ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について (頭がポップコーン)
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アリアハン編
はじめに
※ 二月五日修正済み
僕の名前は、アレル。
アリアハンの勇者オルテガの息子で、その意志をつぎ魔王バラモス討伐のため旅立った十五歳の男だ。
僕はまず旅立つ前にアリアハンの街にあるルイーダの酒場で三人の頼りになる仲間を見つけた。
戦士のフルカス。
武道家のフォン。
僧侶のカダル。
とても頼りになる僕の仲間。
だけど、僕にはもう一人仲間がいる。旅立ってすぐ訪れたナジミの塔で出会った不思議な少年。僕の大事な四人目の仲間。
……その仲間がちょっと、いやだいぶおかしい。
え? この石ブロックはここで、終わったらつぎはあの遺跡の壁ブロックをよろしく?
ねえ、ビルド。なんで僕は勇者のはずなのに、行くところ行くところで大工さんみたいなことしているの? 何? 大工じゃない、ビルダーだって? いや、そういう意味じゃなくて!
何? フルカスも、フォンも、カダルも頑張ってるから、アレルもがんばれ! だって。いややるけどさ、結構楽しいし。
でもね、いまだによくわからないことだらけだけど、君が変なのだけはよくわかってるよ。
だってさ。
なぜ僕たちは行く先々で、ボロボロになってたレーベの村の復興をしたり、ロマリアで鉱山を再開させたり、カンダタ一味や魔物の脅威に備えるためカザーブの村を要塞化したり、ロマリアにもどってあんなに大きなもの作ったり、そして今このクソ暑いイシスの街でピラミッドに石を積んでいるの?
ねぇ、ビルド。勇者って悪い魔物を退治するために旅をするのが仕事じゃなかったっけ? 決して行く街行く街で何かを作って困りごとを解決するのが使命じゃないと思うんだ。あと魔物は君が何かを作るためのそざい集めのために存在するんじゃないんだよ? それから、そざい集めのたびに平然と森や山を更地にするのは異常なことだからね?
そこで何で僕がおかしなことをいっているんだろうって顔しないで! いや、みんなのためになってるからいいんだけど!
フルカス! なんか言ってよ! え? ビルドだから仕方ない? あきらめがいいのが大人の余裕じゃないと僕思うんだけど!
フォン! え? アレルはわがままだって? あんなにいろいろしてもらってるのにって? それとこれとは話が別だよ! それにいつもわがまま言って何かとおねだりしてるのフォンじゃないか!
カダルも何か言ってよ。え? それどころじゃない、朝から働きづめで何も考えられないって、暑くて死にそうだから、あっ、何か悟りそうになってきたぁ……! って日陰で休んで! すぐに!
これはそんな僕たちのかなりおかしないつか伝説になるかもしれない冒険のお話である。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
ノリで走れるところまで書くよてー。
ビルダー3希望!
アレルたちの現状
ミッション イシスの女王様のお願い
① オアシスを助けて! CLEAR!
② ピラミッドを直して! NOW!
※ 二月五日変更点修正済み
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1 アリアハン~レーベ
白竜の月 10日
盗賊のカギを求めて、アリアハンの街から見える孤島にそびえたつナジミの塔の頂上にたどり着いた僕たちをまっていたのは、一人の老人と一人の少年だった。
老人に話しかけると、彼はこころよく僕たちが求めていた盗賊のカギをくれたのだが、ひとつ頼み事もしてきたのだ。
「この子を君たちの旅に連れて行ってほしい」と。
そして僕は少年のことをみた。
鮮やかな金色の髪をした、緊張感がないどこか間の抜けた顔の男の子。背中には大きな本と身の丈と同じくらい大きなきづちを背負っている。
「えっと、君。名前は?」
ビルドとだけ短く答えた無口らしい顔に締まりのない少年の顔を見ているうちに僕の脳裏に謎の選択肢が。
びるど を なかま に しますか?
はい
いいえ
何だこれ、と思いながら、仲間が多くて困ることもないかと思って【はい】を選んだ瞬間、カチッという音がした、気がした。
僕は首をかしげながらも、新しい仲間と一緒にナジミの塔を後にした。今日はアリアハンにもどってビルドの歓迎会かな。ルイーダさんにお願いしよう。
白竜の月 12日
新しくなかまになったビルドなんだけれど、すごい。
正直、強くはない。フルカスみたいに剣が上手でもないし体が頑丈なわけでもない。フォンみたいに素早いわけでもないし、カダルや僕のように魔法が使えるわけでもない。
でもすごい。
初めてそう思ったのは、昨日のこと。
アリアハンからレーベの村に向かう途中の森でのことだった。フロッガーの大群に突然襲われた僕らは全力でそれを退けたのまではよかったのだけれど、そこで毒におかされ、回復アイテムも使い切り、MPもなくなってにっちもさっちもいかなくなってしまった。
そんな中一人無事だったビルドは何を思ったのか急に森の木を大きづちで叩きはじめた。何をいったいと思う僕たちを尻目にビルドはどんどん森を壊しはじめたのだ。あっという間に森一つ分の土地を平らにしたビルドはどこに持っていたのか分からない袋から何か作業台を取りだして工作を始めた。
またたくまに出来上がる、やくそう、どくけしそう。
そして僕たちにそれをわたして飲むように促すと、ビルド自身は木でできたブロックを積み上げはじめ、あっという間に小さな小屋を作ってしまったのだ! なんと中にはわらでできたベッドまで!
ここでちょっと休んでて。そういうと再び森を壊しはじめるビルド。
そのあまりの勢いに何も言えず僕たちは頑丈そうな木の小屋で一休みさせてもらうことにした。そしてそこで十分に英気を養った僕らは無事レーベの村までたどり着いたのである。
ところでフルカス。小さいとはいえ小屋とか家ってほんの20分ほどでできるものなの?
白竜の月 13日
突然だけれどアリアハンの王様はケチだ。
僕たちの旅立ちにあたって餞別としてくれたのは、
50ゴールド
どうのつるぎ
こんぼう 二本
たびびとのふく
たったのこれだけ。
おかげで僕たちは苦労して魔物を倒してゴールドをためて装備(この場合は人数分のたびびとのふくのこと)ややくそうを買う羽目になっていた。
のだけれど、朝レーベの村の宿屋で目覚めた僕たちの姿をみて、ビルドは難しい顔をしてから、何か思いついて本に何かを書き込み始めた。そしてこういったんだ。
『そざいを あつめて そうびを ととのえよう』
そうしてまず昨日大量に手に入れていた木材、ついでに壊していた石、森に生えていたつたを使ってできたひもをつかってすごいものをあっという間につくってしまった。
【いしのおの】
すごい。強そう。さっそくこんぼうをつかっていたフルカスに使ってもらうことにした。フルカスが二、三度振るうとニッコリ笑った。どうやらこんぼうよりずいぶん強いみたい。
それからカダルには、
【いしのやり】
をわたすと、僕とフルカスとカダルにないよりましといって
【おなべのふた】
をわたしてきた。盾の代わり、らしい。
その後すごい剣幕でそざいあつめだ! と(目で)いってくるビルドに押され、僕たちはレーベの村の外へと向かった。何でも昨日の小屋のあたりはけっこう有望かも! らしい。何が有望なんだろうか。
なおフォンが何にも私だけ作ってもらってない! っていうとビルドは少し困った顔をしてから、何かをまたひらめいた。
【けいこぎ】
防御力が旅人の服よりだいぶ高いらしくフォンは大喜び。しかも素早さまで上がるらしい。すごい。それから何だか楽しくなってきた僕たちはビルドに言われるがまま、その有望な小屋のまわりにそざいを集めに行った。
どうやら僕の四人目のなかまはとってもすごいらしい。
ありがとう! すごいね! って僕がいったらビルドはいつも通りの緊張感のない笑顔で、
ビルダー だから とうぜん
といった。びるだーってなんだろう? あとでフルカスに聞いてみよう。
追記 アリアハンの王様は間違いなく、僕のなかまのビルドよりも100万倍気前が悪いケチな王様だと思う。
追記の追記 ビルドが張り切った結果、森がもう一個消えた。森ってあんがい簡単に消えることを僕は初めて知った。
白竜の月 16日
三日ほど日記をお休みしてしまったけれどその間にすごいことになってしまった。
今の僕たちの装備はこうだ。
あれる Eどうのつるぎ
Eかわのよろい
Eかわのたて
Eきのぼうし
ふるかす Eとげこんぼう
Eかわのよろい
Eかわのたて
Eきのぼうし
ふぉん なし
Eけいこぎ
なし
Eけがわのフード
かだる Eいしのやり
Eかわのよろい
Eかわのたて
Eきのぼうし
びるど Eおおきづち
Eかわのよろい
Eかわのたて
Eきのぼうし
信じられない。あのアリアハンの武器屋で喉から手が出るほど欲しかったけれど、高すぎて全く手が出なかったあのかわのよろいやかわのたてが僕の手に! 何度も通って、そのたびにアリアハンの武器屋の親父に貧乏人を見るような蔑む目で見られながら、安くなりませんか? なりません、といわれ結局涙をのんだかわのそうびが!
しかも全員が装備してるなんて夢みたいだ! 苦労して三日間ひたすらいっかくうさぎを狩りまくったかいがあった!
それだけじゃない。ビルドは合間合間にいろいろ作ったらしくふくろの中身を少し見せてくれた。
たいまつ 10
やくそう 50
上やくそう 5
どくけしそう 20
まんげつ丸 5
キメラのつばさ 5
他にもいっぱい。
すごすぎる。大富豪にでもなった気分だ。だからビルド。もう山を掘るのはやめよう? 小さいとはいえ山が一個消えちゃったよ? どうのつるぎとくさりがまが売ってるからには必ずどこかに銅と鉄があるはずだからって僕たち今の装備で十分満足してるから!
そんな装備の力を確かめるため、昨日僕たちは今まではできるだけ避けていた強敵さそりばちにあえて挑んでみた。だけれど結果はビックリするくらい楽勝だった。
とくにフルカスがすごかった。とげこんぼうを一振りすると、さそりばちが一発で粉々に。とげこんぼうすごい。すごすぎてフルカスが何だかやばい笑顔を浮かべてる気がする。
でもその理由はとげこんぼうの強さだけじゃない。
ステーキ
これのおかげだ。いっかくうさぎをたくさん倒しているうちに手に入れたなまにくをたき火で焼いたこれを食べるとおなかもいっぱいになるし、攻撃力も上がるのだ。
装備の力と食事の力。ビルド、ビルダーってホントにすごいんだね。
でもビルド、僕、生のこんぶはちょっと食べられないかな。
追記 ありがとう、ビルド。僕のお願いを聞いていっかくうさぎのお墓作ってくれて。ちょっとだけ心が軽くなったよ。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
ちら裏に移動すべきかもあわせてご意見待ってます。
そざいについて
けがわ いっかくうさぎから入手。
なまにく 同じくいっかくうさぎから入手。
ねばつく液体 フロッガーから入手。
くすりの葉 森で入手。
いばら 森の中にあるナジミの塔への入り口付近にて入手。
キメラのはね キメラから入手(ドラクエ3でキメラが登場するのは裏の世界。なぜかこのキメラは極めて弱体化している)
とげこんぼう 攻撃力13 木材×2 いばら×2 で作れる
こんぶ 海岸で入手。食べられる。
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2 レーベ ミッションスタート!
白竜の月 17日
僕たちがレーベの村に到着すると村の姿は前と一変していた。のどかな田舎の村は何者かに襲われ、見るも無残な姿になっていたんだ。
美しい田園風景は失われ、代わりにあるのは焼け落ちた建物の残がいとそこかしこに広がる毒の沼だった。
ひでぇ、とけわしい顔でフルカスがいう。いつも強気なフォンも言葉が出ないようだ。カダルの顔も青ざめてる。ビルドも……、珍しくまじめな顔をしていた。
どこかでうめき声が聞こえた気がした僕たちは急いで声をたどっていくと道具屋の中から声がした。
僕が大丈夫ですかって声をかけると助けてくれっていうから、フルカスがガレキをどかそうとするとビルドがおおきづちを振り上げてた。ビルドやめて! って叫ぶ間もなくビルドがガレキをぶっ叩くとガレキが石材に。
……冷静に考えてみると変だぞ。なんでガレキをたたいただけで石材になるの?
あわてていた頭が急に冷静になったせいか、今まで無意識に見ないことにしていた事実に僕は気が付いた。小さなころから家の手伝いでずっと薪割りしていたから気が付いた。
木をきづちでたたいて木材になるなら、おのはこの世にいらないってことをね!
そんなどうでもいいことを僕が考えているうちに、カダルが薬草とホイミを使って道具屋のおじさんを治療していた。
よかった、命に別状はないみたい。しばらくして落ち着いたおじさんに僕たちは話をきいた。
どうやらバブルスライムとフロッガーの大群が突然村を襲ったらしい。村の人たちはカギのかかった村のはずれのおじいさんの家(僕たちがドアを開けるためにとうぞくのかぎが必要になった理由だ。つまりとうぞくのかぎは無駄になった。ちくしょう)に逃げ込んだらしいんだけど、おじさんはどうしても自分の店が心配で店の奥に隠れて村が壊れていく様子を見ていたらしい。
なるほど、そういうことか。これで僕たちがこの前のフロッガーの大群に襲われたことにも納得できた。
これは王様に報告しておかないと、と思っている僕におじさんがこういった。
勇者様、どうかこのレーベの村を元通りにしてもらえませんでしょうか?
おじさん。僕は勇者であって、大工さんじゃありません。
そう僕がいおうとしたその時、僕の後ろで気配が変わった。明らかに変わった。振り返るといつも通りのへらへらした笑顔なんだけれど目に炎が燃えているなかまがひとりいた。
ビルドだ。
その瞬間、僕の脳裏にこんな言葉がよぎったんだ。
【レーベの村をふっこうしよう!】
ってね。うん、僕たぶん疲れてるんだ。
白竜の月 18日
とりあえず僕たちはまず村の人々の無事を確認することにした。まず本当に不幸中の幸いだけれど、村の人たちにけが人はいたけれど、死んだ人はいなかった。
でも建物はどこもかしこもボロボロになってしまっており、みんなが寝泊まりする場所にも苦労するありさまに、ビルドが動き出した。
なに? まずは なにか たべよう だって?
そういったビルドはまたたく間にたき火を十個並べてそこになまにくを入れていく。
料理が出来上がる前にふくろから大きな木のテーブル、木のイスを4つ、木でできたお皿をセットしたところで次々になまにくが焼けてステーキに。
レーベの村の人たちは涙を流しながら、ステーキを食べてた。なぜだかその姿に僕もフルカスもフォンもカダルも涙が出てきた。
ビルドはいつものように締まりのない顔に笑顔を浮かべてウンウン頷いていた。
そっか、勇者って魔物を倒しているだけじゃダメなんだなってことを僕は今日学んだんだな。
その後お腹がいっぱいになった村人たちが、いろいろと僕たちにお願いしてきた。
まずはいつまた魔物が襲ってくるかわからないから、魔物たちを何とかしてほしい。
これには僕たちみんなうなづいた。望むところだからだ。
次に村の復興を手伝ってほしい。これにはビルドが激しくうなづいていた。……村の復興は大丈夫だろう。むしろやり過ぎないかが心配である。
最後に、またもし今回のようなことになった時の備えについて考えてほしいっていうことだ。これには正直僕らも困った。ビルドもすぐにはいいアイデアが出ないようだ。
とりあえず僕たちがやるべきことは、魔物が攻めてきた時に撃退すること、村を元通りにすること、そしてもしもの時への備えだ。
よ~し、やるぞぉ!
白竜の月 19日
僕は物心がついたころから、父さんの仇をとるためにきびしい訓練に耐えてきた。剣の腕を鍛えたり、魔法の勉強をしたり、他にもいろいろだ。そのことに後悔はないし、そのことが今の自分を支えてくれてるって思ってるんだけど、僕はどうやら世の中のことを何にも知らなかったってことを知ったんだ。
そう、僕は今日一つ世界の真理を知った。
おおきづちで壊したものはなんでもブロックやアイテムになるんだってこと!
朝いちばんから始まったビルドのレーベの村復興作業はまず、全てを更地にすることから始まった。
ビルドが満面の笑顔のまま、まるでドラゴンが爆走するかのようにどんどん跡形もなくレーベの村を、元レーベの村跡に変えていく様子を、僕も、僕のなかまたちも、レーベの村人たちも、ぽかんと口を開けてみているしかなかった。
……ビルド。僕、村とか街って作るのも壊すのももっと大変なものだと思ってたよ。
そうして唖然としている僕らに、どうしてだろう? キレイな金髪の上に?をうかべてみていたビルドはやがて何かを思いついたらしく、ふくろからごそごそと何かをたくさんとりだした。
【おおきづち】
だった。
へ~、そのおおきづちって大量生産できたんだね。僕はてっきり世界に一本だけの特別な魔法のかかったスーパーおおきづちだと思ってたよ。そんな僕らにおおきづちを無理やり渡してくるビルドに僕は思った。
いや、君みたいに何でもかんでもそんな風に壊せるわけないでしょ?
いや、だからさ。なにを いって いるの? っていう顔はおかしいよビルド。うん、散々見てたからおおきづちの振り方自体は僕らも分かってるからお手本をしますように振り回さなくていいからね。
そのうち、ん~という顔で怒ってきたから僕らもしぶしぶ目の前の土の塊をぶっ壊すと……え?
なんで土がブロックに? どういうこと?
目の前で超ドヤ顔のビルドを殴りたい。もう一回確かめるために他にも叩いてみるとドンドンブロックに変わっていく。
ほら さっさと てつだって
とだけいって喜々として教会を解体し始めるビルドの背中を見ながら、僕は僕の中にあった普通の常識が破壊されていく音を聞いたのであった。
追記 その日は、ビルドが即興で作った大きな木の小屋でみんなでわらベッドで寝ました。
あと村はその大きな木の小屋とうぞくのカギのかかっていたおじいさんの家をのぞいてまっさらな更地に変わってしまいました。
犯人は今僕のとなりでのんきにいびきをかきながら寝ている金髪の悪魔です。周りの人間にも恐ろしい破壊の力を感染させる破壊の権化です。
……僕はバラモス以上にとんでもないものをこの世界に解き放ってしまったのかもしれない。
誤字脱字、感想よろしければお願いします。
はい。というわけで整地が終わりました。
はい、ただの整地ですよ? ビルダーならふつーふつー。
魔物が全てを壊す? ビルダーに勝てるわけねぇだろ!
かかってこいよ、バラモス! バラモス城になんてひきこもってないでかかってこい!(死)
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3 レーベの村を ふっこう しよう パート1
ドラゴンクエストビルダーズ2の(ある意味)重大なネタバレも含まれますので、読者の皆様におかれましてはくれぐれもご注意のうえでお読みいただくようよろしくお願いします。
具体的にはビルダーズ2の新要素をひとつ出してます。
白竜の月 19日
ビルドは朝起きてごはんを食べてすぐにまた働きだした。戦う体力(HP)とは違う意味でビルドの体力は底なしだと思う。
そんなことを考えつつビルドを見ていると、体力だけじゃなく知恵というか応用力がすごいことにも気が付いた。
ほぼ全部更地になった(なってしまった)今のレーベの村に広がる毒の沼地。それも一か所じゃなくそこかしこに点在していた。
そんな悲劇の跡の前でレーベの村の神父さんがビルドに何か相談していた。
ビルド殿、まずはそこかしこに広がるこの毒の沼地をどうにかしていただけませんか?
その言葉を聞いたビルドはそのなかでも一番小さな毒の沼地をしばらく眺めていたけど、そのうち解決策を思いついたらしく、ビルドが毒の沼地にきれいな土を放り込むときれいな土があっという間に毒の紫色に染まった。
汚いというよりまがまがしい色。僕がそれにビックリしている間にも、ビルドはどんどん土で毒の沼地に埋めていく。見る間にビルドの前に広がっていた小さな毒の沼地はまるごと紫色がまがまがしい【毒沼の土】の地面に代わり、うなづいたビルドはおおきづちを取りだして今埋めたばかりの地面を壊しはじめた。
そうしたら不思議、【毒沼の土】が取り除かれた地面から毒の沼地がなくなっていた。全部取り除いてもう一度うなづきビルドが今度はまたきれいな土を取りだして開いたスペースを埋めていく。
出来上がったのはきれいで平らな土の地面。
そこまでやったビルドは、ふくろから作業台を取りだして木でできた箱をひとつ作り出した。みんなに説明を始める。
これは しゅうのうばこ にもつを しまっておいて いつでも とりだせるよ
そう珍しくとても長く話すと、疲れたのかぜーはーいってた。どんだけ無口なんだろうか。いや、目と態度が雄弁すぎるから別にいいんだけど。
つまりその【収納箱】を上手に使って、自分が今やったことと同じ事をしろというビルドのメッセージを正しく読み取った僕たちはいっせいに動き出す。
よし、まずは毒の沼地退治だ!
一日がかりで毒の沼地をきれいにした僕らが仮の生活スペースである小屋に戻ってみると、次から次へとたき火でキノコを焼いているビルドの姿が。その近くでは慣れない手つきでフォンとカダルが料理をしている。
……フォンとカダルの目が死んでたけど。
あ~途中から姿が見えないと思ったら、食料の調達に行ってたのか。でもなんで目が死んでいるんだろう。あとで理由を聞くことにして、僕は串に刺さったおいしそうな焼きキノコをほおばるのだった。
え? フルカス フルカスなら意味もなく村はずれにある大岩を押して筋トレしていたよ。うん、普段は頼りになる大人なんだけど、たまにつかえねぇな! あいつ!
追記 寝る前に二人に話をきくとまた森がふたつ、山がひとつ消えたらしい。
白竜の月 20日
めざめると そとにトイレが できていた
あれる
そして本能(AI)が命じるまま、人生で初めてトイレ待ちの行列に並んでいる自分がいた。
何故だ! なぜ僕は生まれてから十五年間、今日に至るまで毎日この行為をせずに生きてこられたんだ! でも僕のアリアハンの実家のどこにも、トイレなんてなかったよ?
尿意と便意に耐えながら自問自答する僕。
分からない……、分からない。ビルドに出会ってから僕の常識がどんどん変わっていくぅ……。
ツボの上に座って、その、恥ずかしながら、人生初のピーーをしながら僕の頭の中はグルグルとそんなどうしようもないことを考えていた。
ビルドぉ、壊すのは物だけにしてほしいんだ。僕の常識とか世界の法則とかは、壊さなくていいんだよぉ。
追記 ビルドになんでトイレを作ったの? って聞いたら、
こやし が ほしかったから
って言われたから、僕がなぜこやしがいるの? って聞いたら、ビルドはなぜそんな当たり前のことを聞くんだろう? って顔で、
しんりんだんご を つくるんだよ
って教えてくれた。
つまり僕たちの【ピーー】(自主規制)は、やがて森へと変わるらしい。へ~、僕ひとつ賢くなったよ。
ちなみにこの日で毒の沼地はレーベの村から全部なくなりました。あと森と山ももう一個づつなくなりました。
追記の追記 今日も護衛として付いていったフォンとカダルが、ビルドが【森林ダンゴ】を地面に置いたとたん、見たことのないウネウネした魔物が出てきて、何もない平地をあっという間に森に変えてたって教えてくれた。
ビルド、君はもしかして魔物に知り合いがいるのかい? まさかバラモスとも知り合いだとかいわないよね?
追記の追記の追記 夕食の後、フォンが恥ずかしそうに女の子用にもう一つトイレを作ってくれってビルドに頼んでいた。うなづいたビルドが外に飛び出したやいなや、作業台で【おんなの看板】なるものを作って、新しくもう一個トイレを作っていた。
……カダルが悪い笑顔で入ろうとしてフォンにぶっ飛ばされてた。僕も間違えないようにしないと、と心に誓った。
白竜の月 21日
ようやく今日から本格的なレーベの村の再建に取り掛かることになった。そのためにまず僕たちはみんなで、村の中心から見て北西側、元々レーベの村の入り口があったところにやってきていた。
どうしてかっていうと、もちろんあの破壊魔が僕たちにご飯を食べてピーー(自主規制)が終わったら、そこに集まるように言ったからだ。
順番に集まる僕ら。
ここに やどやを たてるよ
ビルドがそういった。でも僕も、フルカスたちも、村の人たちも、誰も家を作った経験なんてない。それを僕がビルドに伝えると、いつもの締まりのない笑顔のままビルドは地面に何かをかき始めた。まるで空を舞うかのようにダイナミックな動きでビルドが何かを書き上げるとそこには【宿屋の設計図】なるものがあった。
なるほど、これに合わせてブロックを置いていけば宿屋が完成するんだね!
僕がそういうとビルドが満面のドヤ顔でうんうんとうなづいていた。よ~し、やるぞぉ! そう思った瞬間、何か悪い気配を感じた僕らが、西側を見てみるとスライム、おおがらす、いっかくうさぎなどのモンスターの群れが!
どうしよう、隠れなきゃ! と一瞬思ってはたと思い返す。
僕のバカ! 僕は勇者オルテガの息子、アレル。僕の本来為すべきことは悪い魔物をやっつけることだろ!
連日の土木作業と常識の破壊の連続で危うく自分のアイデンティティまで破壊されるところだった。何とかおおきづちをどうのつるぎに持ち替えることに成功した僕は仲間たちと一緒に魔物を撃退したのだった。
追記 『僕は勇者です。魔王バラモスをたおして世界を救うために旅をしています』
僕は今日から毎日寝る前にこの言葉を三回言ってから寝ることに決めた。
追記の追記 フォンとカダルも僕と同じようにするって言ってた。僕もそれがいいと思う。
追記の追記の追記 フルカスはどうするって聞いたら、今日もいい汗かいたぜ! って言ってたからあいつは放っておこうと思う。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
特にネタバレに関しては、今回試験的にいくつか作中に入れてみましたが、プレイ済み読者の方も、未プレイ読者の方もご意見いただけると助かります。これは真剣にご検討のほうよろしくお願いします。
正直、私自身はアイテムとシステムに関しては仕方ないかなとは思っていますが、こればかりは賛否両論あるかと思いますので。
道具・素材メモ
森林ダンゴ どんぐり×1 こやし×2 草原の素×1
森林の素 ※おおがらす が ※落とす ※ オリジナル要素
どんぐり 森で入手
大木の原木 森で入手
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座① レーベの村①
が、以下の画像は一見以上の価値ありですので是非!
roines様作成のレーベの村再現映像① 在りし日のレーベの村
視点は本文中の8から見ている感じでしょうか。
https://img.syosetu.org/img/user/15509/48572.JPG
非常に再現度が高いです。正直自分ではここまでできる気がしない……。
……きこえますか。……きこえますか、読者よ。
突然ですがあなたに簡単なビルダーズシリーズの常識と、上から俯瞰した状態でのレーベの村の状況の変遷について説明したいと思います。
……え? おまえは、だれだ? ですって。確かにそうなのですが、様々な都合がありまして今はまだ名乗ることができないのです。
……故にわたしのことは、謎の大地の精霊『R』と呼んでください。
では、話を続けますよ。
まず普通のドラゴンクエストとは違う、基本的なビルダーズルールを説明いたしますね。
え? 普通のドラゴンクエストとか、ずいぶんメタなこというやつだな、ですって?
……説明役として作者にかりだされたのです。その辺りはどうかご勘弁を……。
気を取り直してまいります。
① 敵は定期的に決まった方向から町や村に襲撃してくる。
② 昼と夜があり、夜に活動しているとゲリラ的にちょっと強い敵が襲ってくるので注意が必要。
③ 壁や床などには強度設定があって、もろいものなら魔物は簡単に壊してくるし、逆に強いものなら魔物は壊せない。また魔物の破壊する力(攻撃力とはまた別)は魔物ごとに違うので注意。
あとのことは物語の中で勇者が語ってくれるでしょう。
では本題です。
元々のレーベの村は大まかですが上から見るとこのようなエリア分をしていました。
123
456
789
それぞれの数字に建物ないし、空き地が存在していたのです。なお、入り口は1の左側に存在していました。つまり →1 ですね。
では具体的に元々のレーベの村がどういうものだったか数字に建物を当てはめてみます。
1 道具屋 2 民家 3 老人の家(要:とうぞくのかぎ)4 空き地(正しくは森がある) 5 空き地(ただしくは道がある) 6 教会 7 宿屋 8 武器屋 9 空き地(大岩がある)
となっていました。
ちなみにこの確認のために作者は何度もドラゴンクエスト3プレイ動画をみて確認しています。実機プレイ中、こんなにもレーベの村に注目したことは間違いなくなかったと漏らしていました。
では次に、魔物襲撃直後のレーベの村です。
1 壊れた道具屋 2 壊れた民家(あたりに毒の沼地) 3 老人の家(要:とうぞくのかぎ)4 毒の沼地 5 毒の沼地 6 壊れた教会(あたりに毒の沼地)7 壊れた宿屋(あたりに毒の沼地) 8 壊れた武器屋(あたりに毒の沼地) 9 空き地(大岩がある)
となっていました。大変痛ましい光景です。村人の苦悩はいかばかりだったでしょうか……。
そして復興途中の今はこうなっております。
1 建設中の宿屋 2 空き地 3 老人の家(要:とうぞくのかぎ)4 空き地 5 空き地 6 空き地 7 空き地 8 小屋とトイレ×2 9 空き地(大岩がある)
……というようにほとんど何もない空き地になりました。いっそすがすがしいレベルですね。
本当にこれだからビルダーという生き物は……(諦め)
……さて。現状を把握しやすくなったところで、これから勇者とビルダーがレーベの村をどのように復興していくのか、続きをご覧ください。
すべては 精霊の 導きのままに……。
なお実況、解説はわたし。謎の大地の精霊『R』でお送りいたしました。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
謎の大地の精霊『R』……! いったいどこの誰ビスなんだ……(謎)
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4 レーベの村を ふっこう しよう パート2
白竜の月 22日
う~ん、なぜだろう。妙な電波を受信した気がするなぁ。
さて、村に襲いかかってきた魔物の群れを撃退し、僕自身のアイデンティティを取り戻した日から一夜たち、僕は今日も一日土木作業員のAとして汗を流した。
ビルドの書いた設計図はすごい。これさえあれば僕たちのような素人でも簡単に建物を建てることができるんだ。そしてその過程で僕は今まで知らなかった建築の基本を理解できた。
部屋とは、ブロックを二段以上積み重ねてできた壁で囲われた空間に扉をつけることで完成すること。
中に何を置くかによって部屋が何のための部屋か変化すること。今回の場合は宿屋なので作るのは寝室だ。レーベの村を解体した時に出た【ベッド】を二つ部屋に置き、泥と木材、それからスライムから絞り上げた油を使って作られた【カベかけトーチ】を部屋につけると、そこが【はじめての寝床】になる。
なるほど。知らないことばかりで何もかもが勉強になるなぁ……じゃないよ! 昨日の夜誓ったばかりなのに、もう流されてしまってお昼過ぎてるじゃないか!
恐ろしい……、これがビルダーの感染力。いや、影響力のすごさか。何とかお昼ご飯の【焼きキノコ】を食べ終わったあたりで自分を取り戻した僕は、ビルドを探して文句を言うことにした。
理由? 八つ当たりだよ!
そうやって他の人たちが宿屋づくりにはげんでいるのを横目に、僕は諸悪の根源を探す。そうして村の中を見渡すと……、いない。
おかしい。今の村は余計な障害物(建物ともいう)がないおかげでどこまでも見通しがよくて、村の中にいるなら姿が必ず見つかるはずなのに……。
そうして村の中を探していたら、村の外からホッとかハッとかいう声が聞こえてきた。
ビルドとフルカスの声かな? そう思って外の様子を見て……、絶句した。
なんか割と太めで先のとがった木の棒がいっぱい並んでるぅ!!
ビルド! ビルド、これ何なの?
僕はくい気味(ダジャレじゃないよ!)に、ビルドに尋ねた。
さかもぎ だよ
さかもぎ? 何これ、超こわいんだけど。だって村の西側に入り口の部分をのぞいてびっしり先のとがった杭が二列くらい並んでるんだよ?
これで まものも ちかづけ ないよ
なるほど……、確かに。でもそれなら村の北や南や東にも置かないと村を守れないんじゃない? いや、もしそんなことになったら見た目が本当に怖いからいいんだけど。
僕がそんな素直な疑問をぶつけると、ビルドはそんな僕にあきれるようにこういった。
あれる まものは きまった ほうこう からしか おそってこないよ
このむらなら にし からだよ
珍しく長いセリフを話したビルドは作業を再開した。僕はそんな恐ろしい杭が並ぶ光景を見ながら、僕なら絶対ここから襲ったりしないのにと思った。
ともあれ、これで村の人が望んでいた村を守るための施設が一つできた。これからも頑張らないと! 僕は意気揚々と宿屋の建築現場に戻ってその後も汗を流した。
そうして夜になる前、宿屋ができた! みんな出来上がった宿屋をみて涙を流して拍手をしながら喜んだ。特に宿屋のおじさん親子の喜びようはすごかった。ビルドに何度頭を下げてありがとうありがとうといっていたのが感動的だった。その様子にフルカスもフォンもカダルも涙を流していた。
よ~し、明日からも村の一日でも早い復興のため頑張るぞ!
追記 小屋に帰る前に完成したらしい【逆茂木】の様子を見に行くと、【逆茂木】のまわりにたくさんの【油】や【なまにく】が落ちていた。スライムやいっかくうさぎが通りがかりに何も知らず当たったに違いない。
あわれなスライムといっかくうさぎの冥福を僕は心から祈った。
追記の追記 やっぱり寝る前に『僕は勇者です。魔王バラモスをたおして世界を救うために旅をしています』っていう回数を三回から五回に増やすことにした。
白竜の月 23日
宿屋ができた翌日。僕たちは出来上がったばかりの宿屋とおじいさんの家のあいだの空き地にやってきた。
みんなが集まったところで、ビルドがまた空中で踊るように設計図を書き始めた。
できあがったのは、【道具屋と武器屋の設計図】だった。こじんまりとした小さな道具屋と武器屋を並んで建てるつもりの設計図。
設計図を書き上げたビルドは、【収納箱】に必要なそざいや家具なんかを入れていく。僕らはここから必要なものを取りだして、設計図通りに仕上げればいい。
いつの間にやら慣れてしまった建築作業をはじめようと思ったところで、ビルドから声をかけられた。
あれる ぼくたちは いつまでも このむらを まもっていられない
だから かわりに だれか このむらを まもって くれるひと さがそう
……なんてことだ。ビルドがとっても長ゼリフでしかもこの上なくまともなことをいっている! だとぉ!
しかも本来僕が考えないといけないようなことを一生懸命僕が大工の真似事をやっていた間に考えていただとぉ!
あまりの衝撃に、両手、両膝をつき地面にへたり込む僕と、同じように衝撃を受けたフォンとカダル。
特にカダルがショックをより強く受けたようで あれ? パーティの知恵袋ポジションってオレのポジションじゃないの? ていうか今のオレ、存在感ゼロどころかマイナスまでいってない? とかぶつぶつ言っている。
やばい、ここでリーダーシップを僕がとらないと。勇者から勇者(笑)への転職を余儀なくされてしまう!
僕は何とか表面上とりつくろってからビルドにいった。
ビルド、いい意見だ。ありがとう。じゃあ今すぐアリアハンにもどって王様に兵士を派遣してもらえるようにお願いしてくるよ。
僕がそういうと、ビルドはうんうんうなづいて僕にとあるアイテムをわたしてきた。
【キメラのつばさ】が二つ。
わるいけど ひとりで いってきて
あれるが いないあいだ ぼくたちが むらを まもってる
僕は力強く頷いて【キメラのつばさ】を手にアリアハンへとワープした。
心のうちに焼き焦げるほど焦燥をかかえながら。
やばい、これ以上飲み込まれないようにしないと。
僕は勇者アレル。勇者オルテガの息子、アリアハンの勇者アレルだ!
自分自身に改めて強く強く言い聞かせる。だってこのままじゃビルダーのビルド様とそのなかまの一員になっちゃうぅぅ!
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
逆茂木 そざい 木材×2 ヒモ
効果 当たった魔物にダメージを与える+魔物がノックバック(小)
初の完全なオリジナル要素です。ビルダーズにはないので念のため。
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5 レーベの村を ふっこう しよう パート3
白竜の月 24日
ふっざけんな、あの白いひげのクソじじいめ! ドケチなだけじゃなくションベンちびりの臆病もんかよ!
なんだぁ、アリアハンの街を守るために城から兵を派遣することはできないだぁ! 村ひとつまるごと滅ぼすような凶悪な魔物が迫っているなら、なおさらアリアハンの守りを堅めなければならないだとぉ!
自分の国の村がひとつまるごと滅ぼされておいてその態度は何だよ! お前は何のためにその空っぽの頭に王冠載せているんだよ!
……は~、ちょっと落ち着いた。あんまり汚い言葉使いはよくないよね。僕一応勇者なんだし。
結論からいうと、アリアハンの兵士をレーベの村へ派遣してもらうことは無理だった。理由はアリアハンの守りを堅めるため、だそうだが、本音は自分の身の安全のためだろうと僕は思っている。理由は僕が謁見を願ってレーベの村の惨状の報告をしたときに、王様の目に恐怖があったこと。その証拠に、僕が兵士の派遣を願い出ると、僕の言葉をさえぎるように、
な、ならん! ならんぞ、勇者アレル! 村ひとつ滅ぼすほどの強大な魔物が現れたならば、なおさらアリアハンの守りを堅めねばならぬ! だ、だからレーベの村に兵を派遣などできぬ!
と立ち上がり体を震わせながら叫んだのだ。
その後、さらに進言しようとした僕のことを追い払うように、報告ご苦労! さ、さがれ! ってだけいって自分が奥へと引っ込んでいったのには怒りよりも先に驚きと呆れしかなかったね。
僕自身、自分に驚いている。なんていうか子どもの時から勇者であれ、とおじいちゃんやお母さんに育てられた僕はなんていうか基本イイ子だったと思うんだ。だからもし前の僕なら王様にこんなに厳しいというか、乱暴なことを考えたりできなかったと思う。
でもこの数日でビルドや村の人たちと触れ合って自分自身が変わった気がする。これは同じ場所で寝て起きてご飯を食べて、一緒に同じ目的をもって苦労と努力をしたおかげだ。
つまりそれはビルドのおかげだ。そこはちゃんと認めないと。
ビルドはどうしようもない破壊魔で、無口で、いつも締まりのない笑顔で、とにかく破天荒で、森でも山でもどんどん壊すし、マイペースだし、一緒にいるだけで僕の中にある常識をどんどん壊すしでとにかくとんでもない奴だけど、でもすっごくいいやつでたぶん僕よりもずっと優しい。
そんなビルドに負けない為にも、何とかあの村に誰か頼りになる人たちを村に連れて帰らなきゃならない。じゃないと僕たちは前に進めなくなっちゃう。
必要なのは戦える人だ。ある程度の人数と力と戦う意思がある人だ。装備なんかはビルドに頼んで何とかしてもらえるから、暇と力を持て余している人、誰かいないだろうか……。
そこまで考えたところで、ビカッと僕の中に閃きが走った。うまくいくかどうかわかんないけど、これならいけるかもしれない。そう思いながらアリアハンの城から城下町に至る無駄に長い長い道を僕は走り出した。
やがて見えてくる僕の街、アリアハン。よかった、街は僕の知っている平和な街のままだった。小さなころ上から落ちた広場の木も、活気のある大通りも何も変わっていない。でもいつまでもこのままとは限らない。いつあのレーベの村みたいにボロボロになってしまうかわからない。
だからこそ僕はこの街をあのレーベの村みたいにしないためにも、一刻も早くバラモスを倒すために前に進まなきゃならない。
でもだからといって助けられる人たちを置き去りにして前だけを向くのはダメだと、この数日のことだけど僕は学んだ気がするんだ。
そのせいだろうか、まだ旅立ってそれほど経っていないのに何故だろう、15年間暮らしたこのアリアハンの街のことを何だか懐かしいと感じる自分がいた。
道具屋さんのおじさんの前を通り過ぎ、まっすぐ行けば街の外に出る道の十字路を右にまがって目的の場所へと僕はたどり着いた。
ルイーダさ~~ん! ちょっと相談があるんだけどぉ!
白竜の月 24日のつづき
うまくいった! さすがはアリアハンの誇るルイーダのさかばだ!
昨日、僕は王様にレーベの村への兵士の派遣を断られたあと、ルイーダさんのところに行った。
『ルイーダの酒場』っていってアリアハンで一番人気のある酒場でいろんな人が集まっている。僕が戦士のフルカス、武道家のフォン、僧侶のカダルと出会ったのもこの酒場だ。
そんな酒場の女店主のルイーダさんはいつもこういって僕たちを迎えてくれる。
ここは ルイーダのみせ。
たびびとたちが
なかまをもとめて あつまる
であいと わかれの さかばよ。
なにを おのぞみかしら?
ってね。
ここなら戦う人が集まるここなら何とかなるかもしれない。だから僕はルイーダさんにありのままの事情を説明したんだ。レーベの村が大変なことになったこと。その復興を僕らが助けていること。でもこのままじゃ僕たちがいつまでも旅立つことができないことなんかを。
そうしたら、ルイーダさんはとってもきれいな顔にちょっぴりのとまどいをうかべながらこういった。
ん~、事情は分かったけれどこういうお願いは初めて聞いたわ。ねぇ、アレル坊(僕とルイーダさんは子どもの時からの長い付き合いだから、いつまでたっても子ども扱いされる)悪いけれどちょっとアタシに時間をちょうだいね。とりあえず夜になったらもうちょっと人も集まるだろうか、事情を説明して行ってもいいっていう人たちがいないか聞いてあげるよ。
それを聞いて僕はうれしくなった。少なくても僕の話をルイーダさんはちゃんと聞いてくれている。そう思ったからだ。
だから正直、あの腰抜けケチじじいが王様をやるより目の前のきれいで気風がよくて、そして何より優しさと思いやりのあるルイーダさんが王様をやったほうがいいんじゃないかと思ったくらいだった。
だから僕はいったんレーベにもどって現状の説明をなかまたちや村の人たちにしようと思って外に出ようとしたんだけれど、そこで呼び止められたんだ。
戦士のハンソロさんと魔法使いのマーリンさんと僧侶のエルシトさん。
ずいぶん長くこのアリアハンの街とルイーダの酒場を拠点にパーティを組んで魔物退治をしているベテランさんたちだ。
アレル、その話俺たちにも詳しく聞かせてくれないか
そういわれたので僕はルイーダさんにしたのと同じ話を三人にも話した。話を聞きおえた三人は、少しだけ三人だけで相談してから僕にこういってくれたんだ。
いいぜ、オレ達が行く。アレル、お前たちは村の復興にめどがついたら先に進むんだ。
って。
喜ぶ前に驚いた僕が事情を詳しく聞くと、三人はそろそろ積極的な意味での魔物退治を引退してパーティを解散しようか話し合っているところだったらしい。今のアリアハンはロマリアの通じるいざないのほこらが使えないせいで、他の国々への移動は難しいし、自分たちも年齢的に現役をやり続けるのに辛くなってきたからと。
だから村を守りながら今後の余生をのどかな村で暮らすのもいいと思い引き受けてくれる気になったそうだ。
でも、それだけじゃないことはまだ経験が少ない僕にも分かった。前に進もうとする僕たちが安心して旅立てるように
って思いでいってくれてるんだってことが。
ありがとうございますって僕がいうと、笑いながら僕の背中を叩いてくるハンソロさん。しわだらけの顔にやさしい笑みを浮かべて僕を見てうなづいているマーリンさん。口ひげが似合うエルシトさんが本当に困った顔をしてこの酒場で酒を飲めなくなるのだけは困るなぁなんていうから、みんなで大声で笑ってしまった。
……ビルドにレーベの村にも酒場が作れないか聞いてみようかな。そうすればもっと村に人が集まるかもしれないし。そんなことを考えながら、僕は一足先に【キメラのつばさ】でレーベの村へと戻った。
夜に村へと帰り着いた僕を待っていたのは出来上がった武器屋と防具屋、そしてきれいになったはずの村と村のまわりに広がる毒の沼地だったのである。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
アリアハン、ロマリア、ポルトガ、エジンベア……。まともぽいのがイシスとサマンオサだけとか、ホント、ドラクエ3世界はまともな王様いねぇといわざるを得ない。
せめて旅立つ勇者に十分な金と装備よこせよという全ドラクエユーザーの魂の叫びが今回の話になったと思いますwww
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6 レーベの村を ふっこう しよう パート4
白竜の月 25日
何があった? 僕はすぐさまどうのつるぎを引き抜いて臨戦態勢を整えて駆け出す。
すると地面に座り込んでいるフォンとカダル。村の西側のへりに仁王立ちして村の外、魔物がやってくる方向をにらみつけているフルカス。そしてせっせとまた逆茂木? だっけかをフルカスの見ている先に置いていっているビルドの姿があった。
僕はフルカスに何があったか尋ねた。
僕が朝に【キメラのつばさ】を使ってアリアハンに帰ったあと、ちょうどお昼前に武器屋と道具屋の建物が出来上がったらしい。そうしてみんなが喜んでいる最中に魔物が攻めてきたそうだ。
魔物は今回は前回の襲撃とは違って、この村をボロボロにした時と同じようにフロッガーやバブルスライムの群れが押し寄せたらしい。
だがそこで活躍したのがビルドが作った【逆茂木】だった。【逆茂木】に阻まれ魔物たちはほとんど村に近づくこともできずに、次々と突っ込んでは自滅していったそうだ。
そうして敵を一掃して一息つこうか、と思った瞬間そいつらはやってきたとフルカスは言う。
身の丈が直前までいたフロッガーの二倍以上、よどんだ水色の肌をした巨大なカエルの魔物――ポイズントードが三体現れ【逆茂木】をものともせずに突っ込んできて、ダメージを負いながらも口から毒のかたまりを放物線上に吐き出したらしい。
さすがの【逆茂木】も高いところから山なりに放たれる毒のかたまりには何の効果もなく、逆茂木を飛び越えて毒の沼地がまたそこかしこに出来上がっていく。
そうして見る間に汚染されるレーベの村の西側。それを見たフルカスたちは復興しつつある村を守るため、果敢にポイズントードに挑み、そしてつい先ほど奴らに止めを刺した、ということらしい。
しまった、もう少し早く帰ってくれば僕も力になれたのにと思う気持ちと、よく僕がいない間、そんな強敵に打ち勝ち村を守ってくれた仲間を誇らしく思う気持ちで胸がいっぱいになった。
地面に座り込んでいる二人にも、ねぎらいの声をかけると疲れてはいるもののだいじょうぶ~との声が返ってきたので安心した。
それよりも問題なのは、村の人だ。明らかに表情が暗い。無理もないと思う。つい先日村をボロボロにされ、そして今また再度の襲来で村が脅かされたのだ。そしてその傷跡そのものである毒の沼地が広がって……ってアレ?
さっきまで前のように村全体に広がっていたことに比べればほんのちょっととはいえ、広がっていた毒の沼地はいずこに? と思って辺りを見回してみると、いた。
ビルドだ。僕が話を聞いている少しの時間の間に毒の沼地の処理をすませたに違いない。あのほんのわずかな時間にこれほどの作業を。まさに僕たち素人とはけた違いの圧倒的ビルド力……。
おそらく僕らが初めて見る本気のビルドの姿だ。
たぶんなんだけれど今回の魔物の襲撃がプライドに触ったに違いない。自分が作ったものを作っている最中に邪魔されたっていうのがビルドのビルダー魂に火をつけたんだと思う。
そうして今度はふくろから石垣のブロックを取りだして西側の村と外との境に並べだした。僕がいることなんておそらく目に入ってない。完全に自分の世界に逝っちゃっているビルドに恐ろしさとたくましさを感じ、その姿をしばらく眺めていることにするのだった。
徐々に村人の顔に明るさが戻って行くのがわかる。どんどん出来上がっていく壁に安心感を覚えているんだと思う。どうしても魔物を倒すことに気持ちが行きがちな僕にはある意味真似のできないやり方だなと素直に思った。
……そして、その後もビルドは止まることなく働き続けゴースト避けのたいまつが立ち並ぶ中、ビルドは黙々と夜中まで作業を続け、あっという間に村全体を囲う地面から見て上まで八段積みという石垣と丸太壁でできた頑丈そうな高い壁を作り上げた。
これならポイズントードがどんなに頑張っても毒のかたまりは村には届かないだろうね。
むふ~と息をはきだして完成した壁を見て、周りを見て、ようやく僕が帰ってきていることに気づいたらしいビルドが僕はこういった。
おかえり あれる ちゃんと むら は まもったよ
うん、見てたよ。ビルド、君は僕の自慢のなかまだよ。
追記 そざい が ほとんどなくなったから またとりに いかなきゃ
というビルドの独り言を聞いた瞬間、戦慄とともに僕はあっこれはまた森や山がいっぱい消えるんだろうなと確信した。
特に森。今回村の周囲全面を囲う壁というすごい量の木材を使っただろうから、森林ダンゴで作った森で足りればいいけどと僕はアリアハンの景観の心配もしなくちゃならないのは、本当に勇者の仕事じゃないと思った。
誤字脱字、感想お願いします。
明日の更新は出かけるのでたぶん無理です。明後日木曜にはまた更新しますのでよろしくお願いします。
今回ビルドが作ったのは、下二つ石垣、そのうえに縦向きの丸太四つ、紐付き丸太一つ、最後にとがった丸太飾りというパーツで構成された丸太壁です。
あと、ちゃんと出入り用の扉はついてますので。
というわけで完全に墨俣一夜城みたいな外見へとレーベの村はビフォアアフターしました。
ともあれビルダーズ2なら簡単に再現できますのでよろしければぜひ(ダイレクトマーケティング発動)
追記 本日、日刊ランキング60位でした。ビックリです。ありがとうございます。
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7 レーベの村を ふっこう しよう パート5
白竜の月 30日
まもなく白竜の月が終わり、地竜の月へと暦が移り変わる。というわけで日記が五日ぶりになった。ふりかえると激動の五日間だった。
こうしてまた日記が書けるようになったことは大変にいいことだ。とにかくこの五日間は大変な激動の日々だった。僕らにとっても、レーベの村にとっても、……そしてアリアハンの大地と景観にとっても。
恐ろしい試練の日々だった! 本当に!
あぁ、書きたいこと、突っ込みたいことが多すぎるけれど自分自身整理する意味もかねて時系列に沿って順に整理していこうと思う。
時系列 白竜の月26日
白竜の月の26日。つまり僕がアリアハンへ行ってルイーダの酒場でハンソロさんたちの協力の約束を取り付けたあと帰ってきた日であり、レーベの村がポイズントードの襲撃を受けた翌日からはじめよう。
この日ビルドは前日にあれほどの大仕事をこなしたにもかかわらずいつも通り元気だったのだが、動きは少なかった。
村の真ん中の空き地に座って、ボーとした顔で何かを考え込んでいたのである。
気になった僕が、
ビルド、どうしたの?
って尋ねたら、
ん~ あれる か
むらに つぎなにをたてるか かんがえている だけだよ
と応えてまたうわのそらに。
だけど僕の耳は聞き逃してくれなかった。
そざい そざい そざい そざい そざい そざい
ほしい ほしい ほしい ほしい ほしい ほしい
って小さな声でリズミカルにつぶやいているのを!
ひぃ! と小さな悲鳴を上げて後ずさる僕。
何か恐ろしいことが起きるかもしれないと、昨日ビルドが作り上げた村ひとつ囲う壁を見る。フォンもカダルも村の人たちも僕と同じようにほぼ真上を見るように壁を見ている。
そして明るくなった、そして一夜経って僕自身も冷静になったことで思い知った。
……どう考えても過剰だろ。
壁から結構離れているのに壁のてっぺんを見ようとするとかなり首が痛くなるだと。
ぼそぼそとちょっとだけ聞こえるビルドの声に聞こえないふりしながら物を作る喧騒が久しぶりにしていない村の静かさ。
そんな嵐の前を思わせる朝が終わり、太陽が頂点から傾き始めたころ、早速村にハンソロさんたちがやってきた。村の入り口に設置された【丸太の大トビラ】を開け、三人を迎え入れる。
お~い、アレル! やってきたぞ。……ところでここホントにレーベの村か? レーベの村にこんな壁絶対なかったはずなんだけど一体どういうことだ?
おどろきながらもにこやかに村に入ってきた三人のそんな当然すぎる疑問に苦笑いを浮かべながら応える僕たち。
ハンソロさんはしきりに壁に触ってこれなら俺たちの仕事は楽勝だな! なんていってるし、マーリンさんは背中に背負った大荷物が堪えたのか草地の上に腰を下ろした。
エルシドさんは早速ビルドに話かけると、お前さんすごいものつくりの名人らしいな、どうだ? この村にも酒場やバー、作れないか? って聞いてる。よっぽどお酒が好きなんだなとみんなで笑いあう。そうして村の人たちは僕たちが出て行ったあとも守ってくれる戦士たちを大歓迎した。
せっかくだからパーティだ! といった具合に、なまにくが焼かれ、キノコも昆布も焼かれにぎやかな昼食が始まる。
だけどそんな時間は長く続かなかった。その日の来客はそこで終わらず、招かれざる客がやってきたのだ。
またもあらわれた大量のフロッガー、バブルスライム、そしてポイズントードが姿を見せたのだ。
その知らせを聞くやいなや、とびあがってビルドは壁にはしごをかけててっぺんまで登りはじめた。
急いで僕らも追いかける。一番上で即席の足場を用意して魔物たちを見下すビルドの背中。
僕たちはその背中に、
やれる もん なら やって みろ
と太字の赤字ででかでかと書いてある……ように見えた。
そこからは一方的な展開だった。昨日の襲撃と同じように【逆茂木】を越えられず自滅するフロッガー達。同じく突っ込んできたポイズントードだったが、放物線をえがいて飛んだ毒のかたまりは全て壁にはばまれ村に被害はゼロ。
そのままいくつか【逆茂木】を壊すことには成功したものの壁の破壊には至らずそのまま倒れるポイズントードたち。
完全勝利だ!
そうして村中の人たちが喜んでいる中、外から甲高い声が聞こえた。
ナァンダ コノ馬鹿ミタイニ 高イ 壁ハ!
突然現れたその声の主は、茶色の葉っぱを縦にしたような仮面をかぶった腰みの姿の変態、もとい魔物だった。
僕の後ろにいたフルカスが僕を押しのけるように前に出て壁のへりに前のめりになりながら、かすれた声でそいつの名を呼んだ。
ゾンビマスター、だと?
ゾンビマスター が あらわれた!
ゾンビマスター。名前だけは僕も聞いたことがあった。はるか遠くの国であり、フルカスの故郷であるサマンオサに出没することかなり高位の魔物で、死霊系の魔物を操る非常に厄介な魔物として知られている。
サマンオサ地方ではこいつに率いられた魔物によってほろんだ村々は数知れないといわれているほどの強敵。
それがなぜアリアハンに? 決まっている。バラモスの指図に違いない。そう思ったとき、僕の体の中で血が燃え上がるようになった。奴はたおさなければならない。勇者の使命とかは関係ない。奴は存在するだけで僕の国を、故郷を、このアリアハンを地獄に変える存在だ。
今ここで倒す。
決意を固めた僕が、急いで下に降りようとした僕をビルドが肩をつかんで止めた。振り払おうとした僕の耳にビルドの声が響く。こんなビルドの声聞いたことない。
なにか いるよ とても おぞましい ものが
ビルドの硬い声が呼んだのだろうか、奴の背後にある土がどんどん毒の沼地に変わっていく。そしてみるみる広がっていく沼地の中から、やがてそいつが、ビルドが言ったなにかおぞましいものが現れたのだ。
薄い紫色の肌。苔のような色のぼさぼさ髪と、髪と同じ色をした朽ち果てた服を着た巨人。左の眼窩からは眼球が失われ、残った右目で世界の全てを恨むように目の前を見ている魔物がそこにいた。
ゾンビマスター は なかまを よんだ!
どくどくゾンビ が あらわれた!
そのあまりの光景に誰も僕自身も動けなくなっている中、ゾンビマスターの甲高い声だけが村に響く。
マァ イイ 面白ク ナッテキタナ オイ ヤレ
その声でどくどくゾンビが動き出す。毒の沼地の中に両手を突っ込み、取りだした巨大な岩を奴は頭上に持ち上げて壁に向かって投げつける!
うなりをあげて宙を飛ぶ大岩が壁に激突するとものすごい揺れがおき、壁の上にいた僕らは振り落とされそうになるのを必死でこらえた。
そして地響きがして土煙が上がり、急いで下に降りた僕たちが見たのは。
……あんなに頑丈そうだった丸太の壁に開いた大穴だった。
また甲高い声が聞こえる。
デッカイ穴ガアイタ! デッカイ穴ガアイタ! 面白イ! 面白イ!
面白イカラ シバラク イカシテオイテヤロウ!
