという最悪なケースまで叩き出してしまった。

 

新人の育成やシェフの料理育成にも力を入れていればこんなことにはならなかった筈だ。おそらく主戦力の人には定休日にしか休みを入れていなかったのだろう。だからこんな結果になる。こうやって不満は募り、1人また1人と退職していって最後には何も残らなくなる。

 

ガルボもこれで学習しただろ。オーナーがする事は何も経営だけではない。従業員とのコミュニケーションは勿論、会社の利益に繋がることも試行錯誤していかなければ、いつかは落ちる。今はまだ従業員がいるからいい。だがそれが誰もいない状態になったら頼れるのは自分ただ1人だ。まぁ、1人で店を経営できるのならの話だがな。

 

その点ウチのコミュニケーションは高い方だと思ってる。だって元ガラードワースと元レヴォルフの奴が一緒に仕事できるんだからそうだろ。休憩時間には会話だってしてるしな、まぁ聞いてたらほぼ俺の話題なんだけどよ。それでもコミュニケーションは取れてるって捉えてもいいだろう。

 

 

ガルボという料理人がどういう男でどんな料理人だったのかは知らないが、ライバル関係がいない環境で料理を振るって来たのだろう。だからああいう窮地に陥った時に何もできないし、駆け引きもできない。従業員を駒として見ている内は成長はないだろうな。

 

もしもの話だが、奴がこの料理対決に勝ったとしても、この店の厨房は扱えないだろうな。だって普通の厨房じゃねぇし。まぁそこは改装するんだろうけどな。

 

 

でもこれで一安心だ。うちのスタッフも誰1人欠けてないし、不満を持ってる奴は……いるかどうかは分からんから今度聞いてみよう。全員が全員のフォローを出来るようにしているし、元々の能力が高いから大抵の事はなんとかなっている。

 

 

八幡「さて、開店準備はもう終わったか?」

 

シルヴィア「いつでも大丈夫だよ、八幡。」

 

オーフォリア「私も済んでいるわ。」

 

柚陽「私の方も済んでいます。いつでも大丈夫です!」

 

八幡「よし、じゃあ時間になるまでは此処で話でもしているとするか。」

 

 

うん、ちゃんと信頼関係も築けている。これもシルヴィのおかげだな。ホールリーダーがいるだけでかなり違う。会話が弾む。ガルボさん、これがウチとあんたの店の差だ。これを埋めなければ、あんたの会社はお先真っ暗だぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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波乱の新入生


2ヶ月ぶりの六花生活を投稿再開です!

では、どうぞ!


 

 

八幡side

 

 

さて、今日も鍛錬の時間か。今日はキツめにする日だったな。よし、奴らをしごき上げるか。

 

 

「宗師ー!!」

 

八幡「ん?どした?そんなに慌てて?」

 

「はぁ……はぁ……その、宗師に会わせろという者が界龍に侵入してきまして!」

 

八幡「そんな奴追い払えばいいだろ。」

 

「いえそれが、我々ではどうにもできない強さで……足止めしているものの、まっすぐこちらに向かっていて……」

 

 

………すげぇ度胸だなそいつ。俺だったら真似できねぇよ、しようとも思わねぇ。

 

 

「あっ、宗師!あいつです!あいつがその侵入者です!!まさかこの部屋にまで無断で入るとは!!」

 

 

……ん?あいつは確か………

 

 

「この無礼者!!ここを何処だと「やめろ。」っ!?そ、宗師!?」

 

???「こんちは〜。」

 

八幡「この部屋に勝手に入ってきた事に関してはこの際見逃してやる。で、何か用か?来月入学予定のサイくん?」

 

 

そう、この男は今年の4月からこの界龍に入学予定のサイ・マーフィンだ。名前からして米風だが、香港から来た奴だ。

 

 

サイ「一応自己紹介しますね。今年から界龍に入ります、高等部1年のサイ・マーフィンです。」

 

八幡「比企谷八幡だ。それで、何か用か?」

 

サイ「あんたを倒して、俺が界龍の頂点に立つ。今すぐ勝負しませんか?」

 

 

何を言うかと思えば……こいつは泰正(タイチン)よりもバカな奴だな。しかもこいつはアレだ、人の上には立てないタイプの奴だ。いや、俺が立てるタイプだって言ってるわけじゃないからね?

 

 

八幡「はぁ……やるわけねぇだろ。まだ入学すらしてない奴と何で決闘しなきゃいけないんだよ?せめて入学してからか、公式序列戦まで待て。」

 

サイ「へぇ……逃げるんすか?4代目っていうのは意外と逃げ腰なんですね!」

 

「この無礼者!!」

 

「宗師に向かってなんて口の利き方だ!!」

 

八幡「………お前ら落ち着け。」

 

 

八幡の静かな一声で辺りはすぐに静かになった。

 

 

八幡「……それで、言いたい事はそれだけか?それじゃあ俺を動かすには不合格だな。それと1つ聞く、頂点に立ってどうするんだ?」

 

サイ「俺が界龍の新しい頂点だということを知らしめて、六花最強だという事を、六学園全てに思い知らせてやるんですよ。」

 

八幡「………成る程、要は最強の力を見せつけて屈服させたい、って事か?」

 

サイ「先輩って頭良いですね。」

 

八幡「お前みたいな奴には何度か会ってるからな、思考回路が分かるんだよ。けど、俺から言わせてみれば、お前じゃ無理だ。ウチの序列内が精々って所だな。帰りな、此処はまだお前が来ていい場所じゃねぇんだよ。」

 

サイ「……つまんな、4代目ってのはこんなもんかよ。まぁいい、あんたの言う通り、入学式が終わってからにしてやるよ。」

 

 

そう言ってマーフィンは黄辰殿を出て行った。

 

 

八幡「はぁ………また面倒な奴が入学してくるようだな。今度は泰正にでもやらせるか?」

 

「にしてもあの無礼者、あろうも事か宗師を愚弄しました!!入学しましたら厳しく言い聞かせたほうがよろしいかと進言します!」

 

八幡「それで言うことを聞いてくれるのならわけないけどな。まぁあの性格だ、聞かないだろう。」

 

 

もしかしたら入学式で騒ぎ出すんじゃねぇの?

 

 

ーーーマイホームーーー

 

 

シルヴィア「へぇ〜そんな事があったんだ?」

 

八幡「あぁ。入学前から来るなんてな、余程の自信があるんだろうな。真っ向から勝負しようとするなんてな……そこは評価するけど、性格がなぁ。」

 

シルヴィア「あはは……台無しだね。」

 

八幡「クインヴェールにはそんな自信家な奴らとか入ってこないのか?」

 

シルヴィア「私の所はどちらかと言うと………八幡君には悪いけど、憧れを持って入ってくる子が多いかな。私に敵意を向けて入ってくる子はまずいないっていうのは断言できるよ。」

 

 

流石は世界の歌姫生徒会長様だ。人気もあれば、妬まれるような奴もいない。良いなぁ………

 

 

八幡「俺、これで2回目なんだけど?俺ってそんなに悪い事したか?」

 

シルヴィア「してないと思うけど……八幡くんのやらかす事が全部常識外れだからじゃない?」

 

八幡「おい、それはそれで傷つくぞ。だが、俺そこまで非常識なことしてないと思うぞ?」

 

シルヴィア「人によって見る目が変わるけど、私の目線では……まず木派と水派の関係改善、当時序列2位【覇軍聖君】の撃破、育てた子たちの序列入り、《鳳凰星武祭》準優勝独占の立役者、4代目【万有天羅】の継承、前シーズンを三冠制覇、私が言えるだけでもこれだけあるんだから、嫉妬の対象者はまだまだいると思うよ?」

 

 

………俺ってそんなに常識外れなの?これだけ言われると流石にまともだとは思えなくなってきた。

 

 

シルヴィア「でも、その子も大概だね。入学してもいないのに勝手に学院に入って序列1位を冒涜するなんて、非常識の塊だよ、全く!八幡くんの常識破りなんて可愛いくらいだよ!」

 

 

………ちょっとだけ俺のライフが回復。

 

 

八幡「まぁ兎に角、入学式の後になってみないと分かんないから、それまで待つわ。」

 

シルヴィア「うん、何かあったら私にも言ってね。出来るだけ協力するから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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命知らず

 

 

八幡side

 

 

入学式も無事に終わって3日が過ぎた。新入生も入学初日から鍛錬に来るという(これは例年通り)向上心の高さが見ることが出来た。何でもこれは俺が序列2位になってかららしい。

 

何にせよ、最初から鍛錬に励むのはいい事だ。俺としても嬉しく思う。今後の界龍を支えてくれる奴が増えるってもんだからな。

 

 

八幡「あぁ〜……やること終えた後ってなんもする事ないなぁ。」

 

陽乃「それ分かるよ〜。私も早めに単位とか取って楽しようって思ってやったんだけど、本当に後の方暇なんだよねー。でもさ、まだ4月になったばかりだよ?教科は?」

 

八幡「今日はないんだよ、だから暇してるんだ。ていうか陽乃、お前ここに居ていいのか?仕事は?」

 

陽乃「今日はなし!今はお母さんの所でお手伝いやってるだけ。まだ自分の拠点ができてないからね。設計とか打ち合わせとかはあるんだけどね。でも今日はそれが何もないから完全オフってわけ♪」

 

八幡「そうか。」

 

陽乃「ねねっ、久し振りに手合わせしない?たまに動かしてはいるんだけどさ、現役の頃と比べると全く動かしてないからさ。相手してくれない?」

 

八幡「構わないが、格好は大丈夫か?それでやるなんて言わないよな?」

 

陽乃「八幡くんが私の下着を見たいって言うのなら、このまましてあげるよ?」

 

八幡「バカ言うな。俺はシルヴィのしか興味ない。早く漢服に着替えて来い。」

 

 

全く、3年前となんも変わってねぇな。

 

 

陽乃「相変わらずのベタ惚れっぷりだね……」

 

八幡「良いだろ別に。ウソじゃねぇんだから。」

 

 

確かに嘘はついていない。惚れてない奴のを見ても別にどうとも思わない。だってどうでもいいから。

 

 

シルヴィア「八幡く〜ん、来ちゃった♪あっ、陽乃さん!お久しぶりです!」

 

陽乃「おぉ〜シルヴィアちゃん!お久だねー!元気にしてたかな?」

 

シルヴィア「はい、おかげさまで!所でどうして此処に?お仕事は大丈夫何ですか?」

 

陽乃「今日は無いの。だから君の旦那さんと少しだけ世間話と鍛錬の相手をさせてもらいに来たんだ。ごめんね、独占しちゃって。」

 

シルヴィア「いえ、陽乃さんがそういうことをしない人だっていうのは知ってますから。」

 

 

俺の嫁さんってば懐が深い!

 

 

シルヴィア「ねぇ八幡くん、その鍛錬私も見ていい?陽乃さんの動きってあんまり見た事ないから、じっくり見てみたいんだ。」

 

陽乃「もぉ〜シルヴィアちゃんったらエッチだなぁ。私をじっくり見たいだなんて〜。」(ニヤニヤ)

 

シルヴィア「見たいのは動きなので。確かに陽乃さんのスタイルは羨ましいですけど。」

 

陽乃「そんな普通に返さないでよ………からかった私がバカみたいじゃんか……」

 

八幡「してやられたな。んじゃあ陽乃は着替えて来いよ。場所は分かって「先輩ー。」………はぁ。」

 

 

来てしまったか………入学前にケンカ売ってきたあのバカが。

 

 

サイ「先輩、そろそろ勝負してもらってもいいすか?俺もまちくた……びれ………て………」

 

 

………何固まってるんだこいつ?

 

 

シルヴィア「ねぇ八幡くん、もしかしてこの子?」

 

八幡「あぁ、入学前から啖呵切ってきた命知らず。まぁ今はなぜか固まってるけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイ「噂に違わぬ美しさ。貴女がクインヴェール女学園のシルヴィア・リューネハイムさんですね?」

 

シルヴィア「え?う、うん、そうだよ。」

 

サイ「おぉ、美しくとても綺麗な声だ!まさに世界の歌姫!このサイ・マーフィン、その美貌と美声に改めて感動しました!」

 

シルヴィア「う、うん………」

 

 

何だ、ただの口説きか……

 

 

サイ「やはり貴女のような方こそ、俺の妻に相応しい!どうでしょう?お付き合いしては頂けませんか?絶対に幸せにすることを誓いましょう!」

 

シルヴィア「えっと、私もう付き合っている人がいるので遠慮します。ごめんなさい。」

 

サイ「それはこの逃げ腰だけは一流の4代目の事ですよね?こう言っては何ですが、少し男性を見る目を養ったほうがいいと思いますよ?」

 

シルヴィア「……君こそ、その言葉を言う相手を選んだほうがいいと思うよ。今君が文句を言った相手は4代目【万有天羅】なんだよ?そんな人に勝てると思っているのかな?」

 

サイ「はっ、余裕ですよ。何せ俺は中国では全大会で優勝して負けなしなんですから!」

 

陽乃「それだけで彼に勝てるだなんて思わないほうがいいよ?君のそれって自分の基準でしょ?世界は広いよ〜?自分だけの基準で考えていたら、足元掬われるよ?」

 

サイ「貴女は?」

 

陽乃「雪ノ下陽乃。此処のOGだよ。」

 

サイ「陽乃ですね、覚えました。」

 

 

こいついきなり名前呼びでしかも呼び捨てかよ。

 

 

陽乃「……ねぇ、名前で呼ばないでくれるかな?君には呼ばれたくないんだ。」

 

サイ「そこにいる先輩には良くて俺はダメなんですか?それは酷くないですか?陽乃さん。」

 

 

八幡(なんかこいつって……)

 

陽乃(葉山を思い出させるウザさだなぁ……)

 

 

陽乃「とにかくやめて。虫唾が入るから。」

 

サイ「あっはは!辛辣だなぁ。別にいいじゃないか、そんなに綺麗なんだ、勝手に名前呼びされているんだろ陽乃さん?なら俺が呼んでも別に問題なん「……おい。」……なんでっ!!?」

 

 

こいつの身勝手さに何かが切れたのか、いつの間にか手を出してしまっている。後悔はしてないが。

 

 

サイ「あ……あ”あ”ががが!!?」

 

八幡「お前……さっきから調子に乗り過ぎだ。好き放題言いやがって………テメェ何様だ?」

 

サイ「あがっ!あがががが!!」

 

八幡「おい、言葉にしろよ。俺を倒すんだろ?ならこれくらいの拘束解いてみろよ。」

 

 

マーフィンはジタバタ暴れるだけで八幡には何もしていなかった。

 

 

八幡「はぁ……頂点をとるとか言いながらこの程度か。用無しだな。入学前は序列内くらいだと思っていたが、お前じゃあその域にも入れねぇよ。」

 

サイ「カハッ!!ゲホッ!!ゴホッ!!」

 

八幡「目障りだ、出て行け。お前のような身勝手な奴に教える事は何もない。あるとすれば、屈辱的なまでの敗北と痛みくらいだ。」

 

サイ「ゲホッ!ふ、ふんっ!何が屈辱的な敗北と痛みだ!お前なんか俺が一瞬で倒してやる!今日のところは引いてやるが、明日また来る!その時に決闘だ!!」

 

 

そう言って部屋から出て行ったが、後ろ姿が小さ過ぎる………威圧感ねぇな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





久しぶりに陽乃さんを出しました!そして次は八幡と命知らずの決闘をする予定です!


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八幡の逆鱗


タイトル通り、八幡の怒りが………


 

 

ーーーーーー

 

 

サイ「先輩、今日こそは戦ってもらいますよ。あんたが座っている頂点の椅子、俺が代わってやりますよ。だから早く戦いましょうよ。」

 

 

八幡(………こいつもしつこいな。昨日のアレで実力差はわかったと思っていたんだが、自分がやられたとは思っていないのか?)

 

 

八幡「お前さ、昨日のアレで懲りてないのか?」

 

サイ「……確かにあの時は油断した。だがもう遅れはとらない!!今日の俺は昨日のように簡単には行かないからな!!」

 

八幡「そうなのか?今の発言、俺には『やられたいので、どうぞ好き勝手殴ってください。』という風にしか受け取れなかったんだが?」

 

サイ「何だと!!」

 

八幡「1つ言っておくぞ。自分と相手の実力差くらい自分で把握しておくものだ。今のお前がやっている事は挑戦でも王座の奪還でも何でもない。ただの無謀だ。その意味すら理解出来てないお前に、俺どころか序列内でも勝てやしねぇよ。」

 

サイ「俺がそんじょそこらの奴より劣るって言いたいのか!?」

 

八幡「そう言っているんだが?」

 

 

八幡(逆になんで分からないんだ?自信家というのも考えものだな。まぁこいつの場合、少しだけだが違うようだがな。)

 

 

八幡「分かったのならもう行け。俺だってお前の相手をする程、暇ではない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡は自身が座っている部屋、黄辰殿から出ようとした矢先に後ろから罵倒する声が聞こえた。

 

 

サイ「けっ!そんなのこっちから願い下げだね!!4代目の【万有天羅】がまさかこんなにも逃げ腰だったなんてな!!期待外れもいいところだ!!」

 

サイ「こいつを慕う奴らもバカな連中だ!こんな何もできない奴を崇拝して頭がおかしい!!この学院は頭のおかしな連中ばかりだな!!」

 

サイ「付き合っている女も見た目だけの男を選ぶ目のないアホだ!!世界の歌姫がまさかこんな弱虫と付き合ってるなんて思うと、哀れでしょうがないね!!それに「おい。」……はぁ?何だよ?」

 

八幡「お前今すぐ俺と戦え。」

 

サイ「はぁ?あんた何言って「黙れ。受けるのか受けねぇのかどっちか答えろ。」………まぁあんたを倒せば俺が学院1だからな、受けてやるよ。」

 

八幡「場所は八天門場、開始は1時間だ。逃げるなよ?それだけの啖呵切ったんだ、来なかったら力ずくでも連れてくる。」

 

サイ「はっ!!逃げねーよ!お前なんかに!!」

 

 

サイはそう言うと部屋から出て行った。

 

 

八幡「さて……準備するか。」

 

 

ーーー1時間後、八天門場ーーー

 

 

道場の中には既に生徒が集まっていた。そして何故か母体幹部までもが顔を揃えていた。初代と2代目【万有天羅】である春麗蘭(チェン・リーラン)汪小苑(ワン・シャオエン)までもが見にきていた。そして何故かシルヴィアも来ていた。

 

そしてステージの東方には八幡が刀の切っ先を床に刺して柄頭の部分に手を置いて立ちながら瞑想をしていた。

 

 

サイ「へぇー広いっすね〜。こんな場所で戦えるんすね!そして今後は俺が此処を独り占めできるってわけだ!ははっ、気分が良いね!」

 

八幡「………来たか。皆の者!今回は集まってくれたことに感謝する。何故此処に集めたのかは後ほど説明するとして、今は俺、比企谷八幡とサイ・マーフィンの戦いを見届けて欲しい!異議ある者は今すぐこの場から立ち去ってくれても構わない!これは強制ではないからな。」

 

 

八幡の言葉を聞いても道場から立ち去ろうとする者は居なかった。

 

 

八幡「であれば決闘を始める。我、比企谷八幡は汝、サイ・マーフィンに決闘を申し込む。」

 

サイ「決闘を受諾する!!」

 

 

互いの校章が光り、両者承諾の合図が出た。

 

 

『Start of duel』

 

 

 

 

『Battle start』

 

 

開始の合図が響いた。

 

 

八幡「……来ないのか?」

 

サイ「よく言うだろ?猪武者はすぐに命を落とすって。先手はお前に譲ってやるよ、逃げ腰。」

 

八幡「……そうか。ならその言葉を後悔しないようにしろよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォッ!!!!

 

 

サイ「グホァッ!!!」

 

 

八幡がサイの視界から消えたと思ったら、次の瞬間にはサイの腹部には激痛が走っていた。そう、サイは八幡に殴られていたのだ。

 

 

サイ「ゴハッ!!」

 

 

そして次の瞬間には、八幡の踵落としが同じ腹部に直撃して、サイは床にくの字になってから手足がついた。

 

 

八幡「立て。寝るにはまだ早いぞ。まだほんの小手調べだ。まさか【万有天羅】になる男がこの程度で終わるわけねぇよな?」

 

サイ「グハッ!うぐぅぅ〜!」

 

 

八幡は冷めたような表情と冷たい声でサイに向けてそう言った。サイは余程の痛みだったからか、痛みにもがくので精一杯だった。

 

 

八幡「お前が立つまで待ってやるよ。まさか投了なんてつまらない事しないよな?そんなの俺が許さねぇからな。」

 

 

誰が見ても分かる程に、今の八幡は相当に怒っていた。それもそうである。界龍の生徒をバカにされ、さらには自分の恋人をも愚弄されたのだ。八幡が怒る理由としては充分過ぎる程だった。

 

 

八幡「さて、まだ戦いは始まったばかりだ。これからだぞ?本当の戦いってのはよ。」

 

 

そう、戦いは始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ついには怒らせてしまった〜!

あ〜ぁ、これでこの子終わったも同然だよ。


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報い

 

 

ーーーーーー

 

 

八幡とサイの試合が始まったのだが、開始早々サイが八幡に腹に拳と蹴りをお見舞いし、その攻撃に悶絶しているサイ。界龍の全生徒はこう思っていた。『よくもまぁこの程度で宗師に勝とうと思ったものだ。』と。

 

 

八幡「どうした?立たないのか?なら俺が起こしてやろうか?それならお前も立ってくれるだろう?」

 

サイ「ぐぅ〜!!バカにすんじゃねぇ!!この程度で………〜〜!!」

 

 

サイは何とか自力で立ったものの、足はガクガクで生まれたての子鹿のように震えていた。

 

 

八幡「……打ってこい。1度お前にチャンスをやる。俺を殴り飛ばしてみろ。それくらいこなしてくれねぇと【万有天羅】なんて夢のまた夢だ。」

 

サイ「……上等だ!」

 

 

サイは拳に星辰力を練り上げて溜め込んでいた。八幡はその様子を興味なさげな表情で見ていた。

 

 

サイ「今更さっきの言葉を取り下げても遅いからな!お前が打ってこいと言ったんだ!遠慮なく打たせてもらうからな!!」

 

八幡「御託はいいから早く打ってこい。お前の拳がどんなもんか見てやる。」

 

 

八幡のこの言葉にサイは完全にキレた。

 

 

サイ「喰らえこの野郎ーーーーー!!!!!」

 

 

ドゴォ!

 

 

サイ(やった!!完全に入った!!これならこいつだって………っ!?)

 

 

勝利を確信したサイだったが、目の前にはさっきの興味なさげな表情を変える事なく平然と立ち尽くしている八幡がいた。

 

 

八幡「………はぁ、啖呵を切った割にはこの程度か。前に言ったが、お前は序列内には入れないって言った。それを訂正しよう。お前を序列外の奴らと同等にするのも烏滸がましい。この程度の威力、序列外の奴らなら星辰力を出さなくても出来る。」

 

サイ「そ、そんな………バカな………」

 

八幡「いいか?拳を打つ時はこうするんだよ。」

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

サイ「ゴホォ!!?」

 

八幡「お前の拳はただ前に突き出しているのと一緒だ。用無しなんだよ。」

 

 

サイはその場で蹲ってしまった。八幡の拳をモロに受けたのだ、無理もないだろう。だが………

 

 

八幡「言っておくが、今のは本気じゃないからな?半分程度だ。本気を出すまでもないからな。」

 

 

ーーーーーー

 

シルヴィアside

 

 

………彼、よく八幡くんにあんな口を聞けたものだよ。悪い言い方をするけど、いい気味だね。現実はこうも厳しいものなんだよ。君が中国でどれだけ強かったのかは知らないけど、今の君じゃあ界龍でやっていけないよ。確実にね。

 

 

星露「どうじゃ歌姫殿よ、あやつは?」

 

シルヴィア「どうって言われても、八幡くんに勝てるわけないでしょ?それに八幡くんと戦ったら基準が分からないから、どんな表現を言えばいいのか分からないよ。」

 

星露「主にしては辛辣じゃのう?」

 

シルヴィア「恋人がいるって分かっててその人の目の前で口説く人を信用できると思う?私だったら絶対お近づきになりたくないよ。」

 

星露「まぁ、妾も同意見じゃのう。」

 

 

シルヴィアsideout

 

陽乃side

 

 

雪ノ下母「面白いものが見られると思って来てはみましたが……陽乃、これのどこが面白いのですか?私には分かりかねますが。」

 

陽乃「うん、ゴメンお母さん。正直私もサッパリだよ。八幡くんの無双っぷりを見てもらうだけになっちゃったね。」

 

 

結構実力あるのかと思ってたんだけどな〜。八幡くんに首絞められていた時点でもうダメかぁ……あ〜ぁ、つまんないなぁ。

 

 

雪ノ下母「それにしても相変わらずの強さですね、彼は。停滞という言葉を知らないのでしょうか?」

 

陽乃「ホントだよね〜。八幡くんが伸び悩んでいるところなんて、私は見た事ないなぁ……人知れず悩んでいるのかと知れないけど、あれだけの実力を見せつけられると、それすらもないんじゃないかって思えてくるよ。」

 

雪ノ下母「お願いですから、貴女は普通のままでいて下さいね?」

 

 

私あんな風にならないよ!というよりも、なりたくてもなれないから!

 

 

陽乃sideout

 

ーーーーーー

 

 

八幡「………それで?もう終わりか?」

 

サイ「く、ぐぅ……」

 

八幡「はぁ………」

 

サイ「ぐっ!?この、離せ!!」

 

 

バゴォ!!

 

 

八幡はサイの制服の胸ぐらを掴んでは右の拳で左頬を殴るの繰り返しをしていた。殴る度に吹っ飛ばされる為、八幡は飛ばされたサイの方向へと向かい何度も殴っていた。そして、サイの心は完全に折れていた。

 

 

バコォ!!(10回目)

 

 

サイ「ぐわぁぁぁぁ!!」

 

 

サイの顔はボロボロだった。左頬は既に青くなっている箇所や赤くなっている箇所、裂傷も出来ており口元も腫れていた。

 

 

サイ「き、聞いてた話と違う………」

 

八幡「あ?」

 

サイ「ひ、比企谷八幡は……情け深い、優しい人だと……聞いていたのに。」

 

八幡「誰に聞いた?」

 

サイ「そ、それは………」

 

八幡「そいつも忘れたのか?」

 

サイ「ど、同級生の奴に……」

 

八幡「俺はな、そんなに優しい人間じゃねぇ!!」

 

サイ「ヒィッ!!」

 

 

突然八幡はサイに向かって怒鳴りだした。

 

 

八幡「俺が優しいだぁ?界龍の家族をバカにされて、俺の最愛の恋人までコケにされておいて、俺が優しいままでいられると思っていたのか?だとしたらお前は大バカだな。そんな奴にかける情けなんて持ち合わせていねぇんだよ。」

 

サイ「………」

 

八幡「次また俺の前でシルヴィや界龍の生徒のことをバカにしてみろ、今度はその顔面を人様に向けられないようにしてやる。次はねぇぞ……ムンッ!!」

 

サイ「ガバッ!!」

 

 

八幡はサイの校章目掛けて思い切り蹴りを放った。吹っ飛ばされたサイは壁に激突して気絶した。

 

 

『校章破壊』

 

『End of duel』

 

 

こうして八幡とサイの試合は八幡の完全な完封勝利に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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決闘の事故処理

 

シルヴィアside

 

 

今日は日曜日の学園お休みDAY♪早速八幡くんとデート……って思ってたんだけど、今日は八幡くんと一緒に界龍にいます。何でかっていうと、この前の模擬戦の事後処理みたい。何でも、運営母体【界龍】の一幹部が『入学したばかりの生徒に対して、あれはあまりにも容赦が無さすぎるのではないか?』っていう言葉があったらしいの。それで八幡くんはその幹部に文書を送る為に、学院の黄辰殿でそれを打ち込んでいるの。え?私は何をしているのかって?そんなの八幡くんの側にいるに決まってるでしょう?そんな当たり前なことを聞かないで欲しいよ〜。全くもう!

 

 

八幡「………」

 

シルヴィア「♪〜♪〜」

 

 

因みに私は鼻歌を歌ってるんだけど、八幡くん的にはそれが心地よく聞こえているみたいで、ちょうどよく作業ができるみたい。なんだか得した気分になれるね!

 

 

シルヴィア「それにしても、母体の人からよくそんな文書が来たね?八幡くんに直接?」

 

八幡「あぁ。しかも長ったらしい文章でな。しかも本題はすっげー短かった。前略が長すぎるってどういう事だよ。」

 

シルヴィア「けど、【界龍】の幹部も一枚岩じゃないんだね。八幡くんがただ単に決闘をして、あそこまで新入生を追い詰める理由を考えたりはしないのかな?」

 

 

むしろ私はそこに目をつけるかな。だって八幡くんだよ?優しい八幡くんがあんなにも激しく殴りつけたんだからよほどの理由があるんじゃないかって思うよ。まぁ理由は知ってるけどさ。

 

 

八幡「まぁ俺が【万有天羅】になる前となった後にも揉めたもんだ。俺が星露と決闘するって知らせがあった時なんて、一部は『嘘なんじゃないか。』とか『聞き間違いや勘違いなんじゃないか?』とか言ってたみたいだけどな。これは麗蘭さん情報だ。そしてその後が『流石に自由にさせ過ぎでは?』とか『万有天羅の立場がなくなるからそのままの序列でもよいのでは?』とか言ってたみたいだ。これは陽乃情報だ。」

 

シルヴィア「何それ!?八幡くんに対して不平等すぎるよ!八幡くんだって普通の学生なのに!!」

 

八幡「まぁ俺や星露みたいにこの肩書きがついたら、普通の学生として見られる事は極端に少なくなったからな。特別扱いされるばかりだ。良い意味でも悪い意味でもな。」

 

 

それにしても八幡くんに対する態度は何なのさ!それでも【界龍】の幹部なの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗蘭「失礼いたします。八幡さん、おや?この気は……シルヴィアさんですね?」

 

シルヴィア「こんにちは、麗蘭さん。今日はどうされたんですか?」

 

麗蘭「いえ、たいした事ではないのですが、八幡さんにお伝えしたい事がありまして。」

 

八幡「?何ですか?」

 

麗蘭「先日、運営母体の幹部の1人から八幡さん宛に文書が届けられたと思います。その文書について八幡さんは今、手を進められている途中だと思いますが、そちらはもうお書きにならなくても結構です。」

 

シルヴィア「え?どうしてですか?」

 

麗蘭「私が説得を致しました。あの文書を拝見しましたが、実に不愉快です。『容赦が無さすぎではないか?』八幡さんは意味もなく容赦のない事はしません。八幡さんを知る方なら誰だって知っている事です。むしろあれなら優しい方です。」

 

シルヴィア「うんうん!」(コクコクッ)

 

 

全くその通りです!流石は麗蘭さんです!

 

 

麗蘭「そこで私はこう言いました。『では何故貴方は八幡さんが容赦の無い攻撃をなさったと思われるのですか?」と。その答えに私は憤慨しました。その答えが『新入生をイジめる為では?』と答えたのです。幾ら母体幹部でも言って良い事と悪い事があります。久しぶりに怒鳴りました。まさかあんな回答が来るとは思ってもみませんでしたので。」

 

シルヴィア「……麗蘭さん、私もその幹部の人怒鳴ってきていいですか?ついでに八幡くんの基礎知識についてみっちりと勉強させてあげたいです。」

 

八幡「おいやめろ。そんな無駄な労力を使うな。言わせておけばいいんだよ。何があっても黙らせてやるよ。しかし、放任主義の彼らにしては、この件に突っ掛かるなんて思ってませんでした。なんか理由があるんですか?」

 

麗蘭「嫉妬、ではないでしょうか?八幡さんは歴代最強と呼ばれてもおかしくはない実力ですから。羨ましくも妬ましいのではないでしょうか?」

 

八幡「どうでもいいですね。」

 

シルヴィア「それは八幡くんだから言えるんだよ。私だったら我慢出来ないよ〜。恋人がバカにされてるんだよ?」

 

 

八幡くんだって私がバカにされたらすっごく怒るくせに!今回がいい例だよ!

 

 

八幡「そう言われてもな……特に何も感じないから、どう答えていいもんか分からん。取り敢えず回答として『あっ、そうっすか!もうちょっと優しくしま〜す!(笑)』とでも送っておきますか?」

 

麗蘭「ふふっ、それもいいかもしれませんね。もし何か返答がありましたら、すぐ私にお声掛けください。変な回答だったら………ふふふっ♪」

 

 

麗蘭さん、その笑い方は少しだけ怖いです。

 

 

その後、その幹部から連絡は来なかった。まぁ麗蘭さんに言われた事が響いてたんだと思う。今まだ寝ているサイくんは、起きたら反省をしているのかな?もし、反省をしていなかったら今度は序列外の子たちと戦わせるのもいいよね。

 

 

 



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世話の焼ける新入生

 

 

八幡side

 

 

さて、面倒な事この上ないが、あのサイ・マーフィンの所に行ってやらねぇとな。奴が目を覚ましているかどうかは知らんが、取り敢えずは言って奴の言葉を聞きたい。俺に負けてどうだったのか、この後どうするつもりなのかを。

 

 

シルヴィア「八幡くん、彼の所に行くつもりなの?私はあまりオススメしないよ。」

 

八幡「分かってる。俺だって出来れば行きたくはない。だがこの学院の序列1位、【万有天羅】を張っている以上は、他の奴らも気にかけないといけねぇ。例えそれが敵対する奴であったとしてもな。」

 

シルヴィア「八幡くんは本当に良い人だね。私が八幡くんだったらそんな風にはできないよ。」

 

 

ーーー医務室前ーーー

 

 

八幡「………」

 

シルヴィア「………ねぇ八幡くん。」

 

八幡「聞くな。俺だって今、もう中に入りたくなくなっちまったんだからよ。」

 

 

起きているのはこの際いいとしよう。けど何で中にいる誰かと言い争いをしてるんだよ………

 

 

八幡「はぁ……もういい、入るぞ?」

 

シルヴィア「失礼します。」

 

 

あぁ、怒鳴り声と罵声がもっと大きく聞こえる……

 

 

八幡「今大丈夫か?」

 

忠「っ!?そ、宗師!!?それに奥方様!!」

 

八幡「言い争いをしていたようだが?」

 

忠「あっ、これはお恥ずかしい所を……実は「俺はお前に負けたとは思ってねぇ。」っ!お前、まだ言うか!!」

 

八幡「……成る程、理由は大体察した。マーフィンが俺との決闘の結果に納得していないんだな?」

 

忠「えぇ。俺も過去に過ちを犯した身です。親身になって説得を心掛けようと思ったのですが、俺は負けたわけではないの一点張りで………」

 

サイ「はぁ!?俺がいつ誰に負けた!?そこにいる奴が不正でも働いたに違いないだろ!!そうでもなけりゃ俺が負けるはずがねぇんだよ!!」

 

忠「……この調子でして。」

 

八幡「あー……うん、お前も苦労したな。だが安心しろ、お前の場合はこいつよりも100倍以上はマシだから。こいつはもっとタチ悪いから。」

 

 

今回のことに比べたら、忠の出来事なんてオモチャみたいなものだ。

 

 

八幡「マーフィン、なぜ俺が不正を働いたと分かる?俺には不正をしてまで勝利する程のメリットなんてないんだが?」

 

サイ「お前は俺に勝ったという実績が欲しかったんだ!!だから身体能力を高める技でもかけてもらったんだろ!そうとしか考えられない!」

 

八幡「いや、俺お前に勝ちたいだなんて思ってないけど?それに、そんな技を使える奴は界龍には居ない。いるとしても当日来ていたシルヴィだが、その時俺はシルヴィとは会っていない。俺は選手控え室、シルヴィアは観戦場に居たからな。」

 

 

たとえ恋人であっても、選手の控え室に他学園の生徒を入れるわけにはいかないからな。

 

 

八幡「んで?他に言い訳はあるか?あっても無くても、言い訳はしない方が身のためだぞ?全く自分擁護出来ないから。」

 

サイ「う、うるさい!お前程度の奴が俺に勝てる道理なんて本当はないんだ!逃げ腰野郎!」

 

八幡「その逃げ腰野郎にボコボコにされた気分はどうだ?さぞかし気持ち良かっただろう?自分の無力さが痛快だっただろう?それに言ったよな?次はない、ってよ?お前まだ殴られ足りないのか?」

 

サイ「っ!!このぉ………」

 

シルヴィア「………マーフィンくん、聞いてもいい?」

 

 

ん?シルヴィ?

