一人の少女を守るヒーロー (疾風の警備員)
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プロローグ
始まりは悲劇から


どうも、疾風の警備員です。

最近投稿のモチベが急降下してまして…これはそのひっくいモチベを維持、もしくは回復させる為の作品です。

なので面白くないかもしれませんが、良ければ暇潰しにでも見てってください。


「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ…!!」

 

「もう…限界…だよ…!!」

 

「頑張れッ!!もう少しで逃げられるぞ!!」

 

暗い暗い森の中、一人の少年が少女の手を引き駆け抜けていく。僅かな月明かりとオレンジ色の光を頼りに木々を避け、必死に走るその姿はまるで何かに追われ、逃げ惑っているかのようだ。

 

「いたぞッ!!彼処だ!!」

 

「絶対に逃がすな!!」

 

そんな二人の背後から男達の声と、空気が炸裂するかの様な音と共に近くの木に穴が開く。それもその筈、男達は黒光りする武器……銃を所持していて、その銃口を二人に向けていたのだ。

 

発砲されたことに危機感を更に募らせた少年は、更にスピードを上げる。だが…

 

「キャッ!!」

 

「ッ!?しま…!!」

 

その速さに少女が追いつけず、転んでしまったのだ。

 

「大丈夫かッ!?」

 

「う、うん…」

 

少女を助け起こし、また走ろうとするが…

 

「おっと…鬼ごっこはここまでだぜ?」

 

その間に男達は二人に追いつき、銃口を少年の額に突き付けた。

 

「く…!!」

 

「悪ぃが、お前達は殺処分となったからな……ここで消えろ」

 

擊鉄を起こし、引き金に掛けられる指……それが徐々に押し込まれていくのを、少年は見ていた。いや、正確にはその間に思い出される自身の記憶……走馬灯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事件の数年前、少年は姉と二人で暮らしていた。両親は蒸発し貧しいながらも力を合わせ、時には近隣の大人の人達の助けもあり、人並みに暮らせていた。ところがある日、彼等の元に不思議な出来事が起きた。

 

「お早う、■■姉に■■兄」

 

彼等の家に全く知らない男の子がいたのだ。しかもそいつは、二人に親しげに話しかけてきた。まるで、最初からこの家にいたかの様に……

 

当然二人は怪しんだ。だから最初は追い出そうとした。だが…

 

「コラッ!!■■ちゃん!!弟に何て事をしてるのッ!!」

 

近所に住む人からそう言われて怒られてしまったのだ。だが、その人とは長い付き合いであり、姉は事情を説明したのだが受け入れられる事はなく、いつの間にか知り合いの全てが彼を自分達の家族と信じ込んでいた。

 

だから姉はそいつを追い出す事をやめた。下手をすれば少年に危害があるかもしれないと思ったからだ。

 

しかし、その男のせいで二人の生活は一変してしまう。

 

その男の子は少年と違い、とても優秀だった。勉強は少年が何度か復習して覚えるものを、聞いただけで応用までこなしてしまい、運動においても他を寄せ付けない身体能力を示し、短期間でクラスの人気者になっていた。

 

やがて、周りは少年と男の子を比べる様になっていった。

 

「どうして■■は出来るのに、■■は出来ないんだ?」

 

「■■君なら、すぐ出来るのにね」

 

「■■はダメな奴だな」

 

そういう事を陰口で言われ始め、時が経つとそれは物理的なものへと変化していく。物を隠されたりするのは当たり前、いきなり理由もなく殴られる事や教科書等に存在を否定される様な事まで書かれる事もあった。

 

更に通っていた剣道の道場でもそれは起き、年上すら倒せる男の子を周りは持て囃し、少年は段々と虐げられる様になり、中には指導の名目で休憩なしに連続で戦わされるなんて事もあった。

 

それでも少年は耐える。やり返せば自分もこんな事をする奴等と同じような存在になってしまうと思ったから…

 

そんなある日、道場の娘に呼ばれた少年に待っていたのは、防具なしでの試合……いや、暴力だった。娘は防具をしていて、弟も防具を着けようとしたところを竹刀で襲われたのだ。

 

「これくらい、■■なら楽に避けられたぞ!!」

 

そんな無茶苦茶な理由で襲い掛かってくる竹刀を必死に避ける。だが、壁の四角に追い詰められてしまう。

 

「てやァッ!!」

 

勢いよく振り下ろされる竹刀。弟は何とか防ごうと腕をバツ字にした時…

 

「何をやっているッ!!」

 

「がッ!?」

 

道場の前を通りかかった姉が追い詰められた少年を見て、一気に駆け寄り娘に回し蹴りを喰らわせて吹き飛ばしたのだ。

 

「な、何をするんですかッ!?私はそいつに喝をいれようと…」

 

「貴様のようなのがいる道場など、もはや通う価値も無いな。大丈夫か、■■?」

 

「■■姉…」

 

「喋るな、今病院に連れてってやる」

 

それから姉に支えられて病院に着き、検査を受ける時に服を脱がされる事に少年はしまったと思うが時すでに遅く、身体中の痣を姉に見られてしまう。

 

それを姉に問いただされ、全てを話してしまうと姉は怒りの形相で走りだして診察室を出ていってしまった。が、しばらくして、力なく病院に戻ってきた姿に少年は心配する事しかできなかった。

 

そしてそれから一年後、世界を揺るがす事件が起きる。後に【白騎士事件】と呼ばれるそれは、世界中のミサイル発射システムがハッキングされ、計2000発以上のミサイルが日本へと向けて発射された。それを防いだのが白騎士……正式名称【インフィニット・ストラトス】と呼ばれるパワードスーツである。それはミサイルを全て落とした後、捕縛しようとしてやって来た戦闘機や戦艦を無力化して離脱した。それによる死亡者も0と言われている事がより噂に拍車をかけていた。

 

その後、インフィニット・ストラトスを軍事利用しない事を定めた条約等も締結される程、世界が注目することになった。

 

後に開発者がそれを世界に広め、開発者にしか作れない【ISコア】を467個ばら蒔いてから姿を消し、その開発者の親族であった暴力を振るってきた道場の娘の家族は一家離散となった。

 

それからというもの、姉はインフィニット・ストラトス…通称ISの事に掛かりきりになり、家に帰ってこない日が増え、男と二人きりになると少年はそいつに暴力を奮われる日々を送る事になった。

 

その上、ISが広まってから世界にある風潮ができた。それは【女尊男卑】という。何故そんな風潮になったかというと、ISには致命的な欠点があり【女性にしか動かせない】のだ。しかもそれが、現行兵器を上回る代物である事がそれを更に助長した。

 

そして姉がISの最初の大会【モンドグロッソ】で優勝した事によって、日本の女尊男卑は加速度的に広がった。

 

その結果、少年へのいじめはより酷くなる。毎日生傷が絶えず、既に彼は他人を信頼する事すら出来なくなり始めていた。周りにいる姉以外の存在が敵にしか思えず、精神的にも追い詰められていく少年に姉は必死で寄り添った。大会優勝後【ブリュンヒルデ】等と呼ばれ、周りが喜ぶ中で姉は少年を抱き締めながら「ごめん」と言って泣く事が多かった。そんな姉を見て少年は…

 

「泣かないで、■■姉…俺は大丈夫だから…」

 

姉に向かって出来る限りの笑顔を作ってそう言った。そんな弟の姿に涙を流しながらも…

 

「なら、私も大丈夫にならないとな?」

 

そう言って少年に無理矢理作った笑顔を向けていた。そんな二人を面白く無さそうに見ている人物がいるとも知らずに…

 

そして更に数年後、2回目のモンドグロッソが開かれる事になり姉は少年を連れていく事にした。本当なら少年だけにしたがったが、周囲がうるさく言うのでもう一人も連れていく事になったが、ホテルだけはこっそりと別々に予約をいれていた。

 

それについては、現地で特に文句を言ってこなかったので姉も安心していた。だが、順調に勝ち進み次の決勝に勝てば優勝というときに、少年は何者かに誘拐されてしまった。

 

自力で逃げ出す事も出来ないように手足を縛られ、何処かの施設に売られた少年に待っていたのは……今まで以上に地獄の日々だった。

 

薬物投与によって激痛を伴う身体。繰り返される実験という名の戦闘によってすり減る精神。もうどれだけここに居るのかすら分からなくなっていた少年だったが、ここで幸運が訪れた。

 

施設が何者かの襲撃を受け、自分を閉じ込めていた扉が壊れたのだ。チャンスはここしかないと思った少年は迷わず部屋を飛び出し、出口まで駆け抜けようとした時、隣の部屋から泣き声が聞こえてきた。その部屋も扉は壊れていたので中を覗くと、一人の女の子が体育座りで膝に顔を埋めていた。時折「お父さん」や「お母さん」と聞こえ、彼女も大事な家族と離れ離れになったのかと思ったら……

 

「来い、一緒に逃げるぞ」

 

「……え?」

 

その子の手を掴んで無理矢理立たせ、施設から飛び出した。この時、他人を信用するのに絶望していた彼が、何故彼女を助けたのかはわからない。だが、追っ手がやって来て何とか逃げ切ろうとするも、追い付かれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くそッ!?ここまでかよ…!!)

 

そこで意識が現実に戻り、向けられた銃口に思わず目を瞑ったその時…

 

『ADVENT』

 

「ゴアアアアアアアァァァァァァァァァァァッ!!」

 

何かの機械音の後に、聞いたこともない生き物の雄叫びが周囲に轟いた。

 

「な、何だッ!?」

 

「やべぇ感じがする…!!さっさと殺してズラかるぞッ!!」

 

銃を持った男達はその声に驚き、一瞬気を取られるがすぐに銃口を向け直して引き金を引くが、何かが少年達の後ろに降り立ち、放たれた銃弾を光る翼で受け止めたのだ。

 

「な、なんだぁッ!?」

 

「ど、どどどどどどどどどドラゴンだとぉッ!?」

 

慌てふためく男達に少年達が背後に視線を向けると、金色の鎧を所々に着けた西洋風のドラゴンが二人を翼で守る様にして立っていた。

 

「マジかよ…」

 

「ほ、本物…?」

 

「よくやった、メイル」

 

驚く二人だったが、そこに違う影が現れる。金色のボディスーツに銀の鎧、鉄仮面のスリットからは水色の複眼が見え、腰には銀色のベルトに金色の龍の紋章がある四角い箱がある存在だった。

 

「何だテメェはッ!!」

 

「誰だっていい!!見られたからには殺すぞ!!」

 

男達は銃口をそちらに向けるとすぐさま引き金を引く。パァンと渇いた音が何発も少年達の鼓膜に響くが、その存在はそれをものともせず歩き、男達の前に着くとどこからか剣を取り出し、男達を切り裂いた。だが、男達から血は吹き出さない。

 

「ぎゃあああああああああ………あれ?斬れてねぇ…」

 

「でも確かに今『Remote!!』うおあッ!?」

 

それをおかしく思っていた男達だが、電子音声の後にその場にいきなり崩れ落ちた。

 

「な、なんだ…!!」

 

「身体が…動かねぇ!?」

 

「お前達の身体を動かす神経伝達を【解除】した。これでもう動く事は出来ない……永遠にな…」

 

そんな男達を一瞥し、仮面の存在はベルトの箱を抜き取り素顔を現す。

 

そこにいたのは年齢は20代後半から30代前半で、茶髪の男だった。

 

「君達、怪我はないか?」

 

その男は先程までの威圧を無くし、笑顔を向けながら問うてきた。だが少年は、これが油断を誘って自分達をまた誘拐しようとしている奴等だと思い、龍の翼を掻い潜って少女と二人で再び走り出した。

 

それを見送る1人と1体…それに振り返りもせず、少年は全力で逃げた。

 

「あの人達…!!いいの…!?」

 

「あんなの…!!信用…!!出来るか…!!」

 

「ねぇ…!!これから…!!どうするの…!?」

 

「とりあえず…!!お前だけでも…!!家に帰してやる…!!」

 

それを当面の目標として少年、【織斑 一夏】は少女と共に森の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

「ごめんお兄ちゃん、逃げられちゃった…」

 

「まあ、簡単に信用しちゃくれないよな…」

 

俺は隣でしょんぼりする相棒の頭を撫で、背後で燃える建物を見る。

 

「皆、そっちはどうだ?」

 

『ダメね、めぼしい資料とかは廃棄されたか、持ち出されていて録な物が無いわ』

 

『…パソコンの方もデータは全部消されてる上に、物理的に壊されていて解析不能…』

 

『生存者もいないな。どこももぬけの殻だ』

 

「そうか、ならもうそこに用は無いな。一度俺の所に集まってくれ、生存者を見つけたけど逃げられちまったんだ」

 

『『了解』』

 

『な~にやってんだよ…』

 

「悪い、集まり次第捜索を始める」

 

そこで通信を切り、少年達が逃げた場所を見る。彼が俺に向けていた視線……あれは周囲全てを敵としか思ってない目だ。

 

「あの目……ほっとけないんだよなぁ…」

 

俺は後頭部を掻きながらぼやいた。




いかがでしたか?

次回は逃走中の二人のお話……かも?

では次回でお会いしましょう。


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野宿と出逢い

どうも、疾風の警備員です。

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。

年末から仕事ばかりで投稿と挨拶が遅くなりました。

今年もよろしくお願いします。

では、本編をどうぞ。


「ハァ…!!ハァ…!!ようやく撒けたか…!!」

 

「ハァ…!!もう…走れない…!!」

 

先程の男から逃げた二人は、追っ手が来ていないのを確認し、ようやく一息つくことができた。しかし、かなりの距離を走ったにも関わらず、周囲はたくさんの木々が生い茂っており、未だに自分達がいる場所が何処なのか特定できなかった。

 

「追ってはないし、先ずは落ち着ける場所を探すか」

 

「うん…」

 

後方からの気配が無い事を確認した一夏は、一度腰を落ち着ける場所を探そうと思ったが、連れてきた女の子がその場から動こうとしなかった。

 

「どうした?」

 

「も、もう少し…休ませて…」

 

どうやらここまで走るのに体力を使いきったらしく、荒い息で座り込んでいた。

 

「……しょうがねぇなぁ…」

 

「え?」

 

そんな状態の彼女をここに置いて探しに行こうとも思ったが、それで追ってに見つかり殺されては目覚めが悪いと思った一夏は、彼女に背を向けてしゃがみこんだ。

 

「乗れ…」

 

「でも、貴方も疲れて…」

 

「問題ない、いいから乗れ」

 

「……それじゃ…」

 

最初は遠慮していた少女も、一夏に押しきられ背中に抱き着くと彼は少女の足を抱えて立ち上がる。最強の戦闘員として改造されてきた彼にとって、この程度は苦でもない。

 

「んじゃ、行くか…」

 

「ちょっと待って」

 

「ん?」

 

歩き出そうとした時、呼び止められ彼女が周囲を見回してると…

 

「十時の方向、距離は400メートル程先に川が流れてる。」

 

そう言い出した。

 

「……本当か?」

 

「私を信じて」

 

見つめながらそう言われ、一瞬怒りに支配されそうになる。誰かを信じる事……彼にとって今は、それ事態が嫌悪に変わっている。だが、彼女は自分と同じ研究施設に捕まってた事を思いだし、同じ境遇の者同士として一回だけ信じる事にした。

 

「わかった」

 

「……ありがとう」

 

「だけどそれが嘘だったら、俺は二度とお前を信じねぇからな?」

 

「…助けてくれた人を裏切るなんて、私もしたくないよ」

 

「ケッ…」

 

最後に悪態を着いてから彼は言われた方向へと歩き出す。数分ほどすると、耳に水の流れる音が聞こえてきた。更に歩を進めると本当に川があり、その手前が少し開けている場所に出た。

 

「ほらね?」

 

「…わかったから、一度降ろすぞ」

 

近くの倒れていた木に彼女を座らせる様に降ろし、川の水を掬って飲む。幸いにして汚染されておらず、おかしな味はしなかった。

 

彼は大きめの葉っぱを見つけると川で洗ってからそれを丁寧に折っていき、簡易的なコップを作り水を掬って彼女に手渡した。

 

「ほら、味なら問題ない」

 

「ありがとう…」

 

少女もそれを受け取り、しばらく見つめてからそれを飲む。

 

「さて…先ずはここが何処だか知らないとな…」

 

そう言って少女の隣に腰掛けた一夏は周囲を見渡す。彼は誘拐された時、睡眠薬を嗅がされて気を失い、気がつけば研究施設にいた。だから、ここが自分がいたドイツとは限らないのだ。

 

「つっても…わかる物なんて何も無いんだけどな…」

 

しかし、彼らがいるのは深い深い森の中。人の手が一切入ってないようなこの場所で、自身の居場所を知る事は不可能に近い。

 

「とりあえず明日、森を抜けてみよ?そうすれば、建物の看板とかあるかもしれないし…」

 

「ハァ…それしかねぇか」

 

彼女の言葉に一夏はため息を吐く。確かにそれが彼らに今出来る唯一の方法なのだ。

 

「にしても腹減ったな……川に魚いるか?」

 

走りまくったせいで空腹を感じる一夏は川を覗き込む。普通なら深夜の森で僅かに月明かりが射しているも、殆ど真っ暗で何も見えはしない。だが、身体をあちこち弄くられたお陰で僅かな光源で視界を確保でき、発見した川魚を強化された動体視力で動きを見切って素手で掴み上げる。

 

「よし」

 

「おお~!!」パチパチ♪

 

見事な早業に少女は拍手する。それからもう一匹掴み取り、落ちていた木の板と棒を使い原始的手段で火を起こす。

 

「なんか…手慣れてる?」

 

「あの施設でやらされてたんだよ」

 

更に手頃な木の枝を石で削り、即席の串にして魚を刺しある程度燃えてきた火で焼いていく。

 

二人もその火で暖をとる。時期としてはそこまで暑くもないが、夜になると風の温度が下がってきたのでおそらく季節は秋頃なのだろう。

 

「さすがに暗くなると、少しは冷えてくるか…」

 

「うん…」

 

相づちを打つ少女も、焚き火だけでは寒いのか、少しだけ身体を震わせていた。今の彼等の服装は病院で患者が着るような服なので耐寒性は無いに等しい物だ。

 

「…………ほらよ」

 

それを見かねた一夏は自分が着ていた病人服の上着を脱ぎ、彼女に掛けた。

 

「え…?」

 

「それなら多少はマシだろ…」

 

「でも、それじゃ貴方が…!!」

 

「俺はいい…」

 

そう言って一夏は立ち上がり、周囲を観察して巨大な葉を数枚むしり、地面に敷いて簡易的な寝床を作り始める。

 

「焚き火の温度だけで俺は充分なんだよ」

 

本人はそう言っているが、もちろんやせ我慢である。

 

(何で俺は…コイツを助けたいんだ?)

 

だが、何故か彼女は助けたいと思っている自分に、一夏も心の中で首を傾げていた。

 

「…………ありがとう」

 

そこに笑顔でお礼を言われ、焚き火に照らされたお陰かその顔が綺麗に見えた一夏は、顔を少し赤くしながら向きを僅かに反らした。

 

「………………あ、お魚焼けたよ」

 

「おう」

 

丁度焼けたのか、焚き火で焼いてた魚の串を取り、1つを少女に手渡す。

 

「ほらよ」

 

「うん」

 

それを受け取り、それをしばらく見つめる少女。そこで一夏は気づいた……少女の瞳が赤から青に変わっているのを。

 

「おい、その目…」

 

「え?ああ、これは【盗み見る瞳(シーフ・アイ)】っていう物で、研究施設にいた私に埋め込まれた物なの。能力としては、目に映る物の情報を見れるらしくて、それに視力もかなり上がるよ。まあ、脳の負担が大きいから1分位しか使えないけど…」

 

そう言って、瞼を閉じて再び開けると元の赤に戻っていた。

 

「なるほど、さっきからなにかと見つめるのはその為か…」

 

「うん…よく使わされてたから、癖になってるのかも…他にも色んな機械の操作を覚えさせられたり、戦略知識を学ばされたりしたっけ?」

 

「……俺のとは随分違うな?」

 

少女の話に一夏は疑問を持つ。彼女が受けていたのは主に頭脳面らしく、彼が受けていたのは真逆の肉体面。1つの施設で正反対の研究を行っていたのは何故か…色んな事が彼の脳裏に思い浮かぶ。だが、逆に浮かびすぎて1つに決めきれなくなっていった。

 

「そういえば、【もうすぐお前のパートナーも完成するぞ】って聞かされた事が…」

 

「……なるほどな」

 

そこに、少女の呟きによって解答を得ることになった。

 

「えッ!?解ったの!?」

 

「ああ、彼処が目指していたのは【二人で一人の最強】だ。どんなに困難な状況でも打開出来る策を練れる後衛と、その策を実行できるだけの実力を持った前衛……それが揃えば敵無しって事なんだろうな。」

 

「…てことは、私のパートナーって貴方なの?」

 

「さあな?そこまでは俺もわかんねぇよ」

 

「そっか…………私は貴方が私のパートナーだったら良いな…」

 

少女の呟きは強化された聴覚に届き、気恥ずかしくなった一夏は無心で焚き火に枝をくべた。

 

「ほら、明日は明るくなったら動くから、早めに寝ろよ?」

 

「わかった」

 

一夏が作った寝床に少女は横になるが、すぐに一夏の方へと振り返る。

 

「そういえば、貴方の名前教えてくれない?」

 

「ん?…………一夏だ、織斑一夏」

 

「わあッ!!名前が1文字違いだ!!私【星宮いちご】っていうの、よろしくね♪」

 

「ああ」

 

そして今度こそ寝たいちご。それを見届けてから新たに火に薪をくべる。

 

(千冬姉……今頃なにやってんだろうなぁ)

 

火をある程度維持できる薪をくべ終わると、疲れがきたのか一夏も眠気に襲われ、作っておいた寝床(座っていた倒木を挟んだ反対側)に横になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝……

 

「ふあぁぁぁぁ……ん?」

 

一夏は久方ぶりのゆっくりとした睡眠から目覚め、欠伸をしつつ起き上がろうとしたが、背中に何かがくっついていて起き上がれなかった。

 

「なんだ?」

 

寝起きだった為に一夏も警戒心が薄く、後ろを振り向けばそこには……

 

「…スゥ……スゥ……」

 

いちごが背後から抱き着く形で眠っていた。しかも寝返りのせいか、服も一部はだけている状態だ。

 

(あれ?確かコイツ、向こう側で寝てたよな?なんでこっちにいるんだ?てか、なんで抱き着いてる?でも良い匂いで暖かくて柔ら……いや、何を考えてんだ俺はッ!?変態不審者かッ!?てか服が服だから感触が直にッ!?しかも隙間から見えかけてる~ッ!?)

 

突然の事態に寝ぼけていたのが一気に覚め、思考がおかしくなる一夏。まあ、研究施設にいる時は異性の事を考えてる余裕なんてあるわけないし、思春期真っ盛りな少年からすれば、正常な反応でもあるが…一夏の場合は研究施設のせいで異性に関して免疫があまり無いのもあるだろう。

 

(こ、これは起こした方がいいのかッ!?でも、なんか心地良いし離れられたら名残惜しいし眼福だし…つか寝ぼけてこっちに来てたとしたら、見られた事で絶対に泣かれるッ!!そうなったらどうすればいいんだッ!?女性の泣き止まし方なんて知らねぇぞッ!?助けてくれ千冬姉ぇぇぇぇッ!!)

 

一夏、完全にパニックである。

 

「…んにゅ……はれ…?一夏……?」

 

「…………あ」

 

そんな中、いちごが目を覚ました。

 

「あれ…?なんで一夏が目の前に……………………あ」

 

寝ぼけていた彼女も、徐々に意識が覚醒し自分の状況を理解していき顔を真っ赤に染めていく。

 

(あ、終わった…)

 

「ご、ごめ「え、えっとね!?これはその!?そうッ!!一夏、寒そうだったし!!私も出来る事で恩返ししようと思っただけで!!別に変な感情はないよッ!?うんッ!!決して変な事しようとした訳じゃないから!?」えッ!?お、おう…」

 

先に謝ろうと思っていた一夏だったが、その前にいちごのマシンガントークに先手を取られ、何も言えずに彼女の言葉に頷く事しかできなかった。

 

「そ、それじゃ服を直したいからアッチ向いてて…!!」

 

「わ、わかった!!」

 

急ぎ回れ右をして視界からいちごを外す。だが、一夏の困難はまだ続いていた。

 

シュル…

 

(ヤバいッ!!強化されてる聴覚のせいで、衣擦れの音とかがはっきり聞こえてくるッ!?このままではマズイ!!こういうときは……そうだッ!!御経を唱えていようッ!!)

 

身体能力の高さが招いた弊害に、一夏は落ち着きを取り戻す為に心で御経を唱え始める。

 

(え~と確か…なんて言ってるんだっけ?は~ま~と~…)

 

だが、中身は殆ど知らない為に適当な文だが…

 

(か~ず~み~ん~…………【キイィィィィィィィィィィ】ん?この音は…)

 

それを約2分程続けていた時、彼の耳が異音を捉えた。

 

「ふう…もういいよ、一「シッ!!何かが来る!!」え?」

 

着替え終わったいちごに警戒を促す。音は更に大きく、そして近づいてくる。

 

「これって…ISの飛行音ッ!?」

 

「チッ!!追っ手に気づかれたか!!逃げるぞ!!」

 

一夏はいちごの手を掴み走り始める。その数秒後に、彼らがいた場所に1体のISが降りてくる。だが、肥大化した両腕に全身に取り付けられたスラスター、首のない頭部が異様な雰囲気を醸し出している。

 

「何あれッ!?」

 

「気にせず行くぞッ!!」

 

驚くいちごに声を掛けて走り続ける一夏。だが、その声が聞こえたのかISは一夏達の方を見ると、右腕を突き付け、光を集め始める。

 

(マズイッ!?)「いちごッ!!」

 

「えッ!?キャアッ!!」

 

一夏は咄嗟にいちごを地面に覆い被さるようにして押し倒す。そのすぐ後に一夏の上を閃光が通り抜ける。

 

「ぐうううぅぅぅぅぅぅぅッ!?」

 

「キャアアアアアアアアアッ!!」

 

全てを焼き尽くす殺戮の光が視界を目映く照らす中、光が消えると彼等の先にあった木々が消え、残った一部が赤熱していた。

 

「うそ…」

 

「ボケッとするなッ!!」

 

一夏はその光景に呆けるいちごをお姫様抱っこで抱え、その場から走り出す。

 

「アイツはヤバい!!少しでも距離を取るぞ!!」

 

「うんッ!!(ヌチャ)……え?」

 

全速力で走る一夏から振り落とされない様にいちごは彼にしがみつくが、そこで手が何か温かい液体に触れる感触があり、顔の前に持ってくると……それは血だった。

 

「一夏ッ!?コレ…!!」

 

「気にすんな…!!」

 

実は一夏と先のビームとの距離はあったものの、その出力の高さが発する熱に背中全体を焼かれていたのだ。その痛みは尋常ではないが、彼は走り続ける。

 

「くそッ!!何なんだよアレはッ!?」

 

(このままじゃ一夏が持たない…!!何か…!!何かないの…!?)

 

攻撃を何とか避けながら悪態を着く一夏に、いちごは攻略法を考え始める。そして今度こそある考えが浮かんだ。

 

(でも、確証なんてないし確率は1%以下…どう考えても神頼み的な作戦…でも、生き残るにはこれしかない!!)

 

「一夏ッ!!この状況を打開出来るかもしれない方法があるッ!!」

 

「言えッ!!その作戦をッ!!」

 

「でも、成功確率が1%以下で…!!」

 

「この状況で贅沢言ってられるかッ!!いいから言えッ!!」

 

「もし失敗したら一夏は…!!」

 

「お前は俺のパートナーなんだろッ!!だったらその1%を掴みとってやるよッ!!」

 

無茶過ぎる作戦内容に言葉が小さくなるも、一夏の全力の言葉に彼女は作戦を話す。

 

「しばらくアイツの周囲を回って。それで何時でもいいからタイミングを見て、アイツの発射寸前の腕を真上に蹴り上げてッ!!」

 

「了解ッ!!」

 

その指示に一夏は逃げながらの回避から、異形の周囲を回るように動き始める。それによって異形はその場でグルグル回りながらビームを撃ちまくる。

 

それをいちごを抱えつつ、木々の高低さまで利用した三次元的な動きで避けまくる。そして、チャージが始まると同時に着地できた瞬間にISへと接近し…

 

「オゥラッシャアアアアァァァァァァァァァッ!!」

 

発射寸前だった右腕を全力で蹴り上げた。それによりビームは真っ直ぐ上空へと放たれていく。

 

「よしッ!!次はッ!?」

 

「後はさっきみたいに逃げ回って!!」

 

「はあッ!?」

 

やっと任務を達成できたと思ったら、再び逃げ回る事になり、先程と同じ要領でビームを回避していく。

 

それを10分……体感時間では1時間ほど行っていたら、次に飛び移ろうとした木を先にビームで消されてしまう。

 

「ッ!!ぐあッ!?」

 

「一夏ッ!?」

 

いちごを庇いつつ地面に落下する一夏。痛みで呻くその隙は襲撃してきたISにとっては充分で、彼等の目の前で充填をほぼ終えた腕を向けていた。

 

「あ…」

 

「ここで…万事休すか…!!」

 

逃げられる余裕は既に無く、2人が諦めかけたその時…

 

「い~や!!こっから形勢逆転だッ!!」

 

何処からか聞こえた声と同時にISとは別方向から放たれたビームが、腕の発射口とメインカメラがある場所を正確に射抜く。

 

「え?」

 

「良かった…!!まだいたんだ!!」

 

当然の事に呆然とする一夏と喜ぶいちご。その間にISの背後から2人の女性が現れる。片方はツインテールから巨大化させた丸鋸を出し、もう1人は左腕の籠手の後ろに大剣を装備しており、すれ違い様にISの両腕を肩から切り落とした。そこから流れるのは血ではなく、壊れた機械の部品やオイルだ。

 

「ロボット?」

 

「ええ、油断してはダメよ」

 

その女性達は一夏達の前に立ち、庇うようにして構える。

 

「あ…アンタ達は…」

 

「話はコイツを倒してからね」

 

ISの次なる行動を警戒していると、それはいきなり空へと飛び立った。

 

「えッ!?」

 

「まさか…逃げる気!?」

 

このままでは逃げられると思ったら、空に金色のドラゴンが現れてそれに尾を叩きつけ、再び地面へと落とした。

 

「…メイル、ナイス」

 

「なら、もう終わるわね」

 

『FINAL VENT』

 

「オオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

そしてドラゴンの前に彼等が昨夜見た鎧の存在が跳び上がってきて、右足に羽から出る光弾を集束していき、最後は口から出た炎とともに跳び蹴りをISへと放って、直撃したISは爆散した。

 

「よっと……(コンッ)アイタッ!!何だコレ?」

 

最後が微妙に絞まらなかったが、ISは完全に破壊された。

 

「大丈夫か、2人ともッ!?」

 

(良かった……これでコイツを助け…)

 

「一夏ッ!!助けが……一夏?ねぇ、一夏ってば!!」

 

驚異が消え、いちごを助けられると安堵した一夏はそこで意識を失うのだった。




いかがでしたか?

次回は助けに来た人達の説明と家族との再会、プロローグの終わり辺りまで書こうと思っています。

では次回で、お会いしましょう。


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再会

どうも、疾風の警備員です。

未だにスランプから抜け出せません…

そんな中、やっと出来ました。プロローグの終わりまでは行けませんでしたけど…

では、どうぞ。


一夏side

 

「待ってくれ、千冬姉…」

 

暗い空間で、俺は目の前にいる家族の千冬姉に手を伸ばす。だが、その手は僅かに届かず、距離もゆっくりと離れていく。

 

「千冬姉…!!俺を置いてかないでくれ…!!」

 

唯一の家族に見放されたくない…その一心で俺は走りながら手を伸ばし続けた。

 

そして後少しで手が届く所で、俺の前を何かが勢いよく通りすぎ、発生した風に怯んでいたら千冬姉が目の前からいなくなっていた。

 

「千冬姉?何処だッ!?千冬姉!!」

 

俺は慌てて千冬姉を探すけど、見渡しても千冬姉の姿は無く…

 

――アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!――

 

耳障りなヤツの笑い声が俺の鼓膜に響いてきた。

 

「テメェッ!!千冬姉を返しやがれッ!!」

 

そう叫んだ俺の視界に現れたのは…

 

――死ね――

 

巨大な手が俺を押し潰そうとしているところだった。俺は必死に逃げるが間に合わず、その手に押し潰される……

 

(大丈夫だよ、一夏…)

 

その時、何処からか優しい声が聞こえ、右手が暖かくなってきた。

 

「これは…?」

 

その右手を見ていたら、突如目映い光が俺の視界を覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん…ここ……は…?」

 

「一夏ッ!?」

 

次に視界が戻った時には、俺の右手を握り涙を流しながら嬉しそうな顔をしているいちごが写った。

 

「いちご…?…………俺は一体…」

 

「私達を助けてくれた人達が持ってるテントの中だよ!!本当に目が覚めて良かったよぉ…!!」

 

「ちょッ!?いきなり抱き着くなッ!!背中が…………ッ!?」

 

目を覚ました事に安堵したのか、いちごが俺に抱き着いてきて、背中の痛みを覚悟したが、何故か痛みはこなかった。

 

(何で…?)

 

そもそも包帯を巻かれてもいない事を不思議に思い、背中を触ると火傷の痕と思われる傷が無く、元の状態に綺麗に戻っていた。

 

(どうなってる!?あれほどの傷を残す事無く…!?)

