このサイドエフェクトとともに生きていく (沼地の魔神王)
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本作の設定

実は一回設定だけ出したんですけど、なんかダメだったらしく一回消しました。見てくれた人は本当にすみません&ありがとうございます。


CAUTION‼︎

ここから先は最新話までのネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神田湊人(かんだみなと)

ボーダー玉狛支部所属

ポジション:スナイパー

年齢:17歳

誕生日:6月29日

身長:175㎝

血液型:A型

星座:つるぎ座

職業:高校生

好きなもの:絵を描くこと、読書、映画鑑賞

トリオン:13

攻撃:10

防御・援護:10

機動:5

技術:13

射程:14

指揮:6

特殊戦術:4

TOTAL:75

トリガー構成

メイントリガー

アイビス

イーグレット

FREETRIGGER

シールド

FREETRIGGER

サブトリガー

バッグワーム

FREETRIGGER

シールド

ビーハイブ(試作)

苦労人の凄腕狙撃手

個性派揃いの玉狛支部では珍しい常識人。かなりの貧乏くじ体質で、迅のセクハラ被害者に頭を下げに行ったり、太刀川さんのレポートを(高校生なのに)手伝わされたり、加古炒飯を一度に二皿食わされたり(普段からだいたいハズレを引く)と散々な目に遭うことも多いが、その関係か交友関係は中々に広い。面倒見も良く、彼を慕うボーダー隊員も多い。ボーダーに入る前は一般家庭で平凡な日常を送っていたが、第一次近界民侵攻で家族は彼を残して全員死亡した。入隊時期は現ボーダー設立時で東さんと同期。迅の勧誘もあり紆余曲折あって玉狛支部へと所属する。狙撃の腕は高く、彼自身の洞察眼も合わさり針の穴を通す超精密射撃も可能な狙撃変態。

もう一人の実力派エリート

サイドエフェクトの関係から迅と行動することも多く、迅からは同じ実力派エリートとして扱われている。彼自身も迅には絶大な信頼を寄せており、迅の暗躍に手を貸すことも少なくない。ただし、女性陣へのセクハラにはほとほと手を焼いている。

サイドエフェクト

物体記憶視

触れた物体の記憶を読み取るサイドエフェクト。普段は断片的に読み取る程度だが、集中すれば任意の記憶を読み取ることが可能。本人への負担が大きく、使用には細心の注意を払う必要がある。実は物体より生き物の方が記憶を読み取りやすいのは内緒。使用し過ぎると吐き気、目、鼻からの流血などの症状が現れ、最悪の場合情報量に耐えられず気絶する。強力なサイドエフェクトではあるのだが、手袋の着用が必要なことや、8時間以上の睡眠時間が必要なこと、任意発動中は完全に無防備になるなど様々な制約を受けている。ボーダーのサイドエフェクトランクとしてはSランクに該当。このサイドエフェクトを持った本人からはあまり良くは思われていない。正直に言えば出来れば使用したくないと考えているが、ボーダーのためになるならと合理的判断から使用自体に躊躇いはない。また、普段から大量のエネルギーを補給する必要があり、食事量が同年代のボーダー隊員を軽く超えるため、それを見かねた司令部からサイドエフェクトを使った調査による能力給と携帯食料を特別に支給されている。たまに飯を奢ってもらうこともある。

 

ラプラス

神田湊人が所有する自立型トリオン兵。命名は神田。主に日常生活に支障がある神田のサポートをしており、その機能は多岐に渡る。神田が近界から集めた情報を用いて開発された。

 

専用トリガー「ビーハイブ」

対多戦を想定し、神田のサイドエフェクト使用後の狙撃能力低下を補うために作られた玉狛謹製トリガー。ローブと4機の二等辺六角形からなる構成。いわゆるビット兵器。短期決戦使用の玉狛謹製トリガーには珍しく、消費トリオンは通常トリガーより高いが、べらぼうに高い訳ではない。ステルスモードによりバッグワーム同様レーダーから消えることも可能。しかし、本トリガーは操作が難し過ぎて人間ではまともに動かせないという致命的な欠陥が存在する。なので、ラプラスの機能を拡張し、本トリガーの制御ユニットとしての機能を持たせ、これを解消した。この仕様変更によって神田が戦闘中に行動不能に陥っても、ラプラスは本トリガーを武装として使用可能というメリットが生まれた。また、本トリガーの力を集約し、高出力トリオン砲をブッ放すことも可能。

 

カバー裏風紹介

 

貧乏くじに愛された男

かんだ

玉狛支部ではかなりまともな人。サイドエフェクトのせいで日常的に不便を感じている。しかも知り合いがクセの強い奴が多いので、その点でもとても苦労している。迅のことは信頼しているが、セクハラのせいで敬意はほぼ0になった。なので一纏めにはしないで欲しい。本は紙媒体派。とても気が回りモテるが、本人の自己評価が低くて全く気が付いていない。やはり玉狛だった。

 

介護型カタコト炊飯器

ラプラス

神田が近界で入手した情報を元に作られた本部と玉狛の合作。一家に一台あれば便利かもしれないくらいには便利。作者的には不憫具合が加速したので帳尻合わせにという経緯から生まれた存在。炊飯器とは書いているが、真のモデルは丸いあいつです。はい。




リメイク前の名前は名前を間違えられる、読み辛い、リメイク版だしどうせなら変えようぜ、などなどの理由から変更となりました。あと、リメイク版の主人公の名前は最初九条だったんですが、諸々の事情で変更になりました。


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もう一人の実力派エリート

前作を読んでくれた方はおまたせしました。今作からの人ははじめまして、沼地の魔神王です。前作からリメイクしました。リメイク前も置いてますのでそちらもどうぞ。投稿おせーよ、という方もいらっしゃると思いますが、筆者は執筆速度がクソなので不定期更新でございます。それでも構わない方はどうぞ、お付き合いくださいませ。


「玉狛支部に来ないか?」

 

その声を今でも覚えている。たとえこの身が何度滅びようと、きっとその声を忘れることはないだろう。

 

「俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

 

不思議と、その言葉を疑う気にはならなかった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

三門市人口28万人。ある日この街に異世界への(ゲート)が開いた。

近界民(ネイバー)

後にそう呼ばれる異世界からの侵略者が門付近の地域を蹂躙。街は恐怖に包まれた。こちらの世界とは異なる技術(テクノロジー)を持つ近界民には地球上の兵器は効果が薄く誰もが都市の壊滅は時間の問題だと思いはじめた。その時、突如現れた謎の一団が近界民を撃退しこう言った。

 

「こいつらのことは任せてほしい。我々はこの日のためにずっと備えてきた。」

 

