双子島の影人形 (小匣めもり)
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プロローグ

皆さんこんにちは、今回が自身初のネット投稿になります。小匣めもりと申します。本作は人狼ゲームをベースとした小説となっていますが、オリジナル設定が多めだという理由もあり、初心者でもそうでなくても、誰が見ても分かりやすいようなルールブックも用意しているので、身構えずに見て行ってくれると嬉しいです。また、サイドストーリーや過去ストーリーもたくさん用意しているので、お楽しみ要素も満杯です!それでは前書きはこのくらいにして、小説「双子島の影人形」スタートです!



数ヶ月前、東京

 

 

 

人の足音、車のエンジン音、工事現場の音。その日も様々な音が街中をこだましている。いつもと変わらない日常がそこにはあった。

 

 

そんな音たちが飛び交うこの街のどこかから、賑やかな会話が聞こえてくる…

 

 

 

 

 

~とある大通り~

 

 

 

 

3人の女子中学生が会話を弾ませ、ご機嫌な足取りで通りを歩いている。

 

 

 

「やー、ホンッットに緊張したよ……」

 

 

「うちもだよー、滅多に行くとこじゃないからね。ガラにもないことしちゃったって感じ…」

 

 

「私も~、終始ドキドキしちゃってたし…。まぁでも、無事に手に入れられて良かったよね!」

 

 

「うんうん!無事が一番だよ!あー、でもちょっと疲れちゃったなぁ…、なんかやりきった気分だ(笑)」

 

 

「もー、気持ちは分かるけど、これからが大事でしょ?**ちゃん!」

 

 

「そうだよ!本番は今日じゃなくて明日なんだからさ!」

 

 

「分かってるよ~!明日、明日ね……。あいつ一体、どんな顔するんだろ…」

 

 

「それは…、明日になってのお楽しみかな~♪」

 

 

「うん。そうだね!色んな顔が想像できちゃって、なんだか楽しいなぁ♪」

 

 

「あーあ、ホント待ち遠しいや!早く明日が来ないかなぁ…」

 

 

「ね!私も明日がすっごく楽しみっ!」

 

 

 

 

「本番」を明日に控えた彼女たちの気持ちは舞い上がり、3人は家に向かって歩く足を少し早めた。そうすれば明日が早くやって来る気がして…。

 

 

 

 

 

 

 

でも、それがいけなかったのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

明日への期待を胸に足を早めた彼女らが、まさに横断歩道を渡りきろうとしていたその時、あの事件は起こったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!2人とも、危ないっ!!!」

 

 

「えっ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカドカッ

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の出来事だった。彼女たちのもとに、1台の車が勢いよく突っ込んできた。さっきまで生き生きとしていた3人の体は人形のように宙を舞い、激しく地面に叩きつけられた。突然の出来事に、辺りは騒然としていた。

 

 

 

 

 

 

それから、少し経ってのことだった。

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

 

 

 

3人を跳ねた車の運転席のドアが静かに開き、中からその車の運転手と思われる人物が降りてきた。その人物は30代から40代くらいと見て取れる、素朴な服を身に纏った中肉中背の女だった。女は騒ぎなど、気にもとめない様子でゆっくりと3人に近づき、彼女らが倒れている場所の手前で足を止めた。そしてそのまま女は何も言わず、倒れたまま動かない3人を虚ろな目で眺めていた。

 

 

 

 

 

奇妙な光景だった。

 

 

 

 

 

 

しかし、その光景は長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 

突然、女はしゃがみ込み、震える声でこう言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれもこれも全部、あなたのせいだからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日から、私たちの時間は止まったままだ。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!これから始まる人狼ゲームでは、40人もの生徒が登場しますが、時間をかけてでもいいので、全員覚えて下さると嬉しいです。また、当小説の人狼ゲームは、フィールド全体を使って展開されて行くので、実際にゲームに参加しているかのような臨場感を存分に味わえると思います!また、前書きでも述べたように、かなりオリジナルな設定が多いので、他の人狼系小説とは違った楽しみ方もできる作品となっております。時間とアイデアをたくさん使って制作した物語ですので、最後までゆっくりして行って下さいね!


