Aqours+ (R.N.)
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蜜柑少年と海の少女のdialogue。
よろしくお願いします。
[1]
静岡県沼津市淡島ーーー
3月下旬、冬は過ぎ、沼津周辺は春を予感させる暖かさを少しずつ感じられるようになってきていた。
そんな季節の変わり目の昼前、とあるダイビングショップの隣に設置されたウッドデッキに高校生くらいの少年と少女、2人の姿があった。
少女は海のような深い青色の綺麗な長髪をポニーテールにした、紫色の瞳が特徴の美少女だった。
「〜〜〜♪」
そんな美少女ーーー松浦果南は、大人顔負けのスタイルを持つ身体をベンチに預けて、鼻歌を口ずさみながら眼前に広がる内浦湾を眺めている。
そしてもう1人、日本では珍しい
「あーーー。暇だなぁ」
「また言ってる。
果南は海から視線を外して少年を覗き込むように見つめると、何故か微笑んで、髪を梳くように彼の頭を撫で始めた。
「仕方ないだろ。暇なもんは暇なだから」
少年ーーー高海千景からすると、自分が住まうこの内浦は停滞していて、周りとは別の世界にいるように感じ、快く思っていなかった。
「私は好きだよ?こうやって2人でのんびり過ごすの」
そう言って少し照れるように笑みを浮かべる果南。
可愛い。
素直にそう思った千景だが、そのようなことはおくびにも見せることはない。
「そーかい。そりゃ良かった」
「ふふっ」
千景は不貞腐れたように返事をするが、果南に頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細めているせいで、果南には猫みたいとホッコリされている。
そのことに気づいていない千景は、気紛れに上空を気持ち良さそうに飛行するカモメを1羽、2羽、3羽と数えていたがそれもすぐに飽きてしまう。
「あーあ。なんか面白いこと起きねーかなぁ」
そんな、願望が込めれらた千景の言葉は目の前の幼馴染以外には届くことなく、内浦の穏やかな風に乗せられて消えていく。
やりたいことがない。出来ることも少ない。
千景は退屈なのだ。
「面白いかどうかは分からないけど」
不意に、果南は顔を上げると海の方へと視線を戻した。
彼女の視線の先には内浦からここ、淡島へやってくる定期便の船。
「そろそろ騒がしくはなるんじゃない?」
まだ遠くて何を言っているのか、千景と果南には分からないが、船の方から聞き覚えがあり過ぎる2人分の騒がしい声がだんだんと聞こえてくる。
「ん?」
千景も身体を起こして果南と同じ方を見ると、
「ほら、来たよ」
主人公はこれからどんどんクズっぽくなっていきます。
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蜜柑少女と制服少女の到来
当たりました(๑╹ω╹๑ )
テンアゲ。
「来たってアイツらかよ・・・はぁ」
果南の言葉で起き上がっていた千景は、船に乗る2人の少女を視界に収めると、ため息とともにすぐに寝転がった。
「あらら」
果南はそんな千景を見て今日はいつもより重症だと判断した。
果南を含めた幼馴染3人は今のような千景の状態を退屈病と呼んでいた。
今の千景を見て分かる通り、退屈を感じるとテンションが下がり怠惰になってしまうのだ。
“どーしたものかな”と果南の声が聞こえた千景だったが、今の彼はそんなことよりも果南の太ももを堪能したい気分だった。
「あー!やっぱりここにいたぁ!」
それから数分経つと、2人分の駆け足と共にそんな声が千景の耳に届いてきて、寝転がったまま顔だけをそちら向けた。
「起きたらいないと思ったらやっぱり!やっぱりだよ!」
やってきたのは千景と同じ髪・瞳の色を持つ少女で従姉の高海千歌と、
「なに2人でイチャイチャしてるのさー!」
グレーのボブカットで澄んだ水色の瞳が目立つもう1人の幼馴染、渡辺曜だった。