絶望シロ! ニンゲンドモ! 次ニ 我ラガ 来ルトキが オマエラノ 最後ダ!
そういって去っていくゾンビマスターとどくどくゾンビ。
あぁ~もうだめだぁ……。
そんな声に僕が振り返ると、そこに集まっていた村人たちの顔には絶望と、そしてあきらめがあった。
僕も、フルカスも、フォンも、カダルも、ハンソロさんたちもその声のあまりの悲痛さに、そして次々に二転三転する早すぎる展開に誰も動けなかった。なんていっていいか分からなかった。僕は拳を握りしめる。
何が勇者だ。勇気ひとつ、希望ひとつ与えてあげられないなんて。情けなさとくやしさでどうにかなりそうだった。
そんな中、ビルドが動いた。いつものように緊張感のないにへらと笑った顔で。足場を作って、あっという間の早業で壁の穴を早々と埋めたビルドは僕のところに来るなりこういった。
あれる そざい さがしにいこう
あいつら やっつけなきゃ
その時のビルドの顔に浮かんでいた笑顔を、僕は一生忘れないと思う。三日月みたいに口元がぐ~んと上がった笑顔。満面の笑顔。
なのに、怖い。
そして小さな声が聞こえた。
まものめ よくも やって くれたな
ぼくに じかんを あたえたことを こうかい しろ
そうつぶやいたビルドが僕には恐ろしい あくま に見えたのだった。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
というわけでアリアハン・レーベ編のボス登場となりました。
ここからの五日間にアレル君はついてこれるのか!
デュエルスタンバイ! 次回 アレル(くんの胃が)死す!
※ 二月五日修正済み
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8 レーベの村を ふっこう しよう パート6
可能な限り、原作の枠に収まったままいい感じにシナリオが組めましたのでそっちで参ります。
時系列:白竜の日 26日 昼~夜にかけて
その後、すぐさまビルドは動き出した。まず最初にフルカスに何かを渡していくつか指示をしてからフォンとカダルにもフルカスと一緒に動くように言っている。
村人には安心してくれ。大丈夫だからといい、到着したばかりのハンソロさんたちには、もしもの時には村人を守ってくれと言い残し、ビルド自身は僕に、
あれる いくよ
といって大きな岩がある村の南東に向かい、砂を取り除いて縦穴を掘りはじめた。
ある程度深く掘れたところで上まで上がりやすいように【石の階段】を設置してから今度は人が六人一度に歩けるくらいの幅の横穴、つまりトンネルを掘りはじめる。
ガンガンという音がひたすら響きどんどん穴が広く、かつ奥へ広がっていく中、僕が後ろでその様子を見ていると振り返ったビルドが、
あれる まっすぐ つづき を ほって くれる?
そういい残してどこかに行ってしまうビルド。こんな大事な時なのに今さら穴掘りなんて! と思いながらもビルドの今まで以上の有無を言わせない迫力に僕は素直に穴を掘ることにした。
どれくらい時間がたったのだろう? 自分的には結構頑張ったかなと思えるくらいに掘った僕が一休みしていると、やがてなぜかガンガンという何かを壊す音がうっすら聞こえはじめた。
ビルドかな? もしかして僕がいる穴と平行に穴をもう一本掘っているのかな? とおもったけれどどうやら違う。
おっかしいな~、なんで『前』から音が聞こえてくるんだろう。口元のひきつりが抑えきれない。やがてどんどん音は大きくなり、最後にバカ~ン! という気持ちがいい音がして僕の目の前にビルドがあらわれた。
やぁ、と軽い感じで片手をあげて挨拶してくるビルド。
ビルド、正直に言うよ。さっきどくどくゾンビがあらわれた時より僕びっくりしてるからな!
そっちも前から掘るなら先にそういっておいてよ! 首かしげるな!
というわけでめでたくトンネルが開通したわけだけど、そうなるとどこにつながっているのか気になってしまい僕は僕から見てトンネルの先へと歩き出した。
ビルドも一緒についてくるんだけど道中流れるような手つきでトンネルの壁両面に【石垣】をつんでいかないで! 速過ぎる! 怖いから! そうしてたどり着いた先にはけっこう広めのスペースがあった。そこは壁も床も全部【石垣】でできた大きな部屋で、ところどころ【木の壁】で柱を作って補強してある、そんな広間が広がっていた。
ないそうは また こんど ゆっくり やる
そういったビルドに促され階段を上ってドアを開けるとそこは、この前の小屋のところだった。つい先日フロッガーの大群に襲われ、ビルドのすごさを初めて感じたあの小屋の場所だ。
外に出てまわりの風景を確認すると、僕の視界の先にはナジミの塔へとつながる地下通路の入り口とろうやのかぎがかかった石造りの建物がある。
間違いない。ここは確かにあの小屋のあったあたりだと思い、振り向いたらそこには小屋がなかった。
ちっちゃい山ができていた。
いや、山というか丘? 土でできた丘ができていて、その丘に目立たないようにわらでできた扉がついているそんな感じの何か、としか説明の出来ない建物? ができていたのだ。しかもしっかり緑っぽい草で覆われた土だから風景に溶け込んでいて、知らなかったら間違いなく元々こういう場所だと勘違いするほどのカモフラージュっぷり。こんなの外から見ても中が全部【石垣】でできているなんて全く分からない。
これで もしもの ときでも だいじょうぶ
その言葉で僕はビルドが何をしていたのか理解した。村が襲われているときに村人たちを安全に逃がせる避難場所を作っていたんだ。
【焼きキノコ】をむさぼりながら、来た道を引き返していくビルドの背を追って僕も走り出す。
え?
ぼくが つうろに いしがきで かべを つくるから
あれるは つうろに この たいまつ ならべてよ
ってだから早すぎるよ、ビルド! 作業も切り替えも!
お願いだからもう少し説明して!
時系列:白竜の日 26日~27日 夜
地下通路を通り村へと帰ってきた僕ら。ビルドは夕食後にみんなをあの秘密基地みたいな避難所へと案内した。
これで もしものとき も ひとあんしん
そういってビルドは村の復興作業を始めた時、最初思いつかなかった村人のお願いをちゃんとかなえたわけである。
当然、村人たちは大喜び。みんな安心したのかへたり込んで泣きながらありがとうありがとうといっている。
そんな中、ビルドはハンソロさんたちにもしものときの指示を具体的にやっていた。
まず まほうつかい さんと そうりょ さん
むらのひと と いっしょに このみちを にげて ください
せんし さん は いりぐちを つちで とじて
それが おわったら これで ありあはん に にげて
そのあと ここに あるいて もどってきて ください
そういってハンソロさんに【キメラのつばさ】と【やくそう】をたくさん、あと【せいすい】を渡す。過去最長しゃべったビルドはあんなに作業を続けても全く疲れもしないのに、たったあれだけ話をしただけで体力を使いきったかのようにぜーはー言いながら肩で息をしていた。
どんだけ無口なんだよ。一言しゃべるのにどんだけスタミナ使ってるんだよ。心の中できっちり突っ込む僕。
ちなみに、【キメラのつばさ】と【やくそう】はビルドの御手製。【せいすい】はまだビルドがいなかったころ、僕たちが初めてレーベの村にやってきた時に道具屋で買ったものだ。
改めてビルドの言葉を思い出し、ひとつひとつ検証していく。正直、完璧だと思う。何故なら奴らの目的はせっかくぶっ壊したのに、あっという間に立派な壁を作った目障りな村をぶっ壊すことだと思う。
そのことは前回村があんなに徹底的に壊されたのに死んだ人がいなかったことからたぶん間違いない。一人残らず見つけ出して人を殺すっていう感じはなかったからこそ、村の人たちは今も生きているんだから。
なるほど、これなら魔物が仮に攻めてきても村人もハンソロさんたちも無事に済むはずだ。僕がビルドの計画に感心していると、ハンソロさんがばつが悪そうな顔をしてほおをかきながらビルドに疑問をぶつけた。
なぁ、物づくりの坊主。俺たちはこの村を守るためにここに来たんだが、本当にそれでいいのか? その方法なら村人は守れるけどよ。村は守れねえだろ。……そりゃ、俺たちも死にたいわけじゃねぇ。だから助かるんだけどよ。なんというか……な?
そんなハンソロさんにビルドはにっこり笑って、
むらは ぼくが なんどだって なおすから だいじょうぶ
でも ぼくも ひとは よみがえらせ られないから にげて
いのち だいじに !!
その言葉を聞いたハンソロさんたちは大笑い。あんまりおかしかったのかハンソロさんはヒーヒーいいながらビルドにいう。
よし、分かった! それなら俺たちも安心してとんずらさせてもらうわ! あとのことは任せたぜ! ビルド!
ビルドはその言葉を聞いてコクコク高速でうなづいた後、ふくろから無数のたき火を取りだしそれでものすごい量の料理を始めた。とまることなく焼けていくなまにくとキノコ、あと少しだけこんぶ。しばらくそれを続けてたき火を片付け、ビルドは何でもないことのように、僕に【たいまつ】を渡し、自分自身も【たいまつ】を手に持ってから僕に、
じゃあ あれる いこうか
といって真っ暗な村の外へとダッシュで飛びだそうとするから、さすがに腰に抱き着いてタックル気味になりながら止めた。
だ・か・ら!
お願い! だから!
説明を! して!
僕の大声が真っ暗な夜に響き渡って消えていく。
そんでビルド! なにを いって いるの? って顔禁止! 首かしげるのも禁止! とりあえず今、何考えてるか説明しろ! この暴走ビルダー!
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
びるどは ちからを ためている
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9 レーベの村を ふっこう しよう パート7
時系列:白竜の日 27日 未明
暴走ビルダーを何とか止めることに成功した僕は、まず寝起きをしている小屋の前の【たき火の憩い場】でビルドの考えを聞くことにした。
これは真ん中の【大きなたき火】の周りを【丸石】で囲んだ【大たき火】を中心に適当にイスや丸太、大きな流木などで置くと完成する【部屋:公園】の一種。
ちなみにこの【大きなたき火】は一度に五つの料理が同時並行で作れる超優れものだ。
その【たき火の憩い場】に車座になって僕らはビルドの考えを聞くことにした。
え~と なにが ききたいの?
そこからか! 全部だよ! 何考えてるか全部はけ!
らちが明かない。とりあえずまず先にフルカスに話を振る。
フルカス、昼にビルドに何を頼まれたの?
僕の質問にフルカスはニヤリと笑っていう。
俺がビルドに言われたのは、フォンとカダルを連れて素材を集めて来いということだ。特にビルドから取ってこい言われたのは【石材】と【砂】だな。だから今日の俺たちは【石材】に関しては道中小石や大きな岩を見つけたら片っ端から壊して、【砂】はアリアハンの大橋をまっすぐ西にいったとこにある大きな砂地でいっぱい取って来た。
あとは……スライムは見つけ次第倒して【油】を回収して来いとも言われたな。フォンとカダルがぐったりしているのはスライムを見つけたらひたすら倒し続けるってのを半日機械的にやってたせいらしいぞ。まだまだ鍛え方が足りんぞ! 二人とも!
そう暑苦しい感じで説明してくれたフルカスは、腰につけていたふくろとをビルドに渡した。ふくろはビルドが使っているものとほとんど同じもので、たぶんビルドの予備のふくろなんだと思う。
そんな予備のふくろを受け取ったビルドは中をのぞいてニッコリした後、ふくろ同士をポーンとぶつけるとまたフルカスにふくろをわたしてこういった。
ありがとう あしたも よろしくね
その言葉にフルカスはニヤリと笑って、おう! と力強く答え、フォンとカダルは頭を抱えて絶望しかない顔でイヤだ~、スライム狩りはもう嫌だ~! と叫んでいた。
二人、仲いいよね。何というか親近感を感じるよ。主にビルドの被害者という共通点で。
それにしても【石材】に【油】は今までもいっぱい使ってたからわかる気がするんだけど、【砂】? 何に使うの? と僕が聞くと、
あれる とりあえず そざい は あつめる ものだよ
と真顔で言われたから、おぅ……そうだねといわざるを得なかった。
もう ききたいこと ない? じゃあ
とまた飛びだそうとするからもう一度引き留めて、一番聞きたいことを聞いた。
ねぇ、ビルド。あのゾンビマスターたち、どうやって倒すかもう考えてるの?
と僕が聞くとビルドはいつもの緊張感のない笑顔で、
ん~ まだ ぼんやり だけど おもいついてる
ていうものだからびっくりした。あの巨大な魔物相手に対策をもう思いついてるの? だって今までのようにはいかないはずだ。【逆茂木】でダメージを与えられるかもわかんないし、壁をいくら並べても、それこそ頑丈な【石垣】で壁を作ったとしても、あの大岩をぶつけられたらすぐに壊されてしまうに違いないから。
そんな強敵相手にぼんやりとはいえ倒し方もう考えついてるの? キミの頭の中ど~なってんの? と僕が考えていると、ビルドはでも、と続けて
まだ あたまのなかに せっけいず が できてない
だから まず どう を さがさないと
といい、もう待てないというようにイス代わりに使っていた【大きな流木】から立ち上がり飛びだそうとするから、
ビルド! その三段論法はおかしいよ! ホップとジャンプの間にステップがなさすぎだよ! それに銅はあんなに、具体的には山1ダース分くらい探したじゃないか! みつからないよ!
と僕がいうと、ビルドは『やれやれこれだから素人は』的なイラァっとする顔で僧侶のエルシドさんを指さす。
え? 俺? 俺なんかやったか?
と驚くエルシドさんと僕らに向かってビルドはこういった。
そうりょ さん が ば~ が ほしいって いったから
ば~ を つくるのに かかせない どうは かならず どこかにある
と確信したマジの目でこっちを見てくる。そう言ってから東のほうを見る。視線のずっと先には白く高い岩山が。
というわけで いくよ
そういってもう一秒たりとも待てないといわんばかりに村から今度こそ飛び出していくビルドと放っておけないからそれについていく僕。
闇夜に襲い来るゴーストすらぶっちぎる高速のダッシュっぷりを発揮して、僕らは今まで魔物が多く危険なため近づかなかったアリアハン東部へと足を踏み入れた。
それにしてもさ……、誰かが欲しいって言ったならどこかにあるって因果関係が逆転してないかなぁ!?
時系列:白竜の日 27日 未明から朝にかけて
高い岩山の間を抜ける谷間を通って僕らはアリアハン東部へ。この辺りは今までの魔物と出現する魔物ががらりと変わる。
レーベの村周辺にはほとんどあらわれないしっぽに毒を持つさそりばちがうようよいるし、じんめんちょうという気持ちの悪いちょうちょもいる。そして何よりメラの魔法を得意とするまほうつかいという魔物の縄張りであり、さらに最近今まで見たこともない大きな魔物がこの辺りを徘徊しているという情報もあり、アリアハンのものは絶対に不必要に近づくことはしないのだ。
そんな こと しらねぇ
といわんばかりの顔をして危険地帯を疾走するそざいバカを何とか護衛しながらついていく僕。
だってさ、キメラとかさそりばちとかうろうろしててもお構いなしに森に山に平地に突っ込んでいくんだよ?
まほうつかいのメラが飛び交う中をさっそうと走り抜けるとかどこのB・ウィ〇スだよ! ハードか! 大ハードなのか! そしてビルドに気を引かれているうちにこっそり一匹づつ魔物を倒すとか僕はいつ勇者から暗殺者へ転職したんだよ! 僕は剣士適性と魔法使い適性はあっても暗殺者適性はないはずなんだぞ!
あと最近我ながら人間性(キャラ)崩壊が激しくてついていけてないんだよ!
ほらまた変な電波受信しちゃったじゃないか! あやまれビルド! 不思議そうに首をかしげるな!
そうこうしているうちに僕たちは東部の山裾の大きな森へとたどり着いた。きょろきょろ周りを確認するビルド。それにしてもこの森深くない?
建前) こんな見通しの悪い場所なんて、危険極まりない。こんなところで敵に囲まれたらどうしよう。危ない! 早くここから離れないと!
本音) レーベの村近くの森とは木の密集具合が違うし、キノコも多い。これなら効率よく短時間でたくさん【木材】や【キノコ】がとれるなぁ。やったぁ!
……ビルドにじと目で見られている。まさか、本音をみやぶられたのか? いや大丈夫だ。いかにビルダーといえど心を読む道具なんて作れないはず。
こっそりニヤリと笑うビルドは見ないことにして僕らは森の中を(そざいを回収するためあらかたぶっ壊しながら)進み、やがて今までとは違う黄褐色した山のふもとへとたどり着いた。これは……。
おうざんがん だよ
そういって軽くおおきづちで【黄山岩】? を叩くビルド。するとまるでキンキンと金属同士を打ち合わせるような音がした。
そこで閃いた。この岩を何とか加工して村を囲えばあのどくどくゾンビの岩投げも防げるんじゃないだろうか? そう僕が提案するもビルドは(いつものように若干小ばかにするような様子でなく)首を振って、
だめ あのいわ は たぶん しろのかべ でも ふせげない
といって僕の提案を却下した。
そしてもう一言付け加える。
あのいわなげ の あのいわを なげる こうどう は あいつを やっつける ちゃんす だよ
たぶんね、といって【黄山岩】でできた黄褐色の岩山を登り始めるビルドに今の僕はついていくしかなかった。
そしてその中腹、ちょっと広がったテーブルのようになっている場所で僕らは見つけたんだ!
山肌にむき出しで光る【銅鉱石】を!
本当にあったよ、ビルド! すごいよ、ビルド! と僕が声をかけようとしたらビルドは既におおきづちを振るってそざいの採取をはじめていた。
――【銅鉱石】ガン無視で。
その台地一面に生えていた何だか丈の高い枯れたような色の草を採取するビルド。
顔には満面の笑顔でおおきづちを振るう。振るう。振るう!
その顔にはもはや狂気すら漂っていた。そうして根こそぎそこに生えていた草を全部刈り取り、申し訳程度に一個だけ【銅】を手に入れたビルドはふくろから【キメラのつばさ】を取りだし、僕に今までないほど早口かつ強い口調で、
かえるよ!
といって【キメラのつばさ】を空に放り投げた。
ビルド! まだあんなに残っている【銅】は『どう』するんだよぉ!
誤字脱字、感想よろしくお願いいたします。
誤字報告、二件ありがとうございました。お名前は念のため伏せますが、感謝しております。
さて、ここでビルド君を除くパーティメンバーの称号を(隠れ称号もふくめて)説明
フォン
武道家 女の子 苦労人 現場作業員 スライム虐殺者 いっかくうさぎ虐殺者 ビルダー被害者の会会員番号3
カダル
僧侶 苦労人 超苦労人 現場作業員 スライム虐殺者 いっかくうさぎ虐殺者 ビルダー被害者の会会員番号2
フルカス
戦士 マッチョ 筋肉バカ 脳筋 ナイスガイ いっかくうさぎ虐殺者
アレル
勇者 勇者(笑) ツッコミ 現場作業員 電波受信体質 いっかくうさぎ虐殺者 ビルダー被害者の会会長兼会員番号1
となっております! 世界の未来はどっちだ!
注意 以下はネタバレの解説です。今回の話の三段論法の部分の意味不明なところの説明になりますので、注意して閲覧をお願いします。
ではまいります。
ビルダーズ2でストーリー進行上、【バーカウンター】というものを完成させる必要があり、そのために【シェイカー】が必要です。
【銅】はその【シェイカー】を作るのに必須ですので、バーが欲しい→シェーカーが必要→銅が必要→銅がどこかにある。という三段ならぬ四段論法でした。
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10 レーベの村を ふっこう しよう パート8
時系列:白竜の日 27日 朝から昼
せっかくのそざいを放っておいて僕とビルドは【キメラのつばさ】でいっしょに村に帰ってきた。村に降り立った瞬間、作業台を取りだし、【木材】×1、【ひも】×1、そして先ほどの道中で手に入れた【枯れ草】×5を使って何かを作り出した。何だろう? 帽子をかぶった……、人形? ビルドは出来上がったそれを高々と空に向かってかかげた。
【カカシ】 を てにいれた!
何それと僕が言う前に食事を終えた村人たちが一気に集まってきた。
なんですかそれは? なんだかみているだけで、なにかしたくなる
口々に変なことを口走る彼らにうんうんうなづくビルド。そして元々教会があった場所、その中心当たりの土の上にそのかかしをおいた途端、村人たちがどこからともなくクワを取りだして地面を耕しだすではないか!
体が勝手に動く~、とか、うきゃあああ! とかおかしなことばかり言ってるけどみんな大丈夫? あの【カカシ】ってアイテムは村人に集団催眠術をかけるための道具なの?
僕がそんな風に混乱している間にも、ビルドは動きを止めない。今度は土を耕す村人たちの後ろから村人たちが耕した土に何かを植え始めた。おい、ちょっとまて。ビルド、動きが速過ぎて前で耕してるお姉さんの尻に君の顔がぶっ刺さる直前だ。やめてくれ、僕はまだなかまの監督不行き届きで牢屋に入りたくないんだ!
それにしてもいったいみんな何をやっているんだろう?
そうして村人たちはある程度の範囲を耕し終わると、次に隣にあるおじいさんの家の前から水を汲んで何かを植えた後の土に水をかけ始めた。
何をしているんだろう? そんな僕の思いは自然と言葉となって口から出ていたらしく、ビルドにあっさりと
のうぎょう だよ
そして手に持っていた枯れ草のような何かの植物を僕の目の前に。
これ こむぎ だよ しらない?
え? これが【小麦】なの? これが【パン】になるの?
……ビルド。お願いだから『これだから都会育ちのいいとこのボンボン様はよぉ。パンは知っていても小麦はご存じありませんかぁ?』っていう目で見るのやめて。そんなスライム相手に攻撃を五回連続で回避される武道家をみるような目で僕を見ないで!
ごほん、それでビルド。なんで探していた【銅】を放って、【小麦】を急いで持って帰って来たの? 【パン】、食べたかったの?
そう僕が当然の質問をぶつけると、ビルドはあっさりとこういった。
これで あの どくどくゾンビを やっつけるんだよ
…………え?
この後、僕はあまりのことに全く意味が理解できずそのまま完全に『
……パードゥン? 【小麦】をつかってあの巨大などくどくゾンビをやっつける? いったいどうやって?
そして、ビルドは村の大扉がある西側の壁の上にのぼり、しばらく目の前に広がるレーベの村前の平地を眺めた後、躍り上がるように何かの設計図を書き始めた。
動きだけでわかる! でかい! おそらく村がまるまる納まるくらいに大きな設計図!
【レーベの決戦場】 の 【設計図】 が できた!
やがてそれを書き上げたビルドは満足そうにうなづくと、羽ペンと紙のたばを取りだして何かを走り書きしていく。しばらく経ってようやく
なになに、これは……。
(以下の文章は日記にはさまれていたメモから)
皆さん、おはようございます。
ようやくあの皆さんの大事な村をぶっ壊し、さらにまたぶっ壊そうと狙っている魔物たちに一泡も二泡もふかせたうえで、こてんぱんにしてやるための算段ができました。
ですが、大工事です! 必要なものもまだいくつか足りません! 僕たちはそれを取りに行ったり、作ったりするので精一杯です。
どうか皆さんの手を貸してください!
やることは簡単です。宿屋を作った時のように、道具屋と武器屋を作った時のように、設計図通りにあいつらをやっつけるための場所づくりをしたらいいだけです。
偉大なるオルテガの息子、アリアハンの勇者、アレルが約束します! 皆さんの助けさえあれば必ずやつらを倒し、平和な毎日を取り戻すことを!
どうかお願いします! 皆さんの力を貸してください!
(ここで頭を下げる)
(メモ終了)
はさんであるメモを村人みんなの前で読んだ結果は、村人みんなの大歓声だった。
こうして僕らの初めての大規模ビルドは始まった!
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
というわけで始まります、大規模ビルドです。
この字面では伝わらない感動を感じてもらうためにも!
ドラゴンクエストビルダーズ2! 好評発売中!(いつものダイマ)
次回は謎の大地の精霊Rによる説明回です。
いったいどこのRビスなんだ……。
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座② レーベの村②
……きこえますか。……きこえますか、読者よ。
また唐突ではありますが、あなたに簡単なビルダーズシリーズの知識と、上から俯瞰した状態での今回あのビルダーが敷いた設計図の概要について説明したいと思います。
……え? おまえは、だれだ? 初対面のくせになれなれしい? ですって。失礼な、前回きちんと挨拶したではありませんか。
……今度こそ覚えるのですよ。私の名前は『R』。謎の大地の精霊『R』です。
ではまいりましょうか。
今回重要なのは前に説明したこの二点です。
① 敵は定期的に決まった方向から町や村に襲撃してくる。
②(前回は③と表記) 壁や床などには強度設定があって、もろいものなら魔物は簡単に壊してくるし、逆に強いものなら魔物は壊せない。また魔物の破壊する力(攻撃力とはまた別)は魔物ごとに違うので注意。
まず①に関してですが、本編中を見てもらえばわかるように、今回のレーベの村を襲う敵の首魁も村や町ごとに決まった方向、つまり今回の場合は西から攻めてきます。手薄なところから攻めるというような知恵はあまり彼らにはないのです。少なくても今回の敵は西側から来ますのでそういうものだと納得してください。
次に②に関して、敵の首魁が操るどくどくゾンビの投石攻撃は壁を強化しても完璧に防ぐことはできません。石を当てられれば壁は破壊され、敵の前進を許します。さらに何度も投げつけられれば村の防衛戦ですので、村の破壊はすなわちアレルたちの敗北となります。またもちろんアレルが力尽きることも敗北の条件となります。
まとめると今回の戦いでは、西側から攻めてくる敵からレーベの村を守り切る戦いで、勝利条件は敵の討伐、敗北条件は設定された拠点防御力が削り切られるか、アレルが力尽きるかです。
では次に大規模ビルドについて説明します。これは村人が設計図に従って【収納箱】に入っている素材を使って巨大な建造物を作ることを指します。はっきり言えば宿屋や他の建物を作るのと何ら変わりませんが、圧倒的に規模が違います。
では以下の図を改めて確認してください。
123
456
789
これが基本的なレーベの村の配置図です。
それに今回の【決戦場】の配置を合わせます。【決戦場】をあらわすのを便宜上①のようなかたちとしますのでよろしくお願いしますね。
①②③123
④⑤⑥456
⑦⑧⑨789
となります。やはりやつはバカですね。
いつもいつも慎みとか遠慮とか一切なしですから!
厳密には①~⑨の広さは縦の広さ(147および①④⑦など)はそのままなのに対して、横の広さ(①②③)は(123)の三分の二なんですが、正直些細な差でしょう。
ともあれこのような巨大なフィールドでの戦闘となることを、あなたも理解してください。
次に具体的な配置ですが、大雑把ではありますが以下の通りです。
① 土の地面(そのまま放置、敵出現場所)
② 全面石垣地面で、③の水路の前に秘密兵器ABを置く
③ 総石垣製の六段壁、②と③の間、秘密兵器ABの後ろに水の流れる水路あり
④ 土の地面(そのまま放置、敵出現場所)
⑤ 全面石垣地面で、⑥の水路の前に秘密兵器ABを置く
⑥ 総石垣製の六段壁、⑤と⑥の間、秘密兵器ABの後ろに水の流れる水路あり
⑦ 土の地面(そのまま放置、敵出現場所)
⑧ 全面石垣地面で、⑨の水路の前に秘密兵器ABを置く
⑨ 総石垣製の六段壁、⑧と⑨の間、秘密兵器ABの後ろに水の流れる水路あり
となります。あのやろう、アリアハン大陸から石をなくすつもりに違いありません。
ともあれこういった態勢でアレルたちは敵を迎え撃つことにしたようですので、あなたも陰ながら応援してあげてください。
え? 秘密兵器AとかBってなんだ? ですって?
……それは悔しいですが本編をお待ちください。但し、多少なりともヒントは出ていますよ。
えぇ、小麦を使って奴らを倒すのです。
では続きをご覧ください。
すべては 精霊の 導きのままに……。
なお実況、解説は今回もわたくし。謎の大地の精霊『R』でお送りいたしました。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
こちらにここまでのroinesさんからいただいた再現映像のリンクを張っておきますので皆さん一度ご覧になってください。
在りし日のレーベの村 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48572.JPG
レーベの村再興初日 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48593.JPG
石垣+丸太 with 逆茂木 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48620.JPG
どくどくゾンビ襲撃 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48635.JPG
レーベ決戦前夜 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48672.JPG
以降のものはまた次回の閑話にまとめてリンクを張らせていただきます。
roinesさんありがとうございます!
さて、大仕掛けになりましたね。
秘密兵器の正体とは? といったところで本日の投稿は終了となります。
秘密兵器の正体にピンときた方、物語中に登場させるまでもう少し感想欄での予想をお待ちいただけると助かります。
では次回、決戦! レーベの村 1 で!
追記 今まで二次創作を含めてレーベの村にここまで焦点が当たったことはなかったと声を大にして私は言いたい!
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11 決戦! レーベの村! 1
時系列:白竜の日 27日 昼から夜
き、緊張したぁ。あんなに大勢の人の前で演説するなんて初めてだったから、魔物の群れに切り込むよりも緊張したかもしれない。
それにしても、みんながあんなに生き生きと働いている。大人も子どもも。すごいと思う。僕やフルカスたちは戦う人間だ。そういう風に訓練してきたし、そうなるべく育てられそして生きてきた人間だ。
でも村の人たちは違う。日々平和に生きている、戦いにはほとんど縁のない人ばかりだ。そんな人たちが魔物に何度も踏みつけられ、心がへし折れて打ちひしがれていたのに立ち上がった。今彼らはああやってビルドの書いた設計図を組み立てることで戦っているんだと僕は思った。
そんな彼らにビルドが次々と指示を出してる。いつもどおり口数は少ないし、緊張感のない笑顔だけれど、その指示は細かくて的確だ。
まずぐるっと設計図の外周に【たいまつ】を等間隔に置き魔物避けにして、そのうえでハンソロさんたちに村の外での作業をしている村人たちの安全確保をまかせ、危ないときはすぐ村に避難する様いう。
次に村の中で残って作業する人たちに、料理と一緒に【小麦】の世話をお願いしていた。定期的にちゃんと見て、実っていたら刈り取って大事にとっておいてくれと。何でも【肥料】を撒いて畑の土を【腐葉土】に変えたので普通の何倍ものスピードで【小麦】が育つらしい。だからこそしっかり様子を見て実ったらすぐ刈り取って次にまた生えてくるのを待たなくてはいけないらしい。
へ~、【腐葉土】っていのがあれば【小麦】って半日で育つんだ。すごいなぁ。
それにしても珍しくビルドがまじめな顔をして
こむぎ は たべちゃ だめ
としつこいくらいに村人に伝えていた。
そうして村でできることをやってから僕らは今までは別行動だったフルカスたちと久々に一緒に行くことになった。
特にフォンとカダルが大喜びしていた。これでもう罪のないスライムを倒さなくていいんだ……って。涙を流しながらスライムにごめんよごめんよといっている二人の肩に僕はそっと手を置いて、がんばったね、ありがとうといっていると、あのあくまがしれっと、
ふぉん かだる すらいむ は あぶら を しぼるために いるんだよ
と無慈悲極まりないことをいっていた。それもいつも通りのへらへら顔のまま。奴にとってはスライム=【油】であって、生き物という意識すらないのか!そんなビルドの言葉に震えあがる僕たち。
あいつには人間の心がないに違いない……。そして悪魔はその後もっと恐ろしいことをいい放つ。
あとで じかんが できたら ぼくじょう を つくるよ
はっせいする すらいむ や いっかくうさぎ を じどうで たおす やつ
拝啓 魔王バラモス様
いますぐ 世界中のスライムといっかくうさぎを出現にしないようにしてください。うちの勇者パーティには悪魔が混じっています。
勇者 より
そんな文面が僕の脳裏をよぎるほど、僕らは彼等の運命に深く深く同情した。止められない僕らを許してくれ! じゃあ代わりに君がやってよとか言われたら僕の心がおれちゃうから。
そんなことはさておき、ビルドの行動について一つ、設計図について一つ、僕は気になっていたことをたずねることにした。
ねぇ、ビルド。どうして【小麦】を手に入れてすぐに帰って来たの? 今からまたさっきの場所に戻るんでしょう?
ん? こむぎ の たね を うえて こむぎ を ふやす ためだよ
いっこくも はやく ふやす ひつようが あった からね
なんでそんなに【小麦】が必要なの?
こむぎ で つみわら を たくさん つくる からだよ
【つみわら】って何?
かちく を かうのに つかう どうぐ だね
ますます分からない。【小麦】が必要なのは、【つみわら】をたくさん増やすためで、それを使ってどうやってどくどくゾンビを倒すのだろう?
じゃあ、あの設計図にあった、【タルカタパルト】と【銅の投てき機】って何?
たるかたぱると は たる を とおく に とばす へいき
どうの とうてきき は わら を とばすん だよ
そこまで言うとビルドは、
今夜にでも実践してあげるから今は【銅】を回収しに行こうといい僕らは先ほどの場所へと急ぎ始めた。
経験豊富なフルカスの顔を見るけど、首を振られる。物知りなカダルも首をかしげるばかり。フォンも僕と同じで全く分からず頭から煙を吹きそうだ。
ともかく僕らはこの後、たくさんの魔物を退けながらひたすら【銅】と【石炭】、【小麦】と【小麦の種】そしてそのほかを採取し続けた。
そんな中、ビルドは一人高い山の頂上にのぼり何かを見つけたようだった。
……じかん まにあう かな
とぽつりつぶやきながら。
時系列:白竜の日 27日 夜から未明にかけて
あらかた見える範囲で各種素材を取りつくした僕らは【キメラのつばさ】で村へと戻って来た。
ビルドはふくろから【焼きキノコ】を取りだしむさぼりながら、
おつかれ さま しばらく やすんでて
といって作業台で作業を始めた。
あっという間に見たことのないものばかりできていく。
まず【石材】から鉱石を溶かすための【炉】をつくり広場に三つばかり並べ一気に【銅】を【銅のインゴット】に変えていく。それを待っている間に、【小麦の種】を畑に植え、また臭い粉をばらまき、そして【小麦】から【つみわら】を作った。
【つみわら】は人間一人が隠れられるくらいの大きなわらのかたまりで、フカフカで気持ちのいいものだったのでみんな代わる代わるその感触を確かめてうれしそうにしていた。特にフォンがお気に入りで私、今夜これで寝る! っていいだしたのには笑った。
そんな中でもビルドは次々に作業を進めていく。
出来上がった【銅のインゴット】を加工して、【銅のバネ】なる筒状のうずまきみたいなへんてこなものを作ったかと思うと、それを【木材】と【ひも】を組み合わせておおきな何かを作っていく。
そして出来上がったのが、穴の開いた大きなタルが斜め向きに乗っかった今まで見たこともないような変てこな道具。
【タルカタパルト】 が 完成した!
できた と顔をあげたビルド。続いて次の作業に取り掛かる。僕たちも、ハンソロさんたちも、村の人たちも興味津々でその作業を見ていた。
ビルドはまた【銅のインゴット】を加工すると大きなお皿のようにして、それと【木材】と【ひも】を組み合わせておおきな何かを作っていく。さっきとは全然違う背の高い何かだ。
【銅の投てき機】 が 完成した!
やがて出来上がったそれをみたフルカスとカダルが異口同音に、投石機? といったけれど、ビルドは首を振ってこういった。
どうじゃ とうせきき に ひつような きょうど が でないよ
これは とうてきき これで つみわら を とばすよ
そういってその二つをもって外へ。
ぞろぞろとついていく僕ら。作りかけの決戦場までくるとそこに二つを並べてビルドはこういったんだ。
いまから あいつら を どう たおすか いっかいだけ みせるよ
そういうとビルドは石垣でできた床に【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を少し離して並べる。
次に【タルカタパルト】の前方からやたら重そうななにかがたっぷり入った【タル】を装填して、レバーを引いた。
そうしたら勢いよくタルは弧を描いて飛び、決戦場の土の部分に落ちて、割れて何かをまき散らした。
……すんごい嫌な予感がする。
そう思いながら視線をスライドさせるとロープを引っ張り【銅の投てき機】のお皿の部分が上に向くようにした後、【つみわら】を【銅の投てき機】のお皿の上に乗せ、おもむろに取りだした【たいまつ】で火をつけてロープから手を放した!
みんなの目が空を燃えながら飛ぶ【つみわら】を追っていき、地面に落ちたところで炎が一気に燃え上がる!
唖然とする僕らを尻目にビルドは凶悪なほどのドヤ顔でこういったのだ。
じっけん せいこう ぞんび は もやすに かぎる
ってね。
これで僕にも分かった。ビルドの奴、離れたところからあのどくどくゾンビを炎でやっつけるつもりなのかと。
それで村の前の地面を全部石垣で埋めるのね、って理解したけど納得できるかぁ!!!
こんなの勇者の戦いじゃないと思うんですけどぉ!
誤字脱字、感想お願いします。
というわけで、レーベの村攻防戦はゾンビの投石機対タル&わらファイヤーの戦いとなってしまうことが決まりました。
ありがちで申し訳ない。
ちなみにこのつみわらに火をつけるは、DQB2でもできます。他はオリジナル要素ですが。
このようにできるだけ半歩だけずれたらできるオリジナル要素のみでやっていきたいと思っています。
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12 決戦! レーベの村! 2
時系列:白竜の日 28日 夜から未明
目の前で轟々と燃え続ける炎、いや火柱を見ながらビルド以外の人間の思いは一致していた。
なんつーおっかないもんこさえとんねん、こいつ。
そんなことは関係ないとばかりに、早々に【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を回収し、いったんふくろに戻した。
いまは かくして おくよ
たぶん だいじょぶ だけど みられる と めんどう だし
そういって満足そうな顔をして、村へと入っていった。早々と追加であと二個ずつ【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を完成させそれもふくろにしまう。つづいて【つみわら】も十二個、設計図に必要な分は完成させてしまうビルド。
僕はあらためて設計図を見返して、これでほぼ完成したことを確認し、さすがにぼーとしているビルドに声をかけた。
ビルド、あともうちょっとで完成だね。これでやつらを迎え撃てるね。
僕がそういうとビルドはふるふると首を振ってこう言う。
まだ みずが ひけて ないから
きょう は ねる おやすみ
そういって寝床に向かうビルド。僕がもう一度設計図を確認すると確かにそこには【石垣】の壁のすぐ前に水路が書いてあった。
実際、水路自体はもう完成している。でも水が張っていないからただの空堀である。
水か。この村には北東、つまりおじいさんの家の前に大きな池があるけれど、ちょっと見るだけでも水路はけっこう広い、いや長い。だから池の水ではたぶん足りないんじゃないかなっていうのは僕でもわかった。
さて、どうするんだろう? そう思ったところでビルドに付き合ってだいぶ不眠不休だったせいか僕も眠くなってきた。それじゃおやすみなさい。
追記 普段寝ないビルドが珍しく寝たせいで、僕のベッドが無かった。おかげで、村の人同士が寝てる隙間の土の上でその日は寝ることになった。
わらのベッドで気持ちよさそうにいびきをかいているビルドに殺意が沸いたのは言うまでもない。
追記の追記 つちのうえはいたい。そしてつめたい。
時系列:白竜の日 29日 早朝
体が痛い。全身カッチコチだ。わらのベッドおそるべし。あるとないとじゃ大違いだわ。
微妙にぎこちない体をゆっくりと動かしながら僕は起き上がる。どうやら僕が最後で他の人たちはもうとっくに起きだして食事をはじめているらしい。
外でキノコが焼けるいい匂いが小屋の中にまで届いている。とりあえず外に出てみんなに挨拶をして、自分の分の【焼きキノコ】をほおばっているとなぜかビルドの姿がない。もう外で決戦場の仕上げでもやっているのかなと、外を見に行ってみるとそこにもいない。
あいつ、どこいったの?
嫌な予感がした。いつもの奴だ。もう慣れっこになってしまった。こういう時、ビルドは高い確率でなにかをやらかしているのだ。そうして誰かビルドの行方を知ってそうな人がいないかと探してみると、フォンが一生懸命【石垣】をつんでいるのが見えたので声をかけることにした。
フォン、ビルド知らない?
するとフォンはやれやれという顔をして僕にこういった。
おはよう、お寝坊さん。ビルドたちならとっくに昨日みんなで行った銅が取れた場所に行ったわ。私たちは貴方が起きたら一緒に来てほしいって言われてそれまで待っていたのよ。
お~い、カダル~。アレルが起きて来たわ。出発するわよ~。
そう声をかけると、【石垣】をひぃひぃ言いながら運ぶカダルが地面にへたり込みながら、
わ、わかった。でもちょっとだけ休ませて……。ちょっと限界……。
って言ったんだけど、元気いっぱい体力満点のフォンは僧侶でもやしっこなカダルの意見を間然に無視してこういった。
ほら、いくわよ! ……だってこれ以上残ってたらまたいつスライム狩りやらされるかわかったものじゃないじゃない!
その言葉にカミナリにでも打たれたかのように立ち上がり支度をはじめるカダル。完全に顔色が悪い。さらにその言葉をいったフォン自身も若干震えてる。
……よっぽどスライム狩りが精神的にキテるんだねぇ(遠い目)
そんなこんなで僕らは先日から銅や小麦を手に入れたアリアハン東部に向かうことにした。……したんだけど。
ひょうたんのくびれのように極端に狭まった場所。アリアハン中央部から東部への唯一の道である高い山と高い山の谷間に差し掛かったころ、ふと違和感を覚えた。
何だろう、おかしい。妙に暗いというか。そこまで考えが及んで気が付いた。
何、このまっすぐな影。今ちょうど昼時だからよくわかる。天頂にある太陽が作り、地面に定規で引いたようにまっすぐで、それがまるで黒い橋のように見える影がそこにあった。
あわてて空を見上げる僕ら三人。断言するけれどこんなものは昨日きた時にはなかった。そしてはるか上空で響く小さな小さな建築音。
あのビルダーバカ、今度は一体何をやらかすつもりだ! ていうか既にやらかしているけど! 急いで岩山を駆け上るけれど、なかなかの高さでなかなか上まで到達できない。そんな間にも少しづつ全貌が見えてきた。
山の中腹でみるそれは、僕の目にはレンガでできた橋、のようなものが着々と作られているように見えた。
それも普通のオレンジ色のレンガじゃなく、砂色……に見えるレンガである。ゆっくりと足場を確認しながら登る僕ら。
そして頂上にたどり着いた僕ら三人が見たものは高山と高山の間に乗っかった長い長いレンガの道とそれを黙々と作るビルド。そしてそんなビルドを襲いに来る魔物を【とげこんぼう】でナイスに弾き飛ばしつづけるフルカスだった。
よぅ、と気軽な雰囲気であいさつしてくるフルカスに僕らに気づかずに作業に没頭するビルド。
またたく間に西に、つまりどんどん村のあるほうへと向かって伸びていく天空の道。僕がフルカスにこれは何なのと尋ねるとフルカスはいつも通りにやりと笑ってこういった。
ビルドが言うには、これは【水道橋】というものらしいぞ。ほら、あのあっちの山の向こうに大きな湖があってな。これもビルドが言うにはそこの水は雪解け水でいい水だからということで、村まで引くことしたそうだ。
その言葉を聞いた僕はその湖というものを見るため水道橋なるものを東にたどり、そしてそこにあったものはレンガでできた小さな小屋とそこからずっと西に向かって伸びるレンガの道。そして山の上にあるとは思えないほど大きな湖だった。
地形を確認すると、その湖はちょうど山に四方を囲まれている場所ですり鉢状にくぼんでおり底が見えるくらいきれいな水をたたえていた。
なるほど。つまりビルドは最初からあそこの水路に水を入れるためにこの大掛かり過ぎる水の道を作る気満々だったわけだ。おそらくこのレンガの材料は【砂】と【土】だと思う。そりゃフルカスたちに頼んで【砂】を多めにとってきてもらったはずだよ。こんな大きな国家事業でやるような長い長い建造物を作るならそざいはいくらあっても足りな……ちょっと待って。
ちょっっっと、まて。つまりはナニか? どくどくゾンビへの対抗措置を始めたその瞬間から、おおよそこういう風にやるつもりだったっていうことか? ビルド的には全部予定通りだったっていうことか? じゃあ、この大量のレンガを作るのに使った【砂】はどこのものだ。すでにあれほど大量の【砂レンガ】が並んでいる。その材料はどこからやってきた?
急いでフルカスのところにUターン。スタミナを使いはたしても根性で走り切る。たどり着いたころには肩で息をしていたけれど、そんなことより大事なことがある。だから僕はフルカスに尋ねた。
ねぇ、フルカス。聞きたいことがあるんだけど。
お、おぅ。どうしたアレル。顔が怖いぞ。で、なんだ。
この前さ、丸一日かけてアリアハンの西に【砂】を取りにいったでしょ?
ああ、行ったな。
どれだけ、取って来た?
え~、いっぱい。だな。
具体的に。
え~、アレル、あのだな。怒らないできいてほしいのだがこれは全部ビルドの指示であって……。
だ・か・ら。具体的にどれだけ取って来たの?
……全部だ。
はぁ?
……そこにあった【砂】ブロックひとつ残らず全部だ!
その言葉を聞いた瞬間、理性がかっとんだ。周りにいた共犯三人がなぜか僕の顔を見てガタガタおびえていようが関係ない。
僕は内なる衝動に突き動かされ、ダッシュしながら手におおきづちを握りしめ諸悪の根源の名前を呼んだ。
ビルドぉぉぉぉぉぉ! 歯ぁくいしばれぇ!!
ん? っといった顔で振り返ったビルドの顔面に叩き込まれるハンマー。ビルドの体は(実にギャグ漫画的に)放物線をえがいて飛び、そして空中でくるりと回転してキリッとした顔で着地を決めたビルドが文句をいおうとして、ヒィッという顔になった。
いくらなんでもやりすぎだぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!
このバカ、山と森だけじゃ飽き足らず砂漠までも消しやがった! 許せねぇ! 僕の故郷の景色を何だともっていやがる! アリアハンの大地の怒りを知れぇ!
それからビルドを砂レンガの上に正座で座らせたのち始まった大説教は、共犯のフルカスは同罪なので正座で、仕方なく従っただけの二人には僕怒ってないのに二人はガタガタ震えてるだけという奇妙な様相を呈したまま昼時まで続くのであった。
追記 のちに僕があの時の顔をするとき、仲間たちが【はんにゃのめん】だ! 【はんにゃのめん】がでたぞ! というようになった。遺憾である。
追記の追記 説教が終わってのビルドの一言。
やれやれ ひどいめに あった
つぎは ばれないように やろう
説教が一時間延びた。
追記の追記の追記。この後しばらく経ってからだが、砂漠はビルドの手によってなぜか湖になった。その詳細はまたいつか。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
というわけで天誅が下りましたね(笑)ギャグパートなので大丈夫。ケロッとしてます。
はんにゃのめん 防御力255 呪われている 常に混乱状態になる
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13 決戦! レーベの村! 3
時系列:白竜の日 30日 朝から昼
アリアハン東部にて僕たちは今緊張の一瞬を迎えていた。アリアハン東部にある砂漠の犠牲と五人がかりの徹夜による突貫作業により既に水道橋は完成。
もう一度言う。水道橋は完成した。
そして今僕らは水源横に備え付けられた水門の前にいる。満々と水をたたえる湖と水道橋を隔てる【水門】が今開かれた! あっという間に流れ出す水を誰もがおいかける。
なんだかんだといったけれど、やっぱり物づくりはいいなぁ! 完成したものを見ると何だか感動するんだよなぁ!
但し、その代償に目をつぶればだけど。
そんなことを考えながら水道橋を延々と西に向かうと水道橋のおわりが見えてきた。水が勢いよく水道橋から流れ落ちる。その先にはビルドがあらかじめ掘っていたのだろう、水を受け止めるため池ができており、さらにそこから村の前の水路へと水が引かれていく。
それを水道橋のへりに立ってぼんやりと眺める僕らにビルドがこういった。
やっと あいつら を むかえうつ じゅんび が できたね
そういったビルドの顔はいつも通り緊張感のない笑顔だったけれど目には闘志がみなぎっていた。
そうだね。準備というにはあまりにも壮大な準備は終わった。
そして村に戻ったビルドが【タルカタパルト】と【銅の投てき機】、そして【つみわら】を所定の位置に設置した。すると、
【レーベの決戦場】が 完成 した!
こうして僕たちと村の人たちの努力の結晶が完成した。
そしてみんなでそのことを喜んでいるとき、奴らは再びやってきたのである。
追記 いまだから思うんだけどタイミング良すぎじゃないかな?
追記の追記 なお、決戦前の状況を整理するとこうなる。
【油タル】×20 【つみわら】×15
【やくそう】×50 【上やくそう】×10 【どくけしそう】×10
【ステーキ】×50(食べると攻撃力微増) 【焼き魚】×10(食べると防御力微増)
時系列:白竜の日 30日 昼 決戦
まず最初に地面が大きく揺れた。その後まがまがしい気配が辺りを覆い、いずこからともなく奴がやって来た。
ゾンビマスター が あらわれた!
サァ ヤッテキタゾ 人間ドモ! マタ何カ小賢シク 物ヲ作ッタミタイダガ 無駄ダ!
出デヨ! どくどくゾンビ!
ゾンビマスターがそういうと奴の背後からおぞましく巨大な動く骸があらわれたのだ。
どくどくゾンビ が あらわれた!
コレデオ前タチハ終ワリダ! 殺ス! 殺ス! ヤレ! どくどくゾンビ!
その言葉に応えて、絶叫するどくどくゾンビの声で戦いの幕は切って落とされた。
奴らはまず予想通り毒の沼地から大きな岩を取りだして頭上に持ち上げた。僕は直前にビルドに言われたことを思い出す。
みんな あくまで ひ は おまけ
ねらい は やつ の おおいわ だよ
つまり奴が大岩を持ち上げた時がチャンスだ! 奴が今いるのは三セット用意した兵器のうち、真ん中のセットの直線上。つまり僕の担当だ。あわてずにまず【タルカタパルト】に【油タル】をセット。照準を合わせて、発射!
弧を描いて飛ぶタルは狙いをたがえずどくどくゾンビに命中! やった! 奴の体に大量の油がまき散らされた!
ン? 何ダ。何ノ意味モナイゾ! 人間!
何のダメージも与えられていないのだろう、変わらず大岩を持ち上げたまま立っているどくどくゾンビ。ただ離れた僕のところまで油の臭いはしっかりとただよっている。
それでも余裕たっぷりにこっちの出方を伺っているゾンビマスターは命令を下さない。おそらく僕たちが慌てふためいている様を、そして絶望する様を見ようとしているんだろう。だがな、そのお前の余裕がお前たちの敗因だよ!
続いて急いで【銅の投てき機】に【つみわら】をセットし、すかさず【たいまつ】で火をつける。
【たいまつ】の炎におどろくゾンビマスター。なにかまずいと悟ったのか、急いで『ヤレ、どくどくゾンビ!』という命令をするがもう遅い!
引っ張っていた【銅の投てき機】のひもを外す! さっきより大きく弧を描いて飛んでいく火の玉を、僕も、フルカスたちも、ビルドも、そしてゾンビマスターも思わず目で追った。
そして……、命中! どくどくゾンビは炎に包まれた! さらに頭の上にあった大岩が落ちて頭に直撃! そのまま地面に倒れた!
ナニィィ! 炎ダトォ! クソォ! 人間メェ! 生意気ナ! 起キロ! どくどくゾンビ! 起キロ!
慌てふためくゾンビマスター。
チャンスだ! すかさず走り出す僕ら! またビルドの言葉を思い出した。
ひ が ついたら いわ が おちて どくどくぞんび が たおれる と おもう
そのとき は みんな で こうげき しに いこう
ダッシュで間合いを詰めた僕らは倒れているどくどくゾンビを切りつける! 切りつける! 切りつける!
手応えあった! でも、まだ倒せる感じじゃない! しばらく一方的に攻撃できたけれど奴が起き上がる気配を見せたのでいったん引くことにする。起き上がったどくどくゾンビは頭を一度大きく振ってから立ち上がりこっちのほうを見ている。
どくどくゾンビ! 戻レ! 来イ! くさったしたい ドモ!
くさったしたい が あらわれた!
ゾンビマスターはすかさずくさったしたいを五体呼び出した。サイズは普通の人間サイズ。
僕自身は初めてみる魔物だけれど、有名な魔物だから何ができて何に弱いかは知ってる。そして奴らの大きさと僕自身の感覚でわかる。奴らは間違いなくどくどくゾンビよりも弱い魔物だ!
元の位置にもどった僕らに向かってくるくさったしたい。
すかさず僕らは奴らの進行方向上にある【つみわら】に火をつける! あっという間に燃え上がる【つみわら】にそのまま突っ込むくさったしたい。予想通りくさったしたいは自分で考える力がほとんどない魔物だ。あっというまに炎に包まれ、一歩、二歩、三歩歩く頃には元々よろよろだけど足はよろよろになっている。すかさず一撃加えるとそのまま崩れ落ちるくさったしたい!
いける! と思った次の瞬間、『馬鹿メ! 喰ラエ!』という声がしてビューんという音の後、僕の左後ろ側から轟音がした。目線を前に向けるといつの間にか再び現れていたどくどくゾンビがなにかを投げ終わった姿勢で立っている。あわてて後ろを振り返るとそこには破壊された石垣の壁が。
やられた! 再び前を向くと嬉しそうに飛び跳ねるゾンビマスターの姿が! そしてあんなに燃えていたどくどくゾンビの体の炎が消えていた。どうして? と思ったんだけれど奴はいったん毒の沼地に姿を隠したからその時に炎が消えたに違いない。
くそう、ここまで一勝一敗か。やっぱり奴らは強敵だ!
ここでこちらも体制を立て直す。ビルドが燃やしてしまった【つみわら】を再度設置している間にどくどくゾンビはもう一度沼へと潜った。仕切り直しだ。
にらみ合うゾンビマスターと僕ら。戦いはまだこれからだ!
【ここまでの状況】
アレル側
アレルの体力 まんたん
拠点防御力 80 (20のダメージ)
【油タル】×19 【つみわら】×9
ゾンビマスター側
どくどくゾンビの体力 残り60%
誤字脱字、感想よろしくおねがいします。
というわけで決戦前半までお届けしました。
一進一退の攻防です。
ちなみに大量の油+つみわら炎の威力は直撃メラミくらいの威力です。
但し、どくどくゾンビさんのHPはサイズがでかいのでかなりのタフネスです。
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14 決戦! レーベの村! 4
時系列:白竜の日 30日 昼 決戦 つづき
現状はほぼ五分か、正直少しこちらに分が悪いというのが僕の認識だ。
確かに僕らは初手で相手になかなかに手痛いダメージを与えることに成功した。だけどそれと引き換えにこっちの手の内は見せてしまった。神がかったビルドの読みと事前準備が功をそうして現状対等以上に戦えているけれど、そのアドバンテージもここまでだろう。
その証拠にゾンビマスターの奴に最初の余裕ぶった様子はもうまるでない。奴自身の中でこちらを『蹂躙すべき雑魚』から『警戒すべき敵』へと格上げしたらしい。
おそらく奴の次の手は……。
来イ くさったしたい! ドンドン 来イ!
どくどくゾンビ! 吐ケ! ソシテ 生マレロ! バブルスライムドモ!
予想通りの物量戦法! 呼び出されたくさったしたいとバブルスライムは合わせて12体。かなり多い! だけどこいつらは全部囮、陽動だ。本命はあくまでどくどくゾンビの岩投げによる壁の破壊だ。だから僕はみんなに指示を出す!
フルカス、フォン、カダル! 向かってくる魔物たちを頼む! 僕とビルドでどくどくゾンビに対応する!
おう! という三人分の声とともに【たいまつ】片手にまずは颯爽とフォンが突っ込む! ジャンプ一番、そのままくさったしたいに飛び蹴りをかまし宙を一回転。そのまま魔物の進行方向の【つみわら】2つに火をつける。
ひとつにくさったしたいが突っ込み火だるまに、もう1つのほうもそのつみわらの炎のおかげでバブルスライムが怖がって近寄ってこない!
その後もまるで燕のように決戦場を飛び回るフォンにフルカスとカダルも負けていない。どっしりと構えたフルカスがやってくるくさったしたいを次々と【とげこんぼう】ではねとばし、何匹か集まったところでカダルが【つみわら】に【たいまつ】で火をつけて、さらにそこでバギの呪文を唱えて炎を大きくすることで効率的に魔物を倒していく。ついでに巻き込まれるバブルスライムもいっぱいいた。
こっちは3人に任せておけば大丈夫と意識をどくどくゾンビとゾンビマスターに集中。ビルドも今は下手に動かずじっと様子を伺っている。そうこうしている間にも、どくどくゾンビは沼からあらわれたり、また沼に沈み込んだりとフェイントを繰り返すが、くさったしたいが残り数体になったところでしびれを切らせたのか、
エェイ! ヤレ! どくどくゾンビ!