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第1章 始まりと写真
第1話 双子島学園の新入生


皆さんこんにちは、めもりです。プロローグ投稿から期間が開いてしまいましたが、1話らしい1話が(多分)書けたと思うので、今日もまた、ゆっくりして行ってください!


バラバラバラバラバラ

 

 

僕はヘリコプターの中から、新たに始まる学校生活に期待を寄せつつ、下一面に広がる真っ青な海を眺めていた。

 

 

今日、3月31日は僕たち新入生が島に移動する日だ。というのも僕らが通うことになった双子島学園は、本島からかなり離れた双子島という島の中にあるため、ここに通う生徒は全員、校内にある寮で生活をするという決まりがあるのだ。

また、今日は入学式を明日に控えた僕たち生徒全員に、先生から教室での集合の呼び掛けがされているのである。指定された12時まではまだ時間ある。小春たちは遅れずに到着できるだろうか…?

 

 

おっといけない、自己紹介を忘れていた。僕の名前は高穂経介(たかほきょうすけ)、赤茶色の髪の毛をした、どこにでもいる普通の新高校1年生だ。右目が緑、左目が青のオッドアイなことを除けば、だ。そして今言った小春というのは、僕の幼なじみである硯小春(すずりこはる)のことだ。ヘリコプターでの迎えは各生徒に1台ずつであるため、遅れずに搭乗できているのかは分からないのだ。因みに生徒全員と言っても、双子島学園は創設1年目の新設の高校で、第1学年しかいないのに加えて1学年40人の1クラスなため、大した人数ではないのである。

 

 

しばらくして、今の状況説明を終えて満足していた僕に、このヘリコプターの操縦士さんがこう伝えてきた。

 

 

 

操縦士「着きましたよ!」

 

 

経介「あっ、ホントですか!ありがとうございます!」

 

 

 

そうこうしている間にヘリコプターは無事、目的地であった双子島へと到着したらしい。僕は広々とした港に降り立った後、操縦士さんに軽く礼をして、本島に戻って行くヘリコプターを見送った。

 

 

見送りを終えた後、辺りを見渡すと僕以外にも制服を着た人物がちらほらと見受けられた。そこに僕の知っている人の姿は無かったが、僕の頬を撫でる心地よい潮風と見知らぬ生徒の姿が、新たな学園生活の幕開けを告げているようで、僕はとても楽しい気分になった。僕はあらかじめ送られてきていた島の見取り図を見ながら、学校に向けてせっせと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくの間歩き続け、銭湯や図書館を過ぎた辺りでようやく目的地である学校の校舎が見えてきた。僕は嬉しくなって校舎にある教室まで小走りをした。1階にある教室の前に着いても、気持ちのせいか不思議と疲れはなかった。このドアを開いた瞬間、僕の学校生活は始まるんだ。どんなことが起きるのかな?どんな出会いがあるのかな?僕は胸の高鳴りを感じるままに、教室のドアを勢いよく引いた。

 

 

 

ガラララッ

 

 

 

明「お、また一人来たな、こんにちは!」

 

 

彩「こんにちは!」

 

 

経介「あ、こんにちは!」

 

 

 

教室に入ると先生と思われる2人が僕に挨拶をしてきた。2人ともとても若々しい。

 

 

 

「よっ!」

 

 

経介「うわっ!!」

 

 

 

突然、1人の生徒が経介に話しかけてきた。

 

 

 

小春「久しぶり!」

 

 

経介「なーんだ、小春かぁ…久しぶり!」

 

 

小春「びっくりした?」

 

 

経介「うん、まぁ、かなり…」

 

 

小春「してやったり~♪」

 

 

経介「やー、やられたね。まぁでも、無事に到着できたみたいで安心したよ。小春は時間にルーズだからね」

 

 

小春「ややや、流石にこれは……ね(笑)」

 

 

 

ガラララッ

 

 

 

再び教室のドアが開いて、1人の生徒が入ってきた

 

 

 

明「また来た、こんにちは!」

 

 

彩「こんにちは~!」

 

 

桜「あっ、こんにちは!」

 

 

経介「あ!」

 

 

小春「あ!」

 

 

 

新しく入ってきたその人物に、2人は見覚えがあった。

 

 

 

経介「桜~!」

 

 

