家族仲良く過ごしたい。 (ト——フ)
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〜設定等々〜
ロコン 幼少期 2話から3話までの大まかな年表


今更ですが、ロコン君の幼少時代を簡単に纏めときます。
彼が産まれてから、3話まで何をしてたかっていう流れです。


 ●3歳時 飛ばし子として飛ばされる。

 

 飛ばされた先の惑星では運が良いのか原住民が既に滅ぼされていた(ご都合主義発動)

 さらに頭にインプットされていた惑星の住民を抹殺する命令も、なんとかなる(ご都合主義発動)

 

 どうするか、と悩むが取り敢えず2年くらいこの星に住むことに。独学でどこまで力をつけれるか色々と自分で試してみることにした。(流石に1年で帰ってきたら怪しまれるかも、と思った為2年間にした)

 

 2年間漫画で読んだ亀仙流の修行などを基にそれっぽい訓練をして、戦闘力は300まで上昇。

 技の方はというと、舞空術は原作の悟飯のビーデルに教えたやり方で習得。かめはめ波はその次に出来るようになった。

 ポットの方はというと、行き先が惑星ベジータにしか定まっておらず、高い重力の惑星に赴き効率的に修行することも出来ない。惑星に闘う相手も居ないから戦闘経験を積めない。戦闘で負傷して死にかけ復活して回復という方法もメディカルマシンもない状況じゃキツイ。

 

 なので、ここまでしか成長出来ず、自分が思う試せることは全部やったし、これ以上ここに1人で居ても仕方ないか、と区切りをつける。

 

 ●5歳時、惑星ベジータに帰還

 

 送られた惑星の住民が非常に脆弱であった為、直ぐに仕事が片付いてしまったと担当者に嘘の情報を伝え訝しまれたが、なんとか説得に成功することに。

 

 その後に、上が下した判断により自分は技師になるか、戦闘員になるということが伝えられる。

 で、上の判断は取り敢えず戦闘員候補として育てるかというもの。

 理由としては親に下級戦士ながら戦闘力1万のバーダックがいることと、送られた星の住民の殲滅を果たした功績によるもの。

 

 それから、訓練施設で様々な訓練を積むことになるが、前世で格闘技などしてなかったことや、人との闘いを経験していなかった為、中々苦労する羽目に。

 周りの人は戦闘力500程で且つ、生存率が低いとされる飛ばし子の生還者の人も居たので、実戦経験は豊富。

 対し、戦闘力300で実戦経験も無い主人公は浮いていた。

 

 一緒に訓練を受けている人達に「そんなんでよく星を制圧出来たな?」「雑魚しか居ない星に送られて運が良かったな」「お前みたいな雑魚でもこの星に帰れたんだな」等々、結構辛辣な物言いを受けたりと、イジメの標的にされることもしばしば。

 

 そんなメンタルズタボロ真っしぐらな生活を送っていても、なんとか心折れずに頑張れたのは家族の存在が大きい。

 父親は前世のアニメで視た冷酷な印象から少し苦手意識を持っていたけれども、思いの外ぶっきらぼうながら優しさがあり構ってくれた。母親は純粋に愛情を注いでくれ可愛がってくれた。この年に産まれた弟を育児カプセル越しに見ていると癒された。俺の弟が可愛いすぎる。

 

 そんな辛く苦しい時期に家族が支えになってくれていたこともあってか非常に家族に対して愛情が強い。このことから家族のことになると若干自制の効かないような性格が形成されていく。そして、せめて自分の家族だけはフリーザから守ると改めて決意し、一層訓練に励むことに。

 父親と、その同僚の人に戦闘について教えを請うたり、稽古相手になってもらったりと、精一杯彼なりに訓練を続けていった。

 

 しかし、それでも戦闘力は1年で500程度までしか伸びず、悩んでいた。

 

 ●6歳時 運命の出会い!

 

 自分なりに必死にやってるけど中々上手くいかない……このままじゃフリーザから星を守ることなんて……いやいやけど俺きっと大器晩成型だから……と考え巡らせ悩んでいる際、ナッパと出会い一悶着(13話参照)あり師弟関係になる。

 

 彼の強引でスパルタな、偶に死にかける訓練により以前より戦闘力の伸びが良くなり、4年の末遂に1500まで戦闘力が上昇することになる。

 

(いや、4年も頑張って1500かよって思うかもしれませんが、主人公は大器晩成型のタイプでして。子供の頃はゆっくりと成長していくタイプでした。

 これについては、1話の転生の際に出会った神様よりも更に上位の存在である神様達に操作されています。主人公が必死に足掻いてるのを見ている方達です。

 ご都合主義的な現象はこの人達が操作してたりします。

 

 こんなに成果が芳しくなくても、それでも尚励み続けられるかを試したかったこと。

 単純に最初から強くしたら見応えがないし、調子乗りになって人格形成に悪影響出る恐れがあるので、物語が本格的に動き出すまでは下積みしっかりとして努力して頑張って欲しい。友情・努力・勝利とかを見せて!という思惑があったこと等々があります)

 

 ●10歳時

 

 よし、ここまで戦闘力もありゃ遠征に行ってそれなりには活躍出来るだろっ!と、ナッパに言われ行くことに。

 

 しかしこの主人公、この世界に来て殺しを余り経験しておらず、星の住民の殲滅なんて御免だという考えである。

 

 これはマズイ……、俺殺しとかやりたくない……よし、丁度良い機会だ。事故を装ってヤードラット星に行くか、と方針を固める。

 このことについては家族と仲の良い一部の人達に必死に説得したそうな。

 

 そして、当日ポッドで飛んでる時に事故を装って行き先変更する(原作ではサイヤ人の乗ってる丸い宇宙船は行き先を変更できないようになってますが、この作品では出来るってことでどうかお願いしますm(_ _)m)

 

 そして、其之三のお話へと続きます。

 

 

 格闘技の経験も無い前世でぬくぬくと平和を満喫してた一般人なんで、これくらい苦労するんじゃないかなぁ、って思ったんで、ロコン君には色んなものに揉まれてもらいました。

 そんな中でもラディッツと戯れたり等、結構癒しもありましたけどね。

 

 そこでちらっと余談ですが、この作品のラディッツの扱いも簡単に説明しときます ⬇︎

 

 ●ラディッツはカプセルから出た後、ナッパのいる戦闘員のグループに配属されます。 そこで訓練を積んだり等してるので、その周りの人達の影響も性格に響いてきます。

 まぁ、ですがこの作品ではとことんロコンがラディッツに構いまくって遊んだり、家族一緒に食卓を囲んだりと、地球人っぽい暖かな環境にも触れてます。ってことで、原作より性格は軟化されてるってことでお願いします。

 

「あいつ(カカロット)は下級戦士って判定で家庭用のポッドの中ですよ、みっともない!……ん?そういえばポッドで飛ばされたって言ってたな……ま、どーでもいいすっけどね!」(映画の台詞)

 みたいな冷たい感じの性格からは離れちゃってる感じっす。

 

 ●悟空の方はというと、3歳まで家庭用育児カプセルに居た後、地球に飛ばされました。

 

 ●簡単な年表

 ロコン5歳時 ラディッツ誕生(0歳)

 

 ロコン8歳時 ラディッツ3歳 カカロット誕生(0歳)

 

 ロコン11歳 ラディッツ6歳 カカロット3歳

【↑現在(13話時点)】

 

 

 ●他にも惑星ベジータでの日常の風景、原作を弄ったブロリーの家庭事情、ラディッツとの戯れ等々、色々と話は考えてますが、機を狙って投下していこうかなと思います。



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〜始まり〜
其之一 リスタート。


 初めての小説です。拙い部分が多々ありますが、それでもいいよって方は見てやってくださいm(_ _)m


 ……今、なんか暗くて椅子が2つある場所に居るんだけど、この状況どっかで見たことあるな……。

 具体的には転生ものの小説のアレっぽい。もしかして俺亡くなった、のか……?

 

 確か最後の記憶は……ドラゴンボールの映画観た帰りにトラックが目の前まで近づいてきて……

 

「ちょっといいかな?」

 

「——っ!?は、はい!!」

 

 急に対面の椅子に現れるもんだからさ、いやホントびっくりするわ……

 

「まず自己紹介からかな。私は君達の言うところの神に当たる者です。よろしく」

 

「はっ、はい。よろしくお願いします」

 

 お、おおおお!!!神様!!?? 本当に存在した!!凄い!めっちゃ綺麗な人!ずっと見ときたい! !

 

 ——って違う違うそうじゃない。

 まずいきなり神様ですって言われたのに違和感すらなく受け入れている自分の状況が異常なんだけど……う〜ん……けど、目の前の人はなんか神々しいオーラ纏ってるし、何より初めて会ったっていうのに……なにか絶対的な安心感?を抱いてしまうというか。

 

 ……本当に神様なのかもしれない。

 まぁ結論出すのにはまだ早いし取り敢えず様子見といくかな。

 

 というか、本当に神様だったら今のこの状況……マジで亡くなった可能性が高い……。

 

「えっとね、突然だけど君は亡くなりました。死因はトラックに轢かれそうになってた子供を庇って、代わりに君が轢かれたって感じです。因みにその子供は君のおかげで無傷でした」

 

 ……そういえば。信号待ちしていた俺の横から男の子が飛び出して……気づいたら体が動いてて……。

 

 あー……完全に思い出した……。

 うわー……はあ……。

 いやホント我ながら何であんな無茶したかなぁ……まだまだ生きたかったのに……。やりたいこともたくさんあるし未練とか数えきれないくらいあるんだけど……。

 このまま化けて出てやろうかな……

 

 

 はぁ……。まぁけど………………まだあの子供が助かってくれたんなら良かった。せめて無駄死にじゃなかっただけマシだと思っとこう……。

 

 ──と、思ったけど、やっぱり堪える。なんせまだまだ生きたかったし。こんな現状にはどうしても溜め息を吐いてしまう……はぁ……。

 

「そして提案なんだけど……君はもう一度現世で過ごせる。異世界にだけどね。どうかな?」

 

「え……?」

 

 え、ま、マジ!?まだ生きれる!?

 っていうか、これが異世界転生ってやつですか!?

 なんか見たことあるシチュエーションだなーって思ってたけど……マジか! !

 

「あ、あの神様。ちなみにどこの世界に転生出来るんでしょうか?選べたりしますか?」

 

「あー、えっとね。これに関してはもう1つの世界に決まっちゃってるんだよ。だから君はその異世界で過ごすか、あの世に行くかで選んで欲しい」

 

 勿論まだ生きていたい!どんな世界でも……!

 まぁヤバすぎる世界観の所とかは嫌だけどね。

 だから一応確認しておこう。

 

「分かりました。因みにその異世界とは何処か教えてもらえますか?」

 

「うん。一応君の頭の中を覗いて、君が好きそうな世界をチョイスしたからね。で、その世界とは……」

 

(え?いや今頭の中覗いたって言った……!?

 さらって流したけどそれ結構重要なんじゃ……というか俺の好きな世界……ならToLOVE)

 

「ドラゴンボールの世界です!!」

 

「——っ」

 

 ドラゴンボール……だと!?

 ウソ!?え、マジで言ってる!!??

 うわあああああ!!!やった!!マジかよやった!!

 俺が一番好きな漫画!!

 転生先はドラゴンボール!やった!!(正直ToLOVEるも捨て難い……ナナに会いたいかった……っ!)

 

「是非!!ドラゴンボールの世界に行きたいです!!!!」

 

「お、おぉ。好きだって分かってたけど、こんなに反応するとは。あ、でも原作に存在しない人が居たりとかで完全に原作遵守の世界じゃないんだ。それでもいいかい?」

 

 ふーむなるほど。原作遵守ではないと……。

 まぁ、それでもドラゴンボールの世界で過ごしてみたいし、もちろん返答は

 

「はい、大丈夫です」

 

「うん、了解です。それと転生特典を1つ付けてあげるから、なんでも言ってね 」

 

「転生特典……!」

 

 出た!異世界転生お馴染みの転生特典!うわぁ〜憧れてたんだよなぁ。エミヤの『無限の剣製』とか、アクセラさんの『反射』とか生きてる頃どれだけ夢見たものか……

 

 ——っとその前に色々確認しとかないと。俺の知識の異世界転生と違うと困るし。

 

「神様。確認したいことがあるのですが、私が転生するとして、記憶は引き継がれますでしょうか?そして私の転生先はどうなっていますか?」

 

 この異世界転生の事情が俺の知ってるやつと同じとは限らんしね。

 それに転生先の自分の立場を踏まえた特典がいいし。

 

「残念だけど、記憶はリセットされるね。それと君はバーダックっていう男の息子として転生してもらう予定だよ。別に憑依とかじゃなくオリ主ってやつだね。下にラディッツとカカロットっていう弟がいるよ」

 

 ——ッ!?なにぃ!?!??

 まさかの主人公の兄ポジション!?

 これはなんとも……慎重にいかねば……。

 

 ってか俺の来世サイヤ人か。サイヤ人になることが前世の俺の子供の頃の夢だったけど死んでから叶うことになるとは……。

 

 ——っと、忘れてた。後半があまりにもインパクトありすぎて前半のことが抜けてた。

 う〜ん……しかし記憶が引きつがれないって結構痛いよなぁ。あの世界での原作知識の重要性はかなりあると思うし。しかも記憶が抜けてるってことは下手したらフリーザ様に惑星破壊される時に巻き込まれるし危ないよなぁ。なにより家族揃って助かりたいし……。

 

 それに、記憶をリセットするってことは、もしかして今の自分っていう自我が無くなってしまうのでは……? その辺の頭の構造とかは詳しくないからあれだけど……もしそうだったのなら、嫌だ。俺という自我が消されるくらいなら転生したって意味なんか無いし。

 

 ならば────

 

「転生特典は『記憶の引き継ぎ』でお願いします」

 

「オッケー!了解! じゃあ特典も決まったし、早速で悪いけど今から転生させるね」

 

 いきなりか!

 まぁ神様だから忙しいんだろうし仕方ない。

 

 ——っあ〜〜!!それにしても今から前世で夢見た世界に行けるって思うとワクワクしてきた。

 なにより俺バーダック一家が大好きだったんだよな。pixivとかtwitterでバーダック一家のお話・イラストを何度漁ったことかと……。

 

 バーダック一家が仲良く過ごしてる感じのお話とかさぁ……尊過ぎませんか??なんでしょうかアレ??素晴らしすぎませんかね……。マジでもっと増えてください(懇願)

 

 ——という訳で……よし、んじゃ原作知識を元になんとか家族仲良く末永く過ごせるように頑張ろう。

 

「はい、分かりました! ありがとうございます!

 それでは第2の人生……行ってきます!」

 

「うん、いってらっしゃい。楽しんでおいで」

 

 そう言って神様は俺を送ってくれた。あとずっと思ってたけど、なんか温かい人だった。イメージ通りの神様っていうか。もっとお話ししたかった気持ち、も……。

 

 って……なんか考えてる内……に意識がボヤけてきた……。

 次起きた……時はドラゴンボールの世界か……楽しみ……

 

 

 ——そうしてバーダック家の長男『ロコン』として第2の人生を歩むことになるんだけど……。

 

 ロコン……とうもろこし……コーン……そっか……。……や、まぁ俺とうもろこし好きだし多分神様が汲み取ってくれたんだと思う……。多分。

 あとバーダック家の子なのに根菜類の名前じゃないのは異分子っぽい感が漂ってるような気も……

 

 ま、まぁ何はともあれ……スタートです

 

 次回も絶対ェ見てくれよな!

 

 




 ブロリーの映画を観てつい衝動的に……。

あと第1話の締めは悟空っぽくやりたかったんです……。
気が向けば次回も読んでやってくださいm(_ _)m


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其之ニ 産まれました。考えます。

 ロコン君がこれからの計画を立てるお話です。


 無事転生しました。

 現在産まれたてで家庭用育児カプセルの中で浮いてぷかぷかやってます。

 いやさ、赤ちゃんからやり直してる訳だけどさ、記憶を引き継いでるから精神的に大人な訳で……全裸でカプセルの中にいるこの状況がしんどいっていうね。

 

 まぁそれよりも

 

 今、培養器の前にバーダックとギネさんがいる……すげェ……。

 っと、じゃなくて。今世じゃこの人達の息子なんだから呼び捨てなんて以ての外。父さんと母さんなんだから。

 それと、もうこの世界は漫画じゃなくて現実なんだし意識変えていかないと。

 

 で、話戻るけど。

 マジでドラゴンボールの世界かぁ……父さん格好いいし、母さん美人……。いやはや凄い(語彙力)

 こんな人達の息子な訳だからきっと俺もイケメンか、あるいは可愛い系統の容姿が期待出来そう……ふふふ……心踊る。 もうこの人達の息子ってだけで転生特典として十分なくらい魅力的だからね。嬉しみ。

 

 

 さて、今は保育器の中で考えることしか出来ないし、これからのことについて色々整理するかな。

 

 取り敢えず今の俺の戦闘力は5で、下級戦士としてランク付けされてる。うん、まぁ、強くてスタートっていう都合の良いようにはいかんよね。仕方ない。

 予想通りの最弱からのスタートだけど、まぁ工夫と努力次第でなんとかなると思うし、めげずにいこう……。

 サイヤ人の身体なら伸び代あるし充分充分。

 まぁ後に弟になる悟空は戦闘力2で産まれてきたけど絶え間ない修行で遥か高みに登りつめだんだし、血が繋がってる俺にも可能性はある……かも、と思いたい。

 

 いや、まぁけど折角ドラゴンボールの世界にいるから強くなりたいし、才能無くても頑張るよ!!

 下級戦士って理由で舐められるのも癪だし、なにより弟達に誇れる兄ちゃんでいたいって理由もあるし。

 

 それで、どう戦闘力を伸ばすかだけど……。

 取り敢えず父さんが暇な時に訓練付けてもらおうかな。 出来れば半殺しにされてメディカルマシーンで回復っていうサイクルでやってけばベストだと思う。半殺しとか御免被るけど、まぁ割り……切れんな……。訓練として無茶苦茶すぎる……。

 取り敢えずこの案は置いておく。

 

 それ以外だったら取り敢えず相手してくれそうな人に訓練手伝ってもらったりとか、重力が高い場所での修行とかかな。 う〜ん…………それくらいだろうか。今のところ他には思いつかない。

 

 まぁ、戦闘力のことは追々考えるとして……。

 

 次に戦闘力以外の技術。まずは『気のコントロール』を身につけたい。もし戦闘力のコントロール出来ない状態で大幅なパワーアップなんてしたら目付けられるし。特にフリーザ様に勘付かれたくないから何が何でも身につけたい。

 

 んでどうするかというと、ヤードラット星人に修行をつけてもらおかなと。悟空は『瞬間移動』教えて貰ったって言ってたから、『気のコントロール』にきっと長けている筈。 なんとか頼み込もう。

 

 それに『気のコントロール』が出来れば『フュージョン』が出来るってわけじゃん?やり方は知ってるからさ。『気のコントロール』と『フュージョン』のポーズを一緒に戦う信頼できる人に教えとけば、超サイヤ人に覚醒しなくてもきっとフリーザ様にも対抗出来る!……と思う。

 

 こんなところだろうか。『気のコントロール』を身につけて修行してバレずに戦闘力を大幅に上げていく作戦。そして切り札の『フュージョン』でフリーザ様を倒す!上手く行けばいいけど……。

 

 正直俺、前世でも喧嘩とか数えるくらいしかやってないし、武道とかも分からなくて。『気のコントロール』に必要っぽい精密な作業とかもやってなかった訳で不安でしかないけれど……

 

 ——けど。今、俺のことを培養器越しに温かな目を向けてくれてる父さんと母さん、これから産まれてくる弟達とずっと平穏に過ごせるようにって思うと頑張れそうと思う。

 

 やれるだけやってみよう。




いざ小説書くってなったら難しいものですね。。。
けど、同時に自分の頭の中のストーリーが纏まるから楽しくてワクワクしますね!


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其之三 ヤードラット星にて。

 初めて感想を頂いてめちゃくちゃ嬉しかった……ニヤニヤが止まらない( ´﹀` )
 では3話始まります〜


 ———ヤードラット星

 

『ロコン』として、この世界に転生してから10年の歳月が流れました。ってわけで只今10歳です。

 まぁここまで色々刺激的な毎日を過ごしてた訳だけれど、特に記憶に深く残ってるのはアレかな。初めてかめはめ波を打つことが出来た時。もう最初は興奮して大変だったのなんのって……。俺だけじゃなく皆テンションおかしくなると思う。いっぺんやってみたら分かる。

 いやなんせさ、俺なんか特に、というか他の人も分かってくれると思うけど前世の子供の頃に何度かめはめ波の練習したことかってね。ホント何度出せると信じ続けて練習したことかと。

 大人になって完全に諦めていたけど、来世で実を結んだのならまぁよかったかなと。

 

 

 

 あとは……高所恐怖症で観覧車とかも前世では駄目だったんだけど、舞空術で空飛んでる内に慣れたっていうこともあったかな。

 空飛べるんだから落ちる心配はないし、仮に落ちても死にはしない身体だから恐怖心が薄れたっていうのもあるかも。

 

 

 後は辛かったこととかになるけど…………しんどいしやめとこうかな。うん。尺取るかもだし。仕方ない。

 

 

 ——まぁ、そんな回想は放っておいて、今は例の『気のコントロール』を学ぶべくヤードラット星に来てます。

 さっき到着して現地の人を飛びながら捜索中って感じ。

 

 それにしても荒野っぽい所に無事に着陸出来てホントよかった。間違えても都市の真ん中に着陸なんてしたら信用に関わるからなぁ……。

 

 何処ぞの王子と巨漢の大男を頭にチラつかせながら飛んでいる内に民家が見えてきた。

 

「お、見つけた。んじゃあの歩いてる人に尋ねてみよ」

 

 そういって降下していき近くに居たメタモル星人に喋りかける。ちなみに服装はサイヤ人ってバレないように着替えてて、尻尾は服の中に隠してる。

 

「おや、どうしたのかな?ボク。見たところ違う星から来た旅行者かい?」

 

「こんにちは!はい。勉強しにこの星にやって参りました」

 

「勉強?この星に?まぁそれはそうと、何か私に聞きたいことがあったんじゃないかな?」

 

「はい。風の噂でヤードラット星の方は『瞬間移動』という独自の術を身につけていると耳にしまして。

 私もその術を身につけたく思いこの星に来たのですが、どなたか伝授してくださる方にご存知ありませんか?」

 

「なるほど、事情は分かったよ。しかし、『瞬間移動』か……」

 

(そう簡単に教えるわけにはいかないんだがなぁ……。

 とりあえず村長の元まで案内するか)

 

「それならこの村の村長の下まで案内するよ。

 付いておいで」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 そうして後ろを付いて行く内に他の民家より一際大きな建物が見えてきた。

 

「あれが村長の家だよ。話を通してくるから待ってて貰えるかな?」

 

「はい」

 

 やっぱり村長なだけあって凄い家に住んでるなぁ。俺の家の何倍あるのか……

 

「ロコン君入っておいで」

 

 合図があったので、「おじゃましまーす」と挨拶して家に入る。すると、応接間のような部屋の椅子に座っているヤードラット星人が迎えてくれた。

 

「やぁ、こんにちはロコン君。儂はこの村の村長をやっている者です。ささ、どうぞ掛けなさい」

 

「はい、失礼します」

 

 傍に杖が置いてて腰も曲がってるし、お年を召した方かな?

 

「話は聞いとるよ。『瞬間移動』を習いたいそうじゃな?」

 

「はい……どうかご教授願いませんか?」

 

「教えても構わんが……。ただし条件がある。

 悪しき者に我が一族の技術を教えるわけにはいかんからな。そこでじゃ、儂は人の記憶を見ることが出来てな。君の記憶を見て善人であると確証を得たら、その時はこの技術を教えよう。どうじゃ?」

 

 ——っ、最長老様と同じこと出来るとは……!誤算だった……!

 だけどもうここまで来たんだし、なるようになると思おう。それに第一この技術で悪さしようなんて思っていないし大丈夫の筈。

 

「……分かりました。よろしくお願いします」

 

 目を閉じて暫し逡巡する間に決意を固め、そして開いた真剣な眼差しで村長を見据えて返答を返す。

 

「うむ、それでは失礼するよ」

 

 頭に手が置かれる。記憶の読み取りが始まった?

 ってなんか頭ふわふわしてきた……。

 

(む、この坊や……。見かけに反して中々濃い記憶を持ってるな)

 

「『フリーザ』・『フュージョン』・『気のコントロール』・『瞬間移動』……なるほど。『瞬間移動』は『気のコントロール』を習得するための手段として、さらに母星が破壊される前に家族と逃げる最終手段として保険を掛けておきたいと。むっ、儂が読めない記憶の部分があるとは……。前世の記憶にはモヤがかかっておって見えん」

 

 惑星が破壊される前に『瞬間移動』で逃げる案は父さんが確実に怒ると思うから、フリーザを倒せなかった時の最終保険なんだよな。まぁ、戦術の幅が広がるのと移動が楽に出来ることも理由の一つだけど。

 

「しかし……まさか転生者じゃったとは。何かあるとは思ったが特大の訳あり者だったわけか。

 道理でこんな若い頃から修行なんてしようと……いや、そうとも言えんか。サイヤ人としての在り方も関わっていたりするのかもな」

 

 ——思いがけない事態で転生者ってことがバレた訳だけど……そうか、じゃあもう何も隠す必要ないか……。

 考えてること読まれた訳だし……きっと、遅刻しそうになった時に瞬間移動便利だな〜使えてよかったぁwwとかそういう目論見もバレてるだろうし。

 

「通常ならサイヤ人のような悪しき者に手を貸すことはないんじゃが……。しかし、お主は悪人という訳でもなさそうじゃ。お主が修行する動機は家族を守りたいという強い思いから来ているしの。そして悪しきことを企てようともしとらん。

 まぁ『瞬間移動』を遅刻の時便利だとかいう不純な考えもお主から読み取ったが……まぁ、目を瞑ってやる。

 ——よかろう合格。我が一族の技術、お主に伝授しよう」

 

 認められたか!よし!

 ガッツポーズを取り喜びに震えている俺の頭からスッと村長が手を離す。

 

「さて、ではお主の推測通りじゃが、まずは『気』の扱いをマスターする修行からだが、早速今から始める。なに、記憶に触れて儂はお主のことを存外気に入ったからな。全力を以ってお主の修行に付き合ってやろう」

 

 お、おぉ……思わぬ高評価に正直 面映ゆい思いだけど……まぁ、自分の秘密を曝け出した上で認められたんだし正直めっちゃ嬉しい。

 それにしても予想以上に修行に乗り気になってくれてるみたいだから折角だ。たくさん吸収させてもらうとしよう。

 

「はい、ありがとうございます!ではこれからご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします!」

 

 そうして『気のコントロール』の修行は始まった。




 自分の秘密を曝け出したロコン君。彼にとって村長は師匠としても秘密を共有する相手としても、大きな存在になるのかも?


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其之四 帰還……ん?

 ヤードラット星での修行から1年。なんとか『瞬間移動』を身につけることが出来たので惑星ベジータに帰ることに。

 

「村長様……1年間ありがとうございました……!」

 

「うむ……1年間よく頑張ったな。それにしても早いもんだったなぁ……お主がやって来たことが昨日のように思い出せる。あっという間の1年じゃったな」

 

「はい。とても充実した1年間を過ごさせて頂きました……。この経験を糧に目標に向かって頑張っていこうと思います」

 

「ふふ、あぁ頑張りなさい。きっとこの先もよくやっていけるとも。さぁ儂の可愛い弟子よ 自信を持って進んでいきなさい」

 

「はい!」

 

 この一年で気のコントロールの練度は随分と高めることが出来た。後は、自主的にも気のコントロールの修行を続けるのと戦闘力の増強ってところかな。

 

「では……そろそろ行きます」

 

 そう言って宇宙船に乗り込もうとすると、村長様から待った、と声がかかり、なにやら大きな風呂敷を渡される。

 

「ほれ。帰るまで時間が掛かるだろう?弁当を詰めといたから食うといい。それと今度は家族一緒に遊びにきな。ロコンの家族なら歓迎するぞ」

 

 本当に何から何までこの人は……いい人だな。なんて良い師匠に巡り会えたんだろうかと考えていると涙腺が緩んできたので必死に抑えつつ、ちっぽけな意地を通すために若干顔を俯かせつつ言葉を返す。

 

「——っ、はい……本当にありがとうございます。

 是非伺わせて頂きます。それでは……失礼します!」

 

 星から離れていく宇宙船が見えなくなるまで村長様は見送ってくれた。

 

 —

 ——

 ———

 

 ———宇宙船内

 

 さて、正直今気づいたけど宇宙船ごと『瞬間移動』したら惑星ベジータに帰れたな……。

 別れのシーンで泣くまいと意地張ってて余裕なかったから完全に忘れてた……。まぁ結局最後泣いたけど。

 

 ま、しかし折角お弁当もくれたことだし、ゆっくりと帰るのも悪くない。うん。こういう時間もないと人間やってけないからね。

 

 さて、じゃあどーするか……良い修行場所になりそうな重力の高い惑星か、ドーナツを調達出来る惑星を探すとしようかな。

 ……?なんでドーナツかと?んなもん俺の大好物かつ、生活必需品であるからして……まぁ俺は今世でドーナツに飢えてる訳です……俺にとって前世のソウルフードであった訳だから……(唐突に始まるドーナツ談義。読み飛ばしてもらっても結構です(笑)

 だが こいつ(主人公)が許すかな!)

 

 始まりはそう、俺がアニメ『偽物語』を視聴している時に忍野忍という天使が映って……その子があまりにも美味しそうにドーナツを食べるもんだから見事触発されてミスドに行ってきた訳よ。そっから見事にドーナツに嵌ってしまい俺は週一でドーナツを食べねばならない身体になってしまった……だって金曜日にドーナツを食べれると思えると平日頑張れるんだ……。

 

 因みに今のオススメドーナツは期間限定の「クリスプショコラ ダブルチョコ」!!これはねぇ……¥216と少々値が張るけど、値段の通り凄く美味しいと断言する! もう、なんかザクザクしててチョコが凄く美味しくて最高だった(語彙力)

 

 ——よって!俺のベストパフォーマンスを発揮するには今世でもドーナツを食べなきゃならん訳で、むしろこれを抜きにしては進めんとも言える。ドーナツが無かったらきっとフリーザも倒せない。そんな気がする。いや、そうだと今決めた。 だから今からドーナツ巡る旅に出る。

 

 まぁ、一回行けば『瞬間移動』で行き来できるし。帰りも『瞬間移動』使うから。アレな動機だけど早めに終わらすからドーナツ探し編に入っていいよね?




 早くも脱線していく主人公。1年間修行頑張ったってことでご褒美として許してやって下さい(笑) 彼にとってドーナツとは死活問題ということで、どうか……

ま、ドーナツとは別に非常に大切なことを地球にしに行くんですけど……彼が気づくのはもう少し先かな?

 それにしても今回は作者の趣味全開で行かせて頂きました。ドーナツ大好きなんですよね(笑) そして忍・カタクリさんが超好きです(´ー`*)

 突然ですが皆さん今朝のONEPIECEのカタクリさんの勇姿をご覧になられましたか?観てないよって方は868話をご視聴して下さればですね、えぇ、カタクリさんのファンになります(確信)
カタクリさん超格好良かったですよね。ほんといい人。好き。ルフィと対等な状況を作る為にまさか自ら身体を傷つけるとは……男気溢れる!流石カタクリさん!そこにシビれる(ry)
 それと「外野がうるせェな…」「どうせたってられねェよ!」ってシーンね!漫画でも震えたけど、アニメの演出も凄く格好良くなっててヤバかったっす!それと他n(ry)


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〜4032の緑の877惑星編〜
其之五 あれ?これってもしかしてFa


今回も作者の趣味全開でございます


 ドーナツ探しの旅を決め行先を決めていると、ふと気になったことがあり確かめてみる。

 

「そーいえば地球ってどこら辺にあるんだっけ……ちょっと調べてみっかな」

 

 前世での故郷な訳だし気になるよね。

 それに地球なら確実にドーナツが調達出来るし。

 

 そういうわけで調べ始めたが……なんと!!

 

「あれ?結構直ぐに見つかったか。

 ——っ、割と近い!?

 いやいや、確かに惑星ベジータから結構離れた場所まで来たけどさ。まさか地球と方向が一緒だったとは……!」

 

 なんと思わぬ誤算!ツイてる!

 じゃあ早速行先を地球に設定して……と。

 

 出発!!