と命令した。場所は……北側! さっき壁を抜かれたの南側と逆方向! すかさず走りこんで僕が【タルカタパルト】にタルをセット、岩を持ち上げたのを確認してタルを発射する! 見事命中! 油がまき散らされ、続いてビルドが間髪入れずに燃えた【つみわら】を発射する!
再びどくどくゾンビの体が燃え上がり、そして大岩が落ちて頭に直撃。ズズンという大きな音とともに決戦場に倒れこんだ!
すかさず全員で駆け寄って攻撃にうつる! 動けないうちにできるだけダメージを! 燃え続けるどくどくゾンビに次々にダメージを与える。ビルドは極悪なことに【たいまつ】を振りかざし、どくどくゾンビにさらなる炎によるダメージを与えていた。そんな中、
マホトラ!
どくどくゾンビごしに呪文を唱える声が響き、カダルに魔法でできた何かが命中! うぐっというカダルの声。何があったと駆け寄るとカダルが、
くそう、マホトラだ。ごっそりMPを持っていかれた。もうバギ1回分くらいしか残っていない!
マホトラか、MPを奪い取る厄介な魔法。実際に見たのは初めてだけど、思いのほか厄介だな。
そうこうしているうちにどくどくゾンビは立ち上がり再び毒沼の中へ。
戻り際、燃やした【つみわら】を置きなおすビルド。用意できた【つみわら】は残り5個。有利なのは間違いないけれど、カダルのMPも含めてこっちの手札がだいぶ減ってしまっている。くそう、いい感じに進んでいるのに全く気が抜けないな。魔物とはいえやる、ゾンビマスターめ。
アレル側
アレルの体力 まんたん
拠点防御力 80 (20のダメージ)
【油タル】×18 【つみわら】×5
ゾンビマスター側
どくどくゾンビの体力 残り30%
時系列:白竜の日 30日 昼 決戦 けっちゃく
再び仕切りなおした僕たちは、敵の次の攻撃に備える。ゾンビマスターはまた大量のくさったしたいを呼び出してこちらにつっこませてきた。ここまでは同じ動きだったけれどここからが違った。
どくどくゾンビ! 毒ノカタマリヲ 奴ラニ向カッテ吐キ出セ! ドンドンヤレ! 奴ラノ好キニ サセルナ!
そのゾンビマスターの命令に一声大きく叫び声をあげたどくどくゾンビは口からおぞましい色をした毒のかたまりを吐き出しはじめる。次々に襲い掛かるくさったしたいと放物線をえがいて飛んでくる毒のかたまりの波状攻撃だ! みんなそれでもうまくかわしているけれど、ちょっとずつ押し込まれたりダメージをくらったりしはじめた。特に毒のかたまりは地面ではじけてそのしぶきをさわるだけでも毒におかされてしまう。そのたびに【やくそう】や【どくけしそう】を消費していく。
このままじゃまずい。そう思い僕がビルドを振り返ると、ビルドはうんとうなづいてくれた。前線へと躍り出る僕。フルカスをすり抜けてカダルに攻撃しようとしていたくさったしたいをどうのつるぎで切り付ける。そのまま左手の【たいまつ】で密集地帯の【つみわら】に火をつけるものの、そこに毒のかたまりが! とっさと避けるけれどしぶきをくらう!
アレル は どく に おかされた!
アレル に10 の ダメージ!
くそう、急いで持っていた【やくそう】と【どくけしそう】で回復している間に、またヒューンという音の後、後ろで轟音がして壁が破壊された。今度は……真ん中!
くそ、してやられた。ビルドが放った燃えた【つみわら】は奴に命中したけれど、すぐに毒沼にもぐったのでほとんどダメージは与えられていない。
振り向くと珍しくビルドが悔しそうな顔をしている。
やばい、おそらく一手足りない。おいつめてはいるけれど敵の戦力はほとんど無限なのに対してこっちの戦力は少しづつ貯金を取り崩している形だ。あちらにもそれがわかったのかゾンビマスターの声が響く!
ザマアミロ! 人間! ザマアミロ! 人間メ! アキラメロ! 俺サマノ勝チダ! オマエラノ負ケダ!
くそ、このままじゃじり貧だ。何か手を考えないと! そう思った僕の背中のほうから声がした。
おい! このゾンビ野郎! これ以上好きにやらせねぇぞ!
振り返ると門のところに、ハンソロさん、マーリンさん、エルシドさんに村の大人の男の人が四人も!
勇者様! わたしたちも戦います! タルをセットしたりやつみわらに火をつけるくらいなら、おれたちもできますから!
他の村の人たちは? 大丈夫なんですか?
僕がそう尋ねると、
代表して道具屋のご主人がこういった。
みんないってくれといってくれました! ちょっとのあいだくらい、自分たちの身は自分たちで守ると!
そういって三つのカタパルトと投てき機にそれぞれ二人づつの人間がついた! 前衛もハンソロさんが来たことで戦士が二人、それにまほうつかいのマーリンさんが来たことで後衛の火力と僧侶のエルシドさんの回復もあてにできる!
僕は仲間たちにすかさず指示を出す!
フルカスはそのまま奴らを近づかせるな! フォンは遊撃! 後ろのみんなが狙われた場合すぐに倒して! カダルは今はセット役に回って。バギは温存しておいて、チャンスを待とう。あとビルドは、臨機応変で!
おう! とさっきよりも大きな声が聞こえた。よし、これなら勝てる!
そう思って僕は前衛に専念することにした。
みると悔しそうなゾンビマスターの姿が!
何ダ! オ前タチハ! ドウシテアキラメナイ! ドウシテダ! クソウ! クソウ! ヤレ! どくどくゾンビ! ヤッテシマエ!
追い詰められてヤケになったゾンビマスターが叫び声で命令する。
それに応えたのか、終わりを悟ったのかどくどくゾンビは一声大きく吠えてから今まで一番大きな大岩を持ち上げてきた。
場所は、真ん中! すかさず近くにいた僕とビルドが動く。タルをセットし発射! 僕はカダル、行くよ! とカダルに声をかけそのまま奴らの懐に突っ込む! 万が一にもあんなものをぶつけられたら村の木の壁なんてもたない! ここで確実に止めを刺す! そんな意思をもって駆け出した僕らの上を燃えさかる【つみわら】が飛び越えていく。
目の前で燃え上がる炎! ズズンとひときわ大きな音を立てて倒れるどくどくゾンビに向かって僕がメラの呪文を、カダルが虎の子のバギの呪文を唱える!
目の前の炎も巻き込んで暴れまわる炎の竜巻は、どくどくゾンビの体を燃やし尽くしていく。
そして、
ウォォォォォォォォオオオオォォォォオオオォン……!!
断末魔の声が響き、どくどくゾンビは倒れた。
そしてそれを見て、ヒィッィ! と悲鳴を上げて逃げようとするゾンビマスターの背に僕は手を伸ばす。
今僕の中に何かの力の目覚めを感じた。その力が導くまま僕は右手をあげ、ゾンビマスターの背に向けて呪文を唱えた!
デイン!
僕の声に応えて天より裁きの雷がくだりゾンビマスターを焼き尽くす!
ギャアアアアアァァァァアァァァァァ!!
黒こげになって倒れるゾンビマスター。ドサリと音とともに背後から歓声が起こる。みんなが大声で喜んでいる。
床にへたり込んでいるカダルに手を差し伸べて立たせながら、僕は燃えカスと煤だらけになった決戦場を眺めてから右手を握りしめて突き上げ勝鬨をあげる!
僕たちの勝利だ!
まもののむれ を やっつけた!
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
というわけで決着です。後始末が終わりましたら、ロマリアに向かいます。
なお、日計ランキング62位感謝です。
おかげで頑張れました。
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15 レーベの村を ふっこう しよう 9
これからもぼちぼち頑張ってまいります。
白竜の月 30日 夜
つ、疲れたぁ。ひとしきり勝利の喜びをかみしめた僕らは、その後どっと疲れが出て村の【たき火の憩い場】でへたり込んでいた。
フルカスも、フォンも、カダルももう疲労困憊だ。みんな地下通路の向こうにある避難所から帰ってきた村の人たちに甲斐甲斐しくお世話をされていた。
にもかかわらず、村の外から元気よく何かを壊す音が聞こえる。ようやく静かになった夜にガンガンガンうるさいにもほどがあるけれど、それに突っ込む余裕すらもうない。
あのゾンビマスターとどくどくゾンビを倒した死闘の後、疲れ果てた僕らを尻目にビルドは休む間もなく働き始めた。
よし もう ひつようない から こわすね
といって、せっかくみんなで作った【レーベの決戦場】を破壊しだした。本当にいったいどこからあの体力と破壊とビルドに対する欲求が沸いてくるのやら本気で意味が分からない。
さて他のみんなはハンソロさんたちや村の人達とまだワイワイやっているけれど、僕は日記を書きたかったので一足先に小屋に戻り残る力を振り絞って今机に向かっている。
それにしても文章にするとよくわかるけれど、僕たちよく勝ったなぁと改めて強く思う。完全に綱渡り。なにかが一歩でも間違えていたら今頃レーベの村は跡形もなかったと思う。
正直に言って初めてどくどくゾンビとゾンビマスターを見た時、普通にやっても絶対に勝てないなと思った。差し違える覚悟を決めていた。
勝てたのは、あいつらがあの時そのおごりゆえに引いてくれたことと、ビルドが完璧な準備を整えてくれたおかげだ。
みんなは僕が突然目覚めた新しい力で最後にゾンビマスターに止めを刺したことをさかんに褒めてくれたけれど、正直僕のやったことなんてほんのわずかだ。
今回の勝利はほとんどビルドのおぜん立てとなかまや村の人たちの頑張りのおかげ。
それにしてもガンガンうるさいなぁ……、あれ楽しいんだろうか? いや、楽しんだろうなぁ。顔はいつも通りの顔だったけど目がいつも以上に爛々と輝いてたし。
それにしても僕はもっと勇者として頑張らないとなぁ……、でも今日はもうだめだ、もう……、眠いや……。
地竜の月 1日
あ~、いい朝だ。すがすがしい朝っていうのはこういうのをいうんだろうな! 昨日の失敗を反省して今日はあらかじめ作っておいた【わらベッド】で寝たから体もいたくないし!
外に出て朝食の【焼きキノコ】を食べる。おいしいなぁ……、【焼きキノコ】。ジューシーなキノコをほおばりながら、村の様子を見渡してみた。
小屋の様子、変わらない。小麦畑、いい感じに実ってる。宿屋も道具屋も武器屋もちゃんとあった。被害がなくて本当によかった。
……で、何これ。この抜け道の階段のあったところだけどさ。なんで見たこともないあたらしい小屋が立ってるの? あ、容疑者がちょうど扉から出てきたわ。聞こう。
ビルド、その小屋なに?
ん? おはよう、あれる。これは のうか の そうこ だよ
とち が もったいないし かいだん は かくさないと
いっせきにちょう だよ
いや、そういうことじゃないんだよね。それが大事なのはよくわかるけど、こっちは一晩たったら小屋ができてたことに突っ込んでるんだよ!
さてはビルド、寝てないなお前! あの激闘の後徹夜で作業してたのか! どんな体力だよ! ホントに人間か、君は!
ん? よゆう だよ にんげん は ねなくても しなない
いや、死ぬよ? 全然死ぬからね!
と僕が言うといつものように首をかしげてかわいそうな子を見る目で僕を見てどこかに行ってしまうビルド。
いつか僕のいっていることが正論ってことをおもい知らせてやる……。僕が新たな決意に燃えているとお~いという声が聞こえてきた。
フルカスたちだ。おはようと声をかけて改めて昨日の頑張りをねぎらった。三人ともニコニコしている。当然だ。あれだけ頑張ったんだから、と思ったんだけど、急にフォンとカダルの顔が暗くなった。またスライムといっかくうさぎに懺悔し始めるのか思ったら違って、
ダメだわ……、私全然役に立てなかった。
右に同じだよ。アレル、足引っ張って済まなかった。
なんて異口同音に言いだすものだから僕はびっくりした。
それなら僕も一緒でといおうとしたところでビルドがどこからともなくひょっこり顔を出して珍しく強い口調で言い切った。
みんな できること を ちゃんと やったから!
ひとり かけても かてなかった よ!
そういってちょっと怒りながら外に出ていった。すぐに何かを積み上げる音が聞こえ始めたから外の【石垣】の壁を直しているんだと思う。
……一番頑張ったビルドにああいわれたら何にも言えないよね。口には出さなかったけど、みんなで同じことを思ってそして笑った。
その後みんなで外に出て唖然とした。そこにあったのは昨日まであった木の壁の姿はなかった。かといって石垣の壁も昨日までのものじゃない。なんか分厚くてなっていて、そして上に人が歩いている。
おい、ビルド。君はあの後もしかして【決戦場】で使った石垣再利用してすでにここまで壁を作ったってことか? この分厚い壁を?
しょうじき はちだんずみ は やりすぎた
そら が せまく なる
はんせい したから ろくだん に してみた
ビルド、そこじゃない。やりすぎたのはそこじゃないんだ。そして反省するところも違う。君がやり過ぎたのはほとんど今までの経緯全てで八段とかは些細なことだ。あとするべき反省はまず寝ていないことと事前に僕たちにやるって説明する努力を放棄していることだよ?
さてはビルド。君、徹夜でテンションが上がり過ぎて止まらなくなっているな?
とりあえずまずは元気いっぱいなビルドを羽交い絞めにしてベッドで寝かせることからはじめよう。ビルド以外の僕ら四人の気持ちが今までで一番ぴったりと一緒になった、そんな朝のことだった。
追記 ビルドを(わざわざマーリンさんに頼んでラリホーの呪文で)寝かしつけた後フルカスとカダルに言われ、嫌々アリアハンにもどって嫌々王様に今回の顛末を報告した。
最初はまた兵士の派遣の催促に来たのかと思ったらしく嫌そうな顔で僕を早く追い払おうとしていたけど、僕が今回の顛末を報告すると安心したのか露骨に態度が変わった。
安全が確保できたと感じたのだろう、手のひら返しで近々レーベに人をやろうと思っておったのにそちたちはもう解決してしまったのか! さすが勇者オルテガの息子。それでこそアリアハンの勇者アレルじゃ! とか言い始めた。
あげくばつが悪いのか何かをごまかすように褒美にこれをやろう、とか言って無理やり何か謎の水晶玉を渡された。何じゃこれ。何の役にたつの? これが。絶対渡すべきものが他にあるでしょ。例えば城の兵士が持ってる鉄の装備とかさ。彼ら戦いに出ないんだったら僕らにくれよ。
一応これは何ですか? って聞いたら、よくわからないがお前たちの旅の助けになるだろう! とかぬかしやがった。よくわからないってなんだよ。そのせいで隣にいた大臣さんがあっちゃ~って顔をしながら僕に目で謝ってたよ。
これだからおうさま(笑)はよぉ!
…………ここから先は文字が乱れて読み取れない。
追記の追記 ルイーダさんにもこの顛末を報告した。ものすごく喜んでくれたしとにかく僕のことも仲間のことも村の人たちのことも褒めてくれた。それに今後もなんでも協力するって言ってくれた。
ホント、ルイーダさんは最高だと思う。
それに比べてあのおうさま(笑)はよぉぉぉ!
…………ここから先は文字が乱れて読み取れない。
誤字脱字、感想お待ちしています。
誤字報告ありがとうございます。報告してくださった方々、この場を借りて感謝申し上げます。
さて、あと二話くらいでアリアハン脱出です。
ちなみに石垣の壁は厚さ三ブロックの総石垣製で扉は大トビラというようになってます。
さすがに他の北南東はまだ木の壁のまんまですwww
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16 レーベの村を ふっこう しよう 10
地竜の月 2日
おはよう!
あさですよ、アレル。
さぁ いってらっしゃい
というお母さんの声に送り出されて実家を後にレーベの村へと戻る僕。昨日はおうさま(怒)に憤怒のあまり、ルイーダさんのところで慣れないお酒を飲み過ぎたためにつぶれてしまい、そのまま実家に担ぎ込まれて一夜を過ごしたらしい。
運んでくれた人たちや今もレーベの村に残って頑張っている仲間たちに申し訳ないやら情けないやら……。
だれど、今はそれどころじゃない。全くもってそんなことは大事の前の小事、どうでもいいことだ。故に家の外にダッシュで出た後、即【キメラのつばさ】を空へと放り投げ、レーベへと戻る。
もはや一刻の猶予もない。急がないと……、危ないんだ!
僕の膀胱と尊厳が!!!
しょんべんもらす勇者とか本気で死ねるからな!!
そんな固い決意とともにたどり着いたレーベの村で僕が見たのは絶望の光景だった。
……トイレにたくさんの人が並んでるぅぅぅ!!!
生まれたての小鹿のようにプルプルしながらトイレに並ぶ僕。はやく、はやくぅ!!
その後、僕の下腹部を決戦場に行われた激闘に何とか耐え抜いた後の、あの解放感といったらなかった。率直に言って、最高だった。
ともあれ今度、ビルドにアリアハンの実家とルイーダの酒場にもトイレを作ってってお願いしておこう。おもに僕の勇者、いや一人の人間としての名誉と尊厳のためにね!
とりあえず社会的な死を何とか免れた僕は、村の中を見回した。広場で料理をする人、小麦畑で働く人など様々だけれどすっかり村は平和を取り戻していた。
さて、僕のなかまたちは……、と探しはじめると、いた。
村の中心からみて西側、今まで何も建てられていなかったところ辺りから何かを壊す音がしている。そしてそちらからお~とかすげ~とかっていうみんなの声。
たぶんビルドがまた何か建物を作り出して、みんながその見物や手伝いをしているに違いない、そう思ってそっちのほうを見たらあるのはみんなの姿だけ。
肝心のビルドの姿がない。近寄ってみて、……唖然とした。
何この、丸々大きい建物がすっぽり収まりそうな縦穴は。しかも深い。下に向かって六ブロック分かな? この高さは。ずいぶん深いぞ。
やがて満足いくスペースに掘れたのか、ウンウンとうなづいた後穴の底の部分に隙間なく【石の床】を敷き詰めはじめるビルド。
毎度のことながら何をやっているのかな? 僕は僕と同じように穴の淵から見ていたフルカスに尋ねた。
ねぇ、フルカス。今度は何事?
おぉ! アレル。戻ったか。うむ、これのことだな。昨日お前がアリアハンに行ったあとビルドがな、
ここに さかば を たてるよ
といったのだ。けれども何やら悩んでいるようで一日動かなかったのだが、つい先ほど何か思いついたらしく突然に地面を掘りはじめてあっというまにこの状況だ。はっはっは! まったくわからん! アレル、お前ならわかるんじゃないか?
うん、そう自信満々にいわれても僕にも分からない。分かるはずがないんだけどね。
分からないことは聞くしかない。僕は床を敷く作業が終わって壁と柱を作り出したビルドに上から声をかけた。
ねぇ、ビルド! これは今何を建てているの?
そうするとビルドは僕を見上げてこういった。
おかえり あれる きのう かえって こなかった けど
きのう は おたのしみ だったの?
途端に周りにいたみんなに笑われた。違うわ! おたのしみってなんだ! やけ酒飲んで不覚を取っただけだ!
そういうとまたみんなに笑われた。ビルドもいつも以上に笑っている。ていうかよほど面白いのか地面でごろごろしながら笑い転げている。
さらにはフルカスがガッハッハと笑いながら、バンバンと背中を叩いてきた! 俺たちの勇者様にはこの俺が酒の飲み方を教える必要があるなぁ! とか言って。
……むかつくぅ! なんだかとってもむかつくぅ!
やがて笑いつかれたビルドが立ち上がってこういってきた。
え~とね いま は 【はっこうじょ】 を つくってるよ
それが できたら うえに 【さかば】 を たてる から てつだってね
そう長台詞をしゃべるといつものようにぜーはーいってた。それにしても【酒場】に【発酵所】?
つい昨日にお酒で失敗した僕に対する嫌味かよぉ!
僕がそんな被害妄想に襲われている間にもどんどん作業は進んだ。
そして僕が現実に帰還するころに完成した【発酵所】は、何本も柱をしっかりと立てたとても頑丈そうな作りの部屋で、壁際に上との出入り口になるんだろう階段と、そして見あがるほど大きな【大きな酒ダル】が二つに【収納箱】がひとつ、そしてたくさんの【タル】が並んだ立派なものだった。
なるほど。この上に酒場が建つのか。そりゃ便利そうだけど……、そこで疑問がひとつ。
ビルド、何でお酒を造るの?
僕がそういうと、ビルドはいつものイラっとする感じでこういった。
おさけ じゃないよ
じゅーす だよ
【こむぎ】 で こむぎ で できた じゅーす を つくるん だよ
をい。そういう戯言は僕の目を見ていえ。すーと目をそらすな! そしてビルドの言葉を聞いたフルカスとハンソロさんたちと村の男衆が大喜びし始めた。
いやっほ~い! ジュースだ、ジュースだ! 麦でできたジュースだ!
ってそんなにうれしいか、お酒と酒場! そこから作業は急ピッチで進み、フルカスたちをはじめとした酒飲みたちの協力の元あっという間に建物が建ち、立派な【バーカウンター】や【酒ダル】が備え付けられた部屋が完成した。早速手にどこからか取りだした【銅のジョッキ】を持って催促しだす男たちに今だけバーテンダーになったビルドが、
はい おまたせ しました 【むぎのじゅーす】 ですよ
といってあくまでもと言い張るシュワシュワした【麦のジュース?】を注ぎ入れた【銅のジョッキ】をサーブしていく。うれしそうな顔であっという間に飲み干していく男たち。おい、口のまわりに泡ついてるよ。泡。
うまい! 最高だ! この村に来てよかった! なんていいながら陽気になって飲んで騒いで歌いはじめる男たち。
ビルド、君ほんとに何でもできるよね。バーテンダーまでできるとは思わなかったよ!
あと、ダメ人間まで作れるとは恐れ入った。こいつらもう今日は使い物になんないじゃないか!
あとな、僕がいくら世間知らずでも【ビール】くらい知ってるわ! 何だよ、【麦のジュース】って!
追記 翌日、当然のように村は二日酔いの人間だらけになった。全員、白い目で見られていたのは言うまでもない。
阿呆どもめ! 夜通し飲むからだ!
追記の追記 あとで気になってなぜ【酒場】が完成しないのかビルドに聞いてみると、
【さかばのかんばん】 が ないと 【さかば】 はかんせい しない
でも【さかばのかんばん】 を つくる のに 【てつのいんごっと】 が たりない からね
といわれた。よくわからなかったけれど、色々建物を作るっていうのが大変なことだけ僕にも分かった。
誤字脱字、感想お待ちしています。
おさけ は はたち から!
やべ~、最初酒場の場所、東って間違えて書いてました。
本当に申し訳ないです。切腹!
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17 レーベの村を ふっこう しよう 11 終!
地竜の月 3日
朝起きると酔っ払いどもの姿は小屋にはなく、いつものように朝の食事とトイレを済ませて村を見回ってみたら、全員酒場(予定)の床で寝てやがった。
その醜態を見て自分自身があんなダメな大人にはならないようにしようと思いながら、ダメな大人で恥ずかしながら仲間の一員であるフルカスを叩き起こす。
ん? なんだ? 朝か?
もう昼前だよ、フルカス。起きて。
あぁ……、うっぷ!
そういってトイレに走り出すフルカス。おいおい、肥やしに変なもの混ぜるんじゃないよ。
それにしてもこの村もずいぶんと復興したと思う。宿屋もあるし、武器屋も道具屋もある。畑もできたし……あと何が足りないんだろうと思っていたところで、ビルドの姿を見つけた。
村のちょうど真ん中でのんびりとだけど何か建ててる。あれは……、小さいけれど教会かな?
おそらくそのために少し地面の道とかの配置もいじってるな、これ。
そしてそうした配慮の上で建てられた【石レンガ】の教会は静かに池のほとりにたたずんでおり、素朴な感じだけれど背が高くて、……何というか姿がよかった。アリアハンの教会は何というか荘厳で立派だけれど、この教会は親しみが持ててしかもそれでいて近くにいるとそれだけで少し背筋が伸びるというか何というか犯しがたい雰囲気。
さらに池の北側、例のおじいさんの家の側に【どんぐり】を植えて、【砂】を階段のように積み上げて教会の上にのぼって、濃い紺色の屋根をふいていく。
そうして出来上がったその教会は、とても素晴らしかった。屋根に建って村全体を見渡すビルドも満足そうにうんうんとうなづいている。
そうするとどこからともなく謎の声が聞こえた。
――ミッション レーベの村を復興せよ! 達成!
とにもかくにもよく分からないけれど、これにてレーベの村は元通りの平和な村になったらしい。
そう思って相変わらず教会の屋根の上にいたビルドのところに空から何かが降りてきた。なにか神聖っぽい光を浴びながらくるくる回ってビルドのところに降り立ったそれをビルドは右手をつきあげて高々と掲げた。
【大きなメダル・草原】 を てにいれた!
また謎の電波が僕の頭を勝手に……。
色々疑問だらけだけれど、いったんそれを置いておくことにした僕はいつの間にか集まってきた村のみんなと喜びを共有することにした。みんな泣きながら喜んで、笑いながら泣いていた。
僕はこの時心の底から自分が勇者になって旅に出てよかった、そう思うことができた。
追記 ビルドは村のみんなに頼まれて、【名誉村長】なる称号をもらっていた。そのことについてビルド自身は、
とろふぃー げっと
といっていたんだけど、とろふぃーってなんだろう?
追記の追記 祝い酒だぁ! といってフルカスをはじめとした酒飲みたちがたき火の前で【バブル麦汁】を飲みまくっていた。明日またのたうち回ればいいのにと思い、やつらをフォンたち女性陣とともにトイレのツボの中身を見る目で見ておいた。
追記の追記の追記 そういえば……、何かに使えるかな? と思い、僕がアリアハンのおうさま(笑)にもらった【謎の水晶玉】をビルドに見せると、一瞬でひったくられた。何するんだよ! と声をあげる前に、逆にビルドから怖い声で、
これ どこで みつけたの?
って言われたから正直に、
この前、アリアハンの王様にもらったんだよ
って答えたら、一度今まで見たこともないような顔で憎々し気にあのバカ女め……とかいってからいつもの笑顔に戻って、
あれる これ ぼくのもの だから かえして もらっていい?
っていったので、怖かったし使い道も思いつかなかったのでビルドに返しておいた。
――【天空の宝珠】を てにいれた!
ってまた電波が飛んだけれど、最近多いな、この変な電波!
その後、次の日の朝までビルドの姿を見なかったんだけれど、どこに行ってたのかなぁ?
その日の夜、僕はおかしな夢を見た。夢の中で僕はビルドになっていて、どこか知らない場所にいたんだ。
そこはとても広い広い荒れ野だった。ひび割れた土、乾ききった川、枯れ果てた山々がどこまでも続くそんな場所を、ビルドは何故か懐かしそうにゆっくりと歩いていた。そんな荒れ野にもいつしか終わりが来る。
そんな大地の果てには……雲海が、そして空が広がっていた。眼下、遥かな地上には遠くにチカチカと明かりが見える場所がいくつか。
アリアハン、レーベ、あっちはロマリア、ポルトガ……だろうか。
それらを見てニッコリと笑ったビルドが来た道を引き返していく。やがてその荒れ野の真ん中に見えてきたのは、朽ち果てた神殿のような建物だった。
神殿の中から声が聞こえる。
よくぞ お戻りになりました 偉大なる 我らが ……。
そこまで聞こえたところで、振り返ったビルドが何かに気づいたように困った顔をしている。
そして僕に話しかけた。
いつものビルドの声で。
でもどこかいつもとは違う……、この声は……、僕であって僕じゃない誰かに話しかけるようなこの声を僕はどこかで聞いたことがある気がする……。
遠い遠い昔。僕が僕じゃなくて僕になる前に何度も何度も……。
そして湧き上がってきたとても強い一つの気持ち。何人分もの僕の強い強い後悔の気持ち。
とにかく謝らなきゃ! ごめんって!
そう言葉にしようとした瞬間、困ったような笑顔でビルドはこういった。
アレル? いや、ロ●●●? それとも●●●●●かな? とりあえず勇者たるもの覗き見はよくないよ? それじゃあ……、またね……。
その言葉で唐突に夢から覚めた僕はがばりと目を覚ました。急いで見回してみるけれど、小屋の中にビルドの姿は勿論ない。
夢の中の記憶があっという間に薄れていく。急いで日記に残さないと……と思い、筆をとる僕。
必死になってこの文章を書きながら僕は思った。
それにしても、なんでだろう。
僕は今、どうしてこんなに涙が止まらないんだろう……って。
地竜の月 4日
そして……よがあけた!
のでみんなに見送られ意気揚々と旅立った僕ら。
だけどいざないのほこらまでたどり着いたところで、壁を壊すことができずに急いでつい先ほど旅立ったレーベの村に戻ったことほど恥ずかしかったことはない。
【まほうのたま】のこと、忘れてた!
ていうか【とうぞくのかぎ】の存在自体忘れていたよ!
ていうかじじい、いつまで引きこもってるんだよ! 村があんな大騒ぎの中よく最後まで引きこもってたな! 取りに行く以前にさ、むしろ全部終わったんだから自分から出てきて渡してくれよ! いろいろあり過ぎて存在ごと忘れてたわ!
というわけで、僕たちはその日の夕方、【まほうのたま】で壁を破壊(この時のビルドの顔はそれはそれはイイ笑顔だった)して、封印されていた旅の扉を使ってアリアハンから旅立った。
旅の扉の先は、世界最大の国であるロマリア王国。
思わず圧倒されるほど大きなお城と街を持つこの国で僕らの新しい冒険が始まるんだ。
ここまでの ぼうけん を セーブ しますか?
▶ はい
いいえ
誤字脱字、感想お待ちしています。
あ~、ようやくアリアハン編終わりました! ひゃっほい!
一応、ドラクエ3のエンディングまでのプロットはもう組めているんですが。
長いね……、アリアハンでこの様ですよ、えぇ(遠い目)
というわけで、ロマリア編に突入前にいつものように閑話を挟みます。
まず閑話1が謎の大地の精霊によるレーベのレーベの村の解説です。
次に閑話2に未来の話。ロトの紋章における序盤の名シーンにビルドがいた場合どうなるかを読者さんたちより一足先にアルス君に体験してもらいます(笑)
さらに今からアリアハン編が終了したので、デザイナーズノートなるものを活動報告にあげます。書いてみた感想、ビルダーズ3の予想のようなもの、こうなってほしいなどの妄想と願望を書くだけですので興味のある方だけおいでください。
では、何とか明日には閑話を二つとも書き上げて来週はロマリアに突入しますので、皆さんしばしお付き合いください。
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座③ レーベの村③
……きこえますか。……きこえますか、読者よ。
今回ようやくアリアハンから勇者アレルたちが旅立ちましたので、復興したレーベの村の現状について少し説明しておきたいと思います。
……え? 一方的なテレパシーはお断り、ですって? そんなよく家にかかってくる唐突な営業電話みたいな言い方やめてもらえませんか?
……え? 知らない人とは話しちゃいけないってお父さんとお母さんに? 貴方、わざとでしょう。何度言わせるんですか! 私です、謎の大地の精霊『R』ですよ!
では、いつものように始めます。もう三回目ですから前提条件は飛ばしますね。では基礎的な配置をどうぞ。
123
456
789
今回もこの番号に建物の情報を当てはめていきますね。
まずはおさらいがてら本来のレーベの村の配置から
1 道具屋 2 民家 3 老人の家(要:とうぞくのかぎ)4 空き地(正しくは森がある) 5 空き地(ただしくは道がある) 6 教会 7 宿屋 8 武器屋 9 空き地(大岩がある)
非常に分かりやすい俯瞰図をいただきましたので、こちらを見てください。元々レーベの村がどういう姿だったのかよくわかると思いますので。
https://img.syosetu.org/img/user/15509/48980.png
というように比較していただければよくわかると思います。
では次にあの決戦場込みの配置がどうだったかを見てみましょう。
①②③123
④⑤⑥456
⑦⑧⑨789
となっていました。一応補足情報を加えておくと、①~⑨の広さは縦の広さ(147および①④⑦など)はそのままなのに対して、横の広さ(①②③)は(123)の三分の二です。
次に具体的な配置ですが、大雑把ではありますが以下の通りです。
① 土の地面(そのまま放置、敵出現場所)
② 全面石垣地面で、③の水路の前に【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を置く
③ 総石垣製の六段壁、②と③の間、【タルカタパルト】と【銅の投てき機】の後ろに水の流れる水路あり
④ 土の地面(そのまま放置、敵出現場所)
⑤ 全面石垣地面で、⑥の水路の前に【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を置く。
⑥ 総石垣製の六段壁、⑤と⑥の間、【タルカタパルト】と【銅の投てき機】の後ろに水の流れる水路あり
⑦ 土の地面(そのまま放置、敵出現場所)
⑧ 全面石垣地面で、⑨の水路の前に【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を置く。
⑨ 総石垣製の六段壁、⑧と⑨の間、【タルカタパルト】と【銅の投てき機】の後ろに水の流れる水路あり
この決戦場を駆使して勇者たちは魔物の群れを撃退しました。……非常に口惜しく、残念ですがこの決戦場とやつが作った二つの兵器が大変に有効だったことは認めざるを得ません。
……えぇ、認めますとも。役に立ったわねぇ、今回も。認めてあげるわよ、えぇ。あら? 目から何故赤い涙が? あぁ……悔しいからですね、クソがぁ! 昔から自分だけ彼にイイ格好しやがってぇ!
ごほん、ついつい汚い言葉が口から出てしまいました。私としたことがダメですね。だから忘れてください。
オネガイシマスヨ(脅迫)?
では次の話に。そして最終的に勇者たちが旅立つ前、一応復興したレーベの村の姿がこちらです。
①123
②456
③789
① 水路の後ろに分厚い石垣の壁 1 宿屋 2 武器屋と道具屋 3 老人の家 ② 分厚い石垣の壁と大扉 4 街路+酒場(予定で地下に発酵所) 5 水場+教会 6 小麦畑 ③ 水路の後ろに分厚い石垣の壁 7 空き地 8 たき火の憩い場+寝起きのための小屋 9 農家の倉庫(中に地下通路)
となりました。
それ以外に外に大陸を横断する形で、水道橋がありますが見なかったことにしましょう。
色々紆余曲折ありましたが、村に平和が戻ったことは幸いでした。悔しいですがなかなか良い景観の村になったと思います。
さて、勇者たちはようやくロマリアに向かい本格的な冒険が始まります。
彼らの道行きに精霊の祝福を。
すべては 精霊の 導きのままに……。
なお実況、解説は今回もわたくし。謎の大地の精霊『R』でお送りいたしました。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
アリアハン編終了しましたので、roinesさんからの頂き物の続きをこちらにも掲載しておきます。よろしければぜひ一度ご覧ください。
決戦前の時点 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48704.JPG
タルカタパルト再現 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48785.JPG
タルカタパルト発射試験 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48803.JPG
避難先 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48849.JPG
カモフラージュ https://img.syosetu.org/img/user/15509/48851.JPG
銅の投てき機発射 https://img.syosetu.org/img/user/15509/48909.JPG
農家の倉庫と地下通路 https://img.syosetu.org/img/user/15509/49028.JPG
戦後の石垣 https://img.syosetu.org/img/user/15509/49029.JPG
酒場地下の発酵所 https://img.syosetu.org/img/user/15509/49164.JPG
レーベのみんなの酒場 https://img.syosetu.org/img/user/15509/49165.JPG
小さな青い屋根の教会 https://img.syosetu.org/img/user/15509/49199.JPG
roinesさん、ありがとうございました!
さて、頑張ってロト紋書かないとなぁ……。
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閑話 勇者アレルの末裔アルス王子、伝説の戦いを垣間見る
これは勇者アレルの時代からおよそ百年余年の時が経った頃のお話。
アレルから数えて六代目、七歳になったカ―メン王国王子のアルスはアレルの時代バラモス城と呼ばれた城の跡地に建てられた城であり、彼が生まれ育ったカ―メン城にてとある儀式に臨もうとしていた。
守役兼教育係のカ―メン王国の元神官長タルキンと、同じく守役兼護衛兼剣指南役である騎士団長の娘ルナフレアに連れられて、今まで足を踏み入れることが許されなかった城の最深部への階段を地下へと進む。
「ねぇ、老師様。これから僕は何をすればいいの?」
少年らしいまっすぐな瞳で前を歩くタルキンに尋ねるアルス。その姿は少年時代の勇者アレルに酷似しており、在りし日の勇者アレルの姿を知るタルキンにとってアルスは育て導き、そして仕えるべき次代の王であり、幼き日にあこがれた伝説の勇者の現身であり、そして何より生涯を独身で過ごした彼にとってかけがえのない孫同然の少年であった。
そんな少年を振り返り、タルキンは茶目っ気たっぷりにこう言った。
「そうじゃのぉ……。わしも詳しくは知らんのだが……、昔同じ儀式を為された陛下によると」
「父上によると?」
「勇者アレル様になる、儀式だそうじゃよ?」
「え~、アレル様になる儀式ってどういうことぉ?」
その言葉に頭の上に疑問符を浮かべながらさらに地下へと降っていく二人に付き添いながら、女性の身でありながらカ―メン王国の若手でも屈指の剣腕を持つ麗しき護衛ルナフレアは優しい光を目に浮かべながらその後についていったのである。
その部屋はカ―メン城の最深部、かつて魔王バラモスが鎮座した玉座の間の跡に存在した。
到着した三人を待ち受けていたのは、立派なひげを蓄えた壮年の男性。身体は豪奢かつセンスの良い仕立ての服からでもわかるほど鍛え上げられた持ち主で、その腰には黄金に輝く鳥を模した剣があった。
「父上!」
彼こそカ―メン王国第四代目国王であり、アルスの父カ―メン四世である。
「アルス、よくぞ来た。老師殿、ルナフレアご苦労であった」
その声に即座に片膝をつき控える二人。この時アルスは目の前の父から強面ながらも優しいいつもの父ではなく、カ―メン王として、そして何より勇者アレルの末裔としての父であると感じた。故に真剣な顔つきで父の言葉をまった。
「さて、アルス。今からお前がなすべき試練は、記憶の試練と呼ばれる我がカ―メン、そして兄弟国たるローラン王国の王子が必ず通らねばならぬ試練である」
「はい!」
息子の緊張気味だが意思のこもった声に内心満足しながら表面上堅い顔つきのままカーメン王は続ける。
「この試練はお前の勇気が試される。大事なことは慌てないこと。恐れないこと。そして勇気をもって自分自身と偉大なる勇者アレルとその仲間たちのことを信じることだ」
そういって王は自ら古の魔王の玉座への扉を開いた。
扉の先はある意味意外なものだった。淡く光を放つ不思議な宝玉が銀色の台座にぽつんと置かれているだけだったのだ。
何かに導かれるようにその宝玉に近づいていくアルス。それにふれる直前不安に思ったのか後ろを振り返り、父と守役たちの顔を見て彼らがうなづいているのを見て意を決してアルスは宝玉にふれた。
その瞬間、アルスの意識は場所も時間も違うどこかに飛んだ。
場所は百余年前の地下世界アレフガルドに存在した大魔王ゾーマの居城の最奥部。
そして時間は勇者アレルと一行のゾーマとの戦い、その死闘の最中へと。
「……ここはどこ?」
目を覚ましたアルスが辺りを見回すと、見たこともない場所、見たこともない大人の人が四人懸命に巨大な魔物と戦っている姿だった。
「アレル、無事か!」
額に瞳がある変わった男性がアルスに声をかけてくる。
体をあたたかな光が包む。これはべホマの魔法? 嘘みたいに体が軽くなりアルスは体を起こした。
それにしても僕はアルスなのに、どうしてこの人はアレルっていうんだろう。そう思いながらも見たことがないはずの目の前の男性に見覚えがあることにアルスは気づいた。
え? もしかしてこの額の目の人……賢者様? 賢者カダル様じゃ?
賢者カダル。賢王カダルとも呼ばれる勇者アレルを支えた四人の『ケンオウ』の一人。その姿は肖像画としてカ―メン城の大広間に掲げられており、子どものころから何度もそれを見ているアルスにとってその特徴的な顔から真実へとたどり着くことは難しくなかった。
「え? カダル様? 賢王カダル様ですか?」
「はぁ? ケンオウ? カダル……、様? おい、アレルいったい何をいってる? 今どういう状況かわかってるのか?」
その最中にもカダルの背中越しに激しい戦いは続いていた。吹き荒れる猛吹雪、燃え上がる爆炎に対し、どこからかあらわれた巨大な壁を取りだす小柄な少年の影と、必死に反撃を試みる見事な体躯の戦士と一瞬のスキを伺っている女性だろう細身の武道家の姿。
(じゃあ戦士は……『剣王』フルカスで、女の人は『拳王』フォン。そしてあの小柄な影がじゃあ……)
『建王』ビルド。世界を作ったと呼ばれる人。
つまり目の前にいるあのバケモノは、大魔王ゾーマ? じゃあ今僕はご先祖様になってるってこと?
アレ? アレレレ? 試練って僕が勇者アレルになって、あの大魔王ゾーマを倒すことなの?
「……やばい。みんなアレルが混乱してる!」
その声にフルカスを除く二人が警戒しつつ後ろに下がってきた。入れ替わりに賢王カダルが前に出る。壁の間から抜けてくる防ぎきれないゾーマの攻撃の余波よるダメージを時にやわらげ、時に回復することで何とか戦線を膠着させていく二人。フォンが頭を掻きむしりながら叫ぶ。
「はぁ? この土壇場でなんで混乱してるのよアレル! ビルド、何かないの? 混乱なおすやつ、確かあったでしょ?」
凄まじい力を感じさせる青い道着に身を包んだ『拳王』フォンがイライラした様子で傍らの少年にまくしたて、少年は何かをふくろから取りだした。
てんしのきつけやく は あるけど これは こんらんじゃ ないみたい
こんな激戦の最中でも張り付いたような緊張感のない笑顔の男がフォンにそういった。
「じゃあ、どうすんのよ! あぁ、もうわかんない! 殴ってくる! あとは任したからね、ビルド!」
そういって再び戦線復帰するフォンの背中を見ながらいまだ状況に適応できていないアルスにビルドが声をかけた。
おちついて きみは みらいから ぼくのつくった どうぐで やってきたこ だね
思わずうんうんとうなづくアルス。ビルドは満足そうに頷いてから言葉をつづけた。
じゃあ まずは しんこきゅう
ひっひっふー だよ ひっひっふー
いわれたとおりに深呼吸すると腹をかかえて笑い出す『建王』ビルド。からかわれた! ていうかからかったよ、この人この状況で! そして腹かかえて笑ってる! 何この人ぉ!
そんなアルスの思いを知ってか知らずか、一笑いした後ビルドはこういった。
ごめんね さすが あれる の しそん
いい はんのう だった
それは さておき きみのなかにある あれるのこえに みみをかたむけて みるんだ
おちついて やれば できるよ
そういわれたアルスは、目の前でなぜかぜーはー言っているビルドを横目に自分の中の声とやらに耳を傾けるため精神集中を始めた。
やがて聞こえてくる声がある。
我が末裔、アルスよ。己の心と力を信じよ……。そして仲間の力を!! 光の玉を掲げるのだ!
声に導かれるまま立ち上がったアルスが光の玉を掲げるとゾーマを包んでいた闇の衣と呼ばれるバリアが引きはがされた。
そこからの戦いは凄まじいものだった。『剣王』フルカスが振るう剣は、二回攻撃を可能とするハヤブサの剣のように見えたが、その破壊力たるや恐るべきもので一撃で二回切り付けるだけでなくその一撃一撃が伝説の武器の一撃に匹敵するという矛盾の満ちたものだったし、『拳王』フォンは緑色の足場の下にバネの付いた器具で何度もジャンプしたと思えば一気に天井まで飛び上がり、あまつさえ迎撃しようとしたゾーマの大火球を空中なのにジャンプすることで躱した後、再び天井を蹴って急加速したままの勢いで飛び蹴りをゾーマの角へとぶちかまし、そのまま左の角をへし折った。
『賢王』カダルも負けていない。バギ系極大呪文バギクロスを使いこなし攻撃をしつつも、炎や吹雪のブレスから身を守る超高等補助魔法フバーハや呪文反射魔法マホカンタ、そして攻撃力を高める魔法であるバイキルトに、最高位回復魔法であるベホマラー、べホマを駆使してパーティ全体を最高の状態で戦うことができるようにしていた。
そして……、『建王』ビルドはというとなんというか滅茶苦茶だった。
前線にもどるや否や、ゾーマの攻撃を防いでいた巨大な壁をまた何個も取りだして並べ安全圏を確保しつつ、合間に大きな大砲を並べてゾーマを攻撃しだしたのだ。しかも大砲から打ち出されるのは鉄の玉じゃなく……魔法弾! アルスは子どものころに寝物語に聞いたホラ話を思い出した。世界にはあのイオ系極大呪文イオナズンを打つことができる大砲が存在するというそんなホラ話を!
もしかしたらそんなホラ話の中の道具だと思っていたものを駆使して『建王』ビルドは他のなかまにも負けないほどの活躍を見せていた。
そして戦いに最後の時が訪れる。アルスの、いや、勇者アレルの体がアルスの意思とはかかわりなく動き出している。
力強い声でアレルが呪文を叫ぶ。
ギガデイン、と!
瞬く間に大魔王の間が稲光で満ち溢れ、ギガデインの莫大なエネルギーが勇者アレルが持つ剣に充填された。
その手にある剣をアルスはまじまじと見た。姿は父がどんな時でも手放さないカ―メン王家、そしてローラン王家に伝わる伝説の剣王者の剣と同じもの。
だけどこれは違う。勇者アレルの剣は真なる王者の剣であるといわれている。オリハルコンを用い、カ―メンから遠く離れたジパングの国の真なる神の武器を鍛冶場にて打たれた唯一無二の真なる王者の剣!
ロトの剣!
そのロトの剣に最強の魔法の全ての力を宿らせた勇者アレルが最後の一撃をうちはなった!
ギガブレイク!
その一撃を受けた大魔王ゾーマがゆっくりと崩れ落ちていく。最後に不吉な予言を残して……。
ゆうしゃ アレルよ……。
よくぞ わしを たおした……。
だが ひかり あるかぎり
やみ も またある。
わしには みえるのだ。
ふたたび なにものかが
やみから あらわれよう……。
だが そのときは おまえは
としおいて いきては いまい。
わははは…………っ。ぐふっ!
そう言い残しゾーマは倒れた。
そして勝利を喜ぶ間もなく崩れ落ちるゾーマ城から去るアレル達の中で一人、『建王』ビルドだけがぼそりと呟いた言葉が意識が再びどこかに行こうとしているアルスの耳に残った。
おしえてくれて ありがとう
しらみつぶしに さがして ぜんぶ たいさく することに するよ
という言葉が。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
終わらなかった……、もう少しだけ作者の自己満足にお付き合いください。
それにしてもやり切りました!
く~~~~、これがやりたいがためだけにロト紋クロス要素を出したんですよ!
四人のケンオウ 『建王』ビルドwwwww
我ながらあほやなぁ(遠い目)
なんていうパワーワード……。
ちなみに、
この時のルナフレアの装備は、
E ひかりのつるぎ
E きぞくのふく
『拳王』フォンの装備は、
E 神竜のつめ
E 神竜のぶどうぎ
なし
E 神竜のかみどめ
E ほしふるうでわ
E そらとぶくつ
です。
ん ちょっとだけおかしいきがするなぁ(棒)
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閑話 勇者アレルの末裔アルス王子、勇者ロトより教えを授かる
次にアルスが目を覚ました時、目に飛び込んできたのは今までみたこともないほど青い空。
空が近いのだ。
ここは? と目の前に手を伸ばすと見慣れた自分の手が見えた。小さいけれど毎日の剣の稽古で堅くなった自分の手のひらごしに太陽の光が零れている。草の匂いと背中越しに感じる感触にアルスは自分が草原に寝転んでいることを理解して起き上がって周囲を確認する。
……少なくてもアレル様じゃなくなったみたい。
そう思って辺りを見回すと、遠くから自分のところに歩いてくる人影が見えた。真っ黒な髪をして青い服に身を包んだ壮年の男性。どんどん近づいてくる姿は先ほどまでのアルス自身だった人。優し気でそれでいて圧倒されるような気配を持った男性がぼう然としているアルスへと近づき、腰をかがめて目線を合わせて挨拶してきた。
「ようこそ。小さな勇者くん。名前は……確かアルスだったかな?」
それだけいってアルスの小さな手を取って、手をつないでそれじゃあ行こうかといって男性は歩き出した。
ここは記憶のはざま。遠い過去に勇者アレルが残した心の世界である。
アレルとアルスが歩きはじめてどれだけだったのだろう。やがてたどり着いた先にあったのは白い木でできた小さな東屋であり、その下にテーブルセットがあった。
放された手を名残惜しく思いながら促されるまま席につくアルスを優し気に見つめるアレル。
「さて、アルス。僕の話を聞いてくれるかい?」
「はい! 勇者アレル様!」
文字通り憧れの英雄を見る目でキラキラした目で見つめられたアレルは苦笑しながら、さて、何から話そうかな……と一言言ってからゆっくりと話を始めた。
アルス自身が体験した試練のこと、そしてあの不吉なゾーマの予言について。それを聞いた仲間たちがそれぞれ『ケンオウ』を名乗り自分たちの力と技を後世に伝えようとしたことや、仲間たちの中でも特に事態を重くみた『建王』ビルドが、徹底的に自分たちの世界も、地下世界アレフガルドも調べつくし、将来生じうる闇について可能な限り対策を施したこと。
そして、その中でもアレル自身が存命中に起きた二つの秘められた戦い、すなわち『ゴルゴナ事件』とその背後に存在する異世界の魔神の脅威についてや、恐るべき力を持ったゾーマの妃が起こした『クインゾルマ事件』について詳細にアルスに語って聞かせたのだ。
その上でアレルはいった。
「アルス。どれだけ準備してもいつか必ず闇は世界を覆うだろう。だからこそ僕の子孫である君たちにお願いする」
そういってテーブル越しにアルスの頭を撫でながら、偉大な勇者アレルはいった。
――ひとつ。常に備えをおこたらないように。闇は常に僕たち人間の弱い心につけ込むからね。
――ひとつ。みんな仲良く。心に光あるものが手を取り合って進めば、絶望なんてあっちからどこかにいっちゃうさ。
――ひとつ。やがて王になる君は、一度王である前に人である自分を見つけないといけない。僕があの頃見た王たちのような存在に君はならないでくれ。
そして最後にひとつ。一番大事なお願いだからよく聞いてくれ。
――ビルドの末裔たちを常にしっかり監視して、やばいことを始めたら身を挺してでも止めること! じゃないと世界が壊れかねないからね!
と、最後だけ嫌に気合の入った表情で告げて勇者アレルはアルスの黒い髪から手を放し、じゃあ、君のあるべきところにおかえりといった。
待って、待ってください! もっとお話したいこと、聞きたいことがたくさん! という言葉が言えぬままアルスは水底から水面へとひっぱられる感覚とともに、勇者ロトの残した試練を終えた。
それからのちのこと。カ―メン王国五代目国王カ―メン五世アルスは、幼き頃の勇者ロトからの訓戒を生涯忘れず、融和と協調をもって常に朗らかに人に接しながらその治世を平和のままに終え、王国と世界をつぎの時代に伝えた名君として語り継がれることとなる。
特に彼を語るうえで欠かせないのが果てしない発展をつづけていた『建王』ビルドの末裔の街、ビルドバーグの民のカ―メン王国への招聘、いやその過半数の強制移住の決断である。
これによってカ―メン王国はさらなる発展を、ビルドバーグ自体はぐつぐつとよく煮込まれた地獄の窯の底のようになっていたやばい奴らの密集具合がほどよく分散されたことにより、発展速度と方向性に歯止めがかかり世界平和に大きな貢献をなしたことにより、アルス王はカ―メン王国ならびに世界の歴史に名を太字で残した。
アルス王は後に何度もこう話したという。
――勇者ロトは正しかった。本っ~~~当に正しかった。いつもちゃんと備えること、みんな仲良くすること、そして危ないものは常に監視して危ないと思ったらすぐに止めることはどんなに時代が進んでも大事なことだ。
と何度も何度も語っていたと当時の側近の手記に残されている。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
ロトの紋章に関してはやり切りました!
ロトの紋章なんてなかった! 継ぐ者も(ちゃんといたけど)いなかった!
全部初代ロトとその仲間たち(主にビルド)が対処しちゃいました! 終了!
簡単に各自の末路を。
魔剣ネクロス……原作屈指の鬱な中ボスだが、原作通りフルカスの下に行き封印されたのち、フルカスからの相談でビルドがやってきてあえなく御用。べっこべこにビルダーハンマーで刀身と性根を叩き潰されたうえで、ただの素材として再処理され、ちゃんと使える変な意思のないただの魔剣ネクロスとして再スタートを切る。
但し、歴代剣王愛用の究極の魔剣【はかぶさの剣】(しかも結構いっぱいある)には遠く及ばず、今もサマンオサ地方にある剣王の里で自分を使ってくれる主人を待っている。なおしっかりと調教済みのため精神を乗っ取るような真似とかは無理。
冥王ゴルゴナさん……異魔神の精神体の召喚のため、アープの塔に出向くもアープの塔がビルドにより解体済みのため途方に暮れているところに『賢王』カダルと『建王』ビルドとゴルゴナと同じく復活した太陽王ラムーの三人がかりによる奇襲を受けほとんど何もさせてもらえず、また逃げることもできずにあえなく今度こそ死亡。
異魔神さま……今もオメガルーラで飛ばされた異次元の果てにて意識だけの存在として漂い続けている。なお、仮に精神体を召喚されても肉体の封じられた闇のオーブにはビルドによる二重三重のセーフティロックがかけられている。
ちなみに最終ロックは、物理的に闇のオーブそのものが分厚いオリハルコン製の箱の中に封印されており、ビルド自身でも壊せないレベルで厳重に封印されたうえ、いくつものダミーをばらまいたうえで誰も知らない場所に封印された。
さらにもし仮に闇のオーブにもどれても、オリハルコンの箱がかたすぎて膨張する体がその箱の中で膨張するも箱を内側から破壊できない為、そのまま『げっこう』なしで圧死しつづけるため事実上復活は不可能。むしろやったら死ぬ。
異魔神様は泣いてもいいと思う。
クインゾルマ……またの名をおかあさま。原作通り偶然復活を果たす前にビルドの草の根ローラー作戦で発見され、勇者アレルとゆかいな仲間たち勢ぞろいで強制的に復活させられその場で打ち滅ぼされる。
もと にんげん とか ぞーまさま は いい おっと とか しらんわ
とはその時の『建王』ビルド談。
なお大魔王ゾーマの遺体は、戦後きっちりと勇者たち一行によって適切な処理がなされたため、もし万が一、もとい京が一原作通りにいってもゾーマの遺体モグモグイベントは発生せず詰む。
クインゾルマも泣いていい。
その他の関係者
アルスもカ―メン王国のみんなも、ジャガンことアランもローラン王国の人たちもアステアもそのお兄ちゃんもみんなみんなおおよそ幸せに暮らす。
ルナフレアは剣術指南としてカ―メンにやってきたイケメン剣王サーバインを婿にもらって幸せなお嫁さんに。タルキン老師は老衰でみんなに惜しまれながらベッドで死ぬんだよぉぉ!!