 

 

サイ「はい、何でしょう?」

 

シルヴィア「何でそこまで八幡くんに敵意を向けるの?八幡君が君に何かをしたの?」

 

サイ「そんなの決まってるじゃないですか!そいつが俺に恥をかかせたからですよ!!俺の首を掴んでは締めてきたり、決闘では大勢の奴らにあんな醜態を晒された!これが敵意を向けられずにいられると思いますか!?それにだ、俺はそいつにはまだ「もういい……黙って。」……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「身の程を弁えろ!!」

 

サイ「ヒ、ヒイッ!!」

 

シルヴィア「恥をかかされた?それが何なのさ?そんなの君がただ思い込んでいるだけたよね?それにそれが本当だったとしても、それは君が八幡くんよりも弱いからでしょ?それを棚に上げて八幡くんのことを責めるなんて、そっちの方が醜いよ!君の実力なんて八幡くんに比べたら雲泥の差だよ!」

 

シルヴィア「八幡くんがこれだけの強さを手に入れたのは、血の滲むような鍛錬を毎日のように欠かさずやってきたから。八幡くんは負けを言い訳にしたことなんて今までで一度もない!負けることが恥ずかしい事なのなら、私は何回も恥ずかしい思いをしてきてる!この際だからハッキリ言ってあげる。今の君じゃあ界龍についていけないし、ただ置いていかれるだけだよ。」

 

サイ「そ、そんなのやってみないと分からないでしょう!」

 

シルヴィア「分かるよ。君に聞くけど、この学院で八幡くんに教えてもらっていない人ってどれくらいいると思う?」

 

サイ「……100人ですか?」

 

シルヴィア「答えは……1人だよ。」

 

サイ「1人っ!?それって誰なんですか!?」

 

シルヴィア「分からないの?この前の決闘でボコボコにされていたのは誰?」

 

サイ「………俺だけ?」

 

シルヴィア「そうだよ。この学院で唯一八幡くんに教えを受けていないのは君だけ。その他は皆受けてるよ。過去に冒頭の十二人にいた人たちだって、八幡くんの教えを受けていたんだから。星露だってそうだよ。だから君の器と八幡くんの器がどれだけ違うのかも分かる。八幡くんは優しいから君にチャンスをあげた。けど君はそのチャンスを無下にしようとしている。この意味が分かる?それが要らないんだったら捨てればいいよ。でもそうしたら、いよいよこの学院にはいられないからね?」

 

サイ「………」

 

シルヴィア「………行こっ、八幡くん。」

 

八幡「……あぁ。忠、お前も来るか?」

 

忠「はい、ご一緒させて頂きます。」

 

 

こうして俺たちは医務室を後にした。しかし、シルヴィが怒鳴るとはな。手の焼ける新入生だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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優しい説教

 

 

八幡side

 

 

サイとの決闘から1週間が過ぎた。あれから奴との接点はない。奴が学院でどう過ごしているのかも、何をしているのかも俺は知らない。だって興味ないし。

 

 

冬香「八幡様、不粋ながら少し意見してもよろしいでしょうか?」

 

八幡「ん?突然どうした?」

 

冬香「決闘後の事です。八幡様と戦いになったサイ・マーフィンくんですが、このままでもよろしいのでしょうか?」

 

虎峰「そうですよ八幡。いくら彼が礼儀知らずで身の程知らずとはいえ、あの後のことはやはり気になります。」

 

八幡「そんな事言われてもな………俺自身は別にあいつの事なんてどうでもいいし。」

 

セシリー「でもさー、あたし偶々彼見かけたんだけどー、1人で鍛錬してたよー。」

 

 

マジで?本当に1人で鍛錬してんの?神経図太いな。俺だったら絶対にすぐ謝ってから一緒に鍛錬するのに。

 

 

セシリー「どうするの八幡ー?」

 

八幡「そう言われても、俺からは何もしないぞ。家族をバカにした奴に俺が優しくすると思うか?そんな奴に優しくするなんて、そんなの俺はゴメンだからな。」

 

冬香「八幡様のお気持ちもよく分かります。ですがここは1度彼と話してみてはいかがでしょう?」

 

虎峰「八幡、1度だけでいいんですから。」

 

八幡「お前らまでそんなことを言うのか……はぁ、分かったよ。1回だけだぞ?それ以降は俺も知らねぇからな?」

 

 

八幡sideout

 

サイside

 

 

ーーー放課後・中庭ーーー

 

 

サイ「………」

 

 

最近、クラスでも居場所がなくなっている……嫌がらせはないものの、俺と一緒にいようとする同級生は誰1人としていない。皆俺を避けて通っている。だから俺は今、逃げるようにこの中庭で鍛錬をしている。けど、どうにも身に入らない。

 

 

サイ「クソッ!!」

 

八幡「休憩か?」

 

サイ「っ!?………比企谷先輩。」

 

八幡「少し話でもしないか?頭に血が昇るような話はしねぇから安心しろ。」

 

サイ「………」

 

 

………なんで俺に話し掛けてくるんだよ?俺はお前をバカにしたんだぞ?何でだよ!?

 

 

八幡「学院生活はどうだ?俺にはあまり充実した生活を送れてはいないように思えるが。」

 

サイ「何ですか?バカにしてるんですか?」

 

八幡「いや、そうじゃない。あんな事が起きた後だ、少しクラスから疎遠になっているんじゃないかと思ってな。」

 

サイ「………」

 

八幡「図星、か……1つ聞いていいか?」

 

サイ「……何です?」

 

八幡「何故俺に勝とうとしたんだ?それが悪いとは言わないが、界龍の生徒やシルヴィをバカにしてまでやり遂げたかったのか?」

 

サイ「………特にコレって理由はないんですけど、1番になれば誰もが俺を認めてくれるし、見てくれる。そう思ってたんです。簡単に言えば、目立ちたかったんです。比企谷さんもそうでしょう?」

 

八幡「いや、俺の場合は違うな。避けられない理由があったから今の立場にいるって感じだな。実の所、この序列1位という肩書きは俺にはもう必要のないものだが、界龍の全生徒が卒業までは序列1位でいろってうるさくてな、だからやっている。」

 

サイ「その理由ってなんなんですか?」

 

八幡「アホらしい理由だとバカにしてもいいが、俺からしてみれば重要だ。《王竜星武祭》で序列1位として戦いたかった。そしてシルヴィとお揃いの状態になりたかった。そんな所だな。」

 

サイ「え………」

 

 

そ、そんな理由で?そんな理由でこの人は最強の称号【万有天羅】を継承したのか?

 

 

八幡「まぁそんな反応だろうとは思っていた。けど俺は理由なんてどうでもよかった。兎に角星武祭が始まるまでに序列1位の立場が欲しかったからってだけだ。ただそれだけだ。」

 

サイ「………」

 

八幡「マーフィン。上を目指す事は悪い事ではない。だが、他人を蔑んでまで上を目指すのは頂けないぞ。もしそれで上に辿り着いたとしても、後ろについてくる奴なんて誰1人としていない。今のお前がいい例だ。」

 

サイ「………」

 

八幡「お前には武術の才があるが、その技と力に溺れやすい。もっと武術の本質を見て欲しい。中国武術は何も拳だけじゃない。お前も知っている儒教の精神がある。六経の1つの『礼』をもっと大事にしろ。そうすれば必ずって訳でもないが、自ずと人は集まる。」

 

サイ「………」

 

 

………この人が何故、この学院で宗師と呼ばれているのか少し分かった気がする。俺なんかの物差しじゃ測れない。それ程大きな器を持っている。俺はこんな人を敵に回していたのか………

 

 

八幡「じゃあな、鍛錬頑張れよ。あぁそうだ、最後に1つ。お前の使っている武術、白虎拳の事だ。もっと突きや足技を使え。そうでないと勝てるものも勝てないぞ?南派武術は足技が少ないが、無いわけじゃないからな?」

 

 

………最後に先輩は俺のアドバイスを残して中庭を去って行った。

 

 

サイ「………はははっ、はぁ〜あ!最初から負けてたのか。いや、敵うはずのない相手だったんだな。力でも心でもボロ負けの完敗だ。あんな人には勝てねぇや。」

 

 

比企谷先輩、いや、宗師!俺ももっと強くなってついてきてくれる自然と誰もがついてきてくれるような人になります!!

 

 

 

 

 

 

 

 



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宗師の1日アルバイト

 

八幡side

 

 

今日の鍛錬も終わりか。さて、明日は日曜で久しぶりの休日だな。此の所ずっと鍛錬で八天門場に籠ってたからな。シルヴィと出掛けるっていうのもアリだが、偶には1人で出かけるっていうのもアリかもしれない。まぁシルヴィが1人で出掛けるのを許可するとは思えないけどな。

 

 

ーーー2人の家ーーー

 

 

シルヴィア「という訳なんだ、八幡くん。明日は私もイベントに借り出されることになっちゃったから、一緒にいられないんだ。ゴメンね………」

 

八幡「いや、仕方ないだろ。俺のことは気にしなくてもいいから、仕事頑張ってこいよ。しかし初めてじゃないか?他の奴のイベントに借り出されるなんて事は今までになかっただろ?」

 

シルヴィア「そうだね〜何年か前に私のイベントで何人かを招待した事はあるけど、それっきりだったから。他の子が私を招待したのは初めての事だね。なんだか成長したんだなぁって感じるよ。」

 

 

まぁそれは良いとしよう。それにしてもタイミングが良過ぎるだろ。明日は本当に俺1人なのか……六花の殆どは行き尽くしたしなー、他に何処かあったっけな〜?

 

 

八幡「それって朝イチから行くのか?」

 

シルヴィア「そんなに早いってわけでもないけど、10時には会場についていて欲しいって。だから最低でも9時か9時半くらいには出てるかもね。」

 

八幡「そうか……なら本当に1日いないんだな。」

 

シルヴィア「うん。本当にゴメンね?折角明日は八幡くんとデートできるって凄く楽しみにしてたんだけど……これもお仕事だからさ。」

 

八幡「そんなに気負うなよ。俺は別に気にしてないって。シルヴィは明日の仕事の事を優先してくれ。明日はなんかして過ごすからよ。」

 

シルヴィア「うん、分かった。でも来週は絶対デートしようね♪」

 

八幡「あぁ、分かってる。」

 

 

というわけで緊急だが、俺は明日1人で行動をしなければならなくなった。昔みたいに家でゴロゴロするのもいいが、多分暇過ぎて外に出ると思う。どっか無かったかなぁ?1日バイトでも探してみるか?

 

 

ーーー翌日ーーー

 

 

シルヴィア「じゃあ、また夕方にね。仕事が終わったらすぐに家に戻るから。」

 

八幡「そんなに急がなくてもいい。ゆっくりでいいからお前のペースで帰って来い。」

 

シルヴィア「うん。じゃあ行って来まーす♪」

 

八幡「行ってらっしゃい。」

 

 

………さて、俺も行動開始だ。

 

 

ーーーとある喫茶店ーーー

 

 

八幡「……此処だな。」

 

 

暇だから夕方まで日雇いバイトがあって助かった。それに、将来を見据えて接客は覚えておいて損はないからな。ここでの経験は大きいだろう。

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「すみません。昨日電話した比企谷ですけど……店長はいらっしゃいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店長「おぉ〜!君が!!君があの比企谷くんなんだね!!いやぁ〜実に素晴らしい!!」

 

 

何が素晴らしいんだ?

 

 

店長「君から連絡が来てくれた時は本当に天にも昇るような気分だったよ!今日はよろしく頼むよ、比企谷くん!!」

 

八幡「は、はい……」

 

 

この店長、余程嬉しかったんだろうな……

 

 

店長「見ての通り、ウチは男性スタッフがあまり居なくてね……力仕事とかが大変なんだ。だから君には色々と悪いんだけど、かなりの仕事を任せちゃうことになるんだけど、いいかな?」

 

八幡「今のところは大丈夫ですけど、もし大変だったらその時点でヘルプを呼ぶかもしれません。」

 

店長「あぁ、それで構わないよ。じゃあスタッフルームと制服を渡すから着替えて来てね。あっ、覗かないから安心してね。」

 

 

覗いてきたら逆に怖いよ。男の身体見ても得する奴なんて居ないだろうに………腐女子くらいだろ。

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

店長「というわけで、今日は臨時スタッフとして入ってくれた比企谷くんだ。一通りの説明はしたけど、分からないことがあれば彼女たちに聞いてね。」

 

八幡「いきなりなんですけど、質問いいですか?」

 

店長「ん?なんだい?」

 

八幡「ホールが何人で厨房が何人なんですか?」

 

店長「基本的にはホールが2人で厨房が3人だよ。もしホールが空いていたら、ホール1人が厨房に回ることもあるけどね。」

 

 

成る程……余裕がある時はホールの人員を厨房に回すってわけか。そして厨房の人数は基本的にホールには回さない。うん、勉強になるな。

 

 

八幡「分かりました、ありがとうございます。」

 

店長「うん。比企谷くんはホールに入ってもらおうかな。いきなり厨房に入っても調理手順が分からないだろうしね。」

 

八幡「分かりました。」

 

店長「じゃあ皆、今日もよろしくね。」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタッフ「それにしても、君みたいな有名人がウチに日雇いに来るなんて思ってもなかったわ。」

 

八幡「そうですか?」

 

スタッフ「えぇ。店長が試しに月に何回かそういうのをやっているんだけど、日雇いだとあまり良い子は来ないのよね。経験があるってだけで、動きはそこまで良くないから。」

 

 

経験がものをいうって言うが、短ければあまり意味がないからな。

 

 

ホールスタッフ「でもその点、君は大丈夫そうね。落ち着いてるし、何より雰囲気も見てたのとより大分優しい感じがするもの。お姉さん、ギャップがある子は結構好みよ。」

 

八幡「ありがたいお言葉ですけど、俺には彼女がいますので。」

 

ホールスタッフ「あら、振られちゃったわね。でも知ってるから。あの記者会見を知らない人がいるはず無いものね。」

 

 

居ましたよ。お花屋さんの人たちは仕事が忙しいのとお花が恋人だから、TVをあまり見ないんだよ。

 

 

っと、そろそろ時間だな。

 

 

ホールスタッフ&八幡「いらっしゃいませ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ホール兼厨房スタッフ

 

 

ーーーーーー

 

 

八幡がバイトでやって来た喫茶店は、六花の中でも割と人気層に入ってる店舗に入っている。恐らくだが、六花のオススメガイドブックならば、必ず載っているだろう。そして今八幡は、そのお店に日雇いだが接客として雇われている。そして開店早々、八幡は女性客の接客をしているのだが………

 

 

女性客1「あら?貴方どこかで見たことある気がするのだけど……何処かで会ったかしら?」

 

女性客2「ちょっとナンパ?でも確かに何処かで見たことあるような顔ね?」

 

八幡「実は私、現在界龍第七学院大学部3年の比企谷八幡と申します。私の事を見た覚えがあるとすれば、恐らく星武祭の事かと。」

 

女性客2「え!?あの4代目【万有天羅】の!?」

 

八幡「僭越ながら、その2つ名でも呼ばれております。ですが今は一介のホールスタッフですので。」

 

女性客1「まさかあの界龍最強の生徒が此処で働いていたなんて……意外だったわ。」

 

八幡「ははは……それではこちらメニューとなっております。お決まりになりましたらお呼び下さい。失礼致します。」

 

 

八幡の事を知る人はあまりいないものの、八幡自ら正体を明かすと納得する者が殆どだった。

 

 

八幡「お待たせ致しました、こちら懐かしのオムライスとブレンドコーヒー、デザートになります。ごゆっくりどうぞ。」

 

八幡「ご注文繰り返させて頂きます。ナポリタンセットお1つにコーヒーをお1つでお砂糖を2本、よろしかったでしょうか?」

 

八幡「大変お待たせいたしました、2名様ですね?ご案内致します、こちらへどうぞ。」

 

 

八幡の隙のない接客と柔和な対応と笑顔に対応されたお客は全員笑顔で帰っていった。そして客が客を呼んで、店の前にまで人が並んでいた。

 

 

そして営業開始から1時間後………

 

 

店長「ど、どうなっているんだい!?今日は何もイベントとか半額デーでもないのに、どうして満席になっているんだい!?しかも外に長蛇の列!?」

 

厨房スタッフ「わ、分かりませぇ〜ん!私たちも急いで作っているんですけど、どうしても間に合わないんですぅ〜!」

 

店長「……仕方ない、僕も厨房に「店長、ホールと代わってください。俺が厨房に入ります。」ひ、比企谷くん?」

 

八幡「これでも料理はするので。このお店のレシピでない作り方でよければですけど、今この中にいるお客全部、捌いてみせます。」

 

 

八幡の強い口調に厨房スタッフも店長も初めて会うのになんで頼り甲斐のある人だと心の中で呟いていた。そして店長は………

 

 

店長「……よし、じゃあ僕がホールに回るから比企谷くんは厨房でまだ3人が手をつけていない注文の調理をお願いするよ!それじゃ、頼んだよ!」

 

八幡「はい。」

 

 

八幡(よし……日頃の成果の見せ所だな。)

 

 

八幡は自分の調理場を設けてもらい、そこに必要な料理用具一式と具材を持ってきた。調理スタッフがそれを見ると、レシピには含まれていない物も含まれていた。

 

そして具材と共に八幡が調理を開始すると………

 

 

 

トトトトトトトトンッ

 

ジュージュージュー!

 

グツグツグツグヅ!

 

コネコネコネコネッ

 

コポコポコポコポ〜

 

ウイィィィィ〜ン!

 

 

八幡「7番テーブル、9番テーブル全メニュー仕上がりました。」

 

 

厨房スタッフ全員「え!?もう!?」

 

 

ものの10分足らずで2席のメニューを全て作ってしまったのだ。

 

 

八幡「次は6番テーブルと10番デーブルと12番テーブル入ります。」

 

 

しかも順を追って調理をしている為、お客を長く待たせることもなく、料理を出せている。そして……

 

 

お客1「っ!何このハンバーグ!?ジューシーに焼き上がっているのに中はすごく柔らかい!こんなハンバーグ初めて!」

 

お客2「私のコロッケも衣サクサクで中のジャガイモも程良い甘さ!こんなの初めて食べたわ!」

 

お客3「美味しい、美味しすぎる!これなら私、3品くらい食べれちゃう気がする!」

 

お客4「味もそうだけど、こんなに大勢いるのによく調理を遅れずに出せるわよね?どんな秘訣があるのかしら?教えて欲しいくらいだわ。」

 

 

八幡の調理にした料理に賛辞を送るお客もいれば、どうすればこんなにも早い調理かつ丁寧な作業ができるのか、教えて欲しいお客等色々だが、来たお客全員大絶賛していた。

 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「……少し前に界龍の厨房で料理したのを思い出すなぁ……メチャメチャ人が多い上にどんどん注文が来るから急がされたもんだ。まぁ、あの頃に比べたらまだまだ遅い方だな、この喫茶店は。」

 

 

軽口を叩きながらも八幡は調理する腕を止めてはいなかった。かなりの作業にも関わらず、本人は平然と手を進めていた。

 

 

厨房スタッフ1(何あの子……頼りになるどころか、それを通り越して何でも出来ちゃってるよ!しかも何!?ホールと厨房を行き来してるってどういう事!?注文聞いてそのまま調理してるし!?)

 

厨房スタッフ2(あり得ない……あんな重労働をいとも簡単にやって、しかも疲れを見せていない。あんなの私には無理。)

 

厨房スタッフ3(普通じゃないわ。お客様へと対応は最高だし、調理の丁寧さも完璧。しかも出来た料理も自分で持って行ってるし……デタラメもいい所だわ。)

 

ホールスタッフ1(私と店長、物凄く楽できてるわ。だって比企谷くんが自分で聞きに行くから、誰も呼び鈴鳴らさないんだもの。私たちがやっている事はお客様のご案内とメニュー渡し、食事が済んだお客様の会計と後片付けくらいだもの。何なのあの子?ちょっと反則過ぎない?)

 

店長(………もしかしたら、とんでもない子を日雇いで受け入れちゃったのかもしれないね。これが今日1日って考えるとすごく惜しいよ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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1日バイトの終了

 

八幡side

 

 

……だいぶ作業にも慣れてきたな。(普通はやらない作業を)にしても、やっぱり面白いし楽しいな。こんな風に人と接しながら料理を作って提供をする。こう聞くと俺たちが損しているように聞こえるが、その対価がお客の美味そうに食ってくれる笑顔や声が嬉しく感じる。六花に来て料理を始めた頃を思い出すな、あの頃は星露が味見……実験役だったな。

 

懐かしむ時間も惜しい。よし、作業に戻るか。

 

 

???「………すみません。」

 

八幡「はい、ご注文をお伺い……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「………八幡?」

 

八幡「………よう、オーフェリア。」

 

オーフェリア「………どうして此処に?それにその格好はどういう事なの?」

 

八幡「1日バイトやってんだよ。それよか早く注文してくれ。他の人も待ってる。」

 

オーフェリア「………分かったわ。じゃあ特製サンドイッチとコーヒーをお願いするわ。それと、食後に八幡のお勧めを頂戴。」

 

八幡「ご注文承りました。すぐ作るから待っててくれ。お待たせ致しました、ご注文お伺いします。」

 

 

おどろいたな。まさかオーフェリアが来ているとは思わなかった……まぁいい、いつも通り調理しよう。今日は立場が違うんだ。俺は店員、あっちはお客だから対等じゃない。

 

 

八幡「1番テーブル、2番テーブル、3番テーブル調理開始します。後、もうすぐケチャップが切れそうなので補充しておきます。」

 

厨房スタッフ1「あっ、いいよ!私がやっておくから。比企谷くんは作業に集中して!」

 

八幡「分かりました、お願いします。」

 

 

厨房スタッフ1(今の君は厨房からもホールからも外せられない!ちょっと厳しいと思うけど、勤務時間が終わるまで頑張って!)

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

八幡「1〜3番テーブル、全メニュー仕上がりました。1と3番テーブルは俺が持って行きます。2番テーブルをお願いします。」

 

ホールスタッフ「分かったわ。」

 

 

さて、オーフェリアの所に行くか。あいつ絶対俺以外の奴から渡されたら、ガン飛ばしそうだし。

 

 

八幡「お待たせしました。こちら特製サンドイッチとコーヒーです。食後のオススメは後ほど用意します。ごゆっくりどうぞ。」

 

オーフェリア「………ありがとう。」

 

 

よし、まず1人目だ。次の席は親子連れのテーブルだったな。

 

 

八幡「お待たせしました。こちらオムライスとオレンジジュース、ハンバーグとコーラでございます。食後のデザートは後ほどご用意します。そして、少々失礼いたします。」

 

母親「はい?」

 

八幡「今からちょっとした香りの手品をしますので。と言っても、もう仕込んでありますけど。」

 

 

俺がオムライスの卵をナイフで1刺しすると、そこから一気に香りが爆発した。

 

 

母親「!?これ、カレーの匂い?」

 

八幡「はい。カレーリゾットオムライスでございます。ライスにリンゴやバナナ、人参をペースにしてリゾットに仕上げました。オムレツにも様々な調味料を使ったソースを使っております。勝手にメニューを変えて申し訳ございません。」

 

母親「い、いえ!!す、すごく美味しそうです!!頂きます!」

 

子供「お母さん、僕もそれ食べてみたい!」

 

八幡「ごゆっくりどうぞ。」

 

 

3番テーブルの親子連れから放たれる強烈な香りが殆どのお客を魅了し、目が離せなくなっていた。今か今かと食べる瞬間をまっているようた。

 

 

パクッ!

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食べた母親は顔を殴られたような衝撃を受けていた。今まで体験したことも無いような強い衝撃が口の中を襲っていた。

 

 

母親(な、何これ!?美味し過ぎる!?これ以上の評価ができないくらい美味しい!!この料理、普通の作り方じゃ絶対に出来ない!!)

 

 

子供「お母さん、美味しいの?」

 

母親「……食べてみなさい、すぐに分かるわ。」

 

 

そして子供も一口。

 

 

子供「っ!!すっごい美味しい!!こんなの僕食べた事ないよ!!良いなぁお母さん、僕もっと食べたいなぁ……」

 

母親「じゃあ半分こしましょう。」

 

 

この親子の反応を見て、オムレツを希望するお客が一気に増えた。当然この作業は八幡にしかできない為、厨房スタッフの3人はサポートに徹するしかなかった。

 

 

八幡「全テーブルメニュー上がりです。ホールスタッフはお願いします。」

 

ホールスタッフ「え、えぇ!」

 

店長「わ、分かったよ!」

 

 

最早厨房は八幡の独壇場だった。1人で十数人分の品を作っているのを見て、彼の手伝いをしようと思う人はいなかった。むしろそれが邪魔になるのでは?とも思っていた。

 

 

そして、八幡の1日バイトの定時時間になると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「別に最後まで残って作業しても大丈夫ですよ?俺だって楽しいですし。」

 

店長「いやいや、これ以上は逆に申し訳なくなってしまうのと、僕たちスタッフの自信にも関わってくるからね。今日は日雇いというわけだけど、来てくれて本当に助かったよ!これ、少ないけどバイト代ね。君が定時まで働いてくれた時給分と売り上げの1割を入れてあるから。じゃあ今日はお疲れ様!」

 

八幡「はい、お疲れ様でした。」

 

 

八幡は無事、1日バイトを終えることが出来た。しかも店先からの評価は最高。お客からの評価も最高だった。そしてこんなことも書かれていたらしい。

 

 

『もし彼がこのお店のスタッフ、或いはお店をオープンしたら、私は毎日彼のお店にご飯を食べに行く事をお約束します!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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謎の報告会?

 

 

八幡side

 

 

今日は大分勉強になった1日だったな。将来店を構えることになるから、こういう状況になった時の場合も、冷静に対処できるようになっておかないとな。さて、もうシルヴィも帰っている頃だろうし、早く帰って晩飯でも作るか。今日作ったカレーリゾットオムライスでも作るか。シルヴィからの評価も聞きたいしな。

 

 

八幡「ただいま〜。」

 

シルヴィア「あっ、八幡くん!お帰りなさい!」

 

八幡「?シルヴィ、ずっと玄関にいたのか?」

 

シルヴィア「まさかだよ。私も今帰ってきたんだ。八幡君は何してたの?」

 

八幡「それは飯を食いながら説明する。」

 

 

なんてタイミングの良い……シルヴィアも俺もほぼ同時ぐらいに仕事終わったんじゃないか?

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「とまぁ、こんな事があったってわけだ。中々に有意義な時間だった。将来店を構えるにあたって何をどうすればいいのかっていう部分では、大いに勉強になった1日だった。」

 

シルヴィア「1日バイトをしていたんだ……それっていつ申し込んでたの?」

 

八幡「シルヴィが仕事が入ったから今日一緒に出掛けられないって知った1時間後。」

 

シルヴィア「すごい行動力だね……しかもそれでよく通ったって言いたいよ。きっと店先の店長さん、ちょっと動揺していたんじゃないの?」

 

八幡「電話越しから聞いた声はそんな事なかったけどな……意外と話せる人だったし。」

 

 

寧ろあの店はアットホームな感じがするから俺でも居心地が良く感じた。もしバイトをするんだったら、ああいう店にしたい。

 

 

八幡「そういやシルヴィの方はどうだったんだ?成功したのか?」

 

シルヴィア「そうだね。私がイベントに出るから、雰囲気に飲まれちゃうんじゃないかって心配だったんだけど、ちゃんと自分を出せていたから、イベントは成功したと言えるよ。」

 

八幡「そりゃ何よりだ。現役の超スーパーアイドルからこんなに高評価も頂けて嬉しがっているんじゃないか?」

 

シルヴィア「直接は言ってないけどね。でも確かにあの子は肝が据わってるね。実は、私が出てきた時点で圧されるんじゃないかって思ってたんだ。でもあの子はちゃんと自分の持ち味を出しながらイベントを盛り上げていた。後輩の成長ってなかなか良いものだね。」

 

 

感慨深く感じるものだからな。この後輩がもし同じ舞台に立っていたら、『あぁ〜、俺も昔は此処から始まったんだよなぁ。』って共感出来るからな。まぁ俺にはそんな後輩いないけどな。

 

 

八幡「昔の自分を見ているように感じるからか?それとも、単純にそう思っているだけか?」

 

シルヴィア「内緒♪それにしても、八幡くんまた料理の腕が上がってるね。このオムライスすごく美味しいよ。ライスもそうだけど、このソースが美味しいよ!」

 

八幡「これはオイスターソースに蜂蜜、デミグラスソースを使っている。中のリゾットとは全く風味が違うから、一緒に食べるとより深みが増して美味くなるってわけだ。このメニュー出したら、後半はこれしか出てこなくなったから、ちょっとつまらなかったけどな。」

 

シルヴィア「まぁまぁ、それだけこの料理が美味しかったって事なんだから。八幡くんの料理を高評価してくれたんだから、あまり気にしないでよ。」

 

 

しかも店長から『この料理のレシピをぜひ教えて欲しい!!』なんて言われた時にはビックリしたもんだ。その場の発想ではないが、面白半分博打半分で作った品なんだけどな。

 

 

八幡「なんか今日はお互いに色々あったんだな。」

 

シルヴィア「そうみたいだね。よく分からないけど、報告会みたいになっちゃったね♪」

 

八幡「だな。偶にならこんな日も悪くないな。本当に偶でいいから。」

 

シルヴィア「そうだね。私2日間八幡くんに会えなかったら、絶対発狂してるもん。」

 

八幡「いや、それはそれで止めてくれ。発狂はやり過ぎだって。」

 

シルヴィア「もうっ、冗談だよ〜。」

 

 

いや、全く冗談に聞こえなかったよ?何なら1度2日間だけ居なくなってあげよっか?そしたら本当かどうか実験出来るしね。

 

 

シルヴィア「でも気になったんだけどさ、そのお店ってこの後大丈夫なのかな?」

 

八幡「ん?どうしてだ?」

 

シルヴィア「だってさ、今日は八幡くんがバイトとして入ったでしょ?それだけで1日すごいことになったわけだから、もしこれが明日も続いたらって考えてたんだ。」

 

八幡「……………これは俺が残した試練なのだ。彼女らスタッフには頑張ってもらわねば。」(キリッ)

 

シルヴィア「カッコいいこと言ってるけど、要は考えてなかったんでしょ?今後の事。」

 

八幡「正直に言うとYESだ。だって俺〜、1日バイトの身分だし〜。」

 

シルヴィア「こらっ、棒読みにならないの!まぁでも、これは八幡くんの責任ではないから、この後は彼らで頑張るしかないよね。」

 

 

まぁ、俺は彼からがこの試練を乗り越えられることを祈っておくとしよう。

 

 

そしてその後の明後日に、1日バイトをした店先から電話が掛かってきて、『正式に社員にならないか!?』という打診があった。いや、永久予約があるんで無理っす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





取り敢えずはこんな感じで一区切りというところですね。

さて、この後は俺ガイル×アスタリスクの路線から外れて俺ガイル×競馬というものをやってみたいと思っております!

ウマ娘とのコラボと思う方もいるかもしれませんが、ウマ娘とのコラボではありません!

八幡が騎手であらゆる名馬に乗るという話を作っていきたいと考えています。

もし宜しければ、新作の方もよろしくお願い致します!



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撮影の依頼


皆様、活動報告は見て下さったでしょうか?

見ていない方は、こちらよりご案内します。

昨日(正確には今日の深夜)『やはり俺の騎手生活は暗くな道のりなのは間違っていない。』を削除いたしました。

詳しい内容は活動報告をご覧ください。大した内容は記載してませんけど………

暫くは『比企谷八幡のあり得ない六花生活』を執筆して行く予定です。

では、どうぞ。


 

シルヴィアside

 

 

シルヴィア「それでさ八幡くん………こんなことをお願いするのは少し気が引けるんだけど、引き受けてくれないかな?」

 

八幡「………」

 

シルヴィア「ペトラさんは報酬は弾むって言ってるから、もし足りなければ八幡くんの希望の金額を提示するからさ………ダメかな?」

 

八幡「けどよ……これってアリなのか?」

 

シルヴィア「クインヴェールでも初めての試みだから、やってみたいんだって。」

 

 

私は今、八幡くんにお願いしている。それは皆見ていればわかると思うんだ。けど、その内容が八幡くん的には余り好ましくないことだから、私個人的には余りしたくない。けど、ペトラさんから言われた事だから無碍にもできないから、こうして伝えているけど、なんとも微妙な顔をされているってわけなんだ。

 

 

八幡「俺以外にもいるだろう。」

 

シルヴィア「因みに言うよ?私が八幡くん以外の男の子と肩を組んでたら?」

 

八幡「撮影終わったら、裏に呼んでお話する。」

 

 

……それは後で怖い目に合わせるパターンだね。

 

 

シルヴィア「今六花で知られている私たちだからこそ、やって欲しい依頼だって………私も反対したんだよ?八幡くんは写真を撮られるの嫌いだからって。でもどうしてもって先方のお願いだったみたいだから……」

 

八幡「それなら俺に確認をまずして欲しかった。いきなり結婚衣装を着ての撮影なんて言われても、10人中10人絶対驚くぞ。」

 

 

そう、私が八幡くんにお願いしている事は、結婚衣装を着てのプロモーション撮影。しかもプロモーションだから写真だけじゃなくて動画も撮るの。だから八幡くんにはお願いしたくなかったんだ………私、八幡くんの嫌がることなんて絶対したくないもん!

 

 

八幡「けど、撮影者は何人いるんだ?」

 

シルヴィア「そこなんだけどね……私と八幡君の2人だけみたいなの。」

 

八幡「俺とシルヴィ2人?」

 

シルヴィア「うん。」

 

八幡「要するに、他にめぼしいカップルやらイケメン美少女がいなかったから、俺らに白羽の矢が飛んだってわけ?」

 

シルヴィア「身も蓋も無いけど、そんな感じ。」

 

八幡「それ以外にも何かやりそうで怖いんだけど。大丈夫なのかそれ?」

 

シルヴィア「一応、クインヴェールの殆どの生徒がその出版社にお世話になってて、六花の中でも有数の会社だからさ、ペトラさんも断りづらかったんだと思うんだ。」

 

八幡「おいおい、そんな事言われたら余計断りにくくなるだろ。しかもシルヴィと一緒にだろ?結婚式の衣装で撮影ってのはご褒美でもあるが、罰ゲームでもあるな。あっ、罰ゲームってのは撮影のことだからな?それがなければただのご褒美です。」

 

シルヴィア「分かってるよ。それでどう?引き受けてくれる?」

 

八幡「一応その出版社には伝えておいてくれ。余り刺激的な撮影をするならお断りするって。」

 

シルヴィア「っ!じゃあ!」

 

八幡「あぁ。引き受ける。日時は?」

 

シルヴィア「1番早くて1週間後にエルナトで撮影予定。八幡くんの承認で決めてたから。」

 

八幡「全部俺に責任飛んでくるようなことないよね?あったら怒るよ?」

 

 

良かったぁ………引き受けてくれて。

 

 

ーーー寝室ーーー

 

 

八幡「けどそれって普通の衣装なのか?和装だとかその辺はどうなんだ?」

 

シルヴィア「衣装はタキシードとドレスみたい。和装だと白塗りしなきゃいけないから、私のイメージが下がるって。」

 

八幡「まぁシルヴィは和装よりもドレスだろうな。シルヴィの和装なんて初詣くらいしか見ないし。」

 

 

私もそう思う。和服を着るのは初詣とかだけで充分かな。着付けとか大変だからね。

 

 

シルヴィア「結婚かぁ……私たちが付き合ってからもう6年なんだよね。」

 

八幡「………そうだな。」

 

シルヴィア「色んな事があったよね。もし、結婚式が開かれたとしたらさ、色んな思い出が頭の中で回想されてくのかな?」

 

八幡「俺はするだろうな。多分、六花に来てからの物語から。その前は思い出す価値無いし。」

 

シルヴィア「そっか………」

 

 

………もし八幡くんの回想なんてされたら、私泣いちゃうかもしれないよ?

