クラッシュ・リンカーネーション (トロフィー4000の凡人)
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第1歩
「君は、どんな能力が欲しいのかな?」
遠近感のない、ひたすらに白い世界の中で唯一色を持つ男に、そう問われた。
「はい・・・?」
俺はそう返すことしか出来ない、なにせ突然の事であったし、現実味が無かったからだ。
記憶を思い返すも、家で寝転がっていた事しか記憶に無い。前後に何が起こったのかさっぱり分からないが、俺は何故ここに居るのだろうか。
「まー、詳しい説明は正直要らないでしょ?君がよく願ってた、異世界召喚だよ。ジャンルはクラス転移モノかなぁ」
(しばらくお待ちください
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まさか、自分にこんなイベントが起こるなんて、思ってもいなかったので、動揺を抑える事が難しい。余りの興奮にしばらく呼吸困難になったレベル。
「能力は5つまでだねー、1つだけなら他の人と被ってもいいんだけど、それ以上は多様性が無くなって楽しく・・・ゲフンゲフン対応力に乏しくなっちゃうからダメだよ。それと、スキルにもレア度があって、1つはどんなものでもいいんだけど2つはそこそこ強いスキル、残り二つは便利だなぁ、ってぐらいのスキルしかダメだからね」
今までに出てきた能力は魔法適性カンストやら聖剣使用可能やら。強奪や洗脳と言ったエグい系の力も望んだ奴は居るらしい。そういう能力にはある程度制限を課したらしいけど・・・怖いわ
モノによっては制限がかかり、尚且つ被りは1つしかダメ、と。
こういう時の為に俺の考えた最強のスキル編成、とかあるんだけど被り禁止って、37人もクラスメイトが居たらそりゃもう殆どのスキルは被り前提なぐらいに使われてる。初動が早かったり落ち着いてる奴は速攻で好きなスキルを持っていったみたいだ・・・
定番スキルは全部被りばかりで・・・
ユニークスキル
レアスキル
ノーマルスキル
スキルはこの3つに別れているらしい、上から1・2・2の順番でスキルが貰える。ユニークスキルは、本当になんでもOK、チート級のスキルをここに据えるのだ。新しくスキルを作る場合もあるそうで、ここのスキルが被ることは余りない。少し使用方なんかに変化があると違うスキルになるみたいだし。
レアスキルは、ユニークスキル程ではないけど強力なスキル。あると無いとじゃ大違いで、例えばテイムとか、魔術とか。凡人には持てない才能の塊だ。
ノーマルスキルは凡庸なスキル、剣術とか、生産系とか。スキルじゃなくてもある程度出来るような、そんなものがここに当たる。
それらを踏まえて、俺はスキルを考え無ければならない。既に殆どのものは被って居るのだから急ぐ必要は無い。ユニークスキルが1番重要だ、新しく作れるのだから、ここを被らせずに、尚且つ強いスキルを選びたい。
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ユニークスキル:召喚術(クラロワ)
レアスキル: メタルLv1 逆境Lv1
ノーマルスキル:弓術Lv1 製薬Lv1
なんか・・・こんな感じです
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ぼっち決意
無事にスキルを選び終え、白いあの場所を後にした。意識が遠のき、次に目が覚めた時は既に別の場所へと移動したようで。薄暗い部屋の中に人影が見える。どうやらクラスメイト達のようで、周りでは既に目を覚ましたクラスメイトがグループを作り話し合っている。
薄目で確認する限り、起きていないクラスメイトを起こそうとしていたりする人も居るが、自分の所には誰も来ていない。
ま、まぁ、このクラスに仲良い人あんま居ないし・・・強がりとかじゃねぇし。起きても話す人は居ないし、寝たフリのまま情報を集めようと思う、俺はまだぼっちLvが低いので聞き耳スキルはあまり鍛えられていないけど、この異常な現象に対し興奮や絶望の感情を露わにするクラスメイト達は声が大きく聞き取りやすい。
ふむふむ・・・
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周りのクラスメイトのユニークスキルは大方知ることが出来た、本人の説明を信じるなら、まぁチート級のスキルばかり。しかし・・・聞いている限り、強奪や洗脳なんかのスキルを持っている奴はいない。会話に参加していないやつが持っているのか、あるいは嘘を付いているか。あまり関わるのは辞めておこう、いや・・・グループの庇護下に付いた方がいいのだろうか、分からない。
