この超ドS主人公に喝采を! (晴月)
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始まりの街
「あれ?何処だここ。」
周りを見回しても何もない。ただ目の前には高級そうな椅子が一つあるだけだ。
「なんで俺はこんなところに居るんだ?」
落ち着け俺、先ずは俺の名前だ。
俺の名前は 東條 遙《とうじょう はるか》名前はこんなでもれっきとした男だ。
えーっと俺は確か家の近くのコンビニにルーズリーフ買いに言ったんだったな。えーっと...それから...
「駄目だ。思い出せない。...ん?」
俺の見間違いかな。俺以外にもう一人誰か居るように見える。
間違いない。俺以外にもう一人居た。
「「あ。」」
不意にそいつと目が合った。
「えーっと...もしかしてあんたもか?」
俺は確認するためにそいつにそう聞いた。
「あ、ああ。気が付いたら此所に居た。あんた。ここが何処か分かるか?」
「いや、全く。....其れよりもあれ。」
俺はそいつに見せるように目の前に置いてあった椅子を指差して見せる。するとそこには先程は居なかった人物が座っていた。
もし女神が存在するのならきっと目の前の人物の事を言うのだろう。人間とは思えない美貌。透き通った水のような綺麗な髪。
「サトウカズマさん。トウジョウハルカさん。あなた達は死にました。」
女性は俺達を見据えながらそう答えた。
そうか、俺は死んだのか。.......なんだか自分が死んだ...なんていきなり言われてもあんまり実感が湧かないな。
すると隣に座っていたカズマが立ち上がって女性に訪ねた。
「俺が...俺が助けた女性は無事でしたか?」
へぇーカズマの奴。女性を庇って死んだのか。.......なんとも男らしいな。
「ええ。というかあなたが突飛ばさなければ無事でした。」
「「え?」」
俺とカズマはついハモった。
「あんたの死因はトラクターに轢かれた....と思い込んでショック死しただけよ。」
更に女性は衝撃の事実を俺達に突き付けた。
「そしてあんた。.......あんたの死因はバナナの皮に滑って頭を打ち付けて死んだのよ。....だっさ」プッ
は?.....おいこの自称女神様、今何つった?
ダサい?...ダサいだと?...此方が黙っていれば好き勝手言いやがって。
「まぁ、そんなことはどうでもいいわね。.......はい。」
自称女神.......いや。この女は指を鳴らすと、俺達の足元に絵が描かれたカードが数枚配られた様に散らばった。
「さっさと転生特典選んでね。.......ふぁーあぁ」
なんだこの女。.......まぁ、いい。さっさと選んでこいつに見せるか。
「えーっと。何々......クルセイダー、アークウィザード、サムライ、アークプリースト....へぇー色々な職業が有るのか。.......ん?」
俺はふと視界の端に見えたカードに目を惹かれた。
「なんだこれ?......
そのカードを手に取り、どんな能力を持っているのか確認する。
「相手の弱点を突け、常に相手に対して先制を取れる職業......付属武器は.....双剣
全武器装備可能!?.....しかも道具作成スキル持ち!?.....凄い。
「決めた。.......これにする。」
俺は自称....もう付けるのも面倒だから女でいいわ。
女にカードを見せて自分の転生特典を選んだことを伝えた。
すると女は、
「あーはいはい。.......っと。」パチン
また指を鳴らすと近くに双剣が用意された。.......だが、
「おい、なんだよこれ。」
その双剣はカードに描かれていたものとは違い、剣先が錆びついていた。
「初心者なんだからそんなもんでしょ。.......何?まさか文句とか有る訳じゃないわよね?」
この女、こっちが何も言わないからっていい気になりやがって.........もう限界だ。
「おい、このクソアマ。.......テメェ、俺に文句が無いとか思ってんのか?.....オイ!!」
俺は女の襟を掴むと思いっきり揺さぶった。
「ち、ちょっと何すんのよ!....女神である私に対して暴力を振るうなんて恥ずかしいと思わないの!....この名前だけ女男!」
あ、こいつ......とうとう言いやがった。.......俺が一番言われたくない言葉を。
「よーしわかった。.......なら、お前にも味わって貰うか.......バナナの皮で足を滑らせた時の恐怖を。」
俺がそう言うと何処からかバナナの皮が大量に用意され、俺はそれを全て足元に並べた。
「さぁ、自称女神様の傲慢女。.......お仕置きの時間だぜベイベー。」
俺はそう言うと女の背中を思い切り蹴ってバナナの皮で足を滑らせる。
「ち、ちょっと!....何する....っきゃあ!」
女はそのままバナナの皮で一回転し、後頭部から地面に落ちた。
「あっははははははは!!!.....なんだよそのザマは!....自分がさんざんバカにしていた死に方を今、自分自身が体験してるんだからな。.......アーハッハッハ!」
何だろう?.....何故か今まで体験したことの無い楽しさが身体の底から沸き上がってくる感覚がある。.......これは一体...?