 

 —

 ——

 ———

 

 ——地球

 

 —と、いう訳でやって来ました前世の母星。

 久しぶりの地球……なんか感動、というかそれよりも身体軽いのに驚いてる。

 確か惑星ベジータの重力って地球の10倍だったか。……?ってことはヤードラット星も重力が10倍だったってことか。何の違和感も感じなかったから。

 

「んじゃ、とりあえず乗ってきた宇宙船はどこか洞窟にでも隠さないと」

 

 ちなみに今俺が居るのは森の中。いや、マジでこういう発見されにくい場所に着陸出来て良かった。途中で着陸場所どうしよって焦ったのは秘密。

 

 宇宙船をその辺にまき散らされている葉っぱやらで隠した後、よさげな洞窟を探す為、空を飛び周囲を散策する。

 飛んで周囲を確認して分かったけど、森を抜けた所に街が見える。それも結構な大きさの。

 後で寄ってみたいなと思い散策していると、ふと甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 

「……?ベタな展開だけど熊に襲われている女の子がいる……まぁ助けない理由もないし」

 

 それに色々と聞けるし行くか、と打算的な考えをしながら向かい

 

「よいしょ」

 

 と、熊を出来るだけ傷つけないよう気絶させる。

 

「……え?あ、ありがとう……。死ぬかと思ったわ……」

 

 そう顔を青ざめさせながら言う少女。見た所小学生高学年くらいだろうか?身長から考えて。

 

 しかし……健康的な褐色肌に桃色が交ざった綺麗な銀髪、そして長い睫毛が上をしっかりと向いていて、整った顔立ちをしている。すごく可愛い。超かわいい。

 そして俺より身長高いという……ま、まぁ今の俺の身長が平均的な6歳の子供くらいだから仕方のないことだけれども……。

 

 それにしても都会にでもいそうな感じの子が何故森に?

 

「どういたしまして。あー……っと、ごめん、突然で悪いけど少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

 今居る場所が具体的に何処なのかとか、ミ○ドはあるのかとか色々聞きたい。

 

「え、うん、勿論構わないわ。あなたは命の恩人だから。受けた恩は無碍にはしないし返させて。あっ、そうだ!立ち話もなんだから、この近くに私の泊まってる所があるんだけど来ない?歓迎するわよ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

 そうして、彼女の泊まっている場所へと揃って歩き始めることに。

 

「そうえば、まだ名前を名乗っていなかったわね。私はクロロ。クロでいいわ。あなたは?」

 

「俺はロコン。よろしくクロ」

 

 ふむ……クロ……か。なんだこの既視感って思ってたけど、あれだな。この子『プリズマ☆イリヤ』のクロに似てる……というか、そのままかもしれない。

 原作に出てこないキャラも居るかもって神様言ってたけど、こういうこともあるってことか。クロのチョイスはきっと作者の趣味に違いない。

 

「ところで、あなた何者なの?熊を素手でダウンさせるってなんなの?それに見た所まだ小さいでしょ?」

 

「え?あぁ、あー……ちょっと父さんに鍛えられてるからこういうのは慣れてるっていうか……なんというか」

 

 自分で言うのもなんだけど、地球からしたら並外れた俺の強さを誤魔化した方がいいのかと若干悩み、そして焦った思考で咄嗟に答えたけれど、大丈夫だろうか?

 まぁ父さんに鍛えられてるのは本当だし、嘘は言ってない。

 ——なんか勘ぐったような目で見られてる……。

 

「どうやったらこんなバイオレンスな状況に慣れんのよ……」

 

「いや、はは……」

 

 呆れ顔で此方を見やるクロについ空笑いが出る。

 

 因みに今の俺の見た目は、さっきも言ったけど6歳の子くらいの身長で、母さんの髪型にちょっとマイルドにした父さんの目つきって感じ。確かにこんな子供が熊に対処出来ると思わないか。そらそんな反応になる。

 

「あ、そういえば俺11歳だから!身長の所為でよく間違われるけども!」

 

「えっ!?そうなの?そ、それはごめんなさい……」

 

「や、まぁ慣れてるからいいよ。全然気にしないで」

 

「ありがと。というか、なんだ。それじゃあ私と同い年じゃない。私も11歳」

 

「へぇーマジか、偶然ってあるもんだ」

 

 こりゃまた凄い。まさか同い年とは。

 

「それよりクロはなんでこんな山中に?ここに住んでるとか?」

 

「違うわよ、ここに別荘があるの。夏休みだし家族で行こうってなってね。だけど……来たはいいけどやる事なくて暇だったのよね」

 

 せめて妹が来ればなーと、どんよりと肩を落としながらそう言う彼女。まぁ確かに気持ちは分からんでもない。

 

「だから森の中に入ってたってこと?」

 

「そう。何か珍しい生き物でも探そうと思ったんだけど……思いの外深くまで進んでたみたいでね。さっきの通り熊とエンカウントしちゃったって訳」

 

 森を甘く見過ぎだ!とか叱ってやった方がいいんだろうかなと思ったけど、もう彼女はあんな怖い思いをしたから、まぁその辺はしっかり分かってるし学んでるだろうし。だから何も触れずに、そりゃ災難だったねと苦笑混じりに応答する。

 

「もうこれからは軽率な行動は控えるようにするわ……。

 ロコンが居なかったら私今ここに居なかっただろうしね」

 

「まー高い授業料だったと思って。っと、え、なにあれ。いやなにあれこの建物……城じゃん……」

 

「あぁ、あれが私の別荘よー」

 

「マジすか……」

 

 あれ……アインツベルン城なんじゃ…… 。

 〝別荘〟とは一体……。

 っていうか大丈夫だよね?流石に聖杯戦争なんて嫌ですよ?関わったら今の俺じゃ多分死ぬよ?魔術が〜とか言わないでよ? クロスオーバーのタグ付いちゃ嫌だよ?

 只の普通の城っていうオチでお願いします……。

 

「お嬢様!」

 

 白髪の髪の毛を後ろで一つに括ったメイド服を来たお姉さんがクロに駆け寄って来る。うん。凄い美人さん。

 

「外出するなら一声掛けてからにしてください!心配したんですからね!」

 

「うっ、ごめんなさい……」

 

 しゅん、と小さくなるクロに説教を始めるメイドさん。そんな一連のやりとりをぼーっと見ていると、こちらに気づいたようで、すみません、とこちらに駆け寄り

 

「はじめまして、私クロロ様のお家でメイドをしておりますセーラと申します。お嬢様からお話しは聞きました。その節は本当にありがとうございました」

 

 深々とお辞儀をするセラさん、いやセーラさん。

 

「い、いえいえそんな……。当然のことをしたまでなので、頭を上げてください」

 

 慌てながらそう言うと、スッと綺麗に姿勢を戻す彼女。様になってる……これがメイドか……。

 

「ありがとうございます。このお礼と言ってはなんですが……おもてなしをさせて頂きたいので是非上がっていって下さいませんか?」

 

「──っ、あ、はい。よろしくお願いします」

 

 少し近寄りながら言う彼女に緊張して下を向きながらどもる俺。いや、こんな有り得んくらい綺麗なお姉さんが目の前にいたらね、仕方ないと思うんですよ。なんか甘い匂いするし、凄く綺麗だし……やばいし

 

 ふふっ、ではこちらへ、と案内してくれるセーラさんについて行く。

 だめだ……今絶対俺顔赤いわ。アニメと漫画でセラさん見てたけど……本物で、しかも目の前に居たら緊張でどうにかなりそうになる。TVで観てた芸能人を生で見るような感じかな多分。

 

 はぁ……ヤバイ。

 

 するとニヤニヤと新しいおもちゃでも見つけたようにこちらを見やるクロが

 

「ふふっ、まるで林檎みたいね。照れてる照れてる♪」

 

「──っ、うっせ!」

 

 恥ずかしさから更に顔を真っ赤にする俺を見て、楽しそうに笑うのだった。




はい!ということでクロとセラの登場でした!
折角地球に来て、原作に居ないキャラが居るって設定だったので、じゃあ好きなキャラ出したいなってことで大好きなクロを登場させてしまいました!

混乱された方はすみませんでしたm(_ _)m
fateを知らないって人は、プリヤ クロ でググればイラストが出てきますので是非見て頂ければ……。とっても可愛い女の子ですので、気になったら是非アニメを見てみて下さいm(_ _)m

それと、fateのキャラは出しましたが、聖杯戦争の存在は無いものとします。 詰め込みすぎても混乱しますので。
あくまでもキャラだけってことで。


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其之六 別荘にて。

 招かれた別荘でとても美味しそうな料理の数々がテーブルに敷き詰められている。その一つ一つの品を端から端まで見渡していると

 

「いや……そんな目が飛び出しそうなくらい凝視しなくても逃げないから大丈夫だって」

 

「あ……あー……いやどれもかれも美味しそうでつい」

 

 なにしろ前世の頃からこんな豪勢な料理にありつける機会なんて無かったのだ。興味を惹かれてしまうのは当然のことで、さらにサイヤ人の性もあってか非常に腹ペコ状態。

 もう辛抱堪らん。

 

「じゃ、食べましょうか」

 

 そう言い此方に目配せするクロに頷き

 

「あ、じゃ、じゃあいただきます」

 

 興奮を隠し切れず若干どもりながらも手を合わせ、震える身体を抑えながらフォークを伸ばす。

 

「……う、美味すぎる……」

 

 なんかこう……美味すぎるとしか言えんくらい美味い。とにかく美味い。ほっぺたが落ちそうとは言わず、実際に落ちそうなくらい緩みきった表情になってると思う。

 

「でしょー!セラのご飯は絶品なのよってあんた顔……」

 

 俺の顔を見た途端に若干クロがギョッとした顔で引いていたが構うものか。

 

「……美味すぎて」

 

「へ、へぇ……そうなの」

 

 美味すぎるから仕方ないんです。そう自己完結した俺に対して少し引き攣った笑みを浮かべながらもクロが別の話題を振るべく口を開く。

 

「そういえばロコンってなんで森の中にいたの?」

 

「あー……まぁちょっと修行ってことで放り込まれた。ほら、なんか武人とか山籠りしてるじゃん?多分そんな感じで」

 

 悪びれもなく咄嗟に嘘をつく。

 そして、その嘘に対して頭を抱えるクロ。ロコンの親ってもしかしてヤバイ人なんじゃ……と呟いてる。すんません父さん。父さんが与り知らない所で利用させて貰ってます。風潮被害も甚だしいですよね。ホントすみません。

 

 そして談笑しながらご飯を食べ続け、気がつくとクロが少し引き気味に

 

「よ、よく食べるわね……」

 

「んっんっ……んん。……やー、その、俺大食らいなもんで。あと余りにもご飯が美味しくてつい……」

 

 たはは、と目を逸らしながら笑う俺に

 

「い、いや美味しそうに食べるからね。セラも喜んでたわ。作り甲斐があります!って生き生きとしてたし」

 

 そう気遣ってくれるクロ。優しい。

 

「そ、そう?……そ、そりゃよかった……」

 

 それにしても、食べるのに夢中になり過ぎて遠慮ってものを考えるのを忘れてた……めちゃくちゃ美味しくてつい……。

 サイヤ人の性なのか食事に目がないんです……。

 

「それにしてもクロの家ってかなりのお金持ち?

 この別荘とか最早城だし、メイドさんも居るし」

 

「まぁ、結構裕福な家庭ね。この別荘はママが一目惚れして買っちゃったんだって。メイドは本当はもう一人リズっていうセラの妹も雇ってるんだけど、今は普段住んでいる方の家に居る私の妹に付いてるわね」

 

「色々とすげェ……」

 

 けど、そうか……。この城は普通に売ってたのを買った只の別荘か……よかった。

 いや、城が別荘って規模がデカすぎてよく分かんないけど……。

 まぁ、取り敢えず何も不安な部分は無さそうでよかった。

 

「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

 

「はい。お粗末様でした」

 

 セラさんがとてもいい笑顔でそう応えてくれる。はあああ綺麗すぎてしんどい、結婚しよ……とか言ったらこの家の力で社会的に殺されて地球に居られなくなりそうなので口を噤む。まぁまずそんなこと言える度胸も無い前世から彼女居ない歴=年齢の雑魚なんですけどね。

 こうやって一声掛けて貰えるだけで胸に幸福感が湧き上がるんだから、俺はもうこれで充分。

 あとセラさんって高嶺の花ってイメージだから、そんな人と喋れてる時点でもう幸せよね。うん。

 俺が他人だったら絶対遠目から眺めるだけで手なんか出せないもん。他の人も例に漏れず、おいそれと手を出そうなんて輩もそういまい。変な輩でもちょっかいかけるのを躊躇するくらいだろう。まぁそんなの来たら消すけど。

 

 さて、それじゃ食事中に色々聞けたし、そろそろお暇させてもらうかな。

 

「ご飯ありがとう。んじゃ俺そろそろ行くわ」

 

「えぇ──!もう行っちゃうの?」

 

 不満げに口を膨らませるクロ。可愛い。

 まぁ自分で言うのもなんだけど、同年代ってのもあって色々と喋れて結構打ち解けれた気もするしな。前世はともかく今世での年齢に精神も引っ張られてるし、感覚とかも子供っぽい部分があるしさ今の俺。

 

 んー、それにしても別れを惜しんでくれるのは素直に嬉しい。俺としてもクロみたいな可愛い子ともっと喋っていたいけれども、しかし流石に置いてきた宇宙船が心配というのもある。隠し方も甘いし、さっさと洞窟でも見つけなきゃ不安で不安で。

 

「ん──……そうだ!ロコンってこの森で修行してるって言ってたわよね。もしよければまた会えない?ロコンが暇な時間でいいからさ」

 

「あー……」

 

 まぁ当分はこの森を生活拠点にしようとしてたし問題ないかな。

 

「うん、それならok」

 

「ホントっ!?ありがとう!」

 

 此方に少し身を乗り出し、ふふっと、微笑み混じりに答えたクロの笑顔はまるで向日葵のように明るく、且つなんとも綺麗であり、つい見惚れてしまい自分の顔が赤くなるのが分かる。不意打ちすぎる……。

 

「じゃ、じゃ俺行くから。今日は色々ありがとう。それじゃまた」

 

「うん、こちらこそ今日は本当にありがとう。またね」

 

 またまた緊張によりどもりながら、更に赤くなった顔を見せまいと急ぎ足で別荘を後にするのであった。

 

「〜〜っ、ああああ可愛いすぎか!!クロもセラさんも超美人でヤバイヤバイあとセラさんめっちゃいい匂いしたしクロは健康的な小麦肌もいい匂いも笑顔も超可愛いくてああああああああああ!!!この世界は心臓に悪い!……けど好き!」

 

 顔の火照りを冷ますべく全速力で空を駆けながら、胸の内をぶちまけるサイヤ人の男の子の姿を見た人がいたとかいなかったとか。

 



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其之七 西の都に。

 ———西の都

 

 前からこの地球の都会を散策してみたいなって思ってたのもあるんだけど……今日は買い物しに西の都に来た。目当ての品はホイポイカプセル。色々考えたんだけど、宇宙船を収納して持ち運びたいし(まぁ、リモコンでいつでも呼べるんだけど)手元に置いておきたいからね。それに使用用途は何も宇宙船だけじゃなく汎用性の高い物だから、単純に欲しい。

 

 確かセラさんによると、1つ20万ゼニーするらしい。

 それで、乗り物とかはカプセルコーポレーションの代理店に持ち込んだら、20万ゼニーでカプセルシステムを組み込んで小さくできるようにしてもらえるらしい。けど例外はあって、家とかシステムの組み込みに手間が掛かるものだったら通常より値段が高くなるらしい。

 

 ……因みにクロの別荘……アインツベルン城もシステムの組み込みをしてるからカプセルに収納出来るとのこと。

 あんなバカでかい城だから一体どれだけ掛かったのやら……いやいや全くとんでもないお金持ちなんだなと。

 

 そんで話戻すけど……ホイホイカプセルの次はドーナツ。この世界にもドーナツは勿論あるしミス○もあるらしいから食べていこうと思う。

 

 それと惑星ベジータで野菜作ってみたいから、ゴボウとネギ、とうもろこしとハツカダイコンと人参の種が欲しい。ヤサイ人が住んでいる惑星なんだから、きっと野菜に適した土に違いないしよく育ってくれる筈(謎理論)という予想が合ってるか確認したい。

 

 それとネットも使いたいからパソコン。

 野菜の栽培方法が全く分からないから調べたいのと、他にも色々調べたいこともあるし。それにyoutubeとかSNS(twitter)とか(クロのスマホにインストールされてたから存在はあるらしい)使いたいしね。

 

 あとは……ぶらぶらと観光して行こうかな。本屋さんとか。ほら、この世界にONEPIECEの漫画があるかどうか確かめないとさ、だめじゃないですか。

 ……ホントあれの最終回を見る前に死んでしまったのは悔しかった……っ! 頼む……この世界でも尾○先生存在しててくれ……

 

 そう祈りながら歩いていると

 

「っと……」

 

 隣の子供がぶつかってくる。小学生の……高学年くらい? じゃあ年も近いかも。

 

「いっ……っ……」

 

「大丈夫か……!?」

 

 んー……、いや、なんだかなぁ……。傍目から見たらただ痛がってるように見えるかもしれないけど……生憎彼の少し上がった口角見えてしまったからなぁ……。このままスルーしてもいいけど……ん、なんかあの路地裏の取り巻きっぽい子達ニヤニヤしてる。鴨を見つけたような表情してるし嫌な感じ。

 

「……ちょっと来てくれるボク? 少しでいいから話したいんだけど」

 

「え、すみません俺急いでるんで」

 

「まぁまぁそう言わずに。すぐ終わるから、ね?」

 

 もうこれカツアゲされる予感が……こんな子供でもやるなんて物騒な……。まぁちょっと脅かしたら直ぐ終わってくれると思うし付いて行くか。あとついでに色々聞けそうだし。

 

 そして裏路地に。案の定仲間っぽいお兄さん方がちらほらといる。

 

「お金貸してくれない?」

 

 直球である。

 

 こんな小さい子供相手に(見た目は)カツアゲするとか……やめて頂きたい。

 

 って

 

 カツアゲ……? 

 

「あ……」

 

「ん、どうしたの?」

 

 そーいえば俺この星の金持ってないわ……自分で言ってて自分に呆れますね。

 そうか……俺地球に来たばかりで無一文だったわ。

 いやしかしなんで気づかなかったのか……。

 偶に、いや結構な頻度でやらかすウッカリがここでも発動してしまったらしい……それにしてもこんな状態で買い物に来るとか恥ずかしい……。

 

 えぇ……いやそれよりちょっと待てよ……お金の工面どうすれば……

 

「俺、金持ってないよ」

 

「え? いやこれから何処か行こうとしてたんじゃない? 持ってるでしょ?」

 

「本当にないって。じゃ俺急いでるんで。帰ります」

 

 そう言って帰ろうとすると、一人の少年が駆け寄ってくる。茶髪に整った顔つき、他の取り巻きと比べたらガッシリとした身体つきで見た感じリーダー格っぽい。つかつかと俺の方に駆け寄って来て、ぐいっと乱雑に肩を掴んでくる。

 

「いいからさっさと財布出せって」

 

 今度は服の中を弄ろうとしてきたので、流石にそれ以上はマズイなと止めるため、怪我をしないよう軽く足払いで転がす。

 

「——っ、こいつ!!」

 

 ざわっ、と取り巻き達がざわめきたつ。

 

「おい! 俺が恥かかされたんだ! ただで帰すな!」

 

 その言葉を合図に取り巻きの人達が襲って来たので軽く往なしておく。

 

「この子供なんなの!?」

 

「どいてろ!」

 

 そう言いナイフを取り出すリーダー格の少年。

 

「おい、流石にそれはヤバイ……」

 

「ちょっと切り傷付けてやるだけさ……俺を転ばせるなんざ舐めやがってっ、このまま帰すか」

 

 完全に頭に血が上ってる様子。今の状態じゃ切り傷程度じゃ済まさないだろうな、あの人。

 ここは頭を冷やして貰うためにも……

 

 少年が俺に走り寄り、ナイフを振りかぶる。

 ——が、軽く回避して

 

「っ!」

 

「ちょっと頭冷やして」

 

 バキバキッッ、とナイフの刃を掴み砕く。

 

「……」

 

 目ん玉を飛び出し驚く少年。これでまぁ頭冷えたでしょ。あと、ついでだから聞いておくか。

 

「あー、ちょっといいすか」

 

「え、は、はい!」

 

「俺今手っ取り早くお金稼ぎたいんですけど、あ、ホイホイカプセル買えるくらいの。何か良いアテあったりしますか?」

 

「え、えーと……。

 ——て、天下一武道会なんてどうですかね!? お、お強いですし、きっと優勝して賞金狙えますよ!」

 

「──はっ! 天下一武道会……か!」

 

 天下一武道会……! そういえばドラゴンボールといえば天下一武道会! 正直すっかり忘れてた。

 この時代だとしたら確か……優勝すると50万ゼニー貰えたんだっけかな……つまりカプセルが買える!! 

 よし! 検討してみる価値はある! 

 

「それ、いつ開催するか分かりますか?」

 

「えーっとですね……確か今週末すね」

 

「分かりました。情報提供ありがとうございました。

 あ、それと次見かけた時もこういうのしてたら容赦しないんで」

 

 圧を出す為に軽く気を飛ばしつつ言うと、はい! と揃って良い返事が返ってきたので、それに満足してその場を去った。




ヘプンズフィール2章観てきました。凄かったですね!
もう圧巻というか。終始目が離せなかったです。
作者はアーチャー推しなんでもう、堪らなかったです……。


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其之八 天下一武道会 一回戦!

ロコン君が頑張ります!


「えぇ!?天下一武道会に出るの!?あなたが!?」

 

「うん、父さんが出ててみろって」

 

 クロの家に遊びに来て、ふと件の話題が上がる。

 

「いや、あなたが強いのは分かるわよ?熊に対処出来るくらいだからね。でも、いくらなんでも天下一武道会は危ないわ!全国の猛者が集ってくるのよ?」

 

 そう心配してくれるクロ。うん、やっぱりこの子優しい。けど俺は……。

 

「いや、まぁ……それが燃えるっていうかね……」

 

 正直この時代の地球の猛者と闘ってみたい。原作遵守じゃない世界だから戦闘力高い人が来る可能性もあるし、単純に天下一武道会には参加したいって気持ちもあるし。

 

「こ、この戦闘バカは……いや、もういいわ……。そんなキラキラした目をしてる人に何も言えない……」

 

 まったくしょうがない奴め、と苦笑いでため息を一つ零す彼女。

 

 まぁ、バトルジャンキーってほどではないけど戦闘は好きな方かもしれない。勿論うちの末っ子の闘い大好きマンのカカロットほどではないけれど。まぁしかし、新たな武人との出会いに内心少しワクワクしている自分がいるのは確かで、やっぱりサイヤ人なんだなと思い知らされる。

 

「ま、あなたらしいけどね。よし!じゃあ当日は応援しに行くわ!頑張ってね!」

 

「おう!」

 

 

 

 

 ——パパイヤ島 天下一武道会 会場

 

 当日。とりあえず予選は通過して只今本選です。そろそろ俺の順番かな?

 

「なんとー!今大会最年少のファイターにして本選まで勝ち上がってきた実力者!ロコン選手ー!」

 

『え、あんな小っちゃな子が?大丈夫なのか?』

 

『危ないわよー!』

 

『見た所子供なのに凄いなぁ。よく勝ち上がったもんだよ』

 

『バカ、どーせコネでも使ったんだって』

 

 出場する俺にそんな声がかかる。まぁそーなるわなと思いながら歩いてると

 

『ロコンー!頑張れー!』

 

 こちらに手を振り応援してくれる地球で始めて出来た俺の友達、クロが居た。周りの熱気で熱くなるとのことで髪はツインテールにして、服は白黒の半袖ボーダーシャツにデニムとラフな格好。すッッげェ似合ってる可愛い っよし!俄然やる気出てきた頑張ります!

 

「その大きな身体から繰り出されるパンチは岩をも砕く!ギドラ選手ー!」

 

『怪獣じゃないか!』

 

『おいおいあの子ヤバイぞ!』

 

『棄権してボクー!』

 

 ……?悟空が天下一武道会で戦ってた怪獣に似てるような……同じ種族?

 

「準備はよろしいですか?……始め──!!」

 

 そして鐘がなり試合がスタートされる。よし、友達も応援してくれてるし無様は晒せない。頑張ろう。

 

 相手が背中の翼で飛びながら距離を詰めてくる。

 

「っと」

 

「ほぉ、これを避けるのか。出来れば直ぐに終わらせてやろうとしたが、中々できる奴のようだなァ?」

 

「まぁ、そこそこできるとは思う」

 

 なんせサイヤ人なんで。それに無茶苦茶やらかす師匠にしごかれたし自信はある。

 

「なら手加減は無しでいくぞ! がああああ!!!」

 

「っ、マジか!?」

 

 ぎゅば──!!っと相手の口から固く、しなやかなガムが生成される。 この人もグルグルガムを使えるの!?

 

「っ、危なッ! うおっ!」

 

「ふふふ俺様のグルグルガムは相手へ追尾していくのだ。これを逃れられた者はいない」

 

 追尾機能もあんの!?強ッ! 初戦から厄介な敵に当たったもんだ。 さてどうするか……と考えていると

 

「因みにあのお前を応援している女の子はお前の彼女か?」

 

「──はっ?え、いや、彼女とか……ち、違うから。いやいやクロは俺の友達なんで……」

 

 そう顔を赤くしながら狼狽える。クロの方に目を向けると、声が届いてないのかキョトンとしてる。ぐっ、前世の年齢+今世の年齢=彼女いない歴の童貞の心を弄びやがって……っ!

 

「ふ、チョロいな」

 

「ん、え?」

 

 そう相手が呟いたと同時に俺の背後からガシッと技が見事に決まる。…………あ、あああああああああ!!

 

「しまったああアアアア!!」

 

「はっはっはァ!所詮餓鬼って所かァ? ちょろいぜェ!」

 

 く、くそ……やってしまった。またしても俺のうっかり癖が…… 正直今の俺の戦闘力なら余裕やろって舐めてたのもあるかもしれないけど……敵の言動に簡単に惑わされるようじゃまだまだ半人前だ。

 

 あ、クロが何やってんのよって顔してる。初っ端から無様な所見せてすみませんね……。

 

 ……ふと思ったけど父さんに見られてなくて良かったな。もし見られたら……って考えるだけでゾッとする。

 

 

 

 

『おい!!またやりやがったなテメェ! !なんべん同じこと言わせれば気が済むんだ!?あア゛!?』

 

 とか言われるの予想できる。 怖すぎる。

 

「こうなったら力づくで破壊するしかないよな……っ、え、ビクともしない!?」

 

「はっはー!俺のグルグルガムはちと特別性でな。どんなに力を入れても壊れないのさ!俺の出す溶解液で溶かす以外は方法が無ェよ!」

 

 なんせ、俺は一族の棟梁だからなぁ!スゲェだろ!はっはっー!、と笑いながら、もう勝った気でいるのか俺を見下した目で見てくる。

 

 え、ヤバ大分面倒な技にやられた……拘束系の技で力でなんとか出来ないとか強すぎん? ギランの上位互換すぎん?

 ………………いや、待てよ。これ徐々にキツくなってくるとかじゃ無さそうだな。 つまり時間はあるってことか。

 しかもこんな状況の俺が何も出来ないだろうと奴は舐めているだろうからその間に打開策を……。

 

「さーて、どう料理してくれようかなっ……と!」

 

「くっ!」

 

 奴のパンチをなんとか横にジャンプして避ける。ちょっと?床めり込んでるんですけど? 手加減なしですか!?俺こんな状態なのに!?

 

「ロコン──!!自分の身を第一に考えなさい!棄権したっていいんだからね!?」

 

 そうクロが声を上げ、俺の身を案じてくれる。有り難い…… けど、勝ちたいんだよな。負けたくない。それにこんなピンチで躓いてたらこの先やっていけないだろうし。これも勉強と思って、なんとかこの状況を打開するよう努める。

 

「へっへっへ、そうだぜ?怪我したくなきゃあ棄権したっていいんだぜ?」

 

「いや、それは嫌だなぁーって」

 

「はっはっはァ!まだ勝てるとでも思ってやがんのか!?あめでたい奴だ! ならもうちょっと遊ばせてもらうぜェ!」

 

 とは言ってもどうしたものか。 きっと奴が止めを刺すまで「ちょっと──! 」え、クロ?

 

「人を拘束するなんて卑怯よー!こんなのロコンが何も出来ないじゃないのー!」

 

「ウルセェ!!これも俺の技の一つなんだ!!文句言うなら出てきやがれ!!」

 

 あー……いや確かに考えてみると、そういう技っていうことでアリなのかな。拘束されて何も出来ないのは辛い……あれ? 待てよ…………何も出来ない、ってことは…………なるほど。うん。面白いこと考えた。よし、ならとりあえずもう少し時間を稼いで……。

 

「そうだぞ!こんなの俺何も出来ねぇし!普通に戦ったら俺だって良い勝負が出来るんだから解除しろ!」

 

「へっ!負け惜しみが!そんなに構って欲しければ遊んでやるよォ!」

 

『親父──!!ファイトー!!』

 

「おう!ギラン!見てろよォ!」

 

「親子かよ!?」

 

「息子も見てるんでなァ!派手にいかせて貰うぜェ!」

 

 それからなんとか相手の攻撃を避けていくこと数十秒。

 

 ——よし、これくらいなら大丈夫か。

 

「なぁ!——おっと、ところでさ、ドーナツの穴って、なんで開いてるか知ってる?」

 

「はぁ?なんだお前?いきなり意味の分からんことを言いやがって。熱さと恐怖で頭やられちまったのか?」

 

 くっくっと笑みを溢しながら

 

「答えは……火が通りやすいんだよォ!」

 

「は、なんだよ?って何ィィいい!?」

 

 ガッキィィンン、と俺の言葉を合図に、奴の背後に浮くオレンジ色に輝くドーナツ状の気で出来た塊がその身体を締め付ける。

 

「ぐぅぅ……締め付けられる。ぐ、て、テメェ!一体何をしやがった!?」

 

「俺もグルグルガムと似たような技を使わせて貰ってさ。相手を拘束し、締め付けるな技を」

 

「俺のグルグルガムと一緒だと!?」

 

「まぁ名前はドーナツなんだけど」

 

 さっきのクロの発言からヒント貰って、それでなんとか前世の記憶を頼りにやってみたけど上手くいってよかった。

 

 手順としては、奴がクロの方を向いて怒鳴っていた隙に自分の背後に気をドーナツ状に生成させる。

 それと観客に手を加えない確証が無い分、あのままクロと口論させるのは避けたかったから、奴を呼びつけ注意を逸らす。

 で、攻撃のラッシュを避け続けながら、背後のドーナツの気の密度を高めていく。

 いい頃合いまで出来上がったら奴の背後に移動させて、ドーナツの大きさを上げ、拘束って流れ。

 

 ——いや正直案外上手くいって俺も内心ビックリしてる。まぁ、ヤードラット星での気の修行が活きたってことだろうか。ありがとうございます村長様。そしてゴテンクスにもありがとう。技パクったのはゴメンだけど。

 

「そしてその技は分かってる通り、身体を締め付け続ける。だから酷い怪我したくなかったら棄権して欲しいんだけど」

 

「——ッッ!!くそッ!くそッくそ!クソがァ!!勝った気でいやがって!」

 

 激昂し捲したてるギドラ。だけどもう、これからは時間の問題。

 

「このギドラ様がこんな餓鬼にぃ!俺は敗けない!棄権なぞするものかァ!」

 

 そうしてやがて……

 

「こんな技に!こんな、く、そがァ!く、そ……」

 

 と、気絶したので

 

「ギドラ選手気絶しています!ロコン選手の勝ちー!」

 

「よしっ」

 

『うぉー!マジかすげーぞ!』

 

『やるじゃねぇか坊主!』

 

『やると思ってたんだよね俺は』

 

『えぇ……お前……』

 

『よかったー!』

 

 と周りの喧騒を背にギドラに掛かっている技を外していると、クロの声が。

 

「ロコン!おめでとう!」

 

「ありがとークロ。いやー危なかったけどなんとかなってホントよかった。それでさー実はさっきの技クロが言ってくれた言葉がヒントになって思いついてさ、それで……」

 

「うん、本当にお疲れ様。

 少しでも役に立てたのならよかった。

 でもね、あなた……

 いつまで縛られてるの?」

 

「ん?……はっ」

 

 最後までうっかりが抜けなかったらしい。

 

 え、いや、これって今運ばれていったあの怪獣が起きるまでこのままってことか?俺トイレ行きたいんだけど……え?いつ目覚めるか分からない? は?マジで言ってんの?いや……え?

 

「締まらないわね……」

 

 青ざめた顔で絶望する俺を見て、苦い顔で呟くクロであった。




ロコン君!試合頑張ったね、お疲れ様!それじゃあ試合後も頑張ってね!(愉悦)


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其之九 天下一武道会 二回戦!

 あの後対戦相手が起きたのは丁度次の俺の試合の30分前であり、なんとか俺の膀胱の危機は脱したのであった……。

 

 そして試合が始まるまでの間、ご飯を食べてる内に俺の順番が来て——

 

「——っ!美味しかった!ごちそうさまでした!」

 

 頼めば頼むだけここのスタッフの人達は料理を持ってきてくれるから凄く助かる。しかも美味しいから言うことなし!