 

 

シルヴィア「そろそろ寝ない?明日もデートがあるから。寝坊したら大事件だよ。」

 

八幡「それは怖いな。寝坊したらシルヴィに叩き起こされちまうからな。」

 

シルヴィア「私叩かないもん!優しくナデナデするもん!抱き枕になってるもん!」

 

八幡「いや、お互いに抱き枕になってるんじゃないか?俺にはその方が自然に思えてくる。」

 

 

………うん、そうだね。私と八幡くんがお互いに抱き合ってるのが、1番自然だね。

 

 

八幡「んじゃ、明日の為にも良い抱き枕と一緒に寝るとしますか。」

 

シルヴィア「そうだね。私は良い抱き枕に身体を抱き締めてもらおうかなぁ〜。その方が安心して眠れそうだしね〜。」

 

八幡「そうみたいだな……んじゃ、おお休み。」

 

シルヴィア「うん、お休み。」

 

 

私たちは就寝の挨拶をお互いの顔を見つめ合いながら交わしてから、互いの唇を合わせた。魔法のように口から全身へと幸せが流れ込んでくる………

 

 

私はもう、八幡くんには勝てなさそうです♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アレ?八シルってこんな感じだったっけ?
久々過ぎて感覚が忘れてしまっているようです。


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撮影開始……

 

 

八幡side

 

 

撮影日当日、俺とシルヴィは撮影場所まで車で乗せて行く事になっている。今は移動の最中で隣には男のロマンとも呼ぶべき果実2つを俺の腕にくっつけて、肩に頭を乗せながら甘えているシルヴィアさんがいる。そこの運転手さん、そんなにチラチラ見るんじゃありません。バレバレですからね。

 

 

シルヴィア「やっぱり八幡くんと過ごす2人の時間は全く飽きないなぁ〜。」

 

八幡「飽きられたらちょっとな……ん?シルヴィ、シャンプー変えたか?」

 

シルヴィア「え?何で?いつもと同じだよ?私たち一緒に住んでるんだから、同じのに決まってるじゃん。突然どうしたの?」

 

八幡「いや、いつもより良い匂いがするなぁ〜って思ってな、俺の気のせいか?」

 

シルヴィア「気のせいだよぉ〜。でもそういうのあるよね。同じシャンプー使ってるけど、自分よりもすごく良い匂いがするって時。」

 

八幡「俺なんかお前で常に思ってるけどな。」

 

シルヴィア「やっぱり?」

 

八幡「同じシャンプーでここまで違うもんか?って思う時多いぞ。シルヴィ、なんか使ってない?」

 

シルヴィア「なぁ〜んにも♪」

 

 

シルヴィは面白そうにそう答えると、俺の肩から膝に頭を移動させて来た。

 

 

八幡「今度は膝枕か?」

 

シルヴィア「帰りは私がやるからさ。」

 

八幡「ならば許す。」(ナデナデ)

 

シルヴィア「♪〜」

 

 

頭を撫でた瞬間、シルヴィアは目を細めて嬉しそうにしている。運転手さん、前青ですよ?運転に集中してくださいね〜。

 

 

ーーー撮影場所ーーー

 

 

監督「よく来てくれたね〜!!うん、うん!やっぱり絵になる2人だよ〜!これはもう100点満点の写真と動画が撮れるまで続けるつもりで行くよ!皆〜、今日は張り切って行くよ〜!」

 

 

………ノリノリだな。

 

 

監督「じゃあ2人は早速着替えてもらおうかな。更衣室はあそこになってるから。あっ、2人はタキシードとドレス着たことあるかな?」

 

八幡「あります。」

 

シルヴィア「大丈夫です。」

 

監督「それなら大丈夫そうだね。比企谷くんなら1人でも大丈夫そうだけど、シルヴィアちゃんは何かあったら言ってね。すぐにお手伝いするから。それじゃあお着替えしてきてね!」

 

 

ーーーお着替え中(八幡)ーーー

 

 

八幡「……スーツなんていつ以来だ?エルナトで夜のパーティで歌った時以来か?にしてもあの時は黒だったけど、今回は純白とはな……まぁ着替えるけどさ。」

 

 

ーーーお着替え終了ーーー

 

 

八幡「………やっぱ動き辛いな。普段から漢服なんて格好をしているからか?」

 

監督「お、おぉ……良い!良いよ比企谷くん!!」

 

八幡「と、どうも………」

 

 

この監督熱入りすぎだよ……周りの人たちも少し引いてるし。ていうか女性のスタッフはなんで目を逸らしてるわけ?俺に白ってそんなに見るに堪えないって事?

 

 

シルヴィア「八幡く〜ん!」

 

監督「おっ、シルヴィアちゃんもきが……え……○☆$#*♪:=¥+!!?」

 

 

………どしたの、監督さん?言葉が変になる程ヤバいって………お、おぉ〜……

 

あれって本当に人間?

 

 

シルヴィア「えっと……似合ってる、かな?」

 

八幡(……なぁ、俺の目の前にいる人って本当に俺の彼女?綺麗になり過ぎじゃないの?いや普段から綺麗だけどさ、さらに拍車がかかっちゃってるよ。シルヴィ、これ撮影とかどうでもいいから結婚しよう。今すぐ。」

 

シルヴィア「え、えぇっと……結婚は、お、お受け致します/////でも今日は撮影だから、その………そっちを優先に、ね?」

 

八幡「え?なんで俺の考えてる事が………」

 

シルヴィア「と、途中で声に出てたもん/////」

 

八幡「そ、そうか……///」

 

 

2人から出される甘々な空気に誰もが釘付けになっていた。そのせいもあってか、スタッフ全員が撮影の準備に取り掛かれていなかった。

 

 

ーーー写真撮影ーーー

 

 

監督「じゃあ最初はカーペットの真ん中で撮るからね!2人は腕を組んで斜めでお互いを見るように見つめ合ってね!」

 

シルヴィア「は〜い!じゃあ八幡くん、エスコートをお願いね。」

 

八幡「あぁ、分かってるよ。」

 

 

俺とシルヴィは早速腕を組んだ。シルヴィは指示には出されてなかったが、軽く微笑んでいた。俺もそれに答えてほくそ笑むようにして笑ってみた。

 

 

監督「い、良い……良いよ!!カメラさん!!10枚は撮るよ!!今の2人の顔、最高だからね!!そのまま維持して!!」

 

 

………どうやら期待に添えられたようだ。しかもシャッター音が凄まじい。

 

 

監督「かあぁぁぁぁ!!!僕の選んだ目に間違いはなかった!!このまま次行くよ!!次は式典の真ん中でお互い向かい合って見つめ合って!!あっ、雰囲気作りとかは2人に任せるからね!!」

 

 

もはや丸投げみたいな指示になってるが、それなら任せろ。演技は得意な方だし、シルヴィに至ってはアイドルだ。アドリブでも応えてくれるだろう。

 

 

八幡「シルヴィ…いや、シルヴィア。漸くだな。」

 

シルヴィア「……うん、これからはずっと一緒にいられるね。」(うるうる)

 

八幡「あぁ、ずっと一緒だ。」(テ ギュ)

 

 

………あっ、またも指示にないことをしてしまった……監督さんも俯いてるし。手を握ったらダメだったか?

 

 

監督「………サイコオォォォォォ!!!!撮れぇぇぇい!!!お前ら撮れいぃぃ!!!あの顔は絶対逃したらアカンヤツやぞおぉぉぉ!!!連射で撮るんじゃあ〜!!!」

 

 

……………監督のキャラが分からなくなってきた。監督さんのおかげでシャッター音やフラッシュが全く気にならなくなってる俺がいる。

 

 

シルヴィア「す、凄い人だね………」

 

八幡「あぁ。あの監督、仕事になると人が変わるってヤツか。」

 

監督「ゼェ……ゼェ……ご、ごめん。取り乱しちゃって。つ、次の撮影だけど、簡単にしようか。2人は寄り添うようにしてもらえるかな?比企谷くんはシルヴィアちゃんの肩に手を置いて自分に抱き寄せるようにして!シルヴィアちゃんはこれでもかってくらいのとびっきりの笑顔を比企谷くんに見せてあげて!!八幡くんもさっきの笑顔でシルヴィアちゃんを見つめてね!!

 

 

………サムズアップせんでいいわ。まぁこれなら発狂することもないだろう。けど、雰囲気作りは俺たちに任せるって言ってたから、シルヴィはノリノリで俺に振ってくるだろうな。

 

 

シルヴィア「八幡くん、これからもずっと一緒だからねっ♪」(ニコッ!)

 

 

八幡(ほらな?見てよコレ、満面の笑みだよ。)

 

 

八幡「あぁ、ずっとだ。」

 

 

もうなんか監督の反応見るの楽しみになっちまったよ。次はどんなだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監督「………皆、後は任せた。とりあえず僕から言えることは1つだけ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャッター押しまくれ野郎共オオォォォォォォォ!!!!!押さん奴は給料抜きじゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」(鼻血ブシャー!!)

 

 

………ぶっ壊れた。

 

 

 

 

 

 

 





これ、メイン監督さんじゃね?何だか八幡とシルヴィアが準メインみたいになってる気がするような………


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昼食と帰り道

 

 

シルヴィアside

 

 

漸く撮影(写真撮影の方)が終わった。後はプロモーション動画を撮るだけになったんだけど………監督さんの気合と熱が物凄過ぎて、私と八幡くんは若干引いちゃってるんだ。さっき向こうのスタッフさんに聞いたんだけど、

 

 

『あぁ〜アレですか?よくあるんですよ、自分の想像してた以上の絵が出来たら凄いテンション上がるんです。』

 

『“最高の1枚を撮るまでは続ける”っていうのがポリシーみたいでして……でも、こんなに早く終わったのは初めてかもしれません。写真とプロモーションを兼ねてやってるんですけど、最長で6時間もフルにやってた時もあったんです。あの時は本当に疲れました………本当に。』

 

『撮影が終わっても不充分な点があったら、すぐに撮り直しなんです。熱心なのは伝わりますが、こちらとしてはそれに見合った金銭を要求したいくらいです。』

 

 

………少しだけスタッフさんもやつれてた感じがあったかな。でも文句を言いつつもそれに着いていくってことは、慕われてるって証拠だから、全然悪い人じゃないって事だよね。見てても分かるしね。

 

 

監督「いや〜撮影の途中なのに倒れてしまって申し訳ない。あまりの光景につい………」

 

八幡「いえ、それはいいんですが……途中からは副監督の指導でやっていましたので、監督の思うような写真が撮れていないかもしれません。」

 

シルヴィア「もしあれば言ってください。私たちも出来る限り、監督の理想像に近づけたポージングや表情をしていきますので。」

 

監督「ありがとうねぇ〜。」

 

シルヴィア「あっ、スタッフの皆さ〜ん!昨日、私と八幡くんとでクッキーとパンを焼いて持って来たんです!よければ食べて下さい!」

 

八幡「因みにパンはクロワッサンとハムチーズ、ツナマヨに照り焼きがあります。」

 

 

その瞬間、スタッフの皆は獲物を得た猛獣のように詰め寄ってきた。取り敢えずは各種20個くらい作ってあるから問題は無いと思う。えっ?持参方法が知りたい?

 

………八幡君の影って便利だよね♪

 

 

スタッフ1「う、う、う……美味い!!!なんだコレ!!今まで食べたどのパンよりも美味い!!」

 

スタッフ2「毎日食べても飽きないくらい美味しいわ!どうやって作ってるのかしら!?」

 

スタッフ3「クッキーなんて色んな味があってどれも個性的だわ!」

 

スタッフ4「あぁ……お持ち帰りしてぇよ、このパンとクッキー。」

 

 

おぉ………さすがは八幡くん特製のパンとクッキーだね。たった一口で皆を虜にさせちゃったよ。皆ほっぺたがリスみたいになってるよ。

 

 

八幡「気に入って頂けたようで何よりです。さて、俺たちも食べるか。」

 

シルヴィア「うん、そうだね。」

 

 

私たちも持参してきたパンがあるから、それを食べます。あっ、スタッフさんにあげたのと同じやつだから大丈夫!皆平等は大事っ!

 

 

ーーー休憩終了ーーー

 

 

監督「それじゃあ今度はプロモーションビデオの撮影に移るよ。」

 

シルヴィア「写真は大丈夫でしたか?」

 

監督「あぁ、全く問題なかったよ。それどころかどこに不満があるのか教えて欲しいくらいの出来栄えだったよ。」

 

シルヴィア「それは良かったです。じゃあビデオ撮影はどんなことをすれば良いんでしょうか?」

 

監督「あぁ、それなんだけどね。2人のやりたいようにやってみてくれるかな?」

 

2人「え?」

 

 

どういう事?

 

 

監督「君たちがもし、これが本当の結婚式だったらどうするか……この場を本番だと思ってやってみて欲しいんだよ。出来るかな?」

 

 

………ならまずは雰囲気作りから始めたいかなぁ。後は私たちがどんな風に動くか。

 

やっぱり一緒が良いよね、後は………ちょっとだけ本番に近い形にしたいから、プロモーションの人たちには苦労をかけるかもだけど……

 

 

八幡「シルヴィ、良い案が浮かんだようだな。」

 

シルヴィア「もしかして八幡くんも?」

 

八幡「いや、俺は何も。この手に関してはお前の方が良いのが浮かびそうだと思ったから、顔を眺めていた。間違ってないだろ?」

 

シルヴィア「うん♪監督さん、撮り方とか映像作成に関してなんですけど………」

 

 

ーーー説明中ーーー

 

 

シルヴィア「っていう風にしてみたいって思ってるんですけど、あの……どうでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監督「………さいだ。」

 

シルヴィア「え?」

 

監督「天才だ。まさかそんな演出の仕方があったなんて………なんで今まで思い付かなかったんだ!その案、すぐに実行しよう!!作成についても君の言う通りにしようと思っている!」

 

シルヴィア「ど、どうも……」

 

監督「よし、じゃあ皆!!撮影の準備だ!!」

 

 

ーーー準備中&完了ーーー

 

 

スタッフ「それでは行きます……アクション!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「いやぁ〜1発撮りでOKもらって良かったよ〜!」

 

八幡「あれで貰えなかったらお前どうなってたんだ?また1から練り直してたんじゃねぇのか?」

 

シルヴィア「そうかもっ♪」

 

 

行きは車で送ってもらったけど、帰りは私たちの希望で歩きにして貰った。その方が落ち着けるから。

 

 

八幡「にしても、パン大好評だったな。まさか余りも無いとは………クッキーもだけど。」

 

シルヴィア「ここだから言うけどさ、あのパンもクッキーも八幡くんの暇潰しで作ったものでしょ?八幡くん的にはどうなの?」

 

八幡「あぁー………ちょっと微妙だな。あっ、勿論今朝焼いたのは本気で焼いた奴だからな!俺とシルヴィの昼食用に食べるパンだし、そこは絶対に手を抜かねぇ!」

 

シルヴィア「それはどうもありがとう♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





八幡、暇潰しでスタッフさんの頬を落とす程とは………


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※マネージャーの苦労


今回はある意味苦労人のあの人に出張ってもらいました。




 

 

???side

 

 

はぁ………まただわ。本当に懲りないわね?あの一件から私はもう組まないって決めてるのに、どうしてこうもしつこいのかしら?しかも何よ?『御社の』って。ウチは会社じゃなくて学園だというのを理解していないようね。まずそこから始めることをお勧めするわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あぁ、ごめんなさいね。いきなり愚痴みたいな始まり方になってしまって。私はクインヴェール女学園の理事長、ペトラ・キヴィレフトよ。クインヴェールの運営母体であるW&W(ウォーレン&ウォーレン)の幹部も兼任しているわ。見ての通り、今アイドルのコラボ企画についてのオファーを処理しているのだけど、オファーしてくれたどの社も有力な歌手が多いのだけど、シルヴィア(あの子)と比べるとどうも見劣りするのよねぇ。あの子がいけないのかしら?

 

でもやっぱり1番の理由はシルヴィアの彼氏にあるわね。だって彼とシルヴィアの初めてのライブをする前のスタジオ練習なんて、柄にもなく本当に驚いたわ。本当にウチにスカウトしたいくらいだもの。まぁそれは断られたからいいんだけど、彼の歌声と他の者の歌手を比べても、やっぱり………えぇ、すごく差があるわ。

 

 

ペトラ「早く済ませないといけないわね。さて、内容は………」

 

 

______________________________________________

 

・To:ペトラ・キヴィレフトM(マネージャー)

・From:○○社M

______________________________________________

 

キヴィレフトMにおかれましては益々のご清祥のこととお慶び申し上げます。今回、このメールを送信させて頂きました理由は、貴校に在籍しておられる生徒で、キヴィレフトMが担当されているアイドル、シルヴィア・リューネハイム殿とのコラボを企画したいと思っております。

 

つきましてはーーー

 

______________________________________________

 

 

あぁーもういいわ。このメール今日何通目?数えるのも面倒だから50通目からもう数えてないわ。お願いだからもうコラボの話はやめてちょうだい。シルヴィアも私もコラボする相手はもう1人しか決めていないもの。それにシルヴィアも永久予約が入ってるから無理だの何だの言っているから、この先何があってもコラボの話は無理ね。

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

ペトラ「はぁ………やっと片付いたわ。」

 

 

あれから処理をしてメールや手紙の数を数えたのだけど、凄い数字だったわ。

 

 

・シルヴィアとのコラボ企画についての手紙やメールの合計が124件。

 

・雑誌に載せるアイドルについての書類が3件。

 

・シルヴィアの写真集についてのお問い合わせや新作集についてが2件。

 

その他の書類、15件。

 

合計で144件。

 

 

ペトラ「………雑誌や写真集とか、他の書類はまだ分かるけど、コラボの企画多過ぎなのよ!大体何でそんなにコラボしたいのよ?八幡くんと最初に組んだコラボ以来、組んでない事情を察しなさいよ!私もシルヴィアも八幡くん以外とは誰ともコラボさせたくないのよ!お願いだから理解して!私も同じ文章送るのもう飽き飽きしているのだから!」

 

 

コンコンッ

 

 

ペトラ「入りなさい。」

 

シルヴィア「失礼します。あれ、お邪魔でした?」

 

ペトラ「いえ、今ちょうど終わったところよ。貴方と組みたい件についてまた大量に来ていたのよ。」

 

シルヴィア「コラボ企画ですか?私も八幡くん以外とはコラボをするつもりはないって、仕事用のアカウントで載せてはいるんですけど、誰も見てないんでしょうか?」

 

ペトラ「見てるけど認めたくないのでしょうね。今時手紙で送りつけてくるなんて……気持を込めてるつもりなのでしょうけど、八幡くんの声を聞いた後だと、他の人の声ってなんか物足りないのよね〜。」

 

シルヴィア「分かります!八幡くんと他の人のと比べてみても、やっぱり違うんですよね〜。八幡くんのは歌っている中に躍動感も混ぜ込んでて、重層感もあるんですよ!あぁ〜また聴きたいなぁ……ペトラさん!企画とか出来ないんですか!?」

 

ペトラ「出来るけど、スタジアムの予約とか、チケットとか色々あるでしょ?」

 

シルヴィア「そっかぁ〜……そうですよね〜。あっ!じゃあ一層の事、商業エリアのど真ん中で板と瓶ケースを持ってきて「止しなさい。」」

 

 

この子、どれだけ一緒にやりたいのよ?

 

 

ペトラ「そんなに歌いたいのなら、カラオケにでも行けば良いじゃない。」

 

シルヴィア「だってカラオケだとつまんないんだもん!やっぱり大舞台で八幡くんの声を聞きたい!八幡くん全然違うんですよ!?カラオケで歌う声と舞台で歌う声って!」

 

ペトラ「そう………」

 

 

………1度、シルヴィアから彼を借りてみようかしら?違いが分かるかもしれないわ。

 

 

シルヴィア「言っておきますけど、八幡くんは私のですからね?誰にも貸しませんからね?」

 

 

………何で分かるのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 





本編ではありませんが、このコーナーです!

もしもこんなやり方だったら?

『ダンジョンの世界で』







シルヴィア「もう戦いたくないっ!誰も傷つけたくないっ!1人になりたくないっ!死にたくないっ!助けてっ!!」(ポロポロ)

男「この役立たずガァ!!」

シルヴィア「キャアァァー!」

八幡「っ!!」


八幡は格上の相手に刀を用いて挑んで行った。


激闘の末、八幡は傷だらけの状態だった。だが相手の男を倒して倒れているシルヴィアのところまで行き、上半身を起こした。


八幡「っ!………誰だ?」


遠くには銀髪で黒のドレスを着た女性が崩れた塔の階段に立っていた。何かを喋っていたが、この距離では聞こえなかった。







シルヴィア「んっ……八幡……くん?」

八幡「っ!」

シルヴィア「………」

八幡「………お前を、助けに来た。」

シルヴィア「っ!!」


八幡はシルヴィアの首についている鉄製の首輪に触った。途端にその首輪は粉々になった。

するとシルヴィアは首輪があった首を抑えながら涙を流した。


シルヴィア「こんな……こんなに傷だらけに………」

八幡「………」

シルヴィア「ありがとう……ありがとう、私の……私だけの英雄様っ!」(ポロポロ)







はいっ、ここまでです!この話を見た瞬間、『最高かよっ!』って思いました。何回も何回もこのシーンだけ再生し直しました。皆さんは何のアニメか分かりますか?


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店開き?

 

 

八幡side

 

 

………

 

………………

 

……………………………

 

…………………………………………………

 

 

八幡「………なぁ、シルヴィ。」

 

シルヴィア「なぁ〜にぃ〜?」

 

八幡「俺さ、今思う事があるんだが、口に出してもいいか?」

 

シルヴィア「奇遇だね、私もなんだ。じゃあさ、せ〜ので同時に言ってみようよ。」

 

八幡「了解。」

 

シルヴィア「いくよ?せ〜のっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人「退屈。」

 

 

そう、退屈なのだ。2人で出かけるのも良いんだが、もう六花の行きつけスポットや隠れ名店や娯楽施設は殆ど行き尽くしてしまったのだ。故にめぼしいお店や行ってみたいお店がどこにもないわけで、家で2人揃ってダラダラしているというわけだ。

 

 

シルヴィア「あぁ〜……やること無いって本当に暇なんだね。」

 

八幡「毎日出掛けてたからな。そうでない日は家で取り敢えず遊べることをしてたくらいだが……遊ぶって気分じゃないんだよな………」

 

シルヴィア「うん、私も。なんだか身体を働かせたい。戦闘以外で。」

 

 

シルヴィの言う通りだ。体を動かしたいとは思うが、激しい運動はしたくない。なんか無いかねぇ?

 

 

八幡「いっそ屋台でもやってみるか?今からなんか作って売るとか………まぁ肝心な屋台が無い………何だその『それだよっ!』って目は?屋台がないって言ったよね?」

 

シルヴィア「八幡くん!界龍に行こっ!今すぐ!ほら早く支度してっ!」

 

八幡「え、あっ、ちょ、おいっ!」

 

 

ーーー界龍第七学院ーーー

 

門番2人「お疲れ様です、宗師!奥方様!」

 

八幡「おう。」

 

シルヴィア「うん、お疲れ様っ!」

 

 

シルヴィに手を引っ張られながら連れてこられた我が校だが、シルヴィが何をしに界龍まで来たのかサッパリ分からない。

 

 

シルヴィア「♪〜」

 

八幡「なぁ、何処に行くんだ?」

 

シルヴィア「んー?星露の場所!」

 

 

ーーー黄辰殿ーーー

 

 

星露「荷車?」

 

シルヴィア「そうっ、普通の荷車!あるかな?」

 

星露「お主ら、一体何に使うつもりじゃ?」

 

八幡「ちょっとな。それで、どうなんだ?」

 

星露「まぁないこともないがのう………まぁ、タダでとはいかんぞ?」(ニヤニヤ)

 

シルヴィア「あっ、そういうのいいから。」

 

星露「………歌姫殿や、段々と八幡に毒されて似てきておるのう………」

 

シルヴィア「ホント?ありがとう♪」

 

星露「褒めとらんわい!!」

 

シルヴィア「それよりも早く交渉しようよ。」

 

星露「………あの時の歌姫殿は何処へと行ってしまったのじゃ。」

 

 

その後、問題なく荷車は手に入って俺たちは帰路に着いた。しかもちょうどいい事に、荷車は屋台型だった為、手間が省けたような気がする。勿論荷車は色々とオハナシをしてタダで貰いました。え?脅して?いえいえ、オハナシです。

 

 

ーーー家ーーー

 

 

八幡「それで?荷車も手に入ったが、一体どうするんだ?しかも木材やその他の工具用品までまで買ってきてよ………」

 

シルヴィア「………八幡くん、今からこのみすぼらしい屋台型の荷車を私たちの手で素晴らしい姿へと変えていきます!」

 

八幡「みすぼらしいは無いだろ……それで?」

 

シルヴィア「第1回荷車大改造計画〜♪」(メガネ)

 

八幡「おぉー。」

 

 

………いつの間に眼鏡かけたの?

 

 

シルヴィア「ここに作成図と完成図があります!八幡作業員はこの形に沿って木材を切って加工して合わせていってください!もちろん私もやります!因みにこの屋台、調理器具は勿論、コンロもつけていくからね!その辺り厳しく行くからね!」

 

八幡「お、おぉ……」

 

シルヴィア「よしっ!じゃあ早速作っていこう!」

 

八幡「すいません、シルヴィア棟梁。」

 

シルヴィア「ん?何かな?」

 

八幡「さっき切るって言ってましたけど、何で切るんですか?鋸も無いですけど……」

 

シルヴィア「そこはほら、八幡くんの祢々切丸の出番だよ!」

 

八幡「刀を工具代わりにするなよ………じゃあ打ち込むときの釘は?」

 

シルヴィア「あっ、ハンマーと金槌ならあるから大丈夫!」

 

八幡「そこは鋸も用意して欲しかった。」

 

 

祢々が泣くぞ………

 

 

ーーー2時間後ーーー

 

 

シルヴィア「完成〜!!」(バンザーイ)

 

八幡「おぉー。」(パチパチ)

 

シルヴィア「漸く私たち特製オリジナル屋台が完成したね!それじゃ八幡くん、この屋台のお披露目はメニューも何も決めてないから未定として、まずはメニュー作りから始めよう!」

 

八幡「まずはそこから行うべきだったのでは?」

 

 

ーーー家内・居間ーーー

 

 

シルヴィア「………あ、あのさ八幡くん。」

 

八幡「ん?何だ?」

 

シルヴィア「えっと、なんか今日はゴメンね?」

 

八幡「?何がだ?」

 

シルヴィア「えっと、八幡くんが『屋台でもやってみるか。』って言った時、凄くやりたくなっちゃってさ、その後もなんだか有無を言わない勢いで付き合わせちゃったから………」

 

八幡「あぁ、確かにな。けど気にすんな。そのおかげで今日1日暇を潰せたんだ。それに、これからも暇な日は屋台を出して行けばいいって訳だろ?ならいいと思うぞ。」

 

 

これから先、今日みたいに暇な日が増えるだろうしな。まあシルヴィアはまだ現役アイドルだから六花の外に行く日もある。その時は1人で何もない時に店を開くのもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 



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シルヴィア「路上販売、始めます!」

 

八幡side

 

 

シルヴィア「さて八幡くん、準備はよろしいかな?この時間は晩御飯を作る為に食材を買う奥様!お腹を空かせた学生諸君!会社帰りにお惣菜を買う会社員!居残り作業をする為に夜食を買う会社員!お菓子を買う為にポケットにお金を隠す子供達!見てるこっちが癒されるくらい微笑ましく今日の献立を決める老夫婦!沢山の人達がいます!」

 

八幡「そ、そうだな………(何このテンション?いきなり呼ばれてソファに座らせられたと思ったら、何でこんな演説みたいな事を?)」

 

シルヴィア「今日は待ちに待った、路上販売をしようと思います!話はしたよね?」

 

八幡「あぁ、聞いてる。けどなんでこんな事を?」

 

シルヴィア「雰囲気付け?」

 

八幡「なんの?」

 

 

路上販売するのに雰囲気付けも何もないでしょうに。ていうか順路とかシルヴィに任せてたけど、大丈夫だよな?

 

 

シルヴィア「因みにだけど、最初は行きつけのスーパーがあるでしょ?あそこで1時間くらい止まって売ろうと思ってるんだ。あっ、許可は取ってあるから安心して。」

 

八幡「いつ取ったんだよ………」

 

シルヴィア「その次が中央エリアと行政エリアに行って歩きながら販売して行くよ。そこからは外に回って外縁居住区で公園とかによりながら催促をしていきます!合計で2時間を目安にしています!」

 

八幡「おぉ〜……なかなか良いプランだな。」

 

シルヴィア「でしょ〜♪それでね、もし売れなかったらなんだけど、その場合ってどうしよう?」

 

八幡「俺が全部界龍の奴らに上げてくるわ。飛んで食いついてくるだろ、虎峰が。」

 

シルヴィア「ふふふっ♪じゃあ売れ残ったら界龍の皆にあげるっていうことで!それじゃあやって行きましょう!」

 

 

ーーー行きつけのお店(スーパー)ーーー

 

 

スーパーに着く前からもう並んでるんですけど?まだ開店してないよ?何で並んでるの?メニューすら出してないのにどうして?

 

 

シルヴィア「ありがとうございます、店長さん。」

 

店長「いえいえ、いつもお2人にはご贔屓にさせて頂いておりますからね、これくらいの事はさせて下さい。あっ、私も30分したら上がりなので、その際には寄らせてもらいますね。」

 

シルヴィア「はい、お願いします!」

 

店長「では、頑張って下さいね。」

 

 

朗らかに笑いながら店長は店に戻って行った。

 

 

八幡「そんで?俺はどうする?やっぱ作る側の方がいいか?」

 

シルヴィア「うん、八幡くんはひたすら作って。私はレジ兼フォロー担当。それでもいいかな?」

 

八幡「あぁ。いざとなったら索冥を呼ぶから安心しろ。俺はもう作るから、取り置きの分を売っといてくれ。頼むぞ相棒。」

 

シルヴィア「任せてバディ♪皆さ〜ん!お待たせしました〜!本日初っ!路上販売を開始しま〜す!メニューは今回たった1つ!揚げたてのジャガイモコロッケです!外はサクサクで、中はホクホク!ジャガイモの甘〜い味になっています!今晩のおかず、夜食、おつまみに如何ですか?1個50円です!お1人様5個までお買い上げできます!お買い求めの方は私の方までお願いしま〜す♪」

 

 

流石はシルヴィ、盛り上げ上手な上に引き付けるのが上手いな。いや、その前に並んでるお客さんもいるけどな。

 

 

ってちょっと待て!家で作ってきたコロッケなくなるの早くね!?30個作ったのがもう10個しかないんだけど!?あげる個数にも限界があるから、絶対買ってった奴ら5個買いだろ!?

 

 

シルヴィア「ありがとうございました〜!八幡くん、どう?揚げるスピード上げられそう?」

 

八幡「無茶言うな。これでもかなりハイスピードな方だ。出来上がったのでもまだ10個だぞ?」

 

シルヴィア「そっかぁ……これはちょっと人の数を見誤っていたね。」

 

八幡「っていうか、こんなに並ぶとは思ってなかった。やっぱシルヴィが客寄せに効果絶大なんだろうな。世界一のアイドルが客寄せしてんだぞ?こうもなるって。」

 

シルヴィア「そ、そっか……言われてみればそうかもね。次来た時は交代しよっか。」

 

八幡「あぁ、そうしよう。」

 

 

その後は釜を2つに増やして2個で揚げていた。そのおかげもあってか、シルヴィとの接客に追いつけるようになっていた。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「シルヴィ〜、ここで売る材料のノルマがもう超えてるんだが、どうする?もう30分続けるか?」

 

シルヴィア「ううん。他のエリアでも売りたいから、今あげているので最後にして!」

 

八幡了解。」

 

シルヴィア「お願いね!皆さ〜ん!残り個数30個となりました〜!今並んでいるお客様には申し訳ないんですけど、ここからはお1人様3個とさせて頂きま〜す!」

 

 

お客は不満を垂れる様子はなかった。むしろ『仕方ない。』とか『これだけ売れていれば当然。』という風に納得してくれた。

 

 

そして最後のお客様が終わった。

 

 

シルヴィア「ありがとうございました〜!今回はこれで終了とさせて頂きま〜す!皆さん、お買い上げありがとうございました〜!」

 

 

パチパチパチパチパチパチッ!!

 

 

シルヴィア「ではこれで失礼します!ちなみにシェフは私の彼氏、比企谷八幡くんで〜す!」

 

 

パチパチパチパチパチパチッ!!

 

 

八幡「どうもー……じゃあシルヴィ、押すぞ〜。」

 

シルヴィア「は〜い♪」

 

 

 

 

 




シルヴィア「いやぁ〜凄い売れたね!」

八幡「まさかあんなに来るとは思わなかったわ……ラスト30個以外は全員5個じゃなかったか?」

シルヴィア「うん、全員5個で買ってた。」

八幡「そりゃ1個じゃ追いつかねぇわけだ。」

シルヴィア「今度は歩きながらやるから安心して。交代交代で屋台押していこっ♪」

八幡「あぁ、分かった。」



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販売終了と売り上げ

 

 

八幡side

 

 

さて、今は中央エリアと行政エリアの中間辺りで荷車を引きながら販売している。因みにこの荷車、色々と改造したおかげで人1人なら乗れるくらいの強度があります。なんで1人かって?そりゃ1人じゃないと引きながら売ることできないだろ?

