やはり俺がバンドを組むのはまちがっている (静寂な堕天使クロノス)
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第1章
第1話


素人ですのでおかしなところも多いと思いますが温かい目で見ていただけると幸いです。


いつからだろうか...

自分のギターが奏でる音がひどく退屈に聞こえるようになったのは

 

俺の中から、あのキラキラした輝きは、あのドキドキした光景は

どこに行ってしまったのだろうか....

 

あまり思い出したくないことを夢に見た

一瞬にして俺が全てを失ったあの日のことを...

 

しかしあれは俺が全て悪いのだろう。

 

 

あいつらの苦しみも理解せず、あいつらを傷つけ続けた

そんな俺のせいなのだ。

 

 

 

 

「...久しぶりに見たな、あの夢」

はっきり言うと最悪の目覚めといっていいだろう

しかし今日は新学期が始まる日、高校2年生となる俺には学校という社蓄の養成所に行く必要があるわけで...

 

「はぁーダルい...」

などと言いつつ支度はテキパキしていく。

やだっ!

八幡たらすっかり社畜根性を身につけてる!

などと茶番を心の中で繰り広げていると

ノックもなしに俺の部屋の扉が開き俺の愛しの妹である小町が顔をのぞかせた。

 

「お兄ちゃん起きてる〜?」

 

「起きてるぞ〜、というかしっかりノックしような?お兄ちゃんのプライバシーを守ろうな?」

 

 

「お兄ちゃんが月曜からしっかり起きてるなんて珍しいね〜

雨どころか雪でも降ってくるかもよ?」

 

こ、こいつ兄の言葉を無視しつつさらに俺をディスってきただと...

 

 

「あのなー、今は春だよ?雪なんて降らないよ?

新学期くらい俺だって早く起きるんだよ」

 

「へーお兄ちゃんでも新学期を楽しみにするんだね〜、かーわいい」

 

 

などといつまでも俺をいじる小町を横目に俺は部屋の片隅にあるギターケースを見つめた。

しかしもう俺が人の前であれを引くことはないだろう...

もう、あんな思いをするのはごめんだ。

 

 

「も〜お兄ちゃん話聞いてる?とにかくもう朝ごはんできてるから早く支度して降りてきてね」

 

 

感傷に浸る俺にほおを膨らませ小町は部屋を出て行った。

もう一度ギターケースを見てから俺も部屋を出ていくのだった...

 

 

*****

ー総武高校 2年F組ー

 

2年生になったからといって俺は浮かれたりしない

俺はやっぱ洗練された孤高の人間だからな

ハーッハッハッ

 

言っておくがあれだ、俺はぼっちではない。

ただ友達がいなくて学校でいつも一人でいるだけだ。

 

だから別に「また同じクラスになれたね〜」

とか言えなくても寂しくなどない。

ほ、ほんとだからな!

 

 

「やっはろー!ヒッキー

て、どうしたの!?目が腐ってるよ?」

 

こんなにも俺に馴れ馴れしく話しかけてくるやつなど

この高校には1人しかいない。

 

「ほっとけ、目ならいつでも腐ってるだろ」

 

「自覚あるんだ...」

 

俺に話しかけてきたこの少女の名は由比ヶ浜結衣

...俺のバンドのメンバーだったことから今でも

俺と話してくれる数少ない人の1人だ。

まさか同じクラスだったとは...

 

 

「お前は相変わらずなんだな...」

 

「ちょっ!それどういう意味!?」

 

「いや相変わらずアホの子なんだなって思ってな...」

 

「なっ!アホの子とかいうなし!ヒッキーきもい!」

 

...こんなやりとりもずいぶんと久しぶりだ。

今思えば中3のあの時からあいつらとはほとんど会話していない。

 

 

「悪かった悪かった」

 

 

「すっごい適当に謝るなし!

はぁ、ヒッキーも相変わらずみたいだね...」

 

「当たり前だろ?人はそう簡単には変わらないんだよ」

 

「そうゆうところだし...」

 

俺に呆れていた由比ヶ浜はそこで表情を変え

 

「ヒッキー、あのね今度の日曜日にあたしたちライブするのよかったら来てくれない?あれからまたいっぱい練習したんだよ!」

 

俺が抜けても由比ヶ浜たちは3人でバンドを続けている。

たびたび由比ヶ浜や一色は俺をライブに誘ってくれるのだが、

俺は1度たりとも行ったことはない。

 

「ああ、行けたら行くわ」

 

いつも通りの返事に由比ヶ浜は一瞬悲しげな顔を浮かべたが

すぐにいつもの笑顔になると

 

「うん!待ってるね!」

 

そう言って由比ヶ浜は俺の席から離れていった。

こんなやりとりをするたびに俺の胸は締め付けられるような感覚に襲われる。

きっとそれは愚かな俺への罰なのだろう。

しかし考えずにはいられない。

 

 

「俺は、、どこで間違えちまったのかな...」

 

そんな俺の独り言は教室の喧騒に紛れて消えていった...




文書を書くのって難しいですね。
読んでくださった方ありがとうがとうございました。

4月ながらに追記ですがよければ最後まで読んでくださると嬉しいです、この辺りよりはマシな文章となっているので......


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第2話

なるべく早く投稿するよう頑張りますが、不定期更新になってしまうのはお許しください。


由比ヶ浜が俺をライブに誘ってから5日が経った。

今日がライブ当日だ。

ライブに行くかプリキュアを見てからずっと考えていたが昼飯の時間になっても考えがまとまらない。

 

 

「お兄ちゃんどしたの?なんかずっとぼーっとしてるよ?」

 

 

よほど深刻な顔でもしていたのだろうか、

珍しく小町がオレの心配をしている。

 

「.....大丈夫だ」

 

「また、ライブに誘われたの?」

 

オレの下手な嘘は我が賢妹には通じないようだ。

なのでおとなしく本当のことを話すことにした。

 

「ああ由比ヶ浜にな、正直本気で迷ってる」

 

 

そんな俺の言葉に神妙な顔つきで小町は

 

 

「後悔はしないでね」

とだけ言った。

 

そんな妹の頭を撫でて俺は

「ああ」

と短く答えた。

 

 

そのあと考えてばかりいても仕方ないと思った俺は

1度外へ出かけることにした。

 

「と、いってもどこに行くかな」

すこしどこに行くか迷ったが、新しい本でも買いに本屋へと向かうことにした。

 

 

*****

ー本屋付近ー

 

本屋に向かう途中には色々な店があり、そんな店並を眺めながら

歩いているとある店が目に止まった。

 

それは昔よく訪れていた楽器屋だった。

少しの間立ちながらその店を眺めていると

 

 

「うう、直って良かった〜!」

 

と言いながら涙目で楽器屋から猫耳少女が出てきた。

少し遅れるようにしてもう1人金髪のツインテールの女の子が楽器屋から出てきた。

 

どちらの少女もかなりの美少女だったこともありつい見入ってしまっていたのだが、俺は猫耳少女の持っているものに気づいた。

 

「......ランダムスター」

 

ボソッと小声で呟いてから

こんな目の腐った男があんな美少女2人を見ていたら逮捕されて小町が悲しんじゃう!

いや、むしろ喜ぶか?

なんて考え、また本屋に向かおうと歩き出した時だった。

 

「あなた、ギターやってるんですか!?」

「ちょっ!香澄!?」

 

さっきの猫耳少女がこちらに向かって話しかけているが、

きっと他の人に話しかけているのだと思って歩き続けてたところ

 

 

「無視しないでくださいよー!」

「やめろって!」

 

 

どうやら俺に話しかけているらしいと気づいた。

しかし長年孤高を貫く俺に見知らぬ人と話せるスキルなどない

なので俺は気づいていないフリをしてそのまま歩いて行くことにした。

 

「このギター知ってるんですよね!?」

秒速、いや光速で服を掴まれ強引に会話に持ち込まれた...

ふっ、負けたよなんて現実逃避し始めたとき。

 

「香澄本当に何してんだよ〜!やめろって迷惑そうだろ!」

 

ありがとう、金髪ツインテ少女そのまま俺からこいつを遠ざけてくれ

とか期待したが

 

「ギターやってるんです?どこの高校ですか?何年生ですか?」

 

ここで俺は気づいた、こいつ話が通じない奴だと......

そして、きっと俺の苦手なタイプであると...

 

今思えばこれが俺の新しいステージへの第一歩となる出会いだったのだろう。

が、その時の俺にとってはただの迷惑な奴との出会いでしかなかった。

 




2話目まで読んでくださった方ありがとございました!


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設定

今回は八幡やその身の回りの人についての設定を書いていきます。
バンドリのキャラについてはほぼ原作通りなので説明を省きます。


比企谷八幡(総武高校2年)

 

性格はほぼ原作どおりだがひねくれ度合いは低くなっている。

中学校に入って間も無く由比ヶ浜、一色、雪ノ下

とバンドAbsolute Aloof(以下アブアル)を結成する。

バンドではGt.を担当しその腕は天才と呼ばれるほど

しかし中学校3年の時にバンドを抜けてしまう。

それ以降もギターは引いているが小町などの例外を除き人には聞かせない。

バンドを抜けてからは雪ノ下たちに負い目を感じほとんど喋っていない。

またバンドをやってた頃にバンドリのキャラ達数人とはすでに知り合いになっている。

 

 

 

雪ノ下雪乃(総武高校2年)

 

アブアルのGt.&Vo.担当

原作よりも少し明るい性格。

ほとんどのことは少しやっただけで大体できるようになるが、天才には勝てない秀才といった感じでそのことをコンプレックスとしている。

八幡がバンドを抜けてからは八幡の役割だったGt.も担当するようになったがすでにかなりのレベルで弾けるようになっている。

演奏に対して高い目標を持ち妥協はしない。

八幡には好意を持っているが八幡には気づかれてない。

 

由比ヶ浜結衣(総武高校2年)

 

こちらもほぼ原作通り

バンドではDr.担当

八幡や雪ノ下に強い憧れを持ってバンドのメンバーとなり2人に追いつけるよう必死の努力を重ねている。

八幡にバンドをまたやってほしいと思っており

たびたび八幡をライブに誘う。

八幡にほのかな好意を寄せているが八幡は気づいていない。

 

 

一色いろは(総武高校2年)

 

原作と違って八幡たちと同級生。性格は原作通り。

バンドではBa.担当。

八幡のことは当初先輩だと勘違いして先輩と呼んでしまって以来そのまま先輩と呼んでいるがたまに八幡などと呼んだりする。

雪ノ下のことは雪乃さん、由比ヶ浜のことは結衣ちゃんと呼んでいる。

最初は葉山に近づこうとしてベースを始めたのだが

八幡のギターの音に惹かれアブアルに加入する。

八幡のことは憧れの対象と自分では思っているが、周りから見たら完全に八幡に好意を持っているように見える。

 

その他のキャラの簡単な説明

 

葉山隼人

 

三浦、海老名、戸部とともにバンドを組んでいる。

八幡と同じGt.担当で八幡同様天才と謳われる。

腕前もかなりの物で原作と違い八方美人もせず八幡ともかなり仲がよく、互いに軽口を叩くような仲である。

八幡のことはライバルだと思っている。

 

 

 

平塚静

 

原作通り独身であり、結婚の話をすると容赦ない制裁を下す。

バンドが好きでライブハウスに通っており、その時に八幡達とはすでに知り合っている。

実は過去に自身もバンドを組んでいた過去を持ちそれ故に八幡達のことは特に気にかけている。

八幡もかなりの信頼を寄せていて八幡のバンドを抜けた理由を知っている数少ない人間の1人でもありそのことについて八幡から相談を受けることもある。

 

 

その他俺ガイルキャラをまだ出す予定です。

 

 




今回はキャラ紹介などしてみましたがキャラを考えるのも大変ですね。
原作崩壊もだいぶ進んでいますが、それでも読んでくれるとありがたいです。
バンド名考えるの下手すぎてかなり変な名前になってますが触れないでいただけると嬉しいです...


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第3話

かなり多くの人に見ていただけているようで嬉しいです!
頑張っていくので応援お願いします!


「すごいすごい!鳴った!すごい!すごい!」

 

先程出会った猫耳少女こと戸山香澄は先程持っていたランダムスターを弾いてみてすごいすごいと連呼していた。

...なんか由比ヶ浜に似てる気がするなんて思ってしまうほどには戸山もアホの子だったのだ!

これは世紀の発見だな、由比ヶ浜レベルの少女がいたなんて!

あれ?俺もしかしてめっちゃ面倒な奴に付き合わされている?

というかなんで俺こんな人の家の蔵になんているんだ?

 

 

*****

ー遡ること1時間程前ー

 

「ちょっ!香澄まじでやめろって!すいませんこいつ少し馴れ馴れしいっていうかなんていうか......」

 

.....そんなレベルではない気がするが

必死に謝る金髪ツインテ少女がかわいそうに思えてきた......

 

「私っ!戸山香澄っていいます!ギターについて知っているなら色々教えてくれませんか?」

 

なおも俺に話しかけてくる戸山にもはや尊敬を覚え出した俺は諦めて

 

 

「おっ、俺は比企谷八幡でゃっ......」

 

噛んだ、やばい初対面の人と話せないスキルがこんな時に......

とりあえず死にたい......

 

「ここら辺の高校なら総武高校の人ですか?」

 

しかし戸山は気にせずに質問を重ねる

ほっ、よかったいじられたらまじで家に引きこもってしまうところだった......

ん?元から俺かなり引きこもりじゃね?

 

 

「ああ、総武高だけど......」

 

「そうなんですか!私は花咲川女子学園なんですよ〜」

 

そんなこんなで知らぬ間に自己紹介がお互い終わってしまった......

そのまま戸山に押し切られた俺は不本意ながらも金髪ツインテ少女こと市ヶ谷有咲の家へと向かうことになったのだった......

めでたし、めでたし。

......じゃないけどね?

 

*****

 

思い出したら頭痛くなってきた......

やっぱり俺は絶対戸山のこと苦手だわ......

ホント市ヶ谷に申し訳ない......

 

「あのさ、香澄これからここで練習すれば......」

 

「え!?いいの!?」

 

なんだかんだ言いつつ市ヶ谷は優しいんだな〜

なんて思って眺めてたのだが

 

 

「比企谷先輩!これでギター教えてもらえますね!」

 

え?俺も参加なの、その練習?

というか俺からギター教わるって言ってたの本気だったの!?

よしっ、ここはそうだギターは好きだけど弾けないって設定にすればなんとか......

 

どうにか面倒事を回避しようと必死になっていた時に時計を見ると

......そろそろライブが始まる時間か、行くならそろそろライブハウス向かわなきゃな〜

ん?よしっ!その手で行こう!

 

 

「悪い、今日はこのあと用事があるから」

こう言って帰ってしまえばそのままうやむやになって終わるはず......

やばいな、俺天才すぎるわ

やっぱ伊達にぼっちやってないな。

 

 

「え?そうなんですか?じゃあまた今度教えてくださいね!」

 

 

よし予想通りの返事だ......

 

「市ヶ谷も急に悪かったな」

 

「あ、いえだ、大丈夫ですから!」

 

市ヶ谷も人と話し慣れてないのか?

なんか親近感湧くな

 

 

そうして俺は市ヶ谷宅を後にしたのだった。

 

 

*****

ー八幡帰宅後ー

 

「有咲どうしたの?比企谷先輩いた時元気なかったみたいだけど?」

 

 

「いや、初対面でしかも男の人と話すとかむりだからっ!」

 

「ああ!緊張してたってこと?有咲やっぱりかわいい〜!」

 

「ちょっ!香澄抱きついてくるな〜!ていうかかわいいって言うな〜!」

 

*****

結局ライブハウス前まで来てしまった。

が、どうしても入ることができない。

 

そうして少しの間ライブハウスの前で立ち尽くしていると

 

「もしかして......比企谷君?」

 

「っ!驚かさないでくださいよ......ゆり先輩」

 

「やっぱり比企谷君だ〜、あんな不審者っぽい子比企ヶ谷君くらいしかいないもんね〜」

 

「さらっとディスらないでください......まじで自殺しちゃいますよ......」

 

 

俺に声をかけてきたこの女性は牛込ゆりさん

人気バンドのGlitter*Green通称グリグリのGt.&Vo.を担当している人だ。

アブアル時代たびたび同じステージに立っていた仲だ。

 

「どうしたの?こんなところでというか君、ライブハウス来るのすごい久しぶりだよね?」

 

「その......まぁいろいろありまして......」

 

 

「もう、バンドはやらないの?」

 

ゆり先輩は気を使うような目でこちらを見ている。

 

「俺はぼっちですから」

 

「......そう、じゃあ私はいくね」

 

 

そうしてゆり先輩と俺は別れた。

いつも俺の周りの人は優しくて、その優しさを裏切り続ける自分に反吐が出そうになる。

 

 

「......比企谷君」

 

自己嫌悪に陥った俺を呼ぶ声がした。

 

「......雪ノ下か」

 

「あっ!ヒッキー」

「先輩っ!」

 

そこにはかつての俺の仲間たちがいた。

 

「ヒッキーあたしたちのライブ見にきてくれたの?」

 

由比ヶ浜と一色は期待の表情を浮かべている。

雪ノ下の顔はよく見えないがどんな顔をしているのだろうか?

俺はどう答えるべきなのだろうか?

分かりきっている「そうだ」と、たったそれだけ言えばいいのだ。

 

でも、俺の喉からその言葉が出ることはなかった......

代わりに言った言葉は答えるべき答えに比べひどく複雑なものだった。

 

 

「いや、たまたま通りかかっただけだ......」

 

そうして俺は下を向いて歩き出す......

 

 

 

 

こうして、俺はまた1つ何かを間違えてしまったのだ......

ライブハウスから離れてから見上げた空には決して届かぬ輝かしい星が煌めいていたのだった......

 

 

 

 




ゆり先輩との絡みが思いつかなかった...
ファンの方申し訳ありません
それと明日から更新速度遅くなると思います。


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第4話

他作品と似てしまうことも多くてすいません...
これからは自分らしさを作品に出せるよう頑張っていきます!


あれからどうやって家まで帰ったのかはよく覚えていない。

気がついたら俺は自宅の玄関に立っていて小町が俺の前に立っていた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫なの?顔真っ青だよ?」

 

小町が俺のことを心配してくれているようだ。

ここまで、小町が俺を心配するのは珍しいことだ。

 

 

「ああ、大丈夫......ではない」

 

 

俺にしては珍しく本音がぽろっとこぼれ落ちた。

 

 

なんで、なんで、なんで、俺はまたまちがえた。

なんで、簡単な一言が言えない。

なんで、あいつらを見ると怯えてしまう。

 

「お兄ちゃん......小町お兄ちゃんのギターが聞きたいな......」

 

俺を見て小町はそう告げた。

 

「小町...」

 

小町が俺にギターを弾いてほしいと頼んでくることは稀だ。

しかし、なぜこんなタイミングで?

正直言うと、今はギターを見たくなかった。

 

 

「悪い......今は弾きたくないんだ......」

 

 

「いーや、弾かなきゃだめ!お兄ちゃんは大切なこと忘れてるよ......」

 

俺の......大切なもの......

 

 

「ああ、わかった」

 

無意識のうちに小町の言葉に俺はそう答えていた。

 

*****

 

ー八幡の部屋ー

 

あれから夕飯を済ませてから俺は小町を俺の部屋に招いていた。

俺はすでにギターの準備は済ませてあった。

 

「じゃあ弾くぞ......」

 

そうしていざ弾こうとした時

 

「え......?」

その時、あの日の記憶がフラッシュバックする

 

『どうして......なの?』

いろんな感情を乗せた雪ノ下の顔と声......

 

『ヒッキー!答えてよ......』

少しの怒りと途方もない悲しみがこもった由比ヶ浜の言葉。

 

『八幡!』

何も言わずに去ろうとした俺を呼び止める一色の必死な声。

 

 

指が動かない。

しかし俺は無理にでも指を動かし弾き始めた......。

 

少しの間ギターの音が俺の部屋に響いた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん早くお兄ちゃんの演奏を聞かせてよ」

 

「何言ってるんだよ......もう弾いて......」

 

「小町が聞きたいのは、そんな苦しそうな音じゃない!お兄ちゃんの、あの頃みたいな輝いた音が聞きたいの!」

 

 

その言葉は俺の心に落ちてきて、すっと染み込んだ。

同時に今日出会った少女の楽しそうにギターを弾く姿が思い出された。

どうして俺があいつを苦手なのかがわかった気がした。

きっとあいつは俺の失くしたものを全て振りまいているような少女だから。俺には眩しいほどキラキラしていて、思わず胸が高鳴るようなドキドキを与えてくれた。

だから......あいつは人を惹きつけるのだろう。

市ヶ谷があいつと一緒にいる理由......わかったかもな。

 

 

まだ何一つ答えは出ないけどひとつだけ俺は思い出すことができた。

 

「小町......お兄ちゃんはギター弾くのが大好きだ......」

 

小町の頭を撫でてやりながらそう言うと瞬間小町の顔に満面の笑みが浮かぶ。

 

「小町もお兄ちゃんのギター大好きだよ......」

 

「もう1度聞いてくれるか?」

 

「もちろん!」

 

こうしてしばらくの間俺の部屋に優しい音が響いていた......

 

 

*****

ー翌日ー

 

昨日の小町とのやりとりで俺はギターへの思いを思い出した。

でも、それだけではきっとダメなのだ。

俺は昨日の夜決めた。俺はあの時出せなかった答えを必ず出す。

そしてあいつらと......

そのために俺はある人の元を訪れようと決めた。

 

 

家を出た瞬間、春の風が優しく俺の背中を押すのであった......




書いてる中でどんどん楽しくなってきます。
どうすればいい文章になるのか...
まだ私もキラキラドキドキできるよう書いて行きたいと思います。


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第5話

今日は頑張って書きます。



その日の放課後俺はある人の元を訪れた......

 

「君から来るなんて珍しいじゃないか比企谷」

 

「ええ。平塚先生、相談があってきました」

 

「......"あの件"のことか?」

 

一瞬にして俺が真面目な話をしにきたと悟ってくれる。

ここまで気が利くのになぜこの人は結婚できないんだ......

 

"ブンッ"

空気が裂けるような音とともに俺の顔面寸前まで平塚先生の拳が迫ってくる.......

 

「何か失礼なことを考えたな、比企谷?」

 

 

こっわっ!え?何この人エスパーなの?

これは結婚できな......

 

"ブンッ"

 

「ツギハアテル」

 

先ほどより遥かに高い殺意を感じる......

ぼっちとして培った勘が告げている。これ以上は本当に危険だと......

 

「すいませんでした...」

 

そんなやりとりの後、俺たちは相談室に向かって話すことにした。

 

*****

ー相談室ー

 

「で、君が急にこんな話をしに来るということは何かあったのだろう?」

 

やっぱ鋭いな、この人。

近代でここまでいい先生いないだろ

などと先生に感謝しつつ俺は日曜日に起こったことを話した。

 

「......なるほど、君はまだ昔のバンドメンバーが自分を恨んでいるんじゃないか、と思ってしまっているようだな......」

 

「......怖いんです。あいつらのライブを見ることが、そっちの方がいいバンドになっているんじゃないかって......」

 

「そうか......ではひとつ昔話を聞かせてやろう」

 

昔、昔といってもそれほど昔ではないが

あるガールズバンドがいたそうだ......

その少女たちは本気でプロを目指していたそうだ。

少女たちは楽しみながら演奏していた。

が、どんなにライブを重ねてもスカウトはなく、いつしか少女たちは楽器を演奏することを楽しいと思えなくなっていき、そのうち自然とバンドを解散してしまった......

 

「......先生その話ってもしかして......」

 

「それ以上は言うなよ、比企谷......」

 

追求してほしくなさそうだったのでそれ以上は聞かないでおいた。

 

「いいか比企谷?この話の少女たちはやり直すことができないところまで行ってしまった...... だがな、君はまだやり直せるところにいる。私は君に答えをあげることもできないし、こんなことを言うことしかできない...... 君たちはまだ若い、失敗を恐れず生きなさい。きっとそれが若者の強さになる。なに、その結果生まれた黒歴史など、大人になってから恥ずかしがればいいんだ」

 

「先生、ありがとうございます。俺必ず答えを出してみせます!」

 

俺にしては珍しく力強い返事ができた。

 

「そうか、ならもう行きたまえ......今君がすべきことはここで私と話すことではないだろう?」

 

「はい!」

 

そうして俺は相談室を後にした......

 

*****

 

少し話しすぎてしまったかな......

あの頃は本当に毎日が輝いていた。

彼らにはあんな思い......してほしくないからな。

彼らの助けになるのなら、私たちの失敗にも意味があったのだろうな。

今頃、彼女たちはなにをしているのだろうか......

だがきっとみんな演奏する少年、少女の手伝いをしているのだろうな......

 

過去の仲間たちを思い出しながら私は沈んでいく夕日を眺めるのだった......

 

*****

 

平塚先生の話を聞いて話を聞いて俺はより強い覚悟を持つことができた。

 

「よしっ!やるか」

そう言って俺はスマホを取り出し数少ないアドレス帳を開くのだった......

......言っておくがアドレス帳に人が少ないのはあれだ俺のオーラにみんながビビって誰も話しかけてこなかったからだ。

ほ、ほんとだもん!

八幡寂しくないもん!

 

*****

 

ー翌日の放課後ー

 

俺はライブハウスspaceの前で、昨日呼び出した人たちを待っていた。

 

「あ!ヒッキーやっはろー!」

 

最初に来たのは由比ヶ浜か。

 

それから間もなくして

 

「せーんぱい!」

 

続いてあざとい仕草とともに一色が

 

「比企谷君......」

 

そして、最後に困惑気味の雪ノ下が来た。

 

「突然呼び出して悪かったな」

 

「そーですよー。私にだってスケジュールがあるんですからね!」

 

あー、相変わらずこいつあざといな......

だが確かに生徒会に入っている一色のスケジュールは相当忙しいだろう

 

「それで、話とは何なの比企谷君?」

 

「今日は、お前らに俺の覚悟を伝えに来た。

まず今まで散々お前らを避けてしまったことを謝らせてくれ

そして、いつになるかはわからないけど必ずあの時出せなかった答えを、俺なりの本物を見つけ出す!

だから、それが見つかるまでもう少しの間だけ待っててくれ......」

 

俺の話を聞いた3人は皆下を向いているためどんな顔をしているかわからない。

だが普通に考えて、何を急にそんな都合のいいことをと怒っているのだろう。

しかしそれも覚悟の上だ。

彼女たちの怒りはもっともだし、全て受け入れるつもりだ。

再び覚悟を決めて彼女たちの反応を待っていると

「「「ふふっ」」」

 

「ヒッキー、普通そう言うのって答え出してから言うものじゃない?ほんとウケる」

 

「そーですよー。真剣に話し始めたと思ったら答えが出てないなんてほんと先輩は先輩のままですね」

 

「由比ヶ浜さんと一色さんの言う通りだわ。本当にあなたは変わらないのね」

 

3人に一斉に吹き出され笑われながらそんなことを言われた......

やばい、猛烈に消えたい......

平塚先生、やっぱ黒歴史は今から恥ずかしいっす.......

 

 

「でも、あなたの思いはわかったわ」

 

「うん!あたしたちはいつまででも待ってるよ!」

 

「でも、あんまり待たせると私たちの気持ちも変わってしまうかも知れませんよ?」

 

「......ありがとう」

 

あいつらは俺の思いをしっかり受け止めてくれた。

そのあいつらのためにも、俺は必ず答えを出さなければならない。

決意を新たにした俺と彼女たちは、夕暮れに優しく見守られながらしばし話を続けたのだった...

 

 

 




今回は少し長めでしたね...
次回からはバンドリキャラをまた出していきます。


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第6話

今回からポピパのメンバーを出していきます。


あの日からまた少しの時間が経った。

あれ日からも俺はギターを毎日のように弾いている。

まだ小町以外の人には聞かせていないが、確かに俺は変わっていた。驚くことにあれ以来俺の目の濁りが幾分マシになったらしい。

小町曰く

 

「お兄ちゃん、ちょっとだけかっこよくなったよ!」

 

...そこはかっこよくなったよだけでいいぞ、我が妹よ。

 

そのおかげなのか、あれ以来新しい知り合いが増えた。

 

 

「おはよう!八幡!」

 

「朝から会えて嬉しいぞ、戸塚!」

 

俺は...天使を見つけてしまった...

 

戸塚は前からクラス内で1人でいた俺を気にしてくれていたらしい。こんなところにも俺のことを思ってくれる人がいたのだ。そんな俺の癒しである戸塚だがその見た目に反して男の子である。

女の子以上に可愛いのに、男とは...

でも戸塚なら...

 

俺が新しい趣味に目覚める寸前のことだった。

 

「はちまーん!」

 

なんか変な声が聞こえる...だがその戸塚と喋っている俺はその声をそっとシャットダウンし...

 

「無視!八幡我、泣くぞ!大声で泣き叫ぶぞ!」

 

うぜぇ...材なんとかうるせぇ...

 

「八幡..材木座君がかわいそうだよ?」

 

くっ、戸塚にこんなことを言われてしまっては断れない...

 

「なんだよ材木座」

 

「新しい原稿ができたのだ!読んではくれぬか?」

 

この無駄イケボ厨二野郎の名前は材木座、体育の時間お互いにあぶれて二人組を組む時にいつもこいつと組んでいる。

そんなこいつはライトノベル作家志望で俺が読書好きだと知ると時折自作の小説を見せてくるようになった。

...正直あまり面白くはない、だがこいつも本気で毎回書いてくる。そんなこいつの作品は不思議と読んでいて退屈はしないのだ。

それはこいつの懸命さを俺が知っているからかもしれない。

昔の俺ならこんなことは思わなかっただろうが...

 

これ以外にも変化はあった。

 

「比企谷、またギター弾き始めたんだって?」

 

「なんで知ってるんだよ、葉山」

 

こいつの名前は葉山隼人、こいつも仲のいい奴らと中学の頃バンドを組んでいる、担当は俺と同じGt.だ。

 

「小町ちゃんからメールで聞いたんだよ。小町ちゃん嬉しそうだぞ」

 

「お前なに人の可愛い妹とメールとかしてるんだ?お前、ギターの弦切ってやろうか?」

 

「相変わらずシスコンだな...そしてやり方が陰湿なのも変わらないんだな...」

 

「小町のためなら本気でやるからな?」

 

「せいぜい気をつけることにするよ」

 

「そーしとけ」

 

葉山とも昔のように軽口を叩き合うようになった。

が、ふと葉山は真剣な顔になった。

 

「言っておくが、俺は勝ち逃げはさせないからな?」

 

「ふっ、いつまででも俺の勝ちに決まってんだろ?」

 

...こいつも、俺にまた演奏してほしいんだな。

こいつなりの優しさがわかってしまうことはなんだか少し照れくさいものだ。

 

改めて思うが、俺のことを思ってくれてる人はいるんだな...

 

「ぐふふふふ、はやはちきまきたわー!」

 

...違う意味で思ってくれてる人もいるようだが

 

*****

 

ーしばらく経った土曜日ー

それからしばらくの間はそんな感じで過ごしていた。

その日は楽器屋を久々に訪れた。

するとそこには...

 

「あ!比企谷先輩!」

 

ぴょこぴょこと猫耳を動かす戸山の姿があった。

 

「おう、戸山」

 

「私あれからバンド組んだんです!ギターも毎日練習して上手くなっているんですよ!」

 

あのままこいつと関わらない気でいたが今はこいつの眩しさを拒絶せずに接することができる。

 

「そうなのか、頑張れよ」

 

「また比企谷先輩もギター教えてくださいね!あとっ!それとっ!

私たち今度ライブするんです!よかったら見に来てくれませんか!」

 

こいつの組んだバンドのライブ、普通に興味あるな...

 

「いつどこでやるんだ?」

 

「来週の日曜日に有咲の家の蔵でやるんです!蔵でやるのでクライブです!」

 

クライブか、なんか不思議と語呂がいいな

 

「来週の日曜か...多分いけるわ」

 

こんな返事少し前までの俺ならあり得なかったのだろう。

 

「ほんとですか!じゃあ来週の日曜の午前9時ごろからなので是非来てくださいね!」

 

「おう」

 

そうして戸山と俺は楽器屋を後にした。

 

かくして俺は戸山の組んだバンドのクライブに行くことになった。

ん?日曜の9時ごろ...

あああああ!俺の、俺の大切なプリティでキュアキュアな番組が見れないじゃねぇか!

やべぇ急に行きたくなくなってきた...

 

後悔しつつも俺は自宅へと帰っていくのであった。

そして、しばらくの間俺の目は前と同じように濁りきっていた...らしい




香澄しか出せなかったし、結局俺ガイルキャラばかりでしたね...
バンドリのキャラはまた少しずつ出していきます。


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第7話

これからは2日に1話は出せるよう努力していきますが、不定期更新になってしまうことをご了承ください。


今日は日曜日、すなわち戸山の組んだバンドのライブの日だ。

その日はいつもより少し早く起きて支度をして、8時20分ごろ家を出る。小町もライブに行きたいと言ったので一緒に行くことにした、きっと戸山も了承してくれるだろう。

ん?プリキュアはどうしたのかって?

当然録画したさ!

これで安心してプリキュアが観れると喜んでいると

 

「お兄ちゃん気持ち悪い...」

 

「ばっか、お前俺はマッカンとプリキュアと戸塚がないと生活してられないんだよ」

 

「はあ、お兄ちゃんそんなんじゃいつまでたっても彼女できないよ〜」

 

「俺に彼女できる?いつからそう錯覚していた?」

 

「あーはいはいでも、もしお兄ちゃんに彼女ができなくても小町が面倒見てあげるからね!今の小町的に超ポイント高い!」

 

度々思うのだが、このポイントを貯めるとなにがあるのだろうか...

そんなことを話していると、市ヶ谷の家には30分ほどでついた。

 

 

蔵の場所も一度来たので知っている。小町と一緒に入るとそこには見知った顔が多くあった。

 

 

「おお〜比企谷君が本当に来るなんて〜」

 

まず会ったのはゆり先輩だ。会うたびに少しディスってくるのはわざとだろうか?

それは置いておいてその隣にいるのは...もしかして

 

「はっ八幡君!?久しぶりに会ったね。うちすっごく嬉しい!」

 

やっぱりりみか〜。りみはゆり先輩の妹で昔ライブ会場でゆり先輩のライブを見に来ていたときによく喋っていたのだ。

相変わらずかわいいな〜、これは戸塚ともいい勝負...

こんなところで天使と再会できるとは!

こんな何人も天使に会って俺明日にでも死なないよな?

 

「おう、りみ久しぶりだな!会えて嬉しいぜ!」

 

などとテンション爆上がりしている俺に対してりみはというと

 

「そ、そんな喜ばれるとなんかはずかしいよぉ///」

 

と、尊い...こんなかわいい生き物がいていいのか!

 

「お兄ちゃん、すっごく気持ち悪いよ...」

 

小町につっこまれて正気に戻った俺はある疑問を持つ。

 

「あれ?でもなんでゆり先輩やりみがここにいるんだ?」

 

「それはだね〜、なんと!りみが香澄ちゃんとバンドをやるからだよ〜」

 

え?マジで?りみが戸山と市ヶ谷とバンドを組んだの?

意外だな、恥ずかしがり屋のりみは人前に出るのが苦手そうなのに。いや、きっとりみも戸山に影響されたのだろう。

 

「そっか、りみ頑張れよ」

 

「うん、私精一杯頑張るからしっかり聞いててね八幡君!」

 

「おう、楽しみにしてる」

 

そんな話をしてると戸山と市ヶ谷が来た。

 

「りみりーん、そろそろ準備しないと...ってゆりさんに比企谷先輩!来てくれたんですね〜、嬉しいです!比企谷先輩の隣にいる子は誰ですか?すっごいかわいいですね〜!」

 

「俺のかわいい妹の小町だ。ライブに行きたいと言われたから一緒に来たけど問題ないよな?」

 

「はい〜!大歓迎です!!」

 

「本当ですか〜、こんな兄ですがこれからもお願いしますね!」

 

戸山は相変わらずのテンションの高さだな。ライブ前だからかいつもより高い気もするが...

そして小町のコミュ力もさすがだな...本当に俺の妹か?

逆に隣の市ヶ谷は緊張しているようだ。

俺もどちらかといえばライブ前は緊張してたなぁ...

ここは少しアドバイスしてやるか...

 

「市ヶ谷」

 

「ひゃい!な、何ですか比企谷先輩!?」

 

...思った以上に緊張してるみたいだな。

 

「ライブ前は緊張する気持ちはよくわかるが、バンドってのは1人でやるものじゃない。お前の側にはお前の仲間がいる、それを忘れずに楽しんで演奏してこい」

 

「先輩...はい!わかりました!」

 

これで市ヶ谷も大丈夫そうだな...

 

*****

ー有咲視点ー

比企谷先輩、私が緊張してるってよくわかったな...

あの人も捻くれているように見えてかなり面倒見がいいつーか...

なんか、お兄さんって感じだな。

比企谷先輩のおかげで緊張も解けてきたし、ライブ頑張って演奏するぞ!

でも、比企谷先輩ライブ前に緊張する気持ちがわかるって、比企谷先輩もバンドを組んでたってことなのか?ギター弾けるってのは知ってるけど...

ライブが終わってから聞いてみるか。

 

*****

 

 

そしてついに戸山たちの初めてのライブが始まる。

前に出ている戸山、市ヶ谷、りみ、そしてもう1人ギターの子がいるな。

今見てみると蔵の中には人がかなりいる。

おそらく戸山の同級生と思われる子が1人。小町と同い年くらいの子が1人、多分戸山の妹だろう。あと市ヶ谷のおばあさんもいるな。

...それとあとなぜかうさぎがいる、誰だよ連れてきたの。

心がぴょんぴょんしちゃうわ。

 

「皆さん今日は来てくれてありがとうございます!今日はここにいる皆さんをドキドキさせます!してくださったら嬉しいです!いきます!「私の心はチョココロネ」!」

 

ライブが始まってみれば全員緊張している様子もなく演奏を心の底から楽しんでるって感じだな。

きっとあいつらは今音が一つになる感覚を味わっているのだろう。一度その感覚がわかるとほんとにバンドって面白いんだよな。

...こいつらはいいバンドになりそうだな。

 

*****

 

ー演奏終了後ー

 

「やった!最後までできた!」

 

「まじヤバかった!ほんとヤバかったって!」

 

「でも、楽しかった!」

 

最後にりみも言っていたが4人とも本当に楽しそうだった。

 

その後おたえと呼ばれた少女と戸山の会話から戸山はspaceのステージに立つことを目標にしているらしい。

こいつらならいつか立てるだろう。

だが、何か引っかかる、今考えても仕方ないか。

そうするうちに戸山とその少女は話を終えていた。

 

すると戸山と話していた少女が俺に声をかけてきた。

 

「もしかして、アブアルの比企谷八幡さんですか?」

 

「...!そうだが、なぜ知ってるんだ?」

 

「やっぱり!私昔ライブハウスでアブアルの演奏を聞いてからすっごいファンなんです!私花園たえって言います!会えてすっごい嬉しいです!」

 

...正面切って言われるとなかなか恥ずかしいな

オレが少し恥ずかしがっていると

 

「え!?八幡先輩ってバンドやってたんですか!?」

 

やっぱり戸山はこんな反応するよな...

 

「ああ、まぁな」

 

「でもやってたってことは今はやってないんですか?」

 

市ヶ谷、鋭いところを突いてくるな

 

「いろいろあってな」

 

「でも、お兄ちゃんギターはまだ弾いてるんですよ!」

 

小町、今その情報言う必要なくない?

俺がそう疑問に思っていると

 

「え!?そうなんですか!私比企谷先輩のギター聞いてみたい!」

 

「私も!」

 

戸山と花園はやっぱりそんなこと言い出すよな〜

でもここで俺のギターを聞きたがる人なんてほかにはいないだろ...

 

「わ、私も聞きたい!」

 

え?りみまでそんなことを...

 

「私も久しぶりに比企谷君のギター聞きたいな〜」

 

ゆ、ゆり先輩まで!?

 

気付けば周りの人はみんな俺を見ている。

...ほんとにやらなきゃダメですかね?

 

*****

ー少ししてからー

 

結局ギターを弾くことになってしまった...

正直まだ人前で弾くことには抵抗があるのだが、市ヶ谷にあんなこと言った手前俺が楽しまないで弾くのはかっこ悪いよなぁ...

てかさ、なんでここに俺のギターがあるの?

小町にさっき「はいっ!」て渡されたけどあいつ俺のギター持ってくるそぶりなかったし、朝家を出る前にはあったし...

 

後から聞いて知ったのだが、俺にギターをこの場で弾かせようとあらかじめたくらんでいたらしい。俺がまた、人前で弾けるようになって欲しかったと言っていた。そのために友達に俺のギターを持ってきてもらったのだと言う。

小町の友達にものすごく申し訳ないな...

 

そんなこんなで準備も完了して俺も人前で弾く覚悟も決まった。

 

「久しぶりに人前で弾くから失敗しても笑わないでくれるとありがたいです。」

 

我ながらなんてかっこ悪い挨拶だろうか...

もうこの際思いっきり楽しんで弾くことにした俺はギターを弾き始めた。

 

*****

 

ー八幡演奏終了後ー

 

ふーっ、やりきったな。久々に全力でギターを弾いたな。やっぱりギターを思いっきり弾けるっていいな。俺は余韻に浸っているが周りがあまりにも静かすぎる...

まさか、俺なんか失敗してた?個人的にはかなりうまく演奏できたと思うんだけど?

 

するとようやくみんなが口を開いた。

 

「すごい...すごいキラキラしてた!私もいつかあれくらいキラキラドキドキしたい!」

 

「...ほんとにすげー」

 

「やっぱり八幡君すごいかっこいい!」

 

戸山、市ヶ谷、りみは俺の演奏を口々に褒めてくれた。

 

「...いつか、私も」

 

花園も、俺の演奏を聞いていい刺激になったのだろうか。

 

「少しは追いつけたと思ったんだけどなぁ...」

 

ゆり先輩は少し悔しそうだが、俺の演奏を褒めてくれている。

 

やっぱり音楽の力ってすげぇな、こんなにも多くの人の心を動かせるんだから...

 

こうして俺はまた音楽の力について再確認することができたのだった...

だが、そんな音楽の力は時に人を傷つけることもあるのだ。

俺は感動とともにまたいつか誰か傷つけてしまわないだろうかと恐怖も抱くのだった...

 

やはりまだ俺がステージに戻るのはまだ先のことになりそうだ...

 

こうして戸山たちの初のライブと俺のギター演奏は皆が興奮冷めやらぬまま終わっていくのであった...




なんかすごい駄文が完成してしまった...


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設定2

バンドリキャラの設定紹介をやっぱりすることにしました。
とりあえず今回は近々出す予定のキャラや既に登場しているキャラの紹介をします。俺ガイルキャラの紹介も少しあります。


戸山香澄

性格は原作通り

八幡のギターを聞いてからは八幡に憧れを持つようになり八幡にギターを教えてもらうようになっている。その際に八幡の連絡先も小町から入手済み。

 

ー八幡の印象ー

関わると若干面倒だが、何事にも熱心なやつ

ギターもゆくゆく相当の腕になるだろう

 

市ヶ谷有咲

 

性格は原作通り

八幡のことはなんだかんだ言いつつ面倒見のいいお兄ちゃんのような存在と思っている。クライブ以来八幡とは普通に話せるようになっている。

 

ー八幡の印象ー

バンド内での苦労人、だがバンドに対する思いは誰よりも深いだろう。

少し俺に似ているからかつい面倒を見てしまう。

 

牛込りみ

 

性格は原作通り

八幡とは姉のライブを見に行った時に知り合った。

八幡に限らず男の人と話すことが苦手。

 

ー八幡の印象ー

天使!俺に癒しを与えてくれる存在!

...真面目な話だと、相当な努力家だろうな。

バンドを通して多くのことを学んでくれそうだな。

 

 

花園たえ

 

性格は原作通り

八幡のことは以前ライブで見たことがあったため知っている。

その頃から八幡のことを尊敬していて度々ギターを教わっている。

 

ー八幡の印象ー

見たまんま天然なやつだな。ギターとウサギに対しての熱意は相当なものだな...

戸山とのやりとりはもはや漫才の域だ...

 

 

山吹沙綾

 

性格は原作通り

八幡のことはもともと知らなかった。

クライブ時点での八幡に対するイメージはギャップのすごい人。

クライブを見てからポピパのことをより気にかけている。

 

ー八幡の印象ー

しっかり者そうな子だよな

でも、問題を自分1人で背負いこむタイプに見えたな。

 

 

湊友希那

 

性格は原作通りだが、Roselia結成時からバンドストーリー二章後のような性格。(要するに最初から丸めな性格)

実は八幡がバンドを抜けてから八幡のことをスカウトしたがある理由で自分から断った。

八幡に対しては異性として意識している状態だが、本人は気づいていない。

 

ー八幡の印象ー

こいつの歌は本当にすごい。

一度だけ一緒に演奏したが、ぼんやりしてたらこっちが飲まれそうな感じだった。

前よりは性格もだいぶ丸くなったな。

 

今井リサ

 

性格は原作通り

友希那と親しく喋った八幡に対して最初は警戒心を持ったがすぐにそれもなくなる。友希那の気持ちには気づいてるが本人が気づくまでは、何も言わないつもりでいる。紗夜の気持ちにも気づいているため2人とも応援している。

 

氷川紗夜

 

性格は原作通り

同じギター担当の八幡のことは尊敬しているが、嫉妬もしていて最初はその2つの感情から八幡との接し方がわからなかった。

その後八幡との問題は解決しその時に八幡のことを意識し始める。

 

宇田川あこ

 

性格原作通り

かっこいいセリフを考えてる時に八幡と出会う。兄が欲しかったという思いを持っていたため八幡のことは本当の兄であるかのように接する。

 

白金燐子

 

性格は原作通り

八幡とあこの絡みを見ているのが好き。

八幡はかなり話しやすいと感じている。

友希那と紗夜の気持ちにも気づいている。

今作では、様々な人の相談相手となっていく。

 

オーナー

 

原作通りの性格

八幡のことは彼が幼いときから知っている。

八幡の才能を見出したその人であり、八幡がバンドを抜けた理由にも気づいていて八幡に対して負い目を感じている。

 

ー八幡の印象ー

一言で言うならクソババア、毎回教師みたいなことばっかり言ってきやがる。

...でも一応感謝はしている。

 

戸塚彩加

 

性格は原作通り

八幡のことは新しいクラスになってからずっと気にかけていた。

八幡と仲良くなってからはよく一緒にいる。

バンドにも興味がある様子である。

 

ー八幡の印象ー

天使!俺の日々に潤いを与えてくれる存在だ!

ここまで可愛いと男とか関係なくなってくるな!

...真面目な印象だと、やっぱり優しいな、こんな俺のこと気にかけてくれてたんだからな...

バンドにも興味があるみたいだし、今度一緒にライブでも行こうかな?

 

材木座義輝

 

性格は原作通り

八幡とは体育の時間ペア作りであぶれていたところで出会った。

厨二病ではあるが、根はかなりの友達思いである。

戸塚同様バンドに興味あり。

 

ー八幡の印象ー

こいつについて話すことはない。

 

三浦優美子

 

葉山とバンドを組んでいる女子、原作より女王っぽさが薄れている。バンドではVo.担当

由比ヶ浜と仲がいい。

葉山に好意を寄せている。

 

ー八幡の印象ー

由比ヶ浜と仲がいい女子だな、ちょっと見た目が怖いから実は少し苦手だ...

 

海老名姫名

 

性格は原作通り。

葉山たちとバンドを組んでいて担当は、Ba.である。

腐女子であり、葉山と八幡が一緒にいると妄想が止まらなくなる。

 

ー八幡の印象ー

はっきり言って苦手、俺と葉山で妄想するのは本当にやめてほしい...それに何考えてるかわかんないんだよな〜

悪い人ではないっぽいけど...

 

戸部翔

 

原作通りのお調子者だが、空気は読める。

葉山たちとバンドを組んでいて担当はDr.である。

葉山と一緒にいることが多くその関係で八幡と関わる機会も多い。

最初に八幡のことを「ひきたに」と呼んでからはそのままそう呼んでいる。

 

ー八幡の印象ー

なんていうか、いいやつだけどうざい。

いい加減俺の名前を正しく呼べ。

 

川崎沙希

 

性格は原作通り。

八幡とはあることから知り合いその後八幡の勧めでライブハウスでバイトをすることとなる。

それ以来バンドに興味を持つようになる。




まだ八幡がクライブの時までに出会ってないキャラについてはまだ八幡の印象を載せません。いずれまた書きます。
また新しいキャラを出す時には設定を作ります。


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第8話

お気に入り登録してくれてる方が予想以上に多くてとても嬉しいです!これからも投稿がんばっていきます!


あのクライブからまた少しの時が経った。

あれ以来俺は戸山に頼まれて戸山たちの練習に付き合うようになった。みんなまたあれから着実に上手くなっているようだ。

少し前までならこんな日常ありえなかったなぁ

そんな思いで日々を過ごすのだった。

 

*****

ー学校ー

 

俺はいつものように戸塚と話していた。

こないだの戸山たちのライブの話をすると戸塚は

 

「へーそんなことがあったんだ。僕もライブ行きたかったな〜」

 

俺の関わるようになって戸塚はバンドに興味を持っているようだ。

 

「じゃあ今度俺とライブ見にいくか?」

 

「え?ほんと!八幡がよければボクいってみたいよ!」

 

「じゃあ今度一緒に行こう!戸塚、初めてのデートだな」

 

「もうっ!八幡からかわないでよ...」

 

ハッ!しまった!俺としたことが心の声が漏れていた...

でも照れてる戸塚かわいいなぁ...

 

「ふっふっふっ、話は聞かせてもらったぞ!八幡!我もその狂乱の宴に参加しよう!」

 

「いや、別にお前は来なくてもいいぞ、てかむしろ戸塚と2人で行きたいからくんな」

 

「我の扱い雑すぎない!メンタルがすでにブレイク寸前なのだが...」

 

材木座のメンタルなんて知らん。俺は戸塚と2人っきりで行きたいんだ。

 

「まぁまぁ八幡材木座くんがかわいそうだよ、それにボクは全然大丈夫だよ?」

 

戸塚優しいなぁ...

 

「戸塚が言うんじゃ仕方ないな...」

 

こうして俺と戸塚となぜか材木座はライブに行くことになったのだった。

 

*****

ーその日の放課後ー

 

「ヒッキーライブに行くんだって?」

 

その放課後由比ヶ浜が俺に声をかけてきた。そばには雪ノ下と一色もいる。なぜこいつらがライブに行くことを知ってるんだ?

 

「まぁな、でもなんでお前が知っているんだ?」

 

「さいちゃんから聞いたんだよ、なんであたしたちがいない時に限って見に行っちゃうの!?ヒッキーひどいし!」

 

「いや、別にそれはたまたまだから...」

 

「じゃあ今度私たちがライブをする時には必ず来ることね」

 

「...わかった」

 

なんか雪ノ下にはめられたみたいだな...

 

「そういえば今度のライブにはRoseliaが出るらしいですよ〜」

 

一色がそう言うがRoseliaを俺は知らない。

 

「Roselia?そんなすごいバンドなのか?」

 

「うん、プロ顔負けの演奏技術で最近すっごい人気なんだよ!特にボーカルの湊さんがすごいの!」

 

ん?湊?どっかで聞いたことあるな...

うーん?まぁいいか

 

「そうなのか、それは楽しみだな、お前たちも見にくるのか?」

 

「残念だけれど、私たちは見に行けないの」

 

「そうか残念だな」

 

「なっ、そっそれはどういう意味で...」

 

なぜか雪ノ下の顔が赤くなっている。

 

「...ヒッキーっていつもゆきのんにだけあんなこと言って...」

 

「...もう少し私にもそんな言葉言ってくれていいじゃないですか...」

 

由比ヶ浜と一色が何か言っているが小声でよく聞こえない。

 

「と、とにかく私たちはこれから練習があるから」

 

そう言って雪ノ下たちと俺は別れた。

なんかみんな様子がおかしかったが大丈夫だろうか..

...あの頃のように無理をしてなければいいんだけどな

*****

 

ー公園ー

 

雪ノ下たちと話してから俺はすぐに家に帰るために学校を出た。

途中公園に立ち寄り自販機でマッカンを買う。

家で飲むと小町がうるさいのだ。

そのため落ち着いてマッカンを飲むためベンチに向かうと先客がいた。

紫髪のツインテールの子だ。

見たところ小町と同じくらいの歳だろうか?

でも、なんかぶつぶつ言っているな...

 

「やっぱここはこうした方がかっこいいかな...いや、でもこうするのも...」

 

どうやら何かのセリフでも考えてるようである。

やばい、俺はそう言う類の病に昔かかってしまったことがある。その時の血が騒ぎ出してきているのだ。

しかし、ここでそれを思い出してしまったら、また...黒歴史を...

 

そうして俺が煩悩と戦っていると少女は俺のことに気づいたようだ。

 

「ん?お兄さんどうかしたんですか?あ!もしかしてあこじゃまでした?」

 

「ん?いや、そう言うわけじゃ...ただ昔の封じられし記憶の封印が解けかけただけで...」

 

って!俺バカだろ!よゆーで昔の記憶でてきてるじゃん!

八幡のあほ!馬鹿!マヌケ!八幡!

八幡は悪口じゃねーよ!

 

俺がパニックに陥ってる間も少女は黙っていた。

あああああ絶対引いてるよ、こんないい歳の男がこんなこと言ってたらそりゃ引かれるよ!

 

しかし出てきた言葉は予想外の言葉だった。

 

「なんかかっこいい!お兄さんもしかしてかっこいいこと知ってるの!?」

 

あれ?なんか、すっごい喜ばれてる...?

 

「よかったらあこと一緒にかっこいいセリフ考えてくれませんか!?」

 

「ああ、別にいいけど...」

 

つい勢いに押し切られた俺はそう返事をした。

 

そのまま少し話をすると少女について少しわかった。

 

名前は宇田川あこという、中学3年生のようだ。

見ていてどうも放っておけないような、そう、小町に似た思いを持ってしまう。

 

「あこ、お兄ちゃんも欲しかったからお兄ちゃんできたみたいで嬉しいです!」

 

「もってことはお前には姉がいるのか?」

 

「うん!すっごいかっこいいお姉ちゃんなの!」

 

きっと姉のことが大好きなのだろう。

あこは目を輝かせて話続けた。

そんな様子も可愛らしい。

 

「あっ!あこそろそろ行かないと...また八幡さんあこと話してくれる?」

 

不安げに聞いてくるが、答えは1つに決まっている。

 

「ああ、もちろんだ」

 

こうして俺に妹のような存在ができた。

だがこの時は知らなかった、まさかこのあとあんな再会を何度もすることになるとは...

 

*****

 

ーその後ー

 

「友希那さんすいませーん」

 

うう、八幡さんと話してたら楽しくてつい練習に遅れちゃったよぉ

友希那さん怒ってないかなぁ?

 

「あこ、次からは気をつけるのよ」

 

「はい!」

 

よかったぁ...そこまで怒ってない

 

「どうして遅刻なんかしたの〜あこ?」

 

「あ!リサ姉!実は...」

 

こうして八幡さんとの出会いをあこは語った。

 

「そんなことがあったんだ〜、でも怪しい人だったら危ないから気をつけてね〜」

 

「うん!わかった!」

 

「...あこちゃん、嬉しそうだね...」

 

気がつくとりんりんも後ろで笑っている。

 

「うん!ほんとにいい人だったの!今度りんりんにも紹介するね!」

 

「わ、私は人と話すの..苦手だから...」

 

「大丈夫だって、ほんとにいい人だったもん!」

 

「話すのもいいですが、そろそろ練習をしましょう。宇田川さん、白金さん?」

 

話に夢中になってしまっていたら紗夜さんに怒られちゃった...

 

「はーい」

 

「はい」

 

こうしてRoseliaの練習は過ぎていくのであった...

 

あこの言っていた八幡って....

そんな名前の人、あの人しかいないわね...

まだ、ギターを弾いているのかしら...

 

1人の少女の思いとともに...

 

 




次回で八幡とRoseliaを出会わせることができそうです。
いずれ、全バンドを登場させます。


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第9話

読んでくれている人も増えたのでこれからも頑張っていきます!


俺があこと出会ってからライブの日まではあっという間に過ぎた。

俺は今戸塚と材木座と待ち合わせをしてる場所にて待機中だ。

 

「あっ!はちまーん!おまたせしちゃったかな?」

戸塚が俺を見つけるなり駆け寄ってくる。

うん、今日も俺の天使は最高にかわいい、ほんと毎日待ち合わせしたいくらいにかわいい。

 

「いや今来たばっかだ」

 

「ほんと?八幡は優しいね」

 

うっ、その笑顔は反則だろ...

 

「まぁ戸塚のためなら何時間だって待ってられるけどな!」

 

「もうまたそんなことを言って...」

 

確認だけど戸塚って男のはずだよな?

なのになんでこんなかわいいの?

これはじっくり調べる必要が...

などと、俺が危ない思考にとりつかれかけてると

 

「またせたな、八幡!それに戸塚氏も!」

 

空気読めないなぁ、こいつ...

まぁいいか。

 

「それじゃライブハウスに向かうか」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

こうして俺らはライブハウスspaceへと向かった。

道中もいろんな話をした。

何だかんだ俺は学校ではほとんどこの3人で一緒にいることが多い。

2人の、特に材木座の前では言えないが、こいつらのことは大切な友達だと思っている。

 

そんなこんなで俺たち3人はライブハウスの前に到着した。

するとそこにはすでにかなりの人がいるようだ。

 

「うおっ!思ったより混んでるな」

 

「そうなの?やっぱり由比ヶ浜さんが言ってたバンドが出るからなのかな?」

 

「おそらくはそうなのであろう」

 

参ったな人混みはあまり得意ではないんだが...

まぁ最悪材木座盾にして進めばいいか。

などと俺が考えていると

 

「八幡...?」

 

なんかスッゲェ美少女に声かけられたんだけど...

え?俺こんなかわいい知り合いいたっけ?

てか友達って言えないの悲し過ぎだろ俺...

てかまじでこの銀髪の美少女誰?

 

「...どうやら憶えてないようね」

 

少女が明らかに不満そうな顔になる。

そんな顔もとてもかわいいのだが。

 

「ああ、悪い」

 

「今日のライブを見に来たの?なら、見てなさい。必ず思い出させてあげるわ」

 

「...そうか、楽しみにしてる」

 

「ええ」

 

そう言って少女はライブハウスへと入っていった。

 

「八幡、忘れちゃうなんてあの子がかわいそうだよ!」

 

戸塚が少しオレを責めるような口調だ...

ま、まずい、戸塚に嫌われるのだけは避けねば...

 

「全くである!あのような可憐な者を忘れるとは!我ならば知り合いが少な過ぎて人を忘れたことなどないぞ!忘れられたことなら数えきれんがな!」

 

とりあえず材木座うっさい、あと何気に悲しいこと言うなよ...

俺も同じようなもんだけど...

 

「「グスッ」」

 

「ぼ、ボクは忘れないから、安心してよ!2人とも!」

 

涙ぐんだ俺たちを戸塚が優しくフォローしてくれる。

やっぱ戸塚は俺の天使だ...

 

「と、とにかくライブハウスに入ろう!」

 

相変わらずドタバタながら俺たちはライブハウスに入っていくのであった。

 

*****

 

ーその頃楽屋でー

 

「ごめんなさい、少し遅れてしまったわ」

 

「友希那が遅刻なんて珍しいね〜。なんかあったの?」

 

「ええ、入り口で知り合いにあったの」

 

全くまさか忘れられているなんて思わなかったわ...

絶対この後のライブで思い出させてあげるわ。

 

「へぇー学校の子?」

 

「違うわ、昔の知り合いよ。それよりリサそろそろ準備をしておいて」

 

「なんだがいつもより気合が入ってますね、湊さん」

 

「ええ、今日は最高のライブにするわよ」

 

「はいっ!わかりました!私たちもサイコーにかっこいい演奏をしようね、りんりん!」

 

「...うん、頑張ろうね...あこちゃん」

 

*****

 

ライブハウスに入った俺たちはライブが始まるまでは休憩スペースで待つことにした。

ここでコーヒー飲むのも久しぶりだな...

 

「...あれ?八幡先輩?」

 

不意に名前を呼ばれ振り返ってみると

 

「花園?戸山たちとライブを見に来たのか?」

 

「違うよ、私ここでバイトしてるの」

 

「そうだったのか」

 

「うん、にしても八幡先輩友達いたんですね?」

 

なんて失礼なやつだろうか...

確かに知り合いと言える人さえ少ないけど...

 

「俺だって友達くらいいるんだよ...」

 

「そうなんですね。それは置いといてまた私たちの練習に来てくださいね」

 

「いや、置いとかないでくれよ...」

 

「じゃあ私まだ仕事あるのでいきますね」

 

いや、俺の話にも少しは反応して?

泣いちゃうよ?

 

「おう、頑張れよ」

 

内心涙目になりながらも俺たちは別れた。

 

「八幡って友達がいっぱいいるんだね!」

 

「そんなことはないだろ、俺ぼっちだし」

 

「だって八幡いろんな女の子と話してるでしょ?」

 

なんかその言い方だと俺が女子としか話してないみたいだな...

確かに男の知り合いより女子の知り合いが多いけどさ...

というかなんで戸塚は不満げなんだ?

かわいいなぁ!

 

「た、たまたまだろ」

 

「羨ましいぞ!八幡!リア充になったら呪ってやるからな!」

 

材木座、じゃあお前一生俺を呪えないぞ?

 

「おや?そこにいるのは、ハチかい?」

 

戸塚たちといつものようなやり取りを交わす中俺はあまり聞きたくなかった声を聞いた。

くっ、まさかあってしまうとは...

 

「どーも、久しぶりだなババァ」

 

「あんたは、相変わらずだね」

 

「悪い、戸塚少し話してくるからここで待っててくれ」

 

「う、うんわかったよ八幡」

 

俺に声をかけてきたババァの正体はこのライブハウスのオーナーであり俺にギターを教えてくれた人でもある、だが正直あまり好きな人ではない。

なんというかいうこと1つ1つが説教じみているのだ。

 

「ハチ、まだギターは弾いているのかい?」

 

「ああ、最近はまた人前で弾くようになった」

 

「そうかい...」

 

この人はこの人なりに俺を心配してくれているのだろうか?

 

「...バンドはもうやらないのかい?」

 

「...わからない、ただもうあいつらから逃げない覚悟は決めた」

 

「...相変わらずガキかと思ってたが、知らぬ間に大きくなったもんだね」

 

「そりゃどーも」

 

ババァは心底意外そうだ、同時に喜んでいるような気もする。

 

「まぁ、いつまでも雪乃たちを待たせるのもよくないからね。後悔だけはしないようやりきりな。あんたがまたうちのステージに立つ日を楽しみにしてるよ」

 

「おう、まってろ」

 

...なんだ?ババァのやつなんだか

いや、やめておこう。

このババァにも色々あるんだろう。

 

「んじゃ、ライブ始まるから俺はもう行くぞ」

 

そう言い俺はババァと別れた。

 

*****

 

その後戸塚たちと合流した俺はステージの前でライブが始まるのを待っていた。

 

「みてみて八幡!ボク、ペンライトもしっかり用意してきたよ!」

 

「おお、さすが戸塚準備がいいな」

 

ライブをみるのは久しぶりでペンライトなど持ってきていなかったが戸塚が俺と材木座の分まで持ってきていてくれた。

だが、ペンライトよりもその笑顔の方が眩しいぜ...

 

「このライトセイバーを振りかざし、あの孤高の舞台で戦う者たちを応援すればいいのだな!八幡!」

 

「...あんま変なことはするなよ」

 

材木座ならやりかねない、そしてそれは新たな黒歴史となるであろうことは想像に難くない。

 

「おっ!始まるみたいだな」

 

そうしてライブは始まった、戸塚も材木座も初めてのライブをとても楽しんでいるようだ。

 

そしてあっという間に時は流れ、最後にステージに立つのは由比ヶ浜から聞いていたRoseliaだ。

銀髪の美少女もまだステージに立っていないことからきっとRoseliaの一員なのだろう。

 

そんなことを考えていたらRoseliaはもうステージで準備を開始していた。

やはりあの少女はRoseliaの一員、おそらくVo.だろう。

ん?そしてドラムのとこで準備している子は...あこ!?

あいつもRoseliaのメンバーだったのか!?

 

準備が完了したらしいRoseliaの挨拶はそっけないものだった。

 

「行くわよ、BLACK SHOUT」

 

そして演奏は始まった。

にしても本当にレベルが高いな...

今まで聞いたバンドの中で一番と言っていい。

あこのドラムも見事だし、ベースやキーボードのレベルも高い。

ギターの子も相当な努力家なのだろう。

聞いただけでその正確性が分かる。

しかし何よりボーカルのあの少女がすごい。

 

『特にボーカルの湊さんがすごいの!』

その時不意に由比ヶ浜との会話が思い出される。

 

湊...そうか、あの時の...

 

俺の中で全てが繋がり俺はぼそりとその少女の名を呟いた。

 

「...湊 友希那」

 

*****

 

ーライブ終了後ー

 

俺はあのあと戸塚たちに先に帰ってもらってライブハウスの前で待っていた。

あの少女、湊と話をするためだ。

少し待っていると湊はバンドメンバーと一緒に出てきた。

視線を送ると湊もこちらに気づいたようだった。

 

「どう?思い出してくれたかしら」

 

「ああ、全部な」

 

「ならよかったわ」

 

よかった...根に持ってなさそうだな。

 

「あれ?八幡さん!あこたちのライブ見にきてくれたの!すっごい嬉しい!どうだった!かっこよかったでしょ!」

 

「ああ、すっげーかっこよかった」

 

「やったー!りんりんあこ、八幡さんに褒められたー!」

 

「...よかったね...あこちゃん」

 

あこと話しているのはキーボードを弾いていた子か。

見た目通りおとなしい性格なんだな。

 

「私のことは忘れてたのに...あことはずいぶん仲が良さそうね」

 

なぜか湊が不機嫌だ。

俺は何かしてしまったのだろうか?

 

「なになに〜?あこと友希那の知り合いなの?」

 

「ええ」

 

「はい!」

 

「あこがこないだ話した、公園で知り合った人が八幡さんなんです!」

 

あこがそういうと質問をした少女は

 

「へ〜そうなんだ、友希那とはどういう知り合い?」

 

「昔、色々とあったの」

 

「ふーん...あ!自己紹介がまだだったね。アタシは今井リサ、友希那の幼馴染なんだ〜」

 

湊と付き合い続けられるなんて、相当面倒見のいい性格なのだろう。

 

「ひ、比企谷八幡だ...」

 

前よりはだいぶ自己紹介もできるようになっただろう!

おいそこ、まだきょどってるとかいうツッコミは受け付けないからな。

 

「まさか、お前がバンドを組んでいるなんてな」

 

「ええ、私たちは必ず頂点に立ってみせるわ」

 

「そこは相変わらずだな...」

 

こいつも性格が変わらないというか...でも心なしか前よりも少し話しやすくなった気がする。

 

「...もしかしてあなたはアブアルのギターだった比企谷さんですか?」

 

そこにRoseliaのギター担当の子が話しかけてきた。

 

「ああ、"元"だけどな...」

 

「すいません...気遣いがたりませんでしたね...私は氷川紗夜と言います。あなたのことは前々から尊敬していました」

 

な、なんか正面切ってそんなこと言われると照れるな...

 

「でも、本当にレベルが高い演奏だった」

 

「当たり前でしょう、私たちは頂点を目指しているのよ」

 

「そーそー練習だっていっぱいしてるしね!」

 

このレベルに到達するには並大抵の練習量ではないだろう。

みんなそれぞれ才能を持った上で努力しているのだろう。

 

「八幡はもうギターを弾いていないの?」

 

「まだ弾いてるよ、バンドとしては弾いてないけどな」

 

「そう...あなたのギターまた聞ける日を楽しみにしてるわ」

 

ここにも1人俺のことを案じてくれる人がいた。

なんか今日はそんなことを再確認させられるなぁ

 

「友希那がそこまでいうなんて...八幡は相当ギター上手いんだね!」

 

うっ!今井は急に呼び捨てでいけるタイプか...

コミュ力ハンパねぇ...

 

「べ、別に普通だ」

 

「そんなことはないでしょう、あなたは天才と、そう呼ばれていたでしょう」

 

氷川がそう言ってくるが俺は本当に自分が天才だとは思っていない。

むしろ今日聞いた氷川の方が演奏がうまいと思っている。

 

「あこ、八幡さんのギター聞いてみたい!」

 

「...また、聞かせてやるよ」

 

「あこ、この男はそう言ってはぐらかし続けるわよ」

 

うっ!湊にはバレてるか...

正直こんなすごいバンドの前で演奏したくないんだよな...

 

「じゃあさ、今度のアタシたちの練習の時に聞かせてよ!」

 

「そうね、八幡のギターはいい刺激になりそうだわ」

 

「...私も...聞いてみたいです」

 

くっ、逃げ場がどんどんなくなっていく...

 

「わかったよ」

 

もう諦めた方がいいだろう。

 

「やったー楽しみだねっ!りんりん!」

 

さっきからあこからりんりんと呼ばれている子の名前はなんていうのだろうか?

 

「あっ...私...白金燐子と言います...演奏...楽しみにしてます...」

 

察してくれたのか自己紹介をしてくれる。

なんというか、周りをよく見ているんだろうな。

 

「じゃあ今度の練習楽しみにしているわ」

 

「せいぜいそれまでに練習しておくよ」

 

こうして俺はRoseliaの前で演奏することが決まってしまったのだった...

 




Roseliaと出会わせることができました。
他のバンドはどの順番で出そうか今迷っています。
ちなみに八幡は雪ノ下たちとの出来事により自分のギターの評価をかなり過小評価する癖がついている設定です。


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第10話

お気に入り登録が100人を突破しました!
登録してくれた方ありがとうございます!
これからも自分なりに精一杯頑張っていきます!


俺は結局1週間後に、Roseliaの前でギターを弾くことになってしまった。

流石に何も練習しないのは失礼だと思うし、俺自身が恥をかいてしまうので練習しようと、アドバイスをしがてら戸山たちと共に蔵でギターを弾いている。

 

「何度見ても八幡先輩のギターすごい!」

 

戸山からこんな言葉を聞くのは毎回のことだが、それでもやはり少し恥ずかしい。

 

「そ、そんなことないだろ」

 

「まったまたー顔、にやけてますよ?ほんとは嬉しいんですよね!素直じゃないですね〜!」

 

あ、なんか恥ずかしがってるのがアホらしくなってきた...

 

「ちょっ!香澄そんなことしてないで早く練習に戻れって〜!」

 

今日も市ヶ谷は苦労してんな〜...

もしこいつらに5人目のメンバーができたらしっかり者であることを祈るしかないな...

 

ていうか、こいつらのバンドってまだ名前ないのか?

 

「戸山、お前らのバンドって名前はまだないのか?」

 

「そう言われてみれば...」

 

「まだ、考えてなかったね...」

 

戸山とりみがそう答える。

 

「ほんとにどーすんだよ、文化祭出るなら名前考えないとだろ?」

 

「また、おいおい考えればいいんじゃない?」

 

いつも通り真面目な市ヶ谷に対して相変わらずの花園...

 

「そういえば、八幡先輩がいたバンドの名前って何でしたっけ?」

 

「Absolute Aloofだよ。香澄ちゃん」

 

俺が答える前にりみがそう答える。

 

「でも、どうしてそんな名前にしたんですか?」

 

「あーそれはだな...」

 

その理由はそこそこ恥ずかしいんだが...

 

「私も気になる」

 

「わ、わたしも!」

 

「ここまで聞くと気になるな...」

 

花園、りみ、市ヶ谷も聞きたそうだし...

仕方ない、話してやるか。

 

「別に深い理由はねーよ、ただ高いレベルの演奏を目指してたから、それだけだ」

 

「だから、絶対的な孤高...なるほどな」

 

おい、市ヶ谷直訳しないで...

実はこの名前を提案したのは俺なのだ、中二病を患っていた時の...

 

「と、とにかくだな、難しく考えすぎずに気楽に考えていいと思うぞ?」

 

そんな感じでアドバイスをしてこの話を強制的に終わらせた俺はその後黙々と練習に励むのだった...

 

*****

 

ー学校にてー

その日も授業を全て受けて今日はその後の予定もないのでまっすぐ家に帰ろうとしたところで小町から電話が入った。

 

「もしもし、なんか用か、小町?」

 

「うん、ちょっと相談したいことあるからサ●ゼに来てくれない?」

 

「おう、わかった。ちょっと待ってろ」

 

そういって電話を切った俺はある疑問を持つ。

 

あれ?何でサ●ゼで相談なんだ?ま、まさか今回の相談小町からじゃない...

 

なんか面倒ごとの予感....

急に重くなった足を俺は妹のためを思って必死に動かすのだった。

 

*****

 

そうして俺は小町との待ち合わせ場所についた。

するとそこには...小町の隣に座る男の姿があったのだ。

小町、ま、まさか相談って彼氏の紹介じゃないだろうな...

お兄ちゃんは絶対認めないからな!

 

「あ、お兄ちゃーん、こっちこっち」

 

俺に気づいた小町に呼ばれたのでとりあえず俺は小町の正面に座る。

 

「それで用ってのは何だ?」

 

俺は極力怪しまれないようにそう応じるも...

 

「お兄ちゃんなんか黒いオーラ出てるよ?大丈夫?」

 

失敗していたようだ。

 

「その男は誰なんだ小町?」

 

「初めまして、比企谷さんのお兄さん!俺!川崎大志って言います!今日は相談に乗ってもらってありがとうございます!」

 

「お前にお兄さんと呼ばれる筋合いはない」

 

「お兄ちゃん、結婚を認めない父親みたいだよ...」

 

だって小町取られたくないもん!

 

「なんか気持ち悪いこと考えてるでしょ...。とにかく!大志君の話を聞いてあげてよ!」

 

くっ、小町の頼みなら断れない...

 

「で、相談ってのは?」

 

「その、実は...」

 

長かったので簡潔にまとめるとこいつの姉が帰ってくるのが遅くて心配なのだという。そしてそのことを小町に話したところ俺と同じ高校、しかも同じクラスであることが発覚、そこで俺に何をしているのか調べて欲しいとのことだ。

 

色々心当たりを聞いていると、そらとなく当てはあるそうだ。

曰く、こいつの家は兄弟が多く家計的に大変らしい。

そこで遅くまでバイトをしているのではないかとのことだ。

 

「それで、やってくれる?お兄ちゃん」

 

「正直、そこのお前の推測が当たってた場合には俺1人でどうこうできる問題ではないな」

 

「そう...ですよね、やっぱ俺、直接姉ちゃんに聞いてみます」

 

「そう、急ぐな。やらないとは言ってないだろーが」

 

「じゃあ...」

 

「俺にできるところまでならやってやるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

こうして俺は予想通り面倒ごとに巻き込まれのだった。

 

*****

ー1日後ー

 

まず俺がすべきことは1つだな。

どいつが大志の姉か探すことだ...

実は俺はクラスメイトの名前をほとんど覚えていない。

ひっ、必要なかっただけだからな...

 

だが、どうやって探すか?

まずそもそも俺が人に話しかけることができないので探しようがない。

あれ?もしかしてここで俺のやれること終了?

 

「ヒッキーどしたの?やたら悩んでるけど」

 

「由比ヶ浜か...」

 

悩んでる俺をみて心配してくれたらしい由比ヶ浜が話しかけてきた。はっ!由比ヶ浜ならきっと川崎のことを知っているはず!

 

「なぁ、由比ヶ浜。川崎って名字のやつ知ってる?」

 

「うん、このクラスにも1人いるよ、川崎沙希ちゃんって子が」

 

「そっか、サンキュー」

 

「でも、何でヒッキーそんなことを聞いてきたの?」

 

な、なんか少し不満そうだな。なんか誤解されている気がするからしっかり事情を説明したほうがいいだろう。なら雪ノ下たちにも一緒に話して協力してもらった方がいいかもな。

 

「理由を話すから放課後雪ノ下たちと一緒にまた俺のところに来てくれ」

 

「う、うんわかった」

 

こうして俺は協力者を得た。

 

*****

ー放課後ー

 

「...なるほど、確かにそれは気になるわね」

 

事情を話したら雪ノ下を始めみんな協力してくれるという。

 

「でも、まずどうするんですか?だって誰もその川崎さんと話したことないんですよね?」

 

「それはもう、単刀直入に聞くしかないんだけどさ...」

 

「じゃああたし聞いてこようか?」

 

「いや、それはやめたほうがいい」

 

「そうね」

 

「え?なんで?」

 

「普通に考えて見ず知らずの人から夜何してるのと聞かれても答えてはくれないでしょう?」

 

よく理解ができてない由比ヶ浜に雪ノ下が説明をする。

 

「じゃあもうお手上げじゃないですか〜」

 

「そこはまた由比ヶ浜さんをうまく使うしかないわね...」

 

前途多難ながらこいつらとならできそうな気がするのは不思議なもんだな。

 

*****

 

あれから俺たちは様々なアプローチで川崎と接触したのだが当然のごとく教えてはくれなかった。

 

しかし、俺たちはついに川崎が働いている場所を見つけ出した。

 

「...それで、なんで俺たちもこんな格好しているんだ」

 

今俺たちはみんな正装である。

 

「私たちだって高校生でしょ、こうでもしないとセキュリティを突破できないわ」

 

「それより先輩何かいうことはないんですか?」

 

あざとい...だが確かに何も言わないのも失礼な話だな。

 

「3人ともすごい似合ってるぞー」

 

「てきとーだ!」

 

そりゃこんなセリフ言ったことほとんどないからな。

 

「まぁ、比企谷君が言ってくれただけよしとしましょう...」

 

やっぱり3人とも呆れ顔だな...

やっぱりならないことはするもんじゃないな。

 

「と、とにかく行ってみるか」

 

俺らが行く場所はとあるホテルの最上階にあるバーだ。

そこで、川崎は朝方までバイトをしているようだ。

 

そして俺たちはバーに入った。

こんなとこ普段はまず来ないから緊張するな...

初めてライブハウスに入ったあの時を思い出すぜ...

 

入って席に案内されると川崎はすぐに見つかった。

 

「川崎...」

 

しかしあいつは俺のことを憶えてないようで

 

「すみません、どちら様でしたでしょうか?」

 

「クラスメイトに名前を憶えられてないのはさすが比企谷君ね」

 

なんか既に俺のメンタルがブレイクしそうなんだが...

 

なぜかその後も俺をディスりながら雪ノ下、由比ヶ浜、一色と川崎の口論は続いた。

俺の精神はすでに瀕死だ...

 

「大志が何言ったかは知らないけど気にしないでいいから、もう関わらないで」

 

川崎は冷たくそう言い放つがここで引き下がるわけにはいかない。

 

「別に俺はバイトをやめろとは言わない、ただこんなところで無理して朝まで働くのはやめろってことだ」

 

「でも、そうしたら...」

 

「お前の家の事情は把握しているつもりだ、だからこそ家族に心配をかけるな。俺にも1人妹がいる。俺もできれば妹には苦労はかけたくない、だからお前の気持ちも少しはわかるつもりだ」

 

「それじゃあなおさら止めないでよ...あたしは大志たちに迷惑をかけたくないの!」

 

「だったら、俺はもっといいバイト先を知ってるしお前、スカラシップって知ってるか?」

 

それから俺は川崎の説得を試みた。

 

「俺はお前ら兄弟の問題にまで踏み込む気は無い。もう一度弟とよく話し合ってみるんだな」

 

「...うん」

 

どうやら俺の説得は川崎まで届いたようだ。

きっともう、大丈夫だろう。

こうして俺たちはバーを後にした。

 

...予想より遥かに値段が高かったな。

おかげで俺の小遣いが一気に消えた...

 

*****

 

あれから川崎は弟と話し合ってあのバイト早めることにしたらしい。俺の提案も受け入れてくれるようだ。

 

「その...ありがと...」

 

あの後川崎から感謝を伝えられた。

そして俺が紹介した新しいバイト先とは...

そう、spaceだ。

俺は川崎にライブハウスで働いてみないかと提案したのだ。

あそこなら年齢をごまかさずともバイトができるだろう。

 

こうして俺に依頼された面倒事は無事解決されたのだった...

 

*****

 

兄弟、それは最も近しい他人である。

これは事実だろう。

だがしかし、だからこそお互いなら信頼し合うことができるのだろう。

俺も小町もそのことを再確認できたな...

 

そんなことを俺はギターを弾きながら考えていた。

すると小町が俺の部屋に入ってきた。

 

「お兄ちゃん、今、大丈夫?」

 

「ああ、どうしたんだ小町?」

 

「やっぱりね、小町ギターを弾きたい。だからギターを小町に教えて」

 

っ!予想外の内容に俺は驚く。

以前も小町に同じことを言われた俺は小町を傷つけるのを恐れて小町にギターを弾かせまいと躍起になったのだ。

諦めていたと思ってたが...

弟や妹は姉、兄が思っている以上に成長しているのだと実感したばかりだ。

 

なら、俺の出せる答えは1つだけだ。

 

「ああ、分かった。絶対途中で投げ出すなよ?」

 

「うん!」

 

その時見た小町の笑顔は今までより少し大人びて見えたのだった...




川崎さんとの出会いは作者の能力の関係でだいぶ都合のいいように改変してしまいました。
そして小町がギターを弾きたがったのは兄に対する憧れによるものです。
次回ではRoseliaの前での八幡の演奏を書いていきます。


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第11話

またペースが落ち始めてますががんばって書いていきます!
それと葉山の設定を少し変えさせていただきますのでご了承ください。


川崎の件から少したってついに今日はRoseliaの前でギターを演奏する日だ。

 

ただいまの時間は午前9時、俺はspaceにいる。

Roseliaの練習は午後からだが、川崎の件であまり練習ができていなかったので少しでも練習しようと思って午前からスタジオで練習している。

...のだが

 

「なんでいるんだよ...川崎、花園そしてババァ」

 

なぜかspaceの従業員の3人が俺の練習風景を眺めている。

 

「いや、午前はあんたともう一組の予約しかないから」

 

「そうけち臭いことを言うんじゃないよ、ハチ」

 

「うっせ、ババァ」

 

「オーナーをババァ扱い...」

 

うわっ!花園に引かれた、何がショックだな...

こいつに引かれるとか...

 

「あんた、さすがだね...」

 

川崎も呆れ顔だ。

しかし、ここのオーナーとは俺はだいぶ長い付き合いだし...

今更態度を変えることもできるはずもない。

 

「いいんだよ、2人とももう慣れたことだ」

 

ほら、ババァ自身がこういっているのだ。

 

「というか、八幡先輩とオーナーっていつから知り合いなの?」

 

花園は不思議そうに聞いてくる。

まぁ確かにこんな風に話してたらそう思われるのも仕方ないな。

 

「俺が...中学校に入る少し前くらいからかな?」

 

「そうだね...あんたはほとんど変わってないけどね」

 

このババァは俺に罵声を浴びさせないと気が済まないのか?

 

「ババァはシワが増えたんじゃないか?」

 

とりあえず俺も嫌味の1つくらい言い返しておく。

 

「まったく、ほんとにあのときあんたに声をかけるんじゃ無かったよ」

 

「どういうことですか?」

 

ババァの言葉に川崎がそう質問する。

 

「まぁ、俺とこのババァには色々あったんだよ」

 

「私、その話聞きたい!」

 

「また時間があったときにでもババァに聞け、じゃあ俺は練習するからそろそろ1人にさせてくれ」

 

「それじゃあ2人とも仕事に戻るよ」

 

そういってババァたちはスタジオから出て行った。

 

*****

 

あれから1時間は練習しただろうか、すると不意にドアが開いた。

 

「やっぱり、お前が弾いてたんだな...」

 

聞き覚えがあるその声は俺の数少ない男の知り合いのものだった。

 

「だからどーしたんだよ、葉山?」

 

「そう言うなよ、友達だろ?」

 

「俺はお前と友達になったつもりはねーよ」

 

「まったく相変わらず釣れないやつだなぁ」

 

こんな会話をしてるが葉山はニヤついている、こいつとこんなやりとりするのも久しぶりだな...

多分俺の顔も葉山と同じような顔になっているだろう。

 

「ほんとに、また弾き始めたんだな...」

 

「ああ」

 

急に真面目な雰囲気にしてくるな、こいつ...

でもこいつも俺を心配してくれていた1人なのだ、多少思うところもあるのだろう。

 

「これでようやくお前と勝負の続きができるな」

 

「おいおい、冗談はやめろよ。あの頃は俺の圧勝だっただろ?」

 

「お前こそ寝言は寝て言えよ、俺が本気出してなかったのにも気づいてないのか?」

 

なぜかこいつと話しているとこんな軽口の応酬になってしまう。

きっとそれは本心ではこいつのことをライバルと思っているからなんだろう。

実際自分たちで言うのも難だが俺たち2人は天才と言われよく比べられていた。

まぁ俺の方が技術あると言われてたけどな?

ほんとだよ、八幡嘘つかない。

 

「てか、なんでお前がここにいるんだよ?」

 

「そりゃ、バンドの練習に決まってるだろ。お前こそなんでここにいるんだ?」

 

なるほどババァたちが言っていたもう1組の予約とはこいつらのことか。

 

「俺はまぁ、色々あってな」

 

そう言って俺は葉山にRoseliaの前で演奏することになった経緯を話した。

 

「なるほどな。でも、Roseliaの前で演奏するとは、なかなか緊張してるだろ?」

 

くそっ!楽しそうな顔しやがって。

 

「じゃなきゃ俺がこんな時間から練習なんてするわけないだろ」

 

実際俺は練習が午前からだとよく寝坊して遅刻して雪ノ下からよく怒られていたものだ。

 

「確かにそうだ」

 

そんな風に俺たちが話していると不穏な声が聞こえてきた。

 

「ぐふふっ、やっぱりはやはちはいいね」

 

げっ!海老名さんに見られてたのか...

 

「久しぶりだね、比企谷君」

 

「久しぶり」

 

なんというか俺は海老名さんの雰囲気が苦手だ。

何考えてるか分からないし...

 

「隼人くーん!早く練習しようぜ!ってヒキタニ君じゃん!久しぶりー!」

 

「おう、久しぶり。お前も変わらないな」

 

相変わらず少しウゼェ

 

「ヒキタニ君はまたバンドやるの?」

 

「まだ分からん...」

 

「そっかー。やるんならまたよろしくねー!」

 

でも、こういうところがあるから嫌いになれないんだよな。

てかこの2人が来たってことは...

 

「3人とも遅いし、早く練習しよーよ。ってヒキオじゃん、ギター弾いてるなんて久しぶりじゃん」

 

「み、三浦...」

 

やっぱり来たか...

三浦はなんかちょっと怖いイメージがあるんだよな...

 

「結衣たちとは仲直りしたの?」

 

「いや...まだだ」

 

「そっ、別にあんたのことはどーでもいーけどさ、また結衣たちを泣かしたら許さないから」

 

「それだけはもう絶対にしない...」

 

そう、二度と...

 

「じゃあ俺たちはそろそろ練習をしてくるよ。それと比企谷、俺も後でお前のギター聞きに行っていいか?」

 

「それは俺じゃなくて湊に聞けよ」

 

「じゃあそうするかな」

 

こうして俺と葉山たちは別れた...

 

*****

ー午後ー

 

そして午前はあっという間に過ぎRoseliaの面々も集まってきた。

 

「こんにちは、比企谷さん」

 

最初にきたのは氷川か、やっぱ見たまんま真面目なんだな...

 

「こんにちは、八幡」

 

「こんにちは〜八幡!」

 

次に湊と今井が

 

「あっ八幡さん!こんにちは!」

 

「...こんにちは...」

 

そしてそれから間も無くあこと白金がこれで全員揃ったな...

 

「比企谷、もうすぐに弾くのか?」

 

葉山もほんとにあの後残ってるし...

 

「あなたは...葉山さんですよね?」

 

さすが氷川葉山のことも知ってるようだ。

 

「こんにちは、俺もこいつのギターを聞きたいんだけど、聞いて行っていいかな?」

 

「別にいいわよ」

 

「ありがとう、湊さん」

 

葉山も湊とは知り合いらしい。

てか湊、葉山に許可出すんじゃねーよ

 

「はぁ、言っておくがほんとに期待はするなよ?」

 

「それなんだが比企谷、俺と勝負しないか?」

 

勝負?葉山は一体何をいつまでいるんだ。

 

「せっかくお前がギターを弾くんだ、久しぶりに勝負と行こうぜ」

 

そんなのまぁ湊が却下するだろう。

と、たかをくくっていたのだが

 

「それは面白そうね」

 

「確かにそっちの方がカッコ良さそう!」

 

「2人ともギター上手いんでしょ〜。楽しみだな〜」

 

「...それも...面白そうですね...」

 

おい、4人揃ってなんで受け入れ態勢バッチリなんだよ。

まったく、どこぞやの大統領もこの4人を見習った方がいいな。

 

「たくっ、仕方ねーな」

 

と言いつつ俺もかなりワクワクしているのだ、俺もまだガキだな。

こうして俺と葉山は勝負をすることになった。

 

*****

その後結局、川崎たちも来てスタジオの中にはかなりの人数がいる。

 

「八幡さんと葉山さんって前からライバルだったの?」

 

あこの質問に対して俺らは

 

「「いや、俺の圧勝だったぞ(よ)」」

 

2人揃ってそう返事をする。

 

「おい葉山嘘つくなんてみっともないぞ」

 

「その言葉そっくり返してやるよ」

 

ちなみに実際にはほとんどどっこいどっこいだったが若干俺の方が勝っていた...はず

 

「2人ともほんと仲良いね〜。」

 

「いや、別によくない」

 

「即答するのね...」

 

今井の質問に即答したことに対して湊は呆れ顔だ。

 

「この2人はずっとこんな感じだよ、まったくもう少し仲良く出来ないのかねぇ」

 

おいババァ勝手なこと抜かしてんじゃねーぞ。

 

「...羨ましい...です...」

 

「あんたらがこんな仲よかったなんて意外だね」

 

白金と川崎まで...

 

「とにかくはやく聞かせてよ」

 

花園も相変わらずのマイペースだな...

市ヶ谷の苦労が目に見えるようだ...

 

「じゃあそろそろ始めるか、準備はいいか比企谷?」

 

「いつでも来いよ、先はお前からでいいぜ」

 

「じゃあ行かせてもらうぜ」

 

*****

ー葉山演奏終了後ー

 

「すっごーい...」

 

「さすがね...」

 

湊やあこはそんな言葉をつぶやいた。

他の人たちも皆葉山の演奏に圧倒されている。

 

「また腕を上げたね、隼人」

 

「ありがとうございます。オーナー」

 

「かっこよかった!」

 

ババァや花園も満足しているようだな。

てかババァ葉山には甘いのかよ。

 

「比企谷、これが今の俺の全力だ、次はお前の演奏を見せてもらうぞ」

 

「...おう」

 

そうして俺はみんなの前に立つ。

...はっきり言う、予想外だった。

まさかあそこまで葉山のギターが成長しているとは...

今の俺でこいつの演奏に釣り合う演奏ができるのか?

このあと弾いて俺は...ここにいる人たちを...満足させられるのか?

 

 

「ハチ、変なことは考えずにやりな、変な演奏をしたら2度とうちのステージには立たせないよ」

 

ババァ...ほんとこういう時に人の心を読んだみたいに...

 

「八幡、あなたの音私たちに聞かせて」

 

湊も...

ここまで言われて変な演奏はできないな...

今やれる全てを...出し切る。

 

瞬間、俺の頭の中に扉が現れる。

とても、大きく重々しい扉が

しかし俺は臆することなく、その扉に手をかけ

 

...俺の全力を...見せる...

 

一気にその扉を...開いた。

 

俺を、まばゆい光が包んだ。

 

*****

ー八幡演奏終了後ー

 

はぁはぁ、やりきった...

俺の持てる全てを出した...

 

正直演奏中のことはほとんど覚えてない。

それだけ俺は集中していた。

心なしかいつもよりも体力消耗が激しい...

そして、演奏が終了したというのに、あまりにも静かだ...

 

「...比企谷...お前...」

 

葉山が何かを伝えようとしている。

 

「...あんな八幡見たことない」

 

湊も驚いている。

 

「こないだより、すごい...」

 

花園も

 

「これが...比企谷の...」

 

川崎も

 

「カッコいい...」

 

あこも

 

「...すごく...激しい演奏...」

 

白金も

 

「あんな演奏初めて見た...」

 

今井も

 

 

「.....」

 

氷川も

 

 

みんな言葉を続けようとしているがうまく言葉にできないようだ。

そんな中

 

「ハチ、あんた入ったね」

 

入った?何に?このババァは何を言ってるんだ?

 

「究極の境地、ゾーンに」

 

ゾーン?そういえば昔ババァがそんなこと...

 

「やっぱりか...まだ、俺は入れてないのにな...負けたよ比企谷」

 

どうやら俺の勝ちらしい。

 

「...あの...ゾーンって...何ですか...」

 

「ゾーン、おびただしいほどの練習を重ねたものだけがその扉の存在に気づくことができる。だが、それでも限られた者にしか入ることは許されない。ゾーンに入ると集中力が限界を超え普段よりも凄まじい演奏を可能とするんだよ」

 

白金の質問にババァが答える...

 

「ここまでだとは思ってなかったわ、いい刺激になったわありがとう八幡」

 

「本当にかっこよかった!すごいよ八幡さんっ!」

 

どうやら俺はこの場にいる全員を満足させられたようだ...

よかっ...

 

ここまで考えて俺は意識を失った...

 

*****

 

目を覚ますと湊と今井がそばにいた。

 

「あっ!八幡目を覚ました!よかった〜」

 

「気分は大丈夫?」

 

「ああ、気絶していたのか、、俺は?」

 

「ええ、演奏が終わった直後にね」

 

「でも本当にすぐ目を覚ましてよかったよ〜」

 

「リサみんなを呼んでくれる?」

 

「うん、ちょっと待ってて〜」

 

今井はそうしてみんなを呼びに行く。

どうやらみんなに心配をかけたようだな...

 

「八幡...」

 

「なんだ?」

 

「ごめんなさい、私のお願いのせいで無理をさせてしまったようね」

 

「いや、お前のせいじゃないから気にするな」

 

「...でも謝らせて」

 

「じゃあ受け取っとくわ」

 

「八幡さん大丈夫!?」

 

「うわっ!あこ、飛びついてくるなよ...俺なら大丈夫だから心配すんな」

 

「...よかったです...」

 

白金も心配してくれていたのか...

 

「全く相変わらず比企谷は無茶するな」

 

「誰のせいだと思ってるんだ?」

 

「誰だろうな?」

 

こいつ...

 

とにかくこうしてみんなに一通り体調が問題ないことを伝えると俺は念のため早く帰って休むことにした。

しかしこの時俺は気づいていなかった。

その場で1人とても複雑な思いを抱いた者がいたことを

また俺が知らぬ間に人を傷つけたことを...

 

「...どうして...こんなに努力しても追いつかないの...」

 

夕焼け直後の曖昧な闇が空を覆おうとしていた...

 

 




Roseliaの前で演奏させることができました。
無理やり多くのキャラを出しすぎて変な感じになってしまっていますが...
ゾーン、その設定はまた詳しくどこかで書きます。
いまは、とにかく八幡のギターがもっと凄いものになる程度で考えてください。


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第12話

これから2日に1回の投稿もできないことがあるかもしれないですが頑張って書くので気長に待っていてください。
それとこれからさらに設定がごちゃごちゃになる可能性があります。
その点を踏まえて見てください。


Roseliaの前で演奏した後倒れてしまった俺は念のため家に帰ることにした。

 

...まさか倒れちまうとはな、やっぱり演奏してなかったうちに体力落ちたのかな?次からは気をつけないとな...

 

そう思いながら俺は家へと帰った。

 

*****

ーその夜ー

 

俺は今ベッドで横になりながら今日のことを考えていた。

今思えば俺は演奏中のことをよく覚えてないのだ。

覚えているのは演奏中ギターの音を奏でるたびに熱く、自分が高まっていく感覚、それだけだ。

 

ゾーン、ババァはそう呼んでいた。

前にもそんなことを聞いた気がするんだけどどうも思い出せない...

まぁ今はいいか。

そう結論づけた時俺の部屋のドアが開かれた。

 

「お兄ちゃん!なに今日の演奏、すごすぎるよ!」

 

小町が興奮して入ってきた。

 

「なんでお前が今日の演奏を知ってるんだ?」

 

「おたえさんが動画送ってきてくれたんだよ」

 

あいつ...いつのまに...撮ってたんだ?

そして小町いつのまに花園とそこまで仲良くなったんだ?

我が妹とは思えないほどのコミュ力だな...

 

「...お前はどう思った?」

 

「なんていうかな〜。いつものお兄ちゃんの演奏と違った。悪い意味じゃなくてさ...なんていうかな〜気迫があったっていうか、いつもより迫力があったっていうか...」

 

小町も他のみんな同様俺の演奏をうまく言葉にして表すことができないようだ。

 

「ただ、いつか小町もあんな風にギターを弾いてみたいって思った!だからお兄ちゃん今日もギター教えて!」

 

小町のギターは日に日に上手くなっていっている。

小町もなかなかの才能を持っているだろう。

教えている俺が楽しいと感じるほどだ。

あのババァも俺にギターを教えた時はそう感じていたのだろうか...

いや、あのババァに限ってそれはないな。

 

「もーお兄ちゃん早く教えてよ〜」

 

「ああ、分かった」

 

こうして比企谷家の夜は過ぎていく...

 

*****

ー次の日ー

 

休日の終わり、それは即ち地獄の始まり...

要するに学校が始まるってことだ...

 

本当に毎週毎週休みたいという気持ちを抑えて学校に来ることを褒めてもらいたいくらいだ。

...働きたくないとか言って結局最後には働いちゃうんだろうな、俺

 

そんこと考えながら朝の教室で寝たふりをしておく。

こうすると人目につかない。

さらに「えっ!なにあの子ぼっちなのかわいそー」とかいう哀れみの視線を向けられても気づかないという特典付きだ。

やだっ!八幡たら天才!

...やめよう、なんだか虚しい

 

「やっはろー!ヒッキー」

 

「由比ヶ浜か...」

 

ただし知り合いは普通にこの体勢でも声をかけてくるのだ。

これはまだ改良の余地が...

 

「ヒッキー、しょーもないこと考えてるでしょ...」

 

「しょーもないとはなんだ、俺は俺の安心したぼっちタイムを守る方法を考えてただけだ」

 

「それをしょーもないっていうんだよ!」

 

相変わらず朝からテンションの高いやつだな...

俺には絶対真似できない。

 

「で、何の用だ、由比ヶ浜?」

 

「いや、その...昨日ヒッキーspaceで演奏したんだって?」

 

なぜ知ってる?と思ったがどうせ葉山あたりから聞いたのだろう。

 

「ああ、見たのか、俺の演奏?」

 

「まだ見てない...なんかね隼人くんがまだ君たちは見ない方がいいと思うって言ってたから...」

 

葉山...こういう気遣いができるのはあいつのありがたいところだ。

俺が嫌がるかもしれないと思ってきたのだろう。

 

「...見たければ見て構わない、昨日の演奏が今の俺の全てだ」

 

「...そうなんだ」

 

こいつらも怖いのかも知れないな...

俺の演奏を見ることが...

あんなことがあったんだ、トラウマになっていても仕方ないだろう。

 

「それじゃあ...」

 

心なしか元気をいつもより無くした由比ヶ浜と俺は別れた。

 

*****

ー放課後ー

 

昨日葉山君から比企谷君がギターを弾いたと聞いた時には心のそこから驚いた。

彼がまた人前でギターを弾き始めているなんて...

今は3人で彼の昨日の演奏を聞くか相談している。

 

「で、結局隼人くんから先輩の演奏見せてもらうんですか〜?」

 

「そうね...由比ヶ浜さんの話だと昨日の比企谷君の演奏が今の彼の全力なのでしょう?」

 

「うん、ヒッキーはそう言ってた」

 

「わたしはやっぱり先輩の音と向き合いたい、そう思っています」

 

一色さん...

 

「あたしも...ヒッキーの演奏聞くべきだと思う」

 

由比ヶ浜さん...

 

「私も、同じ意見よ、もう彼の音から逃げたくないわ」

 

こうして私たちは比企谷君の演奏を聞くことにした。

 

*****

 

私たちはそれから私の家に集まってから葉山君に連絡を取った。

 

「...本当に見るのかい?」

 

「ええ、もう逃げないって決めてるの」

 

「...大丈夫そうだね、俺は無駄なお節介を焼いたようだね」

 

「比企谷君のことを思ってなのでしょう?それならば別に誰も責めないわよ」

 

「ありがとう雪ノ下さん、それとこれは黙ってようと思ってたことなんだけど...」

 

「なにかしら?」

 

「実は昨日俺は比企谷とギター勝負をしたんだ、これから送る映像はその時のあいつのものだ」

 

「結果はどうだったの?」

 

かつてもこの2人は事あるごとにギターで勝負をしていた。

その時はほぼ互角の勝負だったのだけど...

 

「俺の完敗だったよ、正直あの状態の比企谷にはこのままじゃ勝てる気がしないな」

 

葉山君がここまで言うなんて...

きっとそれほどまでに圧倒的な演奏だったと言う事なのでしょう。

 

「珍しいわね、あなたがそんなこと言うなんて」

 

「これでも負けは素直に認められるんだ。でも次は勝つよ」

 

「ふふ、まぁせいぜい頑張ってちょうだい」

 

「相変わらず比企谷びいきだね...」

 

「それは私のバンドのギターですもの」

 

「そりゃそうだ、じゃあまたライブで一緒になったらよろしく」

 

「ええ、楽しみにしてるわ」

 

葉山君ともかなり喋れるようになってきたわね。

そして電話を切ってからすぐに葉山君からその映像が送られてくる。

 

「じゃあ、2人とも早速見てみましょう」

 

「はい」

 

「うん」

 

こうして私たちも彼の音と向き合い始めるのだった...

 

*****

 

ー八幡の演奏視聴後ー

 

はっきり言って本当に驚いた。

しばらくのブランクがあるはずなのに...

彼はそんなものを容易くはねのけた。

かつて私たちとバンドをやっていた時よりも彼のギターの腕前は上がっていた、というよりあの頃にはなかった何かが彼の演奏にはあった、それはまだなんとも言えないようなものなのだけれど...

 

「なんか、あたしたちとバンドをやってた時のヒッキーじゃないみたい...」

 

「そうですね...まだ、追いつけなさそうですね...」

 

「だね〜。なんか少しショックだなぁ...」

 

「ですよね〜。あれから相当練習したつもりだったのに...」

 

由比ヶ浜さんたちの言ってることももっともなことね。

でも、私たちは努力を続けなければならない。

あの時彼のことを追い詰めたのは他でもない私たちなのだから...

 

「それでも...彼に追いつくための努力をする...それはあの時に決めたことでしょう?」

 

私がそう言うと暗い顔だった2人は途端に元気になった。

 

「うん!なんかすっごい練習やりたくなってきた!」

 

「わたしもです!」

 

「ふふ私もよ、でも今日はもう遅いから明日からにしましょうか」

 

私たちは彼に何度置いてかれようとついていく。

それだけが彼に対して示せる私たちの誠意だと思うから。

いつか彼と同じ景色が観れるよう、私たちは進み続ける。

終わることのない道を...

 

*****

 

ー翌日ー

 

今日も俺は学校に登校するなり外部との連絡をシャットダウンした。

のだが、最近は知り合いがよく声をかけてくるので意味がない気がしてきた...

なんて思っていると今日も

 

「八幡!おはよう!」

 

俺の天使が舞い降りた。

 

「戸塚、毎日俺に味噌汁を作ってくれないか?」

 

はっ!しまった!俺としたことが戸塚のあまりの可愛さにうっかり本音が出てしまった!

 

「もう、八幡からかわないでって何度も言ってるでしょ!」

 

そう言って怒っているが戸塚は天使なのでそれすらかわいい。

そして俺がどうにか戸塚をなだめると戸塚がこんなことを聞いてきた。

 

「八幡、やっぱり楽器を演奏するのって楽しいの?」

 

「ああ俺はやっぱり楽しいと思う」

 

「そうなんだね!僕でもできる楽器ってあるのかな?」

 

「興味があるのか?」

 

「うん!こないだライブ見たときに、自分もあんな風になりたいって思ったんだ!」

 

「そっか...でもそれならきっと俺に聞くより雪ノ下とかに聞いた方がいいな、俺はギター専門でそれ以外の楽器のことはあまりよくわからないんだ」

 

「僕、雪ノ下さんとまだ話したことがないんだ...よかったら八幡が紹介してくれない?」

 

「...わかった」

 

こうして俺は雪ノ下と戸塚の仲介役となった。

 

*****

 

ー放課後ー

 

雪ノ下にはあらかじめ話を通しておいて放課後ゆっくりと頼むことになった。

 

「...でどうだ雪ノ下頼めるか?」

 

「ええ、それくらいお安いご用よ」

 

「そうかサンキュー」

 

「では戸塚さん早速で悪いのだけれど希望の楽器などはあるの?」

 

そうして2人はしばらく話し続けているが俺はもう必要なさそうだしどうするかな...

 

「比企谷君はどちらがいいと思う?」

 

 

「えっ、なにがだ?」

 

急に雪ノ下から話を振られるが話を聞いてなかった俺は答えることができない。

 

「戸塚さんは、キーボードかベースが向いていると思うの。あなたはどちらが彼に会っていると思う?」

 

「そうだなー。戸塚はなんというか安定感があるしベースがいいんじゃないか?」

「バンドでも重要な楽器だし...たしかに彼に会っているわね」

 

「そうなの?ベースかぁ。面白そうだね!」

 

戸塚も興味を持ったようだ。

 

「今度私たちの練習に来てみる?よければベースも教えるわよ?」

 

「いいの!ありがとう雪ノ下さん、お願いします!」

 

「よかったな、戸塚」

 

こうして戸塚の相談は終わり戸塚はベースのお試しをすることになったのだった...

戸塚と演奏できる日が来るのかな?

そしたら本当に最高だなぁ...

 

*****

 

ーその夜ー

 

夜ゆっくりと自室で過ごしている俺の元にある連絡が来た。

 

差出人は...湊?

連絡先教えた記憶がないんだけど?

だがこんなことをする奴は1人しかいない。

今度また小町に注意しなきゃな...

 

湊からのメールを要約すると...

こないだ俺が演奏した後にRoseliaの練習を見てもらってアドバイスをもらうつもりだったらしい。

しかし俺が倒れてしまったためにそれができなかったので今度の週末にRoseliaの練習に来てアドバイスをしてほしい...

こんな感じだ。

 

特にその日は予定もないので了解しておいた。

こないだは迷惑かけたしな

 

にしてもあんなすごいバンドに俺がアドバイスすることなんてあるか?

そんな疑問を抱きながら俺は週末までの時間を過ごしていくのだった...




また多くの疑問等でてくるでしょうがそれでも暖かく見守ってくれると幸いです。


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第13話

最近投稿が不定期になってしまってすいません
失踪はしないので気長に待っててください


湊から連絡があった日から数日が経ち今日が約束の日だ。

正直俺がRoseliaの練習に参加したところでなにもできる自信はないのだが...

 

最近になってspaceにもよく来るな、前はかなりのペースで来てたのにこんなことを思うくらいに来てなかったんだな...

それに、なんか雨降りそうだな。傘持ってきてないからできれば振らないで欲しいところだが...

そんなことを思いながら俺はスタジオへと入っていく。

 

Roseliaのメンバーはすでに全員揃ってすでに練習を開始していた。

ホントにみんな真面目だな〜、俺なんて3回に1回は遅刻してたというのに...

 

「あっ!八幡さん来た!」

 

「こんにちは八幡」

 

あこと湊が俺に気づき挨拶してくる。

 

「おう、遅れて悪かったな」

 

「友希那の言ってた通りだったね〜」

 

「ええ、全くだわ」

 

「...友希那さん...すごいです」

 

おい、湊お前なにを言ったんだ。

 

「私はただ事実を言っただけよ、八幡は必ず遅れてくるって」

 

なんでナチュラルに心読んでんだよ!

怖ーよ!

でも、実際遅れてきてるからなんも言えない...

 

「本当になにも変わらないのね、あなたって」

 

湊は、というかRoseliaは全員呆れ顔だ...

なんか居心地が悪い...

 

「で、お前らは俺にどうして欲しいんだ?」

 

「連絡した通りよ、ただ私たちの練習を見てアドバイスしてくれればいいわ」

 

「本当にそれだけでいいのか?」

 

「あなたたちアブアルは高いレベルの演奏でした。なのでそのギターだった人からアドバイスを頂いて私たちのレベルアップを図ろうということです」

 

「言っとくけど本当に俺は大したことは言えないからな」

 

「そんなことないって、だいじょーぶだよ」

 

今井ってギャルっぽい見た目だけどオカンみたいに優しいな...

なんかこいつに似た奴知ってるぞ、俺は

 

「それじゃあ聞くが良い!我が闇のえーと、えーと...」

 

「奏でる音をだよ、あこちゃん」

 

この2人のやりとりほっこりするな〜

 

「とにかく聞いてちょうだい」

 

*****

 

とりあえずまず一曲聞いたが相変わらずレベルの高い演奏だ。

湊を中心によくまとまった演奏だ。

...が近くで聞くと少しながらの改善点が見つかった。

やはり完璧な音などない、それだから彼女たちは練習を続けるのだろう。

 

「それでどうでしたか?」

 

「そうだな、じゃあ1人づつ言ってくぞ、悪いけどはっきりと言っていくからな」

 

「ええ、お願いするわ」

 

「じゃあまずあこ、たまにリズムが走り気味になっちまってるぞ。そのままだと全体のリズムが乱れる」

 

「うん!次から気をつけてみるよ!」

 

やっぱあこは素直だな〜。妹になってくれないかな?

 

*****

ーその時の小町ー

 

「なんか小町の妹としての座が危うい気がする!」

 

*****

 

「えーとじゃあ次に白金、自分の音にもっと自信を持てビクビクしながら弾いてるんじゃその先には行けないぞ」

 

「...はい」

 

白金なら俺が言わなくても自覚してるだろう、だがそれを他人に言ってもらうだけで意識が変わるのだ。

 

「じゃあ次に今井、ハッキリ言ってお前が現状1番Roseliaでは下手だ。だけど、努力してるのを感じる音だった、そのまま努力してけば必ずもっと上手くなる」

 

「あはは〜、流石に少し傷つくな〜、でもありがと!もっと頑張って次は褒めてもらうからね〜」

 

こうやって1番下手とまで言われて頑張り続けられる奴はかなり珍しいだろう。だから彼女はきっと人に優しくできるのだろう。

 

「じゃあ次に氷川、なんて言うんだ...演奏は完璧だ。だけど音からお前らしさを感じない。お前だけの音を見つけられてないって感じがするんだよ...それを見つければお前が1番成長の余地があるはずだ」

 

「..ろうは...ないのよ」

 

ん?なんだ氷川が小声で何か言っているがちっとも聞こえない。

 

「そんな簡単に見つけられるのなら苦労はないのよ!」

 

それは唐突に雷が落ちたかのようだった。

 

「あなたみたいな天才にはわからないのよ!完璧な音しか弾けない私の気持ちなんて!」

 

「.....」

 

俺の方はなにも言うことができない。それほどのショックに見舞われていた。

 

「...すいません」

 

そう言うと氷川はスタジオから出ていく、ほおに光る雫を滴らせながら、気づけば外は雨が降り出していた...

 

「...紗夜」

 

今井は心配そうな顔だ。

 

そしてそれはあこや白金も同じようだった。

 

「八幡、紗夜のところに行ってあげて」

 

湊だけは違った、心配そうではあるが氷川に対して俺はなにができるって言うんだ。

俺はまた傷つけてしまったんだ...

 

「たしかにあなたが紗夜を追い詰めていたのは事実だわ、でもだからこそあなたしか紗夜は救えないの...お願い行ってあげて」

 

「...私からも...お願いします」

 

「お願い、八幡さん!」

 

「紗夜を、助けてあげて!」

 

みんな...

 

「...ごめん、俺行ってくる」

 

ここで...また...

この手で間違えたくない!

 

*****

 

それから俺は走り続けた、雨に打たれながら氷川を探した。

もう体は悲鳴をあげている。それでも止まるわけには行けない。

そう思いまた走り出そうとした時、俺は公園のブランコに座る人を見つけた。

 

「...ようやく、見つかったな」

 

「っ!なぜここに...」

 

「お前と...話をしに来た」

 

「今更、今更なにを話そうって言うの!」

 

雨が降る中悲壮な思いで叫ぶ少女、俺は向かい合わなければならない。

 

「私みたいな...才能のない人間となにを話そうっていうの!あなたたちみたいな努力もせず私みたいな人間を...軽く超えていく人が!」

 

「...それは違う、俺は確かに天才と呼ばれていた。だけど俺は自分のことをそう思ったことはないし努力を怠っていたわけじゃない」

 

「どうして、そんなことが信じられると...」

 

「本当だ、努力を必要としない人間なんているはずがない。それに俺はお前のことを心の底から尊敬しているぞ」

 

「どうして?どうして私なんかを...」

 

「なんか、なんて言うんじゃない。お前は俺より優れたものを持っている、俺はあんなに正確に音を奏で続けることはできないそんなお前を見てると俺もまだまだだなって思わせてくれる...だから俺も努力をし続けられるんだよ」

 

「...本当...なんですか?」

 

「本当だ、信じてくれ」

 

そう俺が言った瞬間彼女の頬を涙が伝っていく。

 

気づけば雨も止んで、空に光がさした...

 

*****

 

それからしばらく泣き続けていた氷川は落ち着いたようで、ふと溢れたかのように話を始めた。

 

「私には双子の妹がいるんです...その子は私が始めたことをすぐに同じように始めるのですが、その全てをすぐに私以上にできるようになってしまったんです...」

 

「なるほど、それがお前のコンプレックスの元ってわけだ」

 

「ええ、恥ずかしながらまだ妹との接し方はよくわかっていません...」

 

「俺にもな、1人妹がいる。かなりわがままな妹でよ、昔からだいぶ迷惑かけられてきたしかけてきた。時々大ゲンカすることもあった。それでもさやっぱり俺は妹のことが好きだ、当然家族としてだけどな...お前も本当に心のそこから嫌いなのか、妹のこと?」

 

そう言うと氷川は何か考えてるようだった。

しかし、俺は氷川が本当に妹のことが嫌いだとは思わない、それは根拠もなにもない同じ妹を持つものとしての勘なのだが。

 

「...今まで妹のことは大嫌いだと思ってたんです。でも、今思い返してみると私は妹のことをよく知っているんです。昔あったことも鮮明に覚えていて...私は...私は妹のことを嫌いになんて...なれない」

 

「なら、きっとそれがお前と妹の"本物の関係"ってことだろ」

 

「あなたに言われてようやく気づくことができました...本当にありがとうございます、それと先程はあんなことを言ってしまい申し訳ありませんでした」

 

「気にすんなよ、俺は俺のやらかしたことに責任を取っただけだ。それに礼なら俺じゃなくてお前の仲間に言ってやれよ、お前のことみんな心配してたぞ?」

 

「私みたいな人がこれ以上Roseliaの皆さんに迷惑をかけてしまって...いいんですかね?もっとふさわしい人がいるんじゃ...」

 

「そんなこと誰も思っちゃいねーよ、それはお前を選んだ湊に失礼だろ。お前が思っている以上にお前の存在は大きいんじゃねーの?それに...それはお前の本心か?後悔しないと言い切れる道か?」

 

「そ、それは...」

 

氷川が返事に困っているそんな時。

 

「あ!紗夜さんいた!」

 

「ようやく見つけたよ〜」

 

あこと今井が公園に入ってくる。

 

「はぁはぁ、紗夜、八幡2人とも話は済んだのかしら?」

 

「...2人とも大丈夫ですか?」

 

あまり運動が得意ではなさそうな湊と白金は息を切らして入ってくる。

 

「ああ、全部終わった。それより氷川がお前たちに言いたいことあるらしいぞ」

 

「え?何ですか?」

 

あこは疑問そうだ。

 

「えっと...その...」

 

なかなか言い出せない様子である氷川、その背中を押してやるまでが俺の仕事だ。

 

「氷川、言葉にすることが大切なんだ。言葉にしないまま向き合うことから逃げ続けるといつか自分の大切なものを全てなくすことになるぞ」

 

俺の言葉を聞いた氷川は覚悟が決まったような顔になった。

 

「皆さん...先程はすいませんでした...これからも私はあなたたちに迷惑をかけてしまうかもしれない...でも、それでも、私はあなたたちと演奏をし続けたい!こんな私ですが受け入れてもらえますか?」

 

「なにを言うのかと思えば...そんなこと聞くまでもないでしょう?それともあなたがRoseliaにかける思いはそんなものなのかしら?」

 

「そんなことはないです!私は、このメンバーで最高の音楽を...奏でたい!」

 

「なら、最初からそう言えばいいのよ」

 

途端に湊は優しい笑顔でそう答える。

 

「そうだよ!紗夜がいなきゃRoseliaは成り立たないって」

 

「リサ姉の言うとおりですよ!あこも紗夜さんともっとバンドやりたいです!」

 

「...私も氷川さんと...もっと演奏したいです」

 

「皆さん...」

 

氷川はまた泣きそうな顔だ。

 

「俺の言ったとおりだっただろ?...いい仲間じゃねーか」

 

「ええ、最高の...仲間です!」

 

そして氷川は今日何度目かの涙を流す。

 

もう、空から雲は消え優しい夕焼けが本当の意味での始まりを迎えた少女を照らし続けるのだった...




ひとまずRoselia編はここら辺で終了となります。これからはそろそろポピパに沙綾を入れるための話を始めます。


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第14話

今回からはしばらくポピパメインになる予定です。
バンドリキャラも新しく出すかも...


最近はいろいろなことがあり少々疲れた...

これ以上働いてしまうと社畜になってしまう!

それは勘弁だ、だからしばらくは平和に過ごしたい...

そう思ってた夜のこと

 

『八幡先輩!少し相談したいことがあるので明日有咲の家の蔵まで来てくれませんか?』

 

さっそく面倒ごとが起こった...

戸山の場合断っても無駄そうだし...

仕方ない

 

『了解、ただ学校の後だから少し遅くなるぞ』

 

と、返信するしかないだろう。

 

はぁ大して面倒なことでなければいいのだが...

 

*****

 

ー翌日ー

 

俺は放課後に市ヶ谷家の蔵を訪ねていた。

俺が蔵に入ると4人はすでに練習をしていてよほど集中しているのだろう、俺が入ってきたことにさえ気づいていないようだ。

そのまま戸山たちが一曲演奏し終わるのを待ってから俺は4人に声をかけた。

 

「しっかり練習してるんだな」

 

「うわっ!八幡先輩!いたの!?」

 

おい戸山、いたのはひどいだろ。

いや、昔からよく言われてたからいいんだけどね...

ってんなわけあるか!何回言われようと傷つくわ!

 

「びっくりしたぁ...いるなら声をかけてよ八幡先輩」

 

花園、お前も相変わらずだな...

 

「こんにちは、八幡先輩」

 

「久しぶりだね、八幡君」

 

市ヶ谷とりみはやさしいなぁ

少しは戸山と花園も見習ってもらいたいものだ。

 

「それは置いといて!私たちの演奏どうでした!?」

 

「あ、ああ前のライブの時よりも格段に上手くなってるな」

 

「やったぁ!」

 

戸山もいつもこんな騒いで疲れたりはしないのだろうか?

何回か見て思ったがやっぱりこのバンドはドラムがいない分リズムが少しあってないところがあるな、いたらドラマーが加入したらより良くなるだろう。

 

「それと!八幡先輩こないだのギターおたえに見せてもらいましたよ!八幡先輩こそすごかったです!」

 

「お、おうサンキュ」

 

何回話してもこいつとの会話は慣れねぇ...

 

「香澄〜そろそろ先輩困ってるから本題に入れよ〜」

 

ナイス市ヶ谷、戸山のコントロール上手くなったな。

その調子でお前くらい空気読めるやつにしてやれ。

...無理か

「だって本当にすごかったんだもん〜!」

 

「そうだよ有咲」

 

「ああ〜!本当にこの2人があると話が進まね〜!」

 

「ま、まぁまぁ3人ともそれくらいにして話しないと...」

 

前見たときはりみと市ヶ谷だけで2人を抑えきれるかと思ってたがそれはとんだ誤算だったな...

こいつらには後1人常識人が必要だ...

 

「で、そろそろ用を言わないと帰るぞ」

 

「わ〜!待ってください〜!」

 

それから戸山の話は相変わらず要領を得ないものだったので簡潔にまとめると...

 

戸山たちは文化祭でライブをすることにしたらしいのだが

それに当たってバンド名などは決まったもののドラムを使いたい戸山はドラムが弾ける人を探していたときこないだのクライブに来ていた山吹沙綾という少女がかつてドラムをやっていたことを聞いてスカウトしたところ断られた。そこには山吹のいろんな思いが混ざっているようでどうしたらいいのかをバンドを組んでいた経験のある俺に相談してきた...

ってところだ。

 

「ていうか、山吹本人はバンド自体はやりたがってるんだよな?」

 

そもそもその意思がなければ打てる手はない。

 

「...うん、その思いはさーやの中に絶対あるはず」

 

「そうか、ならやれることは1つだろ」

 

「え?どうするの八幡君?」

 

「決まってるだろ、本人と話をしにいくのさ」

 

「でも、それならもうやったよ?」

 

花園でなくてもそう思うだろう。

しかし俺が言いたいのはそういうことではない。

 

「バンドをやりたいって思いがあるならそれを爆発させてやればいい」

 

「結局どういうことですか?」

 

「つまりだ、市ヶ谷お前はキーボード弾いてらとかどんな気分だ?」

 

「すごい...楽しいです」

 

「俺が思うお前らのバンドの良さはみている人を笑顔にさせるような演奏ができることだと思ってる、お前らが山吹に真剣に頼み込んで見るんだ。お前らがどれほど本気でやってるか...お前らがどれだけそいつを必要としてるのか、それが伝われば山吹のバンドへの思いが...悩みなんて吹き飛ばしてくれるさ」

 

「八幡先輩が真面目な話をしてる...」

 

おい、戸山珍しく人が真面目にって俺自身が珍しくって思っちゃダメだろ...

 

「と、とにかくだなお前らが本気であいつと向き合ってやれ。それがきっとあいつを救うことにもなる」

 

「はい!そうなったら善は急げですよね!みんな今からさーやのところに行こう!」

 

「え?い、今から!?おまっ流石にそれは山吹さんが迷惑だろ」

 

「そ、そうだよ香澄ちゃん沙綾ちゃんとなら明日でも学校で...」

 

「でも、今行かないと、上手く伝えられなくなっちゃいそう!」

 

「私も今行くべきだと思う、だから行こう香澄」

 

はぁ、戸山と花園の無鉄砲さには呆れるが、こんなにも人のことを思ってのことなら無理に止めることなどできやしないだろう。

 

「待て、俺も行く」

 

「先輩まで〜!」

 

こうして俺たち5人は山吹の家に向かうことにした。

 

*****

 

それから俺たちは山吹の家のまで来た。

しかし、戸山が最初は2人で話したいと今俺たちは山吹家の一階で待っている。

 

俺たちの間に会話は一切なかった。

そのうち上の方から戸山と山吹の声が聞こえてくる。

 

「できない!」

 

「できる!なんでも1人で決めちゃうのずるい!一緒に考えさせてよ.....」

 

2人とも自分の思いをぶつけ合っているようだ。

こうなること実は想定内だ。

これが1つ山吹の心に響くこととなればいいのだが...

 

*****

 

それからしばらく2人はお互いの意見をぶつけ合っていた。

その後2人して下に降りてきた。

 

「おつかれ」

 

市ヶ谷が2人を気遣うようにそう言う。

 

「下まで聞こえてたぞ、お前らの声」

 

俺がそう言うと2人とも若干気まずそうだ。

 

「純くん、びっくりしてお店に逃げちゃった.....」

 

「じゃあそろそろ帰るか」

 

「えっ、で、でも.....」

 

「その状態で話すだけ無駄だ」

 

「新しいメンバーが入るなら知らない人より山吹さんの方が私は楽かな」

 

市ヶ谷は立ち上がりながらそう言う、どこまでも素直ではない奴だ。

しかし、その言葉には確かな優しさがある。

 

「私も!沙綾ちゃんとできたら、すっごく嬉しい!」

 

「.....携帯に曲のデータ送った。聞いてみて」

 

りみに花園も想いを伝える。

 

「だから、無理だってば.....」

 

「待ってる。待ってるから」

 

もはやダメ押しとばかりに想いを伝えていく戸山、その目には他の3人同様優しさのこもった笑みが浮かんでいる。

 

そうして戸山たちは部屋から出ていく。

あそこまで必死なあいつらを見た、ここまで関わっておいて手助けしないのもなんだか心苦しい。

 

「.....お前の事情は俺はよく知らない、でもな自分の気持ちを押さえ込んだ気遣いなんてなかけられた方は心配になっちまうんだ。後悔しない道を選べよ」

 

「そんなのできるわけない!だって私だけが、私だけが楽しむだけでいいわけない!」

 

先ほど戸山と言い合っていた時と同じようなことを言う山吹、なるほどこいつは俺と...同じような性格をしているようだ。

 

「お前は、仲間のことを甘く見過ぎだ。あいつらが迷惑に感じてると本気で思ってるのか?」

 

「香澄たちが思ってなくても...私が、私が嫌なの!先輩に分かるわけない!」

 

「分かるに決まってんだろ!俺だって同じように思って、あいつらのためと思って選択した答えが結果的にあいつらを苦しめちまった!いいか、お前が思ってるよりな仲間ってのは助け合えるもんなんだよ。お前だって感じただろ、あいつのキラキラをよ?最後にもう一度言っておくぞ後悔だけはしないよう、本当に自分のやりたい道を選べよ」

 

「.....」

 

そうして俺も部屋を出ていくのだった...

 

*****

 

その後店の外で待ってた戸山たちと合流し俺たちは歩き出した。

 

「私たちの想いしっかり伝わったかなぁ」

 

「大丈夫だ、りみ。きっと山吹にお前らの気持ちは届いたさ」

 

「あとは、信じて待つしかないね」

 

「さーやはきっと来てくれる、私はそう信じてる!」

 

「そーだな、きっと来てくれるよな」

 

俺はもうできることをやりきった、あとはこいつらの問題だ。

だが俺は大丈夫だと不思議と確信できた。

さっき山吹と話した時確かに感じたからだ、あいつの中にあるバンドに対するキラキラとした鼓動が...

 

 

まだこれから戸山たちのバンドがどのような形で完成するのかはわからない、だがその分可能性に満ちているその姿は俺にとっても忘れかけていた熱い想いを目覚めさせてくれた。

そうした戸山たちの輝きは俺自身の答えにも大きな影響を与えてくれている。

先ほどの山吹との会話の後に俺はあることを思い出した。

 

それは、かつてババァから聞いた扉の先の領域、ゾーンについてのことだ。

前から引っかかっていたがようやく思い出した。

 

あの時ババァは...

 

「いいかい、ハチお前には他の人間にはない才能がきっと眠っている。その才能を持つお前ならいつか入れるかもしれない領域がある」

 

「なんだよそれ、そんなもったいぶらずに教えろよ!」

 

まだ幼かった頃の俺は純粋にまだギターが上手くなれると思うとドキドキが止まらなくなっていた。

 

「そう急かさんじゃないよ。いいかいその領域はね本当に限られた人しかその扉の前に立つことさえできない」

 

「俺は立てるのか?」

 

「それはこれからのあんた次第だ、その扉の前に立つことができるのは途方も無い練習を重ねた者だけだ」

 

「うっ、それはきついかも...」

 

俺の練習嫌いはこの頃のやたら厳しいババァの練習によるものだ。

 

「それでも立つことができたとして扉を開けるかはまた別の問題だ。その扉は気まぐれにしか開かない」

 

「運次第ってことか?」

 

「いいや、違う。その扉を開けるのはね、限られた才能を持つ者だけだ。その扉は非情なもんだ。一般人が開くことは絶対できない」

 

「そんなもん本当に俺に開けるのか?」

 

「だから言っただろう、これからのお前次第だって。ほらそうとなったら入れるように今日の練習はいつもよりきつくいくよ」

 

「おい!それはやめろって!」

 

...今回思い出したのはここまで、俺は数回にわたって説明を受けた記憶がある。それら全てを思い出すことができたら俺はゾーンに自由に入れるだろうか?

そうなったらまた俺は...あいつらを傷つけたりしないだろうか...?

 

やめよう、こんなこと考えても仕方ない。

 

「...まん先輩、八幡先輩!」

 

「うおっ!なんだ戸山?」

 

「さっきからずっと呼んでるのにぼーっとしてたよ、八幡先輩具合でも悪いの?」

 

「いや、ちょっと考え事をしていただけだ」

 

「今日実はもう1つ話があったんですけど...」

 

市ヶ谷も俺を気遣うような目をしている。

 

「ん?なんだ?」

 

「今度の文化祭のライブ八幡君も来てくれる?」

 

「おう、行かせてもらう」

 

「やったぁ!」

 

ここまできたらこいつらの結末を最後まで見届けたい。

その先に俺自身の答えもある気がするから

 

それぞれの決意が混ざり合った1日は星空の煌めきに導かれある結末を迎える。

その先にある輝きを俺たちはまだ知らない...

 




八幡の記憶はただ思い出せないだけですがこれからいろんなバンドと関わっていく中で思い出していく予定です。
次回はポピパの文化祭ライブの話ですかね。
それが終わったらシリアスな話以外も書いていこうと思います。


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第15話

UAが20000件突破していました!
見てくれているみなさんありがとうございます!


山吹の家に行ってから時は流れ

今日は花咲川女子学園の文化祭当日だ。

 

周りを見る限り人が沢山いる、普段は入れない女子校の空気に俺は呑まれていた。

...それもそのはずだ、俺はぼっちで文化祭に来てしまったのだから。

戸塚?誘ったよ、そうしたらな

 

『ごめん、、実はその日は部活の練習があって行けないんだ...』

 

と、断られてしまった。

戸塚と一緒に文化祭デートしたかった...

 

その後雪ノ下たちを誘おうかとも考えだが女子3人に男1人というのは流石にキツイ。

 

葉山も用があるとか気持ち悪い笑い顔で言ってたし...

 

小町も勉強があるからステージの始まる時間くらいに来ると言ってたし...

 

そんなわけで俺は1人でいるわけだ。

べ、別に寂しくはないからな!

ちょっと目から汗が大量に出そうなだけだからな!

ううっ...

 

結局俺はぼっちで文化祭を過ごす羽目になってしまったのだった...

 

その後することも無いので俺はとりあえず戸山たちのところに行くことにした。

 

「いらっしゃいませー!1-Aカフェで休憩していきませんか〜?」

 

あいも変わらず戸山はテンション高いなぁ

文化祭みたいなイベントの時にあいつほど人の呼び込みに適任なやつなどいないだろう。

 

「あ!比企谷先輩!来てくれたんですね!」

 

「まぁ、暇だったからな...」

 

「本当に素直じゃないですね〜」

 

「うっせ」

 

「それで何名様ですか?」

 

...戸山その質問だけは今俺に対して絶大なダメージを負われるぞ。

 

「.....」

 

「あっ...すいません!先輩は友達少ないんでしたね...」

 

もうやめて!八幡のライフはもう0よ!

マジで泣きそうだ...

 

「戸山...言わないでおいてくれ...」

 

「わわっ!本当にすいません!ではお席に案内しますねー!」

 

こうして俺は文化祭開始からすぐに絶大なダメージを負った...

帰ろうかな....

 

本当にやることも無いので、戸山たちのカフェで少しのんびりとさせてもらっている。

 

「おすすめはどれ?」

 

「ん〜、メロンパン、クリームパン、チョココロネ、あんパン、ミルクデニッシュ.....」

 

「あはは、それって全部ってこと?」

 

「えへへ!はい、全部です!」

 

本当に戸山ってずっとあんな感じなのか...

学校の人の態度から見ても友達も多そうだな〜

...羨ましいとか思ってないからな

 

「あ、あれ?また失敗しちゃった。うう、ラテアートうまくできない〜」

 

「かわいい、たぬきだ」

 

どうしてりみってあんなにかわいいの!

失礼、取り乱した。

 

こうしているうちに戸山たち1-Aの生徒たちは何か集まってワイワイしている。

...なにやってるんだ?

と思ったがみんなが騒いでいる内容から山吹に電話でもしてるのだろう...

 

ここはやっぱり...

 

*****

 

その後俺は戸山たちのカフェを後にして1人で文化祭をできる限りでエンジョイしていた。

 

「お?そこに1人でいるのは比企谷君じゃないか?」

 

あ?この異常にムカつく声は...

 

「おやおや、誰かと思ったら腐る程友達のいらっしゃる葉山さんじゃないですか」

 

と言ってもなぜか今葉山は1人だが

 

「相変わらず俺には口が悪いなぁ、お前」

 

「イケメンにかける優しさは持ってねーよ」

 

「なら仕方ない」

 

ぐっ!気づいたらこいつを褒めちまってるじゃねーか...

 

「で、俺と文化祭に行けないとか言ってたくせになんでいるんだ?」

 

返答によってはギルティだ。

 

「ん?ああそれは俺たちのバンドがこの文化祭のステージに立つからだよ」

 

「は?お前のバンドは全員うちの高校の生徒だろーが」

 

「花女の文化祭は外部からの有志も受け付けてるんだよ」

 

「なるほど、でもならなんでメンバー戸部たちと一緒にいないんだ?」

 

「さっきまで一緒にいたんだが...ちょっと気を抜いたらはぐれた」

 

え?その年でその見た目で迷子ってこと?

 

「おい、見た目は関係ないだろ」

 

なんで最近みんな俺の心を読んでくるのかな...

俺ってそんなにわかりやすい?

 

「それで俺に声をかけてきたのかよ...」

 

「まぁそんなとこだ、あいつらに連絡したんだけどステージに直接集合しようってなっちゃってそのまま暇してたんだよ」

 

そういえばステージまでの時間もかなり近づいてきてるな。

仕方がないから葉山とともにステージに向かってやるか...

別に、ぼっちじゃなくなって嬉しいとかは思ってないから

そういう勘違いはやめてくれよ?

 

*****

ー病院ー

 

「なんでもなくてよかった.....」

 

「だから、ただの貧血って言ってるじゃない。沙綾は心配しすぎなの」

 

「だって....」

 

心配するに決まっている。

もう、前みたいなことにはなって欲しくないから.....

 

「文化祭は?香澄ちゃんから連絡来てるんじゃない?」

 

「あ、うん、留守電入ってるみたい。ちょっとごめん.....純と紗南見てて」

 

保存されたメッセージは3件です

 

なんだろう?

 

1件目と2件目は香澄からのメッセージだった....

朝届いた手紙を見るとそこには香澄たちと考えた歌詞が載っていた。

 

「タイトル決まったんだ....」

 

私だってバンドしたい、したいよ.....

 

そして、3件目のメッセージが流れ始める....

 

「山吹、こないだは少しきつく言い過ぎて悪かった」

 

そこから聞こえてきた声は予想もしていなかった人物の声だった。

香澄たちとともに自分を説得してくれた人...

 

「だが、俺はこないだ言ったことを訂正する気はないぞ。やっぱりお前はバンドをやるべきだと思ってる。その上でお前に先輩として少しアドバイスを送ってやるよ」

 

似合わないこと言うなぁ.....

一見他人に興味のないふりをして....本当にお節介な人....

 

「俺にもな、妹がいる。そいつは本当わがままでよ、だいぶ子供っぽいと思ってるんだけどよ.....俺の知らない間にどんどん成長してるんだよ。ふとした瞬間に唐突に大人になったんだなって思わされる。要領を得なくなっちまってるけどさ、つまりお前の周りにいる人たちだって変わってきてるんじゃないか?お前の兄弟はお前が思ってる以上に成長してるんじゃないか?それにさ、お前のお袋さんだってお前にバンドやって欲しいんだろ?その期待に答えてやるのが親孝行ってやつなんじゃねーか?親ってのは子供に迷惑かけられるのが好きらしいぜ、俺の親も俺がギターやりたいって言った時は自分のことのように喜んでくれたもんだぜ?.....1人で背負うのはしんどいだろ?ここで誰かに頼ったって誰もお前のことを責めたりしねーよ。俺も待ってるからな、お前らが5人でステージに立つのをよ」

 

そこでメッセージは終わっていた。

 

「行って、沙綾」

 

「母さん....」

 

「沙綾は優しいね。お母さんにもみんなにも優しい。その優しさをもっと自分に向けて」

 

できるわけ....ないよ

 

「できるよ、沙綾はもう1人じゃないんだから」

 

母さん....