 

「あ、目が覚めたんですね?」

 

俺が驚いているとテントに1人の女性が入ってくる。髪はいちごと同じ金髪だが膝上辺りまで伸ばしていて、後頭部に横向きに巻いた三つ編みに黒い大きなリボンを付け碧色の瞳をしている。

 

その人は微笑んだ後、俺の隣に腰掛けた。

 

「それじゃ身体を診察しますから、いちごちゃんは離れてくださいね?」

 

「あ、はい」

 

いちごが離れるとその人は俺に向かって右手を翳す。すると、その手にまるで漫画かアニメで見る魔法陣が浮かび上がった。

 

「えッ!?」

 

「ジッとしててください、身体に害はありませんから」

 

何がなにやら分からない俺はいちごの方を見る。彼女も【盗み見る瞳(シーフ・アイ)】を発動させていたが、情報が得られ無いのか首をしきりに傾げていた。

 

「はい、終わりましたよ。背中の傷はもう大丈夫ですね。さすがに、弄られた身体の方は何とも出来ませんが…」

 

魔法陣を消すと診察結果を話して、その人は少し悲しそうな顔をする。

 

「別に構いませんよ、もう受け入れましたから」

 

そんな女性に俺はそう返す。むしろ、これでアイツを倒せる力が手に入ったと喜ぶべきだ。そう思わねぇと心がヤバいからな…

 

「そうですか……では、ご飯にしましょうか?外で皆さんが待ってますから」

 

そんな俺にまた笑顔を向けた後、女性はそう言って外に出ていった。

 

……強がりだってバレたか?

 

「一夏、別に強がらなくても…」

 

どうやら、こっちにもバレてたようだ…

 

「お前にもバレてるか…まあ、治らないものは仕方ないけど……実際に断言されちまうとな?」

 

「それは…」

 

身体を無理矢理改造され、治療も不可能……もう普通の人間ではいられない事が、こんなにクルものだったなんて…それだったら前向きに受け止めるしかない。

 

「とにかく、助けてもらった礼だけでもしてくるか」

 

「うん!」

 

俺達は立ち上がり、テントから外に出ると空は木々の隙間から見えるだけでも、満点の星が輝いていた。

 

(もう夜だったのかよ…どんだけ寝てたんだ、俺……)

 

かなりの時間寝ていた事に俺は驚き半分呆れ半分な気持ちになり、視線を前に戻すと…

 

「おさ~んどん…おさんどん、おさんどん♪」

 

『『『ねぇねぇ!!味見させて~(ッス)!!』』』

 

「アグちゃん達はダメですよ?この前そう言って、全部食べちゃったんですから」

 

『『『ええ~ッ!?』』』

 

「なあ…このレシピ、後でアタシに教えてくれ」

 

「それは良いですけど……クリス先輩、何故小声?」

 

「ようやく彼の妻になった自覚ができたのかしら?」

 

「んなッ!?べ、別にアイツの為とかそんなんじゃねぇよ!!これは……その…えっと……そうッ!!食うなら旨い飯の方が良いからだよッ!!」

 

「フフ……そういう事にしておいてあげるわ♪」

 

「くっそ~…!!結婚した途端、アタシをからかいまくりやがって…」

 

「今のうちに私が味見を…♪」

 

「お前も前科があるからダメだ」

 

「ああッ!?神器から出れた私の楽しみが~!!」

 

「「……………………………………なにコレ?」」

 

6人の男女と3匹の不思議生物による日常風なカオスがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No side

 

「あの~…」

 

「ん?ああ、キミも起きたのか」

 

このまま見ててもどうにもならないと思い、いちごが声をかけると鎧の存在になってた男が気づき、それにつられて他の者も2人に気づいた。

 

「とりあえずこっちに来て座りな。そこだと寒いだろ?」

 

男の手招きに2人は料理が行われている焚き火の前まで来て、置かれている丸太の上に座ることにした。焚き火の上には鍋が置かれ、煮込まれてるシチューがいい匂いを漂わせている。

 

「…シチュー、もう少しで出来上がるから待ってて」

 

「あ、はい…ありがとうございます」

 

その鍋をかき混ぜてる黒髪ツインテールの女性がそう言うと、鎧の存在になる男性が2人の方に身体を向けた。

 

「それじゃ、それまでの間に自己紹介しておこうか。俺は【龍見 一誠】だ」

 

その次に、一誠に襟首を掴まれてもがいてる少女が自己紹介する。

 

「私は【虹野 ゆめ】!!今はこんな姿だけど、本当はドラゴンなの!!ヨロシクね!!ってかお兄ちゃん!?そろそろ襟首離して~!?」

 

そんな光景に一夏といちごが苦笑していると、今度はピンク髪の女性が自己紹介を始める。

 

「【マリア・カデンツァヴナ・イヴ】よ、歌手をやってるわ。ヨロシクね」

 

「…【月読 調】です、よろしく」

 

「【アーシア・アルジェント】です。よろしくお願いしますね。この子達は【アグモン】のアグちゃんに【ガブモン】のガブちゃん、【ドルモン】のドルちゃんです」

 

『『『ヨロシク~♪』』』

 

「アタシは雪音……じゃなかった【木場 クリス】だ、ヨロシクな」

 

それから続けて黒髪ツインテールの女性に、先程一夏を診察した女性と謎生物3体、からかわれてむくれていた銀髪の女性が自己紹介し、2人も自己紹介する事にした。

 

「星宮 いちごです」

 

「……織斑 一夏…」

 

「いちごちゃんに一夏君な、それじゃちょっと話を(クウ~…)ん?」

 

その時、大きく誰かのお腹の音が鳴った。強化された聴覚で、その音の発生源がいちごだと分かった一夏が彼女を見ると、恥ずかしさに顔を真っ赤にしていた。

 

「今のはいちごか…」

 

「ちょッ!?なんで言っちゃうの~ッ!!」

 

それをバラされたいちごは、ポカポカと一夏の胸を叩く。彼にとっては痛くも痒くもなかったが…

 

「なに怒ってんだ?可愛い音だったけど」

 

「かわッ!?…もぉ~ッ!!もぉ~ッ!!」

 

一夏の言葉にいちごの顔は更に赤くなり、叩くスピードが上がる。そんな2人を一誠は苦笑しながら見守り…

 

「…………そういう事は家でやれ」

 

クリスはボソッとつっこんだ。

 

「シチュー、完成したよ」

 

「んじゃ、先に食事にしようか?」

 

「うう~…!!一夏のせいで、食いしん坊キャラとか思われたらどうするの!?」

 

「えっと…その……なんかゴメン…」

 

シチューが入った器が全員に配られる中、いちごは涙目で一夏を睨み続け、それに耐えられなかった一夏は謝るが、いちごにそっぽを向かれるだけだった。

 

それからも、久々の温かい手料理に一夏といちごが涙を流しながら食べたり、おかわりしようとしたらアグちゃんと呼ばれる謎生物がシチュー鍋を傾けて一気食いしていてアーシアとクリスにお説教されたり、代わりに一誠が即席で作ったチャーハンを食べたいちごが女子力ブレイクされたりといった事があったが、久方ぶりの楽しい食事に二人の顔にも自然と笑みが浮かんでいた。

 

「そういや、あんたらはどうやって俺達が戦ってる場所を特定したんだ?」

 

そこで疑問を口にした一夏。彼はまだ彼等が戦っている場所を知った方法を理解してなかった。

 

「君じゃないのか?ビームを真上に上げさせたのは?」

 

「俺だけど、それはいちごに言われて…」

 

「それが狼煙になったんだよ。後はそこへ向かって進んで君達を見つけたって訳さ」

 

「ああ、アレッてそういう事だったのか…」

 

一誠の言葉に一夏はようやく納得した。そう、あの時ロボットの腕を蹴り上げて真上にビームを飛ばしたのは自分達の居場所を知らせる為だった。横にいるいちごを見ると、彼女が解説する。

 

「でも、この方法って殆ど運任せでね?龍見さん達がまだ森にいる事が前提だったし、いたとしても助けてくれるのかとか、あのロボットに勝てるのかとか不確定要素が多くて…」

 

「まあ、あのまま君達をほっとく訳にもいかなかったからな。一応森の中を探していたんだよ」

 

「でも、アレは敵にも居場所を教える事になるの。普通ならオススメしないわ」

 

更にマリアが口にした事に2人はハッとする。あの時は目の前のロボットから生き残る事だけを考えていて、付近に他にも敵がいるかもしれない事を失念していたのだ。もし、先に来たのが敵の増援だったとしたら2人の命は今頃その辺に転がっていただろう。

 

「ま、今回は君達の運の勝ちだったって事。それに状況が状況だからこれしか選択肢がなかったのも事実なんだろうしね」

 

だが、2人の状況を鑑みてそれしかなかったのも事実であり、それを理解している一誠はここで話を切る事にした。

 

「でも本当に助かりました。皆さんのお陰で私達は研究所から逃げる事ができましたから…」

 

「いや、あれはついでだったんだ。そんな感謝される様な事じゃないよ」

 

「【ついで】…?他にも目的があったのか?」

 

一夏の言葉に一誠達は一度顔を見合せ、全員が頷きあったところで2人に向けて1枚の写真を見せた。

 

「俺達はこの男を探している」

 

写真を受け取り、男の顔を見た瞬間…一夏の雰囲気が変わる。まるで全身から炎を吹き出しそうな程の怒りのオーラを身に纏って…

 

「どうやら…知っているみたいだな?」

 

「ああ…!!俺と千冬姉との間に土足で割り込んできた奴だ…!!」

 

握り潰されそうなその写真を一夏から取り上げ懐に仕舞い、一誠は2人に説明を始める。

 

「俺達は知り合いのティーオさんって人からの依頼で、この男を処分しに来たんだ」

 

「処分って……殺すって事ですか?」

 

「ああ、こいつは【転生者】と呼ばれる存在でね」

 

「「転生者?」」

 

「前世の記憶だったり、それにプラスして特殊な力を持った者達の総称だ。彼らは色んな世界に沢山いて…大半は平穏に暮らしているけど、その内の何人かは自分の思うように世界の歴史を狂わせようとする。こいつもその一人さ」

 

(つまり…俺はアイツに歴史を狂わされたのか…!!)

 

「それで、そいつらを取り締まる人達から討伐命令が出てるんだ。先日、そいつのいる家……一夏君の家に向かったら、家は既に売りに出されていて所在が掴めず、ソイツの情報がないかアチコチ探していたんだ」

 

「家が……売られてるッ!?」

 

転生者である男に怒りの炎を燃やす一夏だが、それ以上の衝撃が来る。自分が住む家は既に失われている事に…

 

だから気になった。自分の唯一の味方であり、一人しかいない大事な家族が無事なのか…

 

「じゃ、じゃあ!!千冬姉はッ!?千冬姉は何処にいるんだ!?」

 

「安心しろ、世界各地で目撃情報がある。昨日も見たと投稿があったから生きてるよ。たぶん、君を探しているんだろうな」

 

「そ…そっか…!!」

 

「良かったね、一夏」

 

一誠が話した内容に一夏は安堵した。

 

「今日のところはとりあえず、君達はさっきのテントで休むといい。明日、君達の家族の下まで送ってあげるから」

 

「良いんですか?」

 

「気にしなくていいよ、これも君達を保護した大人の役目だからな」

 

「それにここが何処か分からないでしょ、貴方達?」

 

「そういや…」

 

マリアに言われ朝、ロボットに襲われる前に彼等は森を出て現在地を確認しようとしていたのを思い出す。だが、ロボットのお陰でそれをすっかり忘れていた。

 

「ここは何処なんだ?」

 

「日本の長野県にある【九郎ヶ岳】って場所だ。近くに遺跡みたいなのがあったけど、ヤバイ雰囲気がするから近づくなよ?」

 

そう言って念を押す一誠。だが将来、とある大学の発掘チームが見つけてしまい、新たな伝説が始まるのだが……それはまた、別のお話である。

 

「んじゃ、君達はそろそろ寝てこい。明日は朝早いからな?」

 

「分かりました」

 

「それじゃ、お休みなさい」

 

まだ疲れが抜けきれてなかった一夏と、一誠達に助けられて気が抜けたいちごを眠気が襲い、2人は言われるままにテントへと戻った。

 

「じゃ、お休み…」

 

「………………………………ねぇ一夏、そっちで一緒に寝てもいい?」

 

「………………ふぁッ!?」

 

そのまますぐに寝袋(怪我人用のキングサイズ)に入る一夏だったが、隣のいちご(一人用の寝袋)からの唐突な頼みに変な声を上げてしまう。

 

「お、おまッ!?何言って…!!」

 

「だって……一人だと、施設の時の事を夢に見そうで…」

 

「あ…」

 

慌てて振り返ると、そこには脅えた様な表情をしたいちごがいた。確かに彼も先程、転生者の事を夢に見て魘されていた。だから、それを見た時の心細さや誰か傍にいてくれる安心感もすぐに理解してしまった。

 

「…………しゃーねぇか、好きにしな」

 

「あ……うん♪」

 

なので、彼女の好きにさせる事にした。隣にモゾモゾと入って来るいちごにドキドキしていたら、背中に彼女がピッタリとくっついてきて、更に一夏の心臓が早鐘を打ち始める。

 

「お、おいッ!?さすがにくっつき過ぎじゃ…!!」

 

「スゥ…スゥ…」

 

「早ッ!?」

 

驚いて振り返るも、既にいちごは夢の世界に旅立っていて、表情は幸せな夢を見ているみたいに笑顔だった。

 

(やべぇ…女の子特有の甘い匂いとか、肌の温もりとか背中に当たる双丘の感触とか気になって眠れねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!)

 

だが逆に、一夏は緊張(と興奮)で眠れなくなってしまってしまいそうになったが、それは杞憂ですぐに眠気が襲ってくる。

 

(あ…これは……やっぱ疲れて…………)

 

その眠気に身を任せ、彼も夢の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、外では…

 

「二人のテントに睡眠魔法と防音・気配遮断の結界、設置完了です」

 

アーシアが一夏達が眠るテントを、光の膜で覆っていた。

 

「これでいくら騒いでも、2人が起きる事はないな」

 

それを確認したマリアとクリスと調は、胸元から赤い結晶のペンダントを取り出して、聖詠を唱える。

 

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

「Killiter ichaival tron」

 

「Various shul shagana tron」

 

そうする事で朝の戦闘時に纏っていた戦装束【シンフォギア】を装着する。何故そんな装備をしたのかというと…

 

「アーシア、敵との距離は?」

 

「現在東の上空500m付近…距離約30kmから時速60kmで接近中です。数は4つで音からして、朝の機体と同一と思われます」

 

彼らは探知の魔法を森全体に張り巡らし、再度の敵の襲来に備えていたのだ。そして先程、その網に何かが引っ掛かり警戒を強めていた。

 

「悪いな、俺は一刀羅刹を使っちまってまだ本調子じゃないから…」

 

「後は任せておきなさい」

 

「…あれぐらいなら、楽勝」

 

「オメーはあいつらのお守りをしてな」

 

「皆、いってらっしゃーい♪」

 

メイルの応援を受け、3人が近づいてくる敵へと向かう中、一誠は思考を巡らせる。

 

(あのロボット達の狙いは間違いなく一夏といちごだ。だが、ロボットの送り主は彼等を殺して何の得があるんだ?普通は捕まえて実験台にするか自分の手駒にした方がいい筈だ…だが、あれは躊躇なく殺しにきている……つまり、正義の味方を気取っているか()()()()()()()()()()()()()()って事か…何にしても、俺のような子達を増やさせはしないさ…!!)

 

彼が思考の海に潜って数分後、空に4つの花火が上がった。




いかがでしたか?

次回でプロローグは終わりに……できたらいいな…

では、次回でお会いしましょう。


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そして始まりへ

どうも、疾風の警備員です。

原作前最後のプロローグです。

色々と詰め込みすぎて、後半駆け足気味になってます。

色々とおかしな点があるかと思いますが、それでも良ければどうぞ。


次の日の朝…

 

「うみゅ…もう、朝?……………………え?」

 

「Zzz……Zzz……」

 

テントから射し込む日差しで目が覚めたいちご。そして目の前の事に、寝惚けていたのが一気に覚醒した。

 

(あれッ!?何で一夏の顔が目の前にあるの!?私、背中側で寝てた筈なのにぃ~ッ!?)

 

そう、昨晩一夏の寝袋に入り背中に抱き着くようにして寝ていた彼女だったが、いつの間にか一夏の顔が真っ正面…しかも、抱き合うような形になっていたのだ。まあ、これは単に一夏が寝返りをうっただけなのだが…

 

(なんでッ!?どうしてッ!?何でこうなってるのぉ~ッ!!)

 

だけどテンパっている今の彼女に、そこまでの考えは浮かばないようだ…

 

(でも、何だか落ち着く…………って!?このままじゃ昨日の二の舞だ!?とりあえず起きようッ!!そうすれば落ち着けるはず!!)

 

そうと決めたらいちごはすぐに寝袋から出て、落ち着くために外に出ると…

 

「お、もう起きたのか…おはようさん」

 

「あ、おはようございます!!」

 

そこには一誠がいて、飯盒でご飯を炊きながら野菜を切って大きめの器に盛っていた。

 

「朝御飯はもうすぐだから、そこのポリタンクに貯めてある水で顔を洗っておいで」

 

「分かりました」

 

言われた通りポリタンクの蛇口を捻って、出てくる冷たい水で顔を洗うと恥ずかしさで熱くなってた顔がスッキリとした。

 

「ふぅ~、何とか落ち着いた……あ!!私も手伝います!!」

 

「ん?なら、飯盒のご飯が炊けてるから茶碗によそってくれ。その後で、そこの火を使って玉子焼きを作って貰えるか?」

 

「はぁ~い!!」

 

そこからは彼女も調理に加わりその結果、サラダと玉子焼きだけでなく焼いたベーコンにほうれん草のお浸しまで出来上がり、少し豪華な朝食となった。

 

「中々手慣れてるね…料理が好きなのか?」

 

「いえ、実家がお弁当屋さんを経営してるので」

 

「なるほど…それじゃ一夏君を起こしてきてくれ。ご飯が冷めちゃうからな」

 

「は~い!!」

 

皿を並べ終えたいちごに一誠はそれを頼み、彼女はテントへと向かう。

 

(一夏は私の料理、美味しいって言ってくれるかな♪)

 

「一夏~、起き「う…うう…!!」一夏ッ!?」

 

そんな事を考えながら彼女がテントに入ると、一夏はうめき声をあげながら右手を上に伸ばし、顔には大量の汗を浮かばせて昨夜の様に魘されていた。

 

「大丈夫だよッ!!ここに居るから!!私はここにちゃんと居るから!!」

 

だから彼女も同じ様に、彼の手を両手で包み込みながら声を掛ける。すると一夏はだんだん落ち着いていき、ゆっくりと目を開けた。

 

「あ……俺は…」

 

「また魘されてたの…大丈夫?」

 

「ああ…途中から手が暖かくなって……そっか、いちごが握ってくれてたんだな?」

 

「うん、こんな事しかできないけど…」

 

「何だ何だ?でっけぇ声がしたけど…………なるほどな」

 

そこに先程の声を聞いたクリスがやって来て、2人の姿で大体の状況を察した。

 

「まず織斑は顔洗ってこい。んで星宮はアタシと来な、そろそろ服も着替えねぇと」

 

「は、はい…!!」

 

「分かりました」

 

クリスに続いて2人もテントを出て、一夏はいちごが使ったポリタンクから水を流して顔を洗い、いちごはクリスと別のテントに入る。

 

「おはよう、一夏君」

 

「…おはようございます」

 

「そこに俺の予備だけど、着替えを用意しておいたから着替えておいで。その後で朝御飯にしよう」

 

「はい」

 

一夏は着替えを受け取りテントに戻って、病人服からそれ(駒王学園のジャージ)を着て出るといちごも丁度着替え終わったらしく、ピンクのシャツに白のミニスカートという姿で出てきた。

 

「あ、一夏!!…えっと……似合う?」

 

「お、おう…!!」

 

今までの病人服から、年頃の女の子らしい格好に思わず見とれてしまった一夏は、視線を反らしつつあわてて答えた。

 

「やっぱり、調のがサイズ的にピッタリだったわね」

 

「だな。アタシらのだと結構ダブダブだったからな」

 

「ううッ!?」

 

「……………………それ、私といちごちゃんへの当てつけ?」

 

「ア、アハハ…」

 

クリスとマリアの言葉にいちごがショックを受け、調が2人を睨み付けアーシアは苦笑いする。確かに何処がとは言わないが、2人(クリスとマリア)の服だとブカブカだっただろう。

 

「…いーもん、私のは希少価値だもんステータスだもん…クリス先輩のなんて肩こるし将来垂れるだけだし…」(ぺた~ん)

 

「拗ねたって、無いものは揺れねぇぞ?」(どたぷ~ん)

 

「しょうちした、きさまはきりきざむ」

 

「ハイハイ、朝から殺伐しない。間に立ってるいちごちゃんも怖がっちゃってるわよ?」

 

「アワワワワワ…ッ!!」(ガクブル)

 

殺気を向け合うクリスと調。その間に立たされていたいちごは涙目になってあたふたしていた。そんないちごを見た一夏は…

 

(小動物みたいで可愛い…)

 

なんて事を思っていた。

 

「ほら、飯が冷めるから早く来い」

 

「「(はぁ~い/あいよ)」」

 

そして一誠の言葉でアッサリと喧嘩は終わり、朝食を食べ終わると移動の為に使っていたテントを片す。

 

「この後だけど、まずはいちごちゃんを家に送り、一夏君は……家がないしお姉さんも場所が分からないから、いちごちゃんの家に連れてくるって形にするけどいいかい?」

 

「はい!!」

 

「頼みます」

 

「わかった」

 

そして撤収作業が終わると、一誠はいちごに1つのアイテムを手渡す。

 

「これは?」

 

「【テレポートジェム】っていって、それを割ると一定範囲内のものを使用者が行きたい場所へと転送してくれるものさ」

 

「すごい…こんなの、どうやって…」

 

気になった彼女はシーフ・アイを使うも、やはり情報が解らず首を傾げる。

 

「とりあえず、君の家の近く……なるべく人目につかない場所を思い浮かべてくれ」

 

「え?家の前じゃダメなんですか?」

 

「もう一般の人達が起きてるからね…念には念をってやつさ」

 

「わかりました」

 

この世界に人を転送する技術はまだ確立されておらず、なのにいきなり人が目の前に現れたら注目を浴びてしまう。それはあまり好ましいものではなく、新たに狙われる理由を作りかねない。だからこその対応であった。

 

「…………………………………………えいッ!!」

 

場所を思い浮かべたいちごはそれを地面へと叩きつけて砕き、足下に魔法陣みたいなのが浮かび上がると眩い光に包まれ、彼らの姿は森から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ」

 

「「え?」」

 

光の眩さに目を閉じていた2人。だが、一誠の言葉に目を開けると周りが木ではなく、建物が密集した少し暗い路地にいた。

 

「本当にテレポートしたのかよ…!!」

 

「うん…」

 

その事に一夏は驚き、いちごは少し呆然としてから走り出した。

 

「あ、おいッ!?」

 

一夏は慌てて、他は歩きながらいちごの後を追いかける。そして路地を出た辺りでいちごは立ち止まっていた。

 

「いきなり走り出すなよ「私のいた町だ…」え?本当に?」

 

そこに広がるのは沢山の人で賑わう商店街で、男女関係なく親しそうに話している姿を見るに女尊男卑はこの町では広まっていないようだ。

 

「ここは……平和なんだな…」

 

「もともと地元住民同士の交流が盛んだったから、女尊男卑は広まらなかったの」

 

「そうか…」

 

「本当に…戻ってこれたんだ…!!」

 

町の人達が楽しそうに会話する姿を一夏は羨ましく見る。もし、こんな自分達の住んでた町がこんな感じだったら、自分と千冬姉は平和に暮らせていられたのではないかと…

 

「ほら、そこでボーッと突っ立ってないで、まずは彼女の家に行こう」

 

「「あ、はい!!」」

 

「いちごちゃんは、案内ヨロシク」

 

「はい、こっちです」

 

そこからいちごの水先案内に従い、少し歩いた場所に【なんでも弁当】と書かれたお店があり、店の前の扉には探し人としていちごの写真が乗ったポスターが貼られていた。

 

「あった…!!」

 

「お店も営業してるみたいだな…先ずは俺が入って話してくるから待ってて」

 

そう言って店内に入る一誠。その間、ソワソワして落ち着かないのかドルちゃんを抱き締めるいちご。一夏達はそんな彼女の傍にいる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

一誠side

 

「ごめんくださ~い」

 

店内に入った俺が最初に感じたのは、綺麗な内装と美味しそうな料理の匂いだった。メイルを連れて入ってたらたぶん食べたいって駄々をこねていただろうなぁ…

 

「はぁ~い!!」

 

そして返事と共に店の奥から顔を出したのはうなじ辺りで髪を纏めた女性だった。

 

結構若いな…20代くらいか…彼女の姉かな?

 

「ご注文は?」

 

「いえ、お弁当を頼みたいのではなくて……ここは星宮さんのお宅で間違いないですか?」

 

「ええ…そうですけど?」

 

「実はいちごさんについてなんですが…」

 

「ッ!?娘を…いちごを知ってるんですかッ!?」

 

「うえッ!?お、落ち着いてください!!」(若ッ!?いちごちゃんのお母さん若ッ!?)

 

カウンターを出て俺に詰め寄ってくる女性……いちごちゃんの母親にどうでもいい事で驚きつつも、何とか落ち着かせる。

 

「す、すみません…お見苦しい所を…」

 

「いえ、お母様のお気持ちは解りますから……みんな!!」

 

俺が入口に向かって呼ぶといちごちゃんを除いたメンバーが現れ、最後に一夏君が彼女の手を引こうとしてるのだが…

 

「何立ち止まってるんだよ?」

 

「えっと…どんな顔して出ればいいのかなって…」

 

どうやら久々過ぎて、顔を出しにくくなっているらしい。だけど、お母様の方は声ですぐに分かったらしく口元を手で押さえて涙を流し始めた。

 

「それは出てから考えろ…よ!!」

 

「うひゃあッ!?」

 

業を煮やした一夏君が思い切り彼女を引っ張り、右腕にドルモンを抱えたいちごちゃんを入口に立させた。

 

「あ…えっと…………ただい「いちごッ!!」わわッ!?」

 

「良かった…!!本当に無事で…!!本当に…!!」

 

「お母さん…!!心配かけて…ごめんなさい…!!」

 

「良いのよ…!!こうやって元気な姿を見せてくれたのなら…!!」

 

彼女の姿を見た途端、お母様は走り出して彼女を抱き締めた。

 

うんうん、感動の再会だな!!ちなみにドルモンは抱き締められる寸前にいちごちゃんの腕から脱出し、アーシアの元に戻っている。再会の邪魔をしないようにしたんだろう。ナイス判断だ!!

 

親子の再会が一段落した後、お母様は息子さんのいる学校や旦那さんに連絡を入れる為に奥に1度戻った。

 

「良かったな、いちご」

 

「うん…!!これも、一夏のお陰だよ♪」

 

「いや、俺は…」

 

「謙遜しなくていい。俺達が助けに行った時に間に合ったかといわれると正直微妙だったからな。彼女を助けたのは…間違いなく君だ」

 

「うんうん♪」

 

「えっと…ど、どういたしまして?」

 

どうやら彼は褒められ慣れていないらしい。顔を少し赤くして、頬を掻く姿は年相応に見えた。

 

「すみません、息子達もすぐに帰ってくるそうなので奥でお待ち下さい。色々とお礼もしたいので…」

 

「でしたら、私は少し席を外します。彼のお姉さんにも無事を教えたいので…その後で、こちらに連れてきても構いませんか?」

 

「そういう事でしたら、こちらは喜んで」

 

「では、失礼します」

 

「あ、お兄ちゃん私も行く!!」

 

店を出た後、付いてきたメイルと一緒にスマホの【ツブヤケバー】にある、織斑千冬の最新情報を元に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No side

 

一誠が織斑千冬を探しに出てから数分後、店の中に一人の少年が駆け込んできた。背はいちごより低く、茶髪の活発そうな子だ。名前は【星宮らいち】…小学6年のいちごの弟である。

 

「お母さん!!お姉ちゃん帰ってきたんだって!?」

 

「ええ、助けてくれた人達と一緒に奥にいるわよ♪」

 

母の返答にランドセルを投げ捨て、部屋へと駆け込んでいくらいち。そしてリビングに入ると、先程クセになったのかドルモンを抱き締めてそのモフモフの毛に顔を埋めてウットリしているいちごとジタバタしているドルモン、それを見て苦笑している一夏達がいた。

 

「はあ~…!!気持ちイイ~♪」

 

『アーシア!!助けてッス~!!』

 

「ドルちゃん、頑張ってください♪」

 

『ガビョーン!?』

 

((((南無…))))

 

アーシアに見捨てられ絶望するドルモン。一夏達は手を合わせて見送るしかなかった。だが、そこで彼に救いがやって来た。

 

「お…お姉ちゃ~ん!!」

 

「え、らいち!?」

 

『ッ!!今のうちッス!!』

 

突然飛びついたらいちにいちごは驚き、それで抱きつく力が弛んだ一瞬の隙をついてドルモンは脱出した。

 

「良かったよ~!!本当に無事で!!」

 

「うん…心配させてゴメンね?」

 

泣き出す弟の頭を優しく撫でるいちご。

 

「その子は?」

 

「私の弟のらいちだよ」

 

「あ、星宮らいちです!!今回はお姉ちゃんを助けてくれて、本当にありがとうございます!!」

 

「それは彼に言ってあげなさい。お姉さんを助けた一番の功労者だもの。私達は誘拐された場所から逃げ出したこの子達を保護して連れてきただけよ」

 

「えッ!?」

 

「お兄さん、本当にありがとうございます!!」

 

「あ、いや…別に俺は…」

 

らいちからのお礼に戸惑う一夏。その時、お店に彼が聞きたかった声がした。

 

「おい、本当に一夏がいるんだろうな?」

 

「それに関しては嘘を言ってませんから…」

 

「ッ!?」

 

「あ、一夏ッ!?」

 

それを強化された聴覚で耳にした一夏は立ち上がり、店の方へと走り出す。そして、店内へと繋がる扉を開けるとそこには目付きが鋭い女性とその女性を宥めている一誠がいた。

 

「千冬姉ッ!!」

 

「え…………一夏…!!」

 

その女性は間違いなく彼の姉である【織斑千冬】だった。彼女は一夏の姿を見や否や走り出した彼を抱き締める。

 

「すまない…!!私のせいでお前をこんな辛い目に…!!」

 

「違うッ!!千冬姉は悪くない!!悪いのは全部…!!」

 

「とりあえず奥に行きましょう。ここだとお客様に迷惑になりますから…」

 

「あ、ああ……そうだな」

 

一誠の言葉で店内だった事を思いだし、2人も奥のリビングへと向かう。

 

「一夏、その人があの…」

 

「ああ、俺の姉の千冬姉だ」

 

「皆さん、弟を救っていただき感謝します」

 

「いえ、それよりも関係者が揃ってきたので2人の事について説明したいのですが、よろしいですか?」

 

いちごの父親はまだ時間が掛かるらしく、今のうちに簡単な説明をしておく一誠。もちろん2人の体についても話した。

 

「2人の体がそんな事になっていたなんて…」

 

「すみません、今の技術ではお二人の治療は……」

 

「それでも、普段の生活には問題無いんですよね!?」

 

「はい、体の機能や寿命を含めて問題ありませんでした」

 

「なら良かったです…!!」

 

その診断に全員が安堵する。

 

「では、話はここまでにして今日は子供達が助かったお祝いをしましょう!!織斑さん達も是非参加していってください」

 

「では、お言葉に甘えまして…」

 

いちごの母の誘いを千冬も承諾し、それから料理が出来るまでの間一夏との久し振りの会話に花を咲かせる。

 

「そういや千冬姉、何で家を売ったのさ?」

 

「しばらくお前を探す手伝いをしてくれたドイツで部隊の指導をするのと、お前を探す軍資金にするのと、アイツが住める場所を無くしてやりたかったんだ。旅立つ前に絶縁状を叩きつけた上でな?」

 

「そうだったんだ…それでアイツは…?」

 

「その後は知らんが……おそらく、束の奴が引き取ってるだろう。奴はアイツを可愛がっていたからな」

 

「そっか…」

 

「その資金も尽きかけていた所に、お前が見つかったと彼に教えてもらってな……そうだ、その話をされた瞬間に刀を抜刀して斬りかかったのを謝らないと…」

 

「いや、本当に何してんのさッ!?」

 

「あの時は死ぬかと思ったよ……」

 

その時を思い出して遠い目をする一誠。実際、不意打ちで目にも止まらぬ速さで抜かれた刀をイナバウアーで鼻先スレスレで回避出来たのは、全くの偶然だろう。

 

「本当に申し訳ありませんでした…」

 

「いえ、もう気にしてませんから…!!」

 

「はい、お料理が出来ましたよ~♪」

 

いちごの母が大皿にいろいろな料理を乗せて、いちごと一緒にもどってくる。

 

「わーい!!唐揚げ唐揚げ~♪」

 

「私はエビフライを♪」

 

ゆめとアーシアはすぐさま好物を確保する。そうしないとアグモン達が一気食いして無くなりかねないからだ。

 

『さすがに怒られるから、もうやらないよ~?』

 

「だったらお前は食べる速度も加減しろッ!!」

 

と言いつつ、お皿の料理を一口でどんどん食べ進めていくアグモン。もちろん、クリスから説教された。

 

それからいちごの父親も合流し、抱き締めるといった何回目かの感動の再会をし、お祝いも終盤に差し掛かった時…何気なく点けてたテレビがバラエティから緊急ニュース速報に切り替わった。

 

「なんだ?」

 

『え~、番組の途中ですが内容を変更し、先程各テレビ局に送られてきた…篠ノ之束博士からのメッセージをノーカットでお送りします。』

 

そして再び画面が切り替わり、今度はエプロンドレスに機械のウサミミを着けた赤みがかった紫の髪をした女性が映り、千冬はその姿を見て右手を強く握り締める。

 

「束…!!」

 

「あれが…」

 

『ハロハロ~♪皆のアイドル、束さんだよ~♥️今日は重大発表があるから。あー君、カモン!!』

 

そう言って手招きをする彼女の横に一人の男が現れる。その男を見た途端、一夏と千冬は画面を睨み付けた。

 

『彼は束さんの可愛い弟の【篠ノ之 秋羅】!!実は今日、彼がISを動かしちゃいました~♪』

 

「「「「ええ~ッ!?」」」」

 

その内容に星宮家が驚く。何故ならISは女性にしか動かせないとされてきた。しかし、その常識を破った存在が現れたのだ。驚かない訳がない。

 

『な・の・で♪来年のIS学園に彼を入学させるから!!よろぴくね~♪それじゃ…Ciao♥️』

 

そこでメッセージは終わり、先程のアナウンサーが映り何かを話始めていくが、それは誰の耳にも入らない。何故なら凄まじい怒気が一夏と千冬から放たれて怯えているからだ。そんな中、一誠達は今後の行動を話す。

 

「なるほど、これが転生者の目的だったのか…」

 

「IS学園って女子高みたいなモンだろ?つまりハーレム狙いか……アンのクソ野郎を思い出すな…!!」

 

「でも大々的にテレビに出てしまったのなら、仕事が遣りづらくなるわね…」

 

「…それに、居場所もまだ不明……」

 

「どうしましょう…」

 

『え~、今速報が入りました!!政府は篠ノ之博士の発表を受けまして、全世界で男性のIS適性検査を行うそうです!!詳細につきましては…』

 

そこでアナウンサーが政府の発表を読み上げる。どうやら他にも男性操縦者がいないか探しだすつもりのようだ。

 

「おいイッセー、お前IS動かしてこい。そうすりゃ簡単だろ?」

 

「ムチャ言うなよクリス…この世界に来るときにティーオさんに見てもらったけど、俺には適性無いって知ってるだろ?」

 

「だったらどうすんだよ?」

 

転生者の排除に暗雲が立ち込める中、一夏が一誠の前に立つ。その瞳は決意を固めた様に凛々しく力強い。

 

「その仕事……俺にやらせてくれませんか?」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

その言葉に呆然とする一誠達。

 

「何か手段があるのか?」

 

「いえ……だから、俺がISを動かせたら…ですけど……」

 

「一夏…」

 

可能性は限りなくゼロに近い条件。でも、秋羅を倒す役目は譲りたくないと思う自分がいたのだ。

 

「………………なら、これに触ってみろ」

 

一誠が出したのは一夏達を襲ったロボットから採取したもの。それを見た千冬は怒りを忘れて驚く。

 

「それは……ISコアッ!?どうしてそれを…!?」

 

「一夏君達を襲っていたロボットを破壊したときに残った残骸です。万が一を思って持っていたのですが、やはりコレがコアだったんですね。これが起動出来たらお前に力を含めて託してやる……できなければ…」

 

「きっぱり諦めます」

 

「よし、やってみろ」

 

差し出されたそれに手を伸ばす一夏。だけど動かせなかったらという不安や緊張の為か腕は震え、なかなか前に出せない。

 

(いや、俺なら出来る!!そしてアイツの野望を打ち砕いて、今までの事を100倍にして返してやる!!)