 

 

シルヴィア「コォォ〜ロォォォッケェェ〜!コロッケだよ!ホックホクのコロッケだよ♪」

 

 

………サツマイモ販売の真似しないの。

 

 

「あっ、兄ちゃん!コロッケ5個下さい!」

 

「俺にもっ!」

 

「さっき同僚からあんたらの事聞いてさ、ここにいるからラッキーって思ったよ。俺にも5個頂戴!」

 

八幡「はい、どうも。シルヴィア、コロッケ5個入り3つ用意してくれ。」

 

シルヴィア「は〜い♪」

 

 

中央エリアに来る前に作り置きしといて良かった。ある程度余裕がある方がシルヴィの負担も少なく済む。油も多めに持ってきてるから問題ないだろう。

 

 

シルヴィア「♪〜」

 

八幡「店長ー。もうすぐ行政エリアに入ります。」

 

シルヴィア「了解〜♪」

 

 

まぁ行政エリアならまだ仕事してる人も多いだろうから、そこまで人は多くないだろう。

 

 

ーーー行政エリアーーー

 

 

「コロッケを5つ頼む!」

 

「僕にもっ!」

 

「私にもお願いします!」

 

「私にも売ってはくれないかね?」

 

 

………さっきの言葉を撤回しよう。ヤバい、人多い。これじゃあパンクしちまうよ。まだ作り置きあるからなんとかなるが、なくなったらシルヴィがヤバい。

 

 

八幡「……シルヴィ、交代だ。」

 

シルヴィア「八幡くん、お願いね!」

 

八幡「おう。」

 

 

さて、揚げまくるか。

 

 

シルヴィア「八幡くん、コロッケ5個入り4つお願い!交代早々ゴメンね!」

 

八幡「いや、気にするな!」

 

 

これくらい簡単に捌いてやるよ。

 

 

ーーー10分後ーーー

 

 

シルヴィア「ありがとうございました〜♪ふぅ〜、なんとか乗り切ったね!」

 

八幡「あぁ……もう具材も心許ない。後は外縁居住区に行って売ろうぜ。」

 

シルヴィア「そうだね、時間も予定より遅くなっちゃってるし、その方が良いかも。」

 

 

ーーー外縁居住区ーーー

 

 

このエリアに来てからは、俺とシルヴィアで屋台を押しながら声をかけての販売をやることにした。コロッケはもう全部揚げた状態で出来立てのままの状態をキープする為に朱雀の力を使っている。こういう時の朱雀の能力は本当にありがたい。

 

 

シルヴィア「出来立てホックホクのジャガイモコロッケで〜すっ!1個50円で販売してます!最大5個詰めで250円で〜す!出来立てのジャガイモコロッケは如何ですか〜?」

 

 

「あら、じゃあ5つもらおうかしら?」

 

シルヴィア「ありがとうございます!もし良かったら、家族に内緒のつまみ食いでもどうですか?」

 

「ふふふ、じゃあ頂こうかしら。」

 

 

シルヴィア、驚異のコミュ力だな。俺にはこんなこと出来ない。

 

 

「っ〜〜!美味しいわ!これを買って正解ね!本当はもうちょっと欲しいけど、我慢ね。」

 

シルヴィア「すみません。」

 

「いいのよいいのよ!これだけ美味しいんだもの、大切に食べるわ!どうもありがとう。」

 

シルヴィア「ありがとうございました〜♪」

 

八幡「しかし、こんなにも売れるもんなんだな。」

 

シルヴィア「私たちの知名度もあると思うけどね。でも、私たちが料理上手という情報なんて出回っていないと思うけど、どうしてこんなに買ってくれたんだろうね?」

 

八幡「シルヴィアの心ある接客のおかげだろ。」

 

シルヴィア「そ、そうかなぁ〜///」

 

 

当たり前だ。でなけりゃお客が寄ってくるわけないからな。無愛想な奴が何もせずに料理作ってても来る奴なんていないだろう。俺1人じゃあ今日みたいにはなってねぇだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「おいおい、美味そうな匂いにつられて来てみたと思ったら、比企谷に【戦律の魔女】じゃねぇか!久し振りだな!」

 

???「お久しぶりです、比企谷さん!そして初めまして、シルヴィアさん!」

 

 

目の前に現れたのは、レヴォルフ内でも屈指の強さを誇る序列3位のイレーネとその妹のプリシラがいた。持っている荷物から察するに買い物帰りだろう。

 

 

八幡「よう、今帰りみたいだな。」

 

イレーネ「まぁな。プリシラの料理は美味いからな!今日も楽しみだぜっ!」

 

八幡「相変わらずだな。」

 

プリシラ「あはは……ところでお2人は何をしていらっしゃるんですか?」

 

シルヴィア「私たちは移動販売をしてるんだ。見ての通りコロッケを売ってるんだ。1つ50円!もしよかったら試食もできるけど、どう?食べる?」

 

イレーネ「いいのか!?じゃあ1つもらうぜ!」

 

 

イレーネは食いつくように爪楊枝で刺してあるコロッケを手に取った。

 

 

プリシラ「あぁもうお姉ちゃん!行儀悪いよ!」

 

シルヴィア「いいよいいよ、気にしないで。それよりもプリシラちゃんもどう?」

 

プリシラ「じ、じゃあ……頂きます。」

 

イレーネ「うおっ!すげぇ美味ぇぜコレ!!」

 

プリシラ「………っ!本当だ!凄く美味しい!どうやったらこんな味が作れるんだろう?」

 

八幡「それは企業秘密だ。俺特製、一子相伝の作り方だからな。」

 

シルヴィア「それだと1人にしか教えられないことになっちゃうよ……」

 

プリシラ「でも、このコロッケのレシピって比企谷さんが?」

 

八幡「あぁ。」

 

イレーネ「マジかよっ!なぁプリシラ、これは買わない方が勿体ねぇぜ!買って行こうぜ!」

 

 

まぁイレーネならそんな反応をするだろうとは思っていた。プリシラはどうする?

 

 

プリシラ「そうだね!買って行こうか!じゃあ6つ下さい。」

 

シルヴィア「どうもありがとう♪」

 

 

よし、お買い上げだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリシラ「どうもありがとうございます〜!」

 

イレーネ「また売ってくれよな〜!」

 

 

2人はコロッケを購入した後は、自身たちの家へと帰って行った。

 

 

シルヴィア「………私たちも帰ろっか。」

 

八幡「そうだな。」

 

 

私たちも販売をストップして、そのまま帰路へと着いた。因みに残ったコロッケの数はちょうどよく10個くらいだったから、半分ずつ食べながら帰った。

 

 

帰って売り上げを数えたら、なんと約30000円という数字になった。個数で表すならおよそ600も販売したという事になる。

 

 

600個も揚げたんだな、俺たち。

 

 

 

 

 

 

 



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依頼、再び!

 

 

シルヴィアside

 

 

シルヴィア「八幡く〜ん!ちょっと相談があるんだけど、今大丈夫かな?」

 

八幡「相談?あぁ、構わない。」

 

シルヴィア「ありがとう!あのね、さっきペトラさんからメールが来て、ライブをやって欲しいんだって!シリウスドームで。」

 

八幡「シリウスドーム?今回は遠征じゃないのか?六花でなんていつでも出来るのに、何でだ?」

 

シルヴィア「ペトラさん曰く、『貴方と八幡くんはちゃんとした形でライブをしてないでしょ?最初にやったのは代役だったから、今回はメインでやって欲しいのよ。』だって。」

 

八幡「俺は別にあれで構わないんだけどな……」

 

シルヴィア「ペトラさんにも八幡くんはそう言うかもって言ったんだけど、ペトラさんは本気みたいでさ。できればすぐに返事が欲しいって。」

 

 

八幡くんと最初にやった時の会場は規模がちっちゃい小規模ステージだったけど、今回はシリウスドームだから六花で1番広いステージになる。まぁ八幡くんとは千葉でもライブを一緒にやってるから大丈夫だと思うけどね。

 

 

八幡「歌は?決まってるのか?」

 

シルヴィア「今回は私たちのチョイスに任せるって。だから私ね!八幡くんが受けてくれたら、歌いたい曲がいっぱいあるんだ!」

 

 

八幡(あぁ……こりゃあれだ、俺が言うとアレだが、ゴリゴリのラブソングだろうな。)

 

 

八幡「俺は曲のレパートリーあんまり無いんだけどな。シルヴィの曲パクろうか……」

 

シルヴィア「絶対私より上手いんだからやめて。」

 

八幡「いやいや、それはないって………」

 

 

それはあるもん!八幡くんって本当に自己評価低いんだから!私が聴いてても凄く上手なのに、何でこんなにも自分の評価に厳しいのかな?

 

 

シルヴィア「何かないの?お気に入りの曲とかさ!1つはあるでしょ?」

 

八幡「んん〜……あっ、そういえばあったな。2つくらいある。」

 

シルヴィア「じゃあそれ歌おうよ!私は5曲くらい歌いたいのあるなぁ〜。」

 

八幡「どんだけあるんだよ。俺も1つお前と歌いたい曲があるんだが、いいか?」

 

シルヴィア「azriteじゃないの?」

 

八幡「あぁ、違う曲だ。この曲だから聴いてみてくれないか?」

 

シルヴィア「一緒にね♪」

 

八幡「あいよ。」

 

 

〜視聴中〜

 

 

八幡「……どう思う?」

 

シルヴィア「うん、良いと思うよ!ちょうどピッタリの季節に入ってるもんね!私は賛成っ♪」

 

八幡「よし。じゃあ俺は取り敢えず2曲とこのデュエット曲の3つだな。シルヴィは決めたのか?」

 

シルヴィア「………えへへ♪」

 

八幡「そんなに決められないのか?」

 

シルヴィア「だってどれも良い曲なんだもん!」

 

 

全部愛が込められて作られた曲なんだよ!

 

 

八幡「まぁやる事は決まったんだし、ペトラさんに報告したらどうだ?選曲についてはじっくり考えればいい。今は報告だ。」

 

シルヴィア「そうだね。ちょっと待っててね!」

 

 

pipipi…pipipi…っ!

 

 

ペトラ『シルヴィアね。それで八幡くんは受けてくれるのかしら?』

 

シルヴィア「受けてくれるって。今2人で選曲してるところです。」

 

ペトラ『それは良かったわ。曲については何も言わないから好きにしていいわ。それよりも貴女、曲は決めてるの?貴女の聴く曲、かなり恋愛系が多くなってるけど………大丈夫?』

 

シルヴィア「えっと……絶賛お悩み中です。」

 

 

するとペトラさんは深い溜息をついてから、おでこに手を当てた。な、何さ!良いじゃん別に!好きな人の為に歌う曲を悩んで何が悪いの!

 

 

ペトラ『予想通りだわ。何故か分からないけど、凄い安心感があるわ。本当に何故かしらね?』

 

シルヴィア「酷いですよ!人が一生懸命悩んでるのにっ!」

 

ペトラ「ふふっ、ごめんなさいね。けど八幡くんがOKしてくれて良かったわ。八幡くんにもありがとうって伝えておいてちょうだい。日程は決まり次第伝えるから、2人は練習に専念して。クインヴェールの設備も使って良いことにするから、遠慮なく来ていいとも伝えておいてちょうだい。』

 

シルヴィア「分かった!!その時は私が八幡くんをエスコートするからね!!」

 

ペトラ『はいはい。それじゃあお願いね。』

 

 

やった〜!!八幡くんと一緒に練習〜♪しかもクインヴェールで一緒に〜♪

 

 

シルヴィア「♪〜」

 

八幡「おう、戻ったか。どうした?なんかご機嫌だな。良い報告でもあったか?」

 

シルヴィア「まぁね〜♪えっとね、ペトラさんが『引き受けてくれてありがとう。』って。後はクインヴェールの施設を使って良いことにするから、遠慮なく来てくれていいって。」

 

八幡「………入るにしても、シルヴィがいてくれないと困るな。シルヴィ、練習する時は校門まで行くから、お迎え頼めるか?」

 

シルヴィア「勿論OKだよ!私は界龍にはよく行くけど、八幡くんはクインヴェールには来れないもんね。それが普通の反応だよ。」

 

八幡「ペトラさんも結構思い切った事をするもんだ。女学園に狼を1匹放り込むなんてな。」

 

シルヴィア「でもその狼は1人の女の子にしか、興味ないでしょ?」

 

八幡「あぁ。基本興味のない女には手を出さない心優しい狼だ。けどその女には容赦なく襲い掛かるけどな。どう思う?」

 

シルヴィア「人前では遠慮してね?」

 

八幡「俺はそこまで変態じゃねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ただの余談。

アニメ、鬼滅の刃の最終回で思った事………







カナヲ最高でした………マジで可愛かった。
炭治郎もようやった!

そして映画化、あざっす!



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久々の帰還

 

 

八幡side

 

 

冬香「そうなのですか……では八幡様はまた六花でライブをなされるということなのですね?」

 

八幡「あぁ。まぁ今回は前と違って変装なんてしないけどな。する意味もないし。」

 

冬香「それは当然です。今を生きる人にとって八幡様は知らぬ者はいない程の有名人なのですから。」

 

八幡「それは言い過ぎだ。それと、前々から思っていたんだが……良い加減その言葉遣いやめないか?冬香は俺よりも年上なんだぞ?敬語は仕方ないとはいえ、様付けされてる上に丁寧語まで使われたら何か少しなぁ……」

 

冬香「そう言われましても……私にはこれが普通になってしまっていますので。昔は出来てはいも、今は貴方様の事を『八幡さん』などとは、恐れ多くてお呼び出来ません。」

 

 

俺が【万有天羅】になってからというものの、冬香は俺の事をこういう風に呼ぶ。けど俺、人から敬えられるような人間でもないしなぁ。

 

 

八幡「……まぁそう言うと思ってた。」

 

冬香「では何故、仰られたのです?」

 

八幡「ただのお試しだ。」

 

冬香「八幡様は意外にイタズラ好きなのですね?」

 

八幡「虎峰をよくイジってるだろ?あれと同じような感覚だ。まぁ少し抑えてるけどな。」

 

冬香「ふふっ……失礼致しました。」

 

八幡「気を遣わなくていい。いつもそう言ってる………いや、いつもっていうか、たまにしか帰ってこないもんな、俺。」

 

冬香「えぇ。そのお言葉は1ヶ月と2週間前にお聞きしました。」

 

 

………何で覚えてるの?

 

 

八幡「しかし、やっぱり冬香と話していると落ち着く。気を使わなくて済むし、何より俺と同郷だからな。まぁ、妖怪の話は今でもあまり慣れないが。」

 

冬香「八幡様さえよろしければ、幾らでもお教えいたしますよ?」

 

八幡「ふっ……取り敢えずは考えておく。シルヴィの良い声を聞きたいからな。」

 

冬香「八幡さんは悪いお人ですね。」

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

八幡「ん?誰だ?………陽乃?」

 

陽乃『ひゃっはろー八幡くん♪久しぶりに遊びに来たよ〜!』

 

めぐり『こんばんは〜比企谷くん!私も遊びに来ちゃった〜。えへへ〜。』

 

 

元魔王(今はハルノエル)にマイナスイオンの上位互換、めぐりんイオンが俺の部屋の前に来ていた。

 

 

八幡「今中に冬香もいるが、一緒でも良いなら入って構わない。」

 

陽乃「構いませ〜ん!お邪魔しまーす!」

 

めぐり「お邪魔しま〜す。」

 

八幡「暫くぶりだな、2人とも。」

 

冬香「陽乃様はお久しぶりです。お隣の方とは初めてでしたね。私、梅小路冬香と申します。以後、よろしくお願い致します。」

 

めぐり「わわっ、ご丁寧にどうも……陽さんの秘書しています、城廻めぐりです。」

 

 

冬香はいつも丁寧語だからな……ていうよりも、冬香と同い年だから、別に丁寧にする必要なんてないけどな。

 

 

八幡「冬香、めぐり。知らないと思うが、お前ら同い年の同級生って事になるからな?敬語はいらないからな?」

 

めぐり「えっ?そうなの!?私てっきりもっと年上の人かと思ってた!」

 

八幡「いやいや、年上だったらどんだけ留年してんだよ。冬香は今もちゃんとした学生だ。」

 

めぐり「じゃあ梅小路さんの事は名前で呼んでいいのかな?」

 

冬香「ふふっ、お好きにお呼び下さい。」

 

 

これで少しは打ち解けただろう。

 

 

陽乃「ねぇ八幡くん。最近シルヴィアちゃんとはどう?上手くいってる?」

 

八幡「なんだその含みのある言い方は?」

 

陽乃「だっていつもはシルヴィアちゃんの家に帰ってる八幡くんが今日はこっちにいるんだもん。聞かずにはいられないよ〜。」

 

冬香「陽乃様……」

 

 

うん、呆れちゃうよね。相変わらずだよこの人は。

 

 

八幡「何を期待しているかは知らんが、別に何もないぞ。良好な関係を築けている。」

 

陽乃「そうなの?なんか予想通り過ぎてつまんないよ〜。なんか面白い話ないの?」

 

八幡「……ライブをやる事になった、以上。」

 

陽乃「ライブ?何処で?」

 

八幡「シリウスドーム。」

 

陽乃「ホントに〜!?ねぇ八幡くん!チケット出来たら私にちょうだいよ!勿論お金は払うからさ!」

 

八幡「……ペトラさんには聞いてみるが、余り期待はするなよ?俺自身があの人に交渉するのは初めてなんだからよ。」

 

陽乃「うん、ありがとう!」

 

八幡「めぐりは………必要無いだろう。」

 

めぐり「え!?何で!?」

 

八幡「いやだってよ、これまで2度も抽選で当たってるんだろ?なら大丈夫だって。」

 

めぐり「当たらなかったら?」

 

八幡「………よく頑張ったなって言ってやる。」

 

めぐり「比企谷くんその時側に居ないじゃん!」

 

 

うん、心の中で呟いとくから。『よく頑張ったな、ドンマイ。』って。

 

 

冬香「八幡様。八幡様が歌われる歌はもうお決めになられているのですか?」

 

八幡「あぁ、決まってる。けど言うつもりはないからな?言ったらつまんないからな。」

 

冬香「そのような無粋なことはいたしません。」

 

 

ダダダダダダダッ!!!

 

 

めぐり「な、何?この音?」

 

八幡「あー心配するな。どうせあいつだから。」

 

 

きっとシルヴィのHP見たんだろうな。そう思ってたら、目の前の扉が勢い良く開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎峰「八幡!!シルヴィアさんと一緒にライブをするというのは本当なのですか!?」

 

 

…………ほらな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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冬香の願い

 

 

八幡side

 

 

虎峰「八幡!!シルヴィアさんと一緒にライブをするというのは本当なのですか!?」

 

 

………ほらな?シルヴィア関連になると必ず現れちゃう男の娘がま〜た来ちゃったよ。

 

 

八幡「あぁ、そうだが?それで?」

 

虎峰「僕、チケット予約取りますので!」

 

八幡「いや、それを俺に言われてもな………陽乃なんて、俺にチケットねだるくらいなんだぞ?」

 

陽乃「ひゃっはろー虎峰くん!また可愛くなったね〜、あははっ♪」

 

虎峰「い、いえ、可愛いなんて僕には……」

 

 

ねぇ気付いてる?虎峰気付いてる?お前そんじょそこらの女よりも良い顔してるからな?男だけど。もし普通の女子制服来たとしても男だなんて思われないくらい、女らしい顔つきしてるからな?男だけど。

 

さらに言うぞ?男だけど。

 

 

虎峰「ですが雪ノ下師姉、ライブを行う者にチケットをねだるなんて如何と思われますが……」

 

陽乃「虎峰くん、使えるものは何でも使うのが私なんだよ。故に私は八幡くんの力を使うことにしたんだよ。それに八幡くんは嫌だなんて言わなかったからね、まぁ貰えるかどうかはシルヴィアちゃんのマネージャー次第だけどね。」

 

虎峰「………ま、まぁ八幡が断らなかったのならいいでしょう。あぁ、八幡?」

 

八幡「ん、何だ?チケットならお断りだぞ。」

 

虎峰「それは魅力的なお話ですが、それではありません。シルヴィアさんがこれまで歌ってきた曲の中に今回のライブで歌う曲はあるのですか?」

 

八幡「さぁ〜どうだろうなぁ〜?」

 

虎峰「………少しだけ腹が立つ喋り方ですね。」

 

八幡「……うん、もうやめるわ。なんか自分でやってもコレは違うなぁって思った。」

 

めぐり「それってこの瞬間で分かるの?」

 

八幡「俺の腹が立ったらもうやらないって事にしてる。それがなかったら続ける。」

 

めぐり「基準が滅茶苦茶だよ……」

 

冬香「八幡様は会う度にユニークになっていかれますね。」

 

虎峰「……?そういえば雪ノ下師姉とめぐり殿はどうしてこちらに?」

 

陽乃「んー?暇つぶし♪」

 

めぐり「え、えっと……陽さんに着いてきたら、ここだったの。比企谷くんの部屋だとは知らなかったんだけどね。」

 

八幡「暇つぶしで来られても、こっちは困るんだけどな。まぁこの部屋には余りいないから、さほど変わらないけどな。」

 

冬香「私としては、もう少しこちらにいる時間を増やして頂きたいものです。側近としての顔が立ちません。」

 

 

あっ、まだ続いてたんだ、その設定。

 

 

虎峰「僕は師父の、冬香殿は八幡の側近というのが、我々界龍では普通になってしまっていますからね。八幡、少しは冬香殿の気持ちも汲んであげてはどうですか?」

 

八幡「んなこと言われてもな……そんなのお前らが勝手決めたことだろう。俺は別に側近や護衛、近衛なんて必要ねぇよ。」

 

冬香「ですが八幡様。それではいざという時に八幡様をお守り出来ません。」

 

八幡「お前の中のこの世の中ってどれだけ物騒なんだよ………何?今六花って抗争でもしてんの?なら護衛も分かるけどよ、今の六花は上手い具合に均衡が保たれてる。護衛なんて要らんだろ。」

 

陽乃「……まぁ確かに八幡くんの言う事にも一理あるね。今の六花が、特に裏でコソコソしている人たちが表舞台に出てくるとは思えないね〜。何せ、すっごく怖〜い怖〜いどこぞの【万有天羅】が居るんだからね。」

 

 

よし、後でメチャメチャ苦いお茶飲ませてやる。

 

 

虎峰「ふむ……そう考えると、確かに常にそばにいるというのは、かえって対象者の機嫌を損ねるかもしれませんね。」

 

八幡「論点が地味にズレてるが、今は側近なんて必要ないだろ。冬香、お前の自由に過ごしてもいいんだぞ?俺につきまとわなくてもいい。お前だってやりたいことの1つや2つ、あるだろ?それを優先しろよ。」

 

冬香「………よろしいのですか?私のやりたい事をさせて頂いても?」

 

八幡「いや、そう言っただろ。」

 

冬香「では八幡様、八幡様の子種を頂きたく思います。私と一夜を共にする事は出来ませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……そうだった。こいつ確かこれが今の願いだったんだ。だからこの学園にいるんだった。

 

 

陽乃「わ、わぉ……冬香ちゃんってば凄いこと言うね。流石にお姉さんもビックリだよ。」

 

めぐり「ひ、ひひひひひ比企谷くんっ!!?ま、まさかす、すすすすするの!!?」

 

虎峰「八幡!!!貴方はシルヴィアさんという彼女がいながらっ!!!!!」

 

 

ちょっと待て。なんで俺が悪いみたいになってんだよ?俺何もしてないよね?ただ自由にしていいって言っただけだよね?なのになんで俺が責められるわけ?この状況を作った冬香に言えよ………

 

 

八幡「……前にも言ったよな?」

 

冬香「はい、お聞きしました。シルヴィア様という決まったお方がいるから、それは出来ないと。」

 

八幡「ならもう1度言う。その答えは変わらない。俺が肌を重ねるのはシルヴィただ1人だ。」

 

 

………俺も変態みたいなこと言ってるけど、間違ってないよな。当たり前のことを言ってるよな!

 

 

冬香「やはりそのお答えになりますか……八幡様のガードはやはり固すぎます。」

 

陽乃「それなら私も手伝うよ〜!私も八幡くんとの子供なら、愛情を持って育てられると思うなぁ〜♪絶対親バカになると思う!」

 

 

おい、火に油を注ぐんじゃねぇ。おさまりつかなくなったらどうすんだよ!

 

 

 

 

 

 

 



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一致団結?

 

ーーーーーー

 

 

八幡たちが界龍で何気ない会話をしている間、シルヴィアはクインヴェールでこのような時を過ごしていた。

 

 

ーーー同時刻・クインヴェールーーー

 

 

「……うん、何処にも不備はないね。じゃあ明後日から1週間の放課後はレッスン会場は君と比企谷くんの練習場所として確保しておくからね。」

 

シルヴィア「はい、お願いします。」

 

「あっ、因みになんだけど、レッスン会場は普通に解放とかしてるのかな?」(キラキラ)

 

 

明らかに期待のこもった視線をシルヴィアに向けている教師。だがその目は1つだけではなかった。チラチラとだが、シルヴィアを見つめる視線の数がさっきよりも多かった。

 

 

シルヴィア「……八幡くんと決める予定です。もし八幡くんが大丈夫って言ったら、普通に開放します。ダメだったら閉めます。」

 

「そう、分かったわ。じゃあこれは理事長にも出しておくから。」

 

シルヴィア「お願いします。失礼しました。」

 

 

シルヴィアが職員室から退室して、重苦しい雰囲気が去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん聞きました!?聞きましたよね!?また比企谷くんがこの学園に来るなんて……」

 

「あの声がまた聴けるのね………でも、比企谷様が開放を許可してくれるかしら?」

 

「そうね。開放=ネタバレになっちゃうものね。」

 

「あぁ〜どうしましょう!比企谷くんの声を聴くために入りに行くか、ライブまで待つか……あぁもう!比企谷くんは私たちを焦らしてるのかしら!?焦らしプレイが得意なのかしら!?」

 

 

………職員室は、混沌(カオス)状態だった。

 

 

ーーーーーー

 

シルヴィアside

 

 

よし、申請書も出した。後は八幡くんに明後日から練習に来てもらうように伝えるだけだね。そしてお迎えは私が行くっ♪ふふっ、良いねぇ♪

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

生徒1「あっ、会長!今日はこちらなんですね!」

 

シルヴィア「うん、少し用事があったからね。」

 

生徒2「会長、お久しぶりです!」

 

シルヴィア「久しぶり♪」

 

 

そのあとは何回も声を掛けられた。確かに私、家が出来てからはこっちの寮で過ごすことは少なくなったけど、そんなに珍しいかな?

 

 

シルヴィア「お願いしま〜す。」

 

「はい……あらシルヴィアちゃん。今日は学園で夕飯なの?」

 

シルヴィア「うん。今日はここで過ごそうって思ってたから。」

 

「彼氏くんは寂しくしてなかったの?」

 

シルヴィア「あはは……」

 

「まぁ深くは聞かないでおくね。はい、お待ちどうさま。シルヴィアちゃんがこっちにいる事は少ないんだから、ゆっくりしていってね。」

 

シルヴィア「はーい。」

 

 

さてと、空いてる席空いてる席……あっ、あそこが良いね。

 

 

シルヴィア「久しぶりの学食だなぁ〜。私よくこれ頼んでたんだよね〜。味変わってなければ良いけど……それじゃあ、頂きます。」

 

 

んんぅ〜この味、変わってないよ!週に1回は必ず食べていたからね、変わってなくて安心したよ。それにしても、皆食べ終わってるのに食堂から出て行かないなんて、どうしたんだろう?

 

 

ーーー15分後ーーー

 

 

シルヴィア「ふぅ〜……ご馳走様でした♪美味しかったぁ〜。あっ、そうだ!今のうちに八幡くんに連絡しておこうっと。」

 

 

pipipi…pipipi…っ!

 

 

八幡『シルヴィか?どうした?』

 

シルヴィア「こんばんは、八幡くん。取り敢えず報告をしようと思って連絡したんだけど、今って大丈夫かな?忙しいようだったらかけ直すよ?」

 

八幡『いや、大丈夫だ。それよりも報告って?』

 

シルヴィア「うん。レッスンの事なんだけど、明後日から借りられるようにしたから。一応1番広いところにしておいたけど、問題ないかな?」

 

八幡『そこは全部シルヴィに任せてあるから問題視してない。他には何かあるか?』

 

シルヴィア「うん。担当の先生から言われたんだけど、私たちがレッスンしている間はその室内の出入りはどうするのかって。簡単に言えば、私たち以外の他の人たちの出入りはいいのかって事。私は八幡くんがいいならいいとは言ってあるけど、本人の意思も効かないまま許可するのもあれだったからね。」

 

八幡『俺も別に構わないぞ。男の俺が歌った曲なんか聞いても、クインヴェールの奴らには意味ないと思うけどな。」

 

 

コラコラ八幡くん?自分の評価を低くしないの。それを世界の皆様に向けて言ってごらんよ?否定の嵐だからね?

 

 

シルヴィア「とりあえずは、八幡くんも大丈夫ってことでいいのかな?」

 

八幡『俺はそっちの敷居に行く立場だから、そっちのルールに従うつもりだ。見たいなら見に来れば良い、それだけだ。』

 

シルヴィア「うん、了解。じゃあ明後日ね。」

 

八幡『あぁ、分かった。じゃあな。』

 

シルヴィア「うん、またね。」

 

 

そして通信を切る。八幡くんは大丈夫だから、普通に開放で大丈夫だよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「やったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」

 

シルヴィア「えっ!?」

 

 

な、何!?どうしたの!?突然叫び出して!?

 

 

「やったよ!やったよ!!比企谷さんの声がまた聞けるよ!!」

 

「これはもう行くしかないね!!」

 

 

「比企谷様の歌声、一言たりとも聞き逃すことは許しません、良いですね!?」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

「楽しみだなぁ………またあの声が聞けるんだぁ。嬉しいなぁ〜。」

 

 

………あぁ、成る程ね。要するに八幡くんのことで気になってたんだ。

 

 

それにしても、皆凄いね。こんなに喜ぶんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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練習初日は歓迎ムード?

 

八幡side

 

 

取り敢えず残ってた大学の授業も終わっていい時間になった事だし、そろそろクインヴェールに行きますか。練習時間も限られてるしな。

 

 

沈雲「聞いたよ比企谷くん。またライブをするんだってね?しかも今回は六花で。」

 

沈華「初じゃないの?六花でライブなんて。」

 

八幡「いや、1度だけある。ま、その時は変装してたから、実質的にはやったうちには入ってないことにしてるけどな。」

 

沈華「あら、そうなの?てっきり私は素顔が見せられないから変装していたとばかり思っていたわ。」

 

八幡「そしたら俺ってどんだけシャイなんだよ。つかお前、知っててそれ聞いただろ?」

 

沈華「さぁ?どうかしらね?」

 

 

こいつは……本当に良い性格してるな。これでもマシになった方だって皆言うけど、前のコイツってどんだけ口悪かったんだよ。

 

 

沈雲「それで、もう帰るみたいだね?今日は鍛錬に参加していかないのかい?」

 

八幡「あぁ、これから練習だ。久しぶりだからな、少し鈍ってるかもしれないな。」

 

沈雲「そうなんだね。まぁ、【戦律の魔女】の足を引っ張らないようにね?」

 

沈華「気をつける事ね。」

 

八幡「一応素直に受け取っておこう。じゃあな。」

 

「「さようなら。」」

 

 

さて、面倒な奴ち絡まれる前にさっさとクインヴェールに向かいますか。

 

 

八幡が界龍を出て5分後………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎峰「八幡っ!!八幡は何処ですか!?ライブについてお聞きしたいことが!!」

 

 

ーーークインヴェール女学園・校門前ーーー

 

 

うわぁ………何度来ても(まだ数回)思うけど、外から見ても分かるくらいキラキラしたオーラが出てるよ。流石は女学園だな。

 

 

シルヴィア「八幡くん、待ってたよ〜♪」

 

八幡「おう。今日から1週間よろしくな。」

 

シルヴィア「うん、よろしくね。後……八幡くん。生徒の皆がね、八幡くんが来るって知ったら凄い盛り上がっちゃって……なんか歓迎会みたいな雰囲気になっちゃってるんだけど、大丈夫?」

 

八幡「お前何言ったんだ?」

 

シルヴィア「違うの!私はただ八幡くんに連絡をしただけなのっ!それを盗み聞きしてた彼女たちが勝手に盛り上がって勝手に歓迎会みたいなことをしたの!まぁ、食堂でお話をした私にも原因はあるんだけどさ。」

 

八幡「……俺、入るの怖くなってきたんだけど。影使っちゃダメ?」

 

シルヴィア「うぅ〜ん……一緒に来て欲しいかな。その方が……ね?雰囲気的にもさ。」

 

八幡「はぁ……分かった。」

 

 

俺はパスポートを見せて承諾して貰ってからクインヴェールの中へと入った。一応見えてはいたんだが、本当に歓迎ムードじゃね?たかが俺1人にそこまでする?

 

 

そして、少し近くまで行くと途端に淑女諸君は大騒ぎし始めた。やれ『握手をして欲しい。』『サインが欲しい。』『お姫様抱っこして欲しい。』『アゴクイ、壁ドンして愛を囁いて欲しい。』『威圧的な目で睨みつけて欲しい。』なんてお願いまでして来る。っていうか、後になるに連れて変なお願いになっているのは気のせいか?

 

つーか着いてくるんだな。まさか練習場所までらずっとか?

 

 

八幡「なぁシルヴィ、この大群まさかとは思うが、練習も見にくるとか言わないよな?」

 

シルヴィア「えっとね………皆そうそたい。」

 

八幡「ねぇ、アイドルって暇なの?俺の歌聞くくらいなら、アイドル活動した方が身のためになるんじゃないの?いや、知らんけど。」

 

シルヴィア「まぁ八幡くんの歌声だから、見逃さないではないと思うよ。」

 

 

ーーー練習会場ーーー

 

 

八幡「……マジで着いてきやがった。」

 

シルヴィア「それだけ八幡くんの声が聞きたいってことなんだからさ、分かってあげて?」

 

八幡「しょうがない。ここはシルヴィア会長の面子を立ててやりますか。」

 

シルヴィア「どうもありがとう♪」

 

 

なんかよく見たら先生もいらっしゃらない?俺の気のせい?

 

 

シルヴィア「じゃあ八幡くん、歌う前に少しだけ打ち合わせしない?どっちが最初に歌うのかも決めないといけないからさ。」

 

八幡「賛成だ。まだその辺りなんも決めてなかったからな。30分程度話し合いの時間にするか。」

 

 

さて、そしたら中に入って打ち合わせするか。それから歌の練習だな。

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

八幡とシルヴィアが練習をするクインヴェールのレッスン会場はすでに満員となっており、立見の生徒、教師までいる始末だった。まさかここまで多くの生徒が見に来るとは八幡もシルヴィアも想像していなかっただろう。

 

 

「早くしないかなぁ〜!」

 

「今、打ち合わせしてるんだって。」

 

「そう言って、裏では2人でイチャイチャと……」

 

「シルヴィ、キスしてもいいか?」

 

「うん、八幡くん………」

 

「「「キャーー!!」」」

 

 

 

 

 

「楽しみだわ、シルヴィアさんと比企谷さんの生声。シルヴィアさんのは何回か聞いたことあるけど、比企谷さんのは無いのよね〜。」

 

「全然期待してて大丈夫ですよ。あの歌声は批判する方がおかしく感じますので。」

 

「あらそうなの?じゃあもっとハードル上げてみようかしら?」

 

 

 

 

「皆の者!!今日は比企谷様の歌が聴ける貴重な日!!一言一句、一分一秒たりとも見逃すことは許さないわ!!いいわね!?」

 

「「「「「はい!!!」」」」」

 

 

会場で待っている女子生徒は純粋に楽しみにしている子もいれば、狂信的な子もいた。だが共通して言えることは、全員、八幡の披露する歌が楽しみであるということだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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アドバイスとハートストロー

 

 

八幡side

 

 

八幡「♪〜」

 

 

シルヴィとの打ち合わせの結果、歌い始めはこれまで2度共に俺がやっていた理由もあるから俺になった。そして今はステージに立ってクインヴェールの生徒に向けて歌を披露している最中だ。

 

そしてこんな話し合いもした。

 

 

ーーー回想ーーー

 

 

八幡「よし、じゃあ歌い始めは俺だな。」

 

シルヴィア「お願いね。あっ、そうだ!今日から1週間は目の前にいるのがアイドルや歌手をやっている子たちもいるわけだから、採点がてらアドバイスをもらいながらやってみようよ!別の視点からの意見も取り入れながらやった方が本番でもっと良い歌が披露できると思うし。」

 

八幡「おぉ、それ良いな。けど、クインヴェールの奴らを実験台にするようなもんだぞ?受け入れてくれるか?」

 

シルヴィア「あっ、きっと問題ないよ。八幡くんからのお願いって事にすれば、皆快く引き受けてくれるよ。皆良い子だからさ。」

 

八幡「……分かった、それで行くか。」

 

 

ーーー説明中ーーー

 

 

八幡「という事にしてみたんだがこの1週間、もしよければで構わないから、俺の歌を良くするために多くの意見が欲しいから、協力して欲しい。」

 

 

〜〜〜〜〜!!!!!

 

 

ーーー回想終了ーーー

 

 

とまぁこんな打ち合わせをしたわけだ。俺の歌ももうすぐ終わるから、目の前の生徒たちからの意見を取り入れつつ、曲の改良をしていくって方法だな。

 

 

八幡「♪〜……」

 

 

1曲目が歌い終わって場が静まり返る……といってもまだBGMが流れているからだろうか、歓声はない。そして楽器の音が完全になくなった。

 

 

〜〜〜〜〜!!!!!

 

 

「最高ぉぉぉぉ!!!」

 

「八幡様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「誰よ今、比企谷様に向かって名前呼び&様付けした奴ぅぅぅぅ!!!!羨ましい〜!!!!」

 

「「「「比企谷様ぁぁぁぁ!!!!!」」」」

 

 

………こう言ったら失礼だが、こいつら採点つけられるのか?

 

 

八幡「皆聞いてくれてありがとうな。それじゃ早速聞いていきたいんだが、今の俺の曲はどうだった?なんでも良いから可能な限り問題点を上げてくれ。なんでも良い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやいや、嘘でしょ?嘘だよね?なんで静まり返ってるの?そして何?『あんた何言ってるの?』的な視線を向けるのやめてくれません?

 

 

八幡「あー……シルヴィ、お前視点ではどうだ?」

 

シルヴィア「えっとね、八幡くん………多分私とこの子たちが思っている事は絶対に一緒だと思うから、私が代表して言うね。皆〜、合ってたら叫んで〜!」

 

八幡「お、おう……」

 

シルヴィア「それじゃあ言うからね。私とこの子たちが思っていた事は……『え?この完成度にしてこの歌にアドバイス?絶対にない。』だと私は思ったけど、皆はどう?」

 

 

〜〜〜〜〜!!!!!