膝枕という恋人がするようなことをしているの千景と果南を見た千歌は”プンスカ”と言わんばかりに頬を膨らませて怒った顔をして、曜は非難めいたジトッとした半目を向けた。
「おはよ。千歌、曜。今日は遅かったね」
しかし、当の本人たちが気にしている様子は全くと言って無い。
果南は普通に挨拶を返して、千景の頭を撫で続けていて、千景は反応すらない。
「そーなんだよ!きいて果南ちゃん。昨日の夜ね、かーくんがーーー」
「千歌ちゃん!果南ちゃんに話を逸らされてるよ!」
千歌は少し⁇単純な子なため、果南の会話誘導に簡単に引っかかってしまう。
そんな千歌を咄嗟にストップさせる曜。
因みに千歌の言う”かーくん”とはもちろん千景のことである。
「は!?果南ちゃんにだまされるところだった・・・!!」
「別に騙そうとした訳じゃないんだけどね・・・」
“あぶないあぶない”と呟く千歌を見て果南は苦笑いを浮かべる。
「ていうか、曜。その格好はなんだ?」
千景は漫才のような会話をしている彼女たちを放って、目の前に立っている曜を頭から足まで見た。
「あ、よく聞いてくれました!これは昨日届いた新しい制服だよ!」
そう言ってクルリと回ってから”ヨーソロー!”とアピールしてきた曜は船長風の制服を着ていた。彼女は生粋の制服コスプレイヤーなのだ。
“感想は?可愛いって言って!”と彼女の瞳が語っている。
「可愛いし似合ってはいるけどさ・・・」
無難に感想を返しながらも、外に遊び行く日に何故コスプレしてきたのか、そう聞こうとした千景だったが、
「ありがとう!・・・で、そんなことより千景くん?いつまで果南ちゃんに膝枕されてるつもりかな?」
だんだんと逸らされていた会話の中で曜は元の話題をしっかりと覚えていて、ニッコリと笑顔を浮かべて千景を問い質した。
その曜の笑顔は喜色の笑みではなく、恐ろしい方の笑みだった。
「あ、そーだよ!かーくん、私だって膝枕したいのに!」
曜の言葉で本題を思い出した千歌も曜に続いて口撃する。
「駄目だ。この太ももは俺のだ」
だが千景は頭をさらに押し付けて果南の太ももの柔らかさを頰で感じながら、さらに労わるような優しい手つきで撫で始めた。
「ちょっ、千景!それ以上は駄目。訴えるよ!」
その行為には流石の果南も慌てて千景の手を抑える。
顔も恥ずかしさで真っ赤になっているが、何故か嫌そうな雰囲気は一切ない。
「ごめんごめん」
そんな果南を見て満足したのか、千景は撫でる手を止めて元の普通の膝枕に戻る。
膝枕自体は止めるつもりはないらしい。
「「・・・・。。」」
そしてバカップルのようなことを目の前でされた千歌と曜の表情はさらに冷たいものになっていく。
「あー・・・、分かった分かった。ほら、譲るよ」
そんな千歌と曜の視線に晒された千景は寒気を感じてすぐ身体を起こして場所を空けた。
「そ、そうだね。じゃあ先に千歌ね。ほら、おいで」
果南も同じように雰囲気を察して空いた太ももをポンポンと叩いて千歌を招く。
「そーじゃなくて、私も曜ちゃんもかーくんに膝枕してあげたいの!」
千景と果南は勘違いしていた。
不機嫌2人組は果南の膝枕を堪能したいわけではなく、自分たちが千景に膝枕をしてあげたいのだ。
曜も千歌の言葉に同意のようで何度も頷いている。
要するに2人も膝枕を通して千景とイチャイチャしたいだけだったのだ。
「なんだ、そっちか・・・でも、今日は果南の気分なんだ」
だが千景はそんは2人の乙女心など気にもしていないようで、すぐに果南の太ももに頭を戻した。
「残念だったね、千歌」
選ばれた果南はどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「むぅ〜」
「千歌ちゃん、私たちこのままじゃ果南ちゃんに負けちゃうよ・・・!」
千景と果南を見てさらに不貞腐れた顔をする千歌と未だ諦めていない曜。
こうして千景を中心に幼馴染4人組が集まった。
ぶった切った感ハンパないですね。すいません。
気が向けば改稿します。
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