近界民の技術を独自に研究し「こちら側」の世界を守るために戦う組織

界境防衛機関「ボーダー」

彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ近界民に対する防衛体制を整えた。それから4年、門は依然開いているにも拘らず三門市を出て行く人間は驚くほど少なく、ボーダーへの信頼に因るものか多くの住人は時折届いてくる爆音や閃光に慣れてしまっていた……。

 

 

 

「………。」

 

…何かが聞こえる。何の音かはわかる。人の声だ。

 

「……田。…起きろ、神田。」

 

どうやら自分を呼んでいるらしい。そう意識すると、まるで自分の身体が深い海から引き上げられるような錯覚を感じる。徐々に意識が覚醒していく…

 

「……すいません鬼怒田さん。寝てました。」

(随分と懐かしい夢を見たな…いつの間か眠っていたらしい。)

 

目に隈をこさえたいかにも偉そうで不健康そうな中年の男、鬼怒田本吉はコーヒー片手にわざわざ神田を起こしにきたらしいかった。神田の肩の毛布も開発室の誰かが掛けたらしい。

 

「いや、謝るのはこちらの方だ。悪いがもう一働きしてもらうぞ。」

 

神田湊人が開発室に居るのは彼が開発室に所属している…という訳では無い。これには彼のサイドエフェクトが関係している。

 

物体記憶視

 

手に触れた物体から記憶を読み取るサイドエフェクトだ。これによりボーダー上層部から現地調査やトリガーの解析を手伝ったりと、色々なことを頼まれたりする。しかし彼本人はサイドエフェクトに関してあまり良くは思っていない。サイドエフェクトを得た経緯もあるが、何より日常的に重い制約を課されているのである。

まず、燃費に関しては最悪で、食事量がもう半端ない。ブラックホールに例えられる食事量である。一応、給料にはサイドエフェクトによる調査などの費用がきちんと組み込まれているし、開発室からも彼専用の携帯食料が渡されているため多少は改善された。

睡眠時間にも大きく制約を受けている。8時間以上の睡眠を必要とするため、夜更かしも出来ない。以前夜更かしした時は大変なことになった。

極めつけはこのサイドエフェクトがONOFFができない常時発動型のサイドエフェクトであること。しかも発動条件がやたらと緩いこともあり、手袋無しではまともな生活を送ることが出来ない。当然ながら手袋を手離すことは出来なくなった。究極のクソサイドエフェクト。やれることは多いが、それ以上にデメリットがヤバい能力である。

 

「中々見つかりませんね、異常門(イレギュラーゲート)の発生源は。」

 

「忌々しいことにな。」

 

彼が開発室に居るのは異常門の発生源を見つけるために、彼のサイドエフェクトならば原因を探るのに最適だろうと上層部から現地調査を頼まれたため、その報告と、他の場所で採取されたトリオン兵の残骸の解析を兼ねていた。

 

『ミナトオツカレ!ミナトオツカレ!』

 

神田たちが芳しくない結果にゲンナリしていると、左腕のブレスレットから緑色の炊飯器のような物がにゅるっと出てきた。

 

「ありがとう。ラプラスももうちょっと付き合ってくれな。」

 

『リョウカイ!リョウカイ!」

 

このトリオン兵の名前はラプラス。神田が遠征先で手に入れた情報を使って構築して貰った自立型トリオン兵で、地味に仲のあまり良くない玉狛支部と本部との合作である。OSは本部、本体は玉狛支部が組んだ。マスターということで、命名は神田。ただ、技術が技術なので、基本的にはブレスレットの中に収まっている。主に日常生活におけるサポートをしてくれる。

 

鬼怒田の携帯が鳴る。

 

「すまん、出るぞ。」

 

「どうぞ。」

 

「…こちら鬼怒田…何⁉︎三門市第三中学校に異常門⁉︎C級がモールモッドを倒した⁉︎」

 

「⁉︎」

(驚いた。まさかC級がモールモッドを?モールモッドは戦闘型トリオン兵。捕獲型のバムスターとは訳が違う。B級下位が手を焼くくらいには強いはず…気になるな…。)

 

昨日、バラバラに破壊されたバムスターから正体不明のトリガー反応が出たということで神田は現地調査に赴いたのだが、その時見たものに気になるものがあった。

 

(警戒区域のC級、正体不明の人型近界民。…まあ見た限りでは放っておいても無害そうだが、確認はしておきたい。)

 

「鬼怒田開発室長。その調査、俺に行かせてください。」

 

「何?」

 

「学校内に門が開いたとしたら生徒の誰か見たかもしれない。それに今からなら門の発生源がまだ近くにある可能性もあります。」

 

数巡目を瞑り考える鬼怒田。

 

「…わかった。現地の嵐山隊にはわしから連絡しておく。お前は現場に向かえ。いいな?」

 

「了解。行くぞラプラス。仕事だ。」

 

『オシゴト!オシゴト!」

 

トリオン体に換装し、三門中学校へと向かう。ここからなら原付よりもこちらの方が早く着く。

 

☆★☆★☆

 

「神田湊人、現着しました。」

 

「待ってたよ、神田。じゃあ現場調査をお願いするよ。」

 

「了解。で、嵐山さん。彼が例の?」

 

「ああ、彼が三雲くんだ。」

 

三雲修は罪悪感に苛まれていた。モールモッドを倒したのは自分ではなく遊真で、尚且つそれを褒められているからだ。本当なら倒したのは自分ではないと言いたかったが、遊真の存在がボーダーにバレてはいけないので我慢した。嵐山隊は先程来たばかりの隊員にその場を任せて本部へと帰っていった。すると、その隊員はトリオン体の換装を解除し、自分の元へと歩いてきた。

 

「はじめまして。君が三雲修くんか。」

 

「ええ、ああ、はい。」

 

握手を求めてきたので修も握手で応じた。すると、一瞬、その隊員はよろめいた。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 

「ただの貧血だ。気にしないで欲しい。」

 

「は、はあ…」

 

「俺は神田湊人。ここの調査を委任された者だ。…まずは謝罪させて欲しい。異常門が未だに開いているのは俺たちの不手際だ。君の勇気ある行動には感謝している。だが…そのせいで君は上層部から処罰を受ける羽目になった。俺からも君の処罰については進言しておく。」

 

「い、いえ、こちらこそ…」

 

「ついでにで申し訳無いが、君は異常門が開いたところを見たと嵐山さんから聞いてね。案内して欲しい。」

 

「わ、わかりました。こっちです。」

 

修は意外にも自分の行動を好意的に見てくれる隊員を門が開いた場所まで案内した。

 

 

☆★☆★☆★☆

 

『のぼってきてくれたおかげで下まで行かずにすんだ。任務完了だな。』

 

(やはり倒したのは人型近界民だったか。)