 

「さーながいるから大丈夫」

 

紗南....

 

「俺も。もう泣かないから.....」

 

純.....

 

「さっきの人の言う通りよ。純も沙南も守ってもらってばっかりじゃないのよ。だからもう、1人で背負わなくていいの」

 

全部....先輩の言う通りだったんだね.....

 

「沙綾も好きなことをもう我慢しないで。母さんは平気だから安心していってらっしゃい」

 

「なんか私、全然ダメだね、ありがとう純、紗南、母さん行ってくるね.....!」

 

私は走り出した、香澄たちと同じ輝くステージに立つために.....

 

*****

ーステージー

 

もうすぐ戸山たちのステージが始まる予定の時間だが、山吹はまだ現れない。

くそっ!このままで間に合うのか?

 

「先輩!沙綾今、ステージに向かってるって沙綾のお母さんから連絡が!」

 

「間に合うのか!?」

 

「わからない....」

 

もうすぐ葉山たちの演奏も終わっちまう....

できるだけ伸ばしてくれと頼んであったがそれももう限界だ....

 

頑張って間に合わせてくれ.....

 

「楽しかったぜ!今日のステージ!!」

 

葉山たちの演奏が....終わってしまった。

こうなった以上....もう仕方ないか。

 

「葉山、頼みがある」

 

「どうせ、そう言うと思っていたよ」

 

「お前のギターを....貸してくれ」

 

「いやだ....と言ってやりたいが、戸山さんたちのためだ」

 

こう言う時だけはホントにイケメンなやつだ。

 

「俺がもう少しだけ時間を稼いでやる」

 

「でも、どうやってそんなことを....」

 

そう思う市ヶ谷の疑問も最もだ。

だが、俺にできることなんて1つしかないだろうに

 

「俺だってギター弾けるんだぜ?」

 

「でも、そんなことしたら八幡君すっごい怒られちゃうよ!?」

 

俺のやろうとしてることが分かったのだろう。

りみが俺を心配そうに見ている。

 

「大丈夫だりみ、その覚悟くらいできてる。自分で言うのもアレだが俺は叱られることには定評があるからな」

 

「ありがとうございます....八幡先輩」

 

花園に真面目な顔してお礼されるとむず痒いな.....

 

「礼ならしなくてもいい、そのかわり5人で最高の演奏をしてみせろ!」

 

「はいっ!絶対先輩をキラキラドキドキさせてみせます!」

 

俺はこうしてステージへと歩き出した.....

 

「なんか次のバンド遅くない?」

 

「どうしたんだろうね?」

 

会場は次のバンドが出てこないことでざわついている。

俺はそんな中ステージに立った。

 

「えー、会場の皆さんただいま次のバンドのメンバーが諸事情により遅れてしまっています。なので、準備ができるまで俺のギターでも聞いていて下さい」

 

「そーだったんだ、でもあの人ホントにギター弾けるのかな?」

 

「さっきのギターの人すごかったもんね〜」

 

まぁこれも当然の反応だよな....

 

「では、いきます」

 

でもそんなことは関係ない、あいつらのために俺にやれる精一杯のことをやるだけだ。

 

*****

 

俺の演奏はほどなくして終わった。

 

「ありがとうございました」

 

俺はそう言って舞台袖に歩いていくのだった。

 

「どうだ?山吹は....」

 

「.....」

 

力なく首を振る戸山、どうやら間に合わなかったらしい....

 

「さーやは間に合わなかったけど、できる限りの演奏、してみせます!」

 

戸山は気丈にもそういうがやはり残念そうだ。

 

「そうか、やり切ってこいよ」

 

「「「「はい!」」」」

 

戸山たちポピパは全員そう返事をする。

 

そうして全員舞台に上がり演奏を始めた。

そして一曲目が終わった後

 

「ありがとうございました!次は今日のために作った曲です!」

 

戸山たちの演奏は宣言通り全力のものでなかなかのものだ。

 

「みんなで作った曲.....今日は1人いないけどいつか一緒に歌おうって約束しました。いつかはまだだけど.....信じてる。一緒に歌うことできるって」

 

「「「.....」」」

 

戸山以外は沈黙を保ったままだが思いは同じようだ。

 

「そんな気持ちを込めて歌います。聞いてください」

 

「みんなっ!」

 

その思いは、1つの奇跡を起こした....

まったく、ヒヤヒヤするタイミングだな。

 

「さーや」

 

「沙綾」

 

「沙綾ちゃん」

 

ポピパメンバーは一斉にその名前を呼ぶ。

 

「えへへ、待ってた!」

 

「ありがとう、香澄、みんな」

 

さぁ、聞かせてもらうぜ

 

「聞いてください!『STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜』」

 

5人になったお前たちPoppin'Partayの音をよ!

 

*****

演奏が終わった時そこにいる誰もが感じた。

とてもキラキラしていて胸をドキドキさせる、熱い思いを

 

5人になったお前らならもっとキラキラドキドキできる、そう期待を込めてあいつらのステージに立つ姿を見る。

 

その時に彼女たちは自分たちの始まりを宣言する。

やはりその姿は眩しくて...

今はまだ俺には出せない輝きで彼女たちは自分たちの始まりを告げた。

 

「私たち5人で....」

 

「「「「「Poppin'Partayです!」」」」」

 

 




本当に更新が遅くなってしまってすいません!!
これからも更新が遅くなることが多々あると思いますが気長に待っていただけるとありがたいです!


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設定3

今回は恒例の設定集です。




丸山 彩

 

性格は原作通り

八幡のことは文化祭のギター演奏を見ている。

結衣やいろはなど各バンドのメンバーとの仲もかなりいい。

八幡はテレビで少し見たことがある程度。

なにかと自分を助けてくれる八幡に対し好意を抱くようになる。

 

戸塚がかなりのファンである。

 

ー八幡の印象ー

なんか....あれだよな、本番に弱いって言葉が具現化した感じ。

でも、その中にある必死さは見ていて応援したいと素直に思えるな。

 

白鷺 千聖

 

性格は原作通り

八幡のことは彩と同じ理由で知っている。

雪乃や紗夜と仲がよくなる。

八幡からの認知もされているが苦手な存在だろうと思われている。

かなりどうでもいいが戸部、材木座はかなりのファンである。

 

ー八幡の印象ー

海老名さんと同じように何考えるか読めなさそうだな。

だから少し苦手なタイプだろう。

でも、努力していることはよくわかる。

 

若宮 イヴ

 

性格は原作通りだが、原作よりネタキャラ化してしまうかも....

当初は八幡のことを本気で忍だと勘違いした。

由比ヶ浜と仲良くなる。

葉山、一色がファンである。

 

ー八幡の印象ー

テレビで見てる限りだと、由比ヶ浜と似てる気がするな。

友達思いなとことか、少し抜けてるところがあるのも.....

 

 

氷川 日菜

 

性格は原作通り。

八幡の初見印象は普段はるんっと来ないがステージの上だとるんって来る人だった。

紗夜との件で悩んでいる時に姉妹2人とも八幡に相談することとなる。

その件以来八幡に対してある思いが.....

由比ヶ浜、小町がファンである。

 

ー八幡の印象ー

氷川(紗夜)の話を聞いての推測でしかないがこいつは器用すぎて逆に紗夜との関わり方を見失っているんだろうな。

姉妹仲良くできるといいんだけどな.....

 

大和 麻弥

 

性格は原作通り。

八幡とは楽器店で出会う。

様々な知識が豊富で雪乃と2人揃ったら恐らく大抵のことは乗り切れると八幡に思われていくこととなる。

三浦がファンである。

 

ー八幡の印象ー

テレビで聞いたがすごいシンデレラストーリーだよな〜

ただ白鷺と2人であの3人をまとめていくのは大変そうだよな....

 

 

Rabbit in wonder land

 

戸塚、材木座、川崎、小町によって結成されたバンド。

Gt.&vo.は川崎、Ba.は戸塚、Gt.は小町、Dr.は材木座がそれぞれ担当する。

略称はラビワン、余談だが材木座がかなりの数のバンド名を考えてきたが小町、川崎に却下されまくったらしい。

この名前に決まりかけた際には川崎が恥ずかしがったが小町と戸塚の説得により納得した。

戸塚が発端となって結成されたバンドであり、八幡は最初戸塚からギターとして誘われたが辞退し小町を紹介した。

普段の練習はspaceで行なっていて度々八幡も練習を見学に行きアドバイスをしていたりする。

 

ー八幡の印象ー

戸塚と小町がいるだけで史上最高のバンドといって過言ではないな、間違いない。

川崎がいれば安心だしポピパ同様いいバンドとなるだろう。

材木座?誰だよそいつ?

 

その他新たに追加される設定

ここから下の設定はほとんどこれからの展開に関係ないものも含まれます。

 

・あこは材木座と仲良くなる、ただし他の人がいると無理やり引き離されることも.....

 

・八幡は花女の文化祭時点で小町、香澄、葉山、アブアルメンバー、友希那、リサ、あこ、平塚先生、戸塚、材木座、川崎の連絡先しか持ってない。

 

・八幡は昔からよく商店街に行っている、そのためかなり商店街について詳しい

 

・文化祭以来ポピパは基本的に八幡のことを名前で呼ぶようになる

 

・バンド時代八幡は一度も歌ったことがない

 

・アブアルメンバーは文化祭時点でRoseliaとは知り合っている、ポピパはまだ八幡から噂で聞いた程度でしか知らない

 

・八幡と燐子は読んでる本の趣味が合うため割とそんなことを話す

 

・アブアルの衣装は基本女子3人で作っていた

 

・八幡、友希那らによる猫派、たえ、戸塚らによるうさぎ派は時折どちらがかわいいかという口論になる

 




久しぶりの投稿なのに内容が少なくてすいません....


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第16話

今回からパスパレのメンバーも出していきます。
彩ちゃんの設定をいくつか変更、追加させていただきました。
そのことをご了承ください。


花女の文化祭から1週間が経ち明日はは日曜日!

予定も何も無い!

と、いうことで1日中ゴロゴロして過ごそうと決意していたのだが.....

 

「お兄ちゃん!明日暇でしょ?」

 

「小町、俺にだってな予定くらいあるんだよ。1日中ゴロゴロするって予定がだな....」

 

「つまり暇ってことでしょ?それなら小町の予定に付き合ってよ」

 

くそっ、俺の久しぶりの休日を潰しにきやがる!

 

「どんな予定なんだ?」

 

「明日、うちの近くでパスパレのイベントがあるんだよ!」

 

ああなるほどな、小町はパスパレのファンだからな〜

 

ここで解説しておこう

パスパレとは最近人気の出てきているアイドルグループのことだ。

特徴として普通のアイドルとは違いバンドグループであることが挙げられる。

色々あって1時期散々ネットで叩かれたがその後メンバーたちの努力により信頼を取り戻しファンが着実に増えてきた。

メンバーはそれぞれ個性的で俺の周りの人も最近夢中な人が多い。

小町はその中でも氷川日菜のファンなのだ。

俺は正直その氷川日菜ってメンバー以外は名前も顔もよく覚えていない

 

「で、どこでやるんだそのイベントは?」

 

俺の返事に途端に小町の目が輝く

 

「えっとね、、ここだよ」

 

そう言って小町は携帯の画面を指差す。

なるほど確かに家からも近いな。

 

「なら早めに出るぞ、時間に余裕持たないといいところで見れないからな」

 

「うんっ!」

 

こうして俺は小町とアイドルのイベントに行くことになった。

 

*****

ー翌日ー

 

その日は俺にしては珍しく早起きして支度をしている。

当然、朝8時30分からの楽しみはしっかり見たがな!

 

で、実際イベントは昼過ぎからだがどうせ行くなら近くで見たいということで午前中から出発することになった。

 

「お兄ちゃ〜んまだ支度できないの〜?」

 

小町はこんな感じで朝からご機嫌だ。

 

「おう、今行くから待ってろ」

 

「早くしてね〜」

 

まったくあいつ自分が受験生だって分かってんのか?

まぁたまにの羽休めも大切だからいいか。

 

*****

ーイベント会場ー

 

あれからすぐに家を出発し、予定通りの時間に会場に着くことができた、予想通りこの時間ならまだ人が集まり始めと言ったところで近くで見ることができそうだ。

 

「近くで見れそうでよかったな」

 

「うんっ!これで日菜ちゃんを近くで見れるよ!」

 

「小町は本当にパスパレ好きだよな」

 

「当たり前でしょっ!女の子はみんなアイドルに憧れるものなの!」

 

「そうなのか?俺は小町の方が可愛いと思うんだが?」

 

「お兄ちゃん、それ小町的にはポイント高いけどあんまりシスコンだと彼女できなくなっちゃうよ?」

 

「小町よ、俺に好意を寄せてくれる人がいると思うか?」

 

「はぁ.....さすがごみぃちゃん」

 

え?なんでいきなり俺盛大にため息つかれて罵倒されてるの?

さすがにひどくない?

 

「一回トイレ行くから少しここで待っててくれ」

 

「うん分かったよ」

 

さすがに泣きたくなってしまった俺はその場から一旦逃げ出したのだった。

 

*****

 

小町と別れた俺はなんとなくイベント会場を1人歩いていた。

 

「お母さんどこ〜!!」

 

「ううっ泣かないで、お願い!」

 

泣いている小さい子供とその隣でこれまた半泣きになってしまっている俺と同い年くらいの桃色の髪をした女の子がいた....

子供はともかくどうして桃色の髪の子も半泣きなんだ....

 

「どうしたんだ?」

 

「うわぁ!」

 

素晴らしいと思うほどに見事なリアクションだな....

 

「あ、あの実はこの子迷子みたいで、一緒にお母さんを探してたんですけど見つからなくてそしたら泣き出してしまって.....」

 

驚くほど予想通りだな〜

となるとやっぱりここは.....

 

「そうか、なら俺も手伝うよ」

 

「いいんですか?よかったぁ...私1人じゃ不安だったんです」

 

悪いけど見てる方が不安だよというツッコミはぐっと俺の胸の中に抑え込んで....

 

「気にするな、あと見た所俺と同い年くらいだろ?敬語も使わなくていいぞ」

 

これで俺よりこの子が年上だったら俺めちゃくちゃ恥ずかしけどな?

 

「うん、分かったよ、ところであなたの名前は?」

 

「俺か?俺は比企谷八幡だ」

 

「じゃあ八幡君って呼ぶね」

 

うわっ、この子コミュ力高い系の人だわ。

俺のこといきなり名前で呼び出したもん。

 

「ところでお前の...」

 

「うわーん!!」

 

うおっ!すっかり迷子のことを忘れていた。

名前はまぁ聞かなくてもなんとかなるか。

 

「とりあえずこの子の親を見つけるか」

 

「うんっ!そうだね」

 

こうして俺たちは迷子の子供の親を探すことになった

のだが.....

 

「うわーん」

 

俺はこんな小さい子供を泣き止ませる方法など知らない。

つまり、俺いても無意味じゃね?

 

「ほら、俺もお母さん探してあげるから、泣き止んでくれ。なっ?」

 

ともかく俺は迷子の子に声をかける。

 

「この人目が濁っててこわい〜!」

 

帰っていいですか?

 

「大丈夫だよ八幡君!確かに普通の人たちと比べたら少しだけ死んだ魚っぽい目をしてるけど私はいいと思うよ!」

 

「ううっ」

 

「え?ちょっと八幡君まで泣き出さないで〜!」

 

だって、だってみんなが俺をいじめるんだもん

どちらも本当に悪意がない分ダメージは絶大だ。

 

「うわーん」

 

というかほんとに泣き止んでくれないとおちおち母親を探すこともできないぞ.....

このまま俺が慰めてもむしろ余計に泣き出しそうな気がするし....

ここは俺が母親を探してもう1人がこの子の慰めつつここで待ってる。よし!この作戦でいこう。

 

「だから泣き止んで?ねっ?」

 

「.....うん」

 

え?なんか俺が考え事してるうちに泣き止ませちゃってるんだけど

俺のいた意味ほんとになくなっちゃったんだけど?

本当に俺何しに声かけたんだよ....

 

「じゃあ母親を探すか」

 

「うんっ!」

 

こうして俺は迷子の子の親を探すのだった。

 

*****

 

「ありがとうございました!本当に心配で.....」

 

「いえいえ、気にしないでください!」

 

それから案外すぐにその子の親は見つかった。

今は桃色の髪の子がお礼を言われているところだ、人と話すことが苦手な俺はその後ろで我関せずって顔してるけどな。

 

「デート中だったでしょうに、本当にありがとう」

 

「い、いや私たちは別にそんな関係なじゃ.....」

 

とんでもない爆弾落としてくれたな、おい

少女は凄い勢いで顔が赤くして否定している

 

「そうですよ、俺なんかがこんな可愛い子とデート出来るはずないでしょう?」

 

あ、自分で言ってて悲しくなってきた....

それになんか俺とんでもないこと言ってない?

気のせいかさっきよりも少女の顔が赤い気がする。

 

「あらそうなの?仲が良さそうだったからついそう思っちゃったわ」

 

「本当にさっき会ったばかりですから」

 

俺が落ち着いてそういうと迷子の子の母親は納得した様子になった。

 

「そうなのね、でも本当にありがとうね」

 

「本当に気にしないでください」

 

本当に当然のことをしたまでだからな。

 

「もうお母さんと離れないようにするんだよ?」

 

少女は俺と母親が話してる間に迷子だった子とさよならをしていたらしい。

 

「うん、ありがとねお姉ちゃんと目の濁ったお兄ちゃん!」

 

「バイバーイ」

 

「じゃあな」

 

最後まで目の濁った扱いかよ....

まぁでも何はともあれしっかり見つけてあげられてよかった。

 

「あ!いけない!もうこんな時間だよ〜」

 

な、なんだ急にまたオロオロし始めたな.....

 

「私、この後用があるから行くね。今日は本当にありがとう、八幡君!」

 

「どういたしまして」

 

俺多分必要なかったけどね.....

なんて思っているうちに少女はもう走り出していた。

よほど急いでることからかなり重要なことなのだろう、そんな中迷子の子の母親を探すとは....

本当に人のことを思いやれらやつなんだな。

あ、そういえば名前聞いてなかったな。

まぁいいか、もう会うこともないだろ。

 

*****

 

「も〜お兄ちゃん遅い〜」

 

「悪い、色々あったんだ」

 

小町の元に戻ると俺の可愛い妹様は大層ご立腹だった。

 

「何があったの、ヒッキー?」

 

側にはなぜか由比ヶ浜たちアブアルのメンバーもいるが....

そういえば由比ヶ浜と一色はパスパレのファンだったな

雪ノ下はこの2人に誘われてって感じだろうか。

 

「いやまぁそれはかくかくしかじかで.....」

 

面倒なので少女のことは伏せて迷子の子の母親を探したことだけを話した。

 

「先輩がそんなことするなんて珍しいこともあるんですね、帰るときに突然雨とか降ってきませんよね?」

 

「おい、それは失礼すぎだろ。俺が意外なことしたくらいで雨は降らないしそもそも普段から俺ほど社会貢献してるやつなんてこの街でそう多くはいないと自負してるまでに.....」

 

「それにしても、比企谷君が迷子の子を泣き止ませたということが信じられないわね」

 

「あっ、小町もそれ思ってました〜。お兄ちゃん小さい子に会ったら目が濁ってるよ〜なんて言われてもっと泣き出しそうなのに...」

 

「だよね〜」

 

「それでうろたえる先輩がすぐに想像できますね」

 

お前ら人の発言をスルーした挙句に悪口大会始めるのやめて?

そのまま続いたら俺の精神的ライフポイントすぐにゼロになるよ?

しかも全部事実とかお前ら俺の記憶覗き見したりしてないよね?

 

「それで本当に1人で探したの、比企谷君?」

 

正直にいうべきか?昔からなぜかこいつら俺が女子と何かするたびに不機嫌になるんだよな。

本当になぜだろうか?

 

「い、いや実はもう1人協力してくれた人が....」

 

「なんで隠してたの、ヒッキー?」

 

「そうですよ先輩、なんでわたしたちにそれを隠す必要があったんですか?」

 

「私たちに知られると不都合なことでもあるのかしら?」

 

こ、怖い

雪ノ下たちの顔は笑ってるはずなのに放っているプレッシャーがとてつもない....

こうなったら小町に3人をなだめてもらうしか....

 

って、小町のやついねぇ!

あいつさてはこの空気に耐えきれずに逃げやがったな!

 

くそっ、小町にも頼らないとなるとどう乗り切れば.....

 

「いや、お前らが考えてるようなことはないから....」

 

「じゃあなんで隠したの?」

 

「先発まさかとは思いますが」

 

「女の子だった、とは言わないわよね?」

 

やっべー久し振りに本気の危機が迫ってきてる。

こんな状況になると人って逆に落ち着けるんだな〜

はっきり言おう、もうこれ以上耐えるのは無理だ。

 

「じつは....」

 

諦めた俺は先ほどの少女の話をした。

 

「やっぱり女の子と一緒じゃん!」

 

「全く、最初からそう素直に言えばいいんですよ〜」

 

話した後の3人の反応としては怒ってはいるけどさっきのようなプレッシャーは放っていない、流石に事情があるので怒ったりできないのだろうか?

 

「何はともあれ私たちに隠し事をしたのだから、後で何かしらお仕置きが必要ね?」

 

そんな甘いわけはなかった.....

この流れになった時は決まって3人にそれぞれ甘いものを奢ることになることが多い、また財布の中身が軽くなっていく.....

 

「いや〜お兄ちゃんも大変だね〜」

 

小町このやろうなんでこのベストタイミングで戻ってこれるんだよ、絶対お前少し離れたところで様子伺ってただろ。

 

「もうすぐイベント始まるよ!楽しみだね、小町ちゃん、いろはちゃん!」

 

「本当ですよ〜、近くで日菜ちゃんを見れるなんで感激です!」

 

「わたしもイヴちゃんをこんな近く見れるなんて....」

 

本当にこいつらパスパレのファンなんだな。

なんて思ってたらイベント開始のアナウンスが流れ出す。

もう直ぐパスパレに会えるということで小町たちはテンションが最高潮だ、周りのファンたちも楽しみにステージを見つめている。

 

「皆さんこんにちは〜」

 

え?ちょっと待って、俺の幻覚じゃないよな?

今、挨拶をしながらステージに登場したのは.....

先ほどともに迷子の子を探したあの少女だった.....

 

と思ってたら他のメンバーもステージに登場し始めている中

その少女が俺の方を見る。

それと同時に顔に驚愕の表情が浮かび考えうる限り普通はとらない行動を取ってしまった。

 

「は、八幡君!?」

 

そう、すなわちマイクの電源が入ったまま大音量で俺の名前を呼んでしまったのだ....

 




今回はここで終了です。
これからは週に1回は投稿できるようにしていきます。


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第17話

リアルが忙しく投稿できませんでした.....
お待たせしてすいません


「それで本当にさっき会ったばかりだと?」

 

「それは本当のことです、本人にも確認を取ってみてください...」

 

どうしてこうなった.....

本当になんでこんないかにもな感じな人たちに囲まれて質問攻めにされなければいけないんだよ.....

 

まぁ理由は単純でイベントで登場した少女、丸山彩が俺の名前を呼んでしまったことが原因なのだが、そのことで芸能事務所の方々から丸山との関係を質問されている....と言った感じだ。

 

だが先程からもう俺の話は信じてもらえてるっぽいな、失礼な話だが丸山は多分ちょくちょくこういうことをしてしまっているのではないだろうか?

 

そうでもなきゃこんな怪しい男なんてとっとっと警察行きになっていそうなものだが....

 

「とりあえず、本人にも確認取らなきゃいけないからイベントが終わるまではここにいてもらうからね」

 

「はい、わかりました」

 

まじかよ、イベント始まって直ぐに俺が連れ出されたから...後どれくらい待てばいいんだ....

ともかく妹に連絡くらい入れといたほうがいいよな

 

色々会って帰り遅くなりそうだから、先帰ってていいぞっと

ま、しばらくの間はイベントに夢中で気づきやしないだろうが

 

それどころか今日は晩御飯にトマトとかいれてきそうだな....

パスパレの大ファンの小町は俺が丸山に名前を呼ばれた時

 

「どういうことなの?なんでお兄ちゃんが彩ちゃんに名前を呼ばれてるの?」

 

と、若干嫉妬気味だったからな.....

 

そんな恐怖を抱きながらも俺は1人でイベントの終了を待つのだった.....

 

*****

ー約1時間後ー

 

その後は本当に退屈だった....

幸い携帯などは普通に使えたのでそれで暇を潰していたり、事務所の人にさっき省略してた事情まで聞かれたりなどして時間が大体1時間程すぎたが、まだイベントは終わらないのだろうか?

 

「失礼します」

 

その時俺がこんな目にあう原因となった人物が部屋に入ってきた。

そう、丸山だ。

 

「あっ、八幡君!さっきはごめん....ってはい?わかりました」

 

俺に謝ろうとしていた丸山に事務所の方が声をかけて丸山はおそらく俺の話したことの事実確認をされているのだろう。

 

「はい、彼の言っていることは本当です」

 

どうやら納得してもらえたらしいな。

これで俺も自由の身になり、ようやく部屋の外に出ることができた。

 

「本当にごめんね、八幡君。私のせいでこんなことになっちゃて.....」

 

「いや、気にしなくていいぞ。アイドルに名前を呼ばれるなんてかなりレアな経験だからな」

 

会ったら嫌味の一つも言ってやろうかと思ってたが.....

あんな誠心誠意謝られたら、そんなこともできないよな。

 

「あ!彩ちゃん!事務所の人の話終わったの?」

 

「うん、もう終わったよ」

 

「やっぱり最初のあれ?」

 

「うん.....」

 

今丸山に話しかけてるこの子は誰か覚えているぞ。

パスパレの中でも特に小町が好きな氷川日菜だな。

実際に見てみると、なんか誰かに似てる気が.....

 

「あっ!この人が彩ちゃんが名前呼んじゃったひと?」

 

「うん、そうだよ」

 

「ふーん、なんかこの人の目、おもしろーい!なんだか死んだ魚みたい!」

 

「ちょっ、ちょっと日菜ちゃん確かにそんな目してるかもしれないけどそんなストレートに言ったら失礼だよ!」

 

.....なに?今日だけで何回このくだりやって俺のメンタルのライフポイント削りに来るの?

すでにオーバーキルだよ?

三日間くらいなら寝込めちゃうくらいのダメージ受けてるよ?

 

「名前なんて言うんだっけ?」

 

おっと、急に話を振ってきたな

 

「俺は比企谷八幡だ」

 

「そっか〜、あたしは氷川日菜だよ!」

 

本当にテレビとかで見たまんまだな.....

 

「ああ、知ってるよ。妹が氷川の大ファンだからな」

 

「そうなの?嬉しいな〜」

 

やっぱり自分にファンがいるってわかると嬉しいんだな。

 

「え?八幡君日菜ちゃんは分かるのに私のことはわからなかったの?」

 

あ、そういえば気づかなかったな。

 

「なんというか、そのすまん」

 

「本当に申し訳なさそうに謝らないでよ〜!ううっ気づいてくれないかなってずっと期待してたのに〜」

 

そ、そんな期待をしてたのか.....

なんか本気で気づかなかったことが申し訳なくなってきた.....

 

「日菜さ〜ん、彩さ〜ん。どこにいるんですか〜?」

 

また誰か来たな?えーとあの眼鏡の子は.....

 

「あ、麻弥ちゃん。どーしたの?」

 

麻弥?ああ、大和麻弥か、ステージと違って眼鏡かけてるからわからなかった....

 

「ん?こちらの方はどなたですか?」

 

「この人は八幡君だよっ!ほら彩ちゃんがステージで名前呼んじゃった人〜」

 

「ああ、なるほど、ジブン大和麻弥って言います」

 

「比企谷八幡だ」

 

なんか俺どんどんパスパレと知り合いになっていってる....

一般的にみたら本当にすごいことじゃないか?

これなら1時間くらいこの部屋でただひたすらに待たされたのも全然安いもんに思えてくるな。

 

「皆さんなにをしているですか〜?」

 

「みんなしてここでなにをしているの?」

 

あ、そんなこと思ってたらパスパレメンバー全員揃っちゃった。

 

「彩ちゃんを呼びにいったきり帰ってこないんだもの、何かあったのかと思ったわ」

 

「ごめんね千聖ちゃん、私がこの人の名前呼んじゃったから謝りに来てたの.....」

 

「この人ってどなたですか?」

 

「ほら、イヴちゃんの後ろの人だよ」

 

「え?きゃぁぁぁ〜!」

 

めちゃくちゃ悲鳴あげられてるじゃん俺.....

やばい、メンタルがズタボロだ.....

 

「あはは、イヴさんそんなに悲鳴をあげたら八幡さんに失礼ですよ...」

 

「ご、ごめんなさい。急に後ろにいたのでびっくりしてしまって....」

 

「いや、気にするな、慣れてるから」

 

「そんな悲しいことをなんで平然として言えるのかしら....」

 

え?ふつうじゃないの?昔から人の後ろに立つとなんも気づかれないで驚かれまくったからなぁ〜

 

「も、もしかしてあなたは忍者ですか!?」

 

え?なんかすごい目を輝かせてない?

 

「い、いやそれは違うが....」

 

「そうなんですか....てっきり忍びの極意を極めてるのかと....」

 

なんかがっかりしてる様子見せられるとすごい申し訳ないことした気分なんだが....

 

「イヴちゃん、八幡君が困っちゃってるから」

 

「そうだよ、八幡君はきっともともと存在感がないだけだよ」

 

ぐはっ!氷川、お前はあれか、八幡キラー持ってるの?お前が発言するたびに俺にダメージが半端ない量入ってくるんだけど.....

 

「日菜ちゃん、多分あなたが1番この人を困らせてるわよ....」

 

「と、とにかくほんとに今日はごめんね。八幡君」

 

「ほんとに気にしてないから気にすんな、むしろこんな不審者じみた俺がアイドルと話せて役得だったまでにある」

 

「本当に自己評価が低いんですね....」

 

「決して奢らないその姿勢....ブシドーですね!」

 

いや、それは違うけどな?むしろブシドーの真逆の精神の塊だぞ?

 

「そろそろ家族も待ってるだろうし、帰らせてもらうわ」

 

多分もう帰って大丈夫だよな?

 

こうして俺はイベント会場を後にした。

そしてラッキーすぎることなのだが俺は最後に丸山と連絡先を交換するというおまけ付きで。

 

丸山曰く、また今度またお詫びがしたいそうだ。

本当にいいやつだな。

 

まあ、結局使うこともないだろ。

今まで交換した人のなかでもあんま連絡する人いないくらいだしな。

そんなことを思いながら家に帰った俺は小町に詳しい事情を聞かれとてつもなく羨まれたことは言うまでもないだろう。

 

*****

ー次の日の学校ー

 

色々あった昨日と違って今日くらいはゆっくりしてたいなぁ〜

なんて朝からいつも通り机に突っ伏して寝たフリをしていると

 

「八幡、起きて!」

 

こ、この声はMy sweet angelの戸塚!

すぐに起きなければ!

 

「どうしたんだ、戸塚!」

 

「うわっ!び、びっくりしたぁ〜。急に大声を出さないでよ」

 

「わ、悪い、それで俺に何か用か?」

 

戸塚はそこで真剣な顔になり俺に言った。

 

「僕たちとバンドをやってくれない?」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺の頭にフラッシュバックする記憶。

それは、俺にとっての始まりの言葉であり今の俺を作ってくれた言葉。

 

そして今は、決して受け入れられない言葉.....

 

「悪い.....」

 

無意識の内に俺の口からはそんな言葉がこぼれた。

 

まだ、答えすら出せない俺には....

 

 

その言葉を受け取る事はできない。

 

 




ここで一つだ補足を八幡はまだ小町に彩と連絡先を交換した事は言ってません。
そして別段最後の展開は暗い展開ではなわけではないです。
ただ雪乃たちに答えを出す前に他のバンドに入ることができないってことなだけです。

それと本当に申し訳ないのですがまだリアルでの用事が落ち着かないのでまた更新が遅くなってしまうと思います。
失踪はしないのでまた上がってたらまたやるかくらいの気持ちでお待ちください


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番外編

今回は八幡がバンドから抜けて少ししてからの頃の話を書きます。
具体的には友希那さんとどう出会ったかを書きます。


ーある日のことー

 

戸塚達とライブに行ってから数日経った日のこと昼休み俺は戸塚や材木座と昼食をとっていた。

 

「そういえばさ八幡、こないだライブ行った時にRoseliaのボーカルの人と知り合いだったけどどういう関係なの?」

 

「そうだぞ八幡!我を差し置いて何をあの様な可憐な少女と知り合いになどなっているのだ!このラノベ主人公が!」

 

「いやどういう意味だよ.....」

 

「それは是非ともどういうことか聞かせてもらいたいわね?」

 

な、なぜここにいるんだ!

などとふざけているのはやめといたほうがいい雰囲気だな、うん。

 

「なんでここにいるんだ、雪ノ下?」

 

「あら?私がいたら話さない様なことなのかしら?」

 

「そうなんですか、先輩!」

 

「いやそんなわけないなだろ.....」

 

「なら話してよ〜、あたしも気になるし」

 

一色に由比ヶ浜まで....

 

まぁ別に本当に話してもなんの問題もないことだしいっか。

 

「少し長くなるぞ?」

 

「じゃあ話してよ八幡!」

 

「分かったよ」

 

そうあれは冬の寒い日のことだったな.....

 

*****

 

 

もうバンドを抜けてから1ヶ月か.....

あいつらとはあれから一切の会話をしていない。

それでもギターだけはやめられなくて、今も月に一回はspaceでギターを弾かせてもらっている。

雪ノ下たちと予約が被らないようババァに無理言って予約の予定を教えてもらっているので雪ノ下たちと会うこともない。

 

「やっぱ、ものたりねぇな.....」

 

1人でギターを弾く、それはかつての当たり前だったはずなのに今はそれがとても寂しくまたみんなで弾きたいという気を起こしてしまう。

 

「このままじゃぼっちの名が廃るな...」

 

自嘲じみた笑みを浮かべてそれでもギターを弾き続けるのはやはり俺の未練の表れ、といったところなのだろうか。

気づくともうすぐ時間も終わってしまう。

俺は帰りの支度を始め、スタジオを後にした。

 

「じゃあ次はこの日で....」

 

受付で次の予約をしてから俺はspaceから出ようとした。

 

「あなた、比企谷八幡よね?」

 

が、急に見知らぬ女の子から声かけられたんだけど

あれ?俺ラノベキャラにでもなったの?

 

「あ、ああ、そうだが....」

 

「そう、なら単刀直入に言うわ」

 

なんというか少し強引な子だなぁ

あれ?まてよ?俺がラノベ主人公ならこの後だいたい何かに巻き込まれる流れじゃね?

めんどくさいのはやだよ?

 

「私と組んで頂点を目指さない?」

 

「は?わ、悪い。組んでっていうのは何でだ?」

 

「もちろん、バンドよ」

 

母さん、父さん、小町、そしてかまくら、俺やっぱりラノベの主人公になれたみたいです。

 

「八幡?八幡?聞いてるの?」

 

「わ、悪い、でなんだっけ?」

 

「聞いてなかったのね....返事はどうなの?」

 

「返事も何もなんで俺なんだ?俺以外にももっといいやつがいるだろ」

 

「いいえ、私は少し前からあなたの練習風景を見ていたわ、私の目標のためにもあなたのようなレベルの高い人が必要なの」

 

「それこそもっとレベルの高いやつが....」

 

「私が見てきた中であなたの演奏はトップクラスよ。それどころかプロ同然ですらあったわ」

 

「それでも初対面でこちらはお前のことを何も知らないままバンドなんて組めるわけないだろ」

 

「そう、なら今度私と一緒に演奏してみない?そうしたらきっと納得してもらえると思うのだけど」

 

ご、強引だな、よほどその目標を達成したいみたいだな。

だがどうするかもう断れる雰囲気でもなくなってしまったんだが....

 

「わかったよ、それでお前名前はなんていうんだ?」

 

ほんとに今更だが名前を尋ねる。

 

「友希那、湊友希那よ」

 

なんだかその名前はその少女にとてもあっている気がした。

 

「そうか、ならこの日は空いてるか?」

 

「ええ、問題ないわ」

 

「じゃあその日のこの時間に....」

 

その後湊とは詳細な集合時間を決めてから別れた。

あった時から感じていたがやはりあいつは....

 

*****

 

夜、今は1人で考えている。

俺はなぜあんな話を断らなかったんだ、いや理由などわかっている。

湊はあいつに、俺を変えてくれたあいつに似ているのだ。

そう、俺が初めて共に演奏をした少女、雪ノ下雪乃に.....

 

纏っている雰囲気、長い髪、さらには少し強引なところ、話し方さえ似てるように感じてしまった.....

 

俺はこのままあの少女とバンドを組むことがあるだろうか?

きっとないだろうな.....

結局ステージの上でも俺はぼっちだったのだから.....

 

あれから俺は随分卑屈になっちまった、いやひねくれてた時に戻ってしまったなぁ.....

そうして俺はあれからなんだ浮かべたかわからない自嘲の笑みをまた浮かべたのだった....

 

*****

 

「比企谷君?あの人とバンドを組んでしまうの?私たちを捨てて?」

 

違う、違うんだ雪ノ下。俺にはその気は.....

 

「ならなんであの時すでに断らなかったの?ヒッキー答えてよ」

 

「わたし達とは遊びでバンドをやっていたってことなんですか、先輩?」

 

由比ヶ浜、一色ちがう、違うんだ。

 

どんなに声にして否定したくても声が出ない、それでも3人はまるで俺の考えがわかっているかのように微笑む、それは諦めの微笑にも、俺が新しいバンドを組もうとしていることをむしろ喜んでいるようにも見えてしまった.....

 

*****

 

「....夢か」

 

そう、あれ夢だ。あいつらを裏切り傷つけた俺の罪悪感が生み出した空想に過ぎない。

なのに、なのになぜこんなにも俺は今日湊と共に演奏することに罪悪感を感じているのだろうか?

それでも、、約束は守らなければならないだろう。

 

「それじゃ行くか....」

 

だいぶ重い足を無理やり動かすようにして俺は家を後にするのだった。

 

いつもより少し歩く速度が遅かったせいか俺にしては珍しくかなり余裕を持って家を出てきたつもりがもう約束の五分前だ。

まぁ遅刻しなかっただけよしとするか。

 

「おはよう、ちゃんと時間通りね」

 

やはり予想通り湊はもうすでにいた。

雪ノ下と同じく時間にはうるさそうだからな.....

 

「おはよう、それでもう準備はいいのか?」

 

「ええ、問題ないわ」

 

「そうかなら早速いくぞ」

 

演奏が終わったとき、率直に俺はこう思った。

湊は天才だと、その声量の生み出す迫力は相当なものだ。

これなら本当にプロだって目指せてしまうかもしれない。

.....かつての俺や葉山のようにいつか声をかけられるかもしれない。

その時にこいつの周りのやつはどうなるのだろうか?

俺は、俺はその時に間違えた、選択をじゃない、対応をだ。

あの時の選択自体は間違っていない、そう信じるしかない。

ただその後のあいつらの気持ちは何一つとしてあっていなかっただけなのだ.....

 

「八幡?またボーっとしてどうしたの?」

 

「わ、悪い」

 

「いいえ、それよりも今の演奏はなんなのかしら?」

 

「なにっていつも通り弾いただけだが?」

 

実際その通りのはずだった、俺はいつも練習してたように弾いたはずだ。

なぜそんな不満げな顔で湊は俺を見上げるのだろうか?

 

「そんなはずはないわ、今日のあなたの音は聞いていて不快だったわ」

 

「なんでお前にそんなことがわかるんだよ?」

 

なんだか朝からの気分の悪さと合わさってだいぶトゲのある声が出てしまった。

 

「いいえ、明らかにあなたの音は普段と違ったわ。普段よりも気持ちが全然入っていなかった」

 

「お前はほとんど俺の演奏なんて聞いたことないだろ?」

 

「そうね、なら白状するわ。私があなたの音を最初に聞いたのはあなたが1人で演奏していた時ではないの」

 

「それって.....」

 

「そう、あなたが4人で演奏していた時よ」

 

「そうか....」

 

「卑怯な話なのだけれど、私はあなたの演奏を初めて見た時にあなたが私の目標のために必要だと思った。でも、ステージ上のあなた達はあまりにも輝いていて....とてもではないけれど私が声かけてもあなたがついてくるとは思えなかった....」

 

「つまりお前は....俺がバンドから抜けたのを知って...」

 

「ええ、率直に言ってチャンスだと思ったわ。でも、今はっきりとわかった。あなたはまだ何か引きずっているわね?」

 

....っ!見抜かれてるな、俺自身もそれは自覚していることだ。

 

「ああ、色々な.....」

 

「そう....私はあなたのその悩みを聞いたとして恐らくなにもできないししようとも思わないわ」

 

「そんなやついらないってことか....」

 

「いいえ、そういうわけではないわ。ただ、そういうことは自分で決着をつけなくては前に進めないのよ。誰かに解決してもらったとしてそのあともその過去はあなたの足かせとなっていつか前に進まなくなってしまう....そんな気がするの」

 

厳しいやつだ....でもだからこそこいつの考えは道理だ。

 

「サンキュ、なんかお前のおかげで少し目が覚めたわ」

 

まだ、前に進めたわけじゃない、でも前に進みたいとは思えた。

きっと世の中大切なのは結局そこなのだ。

前へ進もうとしなければ転ぶこともない....

そこからまた立ち上がり再び転ぶことを恐れず前に進もうとする姿勢

俺に必要なのはそれだった。

 

「だから、あなたことは一度諦めることにするわ」

 

「そうか....でもお前ならきっと俺よりもいい音を奏でられる仲間に出会える、そんな気がする」

 

「あら?それは信用していいのかしら?」

 

「信用だけはするな、何せこちとらぼっちだからな」

 

「なぜ、自慢げなのかしら.....」

 

そりゃ俺が唯一続けてることだからな!

....悲しいなぁ

 

「それに....なぜなのかしらねあなたと演奏していると落ち着かないの」

 

えっ....気持ち悪すぎてってこと.....

最後の最後に俺の存在を....

そういえば心なしか少し顔が赤い....

 

「俺が近くにいると空気が悪くなるらしいからな.....」

 

ちなみにこれは小学校時代に実際に言われた言葉だ。

あれ、目から汗が....

 

「いえ、別にそういう意味ではないの。ただ少し鼓動が早まる感じがあるってだけで....」

 

「体調悪いなら無理はするなよ?」

 

「ええ、しっかりと管理してるから大丈夫よ」

 

「でもやっぱ心配だし、今日はこの辺でやめとこうぜ」

 

実際、話してたら割といい時間になってきてるしな。

 

スタジオを出てからのこと。

 

「俺はまた次の予約してくから先外に出てていいぞ」

 

「ええ、わかったわ」

 

そうして俺が予約をすませ外に出ると....

雪が降っていた。

そしてその先を見ると....

 

「にゃーん....かわいいにゃ〜」

 

え?これは俺の幻覚?

気のせいでなかったらさっきまで迫力ある声で歌っていた人が猫にデレデレしてる様な気が....

 

俺が呆然と立ち尽くしていると湊は俺に気づき、固まった。

 

「....見た?」

 

「いや、別に俺はなんも見てないぞ?猫くらいしか....」

 

その瞬間湊の顔が真っ赤になる。

 

「で、できたら忘れてちょうだい」

 

正直忘れられる気はしない、それほどまでに猫と戯れていた湊は可愛かった。

 

「ぜ、善処する....でも猫は可愛いしお前が好きなのもわかるが....」

 

「それでも...やっぱり恥ずかしいもの....」

 

「そうか?俺の家でも猫飼ってるけどそんなふうに可愛がっててもバカにする奴なんていないぞ?」

 

そもそもうちに来てその様子を見たことがあるやつなど本当に片手で数えられる程度しかいないのだが....

 

「今度、その猫を見せてもらえるかしら?」

 

さっきあんなこと言っといて隠す気ゼロじゃねーか....

 

「また機会があったらな」

 

「そうね、次会ったときには最高の演奏を聞かせてみせるわ」

 

「そうか、楽しみにしておく」

 

そう言って俺は歩き出した、ふとした時に振り返ってみたが湊の姿は儚い雪の様に消えてしまっていた....

 

だから俺も前を向いて歩き出した。次あいつの前で演奏する時には胸を張って演奏しようと心に決めて.....

 

*****

 

「....こんなところかしら?」

 

八幡とライブ会場で会った後の打ち上げでリサから八幡との関係を疑われ出会った時のことを話すことになった。

特に変わったこともないのだけれど

 

「それでも友希那のことを忘れるなんて八幡ってかなりすごいね〜」

 

「そんなに私って記憶に残るかしら?」

 

「「「残ります(ね)」」」

 

それは喜ぶべきことなのかしら.....

 

「まぁライブの時の友希那はそうそう忘れられないと思うよ〜」

 

「でも、本当に比企谷さんをスカウトしなくてよかったんですか?」

 

「そうね、今思えばそれは.....」

 

*****

 

「まぁ、こんなところだ」

 

「なるほど、つまりあなたは湊さんに捨てられたってことでいいのかしら?」

 

「おい、それは事実だとしてもいうなよ....」

 

「いや普通は捨てられたことを否定しますよ....」

 

「でも、実際湊さんからそのあと何も連絡なかったんでしょ?」

 

「そうだな」

 

「だが八幡、本当にその様な才能あるものと組まなくても良かったのか?」

 

「あ?話聞いてたか?今も答え出せずに悩んでる俺がその時組めるわけねーだろ。それに、なんていうかな.....」

 

「「今(前)のメンバーよりしっくりこなかったのよ(んだよ)」」

 




今回は割と早く次の話がかけましたね。
また不定期で更新していくのでよければ読んでください。
次回は多分本編にもどります。

余談ですが割と本当に最初の友希那さんの印象は雪ノ下に似てるなって感じでした。


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第18話

今回は前回の話の続きとなります。
戸塚たちもいつかバンドリキャラたちと絡ませたいですね。


「.....やっぱりダメ?」

 

戸塚よ、そんな目で俺を見ないでくれ....

つい今からでもいいよって言っちゃいそうになっちまうだろ

いいか、お前ら。アニメとかで可愛い子のお願いを断れない主人公って多いだろ?

あれ、ほんとだから。戸塚クラスの可愛さならほんとになるからな?

 

「なぜダメなのだ!八幡!」

 

「うおっ!お前どっから来た!」

 

「最初からいたわ!」

 

え?マジで?全く気づかなかった.....

まぁ材木座だしどうでもいいか

 

「おまえがそういうってことはまさかとは思うが戸塚、こいつとバンドを組もうとしてるのか?」

 

「うん、あと川崎さんも誘ってるんだ〜」

 

か、可愛い。だからこそ断言しよう。

 

「戸塚、材木座と組むのはやめろ。魅力が半減するぞ」

 

「ひどっ!我傷ついた、傷つけられた!」

 

「うっせぇぞ材木座」

 

「だって八幡が酷いことを.....」

 

いやだってさ、なんでよりによって戸塚と材木座なんだよ.....

 

「八幡、これは僕がお願いしたんだ」

 

「うむ、だが我も志は同じだったのでな、断る理由もなかったのだ」

 

まぁ十中八九こないだのライブに影響されてのことだろう。

 

「で、お前らはそれぞれどの楽器を演奏するんだ?」

 

「えっとね....僕がベースで材木座君がドラム、川崎さんがボーカルだよ」

 

「それでギターがいないから俺のところに来たと.....」

 

「うむ、そういうわけだ」

 

「そうか.....なら代わりと言っちゃなんだが...俺に心当たりがある。そこにあたってみるから少しの間だけ待ってくれないか?」

 

「うん、わかったよ!」

 

「だが、そんな急に見ず知らずの人が我らとバンドを組めるものなのか?」

 

「ああ、その点は心配すんな」

 

「そうか、ならいいのだが.....」

 

まあ材木座のことは嫌がるかもしれないが.....

きっと大丈夫だろ、多分

 

*****

ーその夜ー

 

「なに?お兄ちゃん?急に呼び出して?」

 

俺は夜自分の部屋に小町を呼んだ。

要件は至極単純....

 

「小町、バンドを組む気はないか?」

 

「お兄ちゃんと?でもお兄ちゃんは雪乃さんたちと.....」

 

「ああ、悪い。俺とじゃない、俺の同級生に戸塚って言う奴がいてな、そいつがバンドを組もうとしてるんだがギターを探しているらしいんだ。そこで、お前が適任なんじゃないかと思ってな」

 

「でも、小町まだ人前で弾いたことさえないんだよ?」

 

「大丈夫だ、みんな同じだ」

 

「それに見ず知らずの人たちだし.....」

 

「それも大丈夫だ、そいつらの性格の良さは保証する。それに、メンバーの1人は川崎だ」

 

「そうなの?でもやっぱり、自信ないよ.....」

 

「小町、お前はギター好きか?」

 

「うん好きだよ、ううん、大好き!」

 

「そっか、ならなんの問題もない」

 

「どうして、だって小町はまだ弾き始めて少ししか.....」

 

「歴なんて関係ない、必要なのはギターを弾きたいって気持ちだけだ」

 

ここで小町は考え込んでいる、俺がこいつの立場でも同じことをしてだろう。

それほどまでにこの決断は重いことだ。

一度バンドに入る、そうすると良くも悪くもその人間の音楽はそのバンドに左右される。

それに、あんな失敗した俺のことを見てきた小町のことだ、怖いのだろう自分も仲間を失ってしまわないだろうかと.....

 

「なぁ小町、俺が初めてステージにあいつらと立った時のライブ覚えてるか?」

 

「うん、すっごいキラキラしてドキドキした!」

 

「俺もよく覚えてるよ、だってあのステージは今までで1番楽しかったからな。確かに1人で演奏してても楽しいさ、でもみんなで.....仲間と演奏するのはその何倍も楽しい!俺はそれをお前にも知ってほしい」

 

「ねぇお兄ちゃん。小町ね、ずっとお兄ちゃんたちのことが羨ましかったの。みんなで、一生懸命練習して、ステージでもみんなが支えあいながら演奏しててさ。わたしもあんな風に輝きたいってキラキラしたいってずっと思ってたの....小町もあんな風にキラキラできるかな.....」

 

「当たり前だろ?こんな俺でさえそう見えたんなら、お前が輝けないはずないだろ」

 

「お兄ちゃん、今度小町を実際にその人たちに会わせてくれる?」

 

「ああ、勿論だ」

 

そのときの小町の顔は今まで見たことないくらい輝いた笑みだった。

その顔は俺の中にある迷いの氷さえ溶かしてくれたのだった.....

 

*****

 

こうして小町は新しい一歩を踏み出した。

俺もいつか、歩き出す日が来る。

その日に今の小町みたいな顔でその時を迎えられたらどんなにいいことか.....

小町にあんなこと言っときながら...1番怖がってるのは俺なんて笑えない話だよな.....

 

踏み出したくなくても踏み出さなきゃいけないこともあることを、俺は知りすぎているから....

だから、俺は小町に言ってるつもりはなかった、全て自分に言い聞かせていた。

でも、その後の小町の笑顔で俺も決心がついた。

もうすぐ俺も伝えよう、この想いをあいつらに.....

 

*****

ーその週の日曜日ー

 

「本当に1人で大丈夫か?」

 

小町はこの日1人で戸塚たちとspaceで会うことになっている。

俺も予約を入れているためその気にさえなれば俺も立ち会うこともできるのだが、それを小町は断ったのだ。

 

「も〜何度も言ってるでしょ?これは小町の問題だから小町だけでいいの」

 

「そうか、なんかあったら俺のところに来いよ」

 

spaceに入る前にそうとだけ言っておいて小町はspaceの中に入っていった。

 

俺は戸塚たちと会わないように小町に言われているので少し立ってから入ったところだったのだが.....

 

「八幡?最近はよく会うわね」

 

「湊か.....俺は今までも定期的にここに来てたんだがな.....」

 

「知ってるわ、何度も見かけていたもの」

 

「なんで話しかけてこないんだよ.....」

 

俺がそう言うと湊は急にムッとした顔になる。

あれ?俺何か地雷踏んだか?

 

「だって.....あなたがわたしのことを忘れているなんて思ってなかったんだもの」

 

「いや...それはだな」

 

「1度一緒に演奏したのに、忘れられるなんて思わないじゃない.....」

 

「いや、なんと言うかその.....」

 

「ずっと八幡の方から声をかけてもらえると思っていたのに.....」

 

「すいませんでしたぁ!」

 

あまりに罪悪感を刺激してくる湊の言葉に耐えきれなかった俺はジャンピング土下座という、俺史上最もレベルの高い謝罪方法を試みていた。

 

「別にそこまでしなくてもいいわ」

 

「ならあんなに言わなくても.....」

 

「なんだかとてもあなたに苛立ってしまったの、なんでかしらね?」

 

「いや、俺が聞きたいんだが.....」

 

「まぁいいわ、その代わり今度あなたの家の猫を直接見せてちょうだい」

 

「それくらいでいいなら.....」

 

「そう、うやむやにしようとしたら今度は許さないわよ」

 

「はい....」

 

俺の手の内もバレてるか.....

 

「じゃあ俺はそろそろ行くぞ」

 

「ええ、それじゃあ楽しみにしてるわよ」

 

はぁ、どうして最近はこんなに面倒ごとが起こるのだろうか?

 

*****

 

それから俺は数時間程度演奏をしてから家に帰ったのだが、小町はすでに帰宅していた。

 

「どうだった?」

 

「うん!みんないい人だった!」

 

「そうか、なら.....」

 

「うん!小町バンドを組むことにしたよ!」

 

「そうか....」

 

「また集まってバンド名とかを決めることになったの!」

 

その後も小町は嬉しそうに俺にバンドのことを語ってくれた。

ここまで喜んでくれたなら俺が紹介したのは間違いではなかったと思える。

.....俺もきっとこんな顔して話したんだろうな。

 

やっぱ、伝えるなら早いほうがいいよな......

今は6月中旬ほど.....

 

文化祭までには.....間に合わせたいよな....

 

こうして俺の物語も進み出す。

いつか辿り着くべき結末へとたどり着くまで.....

 




活動報告でネタ募集もしてるのでよかったらコメントください。
次回は紗夜さんと日菜ちゃんの話を進め出す予定....です。
パスパレメンバーももう少し出していきたいですね。
あと作者は友希那さん推しなため友希那さんのシーンは多くなります。
それと、設定を変更して八幡たちの文化祭は秋ということになります。
ご了承ください。


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第19話

暇つぶし程度にでも読んでくださる皆様本当にありがとうございます。
何かしら反応があるたびについにやけてしまいますねw


小町がバンドに入ってすでに1週間が経った。

その間に俺は小町はもちろん戸塚、材木座さらには川崎までもがそのバンドであったことをことあるごとに話すようになっていた。

俺としては戸塚と話す機会が減ってしまいちょっとショック.....

 

しかしそんなことも言ってられない事情がある。

それは俺にとっていや全学生の敵。

そう、期末テストが近づいているのだ。

 

いや、まあ俺自身は別に成績が悪いわけではない。

現に今もこうして家で勉強している。

....今は休憩中だが

そりゃ数学はひどい点数だがそれは国語で十分にカバーできている.....はずだ。

 

テストが近づいてくるとクラスの中でもその話題が増えてくる。

ここで朝寝てるふりをしてる時に聞こえてくるテストの話題ランキングを発表したいと思う。

べ、別にたまたま聞こえただけだし。

その話を俺もしてみたいとか思ってねーし。

後テスト勉強サボりたいとも思ってねーからな?

 

では早速第3位.....

 

「私、あの教科やばいんだけど〜」

 

これはあれだな主に頭の悪い奴らが使ってるケースが多い気がする。

これを言ってる奴は大抵他の教科も大してできていない。

まぁたまに俺のように本当に1教科だけが出来ない奴もいるが.....

 

それでは続いて第2位.....

 

「早くテスト終わらないかな〜」

 

まあこれはわからんでもないどころか俺も大いにそう思っている。

だが、だいたいこれを言った後に友達と

 

「テスト終わったらカラオケ行こーぜ!」

 

と言った具合の展開を見せることがほとんどなのでぼっちには縁がない言葉とも言える.....

 

それでは映えある(?)第1位だ。

 

「私今回全然勉強してない〜」

 

はっきり言おうこれに関しては言ってる奴の8割がウソだ。

ソースは中学生の頃の俺。

そう、あの時はみんな勉強してないって言ってたし勉強しなくていいか〜という気持ちでテストを受けひどい結果だったのは俺だけ.....

なんであの時からウソだと気づかなかった俺.....

ほんとにあの時俺を騙した奴、許さないからな?

(八幡は直接話したわけではない)

 

しかも俺の周りのやつは勉強ができる奴が多いんだよなぁ.....

雪ノ下やら葉山は毎回学年トップ2だし、一色もなかなかの高順位だし.....

 

そういや、戸山たちは勉強できんのかな?

今度聞いてみるか......

 

なんて1人で考えていたらかなりの時間が経ってしまっていたので俺は慌てて勉強を再開するのだった。

 

*****

 

せっかくの土曜日!テスト前だから勉強するかぁ!

....とはならずに俺は今spaceの前にいる。

 

なぜかというと.....まぁ単純に俺がテストを忘れていて予約を入れてしまったからだ。

息抜きにはいいか....と思って結局きてしまった.....

 

というか、最近の傾向から言ってspaceに入ったら誰かに会う気がする.....

 

「八幡さん?そこで何をしているのですか?」

 

最近の俺の予感はよく当たるなぁ....

 

「おう、氷川。練習か?」

 

「はい、少し自主練習を....」

 

「そっか、やっぱりお前は真面目だな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

なんか氷川の顔が少し赤くなった気がするが風邪でも引いているのだろうか?

 

「無理はしすぎるなよ?体調崩したら元も子もないからな」

 

「は、はい.....」

 

なんかあの日以来氷川の態度が変わった気がするんだよな

なんか急に名前で呼び出したりするし、前より俺に話しかけてくれるようになったし......

 

「というか、八幡さんの学校ではまだテスト前なのでは....?」

 

「あ、ああそうだが。ま、まぁ息抜きとかいうやつだ....」

 

「そうなのですか?八幡さんは勉強はしっかりとしているのですか?」

 

「国語は学年トップクラスでできるぞ。というかお前の学校はもうテスト終わったのか?」

 

「いえ、私もまだですね。」

 

「なんか氷川は勉強もできそうだよな....」

 

「いえ、そんなことはないですよ?こないだも学年2位でしたし....」

 

え?何この子もしかして俺が思った以上に勉強できる人だったの?

なんで学年2位で悔しがってんの?

 

「ふ、ふーんやっぱすごいんだな、今度教えてもらいたいくらいだな」

 

俺は前まではそんなに勉強する方ではなかったのだがバンド抜けた後は勉強することで気分を紛らわせたりもしていた、数学はできるようにならないから勉強しなかったけどな。

 

「別に私は構いませんよ?」

 

「え?まじでいいのか?」

 

「ええ、明日にでも」

 

俺にしても悪い話ではないな.....

 

「なら、頼むわ」

 

「そうですか、なら明日の午前からで構いませんか?」

 

「ああ、問題ないぞ」

 

「では、この時間にこの場所に.....」

 

こうして俺は頭いい人から勉強を教えてもらえることになったのだった.....

 

*****

ーその夜ー

 

紗夜は自室でベッドに寝転びながら今日のことを思い出して悶えていた。

 

「まさか、こんな簡単に八幡さんを誘うことができるとは....」

 

あの一件以来私は八幡さんのことがその、す、好きになってしまったの.....

それでずっと八幡さんと色々なことをしてみたいと考えていたのだけれど.....

あんなにも簡単に誘えるとは思っても見なかったわ.....

本当に幸運な1日ね.....

 

「あれ?お姉ちゃんどうしたの?なんかすごいるんっ!ってしてるね」

 

「日菜、部屋に入る時にはノックをしてたあれほど....」

 

また勝手に双子の妹である日菜が部屋に入ってきていた。

八幡さんのアドバイス以来頑張って前よりは普通に話せるようになったのだけれどまだやはり少し棘のある言い方になってしまうわね.....

 

「それよりも日菜、あなた明日はどこかに出かけたりするの?」

 

「ううん、明日はお仕事もレッスンもない日だから家で過ごすよ〜」

 

「そう、明日はお客さんが来るから大人しくしていなさいよ」

 

「お姉ちゃんにお客さん?珍しいね〜」

 

「え、ええ。一緒に勉強する予定だから静かにしていてね」

 

「わかったよ!」

 

せっかく八幡さんが来てくれるのに.....日菜に邪魔されたらたまらないわ。

 

日菜が部屋から出て行ったあとも紗夜は明日のことを考えるのであった.....

 

*****

ー翌日ー

 

そのは俺は氷川の指定した時間より10分ほど早く着いたのだが氷川はすでに俺を待っていた。

 

「おはようございます、八幡さん」

 

「おう、でこれからどこへ行って勉強するんだ?」

 

「言ってませんでしたか?私の家です」

 

え?今なんて言った?氷川の家でやるって言った?

 

「今日両親は留守にしているのでなんの問題もないですよ?」

 

それならいいのか?いや、いいはずはないよな....

だが、教えてもらう側として場所を変更して欲しいとは言いにくいしな.....

 

「わかった、じゃあ案内してくれ」

 

俺は氷川の厚意なら甘えることにした。

 

「はい、こっちです」

 

氷川と俺はその後氷川の家まで15分程度歩いた。

もう少し家から近い場所を待ち合わせ場所にすればよかったのに....

その15分の間に俺は氷川といろんな話をした。

 

「では八幡さんは中学校に入学する前からギターを弾いていたのですか?」

 

「まぁ色々あってな.....」

 

こんな俺のことだったり

 

「氷川は部活とかやっているのか?」

 

「ええ、弓道部に所属しています」

 

「イメージにぴったりだな」

 

なんで氷川の話であったり

 

「前から小町のやつは部屋に入る時にノックをしなくてな....」

 

「私の妹もです....何回もやめるように言っているのですが.....」

 

「お互い妹には苦労するな.....」

 

なんて愚痴話もしたな。

 

そんなこんなで氷川の家までの15分は案外早く感じた。

 

「ここですね」

 

「へーここが.....」

 

「では、どうぞ」

 

「お邪魔します....」

 

女子の家なんて片手で数えられるくらいしか入ったことないぞ.....

 

「あ、お姉ちゃん!おかえり〜」

 

緊張してる俺とは対照的な緊張感のかけらもない声が聞こえた。

そちらを振り返るとそこには.....

 

「この人がお姉ちゃんのお客さん?」

 

気のせいじゃないよな?俺がそう思うのも仕方ないだろ

こないだ会ったばっかのパスパレのメンバー氷川日菜が立っていたのだから.....

 




今回はここまでとなります。次回は氷川家での勉強の様子を書く予定です。
それと、感想や評価を残してくださると励みになるので是非お願いします。


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第20話

感想や評価してくれた人ありがとうございます!
その人たちのためにも頑張って書きますよ〜


言われてみれば不思議なことではなかったようにも思える。

確かに俺は氷川(妹)に会った時に何か誰かに似てる気がしたのだ。

なるほど氷川(姉)に似ていたように思えたのか.....

 

「お姉ちゃんのお客さんって八幡君だったんだ〜」

 

「日菜?八幡さんと知り合いだったの?」

 

「うん、こないだのイベントでこんなことがあってね〜」

 

氷川(妹)は手短にこないだの丸山の時間を話した。

 

「あの後も彩ちゃんスッゴイ不安がってたんだよ?何回もこんなメールで大丈夫かなぁってあたしに聞いてきたくらいだからね〜」

 

そんなに気にしてたのかよ.....

あの時来たメールはそんなに考え込まれたものだったとは.....

 

「なるほど、丸山さんらしいわね」

 

「氷川は丸山に会ったことあんのか?」

 

「はい、それに日菜からちょくちょく話を聞いているので」

 

なんか氷川(妹)は人と関わるのが好きだよな

俺とは真逆だな、羨ましくはないが....

それに氷川(姉)ともあんま似てないな....

 

「ところでさ〜八幡君、さっきからあたしとお姉ちゃんのこと氷川って呼んでるけどそれだと紛らわしいから名前で呼んでくれない?」

 

あ、確かにそれもそうだが....女子を名前で呼ぶのはいまだにあまり得意ではない。

なんで葉山はあんな簡単そうに名前で呼べるんだよ....

やっぱ陽キャってすげーわ。

だけど呼ばないと納得しなさそうというかなんというか.....

 

「ああ、わかったよ日菜」

 

ああああああ何普通に呼んじゃってんだ俺!

気持ち悪いとか思われたらどうすんだよ!

てか、あいつから言ってきたことだからそう思われたら理不尽すぎるだろ!

名前で呼んだことの恥ずかしさから俺の脳内はおかしなことになっていた。

どこもかしこもオーバーヒートしている.....

 

「ほらお姉ちゃんのことも」

 

「え、わ、私は別に....」

 

「ああ、紗夜....」

 

そのままの勢いで2人目も名前呼びしてしまったのも仕方ないだろう、だって脳内がバグを起こしてるんだもん。

 

「あの、その、えっと.....」

 

ほら、そのせいで紗夜も顔真っ赤にして気持ち悪がっちゃってるじゃん!

 

「あはは、2人とも顔真っ赤〜。りんごみたい!」

 

「ひ、日菜茶化さないで!」

 

やっぱ俺も顔赤いのか....

くそっ!勉強をするような頭じゃなくなってまったぞ.....

 

「と、とにかく八幡さん行きましょう」

 

え?リビングでするんじゃないの?

と考えているとある部屋に通されるが、そこは.....やはり

 

「あまりじろじろ見ないでもらえますか.....」

 

紗夜の部屋だった.....

なんというか、よく掃除されているからというのはもちろん必要最低限なもの以外部屋に置いてないからかすごい清潔な部屋だ。

 

「では、勉強を始めますか。私も自分の勉強を進めているのでわからないところがあったら聞いてください」

 

そこで俺は迷う、なにをかってどの教科を勉強するかだ。

普通なら苦手教科である数学をやるべきところなのだが、あれやったところでできるようになる気がしないからなぁ.....

 

「そういえば八幡さん言い忘れていましたが、八幡さんの苦手教科をやってくれませんか?そちらの方があなたの勉強になりますからね」

 

.....逃げ道は封じられた。

仕方ない、数学をやるか.....

 

*****

ー1時間後ー

 

「どれほど進みましたか?」

 

紗夜が俺のノートを覗き込む、がそれははっきり言って無意味だ。

なぜなら.....

 

「なぜ白紙なのですか!一問も進んでいないじゃないですか!」

 

「そりゃ全部分からないからな」

 

「なぜそんなに自慢げなんですか.....一問もわからないというのはどういうわけですか?」

 

「授業中寝てるからな」

 

「大問題じゃないですか!」

 

そ、そこまで怒るとは.....

 

「全く.....ここからは私が一問ずつ見ていきますからやってみましょう」

 

ふっ、これも作戦通りこれでずっと教えててもらえるな。

えっ?最初から聞けよって?そうだなその通りだ。

だがな、そしたら紗夜に迷惑かかるだろ?

....結果的にこっちの方が迷惑かかってるのは分かってるから言うな。

 

「では、まずこの問題ですがこれはですね.....」

 

*****

 

し、死ぬかと思った.....

1時間であれだけのことを詰め込まれるとは.....

でも紗夜教え方うまいな、俺でも理解できるくらいわかりやすく説明してくれたぞ。

 

「では、この問題を解いてみてください」

 

「えーと、これは....剰余の定理を使って....」

 

「そうですね、正解です。そうしたらもうお昼時ですし昼食をとりましょうか」

 

そういえば俺昼飯何も用意してきてない.....

どうするか....

 

「何か準備するので少し待っていてもらえますか?」

 

え?何か作ってくれるってこと?女子が作ってくれるなんて.....小町を除けば初めてのことだな....

本当にいいのだろうか?

 

「わざわざいいのか?」

 

「ええ、気にしないでください。それにその様子だと何も用意してないのでしょう」

 

そこまで見抜かれているならこの際厚意に甘え切ることにしよう。

 

「なら頼む、悪いなわざわざ」

 

「あまり期待はしないでくださいよ?」

 

そう言って紗夜は部屋を出ていった。

 

*****

 

紗夜が部屋を出てからすぐのこと、突然部屋の扉が開いた。

 

「紗夜?早かったな....」

 

紗夜かと思ったのだがそこに立っていたのは....

 

「あたしだよ、八幡君!」

 

「ああ、日菜だったか。悪い間違えて」

 

「気にしないでいーよ、それよりさ....」

 

「ん?なんだ?」

 

「お姉ちゃんとはどんな感じで知り合ったの?」

 

突然何を言いだすんだ?そんなことを知ってどうするつもりだろうか?

 

「別に変わったことはないぞ?たまたま友達とライブ見に行った時にあいつのバンドを見てその中に古い知り合いがいてそれで色々あって話すようになったんだ」

 

「なるほどなるほど.....それじゃあさ!八幡君はお姉ちゃんのことどう思っているの?」

 

「な、何を聞いてんだよ」

 

「いーじゃん、教えてよ〜!」

 

「別に、真面目で優しくていいやつだと思ってるよ.....」

 

本人がいないとはいえこう言うことを言うのはすごい恥ずかしいな.....

 

「ふーん、それじゃあ最後にさ.....」

 

なんだかさっきより幾分真面目っぽい雰囲気になったな。

 

「お姉ちゃん、何かあたしに言ってたりしない?」

 

「どうしてそんなことを聞くんだ?」

 

「一時期さ、あたしとお姉ちゃん、あんまり仲良くなかった時期があったんだよね.....」

 

こないだ紗夜が俺に話してたことか、妹に対するコンプレックス.....

あいつはそれにとても悩んでいた.....

あれから、妹に向き合うと言っていた紗夜はきっと前よりは変わってきたのだろう。

それでも、日菜は不安に思ってしまうのだろう。

また、前のように2人の距離が離れてしまうのではないか....と

 

「あたし、昔から他の人のことが考えれてないってよく言われるの。それでね、パスパレに入ってから他の人の考えっていうのも少しはわかるようになったかな〜って思ってたんだけどね。またお姉ちゃんと前みたいになっちゃわないかなって思うと不安で仕方ないの.....」

 

これが、この明るい少女が人前で見せない顔なのだろうか.....

今、日菜は不安でいっぱいになっている。

なら、俺ができることは、その思いが溢れるその思いを受け止めてやることだけだ。

 

「俺が偉そうに言えることじゃないってのはわかってるんだけどよ.....

お前が思ってる以上にあいつはお前のことを考えてると思う。この際言っちまうけど確かに少し前まであいつはお前とのことで悩んでた。

なんでお前ばっかり....ってな」

 

「やっぱり、あたし....お姉ちゃんを傷つけてたのかな?」

 

「ああ、多分な」

 

今この少女に必要なのはその場しのぎの嘘ではない。

真実を知った上で向き合わせる厳しさ、多分そうだ。

 

「でもな、それ以上にお前のことを....大切に思っている」

 

「そんな悩みを話している時でさえあいつの顔は.....姉の顔だった」

 

自分でももう何を言っているかわからない、でも伝えなければいけない。

 

「ここに来るまで、あいつはお前のことばかり話してたぞ。あいつはあいつなりにお前との関わり方を変えようとしている。あいつの話から聞くとお前は天才肌だろ?だからうまくいかないことをもどかしく思っちまうのかもしれないけど、お前にできるのは紗夜と一緒にゆっくりとでも変わっていくことだ」

 

「お姉ちゃんが....八幡君の...を....きになったのも....なぁ」

 

?何か小声で日菜が言っているがよく聞こえないな?

 

「ありがと!八幡君のおかげで なんかわかった気がする!」

 

もう先ほどまでの怯えた少女はいなかった。

そこにいるのは、名前の通り日の光のような笑顔を浮かべる少女だった......

 

「八幡さん、昼食の準備ができまし....」

 

ちょうどそこに紗夜が戻ってきてしまった....

 

「日菜?八幡さんと何をしているの?」

 

俺は、この顔を知っている....

時折雪ノ下たちが浮かべていた、笑っているのに笑っていない顔だ。

こ、こわい、なぜ女子というのはこの顔を浮かべるとここまでの迫力が出るのだろうか.....

 

「別に、ただ八幡君とおしゃべりしてただけだよ〜」

 

なぜ日菜は俺の方に少しやってきてるんだ?

やめろよ、紗夜の顔がさらに迫力がさらに増してるから.....

 

「なぜ勉強途中の八幡さんに話しかけているのかしら?」

 

「だって休憩中でしょ?だったら問題ないじゃん」

 

なんか2人の間に火花が見えるんだが.....

 

「まぁ実際休憩中だったし、暇してたのも事実だから....」

 

「.....八幡さんがそう言うなら」

 

「それより昼を用意してくれたんだろ?悪いけど腹が減っちまったから早く食べさせてくれないか?」

 

俺は別にそこまで腹は減っていないがこの場の雰囲気を変えねば.....

 

「そうですね、ではリビングまで....」

 

*****

 

その後もいろいろなことがあった。

俺たちと一緒に昼飯を食べることになった日菜と紗夜が俺の正面を争い出したり.....

 

午後から日菜まで勉強会に参加すると言い出して少し紗夜と言い合いをして結局参加することになったり....(その後紗夜の予想通りすぐに飽きていたが)

 

そんなこんなでもうだいぶいい時間になり....

 

「今日は急に悪かったな」

 

「いえ、私も教えながら自分の復習になりましたから」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

「今度は勉強とかじゃなくて普通に遊びにきてね!」

 

「いや、それはハードルが.....」

 

「別に気にしなくてもいーのに」

 

いや、気にするだろ.....

 

「それじゃあ...."またな"」

 

自分で言って気づいたが.....

またな....か。

前ならじゃあなだったのにな.....

俺も変わったのかもな......

 

昼と夜が出会う夕暮れに俺はそんなことを思うのだった.....

 

*****

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

 

「なに、日菜?」

 

「お姉ちゃんはさ、八幡君のことどう思う?」

 

「急にどうしたの?」

 

「いや、ただ気になっただけだよ」

 

「全くもう、本当にあなたは気まぐれね」

 

昼と夜が出会う時間に2人の少女はお互い顔を見合わせ笑いあうのだった。

 

お互いに本当の気持ちをどことなく気づいてはいたがそれが確信に変わるのも....また先の話

 

 




今回はだいぶ早く書き上げることができました。
今回の話もまた感想、評価してくださると嬉しいです。
活動報告のネタ募集もお願いします。


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第21話

なんかこの章前之庄より全然長くなってますねw
でもひとまずこの話で一区切りするつもりです。
それと最近感想をくれる人が多くなってとても励みになっています。
感想くれた人、ありがとうございます!


あ〜テスト終わった〜

この最後のチャイムが鳴った時の開放感といったらもう例えようがないくらい最高だよな。

それに紗夜に勉強教えてもらったおかげかどの教科もいつもより手応えがあるぞ。

数学はそれでも赤点回避くらいだろうが.....

 

とにかくこれで自由だが、特に予定もないのがぼっちの嗜み。

エリートぼっちの俺は余裕で予定がない。

戸塚たちは今日も練習するって言ってたし.....

 

とにかく家に帰るか.....

 

それから俺は帰ってからも暇しているしなんなら明日からまた土日だがそこすら暇だ。

spaceに予約も入れてねーしな。

 

どうやってこの暇を潰そうか.....

なんて思って過ごしていると.....

 

ん?メールがきてるな.....

誰からだっ?

 

するとそこにあったのは日菜の名前だった。

こないだ氷川家での勉強会の時に交換したのだ。

2人とも交換したのだが2人とも俺と2人きりになったタイミングで交換しようと急に言い出したんだよな。

何故だろうか?

それに2人とも行動似てるな、さすが双子。

 

で、日菜のメールの内容は〜

うおっ、なんかめちゃくちゃ文面多いな、ただ大半が要件と関係なさげなんだが.....

 

ってなわけで要約すると.....

 

『土日に仕事のレッスンがあるんだけどさ、八幡君来て見ない?お姉ちゃんから八幡君がギターすごいうまいって褒めてたからさ、あたしたちにもアドバイスしてもらいたいな〜って思ったんだけど。もちろん無理にとは言わないよ〜。事務所の人にも話を通しておくから暇なら来てね〜』

 

そのほかに事務所の場所、時間などが指定されていた。

そしてその後には延々と世間話が続いていた。

目を通して見ると日菜がいかに好奇心の塊かということが伺える。

日常のこと一つ一つを楽しんでるんだなって思う。

 

それにしても土日は完全に暇なんだよな.....

この誘いに乗るべきか....

でも、俺なんかが行って迷惑になったりしないかな?

と思いながらようやく日菜のメールの最後の文にたどり着く。

 

『明日....来てくれると嬉しいな』

 

......行ってみるだけ行ってみるか。

行かないで悩むよりは行ってから後悔した方がまだマシだからな.....

 

それに何より日菜がそれを望んでいるような気がした。

 

*****

 

翌日俺は指定された場所に来ていた。

ちなみに小町には適当に街をうろうろしてくると嘘をついている。

そりゃパスパレのファンの小町には言えねーだろ、パスパレの練習に行ってくるなんて。そうしたら小町も行く〜とか言い出しそうだからな。最近バンドに入って忘れかけているがあいつは受験生なのだから。

連絡先も2人持ってるしな。(しかも片方は小町の推しメン)

それも今更言ったところでずるい!としか言われないだろうしな。

 

「にしても緊張するな.....」

 

こんな緊張してんのいつ以来だろうか.....

ステージに立たなくなってから本当に緊張しがちになってるな.....

だが、ここまで来ていつまでも入り口にいたらマジで通報されそうだしな.....

そうなる前に入ってみるか。

 

建物の中に入ると日菜が話を通してくれてあったためかすぐに部屋の位置も教えてもらえた。

 

それで部屋のドアを開けたのだが.....

 

「まんまるお山に彩りを!まんまるお山に彩りを!」

 

そこには鏡の前で何度もポーズを決めながら同じセリフを言いつづけている丸山の姿があった.....

これは、なんだどう反応するのが正しいんだ?

てか、まだ丸山俺に気づいてない?

 

「まんまるお山にいろど....って八幡君!?なんでいるの!?いつからみてたの!?」

 

焦りすぎだろ....顔真っ赤になってんじゃねーか。

てか日菜、メンバーに伝えてなくてどうするんだよ.....

答える前に部屋に入ると日菜の姿も見えるので多少抗議の視線を送っておくとしよう。

 

「てへっ」的な顔を返すんじゃない!

かわいいな、おい

許してやろう。

俺ちょろすぎるだろ.....

 

「そこにいる"日菜"に呼ばれたからだよ、あと見てたのはお前がポーズとってたとこか...」

 

「わ、わかったからそれ以上は言わなくてもいいから!」

 

恥ずかしいならやってんなよ.....

 

「どうしたの彩ちゃん?ずいぶん騒がしいけれど....って八幡さんもういらしてたのですか?」

 

なんで白鷺は知ってんだよ....

なんで俺が呆れてると....

 

「おはようございます!八幡さん!」

 

「あ、おはようございます」

 

若宮と大和も来たな、そしてこの2人も俺のことを知っているとなると....

 

「"日菜"、お前がわざと丸山に教えなかっただろ」

 

「そ、そんなことあるわけないじゃん」

 

これは図星だな。

 

「大方急に来た俺に驚いた丸山の反応を楽しむ気でいたんだろ?」

 

「そうなの、日菜ちゃん?」

 

白鷺からも聞かれたらもうこいつも自白するだろ。

 

「やっぱバレちゃったか〜」

 

自白はしたけど反省はしてないなこれ。

 

「本当だったの!?ひどいよー」

 

この反応を見たらまあ日菜がいじりたがるのもわからんでもないがな。

 

「まさか八幡さんギターが弾けるなんて....少し意外ですね」

 

おい、大和意外は酷いだろ.....

 

「忍として世に溶け込むためのその努力....ブシドーです!」

 

いや、ごめん若宮ブシドー関係ないから....

ていうか忍なのだとしたら武士ではないからブシドーって言ったらダメじゃね?

ああああああなんだこのバンド突っ込むところが多すぎるだろ!

俺普段ツッコミ役じゃないからな!

つか、自分の中でもツッコンでんじゃねーよ俺!

 

「ほらほらみんな、八幡さんも困っているし練習を始めるわよ」

 

ほっ、白鷺はこっちサイドか.....

 

「その前にさ、1ついいかな千聖ちゃん?」

 

「どうしたの日菜ちゃん?」

 

「まだ私たちって八幡君のギター聞いたことないじゃん?だから最初に聞いてみたくない?」

 

日菜のやつ何言い出してんの?

そんなことする必要もないしきっと他のメンバーが止めてくれるはず....

 

「たしかにジブンも興味あります!」

 

「私も聞いてみたいですっ!」

 

「私も聞いてみたいかも....」

 

あ、そういえばこいつらこういう奴らだったわ.....

 

「全く....みんながそう言うなら」

 

頼りの綱の白鷺まで.....

 

「...少しだけだぞ」

 

ここまで来て断ることもできやしないだろ.....

 

「お姉ちゃんは八幡君のこと天才って言ってたから楽しみだな〜」

 

紗夜勝手にハードル上げんな。

 

はぁ、まぁ人前で弾くのはもう慣れてるからいいんだけどさ.....

 

「んじゃいくぞ」

 

*****

 

「すご....」

 

「すごいです.....」

 

日菜と若宮は静かになってまったな。

 

「すごいですっ!ジブン感動しました!」

 

打って変わってこいつはすごいテンション上がってんな.....

 

「.....」

 

白鷺は無言だが、驚いたような表情をしているな.....

俺がギター弾けるのはそんなに意外なことなのだろうか?

 

というか丸山は....

 

「.....」

 

なんか顔赤くして無言なんだが.....

何なんか俺が演奏してて気分悪くしちゃったの?

 

「八幡君本当にギター上手いんだね!あたしもそこそこ自信あったんだけどな〜」

 

そりゃこいつも姉から天才って称されてるからな。

自信くらい多少はあるだろ。

 

「私も驚いてしまったわ.....」

 

「ジブンもここまでのギターを聞いたのは初めてかもしれないです....」

 

「本当にカッコ良かったです!」

 

「うん、本当にそうだったよ!」

 

ようやく丸山が喋ったな。

 

それよりも....

何度褒められても慣れないな.....

なんか恥ずい....

 

「さぁ、それじゃあ八幡さんの演奏も聞かせてもらったし今度こそ練習を始めましょうか」

 

「「「「はい!(うん!)」」」」

 

さてこれでようやく練習が始まるか.....

 

*****

 

それから練習は数時間にわたって続けられた。

俺は練習を見ていたが実際俺のいたバンドとは感じが全く違うためそこまでのアドバイスはできなかったのだが.....

 

「ふーお疲れ様〜どうだった八幡君?」

 

「いや、なんかあれだな華やかなステージに立ってるお前らの努力がよく分かったわ」

 

「そう言ってもらえるととても嬉しいです!」

 

「そうね、頑張っている甲斐があるわね」

 

「ああ、俺にとってもいい刺激になった。サンキューな」

 

「また良かったら来てよ〜」

 

「機会があったらな」

 

そんな感じでみんな練習のスタジオから出て行く、俺も出ようとしたがそこで気づいた。

 

丸山だけは残ってまだ練習しているのだ。

 

「....無理はするなよ」

 

「うわぁ!八幡君!?まだいたの!?」

 

毎回このリアクションでこいつ疲れたりしないのか?

 

「いや、残って練習なんて偉いなとか柄にもなく思っただけだ」

 

「だって私は不器用だから....みんなより練習しないと」

 

なるほど.....なんか1つわかったな。

 

「ねぇ、八幡君私たまに不安なるんだ。本当に自分はアイドルとしてみんなに夢や希望を届けられてるのかなって....」

 

華やかなステージの上でそんな迷いは感じられないがやはりこいつも1人の少女悩みだって当然あるだろうな。

 

「さあな、俺にはわからん」

 

「そうだよね....ごめんこんなこと急に言って」

 

「.....だけどな、俺の妹や俺の学校のやつらはみんなお前らのファンだ。お前らがテレビに出るたびにその話題が必ず出てるし、お前らの曲に励まされたって話だった聞いてる。少なくとも、それは事実じゃねーの?」

 

「....ありがとう、じゃあもう1つ聞いてもいいかな?」

 

「なんだ?」

 

「八幡君は私のことどう思ってる?よく私たちのことを知らない八幡君からは私はどう見えているの?」

 

たしかに知らないこそ見えることだってあるには違いない、だがそれを俺に聞いてくるか?

でも、答えてやれるのも俺くらいしかいないか.....

 

「そうだな、不器用でよくミスもしてらおっちょこちょいなやつ」

 

「やっぱりそう見えるんだ.....」

 

「でも、すごい一生懸命で見てると自分も頑張ろうって失敗しても諦めないようにしようってそう思わさせてくれる、俺はそう思ってるよ」

 

「ううっ....」

 

あれ?フォローできてなかったか?もしかしてから俺が泣かせた?

 

「悪い、なんか変なこと言ったか?」

 

「違う、違うよ....嬉しくて.....ありがとう、本当にありがとう〜!」

 

涙脆っ!そんなことだけで泣けるのこいつ!

どんだけ純粋だよ.....

でも、そんだけまっすぐなやつだから...アイドルなんだろうな。

 

「いつまでも泣いてんなよ、笑ってる方がいいだろアイドルさん」

 

「うん....ごめん本当はこんな泣き虫なところも直さないといけないんだけどね.....」

 

「ま、いいんじゃねーの?そんな簡単に直せるなら多分誰も悩みなんて抱えねーよ」

 

「八幡君と話してたらなんか大丈夫って思えたよ」

 

「タイプは違うけど....お前に似てるやつを知ってるんだよ」

 

誰よりも優しく誰よりも周りを見て、誰よりも努力していたそんなやつをな。

 

「そうなんだ....ところでさ、八幡君1つお願いがあるんだけど.....」

 

「俺が聞ける範囲なら」

 

「私のこと、名前で呼んでもらえたりしないかな?」

 

「わるい、無理」

 

「即答!?日菜ちゃんのことは名前で呼んでるのに〜」

 

「いや、それはあいつの姉と呼び分けるためであって.....」

 

それを言われると弱いんだが.....

 

「じゃあ私のことも呼んだっていいでしょ?」

 

「わかったよ....彩」

 

途端に彩の顔が真っ赤になる。

 

「お、思ってたよりも恥ずかしいかも.....」

 

「ならやめるか?」

 

俺としても恥ずいからやめれるなら戻したいところ.....

 

「いや、このままでいいよ」

 

あらこんなところは意思が硬い。

 

「...だって日菜ちゃんだけ名前呼びなんてずるいもん....」

 

「なんか言ったか?」

 

「なんでもないよ!」

 

うおっ急に大きな声出すなよびっくりしたな.....

 

「それより私ももう行くね!」

 

そう言って彩もスタジオを出ていくのだった.....

 

全く最後のはなんだったんだ?

とにかく俺ももう帰るか.....

 

こうして俺の騒がしい1日は終わった。

余談だはあるがその後夜パスパレメンバーが出てるテレビを小町と一緒に見たときに俺がうっかり彩と日菜の名前を呼んでしまって小町に小一時間ほど問い詰められる羽目になった。

 

今回俺がパスパレと関わって学んだこと、それは

 

間違って人の名前を呼ばないようにすることだ.....




これでパスパレメインの話は一旦終了です。
次はおそらく設定集になりますかね。
よければ感想、評価等お願いします!


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設定4

夏休み編までに全員と合わせたいので今回はキャラ数多くなるかもです。


美竹蘭

 

性格は原作通りより少し素直くらい。

ライブハウスで八幡と出会いその後色々な場所で会うことになる。

八幡は後輩であるためかそこそこいじったりする。

本人は嫌がってる風に見えるが実は割と楽しんでる。

八幡のことはいい先輩くらいの印象

 

上原ひまり

 

性格は原作通り。

蘭同様ライブハウスで八幡と会う。(アフグロとは全員同じ出会い方なので以下略)

蘭と同様かそれ以上に八幡にいじられる存在となる。

結衣と仲良くなりリサ、彩たちと出かけたりすることもあるらしい。

八幡の周りの女子事情を邪推している。

 

青葉モカ

 

性格は原作通り。

八幡のこともふつうにからかっていく。

だが、たまに八幡に甘えたくなる時もあるよう。

本人曰く八幡は恋愛対象には入らないとのこと、理由はなんとなくそんな相手じゃないくらいの感覚。

八幡のことはお兄ちゃんみたいな感じに思っているらしい。

 

宇田川巴

 

性格は原作通り。

八幡のことはあこから聞いていた。

あこと仲良くしてくれてありがたいと思っている。

八幡はあまり先輩って感じがしないらしい。

 

羽沢つぐみ

 

性格は原作通り。

八幡がバンドから抜ける前に羽沢珈琲店に雪ノ下たちと訪れたことが何回かありつぐみはそのときのことを覚えていた。

八幡と知り合ってからは八幡もちょくちょく店に行くようになる。

自分に優しくしてくれる八幡に好意を持つように.....

 

 

 

弦巻こころ

 

性格は原作通りだがもう少し常識があるくらい。

八幡とは花音を経由して知り合う。

八幡からは少し面倒だけどなんだかんだ言っていると楽しいやつくらいの感覚。

しかし例外なく変人だという認定はされている。

 

 

北沢はぐみ

 

性格は原作通り。

八幡はこころと薫とはぐみの行動にちょくちょく振り回されることになる。

それでも付き合いの良さから八幡のことは頼りにしている様子。

 

瀬田薫

 

性格は原作通り。

八幡にも最初男と勘違いされた。

普段は変人的な面も目立つが、時折名言を残す。

口癖の「つまり....そういうことさ」は八幡も使うようになる。

八幡は割と頼りにしていたり.....

 

松原花音

 

性格は原作通り。

迷子になっているところを八幡に助けられる。

その後ハロハピと八幡が知り合っていくきっかけとなる。

その後も八幡に助けられたりアドバイスをもらったりしていく中で好意を抱く。

 

奥沢美咲

 

性格は原作通り。

八幡曰くあそこまでの苦労人はなかなか見ないとのこと。

八幡に対しては苦労をわかってくれる人と思っている。

ミッシェルに対してもなんだかんだ言いつつ相当な愛着を持っている。

 




今回は一気に2つのバンドを出します。
個人的にこの2つのバンドは少し描くのが難しいです。
(特にハロハピ)
それと今更すぎるのですがこの設定は割とすぐ崩れたりしますがご了承ください。
これからの展開に対する要望なども聞いていますので、活動報告や感想までお願いします。


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第22話

今回はアフグロとの出会い編です。

新しく感想、評価くださった方ありがとうございました!
それとお気に入り300突破しました!
登録してくれた人ありがとうございます!


期末テストも終わり、パスパレとの一件が終わった後は特に変わったこともなく平和に過ごしていた。

例えば戸塚たちのバンドの様子を見に行ったり。

(小町にまだダメと追い出された)

商店街歩いてる時に日菜に会ってそのまま一日中買い物に付き合わされたり.....

 

あれ?あんま平和じゃなくね?

 

そんな感じで過ごしていたのだがそんな日々が長く続くわけがなかった.....

 

『八幡先輩!今度の週末空いてますか?空いてたら有咲の家の蔵まで来てくれませんか!』

 

この戸山のメールによって俺の平穏な日々終わりを告げた.....

 

個人的にだが戸山がこういうことを俺に言ってくるときは大抵何か面倒ごとに巻き込まれる。

 

かといって予定が何もないのは小町に聞けばすぐにバレちまうし.....

断れもしないとかマジで世の中理不尽、その世の中で働くのは辛い、よって俺は働かない。

よしQ.E.D。

 

はぁ、仕方ないから

 

『わかった』

 

とだけ返信しとくか.....

 

あまり面倒なことではないといいのだが.....

 

*****

 

戸山のメールからすぐに週末となり俺は今市ヶ谷の家の蔵の前にいる。

 

なんか、ここに来るのも久しぶりだな、そもそもそんな来たことないけど。

 

「とっとと終わらせるか.....」

 

俺はそう呟いてからに入っていくのだった。

 

「あ、八幡先輩!しっかり来てくれたんですね!」

 

おい戸山、お前俺をなんだと思ってるんだ。

一応人との約束だけは守るぞ、俺は。

破られた回数は数えきれないけどな.....

 

「わわっ、八幡君目が濁ってきてるよ?」

 

おっと危ない危ない、最近ようやく治りかけてきてるんだから気をつけないと.....

りみに悪影響与えたらゆり先輩にどんな目にあわされるかわからないしな....

 

「でも、前ならひとしきり嫌がってからだったよね」

 

花園まで俺をなんだと思ってんだ、それはその通りだよ。

 

「まぁまぁみんなそろそろ先輩が困ってるから....」

 

山吹が流れを修正しようとする。

今までの市ヶ谷の負担はだいぶ軽減されたな、これは。

こういう意味でもやはり山吹はこのバンドに入って正解だったな。

 

「で、何の用で俺を呼んだんだ?」

 

「あ、それなんですけど聞いてくださいよ先輩!」

 

「ちょっと待った、ストップ!」

 

「なに?有咲どうかしたの?」

 

「お前が話すとまとまらなくて伝わらねーから」

 

訂正、やはり市ヶ谷は苦労人だ。

でも、なんていうかこいつらのやり取りは見てて面白いっていうか、安心感があるというか....

 

「そんなことないよ!」

 

「いや、あるだろ.....」

 

「先輩まで〜」

 

てか、結局話進んでねーじゃねーか。

 

「ほらほら香澄も有咲も早く話を始めよう」

 

「おたえがツッコミ!?」

 

いや、戸山も驚いてるけどこいつがツッコミするのとかマジでだいぶすごい奇跡じゃないか?

これは割とマジな相談なのかもしれないな......

 

「....それじゃ聞かせてくれ」

 

「はい、実はこないだ私たちspaceのオーデションに行ったんです」

 

「でも、オーナーに不合格って言われちゃって....」

 

戸山の言葉に花園が続ける。

この時点でもう大体わかってきたが.....

 

「それで、あのステージに立ったことのある八幡君になんでダメだったのか聞きたいと思って.....」

 

やっぱりな.....

 

「....話は大体わかった」

 

「じゃあ、どこがダメなのかまずは私たちの演奏を....」

 

山吹はそういうが、俺にそのつもりはない。

 

「いや、大丈夫だ」

 

「な、なんでですか?」

 

理由もなくそう言われたら市ヶ谷の疑問ももっともなものだ。

だがそれはそうする必要すらないからだ。

 

「....理由ならもうあのババァから聞いてるだろ」

 

あのババァはなんの理由もなく不合格にしたりしない。

最後に必ず不合格になった理由を言うはずだ。

その理由以上のことはないし、それ以上のこともない。

だから俺が言うことはない。

 

「たしかに....言われました。けど!」

 

「悪いが俺はあのババァの意見が間違ってたところを見たことがない。俺にババァ以上のアドバイスはできない....」

 

花園の言葉を遮り俺は言う。

これは突き放してると言われても仕方ないし、事実そうだ。

だがそれは自分たちで乗り越えなきゃいけないことだともう俺は知っている。

 

「1つだけ、1つだけなら言っといてやる。あのステージはそう簡単には立てない。だからこそ立った時に俺はすげー楽しかった」

 

この一言だけでいい、この一言だけで頑張る理由くらいにはなるのだ。

 

そのまま振り返ることなく俺はからの外に出る。

 

「頑張れよ....」

 

いつか必ずspaceのステージに立つであろう少女たちの手伝いをする魔法使いはいない。

だが彼女たちはいつか自分たちだけのドレスを着てステージの上から魔法をかけてくれるだろう.....

 

*****

 

あのポピパのことがあって次の日の夜、俺はspaceに来ていた。

理由は単純でただ単にここのライブに来たくなったからだ。

今日はアブアルもRoseliaも出てないようだ。

 

あ、ちなみに1人で来てます......

 

「ねぇこのAfter glowって知ってる?」

 

「勿論だよ!最近spaceですごい人気じゃん!」

 

へーそんなバンドが出来てたのか.....

興味あるな....

 

だがまだ始まるまでに時間あるしもうすこしうろついてくるか.....

人混みも嫌いだし....

 

 

そんなこんなでうろつき始めるとすぐ何やら様子の変な少女を見つける。

 

「どこに落としちゃったかな....。あれを落としちゃうなんて....」

 

なんか最近丸山といいあんな風な子によく会うな.....

 

「探し物ですか?」

 

「うわぁ!びっくりしたぁ....」

 

なんか最近こんなリアクションばっか取られてるな....

俺そんなに存在感無い?

 

「すいません、何か探しているのかと思って....」

 

なんとなくこの子は年下な気がするが一応のことを考えて敬語で話しといたほうがいいな.....

 

「はい、実は大切なものをなくしてしまって.....」

 

「よければ手伝いましょうか?」

 

「いいんですか?」

 

「見たところこれからここで演奏するのでしょう?なら早く探さないとお客を待たせるのはダメだとここのオーナーは言いますよ」

 

あのオーナー時間の融通きかないからなぁ.....

 

「ならお願いしてもいいですか、小さい人形なんですけど.....」

 

「じゃあ俺はあっちを探してみます」

 

「はい、お願いします」

 

あんだけ一生懸命探してるんだ大切なものなんだろう。

それがわかっている分見つけてやらないとな.....

 

 

*****

 

その後探すこと5分、俺はある珍妙な人形を見つけていた。

だが、なんというか....これは人目につかないところに置いておくようなものな気がする....

まさか、これじゃ無いよな?

 

と思ったが念には念を入れて確認だけはしておこう、うん念のため。

 

その後少女を見つけ人形を見せる。

 

「もしかしてだけどこれのこと?」

 

「あ!そうです!その人形です!」

 

マジで?本当にこれなの?間違ってて欲しかった.....

美少女がその人形を持って喜んでいる絵はなかなかにシュールだった.....

 

「これ、バンドの仲間が作ってくれたものなんです!なくした時はどうしようかと思って.....」

 

それなら大切な理由も分かるな、あの人形であっても。

 

「見つかってよかったな」

 

「はい!」

 

「ってすいませんついタメ語で話しちゃって....」

 

ほんと普段敬語とか使わないからすぐに素が出ちまうな.....

 

「いえ、全然構いませんよ。だって私高校1年ですから私より年上ですよね?」

 

なんで断定できるんだ?

まぁ聞いても仕方ないしいいか。

 

「今度よければ羽沢珈琲店に来てください!お礼にすこしサービスしますよ!」

 

「へー商店街にある店だよな?今度また行かせてもらうよ。それよりもう時間だから行ったほうがいいんじゃないか?」

 

「あ!本当だ!じゃあ私行きますね。本当にありがとうございました!」

 

なんというか慌ただしい子だけどこのあとステージに出てくるのか。

どのバンドなんだろうな?

 

*****

 

その質問の答えはまたすぐにでた。

 

「今からこの会場の熱すべてあたしたちのモノにする、見逃さないでついてきて!いくよ!」

 

もう3回目だから八幡驚かない。

と言いつつやっぱりすこし驚いているがさっきの子はライブが始まる前に話題になっていたAfter glowのキーボードだった。

なるほどなんだか、すごい胸に響いてくるバンドだな.....

 

なんというか、俺たちが抱えるような気持ちを歌にしてくれているっていうか.....

 

これはRoseliaとかともいい勝負してるんじゃないか?

とか言ったらどちらのバンドからも怒られそうだからやめておくが.....

 

この演奏聞けただけで来てよかったって思ったな。

 

...やっぱ俺もステージ立ちてーな。

 

今は無理だけどこの熱もお前らのモノにしてくれるか?

 

そんな願いも込めて俺はただひたすらにステージに釘付けになっていたのだった.....

 




今回はここまでです。
今回はアフグロのつぐみちゃんと出会わせています、これから全員との出会いも書いていきます。

それとリアルの都合でまた投稿頻度が落ちてしまいますが、気長に待ってください。

感想、評価、要望等よければしてください。


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番外編2

今回は唐突にネタが思い浮かんだので番外編です。
すいません、本編のネタが考えつかなかったとも言います.....



俺は暇すぎて今日ブラブラと商店街を歩いている。

え?聞いてないって?そんなこと言うなよ。

本当に暇なんだから。

 

「でもマジですることないな.....」

 

商店街に来たが特に用もなく結局家にいた時と何も変わらない。

えー俺こんな暇な日なんだか久しぶりすぎてどう過ごせばいいか分かんないだけど......

俺はいつの間に社畜に.....

 

これも戸山と出会ってからのこと.....

....なんだかんだ楽しかったからいいんだけどな。

 

俺がそんな風なだいぶ恥ずいこと考えていると不意に.....

 

「あ!八幡君!」

 

えーとこの声は....

 

「やっぱ日菜か」

 

「うん!それで八幡君はどうしてこんなところにいるの?何か用事でもあるの?」

 

「いや、そのなんと言うか....」

 

ただ暇って言えばいい話なのだがなんかそれは俺が寂しいやつみたいでなんとなく言えない.....

 

「ん?もしかして暇なの?」

 

ぐはっ!さすが天才.....

あっさり俺の事情を見抜きやがった.....

 

「あ、ああ特にやることがないからな。それでなんかしようと商店街に....」

 

「ならあたしと一緒に遊ぼうよ!」

 

「もしかしてだが、お前も....」

 

「うん、暇だよ」

 

.....お前もかい、なるほどだからこんなぼっちの俺に話しかけてきたのか。

 

「本当はおねーちゃんと遊びたかったんだけどお姉ちゃんバンドの練習だからって....」

 

なんか、想像がめちゃくちゃ簡単に着くんだが.....

 

紗夜に必死にしがみつく日菜の姿が.....

 

でもどうせ暇だし断る理由もないんだが....

そうなるとこれってあれだろ?

ほら、男女が2人で遊びまわるのって言うのわ....

で、デートってやつじゃないのか.....

 

いきなりそんなことは....ハードルが....

 

「で、どうするの八幡君?無理にとは言わないよ〜?」

 

いや、こんな美少女とデートできるとかご褒美でしかないが誰かに見られたら日菜が困るのでは.....?

 

「他の人たちに見られたりしても大丈夫なのか?お前アイドルだし.....」

 

「別に問題ないよ〜。それに....八幡君とならそんな噂立てられてもいいし.....」

 

後半はなんかよく聞こえなかったが.....

まぁ本人が大丈夫って言ってるし大丈夫か?

 

「じゃあ、よければ.....」

 

俺がそう言うとその瞬間に日菜は満面の笑みを浮かべる。

 

「やったー!じゃあ早く行こーよ!」

 

そう言いつつ日菜は俺の手を引いて歩き出す。

その瞬間に不覚にもドキッとしてしまった。

 

「お、おう」

 

が、それを極力悟らせないようにして俺は日菜に引かれるままにして歩き出すのだった。

 

*****

 

まず最初に俺たちはショッピングモールを訪れた。

 

「どの店から見ていく?」

 

「そうだな〜?まずは服から見てみようよ。八幡君の服も選んであげようか?」

 

なんかそれは怖い気がする、とてつもなく俺で遊びだしそうな気がする.....

 

「いや、特に服は今必要ないから....」

 

「そっかー、ならあたしの服選びに付き合ってね?」

 

「あんま大層なことはできないからな?」

 

「そんな難しいことは頼まないって〜」

 

こいつの空気感はいつも楽しげでこっちまで楽しかなってしまうような感じだ。

俺とは正反対だな....

 

そんなこと考えながら俺は日菜を待っていた。

なぜかって?

考えてやれよ、試着室入っていったんだよ。

 

その後少し待つと日菜が出てくる。

 

「どう似合ってる?」

 

正直に言おう、めちゃくちゃ可愛い。

だけど、なんて言うんだこういうのって付き合ってもないやつが褒めたりしていいのだろうか?

 

「聞いてるの?八幡君?」

 

「あ、ああよく似合ってると思うぞ」

 

日菜が少し不機嫌そうに聞いてくるのでつい普通に褒めてしまった.....

 

「ほんと!?じゃああと何着か試着するからまた感想教えて!」

 

そう言うと日菜はまた試着室に入っていく。

てか、こういうのって普通聞いた側が照れたりするものじゃないのか?

そんなことを思いながらも俺は日菜の次の格好を楽しみに待つのだった。

 

*****

 

それからも日菜は何着か試着をして結局その中から数着を買って店を後にした。

ちなみに荷物は俺が持っている。

 

「八幡君は優しいね」

 

「いや、小町に...妹にそうするように言われ続けられたからな....」

 

小町曰く、そうした方がポイントが高いのだそう。

 

「それでも、ありがとね!」

 

素直なのは美徳だよね、ふとそんなことを思った。

そして、気がつくとそこそこ昼飯どきになってきた。

 

「もうそろそろ昼にするか?」

 

「そうだね」

 

こうして俺と日菜は昼食を取ることになった。

 

*****

 

俺たち2人が来たのは全国チェーンのハンバーガー店だ。

せっかくだしもうすこしおしゃれな店にでも行こうかとも思ったが特になんでも日菜曰く面白いものが見られるとのこと。

 

「いらっしゃいませ〜!!」

 

ん?なんかこの店員の声聞いたことある.....?

 

「やっほー彩ちゃん」

 

「日菜ちゃんまた来てくれたの?ありがとうね。でもこの時間帯は忙しからこの前みたいなことはしないでね?」

 

何したんだよ....

 

「わかってるって、今日は1人じゃないし」

 

「え?誰かと一緒なの?」

 

「うん、ていうかあたしの後ろにいるよ?」

 

「え、あ、は、八幡君!?な、なんで日菜ちゃんと一緒に....」

 

確かにめちゃくちゃ慌てふためいて面白いがこれでこいつ大丈夫なのか?

 

「ほらほら〜他の人に迷惑かからないように早く注文させてよ〜」

 

な、なんか日菜遊んでないか?

 

「ううっ、それではご注文はいかがいたちますか....」

 

噛んだな

 

「噛んだね」

 

「ううっまたやっちゃったー!」

 

こいつのこういうところはもはや才能の域に達してるというのがよくわかった。

 

*****

 

注文は結局そこそこな時間がかかってしまい後ろには少し列ができていた。

その人たちに申し訳なさを感じながらも俺と日菜は空いてる席を見つけて座る。

 

「そういえば結局テストはどうだったの〜?」

 

「ん?ああ紗夜のおかげでいつもよりいい成績だったぞ」

 

「ふーん、おねーちゃんだけ?」

 

なんかプレッシャーを感じる.....

いやな、日菜も教えてくれたには教えてくれたのだが.....

その説明は俺には高度すぎるというか....

はっきり言って何を言ってるのかさえわからないくらいに教え方はヘタだった。

 

「ひ、日菜もありがとうな」

 

「うん!どーいたしまして!」

 

それでもやっぱりお礼くらいは言っといた方がいいよな、日菜の機嫌をとるためにも.....

 

「日菜はどうだったんだ?」

 

「あたしはいつも通りだったよ」

 

ちなみにこいつのいつも通りは学年トップクラスらしい。

これは紗夜からの情報、勉強さえやらなくてもできるとか羨ましすぎる.....

 

「そんなことより聞いてよ!」

 

「ん、なんだ?」

 

こんな感じで俺と日菜はゆっくりとおしゃべりしながら昼食を済ませるのだった....

 

*****

 

昼食を済ませると俺たちは次の目的地を決め始めたのだが......

 

「どうする?どこか行きたいところはあるか?」

 

「ん〜?八幡君は?」

 

と、特にやることもなかった2人、行きたい場所なども互いにない。

このままだと最初と特に変わらないな、マジでどうしよう?

 

「とりあえずぶらぶらしてみる?」

 

「そうだな、気になった所に寄ればいいか」

 

こうして俺たちは商店街をぶらぶらし始めたのだが.....

 

「あっ!あのお店に行ってみようよ!」

 

「あ、ああ」

 

「次はあっちのお店に〜」

 

「お、おう」

 

「あ!あのお店もるんっ!って来た!」

 

「わ、わかった」

 

なぜだ?なぜ俺たちはほとんど進んでいないんだ?

どんどん新しい店に入っていくからなのか?

いや、きっと妖怪のせいだな。

うん、そうだな。

 

ていうか日菜の持ってる荷物が増えてきてるな....

あのペースで店に入っていれば当たり前か.....

 

「荷物、持ってやろうか?」

 

「え?いいよ〜あたしが買ったものだし」

 

「いや、俺手ぶらだから気にすんな」

 

「優しいんだね〜」

 

そう言いつつ荷物を半分くらい俺に渡してくる。

全部持ってやるのにな。

 

でももう結構いい時間だな

次のところで最後くらいだろうか.....

 

「あ、八幡君!次あそこに行こうよ!」

 

そう言って日菜が指をさしたのはゲームセンターだった。

 

「でも時間的にあそこが最後だな」

 

「わかったよ〜」

 

俺と日菜は並んでゲームセンターに向かうのだった.....

 

「ねーねーまずはあれやろーよ」

 

「ん?エアホッケー?いいけど.....」

 

「やったー!それじゃあさ負けたらジュース一本奢るっていうのはどう?」

 

「罰ゲームか....まぁいいぞ」

 

ほんとに子供みたいだな.....

仕方ない、ここはひとつ勝たせてやるとするか.....

そう思いながら俺は100円を入れた。

 

 

 

.....のだが結果を言おう。

 

15対0だ。

どちらが0かって?

俺だ.....

 

「あはは〜八幡君よわ〜い」

 

「いや、お前が強すぎるだけだろ.....」

 

ほんとにこいつなんなの?

逆にできないことがなんなの?

 

「お前ほんとになんでもできるよな.....逆にできないこととかあんのか?」

 

「そりゃあるよ〜、彩ちゃんみたいに一生懸命にできないし、麻弥ちゃんみたいに機材に詳しくもないし、千聖ちゃんみたいに周りを見れたりもしないし、イヴちゃんみたいにいろんなことに挑戦したりもできないよ」

 

俺はこいつのことを誤解してたな.....

てっきりこいつはまるっきり他人のことが理解できないのかと思ってたんだが....

 

なんだよ、ちゃんと周りに信用して理解しようとしてるんだな。

 

「パスパレのみんなはね、あたしにいろんなことを教えてくれたんだよ!」

 

「大切にしろよ、そんな仲間に出会えることなんてそうなんどもあることじゃないからな」

 

「八幡君が言うと説得力がないよ〜」

 

前言撤回だ、こいつはまだ人の気持ちを考えれてないわ

 

「俺にだって友達の1人くらいはいるから、多分」

 

「そこ多分つくのおかしくない....」

 

日菜のこの表情は初めて見たな。

できれば女子にこの表情はされたくないけど.....

 

「べ、別にいいだろ」

 

「.....もし寂しいならあたしがなってあげるよ?」

 

......なんか今日のこいつはたびたび俺をドキッとさせてくるな。

しかも、友達って入れろよ.....

俺以外なら勘違いしてるまでにある。

 

「寂しかねーから大丈夫だ、でももしどうしてもって言うならなってもらってやるよ.....」

 

我ながらほんとに下手くそなコミュニケーションだな.....

 

「ふふっ、なら八幡君のために今は友達になってもらってあげるよ」

 

な、なんか含みのある言い方っていうか期限付きなの!?

だって今はって言ったよ!?

何それ怖いって、なら大丈夫だって.....

 

「それじゃあさ八幡君、最後にプリクラ撮らない?」

 

え?今こいつなんて言ったんだ?プリクラ?それはもしやあの噂に聞くリア充御用達のあの四角い機械のことか。

 

俺は今まで縁がなさすぎて撮ったことないからぶっちゃけ少し興味があるけど.....

 

2人で撮ったらなんかそのほんとにデートっぽいし.....

 

「早く早くー!」

 

な!?もうあんなとこまで.....

仕方ない俺もこの際素直になるか....

 

「ちょっと待てよ!」

 

俺はそういい日菜を追いかけた。

 

「じゃあ早速撮ろうよ〜」

 

「俺初めてで勝手がわからないからとりあえず任せたわ」

 

「やっぱり初めてだったんだ〜」

 

だからやっぱりとか言うなよ.....

 

とか思ってる間に日菜はもう撮る準備を進め終わったようで....

 

「ほらほらもう始まるよ!」

 

「お、おう」

 

俺は噂でしか聞いたことがないがあれだろ?

プリクラって機械からいろんな指令がきてそれをこなしながら撮るんだろ?

 

『まずは彼氏さんが後ろから彼女を抱きしめて〜』

 

は?え?ちょままちょっと待って?今この機械なんて言ったの?

なんでそんな指令がくんの?

え?これカップルがやるやつじゃないの?

 

「な、なんでこんなこと指示してくるんだよ?」

 

「そりゃカップルのモードで始めたしね」

 

は?今この子なんて言った?カップルモードで撮り始めた?

なんでそんなことしたの?

 

「こんな恥ずいことやれるわけないだろ.....」

 

「え〜一回くらいいいじゃん、後の指示は...やんなくてもいいからさ」

 

そう言うが恥ずかしいものは恥ずかしいし.....

 

「じゃあもしやってくれなかったら大声で人を呼んでみようかな〜」

 

こ、こいつ考えられる限りでもかなり面倒くさい脅しをしてきやがった....

断ったらガチでやりそうなんだけど、え?やるしかないの?

 

「....この一回だけだぞ」

 

瞬間日菜の顔がほのかに赤くなる。

なんだよ、お前も恥ずいならやるなよ.....

 

「じゃ、じゃあいくぞ」

 

「う、うん」

 

俺は日菜を後ろから軽く抱くようにする。

こうしてみるとこいつが本当に女の子であるのがわかるっていうか....

ドキドキが止まんねぇ.....

これ絶対今俺顔真っ赤になってるな.....

 

その後の指示はより恥ずいようなこともあったがそれは約束通り普通に撮らせてくれた。

 

その後加工の時には日菜は俺を近寄らせてくれなかった.....

なんだよ、ちょっとやってみたかったのに.....

 

「できたよ〜、はい!これ八幡君のぶん」

 

「おお、サンキュ」

 

そう言って俺は受け取り無くさないうちにとりあえず財布の中にしまう。

もしこんなの落としたら俺も日菜も終わりだからな.....

 

俺はこのプリクラを絶対に他の人に見せないと決めた.....

 

*****

 

あの後ゲームセンターを出た後俺は日菜を家の前まで送っていくことにした。

そこそこ暗くなってきてたし荷物も多かったしな

話してると日菜の家はもうすぐそこになっていた。

 

「八幡君のおかげで今日は楽しく過ごせたよ〜。ありがとね!」

 

「俺も暇だったし気にすんな」

 

「またいつか一緒に遊ぼうね!」

 

「いつかな」

 

「じゃバイバーイ!」

 

「おう、じゃあな」

 

日菜が家に入るのを見届けてから俺も家に帰り始めた。

 

*****

 

その夜のこと俺は自室で今日のことを思い出していた。

 

「そういや、日菜とのプリクラまだよく確認してなかったな....」

 

確か、財布の中にっと.....

 

ああ、あったあった。

 

そして見て俺は新たな発見をする。

 

「ほんとに恥ずかしいなら....やるなよな」

 

あの後ろから抱きしめていたプリクラに写っていたのは顔を真っ赤にした俺と同じくらいに顔が赤い日菜の顔であった.....

 

後日クラスメイトに日菜といるところを見られていて雪ノ下たちに問い詰められることになったのはまた別の話......




今回は日菜ちゃんメインの回でした。
またこんな感じで何人か1人ずつデートさせていく予定です。
気長に自分の推しキャラの番が来るのを待っていてください。

感想、評価、要望等お待ちしてます。


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第23話

皆さんはドリフェスどうでしたか?
2周年のドリフェス神引きしてる人多くないですか?
自分も50連で★4が5人出てくれて満足です!
(フェス限こころん、期間限定紗夜さんが特に嬉しかったです!)


アフグロのライブを見てから数日俺は学校の後にライブハウスに来ていた。

普段は休日に来ることが多いのだがこないだのライブで俺も刺激を受けたからな。

らしくないがすぐにでも思い切り弾きたくなったのだ。

 

我ながら単純な思考回路だな.....

そう思いながらも結局いつもより少し長めに弾いてからスタジオを出ると.....

 

「あ....」

 

そこにいたのはこないだの落し物を探していた少女だった。

アフグロも練習していたのだろうか?

 

「いや〜今日も疲れたな〜」

 

あの子は確か....ドラムの子だよな?

ずいぶん男前そうな子だよな.....

 

「蘭〜今日の演奏どうだった〜?」

 

「いつも通りかな」

 

あの子はギターの子とボーカルの子か.....

 

「この後またつぐの家に行こうよ!」

 

で、あの子がベースの子か。

 

ってか俺なに観察しちゃってんの?

なに?通報される気満々なの?

よし、ここは見てることが気づかれる前に帰るか....

ってとりあえず次の予約をするか......

 

アフグロは....よし、まだ話してるな。

 

そんなふうに逃げるようにして俺は予約を済ませたのだが......

 

「あ!このあいだの!」

 

見つかった.....

 

「こないだは本当にありがとうございました!」

 

「いや、別に大したことはしてないから....気にしなくていいぞ」

 

「つぐ、知り合いか?」

 

「うん、こないだ私が落し物しちゃった時にこの人が手伝ってくれたんだよ」

 

「ほんとに私の作ったお守りなくすなんてひどいよ〜」

 

「それはほんとにごめんね」

 

「でも〜アレはお守りというより〜呪い神だよね〜」

 

「多分おいそれと表に出していいものじゃないと思うんだ」

 

「あたしもそう思う.....」

 

「みんなひどい〜!」

 

知らぬ間に俺空気になってる気がする....

でも、こいつらの会話聞いてて1つわかったな。

こいつら、多分付き合いが長い。

それこそかなり小さな時から一緒にいるんじゃないか?

 

「あ、す、すいません、勝手に話しちゃって.....」

 

「いや、慣れてるから気にすんな」

 

「なんで慣れてるの.....」

 

ボーカルの子に小声で言われるが俺は聞こえなかったフリで乗り切る。

 

「にしてもお前ら仲がいいんだな.....」

 

「そりゃ〜あたしたちは幼馴染だからね〜」

 

この子絶対マイペース、八幡悟った。

 

「なるほど...通りで演奏中も息が合ってるわけだ」

 

「そう言ってもらえると嬉しいな!」

 

ドラムの子はやっぱり男前な感じで他のメンバーに話しかけるんだな。

 

「そう言えば、つぐこの人名前はなんていうの?」

 

ベースの子が聞くがそれ、聞くだけ無駄だ。

 

「それが....まだ知らないんだ....」

 

だってお互い名乗ってないもん。

でも、この流れだと多分名乗った方がいいよな。

 

「総武高校の比企谷八幡だ、学年は一応2年」

 

最近の経験で学年もはっきりさせといた方がいいこともあると知った。

後輩とかだったら尚更早めに知らせておかないとあとあと変に謝られたりしたら困るしな。

 

「やっぱり2年生ですよね」

 

前から思ってたがなんでこの子は俺の年齢を知ってるような口ぶりなんだ?

 

「あ、私は羽沢つぐみっていいます。私たちはみんな1年生なのであんまり気を使わないでください」

 

「おう、わかった」

 

そこまで関わることもないかもしれないが.....

 

「あ、私は上原ひまりで〜す!」

 

元気いいなこいつ、どことなく今井と同じ感じがする。

 

「あたしは〜青葉モカだよ〜、気軽にモカちゃんって呼んでい〜よ〜?」

 

はい、マイペースな人確定。

たまには八幡の予感だって当たる。

 

「ちなみに〜、こっちは美竹蘭だよ〜」

 

いや、お前が言うんかい。

まぁその子確かに教えてくれそうな雰囲気なかったけど....

なんか静かだしあんま話さない子なのか?

 

「あ、これは照れちゃってるだけなんで〜気にしないでください〜」

 

「ちょっとモカ、余計なこと言わないでよ!」

 

顔赤らめてるあたり事実なのかもな、つまりちょっと人見知りってことか。

 

「アタシは宇田川巴っていいます!よろしくお願いします!」

 

宇田川.....もしかして

 

「もしかしてだが、妹いるか?」

 

「てことはやっぱり、あこがよく話してたのは八幡先輩の事ですか。妹がお世話になってます」

 

察し、あこもそうだが巴も姉妹を大切に思ってるようだな。

 

「別に、なんかしたわけじゃないから気にすんな」

 

「いえ、あこから色々聞いてますから」

 

あこはどこまで話したのだろうか.....

 

「あこちゃんが八幡先輩ともう知り合いなの?」

 

「ああ、少し前から知り合いみたいで家ではお兄ちゃんみたいな人ができたって大はしゃぎだったよ」

 

羽沢が聞いて宇田川が答えたが、あこはそんな風に思ってくれていたのか....

 

「あと、ギターがすごい上手いってあこが言ってたな」

 

おい、あこなんか嫌な予感がするんだけど.....

俺この流れ知ってるぞ.....

 

「そうなんですか?また今度聞いてみたいな〜」

 

ほら、上原が食いついちゃったよ。

 

「モカちゃんも聞いてみたいな〜」

 

ほら、つられてまた食いついてきたよ。

 

「あたしも、聞いてみたいかも」

 

ほら、こんな感じで美竹が繋げて

 

「わ、私も聞いてみたいです!」

 

少し羽沢が貯めてから

 

「また機会があったら聞かせてください!」

 

こうやって宇田川が決める。

うん、こいつらの連携良すぎるなワールドカップあったら出れるぞ。

 

だけど、Roseliaの時よりかはマシか.....

あの時はいつ聞かせるかまで決められたからな....

最終的に葉山と勝負することになったし....

 

「また機会があったらな....」

 

偶然時間が被ったりしない限り大丈夫だよな?

ここでまた一緒の時間になるほど俺は運も日頃の行いも悪くないよな?

 

「そういえばこれから私の家の珈琲飲んでいきませんか?こないだのお礼も兼ねて....」

 

そうだな、練習後に少し甘い物とかも欲しいし....

 

「そうか、じゃあせっかくだし行かせてもらうわ」

 

「はい!それじゃあ案内しますね」

 

そうして俺は羽沢の家へと向かうのだが....

 

「じゃあ私たちも行こうか」

 

え?後の4人も一緒に行くの?

 

*****

 

その後俺はだいぶひどい目にあった.....

 

結局6人で羽沢の家まで歩いたのだが当然5人にとってイレギュラーな俺は特に会話に参加しようともせず5人の少し後ろをついて歩いていく形になったのだが.....

上原や羽沢がたまに話を振ってきてくれたとはいえはたから見たらただのストーカーが美少女5人の後ろをつけてるって感じでしかないわけで....

 

「君、ちょっといいかい?」

 

なんとついに警察官に話しかけられて必死の弁明を試みる羽目になった.....

その後上原たちが誤解は解いてくれたのだが.....

やはり、なんというかショックが大きい.....

 

だがそんなこともあってこの5人とも割と打ち解けられた気がする。

美竹も少しは喋ってくれるようになったしな。

 

「だから行く前に隣歩きましょうって言ったのに〜」

 

「いや、だってそれは何というか.....」

 

「恥ずかしいんですか〜?」

 

お前絶対楽しんでるだろ....

 

「べ、別にそんなわけじゃ.....」

 

実際はそうです、はい。

 

「モカ、あんま先輩困らせんなよ....」

 

「だってさ〜楽しんだも〜ん」

 

やっぱりな....

でもなんか怒る気にはならないんだよな.....

なんか感覚が狂うな.....

 

「こんな不審者みたいな目してる奴が隣に歩いてたらそっちの方が大事になるだろ」

 

「何でどっちも捕まる想定なんですか.....」

 

美竹よ、そんな呆れた声を出すなよ......

 

「ところで八幡先輩はバンドはもうやってないんですか?」

 

「ああ、今はな」

 

場の空気を察してくれたのか羽沢が話題を変えてくれた。

いい子や〜

 

「前はやってたんですか?」

 

「まぁな」

 

「私、その時の話聞いてみたいです!」

 

上原、お前絶対由比ヶ浜と仲良くなれるわ.....

 

「そんな面白い話はないぞ?」

 

「でも、それを聞いたらアタシたちにとってもいい経験になるかもな!なんたってRoseliaの人たちが天才って褒めた人だからな〜」

 

「.....」

 

なんかRoseliaの名前が出た瞬間美竹の雰囲気が少し剣呑な感じに.....

 

「確かにそれならモカちゃんも聞きたいかも〜」

 

「なら少しだけな....」

 

*****

 

それから30分くらい俺はアフグロのメンバーと話してもう完全に知り合いの域に達していた。

しかしそろそろ帰らないと小町がご機嫌斜めだな......

それは夕飯にトマトを追加される確率が上がるので避けたいところだな。

 

「悪い、そろそろ妹が待ってるから俺は帰るわ」

 

話が一区切りのところで俺はそう言う。

 

「え?妹さんいるんですか?」

 

「ああ、世界1の自慢の妹だ」

 

「うわ、シスコン....」

 

美竹も俺のメンタルをそこそこ削ってくるな、さっき少しからかったからか?

 

「そんなに可愛いなら会ってみたいな〜」

 

「また今度な....って」

 

そこで俺は小町からの連絡が5分くらい前にあったかに気づく。

 

『お兄ちゃん今どこで何してるの?あんまり帰る時間遅くならないようにしてよ』

 

そういやすぐに帰るつもりだったから連絡も入れてなかったんだよな。

今から帰るとはいえ連絡入れておくか.....

 

『悪い、spaceであったバンドの人たちとカフェで話してた。今から帰るわ』

 

っと、これで送っておけばいいだろ.....

 

『それなら別に無理して早か帰らなくてもいいけどさ、なんて言うバンドの人たちといるの?』

 

返信はやっ!

まだ送って10秒ちょっとしか経ってないぞ.....

未来でもみてるとしか思えない速さなんだが.....

 

『After glowってバンドだけど....知ってるか?』

 

『知ってるに決まってんじゃん!今めちゃくちゃ人気なバンドだよっ!なんでそれを早く言わないの!あ〜なんでお兄ちゃんがそんな人たちと知り合いになれるの!?小町だって会ってみたいのに!』

 

もうこの長文が30秒もかからずに送られてきたことに関しては驚かないからな.....

 

ん?でもさっき上原会ってみたいとか言ってたよな.....

ってことは?

 

「上原、お前ほんとに俺の妹に会ってみたいか?」

 

「はい!気になります」

 

「今から、妹をここに呼んでも問題ないよな?」

 

「はい!むしろ大歓迎ですよ!ねっみんな」

 

「うん、私も気になるかな」

 

「別に、問題ないよ」

 

「あたしも会ってみたーい」

 

「アタシもいいぜ」

 

こうして俺は妹をこの場に急遽呼ぶのだった。

 

*****

 

それから小町は15分ほど経ってから来た。

ちなみにかなり早い。

 

「わぁ〜すっごい可愛い!」

 

「いえいえ〜そんなことないですよ〜。それを言うならみなさんの方が〜」

 

「え〜褒めたって何も出てこないからね〜」

 

ほんとに度々思うけど、こいつは本当に俺の妹か?

 

「あんまり似てないですね、性格は」

 

「うるさい、ほっとけ」

 

美竹、それ気にしてるんだから言わないで.....

 

「でも、兄妹揃って同じ楽器なんてアタシたちと同じだな〜」

 

この2人も確かにドラム同士だからな。

 

「お兄ちゃんが小町の先生なんですよ、こんなんでも」

 

「おい、最後の一言がいらねーだろ」

 

「だってこんな目が腐ってるんだよ?ごみいちゃん」

 

「ゴミは言い過ぎだろ!」

 

「でも〜確かにさっきおまわりさんに捕まりかけましたよね〜」

 

「え?どういうこと、お兄ちゃん?」

 

「いや、それは、その、なんていうかあれだ.....」

 

「そんな感じで、八幡先輩がおまわりさんから声かけられちゃって....」

 

人が必死に誤魔化そうとしてることをあっさりバラされる悲しみを知った.....

羽沢素直すぎるだろ.....

 

「うちの愚兄がご迷惑をおかけしてすいません....」

 

「いや〜あの時の先輩の顔写真に撮っておきたかったな〜」

 

「確かに、あの顔は面白かった」

 

「2人ともやめろよ、確かに面白かったけど失礼だろ」

 

お前も充分失礼だわ!

 

「でも、この前だって〜」

 

「え〜それは流石に....」

 

このままではメンタルが.....

と俺は思ったがすでに小町たちは俺の傷の抉りあいを始めてしまい俺はその後1時間にかけて多大なダメージ負うのだった......

 




今回はここまでです。
実は今なかなか文が思いつかないスランプに陥ってしまっています....
そのためこれから先更新速度が落ちたりただでさえ下手な文がより駄文になってしまうかもしれませんがそれでもいい方は続きを待っていてください。

それでは感想、評価、要望等よければ残していってください。


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第24話

そろそろ言うことも少なくなってきたのでこれからは前書きはバンドリ関連の近況報告の場にでもしますかね.....
前にもどこかで言いましたが自分の推しは友希那さんです。
次点でリサ姉、紗夜さんって感じです。



いつのまにか俺のメンタルを削る会と化した小町とアフグロメンバーによる座談会から数日後.....

 

「え!?戸塚先輩男の子なんですか!?」

 

「うん、なんでかみんなからよく間違われるんだけどね」

 

「そりゃその見た目だったら間違えますよ.....」

 

俺はなぜかラビワン、アフグロメンバーと共にspaceにいた。

 

なぜこんなことになっているのかというと察しもつくだろうがこないだの俺のメンタルを削る会でのこと.....

 

「小町ちゃんもバンドやってるの?」

 

「はい!ラビワンってバンドやってます!」

 

「なんの楽器なんだ?」

 

「兄と同じギターです!」

 

「おっ、アタシと同じ感じなんだな」

 

「どういうことなんですか?」

 

「トモちんも妹と一緒の楽器なんだよ〜」

 

「なるほど....」

 

俺だけ帰っていいかな?

だってこの人たちさっきからずっと女子同士で喋ってるから俺とてつもなく暇なんだが.....

そんな感じでしばらくぼーっとしていたのだが.....

 

「いいでしょ?お兄ちゃん?」

 

「あ、おお」

 

え?ちょっと待って話聞いてなかったんだけど。

え?俺なにを了承しちゃったの?

こういう時にいい思い出なんもないんだけど.....

 

「やった〜、八幡先輩も来てくれるならもっと頑張らなきゃね!」

 

待って、上原と小町はマジでなにを言っているの?

せめて内容知りたいんだけど.....

 

「いや〜楽しみだな〜」

 

「そうだね!」

 

宇田川と羽沢まだ俺をはぶるなよ.....

 

「じゃあ詳しい日にち決めちゃおうか!」

 

「はい!そうですね!」

 

「とりあえず私たちの予定は....」

 

「あ、あたしまだ今月の予定更新してない」

 

「蘭〜いつも早く更新してって言ってるじゃん!」

 

「だって使い方もまだよくわかんないし」

 

「こないだ教えたでしょ!?」

 

「まぁまぁひーちゃん、あんまり大きい声出すと目立つよ〜」

 

「え?あ、す、すいません」

 

上原は恥ずかしそうに周りに謝っている。

 

「はは、2人ともいつも通りだな」

 

「アフグロの皆さんって幼馴染なんですよね?いいな〜そういうの憧れますよ〜」

 

「そりゃあたしたちはずっと仲良しだからね〜」

 

「もうずっと一緒にいるからね」

 

「小町はそういう人がいなかったんですよ〜」

 

「八幡先輩もいないんですか?」

 

「俺か?俺はそんな関係の人間はいないぞ。友達だってほとんどいないしな.....」

 

「つぐみさん、お兄ちゃんは見ての通りの社会不適合者なので.....」

 

「でも、バンドやってたりしてたんですよね?」

 

「そいつらとは中学からの付き合いだ、それに友達とは思われてないんじゃないか?」

 

「お兄ちゃん、正解だけど絶対違う意味で捉えてるよね.....」

 

どういう意味だよ?

まさか、俺が思ってる以上に嫌われてるってことか?

そうだとしたらちょっとショックだな.....

 

俺は結構大切な仲間だと思ってるんだけどなぁ.....

やっぱ俺には戸塚しかいないのか.....

いやでも戸塚さえいればいいか?

そもそも俺と戸塚は友達なのか?

もっと上の関係と言えるのではないだろうか?

 

「ちょっとーごみいちゃん聞いてる?」

 

「あ、な、なんだ小町?」

 

「だから、この日でいいの?」

 

「なにがだ?」

 

「ラビワンとアフグロの合同練習」

 

「別にそれ俺に聞かなくてもよくね?小町の都合なんだから」

 

そう言った瞬間小町が少し不機嫌そうな顔をする。

 

「もしかしてだけどさ、八幡先輩、最初から話を聞いてなかった?」

 

それと同時に美竹も俺のことを責めるように見ている。

 

「「「「「......」」」」」

 

いや、よく見たら俺以外全員がそんな目で俺のことを見ていた。

すごい居心地悪いんだけど.....

俺が完全に悪いんだけどさ。

 

「いや、話を聞いていなかったというか考え事をしていたというか.....」

 

「同じことじゃないですか!」

 

俺は必死の弁明試みるが上原に即つっこまれる。

 

「いや、その、すいません」

 

さらなる弁明をしようか迷ったがこれ以上は逆効果にしか思えなかったので潔く謝罪することにした。

 

「もう今更断らせないからね〜?」

 

小町が怖い.....

 

「はい....」

 

「ふふふ」

 

「ん?どうしたんだ羽沢?」

 

「いや、2人とも仲良しなんだな〜って思って」

 

「確かに〜」

 

「まぁ、家族だしな」

 

「昔からお母さんたち仕事で家にいない時間も多くてよく2人でいたからね〜」

 

「2人は巴とあことも違うよね」

 

「あ〜確かに....」

 

「そうか?アタシはそんなことないと思うけど?」

 

「八幡先輩は、なんというか、その....」

 

「妹に頭が上がらないよね〜」

 

「うっせ、ほっとけ」

 

「あははは....」

 

なんて感じの経緯があるのだが.....

 

俺いる?この2バンドだけでいいじゃん!

とか思ったりもしたがラビワンは俺からアドバイスが欲しいらしくアフグロは俺のギターの腕に興味があるようだ。

 

「....じゃあ、そろそろ始めようか」

 

「そうですね」

 

この2人似てるよな、静かでストイックなところが。

雪ノ下といい湊といいボーカルをやってるやつはそんな奴ばかりなのだろうか?

 

『キラキラドキドキしようよっ!』

 

『どうしよう〜』

 

....いや、それは違うか。

誰とは言わないがある2人が頭に浮かびその疑問は解消された。

そんな調子で2つのバンドの練習は進んでいった。

 

俺は最近何故かいろんなバンドの練習に立ち会ってきたためかそろそろアドバイスする立場になれてきた。

.....気がする。

だけど、やっぱり俺なんかの意見よりお互いのバンドの意見交換の方が有意義だと思ったので途中からはほぼ丸投げ、つまり俺は合理的に働かなくていい立場を手に入れた。

八幡ったら策士!

 

.....実は暇だ、そりゃこんな楽しそうに演奏している人たちを見たら俺だって演奏したくもなるだろ。

さっきからうずうずが止まらない。

 

「じゃあこの辺で練習終わりましょうか〜」

 

「そうだね、僕もうヘトヘトだよ」

 

「小町もです〜」

 

「あたしも〜」

 

お、どうやら終わったようだな。

どちらのバンドも片付けを始めている。

これで俺も御役御免か.....

 

「では、そろそろ帰るとするか」

 

材木座いたの?って思うくらい今日こいつ静かだったな。

コミュ症確定だな、普段からこれくらい静かだったらいいのに。

別に真面目に練習してたからいーけど。

 

「でも、ラビワンの皆さんすごいですね!結成して間もないなんて信じられないです!」

 

「あたしもそう思った!すごいよなー」

 

「私もすごいと思ったよ、また同じステージでライブしたいな〜」

 

「そうだね〜」

 

アフグロの面々は口々にラビワンを褒めている。

でも、確かにこいつらの成長速度は相当に早いと思う。

この分なら羽沢のいってたこともすぐに実現するのではないだろうか。

 

「いや、あたしたちはまだまだだよ。こっちこそいい勉強になった、ありがと」

 

本当ストイックな奴....

 

「そうですよ〜まだまだお兄ちゃんのいたバンドには程遠いですしね〜」

 

なんでそこで俺のバンドが出てくるんだよ。

ん?小町のやつなんかニヤニヤしてやがる、どうしてだ.....?

 

「そんなに八幡先輩のいたバンドってすごかったの?」

 

美竹の対抗意識燃えるの早すぎない?

別にバンドごと比べる必要ないと思うんだけどなぁ.....

 

「本当に凄かったんですよ〜。なんでお兄ちゃんがあんなバンドにいたのかいまだに謎です!」

 

「元気よくいうなよ....それにアブアルは俺が結成したバンドだから俺がいるのは当たり前だろ.....」

 

「え!?小町はてっきり雪乃さんが組んだものだとばかり.....」

 

「それはまた機会があったら話してやるよ」

 

「そういえば、まだ八幡先輩のギター聞かせてもらってないじゃん!」

 

あ、思い出しやがった.....