 

「———ロコン選手ー!」

 

 っと、いけない急ごう。スタッフの人にお礼を言ってから、武舞台に上がりに行く。

 

「どんな攻撃をも跳ね返す身体の持ち主!ブヨン選手ー!」

 

 ピンク色の皮膚の巨大な生物でブヨブヨとした衝撃を吸収する肉体……レッドリボン軍の……マッスルタワーに住んでた奴!

 

「準備はよろしいですか……?始め──!!」

 

 とりあえず、どの程度の攻撃まで吸収出来るか確かめるか。先制して素の状態で力一杯殴ってみる。

 

「っ!マジか……スライム殴ってるみたい」

 

「へへへ、俺にはどんな攻撃も効かない」

 

 ブヨンッ!と攻撃しても跳ね返され、力が分散されるのが分かる。

 なら斬撃はどうだと思ったけど、仮に通じたらバイオレンスな映像になるし、下手したら相手が死亡で出場停止になってしまう。

 

 一応気弾を打ち込んでみる……も、またもや衝撃を吸収、からの跳ね返される。

 ……大きな気の板を作って押し出すってのもあるけど、折角の本選なのに味気ない気もするし、断念。

 

 どうすっかなと悩んでいると、相手側から攻めてくる。

 

「次はこっちから 行く」

 

 そう言い相手が自分のベロを伸ばして仕掛けてくる。

 それを避けながら考え耽る。

 

 一応滅多なことはない限り、この大会では戦闘力を相手に合わせて闘おうと抑えている。舐めプかよって思われるのもアレだけど、こっちの方が修行になるし。

 

 ……まぁ、けど今回はそうも言ってられられないかな。さすが本選というべきか、癖のある人達が残ったから正直余裕が無い。

 

 確か漫画でカカロットは吹雪で凍らせらてから打撃で粉々にして攻略してたけど……さて、俺はどうするか。

 単純に足を掴んで場外に落とす?いや、さっき攻撃した時ヌメッとしてたから掴むのは難しそうだから無理。

 

「なかなか すばしっこいな」

 

「それはどうも」

 

「だから こんどは こっちから行かせてもらう」

 

 その言葉の後相手の姿が消える。大きな見かけによらず超高速で動いている。

 中々に速いな……って言ってる場合じゃないな。だって俺のMAXスピードより速いですもん……。

 原作より遥かに強化されてるのか、はたまた別個体なのか定かではないけど……どっちにしろ原作とかけ離れてる敵のレベル設定にげんなりする。

 

 ……まぁ、そっちの方が修行になるし良いと思っとこう。それに、強い相手と闘った方が燃えるし勉強になる。

 

 自分でも知らずの内に笑みを溢しながら、相手の動きに追随していく。

 

『あーっと!両選手!速すぎて見えなーい!』

 

「見かけによらず速いっすね」

 

「ふふ おれは かいぞうをほどこされた 最強の存在 おまえより 強い」

 

『あ、あいつって本当に私と同じ人種なのかな』

 

 クロがそう驚いているのを尻目に、相手選手に仕掛ける。

 

「っし、どうだ」

 

 気の塊を相手の足元に来るであろう場所に何個か設置し転倒させようと画策するも、それに気づいたのか全て跳躍して避ける。

 

 ……冷静な状況判断に高速移動、衝撃を吸収する肉体ね。なんとかこの相手の強みを攻略したいな……どうにか……。

 

 速さでは驚くことに相手に分がある。さて、どうするか。

 

「俺も更に加速出来ればいいんだけど……」

 

 まずスピードで上回ってから仕掛けなければ策を講じようにも奴なら看過してくる。

 スピードを加速させる技……界王拳はどうだって思ったけど、原作で主人公しか使わなかった技っていうのもあって難しそうだし、ぶっつけ本番でってなると厳しいかも。反動もあるし、試合がまだ残っているこの状況で使うのは得策じゃないだろう。

 

 ……けど、奴のスピードを上回るにはそれしかないよなぁ。出来るだけ倍率を低めるよう心掛け反動を抑えるようにする。

 

「よし……やってみっか……」

 

「? ?」

 

 相手が訝しげに見てくるも意に介さず、弟の口調を真似た呟きで気合いを入れ、気を最大限に解放する。

 

「っ!」

 

 ブワッと身体の周囲に風が吹き荒れる。

 相手が驚いてる今の内に……よし。

 気を最大限に開放したら、その気の流れを加速させる。(確かこれで出来るって生前ネットで見たから多分イケル)

 

「──っ!?────、っう、

 

 かなりシンドい……身体の節々も痛むし震えてるしヤバイ。これ後になってから来る負荷がヤバイんじゃないんですかね……まぁそれは置いといて、そうね……初めてのことだから手間取ったけど、なんとか成功した?かもしれない。倍率は1.5倍ってところかも。多分。感覚。

 いや、しかしこれ成功って言えんか……あくまで我流だし(ネット流)、界王様直々に指導して貰ってないし。

 

 おっ、なんか赤いオーラ身体から出てきた。少しの量だけど。なら紛いなりにも一応技が発動してるってことよね?

 よし、んじゃ攻める!

 

「なんと これは早い」

 

「これで互角って所か」

 

 これで同じ舞台に立てた。それからどう攻めるかだけど……策はある、というかやってみたいことがある。

 

「あぁぁああああオラオラオラオラ!!」

 

「ふふふ そうやって 俺に攻撃しても無駄」

 

 相手の衝撃吸収の速度を上回ったパンチのラッシュを繰り出し、なんとかダメージを食らわせないかと踏んだのだが。

 

「うっ うっ うっ 」

 

 少しえづいているだけ。なら、1.7倍。いや、1.9倍で!

 

「うっ おっ おっ おっ 」

 

「オラオラオラオラ!!!」

 

 少しずつ相手は後ろに下がっていく。それに気づいたのか踏ん張り粘る相手。

 

 よし……ならここは必殺技で勝負を決める!!

 これで最後だとラッシュの速さを全開まで上げ、手に特大の気を貯め

 

「ヒートぉぉオオオオ…………ファランクスゥゥうううう!!!」

 

 父さん直伝の技を力の限り相手へとぶつける。

 技はしっかり入った!後は──

 

「おおおおお 吸収 きゅう、しゅ」

 

 後ろずさりながら、衝撃を吸収しようとするが

 

「あああ ああああ!!」

 

 許容量を超えた衝撃により後方へと跳ね返り──

 

「ブヨン選手場外! ロコン選手の勝ち──!!」

 

 わああああ!!と観客席からの歓声が。

 俺の勝利となった。

 

 ──ふぅ、大分疲れた。

 いくら気の扱いに慣れたからといっても初めて行使する界王拳をぶっつけ本番でやるとか無茶が過ぎるし、精神的にも肉体的にもかなり疲労が来てる。

 それに界王拳の負荷なのか、身体もなんか痛い。ダルい。フラフラする。腹減った。滅茶苦茶カロリー使った気がする。

 

「ロコンー!やったわねーおめでとうっ!」

 

「おぉ……ありがと」

 

「え、大丈夫……?酷く疲れた顔してるわよ?」

 

「はは……いやマジでめっちゃ疲れた……」

 

 と苦笑まじりに零す。

 どうやら傍から見ても疲労がありありと現れているよう。

 

「次の決勝はお昼休憩を挟んでからだから、しっかり休まなきゃ。ほら、セラの作ってくれたお弁当もたくさんあるから。たくさん食べてゆっくり昼寝でも取りなさい」

 

「おぉ……やった。ありがとう……ママ」

 

「誰があんたのママよ……ってバカ言ってないで行くわよ」

 

 まるで母さんのようなクロに連れられ、お昼休憩へと入った。




シロウの頭を撫でるクロに母性(姉)を感じた(3rei!!9巻)のは作者だけじゃない筈……
シロウにお姉ちゃんしてるクロっていいよね……もっと見たいです……アニメでも早くあのシーンが観たいなぁ。。


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其之十 天下一武道会 決勝戦!

お、お気に入り件数が77にも増えていて驚愕しています((((;゚Д゚))))
こんなにもたくさんの方々が私の作品を読んでくれているなんて、もう、めちゃくちゃ嬉しいです……!
いつも私の作品を見て頂いてありがとうございます!
これからも自分のペースではありますが、頑張っていきますm(_ _)m

では、第十話 決勝戦です!
果たしてロコン君は優勝出来るのだろうか……!?
始まり 始まり〜〜


「……ロコンが只者じゃないって知ってたけどまさか決勝戦まで来ちゃうなんてねぇ……正直驚いてるわ……」

 

「はは、いやまぁ所々危なかったけど……何はともあれここまで進めたのは嬉しい」

 

 1回戦は相手にうっかり嵌められて、2回戦は力不足故にぶっつけ本番の界王拳をせざるを得ない状況に持っていかれて。結構ギリギリなんだよなぁ……。サイヤ人の恵まれた肉体を持っているとはいえ、無双とか出来ずに苦戦する辺り流石俺だよなと改めて自分の不甲斐なさを思い知らされる。

 

 しかも界王拳(我流又もやネット流)の反動で身体痛いし、ダルい。(スーパー)のいつぞやのカカロットみたく気のコントロールがやり辛くなってはいないだけマシかもだけど、それでもこの後に試合を控えてる以上、痛いな。

 この休憩時間で出来るだけ回復に努めなきゃヤバイ。

 

 だから今はとにかく

 

「それじゃお昼にしましょうか」

 

「よっし!いただきます!!」

 

 飯!!

 

 ─

 ──

 ───

 

「あっそうだ!ロコン。あなた出番が一試合目で、しかもその試合の後はトイレの前でウロチョロしてたわよね。だったら次の試合相手のこと知らないんじゃない?」

 

「——あっ」

 

「やっぱりね……それで次のあなたの対戦相手なんだけど中々厄介だと思うわよ。なんせとにかく速いの。

 一回戦目は高速で相手に接近してから鳩尾へのエルボーで相手を気絶させて試合は終わり。2回戦目も……」

 

 ほーん……とにかく速い相手か。これまた界王拳に頼ることになるかも。……ヤダなぁ……正直もう今日は使いたくないんですが……。

 極力界王拳は控えるためにギャラクティカドーナツで拘束してからダメージ与えて〜って流れで行くか? いやけど折角の決勝戦でそんな盛り上がらなそうな戦法使うのもアレか……いや、まてよ。そもそもギャラクティカドーナツって名前をそのまま使うのも未来の甥になんか申し訳ない気がしてきた。

 

 ここは自分で名付けるしか……と思ったけどしかし……なんかちょっと恥ずい。自分が様になるような技名を付けれるのだろうか?っていう。 理想はピッコロさんみたいな格好良いのにしたいけど……なにか……こう、ピンってくるやつなぁ。

 

 ドーナツだろ?んで形は円形で……強度もあって、締め付けると来た。

 

 ──?俺の好物のオールドファッションじゃなのこれ?形は円形で、他のドーナツよりもサクサクした食感で強度がある。締め付ける……は違うかなぁ。いやまぁ俺はオールドファッションに締め付けられて死ぬなら本望だし、その点は大丈夫か(それは違う)

 おっ、いいんじゃないの?オールドファッションで決まりでコレいいんじゃない?

 

 いやさ、決して俺がミスドの回し者って理由じゃないんだけどね?ホントに。

 そう言えばオールドファッションといえば色々種類があるけど、オールドファッションハニーっていうのがあるんですよね。で、それを温めて、バニラアイスと食べたらね、めっちゃ美味いんすよ……ホント。

 もう……温めたそのドーナツが超しっとりしててスプーン入れたらスッて入ってね……アイスと合うんだなこれが。けど勿論温めなくても絶品なんだけどさ、特に食感g(ry)

 

「…………」

 

「——でね、そうやって相手がね……ってロコン?反応が無いんだけど聞いてた?大丈夫?」

 

 じとーっとした目で此方を見やるクロに、バツが悪く目を若干逸らしつつ

 

「──、あ、あー、勿論。———とにかく次の対戦相手のスピードには気をつけるよ。情報ありがとう」

 

 努めて冷静な風を装って応える。

 なんか聞いてませんでしたと言いづらくて……。

 

「いいわよ。それにもうここまで来たんだもの!優勝もぎ取ってきてよ!」

 

「オッス!頑張ります!」

 

 ……後半の話を聞いてなかったけど今更言い出せる筈もなく、そのまま勢いで力強く応えた。

 

 ─

 ──

 ───

 

 

「世界各地から集まった達人、182名!さらに予選を通過できた者、たったの8名!

 そして決勝戦まで残ったのは、この2名!!ロコン選手と匿名希望の選手であります!!

 果たして世界の頂点に立つのはどっちか!?いよいよ、その答が明らかになります!!」

 

『坊やー頑張ってー!』

 

『フードの兄ちゃんも頑張れよー!』

 

『ロコーン!!ファイトー!!』

 

「それでは、ただいまより天下一武道会、決勝戦を始めたいと思います!!」

 

 遂に始まるか……!!

 

 例の試合相手の人は、黒のチェスターコートの中に赤いパーカー、そして下はスラックスに焦げ茶の紐なし革靴という出で立ち。

 

 パーカーのせいか顔がよく見えないし、まずそもそもの話、武道大会に来る装いには見えない。

 

「準備はよろしいですか……?始め──!!」

 

 先制は貰う!

 相手の背後に素早く回り込み攻撃を仕掛ける。

 

「——良い動きをするね」

 

「っ……」

 

 が、軽く避けられてしまう。

 なるほどお見通しって訳ですか。結構速く移動したんですけれど。

 

「次はこっちからだ」

 

 そう言い相手の攻撃のラッシュが繰り出されるが、なんとかその場から離れる。

 

「ちっ、体術の腕も上々と来たか……ここはどうせめ——はっ!?」

 

 作戦を練ろうとしたところで、ドンッ!とまるで銃弾のように圧縮された気弾が放たれた為、早急に回避行動に移った。

 

「あ、ッッぶねェー……、まさか気弾使える人が出てくるって流石決勝戦」

 

 なんとか避けて独り言ちると相手はスッと両手を銃の形にして

 

「──っ、速!」

 

 ドンドンドンッッッ!!!と休む暇もなく、その両人差し指から気弾が放たれる。

 気弾の大きさを細く小さくしている分、一発一発の威力も相当のモノとなっている。

 

「なら、こっちからも!」

 

 相手へと気弾の連射攻撃を行う。

 

 っし、連射した気弾で発生した煙で姿は眩ませた筈。その内に相手の気を探って仕掛けさせて貰う。

 

 相手の背後に回り、足払いをかけて出来た隙に場外に叩き込もうとしたのだが

 

「っ、や、危っ!?」

 

 相手が振り向きその手に持った短刀型の気の剣で切り込んでくる。

 咄嗟に左手で気の盾を作り防御する。

 

「気の扱いには長けているみたいだね」

 

「貴方も相当ね……っ」

 

 負けじと右手で気の剣を生成し相手に切り込むが、何回か打ち合った後、隙を突いた蹴りを貰ってしまう。

 

「う゛ッ」

 

 くっっそ……容赦なく鳩尾いかれた……中々くる……しんど……。

 てかそれにしても相手は気の扱いに身のこなし、どれも一流のもので正直何処であれ程までの実力を身につけたのかは凄い気になる……けど今は試合に集中。

 

 ——よし、なら今度は……

 

「畳み掛ける……っ!」

 

 間髪入れずに放ってくる銃弾を、両手に生成した気の剣で弾きながら接近していく。

 

 そして再び剣を打ち合いながら相手へと詰めていくが、

 再び巻き返され、相手の力を乗せた一振りにより吹き飛ばされる。

 

「すまないが、終わりだ」

 

 と、再び指を銃の形に変え、止めを刺すかのよう気弾を放とうとするが——

 

「痛っ、……けど作戦通り!」

 

「なッ!これは……!」

 

 相手の背後からオールドファッションがガッチリと嵌る。

 念の為、さっきの煙に隠れて作ったのを空中に待機させて隙を見せる所を狙っていたんだけれど、ようやく決まったみたいだ。

 

 ってかどうでもいいけど、オールドファッションって技名として緊張感が無さすぎる。また後で考えなければ……

 

 ま、だけど、これでようやく

 

「それじゃあ、勝たせて貰います」

 

 そうして相手を場外へと落とす為接近していく。

 場外へと吹き飛ばすべく、そのまま勢いに乗り蹴りを放つが——

 

「——二重加速(ダブルアクセル)

 

 そう言い、相手の身体から赤いオーラが発生し突風が生じる。

 そして、拘束を無理矢理にその力で引きちぎり、蹴りを回避し、カウンターを仕掛けてくる。

 

「——?、え……いや、……は?……いやいや……って、っっ!?ゔ、うぉッ……!?」

 

 またもや鳩尾にキツイ一撃を貰ってしまい、吐き気に襲われるが……なんとか堪える。

 

 は、は、う、ゔぉえ……く、ぐそ……思いっきり蹴りやがって……あ、ダメヤバイ口の中が酸っぱくなってきた逆流してきそう。う、ゔゥォ…………し、シンド……。

 

 逆流してきそうな物を押し返すため必死になり膝をつき背中を丸めて蹲っていると

 

「えぇ!パパ!?」

 

 ──と、クロの声が耳に入った。

 なにごと、と思い青ざめた顔を上げ相手を視界に入れると、激しい赤いオーラの放出による風でフードが脱げてしまっていたある人間の姿が。

 それにより、露わになった顔に驚愕した。

 

 

 一体何を見てきたらそうなるんだと思わせる真っ黒な、まるで死んでいるよう瞳を持ち、顎には薄っすらと何本かの髭を蓄えた男性。見たところ……20代後半くらいの……やけに闇を抱えていそうな男性……

 

 ──衛宮切嗣、その人であった。

 

 

「え、パパ? クロの?…… は?」

 

「はぁ……どうやらバレてしまったらしいね。この技は使わないつもりだったんだけど」

 

 左手を腰に、右手を頭に当て、やれやれ、と溜め息を吐く様はやけに似合っているように感じる。

 

「パパ──!!どういうこと!?説明して貰うわよー!」

 

「まぁクロへの説明は後でするとして……まずは君なんだロコン君」

 

 キッと鋭い眼差しを向けられる。

 ……なんか我が父と似た眼差ししててビビるんですが……睨む時の

 

 言い知れぬ恐怖に身を震わせていると

 

「君のことは知っているよ。別荘で見かけたからね」

 

「は、はぁ……いつもお邪魔させて貰ってます。すみません」

 

「それに随分クロと仲が良いようだね」

 

「え、はい。まぁクロには良くして頂いてます」

 

 でもね、と一泊置き更に眼光を鋭く光らせ

 

「そういうのは、まだ娘には早いと思うんだ」

 

 は、なに?なにがよ?なんなんすかその抽象的な言い回しは……何なんすか?

 こちとらなぁ……さっきから色々ありすぎて頭パンクしてんですよ……衛宮切嗣が登場するし界王拳使い出すしで

 ぶっちゃっけ頭ショートしてんすよマジで。そんで鳩尾蹴られて吐きそうになってシンドイのもあるし、理由不明だけど凄い睨まれて生きた心地しないし……なんなん?

 

 しかも界王拳を使えるってことはさ……

 原作(fate)だと確かスピードを倍加させる技使ってたけど、界王拳の場合は戦闘力自体を倍加させるって訳じゃん?

 つまりスピードだけでなく攻撃力まで上がってるってことでつまり、これまた原作より厄介になってるって訳で。ホントなんてこったと(白目)

 

 という感じで、俺の思考がグルグルと定まらないままになってパニック状態。だからだろうか──目を回しながらつい咄嗟に

 

「……そ、そうですかねェ」

 

 意味を理解せず、ただ咄嗟に口を開いてしまったのは。

 

「そ、そりゃあね。君もだが娘はまだ11なんだ。そういうこと(恋人としての付き合い)はもっとお互いを知って、出来ればもう少し年齢をだね——」

 

「えぇ……?そんなの(友達としての付き合いに)関係ないんじゃ……」

 

「——ふむ、そうか。どうやら、何を言っても君は引かないと」

 

 ため息を吐き、覚悟を決めたかのように

 

「本当は、君が娘に相応しい人物か確かめて一言言うだけにする予定だったんだけどね。

 ——だけど、君はどうあっても引かないときた。

 なら、そんなに娘と一緒になりたいというなら!

 僕を倒してからにするといい!」

 

「──、────────は?」

 

 一気に頭が冷え、意識が覚醒する。

 いや……ってか、なんでそんな話?

 一体いつからそんな話?

 ——ってヤバい……だめだ。自分が何言ったか思い出せん。冷静じゃなかったからってのもあるけど、なんも考えず本心ぶっちゃけたのもありそう。

 でもマズイ。盛大なる勘違いをしてらっしゃる予感。

 

「いや待ってください!クロの父さん俺」

 

「まだ君に!お義父さんと呼ばれる筋合いはない!!」

 

 気の勢いが更に激しさを増す。ヤバイ……これもう話が通じないんじゃ……。

 

 ──、仕方ない。誤解は後で解くとして、まずはこの人に勝つことを考えよう。

 

 となれば、なら、正直かなり、大分気乗りはしないけど、これしかあるまい。

 

「──────、……よし、界王拳ん2倍……っ」

 

 ——っ、……くッ、そ……相変わらずシンドイなぁコレ……。

 使うのまだ2回目だから仕方ないけどマジで慣れない。身体が少しビキビキと鳴り出したし、なにより痛いし。

 長期戦は保たないだろうと簡単に推測出来る。

 

「ぁぁぁもうくそっ!がああああああああ!!」

 

「——————!!」

 

 両者接近しお互いに拳で殴り合い、その余波で周囲に風が吹き荒れ、会場が更に沸く。

 

『スゲェぞー!二人ともー!』

 

『い、今これ凄いモン見てるんじゃ……?』

 

『坊主──!!ファイトだー!』

 

『パーカーの兄ちゃんー!やっちまえー!』

 

『ロコーン!パパー!ファイトー!』

 

 そして一旦お互いに離れる。

 切嗣さんは手を銃の形にし、その人差し指に気を貯めている(霊丸っぽい)。

 

 俺はといえば、まぁ勿論この技の構えを

 

「か……め……は……め……」

 

「————————」

 

 亀仙流の奥義(武天老師様に会ったことすらないけれど)の準備に掛かる。それと技名唱えるのは単純に格好良いからって理由。

 

 そして、お互いの最大限の気を込めた必殺技を放つ———

 

「波ァ──ー!!!」

 

「————ッ!!!」

 

 ドンッ、と凄まじい轟音を響かせる。

 

「っ、ぐ、う……ああああアアアア!!!」

 

「ぐっ、はああああアアア!!!」

 

 バチバチッッ、と必殺技がぶつかり合う。

 威力は互角……ってところかもしれん。

 

「あああああああアアアア!!!」

 

「あああああああアアアア!!!」

 

 そして、しばらく拮抗していたお互いの放たれた技はボシュッ!、と音を立て相殺される。

 

「は、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

「クッ、ハァッ、ハァッ、ハァ」

 

 ガクッとお互いに膝をつき、息を荒げる。

 

「ぜ……全力で、やったんだけどッ、ハァッ、くそっ……」

 

「——ふぅ、本当に君には驚かせられるね。まさか相殺してくるとは」

 

 つッッかれた……いや、まさかここまで威力がこもった気弾を放ってくるとか……さっきで終わらせるつもりで挑んだけど……やっぱりこの人強ェなぁ……流石主人公務めたことある人は違う。

 

「いや、こちら、こそ驚きました……。ここまでのパワーアップを遂げ、るとか……相当に界王拳を使いこなしてますよね。界王様も鼻が高いでしょうねぇ……」

 

 ここまで見事に界王拳を扱えるとか本当に凄いんだよなこの人。だって見た限り気の流れが綺麗。界王拳の赤く発光する気が荒々しさを際立ててる一方で、淀みなく綺麗に、至って平時と変わらないかのように循環してる。

 どれだけ鍛錬積み重ねたのかってのがよく現れてる。

 

 というか、話変わるけど。疑問に出ることすら無かったけれど、切嗣さん一回亡くなったのか?まぁこの世界何があるか分からんから不思議なことでも無いけどさ。

 

 まず界王様に訓練付けて貰うにはあの世の蛇の道を通って界王星まで行かなきゃだし。んで、生き返るのはドラゴンボールを使ってのことだろうし。ってことはドラゴンボールの認知度って結構ある感じなのか?

 

 そんな推測をしていると、目の前の男は若干眉を顰め、さも不思議な様子で

 

「……?ごめん、悪いけど誰の話をしているのかな?」

 

「え?」

 

 え?

 

「いや界王様ですよ。貴方の今のパワーアップ状態を伝授して下さった方じゃないですか」

 

「生憎だけど……僕はこの技を誰かから伝授された訳じゃないよ。だから……君の言う『界王様』が分からないんだ」

 

「…………じゃあ、どうやって身につけたんですか?」

 

「どうやって、か。単に速さを追求していたら、この技に行き着いたんだ」

 

 え、?はや、?……っと、うん。まぁ、さ、俺は前世の知識があるからさ、だから界王拳の仕組みもなんとなく知っていたから出来るのは分かる。DB転生者特有のアドバンテージだからまぁ、出来んのはまだ不思議でもない。

 

 けどこの人に至っては話が違うでしょ。本当に真っ新な状態、正真正銘ゼロからのスタートでしかないのに……界王様レベルの存在が編み出した技に辿り着くって……しかも独学で。更に更には非の打ち所がないレベルで十全に使いこなしているし。

 

 もうこの人あれですね。

 間違いない……。

 この人は完全に──────

 

 

 

 

 

「へ……」

 

「ん?」

 

 

 

「変態だ────ー!!!!うああああああ!!!」

 

「えぇっ!?」

 

 変態だ!!!

 間違いない!この人ヤバイ!ド変態に違いない!!

 こんな変態が地球に居たとは……怖すぎるっ!!

 

 

 

「大変だ──!!変態だ──!!」

 

「ま、待って。なにを急に……」

 

 そう、叫びながら切嗣さんから一心不乱に逃げ始める。

 そんな俺を必死の形相で追いかける切嗣さん。

 

「待ってくれ!僕が何をしたと言うんだ!」

 

『え、ナニ、を?』

 

『いったいナニをしたんですかねぇ……』

 

『マジか……あの兄ちゃん……』

 

『あのパーカー野郎っ!ショタコンだったのか!……!^_^!』

 

『テメッ!YESショタコンNOタッチだろうが!』

 

『うぅっ、 あの男の子かわいそうに……』

 

 ざわざわとざわめき立てる周囲

 

「ちょ、本当に待って!君!違う!誤解だ!僕は何もしていない! 」

 

『パパ……』

 

「クっ、クロ!違う誤解なんだ!父さんを信じてくれ!」

 

『近寄らないで変態』

 

 冷徹な眼差しでばっさりと一言。

 

「あああああああアアアア!!!」

 

 頭を抱え、膝から崩れ落ちるかのようにバッタリと倒れる。最愛の娘からの心無い言葉に、その表情は正にこの世の終わりを感じ取ったかのような、最大級の絶望を孕んだ表情で正直見ていられない。

 

「僕が何をしたっていうんだ!ふざけるな!ふざけるなっ!!馬鹿野郎!!うわぁ──!!!」

 

 —

 ——

 ———

 

 ──や、ヤっべ──……、まさかこの台詞を聞くことになるとは……その所為かテンションが戻って冷静になった。

 さてどうするか。あまりに感情が昂りすぎてうっかり前世で読んだ漫画の1シーン再現してしまったけれど……齎した被害がデカすぎて自分でもどうしたらいいのかと……。

 

 ヤバイどうしよう。切嗣さん娘のこと溺愛してるからなぁ……クロにあんなこと言われたら相当ショックだろう。現にこの世の終わりのような顔してることから如何にダメージがデカかったのか容易に想像できるし。

 

 ヤバイナァ……相当やらかしちゃったナァ……どう詫びたらええんやろか……

 

「あ、あの……っ、そのッですね……」

 

「——三重加速(トリプルアクセル)

 

ヒッ

 

 ぼそっと、小さく呟いた程度だろうけど確かに聞こえた!3倍!?マジか!?

 や、ヤッバ目が血走ってるこの人ガチじゃん……殺られる!

 ──っと、凄ぇ速さで迫ってきた!!

 

「——ッさ、ささ3んんん倍!!!」

 

 ——ヤバいヤバいヤバいヤバイ真面目にこれ身体が悲鳴上げてるってしかも痛いの増したってか本気でヤバイやつ……っっ!!流石に3倍は身体に響……きすぎて死にそうってかビキビキと何かが潰れるような不穏な音が身体から響くし怖すぎる笑えない……多分、ってかほぼ確実に試合の後は覚悟しといた方がよさそう案件かよこれ

 

「はあああああ!!」

 

 ガキィン!、とお互いの腕がぶつかり合う音が響く。

 そして激しい打撃の応酬の末、後退し距離を稼ぐ。

 

 3倍まで使ったし多分お互いに長くは持たない筈……だと思いたい。

 いや、俺なんか余裕無さ過ぎて切嗣さんとは別の意味で目が血走ってるし、激しいぶつかり合いでダメージめっさくるし、気抜けば終わってしまうかのような緊張感に精神擦り減るし、ジワジワと自分の身体が内から壊れていく感覚がさらに拍車を掛けて精神擦り減らして来やがるし……大分余裕無いですよ。

 

 まぁけど俺はともかく……彼も見た限りじゃ息は上がってるし、顔も強張ってきてる。まぁ、仮にそれが演技だとしても気の出力もだんだん下がってることから本当に疲れてはいるんだと分かる。

 

 ……相手も結構な体力の消費で、なにより俺はそろそろ限界で長くは保たんし……ここで一気に勝負を仕掛けるしかないか。

 ……っし、なら、とっておきの技を出し惜しみ無く全力でいくか……

 

 一旦空中に上がり

 

「はあああああああ!!!」

 

 かめはめ波のポーズを取り、腰に携えた両手にありったけの身体中の気を集めていく。

 

「ライオット……」

 

 そして、右の腰辺りに固定していた両手の内、右手だけに貯めた気を移動させ、大きく振りかぶる。

 

「かめ」

 

 一回同僚の人に食らわせてんの見た、父さんの技(格好良かったから練習して覚えた)に、弟の代表的な技を掛け合わせたとっておきの必殺技。まぁ家族愛が割と高めな部類に入る俺としては、非常に気合が入る技。

 

 そして腰の捻りをしっかり加えて

 

「はめ……」

 

 全力で相手に投球する……!

 

「波ァ────ー!!!!」

 

 ゴォッ!、と周囲に轟音が鳴り響く。

 

「なッ、これは……!」

 

 すかさず切嗣さんも、特大の気弾で応戦する。

 

「づ、うううゔゔゔゔゔあああああああああ!!!!」

 

「はあああああああああああああ!!!」

 

 お互いの全力を以って、ぶつかり合う。

 そして——

 

「あああああアアアアアアアア!!」

 

「はああああアアアアアアアア!!」

 

 ズゥン……!とお互いの技が相殺され、重く、身体を震わせる音が響く。

 

「ハァッ、ハッ、ハッ、ハッ」

 

「ハッ、ハッ、ハッ、クッ——」

 

 精一杯の、それこそ身体中の力を掻き集めて放った最後の一撃だったので体力の消費が激しく、地上にゆらゆらと覚束ない様子で降下し、膝を着く。

 界王拳は勿論解けている。が、どうやら切嗣さんも、同じ状態らしい。

 

「は……自慢の技だったのに……普通に相殺して……くるとか」

 

「い、いや、僕も、かなりギリギリ、だったけどね」

 

 もう殆ど気も体力も残っていない。足なんかガタガタ震えて、それを抑えて立ってるのに精一杯って所だし。

 

 ——なら、もう最後は

 

「もう、体力は、殆ど底をついてて、だから、この一撃で、終わらせ、ます」

 

「奇遇だね。僕もせいぜいあと一発が限界だろう」

 

 その言葉を皮切りに、お互いに覚束ない足どりながらも駆け寄り

 

「おおおおおああおあ!」

 

「はああああああああ!」

 

 腕を振りかぶり

 

「ぐふッッ」

 

「グッッ」

 

 渾身の右ストレートを互いの頬へと打ち抜く。

 

「うっ……は、ぁ」

 

「くッ……」

 

 ドサッ、とお互いに倒れる。

 うぁ駄目だコレ……頭ふっらふらする……。頬すっげェ痛い目が回って焦点が定まらない。

 

『両者共にノックアウトです!ダブルノックダウン!』

 

 は、これは相当堪える……ヤバイ……

 

『カウントを取ります!ワーン!ツー!スリー!」

 

『ロコ──ン!!立って──!!』

 

 ぐぎぎ、となんとか立ち上がるべく身体の力を振り絞る。

 

『フォー!ファーイブ!シッークス!』

 

「うぅぐぐぐぐ」

 

「グッ……」

 

 界王拳3倍と、全力の気功波まで使ったから、流石に体力の消耗がヤバイ。節々まで痛むし疲労感凄いし、正直このまま寝てしまいたい。

 もう余力なんか殆ど無いし、なんなら気弾の一つも生成出来ないけれど

 

『セブーン!エーイト!』

 

 だけど……んな弱みを自覚した上でも、度重なる強烈な睡魔に誘惑されようと……それ以上に勝ちたいって気持ちの方が勝って──

 

『ナイン!』

 

「ううううッ」

 

『テーン!』

 

「くそッ」

 

『どちらも立ち上がれません!ダブルノックアウトです!』

 

『しかし、天下一武道会に引き分けはありません!この場合は先に立ち上がり、『優勝したもんねー』とにこやかに宣言した者を勝ちとします!』

 

『頑張って──!もうちょっとー!ロコ──ン!!』

 

『パーカーの兄ちゃんもファイト──!!』

 

「ぐぎぎぎぎぎぎぎ……!!」

 

 勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ勝つ、勝つ……!!