女は暫くバナナの皮に足を取られて立ち上がれなかった。
───────────
「うぅ......ひっく。......ご免なさい。.......偽物掴ませようとしました。.......許してください。」
「分かればいい。....ほら早く本物持ってこい。」
あの後。女に土下座させ、本物の天の叢雲を持って来させた。俺はそれをジーンズのポケットに鞘ごとしまった。.......しかし、何だろうか.....この女を土下座させていると、何故か分からないが楽しいと感じてしまう。
「ハッ、そうだ。カズマは?.....ってまだ考えてたのか。」
まぁ、これから行く異世界では何があるか分からないからな。....迷う筈だよな。
「ねぇーまだなのー早くしてよー。」
こいつ......いつの間に椅子に。.......いや、それよりも何事も無かったかのように振る舞っていやがる。
するとカズマは動きを突然止めた。
「......本当に
ん? カズマの奴、一体何を?
「え、ええ。何でもいいわよ、ほら言ってみなさい。」
するとカズマは女に向けて指を差した。
「
「へ?」
女はそう来るとは思わなかったのだろう。唖然として動かなくなってしまった。
「承知しました。」
するとどこからともなく一人の女性が現れた。青髪の女と違って優しい感じがする。
「ではアクア様の代わりは私が勤めますのでどうぞ異世界を楽しんで来て下さい。.......魔王を討伐すればアクア様もこちらに帰還させますので。」
女性はアクアにさりげなく戻る方法を伝えた。.......というかアクアって名前だったのか、それよりも何故かあの女性の顔が綻んでる様に見える。.......もしかしてこいつ嫌われてたんじゃね?
すると今度は俺達三人の身体が宙に浮き始めた。
「イヤイヤおかしいでしょ!?なんで女神の私が巻き込まれるのよー!!」
「アッハッハッハッハ!これでお前も俺と同じだな!」
カズマの奴、悪い顔してるなぁ....気持ちは分かるけど。
まぁ、何はともあれ俺達三人はこうして異世界へと転生したのである。
──────────
始まりの街 アクセル
俺とカズマは異世界に来たと分かると喜んだ。アクアはカズマに選ばれた事がショックだったのか項垂れていた。
「これから夢見た異世界生活が待ってるんだ!」
「よし!なら先ずはギルドとかがある筈だからそこを目指すか。......ん?おいどうしたよ、自称め・が・み・さ・ま?」
俺は段々この女を苛めるのが楽しくなり、調子に乗っていた。
すると突然アクアがカズマの脚にしがみつき、わんわん泣き出した。
「おいおい何泣いてんだよ。...元はといえばお前が俺ら二人を馬鹿にしたのが悪いんだろうが。.......なら責任とってお前を巻き添えにしても俺達二人は何も悪くない。.......だろ?カズマ。」
「え?..あ、おう。」
俺はカズマにそう言ってアクアの方に目を向ける。
「ほら、アクア。お前も何時までも泣いてないでとっとと案内しろ。」
俺はアクアをカズマから引き剥がしながらそう言った。
「案内って...何処によ。」
アクアは落ち着いたのか俺に対してそう聞き返す。
「とぼけんなよ。俺が案内して欲しいのは、冒険者ギルドだ。」
そう。この冒険者ギルドこそ、俺が異世界で憧れていたもののひとつであり、今後はこの冒険者ギルドに登録すれば冒険者として認められて少しは稼げる筈だ。
「おら、分かったらキビキビ歩け...そして俺たちを冒険者にするために案内しろ。」
「いたっ...ちょっと蹴らないでよ!」
「お前が動かないからだろ。」
「水の女神たるこの私に向かって...なんてことするのよこの鬼畜!」
「テメェが俺に対してナメた態度とったからこうなってるんだろ...あと自分のごと女神とか言わない方がいいぞ...変な人と思われるから。」
「はぁ!?事実なんですけど!?」
「あーハイハイそういうことにしておくから。」
「ムキーッ!!」
アクアの反論を軽く流して冒険者ギルドを探すことにした俺達。
完全に置いてけぼりだな、とカズマが呟いたが俺はそんな事よりも今は冒険者になってみたいという欲求があったため、そちらを優先することにした。
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「ハイ、此方が冒険者カードになります。」
「有り難う御座います。」
受け取った冒険者カードには俺の名前、ジョブ、そして現在のステータス値が記されている。