小春「桜ちゃん!」

 

 

桜「あ!きょーちゃん!小春ちゃん!久しぶり~!元気にしてた?」

 

 

 

彼女の名前は淀屋桜(よどやさくら)、薄い青色のロングヘアで左側に青色のリボンを付けている。彼女も小春と同じように僕の幼なじみである。また、その小春は対照的に薄い緑色の少し長めのボブで右側に緑色のリボンを付けている。

 

 

 

小春「元気してたよ~!桜ちゃんも元気そうだね!」

 

 

桜「うんうん、元気だよ!」

 

 

経介「今日から高校生だからね、こんな日に元気じゃなきゃ勿体ないよね!」

 

 

小春「ね!」

 

 

桜「だね!」

 

 

小春「それにしてももう高校生か~、時の流れって早いねぇ」

 

 

経介「わかる。ついこの間まで2人ともこんなに小さかったのに…」

 

 

桜「きょーちゃんだってそうじゃん!それにきょーちゃん昔はさぁ~」

 

 

 

そんなこんなで話は盛り上がり、僕はしばらくの間2人と談笑を続けた。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

突然、教室にチャイムが鳴り響いた。

 

 

 

彩「あ、もう12時ですね」

 

 

明「早いもんだな……よし、みんな席に着け!」

 

 

経介「じゃ、また後で!」

 

 

小春&桜「うん!」

 

 

 

ガタガタガタッ

 

 

 

先生の合図で3人を含む生徒全員はそれぞれに用意された席に座った。

 

 

 

彩「みんなちゃんと揃ってますね!」

 

 

明「よし、じゃあみんな改めてこんにちは!」

 

 

「こんにちは~」

 

 

明「まずは長時間の移動お疲れ様!そして双子島学園へようこそ!オレは担任の延山明(のべやまあきら)、誕生日は3月9日、血液型はA型、好きな食べ物はパフェ、嫌いな食べ物はゴーヤだ、よろしく!!」

 

 

彩「えーっと、副担任の後藤彩(ごとうあや)です!誕生日は2月21日、血液型はA型で、好きな食べ物はケーキ、嫌いなものは虫全般です!よろしくね!」

 

 

経介(流れるような自己紹介だな…(笑))

 

 

明「さて、今日みんなにここに集まってもらったのは他でもない!早速だが今日はみんなに自己紹介をしてもらうぞ!」

 

 

「ええ~!?」

 

 

彩「入学式は明日だからね~、特にすることもないし。島に移動するだけじゃ面白くないでしょ?」

 

 

明「そうと決まればやるぞ~!相沢から順番に前に来てやってってくれ!名前と誕生日と血液型は必須で、あと1つはみんなに任せる!」

 

 

凉太「うっ、オレからか…、まぁ出席番号1番の宿命だよな…」

 

 

 

そう言うと1人目の生徒が前に立ち、僕らの個性的な自己紹介が始まった。(ここからは席と教卓間の移動シーンは省きます)

 

 

 

凉太「えー、相沢凉太(あいざわりょうた)って言います。誕生日は7月6日、血液型はO型、生まれ変わったら猫になって芝生の上でゴロゴロしたいです。よろしくお願いしま~す」

 

 

経介(かわいいな…)

 

 

 

泰斗「飯野泰斗(いいのたいと)って言います!誕生日は3月25日、血液型はA型、趣味はサイクリングです。よろしくお願いします!」

 

 

 

友輝「岡成友輝(おかなりともき)って言いまーす。誕生日は9月1日、血液型はO型、親子丼が好きです。すっごいバカです。よろしくお願いします~」

 

 

 

太一「釧路太一(くしろたいち)って言います!誕生日は8月26日、血液型はB型、ロックとか楽しい雰囲気が好きです。よろしくお願いします!」

 

 

友輝「ピアスしてんじゃん、不良かよ~」

 

 

太一「お洒落だよ!不良じゃないんで勘違いしないで下さい!!」

 

 

 

冷音「木陰冷音(こかげれおん)だ。誕生日は7月23日、血液型はO型、猫が好きだ。」

 

 

凉太「お、猫いいね!」

 

 

冷音「あ?」

 

 

友輝(不良こっちだ…)

 

 

 

舞人「小牧舞人(こまきまいと)って言います!誕生日は5月18日、血液型はB型、自然と戯れるのが好きです。よろしくお願いします!」

 

 

 

航「朱谷航(しゅたにこう)です。誕生日は10月19日、血液型はB型です」

 

 

友輝「なんでマフラーなんかしてんだ?」

 

 

航「や、なんか落ち着くから1年中やってる」

 

 

経介(1年中?!)