 

その気持ちのままに手を一気に伸ばしてISコアに触れる…………すると、コアが輝き始めた。

 

「これは…!!」

 

「ISコアが……起動してる!?」

 

シーフ・アイでコアの状況を確認するいちご。コアは一夏に反応して起動していたのだ。それを見た一誠は一夏を見て微笑む。

 

「おめでとう一夏君。約束通り君に任務と力を託してあげるよ」

 

「あ…ありがとうございます!!」

 

「おい、いいのかよ?」

 

「ティーオさんには後で連絡を入れるさ。それに狂った世界の歴史は元には戻らない……だったら、彼の頼みに協力するのもやぶさかではないよ」

 

「そうかよ…」

 

「それじゃ先ずは一夏君の機体作りと後ろ楯の為に会社作って…そこの企業代表として登録して……やることは多くなるな…」

 

連絡用の端末を取り出して色々と連絡を始める一誠。そんな中で千冬もある決意を固める。

 

「なら、私は以前から打診のあったIS学園の教師になるとしよう。それでヤツの情報をお前に渡してやる」

 

「いいのか、千冬姉?」

 

「私とて、アイツを懲らしめてやりたいのは同じだからな。これぐらいは姉として協力させてくれ」

 

「…ありがとう、千冬姉」

 

「おーし!!なら、奴とまともに戦える様に徹底的に鍛え上げるぞ!!」

 

「おうッ!!」

 

それから作業は進み、世界初の男性IS操縦者発表から1ヶ月後の12月……IS事業に新規参入したばかりの【グリゴリ社】が、2番目の男性操縦者を発見・企業代表にしたと世間に発表。そこには織斑一夏と星宮いちごの姿があった。




いかがでしたか?

後半につれ雑だな……

とりあえず、次回から原作に入っていきます。そこで他作品のキャラも出します。

では、次回でお会いしましょう。


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原作開始
入・学


どうも、疾風の警備員です。

今回から原作に入っていきます。

さらに他作品から何名か参戦し、一夏といちごの仲間になります。

どんなキャラが出てくるのか気になる人は、本編をどうぞ。


グリゴリ社の2人目の男性操縦者発見発表から月日は経ち、季節は桜の花びらが舞う4月。IS学園では入学式が執り行われていた。

 

IS学園とは、日本の近海に浮かぶ人工島に建設された唯一のIS専門の学校であり、全世界から入学希望が絶えず倍率が20000倍というふざけた数値を持っているエリート校である。

 

そして入学式が終わると普通はHRで終わるが、この学園は通常授業とISの専門授業を同時進行で行うために日数の影響でそのまま授業に入る事になっている。

 

「あ"~……入学初日から授業とかあり得ねぇ…」

 

そんな場所で世界で2番目にISを動かした男、織斑一夏は決められたクラスの席(最後列の窓際)の背もたれに寄りかかって天井を見上げながらその事を愚痴っていた。

 

「仕方ないよ、やる事多いんだし…」

 

それを隣の席に座るいちごが宥める。だけど初日からフルで授業があると聞けば、やはりテンションが下がってしまうものである。だけど、何も悪いことばかりではない。

 

「でも篠ノ之秋羅…だっけ?その人とは別のクラスになれたから良かったじゃない」

 

そう、いちごの言うとおり一夏達は転生者である篠ノ之 秋羅とは別のクラス【1年3組】になっていた。

 

これには2つの理由があり、1つは彼の姉である織斑千冬がIS学園の教師になり転生者がいる【1年1組】の担任となったので、親族を同じ組にしてしまうと贔屓があるかもしれないという教育的判断と、貴重なサンプルである男性操縦者2人を別々のクラスにして、万が一事件に巻き込まれても片方は生き残れる様にするための政治的判断があった。

 

「その点だけは政府に感謝だな。幾ら倒すべき相手とはいえ、あれと授業中ずっと一緒とか気が狂うぜ…」

 

「でも、クラス中の視線は集めてるけどね?」

 

「んなもん無視だ、無視」

 

一夏は体を前に起こし視線を外の景色を向け、自分に突き刺さる数多の視線から気を反らす。だけど、すぐに視線をいちごへと向け直す。

 

「でも本当に良かったのか?お前まで付いて来なくても…」

 

「なに言ってるの?私は一夏のパートナーなんだから♪」

 

一夏は元々、一誠達の援助で千冬と2人だけで決着をつけるつもりだったのだが、何故かいちごも彼を手伝うと言いだし、その結果一夏のサポート役として一緒にIS学園に入学する事になったのだ。

 

「…………ありがとな」

 

「どういたしまして♪」

 

そんないちごに一夏が感謝してると、教室の扉が開いてラベンダー色の髪の女性が入ってきて教壇に立つ。

 

「皆さん、IS学園にご入学おめでとうございます!!私が3組の副担任の【エイミー・クリサンセマム】です。宜しくお願いしますね♪」

 

「「「「「よろしくお願いします」」」」」

 

笑顔で挨拶するエイミーだったが、一夏といちごを含めた5人からしか返事が貰えず、その笑顔も多少引きつったものになっていた。

 

「ア、アハハ……とりあえず、担任の方は職員会議が長引いていますので、先に出席番号順で自己紹介を始めましょうか?皆さんも早く聞きたくてウズウズしてるみたいですし」

 

エイミーの提案で始まる自己紹介。ア行の人から始まり次に一夏の番となった。

 

「では次に…織斑君、お願いしますね?」

 

「えー…グリゴリ社の企業代表で世界で2番目にISを動かした男、織斑一夏です。趣味は料理と鍛練、最近はお菓子作りに嵌まってます。嫌いなのは女尊男卑の人間で、将来の夢は調理師免許を取得して自分の店を持つ事です。ISの事はまだわからない事が多いので皆さんに教えてもらえると助かります。これからよろしくお願いします」

 

よく最初の自己紹介で印象に残るようにド派手な事をやる人がいるが、それでは今後3年間そのキャラでやっていかねばならないし、下手すればイタイ人物認定されてハブられる未来しかない。だから一夏は無難な事を喋る事にした。殆どが女子の中で3年間もハブられるのは、さすがの彼も精神的にキツいのだ。

 

「ありがとうございます。個人的な質問は全員の自己紹介が終わってからか、休み時間などにしてくださいね?では次の人…」

 

一夏の紹介が終わると同時に、エイミーがそう言って次を促す。このまま質問をさせれば次々に手が上がって収拾がつかなくなると思ったからだ。

 

「星宮いちごです。一夏と同じグリゴリ社の企業代表で、趣味は料理と音楽、実家はお弁当屋をやっています。3年間よろしくお願いします」

 

「ありがとうございます。次は「エイミー先生、ゴメンゴメン!!遅くなっちゃった~!!」あ、紺野先生!!」

 

自己紹介は続き、いちごの番が終わると同時に教室に1人の女性が駆け込んできた。腰まで届きそうな黒髪をうなじの部分で赤いリボンで纏めた髪型に、どこか幼さが残る顔で活発そうな女性だ。

 

「会議、やっと終わったんですね?」

 

「うん、警備の事とかで色々と変更点があったから確認に時間が掛かっちゃった」

 

そう理由を告げ、エイミーが降りた教壇に立つ女性は自己紹介を始める。

 

「えー、まだ自己紹介の途中だと思うけど先に話しちゃうね?ボクが君達の担任を勤める【紺野(こんの) 木綿季(ゆうき)】だよ。ヨロシクね♪」

 

「「「「「よろしくお願いします」」」」」

 

担任の挨拶に返事を返すのは先程と同じ5人の声。その状況に木綿季は顔をしかめる。

 

「ん~…今の5人はいいとして皆、挨拶はキチンとやってね?挨拶は礼儀の基本中の基本なんだから。それができない人は社会人になったら相手に無礼者って思われて信用されなくなっちゃうよ?わかったら返事は?」

 

『『『『『は、はい!!』』』』』

 

「そうそう、それでOK♪」

 

木綿季先生の言葉に今度は全員が返事する。それを聞いて彼女はサムズアップした。

 

(な、なんか今の紺野先生…凄い迫力があったね?)

 

(知らないのか?木綿季先生は千冬姉と一緒に国家代表の座を争って……剣だけの千冬姉に同じく剣だけで挑んでほぼ互角に斬り合ってた人だぞ?惜しくも負けたけど、その試合から日本の候補生の間では【絶剣】という二つ名で呼ばれる様になったんだ)

 

(千冬さんと剣で互角ぅッ!?)

 

「ハイそこ!!小声でお話しない!!」

 

「「す、すみません!?」」

 

木綿季先生について話してた一夏といちごだったが、彼女に見つかりすぐに謝る。

 

「それじゃ自己紹介の続きを《キーンコーンカーンコーン》ありゃ?HR終わっちゃった…それじゃ次は授業になるから準備しておいてね?自己紹介できなかった子は放課後にもう一回時間作るし、各人でしてても良いからね」

 

途中で終業のチャイムが鳴り、教師2人は教室を出ていく。するとさすが女子というべきか、部屋が一気に騒がしくなる。

 

「女子の切り替えスゲェ…」

 

「アハハ…」

 

それに唖然とする一夏に苦笑いを浮かべるいちご。だが、2人の周りに人は集まらない。先程と同じく遠巻きに見ているだけだ。一夏の強化された聴覚ではこっちに来ようとしても何故か緊張して無理だとか、男がISを使うなんて生意気なんて声が届く。ただ、否定的な声は教室の外からだけで教室内はどうやって声を掛けようか悩んでいるものが殆どだった。

 

「どうやら君達は、すごい人気者みたいだな?」

 

「ん?」「ほえ?」

 

そんな2人に一人の少女が声を掛けた。黒髪を腰まで伸ばし、切れ長の目で凛とした雰囲気を持つ子だった。

 

「君は確か…」

 

「【十条(じゅうじょう)姫和(ひより)】だ、よろしく頼む」

 

そう言って彼女は右手を差し出してきて、それを一夏はしばし見つめていた。

 

「…?どうかしたのか?」

 

「いや、君は女尊男卑じゃないんだな?」

 

「そういう事か…私は母の教えで自分の目で見たものを信じる様にしているんだ。そして君達は先生にキチンと挨拶していた…だから、悪い人ではないと思ったんだ」

 

「そうか」

 

その理由に納得した一夏は彼女の手を握る。彼女なら信用出来ると。

 

「よろしくな、十条」

 

「こちらこそだ」

 

「んじゃ、お近づきのしるしに…これ、食うか?」

 

そう言って鞄から取り出したのは有名なお菓子会社である海永から発売されてるお菓子、大枝のチョコミント味だ。

 

「そ、それは…大枝の期間限定チョコミント味!?」

 

「俺はチョコミント味が好きなんだけど、誰もこの味の良さを分かってくれないんだよなぁ…」

 

「だってそれ、歯みがき粉みたいな味なんだもん…」

 

「「何を言うッ!!歯みがき粉なんかと一緒にするな!!」」

 

「ウェイッ!?」

 

いちごの呟きに一夏と姫和が同時に怒る。

 

「いいか!?チョコミントの魅力はまずあの清涼感だ!!口に含んだ瞬間にやってくるミントの清涼感は、口だけでなく鼻の中までスーッと真っ白な気分に一新してくれるんだ!!」

 

「そしてその清涼感が、後に来るチョコの香りや味を極限まで味わわせてくれる!!これは正しくベストマッチな組み合わせと私は断言できるぞ!!」

 

「は、ハイィィィィィィィッ!!」

 

そんな風に2人に熱く語られ、涙目になりながらいちごは頷くしかなかった。そしてそんな2人はお互いを見やると、先程とは違う固い握手を交わした。

 

「お前とは、思ってたより仲良くやっていけそうだ。十条」

 

「こちらの台詞だ。それと、私の事は姫和でいい」

 

「なら俺も一夏で良いぜ」

 

今ここに、チョコミント好きによる友情が結ばれた瞬間である。

 

「何やら奇妙な友情が結ばれてますね?」

 

「というか、友情なんでしょうか…?」

 

「「「うん?」」」

 

そこにさらに2人分の声が聞こえ、3人が視線を向けると肩まである黒髪を左側のサイドポニーにして、少しタレ目気味な少女と170㎝はある身長に後頭部に赤いリボンをした黒髪ロングでオッドアイの少女がいた。

 

「貴方達は?」

 

「私は【鹿角(かづの)聖良(せいら)】といいます」

 

「私は【浅間(あさま) (とも)】です」

 

サイドポニーの少女が聖良、オッドアイの少女が智と名乗る。

 

「2人はどうしてこっちに?」

 

「いえ、2人目の男性操縦者がどんな人なのか気になりまして…」

 

「そうしたら、何やら愉快な事を叫んでましたから…思いきって話し掛けてみようと思ったんです」

 

「まぁ…確かに愉快な事だったと思うけど……お?そういやこれで揃ったのか」

 

「「「「揃った?」」」」

 

「さっき先生に挨拶した5人だよ」

 

「「「「あ、そういえば声に覚えが…」」」」

 

4人がそれに気づくと同時に始業のチャイムが鳴り、クラスメイトはすぐに席に戻る。

 

「と、話はまた後でな3人とも!!」

 

「ああ」

 

「失礼しますね」

 

「では、次の休み時間で」

 

こうして出会った3人の少女が、一夏達の頼れる仲間になるのは……ほんの少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、1組の教室では…

 

(ようやく原作が始まった…ここまでは狙い通りに出来損ない(一夏)を始末して、箒や鈴を攻略出来たってのに、まさかここに来て戻ってくるなんてな…………今度こそ、キチンと殺してやる…!!)

 

顔は真顔にしつつも、心の中でこんなドス黒い事を考えている男がいた。一夏によく似た容姿をしつつも目つきが若干鋭かったり、左目下に泣き黒子がある彼は【篠ノ之 秋羅】…篠ノ之束の義弟であり、一夏と千冬の人生を台無しにした転生者だ。

 

(いや、すぐに殺すのも面白くないな……折角だから、俺が活躍するための踏み台にでもなってもらうか!!)

 

「おい…」

 

彼は授業を受けながらそんな事を考える。もちろん、顔には出さずに…

 

(先ずは俺達のクラスで起きる代表決定戦に巻き込んで、そこで俺が華麗にコテンパンに叩きのめしてやろう)

 

「おい…」

 

(そうすれば奴は学園中で恥を晒して、すぐに去っていくさ!!)

 

「呼び掛けに答えんか」(ゴスッ)

 

「いったぁッ!?」

 

そんな彼の意識を現実に引き戻したのは、彼の担任である織斑千冬だ。その手には開かれた教科書があり、先程の痛みはその背表紙で彼の頭を叩いたからだ。

 

「今は授業中だぞ。集中しろ篠ノ之弟」

 

「はい…………チッ…」

 

彼女に聞こえない様に舌打ちする秋羅。だが、千冬の耳にそれは聞こえていた。

 

(ずいぶん生意気になったものだ……しかし、お前はこれから絶望していく事になる。何時までそんな態度でいられるのか見物だな?)

 

そんな彼を横目で見つつ、彼女も心でそう呟いた。

 

こうして始まったのは転生者への復讐劇。彼の野望を悉く打ち砕き、絶望へと追い込む物語の始まりである。




いかがでしたか?

今回から参戦した他作品キャラのは


十条姫和……【刀使ノ巫女】

鹿角聖良……【ラブライブ!サンシャイン!!】

浅間智……【境界線上のホライゾン】

紺野木綿季……【ソードアート・オンライン】

エイミー・クリサンセマム……【GOD EATER3】


となります。

次回はイギリス代表候補生や転生者との接触です。


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接・触

どうも、疾風の警備員です。

スランプから未だに抜け出せず、執筆が遅々としか進まなかった中で、ようやく完成しました。

面白いかどうか解りませんが、良ければどうぞ。


「であるからして、ISを運用する際は国家の承認が必要とされています」

 

休み時間が終わって授業が始まり、今は最初という事でISの基礎についてエイミーが教科書を見ながら説明していた。

 

「織斑君はここまで大丈夫ですか?」

 

「はい、一応基礎は叩き込んできましたから。応用までいかれると少し怪しいですけど…」

 

「分かりました。もし質問があったら遠慮なく言ってくださいね?」

 

「ありがとうございます」

 

時折、ISについては初心者である一夏に確認を取りつつ授業は進み、次の休み時間…

 

「ふぅ…やっぱ面倒な事が多いな、ISは…」

 

「それだけ世界に強く影響してるんだよ」

 

「そうだな、良くも悪くもだけど…」

 

「特に君達男から見れば、ISが巻き起こした風潮は最悪なものだろう」

 

一夏の机の周りには先程の3人が来て、色々と話をしていた。

 

「あ~…これでまだ基礎なんだろ?」

 

「専門知識はまだまだありますよ?整備となれば更に細かい部分まで覚えなくてはいけませんし…実技でも様々な技や技術、マニュアル操作による細かい動きに装備の活用法なんかもありますから…」

 

「…………俺、IS動かした事スッゲー後悔してきた…」

 

「こ~ら、これくらい我慢する!!」

 

聖良の言葉に机に突っ伏す一夏だが、いちごはそれを嗜める様に言う。事実、ISを動かせた事で彼の目的を遂行出来るので、これはその為に必要な対価ともいえた。

 

「そういえば二人は実技はどうなんだ?企業代表だから、実力はある筈だと思うが…」

 

「俺はたぶん……国家代表候補生のトップには食い込めると思うぜ?」

 

「私は元々一夏のサポートで、ISには授業以外乗らないから」

 

その一夏の自己評価の高さもそうだが、姫和達が気になったのはいちごの言葉だった。

 

「?…ISには乗らないのに企業代表なんですか?」

 

そう、企業代表とは強さもそうだが、その企業が作った物を使用する事が前提条件なのだ。彼女の言葉だとIS企業所属なのにその企業のISに乗らないのは矛盾しかない…

 

「そこはヒ・ミ・ツ♪」

 

「「「???」」」

 

智の質問をそう言ってウインクしながら誤魔化すいちご。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「「「「「…?」」」」」

 

そんな5人の中に1人の少女が割って入ってくるが、全員が首を傾げる。先程の自己紹介で紹介はできなくともクラスメイトの顔を覚える事はできる。だが、そこにいる金髪ロールの少女は見覚えがなかった。

 

「誰だアンタ?」

 

「まあッ!?この私の事をご存じない!?入試トップで、イギリスの貴族で代表候補生であるこの【セシリア・オルコット】を!?」

 

一夏の言葉に少女は心底…だが、わざとらしい大袈裟な仕草と大声で反応した。

 

「そりゃ、クラスメイトでもない初対面を知ってるかと言われてもな…」

 

((((((((((うんうん…))))))))))

 

その答えにクラス全員が頷く。

 

「やはり男なんてこの程度ですか…織斑先生の弟というから期待したのがバカみたいですわね…篠ノ乃さんの方がまだマシですわ」

 

「お前ごときの期待に、答えてやる必要が無いからな」

 

この時、一夏はこの女が女尊男卑主義者であると理解し、何の興味も関心も無くなった。

 

「でs「ところで姫和、さっきのお菓子どうだった?」ちょ!?」

 

「ん?…………ああ、美味しかったが元がチョコレートのお菓子だったからかだろうか…ミントの部分が少し弱かったな…」

 

「やっぱりか…やはり王道はアイスだな」

 

「うむ、アレこそがチョコミントの王だろう」

 

「でしたら、今度の休みに皆でアイスが美味しいお店に行きませんか?私、とっておきのお店を知ってますよ」

 

「「そこにチョコミントはあるかッ!?」」

 

「え、ええ……もちろん…!!」

 

「いちごさんはどの味が好きなんですか?」

 

「私は名前の通り、ストロベリー♪♥️」

 

なので一夏が彼女の言葉を遮るようにして全く別の話題を姫和に振り、それを察した彼女も智と一緒にチョコミント談義を始め、聖良もいちごと話し始める。先程から立っているオルコットを蚊帳の外に置いてけぼりにして……

 

「……………………!!」(プルプル)

 

その見事なまでのシカトっぷりに、怒りで拳を震わせるオルコット。

 

「この…!!極東の猿風情が!!私を無視するとは良い度胸ですわね!!」

 

そしてキレたオルコットは怒りのままに叫び出す。

 

「貴方達の様な猿が、高貴な私に声を掛けられただけでもありがたい事なのに、それを無視するなんて……やはり極東は低俗な島国ですわね!!特にそこの男子!!男の癖にISに乗るなんて…ふざけるのも大概になさい!!」

 

勢いのままに言葉を捲し立てるオルコット。だが、彼女の故郷でもあるイギリスも島国であり、ISを生み出したのは彼女が極東という日本である。そして一夏のいる3組は彼に合わせて日本人が多く配置されている。そんな所で他国の代表候補生のこの発言は、最悪のものと言っていい。

 

「フ…私達が極東の猿なら、貴方はその極東の発明で威張っているニワトリですね?」

 

「なッ!?」

 

そんな彼女に最初に反論したのは聖良だった。その瞳はさっきまでの楽しさがあるものではなく、キツく睨み付けるものとなっている。まるで、家族の仇でも見るかのような……

 

「この私が……ニワトリですって!?」

 

「煩いですよ…もう朝は過ぎたんですからコケコッコーと鳴く必要もないのに……ああ、そういえば3歩歩けば必要のない内容は忘れるんでしたね?でしたら貴方はここで学ぶ意味も無いようですし、国にお帰りになったらどうです?」

 

そして口から出るのは、先程のオルコットと同じような暴言の数々。だが、クラスの空気がまるで違う。先程は怒りで重くなっていたが、今では聖良を応援するかのように重さがなくなっている。それにオルコットは顔を真っ赤にした。

 

「あ、貴方ッ!!初対面なのに失礼じゃありませんの!?」

 

「あ、鶏冠にきました?ニワトリだけに」

 

「「「「「「「「「ブフッ!!」」」」」」」」」

 

そんなオルコットへの返しに、クラス中が吹き出す。確かにニワトリ扱いされた後にこの返しは、この場ではギャグとしてウケやすいだろう。

 

「それに初対面なのに失礼?それは先程の貴方の事じゃありませんか?」

 

「うッ!?」

 

「「「「「「「そーだそーだ!!」」」」」」」

 

更に先程の言葉がブーメランし、今度はクラス中が同調して声を上げ始めた。

 

「アレが代表候補生?……だとしたら、イギリスの代表候補生って偉ぶったバカなのね」

 

「そもそも初対面相手に大人げないよね」

 

「あの人、絶対友達いないでしょ?」

 

「いやいや、逆に友達いない自分スゲェ!!とか思ってるんじゃない?」

 

「ま…友達になってほしいと言われても、私達のクラスメイトをバカにするような人はお断りだけどね?」

 

「「「「「「「「ハゲ同!!」」」」」」」」

 

「な…なな…!!」

 

クラスから聞こえるヒソヒソ話がどんどんとオルコットの心に突き刺さっていく。

 

「お……覚えてらっしゃいッ!!!!」

 

そう言って教室を出ていくオルコット。だが、彼女が涙目だったのをクラスは見逃さない。

 

「うわ、涙目で捨て台詞って小悪党っぽい!!」

 

「というか、小悪党だって涙目になんないよ~♪」

 

「もう二度と来ないでほしいわ…!!」

 

(ガラッ)「皆さん、授業を始めますから席に着いてくださーい」

 

そこにエイミーが木綿季と共に教室に入ってきたので、全員が席に戻る。

 

「………………………………………………」

 

そんな中、一夏といちごは聖良の後ろ姿を心配そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~!!まったく何なんですのッ!?」

 

ちなみにオルコットは3組を飛び出してから一度トイレに行き、メイクを直してから教室に向かっていた。その間も先程の事に文句を垂れながら。

 

だからこそ彼女は気づいてなかった。既に時は告げられていたことを……

 

(ガラッ)「だいたい、あのクラスは私を何だと…」

 

「そうだな……私から見れば、授業に遅刻してきた馬鹿者だな」

 

「へ?(ズバァン!!)みぎゃあッ!?」

 

時間を忘れて始業に遅れた彼女は、千冬の出席簿の餌食になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ授業を始めるよー…と、言いたいところだけど…まずはクラスの代表を決めようか!!」

 

「「「「「「「「はい?」」」」」」」」

 

その授業の始め、今回はISの武装に関する説明だったので木綿季が教壇に立っていたのだが、開始早々にそんな事を言い出し、隣でエイミーが頭を抑えた。

 

「木綿季先生……それは最後のHRでも良かったのでは?」

 

「いーや!!今日は入学初日なんだよ!?放課後は皆に有意義に過ごしてほしいじゃん!!」

 

「まぁ……それは確かに…」

 

「てな訳で、今の時間でクラス代表を決めようと思いまーす!!あ、クラス代表ってのは、中学校までにあった学級委員とそんなに変わりはないよ」

 

それを聞くと、全員が嫌そうな顔になる。誰もそんな面倒事を進んで引き受けたくはないようだ…

 

「ただ、年に数回各組のクラス代表が戦って、1位になると【食堂のデザート半年無料パス】とかの豪華な景品が貰えるから……その辺は考慮して選ばないとダメだからね?」

 

だけども後半の景品に目の色が変わる。やはり、いつの時代も女の子は甘いものに目がないらしい。

 

「さあ、我こそはと思う者は挙手!!」

 

「「「「「ハイッ!!織斑君を推薦します!!」」」」」

 

そして代表者選びが始まると同時に、ほぼ全員が一夏を推薦した。

 

「いきなり他力本願ッ!?」

 

「だって織斑君、企業代表だし」

 

「イギリスの代表候補生相手に、シカトできる度胸もあるしね?」

 

「私達、ISにはそんなに乗れてないから操縦に自信ないから…」

 

木綿季にツッコまれるも、クラスの殆どがIS初心者であり一夏のような企業代表や国家代表候補生がクラスにいるのは珍しい事なので、彼に集中するのも不思議ではない。

 

「う~ん…織斑君的にはどう?他推されたけど拒否権はあるからね?」

 

木綿季の言葉に一夏は少し考えて…

 

「別に構わないですよ。企業からも専用機のデータ取りを頼まれていますから。それといちごをサポートに着けても良いですか?」

 

「それくらいなら、全然OKだよ♪」

 

「だったら、やらせてもらいます」

 

いちごをサポートにつける事を条件に彼はそう答えた。だけど本心は…

 

(たぶん奴の事だ、アイツもクラス代表になるだろうから……そこでまず、公の場で一回潰す!!)

 

自身の胸に黒く渦巻く目的を果たす為だった。

 

「じゃあボク達のクラスは織斑君がクラス代表ってことで……皆、いいかな?」

 

「「「「「「「いいとも~♪」」」」」」」

 

こうして、3組の代表は一夏となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―昼休み―

 

「あ~…………勉強つっかれた…」

 

午前中の授業が終わり、学生食堂の前で食券(豚カツ定食 大盛り+チーズケーキ)を買って列に並ぶ一夏。その顔は疲れきった表情をしていた。

 

「そう?私は簡単だったよ」

 

その前にいるいちごは普段と変わらぬ表情で、出された料理(オムライス+いちごパフェ)を受け取っていた。

 

「お前は頭脳面だったんだろうけど、俺は肉体面なんだよ…」

 

「そう言えばそうだったね…アハハハ…」

 

苦笑いするいちごに、一夏も料理を受けとると空いていた席に座る。

 

「早く思いっきり体、動かしてぇなぁ…」

 

「だったら残念だね。しばらく実技はないって♥️」

 

「なん……だと…」(パタリ…)

 

「ほら、そんなに落ち込まないの」

 

「ん…」

 

実技がしばらく無いという事実にテーブルに突っ伏す一夏。その口にスプーンが突っ込まれ、クリームの甘さと苺の甘酸っぱさが口内を満たして疲れきった頭が癒されていった。それはいちごがパフェを分けてくれたものだとすぐに理解できた。

 

「どう?少し元気出た?」

 

「ああ、ありがとな。代わりに…ほら」

 

「わぁ♪あ~ん…」

 

一夏もお礼にチーズケーキを一口分フォークで取り、いちごの顔の前に持っていくと、彼女は頬を綻ばせてそれにパクついた。

 

「んん~!!美味しい~♪」

 

「う~む…これはプロの味だな。後でレシピ聞いてこよう」

 

「ねぇねぇ、そっちのカツも一切れ欲しいな~?」

 

「いいぞ~……ほれ」

 

「あ~ん♪」

 

「代わりにそっちも一口くれよ?」

 

「わかってます、はいど~ぞ♪」

 

「あーん…ん、そっちも旨いな」

 

そんな感じに二人仲良く食事を進めていく。なお、姫和達は昼休みにやりたい事があると言って教室を出た為、2人きりだ。なのでいちごは先程感じた事を一夏に相談することにした。

 

「そういえば、さっきの聖良ちゃんなんだけど…」

 

「………………あの時の目か?」

 

「やっぱり一夏も感じてたんだ?」

 

「ああ、俺はあの目を知っている…」

 

そう言って目を閉じ、その時の情景を思い浮かべる。瞼の裏に映るのは、昔通っていた剣道の道場で師範の娘に襲われて姉である千冬に助け出された時だった。その時に千冬が相手に向けていた目と先程の聖良の目が同じだった。

 

「あれは、大事な人を傷つけた相手を睨む時の目だ」

 

「ということは…聖良ちゃんは昔、誰か大切な人を?」

 

「だからあの金髪ドリルみたいな奴……たぶん女尊男卑主義者とかに良い感情は持ってないんだろう…」

 

それは、似た気持ちを知っている一夏だからこそわかった事だった。だけども彼女のそれは、一夏の一人に対する思いと違い、今の世界に対して敵対することを意味する。

 

今の世の中は、女尊男卑主義者達が全てを牛耳っていると言っても過言ではない。彼女達はISの優位性を理由に好き勝手をやっていて、その被害者は世の男達やISの適性を持たない女性、通称【ゼロ適性】の人達だ。

 

女尊男卑主義者達はそんな人達を、自分達よりも圧倒的下の奴隷と見ている。そして彼女達に逆らえばもれなく冤罪で刑務所行きが待っている為に、ゼロ適性の人達は逆らう事すらできない。このような蛮行が許されてしまう程、ISという存在は今の世界を…そして人を歪めてしまっていた。

 

そんな彼女を心配に思う2人だが、事情も知らないのに勝手に首を突っ込んでしまえば、聖良から反感を買ってしまう可能性もある。故に現段階で2人ができる事は何もなかった。

 

「ま、それについては彼女が話してくれてからにしよう。俺達だけが話し合っていても、それは憶測でしかないんだからな」

 

「うん、そうだね…」

 

2人はそこで話を切り、再び食事を進めようとした時だった…

 

「よお…元気にしてたか?」

 

「「ッ!!」」

 

一夏といちごの耳に、聞きなれない男の声がしたのだ。その声の方を向くと、彼によく似た容姿の男子【篠ノ乃 秋羅】とポニーテールの女子【篠ノ乃 箒】がいて、秋羅は一夏を蔑むように見、いちごには全身を舐め回すような視線を向け、箒は2人を睨み付けていた。

 

その視線にいちごは少し怯えて一夏の右腕に抱きつき、一夏も体を少し前に出して、いちごの視界に秋羅が入らない様にする。

 

「…………誰だ、オマエ?」

 

「オイオイ…元とはいえ、家族の顔も忘れちまったのか?薄情だなぁ…」

 

わざと言う一夏に秋羅は悲しそうな表情をするが、それは表情だけで、目の奥では彼を見下しているのがはっきりとわかった。だからこそ一夏も態度を崩さない。

 

「薄情も何も、ウチは姉と俺しかいなくてね…後は煩悩駄々漏れの幽霊くらいか?おっと、これは幽霊に失礼だったな」

 

幽霊……それは一度死んで甦った転生者に対する彼なりの皮肉であったが、自分を助けてくれた一誠の親友の力を思い浮かべ、あの人達と比較するなど烏滸がましいと思い、すぐに取り消した。

 

「フン、まあいい……お前は精々、俺の踏み台になるんだな?」

 

「ハッ!!どんなに良い踏み台でも、選手が下手くそだったら宝の持ち腐れだぜ?」

 

「貴様ッ!!秋羅に向かって何て口を!!」

 

一夏の煽りにキレた箒はどこからともなく竹刀を取り出し、それを振り下ろしてくる。一夏ではなく、いちご目掛けて…

 

「キャアッ!!」

 

「ちッ!!」

 

―バシィン!!―

 

その事に一夏は素早く反応し、彼女に捕まれてない左腕で庇い、その腕で竹刀の一撃を受け止めた。

 

「くッ!?」

 

「一夏ッ!?」

 

「大丈夫だ…!!」

 

心配するいちごにそう返し、一夏はすぐさま竹刀を左手で掴み取る。

 

「おい…竹刀を振るう相手が違うんじゃないか?」

 

「フン…手元が狂っただけだ」

 

「テメェ…!!」

 

箒の態度に怒りのあまり、竹刀を握り潰してやろうと一夏が力を籠めようとしたら…

 

「そこまでです」

 

「あ?」

 

凛とした声が耳に届き、全員が視線を向けるとそこには智が立っていた。

 

「浅間さん!?」

 

「何だ、貴様は!!」

 

「今、貴方が竹刀を振り下ろした人達の友達です」

 

「フン!!ただの他人が口を出すな!!」

 

「一応言っておきますけど、これ以上は止めた方がよろしいですよ?証拠もありますし」

 

「それで脅しているつもりかッ!!」

 

「警告だ、馬鹿者」(バシィ!!)