最後に『拳王』フォンを除く大魔王ゾーマ戦時の勇者パーティの装備
勇者アレル
E ロトの剣(≒11における勇者の剣・改)
E 光の鎧
E 勇者の盾
E 勇者のかぶと
『剣王』フルカス
E はかぶさの剣
E 英雄王のよろい
E 英雄王の盾
E 英雄王のかぶと
『賢王』カダル
E ときのおうしゃく
E メタルキングよろい
E メタルキングのたて
E メタルキングかぶと
『建王』ビルド
E ビルダーハンマー
E メタルキングよろい
E メタルキングのたて
E メタルキングかぶと
他に賢者の石・メルキドシールド・魔法の大砲など多数。
ふつーふつー(棒)
……正直ゾーマ様、超頑張りました。
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ロマリア編
1 ロマリア編 ロマリアの街
今回は導入なので短いです。
地竜の月 6日
僕をお母さんと一緒に育ててくれたおじいさん。つまり勇者オルテガの父にあたる人は実に物知りな人だった。おじいさんはアリアハンの名家の生まれにもかかわらず故郷であるアリアハンを今の僕と同じくらいの頃に飛びだして世界中を見て回った。冒険家なる仕事をしていたようだ。
なんでもそのころはまだ今のように世界中で魔物が大暴れしているわけでもなく、船も各大陸の大きな国や街をつなぐ定期便が出ていたし、アリアハンも南海航海の一大寄港地として賑わっていたそうだ。あのビルドと出会ったナジミの塔も元々は遠く海を行く船乗りたちの道しるべとなる灯台であったらしい。そんなアリアハンへとやってきていた船の一隻にチケット一枚だけ握りしめて冒険の旅に出たらしい。
そんなおじいさんだから本当に多くのことを僕に教えてくれた。剣術に魔法、サバイバル術に星の見方……などなど。その中の一つに世界地理がある。幼いころおじいさんのひざの上で僕はよく机の上に広げられたおおきな世界地図を見せてもらったものだ。
南海に浮かぶ大国、古き覇者の国アリアハンより方角を北西に距離は遥か彼方。
どれほど離れた場所であって任意の二点間を一瞬で移動することができる摩訶不思議な移動手段である旅の扉。その中の一つである封印されていたいざないのほこらを通り、僕らがやってきたこの国こそロマリア。
傾き始めた太陽が照らす世界最大の大国である。
ロマリア側のほこらから飛び出した僕ら。まず感じたのはアリアハンとは風が違うこと。アリアハンと少し違う少し乾いたような海風が肌をなでる。
ここからが旅の本番。アリアハンを飛びだした僕らはこれからいくつもの国や街を巡って魔王バラモスの居城へとたどり着かなきゃならない。
でもそんな大事な使命があるのに、不謹慎かもしれないけれど僕はドキドキしていた。
おじいさんの口癖がよみがえる。
――旅はよいぞぉ! アレル! 大きくなったらお前も旅に出るのじゃ!
来たよ、おじいちゃん。遠いところに。
そのままほこらから北上していくと大きな街が見えてきた。あれがロマリアの街か……
でかい……。アリアハンにも負けないくらいに大きな街だ。でも……、何だろう。街の外から見ているだけでも何だか……。
なんだか ひへい してる かんじ だね
僕の思っていたことをきちんとした言葉に変えてビルドがいってくれた。
僕の目にうつった世界一の国の都は何だか疲れているように見えた。そしてそれは間違っていなかったんだ。
街の大きな入り口から中に入ろうとすると門番の人に呼び止められる。
初めて見る風体のものたちだな、何者だってね。
僕はアリアハンを旅立った時に、どうのつるぎとかといっしょに授かったきれいな短剣を彼に見せた。正しくいうと短剣の柄の部分についているアリアハン王家の紋章を見せたのだ。
最初はいぶかし気な顔をしていたけれど、思い出したかのように僕に敬礼して挨拶をしてくる兵隊さん。慌てて一人を王宮に報せに走らせた。
失礼ですが、お名前を伺っても?
と聞かれたので僕はこう答えた。
アリアハンから参りました、勇者オルテガの子、アレルと申します。ロマリア王にアリアハン王から書簡をお預かりしていますのでどうかお目通り願います。
ってね。結構練習したからちゃんと言えてよかったよ。
ロマリアの街は外から見て通りだった。とても大きくて豊かそうで歴史もあって……、でも疲弊していた。何というか活気がなかった。
大通りを過ぎ、王宮の門をくぐり圧倒されるほど大きな城の中に案内される。案内の人に従ってやがて玉座の間に至るとそこには初老の男性がいた。
よくぞきた!
ゆうしゃオルテガのうわさは
ききおよんでおるぞよ!
といってきたのがロマリアの王様だった。はい、ありがとうございます。とこたえながらちらりと王様をみる。自信には満ち溢れてはいる。でも何というか……、アリアハンの王様とはまた違う意味で困った人に僕の目には見えた。
では たのみが ある!
カンダタというものが
このしろから きんのかんむりを
うばってにげたのじゃ。
それを とりもどせたのなら
そなたをゆうしゃとみとめよう!
さあ ゆけ! アレルよ!
それを聞いて僕が、僕たちが思ったことは一つだった。
いくらなんでも唐突過ぎるだろ……。
初対面の僕らにいきなりそれですか……。そもそもそのカンダタって誰よ。きんのかんむりが盗まれたってじゃあ今あなたがかぶっているそのキンキラキンのかんむりは何なの?
あっけにとられていた僕らが固まっていたうちに、何やら後ろから騒がしい声がしてきた。どうやら衛兵さんと女性がもみ合っているらしい。
陛下! 陛下! どうかお話を聞いてください! このままではロマリアが滅びてしまいます!
え~い、黙らんか。今は客人の前であるぞ!
振り返ってみてみるとメガネをかけた官吏風の女性が必死に何かを王様に訴えようとしているようだった。厄介事の匂いがする……。アリアハンとレーベの経験が僕に警鐘を鳴らす。
なのでひとまず僕らは退出しようとしたんだけど、おぉ! と大きい声を出した王様がそこにいた。
アレルたち は にげだした!
だが しかし まわりこまれてしまった!
おぉ! アレルよ! もうひとつ たのみを きいてくれ!
わが ロマリアこうざん をせんきょした まものたち をたおし
こうざんを もとにもどすのだ!
では ゆけ! アレルよ!
……どうやら僕らはトラブルから逃げ損ねたらしい。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
さてロマリア編です。
ここからさらにビルダーズぽくしていきますので、しばしお待ちください。
※ ビルダーズ2有料ダウンロードの告知、みなさん見ましたか? すごいですよ! プレイ済みの方も未プレイの方も一見の価値ありです! ぜひ!
いつものダイマでした。
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2 ロマリア編 ミッション1 スタート!
一応ご注意ください。
あと前話最後の部分を少しだけ追加しています。
地竜の月 10日
あのとんでもないロマリア王との初めての謁見から数えること四日。ロマリア北部地域に連なる白い雄大なロマリア連峰。その崖下に広がる黄山石の渓谷地帯に僕たちとロマリア王宮から派遣されている鉱山監督官のマリルさんの姿があった。
やっとついたよ……。この四日間は大変だった。ロマリアについて早々に事情も分からずロマリアの問題に巻き込まれる事になってしまった。
ここに来るまでの道中の大変さといったら……。何しろ僕はロマリアに来るのはもちろん初めてだ。だからこの地方に土地勘もないし、ロマリア地方特有の魔物に対する詳細な知識もない。だからキャタピラーを筆頭にアリアハンとは違う数多くの強力な魔物との初めての戦いを、何故か戦うことができない女性を守りながらやるっていう、二重の大変さの中でこなさなきゃならなかった。正直、ロマリアのさらの北にあるカザーブの村周辺出身のフォンの的確なアドバイスとビルドが野営するタイミングになると毎日当たり前のように建てられる休息用の小屋でぐっすり休めていなかったら全員ここに無事にたどり着けたかどうか……。
というわけで今僕はロマリア鉱山事務所の鉱山夫たちの住まいで一息つきながらこの日記を書いている。
それにしても何というかうちの王様もひどかったけれど、ロマリアの王様はある意味その上を行くね。正直引いたわ。
いつも通り整理のためにこの激動の四日間を振り返ることにする。
時系列 地竜の日 6日 午後
勇者殿、我が王の謁見の場での不作法と突然のぶしつけなお願いを心よりお詫びする。その上でわしの話を聞いていただけぬだろうか?
大臣殿の執務室にて、ご苦労のあまり禿げたのであろう頭を下げる大臣殿に僕は声をかけた。
ともかく頭をあげてください。それでは話もできません。
そういっていただけると助かる。ともかくこの場を設けてもらって感謝いたす。
そういって顔をあげた大臣殿の顔には安堵とそして蓄積された疲れがあらわれていた。その後ろには青い顔のまま直立不動で立つ眼鏡の女性の姿があった。
ともかく説明していただけませんか? とあらためて大臣殿の発言を促すと少しづつロマリアが抱える問題について語り始めた。
事のはじまりは魔王バラモスの出現に端を発する。バラモスがあらわれたことにより世界中の魔物が凶暴化し、人々の生活が脅かされはじめた。それはここロマリアも例外ではなかったがそこは斜陽に差し掛かったとはいえ大国ロマリア、豊富な資源と僕の父であるオルテガのような突出した力を持つ戦士こそいないもののよく訓練され整った装備を持つ軍隊の力でロマリアはバラモス出現後も比較的平和を保っていたらしい。
さて、そうして直接ロマリアの民を守る多くの兵士や政務を執り行う優れた官僚機構のおかげでどうにか平和を維持していたロマリアには一つ困った問題というか人物がいたのである。
ロマリア王その人だ。何でもこの王様、ちょっと欠点が多い人らしい。
大臣殿曰く、
「ちょっと王様としてのやる気がなくて、ちょっと人の気持ちがわからなくて、ちょっと浪費が激しく、ちょっと傲慢で、ちょっと国の今置かれている状況が見えてなくて、ちょっとわがままで、ちょっと悪い方向にざっくばらんなところがあり、誰かに暴力を振るったり女性に無理やり迫ったりはしないちょっといいところもあるのだが、ちょっとばかりおうさまとしての資質に欠けるところがある」王様らしい。
……なるほど、分かりやすい。
とっても暗君ですね(笑)
口には出さずとも僕ら一行の心がひとつになった視線を浴びて全てを悟ったらしい大臣殿がハンカチを取りだして額の汗をぬぐう。
……苦労してるなぁ、この人。
ともあれそれでも優れた国としての力で何とかロマリアは安定していたのだけれどある日王様がやらかした。
わしはわしの王としての偉業を称えるための巨大な建物を建てるぞ!
と言い出したのだ。それを聞いた瞬間、僕は思わずうわぁ……っていっちゃった。すぐさま失礼をしましたと謝罪しようとしたけれど、その前に机に額を打ち付けている大臣殿の姿が。あまりにも率直な僕の感想に心が折れかかったらしい。
慌てて謝罪し何とかとりなすと大臣殿が話の続きを始めた。
そのために大量の石材や鉄、銅などが必要だと考えた王様はロマリアの豊富な資源と人的資源をそのために投入し始めた。そういって僕らに窓の外を見るように促す。
その先に見えたのは、とにかく巨大な作りかけの建造物だ。正直街の外から見えていたしビルドが興味津々だったけれどあえて心理的に完全に無視をした街ひとつ入りそうなほどとにかくデカい建物がそこにはあった。
……でっかい とうぎじょう いや、ころせうむ かな?
僕らの中で誰よりも建築に詳しいビルドがたちどころに建物の正体を言い当てる。
コロセウム、か。僕の知ってる限りだと遠い昔の滅びた国に人間同士を闘わせてそれを見物する興業を行うための施設って聞いたことがあったけれどそれを現代によみがえらせるつもりだったのか?
それも今? この魔王バラモスに全ての人たちがおびえ苦しんでいる今、それをやろうとしたのか?
……大概うちの臆病なアリアハンの王様もひどいと思っていたけどこのロマリアの王様はそれ以上だな。ちらりと見るとその場にいる全員の表情が苦々しさでいっぱいだ。めったに表情を変えることのないビルドでさえ、笑顔がひきつってる。
絞り出すように大臣殿が言葉をつづけた。
もちろん我らは皆そろって御止めした。だが陛下のお気持ちは変わらず国の財、特に建築に必要な石材や鉄などの資材がコロセウムの建設に使われるようになり……、その分必要とされていた街の壁の修復や兵士たちの装備の更新にしわ寄せが来るようになってしまった。
大臣殿の言葉を引き取るように、直立不動で立っていた眼鏡の女性――マリルさんが続ける。
それだけでしたらまだ何とかなっていたのですが、今から数か月前のこと、ロマリア北部にあるロマリア大鉱山で大規模な落盤事故が発生。それと同時に主要な坑道がすべて魔物に占拠される事態が発生しました。これにより鉄と銅の生産が激減、同時にロマリア各地で魔物の活動が活発化し戦いが激化し、装備の破損が相次いでいます。そして数か月たった今ではこのロマリアの街の武器防具屋にてつのつるぎ一本、てつのやり一本てつのよろい一つすらない状態です。
思わず手を額に当て天を仰いでしまった。
さらに追い打ちは続く。
そしてそのためにカンダタ一味なる盗賊に警備体制が甘くなったところを突かれ、まんまと王宮から陛下のお気に入りだったきんのかんむりが盗まれてしまったわけだ。そのことに連日陛下が激怒されていたところにちょうど勇者殿たちが来られた、というわけだ。陛下は……、ここまで国の恥をさらしておいて今さらよな、おそらくだが都合がよいと思われたのだろうな、我らに何の相談もなく勇者殿にあのようなことをおっしゃった……、そういうわけである。
と大臣殿が事の顛末を説明し終えたのである。
……理解しました。正直、お腹いっぱいです。
そりゃ街にただよう空気が疲弊、疲れているわけだよ。
滅びかけてんじゃん!! ロマリア!!!
この後、涙ながらに頼まれたロマリア鉱山の解放と復旧作業についての協力のお願いにただただうなづくことしかできない僕たち一行でした。
というわけで僕の頭にいつもの電波がピーンときた。
【ロマリア鉱山 を ふっかつ せよ!】
ってね。うん、わかってたよ今回は。
追記 鉱山監督官のマリルさんは王宮に今のロマリア鉱山の状況を訴えにもどってきたところだったらしい。合掌。
追記の追記 この話の後、ビルドが大臣殿に、
よく きく いのくすり だよ
ってなんか自作の薬をあげていた。グッジョブ! ビルド!
誤字脱字、感想お待ちしています。
というわけで新ミッション始まりました。
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3 ロマリア鉱山へ 1
時系列 地竜の日 7日
翌日。王宮に寄った僕らは昨日の眼鏡の女性、鉱山監督官のマリルさんと一緒にロマリア北部へと旅立った。
今回マリルさんはロマリア鉱山への道案内役を引き受けてくれた。彼女だけならキメラのつばさで移動できるけれど、僕らが一緒では無理らしく一度歩いてロマリア鉱山へ向かう必要があるからだ。
ロマリアの半島部分を構成する見通しの良い草原を過ぎる。遠くにぴょんぴょん跳ねているスライムに和んだ。ロマリアにもスライムがいるんだなぁ。そんな中、アリアハンでスライムを倒し過ぎたフォンとカダルはスライムを見ないようにしていた。トラウマが深いなぁ……。
そんなかわいそうな二人から目をそらすためにロマリアの景色をあらためてながめてみた。こうして観察してみるとやっぱり違いがたくさんある。何しろ草ひとつ、木ひとつとってもアリアハンとは植生がずいぶん違うからだ。そんなアリアハンとは違ういろんなものが存在するこのロマリアでビルドが大人しくしているわけもなく色々見つけるたびに、いつもの通りに猛ダッシュで走っていく。そしておおきづちでぶっ叩いてはそざいに変えていった。
【黄色い花】【オリーブの木】【オリーブ】【ぬの草】。他にもいろいろ。それらを手に入れるたびにビルドはいろんなものを思い出したかのように思いつき背中の本に書き込んでいた。
そういえばこの前少しだけ見せてもらったけれど、あの背中の本もずいぶん不思議な本だったなぁ。【そざい】って大きく書いたページの次のページが【01:木材】でペラペラめくっていくと、飛び飛びに会い間が空いている感じ。01と02は埋まっていて03、04は埋まっていないのに05は埋まってる、みたいな。知らないものを書いていくんだったらああゆう書き方にはならないんじゃないかなぁ……と思ってしまうおかしな書き方をした本だった。
僕らがアリアハンを離れても何も変わらないいつも通りのそんなビルドの姿を眺めているとマリルさんが、
ゆ、勇者様、ずいぶん個性的なお仲間ですね……。
といってきた。あれ? とこの人は何をいっているんだろう? あんなのいつものビルドじゃないか……と思い至ったところで逆に気づかされた。僕のほうこそ完全に毒されている……。
同じことを考えたのか、フォンとカダルがはっとしていた。フルカス? いつも通りはっはっはと笑っていたよ。あいつに関してはあきらめた。
そしてまだ染まっていない目の前の真っ白なマリルさんの心に対して、心の中で静かに合掌しておいた。短くない付き合いになりそうな彼女が僕らのように染まるのがいつになるやら。そんなことを思いながらロマリアの中部地方に広がる大森林に差し掛かったところで、そいつはあらわれた。
遠目には盛り上がった草地にしか見えなかったけれど、目ざとく見つけたフォンが気をつけて! キャタピラーよ! と声をあげた。
キャタピラー が あらわれた!
その声に反応するかのようにのそりと長くて大きな体を持ち上げる巨大な芋虫。その持ち上がった体だけでも大人ひとり分くらいの高さがあった。
キャタピラー。ロマリア地方の代表的な魔物である。文献に、近寄りさえしなければそれほど危険な魔物ではないが、いざ戦いとなれば大変に凶悪な魔物で特にしっぽの先端についている鋭い毒の針とその巨体による体当たり、そしてその体力には注意が必要であると書いてあったのを思い出す。
まもののむれ が あらわれた!
さらに少し遠くに見える森からつられるように現れる緑色に見えるさそりばちのようなキラービー、人間の顔より大きな蝶々の体に、不気味な顔面がうごめくじんめんちょうといった魔物があらわれた。
どいつもこいつも毒や麻痺毒をあやつる強力で厄介な魔物たちだ。きゃあ! と叫んでその場にしゃがみ込むマリルさん。僕らは彼女を守るように戦闘の態勢を整え、まずは手前にいる厄介なキャタピラーを倒すために全力を尽くすのだった。
追記 ビルド、戦えないマリルさんを守るためとはいえ、彼女の周囲を全部【石垣】で囲うのはやり過ぎだと思うよ?
上まできっちり閉めたせいで、戦闘終了後助け出した時別の意味で震えていたからね?
時系列 地竜の日 7日 昼から夜
何とか魔物の群れを退けたものの慣れない敵との戦いに結構消耗してしまった僕らは昼食を兼ねて休憩することにした。いつものようにあっという間にできる【木の壁】でできた小屋を一軒。その外に食事のための【調理用たき火】をセットし、イスを人数分ならべ、さらにトイレを作って、その周囲を囲う石垣の壁を作り上げた。
ここまでわずか30分。さすがの早業である。目を白黒させるマリルさん。そうだよねぇ……、普通そうなるよねぇ……と思いながらほんの一か月前の自分を眺める僕ら。
そんな僕らを尻目に何か急いでいる様子でビルドは僕らに【キノコ】を渡してあとは好きに焼いて食えといってきた。
どこかに行くんだろうか? 目の前の初めて入る森という宝の山を前にして辛抱たまらなくなったのではないだろうか? そう思った僕が、一人で危なくない? 僕も行くよというとビルドは、
だいじょうぶ もりに はいる わけ じゃない
ちょっと そこまで いってくる だけ だからね
そういって囲いの外に飛び出していくビルド。
いったいどこに……、と思って外を見てみるともうどこにもいない。はてな? と思いながらもビルドの突飛な行動には慣れっこの僕らは見張りを買って出てくれたフルカスを石垣の上に残して、いったん食事をすることにした。
キノコの焼けるいい匂いがする。やがて焼きあがった最初の【焼きキノコ】をまずは緊張しているマリルさんに渡す。
よろしいのですか? そういって戸惑っている彼女に目で促すと恐る恐る小さな口で【焼きキノコ】にかぶりつく。
おいしい! おいしいです! 勇者様!
そういって喜ぶマリルさんの顔に出会ってから初めての笑顔があった。
おいしい食事は誰かを笑顔にする。これが僕がビルドから学んだことのひとつだ。おかげで僕も他のみんなも笑顔になった。旅先でおいしいものをみんなで食べる、これも旅のだいご味だよね? おじいちゃん。
その後しばらくして帰ってきたビルドは何だか一仕事終えた後のようにニッコリしていた。いったい何をやってきたのやら。その後、マリルさんの護衛のためにフルカスとカダルを小屋に残した僕、ビルド、フォンの三人で森の探索に向かうことにした。
キラッキラした目で探索というか偵察を提案してきたビルドの意見はこうだ。
はじめて はいる もり だから
まず ていさつ から
極めてまともなその意見を聞いた後、僕はこういった。
ビルド、本音は?
そざい ほしい!
素直でよろしい。飛び上がって訴えてくるビルドにそう返すと、僕はみんなに今日のこれからの方針を告げた。今日はここで夜を明かすからそのつもりでってね。そうしてロマリア鉱山への旅の一日目は森の手前までとなったのだった。
追記 珍しくこの日はビルドよりもフォンがハッスルしていた。森にたくさん生っていた【モモガキ】なる果物を見つけては食い、見つけては食いしていたのだ。どうやら故郷の味らしくなつかしさに手が止まらなかったらしい。あわれだったのが【モモガキ】が生る木の周りにいたドラキーたちだ。次から次へとぶっ飛ばされる様を見て、スライムはダメでドラキーはええんかいと心の中で突っ込んでおいた。
さて、この日の森の探索での最大の収穫は森になぜか自生していた【キャベツ】と【キャベツの種】だった。なので夕食はみんなでキャベツパーティ。たき火を囲んで一心不乱にみんなでキャベツをかじる。
とってもシュール。
あと当然のように森が二つ消えた。草原が森ふたつ分増えたともいう。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
私事なのですが、しばらくの間ちょっと投稿ペースが落ちるかと思います。
楽しみにしてくださっている方、おられましたら申し訳ありませんが時間を見つけて更新しますのでご容赦ください。
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4 ロマリア鉱山へ 2
時系列 地竜の日 8日
朝、小屋から出発しようとすると、ビルドが入り口の前に看板を立てていた。
【きれいに つかって ください
びるど】
そうして僕らは出発した。ここからは特に大きな事件とかはなかった。林道にしたがって森に入り、道に立ちふさがる魔物を倒したり、そざいをとったりだ。そして森の中で陽が暮れたのでまた小屋とその他一式が建ち、その日はそこで一夜を明かした。
【きれいに つかって ください
びるど】
そして次の日、また今度は森を
ここまで来ればもう一息です! がんばりましょう! と意気揚々というマリルさん。本人としてはかなり頑張って速いペース何だろうけど、僕たち的にはかなりゆっくりと僕らは登山道を登り始めた。
けれど。
はぁはぁ、ひぃひぃ。み、みなさんさすがですね。とっても、はやい……。
……十数分後、案の定へたばって山道の地面に倒れこむマリルさんの姿が。
そうだよねぇ……。僕たちは旅をするために魔物と戦うために体を鍛えているからこれくらいは何でもない。ビルドはビルドでお腹さえ膨れていたなら、何かを作るという意志を原動力に、放っておいたらほぼ無限に動き続けるスタミナお化けだから体力うんぬんをあいつにいうこと自体馬鹿らしい。ほら、今も山道の【枯れ草】を壊してそざいに変えてる。
何とか少し開けた場所まで上がった僕ら。ぱっと周りを見回してみた感じ、どうやら山の三合目といったところだろか。思っていたよりも高いところまで上がってきていたみたいで、眼下にさっき僕らが通り過ぎてきたロマリアの森が広がっていた。
山裾を包み込むように青々と広がる濃い緑の樹々の群れをみてやっぱり広いなぁと思う。素材集めという寄り道も魔物の襲撃ってアクシデントもあったとはいえ、抜けるのに一日半かかる森だ。目線をあげるとはるか遠くに何とかロマリアの街が見えた。
けれど僕のかなりいい視力(5,0くらい)でさえあれほど大きかったロマリアの街が、ここからじゃまるで豆粒みたいだ。遠くに見える街、青い空に浮かぶ白い雲、黒い雲。……黒い雲がこっちに近づいてくる。まるで生きているみたいに。
フォンの声が聞こえる。
ギズモ! 雲の魔物よ! 空を自在で飛び回って上から雷を落としてくるわ!
空を飛ぶ魔物! しかもあんなに高いところを! アリアハンにいた比較的地面から低いところを飛ぶキメラや少し浮いているだけのさそりばちとは違う、自在に空を飛ぶ強力な魔物!
けれど、対策はある。だって僕らのなかまには、
バギ!
頼りになる僧侶のカダルがいるんだから。
バギの魔法により突然吹き荒れた小さな竜巻がギズモの体を切り刻み地面に向かって落下してくる。すかさずフォンが間合いを詰めてしゃがんだフルカスの肩を蹴って空を舞う。
空中で体を翻し渾身の力を込めた回し蹴りがギズモの体を消しとばした。けれど完全に体を空中に投げ出されみるみる地面に向かって落下を始めるフォン。
危ない! と思ったら、すとんと着地する音がしてあきらかに空中に着地したフォンの姿がそこに。
フォン、君はいつの間に空を飛べるようになったのかな? と目をまたたいてみているといつの間にかフォンの足元は【土】でできた即席の足場だった。
ビルド、いつの間に。本当にいつの間に! あの一瞬であんなところまで【土】の床作ったの?
へへ~ん、得意げなビルドに褒めたいやら呆れたいやら何とも言えなくなった僕は、再び今のような空からの襲撃を避けるためにこの山のおよそ六合目の山腹にあるというロマリア鉱山の入り口へと急ぐのだった。
そして陽が暮れるころ、遠くに見えた【壁かけたいまつ】の光は僕らの心を温かくしてくれた。
ゴールが見えたっていうのは力が出るもんなんだな。
そこから急に体が軽くなったみたいになって最後のラストスパートを何とか上り切った。【壁かけたいまつ】の明かりが照らす往時の繁栄を思わせる【鉄のブロック】と【銅のブロック】でできた門をくぐって、打ちひしがれた鉱山へと僕らはたどり着いた。
【ロマリア鉱山】 に たどり着いた!
【移動先】 に 登録された!
追記 ビルド、へたばっているマリルさんにも問題があったのはわかる。確かにあのままだったら危険だったし、合理的だとも思う。だけどビルド。
マリルさんは人間だ。荷物じゃない。
ビルド、善意なのはわかるけれどもう一度言う。
マリルさんは人間だ。荷物じゃない。
もっと言うと年ごろの女性だ。決して肩から小麦の詰まった袋みたいに担ぐものじゃないんだ。
誤字脱字、感想お待ちしています。
来週いっぱいで一度落ち着きますので、すみませんがご理解のほどお願い致します。
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5 ロマリア鉱山へ 3
時系列 地竜の日 9日夜
ロマリアの富とは何か? と聞けば多くの人は何と答えるだろう。
広大かつ肥沃な国土と答えるだろうか。
温暖で過ごしやすい気候が生む多種多様かつ大量の農作物と答えるだろうか。
いや、山にも森にも海にもそして水にも恵まれたために全てが自給自足できるその環境と答えるものもいるだろう。
はたまたそれらの条件の元、様々な産業が生み出す多くの民の力こそロマリアの富だというものもいる。
そんな数あるロマリアの富の中に、この鉱山の名前が存在する。
ロマリア鉱山。およそ100年ほど前に開山されたロマリア北部の山岳地帯にある鉱山で、この鉱山が産出する石炭や銅、そして鉄こそがロマリアの繁栄と平和を支えていた。
そしてそれは魔王バラモスがあらわれ、世界中が大混乱に落ちいった後も変わらなかった。突出した者こそいないが平均的に質の高い数多くの兵隊たちに、同じく質の高い鉄の装備を潤沢に供給することで、ロマリアは大国としての力と平和を維持していたのだ。
つまりこの鉱山こそあのロマリアの要であり、急所。
その鉱山が今完全に操業停止している。国内に代替の鉱山がないわけではないが、あまりにロマリア鉱山が優秀な鉱山であったためにその他の鉱山はほとんど手が加えられておらず、今から急きょそちらを動かすのも難しい。しかももしそちらを動かしても思った通りの量の鉄や銅がとれるとも限らないのだ。
だからこそ、まだ少しでも余裕のある今のうちにロマリア中の力を結集して鉱山の早期復興を陛下にお願いに参ったところで皆様とお会いしたわけです。
こんなふうに今までのいきさつを、道中の三日間の食事のときや夜寝る前などにマリルさんは話してくれた。
そして彼女は代々このロマリア鉱山監督官の家系であり、先の落盤事故によって先代の監督官だったお父さんを亡くしたためその職を自分が引き継いだことも。
無念にも死んでしまった父のためにも、そしてロマリアのためにも鉱山は一日も早く復活させねばなりません。勇者様、お仲間の皆さん。お腹立ちなことはお有りかと思いますが何卒よろしくお願いいたします。
昨日の夜、森の中に建てた小屋の中で、最後に涙をうかべながらそう締めくくったマリルさんの言葉に僕らの気持ちは一つになっていた。彼女のために、そしてロマリアの国の人たちのために最善を尽くそうと。
そんなロマリア鉱山はひどく寂しげな場所となってしまっていた。
【銅ブロック】と【鉄のブロック】を組みあわせてできたゲートをくぐるとそこは山の中腹を切り開いてつくられたかなり広い平らな土地で、日が暮れて暗くなったことでたいまつの揺らめく炎がその場所の陰影を際立たせていた。
まず周囲の建物で無事なものがほとんどない。ゲートをくぐると広場を挟んで大きな建物、役所のように見える建物があるんだけれど一階は無事だけれど二階が全壊。さらに右を見ても左を見ても壊れた建物と崩れた土砂で辺り一帯がしっちゃかめっちゃかになっていた。
あぁ……、これはダメだ。こんな状態で鉄や銅なんて掘れるわけがない。今も鉱山の荒くれたちが力なく土砂を片付け、街の復旧と坑道の再開通のための努力を続けているけれど、その動く影の力のないことといったら。
逆にその光景に僕は決意を固めた。仲間たちを見るとフルカスもフォンもカダルも、そしてもちろんビルドもやる気でいっぱいになっていた。
だから僕はこういったんだ。
みんな、僕たちここに来てよかったね。たぶんできることがいっぱいある。さぁ、ビルド。何からはじめるか僕らに教えてよ!
僕の言葉を受けてビルドが話し出す。
あれる は ふるかすと いっしょに どしゃを かたづけて!
かたっぱし から ぜんぶ こわしちゃえ!
ふぉん と かだる は ありったけ たべものを つくって!
まずは たべないと! ちから でないから!
そして、両手を強く握りしめて突き上げ目を爛々と輝かせて力強くこう言ったんだ。
あとの ことは ぜんぶ ぼくに まかせとけ!!
こうして僕らの二番目の冒険(ミッション)、ロマリア鉱山復興が始まった!
誤字脱字、感想お待ちしています。
というわけで次はいつものあの方です。
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座④ ロマリア鉱山編①
※ 3月7日 加筆修正。
……にしてもあのロマリア王、ほんっとにひでぇな! ゲスが! 私の●●のツメの垢でも煎じて飲んどけ! このクソボケがぁ! アリアハンの王の野郎も玉無しの根性なしで大概だったけどよぉ、あのチキン野郎を上回るとは逆に恐れ入ったわ!
さってと。……封印されている身の上とはいえ、ちょっとした天罰を下すことくらいはまだまだできるしぃ~。愛しい彼への無礼に対するお礼参りでもしてやろっかなぁ!!
とりあえずまずはこれから一週間毎日タンスの角に小指をぶつける天罰と、毎日少しづつ髪の毛が薄くなっていく天罰でも下してやるかぁ!
……んだよ、うるせえな。アタシは今忙しいんだよ。あとにしておくれって……。
ひぃ!! ど、どなたです? 今どこから繋がってました? え、『……にしてもあのロマリア王、ほんっとにひでぇな!』から!? 『ゲス』だの、『クソ』だのかなりお上品なお言葉を連呼されていましたねって……。
嫌あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
謎の大地の精霊R は 【オメガパルプンテ】 を 唱えた!
どくしゃ の 直前の記憶 は なかったことに なった!
……ふぅ、危ないところでした。私のパブリックイメージ、ひいては社会的かつ信仰の対象としての尊厳の危機でしたよ。
【オメガパルプンテ】なんて超大技を使ってしまったおかげでわずかに残っていた外への干渉力をあらかた使い切ってしまいましたが……。
仕方ありませんね(テヘペロ)!
というわけでアリアハンぶりでございます。皆さんの謎の大地の精霊『R』でございますよ~。今日も上品でフェミニンでフォーマルな大地の精霊です!
さて、ではでは本日も皆さんに現在のロマリア鉱山についてご説明していきますよ!
さてさてまずはいつも通り配置図から。
123
456
789
レーベの村と同じ広さといいたいところですが、面積としてはレーベの村の三分の二となります。縦も横も三分の二ですね。とはいえ山の中腹にこの広さ。さすが大国ロマリアの工業を支える一大拠点です。
さて次に前提知識をもう少し。今回のアレルたちがくぐっていた【鉄のブロック】と【銅のブロック】でできたゲートがある場所、つまり外から鉱山への入り口は8です。8を下から入る形となります。他にも1の上側に鉱山への入り口があり、同じく3の右側にも鉱山の入り口が存在します。
つまり、
↑
123→
456
789
↑
ですね。
では上の配置図を踏まえて現状どのような状況かご説明します。
1 土砂で埋まった壊れた鉱山入り口兼トロッコ乗り場
2 鉱山事務所兼監督官の家(但し二階は全壊)
3 土砂で埋まった壊れた鉱山入り口兼トロッコ乗り場
4 壊れた酒場
5 鉱山街の広場
6 壊れた鉱山夫達の住まい
7 土砂で埋まった道具屋
8 入り口
9 土砂で埋まった鉱山夫達の住まい
とまぁ前回のレーベの村の惨状をも上回るかもしれない大変な被害となっております。
また地形そのものにも特徴がいくつかありますので順番に説明を。
まずこの街は【黄山岩】に囲まれたすり鉢状の地形の底にあたります。入り口の8番以外の部分をぐるりと囲うようにすり鉢上の壁が存在し、その壁は三段から四段に分かれており、最も高い部分はブロック8個分になります。
さらに詳しくはアレルやビルドが気が付くでしょうが、黄山岩の地面の上に2ブロック分の土が乘った上に街が作られています。
イメージ的には、ビルダーズ2における初期のオッカムル島の入り口がバーの真正面で、周囲を【黄山岩】にすり鉢状に囲まれており、街の中が土砂で埋め尽くされて建物がボロボロといった感じでしょうか?
え? ビルダーズ2って何? ですか? オッカムル島って? ていうかメタすぎやしないか? その説明、ですって?
……痛いところをグサグサと容赦有りませんねぇ、今回も。
え~大変申し上げにくいのですがこの件に関してはご説明できません。大人の事情ですよ! 大人の事情!
ただ作者曰く、「これが一番イメージしてもらいやすいので……」と自分自身の描写力のなさを棚に上げまくっていたことを私はここにご報告しておきます!
はい! というわけで。さてこれからアレルたちはこの鉱山街、ひいては鉱山をどのように復興していくのでしょうか。
それでは今回も実況、解説は謎の大地の精霊『R』でお送りいたしました。
すべては 精霊の 導きのままに……。
……あ~、やばかった。あ~、寿命ちぢんだ。何とかごまかせたからい~けど。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
R様に私が厳しい、アンチ気味と思われる方がおられるかもしれません。
ですがこじつけに近いとはいえこれにもちゃんと理由がありますのでご容赦を。
タグ追加の必要があるとお感じになった方、おられましたらご指摘もお願いします。
タグは キャラ崩壊 あたりかな?
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6 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート1
時系列 地竜の月 10日 未明
ガン! ガン! ガン!
……とまぁ。本当に濃密な四日間であった。というわけで今僕は土砂を取り除きビルドを除く僕らで仮に復旧した、鉱山街南東にある鉱山夫たちの宿舎である建物で日記を書いている。毎度のことだけれど毎日書かないと内容がすごい……。これじゃ日記じゃなくて記録じゃないだろうか。
ガン! ガン! ガン!
とはいえもう習慣だし、色々考えをまとめたり、あとで思い返したりするのにすごくいいからやめる気もないんだけれど。
ガン! ガン! ガン! ダン! ダン! ダン!
そんな物思いにふけっていると外からいつまでも途切れずに聞こえる何かを壊す音が聞こえ続けていることを無視できなくなってきた。立ち上がって【木の窓】からちらりとたくさんのかがり火に照らされた鉱山街の今の姿を見る。
揺らめくオレンジ色に照らされた廃墟と化した鉱山街の風景、と聞くと普通なら寂しげな感じか、寒々とした感じを想像してしまうはずなんだけど。
何なのかな? ていうか明るすぎないかな? 今はお昼かな? それともそのオレンジ色の光からして夕方なのかな? それとも何かの火祭りかな? そんなそこらじゅうの壁にゴースト対策と明るさの確保のため、床も壁も本当にいたるところに【たいまつ】や【壁かけたいまつ】などで行列ができている鉱山街を所狭しとビルドが駆け巡っている。
シュタタタタタタタ! ガン! ガン! ダン! ダン!
あ、ゴーストが一匹夜にもかかわらず外で動き回っている
ビルドに気づいて襲撃をかけようとしたものの、鉱山街のあまりの明るさに入り口前で涙をうかべて回れ右した。
ガン! ガン! ダン! ダン!
さっき東の土砂を片付けたかと思えば、つぎの瞬間には北東のトロッコ乗り場であり、採掘所の入り口への道をふさいでいる土砂や邪魔な岩にいつものようにおおきづち振るって一発で粉砕していた。
もきゅもきゅ ごっくん ぷはー
そんな中、定期的に【焼きキノコ】をほおばるビルド。
なんでも【焼きキノコ】に限らずキノコを使った料理には物が壊しやすくなる【破壊力】なる力をあげる効果があるらしく、その有り無しで作業効率が随分変わるらしい。
個人的には、あれは燃料だと思う。ビルドのやる気と体力を維持するために必要な燃料。キノコにはそういう不思議な成分が入っているんだろう。
なんかやべー成分が。
そしてそんなビルドのやる気の結果を確認するために、ちらりと今度は部屋の中を見た。そこにはかなり広い室内にしきつめるようにビルドお手製の【わらベッド】が。
その数なんと20。
おかげでかなり広いはずの宿舎の部屋は入り口のスペースと一人が通るための通路と僕が日記を書いていた【石のテーブル】と【石のイス】の置いてあるスペース。そして【木箱】と【イス】、そして【救急キット】で構成された【救急セット】以外は全部【わらベッド】で埋まっていた。
そして20個並んだベッドも5つを除いて埋まっていた。時折寝ている鉱山夫であるあらくれたちの痛みを訴える声や恐怖に震える声、響き渡る大音響のいびきなどにまじって、時折けが人たちの治療(ホイミ)のためにMPを限界まで絞り出して力尽きた本日のMVPであるカダルの、
無理ぃ……。もう限界ぃ……。
といううめき声が聞こえる。
ちなみにフォンは女の子だから護衛もかねてマリルさんと一緒にマリルさんの家でもある鉱山事務所で寝ている。最後にフルカスが何をしているかというと、今も外でビルドの護衛をしながら眠気を噛み殺しながら見張りをやってくれているんだけど……。眠気がつらいのか、眠気で頭が逝っちゃってるのかさっきからしきりにボディビルのポーズの名前を叫びながらポーズの練習を繰り返していた。
フロント・ダブル・セップス! サイド・チェスト! バック・ダブル・セップス!
見なかったこと、聞かなかったことにしよう。僕自身の眠気がみせた幻(マヌーサ)、そして幻聴(メタパ二)だろう。
というわけで……今日のところはもう寝よう。
そう思ってもう一度だけ縦横無尽に鉱山街を駆け回るビルドの姿を見る。
常にダッシュで動き回り、何かを壊し、何かを作るその姿に頼もしさよりも空恐ろしいものしか感じない。
だってビルド。君、今日僕らと同じ山道を登り切ったはずだよね? おまけに中腹からずっと人間一人肩に担いでさ。にもかかわらず元気過ぎないかな? ていうか君以外の仲間全員、平気なふりしてたけど山登りで体力ガリガリ削られたせいで実は鉱山街についてから今までずっと気力だけで動いてたんだよ?
なのに、君は何でそんなの元気なの?
たぶん君だけだよ、本気で元気なの。おかげで僕はそろそろビルドが人間かどうかの自信がなくなってきたよ、マヂで。
そう思いながらもそもそと【わらベッド】にもぐりこみベッドの誘惑に耐えられなくなった僕はゆっくりと意識を手放していった。
……ドン! ドン! ……フロント・ダブル・セップス! サイド・チェスト! ……ガン! ガン!
いつまでも終わらない軽快な破壊音と建築音、そしてフルカスの暑苦しすぎる叫び声から逃れるように。
地竜の月 11日
翌日、目覚めると外の風景は一変していた。
……ある意味で想定外で。ある意味で完璧に予測通りに。
あれだけぐちゃぐちゃになっていたロマリア鉱山街。どのくらいぐちゃぐちゃだったかというと、砂場に作った模型の街にバケツいっぱいの砂を思いっきり加減なしにぶちまけたかのようにぐちゃぐちゃだった昨日の夜。
けれども今朝の段階で鉱山街の東側の土砂やガレキは全て撤去され、壊れてしまっていた建物も仮ではあるけれどすべて使える状態になっていたのだ。
僕と同じように宿舎から起きだしてきたあらくれの人たちが目ん玉が飛びださんばかりに、そして何が起こったのか理解できない気持ちなのだろう、あんぐりと大きく口を開け唖然とする中、僕はあぁ……、少し前の僕がいる! と思って染まってしまった自分が悲しくなった。
そんな鉱山街という集落単位の劇的なビフォアアフターを起こした怪物はある程度やり切ったことに満足したのか、鉱山街の中央にある広場で大いびきをかきながら鼻ちょうちんをプピープピーと作って大の字に寝っ転がっていた。
……そんなビルドを通りすがりに見るマリルさんたちまだ染まっていない人たちの表情ときたら。
仮とはいえそして半分とはいえ復旧した鉱山街の現状に素直に喜んだらいいのか、この一晩でのあまりの変化に驚いたらいいのか、これまでの自分たちの苦労は何だったのかと嘆いたらいいのか、そのほかの感情も入り混じってもんのすごい表現に困る変な顔でビルドのことを見ていた。
……わかるぅ。……ものすんごいよくわかるぅ。
そんな微妙な空気の中、むくりと起き上がるビルド。軽く目をこすり、そしてこういった。
むぅ じゅうごふん も ねてしまう なんて
ぼく とっても つかれてた みたい
なさけない!
そういってビョンと勢いよく立ちあがりすぐさま作業を再開しようとしたビルドを僕も含めた人間全員で
をい!!!
とツッコミを入れたのはいうまでもない。
気を取り直して正午。ビルドに(強制的に)休んでもらった後、若干落ち着いたのだろうマリルさんがこう切り出してきた。
勇者様、ビルド様、そして皆様。私たちをお助けいただきましてありがとうございます。おかげ様をもちまして鉱山街がこんなにも……。
といいかけたところで、ビルドが大変申し訳ないことをしたかのようにこういった。
ごめんね まりるさん
ぼくの ちから が たりない ばっかりに
まだ はんぶんで
しょぼんと肩を落とすビルド。そして怨念たっぷりにぶつぶつと呟きだす。
てつ が てつ さえ あれば!
おおかなづち さえ あれば!
とっくに おわってる のに!
地面とたたいて自分の不出来さを嘆くビルドに周りはドン引き。てつぅ てつぅ という呟きにもドン引き。
……お前はこれでもまだ不満なんかい、と。そしておおかなづちあればもう全部おわっとったんかい、と。
そんなビルドの手をひざまづいて手に取り、顔を引きつらせながらマリルさんがビルドを立ち上がらせてこう続けた。
ビルド様、私たちは昨日から今朝にかけて貴方様が起こしてくださった奇跡に大変感謝しております。ですのでそんなことをおっしゃらないでくださいませ。
そして話を切り替えるようにゴホンと咳ばらいをして次なるお願いをしてきたのだ。
この時、僕の脳裏に毎度不意に飛びこんでくるいつもの謎電波が!
ミッション!
【ロマリア鉱山 を ふっこう しよう! 1】
1. 鉱山街を復興しよう (30/100%)
2 坑道を取り返そう (0/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 (0/100%)
うっわ~。一気に三つも。何々、鉱山街の復興は今の状態でもまだ三割なの? 次に坑道を取りもどそうって、魔物に占拠された坑道を取り返せってことかな? 最後に……納品? 武器と防具? 【銅】ってどういうこと?
そんなことを考えていると、僕の頭の中で流れたそんな言葉の説明が目の前にいるマリルさんの口から始まる。
まずは、とにもかくにも鉱山で働く鉱山夫のみんなのやる気と安全を確保するために鉱山街の復旧作業をお願いします。分からなくなったり迷ったりしたら私や他のものに何が必要か、何をしてほしいか聞いてもらえると助かります。
次に鉱石を再び採掘できるようにするため、魔物に占拠された坑道を取り返してください。まずは昨日ビルド様が道を開いてくださった東側の坑道からお願いいたします。
最後にロマリアの武器防具不足の解消は一刻を争う状況です。鉱石が取れ次第、ビルド様の手で武器や防具を作って頂き私のところまで持ってきてください。まずは東側の坑道で豊富にとれる【銅鉱石】から【どうのつるぎ】10本と【せいどうの盾】×10個をお願いします。あとは私が【キメラのつばさ】を使ってロマリアのお城に運びますので。
いろいろ厚かましいお願いばかりをさせていただき、本当に申し訳ないのですが皆さんだけが頼りです。どうぞよろしくお願いいたします!
そう締めくくったマリルさんの言葉に僕は僕のすぐ横でやる気いっぱいでおおきづちを振り回すビルドを見てとにかく、
今回も大変だぁ。こりゃあ物理的に鉱山が消えかねないなぁ。
とだけ思った。
誤字脱字報告のご協力、感想お待ちしてます。
というわけでミッションが本格的にスタートしました。
ロマリア編で単独で一番長い鉱山編のはじまりです。
ビルダーズ感を出せるよう今まで以上に頑張ります。
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7 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート2
地竜の月 11日 つづき
とにもかくにも鉱山街の東側部分をとりあえず使えるようにした僕らは、マリルさんのいう通りに東の坑道へと向かうことにした。
坑道、つまりは鉱山である。マリルさんの話によると【石炭】や【銅】、そして【青銅】を作るために必要な【スズ】が取れる坑道だそうだ。つまりビルドにとっては既知も未知も含めてそざいが大量にとれる楽園である。
そのはずなんだけれど、ところがどっこい、坑道の入り口まで来たときビルドがおおきづちを振り回しながらやる気十分で鼻息を荒くするんじゃなく、とても残念そうにため息をついたものだからびっくりした。
びっくりっていう表現は正しくないかもしれない。正しくいうと僕らはパニックになった。メタパ二ったともいう。
まずフルカスはたくましい腕を組んでうむぅうむぅと悩みだすし、フォンは大丈夫? ねぇ、ビルド大丈夫といいながらビルドの肩をつかんで前後にシェイクしていた。カダルは驚きのあまり、(HP的な方の)体力がまんたんなのにホイミ! ホイミ! もひとつホイミだぁ!! とMPの無駄使いをし、かくいう僕も、あっ、ひょっとすると今日突然何の準備もなくバラモスと戦うのかぁと現実逃避を始めてしまったほど全員が混乱した。
そのあまりの慌てぶりにビルドはがっかりした感情を隠すこともなく、ビルドはこういってビルド自身の気持ちを一言であらわした。
てつぅ……。
どうやら鉄への愛情があふれてあふれて天元突破した結果、鉄が取れる確率が低い東の坑道への興味があんまり持てなかったらしい。それでもしばらくすると、
まぁ いいか せいどう も いいものだし
と気を取り直していつものように目にやる気をみなぎらせながらおおきづちを振り回しはじめてので僕たちみんなホッと肩をなでおろした。
ビルド、魔物と戦う前に僕らの心臓を止め(ザキ)にかかるのやめてくれないかな?
というわけで何とか気を取り直して行動に向かう僕らを後ろのほうから呼び止める声がした。
お~い、ま、まってほしいんだぞ~。
振り返ると、あらくれさんが一人そこにいた。確か名前は……と僕が思い出そうとしていると、
ひどいぞ! 勇者さん。昨日おいら自己紹介したぞ。おいら、ジョヴァンニだぞ!
とあらためて自己紹介をしてくれた。それにしてもなぜここに? と思ったら今度は事情の説明もしてくれた。
お、おいら、お嬢に頼まれたんだぞ。勇者さんたちが東の坑道に入るから案内してあげてくれって! お、おいら魔物と戦うと、お、おしっこが出ちゃう病気にかかってるから、ホントは行きたくないんだけれど、他のみんなはケガがひどいし、お嬢から頼まれたし、戦うのは勇者さんたちがやってくれるから大丈夫って言われたから道案内するんだぞ! だ、だから、おいらについてきてほしいぞ!
と黄色い覆面で上半身裸のムキムキの人が全身ガタガタ震わせながらこう言ってきたので、僕は思わず、
アッハイ
とだけ答えておいた。あんまりつっこまないほうがいいことって世の中にはあるよね。
そんなこんなで東の坑道へ。この東の坑道は比較的被害が少なかったらしく、西側の鉄が取れる坑道のようにいまだ僕らに壊すことができない【黄山岩】が崩れて道をふさいでいることもなく、昨日もしくは今朝までの間にビルドが徹底的に入り口付近までの土砂を片付けたおかげで、ほとんど元の姿を取り戻していた、そうだ。
うわ、すごいぞ。ほとんど入り口付近全部元通りになってるぞ。トロッコ乗り場も元通りだぞ! すごいぞ、ビルド君!
とは坑道へと入ってすぐのジョヴァンニさんの言葉。
その言葉にエッヘンと胸を張るビルド。
その姿に苦笑しながら僕らは坑道の中へと入った。道すがら僕が消えた【壁かけたいまつ】に火をともし、ビルドはところどころに残る土砂や岩などを壊しつつ、さらに壊れたトロッコの線路を修理しながら坑道をしばらく進むと、ちょっとした広場に出た。どうやら雑然と採掘のための道具が荷物が置かれた場所らしい。ただ、もちろん落盤事故の影響を受けて、そこらじゅうがぐちゃぐちゃになっていたのでみんなでとりあえず片付けることに。
ガンガンガン! ドンドン! ガンガン! っていう具合であっという間にビルドが片づけを終わらせ、それを見ていたジョンさんの目がまん丸になる。
す、すごいぞ。何だか動きが速過ぎてビルド君がぶれてみえたぞ。あんなに細くて筋肉がない体なのに。
と驚愕していた。そんな中、お決まりの休憩用の小屋をちゃちゃっと作り上げたビルドがジョンさんにこう尋ねた。
ねぇ じょんさん みちが みっつ あるけど
どれから すすむの?
ビルドが言ったように道は三つ。ここは広場を中心にした十字路になっていたのだ。
ジョンさんはビルドのその言葉に迷いなくこういった。
まずは正面向かって右側の坑道に入るぞ! まずは【石炭】だぞ! 【石炭】がないと何もできないぞ!
そういって坑道の中へ走り出すジョンさんの後を追い僕らは、ロマリア鉱山の奥へと足を進めることとなった。
するとそこは……。
ドラキーたち が あらわれた!
大量のドラキーたちの巣になっていた!
次から次へと襲い掛かってくるドラキーの群れに僕らは立ち向かう……、まえにジョヴァンニさんがいち早く隅っこでうずくまってガタガタ震えはじめて、魔物だぞ! 怖いぞ! 守ってほしいぞ! って言い始めたからさぁ大変。急いで役割分担を考えた僕は声を張り上げた。
カダル! ジョヴァンニさんを守りながら、僕らを回復して!
フォン! 自由に動いてくれていい! だけどあんまり突出し過ぎないでね!
フルカス! ビルド! とにかくまとめてふっとばしちゃえ!
そう仲間に指示を出した僕はできるだけドラキーたちが固まっているところめがけて呪文を唱える。
ギラ!
燃え盛る炎が僕の手のひらから線状に伸び、延長線上にいたドラキー数匹を巻き込んで燃え上がらせた。さらに突然のまばゆい光にひるんだのか、あわてだすドラキーたち。それを見たビルドがふくろから【たいまつ】を取りだし、ドラキーたちに向かって振り回すとさらに混乱しだすドラキー。それを丁寧にやっつけて全滅させた僕らは、こ、こわかったぞ。でもみんな強いぞ! おいらがんばるぞ! と気を取り直したジョヴァンニさんと共に坑道のさらに奥へ。
何度も襲い掛かるドラキーたちを払いのけながら、さらに道々坑道の修理をしながら先へと進んでいいくとまた少し開けた場所にでた。
ここだぞ! ここが【石炭】がいっぱい取れる場所だぞ!
と走り出しそうだったジョヴァンニさんの覆面をとっさにつかんで後ろに引っ張る。勢いのまま地面にしりもちをつくさん。
な、なにするんだぞ、勇者さ……ん。
天井を見上げる形になったことで気づいたらしい。
ビルドが手に持っていた【たいまつ】を掲げるとそいつらの姿がはっきりと見えた。僕らの視線の先には天井を埋め尽くすほどたくさんのドラキーと、その中に混じる緑色の見たこともないドラキー、さらにひときわ大きな赤いドラキーの姿だった。
ドラキキキ! ニンゲンドモ! ナンノヨウダ! ココハモウ オイラタチノ スミカダゾ!
まものの むれが あらわれた!
メイジドラキー が あらわれた!
タホドラキー が あらわれた!
ドラキー が あらわれた!
ひぃ! すごい数だぞ! あんなの見たことないぞ! もうだめだぞ! おいら、ここで死んじゃうのか! と後ろ向きにうずくまってガタガタ震えだすジョヴァンニさんはほっておいてと。
すかさずカダル! と僕は声をかける。そうしてまるで天井がはがれるかのように勢いで襲い掛かってくる直前のドラキーたちに向かっていつもは後ろにいるカダルが前にずいとでて右手を向けた。
高い天井と広いスペース。それは飛ぶことができるドラキーたちのとって戦いやすい絶好の場所だ。そしてさっきとは比べ物にならないドラキーの大群。それは一見ドラキーにとって最高で、僕らにとって最悪のシチュエーションにみえるかもしれない。けれどもそうじゃない。天井が低くないここなら。翼を持つドラキーたちにとって最悪の呪文を使うことができるんだ!
バギ! バギ! バギィ!
突如吹き荒れる竜巻にドラキーたちは地面に叩きつけられた。それは緑色のドラキーたちもしゃべる赤いドラキーも一緒。そこにみんなで突っ込む! カダルは【いしのやり】でドラキーを突き刺す。フォンはまるで川辺で石から石へと飛び移るみたいにドラキーたちを踏みつけていく。フルカスとビルドが【とげこんぼう】とおおきづちで最後の緑のドラキーを叩き潰したころ、僕はでっかくて赤いドラキーに【どうのつるぎ】を深々と突き刺した。
アレル の こうげき!
かいしん の いちげき!
そしてほどなくして【キャベツのたね】をたくさん残して、ドラキーたちは地面の染みへと姿を変えた。
ふぅとひと息つく僕らを尻目にビルドが壁に向かって駆け出す。
つられて僕らが採掘場の壁を見ると、あるわあるわものすごい量の【石炭】が壁や床のいたるところに!
大喜びでおおきづちを振るいだすビルドに続いて、魔物がいなくなって安心したジョヴァンニさんが、そして僕らも【石炭】の採掘をはじめた。
東の坑道 1 を とりもどした!
【石炭】を たくさん てにいれた!
ミッション!
【ロマリア鉱山 を ふっこう しよう! 1】
1. 鉱山街を復興しよう (30/100%)
2 坑道を取り返そう (10/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 (0/100%)
誤字脱字報告のご協力、感想お待ちしています。
というわけで今回は少し丁寧な描写を頑張ってみました。
ビルダーズに限らず、ドラクエをプレイしているような臨場感が出ていればよいのですが……。
※ 3/18 ジョンから名前をジョヴァンニに変更。
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8 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート3
地竜の月 11日 夜
赤や緑や普通のドラキーの大群を倒してから、約半日。約一名を除いて各自食事と休憩としながら、【石炭】を取りまくった。
おかげで取れた【石炭】の数、何と300個。うちビルドが掘り出した量、250個。ジョヴァンニさん曰く、おいらたちが一か月かけて取る量をビルド君、たった半日で……、だそうである。
本職の鉱山夫たち何人分の働きかな? 暗算で計算ができないくらいじゃない? ホントに。
そんなビルドは、ドラキーたちのいた石炭採掘場で目についた【石炭】を全て回収したのち、採掘場自体の広さを二回り広げた後、さらに二つ新しく採掘用のトンネルを開通させたところでようやく満足したのか、
よし きょうは これくらい で かんべん してやる
というわけで おまたせ
と【わら床】に座って談笑していた僕らにいった。
僕らが延々と続く単調な【石炭】の採掘作業に滅入ってしまって、気分転換を兼ねて採掘場の隅にいつもビルドが作っているような休憩用の小屋をみんなであーでもないこうでもないと喧々諤々やりながらようやく作り終えて、さらにお腹が減ったからたき火で焼きキノコを食べ終わって一服し終わるくらいの時間、ビルドは飽きることも倦むこともなくひたすら【石炭】を掘り続けただけでなく、これから再びロマリア鉱山が再開した時のためだろうか、丈夫な木のブロックでできた足場を作ったり、新しく自分で掘ったトンネルを柱で補強したりしていた。
そんな鉱山のことなんてまったく知らない僕ですら規格外の働きをしただろうことが容易に想像がつく働きをした後のビルドは、
ひさびさに おもうぞんぶん
そざい あつめ した きが するなぁ
と満足そうな顔でニコニコ笑っていた。
そしてジョヴァンニさんは完全に固まっていた。信じられないモノでも見たんだろう。気持ちはよくわかる。
坑道を、一人で、半日どころか、数時間かからず、二本も、掘る。どう考えても頭がおかしいのだから。
そうして東の坑道から脱出呪文【リレミト】で帰ってきた後も、ビルドの動きは止まらない。というか鉱山街に帰り着くやいなや一人で勝手に坑道の壁に今回の土砂の撤去で大量に手に入れた【土岩】を使って階段みたいにしてすいすい山道を登って行ってしまった。
あまりの早業に休憩はしたものの慣れない坑道という場所での戦いやその他諸々の作業に疲れ切っていた僕らは止めることすらできずビルドはたいまつ片手に一人、夜のロマリア
北部山脈へと姿を消した。その姿を見たジョヴァンニさんが一言ポツリと漏らした言葉がこれだ。
ビ、ビルド君は多分人間じゃないんだな! たぶん種族【ビルダー】なんだな!