 

 

航「嫌いな食べ物はカレーうどんです。よろしく」

 

 

経介(絶対飛び散るからだ…)

 

 

 

晴「澄川晴(すみかわはる)です。星を眺めるのが好きです。よろしくお願いします」

 

 

友輝「誕生日…」

 

 

晴「あ、誕生日は7月9日です。よろしくお願いします」

 

 

舞人「血液型も忘れてるぞ~」

 

 

晴「あ、血液型はAB型です。よろしくお願いします」

 

 

太一(天然なのね…)

 

 

 

碧「添田碧(そえだあおい)って言いま~す!誕生日は4月29日で血液型はA型です!甘いものが好きなんで、たくさん恵んで下さい!よろしくお願いしま~す!」

 

 

泰斗(明るい奴だな~)

 

 

 

経介「えっと、高穂経介(たかほきょうすけ)です!誕生日は1月5日、血液型はA型です。白いご飯が好きです。よろしくお願いします!」

 

 

 

恵「玉川恵(たまがわけい)です。誕生日は2月28日で血液型はA型です。好きな季節は秋で、人をからかうのが好きです。よろしく!」

 

 

 

有悟「担城有悟(になしろゆうご)って言います!誕生日は6月17日!血液型はA型です!家は内科です!好きな内臓は肝臓です!何卒よろしくお願いします!!」

 

 

碧「好きな内臓ってなんだよ~(笑)」

 

 

有悟「内科っぽくていいだろう!!」

 

 

 

恒也「日野恒也(ひのこうや)って言います!」

 

 

小春「あれ、日野恒也ってもしかして」

 

 

碧「うお、日野本物じゃん、すげー!!」

 

 

恒也「役者やってました!誕生日は5月4日、血液型はA型です!恋愛小説が好きです!今芸能界から退いてるんで、ずっと憧れてた学園生活を送るのがとても楽しみです!壁とか感じずにどんどん話しかけて下さい!よろしくお願いします!!」

 

 

経介(凄い人もいるなぁ…)

 

 

 

蓮「えー、宿井蓮(やどいれん)って言います!誕生日は11月10日で血液型はB型です!日野の後で印象薄いと思いますけどスポーツ大好きなんで誰かと語り合いたいです!でも水泳は苦手です!よろしくお願いします!」

 

 

晴(僕も水泳苦手だなぁ~)

 

 

 

明「よーし、男子全員終わったな!みんないい自己紹介だったぞ!この調子で次!女子行こー!!」

 

 

 

怜菜「朝香怜菜(あさかれいな)です。誕生日は2月13日で血液型はB型です。豚まんが好きです。人付き合いが下手です。よろしくお願いします」

 

 

碧「豚まん美味しいよな~!」

 

 

怜菜「あ…、はい」

 

 

友輝(ホントに人付き合い下手そ…)

 

 

 

響香「泡瀬響香(あわせきょうか)って言います。誕生日は3月2日で血液型はA型。ピアノ演奏聴くのが好きです。よろしくお願いします」

 

 

太一「ピアノもいいよな~」

 

 

 

唯「沖鳥唯(おきどりゆい)って言います!誕生日は9月29日で血液型はAB型、大福餅が好きです!よろしくお願いします!」

 

 

碧「明るくていいな~!」

 

 

唯「ありがとう!」

 

ニコッ

 

友輝(かわええ……)

 

 

 

暦「おっ、おけ、おけおけおけ桶がっ、桶川こっ、暦…です…」

 

 

舞人「落ち着け落ち着け(笑)」

 

 

暦「おっ、桶川暦(おけがわこよみ)…です…。誕生日はじゅっ、12月28日で、血液型はびびっB型…です…すいません…。」

 

 

泰斗「謝んなくてもいいだろ~(笑)」

 

 