 

「ごふッ!?」

 

彼女の言葉に今度はそちらへと竹刀を向ける箒。しかし、すぐ近くまで来ていた千冬に気づかず背後から出席簿の一撃で倒された。

 

「なッ!!何でお前が…!!」

 

「3組の生徒から、お前達が織斑に暴力を振るったと聞いて駆けつけてみれば……これはどういう事だ?」

 

「これは一夏が先に殴りかかってきて!!「篠ノ乃君の言っている事は嘘です。証拠をお見せします」え?」

 

智の言っている事ははったりと思っていたのか、一夏に罪を擦り付けようとする秋羅だったが、彼女の取り出したスマホの画面に先程までの……箒が先に竹刀を振り下ろしたシーンもハッキリと映っていた。

 

「なるほど……篠ノ乃妹は今すぐ生徒指導室に来い。説教の後に罰則を言い渡す」

 

「は、離せ!!私は悪くない!!」

 

「お、おい!!……一夏、覚えてろよ。来週の月曜日にお前をブッ倒してやるからな…!!

 

千冬に引きずられていく箒に、秋羅は追いかけつつも一夏にしか聞こえない声でそう告げると、食堂を出ていった。

 

(今のはどういう意味だ…?)

 

「それより、一夏も保健室に!!」

 

「ええ、竹刀を腕で直に受けてますから骨に異常があるかもしれません」

 

「え?うおッ!?」

 

秋羅の言葉に疑問を抱きつつも、いちごと智によって保健室へと連れていかれる一夏。そして事情を聞いた保険医が慌てて診察し……

 

「君、本当に人間?」

 

「診察早々ヒデェな、おい」

 

その結果、軽い内出血だけで腕には他に何の異常も見られなかった事で、保険医から人間であるかどうか疑われる始末だった。

 

「だっておかしいでしょ!?相手は中学剣道で全国優勝者よ!?その一撃を生身…しかも片腕で受けて何の異常も無しとか!?」

 

「自分、鍛えてますから」

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

事実を口にしたのだが一蹴されてしまい、視線をいちごや智に向けるも2人にすら頷かれてしまった。

 

「まぁ、体が丈夫なのは良いけど無茶はしちゃダメよ?」

 

「分かりました」

 

「なら教室に戻りなさい。もう授業も始まってるしね」

 

時計を見れば既に授業開始から10分過ぎていた。最後に保険医に一礼してから3人は保健室を出て教室までの道を歩く。

 

「にしても助かったよ、浅間」

 

「いえ、食堂で織斑さん達を見かけた時に嫌な予感がしたので…咄嗟にカメラを向けていたのですが、正解でしたね」

 

「嫌な予感?」

 

「はい、私は実家で巫女をしていまして、昔からそういう勘はよく当たるんです」

 

「まさしく巫女のお告げだな」

 

そんな会話をしている間に教室に着き、中に入ると…

 

「あ、織斑君!!……………………君、人間?」

 

「何故エイミー先生にまで…」

 

心配してたのかエイミーが声を掛けるも、一夏の姿を見てそう口にしていた。

 

「そりゃ竹刀で叩かれて、見た目無傷だったら誰だってそう思うよ?」

 

「木綿季先生もかよ…」

 

ガックリ項垂れる一夏に、クラスメイトはクスクスと笑い出す。まあ、目の前で繰り広げられてるのはコントみたいなモノなのでしょうがないが…

 

「とりあえず、軽い内出血だけで他は異常ありませんので」

 

「良かったですよ~…!!」

 

その結果に心底安堵したようにエイミーは息を吐き出す。授業が始まってからも心配で堪らなかったらしい。そんなエイミーに嬉しく思う一夏だったが、木綿季の顔が険しい事に気づく。

 

「どうしたんですか?」

 

「それが……お昼休みの終わり間際に、IS委員会から連絡があってね?」

 

そこで彼は気づく、秋羅が最後に言った言葉の意味を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑君を来週月曜日の1組のクラス代表決定戦に参戦させ、一敗でもしたら学園を退学、研究所送りにするって…」




いかがでしたか?

次回はこの続きから放課後、そしてグリゴリ社での専用機受け取りまでやろうと思ってます。

また遅くなるかもしれませんが、次回でお会いしましょう。


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受・領

どうも、疾風の警備員です。

やべ……今回は長すぎた……

まさか書いてる間に一万文字越えるとは思わなかった…

それでも話は、代表決定戦前っていう…

文も自信ありませんが、良ければどうぞ。


「織斑君を来週月曜日の1組のクラス代表決定戦に参戦させ、一敗でもしたら学園を退学、研究所送りにするって…」

 

「……………………………………………はい?」

 

木綿季から唐突に告げられた内容に、思わず聞き返す一夏。しかし、そうしたくなる程に今の内容は意味不明だったのだ。何故1組のクラス代表を決める戦いに自分が参加して、尚且つ命まで賭けなければならなくなっているのだと…

 

「ちょっと待ってください……意味が解らんのですが…?」

 

「それはボクだって同じだよ。しかも研究所送りになるのは織斑君だけで、篠ノ乃君の方は負けても何も無いそうだし…」

 

「え?何それ…命懸けなの俺だけ?」

 

んな理不尽な…なんて思いながら一夏は頭を抱え、いちごは頭の中で一夏と秋羅の戦闘シミュレーションを始めていた。なお、今のところ100通りのパターンでシミュレートした結果、一夏の勝率は100%だ。

 

「もちろん織斑先生も抗議したんだけど…………『【裏切り者】の言葉に耳を貸す気はない』って…」

 

「あんにゃろう……そういう事か…」

 

秋羅の呟いた言葉の意味を理解した一夏はイラつくも、逆に公衆の面前で倒せる機会が早まったと思えるので、それはそれでいいかと考えを改めた。何故なら彼にとって秋羅をブチのめせるのに変わりはないのだから…

 

「どうせ断る事も出来無さそうですし、こうなったらやってやりますよ」

 

「そう言いますけど、織斑君だけ命懸けなんて…!!」

 

エイミーの言葉にクラスメート全員が心配そうな顔で一夏を見る。

 

「大丈夫ですよエイミー先生、【俺達】に負けはありませんから。な、いちご?」

 

だけど当の一夏はそう余裕を持っていちごに聞くと、彼女も笑顔で答える。

 

「うん、今1856パターンの戦闘シミュレーションをしたけど、私達が負ける要素はなかったよ♪」

 

「「「「「「「「え"ッ!?」」」」」」」」」

 

そんな笑顔のいちごの答えに全員が驚く。1組の代表決定戦に参加の話は今さっき…つい3分程前の話なのに、既にそれだけのシミュレーションを行っていた事にだ。

 

「ちなみに……それってどんな状況で?」

 

「向こうの機体が近距離・中距離・遠距離のどれかから始めて、あらゆる武装ごとの練度にフィールドの広さ、強さが一夏の下・同程度・格上の全ての場合に天候や一夏の体調に機体のコンディション等含めてですけど?」

 

「…………………………うん、そっか!!」

 

そこまで聞いて、木綿季はなら大丈夫だね♪と無理矢理結論づけ、思考を放棄する事にした。

 

「とりあえず授業しませんか?始業のチャイムは鳴ってますし…」

 

「そうだね!!……アハハ…」

 

この後の授業、木綿季はどこか放心したまま行う事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後…

 

「では皆さん、学園内を見学するのは構いませんが、遅くならない内に寮に戻るようにしてくださいね」

 

「「「「「「「はーい!!」」」」」」」

 

「よろしい♪では、解散です」

 

エイミーの挨拶にクラスメート達の気が一気に弛み、教室内が一気に騒がしくなる。その殆どがどんな部活があるかとか、購買や食堂でお喋りしようといったものだ。

 

「さて、一度龍見さん達に連絡するか?」

 

「そうだね、専用機の概要も少し聞いておきたいし…」

 

一夏が一誠達から預かった盗聴防止機能と、万が一の時に武器にもなる携帯【ファイズフォンX】で連絡しようとした時だった。

 

「おい、一夏」

 

「……あ?」

 

教室内に秋羅が箒を引き連れて入って来たのだ。ちなみに箒は本来、罰則により数日の自室謹慎に300を越える反省文を謹慎中に毎日提出する事になるはずだったのだが、IS委員会が篠之乃束の報復を恐れて横槍を入れ、不門にしてしまった為であり、これを受けた千冬は苦虫を噛み潰していた。

 

「ハァ…………なんか用か?これからやらなくちゃいけない事があるんだけど…」

 

「何でこの天才である俺が、踏み台ごときの事情を察しないといけないのさ?」

 

(((((((((ム…!!)))))))))

 

他クラスでそんな事を大声で言う秋羅。その言葉にクラスメート達が秋羅を睨む。

 

「へーへー…いーからさっさと用件を言え。こちとら暇じゃないんだよ」

 

「まあいい……お前、負けたら研究所送りなんだってな?」

 

「それが?」

 

「今ここで俺に向かって土下座して、忠誠を誓えば助けてやらなくもないぜ?」

 

((((((((((はあッ!?))))))))))

 

更に一夏に対しての土下座発言までしだしたのだ。まだ試合すらしてないのに、何を言ってるんだコイツは?と全員が心で突っ込む。

 

「束姉さんに頼めば、それくらい楽勝だからね。それに俺は束姉さんのところでISをかなり動かしてたんだぜ?どーせ1回か2回しか乗ってないお前が、俺に勝てる可能性があるとは思えないしな?」

 

そう煽る様に言ってくる秋羅。しかし、当の一夏は…

 

「ふーん…」(ホジホジ)

 

まったく気にせず、耳をほじっていた。

 

(ピキッ)「なあ、3組の皆だって彼が俺にボコボコに負ける姿なんて見たくないだろ?」

 

その態度に青筋を額に浮かべながらも、そう言ってとびっきりの笑顔をクラス中に向ける。それは普通の女性達が見れば、簡単に堕ちてしまう程の笑顔だった…

 

「アナタ何を言ってるの?織斑君なら勝てるに決まってるじゃない!!」

 

「え?」

 

が、3組の女子達には通用しなかった。

 

「そーよそーよ!!織斑君の方が絶対強そうだし!!」

 

「戦いもせずに勝った気にならないでほしいわね」

 

「あんな事言うなんて…もしかして勝てる自信ないとか?」

 

「あり得る~!!弱い犬ほどよく吠える的な?」

 

「ようは、姉の七光りって事よ」

 

「「「「「「「「「それだ!!」」」」」」」」」

 

まさしく言いたい放題の3組メンバーに顔を赤くして怒りを堪えている箒は、再び何処からか出した竹刀を震える手で握りしめるが、智がスマホを構えていたのでその怒りを必死に抑え込んでいた。

 

「え?…なんで効果が…」

 

「用が終わったならさっさと帰れ。ほらhouse!!」

 

「く…!!分かったよ、なら試合で不様に負かしてやる」

 

捨て台詞を吐いて教室を出ていく2人。だけど一夏はあることに疑問を持った。

 

(秋羅の奴、何を動揺してたんだ?それに効果?……龍見さんに聞く事が増えたな…)

 

去っていく2人を視界の端に捉えつつ、秋羅の呟いた言葉を気にしていたら、彼の前に姫和が立つ。その目はまるで、これから戦場に出る兵士の様に鋭くなっている。

 

「一夏、今から少し……時間はあるか?」

 

「ん?まあ、急ぎの用事はねぇけど…」

 

「なら、付いてきてほしい」

 

そう言って歩き始める姫和に首を傾げながら、一夏は近くにいたいちごと聖良、智を引き連れで彼女の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうなっている……なんでニコポが通じないんだ!?今まで確実に女の子を虜にしてきたのに…!!)

 

その頃、秋羅は箒と別れて廊下を歩きつつ、先程起きた事に苛立っていた。彼が持つ特典の1つ【ニコポ】を3組の女子に使ったのに、今までと違って効果が無かったからだ。

 

ここで彼について簡単に説明しよう。彼はとある世界で落雷が直撃して死亡、しかし暇をもて余していたとある神によって幾つかの特典を貰い、このインフィニット・ストラトスの世界に転生する事になった。

 

転生先の名を聞いた彼はその場で大喜び、どんな特典が欲しいかを告げた。その内容が…

 

①:原作一夏の立場

 

②:専用機に白式

 

③:最強の肉体と最高の頭脳

 

④:ニコポとナデポ

 

以上、上記の4つになる。しかし、彼はこの選択時で既にあるミスをしていた。だが、彼はそれに未だ気づいていない。

 

(まあいい…だったら()()を実行するだけさ)

 

そんな彼はとある教室の扉を開ける。顔では満面の、心では邪悪な笑みを浮かべながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏達が姫和に案内されて着いた場所は、学園から少し離れた所にある道場みたいな建物だった。

 

「ここは?」

 

「少し昔まで【剣術部】が使っていた道場だ。しかし、部員不足でIS学園開校時から2年で廃部となったらしい」

 

「じゃあ、部活を立ち上げるから入ってほしいって事?」

 

「いや…」

 

いちごの問いを否定しつつ中に入って行く姫和。それに従って4人も中に入ると、姫和があるものを一夏に投げ渡してきたので受けとると、それは木刀であり姫和も同じく木刀を持って構えていた。

 

「一夏、私と勝負してくれ」

 

「………………………………一応、理由を聞いていいか?」

 

「来週の試合、お前は命懸けの試合になる。なのにお前はやたらと自信があるような態度をしていた…だが、私はお前に万が一があったらと思うと恐くてな…折角できたチョコミント仲間を失ったらと思うと不安なんだ…だから勝負してほしい。お前にこの不安を吹き飛ばしてほしいんだ」

 

そう語る姫和の手は僅かに震えていた。まるで、大切なものを失う事を恐がるように…

 

「……わかった、受けて立とう」

 

だから一夏も、彼女の申し出を受けた。その不安を吹き飛ばす為に。

 

「すまない…」

 

「気にするな」

 

「では審判は私、浅間 智が引き受けます」

 

木刀を構える一夏に智が2人の間に立ち、いちごと聖良は端によって試合を見守る。

 

「勝敗は相手に一撃を入れるか降参する事。よろしいですね?」

 

「「ああ…!!」」

 

「それでは…………………………始めッ!!」

 

―バシ!!バシィン!!―

 

智が開始の合図をするとほぼ同時に、2人は互いの距離を一気に詰めて木刀をぶつけ合いながらすれ違い、そこから素早く反転し再度木刀をぶつけてつばぜり合う。

 

「なるほど…!!その自信は伊達ではなかったか!!」

 

「姫和こそ…やるじゃねえか!!」

 

互いを押し合うようにし、一夏は距離を取ろうとするが姫和はすぐさま接近、美しく素早い太刀筋で怒濤のように攻め立てる。

 

「速い…!!」

 

「でも、一夏なら問題ないよ」

 

その攻勢に驚く聖良だが、いちごの言うとおり強化された動体視力で一夏は姫和の動きを見切ってかわし、受け流し、弾いていく。

 

(どういう事だ…!!動き出しは私より後なのに、剣筋を読まれてるみたいに防がれる…!?)

 

「この動き…確か【鹿島新當流】だったか?」

 

「ッ!!流派まで言い当てられるとは…」

 

「剣にはある程度、詳しくてね」

 

「ならばッ!!」

 

姫和は攻撃を止め、一夏から距離を取ると少し腰を落とし剣先を正面に向けつつ腕を引いていく。所謂【突き】を繰り出す前の構えだが、それでも射程外でその構えを取るのを、一夏は理解できなかった。

 

(何をやる気だ…?)

 

そう疑問に思った瞬間だった…姫和が一夏のすぐ目の前に現れたのは。

 

「な…!?」

 

「ハアッ!!」

 

そこから繰り出される神速のごとき突きを、身をよじる事でギリギリ回避する。

 

「…!!あっぶね…」

 

(まさか初見で【一の太刀(ひとつのたち)】を避けるとは…!!)

 

攻撃が回避された事に表情は崩さずも、内心で驚く姫和。だが、それは一夏も同じだった。

 

(なんだ今の技…!?俺の動体視力でも捉えきれなかった…!!)

 

一夏の動体視力は体を改造された事でかなり強化されており、最高速度で走るリニアに書かれた一文字を読み取れる程だ。しかし、そんな彼の動体視力をもってしても、今の突きを捉えきる事はできなかった。しかし、姫和自身もかなりの力を消耗するのか、呼吸が乱れている。

 

「こんなかくし球があったのか…」

 

「長い時間を掛けて研鑽した……私の十八番だ!!」

 

再び構え、姫和は一夏へと攻勢に入る。先程みたく連撃を行うが、消耗した体ではスピードもパワーも格段に落ちていた。

 

「オラッ!!」

 

「しま…!!」

 

なので一夏も簡単に捉え、彼女の剣を上に打ち上げた。そしてがら空きになった懐に一撃を入れようとし……

 

「させんッ!!」

 

―バギィン!!―

 

「なッ!?」

 

たが、姫和の回し蹴りによって弾かれてしまった。

 

「ち…【タイ捨流】か!!」

 

タイ捨流とは剣だけでなく、肉体を使った打撃技等も織り混ぜて戦う流派であり、ISバトルが盛んな現代ではかなり実戦向きの流派でも知られている。

 

「ああ…ISバトルで剣一本の勝負をするのは無謀と言われ、故郷にいる仲間に教わったものだ。まだまだ未熟だが…!!」

 

彼女は木刀を右手に短く持つと、拳や蹴りを交えた連撃を行ってくる。動きはまだ拙いが、元々彼女の素早い動きと相まって反撃する隙を与えない。

 

(攻撃はまだ読める…このまま捌いて、体力が切れた隙を狙う!!)

 

対する一夏も防御に専念し、彼女の攻撃を防いでいく。

 

「この…!!」

 

一夏の狙いが分かった姫和は、一度体勢を立て直すために彼の顔目掛けて上段回し蹴りを放つ。無論、当てる目的ではなく一夏を下げさせる事が狙いだ。

 

(この程d……いいッ!?)

 

それを上体を反らす事で避けようとした一夏だったが、蹴りが当たる直前、視界に()()()()が見えて思わず動きを止めてしまった。

 

―ドゴォッ!!―

 

「ぶぼらッ!?」

 

「「「「え…?」」」」

 

その為、彼女の回し蹴りをまともに喰らってしまった。そのままその場に倒れる一夏に、4人は呆然とするしかなかった。

 

「えっと…………勝者、十条姫和!!」

 

そこからいち早く立ち直った智が決着を告げる。だが、姫和は勝てた事に納得できず、すぐさま彼に詰め寄り問い質した。

 

「いっ痛ぅ~…!!」

 

「一夏、何故避けなかった…?」

 

拍子抜けな終わり方に、姫和は声に怒気を含めて言うが…

 

「お、おおおおおお前なぁッ!?何やってんだよッ!?」

 

「え?」

 

逆に物凄く慌てた感じに喋る一夏に、彼女は不思議に思っていると…

 

「そんな格好で蹴りなんてするんじゃありません!!女の子なんだから、恥じらいを持ちなさい!!」

 

「いや…なんで私が怒られてるんだ?」

 

一夏の説教に困惑する姫和。そこにいちごがやって来て、一夏をジト目で見る。

 

「一夏、何色だったの?」

 

「へ?薄い黄緑………………はッ!?」

 

「?………………ッ!!!!」

 

彼女の問いに動揺してたのか、一夏は素直に答えるもすぐにしまったというような顔をする。その態度と先程の答えで、一夏が動揺した理由を理解した姫和は、顔を赤らめながら慌ててスカートを押さえた。

 

「あ~……そういう事だったんですか…」

 

「織斑君は初心なんですね?」

 

彼女の仕草で聖良達も理解する。そう、一夏は姫和の蹴りを避ける時、偶然にも彼女のスカートの中を見てしまったのだ。そういうのに免疫がない一夏はそれで完全にテンパってしまい、攻撃を避けられなかったのだ。

 

「そうかそうか…………つまり、お前は私の下着を見たんだな…!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!?これは偶然だ!!わざとじゃない!!」

 

「十条さん、落ち着いて落ち着いて!!」

 

下着を見られた恥辱に、体を震わせながら木刀を強く握りしめる姫和。その気迫に一夏は後ずさり、智が姫和を宥める。

 

「そもそも、姫和さんがちゃんと準備しておけば良かったんですよ?スパッツを履くとか…」

 

「うぐ…!!確かに…」

 

だが、聖良からの的確な指摘に姫和も反論できなくなる。

 

「なので今回は両成敗ということにしましょう。織斑君もいいですか?」

 

「まぁ、見ちまった俺も悪いからな…ゴメン」

 

「私も準備不足だった…すまない…だが、見たものは忘れろ!!いいなッ!?」

 

「サー!!イエッサー!?」

 

「はい、じゃあこの件はこれで終了です。そろそろ夕食の時間ですし、私達は先に席を確保しておくので織斑君は治療してから来てくださいね」

 

互いが謝ったのを確認してから、聖良と智が姫和を連れて道場を出ていき、一夏は一緒に残ったいちごに治療してもらっていた。

 

「まったく、女の子の下着を見て動けなくなっちゃうなんて…」

 

「仕方ないだろ?俺はそういうのに耐性無いんだから…」

 

「でも、ちょっとラッキーとか思ったでしょ?」

 

「う…!!それは…」

 

「一夏のムッツリスケベ」

 

「ぐふ…!?」

 

彼女の一言にノックアウトする一夏。その後の夕食では、聖良達によって機嫌を直した姫和とも会話しつつ食事を取っていると、エイミーが現れて一夏が今日から寮暮らしなのと、相部屋がいちごであると伝えて鍵を渡してきたのを受け取り、片付けのために姫和達に挨拶して先に寮の部屋に向かった。

 

「やっぱりいちごと相部屋だったか」

 

「同じ企業の者同士だからね」

 

そして部屋に着くと、鍵を開けて物音を立てずに部屋に入り、いちごがシーフ・アイを使って部屋中を見渡し、紙に何かを書いていく。

 

その指示通りに一夏が動き、そこを調べてあるものを発見していく…

 

そして10分程の時間で見つけた50個ある物全てをテーブルにゆっくりと並べていく。それは巧妙に隠されていた盗聴機だった。

 

(よくもまあ、これだけ仕掛けたね?)

 

(おまけに風呂やトイレまでとか、プライベートは無しかよ…)

 

盗聴相手に聞こえないように筆談しつつ、その量に辟易しながらそれらをテレビのスピーカー前に並べていく。

 

(後は音量を最大にしてタイマーを設定してっと…………これでよし!!)

 

(んじゃ、俺は散歩にでも行ってくるよ)

 

(私はお風呂行ってくるね♪)

 

最後にそう書いて2人は部屋を出ていく。一夏は途中飲み物を買って中庭に出ると、近くにあったベンチに座る。

 

「ふぅ…新しい友達にムカつくイギリス女、秋羅のヤローと腰巾着との接触からの命懸けバトル宣言に姫和のパ……おっと忘れないと…とにかく初日から色々あったな……」

 

「なんだ、お前もいたのか?」

 

「ん?」

 

物思いに耽っていたら声をかけられ、視線を向けると姫和がいた。

 

「ああ、色々とあったからな」

 

「確かにな…隣、いいか?」

 

「どうぞ」

 

聞いてきた彼女にそう答えて、隣に座ってくる。

 

「さっきはすまなかったな…痛くはなかったか?」

 

「これくらい大丈夫だよ」

 

「そうか……」

 

そこで会話が途切れる。このままでは気まずいと思い、一夏が話し掛けようとした時、先に彼女が話し出す。

 

「一夏、お前は何故剣を振るう?」

 

「え…?」

 

唐突に投げかけられた質問に、一瞬戸惑う。

 

「いや、何でもn「復讐だ」…え?」

 

彼女はそれをなかった事にしようと思ったのか、何でもないと言おうとした所に被せて一夏は理由を告げる。

 

「俺が今、剣を振るうのは復讐の為、それだけだ」

 

「…………何があったんだ?」

 

「悪いが、そこまではまだ話せない」

 

「そうか…」

 

確かに彼女とは仲良くなれた。だが、心の中を吐露できるほど一夏は彼女を信頼しきれなかった。過去の経験が、他人を簡単に信用できなくさせるほど、未だ一夏の心に深く傷を残しているのだ。

 

「ならもし…もしもだ?それが絶対に叶わない事になったら…お前はどうする?」

 

そんな中、姫和が何か思い詰めたみたいに質問する。まるで一夏の回答に何かを見出だしたいみたいに…

 

「次の目的を見つける」

 

「は…?」

 

だから彼は真面目に答えたのだが、予想外だったのか姫和は頭に疑問符を浮かべている。

 

「お前はその目標を諦めるのか?」

 

「そうじゃない…そもそも目標なんて一過性のものだ。1つの目標を達成したら更に上の、失敗したらそれに近づく為のまた新しい目標が出来るだけ…」

 

「新しい目標……」

 

「というか、なんでそんな話を?」

 

世間話にしては少し重たい内容に、彼が少し疑問に思っていると…

 

「私の目標は……もう、叶わないかもしれないからだ…」

 

そう、寂しそうに呟いた。

 

「私の目標は【剣で師匠である母を越える事】だ。その為に色々鍛えてきたし、技も磨いてきた。お前に放ったあの突きはまさしく切り札だったんだが…まだまだ未熟だったみたいだ」

 

「いや、アレは結構ギリギリだったぞ?」

 

「そしてそれなりに自信がついて、一度母に勝負を挑もうと思った日に……病院から母が事故に合って運び込まれたと連絡があった…」

 

「………………」

 

「道路にボールを拾いに飛び出した子供に、車が迫っているのを見て咄嗟に庇ったそうだ。子供は無事だったんだが、母は頭を強く地面に打ちつけて、もう一年も目を覚ましていない…」

 

「そうか…」

 

悲しさと寂しさが混ざった彼女の声に、一夏も簡単に掛ける言葉が見つからない。そもそも、彼には親との記憶が殆ど無いので彼女の気持ちを完全に理解する事ができなかった。

 

「すまない…現代の医学では目を覚まさせる事は不可能と言われていて、少し心にきていたらしい……聞いてもらえて少し楽になった」

 

「気にしなくていい……お前の目標、叶うといいな?」

 

「ありがとう、私はそろそろ戻る」

 

「おう、また明日な」

 

「ああ」

 

ベンチから立ち上がり去っていく彼女の後ろ姿を眺める。その背中には、やはり悲しさと寂しさの雰囲気が見てとれた。

 

(事故による昏睡状態……もしかしたら…)

 

そんな彼女の何か力になれないかと思った一夏は、ある人に連絡を入れるのだった。

 

同時刻、保健室に2人の生徒が駆け込んできた。保健医によれば、駆け込んだ1人が音楽を聞こうとしてヘッドホンを着け、曲を流そうとしたらボリュームがMAXだったらしく、鼓膜にモロに響いて卒倒したらしく、もう1人がそれに気づいて運んだそうな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、最初の休日…

 

この日は土曜日で学校は休日となり、グリゴリ社で専用機受け取りと最終調整の為、一夏といちごは外泊届けを出しに行こうとしていた。

 

「書き終わったか?」

 

「うん、終わったよ~」

 

「んじゃ、エイミー先生か木綿季先生に渡しに行くか」

 

外泊届けを持ち、担任がいるであろう職員室へと歩いていると、姫和と聖良に出くわした。

 

「よっ」

 

「2人とも、おはよう」

 

「ああ、おはよう」

 

「おはようございます、お2人はこれからお出掛けですか?」

 

「所属している企業に、専用機を受け取る為にな」

 

「良かったら、2人も来る?」

 

「フム……一夏達の所属している企業か…少し気になるな…」

 

「今日は特に予定も無かったですし、ご一緒しても?」

 

「おう」

 

いちごの提案で職員室に行き、そこにいた木綿季に一夏といちごは外泊届けを、姫和と聖良はその場で外出届けを貰い書いて提出した。

 

「うん、特に記入ミスもないし…それじゃ4人とも、気をつけて行ってきてね?」

 

「「「「はい!!」」」」

 

木綿季から許可を貰い、揃って学園を出てモノレールに乗り込む。そこでグリゴリ社がどういう所か、一夏といちごが2人に質問されていた。

 

「グリゴリ社は俺達の共通の知人が経営してる会社なんだ」

 

「社内も女尊男卑が無くて雰囲気もアットホームな感じで、スッゴくいいところだよ♪」

 

「女尊男卑が無いとは…珍しいな?」

 

「そういう輩を徹底排除してんだよ。そういう奴等は仕事の邪魔にしかならないからな」

 

「ISの適性も重視しない能力主義だから、皆やりがいを持ってるの」

 

「それはいい環境ですね」

 

そうこうしている間に駅にたどり着き、そこからバスを使い30分程の所にある、大きな敷地面積を持つビルの前に来た。ここがグリゴリ社の本社ビルである。

 

「ここだよ~♪」

 

「「でか……」」

 

その圧倒的な広さの敷地に姫和達は驚きつつ、正門を潜りビルの中に入ると、そこにはたくさんの社員が忙しそうに行き交い、空間投影スクリーンにはグリゴリ社のPR映像が流れている。建物内も綺麗に清掃されておりガラスもくもり1つ無かった。

 

「スゴい…」

 

「ええ…それしか言えません…」

 

「でしょ?」

 

2人がグリゴリ社に完全に圧倒されていたら…

 

「ほらほら~!!こっちこっち~♪」

 

「待て~!!」

 

「お2人とも!!社内を走り回ってはいけません~…」

 

「「?」」

 

ロビーを小学校低学年くらいの子供2人が社員達の間を走り回り、その後をアタフタしながら追いかけている高校生くらいの女性がいた。

 

「アハハハハハ!!……?あ、いち姉ちゃんだ!!」

 

「え、ホントだ!!一兄ちゃんもいる!!」

 

「ハァ……ハァ……ほえ?」

 

その子達は一夏達に気づくとまっすぐに向かい、勢いよく抱きついた。

 

「おっと…元気そうだな、響一?」

 

「ルエちゃんも、いい子にしてた?」

 

「「うん!!」」

 

「もぉ~…社内を走り回ってる良い子なんて、聞いたことありませんよ~…」

 

「ハハ…いろはもお疲れ様?」

 

「ありがとうございます、一夏様」

 

「一夏、その子達は?」

 

「おっと、そうだったな…じゃあ2人とも、お姉さん達に元気に挨拶しような?」

 

「「はーい!!」」

 

一夏に言われ、子ども達が姫和達の方を向き、自己紹介を始める。

 

「【龍見 響一】!!小学校1年生です!!」

 

「【御堂 ルエ】です!!キョーイチと同じ小学校1年生です!!」

 

「はい、良くできました♪」

 

「「えへへ~♪」」

 

上手に自己紹介できた2人の頭をいちごが撫でると、嬉しそうに笑う。そして、2人を追いかけていたピンク色の髪をうなじで纏めた少女も自己紹介を始める。

 

「初めまして、私はグリゴリ社で作られた最新型の生体ロボットである【自動人形(オートスコアラー)】…型式番号(Gurigori) (Alchemic) (Technology)ーX168…個体名称【いろは】と申します」

 

「「ロボットぉッ!?」」

 

その自己紹介に2人が再び驚く。彼女の動きや表情は普通の人間がするものと遜色無いからだ。

 

「はい、その証拠に…」

 

いろはが服の袖を捲ると、手首や肘が人間とは違う球体関節になっていて、まさしくロボットである事を裏づけていた。

 

「本当にロボットなんですね…」

 

「私はもう驚き疲れたぞ…」

 

「悪いけどいろは、龍見さん達に連絡を取ってくれないか?」

 

「はい、少々お待ちを…」

 

一夏の頼みに、いろははスマホを取り出して操作し……ようとしたら、そこで動きが止まった。どうしたのかと姫和達が不思議がっていると……

 

「………………あのぅ~、コレってどうやって使えばいいんでしたっけ?」

 

「「だあ~ッ!?」」

 

まさかの答えにずっこける。実は彼女、ロボットなのにスマホの操作が大の苦手で、通話1つまともに出来ないのだ。これでは最新型と言われても信じる事は出来ないだろう…

 

「あ~……じゃあ、響一を頼む。俺が連絡するからさ?」

 

「すみません~…」

 

抱きついていた響一をいろはに預け、一夏が連絡を入れてから数分後、彼等の前に1人の女性がやって来た。一目見て茶髪のショートヘアで活発そうな印象を持てる。

 

「お待たせ~!!2人とも久しぶりだね!!」

 

「お久し振りです、響鬼さん」

 

「うん!!でも一夏君、最後のは余計だからね?」

 

「何故わかった…」

 

「師匠を嘗めたらダメだよ?」

 

「アテッ!!」

 

そんな文章にしなければ分からないようなボケとツッコミをしつつ、響鬼?と呼ばれた女性は一夏にチョップを喰らわせた。

 

「ところでそっちの子達は、2人のお友達?」

 

「あ、はい。向こうで知り合った十条姫和と鹿角聖良です」

 

「「初めまして」」

 

「初めまして、私はここに勤めている【龍見 響】です。今日は楽しんでいってね♪」

 

笑顔で2人に話し掛ける響…だけど、それが終わった途端に響一とルエの後ろ襟を掴んだ。

 

「え?か、母ちゃん?」

 

「叔母さん?」

 

それに訳が分からない2人は響を見るが、その顔は笑顔なれども般若のような迫力を持っていた。

 

「2人はこれから私のお説教タイムだよ……勝手に社内を走り回っちゃダメっていつも言ってるでしょッ!!!!」

 

「「ひぃ!?ご…ゴメンなさ~い!!」」

 

「今回は謝ってもダメ!!さあ、向こうでみっちりお説教してあげるから!!あ、いろはちゃんは皆を一誠の所に連れていってあげて。たぶん格納庫で待ってるはずだから」

 

「「助けて!!兄ちゃん、姉ちゃん!!」」

 

「畏まりました、響様。では皆様、こちらへどうぞ」

 

そう告げて、響一とルエを脇に抱えて去っていく響。全員でそれに苦笑しつつ、いろはの案内で格納庫へと向かい、そこの扉を開けると、茶髪の男性が一夏達を出迎えた。

 

「いらっしゃい、皆。いろはもご苦労様」

 

「はい、一誠様」

 

「まずは自己紹介かな?俺は龍見 一誠。この会社の副社長だ」

 

「「副社長ッ!?」」

 

彼の自己紹介に姫和達はまたも驚く。見た目20代前半っぽい男性が、この大企業の副社長なんて言われれば、驚きしかないだろう。

 

「一誠さん、俺の機体は?」

 

「安心しろ、ちゃんと完成してるよ」

 

そう言って手元のレバーを下げると背後の扉が開き、中にライトが射してそこにあるものを露にする。

 

見た目は水色と紫色を基調とし、ボディスーツらしきものの所々に網目模様があり、銀色の西洋風の鎧や兜みたいなパーツで覆われている一夏の身長と同じくらいの大きさの人型が鎮座していた。

 

「これが?」

 

「そう、グリゴリ社の技術でISを一般成人サイズまで小型化しつつも、従来機を遥かに凌ぐ高出力を持つ超汎用型2・5世代機であり、お前の専用機……その名も【GRIDMAN】だ」

 

「これが俺の……【俺達】の機体…!!」

 

期待を込めてGRIDMANを見つめる一夏。それに答えるかの如く、GRIDMANもライトの光で輝くのだった。




いかがでしたか?