せっかく今まで話題に出さないようにしてきたのに.....

その瞬間俺は気づいた俺は小町にはめられたのだと、小町は俺のバンドの話を出すことによって俺がギターを弾くことを思い出させたのか....

 

「はぁ、少しだけな....」

 

「お兄ちゃん、小町ね、1つお願いがあるんだけどいい?」

 

「ん?なんだ?」

 

「アブアルの時の曲を弾いてよ」

 

小町....真剣な目をしている。

そうか、今度はお前が俺の背中を押そうとしてくれてんのか.....

 

だけど俺が弾いてもいいのかな?

それで誰か喜んでくれるのだろうか、

俺が弾いたと知って雪ノ下たちはどう思うだろうか?

 

「私は聞いてみたいな!」

 

羽沢.....

 

「あたしも聞いてみたい」

 

「アタシもだ!」

 

「もちろん私も聞いてみたい!」

 

「あたしも〜」

 

美竹たちも.....

 

「聞かせてよ!八幡!」

 

「うむ、我も興がわいたぞ!」

 

「あたしにも聞かせてよ」

 

そっか、迷うだけ無駄だよな。

やんなきゃどうなるかなんてわからないんだから。

やらないでする後悔よりやってする後悔なんて誰かから聞いたしな.....

 

「わかった、でも一曲だけだぞ」

 

「うん!ありがとねお兄ちゃん!」

 

どの曲を弾くかは迷わなかった。

俺たちの始まりの曲を奏でようか.....

今日が具体的な俺の一歩目だ!

 

それから俺はいつもより遥かに楽しんで曲が弾けただろう。

多分ではあるが俺は、その時扉を再び開くことができていただろう。

あの時と同じようにどんどん自分が研ぎ澄まされていく感覚があった....

 

演奏中のことは正直あんま覚えてない、気づいたら終わってたくらいの感覚だった。

 

それからは上の空の中の中みんなから色々言われたのは覚えてる。

そこらへんで俺の意識は完全に元に戻っていた。

 

それでみんなでスタジオを出ようとした時のこと.....

 

「私はもう少しだけ残って練習していくね」

 

羽沢はもう少しだけ残っていくようだ。

なんとなく気になるところだな.....

 

「悪い、俺も少し残るわ。少し弾き足りないからな」

 

「あんまり遅くならないでよ〜」

 

なんてことがあって俺と羽沢以外がスタジオから出ていった。

 

「じゃあ、私他のスタジオ借りますね」

 

「いや、実はさっきのは嘘だ。ちょっとお前の様子がへんな気がしてな」

 

「....どうしてそう思ったんですか」

 

「引くなよ?」

 

「はい」

 

なんていうか言葉にすると気持ち悪いことこの上ないのだが.....

 

「お前が笑った時の顔がこないだ話してた時と違った気がした」

 

「....すごいなぁ、そんなことに気づくなんて」

 

「いや、なんとなくだ」

 

「私、昔から不器用で色々人より上手くできなくて.....それで時々不安になるんです、蘭ちゃんたちに迷惑かけてないかなって....それでさっき先輩の演奏を聞いたらもっと怖くなって.....どんなに努力したって無駄なんじゃないかって.....」

 

「そんなことあるはずないだろ!」

 

「え.....」

 

しまった、つい大きな声が出てしまった.....

 

「...悪い、でもな俺は努力が無駄なんて思いたくない」

 

俺がそう思ってしまったら....あいつらは.....

 

「でも.....」

 

「確かに世の中には努力しなくてもできてしまうやつだっている、でもな、そいつらは見かけ倒しでしかない.....そんな奴が奏でる音に.....魂なんて宿りやしない。そんな音で感動はしない.....たとえ上手くなくとも懸命に演奏しているお前の音の方が遥かに俺は感動する!」

 

「私の演奏の方が....」

 

「いいか、世の中できる奴が偉いんじゃない....挑戦した奴が偉いんだ」

 

俺は逃げてしまったから分かる。

そうするのは楽だが何も得ることなんてありはしないことを。

どんなに辛くても進み続けることがいかに凄いことか。

 

「自分の否定だけはしないでくれ....頼む」

 

俺が頼むのはお門違いかもしれない、でも努力してる人間にそれをやめて欲しくない。

俺の勝手なエゴでしかない、でもこの想いは確かに俺の"本物"だから.....

 

「私、間違ってましたね....1人で勝手に不安になって.....」

 

「間違ってなんかないさ、誰だって不安にくらいなるさ」

 

そう言って俺はつい羽沢の頭を撫でてしまう。

 

「あの.....」

 

「あ、悪い...つい癖で嫌だったか?」

 

「いえ.....そんなことは」

 

気を使ってくれて本当にいい奴だな.....

 

「むしろ....落ち着いたというか....」

 

「ん?何か言ったか?」

 

小声だと何言っているかわからないんだよな、俺別にアニメのキャラじゃないんだけどなぁ.....

 

「いえ!なんでもないです!」

 

「ならいいんだけど....」

 

「なんか先輩と話してたら練習したくなってきちゃいました先輩練習に付き合ってくれますか?」

 

「ああ、俺にできる限りでよければ」

 

「ありがとうございます!」

 

きっと、さほどの空は今綺麗な夕焼けで染まっているだろう、急にそんなことを思いながらも俺は目の前の努力の天才と練習を開始するのだった.....

 




今回はここまでです、いつにもましての駄文ですいません.....
アフグロはひとまずここまでにしたいと思います。
次回は番外編かハロハピの登場のどちらかを書きたいと思います。

感想、評価、活動報告へのコメントなどお待ちしてます。


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番外編3

今回は本編ではなく番外編です。
短い間にどんどん番外編書いてしまってすいません.....
今回のヒロインは紗夜さんです。



あー暇だ〜。

なんもすることがない.....

前ならバンドの練習とかで暇なんてなかったからこういう時どう過ごせばいいかいまだによくわかんないんだよなぁ。

 

「お兄ちゃん、最近は少しくらいアクティブになったと思ったのに.....」

 

「それは違うぞ小町、俺は好きで外に出ていたわけじゃない」

 

「それでもお兄ちゃんに知り合いも増えたみたいで安心してたのに.....油断するとすぐまたこうなるんだから」

 

「でも、ほんとにやることないんだよ....」

 

「じゃあギターの弦でも替えたら?こないだもうそろそろ替えないとな〜って言ってたじゃん」

 

「そんなこと言ったか?とりあえず確認してみるか.....」

 

*****

 

「まさか、もう替えなきゃいけない状態になっているとは....」

 

最近何かと弾く機会が増えたからか?

 

....この楽器屋であいつと会ってからか。

俺が変わるきっかけになったのは今思えばここだったなぁ.....

「あら?八幡さん、こんにちは」

 

「うおっ!なんだ紗夜か....」

 

「なんだとはご挨拶ですね、八幡さんはどうしてここに?」

 

「いや、ギターの弦を替えにな」

 

「八幡さんもですか、私もギターの弦を替えに来たんです」

 

「Roseliaはよく練習してるから弦の交換とかも早いのか?」

 

「まぁ、普通よりは早いかもしれませんね。なので練習が休みの時にはほとんど弦などの買い出しにいったりしてますね」

 

「そうなのか、日菜と出かけたりとかはしないのか?」

 

「日菜とは以前より一緒に出かける機会が増えましたね。買い物に行ったりして.....日菜の思いつきに振り回されたりもしますけどね」

 

苦笑しているが以前よりはるかにその顔は楽しげだ。

 

「うまくいってるならよかった」

 

「これも八幡さんのおかげですね」

 

「いや、俺は本当に何もしてないから」

 

「いえ、私たち2人はあなたにとても助けてもらいましたよ」

 

「そっか....」

 

面と向かって礼を言われるなんて慣れてないからどこか気恥ずかしいな.....

 

「そ、それより、こないだのテスト教えてもらったおかげでいつもよりいい成績が取れたよ、ありがとな」

 

「どういたしまして、またよければ教えますから何かあったら言ってくださいね」

 

「おう、その時は頼むわ」

 

「八幡さんはこのあと暇ですか?」

 

「ああ、暇だけどどうした?」

 

「いえ、このあと自主練習をしようと思っているのですが....よければ一緒に練習しませんか?」

 

「別に迷惑じゃないのならいいけど.....」

 

「なら是非お願いします」

 

「おう、こちらこそ」

 

こうして俺の暇な休日は紗夜と過ごすことになった。

 

*****

 

「で、スタジオに来たはいいけどどうするんだ」

 

「実は今新しい曲の練習をしているのですが....何箇所かまだうまく弾くことができなくて....」

 

「とりあえずまず弾いてみてくれないか?」

 

「はい、わかりました」

 

それから紗夜とそのできない箇所を一緒に練習をして午前中を過ごした。

 

「本当に八幡さんはすごいですね.....」

 

「いや、そんなことはないぞ?」

 

「いえ、八幡さんのおかげでだいぶ感覚がつかめてきました」

 

「少しでも役に立ったならよかった」

 

「いえ、またできないところがあったら教えてもらえますか?」

 

「俺は構わないぞ、こっちはその分勉強教えてもらうしな」

 

実際紗夜はほとんど1人でできるようになってたしな、普段から練習してるのがほんとにわかる。

それにしてもちょうど昼時だな。

 

「八幡さん、この後も少し時間はありますか?」

 

「ああ、あるけど.....」

 

「なら....よければ今のお礼も兼ねて一緒にお昼でもいかがですか....?」

 

顔を赤らめてそんなことを言う紗夜にドキッとしながらまとまらない思考はいつのまにか返事をしていた。

 

「ああ、ぜひ?」

 

「では、どこに向かいましょうか....?」

 

「俺は別にどこでも構わないぞ....?」

 

互いに緊張しているせいか喋り方がだいぶ不自然になってしまっている。

だがそんなまとまってない思考回路は奇跡的にある情報を思い出す。

 

そうだ、そういえばこないだ日菜が....

 

『おねーちゃんとあたしは好きな食べ物が一緒なんだよ〜』

 

『何が好きなんだ?』

 

『ポテト!昔からよく2人で食べてたな〜』

 

とか言ってた気がする.....

 

うろ覚えで若干賭けではあるが.....

 

「なぁ、紗夜それなら.....ポテト食べに行かないか?」

 

「っ!はい、そうですね。そうしましょうか」

 

少し驚いたような表情をしながらも喜んでいそうなのでどうやら成功したらしいな.....

 

*****

 

その後俺と紗夜が訪れたのはこないだ日菜と訪れたチェーン店だ。

 

「ここで良かったか?」

 

「ええ、ここにはよく訪れるので.....」

 

「日菜とか?」

 

「そうですね、Roseliaと来ることも多いですが」

 

「湊なんかは前なら絶対来なかったな」

 

「そうですね、最初は私と湊さんはあまりこう言う場所に来ることに賛同してたとはいえませんね」

 

「そこで今井とあこがお前たちを必死に引き止めてるところが想像つくよ」

 

つい苦笑気味にそう言ってしまった.....

 

「そうですね、今思えばあの時には余裕がありませんでした」

 

「変わったんだな....」

 

「それも、八幡さんのおかげですね....」

 

「そんなことないだろ、お前が問題にしっかり向き合ったからだ」

 

「それでも、そのきっかけをくれたのはあなたなんです。だから、とても感謝しているのですよ?」

 

「なら、一応受け取っておく.....」

 

「ふふふ、感謝されることに慣れてないんですね」

 

「仕方ないだろ....しばらく人に感謝なんてされてないんだから....」

 

「顔、真っ赤ですよ」

 

なんかからかわれてる気がする.....

紗夜が楽しいのならいいけど....

 

「お前たちはみんなすぐにお礼とか言ってくるからそのうち慣れるだろ.....」

 

「そう簡単に人は変わるものではないですよ」

 

「お前が言うと説得力あるなぁ」

 

「時間をかけて問題に取り掛からないといけないんですよ」

 

「そうだな.....」

 

それ自体は俺もよく分かってるんだけどな.....

 

「それはともかく、お前が自分からこんなところに誘うなんて珍しいんじゃないか?」

 

「そうですね、かなり珍しいことかもしれませんね」

 

「なんで俺なんかを誘ったんだ?」

 

「それは.....日菜だけずるいと思ったから....です」

 

「ん?ああこないだのことか....」

 

こないだ日菜と俺とでここにきたことを指しているのだろう。

 

「お前もここのポテト食べたかったのか」

 

「.....八幡さんは鈍いのですね」

 

「え?なんでだ?」

 

「わからないのならそれでいいです」

 

なんか不機嫌にさせてしまった......

ほんとになんでだよ.....

山の天気と女心は変わりやすいって言うならどうやらほんとだったようだな.....

なぜか、あいつら俺が気を使うと怒ったりするからな〜。

 

「なんか気に触ること言っちまったか?」

 

「いえ、なにも」

 

これは完全に怒ってらっしゃる。

これは全力の土下座を覚悟するしか.....

 

「いや、本当に俺が悪かった。俺にできることならなんでもするから.....」

 

なんで俺はこんなに痴話喧嘩みたいなことをしてるんだ.....

周りの人も少しずつ俺らに注目しだしてるからいやなんだけど....

 

「なんでも....ですか」

 

お!食いついてくれたこのチャンスを逃すわけには....

 

「ああ、俺にできることなら!」

 

「では....この後も私に付き合ってください」

 

「それでいいのなら!」

 

こうして俺の予定は午後まで埋まることとなった......

どうせ暇だから問題は一切ないのだが。

 

*****

 

「ではまず、買い物に行きましょうか」

 

店を出た俺たちはまずは買い物をすることとなった。

そのために今はショッピングモールに移動してきたところだ。

 

「何か買いたいものもあるのか?」

 

「はい、新しい服を探そうかと」

 

「そうか」

 

「よければ八幡さんの意見も聞きたいのですが....」

 

「俺に聞いても何も言えないぞ」

 

「それでもいいですから」

 

なぜ世の中の女性は服を選ぶ時に人の意見を聞きたがるのだろうか。

葉山のようなイケメンなら何か気の利いたことの1つも言えるのかもしれないがあいにく俺は引きこもりぼっちの男だ。

そんな芸当ができるはずもない。

 

なんて思いながら試着室に入っていった紗夜を待っていると.....

 

「お、比企谷、こんなところで会うなんて奇遇だな」

 

考えてればなんとやらってやつか....

 

「俺は別に会いたくなかったけどな、葉山」

 

「あって早々そんなこと言うなよ、泣くぞ?」

 

「別に俺に損はないから好きなだけ泣けよ?」

 

「相変わらず容赦のないやつだなぁ」

 

こっちも相変わらずだなと思ってるわ!

なんで休日までこんなクソ爽やかイケメンに会わなきゃいけないんだよ.....

 

そりゃ学校やたまにはspaceでも会ってたけどさ....

 

「で、なんで比企谷はこんなところに?」

 

「連れの買い物待ちだ」

 

「なんだ?彼女とでも来てるのか?」

 

「な訳ねーだろ、知り合いとだ」

 

「むしろお前こそなんでこんなところにいるんだよ」

 

「俺だってたまには1人で出かけたい時だってあるんだよ」

 

「ふっ、俺には縁のない悩みだな」

 

「そこ多分ドヤ顔するところじゃないからな.....」

 

「お待たせしました、どうでしょうか....?」

 

なんて葉山とくだらないこと言ってたら紗夜出てきちゃったじゃないか!?

 

「"八幡さん"こちらの方は...ああ、以前お会いしたことがありましたね」

 

「確かあなたはRoseliaの...氷川紗夜さんでしたよね」

 

そう言うと葉山は俺の方をつかみ紗夜と逆方向を向かせると小声で

 

「おいどういうことだ?なんでお前が氷川さんと一緒にいるんだ?しかも名前呼びされてるということはまさか...お前....」

 

なんかこいつ邪推してないか?

 

「八幡さん?何をしてるのですか?」

 

「ああ、なんでもないから気にしないでくれ"紗夜"」

 

すると葉山はまた凄まじい勢いで無理やり俺の向きを変えると

 

「おい、お前も名前呼びしてるじゃないか!これはもう言い逃れできないぞ?」

 

「だから違うって言ってんだろうが」

 

「嘘言うなよ、お前絶対付き合ってるだろ?」

 

しつけぇ.....

こうなったら俺も多大な傷を負うが致し方ない....

 

「なぁ、紗夜こいつが俺とお前が付き合ってるんじゃないかとか言ってるけど俺らは全然そう言う関係じゃないよな?」

 

「......ええ、そうですね」

 

え?なんかまた不機嫌気味になってるんだが.....

 

「.....なるほどな、比企谷、とりあえず今度グーで殴らせろ。あと、お前やっちまったな」

 

「いや、なんでそうなるんだよ!確かに何かやっちまったぽいのは事実だけど!」

 

「これ以上ここにいるとお前がまた自爆しそうだからひとまず俺は行くぞ」

 

「ああ、二度と会わないことを祈っとく」

 

こうして葉山は去っていった。

そして俺には不機嫌そうに佇む紗夜だけが近くにいた。

 

「えーと、そのなんだ、その服よく似合ってると思うぞ?」

 

「そ、そうですか!....ならよかったです」

 

途端に不機嫌そうな顔ではなく笑顔が浮かぶ。

小町よ、ついこないだお前に教わったとりあえず褒めとけっていう戦法は役にたったぞ.....

 

「では、他の服も見てみてください」

 

少しテンションが上がったらしい紗夜はその後さらに数着を試着したが、正直全て似合っているので全て似たり寄ったりの感想になってしまうのは目を瞑って欲しいところだが。

 

「ふぅこういうところに来るとつい多く買ってしまいますね」

 

「そうだな、ついいろんな店を見ちゃうからな」

 

なんていいながら俺たちはショッピングモールの中を回って色々な買い物をして今はまた商店街のあたりだ。

 

「もう一箇所だけ行きたいところがあるのですがいいですか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

そもそも俺が紗夜を怒らせてやっていることなので拒否感もないのだが.....

 

「それでどこに行くんだ?」

 

「あそこです」

 

そうして紗夜が指をさした先にあるのはゲームセンターだ。

 

「意外だな紗夜がこんなところに行きたがるなんて」

 

「いえ、普段は来たりしないのですが...そのこないだ日菜とここにきたのでしょう?」

 

「ああ、そうだけど....」

 

「たまには、私が日菜の真似をしたって誰も怒りませんよ」

 

「それもそうだな」

 

正直意味はわからないが。

 

「では行きましょうか」

 

「そうだな」

 

で、入ったのだが.....

 

「このような店には初めて入りましたがなるほど、とても賑やかなのですね」

 

「そうだな、いろんなゲームがあるけどどんなやうをやりたいんだ?」

 

「そうですね....この間日菜が楽しかったと言っていたエアホッケーをやってみたいですね」

 

「ああ、いいぞ」

 

そう言って俺と紗夜はエアホッケーをやった。

前回の反省を生かして俺は今回は賭けなどはやらないようにした。

 

そして結果は.....

 

6対7で.....

 

俺の負けだった.....

マジかよ俺....今日初めてゲームセンター入ったような相手にまで負けちまうのかよ.....

今度戸塚たちと来て練習しよ.....

 

「案外このような場所もわるくないですね」

 

「そう思ってもらえたなら何よりだ、今度日菜とも来てみたらどうだ?」

 

「そうですね、その時は八幡さんも来ますか?」

 

「いや、遠慮しとくよ。姉妹水入らずで過ごしてくれ」

 

「では、いつか3人で来ましょう」

 

「いつかな」

 

それも案外楽しそうだな。

 

「それで、もう1つやってみたいことがあるのですが.....」

 

「ん?なんだ?」

 

そこで紗夜はふととても真剣な顔になる。

 

「私も....プリクラというものを撮ってみたいのです....」

 

「ふ、あははは」

 

「な、なぜ笑うんですか!?」

 

「いや、すごい真面目な顔してたから何言われるのかと思ったらそんなことか」

 

「そんなこととはなんですか!私は真剣に頼んでいるのに....」

 

「いや、悪い悪い。まぁなんだ、その俺は構わないぞ」

 

「そうですか!ならはやく行きましょう」

 

こうして俺たちはプリクラ機に入ったのだが.....

 

「これはこちらでいいのでしょうか?」

 

「いや、ちょっと待てそっちは....」

 

事件はあまりに唐突に起きた。

そう、紗夜はプリクラの撮影を日菜同様カップルモードで始めてしまったのだ.....

 

「お前これだとカップルがやるようなことやらされるぞ....」

 

「そ、そうなのですか?初めてでよくわからずに.....」

 

「まぁ、やんなくてもとれるから大丈夫だけどな....」

 

「いえ、せっかくですから1枚くらい.....その、指示に従って撮ってみましょう....」

 

日菜にも言ったけどそんな顔赤くするくらいなら撮るなよ.....

 

「でも、それだと....」

 

「これも昼の時の罰です、拒否権はないですから」

 

「そんな強引な.....」

 

「撮ってくれなかったらもう勉強教えません」

 

そ、それは少し困るな.....

また教えてもらおうと思ってたし.....

この姉妹は俺の嫌なことに対して的確に脅してくるな....

 

「一枚だけだからな.....」

 

何回目だろうとこういうのは照れるんだよ.....

 

「じゃあどの指示かはお前に任せる....」

 

「はい....」

 

そしてその時はいきなり訪れる.....

 

『まずは彼氏さんが後ろから彼女さんに抱きしめて〜』

 

「この指示で撮りましょう」

 

やっぱり姉妹なのか撮ろうとする指示まで一緒なようだ....

そして、俺は知っている。

この指示が撮るときに1番恥ずかしい指示だったことを.....

 

「じゃ、じゃあいくぞ....」

 

「は、はい....」

 

こうして撮ったのだが....

その後は2人とも真っ赤な顔をしたまま撮影する羽目になった.....

だが今回は加工をするのが2人とも初めてでとてもたどたどしいものになってしまったのだが.....

 

その後は日菜の時同様紗夜を家まで送っていくことにした。

そして家が近づいてきたとき....

 

「今日はありがとうございました、おかげで楽しい1日を過ごすことができました」

 

「いや、俺も楽しめたよ」

 

「ならばよかったです....」

 

そして紗夜は少し言いづらそうにしていたのだが

 

「1つ白状します、私は今日ゲームセンターであなたに何度か嘘をつきました」

 

「それ、言わなくてよかったんじゃないか?俺は気づいてなかったんだし.....」

 

「いえ、その、それでは私の気持ちが.....」

 

「真面目な奴だな、ほんと損するぞそんな性格だと.....」

 

「いえ、この場合嘘をついていた方が損というか、その.....」

 

「まぁいいよ、その嘘の内容は聞かないでおくわ」

 

「何故ですか?」

 

「いや、なんとなくまだ知らない方がいい気がしただけだ」

 

「.....そうですか、でもいつか必ず話します。その時は私の思い....聞いてくれますか?」

 

「ああ、約束する」

 

「そうですか....なら今日はやめておきますね」

 

そうするともう紗夜の家のすぐ近くまで来ていた。

 

「本当に今日はありがとうございました」

 

「おう、じゃあまたな」

 

こうして俺と紗夜の1日は終わった。

 

「にしても、また絶対秘密にしなきゃいけないものが増えたな....」

 

そう、それはりんごよりも赤くなって写る俺と紗夜のプリクラだった....

ま、たまにはいいか。

もう二度とごめんだけどな。

 

そんなことを考えてすっかり夜の色に染まった空の下俺は家に帰るのだった。

 

その後葉山にバラされて俺と紗夜の関係を雪ノ下たちに問い詰められるのはまた別の話。

 




今回は頑張って早めに書きました。
まだ駄文の目立つ分ではありますが、気が向いたら読んでくれると嬉しいです!
そして申し訳ないのですがネタが先に思い浮かんだので次回はまた番外編となります。
本編を待ってる方すいません.....

それでは感想、評価などよければ残していってください。


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番外編4

番外編が続いてしまってすいません.....
とりあえずこの回で番外編は一区切りになります。
さらに更新も遅くなってしまってすいません.....
少々別ゲーにハマってました()

話は変わりますがアニメのバンドリ最終回神じゃないですか?
Roseliaの新曲めっちゃよかった.....
皆さんはどの曲が好きでした?



アフグロとのラビワンの合同練習の1日後

俺は再びspaceを訪れていた。

理由は至極単純で普通にその日に予約してたのを忘れていたからである。

やだ、八幡たらうっかりさん。

だけど、昨日はあんま弾けてなかったからちょうどいい機会だったな。

 

その後も俺はしばらくギターを弾き続けた。

しかし、俺は自分自身の変化に気づかないわけがなかった。

昨日の一件のせいか俺は昔の曲....アブアル時代に弾いていた曲を弾きたい衝動が生まれていた。

昔何度も弾いた曲なのでほとんど覚えてはいるのだが.....

やはり1人だと物足りないんだよなぁ.....

 

なんてことを思いながらスタジオを出たら.....

 

「あら?八幡も来ていたのね」

 

「ん?ああ、お前こそ自主練か?」

 

「そうよ、日々の練習は欠かせないわ」

 

「相変わらず真面目な奴だなぁ....」

 

俺と同じように練習をしに来ていたらしい湊と会った。

 

「そういう八幡だって頻繁にここに来てるじゃない」

 

「俺は練習っていうか....ただの自己満足みたいな感じだから」

 

「そう、八幡はアブアルに戻る気はないの?」

 

「できることならやっぱり戻りたいとは思ってる....」

 

「早くしないと後悔することになるわよ、時間は有限なのよ?」

 

「実はな.....俺たちの学校の文化祭までに戻れるように頼んでみるつもりではある」

 

「私も早くまたあなたのバンドでの演奏を聴きたいわ」

 

「まだ少しだけ待っててくれ」

 

「ええ、それは私のわがままだもの」

 

なんだかんだ言って初めて会った日からで考えるとこいつとの関わりも相当長いものになってきてるからな。

それに...こいつは俺がバンドにいた頃を知ってる数少ない奴だしなぁ....

 

「まさか....湊とこんな会話する日が来るとはな.....」

 

「あら?それはどういう意味かしら?」

 

「ん?いや、お前も丸くなったなぁって思ってな」

 

「そうかしら?でも、私が変わったのだとしたらそれはRoseliaのみんなのおかげね」

 

「お前からそんなこと聞く日が来るなんてお前と会った時には思わなかった」

 

「あの時はまだ余裕がなかったのよ.....」

 

あ、やっぱり少し昔話は恥ずかしいんだ....

 

「まぁそれはお互い様だ」

 

「たしかにあの時の八幡は余裕のかけらもなかったわね」

 

「あんま、いじめんなよ俺を」

 

本当に俺のメンタル豆腐だからな?

というかもはやメンタル弱すぎてもはや水とか言えるまでにある。

 

「八幡もだいぶ変わったわね」

 

「そうだな、それもお前のおかげかもな」

 

「わ、私は別に何もしてないわ」

 

「そんなことないぞ、お前のおかげで俺は進めたんだ」

 

「だから私は別に....」

 

「ん?顔赤いけど体調でも悪いのか?」

 

「八幡が急にらしくないことを言うから.....少し」

 

ああ、急に礼を言われて照れてるのか、なんだこいつも俺と同じ側の人間なのか?

 

「お前友達少ないだろ?」

 

「どうしてわかったの?」

 

「いや図星かよ....」

 

「ええ、昔から積極的に人と話す方ではなかったわね」

 

「人のことは言えないけど想像が簡単にできんな....」

 

本当どんだけストイックにやってきたんだよ.....

まぁ、あの歌声なら納得するけどな.....

 

「そういえば八幡、前にしたあなたの家の猫を見せてくれる約束いつ守ってくれるのかしら?」

 

あーそういえばこいつにそんなこと言ったことあったらしたな。

アレはその場で終わるものだと思ってたんだが.....

こいつは本気だったか.....

まぁ約束したのは事実だし....

 

「....お前このあと暇か?」

 

「特に予定はないわ」

 

「なら、このあとすぐにでも見せてやるよ」

 

「.....本当?」

 

「ああ」

 

めちゃくちゃ嬉しそうだな.....

 

「じゃあ早速行きましょう」

 

「いや、その前に昼飯でもどうだ?」

 

時間的にもそろそろだし俺の家には今誰もいないから用意もされてないしな。

 

「そうね、じゃあまず昼食をとりましょうか」

 

「なんか希望はあるか?」

 

「特にないわね、八幡に任せるわ」

 

あー、出た!

男が困る問題ランキングでも上位の質問。

これでガチのとこに行けば引かれるしかといってあまりにも普通なところに行ってもダメな男認定されてしまうという恐ろしい質問だ。

だけどこいつの場合そんなこともないか....

 

「じゃあ俺の行きつけに行くか」

 

「ええ、なら案内してちょうだい」

 

*****

 

そして俺が湊を案内したのは当然のごとくサイゼだ。

そうサイゼそこはまさにこの世に生まれ疲れ果てた若者の心を癒す楽園、ヴァルハラ、サンクチュアリといっても過言ではない。

いや、それ以上の言葉が相応しいな。

 

「.....」

 

「なんか不満だったか?」

 

「いえ、ここはライブの後によく来るのよ」

 

「へぇお前らそんな打ち上げ的なことやらなそうだと思ってたんだけどな」

 

「打ち上げというより反省会ね、その日のライブの反省はすぐにすべきだわ」

 

「やっぱボーカルが似てると思考も同じなのな」

 

「どういうこと?」

 

「いや、俺のいたバンドのボーカルがお前に似てるんだけどよ。いってることがそっくりなんだよ」

 

「そうなのね....。ぜひ一度話してみたいわね」

 

「spaceで会ったりしないのか?」

 

「会ったことも話したこともあるけど....雪ノ下さんだけはあまり喋ったことがないのよ」

 

「あーそれはアレだ、ちょっと話しかけるタイミングを他の2人に奪われてるだけだ」

 

「そうなのね、一色さんと由比ヶ浜さんはリサと仲がいいのよ」

 

「そうなのか?まぁ確かに気が合いそうではあるけどな」

 

「昔からリサは私のことを心配して自分のやりたいことをできてないんじゃないかって心配してたのだけれど、必要はなさそうね」

 

「あいつ人当たりいいからな、少しは見習いたいもんだけど」

 

「そうしたら八幡が八幡じゃなくなるわよ?」

 

「なんだかんだ言ってお前俺をグサグサしてくるよな.....」

 

「普段あなたの周りの人がやってるのを見るとついやりたくなってしまうのよ」

 

「....やっぱここで解散にするか」

 

「冗談だから許して.....」

 

「いや、俺のも冗談だから....」

 

本気で心配そうな顔するなよ、罪悪感やばいから。

つか、どんだけ猫好きだよ....

俺もだいぶだと思ってたが.....こいつには到底及ばないな。

 

「でも、お前もやっぱ今井のことは大切なんだな」

 

「当然よ、リサがいなければ今の私はいないわ」

 

こいつ結構恥ずかしいことをさらって言えるタイプか.....

 

「じゃあそろそろ行くか」

 

「ええ、楽しみだわ」

 

*****

 

こうして俺の家に向かい出したわけだが....

サイゼから俺の家までは地味に遠い、歩いて20分くらいかかるのでその間は当然のごとく湊と話すことになるのだが.....

 

先程から湊は猫のことを考えているのか上の空で会話が続かないんだよな.....

今のこいつでも反応しそうな話題は.....

 

「ところでなんでお前はそんなに猫が好きなんだ?」

 

「昔、猫を飼っていたの、その時から猫は好きね」

 

「どんな猫だったんだ?」

 

「それは....」

 

案の定猫の話をし出したら会話も続いて俺の家に着いた。

 

「ここが八幡の家なのね」

 

「ああ、今日は家に誰もいないから気を使わなくてもいいぞ」

 

「......人が、誰もいない」

 

やっぱ男と2人は嫌なのだろうか?

でも小町も今日は絶対戻ってこないしな.....

 

「それが嫌ならまた別の日にするか?」

 

「いえ、構わないわ....」

 

まぁ何かする度胸もないんだけどな。

 

「それじゃあ.....お邪魔するわね」

 

「ああ、そこがリビングだから少し待っててくれ」

 

「ええ」

 

そして俺が飲み物や色んなものを準備してからリビングに行くと.....

 

「八幡、猫がいないのだけど」

 

かまくらを必死に探してる湊の姿があった。

 

「多分少し待ってたら来ると思うぞ」

 

「そう....」

 

残念そうだな....

でもかまくらどこにいるかよくわからないからな.....

 

「そういえば八幡には妹がいるわよね?今日はどうしていないの?」

 

「ああ、今日はあいつのバンドのメンバーと出かけてるらしい」

 

「なんというバンドなの?」

 

「ああ、ラビワンって言うんだけど....」

 

「そのバンド....ボーカルが.水色の髪色の人じゃないかしら?」

 

「ああ、そうだけど」

 

「最近よく練習しているのを見るわ」

 

「一生懸命に練習してるからな、いつかライブとかで一緒になったりしたら頼む」

 

「八幡はシスコンなのね....」

 

は?別にそんなんじゃねーし?

ただ妹を世界でもトップクラスで愛してるだけだし?

 

「それにしてもかまくらこないな....少し探してくるから待っててくれ」

 

「わかったわ」

 

さて、かまくらはどこにいるかなっと....

 

とりあえず俺の部屋にはいないだろうから.....

まぁ適当に探してみるか.....

 

ー5分後ー

 

いねぇ....

あと俺の部屋だけ見てないけどまさかな.....

 

「にゃーん」

 

いたわ、普通に俺の部屋のベッドでくつろいでらっしゃるわ。

 

とりあえず湊に知らせるか....

 

「いたぞ、今は俺の部屋にいたから連れてくるわ」

 

「いえ、私が行くわ」

 

え?俺の部屋に?

いや、普段から片付けてあるから別に汚くもないし健全な男子が持ってるような保険の教科書も持ってないから入られても問題はないけど.....

 

「まぁいいけど」

 

「ならすぐに行きましょう」

 

うわ、過去一に輝いてる顔見たわ.....

 

そうして俺と湊は俺の部屋に入ると....

 

「しっかり片付いてるのね」

 

「片付けるようなものも少ないからな」

 

「それで、猫はどこにいるの?」

 

「ああ、そのベッドの上に....」

 

その瞬間に湊はすでにベッドに腰掛けてかまくらを撫で始めていた。

 

「にゃーん」

 

なん...だと.....

かまくらがすぐに懐く....だと?

俺には未だに懐いてくれていないと言うのに.....

 

「にゃーん、かわいいにゃ〜」

 

もうこいつ俺がいるの忘れているだろ、あとで恥ずかしい思いしたりしてた俺は知らないからな?

 

とりあえずしばらく続いてそうだし俺も本でも読むか.....

 

こうして俺と湊はしばしの間それぞれの時間を堪能していたのだが.....

 

気づけば30分程度が立っていたのだが.....

 

「どうしてこうなってるんだ.....」

 

「....すぅ」

 

なんでこいつかまくらを抱いて俺のベッドで寝てるの?

無防備すぎるだろ.....

 

こいつの寝顔....あどけないな.....

 

女子の寝顔など小町以外の人のを見るのは初めての経験で見慣れてるなんてことは断じてないからつい見入ってしまったのは許してほしいところ。

 

そう見てるといくら俺でも少し変な気が起きるわけで....

気づいたらもう少しだけ近くで見ていた。

当然それ以上のことなど考えつかなかった。

そんなことを考えることができないほどにその寝顔は触れれば消えてしまうのではないのかと思うほどに儚かった....

 

「ただいま、お兄ちゃんいるでしょー?」

 

その瞬間いつのまにか帰ってきたらしい小町が俺の部屋のドアを開けた.....

 

「失礼しました〜」

 

「おい!ちょっと待て小町、誤解だから!」

 

割とガチで誤解だから!

お前のお兄ちゃん別に女子を連れ込んだわけじゃないから!

 

「う、ううん、あら?はちまん?」

 

「お、起きたか湊?」

 

まだ寝ぼけてるらしいが意識がはっきりしてから多少のごまかしをしとこう....

 

「寝てしまっていたのね、ごめんなさい勝手にベッドを使ってしまって....」

 

「いや、それは気にしなくてもいいぞ。かまくらも安心して寝てたしな」

 

「.....なんだかいつもよりもよく眠れた気がするわ」

 

「かまくらのおかげじゃないか?」

 

「そうかしら?なんかそんな感じではなかった気がするのだけど.....」

 

「まぁ考えてもそれは仕方ないだろ」

 

「そうね」

 

それからかまくらも起きてリビングに向かったので俺と湊もリビングへと戻る。

 

「あ、お兄ちゃん....」

 

あ、そういえばこいつの誤解を何も解いてなかった.....

 

「小町ちょっとこっちにきてくれるか?」

 

「お兄ちゃん、全部は言わなくていいから....。小町は嬉しいよ....こんなごみいちゃんが女の人を連れてくるなんて....」

 

「お前は母親か、それに俺と湊はそんな関係じゃない」

 

その後小町に事情を説明してなんとか納得してもらった.....

 

「なるほど....まぁたしかにこんなごみいちゃんに彼女さんなんてできないよね.....」

 

「その通りだけどそんな悲しいことを言わないでくれ.....」

 

「八幡?さっきから何を話しているの?」

 

「いや、なんでもないから気にしないでくれ」

 

「どーも、こんにちは!」

 

「あなたが八幡の妹なのね」

 

「はい!小町っていいます!」

 

「あなたたちのバンドが練習してるところはよく見てるわ」

 

「Roseliaの友希那さんにそんなこと言ってもらえると光栄です!」

 

「小町、お前湊のことを知っていたのか?」

 

「そりゃそうだよ!最初は分からなかったけどお兄ちゃんの話を聞いてたところできづいてたよ」

 

「そう、Roseliaが知られているというのは嬉しいわね」

 

「この周辺でバンドをやっていてRoseliaを知らない人なんていませんよ〜」

 

「なんかすごいもんな」

 

「当然よ、でもまだ満足はできないわ」

 

「小町、これがRoseliaのストイックさだぞ」

 

「うん、すごいね。お兄ちゃんも見習いなよ」

 

「無理だ」

 

「そこを即答しちゃうのがなぁ....」

 

「あなたたちも仲がいいのね」

 

「最近なんかよく言われるなぁ.....」

 

「そうだな、でも"紗夜"と"日菜"の2人には負けるけどな」

 

「あら?八幡、いつのまに2人のことを名前で呼ぶようになったの?」

 

「ほんとだ、雪ノ下さんたちでさえ未だに名字で呼んでるお兄ちゃんが.....」

 

「いや、2人とも氷川でそうしないと紛らわしいからってだけだから.....」

 

「そう」

 

なんで女子ってこういうことですぐに不機嫌になるの?

 

「試しに友希那さんのことも名前で呼んでみたら?」

 

「なんでそうなるんだよ、てかそれは湊の決めることというかさ」

 

「別に私は構わないわよ、どう呼ばれようと関係ないわ」

 

「じゃあこのままでいいだろ」

 

「....そうね」

 

「そういえば湊さんに聞きたいことがあるんですよ!」

 

「なにかしら?」

 

「それが....」

 

その後小町も混ざって話していて結局湊は俺の家で夕飯まで食べていくこととなり流石にそれ以上はと帰ることとなった湊を俺は送ることになった。

 

「今日はありがとう、いい休息になったわ」

 

「こっちも結構楽しめた、サンキュな」

 

「それにしても、八幡の家の猫はかわいかったわね。またいつか会いにいってもいいかしら?」

 

「ああ、多分小町も喜ぶよ」

 

「ならまた行かせてもらうわね」

 

普段のこいつからは少し想像つかないくらい今日は新しい一面を知ることができた気がする。

 

「じゃあもう家の近くだからここからは1人で大丈夫よ」

 

「そうなのか、気をつけろよ」

 

「ええ、心配しなくても大丈夫よ」

 

そういって湊と俺は背を向けた。

だが俺はここであることをしなければならない気がした。

さっき名前を呼ばなかった時、あいつから違和感を感じたのだ。

そこで振り返り俺は

 

「友希那、じゃあな」

 

「ええ、また」

 

その笑顔は今日1日の中で1番綺麗だった気がした.....

 




ほんとに最近なかなか文が思い浮かばず駄文となってしまってすいません.....

感想、評価などお待ちしてます。


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第25話

今回ミラクルチケットガチャを4月2日に引いたのですが引き換えも合わせて☆4が4人出てくれました、大満足です!
その後の☆3確定のチケットも☆4出てまじで明日死ぬんじゃないかと思ってますw


 

 

もう直ぐ夏休みが迫ってきてクラスの中でも夏休みの予定を話し合う声が聞こえてくるころとなった。

俺?俺はまだ予定も何もないぜ、はっはっはっ!

知り合い増えたからワンチャンあるかと思ったんだけどなぁ......

どうやらそんなものはなかったようだ.....

いつも通りとっとと課題を片付けて暇人と決め込むか.....

 

本当は戸塚とか戸塚とか戸塚とかとどこか出かけたかったんだけど今戸塚たちは文化祭までにライブができるレベルまで行きたいと練習頑張ってるから誘いにくいし.....

てか、俺誘えるの戸塚だけとか知り合い増えた意味ないじゃん。

 

「ねぇ八幡、今ちょっといいかな?」

 

「ああ戸塚、見ての通り暇だから問題ないぞ」

 

考えてればなんとやらか、ちなみに噂する友達がいないとこんな悲しい言葉になるので注意だ。

 

「夏休みのことなんだけどさ....八幡さえ良ければだけどみんなで出かけない?」

 

「もちろんいいぞ!いつ行く?どこに行く?」

 

「そ、それはみんなの予定を聞いてから決めようかなって」

 

俺としたことが戸塚に誘われたことでつい舞い上がってしまった.....

これも戸塚がAngelなのが悪いな、うん

 

「悪い、取り乱した」

 

「大丈夫だよ、それよりもみんなの予定が揃うといいね!」

 

「そうだな、でも誰を誘うつもりなんだ?」

 

「僕たちラビワンとあと雪ノ下さんたちも誘うつもりなんだ」

 

「雪ノ下たちもか?戸塚そんなに仲よかったか?」

 

そりゃ由比ヶ浜とかとは仲いいの知ってるけど....

雪ノ下と話したことはほとんどなさそうだが.....

 

「練習してるとたまに会うんだよ、色々教えてもらったりして仲良くなったんだ!」

 

「そっか.....まぁ俺はいつでも暇だから」

 

「八幡友達と遊んだりしないの?」

 

ぐはぁ!八幡に80000ダメージ!

もうやめて!もう八幡のライフはもう0よ!

 

「ま、まぁな.....」

 

「やっぱり八幡も練習で忙しいんだね!頑張って!」

 

ほっ、友達が少ないことはバレてない.....よな?

 

「お、おう」

 

「また良ければ練習見にきてね!」

 

「ああ、俺がいて邪魔じゃなければ」

 

「邪魔なんかじゃないよ!八幡が来てくれると毎回アドバイスしてくれるし....」

 

「いや、そんな大したことはしてないし」

 

「とにかくいいの!」

 

「お、おうサンキュな」

 

「また詳しいことは連絡するからよろしくね!」

 

「おう、楽しみにしとく」

 

そうして戸塚は教室を出て行った。

今年の夏休みはいつもより楽しみかもな.....

そんなことを思いながら俺はまた教室の喧騒に耳を傾けるのであった.....

 

*****

ー放課後ー

 

と、思いつつも実は夏休みまでの数日が1番暇だったりもする。

今日みたいにちょっと下校が早いような時もやることもない。

テストがないから勉強しなくていいし俺は部活もやってないしspaceのスタジオを予約してるわけでもない。

そうすると家に帰っても暇だし.....

商店街でも行って時間を潰すか。

 

にしても最近俺よく商店街に行くな、これはもう商店街マスターの称号もらってもいいんじゃね?

まずそんなもんがないと思うけど。

 

とりあえず今日はどこに行ってみるか.....

あの店は今日空いてないし....

あの店は今度じっくり見たいし....

 

まぁ適当に歩いてればいいか。

 

「ふええ、どうしよう....」

 

八幡も歩けば困ってる少女に出会う。

やば、なんか俺ラブコメの主人公っぽくね?

最近、丸山といい羽沢といいこんなふうに会ったしな.....

 

「....どうかしたのか?」

 

それで俺もなんで毎回面倒ごとに首突っ込んじまうんだろうな.....

なんか見てられなくなるっていうか小町相手に高まったお兄ちゃんスキルが発動するっていうか....

とにかくなんか助けようと思ってしまう、我がことながらお人好しなもんだ。

ラブコメアニメなら既に8人くらいの女の子を落としてるだろ。

ほんと次元とか越えれねぇかなぁ....

 

「実は....その....」

 

「なんだ、言いにくいことか?」

 

「いえ、その....道に迷っちゃって....」

 

え?まじで?この商店街そこまで入り組んでないし迷う要素ないと思うんだけど.....

 

「えっと、どこに行こうとしてるか教えてくれるか?」

 

「あ、えーとここです」

 

そういうとスマホをこちらに向けてくる。

てか、そんな風にスマホあるならそれで調べていけるんじゃね?

 

「そこまで離れてるわけでもないな.....」

 

「私、方向音痴で.....」

 

それは方向音痴というにははるかに超越してもはや才能と呼んでいいレベルだが....

 

「そこまで案内しようか?」

 

そこまで難しい道ではないし、俺でも十分案内できるだろう。

 

「そんな、悪いですから....」

 

「いや、暇だし気にしなくていいぞ」

 

というかほっといたら逆方向に行ってしまいそうだしな.....

 

「すいません.....私松原花音っていいます」

 

「俺は比企谷八幡だ」

 

そのまま話を聞くと松原は俺と同い年で花女生らしい。

 

「というか、この辺りってなにかあったっけ?」

 

歩きながらも俺は松原に質問する。

あれ?俺最近コミュ障解消してね?

俺の、俺のアイデンティティが.....

 

「友達の家に行く予定で....」

 

「今回初めて行くのか?」

 

「いや、もうなんども行ってるんだけどね....」

 

それで迷うってすごくない?

戦慄を禁じ得ないぞ.....

 

「松原はちょくちょく迷子になってるのか?だとしたら大変そうだな」

 

「うん、いつも周りの人に迷惑かけちゃって....」

 

「でも、迷子も悪いことばかりじゃないかもな....案外新しい発見があるもんかもしれないぞ?」

 

「八幡君も迷子の経験が?」

 

「まあな.....いいこと半分悪いこと半分だ」

 

いいことは、俺の全てが始まったこと、悪いことはババァと知り合ってしごかれることになったことだ。

 

「八幡君は何があったの?」

 

「まぁそんな面白い話でもないから、ただ俺がギター弾くきっかけは迷子だったってだけだ」

 

「八幡君はギターを弾くんだ?」

 

「ああ、昔はバンドもやってた」

 

「私もバンドやってるんだ」

 

「そうなのか?もしかしてその友達っていうのも....」

 

「うん、バンドの友達だよ」

 

「へぇー楽器はなんだ?」

 

「ドラムを....」

 

なんか意外というか....一見すると頼りなさげなこの少女がバンドでドラムをやってるのか......

 

「なんてバンドなんだ?」

 

「ハローハッピーワールドってバンドだよ」

 

ん?そのバンドなんか聞いたことある気がする.....

どこかで聞いたんだよ......

あ!こないだspaceで練習してたバンドが話題にしてたな、確か....パフォーマンスがすごくて見てるとつい笑顔になってしまうって

 

「私、一度ドラムを止めようとしたんだけど....でも、その時に私を引き止めてくれたっていうか....またドラムをやりたいって思われてくれた人がいるんだ」

 

「.....そっか、お前も案外俺と似てるのかもな」

 

「ふええ、そんな私と八幡君が似てるなんて....」

 

「まぁ思っただけだ気にするな」

 

そしたらさっき教えてもらった目的地は.....

あ.....この一本前の道を曲がらなきゃいけなかったんじゃん.....

 

「あーその悪い、俺も道を間違えた.....」

 

やっぱ俺と松原似てるわ、確実に

 

*****

 

その後もまた話しながら歩きすぐにその目的地に着いたのだが.....

 

「本当にここで合ってるのか?」

 

「うん」

 

いや、だってさ俺の目の前にあるの.....

めっちゃ豪邸だよ?もはや家というか城の域だよ?

こんなとこに住んでる友達とかどうやって知り合ったんだよ.....

 

「じゃあ、俺はこれで.....」

 

「はい、本当にありがとうね」

 

そうして俺がまた来た道を引き返そうとすると.....

 

「あ!かのちゃん先輩来た!」

 

「本当かい?だが私は花音なら必ず来ると信じていたよ」

 

うわークセが強そうなやつらの予感.....

絡まれる前に早く退散しよ.....

 

「あら?花音の後ろにいるのは誰?」

 

「あ、こころちゃん、迷子になっちゃってたんだけどこの八幡君に案内してもらったんだ」

 

「そうなのね!こんにちは八幡会えて嬉しいわ!」

 

テンションたけぇなぁ....

 

「お、おう」

 

「君が花音を導いてくれたんだね?ありがとう、私からも礼を言わせてはくれないか?」

 

うわっ、近くで見るとイケメンなやつだな.....

 

「松原、これがお前のバンドのメンバーか?」

 

「う、うん」

 

「なんつーか個性豊かだな.....」

 

「う、うん」

 

もう松原同じ反応しかできなくなっちゃってんじゃん。

 

「そうだわ!この人も来ればきっとこの後の作戦会議ももっと楽しくなるわ!」

 

え?ちょっと何言ってるのこの人?

なんでオレを参加させる方向でまとめてるの?

でもきっと他の奴が止めてくれるはず....

 

「こころん、それすっごくいい!」

 

「そうだね....時には第三者からの意見が必要かもしれない」

 

あーダメだ、こいつらの思考回路はオレの想像をはるかに超えている....

これならまだ材木座を相手にしてる方が楽かもしれない.....

 

「で、でも八幡君に迷惑かかっちゃうかもしれないよ?」

 

いいぞ松原、何と無くだがここでこの家に入ったら今後色々とめんどくさいことに巻き込まれそうな気しかしない。

だから頑張ってこの3人を説得してくれ.....

 

「あら?八幡は嫌なの?」

 

「いや、そのなんだ....」

 

「じゃあ行きましょう!」

 

ダメだ!話が通じねぇー!

俺がなんでこんなツッコミしなきゃいけないんだよ!

奇跡だよ!こんな俺がツッコミしてるの!

 

「ふええ、ごめんね八幡君.....」

 

「いや、お前は悪くない。だから謝るな....」

 

こうして俺は半ばというか強引に家にお邪魔することになったのだった.....

 

家の中に入ってから率直に俺は異世界にでも迷い込んだかと思った。

だってこの家全部がなんというか....金持ちの家って感じを出しているのだ。

 

「すげぇ.....」

 

「私も初めて入った時はそう思ったよ....」

 

まぁそうだよな....

 

「あ、こころんごめん!なんか置いてある壺割れちゃった....」

 

「そんなこと気にしなくてもいいわよ、はぐみ!」

 

「そうだよ、それよりもはぐみに怪我がなくて安心したよ」

 

「2人ともありがとう!」

 

こいつらを除いて.....

 

「あ!八幡この部屋よ!」

 

「ようこそ、ハロハピの作戦会議の場へ!」

 

芝居掛かった瀬田だがこいつの場合ほんとに様になってるんだよな....

 

「あ!ミッシェルだ!もうきてたんだね!」

 

「う、うんみんなが来るのを待ってたんだー」

 

ミッシェル?

なんだ外人でもいるのか?

 

「.....」

 

見間違えじゃないよな?なんかピンクのクマがいたぞ?

うん、いくら金持ちの家でもそんなものがあるはずないよな.....

よし、もう一度......

 

「ミッシェルはいつ触ってももふもふね!」

 

やっぱりいるわ.....

 

「あ、八幡さんですよね....少し話したいのでいいですか?」

 

「お、おう」

 

なんで俺のこと知ってるの!?

しかもなんかすごい大人びてるし!?

 

「あ、花音さんも来てくれますか?」

 

そうして俺と松原と謎のクマは別室に一度移動する。

すると....

 

「ふぅ.....」

 

頭が取れた!?

なんてことは言わない、案の定着ぐるみか.....

 

「いつもご苦労様、美咲ちゃん」

 

「いえ、もう慣れてますから.....」

 

あ、なんかこのやり取りだけで若干事情が理解できたわ.....

 

「で、なんでこんなところで着ぐるみを着てるんだ?」

 

「それはそのー」

 

「美咲ちゃんはね、ハロハピのDJなの」

 

「DJ?そりゃ随分と珍しいな」

 

着ぐるみを着てとなると世界中探しても多分このバンドくらいだろ.....

 

「でも、なんで今日は着ぐるみを着てたの?」

 

「今回はミッシェルの着ぐるみが新しくなったらしくてその試着をしてたらこころたちが来ちゃって....」

 

その着ぐるみってやっぱ新しくなったりするんだ.....

 

「にしても、ほんとに黒服の人たちの行動力はすごいですよ....こないだのこころたちの無茶振りもこれならなんとかできそうです....」

 

「悪い、その黒服の人っていうのは?」

 

犯罪者集団みたいだぞ.....

 

「なんていうか、こころの家にいるすごい人たちです.....」

 

あ、もう説明できないんだ.....

 

その後軽い自己紹介とかいろんな話を手短に話した。

 

「私も着替えたら参加するので先に部屋に戻っててください。」

 

じゃあ戻るか....あのカオスな部屋に.....

 

覚悟を決めて俺は部屋の扉に手をかけるのだった.....

 

 

 




今回はハロハピメンバーと八幡を出会わせました。
あの3人は書いてて楽しいところがありますね。
ハロハピはなんていうか名言的なものが多いので上手くいかせるようにしたいですね。

感想、評価、ツイッターのフォローなどよろしくお願いします。


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第26話

次のドリフェスに友希那さんが限定キャラとして登場!
....という夢を見たので今からスター貯めてますw
最近はスターもなかなか貯まらなくて苦労してますが.....


 

 

その扉の先にあったものを俺はなんと形容したらいいのだろうか?

それは言葉に尽くせないカオス、あるいは某猫型ロボットアニメのガキ大将のシチューそんな言葉くらいだろうか。

 

「やっぱりここはこうしましょう!そっちの方がみんな笑顔になれるわ!」

 

「さっすがこころん!それならきっとみんな笑顔になるね!」

 

「ふふ、とても儚い意見だね」

 

「あ!花音に八幡!戻ってきたのね」

 

「あれ?でもミッシェルがいないよー?」

 

「あ、あのねミッシェルは用事があるから帰ったよ」

 

「やはりみんなの人気者というのは辛いものだね....だが、どんなに距離が離れようと私たちとミッシェルの心は1つだ」

 

あーなんだろう、こきゅう、たのしい.....

 

「は、八幡君大丈夫?目が、目がまずいことになってるよ!?」

 

いやだってむりじゃん!

こんなのツッコミきれないじゃん!

 

部屋に入って見えたホワイトボードには何が書いてあるのかよくわからないし、この3人はなんでミッシェルが着ぐるみだということに気づかないのか意味不明だし、そもそもこいつらがこんな感じでなんで会話が成り立つのかわからないし、だいたい俺のツッコミも長すぎるし!

 

はぁはぁ.....なぜこんなにこいつらといると疲れるんだ.....

特に喋ってもないのに心中のツッコミだけで体力が半分くらい持ってかれたぞ.....

 

「あーこいつらのことは適当に流さないと持たないですよ....」

 

奥沢いつのまに....

だがお前の言う通りだ....

 

「苦労してんな、お前ら.....」

 

「その気持ちが嬉しいです....」

 

「でも....3人とも真剣に考えてくれてるんだよ?」

 

「それでもこれでよくやってこれたな....」

 

「それは....美咲ちゃんのおかげかな...」

 

「いえ、花音さんにも助けてもらってますよ....」

 

ポピパの戸山と花園も相当だがこの3人はそれをはるかに凌駕している。

例えるのなら戸山たちが初期の●ジータくらいだとしてこの3人はフ●ーザくらいだ。

 

「いつまでそこに立っているの?早く次のライブの話をしましょう!」

 

「はぁ....なんで俺こんなことに巻き込まれてるんだろ.....」

 

「本当にご迷惑をおかけしています....」

 

「お前が謝らなくてもいい....」

 

とりあえず席に着いたが聞きたいことは山ほどある、まともな回答が返ってくるとは思えないが....

 

「まずお前らは何を話し合っているんだ?」

 

「それもちろん、世界中を笑顔にする方法よ!」

 

「あーつまりどういうことだ?」

 

「ふふっ、私たちの目的は世界を笑顔にすること....つまり....そういうことさ」

 

「説明になってねーよ!」

 

はっ!しまった俺としたことがハイテンションツッコミをかましてしまった....

俺、そういうキャラじゃないのに.....

 

「あーつまり要約すると今度幼稚園で子供達に向けてライブをするんですけど....そのライブについて話し合ってます」

 

要約というかもはや別の言語じゃん....

てか、奥沢だから突っ込まなくてもほんとだってわかるけど幼稚園でライブも聞いたことないぞ.....

 

「はぐみたちはね、よく幼稚園や病院の子供達に向けてライブをするんだよ!」

 

 

「こないだの病院でのライブは特に素晴らしいものだったね....あのミッシェルの手品はとても儚かった....」

 

「今度はきっともっとすごいものを見せてくれるわよ!」

 

「うわー!はぐみ今から楽しみでしかたないよ!」

 

「ふふ、元気のいいお姫様だね...」

 

あーなんだこいつら、すきあらば話を脱線させる天才なのか?

そしてすでにこの空気感に適応してる俺は俺でなんなんだ.....

 

「今までよくこいつらの意見まとめられたな....」

 

「えっと、それは慣れてますので....」

 

「曲を作ってるのも美咲ちゃんだもんね、本当にいつもご苦労様」

 

「花音さん....本当にその心遣い心に染み渡ります....」

 

こっちもこっちで違う意味で重症だな.....

 

「で、結局どんなライブにしたいんだ?」

 

「それは、また子供達を笑顔にできるようなライブよ!」

 

「そのためには....以前とはまた違ったことをしなくてはいけないね.....」

 

「やっぱりそうだよね、はぐみもっとあの子たちに笑顔になってほしいもん!」

 

悪い奴らじゃないのはよくわかるんだけどなぁ.....

こいつらは普通の人間が聞いたらバカにするようなことを本気でやろうとしているのだ、まぁバカなのは事実なのだが....

 

「それで、結局どうするの、こころ?」

 

「そうね、それならこんなのはどうかしら」

 

「なになに?こころん、早く教えて!」

 

「曲の終わりになったら私とミッシェルで空を飛ぶのよ!そうすればきっと笑顔になれるわ!」

 

「いや、それは無理だから....いろんな意味で」

 

間髪入れずにツッコミを入れる奥沢、うん確かにその案は採用したくないだろうな。

 

「それならこんなのはどう?」

 

「なにかな、はぐみちゃん?」

 

「曲が終わる前にみんなで子供達に向かってコロッケを投げてキャッチしてもらうんだよ!」

 

「それすっごくいいわね!お腹もいっぱいになるわ!」

 

「いや、それは幼稚園児相手には危ないだろ....」

 

それにキャッチできなかったコロッケ勿体なさすぎるだろ....

 

「それならば、こんななのはどうだろうか?」

 

「期待はしてないけどとりあえず言ってみろ、瀬田」

 

「私がミッシェルとともに華麗なダンスを披露するのさ」

 

「それは楽しそうね!」

 

「いや、ミッシェルの足だとそんな器用に踊れないから....」

 

「いえ、私どもが改良すれば十分に可能なことです」

 

「いえ、とりあえずもう少し話し合ってみるのでまだ待っててもらえますか?」

 

「はい、それでは必要があればいつでも相談ください」

 

「毎度ご苦労様です」

 

.....今の誰!?

なんで奥沢は普通に対応できてるの?

え?あいつもなんだかんだやばいやつでは?

 

「えっとね、今のはこころちゃんの家にいる人たちで私たちのライブの手助けをしてくれるんだ」

 

「通称黒服の人です」

 

「まんまだな」

 

「でもいつも黒服の人たちの行動力はすごいよね....」

 

「たまに現実離れしたこともしてきますからね....」

 

ちょっと怖いからどんなことがあったかは聞かないでおくとして結局会議も進んでないじゃん、てかさなんで俺ここにいるんだっけ?

 

「美咲たちは何か考えはないの?」

 

「うーん急に言われても考えつかないなー」

 

この状態で考えつけるやつの方がすごいけどな....

 

「いやさ、思ったんだけど....さっきの案を普通に他の方法で実行すればよくないか?」

 

「それは、どういう意味かな?」

 

「例えば弦巻の案は実際に飛ぶのは無理があるから例えば天井のあるところでライブするのならロープで弦巻を吊るしてみるとかさ、北沢の案は普通にライブが始まる前にコロッケを配ってライブ中に食べながら見れるようにするとかさ、瀬田の意見なんかはミッシェルとってより普通に園児と踊れるような踊りを考えて一緒に踊ってみるとかさ」

 

「八幡すごいわ!あなたの意見なら私たちのやりたいことがぜーんぶ叶えられるわね!」

 

「まぁ確かにそういうふうなことならできるかも.....」

 

「それに子供たちも喜んでくれそうだね!」

 

「今までよりもさらに儚いライブになりそうだね.....」

 

相変わらずこいつの言うことはよくわかんねぇ....

儚いってまずなに?

 

まぁとにかくアイディアも出たしこれで俺も帰れるだろ.....

 

「もうこんな時間なのね!それじゃあ今日の作戦会議はここまでにしましょうか!」

 

「そうだね、私もそろそろ帰らなきゃ.....」

 

この流れですぐに帰ってしまえばもう大丈夫だろう....

 

「じゃあまた明日もまた集まってもっと素敵なアイディアを出し合いましょう!」

 

はー明日も集まるのか....

ご苦労なことで....

 

「それじゃあ明日もよろしくね!八幡先輩!」

 

え?

 

「八幡がいてくれるおかげで次のライブはより良いものとなりそうだ」

 

え?なんで俺も参加の流れになってるの?

 

「本当にすいません....うちの3バカが」

 

「もうこの際乗りかかった船だと思うわ....」

 

なんか無断で行かなかったら家まで来て強制連行されそうな気しかしないし.....

 

もう悩んでも仕方ないし....とりあえず帰るか....

 

「は、八幡君!今日は本当にありがとうね」

 

「ん?本当に気にしなくていいからな、あんまお礼言われると違和感しかないからな」

 

「それじゃあ....またね」

 

「おう、また明日」

 

*****

 

それから俺とハロハピは何度か集まってライブについて話したいな今日はライブ前日から準備である。

当然のごとく俺も駆り出された。

ほんと普段働かないやつを働かせるとかどんなブラックバンドだよ....

 

「すいません次こっちお願いします」

 

「おう、任せろ」

 

「ねぇねぇみーくん、ここの飾りだけはこんな感じでいーの?」

 

「あーちょっと待ってて今行くから」

 

こんな感じで現場は大忙しで準備をしている。

 

あの3バカもよく働いている。

なんかあいつらの場合バカだけど一生懸命でほっとけないというか....

なんだかんだ....こんな風なのもたまには悪くないとさえ俺に思わせちまったくらいだしな。

 

「んじゃ、もう少し頑張りますかね....」

 

「ご苦労様八幡君、私も手伝うよ」

 

「おお、サンキュー」

 

「これを飾り付ければいいの?」

 

「ああ、高いところは俺がやるから松原は下の方を頼む」

 

「うん、わかったよ」

 

あの時、こいつに声をかけなかったら、それ以前に商店街に行かなかったら、そう考えたら俺がこいつらとこうしてこんなことをしているのも運命ってやつかもな。

最近いろんな人に会って、らしくもなく運命なんてものまで信じ始めてるな、俺。

 

変われたんだな、多分俺も。

もう、十分ではないだろうか、あいつらの元に帰るのに俺は、もう.....

 

「八幡君?こんな感じでいいかな?」

 

「おう、いいんじゃないか?」

 

「八幡君の方も大丈夫?」

 

「あ、悪い少しボーっとしてたわ。すぐに終わらせるから」

 

「それじゃあ私もやっぱり手伝うよ」

 

「でも多分届かないんじゃないか?」

 

「ここにある踏み台を使えば大丈夫だと思う」

 

「そうか、なら頼むわ。気をつけてな」

 

その後も俺たちは2人で準備を進めていった。

 

「松原?大丈夫か?届かないなら後で俺が...」

 

「後少しだから....」

 

爪先立ちになってるけど大丈夫か?

転んだりしないだろうか?

 

「あっ、届いた!ってきゃあ!」

 

「松原!」

 

台の上でバランスを崩す松原俺は夢中で駆けだす。

 

「ふええ....いたたたって八幡君!」

 

状況を説明しよう今俺は松原を抱きとめる形で下にいる。

つまりだ、今....俺は.....

 

「わ、悪い、とっさに助けに入ったんだが....間に合ってよかった。怪我はないか?」

 

「う、うん大丈夫だよ....また助けてもらっちゃったね」

 

「....お前が怪我をしたら....明日のライブで子供達を笑顔にできなくなるだろ」

 

「八幡君....」

 

「それはそうと松原....悪い、上からどいてくれないか?その...距離が....」

 

「ふええ!ごめんね、すぐにどくから!」

 

なんか、俺最近ラブコメ主人公って言われても仕方ない気がしてきたわ.....

まぁ俺はあんな主人公みたいに女子に好かれたりはしないがな!

.....はぁ、リア充とか全員爆ぜないかな。

 

 

「は、八幡君!目が、目がなんかこないだよりもすごいことになっちゃってるよ!?」

 

「ははは、気にしないでくれ松原ただちょっと世の中のリア充全員に対して呪ってるだけだから....」

 

「ふええ、もしかして頭でも打ったの!?どうしたらいいのかな〜!?」

 

その後俺たち2人は奥沢に見つけられて無事事態は収束した。

悪いな、俺たちまで迷惑かけて....

 

*****

 

翌日のライブは大成功だった。

そりゃハプニングもいろいろあったさ。

 

「それじゃあ次はあの曲行くわよ〜!」

 

「え?ちょっとそれじゃ順番が....」

 

こんな感じで曲の順番が入れ替わったり.....

 

「ほら、みんなで踊ろう!」

 

園児が乱入してきたり.....

 

「よければそこのご婦人達もどうぞ」

 

最終的には保母さんまで巻き込んでのはちゃめちゃライブとなった....

 

さらに言うなら....

 

「八幡も一緒に演奏しましょう!」

 

「え?でもギターなんて持ってきて....」

 

「八幡様、こちらに用意してあります」

 

「なんで俺のギター持ってんの!?」

 

なぜか俺まで参加させられた....

あの黒服の人たちどうやって俺のギター持ってきたんだよ.....

 

まぁそんなこんなでライブも片付けも終わり....

 

「はぁ...疲れた」

 

「でも、八幡とてもいい笑顔だったわ!」

 

「そうだよ!途中から八幡先輩すっごい楽しそうだった!」

 

「そうか?俺はただただ疲れたんだが....」

 

「楽しんでする苦労は苦痛を癒すもの...つまりそういうことさ」

 

「だからどういう意味だよ....」

 

「薫さんの言葉を理解しきるのは不可能ですよ」

 

「だろうな....」

 

それでも、まぁ確かにちっとも楽しくなかったといえば嘘になるが....

 

「はぁ、もう次は手伝ったりしないからな」

 

「でも、今回は本当にありがとうね。私も楽しかったよ」

 

「まぁ、いつもより3バカを抑えてくれて本当にハロハピに入って欲しいくらいですけどね」

 

「でも、やっぱお前らは5人でハロハピなんだろ?」

 

「そうね、でもまた八幡が私たちと笑顔になりたいのならいつでも言ってほしいわ!いつでも私たちは歓迎するわ!」

 

「あっそ、もうごめんだよ」

 

いつか、また....くらいなら考えといてやるけどな.....

 

「それじゃもう疲れたから帰るわ、またな」

 

「ええ、また会いましょう!」

 

*****

 

あいつらはもう見えないしもういいか、本当はもう少しだけ抑えておきたかったんだけどな....

 

「楽しかったぜ....」

 

多分俺は今珍しく笑ったんだろうな、気持ち悪さとかない純粋な顔で...'

やっぱり俺は素直にはなれなそうだな

 

今度は苦笑を浮かべ俺は家への道を歩くのだった....




今回はここまでです次回からは夏休み編に入っていきたいと思います!

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第27話

今回から夏休みに入っていきます。
なるべく全バンドと違った思い出を作らせてあげたいものです。

最近こないだまで運が良かった代償かバンドリのガチャ運が悲惨なことになり出しましたw


 

今日は待ちに待った終業式である。

この日が嫌いというやつなどよほどきつい運動部くらいだろ。

葉山が去年の夏は思い出したくないとか言ってたしな、やっぱ運動部って怖い。

 

「あ!八幡、こないだ話してたことなんだけどさ...」

 

「ああ、みんなで出かけようって言ってたあれか」

 

「そうそう!あのあとみんなに予定を聞いたんだけどね、8月のこの日はどうかなぁ?」

 

「おう、その日も予定はないから大丈夫だぞ」

 

「ならよかったよ、それでね、今のところみんなで海に行かないかって話になってるんだけどそれでいいかな?」

 

海かぁ....

海ってリア充の巣窟のイメージであまり好きじゃないんだよなぁ.....

ん?まてよ.....海に行くということは泳ぎに行くってことだよな....

ってことは水着が必要になる、すると戸塚の水着姿が見られるのか!?

 

「よし、海に行こう、むしろそれしかありえないだろ」

 

「八幡も海が好きなんだね!僕も海で泳ぐの好きなんだ!」

 

戸塚と一緒に....海に.....

 

やべ、想像してたら頰が緩んで....

危ない危ない、危うくクラスメイトに気持ち悪がられるとかはだった。

って、俺のことなんて誰も見てないか、はっはっはっ

 

テンションがだいぶおかしいことになってきてるな、これが夏の魔法ってやつか?

 

「楽しみにしとく」

 

「うん!絶対にみんなで行こうね!」

 

「おう」

 

*****

 

その後終業式を終えクラスでHRを済ませたらばもうそこにあるのは夏休み!

だけど.....別にやることもなかったんだよなぁ....

 

「あっ!ヒッキー!」

 

この声は....まぁ考えるまでもなくあの呼び方するのはあいつだけだよな.....

 

「なんだよ、由比ヶ浜?」

 

「ううん、見かけたから声をかけただけだよ!」

 

「雪ノ下たちは一緒じゃないのか?」

 

「今待ち合わせしてるとこ、この後すぐに練習行くからね」

 

「相変わらず熱心だな」

 

「だってもっと上手くなりたいし!」

 

「そっか....」

 

「結衣ちゃんおまたせ〜、って先輩?」

 

「おう、お前は久しぶりだな」

 

由比ヶ浜とは同じクラスだからちょくちょく話したりもするがこいつと雪ノ下とはそこまで関わる機会もなく話すの自体が久しぶりになってしまうことも珍しくない。

 

「またせてしまったかしら、ごめんなさい.....。で、なんであなたがいるのかしら、比企谷君?」

 

「たまたまここで由比ヶ浜とあっただけだ」

 

最初の頃はマジでこんなことを真面目な顔して聞いてくるからめちゃくちゃ嫌われてるのかと思ってたがこいつの場合マジで純粋に聞いてるだけだからなぁ....

 

「ヒッキーも彩ちゃんから話聞いてるよね?」

 

「ん?ああ、海に行くっていうあれだろ」

 

「そうそう!あたしたちが一緒に出かけるなんてすっごい久しぶりじゃない?」

 

「んー確かにそうだな、てかそもそも元から俺はそんなお前らと出かけてなかっただろ?」

 

「それは先輩が毎回断るからですよ〜」

 

「そうね、毎回めんどくさいの一言で断るんだもの」

 

「いや、それは俺なりの気遣いであってだな....」

 

だって女子3人と出かけるのとかハードル高すぎない?

むしろ数回でも一緒に行ったのが奇跡だよ?

 

「まぁそんな細かいことは置いといて」

 

置いとくなら最初からその話をしないで欲しいんだけど.....

 

「楽しみにしてるね!」

 

「私も楽しみにしてます!」

 

「.....私もよ」

 

雪ノ下まで珍しいこともあるもんだな、冗談じゃなく雪とか降るんじゃないか?

 

「あなた、今失礼なことを考えたわね?」

 

「いや、そんなことないぞー」

 

「あなたは隠し事が下手くそなのよ」

 

「そうですね、わかりやすいです」

 

え?そんなに?俺的には上手く誤魔化せてると思ってたのに.....

恥ずかしい.....

 

「え?そうなの!?あたし全然気づかなかっただけど!?」

 

あーよかったー1人だけめっちゃ俺のこと信用してくれてる奴いたわ....

 

「あなたはそのままでいいと思うわ」

 

「えーそれなんかひどいし!」

 

この空気懐かしいなぁ.....

 

やっぱもうそろそろだよな。

 

「雪乃さん、やっぱりここで伝えた方がいいでよね?」

 

「そうね、それがいいと思うわ」

 

なんか話し合ってから由比ヶ浜が繰り出す。

 

「あのさ、ヒッキー。夏休みの終わりにあたしたちライブをするんだけどさ.....そのライブで私たちの今の音聞いてくれないかな?」

 

「私たちあれからたくさん練習しました」

 

「もし、あなたが戻りたいと言った時にいつでも迎えられるようにしてきたの....だから、一度でいいから聞いて欲しいの」

 

今までで1番真剣な顔でそう頼まれる。

そして俺の返事ももう、決まっている。

 

「行かせてもらう、俺もちょうどお前らに話したいことがあるしな」

 

俺の返事を聞いて3人とも顔が明るくなる。

 

「それなら、ここで話してるわけにはいきませんね」

 

「そうね、すぐに練習しないと」

 

「そうと決まったら早く行こうよ!」

 

「頑張れよ」

 

「ええ、楽しみにしててちょうだい」

 

そういうと3人は去っていった。

 

「俺もとりあえず帰るか....」

 

*****

 

「そういえばさ、ヒッキーにあのこと言っとかなくて大丈夫だったかな?」

 

「あー確かにいうのを忘れてましたね」

 

「彼ならオーナーとも仲が良いのだし、もう聞いてると思うわ」

 

「でも本当に残念だよねー」

 

「でも、こればかりは私たちがどうにかできる問題でもないし....」

 

「そうね、思い出の場所だものね....」

 

そう、それでもそれは避けれぬ運命なのだから.....

 

*****

 

ー夏休み初日ー

 

あーやることねー

ぼっちかつ部活もやってない、そのため本気で予定と呼べるものが少なすぎる....

 

家にいても暇だし....

そういや、戸山たちはオーデションうまくいったのだろうか?

気になるな....

 

『今、市ヶ谷のうちで集まってたりするか?』

...と、前ならこんな感じに自分から連絡とかなかなかありえないことだな....

 

これで返信待つか.....

 

それからおよそ一時間後

 

『はい!今みんなで有咲の家の蔵で集まって練習してます!!』

 

『それならこれから向かっても迷惑じゃないか?こないだの続きを見たい』

 

『もちろんです!待ってますね!!』

 

メールでも元気なやつだな.....

とにかく準備して向かうか.....

 

あいつらのことだしきっと大丈夫だと思うけど....'

 

その後俺が準備を終えて市ヶ谷家に着いたのが約30分後、もう俺も何度か来てて市ヶ谷のおばあさんに顔と名前覚えられてきてしまった。

ほんと、こんな深い関わりができるなんてな....'

 

「邪魔するぞ」

 

「あ!八幡先輩!」

 

んでもって戸山のこの反応もそろそろテンプレ化してきたな。

 

「おう、あれから調子はどうだ?」

 

「八幡先輩が前に来てくれた時の後....やっぱりまだ何がダメなのかわからなくって....」

 

そこで戸山の言葉が途切れその代わりにりみが言葉を繋ぐ。

 

「でもね、私たちちゃんと何が足りてなかったのか気づけたんだ」

 

「私たちはまだ、足りてないところがたくさんある」

 

「でも、それをみんなで埋めればいいんじゃないかって....」

 

「ポピパは、5人でポピパなんだって」

 

りみの言葉は山吹、市ヶ谷、花園が繋ぐ。

 

「そっか、やっぱりしっかり気づけるんじゃねーか」

 

「八幡先輩がアドバイスしてくれたからです」

 

市ヶ谷は謙遜するがそれは違うと否定しないとな。

 

「あの時も言ったけど俺はアドバイスなんかしてない」

 

「八幡先輩ってば素直じゃないんですから〜」

 

「お前せっかくいい雰囲気なのになんでそんな空気読まずに雰囲気ぶち壊すんだよ!」

 

ついツッコミを入れてしまった....

これじゃもう場の雰囲気が.....

 

「ま、香澄らしいな」

 

「そうだね」

 

気づけばみんな笑ってる、そうこいつらは自分たちで進めたんだ。

そのことはいつかこのバンドを支える強さになるのだと....

そう、俺は確信した。

 

「じゃあさ、せっかくだし先輩にも聞いてもらおうよ!」

 

「そうだね、今度こそ先輩に褒めてもらわなきゃね」

 

「八幡君聞いてくれる?」

 

「もちろんだ」

 

そのためにここに来たんだしな.....

 

「聞かせてもらうぜ、お前たちの音を」

 

それからポピパの5人は演奏をした。

その姿は見ている俺が思わず見入ってしまうほどに輝いていて....

そこにいたのは前の迷っていた少女ではなくありのままの、今出来る精一杯の自分たちを奏でる少女だった。

 

「どうでしたか?」

 

「そうだな.....」

 

5人は息を飲んで俺の感想を待つ。

 

「演奏はまだまだだな」

 

「そんな....」

 

「だけど、今までのお前らの中で1番いい演奏だった」

 

「え?でも、まだまだだって.....」

 

「確かにお前たちの演奏技術自体はまだまだだと言ったけどな市ヶ谷、技術があっても....気持ちがないバンドの演奏は聞いててつまらないと思うんだよ」

 

「今の私たちならspaceのオーディションに合格出来るかな?」

 

「それは俺が一概に言えることじゃないけど.....お前たちがそのまま5人でやってけば受かるさ、必ず」

 

「みんな聞いた!?八幡先輩が珍しく素直なこと言ってるよ!」

 

「やっぱお前はダメだ」

 

「えーなんでですかー!?」

 

「自分で考えろ」

 

「えーひどいですよ〜!」

 

「いや、香澄今のは流石に....」

 

「お前が悪いな」

 

「さーやに有咲まで!?」

 

この後も俺はこんなコントじみたことをしながらもポピパの練習に付き合うのだった。

 

*****

 

気づけばもう時刻は6時を過ぎて.....

 

「そろそろ小町が心配してる....いや、怒ってる頃かな」

 

「大丈夫なんですか?」

 

「ああ、連絡は一応入れてあるから...多分説教程度で済むだろ」

 

「八幡先輩も年長者としての威厳がないよね」

 

「おい、花園お前人が気にしてることなんのためらいもなく抉るのやめない?」

 

「え?私そんなことした?」

 

「え?自覚なし?」

 

「でも香澄よりは遥かにマシだろ」

 

「そんなにこいつもひどいのかよ.....」

 

「そんなことないですよー、私だってしっかりお姉ちゃんしてるんですから!」

 

「あはは、香澄いつも叱られてるじゃん」

 

「そんなことな....くもないかも.....」

 

ほんとに威厳ゼロなんだな....

 

「じゃあ今日の練習はここまでにして解散にするか」

 

「そうだね、私もうお腹ぺこぺこだよ」

 

「私も」

 

「私もお腹すいたな〜」

 

「じゃ、俺も帰るから、オーディション頑張れよ」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

見事に揃った返事を返すポピパの声を聞きながら俺は家路につくのだった.....

 

*****

 

「じゃあまた明日も練習頑張ろうね!」

 

「そうだね、絶対に次のオーデションに合格しないとだね」

 

「次のオーデションが最後のチャンスだからね.....」

 

「絶対にみんなでspaceのステージに立とうね!」

 

「そうだな、ほんと急な話だったよな〜」

 

「私、今でも信じられない」

 

「こないだまでお前すごかったからな.....

 

「確かにあれは怖かったね....」

 

やっぱり私はこの5人でステージに立ちたい!

だからこの最後のチャンス掴んでみせる!

 

*****

 

ー翌日ー

 

今日は午後から予約を入れていたのでスタジオを訪れてギターの練習だ。

アブアル時代の頃の曲を練習するようになってからよりギターを弾くのが楽しくなってきてついつい練習時間も長くなる。

 

今回も危うくスタジオの使用時間を過ぎてしまいそうになったがギリギリのところで気づいて俺はスタジオを出た。

 

なんだかんだこのspaceのスタジオを使うようになってもう5年目になるのか?

なんか愛着も湧くもんだよなぁ。

 

「おや、そこにいるのはハチじゃないか」

 

「あ?なんだよババァ」

 

「相変わらずの挨拶だね、元気にやってるかい?」

 

「ああ、このスタジオのおかげでな」

 

「そうかい、それならこのスタジオの運営もしがいがあったってもんだね」

 

「何言ってんだババァ感傷に浸るほどではないだろ」

 

「そういえばハチにはまだ言ってなかったね」

 

「何をだよ?」

 

なんだろう、俺の中で聞きたくないという思いも強くなってきている。

それでも俺はババァに続きを急かした。

 

「ハチ、私はこの店をspaceを閉めるよ」

 

な....spaceを閉める.....?

ここは、俺にとって思い出深い場所だ。

自宅と同じか....それ以上に安らげたほどだ。

 

「そうか....あんたはもう....」

 

「ああ、もう私はやりきったよ」

 

「具体的には....いつ閉めるんだ?」

 

「8月の最後にライブがある、それでこの店は終いだよ」

 

雪ノ下たちが俺を誘ったライブで最後....

 

「あんたが立たないのは残念だけどね」

 

「それは...悪かった」

 

「あんたが素直に謝るとむず痒いねぇ」

 

オーナーは気を緩ませようといつも通りに振る舞うが俺にその強さはない。

 

「....とりあえず今日は帰るわ」

 

「ああ、閉めるまではここに来るんだろう?」

 

「ああ....」

 

店から出た後も俺は深い喪失感に苛まれ続けた。

今の俺には、海のことなど想像もできなかった.....

 

 




今回はここまでです。
8月でspaceとはお別れする予定は前から決めてありました。
こういう思い出深い場所がなくなるのは、辛いものがありますよね.....

感想、評価などよければお願いします。


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第28話

番外編は番外編でまとめたいんですけどそのやり方がわからない......
ちなみに今回から過去編に入っていきます。

最近バンドリの調子が悪くてちょっと萎えてます、フルコン数が全然伸びない.....


 

 

 

ババァと話を終えて俺は家路へとついていた。

不思議とそんなに錯乱はしていない。

人はショックなことがあった時最初は案外現実味を感じられないものだとつくづく思う。

 

それからも俺はどこか上の空という感じで家に着き、自室に入り、それからしばらくして夕飯となった。

 

「なぁ、小町お前spaceのこと聞いたか?」

 

「うん、小町も昔から知ってる場所だから寂しいよ....」

 

「お前はライブにもよく来てくれてたしな」

 

「それに最近は練習させてもらってもいたから余計に残念だよ〜」

 

「ほんとに他のライブハウスに行かなかったからな」

 

「え?この街他にもライブハウスあったの?」

 

「知らなかったのか?この辺にはライブハウスがなぜか多くあるんだよ」

 

「へーてことはひとまずバンドの練習場所は確保できそうだね」

 

「その点は心配いらないけど、もうあそこでライブやれなくなるのはな....」

 

「小町たちもダメ元だけど今度やる最後のオーデションに参加するつもりなんだ」

 

「そっか、頑張れよ」

 

「お兄ちゃんはさ、それでいいの?」

 

ふと小町が真剣な顔でそう尋ねてくる。

 

「.....なにがだよ」

 

「お兄ちゃんはさ、spaceの最後のライブに出なくてもいいの?」

 

「.....あそこに出れるのは"バンド"だけだ、俺みたいなぼっちギタリストの立てるところじゃねーよ」

 

「ふーん、ならいいんだけど」

 

小町の言おうとしてることは本当は分かってる。

でも、なぜかそのことをすぐやろうとは思えなかった。

結局俺は過去の思い出に鎖で繋がれているらしい。

進んでも、それは鎖が伸びる範囲まででしかない。

 

しばらく思い出してなかったから忘れかけてたがそんなことが許されるはずもないのだから.....

 

その夜俺は自室で昔のことを思い返していた。

俺とあいつらの出会いから全てを.....

 

*****

 

「やべぇ....」

 

何がやばいかって?

なんと驚きなのだがもう直ぐ中学生になろうという俺が迷子になってしまったことだ。

冗談抜きでこれはやばい。

マジで引っ越してやることなくて暇だからって家から出て散歩しようなんて考えるもんじゃないな、うん、やっぱり次からは暇な時はゲームかアニメを見ることにしよう。

もう八幡は外に出ないからな!

引きぼっち最高!!

 

なんて考えながら歩いても全く知らない道が続くだけである。

本当になんで知らない街を1人で歩こうと思ったんだよ.....

そんなことを考えながら歩いていると不意に一軒の店を見つける。

 

あそこで道を聞けば帰れるかもな.....

そう思った俺はその店を目指して歩いた。

 

えっと店の名前は...space?

なんの店だかよくわからないな。

まぁ道がわかればなんでもいいや。

 

そう思って店の中に入ったのだが人の姿が見当たらない。

だが受付らしいものがあるので待ってればすぐに人が来るだろう。

 

それよりもあそこにある通路がどこに繋がってるか気になるな.....

自分で言うのもなんだが今は好奇心の強い時期だし....

立ち入り禁止とかも書かれてないし少しくらいなら....いいよな?

 

その通路を進むとそこにはいくつかの部屋があった。

その一つを覗くと.....

あれは、ギター?ドラムなんかもあるな、てことはこの店はあれかライブハウスってやつか。

へー前の街にはこんなところなかったから新鮮だな。

 

それよりも中でどんな音が奏でられているのだろうか?

これもまた気になるな.....

少しくらいなら扉をあけてもバレないよな?

 

そして扉を開けた俺はその音を聞いた瞬間体に電流が走ったかのような衝撃に襲われた。

なんというか全身の血が熱くなる感覚、俺は一瞬でその音の虜になっていた。

これが....音楽の力ってやつなのか?

こんな風な音が....俺にも出せたりするのか?

 

「あんた、そこで何をやってるんだい。ここはガキの来るところじゃないよ」

 

あ、やべ、俺としたことが夢中になりすぎて後ろから来てる人に気づかなかった.....

あー絶対怒られるよなぁ....

 

「なんであんたみたいなガキがここにいるんだい?」

 

「いや、それはですね.....」

 

そして俺はこの店に入った理由を話すとこの店のオーナーだと名乗ったその老人は少し顔の表情というか雰囲気を幾分か柔らかくした。

 

「でも、なんで道を聞くだけでここまで入り込んでいるんだい?」

 

と、思ったらすぐにまた元に戻る。

俺この人たぶん苦手だわ。

怖いもん.....

 

「....それは興味本位というか」

 

「なるほどね.....今回は不問にするけど次からは気をつけるんだね」

 

「はい....」

 

よかったぁ....許してもらえたみたいだな.....

 

「....あんた、ギターに興味を持ったのかい?」

 

え?

オーナーからの質問はあまりに唐突で最初は理解できなかったが.....

 

「はい、なんというか全身が痺れるような感じがして....」

 

俺が興味を持ったことはまぎれもない事実だった。

なんでこの人わかるんだよ.....

 

「....この後もまだ時間はあるかい?」

 

「はい」

 

「ならついてきな」

 

「え?」

 

「ぐずぐずしないで早くしな」

 

「は、はい」

 

もう俺とかのオーナーとの間には多分二度と変わることのない上下関係が出来上がったことを悟った.....

 

「あんたギターを弾いたことはないんだろう?」

 

「えっあっと、はい」

 

「少しだけ教えてやるよ」

 

「え?いいんですか!?」

 

「そうだって言ってるんだよ」

 

「本当ですか?」

 

「くどいよ、早くしな」

 

「は、はい」

 

こうしてからしばらく俺はオーナーからギターの基本的な弾き方を教えてもらった。

自分がギターの音を鳴らしているそう感じるたびにテンションが上がって仕方なかった。

 

「驚いたね、この短時間でここまで弾けるようになるなんて」

 

「ありがとうございます」

 

俺がお世辞だと思ってそう言うとオーナーは不意に考え込むような仕草をして

 

「あんたこれからも定期的にここに来てみないかい?」

 

「え?それって?」

 

「ギターを始めてみないかってことさ」

 

「でも俺ギターを買ってもらうことができるかなんて.....」

 

「しばらくはここのを貸してやるよ」

 

そのオーナーからの申し出は俺にとってとても魅力的なものであった。

しかしそれと同時に少しの不安もあった。

しかしそれは天秤にかけるだけ無駄なことだった。

俺はもうすでにギターという楽器の魅力に取り憑かれていた。

 

「はい!それなら是非!」

 

「いい返事だね、これからは今日より厳しくいくからね」

 

「.....お手柔らかに」

 

オーナーの顔を見て俺は若干師匠にする人ミスったかもと思ったがこれからのことを考えたらそんなものは何処かに行ってしまった.....

それから店を出た俺は優しい春風に吹かれて舞う桜に包まれた.....

 

 

 

「あ、道聞くの忘れた.....」

 

*****

 

その後、俺が家に帰るまでに1時間くらいかかったんだよな.....

その日は親も家にいたからめちゃくちゃ怒られたんだよな〜

そのあと俺がギターを買って欲しいと言った時の親たちのキョトンとした顔は今でも笑えるけどな。

最初は子供遊びだろうと思って頑なに買ってはくれなかった親だったが必死に頼み込んだら買ってくれたんだったっけ.....

 

すでにここまでだけで相当な思い出量な気がするけどやっぱあれ以来充実してたのかなぁ.....

 

あーなんかギター弾きたくなってきた、次にspaceに予約入れてたのいつだったかな〜。

あ、明日じゃん。

 

*****

 

翌日俺はspaceを訪れていつも通りにスタジオで時間を過ごしてスタジオを出ると.....

 

「あ....こんにちは、八幡さん」

 

「おう、白金今はひとりなのか?」

 

「はい....今日は私が....1番でした」

 

「そっか、白金は真面目だよな」

 

「もっと....上手になりたいですから」

 

「まぁ湊とやってたらなぁ....」

 

「湊さんに....置いていかれないよう....みんな必死です」

 

あいつも、俺と同じように天才と言われてるし当然メンバーもついていくのも大変だろうに、それでもRoseliaはそんなものを微塵も感じさせない。

こいつらに聞けば少しくらいわかるかもな......

 

「.....お前たちは湊とバンドをやっていて、どんなことを感じるんだ?」

 

「.....そう....ですね....私はやっぱりいつもすごいと思います.....私にはできないことを湊さんはさらっと.....やっていってしまいますから」

 

「やっぱり羨ましいとか思ったりしないのか?」

 

「それは.....もちろん....羨ましいです」

 

「やっぱりそうなのか.....」

 

やっぱり誰に聞いても答えは一緒なのかもな.....

 

「....でも....最近はそこまで思ったりもしません....」

 

「え?」

 

「最近....こんな風に思うようになったんです.....みんなが.....それぞれ違う個性を持つ人が....みんなで全力で演奏すらからこそ....見ている人は感動するんじゃないかって....」

 

違う個性を.....

全力で.....

 

「思い違いだったら.....悪いですけど.....もし何か悩んでるのなら....お話程度でしたら....聞きますよ?」

 

「どうして俺が悩んでると思ったんだ?」

 

「いえ....いつもと.....少し雰囲気が違ったので....」

 

これは素直に見抜かれた俺の負けだろう。

1人で抱え込むのは.....疲れるしな。

 

「いやな、これは俺の話ではない....なんて言い訳ももういいか。いやなspaceの最後のライブがあるだろ?」

 

「はい....Roseliaも....出演します」

 

「俺もそれに出たいところなんだけどご存知の通り俺はぼっちだろ?」

 

「....たしかに1人では....ステージには立てませんね」

 

「それで昔のバンドに戻ろうと思ったんだけどよ、だいぶひどい別れかたしててな」

 

「まだ....話してないんですか?」

 

「いや、もう戻りたいとはだいぶ前に伝えてある」

 

「....ひとまずどういう状況か....教えてください」

 

「わかった」

 

それから俺は今年の4月からの雪ノ下たちとの状況をかいつまんで話した。

 

「情況はわかりました....それでは....なぜ八幡さんは戻らないんですか?」

 

「いやだからそれは俺のせいであんなことがあったからで.....」

 

「私は....八幡さんたちに何があったのかは知りません.....よければそれも聞かせてもらえますか?」

 

ここまで話して最後まで話さないのは信頼してないみたいだよな.....

白金もすごい親身になってくれているし......

そうだよな.....

もう、他の人に相談してもいいよな?

そう思った瞬間俺の口からはもう言葉がこぼれ出ていた。

 

「そうだな.....あれは.....」

 

そうして俺は俺自身長く、ほとんど話したことのないことを話した。

白金は時折頷きながらも最後まで静かに聞いていた。

 

「まぁ....こんな感じだな」

 

話し終えた時にはたいした時間も経っていないのにとてつもない疲労感に襲われた。

気づけば少し汗もかいているようだ。

 

「....そうでしたか....まずは八幡さん....私は、私たちRoseliaは雪ノ下さんたちとすでに面識があります」

 

考えてみればそれは別に不思議なことではない、練習の前後に会ったのかもしれないし、ライブを一緒にやった可能性だってある。

 

「そうか、それで?」

 

「失礼なのかもしれませんが.....八幡さんは深く考えすぎていると思います」

 

「そりゃ俺のせいでこうなってるんだから、軽く考えることなんて許されるはずがない」

 

「....本当は私の口から言うべきではないのですけど.....雪ノ下さんたちも同じようなことを言っていました、あの時は意味がわからなかったけど今ならわかります」

 

「どういうことだよ?」

 

「お互いにお互いが悪いと思ってしまっている....ということです。どちらかが一歩を踏み出せばすぐに....元に戻れると思います」

 

そんなこと....できるのか?

 

「八幡さん、私たちも....似たようなことが前にありました。その立場から言うなら.....仲間を信頼してるならきっとできます....仲直り」

 

そっか、そうなのかな......

深く考えすぎか.....

 

「サンキュー白金、お前のおかげでだいぶ楽になったわ」

 

「それなら....よかったです」

 

別れを告げて俺は格段に軽くなった足で進み出した....

 

*****

 

その夜、俺はまた昔のことを思い出していた。

白金と話してふと思ったのだ。

どうやって俺はあいつらと出会ったんだっけって

 

そうあれは....俺とその少女が出会ったのは、今日のような穏やかな春の1日だった.....

 

 

 

 




今回はここまでです。
次回は雪ノ下との出会いを書いていきます。
これから夏休み前半は多分ほとんどこんな感じで進みます。
それと今回超ご都合主義で八幡が転校生だと言う設定を追加してしまいました、作者の気まぐれをどうか許してください。

評価、感想などよければしていってください。


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第29話

みなさんからの感想を見るたびにどういう感想であってもやる気につながりますね、今まで感想をくれた方ありがとうございます!
これからもよければ読んでください。
令和でも頑張って書いていきますよ〜

ごちうさコラボのバンドリ曲めっちゃ好きなのオレだけじゃないですよね?
あとドリフェスは10連でフェス限紗夜さんが引けました!
みなさんはどうでしたか?


はぁ.....

今日は中学校の入学式か.....

普通の人なら勉強が大変になりそうだな〜とか新しい友達できるかな〜とか部活どうしようかな〜とか不安と期待でいっぱいの時期だろう。

まぁ俺の場合その誰にも当てはまらない、というか俺は普通の人と多少異なる事情を持っているからだ。

 

そう、俺はこの春からこの街に引っ越してきた転校生であるからだ。

まず新しい環境というのがまんまその通りな訳で.....

そもそも俺は社交的とも言い難いしな。

小学校の頃はずっと1人だったぜ、すげーだろ?

 

その後俺はひとまず学校に行き職員室で待機する。

はぁ....自己紹介で噛んだりしないよな?

 

正直なところ新しい学校で友達が出来ないかと期待してるのは否定しないがぼっち生活が長い俺は1人でもいいかとも思っている。

まぁつまり嫌われなければいいかくらいの感覚である。

 

前の学校だとそこそこ酷い目にあっていたからな.....

まぁ別にそこまで気にしてなかったけど。

 

「比企谷君、それじゃあ教室に向かおうか」

 

「はい、わかりました」

 

おっともう教室に行く時間か。

俺の学校生活はこれからだ!

 

....これじゃ打ち切り漫画みたいだな。

 

*****

 

「緊張しなくても大丈夫だからね」

 

「はい」

 

緊張するなと言われてもやっぱ緊張はするんだよな.....

 

「じゃあ呼んだら入ってきてね」

 

「わかりました」

 

とりあえず先生はいい人っぽいよな、うん最悪味方はいる。

最悪な展開が頭をよぎるがそれをなんとか振り払う。

 

「じゃあ入ってきて〜」

 

気づけば先生に呼ばれていたので俺は教室のドアに手をかけ開ける。

 

「わぁ〜」

 

するとそこには好奇の視線が俺に集められていた。

うわぁ、緊張がやばい.....

心臓がばくばくしてる。

 

「じゃあ自己紹介してもらっていいかな?」

 

「えっと、〇〇から引っ越してきた比企谷八幡です、よろしくお願いちます」

 

噛んだ.....早速やらかした.....

そんな風に後悔する俺とは対照的に

 

「ははは、そんな緊張しなくても大丈夫だって」

 

教室のみんなはひとまず俺を受け入れてくれたようだ。

 

「じゃあ自分の席に着いてくれる?」

 

「はい」

 

アニメとかだと空いてる席に座ってとか言われるが現実ではそんなことはあり得ない、なぜなら出席番号順の席で並べられているからだ。

 

あらかじめ言われていた席に着きひとまずホッと胸をなでおろす。

 

「俺は葉山隼人よろしくな」

 

早速一つ前の席の男子が話しかけてくる。

うわぁなにこいつすっごいイケメン、絶対陽キャだな。

 

「あたしは由比ヶ浜結衣っていうんだ、よろしく!」

 

すると葉山の右隣の少女が話しかけてくる。

こっちもかなりの美少女だがどうもバカっぽさが垣間見えるな.....

 

「お、おうよろしゅく」

 

「また噛んだな」

 

クソだなんだこのイケメンこいつに言われると余計に腹がたつなおい。

 

「あたしたちにそんな緊張しなくてもだいじょーぶだよ!」

 

「そ、そうだな」

 

それでもやっぱり最初はな.....

まぁそのうちつまらない奴判定されて話しかけられなくなるだろ。

そう思っていたが俺は一つ大切なことを忘れていた。

 

転校生あるあるの一つであろう。

休み時間に多くの人に質問責めにあうっていうやつだ。

 

ここで俺が面白い答えの一つでも返せればいいのだが本当につまらない回答しかできないとすぐにぼっち行きである。

 

「趣味とかあるの〜?」

 

「読書とかゲームは...好きかもな」

 

「へーそれじゃなんか特技とかはねーのか?」

 

「特にないな....」

 

「えー絶対なんか隠してるでしょ」

 

本当にないんだよなぁ.....

あ、一つそれっぽいのはあるけどまだあれは始めたばかりだしなぁ。

まぁその場しのぎにはいいか。

 

「強いて言うならギターを少しだけ弾けるくらいだな」

 

「えーすごいじゃん!」

 

「そういえばさ、確か葉山くんもギター弾けるんでしょ?」

 

「え?そうなの葉山くん?」

 

「まぁ俺も少しだけならね」

 

「やっぱりかっこいいー!」

 

「今度聞かせてよ〜」

 

気づけば話題は俺から葉山へと完全にシフトしているようだ。

俺としては人と話さなくて済むのは大変ありがたい限りなのだがそれならば俺の席の周りから離れてくれないかな?

 

しかし結局その後また話題は俺への質問にもどりその休み時間はすっかり好奇心の的となってしまったのだった.....

 

休み時間が終わると当然授業に入るのだが....

学校が始まったばかりの授業は大抵学級委員決めとかな訳で....

 

「誰か学級委員やりたい人はいますか?」

 

担任の呼びかけに対して手を上げる者は当然のごとくいない。

こうなると大抵誰かしらの推薦になるのだが.....

 

「やっぱり葉山くんとかがいいんじゃない?」

 

「そーだよな、やっぱ隼人じゃないとまとまんねーって」

 

あーなるほど人気者はこういう時も辛いってか、でも嫌いな奴に押し付けるとかじゃないんだな。

そういうことがないなら平和的でいいな。

 

「じゃあ俺がやります」

 

「それじゃあもう1人女子から学級委員を出してもらえる?」

 

「じゃあ誰かやりたい人いる?」

 

葉山が呼びかけるともうこれは予想通りのことなのだが....

 

「私やってみようかな?」

 

「あたしも実はやろうかと思ってたんだよね」

 

と言った具合に女子のほとんどが手を上げるという事態が起こった。

さっきの会話で葉山が女子人気高いことは明白だったがまさかここまでとはな.....

 

「流石にこの人数は多いなぁ、どうにかして1人に決めてもらえないか?」

 

葉山わかってるのか?そうしたらあいつら戦争突入だぞ?

でも1人指名しちゃってもそいつがターゲットにされんのか。

どこまでわかってやってるんだか。

 

「由比ヶ浜は手を上げなくていいのか?」

 

「うん、あたしはそんなタイプじゃないし」

 

「ふぅん」

 

そりゃそうだよな、口には出さないけどな。

 

「それじゃあ立候補した人は一ヶ所に集まってどうにかひとりにきめてくれ」

 

葉山がそういうとクラスの女子のほとんどが一ヶ所に集まる。

 

周りを見渡せば本当にいろんな女子が手を上げている。

その中で俺は俺の右隣に座る少女の存在を今更ながらに認識した。

由比ヶ浜同様手は上げずに静かに佇んでいる。

 

その姿はなんというか今の季節、つまり春に似合わない気がした。

なんというか春というより冬っぽい感じがした。

自分でもよくこの感覚がわからないが本当に直感的にそう感じた。

 

いやね、確かに見た目は間違いなく美少女なんだよ。

でもどこかその姿は儚くて....話しかけていいのかもわからない。

まぁどのみち話しかけられないんだけど。

 

「さっきから人をじろじろ見てなんなのかしら?あなたみたいな人に見られると少し危機を感じるのだけど」

 

え?なにこいつ、なにこいつ

いや、見た目にたがわずの綺麗な声で罵倒されたんだけど?

初対面なんだけど?

 

「わ、悪いな隣の席なのにまだ挨拶してなかったと思ってな」

 

「そうね、じゃあ一応自己紹介だけしておくわ、私は雪ノ下雪乃よ」

 

「そっか、よろしくな」

 

なんというかさっきとは別の意味で話しかけにくくなってしまった.....

見た目に反してこんな性格とは.....

 

「雪ノ下も学級委員はやらないんだな」

 

「やってもいいのだけどあんな人たちとまともな話し合いができるとは思えないわ」

 

「全面的にお前の方が正しいけどそこまでズバッと言うのな.....」

 

そう言うと雪ノ下は少し意外そうな顔をした。

 

「あら、あなた見た目によらず周りが見えているのね」

 

「どういうことだよ?」

 

「いえ、目が腐っていて見えてないのかと思ったわ」

 

「ほんと失礼だな!悪かったな腐ってて!」

 

気にしてるのに.....

 

「一体どうしたら中学生でそこまで目を腐らせることができるのかしら?」

 

「色々あったんだよ、それに中学生らしくないのはお互い様だろ」

 

「どういう意味かしら?」

 

「初対面で人を罵倒させられる人間なんてほとんどいねーよ、それにお前も同級生のこと冷え切った目でみてるじゃん」

 

「そうね、確かに彼女たちみたいな人は苦手だわ」

 

「俺もだ、あんな風に葉山のために面倒な役を進んでやろうとは思えないな」

 

最初はあれかと思ったが話してたら案外気が合うかもな。

 

「はぁ」

 

「どうしたんだ?ため息なんてついて」

 

「いえ、大したことではないのだけどあなたと同じ意見だと思ったら少し体調が崩れてきただけよ」

 

「いやひどすぎだから.....俺と意見が同じでも病気になったりしないから....」

 

ほんとにやめろよ.....

小学校の頃比企谷菌って呼ばれたの思い出しちゃうだろうが

 

「あら?そうなの比企谷菌?」

 

「いや、菌を君と同じ発音で言っても悪口には変わらないからな?」

 

「あらそうだったかしら?とにかくあまり私に話しかけないでもらえるかしら?」

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

前言撤回、やっぱこいつ嫌なやつだわ。

 

ちなみに学級委員発音でじゃんけんで決まっていた。

 

*****

 

それから少し経って次は委員会を決めることになった。

 

委員会は学級委員に比べて割とスムーズに決まっていったのだがそれでもやはり不人気な委員会はあるわけで.....

 

「誰か奉仕委員をやってくれる人はいないですか?」

 

各委員会3人ずつなのだがこの奉仕委員会は要するにいろんなボランティアに参加しなければならない委員会なのだが内容が内容なだけに誰もやりたがらない。

まぁ俺もやらないで済むならやりたくはないな。

 

「まだ委員会に入ってない人手を上げてもらってもいいですか?」

 

そういわれてクラスの中の奴らが手をあげる。

ちなみにだが俺も由比ヶ浜も雪ノ下も手を上げている。

 

するとここで女子の一人が....

 

「雪ノ下さんとかでいいんじゃない?」

 

一見すればさっきの葉山のように推薦されているようにしか見えないだろう。

しかしその根底の思いはまるで違うことが俺には容易にわかった。

そしておそらく雪ノ下もわかっている。

 

そう、ここで俺は気がついたのだ。

雪ノ下が女子の中でどういう風に思われているのかを。

 

しかし悪意を押し付けられてなお彼女はその毅然とした態度を崩さずにいる。

 

「そうね、別にやってもいいわよ」

 

別段気にしてないようにそう言い放つ雪ノ下、こいつは強いやつなんだな。

何色にもに染まらない純白の雪、やはりこいつはいろんな色に染まっている春に似合わないな。

 

そこで俺ももう決めた。

おこがましすぎる考えではあると思うし、こいつにそんなものは必要ないだろうがそれでも....

俺は昔の俺みたいな目にあう人を見たくない。

だから.....

 

「俺も、やります」

 

俺は手を上げて立候補した。

 

「ほんとか、助かるよ比企谷」

 

「おう、気にすんな」

 

「別に、やってほしいなんて頼んでないのだけど」

 

すかさず雪ノ下が俺がどう考えたのか少し察したのだろう。

しかし別に同情からやってるわけではない。

 

「これ以上委員会決めが長引くとめんどくさいからだ、他意はない」

 

「そう、ならこれから足を引っ張らないでちょうだい」

 

「それはどーだろうな、保証はできん」

 

「あなたねぇ.....」

 

心底呆れたようにため息をつく雪ノ下、しかしその目に若干さっきと違った感情があるように見えるのは多分俺の勘違いなんだろうな。

だって俺が立候補して嬉しかったなんてことはないだろうからな....

 

「それじゃあ、あと1人はどうしますか?」

 

「じゃあまたじゃんけんでよくない?恨みっこなしでさ」

 

男子の1人がそう発言したが....

 

「あのっ!やっぱあたしがやるよ」

 

由比ヶ浜が勢いよく手を上げてそう宣言した。

 

「ありがとうな」

 

あー葉山のあの笑顔なんか全力で殴りてぇ....

なんかわからないけどあいつとは絶対に分かり合えない気がするわ。

あいつがギターを弾いてるって聞いてからそんな気が起こっているんだよなぁ。

俺にしては珍しく負けん気でも起こしてるんだろうか。

 

その後無事に全て決めることも終わり休み時間に入った。

すると由比ヶ浜がこちらの方を見て

 

「これからよろしくね!雪ノ下さん、比企谷くん!」

 

「よろしくな」

 

「よろしく」

 

ひとまず挨拶を済ませる、由比ヶ浜は雪ノ下ともやっていけそうだろうな。

 

「なんかこの呼び方だとよそよそしいから呼び方変えていい?」

 

「別に俺はいいけど」

 

「じゃぁ....ヒッキーなんてどう?」

 

「悪い、やっぱ却下で」

 

「なんで!?」

 

「いや、そのさ....」

 

「あら、いいじゃない。あなたどうせ引きこもってるでしょう」

 

「ナチュラルに人が思ってたこと言うのやめてもらえますかね....」

 

「じゃ、じゃあ雪ノ下さんは?」

 

「別に呼び方なんて気にしてないわ」

 

「それじゃあ....ゆきのん!」

 

「ごめんなさい、やっぱりやめてもらえるかしら」

 

バカな奴め、俺のパターンで既にわかってたことだろう。

まともなあだ名にならないことなど。

 

「どうして!?」

 

「なんと言うかその....」

 

おお、雪ノ下が押されてる。

 

「別にいいんじゃないか?可愛らしいだろ」

 

さっきのお返しとばかりに俺がそう言っておく。

 

「あら、何を言ってるのか聞こえなかったからもう一度言ってくれるかしら、引きこもり谷君?」

 

「おい、名前を悪意的に間違えすぎだろ」

 

「あら、違った?」

 

くそ、腹立つ.....

 

「まぁまぁこれから頑張ろうね、ヒッキー、ゆきのん!」

 

「「だからやめろ(てと言ってるでしょう)」」

 

なんだかんだ息はあっていた俺たちであった.....

 

*****

 

今思い返せば本当に雪の下の初見印象は酷かったな。

あの時はその3人でバンドを始めることになるとは思わなかったよな.....

 

「お兄ちゃん、ご飯だよ〜」

 

おっと小町も呼んでるし早く行かないとな.....

 

「おまたせ」

 

「じゃあ早く食べちゃおうか」

 

「おう、いただきます」

 

その後和やかに夕飯を食べてそのあとリビングでかまくらとじゃれていたとき。

 

「お兄ちゃんはさどうしてバンドを組もうと思ったの?」

 

小町が唐突に質問してきた。

 

「ん、どうしてそんなこと聞くんだ?」

 

「聞いたことなかったな〜って思ってさ」

 

「そうだな....少し長くなるぞ」

 

「だいじょーぶ!」

 

「そっかならまずは.....」

 

そこから俺は雪ノ下との出会いを簡潔に話す。

 

「へーそんな風に会ったんだ」

 

「ああ、でさこっから色々あってな....」

 

「早く聞かせてよー」

 

「急かすなよ....」

 

「だってお兄ちゃんちょっと前までこんなこと話してくれなかったもん」

 

「まぁそうだな.....じゃあつづき話すぞ」

 

あれはいつくらいだったっけ?

そうそう、あれは6月の文化祭のあたりのことか......

 

 




今回はここまでです。
過去編もそこそこな長さになりそうですね。

最近更新が遅めになっていて本当にすいませんが気長に待っていてください。

感想、評価などくださるとやる気が出るのでぜひお願いします。


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第30話

また更新遅れて本当にすいません.....

6月に以前から自分がやってるカードゲームとバンドリがコラボするのでそれを楽しみに毎日を過ごしてますw


中学校が始まってから1ヶ月がたった。

やはり俺の予想通りクラス内で俺は友達少ない系のやつになっていた。

しかし別に嫌がらせをされるわけではないしもとより騒ぐのも得意ではない俺は別段気にもしなかった。

 

この1ヶ月も俺はオーナーの元でギターを練習し前よりはだいぶ弾けるようになっただろう。

練習するたびにギターが好きになる、どんどんその先へと行ってみたくなる。

ギターのことを考えるとつい広角が緩んじまうな。

 

「黙りながらニヤニヤしていると不審者のようで通報したくなるからその顔をやめてくれるかしら?」

 

「....別に少しくらい俺が笑ってたっていいだろ.....気持ち悪いもは認めるけど」

 

「あはは、そこ認めちゃうんだね....」

 

この1ヶ月で変わったことといえばこれもそうだろう。

委員会の仕事をこの3人で放課後にすることが多くなった。

実際の話週に一回以上は活動がありその大半はクラス単位で行うので必然的にこの3人でやることが多くなる。

 

「それでどうしてそんな気持ち悪い顔をしていたのかしら?」

 

「ん、いや今日はギターを弾ける日だと思ってな」

 

「あーそういえばそんなこと最初に言ってたね〜」

 

「まぁまだ少ししか弾けないけどな」

 

「でも弾けるだけすごいよ!そうだ!6月にある文化祭でギター弾いてみたらどう?」

「いや、やだけど」

 

「即答!?」

 

「いや、だってよ、そんなことしたら文化祭の雰囲気が悪くなるだろ」

 

「そうね、賢明な判断だと思うわ」

 

「ゆきのんもひどいっ!?」

 

「「だって事実その通りだろ(でしょう)?」」

 

「たまに思うけど2人とも絶対仲良いよね.....」

 

「「いや、それはない(わね)」」

 

「あはは.....」

 

全くほんとに何を言いだすんだ。

俺と雪ノ下はどこからどう見ても犬猿の仲だろうが。

 

「でも普通にヒッキーのギター聞いてみたいけどな〜」

 

「....機会があったらな」

 

「そうなの?楽しみにしてるね!」

 

「騙されてはダメよ、由比ヶ浜さん。この男はそう言っていつまでも誤魔化すつもりなのよ」

 

ちっ、勘のいいガキは嫌いだよ。

 

「イヤソンナコトナイゾ、ホントダッテ」

 

「すっごい棒読みだ!」

 

ちっ、また気づかれたか.....

 

「どうせ、自信がないのよ。そんなギターなんて聞いても意味はないわよ、由比ヶ浜さん」

 

「それは言い過ぎじゃないか?」

 

「いえ、だって他にどんな理由があってそこまで弾きたがらないのかしら?」

 

「あーいーよ、そこまで言って後悔すんなよ!」

 

「ええいいわよ、だって後悔なんてするはずがないもの」

 

「もう撤回できないからな?」

 

「する気もないわ」

 

「え、えーと2人とも?喧嘩は良くないよ?」

 

「「由比ヶ浜(さん)はだまってろ(て)」」

 

ここまで言われて引き下がるわけにはいかないだろ。

って....俺にこんなプライドみたいなもんあったっけ?

今までならこんな感情起こったりなんて.....

 

「でも結局ヒッキー弾いてくれるんだね!」

 

「ええ、精々楽しみにしておきましょう?」

 

そう言うと雪ノ下はこちらを向いて挑発的な笑みを浮かべらのだった。

見てろよ.....絶対見返してやるからな......

 

冷静さを失っていた俺はこの時まだ雪ノ下にはめられたことに気づかなかったのだった......

 

*****

 

その放課後俺は最近恒例となりつつあるspace通いをする。

 

「こんにちはー」

 

「あ、八幡君、オーナーはもう直ぐ来ると思うからちょっと待っててね」

 

最近は受付の人たちとも顔見知りになりつつありこのようなやりとりも普通になってきてる。

 

「待たせたね、それじゃあ始めようか」

 

「.....はい」

 

「元気がないね?元気が出るようにいつもよりきつくしようかねぇ.....」

 

「はい!」

 

くそっ....いいようにしやがって.....

このババァが.....

ちなみにオーナーへの態度も変わった.....

 

「それじゃ、今日はこの辺りにしとこうかね」

 

「はぁはぁやっと終わった.....」

 

休憩なしとかふざけてるだろ....

精神的にも疲れるぞ.....

 

「それじゃ次はいつ来るんだい?」

 

「あーこの日なら都合がいいかな」

 

「そうかい、なら次はその日だね」

 

「あ、それとさ俺の中学校の.....知り合い?が俺のギター聞きたいって言って色々あって了承しちゃったんだけど来ても問題ないか?」

 

「まだギターを弾くようになって少ししか経ってないのに随分と自信があるね」

 

「いや、それはほんと成り行きというか....」

 

「まぁ....人に聞いてもらうのも必要だからね.....いいだろう」

 

「サンキュー」

 

「にしてもどうしたらこの短期間でこんなクソ生意気な態度をとるようになるのねぇ?」

 

主にお前のきつすぎる練習のせいだわ、このままだと俺過労死するぞ?

 

「じゃあまた連れてくるから、その時はよろしくな」

 

「ああ、わかったよ」

 

なんだかんだ言いつつこの時間がとても気に入っている俺は結局いつまでだってここに通うんだろうな、どんなきつい仕打ちが待っていても.....

 

*****

 

「急で悪いがその日に来れるなら聞かせてやるよ」

 

「ちょっと待ってて、確認するから」

 

「私の方も確認してみるわ」

 

次の日俺は2人に日にちを伝えていた。

 

「うん、だいじょーぶだったよ!」

 

「私の方も問題ないわ」

 

どうやら2人とも問題は無いようだ。

 

「まぁあんま期待はすんなよ」

 

「あら、こないだはあんなに威勢のいいことを言っておいて今更怖気付いたのかしら?」

 

「あーやっぱ前言撤回だわ、めっちゃ期待してていいぞ」

 

「ヒッキーわかりやすすぎるでしょ.....」

 

いや自分でも本当に意外なんだがギター関連のことは妙に馬鹿にされたくないっていうかさ....

なんかそこだけは譲れないっていうか.....

 

「で、でも本当に楽しみにしとくね!」

 

「まぁ、退屈しないことを期待しておくわ」

 

本当嫌な奴.....

 

「....じゃあその日の放課後に玄関で待っててくれ」

 

「わかったよ!」

 

はぁさっきはああ言ってしまったがやはり不安なんだよなぁ......

これをきっかけにみんなに馬鹿にされたりしたらどうしようかな.....

そこはあの2人を信じるしか無いか.....

 

*****

 

そしてついに約束の日となった。

 

その日は委員会もないので割と直ぐに玄関を通ることになる。

ちなみに俺たち3人は帰宅部であるので部活で遅れることもない。

由比ヶ浜あたりなんて友達とかと部活やってそうなものなんだがな。

とか考えてたらまずは由比ヶ浜を発見っと.....

 

「おう、待たせたな」

 

「んーん全然待ってないよ!」

 

「ならいいんだが....雪ノ下は?」

 

「ゆきのんももう直ぐ来ると思うよ〜」

 

「そっかなら少し待つか.....」

 

もう直ぐ来るんだとは分かってるけど沈黙は気まずいよな.....

なんか話すことは.....

 

「そういえば由比ヶ浜は部活になんで入らなかったんだ?」

 

「そんなこと言うヒッキーだってなんで部活に入らなかったの?」

 

「いや、それは純粋に向いてないからだよ」

 

「運動に?なら文化部とかに入ればよかったのに」

 

「いや、人間関係にだよ」

 

「そこ!?」

 

「俺レベルになるといるだけでその場の雰囲気を悪くするんだよ」

 

「そこまで!?」

 

「ああ、実例あるぞ例えば小4の時にな....」

 

「いや、いいから!そんな悲しそうな思い出話そうとしなくていいから!」

 

「そうか、ならいいんだが.....」

 

「前の学校でどんな生活してたの.....」

 

呆れられるようなことはないと思うんだがな.....

まぁ普通の人よりは黒歴史積んでるとは思うけどさ.....

 

「で、結局なんで部活やってないんだ?お前なら友達からも誘われただろ?」

 

「うん、まぁ何人かから誘われたんだけど....なんでだろうね?」

 

「いやわかんないのに断ったのかよ.....」

 

「なんかね、それより面白いことがあるような気がしちゃったんだよね」

 

「そんな理由でかよ....」

 

「なんかさ、あたしってこういう勘は結構当たる....方だと思う」

 

「自信ないんじゃねーかよ」

 

「あはは....」

 

ふーんなんか面白そうなことか.....

 

「当たるといいな、その勘」

 

「....うん!」

 

俺だって迷子が原因でギターと出会えた訳だしな.....

 

「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」

 

「ううん、全然!今来たとこだよ!」

 

本当は5分くらい待ってるけどそんなの誤差の範囲か。

 

「ああ、ほんの少ししか待ってないから大丈夫だ」

 

「あなたも少しは由比ヶ浜さんを見習った方がいいわね.....」

 

「は?なんでだ?」

 

「わからないのならいいわ」

 

「あはは.....まぁ今のはヒッキーが悪いね」

 

え?なんで?事実を言っただけなのに.....

 

「と、とにかく案内するから付いて来い」

 

「「うん!(ええ)」」

 

*****

 

ひとまず校門を出たところで由比ヶ浜たちを案内しつつspaceへ向かう。

 

「ところでさヒッキー、さっきから気になってたんだけどさ」

 

「ん?なんだ?」

 

「ギター学校に持ってきてていいの?」

 

「ああ、それは先生に許可とってあるから」

 

「部活でもないのによく許可が出たわね」

 

「んーまぁ相当にしつこく頼み込んだからな」

 

そのかわり学校でギターを一度でも弾いたら相当な罰を食らうことになっているんだが.....

 

「そう、まぁあなたに問題を起こすような度胸もないのだろうし問題はないのかもしれないわね」

 

いちいち引っかかる言い方をする奴だな......

そしていちいちその通りなので言い返すことさえできない。

絶対今日で少しくらいは認めさせてやるからな.....

 

「そういえばヒッキーっていつからギター弾いてるの?」

 

「入学する少し前だから本当に最近なんだよ、だから期待すんなって言っただろ」

 

「へぇーこの街に来たばっかでギター始めたんだ」

 

「まぁ色々あってな」

 

そんな風な話をしているといつのまにかspaceの近くまで来ていた。

 

「着いたぞ」

 

「へーここがライブハウス.....」

 

「じゃあ待ってるかもしれないから入るぞ」

 

「オーナーに教えてもらってるのってすごいよね」

 

「そうなのか?」

 

「一般的ではないと思うわ」

 

まぁそんなことはどうでもいいだろう。

 

「こんにちはー」

 

「あら、待ってたわよ八幡君....ってあらあら2人も女の子連れてるなんて八幡君モテるのね〜」

 

受付のお姉さんがめっちゃにやにやしてくるんだけど.....

 

「いえ、そんな関係じゃないですから....」

 

「そうね、こんな目をした男と勘違いされるなんて心外だわ」

 

「あたしもごめんかな〜」

 

「なんで俺だけが一方的にダメージ受けてるんだよ.....」

 

「あはは、手厳しい子達だね」

 

受付のお姉さんも楽しんでるしよ....

 

「待たせたね」

 

そんなやりとりをしているとオーナーがやってきた。

 

「あ、こんにちは!」

 

「こんにちは、今日はよろしくお願いします」

 

「ああ、まだハチのギターは人に聞かせられるもんじゃないが....それでもいいかい?」

 

「ええ、もとよりそのつもりで来てます」

 

「おい、流石に俺に失礼すぎだろ」

 

「自分でも期待するななんて言っていたのに?」

 

「ばっか、それはあれだよほらブラフとかハッタリとかネゴシエーションってやつだよ」

 

「???」

 

おい由比ヶ浜、頭から?が大量に出てるぞ....

 

「要するに自信がないのをごまかしたいということよ」

 

「なるほどね!」

 

なるほどじゃねぇよ.....

 

「ほら、そろそろ言い合いは終わったかい?それじゃ行くよ」

 

「すいません」

 

「それじゃ行くか」

 

その後スタジオに入り少しだけ準備をするため2人には待ってもらう。

 

「へーギターを弾くのにこんな準備があるんだ〜」

 

「まぁな」

 

「まだそんな長く弾いてもないのによく言うね」

 

「うっせ、いいだろこれくらい」

 

「見栄を張り続けてもどこかで剥がれるだけよ、比企谷君」

 

うぜぇ.....

それに元から見えなんて貼っても即剥がされるわ。

 

「なんかヒッキーの目がだんだん濁ってきてるような.....」

 

「おし、準備できたぞ」

 

「じゃあ少しだけだけど聞いてくれ」

 

そのあと俺は5分ほどの演奏をした。

練習を何度もしてあったのでもうだいぶ弾き慣れてきていたがやはり人に聞かせようと思ったらそれなりに緊張するもんだな.....

 

演奏が終わった瞬間俺はなんだかなんともくすぐったいような気分を味わった。

 

「.....すごい!すごいよヒッキー!」

 

すると由比ヶ浜がそんな感想を言ってくる。

嘘をつけるようなやつではないことは短い付き合いながらわかっているのでなんというか単純にとても嬉しかった。

 

「.....予想していたよりはマシな演奏だったわ」

 

雪ノ下もあいつにとっては褒め言葉という感じの言葉をかけてくる。

 

「サンキュー」

 

俺にしては珍しく素直なお礼が出たと思った。

 

「まさかヒッキーがあんな風になるなんて....」

 

え?なになにどういう意味?

 

「そうね、あんな風になるとは誰も予想できないわよね」

 

「あんたらも感じたかい、ハチのギターから」

 

「なんか言葉にできないんですけど、その、とにかくブワーってなりました」

 

語彙力どこ行っちゃったの?

 

「....ええ」

 

雪ノ下は短い返事を返す。

 

「なんか今の演奏見てたらあたしも何か楽器演奏してみたくなったよ!」

 

「なら、あんたも何か弾いてみるかい?」

 

「え?いいんですか!?」

 

「ああ、ここはそういう場所だからね」

 

このオーナーのこういうところは憎めないところだよな。

 

「何か弾きたい楽器とかはあるのかい?」

 

そう言われると由比ヶ浜は考え込んでいる様子だ。

 

「比企谷君、ちょっといいかしら?」

 

「なんだ?雪ノ下?」

 

「あなた、本当にギターを始めたばかりなの?」

 

「ああ、そうだけど」

 

「そう....」

 

なんかいつもと雰囲気が違う気がする。

 

「なんかあったか?」

 

「唐突に何かしら?」

 

「いや、なんか元気ないなって思っただけだよ」

 

「いきなり何を言いだすのかと思ったら勘違いもほどほどにしてほしいわね」

 

「そうか....それよりお前も弾いてみないか?」

 

「私も?」

 

「そうだ、せっかく来たんだしよ」

 

「そう、なら私も何か試してみようかしら」

 

そう言うと雪ノ下は由比ヶ浜の方へと歩き出す。

それが、俺のバンド生活が始まるきっかけになるとも知らず。

 

その後しばらく悩んでいた2人だが結局決めたらしい。

 

「由比ヶ浜はドラムか?」

 

「うん!なんかかっこよくない?」

 

「んーまぁわからなくもない」

 

「で、雪ノ下は?ギターか?」

 

「ええ、やはりギターがいいかと思ってね」

 

何がいいんだ?と聞こうとしたがなぜかやめといた方がいい気がしてやめておいた。

 

その後2人は少しの間オーナーに教えられながらそれぞれの楽器を演奏している。

由比ヶ浜は苦戦気味だが雪ノ下はさすがと言うべき速度で弾けるようになっていた。

.....俺はその間も当然のように個人練習だが。

 

「おや、もうこんな時間かい。そろそろ終わった方がいいかね」

 

「本当にありがとうございました!今日はとっても楽しかったです!」

 

「私も貴重な体験ができました、ありがとうございます」

 

「また弾きたくなったらいつでも来な」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます」

 

なんかみたことあるような光景だなぁ.....

 

 

「そーだ!ねぇゆきのん、ヒッキー!私たちでバンドを組んでみない?」

 

「何を急に言いだすんだよ、そんなこと....」

 

ちょっといいかもしれない.....

実際俺もバンドがどういうものか知りたいと思ってたしな.....

でも雪ノ下が納得するとは思えないな......

 

「まだ何も知らない状況で返事はできないわ」

 

あれ?否定しない?

 

「....それじゃあバンドがどういうものか見てみるかい?」

 

「ん?どうやってだ」

 

「決まってるだろう?ライブを見るのさ。来てみるかい、spaceのライブに?」

 

俺のバンド生活はここからスタートしていくこととなるのだが.....

この時の俺にその実感はわかなかった。

しかし、直感で俺たちは同時に同じ返事をした。

 

「「「おう(はい)」」」




今回はここまでとなります。
次回は3人でバンドを始めるところを書いていこうと思います。

感想、評価など残してくれると励みになるのでよければ残していってください。


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第31話

前書きに書くことなくなってきて困ってますね.......
まぁこんなとこ見てる人はいませんかw
最近いろんな人に評価してもらえるようになって嬉しいです!
これからも必死に書いていくのでよければ感想や評価どんどんください!

バンドリ初めて1年と2ヶ月くらいで星4が21人ってどうなんですかね?(課金は1万円いかないかなくらいしかしてません)


雪ノ下たちとともにspaceを訪れて一夜が明けた。

次の日の放課後にはちょうど委員会もあったため3人で作業をしているところだ。

 

「楽しみだね〜、ライブ!」

 

「そうだな、俺も初めて見るから楽しみだ」

 

まぁ本当は最初覗いた時に見てるけどあんなの聞いたうちにきっと入らないだろう。

 

「それにしてもゆきのんも興味あったんだね!」

 

「確かに意外だったな、お前は来ないかと思ったんだが」

 

「ただの気まぐれよ、それに事の発端は私だもの」

 

生真面目な奴だなぁ。

それと同時に素直でもねぇなぁ。

とか言ったら100倍になって帰ってくることは火を見るよりも明らかなのでグッと俺の心の中だけに抑える。

 

「でもオーナーさんもいい人だよねぇ」

 

「そうね、私たちにここまでのことをしてくれる義理もないはずなのに」

 

は?いい人?

 

「いや、由比ヶ浜、それは勘違いも甚だしいぞ」

 

「え?だっていい人じゃん?」

 

「それはまだあまりあの人と関わってないから言えるんだよ」

 

「まぁ比企谷君のことは放っておきましょう、聞いても特に得はないわよ」

 

「お前は俺の扱いそろそろ雑過ぎないかな?」

 

「あら、だってそういうのが好きでしょう?」

 

「そんな特殊な感性は持ってねーよ」

 

「てっきり女子に罵られて喜んでいるのかと思ってたわ、M谷君?」

 

「それは悪意しかねーだろ.....」

 

「あはは.....でも本当に楽しみ!あー早くライブの日にならないかな〜」

 

「楽しみにするのは結構なのだけど、テストも近いのだからしっかりと勉強しておいたほうがいいわよ」

 

「うーテストの話はやめて〜」

 

ちなみに由比ヶ浜だが俺の予想通りなかなかのバカだった。

まぁ本人にやる気がないわけではないのでそのうち改善される.....かも?

ちなみに雪ノ下もやはりというか勉強はできるのだった。

俺?俺はまぁ一般的に言ったらできるくらいだと思う.....

 

「じゃあさ、ゆきのん!今度あたしに勉強教えてよ!」

 

「別に構わないわ、ただ一切容赦はしないわよ」

 

「うん!」

 

俺はテスト勉強は1人でやるのがモットーにするつもりだ。

.....別に友達がいないからとかじゃない。

本当だからな?

 

「比企谷君もあまりギターばかりやらずに勉強もしっかりやることね」

 

「へいへい、忠告ありがとうございます」

 

まぁそこまでひどい成績を取らなきゃいいんだけどな。

 

「よしっ!作業終わった〜」

 

そんな話をしていたらいつの間にか作業も終わっていた。

これで今日もspaceに行けるな。

 

「ねぇヒッキー」

 

「なんだ?」

 

「ヒッキーは今日もspaceに行くの?」

 

「行くけど」

 

「あたしも行ってもいいかな?」

 

「知らん」

 

「酷くない!?」

 

「それは俺の許可なんていらないだろ、こないだオーナーがもう答えを教えてるはずだぞ」

 

「そーだけどやっぱ不安じゃん!」

 

「だからって俺に聞くな」

 

「べつにいーじゃーん」

 

由比ヶ浜はすっかりとドラムに夢中になったようだ。

このままだと自分のドラムを買う日もそう遠くないんじゃないか?

 

「ゆきのんも行く?」

 

「そうね、私も行こうかしら。比企谷君と2人だと由比ヶ浜さんが何をされるか分かったものではないし」

 

「ヒッキーきもっ!」

 

「なんで俺が手を出す前提なんだよ.....」

 

そんなこと考えたこともないし考えたとして実行する度胸がないわ。

 

「由比ヶ浜もそんなに簡単に信用すんなよ.....」

 

「だって、ヒッキー目濁ってるし」

 

「関係ないわ」

 

「まぁ見た目が不審者じみてるのは間違いないわね」

 

「今この状況を作った本人が何を言ってるんですかね.....」

 

はぁこんな風に誰かと軽口を叩き合う日々が来るなんてな.....

悪くないもんかもな.....

 

*****

 

結局俺たちは3人でその日spaceを訪れた。

 

「こんにちはー」

 

いつものように入るとまたもう恒例となりつつある受付の人への挨拶をする。

 

「あら、八幡君また両手に花の状態で来たわね〜」

 

「邪推しないでください、本当にこの2人に失礼になりますよ」

 

「まったく君も男の子だね〜」

 

だめだ、まったく聞いてない。

これはもう諦めた方がいいかな。

 

「あの、オーナーは?」

 

「ああ、もうすぐ来ると思うわよ」

 

「そうですか」

 

そう言うと俺は2人の方へと向きを変える。

 

「だそうだからちょっと待ってるか」

 

「そうね、あなたは受付の方と話してればいいのではないかしら、エロ谷君?」

 

「おまえ〜谷で俺の悪口作るのやめない?それにそれ風評被害にもほどがあると思うんだが?」

 

「こないだからニヤニヤしながら話していたじゃない」

 

「いや、普通にあの人は年上として俺で遊んでるだけだから.....」

 

「ヒッキーって同級生よりも年上の人と喋ってることが多いよね」

 

グサっ!

八幡のハートに超特大ダメージ!

八幡は倒れた。

 

「ん?どしたのヒッキー?」

 

「彼のことだから変なことで心理的ダメージを受けただけでしょう」

 

「ん?そうなの?なら大丈夫だね!」

 

何がだよっ!

てか実行犯お前だからな!

 

ふぅ、ツッコミを入れたらだいぶダメージも回復したな。

さすが俺今まで伊達にダメージおいまくったわけじゃないな!

 

「待たせたね」

 

「あ、オーナーさんこんにちは!」

 

「おや?あんたたちまた来たのかい?」

 

「はい」

 

「また弾かせてもらえますか?」

 

「ふん、勝手にしな」

 

途端に由比ヶ浜は顔に出しまくって喜んでいる。

雪ノ下も心なしかそんな感情なのではないかと思う。

 

「それじゃ行くよ」

 

その後は俺はいつも通り練習をこなしオーナーは由比ヶ浜たちの方につきっきりだった。

正直俺はその方が楽なので助かっている。

あれ?これできるだけあいつら連れてきてた方がいい?

 

いや、どうせ2人ともすぐに弾けるようになって俺のところに戻ってくるか.....

 

にしても本当に由比ヶ浜は楽しそうに弾いてるな。

思ったよりずっと早かったみたいだな、見つけ物見つけるの。

あいつの勘ってやつも少しくらいは信用してやるか。

 

雪ノ下も懸命に覚えようとしてるまるで誰か負けたくない相手でもいるかのようだ。

あの2人もすっかり俺と同じように演奏することに夢中になったようだな。

 

「ハチ、手が止まってるよ」

 

「悪かったな!」

 

そんなことを考えている最中にそんなことを言われた俺は自分の考えてたことを振り払う意味も込めて取り敢えずギターの練習を再開するのだった.....

 

それからもう少し練習したところで今日の練習は終わりとなった。

 

「それじゃあもう一度言っておくがライブは次の日曜の6時30分からだ、遅れたら入れないからね」

 

「わかりました!」

 

「おう」

 

「はい」

 

俺たちはすでに待ちきれないと言うように返事をする。

 

「あんたたちもわかりやすいねぇ」

 

「子どもだから別にいいだろ?」

 

「生意気なガキの間違いだね」

 

「たしかに比企谷君はそうとしか言えないわね」

 

「お前は何目線で言ってんだ!」

 

なんだろう.....ここ1ヶ月間でギターとツッコミまで上手くなってきてる気がする.....

 

*****

 

その後も俺たちは各々の日々を過ごしてついに日曜日となった。

現在の時間は5時、俺は2人との待ち合わせ場所についたところだ。

見る限り2人の姿はまだない。

集合時間ぴったりだしもういるかと思ったんだけどな。

 

「待たせてしまったかしら?」

 

「いや、本当に今来たとこだ」

 

「あなたが言うなら嘘ではなさそうね」

 

「それは俺が気が使えないからって意味か?」

 

「あら?よくわかったわね」

 

少しくらい悪びれたりしないかなぁ.....

