R団の3中隊長と不思議な少女~アローラ編~ (長星浪漫)
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「常夏の地、アローラ!!」

お久しぶりです、長星浪漫です。
書きたかった続きをようやく書き始めることができました。今回はアローラ地方を舞台にして、冒険モノのようにしていけたらと考えています。
 時間軸は原作のサン・ムーンへんの主人公のサンとムーンが島巡りの証を手に入れる少し前からスタートします。原作を意識しながら書くつもりですが、ポケスペのキャラを今回はたくさん出してみたいので本来原作では出ないキャラとかも書いていきます!
 
あと、この作品は一応前に書いた「R団のズッコケ3中隊長と不思議少女」の続編なので、もしこの小説を始めて見つけてくださった方、これから読んでいただいても楽しんでいただけるように書けるように努力いたしますが、よろしければ前作も読んでいただければうれしいです!

キャラクター紹介

主人公
ミモザ…この小説の主人公で、作者オリジナルのキャラクター。カロス地方出身。幼い頃に両親を亡くし、今はサカキの養子としてR団に入っている。

ケン…元マチス中隊の中隊長
リョウ…元ナツメ中隊の中隊長
ハリー…元キョウ中隊の中隊長

サカキ…R団のボス

とりあえず重要なキャラのみをざっと書きました。本編でも紹介しているので参考にしてください!

長々と失礼しました!それでは始まります!


 照りつける太陽。ここはリゾート地として有名なアローラ地方。4つの島からなるこの地方は独自の進化や変化を遂げたポケモンが数多く存在している。またこの地方独特の風習もたくさんあり訪れる人たちを驚かせている。

 そんなアローラ地方のメレメレ島ハウオリシティの港に四人のトレーナーが降り立った。

 

「「「アローラ~!」」」

 

 四人のうちの男性三人が両手を高くあげ声を揃えて叫んだ。その様子をあと一人の少女があきれた様子で横に並ぶ。

 

「浮かれすぎなの」

 

 少女の名前はミモザ。昨日11歳になったばかりだ。肩まである髪の毛を一つに結んでポニーテールにしている。白を基調とし、黒いフリルがついたワンピースを着ている。頭にはキマワリの顔の部分だけのぬいぐるみがついた麦わら帽子を被っている。

 見た目はどこにでもいそうな普通の少女だが、彼女はR団のボスであるサカキの養子であり、他の三人とともに<R団特殊任務実行部隊>通称<R.S.E>というサカキ直属の部隊に所属している。実力は幹部クラスといっても過言ではなく、一般人では想像できないような過去をもつ。

 

「だってアローラ地方だぜ!有名な観光地なんだぜ!」

 

 豪快に笑うのは黒髪短髪で長いモミアゲと団子鼻が特徴的な<R.S.E>の一人で元マチス中隊の隊長だったケンだ。

 四人の中では一番体格がよく力持ちだ。今はサングラスをかけているのでいつも以上にいかつく見える。カラフルなヤシの木が描かれたアローラシャツを着ておりズボンは半ズボンだ。格好からも浮かれている感じがバッチリと伝わってくる。

 

「おい!俺アーカラ島のオハナ牧場でソフトクリーム食いたい!」

 

 《世界の歩き方~アローラ地方~》を熱心に読みながら興奮気味に提案しているのは銀髪でもみあげの先っぽが爆発している元ナツメ中隊の隊長リョウだ。ケンのかけているサングラスよりは若干色が薄いおしゃれグラスをつけていて、キレイハナの髪飾りの花柄が描かれたアロハシャツにやはり短パンを履いている。

 そんな二人をあきれた目で見ているミモザの肩を最後の一人ハリーが叩いた。

 

「まぁ大目に見てやってくれよ。サカキ様から直接休暇をもらえるなんてそうそうないんだからさ」

 

 ハリーは元キョウ中隊の隊長で、長い金髪を今は結ぶことなくそのままにしている。服装も無地のTシャツに半袖の薄い上着を着ている。下には通気性がいいジーパンを履いている。

 

「はしゃぐなとは言わないけど…サカキ様が仰ったここに来た目的(・・・・・・・)も忘れちゃいけないの」

 

 

 

 ー数日前ー

 〈R.S.E.〉の四人はサカキに呼び出されていた。四人でチームを組んで始めての任務を聞くためだ。いつも通り三十分前行動のケン、リョウ、ハリーが先に部屋にスタンバイしており、十分前にミモザが入ってくる。そして時間ちょうどにサカキがスピアーをともなって部屋に入ってきた。

 

「お前たち、よく集まってくれた」

「は!」

「我々、サカキ様が『来い』とおっしゃれば地球の裏側にだって駆けつける所存です!」

(ミモザは行ける範囲でなら…)

 

 少し温度差があるケン、リョウ、ハリー、ミモザの四人。サカキはそれを少しおかしく感じながらも話を続ける。

 

「早速だが、お前たち四人にはアローラ地方へ行ってもらう」

「アローラ…ですか?」

「そうだ」

「もしかしなくても、あの観光地として有名な…?」

「アローラ地方だ」

 

 しつこく聞いてくる部下にも気分を悪くしたりせずに繰り返すサカキ。「観光地」というワードに少し表情を緩めるミモザ以外の三人。しかしすぐにその顔が元に戻る。

 

「お前たちには任務でアローラに向かってもらう」

「あっ…」

「ですよね…」

「はい…」

「にゃおにゃお」

 

 ミモザが出したニャオニクスが三人のおしりを“ふいうち”した。

 

「あぃだぁ!」

「ぎゃお!」

「~~~!!」

 

 三者三葉の反応を見せて尻を押さえる。ミモザは代りにサカキに詳細を聞いた。

 

「どんな任務なの?」

「調査だ」

「調査?」

「アローラ地方は観光地である一方、ポケモンジムやリーグもない変わった土地だ。俺はそこに新たにR団の拠点を築こうと考えていた。しかし最近アローラで調査活動を命じた者から妙な報告が入った」

「どんな、いちち…報告ですか?」

 

 ケンが尻を押さえたまま会話に入ってきた。

 

「『アローラ地方でR団の姿を見た』という人間が何人かいるらしい」

「!!!!」

「もちろん俺が送り込んだりはしていない。向こうに向かわせているのは一人だけだ」

「誰かがR団をかたっている…ということでしょうか?」

「それがわからんのだ。なのでお前たちに調査に行ってもらおうというわけだ」

「了解しました!」

「お任せください」

 

 四人はサカキに頭をたれる。

 

「まだ話は終わっていないぞ」

 

 四人は顔をあげた。サカキはさらに“旅の目的”を伝える。

 

「先日お前たちの特訓の際に感じたのだが、手持ちの戦力が少し片寄りすぎている」

「そうでしょうか?」

「ドサイドンに対して有効なタイプがオクタンだけだったろう?あの時は勝てたが毎回そううまくいくとはかぎらんからな」

「ということは“戦力の強化”も目的なの?」

「そうだ、お前たちには最低でも一匹は新たな手持ちを入手してきてもらう」

「了解しました!」

「あともうひとつ“アローラ地方の知識”を得てこい」

「え?どういうことですか?」

 

 意図がわからず聞き返すハリー。

 

「特訓の時にもうひとつ思ったことがあるのだが、ミモザも含めお前たちにはアローラ地方の知識かなさすぎだ」

「返す言葉もありません!」

「です!」

「はい!」

「むうぅなの…」

「あの洞穴にいたのはジジーロンというドラゴンポケモンだ。ドサイドンの時のイシツブテは『リージョンフォーム』といって、他の地方に適応した姿でいわ・じめんからいわ・でんきにタイプを変えている」

「「「そうなんですね~」」」

 

 ほわ~っと聞く三人。ミモザはしっかりメモを取っている。サカキは旅の目的をまとめた。

 

「お前たちがアローラに行く目的は3つだ。“新たな手持ちの獲得”、“アローラ地方の知識の獲得”、“謎のR団の調査”だ」

「「「了解しました!」」」

「わかったの!」

「…あとこれもくれてやろう」

 

 ビシッと敬礼する四人の前に四枚の紙を置く。四人はそれを拾ってよく見た。そして愕然とした。

 

「サ、サ、サカキ様!?こ、これは、一体!?(リョウ裏声)」

「今回の旅の資金だ。旅費や宿泊費は別で用意してあるから安心しろ」

「ヴェエェ!?こ、この額で旅費とかは別に出るんですかぁぁ!??!?」

 

 ひっくり返るケン。ハリーとミモザは汗を流しながら顔を見合わせる。ミモザは元お嬢様だが、R団員となってからのほうが長いので巨額を見慣れていなかった。

 

「ちょっと多すぎる気が…するの…」

 

 四人の反応を楽しそうに眺めていたサカキは笑いを噛み殺しながら説明した。

 

「たまには褒美をやらねばいかんからな、任務とは言ったが、少しくらいはリゾートを楽しんでこい」

「「「ありがとうございますサカキ様あぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 顔をぐちゃぐちゃにしながら喜ぶケン、リョウ、ハリー。プチ休暇をもらえたことよりもサカキに労われたことのほうが嬉しいようだ。ミモザは緩みそうなほっぺを必死に押さえ、両手で顔を押さえながらという妙な格好でサカキにお礼を言った。

 

「あ、ありぃがとぅなの」

「…!」

 

 そのあまりに奇妙な顔にサカキは笑いをこらえながら顔をそらし、「…気にするな」と答えた。

 

 

 

ー現在ー

「…というわけで!“三つの目的”!覚えてるの!?」

 

 小さい肩を怒らせながら叫ぶミモザ。ケンとリョウは肩をすくめ「ヤレヤレ」といった表情をつくる。

 

「わかってますよ、ミモザさ~ん」

「でも、『リゾートを楽しんでこい…』とも言われましたあぁー!」

 

 くねくね体をくねらせながらふざけるケンとリョウ。

 

「………」

 

 口の橋をひくつかせながら無言でギルガルドが入ったボールへ手を伸ばすミモザ。それを察知したハリーが慌てて大声で現時点での目的地を伝える。

 

「えっとぉ!このまま一番道路まで向かって道の奥にある一軒家を目指すぞぉ!」

 

 ハリーの声に冷静になる他三人。ハリーはほっとして続ける。

 

「そこにいけばサカキ様がアローラに送り込んでいるR団の元幹部クラスの誰かが待っているらしい」

「えっ!?誰々?マチス様か?」

「いや、意外とアポロ様とか…?オレあの人苦手なんだよな」

「詳しくは書いてないな…」

「ウダウダやっていてもしかたないの!早く行くの!」

 

 ミモザの号令で三人はアローラの地を踏みしめ歩き始めた。この先見たこともないような体験やポケモンたちがこの四人の前に現れるだろう。

 ケン、リョウ、ハリーそしてミモザの四人の新しい旅が始まる!