 

握手する際に修から記憶を盗み見た神田はやはりかと思った。身のこなしも素人のソレで、とてもでは無いがモールモッドを倒すには足りない。どう考えても訓練用トリガーで倒すのは現実的では無い。さりげなく素手で握手した神田は直近数時間の記憶をさっと読み取った。この程度なら数秒で記憶を読み取るなど造作もなかった。まあ、修が無警戒というのもあったが、この能力は無機物より生物の方が読み取りやすかったりする。予想外だったのはその人型近界民が異常門の開いた学校に通っていたことだった。しかし、今回の件で人型近界民が無害であることがほぼ確定になったので気がつかなかったふりをしておいた。わざわざ薮蛇をつつく必要は無いとの判断だった。

 

(しかし…レプリカ…だったか。ウチのラプラスみたいなヤツだな。)

 

人型近界民よりも、そちらの方がむしろ興味がある。そんなことを考えている間に着いたらしい。

 

「ここです。」

 

「ありがとう。ここからはちょっと特別なモノを使って調査するから君は戻っていてくれ。開発室からも他人には見せるなと言われていてね。」

 

「わかりました。では失礼します。」

 

修が教室に戻っていくのを見届けると、地面に手を置いた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

結果から言うと、異常門の原因は見つかった。

 

(まさかこんな小さいトリオン兵が原因だったとは)

 

道理で見つからないはずだと一人ごちる。近界には何度か遠征に行ったが、ここまで小さなトリオン兵は見たことがなかった。

 

(現物は見つけられなかったが、大きな進歩だ。一度本部に…⁉︎)

 

強烈な頭痛が神田を襲う。サイドエフェクトを使い過ぎだ兆候のひとつだった。

 

「ラプラス…投薬…!」

 

『オチュウシャ!オチュウシャ!」

 

「うッ…!」

 

腕輪の裏から注射針が飛び出し、神田へと投薬が行われる。しばらくすると頭痛は収まったが、体が怠い。ここ数日の無理が祟ったらしい。報告が済んだらレイジさんに迎えに来て貰おうと考えていた。

 

 

 

 

 

窓の外に見える馬鹿デカイ魚のようなトリオン兵を見るまでは。




次回予告

『ビンボークジ!ビンボークジ!』

「わかってる!」

「木虎、お前がやるんだ。」

「ビーハイブ、起動!」

次回「三門市空襲」お楽しみに!


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三門市空襲

いきなり評価が真っ赤になってて驚きました。これは待ってくれてる人が多いということで、頑張って書きました。待ってくれてるよね?
あと、前回次回予告書いたんですがね、アレ思ったより大変でした。なので今回からは次回予告書いてません。(そもそもストックが無い。)なので次回予告が書かれていたら近日中に次回が投稿されると思ってください。何故そんな面倒くさいものを書いたかって?書きたかったから書いたんだよ(暗黒微笑)
専用トリガーについては設定の方に投げときます。ギャグ回もどっかでやりたいですね!
ではでは。


『データ検索中…データ検索中…。該当ナシ!該当ナシ!』

 

「今日は新型をよく見る日だ!年末バーゲンには早すぎるぞ!」

 

『ビンボークジ!ビンボークジ!』

 

「わかってる!そんなことはな!」

 

神田湊人は三門市第三中学校に発生した異常門(イレギュラーゲート)の調査を終えた直後、三門市市内の上空に現れた新型のトリオン兵「イルガー」をその目に捉えた。正直言えばさっさと帰って明日からの仕事に備えたかったが、自分の運の悪さに歯噛みした。コンディションからして最悪に近い。とてもでは無いがまともに戦闘を行える状態ではない。

 

「ラプラス、もう一仕事だ。奴を始末する!」

 

『リョウカイ!リョウカイ!』

 

すぐさまトリオン体に換装し、全速力で現場へと向かう。これだけ突然現れたのだ。他の部隊は待ってはいられない。…が

 

(確か例のC級が本部に出頭する付添いで嵐山隊の誰かが居たはず…本部に繋ぐのが早いな。)

「こちら神田、本部応答願います!市内に異常門が開きました!」

 

『神田くん!こちらでも異常門の発生を確認したわ!』

 

通信はすぐに帰ってきた。本部長補佐の沢村さんだ。

 

「沢村さん!近くで非番の隊員は居ますか⁉︎人手が欲しい!」

 

『今、木虎隊員が新型の近くに居るわ。繋ぐわね。』

 

「ありがとう、沢村さん!…木虎、聞こえるか!」

 

『はい、木虎です。』

 

「爆撃はこっちで処理する。新型は木虎、お前がやるんだ。多分それが一番被害を出さずに新型を始末できる。あとそこに居るC級に伝えてくれ。お前は待機しとけってな!」

 

『了解!』

 

「よし、ラプラス!爆撃はこっちでどうにかするぞ!撃ち漏らしは頼む!」

 

『リョウカイ!リョウカイ!』

 

「ビーハイブ、起動!」

 

神田がそう叫ぶと、体を包むローブと、4枚の二等辺六角形の板が現れる。板の大きさは縦に50、横に30㎝くらいの板で、彼の背中に張り付くように装備された。これこそが神田湊人が持つ専用トリガーだった。

 

『ビーハイブ展開!ビーハイブ展開!』

 

ラプラスがそう命令を下すと、板は次々と宙に舞い、神田を囲むように展開された。

 

「爆撃を落とすために推進力に優先してトリオンを回せ。射撃には最低限、防御には回さなくていい。」

 

ビーハイブ出力をラプラスに細かく調整させ、自分もトリガーにセットしておいたライトニングを取り出す。神田は周回軌道を描いて移動するイルガーの爆撃を狙撃できるポイントへと走り、ラプラスはビーハイブとともに爆撃を行うイルガーの方へと駆けて行ったのだった。

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

神田は狙撃ポイントに辿り着くと、ライトニングでイルガーの落とす爆弾処理していた。ライトニングは弾速に優れる一方で、射程はあまり長くなく、威力は嫌がらせ程度の威力でしかない。今回威力はあまり関係はないのだが、どうしても処理しきれない爆撃はラプラスに操作を任せたビーハイブに内蔵されたガトリングで処理していた。

 

「キリがねえ…!まだかッ!木虎…!」

 

しかしそれにも限界がある。既に極度の疲労状態にある。身体的な疲労ならトリオン体に換装すれば誤魔化せる。だが彼のサイドエフェクトは彼の脳に多大な負荷を強いてしまう。限界近くまでサイドエフェクトを発動した彼の集中力は大幅に削られていた。

 

「ッ…⁉︎しまった!」

 