 

「別に.....それくらいにはお前とも話したからな」

 

そう言うと雪ノ下は少し意外そうな目で見てきた。

 

「あら、それは思い上がりにもほどがあるのではないかしら。そもそもその言い方だとあなたと私が友人のように思えてしまうからやめて欲しいのだけど」

 

しかしすぐにいつもの調子で俺を罵倒してきた。

 

「お前いくら俺でもそろそろ自殺しちゃうよ?」

 

「そんなことを本人に言えてるうちは大丈夫ね」

 

「お前は人をなんだと思ってるんだよ.....」

 

「あら?比企谷君って人だったの?」

 

「お前それまじで人格否定だからやめてくれる?」

 

「善処はしてみるわ」

 

「それ絶対直さないやつじゃん.....」

 

「ごめ〜ん!遅れちゃったー」

 

そんなことを話していると由比ヶ浜が駆け足でやってきた。

 

「待った?」

 

「ああ、少しな」

 

「むぅ、ヒッキー気が利かなすぎ!」

 

「いや、お前が遅れてきたからだろ.....」

 

本当なんで女子ってこんな理不尽なの?

するとそんな俺の心情を読んでのことか雪ノ下が言い放つ。

 

「ほらね、さっき言った通りでしょう?」

 

あ.....本当だ.....

なんかあっちには俺のことを見透かされてるみたいでやだな.....

 

「それでは行きましょうか」

 

「うん、本当に楽しみだな〜!」

 

普段なら由比ヶ浜を子どもみたいな奴と言ってるところだが実のところ俺もだいぶテンション上がってるんだよな。

やべ、柄にもなくドキドキしてるな。

 

そのあとは3人でspaceへ向かいついた時にはすでに人がちらほらといた。

どうやらこのspaceのライブに出るためには相当な努力が必要ならしくその分ここのライブは見応えがあるとネットに載っていた。

 

「あれ?そこにいるのは結衣ちゃん?」

 

「え?あっ!ゆり先輩!なんでここにいるんですか?」

 

ん?誰だ?由比ヶ浜の知り合いっぽいけど.....

大人っぽい人だなぁ。

 

「うーん、それは内緒かな?それよりその2人は結衣ちゃんの友達?」

 

「はい!学校で委員会が一緒で....それで3人とも最近楽器を弾くようになって.....そしたらオーナーがライブに招待してくれて!」

 

テンション上がりすぎて説明がいつにもまして下手くそになってる由比ヶ浜を見て苦笑いしつつその先輩は俺たちの方を向く。

 

「こんにちは、私は牛込ゆり。同じ学校なんだけどわかるかな?」

 

「はい、噂には聞いてました」

 

え?この人有名人なの?

もしかして俺だけ置いてかれてる?

 

「あなたは雪ノ下さんだったっけ?あなた私たちの学年でも噂になってるよ〜」

 

え?そしてまさかの雪ノ下も有名人?

 

「そうなんですか?まぁ興味はないですが」

 

「あはは、噂通りの子だね〜。そして君は?」

 

「比企谷八幡です」

 

「八幡君?ああ、もしかして4月に転校してきた子?」

 

「え、はい、そうですけど.....」

 

なんで知ってるんだ?

と言う俺の疑問はこの人に一瞬で見破られたらしい。

 

「ああ、私水泳部に入ってて部活の1年生に聞いたんだ〜」

 

.....水泳部

は?いけないいけない俺としたことがちょっとした煩悩にまみれてしまった。

 

「それにしても結衣ちゃんが楽器を始めるなんて〜」

 

「最初はヒッキーのギターを聞きにきたんですけど.....」

 

なんて由比ヶ浜と牛込先輩は談笑してる。

 

それを見て俺と雪ノ下も時折飛んでくる質問に答えた。

なんたなリア充ってこんなにも周りに話し振れるの?

隠キャ代表みたいな俺でさえ会話に参加できてるみたいに見えるじゃないか、素晴らしい。

 

「それじゃあ私は行くね〜」

 

「先輩も1人なら一緒に見ませんか?」

 

「ううん、私も友達と来てるから」

 

「そうですか」

 

「じゃあ一緒に楽しもうね〜!」

 

そう言って牛込先輩はライブハウスの中へと入っていく。

それから俺たちもライブハウスに入るとすでにオーナーが待っていた。

 

「ようやくきたね、私も忙しいからあんたたちについているわけにはいかない。だから注意事項とかを先に伝えておくよ」

 

そう言うとオーナーは俺たちにライブの説明とかをしてくれた。

 

「それじゃあ楽しんできな」

 

そう言ってオーナーは去っていった。

そんな注意事項とかを聞いたらすでに時間が6時を過ぎていたので俺たちは伝えられていた場所へと向かう。

 

ふーオーナーの計らいで俺たちは見やすい位置に入ることができたな。

こういうところは本当に気の利くババァだ。

 

「あと少しで始まるまるね!私ペンライト持ってきたんだけどヒッキーたちも使う?」

 

「用意がいいなお前.....」

 

こいつのことだから遠足前の小学生並みのテンションでライブまでの時間を過ごしていたのだろう.....

 

「じゃあ俺は一応持たせてもらうわ」

 

嘘だ、本当はライブ始まったら使うつもり満々である。

.....こいつらにバレないようにな

 

「私は遠慮しておくわ」

 

こちらの反応も予想通りだな、まぁこいつがペンライト振ってるのは想像がつかないしな。

 

「あ!もう始まるよ!」

 

すでにテンション最高潮の由比ヶ浜がステージを指差すとそのいう通りもう始まるようだ。

 

俺もそろそろ抑えることが難しかなってきていた。

もう俺も由比ヶ浜とほぼ変わらない顔をしているのだろう。

でも今はそんなことも気にならなかった。

 

*****

 

それからライブは進んでいく。

俺たち3人はみんなライブに夢中になっていた。

どのバンドもみんなが本気で楽しそうで自分の全てを出し切った演奏をしていた。

 

そして次は最後のバンドのようだ。

もう最後かと正直に残念だという気持ちが出てくる。

 

「皆さん、こんばんは!今日も盛り上がっていきましょう!」

 

するとステージに最後のバンドが出てくる。

.....ん?待てよ?今喋ってるのって....?

 

「あ〜!ゆり先輩だ!え?なんで?なんでステージに立っているの?」

 

突然のことで由比ヶ浜はパニックに陥っている。

 

「落ち着いて、由比ヶ浜さん。考えてみれば不思議ではないわ。さっき秘密と言っていたのは私たちを驚かさせたかったからでしょう」

 

なるほどな、それで秘密ってわけか。

 

「うわー!ゆり先輩のバンドなんて楽しみだよ〜!」

 

こちらはテンションが150%まだ振り切れている由比ヶ浜、エキサイトしすぎてステージに上がったりしないよな?

 

「それじゃあいきます!聞いてください、『Don't be afraid!』」

 

それから俺たちは今までよりもさらに心を高ぶらせた。

音が奏でられるたびにワクワクが止まらない。

キラキラと輝くステージから目が離せない。

 

演奏が終わったあともその余韻は残り続けた。

気がつけばライブが終わっていて俺はspaceの外にいた。

 

「すごかったね.....」

 

「ええ....」

 

雪ノ下たちも俺と同じように余韻につかってる状態らしい。

 

その熱に浮かされるかのように由比ヶ浜が呟く。

 

「やっぱりあたし、バンドがやりたい」

 

その熱はろうそくほどの小さな熱だったのだろう。

しかし今日その熱は燃え上がって確かに一つの炎となったようだ。

 

「ヒッキー、ゆきのん、私と私とバンドをやろうよ!」

 

もう、俺も自分の中の熱を自覚していた。

もう、断ることなど考えもしなかった。

 

「ああ、俺もバンドがやりたい」

 

あとは1人、あと1人の少女の答えを待つようにその場は静寂に包まれる。

 

「私は.....私は......私も.....やってみたいわ」

 

雪ノ下も.....その熱を感じていたようだ。

 

「うん!これから始めよう!あたしたちのバンドライフを!」

 

こうして俺たちは一つのバンドを結成したのだった.....

 

*****

 

「....とまぁこんな感じだな小町も覚えてないか?あの日小町も行きたいっ!なんて言ってたんだが」

 

「うーん、覚えてないなぁ」

 

「そっか、まぁこの日から俺たち3人はバンドを組んだんだよ」

 

「そっかーそんな話があったんだね、へぇ〜お兄ちゃんが誘ったわけないとは思ったけど.....結衣さんが言い出したのか〜」

 

「そのことは本当に感謝してる、あいつがいなかったら俺はもうギター弾いてないかもな」

 

1人だと、楽しみ方に限界があるからな。

 

「でもさ、それならいろはさんはいつお兄ちゃんのバンドに入ったの?」

 

「あーあいつはな、もう少しあとだったなぁ」

 

「へーだって一年生の時は文化祭も出てないでしょ?」

 

「ああ、さすがに間に合わなかったからな」

 

「そしたらお兄ちゃんたちがバンドを組んでるなんて誰が知ってるの?」

 

「じゃあ教えてやるよ、あいつはな.....」

 

今から俺が語るのは俺たちがバンドとして本格的に動き出すまでの話.....




今回はここで終了です。
次回がいろはの加入回です!
個人的に俺ガイルの中だといろはが1番好きです。
前回更新が遅かったので今回は頑張って早く書きました。
これからは土曜か日曜に固定更新できるようにしようかなぁ.....

励みになるので感想、評価などお願いします。
それと誤字脱字報告してくれる人もありがとうございます!
(誤字多くてすいません.....)


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第32話

本当に更新遅れてすいません.....
リアルがだいぶ忙しく書く時間が取れませんでした.....



次のドリフェスはいつ来るかビクビクしてます。
友希那さんが実装されたらマジで当てたいなぁ.....
推しが出にくいのはオレだけですかね?

カバー曲に春擬き来たのはだいぶ嬉しかったですね!


俺たちがライブに行きバンドを組むことになって一夜が明けた。

正直未だ興奮冷めやらぬといった感じである。

これから俺のバンド生活が始まるぜ!

とか思いもしたが次の日も何も変わらない時を過ごしている。

今日も委員会の作業がある。

最近は文化祭も近づきこれからは文化祭関連の活動もあるそうだ。

 

はぁ、めんどくさいなぁ.....

 

「どうしたのヒッキー?目が腐ってるよ?」

 

「由比ヶ浜さん、それは元からよ」

 

「そうだけど、なんかいつもよりも酷いじゃん!」

 

「いやだってこれから面倒なことばっかじゃん、俺は働かないで学校生活、できれば社会人になっても働かずに生活を目標にしてるんだよ」

 

「想像してたよりダメ人間だった!?」

 

「はぁそんな考えでよく今まで生きてこれたわね」

 

「いや俺の人生ごと否定するのやめてもらえますかね?」

 

やり直せるなら生まれた瞬間からやり直したいわ。

 

「それに、別にいやなことだけじゃないでしょう?」

 

「そうだよ!あたしたちこれからバンドやっていくんじゃん!」

 

「いや、そりゃそうだけどさ」

 

「それともヒッキー本当は嫌だった?」

 

なんか知らぬ間に俺がだいぶクソ野郎みたいになってきてるんですけど.....

 

「んなわけねぇだろ」

 

実際俺だって相当浮かれてるのだ。

昨日の夜だってステージの上に立つ自分たちを想像したりした。

 

「俺だって.....楽しみだよ」

 

そう俺が続けると2人とも相当に意外そうな顔をする。

 

「ひ、ヒッキーが素直になった.....?」

 

「明日は雪が降るかもしれないわね」

 

え?なんでこんな意外そうな顔されてるの?

それに雪なんて降らないから.....

 

「雪ノ下こそ、いつもと変わらないように思えるけどな?」

 

ここで俺が反撃の一手に出る。

 

「当たり前でしょう」

 

バカめ、かかったな。

 

「え?ゆきのんは嫌だったの......?」

 

俺が狙ってたのは初めから由比ヶ浜のこの反応だぜ?

 

「いえ.....そのそういうわけではないのだけれど.....」

 

俺だって今まで何も見てこなかったわけじゃない。

雪ノ下が由比ヶ浜に若干弱いことも知っている。

 

「じゃあ....ゆきのんもあたしとバンドやりたいって思ってる?」

 

「え.....その.....それは今言わなくてはいけないのかしら?」

 

「だって.....ゆきのんがそう思ってなかったら嫌じゃん.....」

 

「その.....私もあなたたちと一緒にバンドをしたいと思っているわ」

 

「ゆきのーん!!!」

 

途端に由比ヶ浜は雪ノ下にダイブといっても過言ではない勢いで抱きつく。

 

「急に抱きつかないで欲しいのだけど.....」

 

雪ノ下が戸惑っている。

これは非常に面白い光景と言っていいだろう。

 

「え〜いいじゃん!」

 

そう言いつつも抱きつくのをやめない由比ヶ浜。

そろそろ光景が百合百合しいものとなってきた。

てか俺いつの間にか空気になってね?

いや、いつもだったわ。

 

.....泣きたくなってきたわ。

 

側から見たら百合2人に空気であることを悲しむ男が1人。

うん、カオスだな。

だんだん冷静になってきたころ由比ヶ浜もようやく雪ノ下を解放した。

 

「それで....いつから練習するんだ?」

 

「出来るだけすぐ!」

 

由比ヶ浜さん、もう少し頭のレベルがわからないような発言できませんかね?

 

「そうね、やるならば出来るだけ早いほうがいいことに越したことはないわね。なら、いつの日が予定が合うのか確認してみましょう」

 

こういう時の雪ノ下は本当に頼りになる。

なんてことを片隅に思いながら俺は今月の予定を思い出そうとした.....

 

のだが、よく考えたら俺に予定なんてあるはずもない。

 

.....泣きたくなってきたわ

 

「そうしたら.....この日が予定が合うのではないかしら?」

 

「そうだな、じゃあその日にするか」

 

「うん!あたしもそれでいいよ!」

 

とりあえず練習の日にちが決まったところでちょうど作業が終わった。

 

「それではその日にまとまって練習をしましょう。比企谷君予約を頼めるかしら?」

 

「え、めんど.....」

 

「.....頼めるかしら?」

 

「はい.....」

 

雪ノ下のオーラに負けて俺はあっさりと折れた。

なるべく雪ノ下には逆らわない方向で行こう.....

今更ながらな決断をしながらspaceへと向かう俺であった.....

 

*****

 

ついにバンドを組んでから初めて練習をする日となった。

正直に言おう、だいぶ楽しみにしてて若干寝不足だ。

俺としてはこんな経験初めてである。

 

「でも早く着きすぎたかな.....」

 

そう、今は練習開始1時間前である。

それなのに俺が今いるのはspaceの前である。

 

「とりあえず時間潰すか.....」

 

「あれ?君は八幡君、であってるよね?」

 

「うおっ!」

 

「あはは、そんなに驚かなくてもいいのに」

 

「えっと、牛込先輩でしたっけ?」

 

「おっ、覚えててくれたんだね」

 

「いえ、こないだのライブでかっこよかったので.....」

 

「また嬉しいことを言ってくれるね〜」

 

俺としてはとてつもなく珍しいことなのだがほぼ初めて話す人とまともに会話している。

 

「八幡君もギターを演奏してるんだっけ?」

 

「はい」

 

よくそんなこと覚えてるな、こないだ確かに由比ヶ浜が少しそんなことを言ったけども。

 

「さては今こう考えてるね?よくこの人あの程度の会話を覚えてるなって?」

 

するとよほど意外だと思ってたのが顔に出てたのかゆり先輩がドンピシャなことを言ってくる。

 

なんか最近女子ってみんなエスパーなんじゃないかって思えてくるんだけど.....

 

「私も今度聞いてみたいな〜。比企谷君のギター」

 

「.....まだ人に見せられるような腕じゃないですよ」

 

「えー結衣ちゃんや雪ノ下さんには見せてるのに?」

 

「いやそれは成り行きというかなんというか.....」

 

「そんな風に1人だけ仲間はずれなんてお姉さん悲しいな〜」

 

「あんまからかわないでくださいよ.....」

 

「あれ?バレてた?」

 

お姉さんとか言い出した時点でな.....

これは誰でも流石に気づくと思うんだけどな.....

 

「やっぱり君って面白いね。誤解のないように言っておくと私は君のギター聞きたいと思ってるのは本当だよ」

 

「.....また、いつかきっと見せますよ。あいつらと一緒に」

 

「あいつら?比企谷君は誰かとバンドを組んでるの?」

 

「はい、ていっても結成してまだ間もないですけどね」

 

「ふーん、さては今日がその初めての練習でしょ?」

 

もうマジでなんなの?

絶対この人俺の心を読めてるでしょ?

 

「君1人で待ってるんだからきっと早くに来すぎちゃったんでしょ?」

 

「なんでそんな呼吸するみたいに俺のことを読み取るんですか.....」

 

「普段は絶対にできないけどね、君の今やってることなら私にも心当たりがあるからさ」

 

「てことはつまり先輩も.....」

 

「実は練習まであと30分くらいの時間があるんだよね.....」

 

この人ってもしかして案外天然.....?

 

「だから少しおしゃべりでもしない?」

 

「まぁいいですけど.....気の利いた話なんてできませんよ?」

 

「そんなの最初から期待してないから大丈夫だよ!」

 

.....この人やっぱ天然?

それも八幡キラー持ち?

俺今の一言だけでメンタルのライブがほとんど持ってかれたよ?

 

「あ、違う違う期待してないっていうのは言葉の綾っていうか.....」

 

いや今更フォローされても......

 

「ただ私の質問に答えてほしいな〜って思っただけなんだよ」

 

「別に答えられることなら」

 

俺にどんな質問しようっていうんだよ。

 

「じゃあまず一つ目、比企谷君は誰とバンドを組んだの?」

 

「それは、由比ヶ浜と雪ノ下とです」

 

「やっぱりそうだったんだね〜」

 

やっぱりってなに?

この人読心だけじゃなくて未来予知もできるの?

普通俺が女子2人とバンド組むなんて予想できる人なんていないぞ?

 

「なんでわかったんです?」

 

「んーなんていうのかな〜?ライブの前に君たちと話した時にこの3人がバンドを組んだら面白そう!って思ったんだ」

 

「はぁ.....」

 

感覚的すぎて俺にはよくわからないな.....

 

「それに君たちすっごい仲よさそうに話してたしね」

 

「いえ、それはないです」

 

「即答でだいぶ酷いこと言うね......」

 

俺の返答に先輩は苦笑気味な顔をする。

 

「だってあいつらと会話してるとかなりの高確率で俺だけが精神ダメージを食らいまくってるんですよ?」

 

主に雪ノ下から。

 

「君が今言わなかったこともなんとなくわかったけどそれ絶対に本人の前では言わない方がいいと思うよ.....」

 

「言いませんよ、そんなこと言ったら雪ノ下に何されるかわかったものじゃないですから」

 

いやマジで下手したら夜道で襲われるレベル。

 

「八幡君も鈍いと言うか何というか.....」

 

先輩が何かつぶやいているが小声でよく聞き取れないな。

 

「何言ってるんですか?」

 

「いや、気にしないで独り言だからさ」

 

そう言われると余計に気になるんだけど......

とりあえず置いておくとするか、うん諦めの精神って素晴らしいものだよな。

 

「それにしても君たちのバンドなんて将来が楽しみだな〜」

 

「将来だなんて大げさですよ」

 

「ううん、君たちはきっとすごいバンドになるもん!」

 

ここまで期待されると卑屈になることさえバカみたいに思えてしまう。

 

「その、ありがとうございます」

 

俺が素直に感謝を伝えると先輩は驚いたのか目を丸くしている。

本当になんで俺が素直なことを言うとみんな驚くのだろうか。

全く俺がひねくれ者みたいじゃねーか。

 

「そんなに驚かないでください」

 

「ああ、いやごめんね。なんか君そういうこと言わないタイプの人だと思ってたからさ」

 

いや事実そうなんだけどさ、それでもさやっぱり驚くのは酷いと思うんだ?

 

「俺は別に捻くれてるわけじゃないですから」

 

「自覚ないんだ.....」

 

また小声で何か言っているがまたもや俺には内容がわからない。

 

「あのね比企谷君、あの2人にはしっかりと自分の気持ちを伝えてあげてね?」

 

「はぁ、わかりました」

 

どういうことかはわからないけど先輩は少し心配そうにそんな言葉をかけてくれる。

 

「あとさ、気になってたんだけどその3人で誰がボーカルやるの?」

 

そう言われて初めて気付くが俺たちのバンドはまだそれぞれの担当楽器さえ曖昧でボーカルも決まっていない。

 

「まだ決めてませんでした」

 

「そっか、私的には雪ノ下さんとか向いてると思うんだけどな〜」

 

「確かにあいつの声って綺麗ですからね」

 

雪ノ下ならボーカルも軽々こなしそうというのは容易に想像がつくところだろう。

 

「また話し合ってみます」

 

「うん、そういうことは思い立ったがってやつで早いうちに決めないとね」

 

「はい、いつか俺たちの演奏をすごいって言わせてみせますよ」

 

「おっ、言うね〜。楽しみにしてるよ君たちと同じステージに立てる日をね」

 

「ええ、少し待っててください」

 

「それじゃあ私はそろそろ行くね、暇つぶしに付き合ってくれてありがと!」

 

「いえこっちも暇だっので」

 

「じゃあまたね!」

 

「それじゃあまた」

 

そう言って牛込先輩はspaceへと入っていった。

その後グリグリのメンバーも入っていくのを確認して俺は完全な暇人に逆戻りした。

 

「お!ヒッキーやっはろー!早いね!」

 

「ん?まぁな」

 

まさか楽しみすぎて早く来すぎたとは言えないし.....

 

「ヒッキーはむしろ遅刻しそうだな〜って思ってたよ!」

 

「うっせぇぶち●すぞ」

 

「扱いが雑だしすっごい物騒だ!?」

 

「冗談だ」

 

「だよね〜」

 

「半分は」

 

「どっちの方がほんとなの!?」

 

「後半」

 

「まさかの物騒な方!?」

 

「冗談だ」

 

いちいち反応が大きいからついからかってしまうんだよな。

実際今も面白い反応見せてくれたしな。

 

「随分と楽しそうね?」

 

「あ!ゆきのん、やっはろー!」

 

「こんにちは2人とも待たせてしまったかしら?」

 

「私は今きたとこだよ!」

 

「俺もそこまで待ってないぞ」

 

嘘である、この男実は1時間くらい前からバッチリ待っていた。

 

「そう、比企谷君は遅刻してこないか心配だったのだけど」

 

みんなしてどうしてそんなことを考えるんだよ......

確かに多分これから遅刻しだすと思うけどさ.....

 

「いくら俺でも1回目は遅刻しねぇよ」

 

「何回したら遅刻しだすのかしらね?」

 

「まず遅刻しだすことが前提なんだね.....」

 

「とりあえず今はスタジオに入らないか?」

 

そろそろ入れるしな、1時間も立ってたから早くギターを弾きたい。

 

「そうね、それじゃあ行きましょうか」

 

こうして俺たちの1回目の練習は始まった.....

 

*****

 

「あー疲れた〜」

 

「そうね、初めてだからと言うのもあるけど大変だったわね」

 

「早く帰りたい.....」

 

「ヒッキー本当に引きこもりだね.....」

 

今日の内容としてはまず担当の楽器の確認。

これは由比ヶ浜と俺に関しては今まで自分の練習した楽器にすることとした。

そしてボーカルだが話し合いの結果やはり雪ノ下が担当することとなった。

雪ノ下はボーカルに専念することに決まった。

その後は練習をして今に至るというわけだ。

 

しかし問題点もいくつか出てきた。

一つ目が.....

 

「そしたら曲を作らないとだよね.....」

 

そう俺たちはまだ曲を作ってないためみんなで共通の音を奏でてるわけではないのだ。

 

「それはまた私が挑戦してみるということになったでしょう。次の練習までには原案くらいは考えてくるわ」

 

こいつなら完成版を持ってきそうで怖いんだけど.....

 

そしてもう一つが.....

 

「それよりもベースを弾ける人を探さなければいけないわね」

 

そう、俺たちのバンドにはベースがいないのだ。

 

「それはもう全員で探すしかないだろ」

 

「でも誰も心当たりないんだよね?」

 

これはかなり深刻な問題で俺と雪ノ下はそもそもの知り合いが少ないので見つけるのが容易でないし由比ヶ浜もベースが弾ける知り合いはいないらしい。

 

「そうだ!隼人君なら知り合いにベース弾ける人がいるかも!」

 

「確かあいつもギター弾いてるんだっけ?」

 

「そう聞いてるわね、では由比ヶ浜さんお願いできるかしら?」

 

「うん!聞いてみるよ!」

 

「じゃあ今日は解散ってことで」

 

「ええ、それではまた」

 

「うん、またね!」

 

こうして俺たちの練習は始まった。

そしてこの後ある出会いを照らすかのような夕日を背に俺は家路へとつくのだった.....




今回はここまでです!
更新遅れた上にいろはを出さずすいません.....
次の話ではしっかりと登場させます。

感想、評価など励みになるので是非残していってください!


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第33話

ほんとに最近更新遅くてすいません.....

夏に向けてガチャ禁することにしました、皆さんはどれくらいのスターを溜め込んでますか?


俺たちがバンドを組んでからの初練習から少しの日にちがたちいよいよ文化祭の雰囲気が校内で強まってきた。

そんなこともあり学校でもその話題で持ちきりである。

休み時間に耳をすませればすぐに文化祭の話題が聞こえる。

どうせ中学校の文化祭なんてたかが知れてると言うのに.....

そう言ってもやはり例年学校行事の中でもメイン級の盛り上がりを見せるらしいので退屈ということでもないようだ。

 

「......でもなんでこんなめんどいことをやらないといけないんだよ」

 

「話してる暇があったら仕事をしなさい、目がそれ以上腐ると見ていて不快になるだけよ」

 

「いや俺珍しく超働いてるから.....」

 

「珍しいってことは認めちゃうんだね.....」

 

「俺は働かないことをモットーにして生きてるからな」

 

「一応言っておくのだけれどそれは誇らしげに言うことではないわよ」

 

今俺たちは文化祭の準備を委員会単位で行なっている。

決めるときには気づかなかったが前期の委員会では文化祭の準備という仕事が存在していた。

ちなみに俺たちの委員会は他の委員会の手伝いとかいう必要性を本気で疑うような内容である。

 

「とりあえずここの準備はこれでいいだろ」

 

「そうね、では次の場所に向かいましょう」

 

ちなみに手伝いと言いつつもおそらく最もきついのは俺たちの委員会である。

半ば何でも屋のように働かされるのはなかなか辛いものがある。

 

「てかその前に休憩しないか、いくらなんでもぶっ続けで働くのは効率が悪いだろ」

 

「確かにあたしも疲れてきちゃった」

 

「そう.....では10分ほど休憩しましょうか」

 

側から見たらサボりと言われそうだが休憩は各自の判断でとのことなので別段問題はない。

というかそれでサボる人間がほぼいないのは異常だと思うのは俺だけか?

俺単独でだったら影の薄さを利用して何も働かずにずっと座ってたな。

 

「それにしても文化祭もほんとにもうすぐだね!」

 

「だからこんなめんどくさい仕事やらされてるんだけどな......」

 

「けれども必要なことなのだからしょうがないでしょう」

 

「そうだけどよ.....」

 

そもそもこんなの文化祭を楽しめる奴らがやるべきだとさえ思ってる。

俺のような隠キャに準備だけさせて本番を楽しむだけの陽キャがいるのはおかしくないか?

なんなら俺は準備もしないで本番までなくていいまでもある。

 

「そういえば文化祭のステージゆり先輩も出るらしいよ」

 

「そう、私たちのこれからに活かせるかもしれないからしっかりと聞かないといかないわね」

 

牛込先輩が出るならそうも言ってられないかな......

もう一度あのバンドの演奏が聞けるなら全然他のことも耐えれるわ。

 

「それではそろそろ作業を再開しましょうか」

 

「そうだね!もうひと頑張りしよー!!」

 

「面倒だしさっさと終わらせたい.....」

 

「まずはどこの作業がまだ終わってないのか確認してみましょうか」

 

「おう、なるべく楽なところに行こう」

 

「.....あなただけ特別大変なところにしてもらおうかしら」

 

「マジでそれだけはやめて?俺明日休むよ?」

 

「そちらの方が学校全体の利益も高いのではないかしら?」

 

「お前そろそろいじめとして報告するぞ」

 

「あら?あなたの言うことと私の言うことのどちらの方が教師は信じるかしらね?」

 

「お前その話に持ってたら俺誰のいじめも報告できないじゃん.....」

 

「と、とりあえず仕事の確認に行こっか」

 

由比ヶ浜は半分苦笑いをしつつ俺たちの会話を元の軌道に修正する。

こういう時由比ヶ浜が空気が読めるのは本当に助かる。

おかげでこれ以上精神的ダメージ話受けずに済む.....

 

*****

 

.....マジでどうしてこうなった。

あれから3人で仕事の確認に行ったところ雪ノ下と由比ヶ浜と俺は別々の仕事を言い渡された。

そこまでならいいのだが俺が作業場所に来てみると誰もいない、どうやら何やら事情でそこの担当が全員他の場所に出向いてしまっているらしい。

そこで俺は今1人で働いてるというわけだ。

 

.....本当にこの学校俺に対して風当たり強くない?

そろそろ不登校を考えてもいいころかなぁ、いやまぁそんなこと親が許してくれないけど。

 

マジでそもそもおかしいと思うのは当日を楽しむだけの陽キャがいるのに対して別に当日そこまで楽しめない隠キャが一生懸命準備してるってとこだよな、楽しみたいならその分準備もやってもらいたいものだ。

こんなこと考えながらも手はしっかり動いてるなんて八幡有能!

.....冷静に考えれば社畜化してるとも言うのかもしれないが。

 

「あの〜すいませんちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか、"先輩"」

 

ん?誰だ?

全く聞き覚えのない声に呼ばれて俺は振り返る。

てかそもそも一年の俺に後輩なんてあるはずがないのだが.....

 

「.....」

 

振り返った俺は少しばかり驚く。

そこに立っているのは相当な美少女であり、確かになんか後輩って感じのオーラを持っている。

 

「えーとまずどうしてここには"先輩"しかいないんですか?」

 

「.....俺が来た時にはすでに誰もいなかったからわからないな。それでその....なんでここに来たんだ?」

 

「あれ?ここにサッカー部の人たちいるって聞いてたんだけどな.....葉山君に近づくためにボランティアに参加したのにこのままだと無意味になっちゃうし......」

 

何を言っているのかはわからないがどうやら何か事情がありそうだ。

 

「誰か探しているのか?」

 

「え、あ、はい。葉山君に用があったんですけど.....」

 

「葉山?あああいつらは確か急に担当が変わって大慌てで移動してったぞ」

 

「葉山君と知り合いなんですか?」

 

「まぁ、同じクラスだし」

 

「え?同じクラス?だってあなたは先輩なんじゃ.....」

 

「あーやっぱ勘違いしてたか.....俺も1年で訳あってここを1人で準備してたんだ」

 

「それなら最初から言ってくださいよー!まったく.....」

 

いや訂正する必要もないかと思ってたからしなかっただけなんだけど.....

 

「あれ?でもそうするとおかしいですねー?」

 

「何がだよ」

 

「いや私同じ学年の人は名前から誕生日まで把握してるんですけどあなたのことを何も知らないんですよね」

 

いや色々ツッコミたいんだけどまずさらっと学年全員の名前と誕生日覚えてるとか言ってるけど1年だけでも100人くらいいるぞ?

しかもその中で1人だけ把握されてないって俺のステルス性能もだいぶ向上してきたんじゃないか?

もはや海軍の潜水艦レベルまである。

目から海水でそうだけど.....

 

「それはなんだ、俺転校生だからじゃないか?」

 

「いや普通転校生なら余計に覚えますよー」

 

それもそうだがだったらマジでなんでだよ.....

 

「転校生が来たとは知ってましたけどあなただったんですねー」

 

転校生が来たら普通どんなもんか遠目にでも見に来そうなものだけど.....

やめとこうこれを聞いたら俺が傷つく未来がが訪れるだけな気がする.....

 

「教室行った時には人が集まっちゃっててよく見えなくてその後人がいなくなってからまた見に行こうって言ってまた見に行ったら誰がその転校生なのかわからなかったんですよねー。もしかして教室にいなかったんですかね?」

 

多分それは俺の影の薄さでわからなかっただけだ.....

俺もしかして幻のシックスマンになれたりする?

バスケ始めるしかないのか?

いや、あの部活は陽キャが多いから却下だな、どのみち入らないけど。

 

「そんなことよりお前はいつまで敬語使うんだ?俺は同学年だから使う必要ないだろ」

 

それともなんだあれか、陽キャにありがちな普段は先生にさえ敬語使わないやつが隠キャに対してはなぜか敬語で接してくるっていうアレか。

 

「なんか最初先輩だと思って話しちゃったのでもう治んないですかねー。それはそうと結局あなたの名前ってなんなんですか?」

 

そういやまだ名乗ってなかったな。

なんかめんどくさいことに片足突っ込みかけてる気がしてならないのは目の前にいる少女の笑顔に少し違和感を感じるからだろうか。

なんていうか女子特有の腹黒さを感じるというか.....

 

「比企谷八幡だ、お前は?」

 

「私は一色いろはです!」

 

とりあえずお互いに自己紹介をすませたところで一色はおもむろに話を変える。

 

「それで先輩って葉山君と同じでクラスなんですよね?」

 

「名前言ったのに先輩呼びなのな.....」

 

「なんかもう私の中でそう定着しちゃいましたから。それとも.....」

 

そう言うと一色は一歩前に出る。そうすると俺との距離がだいぶ近づいてすぐそばまで一色の顔が来ている。

 

「八幡って呼ばれたりしたいですか?」

 

そうして上目遣いでそう言ってくる姿はそう、あれだな。

 

「あざとい」

 

そう俺が呟くと一色は若干驚いたようだ。

 

「流石にその反応は酷くないですか?いきなり女の子に向かってあざといなんて普通言いませんよー」

 

しかしすぐに憤慨した様子でそう言うが俺にはわかる。

 

「そういうところがあざといって言ってんだよ」

 

実際のところこいつは怒ってなどいない俺をからかっているだけである。

 

「なんで先輩はそんなつまらないリアクションしかしてくれないんですかー。普通私みたいな女の子にこんなことされたら少しくらい顔色変わるじゃないですかー」

 

「そんなこと自分で言ってるうちは少なくとも俺は騙されねーよ」

 

過去のトラウマもたまには役に立つな、うん。

俺とて伊達に黒歴史は積んできてない。

もはや防御高すぎてラスボスすら裸足で逃げ出すレベルなまでにある。

 

「それに葉山の周りにはお前みたいな女子もいっぱいやってきてるからな」

 

「そんなに葉山君とよく話すんですか?」

 

「ん、そこそこな」

 

俺たちがバンドを始めた次の日に由比ヶ浜からそのことを聞いた葉山は俺ともそこそこ話すようになっていた。

葉山もギターのことを話せる友人は流石に少なかったようで俺とはそんなことの話をよくする。

なんなら一回2人でspaceに行ってギターを弾きあったりもした。

葉山が学校で見せないような一面を知ってるという意味ではそこそことは言えないかもしれないが.....

 

「なんか意外です」

 

「何がだよ」

 

「てっきり先輩ってずっと1人でいてほぼ人と話さない人だと思ってました」

 

「まぁ俺の場合あれだからただ教室で読書してるのとかが好きなだけだから.....」

 

「なるほどなるほどつまりぼっちってことですね!」

 

こいつ言いやがったよ、俺がなんとかして隠そうとした事実を普通に言いやがったよ。

 

「ち、ちげーよ、少しくらいは話すやつだっているし.....」

 

「自分で少しって言ってるし友達って言えない時点でぼっちですね」

 

「取りつく島もないなお前.....」

 

「私はただズバッと事実を言っただけですよ」

 

「ていうか俺に友達とか言われた奴がかわいそうだから言わないだけだし、お前も俺みたいなやつに友達とか言われたらキモいと思うだろ?」

 

「え?なんですかそれそうやって自分が悲しいやつアピールすれば私が同情して別にそんなことないですよとかいうと思ってましたかそんなことちょっと勘弁なのでもう少しその腐った魚の目みたいに濁った目をどうにかしてから言ってくださいごめんなさい」

 

なんかすごい勢いで罵倒されたんだけどてかそんな気もなかったんだけどそれにその長文をとっさに思いつくのすごくない?

 

「いやお前それは想像力豊かすぎるだろ、別に同情されることなんてない」

 

そう、なにも.....

 

「なんでそんな遠い目をしてるんですか?」

 

一色が雰囲気を一変させてそう心配気に聞いてくる。

 

「急に態度変えたな」

 

「なんか目がもっと濁りそうな雰囲気だったからですよ」

 

ところどころ腹黒いところがかいま見えるが最後には悪いやつじゃなさそうだ。

 

「これ以上は腐りようがねーよ」

 

「そうですか?先輩ならもっといけますよ」

 

「いやそれ言われてもなんも嬉しくないから.....」

 

「ていうか俺そろそろ作業しないといけないから」

 

「.....流石に先輩1人だけだとかわいそうなので私も手伝ってあげますよ」

 

「葉山のところに行かなくていいのか?」

 

「うーんこれはこれで優しいっていうアピールになるからいいです」

 

「アピール?お前葉山のこと狙ってるの?」

 

「そうですけど何か?」

 

「いやお前よくそんなこと人に言えるな.....」

 

「私だってそんな誰にでも言うわけではないですけど先輩はぼっちで誰かに情報漏洩する心配もないので」

 

「お前的確に俺のメンタル破壊しにかかってくるな.....」

 

「先輩メンタル弱そうですもんねー」

 

「は?お前俺以上にメンタル強いやつとかいないぞ?」

 

「はいはい、それじゃあさっさっと片付けちゃいましょう!」

 

「おう、サンキューな」

 

一応礼は言っておかないとな。

 

「いえいえその代わり葉山君のこと色々教えてもらいますからね?」

 

「強いなぁお前」

 

思わず苦笑いをしてしまうほどに強いその少女を俺は完全に警戒心を解いていたのだった.....

 

「それで、いつまでそんな風に鼻の下を伸ばしているつもりなのかしら?」

 

「えっ.....」

 

そんな風にして作業に取り掛かろうとした瞬間に超冷凍された声が聞こえる。

 

「なんでここにいるんだ雪ノ下?」

 

「あら手伝ってあげようと思ったのに女子と2人で話していたのは誰かしら?」

 

「そんな誤解を招く言い方をしないでもらえますかね.....」

 

「あら事実じゃない?」

 

「えー私のことそんな軽く思われてたなんてショックです....」

 

おい一色お前もちょっと黙れ。

 

「比企谷君?」

 

「だから誤解だって.....」

 

その後数分をかけて雪ノ下に状況の説明をする。

雪ノ下の方は作業がだいぶ終わりかけていたので由比ヶ浜にそちらを任せて一度こっちの様子を見に来たところだったそうだ。

.....もう少し前にも来てなくてよかった。

 

その説明をしてるうちに由比ヶ浜も作業を終わらせてこっちに来た。

 

「あれ?いろはちゃん?どうしてこんなところにいるの?」

 

「私も文化祭の準備のボランティアだからだよ、そっちも大変そうだね」

 

「うんもう私クタクタだよー」

 

由比ヶ浜は一色と旧知の仲らしく会うなり談笑を始めた。

 

「さてそれではそろそろ準備をしましょうか」

 

俺たちは4人で準備をした。

その時よくわからないがパズルのピースが揃ったみたいな感じがしたのはただの錯覚かそれとも.....

 

いずれこの4人で音を奏でることになるなどこの時の俺は知る由もなかった.....

 




今回はここまでです。
次回でいろは加入!ってかんじですかね。
それとおそらく7月中旬を過ぎるあたりまで投稿のペースが相当に落ちます。
どうか気長に待っていてください。

感想、評価など励みになるので是非お願いします!


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番外編5

最近はガチャ引かないおかげで少しくらいはスターが溜まってきました。引きが悪いので数用意しないと.....

今回は久々に過去編ではなく一旦七夕の様子を書いていきます。
果たしてどんな七夕を過ごすのでしょうか.....


はぁ.....あちぃもう七月になって完全に夏って感じになってきたな.....

もうこんな暑いなら外に出るんじゃなかった.....

今日は7月6日土曜日暇だった俺は少し前に発売されて読みたかった本を買おうと外に出たのだがとてつもなく暑くて相当公開している真っ最中である。

 

こんな暑い中でて俺隠キャ卒業して陽キャに転生できないかな?

なんてくだらないことを延々と考えて暑さをなるべく意識しないように歩いていると商店街のあるポスターが目に入る。

 

「ん?七夕祭り?そういや明日は七夕か.....」

 

だからといって別段どうといったわけではないのだが.....

どうせこんな祭りに行くこともないだろう。

昔から七夕に興味は薄かった。

七夕など給食で特別なデザートが出たりする程度で特に何か大々的に行う行事でもないし短冊に書いた願いなんて叶わないと知っているのだから小3以降は書いてない。

 

夏だというのにどこか暗い気分で俺は歩いていくのだった.....

 

*****

 

その翌日俺は家でゴロゴロしていた。

そのまま午後へ突入し気づけばもう3時になろうとしていた。

 

「お兄ちゃん今日一日ゴロゴロしてるね」

 

「そりゃ暇だからな」

 

「少しくらいは外に出ないと引きこもりになるよー」

 

「すでに引きこもりではあるから大丈夫だ」

 

「それなにも大丈夫じゃないよ.....」

 

「そんなこと言ってもどこも出かけるところもないだろ....」

 

「そうだよねー」

 

ん?そういえば今日に商店街で七夕祭りがあったな.....

 

「商店街で七夕祭りがあったはずだろ?お前は誰かと行ったりしないのか?」

 

「うーん今の所予定はないかな。みんな受験勉強してるかもって思ってるうちに忘れちゃってたよ」

 

「そうか」

 

「あーでもやっぱり小町も行きたい!もーお兄ちゃんなんで思い出させてくるかなー」

 

「いやそれは完全に逆恨みだからな?」

 

そんなことを言われても俺に非はない。

 

「そんなに行きたきゃ行ってくればいいだろ」

 

見たところ小町さっきまでしっかり勉強していたようだしな。

少しくらいなら息抜きとしてちょうどいいだろう。

 

「お兄ちゃんわかってないわー」

 

いやなんかいつもと口調違う上に馬鹿にされてるんだが.....

 

「どういうことだよ?」

 

「だってそんなお祭りに一人で行っても寂しいだけじゃん」

 

「今からでも人を探せばいいだろ.....」

 

「行くって人はもうどの人と行くかなんて決まってるんだから今更そこに混ざれるわけないじゃん」

 

そういうもんなのか?俺はそうは思わないんだが.....

 

「それならもう諦めるしかないだろ」

 

「うーお兄ちゃんが思い出させてきたからこんなモヤモヤする羽目になってるんだよ、責任とってよ!」

 

だからなんで俺が悪いことにしてるんだよ.....

責任とってよもとりようないだろそれ.....

 

「そんな無茶なこと言うなよ.....」

 

「こうなったらお兄ちゃん!」

 

「は、はい」

 

あまり大声を出すなよ、怖く見えるぞ。

 

「仕方がないから小町と一緒にお祭り行こ?」

 

「妥協枠なのな.....」

 

「当たり前じゃん、むしろ妥協しただけ褒めて欲しいくらいだよ」

 

「最近妹からの風当たり強くないですかね?」

 

「それじゃあお兄ちゃん早く支度してきてね?」

 

俺の言葉は容赦なく無視されて俺は祭りに行くことになったのだった.....

 

*****

 

それから少しして小町と俺は商店街へと向かった。

.....のだが

 

「なんでこんな時に限って雨が.....」

 

「ほんとだよーでもそんなにふられないで済んでよかったね」

 

俺たちが商店街につくかつかないかといったくらいに雨が突然降ってきた。

そこで慌てて近くのファストフード店に入ったというわけだ。

 

「いらっしゃいませー」

 

ん?なんか聞いたことある声だな。

 

「って彩か」

 

そういえばこいつはこの店でバイトしてたな。

 

「えっ彩さん!?ど、どうしてここに!?」

 

落ち着いてる俺とは対照的に小町は大興奮である。

 

「あれ?八幡君この子は?」

 

「俺の世界一可愛い妹だ」

 

「え?八幡君妹さんいたの!?よろしくね!」

 

「はい!実は小町パスパレの大ファンなんです!」

 

「ほんとう!嬉しいなー!」

 

「私も会えて本当にうれしいです!」

 

「それにしても2人ともせっかくの七夕祭りなのに残念だね」

 

「多分にわか雨だろうし大丈夫だろ、止むまで雨宿りさせてもらうぞ」

 

「うん!もちろん!」

 

「ねぇお兄ちゃんせっかくだしポテトたべてこうよ!」

 

「そうだな」

 

「あ、それならちょうど今ポテトの増量サービスをやってるんだよ」

 

「お、ちょうどいいな」

 

「それとじゃあそれとコーラを2つ」

 

「うん、ポテトLとコーラ2つづつお願いしまーす!」

 

「は、はーい!かしこまりましたー!」

 

「あれは松原か?松原もここでバイトしてたのか....」

 

「うん、そうだよ!それじゃあ揚げたてを持って行くから席でお待ち下さい♪ふふふ」

 

「ん?どうした急に笑ったりして?」

 

「あ、ごめんね、ついさっきも全く同じやりとりしたなーって」

 

「お前の知り合いか?」

 

「そうだよ、まだ店の何処かにあるはずだから探してみたら?」

 

それじゃあ見つけたら挨拶しとくか.....

なんて思って空いてる席を探し始めたのだが.....

 

「あれ?八幡君?おーい!」

 

またもや聞いたことのある声だな.....

 

「え?え?日菜さん!?」

 

「よぉ彩が言ってたのはお前のことか」

 

「彩ちゃんがどうかしたの?」

 

「いやこっちの話だ」

 

こんな話を俺たちがしてる間に小町もエラーから立ち直ったようだ。

ちなみに俺と日菜が知り合いだということは訳があって既に知っているはずなのだがやはりいざ憧れの人が目の前にいるとテンパるみたいだな。

 

「え、えっと日菜さんはどうしてここに?」

 

「あれ?この人が前八幡君が言ってた妹?」

 

「ああ、俺の世界一可愛い自慢の妹だ」

 

「あはは!相変わらず妹大好きのシスコンなんだね!」

 

日菜はちょくちょく俺に連絡してくるので妹がいることなど俺の家族状況は全て把握されている。

 

「あ、あの隣お邪魔してもいいですか?」

 

まだ緊張してるが小町がそう聞く。

 

「うん、もちろん!」

 

「ありがとうございます!」

 

そう言って小町は日菜の隣に座る。

そこで俺は日菜の正面に座ることにした。

 

「日菜も七夕祭りに来たのか?」

 

「うん、おねーちゃんを誘ったんだけど断られちゃって.....」

 

そういう日菜はとても寂しそうな顔を一瞬見せたがすぐさまいつもの笑顔に戻る。

 

「だから八幡君たちが来てくれてよかったよ!」

 

事情を知らない小町は空気を読んで静かにしているようだ。

 

「そっか、それより小町いつまで緊張してるんだ?」

 

「だって急に本物の日菜さんだよっ!?そんな普通に喋ってるお兄ちゃんがおかしいんだよ!」

 

そんなことないし俺も最初からこうだったわけじゃないんだけど.....

などという言い訳はぐっと飲み込む。

他人の前で喧嘩はなるべく見せたくない。

 

「八幡君たちは仲いいんだね、2人でお祭り来たんでしょ?」

 

「ん、まぁな」

 

「喧嘩ばっかりだけどね」

 

「でもやっぱり仲いいよ、だってあたしとおねーちゃんがする喧嘩とは違うもん」

 

「そんなことはないぞ、俺たちだってたまに本気の喧嘩してしばらく口をきかなかったりするしな。喧嘩なんてして当たり前だろ兄妹なんて」

 

「ふふ、そうだね」

 

俺の言葉に日菜は笑みを見せた。

その笑顔になぜか少しドキッとしたが俺はなるべくそれを悟られぬように話を続ける。

 

「ねぇねぇ2人ともよかったらあたしと一緒にお祭りを回ってくれない?」

 

「ん?別に構わないぞ。小町も問題ないよな?」

 

「うん!ってちょっと待って」

 

なにやら芝居掛かった調子で話してるが一体なにしてんだ急に携帯なんて見だして.....

 

「あー!今クラスの友達から誘われちゃったから小町はそっちに行こうかなー」

 

昔からのことだが小町はこういうことを言いだした時は大抵ロクでもないことを考えている時だと長年の付き合いで俺は知っている。

 

「あ!友達すぐ近くにいるみたいだから小町行ってくるねー!」

 

そう言って小町は嵐のように去っていった.....

まったくなにがしたかったのか.....

 

「外雨まだ降ってるけど小町ちゃん大丈夫かな?」

 

「.....大丈夫だと思うぞ」

 

妹よ、頼むから兄の苦労を考えてくれ....

 

「そっか!それよりも雨早くやむといいね!八幡君と回れるの楽しみだよ!」

 

「そうか?多分彩とかと一緒に行った方が楽しいぞ」

 

「あれ?いつの間に彩ちゃんのことを名前を呼ぶようになってたの?」

 

「ま、まぁ色々あってな.....」

 

なぜか若干不機嫌そうにそう聞いてくるので俺もつい言い訳をするような口調になってしまう。

最近よく思うのだが俺はというか親父のこともそうだし大帝の男ならわかると思うのだが男っていうのは女子の言うことに逆らえないようにできてるらしい。

 

「ふーんまぁいいや」

 

ほっ日菜がそこを気にすることがなくてよかった。

いや別になんか話せないことがあったとかじゃないけどね?

 

「そ、それよりそろそろ雨が止みそうだぜ」

 

「あっ!本当だ!それじゃあ八幡君一緒に行こう!」

 

「わ、わかったからそんな急ぐな」

 

そのまま日菜に引っ張られるようにして俺は店を出て行くのだった.....

 

*****

 

「それでねーその時彩ちゃんがねー」

 

「いかにもあいつらしいな」

 

その後日菜と2人で話しながら歩いているが少し前までの俺がアイドルの女の子と並んでいるなんて知ったらどうなるかな?

多分信じないな、我ながらわかりやすい思考をしているものだ。

 

「あっ見て見て!『短冊に願い事を』だって!おもしろそうだから行ってみようよ!」

 

「.....そうだな」

 

繰り返すが俺は短冊というものが嫌いなのだ。

願い事を書いて吊るす、それで願いが叶うものか。

それで叶うならいくらでも書いてやるさ。

 

「八幡君はなんて書くの?」

 

「そうだな、『専業主夫になれますように』とかかな」

 

「あはは!八幡君ってやっぱり面白いね!」

 

「いや俺は真面目に言ってるんだが.....」

 

「それが面白いんだって!あたしには考えつかないもん!やっぱり人と関わるのは楽しいよ!」

 

こいつは他人に理解されず、理解もされなかった。

しかしこいつはそれを前向きに捉えることができるんだな.....

俺はそうできなかった、こいつから学ぶことは案外多いかもな。

 

「そういう日菜はどんな願いをするんだ?」

 

「それはまだ秘密!」

 

こいつのことだから十中八九紗夜のことだろうが。

 

「あっここで書けばいいみたいだね」

 

「そうみたいだな」

 

そう言ってからすぐに日菜は願い事を書き始める。

俺も書いたふりだけして誤魔化すか。

 

「日菜?」

 

その時俺たちの背後から何度目かわからない聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「おねーちゃん!?」

 

やっぱり紗夜か。

 

「こんなところでなにをしてるの?」

 

「あはは....おねーちゃんに断られちゃったから、八幡君と七夕祭りを見て回ってたんだよ」

 

「え?あ、八幡さんこんばんは」

 

やっぱ気づかれてなかったのか.....

 

「おう、紗夜こそなんでここに?」

 

「私は母に買い物を頼まれたので.....七夕祭りには用はありません。それと日菜その手に持っているのは?」

 

「短冊!お願い事を一緒に書いてたんだ〜」

 

「そう.....」

 

やはりまだ少し距離があるようだな。

まぁそんなすぐに仲良くなるんだったら元から悩んだりなんてしないよな。

 

「おねーちゃん....あの、わわっ!」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

あれ?日菜の短冊が.....

 

「2人とも大変〜〜!あたしの短冊鳥がくわえて持ってちゃった!」

 

「「書き直せばいいだろ(じゃない)」」

 

俺と紗夜が同時にそう言う。

しかし本人は

 

「待って〜!!あたしの短冊〜!!」

 

「日菜無理よ!」

 

紗夜がさっきより語気を強めてそう言う。

 

「やだよ!あの短冊にはすごく大切なお願いを書いたんだから!」

 

「だから、取り返したいの!」

 

そういうと日菜は駆け出した。

 

「おい、俺たちも行くぞ」

 

「ああ、もう!」

 

俺たち2人もそれに続く。

 

その後走ること5分。

俺たちが完全に鳥を見失いようやく日菜がその足を止めた。

 

「はぁはぁ結局見失っちゃった....」

 

はぁはぁいや、引きこもりが急に走るとマジで心臓が.....

 

「だから無理だって言ったでしょう」

 

「とりあえずもう少しこの辺りを見てみるか」

 

「うん」

 

「見つかるとも思えませんが.....」

 

まぁそこはダメ元だな。

 

それから少し公園をそれぞれ探したところ.....

 

「なんだよ....本当に落ちてるもんだな」

 

本当に草むらの中にあった。

それを拾い上げる。

 

「そっか、それがお前の願い事か.....」

 

俺は初めて短冊に書かれた願い事が叶うよう祈ったのかもしれない。

そう、俺がカササギならな.....

 

「おーい、2人とも見つかったぞ」

 

「え!?本当に!」

 

「まさか本当に落ちているとは.....」

 

「ありがとう!八幡君!」

 

「おう、だけどそれより疲れた.....」

 

「そーだね、あたしも疲れちゃった」

 

「私もこんなに走ったのは久しぶりだから疲れたわ」

 

「それじゃああそこのベンチに座って休むか」

 

「そうですね、そうしましょう」

 

それから2人が座ったところで俺はこの2人で話して欲しいと思った。

それは単なる俺の下世話であってもしかしたらいらない世話かもしれない。

それでもやってみるか.......

 

「なんか喉乾いたから水買ってくるわ」

 

「わかりました」

 

そう言って俺は 歩き出す。

あとはあの2人次第ってところかな。

 

*****

 

それから俺が飲み物を買って戻るとそこにはまだ話をしている2人がいた。

 

「知ってる?七夕の日に雨が降った時にはカササギっていう鳥が橋を作って織姫と彦星を会えるようにするんだよ」

 

....七夕伝説、それは仕事を怠けるようになった罰に離れ離れにされた2人の話。

俺はこの話をどこか自分に重ねて考えてしまう。

俺は一年以上戻れてないけどな.....

 

「せめて、あの2人のカササギくらいにはなれたらいいんだけどな....」

 

2人はまだ気づいてないようなのでそんなことを考える。

 

「もしかしたら、あの鳥はあたしとおねーちゃんを繋いでくれるカササギなのかもね」

 

「そうかしら?」

 

「ううん、やっぱりあの鳥もそうだけどさ.....最初にあたしたちの橋になってくれたのは八幡君だね!」

 

「ふふ、それはそうかもしれないわね」

 

てかどうしよう、なんか戻るタイミング無くした.....

 

その後続く話にはいるのに俺は1分ほど要した。

しかも話仕掛けた方法も我ながらよくない方法だった。

 

「.....なんて言われて誰も寄り付かないんだけどね」

 

「.....まぁ、日菜が部員なら....」

 

「.....そうなるだろうな」

 

「「八幡君(さん)!?」」

 

「ていうか、それどういう事ー!?もう2人ともー!」

 

「ふふっ」

 

「あっ、おねーちゃんが笑った♪」

 

「本当だ」

 

「別に私だって笑うことくらいあるわ.....」

 

顔を赤らめそう言う紗夜に日菜が嬉しそうに話しかける。

 

「おねーちゃんがあたしの話を聞いてくれたのは久しぶりだよね。ありがとう!」

 

これがこいつらがお互いに踏み出した一歩なのだろう。

もう、こいつらはきっと間違えない。あと少しでこの2人は出会うことができるだろう。

 

その後俺たちは祭りの会場へと戻る。

日菜がすぐさま屋台へと向かっていったので今は紗夜と2人で待っている。

 

「今日はありがとうございます」

 

「なんのことだよ?俺は何もしてないぞ」

 

「いえ、日菜の願いを見つけてくれたので」

 

「お前も真面目だな」

 

「....そのおかげで原因を再確認できましたから」

 

「原因?」

 

「日菜とうまく話せないのは私の問題だということです」

 

「....仕方ないだろ、そんなことはゆっくりやってけばいいだろ」

 

「そうですか....」

 

「お前はなんで俺がアブアルから抜けたか知ってるか?」

 

「いえ、何か事情があるのですか?」

 

「まぁな、全て俺のせいなんだけどよ....今あいつらに俺は手を伸ばしてる」

 

「.....」

 

紗夜は黙って聞いている。

 

「俺は、ここまで来るのに時間がかかったけど手が届く距離まで来た。お前たちも近づいていけば分かり合えるんじゃーねの?」

 

「ふふ、またあなたに助けられましたね、私」

 

「そんな大層なもんじゃないけどな....」

 

こんな風に誰かが救われる日だというのなら七夕も悪い行事じゃないかもしれないな。

 

「おまたせー!」

 

するとそこに日菜が帰ってくる。

 

「あの子ったら....まったく」

 

俺の横で苦笑する少女の顔はまさしく姉のそれだった。

 

その後しばらくは日菜の買ってきた食べ物を食べていざ短冊を吊るすことになった。

 

「2人もせっかくだから短冊書いたら?」

 

「私は別に....」

 

「俺は....書いてみるか」

 

「それならおねーちゃんも書こう!ほらあそこに書くスペースあるから!」

 

そうして俺と紗夜は書くスペースへと向かう。

紗夜は書くことに悩んでいるようだったが何を書くのだろうか。

とりあえず俺も書くか。

 

その数分後に再び日菜とと合流する。

俺も紗夜も短冊を結び終わった。

 

「お前も飾ったのか?」

 

「ううん、あたしは結ばなかったの」

 

やっぱりな、そうだと思っただって....

 

「どういうこと?」

 

「だってあたしの願いはもう叶ったから!『おねーちゃんと仲良く過ごせますように』ってほらねもう叶ったでしょ!」

 

それなら別のことを願えばいいのに....

どこまでも姉思いなやつだ。

 

「だからきっとおねーちゃんのお願いも叶うよ!」

 

「.....そうね、いつか私の願い事も叶う気がするわ」

 

「だといいな」

 

「きっと八幡君の願いも叶うよ!」

 

「.....そうだな」

 

そうきっと叶う、いや叶えてみせる。

 

『いつかまた、4人で演奏できますように』

 

それまで俺は、歩み続ける。

例えそこに橋がなかったとしても.....




今回もお待たせしてすいません!!
7月中にあと2、3話は更新したいと思うので気軽に待っていて下さい。
感想、評価などもらえると励みになるのでぜひお願いします!


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第34話

過去編が長くなりすぎてますけど後少しで終わる予定です。
もう少し過去の八幡たちをお楽しみください。

夏にはバンドリでも色々あるので今から楽しみですね!


 

 

今日は文化祭前日つまり最近多かった文化祭の準備も今日が最終日となる。

中学校ながらそこそこ自由度が高いうちの学校は他の学校より準備も多くなる。

本当に勘弁して欲しいもんだ。

.....でも来年はステージとか立ちたいかも、いやいや何を考えてるんだそんなことしたら俺のステルス性能が落ちてしまう。

え?別に大丈夫?

やめろよ、悲しくなって死んじゃうから。

 

「はぁ.....」

 

「またため息ついてるんですか?こっちまでテンション下がるからやめて欲しいんですけど」

 

「そう言うなよ、はぁ.....」

 

「全く言ったそばから....そんなんだから先輩はダメなんですよ」

 

「お前も相変わらず俺を否定し続けるな.....そろそろ俺泣いちゃうよ?」

 

「これくらいのことで何を言ってるんですか.....」

 

「お前にとってはこれくらいでも俺にとっては隕石が落ちてくるレベルのダメージなんだよ」

 

「情けないですねー」

 

まじで雪ノ下とは違ったダメージを俺に与えてくる一色の攻撃に耐えながら俺は作業を続ける。

 

「ていうかそんなことよりも早く葉山君のこと教えて下さい」

 

「....やっぱそれが目的か」

 

「そりゃそうじゃなきゃわざわざ先輩と2人で作業する訳ないじゃないですか」

 

「まぁそりゃそうだろうけどよ」

 

「先輩ってたまにめっちゃ悲しいことさらりと言いますよね.....」

 

「これが普通じゃないのか?」

 

「先輩が普通だったら世の中滅びますよ」

 

「そういうこと真顔で言うのやめて?」

 

「それより先輩話しをそらさないでください」

 

「いやお前だよ?そらしたのは?」

 

まったくなんというか最終的にそこそこ楽しんでる俺がいると言うのに驚きだな。

あってすぐにこんなふうに話せるようになることなんて経験ないぞ。

 

「それでなんで先輩みたいなパッとしない人が葉山君と友達になったんですか?」

 

「いや、友達じゃねーから」

 

「そんなツンデレ求めてないので早く話してください」

 

ツンデレで言ってる訳じゃないんだが.....

ほ、ほんとなんだからねっ!

あ、つい癖でやっちまった.....

八幡たらノリがいい!

 

「いや、そりゃまぁお互い共通の趣味があったっていうか.....」

 

実際お互いにギターという趣味を持ってなければ多分俺はここまで葉山と関わるようにはなってないだろう。

 

「それがなんなのか聞いてるんですから早く行って下さい」

 

女って怖えな.....

 

「ギターだよ、俺も葉山もギターを弾いてるんだ」

 

「ギター?葉山君はともかく先輩が弾けるんですか?」

 

「お前流石に失礼すぎない?俺そんなメンタル強くないよ?」

 

「いえ、見た目完全隠キャな先輩とギターがどうしても結びつかないだけです」

 

「なに?お前は俺をいじめたいの?」

 

本当に最近俺をみんながいじめるよぅ.....

 

「へーなるほど.....それなら.....」

 

俺の言葉を無視して一色は何やら考え込んでいる。

どうせどうやって葉山にアプローチするかとか考えてるのだろう。

 

「先輩、葉山君って1人でギター弾いてるんですか?」

 

「さぁな、最初にも言ったけど俺は別にあいつと仲がいい訳じゃないからな」

 

「使えないですねー」

 

そこまで言う?

そろそろ俺女性不信になりそう.....

 

「.....でも確かバンドを組む予定だとは言ってた気がする」

 

「本当ですか?」

 

「確か.....」

 

「肝心なところじゃないですかー。先輩今から葉山君に確認取ってきてくださいよ」

 

「いや自分でいけよ.....」

 

「ここで私が聞きに言ったら葉山君のこと知ろうとしてるとか思われてバッシング受けちゃうじゃないですか」

 

「女子ってそんな陰湿なの?」

 

「はい、まあそりゃ男の子とは段違いに」

 

男に生まれてよかったわ......

そもそも存在認知されてるかさえ怪しいけど.....

 

「とりあえず確認しとくから明日まで待ってくんない?」

 

「明日文化祭ですよ?そんな暇あるんですか?」

 

「一応連絡先は知ってるからな」

 

正確に言うなら無理やり知らされただが。

たまにあいつから連絡が来るが俺から自発的に連絡を取ったことはない」

 

「へーもうそれ友達じゃないですか」

 

「いや、断じて違う」

 

「本当なんでそんなにひねくれてるんですかねー」

 

「生まれつきだよ....」

 

「最初からこんなひねくれてるわけないじゃないですかー?なんか昔変なことでもありましたか?」

 

茶化すように言ってくる一色だがなんかは確かにあったな。

そりゃもうひねくれないやつなんていないくらいには。

 

「.....なんもねーよ」

 

まぁ話しても面白いようなものじゃないしな。

 

「よく雪ノ下さんと結衣ちゃんは先輩とバンドなんて組みましたね」

 

「俺自身もなんでそうなったかいまだによくわかってないけどな.....」

 

「なんですそれ」

 

そう飽きられたように一色は言う。

しかし確かにその顔は笑っていて、それはきっと演技などではなく本心からの笑みなのだろう。

だからきっと、俺は何となくこう言ってしまったのだろう。

 

「お前もバンドやってみればわかるんじゃないか?」

 

「え?もしかしてそれ私にも先輩のバンドに入れたか誘われてますか?でもちょっと先輩だと一緒にいて私がきついと言うか何と言うかなのでもう少しその濁った目とひねくれた性格を直してから1000000回くらい頼み込んでくださいごめんなさい」

 

「いや、相変わらずとっさによくそんな文章思いつくな......」

 

「先輩が私を口説こうとするからですよ」

 

「いや、そんな気は1μmもないんだけど.....」

 

「.....そんなこと言ってる内は先輩は大丈夫そうですね」

 

「なんか言ったか?」

 

「そんなこと言ってる内は先輩は絶対彼女できたりしないって言ったんですよー」

 

「何を今更そんな当たり前のこと言ってんだ?」

 

「.....それでいいんですね」

 

「だって俺には可愛い妹がいるからな!」

 

「ちょっと私から離れてもらっていいですか?」

 

「冗談だからそんな引かないで?」

 

「冗談に聞こえなかったんですけど.....」

 

まぁ半分は本当だからな.....

そんなたわいもない話をしながら俺たちは作業を続けた。

その時間は雪ノ下や由比ヶ浜と過ごしている時と同じように不思議な安心感を感じられた。

俺はらしくもなく一瞬こいつとバンドをやる姿を想像したがそんなことはないと即座に頭から追い出すことにした。

 

「はぁ.....ようやく終わったな」

 

「そうですねー。我ながらよくやったって感じです」

 

あれから作業を続けて終わっては次終わっては次とやってるうちにすっかりくたびれてしまった。

 

「これで片付けも手伝わないといけないとか.....」

 

「でも片付けは準備より楽ですよ、多分」

 

「だといいんだけどな.....」

 

そんな会話をしつつ俺たちは校門をくぐるのだった。

 

「じゃあな」

 

「明日までにしっかり聞いといてくださいねー」

 

「おう」

 

そんな会話を最後に俺たちは家路につくのだった。

 

その夜しっかり葉山に連絡をとる。

 

『お前って結局バンド組んだのか?』

 

すると5分と経たないうちに返信が来る。

 

『今はまだかな、でも俺ももう直ぐメンバーが集まりそうなんだ』

 

『もうメンバーは全員決まったのか?』

 

『ああ、近いうちに俺たちも練習しだすつもりだ』

 

『なるほど、頑張れよ』

 

『ところで比企谷何でそんなこと聞くんだ?』

 

『べつにただの興味本位だ』

 

『どのみち君達にも負けないバンドになって見せるから覚悟しとけよ?』

 

『馬鹿野郎、こっちのセリフだ』

 

俺にしては珍しく葉山とのやりとりはもうしばし続いたのだった。

 

*****

 

ー翌日ー

 

「それで葉山君はもうバンドを組む寸前ってことですか?」

 

「まぁそうなるな」

 

「マジですか?」

 

「こんなことで嘘ついてどうなるんだよ.....」

 

翌日の朝俺は一色に昨日の葉山とのやりとりを伝えていた。

ご丁寧に人目につきにくいところでの秘密の会合である。

 

「でもそんなこと知ってどうしようとしてたんだ?」

 

「そりゃどうにかして葉山君のバンドに入れたらとか思ってたに決まってるじゃないですか」

 

なるほどな、確かにそうすれば葉山とだいぶ親密な関係を築くことができるな。

 

「でもそんな状況ならもう意味ない考えですけどねー」

 

「別にそうでもないんじゃないか?」

 

「どういうことです?」

 

「いやだってさ、別に話すきっかけくらいにはできるだろ」

 

「確かに.....」

 

そう言うとしばらく一色は考え込む。

 

「でも、楽器って割と難しいんじゃないですか?それにモチベ持ちますかねー?」

 

「とりあえずさ、今日のステージで先輩のバンドが演奏するからそれまで決めればいいんじゃないか?」

 

きっとこいつは俺や雪ノ下、由比ヶ浜と同じく惹かれるはずだ。

 

「そうですね、たまには先輩に乗せられてあげます」

 

「そりゃどうも」

 

そう言って一色は歩きだす。

 

「.....もし、私が楽器を始めるって決めたら先輩は責任取ってくれますか?」

 

責任なんて大げさなやつだな。

 

「ああ、少しくらいなら教えてやるよ」

 

「言質とりましたからね?」

 

「ん、ああ」

 

深く考えずに俺はそう言うが今思えば相当なものを持ってかれたもんだ。

 

「ったく、しょうがねぇな」

 

そうぼやきながら俺も教室へと向かうのだった。

 

その後文化祭は予定通りに進んでいき牛込先輩のバンドの演奏も無事終わった。

相変わらず心がとても揺さぶられ俺は自分もいつかああなろうと決意を新たに今は文化祭の後片付けの途中である。

 

「やっぱりゆり先輩たちすごかったね!!」

 

「そうね、見習うべきところは多くあるわね」

 

この二人も俺と似たような感想を受けたようで性格が違くても音楽の方向性は同じなのは不思議な方に思えたが案外そんなものなのかもしれない。

 

「あっ!せんぱーいここにいたんですね」

 

「ん?何だよ一色?」

 

「いえ、ちょっと重い荷物があるので持ってもらおうかと」

 

「人使い荒いなお前、言っとくけど俺はそんな力ないしなんなら女子の方が強いまであるからな」

 

「はいはい、そんなこと言ってないで早く働いてください」

 

くそっ、俺は本来働かないで生きていくと言うモットーに基づいて生きているのになんでこんなに働かなきゃいけないんだよ.....

 

「これ終わったら直ぐいくからちょっと待ってろ」

 

そう言って俺は自分があと少しの仕事を片付ける。

何だかんだ言って真面目に働いている俺を世界はもっと褒めてくれてもいいと思うんだけど?

どう?ベスト働き八幡賞とか作ってみない?

ちなみにエントリーされてるのは俺だけだ。

 

「待たせたな」

 

「遅いですよ、女の子待たせるなんてさいてーですよ」

 

「いや、仕方ないだろ仕事なんだから」

 

「全くそんなこと言って、私と仕事どっちが大切なんですか?」

 

「うわーめんどくせー」

 

実際に言われるとこのセリフって本当にめんどくさいと思うんだなと1つまた学んでしまった.....

つまりこんなこと言われないためにも男子は非リアでいるべきはいQ.E.D

 

「もう少し面白い反応してもいいじゃないですかー」

 

「そんな文句は受け付けてない」

 

「まぁそんなことは置いといてですね、先輩」

 

「なんだよ?」

 

「私、楽器始めてみることにしました」

 

「そうか」

 

「驚かないんですね?」

 

「なんとなくそんな気がしてたからな」

 

「どういうことですか?」

 

「別に、ほんとになんとなくだ」

 

「そうですか、始めるならどの楽器がいいんですかね?」

 

「最初だったらやっぱベースとかがいいんじゃないか?」

 

「そうなんですか?」

 

これもオーナーの受け売りだけどな。

 

「じゃあ今度色々教えてくださいよ」

 

「なんで俺が.....」

 

そう言うと一色はずっと俺の前に立つ。

俺はぶつからないように急に止まったのがそれでも一色の顔はだいぶ近い。

 

「だって先輩.....責任、とってくれるんですよね?」

 

「.....覚えてたのかよ」

 

そこで一色は俺から離れまた前を向いて歩き出したかと思うとすぐさま振り返る。

 

「はい!私そう言うこと忘れないので」

 

そんなこと言われたら流石に、断れないよな。

 

「それなら今度俺たちの練習に来てみるか?」

 

「いいんですか?」

 

「ああ、オーナーに頼めばベースも借りれると思うし」

 

「それなら、お邪魔してもいいですかね?」

 

「ああ、多分あの2人も許可してくれると思うぞ」

 

こうして俺たちの練習に一色が訪れることになった。

 

*****

 

その後俺たちの練習の日に一色は訪れた。

やはり2人とも拒否することなくすんなり許可してくれた。

特に由比ヶ浜はむしろ大はしゃぎしたくらいだ。

 

「とりあえずまずベースの弾き方はね.....」

 

本日の練習の最初はオーナーが少し一色に弾き方を教えてその後一通り教え終わった後オーナーはスタジオを出ていった。

 

「なかなか難しいですね.....」

 

「最初にしては上出来なんじゃないか?」

 

「そうだよ!あたしなんて最初はすごい戸惑ったもん」

 

「それならよかったよー」

 

その後も俺たちは自分たちの練習をしつつ一色の様子を見たりする。

それから数時間練習して俺たちはスタジオを後にした。

 

「どうだった、楽しかった?」

 

「うん!すっごい楽しかった!」

 

「でも本当にいろはちゃん上手だったよ、ね?ゆきのん」

 

「そうね、最初にしてはよかったと思うわ」

 

「それさっき俺も言ったぞ」

 

「だからなんだと言うのかしら?」

 

「なんでもないです.....」

 

「あはは、2人とも相変わらずだね.....」

 

俺たち3人がしゃべっている様子を一色は少し離れているところから見ている。

 

「その、結衣ちゃん、雪ノ下さん、先輩」

 

「ん?どうした?」

 

「いえ、その」

 

一色は何かを伝えようとしているがなぜかしどろもどろになっている。

 

「一旦落ち着いて、どうしたの?」

 

「私も.....そのバンドで演奏したい....です」

 

それを聞いた途端俺たち3人は顔を見合わせそして3人で頷く。

話し合うまでもなく俺たちの意見はまとまっていた。

 

「歓迎するわ、よろしく一色さん」

 

その言葉を聞いて一色の顔に笑みが戻る。

 

「はい!お願いします!」

 

こうして俺の、俺たちのバンドはベースを加えて4人になった。

これが俺たちの、完全なスタートだった。

 

*****

 

「それでお兄ちゃんたちは4人でバンドをやり始めたんだね」

 

「まぁそうだな、こっからは色々あったなー」

 

「ふふ、でもその時のお兄ちゃんすっごい楽しそうだったよ」

 

「ああ、そうか」

 

「でもなんで一色さんは急にお兄ちゃんのバンドに入ろうと思ったのかな?」

 

「ああ、それはその後に聞いたんだけどな.....」

 

*****

 

「なんで急にあんなこと言い出したんだ?」

 

その後雪ノ下と由比ヶ浜とは別れたところで俺は一色に尋ねる。

 

「そりゃ葉山君に近づく口実にするためです!」

 

「それもあるんだろうけど、まだなんかあるだろ」

 

そんな動機だけであんなにも真剣な顔ができるとは思えない。

 

「変なところで鋭いですね.....。そうですね、なんて言えばいいのか自分でもよくわからないんですけど.....ここが落ち着いたんですよ」

 

「そうか」

 

本人がこう言うのだからそれ以上は詮索しないがきっとまだ全部は言ってないんだろうな。

 

そう言いつつ俺は前を歩く一色に目を向けたところでちょうど振り返り一色は最後にとっておきと言わんばかりの笑顔で言う。

 

「だから、まだまだ責任はとり続けてもらいますからね!」

 

全くあざといやつだ。

女の子は砂糖とスパイスと素敵な何かでできている

マザグースだったか?

 

どうやら俺は少しばかりこの少女のその割合を見誤ってたらしい。

一色いろはは、俺が思っていたより素敵な何かを持っていたようだ。

だからこう言うしかないじゃないか。

 

「仕方ないから、後少しだけな」

 

その言葉に満足そうに笑った一色を見て俺もどこか暖かい感じがした気がした.....

 




今回はここまでですね!
ようやくいろはを加入させられましたね.....
過去編は次かその次でラストです。

今回は初めての試みで次回予告的なことを最後にして締めたいと思います。
感想、評価など励みになるので是非お願いします!


メンバーが4人となりスタートした八幡たちはその後も長い間充実した時間を過ごす。
しかしずっとそのままということはなく彼らに訪れる波乱とは?
今、八幡たちに起こった悲劇が明らかになる。
次回やはり俺がバンドを組むのは間違っている
「Withdrawal」
どうして、理解してくれないんだよっ!


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第35話

また更新遅れてすいませんでした......

最近また別ゲーやってたせいでバンドリの腕落ちました......
でもドリフェスでは友希那さんを見事に10連で当てれたので幸せすぎます.....


小町に一色が加入したところまでを話し合えた俺は現在一息ついて休憩しているところである。

 

「それでさ.....」

 

俺がコーヒーを飲んでいると小町が少し聞きづらそうに切り出す。

なにが言いたいのかそれだけでわかってしまう。

それは.....

 

「お兄ちゃんあんなに楽しそうだったのに.....なんで、なんでやめちゃったの?」

 

その理由を知る人間は本当に少ない。

 

「そうだな.....いつまでも隠しててもなんも変わんねーだろうからな」

 

「.....」

 

小町は一言も言葉を発しない、ただ俺の話を聞くための覚悟を固めているのだろう。

 

「とりあえず続きから順を追って話すからそう身構えなくてもいいぞ」

 

そう言って俺は話し始めた。

天才と呼ばれた愚かな男の末路を.....

 

*****

 

一色が加入してからの日々は本当にあっという間に過ぎていった。

多くの思い出もあっという間に積み重なった。

 

あの後必死に練習してspaceのオーデションを受けた。

最初はやはり緊張してうまくできない部分も多かった、失敗も怖かった。

だから結果は不合格だった。

 

しかしそんなことで諦めてられないと俺たちは再び練習を重ねてオーデションを受けた。

 

「今回こそ合格しようねっ!」

 

「ああ」

 

「ええ、今度こそあのステージに立てるようにしましょう」

 

「そうですね!」

 

ちなみにだがなぜか一色はこのころから俺と雪ノ下にだけは敬語で接している。

俺的には先輩呼びも普通にやめてほしいんだけど.....

 

「まずは全力で楽しもー!」

 

由比ヶ浜は自分が1番緊張しているくせに俺たちを励まそうとしてくれた。

 

その後3人で話し合っている様子を見ながら俺は改めてこのバンドで演奏ができることがどれほど奇跡的なことだったかを感じた。

 

「ヒッキー?さっきからぼーっとしてるけど大丈夫?」

 

「ん、いや、ありがとな」

 

「え?なに急にどうしたの、きもいよ?」

 

考えてたことがそのまま口に出てしまったことに今更ながら気づく。

うっわまた黒歴史増えたんだけど.....

そんな風に俺が暗くなっていると雪ノ下たちが俺の方を向く。

 

「まだその言葉を言うには早いのではないかしら?」

 

「そうだよ!このオーデションに合格してから言ってよ!」

 

「そのあと私たちに感謝の意を表して甘いものをおごってくれてもいいんですよ?」

 

「いやおごらないし.....」

 

「それじゃあ次のバンドの方準備お願いします」

 

「次ってあたしたちじゃん!早くいこう!」

 

「ちょ、ちょっと由比ヶ浜さん.....」

 

「引っ張らないでよー」

 

そんな調子で慌ただしく部屋を出て行く3人を追いながらふと俺は本当に合格したら甘いものくらい奢ってもいいかもしれないと思うのだった.....

 

その後俺たちは今までで1番な演奏をしたと胸を張れるような演奏ができた。

ただただ楽しくて、熱くてそんな思いを乗せて奏でた音が他の人にどう聞こえたのかは知らないが俺たちにとっては世界で1番な音だった。

だから結果が合格だった時も不思議と驚かなかった。

 

*****

 

「はぁ.....すごかったね」

 

「ええ、熱かったわ.....」

 

「私もうヘトヘトですー」

 

俺たちは初めてのステージに立って今はそのあと控え室で座り込んで余韻に浸っている。

 

「このまま、どこまで熱くなれるんだろうな.....」

 

俺は独り言でそんなことを呟いた。

しかしその言葉は聞こえていたようで

 

「それを確かめるために私たちはバンドを続けていくのでしょう?」

 

「ああ、そうだな」

 

「きっとあたしたちならどこまでだっていけるよ!」

 

「そうです!きっと、1番のバンドになれますよ!」

 

この時は俺は本気でこのままどこまでも行けると本気で思った。

 

その後も色んなことをみんなで経験した。

 

この1年後には学校の文化祭のステージにも立った。

葉山たちやゆり先輩と一緒にだ。

この2つのバンドとはspaceでのライブでも何度か一緒に立ったことがあるのでそこまで変わったことなのではないのだが文化祭というだけでなにやら普段と違ったことを意識してしまう。

そう、学校のやつらに葉山たちよりもスゲーって思わせたいという本当にくだらないものだが俺だって一応男、譲れないものがある。

 

「ありがとなー!!」

 

葉山の声が響くと会場からとてつもない声援が聞こえる。

 

「すごいねー葉山君たちも」

 

「でも先輩たちだってあれくらい盛り上げてくるんですよね?」

 

今年1年で俺はゆり先輩たちのバンドの人たちともだいぶ仲良くなった。

他のバンドの人とも少しくらいは喋れるようになった。

去年までじゃ考えられないような成長だ。

 

「まぁね〜」

 

「まったく葉山といいプレッシャーかけてもいつも通りの演奏までしかできませんよ?」

 

「いつも通りで十分君達はすごいって」

 

「ありがとうございます、それじゃあ頑張ってきてください」

 

「うん!」

 

そう言ってステージに出て行く先輩と入れ替わるように葉山が俺の近くに来る。

 

「どうだ?今日の俺たちは?」

 

「毎回毎回俺に感想聞きに来るんじゃねーよ」

 

「いいだろ?俺にとっては100人の感想よりお前の感想が気になるんだから」

 

「そういたこと男に言ってるといつか勘違いされるぞ.....」

 

「そんな意味じゃないなんてお前が1番よく知ってるだろ?」

 

「と言ってもなー」

 

「ぐふふ.....」

 

お前の後ろでめちゃくちゃ目を光らせてる海老名さんの視線はどうすればいいんだよ.....

 

「まぁいつも通り良かったんじゃないか?」

 

「そりゃ良かった」

 

「でも俺たちの演奏も負けねーからな?」

 

「相変わらず負けず嫌いだな、君は」

 

「お互い様だろ?」

 

「違いないな」

 

そういう葉山も聞いた俺も笑っている。

 

認めたくはないがこいつのことをライバル視してるのはもう否定しても仕方ないことだと最近ようやくそう思えるようになった。

 

「じゃあ俺もそろそろ準備してくるから」

 

「おう、楽しみにしてるぞ」

 

そう言って俺は俺の仲間の元に歩き出す。

 

「相変わらず先輩は葉山君と仲がいいですねー」

 

「なんだ妬いてるのか?」

 

冗談交じりでそう言うと一色は

 

「葉山君のことはもう諦めてるしいいんですよ、もっと好きなものができましたから」

 

「へー参考までに教えてくれ」

 

「このバンドに決まってるじゃないですか!」

 

普通の人間なら言葉の意味のまま捉えるところだが俺はもはやお決まりの一言を返してやる。

 

「あざとい」

 

「先輩もブレないですねー」

 

「お前もな」

 

「2人とも楽しそうなのはいいのだけれどそろそろ準備をしてちょうだい」

 

「おう」

 

「はい!」

 

そのステージからの景色はいつもと少し違ったのを覚えている。

学校で見たことあるような顔ばかりが並んでいる前でライブをやるのは少しくすぐったいものがあったがよく考えたら俺はぼっちだから関係なかかったわ。

はは.....

 

そんなことを考えてると雪ノ下の挨拶も終わっていたらしくもう直ぐ演奏か、目立つのはあんま好きじゃないけどやりますか。

 

文化祭のライブも大成功だった。

盛り上がりでいったら若干葉山たちの方が上だった気がしないでもないがあいつらはもともと陽キャ集団だし仕方ないところもあるだろう。

そんなわけで元からフェアな勝負じゃないからこれは負けじゃない、いいな悔しがって負け惜しみ言ってるんじゃないからな?

ほんとだからな?

 

*****

 

「と、まぁこんなことがあったな」

 

「お兄ちゃんたちでもやっぱり最初は緊張したんだねー」

 

「そりゃ雪ノ下はよくわからなかったけど俺や由比ヶ浜はガチガチだったぞ」

 

「えー他にもなんかないの?お兄ちゃん!」

 

本題も完全に忘れているようですっかりはしゃいでいる。

 

「話してたらきりがないからそれはまた今度にな。それより続き話していいか?」

 

「うん」

 

俺の言葉を聞いて小町は瞬時に真面目な顔へと戻る。

 

「聞きたくなくなったらいつでも言えよ?」

 

そんなことを言うが結局俺が話したくないだけなのかもしれない。

そう言うふうな弱い人間なのだ、俺は。

 

「なんだその、中3になった頃からかな.....」

 

 

*****

 

 

「そんな!君の才能でその選択はもったいない!」

 

「いえ、俺の音はあいつらとじゃないとダメです」

 

「考え直す気は.....」

 

「ないですから」

 

いい加減諦めてくれないかなこの人.....

断るのも大変なんだぞ.....

 

「そうかい.....」

 

おっ、ようやく諦めてくれたか.....

 

「気が変わったら連絡してくれたまえ」

 

そう言って名刺を出してくるあたり未練タラタラと言ったところだろうか。

 

「はい」

 

何はともあれこれで断り切った。

最近自主練してるとこんなことが多くてかなわない。

狙ったかのように1人の時に来るもんだからなぁ。

いやまぁそれはむしろありがたいんだけどさ。

別にやましいことがあるわけじゃないが知られないならそれがいいだろう。

 

「さてようやく帰ってくれたし俺も帰るか.....」

 

うんざりしながらも俺はどこか嬉しさを感じてもいる。

それだけの人が"俺"の実力を認めてくれているということだろ?

でも俺はこのバンドをやめる気は無い。

それだけのものを積み上げてきている。

もうそんな簡単に壊れたりするものではなくなってきている。

 

「んでもって次の練習は明日だったよな.....」

 

この時には俺の変化を俺は大して深く考えないことにしたのだった。

 

 

それから2ヶ月くらいがたって3回目の文化祭のシーズンとなった。

もちろん俺たちは今年もステージに立つことになっている。

そんなわけで俺たちは練習に励んでいるわけなのだがそのある日にいつもと違った出来事があった。

 

「いやー文化祭楽しみだねー」

 

「そうだね!今年こそは私たちが1番盛り上げよう!」

 

「2人とも気持ちばかりで焦らないようにね」

 

「わかってるってばー」

 

「そうですよー私たちだって子供じゃないんですからー」

 

「いやお前たちならどうかわからないだろ.....」

 

「あら?この間急に練習にはなかったアレンジを入れたのは誰だったかしら?」

 

「いや、あれはだな.....まぁいいだろ盛り上がったし」

 

「だからタチが悪いのよ」

 

「次からは気をつけます.....」

 

「あははっ!結局ヒッキーが怒られてるじゃん!」

 

「あなたも気をつけてね」

 

「うう、はい.....」

 

「結局みんな怒られちゃいましたね」

 

いつもの通り俺たちはくだらないやり取りをしながら片付けをしてスタジオを出た時のことだ。

 

この間スカウトを断った人が待っているのが見えた。

 

(なんだよ....またいるのか)

 

正直俺はあいつらにあの内容の会話を聞かせたくは無い。

 

「悪い、やっぱ俺もう少し練習したいから先帰っててくれ」

 

「先輩がそんなことを言うなんて珍しいですね、変なものでも食べましたか?」

 

「これでは明日はきっと吹雪ね」

 

「いや、雪ですら無いのかよ.....」

 

「ヒッキーもそれだけやる気が入ってるってことだよね!」

 

「まぁな」

 

「それでは私たちは先に行きましょう」

 

「じゃあな」

 

「ええ、また」

 

そう言って雪ノ下たちが外に行ったのを確認してから俺は望まぬ待ち人の元へと向かう。

 

「またスカウトですか?」

 

「ああ、やはり君のあの才能を諦めることができない」

 

「俺は答えを変える気は無いですよ?」

 

「そうか、それは残念だ」

 

今回はあっさり引き下がるのな、そっちの方が楽でいいけど。

 

「さっき出ていった子達が君のバンドのメンバーかい?」

 

「ええ、少なくともあいつら以外と演奏するなんて考えられませんね」

 

「1度だけでも演奏してみないか?それからでも遅くは無いと思うんだ」

 

「もう俺以外はメンバー決まってるんですか?ずいぶんせっかちですね」

 

「あと君が、君さえいれば今まで見てきたどのバンドよりもすごいバンドになるはずなんだ!」

 

「言ったでしょう、あいつら以外考えられないって」

 

「頼む....それでダメならこちらも諦める.....」

 

1度だけか.....

 

「それで諦めてくれるのなら.....」

 

「ならこの時間は大丈夫かい?」

 

この時間は.....午後から練習だが十分に間に合うだろう。

 

「大丈夫だと思います」

 

「ならよかった」

 

その後詳しい時間などを伝えられてその後家路の途中俺はなぜか少し罪悪感のようなものを感じていた.....

 

*****

 

「まぁ長くなるから一旦ここで言いたいこと受け付けるぞ?」

 

どうせ小町は言いたいことがあるだろうと勝手に察してそう言うがその予想は当たっていたようで.....

 

「お兄ちゃんスカウトされてたの!?」

 

「一応な」

 

まぁ断ったからこうしてのんびりしているのだが

 

「そんなこと一度も聞いたことなかったよ.....」

 

「一応親父たちには言ったんだけどな」

 

基本うちの両親は忙しくてライブにもほとんど来ないがそれでも何回か見に来てくれたことがある。

そのため一応俺の演奏も素人ながら知っているはずで珍しくそのことだけは褒められたのを覚えている。

 

「え!?じゃあ知らなかったの小町だけ?」

 

「まぁ、そうだな」

 

「みんなしてそんなことを黙ってるなんてひどいよー!!」

 

「いや、だって言ってもしょうがないことだしいいかと思って」

 

「よくない!」

 

なにやら小町が若干不機嫌目だがそこは気にしない方向で話をして戻すとするか。

 

「まぁ言いたいことはあるかもしれないけど続けるぞ」

 

「むぅ、わかった」

 

まだ不機嫌そうだが小町は話を聞く姿勢へと戻る。

 

「まぁあとは簡単な話だ」

 

*****

 

それから文化祭も終わり(今年も当然盛り上がった)あっという間に約束の日は訪れた。

 

「それであなたたちが集めたっていう人たちはどこですか?」

 

「そう慌てないでくれ、少なくともみんな君と同等の腕を持つと思うよ」

 

「そうですか」

 

正直なところ早く終わらせて帰りたい、もとい練習に行きたいところである。

今日のことは雪ノ下たちには伝えず用事で遅れるかもしれないとだけ言っておいた。

 

「お!この子が噂の子ですか」

 

「ああ、今は14歳だよね?」

 

「はい」

 

どうみても俺よりも5歳は年上そうな人が話しかけてくる。

 

「よろしくな!」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

優しそうだがテンション高そうな人だった。

 

その後もあと3人の人を紹介されいずれも俺より3歳は年上であった。

もしかしたら俺が異常なのかもしれない。

 

「じゃあ彼と音を合わせてみてくれないか?」

 

「はい!わかりました!」

 

俺と最初に話した人がリーダー格らしく場を仕切っている。

 

「じゃあ大丈夫かな?」

 

俺にそう確認を取ってくるが早く終わらせたい俺としては断る気がそもそもない。

 

「はい、大丈夫です」

 

その後1時間ほど一緒に演奏して初めてであるのに妙に上手くあっているような気がした。

あの人が言った通り腕は確かなようだ。

 

だが、それでも雪ノ下たちには及ばない。

その結論はやはり変わらなかった。

 

「八幡君、ちょっといいかな?」

 

休憩中にリーダー格の男の人が話しかけてくる。

 

「ええ、なんですか?」

 

「いや、単純にすごいなって思ったんだ」

 

「ありがとうございます」

 

「まだ君は中3なんだろう?羨ましいなその年でそんなに弾けるなんて」

 

「はぁ」

 

いまいちなにが言いたいのかわからない。

 

「君は今、迷ってるんじゃないのかな?」

 

その人は唐突に真面目な顔をしてそう切り出す。

 

「なんのことですか?」

 

「いや、俺としてはね君と一緒にこのまま演奏を続けたいところなんだけど君もバンドに所属してるんだろ?」

 

「君も?」

 

「ああ、俺も高校から組んでいるバンドにまだ所属してる、ただもう話は済んでいて今年で終わりにすることになっている」

 

「.....俺は今のバンドをやめる気は無いですよ」

 

「俺もそう思ってたよ」

 

あまりにも感情を隠さなかった俺の言葉に苦笑しつつも話しを続ける。

 

「俺も最初は断ってたんだけどね、バンドのみんなに話したらなんて言われたと思う?」

 

「いや、行ってこい的なことですか?」

 

「まぁそういう感じなんだけどね、この間あった時に本音を話してくれたんだ」

 

「本音?」

 

「俺と演奏するのが辛くなっていたそうだ」

 

「え.....?」

 

予想外すぎる答えに思わず何も反応できずにいると取り繕うようにその人は続ける。

 

「いや、別に仲が悪くなったとかそういうわけではないんだけど、俺を追いかけ続けるのが辛くなったと言っていたよ」

 

「.....」

 

心の中ではあいつらはそんなことありえないと思いつつもどこか否定しきれないのではと思う自分もいる。

 

「とにかく君がバンドを抜ける気がないにしても一度話し合ったほうがいい、そうしないともしかしたら取り返しのつかないすれ違いをしてしまうかもしれない」

 

その人は話をそう締めくくった。

次には笑顔が戻っていたが一瞬何か悲しげな顔をしていたように俺は思えた。

 

「さ、じゃああと少しがんばろーぜ」

 

そう言って俺の元から去っていくその人を俺は呆然と見ることしかできなかった.....

 

その後の演奏もイマイチ集中しきれずに時間が過ぎていった。

気づいてみると終わった時間は予想よりも遅くてこのままだと練習に30分近く遅れてしまうかもしれない。

 

「じゃあ待ってるぜ」

 

そんなことを口々に言われたが上の空だったため返事は相当に適当なものになっていただろう。

 

「はぁ、この分だと雪ノ下に説教かもな.....」

 

さっきの人の話はどうも頭について回る。

そのことは考えたくなかったので今は別のことを考えて気を紛らわせようとしてる。

 

どうしてありえないとわかってるのに不安になるのだろうか。

あんなにも毎回みんなで楽しく練習できているというのに。

そもそも俺について来ようとしてるなんて傲慢な話じゃないだろうか。

そうだよな、また恥ずかしい勘違いをしてしまうところだった。

 

「遅れて悪かっ.....」

 

俺がそう言いスタジオに入るとそこには修羅のような顔をした雪ノ下の姿があった。

 

「比企谷君?あなたどうしてこんなにも遅れてきたのかしら?」

 

え?俺が遅れたのって30分くらいじゃ.....

そう思い時計を見るとその予定を大幅に超えて俺は1時間近く遅刻していた。

考えながら歩いていたのでいつもより時間がかかったのかもしれない。

 

「とりあえず先ずは理由を聞かせてもらおうかしら?」

 

「はい.....」

 

その後俺は遅れた理由だけははぐらかしたものの10分間ほど説教を受ける羽目になってしまった。

 

「今日はこれで許してあげるけど次はないわよ」

 

雪ノ下もこれ以上練習時間を無駄にする気は無いらしくその程度で済んだ?のでよかった。

 

「先輩最長記録更新じゃないですか?」

 

「うっせ」

 

「でもヒッキー前から遅刻多くてゆきのんに怒られた回数もダントツだよね」

 

「うっせ」

 

笑いながら俺をいじってくる2人にはめんどくさいので適当に反応して俺は準備を進める。

 

そう、俺たちは少なくともまだこうやって笑いあえるのだ。

 

その後練習が終わったが特に問題もなく進んだ。

 

「はぁ」

 

「同士のため息なんてついて、つかれたの?」

 

そりゃ一日中ギター弾いてたらな.....

 

「いや、大丈夫だぞ」

 

「でも休みはしっかり取ってくださいよ?」

 

「お前たちに素直に心配されると怖いんだが」

 

「先輩にだけは言われたくないですね」

 

「俺はいつでも素直だろうが」

 

「でも今日の練習でもぼーっとしていることが多かったわ、体調管理はしっかりとしてちょうだい」

 

「無視しないで?」

 

こいつらはすぐに俺の言葉を無視する癖があるな。

まったく俺みたいにどんなことでも受け止められるメンタルを鍛えてほしいものだ。

 

この時まだ俺は何も知らなかった、知っていると思い込んでいた。

 

そしてある日全ては動き出して全ては終わってしまった.....

 

その日も練習だが俺は数学のテストの点が酷すぎて夏休みの特別補習に参加しなければならないということになっているので1時間ほど練習に遅れると伝えてある。

一応受験生だからまぁ仕方ないことではあるのだが数学に関して言えばどれだけやってもできるようになる気がしない。

 

「じゃあ今日はここまで次回だ最後だからしっかりと出席してね」

 

その言葉が終わると同時に俺とあと数人の生徒は帰り支度を始める。

その時に何が起こっていたかも知らずに.....

 

spaceについたとき入り口から俺を何度もスカウトに来た人が出てきた。

 

「また来てたんですか?」

 

「今日は君には用はないよ、ただ説明をしに来たんだ」

 

「まさか、あいつらに!?」

 

「ああ、3人に君に話した内容を話したよ」

 

「なんでそんなことを!」

 

「どのみち避けては通れないことだろう?」

 

あの人の言う通りだった、俺はもっと早くに自分の口で相談するべきだった.....

 

それ以上会話をする必要はないので俺は急いでスタジオへと入る。

 

「はぁはぁ」

 

「あら、比企谷君」

 

雪ノ下はいつもと口調を変えずそう言う、しかしその側の2人はいつもより顔がこわばっている気がする。

 

「聞いたよ、スカウトされてたんだって」

 

「.....ああ」

 

「断り続けたんですか?」

 

「.....ああ」

 

「あなたはなんでそう言ってくれなかったの?」

 

「俺はこのバンドをやめる気がなかったから....」

 

「それでも相談してくれてもいいじゃん.....」

 

「いやでも!」

 

「さっき、先輩が他の人と演奏しているところを見せてもらいました」

 

あの一回きりの.....演奏を.....?

 

「正直自信をなくしちゃいましたよ.....」

 

「どう....してだよ?」

 

「だってあたしたちよりみんな.....上手かった」

 

「でも!」

 

「ねぇヒッキーあたしたちみんな頑張ってたんだよ」

 

「どう言う意味だよ?」

 

「ヒッキーには内緒でみんなで練習したりしてた.....そうしないとヒッキーがどんどん先に行っちゃうから......」

 

俺は.....追いかけられていた......ってことなのか?

あの人が言ったことが俺にも......起こっているのか?

 

「それでも、先輩はどんどん私たちを置いていってしまって.....」

 

やめろ、その先は言わないでくれ.....

 

「私たちも少し疲れちゃいました」

 

雪ノ下、お前は、お前はどうなんだ?

 

「.....この際だから隠さず言うわ、私はあなたがスカウトされたと聞いたとき最初に悔しいと思ったわ。だって、あなただけがスカウトされたってことは私たちはあなたと同じところに立てていないということでしょう?」

 

「そんなことは.....」

 

「きわめつけはあの演奏よ、私たちの演奏よりレベルが高かった.....初めての演奏でよ?」

 

「でも、俺は.....」

 

「あなたがどう感じたのだとしても私たちにはそう思えてしまったの.....」

 

「ねぇ、比企谷君?どうしてあなたはそんなに先に進め続けられるの?」

 

「俺は.....」

 

「どうしてさっきから何も言ってくれないの?ねえ、ヒッキー!答えてよ!」

 

「どうして.....なの?どうして私たちはあなたに追いつけないの!」

 

全員がその場で溜め込んでいた感情が爆発して誰も抑えることができなかった。

弱い俺はそれだけでその先も終わってしまったと思ってしまったのだ。

俺がいない方が、この3人は楽しんでバンドができるのではないかと思ってしまった。

何も話してすらいなかったのに.....

 

「なら.....俺は.....もう、やめる」

 

「何を言っているの?」

 

「俺はこのバンドを.....やめる」

 

そう言って俺は歩き出す、入口へと。

俺は間違いに気づかず話し合いもせず。

この雰囲気に流されて俺もイライラしていた。

 

「ねぇ、なんでそうなるの.....?」

 

「俺と演奏してたくないんだろ!」

 

「そんなこと言ってないじゃない!」

 

もうお互いに引き返せなくなっていた。

お互いの感情は同じなのに会い入れることなくすれ違った。

 

「じゃあな」

 

もう2度と演奏する気もないとさえこの時は思っていた。

実際に声にもそんな感情が出ていたのだろう。

もう由比ヶ浜ま雪ノ下も何も言ってこなかった。

 

「待ってよ!八幡!!」

 

ただ、その場で少し冷静になれた一色は追いかけてきたが俺はその言葉さえを無視した。

 

それがとどめだったのか一色もその場で座り込んでそれ以上は何も言ってこなかった。

 

これが俺のお終いだった。

 

 

*****

 

「まぁ、これが俺の.....抜けた理由だな」

 

「そんなことがあったんだね.....」

 

そのあと俺たちはお互いに自分の間違いに気づきあいつらは俺をもう一度バンドに戻らないかと誘ってきてくれるが俺は罪悪感ともう一度繰り返してしまうのではという恐怖でその誘いを断り続けている。

 

「スカウトも結局断っちゃったんだよね」

 

「ああ、しばらく誰とも演奏したくなかったしな」

 

「でも、今お兄ちゃんは戻りたいって思ってるんだよね?」

 

「ああ、それだけは確かだ」

 

「なら、まだ戻れるってことだよね!」

 

「ああ、きっと.....」

 

「お兄ちゃんは不器用で捻くれてるからね」

 

「そこまで言うことないだろ」

 

「だから!小町も手伝ってあげる!」

 

「.....ありがとな、小町」

 

そうだったな、俺はもう1人じゃないんだよな。

こんなにも身近にも俺の味方はいるのだ。

 

「小町、俺今度あいつらに頼むつもりなんだ」

 

「そうだよ!お兄ちゃんも一緒にspaceに立とう!」

 

「ああ」

 

また一つ戻らなきゃいけない理由ができた。

俺はもう、誰も傷つけないし、後悔もしない。

そんな選択を、俺の本物を取り戻したいのだ

 

不思議と話した後はすっきりしていて俺は自分の中にもう絶望がないことをここで自覚した。

また始まる、そんな希望がキラキラしたものが胸に満ちているのを感じることができたのだった......

 

 




今回はここまでになります。
次からはようやくみんなで海です!

今回は前回と違った感じの予告にしましょうかね、いろいろ試してみて気に入ったのを定着させます。

感想評価など励みになるので是非残してください。



「はぁ、なんで俺が次回予告なんてしなきゃいけないんだよ.....」

「お兄ちゃん、文句言わないでさっさとやるよ!」

「わかったわかった、えーじゃー次回は海いきまーす、以上」

「お兄ちゃん流石にそれはダラけすぎだって!」

「いや事実なんだしいいだろ」

「ちょっ!お兄ちゃんそんなんで本当に終わらないでってー!あ、え、えーと次回のやはり俺がバンドを組むのは間違っているは『海でも比企谷八幡は変わらない』です!ちょっとお兄ちゃん待ってよー!」



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第36話

UAが10万超えてました!
多くの方に見てもらえて嬉しいです!

もう直ぐRoseliaの水着の復刻もくると思うのでまたスター貯めないと.....



暑い夏、なぜ人はそれを尊いものとしてたらあるのだろうか?

友達や恋人とたくさん一緒に居られるから?

それとも行事が多いから?

海のような夏独特の楽しみがあるから?

ともかく多くの人は勘違いしがちだがそもそも夏というのは嘘と欺瞞に満ち溢れているのである。

 

同時に遊びに誘われた時に片方には「ごめーん用事があって行けないからまた今度一緒に遊ぼ!」とか送ってその裏別の友達とめっちゃ遊んでたりとか夏祭りの瞬間だけ恋人がほしくて7月の頭くらいに告白するやつ急増するけど夏祭り終わったらあっさり別れるとかそんな風に様々な人間関係の露悪的なものを垣間見ることができる季節と言っていいだろう。

つまりだ、夏に人と関わらず家に引き困っていればそんなトラブルに悩まされることもない。

つまり夏休みはどこに出かけず家にいるのが1番なのである。

 

「ねぇお兄ちゃん、明日はせっかくみんなで海に行くんだからもっと楽しそうな顔したらどうなの?」

 

「俺が人の多いところが苦手なことを知ってるだろ?」

 

「うん、でもお兄ちゃんライブの時は平気じゃん」

 

「いや、海とライブ会場全然違うから.....」

 

「とにかく!お兄ちゃんは!もっと!高校生らしく!遊ぶべきだよ!」

 

わざわざ俺に刺さるよう強調して言ってきやがる。

というかそもそもお前のその発言も十分中学生っぽくないわ。

 

「あー善処するわ」

 

「お兄ちゃんそう言って何もやらないのはもうバレバレなんだよ.....」

 

「ほう、小町も俺のことがよくわかってきたじゃないか」

 

「もっと捻くれてなければなー」

 

「いや別に俺捻くれてとかないから」

 

「あーはいはいわかったからはやく明日の支度しちゃってよ」

 

理解するとともに扱いが雑になっていくのはなぜだろうか?

それでも世界で戸塚と並んで1番かわいいけどな!

 

「そういや小町、俺結局集合場所とかしか聞いてないけど明日は誰が来るんだ?」

 

「雪乃さんたちとーあと彩加さんたちとーあと葉山さんも来るって言ってたかな?」

 

「え?なんで葉山いるの?」

 

「お兄ちゃんそれは流石にごみいちゃんだよ.....」

 

「いやだってあいつがなんで1人だけで参加なんだよ?」

 

「予定が合わなかったんじゃない?」

 

「でも男子が俺と材木座しかいなかったからいいか」

 

「お兄ちゃんが若干デレた、けど彩加さん忘れないで?」

 

「いやだって戸塚は女の子だろ?」

 

仮に戸籍が男なのだとしてもそれは世界が間違ってるので問題ない。

待てよ、海に行けば合法的に戸塚の水着が見れる?

 

「おい、小町早く支度しよーぜ」

 

「なんか急にやる気満ち溢れてるのはいいけど絶対ロクでもないこと考えてるよね.....」

 

結局この日俺は戸塚な水着を想像してしまったためか夜2時ごろまで寝付けなかった。

 

*****

 

翌日のなかなかに朝早く俺と小町は家を出て駅へと向かった。

ここから海まで電車で移動するためだ。

小町はみんなと出かけるのが嬉しいのかかなり上機嫌だ。

 

「あっ!八幡たち来たよ!」

 

「おはよう戸塚!夏休みの間会えなくて寂しかったぞ!」

 

戸塚が声をかけてきてくれた瞬間さっきまで感じてた眠気も一瞬で吹っ飛んだ。

いや、戸塚が毎日起こしてくれるなら俺絶対に寝坊も二度寝もしないわ。

いやでも起きなければもう一度起こしてもらえるのか......?

やっぱり二度寝はするわ、絶対。

 

「僕も寂しかったよ八幡、今日はその分楽しもうね!」

 

ああ、かわいい......

 

「久方ぶりだな、八幡よ!今日は生命の誕生の地へと向かい存分に力を蓄え用ではないか!」

 

なんかうるさい声が聞こえるけど何言ってるのかわかるけどその事実がいやなので無視しよう。

 

「それで戸塚はどんな夏休みを過ごしてたんだ?」

 

「無視!?八幡お願いだからそれはやめて!」

 

おい、若干素が出てるぞ......

 

「なんだよ、だったら普通に今日は海行って楽しもうとか言えよ」

 

「はっさすがは八幡我の言葉を皆にわかりやすいようにしたのだな」

 

「だったら最初から誰でもわかるように喋れ」

 

お前のせいで戸塚との会話の時間が減ったじゃねーか。

 

「それでどうどったんだ?」

 

俺はもう一度戸塚に同じような質問をする。

 

「うーん、部活だったりバンドの練習ばかりしてたかな」

 

「さすが戸塚!練習熱心なんだな!」

 

「そんなことないよ」

 

照れてる顔もかわいいなー。

 

「おにいちゃーんちょっと来てー」

 

小町が少し先から呼んでいる。

一体なんだ?

 

「おはようございますっ!八幡先輩!」

 

おい、まてなんでこいつがここにいるんだ。

たかよく見たら後ろにも.....

 

「お久しぶりですね、八幡先輩」

 

もう1人厄介なやつもってかさ.....

 

「なんでお前らここにいるの、戸山?」

 

そう、俺の前に立っているのはポピパの5人だ。

 

「そりゃあ海に行くからですよ!」

 

「いや見てわかるわけないだろ」

 

「八幡君たちも海に行くの?」

 

「ああ、そうだぞりみ。一緒に行けるなんて嬉しいぞ!」

 

「あはは、香澄の時とテンションが違う.....」

 

「まぁ香澄だしいいんじゃね?」

 

市ヶ谷、お前もだいぶ戸山の扱いが手馴れてきたな.....

 

「というか八幡先輩が海に行くなんて意外」

 

花園、俺もそう思ってるわ。

 

「なんだ、ただの気まぐれだよ」

 

まさかかわいい戸塚に誘われたからなんて言えないしな.....

 

「いやーお兄ちゃんが普通に人と会話できてるなんて.....」

 

「お前は俺のおかんか、ていうか悲しくなるからそういうこと言うなよ」

 

とか俺がいろんなやつといる間に他のメンバーも続々とやってきていたようで残るはあと雪ノ下たち3人だけだ。

 

「ごめーんまった?」

 

集合時間の五分前にその3人も来たのでこれで全員揃っただろうか?

 

「よし、それじゃあ行こうか」

 

まじで葉山もいるのな.....

 

「うん!」

 

「では、早く切符を買いましょう」

 

「そうだね!」

 

こうして俺たちは海へ向かうのだった。

 

*****

 

「ついたー!!」

 

「由比ヶ浜さん、急に大声を出さないでほしいのだけれど.....」

 

「まぁまぁ今日くらいいいじゃないですか」

 

「ようやくついたね」

 

「待ちくたびれたのである!」

 

「沙希さんも兄妹を連れてこなくてよかったんですか?」

 

「うちは人数多いからね、誰か1人だけってわけにもいかないから」

 

「なるほど〜」

 

海についてそれぞれ違った反応を見せている中俺はむしろテンションが下がってきている。

いやね、戸塚がなるべく人の少ないところを探してくれたんだけどね、それでもやっぱ一定数は人がいるじゃん?

俺的には人が多いのはちょっとな.....

 

「相変わらず、こういうところは苦手なのか?」

 

「.....お前みたいなやつとは違うからな」

 

「実は俺もそんなに得意ではないんだけどな」

 

「嘘つけ」

 

「本当さ、人混みが好きなやつなんていると思うか?」

 

そう言われるとそんな気がするがこいつに丸め込まれたみたいで悔しいな。

 

「そういうわけだ、なるべく楽しもうぜ」

 

「はいはい」

 

そうは言ってもこいつは結局楽しめるんだろうな。

そんなことを思いながら俺も海へと足を運ぶのだった.....

 

「あっ!八幡先輩!海ですよ!海!本当に海なんですね!」

 

とりあえず戸山、人の回想中に アホすぎる語彙力晒しながら乱入してくるのやめてくれない?

 

その後海は駅からほど近い場所にあり実際に人も結構少なくて意外と俺の憂鬱も杞憂で終わりそうだ。

 

「で、俺たちはいつまでここで待ってればいいんだ?」

 

現在俺は葉山と材木座とともに水着に着替えて待っているところである。

ちなみに戸塚はトイレに行ってから着替え始めたため俺たちが着替え終わった後に更衣室へと入っていった。

 

「お前女子が着替えてくる間待つのはお約束だろ?」

 

「そうである!と言っても我はラノベの中でしかそのような展開は見たことがないがな!」

 

「いやなんで材木座は誇らしげなんだよ.....」

 

「そうしないと悲しくて泣いてしまうからだ!」

 

「もういい、それ以上言うな材木座」

 

「ははっ、やはり君達は仲がいいね」

 

「それはない」

 

「いいのか?八幡、我泣いて転がるぞ?」

 

「めんどくせぇ報復しようとすんな」

 

「ヒッキー!」

 

この声は由比ヶ浜か、てことは女子メンツも着替え終わったみたいだな。

 

「待たせてしまったかしら?」

 

「いや!今来たばかりである!」

 

材木座、お前それもラノベ知識のセリフだろ、言ってやったぜみたいな顔すんなうざいぞ。

 

「ねぇねぇお兄ちゃん、せっかく小町たちが水着に着替えてきたんだから何か言うことはないのかな?」

 

「は?別にそんなの....」

 

「な、い、の?」

 

「言わなきゃダメか?」

 

「とーぜん!」

 

おい、小町以外のやつ止めろよ、絶対こいつ楽しんでるから。

俺をいじり倒したいだけだから。

 

「その、なんだ、似合ってんじゃねーの?」

 

「え?なんですかそれ?妹に頼まれたから仕方なく褒めたみたいな体裁を気取って私たちを全員まとめて口説いてるんですか?ちょっと先輩にしては頑張ったなとか思わないでもなかったですけどみんなまとめて同じ褒め方をするのは流石にひどいと思うので次からはしっかり1人1人に感想を言ってくださいごめんなさい」

 

「いや、お前の言った通り言わされただけだからな.....」

 

それに心なしか今俺別に振られてなかったよね?

 

「あんたも相変わらずだね」

 

「少しくらい同情してくれてもよくないですかね?」

 

「そうしてもあんたがもっと傷つくだけじゃない?」

 

意外と優しい川なんとかさん、ごめん、最近どうもお前の名前忘れがちなんだよな.....

 

「おーい!みんなー!」

 

この声は戸塚?

今振り返れば.....水着の.....戸塚が.....

見たら99%俺は死ぬ.....

だが.....俺は....死すら恐れぬ....

 

「どう....かな....?」

 

ぐばっ!

これは想像以上の.....

正直上裸で来られたら終わりだったがパーカーのようなものを着ているのでその心配はなかったか.....

 

「似合ってる、やっぱり戸塚は何を着ても似合うな!」

 

「褒めすぎだよ.....八幡.....」

 

あ、やばい、死ぬ、萌え死ぬ。

 

「なんか私たちの時と反応違くないですか?」

 

「そうだよね、ヒッキーはさいちゃんに甘いし.....」

 

「....別に私はどうでもいいのだけれど」

 

「うちの愚兄がすいません.....」

 

なにやら話しをしてるようだが戸塚に夢中な俺には聞こえないぜ!

 

「それより、そろそろ海に行こうよ!」

 

「そうだね、あたし速く遊びたい!」

 

「小町もです〜!」

 

「じゃあ俺は荷物番してるわ」

 

「お前ならそう言うと思ってたよ.....」

 

「ちなみに我も荷物番に回る、少々原稿をすすめたいのでな」

 

進んで荷物番になった俺が言えることでもないが海にまで来てそれかよ.....

 

「そんなわけでお前らは遊んでこい」

 

「俺も残るよ、たまには男同士話したいこともあるしな」

 

え?材木座だけでもお腹いっぱいなのに葉山まで残るの?

 

「え?それなら僕も.....」

 

「いや、戸塚は行ってきてくれ」

 

ここに居られると俺の心臓がやばいくらい速く動き続けて最悪死ぬまだにある。

 

「でも.....」

 

「楽しみにしてたんだろ?」

 

おい葉山、お前俺が言いたかったことを言うんじゃねーよ。

 

「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

「じゃあ荷物よろしくね!お兄ちゃん!」

 

「おう」

 

そう言って水着をまとった女子たちは海へと向かっていくのだった。

 

「それで葉山、なんか用でもあるのか?」

 

小町たちが海へと向かった後材木座はすぐに執筆に入り集中してるためかこちらに一切の関心を示していない。

こうなったら静かでいいんだけどなぁこいつ。

 

「そんなに疑うことないだろ」

 

「お前実は腹が黒いからな、信用ならん」

 

「それこそ風評被害だよ」

 

「そうやってヘラヘラしててなに考えてるかわかんないからな」

 

「そりゃ考えてることなんて誰にもわからないだろ」

 

「で、本当のところは?」

 

「まぁ、用というか話がしたかったのは事実だ」

 

「ほらな」

 

「まぁそう言うなよ、それで本題だが、お前最近話題のバンドのALLYを知ってるか?」

 

「知らないな.....」

 

「まぁ本当に最近のことだし知らなくても仕方ないか、そのバンドがこないだテレビに出てたんだがそこでこんな話をしててな.....」

 

葉山の話をまとめるとそのバンドのリーダーが当初ギターは別の人間が担当する予定だったがスカウトを断られてしまったため今のメンバーになったということ。

そしてその男はギターが本当に天才と言われるレベルだったがつかみどころがないというかそれ以外のことにはやる気も興味もなく目も濁っていたということ。

.....ってあれ?これって.....

 

「俺はリーダーの言う人間の特徴を完璧に網羅してるやつを知ってるんだが?」

 

「誰のことだろうな?」

 

「これ、お前のことだろ。中3くらいの」

 

なんで年代までわかるんだよ!?

まぁもう小町にも話したし隠すことでもないからいいんだけどな.....

 

「その通りだ」

 

「やっぱりか、お前はどんな人にもそう言われるよな」

 

「確かに目が濁ってるとかよく言われてたな」

 

今はだいぶ改善されているらしいが。

 

「そこじゃない」

 

そこで葉山は雰囲気を変えておよそ海には似合わない真剣なものとなる。

 

「お前が、天才って言われることだよ」

 

「そんなん俺が言ってるわけじゃねーだろ」

 

「それでもだ、はっきり言うとな俺はいまでも悔しくてしょうがない」

 

「それ以外全部大敗してるだろうが」

 

「そう茶化すなよ、1番負けたくないものだけ負けてるってのはくやしいもんなんだよ」

 

確かにそれはそうなのかもしれない、だが俺にその気持ちはわからない。

傲慢だが俺は1番負けたくないと思えたもので負けたことは....負けたと思ったことは.....ない。

 

「でも勘違いするなよ、そんなことで別にお前を嫌いになったとかじゃないんだ。ただ、もうこれ以上負け続けるつもりはない、それだけだ」

 

こんなところにも俺に劣等感を感じてたやつがいたのか。

俺も....そろそろ自覚したほうがいいのかもしれない。

俺は台風のような存在なのだと.....

 

「追いつかせるかよばーか」

 

俺は今初めて他人のことを考えたのかもしれない.....

海に来てそんなことに気づくとはな.....

 

「お兄ちゃん!もうそろそろお昼を食べに行かない?」

 

「まだ早くないか?」

 

「混む前に行きたいじゃん」

 

「そーですよ!八幡先輩!行きましょう!」

 

「まぁそれもそうか.....ってなんで戸山がいるんだよ!」

 

は、俺がキャラ崩壊寸前のツッコミを.....

 

「海で遊んでたら会ったからそのままポピパのみんなと遊んでたんだよ」

 

「そうか、葉山どうする?」

 

「そうだな、俺も混雑は避けたいしいま行ってしまおうか」

 

「材木座は無視でいいか」

 

「.....」

 

いつものテンションでこないところを見ると本当に集中してるのかもしれない.....

まぁどうでもいいか!

 

「よし、行くか」

 

「うん!」

 

誰も材木座のことを尋ねないあたりどんな扱いを受けてるのかわかるものだ。

 

「あっ、八幡たち呼んで方くれたんだね」

 

「はい!」

 

ああ、小町と戸塚が......

一緒にいるなんて.....

儚い.....

今思ったけど瀬田の迷言って使い勝手がいいな。

 

「あれ?そこにいるのは八幡?それに結衣たちも!」

 

この声は....

 

「あ、リサちゃん!どうしてここに?」

 

「どうしてってRoseliaで海に遊びに来たんだよー!」

 

「Roseliaが?」

 

「そーそーあたしが友希那を頑張って説得してねー」

 

「あれは説得ではなく脅迫よ、リサ」

 

そう言って今井の後ろに立っているのは間違いなく湊でその後ろにいるのは間違いなくRoseliaのメンバーだった.....

なんだろうか、この先面倒ごとになりそうな予感.....

 

こうして波乱の海での午後は幕を開けていくのだった.....

 

 

 




というわけで次回は海の午後を書いていきますねー
UAも10万を超えたのでより皆さんに楽しんでもらえるよう頑張ります!

感想、評価など励みになるので是非残していってください!
それでは最後に次回予告いってみましょう!

「えーと雪ノ下なんでそんな説教する気満々なんだ?」

「こないだあなたが次回予告をサボったと小町さんから聞いたからよ」

「ちっ、小町余計なことを」

「何を人のせいにしているの、だいたいあなたは以前から.....」

「ちょ!雪ノ下ストップ!これじゃ次回予告終わっちゃうから」

「それもそうね、なら先に次回予告を済ましてしまいましょうか。次回は湊さんたちとも合流してさらに騒がしい間に合うようね、次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『なぜこうなったのかを比企谷八幡は考える』よ、よければ見ていってちょうだい」

「今のうちにこっそり.....」

「逃げたら承知しないわよ?」

「.....はい」


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第37話

毎度更新が遅くてすいません.....
これからも出来るだけ更新するので気長に待っていてください


Roseliaの水着、今年は当たりませんでした.....
それどころか現在30連爆死中です.....
それとバンドリの映画めちゃくちゃエモくないですか?




「それにしてはこんなところで会うなんて奇遇だね〜」

 

「そうだよね!すっごい偶然!」

 

やはり性格も似ているだけあってか由比ヶ浜と今井は仲がいいようだな。

 

「お前が海に来るなんて意外だな」

 

「私だってそう思うわ」

 

「じゃあなんできてるんだよ.....」

 

「それは.....」

 

なにやら言い澱む湊だが海に来る理由にそんな言いにくい内容とかあるのか?

 

「ただ、新曲の歌詞が思い浮かばないという話をリサとしていたらその、気分転換がてら行こうって......」

 

「お前ならそんな時間があったら考えつくまで作詞を続けそうなもんだけどな」

 

「最初はそのつもりだったわ、でも....」

 

「無理矢理押し切られたと」

 

「.....そうね、あれは横暴だったわ」

 

「絶対それは言い過ぎだろ」

 

そんな無理矢理海に連れて来られるやつがいるとは.....

でも俺も誘ってきたのが戸塚じゃなかったら同じ末路を辿っていたのは充分すぎるほどに想像がつくところだ。

 

「あこたちは?」

 

「今は向こうにいるわ、私とリサでお昼を買いに来たの」

 

「俺たちも同じかんじだな」

 

ただこちらはほぼ全員が来てるが。

 

「それにしても世界も狭いもんだな.....」

 

「そうね、同じ日に海でこんなにも多くの知り合いに会うことになるとは思わなかったわ」

 

「お前たちは戸山たちと面識があるのか?」

 

「ええ、オーデションの時にね」

 

「そうか、お前たちは1発で合格か?」

 

「ええ、頂点を目指すと言っている手前オーデションで落ちていては笑い話にもならないわ」

 

「まぁそれもそうだな」

 

こいつも始めてオーデション受かった時は喜んだりしたのか?

想像つかないんだが。

 

「ねぇねぇ友希那、午後はあたしたちもこっちのグループと合流しない?みんなでワイワイした方が楽しそうだしさ」

 

「私は構わないわ、あとは紗夜たちにも聞いてちょうだい」

 

「もちろん!」

 

結果的に言えば紗夜たちも当然のように了承したらしく午後、というか昼食からRoseliaのメンバーが合流してより賑やかになった。

 

「それにしても改めて見るとすごい人数になったな」

 

「そりゃ16人もいるからな」

 

「まさか同じ日にこんなに会うとは思わないだろ」

 

てかこれだけ人数いて男が3人ってどういうことだよ、都合よすぎるラブコメかよ。

え?戸塚?戸塚は男じゃないってもうなんども説明してるだろ?

あいつの性別は戸塚だ。

少なくとも俺の中では。

 

「ねぇねぇ八幡さん!午後に各バンド対抗でビーチバレーをやることになったんですけど八幡さんたちもやりませんか?」

 

「ビーチバレー?」

 

なんでまたそんな突然に?

 

「今井さんと由比ヶ浜さん.....一色さんの3人が.....やろうと言い出したんです」

 

心を読んだかのような解説をありがとう。

 

「でもそうすると俺と葉山は未所属だぞ?バンドによって相当人数差あるだろ」

 

「なので八幡さんたちにはアブアルチームに入っていただくことにしました」

 

「確かにそうすれば人数は均等だな、よし俺は乗った!」

 

おい、葉山お前地味に俺の逃げ道を塞いでんじゃねーよ。

お前さえそう言わなければいくらでも回避できたのに.....

 

「八幡君やらないの?」

 

りみもそんなこと言うんじゃありません、いくらお前が天使でも俺は耐え抜いてみせる!

 

「ええ....八幡さんやらないんですか?」

 

あこもやめろその視線、罪悪感やばいことになってくるから!

 

「八幡、やろう?」

 

「うん、やるわ」

 

この3人のコンボで断れるやつとかいるの?

もはや戸塚が喋ってる途中で返事してたよ?

 

「これでみんなでビーチバレーできるね!」

 

「やるからには負けたくないね」

 

「いや遊びなんだからそんなガチにならなくてもいいだろ....」

 

「でも、私も勝ちたいかも」

 

「みんなで頑張れば勝てるよ!」

 

ポピパの5人もやる気はすでに相当高まっているようだ。

 

「やるからには頂点を目指すわよ」

 

「オッケー、任せてよ!」

 

「ええ、必ず勝利をつかんでみせます」

 

「ふふーん、見るがいい!我が闇の力の....えーと」

 

「力を....じゃないかな?」

 

「そうそれ!」

 

もはやビーチバレーとは思えないほどのやる気のRoselia

 

「うーん上手くできるかな?」

 

「小町たちなら大丈夫ですよ!!」

 

「我も死力を尽くして戦おうぞ!」

 

「まぁやるなら負けないよ」

 

前半と後半の雰囲気のギャップがやばいラビワン

 

「私たちも当然優勝を目指すわよ」

 

「うん!もちろんだよ!」

 

「私たちならやれます!」

 

「先に言っておくけど俺は普通のバレーも自信はないぞ」

 

「かっこ悪いこと言ってるのになんか誇ってる!?」

 

「まぁ、俺も全力でやらせてもらうよ」

 

厳しいんだから緩いんだからわからないアブアル(うち2人部外者)

かくして4バンド対抗のビーチバレー対決がスタートしていくことになるのだった。

 

*****

 

それから各チームで30分ほど練習してまずはポピパ対 Roseliaの試合が行われることとなった。

形式は総当たり戦で11点マッチ、そして試合をしていないチームが審判だ。

 

「それじゃあそろそろ始めようか!」

 

元気のいい由比ヶ浜の掛け声で Roseliaのサーブから試合が始まった。

 

「いっくよー!」

 

今井のサーブは成功。

 

「いくよ!りみ!」

 

しかしそれを花園しっかりと受け止める。

 

「う、うん香澄ちゃん!」

 

そしてりみがトスを上げる」

 

「とりゃー!」

 

いやうまいなおい、チームワーク抜群って感じで繋がっている。

 

「さっそく入っちゃうかな?」

 

戸塚、可愛いけどそういうことを言うとな.....

 

「なかなかやりますね、ですがまだ甘い!」

 

ほらフラグになっちゃう。

上手く決まったボールをこれまたキレイに紗夜が拾う。

 

「お願い.....あこちゃん.....」

 

「任せてりんりん!見よ!我が深淵より出ずる漆黒の魔力による闇の.....えーと」

 

とんっ......

 

「あっ」

 

そこで考えるのかい!

あこがアタックを決めるかと思いきやジャンプ寸前でセリフを考え込んでしまったことでボールが落ちてポピパチームに1点が入った。

 

「あこ?」

 

「ごごご、ごめんなさーい!」

 

「まだ1点だよ、頑張ってー!」

 

戸塚は審判のはずだが声援を両チームに送っている。

 

「いやーここでミスをしてしまいましたがこのあとこのミスがどう響いてきますかねー」

 

「ここでのミスはまだ1点、つまりまだ十分に挽回できるチャンスがありますね」

 

小町と葉山はなにやってんだ....

お前たちいつの間にそんなな仲良くなったんだよ.....

つか葉山小町に近づくんじゃねーよ

あとであいつ覚えとけよ.....

 

「それじゃあ次は私の番だね」

 

山吹のサーブからゲームが再開したようだがこのサーブもミスせず決めることができたようだな。

 

「これ以上点はあげないよー?」

 

しかし今井が難なくそれをレシーブし先ほどミスしたあこへと繋ぐ。

 

「お願いします!友希那さん!」

 

「ええ、行くわよ!」

 

そして湊の打ったボールはポピパサイドのビーチに突き刺さるように決まる。

Roseliaも本領発揮と言わんばかりに見事な連携だ。

あれ?こいつら本当に経験者いないんだよな?

その割に妙に上手い気がするがまぁそこはご都合主義ってことでいいか。

 

そんなこんなで試合は進みついに Roseliaがマッチポイントまで迫りポピパはそれを追いかける形となっている。

 

「くぅ、やっぱりつえーな」

 

「でも、私達ならきっとやれる!」

 

「そうだよ、今までだっていろんなことを乗り越えて来れた!」

 

「勝とう!みんなで!」

 

一回戦にしてこのスポーツ漫画の最終戦感はなんだろう.....

このあとやりにくくなるからやめて欲しいんだが.....

 

「最後まで気を抜かずにいくわよ、私たちが目指すのは頂点ただ1つよ」

 

こっちもこっちで最後のライバル感やばいし。

 

「それじゃあ、いきます!」

 

紗夜の強烈なサーブが花園めがけて飛んでいく。

 

「....負けないっ!」

 

しかし花園しっかりとレシーブ。

 

「決めろ!香澄!」

 

そして市ヶ谷がトスを上げ.....

 

「任せてみんな!」

 

戸山が打った。

 

「おおっと!ここで渾身のアタックだー!これは決まったかー!」

 

小町、お前までそうやって.....

 

「.....その程度かしら?」

 

湊がそのボールをあっさりといった感じでレシーブする。

やはりどんなに頑張っても誰が言おうともフラグはフラグにしかならないらしい。

 

「リサ」

 

「おっけー!あこー最初の借りを返しちゃいな!」

 

「うん!今度こそ見るがいい我が深淵より出ずる漆黒の魔力による闇の一撃を!」

 

今度はあらかじめ白金に聞いておいたのであろう決めゼリフとともにポピパチームにとどめとなる1点を叩き込む。

 

「決着ね」

 

「はい!勝者 Roseliaチームでーす!」

 

小町がゲームセットを告げお互いのチームがコートから出てくる。

 

「負けちゃったー」

 

「でもやりきったよ」

 

「てかよく考えたら総当りだからまだ試合はあるんだよな」

 

「あとの試合は勝とうね!」

 

ポピパのメンバーたちは冷静になり始めたのか次の試合があることを思い出しそれに向けて意気込みを新たにしたようだ。

 

さて、とりあえずそろそろ俺はステルスをオンにして存在感を消すか.....

 

「それでは、いきましょうか。比企谷君も早くしてちょうだい」

 

ステルス失敗....だと.....

その昔クラス全員を誘って出かけようとしてたやつにガチで1人だけ忘れられて予定を聞かれなかったこともあるほどの実力を持つ俺のステルス機能をそんなあっさり破るなんて.....

 

「断る、俺は戸塚や小町と戦うことなどできない」

 

「なら、材木....なんとか君を狙えばいいのではないかしら?」

 

「たしかに、その手があったか」

 

「ねぇまって!我の扱い色々酷くない!?せめて名前くらいはしっかりと.....」

 

試合が始まる前から容赦ない精神攻撃が材木座を襲っている、正直流石にここまでされてるのはかわいそうな気もするが材木座なので気のせいだろう。

 

「比企谷、お前容赦ないな.....」

 

「お前に対しても同じことくらいできるぞ?」

 

「遠慮しておく」

 

「らしくないぞ、遠慮なんてするなよ」

 

「先輩、そろそろ無駄口を叩くのも終わりにして集中しましょうか?」

 

今俺が怒られる要素あった?

しかもまだ試合始まってすらないんだよ?

 

「あはは....どうもゆきのんといろはちゃんなんかスイッチが入っちゃったみたいで.....」

 

由比ヶ浜が説明してくれるがどうしてそんなにもやる気になっているのか俺にはさっぱりわからない、何か商品があるわけでもないのに。

 

「でも、やるからにはあたしも勝ちたいかなーなんて」

 

お前もそっち側かよ。

 

「これは負けるわけにはいかなそうだな.....」

 

「ああ、これで負けたらなんかやばい目にあいそうな気がする」

 

「まさかお前と協力する時が来るとはな」

 

「まったくだ」

 

はっ!いかんいかん俺たちのやりとりもなんか強大な敵を目の前にして協力するライバルみたいな感じになってしまっている。

 

「それでは、そろそろ始めましょう」

 

紗夜の一声で両チーム共コートに入る。

ちなみにラビワンは4人チームなので他のチームは一回攻めるごとに1人づつ入れ替わることで4対4の形式をとることにしてある。

 

「まずは.....ラビワンチームのボールからです.....」

 

「それじゃあいきますよー!」

 

小町のサーブが決まるが悪いな。

 

「よっと」

 

葉山が軽々しくそのサーブをレシーブする。

そう、俺たちのチームの葉山と雪ノ下は普通なんてレベルを超えている、この2人から点を取るのは至難の業となるのだ。

 

「由比ヶ浜さん」

 

続いて雪ノ下がつなげる。

 

「任せて!」

 

由比ヶ浜はアタックにはいかず堅実に相手のコートにボールを入れる。

 

「その程度か八幡!我を失望させてくれるな!」

 

「いやそのボールなら小学生でも取れるから.....」

 

「お願い!」

 

材木座が拾ったボールを戸塚も必死につなげる。

 

「いくよっ!」

 

まじかよ.....雪ノ下と葉山の間に落とすだと.....

まさかの伏兵がここにいたか.....

 

「さすがです!」

 

「今のが幻の秘儀.....メテオスパイクか.....」

 

材木座、適当なこと言って雰囲気出そうとしてんじゃねーよ。

 

「1点を取られてしまったわね」

 

「ごめん....あたしが決まらなかったら.....」

 

「そんなことないよ!取り返せばいいだけだよ!」

 

雰囲気がまじでスポーツ漫画のそれなんだが今回どうした?

 

「入るかなぁ?」

 

不安そうに戸塚がサーブするがギリギリこちらのコートに入る。

 

「先輩!」

 

一色、お前繋げさせる相手間違えてるからな。

まぁ来ちまった以上仕方ない。

 

「....雪ノ下!」

 

いくら俺でもご都合主義の恩恵を受ければトスくらい余裕である。

 

「反撃開始よ!」

 

雪ノ下の強烈なスパイクが突き刺さりこちらも1点を返す。

 

「さぁ、ここから一気に突き放すわよ」

 

そこから先は一進一退の攻防だった。

こちらが入れればあちらも入りというようにして結局9対9までもつれこんだ。

 

「よしっ!これで決める!」

 

葉山がアタックを決めて俺たちがマッチポイントとなった。

 

「じゃあ先輩サーブ決めてくださいよ?外したらわかってますね?」

 

「プレッシャーかけると俺は弱くなるぞ」

 

「かけないとやる気が出なさそうなのでかけました!」

 

急に元気いっぱいに言われるとつくづく女子の切り替えの早さに戦慄を覚える。

本当に何考えてるかわからないもんなぁ.....

 

「ひどい目には会いたくないからな、決める!」

 

俺にしてはやる気のこもったサーブだったのだが。

 

「甘いよお兄ちゃん!」

 

「なっ!」

 

くっ、小町のやつ俺がどこにサーブを入れるかを予測してきやがった。

 

「まだ負けるわけにはいかぬのだ!」

 

「そういうこと!」

 

材木座と川崎もさらに続き仕掛けてくるがこちらとせっかく掴んだマッチポイントだ、そう簡単に手放せるものではない。

 

「くっ!まだです!」

 

「ナイスいろはちゃん!ゆきのん!」

 

「任せてちょうだい」

 

こちらの女子勢も負けじと返すがしかし

 

「まだ、負けない!」

 

戸塚がそれに食らいつきボールが入ることはなかった。

 

「ナイスです!彩加さん!」

 

「今度こそ!」

 

再び川崎がアタックを仕掛けてくるが.....

 

「やはりこうなったわね」

 

先ほどまでならおそらく入っていたであろうボールを雪ノ下がレシーブする。

 

「なっ!」

 

考えてみれば当然のことである。

人数を合わせているとはいえこちらは5人で交代で回しているのに対してあちらは4人で戦い続けている。

勝負が長引けば長引くほど体力的にこちらが有利になってしまう。

それを見越してか雪ノ下は決めれるところをわざと決めずにゲームを伸ばしていた。

 

「ヒッキー決めちゃって!」

 

「おう、任せろ」

 

そう言い俺がジャンプしたところで小町がさっきのように俺の狙いそうなところを予測しあらかじめその場所へと向かう。

.....だが残念だったな。

 

「なんてな」

 

俺は打たずにスルーし俺の後ろから葉山が飛びボールを思い切り相手のコートへと打ち込む。

本来小町がいたはずのその場所には今は誰もおらず相手はなすすべもなく決められる。

 

「ナイスだ、比企谷」

 

「たまにくらいは合わせてやるよ」

 

そう言って拳を合わせる。

おっと、またスポーツ漫画のようなノリになってしまった。

なんだかんだ言いつつ俺もしっかり楽しんでいるな。

 

「やったね!ヒッキー!