 読んでいただいてありがとうございました!!ゆっくり書いていきますのでまたみつけたら読んでください!


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第一章「メレメレ島」
「スカルな奴等」


久しぶりの投稿です。
リアルのほうがかなり忙しい上に例の感染症にもかかってしまっていたのでかなりヤバかったです。

作中にいくつかオリジナルの味のマラサダが出ていますが、どうか黙認してください



 四人は港を出て目的地の一番道路へ向かい始めた。港を出てすぐにマラサダショップを見つけた。

 

「お!ちょうどいいや食べていこうぜ」

 

 財布を探りながら中に入ろうとするリョウ。ケンとハリーは乗り気で、ミモザはやれやれといった感じでついていこうとした時、四人を呼び止めるものがいた.。

 

「HEY!HEY!そこの旅行者ぁちょっと待つじゃん?」

「ん?」

 

 四人が振りかえるとそこには妙な格好をした男女の集団がいて、妙なリズムを刻んでいた。

 

「YO!YO! なかなか重そうな財布ジャン?」

「うちらもおなかすいてんだよね、だからその財布を置いてきな」

「その荷物とついでに手持ちのボールも置いてきな?」

「YEAR!!」

 

 びしっとポーズを決める。四人はポカンとその集団をただ眺めた。

 

「なんだこいつら?」

 

 ハリーが困ったようにミモザに聞く。

 

「確か〈スカル団〉っていう組織?だったと思うの。アローラ地方の観光案内に要注意って書いてあったの」

「組織ってことは俺たちみたいな感じなのか?」

「あまり一緒に考えたくはないの、人のポケモン奪ったり、お金を盗んだり、ポケモンを売ったりはするけど、基本はチンピラの集まりなの」

「なんだ…じゃあ俺たちは今、街のチンピラにからまれてるってことか」

「まぁ、そんなとこなの」

「なにゴチャゴチャいってんだコラァ!!」

 

 一番前の耳にモンスターボールのピアスをジャラジャラつけた男のスカル団がボールを構えて前に出る。

 

「おとなしく渡せばそのキャリーバックの中身くらいは見逃してやるYO!さっさと置いてけ~?」

 

 目茶苦茶なめ腐った態度で挑発してくる。他の団員も「YEAR~」とか「FOOO~!」とかいって囃し立ててくる。正直相手にはしたくない。

 

「ハリー、マタドガスの“えんまく”で適当にあしらう…」

 

 ミモザがその場を切り抜ける方法をいくつか提案しようとしたのに、

 

「やってやらあぁぁぁ!」

「かかってこいやあぁぁぉぉぉ!」

 

 ケンとリョウはのりのりだった。

 

「えっ…?」

 

 その反応にミモザのみならず、つっかかってきたスカル団も言葉を失ってしまった。が、すぐに我に帰った。

 

「い、いい度胸してんジャン?ついてこいや、ちょうど空き地があるからYO?」

「わかったついていってやるYO?」

 

 ノリノリでついていくケンとリョウ。その姿を見てため息をつくミモザ。

 

「アローラについていきなり面倒事に巻き込まれたの…」

「まぁあの二人だから仕方ないよ」

「…ハリーも楽しそうなの」

「えっ!?そ、そんなことはない…YO?」

 

 言葉ににじみ出てしまう気持ち。ミモザは頭を振りあきらめる。

 

「せめて事が大きくなりすぎないように気を付けて見ていてほしいの」

「それはもちろん。ミモザはどうする?」

「ミモザはマラサダを買ってからいくの、せっかくアローラに来たんだから…」

 

 ここでミモザはハッと口を覆った。しかし、ハリーはもう聞いていた。

 

「フフフ、ミモザもチェックしてたんだな」

「ううううるさいの!ハリーのやつは〈えげつないマラサダ〉にしてやるの!」

「え?なにそれ怖い!ごめんって!」

「早く二人の監視に行くの!」

「わかったよ!ていうか一番スタンダードな味にしてくれよ!?」

「気が向いたら~なの」

 

 頬を膨らませながらマラサダショップに入っていくミモザを苦笑しながら見送り、ケンとリョウが向かった空き地に向かった。行く途中で交番を見つけたが今は不在のようだった。その隣に奥に続く道がありその先にちょうどバトルができそうなスペースがあった。その中央あたりにケンとリョウがいた。周りをスカル団が囲んでいる。

 

(人数は…八人くらいかな?)

 

 ハリーは少し離れたところでバトルの様子を見守ることにした。

 

「さぁ!始めまスカ!」

 

 八人が一斉にボールを投げる。現れたのはヤングースが三匹、ツツケラが二匹、アローラベトベターが一匹、ズバットが二匹。ケン、リョウ、ハリーはベトベターに目を奪われた。

 

「あのベトベターすごい色してるぞ!?」

「歯みたいなのもあるな…亜種か?」

「いや、ケン、リョウ!あれは『リージョンフォーム』ってやつだ!!」

「おぉこれがか…」

 

 『リージョンフォーム』。異なる環境におかれたポケモンがその環境に適応しようと変化した姿である。見た目だけではなくタイプや特性がかわる個体もいる。

 なにはともあれケンとリョウのテンションはめちゃめちゃ上がった。

 

「いいじゃーん!思いっきりいかせてもらうぜ!いけ!エレキッド!」

「少しは楽しませてくれよ!いけ!ゲンガー!」

 

 ボールからエレキッドとゲンガーが現れ、その瞬間バトルが始まった。

 

「ヤングース!“たいあたり”!」

 

 ヤングースたちが突っ込んでいく。それに合わせてツツケラが“つつく”で上空から攻撃してくる。しかし、ゲンガーが建物の影を利用し、高くまで体を伸ばしながらヤングースの“たいあたり”を退け、エレキッドをツツケラの上から落とす。エレキッドは帯電する拳をツツケラにむけた。

 

「“かみなりパンチ”!」

 

 電気を帯びたパンチがツツケラに降り下ろされた。一匹はかわしたがもう一匹にヒットし一撃でひんしになる。

 

「ツツケラが!」

「おいおい、上ばかり見ていていいのか?」

「え?」

 

 リョウの言葉に上を向いていた全員が視線を戻す。その瞬間、ゲンガーが影から飛び出た。

 

「“シャドーパンチ”!」

 

 ゲンガーが怪しく笑い拳を振るとアローラベトベター、ズバット二匹の真横にゲンガーの腕が現れきつい一撃を叩き込む。アローラベトベターはなんとか耐えたが、ズバットは倒れてしまった。

 あっさり三匹がノックアウトされてしまい焦り始めるスカル団。

 

「ヤングース!“とっしん”!」

「ベトベター!“ヘドロこうげき”!」

 

 ゲンガーに向かって効果のない技(・・・・・・)を連発してしまう。ヤングースはすり抜け、ベトベターの攻撃は全く効いていない。攻撃を受けたゲンガーはヤレヤレといった感じでベトベターにつめよる。ベトベターはゲンガーの攻撃を警戒してゲンガーから目を放さない。しかし、それが命取り。

 

「ベトベター!後ろを見ろぉ!」

「!」

 

 ご主人の命令に後ろを向こうとしたが、その前に後頭部に強烈な“きあいパンチ”が打ち込まれた。

 

「……!」

 

 ベトベターは声をあげる間(声を発するかは不明だが)ひんしになった。

 

「ツツケラ!“つつく”!」

「ヤングース!“かみくだく”!」

 

 今度はちゃんと当たる技を指示し、三匹がそれに従う。ゲンガーとエレキッドは背中合わせになり、三匹が射程範囲(・・・・)に入る瞬間をまった。そしてー

 

「「“かみなり”!」」

 

 ゲンガーとエレキッドの上に雷雲が立ち込め、“かみなり”が落ちる。スカル団の三匹はそれに見事に巻き込まれひんしになった。

 十分程ですべての手持ちがひんしになってしまうという事態にスカル団の面々は唖然となった。誰もしゃべらないのでケンとリョウが喋り出す。

 

「おいおい、どうしたよ?」

 

 リョウが一歩前に踏み出すとスカル団は一歩下がる。

 

「もうおしまいか?んん?」

 

 ケンも指をならしながら周りのスカル団を見回す。すると、マラサダショップ前で最初にからんできたスカル団員が新しいボールを構えながら少し上ずった声で少し切れぎみに前に出る。

 

「は、はぁ!?まだまだこれからですケド?なぁぁみんなぁ!」

 

 その団員の声に我にかえり他の団員もボールを構える。何人かは構えていないが恐らくさっきので手持ちがいなくなったのだろう。

 

「いけやー!!」

 

 新たなボールを投げたのは五人。出てきたポケモンはデカグースがに二匹、ヌイコグマが一匹にタマタマ、ケララッパだった。

 

「おお~!また見たことないポケモンが何匹かいるなぁ!」

「あの熊ポケモン、ぬいぐるみ…?」

「なんでもいいぜ!いくぞ!」

 

 ケンとリョウvsスカル団の第二戦が始まった。しかしこの時、ケンとリョウは気づいていなかった。スカル団員の数が二人ほど減っていることに。




今回の連載は前作みたいなは1話の分量を統一しない前提で書いていこうと思っています。
といってもまだまだ忙しい日々は続くので次の投稿は大分先になると思います。


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「一番道路のその先で」

書いているうちにやめどころがわからなくなり今回はかなり長めです


 ミモザは〈マラサダショップ〉で四人分のマラサダと手持ち用のマラサダを選んでいた。ギルガルドなどの食事を必要としないポケモンを除いてもかなりの量になった。

 

「お嬢さん、大丈夫かい?」

 

 店員も心配そうだ。だがミモザは「大丈夫なの」とボールからニャオニクスをだした。

 

「にゃおにゃお、手伝ってなの」

「にゃ~お」

 

 一声鳴くと“ねんりき”で袋を持ち上げる。それを見て店員は「ほぉー」と感心した。自分達用のマラサダを持ち、店を出ていった。だが、出てすぐに先ほどのスカル団のうちの二人に行く手を阻まれた。