今回の仮面ライダージオウは最高だった!!

あそこでアギトの挿入歌とか燃えないわけないだろ!!

しかも次回は響鬼かよッ!!Blu-ray集めてる時に放送とは…やるな!!

次回は、セシリア戦の終わりまでやろうと考えています。

では、次回でお会いしましょう。


できれば感想もお願いします。執筆スピードが上がるかもしれませんので…


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初・陣

どうも、疾風の警備員です。

またまた遅くなりました…スランプが中々抜け出せない…

コレが令和になって最初の投稿です。よければどうぞ。


「さあ、初期化(フィッティング)最適化(パーソナライズ)を初めようか?」

 

「龍見さん…それ、セントさんのセリフじゃ…」

 

「……ちょっと言ってみたかっただけだ…」

 

そんなネタ会話をしつつ、一誠は端末を操作してGRIDMANを待機形態である白に金の縁取りが特徴のブレスレットに変え、一夏に手渡す。

 

「これが待機形態の【プライマル・アクセプター】だ。失くすなよ?」

 

「はい!!」

 

一夏はそれを受け取り、左腕に当てるとバンドが伸びて固定される。

 

「それを装着してれば、自動で初期化と最適化が行われる。30分程で終わるから、その後に展開するとすぐに一次移行(ファースト・シフト)が起こるぞ」

 

「んじゃ、それまでどうすれば?」

 

そのままで作業が終わってしまうなら、完全に手持ちぶさたになると思い、一誠に尋ねると彼は少し考えてから…

 

「せっかくお前達の友達が来てるんだし……社内を案内しつつ、ついでにウチが開発した未発表のISでも見てもらおうかな?」

 

「「ええッ!?」」

 

その提案に姫和と聖良がまたもや驚く。まさか他にも未発表のISがあり、それを自分達に見せてもらえることになるなんて、普通に考えても破格の内容だからだ。

 

「い…いいんですか?」

 

「あくまでも見るだけだから、大丈夫だよ♪」

 

そんな事を簡単に言われても、企業に所属すらしてないのに簡単に公開してもいいものなのだろうか…

 

そんな不安にだんだんと胃が痛くなってくる2人。しかし、それは機体を見た瞬間、アッサリと治る。

 

施設内を幾つか案内され、最後に来た場所にあったのは、2機のISだった。片方は打鉄を改良したのか、腕部と脚部は面影を残しつつも腰回りのリアスカートや、肩のアンロックユニットである盾が外され、左右の肩部と腰部にはマルチアームに繋がったブースターが取り付けられ、背部は小型スラスターが幾つもあり、高機動タイプである事を思わせる緑の機体と…隣にあるのはラファール・リヴァイブを改良した機体らしく。肩にマルチアームに繋がった大型の盾が左右に装備され、背中にも折り畳まれたマルチアームが4つあり、先端は人間の手みたいなマニピュレーターとなっているので、武装を保持させる事も可能となっている、おそらく重火力型の水色の機体だった。

 

「これは…?」

 

「ウチがそれぞれの機体を元に、色々と改良した2・5世代機……緑の機体が【緑雷(りょくらい)】で、水色の機体が【蒼雪(そうせつ)】だ」

 

「緑雷と…」

 

「蒼雪…」

 

姫和は緑雷に、聖良は蒼雪に目を奪われジッと機体を見つめる。まるで、この機体に何かを感じ取ったみたいに…

 

「緑雷は打鉄を元に、高機動近接戦を主目的としていて、ウエイトになるリアスカートや肩のシールドを廃止。そこにフレキシブル可動のブースターを取り付け、背部のブースターも増設した機体だ。武装は日本刀型の近接ブレード【雷切丸】を予備含め3本と、両腕に内蔵された散弾砲【雷火】だ」

 

一誠は緑雷を見つつ説明し、次に蒼雪へと視線を向ける。

 

「蒼雪はラファール・リヴァイブを改修した重装甲重火力機で、緑雷とは逆に装甲を増設、通常のシールドに加えて両肩にもシールドを追加。更にマニピュレーター式のマルチアームを背部に4つ持ち、それぞれに武器を使わせる事も可能となっている。武装は実弾をメインにしていて、マシンガン【風花】やバズーカの【氷砕】、散弾銃【冬閃】にハンドガン【舞雪】にアサルトライフル【氷解】やキャノン砲【殴冬】にガトリング【豪雪】、ミサイルといったものを大量に装備させてる。予備の銃弾なんかもカートリッジで最大10個ずつ持たせられる。近接武装は高周波振動ダガー1つだけだから気をつけて欲しいけど…それと重量増加で低下した速度を補う為に、脚部にローラーを装備して地上での速度を上げてあるんだ」

 

「「おお~…」」

 

「更に、開発コンセプトに合わせて特別なシステムを各々に幾つか内蔵してあるんだ。これはさすがに教えられないけどな」

 

その後も、ISについて秘匿部分を除いて説明いると、アクセプターから初期化と最適化が終了した音がなる。

 

「お、終わったみたいだな。一夏、設定画面を開いてみろ」

 

「設定画面……ん?【パートナー設定】?」

 

一誠に言われ画面を開き項目を見ていくと、見なれないものがあった。そこを開くと【パートナーになる者の手を握ってください】と表示されていた。

 

「これは?」

 

「実は……GRIDMANは小型化と性能アップに成功したのはいいんだが…………そのせいで武装展開とセンサー類の一部が機能しなくなっちまってな?」

 

「「「「ハアァァァァァァァッ!?」」」」

 

武装展開とセンサー類が使えない……それは視界が効かない暗闇の中で、熊相手に素手で戦えと言われている事と同じなのだ。それは誰でも驚く…

 

「でも、機能するまで性能を落とすのは勿体なくてな…………だったら、戦闘側とサポート側の2つに分割しちゃおうとなったのさ」

 

「だからこそのパートナー設定…」

 

「このパートナー選びが、GRIDMANの性能を左右するといっても過言じゃn…………って、お前の場合は既に決まってるよな?」

 

そう説明の途中で、一夏は迷いなくいちごの方を向き左手を差し出す。

 

「頼むいちご、俺にお前の力を貸してくれないか?」

 

「もちろん♪」

 

そして、いちごもその手をしっかりと握り返すと、彼女の腕にもプライマル・アクセプターが装着された。

 

『パートナー設定を完了しました』

 

「んじゃ、これからもヨロシク頼むな」

 

「うん♪」

 

「これで史上初、2人で運用するISの誕生だな……そんじゃ、俺からのプレゼントだ」(ドサッ)

 

そんな2人に、一誠は広辞苑並みに分厚い本を投げ渡す。

 

「うおッ!?」

 

「お…重い…!!」

 

一夏は片手キャッチし、いちごは両手で受け止めるも、いちごだけはかなり前のめりになっていて、本の重さがよく分かる。

 

「龍見さん、これは?」

 

「GRIDMANの説明書だ」

 

「「説明書!?」」

 

それが専用機の説明書と聞けば驚きしかないだろう…唖然としてそれを見る一夏に一誠はニヤリと笑い…

 

「それ、キチンと覚えろよ?」

 

楽しそうにそう告げた。

 

「い、いや……説明書は見ないのが、俺のプレイスタイルだからさ…!!」

 

「え~?私は大好きだよ、マニュアル」

 

渡されたマニュアル(広辞苑サイズ)を見てから、2人は対極的な反応をする。まあ、これを覚えろと言われれば、よほどの人物じゃない限り無理と答えたくなる物だ…

 

「さすがに全部とは言わないさ。必要な部分を先に覚えて、後は必要になってから学べばいい…けど、知らないより知ってる方が有利な場合もあるからな?」

 

「う……解りましたよ…」

 

「私も教えてあげるから、ね?」

 

しかしそう言われてしまえば、読まない訳にはいかない。さすがの彼も観念して読むしかなくなってしまった。

 

「それじゃ、起動試験をするから2人は試験場に向かってくれ。それと十条さんと鹿角さんには悪いけど、ここから先は社外秘になるから見学はここまででいいかな?」

 

「はい、お世話になりました」

 

「貴重な体験、ありがとうございます」

 

「これからも2人と仲良くしてくれ。それじゃいろは、2人をお見送りを」

 

「畏まりました。それではお二方、こちらに…」

 

「ああ、2人ともまたな」

 

「月曜日に学校で会いましょう」

 

「おう、またな」

 

「じゃあね~」

 

いろはに連れられて去っていく姫和と聖良、それに合わせて一夏といちごも試験場へと向かっていく。続けてその場から出ようとした一誠は一度立ち止まり、鎮座しているISへと振り返る。

 

「どうやら、お前達も主を決めたみたいだな?」

 

そして、そう呟いてから部屋を出るのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから日は経って、月曜日…

 

「「おはよ―…」」

 

「おはよ……って2人ともどうしたの!?」

 

「「ちょっとね……」」

 

朝、教室にやって来た一夏といちごは疲れきった姿……更に一夏においては顔に幾つも絆創膏を貼った状態でやって来て、驚くクラスメイトを横目に席に座るやいなや机に突っ伏した。

 

「どうした、お前達?」

 

「お疲れみたいですが…」

 

「それに織斑さんは傷だらけですし…」

 

その姿に姫和や聖良、土日は会えなかった智が2人の席までやって来る。

 

「ああ……専用機の慣熟訓練でな……」

 

「そのしごきが…………半端なかったんだよ…」

 

「しごきですか?」

 

「口にするのも恐ろしい程のな…」

 

それから2人は体を震わせながら黙ってしまう…まるでその時の恐怖を思い出したかのように……

 

「これは、聞かない方が良いのか?」

 

「それが良いと思います」

 

「下手すると、今日の勝負に影響しそうですしね」

 

智の言葉に2人は頷いて、3人はそこから離れる事にする。放課後までに、2人の精神が戻る事を願って……

 

 

 

 

 

 

その頃、篠ノ乃秋羅達はというと……

 

「おい秋羅、あれにはどういう意味が会ったんだ?」

 

「あれって?」

 

「お前が今日まで休み時間の度に、1年3組を除く全ての学年とクラスを回っていた事だ!!」

 

「ああそれ?……単なる仕込みだよ。ククク…!!」

 

そう言って、怪しげに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後……

 

「さてと、一丁やりますか!!」

 

「頑張ろうね!!」

 

何とか精神を持ち直した2人は、案内された第1アリーナのCピットにいた。

 

第1アリーナはチーム戦や集団戦等を行う広域のアリーナで、ピットもA~Dの4つもある。平日では複数人がそこの一部を借りて別々に訓練したりしている。

 

そこを借りきって行われる1組のクラス代表決定戦……それに巻き込まれた一夏達の初陣でもある。

 

最初は名目通り1組同士での試合な為、一夏といちごは案内されたCピットで準備運動したり、相手の情報収集をしていた。

 

そして最初にセシリアがISに乗って現れるが、篠ノ乃が何時まで経っても出てこなかった。

 

「どうしたんだ?試合時間までもうすぐだってのに…」

 

「搬入が遅れているそうだ」

 

疑問を口にする一夏に、いちご以外の声がそれを教えてくれる。それは昨日会ったばかりの一誠といろはだった。

 

「龍見さんッ!?」

 

「どうしてここに?」

 

「ウチでは対ISのデータが取れないからな。そのデータ取りに来たんだ。それとスカウトにな?」

 

そう言いながら、一誠は一夏達に近づく。

 

「そして一夏、たぶんお前が先に出ることになるだろうから……あのイギリスのISを完膚無きまでに大破させろ」

 

「大破?そんな事したら、イギリスから文句を言われるんじゃ…」

 

「それが篠ノ乃秋羅の野望の1つを砕く……としたら?」

 

その言葉に一夏がニヤリと笑う。まさかここで、憎き相手の野望を打ち砕けるとは思いもしなかった…だからこそ、やる気が更に漲る。

 

「了解、あれをボロッボロにしてやりますよ…!!」

 

「それとお前が頼んできた件……許可が下りたから、今日の放課後にやるぞ」

 

「マジですか!?ありがとうございます!!」

 

「???」

 

『織斑、篠ノ乃の機体がまだ来ない。だが、アリーナの貸し出し時間もあるから…………巻き込んでしまったのにすまないが、先に戦ってもらってもいいか?』

 

「構いませんよ、すぐに出ます」

 

途中、2人の会話の意味が分からなかったいちごが首を傾げていると、一誠の予想通りスピーカーから千冬が申し訳なさそうに一夏に出撃を打診し、一夏は嬉々としてそれを受け入れ、そしてピットの先端に向かう。

 

「いちご、オルコットのデータは?」

 

「さっきから彼処にいるからね……もうバッチリ♪」

 

そう言ういちごの目は青く、既にシーフ・アイでオルコットの機体からあらゆるデータを手に入れていた。

 

「サンキュ、んじゃ行きますか……GRIDMANと、織斑一夏の初陣だ!!」

 

そんな彼女に感謝しつつ、ピットの先端に立つと……

 

『『『『『Boooooooooooo!!』』』』』

 

「ん?」

 

何故か観客(1年3組以外)からブーイングが飛んできたのだ。それ以上に観客席が満員御礼なのにも驚いたが…

 

「引っ込め~!!」

 

「篠ノ乃君を出せ~!!」

 

「お前なんかがISに乗るな~!!」

 

「さっさとくたばれ~!!」

 

などと言った暴言が一夏の鼓膜を揺らすが、彼はそれらを聞き流す。

 

(どうやら、3組以外は誰も信用しない方が良いな…)

 

そして、自クラス以外の全てを信じない事にした。そう決めたらうるさい雑音をシャットアウトし、3組の応援といちごの指示だけに耳を傾ける。

 

「あら、先に来るのは貴方ですか…しかも、ISを纏わずに来るなんて、負けをお認めになったのかしら?」

 

そんな一夏を見つけたオルコットが言葉を発するが、一夏はそれを聞き流す。

 

「まあ当然ですわね!!このイギリス代表候補生たる私相手に、ド素人の貴方が勝てる訳ありませんものね!!そこで土下座でもするなら、許して差し上げてもよろしくてよ?」

 

反論しない一夏が、自分にビビっていると勘違いしたオルコットは更に言葉を捲し立てる。それを聞いている1年3組は……

 

「オリムラァッ!!そんな奴、ボッコボコにしてやりなさい!!」

 

「アリサちゃん、落ち着いて!?中指立てちゃダメだよ!?」

 

「いいから!!すずかも応援しなさい!!」

 

「織斑君はそんな簡単に負けないと思うよね、ミケちゃん?」

 

「うん、私は逆に相手を倒しそうな気がするよ、モカちゃん」

 

「行け、一夏!!」

 

「頑張って下さい!!」

 

「ファイトです!!」

 

など、一夏に対して応援の言葉を送ってくる。

 

(やっぱ、信頼できる人達からの応援は気持ちいいもんだ…)

 

その応援に感激していた一夏は、ようやくオルコットを見る。ISスーツのお陰か彼女のメリハリのある体のラインがくっきり解るが、関心を無くした相手に姫和みたいな反応は起こさない。

 

「何も言い返さないとは…やはり貴方h「さっきからキャンキャン吠えんなよ…弱く見えるぞ?」なッ!?」

 

そして、彼女の言葉がいい加減鬱陶しくなり、自身も挑発を始める。

 

「知ってるか?日本には【弱い犬程、よく吠える】って言葉があってな…たくさん吠えて自分を強く見せようとするって意味なんだ。今のお前みたいにな?まぁ、お前は子犬程も可愛くねぇけど…」

 

「こ…この私を犬と同列扱いしますのッ!?」

 

すると、簡単に挑発に乗って顔を真っ赤にして怒り出す。

 

(うわ~…こいつ煽り耐性低…)「お前が犬と同等とか…ハハハッ!!うぬぼれんなよ?」

 

そんなオルコットを笑いつつ、ISを纏うために左腕のアクセプターを顔の左側に持っていき…

 

「アクセス…フラーッシュ!!」

 

安全の為に設定された起動ワードを叫びながら、右手で下部のボタンを叩く。するとGRIDMANが装着されるが、一次移行が終わっている為、水色のスーツ部分が赤に変わり、銀色の鎧も輝くほどの光沢を持ち、差し色に水色や金色が入った姿になっている。

 

「何ですの、それは?第一世代じゃありませんか。それで第三世代の【ブルー・ティアーズ】に勝てるとでも?」

 

「よく吠えるワンちゃんだ……もしかして散歩の時間だったか?いいぜ、来いよ!!ホラどうした!!Hey come-on!!Let's go!!」(パンパン!!)

 

GRIDMANを見て侮る発言をするオルコットに、一夏は某有名な悪魔狩りみたく手を叩いたり、手招きしながら更に挑発すると、プルプルと震えながら茹でた蛸のごとく顔を真っ赤にする。

 

『試合開始です』

 

「死になさい!!」

 

そこでスタートの合図がなり、オルコットが持っていたレーザーライフル【スターライトMkⅢ】を素早く撃つが…

 

『一夏、左に19度体を捻って』

 

「よっと」

 

いちごの指示に従った一夏に、アッサリと避けられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いちごside

 

「それじゃ、私も頑張るぞ!!」

 

一夏がGRIDMANを纏うのを見て、私はプライマル・アクセプターが付いている左腕を右から左に大きく振るう。すると、私の前に空間投影モニターと同じく空間投影型のキーボードが現れる。

 

これはGRIDMANのセンサーと直結していて、私はシーフ・アイで得た情報を、そこに素早く入力していき解析を行いつつ、あるプログラムを構築していく。

 

「よし、完了♪」

 

ものの数秒で出来上がったそれは、オルコットさんの機体から得た全てのデータを元に作り上げた、いわば【オルコットさん完全再現シミュレーター】とも呼べるものだ。これは彼女の戦闘データと武装データから、何処に攻撃するのかをオルコットさんの行動より先に教えてくれるものだ。

 

そしてすぐにそれが、一夏への攻撃を教えてくれる。

 

(狙いは左肩か…)

 

「一夏、体を19度左に捻って」

 

『よっと』

 

私の指示に一夏が動くと、私が作ったシミュレーター通りに攻撃が来て避ける。

 

「うん、シミュレーターの精度は完璧だね♪」

 

これなら一夏への回避指示は問題なし!!後は、勝利への道筋を見つけるだけ…

 

「一夏に教えてあげる…私達のwinning roadを!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、ほっ、あらよっと!!」

 

いちごから飛んでくる指示で、一夏は最小限の動きだけでレーザーをかわしていく。もっとも、彼女の攻撃がお手本通りのもので、狙いが読みやすいのでそれが無くても避けやすいが…

 

「ったく…散歩の途中でじゃれつくなよ。服が汚れちまう」

 

「この…!!でしたら!!」

 

攻撃が当たらず、一夏の煽りに冷静さを乱すオルコットは、機体名称の元であり、背部のウイングユニットに付いている、脳波コントロール型の4つの自律機動兵器【ブルー・ティアーズ】を展開する。

 

「なんだお前、子持ちだったのか!?ダンナは誰だ?てか、4人もいるとか……夜はずいぶんお盛んだな?」

 

しかし、それくらいで動揺する一夏ではない。むしろ、余計に煽りのネタを与えただけだった。ただ、少々卑猥な内容だが…

 

「な、ななななななな…!!なんてハレンチな!?」

 

「なに今さら清楚ぶってんだよ、このビッチ」

 

「く…!!だったら踊りなさい!!私とブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

 

その煽りに怒りではなく、恥ずかしさで顔を真っ赤にしたオルコットがビットを複雑な軌道で一夏へと飛ばしてくる。

 

『さすがに自律機動兵器4つの攻撃を口頭で指示するのは無理だから、モニターに行動予測映像と弾道予測線を見れる様にしたよ!!』

 

「あいよ!!」

 

そこにいちごのサポートが入り、彼の視界にビットの動きに残像が見えるようになる。だが、それはビクトリーなストライカーを装着した怪盗や、何処かのナイト・オブ・ワンみたく残像が先に動き、その後に本体が残像を追う様に動いており、更にビットの銃口からは時折赤い線が伸び、その数瞬後にレーザーが線に沿って通りすぎていく。これが【行動予測映像】と【弾道予測線】である。そのお陰でどの場所から攻撃が来るのか簡単に解るのだ。

 

「邪気の~♪遠吠えの~♪残音が~♪月下に呻き狂う~♪」

 

それに合わせて縦横無尽に攻めてくるビットを、一夏は師匠達の影響で歌いながら踊る様に回避する。ただし、円舞のような大人しいものではなく、もっと激しいブレイクダンスみたく片手で倒立しながらスピンしたり、筋トレみたいに腕立てやスクワットといった動きの組み合わせだ。

 

「全く、子供の躾がなってないな…そんなんじゃ、母親失格だぜ?」

 

「お黙りなさいッ!!男の分際で…男の分際で!!」

 

「やれやれ…子が子なら、親も親って事か…」

 

もはやヒステリック状態のオルコットにため息を吐き、攻撃の機を伺っていたら…

 

『一夏!!見えたよ、私達のwinning road!!』

 

「待ってました!!」

 

いちごからの勝利確定宣言が届く。

 

『彼女はビットを操作してる間、一切動けないの!!だからそこを狙うよ!!3秒後に瞬時加速(イグニッション・ブースト)で、オルコットさんの真下から1m先に移動!!』

 

「了解!!」

 

言われた事に合わせ、一夏は回避の動きをしつつ準備を始める。

 

『3…』

 

いちごのカウントと共に、背中のスラスターからエネルギーを放出。

 

『2…』

 

レーザーを避けつつ、放出したエネルギーを再度取り込み…

 

『1…』

 

そして攻撃の合間から、クラウチングスタートの構えを取り…

 

『0!!』

 

「牙狼の光る牙は自らをも!!」

 

正面のレーザーが通りすぎると同時にスラスターを全快…瞬時加速を行い、地面スレスレを滑るように移動。指示通りにオルコットの真下から1m先に到達。

 

『そこから一気に上昇、オルコットさんの背後を取って!!』

 

「壊し、滅す、諸刃のよう!!」

 

その指示に一夏は再度瞬時加速を使用、オルコットの背後まで一気に近づく。

 

「なッ!?」

 

『そのままライトセイバーで、ウイングユニット上部を切り裂く!!』

 

「グリッドライトセイバー!!」

 

そして振り返りつつプライマル・アクセプターから伸びるレーザー刃【グリッドライトセイバー】を出し、指定された部位を切り裂くと、飛んでいたビットが大人しくなって地面へと落ちていく。

 

「私のティアーズがッ!?」

 

「剣は剣としか呼べぬのか!?」

 

一夏が破壊した場所…それは個々のティアーズへの指示を送る脳波コントロールの発信部分であり、そこが壊されたのでオルコットはビットのコントロールを失ったのだ。

 

「悪い子達も、親が怒られてる所を見れば大人しくなるだろ?」

 

『後は細切れにしちゃえ!!』

 

「ですが、ティアーズはま「知ってるよ…」」

 

オルコットが反転しつつ、腰に装備されている武装…ミサイル型のティアーズを放とうとするが、その前にグリッドライトセイバーによって切り裂かれ爆散する。

 

「まだ…!!」

 

「我が!!」

 

だがオルコットは諦めずにスターライトMkⅢを向けるが、それも3等分に切断される。

 

「インターセ…!!」

 

「名は!!」

 

何か武装を展開しようとするオルコットだったが、それよりも速く一夏は左腕をV字に動かし、彼女のISの手足を(生身スレスレの位置から)切り落とした。

 

「へ…?」

 

「夢を羽ばたく者なり!!」

 

それにより浮遊できなくなったオルコットは地面へと落下、舞い上がった砂煙が晴れると、倒れたままのオルコットが茫然とした表情でいた。

 

「何故こんな事に…私はいずれブリュンヒルデになる女のはず…」

 

「ブリュンヒルデ?お前が?辞めとけよ。射撃はお手本通りで避けやすいわ、相手の挑発には簡単に乗るわ、おまけに近接戦は下手くそときたもんだ…諦めろよ、向いてないって」

 

地面に降り立った一夏は、彼女の呟きにそう返すとキッと睨まれるが、既に攻撃手段のない達磨相手に臆する事は何もない。

 

「貴様ァ…!!」

 

「悪いが、そろそろ散歩は終わりだ」

 

一夏は両腕を大きく内側に回しながらプライマル・アクセプターにエネルギーを充填していく。

 

「グリッドォォォォォォォォ…」

 

「ま、待って!?私の機体は既にダメージレベルCで…!!」

 

その行動がなにを意味するのか分かったオルコットは慌てて止めるように言うが、オルコットのシールドエネルギーはまだ10%程残っているため、試合終了になることはないし、一夏も合図があるまで止める事はない。

 

そしてチャージが終わるとプライマル・アクセプターをオルコットに向け…

 

「ビィィィィィィィィィィムッ!!!!」

 

そこから金色の光線【グリッドビーム】を放ち、オルコットに直撃して大爆発を起こす。そして爆煙が晴れるとボロボロのISと絶対防御のお陰で無傷だが、その場に倒れているオルコットがいた。

 

『ブルー・ティアーズ、SEエンプティ。よって勝者、織斑一夏』

 

機械音声のアナウンスが彼の勝利を告げ、一夏は右腕を突き上げる。そして暫しの沈黙の後にアリーナ内に響いたのは…

 

『『『『『Boooooooooo!!』』』』』

「「「「「やった~!!」」」」」

 

小さな歓声と大音量のブーイングだった。




いかがでしたか?

今回出てきた3組のキャラはたまに出るだけで、レギュラーではありません。

それとこの作品の一夏は、師匠がシンフォギア装者達なので戦うときに処刑ソングを歌う癖があります。

次回は、やっと転生者相手との第一戦になります。


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援・軍

どうも、疾風の警備員です。

スランプ中に買ったデビルメイクライシリーズにドはまりしました。魔具を試すダンテさんカッケェ!!でも、私はデビルブレイカー装備のネロが好きです。

今回は転生者との勝負1回目になります。ただ、面倒な事態が起きますけど…

では、どうぞ。


時を少し巻き戻して、一夏がピットの先端に立った頃…

 

「何なんですか…この周囲の状況…」

 

「ちょっと気味悪いね…」

 

管制室にいたエイミーと木綿季は、観客席から起こる大ブーイングを不信に思っていた。

 

「織斑君ってそんなに悪い事してませんよね!?」

 

「うん、朝と夕方に自己鍛練してる以外は普通どころか、優良生徒っていっても言いぐらいだよ」

 

エイミーや木綿季から見れば、彼の普段の態度は優良でクラスメイトとも仲が良い。そう考えればここまでブーイングを貰う理由なんてあり得ない。なのにこんな状況になってしまっているのか…女尊男卑以外に彼女達の心当たりは1つしかなかった。

 

「やはり、第二回モンドグロッソの事が?」

 

「ううん、あれは織斑君のせいじゃない。彼は巻き込まれてしまっただけ……寧ろ、責任は彼の護衛を頼まれていたのに果たせなかったボクにあるよ…」

 

そう言って顔を俯ける木綿季。彼女は前回のモンドグロッソの時に千冬に頼まれ一夏の護衛をしており、決勝戦の日も彼を会場まで送る事になっていたが、警備主任から警備体制の変更があったから一旦集まってほしいと連絡があり、警備担当者全員がホテルのロビーに集まったがいつまで経っても主任が現れず、木綿季が連絡するとそんな話は聞いていないと返されたのだ。それに嫌な予感がした彼女が一夏の部屋に飛び込むと、そこに彼は居らず多少争ったような形跡があるだけだった…

 

それを見た木綿季はすぐさま警備主任に伝えたが…

 

(出来損ないの方ならほっときましょ、千冬様の汚点も無くなるしね)

 

そうのたまったのだ。これには普段温厚な彼女も激怒し、すぐさま千冬へと連絡を入れたのだ。それを受けた千冬は決勝戦を放棄して一夏の捜索に向かった。

 

しかし、一夏は発見できず千冬は大会2連覇を期待した日本国民を裏切った【裏切り者】と呼ばれ、千冬も家族を蔑ろにした国に愛想を尽かして代表を辞め、世界中を旅する事にし、同じく木綿季を代表候補を辞めてIS学園の教師になる事にした。

 

「紺野先生…」

 

「でも仮にそうだとしても、他国の生徒の人までブーイングをするのはおかしいよ」

 

「あッ!?」

 

木綿季の言葉にエイミーも気づく。そう、裏切り者の弟である一夏に日本人がブーイングを入れるのは理解ができる。しかし、この学園は外国からの生徒も大勢いる。その全員が彼をブーイングするなど違和感しかないのだ。

 

「つまり、この状況に扇動した何者かがいる…という事ですか?」

 

「憶測に過ぎないけどね…」

 

「そんな中で織斑君は大丈夫でしょうか…?」

 

「彼ならきっと大丈夫だよ」

 

2人が心配と期待を混ぜ合わせた気持ちになりつつ、試合を見届けようとしていると後ろの扉が開いて千冬が入ってきた。

 

「失礼する」

 

「千冬先輩?どうしたんですか?」

 

「いや、会場の様子がおかしいのでお前達の意見を聞きにな?」

 

「先輩もそう思ってたんですね…」

 

そこから3人は木綿季の憶測を元に、話し合いながら試合を観戦する。そこでたまに聞こえる一夏の挑発に話題が変わった。

 

「なんか……ずいぶん独特な挑発ですね?」

 

「あれは最近、アイツがハマってる悪魔を狩るゲームのやつだな。プレイしている所を何度か見ていて、似たのがあったのを知っている…」

 

その内容にエイミーと木綿季は苦笑いし、千冬は頭を抱えていた。

 

そして試合は一夏の圧倒的強さでノーダメ勝利に終わり、オルコットの機体はダメージレベルがDに入り本国から担当者を呼んで修理しなければならない程に大破していた。

 

「スゴいですよッ!!企業代表とはいえ、国家代表候補生に無傷で勝っちゃうなんて!!」

 

「これにはボクもビックリだよ!!」

 

「まあ、今回は星宮からの直接サポートがあるから、当然といえば当然だな」

 

その結果にエイミーと木綿季は喜び、千冬も辛口評価しつつも頬を綻ばせていた。

 

「でも、どうします?これではそちらの代表決定戦が行えませんが?」

 

だが、本来この勝負は1組の代表を決めるための勝負で、一夏はそれに巻き込まれただけ…しかし、これではオルコットが試合をすることは不可能になってしまった。

 

「想定内だ。この場合、不戦勝で篠ノ乃兄を代表にする」

 

でも、千冬はそれを予測しており、不戦勝で秋羅がクラス代表になった。だが理由は他にもあり、彼をクラス代表にする事で、行動に制限をかけたのだ。これで秋羅が何かしようと動いていたら、クラス代表の仕事と称して呼びつけ自分の監視下に置くことが可能になる。

 

「それじゃあ、試合はこれで終わりですか?」

 

「いや、ここで止めてもIS委員会が何か言ってくるでしょうから、織斑と篠ノ乃兄の試合は行いましょう」

 

「解りました、では私は摩耶さんと準備に入ります」

 

エイミーが1組側の指令室と通信しつつ、準備を始めると千冬は部屋を出ていこうとするのを木綿季が止めた。

 

「千冬先輩、どこ行くんですか?」

 

「なぁに、ちょっと生徒達を激励にな?」

 

そう言うと彼女は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

周囲から聞こえてくるブーイングを無視しながら俺はピットに戻り、GRIDMANを解除すると近寄ってきたいちごとハイタッチする。

 

「さっすが一夏、圧勝だったね♪」

 

「いちごのサポートがあったからだよ」

 

実際、俺だけだったら弱点なんて調べないで、力任せのゴリ押し戦法しかやらないからな…

 

「でも体は大丈夫?かなり無茶な動きさせたりしたけど…」

 

「大丈夫だよ、あれくらいだったらいちごのサポート無しでも勝てたし、未来師匠のミラービット地獄の方がもっとつれぇよ…」

 

あのワンちゃん(注:オルコットの事です)の機体についてはある程度調べて知ってたから、未来師匠に頼んで神獣鏡のミラービットで回避訓練をやらせてもらったんだけど…

 

(ほら2人とも、これくらいでへばってたら負けちゃうよ?)