 

『おーっと!ロコン選手頑張るー!!』

 

『もうちょっと!頑張れー!』

 

『ファイト──!!』

 

「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……!!」

 

『立ったー!ロコン選手立ちました──!!』

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

 しっ、しぶとさには、なにぶん自信がある。スパルタの髭にしごかれたから耐性は付いてる。

 

 よし、幸いにも相手はまだ立ち上がってないな……勝ちは貰う!

 

 そして、そのままニカっと、ぎこちないながらも顔に笑みを浮かべ——

 

「ゆ、優勝」

 

 もうちょっと!頑張ってくれ俺の身体……!!

 

「した……」

 

 観客の声も静まり、皆続きの言葉が発せられるのを待つ。

 そして——

 

「もん」

 

 これで決まりだと、そう誰もが疑わず思い始めるが

 

「……」

 

 ドサッ、と倒れる音が響く。

 

『あーっと!あと一息!あと一息のところでロコン選手倒れてしまいましたー!』

 

『あぁ──!!』

 

『惜しいー!』

 

『おーっと!続いて匿名希望選手が立ち上がりました!』

 

「グッ、ハァ、ハァッ、ハァ、ゆ、ゆ……」

 

 少し恥じらいがあるのか、頬を染めながらも笑顔で

 

「優勝したもんね」

 

『優勝です!匿名希望選手が優勝しました──!!』

 

 わあああああ、と観客の歓声が響く。

 

(しかし、本当に見事だった。僕も全力じゃなかったとはいえ、ここまで追いつめられるとはね。

 末恐ろしい子供だよ、全く……)

 

 ふっ、と笑みを浮かべ、

 

「だが、君ならクロを守れるかもしれないな」

 

「……っ!?」

 

 っ、な、俺気失ってた!?確か、優勝したもん、まで言ってから

 

「お疲れ様、ロコン君」

 

「──、……そうか。俺の敗け…………」

 

 仰向けに倒れている俺に、スッ、と手を差し伸べてくれる切嗣さんの手を取り、立ち上がる。

 

 しかし、敗けたか……。

 もう、ちょっとだったんだけど……悔しい。耐久力にはハゲ(将来)に鍛えられたから自信があったんだけど……まだまだ精進しなきゃいかんな。

 

 

 ま、けど、今の俺の全力を尽くしての結果だから仕方ない。むしろ精一杯戦えて清々しい気持ちでもあるし、だから、辛気臭い顔はやめるか。

 

 顔をほころばせて

 

「お手合わせ、ありがとうございました。こんなに良い試合が出来て、光栄です」

 

「ああ、こちらこそ。良い試合だったよ」

 

 本当に良い試合だった。充足感に満ちている。今後の課題も見えたし。勉強にもなった。

 

 っと、振り返る前に

 

「それで、えぇと、あの、っすね……途中にご迷惑お掛けして本当にごめんなさい」

 

「……あぁ、いいよ。だけど、後でクロの誤解は解いておいてね」

 

「はい……」

 

 そうして、俺の初の天下一武道会は準優勝という結果で幕を閉じたのだった。




ということで、パパさんに出演して頂きました!
折角の決勝戦ですから、強キャラに出てもらわなきゃと思いまして。
それにしっかりとロコン君の成長を促してくれる人だと思いましたので!(出場動機が考えやすかったらなんて、ち、違いますからね)

原作で、切嗣は娘に彼氏が出来たら排除するという描写があったそうですが、今作の切嗣は少しその辺は軟化したってことでどうかお願いします……。

プリヤイベント復刻やったーー!!!待ってましたよぉ!ヤッホォォ!!
ようやくクロがうちのカルデアに来てくれる……。
この時を待ってたんだ!
よーし!じゃあイリヤと美遊もお迎えしなきゃ!と思い、ガチャした結果!美遊はお迎え出来たんだけど……
イリヤをお迎え出来ず(T_T) いや、まだ期間はある……。まだまだ諦めませんよォォ!!


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〜ねむり姫編〜
其之十一 お城へと。


構想を色々と練っていてまして、やっとこさなんとか固まってきたので投稿します!
待ってくださっていた方はお待たせして申し訳ありませんm(_ _)m

それでは!天下一武道会の決勝戦、惜しくも敗退し準優勝となったロコン君。彼は今、何を思うのでしょうか?

11話スタートです!


「では、これは優勝賞品の50万ゼニーです」

 

「ああ、ありがとう」

 

 ぱちぱち、と拍手が鳴り切嗣さんに賞金が贈られる。

 只今表彰式。長かった大会もこれにて終幕。

 

 それにしても中々濃い経験が出来た……界王拳は拙いながらも使えるようになったし(反動がヤバ過ぎるけど)新しい技も身についたし(未来の甥の技のパクリ)、って……まぁ、何はともあれ収穫はあったからその背景はスルーで。あと俺の状況を知ることが出来たし。

 

 まず界王拳だけど……これから更に詰める必要がある。素の戦闘力・身体の丈夫さとかも関係してると思うけど、まだまだ3倍までしか引き出せないし。いや初回で3倍まで引き出せたら十分過ぎるってもんだけど、けど反動がヤバすぎるんよなぁ……。2倍の時点で負荷がヤバかったのに、3倍なんか30秒くらいの行使で身体全体が痙攣する始末。そんで多分身体の器官がいかれてる筈。なんか感覚的にそう思う。から後で病院行かなきゃ。

 

 まぁ、てな訳で、まずは2倍までは安定して使えるようにすること。さしあたっての目標は1.3倍から始めて、徐々に倍率上げていって2倍って感じで。

 これからもお世話になりそうな技だから、念入りに練習しないと。

 

 さて次にギャラクティカドーナツだけど……。

 中々いい技名が思いつかん……技名考えるのって案外難しい。

 ま、取り合えず当分はオールドファッションで通していこうかしら…………いや、待て。

 

 ここはいっそドーナツシリーズの技を作るってのはどうか……俺の敬愛する人物であるシャーロット・カタクリさんも自身の好物(ドーナツ)を技の一部に取り入れていたし……(斬・切・餅とか無双ドーナツとかアレ格好良すぎる……)だから真似して俺も取り入れよ。

 俺の場合は気でドーナツ状の塊を生成出来るからやれることも多そう。いろんな形状で強度なドーナツが再現出来るし。

 ふむ……例えば、強度重視のオールドファッション・もちもちの触り心地ポン・デ・リング……とか!実用性があるかは分からないけど空いた時間があれば作ってみたい。

 

 あと昔から思ってたんだけどさ、フレンチクルーラーの形ってなんか……強そうじゃね?あのクルクル螺旋型の形は絶対攻撃力出る!絶対強い!

 っし!!また帰ったら考えるか!楽しくなってきた!

 

 

 そして最後に真面目な話。試合を通じて改めて感じたことは、やっぱりまだまだ戦闘力が足りないってこと。1700くらいしかないからな、今の俺。

 ドラゴンボールの初期の頃なら無双出来るけど、最終的な目標はフリーザを打倒することな訳で。まだまだ強くならなきゃ話にならない。

 

 まぁ、ここ最近は気のコントロールの修行を重点的にして、そっち方面(戦闘力強化)の修行はそんなにしてなかったから仕方ないんだけどさ。

 

 

 ……けど、正直今でもなんとかなるだろうって地球の人達を舐めていた節があったのは確かな訳で。実際自分がサイヤ人ってことで慢心は少なからずしてた。

 だけど、今回の大会で世の中には凄い奴がいるってこと再確認出来たから気が引き締められたからまぁ、この大会に出て良かったかなと。

 

 ……そういえば武天老師様の言で……世の中上には上がいるもんだと。これくらいで満足するほど武の道は甘くない……って言ってたし。

 

 自分が戦闘民族だからって関係ない。自分の目標常に意識して、慢心せずに、精進することを忘れないようにこれからも日々過ごしていこう。

 

『——ご来場の皆さんお疲れさまでした。お気をつけてお帰りください』

 

 色々考えている間に式が終わった。

 

『では、またの大会で!』

 

 ——得るものがたくさんあった一日で、天下一武道会……出場してよかった。

 

「ロコーン!パパー!帰ろ──!」

 

 クロが呼んでる

 

 さて、取り敢えず合流

 

「あー、ごめん、俺医務室行ってか──」

 

 続きの言葉を発する前に、ばたん、と身体が倒れた。……?身体が動かない……え、

 

「ロコン!大丈夫!?」

 

「救護班を呼んでくる!」

 

 駆けつけて心配してくれるクロに、救護班の人を呼びに走り去っていく切嗣さん。

 

 心配かけて申し訳ない……。

 けど俺一体どうしたんだ……。大会が終わってから急に倒れるとか。

 

 あっ、もう担架を持って救護の人が来てくれた。流石切嗣さん。すげェ速い。

 

「あちゃー、毎回こうなる人が一定数居るんだけどね。きっと張っていた緊張が解けて一気に疲労が来たんだよ。まぁ大会も終わったしゆっくりお休み」

 

 救護班の人がそう言う。

 なるほど確かにそうかもしれない。帰ろうとした瞬間に身体が動かなくなったから。

 

「そっか……。なら後でお見舞いに行くから!また後でね!ロコン!」

 

「…………あい」

 

 と、なんとか返事を返す。

 

「それでは運びます。失礼しますね」

 

 そう担架に乗せられって痛ッッ!いっったイヤイヤ痛ッッ……っっ!身体触られただけなのに尋常じゃない程激痛走る……身体に相当ガタ来てるのでは

 

 そんな俺の心の声も届くはずも無く、担架に乗せられる。

 このまま医務室に直行か……いやまぁ、どうせ後で行く予定だったからいいんだけど。それより身体痛いし、しんどいし、瞼が重い。てな訳で流石にもうここらが限界で。寝る

 

 ─

 ──

 ───

 

「これは……病院で診てもらったほうがいいですね」

 

「ではこの近辺だと——」

 

「病院の手配します」

 

「~~はい!天下一武道会会場です。はい。ではよろしくお願いします。

 あと10分ほどで救急車到着します!」

 

「ロコン……大丈夫かしら」

 

「後で病院の場所を聞いておこうか」

 

「うん……。というかパパ……子供相手にムキになりすぎじゃない?ロコンがこんなになるまでやる必要ないのに」

 

「うっ、いや……多分あの身体の異常はあの強化技使ったからだと……いや、ごめん父さんが悪かった」

 

 じとーっと非難するかのような目を娘に向けられ、直ぐに謝る父の姿がそこにあった。

 

「はぁ、全く……相変わらず負けず嫌いね」

 

 そんな風に二人して喋っている内に、救急車が到着しロコンを乗せ病院へ向かっていた。

 

「すみません、ロコン君は何処の病院に向かったんでしょうか?」

 

「あぁ、~~病院だよ」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

「いえいえ、それでは失礼します」

 

 そう言い、救護班の人たちが戻っていく。

 

「さて、じゃあクロ。今日は帰って、また明日その病院にお見舞いに行こうか」

 

「うん、そうするわ」

 

 さて、じゃあ帰ろうか、と背後を振り向くと

 

「これはこれは、久しぶり」

 

「——っ、お、前は……」

 

 ある、一人の男性が夕日をバックに現れる。

 紳士服を着込み、濃い紫色の髪に端正な顔つき。そして病的な程に青白い肌。

 対峙する者を酷く圧倒するかのような存在感を放つ男性。

 

「な、そんな……なんでお前が!?」

 

「ふふふ……」

 

 にやり、と口角を上げその端正な顔つきからは想像しがたい邪悪な笑みを浮かべる。

 

「ダーブラ様はさぞかし強かったろう?まさかあのお方が破れるとは想定外だが、まぁいい。新たな暗黒魔界の王の座が手に入ったということでな。そして、

 ——貴様が弱るこの時を待っていた」

 

「——っち、クロ逃げなさい!!」

 

「……え?」

 

「ふん、パワーも殆ど残っていない今の貴様など取るに足りんな」

 

「ッぐ、あ、ガハッッ」

 

 即座に切嗣の目の前に現れ、鳩尾に強烈な膝蹴りを叩き込む

 

「パパ!!」

 

「く、クロ……に、げなさい」

 

「おっと、そうはさせんよ」

 

 がしっ、とクロの頭を掴む。

 すると、たちまちクロの意識が遠のき静かになる。

 

「暴れられても迷惑だからね、眠ってもらったよ。

 ふむ、それにしても封印はまだ健在のようだ」

 

「き、様……!!またしても僕の娘を!!」

 

「当然。このお嬢さんは、いや、コレは特別だからね。他に代えが効かない代物だ。

 それと、君に聞いても答えてくれそうににないだろうからね。

 もう一人の居場所はコレに聞くとしよう」

 

(——くそッッ、どうする!?)

 

「念のため貴様も捕えておく」

 

 とんっ、と切嗣の首に手刀を落とし意識を刈り取り、その身体を脇に抱える。

 

「さて、では魔神城へ帰るとしよう」

 

 クロと切嗣を脇に抱え、男は自らの城へと飛び立つ。

 

「ふふふ。今度こそは必ず成功させる。残る最後のパーツはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン……はっは!!待っていたまえ」

 

 




というわけで……映画『魔神城のねむり姫』より、ルシフェルの登場です!
次回からは『ねむり姫』編スタートです!
今作のクロのルーツや、切嗣の過去なども交えて描いていきますね。


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其之十二 腐れ縁の二人。

連投すみません!

突如現れた謎の男『ルシフェル』に攫われたクロと切嗣……一体どうなってしまうのか……!?

それでは12話スタートです!


(——っ、? こ、こは……)

 

 飛ばされていた意識が覚醒した切嗣。現在ルシフェルにより脇に抱えられ飛行中である。

 

「おや、お目覚めかね」

 

「……そうか僕は気絶させられて」

 

(この状況はまずいな……。クロは敵の手中にあり、僕の今の状況を鑑みて助けれそうにもない。イリヤがいないことがまだ不幸中の幸いだが……恐らくクロに聞き出そうとするだろう。

 なら、誰かに助けを乞うべきだが……。セラとリズではこの悪魔たちに勝てそうにもない。あのエセ神父なら戦力的にも問題ないが頼んでも絶対に助けにはこないだろう。ならば……次点で戦力になるのはロコン君なわけだが、今の身体の状態からして厳しい。——いや、まてよ……)

 

 気は乗らないが、マジで本ッッ当に気乗りしないが、と一つ溜息をつき、ある男にテレパシーをかける。

 

『……エセ神父今大丈夫か』

 

『なんだ、せっかくの休日だというのに癇に障る声がするな』

 

『お互い様だ。それより本題なんだが、頼みがある』

 

『ほう、貴様が私に頼み事とは』

 

『今~病院にロコンという男の子が運びこまれている。その子に治療を施してやって欲しい』

 

『なんだ、よっぽどの怪我なのか、それとも……急な入り用なのか』

 

 にやり、と笑う顔の男が頭に幻視され、思わず苦々しく顔を歪める。

 

『まぁ、そうだな。体力が消耗している所をルシフェルにやられて、クロ共々魔神城に運ばれている』

 

『ほう、それはまた』

 

『幸いイリヤはまだ捕まっていない。その前にロコン君に助けに来て欲しい』

 

『ふむ、しかしその少年に何とか出来るのかね』

 

『その点は大丈夫だろう。ルシフェルくらいならギリギリ勝てるだろうさ』

 

『ほう、面白い。——だが、私がそう簡単に貴様の頼みを受けるとでも?』

 

『……泰山の麻婆豆腐一か月でどうだ?』

 

『ん?』

 

『くッ……。分かった、二か月でどうだ』

 

『三か月だ』

 

『ぐぐ、わ、分かった。それで手を打とう』

 

『ふむ、交渉成立だな。なら明日にはそちらに向かわせよう』

 

『……了解した。よろしく頼む』

 

 さて、対策は打っておいた。

 

 ……ロコン君には悪いが今回は手を貸して貰わざるを得ない。

 娘達の命が関わっている以上、なりふり構っているわけにはいかないからね。

 

 —

 ——

 ———

 

 ——魔神城

 

「さて、我が城に着いたが……もう時間もお遅い。我が僕たちと食事をして眠りに着くとしよう。明日は記念すべき日になるかもしれないからな。今日は豪勢にいこう」

 

 よし、ツイている。時間は稼げれば稼げるだけいい。ロコン君も明日には着くそうだし、何とかクロに手を上げられる前に方がつけば……!

 

 ——だがしかし、僕の状態が万全ならこんな輩、訳もないんだが……この拘束具のせいで力が入らない。恐らく僕の気を吸収しているんだろう。ということは明日には気の大半は抜かれている筈……。

 くそっ、やはり天下一武道会の休憩の合間に力を使い過ぎたことが痛かったな……。

 暗黒魔界の王ダーブラだったか……?異様に強くて倒すのに苦労したが、その所為で決勝戦はほとんど力が残っていなかった。

 

 ——まぁ、そのお陰でロコン君との勝負も接戦だったわけだが……。

 はぁ……しかし、こんなことになるとは……。

 悔しいが、ロコン君が助けに来てくれても僕自身あまり力になれないだろう……。

 

 

 

 そうして、悪魔たちの晩餐が始まる——

 

 一方ロコンの方はと言えば

 

「これは酷い……全身複雑骨折から~~~~~(医専門用語の羅列)、この子が生きているのが不思議なくらいだ……」

 

「では手術を開始すr」

 

「少し待ってもらおうか」

 

「だ、誰だ君は!?」

 

「私は言峰綺礼。この病院の院長に頼まれて訪れた者だが、その少年の執刀は私に任せてもらおう。院長直々に頼まれたのでね」

 

「院長に!?」

 

「先生!念の為、院長に連絡を取りましたが事実なようです!」

 

 色々と裏で手回しすることに定評のある謎の男性。

 そう、切嗣が言っていた胡散臭いエサ神父こと言峰綺礼、その人である。

 

「そ、そうか……分かった。なら君に任せよう。この子をよろしく頼んだ」

 

「あぁ、頼まれた」

 

 綺礼の執刀が始まる。

 

 

 

 

 

 




今更ですが、ロコン君は神様的な、世界的な、御都合主義的な力により、精神が身体に引っ張られているってことになってます。
はんと今更ですみませんm(_ _)m


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☆◯其之十三 誇り高き M。

手術が終わり目を覚ます主人公……。
そこに現れたのは……?

13話スタートです!


「——これが『知らない天井だ』っての……(一度やりたかった)」

 

 目を覚まし独り言を呟くが、ハッ!っと冷静になり周囲を見渡す。

 

「よかった個室で……聞かれてたら恥ずかしかったし。気つけよ」

 

 ふー、と胸を撫で下ろす。

 

 それにしても俺が倒れてからどれくらい経って、容体とかはどんな感じなのか?病衣着てるから多分手術でも受けたんだろうし身体の状態が心配。

 

 キョロキョロと周りを見渡していると、時計を発見。デジタルの日付まで付いてるやつ。

 えー、12時か。日付も一日しか経ってないな。

 

「おや、お目覚めかね」

 

 カタカタ、と入口のスライドドアが開く。

 そこから現れたのは胸に十字架と神父さん?の服を着た全身真っ黒の男性。そして真っ黒な、まるで死んでいるかのような瞳を持ち、感情の起伏が薄そうな表情に茶髪の男性。

 

 ……言峰綺礼だ。いや、なんで此処に居る?なぜに俺に会いに……?

 

 そう、思わず警戒心を抱くが……。

 それよりも、なによりも気になる事があるんだけど……。

 

 なんか……若いな。見た目からしてまだZeroの時に近いん感じでイケメンって感じ。

 いや、歳食ったら食ったで違う良さはあってそれも格好良いけどさ、若い時の容姿は単純にイケメンっていうか……格好良ェ……

 

「は、はい……それであなたは?」

 

「私は言峰綺礼。これでも聖職者の末席を汚す身だ」

 

 あぁっ!雪下の誓いで聞いた台詞……!

 

「そして、君の手術で執刀した者だ」

 

「ッ!?」

 

 この人が俺の手術!?なんで!? ってか神父さんじゃねぇの!? それとも偶にこういう仕事もするの!?

 いや、まぁアニメで治療するシーンとかあったけども……なんか無性に怖くなってきた。

 

「そ、それはそれは。どうもありがとうございました」

 

「いや、礼には及ばない。なんせ、正当なる報酬を受け取っているからね」

 

 報酬?手術料結構したんだろうか……?

 というか待てよ。そのお金って俺が払うのか?

 それとも武道会側持ちでいいのか?

 

 いやさ、今の俺の懐は薄いというかまるっきり無一文な訳でして、その答え次第によっては追われる身に……

 

「ち、ちなみに手術料は幾らくらいしたんでしょうか……?」

 

「あぁ、その点は心配することは無い。君の手術代は大会側が全額負担する運びとなっている」

 

 よ、よかった……と安堵のあまり思わず呟く。こんな理由で地球去るのはあんまりすぎるから……。

 

 そんな俺の様子を見た言峰さんは

 

「しかし、仮に手術代の負担が君持ちになったとしても私は請求を迫らなかっただろうがな」

 

「え?それは……」

 

 え、なにもしかして良い人?この人この世界じゃこういう人なの?そうなの?

 

 疑って申し訳ないと、心の中で土下座をしようとすると

 

「大会で君には愉快なモノを見せて貰ったからね」

 

「ん?」

 

「私も大会の観戦をしていたということさ、ロコン君」

 

 観てたんかコイツ……っ!って、待てよ……もしかして

 

「クッ、ふっふっふ……あの大会の決勝戦。あのいけすかない男の、ククッ、絶望に染まった顔を拝むことが出来て、愉快だったからね」

 

 ふふふ愉悦愉悦、と楽しそうにお腹を抑えながら笑う言峰さん。

 ……この世界でもこの人は変わらんのね……理解……。

 

「余りにも愉快だったから写真を撮っていたんだ。先程現像した。君にも渡しておこう」

 

 うわっ……タチ悪ッッ!!しかも高画質──っ!!

 えぇ……こんなもん渡されて俺にどうしろっての……俺にそんな趣味無いし……とりあえずポケットに入れとくか。

 

 というか……見れば見るほど正にZeroで観たあのシーン再現しとる……ホント悪いことしてしまった……。

 

「さて、それとは別に君には良い物を持ってきた。なに、遠慮することは無い。私としても良いモノが見れて感謝の気持ちが溢れて仕方がないのだ。是非受け取ってくれたまえ」

 

 ドンっ、とテーブルにラーメンの容器が置かれる。

 おぉ!ラーメンか!やった!って一瞬思ったけど、その料理の香りが届いてきた途端固まる。

 

 え、……?いやおかしい……なんでこんな辛い匂いが……え?

 明らかに別の料理の感じっていうか……それもスッゴイ辛そうな料理の……。

 

「こ、これって」

 

「なに、これでも拉麺屋を営んでいる身でね。作ってきた訳だ。さぁ麻婆だ。食べるといい」

 

「はぁ……ありがとうございます。(ラーメンの容器に麻婆……?)

 あの、因みに麺が見えないんですが……?」

 

「麺なぞ飾りだ。麻婆の海の底に申し訳程度に沈んでいる」

 

(もうそれラーメンと言えん!麻婆豆腐!いや最初に言ってたか麻婆って……。じゃあもうラーメンの容器じゃなくていいんじゃ……なに?一杯入るから?)

 

「なるほど……。

 そ、それでは、いただき……えと、なんか赤すぎやしませんかね。いや、俺、麻婆豆腐は好物なんですけど、なんか俺の知ってるやつと、ちょっと違う気がするようなって……ほら唐辛子の量とか、香辛りょ」

 

「——食わんのか?(威圧)」

 

「いただきます!!」

 

 や、ヤッベー……なんて殺気出すんだこの人……。

 なんなの?この、なんとしてでも麻婆を食べさせようという執念というか、なんていうか……。シンプルに怖い

 

 食べなければタダじゃ済まないだろうな、と思い震える手を動かし、レンゲで麻婆を掬う。

 

「あっ!俺病み上がりなので、こういう食べ物は厳しいんじゃないですかね!?ほら、胃に負担掛かりそうっていうか……そんなので!

 いやホントは食べたいんですけどね?凄い美味しそうなんで!だけど七分病み上がりなもんで!や、ホント残念でならいっていうか……健啖家を自称する身としてはいやホント!仕方ないですよね残念です!」

 

 活路は見えた!との思いで勢いに任せて早口で捲したてる。そうそう冷静に考えて俺病み上がりよ?

 

 俺の胃袋の為にもなんとしてでも切り抜ける。

 

「それじゃ俺は」

 

「安心したまえ。食事をする分に必要な臓器の治療は念入りにしておいた。恐らく1時間ほど前には既に完治している筈だ」

 

「——」

 

「それにしても、ふむ、大食らいだったとはな。これは申し訳ないことをした。生憎今日は2人前しか持ってきていない。私が自分用にと持ってきたのだったが……君に譲ろうじゃないか」

 

 にやり、と口の端を吊り上げながら言う。

 

 盛大に自爆した。食べざるを得ない。

 

 というか、そもそもなんなんでしょうか、その手術にかけての腕の高さは……。そんな直ぐ治るもんなの?

 え?なに?作者の都合、ご都合主義……

 

 まぁ、ともあれ……

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「──、ハハッ、や、そりゃ助かります ね。では、いただきます」

 

 麻婆豆腐が好物なのは嘘じゃないし……多少辛そうでもイケルイケル!!

 

 そう言えば麻婆と言えば、前世で王将に行った時よく頼んでたな。アレは美味しかった。程よく辛くてね、丁度良い塩梅でね。 今度この世界にも店が存在してるか探してみるか(現実逃避)

 

 さて……もうなるようになりやがれーっ!!と思いながら、目の前の極赤麻婆をかき込む。

 

「どうかな?」

 

「──っ!?……え、えぇえええおお、お、おおおお美味しいっす」

 

 ガタガタガタっっと身体を震わせながら、なんとか笑顔を作り返答する。

 

 ふ、ふふふふ震える……!!

 身体が、か、かかかから身体が異常反応を起こしている!!

 や、ヤバイやばいヤバイやばい!!!

 食べる度に血がドクンドクンと激しく脈打つ!高速で流れてる!

 汗が止まらん!顔から汗が滴り落ちる!ベッドのシーツが濡れてくる!

 

「そうかそうか。作った甲斐があったというものだ」

 

 ふふ、と食べる俺を満足げに見ている言峰さん。それは正しく料理人が美味しく食べてくれているお客さんを見る目であり、そんなもの向けられている身としてはなんとも居心地が悪く、同時になんでそんな純粋に嬉しそうなんだよとなんとも言えない感情を抱く。

 俺の様子見て気づかないの?恋ならぬ麻婆は盲目とでも……?

 

 そんな視線の中を死に物狂いで麻婆にありつく俺。

 

 折角治療された身体が悲鳴を上げている。

「なんだこの辛味は!許容範囲を超えているぞ!」と、サイヤ人の胃袋が訴えてくる。

 そして、段々と自身の目のハイライトが霞んでくるのが分かる。

 

 

 

 は、ははは、ハハハハハはーはっはっはぁ!!

 やるじゃないか。ようやく体があたたまってきたぜ!

 しかし、誇り高き戦闘民族サイヤ人であるこの俺の身体をここまで追い詰めるとはなぁ……。面白くなってきやがった!(ベジータ並感)

 

 ふっ、だがなぁ、俺もやられてるばかりじゃあない。

 覚悟しろよ!この唐辛子諸共食らい尽くしてくれる──っ!

 この勝負!敗けてたまるかぁーっ!

 

 そう気持ちを昂らせ更に麻婆を掬うレンゲのスピードを加速させる。

 額の汗の量も尋常じゃないほど滴り落ちてきて、ベッドのシーツは今やびしょ濡れに。

 

 そうして少しすると——

 

 ——ッッ!な、なにィ!?

 旨味の野郎が現れやがった……だと!?

 お、遅いぞ貴様!どれ程探したと思っている!!

 お前が姿を見せるまで俺は辛みとの死闘を繰り返していたんだぞ!!

 

 ——ふっ、まぁいいだろう。

 ようやくお前と対峙できるわけだ。

 覚悟は出来ているだろうな?

 手加減はせん!全力でいかせてもらうぞーっ!

 この俺が食らいつくてやる──っ!!

 

 

 

 ——美味い!美味いぞぉ!!!

 この旨味、癖になりやがる……!

 はーはっはっはぁ!どうだ!この俺様に不可能は無い!!

 この調子で残り全部も平らげてくれる──っ!

 

 

 

 —

 ——

 ———

 

 

 

 ——死ぬ。ベジータをロールして強がってみたはいいけど、限界だ……。

 確かに旨味はあって美味しい。が、辛みの主張が激しすぎる!!

 

 はあああああァァァァああズンガズンガ!!

 口の中とお腹がズンガズンガするですゥゥううう!!!

 

 —

 ——

 ———

 

 ——くッッ! はぁッ……はっ、ふっ

 一旦、休憩を置かせてもらおう。

 

 しかし……これは中々に堪える……。ご飯食うだけでこんなに消耗するとか意味分かんねぇ……。

 もしかしてサイバイマンと訓練してる時よりシンドイんじゃないのこれ?

 ──って、あぁ……思いがけずあの巨漢にしごかれたのを思いだしてしまった。

 惑星ベジータにいた頃にあのヒゲ……ナッパさん(師匠)にしごかれたことを……。

 

 愚痴って悪いけどあの人脳筋すぎるっいうか……まぁ俺が要領悪くて物覚え悪いってのも理由なんだけど、毎回サイバイマンをこれでもかってくらいぶつけてきやがってホント……

 

 —

 ——

 ———

 

『いいかロコン!てめえはどうにも要領が悪いから物覚えもクソだ!というわけで……今からサイバイマンをありったけぶつける!つまりは身体で覚えやがれ!なぁ〜に、これならどんな野郎でもイヤでも強くならあ!!』

 

 がはははは!!と笑いながら俺に死ねと言ってくる。死にたくなければヤレと言ってくる。

 体力のつくトレーニング、即ちナッパ師匠の強みであるタフさを身につけたいって感じで要望出したけどさ、まさかなぁ……いや、こんなんなるとはなぁ……。

 

 

 しかもサボろうとしても家に来るし、なんか母さんと父さんとも仲良くなっとるし……

 

『ロコン!ナッパさんが来たよー!』

 

『は?え、えッ!?いやマジか!?家まで来たの!?ヤバ逃げないと……くっそ……流石に毎日毎日あんなのやってられんっての!俺はマゾでもないし修行大好きカカロットじゃないんだし……ってかまず休みを欲しい!

 って言ってる場合じゃないか……今日くらい俺はゆっくり過ごす。幸い今来たばっかだ。窓から逃g』

 

『ほほぉ……師匠の俺から逃げようと。訓練をサボろうとねぇ…………なるほど』

 

『……お、おはよーございまー……』

 

『おう、ちゃんと挨拶できる奴は好きだぜェ。

 ……そうだな。そんな良い子にはとっておきの訓練メニューをやらねェとなぁ……』ニイィィ

 

『い、いやいやいや!!最近の訓練だけでも充分キツイんで!!これ以上とかマジで死ぬんすけど!?』

 

『あーあーうるせェ!お前は半端な訓練やってる程余裕無ェだろうが——ったく朝から世話焼かせやがって……。

 嫌ならちゃんと来い!! さぁ行くぞ!!』

 

『い、嫌だ!!毎日毎日あんな頭おかしい訓練訓練訓練……今日くらいは休みたい!週休2日を希望する!休みたい!休みたい休みたい休みたい!』

 

『あーったくやかましい!』

 

 駄々をこねる俺に、ごつん、とげんこつ一発

 

『ぐぇっ、え

 

『——ったく師匠ってのも面倒だな……へっ。

 あ、奥さん。では行って参ります』

 

『はーい!うちの息子をよろしくお願いします!』

 

(このヒゲ……いつの間に俺の家族とこんなに仲良く……!?

 ——クソッ!!……こんなのサボったら親に連絡が行く⇨父さんにバレる⇨説教(物理)……)

 

 ——外堀が埋まってて絶対にサボれない。

 絶対に強くならなきゃならない状況になっている……。

 いや、良いことなんだけど……。

 

『ハハ行ってきます……』

 

 そんな訳で俺の修行ライフは嫌でも順調に進みましたと……。

 

 まぁそのお陰で大分とタフさは身についたけど……。毎回死ぬ気で……気を抜くとガチで死ぬかもな訓練に明け暮れた訳だから……。まぁ師匠も師匠で俺の限界分かってて、それを見越してのメニューにしてくるから死にはしないけど……。

 どちらにしてもスパルタっぷりがヤバかった……。あのハゲ(になる予定)め……くそったれめぇ……

 

 

 

 

 ——とまぁ、滅茶苦茶な部分も述べた訳だけれど、まぁ、なに。一応は感謝もしてるというか。なんやかんや俺の初めての師匠で。喋ってて気の良い人だなとは思うし。敵相手には容赦ないけど、仲間に対しては割りかし優しいし。だから人間としてまぁ、好きではある、と一応言っとく。

 あと訓練が終わった帰りとかにご飯奢ってくれる辺り大好き。

 

 

 

 ……まずなんでナッパと師弟関係になってんのかと?