 

「…」

 

 ミモザは黙って目の前の二人を観察した。男女の二人で格好はほぼ一緒。手持ちのツツケラとヤングースを従えている。相手は自分の圧倒的有利を疑っておらずかなり余裕の表情だ。その証拠にさっきから男のほうが頭をぐりぐり動かしてめっちゃガンをとばしてくる。

 

「HEYヘーイ?うまそうなもんもってんジャン?」

 

 頭の動作に加え両手も動かし始めた。

 

「あたしらの事はわかってんだよね?ね?」

 

 女の方は高圧的にしゃべりかけてくる。

 

「…」

 

 ミモザは黙ったままだったが、その目には少しヤバめの光が宿っていた。そんなこととはつゆ知らず、だんまりをきめこむミモザを「怖じ気づいた」と思った二人はさらに調子づく。

 

「ブルってる?ブルってるんでスカ~!?」

「おとなしくあたしらの人質になりな!!」

 

 二人がツツケラとヤングースをけしかけてきた。ミモザは荷物を持っているので動けない。ミモザはため息をついた。

 

「はぁ…しょうがないの」

 

 ミモザは自分が持っている袋を真上に放り投げた。

 

「ん?」

「スカ?」

 

 スカル団二人の目線が無意識にそちらを向く。ミモザか上半身を低くし、背後に控えていたギルガルドが前に出る。

 

「“きりさく”」

 

 『ブレードフォルム』のギルガルドが剣の体でツツケラとヤングースを一閃、そのまま体の刃がない部分で男のスカル団員の頭を打つ。

 

「あぎゃん!」

 

 不思議な声をあげて男のスカル団員が気絶した。

 

「ちょ、え?…まっ…」

 

 女のスカル団員は目の前の状況についていけずパニックになっていた。すかさずミモザは女スカル団員にタックルし、バランスを崩したところで女スカル団員の右手と胸ぐらをつかみ、体を反転させる勢いで女スカル団員を背負い投げた。

 

「あいだぁ!?」

 

 女スカル団員は背中を思いきりうち痛みに悶える。その間にポケットから銀色に光るものをだし女スカル団員の首もとにあてる。

 

「動かないほうがいいの」

「ひぃ…!」

 

 女スカル団員は首もとにあたるひんやりした鉄の感触に短く悲鳴をあげた。

 

「うわぁ!?」

 

 隣では男スカル団員が首もとにギルガルドの刃が当てられているのに気づき叫び声をあげる。ミモザは無表情で二人に告げる。

 

「おとなしくミモザの言うことを聞けばなにもしないの」

 

 ミモザの言葉に二人は激しく頷いた。

 

 

 

 路地裏での戦いも終わりが近づいていた。

 

「ゲンガー!“きあいだま”!」

「エレキッド!“スピードスター”!」

 

 戦いというよりも一方的な蹂躙だった。スカル団の手持ちは残りわずかなのに対してケンとリョウは無傷だった。スカル団は焦っていた。

 

「お、おい、こいつらただの観光客じゃねぇのかよ!」

「落ち着け!二人がそろそろ来るはずだ!」

「それまでなんとか持ちこたえろ!」

 

 その時、路地裏に入ってくる影が三つ。

 

「やっと来たか!」

 

 スカル団が希望に満ちた顔でその影のほうを見た。するとその表情は一瞬でドーミラーみたいに青ざめた。

 そこにはミモザに付き従うようにスカル団の二人がマラサダの袋を持っていた。その二人をギルガルドと先程ミモザが女スカル団員の首に突きつけたものを預かったクレッフィが刃を突きつけている。

 

「こ、このガキやべぇよ!」

 

 男スカル団員は泣いている。ミモザは二人をそのままにしハリーを睨み付けた。

 

「ハリー?この二人がいなくなったことに気づいてたんじゃないの?」

「…まぁ、一応ね。でもミモザなら大丈夫だったろ?」

「はぁ、おかげさまで…なの」

 

 ミモザはため息をはきながら二人に向き直る。

 

「運んでくれてありがとうなの。その紙袋をそこの男に預けるの」

 

 人質のスカル二人は言われるがまま紙袋をハリーに渡した。渡しおえるとギルガルドとクレッフィから解放した。

 

「もう行っていいの」

「「ひいぃぃ~!」」

 

 スカル団の二人は転げるように仲間の元に走っていった。その姿に一人のスカル団員かわあきれた声をだす。

 

「おいおいお~い!あんなガキ一人になにをてこずって…」

「「お前はあのガキ…あの女の子の怖さを体感してないからそう言えるんだ~!!」」

「え、ご、ごめん」

 

 二人が必死の形相で声を揃えてキレてきたので気圧された団員は思わず謝る。二人の話は続く。

 

「なんの躊躇もなくギルガルドに切りかからせてきたんだぜ!?」

「あたしなんか子供とは思えない力で背中から地面に叩きつけられたかと思ったら、あの子が首もとにナイフを押し付けてきたんだよ!!」

「ああ!それに表情ひとつかえずに『このまま首をかっさばくぞ?』って言ってきたんだよ!」

「そうよ!それでお気にのタンクトップを少しずつ切り始めたのよ!」

「いや、そこまでやってないの」

 

 途中から誇張が入ってきたのでさすがに割り込んできたミモザ。話していた団員二人は「ヒィッ」と小さく悲鳴をあげて話すのをやめる。ミモザは右手を腰にあて左手にフォーク(・・・・)を持って振っている。

 

「さっき首にあてたのはこれなの」

「は?フォーク??」

「う、うそだ!」

「じゃあ聞くけど、首にあてられたものをしっかり確認したの?」

「え?えーっと…」

 

 団員二人は考え込む。しかし、首にあてられていたものがなんなのか確認した覚えはなかった。

 

「あの状況で首に相手に見えないように“ナイフのようなもの”を押しあてれば、相手が混乱しているほどそれを“ナイフ”と思い込んでしまうことがあるの。まぁ、肝が座った相手には通用しないんだけど…効果バツグンだったの」

 

 最後の方は笑いをこらえるミモザ。それを見てオクタンのように顔を真っ赤にするスカル団員二人。衝動的に腰のボールに手をかけようとした瞬間、その手をニャオニクスの“サイケこうせん”が襲う。

 

「きゃあ!?」

「つぅわ!?」

 

 手からボールを落とす二人、一方ケン、リョウ、ハリー、ミモザの四人はエレキッド、スリーパー、ドラピオン、ニャオニクスをくりだし攻撃の体勢をとっている。ケンが進み出てスカル団を睨み付ける。

 

「まだやるか?俺たちは構わないが?」

「くっ!覚えてろ!!」

 

 よく聞く捨て台詞を残しスカル団はそそくさと走っていった。ミモザたち四人は手持ちをボールに戻した。

 

「アローラに着いて早速手荒い歓迎だな」

「肩慣らしにもならなかったぜ」

 

 物足りなそうに笑う二人をあきれた様子で見るミモザ。

 

「いきなり面倒ごとに巻き込まれるのはよくないの。もっと穏便にすますべきなの」

「そんなこと言って、ミモザもかなりやってたみたいじゃん?」

「…」

 

 ハリーにからかわれ「ふぅ…」とため息をついたミモザはおもむろにマラサダが入った袋からマラサダを一つ取り出した。それを片手ににっこり笑う。

 

「ハリーの分のマラサダなの」

「ん?いや、今はいい…」

「ふん!」

「むぐっ!?」

 

 強引にハリーの口に突っ込まれるマラサダ。驚き固まるケンとリョウ。ハリーの顔がみるみる赤くなり汗が吹き出してくる。

 

「辛ーーーーーーーー!!」

 

 ハリーが食べたのはミモザが頼んで作ってもらった《マトマのみ》やタバスコをたっぷり使った激辛マラサダだった。辛さでのたうつハリーを冷たい目線で見下ろしながら

 

「ミモザをからかった罰なの」

 

 《ミックスオレ》をハリーの目の前におきながらほとんど無表情でポツリと呟くと、ケンに残りの袋を渡して路地裏を出ていった。その背中を見ながらケンとリョウは《ミックスオレ》をがぶ飲みするハリーの肩を叩く。

 

「なにしたんだお前?」

「はぁっ、ふぅ…いや、気にしないで…」

 

 先に買っておいた《おいしいみず》も飲み干しやっと落ち着いたハリーはすっくと立ち上がり、ケン、リョウとミモザの後を追った。

 四人は道なりにハウオリシティを進み、ポケモンセンターの前を通りすぎ、ブティックやビーチに気を引かれながらも進み、ハウオリシティはずれのトレーナーズスクールを通りすぎ、一番道路をずっと奥まで進み、吊り橋を渡ってすぐの分かれ道を右に進んだところに目的地はあった。

 

「ここだ」

 

 そこにはポケモンセンターくらいの大きさのログハウスがあった。

 

「で?誰がここにいるんだ?」

「おれは聞いてないな、リョウは?」

「俺も聞いてない、ミモザ?」

「聞いてないの、人の気配はちゃんとしているの」

 

 とりあえず中に入ろうと扉に近づいた時、近くの草むらから何かが“ころがって”きた。

 

「フィフィ、“フェアリーロック”!」

 

 クレッフィを出し動きを止めにかかる。相手はビシッと動きが止まった。幾つか穴の空いた赤い壺のようだった。すぐにハリーが追撃する。

 

「ドラピオン!“シザークロス”!」

 

 ドラピオンの強力な一撃が繰り出される。攻撃を受けた壺のようなものには傷ひとつつかなかった。

 

「ドラピオン!もう一度だ!」

 

 ドラピオンがもう一度“シザークロス”を叩き込む。しかし、やはり傷ひとつつかない。と、ドラピオンの攻撃のあとその赤い壺が急に消えた。

 

「ん!?どこにいった!??」

 

 ドラピオンも辺りを探しているとケンがそれを見つけた。

 

「ドラピオンの左手だ!」

 

 全員が一斉にそこを見ると確かにドラピオンの左手にさっきの壺が“からみついて(・・・・・・)”いた。壺のようなものの穴から黄色い触手のようなものが伸びてドラピオンの左手をがっしりつかんでいる。

 

「ドラピオン!ふりはらえ!」

 

 ドラピオンは必死に左手を振り回すが全く取れない。やがて壺のようなものの正体がわかった。

 

「ツボツボなの!」

 