結果、一発。たった一発を外した。外してしまった。ラプラスの制御するビーハイブも、反応が遅れた。既に先程の爆撃で既に崩れかけていた建物に直撃し、瓦礫が少女の上に落ちた。少女は助からなかった。三雲修が庇わなければ。

 

(…危なかった。)

実際助かったが、またトリガーをまた無断使用してるのは問題だし、一度死にかけているのに懲りないヤツだと思った。一応訓練用トリガーでも通信回線は開けるので、三雲修の通信回線をこちらから開く。

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

三雲修は瓦礫から少女を救った後、その母親を阻む瓦礫を退かそうとしていた。

 

「ふっ…んぎぎ…」

(くそっ。流石にこの重さじゃビクともしない。)

 

『こちら神田。』

 

「か、神田先輩…!」

 

彼もこの場に来ていたのかと思った三雲。しかし初めて会った時と話し方が違うことに気づいた。心なしか怒っているようにも思える。

 

『ちょっとそこからどいてくれ。瓦礫の上の方をイーグレットで吹き飛ばす。』

 

「は、はい!」

 

瓦礫から数歩離れると、三発の弾丸が瓦礫の上部分だけ吹き飛ばす。

 

『何故ここに居るかはあえて聞かない。モールモッドに単身訓練用トリガーで挑むようなヤツだ。来るのは予想はしてたし実際助かったのは事実だ。』

 

「い、良いんですか⁉︎」

 

『馬鹿野郎!そんな訳あるか!モールモッドの時もそうだが無茶しやがって!緊急脱出機能の無い訓練用トリガーで戦うなんて死にたいのかお前は!』

 

「す、すみません…」

(その通りだ。実際、空閑が居なければ僕は確実に死んでいた。)

そのことを修は自覚している。でも、それでも。

 

『今回はもういい。手の空いてる時なら瓦礫を退かすのも手伝う。市民の避難が終わったらさっさと逃げろ。奴がまた来る。』

 

「はい!」

 

神田は通信を切った。

 

「急いで避難してください!ケガ人には手を貸して!ほかに逃げ遅れた人をご存じの方は居ませんか⁉︎」

 

「むこうのデパートにまだ人が……」

 

「わかりましたすぐ行きます!」

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

イルガーを見ると背中からトリオンが噴き出していた。恐らくだが木虎が新型を討伐できたのだろう。そんな時だ。イルガーに異変が起きた。イルガーは口を閉じ、背中から棒のような物が露出し、こちらに向かって落ちてきた。

 

「まさかアイツ、自爆する気か⁉︎」

 

アレが街に堕ちれば街は地獄と化すだろう。すぐさまライトニングを消してアイビスに持ち替え、ビーハイブを呼び戻す。ビーハイブは神田の前で縦に円を描くように回転しながらその中心にエネルギーの膜のようなものを形成する。それを新型に向けて構えた。それと同時に、突如として視界から新型が消え、川が爆発した。

 

☆★☆★☆★☆

 

「神田先輩。今日はありがとうございました。」

 

「こちらこそ助かった。怪我人はそこそこ多いが死人は出ていない。結果としては上出来だ。」

 

「神田先輩、一ついいですか?」

 

「何だ?」

 

「新型を落としたのは貴方が?」

 

一瞬迷ったが、人型近界民の存在を隠さない訳にはいかないので同意しておいた。

 

「玉狛で渡された試作品をな。」

 

試作品をセットしているのは嘘ではない。あのビーハイブは玉狛で渡された試作品なのである。対多戦を想定し、神田のサイドエフェクト使用後の狙撃能力低下を補うべく制作されたオプショントリガーである。多少トリオンの消費は多いものの、玉狛謹製のトリガーの中ではかなりマシなほうで、継戦能力もそれなりにあったし、集約させることで高出力の砲撃を放つことも可能だ。だがこのトリガーには一つ、致命的な欠点があった。それは操作が複雑過ぎて人間ではまともに操作できないこと。その欠点を解消するために本来神田のサポート用トリオン兵でしかなかったラプラスの機能を拡張し、ビーハイブの制御ユニットとしての機能を持たせたのである。また、この仕様変更はおもわぬ利点をもたらした。神田とは別に独立したシステム仕様のため、神田がサイドエフェクトの影響で無防備な状態に陥ってもラプラスはビーハイブを武装として使用できるのだ。

 

「ちょ⁉︎そんなものここで使ったんですか⁉︎」

 

「いや悪かったよ。新型の耐久性が高いのはこちらでもわかったから手持ちでアレを落とせる武装を使わせてもらった。」

 

「せめて相談してくださいよ…」

 

木虎が呆れてそう返す。人型近界民の存在を隠すためとはいえ誤魔化すのも楽じゃない。幸い新型は跡形もなく消滅したので、トリガー反応でバレることはないのが救いといえば救いだが、もう今日は疲れた。この後本部に今回の調査と新型の報告をしなければならない。あと、三雲の処分に関しても。早く帰って睡眠が欲しい。猛烈な飢餓感があるが、今にも意識が落ちそうだ。今回の食事は携帯食料で済ませよう。そう考える神田だった。

 

「今度メシ奢るから許してくれ。俺は今回の調査報告もあるから先に行く。」

 

「わかりました。しっかり休んでください。顔色もよくないですし。」

 

「ありがとう木虎。三雲のことは頼んだぞ。」

 

ここから一番近い本部への直通通路を目指す。今日はまだ、やることがあるのだから。そう自分に言い聞かせながら。




次回予告

「俺のサイドエフェクトがそう言ってる、ですか?」

「流石俺が見込んだもう一人の実力派エリートだ。」

「ボーダーのルールを守れない人間は私の組織には必要ない。」

「まあ、無茶しない努力はするよ。」

次回「ボーダー上層部」


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ボーダー上層部

今回は繋ぎ回なのでほぼダイジェストです。
それと新たにまた評価を付けてくださった方々、ありがとうございます。不定期更新ですが、また近いうちに書きたいです。
文に関してはまだまだリハビリ中なので駄文ですが。


一番近い直通ルートからボーダー本部へと向かう。視界は歪み、猛烈な眠気と吐き気、頭痛に加えて強烈な飢餓感。体も鉛のように重い。サイドエフェクトの凄まじいフィードバックは、神田を容赦なく襲っていた。

 

「うっえ、マッズぅ…蟹の食べられないところみたいな味がする…」

 

空腹は手持ちのレーションでなんとかしたが、これがまた不味い。とにかく不味い。普通の食事に比べると腹持ちは格段にいいのだが、恐ろしく不味いのだ。飢餓状態でもここまで不味く感じるのだから相当だろう。基地の自販機で買ったジュースで無理矢理流し込み、胃に収めた。レーションの不味さのおかげか、意識は多少はっきりしてきた。壁伝いに歩いていく。