なんにせよ、自分に影響が無ければいいか。
未だに倒れている者達を除くと大半の人の情報を集め終え、どうしたものかと思案している最中に部屋のドアが開く。見ると、鎧を着た何者かが開かれたドアの前にいることが分かった。突如現れた鎧の男に今後の方針なんかを語り合っていた皆は固まる。この隙に俺は体を起こし、すっと部屋の隅に身を寄せた。
部屋を一瞥した鎧の人物は咳払いをし、部屋の中へと足を進める。
「ようこそ、勇者様方。王がお待ちです」
まぁ、予想してたけど・・・王国召喚。
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「よくぞ参った、勇者殿。私はルーカス聖王国の国王を務めている、イルズ・ルーカス5世だ。この度は異世界で暮らしておったそなたたちを無理やり連れてくるような真似をしてしまい、申し訳ない」
王様だ、口髭とか凄い生えてるし。拉致同然のこの状況だが、武装した兵士に囲まれた状態で抗議する程の勇気は皆持っていないらしく、各々固まって話を聞く姿勢を見せた。俺はぼっちだよ。
「勿論、この世界へと連れてきた責任として基本的な衣食住は保証するし、我等人類が抱えている問題。そしてそなたらを召喚した理由となる、魔族との戦争に対する活躍の度合いによっては報奨金も出す。戦争が一段落すれば、元の世界に戻す事も確約する。どうか、我らを助けてはもらえないだろうか・・・」
・・・うーん、人の本性を見抜く力なんて無いけど、悪い王国では無いかな・・・?油断は出来ないけども。まぁ、俺個人としてはあんまり戦いたくは無いけど、戦争の理由とかによってはやれる事はやろうと思ってる。もし王様が俺らに嘘を付いて非の無い魔族を滅ぼさせようと、ってな感じなら絶対に助けねぇ。
そう言えば、ラノベだとスクールカースト上位の奴が率先して王様に返事を返したりするもんだけど、そんなこと無かったな。まぁそこまで飛び抜けたキャラの奴居ないしな、うちのクラス。
スキル確認、やる事になった。コレで洗脳とかの危険スキルが判明したら楽になるんだけど・・・
中田 幸樹
ユニークスキル:無限の○製
レアスキル:光魔法Lv1 アイテムボックス
ノーマルスキル:剣術Lv1 盾術Lv1
コイツオタクだな
佐藤 恵美
ユニークスキル:蘇生魔法
レアスキル:回復魔法Lv1 土魔法Lv1
ノーマルスキル:杖術Lv1 格闘Lv1
蘇生魔法、無かったんだ。でもよくそれにユニークスキルの枠を使おうと思ったな・・・自分が死んだら使えないし、突然異世界に行く為にスキルを、なんて言われて人助けのスキルを選ぶなんてあの子は聖女なのか。
まぁ、こんな感じで最後まで行った。誰も洗脳や強奪なんかのスキルは持っていなかった。
あの神が適当言ったんだな、とは思わない。少し異世界ファンタジーを知ってるやつなら誰でも考えられる事だ。
(多分、改竄とか、隠蔽のスキルを持ってる。異世界モノに詳しい奴か・・・?)
クラスで、俺の知ってる限りオタクと言われる分類の奴らは3人、1人はさっきの中田で
根本 明夫
ユニークスキル:不死
レアスキル:火魔法Lv1 水魔法Lv1
ノーマルスキル:身体強化Lv1 刀術Lv1
板垣 裕太
ユニークスキル:神匠
レアスキル:品質上昇 鑑定
ノーマルスキル:健康 盾術Lv1
この2人だ、まず言いたいのが、根本、お前アホじゃないの?ユニークスキル不死て。どう考えても人間には過ぎた力だし、制限がかかってるハズだ。よしんばかかっていなくて単純に永遠を生きるとしても、オタクの基本知識として永遠を生きるのは精神的にキツイってのは知ってる筈だ。アイツがにわかだったのか・・・。アホとは関わらんようにしよう。怖い。
板垣は生産系チート。戦わなくてもいい方向性で行くようだ。
2人とも、危険スキルは持っていない、そしてそれが本当のスキルなのかも俺には分からない。ついでにこのクラスの全員、看破と言われるステータスの強制解読スキルを持っていない事が判明したので無理やり見ることも出来ない。更に言うと王国としても看破と言うレアスキルの持ち主はなかなか見つけられるものではなく、国所属の人物なんかは居ないらしいので期待できない。
まぁ、本来の能力との差異を見つけることが出来れば簡単に発覚するだろ、俺は友達もロクに作れないぼっちだけど人の事をどうこうしようとするクズを見過ごす程汚い人間じゃない。
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