 ミモザが名前を叫ぶのと同時にツボツボはその顔を見せる。つぶらな瞳をニヤリと歪めながら。そしてどんどん体を伸ばし“からみつく”範囲を増やしていく。

 

「ドラピオン!早く振りほどけ!」

 

 ドラピオンは必死に腕を振り回すがツボツボは全く離れない。それどころかどんどんドラピオンの腕を締め付け始める。

 

「ギーーーー!!」

 

 苦しむドラピオン。ハリーは焦り始める。

 

「どうして振りほどけない!?」

「ツボツボはそんなにパワーはないはず…そうか!」

「“パワートリック”か!!」

 

 “パワートリック”。物理防御と物理攻撃の数値を入れ換える技。ツボツボは攻撃や素早さこそないが、防御力に関してはトップクラスである。その防御力が攻撃力に変化したのならばそれはかなり恐ろしいことになる。

 ツボツボは“パワートリック”に気づかれたのと同時にさらに力を込める。ドラピオンの爪にひびが入る音がした。

 

「ドラピオン!」

「早く攻撃するの!“パワートリック”をしたってことは今の防御力は低いはずなの!」

「わかった!ドラピオン!“つめとぎ”!」

 

 ドラピオンが右腕を研ぎ澄ます。

 

「“どくづき”!」

 

 ドラピオンの鋭い爪がツボツボの黄色い本体を捉えた。その部分が削り落ちる。

 

「よっしゃあ!」

「…あ!まだなの!」

 

 ミモザの言った通りツボツボのダメージを受けた部分が一瞬で治る。

 

「“じこさいせい”!!」

 

 体力を回復する“じこさいせい”。ツボツボへのダメージはすべて回復していた。だが問題はそこではない。

 

「なんでだ!?ダメージがあんまりなかったぞ!?」

「物理防御があまり下がっていないのか…?」

 

 よく見るとドラピオンへのダメージ量が増えているようだった。まるでドラピオンの物理防御が下がったようだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「“ガードシェア”!」

 

 全員がツボツボが発動した技に気づく。ガードシェアはお互いの防御力を足して分け合う技だ。“パワートリック”で下がった防御力を“ガードシェア”でわけあたえたことによりドラピオンの防御力が元々より下がってしまったのだ。

 

「ギギギ…」

 

 ドラピオンがさらに苦しみ始める。腕からミシミシときしむような音をたてはじめる。

 

「しかしここまでの戦術を野生のポケモンができるのか?」

「そもそもツボツボはここまで好戦的じゃないはずだぜ」

「誰かの手持ち?」

「いや、そんなことより俺のドラピオンがヤバイんだけど!?」

「それなら安心するの、もう倒す手だては考えているの」

「え!?」

 

 ハリーはポカンとした表情になった。だが、他の二人は察したようで、マルマインとゲンガーを繰り出した。

 

「突然襲われたからテンパっちまった」

 

 ケンがガシガシと頭をかく。

 

「よく考えたら簡単な方法だった」

 

 リョウがニヤリとハリーに笑いかける。それを見たハリーは二人が出した手持ちでなにかを察した。

 

「早めに対処を頼むぜ!もう体力がギリギリだ!」

 

 少し涙目のハリーの肩を軽く叩きミモザ。

 

「大丈夫、すぐに終わるの」

 

 ミモザが思いきり手のひらを打ち合わせた。その音にツボツボが反応し顔をそちらに向けた。それを見計らってケンとリョウが攻撃を始める。

 

「マルマイン!“ソニックブーム”!」

「ゲンガー!“ナイトヘッド”!」

 

 二匹が放った技はよそ見をしていたツボツボにあたり、防御力を無視してダメージを与える。しかし、“じこさいせい”ですぐに回復してくる。しかし…

 

「…??…!!?!」

 

 体は再生しなかった。何度“じこさいせい”を行っても発動しない。混乱していると後ろからカチャリとなにかが閉まるような音がした。ツボツボがそちらを振り返るとクレッフィが“かいふくふうじ”を発動していた。

 

「防御力無視の技で体力を確実に削り、“かいふくふうじ”で回復をできなくする…こんな簡単なことにすぐに思い当たらなかったなんてまだまだミモザも勉強が足りないの」

 

 ミモザが反省している間にも攻撃は続き、とうとうツボツボかわドラピオンの左手からはずれた。すぐさまハリーはドラピオンを戻した。ツボツボは目を回して文字どおり伸びている。

 

「なんとか終わった…」

「いや、まだだ。念のためツボツボに止めをさしておこう」

 

 ケンがエレキッドを従えツボツボに迫ろうとしたその時、

 

「待つんだなー!その必要はないんだな!」

「誰だ!?」

 

 突然聞こえた声に全員に緊張が走る。それぞれ動ける手持ちを出し四方を見回しているとログハウスの扉が開いていてそこに大柄な一人の男が現れた。ミモザ以外の三人はその人物が誰だかわかると反射的に背筋を伸ばした。

 

「まさかあなたがここにいらっしゃるとは!」

(…誰なの?)

 

 日の入りが近づき真っ赤な夕日を浴びなからその男はツボツボをボールに戻した。そしてのっしのっしと入り口の小さな階段を降りてくる。ケン、リョウ、ハリーの三人はビシッとした姿勢を崩さないが、ミモザはギルガルドとともにまだ警戒している。大男は階段を降りると四人の前に止まり、まるでフランケンシュタインの怪物のような顔をくしゃっとほころばせながら自己紹介をした。

 

「お前たち三人は久しぶりなんだな、そしてその女の子がボスの言っていたボスの養女(むすめ)のミモザなんだな?オデはかつてR団の《デオキシス捕獲作戦》の時に三銃士としてナナシマ襲撃に参加した、オウカなんだな」

「「「お久しぶりです!オウカ様」」」

 

 ケン、リョウ、ハリー三人が声をハモらせて敬礼する。ミモザは警戒したままだが返事を返した。

 

「R団<R.S.E>の一人、ミモザなの」

「よろしくなんだな、ミモザちゃん」

 

 またまたくしゃっと顔をほころばせながら手を差し出してくる。ミモザは恐る恐るその手を握り返した。といっても相手の手が大きすぎてミモザの手を完全に覆ってしまっていたのだが…、ただ、ミモザはその手越しにオウカが自分に対して敵意を持っていないのを感じ取ったのでやっと警戒が解けた。

 オウカは四人の荷物を軽々持ち上げると中に入るように促した。

 

「さっ、中に入るんだな。晩御飯は準備できてるんだな~」

 

 そういうとオウカはのしのしと中に入っていった。ケン、リョウ、ハリー、ミモザの四人もそれに続いて中に入っていった。

 

 




今回登場したオウカは原作のナナシマ編に登場したキャラクターです。
原作ではナナシマの戦いのあと行方不明となっています。次の話で詳しく書く予定ですが、この小説のなかでは「ナナシマの戦いのあとに気絶しているところをサカキに助けてもらった」というオリジナルの設定でいく予定ですので、何卒お願いします。


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「VSカプ・コケコ」

今回久しぶりの投稿です。
かなり長くなってしまいました


「というわけで、チャクラのフォレトスの“だいばくはつ”に巻き込まれた後、倒れていたオデをサカキ様が拾ってくださったんだな」

 

 少し早めの夕食中、オウカはナナシマの戦いから現在までの話をしていた。

 

「サキは今だに行方不明らしいけど、チャクラはまたやらかして檻に入れられたらしいんだな」

「ええ、まぁ、あれからも色々ありましたから」

「オデもあの時は結局サカキ様の期待を裏切っちまったけど、そんなオデをサカキ様はまたこうして使ってくださっている。うれしいんだなぁ~」

 

 目に涙をうっすら浮かべながらしみじみとするオウカ。ケン、リョウ、ハリーもうんうんと頷いている。ミモザもサカキの慈悲深さに感動していが今はもっと大事なことがある。

 

「オウカさん、ミモザたちはこのアローラ地方にサカキ様の命令できたの」

「聞いているだなぁ、滞在中はオデがお前たち四人のお世話をするんだな」

「オ、オウカ様が!?」

 

 何故か大声をあげたケン、リョウ、ハリーをオウカが順番に見渡して「不満か?」と少し寂しそうに言った。

 

「い、いいいいえ!ただ、三銃士のオウカ様の部下としては…」

「今はお前たちはオデの部下ではないんだなぁ、だからせめて“さん”くらいにしてほしいんだなぁ」

「は、し、しかし…」

「わかったか?」

「は、はい…」

 

 ぐいっと迫力ある顔を寄せてきたオウカにケン、リョウ、ハリーは頷いた。三人の会話に区切りがついたのを見計らってミモザが話をもとに戻す。

 

「命令の内容は“新たな手持ちの獲得”“アローラ地方についての知識の取得”そして…」

「“この地方で目撃されたというR団の調査”なんだな」

 

 食事を終え五人は今後の目的を再確認した。

 

「オデもサカキ様に言われて調べてみたんだな。でも噂は聞くもののR団は見つからなかったんだな」

「本当にいるんでしょうか?」

「いい加減な噂ではないことは確かなんだな」

「なぜですか?」

「写真や映像があるんだな」

 

 そういうとオウカはエプロンのポケットから写真を数枚取り出した。そこには胸にRの文字が入った黒ずくめの男女数人がギリギリ写っていた。

 

「!いるじゃないですか!」

「いやでも、画像が荒すぎてわからないぞ」

「これじゃあ、観光客のイタズラという可能性もかんがえられるな」

「そういえばそういう客もいて困っているって書いてあったの」

「そのとおり、解析しても細かいところまではわからないんだな」

「だから我々が調べるんですね?」

「オデが動くと目立ちすぎるんだな、それにお前たちはチームワークがいいから適任なんだな」

「「「いや~、それほどでもぉ~♪」」」

 

 ケン、リョウ、ハリーが全く同じ動作で照れる。ミモザはそれを無視し話をまとめる。

 

「とりあえず、ミモザたちはアローラの知識を深めつつ、新しい手持ちを確保し、謎のR団について調べる…ということでいいの?」

「その通りなんだな。特に謎のR団に関してはサカキ様が最も気になさっていることなんだな」

「任せてください!俺たち四人がバッチリミッションをこなしてみせますよ!」

 

 ビシッとポーズを決めるケン、リョウ、ハリー。ミモザも頷く。

 

「最後に一つお前たちに言っておくことがあるんだな」

「なんですか?」

「『エーテル財団』と『空間にあく穴』に気を付けるんだな」

 