 

「おー、お疲れー。」

 

「あ、迅さん。」

 

迅悠一。ボーダー玉狛支部所属のS級隊員で、黒トリガー「風刃」の使い手だ。神田は彼にスカウトされる形で玉狛支部に所属することになった。サイドエフェクトのこともあり、彼と組むことも珍しくない。神田は彼のことは信用も信頼もしているが、彼には困った癖があった。

 

「まさかまたセクハラしてるんじゃないでしょうね?」

 

「いや、第一声がそれ?第一声がそれは流石に傷つくわー。」

 

「日頃の行い考えてから言え、このセクハラエリート。何回頭下げに行ったと思ってるんだ…」

 

「それを言われるとなぁ。」

 

彼の困った癖、それは女性の尻を触るというセクハラである。これには神田もほとほと手を焼かされており、セクハラ被害者に頭を下げて回っているのである。しかもタチが悪いのは、サイドエフェクトを使って大丈夫な相手を選んでいることだ。度々説教をしているが全く懲りない。なので、神田も彼から同じ実力派エリートとして扱われているが、内心このセクハラエリートと一緒にしないで欲しいと思っている。

 

「これから上に行くんだろ?肩貸すぜ。」

 

「ありがとうございます。じゃあ肩借ります。」

 

「で、湊人。イレギュラーゲートの原因はわかったか?」

 

「一応は。現物は無いですけど。」

 

「悪いんだけどさ、ちょっとそれ黙っててくんない?」

 

「俺のサイドエフェクトがそう言ってる、ですか?」

 

「ちょ、おれの台詞取らないで!」

 

「じゃあ一応スケッチしたヤツですけど、これを。」

 

そう言って新型トリオン兵のスケッチを渡す。かなり精密に描かれており、新型トリオン兵の特徴をよく掴んだ絵だった。

 

「見たことのないタイプです。背中にゲート発生装置があって、そこからイレギュラーゲートを発生させているようです。しかもかなり小型化されたトリオン兵で発見に手間取りました。」

 

「おー、ナイスナイス。やっぱりお前は仕事が早いね。流石はおれが見込んだもう一人の実力派エリートだ。」

 

「貴方みたいなセクハラエリートと一緒にしないでください。屈辱的です。」

 

「酷い!」

 

「なら女性へのセクハラをやめてください。いい迷惑です。」

 

「うーん…無理だな。」

 

「おいこら。」

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

「やー、沢村さん。今日もお美しい。」

 

「沢村さん。さっきは助かりました。ありがとうございます。」

 

「あら、迅くん、神田くん。…って凄い顔色よ。神田くん、貴方また無理をしたんでしょう?」

 

沢村響子さん。本部に居た頃によくお世話になった。家族を亡くした神田をいつも気にかけており、よく彼の家にご飯を作りに来てくれたりしていた。本部に所属していた時は彼女の率いる沢村隊に所属しており、彼女のことを沢村隊長と呼んでいた時期もあった。迅のセクハラ被害者筆頭であり、今でも頭が上がらない。

 

「そ、そんなことは…」

 

「あるわよ。努力家なのはいいけど頑張り過ぎるのは貴方の悪い癖よ。」

 

「そうそう。もっと言ってやってよ沢村さん。こいつすぐ頑張り過ぎるから。仮眠室で寝てこい湊人。報告はこっちでやるから。」

 

「…わかりました。じゃあ俺はこのまま仮眠室に行きます。」

 

「そうしなさい。私は迅くんと一緒に上に行くわ。」

 

「三雲くんのこともお願いしますね。迅さん、沢村さん。」

 

「任せとけ。沢村さん、おれこいつ仮眠室に連れていくから先行っててよ。」

 

「わかったわ。じゃあ先に行くわね。」

 

迅に連れられ仮眠室へ向かう。本部には神田専用の仮眠室が開発室の隣にある。開発室によく来る神田にと本部が気を利かせて用意してくれた部屋である。ベッドと冷蔵庫、洗面台だけという割と殺風景な部屋だが、神田はそこそこ気に入っていた。迅と別れるとベッドに横になった。神田が眠りに落ちるには数秒とかからなかった。

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

神田が仮眠室で寝ている頃、ボーダー上層部の議論が行われていた。

 

「私は処分に反対だ。三雲くんは市民の命を救っている。」

 

「近界民を倒したのは木虎くんと神田くんでしょう?」

 

「その木虎が三雲くんの救助活動の功績が大きいと報告している。」

 

「へぇ、あの木虎が。…根付さん、それに防衛に当たっていた湊人もミクモくんが居なければ確実に死人が出ていたと報告してるよ。それに原因を発見できなかった我々ボーダーにも非がある。だから三雲くん一人を矢面に出すのは筋が通らない。ボーダーにもメンツがあるのは理解していますが、罰を与えるなら自分が先だ、ともね。」

 

「ぬう…言ってくれおるわい。」

 

「さらに嵐山隊の報告によれば、三雲くんは三門市第三中学校を襲った近界民を単独で撃退している。隊務規定違反とはいえ、緊急時にこれだけの働きができる人間は貴重だ。彼を処分するより、B級に昇格させてその能力を発揮してもらう方が有意義だと思うが?」

 

「本部長の言うことにも一理ある。……が、ボーダーのルールを守れない人間は私の組織に必要ない。三雲くん。もし今日と同じことがまた起きたら、きみはどうするかね?」

 

「……!それは…………目の前で人が襲われたら……やっぱり助けに行くと思います。」

 

「ほれ見ろ、まるで反省しとらん。クビで決まりだ。」

 

「三雲くんの話はもういいでしょう。今はイレギュラー門をどうするかです!先程の爆撃で死者こそ出ていないものの、重軽傷者が50名以上。建物の被害も大半は神田くんが抑えてくれたとはいえ少なくない被害が出ています。第一次近界民侵攻以来ですよ、こんな被害は!このままでは三門市を去る人間も増えるでしょう。被害者への補償も大変な額になりますよ。ねえ唐沢さん。」

 

「いや、金集めは私の仕事ですから。言って貰えれば必要なだけ引っ張ってきますよ。しかし今日みたいな被害が続くと、さすがにスポンサーも手を引くかもしれませんね。開発室長。」

 

「……それは言われんでもわかっとる。しかし開発室総出でも、イレギュラー門の原因がつかめんのだ。虎の子の神田も明日の昼までは使い物にならんし、連日の調査は奴への負担が大き過ぎる。今はトリオン障壁で門を強制封鎖しとるが……それもあと46時間しかもたん。それまでにはどうにかせんと……」

 

「ふむふむ。」

 

「…で、やれるか?迅。」

 

「もちろんです。実力派エリートですから。」

 