 

(あの……確認なんすけど…オルコットの機体のビットは6個でしたよね?)

 

(そうだけど?)

 

(なら、何で俺達は()()()のビットを相手にしてるんですかァッ!?)

 

(し…処理が追いつかないよぉ~…)

 

(文句を言わない。次は100個にするよ?)

 

((それだけは勘弁してくださいッ!?))

 

(じゃ、100個で始めよっか♪)

 

((ノオォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!))

 

あの訓練で次の日、俺は筋肉痛にいちごは知恵熱に苛まされたのに、未来師匠はアーシアさんに頼んで俺達を強制的に回復させて、その日も寮への帰宅時間ギリギリまでやらされた…

 

今、思い出すだけでも震えが止まらねぇ…あの人、鬼や鬼畜や…

 

「一夏ァ…!!」

 

「よしよし、あの人は今いないから安心しろ、な?」

 

その恐怖を思い出したのか、いちごが涙目で俺に抱きついてきたので頭を撫でながらあやす。

 

うん、いちごには悪いけど泣き顔メッチャ可愛い…!!

 

「やれやれ、教師の前で不純異性交遊とは…」

 

「「ッ!?」」

 

そんな事を考えていたら、千冬姉の声が聞こえて俺達は素早く離れた。

 

いつの間にッ!?まさか千冬姉に見られるなんて…!!スッゲェ恥ずかしい…!!

 

「なんだ、別に離れる必要はないぞ?せっかくのチャンスなんだし……キスの1つでもしたらどうだ?」

 

「「キ…!?」」

 

その言葉に俺達は顔が真っ赤になり、千冬姉は俺達を見てクククッと笑い冗談だと言った後に、一本のUSBメモリをいちごに手渡した。

 

「これは?」

 

「篠ノ乃兄が使うIS……その機体データだ」

 

「アイツの…!!」

 

「すぐに解析します!!」

 

いちごはそれを受けとると、近くの端末に挿し込みデータを解析していく。それはもののけ数秒で終わり、秋羅の機体の詳細が表示されると、俺達は呆れ返った。

 

「機体名【白式】……なんだ、この欠陥機?武装が剣一本とかバカじゃねえの?」

 

「機体自体は高機動近接型の第三世代機みたいだけど……ハッキリ言ってその価値もないかも…」

 

「表面性能だけ見ればな…」

 

「「???」」

 

「これを見ろ」

 

千冬姉が指差す画面には【単一仕様能力:零落白夜】と表示されてある……って!?

 

「これは千冬姉の専用機【暮桜】の…!!」

 

「これを見た時、私はその場で画面を殴りそうになったよ……束め…よほど私を怒らせたいらしい…!!」

 

「しかも一次移行で使用可能なんて……」

 

つまりこの機体は篠ノ乃束が作った、千冬姉の機体の後継機…ハハッ!!イイねぇ…やる気が漲ってくるぜ!!

 

「一夏…手加減などするな、全力で倒せ」

 

「わかってるよ…!!」

 

『織斑君、試合の準備ができましたので出撃をお願いします』

 

そこにタイミング良くエイミー先生から出撃要請がくる。さて、暴れてくっか!!

 

「いちご、今回は通常試合のやり方で頼む」

 

「わかった、声かけしないでこっちの判断で色々サポートするから」

 

「サンキュー♪アクセス…フラーッシュ!!」

 

いちごにそう礼を言って、俺はGRIDMANを纏ってフィールドに降り立つとブーイングが起こるが無視。それと同時に秋羅の奴も白式を纏って出てくると黄色い歓声が上がる。

 

ったく、うるせぇ騒音だなぁ……俺のクラスの応援が聞こえねぇだろうが…!!

 

「それがお前の機体か……ずいぶん真っ白だな?まるでお前の頭の中みたいだ」

 

「…………………………………………(ギリッ!!)」

 

さっきの試合みたいに挑発するが、なにも言わずに怖い顔で睨み付けてくる。ま、全然怖くないけど(笑)

 

「なんだ、お喋りは嫌いか?」

 

『余計な事をしてくれたな…!!』

 

このまま無言かと思ったら、俺に個人間秘匿通信(プライベート・チャンネル)を使って話しかけてきた。どうやら、誰にも聞かれたくない内容らしい…

 

『あ?』

 

『セシリアは俺が倒す予定だったんだ!!そうすれば、アイツは俺に惚れる筈だったのに…余計な真似しやがってッ!!』

 

『お前、あんなのが趣味だったのか?女を見る目がねぇな…』

 

あんなワンちゃんよりも、いちごや姫和達の方がよっぽどイイ女だぜ。

 

『うるさいッ!!お前はここで俺が殺してやるッ!!』

 

そう怒鳴り散らしてから、奴は通信を切った。ったく…通信で大声出すなよ…

 

「んじゃ、こっからは肉体言語で話し合いますかッ!!」

 

一夏side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合開始です』

 

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

開始の合図と同時に、秋羅は白式の唯一の武装である日本刀型ブレードの【雪片弐型】を持って一夏へと突っ込んでいく。しかし、フェイントも何もない突進など彼から見ればチビッ子が投げたボールくらいの速度なので、振り下ろされた剣をあっさりと回避し、踏みつけて地面に押さえつける。

 

「なッ!?」

 

「いきなり飛び込んでくるなんて、危ないだろ?もしかしてハグして欲しかった?でも残念、野郎とじゃな…」

 

「ふざけるなッ!!いいから足を退けろ!!」

 

「だったら力ずくでやってみろよ、男だろ?」

 

「言われなくても…!!」

 

怒りで正常に判断できないのか、一夏の挑発に乗って全力で腕を上げようとする秋羅。その場に振り上げるタイミングに合わせて一夏は足を退けると、秋羅は勢い余り両腕を上げたまま仰向けに倒れそうになるが、倒れきる前に持ってた雪片が地面に刺さり、尻もちを着いて雪片を背もたれにするみたいに座りこんだ。

 

「アハハハハハッ!!何やってんだよ、加減って知ってるか?」

 

「この…!!」

 

立ち上がった秋羅は雪片を構えると、その刀身を変形させて白いレーザー刃を作り出す。

 

「俺の零落白夜で、お前をブッ倒すッ!!」

 

「お~お~、物騒なこって…」

 

「死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

怒り任せにそれを振るってくるのを、一夏は余裕を崩さずにスレスレで回避していく。その際に掠めているのか、シールドエネルギーが大幅に減少していく。

 

「さっきまでの威勢はどうしたッ!?このまま大人しく殺されろッ!!」

 

「こりゃあ残念だ…」

 

横凪ぎにきたのをバク転で回避し、一度距離を取る一夏。気づけば、シールドエネルギーは残り3割を切っていた。

 

「そうだろうなッ!!お前の武器はビームソードとビームだけなんだろ?零落白夜に掛かればそんなもん通用しない!!逆転なんか…「そっちじゃねぇよ」あ!?」

 

一夏が視線を秋羅から外し、零落白夜が当たったのか焦げている地面を見る。そしてため息を1つ吐いて右手を前に伸ばす。それを見たいちごは投影キーボードを操作して画面に何かのパスワード入力画面を映し出し素早く入力していく。

 

入力された文字(アクセスコード)は【GRIDMAN CALIBUR】。

 

「アクセスコード、グリッドマンキャリバー!!」

 

最後に音声認証も済ませると、金と黒の二色に緑のランプのある一夏の身の丈を越える一振りの大剣が落ちてきて地面に突き刺さり、彼はそれを力強く掴む。

 

「ベーコンがありゃあ…スライスしながら焼いて食えたのに…」

 

「なッ!?他にも武器があったのかよ!?」

 

「電撃大斬剣…グリッドマンキャリバーッ!!」

 

地面から剣を引き抜き、サン○イズ立ちで構えると仮面の下で一夏はニヤリと笑う。

 

「んじゃ、ハンデも充分くれてやった事だし……こっから本気でいきますか」

 

「ハンデ?………………まさかテメェ…!!」

 

「今頃気づいたのかよ、このウスノロが」

 

そう、一夏はわざと零落白夜をスレスレで回避し、シールドエネルギーを減らしていたのだ。そこまで舐めた真似をされた事に秋羅は完全にキレた。

 

「調子に乗るなアァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

「おい、ブーメランだぞ?……この、胸に宿った信念の火は~♪」

 

憤怒の表情で向かってくる秋羅に、一夏はそう返すと歌いながら先程と同様に回避を行うが、今度は充分な距離を取りダメージを受けない様にしている。

 

「くそッ!?何で当たらねぇッ!!」

 

「そりゃ、ガキんちょが振り回してる傘に当たる大剣豪が何処にいる?」

 

「いい加減死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

「もう何も失うものかと決めた~♪」

 

歌いながら攻撃を華麗に避ける一夏。それがおちょくられてると秋羅は思い、頭の血を更に沸騰させていく。それによってますます剣の振りが甘くなっていく…

 

「闇に惑う夜には、歌を灯そうか~♪」

 

「この…!!(ピーピー!!)しまったッ!?エネルギーが…!?」

 

それを繰り返していたら、雪片からレーザー刃が消え始めていく。零落白夜は強力な力を持つ代わりに、自身のシールドエネルギーを代償にしている。だから使用には注意を払わなくてはいけないのだが、頭に血が上っていた秋羅はそれに気づかず展開を続けていた為に、シールドエネルギーが限界を迎えたのだ。警告音で気づいた秋羅は慌てて解除するが、既にエネルギーは10%しか無かった。

 

「絶対に譲れない、夢が吠え叫ぶよ!!」

 

そこを見逃す一夏ではない。秋羅のお腹に蹴りを入れて強引に距離を離すと、キャリバーを振るい白式の左腕を断ち斬る。

 

「うおッ!?」

 

「正義の為に…悪を貫け!!」

 

続けて右側のウィングスラスターに剣を突き刺し、爆散させる。

 

「ぐうぅぅぅぅぅぅぅ…!!」

 

「覚悟を、今構えたら!!」

 

それによりバランスを崩した所を狙い、キャリバーを上段から振り下ろす…

 

「誇りとち(ピピピピピッ!!)ッ!?」

 

直前、GRIDMANのモニターが切り替わり、複数の弾道予測線が浮かび上がる。しかしそれらは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

すぐさま攻撃を中断して後退すると、そこに銃弾の雨が降り注いだ。

 

「たく……勝利の紙吹雪にしちゃ早すぎだろ…」

 

頭上を見上げると、そこには打鉄とラファール・リヴァイブが3機ずついて、その内の1機には篠ノ乃箒の姿があった。

 

「おいおい、まだライブの途中だぜ?握手とサインは終わってからにしてくれ」

 

「黙れッ!!この卑怯者がッ!!」

 

「これ以上、篠ノ乃君はやらせない!!」

 

「お前なんか死ねッ!!」

 

そう叫び散らすと、彼女達(箒を除く)は一夏へと銃撃を始める。

 

「やれやれ…どうやら、秋羅だけじゃなくアイツらも男を見る目がないみたいだ…んじゃ、マナーの悪い客にはお引き取り願おうか!!」

 

そう言ってため息を吐くと、一夏は乱入者の迎撃に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エイミー先生!!今すぐ教員用ISの準備を!!」

 

「了解です!!」

 

そして試合を観ていた管制室の木綿季とエイミーも慌ただしく動き始める。各アリーナには生徒の問題行動やISの事故等に対応するため、教員用にチューンされた機体が用意されているのだ。木綿季もこの現状に介入するために出ようとするが…

 

「あれ?………………ッ!?大変ですッ!!」

 

「どうしたの!?」

 

「今、篠ノ乃さんが使ってる打鉄から、教員機の反応がッ!!」

 

「ええッ!?」

 

それが今、乱入してきた生徒に使われているというまさかの事態が発生していたのだ。

 

「そんなッ!?あれが置いてある場所は教員しか知らないし、扉だって毎週変わる16桁の暗証番号がないと開かないんだよッ!?」

 

「私にも何がなんだか…!?」

 

「でも、これじゃ助けに行けない…!!」

 

木綿季の言うとおり、教員機は各アリーナに1機しかない。生徒に貸し出す訓練機ならあるかもしれないが、教員機と比べれば機体性能は劣っている為、6人相手は不利でしかない。

 

「一体どうすれば…!!」

 

どうにもならない状況に追い込まれ、木綿季が唇を噛み締めていた時だった。

 

「え、通信?誰から…………ッ!!紺野先生!!」

 

「今度はなにッ!?」

 

「グリゴリ社の副社長さんから通信がきてますッ!!」

 

「繋げて!!」

 

彼女達に通信が入り、繋げると画面に一誠が映し出された。

 

『これは一体どういう状況ですか?』

 

「えっと…身内の恥を晒すようなのですが…」

 

木綿季は今解っている状況を説明していく。それを聞いた一誠は…

 

『解りました。では、こちらが今出せる機体を出撃させます』

 

「えッ!?機体があるんですか!?」

 

『今、仕様書を送りますね』

 

直後、管制室を端末が仕様書を受信し、()()のISのデータが表示される。そこにはパイロットの顔写真と名前まであり、その顔にエイミーは驚く。

 

「2機もッ!?しかもパイロット2人はウチの生徒…!!」

 

『先程、スカウトさせていただきました。勿論、本人達は了承済みです』

 

「ですが、2人はまだ素人…『それに関しての機能もあるんですよ』え…?」

 

「エイミー先生、彼を信じましょう。それに今は時間が惜しい」

 

「…………わかりました、発進シークエンスを開始します!!」

 

『私も彼女達に伝えてきますので』

 

エイミーが作業に入り一誠が通信を切った後、受け取った仕様書を読み始める。そして読み終えると…

 

「技術の進歩って……スゴいなぁ…」

 

ポツリとそう呟くのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋羅side

 

(ククク…!!予想以上の成果だ。先に()()()をしておいて良かったぜ…!!)

 

俺は助けに来てくれた箒達を見て、内心で笑っていた。何故俺が代表決定戦の話から今日までの間に各教室を回っていたのかというと、そこにいる同級生や先輩達にニコポを使っていたからだ。一応、1年3組で効果が無かったのが気になって、効かなくなる前に先に使う事にしたという理由もある。お陰で1年3組を除くIS学園の生徒ほぼ全員が俺のものとなった。

 

(これで一夏はクラス以外から邪魔者扱いされる!!それに、周りがやれば3組の中でも意識の変化が起きてのけ者にするはず!!そうなれば、後はもう一度ニコポを使って、真のハーレムを作ってやる!!)

 

それが集団心理というものだ。人間は周囲の状況に合わせる習性がある…周りがやっていれば、そのやり方に合わせようとするのだ。だったら、先に一夏を迫害するように仕向けておけば、連中だってそうなるはずだ!!

 

「皆、助けに来てくれたのか!!」

 

「大丈夫か、秋羅!?」

 

「ここは私達に任せて!!」

 

「アイツは私達が殺しておくから!!」

 

「いや、君達だけに任せて置くなんて出来ない!!俺も戦うよ!!」

 

心配してくれる皆に俺はそう言って雪片を構える。ここで格好つけておけば、彼女達はますます俺に惚れる。現に彼女達から黄色い歓声が俺に向かって飛んできた。

 

(さあ一夏…ここでお前を殺してやるよ!!)

 

「皆、行こう!!」

 

「「「「「「(はい/ええ/おう)ッ!!」」」」」」

 

心の中でそう叫び、来てくれた皆とこっちへ向かってくる一夏へ突撃していく。フォーメーションとしては近接3に射撃4だ。これならアイツの動きを封じつつ、攻めていける!!

 

そんな確信と共に、俺は一夏に斬り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

「ハハッ!!見ろよいちご、俺ってば人気者だぜ?」

 

『集めてるのは、人気じゃなくて殺気だけどね?』

 

「お、上手い。座布団10枚やろう」

 

『やった♪10枚集めたご褒美に、イチゴパフェ作って♪』

 

「いいぜ、とびっきりのを作ってやる」

 

『わーい♪それじゃ、そろそろちゃんと前見よっか?』

 

「だな」

 

いちごと他愛ない会話を終わらせると、目の前に来ていた秋羅の剣を回避する。相変わらず遅くて欠伸が出るぜ…

 

「ふあ…あ……、ん~これだけいれば、テストには充分か?」

 

「欠伸なんかしてる暇があるのか!!」

 

「あるんだな、これが……っと」

 

「「キャアッ!?」」

 

そんな余裕を見せてると左右から打鉄が来るが、ギリギリまで引き付けてから回避し、そのまま正面衝突させる。それで動きが止まったら、黒髪ポニテの女を秋羅へ向けて蹴り飛ばす。

 

「うおッ!?お前ッ!!女性を蹴るなんて、恥を知れッ!!」

 

「知ったことか。敵なら倒すだけだ」

 

そこに追撃をしようとするが、上から銃弾の雨が降ってきて阻止される。

 

チッ!!…射撃がやっぱ鬱陶しいな。突撃してくる近接もウゼェし…先に援護してる奴等を落とすか?

 

『待って、龍見さんから連絡きてるよ』

 

「龍見さんから?」

 

俺は戦闘に意識を向けながらも、龍見さんの通信に耳を貸す。

 

『2人とも、こっちでも事情は把握している。なので、今から増援を送る』

 

「増援?いたんですか?」

 

『ついさっき出来てな。ただ、もう少し準備に時間が欲しい。稼げるか?』

 

「いや、俺といちごならあれくらい『お前が無駄にエネルギーを消耗してなかったら、任せたんだがな?』…サーセン……任務了解、しばらく逃げに徹します」

 

『頼むぞ』

 

そこで通信が切れ、俺は時間を稼ぐ為に後ろに跳躍して秋羅達から距離を取る。

 

それじゃ、鬼ごっことしゃれこむか!!

 

「おいッ!!この期に及んで逃げる気か!?」

 

「だったら捕まえてみろ!!ホラホラ此方だぜ、鬼ども!!っと、女達は鬼嫁の方がいいか?貰い手が来てくれるといいな?この世界にいればだけど…」

 

((((((ブチィ!!))))))

 

俺の【お前らは一生独身宣言】に、女達の血管がキレる幻聴が聞こえた気がした。でも、あんな過激な女共と結婚したいとか俺は絶対に思わねぇ。

 

「貴方ねぇッ!?」

 

「ふざけないでよッ!!」

 

「おーおー、反応するって事は鬼嫁の自覚ありか?」

 

「「殺すッ!!」」

 

「待って!?陣形を…!!」

 

怒りで秋羅の陣形を無視して2人が俺へと突っ込んでくる。そして慌てる秋羅に笑いそうになるが、必死に堪えて横凪ぎに襲いくる打鉄の近接ブレードをイナバウアーで避け、ラファールのパイルバンカーの杭が飛び出してくる前に、右足を出して杭に乗ると同時に射出の勢いを利用して後ろへと一気に跳躍して、大きく距離を稼ぐ。

 

「なッ!?バンカーの勢いを利用して…!?」

 

「あばよ♪」

 

そのまま俺は奴等に背を向けて走り出す。その後ろから銃弾が襲ってくるが、弾道予測線で場所が解るから余裕で回避する。

 

「おーおー…しつこい女は嫌われるぞ?」

 

「黙れ!!男風情がッ!!」

 

「男のくせに生意気よ!!」

 

「それは聞き飽きたぞ…」

 

背後から来る弾丸を回避しながら、先程のワンちゃんと同じ様な事しか言わなくなった相手にため息が出る。

 

しかし、ただ逃げ回るのも面白くないな……だったら、アレやるか!!

 

そうと決めたら俺はアリーナの壁目掛けて走り出す。普通に考えれば、自爆(笑)としか思われないだろうが、俺は違う。右足を突き出して壁に当て()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あ、言っておくけどISの機能は使ってないぞ?こんなもん足の握力で壁を掴み、腹筋やら背筋やらで身体をまっすぐ支えてやれば誰でも出来るからな?(注:出来ませんし、真似しないでください)

 

「さっきからちょこまかと…!!」

 

「おまけにおかしな動きばっかり…!!」

 

「いい加減に落ちろぉッ!!」

 

そうやっている間にアリーナを3周した時だった…黒髪ポニテが俺に向かってまっすぐ突っ込んできたので、壁から離れようとすると…

 

「やらせんッ!!」

 

―ガキィン!!―

 

「うあッ!?」

 

「ん?」

 

俺達が使っていないピットから一機のISが高速で飛び出してきて、黒髪ポニテを持ってた剣で斬りつけて後退させた。

 

その機体はよく見れば【緑雷】で、パイロットも見覚えのある顔だった。

 

「無事か、一夏?」

 

「……まさかお前がそれに乗って来るとはな……()()?」

 

そう、緑雷に乗っていたのは姫和だったのだ。

 

「仲間の危難に前に、鞘走りを抑えられなかったのでな……それに、私だけじゃないぞ?」

 

その時、姫和の言葉に合わせるかのように彼女が出てきたピットから、水色のISが飛び出してくる。

 

あれは【蒼雪】?こっちは誰が…まさか…

 

「お待たせしました、織斑君」

 

「やっぱり鹿角だったか…」

 

乗っていたのは、俺の予想通り鹿角だった。

 

「くそ…!!邪魔をするなッ!!」

 

「悪いが、それはこちらの台詞だ」

 

「貴女方こそ、彼らの勝負を邪魔してるじゃないですか?」

 

「違うッ!!私達は秋羅を倒そうとするソイツを成敗しているだけだッ!!」

 

「止めとけ…アイツ等に何を言っても無駄だ。自分達のやる事なす事全てが正しいと思ってんだからな」

 

「どうやら、そうらしい…」

 

「なら、やる事は1つですね」

 

説得は通用しないと説明すると、姫和は日本刀型近接ブレード【雷切丸】を手に持ち、鹿角は両手にマシンガン【風花】を持ち、構える。

 

「それじゃ、最高にイカれたパーティーの始まりだッ!!」

 

そう叫んで俺も剣を構える。2人にいちごのサポートがありゃ、負ける気がしねぇ!!

 

ただ、俺には懸念している事があり、いちごに相談した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、姫和達のISスーツ姿がエロくてまともに顔も見れないんだが、どうすりゃいい?」

 

『……………………………………一夏のバカ、変態、ムッツリドスケベ』

 

「カハッ!?」

 

結果、彼女からの罵倒をもらいました……泣いていい?




いかがでしたか?

なんか展開急ぎすぎた気が…

次回で第一回VS転生者を終わらせます。その後はたぶん設定集にする予定です。

では次回で、お会いしましょう


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乱・戦

どうも、疾風の警備員です。

最近、仕事がかなり連続していて疲れていたところにウイルス性の胃腸炎にかかってしまいました。

食べた物全部吐いてしまってマジで辛かった…

もう完治しましたが、皆さんも健康に充分注意してくださいね。

それでは遅れました本編、良ければどうぞ。


またまた時は遡り、一夏VS秋羅が始まる少し前…姫和と聖良はいろはと共にアリーナの廊下を歩いていた。

 

「お二人共、私達のお誘いを受けていただき感謝します」

 

「いや、しかしどんな話なんだ?」

 

「着くまで秘密というのは気になりますし…」

 

その理由は、いろはから2人に対して一誠が話があるから来てほしいという理由で、内容については知らされていないのだ。

 

「私も内容は聞かされておりませんので、直接お聞きになってください」

 

そして着いたのは、一夏や秋羅が使っていないピットだった。その場に扉の前にいろはは立つとノックする。

 

「一誠様、姫和様と聖良様をお連れいたしました」

 

「おう、入ってくれ」

 

中の応答と同時に扉が開き、3人が中に入るとそこには一誠と2機のISが置かれていた。それは以前見た【緑雷】と【蒼雪】だった。

 

「よく来てくれたね、2人共」

 

「龍見さん、私達にお話というのは…?」

 

「それは君達にウチのテストパイロットになってもらい……この機体を預けたいんだ」

 

「「…………………………………………はい?」」

 

その内容は2人を一瞬、放心状態にするのに充分なものだった。何故いきなりテストパイロットへ招待され、専用機を持たされるのか全く理解できなかったからだ。

 

「えっと……理由を聞いてもいいですか?」

 

そこから先に復活した聖良が問う。

 

「ん~…話すと少し難しいけど、簡単に言えば()()()()()()()()()()()()からかな?」

 

「選ばれた?」

 

その奇怪な理由にますます疑問が増える2人に、一誠は苦笑する。

 

「そんなに難しく考えなくていいよ。要はこの2機が、君達に乗ってほしいってだけなんだからさ」

 

「はあ…?」

 

どうしようか悩む姫和。その横にいた聖良は1度蒼雪を見て、次に一誠に見ると…

 

「私はお引き受けします」

 

そう力強く答えた。

 

「聖良ッ!?」

 

その事に驚く姫和だったが、彼女は歩いて蒼雪に近づいて機体に触れる。

 

「……一応、理由を聞かせてくれるか?」

 

「私には必要なんです、大切なものを守れる力が…!!」

 

そう言う彼女の瞳には、怒りが宿っているのを姫和と一誠は見逃さなかった。

 

「……わかった、蒼雪は君に預けよう」

 

「ありがとうございます!!」

 

だが、それでも一誠は彼女に機体を託した。これが、彼女の未来を変えられる事を願いながら…

 

「それで、姫和ちゃんはどうするんだい?」

 

「私は…」

 

彼女はまだ悩んでいた。確かに母親に勝てない未熟な身に専用機など過ぎた代物ではある。それが何故自分を選んだのか理解できない…つまり、自信を持つ事が出来なかった。

 

(せっかくだが、今回は断ろう…)

 

なので、断りをいれようとした時だった…

 

「……ん?フィールドが騒がしいな…」

 

フィールドからの歓声が大きくなり、気になった一誠が覗いてみると……

 

「……そういう事か…」

 

そう呟いて、フィールドを睨み付けた。

 

「どうしたんですか?」

 

そんな彼を見て2人もフィールドを覗くと、そこには秋羅だけでなく他に6機のISと戦う一夏の姿があった。

 

「なッ!?」

 

「どうやら、秋羅の方の援護に出てきたみたいだな」

 

電光掲示板を見れば、GRIDMANのシールドエネルギーは3割を切っているにも拘らず戦う一夏。端から見れば勝機などあり得ない状況だ。

 

(これでは勝ち目なんてない…なのに何故お前は…)

 

『姫和、貴女が剣を振るう理由は何かしら?』

 

一夏の姿を見て、彼女は幼い頃に母に問われた事を思い出す。それになんて答えたのかも…

 

『私は【お母さんみたいに誰かを助けられる】ようになりたいから!!』

 

『そう……なら、その思いを忘れないようにね?それを胸に刻んでおけば、貴女は決して力に飲み込まれたりしないから…』

 

(そうだ…それが私が力を、剣を振るう本当の目標だったじゃないか!!)

 

そして今、目の前に多勢に無勢な友がいて助けに行ける力がそこにある。それが彼女の自信を復活させる。

 

「龍見さん…テストパイロットの件、私もお引き受けします!!」

 

それで迷いが振り切れた彼女は、テストパイロットになる決意をし、機体に触れる。

 

「わかった。それじゃ悪いけど、たぶん2人には試し乗りも出来ずに初陣を飾ってもらう事になる。いろは、2人の最適化の補佐を」

 

「畏まりました、最速で終わらせます」

 

一誠はいろはに指示を出すと、部屋の端末に向かい管制室と話し始め、いろははISスーツに着替え姫和達が乗り込んだ蒼雪と緑雷から1本のケーブルを伸ばすと自身の首の後ろにある端子に接続し、超速演算を始めていく。

 

「出撃の許可は取れた。後はお願いするよ」

 

「「はいッ!!」」

 

そして一夏が時間を稼いでる間に、2機の調整が終わり一次移行が完了する。

 

「ふぅ…調整完了、出撃可能です」

 

『発進シークエンス、開始します!!』

 

「聖良、先に行かせてもらうぞ?」

 

「分かりました」

 

そこにエイミーのアナウンスが入り、先に姫和がカタパルトに乗る。

 

『リニアカタパルトボルテージ上昇…全システムオールグリーン…進路クリア…緑雷、発進どうぞ!!』

 

(今こそ、母さんと誓った自分になるために…!!)

 

正面に並ぶ3つのランプが1つずつ赤く光り、3つとも光った後に全てが緑に変わって発進を促す。

 

「十条姫和!!緑雷、出る!!」

 

宣言と同時にカタパルトが起動し、正面から来るGに耐えながらフィールドに射出され、一夏を探すと今まさに篠ノ乃箒が剣を彼に振り下ろそうとしていた。

 

(この距離じゃ…いや、諦めるものか!!)

 

「緑雷ッ!!」

 

『Yes sir』

 

叫んだ瞬間、電子音声の応答後にカタパルト射出以上のGを味わうがとてつもない加速で接近し、自身の間合いに入ると速度が緩んだので箒を近接ブレード【雷切丸】を呼び出し斬り飛ばした。

 

「やらせん!!」

 

「うあッ!?」

 

その頃、ピットでは蒼雪の発進シークエンスが開始されていた。

 

『カタパルト準備完了!!続きまして蒼雪、発進どうぞ!!』

 

「了解…鹿角聖良!!蒼雪、出撃します!!」

 

飛び出した彼女はゆっくりと一夏の隣に降り立ち、彼と共に篠ノ乃秋羅と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫和side

 

「それじゃ、最高にイカれたパーティーの始まりだッ!!」

 

一夏の言葉に、私はスラスターを吹かし篠ノ乃箒が乗る打鉄へと迫り、剣を振るう。

 

「ぐうッ!?」

 

「お前の相手は私がしてやろう…」

 

彼女はギリギリ剣で受け止めるも、私はスラスターの出力を上げて一気に壁際へと押し込んでいく。

 

「舐めるなァッ!!」

 

彼女も力任せに退かそうとするが、私はそうはさせまいとつばぜり合う場所を細かくずらして、力が入りにくい場所を選んで反撃を防ぐ。

 

「この…!!」

 

「篠ノ乃さん!!」

 

「落ちなさい!!」

 

そこに、他の打鉄がマシンガンである【焔火】を持ち、私に撃ってくる。

 

(くッ!?この状況では下手に動けない…!!)

 

今の状況で下手に動こうとすれば、篠ノ乃の斬撃を喰らいかねない。だったら多少の被弾覚悟で篠ノ乃を吹き飛ばす!!

 

IS操縦が未熟な私がそう判断して行動しようとした時…

 

『Back Ignition』

 

「え?」

 

「な…ウアァァァァァァァァァァッ!?」

 

先程聞こえた電子音声がして、両肩と両腰のブースターの噴射口が前に向くと同時に凄まじい噴射を行い、私を後ろに下げつつそれに巻き込まれた篠ノ乃を押し出した。お陰で私は被弾する事なく篠ノ乃達から距離を取れた。

 

「今のは……お前がやったのか、緑雷?」

 

何とか静止してそんな事はあり得ないと思いつつ、そう口にしてみると…

 

『Yes』

 

そう返答が帰って来た……………って返答したッ!?

 

「一体どういう…!?」

 

『それは、緑雷と蒼雪にAIを積んでいるからだ』

 

困惑する私に通信してきた龍見さんが説明をしてくれる。

 

『その2機は、ISの操縦や高等技術の簡略化を目的として作られた機体なんだ。1人でやるのが難しいなら、サポートを付ければいいっていう感じだな。因みに緑雷は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を、蒼雪は高速切替(ラピッド・スイッチ)の簡略化&効率化を目指して作られてる』

 

「それで…」

 

『ソイツらはこれから君達のパートナーだ。名前を付けて仲良くしてやってくれ』

 

「は、はあ…?」

 

よく解らないが、一夏といちごの関係みたいなものだろうか…?

 

「とりあえず、よろしく頼むぞ……(らい)?」

 

『Yes sir』

 

「そうと決まれば!!」

 

私は雷切丸を構えると、背中のブースターを噴射を吹かして左側から撃ってきた打鉄へと向かう。

 

「く、来るな!!」

 

彼女は焔火を撃ちまくるが、そこは緑雷が回避行動をしてくれるので気にせず突き進み、至近距離に入ったら剣を突き出す。

 

『Ignition boost』

 

直後、緑雷が爆発的な加速をし、距離的に回避不能だった打鉄に直撃する。その加速の勢いと剣先の一点集中の相乗効果で絶対防御を発動させ、エネルギーを大幅に削り取る事ができた。

 

「よしッ!!このまま押し通すぞ!!」

 

『Yes sir』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良side

 

「では、私もいきましょうか!!」

 

私は両手のマシンガンを構え、足裏に付いているローラーで地面を滑る様に移動しながらラファール3機へと撃っていく。

 

ですけど、やっぱり初めての実戦だから狙いが甘くて当たらないですね…

 

『OK,Target lock on』

 

すると、電子音声の後に視界に相手をロックしたと表示され、引き金を引いたら今度はあっさり命中できた。

 

「ほえ~…さすがですね、(ゆき)?」

 

『You`re welcome』

 

「この…!!」

 

それに苛立った相手が銃を乱射してくるけど、私はスケートをするように滑って回避したり、ダブルアクセル等のフィギュアスケートの動きもしたりして少し煽ってみる。

 

あ、実は私は地元の北海道では有望なフィギュアスケートの選手だったんです。だから、空中よりも地面を滑る方が得意なんですよね。なので蒼雪は私にピッタリな機体ですよ。

 

そうやって撃ちまくっていたら、マシンガンが同時に弾切れした。

 

「やば…!?」

 

ここで無防備になったら、ただの的に…!!