 

 四人は顔を見合わせた。ミモザが疑問を口にする。

 

「『エーテル財団』ってあのポケモン保護団体のことなの?」

「そうなんだな」

「そこって、人間に傷つけられたポケモンとかを無償で保護してる団体ですよね?」

「俺たちとは正反対だな」

「俺たちの正体がばれないようにってことですか?」

「お前たちの正体に関しては『エーテル財団』に限ったことではないんだな、オデが気にしているのはあの財団の代表のルザミーネなんだな」

「パンフレットとかでも見たけど特に危険な感じはしなかったの」

「若くてキレイだったよな?」

「ミステリアスな中にもチャーミングな感じが見え隠れしてる」

「ナツメ様と………いい勝負だな!!」

 

 勝手にルザミーネの自分達の評価を語り出すケン、リョウ、ハリーにミモザもオウカもため息をついた。

 

「…一応教えてやるぞ、ルザミーネは40代で二人の子供がいるらしいんだな」

「「「…………………は…………い?」」」

 

 思わぬ情報に頭の中の処理が明らかに遅れたケン、リョウ、ハリー。ミモザも年齢までは知らなかった。

 

「40!?頑張って見ても20後半くらいにしか見えないの!!」

「子供もいるのかよ!見えねぇ…」

「確かにやべぇ」

「要注意だな!!」

「…そういう意味の注意じゃないんだな…」

 

 今度はミモザまで加わって騒ぎだしたのでオウカは頭をかいた。

 

「注意するのは見た目じゃなくて『中身』なんだな」

「中身、ですか?」

「オデが調べたところによるとエーテル財団は裏でなにか企んでいるらしいんだな」

「なにを企んでいるのですか?」

「そこまではわからないんだな。とにかくあまり関わらない方がいいんだな」

「わかりました」

「話はここまでなんだな。あとは明日に備えて早めに就寝するんだな」

「わかったの」

「あ、そのオウカさん」

 

 素直に返事をしたミモザのあとでケンとリョウがおずおずと手をあげた。

 

「どうしたんだな?」

「ここにくるまでに聞いたんですが、近くのタウンでなにやらお祭りがあるとか…」

「リリイタウンのお祭りなんだな?」

「そうそれです!あの~任務のことはわかっているのですが…」

「行ってくるといいんだな、この地方の知識を得るっていおのもひとつの目標なんだな」

「「ありがとうございます!!」」

 

 喜びハイタッチするケンとリョウ。ミモザとハリーは疲れたから遠慮した。

 

 

 

 二人がお祭りに行った少しあと、ミモザは小屋の近くの岩の上で海を眺めていた。そこにハリーがやってくる。

 

「なにしてんだ?」

「海を見ていたの、あと星」

「ふ~ん?」

 

 ハリーも空を見ては見るが興味がないようだ。

 

「今頃ケンとリョウは楽しんでるのかな?」

「ハリーはなんでいかなかったの?」

「いや…結構船の時間長かったろ?さすが疲れるって」

「あの二人は体力バカなの」

「あぁまったくだ…わぁ!?」

 

 そんな会話をしていると狙いすましたタイミングで二人のポケギアにケンとリョウから電話が入った。  

 

「も、もしもし?」

『おい!大変だ今謎の光が祠のあるって方向からお前たちのほうへ飛んでいったぞ!』

「光…?」

 

 言われて見上げれば確かに大きな光がミモザとハリーの方へ飛んできていた。

 

「ぎるぎる!」

「ベトベトン!」

 

 二人はすかさず手持ちをくりだし、同時にその光が目の前に降り立った。

 

「なんだ…コイツ??」

 

 目の前に降り立ったのは鳥の被り物のような物体だった。両サイドに描かれた目が二人を睨み付ける。

 

「ポケモンなの?」

 

 二人が警戒していると、お面が突然二つに割れて中から一匹の生物が現れた。

 

「わ、われた!?」

「あの姿は!」

 

 ミモザは急いでポケットに入れておいたアローラのガイドブックを開く。  

 

「あれは、カプ・コケコなの!」

「カ…コケコッコー?」

「カプ・コケコ!この島の守り神なの!」

「ってことはもしかして貴重なポケモンなのか!?」

「当たり前なの!」

「よーしじゃあ捕獲を…」

 

 ハリーがボールを構えようとした時、カプ・コケコが発光し地面に電気のフィールドが広がった。  

 

「おわぁ!?」

「これは…“エレキフィールド”!?」

 

 二人が一瞬目をはなした隙にカプ・コケコは目の前から消え去った。

 

「に、逃げた?」

「!違うの!ぎるぎ…」

 

 ミモザの意思を直感で認識したギルガルドはミモザの指示が始まると同時に“キングシールド”を展開した。展開とほぼ同時にカプ・コケコが“ワイルドボルト”で突っ込んできた。『シールドフォルム』が不完全だったので攻撃を受けきれずギルガルドが弾かれる。

 

「ぎるぎる!」

「“ダストシュート”!」

 

 すかさずハリーがカプ・コケコに攻撃するが簡単にかわされまた姿を消す。

 

「また…」

「ハリー!上なの!“エレキボール”がくるの!」

 

 上を見るといつの間に移動したのかカプ・コケコが攻撃した瞬間だった。

 

「ベトベトン!“ヘドロばくだん”!!」

 

 ベトベトンが“ヘドロばくだん”を放つがそれ以上に“エレキボール”がたくさん飛んできてベトベトンとギルガルドを襲う。

 

「きゃあぁぁ!」

「ぎぎゃあ!?」

 

 ミモザとハリーにもヒットししびれる二人。すぐに《サプリケース》から《クラボサプリ》を取り出し飲み込む。体を襲いつつあったまひがとれる。だが休んでる暇はない。カプ・コケコは“こうそくいどう”でさらにスピードをあげ襲ってくる。そして防御する間もなくカプ・コケコの攻撃がミモザをとらえた。

 

「かっ…あっ…」

「ミモザァー!」

 

 カプ・コケコの右腕がミモザの細い腰あたりにめり込んでいた。

 

「!!」

 

 しかし驚いたのはカプ・コケコのほうだった。カプ・コケコが右腕をひくとその手に薄いピンク色の綿のようなものが貼り付いていた。カプ・コケコはブンブン手を振ってとろうとするが全く離れない。その隙にミモザはバックステップで距離をとった。その手にペロリームを抱えて。

 

「“わたほうし”、これでスピードが下がったの」

「…!」

 

 ギロリとミモザを睨むカプ・コケコ。だがミモザは全く動じず海のほうを眺めていた。

 

 

「ミモザ!大丈夫…ん?」

 

 ミモザがチラッと目配せしたそれを見たハリーは少し考えなにかを思いつき頷いた。カプ・コケコは“わたほうし”を振り払うことをあきらめミモザへの攻撃を再開しようとした。しかしその時海のほうから強い潮風がふいてきた。

 

「!!」

 

 カプ・コケコは慌てて止まった。なぜなら目の前に“わたほうし”が舞い上がってきたからだ。周りを見渡すとたくさんの“わたほうし”が風に乗って雲のようにふわふわと浮いている。

 

「これで空中の移動は制限されるの」

「…」

 

 カプ・コケコは「この程度か…」と内心がっかりしていた。始めは驚いたがこの程度なら難なくかわせる。それにこの島を長年守ってきたカプ・コケコにはこの島に流れる風はすべて把握していた。カプ・コケコは“わたほうし”を避けながら攻撃を続ける。ミモザとハリーはふたてに別れた。カプ・コケコはミモザを追った。

 

「“ヘドロばくだん”!」

 

 それを見越していたハリーは背後から攻撃を行う。カプ・コケコは慌てて避けるがそこで違和感に気づく。

 

「にゃおにゃおに交代!“エナジーボール”!」

 

 

 今度はミモザの攻撃。カプ・コケコはまたかわすがやはり違和感が拭えない。何度か攻防を繰り返しカプ・コケコは自分の感じた違和感の正体にたどり着いた。「回避行動が遅くなっている」ということに。戦いに集中しすぎたせいでほのかに漂う“あまいかおり”に気づかなかった。

 

「一気に香りを放てば気づかれるけど、かすかに少しずつ“あまいかおり”を漂わせれば気づかれないの」

 

 すべてミモザの計画通りだった。始めにカプ・コケコの攻撃を“わたほうし”で受けることでカプ・コケコに「“わたほうし”をまとわりつかせ動きを制限するのが目的」と思わせておくことで次に放った“わたほうし”も同じ目的と思わせる。動きの制限だと思い込んだカプ・コケコは回避と攻撃に専念するようになりほんのり漂ってくる香りには気づかない。そして少しずつ素早さと回避率を奪っていったのだ。

 相手の意図に気づいたカプ・コケコは“ほうでん”と“スパーク”を繰り返し“わたほうし”をなぎはらいながらミモザの方へ“でんこうせっか”した。

 

「させるかよ!“かなしばり”!」

 

 ベトベトンが“でんこうせっか”を封じる。その間にミモザはニャオニクスのエスパーの力で遠くへ離れる。カプ・コケコはハリーにターゲットを変え、“ワイルドボルト”で突っ込む。ベトベトンは“ちいさくなる”で避けようとしたがカプ・コケコは“ワイルドボルト”を途中でキャンセルし“いやなおと”を鳴らした。

 

「ぎいぃぃぃ!?」

 

 ベトベトンは難を逃れたがハリーはそうはいかず想像を絶する不快な音に膝をつく。そしてカプ・コケコがベトベトンを攻撃しようとすると

そこにはニャオニクス(・・・・・)がいた。

 

「!?」

「にゃー!!」

 

 ニャオニクスの“ふいうち”がきゅうしょにあたる。自分の回避率と素早さが思った以上に下がっていることを認識したカプ・コケコは再び距離をとって戦うために“こうそくいどう”で上昇する。“あまいかおり”の効果も少しずつ薄れてきていた。

 

「“アシッドボム”!」

「“エナジーボール”!」

 

 ミモザとハリーの攻撃が激しさを増していく。カプ・コケコも応戦するが徐々に押され始める。打開策を考えるカプ・コケコに更なる悲劇ぐ起こる。

 

「!!?」

 

 空中で急に体が動かなくなった。体になにかが巻き付いている。それも何重にもなって重なってる。

 

「“ヘドロばくだん”!!」

 

 動けないカプ・コケコにベトベトンの攻撃がヒットする。

 