「どうにかなるのかね⁉︎」

 

「任せてください。イレギュラー門の原因を見つければいいんでしょ?そのかわりと言っちゃなんですけど彼の処分はおれに任せてもらえませんか?」

 

「⁉︎どういうことだ……⁉︎」

 

「はい。おれのサイドエフェクトがそう言っています。」

 

結局、三雲修の処分は迅に委ねられることになった。

☆★☆★☆★☆★

 

仮眠室で寝た神田は、洗面台で顔を洗って歯を磨いて、冷蔵庫の中にあるハムの塊をモシャモシャ食べていた。以前はここに調理台もあったが、ここで加古炒飯の惨劇が起きてしまったために、今は撤去されている。悲劇は繰り返してはならない。時計は既に11時を過ぎていた。

 

『ミナト!ミナト!メール!メール!』

 

「メール?誰からだ。」

 

手持ちのスマホからメールを開く。メールにはこう書かれていた。

 

林籐匠

湊人の罰則について

罰として本日はトリガーの使用を禁ずる。今日はゆっくり休め。

PS

陽太郎と留守番よろしく。

 

(どうやら今日はオフになったらしい。陽太郎とゆっくりするか。)

 

身体の怠さもなく、玉狛支部へと向かった。

 

「おう、かえったか。みなと。」

 

カピバラに乗った幼児が玄関に立っていた。

 

「ただいま、陽太郎。皆はもう出たのか。」

 

「そうだぞ。らいじんまるとともに待っていたのだ。」

 

林籐陽太郎。

俺にとっては年の離れた弟のような存在だが、妙に偉そうなお子様隊員である。十中八九テレビの影響だろうなと思う。あと、女の子が大好き。頼むからせめて迅さんの真似だけはしないで欲しい。そうなると俺は迅さんに対してセクハラ以外でも風間さん直伝の関節技(サブミッション)を解放せざるを得ない。

 

「そうか。昼飯は食べたか?」

 

「おう。みなとの分はレイジが冷蔵庫に入れたぞ。今日はオムライスだ。」

 

「流石です。レイジさん。」

 

やはりレイジさんのメシは美味かった。

 

☆★☆★☆★☆

 

 

神田が起きた時間から遡って4時間。イレギュラー門強制封鎖が解けるまであと34時間。三雲修は迅とともにイレギュラー門の原因を知る人間に会いに来たのだったが、それは空閑遊真のことであった。遊真から原因を聞いた迅たちは新型トリオン兵、ラッドの駆除に当たったのだった。

 

「ええ⁉︎神田先輩もサイドエフェクト持ち⁉︎」

 

「へぇ…どんなサイドエフェクトなんだ?」

 

「物体記憶視。物体に宿る記憶を読み取るサイドエフェクトだ。なあ、メガネくん。もしかして初めて会った時、湊人と握手しなかった?」

 

「え、あ、はい。」

 

「あー、そうなると多分モールモッドを倒したの遊真だって気付いてるな。握手した時にメガネくんの記憶を読み取ったと思うよ。」

 

「あ、あんな一瞬で……⁉︎」

 

「多分遊真の存在を隠すつもりだったんじゃないかな。友好的な近界民だって判断して。」

 

「オサムは隙だらけだからな。俺からよりはかなり楽して情報を取れたと思うぞ。」

 

「す、隙だらけ…」

 

「一応、湊人もラッドの存在自体は前の日に既に見つけてたんだよね。これが湊人から渡されたラッドのスケッチだ。」

 

迅は二人とレプリカに神田から渡されたスケッチを見せた。

 

『上手いな。よく特徴を捉えている。』

 

「カンダ先輩は実際にラッドは見てないんだろ?すごいなこれは。」

 

「凄い…」

 

「けどさ、これおれが居なくてもラッドが捕まるの時間の問題だったんじゃない?そんなすごいサイドエフェクトなら。」

 

「そうですよ。なんかぼくたちが横から掻っ攫ったみたいで…」

 

「まあ、確かに湊人には調査結果は黙ってて貰ったけど、そんなことでアイツは怒らないよ。早ければ早いほどいい。むしろ楽できて助かるくらいは言うと思うよ。」

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

今日一日はオフになったので、陽太郎と一緒に過ごした。今日は自分以外のボーダー隊員総出で新型の駆除を行なっているらしい。

 

(この分だと全員帰ってくるのも遅いだろうから晩飯作って待つか。)

 

「あるのは…これぐらいか。」

 

神田は一度に大量に作れる料理、特に中華料理を得意としている。支部の空いている部屋一つをまるまる改装した食料庫にある業務用サイズの冷蔵庫の中身で作れる料理を考えていた。これだけあってたった3日で食材が尽きるというのだから、このサイドエフェクトの燃費の悪さが伺える。

 

「今日は炒飯と酢豚、餃子でいいか。」

 

手袋を取って手を洗う。実はこのサイドエフェクト、固体に限らず液体でもその効力を発揮してしまう。こうやって普通に手を洗うと…

 

『大丈夫か甲田?』

 

『オボロロロ…』

 

こうなる。サイドエフェクトで読み取ったのはどこかの湖だ。おそらく三門市内の湖だろう。読み取らないように極力素手で触らないことにしているが、これに関しては回避しようがない。手を洗った気がしないのでアルコールで殺菌する。正直この水は使いたくないが、しょうがない。食欲はやや失せるが食べないわけにもいかないので、そっと見なかったことにした。このサイドエフェクトと付き合うには何も考えないのも大事なことだ。手を洗った後、台所の収納スペースから医者が手術用に使うであろう薄手のゴム手袋を取り出す。これも素手で料理してしまうと食材の記憶まで読み取ってしまうため、必須アイテムである。特に肉類はエグ過ぎて食欲を完全に無くしてしまう。食事前に新手のスプラッタ映像を見せられるのだからたまったものではない。一週間は肉が食べられなくなった。

そうこうしているうちに時計は18時を過ぎていた。あと30分くらいで皆帰ってくる。時間的には丁度いい。そんなことを考えながら包丁を振るうのだった。

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

夕飯の後、ラプラスの調整のために神田は宇佐美の部屋を訪れた。神田はラプラスの調整はできないので、そのために彼女の部屋で調整を行ってもらうのだ。

宇佐美栞。彼女は神田の所属する玉狛支部所属のオペレーターである。彼女はこういった機械関係には滅法強いので、神田もその関係では特にあてにしている。

 

「やっぱりサイドエフェクトのフィードバック軽減機能はあまり機能していない。栞、調整頼むよ。」

 

『頼ム!頼ム!』

 

「もおーまた無茶して。小南泣くよ?」

 

困った顔でこちらを見る。前に泣かれたことがある。それはわかってる。けど。

 