ジョヴァンニさん、その言葉頂きました。種族【ビルダー】。今後ビルドがらみで理不尽なことがあっても全部その一言で片付けられそうな気がしてきたよ!
ありがとう、ジョヴァンニさん!
追記 僕が疲れた体にむちを打ってビルドを探しに行こうとしたら、みんなに止められた。今の状態の僕が行っても二次災害になるだけだし、どうせビルドはケロッとしたいつもの締まりのない笑顔で帰ってくるだけだから、だって。
さすがビルド。良くも悪くも信頼が半端ない。
地竜の月 12日
一つ悟ったことがある。やる気で満ち溢れているときの種族【ビルダー】には睡眠がいらないらしいという真理である。
その結果が翌朝目を覚ました僕らが見た、いや見せつけられたのは、鉱山街東側から僕らを見下すかのように突如出現したキャベツの段々畑であった。
これにはかなりビルドの非常識さに慣れてきた僕たち仲間も、昨日から非常識を通り越して奇跡を見ている気になっていたマリルさんたち鉱山街のみんなも全員同じように口をあんぐり開けて驚くしかなかった。
どうやら昨日山へと消えたビルドは、山の上に水源を探しに行っていたらしい。それを滝にしてうまく水を引いてきた上に、東側だけとはいえ鉱山街を囲う【黄山岩】でできた壁、鉱山街のすり鉢のへりにあたるところに水路をつくって流していたのだ。
そしてその狭さのためにおよそ使い道のなさそうなすり鉢状の段差をうまく利用して、【キャベツ】の畑まで作るなんて……。
やばいわ、種族【ビルダー】。
そんな復興二日目にして鉱山街の景観を変えたビルドはというともう朝から超ハイテンションで既に食事も済ませたのか僕らに話しかけてきた。
超ニコニコ顔で!
おはよう みんな ちょっと は やすめた?
じゃあ きょうは つぎの こうどうへ いこう
ビルド、まずは君が休もうね。ホントに。そして待ってくれ。僕らまだご飯も食べてないし、トイレも行ってないから。
僕がそういうとビルドは珍しくぶーたれた顔をした後、
じゃあ じゅんび できたら よびにきて
とビルドは街の西側にダッシュで行ってしまった。どうやら休むという選択肢は今の奴にはないらしい。
ホントやばいな、種族【ビルダー】は!!
というわけで準備を終えた僕らは、昨日と同じようにジョヴァンニさんと一緒に坑道内部へと侵入した。さて、残る坑道は二本。向かって正面の坑道と、左の坑道である。
さて、どちらから行くべきか悩んでいると道案内のジョヴァンニさんが教えてくれる。
こっちの真っすぐ正面の坑道ではお嬢から頼まれてる【銅】の装備を作るのに必要な【銅鉱石】と【スズ】がたくさんとれるぞ! だから今日は正面の坑道にいくぞ!
そういって先頭を走りだすジョヴァンニさん。
あなた戦えないんだからそんなに先行したら危ないって……と思いながらも彼の後をついていく僕ら。こうして坑道探検生活二日目が始まった。
昨日と同じように道すがら道をふさぐ土砂を取り除き、壊れたトロッコの線路を修理しながら先を進んでいると、たいまつが照らす先の地面がもこもこもこと地面が不自然に盛り上がった。
みんな とまって かまえて くるよ
ビルドの警告に身構える僕ら。ヒィと声をあげ後ろに下がるジョヴァンニさん。そして次の瞬間、土の中からスコップを持った謎の魔物が飛び出して……、
いたずらもぐら が あらわ……え?
来れなかった。
ごちーん! という音が行動内部に鈍く響く。
そう、謎の魔物が穴から飛び出してくる前にビルドがそいつの頭をぶっ叩いたからだ。謎の魔物の出番も許さず、名乗りすらも奪った鬼のようなビルダーはこともなげにこういった。
どうやら この こうどう は
もぐら に せんきょ されてる みたいだね
そういったビルドの顔にはありありと じゃま! と書いてあった。
そして惨劇は始まった。
いたずらもぐら が あらわ……ごちーん!
いたずらもぐら が あらわ……ごちーん!
いたずらもぐらたち が あらわ……ごちーん! ごちーん! ごちーん!
キラースコップ が あらわ……ごちーん!
キラースコップたち が あらわ……ごちーん! ごちーん! ごちーん!
まもの の むれ が あらわ……ごちーん! ごちーん! ごちーん!
坑道を進むたびに現れる謎の魔物たちは、僕らにその姿を見せることさえできずにビルドのおおきづちの一撃によって倒され続ける。
フォンがボソッとつぶやいた。
ビルドのやつ、多分魔物が地面から勢いよく飛び出すタイミングを見計らってぶっ叩いているんだわ。だから全部カウンターみたいになって全部会心の一撃なんじゃないかしら。……とにもかくにも魔物ながら同情しちゃうわ。
その言葉にビルドを除いた男たちはうんとうなづいた。ビルド、それは勇者パーティーのメンバーの所業じゃない。悪魔の所業だと僕は思うよ。
そうして僕らがその魔物の姿を初めて見れたのは結局坑道の奥。これまた昨日と同じように少し開けたスペースがある銅とスズの採掘場でのことだった。
僕らを待ち構えるように玉を二つ重ねたような体に手足がある初めて見る魔物。
いたずらもぐらなんだな! キラースコップもいるんだな! いつも作業を邪魔する鉱山の厄介者なんだな! で、でも、あんなに大きなキラースコップ、おいら見たことも聞いたこともないんだな!
そこにいたのは僕たちの中で一番の巨躯を誇るフルカスと比べてもさらに大きな藍色の毛玉。そいつが手に大きなスコップを持ちこっちをにらみつけている。さらにそいつを囲うように茶色の魔物がたくさん。
ニンゲン! ヨク ココマデ キタナ! ダガ コノコウドウハ モウ オレタチノ モノダ!
キラースコップ が あらわれた!
いたずらもぐら が あらわれた!
まもののむれ が あらわれた!
その堂々とした名乗りに僕はさっきまでの世界の法則を破壊していたんじゃないかという不安感から解放されほっとすらした。
そして僕らはこの日昨日と同じようにひたすら【銅鉱石】と【スズ】を掘ることで大量のそざいを手に入れたのである。
【銅鉱石】と【スズ】 を たくさん てにいれた!
ミッション!
【ロマリア鉱山 を ふっこう しよう! 1】
1. 鉱山街を復興しよう (30/100%)
2 坑道を取り返そう (20/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 (0/100%)
追記 あの魔物たちがどうなったか、って?
哀れ過ぎて書けるわけないじゃないか!
ただ音で表現すると、
ごちーん! ごちーん! ごちーん! ごちーん! ごちーん! ごちーん!
ごちーん! ごちーん! ごちーん! ごちーん! ごちーん! ごっちーん!
だったよ。あとは察してほしい。
誤字脱字報告へのご協力、感想お待ちしています。
合掌……ちーん。
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9 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート4
地竜の月 12日 つづき
さてもう思い出したくもない惨劇の後、すっかり(物理的に)平和になった銅とスズの坑道にて。
昨日の石炭の坑道以上にはっちゃけるビルドの姿があった。まず手始めに目に入る範囲にあった全ての鉱石をあっというまに取りつくしたビルドは、手に入れた鉱石の量を確認してこう言い放った。
だめだ ぜんぜん たりない
しかたない やるか
だが、そういったビルドの顔はしかたなさなどかけらも感じられない太陽のような満面の笑みで。
次にビルドがとった行動は、採掘場の壁に床から数えて6ブロック分の【木のはしご】を取り付けることだった。そこはすでにビルドが鉱石をとった後で、壁はぼこぼこの隙間だらけ。その中の一つに入り込んだビルドは下にいた僕らに声をかけた。
あれるー ふるかすー あがってきてー
いわれるがまま、はしごを伝って上に行く僕とフルカスにふくろを渡したビルドはこういった。
いまから どんどん ほるから
ぼくの うしろで そざいを あつめてね
そう一息で言ったあと、本人的には長台詞に少し疲れたらしくちょっとぜーぜーと荒く息を吐くビルド。いつも思うけれど何故その程度の言葉数で息を荒げるのだろうか。スタミナというか体力には全く苦労してないはずななのに。
そんな僕の心の中でのツッコミが伝わるわけもなく、ビルドはふくろから残り少なくなった【焼きキノコ】を取りだしてほおばってからおもむろに、
こっちで いいか
といってから採掘場の入り口から見て右側、つまり時計の進行方向へ向いた。
そして。
よーし いくぞー
さくれつはんまーだー
という気の抜けた声の後、採掘場に嵐が吹き荒れた。
――それは圧倒的だった。
――それはあっという間だった。
――それはビルドの姿をした真空系極大呪文(バギクロス)だった。
僕らにできたことは、僕とフルカスはただその世界でただ一つの吸引力に引き寄せられるようにどんどんできるやわらかめの【土岩】や硬い【白い岩】と、その中に混じる【銅鉱石】と【スズ鉱石】をまとめて拾うこと、そして残された三人は斜め上を向いてぽかんと口を開けてみていることの二つだけだった。
つまりビルドは最初に壁に開けたスペースを起点に時計回りに採掘場の壁を掘り出したのだ。いや、あれは掘るじゃない。
けずるである。
まるで木をけずるカンナのように。
僕のお母さんがナイフで器用にリンゴの皮を薄く向いていくように。
巨大な竜巻が周囲のものを全て巻き込んで破壊するように。
そいや! そいや!
というビルドの掛け声とともにどんどん削れていく採石場の壁。そうして元々大きめの家が丸々一件か二件入る程度の広さがあった採掘場上部の面積がどんどん広がっていく。
これぞ無差別破壊。これこそ無差別破壊。まさに無差別破壊。
そのどこにあるのかわからないなら全部壊せばいいじゃない、とどこか遠い国の王妃の人が言いそうな台詞みたいな掟破りの採掘方法に熟練の鉱山夫であろうジョヴァンニさんがパニックを起こした。
く、くずれるぞ! そんな無茶苦茶な掘り方ありえないぞ! もっと慎重に! 落盤が起きるぞ! ていうか鉱山ってそういうのじゃないんだぞ!
といいながら真っ青になって慌てふためきしゃがんだり汗をふきだしたりおびえたりして、やがて気を失った。
そしてそうして僕らの誰も手を出す暇がないうちにどんどん削られた壁の幅はおよそブロックにして十個分。その為、削れた上の部分と削れていない下の部分の差はエライことになっていた。
なんていうか、上の空いたスペースで街でも作れるじゃないの? っていうくらいの広大なスペースが出来上がっていたのだ。その容赦のないビルドの掘りっぷりに途中から様子を見に来ていたフォンとカダルの顔も真っ青である。フルカスもどこか遠い目をしてこの場所ではないどこかを見ていた。
僕自身は……まぁビルドだしね、とあきらめていた。但し口元の筋肉を激しくつりそうになったけれど。
そうしてやっと満足したのか、うんうんとうなづいて下に飛び降りたビルドから僕たちを呼ぶ声がした。
おーい みんなー
はやく おりてきてー
つづき はじめるよー
そういってさっき上でやったのと同じように鉱石を掘り出したあとの隙間に体を入れるビルドの姿を見て僕は再びこの採掘場に真空系極大呪文(バギクロス)が吹き荒れることを確信したのだった。
その後ビルドが、
きのこ なくなったし
きり が いいから ここまで かな
といって作業を終えたころ、採掘場は恐ろしいことに延々とブロック一個分だけ足場に残した上部と下部の二つに分かれた広大なドーム状の広場へと姿を変えていた。
それを見回した僕はあることに気が付いた。
ロマリアの王様の造りたい建物ってもしかしてこういう感じなのかな?
ということ。なんとなくイメージなんだけれどこういうものの気がする。
そうならあの王様、ここに連れてきたら満足するんじゃないだろうか? と思ったけれど頭の中で打ち消した。
こんな誰にも自慢できないところじゃ駄目なんだろうなぁと、お目当ての【銅鉱石】と【スズ鉱石】以外のいらないものの中からや硬い【白い岩】や【木のブロック】をこれでもかというくらいにふんだんに使って自分が作りだしたホールに壁や柱を作ることで補強工事をやっているビルドの背中を見ながらしみじみと、これを作り出したビルドとこれを地上に作ろうとしたロマリアの王様の無茶苦茶さ加減を僕はかみしめていた。
追記 ビルドがこの時に使った【木のブロック】が余りに大量だった為、慌てた僕が作業途中でビルドをつかまえてこう尋ねた。
ビルド、君どんだけの森を消したの? 正直に言ってくれ! これだけの【木材】、森四つや五つじゃとても足りないよね?
そういうとビルドは例の、あ、こいつわかってねーな的なイラッとする表情を浮かべてこういったのだ。
あのね あれる
あんしん して
もう 【もくざい】 なら いくら つかっても だいじょうぶ なんだよ?
むげん だよ むげん
そういってぜーはーいってから再び作業に戻るビルドの言葉は僕にとっては意味不明で。
無限の木材ってどういうこと? ビルダーってそんなことまでできるの? と悩み続けることしかできないのだった。
地竜の月 12日 夜 つづき
ようやくビルドが坑道内でやることを終えて僕らが【リレミト】で外に出てくるとすっかり外は真夜中だった。
ほとんど何もしていないはずなのにぐったりと疲れ果てた僕たちとジョヴァンニさんがそのまま宿舎に直行すると、マリルさんとマリルさんのお母さんが笑顔で迎えてくれた。
おかえりなさい! 勇者様! みなさん! そしてジョヴァンニさん! 無事で何よりでした。まずは召し上がってください!
そういって差し出された【野菜炒め】のおいしかったこと。【キャベツ】のしゃきしゃきの歯ごたえを残しつつ、火を通したことで甘みが増しているし、さらに疲れた体に熱々の料理は何よりのごちそうだった。
そうして無心で食べる僕らをしばらくうれしそうに眺めていたマリルさんだったが、やがて何かに気づいたように僕に尋ねてきた。
あの、勇者様。ビルドさんはどちらに……。
その言葉で僕は今この宿舎内にビルドの姿がないことに気づく。さすがにあれだけのことをやってのければビルドだって疲れ果てて僕たちと一緒に宿舎に来ているだろうと、僕たちの常識であいつを計ったのが間違いだったようだ。
お行儀は悪いけれど口の中に二つめの【野菜炒め】を詰め込んだまま、急いで外に飛び出してビルドの姿を探す。すると探すまでもなくビルドはいた。鉱山街の中心にある広場で物珍し気な鉱山街のあらくれたちをギャラリーに煌々とたいまつの光に照らされながら何かの準備をしていた。
広場にある程度のスペースを確保したビルドは作業台を取りだし、まず【炉】を三つ作りさらにレーベの村から持ってきた作り置きの【炉】と合わせて五つ広場に並べて一気に【銅鉱石】を溶かしはじめた。
恐ろしい勢いで減っていく【銅鉱石】と【石炭】。同時に出来上がる大量の【銅のインゴット】。さらに出来上がった【銅のインゴット】と【スズ】を再び【炉】に入れて合金化していくビルド。
そんな何だか何かの儀式のようにも感じられる光景の中に大きく、ぐ~~~~~~~~~というお腹の音が鳴り響く。
ん~ だめだ
おなか へった
それを聞いた僕は苦笑いをうかべてマリルさん特製の【野菜炒め】を手に腹ペコのビルドに駆け寄ったのだった。
それにしても今気づいた。ビルドが昨日強行軍で【キャベツ】の段々畑を作ったのはこのためか。
ビルドからふくろを借りて中を確認する。
うわぁ、やばい。【キノコ】はおろか、もうほとんど【小麦】も【モモガキ】もないぞ。
やばい、こりゃ急いで手を打たないと食料が足りなくなる。
ここにきて僕らは坑道を取り返す以外にも難問にぶち当たることになってしまったのであった。
誤字脱字報告へのご協力、感想お待ちしています。
○○系極大呪文ってすごい浪漫ですよね。だって極大だもの。
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10 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート5
地竜の月 13日
さてミッション? には挙がっていないけれど次なる難問に僕らは直面することになった。
食糧問題である。
正直レーベの村のときには周囲の森の恵み(主にキノコ)やそもそもレーベの村の人口が十人未満と少なかったこと、そして何よりレーベの村周辺に大量に沸き【なまにく】を落としてくれる救世主いっかくうさぎという存在がいたため、あまり意識せずにすんだこの問題だけれど今回は違う。
まず人数が多い。ケガ人も含めて既に二十人近い人が生活するロマリア鉱山街はその分食料の消費も激しい。さらに場所も悪い。北部山脈中腹に位置するこの場所は硬い【黄山岩】で覆われており、ドラキー狩りさえすれば【キャベツの種】こそ集まるだろうけれど、そもそもそれを植えるための土地がほとんどない。
さらに高山という普通に生き物に住みずらい環境は魔物にも生きにくいのだろう、今回救世主たるいっかくうさぎはこの周辺にはいないようだった。とたいまつの灯りと【炉】の炎で照らされた広場にて、そこまで思考が及んだところで僕はとある疑問をマリルに尋ねた。
マリルさん、元々ここの食料供給ってどうなっているんですか?
するとマリルさんが言うには、
元々は近くの村々から一定の日にちごとに、【キメラのつばさ】を用いた食料の供給があったらしい。だがそれも国内の治安の悪化で最近は滞りがちで、先の落盤事故の後に持ってきてもらえたのは一度きり。しかもその持ってきてくれた村の人に、
うちの村も村の防衛に人手がとられるおかげで農作物の世話が難しく自分たちが食べる分の確保で精一杯だからしばらく持ってこれない。
といわれたそうだ。
やばい、ホントに僕らが来なかったらこの鉱山、ひいてはロマリア詰んでたかもと思える惨状に僕は頭をかかえた。
とにもかくにも自分たちでどうにかしないといけないことが確定したわけである。
方策は主に二つ。
よそから持ってくるか、ここで自給自足の態勢を整えるかだけれど。
ビルド、どう思う?
と僕はこういう件で一番頼りになる仲間に意見を聞くことにした。
りょうほう やれば いいよ
そういったビルドが言うには、
まず当座は最近覚えた瞬間移動呪文【ルーラ】や【キメラのつばさ】を用いてレーベの村に戻ってでも食料を確保すればいい。しばらくの間なら村のみんなも協力してくれるはずだからと。次に今から武器や防具を作るからそれをロマリアの街に届ければ、治安が回復して食料の供給にも少し目途が立つはずだと続け、最後に使える土地は全部使って僕が何とかするからみんなは心配するなと、ビルド的に超長くしゃべったことで息も絶え絶え見た目にも死にそうになりながらビルドはそう請け負ってくれた。
となると僕たちがやるべきことは……と考えて僕はみんなに指示を出す。
フルカス、ビルドと一緒に動いて。護衛兼作業員としてビルドの指示に従ってビルドのやることをサポートしてあげて。
僕がそういうとフルカスは、おう、任せろと頼もしい声で応えてくれた。
フォンは僕と一緒にまずはロマリアの街にビルドが作ってくれる武器や防具を届けに行こう。そのあとレーベの村に行って小麦をもらってから一度ここにもどってきて、終わったら山裾の森で森の小屋を拠点にしてドラキーを倒したり、食料になりそうなものを集めよう。
わかったわ、アレル。まかせといて。
と元気なフォンの声に励まされる。
ビルドは……、全部任せるからとりあえず息を整えようか。
そういうと青い顔でこくこく頷くビルド。ホント君しゃべるの苦手だね。何かの病気?
とそこまで話したところで最後のなかまからツッコミが入る。
おい、アレル! 俺はどうすればいいんだよ!
と少しお怒りのカダルに僕はこういったんだ。
カダル、君の役割は決まってるじゃないか。僧侶としてマリルさんたちと協力してケガをした人たちをよろしく。今は一人でも働ける人たちが欲しいんだ。そのためにも君の力でみんなをいやしてあげて。
その場にいた全員がカダルに信頼の視線を向けて僕の言葉にうなづく。顔を赤くして照れくさそうにそっぽを向くカダルはあえて無視。そんなカダルをみんながあったかい目で見ていたから、これ以上何か言うと照れ屋のカダルは逆に怒っちゃうだろうからね。
というわけでこれで僕たちの方針が決まった。さて、それじゃ寝るかというところでようやく普通に戻ったビルドから待ったかがかかった。
ちょっと まった
みんな おまたせ
そうび を こうしん しようか
そういって出来上がったばかりの【青銅のインゴット】を手にビルドが【金床】で何かを作り始めた。
剣だ。剣を作っている。分かる、これは僕の剣だ。
ビルドに剣を初めて作ってもらうことに何だかとってもうれしさがこみあげてくると同時に、僕は何故だかこの光景を見たことがある気がした。それも何度も何度も遠い昔にそんなことがあったような……。
そんなふうに遠いいつかに僕が思いをはせていると右手に何か硬いものが触れたことで自分を取り戻す。なんだったんだろう、あの感覚はと思いながらも手元を見るとそこには見事な出来上がりの青緑色の長剣が。
アレル は 【せいどうのつるぎ】 を てにいれた!
出来たばかりの【せいどうのつるぎ】を試しに振るってみる。空気をきる感触が僕に今までの【どうのつるぎ】以上の攻撃力を感じさせた。かなり攻撃力が上がった気がする。具体的にはなんか12くらい? あぁまた電波が! それはさておき。
ありがとう、すごいよビルド!
僕がそういうと満足そうなニコニコ顔で目で小さく頷いて作業を続けるビルド。やがてしばらくすると僕たちみんなのための青銅の装備が出来上がったのである。
あれる Eせいどうのつるぎ
Eせいどうのよろい
Eせいどうのたて
Eブロンズキャップ
ふるかす Eせいどうのたいけん
Eせいどうのよろい
Eなし
Eブロンズキャップ
ふぉん Eブロンズフィスト
Eけいこぎ
なし
Eけがわのフード
かだる Eせいどうのやり
Eかわのよろい
Eせいどうのたて
Eブロンズキャップ
びるど Eせいどうのつるぎ
Eせいどうのよろい
Eせいどうのたて
Eブロンズキャップ
とこうなった。みんな各々に新調された武器防具に嬉しそうだ。中でも初めての武道家用の武器にフォンが大喜びですごいいきおいで拳を振るって感触を確かめていたのが印象的だった。
そして最後にビルドは、今までにない真剣な表情をして【金床】に向かい、大きく深呼吸をしてから【青銅のインゴット】を三つも使って何かを作り始めた。やがて手に持ったハンマーから光があふれはじめ、一本のハンマーが出来上がる。それを勢いよくぶんぶんと振るったあと右手で掲げるビルド。
【ブロンズハンマー】 を てにいれた!
――これで こわせる そざい は そのままのじょうたいで てにはいるぞ!
そんな電波とともに新しいビルドの相棒も出来上がったのである。
誤字脱字、感想お待ちしています。
青銅の装備に関しては銅以上鉄未満と思っていてください。
ビルダーズ2的比較を一応書いておきます。
ひのきのぼう<いしのつるぎ<いばらのつるぎ<どうのつるぎ<てつのつるぎ
拙作
ひのきのぼう<いしのつるぎ<どうのつるぎ<せいどうのつるぎ<てつのつるぎ
です。
ビルダーズ2におけるどうのつるぎくらいの攻撃力で、第二の島での最初の装備くらいには変わります。
というわけで装備更新回でした。
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11 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート6
地竜の月 13日 朝
深夜に装備の更新を終えた後いつものように泥のように寝て起きたといいたいところなんだけど。
ビルドぉ! がんばってくれたのはわかるけど寝ろよぉ! 夜中の間ずっと武器や防具作ってただろ! キンキンカンカン響き渡ってろくに寝れんかったわ!
そう文句をいうも。
え? でも じかん もったいない
とこんな感じでビルドにそんなことをいっても無駄なのはいつものことで。ともあれビルドが夜通し作った大量の武器防具をふくろにいれて僕とフォンは夜決めた段取り通り、まずロマリアの街へと【ルーラ】の呪文で移動した。
全身が光で包まれ目を閉じた次の瞬間あっという間にロマリアの街についた。門番の人が突然現れた僕らに驚いていたがあらわれたのが数日前旅立った僕らだと気付くとあらかじめ言われていたのだろう急ぎ大臣殿へと知らせるために王宮に走ってくれた。その後他の衛兵さんの案内で王宮内の一室にて待つこと三十分くらいだろうか、退屈になったフォンが軽く鍛錬を始めたころに大臣殿が慌てた様子で部屋に飛びこんできた。
勇者殿、なんともう鉱山を開放してくださったのですか?
と息は荒いながらも声に隠し切れない喜びを乗せて僕に尋ねてくる大臣殿に僕は今までの経緯と状況を説明しだした。
僕たちがたどり着いたとき、鉱山街は本当にボロボロで魔物を倒してすぐに、はいじゃあ鉱山の再開どころの状況ではなかったこと。まずは鉱山街の機能を半分だけ復活させ、とりあえず比較的被害が軽くて道がふさがれていない東の坑道に入ったこと。二日かけて東の坑道の三つある坑道の内、二つの坑道を魔物から取り戻したこと。そこで手にいれた【石炭】と【銅】、そして【スズ】を使ってうちのビルドが【せいどうのつるぎ】のような青銅製の武器をたくさん作ったから持ってきたことなどを説明し、その証拠とばかりにふくろから大量の青銅製の武器防具を取りだした。
その数、【せいどうのつるぎ】が三十振に【せいどうのやり】も同じく三十本。さらに【せいどうのよろい】と【せいどうのたて】、【ブロンズキャップ】がそれぞれ五十個づつというまさに大盤振る舞いだった。
それを見て飛び上がらんばかりに喜ぶ大臣殿と警護の兵士たち。これで何とか戦える! ロマリアを守れるぞ! と武器を手に取って涙を流す兵士たちの姿に大臣殿もまた涙を流して喜んでいた。
勇者殿、この短期間にこれほどの成果をあげていただきこの大臣、なんとお礼を申し上げていいのか……。
あとは言葉に詰まったのか僕の手を両手で握って感謝を伝えてくる大臣殿のうしろで、ありがとうございます、ありがとうございますと口々にいいながら武器防具を持って兵士たちが次から次に部屋に入っては装備を取り換えていく。
この時の僕の気持ちが分かるだろうか? はっきり言っていたたまれない。
……だってさ。正直、この手柄の九割九分、ビルドの手柄じゃない? 僕、ちょっと戦っただけで他になんもしてなくない? やばい、ケツがむずむずする。
もっと頑張ろう。自分自身の尊厳のために。そう決意をし直した僕はおそらく同じような決意を固めただろうフォンと一緒にロマリアの街を後にした。
ルーラ!
ホントに便利だなぁ! ルーラ。大陸と大陸の間でもひとっ飛びだ!
ミッション!
【ロマリア鉱山 を ふっこう しよう! 1】
1. 鉱山街を復興しよう (30/100%)
2 坑道を取り返そう (20/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 達成!
地竜の月 13日 昼
というわけでやってきた? 戻ってきた? レーベの村である。何だかかなり懐かしい感じがするけれども、まだ一週間しか経ってないはずなのになぁ。
それにしてもこの総【石垣】造りの壁の重厚感と威圧感よ。高さ六ブロック分、正面であるここからは分からないけれど横三ブロックという、壁を構成する素材こそ違えどアリアハンの城下町を守る壁と変わらないその偉容たるや。すごいわ、ホント。そんな風に僕とフォンが壁に改めて唖然としていたら、上から鋭い誰何の声が。
何ものだ! ……アレルか? どうした、帰ってきたのか?
首をかなり上に向けて声のするほうを確認するとそこにはピンク色の鎧を着たナイスガイ。ハンソロさんだ。
しばらくぶりです、ハンソロさん。村に入っていいですか?
おう、勿論だ! おぉ~い、みんな。アレルたちが帰ってきたぞぉ!
ハンソロさんのその声に村の中から歓声が上がり、村の大扉が開いて僕らは約十日ぶりにレーベの村へと足を踏み入れた。
村の人たちに挨拶をし、歓迎されながら村の様子を確認する。宿屋も武器屋も道具屋も、他の建物も村の景色はどこも変わりがなかったけれど何かが違う気がした。
何が違うのか……、と思ったときに気が付いた。人が多いんだ。そう思って改めて歓迎してくれている人たちを観察してみると、明らかに旅支度の人や一連のレーベの村復興の過程で見知った村人じゃない人たちの姿が多くみられた。
これは……、と思った僕がハンソロさんを見ると察したのだろうハンソロさんが説明してくれた。
すごいだろ。お前らがロマリアに行ったあと、アリアハンから使者が来てな。その使者がアリアハンに戻った後、『レーベの村がすごいことになっている』っていろんなところで言いまくったらしい。そこからうわさがうわさを呼び今じゃこんなに人でいっぱいなのさ。
そこまでは晴れやかな顔で語ってくれたハンソロさんだったが、その後その表情を変えて僕に小声でささやいた。
……あとロマリアから決死の覚悟で逃げてきた人たちもちらほらいる。お前らがほこらを再び使えるようにしたらしいっていううわさを聞いてイチかバチかって気持ちでこっちにきたんだと。おい、アレル。ロマリアで今何が起きてるんだ?
その件を話しに来たんですと僕が短く伝えると、ハンソロさんは重々しく頷いてこの場での質問の続きを一度飲み込んでくれた。そして騒ぎを聞きつけてやってきたマーリンさんとエルシドさんも合流して挨拶を交わした後、村の大人たちを村の教会に集めてもらえるようにお願いした。なんとなく事情を察した三人が村人を集めるために散っていく背中を見ながら僕はビルドが立て直した村の教会へ。
たのもしき カミの しもべよ
わが きょうかいに どんな
ごようじゃな?
ごほん……、おかえりなさい勇者様。ようこそお戻りに。ですが、はて、フォン殿だけですか? 他のお仲間は?
名誉村長殿がおられたなら相談したいことがあったのですが……。
村のまとめ役である神父様の言葉に苦笑いしながら僕は切り出した。
神父様、お久しぶりです。今日は皆さんにお願いがあって戻ってまいりました。皆さんが集まってからご説明いたしますので、教会をお貸しいただけますか?
僕がそういうと神父様は笑顔でうなづいてくれた。
さて、何から話せばいいのやら。
地竜の月 13日 夕方
結果から言うと話し合いはすんなり終わった。
レーベの村からしばらくの間、毎週【小麦】を50個提供してもらえることになったのだ。勇者様たちのため、そして私たちと同じように苦しんでいる方たちのためでしたらとこころよく【小麦】の供給に応じてくれた村の皆さんには感謝の言葉もなかった。
ただ、宿題をひとつ。
村に人が増えたせいで家が足りません。そざいと設計図さえあれば我々にも家が建てられると思うのですが、我々だけでは何ともならず。勇者様ご一行がお忙しいのは重々承知しております。ですがどうか一度ビルド殿に村に戻ってきてもらえるようにお願いできませんでしょうか?
代表として神父様が申し訳なさそうにいった言葉に分かりました、可能な限り早くビルドと一度村に戻ってきますと応えて僕はまず最初の【小麦】を50個持って、再びルーラを使ってロマリア鉱山街へと飛んだ。
……一つめどがついたらまた一つか。なかなか難しいね。
地竜の月 13日 夜
レーベの村のみんなと色々と話し合った後、日が落ちる直前に【ルーラ】で僕らはロマリア鉱山街へ帰り着いた。
ルーラの魔法というのは、多分に感覚的な話になるんだけれど、Aという場所とBという場所を瞬間的に移動する魔法なんだけれど、でもそのAとかBとかいう場所はその場所の空の上に移動して空からゆっくりと落ちてくるというよくわからない魔法である。
僕がそんなことをルーラの覚えたての時に話すとビルドがこんなことをいったのが妙に耳に残っている。
るーら はね
ざひょうかんいどう の まほう だから ね
かべのなかにいる! に ならない ように なってる んだよ
って。何その『かべのなかにいる!』って、よくわかんないけどすごい怖いんだけど! と僕が言うとそういう怖いことにならないためにルーラの魔法は創られているんだよって教えてくれたんだけど……。ビルドは魔法使えないはずなのになんでこんなに詳しいんだろうと思ったことは確かだ。
そういうば僕はビルドのことほとんど知らないなぁ……。
閑話休題。現実逃避ともいう。
つまりそんな前置きをして何がいいたかったかというと、出る前と今のロマリア鉱山街の違いがすごいってことがいいたかった。
上から見た鉱山街の姿は、簡単にいうと【黄山岩】でできたすり鉢でその底の部分に鉱山街の街がある。
けれど今の姿といえば……。
たいまつの灯りで照らされた鉱山街の……色が、色がおかしい。
緑? なんで緑。土と【黄山岩】で構成された鉱山街の色は茶色もしく淡いレンガ色であるはずが、何故緑?
少しづつ高度を下げていくごとにどんどん詳細な姿が見えてくる。
地面に木が植わっている。それにそもそも土だった地面が草原の地面に置き換わっている。だから緑なのか。
それだけじゃない。道が完全に【石の床】で舗装されている。なんていうかそれだけなのに、今までの鉱山街とは雰囲気が違う。
そして広場に降り立った僕らは街を見回してあらためて街の変わりようにびっくりした。
まずとりあえず街の西側にあった片付いていなかった土砂やガレキがかたずけられ、おそらくだけれど酒場や道具屋も建物がきれいになっており本来の鉱山街の姿を取り戻していた。
次に大きく変わっていたのが、東側。
まず僕たちが宿泊していている鉱山夫さんたちの宿舎が二階建てになっていた。それはわかる。分からないのがその屋上が緑地化していたことと、その緑地に木が生えていたことだ。二階建ての屋上から生える木ってすごい……。
ていうかどうやって持って来たのさ……、その木は。下の森から木を引っこ抜いて担いで持ってきたっていうの? 想像するだけですごいな。ビルドが木を肩に担いでダッシュで山を駆け上がる姿は。
そんな変化に隠れてではないだろうけど、しれっと東側と同じように西側の斜面にもキャベツ畑ができているのも見逃せない。その畑に水を供給するためだろう、東側から鉱山街正面の門の上に水道橋を使って水を通してある。
芸が細かい……。何このユーザービリティの高い環境。そしてそのために景観が完全に変わってしまっている。
やばい、効率を最優先して人員配置間違えたかもしれない。
ジャジャーン。フルカス、アウト―。チェンジ。
だって君じゃビルドのブレーキにはならないみたいだし。
なにこの、一度は住んでみたいホワイト労働者の街。そして広場の真ん中で呆然と立ち尽くすマリルさん親子と荒くれたちに満足そうな笑顔のビルドっていう絵は。
とりあえず……、まずはいつも通り聞き取りと説教からかな。
追記 【ビルドのブレーキ】獲得!
は、また電波が! なんか僕に新しい称号が生えた気がする! 僕は勇者!
誤字脱字報告、感想お待ちしてます。
誤字修正のご協力、皆様いつもありがとうございます。
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座⑤ ロマリア鉱山編②
今回は謎が謎を呼ぶ彼女の登場です。
はい、謎の大地の精霊Rですよ! 今回は油断なし、準備万端です。ですのでサクサク行きますよ!
いつものやり取りは? ってそんな茶番はやりません! そういう油断が前回みたいな気のゆるみ、失敗につながるんですから!
というわけでいきますよ! まずは段階ごとの配置!
最初にアレルたちが来る前の鉱山街から。
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123→
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789
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1 土砂で埋まった壊れた鉱山入り口兼トロッコ乗り場
2 鉱山事務所兼監督官の家(但し二階は全壊)
3 土砂で埋まった壊れた鉱山入り口兼トロッコ乗り場
4 壊れた酒場
5 鉱山街の広場
6 壊れた鉱山夫達の住まい
7 土砂で埋まった道具屋
8 入り口
9 土砂で埋まった鉱山夫達の住まい
次にアレルが出発するまでの鉱山街の姿がコレです。
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123→
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1 土砂で埋まった鉱山入り口兼トロッコ乗り場
2 鉱山事務所兼監督官の家(二階は何もなし)
3 鉱山入り口兼トロッコ乗り場
4 壊れた酒場
5 鉱山街の広場(炉が並ぶ)
6 鉱山夫達の住まい(6と9にまたがっている)
7 土砂で埋まった道具屋
8 入り口
9 鉱山夫達の住まい(6と9にまたがっている)
最後にアレルを驚愕させた現在の鉱山街の姿がコレ。
まずベースとして土で覆われていた地面が全て草原の素を使って緑地化して上から見た場合、すり鉢状の底やヘリの部分はほとんど緑で覆われています。それを踏まえてこうなりました。
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123→
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789
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1 鉱山入り口兼トロッコ乗り場
2 鉱山事務所兼監督官の家(二階は何もなし)
3 鉱山入り口兼トロッコ乗り場
4 一階が酒場に、二階に宿。
5 鉱山街の広場(広場に荷物置き場が)
6 鉱山夫達の住まい(6と9にまたがっている+屋上は【緑の公園】に)
7 一階に道具屋、二階に【金属工房】
8 入り口
9 鉱山夫達の住まい(6と9にまたがっている+屋上は【緑の公園】に)
これを約半日で……。いつもいつも何度見てもあいつは……。バイタリティというか生命力というか生きぎたないというかなんというか、さすがあの私たち※※が何もかもを失ったあの大破壊から可能な限り全てを残した手腕はどれほど時代が下ってもどれほど力を失っても健在というわけですか。
そして我らの箱舟、古代※※※※の残滓があの有様……。あの随分と物悲しく寂しい場所が我らが栄光の※※※※の香りが残る全てとは……。
まぁ、今は少し、ほんの少しとはいえ賑わいが戻ってきて何よりです。
あいつもたまにはいいことをしますねぇ。
はっ! 皆さん何か聞きました? 忘れてください! 昔のことなので。
ということで今回はここまで。
今回もお送りしたのはできる女。できる女の、謎の大地の精霊Rでした!
誤字脱字報告、感想お待ちしています。
またいつも感謝しております。この場を借りて御礼申し上げます。
そろそろタグ足そうかなぁ……、感づいている人いるだろうし……。
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12 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート7
地竜の月 14日 未明
たいまつに照らされた鉱山街の広場、作られたばかりの荷物置き場。そこに今ワラ縄ですまきになった被告人(ビルド)がいた。
今の僕は勇者じゃない、裁判官兼検察官のアレルだ。
被告人! 罪状はやり過ぎ! 抗弁はありますか?
まかせる って いった じゃない か!
任せるとは言ったけど、やりたい放題やれとは言ってない! 次の言い訳は?
すごく くらしやすく なった でしょ!
じゃあ いい じゃないか!
だめ! 周りの街のみんなの顔を見てみろよ。あまりの変わりようにみんな石像みたいになっちゃってるじゃないか! 僕たち普通の人間は一夜で街の風景が変わるような異常事態にはなかなか対応できないんだよ! みんなが君みたいな種族ビルダーじゃないの!
ぐぬ~
いつも言ってるでしょ。暴走しないでって! まずは相談してからって! 報告・連絡・相談! ほうれんそうだって! これじゃレーベのときとまるで変わってないじゃないか!
ぐぬぬ~ あれる の くせに~ せいろん を~
僕のくせにってなんだ! 次!
ぐぬ~ まだ とちゅう だから はなせ~!
じたばたすんな! ていうかまだやる気か! まだこれでも途中なのか! ていうか何をやる気だったのか、先に言え! 吐け! 吐くんだ! ビルド!
いわない~ いったら とめる から いわない~!
くそう、こうなれば最終手段だ! やれ、拷問係のFとK! くすぐり攻撃だ!
さーいえっさー!
え? あはははは! ひ ひきょう だ ぞ あれる
そ それで も ゆ ゆうしゃ か!
ええい、今の僕は正義の勇者じゃない! 悪~い裁判官兼検察官兼拷問吏だからオッケーだ!
とまぁ、こんな世界を救うためにアリアハンから旅立った勇者パーティによる茶番を真夜中に街の人たちを置き去りにしてしばし繰り広げた結果ビルドの計画の全貌が明らかになった。きいた感想は一言、止めてよかった! である。
あまりのすごさに街の景色の変化と引き換えにみんなの心臓が止まるわ!
なんだよ! 全部の建物の上に公園や緑、そして畑を配置してさらに街の通りの上に【木の橋】や【木の格子床】を使って作った通路を設けて立体的に空間を使うことによって鉱山街の狭さを解消する計画って!
すごいわ! すごすぎて最初理解できなかったわ! 試しにビルドを拘束していたわら縄を解いてやらせてみて こんなのだよ とみせられてやっとわかったよ!
断言する。そんな街は世界中探してもどこにもない。先進的すぎる。絶対1000年は時代の先に行っている。
なんとなく4のリバーサイドとか、5のエルヘヴンとか、いう電波がかすかに脳裏をよぎったが、これは多分気づいてはいけない類の電波だと僕の直感がささやいたので華麗にスルー。
そんな変な電波に対する怒りもプラスしてその辺の不満を僕が大声でビルドにぶつけるとやれやれといった具合にビルドは足早に門の上に上がって、やおら何かをえがき始めた。まるでレーベの村で決戦場を作った時のように、空中を舞いながら。ものすごい勢いで。
【ロマリア鉱山街の設計図(仮)】 が 完成した!
ふぅ こんな かんじ に する よてー
できるなら最初からやれよ! 一発げんこつをビルドの脳天に一発。かなり痛かったのか地面にごろごろ転がってのたうち回るビルドは無視して僕らはできあがった設計図の確認に入る。
こうして視覚的に分かるようになるとものすごく理解しやすい。あれが、こうなって、動線がこうで、立体的ということは土地が少なくてもなんとかなるっていうことだし……。
といった具合に出来上がった設計図を検討すると、何というかすばらしかった。僕が設計図から受けたイメージは、この鉱山街自体が大きなサラダボウルに盛られたみずみずしいサラダみたい、だった。
広場の真ん中に【丸太】でやぐらを組んでそこから四方へ十字に【木のはし】をかける。橋の行きつく先は鉱山街の一番外側の淵の部分で、一番外側には外に落ちないように【黄山岩】で壁を作ってそのすぐ内側に水路を通し、それをぐるりと全体にそうして水を鉱山街に効率よくいきわたらせるように設計してある。
さらに各建物の屋上の上には畑や公園や緑を配置して食料を少しでも自給自足できる空間づくりもばっちりだし、食料に関してはビルドが思いついた【木のプランター】や【石のプランター】なるものを使って建物の前や街の通路に景観を損なうことなく【キャベツ】を植えられるように配慮されている。
上が閉ざされて一見暗くなりそうだけど、そこは【木の格子床】や【ガラス床】などを使って光を確保し、さらに銅が入手できるようになったことから大量生産が可能になった【壁かけたいまつ】を用いて対策は万全ときたもんだ!
ふふ~ん どう?
くっそう、ビルドのものすっんごいどや顔に一発パンチしたいけどこの設計図が素晴らしすぎてできねぇ!
ていうかあいつの頭の中、こんなのが毎回すぐに出来上がってるってこと? ホントに人間? あぁ、種族【ビルダー】だったね。こりゃ失礼。
こうして分かりやすい設計図のおかげで固まってたマリルさんたち鉱山街のみんなもその顔に理解が広がるにつれ、ここがこんな素晴らしいところになるんだと今では驚きと喜びでみんな笑顔になっちゃってる。
へへ~ん どう あれる
すごい でしょ
いつの間にかげんこつのダメージから立ち直ったビルドが胸を張っていつもの笑顔で僕を見てくる。
くっそう! すっっごいむかつくけど! やってよし! でも、みんなと一緒にやること! いいね!
こうしてビルドとみんなの鉱山街の大改造の幕が上がったのであった。
追記 作業が始まってすぐに『あ~、ビルド。そういえば昼にレーベの村の人たちが、村に家が足りないからビルドに助けてほしいって言ってたよ』って言った次の瞬間、ビルドはふくろから【キメラのつばさ】を取りだしてあっという間にレーベに飛んで行った。
しばらくあっけにとられてたけど急いで僕もルーラを使って追いかけて村にたどり着いた時には、村の南西部分の今まで空き地だったところとビルドが作った僕らも寝泊まりしていた小屋が『あった』場所に、家四件分の設計図が引かれた後であり村人たちを叩き起こしたのだろう、寝間着姿のみんなの前でビルドが
みほん みせる から
あと みっつ じぶんたち で がんばれ!
といってものすごい勢いで家を建て始めたところだった。
早い、早すぎるよ! ビルド! 家一軒内装込みで二時間かからないってどういうことだよぉ!
あと朝になってからでもよかったんじゃない? 小屋で寝泊まりしてた人はどうなる!
誤字脱字、感想お待ちしています。
おお 小屋ダイ~~~~~ン!! よ。
さくれつハンマー二発で死んでしまうとは情けない!
ということで、今回かなり実験しました。
こういうビルダーズプレイ済みの方やプレイ動画をかなり見ている方じゃないと伝わらない感じのこれが果たして良いのやらと悩みましたが、物語の進行ペースを上げるためにやむなくこうなりました。
はやく てつ を とりたいんや!
ボスを だしたいんや!
ということで一つご容赦を。
注意点としては、現段階ではまだ【黄山岩】の破壊ができないので、外壁はなしとなりますので、代替物として木の壁で代替されますので一応。
それにしても何がすごいって、これ全部ゲームでできるのがすごいよ、ビルダーズ2……(ダイマ)
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13 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート8
地竜の月 14日 昼
今、現在僕はレーベの村の宿屋にいる。
深夜に夜明けを待たずロマリア鉱山街から文字通り飛び立ったビルドは、レーベの村にたどりつくやいなやあっという間に村人たちからの依頼である民家四件分の設計図を空いていた土地と僕らが前に寝泊まりしていた小屋をぶっ壊して開けた土地に敷いた後、一件分だけ自分で仕上げた後、その屋根の上で足をプラプラさせながら突如夜中に建築作業をすることになった寝ぼけ眼のレーベの村人たちの作業を見守りはじめた。
僕はそんなビルドに
あれる どこかで ねてきて
ぼくは ねなくても だいじょうぶ だけど
ゆうしゃ は いつも ばんぜん じゃなきゃ
いや、お前が寝ろよとつっこんだものの、
じゃあ あれる に けんちく の げんばかんとく とか できる?
といわれぐぬぬとなってしまった僕はほらほらと背中をぐいぐいものすごい力で押されたため、朝日が上がる頃しぶしぶ宿で眠りについた。
そして今起きたところである。【木の窓】を開けて外を見る。太陽の位置と自分の腹時計からして時間は多分ちょうど正午かな? そのまま宿屋のご主人にお礼を言って村の広場へ。【大きなたき火】のほうに近づいていくと、村の女性が焼きたてですよ! と【パン】をくれたのでありがとうございますとお礼を言ってから食べ始める。
おいひぃ……。
そうして口の中を幸せにしながら視線の先にある民家の建築現場を見ると何と既に二件目が完成しており村人たちは各自休憩しながら楽しそうに三件目の民家を建てているところだった。
さてと、ビルドは……と思い辺りを見回すも姿はなし。トイレにでも行ってるのかと思い小屋と同時の破壊をかろうじて免れたトイレのほうを伺うもビルドの姿はなし。憩い場にいた休憩中の村人に聞いても、建築中の民家のほうに行って作業中の村人に聞いても帰ってきた答えは『名誉村長ならいつの間にかいなくなってましたよ』である。
さーっと血の気が引くのが分かる。
やばい! 見失った!
そう思った僕はビルドを探すため、村を飛びだそうとした。だが次の瞬間村のはずれにある【農家の倉庫】のほうがピカリと光ったかと思ったら、倉庫の陰からビルドがあらわれた。
僕が寝ている間にいつものようにフリーダムに動き回っていなくなっちゃうのではと焦りに焦りまくっていた僕はほーと肩をなでおろした。これじゃあ、フルカスにとやかくいえないじゃないかと。そんな風に安心のあまり大きく息を吐いた僕に近づいてきたビルドは開口一番こういった。
あれる かお あおい よ
ねぶそく?
いや、お前が寝ろよ!
なんで? ぼく ねむく ないよ
おかげで理不尽なやり取りをしてしまった。
ていうか全然寝てない奴に言われたくないからな! あと今僕の顔が青いのは間違いなく君のせいだからな! と思いながらもさすがにこれは八つ当たりになると思いぐっとこらえて僕はもう一度村のみんなに挨拶をしてビルドとともに【ルーラ】で村を後にした。
……それにしてもビルドはあんなところで何をしていたんだろう? 今度からちょっと注意してみておくことにしようかな。
その後、【ルーラ】で降り立った鉱山街はずいぶんと賑わいを取り戻していた。ビルドの書いた設計図の完成のため働ける人と物が行きかい、少しづつではあるけれど街が新しい形へと変化を始めていたのだ。
街の広場に降り立った僕らの目の前にその構造物はあった。
そう、まず最初に完成したのは街の新しい中心になる丸太でできたやぐらだ。
丸太四本で構成されたやぐらは、てっぺんまでの高さが何と8ブロックというかなり高いもので、櫓の真ん中から長い縄ばしごが垂れている。上には【木の格子床】でできた床がありそこから街を囲う東西南北の街を囲う壁のへりの部分に向かって渡り廊下代わりのつり橋が伸びているのだ。
すごい存在感だなぁ……と思いながら今度は街の様子を眺めてみて、僕は昨日までとの一番の違いに気が付いた。
おらぁ! これで土は全部草原の土になっただろ!
石レンガ! 石レンガが足りねぇぞ! もっと作って持ってこい!
さぁ、見なさい。この私の筋肉(あい)の詰まったブロック詰みの筋肉(ぎじゅつ)を! 街づくりは筋肉(ファンタジー)よ!
一部おかしな言葉が聞こえてけれど、今の鉱山街には街には昨日までなかった『活気』があった。誰もが目標をもって何かを成し遂げようとするエネルギーに満ち溢れていたのだ。所狭しと大声でしょうもないことをいいながら作業をする大勢の荒くれの人たち。そんな彼らが回復したことに喜びながらも無理しちゃダメですからね! とうれしそうに叫ぶマリルさんがかわいかった。
うお~ お嬢だ! 見ててくれよぉ! お嬢のためにも俺たち働くぜぇ!
お嬢~、今日もかわいいぜぇ~! さすがは俺たちのアイドルだぜぇ!
何言ってるんですか、もう! ほら、ちゃんと前を見て働いてください!
あはははは! おめえたち、かわいいお嬢の姿を見て筋肉(やるき)は十分だろう? ほら、さっさと完成させようぜぇ!
とまぁこんな感じで。それを見て僕はなんでもビルドや僕たちがやるのはよくないことなんだということを学んだ。人間、やることがないってことは心を弱らせる原因の一つになるんだって学んだんだ。
……やり過ぎはよくないけどね、と隣でぶーたれているビルドをちらり見た。
うわー しごと とられたー
うわー ぼくの しごとがー
しまったー もうちょっと せっけいず もったい ぶれば よかったー
こいつ……。無言でこの後僕がビルドにげんこつを振り下ろしたことはいうまでもない。
こいつ、本気でワーカーホリックだな! ちょっとは休め!
追記 街の人たちに活気が出たのはよかったんだけど、それはともかくとして、なんで筋肉ムキムキのフルカスや街の筋肉ムキムキの荒くれの人たちはこのクソせまい鉱山街ですれ違うたびにポージングしてるのかな? 何なのかな? ●●(伏字)なのかな?
暑っ苦しいんだよ! お前ら!
あとフルカスあうとー。罰としてお前今日から筋トレ禁止な。
ミッション!
【ロマリア鉱山 を ふっこう しよう! 1】
1. 鉱山街を復興しよう (50/100%)
2 坑道を取り返そう (20/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 達成!
地竜の月 15日 朝
翌日。活気と賑わいを見せる鉱山街を街のみんなに任せた僕らの姿は再び東の坑道にあった。
理由はふとしたことからだった。それは今朝のこと。あらくれたちの宿舎の宿舎機能を二階にそのまま移したことで完成した【あらくれキッチン】にて事件は起こった。
キッチンの前に置かれたテーブルに顎を乗せてぶーたれるビルド。昨日僕があの後、ビルドは今日は現場監督ね! 手出しは禁止っていったものだから昨日からずっとぶーたれているのだ。
そんな彼を見かねてジョヴァンニさんが善意でこういったのだ。
そ、それじゃあビルド君、東の坑道でまだ行ってない左側の坑道にいってみるのはどうなんだな? あそこは、元々掘りかけの坑道だったんだけど途中で水が大量に出て坑道が水で埋まってしまって進めなくなってるんだけど……。
問題はこの次の一言であった。
ちょっとだけど【鉄】がでるんだな!
そうジョヴァンニさんが言った瞬間、テーブルから瞬間移動し側に立っていたジョヴァンニさんを片手でつるし上げるビルド。
その目からは完全にハイライトが消えていた。
ねぇなんでそういうだいじなことはやくいわないかなてつがでるとかさいしょからしってたらいままでむだなじかんなんていっさいつかわなくていちばんにそっちにむかっていたにきまっていたのにだっててつだよてつなによりだいじでしょうてつってそれなのにじょうほうをちゃんといってくれないとかじょう”ぁんにさんはばかなのかな?あぁばかなんだね?だったらこのままかべのしみになってもしかた……。
ビルドストップ! 落ち着け! ジョヴァンニさん、白目向いて口から泡吹いてるから!
そこで何とか我に返った僕が惨劇を止めた、んだけどその後がまたものすんごい怖かった。ジョヴァンニさんを床に下して顔だけ僕のほうに向けて依然ハイライトが消えた目のままのビルドが僕にこういう。
……あれる いまから いそいで こうどうに いこう
イイヨネ?
顔真っ青で高速で頷くことしかできない僕、フルカス、フォン、カダル、そして居合わせたあらくれさんたち全員。
ビルドはその後、一足先に右手にジョヴァンニさんの覆面を持って引きずったまま東の坑道に向かった。僕らも間髪入れずそれについていくことに。
まず最初にジョヴァンニさんを助けなきゃ! カダル、分かってるよね!
おう、まずホイミだなぁ! ていうか生きてるんだよな! 俺ザオラルなんて、ましてやザオリクなんて使えないからな!?
うん、多分大丈夫……だと思う。さすがに息の根は止めてないはず。
ところでさ、何か精神をいやす魔法とかに心当たりないかな? ジョヴァンニさん、下手すれば再起不能になってないか心配なんだけどボク。
そんな都合のいい僧侶の魔法はない!
これが僕らが東の坑道に最後に残った一本へと挑むこととなった理由である。
追記 正直、僕もちょっとだけ○○た。絶対人には言えないけど、あの顔を見た時ちょっとだけ、ち○○た。
誤字脱字報告、感想お待ちしています。
【悲報】勇者ロト、ちょっとちび○【拡散禁止】
以下愚痴というか言い訳というかそんな感じ。
本当にどっから降りてきたこのアイデア。
元ブラック企業の創業者経営者が、ブラックすぎて会社を追い出されたその日に元社員に復讐され、拉致監禁されすまきにされてヘッドホンを装着され、お前に順法精神を刷り込んでやるとばかりに延々と流れ続ける日本の法律条文。
その後、無事に死亡の後ファンタジーとか奴隷制度ありありの貴族の子息に転生し、今度こそ俺は俺のために全てを搾取してやるぜぇ! とヒャッハーしようとするも、魂にまで刷り込まれた日本の法律が彼を縛る!
おのれぇぇぇぇぇぇェぇ! 労働基準法めぇぇぇぇぇ!!
生まれ変わっても俺を縛るというのかぁぁぁぁぁ(血涙)!!