「~~~!!」

 

 声にならない叫びをあげるカプ・コケコ。二人は追撃する。

 

「“マジカルリーフ”!」

「“ヘドロウェーブ”!」

 

 避けようにも動けないカプ・コケコはただただ無抵抗で攻撃を受け続け、数分後動けなくなった。ミモザとハリーもひんしの寸前を見切り攻撃をやめた。

 

「にゃおにゃお、ゆっくりと下ろしてなの」

 

 ニャオニクスは頷くとゆっくりとずっと浮かせていた“わたほうし”をおろした。

 

「よし、アリアドス」

 

 ハリーが名前を呼ぶと夜の闇に紛れて隠れていたアリアドスが現れ“いとをはく”でカプ・コケコを縛った。

 

「こういう戦術に関してはハリーはうまいの」

「そりゃあキョウ様の下で働いてたからな。それよりこの戦術を考えたミモザもすごいって」

「ミモザはハリーたち三人より頭はいいからそこで頑張るの」

「言ってくれるね」

 

 からからと笑うハリー。

 ミモザの作戦には続きがあった。空中に浮かせた“わたほうし”に“あまいかおり”を仕込むだけではなく、ハリーが密かに出していたアリアドスが“わたほうし”すべてに見えなくて頑丈な糸をつけておいた。さらにニャオニクスに入れ替え“サイコキネシス”で“わたほうし”を空中に長くとどまらせ、カプ・コケコが“わたほうし”を避けて戦うことで細く頑丈な糸が気づかない間に何重も体に巻き付き最後には動けなくなる。何重にも仕組まれた罠にカプ・コケコははまってしまったのだった。

 

「じゃあ捕まえるか」

 

 ポケットをまさぐったハリーの動きがピタッと止まる。

 

「ハリー?」

「…よし、この伝説のポケモンを捕獲するという栄誉をミモザに譲ってあげよう」

「………ボールを置いてきたの?」

「いやっ!?そんなことはないゾ!??」

 

 明らかに動揺するハリーにミモザはため息をついた。

 

「いつでも空のボールは持ち歩くべきなの、しょうがないからミモザが捕まえるの」

 

 ミモザはポケットからモンスターボールを取り出しカプ・コケコに向かって投げた。カプ・コケコにボールが当たる寸前目を覚ましたカプ・コケコは手に持っている鳥のお面のようなものの半分でボールをはじいた。

 

「まだ動けるの!?」

「野郎!!」

 

 二人が手持ちに手をかけるより早くカプ・コケコはその場から飛んでいった。

 

「逃がしたか!」

「いや、あの様子だとまだ結構余力はあったみたいなの」

 

 伝説のポケモンの底力を目の当たりにいた二人は手持ちをポールに戻した。その時カプ・コケコがいたあたりになにかが落ちていた。

 

「ん?なにか落ちてるの」

 

 ミモザがそれを拾う。それはキラキラ輝く石だった。だが輝いているだけで特に変わったところはない。

 

「ただの石か?」

「うーん、そうみたいなの」

 

 二人でかがやくいしを観察しているとオウカとケン、リョウが走ってきた。

 

「おーい!大丈夫か!?」

「すごい光が飛んでいったんだな」

「さっき伝えたポケモンか!?」

 

 口々に叫びながら近寄ってきた三人に今までの事情を説明した。そのなかでオウカはミモザが持っていたかがやくいしに強い興味を示した。

 

「その石オデに預けてくれないか?」

「え?はい、どうぞなの」

 

 ミモザがオウカの手の中にかがやくいしを置く。オウカはそれを大事そうにしまいこんだ。

 

「これですごいアイテムを作るんだな」

「すごいアイテム?」

「できてからのお楽しみなんだな!とりあえず今日は休むんだな、明日から本格的に調査開始なんだな」

「「「わかりました」」」

「なの」

 

 五人はオウカの小屋に帰っていった。

 



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「ナマコの導き?」

この続きを書くのはかなり久しぶりになりました。世間がガラル地方へ旅立つなかアローラを書いております長星浪漫です。
今回は作中に原作「ボケスペ」にはない自分の想像で書いた設定がいくつか登場します。
それでは、よろしくお願いします。


 いきなりの伝説級のポケモンとのバトルから一夜あけ、ケン、リョウ、ハリー、ミモザの四人はオウカの勧めもあってハウオリシティポケモンセンターの近くにある浜辺に遊びに来ていた。

 

「アローラ~!」

「ア、ローラ!」

「アロー~~…らーー!」

 

 各々色んな言い方でテンションをあげるケン、リョウ、ハリー。

 

「さすがリゾート地方の都市!人がいっぱいだなあ!」

 

 アローラナッシーと普通のナッシーのシルエットが描かれたバミューダ水着を履き頭に濃いめのサングラスをつけたリョウが辺りを見渡す。

 

「海のレジャーも結構あるな、お!〔マンタインサーフ〕ってのがあるらしいぞ!」

 

 必要最低限の筋肉が無駄なく鍛えられたハリーは黒字にモンスターボールがワンポイントでデザインされたスパッツタイプの競技用水着を履き、昨日のアローラシャツを羽織っている。

 

「ふっ、楽しみがいがありそうだ」

 

 服の上からは想像もできないくらい鍛え抜かれたマッスルボディにブーメランパンツ、黒いサングラスもビシッと決めて、もし白い水泳帽を被っていたらかいぱん野郎と間違えそうな見た目のケンが筋肉をアピールする。

 こんな感じで四人は今日は泳ぎに来ていた。水着はサカキからのボーナスで購入した。

 

「さて遊ぶ…あれ?ミモザは?」

「まだ着替えてるんじゃないか?」

 

 当然だがミモザは三人と別のところで着替えている。

 

「あれでも一応女の子だからなぁ、恥ずかしいんじゃねぇの?」

「いや、周りを見てみろリョウ」

「ん?」

 

 ケンに言われ周りを見渡すリョウそしてなにかを察して頷いた。

 

「なるほど…確かにこれはミモザにはきついか…」

「なにがだ?」

 

 なにかを共有したケンとリョウ。ハリー一人なんのことかわからなかった。そんなハリーの肩に手を回しリョウが波打ち際で戯れるビキニのおねいさんを指差した。

 

「あんなナイスバディな女がここにはたくさんいるんだぜ?ミモザは見た目はまぁあ可愛いが、まだ子供だしなぁ、自分の貧相な体が恥ずかしくて出てこれねぇんだろ?」

 

 リョウはミモザをバカにしているつもりはなかった。心からの憐れみの言葉だった。故にそれを聞いた本人は黙っていられるわけなかった。

 

「貧相で悪かったの!!」

「え?ぶべっ!?」

 

 声に反応しリョウがそちらを向いた瞬間リョウの顔面にブニョッとしたものが当たりずりこける。

 

「あいたぁ!」

 

 仰向けに転んだリョウの目にミモザの姿が映る。ミモザは髪の毛を後ろの高い位置でポニーテールにし、フリルがたくさんついたビキニつけていた。

 

「リョウはデリカシーという言葉を脳に刻み込んだ方がいいの」

 

 そう言いながらリョウの隣からリョウに投げつけたモノを拾った。

 

「なんだそれ?」

 

 ハリーが妙な見た目のそれに興味を持った。ミモザはそれの顔が見えるように持ちかえ説明する。

 

「これはこの地方原産のナマコブシというポケモンなの」

「ぶみゅ~」

 

 紹介に反応するようにナマコブシが鳴き声みたいな音を出す。

 

「へぇ~」

 

 ミモザの説明を聞いた三人はそれぞれ感想を述べた。

 

「かわいいな」

「気持ち悪いな!うべっ!?」

「うまそうだな!わぶっ!?」

 

 二番目に感想を言ったリョウと三番目に感想を言ったケンがナマコブシの口から出てきた白い拳のようなもので殴り飛ばされる。

 

「な、なななななんだぁ!?」

「特性の『とびだすなかみ』なの」

「このナマコやろぉ…!うべばぁ!?」

 

 怒ったリョウが掴みかかろうとした時、またしてもナマコブシの『とびだすなかみ』で吹き飛ばされるリョウ。そんな攻防を十回以上繰り返した後ナマコブシを海に返してあげた。

 

「ひどい目にあったぜ…うへぇ…ベタベタ…」

 

 『とびだすなかみ』に殴られ続けたリョウは体全体がベッタベタになっていた。ナマコブシを持っていたミモザもベタベタになっていた。

 

「気持ち悪いの…」

「そういやガイドブックで読んだけど、ナマコブシの体液って美容にいいらしいぞ。日焼け止めにもなるんだと」

「え?」

 

 それを聞いたとたんに体中に塗り始めるミモザ。それを見たケン、リョウ、ハリーは驚いた。

 

「ミモザも女の子…いや、女なんだな…」

「マセガキ…」

「でも、これうまくしたら商売になるかも」

 

 三人がなんやかんや言っていると、ミモザは自分に残っている体液だけでは足りないのでどうしようか考え結論にいたる。

 

「わ!?なんだ!!?」

 

 ミモザはリョウに抱きつきリョウの体の体液を自分の体に塗り始めた。

 

「なにやってんだ!!」

「足りなかったからリョウのを塗ってるの」

「や、やめろ!今すぐ離れろ!!」

「なんなの?照れてるの?」

「んなわけあるか!!周囲の目線が痛いんだよ!」

 

 周りから見たら体がぬめった少女が同じくぬめった男性に抱きついているというかなりヤバめの絵面だった。

 

「お前も恥ずかしいだろうが!」

「サカキ様のために綺麗になりたいの、そのためなら気にもならないの」

「どんだけアイアンハートなんだよ!?俺は気にするんだよ!!ていうかお前の手持ちのギルガルドとニャオニクスがさっきからすごい目でこっち見てるんだよ!」

 

 いつの間にかボールから出たミモザの主力ギルガルドとニャオニクスが技を放つ寸前で止まっている。ギルガルドに関しては《ブレードフォルム》になっている。

 

「ケン!ハリー!助けて…」

 

 二人に助けを求めようとしたがいつの間にかいなくなっていた。

 

「あいつら、裏切りやがったなー!!」

 

 リョウの孤独な叫びがビーチにこだました。

 

 

 

 数分後なんとか通報される寸前でその場を脱したリョウとミモザは四人分の食べ物と飲み物を買ってくれていたケンとハリーに合流し今は四人でビーチボールで遊んでいた。

 

