残光と空中都市 (不知火桃)
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Prologue
1話 終戦の英雄


 はじめましての方ははじめまして!
 小説家になろうで小説書いてます、不知火桃です。
 ハーメルンの方でも上げるのを友人に勧められたので、こちらでも投稿していこうと思います。
 こっちの方は投稿が少し遅くなると思いますが、それでも見てくれると嬉しいです!
 拙い文章ですがお楽しみ頂ければ幸いです!


 

 

 視点:人間の兵士

 地点:???

 

 

 

 視界に映るのは、煙の黒と血の赤。

 俺はなんでこんな場所にいる?

 

 ああ、そうか。

 

 今は戦争の最中じゃないか。

 さっきの轟音(ごうおん)で、俺の頭はおかしくなっちまったのか?

 辺りの状況を確認する為、周囲を見回す。

 

「なんだ、これ……」

 

 見つかったのは、湯気の出ているスープ。

 他に見つかる物は全て、黒と赤に染まった()()だ。

 肉片らしき物も辺りに飛び散っており、たとえそれが仲間のものだとしても分からない。

 

 それでも絶望に打ちひしがれている場合では無い。

 状況を確認するのが先だ。

 俺は毒弾が入った銃を構え、辺りを探索する。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 だんだんと記憶を取り戻した俺は、大爆発があった事を思い出した。

 スープの湯気を見るに爆発からそう時間は経ってないだろうし、早ければ早いほど集まる情報も多い。急がなければ。

 

 そんな時だった。

 

「あの爆発をくらっても生き残りがいるなんて。魔法も使えないのに、意外と人間ってしぶといんだね。」

「っ!」

 

 声が聞こえた方に振り返り、銃口を向ける。

 そして頭に生えた双角(そうかく)を視界に捉えた俺は、即座に引き金を引く。

 

 ──銃声。

 

 だが、その銃弾は声の主に届く前に()()()()()

 

「なっ!」

 

 銃弾が燃え尽きるという異様な現象に、俺は思わず顔を上げる。

 

「ひっ……」

 

 そして即座に顔を上げたことを後悔した。

 噂は聞いていたが、それを目の前にして分かった。

 こいつは本物の化け物だ。

 

「え、炎……てい?」

 

 【炎帝】

 

 世界全土に名を響かせる【魔族】の精鋭であり、見たものを全てを灰燼(かいじん)と化す、炎の使い手。

 

「あ、僕の事知ってる?」

「……ひ、ひぃぃぃぃぁぁああ!!!!」

 

 炎帝に背を向け走る。

 彼女から放たれる圧を浴び、俺はまともでいられなくなった。

 

「おかしくなっちゃったね、じゃあ早く楽にしてあげる。」

 

 爆発音と共に、俺の身体の感覚が消えた。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 視点変更:

 

 

 

「人間が起こした戦争とはいえ何処の種族にも問題はあったんだ。各界の汚点を、みんなで受け入れて改善すれば、それで解決したのに。日常はもう戻らないだろうよ……!」

 

 桃色の髪を持つ美しき少女は、唇を噛みながら煙で黒く霞んだ空を見上げる。

 

「早く終わってよ! 12年前の日常が帰ってきてくれれば……! それだけで……!!!!」

 

 その言葉に反応して、ある男が少女に近づいた。

 少女はその存在に気づいていたが、敵意を感じなかった為に仲間だと思い込んでいた。

 その男は彼女を一瞥(いちべつ)し、彼女も男を見る。

 

「っ!?」

 

 少女は二つの事に驚いた。

 その男は敵である人間だったのだ。

 さらには戦時中に彼女の姿を見て、逃げ出さなかった敵は一人もいない。

 彼女の強さが、世界全土に響く程に有名だからだ。

 敵わない相手にわざわざ突っ込む馬鹿はそういない。

 当然、その男も少女の強さを知っていた。

 

 では何故近付いたのか。

 少女は驚きながらも、男の真意を探る。

 

「君は……?」

「その希望を叶えてやる。戦争なんてとっとと終わらせちまおうぜ。」

 

 その男の頬には涙が伝っていた。

 それでも不思議と語気の中に籠もる力強さを感じ、その提案に乗ろうと頷いた。

 

 その後、戦争は凄まじいスピードで終結に向かう事になる。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ──終戦後

 

 少女は不思議な違和感を感じて、その違和感の正体を探るべく様々な行動を試みた。

 その結果、少女は違和感の正体に辿り着いた。

 

 【戦争を終結に導いた英雄の名前を誰も知らない】

 

 その事実に。




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