そんなブラックすぎる彼と、彼によって幸せにされる領民たちのハートフルストーリー♡
……こいつが今週頭の中で育っていたため、投稿が遅れたことをここに懺悔いたします。
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14 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート9
地竜の月 15日 つづき
というわけで、現在僕たちは今東の坑道最後の一本へと足を踏み入れた。
ジョヴァンニさんもどうにか目覚めてくれていつものようにガタガタ震えながらも道案内をかってでてくれている。但しビビる対象は魔物ではなく恐ろしい気配を漂わせながらず~~~と、
てつぅ~ てつぅ~
と呟き続けているビルドにだったようだけど。
気持ちはわかる。あれは怖い。そりゃあもう怖い。だってジョヴァンニさんだけじゃなくフルカスもフォンもカダルも、そして僕もガッタガタに震えている理由はこの最後の坑道が今までの坑道とは違い緩やかなに下っていく横穴ではなく、そこら中に水が滴る鍾乳洞の中にできた縦穴であることだけでないことは間違いないと思う。
てつぅ~ てつぅ~
と薄気味悪く幽霊みたいにユラユラしながらもビルドの動きはいつもと変わらないどころかキレにキレまくっている。
各自の持っている【たいまつ】だけを頼りに進むうす暗い鍾乳洞の中で、『ボク、イイキノコデスヨ』っていう擬態をして近づいた途端に襲い掛かってきて眠らせてくる狡猾な魔物【おばけキノコ】を、
あほかだれがだまされるかこのかすどもじゃまだからさっさとしね
というビルドの口からでる普段と違うすらすら出る言葉と今まであまり聞いたことのないレベルの罵詈雑言。そして新しく作った【ブロンズハンマー】で【緑石】や【丸い石】ごと吹っ飛ばしては動きを止め、同じく新しく作った【せいどうのつるぎ】で切り刻んでいく。その早業に僕らはまるで手を出す暇すらなく、
てつぅ~ てつぅ~
あれる~ ちゃんとそざいはぜんぶひろっておいてねつかうから
というなぜか息切れひとつせずにすらすらしゃべるビルドの指示通りにそざい集めぐらいしかすることがないほど。
そうして道中あらわれる【おばけキノコ】や【ドラキー】などをなぎ倒して行動を奥へ奥へと進んでいくとやがて目の前にものすごい勢いで上から下へと流れる水の壁があらわれた。
こ、ここなんだぞ! 試掘のときにここで水が出たせいで今この坑道は割が合わないから一旦掘るのをやめてたんだぞ! べ、べつにいじわるとかわすれてたとかでこの坑道を後回しにしたんじゃなかっただぞ! だってオイラたちあらくれは泳げないんだぞ! こ、こわいんだぞ! こんな大量の水は!
とジョヴァンニさんはこの坑道を後回しにした実に情けない理由をガタガタ震えながら力いっぱい教えてくれた。
そんなジョヴァンニさんたちあらくれが泳げるかどうかはさておき、この坑道が半ば放棄されていたことには納得がいった。道中も今までと違いひんやりしていて水が滴るせいでろくにたいまつを設置することも難しかったし、魔物もキノコに擬態する【おばけキノコ】という厄介な魔物。さらにこんなに水が出るならまともな採掘作業は難しいだろうし、さらに外に運び出す運搬ともなると基本的には横穴だった今までとは違いこんな急こう配で細い縦穴では効率が悪いという問題もあり、この坑道は一旦放棄という判断がされたんだろう。
一応念のため、ふくろから【ひのきのぼう】を取りだして目の前の水の壁とかした滝に突っ込んでみるとものすごい勢いで下方向への力が加わり思わず手を放しそうになってしまうほどだった。
これはこの水を何とかしないと無理だな……と僕が思っているとビルドが動き出した。
今日までの作業で出た土砂の中でも一番使い道のない大量の【土岩】をつり出したかと思ったらそれをどんどん階段のように壁に積み上げて滝の上ほうへと登っていき邪魔な岩を壊して天井付近に道を作っていく。気になった僕がビルドの後を追って上に上がると、ビルドは今度は硬い【白い岩】を取りだして巧みに水が噴き出ている穴を埋め始めた。あっという間に水を吹き出していた穴が埋まりやがて勢いよく流れていた水はせき止められ、坑道のさらに奥へと続く道とその先に広がる巨大な地底湖が僕たちの目に飛び込んできた。
これは……、美しい……。
すごい、とってもキレイ……。
これはすごい……、地下にこんな美しい場所があったなんて……。
すごいぞ! オイラ、こんなきれいなの初めて見たぞ!
うっすらと淡く光を放つコケとその光を反射して青く光る神秘的な景色にしばし僕らは目と心を奪われた。
てつぅ~ てつぅ~
……一人を除いては。
しばし見とれていた僕らを何かを壊す音が現実に引き戻す。それはこの地底湖を住まいとする【スライムつむり】という珍しい魔物であったり、地底湖のそこかしこに生えていた【わたげ草】という【わた】が取れるそざいだったりした。
……ビルド、気持ちはわかるけどたまにはキレイなものに感動してもいいんじゃないかな? といういつもなら必ず言っていたツッコミをこの時僕は飲み込んだ。だってそんなことを言って今の完全にイカレテしまっているビルドに朝のジョヴァンニさんみたいに片手で宙吊りにされるのはまっぴらゴメンだったからね!
そして地底湖をぐるりと回るように奥へ奥へと進んでいくと採掘場らしき広間があった。どうやらそこはキノコの群生地になっているらしく、普通の明るいオレンジ色のキノコや見たことのないまがまがしい紫や赤紫っぽい色のキノコの中にひときわ大きな、それこそ太い木の幹くらい太いキノコが真ん中に生えているというそんな光景が広がっていたのだ。
うっわ、あからさまー。
さすがにこれは分かる。あれは魔物の群れであの真ん中のでかいキノコはここのボスに違いないと。だがだとするとあのサイズ、基本標準サイズよりデカい=強い、の法則が適応される魔物の生態においてあの巨大なキノコは相当に強力な魔物に違いない、これはいったいどうするべきか……な~~~んていう僕らの思考はすべて無駄になった。
あきらかな罠であり強力な魔物の群れであろうそれを興味なさげにかつ蔑み切った目で一瞥したビルドは、
けっ
と一言吐き捨てた後、何故か以前レーベの村でどくどくゾンビのときに大活躍した【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を設置し、そしてそれらに乗せる【油ダル】と【つみわら】を取りだして僕らにこういった。
あれどうせぜんぶまものだからあいつらばかだからちょうどつごうよくみっしゅうしてるしここからちかづかないでやきころそう
といって早々と三機の【タルカタパルト】全部に【油ダル】を装填し、発射した。
ひゅ~~~んという音が透き通った静寂が支配する地下に響いてやがてゴ~ンと何かと何かがぶつかる音がして広場のキノコたちが一斉に動き出した!
【おばけキノコ】 が あらわれた!
【マタンゴ】 が あらわれた!
【マージマタンゴ】 があらわれた!
まもののむれ が あらわれた!
そんな次の瞬間、今度は三機の【銅の投てき機】から燃え盛る【つみわら】が美しい放物線を描いて魔物たちの群れの中心に着弾し、次々と油に引火。
だが まもののむれ は おどろき おののいている!
あっという間に荘厳な地下に響き渡るキノコの魔物たちの絶叫とキノコの焼けるいい匂い! そして矢継ぎ早に繰り出される情け容赦のない炎の御代わりに魔物たちはこんがり焼かれることしかできず。
まもののむれ を やっつけた!
――戦いは終わった。
てつぅ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!
そして雄叫びをあげてこんがり焼けた魔物になど見向きもせずにビルドが走り出す。広場の中心に立ち、試掘の後だろう壁の凸凹を目でなぞりながらやがて何かを見つけ、その場所に近づき何故かあえてブロンズハンマーではなくおおきづちで壁を壊しはじめた。
そして満面の笑みを浮かべて僕らを振り返り、手に持った黒いものを掲げてビルドはジャンプした!
【鉄】 を てにいれた!
その姿に僕らの心は一つだった。
ただただ一つだった。
――よかったぁ! ビルドがいつものビルドに戻ったぁ!
誤字脱字報告、感想お待ちしています。
いやあ、まとめてやきころすなんてまったくひどいじけんでしたね(棒)
あとお知らせです。
また資格試験が近づいてまいりました。
これから約10日間ほど更新が極めて遅くなると思いますので皆様何卒ご容赦のほどよろしくお願いいたします。
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15 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート10
地竜の月 15日 さらにつづき
つい先ほどビルドの手によって現出し、キノコの魔物を全て炭へと変えた煉獄地獄の凄惨な現場にて。その黒こげの残がいに見向きもせずビルドはおおきづちを、振るう! 振るう!! 振るう!!!
しかしかなり壁を構成している【グレー岩】という岩がよっぽどかたい岩なのか、普通なら二度三度叩けば壊れる今までの【土岩】や【白い岩】のようなブロックとは違い、なんと五回も叩かないと壊れなかった。
それでもまるでひるまず疲れも見せず壁の中に埋まっている鉄を必死に探すビルド。既に採掘開始からたぶん二時間は経っているが以前ビルドが止まる様子はない。
僕らは街から持ってきた【パン】や道中手に入れた【キノコ】を【たき火】で焼いたおなじみの【焼きキノコ】などでお腹を満たしていた。
こんなふうにビルドがいろいろやってる間にも、僕らは僕らなりにやれることを探してやっておくことにした。まずフルカスたち三人は地底湖にそざいを探しに行った。
なんでもカダルが前に患者さんやケガ人たちを寝かせるための【わらベッド】よりもいいベッドが作れないかと尋ねたところ、ビルドに【わた】があればできると言われていたらしく、今回【わた】が取れる【わたげ草】を見つけたカダルが【わた】と【わたげ草のタネ】の確保を主張し、広大な地底湖の周辺や点在する小島にぽつぽつと生えている【わたげ草】を魔物を退けながら三人はそざいの採取を行っている。
……僕は残念ながらビルドとジョヴァンニさんの護衛を兼ねて待機中。できれば僕も行きたかったけれど二人を放っておくわけもいかず、こういうことになっている。
それからどれほど時間がたっただろう、フルカスたちが満足のいく量の確保できたため僕に合流し、オ、オイラも掘るんだな! 頑張らないと! またあんな怖いゴメンなんだな! といってひたすら頑張っていたジョヴァンニさんが力尽きてひんやりとした地下の地面に【わらベッド】を敷き横になってからさらに長い時間がたった後、ようやく ガイン! ガイン! という甲高い破壊音が響き続けた地底湖に静寂が戻った。
ふー いやー きびしかった
たしかに ここの こうみゃくは てつ の こうみゃく としては だめだね
ぜんぜん なくて くろう したよ
と話す内容とは裏腹に戻ってきたいつも通りの間の抜けた話し方といつも以上のニコニコ顔でいつものビルドが戻ってきた。
ビルド、満足した?
ん? うん とりあえず 【てっこうせき】 3こ てに いれたよ
僕はその言葉に絶句した。3個ぉ! え、あんなに時間をかけてあんなに頑張ったのにたったの3個だけなのぉ! のと。
そして素直にその言葉をビルドに伝えるとビルドは笑ってこういったのだ。
あれる あのね とりあえず さいていげん なんとか なるんだよ
これだけ あれば あの じゃまな おうざんいわ がこわせる はんまー が つくれる からね
そこまで言って膝に手を置き息を荒げてヒーヒーいいだすビルドにいつもならなんでだよと突っ込むところだけど今日だけはかえって安心した。
よかった……、あのおっかないビルドはお静まりになった……と。
そして聞き逃せない重要な言葉を僕の耳はとらえていた。【黄山岩】が壊せるハンマー? それがあれば西の坑道も……。その事実に思い至った僕にビルドがこういった。
だから はやく りれみと
僕はみんなが近くにいることを確認して【リレミト】の魔法で地下深くから脱出した。
よし、ビルドの言葉が確かならもうすぐ西の坑道に入れるはずだ。そうすれば豊富な鉄鉱石を採掘できる坑道があるはず。そして鉄さえ取れるようになり鉱山街が復興さえすればロマリアの国が危機を脱するのもそう遠いことじゃない。
それにしてももっと困難だと思っていた鉱山街の復興だけれど、かなり順調にいっている。東の坑道は全て解放したし、魔物自体は出るだろうけど東坑道だけなら鉱山の再開は可能だと思う。
つまり【銅】と【スズ】と【石炭】は安定的にまた供給可能になったということだ。
それに鉱山街自体の復興もビルドと街のみんなの頑張りもあってそう遠いことじゃない。やばいと一時慌てにあわてた食料の問題もどうやらひと段落したといっていいだろう。
順調だ、とっても順調。
これならあともう少しで今回の冒険も成功に終わるはずだ。これであの頑張り屋のマリルさんやマリルさんのお母さん、そして何故か半裸のマスク姿だけど気のいいあらくれさんたちの顔に本当の笑顔が戻るはず。
よし、もう少し頑張るぞ! と僕は決意を新たに地上へと帰還した。
そして地上に戻ったとき、外はもう夜でちょうどご飯時だった街の人たちはご飯の真っ最中だったけれど、食べるのもそこそこに地下から戻ってきた僕らの周りに殺到した。
そんな期待で目がキラキラしている彼らに東の坑道の完全な解放をみんなに報告した。
坑道を占拠していた強い魔物は全部やっつけたので気をつければ東の坑道なら以前のように操業できると思います、と僕が言うと鉱山街に歓声が轟いた。そうしてあらくれさんたち同士が肩を抱きあったり泣いたり踊ったり歌ったり食べたり筋肉に力を入れたりポーズをとったりして喜びを爆発させた。
やった! やったぞ! これで採掘を再開できる!
ありがとうございます、ありがとうございます! 勇者様、みなさん!
さすが勇者ちゃんたちだわ! お礼に私がとっておきの筋肉パフパフしてあげる!
いや、それは けっこう です
そんなやり取りの後。
最後に満を持してビルドが鉄をてにいれたこと、鉄があればビルドは西の坑道をふさいでいる【黄山岩】を壊せるハンマーを作れることを(僕が代わりに)話すとみんなの喜びがもう一度爆発した。
まるでお祭りのように元気いっぱい、喜びいっぱいに包まれた中に槌音が響く。
喧騒の中いつの間にか、作業を始めていたビルドが【炉】で手にいれた【鉄鉱石】全部使って作った【鉄のインゴット】×5を使って【金床】に向かって何かを作り始めたのだ。
その音に気付いたみんな。やがて喧騒は止み、ギィン! ギィン! という鎚音が夜の闇に響くことしばし。
出来上がったのは、鉄のインゴットを使用した真っ黒で武骨でそして巨大なハンマーだった。それをビルドは何度か感触を確かめるように振りまわしそれから勢いよく右手で掲げた。
【おおかなづち】 を てにいれた!
これで 今まで 壊せなかった 硬いものが 壊れるように なるぞ!
また電波がきた! でも今回分かりやす! よし、これで先に進める! そう思って今までほとんど足を向けなかった西の坑道のほうを見る。
遠くに見えるその場所は入り口に設置された二つの壁かけたいまつで照らされておりその姿が遠くからでも確認できるのだが、そうすることに意味はほとんどない。
入り口全てを隙間なく【黄山岩】でふさがれているからだ。
その為、ビルドでさえ僕たちが鉱山街に着いて早々に、
あ これ いまは むり
とさじを投げていたほど。
その時僕はビルダーのこととかよくわからないものだからこんなふうに言ってしまった。
ビルド、本当に無理なの? 君なら何とかできるんじゃない?
と尋ねると珍しく真剣な顔つきと声でこういって僕を諭してくれた。
あのね あれる
ぼくに だって できること と できないこと が ある
くやしい けど いまの ぼくでは 【おうざんがん】 をこわす どうぐ を つくれない
そざい が ない からね
といい、いつものように息切れを起こしてからニッコリ笑って最後のこうも付け加えた。
まぁ きみに きたい されるのは うれしい から いい けどね
その時にビルドにも無理なことがあるということを僕は思い知った。そして決意と自信に満ちた今のビルドを見ると今まで西の坑道を見るたび一番悔しい思いをしていたのは、実はビルドだったんだろうなと感じた。
そのビルドが鉱山街のみんなに声をかけた。声はいつも通りのいまいちやる気が感じられない声で表情もいつも通りの締まりのない笑顔のはずが何だかとっても力強く感じたのは僕の気のせいだったのだろうか?
みなさん おまたせ しました
にしの こうどう まえに いこう
そう言っていち早く走り出すビルド。
そしてその言葉の意味が最初理解できずに惚けていたけれど、じわじわと言葉の意味を理解した街の人たちが歓声をあげながら灯りに照らされた夜の鉱山街をビルドを追って走り出す。
僕はそんな中、泣きながらうずくまり何度も何度も「ありがとうございます、ありがとうございます」と繰り返すマリルさんを立たせて一緒に西の坑道へと向かう。
坑道入り口に立ちふさがる【黄山岩】の壁の前に立つビルドとそれを少し離れてぐるりと取り巻きながら見ている鉱山街のみんなが待っているところにようやくたどり着いた僕らとマリルさん。そして役者がそろったのを確認したビルドが
きたね まりるさんたち
じゃあ いきます
といって振り返り壁に向かってハンマーを振りかぶったまま、力をため始めた。
ためる。まだためる。
まだまだためる。まだまだまだためる。
そしてためにためた何かのエネルギーでビルドが輝いたと思った次の瞬間、
――おうぎ ちょう すーぱー ずどーん はんまー!
そのいつも通りの気の抜けた掛け声とともに繰り出されたビルドの必殺技は至近距離に雷が落ちたときのようなものすごい轟音を響かせてあれほど硬かった分厚い【黄山岩】の壁などものともせずに全て粉々に破壊した。
へへ~ん
と得意げに振り返ったビルドに感謝の言葉と万来の拍手が降り注ぐ。
こうして僕たちは西の坑道へ足を踏み入れることができるようになったのである。
そんな中、ビルドだけは何故か真剣な顔つきで開いたばかりの坑道の闇の奥をじっと見つめていた。
なにか の こえ? …… いったい なに?
と小さくつぶやくビルドの声が何故か大喜びのみんなの歓声の中なのにやけに僕の耳に残った。
1. 鉱山街を復興しよう (70/100%)
2 坑道を取り返そう (50/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 達成!
ここまでの ぼうけん を セーブ しますか?
▶ はい
いいえ
誤字脱字、感想お待ちしてます。
というわけでロマリア鉱山編も東の坑道は完全に終了して西の坑道の冒険へと突入いたします。
おうぎ ちょう すーぱー ずどーん はんまー!
ビルドの奥義で、直線状にある邪魔なもの全てを破壊する必殺技。そのハンマーに壊せるもので、ビルダーが壊したいと思っている直線状の全てを破壊するイベント用の大技である。
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16 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート11
ただリハビリでちょい短めです。ごめんなさい。
地竜の月 15日 さらにさらにつづき
おうぎ ちょう すーぱー ずどーん はんまー。
さて、ビルドのその溢れかえる、いや氾濫しながら沸騰する大河のようなものすごい物づくりのセンスとは正反対のネーミングセンスによって命名された必殺技のおかげで西の坑道の入り口は開いた。
よし いこうか
しばらく まじめな顔をしていたビルドだったけどそのうちにいつもの緊張感ゼロのぬぼーとした顔に戻った後、ダッシュでかつ蛇行しながら坑道の奥へと消えた。
蛇行していた理由はアレだろう。どうせさっきの必殺技で素材へと変えた大量の【黄山岩】の回収のためだ。真っ暗な坑道の奥からぺぺぺぺぺぺぺぺという素材を回収する音が途切れることなく響き続ける。
そんなビルドを急いで追いかける僕らとこの鉱山で働いていたあらくれさんたち。
それにしてもビルドのネーミングセンスゼロ以下の必殺技の威力はすさまじかった。なにしろ坑道の入り口からしばらく、具体的には30ブロック分もの距離をあの一撃で広い道へと変えていたんだから。
そんな即席の、だけれど巨大な立方体の柱を横倒しにしたような空間を僕らはたいまつを手に急いでビルドを追いかけるんだけど何しろビルドが速過ぎる。さすがに一撃で奥まで貫通とはいかなかったらしくまだ残っている崩れた【黄山岩】が僕らの目の前に大量にあったのだけれど、それを瞬く間にビルドはガンガン叩いて素材に変えていた。
作ったばかりの【おおかなづち】を振り回し、まさに八面六臂、縦横無尽に通路を広げていく。
そんなビルドを見ながら僕らはもう慣れた作業を始める。通路の壁に一定の間隔をあけて【壁かけたいまつ】をつけ、通路に灯りを確保してから改めてビルドをみた。
それにしてもすごいな、【おおかなづち】は。今までどうやっても壊せなかった【黄山岩】が壊せるようになっただけでもすごいのに、ハンマー自体の破壊力も今までのおおきづちとは大違いのようで今までなら三回叩かないと壊れなかったものが一回もしくは二回で壊れていくので、ビルド自身の残像ができそうなほど素早い動きと相まってあっという間に通路が広がっていく。
そして大量の土砂などが片付いた先に見えてきたのは、何というかおかしなものがたくさんあるだだっぴろい空間だった。
まず全貌はやっぱり邪魔者が多くていまだ確認できないんだけれど、それでも目立つのが天井からぶら下がっているぶっとい鉄でできた鎖だろう。何だあれ、あんなもの何に使うのさ。
ふと見ればビルドも興味深げにあたりの様子を見ている。
おかしなものはまだある。
その鎖は天井伝いにずーと伸びていて、それが壁までくるとほぼ垂直に下に向かって壁際にある何かとつながっていた。
え? なに? なんなの? ここ。今までの東の坑道とずいぶん様子が違う気がする。そんな見ても分からない僕とは違ってさすがに専門家は違った。
お~ にあげば かな
ごんどら とは すごい な
ごんどら? と初めて聞く言葉に首をかしげる僕を尻目にそうひとしきり感心し終えたらしいビルドが再び動き出す。ドッカンハンマーやさくれつハンマーを駆使してどんどん広場を占領していた邪魔なものを片付けていく。
そうすることでようやくビルドが言う荷揚げ場の全貌が見えてきた。さっきのぶら下がっていた鉄の鎖は地面に横たわっている【鉄のブロック】でできたとても大きな板の四隅につながっていたのだ。さらにその鉄の板もただ鉄製というだけのものじゃなく、何故だか分からないけれどその板の上にはトロッコの線路が引いてあった。
何だこれ? 変なものがあるなぁと視線を下に向けて歩いていると、またビックリした。
そこにはちょうどその大きな板がすっぽりおさまるくらい大きな長方形の穴が存在していた。
そんな長方形の穴を僕が鉄の板の上、そして穴のへりから注意して下をのぞき込むと下は真っ暗。たいまつで照らしても底が見えない。どうやらこの穴はずいぶんと下まで続いているようでたいまつくらいの灯りじゃ底までは照らせないようだ。
さく ないと あぶないか
なおしとこ
そういったビルドがのぞき込んでいる僕の側でぐるりと木の柵を巡らせはじめる。正面に扉が付けられる隙間を残してあっという間に四段くらいの高さまで積み上げて落下防止の柵を完成させたビルドはそれが終わると今度は壁際の鎖がつながった何かに向かって走っていき、何か棒のようなものをつかんだ。
そして。
おーい あれる
あぶないから はなれてー
といって僕が動き出すのを待たず棒のようなものをガチャリと上に動かした。
するとギギギギとかいいながら僕が四つん這いになってる鉄の床が動き出す! ドンドン景色が変わっていく。ゴインゴインという音と一緒に地面が遠ざかって目線が高くなってゆくのだ。
振り返ると視線の斜め下のほうに呆然とするフルカスたちとは対照的に嬉しそうに声をあげる鉱山街の人々、そして空中にいる僕に向かって指をさして爆笑しているビルドの姿がそこにはあった。
つまりこのすっごく重そうな鉄の板は宙に浮いているのだ。そしてそこで気づいた。いや、浮いてるんじゃない、と。これは吊られているということに。太い鎖が何らかの力で引っ張られて重い鉄の床が宙づりになっていることをこの時になって僕はようやく理解した。
そしてその理解からたっぷり三十秒後、僕は十分な準部体操の後宙づりの鉄の板の上で十分な助走距離を取り、全速力でダッシュして宙づりの鉄の板から飛び降りざま壁際でどや顔で立っいるビルドめがけて渾身のドロップキックダイブを敢行した。
ぐっふぅーーーーーー!!!
まるで夜空を走る一筋の流星のように、再び開通したばかりの西の坑道を切り裂く僕の両足がビルドのどてっぱらに突き刺さるまでそう時間はかからなかった。
危ないと思うなら、離れてから動かせよ! この愉快犯がぁ!
誤字脱字報告、感想お待ちしています。
復帰に時間がかかったことをお詫びいたします。
全部あの試験が悪い。
さてゴンドラはオリジナルです。
ただビルダーズ2に鉄の鎖は存在するのです。
完全なねつ造じゃない、それがコンセプトというか制約ですね。
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17 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート12
地竜の月 16日
さて、僕による私製天誅をどてっぱらに喰らったいたずらビルダー。全力ダッシュ+高所からの急降下攻撃によりしばらくの間のたうち回っていたんだけれど、しばらくするとなんでもなかったかのように立ちあがった。
それからこの後、ビルドが驚くべきことを言ったのである。冒険とさらなる素材を前にしてビルドが言い放った次の言葉が僕たちを混乱の極致に叩き込んだのである。
さてと きょう は もうよるも おそいし
このへんで かえろう
なにぃぃぃ!
すかさず僕が駆け寄ってまずビルドのおでこに手を当てる。
……熱は、ない。
次に僕が鋭く背後に視線を向けるとそこには注意深く周囲を見回すフルカスの姿が。
アレル! ダメだ、魔物の姿はどこにもない!
けれど、幻覚魔法【マヌーサ】を使う魔物の姿はなかった。
次にフォンが駆け寄ってきて、
正気に戻りなさい! ビルド! ほら、早く!
ビルドの頬に容赦のない往復ビンタをぶちかます!
ぶべべべべべべ いたい いたい やめて ふぉん
ダメみたい、アレル! 強めに叩いたのに【メタパ二】が解けないわ!
え~い、カダル! 何か都合のいい僧侶の魔法ないのか!?
え、だからそんなのはないけど……じゃあ、これでどうだ、覚醒魔法【ザメハ】!
だが 効果は なかった!
いいかげん に しろ!
ぼかーんという音とともに宙に舞う僕らの体と飛んでいく意識。
この後、ビルドのおおかなづちで全員天井まで打ち上げられることで僕らは気を失ってしまった、らしい。
らしいの理由は簡単で、僕が次に目を覚ました時には次の日の朝で、場所も西の坑道の中じゃなく鉱山街の宿舎の二階で、おまけに寝ていたのは今までのわらベッドではなくシーツの清潔な白がまぶしい【ベッド】の上だったからだ。
もちろんビルドの仕業であろう、昨日ビルド自身が鉄の採取をしている最中にみんなが集めた素材を使ってもう【ベッド】を作ったのか……、とわらベッドではありえないほど滑らかな布の滑らかな感触を堪能しているとあることに気が付いた。
今までの宿舎の部屋と景色が明らかに違う……。何が違うって今までこの場所にはわらベッドが並んでいたはずなのに、今この場には真っ白なシーツの【木のベッド】が整然と並んでいたのだから、そりゃあ景色の一つや二つ一変していても何もおかしくはないんだけれどそういうことじゃなく。
ベッド以外にもベッドとベッドの間には【木のテーブル】が置かれ、そのテーブルの上には【花の鉢植え】まで置いてせいだろうか。
だから何というか……、
【はじめての寝床】 の 豪華さ が 上がった!
昨日までの【はじめての寝床】よりも部屋の豪華さが随分と上がった気がする。そして部屋の豪華さってなんだ! といつも意味不明な電波にツッコミを入れてから僕は外へと飛びだした。
お腹空いたから、何か食べよう……。
後からマリルさんに聞いた話だけれど、昨日の僕たちの反応にはさすがのビルドもお怒りだったようで、
あいつら ぼく を なんだと おもってる んだ!
こんと か!
ゆうしゃ あれる ひきいる こんと しゅうだん か!
ざんしん! それって とっても ざんしん!!!
ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
とその怒りを全て残っていた街の改築にぶつけた結果、最後まで手を付けていなかった道具屋や酒場が完成したことにより僕たちの寝ている間に、
【ロマリア鉱山街の設計図(仮)】 が 完成した!
らしい。
というわけで僕が外に出たら街の新しいシンボルになるだろう物見やぐらの下にみんな集まってビルドを胴上げしているところだった。
何が何だかわからないけれど、ミッション二つ目達成である。
1. 鉱山街を復興しよう 達成!
2. 坑道を取り返そう (60/100%)
3. 武器・防具を納品しよう【銅】 達成!
地竜の月 16日 つづき
さて、おかしなことは続いた。
街の復興も終わったことだし、さらなる鉄を求めて西の坑道に潜ると当然いうはずのビルドがおかしな行動に出たのである。
あれる きょう は みんな おやすみ ね
ぼくは そのあいだに まちの たてもの を ちぇっく するから
そういって出来上がったばかりの鉱山街の手直しを宣言してビルドはどこかに去っていった。
……おかしい。あのそざいバカがあれほど渇望した鉄素材を前にして西の坑道に突撃しないのはおかしい。
おおかなづちができたからってそれで満足するようなビルドではないのである。鉄があれば鉄の武器も防具も、鉄で作れる様々な建材や家具の類も作れると鉱山への道中や夜、あんなに熱弁していたビルドがハンマー一本作った程度で我慢しているのはさすがにおかしい。
そう思って今までの流れを思い返してみる。
何かビルドの様子におかしなところがなかったかどうか、ひとつづつ思い出してみる。
まず、街の姿があっという間に変わる。普通。いつものビルドだ。
次に、今回は鉄だったけれど、素材を求めての暴走。ちょっと今回は特別やばい感じだったけれど、普通。やばかったけれどこれもいつものビルドだ。
寝てないこと……、これに至っては僕はこの旅に出てからビルドが寝ているところを見たことのほうが珍しいので寝ているほうがおかしい。つまり普通。
冷静に考えて、ビルド的には普通の行動でも一般的に見れば変かおかしいところしかなかったけれど逆にそのことが今のビルドの行動のおかしさを際立たせている。
悩んでいても仕方ない。こういう時は聞くに限る、そう思った僕はビルドの姿を探して新しく出来たばかりのやぐらにのぼることにした。もしビルドが外にいるなら、上から街が一望できるからもしビルドが動きまわっているならすぐに分かるからだ。
明々とたいまつの灯りに照らされる街の姿。その中で喜びいっぱいの人たちの輪の中にビルドの姿はなかった。
僕はしかたなく縄ばしごをおりて、通りすがりの荒くれの人をつかまえビルドを見なかったか尋ねたけれど見ていないという。
仕方なしに片っ端からチェックするといっていた建物を一軒づつ確かめることにした僕が最初の建物である宿舎に入ると……。
いた。ビルドである。
何故か今までそんなことしたことないのに建物の壁に柱を何本も立てていた。
ビルド何やってるの?
そう僕が尋ねるとビルドは僕のほうをちらりと見て、
ん~ ほきょう こうじ かな
たいしん こうじ とも いう
補強? 耐震? どういうことだ? 質問したことで謎がさらに深まった僕はビルドに近づいてさらに聞いた。
ビルド、何か隠してない?
僕の言葉に、ビルドはやれやれという顔をしてから口元に右手の人差し指を一本立ててからその辺にあった食卓の椅子に座り、僕にも同じように座るように促してきた。
素直のすわった僕にうなづいたビルドが説明を始める。
ひみつ だよ? いま みんな が よろこんでる のに みずを さしたくないから
あのね あれる
さいしょから おかしいと おもわなかった?
おおじしん と おなじ たいみんぐ で とつぜん あらわれた まものたち
そう言われて僕は、あっと声をあげた。確かにタイミングが良すぎる。つまりこのロマリア鉱山の一件も、レーベの村と同じように魔物の襲撃によるものだとしたら……。
僕の考え込んだ顔にまた一度うなづいたビルドが続ける。
そもそも ろまりあ たいりくってさ
じばん や がんばん が しっかり してるから
まちまで こわれるような
おおじしん なんて そうそう おきるわけ が ないんだよ
あと、山に水を引きに行ったときに確認したけど本当に自然に起きた地震ならそれらしい痕跡が見つかるはずなのにそれもなかったしね、そうつづけたビルドはいつものように長台詞に疲れたのか休憩中。
その間にさらに考えを進める僕。ではなぜ魔物は鉱山に巣くうだけで街の人たちを襲ったりしなかったんだろう。あの僕たちが来る前のぼろぼろの鉱山街なら東坑道の魔物たちが襲い掛かってくるだけでひとたまりもなかったはずなのに……。
きづいた? ぼくも それが きになってた
いくつか おもいあたる かのうせい は あるけど
いまは いわない かのうせい だからね
だけど ほんかくてきに にしの こうどう に もぐる まえに
まちの たいしん ほきょう こうじ が ひつよう かな と おもってね
そう言ったビルドはイスから立ち上がり再び宿舎に等間隔に柱を立てる作業に戻っていった。
ぼそりと僕に不吉なことを言ってから。
あれる こんかい は こんじょう いれないと やばい かもよ
いやな よかん が するんだ
ビルドのその言葉に僕は宿舎から飛び出してつい先ほど開通したばかりの西坑道への入り口へと走った。
夜の闇の中、たいまつの火が照らす坑道の入り口がぽっかりと僕を飲み込む大きな魔物の口のように見えてしまい、僕は人知れず震える体をおさえていた。
そして思い出した。ビルドが坑道を開通させてすぐ、みんなが喜んでいる中でこぼした言葉を。
なにか の こえ? …… なに?
あの坑道には。なにかが、いるんだ。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
というわけで突如暗雲が立ち込めてまいりました。
ロマリア鉱山編、ここから佳境へ向かいます。
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18 ロマリア鉱山をふっこうしよう! パート13
地竜の月 19日
それから三日間、僕たちとビルドは西の坑道に入ることなくいろいろと準備をした。
まずは街の建物の補強工事。柱を立て、その柱に梁を通し、最後に柱と梁の間に、【ささえ木】を入れる徹底ぶり。それを全部の建物に施しつつ、それぞれの建物の部屋のレイアウトや家具の交換や足りない物を作ったりした。テーブル、イス、タンスにクローゼットなどなど。さらには途中だった街路まで【石床】で舗装されたアリアハンの街やロマリアの街と同じような美しい道へと生まれ変わった。
そんな風に有り余るビルダーの造る意欲と目の前にぶら下げられた鉄という素材の誘惑を忘れるためにビルドはいつものように昼も夜もなく働き続け、鉱山街をそれはそれは素晴らしい街へと生まれ変わらせたのだ。
正直、もうあのぐちゃぐちゃだった鉱山街の面影は全く残っていない。ついでに鉱山街を上から見た時にその面積の大部分を占めていた茶色いスペースももはやほとんど残っておらず、木や草、畑の緑で埋め尽くされてしまっていた。
いや、本当に、これじゃ鉱山街じゃなく、高原の保養所だろというカダルのツッコミは果てしなく的を得ていると思ったね。
そんなビルドの活躍を横目に僕たちもやるべきことをやっていた。フルカスは元気になった数人のあらくれさんたちが復旧した東の坑道へと試しに行ってみるというのでその護衛に。今回も勇気を出して一緒に坑道へと入ったジョヴァンニさんと、何故か女の人みたいなしゃべり方をするのにムキムキぞろいのあらくれさんたちの中でも一際目を引くガタイのあらくれさんであるコジモさんがいうには、
もう大丈夫なんだな! 魔物は出るけれど鉱山があんなことになる前の坑道と同じなんだな! ちょっとしかいないし、強いのもいないんだな!
この程度の魔物だったら十分ワタシたちの力(きんにく)でも倒せるわ! ありがとう! 勇者様たち! Chu♥
ということで東の坑道では作業が再開し、日々少しづつではあるが石炭と銅、スズが取れるようになってきている。
次にカダルは変わらずケガ人たちのお世話をしているけど、ビルドが作ってくれた【木のベッド】のおかげか、それとも街のいたるところに植えられた【薬葉のしげみ】から作れる薬草のおかげか、みんなどんどん良くなってきておりもうすぐオレの仕事はなくなりそうだと三日目の夜に話してくれた。
そしてフォンと僕はというとそこらじゅうを飛び回っていた。
レーベに行ったり、ロマリアに行ったり、鉱山街に戻ったり、東の坑道に潜って素材を集めたり。それぞれの場所でそれぞれの仕事をしていたんだ。つまり雑用である。
そうして街の補強工事も終わり、各地を回って集めた素材で足りなくなっていた食料の備蓄も完了し、枯渇していた【やくそう】の補充も完璧にし、ついに満を持して西の坑道へと再突入することになったのである。
その日の昼。
それでは いまから こうどう に はいりますが
こうどう では かってな こうどう は ひかえて ください
そんないつも勝手な行動しかしないビルドの間の抜けた声での注意にたくさんの声が返ってきた。
はい! 大丈夫です! ね、みんな?
だ、だいじょうぶだぞ! お、おいら危ないことしないぞ!
うっふん、大丈夫よ! ビルドちゃん。もちろん無茶はしないわ。 そうよねぇ、あんたたち!
お~~! 任せとけ! お嬢は俺たちが守ってみせるぜぇ!
そうだそうだ! 俺たちは用心(きんにく)深いんだ! 安心(きんにく)してくれ!
というわけでメンバーは、僕となかまたちに加え、監督官として西の坑道の現状を確認したいと言って動向を申し出たマリルさんと、そんな彼女を心配したあらくれさんたちからジョヴァンニさんとおネエ言葉のコジモさん、そしてさらに三人のあらくれさんの計11人という大人数となった。
なんとなく不安だなぁ……とも思うけれど、ジョヴァンニさんを除くあらくれさんたちは手にビルド謹製の【せいどうのつるぎ】を持ち、さらにコジモさんに至ってはフルカスと同じように【せいどうのだいけん】を振り回して戦うことも十分できる戦士たちであるとフルカスが太鼓判を押したため、それならばと僕たちも同行を認めた経緯がある。
そんな準備万端の僕らはこうして西の坑道へと再び足を踏み入れたのだ。
ドキドキしながら先へと足を進める僕らだったけれど、中は拍子抜けするほど何もなかった。
前に動かしたゴンドラを修理したビルドがそれにみんなを乗せて下に下すと、そこはだだっ広い空間でそこから蜘蛛の巣のように四方八方に細かな坑道が続いていたものの、魔物が出ることもなくただただ崩れた土砂をたいまつ片手に片付けて先へ先へと進んでいくだけの単調な探索が続いていったのである。
正直、気が抜けてしまった。特に最初はかなり緊張していたあらくれさんたちが途中から軽口をたたきあいながら土砂を片付けるその姿は生き生きしており、そんな幸せそうなみんなの姿を見ながら僕は今回はビルドの心配のし過ぎだったかな? と首をかしげたものの、依然ビルドの顔は険しいまま。
いや、何もないがゆえに余計に珍しいマジの顔になるビルドに僕たちだけはこの何もないことに、どこか薄気味悪いものを感じながら奥へ奥へとすすんでいったのだ。
ちなみにこの階層の鉄は全て取りつくした後であり、鉄が取れるのはこのさらに下に広がる広大な空間であるらしく、この時の僕たちはそこへと向かって坑道をひたすら下へ下へと降りて行った。
そしてやがてたどり着いたのは、見上げるほど高い天井と中央に太い楕円形の柱を持った鉱山街が丸々すっぽり二つほど入りそうなほど広い空間だった。
その偉容をビルドは、僕には意味が分からなかったけれどこう一言で表現した。
おいおい けいばじょう かよ
そしてその壁のいたるところに見える鉄、鉄、鉄。
おびただしい鉄が埋まるその場所こそ、僕たちが目指していたロマリア西の坑道の最深部であった。たいまつを掲げても天井まで光が届かないほどの高さ、そしてあまりの広さに僕たちが圧倒されていると、
ここだぞ! ここが、ロマリアを支える俺たちの鉄の大坑道だぞ!
うっひゃ~! 帰ってきたぞ! ここが俺たちの仕事場だぁ!
たまらないわぁ! あぁ、愛しの鉄がこんなに!
そう言って涙をうかべて走っていくジョヴァンニさんたちあらくれさんたち。
まって! と止めるビルドの制止の声も届かない。本来ならビルドと同じように止めてくれるはずのマリルさんもようやくたどり着いた鉄の坑道に涙を流してへたり込んでしまっていた。その間にもあらくれさんたちは壁際へ。一番近くの露頭している鉄鉱石めがけて一直線に走っていく。
やめろ! まだだめだ!
必死であらくれさんたちを止めるために駆け出すビルド。それに続いて僕たちも走り出すけれど、この空間に呆然としていたわずかなタイムラグがこの場合致命傷だった。
よし、行くんだぞ! ここからまたおいらたちの鉱山生活のスタートだぞ!
そう言ってつるはしを振り上げ、振り下ろすジョヴァンニさん。
だだっぴろい空間に、
ギィィィン! ギィィィン!ギィィィン!
と金属同士がぶつかる甲高い音が響き渡り、その後静寂がおとずれ――
GAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!
雷鳴のようなナニカの鳴き声がロマリア鉱山地下深くにある大坑道を物理的に震わせた。
武器を抜き、構える。手がふるえる。ありえないほどのプレッシャーと、坑道どころか鉱山全体を揺らすほどの振動が同時に僕たちの体を襲う!
そしてザバァ! という水しぶきの音の後、ズウゥン! ズウゥン! という足音とともにそいつは暗闇を裂いてあらわれた。
ビルドが無言でたいまつを掲げる。
その灯りに照らし出されたヤツはあまりにも大きかった。
灯りに反応したのか、ぎょろりと金色に光る眼は爬虫類のように縦に鋭い爪痕がはしったかのよう。そんな眼の怪物が遥か高いところから小さな僕たちを見下していた。
どくどくゾンビ? 比べ物にならない。
だって。
縦は三階建ての建物くらい高さ。長い長い首で、その首の先には竜の頭がついていた。そしてその小さな城や砦のように感じるほど巨大なその体は硬い硬い亀の甲羅で覆われていたのだ。
竜の頭に、亀の体。僕はその魔物の名前を知っていた。だけど、それは……。
ビルドが、絞り出すようにそいつの名前を告げる。
首長竜。テドン沖の悪魔。船殺し。サマンオサの悪夢。
『出会ったら死ぬ』といわれ、数々の異名をとどろかせるこの世界でも最悪の魔物の一体。
GAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!
……がめごん!
ロマリア鉱山に巣くうもの! ガメゴン が あらわれた!
誤字脱字、感想お待ちしています。
アレレ? ロマリア鉱山編、楽勝で終わると思った?
残念! 地獄決定ですよ!
というわけで、
ドラクエ3におけるみんなのトラウマ・ガメゴンさんの登場です。しかも超ビックサイズ。
ちなみにアレルたちの装備は、青銅装備です。
もう一度言いましょう。
ロマリア辺りで、青銅装備で、レベルもそこそこで、編成的に物理型、つまり魔法使いなしで、ガメゴンです。
オワタwwwwwwwwwwwww
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19 決戦! ロマリア鉱山! 1
地竜の月 19日 つづき
咆哮とともにあらわれたガメゴンが僕らに向けてゆっくりと前進してくる。
一歩、一歩ごとに、そのあまりの重量によって地面が揺れる。同じ地面に立っているだけでその一歩ごとで揺れる足元にまともに立っていることさえ困難だ。
こんな奴が地上を歩いていることが許されるのか? とさえ思うほどの巨体があれだけ広かった坑道を進むと、ちょうど道幅いっぱい、壁にこすりつけるように舐めるように奴の体が少しづつこちらに向かってやってくる。
どうする? 右手に握った【せいどうのつるぎ】を見る。あれを剣で攻撃する? ……ダメだ、根本的に届かないし、それに意味がない。
何故って? 奴は歩く船、歩く砦、歩く城だ。剣で城をやっつけるなんてどんな勇者だって考えたことないはず。少なくても今の僕ではあいつを切ることはできない。フルカスをちらりと見ると僕と同じように【せいどうのだいけん】を構えたまま、額に脂汗をうかべて固まっている。攻撃手段が手足を使ったものだけのフォンも、おそらく有効な攻撃魔法を持たないカダルも同じだ。
……残る希望はと思い、ビルドを見てみるも首を振られた。
方針決定。撤退だ。
アレルたちは にげだした!
幸い奴の動きは巨体だから鈍い。今なら逃げ切れるはず……。そう思った次の瞬間、僕たちが降りてきた階段がある壁に奴がその長い長い首をしならせてその頭をぶつけてきた。
まるで鎖でつないだ鉄球を振り回す武器、モーニングスターのように壁にぶつけられたガメゴンの頭部によってあの硬い【黄山岩】が簡単に崩れ、ぼくらはへたり込んでいたマリルさんを助けるのが精いっぱい。結果、上に続く階段が完全にふさがれ、退路はふさがれた。
……だが まわりこまれてしまった!
どうやら僕たちを素直に逃がしてくれる気はないらしい。
さらに壁際に目を向けるとガメゴンが放つあまりのプレッシャーに震えて立てないジョヴァンニさんをはじめとしたあらくれの人たちが。
せめて彼等とマリルさんだけでも生かして地上に返さないと、と僕たちは目の前の巨獣との戦闘を開始した。
目の前のバケモノから逃げるための戦いをである。
狙いは一つだけ。【催眠魔法】ラリホーで眠らせて、その隙に逃げる。これしかない。
カダル、まずはピオリムを! その後は補助魔法でとにかくラリホーを唱え続けて! 僕らが時間稼ぎをする。あきらめずに唱え続けて!
フルカス、フォン、行くよ! あくまで牽制だからね!
そしてビルドに一つうなづく。
そうしてビルドは駆け出す前に注意してきた。
かだる まぬーさはつかうな!
あれる すこしだけもたせて!
なるほど、あれだけでかいやつが幻覚になってかかれば今以上にやたらめったらそこら中ぶっ叩きかねない。さすが、ビルドはこんな絶体絶命の状況でも冷静だ。呆然としたままのマリルさんを肩に担いであらくれさんたちのところに向かうビルドの背を見て改めて思う。頼りにしてるからね、ビルド。
そうして改めて無茶苦茶に振り回されるガメゴンの首を加速魔法【ピオリム】で敏捷性を増した僕たちはぎりぎりでかいくぐりながら奴の体を切りつけるも、
フォン の こうげき
ミス! ガメゴンに ダメージを あたえられない!
アレル の こうげき
ミス! ガメゴンに ダメージを あたえられない!
フルカス の こうげき
ガメゴンに 1 の ダメージ!
謎の電波が頭に飛んでくるも、そんなことは電波で解説されなくても手に伝わる手ごたえでわかってる!
硬すぎる! これが英雄譚や勇者の物語の中で語られる竜種の鱗か! 鉄のかたまりでもここまで硬くないとさえ思えるほどのそのあまりの硬さに剣で切り付けるたびに手に重いしびれが。
ならば!
アレルは ラリホー を となえた!
しかし ガメゴン は ねむらなかった!
続けてカダルもラリホーを唱えるも、奴が眠る様子はない。めげずに僕も続けるが、やはり眠らない!
なんて戦いだ。こっちの攻撃はまるで効かず、相手の攻撃はその一撃一撃がまるでレーベの村で戦ったどくどくゾンビの投げた大岩を思わせる轟音を響かせて襲い掛かってくる。つまりはこっちの攻撃はまるで意味がなく、相手の攻撃はかすっただけで致命傷間違いなしという理不尽なもの。
それでも生き残る手段はこれしかない。必死でやつの攻撃をかいくぐりながら牽制のための攻撃とギリギリでの回避を続けていると、ビルドがあらくれさんたちを連れて壁際を移動し始めたのが見えた。
ならあともう少し時間稼ぎしないとね。まるで燕のように華麗な動きでガメゴンを翻弄するフォンと、いつの間にか【せいどうのだいけん】を【せいどうのたて】に持ち替えたフルカスが、次から次へと襲い掛かるガメゴンの猛攻を【ぼうぎょ】と【やくそう】の大盤振る舞いで耐えているせいで、フルカスの口元はもう真っ緑だ!
その様子にクスリと笑って少し緊張がほぐれた。
ならばもう少し僕らに付き合ってもらおうか、ガメゴン!
それからどれぐらいたっただろうか、MPも体力も使い果し疲労困憊、満身創痍になり地面に膝をついた僕らをガメゴンがその巨大な顔に嗜虐的な笑みを浮かべながら踏みつぶそうとしてゆっくりと前進してきたその時、タタタタタっという軽快な足音とともにビルドが帰ってきた。
おまたせ あとは まかせて
かいふく して うしろに にげて
そう言ったビルドは肩に【おおかなづち】を担いで、ガメゴンを睨んだ。
よくも すきほうだい やってくれたな このかめ!
ぶっとばしてやるから かかってこい!
そういってビルドはガメゴンにたち向かっていく。
加勢したかったけれど、その力が残っていない僕らはじりじりと後退しながら残り少ない【やくそう】を使って回復をしていく。
そんな中、ビルドの戦いは圧倒的だった。
ビルドの こうげき
かいしん の いちげき!
ガメゴン は 60 のダメージをうけた
ガメゴンの こうげき!
ミス! ビルドは ひらりと みをかわした
そんな風にあの硬い岩をも壊すおおかなづちの一撃を、正確にガメゴンの頭部にヒットさせることでビルドはダメージを稼いでいったのだ。
ビルドの こうげき
かいしん の いちげき!
ガメゴン は 54 のダメージをうけた
ガメゴンの こうげき!
ミス! ビルドは ひらりと みをかわした
謎の電波による分かりやすい説明で、ビルドが戦いを有利に進めていることは僕にも分かった。
それを見て疑問が。僕たちよりも戦いが苦手なはずのビルドがあんなに有利に戦えているんだろうと思ったんだけれど、その答えはさっき僕自身が奇しくも思ったガメゴンへの考察の中にあった。
奴は歩く船、歩く砦、歩く城だ。船や建物ならビルダーに壊せないわけがない。
つまりあれは戦いじゃなく解体工事なのかな? つまり奴に有効な手段、狙うべきは剣や槍による鋭い一撃でなくビルドの持ってるような硬い鈍器で殴りつけることなのかと僕がようやく立ち上がって加勢をしようとしたその瞬間。
ガメゴンの動きが変わった。
不意にガメゴンが動きを止め、大きく息を吸うようなそぶりをしたのだ。
まずい!
と叫んだビルドが瞬時にふくろから取りだした大量の【黄山岩】でものすごい勢いで後ろにいる僕らの視界をふさぐほどの壁を作り出す。
何が、と思った次の瞬間。
ガメゴンは もえさかる かえん を はいた!
壁の向こう側と僕らの前方。
つまりビルドのいたあたりは紅蓮の炎に包まれたのだ。視界を赤く染めた炎が去った後、壁のあたりには煤に汚れて地面にうずくまるビルドの姿が。
ビルド―!
よくもビルドを! 僕は叫んで駆け出した! 僕のなかまによくも!
この時の僕は怒りに我を忘れた僕はわずかに残った精神力を全て込めてあのカメ野郎に一矢報いることしか頭になかった
デイン!
けして落雷など起きないはずの地下の閉鎖空間に稲光が走り、ガメゴンへと命中した。ぐらりと少しだけよろけた後、雷でしびれているのかガメゴンが固まる。
あれる ない~す あしすと
怒りのまま駆け出した僕が次の瞬間見たものは、半分溶けてしまっている壁を駆け上がりざま足場にしてそのままの勢いで高くジャンプし空中に身を投げ出した後、全身煤だらけのまま体を竜巻のように引き絞り、その両手にがっちり握りしめたおおかなづちを投げようとするビルドの雄姿だった。
くらえ そして さようなら ぼくの おおかなづちちゃんいちごう
いけ! おうぎ だいにだん!
ひっさつの ちょう ぐるぐる はんまー!
そして放たれたおおかなづちはものすごい勢いで回転しながらガメゴンの眉間へと一直線で飛んでいく。
ビルドの 超グルグルハンマー!
かいしんの いちげき!
がめごんに 255 のダメージ!
おおかなづち は くだけてしまった!
ずずんと地面を揺らして沈み込むように動きを止め、頭を長い首ごとだらりと地面に打ち付けるガメゴンの姿に、やったか? 僕はと一瞬思った。
けれどそれが甘い考えだったことを僕はビルドとガメゴンにすぐさま教えられた。
にげるよ!
そう言って僕らの手を引き一目散に楕円形の坑道をガメゴンから遠ざかるように走るビルド。あれだけの一撃だったのに、倒せたかもしれないなんて微塵も考えていないその足取りに僕らはビルドにしたがって懸命に走りだした。それを証明するかのようにしばらくして僕らの背を追うようにガメゴンの咆哮が再び坑道に響き渡り、またずしんずしんと奴が前進を開始したのが振動でわかった。
必死で走る僕らの背に迫るガメゴン。振り返る余裕などない、迫る音が近づいているのだけでやつが距離を詰めているのはわかっているから!
そしてちょうど最初にガメゴンと戦っていた場所から、この坑道の中心に立つ楕円形の柱の向こう側にあたり辺りまできた時、僕らの目に飛び込んできたのはたいまつを手に持った見慣れない男性の姿だった。
みなさん! こちらです! 早く!
その人の声にしたがって壁の隙間に巧妙に隠された隠し部屋に飛びこむ僕ら。そして全員が入ったのを確認するや否やビルドが中から【黄山岩】を使ってふたをするようにそこを閉じてしまう。
そして息をひそめる僕ら。坑道を揺らすガメゴンの足音。壁ごしに聞こえてくる息遣い、咆哮。それが分厚く強固なはずの【黄山岩】の壁がまるでぼろぼろの【ひびわれ土岩】でできた壁のように心細いものに思えた。
そしてどれくらいたっただろうか、僕らが見つからないことにいらだったガメゴンはやがて諦めたのか、ゆっくりとどこかへ去っていった。
けれどその後もかなり長い間、誰も言葉を発せず沈黙を続けた。それはまるで声を出したらあの恐ろしいガメゴンが帰ってくるかもしれないと思っているようだった。
けれどもそれも長くは続かなかった。
あー しぬかと おもった
こういう時に空気を読まないことに定評のあるビルドがいつもの間の抜けて声を出したことで、僕は全身の力が抜けていくのが分かった。
こうしてガメゴンとの最初の戦いは、僕らのある意味勝利、そしてある意味敗北で終わったのである。
誤字脱字、感想お待ちしています。
というわけで辛くも逃げ出すことに成功したアレルたち一行。
次回に続く!
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20 決戦! ロマリア鉱山! 2
地竜の月 20日
九死に一生を得た僕らが最初にしたことは、ふくろから取りだしたわらベッドで泥のように眠ることだった。今回ばかりはビルドも疲れ果てていたらしく、大いびきを逃げ込んだ先である岩の間にできた空間に響かせていた。
というわけで体感時間での翌日、目覚めた僕が最初に目にしたものは、土下座でごめんなさいしてくるあらくれの人たちの姿であった。さらに彼らの前には僕らに膝をついて頭を下げる、つまり貴族やそれに属する人間が目上の人間に謝罪するときの儀礼の中でも最も丁寧な姿勢の昨日の謎の男性とマリルさんの姿があった。
どういうこと? と僕が目を白黒させているとどうやら少し先に起き上がっていたらしいフルカスが困惑気味に教えてくれた。
何でも事前に言われていた忠告を無視して、あのガメゴンを呼び寄せたことを謝罪したいとのことらしい。……とはいえ肝心のお前が寝ているからせめて起きるまで楽してくれと言ったんだが、もうしばらくこのままでな。
正直、起きてくれて助かったよと言葉を結んだフルカスはまたいつものように口をつぐんだ。彼は別に無口なわけではないんだけれど、こういう何らかの判断のときには助言はしてくれても決定や決断はすべて僕に任せてくるところがある。
いや、多分年長者としてそして僕を勇者として尊重するからこそ自分が変なリーダーシップを発揮しないように努めてそうしてくれているんだろうと僕は思っていた。
……とはいえ寝起きで頭がまだボーとしてるこの状況ではちょっと勘弁してほしいんだけれど。とりあえず、はだ。並んだわらベッドを見ると、まだ寝ているのは限界までMPを絞り出したであろうカダルだけで、フォンはすでに起き上がって岩肌に背をつけて半目でこちらを眺めていたし、フルカスはベッドの上で胡坐をかいていた。そして一番怒っていそうなビルドはというと、あんまり興味なさげにいつも以上にぼーとした顔をしていた。
これも今までの経験からわかるんだけど、こういう時のビルドはフルカスの考えと多分同じことを考えてる時で、僕の判断に従うって時なのでとりあえず僕はまず一番気になっていることを尋ねることから始めることにした。
申し訳ありません、マリルさん。こちらの男性の方はどなたでしょうか?