 

「おう、とりあえず一勝だな」

 

「でもまだ気は抜けないわよ」

 

「でも今は喜んでもいいじゃないですか」

 

「そうそう、あまり堅苦しいことは言わずにさ」

 

勝利の余韻に浸る俺たちだがあとこんな試合を2試合もやらなきゃいけないの?

と俺は1人テンションを下げるのだった.....

 




今回は八幡のメタ要素3割り増しほどでしたがいかがでしょうか?
海の話は多分次回でラストになると思います。
次回の更新も気長に待っていてくれると幸いです。
感想、評価など励みになりますのでよければ是非お願いします。
それでは最後に次回予告です。

「はーなんでまたこんな目に俺が合わないといけないんだよ.....」

「なんだかんだ楽しんでるくせにそんなこと言うなよ」

「しかも今回の予告の相手が葉山とかまじでついてないな」

「毎回そんなことばかり言ってると見てる人も飽き飽きするんじゃないか?」

「お前それメタいし作者も多大なダメージ受けるからやめとけよ」

「お前も充分メタいだろ.....。おっとそろそろ予告しないと尺が足りないな、というわけで次回のやはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『なんだかんだ比企谷八幡も熱くなっている』です!お楽しみに」

「いや絶対そんなことないから.....」


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第38話

すいません、更新も遅い上に今回で海編が終わる気がしません()

最近はバンドリのガチャが出なくて少し萎えてますかね。


午後から Roseliaまで合流してビーチバレー対決が行われることとなり現在は ポピパ対 Roseliaの試合とアブアル対ラビワンの試合が終わり Roseliaとアブアルが勝利したというところである。

と、ここまでまとめてみたのはいいもののあと2試合もやらなきゃいけないってまじ?

 

「それじゃあ次は私たちと勝負しましょう!八幡先輩!」

ほらこんな風に俺たちにすかさず勝負を仕掛けてくる戸山とかいるし。

 

「いや連戦はきついんだが.....」

 

「でもどうせどちらかが連戦をしなければならないのでしょう、それで人数の少ない川崎さんたちを連戦させるのは流石に不公平ではないかしら?」

 

「たしかにそうだねー」

 

「まぁ私たちは休みながら試合してましたしね」

 

「俺も問題ないよ」

 

ほらこいつらも断る気ないし。

 

「それじゃあいいですか?」

 

「この状態で俺だけ断るわけにもいかないだろ.....」

 

本当にまじで世の中こうやって誰かが犠牲になってるんだぜ?

 

「八幡君たち本当に大丈夫?休憩しなくていいの?」

 

本当になんでりみはこんなにかわいいの?

 

「まぁ少しくらい休憩するか、暑さで倒れるのも嫌だしな」

 

「比企谷君の言うことも一理あるわね」

 

雪ノ下も賛成してくれるようだしこれで一休みくらいはできそうだな.....

 

「それでは、各チームで10分間休憩にしましょうか」

 

Roseliaもそれで問題なさそうだ。

 

「そうだね、僕も少し休みたいな」

 

「小町も喉がカラカラですよー」

 

ラビワンも当然休憩を取るようだ。

 

「まずは1勝だね!」

 

「はい!でも他の3チームが想像以上に手強いですね」

 

「そうね、でも勝てないチームは1つもないわ」

 

「狙うはもちろん優勝ってことだね?」

 

「当然よ」

 

いやほんとなんなのかな体育会系集団。

この空気と俺は相性が悪いな.....

 

「ちょっと飲み物切れたから買ってくるわ」

 

「あっ!あたしもいく!」

 

自販機って近くにあったかな.....

それにしても......

 

「はぁ.....帰りたい」

 

俺たちのチームはやる気が4人と1人で大きく異なる。

主に俺がやる気がない。

 

「ヒッキーやる気なさすぎでしょ!」

 

「聞くがお前俺がやる気出して物事に取り込んでた試しがあるか?」

 

「あるでしょ」

 

あらその発言は予想外、ここは『.....ないかも』的なリアクションを期待していたのに。

そしたら『だからこんなところで俺のやる気を出すのはもったいない』みたいなこと言ってサボる予定だったのに。

 

「一体何でそんなやる気を出したよ」

 

「ギター、そんなにやる気なかったの.....?」

 

「.....まぁ少しくらいは本気だったかもな」

 

「バンドも?」

 

「どうだろうな?」

 

「.....ヒッキーさ、たまにはあたしたちにも本当のこと言ってほしいな」

 

「.....」

 

由比ヶ浜の言葉に冷水を突然かけられたような気分になる。

 

「なーんてね!ヒッキーいつも捻くれてるからついからかっちゃった」

 

最後には気を使ってくれた由比ヶ浜が引いてくれたがきっと今のが本音なのだろう、このままでは不誠実なのは間違いない。

 

「お前にからかわれると腹立つな」

 

「ひどっ!なんでみんな同じこと言うのかなー?」

 

「アホだからじゃないか?」

 

「そんなことないし!」

 

でも、俺はまだ誠実な対応をする勇気は出ないようだ。

 

「.....その2つは本気だった。それだけは俺の本物だ」

 

でも、少しの勇気なら出せるようになっていた。

 

「......そっか、ならよかった!」

 

この笑顔が見れるのなら俺も全てを話せる気がするなんて思うのは傲慢だろうか?

 

「そんなことより急ぐぞ、休暇時間が終わっちまう」

 

「え!もうそんなにやばい?」

 

実際はまだ若干余裕があるがこの雰囲気が恥ずかしくてとっとと帰りたい。

由比ヶ浜に顔を見せないように前を歩きつつ俺たちはみんなの元に向かうのだった。

 

*****

 

「お待たせー!」

 

みんなの元に帰ると思ってたよりも時間ギリギリでびっくりしている。

 

「八幡先輩!そろそろ始めましょうよ!」

 

「ちょっと待てよ香澄、まだ先輩帰ってきたばっかだから」

 

「え!?そうだったんですか、すいませんでした」

 

「だからあと少しだけ待ってくれる?」

 

横から由比ヶ浜も少し遠慮がちにだがそう言う。

 

「もちろんです!それにしても.....八幡先輩本当にバンドやってたんですね!」

 

「そんなところで嘘つく必要ないだろ.....」

 

「まぁ先輩ってどこから見てもただの人畜無害な捻くれぼっちですもんね」

 

「お前そんな悪口盛り込んで俺を傷つけて楽しいか?」

 

「あら?事実を言っていただけではないかしら?」

 

「比企谷、お前相変わらずだな.....」

 

葉山の同情の目線が少しばかり救いだがそれでもはるかにダメージの方が大きい。

 

「八幡先輩ってバンドにいた時にはどうだったんですか?」

 

「話すと長いけど大丈夫?」

 

「私も聞きたいかも」

 

「わ、私も聞きたい」

 

なんでお前たち全員食いつくんだよ。

 

「八幡さん、そろそらはじめましょう」

 

「ちょっと待ってやってくれ、こいつらが俺の昔話しだしたから」

 

「.....私も同じギターとして参考になるかもしれないので聞いてきますね」

 

紗夜、お前もそっち側か。

 

「八幡、紗夜を見かけてない?あなたたちを呼んでくると言ったきり戻ってこないのだけれど」

 

「あいつは今あそこで俺の昔話を聞いてるよ」

 

「.....私も聞いてくるわ」

 

なんでみんな行くんだよ.....

マジだ面白い話なんてないぞ.....

 

「あはは、友希那もミイラ取りがミイラになっちゃったねー」

 

「今井か、本当になんで面白くもない話を聞きたがるんだろうな?」

 

知らぬ間にラビワンのメンバーも加わってるし。

 

「みんなにとっては面白いのかもよ?」

 

「俺の話がか?」

 

「そんなの聞いてみないとわからないじゃん?」

 

「そんなもんか?」

 

「そうだよ、それとさ八幡は友希那と紗夜がただの興味で話を聞いてると思う?」

 

「まぁ、そうじゃないのか?」

 

逆にそんな話を聞くのに意味とかあるのか?

 

「うーんわからないなら忘れていいよ」

 

「あ!リサ姉!友希那さんと紗夜さんは?」

「見つかりましたか.....?」

 

「うん、でもあんな感じ?」

 

今井が指差す先にはここにいるメンバー以外が1箇所に集まって話しているところである。

 

「どうしてみんなあそこに集まってるの?」

 

「あーなんだ、俺の話をしていた時にどんどん集まってきちゃったみたいでな.....」

 

あの様子だとあと10分はすくなくとも話し続けそうだな。

 

「えー!あこも聞きたかったー!」

 

「流石に俺の話なんて終わってると思うが.....」

 

「それじゃあ八幡さんが話してよー!」

 

「おっ!いいねーあたしも聞きたいなー」

 

「.....皆さんは.....まだ話してますしね」

 

「面白い話なんてないから、またいつかあいつらと話してくれ」

 

「えー八幡さんの昔話聞きたかったなー」

 

「今とほとんど変わらないぞ」

 

「なんか想像つくかも.....」

 

「強いて言うなら、今よりも人と関わってたかもな」

 

ライブで周りの人と話したりとかしてたぶん今よりは活発に他の人と交流していたと言えると思う。

 

「.....すごいですね、私は.....今でも他の人がいると緊張.....します」

 

「俺もやめたらすぐ元に戻った」

 

「あはは.....戻っちゃったんだ.....」

 

「でも、あこも八幡さんとステージ上がりたかったなー」

 

「俺もあこや.....あいつらと立ちたいな」

 

もしそれが現実になったのなら俺はそのステージを一生忘れることはないだろう。

 

「あこたちはいつまでも待ってるからね!」

 

「おう、そんな待たせないように頑張るわ」

 

あことの約束、必ず叶えないとな.....

 

「八幡先輩!そろそろお話はその辺にしてそろそろ試合しましょう!」

 

「誰かさんたちが話してて待たされてたのは俺の方だったんだけど.....」

 

「まぁまぁ細かいことはともかく早くしましょう!」

 

まったく.....こいつは悩んでるのがバカらしくなってくるな。

 

「たく、ぶっ潰してやるから楽しみにしとけ」

 

「まけませんよーだ!」

 

確かに圧勝とはいかないだろうけどな。

こうしてようやくポピパとの試合が始まった。

 

「それじゃあいきますよー!」

 

今回は花園のサーブから試合スタートだ。

 

「おっと、ナイスサーブ」

 

とか言いながら爽やかにレシーブする葉山、マジでこういう時には有能。

 

「よっと」

 

ボールは俺の方へと向かってきたのでとりあえず一色あたりにつながるか。

 

「ようやく私に回ってきましたね!それじゃあいくよっ!」

 

前半は俺に向けて後半は相手に向けて話すとかコミュ力高すぎかよ、俺ならどっちかにしか言わん、てか何も言わないまでにある。

 

「まだ点入らさせませんよ!」

 

しかしまだこれを山吹が受け止める。

 

「りみ!」

 

「う、うん!」

 

市ヶ谷が繋げりみはアタックではなく堅実にこちらにボールを入れてくる。

 

「はいっ!」

 

しかしそうなると当然簡単にボールは拾える、そして由比ヶ浜のとったボールは雪ノ下へと

 

「そろそろね」

 

そしてボールは俺へとつながり葉山と一瞬アイコンタクトしかし今回はまだフェイクは使う気がないらしい。

てことは.....

 

「はぁ.....ついにきたか.....」

 

と言いつつジャンプ、そして相手のコートを見渡す。

そして狙いどころを考える。

.....確か市ヶ谷とりみは運動が苦手だったはず、なおかつ市ヶ谷は今後ろにいる.....

 

「そこだな」

 

狙いをつけたのは市ヶ谷がギリギリ届くかどうかのところだ。

すると案の定.....

 

「うおっ!」

 

拾いきれずボールは明後日の方向へと飛んで行ってしまいそのまま繋げることができずに落ちた。

 

「「「「お、大人気ない!」」」」

 

俺のあまりに容赦のない狙いに思わずポピパのりみ以外のメンバーから抗議の声が上がる。

 

「何言ってんだ、勝負に大人気ないも何もないだろ」

 

「....流石に今のはちょっと」

 

「かわいそうだよね.....」

 

おい、味方が急に相手の肩を持つんじゃない。

てかなんでこんなアウェイなの?

 

「と、とりあえず俺たちのサーブからだな」

 

この雰囲気だともう一度やったらひどいことになりそうだから次からは普通にやろ.....

 

「じゃあいくぞ」

 

そう行ってサーブを打つ、まぁ別に入れることだけを目標にしてるから普通に拾えるだろ.....

 

と思ってた矢先に完全に予想外なことが起こる、そうそれは突風である。

 

「うわぁ!」

 

突如の突風にボールはえげつない起動変化を起こしそのまま拾うこともできずにコートに落ちる。

 

「え?」

 

なに、いまの?

 

「ヒッキー、2回目はマジでないって.....」

 

「いや、いまの狙ってやれるわけないだろ」

 

「ま、まさか今のはウィンドマスターにしか使えないはずの伝説のテンペスタ......八幡、いつの間にそんな技を!」

 

あーあいつ海の波にさらわれて太平洋にまで流されねーかな。

 

「は、八幡さんがそんな技まで持ってたなんて.....」

 

確実に出会わせてはいけない2人が出会ってしまった.....

 

「材木座さんは八幡さんの能力まだ知ってるの?あこにも教えて!」

 

「う、うむ!もちろんである!」

 

宇多川、ごめん、お前の妹に悪影響のものを近づけさせちまった。

そんなやりとりを横目に見つつゲームが再び再開.....したのだがその後も俺は信じられないくらいのプレーを見せてしまった。

 

サールを打ったと思えば鳥にボールを掴まれたと思ったらコートギリギリにボールを鳥が落としていくし、当然のように風が起こるし、そんなこんなでみんなにもはや呆れられつつ俺たちのチームのマッチポイントとなった。

 

「次の1点は確実に取っていきましょう、どこかの卑怯谷君のおかげでまだ余裕があるわ」

 

「だから狙ってるわけじゃないんだけど.....」

 

さっきから女子3人がまるで俺が相手をいじめてるような口ぶりで俺を責めてくるのがマジで精神的にくるんだけど.....

 

「それでは次のサーブは葉山君、お願いするわ」

 

葉山は普通に上手いので無難な選択と言えるだろう。

 

「おう、任せてくれ」

 

そう言って颯爽とサーブの準備を始める姿が異常にむかつくのは果たして何故なのか?

 

「それじゃあ、いくよ!」

 

葉山のサーブは今まで通り正確に相手のコートに向かっていく。

だが、俺の目はごまかせない。

あいつは今まで男子と女子との身体能力の差を考えて手加減をしていたがいまのサーブは今までのサーバよりも威力が高い、つまり手加減のレベルが下がったということだ。

.....こいつも十分大人気ないだろ。

 

「わっ!」

 

レシーブをした瞬間思ったよりも強い威力だったボールは少しづれたところへと上がる。

 

「ナイスファイト香澄!」

 

それをなんとか繋げて花園がアタックを仕掛けてくるが威力が今までのものよりも弱い。

 

「それじゃあ先輩、この際最後までお願いします!」

 

「いや、なにをだよ」

 

意味のわからないお願いをされつつ俺はアタックの体勢は入るが、ここで俺は一回戦のように打たずに落ち始めたところを葉山が後ろからアタックを決める。

今までの俺のミラクルのおかげで相手の頭からすっかりこのプレーが忘れられていただろう。

 

「あっ!」

 

そのボールは確実に砂浜へと叩きつけられた、俺たちの勝利だ。

 

「やったね!なんか少し申し訳ないけど.....」

 

「だれのせいだろうね?」

 

「お前らはそろそろ俺を許せよ.....」

 

「まぁ、過程はともあれこれで2勝ね」

 

「ああ、次にRoseliaの勝てば全勝だ」

 

勝ってもまだ次を見据えてる2人のこのガチ感よ.....

 

「それじゃあ、次は私たちの番ね」

 

「そうですね、ここも落ち着いていきましょう」

 

「ねぇ、りんりん本当に大丈夫?」

 

「....大丈夫だよ.....外に出て体を動かしたのが久しぶりだったから.....少し疲れちゃっただけだよ」

 

「でも無理は禁物だよー?ちょうど相手も4人だし、燐子は休んでなよ」

 

「.....それでは.....お言葉に甘えさせていただきます」 

 

Roseliaは白金抜きの4人で挑むようだ、白金は安定したプレーでサポートしていたがそれがなくなりどうなるかだな。

 

「次はあたしたちも負けないよ」

 

「ええ、こちらも全力で挑ませてもらいます」

 

おおーバチバチしてんなぁ.....

正直なところ川崎に関してはRoseliaのメンバーの方が雰囲気としては近い気がする。

 

「それではこちらのサーブからでいいかしら?」

 

「はい!ばっちこいです!」

 

「おっけーそれじゃ、いい試合しようねー!」

 

「うん!僕たちも負けないよ!」

 

「ふっふっふっ、今一度我が力目につけるが良い!」

 

.....最後まで言い切れたのはいいんだけど目につけるじゃなくて目に焼き付けるだからな?

 

「ハーッハッハッ、よかろう、汝の力この剣豪将軍が試してやるのである!」

 

闇の力と剣豪将軍なら普通に山が圧勝しそうなもんだが.....

てかマジで材木座にあこを接触させて大丈夫だっただろうか?

これは2、3発くらいはビンタされてもなにも言えない.....

 

「皆さん.....頑張ってください....!!」

 

「それじゃあ、いっくよー!」

 

白金の声援を受けて遂にRoselia対ラビワンの試合が始まった。

 

勝負は一進一退で進んでいき両者譲らぬまま得点を取り合っている状況だ。

 

「なかなかやるじゃん」

 

「そちらも、なかなかのものね」

 

両ボーカルは互いの力を認め合いつつもその目には絶対に負けないという意思を感じる。

マジでどこまでスポ根なんだよ.....

 

「てーい!」

 

「なんの!」

 

「今度はこっちの番ですよ!」

 

「まだまだー!」

 

「負けない!」

 

「いくよっ!」

 

お互いになかなか点が取れなくなってきたな、こうなると次に一点を取った方に流れが訪れそうだが.....

 

「そこです!」

 

「くっ!」

 

紗夜がここにきて小町の隙をついて得点を決める。

 

「これで流れはRoseliaサイド.....となるかしら」

 

「でも、彩ちゃんたちもすっごい頑張ってるよ?」

 

「この勝負どうなるかわかりませんね」

 

そしてこういう解説が入るのももはやスポーツ漫画っぽいよな.....

 

「だけど、勝負っていうのはそういう時ほど誰かのワンプレーで変わるものだよ」

 

おい、葉山そういう思わせぶりなこというなよ。

それもスポーツ漫画あるあるじゃねーか。

 

そうこういってる間にあと一点でRoseliaがマッチポイントというところまできた。

 

あのあとやはり流れはRoseliaの方へと向いたらしくラビワンは3点の差をつけられている。

 

「これで、どう!」

 

ここで湊がアタックを仕掛ける。

そのボールは砂浜目掛けて一直線に飛んでいく。

そのまま決まると思った瞬間だった。

 

「まぁぁぁだぁぁぁでぁぁぁる!」

 

唐突に叫んだ材木座がヘッドスライディングで飛び込み砂浜に着く寸前だったボールを拾うことに成功そのボールをすかさず小町がつなげて今度は川崎が逆にアタックを決める。

点が決まったと思って油断してしまったのだろうRoseliaはそのアタックに反応することができずに点を決められてしまう。

 

「俺は今初めて材木座のことをかっこいいと思ったぞ」

 

確かに葉山の言うように一瞬だけ俺もそんなことを思ったけどさ

 

「でも、不思議とそう思いたくない気持ちの方が遥かに強いのよね.....」

 

雪ノ下の言う通りなんだよなぁ。

さっき葉山の建てたフラグ的に漫画ならここで材木座ファンが急増するくらいの流れなんだけどなぁ。

 

「ここから一気に逆転するよ!」

 

その一声からラビワンはRoseliaを猛追し遂に同点に追いついた。

 

「まずいですね」

 

「はい....気付いたら追いつかれちゃってましたね」

 

「でも、まだ勝負はこれからだよ!」

 

「その通りよ、ここから先はミスひとつ許されないわ」

 

「ええ、完璧にこなしてみせます」

 

「はい!ここで負けたら応援してくれてるりんりんにも申し訳ないですしね!」

 

Roseliaも自分たちで話し合い再び体制を万全なものにしたようだ。

 

さてここからどうなるか.....?

 

「いきますよー!」

 

小町のサーブから試合が再開された。

しかし当然そのボールは受け止められてその後もしばらく両チームとも点を決められずにいたが遂にゲームは動く。

 

「そっこだー!」

 

もはや中2っぽいことすら言わなくなったあこの隙をついた一撃によりRoseliaがマッチポイントとなる。

 

「ごめんね、みんな」

 

「まだ謝るには早いのである!まだ負けたわけではない!」

 

「そうですよ!まだこれからです!」

 

「あたしたちならいけるよ」

 

さっきから何度目かわからないけどこれってただの遊びでいいんだよな?

これが夏の魔法ってやつ?

 

.....しかし現実は無情な結果しかなかったようだ。

 

「私たちの勝ちね」

 

その後特に何かあるわけでもなくRoseliaが点を奪い勝利した。

世の中劇的な展開などそうそう起こらないし連続することなどほぼない。

.....ちょっとあの展開ならありそうとか期待してたのは内緒だぞ?

 

かくして各チームが2試合目を終えたのだった.....

 




マジで更新遅い上駄文ですいません.....
今月中にあと1話は投稿するつもりなので待ってくださったら光栄です。
感想、評価など励みになるのでぜひお願いします。
それでは最後に次回予告をして終わりますね。



「いやーまた負けちゃいましたね、彩加さん」

「うん、残念だけど僕は楽しかったな」

「小町もです!でもまだ1回試合は残ってますから次も頑張りましょう!」

「そうだね!それでは次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっている
『そして遂に八幡は....』です!.....小町ちゃんどうしたの、そんな顔して?」

「いえ、あのごみいちゃんがいないと楽に予告できるなーと」

「あはは.....」


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第39話

またも更新遅くてすいません.....
今回でようやく海編が終わります

リゼロコラボは熱いですね!
友希那さん絶対当てたいですね。
でもスターがない.....
さらに課金もできないという.....

多機能フォームとかも使ってみたいところですけど使い方わからないんですよね.....


各チーム2試合目が終わったところで再び休憩を取ることになった。

今は全チーム1ヶ所に集まっているのでなかなかに賑やかだ。

 

「これで次は私たちと八幡たちとの勝負ね」

 

「ここまできたら俺も負けたくはないぞ」

 

「そこ普通は負けないから、とかいうところじゃないんですかー先輩?」

 

「ばっかお前世の中に絶対なんてないからそんなこと言って負けたらまた一つ俺の黒歴史が更新されちまうだろうが」

 

「既に十分すぎるほど抱えているのだし今更些細なことではないかしら?」

 

おい雪ノ下、お前俺の黒歴史が多いことをこんな人が多いときに言うんじゃない。

 

「さっきも色々教えてもらいましたしね!」

 

は?戸山お前何を言って......ってまさかまさかまさかまさか!

 

「お前ら.....」

 

「あはは.....ごめんねヒッキー」

 

やりやがった......

 

「あの話が特に面白かったと思うんだけどさ」

 

「お前失礼だからやめろ!」

 

ポピパの5人は全員知ってる.....というかさっき話を聞いてた人たちは全員知ってるんだろうな......

 

「......今更だけどめっちゃ気になる」

 

「あこも聞きたかったなー」

 

「......少し気になるね」

 

この3人が聞いてなかっただけマシか....

 

「えー八幡教えてよー」

 

「そんなもん簡単に教えられるか」

 

「そこをなんとかお願いします!」

 

どんだけ気になるんだよ。

 

「確かに、八幡の話は面白かったしリサたちだけ知らないのもかわいそうね」

 

「絶対教えるなよ」

 

「ですが3人だけ知らないのもなんだか仲間外れみたいですね」

 

変なところで真面目なところを出さないでくれるかな、紗夜。

 

「それじゃあこんなのはどうですかね?」

 

「却下だ」

 

「先輩早いですよー」

 

「どうせロクなことを言わないだろ」

 

「聞くだけ聞いてみたら、八幡?」

 

戸塚、お前が可愛いことが今ばかりはうらめしいぞ。

 

「.....」

 

俺の沈黙を肯定とみなしたのだろう一色が言うには......

 

「Roseliaが勝ったら先輩の話を残りの3人にもするっていうのはどうですか?」

 

「却下」

 

「おーそれなら3人にもチャンスがあるね!」

 

「でもそれだけでは湊さんと氷川さんにとってなんの得もないわね.....」

 

おーい雪ノ下さーんここで変なこと言い出さのやめてもらっていいですかー。

 

「それではそちらが勝ったらさっきは流石に言わなかった比企谷の昔話でもしましょうか」

 

「おいまて、さっきお前らはどんなことを話したんだ」

 

「うーんとね、ごにょごにょ」

 

ご丁寧に賭けのルールが意味をなくさぬように由比ヶ浜が耳打ちで伝えてくるがその、距離が......しかもお互い水着という格好なわけで意図せず鼓動が早まってしまう。

......と思ったも束の間

 

「そんなとこまでか!?」

 

「うーん、つい」

 

ついじゃねぇよ!

一瞬で真っ青だわ、さっきの俺の鼓動を返せ!

ていうか、あれ以上のこととかマジで数少ないやばいものばかりだ。

 

「.....負けるわけにはいかねぇ」

 

「おっようやく比企谷がやる気になったか」

 

逆にこれで本気にならない奴がいたらそれはもはやそれは正常な精神を持っていないやつだ。

 

「八幡がやる気になったところ悪いのだけれど、まずはポピパとラビワンの試合をやるのはどうかしら?」

 

「確かに一位を決める決勝だとしたら最後に行うのが普通ね」

 

と、俺の社会的命がかかってしまったところで休憩時間は終わりを告げるのだった.....

 

*****

 

「負けませんからね!」

 

「それはこっちのセリフだよ」

 

試合の始まる前から両バンドのボーカルが火花を散らしている。

どちらも一勝をかけた戦いとあってやる気は充分である。

 

「それじゃあこっちからいきますよー!」

 

小町のサーブから試合開始である。

にしても我が妹ながら小町はここまで大きなミスもなくやれていると思う。

ほぼ全てにおいて俺よりもスペックが高い。

本当に俺の妹なのだろうか?

血が繋がってなかったら合法的に......

 

「比企谷君、その気持ち悪いにやけ笑いをどうにかして抑えてくれないかしら?」 

 

おっと、にやけてしまっていたか。

いけないいけない、てかそんなくだらないこと考えてた間にラビワンが一点決めてるな。

 

「見たところ両チームの力は互角といったところでしょうか?」

 

「そうね、どちらが勝ってもおかしくないわ」

 

「見ててすっごいワクワクしますね〜!」

 

観戦しているRoseliaも興奮している様子である。

普段スポーツなど興味のかけらすらない俺であるが流石にここまで両者の力が拮抗している試合は面白く興奮してしまっている。

 

その後も両チームは白熱した展開を見せなんとデュースが5回も続く形となった。

 

「はぁはぁ.....なかなか決められないね」

 

「くっ、我が魔力、もとい体力も底をつきそうだ.....」

 

「そろそろこっちもきちーな」

 

「でもきっと勝てるよ!」

 

両チームともに体力も限界が高そうな感じである。

いくら休憩を挟んでいるといってもどちらも3試合目となる試合なので体力が切れるのも当然のことだろう。

つか次の試合俺も体力もつかな.....

 

「とー!」

 

「くっ!」

 

なんて考えてる間に戸山が一点をもぎ取ったようだ。

これで次の点をポピパが入れればポピパの勝利である。

 

「このまま勝とう!」

 

「もう一度持ち堪えましょう!」

 

やる気を改めて入れ直す両チームを見て思わずその気迫に呑まれかけたが.....

これ、ただの遊びで始めたバレーだよな?

 

そんなことを考えても仕方がないので考えるのはやめたほうがきっと賢明だな、うん。

 

「まだまだぁ!」

 

「なんの!」

 

.....それでもやっぱすげー気合いだな。

そのまま互いのチームは最後の力を振り絞って戦い続けたが勝負とはいつも突然にその終わりを迎えるものである。

 

「これで.....終わりだよ!」

 

川崎によるアタックに必死に追いつこうとするがその手は後10センチボールに届かずに砂浜に落ちる。

 

「......勝った?」

 

「うむ!我らの勝利である!」

 

「やりましたね!」

 

その瞬間その長かった戦いの勝者は決まった。

 

「くー悔しい!」

 

「でもめっちゃ惜しかったね」

 

「そうだよ、私たちもがんばったよ」

 

「おつかれ、いい試合だったよ」

 

「本当にギリギリだったよ」

 

全力で戦った両チームに絆が芽生える、うんこれこそ青春......

っていかんいかん、俺だけは青春を認めるわけにはいかなかった。

決してリア充にならないからという理由の私怨ではないからな。

.....実際今はちょっとそれっぽくてテンション上がりかかってるけどさ。

 

「この勝負の後に情けない勝負はできないわね」

 

「うん!あたしたちも全力でがんばろ〜!!」

 

今の試合を見て我らがチームのメンバーもやる気がさらに高まったようだ。

 

まぁ俺も最後くらいそれなりにやるとしますかね.....

 

「そういや比企谷、次の試合は俺はもう少しがんばった方がいいか?」

 

は?なんで葉山はそんなこと聞いてくるんだ?

.....ってそういや俺のトップシークレットの過去がかけられてふんじゃねーか!

 

「当然だ、マジであれを知られるわけにはいかないんだ.....」

 

危ない危ない、危うく忘れたまま本気でやらずに負けるとこだった.....

葉山と雪ノ下が本気出したら2人だけで勝ってしまうかもしれないけどな.....

いや、でもあっちも全体的に質が高く隙が1番ないチームだしそんなこともないか.....

 

「....ぱい!先輩!」

 

「うおっ!なんだ、一色か」

 

「なんだとはひどいですね。いつまでも先輩が来ないから呼びに来たのに.....」

 

「わざわざ悲しげに言わないでいいぞ、あざといから」

 

「.....たまに思うんですけど先輩って私のことなんだと思ってるんですかね」

 

「別になんとも」

 

「....そーですか、それじゃあ行きましょうか」

 

なんだか声が若干不機嫌な気がしないでもないが別に地雷を踏むようなことは言ってないので多分気のせいだ。

 

「......思ってないわけではない」

 

そりゃなんも思わない訳はない、こいつは意外と気を配るし由比ヶ浜とはまた違った暖かさをもつ、そんなやつだと思ってる。

恥ずかしいからこんなことは口に出せる訳はないが。

 

「....なんですかそれ、思わせぶりなことを言って遠回しに告白でもしようとしてますか。そう言うこと言うなら私は直接言われたいタイプなのでせめて人に正直な気持ちくらい伝えれるくらいにしてから言ってくださいごめんなさい」

 

相変わらずすごい勢いで勝手に振られたんだけど。

こいつも、俺があいつら3人を避けようとしていた時に何も変わらず話しかけてきてくれたんだよな......

その内なんか避けるのさえ馬鹿らしくなって普通に話すようになったんだっけ。

 

「いつかな」

 

「待ってますね」

 

そう言うと一色は振り返り言う。

 

「行きましょう、先輩」

 

「ああ」

 

*****

 

え?今先輩いつかなって言った?

言ったよね.....?

それっていつかまた私に告白してくるってこと?

え?え?なにそれ気になるんだけど!

今絶対顔赤くなっちゃってるから先輩の方を向けないし.....

うーなんか最近の先輩は前よりも素直になってきてて困るな〜

やっぱりもう一度この人と演奏したいな〜

 

先輩が抜けてから私たちは必死に練習をした。

それは今までの練習量を遥かに越す量でとっても大変だったけど、先輩がもしまた戻ってきてがっかりされたらって思うといくら練習しても足りない気分だった。

もちろん先輩がそんなことを思う訳ないとは思ってるんだけど.....

またあんな風に先輩を追い詰めてしまったら.....

次はそんな想像が溢れてきて.....

でも、今日一緒に海に来てわかった。

先輩は、やっぱり優しい先輩のままだって、だからきっとまた同じステージの上で笑い合える!

そう思えたんだ。

その時は3人で.....その後できたら私だけでこう言ってあげたいな。

"おかえり"って。

 

*****

 

「遅かったわね、比企谷君。てっきりあのことを話して欲しいのかと思って話してしまいそうだったわ」

 

「いきなり心臓に悪すぎる冗談はやめてくれ.....」

 

「あれ?いろはちゃん顔が少し赤いけど大丈夫?お水飲む?」

 

「ありがと〜先輩呼びに行ったら少し喉乾いちゃってちょうど水欲しかったんだ〜」

 

「八幡さんも体調が悪いのでしたら言ってくださいね」

 

敵チームながら紗夜も気を使ってくれる......いや、Roseliaの場合は全力の俺たちのチームに勝たないと意味がないと思ってるのだろう。

 

「いや、俺は大丈夫だ。これで不戦勝にされたら俺の命が社会的に死ぬからな」

 

「絶対勝とうねりんりん!」

 

「.....うん.....頑張ろうねあこちゃん」

 

「いい勝負にしよーね!」

 

「うん!リサちゃん!」

 

お互いのチーム全員やる気満々と言ったところか。

だけど今回は珍しく俺も本気だからな。

 

「小町ちゃんはどっちのチームが勝つと思う?」

 

「うーんそうですね、小町的にはやっぱりお兄ちゃんに勝って欲しいと思う気持ちも僅かばかりか存在するんですけど.....」

 

おい、我が妹よ。

今兄はお前のせいでやる気が削がれたぞ。

 

「やっぱり雪乃さんたちからお兄ちゃんの話を聞きたい気持ちが強いのでRoseliaですね」

 

お前もそっちサイドか。

 

「僕はやっぱり八幡たちを応援するよ!」

 

戸塚、俺の味方はお前だけだ。

というか戸塚さえあればそれだけでいいんじゃないか俺の人生。

 

「有咲はどっちが勝つと思う?」

 

ポピパの間でも予想がされてるようだ。

 

「私は八幡先輩の話を聞きたいからRoseliaに勝って欲しい!」

 

おい花園、割り込むな。

てかなんでみんなそんな俺の話を聞きたがるんだ.....

 

「そーだな、なんとなくだけど八幡先輩の方が勝つんじゃねーか?」

 

「わ、私もそう思うかな」

 

「うーん、私はRoseliaだと思うかなー」

 

ポピパの中でも割れてるようだな、だが勝つのは俺たちだ。

 

「それじゃあ始めましょうか」

 

「ええ、湊さんお互い全力を尽くしましょう」

 

「当然よ」

 

「それじゃあこっちのサーブで始めさせてもらうぞ」

 

こうして俺のサーブで試合がスタートする。

 

「あこ、よろしく!」

 

「任せてリサ姉、紗夜さんお願いします!」

 

「任せてください!」

 

流石というべきコンビネーションでアタックまで持ってきたな。

 

「だけど今回だけは負けれないんだよ!」

 

俺の過去を守るために!

 

「あのごみいちゃんがあんな必死にボールを拾うなんて.....」

 

「うむ、我も初めて見る」

 

「てかあそこまで必死になって隠そうとする過去とか逆に気になるんだけど」

 

ギャラリーがなにやらガヤガヤ言ってるけど今は気にする余裕すらない。

 

「ナイスヒッキー!お願いゆきのん!」

 

「ええ、任せてちょうだい」

 

こうしてこちらもアタックを仕掛ける。

 

「.....主導権は.....渡しません」

 

しかし白金に拾われてしまう。

今白金が言ったようにスポーツというのは大抵先に点を入れた方が主導権を握ることが多い。

 

「燐子ナイス!友希那!」

 

「いくわよ!」

 

こんな調子でやりとりは続き互いに1点目から本気も本気でとりにいっている。

しかしそんな時間も永遠に続くことはありえない。

 

「先制点はもらうよ!」

 

葉山がわずかに存在した隙間に見事ボールを叩き込み俺たちが先取点をいれる。

 

「ナイス」

 

「比企谷がそんなこと言うなんてな」

 

「今だけだ」

 

実際勝つためにはこいつの力は必要不可欠である。

少しでもおだててテンションを上げさせていた方がいいだろう。

 

「じゃあいっくよ〜!」

 

そして由比ヶ浜のサーブでさらに追加点を狙いにいくが当然そんなことでは点は入らない。

 

「落ち着いて返していきましょう」

 

「そうね」

 

「あこたちの力を見せてやりましょう!」

 

先取点を入れられても動揺することなく続けられるのは流石といったところか。

 

「こちらも油断せずにいくわよ」

 

「了解です!」

 

「もちろん」

 

しかしこちらだって気を抜いたりしない。

どうやらこの勝負に揺さぶりは通用しなそうだ。

 

「そこです!」

 

その後紗夜によって点数をイーブンに戻されてしまう。

その後も一進一退の攻防を繰り広げつつ試合は進んでいった。

 

そして今9対10とRoseliaチームにマッチポイントを取られてしまった。

 

「ここをしっかり点を取らせないようにしましょう」

 

雪ノ下が声を上げて指示をする。

それに呼応するように俺たちの動きはより洗練されていく。

 

「よし!そこだ!」

 

そして最初のように葉山が点を入れデュースにする。

 

「ナイスだよ!」

 

「ああ、これでチャンスができた」

 

「ここを大切にしたいですね」

 

試合の合間に意識を統一して臨む。

 

「じゃあサーブいくよ」

 

そしてここに来てサーブは葉山であるこの中で1番力のある葉山のサーブは俺たちのサーブに比べて少しとりにくいようでチャンスボールに繋がりやすい。

 

そしてここでもRoseliaはうまく返すことができずに俺たちのチャンスボールになる。

 

「比企谷頼む!」

 

「おう」

 

このボールを決めてみせる!

と見せかけて......軽く上げる感じで.....

 

「あっ!」

 

俺が打ち込んでくると思ったのだろうあこは俺があえて浮かせタイミングをずらしたボールを拾うことができなかったようだ。

これで次に俺たちが点を入れれば勝利だ。

 

「たまにはいい働きをするわね」

 

「たまにはとか言うな、事実でも傷つくだろうが」

 

「事実なのは否定しないんだ.....」

 

しかし、状況はかなり厳しい。

俺たちのチームの体力はもうみんなそれほど残っておらず葉山以外は息が切れ始めている。

ここで決めなければ間違いなくその後押し切られてしまうだろう。

つまり次のポイントが勝負を決めることとなる。

 

「それじゃあいっくよ〜!」

 

由比ヶ浜がサーブを相手のコートにしっかりと入れる。

当然のようにRoseliaチームはそのボールを繋げこちらへと返してくる。

そのまま両チーム決まらない時間が再び続いた。

 

「はぁ!」

 

気合の掛け声とともに湊がスパイクを打ってくる。

くそっ間に合わないか......

いや、こんなところで終われるか!

勝つんだ!

 

その一心の思いで俺はボールに飛びついた。

ボールが地面に落ちる寸前、俺の手はボールに届きボールが上へと上がる。

 

「決めてください!」

 

「「任せてちょうだい!(任せろ!)」」

 

雪ノ下と葉山わがチームのエース2人が同時にジャンプそして.....

 

2人が同時にボールに触れそのボールがとてつもないスピードでビーチへと突き刺さる。

 

「.....私たちの負けね」

 

その湊の宣言を聞き俺は勝利したことを理解した。

 

「やったね!ゆきのん!」

 

「ええ、辛くも勝利といったところね」

 

「でもやってやりましたね!」

 

女子3人も存分に勝利を喜んでいるようだ。

 

「やったな比企谷」

 

「ああ、たまにはこんなのもいいかもな」

 

そういい俺たちは拳を合わせた。

 

「お兄ちゃん全勝おめでとう!」

 

「すーっごいドキドキしました!」

 

気がつけば小町や戸山たちも集まり口々に今の勝負を称賛している。

 

そんな中俺は1人冷静さを取り戻しこう思った。

 

「なんでこんなスポ根してんだ、俺?」

 

どうやら夏の魔法とか言うやつに俺も浮かれてしまったようである。

たまには俺がそうなるのも間違ってはいないだろう。

ともかく今は勝負に勝ったことを喜ぼう、そうたまには素直に思うのだった.....

 

*****

 

それからも俺たちは再び海で泳ぎに行く強者もいればその後は日陰でのんびりと過ごす人もいたりと各々海を存分に満喫して気づけば帰宅の時間となり再び電車に乗り込んだ。

流石にみんな疲れたのか言葉は少なくそれぞれが思い出にふけったり居眠りしたりしている。

俺も今日1日のことを思い出していた。

 

最初は別に乗り気だった訳じゃなかったがなんだかんだ楽しめたな.......

それも.....きっとあいつらがいたからなんだと思う。

やっぱあいつらともっと一緒にいたい。

そんな気持ちが思い出とともに湧き上がってくるのを感じた。

気づけば駅につき、その頃には俺の心の中に一つの覚悟が生まれていた。

駅で解散となったのだが俺は雪ノ下たち3人に声をかける。

 

「少し話がしたいんだけど、今からいいか?」

 

そう言うと雪ノ下たちは俺の言わんとすることを察するような顔をしてこう言う。

 

「とりあえず今日はもう時間も遅いわ、だから明日にしましょう。きっとそっちの方がお互いにとっていいと思うわ」

 

「そうだね、あたしも少し時間が欲しいかも」

 

「私もです」

 

「そうか......それじゃあ明日、どこに行けばいい」

 

どこを指定するのかなんてもう察しがついていたが一応聞いておく。

 

「明日のこの時間に私たちがスタジオを予約してあるの、そこに来てもらえるかしら」

 

予想通りspaceか。

そこで俺は今まで言えなかったことを.....伝えてまた始めてみせる

俺たちの関係が終わったその場所で俺の....俺たちの、バンドライフを。




今回はここまでになります。
次回ついに八幡が行動を起こします。
もう展開の予想もついてることと思いますが良ければ読んでいただけると幸いです。

そして申し訳ないのですがおそらく12月の中旬ごろまで予定が忙しく投稿ができないと思います。
なので気長に待っていただけると幸いです。

それでは次回予告行ってみましょう!

「りんりん!海楽しかったね!」

「.....そうだね.....他のバンドの皆がいたのには.....びっくりしたけど」

「そうだよね!八幡さんたちと遊べて嬉しかったよ!そういえば八幡さん駅に着いたときになんか真剣な表情だったけど何かあったのかな?」

「.....きっと.....八幡さんは進もうとしてるんだよ」

「進む?どこに?」

「.....きっと、すぐにわかるよ」

「それなら楽しみにしておくね!」

「.....じゃああこちゃん.....頼まれた予告をお願い」

「うん!次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『ついに比企谷八幡は.....』です!お楽しみに!」

「ちゃんと.....言えたね」


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第40話

少し予定に余裕があったので思ってたより全然早く投稿できてよかったです。

リゼロコラボでりんりんが当たった喜びで舞い上がっています。
皆さんはどうでしたか?


「いやー楽しかったね〜、海」

 

雪ノ下たちと話して小町より少し遅れて家に帰った俺は現在小町が用意してくれた(だいぶ手抜きだが)夕飯を食べている。

 

「ああ、でもまさか戸山とか湊とかに会うとは思わなかったわ」

 

「本当にびっくりしたよね〜。でも楽しかったからOKでしょ!」

 

「まぁな、でも久々にあんな運動したからあしたは筋肉痛確定だな.....」

 

「まったくもうこれだから引きこもりのごみぃちゃんは.....」

 

「まぁ前の方が体力はあったかもな」

 

バンドをやってるときには体力つけようと多少は運動したからな。

ちなみに雪ノ下の指示だ、断じて自分からやろうとしたわけではない。

いやーなんか俺だけメニューが3倍だったなー。

それまで運動などほとんどしてこなかったため中学入学当初俺の体力は普通にその辺の女子と同じかそれ以下だったためだ。

 

「どしたのお兄ちゃん?なんか遠い目しちゃってるけど?」

 

「いや、ちょっと思い出したくないことを思い出しただけだ.....」

 

もしまたあいつらとバンドやるならまた体力づくりさせられるのかなぁ.....

そう考えるととてつもなく憂鬱だな.....

 

「どうせお兄ちゃんのことだからロクなことじゃないんだろうけどさ、それも本当に嫌だったの?」

 

「小町、お前いつの間に人の心を読めるようになったんだ?」

 

「そんなんじゃないよ、ただお兄ちゃんって昔のことっていうか雪乃さんたちのことを考えてる時っていっつも同じ表情するんだよ」

 

まじか。

さすが我が妹、俺のことをよくわかっていらっしゃるようで頭が本当に上がらない限りだ。

実際今思えばあのキツかった体力づくりだってあいつらがいたから乗り切れたんだろうし本気で嫌だったなんてことはないのだろう。

 

「ほら、またしてる」

 

「え?まじ?」

 

「うん、普段お兄ちゃんの笑い顔なんてキモすぎて見てられないけどさ.....」

 

ナチュラルに傷つく言葉を使うのやめて?

そういう言葉は使っちゃいけないってお兄ちゃん教えたはずだよ?

 

「その笑顔だけは、好きだよ」

 

「......」

 

「どうしたのお兄ちゃん?もしかして照れちゃった?」

 

「いや、そんなこと言われるとは思わなかったから面食らっただけだ」

 

実際照れてもいるんだけどな。

 

「ふっふっふっー隠さなくてもいいのに〜」

 

いつからだっけ?俺と小町のパワーバランス崩れたの?

 

「そういうお前もなんか増えたよな、笑ってること」

 

「え?そう?」

 

「なんていうか、前よりさらに楽しそうにしてる」

 

「それもきっと、バンドのおかげだよ」

 

「そう考えると偉大だな、バンドって」

 

「うん、だからさ.....お兄ちゃんもまたやろう?」

 

「ああ、あと少しなんだ。もう一度あの輝きを掴むまでは」

 

普段ならこんなこと言った時点でキモいとか言われて俺のメンタルが死んでただろうが、こういうときに茶化してくるやつではない。

本当に俺にはもったいない妹だな.....

 

「じゃあそれまでにお兄ちゃんと一緒にステージに立てるくらい一生懸命練習しておくね」

 

「おう、楽しみにしてる」

 

今や俺のバンド復帰は俺だけの望みじゃなくなった。

明日、必ず雪ノ下たちに伝えよう俺の、俺たちの思いを。

 

*****

 

駅で比企谷君と別れて家に帰ってきてから私は由比ヶ浜さん、一色さんと電話で話していた。

 

「.....どうしてゆきのん駅でヒッキーと話そうとしなかったの?」

 

「といっても私たちだって賛成したんだしそれを聞いても仕方なくない?」

 

「それはそうだけどさ.....あたしたちの中で考えが違ったらって思ったら少し不安になっちゃって.....」

 

由比ヶ浜さんの不安も痛いほどに分かる。

正直なところあの瞬間私は怯えてしまった。

 

「.....そうね、あの瞬間だと頭の中が整理できそうになかったから」

 

比企谷君がなんと言おうと、きっとまともに話せなかったと何度考えてもそう思ってしまう。

 

「.....正直私も同じ理由で賛成しました」

 

「確かにあたしもこんがらがっちゃったと思う....けどさ」

 

「けど?」

 

「それよりもあたしたちの思いが正しく伝わらなかったらやだなって.....」

 

「そうね、だから明日までみんなで考えましょう。私たちの気持ちが伝わる言葉を」

 

「そうですね」

 

「うん!あたしもいっぱい考える!」

 

「空回りしないように気をつけてね、由比ヶ浜さん」

 

「えーなにそれゆきのんひどい!」

 

「あと、無理して難しいことを言わないようにね」

 

「いろはちゃんまで〜!」

 

きっと、今不安に感じているのは私だけではないと思うのだけれど全員がそれを出してしまわないように振る舞っている。

 

明日、どんな結末になるのかそれを考えると居ても立っても居られない気持ちになるけれど3人ならきっとどんなことでも受け入れられる気がした。

 

*****

 

そして翌日遂に俺たちにとっての運命の1日となるだろう日の朝が来た。

現在の時間は午前8時30分。

普段休みの日に俺がこんな早くに起きることはないのだが(日曜を除く)なんか今日は寝てる気にならないのだ。

 

「いやーこんな感じになったのなんていつ以来だかな」

 

思わず呟いてしまうほど久々なのは確かだった。

ライブの時にはほぼ毎回こんな感じだったけどな......

 

「あとの時間なにしてるか」

 

それでも時間は流れてといってもまだ1時間程度だが。

結局本読んでいたが約束の時間まではまだかなりあるがもうほとんど片付いている課題をする気分でもないし。

 

「おーい!おにい.....ちゃんがもう....起きてる?」

 

考えていたところに小町が相変わらずノックもせずに開けて入ってくる。

 

「そんな意外みたいに言わないでくれますかね」

 

「だって意外だし、だって普段10時までは絶対起きてこないじゃん」

 

「ばっかお前日曜だけはちゃんと早起きしてるだろ」

 

「いい加減日曜の朝にアニメ見るためだけに早起きしないでほしいんだけど.....」

 

「これは昔からの日課だからな、今更変えられるわけないだろ」

 

だってあの時間のために毎週学校とかに耐えてるんだから。

 

「もっと違う楽しみ見つければいいのに.....」

 

「で、俺になんの用だ?」

 

「あ、そうそう小町も今から出かけてくるから留守番よろしくね」

 

「.....お前受験生なんだから程々にな」

 

「今日は勉強会だからだいじょーぶ!戸塚さんたちが教えてくれるって言ったから!」

 

「お前らも仲良いなー」

 

「そりゃあね」

 

まったくいい顔してるよほんと。

 

「.....しっかり教えてもらってこいよ」

 

材木座はともかく川崎とか戸塚は真面目だからしっかり教えてもらえるだろう。

 

「うん!まぁ2人に対して高校生3人なんて贅沢な話だしね!」

 

「ん?小町以外にも誰かいるのか?」

 

「うん、大志君もいるよ」

 

「おいこら、誰だそいつはお兄ちゃん許しませんよ?」

 

「沙希さんの弟だよ.....前あってるじゃん」

 

「ああ、あいつか確かに人畜無害そうだがそれでもダメだ」

 

「あーはいはいじゃあ行ってくるね〜」

 

「無視はひどくない?」

 

「お兄ちゃんがいつまでも続きそうだからだよ、あとお兄ちゃんも頑張んなよ」

 

「言われなくてもだ」

 

別に昨日のことを話したわけでもない。

それでも小町はわかってしまうんだな。

そんなことを考えると柄でもないが嬉しく思ってしまう。

 

「それじゃあ鍵はしっかり閉めていってね!」

 

「子供じゃないんだぞ.....」

 

さて、1人で特にやることもない状況も変わらないしそうだな.....

 

「とりあえず家にいてもすることないし.....商店街で時間を潰すか」

 

*****

 

とりあえず商店街に来たのはいいのだが別段やることないんだよな。

目的もないしこれじゃ家にいるのとほとんど変わらない。

 

「あれ?八幡先輩?」

 

「ああ、美竹か」

 

「なにしてるんですか?」

 

「いや、まぁ暇だったからうろうろしてるだけだ」

 

「そうですか」

 

「お前はなんか用でもあるのか?」

 

「これからモカたちと勉強です」

 

「あー上原あたりが溜め込みそうだな」

 

「本当に毎年手伝わされるこっちの身にもなってほしいですよ」

 

「毎年溜め込むのかよ.....」

 

なんとなくいろんなやつと遊びに行った結果最後にその分泣きを見るタイプと見た。

 

「だから普段からちょくちょくみんなで勉強しないと」

 

「なるほど、それなら今年は大丈夫なんじゃないか?」

 

「......」

 

なにその苦笑い.....

 

「2人してさっきからひどいよ〜!」

 

「うおっ!いつからいたお前!?」

 

「あー上原あたりが....からです!」

 

ほとんど最初からじゃねーか。

 

「でもほんとのことじゃん」

 

「そうだけど〜.....」

 

「あはは!やっぱみんな同じことを言うな」

 

気づけばなんか全員アフグロ揃ってるんだけど。

 

「まぁひーちゃんが最後必死に課題やってるところ見てるのも面白いけどねー」

 

「ちょっとモカ〜!」

 

「お、落ち着いてひまりちゃん」

 

相変わらずの雰囲気だな。

さすが子供の頃からの幼なじみというだけある。

 

「なんかお前ら喧嘩とかしなさそうだよな」

 

「まさか、喧嘩ばっかりですよ」

 

え?美竹の言葉に割と驚いてしまった。

 

「たしかにちゃくちょくだな」

 

「喧嘩してるのはだいたい蘭と巴じゃん!」

 

「確かに〜」

 

「まぁそこは確かに.....」

 

「否定できない.....」

 

本当に喧嘩なんてすることあるのか?

どっちも思いやり強いしそんなことにはならなそうなもんだけど。

 

「ついこないだだって喧嘩してたじゃん!」

 

「だってあれは蘭がなにも言わないから.....」

 

「言い訳無用!」

 

「本当にひーちゃんママみたい〜」

 

「確かにいつもひまりちゃんがなだめてるよね」

 

「つぐまでそんなこと言わないで〜!」

 

「見ての通りだけどあたしたちだって喧嘩くらいしますよ」

 

「でも、その度にもっと仲が深まってる気がするよな!」

 

「確かに今まですれ違ったりしてきたけど最後には必ず仲直りできるって信じてますから」

 

「だから、私たちって感じだよね!」

 

「ひーちゃんたまにはいいこと言うね〜」

 

「たまにはは余計だって〜!」

 

なんか羨ましいな、そんなふうに言える人がいるっていうのは。

現に今も楽しそうにしてるがきっとこれからもこいつらは喧嘩しながらだっていつだって5人一緒にいるんだろな。

 

「そうだ!八幡先輩私たちに勉強教えてくれませんか?」

 

「え?」

 

「無理にとは言わないですけど.....」

 

まぁ別に暇だからいいんだけど。

 

「別にいいぞ」

 

「そういえば八幡先輩って勉強できるんですか?」

 

「数学以外ならそこそこだ」

 

「えー私数学も聞きたかったのに.....」

 

「あれは人間のやることじゃない」

 

「少し分かるような気が.....」

 

「そう言ってひまり毎年数学が最後まで残ってるじゃん」

 

「それは言わないで.....」

 

「それじゃあ数学はモカちゃんが教えてあげよー」

 

「モカ神様〜」

 

「ふっふーパンを献上するのだ〜」

 

「それじゃあそろそろ行こうぜ!」

 

「それじゃあつぐの家へゴー!」

 

こうして俺は12時ごろまで勉強を5人に教えた、といってもそこまで大したことはしてないのだが。

そこで知ったが青葉はかなり頭がいいらしく普通に俺よりも教えるのもうまかった。

何はともあれ結構いい感じに時間をつぶせてよかった。

あとは昼を食べてspaceに行けばちょうどいいくらいだろうか。

 

「あ!おーい八幡君!」

 

なんか知り合いに今日よく会うなぁ。

 

「なんだよ、彩?」

 

「ううん、用はないんだけど見かけたから話しかけちゃった」

 

「いや、それは構わないんだがバイトに行くのか?」

 

「ううん、今終わったところだよ」

 

「そうか、お前も芸能活動しながらバイトもしてるなんて大変だよな」

 

「それも、自分がやりたいことだもん。頑張るのは当たり前だよ!」

 

「お前を見てると自分が何にもしてないふうに思っちまうな」

 

まぁ実際なにもしてないんだけど.....

 

「そんなことないよ!私は八幡君にあってからもういっぱい助けてもらっちゃってるし」

 

「いや、それだって成り行きだし」

 

「それでも私は嬉しかったから.....」

 

なにも考えてなかったけどきっと時間が近づいてきて少し暗い気持ちになっている自分に今更ながら気づく。

ただそれを彩は晴らしてくれた。

 

「いや、なんつのそういうこと言われたことなかったし.....嬉しかったサンキューな」

 

普段言い慣れていないお礼は彩へと伝わっただろうか。

 

「え?あのえっとこっちこそありがとうね....?」

 

「なんでお礼を言われたことにお礼を言うんだよ....」

 

少し苦笑いしながらになってしまったが少し胸にあった不安がなくなっていくのを感じた。

 

「え?えっとだって.....なんでだろう?」

 

「お前に分からなくて俺に分かるか」

 

「それもそうだね....はぁーまたトチっちゃったなー」

 

「いいんじゃないか、もうお前の名物みたいなところあるし」

 

「そんなこと言わないでよ〜」

 

といっても本当に面白いのでそのままであることをこっそり祈っておくか。

 

「なんかお前と話せてよかったわ」

 

あれ?なんか俺相当キモいこといってないか?

 

「.....わ、わたしこそ話せてよかったっておもっちぇる」

 

「噛んだな」

 

「ううううう、と、とにかくまたね!」

 

最後の最後まで彩は彩だったな。

でもあいつになんだかんだいつだって俺は救われてるんだよな。

あいつほどアイドルって感じのやつはきっとこの先も見ないだろうな。

さて話してたら昼食食べる時間は無くなったけどまぁいいか。

 

こうして思ったより充実した時間を過ごせた俺は遂にspaceへと歩きだすのだった.....

 

*****

 

「いよいよね」

 

「ええ、私たちの気持ちをきちんと伝えましょう」

 

「そうだね!もう一度みんなで.....」

 

その先を由比ヶ浜さんがなぜ言わなかったのかはきっと言葉にしなくても分かると思ったのだろう。

 

「当然よ、そのために今まで必死に練習してきたのだから」

 

「そうですね!きっと大丈夫ですよね!」

 

「ええ」

 

それでもごめんなさい、2人とも私はあなたたちにも全てを話していないの。

私はあの時本気で.....

だから、私は彼と共に謝らなければならない。

だから、私は.....まちがっていても彼の話を全て聞こうと思う、そして自分のことも.....全て話そうと

私が1日待ったのは心の準備の問題、ただし受け入れるだけでなく嫌われるかもしれないという準備も兼ね泣いたものだけれど。

 

「今日で、終わらせましょう」

 

たとえどんな結末だってきっと受け入れられる。

自分に再びそう言い聞かせながら私は彼が来るのを待っていた.....

 




今回は若干短いですが次の話とつながると長くなり過ぎそうなので一度ここで切りますね。

よければ感想、評価などしていってくれると励みになりますので残していってくださると光栄です。



それでは最後に次回予告いってみましょう。

「いや〜八幡先輩意外に教え上手だったね〜」

「モカ、意外は失礼じゃない?」

「特に国語なんてモカちゃんに迫るものがあったね〜」

「そりゃ先輩なんだし」

「機会があったらまた教えてもらいたいね〜」

「まぁそれはそうだけど、それじゃあモカ時間もあれだから予告しちゃうよ。次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『たとえまちがっていても比企谷八幡は進む』です」

「お楽しみに〜」


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第41話

予告していたよりも更新遅れてしまいすいません.....
今回で遂に今まだ書いてきた八幡の悩みの結末が書けました。

年末年始のカバー曲が発表されてだいぶテンション上がりました。
ただしスターは20連分しかないのでガチャの方は不安です.....


「ちょうどいいくらいだな」

 

彩と別れてからspaceに向かった俺は約束の時間の5分ほど前にspaceの前に着いた。

歩いていて少し不安な気持ちこそしたがそれ以上に何かに背中を押されてるかのように感じた。

 

「.....来たのね、比企谷君」

 

「わざわざ待ってたのか?」

 

「いえ、私も外の空気を吸おうを思っただけよ」

 

こいつらだって多少思うところはあるんだろうな、普段の雪ノ下とは少し違った様子を見てふとそんなことを思う。

最初は冷血で人間離れしているように思ったんだけどな......

やっぱこいつも年相応なところもあるんだよな。

 

「何か今失礼なことを考えたでしょう?」

 

「そんなことないぞ、うんマジで」

 

小町と言い俺ってそんな思ってること顔に出るの?

それとも女の子には男の心が読めるスキルがあらかじめ備わっているの?

 

「.....ともかく行きましょう、2人も待ってるわ」

 

疑わしげな目はそのままだが雪ノ下は入り口に向け歩き出す。

RPGのように俺が1人入り口の前に残される。

ゲームならここからなにをしてもいつまででもあの3人はここにいるのだろう。

それならきっと俺は3日はスタジオへと向かわなかったかもしれないな、なんて思いもしたがそんなことはしないとすぐに自分の中で否定できたのは一つ成長かもな。

 

「.....よし」

 

最後にもう一度だけ深呼吸をして覚悟を決めて俺はspaceの入り口へと向かう。

 

「ハチ」

 

入った瞬間に聞き覚えがありすぎるほどに聞いた声がする。

 

「なんだよ、ババァ」

 

「決めたのかい」

 

「まぁな」

 

この人とも俺はもうかなり長い付き合いになる。

不本意なことだがこの人も分かってしまうらしい。

 

「どうなろうと、やりきることだね」

 

「ああ、もちろんだ」

 

そして俺にも分かる、この人は俺を応援してくれているのだと。

俺が言えることではないのだが素直じゃねーな。

 

「じゃあ行ってきな」

 

「行ってくる」

 

短い会話ではあったがそれだけでも気はかなり楽になった。

 

そしてついに俺はあいつらの待つスタジオの前に立つ。

扉に手をかける、もう躊躇いはない。

俺はそのまま扉を開けた。

 

「よぉ、ここで会うのは久しぶりだな」

 

そこには緊張した様子で待っている3人の姿があった。

 

「そうですね、なんだか懐かしいですね」

 

「うん、そうだね」

 

「あなたは毎回最後に来たものね」

 

「お前らが早すぎるんだよ、俺は5分前行動してたっての」

 

「その割に遅刻回数が多かったのはなぜかしら?」

 

「それだっていろいろな理由があってだな.....」

 

会話をするうちに3人の表情も柔らかくなってきた。

かつてのような光景に自分がバンドを抜けたという事実さえも忘れてしまいそうになる。

 

「大体の理由は寝坊じゃなかったですかー」

 

「そんなことは覚えてないな」

 

「都合の悪いことだけ忘れたフリ!?」

 

ああ、そうだ。

俺は、俺はこんな日の満ちる部屋のような、そんな暖かさを持つこんなやりとりを.....心の底から気に入っていたんだ。

そこでなら、何も偽らないで済む"本物の自分"でいられる気がしたんだ。

それは今も、変わらない。

だから、こんなにも求めてしまう。

 

「なぁ、雪ノ下、由比浜、一色」

 

それはあまりに不自然な切り出しだったことだろう。

俺自身気づけば口から言葉が出ていた。

 

「なにかしら?」

 

「なに?」

 

「なんですか?」

 

俺の呼びかけに3人が同時に答える。

 

「やっぱ、このバンドに戻りたい。改めてそう思った」

 

本当に思い返せばもっと良い言い方があったろうに。

 

「今更すぎるし身勝手なのも自覚してる、だけど俺を、俺をもう一度このバンドに入れて欲しい.....」

 

俺は数ヶ月ほど前から待たせていた言葉を伝える。

あの時本物を見つけると言ってずっと待たせてしまった、もっと前からこの気持ちを自覚していたにも関わらずに。

 

「お前たちと.....もう一度一緒に演奏させてくれ」

 

「そんなの.....もちろんだよ!あたしだって....またヒッキーと演奏したい....」

 

「私も.....私も先輩.....八幡と演奏したい.....」

 

俺の願いを聞き入れてくれる2人、その目には涙が浮かんでいる。

この2人は俺がバンドを抜けてからも必死で声をかけてきてくれた。

最初こそ冷たい対応をしていたがいつまでも笑顔で話しかけてくる2人を見ていたら悩んでるのもバカみたいになったっけな。

 

「ありがとう.....2人とも」

 

離れていく俺をこのバンドに戻れるところでつなぎとめておいてくれたこと、こんな俺を許してくれたこと、感謝しても足りないそんな気分だった。

 

しかし、そこで俺は気づく先程から黙り込んでしまっている雪ノ下がさっきとは打って変わってつらそうな表情をしていることに。

 

「.....ねぇ、比企谷君」

 

「どうした、雪ノ下?」

 

「私は、私はまだあなたをこのバンドに戻ってもらうわけにはいかないの」

 

「.....そうか、そりゃそうだよな」

 

「え?どうしてゆきのん!?ずっと戻ってきて欲しいって.....そう言ってたじゃん!」

 

「そうですよ!私たちにも嘘をついていたんですか!」

 

由比ヶ浜と一色は憤りの感情さえもこもった声で雪ノ下に問いかける。

 

「今言っても信じてもらえないかもしれないのだけれどその言葉は嘘ではないし今もそうも思っているわ」

 

「それならなんで......」

 

「.....どうしてなのか教えてくれないか、雪ノ下」

 

俺としてもそう簡単に拒否されるわけにはいけない。

それに、さっきの表情そして雪ノ下は"まだ"と言ったんだ。

 

「....比企谷君、私はあなたとしっかりあの時のことを全て話し合ってからあなたを迎えたいの」

 

「そうだよな、あの時はなにも答えなかったもんな.....」

 

「由比ヶ浜さんと一色さんはどう思うかしら?」

 

「....あたしは、あたしはヒッキーの考えてたことを知りたい」

 

「私も、あの時の返事聞きたいです」

 

俺は最後の最後に引き止めてくれようとしていたこいつらの声を無視した。

自分がなにを思ってるかを話そうとさえしなかった。

さらに、こいつらがなにを思っていたかも聞こうとしなかった。

 

その罪を清算しなければ本当の意味で俺たちの溝が埋まったとは言えない。

 

「.....それじゃあ俺がなにを思ってたのか話す、その後にもう一度返事を聞かせてくれ」

 

「ええ」

 

そこで俺は一度深呼吸をする、あの時の自分を思い出す。

そうだ、そうだな。

 

「俺はあの時、スカウトを受けた時に俺1人だったことに苛立ってた、みんなで一生懸命練習してきている中で俺1人だけなんでおかしいだろって......でも、でもスカウトを受けたことを嬉しく思う俺も少なからずいたんだ。今思えば俺は自惚れたんだと思う.....そこらへんにいるような人じゃ無く、もっと上の人たちに認められたことを」

 

言っていて自覚するような部分も多いが俺は確かにスカウトを嬉しく思ってた。

 

「それでも、お前たちとのバンドよりも魅力的な話だとは1ミリも思わなかった、それは信じて欲しい」

 

「それなら、それならなぜ私たちになにも言わなかったの....答えて比企谷君」

 

「.....抜ける気もないから話す必要もないって思ってた」

 

「最後に私たちの質問に答えずに去って行ったのはなぜ?」

 

雪ノ下は聞きたいことが溢れてくるのか質問を次から次へと問いかけてくる。

 

「お前たちなら俺のことをわかってくれているだろう、そうも思ってたのに.....予想外のことを言われて.....それで.....」

 

俺の言葉がそこで途絶える。

俺はこのままだとなにを言うんだ、この言葉を言ってもいいのか?

違う、言わなきゃダメなんだろ、また同じ間違いをするな。

進むんだ.......前に!

 

その時なぜかこの4月からの思い出が頭をよぎった、

新しい出会い、新しい経験その全てがこの時のためにあったかのように、俺の背中を押した。

 

「お前たちと本当に同じことを考えてるのかわからなくなった、お前たちがなにを思って、感じているのかなにも、全部わからなくなった。そうしたら今までやってたことに意味があったのかってそう思った。俺が今までやってきたことは"本物"だったのかそう思った」

 

うまく言えたかはわからない、ただ伝わってることを祈るだけだ。

 

「そう.....ありがとう比企谷君、全て正直に話してくれて」

 

「あの!ヒッキー.....まだあたしもうまく言えないんだけどあたしはあの時間は、この4人で過ごした時間に偽物なんてなかった.....そう思う」

 

「私は、確かに先輩の全てをわかってなかったのかもしれません。でもだから理解したいってずっと思ってました」

 

「.....お前ら」

 

2人はそんなことを感じていたのか。

なんだ......

 

「1番お前たちのことをわかってなかったのは.....俺じゃねぇか」

 

3人に聞こえないような小声で俺は呟く。

やはり、俺が歩んでたあの時間を俺は間違え続けてたわけだ。

 

「比企谷君、私もあなたに話さなければいけないことがあるの」

 

またもや静かにしてた雪ノ下が再び口を開く。

 

「あなただけに話させて私が隠してたことを話さないのは不公平だもの、だから、私のためにも聞いてもらえるかしら?」

 

「.....それがお前がそんな顔をする理由なのか?」

 

そう俺が尋ねると

 

「あなたに見ぬかれるなんて、私は今ひどい顔をしているのね」

 

いくら間違えてたと自覚したばかりの俺でもひとつだけ、自信を持って言えることがある。

 

「お前たちとの時間は俺をそれくらい気づける男にしたぞ」

 

こいつらが悩んでる時には大抵俺はそれに気づけた。

それだけは俺が間違いなく培ったものだろう。

 

「.....そうだっだのね、確かにあなたは最初は私の悩みなんてなにも気づかなかったもの」

 

え?どう言うことだ?

雪ノ下は.....俺と出会った頃から何かに悩んでた....ってことか?

 

「やっぱり、気付いていなかったのね」

 

「ゆきのん....」

 

「由比ヶ浜さんや一色さんは気づかなくてもおかしくないわ」

 

俺は気づけるかもしれなかったってことなのか?

 

「それに、これは誰が悪いとかそう言う話でもないの.....いいえ、私だけは悪者かもしれないわね」

 

「話してくれ、どんな内容でも受け止める」

 

それくらいの覚悟を決めてきてるのだ。

 

「比企谷君は今の私のギターをどう思うかしら?」

 

「練習をしっかりしてるのがよくわかる、いい演奏だな」

 

「じゃあ、あなたと私がギターを人前で弾いて聞いていた人にどっちの演奏がよかったか聞いたならどうなると思う?」

 

少しだけ考えるがわからない、そりゃ負けたくはないと思うけどな。

 

「恐らく9割、いえ全員があなたを選ぶと思うわ」

 

「そんな.....」

 

「そんなことあるのよ、あなたは今考えてる間に自分が負けるところを想像したかしら?」

 

全くしていなかった俺は反論することができない。

 

「普通の人なら大抵、一瞬は自分にとって悪い結果を想像するものなのにあなたはそんな様子を見せたことすらなかった」

 

なにが言いたいんだ、雪ノ下。

俺はまだなにが言いたいのかわからない。

 

「私はね、比企谷君あなたにずっと嫉妬していたの初めてギターを一緒に弾いた瞬間から」

 

驚いてなにも声が出なかった。

 

*****

 

私が本心を吐露した瞬間比企谷君はまるで時間が止まってしまったかのようになってしまった。

由比ヶ浜さんと一色さんも何も言わずにこちらを見ている。

 

言い訳をするわけではないのだけれど私が彼に嫉妬するのには十分すぎるほどの理由があったと思う。

本当は自分で言うものではないのだと思うのだけれど私は全てにおいて周りの人間より秀でていた。

勉強は基本的に1番をとっていたしスポーツも3日もすれば教えてくれた先生に勝利できた。

そうして育ってきた私はおそらく相当歪んだ思考をしていたことでしょうね。

 

ただ、そんな誰にも負けずに生きてきた私のプライドをボロボロにしたのは間違いなく今私の前にいる少年だった。

最初に見た時には目は腐ってるしとるに足らない存在だと思っていたのだけれど彼はそんな私のイメージを粉々に打ち砕いた。

ギターを弾く彼はとても輝いていてつい見惚れてしまった。

その後には私のギターの音などもはや比べ物にならなかった。

その瞬間、私の胸に生まれて初めての感情が宿った。

 

それから私はボーカルになってそれもまた彼に負けたことを認めてしまったようで芽生えだ思いを強めた。

それからもその想いは消えることはなかった。

彼が嫌いということはないのだけれど彼の演奏を聞くたびに少し胸がちくりと痛んだ。

 

さらに辛いことは彼が見かけによらずとても優しく自分の才能を誇らないどころか私の演奏を認めて褒めてくれた。

彼は本気でそう思っているが私にとってはその言葉を嬉しく思う反面そんなことないと自己否定の気持ちを刺激するものだった。

そんな彼の優しさは私のプライドをだんだんと無くしていったが最初につけられた傷だけは癒えることはなかった。

 

そして何より辛かったのは私が彼の優しさに惹かれ始めてしまったことでしょう。

彼に対する嫉妬心とその言葉にすると気恥ずかしい感情の間に私は彼に対してどう接すればいいかわからなくなっていってしまっていた。

 

その二つの感情をため込んだ結果私はあのとき彼に対して当たってしまった、つまりこのバンドから比企谷君が抜けた原因は私ということになるのでしょう。

 

これが私が隠していた罪、今日私はこの罪を3人に告白するつもりで来たのだけれど今更また3人に軽蔑されるのが.....怖い。

でも許されなくたっていい、私にそんなことを思う資格なんてないのだから。

 

「それは、本当なのか雪ノ下?」

 

私が考えをまとめている時に比企谷君の方もフリーズが解除されたようだ。

 

「ええ、そのことで私も.....あなたに、あなたたち3人に話したいことがあるの」

 

これが私の贖罪になるのかはわからないけれどもせめて正直に話そうと改めてそう決意して私は話し始めた。

 

*****

 

私の話を聞いた3人は呆けたような顔をしていた。

 

「雪ノ下.....」

 

そして比企谷君が口を開く私はその言葉に耳を傾けた。

 

*****

 

雪ノ下の話を聞いて俺は衝撃を受けた。

そして雪ノ下にかけたい言葉が次から次へと溢れてきた。

 

「雪ノ下.....悪かった」

 

「え?」

 

俺の言葉を身構えてた雪ノ下が珍しく困惑の表情を浮かべる。

 

「何も、何も気づかなかった」

 

雪ノ下は話しの終わりを自分が悪いとして締めくくったが俺の考えは違う。

 

「知らぬ間に俺がお前を傷つけてたなんて考えもしなかった」

 

「あなたは悪くないわ、私が勝手に嫉妬して.....勝手に傷ついてただけじゃない」

 

「それでも、それでも.....」

 

必死に言葉を探すがどう考えても雪ノ下を納得させるような言葉は出てこない。

 

「あのさ、2人とも」

 

俺と雪ノ下が黙り込んでしまった瞬間に由比ヶ浜が口を開く。

 

「あたしは、2人の言ってることが同じだなって思うよ」

 

「私も同じ意見です」

 

由比ヶ浜の発言に一色も賛同しているが俺には由比ヶ浜が言ってることがわからない。

 

「だってさ、2人とも自分が悪い自分が悪いって言い合ってるだけじゃん。そのままだとずっとそうしてるだけだよ?」

 

「そうですよ、私は.....今日誰が悪者なのかを決めるためにここにきたわけじゃないです」

 

「でも、仕方ないでしょう!そうしないと、そうしないと先に進まないのだから!」

 

雪ノ下が少し声を荒げる。

 

「たしかにそうかもしれないけど、いつまでもその話をしてても先に進めないじゃん!」

 

「2人とも全部話した今だからお互いに自分を許しましょうよ。私たちだってたまには、頼って欲しいです」

 

「2人ともずっと1人で背負っちゃうんだもん、あたしたちってそんなに信用されてないかな?」

 

「違う、お前たちに迷惑をかけたくないから.....」

 

「それに、こんなことを言えるわけないじゃない.....」

 

そんなことを急に言っても困らせてしまうだけだろう。

 

「これは2人ともあれだねぇ、いろはちゃん」

 

「そうですね、一度強く言っておいたほうがいいかもしれませんね」

 

「2人とも、バカだよ本当に」

 

唐突に罵倒された......

 

「そうですね、それも救いようがないくらい」

 

「......」

 

雪ノ下も突然のことに面食らったような表情を浮かべている。

 

「私たちは、なんなんですか?」

 

「同じバンドのメンバー.....かしら」

 

「あたしたちってどれくらいの時間を過ごしたっけ?」

 

「.....わからなくなるくらい長く、だな」

 

「それじゃあ、私たちの関係って浅いものですかね?」

 

「「いいや(いいえ)」」

 

「それなら、迷惑かけられるくらいなんの問題でもないじゃないですか」

 

「あたしたちだって2人にいっぱい迷惑をかけた。だからさ、ヒッキーたちが何を頼んできたって迷惑だなんて思わない」

 

「だから、お願いです。私たちのことをもう少し頼ってください。それに知ってますか?仲間から頼りにされないって案外辛いんですよ?」

 

「だからさ、もう1人で背負わないでよ。4人で、一緒に背負おう?」

 

「.....本当にいいのか?頼っても?」

 

「くどいですよ、当たり前じゃないですか」

 

「本当に大変なことを背負わせるかもしれないのよ?」

 

「どんとこいだよ!」

 

気づけば俺たち4人の目には涙が浮かび上がっていた。

それぞれが今まで秘めていた想いを打ち明けて、今ついに止まっていた俺たち4人の時間が動き始めようとしているのをきっと全員が感じていた。

 

「そのためにも、先輩、戻ってきてください」

 

「今度こそみんなで協力していこう?ゆきのんもさ、ほら」

 

そう言って2人は雪ノ下の背中を押す。

そして雪ノ下は俺の真正面に立つ。

 

「私も......私もあなたと.....このバンドでもう1度やり直したい......だから比企谷君、私を.....私たちの願いを受け入れてくれるかしら?」

 

あちらから頼まれることではない、本来は俺が頼み込むべきものだ。

それなのだから、答えは決まりきっていた。

 

「もちろん.....よろしく頼む」

 

その瞬間、俺たちは俺たちは新しい一歩を踏み出した......

 




長くなってしまいましたがこれで今回は終わりです。
しかし八幡たちの物語はまだまだ続きます。
この作品の中でこれは一つ目のゴールでありもう一つ思い浮かべているゴールに到達した時にこの作品は終わります。
これから先の話はもっと八幡をバンドリのキャラと絡ませたいと思ってますのでよければこれからも読んでください。

それでは最後に次回予告にいきましょう。
よければ感想、評価など残してくださるとモチベーション上がります。




「ここまで長かったわね」

「ああ、でもこれからようやく俺たちのバンドの再始動だな」

「そのためにもまずはspaceのラストライブのステージに立たないといけないわね」

「そのためにも練習しなきゃな」

「練習嫌いなあなたにしては珍しいわね」

「今は早く4人で練習したいような気分なだけだ」

「ふふ、あなたもかなり変わったわね。それでは次回予告をすまして練習に行きましょうか。次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『珍しく比企谷八幡は本気の努力をする』よ」

「絶倒にあのババァのオーデションに合格してやる!」


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第42話

八幡がバンドに戻ってきて最初の話、今回からパンドラキャラの出番も増えてきますよー

Afterglowのクリスマス復刻10連しましたけど爆死しました.....
出た人がとても羨ましいです。
お正月は何か当たるといいなぁ.....


「.....早く来すぎたかな」

 

現在時刻は8時30分ほど、スタジオの予約時間まで後30分ほどある。

久しぶりに4人で練習ということで遅刻だけはしないようにと思っていたのだがむしろだいぶ早く着いてしまった。

 

「あら?今日は早いのね、八幡?」

 

「まぁな」

 

そうしてると後ろから湊に話しかけられる。

Roseliaとはたまに自主練と時間が被ってて会うこともあったがこんな早くに会ったのは初めてのことだった。

 

「そういう湊こそ早くに来てるのか?」

 

「ええ、この場所での最後のライブに向けて全力を尽くすために」

 

流石、雪ノ下に対抗しうるストイックさだ。

.....俺には絶対に身に付かないな。

 

「.....そうか、頑張れよ」

 

「最後のライブまで、あなたがステージに立つところは見れないのね」

 

俺の言葉をまだ事情を知らない湊は誤解したらしい。

まぁ、まだ俺がバンドに戻ったことを知っているのは俺の関係者だと小町くらいしかいないしな。

 

「努力してみるがあのババァのオーデション結果次第だ」

 

俺たちがやりきれなかったことは一度たりともなかったけどな。

 

「え?でもあなたは.....」

 

「俺は、戻りたい古巣に戻れたんだよ」

 

なんだか分かりにくい表現を使ってしまったがそれでも湊には伝わったらしい。

 

「そうなの....またあのバンドで八幡が見られるのね」

 

「ああ、アブアルの演奏楽しみにしとけ」

 

「もちろんよ、私がどうしてあなたをスカウトしたかわかってるかしら?」

 

「いや、その俺のギターがお前の採点基準で合格をもらえたからじゃないのか?」

 

「ステージであなたが.....輝いていたからよ。今思えば、あれはあのバンドだからこそだったのね」

 

確かに湊にバンドを組まないかと誘われて一度一緒に音を合わせた時俺たちは揃って違和感を感じた、それは単に俺があいつら以外と演奏することに違和感を覚えた結果なのかもしれない。

 

「お前たちと同じステージに立てるように努力だけはしてみる」

 

「そう言っておきながらあなた、今不合格なんて全く考えてないって顔してるわよ」

 

「そう見えるか?」

 

実際その通りでもちろん死ぬ気での練習は必要になるが4人でならやり切れると思う。

 

「ええ」

 

こうやって俺なんかを待っててくれた人がいるんだなぁ......

そう思うとなんだか不思議な気分だ、こそばゆいというか......

 

「おはようございます湊さん、今日も早いですね」

 

「おはよう、紗夜」

 

「2日ぶりだな」

 

「あら、八幡さんもいたのですね」

 

さっきの湊と同じようにこの時間に俺がいることに少し驚いているらしい。

 

「それはそうよ、私たちにライバルができたのだもの」

 

「ライバル?」

 

突然の発言に紗夜は不思議そうにしている。

 

「勝手に人のバンドをライバル認定しないでくれますかね.....」

 

「あら?それを決めるのはあなたではないでしょう?」

 

「お前でもないだろ.....」

 

正直そんなの誰でもないと思うが.....

 

「えっとそれはつまり.....八幡さんが.....」

 

紗夜はこの流れだけで事の流れを察したらしい。

 

「まぁそういうことだ」

 

「.....よかったですね」

 

「サンキュー」

 

「わかったでしょう?私たちが頂点に立つためにもさらに練習をしなければいけないわ」

 

「そうですね、同じギターとして負けるわけにはいきません」

 

まぁ音楽に勝ち負けなんてものはないのだが感覚的に相手の方が上手いと思うこともある。

当然俺だってプロの演奏とかを聞けばそんな気分になることもある。

 

「おっ!友希那に紗夜、それに八幡もおはよー!」

 

「おはようございます」

 

「おはよう、リサ」

 

Roseliaはみんな集合時間の10分前には来るのか?

だとしたらこいつら優秀すぎるだろ。

修学旅行とかでもこいつら絶対送れないタイプのやつだな。

 

「おはようございます!!」

 

「おはようございます......」

 

タイミングよくあこと白金も集合してくる。

 

「まだ少し早いけどスタジオにはもう入れるかしら?」

 

「確認してみましょうか」

 

「2人ともいつにも増してやる気充分だね〜。なんかいいことでもあったの?」

 

「私たちに、と言うよりは八幡に.....かしら?」

 

「私たちにとってもいい刺激になるので良いことではありますね」

 

「えっと?つまりどういうこと?」

 

「八幡さん何があったんですか?」

 

事情をよく知らない今井とあこはよくわからないようだが白金はそれである程度事情を理解したようだ。

 

「しっかり.....話し合えたんですね」

 

「ああ、あの時のお前の言葉がきっかけだった....だからそのありがとな」

 

未だに人にお礼を言うのは照れてしまうのは単に言い慣れてないだけなのかみんなもそうなのかはわからないがきちんと感謝が伝わっていることを祈ることしかできない。

 

「いえ.....少しでも八幡さんの背中を押せたなら.....よかったです」

 

「ん?りんりんと八幡さんは何を話してるの?」

 

「いや、たいした話じゃないから気にするな」

 

なんとなくあの会話を人に知られるのは気恥ずかしいものがある。

 

「それで結局なにがあったの?」

 

その後俺は3回目となる説明をして改めて3人からも祝福の言葉をもらった。

 

「てことはこれからのライブで八幡さんとも同じステージに立てるってこと?」

 

「そうなるな」

 

「それって超かっこいい!」

 

あこのかっこいいの基準は正直よくわからないがそう思ってもらえるのはきっと感謝するべきことなのだろう。

 

「確かにそれじゃあアブアルに負けないように練習しなきゃだね〜」

 

今井も湊と紗夜と同じ結論にたどり着いたらしい。

 

「それじゃあ私たちはそろそろ練習を始めましょう」

 

「次は今度のライブで会えることを期待してるわ」

 

そう言ってRoseliaの面々は去っていった。

それにしてももう一つ今度のライブに出なければならない理由が増えたな。

 

「.....随分とRoseliaと仲がいいのね」

 

この声は.....雪ノ下には間違いないのだがなんだか声がやたらと冷えていると言うか.....はっきり言って怖い。

 

「いや、そりゃまぁなんというかその」

 

とりあえずこういう時には何も言わずにはぐらかすのが最適解だろう。

こういうときのはぐらかしのスキルはぼっちたら俺にとっては簡単なことだ。

 

「.....また今度まとめて聞かせてもらうわよ」

 

あれ?今回はすんなりと引いたな?

流石の雪ノ下も久々の練習前に俺を問い詰める気はないのか?

つかまとめてって言うほどのことでもないだろ。

 

「それより後の2人は?」

 

「いつも通りならあと少しで来るわね」

 

「そうか」

 

なんかこうやって練習の前後の時間を誰かと過ごすということ自体久々なことで新鮮にさえ思ってしまうのが俺がバンドを抜けていた期間の長さを表している。

 

「2人ともやっはろー!」

 

「待たせちゃいましたかね?」

 

「いいえ、私は今きたところでこの男は楽しそうにRoseliaと話してたわ」

 

「その情報今いる?」

 

「ふーん、ヒッキー珍しく早くに来てたんだね?」

 

「前の先輩なら考えれないことですね、Roseliaの人たちと待ち合わせでもしてたんですか?」

 

うーんなんかさっきと同じようにこいつらの声も若干いつもより低いぞ?

 

「そんなわけねーだろ」

 

とか言いながらもめっちゃ冷や汗かいてるんですけど、なんでかわからないけど体が震えてるんですけど......

 

「まぁ今は追求しないでおきましょう」

 

「そうだね、とりあえずスタジオに入ろっか」

 

「そうだな」

 

「先輩久しぶりの練習なんでしっかり音を合わせてくださいね?」

 

「善処する」

 

いいか、この世の中で善処するって言葉はめちゃくちゃ便利だから覚えておけよ。

ただし使いすぎると効果がなくなるから気を付けろ。

 

「それでは行きましょうか」

 

こうして俺は久しぶりにバンドとして練習をしたがやはり誰かと音を合わせるのはかなり久しぶりのことなので俺は相当にミスをした。

他の3人にも迷惑をかけまくった、ただそれすらも帰ってきたんだと実感する材料になるだけである。

そんな風に俺たちの練習の日々はあっという間に過ぎてついに今日はオーデションの日になった。

 

「まさか同じステージのオーデションを2度受けることになるとは思わなかったわね」

 

「本当ですよ、でももう一度受かればいいだけです」

 

「うん!短かったけどヒッキーともいっぱい音合わせたしね!」

 

「.....少し飲み物買ってくるわ」

 

「.....そう、わかったわ」

 

そういい一度外へと出る。

きっと3人にはバラバラなのであろうが俺は緊張しまくっている。

そりゃあ久しぶりのオーデションだ、しかも3人は1度受かっているのに俺のためにもう一度オーデションを受けるのだ。

俺がやり切らなかったらと、ここにきてそんな想像をしてしまう。

昨日まではそんなこと少しも考えなかったのにな。

 

「あ!八幡先輩!」

 

「お前も今日オーデションか?」

 

「はい!今回こそ受かってみせます!」

 

俺に話しかけてきたのは戸山だった。

普段市ヶ谷家の蔵で練習をしているポピパとはスタジオで会うことはないので海以来の再会だ。

 

「ここにいるってことは八幡先輩バンドまた始めたんですか!?」

 

こいつは緊張とは無関係そうな性格してるなぁ.....

 

「ああ、また....アブアルとしてな」

 

「おめでとうございます!それで雪乃先輩たちも会場にいるんですね!」

 

「ああ、もう会ったのか?」

 

「はい!ここにくる直前に会いました!」

 

てことは俺がスタジオを出た直後くらいか。

 

「今日はお互いやり切れるようがんばろうな」

 

「八幡先輩が.....素直に応援してくれてる.....?」

 

「お前は俺をなんだと思ってるんだよ.....」

 

全く、みんなして俺のことを誤解しすぎである。

俺はリア充以外のやつに対してはかなり寛容な心を持っているというのに。

しかし俺目線で言えば俺以外のやつなんて大抵リア充なのだが。

それじゃ寛容な心持ってても意味ないじゃん。

 

「えーと、ひねくれてる先輩?」

 

「素直に答えるな、もう2度と言ってやんねー」

 

「嘘嘘!冗談ですよ!ちゃんと優しいって知ってますから!」

 

この間雪ノ下たちが俺のことをこいつらに喋ったせいでこいつらも俺をいじり出してきて困ってるんだよな。

 

「たく、それじゃ俺はあいつら待たせてるからそろそろ行くわ」

 

「はい!お互い頑張りましょうね!」

 

「次はステージで会えるといいな」

 

「はい!」

 

そう言いながら戸山に背を向けながら俺は戸山と出会ったときのことを思い出した。

こいつと会ったのが俺が多少は変われたきっかけなんだよな.....

結果として俺は年下の女子に人生の転機を作ってもらったわけだ。

ダサい話だなぁ.....

でも、だからこそ俺はここに今立っているのだ。

感謝すべきなのだろう、あいつには。

 

「.....ありがとな」

 

最後に聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量でお礼を言う。

最近になって俺は人に礼を言うことが増えたと思う。

それだけ俺は人に助けてもらってるのだ。

ぼっちだと思ってた俺も.....人にずっと助けてもらってたのだ。

 

「遅かったわね.....またどこかで油を売ってたのかしら?」

 

「いや、ただ入り口で戸山と会っただけだ」

 

「そう言えば私たちと話した後に香澄ちゃんも外に出てましたね」

 

「香澄ちゃんたちは何回か落ちちゃってるんだけどあきらめないで受けてるんだって、一緒に合格したいねー」

 

「きっと彼女たちなら大丈夫よ」

 

「雪ノ下がそんなこと言うなんて.....」

 

「どういう意味かしら?」

 

相変わらず俺には当たりが強い.....

 

「それよりも今は自分たちのことに集中しましょう」

 

「ああ」

 

その後オーデションの順番を待ってる間はまるで永遠のように長く感じたが遂に俺たちの番が来た。

 

「それじゃあ練習通りに行くわよ!」

 

「はい!任せてください!」

 

「うん!頑張ろー!」

 

「....任せろ」

 

久しぶりの感覚に鼓動がどんどん早くなる。

しかし、先ほどのような緊張というよりは興奮に近い感情になっている。

 

「それじゃあ行くわよ!」

 

そのままオーデションは拍子抜けなほどスムーズに進行していった。

演奏が終わった瞬間に練習ともライブとも少し違った感覚に襲われる。

 

「.....あんたたち3人は聞くまでもないね」

 

そう言いババァ、元居オーナーは雪ノ下たちに目を向ける。

そっちの3人は合格のようだ。

てことは俺は....ダメだったのか?

 

「それじゃあハチ、あんたに幾つか質問するよ?」

 

「はい」

 

本来俺はこの人に敬語など使わないのだがこの場ではお互いに立場があるので敬語を使う。

 

「一つ目だ、あんたは今どんな気持ちで演奏してたんだい?」

 

「.....よく覚えてないです、ただ凄く楽しくて、ワクワクして興奮が止まらなかった」

 

「二つ目だ、あんたは今の自分の点数に何点をつける?」

 

「....40点くらいでしょうか、他の3人に対して俺だけ明らかに音がズレてます」

 

「最後だ、それでもやり切ったかい?」

 

「.....はい!」

 

それだけは間違いないことだと確信している。

 

「ふっ、やっぱりあんたも聞くまでもなかったね」

 

この人はただ確認をしたかっただけらしい。

全くいちいち不安にさせやがって.....

 

「合格だ」

 

「「「ありがとうございます」」」

 

オーナーの言葉に雪ノ下たち3人が頭を下げる。

 

「比企谷君?」

 

その中で1人だけ立ち尽くしてる俺に雪ノ下が視線を送ってくる。

 

「雪ノ下、先に行っててくれ」

 

「.....わかったわ」

 

そう言って雪ノ下は他の2人と共に部屋を出ていく。

 

「どうしたんだい、ハチ?」

 

「オーナー、俺はあんたにギターを教わったことといいその他にも色々とお世話になっていて言葉で尽くせるものではないけれど、一度しか言いませんのでよく聞いててください。ありがとうございました!」

 

俺にしてはかなりの大声を出した方だろう。

俺個人も意外なほどこのオーナーに感謝を伝えることは多かったらしい。

 

「なんだい藪から棒に、あんたがそんなことを言うと気色が悪いね」

 

そこまで言うことねぇだろうが、このくそババァが.....

久しぶりに殺意を覚えてるぞ.....

 

「そもそも私はあんたに見返りなんて求めてないんだ。その代わり、これからもずっと演奏をやりきることだね」

 

その言葉がこの人なりの精一杯の優しさなのだと気付くようになるまでにはかなりの時間がかかるが俺はそれがわかるに足る時間を過ごしている。

 

「最後のステージ楽しみにしててください」

 

オレは最後にそう言い残して部屋を後にした。

 

「あ!八幡先輩!どうでした結果は?」

 

そしてspaceの外に出るなり戸山たちが出待ちをしていた。

ちなみに雪ノ下たちは俺を待つことなく帰ってしまったらしい。

 

「....お前たちは?」

 

こいつらの表情を見る限り結果はわかり切っているのだが一応確認をする。

 

「私たちは....合格しました!」

 

「本当にミスばっかでやばいと思ったけどなー」

 

「うん、私もいっぱいミスしたし怖かったよ.....」

 

「でも、やり切ったって言える演奏だったよ」

そう振り返るのは市ヶ谷とりみ、山吹だがその顔は安堵に満ちている。

 

「それで八幡先輩たちはどうでした?」

 

そして花園は興味津々と言った様子で聞いてくる。

そうだな、普通に言うのもなんかつまらない気がするし.....

 

「.....」

 

俺はその前を無言で通り過ぎる。

 

「えっと.....その....」

 

突然の俺の行動に5人は戸惑っているようだ。

 

「また、ステージの上でな」

 

今思えば死にたくなるくらいカッコつけた言葉だ。

黒歴史認定第300号.....かどうかはなんも知らないがそれくらいあってもおかしくなさそうだなぁ.....

 

「はい!それまだまだ練習頑張りますね!」

 

その言葉にきっと満面の笑みで言っているであろう戸山を振り返ることもなく俺はその場を後にするのだった.....

 




なんとか年内にもう1話更新できてよかったです.....
次はついにspaceとお別れの時が来ます。
あと、現段階では確定してませんが現在オリキャラを登場させることを検討し始めてます。

感想評価などしていただけると励みになるのでお願いします。
それでは最後に次回予告行ってみましょう!



「なんで今回は相手がお前なんだよ.....」

「そんなこと言わないでくださいよ、八幡先輩!」

「はぁ.....お前といるといろいろ疲れるんだよ」

「ひどいっ!でもこの間雪乃先輩たちま八幡先輩といるといつも疲れるって言ってましたよ?」

「あいつら.....」

「でも確かにあんなこととかこんなことを八幡先輩がしてたなんて....」

「戸山、頼むからそれ以上何も喋るな。俺が死にたくなる」

「それは困りますよ!じゃあこの話はまた今度にして次回予告だけしますね!次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『ついに比企谷八幡は別れを告げる』です!お楽しみに!」

「はぁ....本当に面倒なやつに黒歴史教えやがって.....」


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第43話

だいぶ遅くなってしまいましたが、
皆さんあけましておめでとうございます。
この小説を書き始めてからもう1年が経ちましたね。
この1年多くの人が見てくださって嬉しかったです!
これからもよければ見てください!

今回のドリフェスは30連でフェス限りんりんと有咲とロリの薫さんが出てくれました。
めちゃくちゃ嬉しかったです!
皆さんの結果もよければ教えてください。


遂にspaceのラストライブの日が訪れた。

その日も珍しく早起きした俺は今日の夕方から始まるライブのことをぼんやり考えていた。

 

「......あ〜!やっぱだめ!緊張する!」

 

小町も朝から初めてのライブということがあり緊張しっぱないしでずっとソワソワしていて見ていてこっちまで落ち着きがなくなってしまう。

 

「なぁ小町、もう少し落ち着かない?」

 

「できるわけないでしょ!?お兄ちゃんバカなの!?」

 

「せめて努力はしてみよう?」

 

俺が言えたことじゃないって?

キットキノセイダヨー

 

「だって....小町はお兄ちゃんと違って.....初めてだもん」

 

もう少し言い方気をつけよう?

 

「その気持ちもわからなくもないけどな、ライブは楽しんでやるのが1番だぞ。気負わずにな」

 

そんなこと言われたところで緊張は治らないだろうが本番になればまぁ大丈夫だろう。

 

「うん、頑張る....」

 

「にしても妹と、小町と同じステージに立つ日が来るとはな.....」

 

「お兄ちゃんも感慨に浸るの早すぎでしょ.....」

 

そんなこと言われたってお兄ちゃん小町とステージに立つのすっごい楽しみにしてたからね?

 

「ばっかお前、兄ってのはそんなもんなんだよ」

 

少なくとも俺レベルのシスコンになれば当たり前のことだ。

 

「小町はもうちょっとお兄ちゃんに妹離れしてもらいたいんだけどなー」

 

「安心しろ、一生離れられないから」

 

小町が将来彼氏とか家に連れて来た暁には精神的に徹底的に追い詰めて即刻追い返すまでにある。

 

「やっぱ小町のお兄ちゃんはごみぃちゃんなんだね.....」

 

「こんな妹思いの兄とか滅多にいないぞ」

 

「小町はもう少し社交的で友達も多くて捻くれてなくて目が輝いてるお兄ちゃんが欲しかったよ.....」

 

「的確に兄の真反対の性格を上げるのやめよう?」

 

自覚してる分ダメージ大きいから.....

 

「でも、小町はそんなごみぃちゃんでも受け入れてあげるよ!今の小町的にポイント高い!」

 

「その割には色々辛辣だなおい」

 

確かになんだかんだ言って小町は俺のことを思ってくれているのはわかるが。

やだ!これって両思い?

 

「なんかお兄ちゃんがくだらないことばっかり言うから緊張するのがバカみたいになっちゃった」

 

それなら俺が精神的にダメージを食らった意味もできると言うものだ。

 

「.....そうか」

 

「ふふ、ありがとお兄ちゃん!」

 

やはり俺の妹は世界で1番可愛いらしい。

誰がなんと言おうと異論は認めない。

 

「ねぇお兄ちゃん、小町spaceに行く前になんか甘いもの食べに行きたいなー?」

 

「え?めんどくさ.....」

 

「行きたいな〜?」

 

「.....わかりましたよ、小町様」

 

そして俺は一生妹には勝てない運命らしい.....

 

「やったー!それじゃあ行こう!」

 

まぁこの後の時間的にもまだ全然余裕はあるから少しくらい商店街でゆっくりするのもいいかもしれない。

 

「....準備するから少し待ってろ」

 

なんだかんだ言いつつ俺たち2人はきっと周りに言わせれば仲がいいのだろう、というかそうだといいな。

ふと、そんなことを思いながら俺は急いで支度を始めるのだった.....

 

*****

 

「ふっふーん♪」

 

その後なんだかんだあって俺に奢らせることを約束した小町は非常に上機嫌だった。

 

「それで、どこに向かってるんだ?」

 

「ん?つぐさんの店だよ?」

 

ああ、羽沢珈琲店か。

確かにあそこの店はコーヒーはもちろんケーキとかも美味いんだよな。

と言っても俺も小町に連れられる形で数回しか行ったことはないのだが.....

 

「そういや、アフグロは今日のライブ出るのか?」

 

俺はまだ知り合いでどのバンドが出るかは把握しきってない。

知っているのはRoselia、ラビワン、ポピパ、グリグリくらいのものだ。

 

「んーと確かだけど......アフグロも出るはずだった気がするよ?」

 

「へー他に有名なバンドとか出たりするのか?」

 

「小町が知ってる限りだとハロハピも出るはずだよ、あとパスパレも事務所の許可が出たらしくてライブに出るらしいよ」

 

パスパレに関して言えば日菜から連絡があったので知っていたことだが改めて聞くと普通に芸能人が出るってだけですごいことだよな。

てか、今更だけど日菜からとてつもない数のメッセージが来てるんだけど.....

なに?新手の嫌がらせ?

チェーンメールみたいなのだとしても俺は誰にも渡せないぞ?

 

「そう考えると知り合いばっかだな」

 

「え?お兄ちゃんそんなの知り合いいるの?」

 

「お兄ちゃんだって友達はいなくても知り合いはいるんだよ?」

 

「悪いことは言わないから知り合いなんて言わないでいた方がいいって.....」

 

「まるで向こうはそう思ってないから傷つく前にやめとけって言いたげな目をするのやめて?」

 

「だってお兄ちゃんにそんなに女の人の知り合いがいるなんて考えられないじゃん、お兄ちゃんも知らぬ間に立派になって.....」

 

「お前は俺の母親か」

 

「あれ?八幡先輩?.....と小町」

 

俺たちがお決まりすぎる流れの会話をしていると突然声をかけられる。

 

「蘭さんお久しぶりです〜!!」

 

ちょっと俺の時と態度違いすぎない?

 

「久しぶり、八幡先輩も久しぶりですね」

 

「まぁ俺も最近忙しかったからな」

 

「....家にいる時ほぼ寝てたけどね」

 

それは練習での疲れでめちゃくちゃ眠かったからなんだけどな......

普段運動しない俺からしたら連日の練習なんて拷問にも等しい苦行だ。

それでもこのライブのために頑張ってきてたわけだが。

 

「お前は雪ノ下の練習を知らないからそんなこと言えるんだ......」

 

「雪ノ下.....?アブアルの雪ノ下先輩のことですか?」

 

「ん?知ってるのか?」

 

「何度かライブも一緒にやったので」

 

「そうなんですね〜。これからはお兄ちゃんもお願いしますね?」

 

「えっと.....どういうこと?」

 

「話すと長いからまずはつぐみ先輩の店に行きません?」

 

「あたしもつぐみのところに行くつもりだったしいいよ」

 

そうして歩き出す2人を見ながら俺はふとこんなことを思っていた。

 

またこのパターンかよ........と。

 

*****

 

「え〜!八幡先輩そんな過去があったんですか!?」

 

羽沢の店に入った時にはすでにアフグロのメンバーは勢揃いしていて小町がかいつまんで話した俺の過去を聞いての上原の反応がこれである。

 

「そんな大声を出すなよ」

 

周りの客からチラチラ見られていて落ち着かないから......

 

「でもひーちゃんの気持ちもモカちゃんにはよくわかるよ〜」

 

普段よく表情がわからない青葉も本当に驚いているのがわかる。

 

「そんなに驚くことか?」

 

「そりゃ驚きますよ、それともしかしてあこにもそのこと言いましたか?」

 

「ん?言ったけどそれがどうしたんだ?」

 

「いやーなんかこの間やたら機嫌が良かった時があって.....理由を聞いてもきっともう直ぐわかるからって教えてくれなかったんですよ」

 

あこならすぐ喋ってるものだと勝手に思ってたわ、ごめんな。

 

「あこが巴に隠し事なんて珍しいね」

 

「あたしも気になってたんだけどようやくわかったよ」

 

「一つ質問してもいいですか?」

 

遠慮がちに羽沢が俺を見る。

 

「てことは、八幡先輩も今日のライブに出るってことですか?」

 

「ああ、そのために無理言ってこのタイミングで復帰させてもらったからな」

 

俺がそう言うと羽沢が笑みを浮かべる。

ここで普通の男ならば俺と同じステージに立てることを喜んでるのか?とか思ってしまうところだが幾度となく経験を重ねた俺はそんなミスは犯さない。

羽沢は真面目だからきっと4人になったアブアルの演奏がどんなものかと楽しみにしてるに違いないな。

 

「あれ〜つぐなんか嬉しそうだね〜?」

 

「モ、モカちゃん!」

 

何やら青葉と羽沢が喋ってるようだったが何を言ってたのかよく聞こえなかったな。

 

「アブアルに八幡先輩.....」

 

美竹は早くもステージを想像し出したようだから言っておいてやろう。

 

「.....俺が入ってアブアルは変わったぞ」

 

これだけは譲れない俺の誇りだから、ここだけは自惚れをしても.....いいはずだよな。

 

「なんか八幡先輩がかっこよく見える?」

 

「おい、疑問形にするな」

 

「え?だって八幡先輩が?」

 

おい、上原お前罪に罪を重ねるな。

 

「ひまり....流石に....ふふっ.....かわいそうだよ」

 

ならお前も笑ってんじゃねーよ。

 

「今お前らのせいで俺は一つ黒歴史ができたからな」

 

「いや、お兄ちゃんが勝手に作っただけでしょ」

 

「あ、アタシはかっこいいと思いますよ!」

 

「わ、私もです!」

 

宇田川に羽沢はフォローしてくれるのはいいが時としてそれがより一層傷を抉ることもあることを覚えた方がいいぞ、そうしないと俺とか俺とか俺が犠牲になるからな?

 

「でも、それだけ自信があるなら、楽しみにしてます」

 

ようやく笑いが治ったらしい美竹は最後にそう言ってきたのでさっき笑われた仕返しをした。

 

「ああ、俺たちは"いつも通り"行くだけだ」

 

「蘭の決めゼリフ盗られちゃったね〜」

 

「別にそんなんじゃないから」

 

と言いつつ少し不服そうにしてるのでひとまず仕返しは成功といったところだろうか。

 

「お兄ちゃんもアフグロの皆さんも小町たちを忘れないでくださいよ?」

 

「もちろん、ラビワンも楽しみにしてるからな!」

 

「お世話になったspaceへの恩返し、しないとね」

 

美竹の一言で俺は今回俺が定めた今回のライブの目的を思い出していた。

 

それは、『しっかりと別れを告げる』ということだ。

俺たちをここまで見守ってくれたspaceには感謝してもし足りない、ここでしっかり別れを告げることだけが今の俺にできる恩返し.....になると信じてやり切ってみせる。

 

決意を新たにした俺はそのまましばらくの間時間を過ごした。

なんだかんだアフグロは雪ノ下たち以外で俺が1番話してる時間が長いかもしれないな。

 

「それじゃあ俺たちは先にspaceに向かってるぞ」

 

「あたしたちもつぐみの手伝いが終わったら行くので」

 

「おう、大丈夫だと思うけど遅刻すんなよ」

 

「八幡先輩じゃないんですから」

 

おい、美竹お前俺の話を小町から聞いているからといって俺をdisるんじゃない。

年下にまでいじめられ出したら俺の残り少ないメンタルのHPが.....

 

「.....また後でな」

 

「すっごい露骨な無視.....」

 

ちょっと上原?そんな目で見ないで?本当に俺泣いちゃうよ?

 

「と、とにかくライブではお願いしますね」

 

やっぱ羽沢は戸塚と小町に並んで俺の天使になりうる存在かもしれない.....

傷ついた俺の心もすぐに癒してくれる.....

一家に1人とかいたら地球上からストレスって単語がなくなるレベルなまでにある。

 

「はい!こちらこそ愚兄ともどもお願いします!」

 

「愚兄はひどくない?」

 

結局最終的には罵倒をされた俺はspaceへ向かうのだった.....

 

*****

 

「いや、普通にこれ早く着きすぎたな」

 

「だねー。どうするのお兄ちゃん?」

 

「いやどうもできやしないんだが.....」

 

「たまにはお兄ちゃんも役に立つようなこと言おうよ」

 

「ばっかお前俺ほどためになる言葉を世に送ってるやつとかそうそういないから」

 

進んで世の中の厳しさを説いていく俺ほど感謝されるような存在とか滅多にいるもんじゃないと断言できる。

 

「お兄ちゃんの場合ただ単に自分の経験談言ってるだけじゃん」

 

「実際経験してるから説得力があるんだよ.....」

 

俺だって好き好んであんな経験を積んでるわけじゃない.....

 

「あら?そこにいるのは八幡じゃない!」

 

「おい小町今すぐここを離れるぞ」

 

「え?なん....」

 

今の声は間違いなく俺の知る限り1番の問題児の声だった。

あいつら3人が揃う前にこの場から逃げなければ......俺の心労が.....

 

「本当だー!おーい!はーくん先輩!」

 

これで2人が揃ってしまった!

しかもなんか呼び方が前よりも馴れ馴れしい!

 

「おい、小町早くしろ!どうなっても知らんぞー!」

 

あれ?なんか俺どっかの戦闘民族の王子になってない。

 

「あ!こころさん!というかハロハピの皆さんこんにちは〜」

 

あ、お前もう知り合いなのね......

 

「おお、小町ちゃんにまで会えるとはこれは運命だね、儚い.....」

 

ああ、もう3人揃ってしまったか.....

 

「薫さん.....」

 

おい、小町なにうっとりしてるんだ。

頼むからお前はノーマルでいてくれ.....

 

「八幡君、こんにちは」

 

「久しぶりだな」

 

ハロハピの方たちはたまーに見かけることがあったがあの3人に関わられると面倒で挨拶をしなかったのは内緒だ。

いや本当にたまーにだからね?

 

「早速うちの三馬鹿がすみません.....」

 

「いや、お前も相変わらず大変そうだな.....」

 

俺が知ってる限りで一番の苦労人は間違いなく奥沢だと俺は断言できる。

ちなみに2番目は市ヶ谷。

 

「そう言ってもらえるだけでありがたいです.....」

 

そのレベルに到達してるのか.....

 

「そ、そんなことより八幡君は今日のライブを見にきてくれたの?」

 

「ん、いや、今日のライブに出るために来た」

 

「え?でも八幡さんって.....」

 

「まぁ色々あって昔のバンドに戻ったんだ」

 

もう説明するのが面倒なので最低限伝えるべきことのみを伝える。

 

「それじゃあよろしくお願いしますだね」

 

ああ、羽沢に続きここにも俺の天使がいたのか.....

 

「ああ、こちらこそよろしくな!」

 

「な、なんか急に元気だね」

 

は!しまったつい天使に出会ってテンションが120%までいってしまった.....

 

「いや、そのあれだ、ライブ前だからだ」

 

我ながら言い訳が下手くそすぎる.....

流石にこれは引かれたか。

 

「そっか、私もライブ前は緊張するけど楽しみだなって思うよ」

 

あーやっぱ天使!

 

「えー八幡さん、妹さんが少しずつ押されてきてます.....」

 

え?あ、本当だ。

最初は3人と普通に話していた小町だったがあの3人の会話のできなさはレベチなのでコミュ力が高すぎる小町も押され始めてるみたいだな。

 

「....助けに行かなきゃだめ?」

 

「いや、妹さんですよね?」

 

そりゃそうなんだけど.....

 

「仕方ないか.....」

 

これもなんかの試練だと思うしかない。

 

「えーと、なんで弦巻たちはこんな早くに着いたんだ?」

 

我ながら話しかけ方下手くそすぎかよ.....

 

「それはだね、こころの提案なのさ」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

3バカの中でも特に要注意人物だしな、いや悪いやつじゃないんだけどこいつの発案の場合リアルに国とか動かしかねんし.....

 

「なんだか早くspaceに行けばいいことがある気がしたのよ!」

 

「そしたらはーくん先輩たちに会えたからこころんの言う通りだったね!」

 

俺と会うことをいいことと捉えるのはどうかと思うが....

 

「そうだわはぐみ!せっかく早く来たのだし少し準備運動しましょう!」

 

「確かに準備運動をすればライブでもっといい演奏ができそう!流石だよこころん!」

 

発想の飛躍がすげぇ.....

 

「もちろん私も付き合わせてもらうよ」

 

そして止める奴が不在っていうのもすげぇ.....

 

「それじゃあ行きましょう!」

 

そう言うと3人は勢いよく走り出した.....って言うかちょっと待ってめっちゃスピード早くない?

日本新記録くらいでてない?

 

「あーあの3人をほっとくとなにするのかわからないのであたしたちも追いかけますね.....」

 

「お、おう」

 

「それじゃあまたね、八幡君」

 

「おう、待ってる.....」

 

そう言うとハロハピは嵐のように去っていった.....

 

「相変わらずすごいね.....」

 

「ああ、あいつらを理解できる日は多分来ないわ....」

 

あのバンドの型破りなスタイルもあれを見ればむしろ自然な気がするから不思議なものだよな.....

 

「あれ?八幡君じゃん」

 

いや俺の知り合いみんな来るの早くないっすかね?

 

「ああ、日菜か」

 

というか、パスパレも全員で来てるみたいだけど......

 

「あの.....すいません日菜さん、私ファンなんですけど良ければ握手して下さい!」

 

「ん?いいよ〜」

 

そう言うと日菜はフレンドリーに小町に手を差し出す。

 

「お兄ちゃん、小町はもう死んでもいいかも......」

 

「頼むから生きて?じゃないとお兄ちゃんも生きていけないよ?」

 

「なんと美しい兄妹愛.....素晴らしいブシドーです!」

 

「と言うよりあれは.....」

 

「シスコンってやつだよね......」

 

そうだが何か?

 

「まさか本物のパスパレの皆さんと同じステージに立てるなんて.....」

 

小町は感動しっぱなしのようだ。

 

「こんなに言ってもらえると私たちも頑張ってよかったって思えるわね」

 

白鷺もいつもはよく感情がわからないけど今だけは本心だと理解できる。

 

「この子が八幡君の妹?」

 

「ああ、世界一可愛い妹だ」

 

「うわぁ.....あれは重症ですね.....」

 

大和にまでそんなこと言わららなんて心外でしかないな。

あこや日菜が姉を好きなのと同じ感情だというのになぜ俺は引かれなきゃいけないんだ。

 

「最近八幡君に会えなくて寂しかったよー」

 

と、ショックを受けてるうちに小町の要望に一通り応え終わったらしい日菜が俺の方に話しかけてくる。

こいつは俺を観察対象としてだろうが興味を持ってるらしいからな。

あくまで観察対象としてというのを決して勘違いはしてはいけない。

最近俺はこれを何回言うんだよ、一個くらい本物の好意ないかなぁ.....

 

「まぁお前たちが忙しいだろうしな」

 

「八幡君が言ってくれたらどこにだっていくのに〜」

 

マジで勘違いしそうなことばかり言うなこいつ。

後こいつは本気で来そうなのも怖い.....

 

「私も.....日菜ちゃんみたいにできたらなぁ.....」

 

「彩ちゃんは彩ちゃんのままでいいのよ」

 

「え?それってどういうこと?ていうか千聖ちゃんもしかしてだけど......」

 

「あれだけ分かりやすければ誰でも気づくと思うのだけれど」

 

「え〜!」

 

「うおっ!どうした、彩?」

 

日菜と話していたら急に彩が大声を出してついびっくりしてしまった。

 

「い、いや、な、なんでもにゃいよ?」

 

めちゃくちゃ動転してるし怪しいんだが.....でも噛んでるからいつも通りか。

 

「彩さん、その言い方何かあるって言ってるのと同じですよ.....」

 

「彩さんは隠し事には向きませんね!」

 

「それって褒められてるの?」

 

「それは彩ちゃんが判断すればいいんじゃないかしら?」

 

まぁ普通に考えて褒められてはないと思うが......

 

「そういや、パスパレも来るのが早いな」

 

「あたしたちは人が集まったところに来るわけにはいかないからねー」

 

さすがアイドル、確かにパスパレがいたらみんな話に行っちゃうわな。

 

「というか、八幡君こそライブを観に来るにしても早くない?」

 

「あー俺と小町はライブ見に来たんじゃなくてライブに出るんだ」

 

「え?八幡君もステージに立つの?」

 

「ああ、まぁ色々あってな」

 

もはや説明すらしないのは許してほしい。

 

「そうなんだ!楽しみにしてるね!」

 

「わ、わたしも楽しみにしてるね!」

 

日菜と彩がそう言ってくれたからには下手な演奏はできないな。

 

「というわけで私たちは先にspaceで準備してますね」

 

「ああ、今日はよろしく頼む」

 

「お互い全力で頑張りましょう!」

 

「ジブンも八幡さんの演奏楽しみにさせてもらいますね!」

 

なんか、すでに大勢から期待されてしまったな。

本当に重いプレッシャーになりかねないのに背中を押してくれてる気がするのはあいつらの優しさのおかげなのかもしれないな。

 

「.....お兄ちゃん」

 

「ん?どうした小町?」

 

「なんであんなにパスパレの人と気軽に話してるの!?」

 

「え?それは.....」

 

「お兄ちゃんみたいな目の腐ってる死んだ魚見ないな人と話してたらパスパレの人が.....」

 

えー理不尽、と思ったがこうなった小町は止まらないことを知っているので甘んじて説教を受けるしかない。

本当にガチのファンって怖い......

 

「まったくもう少しお兄ちゃんは考えて行動を.....」

 

「あれ?小町ちゃん?早いねー、僕たちが一番乗りだと思ったのに.....」

 

こ、この声は!

 

「まってたぜ!戸塚!今日はお前と同じステージな立てて嬉しいぜ!」

 

「小町はいま痛切にパスパレの人たちがこの現場にいなくて良かったと思ってるよ.....」

 

そんなこと言われても戸塚を見てテンションが上がるのは全人類共通のことだし......

 

「おーい、我もいるぞー」

 

「僕も八幡たちと同じステージに立てて嬉しいよ!」

 

「我もー」

 

「戸塚も俺と同じことを思ってたなんて.....これは運命だな」

 

「ねぇ?無視?我を無視してるのか?」

 

「もう.....八幡たら冗談はやめてよ」

 

9割方本気なんだが。

 

「小町は緊張しっぱなしですよ〜」

 

さっきまでだいぶ寛いでたろうが。

 

「とにかく、やれることをやろう。あたしたちにできるのはそれくらいだよ」

 

「ちょっとー1人忘れてはおらぬか?」

 

川崎はこんな時でも落ち着いてるんだなぁ。

個人的には雪ノ下と湊との3人での絡みをぜひ見たいところではある。

ちょっと喧嘩になりそうで怖いけど.....

 

「それじゃあ小町はここからはみんなと行ってくるね」

 

「ああ、川崎も今日はよろしく頼むな」

 

「うん、お互い全力でいこう」

 

そう言ってラビワンのメンバーもspaceに向かっていく。

 

「ちょっとまったぁぁぁぁ!!!!」

 

「なんだよ、材木座うるさいな」

 

「最初から最後まで完全無視はさすがにやられないと思ってたのに....思ってたのに......」

 

「だって完全にそういう流れだっただろ?」

 

「そんな流れなどあってたまるかぁ!」

 

「まぁ、悪かったから落ち着きな」

 

なんだかんだ言ってこいつも完全に確信犯でやっていたあたり材木座の普段の扱いも窺えるというものだな。

別に哀れとは思わないけど。

 

そのままギャーギャー言ってる材木座を連れて4人はspaceに今度こそ入っていった。

 

なんかみんなに会ってたら知らぬ間に結構いい時間になってきてるんじゃないか?

もうすぐ雪ノ下たちも来るんじゃないか?

 

「あら?珍しいこともあるものね、あなたが1番最初に来ているなんて」

 

とか思ってたらちょうどだな。

 

「たまには、な」

 

「そのやる気が空回りしなければいいのだけれど」

 

「それはどっちかというと由比ヶ浜のほうだろ.....」

 

「あら?あなたが思ってるより由比ヶ浜さんは成長したわよ?」

 

「え?マジで?いつもならやる気高すぎて何かしらやってたのに?」

 

いや、めちゃくちゃ失礼な会話なのは自覚してるよ?

 

「ええ、あなたが抜けた直後くらいからかしらね、意識的に直そうとしてたのが見ててわかったわ」

 

「へー俺は割とああいう感じの演奏も嫌いじゃなかったんだけどな」

 

ミスがないというのはもちろんいいことなのだが、それだけでは見てる人の心を掴むことはできない。

むしろミスがあった方が人間味があって俺は好みだ。

まぁRoseliaレベルになるとまた話は別だが。

 

「....あなたはそう思ってたのね」

 

俺がこういうことをしっかりと言ってればすれ違いはなかったらな。

 

「だけど、今の演奏は前より好きだぞ」

 

前よりもレベルが上がったのはもちろんだが全員本音で語り合ったからか以前より近い距離で演奏してる感じがするというか.....

 

「そう....ならいいわ」

 

「あのーそろそろ私たちに気づいてもらっていいですかね?」

 

「うおっ!いつの間にいたんだ?」

 

「うおっ!なんてひどい!」

 

「ちなみにしっかり先輩の思ってたことは聞かせてもらいましたよ〜」

 

「そうか」

 

「ていうかヒッキーあたしにちょっと失礼なこと言ってなかった?」

 

「それに気づけるようになるとは....成長したな.....」

 

「もはやただの悪口!?」

 

「2人ともじゃれ合うのもほどほどにして頂戴」

 

「いや、俺は素直に由比ヶ浜の成長を感じてるだけだ」

 

「.....先輩ってちょくちょく結衣ちゃんのことバカにしますよね」

 

「実際バカだし」

 

「ひどっ!ヒッキーだって数学あたしと同じくらいじゃん!」

 

「どのみち2人とも学年最底辺レベルなのだから変わらないでしょう.....」

 

俺たちの言い争いに雪ノ下は呆れてるのでここらへんで終わりにしておくか。

 

「八幡、戻ったというのは本当だったのね」

 

と茶番に一区切りついたところでRoseliaもご到着である。

 

「ああ、そんなたちの悪い嘘はつかねーよ」

 

「それはそうですが、改めて見るとやはり4人の方がしっくりきますね」

 

「いやーそう言ってもらえると嬉しいものですね〜」

 

「あなたたちの成長した演奏、楽しみだわ」

 

「そちらの演奏も楽しみにしてるわ」

 

「ふっふっふっ我らのきょう、きょう.....?」

 

「狂乱だよ.....あこちゃん.....」

 

「我らの狂乱の宴を仕方と見るがいい!」

 

「あこちゃんが中2みたいにならないことをあたし祈ってる」

 

「ああ、俺もだ」

 

まぁあこの周りには沢山の友達顔いるし大丈夫だと思うけどな。

....俺と違って。

 

「そらにしても八幡がアブアルとして立つステージをもう一度見れるとは思わなかったわ」

 

「それもお前たちのおかげなところもあるけどな」

 

「そんなことはないわ、八幡が努力した結果よ」

 

「いや、それでもサンキューな」

 

「そこまでいうならどういたしましてと言っておくわ」

 

そう言って湊は俺に微笑む、正直めっちゃ可愛いので思わず照れてしまう。

 

「ぐふっ!」

 

とか思ってたら急に一色に横っ腹を膝でこづかれる。

と言ってもそれなりの威力で超痛いんだけど.....

 

「なにすんだよ.....」

 

「べっつにー、です」

 

「あら?ライブ前に緩んだ顔をしてるあなたの気を引き締めてくれたことに気づかないのかしら?」

 

「不可抗力だろ.....」

 

なに?なんで急にそんな対応冷たいの?

女の子の機嫌は山の天気よりも変わりやすいのは小町を見てても明らかだがこの3人は特に激しいんだよな......

 

「八幡さんなんだか楽しそう!」

 

「そうだね.....」

 

「いやー結衣たちも今日はよろしくね〜」

 

「こっちこそよろしくね、リサちゃん!」

 

にしてもなんでこんなに一つの場所でこんなにも多くの人に会うんだよ......

 

「今日はよろしく頼むわね」

 

「ええ、こちらこそよろしく頼むわ」

 

そしてそれぞれのメンバー間で挨拶が行われる。

 

「それでは私たちは先に行きますね」

 

「うん!また後でねー!」

 

Roseliaも控え室に行きもうほとんどの知り合いのバンドは来たんじゃないか?

このままだと知り合いをコンプリートしかねないしそろそろ俺たちも中に入るか.....

 

「なぁ、そろそろ俺たちも中に....」

 

「おおー比企谷君!久しぶりだね!」

 

とか思ってた矢先に早速また知り合いが.....

 

「お久しぶりです、ゆり先輩」

 

いや、でも本当にゆり先輩に関してはお久しぶりだな。

 

「お、というか見て察するに比企谷君またアブアルに戻ったねー?」

 

いやこの人すごいな、エスパーか。

 

「見て察するにってのは流石に冗談だけどね」

 

「え?」

 

「りみが教えてくれたの、あの子すっごい嬉しそうに話してたわよ」

 

おお、俺の天使の中の1人りみがそんなにも俺の復帰を.....

これは今度何かしらしてあげなければ.....

 

「ヒッキー流石にその顔はアウトだと思うよ.....」

 

「おっ!結衣ちゃんも久しぶりだね〜」

 

「はい!久しぶりです、ゆり先輩!」

 

「さらに奥には雪乃ちゃんといろはちゃんもいるね〜」

 

「どうも、今日はお願いしますね〜」

 

「お願いします」

 

ゆり先輩もこう見るとあまり似てる姉妹ではない気がするよな。

 

「それじゃあ私はやる事あるからまた後でね〜」

 

え?なんでわざわざspaceにきた後どっか行くんだ?

 

「え?ゆり先輩どこ行くんですか?」

 

同じことを思ったらしい由比ヶ浜が尋ねると

 

「いやーなんというかひなこがさ.....」

 

あ、そういやこの人のところにもあの3バカに勝るとも劣らないほどの強烈キャラいたわ。

そういや、ハロハピもまだ戻ってこないけど戻ってくるよな?

 

「.....それじゃあまた後で」

 

「うん!比企谷君私もりみも君の演奏、ううん君たちの演奏を楽しみにしてるからね!」

 

そう言うとゆり先輩は若干急ぎ足でspaceを後にした。

つか、あの人はどこまで俺たちの事情を読み取ってるんだろうか?

なんか、8割方理解してそうで怖いんだけど。

 

「さて、ここまで来たらあれだなうん、きっとあいつらもくるな」

 

「ヒッキー何言ってるの?」

 

「いや、こっちの話だ」

 

いやだって俺の知り合いの奴らあと一組だけだから来ないこととか流れ的にないだろう。

 

「さて、それではそろそろ私たちも控え室に向かいましょう」

 

「そうですね、まだ若干早いですけど行きましょうか」

 

まぁ、若干どころじゃないけどね?

割とまだ時間には余裕がある、むしろspaceのスタッフがこんなに早くみんなきて驚いてるくらいじゃないか?

 

「それじゃあ行こうか」

 

だけどこうやって入ろうとした瞬間にくるんだろ、後ろから。

 

「ヒッキー?何してるの早く行くよ?」

 

いやこないんかい。

 

*****

 

それからまた控え室で色んなバンドと喋っていたら時間は割とすぐに過ぎてもうそろそろ本番に向けての準備が始まるくらいにはなったのだがいまだにまだハロハピだけがその姿を見せない。

え?くるよね?

 

「本当にハロハピの人たちは間に合うのかな?」

 

事情を知ってる小町はそろそろ本気で心配をしだしたようだ。

でも、あの黒服の人たちの存在があることを知っている俺はどこか大丈夫だろうと決め付けている気持ちがあった。

 

「す、すみません、あとはあたしたちだけですよね.....」

 

ほらな、間に合ってきた。

ちょうど奥沢が3バカの手を引いて控え室に入ってくる。

その後ろに松原も続く。

 

「おつかれ.....でいいよな?」

 

もうそのレベルじゃないほど奥沢の顔は疲れ果てているがこれからのライブ大丈夫か?

 

「はい.....ありがとうございます.....」

 

本当に倒れたりはしないよな?

 

「それにしても気づいたら隣町まで行っちゃうなんて思わなかったよね!」

 

ん?今北沢なんて言った?隣町まで?

それここからの距離にすると最短でも10キロ近くあるんじゃ......

それを往復ってことは......

もはやハーフマラソンくらいの距離になる.......

 

「松原も大丈夫なのか?」

 

「うん、私と美咲ちゃんは黒い服の人たちが用意してくれた自転車だったから.....」

 

有能、あの黒服の人たち有能!

俺の家にも来ないかな?

そしたら完璧にニート生活できるのに.....

 

「さて、全員揃ったみたいだね」

 

ハロハピが揃ったところでババァ、今はオーナーって呼んでやるか.....

オーナーが控え室に入ってくる。

 

「今日のライブで私はこの店を閉める。だからこの最後のライブ絶対にやりきりな」

 

「はい!」

 

みんなが同時に返事をするので相当な声量になる。

それを合図に各バンドの間で緊張感が生まれる。

 

「それじゃ開演まではそれぞれしっかり準備をするんだよ」

 

そう言うとオーナーは控え室を出て行った。

 

「比企谷君、私たちも最後にもう一度確認をしておきましょう」

 

それぞれのバンドが最後の確認に入り始めいよいよ緊張感が漂い始める。

だが俺はこの空気が嫌いじゃない。

慣れればむしろライブ前の集中力を高めるのに最適だ。

 

「では、特に変更はなくいくわよ」

 

「うん!」

 

「了解です!」

 

「おう」

 

最後の確認が終わったところで改めて周りを見渡すが他のバンドも準備万全となったようだ。

 

「それじゃあ最初はあたしたちね!」

 

今回のライブ最初の出番はハロハピだ。

さっきまで疲れてないかとか思ったがあの3バカは疲れとは無縁のようだ。

 

「こころんがんばってね!」

 

「任せてちょうだい香澄!」

 

「はぐみも頑張ってね」

 

「みーんなを笑顔にしてくるね!」

 

「子猫ちゃんたちの望みを叶えるのが私たちの役目さ.....」

 

「「「薫さん.....」」」

 

瀬田の言葉にメロメロになっているりみと上原、そして小町正直あいつがモテるのを見ると男として....とてつもない敗北感があるんだけど.....

俺も儚いとかいってたらモテるかな?

キモいとか言われて飛び降りる未来が見えるな、いやキモい確定してるのかよ......

 

「それじゃあ行ってくるわね!」

 

そう言うと嵐の如くハロハピの5人は行ってしまった。

ちなみにライブステージの様子は控え室からもモニターで見ることができるので他のバンドの様子や会場の盛り上がりもバッチリわかる。

 

「みんな〜ハロー!」

 

「「「「「ハロー!!!」」」」」

 

弦巻の呼びかけに会場から一体感溢れる反応が返ってくる。

どうやら俺たちが思ってる以上に会場のボルテージは上がっているらしい。

 

「今日はこの場所での最後のライブだけれどだからこそみんな最高の笑顔でさよならしましょう!」

 

「寂しい気持ちなんてはぐみたちが吹っ飛ばしちゃうよー!」

 

「そうだね、私も寂しいがかのシェイクスピアもこう言っているよ。

『運命と魂を最もふさわしい場所へ運ぶのだ』とね。まぁつまり、そういうことさ」

 

「「「きゃー!!!」」」

 

ここでも瀬田薫ファンの熱烈な応援が....

というかあいつら最初から客のテンション上げさせすぎじゃないか?

このままだと俺らのときに疲れてたりとかしないかな.....

 

「あ、あのこころちゃんそろそろ進めないと時間がね?」

 

「ええ!わかったわ!それじゃあみんな行くわよ〜!ハッピー!ラッキー!スマイル!イェーイ!」

 

これまた会場との一体感が見事なコールだ。

こりゃあ俺たちも頑張らないとな。

 

その後ハロハピの演奏は常に客の視線を集め続け特に問題はなく終わりそうだ。

 

「それじゃあこの次はあたしたちの番だね」

 

「おう!ハロハピに負けないようがんばろうぜ!」

 

「今日もモカちゃんがんざっちゃうよ〜」

 

「私もがんばるね!」

 

次の出番のアフグロも気合バッチリだ。

 

「それじゃあみんなえいえいおー!」

 

「「「「.....」」」」

 

「こういうときくらい一緒にやってよー!!」

 

あ、そこは相変わらずなのね.....

 

「美竹さん、頼むわよ」

 

「もちろんです、あたしたちはいつも通りにいくだけです」

 

この2人仲悪いようで意外といい組み合わせなのかもしれないな。

本人たちに言ったら美竹は全力で否定してきそうだが.....

 

「みんな最高の笑顔だったわ!」

 

おっと、ハロハピの出番は終わったようだな。

最初の盛り上げは完璧だったようだな。

 

「どうも、Afterglowです」

 

「ハロハピが盛り上げてくれたからな、あたしたちも負けてらんないぜ!」

 

「おーともちんやる気バッチリ〜」

 

「もちろん私たちもだよね、つぐ?」

 

「うん!もちろんだよ!」

 

「それじゃあみんなあたしたちを見ていて!」

 

アフグロも自分たちで言ってた通りに気合入ってるなー。

演奏からもひしひしと熱気が伝わってくる。

 

「友希那〜、蘭たちすっごいね〜」

 

「ええ、5人とも最高の演奏をしているわ」

 

「会場の熱気もすでに最高潮ですね」

 

やっぱまぁみんな同じことも考えるわけだ。

 

「あこたちも負けないくらい盛り上げていかないとですね!」

 

でもどのバンドも自分たちは.....とか思ってないのがすごいよなぁ.....

 

「こんなに盛り上がってると私たちの方もテンション上がっちゃうね」

 

「うわっ!ゆり先輩、そろそろ準備してなくていいんですか?」

 

次の出番はグリグリだったはずだが.....

 

「うん、もうすぐ行かないとだね」

 

「呑気に話してていいんですか?」

 

「まぁまぁそんなこと言わずにさ、私だって君に言いたいことはいっぱいあったんだからさ」

 

「そんなのとっくに言ってくれてればよかったのに.....」

 

「比企谷君はひどいなぁ、私は気を遣ってたのに」

 

「ゆり先輩を迷惑に思うことなんてないですからそういう遠慮は別にしなくていいですよ」

 

「君はたまにそういうことをさらっと言うなぁ.....」

 

え?もしかして俺今相当キモいこと言ってた?

え?やばい、死にたい.....

絶対引かれたじゃん.....

 

「まぁいいや、じゃあ行ってくるね」

 

「は、はい」

 

そう言うとゆり先輩も行ってしまった。

一体何だったんだ.....

考えても仕方ないかと思ったら材木座が俺の近くへと寄ってくる。

 

「.....八幡よ、なぜ貴様はこの環境に適応できるのだ?我、周りに女子しかいなくてもはや息苦しいのだが.....」

 

「何だよ材木座、お前もグリグリの次が出番なんだから早く準備しろよ」

 

とか言ってるけど俺も不思議な限りである。

強いて言うなら普通に知り合いが多いからだろうか?

てか材木座は一応戸塚が同じバンドにいるけど俺は完全に男1人だからなぁ.....

慣れるしかなかったのかもしれないなぁ.....

 

「そんなもの、あとは覚悟を決めるだけに決まっているであろう」

 

「お前の場合多分それが1番長いだろ」

 

「そ、そんなことはないのである!剣豪将軍たる者常に覚悟など.....」

 

「出来てないから俺のところに来てんだろ?」

 

「まぁ、そうだが.....」

 

「じゃあとっとと帰れ」

 

「酷すぎないか!?お前は俺を何だと思ってるんだ!?」

 

あれ?なんかこいつ緊張しすぎてなんか口調普通になってない?

そうなると誰が喋ってんだかよくわからないぞ?

 

「え?なにも?」

 

「思ってすらないの!?」

 

そりゃ材木座だし?

 

「ほらとっとといったいった」

 

「まじでなんも言ってくれないの!?」

 

それはともかくお前もうキャラ崩壊しまくってるよ?

大丈夫?

素が見えちゃってるけど大丈夫?

 

「これで何かあったらお前を恨むからな......」

 

もう、手遅れだな。

俺の元から離れて行く材木座を見ながら俺は次にあいつと話す時どう接すればいいのか分からなくなりつつある。

 

時になってモニターを見たところ今はグリグリの曲が始まったくらいか。

 

「お姉ちゃんすごいなぁ.....」

 

「私たちも頑張らないとだね」

 

「やっべー結構緊張してきた.....」

 

そして次に俺たちの近くにやってきたのはこれまた初ライブを控えるポピパの5人だ。

 

「あ、八幡先輩今日はお願いしますね」

 

「花園はあんま緊張しないんだな」

 

「ううん、緊張してるけどそれ以上にライブが楽しみ」

 

「わかるなーその感じ、あたしも初めてのライブのときそんな気持ちだったもん」

 

材木座の時にはいたのかさえわからなかった由比ヶ浜はポピパ相手にはしっかり出てくるらしい。

 

「私は今でも緊張しますよー、先輩はどうですか?」

 

「俺は、なんかよくわかんないな」

 

いやそりゃしてないわけではないんだけどさ。

 

「ヒッキーどっちかっていうと本番テンション上がっちゃうタイプだしね」

 

いや、それどんなタイプだよ.....