 

 

八幡「えぇ〜マジィ?」

 

シルヴィア「大マジ♪八幡くんはもう少し自分の歌を評価するべきだよ〜。ね〜皆♪」

 

 

するとまた歓声が上がった。え、これって俺の自分の歌唱力の評価が低いせいなの?

 

 

八幡「むぅ……そうか、何もないかぁ。」

 

シルヴィア「なので八幡くん!本番は今の感じでよろしい!!あと1つの曲も聴いてみるけど、多分結果は同じだと思うから。」

 

八幡「それって俺が歌う意味ある?いや練習は必要だけどさ。」

 

 

「歌ってーーー!!!その歌声を私に〜!!!」

 

「「「お願いします!!!」」」

 

「見るだけ聴くだけならできますから!!」

 

 

………こいつらただ聴きたいだけなんじゃね?目の前のクインヴェール生徒からは、何故か『歌って』という文字が顔に書いてあるように見える。

 

 

八幡「あぁはいはい分かった!歌うから!まぁどの道、シルヴィが申請を出してくれているから、歌うんだけどね。」

 

シルヴィア「それじゃあ次は私の番だね。私の時も八幡くん同様に何かあったら言ってね。」

 

 

その後、一通り全部の曲を披露したわけだが、誰1人として意見する者、アドバイスをする者は居なかった。シルヴィは分かるよ?だって現役世界トップのアイドル歌手だからね?けど俺はどうよ?素人だよ?俺にはアドバイスちょうだい?

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

八幡「取り敢えずは喉を刺激しない飲み物だな。」

 

シルヴィア「あっ、私が持ってくるよ。八幡くん勝手が分からないでしょ?私が持ってくるから待ってて良いよ。」

 

八幡「悪いな、じゃあアップルで頼む。」

 

シルヴィア「は〜い♪」

 

 

気分良さそうに返事をして飲み物を取りに行った。本当、俺にはもったいないくらいの彼女だな。

 

 

八幡「にしても本当にレパートリーが多いよな、クインヴェールのメニューは。界龍にも見習って欲しいものだ。中華しかないからな。おかげでシルヴィが家を手に入れてから住むまでは、料理をする癖がついちまった。中華ものばっかり食べてると、和とか洋の料理が恋しくなってくるんだよな。」

 

シルヴィア「ね、ねぇ八幡くん……」

 

八幡「ん?おぉもど………え、何それ?」

 

 

シルヴィが戻ってきたと思って、シルヴィの方に向いたら、アップルジュースは確かにあった。あったんだが、ジョッキのサイズとストローの形と本数に問題があった。

 

まずジョッキのサイズは2人分くらいはあるだろう。それくらい大きい。そしてストローの数は2本あって、その形が2本合わせるとハートマークになっている。なんかアレだ、メイド喫茶とか喫茶店でカップル限定によく出す飲み物的なアレだ。

 

 

シルヴィア「私もアップルにしたら、こうなっちゃったんだ………どうする?」

 

八幡「いや、もう今更変えてもらうのも面倒だ。そのままで良いだろう。シルヴィが恥ずかしかったら、変えてきても良いけど。」

 

シルヴィア「このまま飲もう。うん、それが良いよ。そうするべきだよ。」

 

 

周りの視線が集まって飲みにくい中、俺たちは1度だけ一緒に飲んでみた。予想通り周りからは黄色い歓声が……君たち好きだねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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謎のニュース

 

 

冬香side

 

 

虎峰「………」(プルプル)

 

セシリー「………」

 

沈華「………」

 

沈雲「………」

 

冬香「………」

 

暁彗「………………」

 

星露「………何じゃ、この空気は?」

 

沈雲「はい。それが、趙師兄が食堂に入って最近の記事欄を見た辺りから、ずっとこの様子なのです。我々が聞いてもずっと黙ったままでして………」

 

セシリー「いつもなら反応するんですけどねー。しかも何かブツブツ言ってるしー。」

 

冬香「何か嫌な記事でもあったのでしょうか?」

 

暁彗「……………」

 

星露「ふむ……なんじゃろうかのう?最近の記事じゃろ?なら妾も見てみようかの。」

 

 

すると師父も虎峰くんと同じ端末を開きました。そして何かを見つけると、虎峰くんと同じ反応を見せましたが、すぐに戻って来ました。

 

 

沈華「師父、一体何が?」

 

星露「何というか、アレじゃ。八幡がニュースになっておる。内容はクインヴェールはついに男子禁制廃止みたいじゃ。普通に考えてそれはないと思うんじゃが、面白い事には、やはり八幡は欠かせぬというわけじゃな。」

 

セシリー「嘘〜!そしたら八幡がクインヴェールの中にいるみたいな事じゃーん!」

 

星露「………実際におる、と言ったら?」

 

セシリー「いやいや師父ー、それは流石に………本当なんですかー?」

 

星露「嘘だと思うのなら見てみるがよい。」

 

 

私も少し気になりましたので、端末を開いて最近のニュース欄を表示すると、確かにそこには八幡様の写真と共に『クインヴェール、ついに男子禁制の廃止か?』と大きく出されていた。

 

ですがだからこそ疑問が増えます。八幡様はこのような写真を使うことを許可なされたのか?私は八幡様がこのようなことを進んでする方には思えません。これは八幡様にご連絡でしょうか?

 

 

沈華「如何なさいますか?師父。」

 

星露「どうするも何も、妾たちには関係のないことじゃからのう………放っておく他あるまい。」

 

セシリー「うーん、やっぱりそうですかー。」

 

沈雲「ですが、何らかの確認は取った方がよろしいと思います。」

 

冬香「では私が八幡様に連絡致します。通じればいいのですが………」

 

 

pipipi…pipipi…っ!

 

 

冬香「っ!八幡様でしょうか?私です、冬香でございます。今、お時間よろしいでしょうか?」

 

八幡『あぁ、構わない。どうした?』

 

冬香「はい。実は………」

 

 

私は八幡様のニュースについて全て包み欠かさず話した。八幡様は聞いている最中に質問等もしてきましたが、話しが終わりに近づくにつれて、静かになっていきました。

 

 

冬香「……ということなのです。我々としては、八幡様が自らそのような行動を取ったとは思えませんし、する方とも思えなかったので、こうしてご連絡させて頂いた所存です。」

 

八幡『……成る程な、いつからかは分からんが、俺の写真が流通してるみたいだな。撮った奴、流した奴はクインヴェールのW&Wが何とかするだろう。お前らもあまり気にするな。』

 

冬香「はい、かしこまりました。」

 

八幡『そっちでもう手遅れな奴とかっているか?」

 

冬香「えっと……虎峰くんが。」

 

八幡『………またか。』

 

冬香「はい………」

 

八幡『虎峰はなんかめんどいから放置って事で。俺が載っているニュースについては、界龍内だけでも良いから、デマだって伝えておいてくれ。』

 

 

八幡様、虎峰くんの扱いがとても雑です。

 

 

八幡『それじゃあ頼んだ。俺もそろそろライブの練習がある。失礼するぞ。』

 

冬香「あっ、はい。お忙しい所、申し訳ございませんでした。」

 

八幡『あぁ。』

 

 

そして八幡様は通信を切った。まぁこれで八幡様がやってないという事実確認も取れましたので、よしと致しましょう。

 

 

冬香side

 

八幡side

 

 

八幡「………というわけみたいで、何故か俺の写真と一緒に男子禁制の廃止みたいな記事が出ていると、俺の学院から報告を受けたので、取り敢えずペトラさんにも報告しておきます。」

 

ペトラ「そうだったのね。道理で外が騒がしいわけだわ。入り口付近で取材陣が待ち構えているもの。これから説明しに行こうと思っていたけど、貴方の話が本当なら、この学園に偽の情報を漏洩した子がいるって事になるわ。その子の処分については私たちに任せてはもらえないかしら?」

 

シルヴィア「私からもお願い。この件を引き起こした子には、本当に厳しく言っておくから。」

 

八幡「まぁ元から任せるつもりだったから構わない。じゃあお願いします。」

 

 

まさかクインヴェールにこんな事をする奴がいたなんてな………だが本当にクインヴェール生徒の仕業か?なんのメリットもないのに?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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透明な犯人

 

 

シルヴィアside

 

 

八幡くんがクインヴェール女学園に訪問した事は、既に六花中の噂になっていた。それもその筈、普段からクインヴェールは男性の訪問を許可していない。学園祭シーズンは別だとしても、それ以外は特例や緊急事態でない限りは校内への進入は許されていないから。

 

八幡くんは今回、ライブに向けての練習という名目でクインヴェール女学園に来てた。これはさっき言った特例に基づいて許可されたもの。だから別に公開していたとしても、八幡くんやクインヴェールには何らダメージはない。でも、ダメージが無いだけで、問題がないというわけではない。その問題は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷八幡が入れたんなら、俺にも入れろよ!」

 

「そーだそーだ!なんかするわけでもねぇんだから、入れてくれたって良いだろ!」

 

「ふんっ、たかだか校風の写真を撮りたいだけなのに、なぜ男はダメなのか理解に苦しむね。今回の事もあるのだから、入れてはもらえないのかね?」

 

 

そう、こう言った人たちがクインヴェールの校門をうろつくようになってしまったの。八幡くんが入れたのなら、僕たち俺たちも入れるだろうっていう人たちが日に日に増えていっているの。力ずくで追い返すわけにもいかないから、凄く困っているの。

 

でも、そんな私たちのヒーローが、彼だった。

 

 

八幡「………お前らも懲りねぇな。」

 

「「「っ!!?ば、万有天羅!!」」」

 

八幡「昨日も今日もニュースや記事でやってただろうが。俺がこの学園に入っている理由も分かってるよな?俺は此処の理事長にちゃんと許可もらって入ってるんだよ。許可がなければ俺も入れない。いい加減に自分の立場を弁えろ。」

 

「く、くそっ!行くぞ!」

 

「お、おう!」

 

「ま、まぁ君みたいなのも許可が降りたんだ。僕にもじきに降りるさ………じゃあ失礼するよ。」

 

八幡「………はぁ。」

 

 

そう、いつもいつも八幡くんが練習の時間になったら追い払ってくれるから、その間だけはすごく自由に過ごせている。今のクインヴェールはなんだか鎖国されているような感じになっている。

 

 

八幡「比企谷です。本当にすみません。」

 

受付嬢「いえ、良いんです。むしろお礼を言うのはこちら側なんですから。悪いのは全て、デマを流した犯人なんですから。」

 

八幡「………そうっすね。」

 

 

八幡くんは手続きを済ませて中へと入ってきた。皆も八幡くんが校内に入って来たら、凄く安心したように溜息をつく。

 

 

シルヴィア「八幡くん、今日もありがとう。」

 

八幡「いや、気にするな。お前らも買い物とかがあるなら今の内に行っておいた方がいい。また奴らが現れて面倒なことになるとも限らない。ただし、行く時はなるべく序列上位の奴と一緒にな。」

 

 

八幡くんは今、クインヴェールに厳戒態勢を取らせている。理由の1つとしては、クインヴェールの生徒に対する強制決闘や拉致の阻止。前例はないけど、この状況下だったらあり得るかもしれないからだって八幡くんが言ってたから。

 

もう1つが校内への進入禁止だった。今までは女子だったら手続きをすれば入れる事にはなっていたけど、今はそれもやめている。入れる権利はその日の制限時間までで、それを過ぎると校内に入れない時間になるから。一応記録表は作ってるんだけど、1日限りだから人数を集計したら、誰が入ったか記入した紙は破棄しているの。

 

 

だから誰がなんのためにこんなことをしたのかわからないけど、今は六花の全女子生徒が容疑者にかけられているってわけ。特にクインヴェールの生徒に。もちろん私も生徒全員に質問や質疑応答をしたけど、誰もこそんなことはしてなかったし、端末データを見ても、記事に載ってた八幡くんの写真はなかった。

 

 

つまり、犯人はクインヴェール以外の生徒ということになるんだけど、特定が難し過ぎるから、犯人探しは時間がかかりすぎちゃう………

 

 

八幡「シルヴィ、検査はどうだった?」

 

シルヴィア「ダメだった。少なくともクインヴェールの生徒じゃないと思う。」

 

八幡「だろうな。お前が生徒会長やってるところの学園の生徒がやるとは考えづらい。かといって無作為に他学園に乗り込むのもな………」

 

シルヴィア「じゃあ、単純な探し方だけど、八幡くんを恨んでる人、とか?」

 

八幡「………六花に居たとしても、明確な敵意を持っている奴なんて、俺には2人しか知らない。レヴォルフのディルクと星導館の由比ヶ浜くらいだ。由比ヶ浜なら可能性は無くはないが、こんなことをしても奴にはメリットなんてこれっぽっちもないぞ?」

 

シルヴィア「そうだよね………」

 

八幡「……このままじゃ時間が勿体無い。シルヴィ、とりあえず今はライブの事に集中だ。他人任せにするのも申し訳ないが、ペトラさんに任せるしかない。俺たちは今できることをしていくしかない。」

 

シルヴィア「………うん、そうだね。ライブまで時間もないからね、じゃあ会場に行こっか。」

 

 

誰がやったかは分からないし、予想もつかない。でもこれだけは言える。私たちの学園をこんな酷い事にした落とし前はつけさせて貰うからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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販売催促とクインヴェールの現状

 

 

八幡side

 

 

俺がクインヴェールでライブに向けての練習を開始してから1週間が過ぎて、申請期間も終了した。そして今日は本番前のリハーサルだった。シリウスドームを貸切にしてライブの練習を行っている。にしても、今回のライブ会場は今までとは違って、全方向から注目を浴びる。だから目の前だけを歌っていれば良いというわけにはいかない。その辺りの指摘もされながらのリハーサルだった。俺はこれまで2度やってるが、その2つとも後ろには画面があった。今回はそれがないから、会場を回りながらのライブになるってわけだ。

 

 

八幡「ふぅ………中々に疲れるし、神経も使うな。一方向ならなんとかなったが、全方向にもなるとこうも勝手が違うんだな。」

 

シルヴィア「慣れればどうって事ないけど、私も最初は苦労したな〜。ペトラさんからは何回も注意されてたのを思い出すよ……」

 

八幡「俺はまだマシか?」

 

シルヴィア「動けているだけでも、私が初めてやったときの頃よりはすごく良い動きだと思う。私なんて動きながら歌うのなんて、その時は『難しすぎて無理〜!』なんて思ってたくらいだからね。まぁ何回もやってマスターしたけどね。」

 

 

シルヴィでそんな思うするってどんだけだよ……アイドル業界も楽じゃないな。いや、甘くは見てなかったけどよ。

 

 

シルヴィア「あっ、そういえば最近ね!近所の人から言われたんだけど、もう路上販売はしないの?って。この前のはまた作って欲しいみたいなの。八幡くんはどうしたい?」

 

八幡「好評だったのなら、またやるのは吝かじゃない。俺も楽しかったからな。」

 

シルヴィア「やるとしたら今度は違うメニューで行きたいね。焼き鳥とかかな?」

 

八幡「なら予め串に刺しておいた方が良さそうだな。その時その時に刺してたんじゃあ時間がかかり過ぎるからな。」

 

シルヴィア「後は唐揚げとかもアリだね。でも、ありふれた食べ物の中ではそんなに無いんだね。」

 

八幡「祭りとかの露店ではかなり出してたけど、路上販売は限られてくるな……」

 

シルヴィア「他には………」

 

 

むぅ……余り浮かばないな。よく考えてみると、新しいものを生み出す人って本当にスゲェな。こんなに悩んだ末に面白い物とか作り出せるんだからよ。お菓子とかも色んなのがあるしな。お菓子?あぁ、お菓子もあったな。

 

 

八幡「………なぁ、もしかしたら揚げ物とか、おかずに限定するからかもしれないぞ。スイーツとか食べ物以外でも出来るわけだから、色んなのがあるから考えてみろよ。」

 

シルヴィア「そうだね〜……あっ、プリンとかシュークリームとかの洋菓子も出来そう!他にも私たちが作る限定のグッズとか売り出して見たら面白そう♪」

 

八幡「洋菓子は分かるが、限定のグッズって?」

 

シルヴィア「例えば……八幡くんがオーフェリアさんに作った校章だよ!後は……煌式武装の小型模造品した物にアクセサリー!どう思う?」

 

八幡「校章やアクセサリーは何とかなりそうだが、煌式武装の模造品って俺たちだけで用意できるものなのか?」

 

シルヴィア「なんとも言えないかなぁ……私たちって鍛治とか木材の加工なんてやったことないからね。難しかったら却下だから安心して。」

 

 

いや、まだ否定もしてないから何とも言えんが……

 

 

八幡「アルルカントから、要らないガラクタ貰って売り物にするか?」

 

シルヴィア「いやいや危ないよ!?何か誤作動起きたらどうするのさ!?」

 

八幡「冗談だよ。そろそろ練習再開しないか?だいぶ話し込んじまったし、丁度いい休憩にもなっただろう。」

 

シルヴィア「そうだね!よい……しょっと!じゃ、練習再開!行ってみよ〜っ!!」

 

八幡「おぉ〜。」

 

 

ーーー1時間後ーーー

 

 

ペトラ「良い感じになってきたわね。これなら文句はないわ。八幡くんも物覚えが良いからすぐにマスターしてくれるしね。」

 

八幡「ありがとうございます。」

 

シルヴィア「あっ、ペトラさん!今ってチケットの売上どのくらいですか?」

 

ペトラ「もう完売。後は抽選するだけよ。本当に凄い人気ね。まぁ無理もないわね。六花最強最高のカップルがライブをするんだものね。」

 

シルヴィア「えへへ、やっぱりそういう風に言われると、ちょっと照れるなぁ///」

 

 

ペトラ(……前から少しは思ってたけど、もう顔を真っ赤にする事もなくなったわね。しかも否定もしないし。まぁ事実なんだけどね。)

 

 

八幡「……ペトラさん、あれから学園の方はどうです?俺がクインヴェールに行かなくなってもう3日ですけど。まだ居ますか?」

 

ペトラ「えぇ、本当に厄介だわ。ウチの学園の子たちも外の男たちを怖がって外にも出られない状況が続いているもの。人見知りや男が怖い子にはきついでしょうね。」

 

シルヴィア「私も説得してはいるんだけど、中々聞き入れてもらえなくてさ。話したら話したで『可愛い〜。』とか『写真撮って〜。』とかの連続で全く聞きいてくれないんだ。」

 

 

………そいつら、暇なんだな。そんなに暇なら学校行くか仕事見つけろよ。何やってんだよ。余計女が寄り付かなくなりそうなことやってどうすんだよ。

 

 

八幡「もし止みそうになかったら、俺がまた行きましょうか?」

 

ペトラ「…….あまりにしつこく続くようだったらお願いするかもしれないわ。」

 

八幡「その時はやりますよ。俺にも責任はありますので。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ライブ当日の緊張感

シルヴィアside

 

 

ライブ当日。練習開始日から今日までの日付の経過が物凄く長く感じた気がする。色々ありすぎたせいかな?なんかもう、あんなことは金輪際、起こらないで欲しいって思ったよ。

 

そもそもの原因は八幡くんを招いたことにあるけど、今回は特例だから無効になるとして、本当に誰なのかな?嫌な考え方だけど、自首してきて欲しかったよ。それならまだ熱りも早く冷めただろうに。

 

 

八幡「考え事か?」

 

シルヴィア「……まぁね。八幡くん事件の犯人を考えてた。」

 

八幡「俺の事件って何?事件名とか要らないからね?まぁでも、気持ちは分かる。こんなに期間が過ぎても名乗り出てこない。ペトラさんが理由を記者会見で話したにも関わらずだ。」

 

シルヴィア「……八幡くんの立場とかを撹乱したかったのかな?」

 

八幡「さぁな。これ以上考えても仕方ないだろう。それよかシルヴィ、ライブのチケットを絶対応募するって意気込んでた奴がいてな。ウチの学院のお前の大ファンの事なんだが、分かるか?」

 

 

あっ、絶対虎峰くんの事だ。

 

 

八幡「その顔は分かったようだな?ライブのチケット、取れなかったみたいだ。あいつチケットが取れなかったからか、俺に連絡してきて、『八幡………僕はどうすればいいんでしょうか?』って生気のない目で俺に言ってきたんだ。余りこういう事で特別扱いはしたくないんだが、またサインとかって頼めるか?」

 

シルヴィア「そうなんだ……うん、いいよ。そういえばめぐりさんと陽乃さんも応募してたんだよね?どうだったの?」

 

八幡「どっちも当選して手に入れてた。めぐりの奴はこれで俺らのライブ3回連続だ。運がメチャメチャあるんだな。」

 

 

今のところ100発100中だなんて……めぐりさんって何者なんだろう?悪い人たちと組んでるわけじゃないよね?

 

 

シルヴィア「あっ、オーフェリアさんにも聞いたんだけど、応募して当選したって!しかも結構前の列だったって!」

 

八幡「横流ししてないよね?」

 

シルヴィア「するわけないでしょ!」

 

八幡「うん、知ってた。」

 

シルヴィア「ならば許そう!」

 

八幡「ありがたやーシルヴィア陛下〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「ふふふっ♪八幡くんってば……さっ、もうそろそろ打ち合わせだね。行こっ♪」

 

八幡「あぁ。」

 

 

ーーー会議室ーーー

 

 

ペトラ「……取り敢えずは以上よ。シルヴィアと八幡くんは前にも言ったけど、一方向だけを向きすぎないようにね。今回は360度に観客がいるから、全員に振り向くようにね。」

 

2人「はい。」

 

ペトラ「他に何かあるかしら?」

 

 

「ないとは思いますが、もし誰かが乱入してきたらどうします?」

 

ペトラ「八幡くんに任せてあるわ。いいのね?」

 

八幡「はい。シルヴィは俺が守ります。」

 

ペトラ「2人の事は2人自身に聞きなさい。その方が色々と好都合だから。他に何かあるかしら?」

 

 

今度こそ周りが静かになった。これは何もないよの合図みたいなもの。

 

 

ペトラ「……よろしい。開幕の合図も2人に任せてあるから、何で始まるかは2人の行動次第になるわ。もし不安に感じたら、2人に聞いてみると良いわ。それじゃあ解散!」

 

 

ーーー舞台裏ーーー

 

 

刻一刻と時間が迫ってきている………その度に心の緊張が高まってくる。隣にいる八幡くんは大丈夫かな?緊張のし過ぎで歌う歌間違えたりしないよね。

 

 

シルヴィア「八幡くん緊張してない?こういう時は人という字を掌に書いて、そのまま飲むと良いよ!」

 

八幡「いや、緊張していないが……てか何だ?そのかえって緊張感を高めそうな行動は?」

 

シルヴィア「あはは……何だろうね?なんかこの向こう側に行ったら、本当に周りが人だらけなんだなぁって思うと、少し……ね。」

 

八幡「そうなのか……とりあえず俺は周りにある観客は全部喋る雑草って思うことにした。」

 

 

八幡くん、それは幾ら何でもヒドくない?

 

 

八幡「まぁ今のは冗談だが、深く考え過ぎないようにしている。シルヴィ、気楽に行こう。な?それが無理ならガンガン行こうぜっ!だ。」

 

シルヴィア「ふふふっ♪うん、そうだね。楽しくやらなきゃ意味ないもんね!八幡くん、ありがとうね。私このライブ、思いっきり楽しむことにするよ!」

 

八幡「あぁ、そうしろ。」

 

 

「シルヴィアちゃ〜ん!比企谷く〜ん!そろそろスタンバイお願いしま〜す!」

 

シルヴィア「は〜い!じゃあ行こっか!」

 

八幡「あぁ。」

 

 

よぉ〜し!久々の八幡くんとのライブ!思いっきり楽しんで行こうっと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 














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ライブ①

 

ーーーーーー

 

 

ライブ開始時間になると、シルヴィアと八幡がブリッジを渡りながらステージへと向かっている。その間2人は観客に向けて手を振って挨拶をしていた。

 

ブリッジから中央のステージへと到着した途端、ブリッジは入り口付近へと段々戻って行った。元の位置に戻るのであろう。

 

 

シルヴィア「皆〜!!今日は来てくれてありがとう〜!!さて、いきなりですが皆さんに質問です。今日のライブ、楽しみだった人〜!」

 

 

〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 

 

シルヴィア「うんうん、それだけ元気があれば今日のライブも大丈夫だね!早速ライブを始めます!っと言いたい所なんだけど、まず最初に皆さんに謝らなければならない事があります。」

 

 

会場内が騒ついた。シルヴィアが謝る事、会場の観客には思い当たる節がないのだろう。

 

 

シルヴィア「謝る事というのは、隣にいる比企谷八幡くんのクインヴェール校内進入の事です。正当な理由があってクインヴェール校内に入ったとはいえ、世間、皆様をお騒がせしてしまったことをお詫び増します。申し訳ございませんでした。」

 

八幡「俺からも謝らせて欲しい。今回は本当に申し訳ない。」

 

 

シルヴィアと八幡は深々と頭を下げた。すると観客の1人が………

 

 

「2人が謝ることじゃねぇー!!頭なんて下げないでくれー!!ライブを盛り上げてくれー!!」

 

 

すると、それが山彦となって色んな所から声が響き始めた。

 

 

「そうだそうだー!!2人は悪くない!!」

 

「悪いのはこんなデマ流した犯人なんだから気にしないでー!!」

 

「気にしなくても大丈夫だから、ライブを盛り上げてくださ〜い!!」

 

 

いつの間にか観客全員から2人に向けて慰めや擁護といった類の言葉が飛び交っていた。2人はその言葉を無視するはずもなく………

 

 

八幡「ありがとう!皆の言葉に心が救われた。」

 

シルヴィア「皆、暖かい言葉をありがとう♪皆のおかげで心から楽しみながらライブが出来そう!じゃあ今日は皆で、ライブを盛り上げていこうね!!」

 

 

〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 

 

シルヴィア「うん、この調子なら最後まで大丈夫そうだね!じゃあ最初の歌は私の隣にある八幡くんからです!」

 

八幡「皆には叶えたい夢ってあると思う。そんなのただボーっとしてるだけじゃ叶わないよな?なら前に進みながら夢を叶える努力をしないといけないよな。努力の可能性は無限大だ。まず最初は『シンボル』って曲から始める。皆、ペンライトの準備を忘れるなよ?」

 

 

照明が消えてあたりが暗くなった。

 

 

BGMが流れたと同時に照明も再びステージへと照らされて、八幡もBGMの流れに沿って曲を歌い始めた。

 

 

ーーー3分半後ーーー

 

 

八幡「その手で♪〜」

 

 

BGMが終わった途端、会場からは拍手と歓声が巻き起こり、1曲目が終了した。

 

 

シルヴィア「ブラボ〜♪やっぱり八幡くんの歌声は良いね!聞いてるこっちも熱くなってくるよ!」

 

八幡「この曲は歌ってる俺も前を向いて進まなきゃなって思う曲でな。聞いた瞬間、『あっ、良い曲だな〜。』って思って歌う事にしたんだよ。」

 

シルヴィア「成る程!良いチョイスだね!」

 

八幡「さて、じゃあ次はシルヴィだな。このテンション下げるなよ?」

 

シルヴィア「分かってるよ〜!それじゃあ次は私が歌います!取り敢えず質問します!あっ、答えなくても良いからね!今、恋をしている人〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「うん、チラホラいるね!ありがとう!手を挙げてくれて!」

 

 

シルヴィア(それから前列辺りにいる白髪長髪の赤目の女の子は後でお話でもしよっか♪)

 

 

シルヴィア「想いを伝えるのって怖いよね?伝えたい……でも相手からも自分に想いぶつけて欲しい!確かな気持ちは相手が好きだっていうこと!聞いてください!『センチメンタルクライシス』です!」

 

 

カッ、カッ、カッカッ

 

 

シルヴィア「♪〜♪〜」

 

 

シルヴィアがテンポ良く歌い出して、そのままBGMが大きくなる。ドラムの激しく叩く音も聞こえてくる中、再び曲の歌い初めに入っていった。

 

 

ーーー4分ーーー

 

 

シルヴィア「私を〜連れ出して♪〜」

 

 

〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 

 

シルヴィアの曲が歌い終わって、BGMも流れ終わると、八幡の時と同様に大きな歓声と拍手が巻き起こった。

 

 

八幡「いやぁ〜なんていうか、またかなりの恋愛系の歌を選んだものだな。」

 

シルヴィア「良いじゃん!恋愛ソング!応援したくなんだもん!告白したいけど、なんだか不安で出来ない子とか、相手からしてもらいたくて必死にアピールしているのを見ていると、無性に応援したくなるの!」

 

八幡「それ、自分を重ねてるわけじゃないよな?」

 

シルヴィア「な、何のことかなぁ〜?」

 

 

wwwww〜〜!!!

 

 

シルヴィア「もぉ〜笑わないでよー!私だって八幡くんに告白するのに凄い勇気必要だったんだからね!しかもすごく怖かったし!」

 

八幡「まぁそのおかげでこうしていられるわけだけどな。にしてもだいぶ経ったよな〜。あれからもう6年経ってるのか?」

 

シルヴィア「うん、大体そのくらい。八幡くんが六花に来たのって高ら等部1年の時でしょ?」

 

八幡「あぁ、その時に転校してきた。色々あったもんだよ。」

 

シルヴィア「ふふっ、本当だね。じゃあ次は八幡くんだよ!交代で行くからね〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シンボル…食戟のソーマ餐の皿のOP

センチメンタルクライシス…かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜のED


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ライブ②

 

 

ーーーーーー

 

 

八幡「♪〜♪〜」

 

 

八幡が歌い終わると、暫くエアギターのBGMが続いて、20秒くらいすると音も完全に無くなった。そして次に出てきたのが観客たちの大きな歓声だった。

 

 

シルヴィア「良いねぇ〜!これまでの八幡くんの曲とは打って変わって激しい曲になったね!」

 

八幡「まぁ俺にはもう星武祭の出場権は無いから、出来ることで暴れまわろうと思ってな。今回は歌でそれをやってみたってわけだ。」

 

シルヴィア「そっかぁ〜……じゃあさ、もし星武祭の出場権がまだあったら?」

 

八幡「その時は星部祭で暴れる。願い事は誰かにあげるかもな。別に興味ないし。」

 

 

すると観客は少しだけ騒ぎ始めた。

 

 

八幡「いや、もう願い事なんてないよ?これ以上何を要求すればいいわけ?3回も叶えてもらったんだよ?俺はもう良いっす。」

 

シルヴィア「まぁ、そうなるよね。八幡くん【王竜星武祭】が終わった時なんて、あーとかうーとか唸ってたもんね。」

 

 

wwwww〜〜〜〜!!!!

 

 

 

八幡「わ、笑うなよ……はいっ!この話はもう終わりっ!次はシルヴィの曲だ。面白おかしくしても良いぞ。目一杯笑ってやるから。」

 

シルヴィア「もう、八幡くんったら………よし、じゃあ次は私の曲だね!これは前のライブでも歌った曲だよ!君と一緒ならどこへでも、どこまでも一緒に。『私の幸せ』。」

 

 

穏やかなギターの音色から始まるこの曲は、数年前に千葉で初披露した曲である。

 

 

シルヴィア「朝に目覚めたら、君を見ていたの♪〜♪〜」

 

シルヴィア「ずっと目を合わせてたね♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君が抱き締めた瞬間、満たされた♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君といれるだけで私は幸せよ、Thank You♪〜♪〜」

 

 

静かな歌い出しだが、徐々に声量や音が大きくなるのが、この曲の特徴である。

 

 

シルヴィア「君とならいける、たとえ過酷でも♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君と一緒なら、きっと大丈夫だから♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君だけが良いの、君以外は嫌なの♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「私が選ぶのは、君しかいないから♪〜♪〜♪〜」

 

 

『これ前も聞いたけど、やっぱり良いよなぁ。』

 

『なんていうの?静かだけど、想いは熱い的な?』

 

『そうそう!何でこんな曲作れるんだ?』

 

 

シルヴィア「昼に出かけたら、手を繋いだよね♪〜♪〜」

 

シルヴィア「当たり前だけど、嬉しい♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君がくれた温もりまだ残っているよ♪〜♪〜」

 

シルヴィア「この手の温もりは、私だけの秘密だから♪〜♪〜」

 

シルヴィア「夜に寄り添ったら、肩合わせてたね♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「眠る時間には、抱き締め合っていたよね♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「そして朝になり、君の横顔を見る♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「この繰り返しが、堪らなく好きなの♪〜♪〜♪〜」

 

 

2パート目のサビが終わって、長い完奏に入った。

 

 

シルヴィア「君とならいける、負けそうになってたら♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「声が聞こえたよ、『頑張ってくれ』と♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「たとえ苦しくても、痛さで辛くても♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君からの声で、何度でも立ち上がる♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「そしてその夜、夢が実りました♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「私の願いが、叶った瞬間です♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「目を閉じて待てば、唇の感触♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「そのひと時が、私の幸せ♪〜♪〜♪〜」

 

シルヴィア「君と一緒なら、何処へでも行くよ♪〜♪〜」

 

 

八幡のために作った曲、再び観客の前で歌ったシルヴィアの心は舞い踊っていた。ギターの音が鳴り止むとまたまた大きな歓声が鳴り響いた。

 

 

八幡「一言いい?なんでそんなに歌上手いの?」

 

シルヴィア「そりゃあプロですから!」

 

八幡「それで済ませられるって………うん、羨ましく思うよ。」

 

シルヴィア「八幡くんだって料理上手じゃん。なんでそんなに上手に出来るの?」

 

八幡「将来料理人目指してますから。」

 

シルヴィア「さっきの私と同じじゃない?」

 

 

wwwww〜〜〜〜!!!!

 

 

八幡「それはさておき、次で最後の曲になっちまうけど、皆心の準備はいいか?よかったら返事をしてくれ。いやよくなくても返事をすること。何が何でも返事をすること。最後の曲……皆、準備はいいか!?」

 

 

〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!

 

 

八幡「はい、どうも!これならいけるな。最後は俺たちのデュエット曲『打ち上げ花火』を歌う。夏の思い出にはピッタリのテーマだ。最後の曲、しっかり聞いてくれ。」

 

 

ピアノの音色が会場に響き渡り、心地良い音が1人1人に流れ込んで行った。

 

 

ーーー5分ーーー

 

 

2人「この夜が、続いて欲しかった♪〜」

 

 

サビの激しい曲の流れから徐々に緩やかにそして消えるように音が消えて行った………

 

 

〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!

 

 

シルヴィア「皆〜、今日は本当にありがとう!!今日のライブはこれで終わりだよ!!ちゃんと自分の荷物とペンライトは忘れずに持ち帰ってね!!それじゃあ、次のライブでまたね!さようなら〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





私の幸せ…angel beatのED『一番の宝物』の替え歌。

打ち上げ花火…映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌。


思った事………ライブの書き方ってこんなに難しかったっけ?


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不当選のあの人に

 

 

シルヴィアside

 

ライブも無事に終わって、私たちの生活は普段通りのとても楽しい日々に戻った。ライブの練習期間が嫌だったわけじゃないけど、八幡くんと過ごせる時間が減るのはちょっと嫌だったから………え?一緒に居るじゃんって?違うのっ!空間は一緒でも普段と同じように話せないのが嫌なの!

 

まぁちょっと理由がお子様っぽいけど、今はとても楽しい日々を送れているから問題ありません!そして今、私は八幡くんと一緒に界龍に来ているんだ。その理由はこの前八幡くんから聞いたんだけど、ライブ終わった後の虎峰くんが本当に抜け殻みたいになっていたみたいなの。なんでか聞いてみたら、『界龍でライブに当選されなかったのは僕だけ………』………みたいなの。流石にこれは哀れだよ。界龍にライブを観にくるような人はいないと思うんだけどなぁ〜。

 

それで取り敢えず、サイン入りのアルバム(新作じゃないけどね。)を持って界龍に来たってわけ!けどまだ虎峰くんが部屋から出てこないから、私は個人で界龍の校内を見て回ってるんだ〜。

 

 

でもさ、最近思っていることがあるの。なんでもないことかもしれないんだけどね。

 

 

シルヴィア「私って界龍にこんなに当たり前のように顔パスみたいに入ってるけど、大丈夫なの?やっぱりパスポートを発行した方が………」

 

玉緑「いえ、貴方様は我らが宗師の妻になるお方。そのようなお方に、お手間を取らせるなどという行為は一切出来ません。なので、お気になさらないでください。これまで通りでお願いします。」

 

帆季「玉緑(ユーシェン)の言う通りでございます。奥方様が宗師とのご関係を公表した時から、師父……いえ、先代様から『そのまま通しても良い。』とのお達しが来ておりましたので。」

 

シルヴィア「そうだったんだ〜。今まで疑問に思わなかったけど、それなら合点がいくね。わざわざ教えてくれてありがとう。」

 

2人「いえ、とんでもございません!!」

 

 

星露がそんな事を言っていたなんて……でもそのおかげで私はこうやって自由に出入りできてるんだもんね。そこは感謝しないとダメだよね。

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

あっ、八幡くんからだっ!