「本当に危なかったぜ…」

 

 げっそりするリョウ、一方ミモザはなんだか元気いっぱいだった。

 

「リョウは情けないの」

「お前のせいだろうがー…」

 

 ツッコミにも覇気がない。それゆえに飛んできたボールを取り逃した。

 

「ああ、すまん」

 

 謝りながらボールを追いかける。するとボールは妙な軌道で転がり一つのパラソルの下に入っていった。

 

「すみません、ボールを取らせていただけませんか?」

 

 パラソルの下には一人の女性がビーチでよく見るようなイスに寝転がり涼んでいた。

 

(うっわ、スッゲェいい女…)

 

 サングラスで顔は隠れているが黒と濃い紫のビキニにモデルを思わせるスタイルに見惚れてしまう。そしてリョウの男としてのスイッチが入る。

 

「ねぇ彼女、俺達と遊ばない?」

 

 できうる限りのイケボとナイスな表情、そして決めポーズで女性を誘う。完全にアローラの熱に当てられテンションが上がるリョウ。しかし答えてきた女性の声にリョウのテンションは再び地の底まで落ちる。

 

「フフフ…元気そうで何よりだわ、リョウ」

「!!!その声は!!?」

 

 女性が上体を起こしサングラスを取る。リョウが遅いので追いかけてきた他の三人もタイミングよくその場に到着した。サングラスを取った女性は結んでいた髪をほどいた。漆黒よりも黒い長髪がブラックホールのようにその場の全員の視線を集める。リョウはガタガタと震えだした。

 

「ナ…ナツメ…様?」

「あら、私の顔を忘れたわけじゃないのね」

 

 目の前にいる綺麗な女性、ナツメは冷たい笑みを浮かべリョウを見据える。ナツメ、元R団幹部でリョウの直属の上司、ヤマブキシティジムリーダーで現在はイッシュ地方のポケウッドで女優業もこなし、エスパータイプのエキスパートで本人も超能力者というなんだか盛りだくさんな女性だ。

 リョウは砂浜におでこを擦り付け必死に謝罪した。

 

「申し訳ありませんでした!!ナツメ様とは気づかずあのような軽口を叩いてしまいました!」

「お前ナツメ様に何を言ったんだ!?」

「ウフフ、気にしなくてもいいわリョウ」

(本当に綺麗な人なの…)

 

 ミモザはナツメとは初対面だがR団の資料を読んで少しは知っていた。

 

(でも実際に会うとなんだかとってもミステリアスな雰囲気なの)

 

 ミモザが見惚れているとナツメが気付き笑いかける。

 

「あなたがミモザね、あの方の養女の」

 

 少し言葉に圧を感じたが気にせず答える。

 

「そうなの、私はミモザなの。でもなんで私の名前を?」

 

 今ナツメはサカキとは連絡をとっていないはずだ。

 

「久しぶりにマチスから連絡があってね、あなたたちの近況を聞いたのよ、それで会いたくなって超能力で場所を予知して会いに来たのよ」

「ということは、今日ここにいらっしゃるのは偶然ではないと?」

「ええ、目的もあるわ」

「目的?」

 

 ナツメは立ち上がり上着を羽織った。

 

「あなたたちの力を見極めに来たのよ。ついてきて」

 

 ナツメの言葉に従い着替えてついていくとハウオリシティの外れのある施設の地下に入っていった。暗い階段を下っていくと扉があり、それを開けるとバトル用の部屋が広がっていた。

 

「ここは?」

「ここはプライベートのバトルスペースよ、誰にも見られずにバトルをしたい人をターゲットにした貸しバトルフィールド」

「え、それってかなり高いんじゃ…」

 

 パンフレットにも書いてあった。アローラ地方はリゾート地方ということもあってお金持ちが多く訪れる。その中にはポケモンバトルを目的とした人も多くいる。その辺のトレーナーにバトルを仕掛ける人がほとんどだが、中には仲間内でちゃんとした設備でバトルをしたいという人もいる。そういった人のためにこのような施設があるのだが、基本貸し切りなので値段が高い。この場所のように地下にあり、フィールド切り替え装置やあらゆるポケモンの技に耐えうる“ひかりのかべ”と“リフレクター”を応用した特殊な壁など設備が充実していると値段がとんでもないことになる。

 

「ちなみにナツメ様?この場所のお値段を教えていただけませんか?」

「ここは私が持つわよ、気にしなくていいわ」

「それでも一応聞いておきたいの」

「…わかったわ」

 

 ぐいぐいくる元部下たちの気迫に負けここの使用料を聞いたケン、リョウ、ハリー、ミモザの四人は目の前が真っ白になった…

 

「そろそろ戻ってきなさい」

「「「「は!!!!」」」」

 

 ナツメの声で現実に戻ってきた四人。「相変わらずね…」とナツメにあきれられた。

 

「さて、ルールを説明するわよ。勝負は私一人があなたたち一人ずつと順番に一対一で勝負をしていくわ。各勝負に使えるポケモンはお互いに一匹のみ、道具は一切なしわかったかしら?」

「あ、あの」

「何かしら?」

 

 おずおずと手をあげるミモザ。

 

「ルールはわかったの、でもなんで今はR団じゃないあなたがここまでしてくれるの?」

「お、おいミモザ!失礼だぞ!」

「ナツメ様!すいません!」

 

 ペコペコ謝るケン、リョウ、ハリー、だがナツメはR団当時では考えられない優しい笑顔をミモザに向けた。

 

「確かに私は今はR団ではないわ、しかも立場的には元R団だと知られればまずい所にもいる」

「ではなぜ?」

「マチスと同じ理由…いえ、それ以上に私の心はまだあの方…サカキ様に囚われているから…私が唯一慕うあのお方、そんなサカキ様の直属の部下になったあなたたちの力を見ておきたい、ちゃんとサカキ様の力になれるかどうか…ね」

 

 恍惚とした表情、心からの言葉であると演技ではないと直感がそう告げている。ミモザ自身サカキの事を心から慕っているから。

 

「よくわかったの。ナツメ様、よろしくお願いしますなの」

「ウフフ、素直な子は嫌いじゃないわ。さぁ、誰からやる?」

「俺からいきます!!」

「あなたからね、わかったわ」

 

 リョウが前に出る。ナツメは対面に移動する。ナツメが手元のパネルをそうなすると部屋の両側にあるモニターがつき、部屋中のカメラが映す映像をダイナミックに表示した。ナツメは上着を脱ぎ捨てた。いつの間にか服が変わりかつてジムで着ていたコスチュームになっていた。

 

「雰囲気は大事だからね、さぁいくわよ!」

「はい!!」

 

 ナツメとリョウの手から同時にボールが投げられた。




いかがだったでしょうか?久しぶりすぎて設定ガバガバになっていてらすいません!

今回のサブタイトルにも使ったナマコブシはサンムーン発売時からかなりお気に入りのポケモンでガラルでもナマコブシ×6のパーティを作ったり、色違いが欲しくて国際孵化でナマコブシを200匹以上孵化させたりしました(だいたい250くらいで生まれました)。
今はナマコブシのぬいぐるみが出たら買おうと妄想しています。

次の話も投稿までかなり空くと思いますが頑張って書きますのでよろしくお願いします!


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VSナツメのヤドラン

書いている途中で鎧の孤島がが発売されたので少し内容を変えました


 バトルを前にもう一つルールが追加された。このバトルにおいて一匹のポケモンが使える技を公式戦と同じく4つまでとした。さらに選んだ4つに加えてバトル中一度だけ使用できるという条件付きで5つ目の技も選択しておく事にもなった。

 

「公式戦で一匹のポケモンが使える技が4つまでなのは、その数がポケモンとトレーナーにとって確実に覚えやすくて使いこなしやすいからよ。あなたたちは公式戦の舞台に立つことはないかもしれないけど、普段からこういうトレーニングをしておけばより効率よく技を使えるようになると思うわ。そして5つ目の技を選ばせた理由だけど、さっきもいった通りほとんどのトレーナーは技を4つにしてバトルをするわ、だから公式戦以外でも『相手も技を4つしか使ってこない』と思い込んでいる事が多い。そんな時に不意をつく意味でも5つ目の技を用意しておくの、いかに相手の予想を欺けるかが大事よ」

 

 というのが追加ルールの理由だ。そしてバトルは始まった。始まって早々にミモザたち四人は驚かされた。

 リョウがくり出したのはサカキとの修行の後で進化させたヤドキング。一方ナツメがくり出したのはヤドランだったのだが…

 

「んん!!??」

 

 その姿に四人は目を見開いた。本来尻尾に噛みついているはずのシェルダーがなんとヤドランの左腕に噛みついていた。しかも頭頂部と手・尻尾の先が毒々しい紫色に変色している。

 

「ナ、ナツメ様!?それはヤドランなんですか??」

「えぇそうよ」

「そんなヤドラン見たことないの!」

「まさか遺伝子操作…?」

 

 様々な憶測が飛び交うのを面白そうに眺めていたナツメだがいつまでもそうしているわけにはいかないので答えを教える。

 

「これはヤドランの『リージョンフォーム』よ」

「えぇ!?」

「で、でもアローラのパンフには普通のヤドランしか描いてなかったですよ!?」

「まさか新種ですか!?」

 

 元部下たちの的はずれな見解に可笑しそうにクスクス笑うナツメ、そこにミモザが一つの憶測を唱えた。

 

「…ここ以外の別の地方の『リージョンフォーム』?」

「あら、正解よ」

 

 ぱちぱちと拍手を送ったナツメはゲットした時の状況を説明した。

 

「私が映画の撮影で〈ガラル地方〉にあるとある島に行った時にたまたま進化の瞬間に居合わせたの。初めて見る姿だったから捕まえたのよ、その後でその島で道場を営んでいたマスタードという人に教えてもらったの」

「へぇ~」

 

 興味津々に聞き入る四人ナツメは困ったように笑う。

 

「ミモザはともかく、あなたたちそこまで勉強熱心だっかしら?さぁ!始めるわよ!!」

「は、はい!!」

 

 返事をした分リョウの初動が遅れてしまう。

 

「ヤドラン!“シャドーボール”」

 

 ヤドランがシェルダーの先端をヤドキングに向けるとその先に黒く蠢く黒球が現れ放たれる。

 

「しまった!ヤドキング!“パワー…”」

 