 

「私たちもいたか純粋に楽しみって思えるくらいライブしたいね」

 

「そんなんになるまですげーかかりそうだけどな」

 

「ふふ、それはわからないわよ?」

 

雪ノ下にしては相当柔らかい雰囲気を纏った一言にむしろ俺の方が驚いてる件。

 

「え?どういうことですか?」

 

りみの質問にも雪ノ下は微笑んだだけだった。

まぁ雪ノ下の言わんとすることはわかるけどな。

 

「すぐにきっとわかるよ、私が保証しちゃいます」

 

一色が変わりにそう伝える。

いまだに5人はよくわからないようだがそれは本当に感じてもらうしかないからな。

 

「ま、とにかく今日のライブを楽しめ」

 

「はい!みんなに負けないくらいのキラキラドキドキを届けます!」

 

それでいい、それがお前らしさ、お前たちらしさだ。

 

「皆さんありがとうございます、なんか緊張取れました」

 

いや、お前は元からそんな緊張してるそぶりなかったけどな?」

 

「みなさん、はじめまして私たちはRabbit in wonderlandって言います」

 

そんなことを話してるとグリグリの出番は終わりついにラビワンの番になったようだ。

 

「それじゃあまずはメンバー紹介から、ギター比企谷小町!」

 

「みなさーんお願いしますねー!」

 

なんだかんだ言いながら小町もしっかり緊張が取れたらしい。

 

「「「うおおおおお!!!」」」

 

そして小町の可愛さを見て男どもが絶叫してやがる。

今顔を覚えたから今叫んだやつ覚悟しろよ?

 

「ベース戸塚彩加!」

 

「よ、よろしくね!」

 

「「「「「.....」」」」」

 

なぜか会場が一瞬静まる。

そして.....

 

「「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」」

 

今日1番の大声が響き渡る。

 

「な、なんだあの子、すごい可愛いぞ!」

 

「お、オレもうファンになる!」

 

戸塚の可愛さに会場の男たちは大興奮だ。

 

「あ、あの僕、男子なんですけど....」

 

 

戸塚、真実ってのは時に最も人を傷つける凶器になり得ることを自覚した方がいいぞ。

 

「「「「「......」」」」」

 

ほら会場の男どもショックで静まり返っちゃったよ.....

 

「いや、むしろそっちの方が萌えないか?」

 

「オレもだ!男の娘ってロマンだからな!」

 

「「「うおおおおお!!!」」」

 

むしろ一部の男どもは余計に盛り上がってしまった.....

こいつら、俺と仲良くなれるな。

 

「.....」

 

なんだか控え室の女子のモニターを見る視線がすっごい冷たいけど問題ないよね!

 

「ドラム、材木座義輝!」

 

「みんな、今日はよろしく頼むぞ!」

 

あ、あいつも流石にこの人前でキャラ作る勇気はなかったのな。

 

「「「「「......」」」」」

 

「せめてなんか言って!?」

 

ここでも無視られる材木座.....

まぁ会場は笑ってるしこいつも案外名物化するかもな。

 

「そして最後にギターボーカルはあたし、川崎沙希!」

 

「「「おおおお!!」」」

 

材木座.....お前はいいやつだったよ、よく知らんけど....

 

そうして観客に受け入れられたラビワンの演奏は大成功に終わったと言っていいだろう。

 

「以上、ラビワンでした!ありがとう!」

 

手を振りつつステージから退場するラビワン、その顔はみんな笑っていた。

 

「皆さん、はじめまして!私たち.....」

 

「「「「「Poppin'Partyです!」」」」」

 

こちらは声を合わせての登場となるポピパ。

 

「まずはメンバー紹介させてください!ギター花園たえ!」

 

「よろしくお願いします」

 

ラビワンで叫びすぎたのか男たちもさっきより反応が薄くなっている。

 

「ベース牛込りみ!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「あれ?なんかあの子グリグリのゆりさんに似てない?名字も一緒だし....」

 

感の良い客はりみがゆり先輩の妹であることに気付きつつあるようだ。

 

「キーボード市ヶ谷有咲!」

 

「お、お願いします」

 

今この中で1番緊張してるのはこいつかもしれないな。

本番になって緊張が取れるかは大事なとこだがどうか.....

 

「ドラム山吹沙綾!」

 

「よろしくお願いします!」

 

「そしてギターボーカル、戸山香澄!」

 

「今からみなさんをキラキラドキドキさせます!聞いてください.....」

 

そうしてポピパの演奏も順調に進んでいる。

 

「八幡くーん!次は私たちの番だよ!」

 

「日菜か、お前は緊張とかしなさそうだな」

 

「だって、緊張なんてしててもいいことないじゃん!」

 

「うっ、その通りだけどぉ.....」

 

日菜の一言で彩が流れ弾くらったけど大丈夫か?

 

「今日こそ噛まないよう頑張りましょうね」

 

「うん、がんばりゅ!」

 

なんかすでに先行きが不安なんだが.....

 

「今まだの皆さんが盛り上げてくれたステージジブンたちも続いてみせます!」

 

「ブシドーの心を持っていきましょう!」

 

「それじゃああたしたちもいってくるねー!」

 

「おう、頼むぞ」

 

「まっかせてよ!」

 

気づけばもうすぐ最後の俺たちの出番も近づいてきたな。

パスパレの後はRoselia、そして最後の俺たちとなる。

やばい、なんかテンシャン上がってきた.....

 

「八幡先輩、なんかいつもと雰囲気違いますね」

 

そこにすでに出番を終えた美竹と青葉、そして羽沢が近づいてくる。

 

「ヒッキー、ライブ前はいつもこんな感じになるんだよねー」

 

「そうなんですか?」

 

「ええそうね、そのせいなのかこの男この瞬間だけは目が腐ってないのよ」

 

「なので学校の友達にも同一人物って気づかれないんですよね、先輩?」

 

「それを俺に聞くのは悪意以外なんでもないだろ.....」

 

確かに今までライブに見にきたクラスのやつらが由比ヶ浜に『昨日のライブの男の人誰?』とか聞いてるの何度も聞いてたけど.....

そのあと本当にこの人が?とか言われたけど.....

 

「それは流石にモカちゃんも泣いちゃいます〜よよよ〜」

 

「わ、私たちはわかりますから!」

 

そりゃお前たちがわからなかったら俺は飛び降りるぞ。

 

「それでも一部の女子からは意外とかっこいいとか言われたらしてるんですよこの人」

 

「え?そ、そうなんですか?」

 

なぜか羽沢の羅列が悪くなったがライブの後でしっかり水分は取ったのか?

 

「そんなわけないだろ、そもそも存在自体認識されてないし.....」

 

「なんか、あたしたちまで悲しくなってくるんですけど.....」

 

「この男の言うことをいちいち聞いていたらずっと泣くハメになるわよ」

 

「それが1番悲しい言葉ですよね〜」

 

それを言うなよ.....

 

「皆さんこんにちは〜!私たちアイドルバンドのパスパレことPastel*Palettesです!」

 

「みなさん、しっかりと水分は取っていますか?ジブンも忘れがちですけど忘れずに細めにとってくださいね」

 

「みんなまだまだ声出せるかな〜?」

 

「「「イェーイ!」」」

 

まだまだ観客は元気なようだ。

 

「みなさん怪我はしないようにしてくださいね?」

 

「ブシドーの精神を忘れずに行きましょう!」

 

「それではみんな聞いてくだしゃい」

 

あ、やっぱり噛むのね....

会場から笑いが起こるもののやはり芸能人というだけあって華があるなぁ.....

 

「八幡、私たちはあなたたちに最高のバトンをつないでみせるわ。だから待ってて」

 

「おう、任せた」

 

「あなたたちも見ていてください、私たちを」

 

「ええ、もちろんよ」

 

「会場のテンション、もっと上げてきてね!」

 

「任せてください!」

 

「私たちも準備万端にしておきますね!」

 

「うんうん、あたしも今からテンション上がってきたよ〜」

 

「私たちも楽しみにしてるわ、Roseliaの演奏を」

 

それを聞くとRoseliaのメンバーは皆不敵に微笑む。

それは絶対的な自信、圧倒的な練習量をこなした者のみができる表情だった。

 

「.....湊さん.....そろそろ時間です」

 

「わかったわ、それじゃあ行きましょうか」

 

それにしても、このライブも夢のように一瞬で時間が過ぎていってしまう。

 

「お兄ちゃん、小町たちの演奏どうだった!?」

 

うっわ、普段よりテンションが倍高い妹が来た......

そんな風にはしゃぐ姿もかわいいなくそ。

 

「.....最初にしては上出来だろ」

 

「全くお兄ちゃんもこういう時くらい素直に褒めてよ」

 

いや、俺にしては最大限素直に褒めてるんだけど.....

 

「サイコーだったよ!小町ちゃん!」

 

「やっぱり結衣さんはわかってますね〜」

 

もうめんどくさいしこれ以上何も言われたくないから小町の相手は

由比ヶ浜に任せよ......

 

「Roseliaです、よろしくお願いします。それじゃあ早速いくわよ!」

 

MC短かっ!?

え?もう少し俺に落ち着く時間とかくれないの?

まぁ湊が好き好んで喋るとも思わないけど.....

 

「八幡先輩!」

 

この声はまたお前か.....

もうこれ以上の感謝は出てこないぞ?

 

「なんだよ、戸山」

 

「いえ、八幡先輩の、アブアルの演奏すっごい楽しみにしてます!」

 

「何度めだよ、それ言うの」

 

「なんかまた言いたくなっちゃったんです!」

 

「そうか、ならしっかり見てろよ?」

 

ポピパのライブは今まで全て見てきた。

俺はその演奏を聞くたびに俺もまた.....と毎回思わされてたんだ。

その前に俺にまたこの熱さを思い出させてくれたのは戸山なのだ。

 

「もちろんです!」

 

だから感謝は言葉になんてしてやらない。

こいつももう立派なギタリスト、だから伝えるのは演奏で。

 

「比企谷君、準備はいいわね?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

「それじゃあ.....」

 

「行きましょう!」

 

「あたしたちのステージに!」

 

気がつけば控室にいる全員の目線が俺たちのもとに集まる。

 

「八幡!あたし、あなたの演奏でもっと笑顔になりたいわ!」

 

弦巻.....

 

「あたしも、八幡さんの新しいいつも通り期待してます」

 

美竹......

 

「いってらっしゃい、比企谷君」

 

ゆり先輩.....

 

「お兄ちゃん、おかえりなさい!」

 

小町.....

 

「キラキラドキドキさせてください!」

 

戸山......

 

「八幡君、頑張ってね!」

 

彩......

 

「ほら、つぐも」

 

「え、えっと八幡先輩、頑張ってきてください!」

 

 

羽沢も.....

 

「全力で楽しんできてね」

 

松原......

 

「八幡君、るんってくる演奏よろしく!」

 

日菜も.....

 

なんでかな、今.....

 

「ありがとう.....行ってくる」

 

なんかすでに.....泣いてしまいそうだ......

 

俺は遠回りした末にこれだけの人と.....本物と呼べるものを......得られたのか......

 

このドアを開ければもうあとはステージの裾までの道だ。

最後にもう1度みんなの方を向こうかと思ったが、そうしたら本当に泣いてしまいそうなのでやめておいた。

 

「....」

 

そのまま無言で俺は扉を開けた。

そこに、もう迷いも何もなかった。

 

「.....あなたがこんなにも多くの人との関わりを持つなんて今でも信じられないわ、でもそれがあなたが変わった証拠なのよね」

 

「そうだね、あたしたち以外にも頼れる人がいっぱいできたんだね」

 

「なんだか少し寂しい気もしますけどそれ以上に嬉しいです」

 

「だからこそ、このステージでみんなに見せましょう。新しい私たちを」

 

ああ、なんだよ、そんなこと言われたら......本番前なのに涙が.....勝手に.....

 

「その気持ちは、ライブが終わった時まで取っておいてちょうだい」

 

そう言うと雪ノ下は俺の涙を指で拭う。

 

「今は、最高の演奏をやりきりましょう!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

「....おう!」

 

「ありがとうございました」

 

するとRoseliaが演奏を終えたらしくステージから降りてくる。

 

「八幡、約束は守ったわよ」

 

ああ、確かに約束通り観客のボルテージは最高潮だ」

 

「私たちのパス、受け取っていただけますか?」

 

「もちろんだ」

 

「言っておくけど、もともとあなたたちのファンの私たちのハードルは高いわよ?」

 

湊と紗夜は俺がバンドを抜ける前の姿を知っている。

だからこそ、俺は自信を持って答える。

 

「昔の俺なんて、もうとっくに追い抜かしたよ」

 

それを聞いた2人は笑って控え室へと戻っていった。

 

「それじゃあいくわよ!」

 

そうして俺たちはステージへと上がる。

今でもアブアルは知名度があるようで多くの観客が雪ノ下たちの名前などを叫んでたりする。

 

「え?あのギターの男だれだ?」

 

「わからない?新メンバーなのかな?」

 

「今までずっと3人だったのに.....」

 

当然俺を知らない人は大多数だ。

この反応も当然のことだ。

 

「もしかきてあの人.....3年前までいた......」

 

なかには覚えててくれた人もいるのか.....

ありがたいな......

 

「みなさん、Absolute aloofです。まずは皆さんに1人紹介したいと思います」

 

俺のことだ。

それは見てる方も当然理解してるわけで好奇の視線で俺を見てくる。

 

「この人は比企谷八幡、かつてアブアルでギターを担当していた人よ。それで色々あって今回から再び私たちと共に演奏することになった彼をどうか迎え入れてください」

 

そう言い雪ノ下は頭を下げる。

そして俺は一歩前に出る。

 

「どうも、今紹介された通り比企谷八幡って言います、今まで休んでた分今日思いっきり演奏するのでどうかお願いします」

 

そう言い俺も頭を下げる。

会場から拍手が起きる。

どうやら俺は迎え入れてもらえたらしい。

 

「じゃあみなさんこらからヒッキーをよろしくね!」

 

「おい、ここでその変な呼び方で呼ぶな」

 

定着したら最悪すぎる.....

 

「呼び方なんてどうでもいいじゃないですか、先輩?みなさんもそう思いますよね?」

 

「そーだそーだ!」

 

「ヒッキー!!」

 

「お前の帰り待ってたぞ!ヒッキー!」

 

あ、手遅れだった.....

あんだけカッコつけて控室出てきたのにきっと今頃あいつら全員笑ってんな、死にたい。

 

「比企谷君、よかったじゃないあだ名が広まって」

 

「いや、なんもよくないんだけど.....」

 

「まぁそれは置いといてみなさん最後まで声出す準備はいいですか〜?」

 

「「「イエーイ!!」」」

 

「あたしたちの演奏楽しみにしてくれてる?」

 

「「「イエーイ!!」」」

 

「それじゃあ、最後までお付き合いお願いするわ、聞いてください」

 

演奏はまるで夢のような心地だった。

観客の熱は止まることを知らないのかと思うほどに高まり続ける。

それに呼応するように俺たちの演奏はより激しさを増していく。

終わりが来なければいい、きっとだれもがそう思った。

 

だが、終わりは来るものだ。

 

「以上アブアルでした!ありがとうございました!」

 

これであとは少し休憩を挟んだあとにみんなでステージに上がって挨拶をするだけ.....

 

「......」

 

演奏が終わって観客が見えなくなったからかな......さっきまでこみ上げてた涙が.....また......

 

「もう、いいか?」

 

「......いいわよ」

 

いざそう言われてもそれまで抑えてたからかなかなか涙が流れ出すことはない。

 

「ヒッキー.....」

 

「八幡、もう一度がんばれそうですか?」

 

なんか一色が変な口調になってるがどういうことだ?

 

「どうやら、あの人たちはあなたを泣かせる気はないみたいよ?」

 

「......コール!」

 

「アンコール!」

 

「アンコール!」

 

なるほど、確かにこれは泣いてる暇はなさそうだな。

 

「......じゃあ行くか」

 

俺の呼びかけに3人は呼びかける代わりに先に走り出す。

俺も3人を追いかけ走り出した。

 

輝くステージへと......




はい、更新が遅くなってすいませんでした。
かつ、話を考えてたら知らぬ間にいつもの3倍以上の分量になってしまいました。
これでひとまず一部が完結って感じですかね。
これからはより八幡とバンドリキャラを絡ませて行こうと思います。
なのでまだしばらくは続くのでよければ引き続いて読んでくださると嬉しいです!
感想、評価など励みになるので良ければ聞かせてください。

いつもなら次回予告なのですが今回はまだ次の話が考えきれてないのでお休みです.....


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第2章
第44話


今回から八幡たちの演奏の舞台は変わっていきます。
そして、皆さんにあらかじめお知らせです。
この度私はこの小説において1人オリキャラを登場させることにしました。
今回からそのキャラにも登場してもらいます、ただ完全オリキャラというよりバンドリで存在を運営に消されてしまったキャラを勝手に登場させるだけです。

不快に感じる方がいたら本当にすいません.....



spaceでの夢のようなラストライブから3日がたった。

俺はいまでもあの時の興奮を容易に思い出せる。

え?結局あの後どうなったかって?

そりゃあのあとはアンコールの演奏が終わったあと予定通りみんなでステージに上がって.....それ....で.....

あれ?頭が.....なんかもやがかかったみたいに.....思い出すな.....俺。

 

「みなさん今日は本当にありがとうございました!」

 

全バンドを代表して雪ノ下がそう言った後に全員それに続いて頭を下げてお礼を言った。

 

「.....」

 

そして退場してる途中に俺は気がつかないうちに涙腺が決壊したらしい。

勝手に涙が出てきて....それでしかも.....

 

「結局、耐えられなかったのね」

 

「でも、ヒッキーが泣いちゃうのもわかるな」

 

「そうだね、だから今だけは泣いていいですよ先輩」

 

「俺は....俺はようやくお前たちと本物を見れた気がする.....」

 

涙ながらに俺は言葉を語る。

その場に大勢の人がいるのを忘れて.....

 

「俺はずっと探してんだよ.....それを今日初めて....掴めた気がする....」

 

そのあとは喋れないくらいの号泣である。

せめてもの理性が声をあげて泣くのを阻止したとはいえ.....

 

あああああああああ!!!!!

死にたい!しにたい死にたいしにたい!

何言ってんの!

本物ってなんだよ!

とりあえずしね俺!

 

「ちょっとお兄ちゃん、うるさいよ」

 

ベッドでのたうちまわっていた騒音を聞きつけた小町が部屋へとやってくる。

 

「妹よ、俺はもう生きていけない....」

 

「全くまたそんなことを言って、いいから静かにしてよね」

 

「おう、静かに逝くわ」

 

「はぁ、いいお兄ちゃん。確かに昨日の台詞は正直今思えば相当くさかったよ?」

 

「いいのか小町、俺はこのままいったら死ぬぞ?」

 

「ちょっと斬新な脅し方しないでよ.....でもさ、あの時は誰も笑ってなんていないし小町だって素直によかったねって思ったよ?」

 

「そういう問題じゃない....あんな泣いてまでいるところを見られて.....」

 

「全くぐちぐちいってないで早く支度しなよ、今日このあと雪乃さんたちと待ち合わせしてるんでしょ?」

 

あ、やべ悶えてたら忘れかけてた。

時間は.....まだ少しくらい余裕はあるな。

さすが小町兄の予定まで完璧に把握してるとは。

これなら将来養ってもらうときも心配ないな。

 

「ほら思い出したならさっさと動く!」

 

「はいよ」

 

「相変わらず手のかかるごみぃちゃんなんだから」

 

あっという間にテンション戻した俺は小町は呆れ気味だが今思えば黒歴史などもう数え切れないほどあるのだし長く恥ずかしがってるのもただの時間の無駄と言える。

 

「そりゃ俺は一生俺のままだからな」

 

「小町的にはそんななんの役にも立たないアイデンティティはドブにでも捨てて欲しいな」

 

「いい笑顔で俺の人格全否定とかしてくるのやめて?」

 

最近妹の兄扱いが雑すぎてつらい.....

 

「とにかく!お兄ちゃんはいつも通りでいいの!」

 

「はいはい」

 

小町の兄離れはもしやもうすぐそこなのかもしれない。

そんなことあったら今度は違う意味で死にたくなりそう。

 

「じゃあほら!さっさと支度!」

 

結果としてだいぶ騒がしいことになったがまぁたまにはいいか。

なんて思ったりもするのだった。

 

*****

 

 

今日はspaceの代わりにこれから利用することになるライブハウスに行くことになっている。

そして初っ端から現地集合なのである程度迷っても大丈夫なようにある程度時間に余裕をもって家を出たが道が割とシンプルなので迷うこともなくこのままでは早く着きすぎてしまいそうだ。

 

「おっ!八幡じゃん、こんなところで会うなんて奇遇だね〜」

 

「よう、今井最近はよく会うな」

 

いや3日に1回くらいあってるからな、リアルに。

そこで俺は今井の横に立つ1人の男子の存在に気づく。

 

これはいわゆるあれか、デートってやつか。

今井なら顔も可愛いし性格明るいし彼氏が3人くらいいても驚きはしない、いやありえないけどさ。

 

「悪い、邪魔してるか?」

 

「あははっ!八幡勘違いしちゃった?大丈夫だよ」

 

勘違いってじゃあ隣の男子は誰だ。

なんというか、普通にイケメンだが口数はあまり多そうじゃないな.....

それに線も細くて若干中性的な印象が.....

 

「こっちはあたしの弟のケントだよ」

 

「.....」

 

紹介をされても黙ってるあたり人見知りなのかもしれない。

あら、なんだか親近感.....

 

「弟いたんだな」

 

いや、確かに今井は姉って感じで実際あことかリサ姉って呼んでたりとかするけどさ.....

 

「ほーらケント挨拶しなよ」

 

「.....今井ケントです」

 

緊張のためか若干声が上ずっていてなんだか初々しい。

あれ?俺そっちの趣味はないんだけどな?

 

「俺は比企谷八幡だ、よろしくな」

 

最近いろんな人といやおうでも自己紹介する機会が増えたからそこだけはもう慣れて普通にできるようになってたおかげでここでもナチュラルに返せた.....

 

「ほら、ケント言いたいことあるんでしょ?言っちゃいなよ」

 

「....でも、緊張しちゃって.....」

 

「ほら、八幡だって忙しいんだからさ」

 

「いや、むしろ練習までまだ時間があるからゆっくりでいいぞ?」

 

これで文句とかだったらもう俺恥ずかしさとか色々なもので走り出すまでにある。

 

「あ、あのこの間のライブ見ました....」

 

俺が最近出たライブは一つしかないので考えることもなくspaceでのライブのことが思い当たる。

 

「どうだった?」

 

ライブとかに限らず人前に出るとそれを見ていた人間の評価というのは気になるものである。

だがそれも聞きたいような聞きたくないような.....といった感じで不安を多く含んだ期待である。

 

「その、すっごい感動しました!」

 

「そうか....ありがとな」

 

面と向かって言われると普通に照れるな.....

 

「ケントったらあれ以来すっかりアブアルのファンなんだよ〜」

 

「リ、リサ姉」

 

あ、リアルな弟はリサ姉呼びなんだ.....

とか考えてる場合じゃないな。

 

「いや、すげー嬉しいぞ」

 

「そ、そんなこちらこそアブアルみたいなバンドを知れて良かったです」

 

話してるうちに緊張が溶けてきたのか喋り方が普通になってきたな。

 

「今井はなにか楽器やったりとかしてないのか?」

 

「うーん八幡今のならわかるけどあたしも今井なんだから紛らわしいよ〜」

 

「それもそうだな.....それじゃあケントでいいか?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

年下で同性なら呼び捨てもそこまでの抵抗はないからな。

 

「てか別にあたしも名前で呼んでくれていいんだよ?」

 

「いや、それはなんというかな.....」

 

普通に恥ずかしいんだけど.....

 

「リサ姉、みんながみんなリサ姉みたいにできるわけじゃないんだから.....」

 

姉に似て気がきくやつなんだなぁ.....

 

「そう言わずにまずは試してみようよ、紗夜とかは名前で呼べてるんだし」

 

こんなコミュ力いったいどこで手に入るの?

わかるんなら今すぐそこに行くんだけど?

 

「わかったよ.....リサ」

 

「.....」

 

え?なに黙られるとなんかきもがらてるみたいで傷つくんだけだ.....

 

「えーと、どうした?」

 

「いや、あたしも父親以外の男の人に名前呼び捨てにされた方ないからさ.....少し照れちゃった」

 

なんだその理由ラブコメがなんかか現実でそんなことあるわけないけどさ。

 

「そ、そういえばさっきの質問に戻るけどケントは何か楽器やってたりとかするのか?」

 

日和った俺は一度場をリセットするためにケントに話を振る。

 

「オレはピアノを.....」

 

「結構小さい頃から続けてるんだよね?」

 

「ま、まぁ.....」

 

この姉弟も仲が良さそうだなぁ.....

それにしてもピアノ経験有りか.....

 

「すごいな、俺はギター歴そんな長くないからな」

 

「いえ、八幡さんのギターは本当に凄いですから!」

 

なんか本当にいい子だな、まじで俺の弟にならないだろうか?

 

「ありがとな」

 

「それで八幡はどこに向かってるの、見たところこれから練習?」

 

「ああ、今日からCiRCLEってところで練習することになってる」

 

「え?あたしたちもちょうどCiRCLEに向かってたんだよ〜!」

 

「自主練か?」

 

「それもあるけどケントほっとくとずっと部屋にいちゃうからさ。あたしの自主練に付き合ってもらおうかと思って」

 

「リサ姉はいつも強引......」

 

なんだ、本当にケントと俺は気が合うな。

俺も部屋大好きで必要ない限りは引きこもりがちだし.....

あれなんだろう、涙が......

 

「八幡どうしたの?」

 

「いや、気にするな」

 

「そっか、それじゃあどうせ向かうところ同じだし一緒に行こうよ」

 

いや姉も気がきくな、深い詮索はしないでスムーズに話を変えやがった.....

 

「ああ、じゃあそうするか」

 

別に断る理由もないしな。

 

「ケントもいいよね?」

 

「うん」

 

こうしてかなり珍しい組み合わせとなってしまった俺なのだが不思議と前のような不安とかがないんだよな。

人と関わるのが怖く無くなってきたっていうかさ。

 

「そういやケントに練習を手伝ってもらうって言ってたけどケントは

キーボード引けたりするのか?」

 

「あ、はい一応.....ですけど」

 

「ふふ、ケントはね八幡たちの演奏を見た後突然キーボードの練習をし出したんだよ?」

 

「リサ姉、余計なこと言わないでよ......」

 

ケントは照れているが俺はさらに嬉しいような気分になっていた。

俺たちの演奏がきっかけでまたどこかでこうやって新しい音が生まれる.....これって幸せなことだと思うんだよな。

 

それとなんだろうな.....俺にさっきから一つの衝動が生まれてるんだよな。

ほんと感覚的な話でしかないのだが......

 

「お前と演奏してみたいな、いつか」

 

なんかこいつとはうまくいきそうな気がする、証拠なんてないけどな。

 

「おおーケント八幡から誘われるなんて超レアじゃん!」

 

「おい、まるで人をコミュ障男みたいに言うな......」

 

あれ?間違ってなくね?

 

「そ、そんな恐れ多いというか......」

 

「せっかく誘ってもらったんだし演奏してみればいいじゃん」

 

「で、でもまだオレ初心者だし.....」

 

「そんなの関係ない、俺がただそう思っただけだからな」

 

自分でも驚くほどに俺はケントに話しかけていた。

 

「そこまで言うなのなら......オレにとって願ってもない話ですし.....」

 

「最初から素直にそう言えばいいのに〜」

 

「リサ姉、うるさいよ......」

 

そんなこと言ってながら照れてリサの顔を見ないあたりこいつも姉のこと好きなんだろうな。

 

「八幡はCiRCLE初めてなんだっけ?」

 

「ああ、Roseliaはそうじゃないのか?」

 

「うん、あたしたちはspaceの予約が取れない時とかに使ってたよ」

 

「ほんとリサ姉もユキ姉も毎日のように練習してるからちょっと不安」

 

うっわなにこのいい子!

てかユキ姉って誰だ?

 

「友希那とか紗夜は本当に休まないからあたしも不安だよー」

 

あ、湊のことね。

ユキ姉.....なんか響きいいな。

 

「いやユキ姉が練習するときリサ姉も練習してるんだからさ.....」

 

まぁどっちも心配にはなるわな。

....うちも似たようなブラックバンドだが.....

 

「あははケントは心配しすぎ、あたしは大丈夫だからさ」

 

「無理しすぎないようにね....」

 

うーんもしかしたらケントはシスコンの気があるのかもしれない.....

その点でも俺と同じだな!

 

「おっちょうど着いたね」

 

時間的にも話してたぶんちょうどいいくらいかな。

 

「あっ先輩!それにリサちゃん?先輩.....どういうことですか?」

 

「いや、ここに来る途中にたまたまあっただけだぞ」

 

怖えよぉ、なんでこいつらは俺が女子といると怒るんだよ.....

 

「そうだよ、それにケントもいるしね!」

 

「こ、こんにちは」

 

「え?もしかしてリサちゃんの弟?すっごくかっこいいね〜」

 

「い、いえそんなこと.....ないです」

 

だんだん喋りながら声が小さくなっていく様子はなんというか.....

 

「か、可愛い.....?」

 

なんか一色も変なスイッチ入っちゃいそうになってるんだが.....

 

「と、とにかくそういうことだからな」

 

「むぅ、それじゃあケント君に免じてそういうことにしておいてあげます」

 

「なんでそんなに怒ってるかつ上から目線なんだよ.....」

 

「別に.....怒ってないです」

 

絶対怒ってるじゃん。

でもそれを指摘すると余計に機嫌を損ねそうなのでやめておいた。

 

「ふふっ......八幡.....大変そうだね.....ふふ」

 

お前はお前でなにをそんな笑ってるんだ。

 

「それより一色後の2人はまだ来ないのか?」

 

特に雪ノ下がまだいないのはかなり意外なんだけど......

 

「なんか少しギリギリになるかもしれないって言ってましたよ?」

 

「そうか、ならまた後で揃ってから話したいことがあるけどいいか?」

 

「断ってもたぶん勝手に話しますよね.....」

 

「別になんか悪いことがあるわけじゃないしむしろ得な話だぞ」

 

「ええー」

 

こいつ信じてないな、全くなぜ多くの人は真実ほど目を背けるのだろうか。

 

「それじゃああたしはもういくね、練習しないとだし」

 

「ああ、またなリサ」

 

「うんまたね八幡」

 

そう言うとリサはCiRCLEの中へと姿を消した。

てかここにケントがなかった時点で俺の話したいこととか見え見えだよな.......

 

「......」

 

とか思ってたら一色さらに不機嫌なんですけど?

なんで?

女の子の機嫌で山の天気より不安定くらいじゃないの?

そんなレベルですらなくて普通に理由がわからない。

 

「あの、一色?」

 

「なんですかね?」

 

うっわー言葉の要所要所にトゲが見え隠れしてる......

 

「いや、なんかあった?」

 

「別に、先輩には関係ないです」

 

地味にこう言う態度ショックだからやめて欲しいんだけど......

 

「まだ私たちは名前呼んでくれないのに......」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「なにも言ってないです!」

 

「お、おうそうか」

 

怖え怖えよぉ......

 

「大変なんですね.....」

 

あ、なんか俺奥沢の気持ち少しだけわかったかもしれんわ......

 

「比企谷君、一色さん遅れてごめんなさい.....あら?比企谷君、その子は?」

 

「あれ?いろはちゃんなんかご機嫌斜め?」

 

「そんなことないよ」

 

「あはは......」

 

どうやら一色は感情の手綱が効かないらしく由比ヶ浜に対しても若干トゲが残ってしまっている。

 

「もう一度聞くけれどもその子は誰かしら?」

 

「あ、ああこいつはケント、リサの弟だ」

 

「こ、こんにちは」

 

「リサ?ああ今井さんのことね。いつの間に名前で呼び捨てにするほど仲良くなったのかしら?」

 

あ、やべまたなんか地雷を踏んだかも.....

雪ノ下の機嫌も氷点下に......

 

「あの、由比ヶ浜?」

 

困り果てた俺はとりあえず由比ヶ浜に助け舟を求める。

 

「しーらないっ!」

 

あっれー?なんか由比ヶ浜まで不機嫌だぞ?

なんで?

 

そうか、つまりこう言うことなのか......

 

やはり俺が名前を呼び捨てにするのはまちがっている......




今回はここまでです。
今回から参加した新キャラ、ケントの登場で八幡たちがどうなっていくのかお楽しみください。

そして、やはりオリキャラが無理、という方は申し訳ないですが前回の話を最終回としておいてください......
そうなってもいいように書いてきたつもりなので......

感想評価など励みになるのでよければお願いします。
それでは今回の最後はケントの自己紹介を.....

「あ、あのみなさんこんにちは今井ケント.....です」

「ほーらケントそんなに緊張しないで」

「そ、そんなこと言ったって.....」

「それじゃああたしからいくつか紹介するね」

「い、いいよオレが任されたんだから.....」

「おっ!珍しかやる気だねーそれじゃあケント頑張ってね」

「オレは今中学3年生で.....来年は相武高校を受験するつもりです.....小さい頃からピアノをやっていて.....最近八幡さんたちのライブをみてキーボードを始めました......」

「ちなみにケントはピアノでいくつも賞をとっちゃうくらいの実力なんだよ〜」

「リサ姉余計なことは言わないで......そんな大したことじゃないから.....」

「そんなこと言って〜」

「ほら、もう尺がないから.....」

「いやーそれにしてもケントも成長したねー、よしよし」

「ふにゃ.....ってやめてよリサ姉に撫でられると力抜けちゃうんだから.....」

「えーだって撫でたいしいいじゃん」

「そういうことじゃないんだって.....とにかくこれからよろしくお願いしますね」

「ケントのことよろしくね〜」

「もう、やめてってば.....」


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第45話

オリキャラが入ると全て考えないといけないので大変だけど面白いですね。
それと章をわかりやすく二つだけにしてしまいました、ご了承ください。

バレンタインガチャは.....30連爆死でした.....
ゲームですら....チョコが.....もらえない.....なんて.....


雪ノ下たち3人の機嫌を直すのに相当な時間を要したがなんとか直したところでようやくケントのことを紹介する。

 

「.....てわけで今日こいつと演奏してみてもいいか?」

 

「あたしはいーよ、リサちゃんの弟の演奏なんて興味あるし!」

 

「私も別にいいですけど.....」

 

問題は雪ノ下が許してくれるかなんだが......

 

「そうね、たまにはそういうことをしてもいいかもしれないわね」

 

「あ、ありがとうございます.....」

 

とりあえず3人に受け入れてもらうことはできたようだな。

 

「てなわけでケント、今日はよろしくな」

 

かなり強引な俺の誘いに乗ってくれたことには本当に感謝だ。

 

「いえ....どうせ姉の練習に付き合う予定でしたから」

 

そう言われたら後でリサにも礼を言わなきゃな.....

 

「それにしても比企谷君が突然他の人と演奏したいと言い出すなんて明日は槍でも降るのかしら?」

 

「いや、せめて雪を降らさせて?」

 

槍降ったら俺とか突き刺さっちゃうじゃん。

てか絶対お前はまだ何持ってるだろ。

 

「いや、なんとなくな」

 

「へえーヒッキーにもそんなことあるんだ」

 

なに?こいつらは俺をなんだと思ってるの?

 

「とりあえずケントまずお前がどんな風に演奏するのか聞かせてもらえないか?」

 

「え?オレ1人でですか?」

 

「ああ」

 

「さすがにいきなり1人はハードル高いんじゃないですか?」

 

「頼む」

 

「そこまで言うのならいいですけど.....」

 

「ケントもいいか?」

 

「はい、さっきも言ったんですけどあまり期待はしないでくださいね?」

 

正直なところそれは無理な話だろ、俺はお前に期待したからここに連れてきたんだから。

 

「少し準備させてもらってもいいですか?」

 

「ああ、できたら言ってくれ」

 

そりゃいきなりほとんど初対面の俺たちの前で弾くのだから緊張くらいするだろう。

 

「ヒッキー本当に変わったね〜」

 

「そうね、前なら確実にこんなことはしなかったでしょうし」

 

「いいことなんですけどやたら女の子と仲良くなり始めてるのはどういうことなんでしょうかね?」

 

「本当にこの間のライブの時だってほとんど全部のバンドの女の子と知り合いだったもんね」

 

「.....それになぜかあのコミュ障の比企谷君が普通に喋れるようになってしまったのよね.....」

 

いいことだろうが。

俺だっていつまで経ってもコミュ障でいいなんてほんの40%くらいしか思ってなかったからな。

 

「あの、準備できました」

 

なんて知らぬ間に俺が女子3人の中でディスられ始めた時にケントが準備できたようだ、いろんな今でナイスタイミング!

おかげで俺のメンタルは守られたぞ!

 

「そうか、じゃあいいか?」

 

「はい、本当に期待しないでくださいよ」

 

そう言ってケントはキーボードを弾き始めたのだが始まってすぐに俺はあることに気づく。

 

このリズム.....この間ライブで俺たちが演奏した曲とぴったり合う.....

しかも.....多分だが俺たちの演奏と合わせたらしっくりくるものとなるだろう。

つまりケントは俺たちの演奏を一回聞いただけでその曲に合うキーボードを考えたことになる。

何回も聞けば俺もできるかもしれないが一回でそれをやってのけたケントは俺以上の才能の持ち主なのかもしれない.....

 

俺とほぼ同時に3人もこの事実に気づいたらしく4人揃って目を合わせて驚愕の表情を浮かべる。

もしかしたら俺は想像していたよりもとんでもないやつを見つけてしまったのかもしれない。

 

「どうでしたか?」

 

演奏が終わりケントは不安そうに俺たちにそう言ってくる。

 

「.....一つだけいいかしら、今弾いていたのは.....私たちの曲よね?」

 

「そ、そうです。こんな風に弾いたら合うのかなって考えてましたから.....」

 

即興ではなかったにしろ充分に驚異的なことである。

 

「な、何か変でしたか?」

 

「いや、そんなことはないぞ」

 

それどころか....

 

「ケントすっごいじゃん!」

 

由比ヶ浜は興奮気味にそう伝える。

 

「シンプルに私も音を合わせたくなりました」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

由比ヶ浜と一色に褒められてケントは嬉しそうな表情を見せる。

 

「比企谷君の予感はやっぱり外れるのね、想像以上だったもの」

 

「ああ、まったくだ」

 

まぁ普段は悪い方向にはずれるのだが.....

 

「雪ノ下、ケントと一緒に演奏してみようぜ」

 

正直言って俺は早くこいつと音を合わせたい。

さっきからその衝動がどんどん大きくなってきて抑えきれそうにない。

 

「まったく、こういう時ばかりやる気を出して....」

 

「でもあたしもラッキーと同じ気持ちだよ、ゆきのん」

 

「私もです、あんなの見せられたら血が騒いじゃいます」

 

「ケントももう一度大丈夫か?」

 

「はい、オレは問題ないです」

 

「はぁ....相変わらずあなたたちはせっかちね」

 

「そういうお前だってさっきからちょっとうずうずしてるだろ?」

 

「.....そんなことないわ」

 

図星だな。

雪ノ下にしてはわかりやすかったからこいつも冷静を装って実は1番興奮してるのかもしれないな。

 

「それはおいといてはやく演奏しようよ!」

 

子どものように待ちきれない由比ヶ浜の言葉にもう反応する人間などこの場にはおらず全員が演奏を始めようと構える。

 

ああ、なんだろうなきっとこれから俺たちが演奏するこの曲はきっと今までで1番なものになる、そんな感じがする。

 

*****

 

「.....」

 

演奏が終わったあと俺たちは全員余韻に浸り一言も喋ることはなかった。

だが全員が同じことを感じていただろう。

 

「....なんだか最初にあたしたち4人で演奏したときのこと思い出したよ」

 

「私も....」

 

そう、最初に4人で演奏した時と同じような感覚なのだ。

要するに....ケントを入れての演奏は俺たちにとってなんの違和感もなくより良いものとなったということだ。

 

「ケント、お前はどう思った?」

 

俺はとてつもなく身勝手なことを考え始めていた。

そう、ケントを.....アブアルにスカウトしようと考えだした。

 

「.....比企谷君、私たちはなにも言わないわ」

 

どうやら俺のがなにをしようとしてるか3人には伝わったらしく3人も俺と同じことを考えているようだ。

 

「オレは.....楽しかったです......なんだか世界が輝いて....今も心臓が、鼓動の音が治まりません.....」

 

そうか、こいつも戸山がよくいうあの感情の持ち主だったか。

尚更こいつと演奏したくなってきた。

 

「なぁケント今すぐに答えを出さなくてもいいんだが.....俺たちのバンドに入らないか?俺たちはお前と演奏したくなっちまった」

 

「え.....そのオレなんかでいいんですか?」

 

「ああ、お前がいいんだ」

 

あらやだ俺ったらなんだかプロポーズしてるみたい。

 

「だけどこの場で結論を出さなくていい、この決断はこれからの生活にも大きな影響があるしな.....俺たちは1週間後にまたここで練習をするんだが.....もしお前が俺たちと演奏したいって思ったのならまた来てくれ」

 

「はい....」

 

「それじゃあ、お前はリサのところに行ってやれ。流石にずっとお前を借りたままじゃ申し訳ないしな」

 

「そうね、私たちも比企谷君と同じ考えよ。できればしっかりと考えて欲しいわ」

 

「わかりました、その今日はありがとうございました」

 

そう言ってケントはスタジオを出て行った。

 

「先輩珍しく気を使いましたね」

 

「まるで人がなにも人に気を使わないみたいな言い草やめて?」

 

「え?違うの?」

 

「本気で聞いてくるのやめて?」

 

そんなに俺印象悪いの?

 

「2人とも騙されてはだめよ、この男が気を使ったわけないじゃない」

 

「おい、まぁその通りだけど.....」

 

「え?先輩まさかとは思うんですけど普通に『生半可な覚悟やつなんていらない』みたいな感じでアレ言ってました?」

 

「ああ」

 

「うわっ.....」

 

引かないで?

 

「いや、落ち着いて判断しないとあとあと後悔したりすることになっちまうだろ?」

 

「ヒッキーがまともなこと言ってる.....」

 

「お前にだけは言われたくないわ」

 

「はぁ!?ヒッキーそれどういう意味!?」

 

「そのまんまだわ」

 

「とりあえずその男の言ってることは無視して次は言っていいかしら由比ヶ浜さん?」

 

俺の扱い、いつになったら改善されるんだろうか?

 

「あ、うんいいよ」

 

由比ヶ浜は基本的に明かりが継続しないタイプなのでこういう時は非常に扱いやすい。

 

「とにかくどちらにせよ私たちのやることは変わらないでしょう、だから私たちは変わらずに練習しましょう」

 

「そうですね、ケント君がどうなるかわからないですし」

 

「そうよ、わかったなら練習を再開しましょう」

 

「ああ」

 

そう言って俺たちの練習はそれから数時間にわたって行われるのだった.....

 

*****

 

八幡さんたちと演奏してから胸がずっと興奮しているな。

しばらくは落ち着きそうにないや。

 

「それにしても....オレがアブアルに誘われるなんてなぁ.....」

 

こないだライブを見た時俺は一瞬で八幡さんたちのファンになっていた。

そんな憧れの存在から直々にオレが....

そう思うと顔が思わず緩んでしまう。

だけどリサ姉の前でそんな顔してたら全部バレそうだからしっかり気を引き締めてからリサ姉がいるスタジオのドアを開ける。

 

「リサ姉、ただいま」

 

「あれ?ケント戻ってきたんだ」

 

「うん、八幡さんたちとの演奏が終わったから」

 

「そっか、それでどうだったアブアルとの演奏は?」

 

「うん、すごい....楽しかった」

 

「その様子だと本当に楽しかったみたいだね、よかったよかった」

 

そう言いつつリサ姉はオレの頭を撫でようとしてくる。

昔からリサ姉はオレのことをよく気にかけてくれる。

人見知りであまり友達がいなかったオレをよくユキ姉ともども連れ出したのはよく覚えている。

正直リサ姉はわりとブラコン気質があるとオレは勝手に思ってるんだけど。

 

「そろそろ子ども扱いもやめてよリサ姉」

 

「そんなつもりあたしにはないんだけどな〜?」

 

無自覚なところがまたなんというか.....

 

「それじゃあ早速で悪いけどあたしの練習にも付き合ってくれる?」

 

「うん、もとよりその予定だったし」

 

「ふふ、ありがとうね」

 

でも、こうやって笑っていてくれるならいいやって最終的に思ってしまうあたりきっとオレもリサ姉のことを思ってるんだろうな。

 

「たださ、その代わり帰ったらオレの相談にのってよ」

 

「そんなことわざわざ言わなくてもいつでも聞くって、なんならこの後の休憩時間とかでもいいよ?」

 

「じゃあそうしてもらおうかな」

 

八幡さんたちに誘われたと聞いたらどんな反応をするんだろうか、きっと自分のことのように喜んでくれるんだろうな。

そんな優しい姉のためにもオレも頑張らなくちゃな。

そう思いつつオレはまた準備を始めるのだった.....

 

*****

 

 

「ただいまー」

 

「お帰りお兄ちゃん、今日はいつにも増して帰りが遅いね」

 

「ああ、まぁ色々あってな」

 

まさかケントと演奏してた時間を延長してまで練習するとは.....

そのおかげで相当くたくただ。

夕飯までの時間はほとんどないかもしれない。

 

「んーやっぱり前よりはマシだけど疲れるとお兄ちゃんの目が腐るんだよねー」

 

「うっせほっとけ」

 

これでも前に比べれば相当澄んでるんだから。

 

「でもなんか今日はいいことがあったでしょ?」

 

「は?なんでわかったんだ?」

 

「だって小町はお兄ちゃんの妹だもん!今のは小町的にポイント高い!」

 

なにこの子めっちゃ可愛いじゃん。

俺の妹離れできる確率さらに下がったけどいいの?

だめでも離れないけど。

 

「そんなにわかるもんか?」

 

「わかるものだよ〜」

 

「まぁいいことが起こるかもしれないって感じなんだけどな」

 

「どういうこと?」

 

首傾げてるのも可愛いなちくしょう。

 

「まぁまずは.....」

 

それから俺は小町にケントとの出会いを端的に話す。

最近何かと説明する機会が多かったせいかこういう説明もわかりやすくなったと我ながら思う。

あら、知らぬ間に社畜スキルがまたあがっちゃってる。

 

「リサさんって弟いたんだね、いいなー小町にリサさんみたいな人がよかったなー」

 

「悪かったなこんな兄で」

 

そういう一言はわりと本気で人を傷つけるから気をつけよう?

 

「でもお兄ちゃんがそんなに人を褒めるなんて珍しいし小町もケント君の演奏聞いてみたいな」

 

「いやほんとまじですごいから」

 

「お兄ちゃん、語彙力大丈夫?」

 

小町に....それを言われた.....

 

「お兄ちゃん今すっごく失礼なこと考えたでしょ?」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

「むぅ、お兄ちゃん小町だってお勉強してるんだよ?」

 

いや最近はバンドの練習でだいぶ時間減ってただろ、とは思ったがそれを言わない俺まじ優しい。

 

「まぁ多分いつか聞けるだろ」

 

「まだわかってないのにずいぶん自信あるんだね?」

 

「ああ、だってあいつはこっち側の人間だろうしな」

 

「こっち側?」

 

「演奏が大好きな奴ってことだ」

 

「そっか、それなら大丈夫だね!」

 

正直俺は1週間後にあいつがまた来てくれると信じている。

 

「小町たちも明日また練習だったか?」

 

「うん、そんな話を聞いたら小町もまた頑張らないとね」

 

「バンドもいいけど勉強もしっかりしろよ」

 

一応小町に釘さしておく。

 

「そんな話は聞きたくなかったよ.....」

 

「現実を見ろ」

 

「お兄ちゃんに言われても説得力ないよ.....」

 

一瞬で小町のテンションを下げるとか受験の効果ってすげーわ。

 

「.....バンドを続けるためにも頑張らないとだぞ」

 

俺もなんだ数学の追加のために練習に遅れたか.....

 

「はーい」

 

返事をするあたり小町にも自覚はあるのだろう。

 

「それじゃあまた夕飯の時に呼んでくれ」

 

「わかったよ」

 

そう小町に言い残しておき俺は自分の部屋に向かう。

部屋に入ったら荷物を放り出しすぐにベッドにダイブ、これ疲れたらみんなやるよな?

 

「はー、何かと疲れたな.....」

 

なんて言いながら眠いから夕飯までの時間は寝ようかな.....

とか思って自分の携帯のアラームをセットしようとしたところでメッセージが届いていることに気づく。

 

「誰からだ....?」

 

最近はそれなりに知り合いも増えて連絡先を交換したりしてるので前に比べれば格段にメッセージの量も増えている。

いつも通り日菜からのメッセージかそれとも雪ノ下たちからの今後の予定か......

 

「ん?リサからか?」

 

別にそんなに頻繁に話したりしないがリサとは連絡先を交換しておいた。

なになに.....

 

『八幡今日はケントがありがとうね〜!ケントすっごい喜んでたよ!』

 

ちなみにこれは要約したもので本来のメールは顔文字やらなんやらで

慣れてない俺からしたら若干読みづらい。

 

『こっちこそ楽しかったぞって伝えといてくれ』.....と

 

『オッケー!それとケントから聞いたんだけど八幡ケントをスカウトしたんだって?』

 

いや返信早いな、この秒数でどうやったらこの分量を打てるんだよ?

 

『ああ、俺たちの演奏がより良いものになれるって思ったからな』

 

『ケントから聞いてあたしもびっくりしちゃったよ』

 

『そんなに意外か?』

 

『うーん八幡が誘ってきたっていうのが意外だったかな?』

 

『自分でもそう思うわ』

 

『八幡はケントがどうすると思う?』

 

『さぁな、それは本人の決定だろ?』

 

『そっか、八幡ありがとうね』

 

『なにがだ?』

 

『ケントを外に連れ出してくれてだよ』

 

『礼を言うにはまだ早いだろ』

 

『いいじゃん、お礼を言うのにタイミングなんていらないよ』

 

『なら受け取っておくわ』

 

その後も少し世間話が続いたがリサがこの話をまたしてくることはなかった。

 

*****

 

こうして話してると友希那が八幡に惹かれたのもなんかわかるな〜。

正直ケントからスカウトされたって聞いた時には驚いたけど八幡たちなら心配ないし、引きこもりがちなケントにとっては新しいものに挑戦するいい機会だしね〜。

 

「リサ姉、ちょっといい」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

なんて思ってたらちょうどケントが来るんだね。

 

「さっき話したことだけどさ」

 

「ああ八幡たちに誘われったってやつね」

 

「うん、やっぱりもう一度リサ姉に聞いておきたくてさ」

 

「なにを?」

 

「リサ姉はバンドに入ってどうだったかって」

 

「....これはあたしの意見でしかないけどさ。あたしは今が今までの中で1番充実してるって思ってるよ。そりゃ練習とかで時間は取られるし大変なこともあるけど....みんなで一つの目標に向かって頑張るのは....やっぱり楽しいよ」

 

「そう....」

 

ケントは考えるような顔をしてるけどあたしにはわかっちゃってるからね〜。

 

「ケント、やりたいことをやりたいって言えなかったことって必ず後悔しちゃうよ」

 

「うん、もう決めたよリサ姉ありがとうね」

 

「よしよしケントがんばって」

 

そう言ってあたしはケントの頭を撫でる。

最近はケントはあたしに撫でられるのを嫌がるけど決して拒んではこないのが可愛いところだよね。

 

「ふにゃ.....だから撫でるのはやめてって.....」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

「まったくもう.....」

 

ケント、あたしたちがゆっくり2人で過ごせる時間もそんな長くないかもね.....

でも、あたしはケントのこと応援するからね!

 

*****

 

そして約束の1週間がたった。

俺たち4人はいつも通りにスタジオに入り準備を始める。

 

「ねぇヒッキー、ケント君から連絡あった?」

 

「いや、リサから一度あったきりだな」

 

「そう、あなたそこまで親密になっていたのね?」

 

「い、いやたまたまだから....」

 

阿修羅像が見えるんですけど.....

 

「ケント君来てくれますかね?」

 

「もう直ぐ結果はわかるだろ?」

 

俺たちがそんな会話をしているとドアが開く。

 

「はぁはぁ.....すいません遅れました.....」

 

「待ってたぜ、ケント」

 

「八幡さん....皆さん....オレをこのバンドに入れてください!」

 

「お願いしたのはこちらなのだし断るなんてことはしないわ」

 

珍しく微笑んで雪ノ下はそう言う。

 

「そうそう、遠慮なんてしなくていいんだよ」

 

普段は末っ子的なポジションの一色も若干年上ぶってるな。

 

「あたしたちは大歓迎だからね!」

 

相変わらずなのは由比ヶ浜だけか。

ケントの加入でどうなるかは誰にまだわからないが.....

 

「よろしくな、ケント」

 

今までより楽しくなりそうだ。

そうなんとなく思った。




今回はここまでです。
ケントが加入したので次回からはまたバンドリのキャラも出していっていきますよー。
そしてあらかじめ言っておきますが2月が終わるまでリアルが忙しくなるので2月中に更新できないかもしれませんが気長に待っていてくれると嬉しいです。

感想評価など励みになるので良ければお願いします。
今回からまた次回予告再開します。



「オレなんかがもう次回予告やっていいんですか?」

「安心しろ、むしろ俺なんかよりお前がしてくれることをみんな望んでるから」

「よくそんなことを真顔で言えますね.....」

「慣れっこだからな、お前は人間関係とか苦労しなさそうでいいな」

「そんなことないですよ.....友達はあまりいないし女子なんてオレがそっち見るとみんな顔を逸らすんですよ」

「ナチュラルにそんなこと言われると腹も立たないんだな.....」

「何か言いましたか?」

「いや、なんでもないから次回予告しちゃってくれ」

「は、はいそれでは次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『なぜ比企谷八幡はここにいるのか?』ですお楽しみに」

「俺たち2人はほんとうにまきこまれなんだよな.....」

「どういうことですか?」

「次回なればわかる」

「なんかメタいですね.....」


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第46話

ノーブルローズでイベランを久しぶりにしたので疲れました.....
それでも3000位くらいが限界でしたけど.....
あとごめんなさい、今回もう1人オリキャラっぽい人が出ます。

あと今日ついにRASとましろちゃんの追加フラグ来ましたね。
自分は素直に楽しみです。
そんなこともあってバンドリが3周年ですね、今から楽しみです。


ケントが加入してから1週間があっという間に立ちその間に数回練習があったがどれも今までにないくらい充実したものだった。

 

「はぁ.....」

 

その日も練習が終わりオレはいつも通りのため息をつく。

 

「どうしたんですか、八幡さん?」

 

マジすぐに心配してくれるケントは聖人.....

 

「気にしなくていいわよ、その男基本的に毎日ため息をついているから」

 

それに比べてこいつときたら.....

 

「ばっかお前俺は無意味にため息ついてるわけじゃないから」

 

「じゃあなんでそんなため息つくの?」

 

「それはあれだ、俺だけ世の中ハードモードだからだ」

 

「なに言ってるんですか.....」

 

最近前よりさらに女子3人からの扱いがひどいんだけど.....

 

「そういやケント、お前の八幡さんって呼び方やめないか?」

 

「え?どうしてです?」

 

「いや、もう同じバンドなんだしさ。正直そういう呼び方は慣れてないからむず痒い」

 

「そうですか....じゃあなんで呼べばいいですか?」

 

「それは別に変な呼び方じゃなきゃいいぞ」

 

「うーん」

 

そんな風に悩む姿もなんというか本当に弟がいたらこんな気分なのかとか考えてしまうのは俺だけじゃないと信じてる。

 

「なんで自分がそうなのに私たちのことは無視なんですかねー」

 

「いろはちゃん、ヒッキーに期待するだけ無駄だって」

 

「そうね....」

 

なんだか女子たちだけで話してるのを見ると最近恐怖が走るのは俺が悪いのだろうか?

いやそんなはずはないな。

 

「そうですね....ハチ兄とか?」

 

「....」

 

「す、すいません変でしたよね....オレ、周りの年上はだいたいこんな感じで呼んでたので....」

 

「いや、別にいいぞ」

 

ただ純粋に響きが思いの外しっくり来てびっくりしてただけだし。

 

「えーヒッキー1人だけはずるい!」

 

「じゃあ、ユイ姉?」

 

「.....いい!その呼び方いいよケント!」

 

落ち着け由比ヶ浜、言動が変態っぽいぞ。

 

「えーそれじゃあ私も〜」

 

「いろは姉?」

 

「確かにこれはなかなか.....」

 

なんかどんどんケントがこのバンドでの弟枠が定着しつつあるんだけど.....

 

「.....」

 

なんか雪ノ下も無言でこっち見てるけど.....

 

「お前も呼ばれたいのか?」

 

「急になにを言う出すのかと思えば検討外れもいいところね、もう少し考えてから物事を言ってはどうかしら?」

 

.....図星か。

雪ノ下、もうみんなわかってるから不用意に俺を傷つけるのやめよう?

 

「でも、ユキ姉って呼ぶと被ってしまうんですよね」

 

ああそういや湊のこともそう呼んでたな。

 

「.....そう、別に私はどうでもいいのだけれど」

 

あからさまにがっかりされるのもなんかな.....

 

「じゃあ別のところから取ればいいんじゃない?」

 

「と言っても.....」

 

「キノ姉?」

 

なんか新鮮だな、それ。

 

「別に、私はそか呼んでも構わないわ」

 

あ、めっちゃ喜んでいらっしゃる.....

雪ノ下は関わるとわかるんだけど意外とポンコツなところがあるというかなんというか.....

 

「それじゃあ俺次回の予約とってくるわ」

 

「はい、お願いしますね」

 

そうして俺は一足先にスタジオを出て受付へと向かい予約を済ませていると。

 

「あ、八幡君、練習お疲れ様」

 

「うす」

 

「最近アブアルがんばってるね〜」

 

俺と話しているこの人は月島まりなさんこのライブハウスで働いている人だ。

フレンドリーな人でこうしてよく話しかけてくれる。

その隣に男の人がいることがあるがその人は名前も知らない。

 

「はぁ君たちが出れたらよかったのに......」 

 

「なにがですか?」

 

「それはね.....」

 

そうきてまりなさんが話してる途中のこと。

俺の平和が壊れる時には、いつもあいつの声がする.....

 

「こんにちは〜!」

 

.....よし、逃げよう。

 

「わっだ、誰?」

 

「私、戸山香澄って言います!はじめまして!」

 

「はぁはぁ.....すいません....この子が急にお邪魔してしまって....」

 

本当にお疲れ様としか言いようがねぇ....

っと、めんどくさいことになる前に逃げなくては.....

 

「あれ?八幡先輩!こんなところで会うなんてすっごい偶然ですね!」

 

「.....」

 

一度無視してそのまま逃げようと試みるものの.....

 

「ちょ、ちょっと無視しないでくださいよー!」

 

確保.....されたか。

 

「八幡先輩、毎度毎度すいません.....」

 

「謝るな、お前は悪くない.....」

 

「えーと、八幡君の知り合い?」

 

「あ、はい」

 

「あはは、とりあえず私たち自己紹介したほうがいいんじゃないかな?」

 

てか気付けばポピパ勢揃いである。

そして自己紹介の最中に最も驚いたのは男の人の名前が判明したことである。

 

「ボクはユウト、よろしく」

 

なんかわからないけどちょっとスッキリしたわ。

 

「ここでPoppin'Partyに会えたのはラッキーだったな〜」

 

「え?なにが?」

 

そして初めてユウトさんの声聞いたわ.....

そしてまりなさんと2人でこそこそ話し出すが位置的に俺には聞こえてしまう。

 

「なにがって、ライブだよ、ライブ。この子たちにイベントに出てもらおうよ」

 

「ああ、なるほど。でも急じゃないかな?」

 

この人意外と天然なのか?

 

「急もなにもとにかく出演者をつかまえないと!だから早く君からみんなに声をかけてよ」

 

「わかったよ」

 

「ええっと戸山さんちょっといいかな?」

 

「はい!なんですか?」

 

そういうとユウトさんは戸山たちに説明を開始する。

要約するともうすぐガールズバンド限定のイベントがあるらしく現在参加者がいないから出てくれないか?というものだ。

さっきまりなさんが俺に言ってきたことはこのこのか。

 

「出ます!」

 

あ、即答なのね。

 

「ちょ、ちょっと待てよ香澄。もう少し詳しく聞かないとわかんねーだろ」

 

「というわけでもう一度詳しく聞いていいですか?」

 

「うん、えっとね.....」

 

そうしてより詳しいことも含めて説明してくれるユウキさん、意外と説明はわかりやすい。

 

「えっと.....つまりどういうこと?」

 

あ、ここに想像を絶して理解力のない子がいたわ。

 

「いやわかれよ!」

 

「あはは.....」

 

これにはりみも苦笑いだ。

 

「つまり私たちにライブに出ないかって言ってくれてるの」

 

「ライブイベントかぁ.....まだ初心者ですけど頑張ります!」

 

結局結論は変わらないのな、わかってたけど。

 

「こうなったら香澄は聞かないからね、出るしかない!」

 

山吹よ、お前なんか思想が戸山寄りになってない?

 

「なんか私早速弾きたくなってきた.....」

 

花園さんの思考はいつも通りのようで安心でございます。

 

「まりなさん!早速練習していってもいいですか?」

 

「もちろん!」

 

「ハチ兄、お待たせ」

 

そこでちょうどケントたちがスタジオから出てくる。

 

「あ!結衣先輩!お久しぶりです!」

 

「やっはろー香澄ちゃん!」

 

「いろは先輩たちもこんにちは」

 

「こんにちは、たえちゃん」

 

「本当に八幡君たちが出れればよかったんだけどなー」

 

「そう言っても俺とケントの性別は変わらないので.....」

 

「どういうことかしら?」

 

「えっとそれは....」

 

「ボクから説明するよ」

 

おお、もしかしてユウトさんって解説ポジション?

実際にいると便利だな。

 

「.....なるほど確かに私たちはガールズバンドではないわね」

 

「もうちょっと前なら出れたんだけどねー」

 

「ちょっと興味はありますけど出れないものは仕方ないですね」

 

別に俺が出れないのはいいんだけどこいつらだけで活動していた時期もあるんだし出てもいいとは思うんだけどな。

 

「本当に残念だよ〜。まだ参加してくれるバンドが全然集まってなくて困ってるんだよね.....」

 

そらならこいつら3人で出てもらうのも考えなきゃいけないかもな.....

 

「それなら私たちの方で何組かお願いしてみますよ?」

 

「そうだねあたしたちの知り合いのバンドなら出てくれるかもだし」

 

「え?本当に?すっごく助かるよ〜!」

 

まりなさん思わず感激である。

 

「.....オレたちもできることがあれば手伝うので何かあったら遠慮せず言ってくださいね」

 

ケント、お前どんだけいいやつなんだよ.....

そういう面倒見の良さが見えるのはリサの弟というのがわかるな。

 

「そしたらその時は頼むよ」

 

ユウトさんも見てると真面目に働いてるもんな〜。

俺は絶対にああはならない。

いまだに将来の夢は専業主夫だからな!

 

と決意を新たにして俺は帰宅するのだった.....

 

*****

 

「たたいまー」

 

「おかえり」

 

疲れた体に小町の声が染みるわ〜。

 

「なんか今日はちょっと遅かったね?」

 

「いや、まぁ色々あってな」

 

「ふーんどんなことあったの?」

 

そこで俺は小町にCiRCLEのイベントのことを話す。

 

「へーそんなイベントやるんだ」

 

「ああ、でも参加資格の問題で俺たちは出れないからな」

 

「それじゃあ小町たちも無理だよね....」

 

「戸塚はともかく材木座はごまかしきれないからな」

 

「お兄ちゃん、戸塚さんそれ割と気にしてるんだからやめてあげなよ?」

 

そんなに気にしてたのか.....

次から気をつけるか.....

どこまで我慢できるかは保証できんがな!

 

「残念だなぁ.....」

 

小町たちはこの間ライブをしたばかりで次のライブを早くやりたがってるだろうしな.....

 

「由比ヶ浜たちも残念がってたな、ポピパは出るって言ってたけどな」

 

「えー香澄さんたちいいな〜」

 

俺としても由比ヶ浜や小町たちが出れたらいいと思うんだけどな.....

 

「あーあいっそ雪乃さんたちとバンド組み直そうかな〜」

 

「流石にそれは無茶だろ.....」

 

ツッコミながらも俺はその可能性を割と本気で考え出していた。

まりなさん曰くまだ参加するバンドも集まっていないみたいだし.....

 

「声かけてやろうか?」

 

「ん?誰に?」

 

こいつも戸山レベルに理解力ないからお兄ちゃん、本気で心配してます。

勉強もしてるみたいだからなんも言わないけど.....

こういう気遣いができる俺まじいいお兄ちゃん!

 

「だから雪ノ下たちに小町たちとでないかって」

 

偶然にも出れない男メンバーの担当の楽器はかぶってないため二つのバンドの女子メンバーが合わされば演奏もできるのだ。

 

「え?そんなことしちゃって大丈夫なの?」

 

「多分.....」

 

「確信ないなら言わないでよ.....」

 

いやだってお前にしろ由比ヶ浜にしろなんかすごい残念がるし.....

なんとかして出れないかなとか考えたって仕方ないだろ。

 

「いや、しばらく目標があるわけじゃないし.....」

 

「でもそれでも練習しないとじゃん」

 

「まだイベントまで時間はあるし.....」

 

「その間お兄ちゃんたちはどうするの?」

 

「それは自主練とかさ.....」

 

「お兄ちゃんはそれでいいの?」

 

はぁ最終的に俺の心配をしてくれるあたり本当にできた妹だ。

 

「いいんだよ、いつも通りわがまま言ってりゃ」

 

「むぅ、小町そんな普段わがまま言ってないじゃん」

 

「そう思うならたまには言えばいいだろ?」

 

「.....なんか今日のお兄ちゃんはポイント高いよ」

 

「ふっいつも通りだろ?」

 

「いや、それはない」

 

そこは辛辣なのな......

 

*****

 

小町に提案をしたはいいがそれを雪ノ下たちにも許可を取らなければならないからな。

とりあえず明日説明するか......

なんて思っていると

 

『八幡先輩!ちょっと頼みたいことがあるんですけどいいですか?』

 

はいまた戸山は俺の平穏を奪ってくる。

 

『やだ』

 

『そんなこと言わずに聞いてくださいよ〜!』

 

『....一応聞いてやる』

 

『実は私たちまりなさんたちにバンドを集めて欲しいって頼まれたんですけど.....』

 

『断る』

 

『まだ最後まで言ってないのに!?』

 

『どうせそれを手伝えって言うんだろ』

 

『はい!』

 

『俺だって練習とかあるし無理だ』

 

『そこをなんとか〜』

 

『とりあえずこれからの予定がまだわかってないからちょっと待て』

 

『わかりました!』

 

嘘である.....

もう今後の予定は出てるし実際のところ頑張れば手伝えないこともないくらいの予定の空きもある。

だが面倒くさいからな。

 

「さて、これで面倒ごとは明日で終わるな......」

 

この時俺は安心し切っていたがこの後起こることを何も知らないのだった.....

 

*****

 

次の日の放課後練習はないのだが俺は3人を集めて昨日小町と話したことをそのまま話した。

 

「確かにあたしはイベント出てみたいけどさ.....ヒッキーはそれでいいの?」

 

「ああ、今ならケントもいるしな」

 

正直1人ならこの提案は多分しなかったが今はケントがいるのでその分提案できるだけの余裕があった。

 

「なんて言ってサボる気じゃないわよね?」

 

「そ、そんなわけないだろ」

 

本当は少しだけサボるつもりだったけど.....

本当にすこしだけ、な?

 

「どうですかね?」

 

そして信用のなさが辛い.....

 

「と、とにかく考えてみてくれないか?小町も出たがってたし.....」

 

「本当にヒッキー小町ちゃんに対しては一生懸命だよね.....」 

 

そりゃ俺ほどのお兄ちゃんはなかなかいないしな!

 

「そうね、そう言う経験をしておくのも悪くないわね」

 

「と、いうかラビワンの方の許可は取ってるんですか?」

 

「それも小町が練習の前に確認してくれてることになってる」

 

と言ってたらちょうど小町から連絡が来たな。

 

「ちょうど今連絡きたぞ」

 

「どうなんですか?早く確認してください」

 

「ちょっと待てって.....」

 

そういいメールに目を通すと.....

 

「あっち側もいいってよ」

 

メール曰く材木座がハブられて少し傷ついたくらいで話は済んだそうだ。

材木座メンタル弱すぎだろ、俺と同じような扱いなのにこのメンタルの差はなんだ?

そこ、大差ないだろとか言わない。

 

「これであたしたちライブ出れるね!」

 

「そうだな」

 

「そうなると川崎さんたちと話し合いをしなければならないわね」

 

「それはまた後日でいいだろ」

 

「そうね、それにその時にはあなたは必要ないのだし....そうねあなたはCiRCLEの人の手伝いでもしたらどうかしら?そうすればサボることもないでしょうし」

 

え?なんか不安な空気流れてきたんだけど.....

 

「今度の練習でCiRCLEの人に比企谷君を引き渡しましょうか」

 

「せめて普通の扱いをして?」

 

引き渡すって俺犯罪者じゃないんだから.....

 

ん?なんかまた連絡来たな.....

 

『八幡先輩!予定分かりましたか?』

 

せっかちすぎだろこいつ.....

 

「次はなんの連絡かしら?」

 

「いや、なんでもない」

 

「あなたがそういう時は何かある時と決まってるわ。隠すのはやめなさい」

 

「本当に何もないから.....」

 

「なら強硬手段に出るしかないわね」

 

「すいません、それだけはまじ勘弁してください.....」

 

雪ノ下の強硬手段=俺にとって最も恐ろしいことなので全力で回避する。

他の2人の視線が冷たいがそんなの気にならないレベルだ。

 

「いや実は.....」

 

そこで隠し事をせずに話す。

 

「あら、ちょうどいい仕事じゃない。どうせあなたの練習は減るのだしやりなさい」

 

もはや選択権すらない.....

 

「わかった......」

 

結局俺は最終的には逃げれないらしい。

こうして俺は面倒ごとを抱える羽目になるのだった......




今回はここまでです。
2月中に更新できてよかったです。
今回の新キャラはゲームのあなたポジションの人です、本作同様ほぼ絡んでこないのでそのうち多分出なくなりますが。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。
それでは最後に次回予告行ってみましょう!



「なんだか珍しい組み合わせね」

「そうね、まさか雪ノ下さんと次回予告するとは思わなかったわ」

「比企谷君曰く私たちは似てるらしいし、きっとそんなことで選ばれたんでしょうね」

「そんなに似てるかしら?」

「それは私にもわからないけれど任された以上次回予告だけはしっかりしましょう」

「そうね、次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『いつになく比企谷八幡は忙しい』よ」

「比企谷君、サボらず働けばいいのだけれど」

「.....八幡に対してそこまで信用がないのね」



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第47話

昨日のハロハピ放送局の3周年情報盛り沢山ですごかったですね!
16日がすごい楽しみになりました。
特にMorfonicaは期待してます、今日公開されたMVのフルバージョンもよかったので楽しみです!

みなさんが特に楽しみなのはなにかよければ教えてください。


「はぁ.....」

 

なぜ俺がこんなため息をついているのかというとこれから俺がしなければならないことの疲労を考えてのことだ。

結局あれから3日が経ったがその間に正式に俺とケントがバンドへのオファーをしに行くことが確定した。

 

と言っても俺たちが知り合いのバンドなので実際にオファーに行くのは4バンドなんだけどな。

それで手分けした方がいいという話になったまではよかったのだが.....

 

「おい待て雪ノ下、もう一回言ってくれ?」

 

「あなたにはRoselia以外の3バンドを担当してもらうわ」

 

なんで?普通に半分こでいいじゃん。

 

「今井君はRoselia以外に知り合いがまだいないからよ」

 

「そうだよ、ヒッキーだって初対面の人たちにいきなりオファーなんてできないでしょ?」

 

「そうですよ、それに先輩どうせ暇なんですしいいじゃないですか」

 

「いやお前練習が減っても色々やることあるから」

 

「ロクでもないことでしょうし聞かないわよ」

 

最近こいつら慣れてきたせいでこの先のくだりやらなくなってきたなぁ.....

ってそんなこと考えてる場合じゃなかった。

 

「それとも、あなたが今井君を無理させて知らない人に頼みに行かせたいのならこれ以上は言わないわよ」

 

そんなこと言われて人見知りのケントを行かせられるわけねぇ.....

これはいわゆる選択権を与えられてないやつである。

いや待てよ、ラビワン側にも男子はいるのだからそこに頼れるんじゃないか?

 

「材木座とかは?」

 

「彼がそんなことできると思う?」

 

ですよねー

 

「ちなみに彩ちゃんも部活の都合で無理って言ってたからね」

 

希望は......終えた.....

 

「.....全て仰せのままに」

 

いつか俺の立場がもう少し良くなることを祈りながら俺は抵抗をやめたのだった.....

 

*****

 

その後雪ノ下たちはラビワンとの練習を開始して今日はもうお役御免になった俺とケントはもう帰ることにした。

 

「ハチ兄ごめんね、オレのせいで無理させちゃって......」

 

「別にお前が気にする必要はない、最初から覚悟してたことだしな」

 

ケントがRoseliaだけというのは正直本当に予想していたことであり他のところに最初頼まれていた戸山たちが行くのかどうかが俺の勝負だったからな......

 

「それでケントはいつ頃Roseliaに話に行くんだ?なるべく頼みに行く期間揃えたいから教えてくれ」

 

「あ、オレは今週末にも行こうかなって思ってるよ」

 

「お前の場合リサに話せばそれで済みそうなのにわざわざ行くなんて偉いよな」

 

「ハチ兄に任せてるんだからオレがサボっちゃだめでしょ」

 

本当こいつはこういうところが可愛いやつだなぁ......

 

「そうか、そういやケントってリサと湊以外のRoseliaのメンバーに会ったことはあるのか?」

 

「うーん面と向かって会ったことはないかな」

 

へーそんなもんなのか。

ライブの後とかに姉に会いに行ったりしないのか。

昔の小町はすぐに来たもんなんだが。

 

「みんな優しい奴だし大丈夫だろうけどな」

 

「リサ姉に話をたくさん聞いてるから、オレもそこまで心配してないよ」

 

「とにかく頑張れよ」

 

そういうと俺はつい小町でついてしまった癖でケントの頭を撫でてしまう。

 

「ハチ兄、さすがにそれは恥ずかしいって.....」

 

「わ、悪いつい妹にやる癖が....」

 

「でもやっぱり力が抜けたりはしないんだ.....」

 

「どういうことだ?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

「?.....そうか」

 

「うん、それじゃあハチ兄オレはここで」

 

「おう、じゃあな」

 

ケントも頑張るんだし俺も働かないとな......

 

「はぁ.....」

 

しかしその後も俺のため息が潰えることはないのだった......

 

*****

 

次の週末俺は早速オファーに向かうことになり俺の最初に向かうのは

Afterglowのところである。

既に話があるということを小町を通して伝えてあるので全員揃っているはずだ。

集合場所はCiRCLEになってるから練習の前にでも聞いてくれるのだろう。

 

「で、珍しく俺が一番乗りか」

 

さすがに頼みに行く立場で遅刻はしないように家を出てきたが1番に着くとは思っていなかった。

 

「あ!もう八幡先輩いるじゃん!」

 

「モカがパン選ぶのに時間かかったから遅れちゃったじゃん.....」

 

「ふっふーモカちゃんはパンへのこだわりが強いからね〜」

 

「ごめんなさい遅れちゃって......」

 

「いや、まだ時間前だから気にするな」

 

「それでアタシたちに話ってなんですか?」

 

脱線しかけていたレールを宇田川が戻してくれる。

練習前だし手短に説明しないとな.....

 

「もしかしたら知ってるかもしれんが.....」

 

その後俺は手短に説明をして出来る限り参加してほしいという旨を伝えた。

 

「面白そう!出ようよ蘭!」

 

さすが上原、聞いた瞬間にこの反応である。

 

「CiRCLEにはお世話になってるから断るのもあれだしね〜」

 

青葉も乗り気のようだ。

 

「他にはどんなバンドが出るんですか?」

 

まぁ気になるよな。

 

「実は今俺ともう1人がこうやってオファーしてる状態だ....だからまだ確定してるのはPoppin'Partyとアブアル、ラビワンの混合バンドだけだ」

 

「なるほど....それで暇になった八幡先輩がオファーに駆り出されてるんですね」

 

一言多いわ。

 

「ちなみにこれから声をかける予定なのはRoselia、パスパレ、ハロハピだな」

 

「そうですか」

 

美竹は平静を装っているがRoseliaの名前出た瞬間のライバル意識のむき出し感がなにもごまかせていない。

 

「つぐはどう思う?」

 

「私も....出てみたいかな」

 

おお、もしなしてこのオファー俺がおもってるよりイージーモードだったりする?

 

「おっつぐも乗り気か!」

 

誰1人としては反対なしで決まったのはマジで説得の手間が省けていいな。

 

「まぁ断る理由も特にないですし引き受けますよ」

 

「もおーらんそこは素直に出たいって言うところでしょ!」

 

確かに素直に言わないと可愛げはないわな。

 

「そんなんだと八幡先輩も愛想尽かしちゃうよ〜」

 

「別にそれはどうでもいい.....」

 

「お前それ本人の前でさらっと言うのやめろ?今すぐ死にたくなっちゃうから」

 

「脅し方が斬新すぎる.....」

 

「だ、ダメですよ八幡先輩そんなことを思ったら!」

 

「羽沢、お前くらいだよ俺にやさしくしてくれるの.....」

 

「そ、そんな私は普通に接してるだけで.....」

 

そんな風に照れてるところとかマジで戸塚や小町に並んでのエンジェルぶりを発揮してる。

 

「つぐの優しさは世界一だからね〜」

 

「かといってモカは甘えすぎな」

 

「つぐーともちんが厳しいよ〜」

 

「言われたそばから甘えに行くなよ」

 

青葉さんの雰囲気独特すぎてついていけねぇ.....

 

「お前周りの人に甘やかしてもらったらと後々辛い目にあった時苦労するぞ?」

 

周りから厳しい対応しかされない俺でさえ辛いのだから。

 

「なんか一瞬すごい悲しい感じがしたんだけど.....」

 

「うん、あたしも感じた」

 

「それはともかくだお前たちは出演するってことでいいのか?」

 

これ以上話が長引くと俺のネガティブスイッチが入りそうだったので無理やりにでも話を打ち切る。

 

「はい、あたしたちは出させてもらいます」

 

「おう、まりなさんたちには俺の方から伝えるわ」

 

「ありがとうございます」

 

「最初からそう言ってばよかったのに〜」

 

「モカ、うるさい」

 

「そうだよモカ、蘭はいじっぱりなんだから」

 

「ひまりも」

 

「だなー本当に困ったもんだぜ」

 

「3人ともいい加減に......」

 

「そ、その辺でやめとこう3人とも、蘭ちゃんも落ち着いて......」

 

うん、羽沢もたいへんだな。

 

だが1つ目のバンドはスムーズに出演が決まってよかった。

 

「それじゃあ練習頑張れよ」

 

「はい、そっちも頑張ってください」

 

「おう」

 

こうしてアフグロと別れた俺がCiRCLEから出ようとした時ちょうどケントがこちらに向かってくるのが見えた。

 

「ハチ兄も今日だったんだね」

 

「おう、俺はちょうど今終わったところだ」

 

「オレはこれからだよ」

 

「俺は終わったし手伝おうか?」

 

「いやいいよ、オレが説明するよ.....けど不安だからいるだけいて欲しい.....かも」

 

「おう、任せろいるだけなら得意だ」

 

「それってどういう意味なのさ.....」

 

「Roseliaはもういるのか?」

 

「うん、オレは練習終わりに話を聞いてもらうことになってるから」

 

「俺もそうしとけばよかったな.....」

 

ほうすればもう少しゆっくり説明できたんだが.....

 

「でもハチ兄はOKもらえたんでしょ?」

 

「そうだけどなんでわかった?」

 

「いやダメだったならハチ兄は全面的にそういうオーラ出るから」

 

え?そうだったの?もしかして今まで周りの奴らが俺の感情を読めたのって俺がそういうオーラ出してたからなの?

 

「ちなみにキノ姉たちがわかるのはまた違う理由だと思うよ」

 

「お前も既に読んでるじゃねぇか.....」

 

本当に俺の心の声ってもしかして周りに聞こえてたりとかするの?

 

「ケントお待たせ〜待った?」

 

「おや、八幡さんもいるのですね」

 

「ああ、俺もケントと同じ目的で動いてるからな」

 

「なんかそれって秘密のミッションみたいでかっこいい!」

 

「.....それでお話というのは.....なんなんでしょうか?」

 

「ああ、それは今からケントが説明してくれる」

 

「それじゃあ聞かせて頂戴」

 

Roseliaはアフグロと違ってスムーズだな、話までの流れが。

 

「ケント頼むぞ」

 

「うん」

 

不安そうにしてたケントだが説明は俺なんかよりうまくRoseliaの5人も一回でわかったようだ。

 

「つまり私たちにそのイベントに出て欲しいということかしら?」

 

「うん、そうだよユキ姉」

 

「どうしますか?」

 

「あたしとしては出てみたいかな〜。まりなさんたちのお願いなら尚更ね」

 

「あこも出たいです!」

 

「ですが、この間しばらくは練習に専念すると決めたばかりでしょう」

 

「そうね、しばらくは私たちだけで目標のために練習したいわね」

 

くそ、紗夜と湊を説得しないとダメとは.....

これは攻略難易度高いぞ.....

 

「そこをなんとか頼めないか?」

 

ケントだけでは押し切れないだろうと判断した俺も加勢する。

 

「ですが私たちの時間も限られていますし.....やはり参加するのは難しいかと.....」

 

真面目な性格な奴はこういう時は本当に面倒だな。

 

「ユキ姉、本当にまりなさんたちも困ってるからそこをなんとか.....」

 

「ケントの頼みでもダメよ」

 

そして面倒なのはその真面目なやつがもう1人いることだ。

 

「ごめんね〜2人ともこの2人がこう言ってるからさ、今回は無理っぽいかも」

 

「そうか.....」

 

ここまで頑なに断られてはこれ以上押すのも無意味だろう。

 

「.....あの、すいません.....」

 

ここで今まで黙っていた白金が声をかけてくる。

 

「.....私も出てみたいんです......そのイベントに」

 

おお、ここに来て更なる援軍がきた。

 

「だよねさすがりんりんわかってる!」

 

「でもハッキリ言って私たちのメリットが少ないのです。今回は見送った方がいいでしょう」

 

「.....私は.....一概にそうとは言えないと思います」

 

「どういうことかしら?」

 

「.....この前のspaceのライブで.....いろいろなバンドとステージに立って.....それが私にとっていい刺激になりました.....それは皆さんも同じじゃなかったでしょうか?」

 

「確かにあの後はみんないつもよりもっとやる気だったもんね〜」

 

「あこもなんか他のバンドに負けずにもっと上手くなりたいって思った!」

 

「確かにあれから雪ノ下もいつもより練習がキツかったな」

 

「そうなんですか?」

 

そうか、ケントはそこから入ったからわからないのか。

 

「ああ、普段はあれよりほんの少しだが軽めの練習だ」

 

あまり期待させてはいけないので表現をマイルドにさせてもらう。

 

「で、2人はどうだったの?」

 

「確かにそれは否めないですね」

 

「そうね、私たちもまだまだだと思ったわ」

 

「.....私たちの実力を知るためにも.....出る価値があると思います」

 

このまま押し切れるか.....

 

「.....ちなみに今回声をかけてるのはあのspaceのライブにいたバンドたちだぞ」

 

追い討ちとばかりに俺が呟く。

要するに湊たちに今回のイベントのレベルが立つ価値があると思えるものだと思わせればいいわけだ。

 

「オレたちが頑張ってオファーするから信じて出てくれないかな?」

 

「.....そうねそこまで言われて断るのもあなたたちを信用してないみたいよね」

 

「.....ですね、八幡さん、私たちもそのイベントに出演させてもらえますか?」

 

「ああ、願ったり叶ったりだ」

 

「はぁ.....ハチ兄ありがとね」

 

「俺は何もしていない」

 

「そんなことないって」

 

「いや、ほとんどお前がやったことだ。胸を張れ」

 

「.....ありがと」

 

俺は感謝されるのは苦手だしこうやって人を褒めたりするのも苦手だ。

だけどケントの前では不思議とそれができる。

 

「ケント.....」

 

リサの声が聞こえるけど気のせいかな、なんか.....

 

「え?リサ姉どうして泣いてるの?」 

 

あこの言うとうりリサは目に涙を溜めている。

 

「いやだって.....ついこの前まで人見知りだったケントがそんな風に言ってくれる仲間に会えたんだと思ったらさ.....」

 

いや、俺も人のこと言えた義理じゃないとは思うけどそれはブラコンじゃない?

 

「リサ姉、流石にそれは恥ずかしいんだけど.....」

 

流石のケントも恥ずかしさ半分で後は普通に引いてそうである。

 

「よかったね.....」

 

そんなことお構いなしと言わんばかりにリサはケントに近づくとその頭を撫でる。

 

「ふにゃ.....」

 

途端にケントはまるで甘えてる猫のように力が抜けた声をだす。

 

「ケント、まだリサに撫でられるとそうなるのね」

 

「.....仕方ないでしょ」

 

まぁ確かにリサってそういうところあるよな。

なんか具体的には言えないけど。

 

「今井さんも姉弟で仲がいいんですね」

 

それを見て紗夜がそう呟く。

こいつも姉妹関係で苦労してるからな.....

 

「でもお前だって最近日菜といい感じなんだろ?」

 

毎日のように紗夜のことをメールで送ってくるし......

 

「.....そうですね、前よりはずっといい関係だと思います」

 

「まだこれから歩み寄ればもっといい関係になれる、俺はそう思うぞ」

 

「.....なんだか......皆さん羨ましいです」

 

「どうして?」

 

「.....だって私は兄弟はいませんから」

 

一人っ子の白金は兄弟に憧れたりするのだろうか。

 

「でもあこはりんりんのことももう1人のお姉ちゃんみたいにおもってるよ?」

 

「ふふ....あこちゃんが妹なら毎日楽しそう」

 

そう言う白金の顔は本当にうれしそうだ。

 

「それじゃあ、まりなさんたちには俺たちの方から伝えとくわ」

 

このままでは話が脱線したまま終わりそうだったので最後にそう締めておく。

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあユキ姉イベント楽しみにしてるね」

 

「ええ、期待して待ってて」

 

これでなんとか2バンドの出演が決まった。

しかし俺はまた来週この2バンドより難易度の高いところに行かなければならない。

そう思う俺はため息をつきつつ小町をいつもより甘やかしてやろうかななんて思いながら家へと帰るのだった.....




今回はここまでです。
そして次は久しぶりに番外編を挟んでから次の話に行きたいと思います。
次回の番外編のヒロインはつぐの予定ですのでファンの方楽しみにしていてください。

感想評価など励みになるので良ければ残していってください。

番外編は基本的に本編の最新話から見て過去のお話になるので上手い次回予告思いつかなかったのでカットします。
すいません......


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番外編6

いよいよ3周年が迫ってきましたね。
今から楽しみでうずうずしてます。
なので毎日モニカの曲を聞いてますw



spaceでのラストライブの次の日さすがに雪ノ下も練習を休みにしてくれたのはよかったのだが.....

 

「やばい.....最近練習ばっかだったからすごい暇だな.....」

 

まさかこの俺が練習のしすぎで休日なにをすればいいかわからなくなる日が来るとはな。

 

「まったくお兄ちゃんもこういう日に一緒に遊ぶ友達くらいいい加減つくったら?」

 

「そんな簡単に友達ができるならぼっちはやってない」

 

「それ、完全にお兄ちゃんの問題じゃん」

 

妹の厳しい意見が耳に痛いぜ

 

「小町はお兄ちゃんご大学生とかになってもそうやって1人でいそうで心配だよ.....」

 

「今からそんな先のことを心配されても......」

 

「そんなこと言ってるからいつまでも友達できないんだよ」

 

「そんなこと言われても今の暇がなくなるわけじゃないし.....」

 

「それなら商店街にでも行ってきなよ、家にいたって邪魔なだけだし」

 

「そんな風に扱われてお兄ちゃん悲しい」

 

「ほらそんなこと言ってないで早く行ってきてよ」

 

「本当に追い出すのね.....」

 

こうしてせっかくの休日も目的もなく商店街をぶらぶら彷徨うことになるのだった.....

 

*****

 

 

「で、商店街に着いたのはいいもののなにするか.....」

 

引っ越してきてこの方この商店街を俺ほど愛してるやつはなかなかいないと思うが......

 

「逆になにすればいいかわからねぇ.....」

 

いやほんとねこの商店街好きだから、好きすぎてもう逆になにすればいいかわからないだけだから。

断じて限られた所にしか行ったことないとかないから。

 

「.....あれ?八幡先輩?」

 

「ん?羽沢か」

 

「はい、どうしてここにいるんですか?」

 

「いや、練習がないと暇でな」

 

あれ?このセリフ俺なんだか社畜に一歩近づいてないか?

このまま俺も有給を取らずに働きまくる男になってしまうのか......

 

「八幡先輩どうしました?なんだか顔色が急に悪くなりましたよ?」

 

「ん、いやなんでもない......って」

 

羽沢に声をかけられ我に返ったものの羽沢の顔がその.....思ったより近い.....

 

「どうしました?」

 

「その、そんなマジマジ見られるとな?」

 

「っ.....す、すいません!つい心配で.....」

 

自覚せずにやってたのか.....

でも照れてるの本当にいじらしい。

 

「心配してくれてありがとな」

 

「い、いえ八幡先輩が大丈夫ならいいんですけど.....」

 

「いや心配されるのに慣れてないもんでな」

 

「そんなことないですよ、きっと雪乃先輩たちだって.....」

 

「.....」

 

「そこは黙らないでください!」

 

いやだってな、由比ヶ浜とかはともかく雪ノ下とかが俺を心配するところなんてまったく想像ができないからな。

 

「本当に羽沢がいるってだけでアフグロは羨ましいわ」

 

「えっとそれってどういうことです?」

 

「バンドに1人そうやって優しく気配りできる人間がいると楽そうだなって思っただけだ」

 

はいそこ、お前が言うなとか言わない。

 

「い、いやそんなことないですよ」

 

また照れてるあたり本当に謙虚な性格なんだな。

 

「むしろ、私がみんなに助けてもらってばっかりです」

 

こいつらは幼なじみで組んだバンドというのもあって他のバンドより特に仲がいいような印象がある。

俺は昔隣の家のやつとさえ友達になれなかったなぁ.....

 

「ど、どうしましたか?なんと言うかその、目が.....」

 

「ああ、悪い昔のことを思い出してたらな.....」

 

「その、そんな目になるような昔のことがあったんですか?」

 

「いや、聞いてて面白い話は一個もないぞ?」

 

いや、本当に特に羽沢なんかが聞いたらまた心配されるだけだからな。

 

「それより羽沢はなんでここに?」

 

「いや〜実は.....私も手持ち無沙汰で.....」

 

「アフグロも休みなんだな」

 

「はい、特に予定もなくて店を手伝ってたんですけど.....」

 

ちょっと待て、それ羽沢休んでなくね?

休日だよ?なんで進んで働いてるの?

 

「そしたら父にたまには休みなさいって.....」

 

なんでだろうな、すぐにその場面が想像できる......

 

「なんか納得だな.....」

 

「なにがです?」

 

「いや、羽沢がみんなから頼られる理由がだよ」

 

「え?」

 

「そうやって全部のことを頑張ろうとしちゃうんだもんな」

 

あと頼んだら断らなそうだし......

 

「ほぼ働かない俺が言うのもあれだがたまには休めよ、じゃないといつか体調崩すぞ」

 

「八幡先輩.....」

 

「それに、たまにはお前が周りにわがまま言ってもいいんじゃね?」

 

特にアフグロの4人にはな。

青葉とか上原には特に....

いやね、別に羽沢としては苦痛ではないんだろうけどね?

 

「えーと....その八幡先輩」

 

俺が考えていると羽沢が歯切れ悪く声をかけてくる。

 

「ん?どうした?」

 

なんか妙に顔が赤いし.....

本当に体調でも悪いだろうか?

 

「その....早速で申し訳ないんですけど.....今から私先輩にわがまま言ってもいいですか?」

 

「いいぞ」

 

俺にしては珍しいレベルでの即答だ。

というか自分で言った手前断れるわけない。

さらにどうせ暇だし、羽沢なら問題を起こすこともなさそうだし.....

 

「あ、ありがとうございます.....」

 

俺の即答が予想外だったらしくちょっと動揺してるのひどくない?

俺だってたまにはそういうことあるよ?

 

「で、俺になにをして欲しいんだ?」

 

俺にわがまま言ってくるのなんて小町ぐらいしかいないからなにを頼まれるのかよく分からないんだよな。

 

「その....もし良ければ....この後私と.....」

 

え?なになにそんな言いにくいほど大きいことなの?

 

「買い物でも.....行きませんか?」

 

「そんなことくらいでいいのか?」

 

てかむしろ俺と出かけるとかもはや罰ゲームなまでにある。

 

「は、はい」

 

「それくらいならいくらでも付き合うぞ」

 

俺もやることなかったしな。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

そんなことでこんなに喜んでくれるとは.....

なんかこういう妹も欲しかったなぁ.....

もちろん1番可愛い妹は小町だがな!

 

「それじゃあ羽沢はどこに行きたいんだ?」

 

「その、実は特に決まってないんですけど.....」

 

そうなるととりあえずいろんな店があるところとかがいいかもな.....

 

「それじゃあとりあえずショッピングモール行くか、あそこならいろんな店があるしな」

 

「じゃあそうしましょう」

 

こうしてなぜか俺は後輩の女子と出かけることになったのだった.....

 

*****

 

「今日はアフグロの奴らとも一緒にいないんだな」

 

なんかいつも一緒にいるような感じがあるし。

 

「なんだかみんなすでに用事があったみたいで......」

 

なんでみんなそんな用事があったりするの?

俺とか誰からも誘いとかきたりしないよ?

 

「他の4人はバンド以外にもいろんなことをしてるんですよ、蘭ちゃんは華道をやってますし、巴ちゃんは和太鼓....なんていうふうに」

 

「え?美竹が華道?」

 

普通に以外なんだけど......

 

「お花とかすっごい詳しいんですよ!」

 

まぁ本人の名前が蘭だしなぁ.....

 

「宇田川の方はなんか想像しやすいな.....」

 

「巴ちゃんは小さい頃から和太鼓をやっててお祭りの時とかに毎年演奏してるんですよ」

 

「祭りとかはあんま行かないから知らなかったな」

 

「雪乃先輩たちと行ったりしないんですか?」

 

「いや、あいつらは女子でいくからな。俺の方から断ってる」

 

「そうなんですか.....もし良ければわた.......」

 

「ん?」

 

「い、いえなんでもないです!忘れてください!」

 

なにを言いかけたのかよく分からないがなんでもないならいいか。

それに全く行かないわけでもないしな。

 

「そう考えるとアフグロの奴らはみんな色々頑張ってるんだな」

 

「そうなんですよ!私もみんなのことを見習わなくっちゃです」

 

なんか羽沢って自分のことを認められてないのか自己評価が低いんだよな.....

羽沢も他の4人に負けないどころか1番頑張ってる気がするけどな......

 

「俺は羽沢を1番見習わなきゃだけどな」

 

「私なんて.....見習うところないですよ」

 

「いやお前みたいに俺はなんでも頑張ったりできないっていうかな」

 

「私はそうしないと気が済まないってだけで」

 

「俺はそういうのがすごいって思うだけだから気にしなくていいぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「あと俺はそんなふうにすぐお礼言ったりもできないな」

 

それで何回小町に怒られ雪ノ下たちを不機嫌にさせてきたことか.....

 

「そうですか?」

 

「みんなが羽沢みたいな性格だったらきっと今の3倍はいい世界になるな」

 

これに関しては確信して言えるまである。

 

「さ、さっきからそんな褒めないでください......」

 

だって褒めるところしかないし。

 

「あ、もう着きますよ」

 

「そうだな、どこか行きたい店とか思いついたか?」

 

「そうですね.....小物を見たいです」

 

「じゃあ小物店に行ってみるか」

 

えーと小物店は何階だったかな.....

3階か......

 

「先輩、エレベーターがちょうど来たので乗ってきましょう」

 

「そうするか」

 

エスカレーターで移動するよりそっちの方が早そうだしな.....

 

「本当にいいタイミングで来たな....」

 

「ラッキーでしたね」

 

そう言いつつ2人でエレベーターに乗り込む。

他に人はいなく快適に3階まで行けそうだ。

人が多くなってるとエレベーターとか窮屈すぎてもはや地獄なまである。

 

「おわっ.....」

 

フラグだった......

2階に着いた瞬間8人くらいがエレベーターに乗り込んでくる。

必然的に最初から乗ってた俺と羽沢は奥に押し込まれるわけで.....

 

「わ、悪い.....」

 

そして混雑したエレベーターの中では密着度がかなり上がるわけで.....

 

「い、いえ仕方ないですから.....」

 

少しの間のはずなのに時間が長く感じる.....

顔が熱い.....

 

「おっと.....」

 

その瞬間俺のすぐ後ろにいた人にぶつかられて俺は体勢を崩す。

そうすると....

 

「はわわわわわわ.......」

 

俺が羽沢に至近距離壁ドンを炸裂させてしまうわけだ.....

 

「わ、悪い」

 

しかもそのまま俺にぶつかった人が動かないせいで元の体勢に戻れない.....

 

なんだこの羞恥プレイは.....

それから時間にして5秒ほどで着いたが周りの視線がなんだか痛かった......

でもリア充気分、味わえました。

 

*****

 

「さ、さっきは悪かった.....」

 

「い、いえ不可抗力ですから.....」

 

エレベーターを降りてからお互いに羞恥心からさっき会話して普通に話せてたのがまたぎこちなくなってしまった.....

 

「そ、それじゃあ行くか.....」

 

「はい.....」

 

その空気に耐えれなくてそのまま羽沢の方を振り返ることなく歩き出す。

 

そのまま小物店にたどり着きその頃には流石に顔も熱くはなかった。

そのまま2人で店内を見ていく。

 

「こういう店はあんま来ないからなんか新鮮だな」

 

「見ていて楽しいから私は定期的に来ちゃいます」

 

「俺もなんか小町に買っていってやろうかな」

 

「八幡先輩も小町ちゃんと仲良しですね」

 

「まぁそりゃ世界一の妹だしな」

 

「なんか真顔でそういうこと言われると感心しちゃいますね.....」

 

なぜ俺の妹愛は誰にも理解をされないのか.....

羽沢にすら引かれたらもう誰がこの大いなる愛を理解できるというんだ.....

 

「でもこれだけ色々な種類があると目移りしちまうな」

 

「そうですね、全部欲しくなっちゃいます」

 

てか今更だけどこれってなんかデートっぽくね?

いやてか状況だけ見ればこれってデートに当たるんじゃないか?

なんか意識し出したらそうとしか思えないんだけど。

だっていくら暇だからって男と出かけようとするか?

これはもしかして.....

 

「八幡先輩良いものが見つかったんですか?」

 

「あ、ああこのマグカップとかいいかな〜ってな.....」

 

そんなわけないですよねー、こんないい子が俺にそんなことあるわけないですよねー。

羽沢は純粋な子なんだから、他意なんてあるはずなく暇だっただけ。

はいQ.E.D。

 

「確かに可愛いですね!これなら小町ちゃんも喜びますよ!」

 

「そうだといいんだけどな」

 

小町と俺って基本的に趣向が逆方向だからな.....

 

「八幡先輩が選んだんですから!」

 

「そうか....じゃあ買っていってやるか」

 

最近は勉強の方も頑張ってるしな.....

 

「ついでに俺も新しく欲しかったしちょっと違う柄のやつ買ってくか.....」

 

ちなみにここで似たような柄にすふと小町が本気で嫌がることを知っているのでやめておく。

 

「それじゃあ俺ちょっと買ってくるわ」

 

「はい、私はあと少し見たいので先に行っててもらえますか?」

 

「おう、わかった」

 

羽沢にそう言われた俺はマグカップ2つを持ってレジへと向かうのだった.....

 

*****

 

ど、どうしようかな八幡先輩に先に行ってもらったけど.....

せっかく一緒に買い物に来てるんだからなにか思い出になりそうなものを買いたいし.....

 

「うう〜八幡先輩待たせてるだろうし早く決めないと.....」

 

迷ってたって仕方ないし何か買わないと.....

でも思い出になりそうなもの.....

こ、こっそり八幡先輩と同じマグカップを買うくらいいいよね?

八幡先輩だってわがまま言っていいって言ってたもんね!

 

それで言えばデートに誘った時点で一生分のわがままを言ってしまった気もするけど.....

でも.....やっぱり八幡先輩と一緒だと楽しいな。

いつか普通にこうやってデートできるようになれたらいいのに.....

 

「よしっ!せっかくだし買っちゃおう!」

 

そう決心して私は八幡先輩とお揃いのマグカップをレジへとこっそり持っていったのだった......

 

*****

 

小物店で買い物を終えた俺は羽沢を店前のベンチで待っていた。

なんか考え込んでたけど果たしてどんなものを買ってくるのか?

 

「おまたせしました」

 

「お、羽沢はなにを買ったんだ?」

 

ちょっと興味があるので聞いてみたり。

 

「そ、それは......秘密....です」

 

「......」

 

え?なんかその表情めっちゃ可愛い!

元から俺の心のストレスを消し去ってくれる天使だったけど俺の天使の浮かべた表情の中でも1、2を争うほどのかわいさ.....

軽く俺のライフの99%をもってたぞ。

 

「ど、どうしました?」

 

「いや、なんでもない」

 

あまりのかわいさにフリーズした俺を心配してくれるなんて.....

これは俺のエンジェル序列でも1位は確実か.....

いやだが戸塚や小町も......

 

「本当に大丈夫ですか?疲れたならちょっと休憩しましょう」

 

「そ、そうするか」

 

ちょっと今は頭がラリってるから落ち着く時間を作らなければ.....

 

「それならこの間ひまりちゃんがすっごい美味しいスイーツを教えてくれたのでそこに行きましょう!」

 

スイーツ、それは女子を狂わせる魔性の食べ物。

羽沢とてスイーツとあらばテンションが上がるのか......

 

「じゃあそうするか」

 

だが、俺も甘党の派閥なのだ。

そこらへんの女子じゃあ俺の甘党レベルには追いつけまい。

 

「じゃあ行きましょう!」

 

そうして2人でその店に着いた時.....

 

「なんだかカップルが多いな」

 

「そうですか、なんででしょうか?」

 

そうやって不思議に思ってると看板が目につく。

えーとなになに......

 

『本日カップルデー!!カップルのお客様は様々な特典をご用意してます!』

 

へー割引きに特別メニュー、他にもなにかとサービスがあるみたいだな。

 

「次のお客様はカップルのおふたりですか?」

 

なんて目を通してると俺たちより3組ほど前のカップルらしき2人がそんな質問を店員からされている。

 

「あ、はい」

 

さらりと彼氏が答える、なんとなくそういう手の質問に慣れてる気がする。

 

「人前であんな堂々と答えられるなんてすごいですね.....」

 

俺と一緒に看板を読んでいた羽沢はその様子を見て驚きの表情だ。

 

「それではカップルの証明であっつーいハグを.....お願いしますね?」

 

「人前だと照れくさいなぁ.....」

 

「ねー」

 

どこがだよ、普通にやってるじゃねーか。

でもやっぱり2人とも若干顔が赤いわ。

いやそれでもすげーよ。

爆ぜないかな、あいつらというかここにいるカップル全員。

 

「ありがとうございま〜す!こちらがカップルの証明書でございますお受け取りください!」

 

なるほどアレをもってるカップルだけがサービスを受けれるシステムか。

しかもその証明書自体が思い出になると、よくできてるシステムだ。

ただ一つ周りの非リアが死ぬほど腹が立つ以外は。

 

「は、はわわわわわわ」

 

おっと純粋な羽沢にこれは刺激が強いかな?

 

「大丈夫だ、羽沢俺たちがやるわけじゃないんだから」

 

「で、でもここで答えれば......いやでもぉ......」

 

なんか完全に自分の世界に入ってしまっている......

俺が否定すればいいだけの話なんだけどな。

 

「それでは〜あっつーいハグをお願いしますね?」

 

気づけばもう俺たちの一つ前のカップルたちまできておりその2人はかなり恥じらいながらもハグをしていた。

 

「ありがとうございました〜!」

 

そしてついに俺たちの番が来る。

 

「あなたたちもカップルですか〜?お似合いですね〜」

 

「いや俺たちは.....」

 

「は、はい!」

 

え?ちょっと羽沢さんなに言ってるの?

自分がなに言ってるかわかってるの?

あなた今こんな俺みたいな腐った魚の死体みたいな目をしてるって言われてる男とカップルだって言ったんだよ?

あれ?なんだろう涙が.....

 

「それでは〜あつーいハグで証明をお願いしま〜す!」

 

「お、おい羽沢」

 

ここでなんとかハグをする前に羽沢を正気に戻して店員からの誤解を解かないと......

 

「おい見ろよ、あの彼氏彼女がおんなに勇気を出してるのに自分は逃げ腰だぞ」

 

「まじでないわ」

 

「女の子が頑張っているのに.....」

 

「あの子かわいそう......」

 

おい周りのカップルたち、俺の逃げ道を塞ぎに来るんじゃない。

だがまだ負けないからな、俺はどんな視線を投げかけられようとここで否定するからな!

 

「......」

 

「.....やります」

 

羽沢の視線には耐えられませんでした......

嫌だって考えてみろ、目の前にめっちゃ可愛い女の子が照れて顔が赤くなって不安そうな目で見てくるんだよ?

耐えられる男はいるだろうか、いやいるはずない。

 

「.....じゃあいくぞ」

 

なんか羽沢の目が正気なように思えないというかなんかとろんとしてるというか.....

なんかアニメとかでこんな表情見たことあるな、そうなんか真面目な子が考えすぎで思考がショートしてアホになっちゃった時みたいな.....

なんか羽沢がそんな調子だから不思議なくらい頭は冷静だ。

いや顔はマグマくらい熱いけど。

 

「......」

 

羽沢からの返事は特にないのでめっちゃためらいがちに抱きつく。

 

「おや〜まだまだ抱きしめられますよ〜」

 

この店員性格悪すぎるだろ!

楽しんでるよこの状況!

 

「......」

 

羽沢さんもなにも喋ってくれないし!

 

もうこの際どうにでもなれ!

もはやヤケクソになった俺はより強く羽沢を抱きしめる。

ああ、神様サービスしすぎだって.....

 

「......きゅう」

 

あれ、なんか羽沢の体から力が抜けた....

 

「あれ?お客様!大丈夫ですか!?」

 

え?なにがあったの?

そう思って羽沢の方を見てみると.....

 

「おい!大丈夫か」

 

ショートしすぎて気絶をした羽沢の姿があった.....

 

*****

 

それからショッピングモールの休憩室を借りて羽沢が目を覚ますのを待つ。

まさか気絶するとは......

 

「お客様大丈夫ですか?」

 

するとさっきの店の店員が入ってくる。

仕事の時間は終わったのか制服ではなく私服になっている。

 

「はい」

 

まじで初対面だからなにも話せん。

 

「いや〜さっきはごめんね、私が変におもしろがっちゃったからこんなことになっちゃって.....」

 

私服になってお仕事モードが終わったらしく敬語抜きで話しかけてくる。

 

「いや、気にしなくていいです」

 

俺は否定できなかったわけだし.....

 

「いや〜2人とも照れてて可愛かったからついね〜」

 

見てておもしろがってたのは明白なので今更怒る気にもならない.....

 

「あ、そうそう君たちにこれを渡そうと思って来たんだ〜」

 

そういい何かを差し出してくる。

 

「これ、カップル証明書そこの女の子の分もね」

 

なんて律儀な人なんだろうか、わざわざ渡しに来てくれるなんて。

 

「ありがとうございます」

 

「ま、少年仮にそこの子とカップルじゃなくても女の子に恥は描かざるものじゃあないよ?」

 

この人まさか最初から気付いた上で......

 

「まずその証明書は必ずその子に渡してあげなよ、じゃないとその子が頑張った意味がなくなっちゃうから」

 

「はぁ.....」

 

どういう意味なのかわからない。

そもそも羽沢がなんであんなことをしたのかわかってないのだ.....

 

「その顔は意味が分からないって感じだね。その子も茨の道を選んだな〜」

 

「?」

 

もうなにがなんだか分からないがこの人はこの短い時間だけで俺よりも羽沢のことを理解してしまったらしい。

 

「それじゃあ私はお邪魔になっちゃうからその子の目が覚める前に行くね」

 

「.....わざわざありがとうございました」

 

「気にしなくていーのその代わりまた今度その子とまた店に来てね?」

 

「わかりました」

 

そのままその女の人は嵐のように去っていった。

 

「う、ううん.....」

 

それからおよそ10分後に羽沢が目を覚ました。

ただ気絶しただけにしてはちょっと眠っていた時間が長かったのでおそらく今までの疲労も出たのだろう。

 

「目が覚めたか?」

 

「八幡.....先輩?」

 

まだ若干意識がはっきりしてないみたいだが目を覚まして何よりだ。

 

「えっと、私......」

 

そうして辺りをキョロキョロと見渡しているうちに意識がはっきりしてさっきのことを思い出し始めたらしい。

 

「あ、あのえっとわたし.....その......」

 

一瞬でまた顔が真っ赤になる。

そんな顔をされると俺も思い出して恥ずかしくなってくるんだけど.....

 

「その、なんだ体調は大丈夫か?」

 

「はい......」

 

なんか声が小さい。

まぁきっと恥ずかしさでやばいんだろう。

 

「さっきはその.....すいませんでした.....」

 

「いや気にするな.....」

 

「その上こんな迷惑までかけて.....」

 

「別に.....迷惑じゃないし.....」

 

やばい、めっちゃ空気が気まずい。

 

「なんで....あんなことを?」

 

聞いてしまってから俺は自分が聞かなくてよかったんだろうと気づく。

 

「そ、その.....あの.....限定のメニューがき、気になって......それだけです!」

 

なるほどそういうことか、そう言われたら割と納得な理由だな。

まさかスイーツは女子をここまで変えるのか......

羽沢のそれは俺の想像を上回ってたってことか。

 

「あの、八幡先輩今日のことは.....絶対!絶対!秘密でお願いします.....」

 

「もちろんだ......」

 

こんなこと俺も恥ずかしすぎて人に話せるわけない。

あ、そもそもこんなこと話す友達がいないわ。

 

「それじゃあ、そろそろ行くか」

 

「はい.....」

 

こうして俺たちは貸してくれた人にお礼を言ってショッピングモールをあとにした。

 

*****

 

「すいません....わたしのせいで結局ほとんどお店を回らなくて......」

 

「いやなんだかんだ楽しめたぞ?」

 

「そう言ってくれてありがとうございます.....」

 

家でゴロゴロしてるよりはよっぽど充実はしてただろう。

 

「そういや、羽沢これ」

 

「なんですか、これ?」

 

「ほら、あの店の.....カップル証明書だ」

 

そう言った瞬間に羽沢の顔が一瞬で赤くなった。

 

「.....ありがとうございます」

 

だが証明書を受け取った瞬間に羽沢は笑顔を浮かべる。

 

「.....」

 

まさか1日に何度も印象に残る表情を見ることがあるなんてな.....

その顔は夕陽に照らされてとても綺麗だった......

 

「それじゃあ私はこっちなので」

 

「あ、ああ、またな」

 

「今日は本当にありがとうございました」

 

そうして俺と羽沢は別れるのだった.....

 

*****

 

-その夜-

 

「はぁ.....今日はいろいろなことがあったなぁ.....」

 

家に帰ってきてからずっとこんな調子で思い出してるなぁ.....

 

「ちょっとわがまま言い過ぎちゃったよね.....」

 

八幡先輩はすごい優しいからつい甘えてちゃうけど.....

 

「.....どんどん好きになっちゃうなぁ」

 

その優しさに触れるたびに八幡先輩を思う気持ちが強くなってく.....

そこで私は机に置いた2つの思い出を見る。

 

「ふふっ」

 

マグカップはこっそり同じものを買ったけどもしかしたら今頃八幡先輩も使っているかもしれない.....

そう思うとなんだか笑ってしまう。

 

「それに....私.....今日頑張ったよね」

 

それこそ普段したこともなかったことを.....

 

「このままいつか....」

 

この気持ちを伝えられたら....

今度はちゃんとこの証明書を受け取りに行きたいな。

 

 




今回の話はここまでです。
正直な話番外編は皆さんが望んでる組み合わせを書きたいので良ければこんな組み合わせの話が見てみたいっていうリクエストとかよければしてください。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。

それでは本編の次回予告に行きましょう!



「はぁ.....」

「まだため息、ハチ兄?」

「いや、気にするなちょっと気が重いことがあるだけだから.....」

「どんなことごあるの?」

「いや、ちょっと個性がめちゃくちゃ強い奴らにオファーしなくちゃならなくてな.....」

「ああ、ハチ兄はあと二つのバンドにオファーしなきゃだもんね」

「ああ、どちらもこの前のバンドよりも面倒なんでな.....」

「そう言わずに頑張ってハチ兄!」

「ああそれじゃもう次回予告しちまうか....次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『また比企谷八幡のため息は増える』だ」

「本当に大変ならオレを頼ってね?」

「ああ、サンキュー」


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第48話

3周年目前とあってスターを必死に集めてます
限定キャラ当たるといいんですがそしてあわよくばモニカのましろちゃんとつくしちゃんを当てたい.....
というかミラチケ神すぎるのに今月は課金する余裕がないのが絶望すぎます.....
皆さんはどのキャラを狙って引きますか?



「はぁ.....」

 

アフグロとRoseliaにオファーをした次の日俺はため息ばかり付いている。

いや、己の運命を嘆いていると言った方がいいか....

次に挑む敵があまりに強大すぎるためだ.....

 

「とりあえず午前はパスパレのオファーだからまだいいか....」

 

というわけで今私はパスパレが練習をしているスタジオの前に来ていま〜す。

 

.....なんてリポーター気分でいられたら気が楽なんだけどなぁ.....

 

「とにかく早く行かないとな.....」

 

なにせパスパレは芸能人のため予定の確保が難しいのだ。

ある意味で1番オファーが難しい相手でもある。

日菜に連絡したら1発でアポ取れたけどこれが誰かにしわ寄せがいってないことを願うばかりである。

 

それから俺は入り口で確認を受けたあとスタジオまで案内される。

と言っても俺は前にも一度来たことがあるのである程度の構造は理解してるのだが.....

 

「お邪魔しまーす」

 

「あっ!八幡君!あたしたちに話って何かな!?」

 

扉を開けた瞬間日菜がそう聞いてくる。

 

「まだ日菜しかいないのか?」

 

「うん、後のみんなはまだ準備してるからね」

 

うん、話がスムーズに進みそうなのはいいけど白鷺と大和が来るまで話は待った方がいいな、間違いない。

 

「まぁとりあえずお前たちが揃ってから話すわ」

 

.....決して日菜だけに先に話すと勝手に決めてあとあと多方面から怒られるのではないかなどとは考えてない。

ホントダヨ、八幡ウソツカナイヨー。

 

「そういえば八幡君はお久しぶりだね〜」

 

「そうか?お前毎日メール送ってくるしそんな気がしないんだが.....」

 

「そうだけどさ〜。でもたまには八幡君から送ってきて欲しいな〜なんて思ってるんだよ?」

 

そういうこと言うと勘違いしそうになるからやめて欲しいんだけど.....

 

「だって特に話すこともないし」

 

「もー!私は八幡君の話が聞きたいんだからその日にあったこととかを話してくれればいいの!」

 

「そんなもん聞いてもなんも面白くないだろ.....」

 

「そんなことない!」

 

なんでお前がそんな意固地になってるんだよ.....

 

「とにかく!たまには八幡君から連絡してね!」

 

「お、おう」

 

強引だなぁ.....

でもやらないとなにかまたやられそうだからたまに俺から連絡しないとな......

 

こうしてコミュ障陰キャぼっちにはベリーハードなミッションが追加されるのだった.....

 

*****

 

「むむむ.....」

 

「あら?彩ちゃんどうしたのそんな顔して.....って八幡さんもう来てたのね。待たせてしまったかしら?」

 

「むー」

 

「彩ちゃん?なんでそんなにむくれてるの?」

 

「だって.....日菜ちゃんと八幡さん楽しそうなんだもん」

 

「はぁ、もう隠そうとしないのね.....」

 

「どうせ千聖ちゃんは気付いてるんだし問題ないもん」

 

「彩ちゃんってたまに大物よね.....」

 

「むぅ」

 

「そんなに嫌なら彩ちゃんも混ざればいいじゃない」

 

「そうなんだけど.....私が日菜ちゃんならきっともっと2人で話したいって思っちゃうから.....」

 

「かと言って見ているのもつらいでしょう、それにどうせ練習が始まる前にはここにいなきゃいけなのだし.....」

 

「でも.....」

 

「はぁ、彩ちゃんが入らなくても私が入るのだし関係ないと思うのだけれど....」

 

「千聖ちゃんが入るなら私が入っても問題ないよね?」

 

「別に最初から問題はないのだけれど.....」

 

(なんで私がこんな役割なのかしら.....)

 

*****

 

「他の奴らはまだ来ないのか?」

 

「んーそろそろ来るとは思うんだけどね〜」

 

失礼な話パスパレは正直前座だ。

この後に控えてるところに比べればではあるが.....

 

「は、八幡君も、もう来てたんだー」

 

なんか恐ろしく棒読みでさっきからいましたってことを自白するかのような人きたんですけど.....

 

「すみません、待たせてしまいましたか?」

 

「ああ、いや俺も今きたばかりだ」

 

というか日菜と話してた時間がどれくらいかよくわからないけど。

 

「それで、後の2人は?」

 

「あとの2人は用事でもう少し遅れるって言ってたよ」 

 

「急ぎの要件なら私たちだけででも聞きますけど?」

 

同じ学年のやつに敬語使われるのってなんかな.....変な感じなんだよな。

いつも馬鹿にされてばかりいるからだからだろうか?

だとしたら俺もう終わりの領域じゃん。

 

「一応5人揃ってから話させてもらうからもう少し待たせてもらってもいいか?」

 

「あ!それじゃあ八幡君あたしのギターの練習にちょっと付き合ってよ!」

 

「いやお前にそんなの必要ないだろ.....」

 

こいつ基本的に出来ないことないんだし.....

 

「そんなこと言わずにさ〜」

 

「あ、あの!八幡君私の練習も.....付き合ってくれない?」

 

「いや俺パスパレの曲弾けないし......」

 

つまりだ、練習にどう付き合えと?

 

「そうだけど....聞いてくれるだけでいいの」

 

「まぁそれくらいなら」

 

「えー八幡君あたしの練習には付き合ってくれないの?」

 

「交代で付き合ってもらえばいいのではないかしら?」

 

「そうするしかないよな.....」

 

なんだかわからないけどどっちかを選んだらなんかよくないことがある気がする.....

 

「じゃあ最初は日菜の方からな」

 

彩は発声とかもあるかもしれないしな.....

 

「むぅ.....日菜ちゃんが先か.....」

 

あれ?なんか若干彩が不機嫌か?

練習熱心なんだなきっと。

 

それから少しの間だったが俺はあと2人が来るまで2人の練習に付き合うのだった......

 

「えー八幡君あたしの時間短い〜!」

 

「いやお前もうできてるし」

 

正直個人練習がいらないレベルなまでにある。

 

「ならまだ彩の方に付き合った方が効率的だろ」

 

「な、なんかそれはちょっと複雑かも.....」

 

「そうね、たまには私たちが言わないことも言ってもらった方がいいんじゃないかしら?」

 

「えっ!それ普段から言いたいことあるってこと?」

 

「ふふ、どうかしらね?」

 

多分冗談だと思うけどそれ本気で言われてるんだとしたら相当だぞ?

 

そんなやりとりをしながらもなんだなんだ楽しんで練習するのだった......

 

*****

 

「皆さん遅れてすいません!」

 

それから少しして大和が急いで来たのがすぐわかるくらいに慌てて部屋に入ってくる。

 

「いえ、結果として彩ちゃんにとって有意義な時間になったわ」

 

「まさか.....あそこまで細かく指導されるなんて.....」

 

普段から雪ノ下が意識してるようなことを言ってたらその量になっただけだ。

てことはもしかしてあいつ基準だと一般人にはつらい?

つまり俺はやっぱりブラックバンドに属してしまってるのか?

 

「八幡さんもしかして待たせちゃいました?」

 

「いや、彩に色々指摘できてよかった」

 

「そんなに元がひどかったの!?」

 

普通にアイドルとして普段から練習しているのだから基本のところは大丈夫だが細かいところが抜けてたりするだけだが......

まぁ俺もボーカルなんてやったことないからわからんけど。

 

「あはははは.....」

 

「皆さんお待たせしてすいません!」

 

そこに若宮もやってくる。

 

「イヴちゃんお仕事お疲れ様」

 

「いえ、仕事を頑張るのはブシとして当然です!」

 

なんか純正の日本男児の俺の100倍は武士道心得てそう.....

0になにかけても0だって?

いくら俺でも0.1くらいあるわ。

どんなに文句を言いつつも結局練習に行くところとか.....

 

「じゃあ揃ったし練習の邪魔にならないうちに手短に話すけどいいか?」

 

「うん!」

 

そしていい加減に慣れてきた説明を済ませる。

 

「出る!」

 

はい予想通りの日菜の即答。

 

「そうだね、私も出てみたい!」

 

「確かに面白そうですね!ジブンも賛成です」

 

「私もです!」

 

基本的に前向きに検討してくれそうな雰囲気でよかった。

 

「でもまずは事務所に許可をもらったり予定確認しなければいけないわね」

 

まぁそうなってくるよな.....

 

「うーんそれじゃあまたその辺わかったら八幡君に連絡すればよくない?」

 

「そうしてくれるなら助かる」

 

そうしなくても勝手に日菜ならメールしてくるだろうけどな.....

本当に気分だけリア充、つまり俺はただの陰キャにあらず。

.....いや決してリア充にはなれないんだろうってわかってるよ?

 

「それじゃあそうすることにしましょうか」

 

「それじゃあ返事はわかったらなるべく早く送ってくれ」

 

「「任せて!」」

 

彩と日菜が同時にそう言う。

確かにパスパレで連絡先を教えてるのはその2人だけだけど.....

 

「あーじゃあどっちか頼むわ」

 

俺がそう言った瞬間になんとも言えない空気になるって言うか.....

 

「「.....」」

 

なんか2人の間に火花が見える気がするが多分気のせいなので目を逸らしておこう。

 

「あー八幡さん選択を失敗しましたね.....」

 

「そうね.....」

 

「どう言うことですか?」

 

「いえ、こっちの話です.....」

 

「イヴちゃんはもう少し知らなくていいと思うわた.....」

 

「?わかりました」

 

「と、とりあえず俺はまだこのあと行くところがあるからもう行くわ」

 

決して、ちょっと面倒なことになる前に逃げようというわけではない。

俺はただただCiRCLEのイベントのため1秒でも早く一組でも多くオファーしようとしているだけだ。

 

「ええ、さようなら.....」

 

こうして俺は修羅場(?)を抜け出すのだった。

 

*****

 

しかしパスパレの事務所を出て俺は現実を思い出す。

この後向かうべき場所は、魔王城であるということを......

 

「いや、手っ取り早く奥沢と松原にだけ説明すれば.....」

 

そう思うがその後にあいつらが3バカに説明してるところを想像すると若干心が痛む.....

 

「はぁ.....」

 

そのままため息をつきっぱなしで俺は弦巻家へと向かうのだった.....

 

ちなみにハロハピは誰も連絡先を知らないためまりなさんに伝えて伝言をもらおうと思ったらいきなり黒服の人が家に来て弦巻の予定を教え今日がベストだと言うことを説明して嵐のようにさっていったということがあった。

正直あの人たちの行動力は恐怖を感じるまである。

 

「そしてついに着いてしまった.....」

 

いっそ迷子になりたかったけど弦巻の家が大きすぎて迷いようがなかった......

ふぇぇ.....

 

「八幡様、お待ちしていました」

 

そしてなんでこの人たちは当然の如く門の前で待機してるんですかね......

時間とかは伝えてなかったはずなんだけど......

 

「それでは皆様がいらっしゃる部屋までご案内します」

 

「あ、お願いします」

 

そして俺適応するの早すぎか。

いや、普段から何かと周りに振り回されてるからか......

 

それから案内された部屋は以前も案内された部屋だと思われる。

なにせ家が大きすぎて部屋の場所など覚えられるはずもない。

なんなら家の中の方が迷子になりそうなまである。

 

「こちらになります」

 

「ありがとうございます」

 

そのまま黒服の人はさっとその場から去っていった。

 

「さて.....」

 

そして扉の前で俺は最後の覚悟を決める。

大丈夫、俺は.....必ず生きて帰るんだ.....

あれ?俺なんか死亡フラグ立ててね?

 

「よしっ!」

 

覚悟をいざ決めて部屋のドアノブに手をかける。

そして一気に開ける。

 

「あっ八幡君」

 

そうすると松原の姿が見える後の4人の姿が見えないが.....

 

「わーいミッシェル〜!!」

 

「ミッシェルはもふもふで気持ちいいわね!」

 

「ああ、この触り心地.....儚い......」

 

「.....」

 

そしてなにもみなかったことにして俺はドアを閉める。

うん、今俺はミッシェルが3バカに抱きつかれて地面に倒れ込んでるところなんて見なかった。

 

「ふぇぇ、は、八幡君!?」

 

ああ松原、俺を追いかけて来てしまったのか.....

 

「どうしたの?お話があるって聞いてたんだけど.....」

 

「え?俺お前たちに連絡をいれてなかったはずなんだけど.....」

 

「黒服の人たちから聞いたんだけど......」

 

「もうなんでもありだなあの人たち.....」

 

なんかもう驚きもしないわ。

 

「ああ、うんとりあえずあいつらが落ち着いてから話すわ」

 

なんだか黒服の人たちの行動力を考えたらこの3バカのことがどうでもよくなって来たわ.....

 

「じゃあとりあえずもう1度中に.....」

 

「あら?ミッシェルが.....美咲になっちゃったわ!?」

 

「え?どういうことミッシェルはどこに行っちゃったの?」

 

訂正、やっぱり頭が痛くなって来たわ.....

 

「おう、そうするわ」

 

とりあえずそう返事をしたがやはりため息は尽きないのだった.....

 

*****

 

「お見苦しいところを見せてすいませんでした.....」

 

「謝らなくていいぞ、覚悟は決めて来たつもりだ」

 

「そうですか.....」

 

なんか会話だけ見たら世界を救いに行く勇者くらいカッコよさげなんだけどなぁ.....

 

「それで私たちに話があるのだろう?」

 

「ああ」

 

珍しく瀬田が会話を始めた......

明日は雨かな?

 

「じゃあ手短に話すけどな.....」

 

この後3人に横槍を入れられつつもなんとか説明を俺は終えた。

 

「出るわ!」

 

「え!こころ色々考えないと」

 

「だってそのライブ楽しそうじゃない!」

 

「そうだよ!はぐみも出たい!」

 

「2人がそう言うなら私はなにも言わないさ、私ももちろん賛成だけどね」

 

「はぁこうなったらやるしかないですね.....」

 

諦めが早くなったな、それを極めるともはや話を聞かずに折れるまでにある。

 

「花音さんもいいですね?」

 

「うん、私も出てみたいな」

 

正直このバンドに関してはこうなることまで予想通りなんだよな.....

 

「それじゃあ決まりね!」

 

「そうと決まったら早速作戦会議しないとだね!」

 

「ああ、今なら儚いアイディアが出てきそうだ」

 

あ、なんかこの流れ嫌な予感。

こういう時には俺の予感はよく当たるのだ.....

 

「八幡も何かアイディアはないの?」

 

うん、俺も強制参加の流れだよね。

 

「八幡さん、ドンマイです」

 

「これも覚悟の上だ」

 

「本当にすいません.....」

 

こんなやりとりをしている間にも3バカは色々と意味のわからないことを言っている。

 

「それならあたしの部屋にあったわ!」

 

「え?本当!見つけに行こうよ!」

 

「ふっ困ったお姫様たちだ私もお供するよ」

 

「ふぇぇ3人ともどこに行くの〜!?」

 

「また目を離すとすぐに.....」

 

「八幡さん、私が連れ戻してくるので少しここで待っててもらえますか?」

 

「お、おう」

 

あまりの急展開に流石においていかれ気味である。

 

「花音さんもあの3バカが戻ってきた時のためにここにいてもらってもいいですか?」

 

「う、うん」

 

奥沢さん慣れすぎじゃないですかね....

ここまで来るともう小学校の先生くらいの手際の良さまである。

 

「もし戻ってきたら連絡ください」

 

「うん、わかったよ」

 

最初こそ慌ててた松原もすでに落ち着いている。

充分常人の域を超えている。

 

「それじゃあお願いします」

 

そう言い残して奥沢は部屋を出ていった。

 

「行っちゃったね」

 

「ああ、これがいつもなのか?」

 

「うーん、まぁたまに.....かな?」

 

これはそれなりに頻繁にあるんだな。

 

「大変じゃないか?」

 

「大変だけどでもそれよりも.....楽しいかな」

 

果たして俺もこのバンドに入っていたらそう言えるようになれただろうか......

いや、なれないな。

 

「私はこころちゃんに音楽の楽しさを教えてもらったから.....」

 

「どういうことだ?」

 

「私ね、1度ドラムをやめようとしてたんだけどなんだかんだあってこころちゃんと路上ライブして.....それからバンドを組んで、笑顔にしてもらったの」

 

「確かになんだかんだで笑顔にはなるな」

 

たまに過程がぶっとんでるけど.....

 

「そう思うと、こういうこともあとで笑えるから.....楽しいの」

 

松原も松原としての考えがあるんだな。

 

「でもきっと弦巻たちは松原と奥沢がいなかったらダメなんだろうな」

 

「そうだといいなぁ、私もなにか返していきたいから」

 

多分普通の観点から言ったらもう充分すぎるほどなんだろうけどな。

 

「そうか」

 

でも、その気持ちは俺もわかるつもりだ。

前に松原と俺が似てると思ったことがあったがそれは間違ってないのかもしれない.....

 

「俺も、俺もそうしていけるといいんだけどな」

 

「八幡君も?」

 

「ああ、俺も周りに助けてもらってばかりだ」

 

「じゃあ....2人で頑張っていこう?私も頑張るから八幡君も頑張って」

 

「.....ああ、お互いにな」

 

俺と松原は夕暮れの部屋でそんな約束をするのだった.....

 

*****

 

「お待たせしました.....」

 

それからおよそ5分後に3バカと奥沢は戻ってきた。

 

「お疲れ様、美咲ちゃん」

 

「あら?花音あなた今いい笑顔ね!」

 

「ほんとだ!なにかいいことでもあったの?」

 

「うーん、内緒かな?」

 

「ああ花音、君はなんてミステリアスなんだ.....儚い.....」

 

「花音がいい笑顔のうちに作戦会議よ!きっといいアイディアが出るわ!」

 

なんかさっきも同じような光景だな.....

 

「はーいストーップ!もうそろそろあたし帰らなきゃならないからまた今度ね」

 

「でも今ならきっといいアイディアが出るのよ!」

 

「また考えてくればいいでしょ?考えてくればきっともっといい意見が出るって」

 

「確かにそれもそうね!」

 

ちょろ!

びっくりするくらい素直だな.....

 

「それでは、また後日みんなでいい意見を持ち寄ろうじゃないか!」

 

「そうだね!はぐみいっぱい考えてくるよ!」

 

「そうだね、私も考えてくるよ」

 

「じゃあというわけで今日はこれで解散で」

 

こうして俺たちは弦巻家を後にする。

それから門の前でハロハピのメンバーとも別れた。

 

「八幡君!」

 

「ん、どうした?」

 

それから1人で歩き始めた時に後ろから松原に声をかけられる。

 

「今日の話は秘密にしてね?」

 

「ああ、任せろ口は硬いぞ」

 

正確に言えば言う相手がいない、だが。

 

「約束だよ?」

 

「おう」

 

「それじゃあ.....またね!」

 

最近俺の周りの女の子は俺を勘違いさせに来ているのだろうか?

そう思ってしまうほどにみんなが魅力的な笑顔なのである。

そうだからきっと女の子というのは甘いお砂糖のようなものでできているのだろう。

だからこうも甘い気持ちになりそうになるのだ。

 

そんなことを思いながら俺はまた歩き出すのだった.....




はい今回はここまでです。
これで全バンドのオファーが完了しましたね。
あと数本こんな感じの話が続きます。
よければまた見てください。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。

それでは次回予告に行ってみましょう!


「今回は私たちが担当なのね」

「そうだよ千聖ちゃん!せっかく任されたんだから頑張らないと!」

「彩ちゃん、張り切るのはいいけど空振りしないようにね?」

「もう千聖ちゃん私もそんなに失敗しないよ〜!」

「冗談よ、でも肩の力は抜いてね?」

「それ冗談だと思えないんだけど.....」

「そんなことを言ってないで次回予告をしましょう?」

「なんかごまかされた気がする.....まぁいいや、それでは次回、やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『こうしてふたたび5つのバンドが揃う』です!おたのしゅみに!って噛んじゃった〜......」

「だから言ったのに.....」


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第49話

皆さん3周年を楽しんでますか?
自分は60連で新フェス限の蘭ちゃんと花音先輩を含めた6枚の☆4が当たりました!
よければ皆さんの結果も教えてください。

個人的にモニカの譜面は結構好きです。
これからの曲にも期待したいですね!


俺がオファーを担当したバンド全てを訪れた翌週そのバンドたちが集まっての話し合いが行われることになった。

 

「いやーみんなでライブについて話し合うなんてワクワクしちゃうね!」

 

その前日はアブアルとしての練習で由比ヶ浜はいつになくテンションが高い。

それ以上テンション上がると陰キャの俺は溶けるぞ?

 

「うまく意見がまとまるといいけどね〜」

 

一色は生徒会に属してるだけありその辺の難しさはよく知っているようだ。

 

「というかなんで俺も参加なんだよ....」

 

「そういえば言ってなかったわね、あなたこのイベント限定でCiRCLEのスタッフと同じ扱いになって手伝うことになったのよ」

 

「は?」

 

ちょままちょままてちょと待ってちょっと!

え?それ俺の知らないところで決まっていいことじゃなくない?

 

「マジで?」

 

「ええ」

 

いやだとしたらシンプルに俺の人権なさすぎない?

 

「.....」

 

「もう決まったことよ、諦めなさい」

 

「もうなんか怒る気すら起きねぇ.....」

 

「そういえばさっきユウトさんがヒッキーに練習終わりに来て欲しいって言ってたよ」

 

「はぁ.....わかった」

 

こうして俺のような社会にしっかり反抗できる奴が社畜になっていくんだなぁ.....

 

「ハチ兄、オレも手伝うから一緒に行くね」

 

そうか、ケントも手伝うことになってたのか....

ってまて、ケントはなんですでに知ってるんだ?

まさかケントも.....その場にいた....?

 

いややめようこのままだと本当にこのバンドの誰も信じられなくなりそうだ。

 

「それじゃあ片付けはやっておいておげますから先輩たちはさっさとユウトさんのところに行ってきてください」

 

「....いつになったら俺の扱いは良くなるんだよ」

 

「さぁ、永遠に来ないんじゃないんですか?」

 

それもう死亡宣言と同じじゃん。

 

「じゃあ行こうか、ハチ兄」

 

「ああ」

 

いつまで経ってもこの扱いが変わらないのを確信した俺はとぼとぼと歩き出すのだった.....

 

 

*****

 

「あ、2人とも練習お疲れ様」

 

「ありがとうございます、まりなさん」

 

ユウトさんを探しにスタジオを出てきたときにまりなさんとばったり出会う。

 

「えっとユウトさんってどこにいますか?」

 

今は別行動してるのか姿が見えないのでケントが聞く。

 

「えーと今は多分受付にいるはずだよ」

 

「ありがとうございます」

 

「そういえば八幡君、今度のイベント手伝ってくれるんだって?うちは人数が少ないから助かるよ〜」

 

こう言われたらもう出口完全にないじゃん。

いや今更だけどさ、まりなさんにそれ言われたらもう本当にダメじゃん。

 

「いえいつもお世話になってますから」

 

さらっとちゃんとそういうこと言えるケントまじ偉い。

 

「そう言ってくれるなんてやっぱり君たちは良い子だね〜」

 

ケントはもちろん社畜の如く働く俺もいい子、異論は認めない。

 

「当たり前のことをしてるだけですよ」

 

ケントさんイケメンすぎますわぁ.....