 

 まぁ簡単に言うと、成り行きであの人と戦うというか、ぶつかることがあって、それで当然敗けたんだけど、その時に俺が言った一言があの人を焚きつけてしまったらしく……

 

『……ハァッ、クソ……。流石に強いな。……けど、俺もいつかこのレベルまで登らなきゃ……。強くならないと……奴(フリーザ)に追いつく為に!』

 

『……おい てめぇ…… 』

 

『——なんですか?』

 

『……さっき オレに向かって

「強くなって追いつきてえ』……っつったな?』

 

『……?ああハイ。まぁ言いましたけど』

 

『——そんなに

 

『?』

 

 ぶるぶる、と目の前の男は身体を震わせている。

 俯いた顔からは、どんな表情をしているのかは伺うことが出来ない。

 

 な、なんだ急に黙ったりなんかして……何か企んでるのか?…… 念の為すぐ動けるように身構えとくか。

 

 そう警戒心を胸に男の動向を慎重に伺っていると、急に顔を上げて

 

『そんなにオレに認められてえか!

 なかなか従順なヤロウだぜ!!』

 

 ニンマリとした表情で、的外れなことを言い出した。

 

『……え?いや……なに??』

 

(色々と曲解してる?)

 

『いいぜえ てめえは気にいった!!

 まぁまぁ根性あるじゃねえか!!!』

 

『お、おぉ……。はい、ありがとうございます……』

 

『よーし……。今日からてめえはオレの「弟子」だ!』

 

『は?え、いや俺が「弟子」?

 い、いや一体アンタ唐突に何言って……』

 

『アンタじゃねェ!

 今日からオレはてめえの「師匠」だ!!』

 

『ヘェッツ!?え、師匠!?えぇ……。な、なんだこの展開は……』

 

『がはは!!「師匠」って響きがいいぜえ!!』

 

『……』

 

(——どうする!?急にこんなことになったけど、え、どうしたら……)

 

 思わぬ展開に回り出した事態に頭がついていかず、流されるままに

 

『そういう訳だ。てめえは今日からオレの弟子としてみっちりしごいてやらあ!!さーて、そうと決まれば善は急げってなぁ!トレーニングルームに直行だ!!』

 

 ガシッと俺の身体を脇に抱える。

 

『え、いや俺まだ承諾してないし!ちょっと待っ、って力強いし!! 』

 

『がははは!! 威勢の良いヤロウだ!流石オレの一番弟子だ!』

 

(……あの時一瞬……こいつの目から感じた決意のようなもん……稀に見ることがある戦士の目……雑魚の癖して一丁前に本気の目をしてやがったからな。下級戦士の癖して絶対ェに強くなるっていう、そんな意思の篭った瞳を。

 今はクソ雑魚野郎だが、もしかしたら……まぁオレには及ばねぇだろうがいい線いくかもしれねぇと直感で感じたし、面白そうな奴だしな。

 って、下級戦士相手に何考えてんだがな……らしくねぇと自分でも思うが……)

 

『へっ、まぁこういうのも悪かねェだろ』

 

『悪いよ!まず俺の話を聞けって……くそっ!この人話聞かん!!』

 

 俺の意思は────!!!という叫び声も虚しく連れて行かれ、その日を境に俺のナッパ式訓練の日々が始まるのであった。

 

 くそっ!一体何処のレジェンズのシャ○ットなんだ……っ!!

 

 ——というのが、ナッパと俺の師弟関係の始まり。

 

 まぁ、色々思うところはあるにはあるけど、うん、この師弟関係は割と、まぁ少しは気に入ってるかな。

 

 懐かしい……って意識が完全に過去に飛んでた!!

 

 ——そうだ、今は麻婆だ。現状に目を向けるべき。

 そうか……うん。

 一つ、この戦いを振りかっていると、ある事に気がついた。

 

 

 それは、ある男の子の気持ち。

 

 

 アニメで観ている分には、「あ〜不憫になぁ」程度にしか思わなかったけれど、やっとその子の気持ちを真に理解できたような気がする。

 

 

 

 本ッッ〜〜〜当に

 

 

 

 

 

 

 心の底から思う

 

 

 

 

 

 

 うむ

 

 

 

 

 

 俺は今———

 

 

 

 

 

 

 

 うぅ〜〜〜……中華まんが食べたい……(悟飯並感)

 

 

 

 

 

 

 中華まんが食べたいよ!!!(必死)




レジェンズ初めてみましたー!
対戦システムやらストーリーやら面白くて、一気に進めちゃいましたよ!
ナッパ師匠……いい!
それと、初めての10連ガシャは、作者が好きなカリフラ姐さんでした! やったぜ!

それと今回のお話。
プリヤの単行本を買い揃えてきて読んでいたのですが、3reiの1巻の麻婆のくだりに凄く笑ってしまいまして……そうだ!この話入れよう!入れたい!っていう感じで決まりました。

それとプリヤはアニメで観ていて内容は知ってたんですけど、漫画でも充分に楽しめました!
特に思ったのは、話も凄く面白いんですけど、画力が凄いのなんのって……。
もう……お話も絵も素晴らしくて……っっ!!
漫画買ってよかった……!!


中華まんのくだりは「まろに☆えーるTV」の野沢雅子さん(アイデンティティ田島さん)の発言から思い出しました!
凄く面白かったものでして……笑

それにしても「まろに☆えーるTV」ってドラゴンボールファンの人ならハマっちゃいますよね笑笑
出演者の方々が原作愛に溢れてて、「えっ!?凄いな……そのネタを持ってくるのか……っっ!!」って毎回驚きと笑いを提供してくれます!
最近じゃあ週末に、お酒片手にこの番組を観るのが作者の癒しになってます!
どうか終わらないでーー!!続いてくれーー!!!


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其之十四 (過去篇) トリックか……?

 突然ですが、今回から切嗣の今に至るまでのお話に移ります。
ですので、切嗣視点の過去のお話となります。ルシフェルと衛宮一家の因縁についてです。

今作の切嗣の経歴は途中までは原作とほぼ一緒です。
下にざっと纏めましたので、Fate/zero観てないって方は良ければ読んで頂ければ。
逆に観たよって方は飛ばしてもらっても支障は全然ありません!

 
 ●父「衛宮矩賢」の行う研究の有用性から、親子共々狙われる身のため共に各地を転々とする中、南国の島「アリマゴ島」へと潜伏することになる。


 ●研究内容は「時間の操作」について。しかし、この研究が進むにつれ、自身の存命の間は実を結ぶことはないだろうと察し、不老不死に関する吸血鬼の研究も並行して進める。


 ●アリマゴ島での切嗣の生活は順風満帆。島の人と打ち解けて友達も出来、原住民の少女「シャーレイ」に初恋する等々、村に馴染めていた。

 一方、矩賢の方はというと、村の人間との付き合いを絶ち研究ばかりしていて家に籠りっきみなので村の人間からは敬遠されがち。特に、住んでいる家の場所が、村の伝承の「お供え物に手を出した女の子を祟り、サワガニの姿へと変えた神様」の祀られていた場所と近くだった為、村の人には家に出入りすれば祟られる等と不吉に思われていた。その為、教会の神父には目の敵にされている。


 ●切嗣の初恋の相手であるシャーレイという少女は、通信教育のみで13歳のうちに修士課程まで獲得してしまう天才少女であり、その才能を見込まれ矩賢の助手もどき、家事全般を任せられる雑用係として起用される。

 そして、その持ち前の知識欲から、矩賢の研究を手伝う傍ら貪欲に様々な知識を吸収していく。

 矩賢の知識や発見、研究は世の中の為になると思っていて、尊敬している。
 切嗣のことは弟分の様に思っていて、良好な仲。

 しかし、上述のことから、不吉な場所(衛宮家)に出入りしているということで「悪魔に魅入られる」等と神父に頻繁に説教されている。(霊験あらたかなお守り「銀色の短剣」を押し付けられ、肌身離さず持っているようにと言い聞かされるくらい)


 ●ある日、事件が起きる。

 シャーレイが矩賢の作った試薬を持ち出し、無断で服用してしまう。理由は上述しているように、彼女は矩賢の研究が世の中の、人の為になるものだと信じていて、村の皆にそのことを実証しようとしたかった為。

 しかし、試薬が不完全であった為、不完全な吸血鬼と化す。

 このままでは自我を失い、吸血衝動に駆られ村の人間を襲ってしまい、地獄絵図になることを危惧する。(ゾンビの如く噛まれた相手も吸血鬼になるため。※無印でクリリンがドラキュラマンに噛まれた際、吸血鬼化しなかったのは彼が完全な吸血鬼で、噛んだ相手を同族へとするかは彼の匙加減次第って設定でお願いします)

 吸血衝動をなんとか抑えようと耐えていたところ、切嗣に発見され、その際に彼女が持っていた「銀色の短剣」で手遅れになる前に殺して貰うように、懇願するが、まだ幼なかった少年切嗣はその場から逃げ、教会に助けを求める。その後、神父をシャーレイがいた場所へ案内したが、既に彼女の姿は無かった。


●その後、彼女が危惧した通り島が地獄と化し、この騒ぎに駆け付けた連中によって、吸血鬼(村の人達)は殲滅されていく。この状況に混乱していた切嗣は、吸血鬼に追い詰められピンチに陥るが、偶然にも雇われのフリーランサーである「ナタリア・カミンスキー」という女性に助けられる。(この女性は主に、報奨金を目当てに「危険な思想を持っている危険人物」や「お尋ね者」等の部類の者を狩っているハンター)
 
 この女性の言によると、村に来た連中は、この惨事を引き起こした吸血鬼を造り出した者・研究内容を独り占めしようとしている。

 その為、事の事情を知っている者は殲滅されるとのこと。(証拠隠滅の為、村中に火をつけるほどの徹底ぶり)。

 このことから、父を放っておくと、いずれ違う場所でも危険を顧みずに研究を続け、今回の様に犠牲者が出ると考えた切嗣は自らの手で父親を銃殺する。


●今回の件から彼は、「愛する人ひとりを殺せなかったために大勢を殺した」というトラウマを刻み込まれることになる。

そのことから、悲劇・闘争から多くの人間を救うことを自身に課しているが、私情を排し救う優先順位を命の数で判断することを信条とするようになる。


 ●その後、村から脱してナタリアに師事し、暗殺術・兵器の取り扱い・追跡術等を学び、彼女と同じ稼業に就く。それから、彼女のパートナーとして世界を巡る中で、父の様に周囲も巻き込む輩を何度も目の当たりにし、幼い頃からの夢であった「正義の味方」は歪んでいくこととなる。

 ハンターとして血と硝煙にまみれた生活を送っていた為に、彼のまなざしは10代の少年のものではなくなる。


●そんな生活がしばらく経ち、ある出来事が起きる。

蜂を媒体に人を屍食鬼に変える危険人物をターゲットとした暗殺の仕事が舞い込んできた。

ナタリアは過去に取り逃がした人物だということから、自ら後始末を付けると言い、切嗣とは別行動で仕事に臨むことに。

そうして、彼女はターゲットが搭乗する旅客機に、切嗣はターゲットの仲間を殲滅する為にニューヨークへと行くことに。
 
切嗣は滞りなく仕事を完遂させ、ナタリアも暗殺は成功しターゲットの持っていたトラッシュケースの中の蜂の駆除に成功した。

しかし、ターゲットは体内に蜂を仕込んでおり、既にナタリア以外の乗員全てを屍食鬼に変えていた。


●それでも彼女は生きて帰ることを諦めることなく、コックピットに赴き操縦し、空港に向かう。

空港に着くまでは時間があるとのことで、切嗣と通信で会話することに。

その中で、お互いのことを家族みたいなものだと思っていたこと、面白おかしいものだったと零す。長い間師弟として過ごす中で、互いを母親と息子だと感じていたと語り合う。

そして旅客機が空港に近づく頃、切嗣はミサイルを携え海にいた。

「あんたは僕の──本当の、家族だ」という言葉を合図に、彼女の搭乗する旅客機へとミサイルを放つ。

見事ミサイルは旅客機に直撃し、炎に包まれ撃墜。だが、彼女はこうなることを予見していたのかのように、散り際には笑みを浮かべていた。

切嗣がこのような行動をとった原因は、彼女が生き残り旅客機が空港に着陸した場合、屍食鬼が解き放たれ、災厄が拡大する最悪の事態を阻止する為。

こうして、彼は自分の母のように慕っていた人物を、他の大勢の命の為に殺害するという非常な決断を下した。


●その後、彼は呆然とした顔でシャーレイに語り掛けるように、君の時のようなへまはしなかった、今度もまた、父さんの時と同じように殺したと、大勢の人を救ったと、一人呟く。

ナタリアの犠牲で被害が防げた、と悲痛な面持ちで吐露したのち、耐え切れずひとり涙を流し慟哭した。

 



——

———

 

という感じです。

長かったですよね!すみません!!

前書き長ェわ!って思われた方が多いですよね!

 

一応理由としましては、この話を書くに当たって改めてZeroの18.19話(切嗣の昔のお話)を見直してたんですけど、彼のこれまで歩んできた道のりを簡潔に纏めるのはなんか嫌だなって思いまして……。それでもなるべく短く纏めようと思ったんですがこの結果です……。(くっ、作者の技量がもっとあれば!)

というわけで、長文読んで下さった方はありがとうございますm(_ _)m

ここから彼の歩む道は変わっていきます。

では、本編始まります!!

 


 ナタリアの死後、僕は独立し活動するようになり、数年が経ったある日、一匹の亀に出会う。

 

 今思うと、この出来事が僕の人生のターニングポイントだったのだろう。

 

 

 なんでもその亀曰く、松茸狩りに行ったきり海に帰ることが出来なくなったらしい。

 

 まぁ、その日の仕事は終わっていて後は帰るだけだったということで、その亀を海まで連れて行ってやったんだが……そうすると今度はお礼をさせて欲しいと言う。

 

 そんなものはいらないと断ったんだが、余りにも相手が引かない為に、そのお礼を受け取ることに。

 

 そして、浜辺で待つこと数分。

 

 ——ご老人が亀に乗ってやって来た。

 

「ハロー〜〜グッドアフタヌーン」

 

「ど、どうも」

 

 随分と派手な爺さんが来たな……。

 

「亀を助けてくれたそうだな」

 

「はぁ……」

 

 すると突然、何か思い出したのか、むっ、と顔をしかめるご老人。

 

「お主……衛宮切嗣……ではないか?」

 

「——!……僕のことを知っているとは、只のご老人ではないようですね」

 

「左様。儂は亀仙人。武天老師と呼ぶ者もおるな」

 

「——!!」

 

 武天老師……!?僕でも聞いたことがある……。

 なんでも、こと武術においては神と謳われる程の実力を持つと……!

 まさか、こんな所で会うことになるとは……。

 

「しかしお主、見た所まだ若いというのにその瞳は……。どれ、少し失礼するぞ」

 

「え?」

 

 切嗣の頭に杖をかざし記憶を探っていく

 

(なんと……。この少年からは良い噂を聞かんかったから、もしやと思ったが……まさかこれほどまでとは……。

 この少年が歩んできた人生……このような血と硝煙にまみれた生活を送っていれば瞳の光が消えてしまうのも無理はない。そして極めつけは母のように慕っていた女性の一件か。

 ——ふぅ、全く……長いこと生きてきたがこんな経歴を歩んだ少年なぞ、そうそう見ることもない。まだ若いのにのぅ。

 ふむ……)

 

「な、なんでしょうか?」

 

「ん?あぁ、いや。体調でも崩しとるんじゃないかと、ちっとばかし身体の状態を見とったんじゃよ」

 

「それはどうも」

 

(そんな事も出来るのか)

 

「さて、では本題に入る。

 亀を助けてくれた礼に素敵なプレゼントをあげようと思ったのじゃが……どうじゃ?儂の弟子になってみんか?」

 

(事情を知ってしまった以上、この少年を放っておけん。

 それにこのままじゃと、この少年、鶴のジジイに目をつけられるかもしれん。この少年に悪影響じゃろうし、そうなる前にせめて奴からは自衛出来るくらいの力を付けておいた方がいい。

 それに、昨日来た璃正のせがれの良きライバルに、良い武道家になりそうだと思ったしな)

 

 

 あの伝説の武天老師の元で修行か……。

 だが、武術なんてモノ……手段を問わず、だまし討ちや、毒殺なんかをしてきた僕みたいな奴とは正反対なモノだな……似合わないにも程がある。

 それに、弟子にでもなれば時間が拘束される。

 その時間があればどれだけの人を救えることが出来るか……考えるまでもない。

 

「折角のお誘いのところ申し訳ありません。断らせて頂きます」

 

「むっ、そうか……理由を聞いても?」

 

(まぁ、そう言うと思ったがの)

 

「まず、僕のことを知っているようなので説明は省きますが、僕は武道家とは対極の存在です。それに、師から兵器の扱いや、追跡術等、徹底的に叩き込まれています。武術を学ばずとも、今の仕事をする分には困っていません。僕は1人でも多くの人を救わなければならない。だから、その為にも武術の修行をしている時間はありません」

 

「ふむ……」

 

「折角のご好意を無下にしてしまい申し訳ありません。では、失礼します」

 

「まぁ、待て。なら、修行の有益性が証明できれば、お前さんのその考え、改めてくれるか?」

 

「……」

 

 やけに食い下がるな……。

 だが、幾ら粘ろうと僕の考えは変わらないだろうけど。

 

「まぁ見ておれ」

 

 そう言うと、徐に背中に背負っている甲羅を外し出し、地面に置き、肩を回したり、足を伸ばしたりと、ストレッチを始めた。

 

「あそこに大きな岩があるじゃろ」

 

 海岸から30mほど離れた場所にある凡そ20mは優に越している非常に巨大な岩を指差して言う。

 

「腕力のみでこの位置まで運んでみせよう」

 

「……は?」

 

 いや、どう考えてもこのご老人の身体からそんな力を出せそうにはないが……。幾ら伝説の存在とはいえ、同じく人間。そんなこと出来るわけがない。

 

「い、いや、危ないですし、止めた方がいいかと……」

 

「いいから見ておれ、伊達に武天老師と呼ばれとらんと証明してみせるわ」

 

 有無を言わせない迫力に、頭を縦に振ることしか出来なかった。

 そうして、ご老人は岩の下まで走って行き、今度は服を脱ぎ出す。痩せ細った上半身が露わになる。

 

 やはり、あんな身体では無理がある、と思っていたが

 

「んんん〜〜……はっ!!!!」

 

「——ッ!?な、あ、あれは一体……どういう原理で……!?」

 

 ずごごご…!!と、擬音でも出ているかのような凄まじい迫力とともに、ご老人の身体が元の姿より二回り以上も大きく、筋骨隆々な姿へと変化していく。

 

 ——な、どういうことなんだ……人間じゃあないのか!?

 

「ふんっ!」

 

 ズズズズ…!!と、そのまま巨大な岩を10秒もかからずに、こちらへと移動させて来た。

 

「どうじゃ、まぁ、ざっとこんなもんかの」

 

「……し、失礼ですが貴方は人間ではなかったりしませんか?」

 

「なにを失礼な!れっきとした人間じゃよ」

 

「で、ですが……人間にあんなことが」

 

「儂は人間の壁を超えとるからの。完成された武道家というのはそんなもんじゃ」

 

「そ、そうですか……」

 

 人間に、その壁とやらを越えると、こんな出鱈目なことが可能だというのか……?

 

「ふーむ、まだちょっと怪しんどるのぉ」

 

 にやり、と笑みを浮かべ

 

「よし、特別サービスじゃ。これを見ればお前さんの気も変わろう」

 

「……?」

 

 危ないから下がっておれ、と言い、僕と亀を後ろに下がらすと、なにやら岩から離れた所で謎のポーズを取り出す。

 

 一体なんだ……?

 

「か……めは……め……」

 

 両手を右の腰に携え、なにやら力んでいる。

 すると、その掌に光が灯りだし、やがて溢れんばかりに膨れ上がっていく。

 

「波!!」

 

 ボッ!!と突き出した掌から膨大な光が放出される。

 すると、轟音が鳴り響き岩が破壊され、粉微塵と化した。

 

「ふ~……」

 

「……」

 

 言葉が出ない……。なんだ?僕は何を見た……?

 ミサイルでも使わなければ破壊できないであろう巨大な岩を、ご老人の掌から放出された光が粉々にした。

 全く持って意味が分からない。まさか魔法とでも言うのか……?

 

「貴方は……魔法使いだとでも言うのか……?」

 

「違うわい。儂は武道家じゃて」

 

「じゃあ、今のは一体なんだっていうんだ……?」

 

「かめはめ波じゃよ」

 

「──かめはめ波……?」

 

 たしか……さっきそんなことを言っていたような。

 

「うむ。体内の潜在エネルギーを凝縮し、一気に放出させる技じゃ」

 

「……」

 

 明らかに僕の知っている常識とはかけ離れている。こんなトリックのようなことを本当にやってのける人間がいるとは……。

 

 体内の潜在エネルギー……か。

 

「それは僕にもあるんですか?」

 

「うむ、誰にでも備わっておる。皆それを使っていないだけじゃ」

 

「それじゃあ僕も、かめはめ波を使える、ということですね」

 

「まぁ、そういう訳じゃが……儂でも50年はかかったからのぅ。直ぐに出来るというわけではないぞよ」

 

「50年……」

 

 そんなにも時間が……

 

「まぁ、さっき見せた儂の手本を参考に鍛錬を積めば、もっと短い時間でも習得できるかもしれんがの。まぁ、どちらにしろ人間の壁を超えるということじゃ」

 

「人間の壁を超える……」

 

「どうじゃ?儂の修行を真面目にしっかりと取り組めば超えることが出来る。それに壁を越えれば、お前さんの言う『より多くの人たちを救うこと』にだって大いに貢献すると思うがの」

 

「……」

 

 確かに、これまでご老人が見せたような超人的なことが出来るのであれば……僕は今よりも最小限の犠牲で多くの人々を救うことが出来るかもしれない。

 この爺さんが言うように人間の壁を超えることが出来れば……!!

 

 賭けてみる価値はあるかもしれないな……。

 

「僕に……そんな人間を超えた可能性が秘められているのなら……より多くの人々を救える手立てが存在するのなら……やってやる……どんな苦行でもやってやるさ……」

 

 目を瞑り、改めて今、自分の選択が正しいのか考える。

 今まで支払った代価、積み上げた犠牲に沿うものかを──

 

「僕を……鍛えてください」

 

「うむ。では、これから儂はお前の師匠じゃ。よろしくな」

 

(なんとか説得できたか……。

 それにしても璃正のせがれにこの少年。全く、癖のある奴らが揃ったもんじゃわい。

 ——これから忙しくなりそう……)

 

 

 

 こうして僕は武天老師様の元で修行に勤しむことになり、形上は兄弟子にあたるクソ神父、言峰綺礼と出会うことになる。




というわけで、武天老師様との出会い、でした!
これから彼はどんな道を歩んでいくのか?
乞うご期待です!!

(切嗣の考え方とか解釈とか間違えてたら申し訳ございませんm(_ _)m)



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其之十五 (過去編) 銀色の。

連投失礼しますm(_ _)m


 武天老師様の元での修行から1年が経ち、ある日、課題を出されることとなる。

 

「突然だが今日は課題を出す。魔神城のねむり姫という単語に聞き覚えはあるか?」

 

「……ねむり姫?」

 

「まぁ、切嗣は知らんじゃろうなぁ」

 

「私は耳にしたことがあります」

 

「おっ!では綺礼答えてみよ」

 

 むっ、ちょっと癪だな。まぁコイツが知ってることだ。碌なもんじゃなさそうだ。

 

「はい。

 ——なんでも大昔、悪魔に攫われて城に閉じ込められ、数千年もの眠りに就いている美女のことだとか……」

 

「うむ、その通り。しかもその美しさは女神にも引けを取らんらしい。今回の課題はそんな彼女を救い出し連れてくることじゃ」

 

 なるほど、そういうことか……。数千年もの間眠り続けるとは俄かには信じがたいが、武天老師様のように不老不死の薬を飲んで長命になったという例(ウミガメさんから聞いたが、どうにも胡散臭いとは思っている)もあることだ。可能性としては無くはないだろう。まぁこの人が課題として出すくらいだから、きっと何かがあるに違いない。

 それに、仮に存命ならいい加減、千年なんていうばか長い眠りから解放されるべきだ。

 

「分かりました。しかし、その魔神城とは一体何処にあるのでしょうか?」

 

「うむ、ここからずーっと西に行った先に、悪魔の手と言われる連なった5つの山が見える。魔神城はその山の何処かにあるとされている。まぁ要はひたすら西に進めってわけじゃ」

 

「はぁ……ひたすらに西へですか……」

 

「うむ」

 

 これはまた……えらく抽象的な……。それ故にきっと大変な課題になりそうだ。

 

「よし、では早速出発するのじゃ」

 

「「はい」」

 

「おっと、言い忘れておった。乗り物などは一切不可。二人とも己の肉体の身で進むんじゃぞ。これも修行じゃ」

 

「は、はい……」

 

 相変わらず出鱈目なことを要求されるなぁ、全く……

 

「それと、お主ら二人で帰ってくるんじゃぞ。時に力を合わせ、くれぐれも喧嘩せんようにな」

 

「「善処します、では行って参ります」」

 

「あっ、これ待たんか!

 ——行ってしもうた。はぁ……、あの二人はどうにも張り合ってばかりじゃな。まぁ、そのおかげでお互いに負けまいと成長するスピードは目を見張るものがあるが……。全く難儀な奴等じゃ」

 

 —

 ——

 ———

 

「「ハァッ、ハァッ、ハァッ」」

 

 野を超え山を超え谷を超え、なんとか例の悪魔の手と呼ばれる山に辿り着いた。

 

 ——しかし相当疲れた……。武天老師様の元で修行してはや1年……身体能力をはじめ色々と向上したんだが、僕もまだまだといったところか……。

 

 ……と思ったが、あのクソ神父の所為だ。アイツ僕が綱橋を渡っている途中に綱を切って崖に落としやがったからな。まぁお返しに崖を登っているアイツの元に岩石を落としておいてやったが……。

 

 そんな妨害行為をし合いながら進んでいると、いつの間にかここに着いていたというわけだが、本当に5つの山が手のようにそびえ立っている。

 

 そして心なしか、何が邪悪な気配がする……。

 

「おい、何か邪悪な気配を感じないか?」

 

「あぁ、恐らくこれは……悪魔の類といったところか」

 

「はぁ……。本当に悪魔が居るのか……。

 武天老師様のことだから一筋縄ではいかないと思っていたが、今回も苦労しそうだ」

 

 そう喋りながら歩いていくと、巨大な悪魔?の顔の彫刻があり、中に入口らしきものがあったので入っていく。

 

 しばらく進んでいくうちに、とても広い開けた場所が見えてくる。そこには大勢の悪魔のような者達が集まっている。

 集会でもしているのか?

 

 念のため、岩陰に隠れておく。

 

「おい、もしかしてあそこにいる奴ら全員悪魔だったりするのか?」

 

「あぁ、間違いないだろうな。父の悪魔祓いを見学した時と同じ気配が奴らからする」

 

「そうか、ん?あれは……人間……?」

 

 銀髪の髪に緋色の綺麗な瞳、端正な顔立ちをしている女性が居た。

 その瞳には感情の色が無く生気が抜かれているように見えるが、佇まいは正に淑女を思わせるかのように背筋がしゃん、と伸びており、そのアンバランスさに気味が悪く感じる。

 

 ——もしや、伝承にあったように攫われてきて洗脳でも掛けられたのか!? もし、そうだっなら——ん?何か中央に居る奴が喋っているな。取り敢えず話を聞いてみるか。

 

 

「皆さん、今宵は遂に我らが悲願、暗黒と極寒の世界が誕生することとなる」

 

 うおおおおおお、と周囲の悪魔達の雄叫びが上がる。

 

「膨大な力が封印された宝石『ねむり姫』、そして、その『ねむり姫』の力を解放する為の我等が故郷、暗黒魔界に伝わる伝説の兵器……人間の生命エネルギーを糧に起動する『太陽破壊光線砲』、そして……その為の生贄としての人造人間……『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』

 

 ——ッッ!? 人造人間……だって!?

 人工的に造られた生命……。

 なら、あの感情のない瞳は……本当に感情が喪失しているっていうことか!?

 

「遂にダーブラ様より命じられた使命を果たすことが出来る……。

 さて、では人造人間よ……早速この兵器の中へ入りたまえ」

 

「はい……」

 

 なにやら『太陽破壊光線砲』と呼ばれる兵器に備え付けられている扉が開き、その中に銀髪の女性が誘導されていく

 

 ——どうする?あの男の言と、兵器の名前が本当なら太陽が破壊されるかもしれない。そんなことになったら……それよりも、あの女性は無事でいられるのか!?

 生贄と言ったな……なら、あの女性の命は……ッックソ!!

 

「——二重加速(ダブルアクセル)!」

 

 居ても立っても居られなくなり、女性の元まで疾走し抱き抱え、兵器の傍から離し後ろずさる。

 

「——ッッ!?なんだ貴様!?」

 

「悪いが見ていられなくてね。この女性を攫っていく」

 

「なんだと……?」

 

 途端、相手の雰囲気が殺気の篭ったものへと変わる。

 

「Dr.ゲロに造らせ、一年の末ようやく完成したのだぞ……。邪魔立ては許さん!!みすみす逃そんぞ!!

 我が同胞達よ!この侵入者を八つ裂きにしろ!!」

 

 周囲の悪魔達が一斉に襲いかかってくる。

 

 一々全員を相手にはしていられない。

 狙うは一点突破だ。

 

 右手を銃の形に変え人差し指に気を溜め、勢い良く放ち進行上の敵を屠り、一目散に駆ける。

 

「なにィッッ!?ただの人間じゃない!!

 マズイ、逃げられる!!」

 

 悪魔達が追ってくるが、なんとか躱しながら逃げていき途中で言峰と合流する。

 

「全く、とんだ厄災を拾ってきたものだな」

 

「——ちッ、こんな状況で嫌味とは余裕だな」

 

「その女はどうする?そいつがいる限りヤツらは追ってくるぞ」

 

「取り敢えず、武天老師様の元へと一旦帰って考える」

 

「はぁ……つまり、私まで巻き込みやがったということか」

 

 心底面倒だといった様な顔をして、溜息をつく横のエセ神父。

 いやぁ悪いな、お前にも協力してもらうとする。

 

 そういってる間に出口が見えてくる。

 ここからは武天老師様の元まで逃げ切らなければならない。 常に気を張って帰らなければ。

 




魔神城関連の設定は弄りましたので、原作と異なってます。ご了承下さいm(_ _)m

また、普通の人造人間には「気」即ち生命エネルギーが無いはずですが、アイリは特別、といった設定でよろしくお願いしますm(_ _)m

それと、改めて自分の作品を通して読んでみたら、拙い部分が目立つなぁって所が多かったので加筆修正しました。
 
基本内容は一緒ですが、違ってくるところ・新しく追加されたこと等、下に纏めておきます。
 
●5話から、クロの容姿について言及がありますが、主人公よりも身長が高いことが分かります。
 
主人公118cm クロ133sm って感じです。
 
 
●6,7話で、クロのいた別荘は、現在の森に建てられていた所を売りに出されていて、母親が一目ぼれして購入したことになってます。
 
あと、カプセルで収納できます。
 
それと、セーラの妹「リズ」というメイドも雇ってるけど、今は普段住んでいる方の家に居るクロの妹に付いてるらしいです。
 
 
●7話では、西の都にやってきた主人公ですが、買い物のラインナップが以前より増えています。
 
小麦の他にも、ゴボウとネギ、とうもろこしとハツカダイコンと人参まで買っていこうとしてます。
 
他には、パソコンを欲しがってます。理由は野菜の栽培方法など調べるためだったり、youtube、SNSが見たいためです。(なお、クロの持っているスマホには上記のアプリがインストールされていた為、存在はしているものとなっています)
 
それと、前世でONEPIECEの最終回を見届けられなかったことに未練を残している為、この世界でも存在しているか本屋さんに行こうとしています。
 
 
●8話では、対戦相手のギドラ選手、天下一武道会で悟空と闘った怪獣「ギラン」の父親ということが発覚します。あのグルグルガムは、父親譲りだったということになります。但し、父より性能は劣りますが。
 
 
●第9話 対戦相手のブヨン選手は何者かに改造されたと自分で言っていました。喋れること、原作より強化されているのは、その所為でということでお願いします。
 
ロコン君の界王拳の反動での身体への負担を増やしました。1.5倍の負荷で、身体が痛み始め、しんどくもなります。
 
 
●10話あとがきに書いたのですが、切嗣は原作で娘に彼氏が出来たら排除するという描写があったそうな……。
 
ですので、今作の切嗣は少しその辺は軟化したってことでどうかお願いします……。
 


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其之十六 (過去編) 2人は気が合わない。

お、おおお気に入りが100件を超えている……だと!?
うわああああ!!!!ありがとうございますうう!!((((;゚Д゚))))
気付いた時めっちゃ嬉しくてホントどうにかなりそうでした。

それと今回登場キャラが若干…というか、かなりキャラ崩壊します。 苦手な方はブラウザバック推奨ですm(_ _)m


 なんとか残り半分といった所まで逃げてきた訳だが流石に体力が持たない為、途中の森の中の洞窟で一休みしている。取り敢えずここで朝までやり過ごすことにした。

 

「私は食料を調達してくる。お前はそこの女と一緒にいろ」

 

「ん?あ、あぁ、頼んだ」

 

 なんだ、珍しいこともあるな?