 リョウの指示が耳に入った瞬間ヤドキングは動いていた。ヤドキングの周囲に高エネルギーの塊が形成され“シャドーボール”に向けて放たれる。

 ヤドキングは頭に噛みついたシェルダーの毒素によりノーベル賞受賞者並みの知性を手にいれている。つまりかなりの切れ者になっているのだ。

 ヤドキングが放った“パワージェム”は“シャドーボール”に当たり威力を削りはしたが打ち消すには至らずヤドキングにヒットする。しかし威力はそこまでではなかった。

 

「ヤドラン、攻撃を続けなさい」

 

 ヤドランは“シャドーボール”を連続で放つ。複数発の“シャドーボール”がヤドキングに迫る。リョウがある技の組み合わせを思い付く。

 

「ヤドキング!“パワー…”」

「ヤァド!!」

 

 ヤドキングはいち早くトレーナーの考えを認識するためにバトル中は常にリョウの頭の中を覗いている(リョウは気づいていない)。ヤドキングは先程のように“パワージェム”を出し同時に“サイコキネシス”を発動、“パワージェム”でいくつかの塊を作り“シャドーボール”に当ててすべて相殺した。そして残った一発をヤドランに挑発の意味を込めて高速で飛ばした。ヤドランはボーッとしたまま動かなかったが、顔のすぐ横を“パワージェム”が飛び過ぎた。頬が少し切れた。ヤドランはシェルダーに噛まれていない方の手で頬をさする。傷ができたことを確認したヤドランの目付きが変わり咆哮する。

 

「ヤアアァァァ!!!」

「な、なんだぁ!?」

 

 ヤドランらしからぬ雰囲気にリョウをはじめその場の全員が驚いた。ナツメだけはどうなっているのかわかっているのでほくそえんだ。

 

「この子はスロースターターなのよね、あなたのことを“強敵”だと認識したみたいよ」

 

 ヤドランがヤドキングに突進していった。ヤドキングは“わるだくみ”しながらタイプ相性も考え、再び“パワージェム”を放つ。威力を重視したため放たれた数は先程よりも少ない。ヤドランはそれらを一瞥すると左手のシェルダーを構えた。それを見てナツメは技を指示する。

 

「“シェルアームズ”」

 

 構えたシェルダーの先端から毒の弾丸が放たれ“パワージェム”を打ち落とした。その一発を皮切りにヤドランとは思えないスピードで次々に毒の弾丸を発射しついには“パワージェム”をすべて打ち落とした。きらめき散らばる“パワージェム”の中を歩くヤドランの姿はまるで凄腕のガンマンのようだった。

 

「なんなんだよあのヤドランは!!」

「あの攻撃は毒タイプみたいなの。どう思うハリー?」

「あぁ、確実に毒タイプだな。でも初めて見る技だ、あの様子だとあのリージョンフォームヤドランの固有技かもしれないぞ」

「普通のヤドランのタイプはみず・エスパーなの。じゃああのヤドランはどく・エスパー?」

「みずっぽくはないしな」

「だったら5番目の技で試してやる!ヤドキング!“くさむすび”!」

 

 向かってくるヤドランの足元に草が生え足を引っ掻ける。

 

「ヤァァブ!!」

 

 前のめりに激しく転倒する。だがダメージはリョウが予想していたよりもはるかに少ないようだった。

 

「くさタイプの攻撃がほとんど効いてねぇな、ミモザたちが言うようにどくタイプは確定かな?よし、ヤドキング!“サイコキ…”」

「ヤドラン、こちらも“サイコキネシス”」

 

 “サイコキネシス”を発動するヤドキング。すぐに立ち上がり同じ技をぶつけるヤドラン。しかし、徐々にヤドランが押されはじめる。

 

「エスパーにエスパーを返してきた。もしみずタイプならみずタイプもちならナツメ様ならみずタイプの技を使うよな」

「エスパータイプのエキスパートだからエスパータイプは入ってるよな」

「エスパータイプの技で押し負けてるのも妙だ」

「どくタイプが影響している可能性があるの」

 

 仲間の考察を聞きリョウは最後の“試し”を実行することにした。

 

「ヤドキング!“ねっとう”!」

 

 熱々の熱湯がヤドランを襲った。

 

「ヤドォ!?」

 

 あまりの熱さで手足をばたつかせるヤドランに大きな隙ができた。

 

「“パワージェム”!」

 

 何枚ものエネルギーの塊が再びヤドランを襲う。ヤドランはゆっくりと立ち上がり口を大きく開けて閉じた後シェルダーを構えた。その間“パワージェム”が当たる。しかしヤドランは持ち前の耐久力を生かし攻撃を受け止めながら“シェルアームズ”でいくつかを打ち落とす。そしてすべての“パワージェム”を耐えきった。

 

「まじか!!」

 

 この時、たくさんの“パワージェム”が当たったにも関わらずヤドランには一つとして急所に当たらなかった。実は先程の“シェルアームズ”は攻撃ではなく急所に当たりそうな攻撃だけを打ち落としていたのだ。

 そんなことには気付かないリョウ、しかし状況的に有利なのはリョウだった。

 

「“サイ…」

 

 技を言いきる前に発動するヤドキング。今度はエスパーパワーMAXの“サイコキネシス”で完全にヤドランを押さえ込んだ。ヤドランはうつ伏せに近い状態で地面に押さえ込まれる。左手のシェルダーの牙が食い込みはじめる。完全に有利だと思っているリョウはすでに勝った気でいる。

 

「ナツメ様、完全に押さえ込みましたよ!」

 

 一方のナツメは余裕の表情をしている。

 

「さて、どうかしら?」

「強がりですか?ヤドキング!そのままいけぇ!」

 

 ヤドキングの“サイコキネシス”がさらに強くなる。ヤドランの腕のシェルダーがどんどん食い込み痛みとうずきでヤドランの顔つきが変わっていく。それを確認したナツメはニヤリと笑った。

 

「さぁ、“あばれなさい”」

 

 ナツメが呟いた瞬間ヤドランが左腕を思い切り振り上げた。それを皮切りに暴れ始めた。シェルダーが噛みついた腕をメチャクチャに振り回し暴れる。ヤドキングは何とかかわしているが徐々に避けるのが難しくなる。

 

「な、なんだ?普通の“あばれる”とは違う!?ヤドキング!絶対に“サイコキネシス”を解くな!」

 

 ヤドキングはわかっているとばかりに首を縦にふる。…が急に動きが鈍くなった。

 

「どうした!?」

 

 リョウの方を振り返ったヤドキングの顔はなんだか眠たいのを必死に我慢しているようだった。

 

「効いてきたみたいね」

「え?」

 

 そうこうしているうちにヤドキングはどんどん眠りに落ちていき、ヤドランの暴走ともとれる“あばれる”がどんどんヒートアップしていく。状況が理解できずリョウは焦る。

 

「ヤ、ヤドキング!これは、どうなってるんだ??」

「わかった!“あくび”なの!!」

 

 後ろで見ていたミモザが気づいて叫ぶ。“あくび”は対象を時間差で眠りにおとす技だ。

 

「正解よ、ミモザちゃんはさすがね」

「で、でもいつ?」

「多分二回目の“パワージェム”の後なの」

「そういえば口を開けたような記憶がある…って!そんな場合じゃない!」

 

 ヤドキングはヤドランの猛攻に何とか耐えているもののふらふらしている。あと少しで倒れそうになったが寸前でヤドランが疲れはてて混乱した。

 

「よっしゃ!今がチャンスだ!“パワージェム”!」

 

 何とか眠る前に決着をつけようと残った力を振り絞り最大火力の“パワージェム”を準備するヤドキングの目の前にヤドランの左腕が向けられた。

 

「え?」

 

 ヤドランー見ると何かを食べている。それが何か気づいたリョウは思わず叫んだ。

 

「《ラムのみ》か!!」

「“シェルアームズ”」

 

 ヤドキングの動きよりも早くヤドランの左手のシェルダーの先端から毒の弾丸が放たれた。顔面にもろに食らったヤドキングは

 

「ヤッドッ……!?…」

 

 何が起こったのかわからないまま戦闘不能になった。

 

「ヤドキングー!?」

「勝負あったわね」

 

 ナツメはヤドランをボールに戻しリョウに近寄った。

 

「昔に比べれば強くはなっているようだけど、未知の存在にであった時にかなり動揺するみたいね」

「面目ありません…」

 

 うなだれるリョウにナツメは優しく語りかける。

 

「そこまで落ち込むことはないわ。さっきも言ったけど強くはなっているし、ヤドキングとの信頼関係もちゃんと築けているようだしね」

「ナツメ様ぁ!!」

 

 ナツメの部下だった当時は絶対にかけてもらえなかったような優しい言葉をかけられ飛びつくリョウをサッとかわしナツメは他の三人の方を向いた。

 

「さあ、次は誰かしら?」

「俺が行きます」

 

 前に出たのはケンだ。

 

「あなたはマチスについていたのよね?フフッどんな成長をしたのかしら?」

 

 ナツメがもとの場所に戻ろうとした時ミモザが呼び止めた。

 

「あ、あの、質問してもいいなの?」

「なにかしら?」

「さっきのバトルの中で何度かヤドランがかなり早く動く瞬間がいくつかあったの、リョウのヤドキングの方がすばやいはずなのに」

「本当にあなたは目のつけどころがいいわね、私がまだR団ならあなたをぜひ部下に欲しいわ」

「そんな、ナツメ様~」

 

 不満そうな声をあげるリョウを無視しナツメはミモザの問いに答える。

 

「それはね、ガラルヤドランの特性の『クイックドロウ』》の効果よ」

「初めて聞く特性なの」

「現時点ではガラルヤドランにしか確認されていない特性だからね、一定確率で相手より早く行動できるのよ」

 

 そのおかけで何度かかなりの素早さで動いていたようだ。フムフムと頷くミモザをナツメが覗き込んだ。

 

「納得したかしら?」

「あ、はいなの!」

 

 間近で見たナツメのあまりの綺麗さにドキッとしてしまうミモザだった。改めてナツメとケンが位置につく。

 

「それじゃ、始めましょうか」

 

 二人の手からボールが放たれ第二バトルが始まった。「」




ガラルヤドランの見た目に一目惚れし、即座にいれてみました。情報があまりない状態で想像をいれながら書いたのでゲーム内の性能と異なる点も多くあると思います。

あと話の中にバトルルールに「五つ目の技」というのをいれたのですが、あんまりうまく使えてません。次はうまく使えるように精進します。


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