 

「うーんこんな子たちが利用してくれてるなんて.....このライブハウスは恵まれてるなぁ.....」

 

ケントが返事をするたびにむしろまりなさんが感動してそのうち泣き出しそうな勢いなんだけど.....

 

「それじゃあ俺たちはそろそろ行きますね、お仕事頑張ってください」

 

そう言って俺は無理やり会話を終わらせる、最後の一文は決してケントと同じようにポイントを稼ごうとしたわけではない、文句は受け付けない。

 

「うん、それじゃあこれからしばらくの間よろしくね!」

 

こうしてまりなさんと別れた俺たちはユウトさんがいるという受付へと向かう。

 

「あ、2人とも来てくれたんだね。練習お疲れ様」

 

「いえ、それで俺たちに話ってなんですか?」

 

「あ、うん少しここじゃしにくい話だからちょっとカフェに行こうか」

 

CiRCLEにはカフェが隣接していて俺たちも練習帰りによく訪れている。

 

「お仕事残ってるならまだ待ちますけど....」

 

「うーん多分大丈夫かな、あとでまりなさんにちょっと怒られるかもだけど.....」

 

それ大丈夫じゃなくね?

てかまりなさんって怒るの?

ヤベェツッコミが捌ききれねぇ.....

 

「本当に.....待ちますよ?」

 

「君たちの時間をもらうのも悪いし、気にしないでいいよ」

 

この人はこの人で優しすぎるんだよなぁ....

多分このままだと永遠に続きそうだし早めに話を聞くことにしておこう。

 

「じゃあ行きましょうか」

 

まだ何か言いたげなケントを差し置いて俺はそう言う。

 

「ハチ兄、いいの?」

 

「多分このままだと余計に時間かかるだけだからな、時短だ俺早く帰りたいし」

 

流石に冗談だがユウトさんに聞かれるとまずいので小声でそう言う。

どんな時でもユーモアを忘れない俺はやっぱりお茶目だな、これは友達級増間違いなし!

.....わかってるってそんなことないのは。

 

「?ハチ兄早く行こう?」

 

「あ、ああわかった」

 

慌てて俺はまたそう答えカフェへと向かうのだった.....

 

*****

 

「それで話っていうのは?」

 

なるべく時間を取らせないためにも早速そう切り出す。

 

「ああ、うん君たちはこれこらうちのイベントを手伝ってくれることになってるよね?」

 

「ええ、まぁ無理やりに近い形で」

 

「ハチ兄、その言い方はよくないって....」

 

おっと俺としたことが失言だった。

八幡ったらつい本音が出ちゃうんだから。

 

「あはは僕も君がいないのに雪乃ちゃんたちがそれを決めていった時にはびっくりしたよ」

 

ちょっとまて、あんたそこ俺の確認を取るまで認めるなよ。

 

「確かにちょっと.....ハチ兄かわいそうだったかも」

 

そんなに?そんなに無理やりだったの?

知りたくなかった新事実。

 

「それでそのことなんだけど、君たちにイベントを手伝ってもらう上で先に言っておくんだけど形式上これはバイトと同じ形になるんだ」

 

あれ?それって......

ここで俺は先立ってユウトさんの言いたいことを理解する。

そしてできればそれは勘違いであってほしい。

勘違いのプロの俺ならそれくらいの勘違い......

 

「そう、だから中学生のケント君に表立って手伝ってもらうわけにはいかないんだ」

 

なんでこういう時に限って勘違いじゃないんですかね.....

そうケントは小町と同じ中3、つまりバイトをする事は禁止されている身分だ。

CiRCLEのスタッフからすればそのケントに手伝ってもらってしまうと色々とまずいのだろう。

 

「だからケント君にはチラシを学校で配ってもらうみたいなあくまで直接的にイベントに関わらないことを手伝ってもらおうと思ってるんだ」

 

まぁ自分の学校で宣伝したりする分には個人の自由だろうしな。

そんなふうにすればケントも手伝うことができるというわけか。

 

「はい、どんなことでもオレはやりますよ」

 

「ありがとう」

 

この時期にケントがバイトしてたなんてなってしまったら高校受験に関わることになるからな.....

そこら辺はちゃんと気にかけてくれるあたりやはりこの人はきっと優しい人だな。

 

「それで、むしろこっちが本題なんだけど......」

 

そう言いユウトさんは俺の方を向く。

 

「まず八幡君にも学校側にバイトとしての申請を出す必要があるのなら申請をしてほしい」

 

えーと確かうちの校則だと.....

 

「確かバイトは短期間のものなら申請が要らなかったと思います」

 

いやーこういうところはご都合主義で本当に助かるわ。

 

「そうか、ならこのまま次の話をしちゃうんだけど.....」

 

ユウトさんは先ほどよりも真剣な顔になる、きっと割と真面目な話だ。

 

「CiRCLEのスタッフとしてイベントを手伝ってもらう以上君にもバイト代を出すことになってね」

 

え?それまじ?今までみたいに見返り0の貧乏くじじゃないの?

まじこの人天使だわ。

 

「まぁそうしないと僕たちとしてもまずいんだけど.....」

 

「表面上君はバイトだから君にはうちの通常勤務も手伝ってもらわなきゃいけない」

 

まぁ色々とそんな不都合も出てきてしまうだろう。

世の中ってそういうものだ、俺には不都合ばかりだが。

 

「はい、まぁそれくらいなら」

 

正直バイト代が出ると聞いただけで働く気が起きた、いや俺現金なやつだな.....

 

「それで次ここに来る時までに予定を確認しておいてほしいんだ」

 

「あ、毎日暇です」

 

「......一応確認しておいてもらえるかな?」

 

俺の即答にユウトさんはなんともいえないような表情になりながらもそう言う。

でも嘘じゃないし.....

 

思い当たる限りイベントまでの間の予定なんてほとんどない。

前に比べればクラスメイトと話すことも若干増えたが大半はライブ後に俺たちを見たやつだ。

しかしコミュ障スキルコンプリート勢の俺は友達になるまでには至らなかった.....

 

「はい、まぁ一応確認しておきます」

 

結局時々バンドの練習が入ったらから普通に確認しなきゃいけないんだがな。

 

「とりあえず今日はこんなところかな、2人に何をしてもらいたいかは次に話すよ」

 

「はい」

 

「わかりました」

 

「それじゃあ時間を取らせてごめんね?」

 

「いえ、俺たちこそ申し訳ないです」

 

もうこれから目上の人の対応はケントに一任しようかな。

いやそれじゃだめじゃん。

 

「じゃあ僕は仕事に戻るから、気をつけて帰ってね」

 

「はい、さようなら」

 

そう言いユウトさんはまたCiRCLEに入っていった。

 

「さて、俺たちは雪ノ下たちを待つか」

 

「そうだね」

 

その後だいたい5分くらいで雪ノ下たちも合流する。

 

「あ、ヒッキーにケントも待っててくれたんだ!」

 

ちなみにだが由比ヶ浜はケントにもあだ名をつけようとしたがあまりのセンスのなさに流石に俺が辞めさせた。

候補としてはけんけんが1番マシだったか......

いやほんとにセンスねぇな。

 

「ちょうど伝えたいこともあったし好都合だったわね」

 

「ん?なんだ?」

 

「えっとですね、イベントを前に一度ミニライブを開催することになりました」

 

「へーそうなんだね」

 

「でもそれ俺たちに言う必要あるか?」

 

「話は最後まで聞きなさい」

 

「.....はい」

 

「それで出演するバンドでの話し合いをすることになったのだけど.....」

 

あーはいはい八幡もうわかった。

最近の八幡はもう学んだ。

 

「あなたたちにはそこで話し合いをまとめてもらうことにしたの」

 

そうなりますよねー。

 

「でもなんで俺たちなんだ?」

 

「あなたが出演するバンド全てに面識があるのとスタッフ側に話し合いの内容を伝えやすいこと、そして第3者がいたほうが話し合いがスムーズになることが理由かしらね」

 

さすが雪ノ下俺の逃げ道を完璧に塞ぐことにかけては他の追随を一切許さないな!

 

「どうせ拒否権ないだろ.....」

 

「よくわかってますね!」

 

「あはは.....ヒッキードンマイ!」

 

いつか何か一つくらいやり返しをしようと心に決める俺だった.....

 

*****

 

 

「で、どうしてこうなった......」

 

「日頃の行いじゃないかしら?」

 

「そんなはずはない.....」

 

最近これほど働いてるのに......

俺が一体なにをしたって言うんだ......

 

「その時ヒッキーったらさ」

 

「え?八幡君そんなことがあったんだ〜」

 

「やっぱ八幡君の話ってるんってする!」

 

「そういえば小町ちゃんから聞いた話でも.....」

 

「ふええ八幡君大変そう.....」

 

なぜ、なぜまた俺の黒歴史が広まっているんだ.....

 

時は遡ること1時間前、出演する全てのバンドが集まった。

 

「では早速始めましょうか、八幡さん進行をお願いします」

 

「あ、ああ」

 

俺より紗夜が仕切ったほうが絶対早いと思いながらもしっかりと働く俺って社畜!

.....悲しいなぁ

 

「じゃあ今回のイベントの内容を改めて言うんだが......」

 

とこんな感じで始まり順調に会議は進んでいったのだ....

 

「では方向性としてはこんな感じでいいかしら?」

 

白鷺などしっかり者たちの力を借りつつも本当に順調に進んでいったのだ。

 

「それじゃあ今日決めるのはここまでだ」

 

だからか予定ではもう少し長く話し合いをするはずだったのだ......

 

「だいぶ早く終わったな〜」

 

「そうだね、まぁいいんじゃない?」

 

「これも八幡さんの進行のおかげですねっ!」

 

やめろやめろ照れるだろうが、俺ほとんどなにもしてないけど。

 

「そんな事はないわね、この男は人との話し合いがそもそも苦手なのだし」

 

「え?そうなんですか?はっ!秘密を喋らないように訓練してるんですね!さすが八幡さんブシドーです!」

 

だからそれブシドーじゃないって.....

 

「あら?この男はそんなものとは真反対の精神の持ち主よ?」

 

おい雪ノ下やめろ、せっかく俺を褒めてくれてるんだから。

 

「え?そうなの?」

 

そして日菜、食いつくんじゃない。

 

「八幡先輩ちょっと確認したいことが.....」

 

頼むから羽沢、今はこっちに来ないでくれ.....

 

「あ、ああなんだ?」

 

しかし追い返すわけにもいかないので話を聞いてみる。

 

「ここなんですけど.....」

 

「ああ、そこは.....」

 

生徒会に所属している羽沢も今回の会議ではかなり助けになってくれた。

 

「ありがとうございます!」

 

「つぐちゃんも話していこうよ!」

 

「なにをですか?」

 

「八幡君のこと!」

 

「そ、そうですね。私も参加させてもらいますね」

 

ほらこういう流れになっちゃう。

どうせあと何人か来るんだろ?

 

「あれ?みんななにを話してるの?」

 

ほら松原来たし.....

 

「あ!おねーちゃんも話そうよ!」

 

日菜が紗夜呼んで湊と一緒に来ちゃうし......

 

結局俺の予想通り何人かの人が来て俺の黒歴史は暴露され続けた.....

そして冒頭につながるわけだ。

 

「.....わかったかしらこの男のこと」

 

「うん!やっぱり面白い!」

 

「あの話を聞いてそう思うってすごいね.....」

 

日菜の様子に一色も若干引いてる。

てかそれなら話すんじゃねーよ。

 

「でもあたしたちも小町ちゃんからの話が聞けて面白かったよね」

 

「そうね、この男私たちのいないところでも散々なことをしているみたいね」

 

なに羽沢も教えてるんだ......

 

「前に海で聞いた話以外にもこんなにも多くあるなんて.....」

 

紗夜もちょっと一周回って感動するのやめろ。

 

「でもだからこそ音楽に集中できるのかもしれないわね」

 

いや湊、友達居なくて黒歴史多いのと音楽は全く関係ないわ.....

 

「ですがやはりどんな困難を前にしても進み続けた八幡さんはブシドーの精神の持ち主です!」

 

そして雪ノ下、こいつまったくわかってないぞ。

 

「でも八幡君って小学校の頃の話だけなにもないんだね?」

 

「確かにそうだね、雪乃ちゃんたちとは学校が違ったの?」

 

「うん、ヒッキー中学生になるときに転校してきたからね」

 

「八幡さんは元はこの街の出身ではなかったんですね」

 

「あたし小学校の時の八幡君の話聞きたい!」

 

「あたしたちにも話してくれたことないもんね〜」

 

「私も興味あるかもです!」

 

由比ヶ浜や一色も興味を持ったようだ。

 

しかしら小学校の頃か.....

小町もあの時のことは話したがらないもんな.....

 

「.....やめとけ、本当に聞いても面白くないから」

 

自分でも驚くほど落ち着いた声だった。

ただ、その声は乾いて冷えていた.....

 

「日菜ちゃん、今日はこのあたりにしておきましょう」

 

白鷺が俺の雰囲気が変わったことを察知して気を遣ってくれる。

 

「うん、そうしよう?」

 

彩も賛同してくれる。

 

「また...俺が話せるようになってからな」

 

そうか、俺は乗り越えてはないんだよなあの時の記憶を。

だからまだ俺は人との距離がわからない。

関係性に確信を持てない。

 

だから、俺は友達が少ない。

 

そのまま微妙な雰囲気になってしまった会話はそのまま終わりその後解散になるのだった......

 

 




今回はここまでです。
八幡の小学校時代はまたいつかしっかりと書きます、意外な内容でもないと思いますが.....

感想、評価など励みになるのでよからば残していってください。

それでは次回予告行きましょう!



「八幡君....大丈夫かなぁ......」

「あら?どうしたの花音?そんな顔をしててもいいことはないわ!笑顔になりましょう!」

「こころちゃん....ありがとう。そうだよね私も笑顔じゃなかったら八幡君も笑顔にならないよね」

「そうよ!誰か1人が笑顔にならないなら周りの人が笑顔にしてあげらばいいの!」

「ふふこころちゃんはやっぱりすごいなぁ.....」

「それで花音、さっき黒服の人から次回予告をしてくださいと言われたのだけどなにをすればいいのかしら?」

「あ、それじゃあ一緒にやろうか、次回やはり俺がバンドを組むのは間違っているは.....」

「『驚くほどイベントは順調に進んでいく』よ!みんなも笑顔で見ましょう!」

「2人でやるとなんだか楽しいね」

「そうね!またやってみたいわ!」


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第50話

なんだかんだでもう50話ですね。
いつも読んでくださってありがとうございます!
こうして続けられるのも読んでくださる皆さんがいるからです!
これからもマイペースに頑張るので良ければ読んでください!


「それで八幡君、イベントの調子はどう?」

 

「今のところ順調ですよ」

 

「そう、それならよかった〜」

 

CiRCLEでバイトをすると言うことになっている俺はあの話し合い以来すでに何回か経験をしてようやく仕事の内容を理解したくらいである。

 

スタッフの人はみんな優しくてなにもわからない俺に優しく教えてくれた。

なかでもまりなさんとユウトさんはほぼつきっきりで仕事を教えてくれた。

 

「八幡君も仕事に慣れてきてくれたみたいだし、私たちも大助かりだよ〜」

 

「いえ、まりなさんたちが教え方がうまかったですから」

 

事実この人たちら説明が本当にわかりやすいのだ。

 

「そんなことないよ〜、八幡君も頑張って覚えてくれたし」

 

こうやって働いてみると思ったよりも自分の好きなことって覚えられるし働こうと思えちゃうんだよな。

これなら社畜も悪くない....?

わけはないか。

 

「このまま八幡君にはたらいてもらいたいくらいだよ〜」

 

「それもいいかもですね」

 

CiRCLEなら就職してもいいまである。

環境だけなら傷ついた俺を癒してくれるかのような人ばかりだし。

 

「でも八幡君たちは練習大変そうだし無理は言えないけどね」

 

まぁそれはそうなんだけどリサとかは俺たちと同じくらい練習しててもバイトしてるしな.....

 

「まりなさんの頼みならいつでも手伝いますよ」

 

「あはは、そんなこと言うと本当に働いてもらっちゃうよ?」

 

この数日の間に俺はCiRCLEのスタッフの人たちに心をすでに開いたと言っていいだろう。

なんだか平塚先生くらいの信頼感がある。

世の中の人がただみんなこんな人たちならいいのに。

 

「お疲れ様でーす!」

 

「練習おつかれさま、ひまりちゃん」

 

「いえいえまりなさんもお疲れ様です」

 

「.....」

 

あれ?俺に気づいてない?

それとも気づいて無視してるの?

 

 

「それで次の予約なんですけど......」

 

これはおそらく気づかれてないですね。

 

「ひーちゃん片付け終わったよー」

 

「こっちも今次の予約とっておいたよ」

 

「みんなおつかれさま」

 

「おつかれさまです」

 

「あれ?まりなさんの横にいるのって.....」

 

「.....おつかれ」

 

美竹が俺に気づいたようなのでとりあえずそう言っておく。

 

「え、あ!は、八幡先輩!?」

 

「お前さすがに気づかないのはやばいだろ」

 

「だってこんなところに八幡先輩がいるとは思わないじゃないですか!」

 

「いやさすがにそれは失礼だろ」

 

「いやーうちのひーちゃんがすいませんねー」

 

「モカ〜!!」

 

「それでなんで八幡先輩がここにいるんですか?」

 

宇田川が聞いてくるけどまぁ普通気になるよな。

 

「まぁ、そのなんだ、バンドメンバーからの裏切りだ」

 

「一体八幡先輩ってどんな扱い受けてるんですか.....」

 

俺の言葉に美竹が引いている。

 

「....もう俺には普通がわからん」

 

「それ相当ですよね.....」

 

「だ、大丈夫なんですか?」

 

やっぱ心配してくれるのが普通だよな?

俺の周りの奴が異常なんだよな?

 

「もう慣れてきた」

 

「八幡君、あんまりあれなら私にも相談してね?」

 

「もういいんです.....」

 

まりなさんも心配してくれるが今更急に扱いが良くなったとしてもむしろ何かありそうで不安になりそうなだけな気がする.....

 

「つらいなら私も話を聞きますからね?」

 

「その時にはそうさせてもらうわ」

 

「あれ?なんかつぐみ八幡さんとの雰囲気変わった?」

 

「ら、蘭ちゃん!?」

 

まぁ前に色々あって一緒に出かけたりしたからな.....

あのことはいまだに恥ずかしくて思い出すたびに顔が赤くなる.....

 

「な、なにもないから!本当に!」

 

その反応何かあるって言ってるようなもんだからな?

 

「ふふつぐ〜話はこのあとゆっくり聞かせてもらおうか〜?」

 

「ひ、ひまりちゃん目が怖いよ....」

 

「それじゃあ〜つぐの家にゴー」

 

「ちょちょっとみんな〜」

 

そんな感じでアフグロは騒がしくCiRCLEを出て行ったのだった.....

 

「ふふっ八幡君もしっかり青春してるねー」

 

「そんなことないですって.....」

 

「いいから私にも話してごらん?」

 

ここにも1人食いついちゃった人いたわ.....

 

「いや、だから.....」

 

このまま引き下がらないだろうと判断した俺は羽沢と出かけたことを抜粋して話した。

 

「つぐみちゃん意外と大胆なんだな〜」

 

「でもなにもなかったですよ」

 

本当はちょっとはあったけど.....

 

「なるほど.....八幡君がそう言う感じなのか.....」

 

「どうかしました?」

 

「いやーこれは私が言っちゃうとね?」

 

聞いておいて教えてくれないのか.....

俺の周りの人は俺に隠し事するのが好きなの?

そのうち俺以外で情報共有されてそう。

 

「はぁ.....」

 

しかしどれだけ考えても俺にはわからないので仕方いないことなんだが。

本当諦めることに関して俺の右に並べるやついるの?

 

「八幡君ってよく女の子たちに怒られるでしょ?」

 

「え、なんでわかるんですか?」

 

「うーんとね、女の子ならみんなわかることなんだよ」

 

そんなことあるのだろうか?

 

「はぁ.....」

 

「でも君は多分そのままでいいと思うよ」

 

「ありがとうございます?」

 

そんなことを言われたことがないくらいの褒め言葉だがなんか褒められてる気がしないんだよな。

 

「あれ?八幡じゃん!本当に働いてるんだね〜」

 

「ああ、そりゃそんな冗談は言わないわ」

 

リサはケントから聞いて知ってるんだろうな。

でもなぜか、ケントがリサ姉にはオレも手伝ってるって言わないでって言ってたな.....

 

「リサちゃんこんにちは!今日も練習?」

 

「あ、まりなさんこんにちは〜今日はあたしと燐子だけで自主練するんだ〜」

 

「普段から自主練とかどんだけ偉いんだよ....」

 

「そう?あたしたちは普通なんだけど?」

 

「ふっうちも俺以外は頑張っているぞ」

 

「いやそこは八幡も頑張ろうよ.....」

 

「.....それ以外のことを頑張らさせられてるからな」

 

「あ〜なるほどね.....」

 

というか実際のところ俺はそれなりに1人でも練習はしてる。

バンドに戻ってくる前にも1人でスタジオによく通ってたし今でも練習以外にも家でも弾いてるくらいだ。

....断じて他にやることがないとかではない。

 

「でもこないだケントが言ってたけど八幡、そういう割に努力家なんだってね。隠そうとしてるのかな〜、いやー八幡も意外と見栄っ張り?」

 

ケント.....頼むから人の個人情報を易々と教えないでくれ.....

 

「そんなことない」

 

嘘です、めっちゃ見栄張ってます。

 

「あはは、じゃあそういうことにしとくね」

 

その言い方は信じてないですよね〜。

 

「あの.....今井さん、お待たせ.....しました」

 

「あれ?燐子いつからいたの?」

 

「少し前からいたんですけど.....声をかけるタイミングが分からなくて....」

 

俺はクラスでそんなことばかりだけどな.....

 

「私も気づかなかったよ.....」

 

「すまん.....俺もだ」

 

「いえ.....気にしないでください」

 

「それじゃああたしたちはそろそろ行こうか」

 

「はい.....そうしましょう」

 

「それじゃあ八幡にまりなさんお仕事がんばってね〜」

 

「うん、リサちゃんたちも練習頑張ってねー!」

 

こうして受付にいるだけでいろんな人と関わる機会がある。

スーパーエリートぼっちの俺には難易度が高い仕事だがこうやって知り合いなら気が楽だな.....

CiRCLEはガールズバンドが利用することが多いから尚更そう感じるんだよな.....

 

「2人ともおつかれ、一旦ボクが変わるから休憩したら?」

 

「あ、ユウト君それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

「じゃあお願いします」

 

「うん、でもちゃんと時間は守ってね?」

 

「.....善処します」

 

俺が仕事に疲れてたまに休憩が若干長くなってしまうからの注意である。

いやだって働きたくないとか本気で思ってる奴が急に働いたらそりゃそうなるだろ。

 

「だいじょーぶ!今回は私も一緒に休憩するし!」

 

監視がつくほど信用ないですかね.....

 

「ははっ、なら安心だね」

 

「それじゃあよろしくね」

 

そう言いまりなさんはスタッフしか入れない扉を開け姿を消す。

 

「?八幡君も行かないの?」

 

「なんか不思議だなって思って」

 

「なにがだい?」

 

「こうやって俺がここで働いてることです」

 

「ボクも働き始めた時は同じことを思ったよ」

 

「なんか俺たちが使ってるスタジオもいろんな人のおかげで使えるんだなって」

 

「そうだね、本当に大切なことだ」

 

しみじみと噛み締めるようにユウトさんはそう呟く。

 

「だからいつもありがとうございます」

 

「早急に言われちゃうと照れるね」

 

「それじゃあ俺も休ませてもらいます」

 

「うん、さっきの言葉を言ってくれたサービスで少しだけなら長めに休憩してもなにも言わないよ」

 

「そりゃ言った甲斐がありましたね」

 

「あははそうだね」

 

そう言って俺もいまだに開ける時に違和感を感じるドアを開けるのだった.....

 

「本当に、ありがとう」

 

扉を閉める瞬間ユウトさんがそうポツリと呟いたのが聞こえた。

その時の表情はきっと笑ってるんだろうなと思った。

 

*****

 

「八幡君なにかユウト君と話してたの?」

 

「まぁ少しだけ」

 

「どんなことを話してたのかな?」

 

「そうですね.....内緒です」

 

「えー男の子同士でずるーい!」

 

「男の秘密話なんて聞いても大した話なんてしてないんですよ」

 

個人的な意見でしかないが男というのは女子が普段から友達同士でするようなコミュニケーションを極端に恥ずかしがるものだ。

だからきっと女子からすればそれはたいした話じゃない。

 

「そうなの?うーんじゃあ今回は諦めようかな」

 

次回もできれば諦めてください。

 

「でも八幡君がすぐに馴染んでくれてよかったな〜」

 

「周りが優しい人ばかりだったしそれは....俺の方が感謝したいくらいです」

 

「うーん本当に嬉しいことを言ってくれるね!よしよし」

 

「ちょっとやめてください.....」

 

流石にこの歳の男が美人のお姉さんに撫でられてるのは絵面的にアウトだ。

 

「ごめんごめんつい手が勝手に〜」

 

「次はやめてくださいね.....」

 

「気を付けはするよ」

 

あ、この人多分次もやるわ。

 

「でもちょっと意外だったかも」

 

「なにがですか?」

 

「なんとなく八幡君って周りとあまり関わらないタイプの子なのかと思ってたからさ」

 

「無意識なら人が傷つくワード選ばないでください.....」

 

否定できないから......

 

「あ!ご、ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだけど.....」

 

「もういいです.....慣れてるので.....」

 

「だからねなおさらさっきの言葉が嬉しかった」

 

「そういうものなんですかね?」

 

「うん!そうだよ!」

 

「そうですか、でもCiRCLEのスタッフの人たちはなんとなく似てるんですよ、俺が今まであった信用できる大人に」

 

やっべなんかすごい偉そうなこと言ってしまった.....

 

「でもわかるなぁ.....年上でなんか信用できる人って感じられるひといるよね」

 

「はい」

 

俺にとって今までそれは平塚先生だったわけだけど.....

あの人は短期で強引なところもあるし結婚もできないけどそれでも俺のことを本気で考えてくれているのがわかるのだ。→短気で

 

「私も昔バンドやってたときにそれを感じたな〜」

 

「まりなさんは年上の人とバンド組んでたんですね」

 

まりなさんの昔バンドを組んでいた話はこうやってバイトの休憩中とかに聞かせてもらったがバンドのメンバーのことはあまり詳しく聞いてないんだよな。

 

「うん、私以外みんな同じ学年だったんだけど....みんな優しい人だったよ」

 

逆などうしたらそんな状態になるんだよ.....

 

「当時バンドのリーダーだった人はちょっと強引なところもあったんだけどバンドのことを誰より大切にしてくれたんだよ」

 

なんか平塚先生に似ているな.....

 

「バンドの空気が悪くなり始めたのもいち早く気付いて.....バンドのために解散を提案してくれた.....今思えば多分1番自分が提案するのが辛かったんだろうなって思うんだ」

 

「でもきっと今もその人はそのことを後悔はしてないですよ」

 

「そうかな?」

 

まりなさんが不安げな表情を浮かべる。

 

「はい、きっと」

 

なぜかは分からないけどきっとそうなのだろうなわかる。

きっと俺の知ってるあの人はそうだろうから。

 

「そっか、ありがとうなんかスッキリしたよ」

 

「いえ、俺も出過ぎたこと言いました.....」

 

「ううん、なんだか君と話してたら昔の仲間に会いたくなっちゃった」

 

「今も連絡を取ってるんですか?」

 

「ううん、今はなにをしてるのかも分からないけど面倒見のいい人だったから.....先生なんてやってるかもね」

 

「きっといつか会えますよ」

 

「うん!そうだよね!」

 

「音楽が好きならふらっとここにくるかもしれないですしね」

 

「ふふ君って優しいんだね」

 

「そんなことはないと思うんですけど.....」

 

俺はお世話になってる人が落ちこんでいるのを見てたくないだけだしな。

 

「おっとこれ以上はユウト君に怒られちゃうね」

 

気がつくと確かにそろそろ戻らないといけない時間だった。

 

「そうですね、もうひと頑張りしましょう」

 

こうして俺たちはまた仕事に戻るべく立ち上がるのだった.....

 

*****

 

それから1週間が経ち明日がイベント前のミニライブの日となったがそれまでの間驚くほどトラブルもなく順調にすすんでいる。

 

「それではもう一度イベントについての確認をしましょう」

 

そして今は前日の各バンドの代表による確認が行われている。

 

「おう、内容についてはこの間の話し合いで決まったことで変更はない」

 

「えっとそれで順番とかも変更はないってことで大丈夫ですか?」

 

ポピパからは市ヶ谷が来てくれて助かったな.....

 

「ああ、なにか起こらない限りはそのままでいく」

 

「うん、わかったよ!」

 

「イベントの前にミニライブが成功すればいいアピールになるわ、だからこのライブは大切にしたいわね」

 

雪ノ下が一応言おうとしてたミニライブの意味を先取りして言ってしまった.....

 

「でもどんな時もあたしたちはいつも通りでいくだけだから」

 

「そうよ!あたしたちはどんなときもみんなを笑顔にさせてみせるわ!」

 

なんて頼もしい言葉だろうか。

普段はよくわからない鶴巻の言葉さえこんな状況だと安心できるな。

 

「それじゃあ確認は異常だから各自で自分のバンドのメンバーに話し合いの内容を伝えてくれ」→以上だから

 

「うん!わかったよ」

 

彩が返事をして他の奴らもうなづいている。

これなら明日もきっと大丈夫だろう。

 

「それじゃあ明日はよろしく頼む」

 

なんだか俺委員長にでもなった気分だなぁ.....

現実には絶対にあり得ないことだけどな.....

そして俺の言葉を聞いて各メンバーは解散をする。

 

「比企谷君」

 

「ん?どうした雪ノ下」

 

「いえ、あなたは明日スタッフとして働いているのよね?」

 

「ああ、誰かさんのせいでな」

 

実際はわりと楽しんでるからいいんだけどな.....

 

「そしたら演奏は聞いてられるの?」

 

「ああ、そこは気を利かせてくれてな」

 

「そう、あなた最近練習に来ないから私たちの演奏がどうなったか知らないでしょう?」

 

「ああ、でも仕方ないだろ....」

 

イベントの運営というのは大変なんだなぁといやというほど思い知らされた。

働いてるのがここでなかったら多分無理やり辞めてたまでにある。

 

「それはわかってるわ、それにあなたはなんだかんだ言って練習はしてるようだし」

 

「.....でなにが言いたいんだ?」

 

「いえ、あなたが思ってるより私たちは仕上がってるわよ?」

 

「なんだ、それは楽しみにしてろってことでいいのか?」

 

「ええ、そうね」

 

いつもならそういうことを喋る小町もあんまそういうことを喋らなかったし口止めでもさらてたのか?→させられてたのか?

 

「別に元からおまえが仕切ってる時点で心配してねーよ」

 

「あなたも練習を頑張らないと置いていってしまうわよ?」

 

「手厳しいなお前」

 

俺のことを心配してくれてるのか?

いやそんなことはないかこいつ良くも悪くも裏表ないし。

 

「まぁ楽しみにしとく」

 

そう言いつつ自分が出ないのに明日のライブが楽しみになっていることに俺はふと気がつくのだった.....




今回はここまでです。
なんかかなり日常回っぽくなりましたね。
次回もわりとこんな感じになるかもしれません。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。

それでは次回予告行ってみましょう!



「それで私なんかが来てよかったのかな.....?」

「まぁここに呼ぶ人は気分次第らしいのでいいんじゃないですか?」

「八幡君、次回予告だからってちょっとメタいよ.....」

「そうは言ってもしかたないですし次回予告しちゃいましょう」

「あははそれじゃあ次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『たまには神様もいいことをするらしい』です!」

「まさかあの人が来るとはな.....」



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第51話

3月はかなりの話数投稿できましたね。
4月からはいつも通りのペースに戻りますが気長に待っていてください。

バッドアップルのグレ数が1桁以内にできないのが悩みです....


ついにミニライブ当日となった。

いつもならイベント開始の時間に合わせて家を出るのだが今回に限ってはそうはいかない。

 

「じゃあ小町俺は先に行ってるからな」

 

「いってらっしゃいお兄ちゃん、小町たちのためにも頑張ってね!」

 

「はいはい」

 

「もう!そこで任せろって言えば小町的にポイント高かったのに」

 

「あらやだそうだったの?」

 

「うん、次からは気を付けてね?」

 

「忘れなかったらな」

 

「じゃあお兄ちゃん周りの人に迷惑かけないようにね?慣れないことを無理しないでね?ちゃんと休憩も適度にもらうんだよ?」

 

「お前はお兄ちゃんをなんだと思ってるんだ.....」

 

「ごみぃちゃん?」

 

「ひでぇ.....」

 

「まぁとにかく頑張れってことだよ!」

 

「はいよ」

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

結局また同じことを言ってから俺は家を出るのだった.....

 

*****

 

「あ!八幡君こんにちは」

 

「こんにちは、もしかして俺遅刻しちゃってますか?」

 

挨拶してきたまりなさんの奥にもすでにスタッフの人が働いてくれているのが見える。

余裕を持って出てきたはずなんだけどな.....

 

「ううん、私たちはただ落ち着かなくて早くきちゃっただけだよ」

 

「俺もすぐ手伝いますね」

 

「うん!お願い!」

 

そうだよな、このライブハウスの初めてのビックイベントだもんな.....

 

「必ず、成功させましょう」

 

「うん!そのためにも君にも働いてもらうよ〜」

 

「今日だけ特別ですよ」

 

普段なら絶対そんなに働かない。

 

「できればいつもそれくらい頑張ってほしいんだけだな.....」

 

「無理ですね」

 

「即答するね!?」

 

「それじゃあ準備してきます」

 

「うん!」

 

そうして俺はひとまず着替えを済ませようとスタッフルームに入るのだった.....

 

「あ、八幡君も今来たんだね」

 

「ユウトさんもですか?なんか俺たちだけ遅刻しちゃったみたいですよね」

 

「あはは、ボクも今日のイベント楽しみでさ.....寝れなくてつい....ね?」

 

なるほど

 

「寝坊したんですね」

 

「はっきり言ってくれるな!?」

 

「とにかく急ぎましょう」

 

最近はこんな感じでユウトさんをいじる余裕まであるまでにある。

 

「あ、ちょっ、ちょっと待ってよ!」

 

俺にからかわれてたせいでユウトさんはなんとも中途半端な着替えになってしまっている。

 

「急がないとまりなさんたちが全部終わらせちゃいますよ」

 

「確かにそれもそうだ」

 

「なら早くしましょう」

 

「うん!」

 

どうやらこのライブハウスにサボろうなんて考えは誰1人として持っていないらしい。

これじゃあ俺もがんばらなければならないじゃないか.....

なんて、昔なら思ったのかななんて思いながら俺はユウトさんを置いてドアを開けるのだった......

 

「え?結局ボク置いてかれるの!?」

 

*****

 

「2人とも遅れてきた分しっかり働いてもらうからね〜」

 

「いや遅れてはないんですけど.....」

 

「君たちだけ遅くきたんだから実質遅刻みたいなものでしょ」

 

「なんて暴論.....」

 

流石のユウトさんもこの表情である。

 

「ほらほらそんなこと言ってないで仕事仕事〜」

 

「もしかして今日想像よりもブラックデー?」

 

「はは.....かもね....」

 

少しばかりテンションが下がった俺たちだった.....

 

*****

 

しかしそれから俺は社畜の如く働いた。

正直今までのライブの裏にはこんなにも人のサポートがあったんだなぁと思った。

 

「ふぅ、これで一通りは大丈夫かな?」

 

「思ったより大変なんですね.....」

 

「わかってくれた?」

 

「はい....」

 

「....まだなのかな」

 

「ユウト君そんなにキョロキョロ辺りを見渡してどうしたの?」

 

「言い忘れてたんだけど今日八幡君に会いたいって人が来るんだよね」

 

「え?俺ですか?」

 

「うん、なんでも学校の先生らしいんだけど....八幡君が働いてると聞いて真面目に働いてるか見たいんだって」

 

それもうあの人が来ること確定じゃん。

 

「もーそういうことは前もって言ってくれないと」

 

「それ俺のセリフです」

 

「ごめんね、オーナーに許可を取ったあとに言えばいいかと思ってたら忘れてたよ.....」

 

オーナーも許可を出さないで欲しかったな......

 

「おお!比企谷探したぞ!」

 

あ、話をすればなんとやらってやつだった.....

 

「こんにちは、平塚さん....でよかったですよね?」

 

「はい、今回は無理を言ってすいません」

 

え?この人こんなしっかり周りに接せられるの?

八幡びっくり!

 

「比企谷、それ以上失礼なことを考えたら容赦なく一撃浴びせるがいいか?」

 

そういえばこの人元祖エスパーだった.....

 

「それはそうと比企谷は真面目に働いていますか?」

 

「は、はい仕事はきっちりとこなしてくれていますし職場にも馴染めています」

 

「そうですか!比企谷が真面目に働いてるなんてな〜。私は嬉しいぞ.....」

 

「おかんみたいなことを言わないでください」

 

「だってついこの間まであんなにも性根が腐って目が濁っていて働きたくないとか本気で言っていたような生徒がここまで成長したんだぞ.....」

 

「泣きますよ?」

 

「冗談だ」

 

そういえばさっきからまりなさんがやたらと静かだな。

 

「.....静さん」

 

「.....え?」

 

まりなさん?知り合いなのか.....

まさかとは思うけどこないだ同じ人のこと話してた?

世間狭すぎだろ.....

 

「ま、まりなか?」

 

「は、はい」

 

あらやっぱり予想通りっぽいな。

でも久しぶりだからかいまいちぎこちないな.....

 

「本当に先生やってたんだ.....」

 

まりなさんがそう呟く。

そういえばこの間冗談でそう言ってたんだったな。

 

「なんだ、似合わないとでも言いたいのか?」

 

「いえ、すっごい合ってると思いますよ」

 

まりなさん....嬉しそうだな。

 

「まさかこんなところで再開するなんて思わなかったな、君は.....まだ音楽に関わっていたのか」

 

「はい、音楽を頑張ってる子を手伝ってあげたくて」

 

「そうか.....それは素晴らしいな」

 

「静さんはどうして先生に?」

 

「私も似たようなものだ、青春を送る子どもの手伝いをしたかったんだよ。こんなふうに手のかかる子どもも多いがね」

 

「水を差すようで悪いんですけど本人がいる前で手がかかるとか言わないでくれます?」

 

あ、やばつい我慢しきれずにツッコンでしまった.....

2人の感動の再会だったというのに。

 

「でもこうやって八幡君を静さんが教えてたからまた私たちは会えたんですね」

 

「そう思えば、比企谷には感謝だな」

 

本当にそうだろうか?

多分俺がいなくてもこの2人は出会った気がするんだよな。

そう思うのはなぜだろうか。

俺は運命なんて信じない、そゆなものがあるのなら人間はそれにすがることしかできなくなるからだ。

でも.....こんな運命ならあってもいいのかもしれない。

 

「....俺は何も」

 

「そう言うな、こういったときには素直に感謝しておけばいいんだ」

 

「ふふ本当に先生なんですね....」

 

「おいおいまるで信じられないみたいに言うな」

 

「実際にこうして会えたのが信じられないですから」

 

「私もだ、君ももう成人したしまた今度話をするがてら飲みにでも行こう」

 

「はい!楽しみにしておきます」

 

「いまいちボクだけ状況がわからないんだけど.....」

 

「また後で説明します」

 

1人事情を知らないユウトさんだけは困惑してるようだ。

 

「そうしてもらえるかな?」

 

正直この状況で俺たちは邪魔でしかない気がするのだが.....

 

「それからどうだったんだ?」

 

「そのあとは.....」

 

もう2人で思い出話に花を咲かせてしまって周りが見えてないようだな。

 

「準備も終わってるしもう少しそっとしておこうか」

 

「そうですね」

 

そのまま俺たちはそっとその場をあとにするのだった....

 

*****

 

それからおよそ1時間後その他の細かいことなども準備し終わりそろそろ出演バンドが集まりだすころになった。

結局平塚先生はそのままライブを見ていくことにしたらしく「まりなのためだ!」なんて言って手伝いまでしてくれた。

本当にあの人男前すぎるんだよなぁ.....

 

「こんにちは、八幡お仕事お疲れ様」

 

「おう、湊早いな」

 

「当たり前よライブ前にも準備が色々あるのだから」

 

相変わらずストイックなやつだなぁ.....

 

「Roseliaのメンバーはいつも早いしなぁ....」

 

「あなたたちがこうやって準備してくれてるのだから私たちが最高のステージにするための努力を怠っていいはずがないわ」

 

なんだろう、俺の周りの女子は俺より男らしいこという人が多いんだけど。

なに、もしかしてこれ俺がヒロインだったりする?

そんなわけないのはわかってるよ?

 

「そ、そうか」

 

やだ、なんだかドキドキしてきちゃった?

 

「約束するわ、今日も私たちは最高のステージにすると」

 

「おう、楽しみにしてる」

 

全く恥ずかしいことを言ってくれるやつだ。

 

「湊さん、八幡さんもこんにちは」

 

「友希那があんなこと言っちゃったらあたしたちも頑張らないとね〜」

 

いや聞いてたんかい。

 

「ええ、その通りですね」

 

「もちろん!あこたちもすーーっごくかっこいい演奏しちゃうよ!」

 

「....頑張ろうね....あこちゃん」

 

あれ?この人たち打ち合わせでもしてたの?

そう思うくらいタイミングよく集まってくるじゃん.....

 

「比企谷が....あんな風に話してるなんて....」

 

「静さん、ハンカチ使います?」

 

「ああ、ありがとう」

 

あんたはあんたでそんなことで感動しないで?

そしてまりなさんもうちょっとおかしいと思って?

 

「とにかく今日は頼んだぞ」

 

「ええ任せてちょうだい」

 

そう言ってRoseliaは控え室へと向かっていった。

 

「あ、八幡君お仕事お疲れ様」

 

「おう俺がこれだけ働いたんだから今日は頼むぞ」

 

「う、なんかそう言われると緊張しちゃうな〜」

 

「彩ちゃんの場合ステージならいつでもどこでも緊張してるじゃん」

 

「ううその言い方はひどいよ〜」

 

「でも空が彩さんらしいですよ!」

 

「そうです!彩さん気にしなくてもいいんですよ!」

 

「少しは気にしてほしいのだけど.....」

 

このバンドも本当に仲がいいなぁ.....

 

「まぁ噛まなかったら彩じゃないみたいなところあるからな」

 

「八幡君までそんなこと言わないで〜。うう〜今日は絶対噛まないんだから!」

 

「....から回らなければいいのだけど」

 

そう心配される時点でもう信用されてないよね。

 

「そんなことにゃいんだから!」

 

もう噛むんだ.....

これは先が思いやられる.....

 

「.....白鷺、頑張れよ」

 

「はい....」

 

「あはは彩ちゃんもう噛んでるじゃん!」

 

「やっぱりこれでこそ彩さんってかんじですね!」

 

「彩さんはやっぱり彩さんです!」

 

「本番は絶対噛まないから.....」

 

そう言いながら彩は恥ずかしそうに顔を赤くして控え室へと向かって行った。

 

「比企谷、今のってアイドルバンドのパスパレだろ?お前なんで知り合いなんだ?」

 

「まぁ色々あって」

 

説明するのは面倒くさい。

 

「まぁいいそれはまた今度聞くことにしよう」

 

「八幡君って今思うと女の子の友達多いよね〜」

 

「お前.....私を置いて行く気か?」

 

「高校生の交友関係に本気で自分の結婚の心配しないでください....」

 

「お前にはわからんよ、この焦りは....」

 

「私ももう危ない歳になってきちゃったなー」

 

まりなさんも乗っからないで?

てかまりなさんもそんなこと気にしてたの?

 

「とりあえず今はその話は置いておいたら?」

 

あれ、ユウトさんいつのまに?

 

「私たちからしたら深刻なんだよこの悩み」

 

え?まりなさんもしかしてそう言うのめっちゃ気にするタイプなの?

2人とも性格いいし絶対いい人見つかると思うんだけどなぁ。

 

「大丈夫、2人ともとても素敵だからいつかいい人が見つかるよ」

 

それを言葉にして伝えられるとかこの人イケメンすぎか?

 

「ユウト君.....そ、それで何か用でもあったの?」

 

まりなさんも動揺してんじゃん。

 

「いやまりなさんに手を貸してもらいたくてね」

 

「そうなの?今から行くよ」

 

そう言って2人は受付を離れて行った。

 

「.....なにが危ない歳になってきただ」

 

そしてこの人はこの人でそんなことで年下に嫉妬しないでくれ.....

 

「平塚先生も......見つかりますよ......多分」

 

「はぁ.....」

 

なんか雰囲気が重くなってきてしまった.....

 

「あら?どうしたの八幡にそこの人はなんで楽しいライブの前にそんな顔をしているのかしら?」

 

こ、この声はこの場の雰囲気を変えるには最適な存在!

 

「そうだよ!ライブは笑顔で楽しまないと!」

 

その調子で平塚先生をいつもの感じに戻してくれ.....

 

「あ、ああすまないそうだよな、そう私はただライブを楽しみにしてれば.....」

 

よし、いつもの感じになりつつあるぞ。

 

「それにあなたのような人には笑顔こそが1番似合う」

 

「は、はい」

 

あれ?なんか平塚先生顔が赤くない?

ねぇもしかして瀬田さん落としちゃった?

 

「あら?いい笑顔ね!」

 

「こ、こころたち速すぎ.....」

 

「ふええ.....」

 

そしていないと思ってた2人は案の定こいつらに置いていかれてたのか。

 

「す、すいませんうちの3バカが何か迷惑かけてませんか?」

 

もう完全に保護者になってるなぁ.....

 

「いや、この場においてはむしろ感謝してる」

 

若干平塚先生がやばいことになるかもしれないが。

 

「それじゃあこころライブの準備しに行こう?」

 

「そうね!みんなを笑顔にするために準備をしましょう!」

 

嵐のようにきて嵐のように去っていくな.....

 

「は、八幡君」

 

みんなが控え室に向かう中松原だけが立ち止まり俺の名前を呼ぶ。

 

「お疲れ様、ありがとうね」

 

「お、おう」

 

全くさっきからみんな俺に感謝を言ってくれるが.....本当に慣れないんだよな.....

 

「....君も裏切りものだったか......」

 

さ、殺気?

 

「いや断じてそんなんじゃないです」

 

「ではなんだというのだ?」

 

「あれは期待させてくれるだけで....ただの優しい女の子ですよ」

 

「君はそういうところも捻くれているのか.....」

 

「他の人と違った観点から事実を見てるんです」

 

「さっきは成長したかと思ったんだがな....」

 

「人はそう簡単に変わらないってことです」

 

「まぁ、前に比べれば遥かな前進だ」

 

「そうですか、未だにお礼を言われても慣れないくらいですし」

 

「本当に感謝された時なんてみんなそんなものさ、そういう人は人生でそう多く会えないからな」

 

「説得力がありますね」

 

「そりゃこういうことを伝えようと教師をしてるんだからな」

 

「静さん、やっぱり変わらないですね」

 

「悔しいが比企谷のいう通りなんだよな.....」

 

「ようやく俺の正しさがわかりましたか」

 

「調子にのるなっ!」

 

いってぇ....いつもの威力よりは弱いけど.....それでもいてぇ.....

 

「あはは、そういうところも変わりませんね」

 

昔からこうだったのかよ.....

 

「そうそう、それで八幡君力仕事で男の人が必要だから手伝ってくれる?」

 

「はーい....」

 

「あからさまに嫌がってるな.....」

 

力仕事を喜ぶ変態とかこの世の中に存在するの?

 

「お疲れヒッキー!あれ?なんで平塚先生いるの?」

 

「俺の働きぶりに感動しにきたんだよ」

 

「嘘をつくな嘘を」

 

いってぇ....またかよ

 

「もしかしてライブ見て行ってくれるんですか?」

 

「ああ、楽しみにしてるぞ」

 

「これは気合入れないとですね!」

 

小町もやる気ばっちりみついだな、この間よりも緊張してないようだし。

 

「そーだよ!」

 

あらポピパの皆さんもお揃いで。

 

「やる気いっぱいですね」

 

「そりゃこのメンバーでやるライブは初めてだからね!」

 

結局俺は最後の方は全く練習見てないから完成度は不明だ。

 

「戸山さん今日はよろしく頼むわね」

 

「はい!雪乃さんも沙希さんもお願いします!」

 

「うん、よろしく」

 

返事は素っ気ないが雰囲気は柔らかいな。

こいつも前に比べて変わったよな.....

 

「まりな、このライブハウスは恵まれたな」

 

「はい、まったくです」

 

さっきは変わってないなんて言ったが.....

知らぬ間に俺の周りは騒がしくなったな

ま、それはそれでいいか。

 

*****

 

その後のミニライブは大成功と言っていいだろうほど盛り上がった。

どのバンドも大きな歓声が上がっていた。

 

「八幡先輩そこのジュースとってもらえますか?」

 

「ほらよ」

 

今はまりなさんたちの計らいでライブの打ち上げを全バンドでやっているところだ。

湊と紗夜が若干渋ったが最終的には全員参加になった。

 

「先輩、今度はこっちにもお願いしまーす」

 

「お前ら仮にも先輩をこき使うな」

 

戸山と花園は俺のことを本当に先輩と思ってるだろうか?

 

「私もいていいのだろうか.....」

 

「いいんですよ、静さんもも準備手伝ってくれましたし!」

 

「そ、そうか....?」

 

「いいんですよ、みんなに感想を言ってあげてください」

 

平塚先生もまりなさんに半ば強制的に参加させられている。

ユウトさんも持ち前の心の広さで嫌な顔一つしない。

 

「でも今日のライブなんかドキドキしちゃった!」

 

「うん、本番はもっとみんなを楽しんでもらえそう!」

 

打ち上げ会場の様々な場所で今日のライブの感想を話し合っているがどこも手応えを感じているようだ。

 

「このままこのメンバーでバンドやってもいいかもってくらいだよ!」

 

「ユイ姉.....冗談だよね?」

 

ライブを見にきたケントが由比ヶ浜の言葉に不安がっている.....

冗談のはずだ.....多分。

 

「そしたらお兄ちゃんたちはお兄ちゃんたちでバンドを組んじゃうかもですね!」

 

戸塚と一緒にバンドできるならそれはアリかもしれない.....

いやいや、あんなことまでして即リストラは勘弁だ.....

 

「た、多分冗談だよ」

 

「....あいつらならやりかねない気がしてきました」

 

いや、ほんとマジで。

 

「でもこの感じならこのままあの子たちにイベントの方向性を決めてもらって大丈夫そうだね、八幡君はどう思う?」 

 

「.....大丈夫じゃないですかね?」 

 

と言いつつも若干不安なのも確かだ、今のところあまりに順調に行き過ぎなんだよなぁ......

 

「うんうん、そうだよね。」

 

「細かいフォローはボクたちの仕事だけどあの子たちのパワーを信じてみようか」

 

「うんうん、だからさ君たち景気づけにもう少し食べ物買ってきてくれる?」

 

「え?いいけど」

 

「それくらいなら」

 

まぁこいつらもがんばったし買い出しくらい引き受けてやろう。

 

「あ、もちろん君たちのおごりね〜」

 

俺とユウトさんはそう言われて顔を見合わせる。

お互いに懐に余裕があるわけではないからおそらく考えてることは同じだ。

 

「いいよね?」

 

ダメ押しの一撃を入れられて俺たちは素直に諦めることにした。

というか抗議はおそらく意味をなさない。

 

「「はぁ.....わかったよ(わかりましたよ)」」

 

やっぱりしわ寄せはどこかに来るのだ.....

俺とユウトさんは2人だけテンション低く打ち上げ会場から出ていくのだった......

なんだか外の月がいつもより優しく見えた.....




今回はここまてまでになります。
まさかの連日投稿に自分が1番びっくりしてます。
このペースなら3月中にもう1、2話投稿できるかもしれないかもですね。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。

それでは次回予告にいきましょう!


「どうして....こうなったんですかね?」

「考えちゃダメだよ.....ボクたちはそういうふうになってるんだ」

「ユウトさん.....悲しいですね」

「ああ、仕方ないよ.....」

「これ以上この話をするのはやめましょう.....」

「それじゃあ次回予告しちゃおっか.....」

「はい.....次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『いつか糸は綻びだすものである』だ」

「「はぁ.....」」


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第52話

なんか予想外にこの話長くなってきてますね、でもあと数話でひと段落すると思います。
その後はまたいろんなイベントに八幡たちを参加させたいですね〜。
このガルパのイベントに八幡たちが入ったのを見たい!とかあったら気軽に言ってください。
ネ、ネタ切れなんてしてないですからね!



ミニライブは成功に終わり各バンドのモチベーションが高まってきたところで出演バンド合同で練習してみようという意見が出てきた。

 

「そうかそうか、次は合同練習するのか〜」

 

そこで俺はまりなさんに報告がてらどうするべきか相談しているところだ。

 

「今のところ3回くらいやろうかって思ってるんですけどどう思いますか?」

 

一度きりじゃそれぞれのバンドの特色を理解しきれない可能性があるからな.....

 

「私はいい意見だと思うんだけど....」

 

「だけど?」

 

「ちょっと不安なところもあるかなって」

 

優しいまりなさんだが意見はしっかりと言ってくれるのはありがたい。

 

「そうですよね.....」

 

だがそれは俺も思っていたことでもある。

 

「わかってると思うから心配はあまりしてないけど.....気をつけてね?」

 

「はい、わかりました」

 

ここでいう不安それは各バンドの方向性をまとめられるかということだ。

特に合同で練習などをする場合はその問題はわりと深刻なのだ。

 

「これからも話し合いとかがあるのでなるべくフォローしておきます」

 

「うん、困ったことがあったらしっかりと私に言ってね」

 

「はい」

 

そういうところで俺は思い上がってはいけない。

自分がまとめられるなどと思ったらそれで終わりだ。

人間調子に乗った時にこそ痛い目を見るものだ。

 

「おっと時間なので俺上がらせてもらいますね」

 

俺は残業など断じてしない主義だ。

 

「うん、お疲れ様〜」

 

「お疲れ様です」

 

そう言い残し俺はCiRCLEを後にした。

.....この後直ぐに問題の話し合いがあるんだけどな。

 

*****

 

その後俺は話し合いの場であるファミレスへと向かう。

 

「待たせたか?」

 

「いえ、私たちも今集まったところです」

 

と言いつつもすでにテーブルになぜ空になったポテトの皿があるんだ.....

 

「とりあえず八幡先輩も座ってください」

 

山吹に促され俺は空いている席に座る。

 

「何かもう話し合ったりしたか?」

 

「まだ具体的なことは何も話してないんですけど.....」

 

生徒会に入っているからなのか羽沢はこういう事務的な連絡をしっかりしてくれる。

そのおかげで情報の整理が簡単になって助かっている。

 

「なるほど、大体のスケジュールの確認が済んだところか」

 

「だけど、なかなかそれぞれのバンドの予定が一律に揃う日はないわね」

 

「そうですね.....スケジュールを組むのはなかなか大変なことになっちゃってますね」

 

ハロハピはライブをいろんな施設でやったりしているのはもちろん羽沢や瀬田はさらに別の活動をしてたりするしなかなかスケジュールに空きがないのかもな.....

 

「私たちも....5人が揃って時間を取れるのはそう多くはないわね....」

 

そしてそれ以上の難関がパスパレだよな.....

予定を自分たちで決めてるわけでもなく仕事を休むわけにもいかないからな....

 

「そうすると今のところ候補はいつになるんだ?」

 

「それが.....」

 

なんだか不穏な切り出しだな.....

 

「今の所候補になる日にちが.....ないんです」

 

「まじで?」

 

「正確に言うと25人が最初から最後まで同じ時間練習できる日にちはないと言うのが正しいですね」

 

「あと、バイト組のシフトの移動次第ではまだ予定が合う日があるかもそれないですね」

 

なるほど....つまり

 

「今のところ厳しそうってことか?」

 

「まだ言い切れはしないのだけど、今日結論を出すのは難しそうね」

 

「だからとりあえず候補の日を何日が決めておいてこれからの予定の変動に合わせて決定しようかなと.....」

 

「なるほど....」

 

思ったより難しい状況だな.....

 

「それじゃあそれを決めてから実際どんな練習をその時するのかを話し合っておくか」

 

「はい、そうしましょう」

 

「そうですね....予め練習がわかってれば3バカの制御もしやすいですしね」

 

「そ、そんな観点なんだ.....」

 

まぁだいぶ特殊な観点ではあるな。

 

「それでは話し合いを始めましょう、決めることはたくさんありますから」

 

 

「おう」

 

なんとなく不安を覚えながらもその日の会議は進んでいくのだった....

 

*****

 

「うーん」

 

「どしたのお兄ちゃん、珍しく勉強でもしてるの?」

 

「いや見れば違うってわかるだろ.....」

 

携帯見てるのを勉強って言うならこの世の陽キャ勉強しすぎになっちゃうだろ。

 

「珍しく本当に悩んでそうだったからついね〜」

 

「いつからこんなに兄をからかう子になっちゃったのかしら?」

 

「それで結局何をそんなにうんうん言ってるの?」

 

「いや、なかなか合同練習の日程が合わなくてな.....」

 

あれから予定の変更が何件か来たがそれでも今のところ全員が揃っての練習をするのは難しそうだ。

 

「やっぱりこんなに人がいるとそう言うのも大変だね」

 

「全くだ、みんな頑張って予定を合わせようと頑張ってみてくれてるが.....かと言ってそろそろ予定を決めないといけないしな.....」

 

本当にどうしたものか?

 

「まぁ最悪はなるべく人が集まれるようにするしかないよねー」

 

「そうするしかなさそうだしな」

 

でもそうするとほんとに数人が参加できないだけって感じで仲間外れみたいだしな.....

 

「ま、悩んだってしょうがないしお兄ちゃんのせいにする人なんていないんだから早く決めちゃいなよ」

 

小町ちゃん意外とドライなのね.....

 

「....明日か明後日までに結論だすわ」

 

「うん、早くしてね!小町はすっごい楽しみにしてるからね!」

 

「プレッシャーをかけるな、プレッシャーを」

 

「ふふ小町は楽しみすぎて練習をいつも以上に頑張ってるからね!」

 

「勉強もそれくらい頑張ればいいのに....」

 

もう半年もせずに受験だというのに小町は最近前よりも勉強時間が減っているように見える。

 

「い、いやこのイベント終わったらちゃんとするから....」

 

なんか歯切れ悪いな。

 

「そろそろ志望校も決めとけよ」

 

「うーん実はねお兄ちゃん」

 

「どうした小町?」

 

「今小町ね、どの高校を受けようか迷ってるんだよね」

 

この辺りで小町が行くとなると.....

総武高校か花女、羽女....くらいか。

小町の学力じゃこの辺りより上の高校は難しいだろう。

 

「最近ね、香澄さんやひまりさんから話を聞いててどっちの学校も楽しそうだなって思って」

 

小町、まさかの総武高校には興味なし?

 

「もちろん、今までと同じように総武高校を目指したいとも思うんだけどさ〜」

 

あ、よかったさすがに選択肢には残ってた....

 

「それは小町の自由だろ、自分で決めろ」

 

「.....」

 

そう言うと小町は普通に驚いた顔で俺を見てくる。

 

「お兄ちゃん大丈夫?熱はない?」

 

本当になぜこんな失礼な子になったんだ.....

 

「熱なんてない」

 

「だってお兄ちゃんがそんなこと言うとは思わなくって」

 

「確かに小町と同じ高校に通えないのは今にも号泣したいくらい悲しい」

 

「うん、確かに熱はなさそうだね」

 

返事おかしくない?

 

「でもな....小町が決めたことなら文句は言わねーよ」

 

「お兄ちゃん....今のは小町的に超、超、超ポイント高いよ!」

 

なんか一気に5000ポイントくらい入ってきそうだなおい。

 

「それにどうせお前はもう俺の言うことなんて聞かないしな」

 

「そんなことないもん!小町はお兄ちゃんのことを思って行動してるよー」

 

「嘘つけ」

 

思いっきり棒読みなところから隠す気さえないのがバレバレだ。

 

「ひっどいな〜本当なのに」

 

「そう言うのはもっと感情を込めて言うんだな」

 

「ちえお兄ちゃんなら騙せると思ったのに」

 

「そしてそう言うことを言わなければもっと八幡的にポイント高いぞ」

 

「はーい」

 

そんなことを言いながらも小町が後悔しない選択をすることを願っているのはやはり家族だからだろうか。

そんな柄にもないことを考えながら俺は自分の部屋へと戻るのだった.....

 

*****

 

「.....まじか」

 

「どうしたの、ハチ兄?」

 

その週末にCiRCLEの手伝いでイベントのポスターを許可をとった場所へと貼る作業をケントとしているときにその知らせは届いた。

 

『ごめんね八幡、その日はやっぱり店長に頼んでもシフトうごかせそうにないかも.....』

 

「リサ姉このところシフト移動かなりしてたからなぁ....」

 

今回のイベントのためにシフトを動かしていたがためにそのしわ寄せがまさかの合同練習の予定日に来たか.....

せっかくなるべく多くの人が集まる日に設定したがよりによって今井がいないのか.....

 

「リサ姉の他にもいない人がいるの?」

 

「1年組は羽沢、北沢、山吹の3人が来れなくて2年組は若宮、大和が来れなそうだったんだが.....」

 

何が不安かって今名前をあげたやつはそのバンドのまとめ役だったり他のバンドとの関係をよく保つ上で必要そうなやつなんだよな.....

 

「うーんまぁ練習をするのには問題ないだろうけど....」

 

ケントも若干の不安を覚えるらしい。

 

「それで大丈夫かなぁ....」

 

「そればかりはやってみないとわからないな....場合によってはまりなさん達の手も借りなきゃいけないかもな」

 

「そうだね、頑張ってフォローしないとだね」

 

「はぁ....そういう仕事は専門外なんだけどな.....」

 

「ハチ兄の場合対人関係が専門外みたいなところあるしね」

 

「お前最近的確に俺の急所をえぐり取るな.....」

 

「?なんのこと?」

 

自覚なしに言ってるから怒るに怒れないし.....

 

「とにかく頑張ろう」

 

「うん、わかったよ」

 

その後も黙々と作業を続けたがどうしても不安は消えないのだった.....

 

*****

 

そしてついに1回目の合同練習の日当日になった。

合同練習は午後からだがさすがに最近ギターの練習の時間が取れてないのでその前にスタジオに予約を入れておき1人で練習している。

 

「お疲れ様八幡君、それにしても君のギターはやっぱりすごいねー」

 

1人と言ったが実はまりなさんも同じスタジオでギターを弾いてたりする。

 

「いえ.....まりなさんもすごくてびっくりしました」

 

「あはは、ありがとう」

 

本当は午前にスタジオの空きはなかったのだがそしたらまりなさんが

 

「私と一緒で良ければスタジオ使えるけどどうする?」

 

と言ってくれたのでご一緒してるというわけだ。

 

「この後合同練習もやるんでしょ?八幡君頑張るねー」

 

「そういうまりなさんも仕事でしょう.....」

 

「え?私はこの後休みだよ?」

 

衝撃の事実判明。

 

「まりなさんいつ来てもいるからてっきり休んでないのかと....」

 

「やだなーさすがにそれじゃあ私だって体が持たないよー」

 

とか言いつつ休みにギター弾いてる時点で疑問だが....

 

「.....たまにまりなさんって平塚先生に似てますね?」

 

「ええっ!そうかな.....?」

 

「はい、なんとなくですけど」

 

「それは、なんか複雑だなぁ.....」

 

「本人が聞いたら怒りますよ」

 

「いや....きっと飲みに行こうって言われるよ.....」

 

なんでそんなに悲しげなんだ.....

 

「平塚先生に似てるって言ったら普通は褒め言葉だとは思うんですけどね」

 

「基本的には....でもね、似たくないこともあるんだよ.....」

 

「結婚できないこととかですか?」

 

俺は冗談でそういうのだが....

 

「.....」

 

え?もしかして似たくない場所ってまじでそこなの?

 

「....私もああなるのかな?」

 

ちょっと本気で不安そうな目で見ないで!

このままだと俺がもらっちゃうから!

 

「....それはなんとも」

 

「やっぱりぃ!」

 

なんかこの人にしろ平塚先生にしろ本当に貰い手がいないのが不思議なくらいだとは思うんだけどな。

 

「お、落ち着いてください」

 

「だって.....だってぇ....」

 

何この人可愛い。

 

「大丈夫ですよ、必ずどこかで見つかりますって....」

 

「うう、私、帰る!」

 

そのまままりなさんはとてつもないスピードで片付けを終えて帰るのだった。

いいかお前ら、独身女性ってのは丁重に扱えよ?

 

*****

 

「それで、とりあえず全員揃ったか?」

 

「ええ、私たちは全員いるわ」

 

「私たちも全員いまーす!」

 

まずは雪ノ下と戸山の点呼。

 

「Roselia、揃っているわ」

 

「あたしたちも揃ってます」

 

続いて湊と美竹からの点呼。

 

「私たちも全員いるよ!」

 

「あ、あたしたちも揃ってまーす」

 

彩と奥沢の点呼もあったからこれで大丈夫かな。

 

「よしそれじゃあ始めるか」

 

「えっとまずは楽器ごとに集まっての練習だったっけ?」

 

「そうだ」

 

「やったー!それならおねーちゃんと一緒だ!」

 

「嬉しいのはわかるけどしっかり練習しろよ」

 

「わかってるって〜!」

 

「日菜先輩嬉しそう」

 

「だね〜。モカちゃんがパンを目の前にした時と同じくらいよろこんでる〜」

 

「あ、それなら私はおっちゃんたちと遊んでる時が幸せかな」

 

「小町はこうして皆さんと練習できるだけで幸せです!」

 

「それなら私は舞台を演じてる時が儚い時間だと感じるよ....ああ、だがハロハピのみんなと過ごす時間もまた儚い....私にはどちらかを選ぶことなんてできない!」

 

「あ、それなら私もポピパのみんなと過ごす時間も幸せだなー」

 

「ふっふーモカちゃんだってひーちゃんをいじったりする時間が大好きだよ〜」

 

本当に大丈夫だろうか?

 

「頼むぞ、紗夜」

 

「ええ、正直骨が折れそうです.....」

 

「困ったら迷わず俺を呼べ。正直どうにかできる気はしないけどな.....」

 

「ええ、困った時はお願いします.....」

 

ギターは変人の激戦区みたいなところあるからな。

紗夜の心労は計り知れない.....

優先的にフォローしにいかないとな。

 

「それでは今回はお互いの歌を聞き合ってみましょうか」

 

「う、うんなんか緊張するな〜」

 

「そうかしら?とっても楽しそうじゃない!」

 

「そうだよね!私もすっごい楽しみだよ!蘭ちゃんはどう?」

 

「あたしはいつも通りにいくだけだから.....」

 

「それでは早速始めましょうか」

 

まぁボーカル組は多分なんとかなるだろう。

基本的に真面目な奴が多いし戸山と弦巻を押さえ込むのもなんとかできるだろう。

 

「なんだかベースで集まるって新鮮ですね〜」

 

「そうだよね!私も楽しみだよ!」

 

「ええ、楽しみながらもしっかり練習しましょう」

 

「うん!みんなで練習頑張ろう!」

 

ベース組に関しては心配ごと皆無と言い切っていい。

そのレベルでちゃんと練習する奴らだろう。

コミュニケーションもしっかり取れるだろうし。

強いて言うなら一色と上原が無駄話をしないかくらいなもんだ。

 

「わーい!お姉ちゃんと一緒に練習だー!」

 

「おう、よろしくなあこ!」

 

「やっぱ巴たちは仲がいいね〜羨ましいな〜」

 

「3人よろしくね」

 

「はいお願いしますね!」

 

それでもってドラム組も心配ないな。

 

パッと見た限り特に心配そうなところはギター組くらいだろうか.....

だがそこも大丈夫だろう。

 

「.....」

 

なんだか今日やたらと体がだるいんだよな.....

帰ったらゆっくり寝ることにしよう.....

そう思ってたらなんか眠くなってきたな.....

 

「わ、やっぱり紗夜先輩すごい」

 

「私はいつも通りに弾いてるだけなのですが.....」

 

「でしょー?おねーちゃんのギターはるんってするよね!」

 

「日菜、あなたも私のことばかり見てないで練習しなさい」

 

「だってあたしもうできるようになったよ?」

 

「その速さはあたしもびっくりですよ〜」

 

「日菜、ギターは演劇と同じで終わりなどないのさ。より儚い演奏を目指して頑張ろうじゃないか」

 

たまにはいいこと言うな瀬田。

そしてそれがめちゃくちゃカッコよく見えるのが腹立つ.....

 

でも....

 

「特に心配事はなさそうだね、ハチ兄」

 

俺と一緒にケントも各パートのところのサポートをしてもらっているがどうやら特に心配はなさそうだ。

 

「でもハチ兄、顔色良くないけど大丈夫?」

 

「最近慣れないことしてたからな....ただ疲れてるだけだから大丈夫だ」

 

「そう....無理はしないでね」

 

「大丈夫だ、俺は人生で無理したことなんてないから」

 

「それはそれでどうかと思うけど.....」

 

あれ?なんかケントの顔すらぼやけてきた.....

 

「ハチ兄!」

 

ケント何をそんな心配そうな顔してるんだ....

 

ああ、意識が....

 

「八幡さん!」

 

「八幡君!」

 

途切れていく意識の中で俺はみんなの俺を呼ぶ声だけがやたらと耳に入ってきた.....




今回はここまでになります!
今回八幡は倒れてしまいましたがきっと次回には女の子たちに優しく看病されてることでしょう()
羨ま....けしからんですね。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。

それでは次回予告いってみましょう!



「ハチ兄....大丈夫かな?」

「とりあえず目を覚ますまで待つしかないわね....」

「ヒッキーそんなに無理してたのかな....」

「これは私たちの責任ね、起きたら彼に謝りましょう」

「そうですね....流石にこれからは先輩のことを勝手に決めないほうがいいですね」

「そうね、そうしましょう」

(それって普通のことなんじゃないかなぁ?)

「それじゃあ次回予告をしてしまいましょうか」

「うん....次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『それでも比企谷八幡は立ち上がる』だよ」

「でも....先輩あんなに女の子に囲まれてるなんて....」

「やはり、彼の扱いを変えないほうがいいかもしれないわね」

(ハチ兄、どんまい.....)


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番外編7

エイプリルフールということで今回はこんな未来があるかも....
なんていう話を短編集でどうぞ〜

分かりにくくならないよう言っておきますが*****を区切りに話が変わってます。


俺は全力でここまでバンドを仲間と楽しんできた。

その楽しい日々の中で俺は、1人の女の子に、恋をした。

 

「オレは.....お前のことが.....その...好きだ」

 

あの日、俺が思いを伝えた相手.....

それは.....

 

「まん、八幡、起きて」

 

「ん....誰だ?」

 

幸せな微睡の中で声をかけてきてる人の顔が鮮明になってくる。

 

「誰だなんてひどいわよ.....」

 

まだ意識がはっきりしない....

さっきまでのは夢か?

 

「まったくしっかりして頂戴、もう直ぐ....父親になるのだし」

 

父親?俺が....?

 

「まだ寝ぼけているのね、顔を洗ってきたら?」

 

「お、おう。湊」

 

「急に私の旧姓を言うなんて本当に大丈夫かしら?」

 

旧姓....?

いやだって目の前にいるのは.....

その時俺の頭は急に覚醒する。

 

そうだ、俺はもう高校生なんかではない。

あれはもう10年近く前のことなのだから.....

 

「悪い、寝ぼけてた」

 

「本当に忘れられたのかと思って少し不安になってしまったわ」

 

「わ、悪かったって」

 

目の前で可愛らしく拗ねているのは....3年前に俺と結婚した俺の奥さん、旧姓、湊友希那今は比企谷友希那だ。

1年前に俺との間に子供を授かり今は2人で仕事を休んで準備をしているところだったんだよな。

 

「今日はみんながうちに来るのだからしっかり準備をしましょう」

 

それで今日はお互いのバンド.....Roseliaとアバアルのメンバーと久しぶりに会うことになっている。

 

そう、俺たちは互いに今やそれなりに有名なバンドとなりメジャーデビューもした。

そんな中突然俺たちが結婚したから世間ではかなり話題になった。

 

「久しぶりって言ったって1週間ぶりだろ.....」

 

一応プロのミュージシャンなので曲の制作であったりギターの練習をお互いしてるのだが俺たちに付き合って活動を休止しているあいつらも練習以外の時間はそれなりに暇らしくちょくちょく我が家に遊びに来るのだ。

 

「そうだったかしら?」

 

こいつも高校生の頃よりはるかに丸くなり素がこうなのか今は割と天然である。

もちろん音楽に対する姿勢はなんら変わっていないが。

 

「....とか言いつつ料理とかは俺がやってるだろ」

 

「私だって手伝ってるわよ」

 

「頼むからもう少し家事を身に付けてくれ.....」

 

結婚してから判明したことだが音楽に全てを捧げてるかのように生きてきた友希那は家事が全くと言うほどできない。

俺も教えてるのだが未だ完璧にできるものは少ない。

 

「それじゃあ早く支度をするためにも身支度をして」

 

そう言って友希那は驚くほど俊敏に俺の部屋から出ていく.....

 

「逃げたか.....」

 

だけど.....俺の嫁だけあってさすが可愛い。

だから家事ができないことも許してやろう。

惚れた弱みというのは恐ろしいものだが....案外悪くないものだ。

 

「さて、じゃあうちの歌姫様の機嫌を損ねる前に支度しますか」

 

そう言い俺はとっとと支度をすることにするのだった......

 

「八幡、起きてちょうだい」

 

「ん....友希那....?」

 

「め、目が覚めたのねそれより突然どうして名前で呼んだのかしら?」

 

「だってお前は俺の.....」

 

そこで俺は本当の現実を思い出す。

俺は今日湊にかまくらに合わせる約束をしていて猫と戯れている友希那を見ているうちに居眠りしてしまったらしいり

 

「な、なんでもない寝ぼけてたみたいだ」

 

「そ、そう」

 

「あれかまくらはどうした?」

 

「ついさっきどこかへ行ってしまったわ」

 

「また探してこようか?」

 

「いえ、自由な猫を束縛したくはないわ」

 

何そのポリシー

 

「だから....またここにきてくれるまで、話をしましょう?」

 

本当にさっきの夢はなんだったのだろうか?

何はともかく、やはり俺にあんな未来が訪れるのはまちがっている.....

 

*****

 

俺は全力でここまでバンドを仲間と楽しんできた。

その楽しい日々の中で俺は、1人の女の子に、恋をした。

 

「オレは.....お前のことが.....その...好きだ」

 

あの日、俺が思いを伝えた相手.....

それは.....

 

「ねーねー八幡君!」

 

「どうしたんだ日菜?」

 

「ううん、呼びたくなっただけ!」

 

「なんだそれ.....」

 

俺は高3の時に日菜から告白をされ....自分の気持ちに気づいた俺はその告白を受けた。

 

「いいじゃん!だって....今日はあたしたちが付き合い始めて3年の記念日なんだし!」

 

「そうだけど周りの目が....」

 

高校卒業後音楽の道へと進んだ俺は20歳でメジャーデビューを果たした。

アブアルは話し合いの末卒業をもって解散した。

みんな悔いはない選択だった。

今、俺は新しいバンドと頑張っているところで他の4人もそれぞれの道を進んでいて今でもたまに会っている。

 

「だって八幡君さっきからあたしのことあまり見てくれないんだもん.....」

 

この後のことを思って照れてるだけなんだけどな.....

ちなみに俺たちの関係は公表していないというか日菜がアイドルという立場の以上公表したら俺が殺されかねない.....

 

「わ、悪い」

 

それでも日菜がこんな表情になるとやたらと罪悪感を刺激されるしついでに可愛すぎて余計に直視できない。

 

「もーそのかわりこれからもあたしを大切にしてね?」

 

「.....」

 

「どうしたの?何か言ってよ.....」

 

さすがに日菜も反応がないと恥ずかしくなってしまうようだ。

 

「いや、俺の彼女超可愛い」

 

「....ううう」

 

やったぜ、珍しく俺が日菜から一本取れたようだ。

だがこれは可愛い日菜が悪い、よってこれは日菜の自爆。

 

「それで八幡君は今どこに向かっているの?」

 

そして立ち直りの早さも流石としか言えないな.....

 

「まぁその、秘密だ」

 

そう、俺はこれから日菜に、プロポーズする予定なのだ。

そのために人が少ないところをあらかじめ調べておいて今はそこに向かっているところである。

 

「なんだか人が少ないけど道あってる?」

 

「大丈夫だ、多分」

 

「そっか!」

 

純粋!疑うことを知らない.....

だけどそんな日菜に影響されてか俺は見知らぬ人たちとバンドを組めたのかもしれない.....

 

「.....」

 

そしてついに目的地にたどり着いた、調べておいた通り景色もよく人が少ない。

 

「わーキレイだねー!」

 

日菜は喜んでくれたが俺は緊張でどうにかなってしまいそうだ。

 

「八幡くんも見てみなよ!」

 

そこで日菜がこちらを向く。

俺も男だし、告白は日菜にさせてしまったのだ覚悟を決まるしかない。

 

「.....日菜」

 

「なに?」

 

「その....お前と付き合い始めてずっと楽しいことばかりだったし....辛い時も頑張れた.....」

 

「やだな〜急な照れちゃうよ」

 

まだ日菜は俺がプロポーズしているのだとは気づいていないらしい。

 

「それで....これからもお前には俺のそばにいてほしい、だから.....俺と結婚してくれ!」

 

用意しておいた指輪を出して俺は自分の願いを伝える。

 

「....」

 

反応がないのが怖い.....

 

「うう.....」

 

「え?日菜どうした、なんで泣いてるんだ?」

 

「だって.....嬉しくて....八幡君がそう言ってくれて嬉しくて.....」

 

「もちろん俺たちの立場的にもすぐにはできないけど....返事....してもらってもいいか?」

 

「.....決まってるじゃん!よろこんで.....」

 

そのまま俺に抱きついてくる。

 

「八幡君、いつまでも大好きだよ.....」

 

そう言って顔を近づけてくる日菜を受け入れる。

こんな幸せを俺はずっと感じていたい。

そのためにも彼女をいつまでも大切にしよう。

そう改めて決意する俺だった.....

 

「....くん!はち...くん!八幡君!」

 

「ん?」

 

「あ!やっと起きたー!」

 

そこで俺の意識ははっきりと現実に引き戻される。

 

「なんでお前がここにいるんだ?」

 

「それがね〜あたし急にお仕事がお休みになったんだけど暇だから八幡君と遊びたいなって思ってつい来ちゃったよ〜!」

 

ついじゃないだろ.....

 

「てか小町止めろよ.....」

 

「ん?小町ちゃんならすぐに部屋まで案内してくれたよ?」

 

後できつめのお説教が必要だな。

 

「だから八幡君、出かけよ!」

 

「....はぁ支度するから下で待っててくれ」

 

「うん!」

 

断っても無駄なのは明白だしなにより.....夢のせいかなんとなく日菜と出かけたいと思ってしまったしな。

 

「八幡くん....はやくしてね!」

 

しかしどうしてあんな夢を見たのか.....

やはり俺にあんな未来が訪れるのはまちがっている。

 

*****

 

俺は全力でここまでバンドを仲間と楽しんできた。

その楽しい日々の中で俺は、1人の女の子に、恋をした。

 

「オレは.....お前のことが.....その...好きだ」

 

あの日、俺が思いを伝えた相手.....

それは.....

 

「八幡さん、注文入ったのでお願いしていいですか?」

 

「ああ、任せろ」

 

まさか高校生の頃はこんなことになるとは思わなかったな.....

俺は3年前だから....24歳で1歳年下の女の子と結婚した。

 

「八幡さん!ちょっと本格的にやばいのでそろそろ手を動かしてしもらってもいいですか!」

 

「あ、悪い悪い」

 

そう、俺は今かつての後輩であるつぐと結婚したのだ。

そして俺とつぐでこのお店を継いだのだ。

といってもまだ義父さん、義母さんにも手伝ってもらっているが.....

 

「八幡さん!また注文入りました!」

 

「なんか今日はやたらと忙しいな」

 

「クリスマスシーズンですからね.....だからこそ頑張りましょう!」

 

「つぐってるなー」

 

「八幡さんもその言葉を使うようになってもうだいぶ経ちましたね」

 

「万能だもん、つぐってる」

 

ちなみにこの言葉の意味は結婚式の時に青葉からつぐがつぐりすぎないように気をつけてね〜という言葉とともに教えてもらった。

なぜそのタイミングまで教えなかったのか.....

そんなことを考えながらもその日の営業をなんとか俺は乗り切った.....

 

「お疲れ様です、八幡さん」

 

「.....前から思ってたんだがそろそろ俺に敬語を使うのやめないか?」

 

「なんかもう癖になっちゃってて.....」

 

「なんか敬語を使われてるとつぐとの間にまだ距離がある気がするんだよな」

 

「そんなつもりはないですよ!でも今更直すのもなんか.....」

 

「それじゃあサンタにでも頼めば敬語が抜けるかな?」

 

「そんなことでサンタさんを使わないでください!」

 

「じゃあ言ってくれよ」

 

「で、でも....なんだか恥ずかしいですし....」

 

「俺の嫁超可愛い」

 

「か、からかわないでください!」

 

「いやまじで」

 

「もう....」

 

どうやら信じてもらえてないらしい。

悲しいぜ....俺の愛は本物なのにな。

 

「まぁとにかく美竹たちと話すみたく気軽に話してくれ」

 

「ど、努力するよ」

 

「おう、つぐってくれ!」

 

「全く調子がいいんだから.....」

 

そう言いながらもつぐの顔にも笑顔が浮かんでる。

 

「だから、私もお返しするね」

 

「え?なにを?」

 

普段怒らないつぐがそういうこと言うと普通に怖いんだけど....

 

「たまには私もデートしたいなーなんて.....」

 

やっぱ俺の嫁超可愛い。

 

「でもそのしばらくクリスマスシーズンで忙しいからな....」

 

つぐのためならいくらでもつぐってやるが。

 

「私だって.....たまにはプレゼント欲しい」

 

「予定を立てよう、今すぐ立てよう」

 

こんな可愛い嫁にプレゼントを渡すのは当たり前のことだからな!

 

「うん!」

 

それでこんなにも喜んでくれるなら.....

俺も多分つぐれるからな.....

そんなことを思いながら俺たちは予定を立て出すのだった.....

 

「先輩!....まん先輩!八幡先輩!」

 

「ん?」

 

「よかった.....起きてくれましたね」

 

ここは羽沢珈琲店?

あれ?でもさっきまで俺はつぐと.....

 

「練習終わりで疲れちゃってたみたいで起こすのも申し訳なかったんですけど....先輩が風邪をひいてしまうと困るので.....」

 

あ、そういえば俺は練習終わりにふとコーヒーが飲みたくなって羽沢の店に訪れて.....

それで寝てしまったのか.....

カフェイン仕事しろよ.....

 

「悪い....迷惑かけた」

 

「気にしないでください、先輩にはお世話になってますから!」

 

本当にいい性格してるなぁ.....

だからこそ、やはり俺にあんな未来が訪れるのはまちがっている.....

 

 




今回はここまでです!
紗夜さんや彩ちゃん、花音先輩の話を待っていた方すいません.....
エイプリルフールのうちにこの話を上げるために泣く泣くこの3人の話だけになってしまいました.....
みなさんがみたいなら今後また番外編で書くかもしれませんが.....

感想評価など励みになるので良ければ残していってください!


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第53話

多分今月からまた今までのようなペースに戻りますが気長に待っていてくださいね。

ありがたいことにUAが15万件超えてました!
いつも読んでくれてありがとうございます!


なんだろう.....

なんだか....心地よい感触が後頭部にある.....

ずっとここで寝ていたいような.....

と言うか俺こんないい枕使ってたっけ?

 

「ううん....」

 

そして俺が目を開けるとなぜか俺を上から覗き込む彩の顔があった。

てかこの体制おかしくね?

普通に考えてこうやって彩の顔が見えるなんて....

 

「.....これ、俺死んでない?」

 

状況を理解した俺は最初に出てきた言葉はこんなものだった。

いやだってさ、今俺アイドルに膝枕されてるんだよ?

死んで神様が俺に幻覚見せてきてるんじゃないの?

 

「し、死んでなんてないよ!」

 

「じゃあなんでこんな状況なんだ?」

 

ってかはやく起きないと.....

 

「あ、まだ安静にしてて....八幡君。さっき倒れちゃったんだから....」

 

俺が起きようとすると彩がそれを制する。

その顔は本当に俺を心配してくれてるようだ。

 

「いやでも.....」

 

「いいから、お願い」

 

「お、おう」

 

真剣な顔されると言い返せない.....

 

「で、どうして俺はこんな状態なんだ.....」

 

「いや、それはあの.....」

 

なんか話しにくい事情でもあるのだろうか?

 

「八幡君が倒れちゃって....それで練習もやらなくちゃいけないから誰かが看病しようってなったんどけど.....」

 

「なるほど、それでじゃんけんにでも負けたのか」

 

「ううん、その....看病を名乗り出る人が多くて....じゃんけんに勝った私が看病することになったの」

 

いやみんな優しすぎるだろ。

 

「悪い....迷惑かけたな」

 

「ううん、気にしないで」

 

こんな時どうしようもなく俺は自己嫌悪に陥りたくなる。

こういう行為をなにか意図があるのではないかと思ってしまう俺がどうしようもなく嫌いだ。

 

「で、でも私が膝枕したことは黙っていてね?」

 

「ああ、俺なんかにそんなことしたいなんて思わないもんな」

 

「そ、そんなんじゃないんだけど.....」

 

そしてこんな時その感情を抑えられない俺が。

それで前も失敗してるのに.....

それなのに....やはり俺は.....

 

「無理しなくていいぞ、俺はもう1人でも大丈夫だ。練習にもどれ」

 

「で、でも」

 

「いいから、こんなところ誰にも見られたくないだろ」

 

俺は無理やりにでも起き上がり、そしてまちがいを、繰り返す。

優しさを受け入れられない受け入れたら勘違いをしてしまうのだろうから。

だから俺はどうしても.....優しい女の子は.....キライだ。

 

「でも.....」

 

「やめてくれ、もう無理して俺に優しくしないでくれ」

 

完全にとどめの一言だった。

俺ははっきりと彩の優しさを拒絶したのだ。

 

「うん.....それじゃあ練習、先に戻ってるね」

 

そう言って彩はスタジオへ戻っていく。

ただ俺はその目に涙を溜めているのを見てしまった.....

 

「ほんと....懲りないな、俺は」

 

最悪だ.....

なにが不安だよ.....1番邪魔してるのは....てめぇじゃねぇか。

 

「戻りにくいな....」

 

ここで俺が戻っても雰囲気を壊すだけだよな.....

 

「俺は....この場にはいらないな」

 

その後俺は受付の人に体調がよくないから先に帰ったと伝えてかれるように頼んでおいた。

 

そのまま帰る気にもならなかった俺は街を歩きまわりそして公園を見つけそのベンチに座り込む。

 

「....結局逃げてばっかなんだな」

 

だがこのままいけば俺が悪者になるだけで済むだろう。

その後....雪ノ下たちが俺を許すとは思わないが.....

 

「まちがえない方法がわかればいいのにな.....」

 

そうすれば最短で本物に辿り着けるのだろうか.....

 

「はぁ.....」

 

今思えばあそこでスタジオに戻って謝れば良かっただけだというのに.....

 

「結局俺はみんなを信じれてないんだな.....」

 

俺は人を信じるのを無条件だ怖がる。

いつか裏切られてしまうのではないかと心の底にそんな思いがあるからだ。

やはり、昔の記憶ってのは嫌なもんだな.....

いつまでも俺を縛って忘れさせてなどくれないのだから.....

 

「はぁ.....」

 

「相変わらずでかいため息だな」

 

この声は.....

 

「うるせーよ、葉山」

 

今は誰とも話したくなかったんだけどな.....

話してたら気分も紛れるかもな。

 

「どうしたんだ、ずいぶん浮かない顔だな」

 

「お前にバレるんじゃそりゃひでぇ顔だ....」

 

皮肉でもなく本心の言葉だった。

 

「何かあったのか?」

 

「....話したくない」

 

「そうか、それなら聞かないよ」

 

「そうしてくれ」

 

「何があったかは聞かない、ただ君が話してくれるなら別だ。相談したくなったら言ってくれ」

 

基本的にこいつはいいやつなのだ。

俺なんかとは違う、周りの人のことを気遣いその場で的確な判断をし周りの誰も傷つけない方法を探し出す。

それは....俺にはないものだった....

俺には葉山みたいな優しい嘘つきにはなれない、俺は悪い真実ばかりを見つけてしまうから。

 

「....君はそう言っても相談なんかしないだろうから言っておくよ、今の君の顔、バンドにもどる前に戻ってしまったかのようだ」

 

「そうか....」

 

そりゃ、また....そうなるんだろうからな。

 

「今の君の顔は見ていたくない、だから俺はもう行くよ」

 

「慰めるわけじゃないのかよ」

 

「それは今の君に必要なのかい?」

 

「....そうだな」

 

そんなことをされる資格があるわけないな.....

 

「君に必要なのは変わる勇気さ、自分がそうなりたいと思っててもそれをすぐ自分で否定してしまっては....変われるはずがない」

 

「....」

 

言葉を返せない俺をもう一度見て葉山はその場を去って行った。

 

「変わる勇気.....そんなんどこにあるんだよ.....」

 

しかし、俺にそれを見つけるのは難しそうだった.....

 

*****

 

それからさらにしばらくの時間がたったが俺はどこにも行く気にならずにそのままベンチで座っていた。

 

「はぁ.....」

 

さっきからため息をついてばかりだ、俺はこれからどうすればいいだろうか。

 

「.....探したわよ、比企谷君」

 

下を向いて考えていたら聞き覚えのある声がする。

しかも携帯の電源も切ったから連絡もできないから.....

手当たり次第探したのか.....?

 

「何してるんだよ.....練習は.....」

 

まだ時間的には練習をしてるはず.....

 

「どこかの誰かが急にいなくなってしまったのが原因かしらね?」

 

今のところいつもと同じような態度だが明らかに声がいつもよりも冷たい。

 

「俺なんかいなくても練習はできるだろ.....」

 

「あら、そうだとしてもあなたには聞かなければならないことがあるもの」

 

なるほど、俺は彩を結局傷つけてしまったからな.....

 

「そのことは本当に俺が全て悪い、彩には合わせる顔もない.....」

 

「.....丸山さんに聞いても理由は教えてくれなかったわ。なぜ彼女を泣かせたのかしら?」

 

「.....いいだろ、そんなの」

 

「悪いと言っておきながらその態度はどうかしら?」

 

「お前に.....何がわかるって言うんだよ」

 

わかっている、俺は止まるべきなんだ。

なのに、なんで.....

 

「.....丸山さんにもそんなことを言ったのかしら?」

 

驚いたようにそう言ってくる。

 

「.....」

 

「黙ってないで答えなさい」

 

「.....ああ」

 

「.....なんてことを」

 

「そんなの言われなくてもわかってるんだよ.....」

 

頼む、雪ノ下お前もどこかは早く行ってくれ。

出ないと俺は.....また.....

 

「.....あなたがただそんなことを言うとは思わないわ、だから理由を教えて.....そうしないと.....」

 

ああ、これはあの時と同じだ積み上げたものが崩れかけている音。

ここは、俺の人生でも大きな.....特異点だ。

 

「理由か....聞いたとしてお前はどうするんだよ。俺を責めるのか、蔑むのか......あいつらみたいに」

 

言ってからしまったと思った、雪ノ下に言わなくていいことを言ってしまったから.....

 

「....いいえ、私もあなたと一緒にいた.....だから、あなたが蔑まれていい人間でないと思ってるわ。絶対に私たちはあなたたちを蔑みはしない」

 

ここまで言われてなおこう思うのだ、口で言われた言葉など信じれるだろうか、と。

 

「.....つまらない話だ、俺の昔話なんて」

 

「何を言ってるの?」

 

察しのいい雪ノ下でもとっさに俺の言葉が理解できないらしい。

 

「俺が転校してきたのは知ってるだろ、その前に俺がどんな生活をしてきたかってことだ」

 

「それが?」

 

「俺の考えを固めちまった思い出だ。言い訳するわけじゃないが.....それはこれからもお前たちに迷惑をかけ続けるもんだ」

 

「なら.....教えて、あなたの考えとは.....なんなの?」

 

「.....人間への、不信感」

 

ここまで言ったらもうどうなってもいい。

どう転ぼうと....話さないのはやめたから。

 

「それは.....私や由比ヶ浜さん、一色さん....他のみんなにもなの?」

 

「.....ああ、お前たちのことは99%信頼してる」

 

ただその足りない1%が決定的なのだ。

信用しようとする瞬間に叫ぶのだ、それはまちがいだ、信じるな、自分を守れと。

 

「.....教えてくれよ、俺はどうすればいい」

 

心は思ったより静かだった、さっきまでの感情は消え虚無感が湧き出てきた。

 

「それは.....私には答えられないわ」

 

「そうか、変なことを聞いて悪かった.....」

 

「ただ、このまま終わりたくない.....それだけしか考えられない」

 

「.....俺もだ、でももう俺はダメだ」

 

「お願い.....私たちを今すぐ信じてなんて言えないけれど.....」

 

「それでも.....俺がここにいるのは....」

 

俺がそう言いかけた時だった。

 

「あ!ヒッキー本当にいた!みんな、本当にいるよ!」

 

そこに由比ヶ浜を先頭にして一色、白鷺が公園の入り口からこちらに向かって走ってくる。

 

「どうして.....」

 

「あなたを見つけた時に.....みんなに連絡をしておいたの」

 

それにしても雪ノ下と話してでもそんなに時間は経っていないはず.....

 

「探しましたよ.....先輩、なんて言ってる雰囲気じゃなさそうですね」

 

そう言いながら俺を見る一色の額には汗が滲んでいる、他の人たちもみな汗を浮かべている。

 

「2人とも顔色悪いけど大丈夫?」

 

由比ヶ浜も気を使ってそう言ってくれる。

なぜ、俺の周りにはこうも俺の嫌いな優しい女の子ばかりなのだろうか?

なぜ.....こんな俺を探しにきてくれるのか.....?

 

「それよりも八幡さん、話してくれるかしら。彩ちゃんになにをしたの?説明してもらえるかしら?」

 

白鷺.....そりゃ怒るよな。

口調もいつもと違って丁寧なものじゃなくなっているしな。

 

「.....わかった」

 

「ちょっと待って......ここでは目立つわ。一度CiRCLEに戻りましょう」

 

「.....そうね、そうしましょう」

 

こうして俺はもう一度CiRCLEに戻ってくることになった。

何人かはスタジオで俺が戻ってきた時のために残っていたらしくスタジオに入るのはスムーズだった。

 

「彩.....」

 

その中の1人は彩でスタジオに入ってその姿を見た瞬間罪悪感に駆られる。

 

「彩ちゃん、聞きたくなければ外にいてもいいのよ?」

 

「ううん、ここにいる.....」

 

「.....まず話す前に彩に謝らせてくれ、さっきは本当に悪かった」

 

彩はなにも言ってくれない。

いっそここで許さないと言ってくれた方が楽だったんだけどな.....

 

「.....お願い八幡君、私が何かしちゃったなら話して.......」

 

俺は間違いを強く自覚させられた。

いや、させてもらった.....なのか。

 

「いやお前はなにも.....口で言ってもわかってもらえないかもしれないけど......なにも隠さずに話す。だから聞いててくれ」

 

そして俺は彩に対しての行動を話す。

それとさっき雪ノ下に話した話もしてしまう。

 

「なにがそこまで.....あなたを歪めてしまったの?」

 

話し合えたタイミングで白鷺がそう聞いてくる。

色々と複雑な感情を抱えているのだろう、疑問、怒り、戸惑い不思議と普段より表情が読み取れる。

 

「そうだな.....」

 

「お兄ちゃん、やめて」

 

話始めようとしたその瞬間に小町が止めてくる。

その顔はとても辛そうで今すぐに状況を忘れて頭を撫でたくなってしまう。

 

「やめて.....お兄ちゃん、お兄ちゃん.....」

 

小町は泣き出してしまった。

 

「.....悪い、小町これは.....必要なことなんだ」

 

そういえば小町はうなずくと知ってやっているのだから本当に俺も性格の悪い兄だな.....

俺のことを知ってしまったその後どうするかはこいつたちに委ねよう、そうすることしかできないのだ。

 

「先に言っておくが絶対に同情するな、それだけはやめてくれ.....」

 

「うん.....」

 

「面白くない話だ、聞きたくない奴はここから立ち去ってくれ」

 

そう警告するもだれも動こうとしない。

 

「はぁ....いいんだな」

 

俺はこうして語り出すのだ、といってもそれに具体的なエピソードなどない。

それは日常の中で当たり前に行われてしまったものだから......

 

「オレは、中学からこの街に来たんだが.....小学生の頃、周りの奴らにいじめられてたんだ。毎日のように物は無くなったし、悪口は隠れもせず言われた。ひどい時には水をかけられたり、殴られることもあったな」

 

「.....」

 

世の中にいじめというのはどの学校にも1つは存在するものだ、そんなことはだれもが知っているそしてそれをいけないことだと知っている。

なのにいじめはなくならず、それどころか手法は複雑化し教師や周りの大人に気づかせないようになってきている。

気づいたら気付いたで大抵の大人は保身のために大事にしたりしない。

それに気付いた俺はいつしかだれにも相談しなくなった。

 

「その間にもずいぶんひどい目にあったな.....上履きは小学校だけで10足以上買ったし、親に変な言い訳しなきゃいけなかったし.....」

 

俺が優しい人間を嫌うようになったのは優しくされるたびにこの思い出が辛いもののような気がしてしまうから。

ああ、なのにもう話していて悲しいとも思わないな。

それが普通の日々であるかのように。

 

「.....まぁ、こんなところだ。それ以来俺はほとんどの人を信用しきれてない」

 

信用できるのは俺のことを心配し続けてくれた小町くらいかもしれない。

そこまで長い時間話したわけではない、しかしみんなの雰囲気は明らかに変わっていた。

 

「.....八幡君」

 

話終わった後に彩が声をかけてくる。

瞬間的に俺は身構えてしまう。

 

「....うう」

 

「なんでお前が.....泣くんだよ」

 

「だって....八幡君が八幡君が....」

 

「.....同情はしないでくれ、そう言っただろ」

 

「でも....涙が....止まらなくて。八幡君に信じてもらいたくて.....」

 

「ヒッキー.....すっごい余計なお世話なのかもしれないんだけどさ.....辛かったならそう言って欲しいの.....あたしたちに.....慰めさせて欲しいの......」

 

「そうやって辛くないって言い聞かせ続けたら先輩どこかで壊れちゃいます.....私たちにくらい先輩の弱さを見せてください.....」

 

もう散々見せてきたというのに....それ以上見せろというのは......

 

「.....私もこのバンドで散々自分の弱さを見つけてきたわ、その度にあなたたちは受け入れてくれた.....今度は私の番よ」

 

「お前たち.....」

 

俺は.....変わってもいいのか?

 

「私だって.....八幡君が悩んでるなら絶対に八幡君を助ける.....だから.....」

 

彩まで.....

 

「八幡さん、私からもお願いします。彩ちゃんのお願いを聞いてあげてください」

 

白鷺.....

 

「俺は.....過去を辛いものにしたくはない。ただ.....これからのことは....本物の日々を過ごしたい.....」

 

「....もう、過去を無理に1人で受け入れようとしないで。そうすればきっと.....叶うわ」

 

「....なら、少し....少しだけ時間をくれ」

 

今、ここで少し泣いたのなら.....

 

「きっと....大丈だから」

 

なぜなら俺はこの日から、確かに何かが変わるのだろうから.....




今回はここまでになります。
なんか八幡ばかり辛い目に合わせてとてつもなく申し訳ない.....
しかしこれからは八幡はあまりある日常が来るのだろうと思います。
なのでよければこれからさらに充実するだろう八幡の話をよければ見てください。

感想、評価など励みになるのでよければ残していってください。

それでは次回予告行ってみましょう。

「お兄ちゃん.....よかったね」

「おう、小町も....悪かったな」

「ううん、小町はお兄ちゃんが幸せになれたならなんでもいいんだよ、あっ!今の小町的にポイント高い!」

「....そのポイントが貯まると何かいいことあるかもな」

「それは小町にはわからないよ?でも、そう思ってればいいんじゃない?」

「そうか....それじゃあ次回予告しちまうか」

「うん、次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『そして比企谷八幡は....』です!」

「さて、それじゃあイベントに向けて頑張りますか」

「お兄ちゃんが珍しくやる気になってる!?」


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第54話

更新がかなり遅くなってすいません......
このあいだモニカの新イベのましろちゃん狙って10連したら関係ない星4を2枚抜きして複雑な心境になりました()
ちなみに今開催されてるドリフェスは20連で星4が2枚限定をすり抜けて出ました
良ければ皆さんの引きも教えてくださいね

今回からはシリアス回はしばらくない....と思います。


よく人は言う、間違ったならやり直せばいいと失敗は成功の母だとだが断言しておくがそれらは全てがそういうわけではない。

間違ったままやり直せなくなってしまうものもあるし失敗のまま終わる事柄だって珍しくない。

引き返せるところにいるやつがそれを諦めてしまうのは罪だ。

そして大抵青春を送ってるやつというのはそういう奴の集まりだ。

つまり俺が何を言いたいのかというと.....リア充爆発しねーかな......

 

「はぁ.....」

 

今俺は絶賛駅の前で1人黙々とイベント告知のポスターを貼ってイベントのチラシを配っているのだがその近くをさっきから高校生のカップルらしき奴らが大量に通り過ぎて行っているがこんなにも真面目にも働いている俺を見習って欲しいものだ。

 

「まりなさんが気を使ってくれたのはいいんだけどさ.....」

 

昨日はあの後結局残りのメンバーにも俺のことを話してその上で再び謝罪したのだが、みんな俺のことを許してくれたのだ。

しかし今日になって恥ずかしくなってきてまりなさんに無理を言ってこうして外の仕事に回してもらったのだ.....

 

「でもこんなに仕事押し付けられるとはな....」

 

無理を聞いた代わりと言わんばかりにまりなさんはポスターはともかく大量のチラシを渡してきたのだが無理言ってる側がそれを断れるわけもなく.....

 

「もやはパワハラだろ、これ.....」

 

「あら、進んで働きにいったと聞いたのだけどあれはまりなさんの気遣いだったのかしら?」

 

「なんでここにいるんだよ.....」

 

「聞いていなかったの?まりなさんに聞いてのよ」

 

「じゃあなんでわざわざここまで来たんだ?」

 

「あなたがまた逃げ出してないか監視に来たのよ」

 

「って、言ってますけど要するに手伝いに来たってことですね」

 

「一色さん、勝手なことを言うのはやめてもらってもいいかしら?」

 

「もうゆきのん素直じゃないな〜」

 

「由比ヶ浜さんもよ、真面目に働いているならいいのだけれど」

 

こいつもたいがいだなぁ.....

 

「ヒッキーまだ仕事あるんでしょ?あたしたちも手伝うよ!」

 

「いやこれは俺の仕事だからいいって」

 

「.....あなた本当に先輩ですか?」

 

「失礼だな、おい」

 

俺だってやらなきゃいけないことはサボらないから.....

 

「ヒッキー....熱あったりしない?」

 

「だから失礼だな」

 

「いつもこれくらい働けばいいのだけど....」

 

「最後のお前は違う意味で失礼だな」

 

まるで俺が普段は働かないみたいじゃないか、俺はただ自分のやるべきことだけをやるだけだというのに。

 

「....とにかく、私が先輩を手伝ってあげるって言うなんて滅多にないんですからありがたがっておけばいいんですよ」

 

「なんでそんな上からなんだよ.....」

 

でも確かに予想より時間かかりそうだったし.....

 

「じゃあ頼むわ」

 

こうして俺たちは一緒にチラシを配り始めた。

 

それから三十分ほどチラシを配り続けたところでチラシをほとんど配り終えてしまった。

理由は明白、3人も見た目は可愛い女子からチラシを渡されると男はみんなホイホイもらっていくからである。

あと由比ヶ浜と一色はかなり友達にもあったようだが.....

 

「まさかこんな早く終わるとは....」

 

「私たちのおかげですね!」

 

「自分で言うな」

 

調子にならないように軽く頭にチョップをしておく。

 

「いったーい先輩女の子に暴力振るうなんてひどくないですか〜!」

 

「雪ノ下と由比ヶ浜も助かったわ」

 

「無視ですか!?」

 

「私たちが手伝ったのだから早く終わるのは当然でしょう?」

 

こいつもこいつでどこからその自信が出てくるんだよ.....

しかも事実だから文句も言えねぇ.....

 

「....助かった、ありがとな」

 

「「「.....」」」

 

あれ?俺なんか変なこと言ったか?

だれからも反応が返ってこない。

 

「あなた、もしかして比企谷君の双子の弟さんか誰かかしら?」

 

「いや俺の兄妹は小町だけだし.....」

 

「そう言ってあたしたちを騙そうとしてるんでしょ?」

 

「いや違うって」

 

とてつもなく失礼な誤解をされまくってんな......

 

「先輩が素直にお礼を言ったことに驚いてつい.....」

 

「なんだ....その、そういうことも大切だなって.....」

 

「やばいよ、ゆきのん、これはもうヒッキーじゃないって....」

 

「そうね、これはもはや別人ね」

 

「本当に同一人物なのか未だにわからないくらいですよ」

 

「お前たちな.....」

 

「そういえば比企谷君、あなたここで話してる暇はあるの?」

 

「.....あ」

 

そういえば俺まだバイト中だったわ。

 

「はぁ、そういうところは変わらないようね。ほら無駄口叩いてないで早く戻って馬のように働きなさい」

 

「誰のせいだと思ってるんだよ......」

 

「ほらほら、ヒッキーはやく!」

 

「.....へいへい」

 

「頑張ってくださいね!」

 

「はいよ」

 

3人にそれぞれ声をかけられながら俺はやはりこのバンドの中での俺の立ち位置は変わらないのだろうと、そうまた思い知らされのだった。

 

*****

 

「あ、ハチ兄お疲れ様」

 

「あれ?なんでケントがここにいるんだ?今日は手伝いもないはずだろ?」

 

「オレは自主練しにきたんだ、今のうちにハチ兄やキノ姉たちに追いつかないと.....」

 

すでに追いついたどころか追い越されてる気すらするんですけど.....

 

「そ、そうか頑張れよ」

 

しかし純粋なまで見てくるケント相手に変なことは言えないしな.....

 

「ハチ兄も無理すぎないでね、昨日倒れちゃったんだし」

 

「俺としたことが働きすぎで倒れるなんて.....一生の不覚だ.....」

 

働かないことわモットーにしてるというのに......

 

「ハチ兄は頑張りすぎちゃうんだからしっかり休むんだよ」

 

あ、ケントはまだそこでお前の場合は働きたくないからだろっ!ってツッコミはできないか.....

 

「お、おう」

 

なんだかんだでケントにも勝てないことを実感する俺であった......

 

*****

 

「まりなさん、言われた仕事終わらせてきました」

 

「八幡君お疲れ様、早かったね?」

 

「雪ノ下たちが手伝ってくれたんで.....」

 

「雪乃ちゃんたちが?」

 

「はい、まりなさんに俺の場所を聞いたって言ってましたけど」

 

「うん、君が今日ここにいないからって心配してたみたいなんだけど....」

 

あー練習の予定を入れやすくするためにスケジュールをアプリで共有してるからな.....

てかよく俺のバイトの予定まで覚えてるな.....

というかそれ以外によていがないからかw

.....やめよう、このままだとメンタルにダメージを負ってしまう。

 

「それは俺がサボってないか確認してるだけですよ」

 

多分心配はしてない。

 

「昨日、八幡君倒れちゃったんでしょ?それなら心配するのも普通だとおもうけどな〜」

 

「そうでしょうかね?」

 

「うんうん、きっとそうだよ!」

 

そんな様子は感じなかったが.....

どの道仕事手伝ってくれてしな.....

 

「それにしてもあの3人も八幡君を心配して様子を見に行っちゃうなんて.....若いっていいなぁ.....」

 

なんだかまりなさんがあらぬ勘違いをしてるような気がするがなんか地雷踏みぬく気がするからなにも言わないでおこう。

ぼっちはこういう時に気を使える人種だからな!

 

「それで....あとはいつも通り働いてればいいですか?」

 

「あ、うんそれなんだけど君の仕事は今日はもう終わりだよ」

 

「え?まだ定時じゃないはずですけど.....」

 

「ううん、君に無理をさせちゃったみたいだしせめて今日くらいはゆっくり休むべきだってみんなで決めたの」

 

「はぁ....本当にいいんですか?」

 

実際連日の仕事で疲れてるのは事実なのでとてもありがたい申し出なのだが.....

その分他の人に迷惑がかからないだろうか?

 

「うん、今日は予約のお客さんも少なめだから大丈夫だよ。気にしないでたまには私たちに大人らしいことさせて、ね?」

 

普段から大人らしいことされまくってるのだが.....

 

「それじゃあ....お言葉に甘えて」

 

ここのライブハウスの大人たちにも....これは勝てないんだなぁ.....

今日何度目かわからなくなってきたがオレまじでこの世界で最弱説でてきたな。

 

*****

 

「って暇をもらえたのはいいけど帰ってもやることないんだよな....」

 

こういう時にはぼっちなのを悲しく思う....わけないだろ危ない危ない。

ぼっちがぼっちを悲しいものと思ったらおわりだからな、いいな八幡お前は悲しい存在じゃないからな!

 

「.....なにやってるんですか?」

 

俺が必死にぼっちの悲しみを否定してる時に急に後ろから声をかけられる。

なんなの?最近の俺歩いてるだけで知り合いに会いすぎじゃない?

 

「なんだ....美竹か」

 

「なんだって流石に酷くないですか?」

 

「急に人に話しかけられると普通驚くだろ」

 

「.....普段どんだけ人と会話しないんですか」

 

「お前だって青葉たち以外とはどうせそんなに話してないだろ」

 

ぼっち特有の感覚なのだが同族を感知するのが異常に早い。

こいつもアフグロのメンバー以外といるのをあまり見ないし.....

きっとそうに違いない。

 

「否定はしませんけど....流石に八幡さんほどじゃないですよ.....」

 

はーそう!はーそう!お前はぼっちではないけどあんま話さないタイプの人つまり俺の完全上位互換ってことかい。

お前らにはわからないだろうけどな、これまじで天と地ほどの差あるからな。

 

「俺はは周りのやつと話せないじゃない、話す気がないだけだ」

 

「それ1番ダメなやつ.....」

 

もはやあきれを通り越して哀れみの視線さえ感じるがそっと気付かないフリをして無視をする。

 

「というか....お前その格好は?」

 

今更すぎると思うが美竹が今来ているのは和服でいつもと雰囲気がかなり違う。 

意外というと失礼だがかなり似合ってる。

 

「今更それ聞くんですか.....本気で気づかれてないのかと思ってましたよ.....」

 

「いやだってお前が話を逸らすから....」

 

「明らかにそらしてたのはそっちです」

 

「と、とにかくなんで和服なんか着てるんだ?」

 

後輩にボケを完全に潰されたがそんなことにショックなんて受けてないんだからね!

 

「今日は華道の集まりがあったのでそれで....」

 

「.....本当にお前華道やってたんだな」

 

「今日いつにも増して失礼なこと言ってる自覚ありますか?」

 

いや仕方ないだろステージの上であれだけの歌を歌ってるやつがおしとやかに華道をやってるところなんて想像できるか?

俺にはできない、ただそれだけだ。

 

「い、いやほらそれは言葉の綾というかなんというかでだな....」

 

しかし俺は空気が読める系のボッチなのだから本当のことは言わないのだ。

はい俺偉い。

 

「まあ、自分でもそう思うのでいいですけど」

 

「いいならそういうこと言わないでくれますかね....」

 

「八幡さん、失礼なこと言うこと多いし釘を刺しといたほうがいいかと思って」

 

「お前は人をなんだと思ってるんだよ」

 

「その言葉、そのままお返ししときます」

 

全く可愛げのない奴め。

 

「そんなことより体調は大丈夫なんですか?」

 

「ああ、まぁ大丈夫だ」

 

「そうですか、無理…しすぎないでくださいね」

 

「やけに心配してくれるんだな」

 

そう言うと美竹は顔を赤くする。

 

「べ、別にあたしは心配なんてしてないですから.....」

 

なるほど、テンプレなツンデレこそ破壊力は絶大なのか.....

 

「ま、でも昨日探してくれたりもしたし.....」

 

「それならそのお礼はつぐみに言ってあげてください」

 

「どうしてだ?」

 

「1番必死になって探してたのつぐみなんで」

 

「そうか、また会った時に伝えとく」

 

確かに羽沢は特に優しいし迷惑もかなりかけただろうな.....

 

「そうしてください」

 

「でもお前も探してくれたのには変わらないんだろ?」

 

「....まぁ、倒れた後にいなくなったら少しは心配になるんで」

 

さっきと言ってることが違うが.....

なんだかんだ言ってこいつは優しいんだよなぁ.....

可愛げがないってのは撤回だな。

 

「体調も良くなったならなによりです」

 

「ああ、このイベント終わるまでは休んでられないからな」

 

「そうですか、あたしたちがいつも通りの演奏できるように頑張ってください」

 

そう言われたらますます倒れてるわけにはいかなくなったな。

その分イベント終わったらサボりまくってやるからな......

 

「それじゃあ、あたしはこれで」

 

「おう」

 

そう言って美竹は俺とは違う方向に歩き出す。

その背中を見ながら俺はもう一度言葉に出さずに礼を言っておくのだった.....

 

*****

 

「さて、まだまっすぐ帰るにはまだもったいない気がするな....」

 

こうしてみると改めて最近の俺が忙しかったのかわかるな。

今まで当たり前のように暇だった時間ってこんなにも貴重だったんだなぁ.....

ふとそんなことを思ってる時点で過去の俺を遥かに超えたエリート社畜ぼっちになれてるな!

なんて思ってたら前からまたもや知り合いの白金の姿が見えた

 

「あ.....こんにちは八幡さん」

 

「おう、これから練習か?」

 

「いえ、練習はもう.....終わりました」

 

「そうか....Roseliaは練習量多そうだし大変だろ」

 

「大変ですけど.....それ以上に....楽しいですから」

 

「普通にそれ言えるのがすごいわ.....」

 

と言っても言いたいことはわかるんだけどな。

 

「それよりも....体調はもういいんですか?」

 

「ああ、もう大丈夫だ。そのあとのことも含めて迷惑かけて悪かった」

 

「.....迷惑だなんて誰も思ってないですよ」

 

そう言ってくれるのはありがたいが迷惑をかけてるのは事実なわけで.....

 

「それでも悪かった」

 

それに対して謝罪するのは当たり前のことだ。

 

「でも....八幡さんにとってそれはきっと必要だったんですよ」

 

「どういうことだ?」

 

「今の八幡さんは....前とはちょっと違う感じがします」

 

なんかもうそれ哲学的すぎて俺には理解できないな、助けてくれソクラテス。

 

「そうなのか?」

 

「はい....」

 

そう言って白金は笑う。

その表情を見る限りそんな悪い変化ではないと信じたいが.....

 

「そっか、白金は周りのことよく見ててすごいな」

 

「そんなこと....ないです」

 

「いや本当に凄いことだと思うぞ、俺にはできん」

 

ただぼっちだからそんな見るような人がいないだけなんですけどね!

 

「私からしたら....皆さんそれぞれすごいです....私が持ってないものを....それぞれが持ってますから」

 

そこで白金は一度言葉を切った。

 

「それで....そのいいところを持ち寄って.....バンドってできるんじゃないでしょうか」

 

「....まちがいないな」

 

白金は一歩周りから引いてるように見えるが実際は誰よりも前を歩いてるのかもしれないな.....

 

「RoseliaにはRoseliaの....アブアルにはアブアルの....それぞれのバンドの良さは.....絶対に他のバンドにはないと思うんです」

 

「.....」

 

そこまで聞いて俺は思ったよりも納得してる自分に気づいた。

そっか....俺がいなくなったらもうそれは同じアブアルにはならないのか....

 

「だから....私も頑張れます....少しは周りの役に立てるのならって」

 

「.....白金がいる限りRoseliaが道を踏み外すことはないな」

 

うちにもこれくらい大人な奴がいればなぁ.....

雪ノ下にしろ俺にしろいざという時周りなんて何も見えてない、これじゃ何のためにぼっちやってるかわからない。

いや別にやりたくてやってるわけじゃないけどね?

 

「私は.....見てることしかできません.....」

 

「そういう奴が1人くらいいた方がいいんだよ、多分だけどな」

 

「そうでしょうか?」

 

「ああ」

 

本当にただの予感でしかないのだが。

 

「お互い、このまま何もないといいんだけどな.....」

 

「そうですね.....」

 

「でも.....なんか大丈夫な気がしてきたわ」

 

「....そうですね」

 

ここまでいろいろなことをなんだかんだ乗り越えてこれたのだ、これからもいけるのではないだろうか。

 

「では、私はこれで」

 

「おう、いろいろありがとな」

 

「いえ.....気にしないでください」

 

本当に俺は周りの奴らに恵まれたんだなぁ.....

ふとそんなことを思いながら、俺はまた歩き出すのであった.....

 

*****

 

しかし結局そのあと何をすればいいのか思いつかなかった俺は結局家に戻ってきてしまった。

 

「あれ?お兄ちゃんお仕事終わるのはやくない?」

 

「いや、まりなさんが気遣いしてくれてな」

 

「そうなの?本当にお兄ちゃん帰ってきて大丈夫だったの?」

 

「まりなさんに大丈夫とは言われたし.....断れないだろ逆に」

 

「まぁね〜」

 

「本当に頼りなる人たちだよ」

 

「お兄ちゃんと比べたら誰でも頼りになるんじゃない?」

 

「おい、小町こら」

 

「それでも小町はお兄ちゃんを見捨てたりしないからね!今の小町的にポイント高いよ?」

 

「そーかよ」

 

まぁ、正直俺も小町離れできる気はしない。

 

「あ、そうそうお兄ちゃん、今度の合同練習の後面白いことやるから楽しみにしててね?」

 

「は?」

 

その言葉を聞いて急激に不安になる俺であった.....

 

 




今回はここまでになります!
今回は八幡がいろいろな人と話すだけの回でしたね。
それと先に言っておくのですが次回は本編ですがほぼ番外編のような話です。
要するにおふざけ回のようなものです。
良ければ読んでやってください。

感想、評価など励みになりますので良ければ残していってください。

それでは次回予告に行ってみましょう!



「.....」

「どうしたのハチ兄?考え事?」

「ああ、昨日小町が次の合同練習のあとを楽しみにしとけって言われたんだがなんか嫌な予感がしてな」

「でも小町がハチ兄が本気で嫌がることをするとは思わないんだけど.....」

「おいまてケント、お前今こまちのことを呼び捨てにしたか?」

「え....?う、うん本人にそう呼べって言われたし....」

「俺はそんなの認めないからな!呼び捨てなぞ断じて許さん!」

「ちょっ、ちょっとハチ兄落ち着いて、別に小町とはなにもないから!」

「お前小町には魅力がないって言うのか!」

「そ、そんなこと言ってないよ!....ああ、このままじゃ次回予告が」

「さて、ケントゆっくり話を聞かせてもらおうか?」

「じ、次回!やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
『まちがいなくこの対決はなにかが違う』です!お楽しみに...ってハチ兄目が怖いよ!」


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第55話

今回は予告してた通りほぼ番外編になります。
俺ガイルのあの対決がバンドリメンバーで行われたら....と言う話です。

イベントの報酬3倍って思ったよりも恩恵大きいですね、これからも定期的にやってくれませんかね?


いよいよ今日は2回目の合同練習である。

1度目の後いろいろスケジュールが変わり奇跡的に全員集合できることになっているだけあって1度目よりも充実した練習になるだろう。

....もちろんもう中断させるようなことはしない。

 

「比企谷君、全バンドが全員揃ったわよ」

 

「そうか、それじゃあそろそろ始まるか」

 

各バンドの点呼を取ってくれた雪ノ下から報告を受け俺は全体に向けて話し始める。

 

「えーそれじゃあそろそろ練習を始めるから前回と同じようにまずは楽器ごと集まって練習を始めてくれ」

 

「「「「はーい!」」」」

 

俺の言葉にみんな(一部の人間はかなりの大声で)返事をしてくれる。

 

「....今度は逃げ出さないでくださいよ?」

 

「うるせぇ、もうほじくり返すな」

 

「はーい」

 

にやけながら俺をわざわざからかってから一色は練習場所へと向かう。

本当に物好きな奴である。

だが本当に今回はなにもなく終わればいいんだけどな.....

 

「ハチ兄、そろそろ時間じゃない?」

 

なんて思ってたがその後驚くほど順調に進んでいき気づけばもうそろそろ終了時間だった。

 

「そうだな、そろそろじゃあ終わるか.....」

 

俺たち以外は集中していて時間に気付いてなさそうである。

 

「おーいわるいがそろそろ時間だ、きりのいいところで片付けに入ってくれ」

 

そうして各自片づけに入り始めた。

今日の練習はかなりいい感じだったのではないだろうか?

 

「戸山さん、いつもよりものびのび歌えてたわね」

 

「本当ですか!ありがとうございます!友希那先輩もすごかったです!」

 

「おねーちゃん!あたしのギターどうだった?」

 

「こんな時くらい私以外の人に聞きなさい」

 

「えー、だっておねーちゃんと一緒に練習することもないじゃん」

 

「....よかったんじゃない、ただ毎回楽譜を無視するのはやめなさい」

 

「えーだってそっちの方がるんっ!ってするんだもん」

 

なんて周りの雰囲気もかなりいいようだ。

この分ならイベントも成功しそうだな.....

 

「よし、じゃあ今日はこれでかいさ.....」

 

その後片付けもスムーズに終わり解散の宣言をしようとした瞬間.....

 

「ちょーっとまったぁ!」

 

認めたくはないが我が妹のアホみたいな声が聞こえてきた......

 

「.....」

 

「お兄ちゃん、無視しないで?」

 

いつもと明らかに立場が違うが小町がこう言うテンションの時には大抵面倒ごとに巻き込まれる。

 

「....なんだよ」

 

しかし無視すると後々余計に機嫌を損ねることを知ってるので俺は優しくしかたなく、小町に反応してやる。

え?お前がシスコンだからだろって?

そんなわけないだろ俺はただ小町を世界一愛してるだけだ。

 

「前もって言っておいたよね、楽しみにしててねって」

 

「お前がそう言う時だいたい俺がろくでもない目に遭うんだが.....」

 

「そんなことないって、とにかくみんな来てくれるんだから今更お兄ちゃんだけ変えるなんて選択肢はないよ」

 

「いや全員どうやって集めたんだよ、てかそんな人数でなにやるんだよ.....」

 

いや本当によく全員集まったな、我が妹ながら恐ろしい交渉力である。

 

「ほらほらお兄ちゃん他のみんなはもう向かってるからはやくはやく!」

 

「わかったからそんな引っ張るな.....」

 

そしてそのまま俺はなすすべもなく小町に引きずられていくのだった.....

 

*****

 

「.....って総武高校じゃねーか!」

 

そのまま俺が引きずられてきた場所はなんと俺の学び舎総武高校である。

 

「こんなところでなにするんだよ.....」

 

「まだ秘密」

 

あざとく言いやがって....可愛すぎて死ぬかと思ったじゃないか。

流石は俺の天使なだけあるな!

 

「へーここが八幡先輩たちが通ってる学校なんだね〜」

 

「ちょ、ちょっとおたえ、どこ行くの!?」

 

「ふええ....迷子になっちゃわないかな?」

 

「花音さん、今日はこんなに人もいるので大丈夫です」

 

既にこの辺で色々起こってるみたいだが.....

というかそれ以前に周りから相当目立ってるぞ.....

 

「それで総武高校にきてなにやるんだよ?」

 

「まぁまぁとりあえず家庭科室へGOだよ!」

 

「いやなんで家庭科室.....」

 

もし料理するとかいうなら俺は絶対試食係はやらんからな、主に由比ヶ浜や由比ヶ浜や由比ヶ浜が心配だしな。

あれ?なんかおかしかったか今?

 

「それもまだお楽しみだよ!」

 

なんか嫌な予感しかしないというかなぜ小町がうちの高校の使用許可を....?

もしかしてからわりとこれ大事なののでは?

 

「....考えるだけ無駄か....」

 

そこで俺は考えるのをやめ家庭科室へと進んでいくのだった.....

 

*****

 

「....明らかにこれは小町だけのしわざじゃねーな」

 

家庭科室に入るとなんかクイズ番組みたいな見た目になっている。

しかもこのクオリティ.....

 

「いやでもまさか....」

 

そんなことあるわけないよな。

 

「小町様、準備はこれでよろしいでしょうか?」

 

「完璧です〜本当にありがとうございます」

 

「お気になさらず、お嬢様もお楽しみにしていらしたので」

 

あー背後から全ての回答が返ってきたけど八幡先輩聞こえない。

 

「それじゃあお兄ちゃんはここに座って!」

 

そういうと俺はテーブルの一つに案内される。

 

「あ、ケント君もお兄ちゃんと同じところに座っててね!」

 

「うん、わかったよ」

 

ほーういつのまにこの2人は仲良くなってやがんだ?

あとで事情聴取だなこれは。

 

なんて考えてるうちに全バンドが全員揃ってるようである。

 

「皆さん今日はお忙しい中小町、いえお兄ちゃんのために集まっていただきありがとうございます!」

 

とか思ってたらなんか始まったし.....

 

「本日皆さんに集まってもらったのはですね、イベント前に全バンドでそれぞれ対決をして親睦を深めてもらおうと思って小町が独断と偏見で企画しました!」

 

「それならこんな人数巻き込むなよ......」

 

「ところで小町ちゃん」

 

「はいなんでしょうか香澄さん!」

 

「一体私たちこれからなにをするの?」

 

いや俺以外もなにやるのか知らんのかい!

 

「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれましたね」

 

あーだめだ、今日の小町完全にアホモード入っちゃってるわ。

 

「ズバリ!今日はバンド対抗嫁度対決をしていたただきます!」

 

「.....は?」

 

「すみませんがそれはどういうものなのでしょうか?」

 

紗夜も完全に困惑している。

というかみんな小町の発言の意味を理解できていなさそうなのだが....

 

「あら、面白そうじゃない!」

 

訂正、1人いたわ。

 

「うん!きっとおもしろいよ!」

 

「これは儚いことになりそうだね.....」

 

「なんかるんってする!」

 

再び訂正、やっぱ結構いたわ。

 

「それで具体的にどんなことをするの?」

 

それでその質問したらもう引き返せないだろうが美竹.....

 

「そう焦らずに〜これから説明しますので〜」

 

「う、うん」

 

普段よりテンション増し増しの小町に美竹もちょっと驚いているようだ。

 

「今回いくつか対決を用意したので各バンドで代表を決め、代表を決めたあとでくじ引きでなんの対決を行うか決定します!そして審査員の方に勝敗を決めていただきます!」

 

「ちょっと待て、まさかその審査員って....」

 

「そう!お兄ちゃんとケント君が審査員でーす!」

 

「おいまて、でも審査員2人だと少なすぎないか?」

 

かなりの高確率で2チームの引き分けになるだろ.....

 

「そういうと思いまして今回ゲストの方々をお呼びしてま〜す!それではどうぞ〜」

 

誘導されてたか.....

 

「よろしく....でいいのかな?」

 

戸塚きたぁぁぁぁ!!!

すでに癒されたから帰っていい?

 

「戸塚、会えて嬉しいぞ!」

 

「お兄ちゃん、未だゲストいるんだから程々にね〜」

 

おっと、俺としたことが戸塚の可愛さにテンションが上がりまくってしまった.....

 

「我もいるぞ!」

 

「いやー戸塚まで来てくれるなんてなぁ....」

 

「おい!我を無視するでない!」

 

「おい小町、なんでこいつまで呼んだんだよ?」

 

「なんでいるのか小町にもわからない?」

 

「お主ら2人揃ってひどいな!?」

 

相変わらずのリアクション芸人だなこいつ。

 

「と、とにかくよろしく頼むぞ」

 

材木座、意外と空気を読んでこのくだりを終わらせたな。

いや、こんだけの大人数の前で喋れなくなっただけか.....

 

「俺まで来て良かったのかい?」

 

「げっ.....」

 

「げっ、とはご挨拶だな」

 

葉山までいんのかよ、これ審査員身内でしかないなおい。

 

「そして最後にこの方も!」

 

え、まだいんの?

 

「みんなよろしくね」

 

まさかのユウトさん登場である。

高校生とはまた違った観点にはなるけどよく来れたな.....

 

「そして回答者側にもゲストチームに参加してもらいまーす!」

 

まだチーム増えるのかよ.....

 

「よろしく頼むぞ!」

 

「わ、私もいていいのかなぁ.....」

 

平塚先生とまりなさん.....小町さん、この2人にこの対決参加させちゃだめでしょうよ.....

 

「つか小町はどうするんだ?お前でないと雪ノ下たち1人足りなくないか?」

 

「そこはしっかり考えてあるよ、小町もどんな対決があるかはほとんど知らないんだ、こんな感じの対決を〜っていうのだけ伝えて黒服の人たちに用意してもらったから.....」

 

「マジであの人たちに感謝だなこの企画....」

 

「その分お兄ちゃんしっかり審査員してね?」

 

「はいよ」

 

なんかここで適当にやるのは黒坂の人たちに申し訳ないからな.....

 

「さて、それではこれで全員揃ったので早速始めていきましょう!各チームは代表者を1人ずつ決めてくださ〜い!」

 

切り替え早いな、おい。

その後各チームは代表者決めで話し合いにはいるのだが.....

 

「なんか....みんなすごい真剣だね?」

 

「だよな、なんでだろうな」

 

ケントも気づいたようだがやたらとみんなやる気が高い、こんな企画もっとゆるく楽しむものでは.....

 

「おや?比企谷は聞いていないのか?」

 

「は?どういうことだ?」

 

「えーと、この勝負に賞品があるらしいんだけど....」

 

え?戸塚も知ってるの?

 

もしかして知らないの俺たちだけ?

 

「ちなみにその商品ってなんなんですか?」

 

「たしか.....イベント時間的に一つのバンドだけ時間が長くなるんだけど.....」

 

「その時間に割り当てられる権利....だったかな?」

 

そりゃこいつらが真剣にもなるか.....

 

「それともう一つ謎の副賞があるがな!」

 

「は?まだなんかあるのか?」

 

「呑気に言っておるが八幡、お前に関わることだぞ」

 

「は?」

 

いやまた俺はなにをさせられるんだ?

 

「うん、たしか八幡を1日好きに使える権利....だったかな?」

 

おいまて戸塚、その可愛いくて仕方ない口からとんでもないこと言ってるぞ?

 

「おい小町」

 

「何かなお兄ちゃん?」

 

「お前なに勝手に人を商品にしてんだ」

 

「だってお兄ちゃん暇人でしょ?」

 

「理由になってないだろ.....しかも誰もいらないだろ俺なんて」

 

「だから権利なんでしょ?」

 

「そういうことか....」

 

権利ならいらなければ使わなくていいわけだからな.....

どの道俺ロクな目に遭わないの確定じゃねーか.....

 

「てかその場合平塚先生たちが勝ったらどうなんだ?」

 

「.....あの2人には賞品はないんだ」

 

ん、ユウトさんがすごい微妙な顔をしてるがなぜだろうか?

 

「それならあんな真面目にやらなくても...」

 

「八幡君、あの2人は.....自身のプライドを守るための戦いなんだ....」

 

あ....そういうことか。

それは必死になるか.....

負けたら嫁度?が高校生以下って烙印を押されるわけだからな。

それをあの未婚を気にしてる2人なら.....負けたら死よりも辛いことかもしれない.....

 

「それではみなさん代表者はお決まりのようなのでそれぞれ発表していってくださ〜い!まずはラビアルチームの皆さんから!」

 

「私たちは由比ヶ浜さんでいくわ」

 

「が、頑張るよ!」

 

なるほど、料理を引く確率が低いうちに由比ヶ浜を使うって作戦か.....

 

「それでは続いてポピパさん!」

 

「私たちの代表は.....おたえ!」

 

「うん、任せて」

 

あー対決内容がわからないがとりあえず不安なことだけはわかる。

 

「それでは続いて〜アフグロさん!」

 

「あたしたちは.....ひまりで」

 

「がんばるよ〜!」

 

空回りしそう感が否めん....

 

「続いてパスパレさん〜」

 

「私たちは....日菜ちゃんだよ!」

 

「まっけないよ〜!」

 

安心なんだか不安なんだかわからないやつきちゃった.....

 

「続いてRoseliaさん〜」

 

「私たちは....あこでいくわ」

 

「我が闇の力でえーと....ババーンってしちゃうよ!」

 

あこの場合嫁度?っていう観点では一番低いかもしれないな.....

 

「次にハロハピさん!」

 

「あたしたちははぐみでいくわ!」

 

一番不安なバンド来ちゃったよ.....

 

「そして最後にSPチームのお2人は?」

 

「私が行っちゃおうかな」

 

「任せたぞまりな」

 

どんなお題があるかはわからないけどまりなさんはこの勝負強いのではないだろうか?

 

「それでは対決内容を決めるくじは審査員の....彩加さん引いてください!」

 

「なんだか僕が緊張しちゃうな.....」

 

か、かわいい。この勝負戸塚が参加してたらなにがあっても戸塚の優勝にするのに.....

 

「それでは彩加さん!引いたくじに書いてあるお題を読んでください!」

 

「えーとお題は.....料理...です!」

 

.....最悪だ、確実に1人はダークマターを持ってくるぞ。

雪ノ下も頭を抱えてやがる....

それに他のメンバーもかなり未知数だな.....

 

「てか、まず材料は....」

 

「私どもが揃えてあります」

 

あ、はいそうですか。

この人たちの行動力マジで怖い.....

 

「....さっきから思ってたんだがこの黒服の人たちはだれなんだ?」

 

葉山だけでなく他の審査員も戸惑っている。

そりゃ、初見はそう思うよな。

 

「....弦巻家の人間だ、行ったことは大抵叶えてくれるらしい.....」

 

現代版ドラ◯もんのような人間と言ったほうが分かりやすかっただろうか?

 

「....なんだかこころちゃんの行動力の原点を見た気がするよ」

 

それを聞いてユウトさんも半分呆れたような感じである。

 

「うん、できた!」

 

そうこう言ってるうちに花園が料理を完了したようであ.....早くない?

流石に早すぎないか、まだほとんど料理を開始して時間経ってないんだが.....

 

「おーっと早速おたえさんが完成一体どんな料理なのでしょうか?」

 

小町さん今日はもうそのテンションなのね。

 

「どうぞ」

 

「えーとその....花園さん?」

 

「これは....」

 

葉山と材木座がそのリアクションをするそれは何かというと....

 

「これ、ただの人参とかを切っただけじゃ.....」

 

「なにやってんだおたえ〜!!」

 

市ヶ谷さん、今日もお勤めご苦労様です!

 

「あはは....おたえらしいっちゃおたえらしいね....」

 

「ん?だって人の料理って言ってないよね?」

 

「まさかだか花園.....お前うさぎ用の料理?をしたのか....」

 

「はい、そうですけど」

 

「八幡よ、我は今謎の寒気に襲われておる.....」

 

「流石に....これは」

 

材木座、葉山、審査員席はみんな同じことを感じてるぞ。

 

「えー実食はスルーだ」

 

「本当ならダメって言いたいけど....流石の小町もこれは許してあげるよ」

 

「ダメだったか〜」

 

「当たり前だろうが!お前これ結構大事な勝負なんだかんな!」

 

そのまま花園は市ヶ谷に叱られながらもポピパのテーブルへと戻っていった.....

 

「....最初からとんでもないことになったな」

 

「つ、次の料理はなにがでてくるのかな」

 

「我はなんだか不安になってきたぞ.....」

 

「流石に....次はまともなのが出てきてくれると思うけど....」

 

「いやこれも食えなくはないんだけどな」

 

流石に生野菜をここで食べるのもなんかな....

 

さて他の奴らは一体どんな感じなのだろうか.....

 

「えーと次はどうすればいいんだっけ....?」

 

由比ヶ浜....頼むからギリギリ食えるくらいのものを作ってくれ.....