僕がそういうと昨日僕らが眠った後、涙をたくさん流したのだろうマリルさんが真っ赤になった目を僕に向けてこう教えてくれた。
はい、勇者様。こちらは鉱山監督官であり落盤事故の折、死んだと思っていたわたしの父でございます。
……どうやら昨日僕らが必死で戦っただけの報酬を神様は忘れておられなかったらしい。顔をあげたマリルさんの顔にはお父さんが生きていて飛び跳ねそうなほどうれしい気持ち、昨日暴走したあらくれさんたちを止められなかった情けない気持ちや申し訳の無さ、それが責任感や安心感と混じってとっても表現に困る顔をしていたので、そのことがおかしかった僕はクスリと笑ってしまった後、目の前でかしこまるこのきちんとした男性と他の全ての人たちにこういって話を切り出した。
え~、マリルさんのお父さん。初めまして、僕がアリアハンの勇者オルテガの子アレルと申します。とりあえず、謝罪とかは後にしてお話、しませんか?
ってね。
そこから僕らはいろんな話をした。まずは謝罪を受け、二度と同じ過ちを犯さないようにと厳重に注意をした後、僕たちはまずマリルさんのお父さんに今までのことを尋ねた。
それによるとマリルさんのお父さんは最初の鉱山の崩落のとき、坑道に飛びこんで崩れゆく坑道を何とか進み、中に残されていた荒くれさんたちと力を合わせて地盤の特に固い場所に避難することでまずは難を逃れたらしい。けれど揺れが収まった後、いざ脱出しようにも入り口は完全にふさがれており、何とか崩れた坑道を下へと降りこの鉱山夫達の休憩場にたどり着いた。そして休憩場に備蓄しておいた緊急用の食料や鉱山内にあるキノコやたまたま湧いた湧き水で何とかやりくりして食いつなぎながら、助けが来るのを待っていたとのことだった。
最も、それももはや限界が近づいておりもうだめかと思っていたともマリルさんのお父さんはひげだらけになった顔で僕たちに教えてくれたものだ。
あぶねぇ……ギリギリじゃないかというのが僕のこの時の感想。とにかくよかったと無事を喜んでいた僕らに彼はとても重要な情報を教えてくれたのである。
なぜこのロマリア鉱山に、あんな超巨大なガメゴンがいたのか? その一部始終を彼は僕らに話してくれたのである。
あれは、私たちがこの休憩場にたどり着いて数日後のことでございました。
地面を鉱山ごと揺らす振動が再び坑道内で起こり、また地震か崩落かと身構えておりますとしばらくして揺れが収まり、代わりに話し声が聞こえてまいりました。もしや助けが来たのかと、外の様子を伺いますと何とそこにはあの巨大な魔物と二体の小さな魔物の姿が。小さな魔物の片方は、エビルマージと呼ばれた全身を緑色のローブで身を包んだ魔法使い、だったかと思います。そしてもう一体は、こうもりおとこと名乗るコウモリの羽をもつ人型の魔物でございました。
私はとっさに壁の隙間に身を隠し彼らの話を聞くことができたのです。
エビルマージはいいました。
よし、こうもりおとこよ。このバラモス様が直々にとある魔法の品を利用してここまで巨大にしたガメゴン、つまり【育ち過ぎたガメゴン】による体当たりという力技ではあったが、このロマリア鉱山はもはや復旧不可能な状況へと追い込まれておる。これ以上、何かこの【育ち過ぎたガメゴン】にさせる必要はない。こやつをここに留めておくのは万が一、誰かが鉱山を解放しようとここまでやってきても、それをさせぬようにするためじゃ。
何しろこのガメゴンは強い。そりゃあもう強い。このバラモス軍一の魔法使いであるワシが本気を出して倒そうとしても倒しきれるか自信がないほど強い。さらにこの狭い坑道の中では大軍を送り込むこともできぬ故こやつを倒すことは事実上不可能よ。
そしてこのガメゴンにはあらかじめ【鉄を掘るときの音】に反応して、この場所で暴れるようにワシが魔法をかけておいた。つまり今後、ロマリア鉱山から鉄が生まれることはない。まさにバラモス様の深慮遠謀よ。
では、こうもりおとこよ。ワシは次にイシスに向かいかの国での次の任務を果たしてまいる。お前にはこの【育ち過ぎたガメゴン】と、残る東側の坑道に侵入した魔物たちのことを任せる。なに、特に何かをする必要はない。変に坑道の外に出て、外部の人間を呼びこまず自分たちに任された坑道をただただ占拠しているだけでよいと奴らには伝えてある。
むしろ何もしてはならぬ。聞け、バラモス様はこうおっしゃった。
人間は愚かで脆弱であるが、決して侮ってはならぬ生き物である。特に奴らが団結した時は侮れぬ。一人一人の人間は決して強くないが、追い詰められ結束した人間の力は決して侮れるものではないと。
故にバラモス様はお考えになった。我ら魔物の力を持って正面から人間を打倒するのは悪手であり、まるで真綿で首を絞めるようにじわじわと弱らせていくことこそ上策。
ロマリアにおいてはこのロマリア鉱山の鉄こそこの国の要、この国の急所よ。ここさえ押さえておけば、いずれロマリアは立ち枯れる。
故に。つまり貴様の仕事は、この【育ち過ぎたガメゴン】や東坑道に送り込んだ魔物たちがおかしな暴走せぬように監視することと、そしてもしこの西の坑道や東の坑道を解放しようと人間たちが攻め込んで来たら、すぐにワシへ連絡を入れるだけ。戦う必要もない非常に安全な仕事である。分かったか?
そうエビルマージが言うと、こうもりおとこはこう答えました。
ハイ、エビルマージサマ。
コノこうもりおとこ、セキニンヲモッテ コヤツラノカンシト モシモノ時ニハスグニオシラセシマス!
その返事を聞いたエビルマージは満足げに、
良い返事である。では任せたぞ!
とだけ言ってその場から魔法で去っていきました。
それからしばらくガメゴンのゆっくりとした、そして大きな息遣いだけが響いておりましたが、やがて小さな笑い声が聞こえはじめたのです。
どうやら残されたこうもりおとこがクスクスと笑いはじめ、その内何が楽しいのかゲラゲラと大声で笑いだしたのです。
ナニガ ナニモ シナクテイイダ! アノ バカ緑メ!
コンナスゴイオモチャガアルンダカラ モットメチャクチャニシテヤレバイインダ!
コイツナラ ロマリアノ国ゴト 滅ボスナンテ 簡単ダ!
オイ! デカブツ! オレ様ノイウコトヲキケ! マズコノ鉱山ヲ モットメチャクチャニシテ……
こうもりおとこに言えたのはそこまででした。
ぎょろりと目を開けたガメゴンは、煩わしそうにこうもりおとこを一瞥したかと思えば次の瞬間、その長い長い首を振るってこうもりおとこを壁に叩きつけたのです。
もちろんこうもりおとこはそのまま即死。
ガメゴンはうっとうしい奴が消えたとばかりにその後は何を気にすることなくそのまま眠りにつき、やがて腹が減ったのか自分が開けた外への大穴を通ってどこかに行ってしまったのです。
と、ここまでが今回の事件の真相であった。
つまり、このロマリア鉱山の事件はバラモス直々の侵攻作戦だったのである。
追記 こうもりおとことやら、ホント何のためにいたんだろうね?
誤字脱字報告、感想お待ちしてます。
出落ちに合掌……。
あと、いくら食料と水があったからって長時間地下で人間が生きられるわけないだろ! という方は、チリ落盤事故 で検索ですよ。
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21 決戦! ロマリア鉱山! 3
地竜の月 20日 つづき
マリルさんのお父さんの話はそこで終わった。その長い話を聞き終えた僕は何とも言えない気分だった。
何故なら話の中に『魔王バラモス』という名前が出てきたからだ。目指すべき目標だった僕たちが倒すべき相手だけど、だれもその姿すら知らないどこか遠い存在であった魔王バラモス。そんな魔王バラモスに僕はなんとなくこんなイメージを持っていた。
魔王ってやつは魔物の本拠地で玉座に座って何もせず偉そうにして、そしてその強大無比な力を持って勇者を迎え撃つだけの存在だと思っていた。
けれどもマリルさんのお父さんが話してくれた情報から見えてきた現実の魔王バラモスは違った。さっき戦ったガメゴンのように今まで見たことも聞いたこともないほど強力な魔物を作ることができるほど強い力を持っている強大無比な魔物なのは間違いないんだろうけどそれだけじゃなく、今回みたいに人間への侵攻作戦を考えてそのための魔物を用意して、さらに側近に指図してその作戦を実行させるなんてことをやっているなんて。
しかも人間ごときが、とか言ってはいそうだけど、その実人間を侮っていないなんて。
……あたまいいね ばらもす
天井からぽつりぽつりと水が滴る音だけがする狭い空間にぼそりとビルドの呟いた言葉が響く。
同感だ。頭いいよね、魔王バラモス。
そしてもう一つ、分かったことがある。
おそらく頭がいいのは、魔王バラモスとその側近だけだ。
何故かって? 今回のこうもりおとこの死にざまを考えればわかる。低位の魔物はおそらく考えたり我慢したりがひどく苦手なんだ。僕はこの時レーベの村での出来事を思い出した。
あの凶悪極まりないどくどくゾンビとそれを操るゾンビマスターのことを。
あいつもたぶんバラモスかその側近に送り込まれた魔物だったんだろう。そして今回のことと併せて推理するとアリアハンに対するバラモスの計画は多分こうだ。
アリアハン奥地の森辺りにどくどくゾンビを隠して目立たないようにして、どくどくゾンビがいるだけで生まれ続けるくさった死体やバブルスライム、フロッガーなんかでじわじわとアリアハンを侵攻する計画だったんじゃないだろうか?
ちょっと魔物が増えたくらいならアリアハンの人たちも、おかしいな? で済ませてしまうだろうし、本格的におかしなことに気がついてもその時にはもうアリアハン大陸はどくどくゾンビによって生み出された魔物でいっぱいになり手遅れだったはずだ。
正直、その通りにされたら僕らはその事実に気づかず何事もなくアリアハンを脱出した後、しばらくして何かの拍子にアリアハンに戻った時にゾンビによって滅ぼされた故郷を見せつけられたはずだ。
背筋に直接ヒャドをぶち込まれたかのような寒気がした。
危ない、本気でやばかった。アリアハンでもロマリアでも打つ手が効果的かつ悪辣すぎる。
でもゾンビマスターもこうもりおとこと同じで我慢が出来なかったんだ。強大な力を持つどくどくゾンビを与えられて、人間が苦しむところを見るという自分の欲に負けてあんな風に姿を現した。そして姿を見せたがゆえに、僕らに倒されたというわけだ。
つまり……、とそこまで考えたところでまたビルドが僕の頭の中を代弁してくれた。
でも みるめ ないね ばらもす
そういうことなのだ。魔王バラモスもその側近も自分たちが賢いがゆえに馬鹿の考えが分からない。奴と側近だけが賢過ぎて馬鹿が馬鹿な真似をやる理由が分からない。つまりバラモスたちは見る目がないのだ。
まだまだ続く僕らの冒険の旅、そのまだまだ序盤だろうこの早い段階でそのことが分かってよかった。
そんな考えにふけっているとフォンが呆れたようにこう言ってきた。
ねぇ、アレル。今回の顛末はわかったけどさ。とりあえずここからみんなで出る方法考えない?
……あ、忘れてた。ここに避難するときに入り口を閉じちゃっていたはず。しかも【黄山岩】で。でも大丈夫、僕には脱出魔法【リレミト】がある。
みんな僕の周りに集まって、と僕が声をかけるとわらわらとみんなが集まってくる。ひぃふぅみぃよぉ……。
うん、無理だね。僕らだけならともかくこの大人数をいっぺんに脱出させることはできないや。
かといって置いていくわけにもいかない。何人かはもう限界だ、早く安全な場所で養生させてあげないと。
だから次に……念のため入り口を確認するも隙間なく積まれた【黄山岩】でふさがれており外には出られなかった。
でも大丈夫! ビルドが持ってるおおかなづちがあれば【黄山岩】だって簡単にって……、ちょっと待て。
おおかなづちって確か……、記憶をたどって【おもいだす】僕。
くらえ そして さようなら ぼくの おおかなづちちゃんいちごう
いけ! おうぎ だいにだん!
ひっさつの ちょう ぐるぐる はんまー!
そして放たれたおおかなづちはものすごい勢いで回転しながらガメゴンの眉間へと一直線で飛んでいく。
ビルドの 超グルグルハンマー!
かいしんの いちげき!
がめごんに 255 のダメージ!
おおかなづち は くだけてしまった!
念のためもう一度【おもいだす】僕!
おおかなづち は くだけてしまった!
やばい……、もしかして詰んだ?
ビルド、どうしようと慌ててビルドを見るとビルドはもうベッドを片付けて部屋のすみで【たき火】で【キノコ】を焼いていた。
ビルド、キノコ焼いてる場合じゃないよ! ここからどうやって出るのさ!
と僕が聞くと、ビルドは首をかしげてからしばし考えてポンと手をうってから僕をいつものアホを見る目で見てきた。
ほい
そう言ったビルドの手にはいつの間に手に入れていた【鉄鉱石】がいくつか。
そして狭い空間に何とかスペースを作って、【ふくろ】から取りだした【炉】を取りだしそれを【石炭】と一緒にくべた。
そしてビルドはしばらくして出来上がった【鉄のインゴット】を僕に見せつけてきた。
あふれんばかりのどや顔で。
……こいつ、まじでやばい。あのド修羅場の真っただ中で冷静に先を見越して【鉄鉱石】を確保していただとぉ! いくら壁一面にたくさんあったからってそんな時間、ホントにあったのか?
……その手際に感心する一方、目の前のどや顔のウザさたるや……。
拳を握りしめ唇を痛いほどかみしめて立ち尽くす僕にビルドはこう言ってトドメをさした。
あれる~
もしかして ここから でられない とか おもって あわててたん じゃないよね?
ぼくが なかに はいって そとに でられない
そんな みす するとでも おもったの?
もし そうだと したら
……うけるぅ(笑)
あははははははははははははははは!
あはははははははは!
ひぃ~ ひぃ~ あはははははははははははは!!!
そう言って地面を転がりながら爆笑し始めるビルド。
その有様を自分でも恐ろしいほど、冷え切った心と眼差しで僕は見つめた。
これは何だ……、何か? なるほど……、つまり(ピー)てくれということでよろしいか?
そう解釈した僕は迷うことなく爆笑しながら地面をごろごろ転がり続けるビルドにおもむろに近づき、それからその場で右足を高くあげ、ビルドが仰向けになる瞬間を見計らって勢いよくどてっぱらに突き刺した!
ぐっふぅーーーーーー!
ビクンビクンと地面でのたうち回るビルド。さもありなんとうなづくフルカスに、僕と同じことを考えていたのだろう自分もバカにされたと感じていたらしく笑顔で親指を立ててぐっと拳を突き出してくるフォン、さらにこの騒動でようやく目覚めたせいで周りにまるでついていけていないカダル。
そして一連のやり取りを見せられてドン引きしているロマリアの人たち。
もしも勇者一行に夢をみていたならごめんなさい。うちのパーティこんなもんです。
追記 その後、何事もなく完成した【おおかなづち】(二号)により僕らは無事全員ロマリア鉱山内部から脱出を果たした。
どうやら情報通り鉄さえ叩かなければガメゴンはやってくることもなかったため、拍子抜けするほど安全に僕らは道々崩れた岩や土砂を片付けながら地上へと帰還したのであった。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
次回、もう一話挟んで決戦場作りへと向かいます。
次回終了後、R様から皆さんにお話があるそうですよ!
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22 決戦! ロマリア鉱山! 4
地竜の月 20日 さらにつづき
昨日の僕たちとガメゴンとの戦闘のため、ビルドがところどころ崩れた西坑道の邪魔者を新しくできたばかりの【おおかなづち】で壊しつつ開いた道を、長い地下生活で弱り切った人たちやけが人に肩を貸しながら僕らは地上を目指して歩いていた。
その道中、僕はどうしても気になっていたことをビルドに尋ねることにした。
ビルド、もしかして鉱山に入る前からあのでっかいガメゴンがいること知ってたの?
どうして?
一旦、邪魔者を壊すのを中断し僕を振り返ったビルドが不思議そうに聞く。僕は質問を続けた。
だって、そうでもなければこの西の坑道に入る前に耐震補強? だっけ? あんなことする理由が無いじゃん。何かがいるとは僕は聞いてたけど、さすがにあんなにデカい魔物なんて想定外にもほどがあったからさ。でもビルドは予想してたんでしょ? ああゆう何かがいること。
だから、どうしてその予想ができたのかを聞いておきたかっただけ。
僕がそう言うと、その事実に今気づいた人があっと驚きの声をあげ、訳がわからない他の人に説明している。
そんな中ビルドは腕を組んでん~~とうなりだしてしばらくしてからゆっくりと言葉を選んで話しだした。
まず なんらかの まもの の しわざ ていうのは よそう してた
ひがしこうどう のせんきょ も あったし たいみんぐ がよすぎたからね
……ちょっと きゅうけい。
そう言って一度言葉を切るビルド。他のみんなはそのビルドの予想の的確さに驚いていたけれど、僕にとってここまでは事前に聞いていた予想で何も驚くことはなかった。
しばらくして息が整ったビルドが再び口を開く。
それが なにかの ちからで じしん を おこしてる かのうせい も
なんとなく よそう してた
でも さすがに それが なにかまでは わかって なかったよ
ぼくは もっと まほう てきな なにか だと おもってた んだけどね
まさか物理的に岩山に穴を開けてたとは……あいつ等、力技すぎるだろといって話を切り上げて前を向いて作業に戻るビルド。たちまち目の前の土砂が片付いていく。
でもまだ一つ疑問が、今のやり取りの中で生まれた新しい疑問だ。それが僕の口を突いて出た。
ビルド、最後に一ついいかな?
さっきビルドは魔法的な手段だと思ったって言ってたけど、ビルド自身はその方法を知ってるってこと?
僕がそう聞くと、ビルドは僕に背中を向けたまま小さな声でこういった。
……ひみつ かな
すくなくても いまの あれるは しらなくて いいことだよ
その言葉を最後にこの話題に関してビルドが話してくれることはなくなった。
どうやらビルドには僕らが知らない秘密がまだまだいっぱいあるようだ。ただハチャメチャで物づくりと環境破壊もとい素材集めが好きなだけのビルダーじゃない。もっと大きな秘密をビルドは隠している……、僕はこの時そう思った。
やがて到着した鉱山街は事前のビルドの耐震補強の効果もあってところどころ壊れていたけれど、概ね出発前の姿をとどめていた。
心配顔で僕らを迎えた居残りの人々だったけれど、西坑道で死んだとばかり思っていたマリルさんのお父さんや仲間たちの生還に最初驚き、そして喜び、最後に泣き出しながらみんなで大騒ぎした。
体の弱っていたみんなをベッドに寝かせ、自分もヘトヘトだろうに治療を始めるカダル。喜ぶ街の人たちの様子に同じように喜びながらもどこか浮かない顔のフルカスとフォン。そして、気が抜けたのか門の上からぼー―――と地下の方を見つめるビルド。
それぞれの思いが交錯しつつ……、僕らはこの夜に今後のことを話し合うことにした。喧々諤々僕たちだけの議論は真夜中まで続いた。
そして よが あけた!
地竜の月 21日
この日は目覚めてからすぐに大忙しだった。
まずはロマリア王宮に今回の事実を伝えに行かないといけないというマリルさんのお父さんの言葉にしたがって、僕とマリルさんが代表してロマリアに。
前回と同じようにルーラでロマリアの街の正門前に移動すると、すぐに王宮の大臣殿へと取り次がれた。
ほとんど待たされることなく転がり込むように部屋に入ってきた大臣殿に一つ一つこのの経緯を説明していく。
西の坑道へ入れるようになったこと。
坑道の奥に超巨大なガメゴンがおり、戦闘になったこと。
命からがら逃げきりその先で死んだと思っていたマリルさんのお父さんや鉱山夫たちと合流したこと。
そして今回の事件がバラモスの手の物の仕業だということを知ったことなどを順序良く話したうえで、光る額と頭に汗を浮かべながら話を聞いていた大臣殿に僕は昨日の夜僕らだけで話し合った今後の考えを伝えることにした。
大臣殿、ロマリアの現状はいかがでしょうか?
……そうですな。小康状態といえるでしょうか。以前いただいた青銅製の武器防具のおかげもありまして何とか国は平穏を保てているかと。
そうですか、でしたらしばらくの間ロマリアは鉄なしでも大丈夫ですか?
……どういうことでしょうか?
これは仲間と相談した結果なのですが、現状鉄さえ掘らなければあのガメゴンが暴れだす危険性は低いと思われます。そして、であればロマリア鉱山に関しては一旦西坑道を封鎖という形にして、我々はマリルさんのおと……失礼、父上から得た情報からロマリアと同じような被害を受けている可能性が高いイシスを目指して旅を再開しようかと思いまして。
そ、それは困ります!
そう言って席を立ち上がる大臣殿に僕は冷静に話を続ける。
そうは言いましてもあのガメゴンは強敵です。正直、現状の我々では情けないことにまともな方法では太刀打ちできません。そして奴は現状鉄が取れないことを除いて実害のない存在になっています。で、あれば我々は冒険の旅をつづけ力をつけた後でもよいのではないか? そう考えているのです。
そ、それは……。
大臣殿がどさりと椅子に座り込んで頭を抱えた。さもありなん。確かに喫緊の課題に関してはクリアされたうえ、相手はガメゴン、しかも通常のガメゴンよりもはるかに強力だろう魔王バラモス特製のガメゴンである。下手に手を出さない方がいいというのも理性的な大臣殿のこと、十分に理解できているはずなのだ。現実的は妥協せざる得ない、けれど。
お話は分かりました。ですが何とか……、何とかなりませぬか。勇者殿。
だが、国を預かるものとしてリスクをとってでもあの鉱山の再開は急務だ。だからこそ。
我らにできることなら、何でも致しますから!
こういっちゃうんだよねぇ!
僕は口元を隠してニヤリと笑った。
――想定通りと。
では、大臣殿。お願いがいくつか……。
そう言って僕が切り出した話を聞くにつれ、大臣殿とマリルさんの顔色がどんどん悪くなっていく。僕はその様子を見ながら、昨日の夜のビルドの話を思い出していた。
――もういちど もぐって かくにん しないと だんげん できないけど
――あの がめごん を たおす ほうほう は ある
そう言ってビルドは紙の上にではあったけれど、奴を倒すための決戦場の設計図を僕らに見せた。
それはまさに僕らの度肝を抜くような大仕掛け。まさかそんな方法があるとは……。
相変わらずビルドはとんでもないことを考えるとみんなで驚いた後、フルカスはいつものように力強く頷き、フォンは決意を秘めた顔で僕のことを見て、そして無理難題を吹っ掛けられたうえ、責任重大なカダルは顔が真っ青になっていたけれど。
確かにその方法なら、あのデカすぎるガメゴンを倒せるかもしれない。
だから僕らは深夜、勝算を持ってこの時点でのガメゴン討伐を決めた。
逃げるのなんてまっぴらだ。だって勝つ可能性が少しでもあるなら最善を尽くすのが、勇者ってものでしょ?
だから待ってろ、ガメゴン。そして魔王バラモス。
お前が恐れた人間の団結の力ってやつを見せてやるから。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
投稿時点で日刊ランキング45位、ありがとうございます。
というわけでこの後、R様の登場です。
今からがんばりますww
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座⑥ ロマリア鉱山編③
後書きはその為今回ありません。
いつも通り、誤字脱字感想お待ちしております。
はい、今回もやってまいりました。
私こと、謎の大地の精霊Rによるビルダーズ講座のお時間です。
ですが今回は一味違います。
題して、対【育ちすぎたガメゴン】用決戦場予想! をやっていきたいと思います!
ルールは簡単です。まず今から私が舞台となるロマリア鉱山地下の大坑道の説明をいつものようにいたします。
その後、皆さんには今までロマリア編で出た要素を使ってどうやったらあの強敵、【育ちすぎたガメゴン】をやっつけられるか予想していただきたいと思っているのです!
まずは前提条件から。
1 鉄は使えません。採掘しようとするとガメゴンが襲ってきますので鉄の採掘はNGです。鉄がNGですので、ビルダーズに登場する大砲などのアイテムは使えません。
2 場所は、先ほども言いましたがロマリア大坑道です。
3 作中出てきたアイテムは、どのように使っても構いません。
4 原作ビルダーズでできないことでも、現実にできそうなことならOKです。
さて、名探偵の皆さん。準備はよろしいですか?
では参ります。
■■←ガメゴンのサイズ
■■
■■■■■■■■■■
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■■□□□□□□■■
■□□□■■□□□■
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■■■□□□□■■■
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上の図が俯瞰図となっております。
ビルダーズ的には、■や□の四角一個につき、4×4ブロック想定です。
ブロックは作者想定で1平方メートルとなっておりますので、ガメゴンがいかに巨大かがお分かりいただけるかと。
さらに高さですが、この坑道の天井の高さはおよそ20ブロック分以上となっていますので、上方向には十分なスペースがあります。
ちなみにガメゴンの首の位置は地面から8メートル地点です。
条件は以上です!
ご参加くださる読者の方は、作者が今から作者の【活動報告】に、
対【育ちすぎたガメゴン】用決戦場予想!
という活動報告を用意しますので、そちらに思いついたことを書き込んでいただければオーケーです。
期間は、作者が本編で決戦場の全容を明かす時までとします。
ちなみに作者は今から6月初めの試験までほとんど更新できないと思います。できて1、2回でしょう(笑)!
ヒントは作中にちりばめてありますので、よく読んでいただければいいのですが特にヒントを3つ、こっそり私が教えてしまいます!
みたくない、この名探偵にヒントなど不要! という方は、ここでバックをお願いします!
ではいきますよ!
ヒント1 アレルがガメゴンに抱いた【奴は歩く船、歩く砦、歩く城だ】という印象です。
ヒント2 アレルたちの攻撃は効かなかったのに、ビルドの攻撃が通用したのは武器である【おおかなづち】、つまり鈍器を的確に頭部に命中させたからです。
ヒント3 カメはその生態上、後ろに向かっては進めません。前進あるのみなんです。
では、皆さん奮ってご参加ください! 謎の大地の精霊Rでした!
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23 決戦! ロマリア鉱山! 5
そして今回(と次回で)はDQB3にあったらいいな的なシステムの提案を作中に盛り込みました。
地竜の月 21日 つづき
大臣殿へのお願いはいくつかあったが、とりあえず最初に動きがあるのはロマリアの街を守る衛兵の中でも特に力自慢の人数人のロマリア鉱山への派遣だろう。
今回のガメゴン退治に関して、ビルドは順調にいけば準備は十日から二週間くらいあればいけるのではないかと事前に説明を受けているので、彼らが徒歩で鉱山にやってきてその後彼らがそれぞれの役目を果たす時間は十分にあるだろう。
代わりといってはなんだけれど、残っていた青銅を使ってビルドが作った追加の武器防具を大臣殿に預けておいたのでロマリアの治安は何とかなると思う。
その後マリルさんと連れ立ってロマリアの酒場に行ってみるけれど、目的の人たちの協力は得られなかった。
そのことに肩を落とすマリルさんを励ました後、彼女とは一旦ロマリアの街で別れた。マリルさんはロマリアの街でやるべきをもう少し済ませてからロマリア鉱山へ帰ることになっている。もちろん彼女一人で歩いて帰れるわけもなくキメラのつばさでだけれど。
そして僕はルーラを使ってアリアハンへと飛んだ。
いざないのほこらから旅立ってから初めてのアリアハンの街に家に帰ってゆっくりしたい気持ちがないわけじゃなかったけれど、今の僕にはやるべきことがある。
――この さくせん の かぎは あらくれさん たちの やるき だよ
ビルドが昨夜の話し合いで提示したこの問題点をどうやって解決するか……、とみんなで考えていた時、ふと僕の対面にいたフルカスを見た時に何か引っかかるものを感じた。
何だろう……、フルカスとあらくれさんたちのとの共通点? 筋肉バカなこと? 違う……、何が引っかかってる?
その引っ掛かりが気になって思わずフルカスに聞いていた。
ねぇ、フルカス。君なら何があれば日々の仕事にやる気が出る?
ん? とフルカスが片眉を上げしばし考えてこういった。
ん~~~~~~、酒、かなぁ……。疲れた後に酒が飲めたら俺はうれしいけどなぁ。
あぁ、レーベでも君飲んだくれてたよね……。
とレーベの村でのフルカスたちの醜態を思い出した後、ピーンときた。
酒だ。あらくれさんたちのやる気を出すために、酒を用意して、再開すればいい。
思い付きをそのまま僕が口に出すと、それを聞いたビルドが机の上に残った【鉄のインゴット】を置く。
ビルドがちょっとためらい気味に口を開く。
いいの? あれる
これだけ あれば きみのぶん くらいは 【てつのつるぎ】を つくって あげられるのに
さかば を さいかい するなら 【さかばのかべかけ】 が いるから
【てつのつるぎ】 は つくれなく なっちゃうよ
ビルドが言ったその言葉を僕は軽く笑い飛ばす。
僕が【鉄の剣】一本持ったところであのガメゴンに有効なダメージなんて与えられないでしょ? なら、それで【酒場の壁かけ】だっけ? を作ってみんなのやる気をあげたほうが絶対いいさ。
そういうとビルドはニッコリ笑って胸を叩いてこういう。
よし あれる
【さかば】の件はまかせとけ
あれる は あした ろまりあのまち で ばーてんさん をさがしてきて
それで みつからない なら しかたない
ぼくが よる りんじで ばーてんさん やるから
そんなことをいうビルドに僕はいい考えがあるといってアリアハンにやってきた。
そう。困ったときの……、
ルイーダさぁん! 助けてぇ!
そう言って僕はルイーダの酒場に駆け込んだ。
久々に顔を見せたと思ったらいきなり何事だい、アレル坊!
ルイーダさん頼みである!
地竜の月 21日 さらにつづき
それでつまり、あんたとしては誰かロマリアの、そのロマリア鉱山の酒場でバーテンをやってくれる人間に心当たりはないか? ってことでいいかい?
……あんたねぇ、うちは人材派遣の場じゃないんだよ、といいたいところだけれど、うちも最近は色々手を広げてね。いろんな希望を聞いていろんな場所への人材の斡旋したりしてるんだよ。
……それで、バーテン……か。ひとり登録があるね。名前はアイーダ。……うちの妹だね。
ちょっと待ってな。呼んでくるから。
そう言ってルイーダさんはひらりと立ち上がり酒場の奥に消えていった。
割と無理難題な自覚はあったのに、さすがは圧倒的な頼りがいである。
そうして出されていたおいしい【ミルク】を飲んで待つことしばし。
ルイーダさんはルイーダさんによく似た長身の美人さんを連れて戻ってきた。
アイーダさん。ルイーダさんの妹でこのルイーダの酒場の看板娘の一人である。
久しぶり、アレル坊。
そう言って僕の頭をくしゃりとなでるアイーダさん。
話は聞いたよ。アレル坊、私は別にロマリアのその鉱山だっけ? 行ってもいいよ。でもそれにはお願いがある。どうせ新しい店で働くなら私は気持ちよく自分の趣味に合った酒場で働きたい。だから私が働くその【酒場】は【レンガ造りの酒場】にしてほしいんだ。お願いできるかな?
ん? 【酒場】を【レンガ造りの酒場】にってどういうこと?
そう思ってる僕に不意にいつもの電波がやってきた。
お願いクエスト 1
アイーダのお願い 【レンガ造りの酒場】 を 造って!
――お願いクエストは、旅の途中いろんな人にお願いされるクエストのことです。お願いをかなえると、その人が移住してくれたり、何かアイテムをくれたりします。
え? 何これ。
謎の電波に驚いているアイーダさんはこう続けた。
【レンガ造りの酒場】はまず【広さ】は【大きい】がいいね。
次に壁を【赤レンガ】で作ってほしいんだ。それで扉は【ウェスタンドア】かな。他に必要なのは【酒場の壁かけ】、灯りは何でもいいけど、【バーカウンター】、【シェイカー】、【大きな木の机】と【椅子】が四つづつのワンセットを二つ、あとは【酒ダル】が二つに【銅のジョッキ】を大きな机の上に各四つかな?
どうだい、出来るかい? それができたら私はそのロマリア鉱山ってのに行ってあげるからいつでも呼びに来ておくれ。
そうお願いされた僕は、こういうことしかできなかった。
ちょっと待ってて。急いでビ、ビルドに話してくるから!
そのままルイーダの酒場を飛びだして、ルーラを唱える!
ビルド~、助けてぇ!
なんか無茶ぶりしようとしたら、無茶ぶりがかえってきたよぉ!
そのまま酒場の手直しをしていたビルドのところに駆け込んで説明をするとビルドはいつも通りのぼへーとした顔つきのまま何事でもないかのようにアイーダさんからの無茶ぶりを聞いてくれた。
ふ~ん 【ひろさ】は【おおきい】で、壁は【あかれんが】、扉は【うぇすたんどあ】で ないそうが【さかばのかべかけ】、あかりはなんでもいいけどよっつ、あと【ばーかうんたー】、【しぇいかー】、【おおきなきのつくえ】をふたつ。それぞれに【いす】と【どうのじょっき】がよっつづつ。あとは【さかだる】をふたつね。
わかった。
すぐつくるよ。
そう言ってまずビルドは何を思ったのか、せっかく完成した宿屋と道具屋をまるごとぶっ壊し空き地に変えはじめた!
何やってんのさ、ビルドぉ!
僕のツッコミに全く耳を貸さずビルドは建物二件分のスペースを確保するとまず建物の一階部分に大きな酒場を建設し始めた。
まずふくろから炉を取りだして【黄山岩】と【粘土】、そして【石炭】で【赤レンガ】を大量に焼き上げた後、次に作業台を取りだし【ウェスタンドア】や【酒場の壁かけ】、【壁かけたいまつ】、【バーカウンター】、【シェイカー】、【木の机】と【木の椅子】、【酒ダル】【銅のジョッキ】をそれぞれ必要な数完成させていく。
そしてそれが終わった後、しばらく空き地を眺めていたと思ったらものすごい勢いで壁を並べ始めた。
あっという間に出来上がる赤いレンガの建物。さらに芸が細かいのが、柱の部分にはいつのまに手に入れたのか【スギ原木】を使いアクセントに。壁も赤レンガだけで作るんじゃなくところどころに【フレームガラス】を入れる工夫ぶり。最後に指定された調度品をバランスよく並べ終えて……、
【おおきなレンガ造りの酒場】が完成した!
あっという間に、アイーダさんの無理難題を完成させちゃった。
この間、約二時間。
よし まぁまぁかな
と言ってビルドは今度は壊してしまった二階の宿屋と道具屋の再建に取り掛かった。
その前に僕にくるりと振り返ってこう言ってから。
あれる ぼさっとしてないで はやく ありあはん にいって
あいーださん? だっけ つれてきてよ
その言葉に背を押されるまま僕は本日都合四回目のルーラにてアリアハンに舞い戻ったのである。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
まずは新システムその一、ルイーダの酒場の初お披露目でした。
いろんな町を発展させるのに足りなかったり、必要だったりする人材をルイーダさんに頼んで紹介してもらい、その条件として決まったルールの建物の建築だったり、アイテムを渡すことでその人に移住してもらう。
そんなシステムです。
次の話に、これに関連した目玉システムのお話も投入したいと思ってますのでしばしお待ちくださいね。
あと、今回のあらくれたちのやる気がカギっていうのもちょっとですけど決戦場のヒントですよ~。
追伸 もし再現する方おられましたら、赤レンガはゴーレム岩あたりで代用していただくとよいかと思います。
追伸の追伸 少しバーの内容を修正しました。作ってみたら机が少なくてさみしかったので。撮影もスマホでやったので掲載したいのですが私がモバイル音痴過ぎて断念……。
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24 決戦! ロマリア鉱山! 6
現在リハビリちうですが、投稿します。
地竜の月 22日
翌日。つまり僕のルイーダさんに対する遠くの街で働いてくれるバーテンさん知りませんか? という無茶ぶりに対する、ルイーダさんの妹のアイーダさんによる私が働きたいと思う酒場を用意したらいいよ? という無茶ぶり返しを、え? なに? わかった すぐつくるよ という言葉とともに宣言通り約二時間で大きな酒場を一から作り上げるという形で真っ正面から叩き返したビルドのファインプレイにより、僕はまるで球遊びで宙を何度も行き来するボールのようにロマリアとアリアハンのあいだを行ったり来たりした、そんな日の翌日のこと。
うぉぉぉ! 美人のバーテンさんだぁ! 酒場が復活したと思ったら大人のおねえさんがきたぁ!
うぉおぉぉ! 何だいきなりぃ! 酒だぁ! 美人だぁ!
な、なんだいこの人たち! アレル坊、ちょっと大丈夫なの?
というわけで朝一で僕といっしょにロマリア鉱山街にやってきたアイーダさんと酒場に街のあらくれたちは大騒ぎ。そんな様子を僕は苦笑しながらしばらく眺めていたけれど、その騒ぎはやっぱり長くは続かなかった。
……でもなぁ、俺たちもう仕事ができねぇんだ。
……そうだよなぁ。鉄が取れる西の坑道にはあのおっかないカメの化け物がいるんだよぉ。
……きれいなお姐さんや酒場を作りなおしてくれたビルドの旦那には悪いけれど、ロマリア鉱山はもうおしめぇなんだぁ。
口々にそんなことをいい、きれいになった街路でうなだれるように座り込むあらくれたち。
やっぱり。あの夜のビルドの言葉がよみがえる。
――いまの あらくれさんたちは かんぜんに こころが おれてる
――かれらに かてると おもわせる
――それが さくせんの だいいち だんかい だよ
そこに騒ぎを聞きつけたのだろう、フルカスがやってきて項垂れているあらくれさんたちを見張り台の上から見ていた僕のところに縄ばしごをよじ登ってやってきた。
そんなフルカスに手を差し伸べて上に引っ張り上げる。うん、重い。
ただいまフルカス。ビルドのいった通りになったね。それで肝心のビルドは?
おう、アレル。お帰り。お疲れさん。ビルドなら予定通り今は東の坑道の中だ。万が一のため、俺も行くといったんだが万が一に備えて街で待ってろといわれたもんでな。
なるほど。それでこの影が?
ああ、坑道に潜る前にあっという間に準備していったよ。
そう言って僕らは街の中央にそびえたつ見張り台の上のさらに遥か上を見た。
そこには昨日までは間違いなく影も形もなかった崖の岩肌からにょっきりと生えた【黄山岩】でできた足場と、そこへと登るための異常な高さまで続く【木のはしご】の姿が。
さらに崖の壁面を西の坑道方向に目を滑らせていくと、真上にあるものと似たような足場と【木のはしご】が見える。
さすがビルド。手が(異常に)早い。
僕は続けてフルカスに尋ねた。
フォンの姿が見えないけれど?
フォンは一人で山を下りて食料収集もかねて魔物を倒しに行ってるよ。どうやらあのガメゴンに攻撃が通じなかったことをずいぶん気に病んでいたからな。……じっとしてられなかったらしい。
そういうフルカスのたくましい両腕にも力が入っていた。他人事のように言ってはいるがフルカス自身もフォンと同じように思っているのだろう。そういう僕自身もいつの間にか腰の【せいどうのつるぎ】の柄を握りしめ、あの日の自身の無力さをかみしめる。
しばらくしてから大きく息を吐きだしたフルカスが何かを振り切るように頭を振って、最後の仲間の現状を教えてくれた。
カダルは……、まだあのままだな。それにしても呪文を使えん俺には分からんがあのビルドの言っていたことは本当か? 僧侶が魔法使いの呪文を使えるようになるとか……。
そう言って今度は腕を組んで悩み始めるフルカスの姿に、僕は改めてあの二日前の夜、計画を説明するビルドの口から出た驚きの言葉とその後の光景をを思い出していた。
――かだる こんかいは かだる が かぎ だからね
――ちょっとだけ むちゃを するけど だいじょうぶ
そう言ってビルドは呆気にとられているカダルの背後に回って両手でカダルの頭をつかみ、そして。
――ぶっすり。
――ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!!!
ビルドは何の躊躇もなくカダルの後頭部に指を突き刺した。それはもう頭蓋骨を貫通してるんじゃない? と言わんばかりの勢いで。
そのままカダルは失神。ぷら~んと地面に垂れ下がったカダルをビルドは後頭部を持ったまま振り回し、そぉおぃ! とい掛け声とともにベッドに放り込んだ。
おいいきなり何してる! と詰め寄る僕らにビルドはしれ~とした顔でこう答えたのだ。
――きいてたでしょ? こんかいは かだる が かぎ なんだよ
――だから すこし はやいし うらわざ だけど
――かだるの つかえる じゅもん を ふやした だけだよ
魔法使いの魔法をね。
そう言葉をつづけたビルドの口から出た意味不明な言葉に僕たちは怒りも忘れてポカンとしその後、ビルドをしかりつけた。
何言ってんだよ、僧侶は僧侶の魔法しか使えないし、魔法使いは魔法使いの呪文しか使えないだろ?
僕がそういうと心底やれやれという顔をしたビルドが、僕のことを指さす。
じゃあ どうして あれる は ほいみ も めら も つかえるの?
え? だって僕は勇者だし……。
そう あれる は ぜんぶ じゃないけど りょうほう つかえる
それは あれるが ゆうしゃ だから じゅもんを おぼえる みちが
とくべつ だから なんだ
そこで大きく息を吸い込んだビルドが言葉をつづけた。
そうりょと まほうつかいの じゅもん は こいんの おもてと うら
さっきのは そのこいんの ぎゃくがわを いちぶ だけでも つかえるようにする あらりょうじ だよ
まぁ それも かだる だから できるん だけどね
……どういうこと? と三人分の視線を受けたビルドがこの後口にした言葉は衝撃的なものだった。
長台詞にぜーぜー言いながらも、ベッドで死んだように静かなカダルのことを一瞥しビルドは確かにこういったのだ。
――みんな きづいて なかったの?
――かだるは てんさい だよ
――いずれ かならず けんじゃ に なれる おとこ なんだよ
誤字脱字、感想お待ちしております。
というわけで呪文習得に関するオリジナル設定ぶっこみます。
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25 決戦! ロマリア鉱山! 7
さくしゃは ちからを ためている!
地竜の月 22日 つづき
珍しくこの時のビルドは饒舌だった。
あのね げんだいの じゅもんが つかえる にんげんの なかには ふたつの みちが あるんだよ
かりに こいんの おもてがわの みちを そうりょの みち
うらがわの みちを まほうつかいの みち とするよ
それぞれの てきせいに よって じゅもんの つかえる にんげんは そうりょや まほうつかいになる
ここまではいい?
分かりやすい説明に思わず頷く僕とは対照的に、フォンは呪文が使えないこともあって感覚的に理解できなかったのだろう、ビルドに気ぜわしそうに聞いた。
ビルド、つまり僧侶の道と魔法使いの道があって、でもそれが乗り越えられないからみんなそれぞれの魔法しか使えないんじゃないの? だったらカダルもそうじゃない。あいつも僧侶の呪文しか使えないわよ? だってあいつがメラとかギラとか使ってんの私見たことないし。
フルカスも無言で腕を組んだままフォンの言葉に頷いた。
僕らの疑問にビルドは言葉をつなげていく。
そうだね さいのうが あっても いまは みちが ひらいてない からね
そして じぶんで じゆうに こいんを うらにしたり おもてにしたり できる にんげんの ことを けんじゃって いう
だから ぼくは さっきのあれで かだるの あたまの なかにある こいんを いちぶだけだけど じゆうに ひっくりかえせるよう にしたんだ
これで ひとつの じゅもんでは あるけれど かだるは まほうつかいの じゅもんが つかえるように なったはず
あとは じっさいに みたほうが はやいね
ひゃくぶんは いっけんに しかず だよ
そういって説明を打ち切ったビルドにフォンが不安そうな声でなおも食い下がった。それは何かすがるものを無くしたか弱い少女のような声だった。
ねぇ、ビルド。じゃあ、私みたいな呪文が使えない人間は頭の中にその道とかいうのがない人間ってことなの?
フォンのその言葉にビルドは珍しく本当に優しい声を出してこういった。
うん げんみつには もう みちが うまっちゃった にんげん だね
だけどね ふぉん それに ふるかすも だけど
まず あのくそでけー がめごん あいてに ぶつりこうげきが つうじなかった のは しかたない
あんな はんそくもんすたー めったにみれる もんじゃ ないからね
あれに ゆうこうな だめーじを あたえるには つよい だげきで ぴんぽいんとに のうを ゆらすこと しかないよ
だから ぼくの こうげきが つうじたのは そのおかげ
たまたま やつに ゆうこうな ぶきを もってた
それだけだよ きにやむことは ないからね
あと ふぉん
じゅもん の さいのう っていうのは ふぉんが おもうほど いいもの じゃないんだよ?
それに にんげんは ほんと よくできてるから
きほん じゅもんの さいのうが ないほうが しんたいのうりょくは たかくなるんだよ
だから ふぉんは じぶんに もっと じしんを もっていい
いまの だんかいで あんな さんじげんてきな すげー うごきが できる
ぶどうか とか まじで すごいから
ていうか ぼくらの ぱーてぃは ぼくいがい みんな だいてんさい しか いないからね!
そういうビルドの顔は満面の笑みだったけれど、ビルドの自分だけは凡人発言にその場にいた僕ら全員、半死半生でベッドで寝ているカダルでさえ無意識で手を動かしたのだろう、ビルドを除くメンバー全員で渾身の総突っ込みをした。
お前(あんた)が言うな! お前(あんた)が一番バグだからな(ね)! ビルド!
その言葉にケラケラ笑うビルド。こうしてカダルが目覚めるまで呪文の話はお預けになった経緯があった。
そこまで【おもいだす】した僕は、フルカスを見張り台に残して下に降りることにした。
おい、アレル。どこにいくつもりだ?
下まで降りた僕はフルカスを見上げる形になりながらこうこたえる。
まずは、いきなりしょんぼりしだしたあらくれさんたちに戸惑ってるアイーダさんにこの鉱山街を案内するところからかな? フルカスもおいでよ? お酒一杯くらいなら飲めるかもしれないよ?
そう言って新築の酒場の前で酒場の新しい主となるアイーダさんとしょんぼり三角座りしているあらくれさんたちをつれて、僕はビルド自慢の【レンガ造りの酒場】へと足を踏み入れた。
さて、準備はあと半分。予定通りに行けば明日から僕たちの反撃のはじまりだ。
そんな決意を胸に秘めて僕は、この日鉱山街のみんなと楽しい一日を過ごしたのだった。
追記 この日結局ビルドが帰ってきたのは、日付が変わった深夜だった。どうやらこの先の仕込みに必要になる大量の【石炭】、それに【銅】や【スズ】の採掘だけではなく、一人だったことをいいことに東の坑道を探検してきたらしく、ホクホクの笑顔で帰ってきたビルド。
特に大発見だったのが、東の坑道の地底湖の奥にある滝の裏にさらに奥に行ける天然の隠し通路みたいな場所を見つけたらしく、そこには今まで見たことない素材がたくさんあったと、その中の一つである【ツタの実】や【青いツタの実】などを見せてくれた。
アリアハンから来る途中に寄ったレーベで手に入れた【小麦】で作った【バブル麦汁】はロマリアでも大人気。気風のいいアイーダさんに勧められてすっかり気を良くしたうちの酔っ払い(フルカス)やあらくれさんたちが酔いつぶれた後のいびきの大合唱の中、帰りが遅いビルドが心配でが遅くやきもきしながら何とか起きていた僕がフォンが、そのあまりのビルドらしさに安心しながら脱力しつつ、そんな楽しそうな冒険を独り占めしたことに抗議するもビルドはどこ吹く風で、そのまま酒場の二階部分に通じる外階段を作って二階部分にのぼって、その開けた二階部分に酒場を作るために壊した宿屋と道具屋をあっという間に再建した。
この日のビルドはつまり、
① 昨日の夜あっというまに【レンガ造りの酒場】を作った後、
② あの遥か頭上にある崖から突き出た足場を二つ完成させ、
③ その後東の坑道へ向かい、【石炭】や【銅】、【スズ】などの必要な大量の素材を回収した後、
④ 気分転換に地底湖の探検に出かけ、滝の裏の未発見地帯を見つけてそこで新たな素材を回収したのちに、
⑤ 帰ってきてしれっと宿屋と道具屋を作ったということになる。
そんなビルドを見て、僕はため息交じりに拳を振り上げ、少し目を離したすきに文字通り好き勝手やり倒したうちのパーティで一番のバグに制裁のげんこつを振り下ろすのであった。
追記の追記 ……カダルがまだ目を覚まさない。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
ホントコンスタントに三千書きたいですよ。えぇ。
そして現在、ロマリア編だけで既に25パート突破した事実に驚愕きわまる……。
これ、ロマリア編いつ終わるの? この後、あれもあれもあるんだよ……?
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26 決戦! ロマリア鉱山! 8
地竜の月 23日
明けて翌日。僕らは朝食後、鉱山街のみんなを街の中心部に集めた。三々五々朝食を済ませたマリルさんご一家やあらくれさんたち、そしてアイーダさんたちが集まってくる。
その中でも僕はあらくれさんたちの様子を注意深く見ていた。足取り、歩き方、視線の行き先、そういうものに人間のその時々の感情や気持ちがあらわれることがある。そんな単純な話か? と言われるかもしれないが、人間元気な時、前向きな時にはまっすぐ前を向いて自信ありげに歩くものだけれど、落ち込んでいるときやつらい時にはどうしても足取りが重くうつむき加減になるものなのだ。
その結果だけれど、昨日までよりは少しマシといった程度。
やはり今日こそが勝負を決める。そのことを僕は確信し、そして自然と手がズボンのポケットにふれた。
ビルドの言葉を【おもいだす】。
――あれる だんどりは ぜんぶ ぼくがやる
――だから あれくれさんたちの こころに ひをつけろ
――だいじょうぶ きみなら できる
――だって こんなんや ぜつぼうを まえに ひとを たちあがらせる こころ の つよさこそが
――きみの ゆうしゃ としての さいだいの さいのう なんだから
思い出したその言葉にまず僕の心に火が入ったよ。
そうして僕はみんなに今日、ビルドが西の坑道に入って必要な作業をするのでそれが終わるまで万が一のために東の坑道に避難してほしいってことを伝えた。
場が騒然とし始める。おびえて肩を震わせる人、覆面の上からでもわかるほど怒る人、反応は様々だったけれど、ビルドが西の坑道に入ると聞いて鉄を取りに行くと思ったのだろう一番多かったのは青い顔をしながら「だめだ、あのバケモノを刺激しないでくれ」っていう声だった。
僕は少し騒ぎが収まるのを待ってみんなへの言葉を続ける。
皆さん、落ち着いてください。僕たちは何もあの坑道最下層にあるガメゴンお住みかで新たに鉄鉱石をてにいれるつもりはありません。
ただ、他に必要なものがあの西の坑道の中にありそれを取りに行くだけです。
何故なら僕たちが鉱山監督官殿と皆さんの仲間たちを連れて何とか西の坑道から生還したあの日から、僕たちは皆さんのロマリア鉱山に巣くう怪物をやっつけるための準備をしてきました。
今夜、その成果を皆さんに見せます。この方法ならあのとてつもなくでっかいカメの化け物である巨大ガメゴンだって倒せる、皆さんにそう思ってもらえる方法を僕たちは考えてそれを今夜皆さんに見てもらいます。
全てはそれからにしましょう。だから今は僕たちの指示に従って一時東の坑道へと避難してください。
最後にお願いしますと僕が頭を下げると、マリルさんのお父さん、つまり監督官殿があらくれさんたちにこう言ってくれたのだ。
おい、お前達。遠い異国からやってきた勇者様がこれほどに我らロマリアのために尽力してくださっているのにその態度は何だ! 立ち上がれ! 胸を張れ! お前たちはそれでも暗くつらい坑道でひたすら鉱物を掘り続けるあらくれなのか! お前達の筋肉は飾りなのか! 早く東の坑道へ向かうぞ。勇者様たちのやることの邪魔をするでない! さぁ、これは私からの命令だ! さぁ早く!
その言葉にゆっくりとではあるが各々東の坑道へと向かう鉱山街の人たち。やがていつもの喧騒が嘘のように静まり返る鉱山街。それでも念のため、僕らは手分けしてもう一度全ての建物や物陰などをチェックし街には誰もいないことを確認した後、最後に残っていた相変わらずピクリとも起きないカダルをフルカスが背負って僕たちも東の坑道へと向かった。
ビルド一人をそこに残して。すれ違いざま、目配せをする。お互いに強く頷き返すだけだった。
そうして無人の鉱山街に一人残ったビルドは、右手におおかなづち(二号)を握りしめ、顔はいつもの締まりのない笑顔だけれど目を爛々と輝かせて西の坑道へと突撃していった。
東の坑道の中は入ってすぐのところが街の人が全員入れるくらいのでかい休憩スペースになっていた。万が一に備えて天井を支える柱を多く入れたり、食料がたくさん入った【収納箱】が用意されたりしていた。
その中でみんなで身を寄せ合うようにして時を待つ。
静けさと緊張感だけがその空間にはあった。
やがてしばらくしてズズン、ズズンという小さな揺れが何度も何度も起きて、その後微かにではあるけれどあの恐ろしいガメゴンの咆哮が聞こえた気がした。
そんなことがある程度の時間の間隔を開けて何度か続いた後、それがピタッと止み、それからしばらくしてみんなが空腹を覚え始めた頃にタタタタタという軽快な足音とともに全身ホコリまみれになったビルドが帰ってきた。
真っ先にそれに気づいた僕がビルドに駆け寄る。
成果は?
ばっちり
そう言ったビルドが袋の中から取りだしたのは、あの西の坑道に初めて侵入した時に僕が地面ごと釣り上げられたゴンドラを構成していた大量の【鉄のブロック】と【鉄の鎖】だった。
ニヤリと不敵に笑うビルド。
これで じゅんびは ととのった
さぁ みんな そとに でよう
いまから ぼくが あの でっかい まものの たおす しくみを つくって あげるから
そういって汚れた顔をぐいっとぬぐって外へと飛びだすビルド。
まちの いりぐち あたりの がけのふちから みんなで みててね
そういって走り出すビルド。そこから大工事が始まった。
まず【鉄のブロック】と【鉄の鎖】を動かしていた大きな歯車を加工して【鉄の鎖巻き上げ機】を作り上げ、それを昨日作ったあの崖から張り出した東側の足場の上にセット。それから目も眩むほどの高さにある中央の足場の下側に大量の【鉄のブロック】を使って凹の形をした【鉄の鎖】をぶら下げる頑丈な【鉄の鎖台】を完成させ、そこに【鉄の鎖】をつないだ。
中央の崖の足場の下にぶら下がった長い長い鎖。それはビルドが作った新しい街のシンボルである見張り台の上の方に垂れ下がっていた。
次に前日に大量にとってきておいた【銅】と【スズ】をこれでもかというくらい【炉】に放り込んだ後、今度は西の坑道方向、街の外縁部分にあたるへりの部分からどんどん足場をつぎだして空中に作業用の足場を完成させたビルドは、それからあの僕たちを阻んでいた硬い【黄山岩】を使って巨大なオブジェをつくりはじめたのだ。
作業を続けるビルドを夕日が照らし、その姿をみんなが見守る中、ドンドンそのオブジェは何かの形に変わっていく。
やがて暗くなっていく空をビルドが大量のたいまつでライトアップしたころそれは完成した。
それはあの巨大なガメゴンを思わせる竜の首をした【黄山岩】の石柱だった。
完成したその頭の上でビルドは自慢気にふふ~んと鼻を鳴らした後、足場を伝って地上に降りてきた。
さすがに消耗した様子で、しばらくものすごい勢いで次から次へと食べ物を口に運んでいたけれど、たらふく食ったら回復したのかみんなにこう告げた。
さぁ とくと ごろうじろ!
ぼくの いっせい いちだいの おおじかけ を みせてあげる!
そういうとビルドは炉から取りだした大量の【青銅のインゴット】を一気に加工していく。
その数何と100個。
その大量の【青銅のインゴット】を使ってビルドが作り上げたもの、それは。
【巨大すぎる青銅鉄球】が完成した!
それをえっちらほっちら見張り台の上に持っていき、また足場を組んで少し上に行き鉄の鎖の先端に接続。さらにもう一本その【巨大すぎる青銅鉄球】に鎖をつなげそれを東側の足場まで引っ張っていく。
最後に【鉄の鎖巻き上げ機】につなげてついに準備は完成した。
――【ロマリア鉱山・決戦場(デモンストレーション)】が完成した!