 

『Switch to bazooka』(バズーカに切り替えます)

 

しかし、雪がそう言うと両手のマシンガンが消え、すぐにバズーカである【氷砕】が両手に握られた。

 

「ナイスです、雪!!」

 

それをすぐさま相手に向けて撃ち放つと、途中で弾頭が炸裂して散弾をばらまく。

 

「嘘ッ!?きゃあッ!!」

 

それは予想外だったらしく、散弾をまともに受けた相手が吹き飛ぶ。

 

「おお…これは役立ちますね」

 

「でも、後ろががら空きよ!!」

 

そこに後ろからパイルバンカーを構えたラファールが近づいて来るが…

 

『Launch back arm, armed choose Gatling』(背部アーム起動、武装はガトリングを選択します)

 

背中にある日本のサブアームが動き、先端のマニピュレーターにガトリングの【豪雪】を保持すると、それをラファールへと向けて撃ちまくる。

 

「キャアアアアアアアッ!!」

 

近づいていたラファールはそれを回避出来ずに弾丸の雨に晒され、パイルバンカーは破壊されスラスターなども動かなくなったのか地面に落ちていった。

 

「助かりました、雪…」

 

『You`re welcome』

 

やっぱりまだ私は戦闘に慣れてないから、雪がいてくれてありがたいですね…

 

「さて、ここからはしっかりと足止めさせてもらいます…!!行きますよ、雪!!」

 

『OK,My master』

 

正面にガトリングとバズーカを構えた私は、残ったラファールへと集中砲火を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏side

 

「お~お~…2人共、結構やるじゃん」

 

俺は2人の戦闘を見てそう呟いた。

 

あの2機にはAIが積まれてるんだっけ?……つまり、俺といちごの関係を擬似的に再現してんのか。

 

「おいッ!!こっちを見やがれッ!!」

 

「よっと」

 

そんな俺の後ろから、秋羅が剣を振るってくるけどノールックで避ける。だって殺気で分かりやすいんだよな…

 

「これくらいなら、見てなくたって避けられるさ」

 

「このッ!!」

 

その上、少し煽れば簡単に乗ってきて動きが雑になっていく…本当つまらねぇ…

 

「秋羅によくもぉぉぉぉぉッ!!」

 

「ん?」

 

そこに黒髪ポニテの女の声がして、俺へと正面から向かってきたので…

 

「ほいっと」

 

「なッ!!…ガッ!?」

 

「ちょッ!?ほう……ぶはぁッ!!」

 

俺は横へと飛び退き、後ろから来ていた秋羅と正面衝突させてやった。2人はそのままくんずほぐれつな体勢で転がっていく。

 

「おいおい…バトル中にイチャイチャするとか、付き合いたてなのか?兄妹同士で禁断の愛か……ハハッ!!笑えるねぇ…!!」

 

「すまない一夏、篠ノ乃に逃げられた!!」

 

「おう、気にすんな。こっちで片しとくからよ~」

 

謝ってくる姫和に顔を向けずに俺はそう返す。

 

だって向こうが俺より上にいるから、今の角度ですと彼女のお尻やら太ももがハッキリ見えて、めっちゃエロいんやもん。鹿角だってかなり胸があって、動く度に揺れまくって…まともに見たら鼻血吹くかも…

 

『一夏、姫和ちゃん達見てまたスケベな事考えてるでしょ?』

 

「……スンマセン…」

 

しかし、その考えは相棒(いちご)にバレていた。

 

『まったく…!!今、()()()を呼んだからね!!』

 

「合点承知!!」

 

いちごの言葉に俺は篠ノ乃兄妹から離れる。

 

「また逃げるのか!?」

 

「違えよ…」

 

そう言うと同時に、俺達の間に弾丸が降り注ぐ。

 

「な、なんだ!?」

 

「上…!?」

 

2人が上を見上げると、そこには青い戦闘機が飛んでいて、俺に向かってきていた。

 

「来たか…【スカイヴィッター】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクセスコード、スカイヴィッター!!」

 

いちごがコード入力と音声認証を行い、GRIDMANの拡張領域から青い戦闘機を発進させ、機首の機関砲から弾幕を放って一夏と篠ノ乃兄妹を分断させる。

 

「来たな…スカイヴィッター」

 

『待たせた!!合体するぞ、一夏!!』

 

「おうよ!!」

 

スカイヴィッターに搭載されているAI人格(青年男性の声)に合わせて一夏も跳び上がると、垂直飛行してきたスカイヴィッターが彼の背後にやって来て、機首とメインブースターを本体部分から分離し、更にメインブースターは左右2つに別れる。そのメインブースターに一夏は片足ずつ入れて接続する。そして背中に本体パーツをドッキングさせ、最後に機首部分をヘッドギアとして被り目元をオレンジのバイザーが覆う姿となった。

 

これがGRIDMANが2・5世代と言われる理由。本来なら戦闘中でのパッケージ換装は不可能と言われていたのをAIによるコンピュータ制御と、接続箇所を少なくしつつも効率化させたフォルム、そしてパッケージ単体でも戦闘可能にさせた事でそれを実現させたのだ。

 

そしてこれがスカイヴィッターと合体したGRIDMANの高機動形態。その名も…

 

「大空合体……【スカイグリッドマン】ッ!!」

 

「「合体しただとッ!?」」

 

「さあ…こっからが本番だ!!」

 

一夏の言葉に答える様に足と背中のブースターが火を吹き、凄まじき速度で動く。

 

「速い…!!」

 

「皆、撃ちまくれ!!」

 

その速度は白式の瞬時加速に並ぶ程で、一夏でなければ骨が砕けてもおかしくないレベルだ。その速度の中で彼はアクロバットに飛行して弾幕を難なくすり抜けていく。

 

「ハハハハハッ!!遅いッ!!遅すぎるッ!!」

 

その速度のまま、一夏は突き進むと姫和が相手していた打鉄2機の腕をキャリバーで斬り落とす。

 

「なッ!?」

 

「何が起きたのッ!?」

 

「今のは…一夏なのか?」

 

それを確認した一夏は、続けてラファール3機の腕を斬り落とす。

 

「キャア!!」

 

「なにッ!?」

 

「いきなり腕がッ!?」

 

そして次に篠ノ乃箒に狙いを定めると…

 

「悪・行・即・瞬・殺!!」

 

すれ違い様に両手両足にヘッドギアと肩のシールドなど全てを両断して達磨にした後…

 

「これをゴールに向かってシュゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!!!」

 

「アアアアァァァァァァァァァァァァァァァ…」

 

思い切り蹴り、秋羅が使っていたピットまで吹き飛ばしていった。

 

「超エキサイティング!!……てか?」

 

「箒ッ!?この…!!途中で合体するなんて卑怯だぞッ!!」

 

「……いい加減、見苦しいな…」

 

パッケージを装備した一夏に文句を言う秋羅だが、そもそも自分に有利な乱入者達を仲間に付けて襲いかかってきた時点で、秋羅に文句を言う資格はない。

 

「うるさいッ!!正義は俺にあるんだッ!!死ねぇぇぇぇッ!!!!」

 

瞬時加速を使い一夏へと迫る秋羅に、一夏もブースターを全開にして突撃していく。

 

『スカイ…!!』

 

「グリッドォォォォォ…!!」

 

『キャリバー…!!』

 

『『「エェェェェェェェェェェェェンドッ!!!!」』』

 

そして同時に振り下ろされた剣。しかし片腕の秋羅と違い両腕揃っている一夏の一撃に秋羅が耐えられる筈もなく、雪片を弾き飛ばされ一夏の斬撃をモロに喰らった。

 

『白式のシールドエネルギー、エンプティ。よって勝者、織斑一夏』

 

「「「「「やったぁ~!!」」」」」

 

アナウンスに喜びの声を上げる3組。それ以外はあり得ないといった顔で固まっていた。

 

「皆~、応援サンキュ~!!」

 

応援してくれてた3組に手を振りながら、一夏は姫和と聖良と共にいちごのいるピットに戻っていった。

 

「お帰り、3人とも。お疲れ様♪」

 

「おう、ただいま~」

 

「やはり、慣れない物を使うと疲れるな…」

 

「私は実戦事態が初ですから…もうクタクタですよ…」

 

いちごの労いに一夏は軽く答え、姫和と聖良は疲れでISを解除したらその場に座り込んでしまった。

 

「なんか悪かったな?俺のバトルに巻き込んじまってよ…」

 

「気にするな、友を助けたかっただけだからな…」

 

「ええ、私は私情がありますけど助けたかったのは本当ですし…」

 

「…………ありがとよ」

 

そんな2人に一夏は感謝しかなかった。

 

「皆、お疲れ様」

 

そこに一誠がいろはを引き連れてやって来る。

 

「姫和ちゃんと聖良ちゃんは初めての専用機で疲れたろ?事後処理は先生達がやってくれるそうだ」

 

「そうですか……では、私は皆に勝利を伝えて来ますね」

 

聖良はそう言って部屋を出ていく。

 

「では、私も…「あ、姫和ちゃんはちょっと待ってもらえないか?」はい?」

 

姫和も続けて退室しようとするが、それは一誠に止められた。

 

「実は一夏君に頼まれた事があってね。君のお母さんが入院している病院を教えてもらえないかな?」

 

「母のですか?○△病院ですが…」

 

「なら、今からそこに行くよ。外出届けは出してあるから」

 

「はい?」

 

「いいから、いいから……ほら、いちごも一緒に行こうぜ?」

 

「え?う、うん…」

 

置いてけぼりないろはを除く女性陣を尻目に一誠と一夏は2人を連れて、外に止めてあるグリゴリ社の車に乗ると、姫和のお母さんが入院している病院へと向かい出す。

 

「おい、一体どういう事か説明してくれないか?」

 

「私も!!」

 

問いただす姫和達に一夏が答えたのは、彼女が今…最も望んでいる事だった。

 

「龍見さんの所にいる医療が得意な人なら、姫和のお母さんを治せるかもしれないんだ」

 

「え…?」

 

「一応向こうで合流して診察するけど、聞いた限りの病状なら治す事は可能らしい」

 

「ほ、本当ですかッ!?」

 

「まだ確信を持って言えないけど……おそらくね?」

 

「そ、そうですか…!!」

 

「待って、私は話がわかんないんだけど!?」

 

母親が目覚めるかもしれない……それは彼女にとってみれば待ち望んでいた朗報だ。

 

置いてけぼりにされているいちごに、姫和の母親の事を説明し彼女がもらい泣きしている間に病院に到着し、フロントで少し待っているとグリゴリ社の医療担当であるアーシアがやって来た。

 

「お待たせしました、皆さん!!」

 

「悪かったなアーシア、ここまで来てもらって…」

 

「いえ、私でお役に立てる事があるなら全然です!!」

 

「一夏、彼女が?」

 

「ああ、昔俺が背中に大火傷負ったのを、綺麗さっぱり治してくれた人だ」

 

「それほどの腕を…!!」

 

「貴女が姫和さんですね。お母様の事、精一杯やらせてもらいますから!!」

 

「お、お願いします!!」

 

軽い顔合わせをして姫和の案内の元、母親の病室に入るとそこには彼女の面影を感じるが少し痩せこけている女性が、静かに眠っていた。

 

「この人がお前の?」

 

「そうだ…」

 

そう言うと姫和はベッドの傍の椅子に腰かけた。

 

「久しぶり…母さん、今日は友達が来てるんだ。紹介させてほしいから、起きてよ…」

 

優しく髪を撫で、話しかける姫和。いつもだったら、目覚めない事に落胆していたところだったが、今日は違う。今の彼女の声には希望があった。

 

「それじゃ、診察しますね」

 

「いろは、君は外に立って人が入れない様にしててくれ」

 

「承知しました」

 

いろはが外に出ると、アーシアは魔法陣を展開して姫和の母親の体を診察していく。

 

「は?……え?…これは?」

 

「姫和ちゃん、これはグリゴリ社の機密だから内緒にしといてくれ」

 

その光景に呆然とする姫和に一誠が告げ、そのすぐ後に診察が終わる。

 

「どうだ?」

 

「これなら大丈夫です!!」

 

そして自身の神器【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】を出し、そこから緑の光を当てて治療していく。

 

それが1分程続いて、光を納める。

 

「母さんは!?」

 

「大丈夫ですよ♪」

 

気になって聞いてくる姫和にアーシアは笑顔で返答し、母親の方を見るとゆっくりと目が開いていった。

 

「あら…?ここは……」

 

「ッ!!母さん…!!」

 

「姫和?ここは病院かしら…ねえ、何が「母さんッ!!」キャッ!?……もう、どうしたのよ?」

 

久方ぶりに聞く母親の声に感極まった彼女は、そのまま母親に抱きついた。

 

「母さん…!!良かった……目が覚めて…本当に良かった…!!」

 

「…………どうやら、貴女に寂しい思いをさせちゃったみたいね、ごめんなさい…」

 

「ううん!!謝らなくていい!!目が覚めて、こうやって話せるだけで…!!」

 

「そっか……大きくなったわね、姫和…」

 

泣いている姫和をあやす様に撫でる彼女の母親は、優しい目をしつつ目尻には涙を浮かべていた。

 

「それで、そちらの方々は?」

 

「紹介するよ…私の高校での友達と、お世話になる事にした会社の人達なんだ」

 

「初めまして、織斑一夏と言います」

 

「私は星宮いちごです」

 

「彼女が所属する会社の副社長、龍見一誠です。こっちはわが社の医療担当のアーシア・アルジェントです」

 

「初めまして」

 

「そう……この子は良い縁に恵まれたみたいですね。この度は、ありがとうございました」

 

「お礼なら一夏に言ってやってください。彼がウチに打診しなければ、この結果はありませんでしたから」

 

「いやッ!?俺は別に礼なんて…!!」

 

「いや、お前にはとてつもない恩ができてしまった…ありがとう…!!」

 

立ち上がった姫和は、一夏の方を向くと頭を下げた。それに一夏は慌てる。

 

「だから止めてくれって!?俺はただ、家族の事で苦しんでる姫和を助けたかっただけで…!!」

 

「一夏君、ここは素直に受け取っておけ」

 

「ええッ!?ど、どういたしまして…」

 

「ああ…!!」

 

照れ臭くてしょうがなかった一夏だが、この時彼女が見せた笑顔に、これも悪くないと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一応この病院の医師達にも診察してもらい、異常なしと言われ面会時間が過ぎて一夏達は帰ったが、姫和は一誠達と学園側の配慮で外泊が認められたので、この日は病室に泊まる事になったのだが…

 

「ところで姫和、あの織斑君は貴方の彼氏なの?」

 

「は、はあッ!?一夏はクラスメイトで同僚で同じチョコミント好きなだけで…!!」

 

「あら♪チョコミント好きだなんて、貴女と気が合うかもね♪」

 

「か、母さ~んッ!?」

 

「ウフフ♪彼、逃がしちゃダメよ?」

 

「だから違うって!?」

 

寝るまでの間、そうからかわれ続けたのだった。




いかがでしたか?

これでクラス代表決定(巻き込まれ)戦は終了になります。

次回から2話程、設定集をやってクラス代表戦を始めようと思います。

では、また次回でお会いしましょう。


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キャラクター紹介

どうも、疾風の警備員です。

今回はキャラ紹介になります。

多少ネタバレも含みます。

では、どうぞ。


織斑 一夏

 

本作の主人公。第二回モンドグロッソの時に誘拐され、日本の九郎ヶ岳にあった研究施設に送られる。そこで行われていた【最強兵士計画】の戦闘側の被験者となり、戦闘訓練と薬物投与による肉体改造で驚異的な身体能力とサバイバル術を身に付けた。

 

子供の頃は姉の千冬と2人暮らしだったが、そこに転生者である秋羅が介入する事で生活が一変、信じていた人達に何度も裏切られた事で人を信じられなくなっていた。更に研究施設での生活でそれは悪化し、人を信じる事を憎悪しかけていたが、研究施設が襲撃され共に脱出したいちごのお陰で多少は改善されたものの、信じるに値しない相手は一切の興味を失くしてしまう様になった。

 

その後、謎のISに襲われるも研究施設を襲撃した龍見一誠達によって救出、保護され家族の元に帰る事が出来た。

 

秋羅への復讐を誓っていて、ISが起動出来るのがわかると協力者となった龍見一誠が作った【グリゴリ社】の企業代表となって、いちごと共にIS学園に入学した。

 

1人で寝ると過去の出来事に魘されてろくに眠れない為、いちごと一緒に寝ている(寝てる時はエロ要素皆無だが、起きた時にあったりする)

 

性格は優しく気配りができる好青年で、3組での人気度は高い。料理とゲームが趣味で、お菓子に至ってはプロ級の腕前を持ち、たまに作ってはクラスメイトに配ったりしている。年相応にエロい事に興味があるも、耐性がか~な~り低く女性の下着が少し見えてしまっただけで冷静でいられなくなるほど慌てたり、そういう写真や映像を見ただけで鼻血を出して倒れてしまう程(妄想なら問題なし)。なお、上記の性格は一夏が信じられる相手のみで、信じるに値しない相手にはなにも感じたり動じたりせず、手加減も容赦もしない。

 

戦闘ではハマっている某伝説の悪魔狩りのゲームよろしく、相手を挑発しまくって冷静でなくなったところを力技で捩じ伏せるパワー型。単独でも学園トップの実力を誇るが、いちごと組む事で高度な戦略と戦術を駆使しながら戦い、相手に反撃の隙を与えずに倒す最強の戦士となる。それと鍛えられた師匠達(シンフォギア装者)のせいで戦闘中に歌う癖があり、よく単独で歌うのが翼、クリス、マリアの曲。いちごとユニゾンを歌う時は響、翼、クリス、切歌のパートを担当する。

 

 

 

 

 

 

星宮 いちご

 

本作のメインヒロイン。小学6年生の時に誘拐され、九郎ヶ岳にあった研究施設に送られる。そこで行われていた【最強兵士計画】の頭脳側の被験者となり、脳改造と特殊教育で驚異的な頭脳と柔軟な戦略思想を身に付けた。更に脳に埋められたチップと目に投与されたナノマシンによって【盗み見る目(シーフ・アイ)】を獲得。これを使うと視力が通常の3倍になり、脳のチップが放つ特殊な電波で視界に見えるもの全ての情報を手に入れる事が可能となっている。

 

家族と無理矢理離された事で悲嘆していたところに研究施設が襲撃され、織斑一夏と共に施設を脱出。その後、謎のISに襲われるも研究施設を襲撃した龍見一誠達によって救出、保護され家族の元に帰る事が出来た。

 

助けてくれた一夏に恩を感じていて、彼が秋羅への復讐をすると聞いた時にそれをサポートすると決意、彼と一緒にグリゴリ社の企業代表となって、IS学園に入学した。

 

性格は明るく誰にでも優しく接するムードメーカー。料理と食べる事が趣味で一番のお気に入りは一夏の作るイチゴパフェ。本人の腕前も一夏には劣るものの、かなりのもので特に洋食を得意とする。現在は一夏への恩の気持ちが恋心に変わっているが、伝える勇気がまだ持てず、また彼が他の女性でエッチな事を考えている事が分かると、その時は淡々とした声で毒を吐く。

 

1人で寝ると研究施設での事を思い出して、眠る事ができないので一夏と一緒に寝ている。

 

戦闘では一夏のサポートや戦略を担当するブレイン役。シーフ・アイで相手の情報を読み取り、それに合わせた対策や逐一変わる戦場での的確な戦略を作り上げて一夏に伝える事を主とする。また、一夏とは別に歌ったりユニゾンする事もある。単独で歌う時は切歌、調、響の曲。一夏とユニゾンする時は切歌、調、マリアのパートを担当する。

 

 

 

 

 

 

十条 姫和

 

本作のヒロインの1人。IS学園で知り合った最初の人物。母子家庭で父は彼女が産まれる前に他界している。母親は剣術の道場を開いていて、彼女はそこで母親から剣術を叩き込まれた。その腕前は身体強化されている一夏にも負けない程の技量で、いつの日か母親を越える事を目標にしていた。そしてそれだけの自信がついて、いざ勝負を挑もうとした矢先に母親が事故にあったと警察から連絡があり、治療は成功するも昏睡状態となってしまった。最初は落ち込んでいた彼女だったが、当時の学友達に励まされて徐々に調子を取り戻していたところに、学校の検査でISに対して高い適正(A+判定)を出し、政府の薦めでIS学園に入学する事となった。その時に、学友の1人から剣の流派の1つ【タイ捨流】を教わる。

 

そして入学後に一夏達と出会い、数奇な運命でグリゴリ社のテストパイロットとなって、専用機【緑雷】を受領する。

 

母親からの教えで【自分の目で見たものを信じる】ようにしていて、女尊男卑には染まらず男女平等を信条としている。

 

性格は真面目な委員長タイプで、何事にも真剣に取り組み、成績も優秀。少し頭が固い事もあるが、すぐに受け止められる柔軟さも持つ。そして仲間思い。また、大のチョコミント好きで語り出したり歯みがき粉みたいとバカにすると3時間は止まらなくなる。また、エロ系の話題には弱く、顔を真っ赤にして怒り出す。

 

戦闘では緑雷の主武装である刀と体術を用いた高機動近接戦を得意とし、瞬時加速系の技を駆使して撹乱しつつ全速力の突きで相手を仕留めるヒット&アウェイで攻め立てる。必殺技は【連続瞬時加速(リボルバーイグニッション・ブースト)】から放たれる神速の突き【一ノ太刀(ひとつのたち)

 

 

 

 

 

 

 

鹿角 聖良

 

本作のヒロインの1人。IS学園で知り合った2番目の人物。両親と妹の四人家族で実家が和風喫茶を経営している。小学・中学時代とフィギュアスケートの選手で将来のオリンピック金メダル候補とまで言われていたが、中学2年の時に練習中に大怪我をして引退。目標を見失っていた時に学校の検査でIS適正が高い(AA判定)を出して、政府の薦めでIS学園に入学する事となった。

 

そして学園で一夏達と出会い、数奇な運命でグリゴリ社のテストパイロットとなって、専用機【蒼雪】を受領した。

 

性格はしっかりとしたお姉さんタイプ。普段は優しくも、間違いや失敗などにはキチンと指摘する厳しさも持つ。とある理由で女尊男卑者を嫌っていて、そういう相手には小馬鹿にした態度で接し、やや挑発的になる。和菓子作りが得意だが一夏には劣り、いつか和菓子作りで一夏の勝つのを目標にしている。エロネタには寛容で、実は人をからかうのが好きだったりする。

 

戦闘は【蒼雪】に積まれている火器を使った中~遠距離戦を得意とし、足裏のローラーとフィギュアスケートで培った動きで相手を翻弄しつつ攻める移動砲台。更に高速切替で弾切れした武装を瞬時に入れ換えたり、多数あるサブアームに武器を持たせての一斉射で、近寄る隙を与えない。

 

 

 

 

 

 

浅間 智

 

本作のヒロインの1人。IS学園で知り合った3番目の人物で瞳が赤と翠のオッドアイ。実家が神社で本人もそこの巫女を勤めている。幼い頃から直感が鋭く、危険を素早く察知する事が出来る。そして叔父がIS関連の会社を経営している。

 

ISには興味がなかったが、学校の検査で高い適正(A+判定)を出してしまい、本人に行く気はなかったものの政府と、何よりも叔父に強く薦められてIS学園に入学した。

 

性格はちょっぴり天然で苦労人タイプ。たまに的はずれな事を言ってしまい周囲を困惑させてしまうので、学園ではそうならない様に意識している。また、怒らせるとかなり怖く、無言で何処からともなく弓を取り出し、矢尻を外した矢(鉄製)を放ってくる。エロネタには興味津々で、たまに妄想してはそれを文章にしてしまう事がある(実家の部屋には約300枚ほど保管されている)。抜群のプロポーションを持ち、ISスーツを着たら一夏が鼻血を吹いて卒倒する程。姫和からはその胸を羨ましがられている。

 

 

 

 

 

 

環 いろは

 

本作のヒロインの1人。グリゴリ社で作られた【自動人形(オートスコアラー)】と呼ばれる生体ロボット。元は違法研究所で作られたある人間のクローンで、度重なる実験の影響で肉体が腐り初めていたところを救出され、臓器や脳を人形の体に移植する事で生き延びた。最初は自己というものが無く、言われた事をするだけだったが、龍見一誠・響夫妻の献身で自己を手に入れ、今の性格となる。

 

型式番号はGAT-X168

 

人間の臓器と脳を持っている為、ロボットながらIS適正(B+判定)を持っているが、肉体が人間ではないので通常の機体ではISコアが反応せず、彼女用に調整された専用機以外乗ることは出来ない。

 

代表決定戦後にIS学園に編入、一夏達グリゴリ社の機体の整備を一手に担当する。

 

性格はおしとやかなお嬢様タイプ。どんな相手にも丁寧口調で話し、与えられた仕事もテキパキとこなしていく。パソコンなどのコンピューターにも強いが、スマホに関しては殆ど使うことが出来ず、メールを開くどころか通話のやり方すら分からない始末。また、純粋に育った為にエロネタが通用しない。

 

戦闘に関してはオートスコアラーとしての力とシンフォギア装者達直伝の戦闘技術、グリゴリ社で作られたいろはの専用機でGRIDMANの二号機【GRID KNIGHT】を纏い、サポート中無防備になるいちごの護衛や一夏のサポートにつく。その身体能力は凄まじく、生身でもISのライフル弾やバズーカの砲弾を跳ね返せる上、最近は全身に施された特殊加工でビームすら殴れる様になった。

 

尚、特技はシンフォギア装者達の声まねである。

 

 

 

 

 

 

紺野 木綿季

 

IS学園の教師で、一夏達の担任教諭。元日本代表候補生で千冬と同期。日本代表決定戦では千冬と同じく剣だけで戦い、僅差で負けたがその戦いぶりから【絶剣】と呼ばれるようになる。

 

第二回モンドグロッソの時は一夏の護衛を担当したが、誘拐されてしまい、更にその時の警備責任者の態度に激怒して千冬に連絡した。その事が原因で彼女は決勝を辞退し、【裏切り者】と呼ばれる様になってしまった事を悔いている。後に代表候補を辞めてIS学園の教師となった。

 

その後、千冬がIS学園の教師へと誘い、彼女から一夏の事を再び頼まれた時に、同じ失敗は絶対に繰り返さないと心に誓っている。

 

なお、ボクっ娘である。

 

 

 

 

 

 

エイミー・クリサンセマム

 

IS学園の教師で、一夏達の副担任。元はIS選手だったが、すぐに才能の限界を感じてオペレーターに転向。そこで頭角を現してIS学園からスカウトされて教師となった。

 

授業は座学を担当、解りやすく面白いと生徒の人気は高い。たまに社会のマメ知識や数学の裏技なども教えたりしている。

 

選手時代は大のスピード狂で、テンペスタを愛用しスピード極振りの設定にしていたとか、機体から鎌鼬が発生してアリーナを傷だらけにしたとか、音速すら置いてけぼりにしたなどの逸話がある。

 

その時のモットーは【速ければ万事OK♪】だとか…

 

 

 

 

 

織斑 千冬

 

IS学園の教師で1組の担任教諭。一夏の姉であり、第一回モンドグロッソ覇者の初代ブリュンヒルデ。

 

幼い頃に一夏と2人きりになり、アルバイトや近所の人の協力で暮らしていた。そこに転生者である秋羅の介入によって生活が一変する。そんな中でも一夏だけは絶対に守ると誓い、必死に耐えてきた。

 

白騎士事件以降、IS操縦者として活躍し始めるも、周囲の状況が一夏を傷つけているのに、なにも出来ない自分に内心腹が立っていた。

 

そして第二回モンドグロッソでの決勝放棄で国民の怒りを買い、裏切り者として扱われたのを気に日本代表を引退。元凶である秋羅に絶縁を叩きつけた上で家を売却。その資金を元手に一夏を探す旅に出た。

 

その後、龍見一誠達によって一夏と再会した時は、涙を流して喜んだ。

 

それから、秋羅への復讐を誓う一夏をサポートするためにIS学園の教師として就職。秋羅の担任となり、彼の情報を一夏に渡したり、彼の行動を妨害する役割になる。

 

 

 

 

 

龍見 一誠

 

一夏が所属するグリゴリ社の副社長。一夏達とは違う世界の住人で、とある人物から秋羅の抹殺を頼まれ、仲間と共にこの世界にやって来た。

 

しかし、秋羅は中々見つからず、代わりに違法な研究施設ばかりを見つけ、秋羅に利用される前にそれらを潰していた時に一夏といちごに出会う。

 

境遇の近い一夏に共感を覚え、なにかと手助けする。

 

既婚者であり、息子が1人いる。




いかがでしたか?

今後、設定の変更や追加があったら、追記していきますので。

では、次回でお会いしましょう。


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主人公側機体設定

どうも、疾風の警備員です。

今回は主人公側の機体設定になります。

こういうのを考えるのは苦手で、おかしな部分があるかもしれません。

それでも良ければどうぞ。


GRIDMAN

 

 

種別

 

試作汎用型2・5世代機

 

 

固定武装

 

左腕熱線砲《グリッドビーム》

左腕レーザーソード《グリッドライトセイバー》

携帯変形銃《ファイズフォンX》×2

 

 

 

特殊武装&パッケージ

 

電光大斬剣《グリッドマンキャリバー》

腕力強化パッケージ《バトルトラクトマックス》

火力強化パッケージ《バスターボラー》

速力強化パッケージ《スカイヴィッター》

 

 

操縦者

 

織斑一夏・星宮いちご

 

 

 

グリゴリ社が開発した織斑一夏と星宮いちごの専用機。

 

本機はISをダウンサイズさせつつ、出力向上を図った機体で、成人男性サイズの全身装甲までダウンサイジングに成功。出力も第3世代に勝る性能となったが、拡張領域へのアクセスとセンサー類が機能しない欠陥を持ってしまいお蔵入りしていたが、一夏といちごの事を知った開発者が機体を2人で動かす仕様に改良、操縦者(アタッカー)補助者(サポーター)に機能を分担・相互連携させる事によって欠陥を克服して操縦を可能とし、日の目を見る事となった。

 

試作機であるため固定武装は最小限だが、機動性はかなり高く操縦者によってはアクロバティックな動きすら可能とする。後に右腕にライドウォッチホルダーが付けられ、そこにファイズフォンXを2つ、新たに装備した事で戦闘力も向上した。

 

補助者は投影モニターから、操縦者の視界データをリアルタイムで観測でき、そこから操縦者の視界モニターに必要なデータの表示や作戦の指示出し、武装の展開を行う事を主としている。

 

また、機体の開発コンセプトの1つに【パッケージの即時換装】があり、パッケージの性能を極端に特化させ余分な部分を徹底排除、更に変形機能とAIを搭載する事で単独での戦闘を可能とさせ、パッケージからのサポートを受け、その隙に換装している。

 

本機は操縦者と補助者の連携によっては機体性能以上の力を発揮できたり、ガタ落ちしてしまう非常にじゃじゃ馬な機体となっていて、これにより織斑一夏と星宮いちごでなければ本機の真価を発揮する事はできない。

 

また、この機体には更なる仕掛けがあるらしい。

 

 

 

 

 

 

緑雷(りょくらい)

 

 

種別

 

高機動近接型2・5世代機

 

 

武装

 

日本刀型近接ブレード《雷切丸》×3

左右腕部内蔵式散弾砲《雷火》

 

 

操縦者

 

十条姫和

 

 

グリゴリ社が日本の第2世代量産機【打鉄】を改良して作り上げた機体。

 

本来は防御重視の機体だが、腰のリアスカートと肩のシールドを排除。そこにフレキシブルブースターを搭載、更に背中や脚部にもブースターを増設する事で高速戦闘に特化した仕様に変更した。

 

この機体の開発コンセプトは【高等技術の簡略化と効率化】で、特に瞬時加速系を主目的としている。

 

その手段として機体にサポートAIを搭載。AIに瞬時加速の技術を教え込ませる事でその発動を手助けさせている。これにより、技術の早期習得と消費を3分の1にする事に成功している。

 

AIの性格は寡黙な男性で、操縦者が付けた愛称は【(らい)

 

武装は少ないがその機体速度と瞬時加速を生かしたヒット&アウェイを得意とし、相手から見れば雷の様に近づき、雷の様に距離を離される感覚に陥ってしまう。その代わり防御力がかなり落ちているので、1発の被弾で形勢を逆転される弱点も抱えている。

 

 

 

蒼雪(そうせつ)

 

 

種別

 

重装甲重火力型2・5世代機

 

 

武装

 

マシンガン【風花】×2

バズーカ【氷砕】×2

散弾銃【冬閃】×2

ハンドガン【舞雪】×2

アサルトライフル【氷解】×2

キャノン砲【殴冬】×2

ガトリング【豪雪】×2

4連装ミサイルランチャー【氷帝】×2

腰部多連装式小型ミサイルユニット【爆氷】

予備弾装 各々×10

高周波振動式近接ダガー

肩部フレキシブルシールド×2

初期シールド×2

 

 

操縦者

 

鹿角聖良

 

 

 

グリゴリ社がフランスの第2世代量産機【ラファール・リヴァイヴ】を改良して作り上げた機体。

 

緑雷と同時期に開発され、本来のラファールが持つ武装をシールド以外全て外し、グリゴリ社が作り上げた実弾系射撃武装を装備。更に装甲を増設する事で火力と防御力を強化した機体となっている。

 

敵の攻撃での暴発を防ぐ為に、殆どが拡張領域に収納されているので、相手に合わせて展開時に武装も選択する。また、重装甲によって低下した機動性を補う為、脚部に地面滑走用のローラーが付いていて、地面を滑る様に移動できる。

 

戦闘時は、両腕両肩のシールドによる鉄壁の防御と両手と背部に4つあるマルチアームの計6本の腕に、武装を持たせての制圧射撃を得意としていて、ローラーの機動力も合わさり、その姿はさながら移動砲台である。

 

機体の開発コンセプトは緑雷と同じく【高等技術の簡略化と効率化】で、こちらは高速切替を主目的としている。これに合わせてサポートAIを搭載、補助によって状況に合わせての武装変更や弾薬補充を可能としている。

 

AIの性格は冷静な女性風。操縦者が付けた愛称は【(ゆき)

 

しかし、機体重量故に空中では機動力に欠け、1度でも敵の接近を許してしまえば距離を離すのが難しく、武装もダガー1本と貧弱なので圧倒的不利になってしまう為、注意が必要である。

 

 

 

 

GRIDKNIGHT

 

 

種別

 

試作汎用型2・5世代機

 

 

固定武装

 

右腕熱線砲【グリッドナイトストーム】

ビーム光輪【グリッドナイトサーキュラー】

胸部エネルギー砲【ナイト爆裂光破弾】

 

 

特殊武装&サポートマシン

 

電撃大斬剣【グリッドナイトキャリバー】

サポートマシン【ダイナソルジャー】

サポートマシン【ダイナウイング】

サポートマシン【ダイナストライカー】

サポートマシン【ダイナダイバー】

サポートマシン【ゴルドバーン】

 

 

使用者

 

環いろは

 

 

いろはが纏う自動人形用に調整された専用機でGRIDMANの二号機にあたる。大まかな性能は変わらないが、GRIDMANより攻撃力と機動性が高く、代わりに防御力が低くなっている。また、こちらはGRIDMANの実戦データから、欠陥である拡張領域とセンサー類のプログラムが見直され、1人での使用が可能となっている。

 

外見は紫とダークオレンジ、グレーの三色で顔の左右にフェイスガード、目にはワインレッドのクリアバイザーが装備され、その奥にGRIDMAN同様のツインアイがある。

 

戦闘では機動性とアクロバティックな動きを生かした格闘戦を得意とし、敵の攻撃に対しては【当たらなければどうという事はない】を地でいく。

 

他にもAI搭載型支援機である【ダイナシリーズ】との共闘も視野に入っており、汎用性はGRIDMANにもひけを取らない。

 

 




いかがでしたか?