 

「うーん大丈夫かなぁ....」

 

上原は不安気だがああいう陽キャ組は一部除き料理とかやったりしてそうだしまぁなんとかなるのだろう。

実際その手に迷いはない。

 

「うーんこの調味料をるんっ!って入れて....こっちはるるんっ!て入れちゃおう!」

 

日菜は独特すぎる調理工程でよくわからないが手つきは慣れてるような感じなので大丈夫そうだな.....

 

「よーしこっちは準備完了!あとは....えーと」

 

意外とあこもゆっくりながらしっかりと作っている、宇田川と作ったりするのだろうか?」

 

「よいしょ....うん!美味しそうにできてる!」

 

そして北沢も1つ1つ確認しながらしっかり作っている。

 

「なんだかみんなの前で料理するのって照れるな〜」

 

と言いつつ手際のいいまりなさんも心配なさそうだ。

....あれ?もしかして意外とこの勝負いい感じ?

 

「この調子なら心配はなさそうだね、ハチ兄」

 

「ああ、なんとかなりそうだ.....1人を除いて....」

 

「え?どういうこと?」

 

「実食の時にわかる」

 

「比企谷、お前何も知らないやつにあれを食べさせるのか?」

 

調理実習で由比ヶ浜のあれを知っている葉山と戸塚は相当に怯えている。

 

「仕方ないだろ....」

 

最悪戸塚、ケント、ユウトさんが食べなくてもいいように俺と葉山そして材木座が頑張るしかない。

 

「....はぁ」

 

その後も俺たちは恐怖を紛らわすためにも談笑しながらしばらくの間まってたがどうやら各自の料理ができ始めたらしい。

 

「できた〜!」

 

まずは日菜か.....

 

「それでは日菜さん!料理を審査員席まで!」

 

「はーい、あたしが作ったのは麻婆豆腐だよー」

 

「おお....」

 

見た目はなんかちょっと.....辛そうだな

 

「美味しそうだね、それじゃあ早速....」

 

1番にユウトさんが口へ運ぶ。

 

「.....」

 

かなり辛そうだが大丈夫だろうか?

 

「か、辛い.....」

 

まぁ色を見ればそりゃあ辛いだろう.....

 

「でも...後を引くような旨味もある....辛くてもまだ食べたいと思える....」

 

「つまり?」

 

「美味しいよ!」

 

「日菜ちゃんナイスだよ!」

 

審査員の高反応に彩も喜んでいる。

 

「....」

 

「いったいどうしたの紗夜、なんか複雑な顔してるよ?」

 

「いえ、なんでもないのですが....日菜は料理も感覚でできてしまうのだなぁ....と」

 

え?こいつもしかして普段料理しない人間?

 

「前に調理実習で作ったのをなんとなく覚えててよかったよ〜」

 

「なんだろう、俺は今猛烈な敗北感に襲われてる」

 

「ハチ兄、こういう人と比べたら負けだよ....」

 

「だけど...本当に辛いのに美味しいよこの麻婆豆腐」

 

戸塚もご満悦のようだしとりあえずはよしとしよう。

 

「2品目にしてかなりの好反応、他の人たちはどう対抗するのか〜?」

 

「うう、なんかプレッシャーかかってきちゃった....」

 

「ひまり、落ち着いてやれよ〜!」

 

不安げにしてる上原を宇田川が励ます。

 

「う、うんそれじゃあ....私も完成!」

 

次は上原か.....

 

「それでは連続でひまりさんの料理の実食です!」

 

「私が作ったのは....ちょい足しスイーツです!」

 

そういい何品かテーブルの上に並べる上原。

 

「おお、普通にうまそうだな.....」

 

「辛いものを食べたあとだしちょうどいいね」

 

「それでは早速いただくのである!」

 

材木座の言葉を合図に俺たちは上原の料理を口に運ぶ。

 

「うん!すっごく美味しいよ!」

 

「そうだね、それぞれに合う工夫がされている」

 

「よかった〜私普段はちゃんと料理することってなくて不安だったんですよ〜」

 

....もしかして現代の陽キャって料理しない方が多いのか?

 

「だとしたらこのスイーツたちはどう作ったんのかな?」

 

ユウトさんが聞いてくれたが料理経験がなくても作れるのなら実はかなりポイント高いのではないだろうか?

 

「これはですね、コンビニとかで手に入るようなものを組み合わせて簡単に作れるんですよ。気になるなら後で作り方教えますね!」

 

俺たちの反応で安心したのかいつも通りのテンションに戻ったようだ。

 

「うん、後で教えてね!」

 

まぁ戸塚が満足すれば俺はそれでもうなんでもいいけどな!」

 

「うう....なんか私も食べたくなってきちゃった....」

 

「少しくらい我慢しろよ香澄」

 

周りで対決を見守ってるメンバーも食欲をそそられ始めてるらしい。

 

「そこはご心配なく審査が終わった後にみなさんで試食タイムにしましょう!」

 

いやお前も食べたいだけだろ。

 

「あこもかんせーい!」

 

「おっと次はあこちゃんの料理だ〜!」

 

「あこが作ったのはカレーだよ!」

 

シンプルだが失敗がなくなおかつ家庭的な料理.....

料理のチョイスとしてはベストだろう。

 

「うん、美味しそうだね」

 

「そうだね、早速食べてみようか」

 

なんだかんだ不安だったが最初以外は普通にうまい料理がでよかったな.....

 

「うん、うまいぞあこ」

 

「本当?やったー!!」

 

俺が褒めてやると無邪気に喜ぶ。

本当に第二の妹ができた気分である。

 

「はっ!なんだか小町的にピンチの予感!」

 

勘のいい小町は的確に妹の立場の危機を感じたようだが少なくとも今の小町ならあこの方が妹らしいかもしれない。

いやどっちも世界一レベルなのには変わりないのだが。

 

「....あこちゃん....頑張ったね」

 

「りんりんもありがと〜!!」

 

「あこ、頑張ったな」

 

「お姉ちゃんと前に作ったおかげだよ!」

 

おっと微笑ましいエピソードも含めて相当の高得点かもしれないな。

 

「はぐみもできたよ〜!」

 

いや本当にタイミングいいなこいつら。

 

「はぐみ....大丈夫かなぁ....」

 

心配そうに見つめるハロハピの保護者こと奥沢だが果たして.....

 

「はぐみはコロッケを作ったんだ〜!」

 

「おお、これまた美味しそうだ」

 

「揚げたてのうちに食べちゃおうか」

 

「うむ!美味である!」

 

「うん、揚げたてで美味しいね!」

 

「前にとーちゃんに作りかた教えてもらったんだ〜」

 

「はぐみ!すごいわ!」

 

「みんなの分も作ってあるから安心してね〜」

 

「おお〜楽しみだなぁ」

 

「呑気に言ってるけどお前だけだぞ料理以外のもん出してんの....」

 

「あれは指定がなかったのが悪い」

 

「開き直んな!」

 

思っていた何倍も対決は盛り上がってきているな。

しかも割とレベルが高いのが意外なところである。

 

「よし!私も完成!」

 

まりなさんも無事完成したらしい。

 

「私は無難に肉じゃがを作ってみたよ〜」

 

なんだろうか、チョイスに嫁度への意識がにじみ出ている.....

 

「うん、それじゃあ早速いただきます」

 

「どうかな?」

 

「うん、美味しいよ」

 

「よかった〜」

 

この2人仲良いよなぁ.....

 

「....」

 

奥で平塚先生がなにやらすごい顔をしているが見なかったフリをしよう、うんそれがいい。

 

「すごく美味しいです!まりなさんは普段から料理するんですか?」

 

「うん、基本的には自分で作ってるよ」

 

「凄いですね、僕にはできないな〜」

 

「戸塚君も慣れれば大丈夫だよ〜」

 

会話を聞いててもこの人なんで結婚できないんだろう?

周りの見る目がないのだろうか?

 

「あたしも完成!」

 

はぁ....ついにこの時が来てしまったか.....

 

「ついに最後の料理が完成だ〜!それでは結衣さん、料理をどうぞ!」

 

小町に促されて由比ヶ浜が作った料理をテーブルに置く.....

 

「えーと、これは....なんだ?」

 

見た目的には.....まさかとは思うけど....

 

「和風ハンバーグ!」

 

「「「「「「.....」」」」」」

 

あまりの料理に審査員全員絶句である。

見た目からしてダークマターすぎる。

 

「え、えーとそれじゃあ食べてみようか」

 

葉山がそういうが誰1人として手を出さない。

 

「ん?どうしたの?」

 

「お前自分の料理の腕前を知ってるよな?」

 

「み、見た目はともかく味は大丈夫....多分」

 

それ絶対ダメなやつじゃん.....

 

「我は覚悟を決めたぞ!いざ!」

 

バカヤロウ....死に急ぎやがって.....

 

「おそらくこの料理、奥に輝きを秘めているのだろう....」

 

自己暗示をかけてやがる.....

そして材木座が口へとその物体を運ぶ。

 

「.....がはっ!死す......」

 

このやろう一口で倒れやがった....

そのペースだと俺と葉山で残りの3人を守りきれんぞ....

 

「.....比企谷、俺が先に行く」

 

「....死ぬ気で頑張れよ、じゃないと俺たち以外にも被害が....」

 

「ああ、任せろ....」

 

そう言って葉山も一口ハンバーグを口に入れる.....

 

「.....」

 

「おい、大丈夫か葉山....?」

 

こいつ....体勢を保ったまま気絶してやがる.....

くそっ!予定なら俺は一口で終わるはずだったのに.....

むしろほとんど残ってるじゃないか.....

 

「ヒ、ヒッキー無理して食べなくてもいいんだよ?」

 

由比ヶ浜がそう言ってくるが流石の俺でも....

 

「どうしたの、八幡?」

 

「ハチ兄大丈夫?」

 

「えーと、無理はしないでね?」

 

この3人を残して倒れるわけには.....これを食べさせるわけには.....

 

「あむ!あむ!あむ!」

 

覚悟を決めて俺はダメージが来る前に食べ切る戦法をとる。

 

「....なんというか覚悟して無理すれば食べらなくはない....感じだな」

 

「コメントが微妙すぎる!?」

 

いや由比ヶ浜に向けて言ったのだとすれば最上級の褒め言葉.....だ....ろ....あ、やっぱダメージ無効にはならないわ.....

そこで俺の意識はばったり途絶えたのだった.....




今回はここまでになります!
いつかこういう話を書いてみようと思ってたんですよね。
もしかしたらあと2本はこの話が続くかもしれません。
全員出場してもらうのでお楽しみに。
(ただまだ2つ対決が決まってないので少し更新遅れるかもです、もし何かこんな対決みたいっていう希望がありましたら感想までお願いします)

感想、評価など残してくれると励みになるので良ければ残して行ってください!

それでは次回予告いってみましょう!



「八幡たち大丈夫かなぁ....」

「多分....」

「世の中に人を倒せる料理って本当にあるんだね....」

「3人には悪いけどボク、少し安心してるよ....」

「ハチ兄たちのおかげで助かりましたね....」

「だから八幡たちが目を覚ます前に次回予告だけ僕たちでやっちゃおうか」

「そうだね、それでは次回やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは『絶対にこの対決はなにかがズレている』です!お楽しみに」

「はーいみなさん、お兄ちゃんたちが倒れちゃったので今から皆さんの試食タイムで〜す!」

「....小町って意外とハチ兄にドライなところあるよね」


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第56話

まずは.....更新遅れまくってすいません!
少しドタバタしておくれてしまいました.....


RASがついにきましたね〜
自分はRoseliaもRASもすきなんですけど.....
この2つのバンドって系統の違うかっこよさがあると思うんですけどわかってくれますかね?
そして花嫁姿のりんりんが美しすぎて....
言葉を失いましたね(なお当てられなかった模様)
当たった人本当におめでとうです〜

コラボは今回は収穫なしです.....

期間が空いたせいで前書きがごっちゃですねw


「う、ううん....」

 

ここはどこだ.....

俺はなにを....

 

「あ!八幡目が覚めたんだね!」

 

「戸塚!」

 

目が覚めた瞬間目の前に戸塚がいるんだけどもしかしてまだ夢の中か?

それなら何言ってもいいんじゃね?

 

「....ずっと一緒にいよう」

 

「え?は、八幡....急にそんなこと言われると照れちゃうよ....」

 

夢の中でまで可愛いなんて....

罪なやつだ.....

 

「八幡寝ぼけてるの?」

 

寝ぼけてるも何もここは夢で.....

あれ?でも俺いつ寝たんだ....?

 

「しっかりして八幡!」

 

その瞬間俺は全てを思い出す、確か俺は由比ヶ浜の料理を処理して.....

そのあと.....

 

「あ、彩加さんお兄ちゃん起きました?」

 

「うん、まだ寝ぼけてるみたいだけど....」

 

「ああ気にしなくていいですよ愚兄の言うことなんて」

 

「お前もう少し兄を労われよ」

 

「そんなことはいいから早く審査員席に戻った戻ったまだ審査終わってないんだから」

 

いつからこの子こんなに兄のことを思わない子になっちゃったのかしら?

 

「はいよ....」

 

「さてそれではお兄ちゃんが起きたところで1回戦の勝利チームを決めま〜す!審査員の方はフリップに勝利チームを書いてくださ〜い!」

 

そういうシステムか.....

さて俺はどのチームにするか.....

 

「うう、ごめんね....」

 

「もとよりこのお題の時点で覚悟していたことよ」

 

「そうですね、次から巻き返しましょう」

 

「それにしてもどうやったらああなるんだい?」

 

「みんなひどい!?」

 

まず由比ヶ浜は論外として.....

 

「私たち勝てるかなぁ?」

 

「あんなん出して勝てるわけねーだろ!」

 

「うーん確かに厳しいかも....」

 

「うーんそんなにだめだったかなぁ.....」

 

「つ、つぎはがんばろう!」

 

ポピパは流石にちょっと.....あれだしな。

 

「うーんみんなの料理見てたら自信なくなっちゃったなぁ....」

 

「ひまりちゃんはがんばってたからきっと大丈夫だよ!」

 

「ただあこのカレーもなかなか....」

 

「巴、今回はあこに肩入れしちゃだめだよ」

 

「そうだよ〜モカちゃん的にはコロッケも絶品でしたな〜」

 

相変わらず緊張感ないな.....

ただ上原の料理は他のチームとは違った趣向だったしな.....

 

「日菜ちゃんの麻婆豆腐すっごく美味しかったよ!」

 

「料理なんて久しぶりだからなんかるんってしちゃったよ!」

 

「それであそこまでの品を作れるのが日菜さんらしいです....」

 

「でもあれなら充分にチャンスはあるわね」

 

「そうです!自信を持って行きましょう!」

 

確かに日菜の麻婆豆腐は相当に美味かった.....

 

「あこすごいじゃん!カレー美味しかったよ!」

 

「ありがとうリサ姉!」

 

「あこちゃん....がんばったね....」

 

「ですが他のチームもかなり美味しかったので油断はできませんね」

 

「そうね、ここで勝てたらいいのだけれど」

 

あこの料理もがんばったのが伝わってきて高得点だ。

 

「はぐみすごいわ!あんなに美味しいコロッケを作れるなんて!」

 

「ああ、私も思わず心奪われてしまったよ」

 

「2人ともありがとう!とーちゃんと特訓したからね!」

 

「いい意味で予想外な結果でしたね」

 

「う、うんすごい美味しかったね」

 

まさに予想外の出来で北沢も個人的には高評価だ。

 

「みんなすごいなぁ....」

 

「まりなは昔料理できなかったからな」

 

「そ、それは言わないでくださいよ!」

 

「あの時のまりなは...今でも...」

 

「わ、笑わないでください!」

 

なんかすごいその話詳しく聞きたいがとりあえず審査に集中するとしよう。

 

「うーん」

 

「なかなかの難題であるな....」

 

審査員席もみな俺と同じように悩んでいるようだが....ここはもう直感に頼るしかないな.....

 

「それでは審査員の皆さんも準備できたようなので1人ずつ発表してもらいましょう!まずは....中2さんから!」

 

「ふむ、我は....パスパレチームに1票である!やはりあの後を引く旨味と絡みがたまらなかった!」

 

見た目通り食レポできるんじゃねこいつ?

 

「ではでは続いて彩加さん!」

 

「僕はアフグロチームが良かったと思ったよ!簡単にできるし今度僕も試してみたくなっちゃった!」

 

なるほど....確かに簡単ってのはポイントが高いところだな。

 

「ではでは続いて葉山さん!」

 

「うん、俺はハロハピチームに1票だ。あのコロッケは本当に店のような味だったよ」

 

熱々のコロッケはマジで美味かったからなぁ.....

 

「ではでは続いてユウトさん!」

 

「ボクはSPチームに票を入れるよ。なんというか安心感があったからね」

 

うわぁ....作った人の前で安心感があるって言えるのちょっと凄くない?

そんなことない?

 

「次はケント君!」

 

「オレは....Roseliaチームかな。ちょっと甘めに作られてるのもよかったし」

 

なんと甘口なのがケントの好みにヒットしたようだ。

そしてこの瞬間俺の投票によって勝利チームが決まることが確定した。

全員が俺の発表に注目しているが....なんか変に緊張するな。

 

「それでは最後にお兄ちゃん、発表を!」

 

「俺が選んだのは....パスパレチームだ」

 

「やった!日菜ちゃんすごいよ!」 

 

「さすがは日菜さんです!」

 

「そうね、これは相当有利になったわね」

 

「本当にすごいです日菜さん!」

 

「みんなありがとう!あたし的にはまだるんってできる気はするんだけどね〜」

 

まだ進化の余地があるのか....

ならなおさら1位かもしれない.....

 

「さてどんどん行きますよ〜。それでは各チーム2回戦目の代表者を決めちゃってくださ〜い!」

 

そのまま各チームが再び話し合うこと3分。

 

「さてそれでは皆さん決まったようなので発表してもらいましょう!まずはアブアルチーム!」

 

「あたしたちは小町ちゃんだよ!」

 

「そうです、ここに来て小町が参戦しちゃいます!」

 

うわぁ....ここに来て小町かぁ....妹度ならダントツ1位なんだけど嫁度はどうだろうか?

 

「では続いてポピパチーム!」

 

「次はりみりんだよ!」

 

「自信はないけど....私がんばってみるよ!」

.

もはや勝負以前に可愛さだけで1点あげたいまでにある。

 

「続いてアフグロチーム!」

 

「うん!私たちの代表は巴だよ!」

 

「よっし!気合入れて頑張るか!」

 

はぁまた未知数なやつが来たな。

面倒見の良さならトップクラスだろうが.....

 

「次はパスパレチーム!」

 

「私たちは麻弥ちゃんでいくよ!」

 

嫁度に関係あるかはわからないがわりと博学な大和は強いのではないだろうか?

勝負を決めに来た感じだろうか?

 

「次はRoseliaチーム!」

 

「私たちは燐子でいくわ」

 

問題によるかもしれんが白金もそれなりに安定している人選と言えるだろう。

 

「続いてハロハピチーム!」

 

「あたしたちの代表は薫よ!」

 

ああ、ついに3バカの1人が降臨してしまった......

 

「そしてSPチームは?」

 

「もちろん私だ」

 

平塚先生....なぜそんなラスボスみたいな風格が....

 

「さて代表が決まったところで次に対決内容を決めます!それでは今回は....ユウトさんにくじを引いてもらいましょう!」

 

「ぼ、ボク?それじゃあ引くね.....」

 

「さて、それではくじに書いてあるのは〜?」

 

「えーと『競え!お嫁スキル対決!』って書いてあるよ」

 

「おーとここに来て難解そうなお題が来ましたね〜」

 

「てか小町もこの対決でるのに司会もやるのか?」

 

「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました!しかーし小町はしっかりと対策を考えてあるのです!そう小町が対決に出てる間は司会を黒服の人たちに交代してもらいます!」

 

「はい、承りました」

 

この人たち本当に万能かな?

 

「それでは対決内容を説明します、この対決では私どもが独自に考案した3つのお嫁らしいスキルの実践をしてもらいそれを見て審査員の方々に誰が最もお嫁スキルを習得しているのかを判断していただきます」

 

要するに家庭科の実技を誰が1番うまくできるかってことと変わらないってことだな。

 

「しかし、先ほど予想外の事態により時間が少々おしているので今回は断腸の思いで3つのスキルのうちの1つだけで勝負していたただきます」

 

実際黒服の人たちはどことなく不服そうな目をしている。

おそらくわりと準備張り切ったからカットされるのがいやなのだろう.....

ほんとお疲れ様です.....

 

「それではネクタイ結び、裁縫、掃除の3つのうち1つを競ってもらうのですが.....」

 

ネクタイ...結び?

それお嫁スキルなのか、一つだけえげつない異彩放ってるよ?

 

「我々で審議しましたところ、ネクタイ結びで勝負していただきます」

 

よりによってなんでそれ選んじゃったの?

てかさそもそもそれ.....

 

「制服でネクタイを結ぶやつら有利じゃないか?」

 

「ご心配なく、我々の独自のリサーチで人に結んであげるのはまた違うものと判明しております」

 

「そんなこと調べたのか.....」

 

「さらに今回はあくまでもお嫁スキルとしてのネクタイ結びとなりますので結んでいる最中の会話なども加味して審査してください」

 

いやこの人たちもしかしてノリノリでルール決めたりしてない?

 

「ちなみに今回審査員の方から1名くじでネクタイを結んでもらう人を決めていただきます」

 

え?何それ役得すぎない

一般的な男子なら普通にその権利めっちゃ欲しいよ?

 

「では審査員の皆様くじを」

 

その言葉に俺たちは少し戸惑いながらもくじを引く。

 

「あたりと書いてある方は誰でしょうか?」

 

どれどれ俺は.....

 

「僕は違うみたい」

 

「俺もだ」

 

「我も違うようだな」

 

「ボクも何も書いてないや」

 

「オレも」

 

え?てことは....

 

「....俺?」

 

くじを見るとどう見てもあたりと書いてある。

 

「....マジかよ」

 

「では比企谷様、前へ出てきてください」

 

「ちなみに皆様がくじを引いている間にあちらも順番が目のくじを行っていたのでその順番に従って審査していきます」

 

いや本当にスムーズだなおい。

 

「では1番目に宇田川様、お願いします」

 

「は、はい、それじゃあ少し失礼しますね」

 

少し戸惑いつつも宇田川はネクタイを俺の首にかけ結びだす。

 

「なんか手慣れてるな」

 

「普段あこのを結んであげたりしてますから」

 

「なるほどな、あこが自慢してるのもよくわかるな」

 

あこのネクタイを締めてあげる様子はありありと想像できる。

 

「そ、そんなに言ってまわってるんですか....?」

 

若干照れているがそれ以上に嬉しそうだな。

姉妹愛とは美しいものだな、俺と小町との兄妹愛にも負けないくらいだな

 

「よし!できましたよ」

 

ネクタイなんて普段結ばないがしっかり結ばれてるのがわかるな。

ただやっぱりなんというか嫁というか....姉っぽいな。

 

「宇田川様ありがとうございました。では続いて小町様お願いします」

 

「はいはーい!」

 

元気よく小町がご登場である。

 

「はいおに....あなた、ちょっとかがんでね?」

 

身長差が宇田川よりだいぶ大きいからなそっちの方が結びやすいのはわかるが.....

 

「流石に呼び方まで変える必要あるか?」

 

実の妹に実際にそういうこと言われるとなんかこんなにも変な感じなのか、いや可愛いしめっちゃその通りになりたくはあるんだが。

 

「あるよ!だってこれ嫁度勝負だよ。そしたら呼び方は1番大事でしょ!」

 

なんて言いつつもネクタイを締める手つきは宇田川ほどではないが十分なものではないだろうか。

 

「はいできたよ!」

 

小町もいつの間にこんなことを覚えたんだ?

親父のネクタイ結んでたことなんてないはずだしな.....

ま、まさか他の男に.....

だとしたらそいつ地の果てまで追い詰めて息の根を.....

 

「八幡だけ役得ではないか、これ?」

 

「まぁ確かに夜背中から刺されてもおかしくないかもな」

 

ちょっと葉山さん人が小町に言い寄ってくる男の処理方法考えてるときに爽やかな笑顔で怖いこと言わないでくれますか?

え?審査員席にそんな人いないよね?

 

「では続いて、瀬田様お願いします」

 

「私は争い事は苦手なのだが.....こころたちのためにも一肌脱ごうじゃないか!」

 

聞いてる分にはただのキザなセリフのはずなのにこんなにも様になってるのはなぜだろうか?

 

「それでは八幡失礼するよ」

 

瀬田はもう俺と同じくらいの身長がありそれに....なんか近くで見るとこいつ......

 

「おや、どうしたんだい?もしものことがあってはいけない、だから八幡どうか動かずにいてほしい」

 

か、かっこいい.....

 

「ふふ、まさか私が八幡のネクタイを結ぶ日が来るとはね.....儚い....」

 

いつもの意味不明なセリフさえもやたらとかっこよく聞こえる。

これはこいつのファンが多いのも.....

 

「さぁ、結び終わったよ」

 

さらに手際もいいなんて.....これは

 

「瀬田様、ありがとうございました」

 

「八幡先輩、薫さんにネクタイ結んでもらうなんて....羨ましすぎる.....」

 

上原がそんなことを言っているのが聞こえた瞬間俺は正気に帰る。

 

「あ、危なかった.....」

 

危うく何か新しい趣味に目覚めかかるところだった.....

この対決の空気に流されてか危うく俺がヒロインポジションに立つところだった.....

 

「なんだか小町、お兄ちゃんがすごい遠くに行っちゃいそうな気がしたんだけど.....」

 

「そんなわけないだろ、俺はいつも小町と一緒だぞ」

 

「気持ち悪いからやめて」

 

「シンプルに言われると傷つくなそれ....」

 

大ダメージで危うくまた気絶するところだったぞマジで。

 

「八幡も相変わらずだね〜」

 

「本当だよね〜」

 

おい、リサに日菜お前たちにはあんま言われたくないぞ。

 

「それでは続いて.....平塚さまお願いします」

 

「ふっ....ついに私の出番が来たか....」

 

だからなんでそんなにこの人はラスボスの風格を出してくるの?

なんかむしろ不安なんだけど.....

 

「それじゃあ比企谷、そこを動くなよ?」

 

あれ?本当にネクタイ結ばれるだけだよねオレ?

ついでになんか呪いとか解除されたりしないよね?

 

「あれ?意外と手つきが....」

 

「お前は私をなんだと思ってるんだ」

 

「すいません....」

 

こえーから威圧しないでください.....

 

「私とて一般的な女性に求められる程度の能力はあるんだ、準備として早めに覚えておいたからな.....」

 

後半悲しそうな声出さないで!

本当に誰か貰ってあげて!貰い手がいなきゃ俺が貰っちゃうから!

 

「それは関係なく昔から私のネクタイとか結んでくれましたもんね〜」

 

「それはお前が練習後に適当に結ぼうとしてたからだろう」

 

「い、いや〜そんなことありましたっけ?」

 

まりなさんからそんな少し意外なエピソードが飛び出しつつもネクタイは結ばれた。

 

「よし、これでいいだろう」

 

今のところ全員ネクタイ結び経験者だからか今のところ全員手つきがいい。

これはなかなか優劣をつけがたい.....

 

「平塚様、ありがとうございました。では続いて麻弥さまお願いします」

 

「じ、ジブンの番ですか....」

 

「あれならいいんだぞ、無理しなくて」

 

まぁ普通に考えても恥ずかしがっていい行為なのにさらに相手が俺だからな。

 

「いえ、彩さんたちのためにも頑張ります!」

 

お、おおすごいやる気.....

 

「それでは.....失礼します....」

 

そう言いつつ結び始めた大和だがこちらも手つきがいい。

 

「....慣れてるんだな」

 

「ま、まぁ演劇部として覚えておいたので....」

 

そう言えばこいつも演劇部だったな.....

手先も器用なようだし当然と言えば当然か.....

 

つかさ、今思ったんだけどこれ優劣今のところつかないぞ?

 

「えーとここはこうして....」

 

というか.....

 

「あの、ちょっと近くないか?」

 

さっきからちょっと顔の距離が.....

 

「え?あ!えっとす、すいません!」

 

途端に大和は顔を真っ赤にしてオレから離れる。

ちょうどネクタイを結び終わったタイミングだったようでオレの胸にはしっかりとネクタイが結ばれている。

 

「えー麻弥ちゃんいいな〜」

 

日菜は何に対しての発言なんだ.....

 

「....まさか麻弥ちゃんも....でもそんな様子は.....」

 

なぜか彩もこちらを心配気に見てるがなぜだろう?

 

「と、ともかくジブンの番はこれで終わりですね!」

 

まだ赤い顔をしている大和は誤魔化すように自分の番を終わらせた。

 

「大和様ありがとうございました、では続いて白金様お願いします」

 

「は、はい」

 

「りんりん〜緊張せずに頑張ってね〜」

 

「が、がんばるね.....」

 

始まる前にすでにだいぶ顔が赤い白金、ただでさえ人見知りそうなのにいきなり男にネクタイを結べというのはなかなかハードルが高いのだろう。

 

「そ、それでは....し、失礼します.....」

 

「その、なんだ、無理はしなくていいんだぞ?」

 

特に俺が相手なんて拷問に等しいのかもしれない。

 

「いえ....みんなに.....任されたことですし.....」

 

白金もかなり責任感が強いよな.....

 

「それに....八幡さんになら.....できると思いますから」

 

え?なにもしかしてここにも俺の天使がいたの?

めっちゃ今の顔とセリフ可愛かったんだけど?

 

「お、おう」

 

最近俺に天使が増えすぎてるな、もしかしてもうすぐ俺死ぬの?

 

「う、動かないでくださいね.....」

 

「ああ....」

 

「なんか、ヒッキーがデレデレしてる....」

 

「まったくだらしがないわね」

 

「まったくですね」

 

なにやら俺のバンドメンバーたちから冷たい目線が向けられてる気がするな.....

やっぱもうすぐ死ぬのかも.....

 

「え、えっと八幡さん.....できました.....」

 

「え?」

 

俺がそんなふうに意識を逸らしていたうちに白金はネクタイを結び終わったようだ。

これまた手際のいい.....

 

「あこちゃんのネクタイ.....よく結んであげてますから」

 

「ナチュラルに心読むのやめてくれない?」

 

「すいません.....つい」

 

つい、なんてレベルで人の心読めるの?

もしかして魔法使いだったりする?

それとあこはどんだけ人に結んでもらってんだよ

 

「それでは白金様ありがとうございました。それでは最後に牛込様お願いします」

 

「りみりん頑張って〜」

 

「う、うん!頑張ってくるね!」

 

りみもかなり緊張してるようだな。

あとなんというか....顔がかなり不安そうなのはなんでだ?

 

「あの、八幡君そのね、私ネクタイを結んだことあってなくて....その八幡君私に教えてくれないかな.....?」

 

ああ、やはり俺の天使は今日も可愛い、いや今日は特に可愛い.....,

でも.....

 

「俺も教えられるかは怪しいな.....自分で結んだこともほぼないしな.....」

 

最後に自分で結んだのは小学校の卒業式だろうか?

終わってから速攻帰って外した記憶がある、いや悲しすぎかよ。

 

「それでもいいから....お願い!」

 

「お、おう」

 

なんだろう、ずっと守ってあげたい.....

 

「えーとそこは確か.....」

 

「こ、こうかな?」

 

そんな風に俺は必死に思い出しながらりみに結び方を教える。

 

「.....少し近くないかしら?」

 

「まったくですね、ふしだらな.....」

 

「り、りみちゃん....手強いなぁ....」

 

「ふぇぇ.....八幡君....」

 

なぜかさっきよりもはるかに多い視線を感じるがどういうことだろうか?

 

 

「それでそこをこうすれば.....」

 

「で、できた〜!」

 

「よかったな」

 

「八幡君が教えてくれたおかげだよ!」

 

「なんだろう、今俺は比企谷を殴りたい」

 

「奇遇であるな、我もだ」

 

ふっ、哀れな奴らが何かをほざいてるがりみとの幸せな時間を過ごした俺にはノーダメージだぜ.....

 

「それでは牛込様ありがとうございました、八幡様も審査員席にお戻りください」

 

黒服の人の指示で俺とりみはそれぞれの席に戻る。

 

「それでは続いて投票に移りますが.....今回は審査員の方々に配慮して匿名投票とします」

 

ナイス配慮だな.....

なんとなくこれは誰に入れたかなんて知られたくなかったからな......

 

「ではこちらの投票用紙に記入を....」

 

まじでこの人たちが1番楽しんでないか?

なんて思いもするがとりあえず投票せねば.....

誰に投票するかなぁ....なんて思ったがそもそもお題が真面目に考えるだけ無駄な内容だからもう1番可愛かったやつでいいか.....

 

「それでは、結果を発表します」

 

黒服の人たちのその言葉に各バンドに緊張感が走る。

場合によってはここでもう勝負がついてしまうこともあるからな.....

 

「嫁度対決2回戦目の勝利チームは..... Poppin'Partyチームです!」

 

「やったぁ!」

 

「りみりんありがと〜!」

 

「か、香澄ちゃん急に抱きつかれるとびっくりしちゃうよ〜」

 

なんて風にポビパチームは大はしゃぎである。

 

「これであと1回勝てれば!」

 

「ステージは私たちのものだね!」

 

そういえばこの対決それがかかってるからみんな必死なんだったな.....

すっかり忘れてたわ。

 

「では、これで私たちの司会は終わらせていただきます。小町様、あとはお願いします」

 

「はいはーい任せてください!」

 

うわー、一気に不安になってきた......

 

「ひとまず各バンドのみなさんも相談などしたいと思うので一旦ここで10分間休憩してタイムとしますので相談するもよし、相手と健闘を称え合うのもよしで自由に過ごしてくださーい!」

 

すると各バンドは次に出すメンバーの相談を始めたようだ。

3回戦目か.....どうせまたロクでもないお題が来るのだろう.....

 

「はぁ......」

 

「お、比企谷ため息ついてどうした?一生分の幸運を使い果たしたことを悟ったか?」

 

「笑顔で勝手に人の幸運使い果たさせるな.....」

 

「だが、確かに八幡はここ数ヶ月分の運を使い切ったのは間違いないだろうな!」

 

まぁ、正直それは否めない。

 

「ねぇ戸塚さん、ハチ兄ってさキノ姉たちの視線に気付いてるのかな?」

 

「どうだろうね.....八幡はちょっと鈍感だから....」

 

「だよねぇ.....」

 

「あはは、比企谷君も大変そうだね.....」

 

何やら後ろでこそこそ話してるがなんとなく聞いたら傷つきそうなのでスルーすることにしよう。

ぼっちはスルーすることもされることもプロだからな......

 

「そういえば比企谷は誰に入れたんだ?」

 

「いやそれ言ったら匿名の意味ないだろ.....」

 

「男同士であるのだしないではないか」

 

材木座、お前は女子風呂で同級生の胸を揉みたがる変態女か。

いやこのツッコミはよくわからないな.....

 

「はぁ.....りみに入れた」

 

抵抗しても無駄なのはわかり切っている俺は素直に白状した。

 

「そうか.....実は俺もだ」

 

「じつは我も.....」

 

審査員の半分は投票先りみかよ.....

 

「まぁ、めっちゃ可愛かったしなぁ.....」

 

おや?なんだか頭の中の言葉が漏れてるぞ?

 

「比企谷が言うとストーカー感出るな」

 

「そうであるな」

 

「いや理不尽すぎだろ」

 

「だけど今ばかりは全面的に同意だ」

 

「うむ、この世にあそこまで可愛い生物は画面の中以外に存在しないからな!」

 

「いや画面の中はこの世ではないだろ.....」

 

だが、仕方ない、本当にしかたなーくりみの話に付き合ってやるとしよう。

こいつらが話したくてうずうずしてるから仕方なくだぞ?

 

そんなこんなで結局審査員席も休憩中盛り上がっているのだった.......




今回はここまでになります!
本当に更新遅れてすいませんでした!
これからも更新が不定期かつ遅れると思いますが見てくださると嬉しいです。

感想、評価など励みになりますのでよければお願いします。

それでは最後に次回予告してみましょう!


「今回は皆様おくつろぎのようですので私たちが次回予告を努めさせていただきます」

「次回は勝負も中盤の3回戦に突入していくようです」

「果たしてその対決内容とは?」

「誰がどのような嫁度を見せるのか?」

「次回、やはり俺がバンドを組むのはまちがっているは
「確実にこのクイズはずれている」です」

「お楽しみに」

(.....やっぱあの人たち絶対に楽しんでるな)


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第57話

今回も更新遅くなりすいません.....


最近あまりにガチャ運がなさすぎてちょっとやばいです()
それと!Roseliaの映画の情報が発表されましたね!
来年が楽しみです.....
なんて思ってたらバンドストーリー3章も始まりましたね〜
最初のアフグロもとても良かったです!
そしたら予想外のコラボでびっくりですけどハロハピのイメージぴったりですね〜

.....なんかいかに自分の更新が遅くなってしまってたかが分かりますね。
その代わりではありませんが今回の話はかなりのボリュームなので良ければお楽しみください


「さてそれでは皆さん!休憩はここまで!再び勝負の時間です!」

 

「お、もうそんな時間か」

 

りみの可愛さを語ってたら10分なんてすぐに終わってしまうな。

 

「そうだな、とりあえずこの話はまた後にでも」

 

思った以上に葉山も材木座もりみの魅力に気づいていたために想定の10倍は盛り上がってしまったな.....

 

「それでは全チームすでに相談は済んでると思いますので次の代表を発表してもらいます!それではアブアルチームはどなたでしょうか?」

 

「私たちは川崎さんでいくわ」

 

「....絶対負けない」

 

ほう、普段から弟や妹の世話をしている川崎ならかなり期待ができるのかもしれない。

しかしこの対決どんなお題がなるかわからないからなぁ......

 

「では続いてポピパチームさんは?」

 

「私たちは〜有咲でいくよ!」

 

「うーなんか変に緊張してきた....」

 

市ヶ谷か、実力は未知数だがどうなるのだろうか....?

 

「続いてアフグロチームさんは?」

 

「あたしたちはモカでいくよ」

 

「ふっふっふっ〜モカちゃんにお任せ〜」

 

普段ボケ倒してるせいで忘れがちだが実は青葉は基本スペックが高いからな。

案外どんな内容でもそつなくこなすかもしれない。

 

「続いてパスパレチームさんは?」

 

「私たちは千聖ちゃんだよ!」

 

「正直自信はないのだけど....頑張ってくるわね」

 

白鷺は芸能界でかなりいろんなことを経験してるだろうしこれまたどんなお題にも対応できそうだな。

 

「続いてハロハピチームさんは?」

 

「あたしたちは美咲よ!」

 

「....ほどほどに頑張ってきますか〜」

 

すでに3バカの相手で体力を消耗してるようだが大丈夫だろうか.....

だが奥沢も羊毛フェルトでいろんなものを作ったりしてるしそんな内容なら充分勝機はあるだろう。

 

「最後にspチームは?」

 

「また私が出よう」

 

相変わらずラスボスの風格がダダ漏れの平塚先生だがさっきの対決で意外と実力者であることが判明してるし、それ以前にこれ以上点を取らないとプライドを傷つけそうだからぜひ頑張ったもらいたい.....

 

「さてそれでは代表者も揃ったところで今回の対決の内容を決めましょう!それでは今回は....葉山さんお願いします!」

 

「俺が引くのか....」

 

なんでお前が緊張してんだ.....

 

「よし、これかな」

 

「それでは対決内容を発表してください!」

 

「えーと....『お嫁クイズ!こんなときどうする?』って書いてあるな」

 

「おーっと!ここに来て今対決の中でも難易度の高いお題だ〜!」

 

つかまずお嫁クイズってなんだよってツッコミは受理されるだろうか?

だけどクイズってお題はこのメンバーならぴったりかも知れないな.....

各バンドの真面目枠が揃ってる感じだからな.....

青葉?頭はいいからな、真面目かどうかは知らん。

 

「ではまず今回の対決のルールを説明します!この対決は様々なシチュエーションでどのような行動を取るのかを答えてもらいます!そして小町がすでにその問題に対する嫁度の高い回答を用意してあるのでその回答に最も近い方に1ポイントを差し上げます!全問題が終わったときに1番ポイントが多かったチームの勝利になります!」

 

「おいまて、それだと俺たちはいる意味ないんじゃないか?」

 

「まったくお兄ちゃんはせっかちだな〜まだ説明の途中なんだからしっかり聞いてて!」

 

「さいですか....」

 

最近小町の俺に対する対応する扱いがどんどん雑になってる気が.....

これが反抗期ってやつか?あとで戸塚かりみかあこに癒して貰おう.....

あれ?俺知らない間に天使増えすぎじゃね?

 

「では説明の続きですが審査員の方々にはそれぞれの問題に旦那さんの立場としてはどうして欲しいかを書いていただきます、そして小町的な正解の後にその答えを発表していただきその回答に最も高かったチームにも1ポイントが入ります!」

 

「一つ質問してもいいですか?」

 

とそこで紗夜が手を挙げる。

 

「はいなんでしょうか?」

 

「もし小町さんの回答と審査員の皆さんの回答が同じようなものだった場合一問で1チームが2ポイントを獲得することもあるということですか?」

 

「流石紗夜さん!鋭い指摘ですね〜もちろんその可能性もあります!なので負けているチームでも充分に後からの巻き返しが可能!そのようなルールなのです!」

 

そう考えるとよく考えられてる気がしなくもないな。

 

「そして実はもう一つルールが存在します!なんと、審査員の皆さんの回答と回答者の回答が一致した場合にはの嫁度が高いということとで一気に3ポイント獲得することができます!なおその判断は審査員の方に任せるので判定もおねがいします!」

 

おい、そこの責任は丸投げかよ。

 

「えーと僕からも質問いいかな?」

 

戸塚が手を挙げてるがそれすら可愛いとかもはや反則だろ、そんなん惚れてまうがな!

おっといかん、俺のキャラじゃなかったな。

 

「はいどうぞ!」

 

「僕たちの回答っていうのは相談して決めるんだよね?」

 

「はい!その通りです!」

 

「それだと意見が纏まらないときにはどうするのかな?」

 

「そうですね....その時にはくじ引きでもして代表の人の回答ということにしましょう!」

 

とことんまで責任は負いたくないらしいな......

 

「うん、わかったよありがとう小町ちゃん」

 

まぁ戸塚が可愛いからいいか。

 

「それではこれ以上質問がなければ対決を始めますので代表の方は回答者席にどうぞ!」

 

そして移動した後、川崎たち回答者は謎の昔のクイズで被ってたような帽子を被らされホワイトボードを持って待機状態だ。

 

「では第一問!掃除が終わった後お姑さんに文句を言われた.....こんな時どうする?それでは皆さん回答をどうぞ!」

 

いや1問目からリアルな問題だなおい、もう少し可愛げあるやつだと思ってたぞ。

 

「おい、これ別に俺たちの視点関係なくないか?」

 

「でもお姑さんって置き換えるの僕たちのお母さんってことだよね。それなら仲良くしてもらいたいなぁ....」

 

「その通りだな戸塚」

 

「ハチ兄変わり身が早い.....」

 

「それで回答はどうするんだ?」

 

「正直なところ我にはまったく正解がわからぬ.....」

 

「ボクもこういうのはよくわからないなぁ.....」

 

ユウトさん、なんとなく鈍そうだもんなぁ.....

もし奥さんと姑との間に対立あっても気付かなそうと言うかむしろ火に油を注ぎそうなタイプだ.....

 

「じゃあとりあえず戸塚に任せてもいいか?平和的に解決できるならそれが多分いいはずだしな」

 

「うん、自信はないけど考えてみるよ」

 

「実際正解はないんだし気楽にでいいんじゃないか?」

 

実際葉山の言う通り俺たちがどう答えたところで不正解などはないだろう。

俺が今思いついたのは「塩分高めの味噌汁を出す」だったしな.....

 

「それではみなさんの回答が出揃ったようなので回答を順番に聞いていきましょう!まずは沙希さんから回答をどうぞ!」

 

「面倒だからそんなことないって言って無視」

 

いきなりド直球の問題児きたなおい。

 

「多分私も無視しちゃいますね〜」

 

「一色さん、流石に無視は良くないわ。自分の掃除の方が正しいと完璧に相手認めさせるべきよ」

 

それも間違ってるわ。

 

「あたしは多分ごめんなさいしてもう一度やり直すな〜」

 

お前は将来マジで姑に虐められるなよ?

 

「では続いて有咲さん!」

 

「心を落ち着けてからもう一度やる」

 

よかったまともだ.....

 

「有咲ならきっと盆栽を見てからやり直すね」

 

「勝手に決めつけんな!」

 

「え?違ったの?」

 

「そ、そうだろうけどさ....」

 

あの花園さん、イチャイチャするのやめてもらえます?

 

「有咲はなんだかんだ言いながらもしっかりやり直しそうだよね〜」

 

「さ、沙綾までからかうなよ!」

 

「なんか私も想像できちゃった」

 

「有咲ってば素直じゃないんだから〜」

 

「う、うっせーな!」

 

相変わらずのやりとりだなぁ.....

 

「では続いてモカさん!」

 

「パンを渡して許してもらう〜」

 

真面目にやれ?

その賄賂は多分お前にしか効かないぞ?

 

「それでどうにかなるのはモカだけだって....」

 

美竹も同じことを考えたらしい。

 

「え〜パンで解決しない問題はないって〜」

 

だとしたらこの世界平和すぎだろ、俺のぼっちも解消するってのか?

 

「あ、でも八幡先輩に友達がいないからパンを渡すことさえできなかった〜」

 

「はい、お前のおかげでまた一つ俺が傷付いたからな」

 

心でも読んでるのかお前は。

あの流れでなんで俺がダメージ負うんだよ。

 

「...ふふっ....」

 

そして葉山、ツボってんじゃねーよ。

 

「では続いて千聖さん!」

 

「話し合いをして何がダメだったのかを確認する....って感じかしら?」

 

プロ意識高い白鷺らしい解答だ.....

だけど多分1番正しいことしてるんだよなぁ....

 

「さ、流石千聖ちゃん」

 

「自分の悪いところをしっかり聞くのは大事ですよね!」

 

「あたしなら別のるんってすること一緒に探しに行くのにな〜」

 

いやそれは何しにいくんだよ....

 

「常にやり良いものを目指すその姿勢.....ブシドーです!」

 

とりあえずブシドーって単語万能だな.....

 

「では続いて紗夜さんお答えをどうぞ!」

 

「白鷺さんと似たような解答ですが、どこがダメなのかをしっかりと確認する、です」

 

流石真面目、回答が似たようになるのは流石としか言いようがない。

でもこの問題の姑って多分嫌味で言ってるんだよなぁ.....

 

「りんりんならどうする?」

 

「わ、わたし?私なら....多分紗夜さんと同じことをするかな....」

 

「そもそも自分は掃除をしてないのに文句を言ってくるのはどういうことなのかしら?」

 

湊、ごもっともな意見だがそれを言ったら終わりなんだ.....

 

「あーでも確かに終わったと思ったら文句言われるのは嫌だよね〜」

 

リサの場合普通に文句の付け所もなさそうだが.....

 

「では続いてハロハピさんお願いします!」

 

「え、なんかあたしだけ違う感じなんだけど.....」

 

ほう、どういう意味だろうか。

 

「誰かに愚痴って乗り切る」

 

「やっべ、思いのほかリアルな回答だった」

 

「これは....たしかに今までとは違う答えだな」

 

葉山も思わず苦笑いしてるが奥沢は普段からあの3バカの相手で疲れてるだろうし今度愚痴を聞いてやるべきかもしれない......

 

「さてそれでは!みなさんの回答が出揃ったところでまずは小町が用意した回答を発表します!」

 

途端に会場内に緊張?が走る。

 

「正解は〜『実母に愚痴って明日から頑張る』です!」

 

うっわ〜まさのリアル路線かぁ....

ってことは.....

 

「ハロハピチームにまずは1ポイント!」

 

「え、本当に?」

 

「やったわね!」

 

「ああ、流石は美咲だ....儚い回答だったね」

 

 

正解者より周りのやつの方が喜んでるのはなんなんだよ....

てか奥沢もそのリアクションだと正解すると思わずにその回答書いてたの?

 

「ですが!まだ審査員席の回答からポイント獲得のチャンスがあります!それでは審査員席の回答を発表してください!」

 

「ぼ、僕がやるんだよね....『どこがダメなのか教えてもらいながら一緒に話をしながら掃除をやりなおす』かなぁ....」

 

なんて平和な世界.....

 

「おっと、これはパスパレチームとRoseliaチームにポイントでしょうか?」

 

「だが全く同じとは言い難いのではないか?」

 

「確かに戸塚さんは一緒にって答えてるし全く一緒ではないかも....」

 

いやケントも材木座も判定割とシビアだな.....

というかすでにこのクイズにまともな問題がある気がしなくなってきた......

 

この調子で大丈夫だろうか?

 

「さてさてそれでは第2問!『明日はクリスマス!でも旦那が甲斐性なしろくでなしで今月苦しいかも.....そんな状況ですが子供たちへのプレゼントはどうする?』」

 

「「「「「......」」」」」

 

え?なんでみんなこっち見てるの?

まるで俺がろくでもない男だと思われてるみたいじゃないか?

むしろ俺は専業主夫としてめちゃくちゃ支えるから甲斐性の塊のような人間のはずなんだが?

 

「あら、誰かさんにそっくりね」

 

「なんのことだ?」

 

さらに雪ノ下から唐突に言葉という刃物が飛んできたがそんなものもはや俺には効かんな!

 

「まぁ先輩って見るからにあれですもんね.....」

 

ちょっと一色さんまで刃物投げてこないでくれます?

流石に何本もは無理だよ?

 

「まぁヒッキーはちょっとね〜」

 

もう帰っていいか?

 

「さ、さて皆さんそろそろ回答をお手元のフリップにお願いします!」

 

小町のおかげでひとまず俺への非難の目は逸れたな.....

 

「さて、じゃあ俺たちもだれが回答するか考えないとな」

 

「さっきは戸塚が考えてくれたわけだし.....今度は違うやつのほうがいいだろ」

 

「だがこのお題、男である我らには非常に答えづらいものであるからなぁ....」

 

「確かに.....」

 

「....逆に比企谷が答えるってのはどうだ?」

 

「おい葉山、逆にってなんだ逆にって」

 

さっきも言ったが俺は甲斐性という言葉が擬人化したみたいな存在だぞ?

ちなみに異論は認めん。

 

「まぁオレはそれでいいと思うよ、ハチ兄の答え面白そうだし」

 

あらやだ、いつのまにこの子ったら俺をおもちゃ扱いするようになったのかしら?

 

「うーん他に答えられる人も居いなさそうだし、八幡お願いしてもいいかな?」

 

「任せろ戸塚、俺が完璧な回答をしてやる」

 

「変わり身の速さなら我ですらたやすく凌駕してくるのだな.....」

 

いやお前も相当変わり身速いだろうが、ライブ中とかもはや別人だろ。

しかし、実は俺は問題が出された瞬間からある答えがすでに思いついてるからな、楽勝だな.....

 

「さて、それでは全チーム回答が済んだようなので順番に回答を発表してもらいましょー!それではまずは沙希さん!」

 

「なにか手作りのプレゼントを渡す」

 

.....あれ?おかしいな、回答がまともかつ非常に女子力の高いものになっているぞ?

さっきの回答をしたやつとは同一人物だと思えん。

 

「あー確かに手先器用だもんねー」

 

「え?沙希さんって料理とかも普通にできるのに手先まで器用なんですか?なんですかそれ見た目に反して女子力高すぎませんか?」

 

いや一色お前本人に聞こえてるからな?見た目に反してとか失礼だからな?俺も思ったけど。

川崎だって多分怒ってるぞ全く....

 

「....」

 

いやなんか傷ついてない?

ごめん、もしかして川崎って普通に可愛い系のキャラだったりする?

 

「ではどんどん回答を見ていきましょう!次は有咲さん!」

 

「わ、私は....『とりあえず親族に頼る』かな....」

 

「あー確かにおじいちゃんとかすっごい私たちに甘いもんね〜」

 

おい戸山、全員が全員甘やかされてるわけじゃないからな?

ちなみに俺の祖父たちは小町にはめちゃくちゃ甘い。

俺はどうなのかって?なんの話だ?

 

「私もおじいちゃん優しいから大好きだよ」

 

りみにあんなこと言ってもらえるおじいちゃん羨ましすぎる.....

俺もりみみたいな孫がいたら絶対甘やかす自信がある。

 

「りみりんのおじいちゃん、会ってみたいな」

 

「私もおたえちゃんのおじいちゃんにも会ってみたいかも」

 

そんな風に知らぬ間に各家庭のおじいちゃんの話に移っていってしまうポピパ、本当にみんな家族思いなんだな.....

まぁ俺も小町にかける愛情なら負けないけどな!

.....なにを俺は張り合ってるんだろうか

 

「さーてそれでは次の回答にいきましょう!続いてはモカさん!」

 

「ふっふー今度は自信ありだよ〜」

 

「やっぱさっきはふざけてたんじゃん!」

 

「え〜そんなことないよ〜」

 

上原渾身のツッコミが響き渡るがその中でも相変わらずのテンションの青葉はどんな精神をしてるんだか.....

 

「とにかくはやく回答しちゃいなよ」

 

美竹が流れを戻してくれたな。

全くこいつらはすぐコントを始めるんだから困る。

 

「そうだった〜モカちゃんの答えは『パンを買ってきてあげる』だよ〜」

 

 

「「「「.....」」」」

 

おや、なんか急にアフグロチームが静まりかえったぞ?

 

「モ〜カ〜!!!真面目にやってってば〜!!!」

 

先ほど以上の声での上原のツッコミ、これはツッコミで世界をとれるな.....

 

「え〜パンは世界を救うんだよ〜」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

まだツッコミ続ける上原に思わず同情したくなるな.....

 

「あはは、相変わらずアフグロの子たちは賑やかだね〜」

 

そして純粋に楽しんでるユウトさんもすげぇ.....

 

「では続いて千聖さんお願いします!」

 

「あまり自信はないのだけど.....『子どもにはどうにか説明して納得してもらう』かしら」

 

まぁこんな問題まず考える必要ないもんな....

小町のやつどんな目的でこんな問題を出したんだか.....

 

「でも小さい子はすごい落ち込んじゃいそうだよね....」

 

「確かに子供からしたらクリスマスのプレゼントは1年に1度の大切なものですもんね」

 

「あたしなら絶対に納得しないな〜」

 

「あなたはよくわからないものばかり頼んでいたせいできっとプレゼントを用意する側も苦労したでしょうね」

 

「えー普通だと思うけどな〜」

 

「あれは絶対に普通じゃないわ」

 

一体何頼んでたんだよ.....

 

「でもあたしはおねーちゃんと過ごせるだけで幸せだよ?」

 

「まったくすぐそう調子のいいことを....」

 

なんて言いながら別に前のように険悪な雰囲気はない分かなり関係は改善されてるっぽいな。

というか紗夜むしろ喜んでないか?

 

「さてさてそれではおふたりの微笑ましい会話はこれくらいにしてもらってそのまま紗夜さんの回答をお聞きしましょう!」

 

「改めて本当に凄いお題ですね....私の回答は『安くて子供が喜びそうなものを探してみる』でしょうか。本当は夫を更生させるべきなのでしょうが.....」

 

回答はともかくそのあとの考えがいかにも紗夜らしいな.....

でも.....

 

「そもそも紗夜が結婚するような人は元から真面目そうだけどね〜」

 

そう、それなんだよな。

紗夜が俺みたいなダメ人間と結婚するのが想像できないんだよな。

 

「そ、それは当然....そうでなくては困りますから」

 

なんかこっちを一瞬見た気がするが気のせいか?

 

「なるほどね.....紗夜も可愛いとこあるじゃん」

 

なぜかリサは何かを納得したような顔をしているが俺には何もわからなかったぞ。

 

「こ、この話はもういいでしょう、次の人に行ってください」

 

「ふふふ先ほどとは違う微笑ましさがあって小町的にとても聞き込みたいのは山々ですが....」

 

そこで謎に小町はこちらをニヤニヤしながら見てくるが本当に今日のあいつテンションどうしちゃったの?

 

「ここはぐっと堪えて後回しにします!と、言うことで続いて美咲さんお答えをどうぞ!」

 

「この流れでなんか答えにくいんだけど.....『おじいちゃんおばぁちゃんに頼る』かな」

 

「そう言えばはぐみ前にじいちゃんたちからプレゼントもらったことある!」

 

「あら、それは素敵ね!何をもらったの?」

 

「えーとねソフトボールのグローブだよ!嬉しかったから今でも大切に使ってるよ!」

 

「よかったね、はぐみちゃん」

 

「ああそのグローブを使って練習に励むはぐみの姿がすぐに想像できるよ」

 

なんか普通にほのぼのするエピソードだな、さっきの戸山とは大違いだな。

 

「さてそれでは続いて平塚先生の回答は〜?」

 

「ふっ、これはもらったな!『名作アニメ全巻セット』だ!」

 

いやそんなピンポイントな回答ある?

 

「静さん、ちょっとそれは....」

 

「なんだまりな、お前も好きだっただろ?」

 

「いや、まぁそうなんですけど.....この問題でそれは.....」

 

「何か文句でも?」

 

「.....なんでもないです」

 

今あの人思いっきり圧を出していたな.....

普段かけられてる俺にはわかる.....

こういう時には見たかったことにしよう.....

 

「さてそれでは全員の答えが揃ったのでまずは小町が用意した正解から発表します!今回の答えは〜『祖父母に頼る!」です!」

 

てことは....

 

「ポピパチームとハロハピチームにそれぞれ1ポイントです!」

 

今ので確信したけどこのクイズ完全にリアル路線だな.....

 

「美咲すごいわ!2問続けて正解よ!」

 

「あたしが1番びっくりしてるんだけど.....」

 

「みーくんその調子で次も頑張れ!」

 

ハロハピは連続正解でかなり勢いに乗ってるな....

 

「有咲も正解すごい!」

 

「た、たまたまだよ」

 

「有咲ナイス!」

 

同じくポイントを獲得したポピパもみんなではしゃいでいる。

 

「さて、それでは続いて審査員の人が考える正解を発表してもらいましょう!」

 

そういえばそんなのもあったな、てか今回考えたのは俺なんだが。

 

「今回の回答はどなたが考えたんですか?」

 

「八幡だよ!」

 

戸塚が笑顔でそう俺の名前を呼んでくれるだけで心が浄化される......

 

「え、本当に大丈夫、おにいちゃん?」

 

「少しはお兄ちゃんのこと信じて?」

 

全く最近の小町は兄に対して冷たくない?

もうちょっと昔を思い返してもらいたいもんだ.....

 

「とりあえずじゃあ回答どぞー」

 

棒読みをもうちょっと隠そうとしろ?

興味なさすぎるだろ。

 

「まったく.....俺の答えだが.....『悪い子のところにはサンタさんは来ないと説明する』だ」

 

「「「「「「「「「.........」」」」」」」」」 

 

あれ?誰も反応してくれないぞ?

そうか、あまりに俺の答えの妥当性に声も出ないのか.....

全く、これくらいの回答も出てこないなんてまだまだだなあいつらも。

 

「えーそれじゃあ次の問題は....」

 

「ちょっとまて、無視は流石に酷くね?」

 

「なんでそうしたか自分の胸に聞いてみたら?」

 

「はて、何も聞こえないな」

 

「ハチ兄、さすがにそれはちょっと.....」

 

あれ?もしかしてケントも引いてたりする?

 

「なんかわからないけど少し自信が出てきたわ.....」

 

市ヶ谷まで!?

 

「.....流石のモカちゃんも反応できなかったな〜」

 

あれ?味方はいないのかな?

 

「私はノーコメントにしておこうかしら」

 

心なしか白鷺の目線も冷たいような?

 

「.....流石にそれでは子どもがかわいそうです」

 

紗夜も呆れてる?

 

「まさかあたし以上に凄い人がいるとは.....」

 

あーあれかうん、俺は大不正解したみたいだな、死にたい。

 

「さて、もうこれ以上触れることもないだろう、次の問題へ行こうか」

 

平塚先生もやれやれといったテンションかよ.....

 

「そ、それでは!気を取り直して次の問題いってみましょう!....おっと次の問題はなんと最終問題です!」

 

時間も押してるせいか3問目にして最終問題のようだ。

ここまでかなりリアルな問題が続いてるが最終問題は果たしてどんな問題が飛び出して来るのか......

 

「では第3問!『最近主人の帰りが遅い、もしかして浮気?こんな時どうする?』」

 

.まさかの浮気問題出してきやがった......

これ俺たち回答用意すんの?無理だよ?

 

「さてそれではみなさんフリップに回答をどうぞ!」

 

「....どうする、流石にこの問題は」

 

「答えにくい問題であるな.....」

 

どうやら葉山と材木座も俺と同じことを考えていたようだ。

 

「....それで誰が答えるのハチ兄」

 

「どうするか.....葉山、なんとかならないか?」

 

「こんな問題を人任せにしないでほしいんだが.....というかこれ俺たちはどの視点での答えを考えればいいんだ?」

 

「どういうこと....?」

 

首を傾げる戸塚もなんで可愛いんだ......

あと10時間は見てられる......

 

「確かに言われてみればどっちの立場に立てばいいのかわからないよね」

 

ユウトさんは話を聞いて気づいたらしい。

最近知って驚いたのだがユウトさんはかなり頭が良く誰もが知ってるような大学を卒業していた。

優しくて頭も良くてでマジで完璧すぎるな、やっぱこの世の中平等ではないな。

オレなんて捻くれてて目が腐ってて友達いなくて勉強も数学とか目も当てられなくて.....

あれ?涙が出そうだ.....

 

「小町に聞いてみるか.....小町〜質問があるんだが」

 

「なに?お兄ちゃん?」

 

「この質問俺たちはどういう感じで答えを出せばいいんだ?」

 

「あーお兄ちゃんたちもその質問なのね.....」

 

「俺たち以外も同じ質問されたのか?」

 

「うん、全チームから」

 

「あえてつっこまずにスルーするけどそれでなんて説明したんだ?」

 

「ん〜とね『自分がこのシチュエーションになった時にどうされたら嬉しいかとかでいいんじゃないですかね?』って」

 

「いやなんでその辺適当なんだよ」

 

「んーわかんない!」

 

クソなんだこいつ本当なら殴りたいくらいイラつくはずなのに可愛さがそれを全て打ち消してしまっている......

 

「質問他にはないんだよね?じゃあ小町は行くね〜」

 

「ああ」

 

てかまて、この質問に答える場合は俺たちの誰かは自分がこのシチュエーションに陥ったことを想定しなきゃいせないのか?

しかもそれを周りの人は知っててどう対応して欲しいのかそれ控えめに言って地獄すぎないか?

 

「みんな......この質問にみんな答えたくないよな....?」

 

「当たり前だ」

 

「うむ」

 

「僕もこの問題はちょっと.....」

 

「オレも嫌だ」

 

「ボクも遠慮したいかな......」

 

葉山の言葉を皆肯定する。

この質問に下手な回答をしたらこの場にいる女子全員から冷めた目つきで見られることは確実なのだから当たり前の反応だろう。

 

「ならここはもう恨みっこなしで......勝負をしようじゃないか」

 

「まぁ、そうなるよな」

 

「ふっふっふ、我はこの時のために己の力を磨き続けたのである!」

 

「みんなすごいやる気.....でも僕だって負けないよ!」

 

「オレも.....この勝負だけは勝つ」

 

「ボクも今回は手加減なしだ、さぁ始めようか」

 

「おぉーと何故か審査員席の方がバチバチしております!これはまさかそれだけ質問にみんな答えたいと言うことなのか〜!」

 

テンションの上がっている小町には悪いが真相はその逆、俺たちは多分この世で1番醜い押し付け合いをしている。

 

「.....あんな真剣な顔をしている皆さんは初めて見ました」

 

「だね〜あたしもケントがあんな真剣な顔してるのは初めて見たかも」

 

「八幡もすごいやる気ね」

 

「材木座さんもすっごいやる気.....あこにはすごい闇のアレが...その....ババーン!ってなってるのがわかるよ」

 

「葉山さんにユウトさんも.....すごいやる気.....」

 

ああ、Roseliaまでも勘違いし出しているがそんなことはどうでもいいんだ.....

 

「ゆきのんはどう思う?」

 

「そうね、比企谷君がこういう時にああいう顔をしてる時には大抵くだらないことをしてるね」

 

「ですね〜この問題誰が答えるかくらいのもんじゃないですかね?」

 

「そんなんにあいつらはあんな真面目になってるの......」

 

正反対にアブアル+川崎は呆れ果てたるようだが今はそんなことを気にしてる場合ではない。

この勝負だけは.....負けられない。

そう.....俺たちの運命を決める.....このじゃんけんだけは!

 

*****

 

「.....何故だ」

 

「答えは簡単である.....それが八幡、お前の運命だっただけだ」

 

結果は....一瞬で着いた。

いざ蓋を開けると俺が出したのはチョキ、対して周りの全員が出していたのは.....グーだった.....

 

「じゃあ八幡よろしくね!」

 

今だけは戸塚であっても恨めしいぜ.....

 

「はぁ....こればかりは本当に下手なこと書けないからな....」

 

そう何故ここまで嫌がるかと言うとこの回答の圧倒的答えにくさとリスクが大きすぎるということだ。

無難な回答をしてはみんなと回答が被りまくってしまうしかといって下手なことを書けば男としては避けたい状況が一瞬で出来上がってしまう.....

まさか最後にこんな難問があったとは.....

 

「そういえば今それぞれ何ポイント獲得してるんだっけ?」

 

「えーと確かハロハピチームが2ポイントでポピパ、パスパレ、Roseliaチームが1ポイントずつじゃなかったかな?」

 

「だけどハチ兄と同じ回答をすれば3ポイント入るからまだわからないね」

 

「八幡君の回答は責任重大というわけだ」

 

くそ、全員回答するのを回避したせいで気楽に会話しやがって.....

 

「にしても八幡も苦労する役割を押し付けられたものだな」

 

「材木座、黙れ」

 

この野郎完全に今のは煽りだっただろ。

 

「そうだな、だけどじゃんけんだから仕方ないよなぁ?」

 

葉山まで.....こいつらだけには絶対どっかでやり返すからな.....

だがこんなところでイライラしてたら本当にいい回答が思い浮かばなくなってしまう、そうならないようここは我慢だ.....

やだ八幡たらいつのまにこんなに大人になったのかしら?

 

「.....」

 

ダメだなんも思いつかない.....

こうなったら被ることを気にせずに無難な回答を書くしかないか......

 

「さてそれではみなさんそろそろ回答が出揃ったようなので早速聞いていきましょう!」

 

さて、俺もギリギリで書いたうは用意できたし....

あとはどうなることやら.....

 

「それではまずは沙希さんの回答を見てみましょう!」

 

「正直この問題は本当によくわからなったんだけど.....『相手に自分のことをどう思ってるか遠回しに聞いてみる』....とか?」

 

......本当は感想を言いたいところなのだがここはノーコメントだ。

おっと、今考えてることはそれ以上考えないほうがいい。

まったく察しのいいガキは嫌いだよ。

いやほんとマジで俺も予想外なんだって。

 

「沙希さん....やっぱり意外と可愛い考えをしてる気が.....」

 

「だね〜あたしももっと仲良くなれる気がしてきた!」

 

お前ら2人は割と失礼なことを言ってる自覚をしろ?

 

「.....まぁ聞きたいことはいくつかあるけれど野暮なことなのでしょうしやめておくわ」

 

おそらく本来なら俺も思ってたことと同じことを思ってるのであろう雪ノ下は空気を読んだらしい。

 

「沙希さん〜やっぱり可愛いです!」

 

あ、小町がついに我慢しきれず抱きつきにいった。

 

「ちょ、人の前だしやめてって」

 

そう言いながらも顔を赤くしてどかす気はないらしいから多分いつもあんな風にされてるんだろうな。

 

「は、はやく次のチームにいきなよ」

 

「はっ!ついうっかり沙希さんが可愛すぎて.....それでは気を取り直して続いて有咲さんお願いします!」

 

「私も自信ないんだよなぁ.....『きちんと話し合ってみる」」

 

普通はそんな答えになるよなぁ.....

 

「有咲と話し合い....いっぱい怒られるんだろうなぁ.....」

 

「それはお前限定の話だろ!」

 

「えーだって有咲何か言うとすぐ私を怒るんだもん」

 

「お前が変なことばっかするからだろ!」

 

「まぁまぁ2人とも落ち着いて」

 

「今日も有咲と香澄は仲良し」

 

「あはは....」

 

市ヶ谷もよく毎度ツッコンでられるな.....

俺なら多分どこかで心を閉ざして関わらないように生きだすな。

 

「それでは続いてモカさん!回答をどうぞ!」

 

「ふっふっふ〜今回はモカちゃん本気出しちゃったよ〜」

 

「最初から本気出してよ〜!!」

 

ここにも過労死しそうな奴がいた.....

 

「まぁまぁそう怒らないでひーちゃん、今回は本当に真面目だから〜」

 

「そうやって毎回ふざけるから信用がないの!」

 

「まぁひまりとりあえず聞いてみるだけ聞いてみようよ」

 

美竹、その言葉は何も青葉を信用してない気がする。

 

「まぁ見てなって〜『取り調べで自白させる』に決まりでしょ〜」

 

思ってたよりはまともだけど、多分まだ先があるなこれ。

 

「どんな感じで取り調べるつもりなんだ?」

 

「よく聞いてくれたね〜。こんな感じだよ〜」

 

途端に青葉が芝居がかった雰囲気になる。

 

「もしかして浮気してたりしないだろうな〜、刑を重くされたくなければ自白するんだ〜」

 

.....緊張感はゼロを通り越してマイナスだな。

 

「まだ自白する気にはならんのかね、腹が減っただろうこのメロンパンを食べるんだな〜。なに自白する気になったのか?よし話せ〜。こんな感じにうまく行くこと間違いなしだよ〜」

 

「やっぱふざけてるじゃん!」

 

「よよよ〜あたしは真面目にやったのにひーちゃんがふざけてるって言ってくる〜」

 

「あ、あははモカちゃんはやっぱりパンが好きだね....」

 

「つぐ、無理にフォローしなくていいと思う」

 

「まさか3問ともパンを使った回答とはな....」

 

流石のアフグロの4人も呆れ気味だが青葉が満足気なのでまぁきっとこれで良かったはず....だよな?

 

「そ、それでは次に行きましょう!千聖さんよろしくお願いします!」

 

「このくだりのあとだと少し回答しにくいのだけど....『浮気していないか調査する』かしら」

 

あえてどんなやり方をするのかは聞かないでおこう.....

 

「ねぇねぇ千聖ちゃん、どんな風に調査するの?」

 

こいつには恐怖心とかいうのは本当にないのだろうか?

 

「き、気になるけどなんかちょっと聞なのが怖いかも.....」

 

「あら別にそんな怖いことはしないわよ、ただちょっとそういうのを仕事にしてる方に調べてもらったりするだけよ」

 

笑顔で言いきってるけど一般的には専門の人間に頼んでる時点で相当怖いと思うんだが.....

 

「.....これ以上は聞かない方がいいですね」

 

「ですがどのような方々に調査を頼むのでしょうか?もしかして忍者なのでは!」

 

「いえ、この場合は探偵などの職業の方ではないかと」

 

「へー探偵って事件を解決してるだけかと思ってたよ〜」

 

「実際はそんな仕事ではなくかなり地味な仕事ばかりなようですね」

 

「へーやっぱり麻弥ちゃんは物知りだね」

 

どうしてあんな怖い回答からこんな緩い雰囲気作れるの?

最近思ったけど俺の周りの奴らの雰囲気形成作用(命名したのは俺)が強すぎないか?

 

「さてそれでは次にいきましょう!続いて紗夜さんお願いします!」

 

「浮気のことをあらかじめ考えるというのも変な気分なのですが......『ひとまず携帯電話を調べる』と言ったところでしょうか」

 

無難なんだけどその言い方だと無断で調べるって確率がない?

もし勝手にやったらそれもう犯罪の域だよ?

 

「そういえばあこ前にTVでそんなシーン見たことある!」

 

「あーあたしも見たことあるな〜。その後に『このメールはなに!』ってなるのがお約束だよね〜」

 

「そうなの?私にはよくわからないわ」

 

「.....紗夜さんが.....勝手にメールを見るところは想像できませんね....」

 

まぁそうだよな、あの真面目な紗夜が人の電話を勝手に見るとは思えないよな。

 

「そうですね、わたしも勝手に見るような真似はしたくありませんが.....浮気をされてるかもしれないなら....分かりませんが」

 

こ、こえぇ....

今なにも目が笑ってなかったぞ.....

ともかく紗夜が結婚する相手には気をつけてもらいたいもんだ.....

 

「....ですがきっとそんなことにはならないと思ってます」

 

なんでそんな確信してるのかは全くわからないが一応同じ男として多少は女子に誠実に生きた方が良さそうだな.....

 

「ではでは続いて美咲さん回答をどうぞ!」

 

「えーと『相手を信じる』かな.....本当に相手のことが大事ならそれが1番じゃないかなって」

 

なんで今まであんなリアルな回答書けてたのに急にこんな乙女チックな回答になったのかは置いておくとしてまぁ確かにそうできればいいんだろうけどこのクイズにおいてはおそらく正解はできないだろう.....

 

「ところではぐみ、浮気ってなんなのかしら?」

 

「えーとねはぐみ前にドラマで見たことがあるんだけど....なんかね好きな人がいるのに別の人のことを好きになっちゃうのが浮気なんだって!」

 

「あら?それってとっても素敵なことじゃないかしらみんなが浮気をすれば世界中がきっと笑顔になるわ!」

 

やっべー思ってた以上に頭の中がワンダーランドだわあいつ、浮気であんなこと考えれるのマジであいつだけだろ。

 

「ふむ、確かにそう捉えることができれば浮気、というものも儚いものかもしれないね」

 

いやそれは絶対にない。

 

「花音もそう思わない?」

 

「え、えーとね私は....浮気されたらやっぱり悲しいかな....やっぱり自分が好きな人が他の人のことを好きなっちゃったら....私のこと忘れちゃってみたいな気がして.....」

 

ぐ、ぐはぁ....まさか唐突にとんでもない可愛い攻撃が来るとは.....

これではまた俺の天使が1人増えてしまうな、いやむしろそれは素晴らしいことなのでは?

ともかく俺はもう浮気なんてしないと決めたぞ、いやしたこともないっていうか彼女がいたことすらないんだけど。

あれ、なんか両眼から海水が.....

 

「さてさて、それでは花音さんの可愛らしい姿も見れたことですし次の回答に移りましょう!平塚先生どうぞ!」

 

なぜだか、分からないが回答が聞く前に予想がつくんだが.....

 

「鉄拳制裁」

 

「まだ無実かもしれないのに!?」

 

やっぱりか.....

そして流石はまりなさん、ツッコミを入れるまでの速度がとてつもなかった。

 

「何を言ってるんだ、こっちは浮気されたかもしれないという不安を感じさせられたんだ。それだけで理由は十分だろう」

 

この人と結婚するのハードル高そうだなぁ.....

そんなんだから貰い手がいな.....

 

「.....」

 

こえぇ!あの人超睨んでくるんだけど!てかなんで声に出してないのにわかるんだよ!

 

「比企谷....なんだか寒気が止まらないんだが....」

 

「うむ....ここまでの恐怖を感じたのは以前対峙した幻の剣豪と会い見えた時以来なので.....」

 

「俺に言うな、どうにもできん」

 

原因俺だけど。

 

「さ、さてそれでは正解発表といきましょう!運命の3問目正解は〜....」

 

「「「「「「「「「「.....」」」」」」」」」」

 

小町がわざと焦らすので謎の緊張感が走る。

果たしてどうなることか.....

 

「『信じる』です!この回答小町的にポイント高い!」

 

「.....てことは?」

 

「ハロハピチームなんと3問連続で正解!」

 

「やったわね!美咲!」

 

「これではぐみたちが1番だね!」

 

「あ、あたしが1番驚いてるんだけど.....」

 

そりゃこんな難問で全部正解したら誰でもビビる。

 

「ですが!まだ審査員の回答が残っているのでまだ勝負は分かりません!それでは今回の回答者はどなたでしょうか?」

 

「俺だ」

 

「本当に大丈夫?なんでまたごみぃちゃんなの?」

 

なんでもなにもじゃんけんの結果なのだが.....

 

「とにかく回答は一応聞いておくからね、それではどうぞ!」

 

兄の信用が今日だけでかなりマイナスになってる気がする.....

 

「『相手に間接的に自分のことをどう思ってるか聞いてみる』だ」

 

さっき川崎の回答を聞いた時俺がノーコメントを貫いた理由は.....

 

「なんと!アブアル、ラビワン合同チーム審査員の回答を見事に的中!3ポイント獲得です!」

 

いきなり回答が被ってしまったからだ......

 

「お兄ちゃんにしてはまともな回答だね」

 

「お前は兄をなんだと思ってるんだ....」

 

「でも確かに比企谷君らしくはないわね、大方回答に困って適当に当たりにくいものを書いたといつところかしら」

 

「お前もエスパーかなんかなのか?」

 

「あら?あなたみたいな捻くれた思考は逆に読みやすいだけよ」

 

「お前もそれなりに捻くれてるだろ.....」

 

まぁ俺が捻くれてるのは認めざるを得ない。

 

「それでは最終結果を発表します!まずアブアル、ラビワン合同チーム3ポイント!ポピパチーム、1ポイント!アフグロチーム0ポイント!パスパレチーム1ポイント!Roseliaチーム1ポイント!ハロハピチーム3ポイント!そしてSPチーム0ポイント!ということで勝者は〜.....アブアル、ラビワン合同チームと、ハロハピチームです!」

 

最終的に1位が2チームか、これでアフグロ、Roseliaチーム以外が1ポイントずつで並んでることになるな。

あと2勝負はどんな結果になるのか....。

 

「それではまたここで一度休憩の時間にしようと思います!10分後にまた集まってください!」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

「今回もなかなか見応えある勝負だったな」

 

「そうだね、僕も見てて楽しいよ」

 

「うむ、我も思いの外普通に楽しめてるな」

 

「八幡君はどうかな?」

 

「俺ですか....?まぁ思ってたより退屈はしてないですね」

 

「相変わらず素直じゃないなぁ」

 

「まったくである、八幡はおそらく結婚したら相手を苦労させるであるな」

 

「うっせ、つかお前が言うな!」

 

「我はそもそも相手が見つかるわけがないからな!そのようなこと考える必要もな.....ううう」

 

「悲しくなるならそう言うことするのやめよ?」

 

まぁだけど確かに思ってたより楽しいのは確かだな......

あと2勝負もなんだかんだ楽しみにしながら俺は休憩時間を過ごすのだった......




今回はここまでになります!
書いてたら知らない間にすごい量になっちゃいました....
それとお知らせですがおそらく3月ごろになるまでリアルの都合が合わないことも多くほとんど更新できないと思います。
なので気長に待ってくださるとありがたいです!
と、言いつつ次回は一度番外編を入れます。
この話は頑張ってクリスマスごろには投稿できるようにします(約束はできませんが)のでお待ちしててください!

番外編の内容は.....前もやったもしもの未来の予定です!


追記、たまに活動報告とかでどんな話が見てみたいかとかのリクエストとったりするつもりなので良ければたまーに活動報告を確認していただけると嬉しいです


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番外編8

メリークリスマス!(のあたりで投稿できると信じています)
今回は以前もやったもしもの未来を描いてみました!
時期に合わせてクリスマスのお話を何本か書いてみました!
なお甘々成分多めで書きましたのでキャラ崩壊しておりますが気にならないという方はどうぞお楽しみください。



「おっ、もうすぐ休憩が終わるな」

 

「そうだね、4回戦も楽しみだ」

 

「あれ?八幡寝ちゃってるのかな?」

 

「そうであるな、起こすか?」

 

「まだ少し時間あるしもう少し寝ててもいいんじゃない?.....ハチ兄なんか、笑ってるし」

 

「まったく、どんな夢を見てるんだか.....」

 

*****

 

 

「....きて...だ...い、おき....くだ...さい」

 

心地よいまどろみの中急に誰かに起こされている。

....まったく、誰だよ気持ちよく寝てるのに.....

 

「起きてください、八幡さん」

 

「....あと....5時間....」

 

「5分ならともかくそんな時間は待てません、早く起きてください」

 

「だってよ....こんなにも寒いと....布団から出たくなくなるだろ?」

 

「確かに寒いですがここは部屋の中でしょう.....」

 

バレたか、ちゃんと暖房を入れているので寒いどころかめちゃくちゃ快適である。

 

「はぁ....わかったよ。紗夜」

 

そうしてようやく抵抗を諦めた俺は起き上がり起こしにきた人間の....紗夜の方を見る。

俺と紗夜は高校3年生の冬、なんやかんやあって付き合い始め今は互いに大学生となりお互いの大学が近いこともあり3年生になった頃に同棲を始めた。

同棲を始めて早くも半年以上が経ってるわけだが.....

 

「最初から素直に起きてください」

 

「そうだな、紗夜が目覚めのキスでもしてくれたらすぐ起きれるぞ」

 

「そ、そんなこと....できるわけ.....」

 

「いやなのか?」

 

「そ、そんなことはないのですが....」

 

やばい、俺の彼女が朝から可愛すぎる。

と、飽きるどころか次々に新しい一面を知ることができますます紗夜への想いは増すばかりだ。

昔はバカップルには絶対にならないと思っていたが今は行く先々でバカップル扱いである。

世の中何があるかわからないもんだ。

 

「いやなのか?」

 

そんなことを思いながら俺は言葉を繰り返す。

 

「いやでは....ないです」

 

「ならよかった」

 

「またからかっていますね....?」

 

そう拗ねたような表情を浮かべるのもまたなんとも可愛いものなのだがこれ以上は本当に機嫌を損ねかねないのでこの辺にしておくか。

 

「で、今日はいつにも増して起こすのが早いな」

 

基本毎日紗夜に起こしてもらってるのだが現在の時刻は朝の7時前、休みの日はいつもあと30分は後に起こしに来ることが多かったが.....

 

「それはだって.....クリスマスですし」

 

「ああ、なるほど....」

 

つまりきっと紗夜はこう言いたいのだろう。

クリスマスだし、デートがしたいと。

 

「ちょっと待っててくれ、俺も準備をするから」

 

「はい、ですが慌てる必要はありませんからね?」

 

先読みして返事をしてしまったがどうやら正解のようだ。

全く、俺の返事を聞いた途端の笑顔は反則だろ。

 

「いや、俺も....お前と出かけるの楽しみだし」

 

「....わ、私も準備を終わらせてきます!」

 

同棲して以来前よりも素直に感謝とかを伝えるようになったのだがその理由の半分以上がそうすると高確率で紗夜の可愛い姿を見れるからだ。

 

「さて、じゃあさっさと準備するか」

 

きっと紗夜のことだから紗夜はもう準備の大半が終わっているのだろうし急がないとな.....

 

そんなことを思いながら俺は急いで準備を進めていくのだった.....

 

「よーし準備できたぞ」

 

あれから着替えやら朝食(紗夜が作ってくれてあった)を済ませた俺は紗夜に声をかける。

 

「私の方も準備し終わりました」

 

「そっか、それで今日はどこに行くつもりなんだ?」

 

「そのですね....実は決めてないのですが.....」

 

「珍しいな、お前が予定も立たずに誘うなんて」

 

「さ、最近お互いに練習やらで忙しくて一緒に出かけられてなくてふと出かけたいなと思って声をかけたので.....」

 

どつしよつ、俺の彼女の可愛さが止まることを知らないんだが。

同棲して以来たびたび紗夜の可愛さによって死にそうになるんだが?

 

「年末までしっかりと練習の予定立てられてたからな......逆によくクリスマスにお互いの練習が休みになってたな」

 

「そうですね、本当によかったです」

 

言い忘れていたが俺も紗夜も高校時代と変わらずバンド活動を続けている、奇跡なのか誰かしらがわざとそうしたのかかはわからないが俺たちはみんなすぐに集まることのできるくらいの近さの大学に進学している。

 

「で、どうするか?」

 

そして話は振り出しに戻る。

 

「そうですね....ではまずはどこに行くのか話し合ってみましょうか」

 

「そうだな、早めに起きてるからまだ時間に余裕があるからな」

 

「そう思えたならこれからは自分で早起きしてください」

 

「無理だな、お前に起こしてもらうのが俺の日課だ」

 

「調子がいいんですから....」

 

と言いつつ嬉しそうな表情を隠しきれてないのも可愛いのだが口に出さずに堪能する可愛さがあってもいいと思わないか?

 

「それで紗夜はどこか行きたいところとかないのか?」

 

「そうですね....私はイルミネーションを見に行きたいです」

 

「ただイルミネーションは夜からだもんな、それまで別の場所に行けそうだよな....」

 

「そうですね.....八幡さんは行きたいところはないんですか?」

 

「俺か?うーん急に言われても思いつかないな....」

 

大学生になり相当改善された俺のぼっちだがそれでも圧倒的に1人で過ごしていた時間が長いのでこうやって誰かとどこか行くところ考えたりするのはまだ苦手なんだよな.....

 

「そういや今年はRoseliaやら日菜から誘われてないのか?」

 

去年は昼にRoseliaとパーティーをしていたから一緒に過ごしたのは夕方からなんだよな。

ちなみに一昨年は日菜と2人で過ごしてから俺との時間は同じように夕方からだった。

 

「今年はみんな予定があると言っていました、なので問題ありません」

 

「そうか、ようやく1日俺が紗夜を独占できるのか」

 

「も、もう!急にそういうことを言わないでください!」

 

「すまん、最近割とお互い忙しかったせいか1日一緒にいられるのが嬉しくてな」

 

こればかりは事実だ、さっきも言ったが最近は大学なりバンドの練習なりが忙しく2人で過ごす時間は減っていた。

 

「....ようやくも何も私はあなたにしか独占されてません」

 

「ぐはっ!?」

 

「は、八幡さん!どうしたのですか!?」

 

「悪い....唐突に可愛すぎた....」

 

いやね、本当にたまにこんな風に俺を殺そうとしてくるんだよ、こいつ。

 

「な、何を言ってるのですか!」

 

そして紗夜も顔を真っ赤にしてノックアウトと2人して恥ずかしさに悶えてるこの光景は人に見せたらそれは確かにバカップルに見えるんだろうな.....

 

「と、とにかくはやく行く場所を決めましょう!」

 

「お、おう」

 

その後なんとか瀕死の状態から回復して話し合いを進める。

そしてなんとか予定を立て終わり出かけるにはちょうどいい感じの時間になった。

 

「よし、なら予定も決まったし早速出かけるか」

 

「はい、そうですね」

 

「ふぁ....」

 

おっと珍しく早起きしたからかあくびが.....

 

「....」

 

あくびをしてる最中に紗夜が立ち上がった音がした。

先に玄関に向かうのだろう。

 

「....っ!?」

 

え?ちょっと待ってあくびし終わって口を閉じた瞬間に口に訪れたこの感触は......

 

「ちょ、なんで急に.....」

 

「先程....私が....そのキスをしたら目が覚めると言っていたので.....眠いままデートされるのも....いやですし....」

 

むしろ目が覚めすぎて1週間くらい寝不足になりそうだ.....

 

「そ、それでは行きましょう!」

 

そう言って逃げるようにして玄関に向かう紗夜。

 

「そ、そうだな!」

 

慌てて俺も紗夜を追う。

 

「....なぁ紗夜」

 

「なんですか?」

 

玄関を出てから恥ずかしさから沈黙してた俺たちだが不意に俺が声をかける。

 

「今日は....楽しもうな」

 

「はい....せっかくのクリスマスですからね」

 

そう言っておずおずと手を伸ばしてくる紗夜の手を取りながら周りに人がいないことを確認しその手を少し強引に引き寄せる。

 

「え?」

 

驚いたような顔をする紗夜の顔へと近づけ先程のお返しを軽くしておく。

 

「え、その...こんな....場所で....」

 

「人がいないことは確認した....あと、お返ししておかないとな」

 

「.....」

 

声にならない声をだして悶絶している紗夜の手を今度は普通に握って俺はこう思う。

 

やはり、俺の彼女がこんなに可愛いのは何も間違ってないと。

 

 

 

**********

 

 

 

 

「ねぇ八幡君、今年のクリスマスの予定は.....空いてたりしない?」

 

大学に進学して初めての12月になったばかりのある日突然彩が電話でそう聞いてくる。

 

「空いてると思ったけど....それがどうかしたか?」

 

「いやーその日私もたまたま仕事が休みでさ、よければその....一緒に出かけたりしない?」

 

現役のアイドルからクリスマスにこんなお誘いを受ける日が来るは......

明日あたりにこの辺りが雪で完全に埋れてしまわなければいいのだが.....

 

「俺は構わないけど.....彩はパスパレのみんなと過ごしたりしなくていいのか?」

 

「その日は....他のみんなはもう予定が入っちゃってるみたいで.....あ、ほ、他の人もね、聞いたんだけど空いてないらしくて.....」

 

それで仕方なく最後に俺に予定を聞いてきたってことか?

まぁ俺もその日は暇だし.....断る理由は特にないな。

 

「ま、俺でよければこっちは構わないぞ」

 

「ほ、本当よかったぁ.....」

 

「俺を誘えたくらいで大袈裟すぎないか?」

 

「う、ううんこの日のために頑張った甲斐があったっていうかそのなんていうか....と、とにかく楽しみにしてるね!ま、また今度詳しく話し合おうね!」

 

そう言うだけ言ってさっさと電話を切ってしまう彩を不思議に思いながら人生でも稀に見る幸運なのだろうイベントができたことをただただ喜ぶ俺だった.....

 

 

 

「少し早く着きすぎたかな......」

 

クリスマス当日となり俺は彩と話し合って決めた集合場所である駅に着いたが待たせるのも悪いと思って早く家を出たのだが思ったよりもはやく着いてしまった。

 

「あっ!八幡君!」

 

なんて思ってたのだが彩も早く着いてしまったらしく手を振りながら俺へと近づいてくる。

 

「ごめん、待たせちゃった?」

 

「いや、本当に今着いたばかりだ。ほぼ同時につくなんてな」

 

気を遣われたと思わせるのもあれなのでしっかり今きたばかりなことを強調しておく。

 

「そうなの?でも私も早く家を出てきたのに八幡君も着いてるなんて....」

 

「小町に女の子は待たせないようにって昔から無駄に言われ続けてきたからな」

 

事実バンドを始めるまでまず誰かと待ち合わせするということはなかったので無駄だったのは間違いない。

 

「ふふっ、それでも八幡君ってそういうところ本当に優しいよね」

 

「俺が優しかったら全人類が聖人になるけどな」

 

「そういう謙虚なところも私はす....すごいなぁって思うよ」

 

何か一回違うことを言いかけてた気がするがまぁ気にしないでおこう。

 

「そ、それじゃあ早速出かけようか!」

 

「ああ、そうだな」

 

ちなみに今日は電車を使って話題になっているイルミネーションを見ることになっている。

その後電車に乗り込みしばらく揺られる。

 

「最近前よりパスパレのことをよくテレビで見るようになった気がするな」

 

「本当?でも確かに前よりもお仕事を貰えるようになってきて前よりも忙しいかも」

 

「まだ大学生だってのにすげーなって毎回思ってるぞ」

 

「八幡君にそう言ってもらえたら頑張った甲斐があるよ!」

 

だからこそ今でもそんなアイドルと一緒に出かけてるというのが信じられないのだが。

 

「八幡君たちは最近調子はどうなの?」

 

「俺たちか?まぁケントが受験期になってからは少し練習が減ってるけど順調だぞ」

 

だが俺たちアブアルも実はスカウトが来るようになっていて今はケントの受験を理由に断ってたり返事を保留にしてるのだが一度みんなで話し合ってケントの受験が終わり次第挑戦してみようという結論が出ている。

 

「そうなんだ、ケント君にも頑張れって伝えてね」

 

「おう、伝えとく」

 

彩とこうやって接しているとまるで芸能人であるというのを感じない。

もちろんそれはいい意味であり緊張せずに話せるというのは芸能人としてはすごいことじゃないかと思う。

 

「八幡君は大学でどうなの?その.....彼女とか出来たりしてるの?」

 

「俺か?俺は....そもそも友達すらできてないな」

 

残念なことに俺は大学デビューをするわけでもなく高校と同じように大学でもほとんど1人で過ごしている。

 

「よかった.....」

 

「そこで安心されるのは複雑なんだが....」

 

「あ、ご、ごめんね!違うのそうじゃなくって!」

 

「大丈夫だ、わかってるから」

 

その反応を見たくてやっただけだ。

 

「俺には友達も彼女も多分できないんじゃないか、こんなんだし」

 

「そ、そんなことないよ!八幡君は優しいし.....私はいいところいっぱい知ってるよ!」

 

冗談のはずがそんな真面目に否定されるとは思わなかったな.....

 

「その、ありがとな」

 

思わず普通にお礼を言ってしまったがきっと俺の顔は今赤くなっているのだろう、顔熱いし.....

 

「あ、えっとごめんね急に」

 

と、言いつつお互いに照れてしまって相手の顔が見れない.....

そのまま電車の中ではお互い悶絶していたら気がついたら目的へと着いていた.....

 

 

「うわ〜すっごい綺麗!」

 

「そうだな、こんな本格的なイルミネーション見にしたのは初めてだけどすごいのはわかるな」

 

「私もこんな綺麗なイルミネーションは初めてだよ!」

 

「ロケとかでも行ったりしないのか?」

 

「行ったことはあったけど時間がなくてゆっくり見れなかったんだよね」

 

「なるほど....それじゃ今日はしっかり楽しまないとな」

 

「うん!」

 

なんて話しながら歩いてるとだんだん人が多くなってきたようだ。

 

「あ、すいません....」

 

どうやら彩は人にぶつかってしまってるようだ。

てか普通にこのままだとはぐれかねないな....

 

「あ、あのさ八幡君人が多くなってきたからさ....その」

 

「ん?どうした?」

 

どうも歯切れが悪く何かを言ってこようとしてる彩に問いかける。

 

「その....はぐれないようにさ....手、繋がない?」

 

「あ、ああ」

 

人が多くてはぐれないようにするのはわかるのだが.....

女子と手をつなぐ機会など小さい頃小町にして以来なんだよな.....

え?学校行事とかはどうしたのかって?そんなん全部拒否られたに決まってるだろ。

 

「じゃ、じゃあ....失礼します.....」

 

なぜか敬語になりながらとても遠慮がちに俺の手を握る彩。

 

「お、おう」

 

俺もその手を相当ためらったものの握り返す。

え?これ現実?だってただのぼっち大学生が現役のアイドルと手を繋いでるんだよ?

 

「八幡君の手....あったかいね」

 

先ほどまでカイロの入ったポケットにずっと手を入れてたおかげで俺の手は割と暖かくなっている。

対して彩の手はかなり冷たくなっていた。

 

「彩も手袋くらいしてくればよかったのに」

 

「いや、あのその〜実は忘れちゃって」

 

「やっぱおっちょこちょいなのは相変わらずか」

 

「う、うん。早く治したいんだけどね.....」

 

だけど彩の場合それが可愛いのかもしれないが。

 

「本当は八幡君と手をつなぐ口実にしようとしてたんだけどなぁ.....」

 

「何か言ったか?」

 

「う、ううん!なんでもない!」

 

気のせいならいいのだが.....

というか本当に初めて本格的なイルミネーションを見たけど綺麗だなぁ.....

 

「ねぇあれパスパレの彩ちゃんじゃない?」

 

「あったしかに似てるね〜でもなんか男の人といない?」

 

「しかも手を繋いでるよね、本当に彩ちゃんならなんかショックかも」

 

やばいな、今まで気づいてなかったが人が多くなってきて彩のことに気づいた人が出てきてるな.....

このままバレたら男と一緒にいたことが明らかになってしまう。

それは彩にとってプラスになる事はないだろう。

 

「彩、人が多くなってきたし少し人混みを離れないか?」

 

「うん、そうしようか」

 

彩も人に気づかれてることに気づいたらしく俺の提案を受け入れてくれる。

 

「えへへ....私も少しは有名に....」

 

心なしか喜んでる気もするけど早く離れないとな.....

お、あっちはこっちに比べて人が少ないな。

 

「ひとまずあっちに向かうぞ」

 

「うん、わかったよ」

 

その後なるべく人目につかないように人気の少ない場所まで移動した俺たちはベンチで休憩をしていた。

 

「危なかったな」

 

「そうだね、でも私たちも前より多くの人たちに知ってもらえてるんだって思えたよ」

 

「だけだ今は状況がまずいからな、バレないようにしないとな」

 

「.....八幡君はさ、私とそういうふうに見られるのはイヤ....かな?」

 

「悪いがアイドルと出かけて役得と思わないほど男を捨ててるつもりはないぞ」

 

俺は少し冗談めかしてそう答える。

 

「誤魔化さないで.....ちゃんと答えて」

 

しかし彩は俺に逃げることを許してはくれない。

真剣な眼差しで俺を見つめてきている。

 

「....嫌なわけないだろ」

 

「そう、ならさ....こんな状況じゃないとチャンスがないし....聞いてもらいたい話があるの」

 

俺は薄々これから彩が語るのだろう言葉がなんなのか察しがすでについている。

いや、白状するならずっと前から彩が俺に好意らしき想いを持ってくれてるのだろうことも気づいていた。

しかしこんな状況になるまでその思いを勘違いだと、そう思ってしまっていた。

 

「ああ、なんだ?」

 

「あのね....私、八幡君のことが好き」

 

ぽつりと呟くように告げられる彩の思い。

気づいていたのに見ないようにしてた、俺には眩しすぎるほど純粋な好意。

 

「初めて会ってから、最初は迷惑かけちゃって....それでも許してくれてそんな優しいところを見てたらすぐに好きになっちゃって....だから私と.....」

 

必死に言葉を探して俺に想いを伝えてくる彩。

だが、これ以上言わせるのは男として流石にアレなので俺も覚悟を決める。

 

「.....彩、俺もお前のことが好きだ。後出しになっちまって悪いけど.....俺と付き合ってくれ」

 

「え?」

 

自分が告白してら途中に急にその相手から告白されたのだ。

普通の人でもパニックになるだろう状況で彩は状況がわからな過ぎてシャットダウンしそうな勢いだ。

 

「え?そ、それって.....」

 

「もう言っただろ、俺はお前が好きなんだ」

 

何度も繰り返すと普通に恥ずかしいのでぜひそろそろ正気に戻ってほしい。

というか彩が慌て過ぎてるおかげで俺の方は驚くほど平静だ、いや恥ずかし過ぎて死にそうではあるけど。

 

「う、うう....」

 

「お、おいどうした?」

 

突然泣き出してしまう彩に俺もあたふたとしてしむう。

 

「う、嬉し過ぎて....私が頑張ってきたのも無駄じゃなかったんだって....」

 

最初は本当にただただ一生懸命な姿に心を打たれただけだった。

それが関わっていくうちに気持ちが大きくなっているのを俺は知っていた。

 

「....1回しか言わないからしっかり聞けよ」

 

今思えば最近になって俺に積極的に接してくるようになっていた。

そうしてより長い時間を彩と過ごして.....

そして俺は彩の強いところも、弱いところも見て....恋をした。

 

「う、うん」

 

泣きながら真剣な顔になると人はこんなにもマヌケで....可愛い表情になるものなのか、いや彩だから....こんなにも可愛い表情になるのだろう。

そんな愛しさを感じ俺は告げる。

 

「俺は....ずっとお前に夢中だったよ」

 

ずっと誤魔化していた、自分が傷つくのが怖いから。

勘違いしないように、みっともないことだが彩の本心を知ってその恐れは必要のないものになった今だから俺はこの言葉が言えるのだ。

 

「はわわわわわ.....きゅう.....」

 

「おい?彩?彩!?」

 

俺の言葉を聞いた彩は限界を迎えてシャットダウンしてしまったらしい。

 

「可愛いな....」

 

しかし照れすぎで気絶した彩の顔はとても可愛らしく俺は思わず湧き上がる欲望を抑えきれなかった。

 

「....これくらいはセーフだよな?」

 

誰かに言い訳をするように俺は彩の手を取り握りしめる、さっきとは違いしっかりと指を絡めて、さっきよりも力強く。

 

「これからは....もっと思い出を残していこうな」

 

起きた時にどんな反応を彩はするだろうか?

そんなことを楽しみに考えながら誰にも届かないが確かに伝わっただろう言葉を呟いて俺は改めて彩を見てこう思う。

 

 

やはり、彼女の努力は間違っていない。

 

 

 

*****

 

 

突然だが俺の名前は比企谷八幡、25歳のどこにでもいるただの成人男性だ。

俺はとある理由から今現在1人で水族館を歩いて回っている。

え?いい歳した男がなんで1人で水族館にいるのかって?

その疑問はもっともだがただ魚が好きな人の確率もあるから決して他の人には言うなよ?

 

「って何考えてるんだよ俺は.....」

 

思わず自分自身にツッコミを入れる俺だがそれも許してもらいたい。

なぜなら俺はかれこれ30分以上も本来は俺の横にいたはずの人を探しているからだ。

 

「まったく変わらない迷子体質だけは考えものだよなぁ.....花音も」

 

そう、今日俺と水族館に来てるのは俺の彼女である花音とクリスマスということでデートに来ていたのである。

が、水族館についてわずか5分後には花音の姿が消えていた.....

というのが現状だ。

もちろん電話をしたのだが人が多いせいか電波が届かないようだ。

 

「職場でまで迷うならあいつ普段どうしてるんだろうな.....」

 

花音は今俺と訪れているこの水族館で働いているのだが普段は主にペンギンの世話をしてるらしくあまり他の生物、特にお気に入りのクラゲを見れないことを残念に思ってるらしくたまにはゆっくり回りたいという希望の下デートに来たのだが.....

 

「このまま見つからなかったらどうするかぁ....」

 

この30分花音が訪れそうな場所を探しているのだがまるで姿が見えない。

普段からよく迷子になる花音だがかつて2時間ほど再開までに時間を要したことがある。

 

「....流石にクリスマスにまでそれは勘弁してほしいよなぁ」

 

いやほんとまじで。

 

「かといって次はどこを探すか.....っと」

 

次にどこを探しにいくか考え始めた瞬間電話がかかってくる、どつやら電波がようやく通じるようになったらしい。

 

『もしもし八幡君?』

 

「ああ、今どこにいるんだ?」

 

『え、えっとね八幡君とはぐれちゃった辺りまで戻ろうとしたんだけど.....気づいたらクラゲの水槽の前に....』

 

その話を聞きながら地図で位置を確認したのだが.....

 

「どうやったらそこまで辿り着くんだよ.....」

 

はぐれたあたりの位置からクラゲが展示されてる場所は相当な距離がある。

が、幸い今俺がいる位置からはそう離れていない。

 

「今から俺がそっちに向かうから絶対にそこから離れるなよ」

 

『う、うん』

 

「じゃあちょっと待っててくれ」

 

『いつも本当にごめんね....』

 

「気にするな、いつものことだ」

 

いや、いつものことなのもおかしいっちゃおかしいのだが。

 

『ありがとう.....じゃあ、ここで待ってるね』

 

「おう」

 

そう言って電話を切る。

 

「さて、じゃあ迎えに行きますか.....」

 

それから5分ほどして花音がいるはずのクラゲの水槽の付近まで来たのだが.....

 

「クラゲってこんな人気なのか.....」

 

そこには他の場所よりも多くの人が密集していて花音を探すのがウォー◯ーを探せなみの難易度だ。

 

「あ!八幡君!」

 

と、思ってたのだが花音の方が俺に気づいてくれた。

 

「ようやく会えたな」

 

「うん、このまま時間が経っちゃたらどうしようって思っちゃったよ....」

 

「本格的に出かける時にGPSでもつけてもらおうか考えたわ」

 

「そ、そんなにかなぁ....」

 

「冗談だ」

 

8割方は

 

「そ、それよりも八幡君!見て、クラゲたちすっごい綺麗でしょ?」

 

若干話を誤魔化された気がするが.....

 

「そうだな、想像以上だ」

 

花音の影響があってか俺もいつしかかなりのクラゲ好きになっていたのだがこの光景はなかなか.....

 

「私も久しぶりに見たけどやっぱりいいなぁ.....」

 

「俺もようやく見れてよかった、花音が頑なに俺とここに来たがらなかったからな」

 

「だ、だって知り合いに見られたら恥ずかしいし.....」

 

「じゃあなんで今日はここに来ようなんて誘ってきたんだ?」

 

「そ、それは....やっぱり八幡君に私たちがお世話してる子たちを知ってもらいたくて.....。それに最近あんまり八幡君が構ってくれなかったし.....」

 

あ、俺の彼女めっちゃ可愛い。

確かにここ1、2ヶ月の間俺の方も仕事が忙しくて花音とあまり出かけたりはできてなかったな.....

 

「オレには詳しくは分からないけど.....ここで働いている人たちが一生懸命お世話をしてるのはわかった」

 

「ふふっ、なら良かった」

 

「まぁ花音が迷子にならなきゃもっとゆっくり見てられたんだけどな」

 

「ふぇぇ!その話はもう終わりにしようよ〜」

 

「冗談だ」

 

花音に言われてみればそう思っただけであって多分言われなければこうして意識することはなかっただろう。

 

「だけど本当に神秘的だな、クラゲってのは」

 

「でしょ!このクラゲは実は....」

 

あ、やべスイッチ入れてしまったかもしれない.....

 

「お、おい」

 

「それでね!特にこのクラゲはね.....」

 

結局そのまま10分以上にわたる説明を聞いたところでようやく花音は我に帰り恥ずかしそうに俺に謝るのだった.....

 

その後も水族館で様々な動物を見て回る。

2人でイルカのショーを見ていたら思いの外水飛沫が飛んできてあわや2人揃ってびしょ濡れになるところだった。

 

ペンギンも見たが花音の方をペンギンが向いた瞬間大量に花音の近くへとペンギンが寄ってきて周りの客の視線が一点に集中したりだとか.....

 

そんなこんなであっという間に時間は過ぎていった.....

 

「もうすぐ閉館時間だな.....」

 

「だね〜」

 

「なぁ、最後にもう一度だけクラゲを見にいかないか?

 

「時間、間に合うかなぁ?」

 

「まぁ多分大丈夫だろ」

 

実際長居しなければ普通に見れるくらいの時間はある。

さて、ここで俺は花音をを誘導するのには成功した....

ここでネタバラシをしよう、そう俺は花音にこれからサプライズを仕掛けるつもりでここに来た。

 

「じゃあ早く行こう!実は私もう一回見たいと思ってたんだ!」

 

「そうだろうと思ってな」

 

「そ、そんなにわかりやすかったかな?」

 

「もうかなり長いこと付き合ってるからな、それくらいはわかるぞ?」

 

「ふぇぇ....そんなふうに言われると照れちゃうよ....」

 

すでに顔が真っ赤だがこの後のサプライズが生活したらどんなことになるだろうか?

想像するだけでなんだかこっちまで恥ずかしくなりそうだが今回ばかりは準備もそれなりに頑張ってるからな.....

水族館の方に連絡をして....何故かめちゃくちゃあっさり許可もらえたんだけどな.....

 

「なんだか人が少ないね?」

 

「もうみんな帰り始めてるのかもな」

 

実際は水族館の方々に協力してもらってるわけなのだが.....

なにやら交渉がスムーズに進みすぎていて何やら裏に強大な何かの力を感じるのだが考えすぎなのだろうか?

ん?なんかかつて見かけたスーツ姿をそういえば何度か見かけた気が.....

いや、これ以上考えるのはやめよう。

 

「あ!八幡君あの水槽だよね!」

 

「ああ、確かそうだったな」

 

「わぁぁ.....やっぱり綺麗....」

 

「そうだな....」

 

水槽に浮かんでいるクラゲは発光していて予想のつかない動きが合わさり本当に神秘的な光景だ。

 

「「....」」

 

お互いに無言で少しの間クラゲに見入っていたが俺は自分のすべきことを思い出し一足先に現実に戻ってくる。

だが何故か今日がどうなろうと俺たちの記憶に残るだろうと確信する。

 

「なぁ花音.....大切な話があるんだ」

 

「なにかな?」

 

「....驚かないんだな」

 

「うん、なんか八幡君がそんな顔をしてたから」

 

「なんだよ、それ」

 

「さっき八幡君も言ってたでしょ、私だって....ただ何年も八幡君と一緒にいたわけじゃないんだよ?」

 

「....」

 

これは一本取られた気分だな。

 

「じゃあ聞いてくれ」

 

「うん」

 

きっと周りに人がいないのが俺の手回しであることも気づいているのだろう。

 

「今までお前には色んなものをもらった....お前のおかげで俺はそこそこまともな人間になれたと思う」

 

「うん」

 

静かに話を聞いてくれる花音、改めて止めどない私さが込み上げてくる。

 

「まだこれからも迷惑をかける自信しかないし、大変な目に合わせるのはほぼ確定事項だ」

 

「ふふ、八幡君のことなら大変なんて思わないよ」

 

「そうか、ならそのままひとつお願いがあるんだ」

 

少し笑みを浮かべながら俺はそう告げポケットに大切に入れていたものを取り出す。

 

「よければ、このまま俺の人生もらってくれ。代わりにお前の人生を俺にくれ」

 

そう言って俺が差し出したのは....指輪だ。

 

「その....いいか?」

 

「むぅ」

 

珍しく少し方を膨らませている。

何か間違えてしまったらしい。

 

「ちゃんと、素直に言ってもらいたいな」

 

「マジでか?」

 

「....じゃないと、私の人生はあげない」

 

「....わかった、ちょっとだけ待ってくれ」

 

「早くしないと、ダメだからね?」

 

ここにきて今まででも初めての出現となる小悪魔花音誕生である。

いや可愛いからいいんだけど。

でも....ここで覚悟を決めなきゃダメか....

 

「よし」

 

「....」

 

ただ真剣に、俺の方を見つめている花音。

その姿は俺の拗れた性格をほどくのには十分すぎた。

 

「俺と、結婚してください」

 

「....はい、喜んで」

 

そのまま目を瞑る花音。

流石に俺もそこで間違えるほどの性格はしていない。

 

「「....」」

 

お互いに顔を少しずつ近づけて....唇が触れ合う。

きっとこの瞬間を写真に収めていたのなら後ろの水槽と合わさってそれはきっと....世界で1番美しく、幸せに満ちた写真になっただろう。

 

唇が離れてから俺たちは顔を見合わせてから笑い合いながらこう言い合う。

 

「これからもよろしくな、花音」

 

「うん、こちらこそ」

 

やはり、俺たちの思い出は間違っていない




今回はここまでです!
なんとかギリでクリスマスイブにに投稿できました!
それと申し訳ないですがここからリアルが忙しくしばらく投稿できないと思います....
よければ気長に待ってくださるとありがたいです。
それとよければ感想、評価など残してくださるとありがたいです!
では次回予告いってみましょう!



「ハチ兄、まだ起きないね」

「だね、もうそろそろ起こさないとかな?」

「そうであるな、もうじき休憩時間も終わりであるしな」

「じゃあ次回予告してから起こすか」

「うん、じゃあ僕がしちゃうね、次回やはり俺がバンドを組むのは間違っているは『そろそろ比企谷八幡も企画にツッコミをしなくなる』です!」

「本当に次の対決はなんなんだろうな.....」

「とりあえず八幡君を起こしちゃおっか」

「おい!八幡!起きろ!もう次の戦いはすぐであるぞ!」

「....うるさいぞ、材木座」

「まったく幸せそうな顔して寝てどんな夢を見てたんだ?」

「は?夢....夢....なんも見てない」

その後休憩終わりまで続いた追及はここでは触れないでおこう.....


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第58話

予告していたとはいえ更新がまた遅くなって申し訳ありません.....
気づけばなんか嫁度対決がかなり長いことになってますが....
次の回で最後なのであと少しお付き合いください



「ふぁ.....」

 

「ずいぶん大きなあくびだな」

 

「仕方ねーだろ.....寝起きなんだから」

 

「我としてはこの環境で居眠りできるお主がすごいと思うのだが....」

 

俺だって自分で驚いてるわ。

しかもなんかやたらと恥ずかしい夢を見たんだよな.....

この記憶は即刻忘れることにしよう、そうだあれはこんな企画が頭に残ってたからたまたま見てしまっただけだ。

 

「そろそろ始まるんじゃないかな」

 

「なんだかんだで楽しくなってきたね」

 

最初は訳の分からなかった企画であるがなんだかんだみんな楽しめてるのはなんなんだろうな?

いやまぁ俺も少しくらいはそう思わないでもないが。

あれ?なんかオレ、ツンデレになってない?

 

「そうだね、見てて楽しいよ」

 

「さて!みなさん!そろそろ次の対決に移りますので準備をお願いします!」

 

そんな話をしていたらちょうど次の対決に移るようだ。

 

「ではそれぞれのチームから対決に臨むメンバーを発表していただきます!まずはアブアル、ラビワンチームは誰でしょうか?」

 

「はいはーい!ついに満を辞して私が出ちゃいます!」

 

そう言って謎に俺にウインクしてくる。

あざとい、しかし可愛いとも思ってしまうのがなぜか腹立たしい。

 

「では続いてポピパチームの代表はどなたでしょうか?」

 

「私たちはさーやだよ!」

 

「ライブに長く出るためにも頑張らなきゃね!」

 

そういえば完全に忘れていたがステージをかけての勝負だったなこれ.....

しかし山吹は家の手伝いなども良くやってるみたいだしなかなかの実力者なのではないだろうか?

 

「では続いてアフグロチームはどなたでしょうか?」

 

「あたしたちはつぐみでいくよ」

 

「が、頑張ってくるね!」

 

羽沢もかなり違ってくれる予感がする、山吹と同じように家の手伝いもしてるしこちらもかなりの実力とみていいだろう。

 

「では続いてパスパレチームはどなたでしょうか?」

 

「わたしたちはイヴちゃんだよ!」

 

「全力を尽くしてみなさんに勝利を捧げます!」

 

やる気が非常に高い若宮、俺もついこないだ知ったのだが若宮は様々な部活をかけまたしてるだけでなく羽沢の家でバイトまでしてるらしい。

その経験は侮ることはできないだろう。

 

「続いてRoseliaチームはどなたでしょうか?」

 

「私たちはリサでいくわ」

 

「まっかせてー!」

 

おお、これまたなかなかの実力と推測される今井か。

ケントからな話を聞く限りでも女子力はこの場でもトップクラスなはずだ。

それが嫁度(?)に関係あるのかはわからないが。

 

「ハロハピチームの代表はどなたでしょうか?」

 

「あたしたちは花音よ!」

 

「ふぇぇ....自信はないけど頑張るね!」

 

ハロハピの苦労人コンビが連続で登場か、ハッキリ言って実力は未知数であるものの3バカに比べればはるかにまともな勝負をしてくれるだろう。

 

 

「では続いてspチームはどちらが出るのでしょうか?」

 

「「....」」

 

「えーとどちらが代表に出るのでしょうか?」

 

なぜか完全に沈黙して下を向いているspチーム、小町の2回目の質問にも顔を上げない。

ま、まさか.....

 

「小町、もう....あの2人は.....」

 

「いいんだ、比企谷、もういいんだ」

 

「そんなこと言わないでください!ここで終わってもいいんですか?」

 

「ああ、私たちにはこれが....これがお似合いの結果というものさ」

 

「えーとおにいちゃん、説明してもらえる?」

 

本当に言ってもいいものだろうか、しかしどうやらこの場であの2人の異変の真実に気づいてるっぽいのは俺だけのようだ.....

ここは心を無にするしかない....

 

「本当にそれでいいんですね、平塚先生、まりなさん」

 

「ああ、もう、それでいい」

 

「私も....静さんと同じ気持ちだよ....」

 

「そうですか....」

 

「もしもーしおにいちゃん、勝手に3人の世界に入り込まないで説明してもらえますー?」

 

「小町、そしてみんなあの2人はこれ以上の戦いについていけなくなったんだ」

 

「どゆこと?」

 

ああ、我が妹ながら察しの悪い。

 

「.....つまりこれだけ対決しても自分たちより年下の女子に負け続けて.....メンタルが....」

 

「「「「「「「「「「あっ.....」」」」」」」」」」

 

俺のその一言で会場のほとんどの人が察してくれたらしい。

 

「で、ではsチームの2人はここで棄権ということで....た、対決の方に移りましょう!じゃあおにいちゃん早く対決の内容決めるくじ引いて!」

 

一瞬でなんともいえない空気になった会場を元に戻そうと奮闘する小町だが珍しくかなり動揺してるようだ。

俺としてもこれ以上あの2人を精神的苦痛を与えるのは忍びない。

 

「わかった、じゃあこれだな」

 

えーとくじ引きに書いてあるのは.....なんだこれ?

 

「何引いたのか早く言って!」

 

「いやこれどうゆうことだ?」

 

「あーと!これは!ここにきてこの対決が来てしまったー!」

 

「それで、対決内容はなんなのかしら?」

 

2人だけで盛り上がってしまっている俺たちに対して湊が質問をしてくる。

 

「あっとすいません、続いての対決は〜『2人の力を合わせて!共同家事作業対決』となります!」

 

いやわからなすぎるし共同って誰と誰がだよ。

 

「では対決内容の説明をします!この対決はなんと審査員の方々にも参加していただく対決になります!それぞれがくじ引きで2人組のペアとなっていただき3つの家事を共同で作業をしていただきどのペアが最も協力して家事を行えたかという対決になります!」

 

「なるほど、そういうことか」

 

「対決内容を聞くと案外普通なのであるな」

 

「でも僕たちも参加するなんて....」

 

「誰が審査することになるのかな?」

 

「と、疑問に思ってる審査員の方々の質問にお答えしましょう!本来なら対決後に小町の独断と偏見で審査しようと思います!」

 

おいこら、司会者乗っ取ってくんな。

 

「それではこの対決でパートナーとなる相手を決めていきましょう!審査員から参加する方々は集まってください!」

 

強引に話をもってこうとしてるな.....

 

「それではこのくじで書かれてるチームの代表の方と組んでいただきます!それでは一本ずつくじを選んでください!」

 

小町の言葉に合わせ各々でくじを選んでいく、俺も1番自分に近かったという理由でくじを選ぶ。

 

「それでは一斉にくじを確認してください!」

 

えーと俺が組むのは......

アフグロ、つまり羽沢か。

羽沢ならやりやすそうだし助かるな。

 

「それではそれぞれパートナーとなる人のもとに行ってください!」

 

「羽沢、よろしく頼む」

 

「は、八幡先輩が相手ですか....よ、よろしくお願いします!」

 

なんか微妙に距離を感じるかつなんかこっちを見てくれないな。

 

「つぐラッキーだね〜」

 

「モ、モカちゃん何を言ってるのかな!?」

 

「ふっふっふっ〜モカちゃんには全てお見通しなのだよ」

 

「てか流石にあれはモカじゃなくても気づくって」

 

「だよな」

 

「ええっ!みんななんの話をしてるの!?」

 

「え?ひまり嘘でしょ?」

 

「み、みんな!そこらへんでストップ!」

 

慌ててほか4人の会話を止める羽沢、こいつら本当に仲良いよなぁ....

別に俺はぼっちで寂しいとか思ってないからな?

 

「とにかくよろしく頼むな、大した戦力にはならないと思うけどな」

 

「いえ!八幡先輩となら心強いですよ!」

 

本当によくできた後輩だよなぁ.....

一色は10000分の1でいいから見習ってもらいたい。

 

「せーんぱい!何か今すっごく失礼なこと考えませんでしたか?」

 

「そんなことはないぞ、うん」

 

「そうですか、それはともかくつぐちゃん困らさないでくださいよ?」

 

「善処はするつもりではある」

 

「それまったく信用ならないじゃないですか....」

 

「てかお前はだれと組むんだ」

 

そういうと一色は材木座の方を指さす。

 

「察してください、私が1番想定外の事態に見舞われてます」

 

ひでぇ....けどあいつは確かに家事をするタイプには見えない。

しかも一色相手ではまともにコミュニケーションも取れないだろう。

俺もこいつみたいなタイプは苦手だからよくわかる。

え?お前たちはだれともまともに喋れないだろって?

甘く見るなよ、喋れないんじゃなくて喋ってないだけだ。

 

「....ほら、流石にほったらかされるのは材木座でも可哀想だし早く戻れ」

 

そういうと一色は微笑み(あざとい)少し声を落とし顔を近づけたくる。

 

「私に見惚れて作業をおろそかにしちゃダメですからね?」

 

「....そんなことあるわけないだろ」

 

「それじゃお互い頑張ろうねつぐちゃん!」

 

「はい!お手柔らかにお願いしますね!」

 

最後に羽沢に挨拶をしていき一色は材木座の元へと戻っていった。

 

「本当にあいつ何しに来たんだよ....」

 

「....先輩はやっぱり自分のバンドの人だと私とは違う対応なんですね」

 

「?なんか言ったか?」

 

「い、いえなんでもないです!ただなんでいろは先輩は八幡先輩に敬語なのかな〜って思って」

 

「まぁそれにはあいつの気まぐれだろ」

 

そうでもなきゃ初対面から敬語を続けてる理由なんかわかるはずない。

 

「あ、でもたまに敬語じゃない時もあるんだよな」

 

「へーそうなんですか」

 

そんな感じで俺たちが思わず雑談を始める感じになりつつあった時

 

「さて!それでは顔合わせも終わったぽいので対決に入っていきましょう!」

 

対決が始まるようだな。

さてどんな内容がとんでくるのやら.....

 

「まずは家事の中でも基本中の基本!お掃除です!」

 

ベタではあるけどたしかにほぼ毎日やるべきことだし納得の内容ではある。

思ってたよりこの対決はしっかりとしているのかもしれない。

 

「それでは各ペア別の教室に移動してもらいますのでそれぞれ黒服の人たちの後についていってくださーい!」

 

は?そんな大掛かりなの?

まさか各教室が改造されてたりしてな....

 

*****

 

「黒服の人たちすげぇ.....」

 

そのまさかだった。

いざ移動され案内された教室はドアを開けた瞬間にただのアパートのような感じの内装の部屋へと変わっている。

休みになる前は確実にただの教室だったのでおそるべき速さの仕事であることがわかる。

 

「しかも各チーム違う教室に案内されましたよね?」

 

「ああ、嘘としか思えないがつまりそういうことだろ」

 

「同じ部屋で対決すると思ってました....」

 

「だな、まさか他のチームの事情がわからないとはな」

 

ちなみにだがペア分けの結果は

俺と羽沢、一色と材木座、山吹と葉山、若宮とユウトさん

リサとケントそして松原と戸塚という組み合わせになっている。

 

「まさか八幡先輩と2人きりだなんて....」

 

「....悪かった」

 

「あ!い、いえ!嫌というわけではなくてむしろ嬉しいというか....って何言ってるの私!?」

 

「落ち着け、無理に誤魔化さなくてもいいからな」

 

エリートぼっちである俺は勘違いなどしない。

 

「あーあーマイクテスト、マイクテスト。みなさん聞こえてますか?」

 

そうすると小町の声が聞こえて来る。

まさか放送室まで使ってるのか?

 

「えー説明しておくと各部屋にはカメラ及び独自のスピーカーが設置されてます」

 

いや想像を軽く超えていくのやめろ?

 

「ついでにそちらの声も聞こえてるのでそのつもりでいてくださいね〜」

 

最初に言っとけよそれは.....

 

「え?じゃ、じゃあさっきの会話も.......」

 

「なお、カメラを起動したのは小町が皆さんに話を始めてからなので安心してくださいね」

 

お前わざとやってるだろ。

悪意しか感じないぞ.....

全くお兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありませんからね。

 

「ではお掃除での対決の詳細を説明しますね。まずは改めてその部屋をご覧下さい!」

 

指示に従って俺たちは部屋を改めて見渡してみる。

見た感じ普通の部屋ではあるのだが....若干汚れてたりするな。

あと謎に洗濯物がかかってたりする。

 

「ご覧の通り各部屋はそれぞれ汚れや片付けるべきものなどがあります!それらを2人で協力してお掃除お片付けしてもらいます!」

 

はぁなるほどやはりこれはまともな対決なようだな。

 

「ちなみにフェアに採点をするために小町の独断ではなくこの場にいるメンバーの意見を取り入れつつ採点をすることになったことをご報告しておきまーす!」

 

ほうさらにここに来て採点方法もまともになるとはな。

これはなかなか普通に勝ちたくなってきたな。

 

「それでは一応時間制限を30分として対決を開始していきます!この放送が終わったら一切こちらの声はそちらに届かないのでお掃除終了と思ったら両手で丸を作ってくださいね〜。制限時間になるか全チームが終了した時点で対決終了を知らせるのでそこんとこよろしくお願いします!それでは対決、スタートです!」

 

え?そんないきなり始まるもんなの?

 

「とりあえず先輩、まずはこの部屋に何があるのかを確認してみませんか?」

 

「そうだな、それから分担して明らかに片付かないいけなさそうなやつから片付けてくか」

 

「はい!」

 

結果としてこの部屋には掃除に必要なものは一式が揃っていた。

お陰で掃除するの自体は全く苦労がない。

 

「羽沢、洗濯物たたみ終わったぞ」

 

「はい!そしたら洗濯物をそれぞれしまってください、多分なんとなく同じ感じの種類の洋服が入っているところに仕舞えば大丈夫だと思います」

 

「おうわかった」

 

しかも今回俺は羽沢と組んでいる、それはつまり協力して何かをするのには最適な相手と組んでいるということでもある。

 

「それにしても一体どれだけの労力要してるんだよ.....」

 

「本当にすごいですよね.....」

 

これと同じ感じの部屋がまだあと5つあると考えると.....

 

「まぁ考えるだけ無駄か.....」

 

「準備してくれた人たちのためにも楽しまないとですね!」

 

なんだかんだ羽沢も結構適応力高めだよなぁ......

 

「にしても悪かったな、小町がまた変なことしだして」

 

「いえ、私は楽しいですから小町ちゃんにお礼を言わないといけないくらいですよ」

 

ああ....なんていい子なんだろうか.....

俺の周りの具体的にいうなら一色やらにもぜひ見習ってもらいたいものだ。

同じ生徒会員なのにどうしてここまで差があるのだろうか?

これを機に我が校にもつぐることを推進するべきでは?

 

「あの?八幡先輩?」

 

「ああ、悪い考え事してた。それでどうかしたか?」

 

「い、いえ用というほどではないのですが....」

 

「なんかミスしてたりとかしてたか?」

 

「いえ、八幡先輩の仕事は完璧なのですが......」

 

念のため言っておくがこの会話をしながらも俺たちはしっかり自分の分の仕事はやってるからな?

 

「その、八幡先輩って普段家事をやったりするんですか?」

 

「いや、あんまやらないな。小町がやってくれることが多いからな」

 

「でも手慣れてるんですね」

 

「まぁたまに小町を手伝ったりもするからな」

 

「なるほど、八幡先輩は本当に小町ちゃんと仲がいいんですね」

 

「そう見えるか?」

 

「はい、なんだかあこちゃんと巴ちゃんとは違った形での絆を感じます」

 

「まぁそりゃ、俺は小町を溺愛してるからな」

 

「自分で言っちゃうんですね.....」

 

まぁ正直否定できるところがないしな。

 

「やっぱり....だからなんですかね?」

 

「ん?なにがだ?」

 

「いえ、その....八幡先輩って私たちに優しくしてくれるじゃないですか、それって小町ちゃんに接するみたいにしてくれてるからかなぁ....なんて」

 

なぜか若干不服なニュアンスを感じないでもないが.....

確かに考えてみれば羽沢に限らず俺はアフグロのメンツに対しては後輩というイメージが根底にあるしそこから俺が唯一年下の女子として扱いを知っているのは小町なためその扱いに似た扱いをしてしまってはいるのかもしれない。

 

「そうだな....そういうふうに思ってはなかったが否定はできないな」

 

冷静に考えれば知らない男からそんな風に扱われてるとか普通嫌だよな、いや俺マジでやばいやつじゃん。

 

「悪かった、嫌だったか?」

 

「い、いえそんなことはないですよ!八幡先輩は優しいですし....嫌なはずないです」

 

そう言ってくれてるし羽沢は多分嘘とかつけるタイプではない、変に疑いすぎるのはよくないと学んだはずだからな。

 

「そうか....それならよかった」

 

思わず俺も安堵の笑みを浮かべてしまう。

やばいな、これは流石に引かれるくらいキモいのでは.....?

 

「ただ....」

 

「?」

 

「ただ、たまには違うように接して欲しいなぁ....とも思ってます....」

 

「それってどういう...」

 

「い、いえ何でもないです忘れてください!」

 

「?お、おう」

 

どういうことだ?

今とは違う接し方.....わからんな....

そもそも俺自体があまりにも人付き合いの経験が少ないからなぁ.....

それはこれからも変わらないんだろうけどな。

 

「うーんあとちょっと.....」

 

それからも掃除を続けていたがかなり順調でこのままなら制限時間にも余裕を持って終わりそうな時、羽沢が背伸びをして必死に上のものを取ろうとしている。

はっきり言って可愛い、ずっと見てたい。

 

「俺がとるぞ?」

 

「い、いえあと少しなので....」

 

「まぁいいから任せとけって」

 

そう言って俺は羽沢の後ろから手を伸ばすが羽沢の後ろから手を伸ばしてるせいか俺も若干手が届かない。

 

「あと少し....」

 

これで取れないとかダサすぎるので俺はそのまま手を伸ばす。

すると

 

「あっ....」

 

俺の体が何かにぶつかる、いやこの場合において俺がぶつかるのは一つしかない。

 

「わ、悪い、決してわざととかそういうようなことはなくてだな」

 

正直に今の状態を言うならめちゃくちゃ密接してしまっている。

というか半分くらい俺が抱き抱えてるみたいになっている。

 

「わ、分かってます.....大丈夫ですから....」

 

「お、おう.....あ、あとこれほら取れたぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

目的は達成したのになぜかさっきより状況が悪化している.....

 

「と、とにかく早く終わらせちまうか、あと少しだしな」

 

「は、はい!」

 

しかしその後はなんとなく俺たち2人はぎこちなくなってしまうのだった.....

 

 

「よし!これで終わりですね!」

 

「そうだな、えっとじゃあどうやって小町たちに知らせるんだっけ?」

 

「こうすれば大丈夫なはずです」

 

そう言うと羽沢は自分の両手で大きな丸を作る。

なんか可愛い.....ってダメだダメだ。

これ以上俺は戸塚やりみを裏切ることはできない.....!

 

「えー全チームが終了したようなので一旦小町たちの方と音声繋ぎますね〜」

 

すると小町の声が聞こえてくる。

どうも俺たちが最後に終わったらしい。

 

「えーここでひとつお知らせです、本来あと2つの勝負を行う予定でしたが諸事情によりここで対決終了とするので全員こちらに戻ってきてくださいね」

 

急に勝負を打ち切り?

時間の都合とかそんなんだろうか?

 

「急に打ち切るなんて何かあったんですかね?」

 

「さぁな、俺には小町の考えはわからん。たまに本当に俺の妹が怪しんでるレベルなまである」

 

「そ、そんなになんですね.....」

 

そんなふうに俺たちは2人で歩いてもたいた場所へと帰ろうとする。

他のやつらの姿は見えないしおそらくもうすでに戻っているのだろう。

そんなことを考えていると俺たちもすぐにもといた教室に着いた。

そしてドアを開けると......

 

「比企谷....ちょっと歯を食いしばれ」

 

「なぜすでに攻撃体制に!?」

 

殺意と言っていいほどのオーラを纏った平塚先生が立っていた.....

 

「理由はわかるだろう?」

 

「1ミクロンたりともわかりません!」

 

「数学が苦手なくせにミクロンなんて単位を使うんじゃない!」

 

「理不尽すぎませんかね!?」

 

なぜだ....俺はなにをしてしまったんだ....

 

「さっきまでは私も参加していたからそこまで気にならなかった.....だが!実際こうして見てるだけだとなんだ君は!ただただいちゃつきまくって私たちへの当てつけか?そうなのか?いやそうに決まってる!」

 

 

あ.....

いやここはなんとか殴られないようにせねば.....

 

「そんなつもりはなくてですね、さっきから偶然こんなことになっているわけでそもそもそれならこんなことを企画した運営サイドに文句を言って欲しいというか....」

 

「ごちゃごちゃ言うな!さぁ!今度こそ歯を食いしばれ!」

 

ダメだ!俺の力ではどうにもならない!

 

「ちょ、まりなさん.....助け....」

 

「ごめんね、八幡君。今回ばかりは....ちょっと」

 

そういやあの人もそこらへん敏感だった.....

あぁそうか.....

 

やっぱラブコメってロクなことないわ......

 

そう思った次の瞬間、俺の体にかつてない威力の衝撃が襲い俺の意識は途切れた......

 

 

*****

 

 

「は、八幡先輩!?」

 

私がおろおろとしてる間に八幡先輩が大変なことに.....

 

「えーとその兄は適当にその辺にでも寝かしておいてください」

 

流石に小町ちゃんそれは扱いが酷いんじゃないかな!?

そう思いながらも私1人の力じゃ先輩を動かしてあげることはできない。

どうすれば.....

い、いっそ私の膝を....

っていやいや何を考えてるの私!?

うう....さっきからやっぱ私変かも....

 

「じゃあ俺がひとまず保健室に運ぶよ、誰か手伝ってくれるか?」

 

しかし葉山先輩が保健室まで連れて行ってくれるようだ。

 

「あ、じゃあ僕手伝うよ」

 

「我も手伝おう」

 

そう言うと戸塚先輩や材....なんて名前の先輩だったかな?も手伝ってくれるみたいで何故か私が胸を撫で下ろしてしまう。

八幡先輩は普段友達がいないって言ってるけど私から見たら八幡先輩のことを心配したりしてくれる人がすごく多いと思う。

 

「あ、皆さんちなみに今の勝負の勝者は1番見てて面白かったといえかニヤニヤが止まらなかったつぐみさんとお兄ちゃんのペアに決定しましたのでご理解ください!」

 

え?そんな気まぐれみたいな理由で私が勝っちゃってもいいのかなぁ....

途中からは八幡先輩とまともに喋れなかったし....

今思い出しても顔が熱くなってきてしまう....

 

「つぐ、やったね。いろんな意味で」

 

「ちょ、ちょっと蘭ちゃんそれどう言うことかな!?」

 

「だってひまり八幡先輩と大接近じゃん!」

 

「そ、そんなこと....あるかなぁ.....?」

 

流石に声を落としてくれているが口に出されると恥ずかしいからやめてひまりちゃん.....

ん....あれ?なんでみんながそんなことを知って....

 

「あれ?なんでみんなそんなことを知って....」

 

そのまま思っていたことが口に出てしまう。

 

「え?だってそりゃカメラから様子が見えてたし....」

 

「流石に声はよく聞こえなかったけどね〜。つぐと八幡先輩があんなことしてるのも.....」

 

み、見られてたってこと?

そ、そんなの恥ずかし過ぎるよぉ.....

 

「わ、わたし、ちょっと外の空気を吸ってくるね!」

 

「え?ちょっとつぐみ...」

 

蘭ちゃんが止めようとしてくるけどごめんね、いまは本当に恥ずかしすぎてここにいたら死んじゃいそう.....

そのまま止まらずに私も教室から出て少し離れる。

そしてふと気づく、恥ずかしさと一緒にすっごい嬉しい気持ちがあるってことに.....

 

「そっか......私....」

 

そうして私は一つ理解する。

 

「やっぱり....好きなんだなぁ.....」

 

恋という、自分がかかった病はとても素晴らしくて....こんなにもドキドキできるんだって。

今はまだただの後輩なのかもしれないけど.....

 

「いつか必ず....」

 

この思い....伝えたいな。

 

 




今回はここまでになります!
独断により今回はつぐ回です!
こうやって1人か2人ずつくらいで八幡との仲を深めさせていきたいですね。
あと今回メインにしてあげられなかった花音ちゃんにもどこかで進展をさせてあげたいところです.....
それでは最後に次回予告行ってみましょう!


「さっきのつぐの事どう思う?」

「どうって照れてるのはわかるけど」

「つぐ、可愛かったね〜これで八幡先輩もイチコロだね〜」

「3人ともつぐが帰ってきたらあんまからかうなよー、つぐは本気なんだから」

「それは分かってるからこそ応援してあげたいんじゃん!」

「ひまりとモカは多分余計なお世話な事しかしないだろうけどね」

「そんな事ないってば〜!」

「モカちゃんもつぐを応援したいだけなのに〜」

「この2人のことは一旦置いといて次回予告しちゃおうぜ、蘭」

「そうだね、次回やはり俺がバンドを組むのは間違っているは『こうして謎の対決は幕を下ろす』です、よろしく」

「ところでつぐそろそろ帰ってきてもいいんじゃないか?」

「じゃああたし呼んでくるよ」

「お、サンキュー」


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