 

 

シルヴィア「はい、もしも〜し♪八幡くんどうしたの?虎峰くん出てきたの?」

 

八幡『あぁ、ようやく出て来たわ。今飯誘って食堂に行く所だからお前も来てくれ。多分俺たちの方が早く着くから、シルヴィはそのまま入ってきてくれれば良いから。入ったら虎峰に『例のブツだ。』みたいな感じでいえば大丈夫だ。』

 

シルヴィア「私のアルバムは麻薬取引の現場に使われるのかな?」

 

八幡『大丈夫だ。シルヴィのアルバムは麻薬じゃなくて、1人の人間を救う秘薬だから。』

 

 

もう、八幡くんってば!

 

 

シルヴィア「ふふっ♪とりあえず了解!私は少しゆっくりしながら行くね。」

 

八幡『おう、頼むぞ。』

 

 

……よしっ!じゃあ食堂に向かおうか。

 

 

帆季「やはり宗師はイタズラ好きのようですね。師兄もからかわれてお気の毒ですが、これも界龍の日常のようなものですから、慣れてしまいました。」

 

シルヴィア「八幡くんがいると、こんな感じ?」

 

帆季「えぇ、皆それはもう楽しそうにしておられます。あの方が来ると自然と皆の気が和らぐのです。とても偉大なお方です、宗師は。」

 

 

崇められ過ぎかもしれないけど、これも八幡くんの1つの魅力だよね。

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

……よしっ、作戦開始!!

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「………」(パチパチ)

 

 

?アイコンタクト?えっと……『虎峰の隣に座ってアルバムを渡せ。』だね。オッケーっと。

 

私はそのまま2人のいる席に進んで虎峰くんの隣の席に座った。虎峰くん、この距離なのに気付いてないよ……ライブに行けなかったの、そんなにしょっくだったのかな?

 

 

……取り敢えずそれは置いておこう。今はこのアルバムを横に滑らせながら虎峰くんに渡せば良いんだもんね。よし、やろう!

 

 

シルヴィア「………例のブツだよ。」

 

虎峰「……………………………………?」

 

シルヴィア「確かに渡したからね。」

 

虎峰「………………っ!!!こ、これはシルヴィアさんの現時点での最新アルバム!!しかも限定版!!!何故貴女がこれ…………………え?」

 

シルヴィア「ハロー♪」

 

虎峰「………………………………………」(石化)

 

シルヴィア「八幡くん、石になっちゃった。」

 

八幡「マジかよ……ちょっと予想外だな。てっきり人間が理解できない言語を喋り出すと思っていたんだが……まさか石になるなんてな。」

 

シルヴィア「おーい、虎峰く〜ん。起きてー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………返事がない。ただの石像のようだ。」

 

シルヴィア「じゃなくて。どうするの?」

 

八幡「う〜ん………取り敢えずアルバムは俺が貰っておくわ。石が持ってても仕方ないだろう。」

 

虎峰「絶対にあげません!!!これはもう僕のものです!!!シルヴィアさんから頂いた貴重なアルバムなんですから!!!」

 

八幡「分かった分かった。分かったからまずは飯食うぞ。折角シルヴィが来てくれてんのに、客人を待たせる気か?」

 

虎峰「っ!!そ、そうでした!!シルヴィアさんを待たせるわけにはいきません!!急いで食事を済ませなくては!!」

 

シルヴィア「い、急がなくても良いよ〜……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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入れ替わった2人

 

 

八幡side

 

 

八幡「………ん?んんぅ……おぉ、朝か。」

 

シルヴィア「すぅ……すぅ……」

 

八幡「ふっ、まだ俺より早く起きるのは無理みたいだな。偶にしか起きれないようだな。」

 

 

しかし、こうやって改めて見ると本当に端正な顔してるよな。凄い有名な彫刻師でもここまでの美貌を表すのは無理だろう。絵師でも無理だろうな。

 

昔の俺なら絶対に信じていないだろうな。俺に彼女も出来て。それだけじゃなく、居場所や界龍っていう家族もできて、慕われるようにまでなるなんて。昔は正反対だったもんな。今ではこの暮らし、この日常が気に入っている。この日常だけは誰にも壊されたくない。失いたくないものになっている。たとえ自分が犠牲になったとしてもだ。

 

 

八幡「……朝から考えるようなことじゃないな。シルヴィが起きるまでは、こうしてるか。どうせすぐに目を覚ますだろうしな。」

 

 

ーーー2時間後ーーー

 

 

八幡「……シルヴィってこんなに寝坊助だっけ?」

 

 

おかしいよ?だっていつもなら6時か6時半くらいに起きてるのに……今もう8時だぞ?いくら休みだからって寝過ぎじゃない?普段の休みだって、最低でも7時には起きてるぞ?そんなに心地良い夢でも見てるのか?

 

 

シルヴィア「すぅ……すぅ……」

 

八幡「にしても本当に起きる気配がないな……しかも俺には抱き着いたままだし。」

 

 

いや、別に離れたいわけじゃないからね?ただ寝ながら他人に抱き着いて、落ち着いて寝られるのかなぁって思ってるだけだ。あったかいから良いのか?

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

シルヴィア「………ん、んんぅ……?ここは?」

 

八幡「おう、シルヴィ。やっと起きたか。」

 

 

2時間半………これはもう新記録だな。俺が起きてから眼を覚ます時間記録更新だ。なんだよその意味分からん記録。誰が作ったんだよ……俺ですね。

 

 

シルヴィア「………八幡?」

 

八幡「おう、お前の彼氏、比企谷八幡だ。」

 

シルヴィア「………貴方の恋人はシルヴィアよ?」

 

 

………この寝坊助は何を言ってるんですかね?寝ぼけ過ぎて自分の名前まで忘れちゃってんのか?

 

 

八幡「あぁ、知ってるよ?目の前にいるし、自分の事だろ?」

 

シルヴィア………?何を言っているの?私は……」

 

 

すると、突然扉が勢い良く開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「八幡くんっ!!」

 

 

………オーフェリア?しかもくん付け?まぁ今はそんなことどうでも良い。

 

 

八幡「おいおい、いくらお前でも人のうちに勝手に入り込むなよ。流石に怒るぞ。」

 

オーフェリア「違うの!!聞いて八幡くん!!」

 

八幡「………てかその口調やめろよ。なんか気持ち悪いぞ。」

 

オーフェリア「だから聞いてって八幡くん!!今は私がシルヴィア・リューネハイムなのっ!!」

 

 

……………はぁ?

 

 

八幡「い、いやいや何言ってんの?冗談も大概にしろよ。どっやって中身が入れ替わるんだよ。それにこっちは本物かもしれないだろ。」

 

オーフェリア「じゃあ聞いてみてよ!」

 

八幡「はいはい……名前は?」

 

シルヴィア「………オーフェリア・ランドルーフェンよ。」

 

 

……………へぇ?

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

八幡「ズズゥ〜……ふぅ………それで?今はシルヴィがオーフェリアで、オーフェリアがシルヴィって事?なんで?」

 

オーフェリア「そんなの私が聞きたいよぉ〜!今朝目が覚めたら知らない天井で1人なんだよ!?隣に八幡くんが居ない不安ったらとんでもなかったんだから!!」

 

 

………心中お察しします。

 

 

八幡「それにしても………違和感しかないな。声の出てるオーフェリアと無口なシルヴィって。なんかすっごいやり辛い。」

 

シルヴィア「………私は普通にしているつもりなのだけど、この姿はシルヴィアなのよね。なんだか変な感じだわ。」

 

オーフェリア「私もだよ〜。」

 

八幡「それよりも、どうする?この状態は流石に放っては置けないだろう。このままお前らが普段通りに学園に行ったら、違和感丸出しでアウトだ。」

 

 

かといって逆にしたら、クインヴェールは恐怖と混乱を招くだろうし、レヴォルフは欲望丸出しだろうからな。こんなの絶対ダメだ。

 

 

シルヴィア「………八幡、ならこの原因不明の現象が消滅するまでは私たち3人は一緒にいるというのはどうかしら?私とシルヴィアは今、ただでさえこんな状態。外は歩けと思うけど、何が起こるか分からないわ。ならいっそ、私も八幡の所にいれば安全だも思うわ。」

 

八幡「……一理あるな。」

 

オーフェリア「確かに理に適ってるけど、それは理屈で本当は八幡くんと一緒に居る時間が欲しいだけなんじゃないの?」

 

シルヴィア「………それもあるわ。でも今回は前者の方が大きいわ。私だって貴女の身体で好き放題やるわけにはいかないもの。」

 

オーフェリア「そ、そっか………」

 

 

おぉ、珍しくオーフェリアが良い事を言う。確かにこの不可解な現象が無くなるまでは3人でいた方がいいな。その方が安全だ。

 

 

八幡「俺は賛成だ。流石にこの状況なら仕方ないだろう。シルヴィ、お前はどうだ?」

 

オーフェリア「うぅ〜………確かにそうだよね。今はこんな状況だもんね。私もオーフェリアさんの意見に賛成だよ。」

 

八幡「よし、なら住む場所はここで良いだろう。その方が把握もしやすいからな。分かってると思うが、余り身勝手な行動はするなよ。」

 

2人「はーい。(………えぇ。)」

 

 

………ほんとうに違和感しかない。

 

 

 



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騒がしいのが再び……

八幡side

 

 

あれから議論に議論を重ねた結果、やはりこの現状が治るまでは3人でいようという事になった。流石にこの状況下じゃあ外にも出歩けないだろうしな。晩飯くらいは出来るが、買い出しは俺と一緒じゃないと無理だろう。でないといつも行くスーパーとかで疑われて違和感もたれたら、その時点でヤバいことになりそう。

 

というわけで、今日は……というより暫くの間は外出は極力控える事にした。流石にこれは仕方ない。だが問題はまだまだ山積みだ。けどまずは目先の事だ。それはというと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「ちょっとオーフェリアさん?八幡くんにくっつき過ぎじゃない?いくら私の身体だって分かってはいても、他人に身体を操られてる状態でやられても嬉しくないんだけどなぁ?」

 

シルヴィア「………シルヴィアはもっと抱きついてくれれば良いわ。できればもっと密着して頂戴。まだまだ密着度が足りないわ。」

 

 

………両サイドの2人が言い争っています。俺の腕を自身に抱き寄せながらだ。頼むからそういうのは後にしてくれませんかね?そんな場合じゃないってことくらい分かってるよね?

 

 

八幡「お前ら、そろそろ口喧嘩はやめろ。でないと俺は界龍に戻るからな。」

 

シルヴィア「私たちは仲良く八幡を共有していただけよ、そうよねシルヴィア?」

 

オーフェリア「勿論だよオーフェリアさん!八幡くんってば勘違いしちゃダメだよ〜!私たちって口喧嘩するくらい仲が良いんだから♪」

 

八幡「物は言いようって言葉知ってる?」

 

 

ったく調子の良い二人だ。抱き着くオーフェリアに嫉妬しながら俺の腕に抱き着いて離れるように言うシルヴィ。何度見てきて何度同じように調子の良い事を言ってきたか………まぁいいけどよ。

 

 

シルヴィア「………やっぱり大きいわね、シルヴィアの胸は。」

 

オーフェリア「え、えぇ?そうかな?」

 

シルヴィア「えぇ。だって………」

 

 

オーフェリアは俺の掌を広げてそのまま胸を鷲掴みさせた………って何やってんのお前っ!!?

 

 

オーフェリア「ち、ちょっと!?いきなり何やってるの!?」

 

シルヴィア「………私の胸ではこうはならないわ。胸をこんな風に揉めるもの。」

 

八幡「だからって本当に揉ませるバカがいるか!お前人の身体で何やってんの!?」

 

シルヴィア「………八幡。」

 

八幡「………何だ?」

 

シルヴィア「………私が触られた感想だけど、シルヴィアの胸は感度も抜群だったわ。」

 

オーフェリア「もうやめて〜!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーフェリア「酷い目に遭ったよ………」

 

八幡「あぁ、災難だったな。」

 

シルヴィア「その調子よ八幡、もっと私を慰めてちょうだい。」

 

八幡「お前は1回黙ってろや。」

 

 

オーフェリア「(オーフェリアさんめ……こうなってら私だって仕返ししてやるんだから!)じゃあオーフェリアさんはどうなのか、試してみてもいいのかな?八幡くんに揉んでもらうけど?」

 

八幡「ちょっと?人を巻き込むんじゃありません。怒られたいの?」

 

シルヴィア「………八幡なら大歓迎よ。」

 

八幡「お前も何ノってるんだよ。」

 

 

するとオーフェリアは掌を広げて、胸の部分へと触れさせた……これって俺どうすりゃいいの?

 

 

オーフェリア「んっ♡………ご、ごめん/////」

 

シルヴィア「………シルヴィア、私で変な声を上げないでちょうだい。」

 

オーフェリア「だ、だってオーフェリアさん……絶対私よりも、上だよね?」

 

シルヴィア「………何のことかしら?」

 

オーフェリア「誤魔化せないからね?オーフェリアさんの方が胸の感度あるよね?触られただけでビビッて電気が走ったよ?相当強いよね、オーフェリアさんってば。」

 

シルヴィア「………分かったわシルヴィア。私が悪かったから、八幡の前でもうその話はやめてちょうだい。恥ずかしいわ///」

 

オーフェリア「よし、勝った♪」グッ

 

 

何が『よし、勝った♪』だよ。隣で胸の感度確かめ合ってるのを聞かされたり触られたりしてる俺はどうすりゃいいわけ?

 

 

八幡「………話は終わったか?ならそろそろ手を解放させてくんない?」

 

オーフェリア「おっと、ゴメンね。」

 

シルヴィア「………八幡、私の胸はどうだったかしら?気持ち良かったかしら?」

 

八幡「どう答えていいか分からないから、ノーコメントだ。」

 

 

答えるわけねぇだろ。何平然と感想求めてるの?なんかもう普通に聞いてきてるから怖いんだけど。

 

 

 

 

シルヴィア「………あっ、そうだわ八幡。今日私はどこで寝れば良いのかしら?」

 

八幡「客間に布団引いてそこで寝てもらう。言っておくがシルヴィ、この現象が無くなるまでは一緒に寝るのは無しだからな。」

 

オーフェリア「そ、そんなぁ………」

 

 

だって絶対うるさくなりそうだもん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2人の時間

 

 

オーフェリア(中身シルヴィア)side

 

 

八幡「じゃあ行ってくる。何度も言ったが、くれぐれもケンカしないようにな?」

 

オーフェリア「分かったってば!八幡くん心配し過ぎだよ。」

 

シルヴィア「………その通りよ八幡。ケンカをしたとしても、私とシルヴィアなら、すぐに仲直りできるから安心して。」

 

八幡「……あまり信じられないが、取り敢えずは受け取っておこう。もし俺が帰ってきた時にケンカしてたら、お前らの頭に肌色の丘ができてるからな?」

 

オーフェリア「は、八幡くんってばやだなぁ〜!そんな事にはならないよ〜!ねっ?」

 

シルヴィア「………そうね。」

 

八幡「………じゃあ行ってくる。なるべくすぐ戻って来るからな。」

 

 

八幡くんは今日のお昼ご飯と晩御飯の買い出しに行ってくれている。昨日行けば良かったって今更嘆いても仕方ないけど、我慢だね。それにしても、本当に変な感じ。能力を使ってもないし、鏡も見てないのに目の前に自分がいるなんて………

 

 

シルヴィア「………当てつけで言うわけではないけれど、何故こうなったのかしらね?」

 

オーフェリア「そうだよね。私もオーフェリアさんも特に変わった事はしていないはずなのに……どうしてこうなったんだろうね?」

 

シルヴィア「………誰かの魔法とも考えにくいわ。こんな摩訶不思議な魔法や能力なんて聞いたことも見たこともないもの。」

 

 

もしそんな人がいたらすぐ噂になってそうだもんね。他者の中身を入れ替える能力なんて。

 

 

オーフェリア「オーフェリアさんはさ、昨日に限らずだけど、何かいつもと違うことはしなかった?私はいつも通り八幡くんと過ごしてたから、変わったことはしていないと思うんだけど………」

 

オーフェリア「………特に思いつかないわ。私も学院で生徒会の仕事をしたり、部屋でお花のお世話をして、料理をしたりだから、これといって何も無いわ。」

 

オーフェリア「そっかぁ………原因不明だね。」

 

シルヴィア「………そうね。」

 

 

何かのアイテムの効果ならまだ納得できるけど、そんなもの出回ってるはずもないし、羽衣狐の呪いはこんな事にならないし、純星煌式武装の代償も考えられない。だって八幡くんのはそんな代償じゃないし、そもそも私は持ってない。オーフェリアさんのは………あれ?そういえば、オーフェリアさんの純星煌式武装の代償って何?

 

 

オーフェリア「オーフェリアさん、君の持っている純星煌式武装の代償って把握してる?」

 

シルヴィア「………勿論。あの子の代償は触れた物を一瞬にして氷漬けにしてしまうというものよ。だからあの子は余程のことが無い限りは持ち歩かない事にしているもの。誰かを氷漬けになんてしたくもないわ。」

 

 

もしかしたらっ!って可能性もダメだったかぁ……あ〜ぁ、何なんだろうなぁ………

 

 

シルヴィア「………シルヴィア、考え詰めても仕方ないわ。今はもっと楽にしましょう。」

 

オーフェリア「………そうだね。うん、その通りだね。大変な時こそ冷静でいなきゃ、だもんね。」

 

シルヴィア「………えぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「………」

 

オーフェリア「………」

 

シルヴィア「……………」

 

オーフェリア「……………」

 

シルヴィア「……………………」

 

オーフェリア「……………………」

 

 

流石に静か過ぎるよっ!?何もないわけじゃないのになんでこんな雰囲気に!?考えすぎてもダメだって言われたけど、これはないよ!!

 

 

オーフェリア「えっと、オーフェリアさん?」

 

シルヴィア「………何かしら?」

 

オーフェリア「えっと………オーフェリアさんってさ、生徒会の仕事以外で学園で何してるの?」

 

シルヴィア「………何もしてないわね。強いて言うなら見回りくらいかしら。最近は悪さをする生徒もいないからとても暇になっているのよ。仕事が恋しいって思う日もあるわ。」

 

オーフェリア「そ、そうなんだ………」

 

シルヴィア「だからシルヴィア、八幡を1時間でも、なんなら3時間でもいいから1週間に1度の頻度で会わせてはもらえないかしら?」

 

オーフェリア「うん。それって時間伸ばすところは言わなくても良かったよね?何でわざわざ1時間から3時間に伸ばしたのか、そこの所詳しく聞いても良いかな?」

 

シルヴィア「………だって今日まで八幡に全く会えてなかったんだもの。流石に寂しいわ。」

 

 

………あぁ、そっかぁ。オーフェリアさんは八幡くんに恋愛感情を……抱いているかは分からないけど、八幡くんのこと好きだもんね。好きな人に会えないのは流石に辛いよね。

 

 

オーフェリア「………私は大丈夫だけど、後は八幡くん次第かな。八幡くんがオーフェリアさんに会いに行くのなら、私は止める義理もないからね。」

 

シルヴィア「………ありがとう。」

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

八幡「ただいまー。」

 

オーフェリア「お帰り〜八幡くん♪」

 

シルヴィア「………お帰りなさい、八幡。」

 

八幡「………なんか、やっぱり違和感しかないわ。分かってはいるが、お前らが普段と正反対だと。」

 

 

私もそう思うよ。早く元に戻れば良いんだけど……治す方法とかってないのかな?

 

 

 

 

 

 

 



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就職先は?

13日・16日はすみませんでした!1日中仕事があって書けませんでした!

あと何回かありますので、その時はごめんなさい!


 

 

シルヴィア(中身オーフェリア)side

 

 

………久々に八幡の手料理を食べたけれど、やっぱりとても美味しかったわ。私とシルヴィアもお手伝いをしながら作ったわ。流石に何もしないままというわけにはいかないものね。将来、飲食店をしたいと言っていたのは嘘ではないようね。私も雇ってもらおうかしら?

 

………それにしても、2人の手際の良さには驚いたわ。軽い指示を出しただけでそれ以上の事までして帰ってくる。本当に夫婦みたいだわ。

 

 

シルヴィア「………2人は将来、飲食店を経営するのよね?何処でするのかしら?」

 

八幡「取り敢えず店の場所はこの家のすぐ近くにしてあるんだ。通いやすいっていうのと、何かあった時に駆けつけやすいって理由だな。」

 

オーフェリア「しかもそのお店はね、八幡くんが《獅鷲星武祭》のお願いで作ってくれたんだ♪」

 

八幡「場所は商業エリアの端辺りだ。目立たない場所だから客足は伸びないだろうが、まぁその時はその時だ。」

 

シルヴィア「………八幡、シルヴィア。もしその料理店を開業する予定に目処が立ったら、私も働かせてちょうだい。」

 

八幡「それは良いが………お前どうせなら花屋で働けよ。花好きだろ?」

 

シルヴィア「………確かにそうだけれど、お仕事までお花のお世話だったら流石に疲れちゃうと思うの。だからお花は自分のお部屋にあるのと、偶にお店に行くくらいで充分だわ。」

 

オーフェリア「うん、それは何となく分かるよ。好きでも煮詰め過ぎちゃうと、熱が冷めちゃう時ってあるんだよね。だから好きな事は趣味程度でやるのが1番だよ。私は歌を歌うのが好きだからって理由と、皆が笑顔になって欲しいからって理由があるからかな。」

 

八幡「聞いたかオーフェリア?流石はシルヴィだな。これがプロの言える言葉なんだろう。」

 

シルヴィア「………えぇ、流石だわ。私にはあんなこと、言えないもの。」

 

 

………流石はプロね。それも世界トップレベルの。

 

 

オーフェリア「も、もう!2人共やめてよ!私なんてそんなに大したことないよ!」

 

八幡「いや、それ言っちまったら他のアイドル活動やってる子は一体何?」

 

オーフェリア「あの子達は原石なの!磨いたらその分だけ光り輝く原石なの!そして私が「………ダイヤモンド。」そうそう!ダイヤモン……じゃないよ!!私そんな大層な宝石じゃないもん!!」

 

 

((世界一のアイドルが何言ってんだか………))

 

 

八幡「……んんっ!まぁシルヴィの話は取り敢えず今は置いておくとして、オーフェリア。お前本当にうちで働きたいのか?」

 

シルヴィア「………えぇ。だって楽しそうだし面白そうだもの。それに2人の料理を食べると、不思議と笑顔になれる気がするわ。だから私も貴方たちの料理店の仲間に加えて欲しいの。」

 

八幡「………まぁ今はそこまでは決められない。意気込みは聞いたけどな。もし開業してすぐに来てくれたのなら、その時は即採用してやるよ。どうだ、シルヴィ?」

 

オーフェリア「私は問題ないよ。未来の店長さんが決めたことなら文句なし♪」

 

 

………ふぅ、何とかこじつけられたわね。それまでに何とか料理の腕を上達させておかないといけないわね。でも八幡とシルヴィアのレベルまで辿り着けるかしら?

 

 

シルヴィア「………そういえば、メニューは決めているのかしら?」

 

八幡「一応はな。何だ、作り方を知りたいのか?」

 

シルヴィア「………入るって決めた以上は、料理も作れないといけないって思ったから。」

 

オーフェリア「良い心がけだね。でもオーフェリアさんに作れるかなぁ?」

 

 

………?どういう事かしら?作る工程が複雑なのかしら?それとも普通の食材じゃないとか?

 

 

シルヴィア「………どういう事かしら?」

 

オーフェリア「八幡くんの作る料理は一癖も二癖もある調理法なんだ。私も真似しようとしたんだけど、なかなか出来なくてね。今のところ八幡くんくらいしか出来ないんだ。」

 

八幡「色々勉強して試したからな。そう簡単に覚えられたら、地味ショックだ。シルヴィも手こずっているようで何よりだ。」

 

オーフェリア「あっ!それヒドイ!」

 

 

………どうやら一筋縄ではいかないようね。でも諦めないわ。

 

 

シルヴィア「………八幡、そのレシピってあるのかしら?」

 

八幡「ん?あぁ、あるが……何だ?もしかして練習するつもりか?」

 

シルヴィア「………えぇ、やれるだけやってみるわ。八幡の料理店に入る為だもの。」

 

八幡「ウチの料理店はそこまでハードル高くないぞ?それに、俺はできるから良いとして、シルヴィもある程度出来るようになったら2人で回そうと思ってるから、オーフェリアの出番はホールだけかもしれないぞ?」

 

シルヴィア「………それでも覚えるわ。」

 

 

………だって八幡の作った料理だもの。私も覚えないと言えないといけない気がするわ。

 

 

八幡「そこまで言うのなら止めないが……まぁ頑張れよ。あとで端末に送っておく。」

 

シルヴィア「………えぇ、ありがとう。」

 

 

………これで私も八幡と同じように料理が出来るようになったら……厨房で八幡と一緒に料理ができるわ。厨房でなら別ににいいわよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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長い1日の終わり

 

八幡side

 

 

時間が経って今は夜になった。あれから2人の身体には異変が起きる事もなく、ただ入れ替わったまま時が過ぎて行った。半日で慣れてしまったのか、2人は当たり前のように過ごしている。俺はまだ2人を呼ぶ時に苦労するけどな。

 

そして今は9時。俺とシルヴィにとって寝る時間になったわけだが、問題が発生した。

 

 

オーフェリア「やだよ八幡くん!!なんで別々に寝なきゃいけないのさ!!」

 

シルヴィア「そうよ八幡。私たち3人は一緒に寝た事あるじゃない。どうしてダメなの?」

 

八幡「いや、でもな。もし間違って俺がお前らのうちどちらかを抱き枕にしてたらどうするんだよ?」

 

2人「そんなの喜んで枕になるよ!!(なるわ。)」

 

八幡「こいつらもうダメだ。俺に関してだけオープン過ぎる。」

 

 

今回は心と身体が入れ替わっている状態だから、別々に寝た方が良いと思って提案したんだが、この通り2人からは猛反対。2人は俺の腕に抱き着きながら『断固離しません!』とでも言うかのように離れないのをアピールしている。

 

 

八幡「じゃあシルヴィに聞くぞ。もし俺がお前らと寝たとしよう。朝起きたら中身オーフェリアのシルヴィに抱き着いてたら?」

 

オーフェリア「……………が、我慢するもん!もしかしたら私に戻ってるかもしれないじゃん!それに賭けるもん!」

 

八幡「大博打じゃねぇか………まぁいい。お前がそう言うなら俺はもう止めない。オーフェリア、3人で寝ることになりそうだが、いいか?」

 

シルヴィア「………むしろ私はそれを望んでいたわ。さぁ八幡、早くベットへ向かいましょう。分かっているとは思うけれど、貴方が真ん中で私たちがその隣よ。」

 

八幡「予想通りの答えをありがとう。」

 

 

ーーー寝室ーーー

 

 

………別に考える必要はない。俺の両隣にいるのは過去にホテル・エルナトで一緒に寝た事のある2人。しかも片方とはいつも一緒に寝てるんだ。何にも考える必要はない。ただ中身が違うだけなんだ。シルヴィがオーフェリアでオーフェリアがシルヴィ。ただそれだけだ。

 

 

シルヴィア「………やっぱり八幡はとても温かいわ。夏だとしてもこうしてくっついていられる自信があるもの。」

 

オーフェリア「そうなんだよね〜。私、八幡くんと毎日一緒に寝てるんだけど、夏でも抱き着いていられるよ。なんかね、包み込まれてるっていうのかな?守られてるって感じがするんだ。」

 

シルヴィア「………何となく分かる気がするわ。」

 

八幡「君たちさ、俺のことをベタ褒めしなくていいから早く寝ような?褒めたって俺からは何も出てこないからな?」

 

 

この子たちは何なの?人の事を急に褒めたりしてさ。温かいのは人肌ですけど?守られている気がするのは取り敢えず守らなきゃ行けないと思っているからですけど?だって男が女を守るのって当たり前じゃないですか。

 

 

シルヴィア「………八幡、眠れそうかしら?」

 

八幡「逆に寝れそうだと思うか?」

 

シルヴィア「………いえ、あまりそうには。」

 

八幡「だよね?だからさ、もう少しだけ「「いやだ。」」離れ………せめて最後まで言わせてくれよ。拒否されるの分かって言ったんだから。」

 

オーフェリア「イヤだからね?八幡くんも知ってるでしょ?私は八幡くんが居ないと寂しくて死んじゃう病なんだから。」

 

八幡「なんか、前にも聞いたことのあるような病名だな、それ。オーフェリアは?」

 

シルヴィア「………貴方と居られるのは滅多にないのよ?それなのに離れると思っているの?」

 

八幡「あーはいはい、もう分かった。お前ら絶対離れる気がないってことが。もういいよ、このまま寝よう。」

 

 

そう言って俺たちはこのままの体勢で寝る事になった。まぁ分かってたけどね?

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

結局、八幡は2人よりも早く寝付いてしまった。今日1番で神経を使っていたのは彼だから仕方ないだろう。そんな彼の隣にいる美女2人は起こさないようにコソコソ話をしながら喋っている。

 

 

オーフェリア「なんだが懐かしいね、こんなふうに3人で寝るのも。もう無いと思ってたのに。」

 

シルヴィア「………そうね。しかも身体が入れ替わってる状態でなんて思いもしなかったわ。」

 

オーフェリア「ふふふっ、確かに。」

 

シルヴィア「………でも、八幡には少し悪いことをしたかしら。やっぱりこの姿でも学院に戻るべきだったかしら?」

 

オーフェリア「そんなこと言わないの。八幡くんだって言ってたでしょ?この姿で外を出歩くのは危険だって。だから今日はこれでいいの。」

 

シルヴィア「………」

 

オーフェリア「それにさ、今日入れ替わって分かったんだ。八幡くんってね、私とオーフェリアさんに接する時、そんなに意識を変えてないんだ。いつも通りに話してる。」

 

シルヴィア「………?それが?」

 

オーフェリア「八幡くんはいつも私たちに自然体で話してくれているって事。彼女としては少しだけ複雑だけど、他の人にも自分の彼女と同じように接しているのは、凄い事だと思う。私だったら八幡くんは特別だから、絶対贔屓しちゃうもん。」

 

シルヴィア「………そうね。私も八幡と他の男を比べたくもないと思っているわ。」

 

オーフェリア「あはは……それだけ八幡くんは魅力が詰まってるってことだよね、私たちにとって。」

 

シルヴィア「………そうね、そろそろ寝ましょう。明日になったら、元に戻ってると良いわね。」

 

オーフェリア「そうだね。じゃあお休み。」

 

シルヴィア「えぇ、お休み。」

 

 

そして2人も八幡に抱き着きながら眠りに就いた。

 

そしてその翌日、2人の身体は無事に元に戻っていましたとさ。

 

 

 

 



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2人目の子供





 

 

八幡side

 

 

シルヴィア「八幡〜、日替わり丼の大盛り2つ。」

 

八幡「あいよ〜。」

 

柚陽「店長、店長オススメの品1つとカレーリゾットオムライス1つお願いします!」

 

八幡「ほいほ〜い。」

 

 

………おっ、皆久し振りだな。けど今は営業中の調理中だから手短になる。比企谷八幡、34歳。この【喫茶 ランベリ】の店主をやっている。悪いが今は稼ぎ時のお昼なんだ、詳しい話はまた後でな。

 

 

八幡「日替わり丼の大盛り2つ、出来たぞ。」

 

シルヴィア「は〜い♪」

 

 

客足は衰えそうにないな。よし、まだまだ作るぜ!

 

 

ーーー営業終了時間ーーー

 

 

八幡「ふぅ〜……今日も終わりか。さてと、集計集計っと。」

 

オーフェリア「八幡、今日は私が締めておくわ。貴方は先に帰って。」

 

八幡「は?いやいや、俺も残る。」

 

冬香「そう仰らないでください。今日は八幡様のご息女様が六花へご帰還なされる日ではありませんか。今頃は家で八幡様を待っている筈です。どうか行ってあげてください。」

 

八幡「………じゃあ、任せてもいいか?」

 

冬香「はい、お任せ下さい!」

 

オーフェリア「明日の掃除も要らないくらい、綺麗にして帰るわ。」

 

八幡「頼もしいな。それじゃあ先に上がらせてもらう、お疲れさん。」

 

 

そう、俺には奏斗ともう1人子供がいる。その子は奏斗よりも3つ上の13歳。今年で中等部の2年になる。在籍している学園はクインヴェール女学園。つまりシルヴィの後輩っていうことだ。しかも入学して早々、俺とシルヴィの子だという理由で目をつけられたのか、序列上位の生徒に決闘を挑まれたんだが、あっさりと返り討ちにしてやった。1週間足らずで公式の決闘記録は25戦25勝0敗。しかもどの戦いも圧倒的な実力差での勝利だった。そして今の序列は1位。元序列1位からの決闘を公式の場で申し込まれた結果、勝ったからその座にいるみたいだ。まぁ当の本人は全く興味がないみたいだけどな。

 

それで今は学生時代のシルヴィ同様に、ペトラさん指導の元でアイドルをやっている。容姿、実力、歌唱力、共にクインヴェールトップならば、注目しない人はいないだろう。そして何よりも、元トップアイドルの娘というのが大きいだろう。本人はそれを嫌っているみたいだけどな。

 

 

八幡「っと、なんだかんだで着いたな。」

 

 

今回も海外の仕事で暫くの間、家を離れていた。けどそれが今日終わって家に帰ってくる日だ。多分もう中にいるだろう。

 

 

ガチャッ

 

 

八幡「ただい……わっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「お帰り、お父さん♪」

 

八幡「いきなりは危ないだろ?」

 

???「でもお父さんなら、受け止めてくれるでしょ?私のお父さんは世界最強だもの♪」

 

八幡「ふっ………お帰り、カノン。」

 

カノン「うん、ただいま♪」

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

奏斗「姉さん、また父さんに抱き着いてる……本当に好きだよね、父さんのこと。」

 

カノン「当たり前だよ奏斗!だって私のお父さんだよ!好きにならない方がおかしいよ!」

 

奏斗「いや、姉さんのそれは少しだけ範疇を超えてると思うんだけど………」

 

 

………見てわかる通り、俺とシルヴィの娘であるカノンは極度のファザコン。学校から帰ってきては飛んで抱き着いてくるのが1つの癖だ。しかも寝る時間まで俺を離さないまである。年頃だから父親を嫌うと思っていたんだが、カノンにはその様子が全く見られない。

 

 

カノン「えへへぇ〜……お父さ〜ん♪」

 

シルヴィア「もうカノンったら……またお父さんに甘えちゃって。本当にお父さんっ子なんだから。」

 

カノン「私は家族皆大好きだけど、お父さんは中でも1番大好きなんだ♪」

 

 

こんな風に言ってくれるのは嬉しいが、君のこの先がお父さん少しだけ心配だよ………

 

 

シルヴィア「こんなので彼氏とか出来るのかな?」

 

奏斗「あっ、それ俺も思ってた。」

 

 

うん、俺もそう思ってた。カノンはシルヴィ同様に端麗な容姿を受け継いでいる。髪の色も長さも学生時代と同じくらいにしている。違う点があるとしたら、髪はサラサラって所だな。シルヴィは撫でるとふわふわしたような感触だが、カノンは手櫛で撫でればその通りに行くような感じだ。

 

 

カノン「彼氏?ん〜そうだねぇ……もしお父さんの全てを超えられる人がいたら、付き合ってあげるかな。まぁそんな人はいないと思うけど。だってお父さんが1番だもん♪」

 

シルヴィア/奏斗「うわぁ……絶対に勝てない。」

 

八幡「カノン、俺以外に気になる奴とかはいないのか?クインヴェールだから余り男関係はいないと思うが、他学園になら誰かいるだろ?」

 

カノン「え?居ないよ?」(キョトン)

 

 

………マジですか。

 

 

シルヴィア「本当?ガラードワースには【竜騎士(ドラグーン) 】が居るじゃない。彼はどうなの?」

 

カノン「ダメ。だってあの人、【いつかはあの伝説の男、比企谷八幡を超えるのが目標です。】なんて言ったんだよ!あんな人とお付き合いするなんて絶対に嫌!!」

 

 

俺、そのガラードワースの子に同情したよ……カノンさんよ、そこまで言っちゃう?