「おお凄ぇ....ステータス値が高い。」
これも転生する時に選んだジョブの恩恵かな?......だとしたらこれからの生活が楽しくなってきた。
「....さて、先ずはクエスト行ってみようかな。」
カズマとアクア(強制的に)を連れてクエストボードらしき物を探していると、
「あった....えーと、ジャイアントトードの討伐?」
トードと言うのはカエルの事だ。
しかもジャイアント?......つまり、巨大なカエルを討伐しろとそう言うことか。
「...よし、これにしよう。」
早速カズマに見せてみよう。
「カズマ、これなんてどうだ?」
「えーと何々...ジャイアントトードの討伐?」
「俺らみたいな駆け出し冒険者にはちょうどいいクエストじゃないか?それに、そこまで強くないらしいし...俺達に向いてると思うぜ。」
「...そうだな、なら早速行くか。」
話が纏まったようなので、早速村の外に向かおうとすると━━
「ちょ...ちょっと待ちなさいよ。」
「ん?」
アクアが文句ありげな顔をして俺を睨んできた。
「この高貴な水の女神たる私に対してカエルを討伐しろと命じるの!?」
「いや...命じるっつーか....というかお前、その水の女神とか人前で言うの止めろってさっき言ったばっかじゃなかったか?」
このアホは人の話を聞いていなかったのか?
「とにかく、私は行かないわよ。」
俺の言葉を無視してその場に座り込むアクア。
このアホ、まるで全ての決定権が自分に有るような言い草だな。
「あっそ...ならカズマ、二人だけで行くか。」
「えっ....良いのか?」
なんだよその疑ってるような顔は、別に疑っても何も無いぞ俺。
「良いんだよ、あいつは乗り切じゃないみたいだし...それにさっきジャイアントトードの肉は上手いって噂話が聞こえたから二人で肉と報酬を山分けしようぜ。」
俺はアクアに対してわざと聞こえるように言ってやった。
「おう、協力して一緒に肉を食おうぜ!」
どうやらカズマもその気になってくれたみたいだな。
「それじゃあ行こうか....えっと場所は━━━」
「ちょっと待って!?」
「あ?」
見るとアクアが立ち上がってこっちを見ていた。
「そ、そのクエスト...良かったら行ってあげても良いわよ。」
は?この女、今なんつった? 行ってあげても良いわよ?
何でこの状況でも上から目線なんだよこのアマ!?
「...いえ、結構です....それでは━━」
「ま、待って!...お願いホント待って!」
「なんだよ、めんどくせーな...そもそも、お前は行きたく無いんじゃ無かったのかよ?」
「うっ...それは...その....」
急に口ごもり始めたな。
「どうせ肉と報酬に釣られたんだろ....。」
「うっ...!」
どうやら図星のようだ。
「カズマさっさと行こう。」
こいつは無視しよう。
「お...お願いよー私も肉...食べたいの。」
このやろう...都合が良いときばかり可愛こぶりやがって...!!!
「分かった。」
俺の言葉を聞いた瞬間、パァァとアクアの表情が明るくなるのが分かった。
「ただし!...今この場で謝罪して貰おうか。」
「は?謝罪?」
コイツ.....ホントに殴ってやろうか....!!!
「当たり前だろ.....そうだな...調子に乗って済みませんでした、今後はハルカさんに逆らいません...と謝罪するなら考えてやってもいいぞ。」
「はぁ!?....何で私がそんな事を━━━」
「あっそ、ならカズマと二人だけでクエスト行くだけだ..じゃあな。」
「まっ...待って!」
「あ?」
振り替えると土下座して此方を見ているアクアがいた。
「お....お願い....します...わ...私を連れて行って下さい.....ちょっ....調子に乗って....済みません...でした...今後は....ハルカ....さんに逆らい....ません」グスッ
目に涙を溜めながら土下座するアクア
今まで土下座なんてしたことなかったんだろう、悔しさのあまりに泣きながらしている
「......プライド無いのか、お前?」
「ちょっと!?幾らなんでもその言い方はあんまりじゃない!?」
「冗談だ...分かった、ならさっさと行くぞ。」
アクアを立ち上がらせて街の外へと向かう。
この時、俺はアクアに土下座をさせて気分が良かった為気付かなかった。
自分のこの街での呼び名を━━━━
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