 それともこの女性がいるお陰か?

 

 ……そういえば、武天老師様に女の子が困っていたら優しく助けてあげる様に、と説かれたことがあるがアイツはそれに倣っている、のか?

 

 これでも1年間一緒に修行したが、未だによく分からない奴だからな。

 

 この前だって修行が終わってから、休憩にと武天老師様と言峰と僕の3人で週末恒例の録画していたアニメを観ている時、『五等分の花嫁』の視聴後、討論になってしまったんだが……全く、奴とは本当に馬が合わなかった……

 

 —

 ——

 ———

 

『なんでだ!なんで四葉こそ最も癒しだということが分からない!!』

 

『ふん、お前こそ価値観が狂っているらしい。よもや三玖の圧倒的ヒロイン力を理解しようとしないとはな』

 

『ヒロインとしてなら四葉だって強いじゃないか!

 最初から主人公の側に付き支えていたんだぞ!

 待っていろ……(リモコン操作中)……8話の7:45のシーン……ほら!これだ!

 姉妹5人揃って風太郎の授業を受けようと、五月を勉強に誘う「五月も一緒に勉強しよっ 五人揃った方が絶対楽しいよ」のシーンだ!

 見てみろ!この笑顔を!!汚れきった心を浄化してくれるような、お前の死んだ目にも光を灯してくれるかのような笑顔を!どうだ!?守りたいと思うだろう!?まさしく天使と言わざるを得ないッ!!

 

 ——そして、極め付けは……(早送り中)……この9:04からのやり取りだ!

 横になっている風太郎の顔に手を添えて上から覗き込み「好きだから」と言うシーン……。

 

 いやぁ〜四葉派の僕としては感激としか言えなかったなぁ!あの告白が本当に嘘なのか、あるいは……あぁクソッ!想像するだけで顔のにやつきが止まらない!!』

 

『——リモコンを寄越せ。……2話の22:00、三玖の「責任取ってよね」のシーンだ。言い逃れは許さん。私は見ていたぞ、お前が手を口に当て悶えてたことをな』

 

『——ッッ!!グッッ……な、ならお前は四葉に「こーとみーねさーん」と呼んで欲しくないのか!!』

 

『お前こそ三玖に「キリツグー」と呼ばれたくないのか?』

 

 ばちばち、と向き合うお互いの目から火花が飛び散る。

 

『ま、まぁまぁ、落ち着かんか2人とも。少し頭を冷やせ』

 

『 ……』

 

『キャラクターそれぞれに魅力はあるものじゃ。それなのにどちらが上かなどと……不毛な争いだということが分からんか』

 

 うっ……そう言われると耳が痛い。そうだな、確かに一花は普段のお姉さんとしての振る舞いからデレた時の威力は凄い。

 二乃はあのツンツンとした態度の裏にある家族愛が素晴らしく、家庭的な一面もあり、なにより非常にツンツンしている分、デレた時の破壊力は計り知れないだろう……。

 三玖は、まぁ、言峰の言う通り「責任取ってよね」のシーンに魅了されたのは事実だ……それに風太郎にオムライスを褒められた時の反応も可愛いかった……。

 四葉は言わずもがなだ。

 五月は真面目でしっかり者なんだが、それに比例せずに成績が思うように伸びない……だが、そんな所が応援したくなってくる。それに食べる五月の姿は可愛い。

 

 ——そうだな、皆いい子で可愛くて、魅力的だ。

 

『その……まぁ、悪かったな』

 

『ふん……まぁ私こそ、らしくなく熱くなったしまった。お互い様、といったやつだろう』

 

 お互い、大切なことに気づき謝罪し和解する。

 もう、こんな不毛なことで喧嘩をするのは止めよう。

 そう——思っていたんだが——

 

『まぁ一花お姉さんが一番可愛いんじゃがな』

 

『『はぁ!?』』

 

 

 そうして、ジジイと言峰と一悶着あったんだが……なんだ、まぁ、つまり四葉を推さない言峰の考えは分からないということだ……。

 

 

 

 そして今回も真相はどうか分からない……が、今は素直に助かる。

 

 それにしても……

 

「この女性が……莫大な生命エネルギー(気)を糧に起動する『太陽破壊光線砲』に供物として捧げられる為に造られた人造人間、か……」

 

 捧げられる供物が人間でなければならないなんて、酷く悪趣味に過ぎる兵器だ。

 なにより、それに対応させて都合の良いように、使い潰しの為に生命を誕生させる輩も碌なもんじゃあない。

 

 「あー……えっと、聞こえてるか?僕の言葉は理解できるかな?」

 

 「はい」

 

 「受け答えは大丈夫……と」

 

 「あなたは、Dr.ゲロ様の製造した人造人間について、随分過小評価をなさっているようですね」

 

 あ、しまった、気に障ってしまったかな……

 

 「そんなことはないさ。世界最悪の軍団と称されているレッドリボン軍。それに所属する科学者であるDr.ゲロといえば、天才的な頭脳を持ち、あらゆる兵器の生みの親として知れ渡ってる。そんな科学者が製造する人造人間ともなれば、さぞかし優れているに違いない」

 

 「その通りです。私は完成された人体として備わっている全ての機能に加えて、常人を遥かに凌駕する生命エネルギーを宿しています。私に戦闘機能は搭載されていませんが、戦士としての素体は、貴方を上回る性能を備えている筈です」

 

「もしかすると、僕の力とか測れるのか?」

 

「はい、あなたの生命エネルギーは大したものですが、この私には敵わないですね」

 

「……因みにさっきまでいたもう一人の男と僕だったら、どっちが強いかな?」

 

「生命エネルギーの総量であれば全くの互角です」

 

「——そうか」

 

 クソッ!なら、まだ奴を負かすことは厳しいか。

 

 僕は二重加速等でスピードを上げることが出来、速さでは勝っているが(この頃の切嗣は界王拳の熟練度がまだ低い為、スピードのみの倍加となっております)、奴には格闘術の技量で負けている。それにパワーも相当なものだ。

 

 稽古の組手ではよく引き分けになり、30勝30敗20引き分けという戦績。

 

 いつか奴は負かす……!!

 

「それにしても、いや、無礼を承知で質問させて貰うが……何故Dr.ゲロは言語機能等もつけたんだ?君は生贄にされる為に造られた存在だと聞いた。

 なら、莫大な生命エネルギーと人間の形さえ整っていればいいものだと思うんだが……」

 

「そうですね、仰る通りかと。ですが、Dr.ゲロ様が仰っていました。あれは私の製造途中のことです」

 

 —

 ——

 ———

 

『悪魔だがなんだが知らんが、この私を脅して働かせるとは……まったく不愉快だ』

 

(だが、そのお陰で興味深い研究対象(人造人間)が増えたんだが……)

 

『ん?こ、この反応は一体……!?予想以上の生命エネルギーだ!!よもやこれ程までとは!?』

 

(確かコイツは……遺体の状態で運ばれてきた何処ぞの貴族……だったか?)

 

『いやぁ、しかし流石私だな!!天才だ!

 偶然出来た産物だが、それも天才たる所以……か。

 そうだ どうせなら他の機能もつけてみるとするか!

 いやぁ、天才だからなぁ!私は!!』

 

 

 

「そして、研究室には、はーはっはっは!!という高笑いが響き渡りました」

 

「そ、そうか……」

 

 あのマッドサイエンティストにもお茶目な部分があったなんてな……。知りたくもない情報だった……。

 

 ………

 

「……本題だが、えっと……まず君は僕があの場所から攫ってきたことに関して、何も抵抗を見せなかった。あの悪魔達の意向に沿うように行動するよう何か命令のようなモノをインプットされてたりしなかったのかい?」

 

「いいえ、されていません。強いて言うならば命令には忠実に動くようにと、Dr.ゲロ様に言われただけです。

 なんでも、何もかもあちらの思うようにするのは癪に触るから、とのことです」

 

「なるほど……」

 

 そういうことか……あの悪魔達から逃げる際、彼女がなんのアクションも起こさず、流れに身を任せていたのは、悪魔達から何の命令も受けていなかったからという所だろうか。

 

 なら、これからこの女性を武天老師様の元で匿うことも大丈夫だろう。

 

「君はどういう目的で製造されたか理解っているのかい?」

 

「はい、私は『太陽破壊光線砲』の燃料。捧げられる供物として、生き絶えた『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』の肉体を基に製造された人造人間です」

 

「……ッ」

 

 自分を蔑ろに、命を軽んじられているというのに、それが当たり前だと言うように淡々と語る。

 

 生き絶えた肉体を基に……か。

 確かに一度は亡くなった命なのかもしれない。

 だが、それでも新しく『アイリスフィール』の身体に宿った、目の前の彼女という存在を蔑ろにしていい理由にはならない。

 彼女は自分自身が損なわれることに抵抗し、怒りを抱くべきなんだ。

 

 だから、彼女が自らの命を軽んじていることが、無性に腹が立つ。

 

「君は……ッッ!」

 

 がさっと、音が鳴り振り向くと、右手に大量の木の実の入った籠を持ち、左手には仕留めたであろう狼を抱えた言峰が居た。

 

「食料を調達してきた」

 

「あ、ああ、なんだお前か……悪い、助かる」

 

 彼女へは言いたいことがたくさんあるが……仕方ない、また今度にするか。

 

「ん?お前そんな籠持っていたか?」

 

「作った」

 

「……相変わらず器用なことで」

 

 

 そうして言峰の調達してきた食料を頂き、夜を明かした。




武天老師様の趣味はTV鑑賞(H系の、という設定には目を逸らし……)ということはアニメを観ている可能性も無きにしもあらず、という妄想で今回のお話を考えました。「五等分の花嫁」はお察しかと思いですが、作者の趣味です!五つ子ちゃん達、皆それぞれ魅力的で可愛いすぎる!!


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其之十七 (過去編) Ein。

 夜が明け朝になったので移動を始める。

 言峰によると悪魔達は陽の光を好まないらしく、今の内に一気に帰るのが得策とのこと。

 

 そうして、武天老師様の待つかめハウスまで時々来る追っ手を撃退しながらも無事到着した。

 

「武天老師様只今帰りました!」

 

「むっ、早かったの切嗣。まだ1日しか経っとらんのに」

 

 よっこいしょ、と読んでいた新聞をテーブルの上に置き、こちらに近づいてくる武天老師様。

 

「は、はい。実は少し厄介な事態になっておりまして相談が……取り敢えずアイリスフィール、入ってきてくれ」

 

「アイリスフィール?」

 

 扉の方に目を向ける僕に倣い、武天老師様も「?」を頭に浮かべながら怪訝な表情で頭を動かす。

 

「……」

 

「うっひょーーー!!!こりゃあ、とんでもないべっぴんさんじゃのーー!!切嗣でかしたぞい!……って空気じゃなさそうじゃの」

 

「はい、実は——」

 

 —

 ——

 ———

 

「なるほど、そうか。道理でこの娘さんの瞳に感情の色が見えなかったわけじゃ。そして、悪魔達の企み……よもや太陽を破壊しようなどと大それたことを企んでおったとはな……ふ〜む、こりゃ厄介なことになったもんじゃ……」

 

「はい、そういう訳で僕達では対処できず武天老師様の助力を願おうと帰ってきた次第です」

 

「ふむ……それにしても切嗣、よくこの娘さんを救ってきてくれた。わしの教えたことをよいことに活かしてくれたの」

 

 にっかりと表情を崩し暖かな目でこちらを見やる武天老師様に、気恥ずかしさからか俯いてしまう。

 

「……っ、はい」

 

「さて、ではこれからどうするかじゃが……まぁ、ことがことじゃからな、今回は儂が何とかしよう。話を聞く限り、その悪魔達と、例の兵器をどうにかすりゃええじゃろうしな」

 

「はい」

 

「そして、この娘さんの件はお主に一任することにする。色々とこの世界について教えてやりなさい」

 

「——え?いや、僕が、ですが……?いやいや!武天老師様の方がこういったことに向いてるかと思うのですが!」

 

「まぁまぁ、お主にも良い経験になるじゃろうて。本当に困ったら相談に乗ってやるから、まぁ、頑張ってみい」

 

(それにこの娘さん……僅かだが切嗣に懐いておるしの。

 こやつの心をほぐしてくれる、そんな存在になってくれると良ぇのう)

 

 し、しかし!、と抗議をするも中々折れてくれないので仕方なく了々の返事を返すことに。

 

「よし。じゃあ早速行ってくる。昼食作って待っといてくれ」

 

「は、はい!!よろしくお願いします!」

 

 

 その後、軽いノリの台詞を残し行ってしまった武天老師様だが、本当に昼時に帰ってきて、あっけなくこの件は終わってしまった……。

 

「城にいたアルシエルとかいう親玉らしき奴に少し手こずったが、まぁなんとかなったわい」

 

 相変わらず武天老師様は常識外れなお方だということを再認識した。

 

 

 —

 ——

 ———

 

 ——暗黒魔界

 

 暗黒魔界の王の城、その玉座に掛ける王の元に、ある報せが入る。

 

「ダーブラ様、ご報告が」

 

「ん?なんだこの忙しい時に。手短に済ませ」

 

「はっ!地球に送り込んだアルシエルが死亡しました」

 

「——なんだと?アイツがか?そうなると……おい、ねむり姫はどうなっている?」

 

「はい。あやつの最後の足掻きで「ねむり姫」と「太陽破壊光線砲」はこの暗黒魔界に転送されておりますので、ご安心を」

 

「そうか……なら早速次の刺客を送るとするか」

 

「そ、それがてすね……肝心の兵器が少々傷ついており修理の必要がありまして……」

 

「なに?……仕方ない。まぁ、急を要することではないからな。気長に待つとする」

 

「ははっ!お心遣い感謝致します!では失礼致します!」

 

 ばたん、と扉の閉まる音が王の部屋に静かに響く。

 

「そうか……アルシエルがやられたか。

 どうやら地球人共を甘く見ていたらしい。

 これは私の落ち度でもあるな。

 ふむ……では次はもっと力のある奴に、ルシフェル辺りに任せるとするか。

 ——さて、この件はまた今度考えるとして……仕事に戻るとするか」

 

 そうして、仕事に戻る王様であった。

 

 




という訳で、駆け足気味ですが過去編の第一幕が終わりました。
もうちょっとだけ続きます!!

それと、アイリが膨大な生命エネルギーを宿していて、悪魔達を蹴散らすポテンシャルを秘めているのにも関わらず、何故ゲロはそうしなかったというと、アイリ自身に戦闘のデータ等インプットすること等が出来なかった為。どうしても戦闘に関する機能を付けれなくて(時間が足りなかったのもあるかも)、諦めたって感じでお願いしますm(_ _)m


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其之十八 (過去編) ♡♡。

作者の願望が詰まった回です!


 ねむり姫の騒動から6年もの歳月が過ぎた。

 あれから僕は武天老師様の修行を終えて、元の生活に戻ることに。

 以前のように、危険人物の抹殺や、虐げられている人達を救う活動をしている。

 

 そして、変わったことと言えば……

 

「行ってきます!おとうさん!ママ!」

 

「あぁ、行ってらっしゃい。イリヤ」

 

「行ってらっしゃい、イリヤちゃん」

 

 愛おしい我が娘、イリヤだ。

 

 あの1件からアイリスフィール……アイリに情操教育を施すよう命じられた僕は、彼女に付きっ切りで様々なことを教えることに。その甲斐あってか、半年程する頃には感情豊かになり、天真爛漫で好奇心旺盛、元気な…少々元気すぎるかもな女性に成長した。

 

 その後、異様に僕に懐いて寄ってくる彼女に根負けする形で付き合うことに。

 そして更に1年後、彼女と結婚し夫婦となり、子供を授かることになる。その子供がイリヤというわけだ。

 18歳の頃の出来事である。

 

 しばらくは家族で新築の家で暮らしていたんだが、イリヤが2歳になる頃、自分のなすべきことをするべく再び以前のような活動を再開する。その為、しばしば家を空けることになるので、メイドのセラとリズを雇うことになった。

 

 我が家のお金事情は僕の稼ぎで充分に補えているのもあるが、何より、アイリが持ち前の豪運で時々引くぐらい稼いでくるので、メイドを雇う為のお金の工面は心配ない。

 なんなら最近、アイリが一目惚れで城を買ったと言っていたくらいだ。

 

 

 それから時が過ぎ、23歳になった僕は仕事がひと段落したお陰で、昨日久方ぶりに家に帰れたという訳だか……またもや、事件が起きることになる。

 

 その日は平日だった為イリヤを幼稚園に送り届け、それからアイリと2人で出掛けていて、今はスイーツバイキングに来ている。

 

「う〜〜ん!こんなにも美味しいケーキが幾らでも食べられるなんて幸せだわ〜!ね、あなた?」

 

 ほくほくとした表情で、膨らませたほっぺに両手を当て、此方を伺ってくるアイリ。

 

 ——全く、僕の奥さんはなんでこんなにも可愛いんだろうか……。

 思わず写真を撮ろうと携帯を取り出そうとするが、つい先日、家族の写真で容量が限界に達してしまったことを思い出し諦めることに。

 

 どうにも写真を整理することは慣れない。

 1つ1つのアイリや、イリヤの家族の写真がどれもこれも大切で、とてもじゃないが消せないんだ。

 やはり64GBじゃ全然足りないな。今度助手の舞弥に相談してみるとしようか。

 彼女にも溺愛している息子が居るからきっと共感してくれるだろう。

 

「あぁ、そうだね。このティラミスと苺シャーベットなんか特に絶品だな、流石舞弥のお墨付きなだけある」

 

「そうなの?なら私も一口頂いてもいいかしら?」

 

「うん、勿論いいとも」

 

 すっ、と自分の皿を差し出すが、何故か一向に手を出そうとしない。不思議に思い彼女の方に顔を向けると、ジッ、と、此方を見つめている。

 

「ん、どうしだんだいアイリ?」

 

 なにやらムムム、と唸っており、何かやってしまったかと焦ったが

 

「あ〜〜ん、してくれないかしら?♡」

 

 ずずいっ、とニッコリとした顔を乗り出して、甘えた声でねだってくる。

 

「——ッ!、う、いやその、ほら、ここは人目もあることだし、何より公共の場というかだね」

 

 まさかの要求に動揺を隠せないで反応してしまったが、追い討ちを掛けるように

 

「ね?お願い」

 

 とどめのウィンクときた。

 

「——はぁ……全く、どうにも敵わないなぁ、アイリには」

 

「ふふふ、私は強情な女だからね♪」

 

 ははは、と互いに笑みを浮かべ、朗らかな空気になる。

 

 因みに、この時通りかかった店員さんの言によると、途轍もない幸せオーラが漂っていたとかなんとか。

 

「ふぅーー……、じゃ、じゃあ、いくよ」

 

「え、えぇ、お願い」

 

 夫婦といってもなんか緊張するな。心なしかアイリもちょっと頬に赤みがかっているし、なんやかんや恥ずかしいんだろう。

 

「あ、あーん」

 

「あー、あむっ」

 

 むぐむぐ、と視線を僕から横に外し、顔を赤らめながらも咀嚼しているアイリ。

 

「ど、どうだい?美味しいかな?」

 

「——ごくん。……なんでしょうね、ふふ、緊張しちゃって味が分からなかったわ」

 

「そ、そうかい」

 

 あ、あははは、と互いに赤面して顔を見れずに俯いてしまう。

 

 またもや通りかかった店員さんによると、甘酸っぱいオーラが漂っていたとかなんとか。

 

「そ、そろそろ出るとしないかな?今思えば次に行く映画が始まる前にジュースとか買っておきたいし、混んでしまう前に向かった方がい、いいだろうからね」

 

「そ、そうね!それがいいわ!そうしましょうか!」

 

 ご馳走様でした、とそそくさと店から出る仲良し夫婦さんであった。




というわけで、話しは進まず只々仲良し夫婦さんがイチャイチャしてる回でした〜〜。

ぶっちゃけますと、この小説を書こう思ったのは原作で浮かばれなかった人達とかを強引に幸せにしようっていう理由もあったんで、やりたい放題やりました!

特に舞弥さんっていう切嗣の仕事上の助手さんがいるんですけど、彼女は原作では息子を出産した後、引き離されています。ですが、この世界じゃ切嗣さんが色々となんとかしてくれました(投げやり)!流石ァ!

ですんで、彼女は息子のシグマ君と暮らしてます。
基本人間性は希薄な彼女ですが、息子と触れ合う内に家族愛に目覚めたっていうことでお願いしますm(_ _)m
それと、原作通り甘党で、数多のケーキバイキングを渡り歩いているそうな。
最近は息子とケーキバイキングに行くことが幸せなんだと、いつになく楽しそうに切嗣に語っていたらしいです。


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其之十九 (過去編) 再び。

感想頂いたら嬉しすぎて仙豆食ったかのように力が湧いてくる……ヽ(゚∀゚)ノ!!!
なのでもし気が向いたら気軽に感想頂けたらなぁ……と(|´-`)チラッ


 映画の上映が終了し、アイリと感想を交わしていた。

 

「いや〜それにしても面白かったなぁ。思わず見入っちゃってポップコーンを食べる手が止まってしまったよ」

 

「えぇ、私も。特に主人公が、ヒロインの女の子だけの正義の味方になるって言ったシーンあったじゃない?見惚れちゃったわ〜」

 

「あぁ、やっぱりアイリもそのシーンが好きなんだね。

 願わくば、2人結ばれて幸せになってくれることを祈るばかりだ」

 

「そうね……はぁ〜〜続きは来年の春かぁ。待ち遠しいわ〜〜」

 

「あぁ、本当だね。桜の咲く……って、ん?悪いアイリ、電話だから少し外すよ……ってセラじゃないか」

 

 一体なんだと思い携帯に出る。

 

「もしもし?セ」

 

『切嗣様!!大変ですイリヤさんが!!』

 

 ッッ!声が大きくて耳が!

 というか慌てて一体何事だ?

 

『攫われたんです!』

 

「——ッ!なッ」

 

 —

 ——

 ———

 

 セラからの話によると、幼稚園にイリヤを迎えに着た時、ちょうど紳士服を着た青白い肌の男が攫っていったとのこと。

 

 そんな奴に心当たりがあるわけもないので、どう捜索するか、と悩んでいると

 

「安心して、切嗣。こんな時の為にイリヤには防犯用のGPS付き携帯を持たせているの。えっと……ここね!

 西の方角にずっと進んだ所に居るみたい」

 

「了解した。じゃあ直ぐに行こう」

 

 西……か。

 なにか、よくない気がしてならない。

 

 そんな漠然とした気持ちを抱えて、目的地へと飛び始める。

 

「この場所は……!!」

 

「いえ、そんな筈は……。だってお爺様が……」

 

 その場所は、過去に一度訪れたことのある場所、魔神城だった。

 なんだこれは……偶然か?

 いや、偶然でもタチが悪いぞこれは。

 

 ここは、アイリにとっても複雑な場所だ。

 ここで行われた非人道的な行為……アイリを生贄に兵器の燃料とし、物騒なことをしでかそうと企んでいた連中の住処だった場所。

 

 連中は武天老師様に殲滅されたと聞いたから、その線は薄いかもしれないが……だが、それでも嫌な予感がする。

 

 

「……とにかく入るしかない」

 

「ええ……そうね。行きましょう」

 

 —

 ——

 ———

 

 入り組んだ道を暫く進んだ頃、赤い鬼が門番かのように待ち構えていた。

 

「よぉ。ルシフェル様に誰一人通さないように言われてるんもんでな。ここは通さんぜ」

 

「すまないが、先を急いでいる」

 

 イリヤの状態が分からない以上、こんな道中で油を売っているわけにはいかない。

 最効率で最短に処理する。

 

「——ッッが!う゛い、痛でッ!」

 

 銃弾のサイズに圧縮させた気弾を両脚に打ち込み、相手の動きを封じる。

 そして間髪入れず両腕にも打ち込み身動きを封じる。

 

 さて——

 

「悪いが、君には色々と聞かせてもらう。ここに連れ込まれた銀髪の少女は何処に居る?」

 

「冗談じゃあねぇ……んなこと言えばルシフェル様に消されッッゔお゛あ、ああ……」

 

 追加で更に両肩を撃つ。

 

「どのみちイリヤを攫った時点でそいつは抹殺対象だ。

 後のことは気にしなくていい。

 ——それとも更に痛い目にあうのがお望みなのか?」

 

(——ッッ!!な、なんだ…こいつのドス黒い目は…!

 躊躇なく俺に拷問を掛ける気でいやがる!

 ……)

 

「……この先を右に曲がった所に崖がある。そこを降りた先の開けた場所に居る」

 

「なぜイリヤは攫われた?」

 

「太陽を破壊する為の生贄にすると、聞いた」

 

「「——ッッ!」」

 

 まさか……そんな…想定していた最悪の事態だ!

 

 イリヤには母親のアイリから受け継いだ高い生命エネルギーが宿っている。それに目を付けてあの兵器の生贄にしようとしているのか!

 くそッッ!!

 

「急ごうアイリ!」

 

「えぇ、イリヤがあの兵器に入れられる前に!!」

 

 アイリを担ぎ、二重加速(ダブルアクセル)で駆ける。

 

 そして、件の開けた場所へ。

 中央にはなにやら祭壇があり、その周辺に悪魔らしき者たちが集っている。

 そして、周りの者と一風変わった紳士服を着込む青白い肌の男性がいる。恐らく奴がイリヤを攫った張本人だろう。

 

「諸君!!長らくお待たせした!今この瞬間、ねむり姫の美しき輝きが我らに永遠の繁栄と暗黒をもたらしてくれよう!!」

 

 やはり、ねむり姫か……ということは、イリヤは太陽破壊光線砲の近くに居るはずだ。あの兵器に入れられる前に見つけなくては!

 

「さて、では諸君!我らの悲願を達成する瞬間を見に行こうではないか!!」

 

 場所が分からない以上付いていくしかないか。

 イリヤを見つけ次第、早急に奪還する。

 

 奥へと進む集団に気づかれないよう気を消して付いていくことに。

 

「さぁ諸君!観るがいい!憎き太陽に引導を渡す暗黒魔界に伝わりし伝説の兵器「太陽破壊光線砲」だ!!」

 

 うおおおおおお!!!と、歓声が広がる。

 

「この兵器こそ「ねむり姫」の力を解放する!

 そして、その燃料となる少女だ!」

 

 兵器の後ろより銀髪の少女が現れる。

 両腕を前で縛られて、手を引かれて歩いている。

 

 間違いない、イリヤだ!

 あぁ、あんな泣きそうな顔をして……無理もない、まだ5歳の少女なんだ。

 僕達の娘をあんな目に遭わせるとは……絶対に生かしてはおけない。

 

「アイリ、ここで待っていてくれ。奴らからイリヤを奪還してくる」

 

「えぇ、分かったわ。それじゃあ、私は相手の気を逸らす為に立ち回る」

 

「本当はココで隠れていて欲しいんだが……状況が状況だからね、よろしく頼む」

 

 アイリは肉弾戦こそ苦手にしているが、気のコントロールは精密だ。

 よって、気弾の扱いに長けている。

 

「目一杯の……散弾!!」

 

 アイリが放った、細かな気の弾丸が悪魔達のいる方向へと被弾し、砂煙を発生させる。

 

「な、何事だ!?」

 

 よし、案の定連中は混乱している。

 この隙にイリヤの元へと向かう!

 

固有時制御・(タイムアルター・)二重加速(ダブルアクセル)

 

 2倍速の速さで以って、イリヤの元へ。

 そして、イリヤの身体を掴もうと手を伸ばした瞬間、

 

「ふっ、そうか。私としたことが侵入者に気づかんとは」

 

「——なっ!」

 

 差し出した筈の手を男に掴まれる。

 

「挨拶が遅れてしまったね、ようこそ魔神城へ。私はこの城の現城主ルシフェル。歓迎しようじゃないか」

 

「——くっ、この」

 

「まぁ元城主のアルシエルのようにはいかんぞ。

 今回こそ、ダーブラ様の使命を果たしてみせ」

 

「……!」

 

 目の前の男が喋っている隙に右人差し指から気弾を数発放ち、掴まれた腕を解く。

 

「なんて物騒な。人が喋っている最中だというのに」

 

「生憎、お喋りに来た訳じゃないんでね。イリヤは返してもらう」

 

「そうはいかない。あのお嬢さんの生命エネルギーは前回のそれを優に上回る。逃す訳にはいかない」

 

「なら、あんたを倒すまでだ」

 

 気の弾丸を放ちながら相手に接近していく。

 が、敵は器用にそれらを避ける。

 

 相手の元まで近づいたので激しく体術で攻め立てる。

 打撃のラッシュに相手は反応してくるが、少しこちらの方が優勢のようだ。

 

「ふふっ、この程度の攻撃造作もない」

 

あんたもな

 

「——ッ!ぐ、あ……貴様」

 

 ボンッッ!、とルシフェルの背後が爆発する。

 

 タネは簡単だが、先程打った弾丸を操作して奴の背後にぶつけた。

 

 奴が膝をついている内に、頭にとどめの弾丸を放つ。

 

「悪いが、終わりだ」

 

「ふ、貴様こそな」

 

 俯いた顔を上げ、にやり、と表情を歪めるルシフェル。

 その手は横を向いていて、掌の光をイリヤの居る方角と合わせ、

 

「——ッ!……クソ!三重加速(トリプルアクセル)!」

 

 ボウッ!と気弾が発射される。

 発射された一撃は真っ直ぐにイリヤへと向かい、その間に入った切嗣へと直撃した。

 

「うっ、ハァッ、くそ」

 

「ふふっ、はっは!!そうだ。貴様ら人間ならそうすると思ったよ」

 

 マズイ、中々の威力を食らってしまった。

 アイツ……卑怯な手を……と罵ることは出来ない。

 僕も人のことを言えた義理では……ない。

 

 だがこれでイリヤに近づくことが出来た。

 後ろのイリヤを抱き抱え、その場を離れる……が、何故かルシフェルは眉ひとつ動かさずに涼しい顔をしている。

 

「そして私の計算通りだ」

 

「何を……うっ、がっあ゛、イリ、ヤ……?」

 

 ドスッッ、と脇腹から音が鳴り急に激しい痛みが走る。

 頭を向けると、抱えているイリヤの手の指が鋭利なモノとなり僕の脇腹に刺さっている。

 

 ……くそ、まさかコイツは……!!

 

 ルシフェルがぱちっと、指を鳴らすと抱えていた筈のイリヤの姿が変化し、ツノの生えたイリヤとは似つきもしない化け物へと変化する。

 

「ふふっ、悪魔を甘く見ていたようだな。変身できる者も数は限られるが存在するのだよ」

 

「そして本物はというと……ジャジャーーン!!」

 

 得意げな顔で両手を件の兵器に向ける。

 

 そこには

 

「本物のお嬢さんは兵器の後ろに隠していた、という訳だ」

 

 悪魔に手を引かれたイリヤがいた。

 

「——ッッ!クソ!やられた……!!」

 

 まさか、あの砂煙を上げた時に既に!

 こんな手に引っかかるとは……!!

 

「貴様は私の戦闘力より優っているが……まぁ残念だったな。最後に笑うのは私らしい」

 

「ふふふはははははははは!!!よし!では同胞よ、そのお嬢さんを兵器の中へと案内して差し上げろ!」

 

「そうはさせるかッ!くっ、コイツ、邪魔を!」

 

 イリヤに化けていた悪魔がしがみつき、身動きがしづらい。

 なりふり構ってられない。

 

四重加速(スクエアアクセル)!」

 

 身体への負荷が大きい倍率を使う。

 身体から更に激しい気の奔流が発生する。

 流石にそれには敵わないのか、しがみついた悪魔が吹き飛ぶ。

 

 そして全速力でイリヤの元へと向かう。

 が、目の前に大勢の悪魔達が壁となる。

 

「ぐっ、こんな時に……!!」

 

 余りにも数が多い為、師匠より受け継いだかめはめ波で薙ぎ払うが、

 時既に遅し。

 

 ガチャっ、という扉の閉じた音がする。

 

「残念、時間切れだ」




この頃の切嗣は戦闘力500くらいです。

え、じゃあ二倍の界王拳の時点で身体耐えられないでしょ?と思われた方いると思います。(サイヤ人襲来編の悟空【戦闘力8000】でも、三倍で身体が悲鳴上げてるくらいだから)

なので、この作品の切嗣は界王様とは違う独自の理論で界王拳を使っており、燃費が良いっていう設定になってます。
勿論、切嗣等の限られた人にしか適用されない設定にしてます。
ちなみに、主人公には絶対に適用されません。

あと、こんな強設定ですが切嗣の(他のキャラもですが)無双する展開は今のところ控えめにしようと考えてます。(作者的に苦しんでやっと敵に勝利ってパターンの方が好みなんで)

というわけで、いつも通りのご都合主義な設定ですが、どうかご了承くださいませm(_ _)m



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其之二十 (過去編) 2wei!。

「私たちの勝利だ」

 

「ぐっ、この……」

 

 夥しい数の悪魔達に押さえつけられ、身動きが取れない。

 そして四重加速(スクエアアクセル)は消え、二重加速(ダブルアクセル)にまで減少している。

 

 このままじゃ本当にマズイ!!