 

 

八幡「ま、まぁカノンの未来の恋人の話はここまでにしよう。今日は久しぶりに家族全員揃ったんだ。明日は休みだし、少しだけ長く夜更かしするか。」

 

子供2人「賛成〜!!」

 

シルヴィア「はいはい。」

 

 

………今の俺はこんなにも幸せになっている。やっぱり家族ってあったけぇな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今回は2人目(厳密には1人目?)の子供であるカノンさんを出しました!

だって本編の最終話に2人居るのにずっと奏斗くんしか出してなかったんだもん!出すしかないじゃん!というわけで出しました。

カノンさんの大まかな設定はこちらです。

クインヴェール女学園 中等部2年。
序列1位。
世界トップアイドル。
母親から受け継いだ完璧な容姿。
極度のファザコン兼父親至上主義。
家族が大好き。中でもお父さんは1番。

見た目は【神様のいない日曜日】のスカーを幼くしたような感じです。

こんな所です。

それで訂正点が1つだけ。奏斗くんとの年の差が3つなので、奏斗くんの年齢を8歳から10歳にします。自分で分かる範囲のところは編集しますが、治ってない部分があったら、教えて下さい!



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カノンの1日

 

カノンside

 

 

皆さん初めまして!比企谷カノンです!比企谷家の長女で奏斗の姉、父親が比企谷八幡で、母親が比企谷シルヴィア(旧姓シルヴィア・リューネハイム)の超有名人の間に生まれた娘です!まぁそんなことはどうでも良いんだけどね。

 

今日はお父さんもお母さんも仕事で、私たちも学園があるから家は誰も居ないからすっからかん。私の通っているクインヴェール女学園は言わずもがな六花唯一の女子学園。最初は界龍にしようと思ってたんだけど、お母さんがクインヴェールを勧めるからこっちにしました。楽しくやれているから問題はありません!まぁ最初の頃は凄かったけどね〜。

 

やれ『あの2人の娘だからって調子に乗るな!』だの、やれ『少し可愛いからって良い気にならないで!』だの、やれ『此処では親の七光りなんて通用しないわよ!』だのと上級生の人たちから本当に色んなことを言われたよ。しかも入学して早々に10人くらいの人たちから決闘を申し込まれて大変ったらないよ………まぁ全部返り討ちにしたんだけどさ。

 

それから少ししてから序列1位の人からも決闘を申し込まれたから戦ったけど、お父さんやお母さんに比べたら物凄く弱い。なんか相手の人に悪いけど、肩慣らしにもならなかったよ。星武祭にも参加できる年齢にはなってるけど、あんまり興味ないんだよね〜……別に戦うの好きじゃないし、欲しいものなんてないし、参加する理由が見つからないんだよね〜。

 

 

まぁ学園生活は一生に1度しか体験できないから、楽しく過ごしていけば良いよね♪

 

 

???「あっ、カノンちゃん!おっはよぉ〜!」

 

カノン「あっ、リディ!おはよぉ〜!」

 

リディ「ツアーはどうだった?」

 

カノン「楽しかったけど、もう少し観光とかしたかったかなぁ〜。ライブが終わったらすぐに移動なんだもん。何日かは休みあったけどさ。」

 

リディ「あはは……相変わらずみたいだね。でもまぁ元気そうでよかったよ。」

 

 

彼女はリディで、本名はリディアナ。私がこの学園に入って最初にできた友達!私の事を特別扱いもせず、変に態度を変えたり、オドオドしたりしないから1番の親友だと思ってる。

 

 

リディ「あっ、そうそう!カノンちゃんに教えてもらったあの動き、やっとできるようになったよ!今日の放課後にでも見てくれないかな!?」

 

カノン「おっ?出来たの?じゃあお手並み拝見といきましょうかね〜。」

 

 

因みに私の技術を教わりたいって言ってきたから、放課後の時だけ弟子と師匠みたいな関係になってる。普段はちゃんと友達だからね?

 

 

ーーークラス内ーーー

 

 

「カノンちゃん、ライブ見てたよ!やっぱり凄い歌上手だよね!今度私のも見てくれないかな?」

 

「わっ、私のもお願い!」

 

「私にはステップを教えてくれないかな?少し難しくて……」

 

 

クラスに入ればこの通り、周りには自然と人が集まってくる。そりゃ私だって自覚してるよ。この人気も私の両親のものだって。でも最近は少しだけ、自分の努力の成果も出てきてるって思えてきたんだ。だって、周りの皆は最近、私の両親の話をしなくなってきたから。

 

1年前までは、皆揃って『比企谷八幡』と『シルヴィア・リューネハイム』の名前が必ず付いていた。けど今はその2人の名前が段々と薄れつつある。少しだけ私の努力も報われてるのかなって思うんだ。

 

 

ーーー放課後ーーー

 

 

授業とHRが終わって、放課後に突入。私この時間、自分の動きの確認や歌の練習をしているの。後は……なんかあったかなぁ?

 

 

「比企谷カノンはいるかしら?」

 

 

………あぁ、もう1つあったよ。

 

 

カノン「はい、私ですけど。」

 

「貴女ね?あの2人の娘だからって調子に乗っているのは。」

 

カノン「私は両親の名前を着飾るの嫌いなんです。そんなの私じゃないから。それで、何か用ですか?」

 

 

この後の言葉は大体予想できる。だっていつも決まってるんだもん。言う事が。

 

 

「私と勝負しなさい!」

 

 

やっぱり。

 

 

カノン「お断りします。先輩はいいかもしれませんけど、私には受ける理由がありませんので。」

 

「あら?逃げるのかしら?」

 

カノン「受ける理由がないからって言いましたよね?それと、私からも1つ聞いて良いですか?」

 

「何かしら?」

 

カノン「なんで私と戦いたいんですか?」

 

「調子に乗っている貴女を叩きのめす為よ!」

 

 

あぁ〜……面倒だなぁ。今日断っても次の日にまた来るだけだからなぁ……お母さんの時代にはこういうのなかったのかなぁ?

 

 

カノン「……分かりました。その決闘お受けします。何処でやりますか?」

 

「校庭でやるわよ!」

 

 

……多分見せしめのつもりだよね。1番多く人の目に入るところを選ぶ辺りは。

 

 

まぁ、私には関係ないけど。

 

 

ーーー下校ーーー

 

 

結局、相手にもならなかったよ。あの先輩って序列入りしてるのかな?ただ挑んで来ただけなら、少し無謀にもほどがあるよ。

 

けどまぁ、これが私の日常かな。登校して友達と挨拶をしてから学園での1日が始まって、授業を受けて、お昼を食べて、放課後には……今日は決闘だったけど色んな事をしてから家に帰る。

 

 

カノン「それにしても、帰ってすぐの学校で久々の決闘だったからちょっと疲れたかも。家に帰ったらすぐにお父さん成分を摂取しなきゃ。」

 

 

私には欠かせないお父さんパワー。これがあればなんでも出来ちゃうくらいにパワーが漲るのです♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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本当はあり得ない話 まとめて投稿版


ネタが思いつかなかったので、僕が思いついていたあり得ないシリーズを投稿しました。




 

 

その1. 『ありふれた職業の世界で』

 

 

 

 

オーフェリア「お兄さん!助けてくれてありがとう!」

 

八幡「お、おう。それとそのお兄さんって言うのやめてくれないか?なんかむず痒くてな。普通に八幡でいい。」

 

オーフェリア「じゃあパパッ♪」

 

八幡「っ!?そ、それはあれか?お前の国の言葉でお兄さんとか八幡とかって意味か?」

 

オーフェリア「ううん、パパはパパだよ。」

 

八幡「………」

 

シルヴィア「どうしてパパなの?」

 

オーフェリア「リアね、パパ居ないの。だからお兄さんがパパなのっ♪」

 

八幡「頼むからパパは勘弁してくれ!こう見えても俺はまだ17なんだぞ!?」

 

オーフェリア「いや!パパなのっ!」

 

八幡「分かった!もうお兄さんで良い!贅沢は言わないからパパはやめてくれ!」

 

オーフェリア「や〜ぁ!!パパはリアのパパなのっ!!」(ナミダメ)

 

八幡「………」

 

 

そして八幡は渋々、パパ呼びを認めるのだった。

 

 

______________________________________________

 

 

 

その2. 『鬼滅の世界で』

 

 

 

 

 

???『八幡、この神楽と耳飾りだけは絶やさず継承していってくれ………約束なんだ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「っ!!……………」(スゥーーー)

 

八幡「黒神神楽(くろかみかぐら)………闇舞(あんぶ)っ!!!」

 

下弦の鬼「っ!!(糸がっ!?)」

 

 

ズパッ! プシュッ!

 

 

八幡(止まるなっ!走り続けろ!!今ここで止まったら、水の呼吸から黒神神楽の呼吸に無理矢理切り替えた跳ね返りが来る!そうなったら、俺はしばらく動けなくなるだろう……だから今やらねぇとダメだ!!走れっ!!シルヴィを守れっ!!!)

 

 

八幡「うおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

八幡は黒い炎を纏った刀で血に染まった赤い糸を次々と切っていった。

 

 

下弦の鬼(こいつ!!)

 

 

鬼も八幡の猛攻に後ろへ飛んで距離を取るが、攻撃の手を緩めない八幡はついに相手を捉えた。

 

 

キィーン!

 

 

八幡(っ!!隙の糸っ!!今ここで倒すっ!!たとえ、相討ちになったとしても!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???『シルヴィア……シルヴィア、起きてシルヴィア。八幡くんを助けるの。今のシルヴィアなら出来る………頑張って。』

 

シルヴィア「………」

 

???『………お願い、シルヴィア。八幡くんまで死んでしまうわよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「っ!!!」

 

シルヴィア(血気術………)

 

 

シルヴィアに纏わり付いている糸に付着しているシルヴィアの血が白く光り始めた。

 

 

シルヴィア(響音裂血(きょうおんれっけつ)っ!!)

 

 

シルヴィアの血が途端に大きな音を上げた。

 

 

下弦の鬼「っ!!?」

 

 

その音に驚いて怯んだからか、八幡に喉を刀で打たれた。

 

 

下弦の鬼(バカなっ!!糸が切れて………!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「俺とシルヴィアの絆は、誰にも……引き裂けねぇっ!!!」

 

 

八幡の刀にもシルヴィアの血が付着していた為、血気術が発動。それによって超音波による超高速振動になり、下弦の鬼の頸を切った。

 

 

______________________________________________

 

 

 

その3. 『賢者の孫の世界で』

 

 

 

 

 

シルヴィア「あの……さっきはゴメンね。」

 

八幡「え?あぁいや、気にしてない………ってよりも、嬉しかった。」

 

シルヴィア「えっ!?」

 

八幡「……なぁシルヴィ、初めて会った時の事、覚えてるか?」

 

シルヴィア「うん。私とオーフェリアさんが不良に絡まれてて………」

 

 

それから八幡とシルヴィアは初めてあった時のエピソードを語り合った。

 

 

八幡「……俺、最初にお前にあった時、頭に雷が落ちたような気がしたんだ。」

 

シルヴィア「え?」

 

八幡「なんて……綺麗な奴なんだろうって///」

 

シルヴィア「あっ…え、えっと、その…わ、私もな、なんてかっこいい人なんだろうって思ってたんだ/////」

 

八幡「………そうなのか?」

 

シルヴィア「う、うん……/////」

 

八幡「………シルヴィ。」

 

シルヴィア「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「好きだ。」

 

シルヴィア「っ!!………嬉しい。八幡くんは優しいから、だから、私にも優しくしてくるんだって思ってて………」|《ポロポロ〉

 

八幡「……そんな風に思わせてたんだな、俺。」

 

シルヴィア「でも、でも!!そうじゃないって今、君の口からそう言ってくれた!!私も好き……大好きだよ、八幡くんっ!!」(ツー)

 

八幡「シルヴィ…俺の彼女になってくれないか?」

 

シルヴィア「………はい!」

 

 

八幡はシルヴィアの肩に手を掛け、自分へと引き寄せた。シルヴィアも自分の顔を八幡へと近づけて、お互いの唇が重なり合った。

 

 

______________________________________________

 

 

その4. 『僕は勉強ができない世界で』

 

 

 

 

 

八幡(ダメだ!なんか会話して気を紛らわそう……)

 

八幡「っ!……シルヴィ、おいシルヴィ。」

 

シルヴィア「な、何///」

 

八幡「窓、見てみろよ。」

 

 

そこには闇が広がる空に輝く星の大群がキラキラと並んでいた。

 

 

シルヴィア「………綺麗。」

 

八幡「………そうだな。」

 

 

2人は星座にそこまで詳しくない。故に眺めていてもどれがどの星なのかは分からなかったが、眺めているだけでも楽しめていた。

 

 

シルヴィア「八幡くんはさ、何かやりたい事とかないの?」

 

八幡「……特にそういうのはないな。家族も俺には放任主義だし、とりあえず高校卒業したら大学行って就職って感じだな。」

 

シルヴィア「そっか………でも、君が本当にやりたい事を見つけたら、私が全力で応援するからね♪八幡くん。」

 

八幡「………あぁ。」

 

 

八幡(俺が本当にやりたい事、か……)

 

 

八幡「?」

 

 

考え事をしていたからか、シルヴィアの手が八幡に触れるまで気付かないでいた。

 

 

八幡「お、おいシルヴィ?」

 

シルヴィア「………お母、さん……」

 

八幡「っ!」

 

 

八幡シルヴィの母親はシルヴィが幼い頃に亡くなっている。きっとその夢を見ているんだろう。

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア(少しひんやりしてて、私の手を包み込んでくれる手……あぁ、お母さんの手だ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「………っ!!/////」

 

 

シルヴィアが眼を覚ますと、目の前には眠っている八幡が居たが、シルヴィアをのを握っていて、シルヴィアを抱き寄せて……いや、包み込むようにして眠っていた。

 

 

八幡「すぅ………すぅ………」

 

シルヴィア「………/////」

 

 

好きな人の温もりが母親と似ているからか、シルヴィアは八幡を拒絶せず、むしろそれを望むかのように八幡の胸へと自身の頭を寄せて眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 



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わらしべ長者

八幡side

 

 

シルヴィア「それで?何か言いたいことはありますか?八幡くん?」

 

八幡「本当に申し訳ございませんでした。」(ドゲザ)

 

 

開幕早々俺の彼女の前で正座をして即土下座をしている比企谷八幡だ。何があったのかというと、俺が冷蔵庫の中にあったデザートがあったのだが、それがシルヴィのとっておいた物とは知らずに食べてしまったのだ。

 

今その事実を知らされて、土下座をして謝っている次第だ。これに関しては完全に俺が悪いから弁明も何もない。謝って許してもらうことしか出来ない。

 

 

シルヴィア「……うん、八幡くんだけが悪いわけじゃないからね。言っておかなかった私も悪いから、今回は不問とします。」

 

八幡「ありがとうございます。けど、アレどうしたんだ?六花の中でも有名な洋菓子だろ?手に入るのに苦労するって噂だが………」

 

シルヴィア「うん。この前商業エリアを散歩している時にね、私のファンの人が偶々通りかかってそれをくれたの。」

 

八幡「……凄いことをするな、その人。」

 

シルヴィア「というわけで八幡くん。明日はそのお菓子を買いにデートに行きましょう♪」

 

八幡「俺は断れる立場にないから喜んでお供しよう。それに今回の責任もある。そのお菓子の代金は俺が払ってもいいか?」

 

シルヴィア「……八幡くんがそうしたいのならいいけど、そこまで責任感じなくてもいいんだよ?」

 

八幡「これも性分だからな、分かってくれ。」

 

 

こうして俺とシルヴィアは明日のデートに、その有名洋菓子店のスイーツを買う為に明日のスケジュールを組むのであった。

 

 

ーーー翌日ーーー

 

 

シルヴィア「うわぁ……開店30分前なのに、結構人並んでるね〜!流石は六花でも人気で有名な洋菓子店なだけはあるね。」

 

八幡「あ、あぁ。まさかここまでとはな……」

 

 

見た感じ、10〜15mくらいの長蛇だった。奥様やマダム、子連れの親子やパシリ?にされたお父さんだったりと、色んな人が並んでいた。

 

 

シルヴィア「私たちも並ぼっか。」

 

八幡「あぁ、そうだな。」

 

 

俺たちも列の後ろに並んで開店を待つ。しかしながら俺とシルヴィアは一応星武祭の優勝者、しかもシルヴィアはそれに加えて世界一のアイドルでもある。注目されてしまうのは自然の理だった。

 

だが当の本人のシルヴィはそうとは知らずに、気分良さそうに鼻歌を歌いながら俺の手を握っている。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

店員「おはようございます〜!ただいまより開店します!当店人気のスイーツはお1人様2つとさせて頂いております!取り過ぎないよう、ご協力お願いします!」

 

シルヴィア「2つだって。大丈夫かなぁ?」

 

八幡「材料があるなら大丈夫だろうが、開店30分で売り切れなんだろ?残ってて欲しいよな。」

 

 

その後、シルヴィアと八幡が店内に入り、お目当のスイーツを探していたところ、まだ残っていたので迷わず購入した。

 

そして店長からはサインを要求されたのだった。

 

 

ーーーベンチーーー

 

 

シルヴィア「えへへぇ〜♪」

 

八幡「良かったな、まだ残ってて。」

 

シルヴィア「うん♪じゃあ八幡くん、デートに……あれ、あの子どうしたんだろう?」

 

八幡「……泣いてるな。しかもさっきの店だ。」

 

 

……なんとなく予想はつく。あの人気スイーツをギリギリ買えなかったとかだろうな。

 

 

シルヴィア「八幡くん………」

 

八幡「お前ならそう言うと思っていたよ。あの子のところに行くか。」

 

シルヴィア「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子「うええぇぇぇぇん〜!!」

 

店員「ゴメンねお嬢ちゃん。また今度、ね?」

 

シルヴィア「そこの可愛いお嬢さん?ちょっと良いかな?お姉ちゃんとお話ししない?」

 

女の子「グズッ……ひぐっ……」

 

シルヴィア「こんにちはっ♪」(ニコッ)

 

女の子「グズッ……ごんにぢは。」

 

シルヴィア「うん、ちゃんと挨拶できて偉いね♪ちょっとあのベンチに座ってお話ししよっ?ね?」

 

女の子「……うん。」

 

 

女の子の話を聞くと、長い列を並んなようやく自分の番が来た。けど、お目当ての人気スイーツが既に無くなっていて、女の子の前にいたお客で最後だったらしい。そして今日は母親の誕生日だったらしく、どうしてもこのお菓子が欲しかったようだ。

 

 

シルヴィア「そっかぁ……」

 

女の子「うん……お店の人は『また明日、来てくれたら用意するから。』って言ってくれたんだけど、今日じゃないとダメなんだもん!お母さんの誕生日は今日だもん!明日にズラせないもん!」

 

シルヴィア「そうだよね。君はお母さんのことが大好きなんだね。」

 

女の子「うん!大好き!」

 

シルヴィア「………」

 

八幡「フッ……シルヴィ。お前の好きにすればいい。俺のも渡して良いから。」

 

シルヴィア「………いいの?」

 

八幡「あぁ、こんな純粋な気持ちを見せられたらな。ほったらかす方が野暮ってもんだ。」

 

シルヴィア「………ありがとう。」

 

女の子「?お姉ちゃんとお兄ちゃん、なんのお話してるの?」

 

シルヴィア「ふふふっ♪実はね、そんなお母さん想いの君にご褒美をあげたくてさ。私たちもさっきのお店に行って君が買おうと思っていたスイーツ、持ってるんだ。それを君に上げちゃおうと思ってね。」

 

女の子「えっ!!?良いの!!?」

 

シルヴィア「うん♪じゃあコレ、私たちからのプレゼントだよ。」

 

女の子「わぁ………ありがとう!!お姉ちゃん、お兄ちゃん!!」

 

シルヴィア「どういたしまして♪」

 

八幡「落とさないように持って帰るんだぞ。」

 

女の子「うん!!あっ、じゃあお姉ちゃんにコレあげる!商店街でやってるジャラジャラって音がなるくじのチケット!」

 

シルヴィア「ジャラジャラ?」

 

八幡「福引きのことだろう。その引換券だな。」

 

シルヴィア「あぁ〜!」

 

 

ジャラジャラって子供の発想とかであるよな。

 

 

女の子「バイバーイ!!」

 

 

子供達を見送った後、シルヴィアが申し訳なさそうにこっちを見てきた。

 

 

シルヴィア「………ゴメンね八幡くん。折角買ってもらったのに。」

 

八幡「気にすんなよ。あれは俺が見てても放置は出来なかったと思う。それよりも、商業エリアに行って福引きやったらどうだ?せっかく貰ったんだし。」

 

シルヴィア「そうだね。じゃあやってみようか!」

 

 

ーーー商業エリアーーー

 

 

シルヴィア「あっ、此処じゃない?」

 

八幡「そうみたいだな。」

 

シルヴィア「すみませ〜ん!福引き1回お願いしま〜す!」

 

「はいチケット1枚ありがとうございます!ではこちらの福引きを回して下さい!景品内容はこちらとなっております!!」

 

 

5等(白)……ポケットティッシュ

4等(緑)……新鮮野菜詰め合わせ

3等(水)……有名洋菓子店の人気スイーツ10個入り

2等(黄)……コーヒーメーカー

1等(赤)……万能電子レンジ

特等(金)……5等以外全ての商品

 

チャンス(銀)……もう1回!!

 

 

金出しちゃったらヤバイな。大赤字じゃん。

 

 

「それではどうぞ!回してください!」

 

シルヴィア「はい。何が出るかなぁ〜。」

 

 

ジャラジャラジャラジャラ………カランカラン

 

 

「おおっとぉ〜!!銀が出ましたのでもう1度挑戦です!!さて、ではもう1度お願いします!」

 

シルヴィア「も、もう1回かぁ……よしっ!」

 

 

ジャラジャラジャラジャラ………カランカラン

 

 

「お、お、大当たり〜!!!!!」

 

 

カランカランカランカランカラン!!

 

 

「特等、金が出ました!!お客様には新鮮野菜詰め合わせ、有名洋菓子店の人気スイーツ10個入り、コーヒーメーカー、万能電子レンジの全てをプレゼント〜!!」

 

 

2人「………」

 

 

ーーー帰り道ーーー

 

 

シルヴィア「………どうしてこうなったのかな?」

 

八幡「いや、アレだよ。なんか……わらしべ長者的なアレだよ。1つのスイーツから始まってくじのチケットと交換したのが、これになって戻ってきたってわけだ。」

 

シルヴィア「しかも目的のお菓子も倍になって戻ってきちゃったよ?さっき4個だったのに今は10個だよ?しかも新鮮野菜にコーヒーメーカーに電子レンジ付きって………こんなわらしべ長者ってある?」

 

八幡「………聞いたことはないな。」

 

 

こうして、目的だった人気スイーツは手に入れたのだったが、ほかのおまけもついてきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ーーーおまけーーー

女の子「お母さん、お誕生日おめでとう〜!!」

母親「あら、ありがとう〜!これっていま人気のスイーツじゃない。よく買って来れたわね。」

女の子「ううん。買えなかったんだけど、綺麗なお姉ちゃんとカッコいいお兄ちゃんがくれたんだ!」

母親「へぇ〜そうなの。お礼がしたいけど、顔が分からないからどうしようもないわね。」

女の子「写真撮って貰ったからわかるよ。」

母親「本当?見せてちょうだい。」

女の子「うん♪」


その後、母親はその写真を見て固まった後にその場に倒れてしまった。




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特定と悪魔の笑い


天羽凛音様より、ネタ提供したものを投稿させて頂きました。ネタ提供ありがとうございます!




 

 

八幡side

 

 

シルヴィア「♪〜」

 

八幡「……シルヴィ〜、醤油と砂糖頼めるか?」

 

シルヴィア「は〜い♪」

 

 

漸く俺たちの周りも落ち着いて、普段通りの生活を送れている。最近まではクインヴェールに俺が入った事が影響して一時期クインヴェールが大変だったが、それも収まった。更には俺とシルヴィの跡をつけてくる奴もいた。当然家までご案内するわけもなく、途中でご退場してもらったけどな。まぁ幻術を見せるってのもアリだが、相手が星脈世代じゃないかもしれない場合もあるからな。

 

シルヴィから聞いたが、今でも犯人を捜索しているらしい。ペトラさんも本気なのか、W&Wの幹部総動員で動いているみたいだ。その犯人見つかったらタダじゃ済まないんじゃね?

 

まぁその後の事はペトラさんに任せてあるから、俺の出る幕ではないだろう。もしまだクインヴェールにたむろする奴がいるのなら、俺の出番だけどな。

 

 

八幡「よし、出来た。」

 

シルヴィア「はい、盛り付けのお皿。ご飯とお味噌汁はもう用意してあるから。あとお水もね。」

 

八幡「流石だ。」

 

 

言い忘れていたが、今日は和食メニューです。

 

 

ーーー食後ーーー

 

 

シルヴィア「ん〜……最近めぼしいニュース無いね。静かになり過ぎてる気がするよ。」

 

八幡「おいおい、そんな事言うな。俺が言えた義理じゃないが、前まではクインヴェールが大変だっただろ。それじゃまるでトラブルが起きて欲しいみたいな言い方に聞こえるぞ?」

 

シルヴィア「深く捉え過ぎだよ〜。そんな大事件求めてるわけないじゃんか〜!」

 

 

なら良いけどよ………頼むぜ?

 

 

八幡「まぁ気持ちは分からなくもない。星武祭も終わった今の六花は休戦状態だからな。外からくる奴らもいないからじゃないか?」

 

シルヴィア「そうかなぁ?」

 

八幡「何だったらまた海外ライブにでも行ってくれば良いじゃねぇか。」

 

シルヴィア「ねぇ八幡くん。八幡君は私に死ねって言いたいの?」

 

八幡「………話がぶっ飛んでるってレベルじゃないよね、今の言葉。」

 

シルヴィア「私八幡くんと一緒に居ないと死んじゃう病なんだよ!?海外なんて無理!!」

 

 

前までは行けてただろうに………3ヶ月は流石に辛かったけど乗り切ったじゃん。今では何?1日でもアウト?君俺の事好きすぎだろ………嬉しいけどさ。

 

 

pipipi…pipipi…

 

 

八幡「ん?誰からだ………ペトラさん?」

 

ペトラ『こんばんは八幡くん、それにシルヴィアも。仲が良いみたいで何よりだわ。』

 

シルヴィア「私と八幡くんはいつでも仲良しですから♪問題ありません!」

 

八幡「それでペトラさん。どうかしたんですか?」

 

ペトラ『えぇ。報告は1つよ。この前、八幡くんがクインヴェールに入った事で世間を騒がせたニュースの事だけど、犯人が見つかったわ。』

 

シルヴィア「っ!本当ですか!?」

 

ペトラ『えぇ。ニュースをしらみつぶしに徹底的に調べて漸く見つけたのよ。最も、分かった理由がニュースの記事じゃなくて画像なのだけどね。』

 

八幡「?ネタ提供から逆探知したんじゃないんですか?いや、そのアカウントが消されていた?」

 

ペトラ『えぇ、その通りよ。アカウントは既に削除されていたから、そこで調べる事は出来なかったの。でも画像は残っていたからそれを解析していたら、分かったことがあったのよ。その画像はね、端末で撮ったものじゃなくてカメラで撮ったものなのよ。』

 

シルヴィア「?カメラ?」

 

八幡「………成る程、ぼかしですね?」

 

ペトラ『正解よ。』

 

シルヴィア「え?どういう事?」

 

八幡「シルヴィ、俺たちが空間に表示する写真端末はどれだけ遠くのものを撮ろうがぼかしにはならない。どれどけ振り回して撮ろうとも、その場のものをはっきりと写し撮ってくれる。けどカメラなら話は別だ。どんなに最新のものだろうが、手元1つのミスで簡単にボケが出る。遠くの物を撮ろうとするなら、それこそな。そしてもし、そのカメラの機種と取り扱っている会社が分かれば………」

 

シルヴィア「っ!!そこに犯人がいる可能性が1番高い!!」

 

八幡「正解だ。それでその会社はどこなんですか?もう特定はできてるんですよね?」

 

ペトラ『えぇ。それに関しても信憑性が高いものがあったから。貴方がクインヴェールの前にいた人たちを追い払ってくれた中の男性に1人、カメラを持っていた人がいた人がいると思うけど、その人がその会社の職員らしいのよ。』

 

 

………居たな、喋り方がすげぇプライド高そうな奴。多分ボンボンだな。

 

 

ペトラ『しかもその会社、△△社よ。』

 

 

………マジかよ、反省もクソもねぇじゃん。まだこんな最低なやり方してるの?

 

 

八幡「……ペトラさん、その会社俺もついてっていいですか?」

 

ペトラ『あら奇遇ね。私も貴方を誘おうと思っていたのよ。来てくれるかしら?』

 

八幡「えぇ、お伴しますよ。シルヴィも一緒にきてくれるか?」

 

シルヴィア「う、うん……大丈夫。」

 

ペトラ『決まりね。じゃあアポはもう取ってあるから、○○日になったらクインヴェールの校門前まで来てちょうだい。待ってるわ。』

 

八幡「はい、その日を楽しみにしてます。」

 

八幡「ははは………」

 

ペトラ『ふふふ………』

 

 

シルヴィア(怖いよ……2人の笑い方が凄く怖いよ。同情はしないけど、△△社の方々、覚悟しておいてね?きっともう逃げられないから。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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制裁

 

 

八幡side

 

 

いやぁ、この後が楽しみだ。まさか《鳳凰星武祭》、記者会見に飽き足らず、今度は1学園巻き込んでまで騒動を起こしやがったか……逆に尊敬するよ。1度目は個人記者だったから良かったものの、2度目はお茶の間の中継だから恥をさらしたも同然なのに、3度目はいよいよ潰されに来たか。

 

おっ、あれはペトラさんの車だな。

 

 

2人「おはようございます、ペトラさん。」

 

ペトラ「おはよう2人共。催促するようだけど、早速乗ってちょうだい。私としても、こんな面倒な事は早く済ませたいから。」

 

 

俺とシルヴィアは早々に車に乗って、目的地である△△社へと向かう。

 

 

ペトラ「私たちが対面する相手は、まぁ当たり前だけど社長ね。八幡くん、あなたにお願いがあるのだけど、いいかしら?」

 

八幡「相手の心を読め、って事ですか?」

 

ペトラ「………どうして分かったの?」

 

八幡「シルヴィが貴女に俺の惚気を話さないとでも?多分言ってるんだろうなって思ってましたから。」

 

シルヴィア「は、八幡くん……///」

 

八幡「というわけで、心の読む事なら任せて下さい。社長が変な事を考えているようならすぐに言いますので。もしかしたら俺も加わるかもしれないですけど。」

 

ペトラ「むしろ加わってちょうだい。でも八幡くん、何故シルヴィアを連れて来たの?」

 

八幡「今回の、っていうよりも△△社関連ではある意味1番の被害者ですからね。連れてきても損はないでしょう?」

 

シルヴィア「つまり、私の証言も欲しいって事?」

 

八幡「それもあるが、△△社の記者の特徴や行動を言ってくれれば良い。馴れ馴れし過ぎるとか、丁寧語を使わないとか、そんな感じだ。」

 

シルヴィア「うん、分かった。」

 

ペトラ「もうすぐ着くわ。八幡くん、もし本当に口を出すのなら、潰す気で行っても構わないわ。」

 

八幡「当然ですよ。だって………俺のシルヴィに手を出した会社ですよ?手加減なんかするわけないじゃないですか。」

 

 

ーーー△△社ーーー

 

 

ペトラ「○○社長と面談を申請したクインヴェール女学園の理事長、ペトラ・キヴィレフトです。」

 

受付「お話はお伺いしております。すぐに担当の方を読んで参りますので、あちらの席に座ってお待ちください。」

 

 

ーーー5分後ーーー

 

 

秘書「お待たせ致しました。社長の秘書をしているものです。応接室へとご案内いたしますので、こちらへどうぞ。(あの社長は………また変な事をしたのか?しかも相手はこれまで2回もご迷惑をおかけしているお2人じゃないか。はぁ………)」

 

 

う、うわぁ………この人苦労人だ。心の中で労っておこっと。

 

 

ーーー応接室前ーーー

 

 

秘書「此方が応接室となっております。」

 

 

秘書の人はノックをしてから扉を開けて先に入ってから、俺たちに入るように促した。俺たちが入り終えると、そこには1人の男が座っていた。そして秘書の人が扉を閉めた。

 

 

秘書「社長、クインヴェール女学園理事長のペトラ・キヴィレフト様、並びにその生徒のシルヴィア・リューネハイム様、そして界龍第七学院の比企谷八幡様、ご入室です。」

 

社長「いやいやこれはこれは遠い所までわざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。私が△△社の社長を務めておる者です。」

 

 

………随分と偉そうな奴だな。まさか座ったまま挨拶するとはな。見ろよ、俺たちの隣にいる秘書なんてもう溜め息つきそうな顔してるよ。

 

さて、それじゃあ覗いていきますか。

 

 

社長(何でこの男までいるんだ!!確かに3人とは聞いていたが、全員クインヴェールだと思っていたのに!!まぁいい、にしても良い身体をしてるなぁ〜シルヴィアちゃんは♪)

 

 

この野郎………もうぶん殴っていいか?

 

 

秘書「皆様、どうぞ席へとお掛けください。只今お茶をご用意させて頂きます。」

 

ペトラ「ありがとうございます。それで早速本題に入りたいのですが、よろしいですか?」

 

社長「えぇ、構いませんとも。」

 

 

ペトラさんは今回の事件の一連の流れを説明した。そして証拠になる写真と記事を提示した。当然社長は知らんふりをしたが、俺の目は誤魔化せねぇよ。

 

 

社長(あのド素人め……カメラで撮る時はこの会社の物を使うなと言っただろう!!何で言うことも聞けないんだ!!おかげで尻尾を掴まれたじゃないか!!)