暦「えと…、マッキーの匂いが好きです…」

 

 

碧「マッキーて!」

 

 

恵(面白そ♪)

 

 

暦「よっ、よろしくお願いします…」

 

 

 

縁「檻鶴縁(おりづるゆかり)です!誕生日は6月16日で血液型はA型です!」

 

 

友輝(しっかりしてそうな人だな~、上品な感じだ)

 

 

縁「意外って言われるんですけど、特技は金魚すくいです!よろしくお願いします!」

 

 

友輝「意外!!!」

 

 

 

銘「んしょっ…と」

 

 

経介(あ、この人車椅子だ…)

 

 

銘「えー、加古川銘(かこがわめい)って言います!誕生日は4月30日で血液型はA型です!私は生まれながらに歩けないし心臓も弱いですが、勉強とゲームなら誰にも負けない自信があります!よろしくお願いします!」

 

 

凉太「お、今度オレと勝負しようぜ~!」

 

 

銘「分かりました!」

 

 

怜菜(人付き合い上手そうでいいな…)

 

 

 

理央「えーっと、枷田理央(かせだりお)って言います!誕生日は5月7日で血液型はO型です!水泳めっちゃ得意なんで、蓮君に教えてあげたいです!よろしくお願いします!」

 

 

蓮「まじか!お願いしちゃおうかな…(笑)」

 

 

 

柚季「神薙柚季(かんなぎゆずき)です!誕生日は11月19日で、血液型は見ての通りA型です!兄の影響で花がとても好きです!よろしくお願いします!」

 

 

舞人「花もいいよな~!」

 

 

柚季「いいですよ!」

 

 

 

穂乃香「木陰穂乃香(こかげほのか)って言います!」

 

 

碧「あれ、木陰ってまさか…?」

 

 

冷音「……」

 

 

穂乃香「あ、お察しの通りそこに座っているお兄ちゃんと双子の兄妹です!誕生日は7月23日、血液型はO型です!好きなものは苺とお兄ちゃんです!」

 

 

碧「まじか!!」

 

 

冷音「……」

 

 

碧「……おい、ニヤけてるぞ」

 

 

冷音「……う、うるせぇ!!」

 

 

碧「ツンデレだ~(笑笑)」

 

 

穂乃香「よろしくお願いしま~す!」

 

 

 

白夜「木暮白夜(こぐれさよ)って言います!誕生日は12月14日で、血液型はA型です!趣味は読書です!よろしくお願いします!」

 

 

碧「小さいね~!身長いくつ?」

 

 

白夜「150.0です!」

 

 

碧「おぉ~!なんかおめでとう…?」

 

 

白夜「ありがとうございます…?」

 

 

 

初「あー、小越初(こごえうい)です」

 

 

碧「あれ、白夜ちゃんより小さくない?!」

 

 

初「うるせー!」

 

 

友輝「子供みたいだな~、身長いくつよ」

 

 

初「は、子供じゃねぇし!身長は…147.2」

 

 

経介(言っちゃ悪いがかなり小さいな…)

 

 

初「誕生日は5月5日で」

 

 

友輝「子供じゃん!!!」

 

 

初「偶然だよ!ぐーぜん!!」

 

 

恵(この子も面白そ…♪)

 

 

初「えーっと、血液型はB型で、好きなものはグミです。よろしくお願いします~」

 

 

友輝「アメ好き人参嫌いとかじゃねーのか」

 

 

初「お前いい加減にしろよ~!!」←アメ好き人参嫌い

 

 

 

青葉「栄青葉(さかえあおは)って言います!誕生日は10月31日で血液型はO型です!歌うのが好きです!よろしくお願いします~!」

 

 

響香(聴いてみたい…!)