 

「さぁ、遂に長すぎた太陽の支配に終止符を打つ時……!!」

 

 そして、側近の悪魔より運ばれた宝石「ねむり姫」を兵器にセットする。

 

「さぁ、ねむり姫よ、その力を以て太陽を葬り去るのだ」

 

 ルシフェルが兵器の操作をし始める。

 すると、蒸気が吹き出し点滅をし始め、遂に太陽を破壊する光線を放つ準備が整ってしまった。

 

「ふふふ、準備は整った!さぁ、確と見るがいい。太陽の最後を」

 

 自らの勝ちを確信し、高笑いを上げるルシフェル。

 そして、勢いよく発射ボタンを押す。

 

 ——しかし

 

「……なんだ、一向に発射されない?」

 

 そう、発射ボタンを押しても反応が無い。

 

「——ッッな、何故だ!?こんなことが……いやまさか、この娘の膨大な生命エネルギーが許容範囲を超え、バグを!?」

 

「……様子を見るに、まだ、終わってはいないみたいだ」

 

 異常事態が起き、切嗣を押さえつけている悪魔達も狼狽えているのか力も弱まっている。

 

 ——仕掛けるなら今だ!

 

「はああああ!!」

 

「「「!!!???」」」

 

 身体中の気を四方に放出させ、悪魔達を吹き飛ばす。

 全力で兵器に備えてある扉に掛けて行き、イリヤを救出する為に扉を勢いよく引きちぎる。

 

 そして、中にいるイリヤを取り戻そうと、手を伸ばした瞬間——爆発が起きた——

 

「うおおおおおあああ!!!」

 

 兵器の近くにいたルシフェルは爆発が直撃し大きく吹き飛ばされる。

 

「——ぐッッ、イリヤァアア!!!」

 

 無論切嗣も爆発に巻き込まれるが、娘だけは守ろうと彼女の身体を抱き抱え吹き飛ばされる。

 

 そして爆発により辺り一面が煙に覆われた。

 

 —

 ——

 ———

 

 そうして煙が晴れた頃、爆発の直撃により僅かの間飛ばされた切嗣の意識が戻る。

 

 直ぐに慌てて、抱き抱えていた娘の安否を確認する。

 腕の中の二人とも脈は動いており、気を失っているだけだ。

 

 そう、〝二人〟とも

 

「……な!?」

 

 イリヤに姿形はそっくりだが、肌の色が綺麗な小麦色の少女がいた。

 

 そして、何やら焦点の合わない目で呟いている。

 

『こ……の身体……、……だい、、うちゅ………該当』

 

『い……すと、、、る………ロエ、、、ツベル……』

 

 そして、ぶつん、と機会が停止したかのように少女の瞳が閉じ、身体から力が抜ける。

 

「な、なんなんだ……このイリヤに似た子は……?」

 

「い、イリヤちゃんが二人!?」

 

「——ッ!アイリ!よかった無事だったか!」

 

「えぇ、バリアを張っていたから爆発の被害は免れたみたい……それにしても、その子は……?」

 

「いや、僕にも何が何だが」

 

 そう二人が話している内に、飛ばされたルシフェルが、遅れてズズっと、地面を這って戻ってくる。

 

(あのもう一人の少女……もしや———————彼女の生命エネルギーが半分に————いや、なら—————————

 ———————————)

 

 数瞬、考えるように頭を振り、

 

(仕方あるまい……アレが起きる前に記憶を弄らねば下手に命を絶たれても困るからな……この致命傷の身体でどこまで出来るか分からんが、記憶を弄らせてもらう。そして……封印を)

 

 そう、ルシフェルは思考し切嗣の腕の中に収まっている褐色の肌の少女に掌を向け、

 

(…………ッッ!、ぐっ、持てる力を、尽くして…取り敢えずは最低限、はできたか……加減を間違え、隣の銀髪の、少女…にもかか、ったが、まぁよかろ、う。

 ふは、は、願わくば……次に、三度目に遣わされる刺客で、この……我ら悪魔の悲願が達成することを……)

 

 そうして、ルシフェルは力を使い果たし気を失った。

 

 

「……はぁ、全く面倒なことになった。まさかルシフェル様が居ながらこんなことになるとは」

 

 ぬっ、と岩陰から姿を現わす一人の青年。

 

 見かけは真っ黒な髪と服、ツリ目気味な真っ赤な目と高圧的な印象を与えがちだが、その纏っている、どよんとした雰囲気に相殺されている。

 額にはツノ、閉じた口からは鋭利な八重歯が飛び出ている。

 

「ダーブラ様に念の為の保険として便利役のオレが遣わされたんだけど、はぁ……おっかない場所に送り込まれたもんだ。隠れて見守っていて正解だったな。

 戦闘力皆無なオレからしたらマジで死ぬかと思ったわ……」

 

 給料の割に合わんぞ、と心底うんざりといった風に呟く。

 こうなったら報告書の内容を盛ってやって、給料上げる為にダーブラ様に直談判してやるんだ……と半ばヤケクソ気味に吐き捨てる青年。

 

「はぁ、仕方ない。これも仕事か……。取り敢えず、そこらの転がってる奴でルシフェル様の死体を偽装して……

 兵器は爆風充満してる間に転送したから、後は虫の息のこの人だけか」

 

 そうしてルシフェルに近づく青年

 

「それにしても全滅するとは……結構前に地球に調査しに来た時は、あんな化け物みたいな奴ら居なかったのに」

 

 一体なにがあったのやら、という台詞を残し、ルシフェルと共にその場から消え去った。

 

 —

 ——

 ———

 

 ——暗黒魔界

 

「ダーブラ様、戻りました」

 

 がちゃ、と扉の開く音が王の部屋に響く。

 

「ん、あぁ、オセか。仕事は終わったのか?」

 

 机の上に山のように積まれた書類に目を通しながら、オセと呼ばれた青年に話を振る魔界の王。

 

「あー、まぁ終わったといえば終わったんですが。……ある意味終わったのは間違いないよな」

 

 煮え切らない態度で話す青年に、何かあったのかと訝しむ王。

 

「なんだ……?やけに渋るな、はっきりと言え」

 

 目線を彷徨わせ落ち着かない態度だった青年は、目の前の王の言葉に腹をくくることにした。

 

ま、まぁオレが悪いわけじゃないし、うん、オレ自分の仕事はちゃんとやったから、むしろやることやってるし

 

「……いいから早よ言わんかい」

 

 小声でなにやら呟いてるのに痺れを切らし催促する王。

 まだ仕事残ってんだから早よ報告しろや、と目に威圧感を持たせてジーッと睨む。

 

「——うっ、……えっ、えっ〜〜とですね、単刀直入に申しますと……ルシフェル様以外全滅しました」

 

「」

 

「あっ、勿論兵器の転送はしっかりとしましたよ!

 自分の仕事はきっちりこなしたんで!!」

 

 眉間に手を当てて、ふーーーっ、と長めの息を吐く王。

 その顔をチラッと伺うと、また面倒なことになったとでも考えているのであろうか、疲れを感じさせる表情をしている。

 

「……2回目だぞ。この案件2回目なんだぞ……。

 また地球に送りこむ奴雇わなならんのか……」

 

 また仕事が増えるのか……と我が国のトップが憂いているのを気まずそうにする青年。

 

「は、はは、いやぁ。……で、ですけど前に調査に行った時と比べ物にもならないくらい地球人の戦闘力上がってましたよ。

 この結果も当然のものだと私は思いました」

 

「そうか……それ程まで地球人が力をつけていたとはな。

 ルシフェルなら大丈夫だと踏んだが……また私の読みが甘かったわけか」

 

「それでは、私はこれにて失礼します。

 詳しいことは後で報告書に纏めて提出しますので、それでは」

 

 そう言い残して、青年はやや駆け足気味に部屋を出て行く。

 

「あいつ…この空気に耐えかねて早く帰ろうと……」

 

 扉の向こうからは、「あー、疲れた……。ったく、だからこんな報告すんの嫌だったんだよな。あんな空気の中長く居てられっか。はぁ、今回の仕事はマジで色々と割に合わねぇ……。う〜〜だぁー!もういい!頑張ったからご褒美に飲むぞ!!ト◯キで富豪するぞー!!」とタガが外れたのか大声で叫びながら廊下を走るバカの声がする。

 

「あのアホめ……はぁ、しかしあいつは見立てが良く毎回送られてくる報告は給料以上の働きに相当している。

 後はあの性格さえ改善されれば言うことはないんだがな」

 

 癖のある部下の評価をしながら、またもや溜め息をつく王。

 

「しかし、地球人か。3度目の正直とでも言うべきか……やむを得まい。これ以上被害を出す訳にはいかんからな。

 次は私が出るとしよう」

 

 一人、そう決意するのだった。

 

 それから数日後。

 提出された報告書に記載されている「太陽破壊光線砲」の爆発の件の項目を読み、またしても溜め息を吐くのであった。

 

「碌なことがないな……今夜は飲むか」

 

 飲まずにやってられるか、とボヤいた後、あのアホでも誘ってトリ◯に行くか、と案外庶民じみた部分もある王様は今夜の予定を立てるのであった。

 

 —

 ——

 ———

 

——地球

 

 あの後、連絡が行っていたのか駆けつけてくれた武天老師様に仙豆を頂いて体力を回復。事情を話すも一旦家に帰ることにした。

 

 それから1日が経過し、イリヤと謎の少女が起きると奇妙な事態に。

 

「おはよーおとうさん」

 

「あぁ、おはようイリヤ。体調は大丈夫かい?」

 

「ほぇ?なんのこと?私何かしたっけ?」

 

「なにって……覚えてないのかい?」

 

 あれだけのことがあったのにどうして……と、困惑していると、横から武天老師様が深刻な面持ちで語りかける。

 

「切嗣、お前たちの会話を聞いていて何か引っかかる部分があったから、イリヤの記憶を覗いてみたんじゃが……この子は…記憶を弄られている」

 

「——ッッ!?な、それは」

 

「具体的に言うとな、軽いものでメイドのセラの名前の誤認じゃが……一番深刻なのは……」

 

「あっ!そういえばクロは!?てんにゅう?の手続きが終わったから今日からクロも一緒の幼稚園に通うんだよね!私、妹と一緒に登校するの憧れてたんだー」

 

「!?い、イリヤ? 誰のことを言ってるんだい?クロっていうのは」

 

「どうしたのおとうさん?クロはクロじゃない。私とそっくりな女の子。大切な妹だよ」

 

「……」

 

「そう——あの謎の少女のことをイリヤは双子の妹と誤認している」

 

 —

 ——

 ———

 

 それから、件の「クロ」も目を覚ましたんだが……

 

「お、おはようクロ……ちゃん?」

 

「おはよーママー……ってもう8時半じゃない!?

 折角の幼稚園初日から遅刻なんて嫌よ私!!

 もう〜〜セラったら、なんでもっと早くに起こしてくれなかったのーー!!」

 

「な、なぁクロ……?ちょっといいかい?」

 

「え、なによパパ私急いでるんだけど」

 

「——クッ!つ、冷たい反応に思わずダメージが……いや、あのね急いでる所悪いんだけど、生憎今日は幼稚園の都合が悪くて休園日になっちゃってね」

 

「えぇ!?そんな……それならそうと前日にでも連絡入れるのが筋ってもんでしょーが」ぶつぶつ

 

 勿論この少女の転入手続きなど、何一つしていないのだ。

 なにしろ、つい先ほどイリヤから聞いたばかりである。

 この状態で行ってもお互いに混乱を招くだけだろう。

 

「わ、悪いけど今日は家でゆっくりとしといてね」

 

「分かった……はぁ、折角妹と登校出来ると思ったのに」

 

「……妹?」

 

 —

 ——

 ———

 

「そう——あのクロという少女もイリヤのことを双子の妹と誤認しておる」

 

「なんでこんなややこしい事態に……」

 

「まぁ、他にはある程度読み取った限り、あのクロという少女の本名はクロロ。クロロ・フォン・アインツベルン。

 幼い頃は身体が弱かったが、最近になって容体が良くなり晴れて幼稚園に通えることになった、と記憶から読み取った」

 

「記憶の改竄……ですか」

 

「なんていうことなの……」

 

「うむ……じゃから正体や本当の名前はなんなのか……今のままじゃ、てんで分からんのぉ」

 

「はぁ……全く、一体どうしたら」

 

「だかな、切嗣、そしてアイリよ。

 彼女はお主たちを本当の父と母と認識している。

 何か彼女について分かるまででもいい……どうかクロには親として接してあげてくれんか……?」

 

 頭を下げる武天老師様に慌てて

 

「そ、そんな!どうか頭をお上げください!!」

 

「そ、そうですお爺様!」

 

 彼女が何者かは分からない。

 唐突に現れたイリヤと酷似した少女で、僕のことを父親のようにパパと呼ぶ……パパ、か。ふむ、悪くない響きだ。

 そして何故か彼女には父性が刺激される……不思議なことに。まるで父親として接するのが自然かのような、そんな心地よさが感じられる。

 本当に不思議な少女だな。

 

 まぁ、とにかく彼女の処遇については、家族として接する、というもので問題ないだろう。

 様子見として暫くは僕も家に居なきゃいけなくなるが。

 

「……警戒を解くことは出来ませんが、それでも彼女には出来るだけ娘として接するようにします」

 

「えぇ、私も。我が子として接するわ。

 ……不思議なんだけどね、何故か、クロちゃんを見てると母性が刺激されるというか、イリヤちゃんと同じくらい愛おしく思うのよね」

 

「アイリもかい……?」

 

「え、あなたも?」

 

 同じ感覚を夫婦同士で抱き困惑しながらお互いを見やる。

 

「まぁ、これなら心配なさそうじゃの」

 

 それから、クロとの生活が始まった。

 メイドたちには都合を合わせるように言い、当初は怪しまれたが、クロと触れ合う内に段々と慣れていったようだ。

 

 

 そうして、クロと出会ってから6年の歳月が流れる。

 当初は警戒していたが、もう今では僕もアイリも一人の娘として愛情を注ぐ対象となっている。

 

 そしてある日、例の少年がやって来た訳だ。

 彼は度々別荘に訪れてクロとなにやら仲良くしていた。

 それからの行動は早かった。大切な娘のことだからね。

 彼が天下一武道会に出るということで、僕もエントリーして決勝戦でぶつかることに。

 

 まぁ、その前にやたらに強いダーブラとかいう奴が現れて、殺し合いになり勝ったのはいいが、殆どの力を出し尽くしてしまっていてね。

 ロコン君との勝負は正直辛かった。

 

 そして、彼は僕に向かってクロのことを諦めない旨をぶつけてきた。

 それからの彼の勢いは凄まじく、幾ら叩いても立ち上がってくる並ではないタフさだった。

 しかも、三倍まで使ってきたからね。

 見たところ、かなり無理していたようだが。

 

 それから僕も応戦したが、最終的には相打ちのような形になり、辛うじて僕の勝利となる。

 

 そこで僕は思った。彼なら、どんなに叩いても諦めず、必死に食らいつく闘志を宿した強かな彼ならば、娘を……まだ分かっていない謎を抱える彼女を支えてあげれるんじゃないか、と。

 

 —

 ——

 ———

 

「——ッ!……なんだ、長い夢を見ていたようだ」

 

 腕を動かすと、じゃら、と拘束具の音が鳴る。

 そうか、今もまだ僕の気を吸い取っている訳だ。

 睡眠で回復出来た気も吸い取られていてるので、どうしようもない。

 

「まぁ、あのエセ神父なら、性格はあれだが上手くやるだろう」

 

 だから、大丈夫。

 きっと助けは来る。

 彼に拘束具さえ外して貰いさえすれば、僕は命を賭して戦うことが出来る。

 

 男は希望を胸に再びねむりに就いた。




これにて過去編は終了です!長かったー!
お付き合い頂いた皆様ありがとうございました!!

それでは、またしても設定解説です⬇︎

この作品のダーブラ様の戦闘力は下げてます。
 原作じゃバビディに潜在能力を限界以上に引き出され、セル以上の戦闘力を誇っているのですが、この作品では某ウルクの王様の如く魔界の仕事に追われ過ぎて修行する暇が無く、潜在能力は凄いけどあまり戦闘力は無いって感じになってます。

 ですんで、素の戦闘力120万ちょっとくらいってことになってます。
 切嗣は戦闘力40万くらいですが四重加速(スクエアアクセル)を使い、めちゃくちゃ頑張って倒しました。



鳥◯族いいですよね。作者は大好きです。
なんせダーブラ様達筆頭に多くの悪魔の支持を得ている訳ですから。えぇ。

ちなみにこの店にまつわる小ネタですが、ダーブラ様がまだ王ではなかった時、下積みの時によく先輩に奢ってもらってたそうな……。そういう思い出とか、愛着とか、舌が店の味を求めているとかそんな理由で、今でも常連さんでよく訪れてるそうです。

それと鳥貴◯は魔界での歴史が長く、コスパの良さから学生、社会人と幅広い層に人気のあるチェーン店。
魔界では一駅に一店あるのが常識なくらいで、よく繁盛してるんだとか。

と、自分のやりたい放題書いてたらこの作品の魔界のイメージがこんなことにwww原作崩壊がすぎるwww
めちゃくちゃ親近感湧くようになってしまったww
まぁ、取り敢えず魔界の設定はこんな感じで行くんでよろしくです。苦手な方はブラウザバック推奨します。

癖のある部下を苦労しながらも従え、部下からの信頼も厚い仕事人間のダーブラ様。
愛着わいてしまった。なんとか復活させてあげたいなぁ。


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☆◯其之二十一 爆発。

過去編が終わり遂に時が現代に!

久しぶりなんで簡単なあらすじをば。

天下一武道会での界王拳使用により、瀕死状態に陥ってしまった主人公。
無事病院に運ばれたのだが……なんと執刀するのは謎の神父言峰綺礼。

そして手術より1日が経過し、すっかり身体は完治。
だが何故か激辛麻婆を食べることになってしまう(!?)

無事完食し安心したのも束の間、言峰がなにやら話があるという。

一体……?


「喜べ少年、これで君は2日分のカロリーを摂取したことになる」

 

(——ッ!!サイヤ人でよかった……)

 

 あの後、なんとか麻婆を完食するも汗だくだった為、元の服に着替えることに。

 そして今、言峰さんと向き合っている。

 

「——さて、では本題に入る」

 

「本題?さっきのが本題では……」

 

「それもあるが……まぁ、頼まれたのでな」

 

「……?」

 

「今起こっている状況を教える。それからは君の好きなように行動するといい」

 

 —

 ——

 ———

 

「……マジか」

 

 クロと切嗣さんが攫われた。んで、放っておくと、クロの妹まで危ないと……。てかなんでそれ先に言わないんですかねこの神父は……。

 

「なんでこう次から次へと……」

 

「イベントに巻き込まれる……それが主人公の性だ。諦める他あるまい」

 

「——あっ俺主人公か。最近出番無かったから自覚が……って、いやマジでふざけてる場合じゃない。急がねば」

 

「行くのか?」

 

「勿論です」

 

 正直病み上がりだからゆっくりしたいんだけれど……まぁ、友達が危ない目に遭ってるし、なりふり構ってられない。

 

「なら、これも持っていくといい」

 

「……これは?」

 

 なにやら、湿布?的なもん渡されたけど。

 

「効能のある薬草を塗った湿布だ。軽い傷ならば比較的早く治る」

 

「ほぇー……すごい。ありがとうございます」

 

「そして先程の食べっぷりに免じてご褒美だ。この豆をやろう」

 

「——ッッ!?」

 

 せ、せせせせせせせ仙豆!!!???だよな間違いないよなこんな場面で普通のそら豆渡す訳ないし。うわぁヤバDBファンとしてテンション上がる!!

 

「な、なんでしょうかこの豆は……?」

 

 と、いっても不自然にならないよう、知らない体を装い尋ねる。

 

「これは仙豆といってな、それはそれは有難い豆で、一粒食べると傷が瞬時に回復するくらいだ。ある仙猫様が栽培している豆で稀に頂くことがあるのだよ」

 

「え、じゃあ、もしかして俺の治療の際にも?」

 

「いや、君の治療には使ってはいない。なにしろ、尻尾を生やした人間の身体がどうなっているか見たかったからな」

 

「そっすか……」

 

「まぁ、その仙猫様が作った薬草を最後には使ったがね……でなければあれ程の重症が1日で完治する訳もあるまい」

 

「な、なるほど……じゃあ有り難く頂いていきます」

 

 巾着袋に入った仙豆を受け取り、改めて服装を正す。

 

「では、私は精々君の健闘を祈っているとしよう」

 

「色々とありがとうございました。では行ってきます」

 

 窓を開け、舞空術で空へと進む。

 

 え〜〜〜っと、確か西の方角の……魔神城?

 いや、こんな時こそ瞬間移動だな。よし……クロの気を探って……!これか、見つけた。

 

 —

 ——

 ———

 

 クロside

 

 

 

 手に手錠を掛けられ、目の前の紳士服を着込んだ男、ルシフェルと対話していた。

 

「さて、では君に質問だ」

 

 クロ達を攫った元凶である目の前の男、ルシフェルはそう問う。

 

「君の姉妹であるイリヤスフィールは今、何処にいるのかな?」

 

「……私の妹に何をするつもり?」

 

 目を細め、若干語気を荒げながら問う。

 

「ふん——なに、我らの野望に協力してもらうだけさ」

 

「……?」

 

 一体なにを?と、その表情に疑問を隠さず問う。

 

「この世に私たち悪魔の理想の世界を築く野望のね」

 

「へぇ、そう。碌なものじゃなさそうね」

 

 目の前の男に物怖じせず、そう悪態を吐く。

 

「いやいやとんでもない!君たち人間には少し厳しい環境かもしれないが、この世が暗黒と極寒の世界に包み込まれるのだ!ふっふ。これを望まずにはいられまい!!」

 

「──とんだ迷惑な話ね」

 

 感情的に叫ぶルシフェルに対して、嫌悪感を露わに応えるクロ。

 

「そして……我らが野望を果たす為には、君の妹のイリヤスフィールが必要不可欠なのだよ」

 

「……そう、それで私に居場所を吐き出させようってわけ」

 

「理解が早くて助かる」

 

「言っておくけど、私は妹のことは絶対に売らない。あの子の笑顔が侵されるくらいなら、死んだ方がマシ」

 

 決意の篭った瞳で目の前の男にはっきりと宣言する。

 

「ふふ……そうか。なるほど」

 

 そう言ったきり、俯きだした。

 小刻みに体は震えており

 

「……っハハッ」

 

「!?」

 

 我慢出来ず、といったように笑みが漏れる。

 

「なるほど、これはまた……私好みの展開と言える」

 

 そう言い、口の端を大きく歪め本性を現したかのような、正に悪魔たちを率いる棟梁に相応しき凶悪な笑みを浮かべる。

 

「では、口を割るまで」

 

 その手に鞭を出現させ

 

「少々、楽しませてもらおう」

 

「——ッッ」

 

 —

 ——

 ———

 

 鞭で身体を打ち付ける尋問が始まり、10分ほどの時が経過する頃

 

「……はぁ、はぁ」

 

「いやはや君も中々意志が強いねぇ」

 

「はっ……言ったでしょ、妹を売るくらいなら……死んだ方がマシって」

 

「そうかそうか……では少し強めに」

 

 ブォン、と激しくしなる音とともに、クロの小さな身体に鞭が打ち付けられる。

 

「——ッッ、痛……」

 

 先程よりも激しく打ち付けられたことに対し思わず目尻に涙が浮かぶが、なんとか堪える。

 

 その光景を見て、頰に少し赤みが差しながら男は、この状況を楽しんでいた。

 

「ふ、……ハッハ!楽しい!楽しいなぁ!痛めつけるのは最高の娯楽だよ!あぁ……楽しい……」

 

「こ、こいつ……うっ!」

 

「さてさて!!盛り上がってきた!!」

 

「いっ……!!」

 

「ふふ、その顔だ。その苦痛に歪んだ顔が良い……っ!」

 

 恍惚とした表情でそう言う男。

 

「うぅ……、くっ、こんの……変態!!」

 

 それに負けじと、勢いよく相手に噛み付くがごとく吠えるクロ。

 

「ふふ、──っ!」

 

 バチィッ!と、小さい少女の身体に勢いよく鞭を打つけるルシフェル。

 その手にしている鞭が若干赤い色で染まっている。

 

 少女の身体はいたる所に擦り傷等の怪我をしており、痛々しい見た目となっている。

 

「いい身体になった。が、まだまだ終わらんよ……はは!」

 

 ビシッビシッと、鞭を叩くスピードが早まる。

 

「——っふ、い、痛……い、う」

 

 少女は限界なのか涙を零し、だがそれでも唇を噛んで嗚咽を零さないよう堪える。

 

「はぁあああ……っ!良いよ!」

 

 それからヒートアップしたのか勢いそのままに尋問を続けた。

 

 ─

 ──

 ───

 

 

 そして、5分もの時間が過ぎ。

 流石に限界なのか、泣き腫らした目元、ハイライトが消えかかった瞳と、ぐったりした表情を見せる。

 

「ふむ、反応が薄くなってしまったな……どうするか……っと、ならば」

 

 男はそう言うと鞭を足元に置き、掌に剣を出現させる。

 

「腕を切り落とすか。コレは死んでいなければいいのだし、少し手荒な真似くらい大丈夫だろう」

 

「——っ、な」

 

 男の異常な言動を聞いて動揺を隠せないクロ。

 

「どんな反応をしてくれるのかな……」

 

 じりじり、と詰め寄ってくる。

 

「い、いや、嫌……だ」

 

「いいなぁ。そういう顔が堪らない」

 

 遂に、その手を振り被り

 

「私に見せてくれ!!更に苦痛に歪んだ顔を!!」

 

「……ッッ!!」

 

 あまりの恐怖に思わず目を瞑る。

 

 

 

 

 ——が、一向に何も起きない。

 なにごと、と目を開けてみると、そこには

 

 男の振り被った剣を自らが発生させた気の剣で食い止める少年の後姿。

 

「ロ、コン……」

 

 —

 ——

 ———

 

 クロの気を探り瞬間移動で魔神城までやってきた訳だけど、いきなりクライマックスだった。

 

 瞬間移動で飛んだ地点に剣が飛んできて、すかさず気の剣を右手に作り食い止めることに。

 

「——ッマジかよ!」

 

「な、なんだ貴様!!一体どこから!?」

 

 いきなり死にかけた!怖い!物騒に過ぎる!!

 って、なんか敵っぽいのもぞろぞろ湧いてきたし。……100人くらい居るかな……。

 

 とりあえず目の前の男を蹴り飛ばして、と。

 

「はぁ……しんど」

 

 ふぅ、と一息つく。

 いきなり録でもない目に遭い参っていると、背後から掠れた声が聞こえてきた。

 なんだ、と思い振り向くとそこには——

 

「ロ、コン……」

 

「……っ」

 

 涙の跡が残る目元、弱々しく下がった目尻、力の抜けた疲れ切ったかのような表情。

 さらには、鞭で叩かれた跡のような体中についた切り傷。あまりにも弱弱しくぐったりとしているクロの状態に目を見開き息を呑む。

 

「……ごめん」

 

 なんでこうなる前に、早く助けに来てあげられなかったのか。友達が苦しんでいる時に、悠々と寝ていただけの自分に嫌気がさす。

 

 幾らしてもしきれない懺悔が頭の中を巡る。

 胸が締め付けられるように苦しくて堪らない。

 

 そんな胸中で、ふらふらと安定しない足取りでクロに近づいていく。

 

「悪い……こんな、なるまで頑張って……。俺がもっと早かったら、っ、本当に……」

 

 ごめん

 

 半ば泣きそうに、拙いながらも言葉を発しクロに歩み寄り、その掛けられた手錠を破壊する。

 

「これ傷の治りが良くなる湿布だから」と、言峰さんがくれた特製の湿布をクロに貼ると、ゆっくりとだが目に見えて身体の傷が治癒されていく。

 

 ——そして、もうこれ以上友人に危害を加えさせまいと、彼女を守るように前に立つ。

 

「……こっからは俺が頑張る」

 

「え、ちょっとずつ、き、傷が和らいでいく……痛みも少し引いてきた……?

 ——って、だ、駄目……逃げな、さいよ

 あんな数の悪魔達……100人以上は……居る……いくらあなたでも」

 

「大丈夫。——殲滅させるの得意だから」

 

 ただし得意なだけで好きじゃないし、あまりやらない。

 

「ま、そういう技ってだけなんだけど」

 

 ふぅ──、と息を吐き出す。

 

 この技は瞬時に高火力のエネルギーを発生させる。

 だから使うにしても溜めが必要で、その為の行程をなぞらなければならない。

 まぁ、あの師匠は簡単にくんっ、ってやったりするけど……俺は別。

 

 一旦力を抜き、心を落ち着かせ、身体の中を巡る気に意識を傾ける。

 

 そして、一つ深呼吸。

 

「…………よし、やる」

 

 腹の底に力を溜めて気合いを入れつつ、ゆっくりと右腕を上げる。

 そして、人差し指と中指を揃えて上へ突き上げる。

 

 この時、決して注意力が削がれるような、ましてや寿司を握る戦闘民族の板前店主など想像してはならない。

 イメージするのは只々────

 

 力

 

 脳裏に将来頭皮が残念になるであろう某師匠を一瞬浮かべつつ。

 

 力を放出する。

 

 ズァオッッ、と前方に大爆発を起こし、襲いかかってきた悪魔達を吹き飛ばす。

 

 ナッパ(師匠)から教わった(弟子なんだから師匠の技を使えるようにと半ば無理矢理叩き込まれた)ジャイアントストームという広範囲技。所謂、クンッ。

 

 これに至っては指の角度まで正確に叩き込まれたからな。ホント見た目によらず細かいなと思いながらひたすら練習させられた思い出だけど。まぁ、そんな訳で限りなく完璧に出来るようになった師匠直伝のお墨付きの技。

 

 

「き、貴様……!?よくも私の部下を……!!」

 

「……あんたらが仕掛けてきたんだ。とやかく言われる筋合いない」

 

 温度のない瞳で相手を見据え、そう応える。

 

 そして、射殺すように目つきを改め、向き直る。

 

「あんたがルシフェル……だよな?」

 

「……如何にも。私こそがこの悪魔達率いる棟梁、ルシフェルだが」

 

「そうか……。あんたが元凶か。

 ——クロを攫って……その足元の鞭で怪我させたのはあんたか」

 

「あぁ……如何にも。楽しませてもらったさ。ソレの痛みに耐える声、呻く声……堪らなかったとも……」

 

「——っ」

 

 その青白い肌を紅潮させ、うっとりとした表情で自らの身体を抱きしめる。興奮抑えきらぬその様子で

 

「私はね、嬲り痛めつけることを好む性質でね……。じっくり……鞭で痛めつけて。堪能させて貰った。

 ……妹の居場所さえ吐けば止めると言ったというのに、全くなんて妹想いなことか。まぁそのお陰で私は楽しめたんだがね。

 しかし、趣向を変えようとした所で君が現れて台無しになった。

 コレは重要なパーツだから困るんだ。まぁ、だが生きていさえいればいいから、手足をもぎ、抵抗できないようにしようとしたのに……。

 君の余計な介入の所為だよ……」

 

「────、っ」

 

 ——コイツは……生かしておいたら不味い。クロが危険に晒されるし、なにより邪悪だ。

 それに、もうコイツは——

 

「こんな物騒な世界に来て……闘いに身を置くことになっても、殺人だけは出来るだけしないよう気をつけてきたけど……」

 

 ぽつりと、半ば自分に語りかけるようにと言葉を零していく。

 それに伴い、先程の擦り傷、切り傷、酷くやつれた表情で泣き腫らした跡の残る友達の顔が、フラッシュバックされ、自分の不甲斐なさ故の怒り、敵への憎悪がふつふつと、湧いてくる。

 

「自分語りとは余裕だね」

 

「——だけど、例外もあってな。

 ……俺の友達泣かせやがって……あんたは」

 

 怒気を帯び始めた僅かに震えた声が周りに響く。

 

 胸に湧き上がる怒りが収まらず、ぎりぎり、と歯を強く噛み締める音が鳴る。

 そして拳を固く握り締めて、目の前の男を射殺さんばかりに睨みつけ

 

「殺す」

 

 コイツがいる限り、クロはまた虐げられ涙を流すことになる。だから、生かしてはおけない。

 

「——俺は大切な人を害するような存在は全力を以てして排除する。

 だから——————」

 

 煮えたぎるかの如く、ふつふつと怒りが胸に込み上げてくる。血が上り、顔が林檎の如く真っ赤に染め渡る。

 友達を泣かせたアイツを絶対に許さない。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 試合でも修行でもないから、力のセーブはもうしない。

 加減抜き、正真正銘全力で目の前の敵を倒す。




——ロコン 怒り爆発!!
 