 

 

………もう犯人確定だな。こいつが黒幕かよ。

 

 

しかも………

 

 

八幡「すみません、発言よろしいですか?」

 

社長「ん?何だね?今は私とキヴィレフト殿が話しているのだが?」

 

八幡「すぐに済みます。秘書の方、睡眠薬というのはご存知ですか?」

 

秘書「?え、えぇ……知っていますが、あの……それが如何なさいましたか?」

 

八幡「………ふむ、では社長。このお茶、飲んでは下さらないでしょうか?」

 

社長「何故に私が?それはきみの茶だ。君が飲むのが「もう分かってんだろ?気付かれてるって。見苦しいんだよ。」っ!?」

 

シルヴィア「八幡くん、どういう事?」

 

 

秘書の人も知りたそうにこっちを見ていた。

 

 

八幡「おかしいって思ったよ。俺たちが入る前にはあんたの机の前には既に茶が用意されていた。普通なら同じタイミングで両者に渡される筈なのにだ。それにあんたは異常な程ペトラさんに視線を合わせず、茶だけに視線を向けていた。こんなに不自然な事があるかってんだ。もしこの2人が茶飲もうものなら俺が止めていたから、意味は無いけどな。」

 

秘書「っ!!社長!!」

 

 

秘書が怒鳴り散らすと、社長は青ざめた表情でこっちを見ていた。いやもう隠す気ねぇじゃん。今まで会ってきたこの会社の人中の奴で1番小物じゃん。

 

 

八幡「どうせ此処にいる秘書以外の全員を眠らせた後に俺をどこかに監禁でもして、2人にいかがわしい事でもしようとしたんだろう?下卑た男のやりそうな事だ。」

 

 

その後はトントン拍子で話が進み、俺たちは帰路に着いた。この事は世間には公表しないが、△△社は当分の間機能しなくなるだろうな。だって親がアレだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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唐突の再会

 

 

八幡side

 

 

八幡「さて、今日はシルヴィが1日居ないからなぁ……1人で過ごすには退屈過ぎるし、かといって鍛錬で時間を潰すのは少し勿体ない気がする。町に歩いてきたは良いが、何をすればいいのか分からん………」

 

 

なんか、退屈にしてる人の気持ちが分かった気がする。こんなにもする事ないんだな、普段の俺って。いつもシルヴィと休みの日には出掛けてる(デート)俺だが、シルヴィが居ないだけでこうも暇人になるとはな………だれか丁度良く暇つぶしになってくれそうな相手はいないものかねぇ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪乃「あら、比企谷くん。」

 

八幡「ん?おぉ、雪ノ下か。奇遇だな。」

 

雪乃「そうね。1人でいる時の貴方に会うなんて数年ぶりね。」

 

八幡「ちょっと?それどういう意味?」

 

雪乃「いつもはリューネハイムさんも一緒にいるじゃない。今日は居ないみたいだけれど。」

 

八幡「あぁ、今日は用事があるみたいだからな。」

 

 

声を掛けられたのは、前回の《王竜星武祭》の優勝者で、陽乃の妹の雪ノ下雪乃だった。数年前まではかなり恨まれていたが、今ではそれも無くなって性格も総武にいた頃よりも棘がなくなって柔らかくなった。会っても毒吐いてこないから良かったよ。

 

 

雪乃「それで、貴方はここで何をしているの?」

 

八幡「暇だったからぶらついているだけだ。今さっき自分でも思い知ってな。シルヴィアが居ないとこうも暇人なんだってな。」

 

雪乃「あら、そうなの。私はてっきり苦手な太陽を克服するために直射日光を浴びに来たと思っていたのだけれど、違ったのね。ゾンビ谷くん?」

 

八幡「誰がゾンビだ。」

 

雪乃「ふふふっ、冗談よ。」

 

 

今ではこんな風に軽口を叩き会うような関係だ。前々回の《王竜星武祭》で家族の前で俺に頭を下げて謝った事と、その覚悟が認められたからこそ、今の関係があると言ってもいい。その後の家族の関係も良好みたいだしな。あっ、今のは陽乃情報な。

 

 

雪乃「けれど……そうね。比企谷くん、もし貴方が本当に退屈で今にも死にそうだと言うのなら、今日は私がお相手をしましょうか?リューネハイムさん程のエスコートはできないけれど。」

 

八幡「それはアレか?暇つぶしの相手になってくれる、っていう解釈でいいのか?」

 

雪乃「えぇ。これに乗るか乗らないかは貴方次第よ。別に断ったからといって何かする訳ではないから安心してちょうだい。」

 

八幡「当たり前だ。なんかあったら余計怖いわ。まぁでもそう言ってくれんのなら、今日1日は頼んでもいいか?」

 

雪乃「えぇ、分かったわ。それにしても、貴方と一緒に行動するのも10年ぶり以来になるのかしらね。まだ総武高にいた頃かしら。」

 

八幡「そうだな。由比ヶ浜にアホっぽいエプロンを買ってやってたよな。それに当時の強化外骨格を取り付けた陽乃に初めて会った日だな。」

 

雪乃「………そうね。」

 

 

………あぁ、多分こいつの前で由比ヶ浜の名前はタブーみたいだな。よし、もうあいつに関係する事は言わないでおこう。

 

 

ーーー喫茶店ーーー

 

 

店長「………」

 

店員「………」

 

お客「………」

 

 

八幡「そんでな、俺がこの学院には水とお茶しかないから、自販機でも良いから取り敢えずジュース類を入れたんだよ。そしたら1日でお茶と水以外全部売り切れてたんだわ。」

 

雪乃「ふふふっ、余程飢えていたのね。」

 

八幡「今でも続いてるぞ。一応1週間に1回補充しに来るんだが、翌日にはもう無くなってんだよお茶と水は残ってるのに。」

 

 

取り敢えず話題作りとして、俺が界龍の面白エピソードを話している。いや、今話してるのは面白くもあるが、逆にそこまで?って思うくらいのエピソードだな。だって1日でお茶と水以外の全てが売り切れる自販機って………

 

 

だが此処に入ってからか、なんか妙に周りが静かなんだよな……お客も店員もいるのに、まるで俺たちしかいないような静けさなんだよ。まぁ理由は分かるんだけどな。

 

 

雪乃「じゃあ今度は私ね。余り他人のことを言いたくはないのだけれど、戸塚くんに関してよ。」

 

八幡「戸塚?あいつで面白いのか?」

 

雪乃「1ヶ月で10人くらいの男子生徒に告白された事よ。これは本人がそう言っていたもの。」

 

八幡「………ま、まぁアレだ。戸塚はあの性格であの容姿、しかもあの能力だからな。勘違いしてしまう奴も多いだろう。」

 

雪乃「女子力だったら私、負けているじゃないかしら?って思う時が少なからずあるわ。」

 

 

いやなんかそのエピソード笑えるようで笑えないよ。ちょっと切ねぇ。

 

 

雪乃「しかもその内の3人は………その、あっち方面だったから知っていて告白したらしいわ。」

 

八幡「知りたくなかったよその驚愕事実。」

 

 

その後も面白エピソードを話し合い、店を出てからは買い物をしたりして時間を潰した。なんかアレだな、シルヴィ以外の奴と出掛けるのはすげぇ久し振りだから新鮮だな。

 

 

雪乃「比企谷くん、今日は楽しかったわ。またこんな日があったらお茶しましょう。」

 

八幡「そうだな。なら、お前のアドレス教えてくれよ。シルヴィが居なくて何もすることがなければお前を誘うからよ。」

 

雪乃「ふふふっ、前の貴方では考えられない言葉ね………それが私のアドレスよ。暇な時は相手をしてあげるわ。」

 

八幡「よろしく頼む。じゃあ、またな。」

 

雪乃「えぇ、また……会いましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、というわけで今回は雪乃ちゃんでした!

久々に出したほうがいいかなって思いましたので。

そしてお知らせです!27日・28日はお仕事の関係で投稿が出来ません。なので、次の投稿は29日からとなります!



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八幡の初合コン

 

 

八幡side

 

 

八幡「はぁ?合コン?」

 

戸塚『うん、そうなんだ。どうにかならないかな?』

 

八幡「………あのさ、俺に彼女いるの分かってて言ってるんだよな?だとしたらさ、俺に誘った戸部って超絶バカ?」

 

戸部『ッベー!比企谷くん辛辣っしょ〜!!それに俺だって被害者なんだから、協力してくれねぇと困るべ!』

 

八幡「都合の良いこと言ってんじゃねぇよ。大体なんで俺なんだよ?お前らの学園にもまだ女に飢えてる男くらいいるだろうが。居なくても材木座とかいただろうが。それなのになんで俺?」

 

戸塚『八幡が真っ先に頭に浮かんだんだ。』

 

 

いや、そんな俺が女遊び得意みたいな感じに言われても………

 

 

戸部『比企谷くん、おなしゃす!!もう比企谷くんしかいねぇだべ!!』

 

八幡「あのなぁ………」

 

戸塚『八幡、僕からもお願い!!』

 

 

戸塚……お前もかよ。

 

 

八幡「………はぁ、分かった。けどこれだけは言っておくぞ。俺はただいるだけだからな?会話もなにもかもお前らに丸投げするからそのつもりでな。」

 

戸塚『っ!!ありがとう八幡!!』

 

戸部『やったべ!!じゃあ明日の夜7時に○○に集合な!!よろしく頼むべ!!』

 

八幡「あっ、ドタキャンしても良い?」

 

戸部『比企谷くんそれはねぇべ………』

 

 

正直、今速攻でキャンセルしたいんだよ?

 

 

ーーー翌日・○○ーーー

 

 

八幡「あぁ………来てしまったか………」

 

戸部「あっ、おぉ〜い比企谷く〜ん!!こっちこっち〜!もう男は皆来てるべ〜!!」

 

八幡「はぁ………」

 

戸塚「八幡、その格好似合ってるよ!!」

 

 

※八幡の格好…映画【HiGH&LOW LAST MISSON】の雨宮広斗の服装です。

 

 

八幡「適当に見繕ってきただけだ。んで、そっちの2人が戸部の言ってた合コン仲間?」

 

戸部「比企谷くん、俺そんなこと言ってねぇべ…」

 

男1「悪いな、こんなことに付き合わせちまって。」

 

八幡「もう良い。俺はちゃっちゃと済ませて帰るだけだ。ただの人数合わせだ。」

 

男2「んじゃあ早速行こうか!店ん中入って女の子待とうぜ〜!」

 

 

ーーー店内・合コンエリアーーー

 

 

八幡「おい、1つ聞くぞ。なんで俺が真ん中?」

 

男2「いや、なんか1番迫力あったから。」

 

八幡「1番目立っちゃいけない奴が堂々と真ん中にいてどうするだよ!?お前らバカだろ!?」

 

戸塚「な、何でか分からないけど、八幡が真ん中かなぁって。」

 

八幡「ヤバい、なんか頭痛がして来た………おい、位置替われ。何だって俺がど真ん中にいなきゃならねぇんだよ。」

 

 

キャーキャー!

 

 

戸部「おっ、どうやら来たみたいだべ!!」

 

八幡「あっ、たった今用事思い出したんで帰って良いですか?」

 

戸部「比企谷くん、来て早々それねぇべ………」

 

 

いや、昨日の時点でこのテンションだ。

 

 

女1「入りまーす!!へぇ〜良い部屋……えっ!!?」

 

女2「えっ?どうしたの?えっ、嘘っ!?」

 

 

まぁ、そんな反応になるよね。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

「「「カンパーイッ!!!」」」

 

 

自己紹介やゲームをしている最中でも構わず乾杯。そして騒ぎ出す男共と女共。正直、このノリには着いていけねぇ。嫌いだし苦手だ。

 

 

女5「数合わせってなんか嫌だよね。」

 

八幡「ホントその通りだな………え?お前も男目当てじゃないのか?」

 

女5「いえ、私はそういうのは……比企谷くんも数合わせで誘われたって感じだったよね?」

 

八幡「あぁ、まぁな。」

 

女5「早く終わって欲しいよ、合コン。」

 

八幡「全くだ。ウチに帰ったら嫁さんが鬼のツノ生やして待ってるんだからよ。遅くなった理由を話さなきゃいけないわけだしな。まぁ事前に説明してるから、内容だけ聞かれるだろうが。」

 

女5「………大変だね。」

 

八幡「だが、裏を返せばそれだけ見てくれてるってことだからな。」

 

女5「ふふっ、そっか。」

 

戸部「ほらほら比企谷くん!!そんなとこにいねぇで比企谷くんも歌うべ〜!!」

 

女1「あっ、私も聴きた〜い♪」

 

女2「私も〜!」

 

戸塚「八幡、歌ってよ!!」

 

八幡「………じゃあ演歌でいい?」

 

戸部「テンション下がるべさ、それ。」

 

八幡「ダメか?じゃあ日本の国歌。」

 

戸部「いやいや、合コンで歌う曲じゃないべ!!」

 

八幡「嘘だよ、ちゃんと分かってる。魔王だよな?シューベルトの。」

 

戸部「まともな選曲は無いんだべか?」

 

女3「あはははっ!比企谷くん、面白い!!」

 

女4「ホントだね!!」

 

 

その後も合コンは続いて、時間ギリギリまで楽しんだ。そして店を出た後………

 

 

八幡「そんで?誰が誰を持ち帰るの?」

 

戸塚「八幡、もっとオブラートに包もうよ。」

 

八幡「酒飲んだせいか、少しだけオープンになってるのかもな。それで決まったのか?誰が持ち帰りで誰が襲われるのか。」

 

戸部「キャラ壊れてるべ………」

 

女1「取り敢えず私たち3人と男3人は2次会だねー。比企谷くんも来れば良いのに〜!」

 

八幡「バカ言うな、ウチに女房が待ってんだ。俺は嫁さんが1番なんだ。」

 

男1「見せつけてくれるな〜!んじゃあ俺たちは2次会行こうぜー!比企谷〜、今日はありがとな〜!」

 

 

もう2度と誘わないでくれ。

 

 

そして俺は無事に家に着いて、シルヴィに言われる前に合コンで何があったかを説明した後にシルヴィを慰めながらその日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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結婚後、とある村にて

 

 

ーーーとある某村ーーー

 

 

八幡とシルヴィアが結婚して数ヶ月。彼らは六花の地を離れて、小さい村へと移り住んだ。その村は六花に比べると文化水準が非常に遅れていて、2人が生活するにはとても不便となりうる地だった。だが、それでも2人がこの村を選んだ理由、それは星脈世代を差別しない所だった。

 

そうであろうとなかろうと、心に良心のある者は皆家族。此処の村長も2人の移住を快く承諾してくれたのだ。

 

そして数ヶ月が経って生活にも慣れた頃だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「シルヴィ、デダールの城下町から色々買ってきたぞ。今日は格安だった。」

 

シルヴィア「ありがとう八幡くん。ゴメンね、なんか押し付けるように頼み込んじゃって。」

 

八幡「気にすんなよ。あの国の兵士のナンパを受けたってんなら、俺が引き受けるのは当然だ。にしても、今日の買い物は随分と多かったな。何かあるのか?」

 

シルヴィア「ふふふっ、ちょっとね♪」

 

八幡「気になるな………まぁお楽しみにとっておくか。んじゃあ俺は薪割りでもしてくる。シルヴィは料理進めてていいからな。オーブがあれば出来るだろ?」

 

シルヴィア「うん♪」

 

 

そう、この村には電化製品がない。そしてコンセントも無いのだ。明かりに使うのは火のみだった。だが八幡とシルヴィアは八幡の作ったオーブで火や水を出している為、そこまでの苦労はなかった。

 

 

男の子「あっ、八幡お兄ちゃんだ!」

 

八幡「よう、今日も元気だな。」

 

男の子「うんっ!!」

 

女の子「八幡お兄ちゃんこんにちはー!!」

 

八幡「あぁ、こんにちは。」

 

 

村人1「おぉ八幡。ちょいと手伝ってはくれないか?この年になると薪割りはキツくてな……」

 

八幡「あぁ、任せてくれ。」

 

村人2「八幡ちゃん、この前の調味料の作り方だけどね………」

 

村人3「星辰力の使い方なんだけど………」

 

 

八幡はこの村に入ってから、頼られる事が多かった。それは彼が何でも卒なくこなしてしまうという理由もあった。村の人々も『彼なら』と思っているのだろう。

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

八幡「ふぅ……ただいま〜。」

 

シルヴィア「お帰り〜……ふふふっ、その様子だとまたみたいだね。」

 

八幡「頼られるのは嬉しいんだが、もう少し俺以外の若い連中にも頼んで欲しいものだ。」

 

シルヴィア「お疲れみたいだね?今日はもう休む?ご飯は作ってあるけど……」

 

八幡「いや、流石に何も食べずにってのは気がひけるからな……」

 

シルヴィア「あっ、じゃあさ!村長さんが言ってた世界を見渡せる神の丘の頂上にピクニックに行かない?そこでお弁当を食べながらゆっくりするの!」

 

八幡「おぉ、良いな。ならすぐに行くか。」

 

シルヴィア「おぉ〜♪」

 

 

2人が揃って外出に向かう途中、必ずと言っていい程村の者たちが2人を見送るのだ。

 

 

村人1「いやぁ〜やっぱりシルヴィアちゃん可愛いよなぁ〜……」

 

村人2「あぁ。あんな美人、この地方を探してもそうはいねぇだろうよ。」

 

村人3「いやいや、世界中探してもそうそういるもんじゃねぇだろ。」

 

 

この村には似つかわしくない美貌を持ったシルヴィアを一目見ようと男たちが出てくるのだ。しかもその影響はこの村に訪問する旅人や隣の国の者たちが来る程だった。

 

 

ーーー神の丘・麓ーーー

 

 

シルヴィア「やっぱり大きな岩だよね〜。」

 

八幡「あぁ。しかもその岩が登れるように作られているのもまた不思議だよな。」

 

シルヴィア「変な模様も見えるけど、あれは一体どんな意味なんだろうね?村の人たちに聞いてもあやふやだったから。」

 

八幡「んじゃ、今度はその謎を追求する旅にでも出るか。」

 

シルヴィア「あはは、それも良いかもね♪」

 

 

ーーー神の丘ーーー

 

 

シルヴィア「着いた〜!」

 

八幡「……いつ見ても絶景だな、此処から眺める景色ってのは。」

 

シルヴィア「しかも今日は天気も良いからよく見渡せるね。素敵な景色だね〜。」

 

八幡「そうだな。」

 

シルヴィア「………あっ!忘れるところだった!お弁当、作ってきたからさ、この景色を眺めながら食べよっか♪」

 

八幡「あぁ。シルヴィの作る料理はどれも上手いからな。喜んで頂く。」

 

 

ーーー数時間後ーーー

 

 

2人はお弁当を食べ終えて、神の丘から見える景色を座りながら眺めていた。

 

 

シルヴィア「……お弁当、美味しかった?」

 

八幡「あぁ、お前の作る優しい味だった。」

 

シルヴィア「そっか、なら良かった……私ね、もっと料理覚えたいって思うんだ。」

 

八幡「ん?どうした急に?」

 

シルヴィア「だって八幡くん、私よりも美味しいの作るんだもん!負けてられないよ!」

 

八幡「そ、そうか……」

 

シルヴィア「……ふふっ、な〜んてね。それもちょっとはあるけど、1番は君と一緒にこれからもこんな風に過ごしていきたいから。」

 

八幡「………」

 

シルヴィア「………ふふふっ、また此処に来てお弁当を食べよっ!」

 

八幡「………あぁ。けど、もう少し眺めていかないか?お前と過ごすこの時間は、俺にとってもかけがえのないものだからな。」

 

シルヴィア「っ!………うん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「これからもずっと、君の隣で笑顔でいさせてね。」

 

 

シルヴィアは八幡の肩に頭を預けながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 





取り敢えず、この物語のベースはとあるゲームから引用しました。



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あり得ない話 まとめて投稿版2

 

 

その1. 『俺好きの世界で』

 

 

 

 

 

シルヴィア「それで、もう図書室には来てくれないの?」

 

八幡「………あぁ〜もう分かった。来てやるよ、来ればいいんだろ?」

 

シルヴィア「………嬉しい。本当に凄く嬉しい………やっと、やっとここまで来れたよ。」(ポロポロ)

 

八幡「お、おい……」

 

 

チュッ………

 

 

八幡「っ!?」

 

シルヴィア「自分の為じゃなくて、他人のために頑張った八幡くん。そんな君にご褒美だよ。ちょっと恥ずかしかったけどね///」

 

八幡「い、言っておくが、俺がお前の事が大嫌いだというのは変わんねぇぞ!」

 

シルヴィア「言っておくけど、私が貴方の事が大好きっていうのも変わらないよ。」

 

八幡「ぐっ……」

 

 

 

 

その2. 『盾の勇者の世界で』

 

 

 

 

八幡「以前の俺なら、確かに迷っていた。だが、今は違う。だから六花(ここ)に来た。」

 

シルヴィア「え?」

 

八幡「ここから始めていく。星武祭での戦いも新しい仲間探しも。全部ここからだ。」

 

八幡「シルヴィに出会ったから、俺はこの六花で戦う意味を見出した。オーフェリアや冬香に出会ったから、仲間の為に戦おうと決めた。」

 

八幡「他にも大勢の人に出会って、俺は比企谷八幡としてこの六花を守って行こうって思ったんだ。」

 

八幡「だからここが出発点だ。そして帰る場所でもある。」

 

シルヴィア「八幡くん………」(ポロポロ)

 

八幡「だから……これからも俺の隣で支えてくれ、シルヴィ。」

 

シルヴィア「うん、うん!八幡くんっ!!」(ダキッ!!)

 

 

オーフェリア「あぁ〜!!シルヴィアさんずるぅ〜い!お兄さん、リアにも〜!えへへぇ〜♪」

 

 

 

 

その3. 『魔法科の世界で 2』

 

 

 

 

八幡「皆、そういう訳だから。」

 

シルヴィア「ま、待って八幡くん!」

 

八幡「?」

 

 

シルヴィアは何か恥ずかしがっているようだったが、意が固まったのか八幡に歩み寄った。そして八幡の頬に手を伸ばした。

 

八幡は全てを理解したかのように両目を閉じて、片膝をついた。

 

 

シルヴィア「………///」

 

シルヴィアは俯いている八幡を顎を持って顔を軽く上げ、正面を向かせた。そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡の額に口付けをした。

 

 

 

 

口付けをした途端、八幡からは途轍もない量の星辰力が溢れ出てきた。

 

 

虎峰「な、何ですか!?」

 

セシリー「こ、これって!?」

 

 

光の中からは先程と見た目は変わらずとも、雰囲気は全く違う八幡が立っていた。

 

 

シルヴィア「八幡くん、生きて帰ってきてね。」

 

八幡「………あぁ、行ってくる。」

 

 

 

 

その4. 『BEATLESSの世界で 1』

 

 

 

 

八幡「シルヴィアは俺に隠し事をしていた。嘘もついてきた。」

 

オーフェリア「………人間誰だって隠し事はするし、嘘もつくわ。それに、そんな事をされても、八幡はシルヴィアの手を取らなかったことを後悔しているのでしょう?」

 

 

すると八幡の唇に湿り気のある柔らかいものが当たった。そして目の前にはオーフェリアの顔があった。

 

 

八幡が我にかえると、布団にくるまっているオーフェリアの姿があった。

 

 

オーフェリア「………私は今、私のしたいことをしたわ。だから貴方も自分のしたいことをすると良いわ///」

 

八幡「………オーフェリア。」

 

オーフェリア「………覚えておいて。私には心があるから八幡を送り出す前に、したい事をしたかったのよ///」

 

オーフェリア「………後、お願いなのだけど、このことは内緒にしておいて///」

 

 

 

 

 

その4. 『BEATLESSの世界で 2』

 

 

 

 

小町「ねぇ、わたし邪魔者にならないよね?私、ここにいて気まずくならないよね?」

 

八幡「はぁ?」

 

小町「イチャイチャし出して、晩御飯の時にはあ〜んとかしたりさ、お風呂に入ったら中からキャッキャッウフフなんて聞こえたら考えちゃうじゃん!新婚家庭に入ったお邪魔虫じゃん!」

 

八幡「色々捏造し過ぎだろ……」

 

シルヴィア「///」

 

八幡「………///」

 

小町「早速イチャイチャするな〜!」

 

シルヴィア「ゴ、ゴメンね。じゃあそういうのは小町ちゃんの目につかない所でやるね。」

 

小町「な、何それ?もうやるところまでやっちゃったの?」

 

八幡「するか!」

 

シルヴィア「う、うん。まだね。流石にお互いが18歳を越えるまでは……ね。」

 

小町「………じ、じゃあ18歳を越えたら?」

 

シルヴィア「そ、その時は………/////」

 

八幡「お、俺を見ながら赤くなるなよ///」

 

小町「やっぱお邪魔虫じゃ〜ん!!」

 

 

 

 

その5. 『BEATLESSの世界で 3』

 

 

 

 

 

八幡「………シルヴィ、なのか?」

 

シルヴィア「うん。」

 

八幡「シルヴィ、もう身体は平気なのか?」

 

シルヴィア「………平気、とは言えないかな。八幡くんのおかげで余命は伸ばす事は出来たけど、何回も何回も入退院を続ける事になっちゃうと思う。」

 

八幡「………」

 

シルヴィア「それでも……こんな身体の私と、一緒に……同じ場所で過ごしてくれる?」

 

八幡「………あぁ。」

 

シルヴィア「………」(ニコ)

 

 

シルヴィアは目に涙を浮かべながら八幡の手を握り、寄り添った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルヴィア「ただいま………八幡くん。」

 

八幡「………おかえり、シルヴィ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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好感度調整機


訳のわからないタイトルで戸惑ったでしょう?




 

 

虎峰side

 

 

虎峰「お2人共、今日は集まってくれてありがとうございます。」

 

八幡「いや、それは別に構わないんだが、お前が俺らを呼び出すなんてな……何?いつもイタズラやってるからその仕返し?」

 

虎峰「いえ、その節はどうもありがとうございました。おかげさまでとても貴重な体験と品々を頂いております。」

 

八幡「急にかしこまられてもな………」

 

シルヴィア「あはは……それで、今日はどうしたの?なんかすごく大きい機械があるけど……」

 

虎峰「はい。実はお2人で実験をしたいと思っておりまして、その協力を頼めないかと思いまして。界龍には丁度いい人材がいないもので………」

 

八幡「まぁお前には何かと世話になってるからな、これくらいなら別に構わないぞ。」

 

シルヴィア「うん、私もOKだよ。」

 

虎峰「っ!ありがとうございます。では早速で申し訳ないのですが、そのカプセルの中に入って頂けますか?設定してすぐに終わらせますので。」

 

八幡「……なんか怪しいが、まぁ大丈夫だろう。」

 

 

2人はカプセルの中に入って扉を閉めました。さて、ここからですね。

 

 

虎峰「それではやっていきましょう。」

 

セシリー「あんたらが喋ってたから会話の中に入らなかったけどさー、これってなんなのー?」

 

虎峰「この機械はですね、『好感度変換機』です。お互いが好きな数値をこの機械で変換することができるのです。」

 

セシリー「なんでそんなものがー?」

 

虎峰「八幡には日頃お世話になっているので。」

 

セシリー「それ絶対根に持ってる奴だよねー。」

 

 

い、良いんです!たまにはこんな風に仕返しをしなければ、僕の気も収まらないんです!

 

 

虎峰「そ、それじゃあ最初はお互いの好感度を調べて………おぉ、やはり100%でしたか。」

 

セシリー「当たり前っちゃあ当たり前だねー。」

 

虎峰「ここは半分の50%にしてみますか。」

 

 

設定をして確定ボタンを押す!

 

 

セシリー「わおぉー光ってるぅー!」

 

虎峰「2人が50%での状態ではどうなるんでしょうかね?」

 

 

動作が終了すると、2人はカプセルから出てきた。

 

 

八幡「………」

 

シルヴィア「………」

 

虎峰「どうですか?」

 

八幡「……特に変わった感じはないが、お前はどうだ?」

 

シルヴィア「私もかな。そんなに変わった感じはしない。前と何が違うんだろう?」

 

セシリー「雰囲気もさっきと全く変わってないよー。虎峰、ちゃんと説明書読んだのー?」

 

 

失敗、でしょうか?何も変化がないとはおかしいですね………

 

 

八幡「………なぁリューネハイム、俺たちの距離感、少し近くないか?」

 

シルヴィア「え?そ、そうかな?」

 

八幡「あーなんかすぐ隣にいるから。」

 

シルヴィア「あーゴメンね?ちょっと離れるよ。」

 

八幡「い、いや。別に離れて欲しいわけじゃないからな、そのままでも良い。」

 

シルヴィア「そ、そう?でもなんかね、私も君からは離れたくないんだ。どうしてだろ?」

 

八幡「……俺に聞くなよ。」

 

シルヴィア「あはは、そうだね///」

 

 

………何でしょう?変化は見られたのですが、いつも2人が曝け出している濃厚な甘さではなく、控えめかつ甘酸っぱいようなピンク色の雰囲気になってます。男女お付き合いする前みたいな雰囲気ですね。

 

 

シルヴィア「あ、あのさ……八幡くん?」

 

八幡「何だ?」

 

シルヴィア「………手を繋いでも良い?」(ウルウル)

 

 

っ!!?

 

 

八幡「………好きにしろ///」

 

シルヴィア「っ〜!!うん♪」(パアァ)

 

八幡「………///」

 

シルヴィア「えへへ、なんか少し恥ずかしい///」

 

八幡「それはこっちのセリフだ///」

 

シルヴィア「でもそれ以上に嬉しい///」

 

八幡「……そうか///」

 

 

………もう中に入れましょう。この2人の雰囲気がとてつもなく苛立たしく思えてしました。

 

 

虎峰「はい、それではもう1度カプセルに入ってくださいね。」

 

シルヴィア「え?あっ、う、うん。」

 

八幡「わ、分かったから押すなよ……」

 

虎峰「………2人がお付き合いする前はこんな感じだったのでしょうか?」

 

セシリー「最初はこんなもんじゃないのー?初々しかったよねー。」

 

虎峰「と、とりあえず次です次!思い切って100%の上、150%にしてみましょう。」

 

セシリー「いいのー?どうなっても、あたし知らないよー?」

 

 

もう遅いです。起動させたので。

 

調整が終わって2人が出てくると、やはり先程とは変わりません。

 

 

八幡「……なぁ虎峰、シルヴィは何処だ?」

 

虎峰「え?シルヴィアさんならお隣の機械から出てきていますよ。」

 

八幡「………シルヴィ、こっちだ。」

 

シルヴィア「っ!!八幡くん!!」

 

 

シルヴィアさんは八幡の方へと駆け寄って、そのまま八幡と抱き合いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱き合う!?

 

 

シルヴィア「……寂しかった。起きたら八幡くんが居ないんだもん。私のこと、ひとりぼっちにさせたんじゃないかって思ったんだからね?」

 

八幡「そんな事するわけないだろ。そんなこと絶対にしねぇよ。」

 

シルヴィア「……ねぇ八幡くん。もっとギューってして。八幡くんの匂いが私に染み込んで取れないくらいキツく抱き締めて。」

 

八幡「あぁ……こうか?」

 

 

ギュウゥゥ〜!!

 

 

シルヴィア「ふわぁぁぁ〜……/////うん、これぇ♡八幡くんを3番目に感じる方法。やっぱり癖になるよ♡もっと、もっとギューってしてね♡」

 

 

………………

 

 

セシリー「虎峰ー、もうカプセルの中に入れたらー?あんたの顔すごい事になってるからー。」

 

 

 

 

 

シルヴィア「ねぇ八幡くん、キスがしたい。」

 

八幡「……どんなだ?」

 

シルヴィア「とにかく八幡くんをいっっっっぱい感じられる奴がいい。」

 

八幡「……分かった、じゃあやるぞ。」

 

シルヴィア「んっ……んんっ♡……ちゅっ、んん〜……れろっ、くちゅ〜〜……んんぅ♡……くちゅり、れろれろ……、んんんっ、ちゅうぅぅぅ〜……こくっ……こくっ……」

 

 

あろう事か、僕らの目の前でものすごいキスをし始めました……ていうか何やってるんですか!!!?

 

 

虎峰「はい、もう終了です!!とっととカプセルに戻りますよ!!さぁ早く!!」

 

シルヴィア「えぇ!?まだだよ!まだ八幡くんとキスの途中なのに〜!」

 

 

バタンッ!

 

 

虎峰「………イチャイチャした光景しか見てない気がします。」

 

セシリー「この2人は基本のベースがイチャイチャだと思うよー?」

 

虎峰「ふふふふ、ですが安心してください。最後に奥の手、0%がありますので!」

 

セシリー「わぁー鬼畜ー。それを最後にとっておくなんてさー、あんた最低ー。」

 

虎峰「でも見てみたくはありませんか?仲の悪いお2人を。」

 

セシリー「………確かに少し気になるかも。」

 

 

おっ、間延びが無いってことは本気ですね?

 

 

虎峰「では行きましょう!!」

 

 

0%に設定して起動させ、調整をする。そしてそれが終わると、中から2人が出てきます。さて、どんな反応なんでしょうか?

 

 

八幡「なっ!?リューネハイム!?」

 

シルヴィア「うわっ!?比企谷くん!?なんでここにいるの!?」

 

八幡「それはこっちのセリフだ。此処は界龍だ。クインヴェールのアイドルはさっさと帰れ。鍛錬の邪魔だ。」

 

シルヴィア「わぁー脳筋!そんなのだから女の子に誰1人として声かけてもらえないんだ〜♪何だったら女の子のモテ方教えてあげよっかー?」

 

八幡「何だと?」

 

シルヴィア「何さ!?」

 

 

………凄く険悪な雰囲気です。こんな2人今まで見たことありません。

 

 

セシリー「うわぁー想像以上だねー。」

 

虎峰「で、ですね………」

 

八幡「ていうか離れろよ。近いんだよ。」

 

シルヴィア「君から離れたら?」

 

八幡「なんで俺がお前から逃げるような事しなきゃなんねぇんだよ?そんなの御免だ。」

 

シルヴィア「ふーん……じゃあこのままだね〜♪」

 

八幡「チッ……もう好きにしろ。」

 

 

あ、あれ?

 

 

八幡「あーなんか喉乾いてきた。おいお前ら、なんか飲むたいのあるか?」

 

セシリー「あたしはお茶あるから大丈夫ー。」

 

虎峰「僕も平気です。」

 

八幡「………お前は?」

 

シルヴィア「え?私?」

 

八幡「お前以外そこに誰がいんだよ?」

 

シルヴィア「……じゃあお茶で。」

 

八幡「おう。じゃあ買って「待って!」く……何だ?」

 

シルヴィア「……………ありがと///」

 

八幡「………お、おう///」

 

 

………なんか、雰囲気良くなってきてません?よし、ならここは人体実験です!

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

虎峰「お2人共、ちょっとそこに並んでもらっても良いですか?」

 

八幡「リューネハイムの隣に?マジか……」

 

シルヴィア「何か文句でもあるのかな?」

 

八幡「お前の隣っていう時点で文句アリアリだな。今すぐにでも離れたい。」

 

シルヴィア「その言葉、そっくりそのまま返してあげるよ。」

 

 

………シルヴィアさん、ごめんなさい!!

 

 

シルヴィア「っ!?」

 

八幡「お、おい!?」

 

 

八幡はシルヴィアさんの身体を受け止めました。まぁここは予想通りです。

 

 

シルヴィア「と、突然何するの?」

 

八幡「流石にリューネハイムの言う通りだ。虎峰、お前何やってんだ?」

 

虎峰「いえ、ただの実験です。それよりもよろしいんですか?お2人は今、触れ合ってますよ?」

 

 

さて、どんな反応を見せるんでしょう?

 

 

シルヴィア「………っ!!?ち、ちょっと!いつまでやってるのさ!!離してよ!!」

 

八幡「お前が起き上がるの遅いんだよ。さっさと元の状態に戻りやがれ。」

 

シルヴィア「あぁーこの体勢楽だなぁ。君に触られるのは癪だけど、このままでいよっと♪」

 

八幡「テメェ………」

 

 

………………

 

 

シルヴィア「……な、なんで身体でも支えてるのさ?手だけで良いよ。」

 

八幡「こっちの方が安定感あんだよ。お前は嫌だろうが、俺は楽ができる。最高だな。」

 

シルヴィア「でもさ〜、この絵面って君が私を後ろから抱いているように見えるよねぇ〜。いいのぉ?」

 

八幡「別になんて事ねぇよ。つーかお前軽いな。ちゃんと食ってるのか?」

 

シルヴィア「3食欠かさず食べてるけど?」

 

八幡「……なら良い。」

 

シルヴィア「なんの質問だったの?」

 

八幡「別に。ただの気遣いだ。お前は嫌いだが、お前の歌は好きだからな。次のライブあるだろ?その時に聞けなくなったら俺が困るんだよ。」

 

シルヴィア「へ、へぇ〜……そっかぁ///」

 

八幡「………」

 

シルヴィア「………ねぇ。

 

八幡「何だ?」

 

シルヴィア「私の歌ってどんな歌?」

 

八幡「………色取り取りだな。激しく情熱的な歌もあれば、静かで穏やかな曲もある。俺は静かな曲の方が好きだが、お前の歌ならどれも好きだ。」

 

シルヴィア「………そ、そっか///わ、私もね!君のことは嫌いだけど、君のそういうたまに見せる素直な所は好きかな///」

 

八幡「………そうか///」

 

シルヴィア「う、うん///」

 

 

………なんで0%でもイチャイチャできるんですか!!?あなたたちはなんでもアリですか!!?

 

 

その後、虎峰は2人を機械に入れて元に戻した。そして虎峰は後にこう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虎峰「普通の2人って最高ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





どんなに好感度イジっても、結局イチャイチャな2人でした。


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