次回からはクラス代表戦の話に入ります。

では、次回でお会いしましょう。



後、出来れば感想をください……


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転・入

どうも、疾風の警備員です。

久々にこちらの作品に感想が来たので、筆が乗りました。

では、どうぞ。


姫和母の病院から戻った一夏達は、迎えに出ていた木綿季から試合での労いの言葉と、その後の事後処理について簡単な説明を受けてから、自室に戻った。

 

その内容は曰く、試合に乱入してきた篠ノ乃箒以外のIS操縦者達は全員強制退学・国際IS法違反により逮捕となった。今回の件は学園でも重く受け止められ、生徒達への見せしめと再発防止の為にこの処置となったらしい。

 

そんな関心のない相手の事など、どうでもいいとしか思わない一夏だったが、次に聞かされた篠ノ乃箒の対応にいちご共々頭を抱えた。何故なら……

 

「篠ノ乃箒はお咎め無しって……前回に続き、いくら何でも甘過ぎじゃねぇ?」

 

「だよねぇ…」

 

ベットの上で横になる一夏に膝枕しているいちごも、呆れた様なため息を吐く。実際、それを説明している木綿季も、呆れと疲れが混ざったため息を吐いていた。

 

篠ノ乃箒に関しては当初、乱入してきた他のIS操縦者より軽い反省文200枚と、残り在籍中は毎日奉仕活動にIS使用の厳重監視となる予定だった。何故他の乱入者と比べて軽くなっていたのかというと、彼女自身が保護対象だからだ。そんな彼女を退学にして誘拐されたとあれば、あの篠ノ乃束(天災シスコン)が許す筈もない。最悪、全世界の核ミサイルを暴発させるなんて事も辞さないだろう。それを例によって恐れたIS委員会の横槍によって、またしても不問となってしまったのだ。

 

「これだと、彼女が反省する事は無さそう…」

 

「無さそうじゃなくてしねぇよ。ま、襲ってくるならやり返すだけだ」

 

「どのぐらいで?」

 

「倍返しだ」

 

そんな某ドラマの名言を言って、一夏はいちごの膝から頭を上げる。その顔には怒りが浮かんでいる。

 

「それに加えて、壊した教員機の代わりはグリゴリ社で最新鋭機を無償提供しろとか…こっちの技術力目当てだろ?勝手に巻き込んどいてIS委員会のヤロウ…ふざけんなっての」

 

そう、篠ノ乃箒が乗っていて一夏が再起不能までバラした打鉄は当然廃棄処分となり、IS委員会は代替え機をグリゴリ社に無償提供しろと言ってきたのだ。それに一夏は憤慨していた。

 

「でも、よく龍見さんはOKしたね?」

 

「一応理由を聞いたら、機体は提供してやるけど修理やパーツ交換については何も書いてなかったから、オーダーメイドや高級パーツ使いまくりの機体を作って修理やメンテを有料化。その都度、全額委員会に請求してやるってさ」

 

「わあぉ…御愁傷様」

 

しかし、穴だらけの契約だったらしい。グリゴリ社はその穴を突いて、委員会からむしり取る事にしたようだ。

 

「おまけに性能は最新鋭機に相応しい超ピーキー仕様にして、千冬姉か木綿季先生ぐらいしか乗れない様にするって」

 

「それって安全なのかな?篠ノ乃束博士とか侵入者に奪われたり…」

 

「大丈夫だよ。起動者登録には龍見さんの世界の言語……悪魔語だっけ?それを使った手書きのコード入力が必要だし、ブリュンヒルデ級の腕がないと、まともに飛ぶ事すら出来ない程の反応伝達速度にするらしいぜ?」

 

「うん、なら安全だね」

 

最初は奪われる危険性を危惧するいちごだったが、そのトンデモセキュリティや性能に逆に安心した。確かに、この世界に無い言語を読み解くのは不可能に近く、千冬や彼女と剣で互角に渡り合った木綿季のような超人が安売りレベルでいたら怖すぎる……

 

「さて、愚痴はここまでにして寝るか。明日は()()が来るし…」

 

「そうだね……ふわぁ…私も眠くなっちゃった…」

 

会話を終えた2人は寝間着に着替えると、1つのベッドで寄り添い合って横になった。

 

 

 

念のためにもう一度言おう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 

ここだけ見れば、2人は既に恋人同士だとか夜の営みだとかのエロい想像が浮かんだりするかもしれないが、その答えはどちらも違う。

 

2人がこうしているのは……これが2人が【まともに眠れる唯一の方法】だからだ。

 

一誠達によって研究施設から救出され、家族の元に帰ったその日の夜。家がない一夏と千冬は、しばらく星宮家に厄介になる事になった。入浴を終え、貸し与えられた部屋で一夏と千冬が眠りに着いてすぐの事だった…

 

 

一夏が激しく魘され始めたのは。

 

 

それに気づいて慌てた千冬が一夏を起こし、荒い呼吸を整えさせてから話を聞こうとした時、別の部屋から悲鳴が響き渡った。賊の侵入かと思った千冬は近くに立て掛けておいた木刀を手に部屋を飛び出し、悲鳴が起きた部屋に向かうと……そこには両親と弟に支えられながら自身を抱きしめて泣いているいちごがいた。

 

一夏といちごは最初、悪夢を見たからと言って落ち着いたらもう一度寝ようと瞼を閉じるが、しばらくするとまた魘されて飛び起きる。それを夜中に何度も繰り返し、気がつくと2人はまともに眠れぬまま、夜明けを迎える事となった。

 

さすがに異常を感じた大人達は嫌がる2人を病院へ連れていき、医者に診てもらう事にした。その診断結果はPTSD…所謂【心的外傷後ストレス障害】の一種と診察された。

 

心的外傷後ストレス障害とは、生死に関わる様なトラウマ等による強烈なストレスによって引き起こされる病で、事件の記憶が突如甦るフラッシュバックや其れによる不眠、原因となったものへの回避行動などの症状がある。

 

2人が眠れないのは、捕まっていた時の記憶がフラッシュバックしていた為であり、病院を嫌がったのは人体実験された研究施設を想起する物が多かった事が原因であった。

 

それから星宮夫妻と千冬は協力して、2人が眠れる方法を探した。時に寝具一式を安眠仕様の物に取り替えたり、安眠に効くアロマキャンドルを焚いたり、場合によっては市販の睡眠薬等を試してみるも効果はなく、時間ばかりが過ぎていき、2人も見るからに痩せていった。

 

そんなある日、りんごが洗濯物を取り込んでリビングで畳もうしたら、一夏といちごがソファーに寄り添って寝ていたのを見つけた。最初はまた悪夢に魘されるのではないかと心配したりんごだったが、幾ら時間が経とうとも魘される事はなく、それどころか穏やかな顔で2人は眠り続けたのだ。

 

これに驚いたりんごは、すぐさま千冬に連絡。やって来た彼女との話し合い、夕方に起きた2人に事情を話すと、2人も研究施設にいた時はあまり眠れなかったが、脱走して野宿した時はよく眠れた事を話してくれた。

 

それからは、寄り添う組み合わせを替えて何度か試したが、一夏といちごの組み合わせ以外は効果がなかった。

 

ゆえに、一夏といちごは2人で寄り添って眠る事が安眠の為の唯一にして絶対の条件となった。

 

一応、思春期である一夏といちごは、なるべくお互いを配慮して、寝る前に服装等をキチンとし、エロい事が起きないように背中合わせにしている為、今のところ、お互いに安心して眠れている。

 

「んぅ…?って!?なんで俺、いちごの胸に顔を埋めてどわぁッ!!」ドッシ~ン!

 

まぁ、寝相などによるハプニングについては、どうしようも無いが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、さっきは悪かった!!」

 

「いいよ別に、ワザとじゃ無いんだし…」

 

「だけどよぉ…」

 

「なら、今日のお昼に食堂のパフェを奢る事」

 

「了解、それくらいなら大丈夫だ」

 

あの後、一夏がベットから墜ちた音で目覚めたいちごに、落ちた理由を話し、謝罪した一夏をいちごは許して一緒に朝食を作り、食べて片付けを終えてから揃って寮を出る。そして、教室までの間に一夏は朝の事を謝り続けていた。いちごは事故だと判断していたので気にしてなかったが、一夏はお咎め無しなのを許せないらしく、それならとデザートの奢りで手を打つ事にした。

 

(せっかくだから、一番高い【旬のフルーツ盛りだくさんパフェ】にしよ~っと♪)

 

しかし、そこでちゃっかりしているいちごだったりする。

 

そんな2人が教室に入ると、中はクラスメイトの半数以上が来ており、何やら話し込んでいた。

 

「なんだなんだ?随分楽しそうだな?」

 

「皆、転入生の事を話しているんだ」

 

それが気になる一夏に話しかけてきたのは、姫和だった。

 

「おう姫和、おはよう」

 

「おはよう、姫和ちゃん」

 

「ああ、おはよう。昨日は本当にありがとう…何度感謝してもしきれない…」

 

「いや、だからそれはもういいって!?」

 

昨日の事でまだお礼を言う姫和に、一夏はタジタジとする。

 

「何を言う。もう目覚めないと言われていた母さんを目覚めさせてくれたんだ。私としては、これ以上ない幸せな事だったんだぞ。それをしてくれたお前には、感謝しかない」

 

「だから、礼ならもう充分してもらったからさ!?」

 

「フ…なら、これ以上は止めておこう。私もお前を困らせたい訳じゃないしな。だが、何かあった時は遠慮なく相談してくれ。私も全力で付き合ってやる」

 

「ああ、そん時は頼むよ……ところで、なんでさっきから俺と目を会わせようとしないんだ?」

 

「うぐッ!?」

 

そこで一夏からの疑問に、体をビクッ!!と強張らせる姫和。そう、先程から彼女は一夏への視線を微妙にずらしていた。

 

「あ、それ私も気になってたの。なんか微妙に視線をずらしているというか…顔も少し赤いし…?」

 

「大丈夫か?病院で病気でも貰ってきたんじゃ…」

 

「いや、何でもないぞ!?」

 

「そっか」

 

「ふ~ん…?」

 

「ア、アハハ…」(くそぅ~!!母さんがおかしな事言うから、変に意識してしまう…!!何か…!!何か話を変えねば!!)

 

姫和はそんな内心を悟られぬよう話題を探し、今さっきのネタを使う事にした。

 

「そ、そういえば!!…お前達は転入生について何か知ってるのか?」

 

「ああ、知ってるぜ」

 

一夏としては、それが自分の知り合いだから断言できた。しかし、ここで予想外な言葉が姫和から放たれる。

 

「おお…!!それは()()()()()()の内、誰なんだ?」

 

「「え?」」

 

その質問に、一夏といちごは一瞬思考が止まる。だが、姫和は確かに3人の転入生の転入生と言った。つまり、今日来る転入生は3人もいるという事だ。

 

「え~と……1人は知ってるけど、他はどこに来るんだ?」

 

「確か噂では、2組に1人と3組に2人らしいが…内、企業代表が1人に国家代表候補生が1人らしい。残った1人は企業からの推薦だとか…」

 

「へぇ~…」(いちご、どう思う?)

 

(たぶん、企業代表の方はスパイだと思った方が良いよ。狙いはきっと…)

 

(俺か秋羅のデータ……か)

 

(違うかもしれないけど、注意だけはしておいて)

 

(了解)

 

2人は目線だけで会話し、とりあえずの対策を決める。

 

「それで、お前達が知っているのは誰なんだ?」

 

「ああ…それなら姫和も1度会ってるぞ?」

 

「え?……うーむ…」

 

一夏の言葉に頭を捻る姫和だったが、そこで始業のチャイムが鳴り、全員が席に着いてすぐにエイミーが入ってきた。

 

「皆さん、おはようございます」

 

「「「「「おはようございます!!」」」」」

 

「はい、元気で良いですね♪それでは出席を取る前に……このクラスに加わる新しい子達を紹介しまーす!!」

 

「「「「「「イエェェェェェェェイ!!」」」」」」

 

「それでは、2人とも…入ってきてくださーい!!」

 

エイミーの言葉にテンションが爆上がりする3組。そしてエイミーに言われて入ってきたのは、以前グリゴリ社で出会った自動人形(オートスコアラー)の少女【いろは】と、腰まで伸びた薄い紫のストレートヘアに細身のリボンを着け、少し気弱そうな顔を緊張で強張らせ手と足が左右一緒に出ている少女だった。

 

「其れでは2人とも、自己紹介をお願いしますね?」

 

「畏まりました」

 

エイミー先生の言葉にいろはが答えて、一歩前に出る。

 

「ただいまご紹介にあずかりました、グリゴリ社所属の自動人形…【環 いろは】と申します。不束ものですが、よろしくお願いいたします」

 

「しつも~ん!!おーとすこあらー?…って何?」

 

「そうですね……簡単に言えば生体ロボットでしょうか?」

 

「ええッ!?全然ロボットに見えない!!」

 

質問した少女はいろはの見た目に驚く。それもその筈、今の彼女は体に人工皮膚を着けているので、前に見れた球体間接などが見えなくなっているので普通の人間と変わらないからだ。そんな見た目でロボットと言われても、信じがたいだろう…

 

「では、証拠をお見せしましょう」

 

そう言うと、いろはは両手を自分の頬に当てて植えに押し上げようとする…

 

「ちょいストップ!!」

 

が、その前に飛び出してきた一夏に頭を上から押さえつけられた。

 

「何をするのですか、一夏様?」

 

「いろは……お前今、何やろうとした?」

 

「え?ここはロボットらしく、首をこう…ポーンと」

 

そう言って両手を上に上げるいろはに、一夏はため息を吐く。

 

「ああ、確かにそれはロボットらしいけどよ……さすがにリアルでやったらトラウマもんだぞ…」

 

「そうなのですか?自己紹介で聞かれたら、こうした方がインパクトがあると、響様に教わったのですが…」

 

「何教えてんだよ、響さん…!!」

 

それが師匠の入れ知恵だった事に呆れる一夏。

 

「とりあえず、首を外すのは禁止だ!!」

 

「では、腕ならよろしいでしょうか?」

 

そう言ういろはの右手には、既に外した自身の左腕が握られていた。

 

「外す前に言って!?」

 

「「「「「アハハハハハハ!!」」」」」

 

段々とコント染みた2人の会話に笑い出すクラスメイト。いろはに対して、変な感情を抱いている者がいない事に一夏は安堵した。

 

「はいはい、コントはそこまでにして織斑君は席に戻ってくださいね。次に…マユカさん、自己紹介をお願いします」

 

「は、はいぃ!?(ガッ)はう!?」(ビッターン!!)

 

エイミーに促され、一歩前に出ようとしたマユカと呼ばれた少女だったが、何もない床で足を縺れさせて顔面から派手に転んだ。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「イタタ…はい、大丈夫ですぅ…」

 

転んだ時に打ったのか鼻と額が赤くなっていたが、慣れているのかすぐに立ち上がり自己紹介を始める。

 

「はは初めまして!!【マユカ サナギ】と言いましゅ!!グリューネ社の企業代表で専用機持ちです!!え、えっと…!!よ、よろしくお願いしま(ガン!!)いったあ!?」

 

途中どもったり噛んだりしていたが、何とか無事に終わりそうと思ったその瞬間、お辞儀をしようと頭を下げるが、下げすぎて前の席の子の机に思いっきり頭をぶつけていた。これまでの出来事を見て3組の全員が…

 

((((((あ、この子ドジっ子だ…))))))

 

そう心の中で思った。

 

「……いちご、アイツが本当にスパイなのか?」

 

「え、え~っと……アハハ…」

 

そして最初はスパイかもと疑っていた一夏といちごも、この光景には困惑しかない。

 

「はい、色々ありましたが皆さん仲良くしてくださいね~。それでは、授業を初めますよ~。最初は実技の授業になりますから、更衣室で着替えて【第一アリーナ】に集まってくださいね~」

 

そしてエイミーが声かけをして空気を正し、新たな仲間と共に、何時も通りの授業が始まるのだった。




いかがでしたか?

という訳で、いろはと新キャラ参戦となりました。

次回はISの実技授業と2組の転入生登場回です。

更新は……感想次第です。

では、次回でお会いしましょう。


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実・技

どうも、疾風の警備員です。

今回は実技の授業の内容を書いてます。特に大きな変化のない日常回です。


よければ、暇潰しにどうぞ。


一夏side

 

今日は俺が待ちに待った実技のある日。エイミー先生の指示を聞いた俺は、素早く男性用更衣室へと向かうために教室の窓から飛び降り、眼下の木を使って勢いを殺しつつ着地。それから障害物をパルクールの要領で華麗に飛び越えたり、避けたりしながら男子更衣室に到着!!

 

元々ISスーツは着てたから、制服だけ脱いですぐにアリーナに出た。

 

「よっしゃ!!一番乗りィッ!!」

 

「残念、君は2番目だよ」

 

そして誰もいないアリーナに思わずガッツポーズする俺だったけど、既に紫色のジャージに身を包んだ木綿季先生が俺の隣に立っていた。

 

「木綿季先生…もう来てたんですか?」

 

「準備とか色々あるからね。それより…」

 

そう説明する木綿季先生の雰囲気が突如変わった。具体的に言うと、おっかないオーラに額に青筋が浮かんでいる感じ……ってメッチャ怒ってる!?

 

「織斑くぅ~ん?エイミー先生から聞いたんだけど……此処に来る時、教室の窓から飛び降りたんだって~?」

 

「えッ!?あ、いや~……その~…」

 

そして木綿季先生は一歩一歩、ゆっくりと俺に近づいてくる。その距離が縮む度に、俺に掛かるプレッシャーが強くなる。

 

「ボク達の教室が3階にあるの……知らない訳ないよねぇ~?そこから飛び降りるなんて、危険なのも解る年齢でしょ~?なのに…何でそんな事したのかなぁ~?」

 

「それは…その…」

 

ヤベェ……迫力ありすぎて言い訳が思い浮かばねぇ!!

 

「とりあえず、皆が来るまで腕立て伏せしてよっか?」

 

「え!?それって……何回までッスか?」

 

「ん?皆が揃うまでだよ♪」

 

「…途中できゅうけ「ん?」イエスマム!!直ちに腕立て伏せを開始します!!」

 

これ以上何かを言えば、更に酷い目に合うと思った俺は言われた通り全員が揃うまで腕立てした。回数?たぶん500は越えたよ…

 

 

 

 

 

 

「まったく…あんな事するからだよ?」

 

「おっしゃる通りで…」

 

ようやくクラスメイトが揃った事で、腕立て伏せから解放された俺は、いちごから再度お説教された…

 

「今度からはちゃんとしたルートで行くこと、いい?」

 

「うっす…」

 

さすがにこれ以上、木綿季先生を怒らせたくねぇよ…笑顔で静かに怒りながらにじり寄ってくるから、感じるプレッシャー半端なかったぞ…

 

「それじゃお説教はここまでにして…ねぇねぇ、どう?」

 

ようやくお説教を終えてくれたいちごは、俺から少し距離を取ると両腕を広げる。

 

そんな彼女の今の格好は自身のパーソナルカラーであるパステルピンクのISスーツを着ている。しかし、男の俺から見ればどう見てもその形状はスク水だ。そしていちごの体は会った頃に比べると出る所は出て、引き締まる所は引き締まっているのでかなり魅惑的だ。

 

「お、おう…!!似合ってるよ…!!」

 

なので、まっすぐ見てると鼻血を噴きそうだったから、若干視線を反らしながら答えた。

 

「えへへ…そっか♪」

 

俺の答えに嬉しそうに笑顔になるいちご。その笑顔が眩しすぎたので、視線を別方向に向けると姫和と鹿角がこっちにやって来ていた。

 

因みに彼女達もISスーツ姿だ。姫和の色は深緑で、遠目からでも解るほど足腰が引き締まっていて目線が行きそうになるのを堪える。そして鹿角は水色のISスーツで、いちごより胸が大きかった。マジマジとは見れないがうん、眼福。

 

「何をやってるんだ、お前達は…」

 

「あ、姫和ちゃんに聖良ちゃん。今、一夏にISスーツの感想もらってたの♪」

 

「へぇ~?」

 

それを聞いた鹿角は面白い事を聞いたと思うような笑みを浮かべると、俺の前に立ち…

 

「織斑君、私はどうですかぁ?」

 

そう言って両腕で自身を抱くようにして下から胸を持ち上げ、少し前屈みになって俺を見上げる様な蠱惑的な笑みでポーズをしてきた……って!?

 

「お、おおおおおおおおお前!?なんてポポポポーズを…!!」

 

いくら何でもエロ過ぎるだろッ!?ヤバイ…!!視線が胸から離せない!!おっと、鼻血が…

 

思わず鼻血が出そうになるのを、右手で顔下半分を隠す事で何とか防いだ。

 

「何破廉恥な格好をしとるんだ、お前はッ!?」

 

「あ痛ッ!?」

 

そこに顔を真っ赤にした姫和が鹿角にチョップを喰らわせて、鹿角は頭を押さえながらしゃがみこむ。

 

「少しは慎みを持て!!」

 

「うう~…ちょっとからかってみただけなのに…」

 

「まったく…!!」

 

「助かったぜ、姫和…」

 

「気にするな」

 

そんな彼女にお礼を言って、改めて彼女の姿を見る。

 

うん、胸は少し足りないけど、やっぱり腰から足にかけてのラインは見事だ。剣術で鍛えられた健康的な脚線美は、胸派である俺でも目を奪われてしまう…それに、先程の鹿角の胸を強調した姿も脳裏に浮かんでくる………うん、あれは素晴らしかったな!!

 

「イチカ…?」

 

「はッ!?」

 

しかし、そんな思考に気づいたいちごから、多少ドスの効いた声を掛けられ、顔を向けるとメチャクチャ蔑んだ視線を俺に向けていた。

 

「今、姫和ちゃん達のエッチな姿を思い浮かべてたでしょ…?」

 

「いや、これは思春期男子の正常な反応と言いますか……」

 

「………………このスーパームッツリドスケベ」

 

「ぐはッ!?」

 

いや、もうムッツリなのは認めるけどよ…そうハッキリ言わんでください、貴女に言われると心が折れます…

 

いちごの言葉でorzってたら…

 

「どうされましたか、一夏様?」

 

そう名前を呼ばれ、顔を上げれば俺を覗き込んでるいろはとその後ろにサナギさんがいた。

 

因みにどちらもISスーツ姿で、いろははいちごより色の濃いショッキングピンクで、サナギさんはライムグリーン色だ。

 

「別に、一夏がムッツリだっただけだよ!!」(プイッ)

 

「ああ、そういう事でございますか…」

 

「……その通りです、ハイ…」

 

なんか、いろはにまで呆れられた気がするけど……事実だから反論できねぇ…

 

「てか、何でいろはもISスーツなんだ?」

 

いろははオートスコアラーである為、体を動かす仕組みが人間とは違うのでISを操縦する事が出来ない。まあ、特殊な事情で適正はあるんだけど…

 

「たとえ乗れなくても、授業の一環なので一応着替えるよう、エイミー教諭から言われてますので」

 

「なるほどな…」

 

それなら納得だな。1人だけ制服ってのも仲間外れみたいだし…

 

「それで、サナギさんと一緒なのはどうして?」

 

「あの、それは偶然…!!」

 

「実は……此処に来る途中、階段の踊り場で目を回して倒れているのを発見いたしまして…おそらく、段差を踏み外して転がり落ちたのだと推測します。それで安全を兼ねて私が同行を…」

 

「「「「ああ~…」」」」

 

「そ、それは言わない約束じゃないですかぁ~!!」

 

事情を話すいろはの後ろで、サナギさんが涙目になりながらいろはの背中をポカポカ叩いている。

 

まあ、朝の自己紹介の時の事を考えると……やっぱりドジっ子属性か…けど、制服を着ていた時より胸がデカいとは…着痩せするタイプとみた!!

 

いろはを叩く度に揺れる彼女の胸に目が行き、いちごに気づかれる前にいろはに視線を移す。彼女はいちご達より少し小柄なので全体的に少し小さめだが、それが逆にバランスよく見える。

 

あれがスレンダーってやつか?

 

「よーし、それじゃ皆、授業を始めるよー!!」

 

「あ、集合みたい。早く行こ」

 

木綿季先生の召集で皆が集まり始めたので、俺達も並ぶ為に急ぐ。

 

その時、俺は見てしまった……少し離れた場所にいた浅間の胸が、走る度に大きく揺れていたのを…

 

あれは…俺の目でも測定不能だと!?おっと、鼻血出てきた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日から実技の授業が始まるけど……男の子的にはどう?この状況♪」

 

「ノーコメントっす」

 

「いや、その顔で言っても説得力皆無だから…」

 

木綿季先生のからかいを上手く(?)スルーしようとしたが、それは苦笑とともに否定される。

 

まぁ、鼻血出てティッシュ詰めてりゃそうなるか…後、いちごさん?そんな怖い顔で睨まないでください。

 

「織斑君をからかうのはここまでにして……今日は初めてISに乗る人も多いから、先ずは専用機を持っている人はお手本を見せてもらって、それから練習機を使った実習に入るから。あ、十条さんと鹿角さんは専用機持ちになったばかりだから、今回は一般生徒側と同じね?」

 

木綿季先生の指示に、前に出る俺とサナギさん。あ、鼻血止まった…ティッシュはその辺に捨てられないからポケットへ……と。

 

「それじゃ2人とも、お願いね」

 

「了解、アクセス…フラーッシュ!!」

 

俺はいつもの動作と言葉を叫んで、GRIDMANを纏う。

 

「うん、展開まで0,2秒。代表候補生どころか国家代表レベルの早さだね」

 

「けど……その動作と台詞は必要なんですか?」

 

木綿季先生は俺の展開速度を褒めてくれたが、エイミー先生からはそうツッコまれる。

 

「これ、一応セキュリティも兼ねてるんです。GRIDMAN自体が特殊技術の集合体ですし、俺という男性操縦者のデータも入ってますから」

 

「そういう事でしたか」

 

俺の説明に納得してくれるエイミー先生。まぁ、それ以外にもセキュリティはあるけど、それを教える訳にはいかないからな。

 

「行こう、【ヴェルデ】」

 

そして横では、サナギさんが専用機を展開していた。その速度は俺とほぼ同速度だ。

 

彼女の機体は白と緑が基調で少し角ばった感じの機体で、左肩と両膝と腰背部に縦長の六角形みたいな深緑色のパーツが付いている。そして頭部にはV字に伸びたアンテナとその中央にクリアレッドのパーツが付いていて、その中に望遠レンズの様な物がうっすらと見えた。

 

(見た感じ、射撃型か?…それに額のレンズ……この設計だと、どうやら狙撃型みたいだな。それに肩や膝のパーツは分離しそうだ…)

 

「展開速度は織斑君とほぼ同じ0,3秒……うん、2人ともかなり優秀だよ。それじゃ次は飛んでもらおうかな?」

 

俺なりに彼女の機体を考察していたら、木綿季先生から次の指示が出た。

 

飛行か……なら、あの言葉は叫ばないと!!

 

「シュワッチ!!」

 

「「「「「「何故その掛け声!?」」」」」」

 

俺が上を見上げ、両腕をY字に広げながら空に上がると下から総ツッコミがきた。

 

あれ?飛ぶ時に今のセリフはデフォじゃないのか?

 

「お、面白い飛び方をしますね…?」

 

そしてさほど遅れずに、苦笑いしたサナギさんも隣にやって来る。その機体のスラスター部分から緑色の粒子を出しながら…

 

「その粒子は?」

 

「え、えと…!?私の所属する会社が発見した粒子でして……あんまり詳しい事は…ただ、重力を軽減する効果があるんでしゅ…」

 

(噛んでる…)

 

『機体の調査ついでに、粒子の解析もやっておくね?』

 

「頼んだ」

 

どうやら彼女自身も詳しく知らないらしい。でも、頼もしい相棒に掛かれば、解析するのはそう難しくはないだろう。

 

「それじゃ2人とも、しばらくアリーナ内をグルグル回って。何周かしたら今度は急降下と急停止をやってもらうよ」

 

「「(了解/わ、わかりました!!)」」

 

先生の指示に俺は先程のポーズでアリーナを飛んでいき、サナギさんがその後を追ってくる。

 

「ま、待ってくだしゃ~い!?」

 

「んじゃ、お先に♪」

 

俺が速度を上げると、サナギさんとの距離がどんどんと離れていく。

 

どうやら、そこまで速度はないみたいだな。射撃型なら当然か?

 

それから5周程回ったら、木綿季先生から急降下と地上10cmでの急停止の指示がきた。俺はそれをすぐに実行する為にPICを解除して落ちていき…

 

『今ッ!!』

 

「了解」

 

いちごの指示がきた所でPICを再起動。減速してみごと10cmで停止する。

 

「お見事!!ジャスト10cmだね。それじゃ次はサナギさん!!」

 

「は、はいぃ!!」

 

続いてサナギさんが急降下してくる。しかし、かなり早いタイミングで急停止した為、1m40cmくらいの場所で止まってしまう。

 

「う~ん…もう少し遅くても大丈夫かな?次は頑張ってみようか」

 

「は、はい…」

 

上手く出来なかった事に悄気るサナギさん。まぁ、今の結果じゃ仕方ないよな。

 

「……………………(ボソボソ)」

 

そんな彼女を見ていたら、口がモゴモゴと動き何かを呟いていた。もしかしたらスパイに関する情報かと思って、GRIDMANの集音機能を上げると…

 

「お姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られるお姉ちゃんに怒られる…」(ガタガタ…)

 

顔を青くしてなんかトラウマみたいな事を呟いていた。どんだけ怖いんだ君のお姉さん…

 

「それじゃ次は武器の展開ね。まずは織斑君から……ってそういえば、自分じゃ出せないんだっけ?」

 

「ええ、いちごの協力が必要です」

 

「とりあえず、やってみて」

 

「了解。いちご、キャリバーを太刀モードで頼む」

 

「OK♪」

 

そう言うと、いちごは空間投影モニターを出して高速タイピングでデータを入力していき…

 

「アクセスコード・グリッドマンキャリバー」

 

最後の音声入力が終わった所で、俺は左手を前に伸ばして正面に作られた鞘付きの一般人サイズの太刀モードのキャリバーを手にして、鞘から抜き放つ。

 

やっぱこれくらいのサイズが丁度良いな。ナノメタルだから形も自在だし。大剣も悪くはないが、取り回しが悪すぎるんだよ…言ったらキャリバーが愚痴るから言わないけど。

 

「うん、特殊なやり方だけど早さは充分実戦で通じるね。次はサナギさん」

 

「はい…」

 

まだ落ち込んでいる彼女だったけど、木綿季先生に言われてため息を吐きながら右手を伸ばすと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「え…?」」

 

それを見た俺といちごも、あまりの光景にポカーンとしてしまった。

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ?サナギさんが手を伸ばしたと思ったら、もう拳銃が握られていたんだ。何を言ってるのかわからねーとは思うが、俺も何が起きたのかわからなかった…見間違いとかなんてチャチなものじゃねぇ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったみたいだ…!!

 

「えーと……今のは0.01秒…歴代最高速度だよ…?」

 

さすがの木綿季先生も、この事実に驚いているようだ。でも、エイミー先生が目をキラキラさせてるのはなんでだ?

 

「そうですか……」

 

でも落ち込んでるからか、木綿季先生の言葉を理解してはいないみたいだ…

 

「と、とりあえず…2人とも合格だね。それじゃ次は練習機を使った装着から歩行、解除までの実習に入るよ。指導係はボクとエイミー先生、織斑君と星宮さんにサナギさんで…」

 

「木綿季教諭、私も指導なら可能です。基礎情報はインストール済みですので」

 

木綿季先生が指導係を決めていたら、いろはも立候補する。

 

確かに、入学前はいろはに結構教えてもらったし、解りやすかったから最適だろうな。

 

「じゃあ環さんもお願いね。練習機は打鉄が3機とラファールが3機だから、指導係の人は取りに来て」

 

そう言われ、俺はラファールを選択した。この機体は第2世代の最後発で機体バランスが良いからだ。因みにいちごもラファールで、いろはとサナギさんは打鉄だ。

 

「それじゃ皆、出席番号から順に教わりたい人を選んで並んでね。このクラスは30人だから…1人につき5人までだよ」

 

木綿季先生の指示でクラスメイトが並んでいき、俺の所には姫和と月村すずかさん、ユウナ・クロフォードさんにアリス・キャロルさん、白峰理沙さんだ。

 

姫和とクロフォードさんに白峰さんは操作技術、月村さんとキャロルさんは武装展開が上手だった。ただ月村さん?鼻息荒くして、いろはを分解・解析したいとか言うの止めてくれません?あの子、大事な仲間なんですから…え?ならGRIDMANのパッケージを解析させてくれ?ダメに決まってんでしょうが。

 

そんな彼女は、幼馴染みのバニングスさんによってドナドナされた。何でも月村さんは工業系の会社の社長令嬢らしく、ロボットなどに目がないらしい…

 

一応、いろはに月村さんに近づく時は注意するよう言っておこう…

 

それとクロフォードさんも、勝手に浮こうとしない。慣れてないのに下手に動いてると、PICの操作をミスって…(ドゴォン!!)ああッ!?クロフォードさんがペットボトルロケットを背負って空を飛べるか実験した出川◯郎みたく、数cm浮いてから地面に顔面から突っ込んだ!?

 

それからも白峰さんがISを纏ったまま、何故かロンダートからの新体操のシライを華麗に決めたり、キャロルさんが展開した槍をオールみたく使って、ゴンドラ乗りの様に浮きながら前に進んだりと、多少(?)のトラブルはあったが、最初の実技授業は無事に終了したのだった。




いかがでしたか?

次回は日常回からの転生者達の行動にする予定です


では、次回でまたお会いしましょう


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