 

 

 

風里「あ…、鰆居風里(さわらいふうり)です。誕生日は1月23日です。血液型はO型です…、多分。」

 

 

穂乃香(ふわふわしてるなぁ…)

 

 

泰斗(蝶とか好きそ…)

 

 

風里「虫が好きです。よろしくお願いします~」

 

 

泰斗(虫だった……(笑))

 

 

 

真琴「四宮真琴(しのみやまこと)です。えー、誕生日は3月6日で血液型はA型。暑いのと寒いのが苦手って感じなんで、よろしくお願いします~」

 

 

太一(ピアスしてる…)

 

 

縁「……」

 

 

 

瞳「知石瞳(しれいしひとみ)です!誕生日は8月11日で、血液型はA型です!こまめに掃除しないと気が済まない性分です。勉強は苦手です……(笑)よろしくお願いします!」

 

 

 

小春「硯小春(すずりこはる)です!誕生日は11月6日で、血液型はO型です!趣味は映画鑑賞で、苦手なものは勉強とピーマンです(笑)よろしくお願いします!」

 

 

経介(小春かわいい…)

 

 

初「ピーマン食えねーのか~、子供だな~」

 

 

友輝「いや、お前の方が子供だぞ」

 

 

初「うっせ~チビ!!」

 

 

友輝(なんだろう、全然傷付かない)←157.3cm

 

 

 

秋子「瀬戸秋子(せとあきこ)って言います!誕生日は9月18日で、血液型はA型です!走るのがめっちゃ好きです!勉強は苦手ですが、そこのバカよりは賢い自信あります!よろしくお願いします!」

 

 

友輝「秋子にだけは負けんぞ!!」

 

 

秋子「次のテストで勝負な!!」

 

 

 

茜「常磐茜(ときわあかね)です!誕生日は10月10日で、血液型はO型です!宝物はパパに貰ったテープ式のビデオカメラです!よろしくお願いします!」

 

 

碧「それくわえてるの何?まさか煙草?」

 

 

茜「あ、いえ!これはココアシガレットです!ホントはパパと同じく煙草が良かったんですけど、お前はまだ子供だし体に悪いからココアシガレットにしとけって…」

 

 

碧「お父さん大好きなんだね~♪」

 

 

茜「はい!あ、でもライターはお父さんと一緒です!」

 

 

碧「ライターいる?!」

 

 

 

美咲「えと、等野美咲(などのみさき)って言います!誕生日は1月19日で、血液型はA型です!好きな食べ物はお餅です!関西弁が抑えられやんので気にせんとって下さい……(笑)」

 

 

友輝(関西弁女子いいね!)

 

 

 

千優「西木千優(にしのきちゆ)です。誕生日は6月24日で、血液型はA型です。ホラー映画と血が苦手です……、よろしくお願いします」

 

 

舞人(大人しそうな子だな~)

 

 

 

祥子「姫野祥子(ひめのしょうこ)と申します!誕生日は2月8日で血液型はB型です!好きな飲み物は紅茶です!勉学の方は少し苦手です…。よろしくお願い致します!」

 

 

有悟「礼儀正しいな!いいね!!」

 

 

 

雪紀「双葉雪紀(ふたばゆき)です!誕生日は12月14日で血液型はA型です!好きな食べ物はクレープです!よろしくお願いします!」

 

 

碧「その赤いベレー帽かわいいね!似合ってるよ!」

 

 

雪紀「ホントですか!嬉しいです!」

 

 

 

和奏「百園和奏(ももぞのわかな)です!誕生日は8月1日で血液型はO型です!趣味は漫画喫茶に通うことです!クラシックも好きです!よろしくお願いします!」

 

 

響香(クラシックいいよね~)

 

 

太一(クラシックもいいんだよな~)

 

 

 

桜「淀屋桜(よどやさくら)です!誕生日は11月17日で、血液型はA型です!好きな食べ物はメロンパンで、苦手なものは蟻と雷です(笑)よろしくお願いします!」

 

 

美咲(メロンパンもええよね……!)

 

 

 

菜華「凜堂菜華(りんどうなばな)です。誕生日は2月12日で、血液型はAB型です。好きな飲み物はコーヒーです。極度の機械音痴です。よろしくお願いします!」

 

 

碧「え~、意外!眼鏡してるし機械も得意そうなのに!」

 

 

恵(ばななの機械音痴レベルはヤバいからな~(笑))

 

 

 

梢「厘伶梢(りんりょうこずえ)って言います。誕生日は3月24日で、血液型はAB型です。趣味はバードウォッチングです。よろしくお願いします!」

 

 

友輝「髪の毛で目見えねーけどちゃんと前見えてる?」

 

 