 穏やかな心を持って、激しい怒りを起こした主人公。
 ですが、戦闘力が足りてないんで超サイヤ人にはなれてません。う〜ん惜しい!
ですが、完全にぶちギレて容赦なくなっているので、通常より強いです。

挿絵のロコン君のポーズはタンバリン戦の扉絵の悟空を参考にさせて頂きました!
いやー描くのに手間取って凄い時間掛かったな……。
絵を描くのってホント難しい……。
絵が上手い人はどれだけ努力したんだろうか……ホント尊敬ですm(_ _)m


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其之二十二 激突。

其之二十で、ダーブラ様が何故地球にやってきたのかを書くのを忘れてしまっていました!
本当に申し訳ありませんm(_ _)m
真ん中のページくらいに加筆修正致しましたので、もしよければ読んで頂ければm(_ _)m


「ふふ、排除する、ねェ……。君の力は昨日目にしたが、私には及ぶまいよ。まぁ折角来たことだしサービスだ。

 どれ、かかってくるといい」

 

(あの男も使っていた赤いオーラの増強技を使う前は戦闘力1700といったところ。ふふ、さらに試合後の反応を見る限り多用出来る技ではないとみた。

 なら、戦闘力2000の私からすれば気をつけてさえいれば分がある)

 

 どれ遊んでやるとするか、と目の前の男は余裕の態度を取っている。

 構えもなにもなく、その手に杖を出現させ優雅な佇まいで構えるのみ。

 

 そんな隙だらけな相手に敵意の篭った目を向け

 

「……じゃあ、遠慮なく」

 

 瞬間移動で相手の懐に潜り込み

 

「——ッッ!?そうか!転移の使い手!!」

 

 驚愕している相手に容赦を掛けることなく、がら空きになっている腹部を目掛け、今の全力で拳をめり込ませる。

 

「——ッハが……く、なん……だと」

 

 これ程の力が、と驚きを露わにする。

 吐き出した息からは血が混じっており、ダメージの入りの深さが伺える。

 

 そんな相手へ向け、ぽつりと呟く。

 

「……俺たち種族は傷ついて復活する度強くなれる。

 現に昨日死にかけて無事回復したから、今はあんたより俺のが強いよ」

 

「な、貴様もしや人間では……!?」

 

 そんな相手の言葉を流し、そして、と続けざまに

 

「取り敢えず……この一発が切嗣さんの分」

 

 力とスピードを出来る限り乗せた全力の蹴りで相手を直線上に吹き飛ばす。

 

「……!!」

 

 間髪を入れずに、次の攻撃の態勢に入るため腰を落とし構える。

 

「そしてこれが……」

 

 腰に構えた掌に今出せる気を最大限に貯め

 

「クロを泣かせた分……!!」

 

 全開のかめはめ波を叩き込む。

 

「ぐっ、う、あおおおおおおお!!!!」

 

 かめはめ波の直撃により更に勢いを増して吹き飛び、後ろの壁に激突し、地面に墜落する。

 

(ば、バカな……明らかに昨日のレベルを超えているだと!?まだあの増強技は使っていない筈……だというのに私が!このような小僧に醜態を……!!)

 

「こ、こんのガキめがああああ!!!」

 

 認めるものかと叫びながら、顔つきを険しいものへと変え、勢いよく此方に飛び掛かってくる。

 

 しかしその途中、ドーナツ状の輪に身体を拘束され動きが止まる。

 

「なっ!?昨日の!!」

 

「……これが」

 

 空中で停止している相手の上空へと移動し、急降下する。その勢いのまま、斜めへと傾けた体勢で両手を組み合わせ、全力で相手の頭部へと振りかぶる。

 

「クロが受けた痛みの分……!!」

 

「——ッッ、う、ぐがあああっ!!」

 

 凄まじい勢いで急降下していく相手。

 それだけでは終わらせまいと、その落下地点に先回りし、

 追撃の準備に入る。

 

 これで最後だと、右手を掲げ技の態勢に入る。

 

「サタデー……」

 

 掌に雷撃の如く迸る赤い気弾を練り上げる。

 弟の愛用している技の一つであるこの技。

 

 威力は充分にある。

 が、なによりこの纏っている雷撃のようなスパークが相手に更なる衝撃を与えることが出来、二重のダメージを与えることが出来る。

 

 その掌に練り上げた禍々しく輝く光球を、勢いよく上空の敵に向かい振りかぶる。

 

「クラッシュ!!」

 

 ズォッ!という轟音を響かせ、相手に直撃する。

 直後、バチバチィッッ!と、感電したかのような音が響き渡る。

 

 暫くすると、ふらふらと力が抜けたかのように落下してくる相手。

 先程の攻撃の影響か、纏っていた紳士服は焼け焦げ、中の火傷した肌が露わになっている。

 

 流石にもう動けまい、と相手を見やると、身体を震わせ痙攣を起こしながらもゆっくりと立ち上がってくる。

 

「ふ、ふふ、よもやこれほどまでやるとは……」

 

「まだ立ち上がれるか……しぶといな」

 

「……仕方ない、癪ではあるが、奥の手を使わざるを得まい、か」

 

「……?」

 

 そう言うと、右の掌に宝石が出現する。

 それはクリスタルのように透き通っていて美しく。

 そして、左の掌にはスイッチが。

 何か企んでいる様子で、直感的にそのスイッチを押されてはマズイと思い、攻撃に移るも少し遅かった。

 

「ふふ、ふ、これぞ太陽を滅ぼす為の我らが切り札」

 

 ルシフェルがそのスイッチを押した途端、ゴゴゴゴ、と重音が響く。

 すると、後方にある壁を勢いよく突き壊し巨大な兵器が姿を現わす。

 

 ルシフェルの盾になるかの如くそれは、両者の直線上に滑り込む。

 

「そして、これがねむり姫の力!」

 

 現れた巨大な兵器に宝石をセットし、目の前の男の様子が一変する。

 

「な、急に気が上がった……!?」

 

「ふふふ、この兵器には「ねむり姫」の力を自らに付与する機能が搭載されている。まぁ、使用者により限度があるがね」

 

 得意げな表情で語るルシフェルの思わぬパワーアップに舌打ちする。

 なにより厄介なのは、先程与えたダメージも傷も回復していっているのが目に見えて分かる。

 

「さらに治癒能力もついってるって訳か……とんだチートだ」

 

「ふふ、ご明察。君から受けたダメージは回復された……ではこちらの番といこうか」

 

「——ッ、はや、っあが!!」

 

 言い切る前に相手の攻撃により地面に叩きつけられる。

 肺の中の空気が吐き出され、思わず怯んでしまう。

 

 その隙を見逃す筈もなく、攻撃の手は緩められない。

 

「そらそらそら!まだまだぁア!!」

 

 襟首を掴み上げられ、空中に放り投げられる。

 すると、さっきのお返しとばかりに

 

「ブラッディフレイム!」

 

 その掌に作られた赤黒い光球を上空の少年を目掛け放つ。

 

「——ッッぐ、あああああ!?」

 

 見事直撃し、ダメージをモロに受けてしまう。

 

 くっそ、あまりの勢いにやられっ放しだ。

 しかし現に相手は大幅に力を上げている。

 今のままじゃ抵抗すら厳しいだろう。

 

 何かないか、と急いで頭を巡らせていると、ふと言峰さんから頂いたものを思い出す。

 

 ……そうか、脳筋な考えかもしれないけど……今はこれしかない。

 

 そうと決まれば行動だ。

 

 袋を開き、仙豆を半分齧り口の中に含む。

 もう半分は袋に直しておく。

 

 奴が戦闘力を上げたのなら、こちらも同じことをするしかない——

 

「ふぁい、ほぉう……へん二ばい!!」

 

 心の中で言えばいいものを、つい癖で技名を口ずさんでしまったので、口の中の仙豆を噛まないよう気をつける。

 

「ッッ貴様!その技は!!」

 

 たちまち赤いオーラに身体が包まれ、戦闘力が上昇する。

 だが、身の丈に合わない技の行使により、身体が悲鳴を上げ始める。

 

 相変わらず全然なれない。身体の節々が痛みに苛まれ苦しい。

 

 だけど今はやるしかない。

 

「……ッッ!!」

 

「ぬっ、ぐぅうう!!」

 

 勢いそのままに相手へと接近し、攻撃を仕掛ける。

 が、相手もそれに応じて対処してくる。

 

 多分、今の俺と奴の戦闘力はほぼ互角。

 じゃあ、技量の差が勝利に繋がる、ってところか。

 

 そうして両者互角の攻防を繰り広げた訳だが、先に界王拳の反動で俺の体力が大きく減衰し、劣勢へと陥っていた。

 

「無理もあるまい、貴様にはまだその技は早すぎたのだ。二倍ですら、重症に繋がり病院送りにされたのだからなァ!!」

 

 これで沈め!と顔面に右ストレートを入れようと振りかぶる。

 

 勢いよく突き出された拳は少年の顔へと進み、ルシフェルは内心勝ちを確信する。

 

「ここまでよくやったと褒めてやろう!終わりだぁ!」

 

 その瞬間カリッという咀嚼音が響く。

 すると、突き出された拳を少年の手が掴み上げる。

 更にそのまま腕を引き寄せて相手の体勢を崩し、お返しに顔面へと拳を叩き込む。

 

「貴様……何故回復を!?」

 

「まぁ、ちょっとね」

 

 お気づきかもしれないが、タネは簡単で口に含んでいた仙豆を食べたのである。

 

 今の俺なら二倍の界王拳でさえ身体がぶっ壊れてしまい、長期戦が不利なのだ。

 なら、身体が壊れる度に直すしか方法は無い。

 

 正直心身ともにしんど過ぎるから、出来ればやりたくないんだけど……なりふり構ってられない。

 

「さて、見た所あんたはそれ以上にパワーアップは図れないとみた。そして動きも大体見慣れてきた。だから……」

 

 次で最後にする!

 

「2.……5倍ぃい゛い゛!!」

 

「ッッ!ま、マズイ!」

 

 速攻で終わらせる!!

 

 瞬間移動で相手の背後に移動してから畳み掛ける。

 すかさず相手も応酬するも、俺の方が優勢。

 出来る限りの攻撃で速攻の攻撃を仕掛けていく。

 

「ハァッ、ハァッ」

 

「は、あぁ、くっ」

 

 が、相手は例の兵器のバックアップにより、幾ら叩いても倒れない。

 

「ふふ、ふ……貴様の攻撃は確かに凄まじい……が、幾ら強くてもねむり姫の恩恵により私へのダメージは回復する。このままではジリ貧だと気づかんのかね?」

 

 確かにそうだろう。

 幾ら強い力を持っていたとしても、回復する相手に考えなしに突っ込んで勝てる訳もない。

 

「だろうね……だから、そのねむり姫には消えてもらう」

 

「なに?」

 

「2倍で戦ってる時はお互い実力が拮抗していて他のことまでしてる余裕なんか無かったけど、2.5倍なら話が違う。

 あんたとやり合ってる間に、例の兵器の所に気弾を仕込んでおいた」

 

 そう、いつでも起爆出来るように裏で設置しておいたのだ。

 後は、爆発の影響がクロに及ばないように安全な場所へ移動すればいいだけだ。

 

「ねむり姫さえ無ければ、あんたの状態は解除される。

 だから——この勝負、俺の勝ち」

 

 そう言い放った後、2.5倍で傷ついた身体の状態を戻す為に残りの仙豆を袋から取り出し咀嚼する。

 気弾の設置に思ったより時間が掛かり、身体への負荷が予想以上に掛かった為、仕方がない。

 

 さて——

 

 勝つ為の布石を打った。2.5倍の戦闘力は相手を上回っていて充分。そして残り半分の仙豆を食べて身体もマシな状態にまで回復した。

 自分の打てる手札を使い切り、ここまで勝つ為の算段は整えた。

 

 あとはクロを安全な場所に移動させるだけだと行動に移そうとした時——目の前の男が突然笑い声を上げ出した。

 

「ふっふっふ、そうだな。確かにそうだ。

 ねむり姫を破壊でもされたら私に勝ち目が無い」

 

 発言の内容の割には、目の前の男は涼しげな顔をしている。

 まだなにか企んでいるのかと思い、こちらも気を緩めずに相手の発言を待つ。

 

「だが、ねむり姫が破壊されるなど……起こりはしない」

 

「……言っとくけど、宝石の一つや二つ、やろうと思えば幾らでも」

 

「そうじゃない。そうじゃないんだよなぁ……」

 

 くっくっくっ、と笑いを押し殺しながら、続く言葉を発する。

 

「確かに貴様の力ならば、ねむり姫を破壊することは容易いだろう。

 ——だがそれでも、貴様が貴様である限り、私が行ったことへの憤りを感じた貴様である限り、なによりこの場へと赴き、私と対峙している貴様である限り、ねむり姫は破壊されることは無い」

 

「……」

 

 要領を得ない相手の言葉にどういうことか、と混乱する。

 この場でハッタリをかましているのかと思ったが、様子を見る限りそれは無さそうだ。

 

 ならば一体、他に切れる手札でもあるのか、と訝しむ。

 

「まぁいいだろう……教えてやろう。勿体ぶって貴様がねむり姫を破壊でもしたら、私の身は危ないのだからな」

 

 それはこの状況を覆せるくらいの情報なのだろうか?

 その内容がどのようなものでも、自分は目の前の敵を倒す為ならば行動に移せるだろうが、と考えていたのだが

 

「貴様の壊そうとしているねむり姫だが、その正体は……貴様の今戦っている理由でもある——」

 

「……は?」

 

 いや、まさかそんな……あり得ないだろ。

 きっと俺が想像した答えは違う。

 もしそうならば、本当にもう手出しが出来なくなるのだから。

 

「お友達なのだよ」

 

 その発言は、俺の勝ち筋を潰すには充分すぎる内容だった。





ロコン戦闘力1700(天下一武道会時点)
 格上の相手との闘い。
 界王拳二倍で身体が悲鳴あげるレベルなのに、無理して三倍まで使い体中ガタガタになる。
 ⬇︎
 ほぼ瀕死状態から言峰の治療で回復
 ⬇︎
 戦闘力2600に上昇(現時点)

って感じの変化です。

 ちなみに小ネタですが、原作のラディッツが上空の悟空に放った技がサタデークラッシュでして、今回主人公も同じタイミングで使用しました。
 やっぱり兄弟だなぁって思わせるシーンが欲しかったので、この技の採用となりました。あと単純に格好良い技なんで。


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其之二十三 独りじゃない。

そ、そんなわけ……

 

 動揺からか、掠れたような声を出す。

 

「つまり、ねむり姫を破壊すればお友達も死に、お友達が死ねばねむり姫は破壊される、ということだよ」

 

「な、何を根拠に……そんなハッタリ言っても」

 

「ほぉ……ならやってみるがいい。貴様自身の手でお友達を亡き者へとしたいならね」

 

 獰猛な笑みを浮かべ、突き放すようにハッキリと言い切る。

 

「……っ、くっそ」

 

 奴の言い分がハッタリかどうかなんて、見分けられもしない。

 それにもし本当なら……と考えてしまい軽率に動くことが出来ない。

 

 どう対処するか……と、考えを巡らせている中、背後から自分へと呼びかける友達の声が

 

「ロコンっ!! そんな奴の言うことなんて信じる必要無いわ! 私は……普通の女の子なんだから!」

 

 気にしないでやっちゃいなさい!! と、俺へと言葉を投げかけるクロがいた。

 

「……クロ自身そう言ってる。こんな切羽詰まった状況で嘘言う筈がないよな」

 

 だんだんと、奴が嘘を言っている可能性が自分の中で膨らむ。

 

 だが、

 

「ふふ、まぁそうだろね。アレは確かに普通の女の子だ」

 

 やけにあっさりと認める目の前の男に、逆に不信感を抱く。

 そのままジッと言葉の続きを待つ。

 

「なにせ、そう認識するようにあの日、私は記憶の改竄をしたのだから」

 

「改竄……?」

 

「そ、そんなのデタラメ……」

 

「どうあっても認めることはない、か。

 いいだろう、アレの絶望に染まる顔を見るのも一興か」

 

 いいことを思いついた、とでも言いそうな顔をしながら

 

「あの日、アレが誕生した瞬間を貴様達にも見せてやろう」

 

 男のその言葉を合図に、目の前の景色が変化する。

 

「「っっ!?」」

 

「少し君達の意識に介入させて貰う。さて……では私の記憶の一部を見せてやろう」

 

 —

 ——

 ———

 

 ——っ、これは!? 

 

 どこか色褪せた映像に、大人数の悪魔達と先程まで闘っていた男ルシフェル……そして、切嗣さんが映り込んでいる。

 

「っ!? この映像は……!?」

 

「ぱ、パパが闘ってる……」

 

 〈ふふ、驚いているようだが、ここからが見ものだ……確と見るがいい〉

 

「「ッッ!?」」

 

 頭の中にルシフェルの声が響いてくる!? 

 アイツの思い通りに動かされてるみたいで癪だけど、今は言う通りこの映像を見る他はない……。

 

 ルシフェルの言う通り黙って映像を見守ることに。

 そこには切嗣さんが悪魔達を相手に奮闘している姿が映っていた。

 

 暫く見守っているうちに、切嗣さんが膝をついたルシフェルの頭に指を構え、勝負は決したかと思われた。

 しかし、あろうことか銀髪の少女に対してルシフェルが攻撃を仕掛ける。すかさず切嗣さんは少女の盾となるように身を挺し庇う。

 

 見るからにダメージが深く入ってるようで……息も荒い。

 が、すぐさま後ろの少女を抱え離脱する。

 遂に娘を連れ戻したと表情を和らげる。

 

 しかし、守るべき対象の抱えている少女に脇腹を刺され、

 苦悶の表情を浮かべることに。

 

 ルシフェルの合図とともに、本物の少女が現れ、兵器の中へと連れて行かれる。

 

「……っ、イリヤ! イリヤが!!」

 

 妹の危機だと俺の隣にいるクロが激しく狼狽えている。

 

 

 切嗣さんはすぐさま界王拳で少女の元へと駆けるが、ここぞとばかりに悪魔たちが壁となり立ち塞がる。

 

 邪魔をする悪魔達をを相手にしているうちに、時間切れとなり、遂に少女は兵器の中へと入れられた。

 

 更には切嗣さんの身動きを封じるべく、大勢の悪魔が身体を抑えつける。

 

 完全に詰みの状態。

 為すすべはない、そう思われたが——

 

 

 

 

『……なんだ、一向に発射されない?』

 

 ルシフェルが兵器の操作をしているが、不具合でも起きているのか上手くいかない様子。

 

『——ッッな、何故だ!? こんなことが……いやまさか、この娘の膨大な生命エネルギーが許容範囲を超え、バグを!?』

 

『……様子を見るに、まだ、終わってはいないみたいだ』

 

 大勢の悪魔に押さえつけられ身動きを封じられている切嗣さんの目に一際光が灯る。

 

『はああああ!!』

 

『『『!!!???』』』

 

 気を解放し、押さえつけていた悪魔を吹き飛ばし一心不乱に兵器に取り付けられた扉へと向かい、勢いよく引きちぎる。

 

 直後、兵器から爆発が。

 

『うおおおおおあああ!!!』

 

 兵器の前に居たルシフェルは防御の姿勢もなく爆発をモロにくらい吹っ飛んでいく。

 

『——ぐッッ、イリヤァアア!!!』

 

 対して切嗣さんは扉の中の少女を内に抱えて守るよう身を丸め、吹っ飛ばされていく。

 

「イリヤ、パパ……!!」

 

 爆発に巻き込まれる家族の身を案じて、思わず叫びを上げてしまうクロ。

 

 家族想いの子だから無理もない……。

 

 そして、爆風が晴れた頃、切嗣さんの姿が——

 

 

『ッッ! イリヤ!」

 

 爆発に巻き込まれた影響で飛ばされた意識が覚醒する。

 すぐさま腕の中に抱えた娘の容体を確認する。

 

『よかった……! 脈はある、二人とも気を失っているだけか……』

 

 幸い、娘の身体に異常は無かったらしい。

 だがしかし——

 

『……2人?』

 

 そう、そこには——居るはずのない、先程まで此処に居なかった少女。

 

「え……? なんで私が……」

 

 何が起こっているか分からない、という表情で困惑しているクロ。

 

『こ……の身体……、……だい、うちゅ…………該当』

 

『い……すと、る…………ロエ、ツベル……』

 

 そう言い残し、意識が途絶えるクロらしき少女。

 

『な、なんだ……このイリヤに似た子は……?』

 

『い、イリヤちゃんが二人!?』

 

『——ッ! アイリ! よかった無事だったか!』

 

『えぇ、バリアを張っていたから爆発の被害は免れたみたい……それにしても、その子は……?』

 

『いや、僕にも何が何だが』

 

 

「……なに、言ってるの? それは私じゃない、パパ、ママ。

 なんでそんな……初めて会ったみたいな顔してるの……?」

 

 意味がわからない、と眉を曲げ困惑の表情を浮かべる。

 その顔色は心なしか暗い。

 

 〈ふふふ、いい顔だ……なぁに、初めて会ったもなにも……貴様は先程誕生したのだよ〉

 

 これから重要な場面だ、と続きを見るように促す。

 

 そこにはルシフェルが這いずって戻ってくる様子が映されている。

 そして、ルシフェルの長い独白が始まる。

 

 [あのもう一人の少女……もしや、イリヤスフィールから分かたれた存在か……? 現に彼女の生命エネルギーが半分に減少している。ということは……いや、だが、それなら心はどうなる? 分かたれた存在の褐色の少女の自我は……]

 

 [──っ!? なぜ……どういうことか……あの少女からねむり姫の気配も感じる……だと!? 

 ——くっ……まさか、ねむり姫の意識のようなモノがあの褐色の少女に入り込んだとでも言う……のか!? 

 

 実際にねむり姫を確認しなければ真相は分からんが……だが、もし、この仮説が正しいならば……。

 ねむり姫の機能はあの娘が死ねば失われる……ということになるのでは]

 

 [さらに彼女の先程の反応……恐らくは文面から察するに何処ぞの宇宙のあの身体に該当する人物の人格をコピーでもしたか? クロエ・フォン・アインツベルンと言っていたが、恐らくソイツの記憶と人格を……]

 

 [問題は奴が目覚めた時、自らのことをねむり姫と認識していて、最悪我々の目論見を砕くべく自害する可能性もあるということだ……。何分こちらとしても想定外の事態、奴がどう動くか見当もつかん ]

 

 [仕方あるまい……アレが起きる前に記憶を弄らねば下手に命を絶たれても困るからな……この致命傷の身体でどこまで出来るか分からんが、記憶を弄らせてもらう。そして……封印を]

 

 […………ッッ! 、ぐっ、持てる力を、尽くして……取り敢えずは最低限、はできたか……加減を間違え、隣の銀髪の、少女……にもかか、ったが、まぁよかろ、う。

 ふは、は、願わくば……次に、三度目に遣わされる刺客で、この……我ら悪魔の悲願が達成することを……]

 

 そこまで続くと、映像が途切れた。

 恐らくルシフェルの意識が途切れでもしたのだろう。

 そして、俺達の意識は再び現実の世界へと戻される——

 

 —

 ——

 ———

 

「あの後故郷へと帰還し、ねむり姫の状態を調べたが以前まであった生体反応のようなモノが消えていた。

 そして、そのお友達からはその反応がするときた」

 

「つまり……私の仮説は正しいということを示している」

 

「長くなったね、まぁ纏めるとだ。

 イリヤスフィールの膨大な生命エネルギーにバグを起こした「太陽破壊光線砲」が、その生命エネルギーの半分を基に作った身体がその褐色の少女。

 そして、ねむり姫の意識……自我のようなモノがその身体に入り込んだ。

 その自我が器の少女に該当する人格と記憶を何処ぞの宇宙からコピーした。

 それがクロエ・フォン・アインツベルン……という訳だ」

 

 おっと、そう言えば今はクロロ、だったかな? と此方をニヤニヤと見やるルシフェルに言葉が詰まる。

 

「そして、宝石のねむり姫と繋がった存在。

 さぁ、出来る限り丁寧に説明したが……分かってくれたかな?」

 

 貴様はねむり姫を破壊出来ないことを——

 

「……っ」

 

 奴が見せた記憶は映像は作りものだと思えない程、非常にリアルだった。

 そして説明も一応筋が通っていた。

 だけど、それならクロは本当に……なら奴に勝てる算段が……。

 いや、だけど、それでも都合の良いように作った映像を見せた可能性もある。

 まだ分からない。相手の思うようにさせるものかと、反論しようとするが——

 

「……そんなの! あの映像自体がでっちあげの可能性だってある!」

 

「ふふ、ならば、君の隣で震えているお友達を見てみるといい」

 

「……」

 

 その隣の少女は酷く暗い表情で身体を震わせ、体を丸めた弱弱しい様子となっていた。

 

「なっ……、っ、大丈夫クロ、あんなのアイツが作った偽の」

 

「残念だが、先程記憶の封印を解いておいた。ソレ自身、既に自分の正体を理解しているだろう」

 

(如何に元が数千年の宝石の自我で人間じゃないとはいえ、今日に至るまでそれこそ普通の生活をしてきたのだ。

 そのような普通の少女が自害する勇気もあるまいし、記憶の封印を解いても問題ないだろう)

 

「……ッ、くッ……」

 

「そうだ——私、私……は——」

 

 焦点の定まらない瞳で呟くクロ。

 

(永い……夢でも見ていたかのよう。

 温かで幸せな夢を。

 父、母、妹、メイド達、皆と過ごす、ごく普通な少女の夢を。

 ——だけど、もう覚めてしまった。

 あの男が私の記憶を元に戻したと言った。

 そしてあの映像で確信した。

 私は——)

 

 

 

「私は——人間じゃ……ないんだ」

 

(偽物……だったんだ)

 

「そっか……じゃあ私ホントは独りぼっち、で。

 本当の家族は居ない……天涯孤独で、ずっと……私だけ偽物のまま……あの家に住んでたんだ……」

 

 感情が消えたような瞳から涙が溢れている。

 そんな自棄になった様子で、ぽつりぽつりと呟く。

 

「ふふ、はははは!!! その顔が見たかったのだ! 

 そうとも貴様は所詮只の道具にすぎん! 

 いっぱしの道具が人格を得て人間として振る舞うなど滑稽極まる!!」

 

「──ッ、……喋んな!!!」

 

 これ以上、友達を愚弄する台詞を吐かせないよう気弾を放つ。

 距離を取る相手。今の内になんとかクロへのフォローを……!! 

 

「……っ、クロは偽物なんかじゃ……ましてや独りぼっちでもない! 俺はまだセラさんと切嗣さんのことしか見ていないけど、それでもあの人達がクロに向ける目は温かくて、本当の家族に向ける目だった! ぽっと出の俺からでも分かる程クロは愛されてるんだ! って思えるくらい!」

 

「ぅ、でも、でも私が……私が人間でも無くて……よく分からない……存在なんだって……知ったら……拒絶されるかもしれない……そんなの……」

 

 いやだよ

 

 そう、小さく震えた声を零した。

 

「……っ、どうしたら」

 

 なんて声を掛けてあげたらいい!? 

 時間も限られてる! 今するべきことはなんだ!? 

 まだ短い付き合いの俺がしてあげられること……

 くっそ! 頭がこんがらがって……

 

 俺は——ッッ!? 

 

 どうするか考えていると、向こうから気弾を放れたので、すぐさまクロを抱えて後ろに下がる。

 

「取り込み中悪いね。

 だが、私が見たかったものはもう見れた。

 充分満足したんでね、そろそろ終わりにさせてもらおう」

 

 どうする……ねむり姫がクロと繋がっていて手出し出来ない。つまり、あの常時回復する性質を打ち消す手立てが無い。

 魔人ブウと同じ要領で回復が追いつかないような高エネルギーで完全に消滅させるしかないってことになるけど……

 そんな攻撃、仮に無理して3倍、いや4倍を使ったとしても出せるか分からない。

 

 どうすれば——! 

 

「消えろ!!」

 

 巨大な気の塊を俺達に向け放ってくる相手。

 それは非常に莫大なエネルギーを宿しており、この一撃で終わらせようとしているのが分かる。

 

 気弾で相殺するべく気を練り上げようとした、その時——

 

「——ッッ!! なに!?」

 

 背後から突如飛んできた気弾に、ルシフェルの攻撃が相殺された。

 一体誰が、と後ろを振り向く。

 そこには、捕らえられている筈の、この場所に居るはずの無い男。

 

 

 

「——そうだ、クロ。君は……独りなんかじゃない」

 

「……!?」

 

 なんでこの人が此処に

 

「話は聞かせてもらった。それにロコン君、病み上がりに無茶させて本当に申し訳ない。うちの娘を守ってくれてありがとう」

 

 このお礼は一生を賭してでも必ず返すよ、と俺の方を振り向く。

 

「……捕まってる筈では」

 

 そして、男はクロの元へとゆっくり歩み寄り

 

「ぱ、パパ……、ッ、いや……違うっ、……私、は……本当の子供じゃ……っ」

 

 俯きながら嗚咽交じりに吐露する。

 そんな彼女に、暖かな、娘を前にした父親のするような表情を浮かべ、ポン……と頭に優しく手を置く。

 

「クロ、ごめんね、守ってあげられなくて。だけど〝父さん〟今度こそ……終わらせてくるから。待っていてくれるかい?」

 

「……っ!! わた、しは………………ゔ……ぅん……パパ……

 

 溢れ出る涙を拭きながら、くしゃくしゃになったその表情は——自身の父親に向けた表情は、ぎこちないながらも確かに——笑顔を浮かべていた。

 

「さて、後は任せてくれ。それが……〝父親〟としての務めだ」

 

 男は前に立ち、決意を宿した瞳で言葉を発する。

 

固有時制御・(タイムアルター・)二重加速(ダブルアクセル)

 

 そう呟くと、たちまち男の姿が消え瞬時にルシフェルの前に現れた。

 

「……どうやらあんたを倒さない限り、うちの娘は笑顔でいられないみたいだ」

 

「貴様は……!!」

 

「あんたが何回倒れても僕達家族に手を出すと言うのなら……今度こそ……完全に始末する」

 

「また私の邪魔を……!!」

 

「——覚悟は良いか」

 

「衛宮切嗣……!!!」




——最愛の娘を守る為 男は——

BGM エミヤ -Time alter- (再生ボタン ポチッ)
流れてたら熱いなぁ。。

って感じで今回のラストはプリヤの士郎(美遊のお兄ちゃんの方)に被せました!
状況もなんとなく似てますし、これ切嗣に士郎を重ねた登場させたら超熱いのでは!?と、お風呂でぼーっとしてる時に思いついたので採用の流れとなりました。

あ、それと加筆修正の報告です。
●今回のお話で、切嗣に固有時制御とどうしても言って欲しかったんです(プリヤの士郎の台詞に合わせたくて)
ですんで、以前のお話でも切嗣の界王拳を使用する際の掛け声を加筆して、「固有時制御」と付けることにしました。(切羽詰まってる時とか、状況に応じて加速度のみ言う場合もありますが)

あ、ですが内容は界王拳です。魔術とかではないので。
技名だけってことで。

●其之五のあとがきで以前は魔術の存在は無いものとする、と書いていましたが、魔界のダーブラ様とか割と色んな人が普通に使ってるのに今更ながら気づきました。
ですので魔術は存在するが、聖杯戦争等の存在は無いものとする、という設定でお願いします。
こんな初歩的なミスをしてしまい、混乱させてしまった方には申し訳ないです……m(_ _)m
 
 
●「ロコン 幼少期 2話から3話までの大まかな年表」
を一部加筆しました。
内容はサイヤ人が乗っている丸い宇宙船は、この作品では行き先を変更出来るという点です。
どうか、よろしくお願いしますm(_ _)m


それとルシフェルが弄った記憶纏めときます。(致命傷の状態での記憶の改竄なので、よく分からない部分を弄ってしまってる所もあります)
・クロ
—ねむり姫に関する記憶の封印。
—自身の名前をクロロと誤認。(本名はクロエ)
—メイドの名前をセーラと誤認(まぁ、略してセラって呼んでたんで殆ど意味ない)
—イリヤを妹と誤認

・イリヤ
—何処かの宇宙から持ってきたクロの記憶との辻褄合わせ
—クロを妹と誤認

って感じです。
まぁルシフェルはこの手の魔術は余り得意じゃないので、これくらいが限界かな、と。(それでも充分凄い)


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