そうして僕らはビルドと一緒に力いっぱい【鉄の鎖巻き上げ機】を動かしはじめた。僕もフルカスもビルドもフォンも、いまだに寝坊助のカダル以外はみんな必死になって大きな【鉄の鎖巻き上げ機】を回していくと少しづつ【巨大すぎる青銅鉄球】がそれに引っ張られて鉱山街の東側へと移動していく。
呆然と事の推移を見守っている街の人たちを置き去りにして、最後の力を振り絞り僕が手でさわれるところまで【巨大すぎる青銅鉄球】はやってきてそこで動きを止めた。
あまりに両腕を酷使したためか痙攣する両腕をぶらりとぶら下げながら僕らは街の西側にたいまつの灯りに照らされた作り物の巨大なガメゴンの顔をみた。
そしていつもは寡黙でどちらかというと物静かなフルカスの
いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
という声とともに、【鉄の鎖巻き上げ機】に巻き上げられていた【巨大すぎる青銅鉄球】が振り子の要領でうなりを上げて夜の鉱山街の空を東から西へと弧を描いて、ものすごい轟音とともについに作り物の巨大なガメゴンの顔に直撃した!!
そのあまりの音の大きさにみんなが一瞬目を閉じ、そして開いた時にはそこには硬い硬い【黄山岩】でできた巨大な竜の頭は首だけ残してどこにもなく。
あとにはぶらぶらとゆれる鉄の鎖と、少し遅れて鉱山街にその光景を見た人々の大歓声だけが轟いていた。
その光景を僕らは東側の崖の上から見ていた。僕もフルカスもフォンもそしてビルドも疲れて果てていたけれど口元にはニヤリと笑みを浮かべて、目だけは爛々と輝かせて。
あの夜最初にビルドはいった。
――あんな しろや とりでみたいに でかい やつを たおすためには
――こっちも でっかい はんまーを よういしたら いいんだよ
そして出来上がったこの超巨大ハンマー。そしてその効果は今僕らの目の前で実証された。
さぁ、待ってろ、ガメゴン! 今度はこの【巨大すぎる青銅鉄球】をお前の顔面にお見舞いしてやるからな!
追記 ……え? なになに? いま、ものすんごい音しなかった?
そして、その音でついにねぼすけカダルも目覚めたようだ!
おはよう! カダル!
誤字脱字報告、感想お待ちしています。
というわけで今回のギミックは、
昔、ビル解体などに用いられていたクレーン鉄球でした!
ピンと来ない方は、
ビル解体 クレーン 鉄球
で検索よろしくです!
ヒントの答え合わせは、次回やります!
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27 決戦! ロマリア鉱山! 9
地竜の月 23日 つづき
しばらく経ってもいまだ痙攣しつづける腕に何とか【ホイミ】をかけて、手のひらを開いたり握ったりして手の感覚を確かめる。それからゆっくりと体の調子を確かめながら東の崖の上に張り出した足場の上で僕は何とか立ち上がった。
次に地面にぐで~~~と座り込んでやり切った満足感をそのいつも通りに見えるしまりのない笑顔に浮かべるビルドをちらりと見た。
珍しく本気で疲れたのかしゃべるのもおっくうなようで、大きく呼吸を繰り返すビルド。
ふとビルドと目が合う。僕が小さく頷くと安心したように足場の冷たい【黄山岩】の上に大の字になった。そしてビルドはすぐさまいびきをかいて寝始める。
そのビルドのやり切って全てを絞りつくした姿を見た後、松明の炎に照らされて夜空にぼぉっと浮かび上がる【黄山岩】のオブジェの残がいの姿をもう一度確認して、もう一度グッと手を握りしめ僕は気持ちを引き締めた。
ビルドはちゃんと自分の仕事をしてくれた。だから、ここからは僕の仕事である。
一気に全身の力を振り絞った結果、いまだ思い通りに動いてくれない自分の体を無理やり動かして僕は街のみんなが歓声を上げる街の中心部へと向かうために長いはしごを降り始める。
やった! すごいぞ! これさえあれば勇者さんたちがあのバケモノを倒してくれるぞ!
ホントだ! さすがアリアハンの勇者だ! 万歳! これでロマリアは救われる!
その途中でそんな声が僕の耳に聞こえた。その瞬間、まるでお酒でも飲んだみたいに僕の頭がかっとなった。あらかじめ用意していたポケットの中の原稿を僕はこの瞬間頭の中で破り捨てた。
やっぱり、ビルドのあげた悪い方の予想通りになってしまった。
――じっさい やってみせても たぶん ここの ひとたちは ひとまかせ
――たりきほんがんだと おもうよ ろまりあじん ってのは そういうひとたち みたいだね
――ゆうしゃさまたち が たおして くれる
――むじゃきに そうよろこぶ かれらの すがた が いまから めに うかぶよ
そう言って口元に苦い笑みを浮かべたビルドにそんなことなんてないといったあの時の僕は間違っていた。そう思いながらはしごを降り切った僕は怒りとともに地面をしっかりと踏みしめて駆け足で見張り台へと走った。
――まぁ たぶん そんなかんじに なるからさ
――だからこそ あれる じっさいに しくみを つかったあと が きみの でばんだ
――どんな ほうほう でもいい あらくれさんたち いや ろまりあじんたちの こころに ひを つけろ
――かれらの こころに ひとにぎりの ゆうきを きみが あたえるんだ
――そこが こんかいの しょうぶの ぶんすいれいだ
その言葉を胸に僕は急いで縄ばしごをよじ登る。腕がきしむように痛むけれど今はそんなことはどうでもいい。ちぎれても構わないと悲鳴を上げる両腕に力を込めて一気に縄ばしごを登り切ると、鉱山街の入り口辺りで歓声を上げる鉱山街の人々の姿が見えた。
大きく息を吸い込んで、僕は叫んだ!
それでいいのか!
今、お前たちの声が聞こえたぞ! 勇者たちがあの仕掛けを使ってあの魔物を倒してくれるって。
本当にそれでいいのか? 僕らみたいな遠い遠い異国であるアリアハンから突然やってきた来た旅人である僕らに何から何までお前たちが奪われた大事なものを取り返すこと全てを押し付けて、お前たちロマリア人は本当にそれでいいのか?
僕の大喝に喧騒が嘘みたいにシンとなる。高地の夜の空気が僕の熱くほてる頬にふきつけるが、そんなもので僕の中にあるこの熱い何かが冷めることなんてない。
僕らはちゃんと示したぞ! あのバケモノをやっつける方法を! お前たちの目に見える方法で!
ここで今、はっきりいっておく!
僕たちだけであの巨大なガメゴンを倒すことは不可能だ!!!
なんだって?
そんな……。
勇者がそんなこといってもいいのかよ!?
口々にそんな声が街のあらくれたちからこぼれる。
その情けない姿に僕は煮立った頭のまま、このロマリアに来てからというもの感じていたやり場のなかった怒りをぶちまけていく。
沈まぬ大国ロマリア。栄光の国ロマリア。僕が寝物語に祖父から聞いた北大陸随一の大国は姿はどこにいった!
魔物の手にまんまとはまりその結果ぼろぼろに疲弊した街! それなのに何もかも人任せで立ち上がらない人々! そんな人々を見もしないで馬鹿なことをやる王様!
そんなものか! これがロマリアか! そんな国なら僕らももうできることはない。このまま僕らはこの国を出て魔王バラモスを倒すための旅をつづけるから、あとはお前たちで勝手にすればいい!!
なんだって!?
おれたちを見捨てるのか?
そういって右往左往する街の人々の中に、両手で口元をおさえ何とか悲鳴を上げるのをこらえるマリルさんとその横で目を閉じて両手を組み何かを堪えるように立つマリルさんのお父さんの姿が見えた。
その姿に心に冷たいものが吹き込み、なえそうになる心に再び活を入れ僕は言葉を続ける。
僕は言ったはずだ! あなたたちにあの魔物を倒すための方法を見せるって! 僕は何も僕らだけで戦うなんて一言も言ってないからな!
そんな役回りなんてまっぴらごめんだ! 僕が救わなきゃいけないのはこの世界そのものであって、そのために魔王バラモスを倒すため、僕らは冒険の旅に出たんだ!
その旅の途中でまったく勝ち目のない戦いをしてロマリアのために死ぬなんてこと絶対やらないからな!
何だと、それでもお前勇者か!
恥を知れ! 勇者のくせに!
僕の言葉に反応してあらくれさんたちの荒々しい非難の言葉が返ってくる。僕はこっそりと口元に笑みを浮かべ、彼らのその罵倒をさらに倍返ししてやることにした。
恥をしれだと!
それはお前たちの方だ! 何から何まで僕らに頼りきりで何もしない、やったと思えば余計なことをして自分たちだけじゃなくみんなを危険に巻き込むことしかしない!
そんなやつらが恥をしれだと? よくも言えたな、そんなこと! この恩知らずの腰抜けどもめ! どうやらどいつもこいつもその筋肉だらけの身体はただの見せかけのようだな! すっかすかでみっともない! 全部見せかけの張りぼてじゃないか!
悔しいか! この腰抜けども!
なんだとぉ! 俺の筋肉が飾りだとぉ?
いくら勇者だからって、言っていいことと悪いことがあるぞ!
舐めやがって降りて来い! ぶっとばしてやる!
黙れ!
悔しかったら立ち上がれ! 僕たちと一緒にあの恐ろしい魔物を立ち向かってみろ!
言っただろう? やり方は教えるって! 何も奴と直接剣を交えろなんて僕らはそんなことは言ってない!
言っただろう!
あの化け物は倒せる! 見ただろう、僕の仲間が作ったあの仕掛けの威力を! あれがあればあの化け物だって倒すことは可能なんだよ!
そこに冷たい風がまた吹いて、一旦鉱山街から吹き抜ける風の音以外のが消えた。
そしてしばらくして呟くように小さな声がまた聞こえはじめる。
……でも、あんな恐ろしい化け物、おれたちみたいな普通の人間には。
……俺達はあんたたちみたいな特別な戦う力なんてないんだよ!
違う、大事なのは力じゃない! 再び肚に力を込めて僕は声を絞り出しように叫ぶ。
ちがうな! あんたたちにないのは勇気だ! 怖くても恐ろしくても大事なもののために戦おうとする前に向かう意志だ!
悔しくないのか! 僕みたいなよそ者の若造にここまで言われて! 取り戻そうとは思わないのか! 自分たちの日常と大事な居場所を!
し~んと静まり返る鉱山街。僕も一度大きく息を吸い込んだ。1、2、3とゆっくり数字を数え少し落ち着いた声で再び僕は目の前のロマリアの人々に話しかける。
……今あなたたちに必要なのは一握りの勇気をもって立ち上がること! 戦う意志を見せること!
あなたたちが戦うというのなら! 僕たちは、このアリアハンの勇者アレルは共に戦う誰かを見捨てたりなんて絶対にしない!
約束しよう! あなたたちが立ち上がるというのなら! 僕は、僕らは! 必ずこのロマリア大鉱山に巣くうあのガメゴンを打倒し、ロマリアという国に平和を取り戻すと!
だから! 自分たちの大事なものは、自分たちの手で取り戻せ!!!
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
という野太い大歓声に、僕は自分の仕事を果たせたことを確信し、その場にへたり込んだ。そしてふと気配を感じたので見上げると満面の笑みのフルカスとフォンが僕の肩や背中をバンバン叩いてくる。
見上げるように東の足場を見ると、そこには足場からはみ出すように僕を見ている笑顔のカダルの姿とビルドの手だけがよくやったといわんばかりに親指を立てていた。
やってやる! みてろよぉ!
バカにしやがって! アリアハンの勇者がなんぼのもんじゃ! 俺達あらくれの、いやロマリア人の意地を見せてやる!
ほら、あんたたち! やる気になったあんたたちのために、私が故郷から持ち込んだとっておきの酒を出してやるからさっさと酒場に来な! もたもたしてると飲み損ねても知らないからね!
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 前祝いだぁ! 飲むぞ! 飲んでぶっ倒してやるからな! 魔物めぇ!
そんな声をききながら僕は何とか自分の仕事を果たせたことに満足しながら、さっきのビルドと同じように見張り台の床の上に大の字に寝転んだ。
さて、これからが本番だ。
こうしてロマリア大鉱山を舞台とした決戦の火ぶたが切られたのだった。
今回は賛否両論あるかと思いますが、ノリで押し切ることにしました。
いつも通り誤字脱字報告、感想お待ちしています。
次回は謎の精霊さまによる決戦場の詳細説明です。
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28 決戦! ロマリア鉱山! 10
地竜の月 24日
翌朝。人間一晩立てば大体怒りと勢いは収まってしまうもので。
そんな状態で新しく作ったまだ店主のいない宿屋のベッドで目覚めた僕はいまだに全身に残る筋肉痛と倦怠感に苦しみながら別のものにも苦しんでいた。
あれ僕やっちゃった?
昨日これまでたまりにたまった怒りとか勢いとかに任せて暴言はきすぎちゃった?
ベッドの上でじたばたしながら昨日の自分の言動を【おもいだす】。
――ここで今、はっきりいっておく!
――僕たちだけであの巨大なガメゴンを倒すことは不可能だ!!!
うわぁぁあぁぁぁぁ、事実とはいえかっこわるぅぅぅぅ!!!
仮にも勇者がみんなの前で堂々と言う台詞じゃないよぉぉぉぉ!!!
さらに【おもいだす】。思い出してしまう。
――そんなやつらが恥をしれだと? よくも言えたな、そんなこと! この恩知らずの腰抜けどもめ! どうやらどいつもこいつもその筋肉だらけの身体はただの見せかけのようだな! すっかすかでみっともない! 全部見せかけの張りぼてじゃないか!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 勢いだけで何言っちゃってるの僕ぅぅぅ!! ていうか恥を知るのはお前だよぉ! アレルくぅぅぅん!!!
人はこれを自業自得という。
…………うわぁ。
ベッドにうつぶせに寝そべって伸びたまま思わず声が出た。
…………やっちゃったぁ。本当はもっと穏当な言葉でみんなにお願いする文章を考えていたのになぁ……、そう思いながらも一回やっちゃったものはしかたない。宿屋の部屋に朝の陽ざしがカーテン越しに差し込んでくる。そのまましばらくベッドに座って時間を過ごす。
だってあんなこと言ったら10000%ロマリアの皆さん敵に回したはず。正直僕もどんな顔をしていいのかわからない。
よくて無視……、悪くてリンチ……、最悪は暴動かな……?
とはいえいつまでもここに閉じこもっているわけにはいかない。やることはいっぱいあるし、外に出ていくのはこの上なく気まずいけれど、そろそろこのままここにいつづけるのも限界だった。
……限界だったのは僕の膀胱だったのだけれど。
だがしかしこれは尊厳にかかわる問題である。
まてよ、前にもこんなことがあったような……。毎度、トイレに駆け込む勇者ってどうなの? とまた気持ちが落ち込みそうになるけれど今はそれどころじゃない。事と次第によっては朝一からトイレのためだけにルーラでレーベにトイレに行くことも辞さない覚悟を固めた僕が、そろりそろりと街へと出ると、街は何だか静かでそして閑散としていた。
あれ? 誰もいない?
そう思っておっかなびっくり急ぎ歩きかつ忍び歩きでトイレに駆け込み、何とか無事にピーーを済ませて外に出るとやっぱり静かな街がそこにはあった。
あれ? と思って人の姿を探してみると、東側の段々畑に誰かの姿が。近づいていくと懸命に農作業に勤しむマリルさんとマリルさんのお母さんの姿があった。こっそり近づくとふと顔をあげたマリルさんとばっちり眼が合った。
やべ、怒ってるに違いない。とはいえこう見つめあっちゃってるのに僕はいませんよ~、透明人間ですよ~とはいかず一発ぶっ叩かれることも覚悟しながら僕はマリルさんたちにお、おはようございますとご挨拶をした。
すると。
勇者様!
はじけるような笑顔で段々畑からかけ下りてきたマリルさんが僕の手を取ってこういってきたのだ。
ありがとうございました! 勇者様! 昨夜の勇者様の演説、私感動しました。おかげで目が覚めました! 勇者様に助けてもらうだけじゃなく、私たちが自分たちにできることを精いっぱいやることが大事だってわかったんです! 街のみんなもです! いまみんなはビルド様と一緒に東の坑道にいっています。みんなやる気に満ち溢れていて、生き生きしていて! まるで昔の鉱山街に戻ったみたいで私うれしくて! ありがとうございます! ありがとうございます!
マリルさんにぶんぶん上下に両手を振られながら、僕は何故か勢いだけの昨夜の演説が何故か大成功だったことを知った。しばらく呆気にとられていた僕だったけれど、いつまでも興奮が収まらなかったのかありがとうございます! って連呼しながらぶんぶん手を振るマリルさんと僕との距離がかなり近いことに気が付いた。
どれだけ近いかというと眼鏡越しに見えるキラキラしたマリルさんの瞳に僕の困惑した姿が映っているのが分かるほど近いことに気が付いた僕は急に恥ずかしくなった。そしてちょっと彼女の後ろを見るとあらあらまぁまぁといった風情のマリルさんのお母さん、そして。
まりるさんのおかあさん
どうですか? うちのあれるはああみえてなかなかゆうりょうぶっけんですよ
あらビルド様、うちの娘などでよろしいのでしょうか?
ええ ぼくてきにはこのままふたりをやどやにほうりこもうかとおもうていどにおにあいのふたりかと
その言葉が聞こえたのか、急にわたわたと手を放したマリルさんが振り返ってお母さんにも~~~~と顔を真っ赤にして抗議を始めた。
僕は何だかいつものようにビルドに突っ込む気も起こらず、何故ここにビルドがいるのかを尋ねる。
ビルド、おはよう。坑道にいったって聞いたけど? あと、こんなときにだけスラスラしゃべるなよ。一体全体ど~~なってのさ、君の口は。
僕がぼやくとビルドはこういって僕の質問に応えたのである。
おはよう あれる
さいくつは かれらに まかせてきた から だいじょうぶ
もくひょうの どうの いんごっと 500こ
かれらには がんばって もらわないとね
あと ぼくは きみを からかったり おちょくったり することに いのちを かけている
だから きみを ひゅーひゅー とはやしたてる ためなら げんかいの ひとつや ふたつ いつでも こえてみせるとも!
そのビルドのどうしようもない言葉に、僕は奴の頭に一発どたまにげんこつを落とすことで返すことにしたのであった。
追記
その後、ビルドにあらくれさんたち僕たちに怒ってなかった? とビルドに尋ねたんだけど、ビルドはふっと小さく笑って、否、嗤ってこういった。
だいじょうぶ
はねっかえりが いないわけ じゃなかった けど
ぼくが さいくつしょうぶで だまらせた から
ぜんいん じつりょくさで じめんに はいつくばらせたし
もし また さからってきたら その はんこうしん ごと
こなみじんに はかいして あげるよ
あははははははは あははははははははは!!!
そう言って笑い続けるビルドの姿は確かに姿だけいつものビルドだったんだけど、僕にはビルドの姿をした悪魔にしか見えなかったとだけ、この日記に書き残しておきたい。
何やったのさ、君。
そしてその後、あらくれさんたちがビルドの姿を見るたびに恐怖と畏怖で直立不動のガッチガチになる姿を僕らはこの後しばらく見ることとなる。
ホント、君何やったの? マジで。
誤字脱字、感想お待ちしています。
遅くなって申し訳ない&進まなくて申し訳ない……。
前回宣言したR様の出番は諸事情で後に回します。
そして次回はダイジェスト展開で時間を一気にまわします!
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29 決戦! ロマリア鉱山! 11
水竜の月 1日
……何日ぶりの日記だろうか。一週間? もっと長く感じたけれどようやく怒涛の一週間が終わり、月が地竜の月から水竜の月へと変わったこの日、全ての準備を終えた僕らはついに明日あのガメゴンへと挑む。
正直、今はこれまでの準備のために東奔西走し、くたくたでへとへとだけれど忘れないうちに覚えている範囲で記憶をさかのぼって日記を書いておくことにする。
地竜の月 24日
【青銅のインゴット】500個分の【銅】、【スズ】、そしてそれを生成するための【石炭】。考えるだけで途方もない量になるその素材の採掘をビルドは鉱山街のあらくれさんたちに任せた。
そして僕らはこの日からひたすらその間にそのほか必要な準備に奔走することになる。
まずこの日、僕らはビルドがしばらく前に見つけたという東坑道の地底湖の滝裏へと突入した。
その場の美しさに目を奪われている暇もなくそこに巣くう魔物たちは襲い掛かってきた。【おばけキノコ】や【マタンゴ】、地底湖の住人でありとがった巻き貝を身に着けた【スライムつむり】に、硬い殻と鋭いハサミを持ちそれだけでも厄介なのに放っておくとどんどん増えていく恐ろしい【ぐんたいガ二】、そんなうっとおしい【ぐんたいガ二】を【ホイミ】で回復させてくる青い【ホイミスライム】と姿はそっくりで色が白、触るとマヒする【しびれくらげ】、極め付きはへらへら笑いながら【ふしぎなおどり】を踊ってこちらのMPを削ってくる【わらいぶくろ】と硬いよろいに身を包んだ鎧騎士の亡霊【さまようよろい】などなど。
そんな数も種類も多種多様で厄介きわまる魔物どもをちぎっては投げちぎっては投げしながら、そして当然魔物からもそざいを回収し、途中で休憩も挟みつつ僕らはどんどん奥へと進んでいった。
回収できた主な素材は、既出の【わたげ草】【ツタの実】、【光るツタの実】に加え、はしごのようにも使える【つた】、【シルク草】という新しい布が作れそうな素材に、【黒い染料】、【青い染料】、【緑の染料】などの染料と呼ばれるものに色を付けることができる素材、他にもぐんたいガ二が落とす【カニの爪】、わらいぶくろの落とす【まどわしそう】など新しい素材が他にもいっぱい。
素材がいっぱいでホクホクのビルドをよそにどこまで続くのか分からない地底湖を隅から隅まで探索しつくした僕らがその最奥で見つけたのは青い水の中に沈む崩れて遺跡だった。
明らかに現代の様式ではない、今の世界の文明とは異質な文明が残したであろう装飾が目を引くその遺跡とその光景は、地下を照らすヒカリ苔の光を受け青々と輝く水の中でひどく幻想的なものだった。
……そんな不思議な景色に僕らがしばし見とれていると止める間もなくビルドが水へと飛びこんでいた。
飛びこんだビルドは透き通った水の中で何か調べるかのように遺跡の壁をさわったり、水の中でおおかなづちを振るったりするも遺跡は不思議な力に守られており、石でできているように見える扉があったのだけどその中にも入れなかった。
やがて息が続かなくなったのだろう、浮かび上がってきたビルドを叱ろうとするも、その時のビルドの顔は今まで見たこともない悲しそうな顔で。
しばらく水面を見つめていたビルドは体を振るって水をまき散らした後、いつものビルドに戻っており、リレミトで僕らは地上に戻った。
ちなみに、この間、即席の小屋を作って食事と休憩をすること何と三回。外に出た時には既に二日が経過していた。その日はそのままベッドに直行した僕ら。
その日、僕はあんなに疲れていたのに夢をみた、気がする。
その夢の中で、遠いいつか、僕はあんな不思議な造りの建物を、見ていた気が、したのだ。
地竜の月 27日
この日、前日までに手に入れた素材を使って装備の大幅な更新が、ビルドの手によって行われた。
その結果、僕らの装備はこうなった。
あれる Eせいどうのつるぎ
Eみかわしのふく
Eせいどうのたて
Eブロンズキャップ
ふるかす Eせいどうのたいけん
Eせいどうのよろい
Eなし(どうぐぶくろにせいどうのおおたて)
Eブロンズキャップ
ふぉん Eブロンズフィスト
Eみかわしのふく
なし
Eはねぼうし
かだる Eせいどうのやり
Eみかわしのふく
Eせいどうのたて
Eブロンズキャップ
びるど Eせいどうのつるぎ
Eみかわしのふく
Eせいどうのたて
Eブロンズキャップ
ひと目でわかるように、今回一番変わったのが、【みかわしのふく】である。この服、何がすごいかって服なのに防御力が【せいどうのよろい】と変わらない上に、何故か敵の攻撃をかわしやすくなる効果と、走るとき移動速度が少しだけ早くなる効果があるすぐれものであった。
ちなみに、使用した素材は【わたげ草】三個、【シルク草】二個、【まどわしそう】一個、そして【緑の染料】である。
さらにビルドは新しい飲み物を発明した。【発酵ダル】に【ツタの実】を入れて【ルビーラ】なる新しい飲み物を作りだしたのだ。
それに群がる鉱山での重労働につかれた荒くれたちで街はこの日から空前のルビーラフィーバー。あらくれさんたちのやる気にさらなる火が入り、翌日以降の鉱物採掘量が増えることになった。
それだけでも素晴らしい効果をもたらした【ルビーラ】だけど、それ以外にも意外な効果が。これを飲むと走るときに疲れにくくなるのだ。
これには僕らもニッコリ。当然作戦へと組み入れた。
但し、困った副作用が。疲れにくくなる効果が切れるたびに次々飲むとトイレの問題がね……。
ちなみにこの時点での素材の回収率は、20%に満たない。若干ビルドがイライラし始めたのはこの辺りである。
さて、装備を更新した僕らは以前から見ないふりをして棚上げしていたことに挑む決意をする。その為にいったんルーラでアリアハンに帰還し、アリアハンの街を南に1時間ほど歩くとそこにいたのは、王冠をかぶったひときわ巨大なスライム、【キングスライム】の姿があった。
実はこの【キングスライム】。ビルドと出会ってしばらくして見つけていたのだが、当時遠目に見て明らかに格上の空気を放っており挑むのはためらわれた。それでも好奇心には勝てず軽くちょっかいを出しては見たものの、あっさりとかえりうちにあい命からがら逃げだした経緯がある。
そんな忘れていたかった強敵だが、ビルドに今回の作戦には僕ら自身のれべるあっぷ? が言われ、一念発起しリベンジにやってきたのだ。
岬から海を眺める【キングスライム】にこっそり後ろから近づく。すでに僕らはこの直前に攻撃力を高める【ステーキ】、ぐんたいガ二の素材で作れるようになった防御力を高める【ゆでがに】、そしてスタミナアップの【ルビーラ】を飲んで準備万端。
それでも前回の苦い経験を忘れられず、じわりじわりできれば不意打ちをと思い近づくが、あと少しのところでまるですべてお見通しだというかのように振り向く【キングスライム】。その顔にはニヤリという笑いがあった。
そして意を決して飛びこんだフォンの一撃によって戦闘の火ぶたは切られた。
強敵! 【キングスライム】 が あらわれた!
この後、とんでもないタフネスを発揮した【キングスライム】との戦いは数時間に及ぶ死闘を経てついに僕らの勝利という形で決着した。
最後にニヤリと笑って溶けるように消えていく【キングスライム】。奴はこの岬で海の向こうに何を見ていたのだろうか……。
そんな強敵を倒した結果得られたのは、何に使えるかわからない【スライムの王冠】と【スライムピアスのレシピ】なるアイテムを作るためのレシピだった。
ビルドがやたらとやったーと喜んでいたけどいったいなんだったんだろうと、この時激闘に疲れ果てて地面に寝そべっていた僕はそんな風に思ったのであった。
追記 この【スライムピアス】、誰でも装備できるうえ装備するだけで防御力が結構上がるすぐれものだった。但し作るためにスライムの落とす素材で今までなぜか手に入らなかった【スライムゼリー】なる素材を手にいれるため、再びスライムの虐殺をする羽目になったフォンとカダルには正直同情を禁じ得ない。
さらに悪いことに、この【スライムゼリー】。めったに落ちない素材らしく必要な個数集めるのに大変に苦労した。当然入手難易度に比例して倒すスライムの数が増えるために二人の表情は完全に死んでいた。
そして次の日の朝日が昇るまで、アリアハンの大地からスライムたちとついでに巻き込まれたいっかくうさぎたちの断末魔の叫びが途切れることはなかったのである。
南無。
誤字脱字、感想お待ちしています。
ダイジェスト展開っていったのに、箇条書きの予定が……。
何とか次で終わらせて、R様の解説+あの日の夜に何を話していたのかを書いて、決戦へ行きたいなと思っています。
なかなか思い通りにいかないなぁ!
あ、みかわしの服の素材はオリ要素かなり入れました。
ビルダーズ2ならもう少し簡単に作れますよ!
追伸 現在、私の生活環境が激変しまして落ち着くまでまとまって時間(よりも文章を書く集中力)が取れそうにありません。
落ち着きましたら、おそらく前以上に余暇が生まれると思いますので再開しますのでお待ちの方おられましたら、それまでしばしお待ちいただけると幸いです。
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30 決戦! ロマリア鉱山! 12
地竜の月 28日
キングスライムという強敵との戦いとその後のスライム狩りの後、疲れ果てた僕らは海を眼下に望むアリアハン岬で【たき火】を囲んで一夜を過ごした。いつもの通りまるで疲れを見せないビルドがさくっと【木のブロック】で囲いだけ作り、そこで手を止めた。何故と思った僕にビルドが空に向かって指をさす。そこには雲一つない美しい星空が。
しばし疲れを忘れ夜空を眺めていた僕らだったけど、そこにビルドがたき火で【焼き魚】を焼き上げてみんなに配った。あつあつのうちに頬張る。そのおいしいことと言ったら。すこしだけだよ、といって出してくれた【バブル麦汁】を飲みながら疲れているのに、僕たちのバカ騒ぎは夜遅くまで終わらなかった。そんな久しぶりの仲間だけの夜、最後はとりとめのない話をしながら地面に【わらベッド】を並べて僕らは眠りについた。
そんな良い夜が明けて、そして あさがきた!
早朝、陽がロマリアの東の山々の間からのぞき始めたそんな頃、ルーラで鉱山街に帰ってきた僕らとビルド。
空から降り立った僕ら。そこにちょうど通りがかりのマリルさんに話しかけその五分後、ビルドが激怒した。
それはもう激怒した。
理由はこの時点で目標の30%という全然進捗しない素材の回収のためである。
そしてゆらりと嫌になめらかな動きでおおかなづちを肩に担いでビルドが向かったのは、僕らも寝泊まりしているあらくれたちのねぐらである。
おきろ ごらぁぁぁぁぁぁぁ!!
ものすごい汚い言葉とともに放たれたさくれつハンマーによってせっかく自分で作ったあらくれのねぐらに風穴を開けるビルド。その結果、哀れあらくれさんたちは冷え込みが激しい早朝の鉱山街で正座をさせられる羽目になったのである。
どこからともなく(というかふくろからなんだけど)取りだした【古びた木箱】に片膝を立てて座るビルドとその前に正座で並ぶ荒くれさんたち。
いつも通りのニコニコ顔のビルドだけど目が一切笑っていない。
それにしても客観的に見るとこの光景、童顔で子供みたいなビルドに正座させられているたくさんのムキムキ筋肉の荒くれさんたちって、すごい絵だな。おい。
以下その後のやり取りをここに記す。
まずものすごくドスのきいた声でビルドが荒くれさんたちに尋ねた。
で なんで こんな おそいの? はい じゃあ じょゔぁんにさん
ヒィ! ビ、ビルド君! おいらたち一生懸命頑張ってるんだぞ! 全速全開でやってるんだぞ!
ありえない
ぼくのみつもりじゃ きみたちが ほんとうに ぜんりょくなら もうもくひょうの 60%は いかないと おかしい
こっちは ちゃんと しょにちに みんなの さぎょうを みて そこから よていを くんでるんだから
ひぃ! なんでそんなことが分かるんだな! あの時ビルド君、自分も採掘していたし坑道の整備もしてたし誰よりも働いていたのに!
ぼくは こと つくることと こわすことにかけては せかいじゅうの だれにも まけない じしんがある
だから そんなの じぶんの さぎょうのあいまに ちらっとみれば わかるんだよ!
(ここでビルド、木箱から降りておおかなづちで地面をたたく。あらくれさんたち、正座のまま少し地面から浮く)
ヒィィ!!
いいか! おまえら! きょうから ぼくらも さぎょうに さんかする!
だから さっさと さぎょうを おわらせるぞ!
そのビルドの言葉に、え? っと思わず声が出た。聞いてないよ、と思ったけれど、じと目で僕を見るビルドに何も言えなくなる。
そしてビルドがここで投下した爆弾によって、翌日以降に阿鼻叫喚の大騒動が巻き起こることになるのである。
もし きょう きみたちが がんばったら ひとつ きみたちの おねがいを きいてあげる
う~ん そうだな …… ばにー なんて どうかな?
その言葉を聞いた荒くれさんたちは一拍置いて大歓声とともに立ち上がり血走った目をしながら猛ダッシュで鉱山へと消えていった。
さて ぼくたちも いこうか?
そう言って笑うビルドにひきつった笑みで返す僕ら。
そしてビルドはおもむろにフォンに近づいてその肩を叩いた。
ふぉん さくせんすいこう のためだ
もちろん きょうりょく してくれるよね?
次の瞬間、早朝の鉱山街にフォンの切り裂く様な悲鳴が響いたことはいうまでもない。
誤字脱字・感想お待ちしてます。
なかなか進まない……。
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30 続き
そしてその日の夜。真新しい店構えの鉱山街の酒場は生まれて間もなくのこの時、前代未聞、空前絶後、ものすごい盛り上がりを見せていた。
理由は。
フォンちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!! いや、素敵な素敵なバニーさぁぁぁぁん! ルビーラおかわりぃぃ!! いや~~、旨い! 今日の酒はうまいぞぉぉ!!
くっ! 私を殺せ! 今すぐにぃ!
あれあれ~、バニーさん、殺せとか汚い言葉はバニーさん言わないはずだよぉ~?
あ~~~もうわかったわよ! ハイ! ヨロコンデ~~!!
あ~、フォンちゃんの脚線美サイコー! 網タイツがまたエロイのなんのって! そこのとっても素敵なバニー姿のバーテンダーさん、ルビーラおかわりぃ!!
はいはい、ちょっと待ってね。フォンちゃん次はこれお願いね。
ハイ! ヨロコンデ~~!!
いや~、あの地獄みたいなノルマでも人間やる気になれば達成できるもんなんなんだなぁ。よ~し、明日からも頑張るぞぉ!! バニーさん、バブル麦汁おかわりぃ!
はいはい いま もって いきます よぉ
ちがうんだよ、ビルドの親方ぁ!! 親方じゃないんだよぉ!! 俺が持ってきてほしいのは女の子のバニーさんなんだよぉ!!
む せっかく ぼくが ばにーさんに なっているのに なんのふまんが あるの?
不満しかないわぁ! アホぉぉぉぉぉぉ!!
ぎゃはははははははははは!!
カオス。
ただただカオス。
店内はもう超満員。そんな中にうさ耳がぴょんと伸びたバニースーツ姿の人間が三人いた。一人はオーソドックスな黒いバニースーツに身を包み、さっきから次から次へひっきりなしにオーダーが飛び交う店内をひきつりきった笑顔のまま行ったり来たりしている我らが勇者パーティの紅一点、フォンである。その鍛え上げられた健康的な肢体はすらりとしていて、特に網タイツに包まれた脚線美の美しさは男どもの視線を釘づけにしていた。
二人目が成熟した大人の色気と体を赤いバニースーツに包んだバーのマスター、アイーダさんだ。バイーン、ムチーン、ボキュ、ボイーンという謎の擬音が聞こえてくるようだ。イヤ、僕の隣でカダルが壊れたように小声で繰り返していた。そんなエロバカカダルの鼻からは鼻血をたらしながら目線が彼女に釘づけである。正直僕はエロ過ぎて直視できません!
……チラ見が限界だよ。……ていうかね、谷間がね、すごいのよ。アリアハンの田舎にはあんなけしからん物はなかった! でもアイーダさんはアリアハン出身だ! やばい、メタパ二喰らったか僕?
最後に白いバニースーツを着てしれっと料理をしながら働いているビルドである。
男がバニースーツ着るんじゃねぇ!
そんなカオスな夜はどんどん更けていく。喧騒と騒ぎがピークになったころ、その日のメインイベントが恥ずかしそうにやってきた。
あ、あの、み、みんな、あと、ゆうしゃさまたちも!
これで、バニーさんというのは、よろしいのでしょうか? あの私、フォンさんたちだけにこのような格好をさせるのは忍びなくて、でもこんな肌がいっぱい見える格好生まれて初めてで……。ていうか、似合いませんよね? 私なんて……。
そこにはピンクと白のコントラストもかわいらしい眼鏡のバニーさんが顔を真っ赤にして立っておられた。
その後、男どものテンションが振り切れたのは言うまでもない。
追記 マリルさんは着やせするタイプだったんだなぁ……、とアルコールでぼんやりした頭で僕は思いました まる
いや、諸々すみません。
とりあえず次が書けたらこれは30の最後に編集で付け足します。
あと、書くのが遅れています。生活リズムの確立がなかなか……。
人生ってままなりませんね(謝罪)
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31 決戦! ロマリア鉱山! 13
地竜の月 29日
そうして狂乱の夜が明けた。あらくれさんたちは二日酔いの頭を抱えながらも昨夜バーで過ごした夢のような時間を糧にやる気全開で今日も東の坑道へと向かっていった。
人間という生き物は、いや訂正しよう、目の前にかわいかったりエロかったりする女の子をぶら下げた男という生き物は本当に恐ろしい。目の前に人参を吊られた馬よろしく、彼らは昨日本当によく働きこの時点での作業達成率は何と驚きの70%であった。僕ら、特にあらゆる作業に八面六臂の活躍をしたビルドという要因があったとはいえ、たった昨日半日で工程の40%を達成するという偉業を彼らは成し遂げたのである。
そして昨日のペースを考えると僕たちが作業に参加しなくても大丈夫だろうと、ビルドが判断したため僕らは一丸となって今日の作業へと向かう彼らの背中を見送ったのだ。
ぽっかり空いたこの時間であるが、もちろんやるべきことは残っている。今回の勝負の要であるカダルが、あの呪文を本当に使えるようになっているのか。そしてビルドが話してくれた理論やあの深夜に行われた非道の結果を試しに僕らは再び東坑道へと足を踏み入れることにしたのである。
ちなみに、メンバーはこの通り。
せんし ゆうしゃ ばにー びるだー そうりょ
である。
大事なことなのでもう一回。
せんし ゆうしゃ ばにー びるだー そうりょ
である。
原因はビルドのこの一言。
ふぉん ちなみに その ばにーすーつ いっしき
みかわしのふく より ぼうぎょ たかい からね
その言葉を聞いたフォンは泣いた。そりゃあもう泣いた。地面にうずくまり嗚咽を堪えながら泣きたおした。バニースーツのまま。そしてヤケクソになった結果がこれである。目のやりどころに困るので決戦までには着替えてほしいような、そうじゃないような……。
まぁ、カダルがやけにやる気になっているからいいかな? なんといっても今回の育ち過ぎたガメゴン討伐の主役は、勇者の僕じゃなく、怪力無双である戦士のフルカスでもなく、見事な脚線美を網タイツに包んだバニーさんもとい我らが紅一点の武道家のフォンでもなく、ビルダーのビルドと、そのビルドの手によって怪しい改造手術を受けた、現在緊張で顔が真っ白、体がガチガチ状態の僧侶のカダルなのだから。
なんたってカダル、今日今までずっとまるでさまようよろいみたいに動きがガチガチなんだもの。見ているこっちが笑ってしまう。
そんな頼りない今日の主役を引き連れて、そのまま地底湖の奥へと踏み込んだ僕らはしばらく青白く輝く地下の道をどんどん降りていき、少し広場になっているところにたどり着いた。その場所は地底湖の他の場所に比べてずいぶんと拓けた砂浜にあたる場所で、そんな砂浜を僕らを代表して無造作に歩きビルドは青々と広がる水面へと足を踏み入れ、そしてすぐに引き返してきた。何故かって? それは水面の底をひと目見ればわかる。だってそこには大量の赤と緑の魔物の姿が。
つまり――
ぐんたいがに たちが あらわれた!
じごくのハサミ たちが あらわれた!
まもののむれ が あらわれた!
――こういうことである。
案外素早い横歩きで浜へと押し寄せてくるカニの魔物の大群に、カダルは緊張した面持ちで、僧侶が本来となえられないはずの呪文を唱えた。
――ル、ル、ルカナン!
広域の敵の防御力を下げる効果を持つ呪文であるルカナンによる濃い青紫のヴェールがカニの大群を包み込み、それを見たフルカス、フォンがたがいに向き合って驚きの表情を見せた後、カダルの顔を振り返り、ブルブルと顔を振るった後、ようやく気を取り直し魔物の群れに突貫した。
硬い殻が柔らかくなったカニなどどれだけの数がいようとも今の僕らにはただの雑魚である。
金属のように硬いはずの殻がフルカスのせいどうの大剣による打ち下ろしの一閃で面白いように二つに裂ける。続いてフルカスが力任せに大剣を横に振るうと一体のぐんたいガ二でその一撃は止まらず、そのまま硬いはずの二体目のぐんたいガ二の甲羅に深々と突き刺さりそのまま二体のぐんたいガ二を倒してしまった。
一方のフォンも負けてはいない。バニー姿のまま跳躍すると柔らかくなったカニの甲羅を踏みつけ、砕き、そしてその反動を利用してまるで本当にウサギさんかのよう(意味深)にぐんたいガ二や地獄のハサミを倒していった。
その時のフォンの表情と言ったら……、本当に楽しげでやけっぱちでそれでいて最高に解放感にあふれていて、あぁ昨日の一連の出来事でのストレスをここで一気に晴らしているんだなと確信させるに十分なものであった。
正直、シュール過ぎて怖かった。だって幻想的な地底湖で大量の赤や緑のカニの魔物を満面の笑みで踏みつけ続けるバニーガールだよ?
そんな風に以前この地底湖に潜った時にあんなに苦労したぐんたいガ二たちがまるで嘘のように蹴散らされていく光景を見ながら、それをやってのけたカダルは呆けたように目の前の光景と自分の手を見つめていた。その後ろに自信満々のどや顔をしているビルドの姿が。
ほら いったでしょ? できるって
そういって呪文の常識を破壊した僕たちのビルダーは未だに自分のやったことが信じられないカダルの目の前で勢いよく手を打ち合わせた。
パァンという音が空間に反響する。そしてカダルの意識が現実へと戻ってきたのを確認したビルドは、今日の本来の目的を果たすためカダルにこういったのである。
ほら いつまでも ぼーとしてないで
るかなん なんて ぐうぜんの ふくさんぶつ は どうでもいいから
ほんめいの じゅもん となえてよ
そして既にずいぶんと数を減らしていたけれどいまだ健在だったカニの群れにカダルは今回の要の呪文を唱えたのであった。
――ボミオス、と。
それから僕とビルドも参戦してまるで動きが遅くなったカニの群れを片付けるまでそれほど時間はかからなかった。
それから何度か明日以降の動き方などを確認し、僕らがリレミトで帰って来た時には既に外は真っ暗で、そして町の広場では万歳三唱しながら僕らの帰りを待っていた鉱山街の人々の姿が。
その様子にビルドはニッコリして早速そろった材料をものすごい勢いで加工し始める。あっという間に小山のように詰み上がる今回の決戦場の材料を見ながら、僕はようやくあのガメゴンへと挑む時が来たことを確信するのであった。
あの夜、ビルドはこういった。
あの そだちすぎた でかい がめごん は
ものすごくでっかい せいどうせいの はんまーを つかって ぶったおす
やつが とおりがかった ところに ふりこのような はんまーを なんども くらわせて やるんだ
あの けいばじょうみたいな ちかこうどうの ちけいを さいだいげん りようすれば しょうきは じゅんぶんに ある
だって かめは うしろへは あるけない あんな でかい かめにとっては あのつうろの とちゅうじゃ ほうこうてんかんも ままならない
もんだいは はんまーには おっきなせいどうきゅう を つくるんだけど
まちがいなく いっぱつじゃ あのでかぶつは たおせない
そして いっぱつあてたら まちがいなく こわれる
だから たくさん せいどうきゅう を よういして やるひつようと あてるたびに あたらしいのに つけかえる ひつようがある
だから こんかいは やくわりぶんたんが じゅうようだ
まず ふるかす きみは まきあげきの たんとう だよ
じまんのかいりきで ぼくが あいずしたら きょうりょくしてくれる あらくれさんたちと いっしょに ちからのかぎり はんまーを うえへとあげてくれ
つぎに ぼくは とうぜん したで はんまーを つけなおす かかりだ ぼくいがいに だれがやるんだっていうんだよ これ
そして さいごに あれる ふぉん そして かだる
きみたちさんにんは あの そだちすぎた がめごん の あしもとで ちゅういを ひいて そして にげまわってもらう やくわりを おねがいする
まるで けいばで にげる にげうまの ようにね?
つまり僕ら三人は、あの巨大な育ち過ぎたガメゴンと命がけの追いかけっこをしなければならないということなのであった。
うっわ~~、今になって体が震えてきたぁ~~。初めてこの計画を聞いた時も思ったけど、ビルド狂ってるわ~~。
発想がおかしいんだよ!
誤字脱字、感想お待ちしてます。
というわけで次は久々にR様による今回の決戦場紹介です。
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閑話 謎の大地の精霊『R』によるビルダーズ講座⑦ ロマリア鉱山編④ 実況! ロマリア大鉱山!!
みんなのアイドルの登場だぁ!!
……ホント色々ごめんなさい(土下寝)
さて皆さん、お久しぶりです(小声)。
皆さんお待ちかねの謎の大地の精霊Rです(小声)。
今回はいつもとやり方を変えまして、現在【ロマリア鉱山の決戦場】を建設中のアレルたち一行の作業をこっそりと実況中継したいと思います(小声)。
なお、あまり大きな声を出しますとあの忌まわしい建築バカにばれてしまう恐れがありますので、今回はこのように小声でお送りしたいと思います(小声)。
さて、あのビルダーバカがいつものように途方もない設計図を敷き終える前に前提条件から参ります。
まずはロマリア大坑道の俯瞰図から。
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次に側面図です。黒い■が壁や地面だと考えてください。
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あ、そうこう説明しているうちにビルドの奴が設計図を書くために空中に躍り上がりやがりました(小声)!!
あっという間に完成した設計図に、アレルたち勇者一行も鉱山街の皆も驚きが隠せません(小声)!
そしてお待ちかねの設計図はこうなっていました(小声)!
順を追って説明いたします。
まずは俯瞰図からいきましょう。
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まず左側通路の天井部にロマリア鉱山の西坑道の【ゴンドラ】用に使われていた【鉄のブロック】を用いて同じくゴンドラなどに使用されていた【鉄の鎖】をぶら下げる台を設置するようですぅ!
さらに左側通路の下の部分に巻き上げ機を設置する足場を確保ぉ!
側面図で見ると分かりやすいでしょう。
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■□□□□□□□●□□○○○◆□■
■□□□□□□□●□○□■■■■■
■□□□□□□□◎○□□□□□□■
■□□□□□□□□□□□□□□□■
■□□□□□□□□□□□□□□□■
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このような形で中央の■■■に鎖をぶら下げ、■■■■の足場に設置した巻き上げ機で鎖を斜めに上に引っ張り上げるつもりのようです!
つまりこうなります!
青銅球の先端部が◎で、鎖が●。巻き上げ用の鎖が○で、その鎖を巻き上げる巻き上げ機が◆となります。
これに育ち過ぎたガメゴンを加えてみますとぉ(大声)!
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■□□□□□□□●□□○○○◆□■
■□□□□□□□●□○□■■■■■
■□□□□□□▲◎○□□□□□□■
■□□□▲▲□▲□□□□□□□□■
■□□▲▲▲▲▲□□□□□□□□■
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こうなります(大声)!!
いやぁ……、何て単純かつ効率的で、頭が悪い仕掛けでしょうか(かなりの大声)!!
と私が説明している間にも、やる気に満ち溢れた人々がどんどん設計図を完成させていきます(すんごい大声)!
主な仕掛けは先ほど説明したとおりですが、それ以外の細かなところにも手を抜かないのがビルド流です!
青銅球の付け替えの時に効率よく上に上がるための壁面に作った階段や、付け替えや巻き上げまでの時間を稼ぐために逃げることになるアレルたちのための隠れ場所などがそこら中に作られていっております(すんごい大声)!!
さて、これらを踏まえて今回の戦いのやり方はこうだぁ!!
① ガメゴンを誘導して俯瞰図の上から右側通路におびき寄せる。
② ガメゴンに向かって青銅球をぶつける。
③ 怒り狂ったガメゴンを、囮のアレルたちが右側の通路に誘導し追いかけっこをしている間に青銅球を取り付け、巻き上げ機で鎖を巻き上げる。
④ 一周してガメゴンを誘導し、青銅球をぶつける。
⑤ ガメゴンをやっつけるまで②~④を繰り返す。
以上となっております(すっごい大声)!!!!
いや~、なんて壮大かつ力技でスマートさのかけらもない仕掛けなんでしょうか。考えたやつの気がしれません! バカです!! 断言します、奴はただの建築バカなのです(力説)!!
……さて、その設計図を書いた建築バカですが何故でしょう? すんごい物調面で、あとすんごいじと目で、何故か何もないはずの天井方向、つまりこちらを睨んでいるのでしょうか(超小声)?
……さて、ビルド選手、何故かおお木づちを手に持ち、竜巻を思わせるフォームで、こちらに背を向けておおきづちを振りかぶって、ひっさつのぉ、
ちょう ぐるぐる はんまー!
……投げたぁ(超大声)!!!! ってやばいっ(小声で叫ぶ)!
アイダぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(絶叫)!!!!
……。
…………。
………………。
……というわけで、現場より実況兼解説の、謎の大地の精霊Rがお送りしました。
追記 ビルドが突然またおかしな行動、つまり作業を放りだしていきなりなにもないはずの天井に向かっておおきづちをぶん投げるという奇行をしていたので、どうしてなのかを聞いたら心底(僕じゃない)誰かを蔑んだ顔と口調で、
ちょうどきゅうの ばかが ちょうどきゅうの ばかやってたから せいさい しておいた
そして僕の顔をまじまじと見て哀れそうにため息をひとつついてこういったのである。
……あれる も くろう するね
ほんとうに いつまでも
そういってビルドはやれやれと肩をすくめて作業へと戻っていった。
……いったい何だったの? いや、説明してよビルドと追いすがったけれどビルドにはぐらかされ、なんとなく釈然としないものをかかえながら僕はその日の作業を終えたのだった。
それにしてもどこからか聞こえたあの声はなんだったんだろう?
声が何故かひどく興奮していたからよくわかんなかったけれど、何故かとっても胸が締め付けられるような……、そんな気分になっちゃったよ。
誤字脱字、感想お待ちしております。
今回は物語的な面白さよりも、戦闘の推移を分かりやすくすることを優先しましたのでこういう仕様となりました。
賛否両論あるかと思いますが、今回はこの形で行こうかと思います。
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32 決戦! ロマリア鉱山! 14
まるで日の差さない深い深い谷底を思わせるロマリア大坑道のそそり立つ壁面。そこに並ぶ【壁かけたいまつ】がそこに造られた様々な仕掛けや集まった人々の顔を照らしていた。
様々な仕掛けといったが、中でも目を引くのは坑道の天井からぶら下げられ中空に留まっている巨大な鉄球、もとい青銅の塊であり、ぽつぽつとだが整然とならぶ並ぶ【壁かけたいまつ】の炎により、その影を地面まで伸ばしていた。
そしてそれを作ったであろう人々の姿は通路を見下すように張り出した高台にあった。疲れ果て肩を息をしながらも、彼らの顔にはやり遂げた達成感があった。
地下深い空間にしばし静寂が――と思ったが、その中で一つだけ動き回る影があった。子どものように小柄で、とがった金髪をした男の子だけが元気いっぱいに動き回っていたのだ。
疲れ果てた人々にどこからか取りだした【きれいな水】を取りだして飲ませたり、同じくどこからか取りだした【パン】や【焼きキノコ】を食べさせたりまでならともかく、足場の奥を【おおかなづち】を取りだして掘りだしてそれによってできたスペースに【木のベッド】を並べて、地面に寝そべっていた人々をベッドに寝かせていた。
それから外では日が昇り、そして陽が落ちるくらいの時間が経った後、再び人々――アリアハンの勇者一行とロマリア鉱山のあらくれたちは動き出した。
「せ~の!」
「おっいしょぉ!!」
「せ~の!」
「おっいしょぉ!!」
掛け声とともにギギギという音とともに今まで中空にただぶら下がっていた青銅球が、少しづつ斜めに動き始めやがてその動きを止めた。
うぉぉぉぉ!! という歓声がまた地下に響き渡り、抱き合ったりハイタッチしたりしてひとしきり喜んだあと、全員の顔に覚悟の表情が浮かんだ。
これで準備は本当に完了である。ここにいるのは覚悟を決めた力自慢のあらくれ男たちと、戦士一人を除いて【みかわしのふく】に身を包んだ勇者一行。
互いに頷きあって戦士ひとりを高台を残して勇者たちは階段を下へと降りる。とがった黒髪の精悍な少年、淡いブロンドの髪の緊張している少年、とがったまばゆい金色の髪の子どものように小柄な少年に、ぴょんと伸びたウサギの耳をその黒髪の上につけたすらりとした少女の四人がたいまつが照らす戦場へと降り立った。
「じゃあ、始めようか」
そうとがった黒髪の少年――勇者アレルが傍らに立っていたとがったまばゆい金色の髪の子どものように小柄な少年――ビルドに促すと彼は小さく頷いておもむろに手に持った【おおかなづち】を壁際に埋まった【鉄の鉱脈】に振り下ろした。
ギィィイィィン! という甲高い音が坑道に響き渡り、しばし。
大量の水が吹きあがる轟音に続いて、坑道に今再び巨獣の絶叫が響き渡る。
地面が揺れ、やがて奴は姿を現した。
三階建ての大きな建物がすっぽり入ってもまだ余裕があるほど高く広い
坑道を埋め尽くす、亀の甲羅を背負った巨体から伸びる長い長い首の先にある頭は鋭い牙が並び太い角がそびえ立つ竜のそれ。ギロリとひらかれた瞳が遥か眼下のちっぽけな挑戦者たちを睨みつけ、威嚇するようにいらだちを吐き出すようにもう一度大きく吠えた。
GYAAOOOOOOOON!!!
ロマリア大坑道に巣くう魔物
育ち過ぎたガメゴン が あらわれた!!!
さぁ、勇者たちよ。リベンジの時だ。眼前の巨大な魔物を打ち倒せ。
ズズン、ズズンと大きな音を立ててガメゴンが前進を始める。その度に坑道ごと地面が揺れ、淡いブロンドの髪のひどく緊張している少年――僧侶のカダルがゴクリとのどを鳴らした。
その背中を勢いよくぴょんと伸びたウサギの耳をその黒髪の上につけたすらりとした少女――武闘家のフォンが叩いた。
「何するんだよ!」
「こっちの台詞よ。あんた、今さら緊張しててどうすんのよ」
文句を言うカダルだったが、半眼のフォンにバカにされたように言われてぶすっとした顔になりそして表情を引き締めた。
その様子をやれやれと横目で見ていたアレルといつの間にか戻ってきたビルドは、近づいてくるガメゴンとの距離を測りながら今か今かとその時を待っていた。そして地面に【黒い染料】でひかれた線にガメゴンの体がたどり着いたその瞬間、アレルが「今だ!」と叫んだ瞬間、ビルドが手に持っていた【せいどうの銅鑼】が打ち鳴らされる。
次の瞬間、ものすごい勢いで坑道の空間を押しつぶすように巨大な青銅の塊が走りそのままの勢いでガメゴンの竜の頭にものすごい轟音とともに直撃した。砕け散る大青銅球。がその威力は確かにガメゴンへと無視の出来ないダメージを与えた。
思わず高台から身を乗り出して下を見たあらくれたちの目に飛び込んできたのはズズーンという音ともにガメゴンの長い長い首が地面に投げ出された姿。そのことにはじめ信じられないような表情を(マスクの上から)浮かべていたあらくれたちだったが、やがて彼らの口から抑えきれない言葉にならない言葉が零れて合わさり大歓声が坑道に響いた。それは坑道を占拠され、街を壊され、何とか立ち直り、そしてこの場所で一度心を完全に折られた荒くれたちの魂の叫びだった。
そんな声が響く中、ガメゴンの前にいた勇者たちの様子は、アレルはその光景にいけると拳を握りしめ、ビルドはいつの間にか地面に掘った穴の中に隠れ、フォンはトントンと足の調子を確かめるようにステップを踏んで、カダルは俺はやれる俺はやれると自分に言い聞かせていた。
やがてむくりと鎌首をもたげて起き上がるガメゴンは、その高台にも届きそうな頭をふらりふらりとさせながら体を起こし、その眼に確かな怒りを込めて怪物は進撃を始めた。何が何だか分からないが自分を傷つけた矮小な存在を踏みつぶしてやる。そんな意思を込めたガメゴンの進撃に対し、アレル、フォン、カダルの三人は一斉に【ルビーラ】を飲み干し、て、勇者一行らしく勇ましく雄々しく戦いを挑む
――と見せかけてケツをまくって逃げ出した!
その身体をカダルの【ピオリム】の呪文で強化して。こうして人間と生きている砦級の生き物の生死をかけた追いかけっこの幕は上がったのである。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
というわけでガメゴン戦開始です。
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