「しょうがないだろ?近場に居る隊員が俺と木虎しか居なかったんだから。」

 

「そんな時のためにモノ(・・)は渡してるでしょ?」

 

「馬鹿。人の居ない警戒区域ならともかく、あんなもん人の居る市街地で使えるか。パニックを加速させるだけさせて、他の防衛隊員に落とされるのが関の山だ。」

 

「あー、そっか。それもそうだね。でも無茶は厳禁だよ。まだ神田くんのサイドエフェクトはわからないことの方が多いんだから。いい?」

 

「まあ、無茶しない努力はするよ。」

 

『善処スル!善処スル!』

 

「じゃあラプラスはこっちで預かるから、そのブレスレットは外してね。終わったら居間のテーブルに置いておくから。」

 

『今日ハモウ寝ロ!ミナト!』

 

時計を見ると21時半を過ぎていた。

 

「もうこんな時間か。ありがとう。今日はもう寝るよ。おやすみ。」

 

「おやすみなさーい。」

 

『オヤスミ!オヤスミ!』

 

歯を磨いて自室に向かい、スウェットに着替える。明日は休みだが、しっかりと睡眠時間を確保しなければならない。電気を消して、布団に潜る。…今日はいい夢が見れそうだ。

布団に入って数分後、部屋には彼の寝息だけが聞こえていた。




次回予告

『弓をやってみないか?』

『俺たちが居る限りこの町は好きにはさせない!』

『反応ロスト!反応ロスト!ヤベェゼアニキ!ヤベェゼアニキ!』

「……⁉︎ゲートが⁉︎ラッドは全部駆除したのに何で⁉︎」

次回「武力介入」


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武力介入

実はいきなりお気に入りがものすごく増えてビックリしてます。気を良くしてまた書きました。あと余談なんですが、前回の分実はこっそり加筆してます。ちょっと書き忘れがあったので。前作とは違う展開になってるのでリメイク前の読んだ人でも読めるかなと思います。


『弓をやってみないか?』

 

『叔父さん。僕はこうして絵を描いてる方が好きだし、それにもう痛いのは嫌だ。太刀川さんに竹刀で叩かれたところ、まだ痛いんだからね?』

 

呆れた顔で竹刀で叩かれた腕をさすりながら叔父にそう言う。叔父の弟子である太刀川は剣道がとても強い人ではあるのだがとにかく手加減が下手で、試合の度にボコボコにされる。そのせいで身体のあちこちに青痣ができていた。こちらは年下で素人なのだからここまでボコボコにしなくてもと神田少年は思った。それ以外にも不満はたくさんあるが、ここでは割愛する。

 

『いや、それに関しては本当に悪かった。慶には手加減しろと言っておいたのだが…』

 

『叔父さんには悪いと思うけど武道には興味ないよ。痛いし。痛いし!』

 

『わかった湊人くん!じゃあこうしよう!もしやってくれるなら君の好きなものを買ってあげよう!だからほら!一回!一回でいいから!』

 

なんかもうもの凄い必死だった。こちらが引くくらいには。結局、こちらが折れる形でその提案を受けたのだった。

 

 

☆★☆★☆★☆

 

『起きるんだ!爽やかな朝だぞ!起きるんだ!爽やかな朝…』

 

この前根付さんに貰った嵐山さんフルボイス目覚まし時計を止める。思いのほかうるさいが、起きるには丁度良い。

 

「また懐かしい夢だ。」

 

サイドエフェクトを得た後からよく夢を見るようになった。診断してくれた医者が言うにはサイドエフェクトによって得た情報を寝ている間に処理している影響らしく、それが夢として現れているという。

 

『弓をやってみないか?』

 

確か10歳の夏場、父親に半ば無理矢理連れてこられた叔父の経営する剣道場で叔父から言われたことだった。当時は武道に全く興味はなかったし、絵を描くのが一番好きな子供だった自分は不満タラタラだった。今思うと叔父には悪いことをした気もするが、叔父もグルだったらしいので自業自得と思いたい。

布団から身体を起こすと、洗面台で歯を磨き、すっかり日課になった瞑想を行う。一昨日は危うく死人を出すところだった。疲弊していたとはいえ、自分の修行不足を痛感する。このままでは駄目だ。これでは大切な人は守れない。

 

『ママー!』

 

もしあの時、三雲くん()が居なければ、あの瓦礫だ。子供は確実に死んでいた。そう考えて不意に、あの時、あの子供が、

 

『お兄ちゃん!』

 

死んだ妹と重なったことを思い出した。それが、どうしようもなく恐ろしく感じた。

 

 

☆★☆★☆★☆

 

朝の9時半。レイジさんの作ってくれた朝食を胃に収める。起きているのはレイジさんと俺と陽太郎のみ。京介は家に帰り、桐絵と栞、林藤さんはまだ寝ている。今日は休みだし、栞にはラプラスの調整を頼んでしまったのでゆっくり寝ていて貰おう。迅さんは…何かしら用事があるらしい。用があるなら電話で呼ぶだろう。

 

『トリオン、レッド!』

 

『トリオンブルー』

 

『トリオ〜ン、イエロ〜』

 

『トリオンホワイト!』

 

『『『『果てなき世界を守るため、ただいま推参!界境戦隊、トリオンジャー』』』』

 

そして今、後ろで居間のテレビに噛り付いている陽太郎が見ているのはボーダーが作った特撮番組『界境戦隊トリオンジャー』だ。ボーダーの広報活動の一環で放送されている。舞台は2052年の近未来で、ネオ三門シティにやってきた異世界からの侵略者「ネイバー」と戦う王道特撮番組だ。巧みな伏線、大迫力のアクションシーン、笑いと涙がベストマッチした作品であるとネットでも中々に好評で、玩具やグッズの売り上げもけっこう好調らしい。これには根付さんもニッコリである。

根付さん曰く、実はこの作品は根付さんの奢りでラーメン屋に行った時に俺が陽太郎の話をした時にアイデアが出たらしく、俺が陽太郎は最近テレビのヒーロー番組を観てますよだとか、嵐山隊がヒーローとか面白そうですよね、だとか言ったのがアイデアに繋がったと嬉しそうに教えてくれた。…それを知った木虎がもの凄い目でこっちを見ていたのは見なかったことにした。最終的にはノリノリでやっていたし、こちらも悪役で出演する羽目になったのだ。当然ノーカンである。あと、若干だが根付さんが飯を奢ってくれる頻度が増えたり、試供品として玩具やグッズを送ってくれるようになった。

 

そんなことを考えていると、もう巨大ロボと巨大怪人の戦闘シーン。四人のマシーンが合体し、巨大ロボ、『ギャラクシー・トマホーク』へと合体変形する。怪人と一通り戦った後、必殺技でトドメを刺す。

 

『『『『トマホーク・エスペシャリー‼︎』』』』

 

『ウギャァァァァ‼︎』

 

爆発する怪人オクラネイバー。

 

『俺たちが居る限りこの町は好きにさせない!』

 

嵐山さんが演じるトリガーレッドがそう締めくくるとエンディングに突入する。

 

『サ・ト・ケ・ン・サ〜ン〜バ〜……オレ!』

 

陽太郎はエンディングの『サトケン☆サンバ』を踊っている。この『サトケン☆サンバ』、初見は腹筋崩壊間違いなしの破壊力を誇り、動画サイトでもかなりネタにされている。当人の佐鳥は「安定の窓枠」とは呼ばれなくなったものの、サンバ、雑コラ先輩と呼ばれるようになってしまった。許せ佐鳥。悪気はなかったんだ。後輩のこれからに合掌した。ただ、キャラソンでもこれの別バージョンを持っているお前も悪いのだ。神田はそう思った。

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

朝食を食べ終わるとレイジさんとランニングに行く。たとえ狙撃手だろうとランニングは重要だ。逃げ足という点では特に。逃げることは決して恥ではない。

 

「今日はやけに張り切ってるな。もしかして一昨日のことか?」

 

やはりこの人は気付いていたらしい。

木崎レイジさん。

俺が所属する玉狛の隊長で、同じ師匠から狙撃手のいろはを教えてもらった兄弟弟子でもある。また、ボーダーで唯一無二の完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)でもある凄い人で、作る料理も美味しく、胃袋はこの人に完璧に掴まれてしまっている。

 

「はい。昨日は運良く死者無しで抑えられましたが、C級隊員の力を借りざるを得ませんでした。…俺は、僕は、怖いんです。木虎には死人が出なかったから上々だって言ったけど、守れなかったことを考えると怖くて堪らない。」

 

「あまり気負い過ぎるな。結果を言えば死人は出なかったしお前はお前にできることを全部やったんだ。疲弊した状態であそこまでのことをできるやつはそうは居ない。」

 

『気ニスルナ!気ニスルナ!』

 

「でも、」

 

「それにそれは一緒に防衛にあたっていた木虎への侮辱でもある。違うか?」

 

「…はい。そうですね。ちょっと弱気になってました。ありがとうございますレイジさん。」

 

やっぱり凄い人だな、と神田は改めて感じた。

 

「今度お前の好きなものを作ってやる。リクエストはあるか?」

 

「じゃあ、ハンバーグが食べたいです。」

 

よだれを垂らしながら答える神田を見てレイジは同年代と比べて大人びたところはあるがこういうところは年相応らしいと感じた。

 

「……?女の子?」

 

丁度川を挟んで向こう側に走る女の子。

 

「…あっちは警戒区域の方だ。いったい何を?」

 

けたたましいサイレンが鳴り響いた。警戒区域にトリオン兵が現れたらしい。

 

(警報が鳴る前に警戒区域に向かったように見えた…)

「ごめんレイジさん!ちょっと俺行ってくる!」

 

『行ッテクル!』

 

「出来るだけ早く帰ってこい。」

 

「わかりました!トリガー、オン‼︎」

 

戦闘体に換装し、全速力で駆ける。

 

「見失った?ラプラス。何か反応は無い?」

 

『反応ロスト!反応ロスト!ヤベェゼアニキ!ヤベェゼアニキ!』

 

「どこで覚えてきたんだよそれ?…しかし困ったな。完全に見失ったぞ。」

 

〜♪

 

タイミング良く携帯電話が鳴る。こんなタイミングで電話してくるのはあの人しか居ない。

 

「迅さんか。」

 

『湊人。早速悪いけど旧弓手町駅まで行ってくんない?』

 

「旧弓手町駅?何かあるんです?」

 

『三輪隊止めるの手伝ってくれ。多分お前の方が早く終わる。』

 

「また三雲くん関連ですか?」

 

『そうそう。』

 

「了解です。こちらから向かいます。」

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

一方その頃…

 

遊真、修、千佳の三人は三輪隊の襲撃を受けていた。

 

「…くそっ!」

 

修は迅に電話をかける。

 

『はいはいもしもし?こちら実力派エリート。どうした?メガネくん。』

 

「迅さん!助けてください!A級の部隊が空閑を…」

 

『うん知ってる。三輪隊だろ?』

 

「……え⁉︎」

 

『知ってるっていうか見えてる。』

 

「え⁉︎」

 

『今ちょうどバトりだしたとこだな。』

 

「な……それなら……」

 

『大丈夫大丈夫。安心して見てなよ。』

 

「……⁉︎」

 

『三輪隊は確かに腕の立つ連中だけど遊真(あいつ)には勝てないよ。あいつは特別だからな。それにこっちに湊人の奴送ったからなんとかなるよ。』

 

三輪隊二人の攻撃を躱す遊真。三輪の弾を『盾』印(シールド)で防ぐが、孤月に叩き割られる。三輪隊二人の挟撃を回避するため『弾』印(バウンド)で跳び、屋根を突き破る。

 

「狭いとこだとめんどうだな。」

 

跳び上がった遊真目掛けて二つの閃光が走る。遊真に片方は命中。

 

「「「「「なっ……⁉︎」」」」」

 

と思われた。だが、別の場所から飛んできた弾が命中コースに乗っていた弾に命中し、弾の弾道を逸らされてしまった弾はあらぬ方向へ飛んでいってしまった。こんな曲芸じみた超絶変態狙撃ができる狙撃手は一人しか居ない。

 

「おー、イーグレットの弾にイーグレット命中させるとか相変わらず変態が極まってるな!」

 

「神田…湊人…ッ‼︎」

 

驚きも束の間、更なる衝撃が修たちを襲う。

 

「……⁉︎ゲートが⁉︎ラッドは全部駆除したのに何で⁉︎」

 

なんと、もう出現しないはずのイレギュラーゲートが目の前で空いているのだ。遊真や三輪隊の面々も固まっている。それほど異常なのだアレは。

 

「アレは…モールモッドか⁉︎」

 

『データベース照会…不明だ。私のデータベースには無い。』

 

「未知のトリオン兵……⁉︎』

 

ゲートからモールモッドのようなトリオン兵が一体出てきた。しかし、それは普通のモールモッドとは違う。体色は黒に近いグレーだったそれとは違い体色は黒一色。薄く開いた口の奥にはトリオン兵らしからぬツインアイが赤く輝く。だが一番目を引くのはそこではない。修は見た。

 

「BORDER………ボーダー⁉︎」

 

未知のトリオン兵の背中に取り付けられたミサイルポッドの横には確かにボーダーのエンブレムがあった。



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