梢「見えてます!視力も両目2.0なんで前どころか遠くまでバッチリ見えます~」

 

 

美咲(ジャングルかどっかで育ったんかな……)

 

 

 

明「ハハハッ、みんな面白い自己紹介だったなぁ!」

 

 

彩「個性的でとっても良かったですね~!」

 

 

明「よしよし、みんなお疲れ様だ!これでお互いのことをよーく知れただろう!今日はもうこれで終わりだが、最後に連絡が一つある!明日の8:30から入学式と大事なお知らせがあるから、10分前までに体育館に入っておくこと!分かったな!」

 

 

秋子「大事なお知らせって~?」

 

 

明「それは明日になってからのお楽しみだ!だから今日はもう自由にしていいぞ!」

 

 

彩「寮棟の部屋の中に校内見取り図とその部屋の鍵が置いてあるので、まずは自分の部屋に行ってみたらどうですか?部屋の扉に名前が書いてありますから、きちんと自分の名前が書かれた部屋に入ってくださいね~!あ、男子が1階で女子が2階ですよ!」

 

 

明「部屋の鍵は無くしてもスペアがあるから無くした奴はオレのとこに来いよ!まぁ、無くしたら鍵に部屋の番号が振ってあるから見つけた奴に自由に出入りされちまうけどな~(笑)」

 

 

彩「要するに無くさない方がいいってことです!」

 

 

明「ってことで!今日はここで…」

 

 

 

明が解散を呼び掛けようとした、そのときだった。

 

 

 

理央「わー!待って待って!まだ解散しないで~!」

 

 

明「なんだ、どうした?枷田」

 

 

理央「折角だし、クラス写真撮ろうよ!入学前の初々しい感じのさ!」

 

 

碧「おぉ~!それは名案だな~!」

 

 

秋子「いいねいいね!!」

 

 

明「なるほどな!そこまで考えられてなかったぜ…、オレもまだまだだな!でもいい案じゃないか!そうと決まれば早速、みんなで撮るぞ~!!」

 

 

真琴「うぇ~、まじかよ」

 

 

理央「はい!先生。これ私のスマホ!」

 

 

明「え!オレが撮るの?!」

 

 

理央「うん!」

 

 

明「ちぇ~っ、でもまぁいいか。よーし、みんな黒板の前に集まれ~!」

 

 

彩「はいみんな集まって~!」

 

 

明「ん、なんだこれ、電源どーやってつけるんだ?」

 

 

理央「先生もスマホでしょ!しっかりして!」

 

 

明「おぉ、ついたついた、じゃあ行くぞ~!」

 

 

理央「みんなピースして!!」

 

 

恒也「学生って感じでいいね!!」

 

 

明「行くぞ!!ハイ、チーズ!!」

 

 

 

パシャッ

 

 

 

先生の合図と共にカメラのシャッターが切られた

 

 

 

この島のことを何も知らない純粋な笑顔の映える、素敵な写真だった。そして僕ら全員が写った最初で最後の写真だった。

 

 

 

明「明日は8:30までに体育館集合だからな!それじゃあ今度こそ、かいさーん!!」

 

 

 

僕は解散の合図を受けて、寮棟にある自分の部屋へと向かった。僕の部屋は中央階段の隣の部屋だった。

 

 

 

僕は自分の部屋に着くと、長時間移動の疲れが今更やってきたのか、少しベッドで横になったつもりが、すぐに眠りに落ちてしまった。

 

 

 

こうして、僕の楽しい楽しい学園生活が幕を開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かの様に見えた。

 

 

 

 

 

 

僕は、みんなはこの時、何も知らなかったんだ。先生の言う大事なお知らせとは何かを。この双子島学園が、どのような目的で作られたものなのかを……。




まずはここまでのご精読ありがとうございました!いよいよ次回から、ゲームがスタートしそうですね!できるだけ早く次話も投稿したいと考えていますが、また期間が開いてしまう可能性もあるので、気長に待って下さると嬉しいです……(笑)


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第2話 学園の隠し事

当小説の閲覧ありがとうございます、めもりです。前回の後書きにて、今回からゲームが始まりそうだと言いましたが、予定通りに話を進めると今回の話があまりにも長くなってしまうことが分かったため、ゲーム開始の少し前で第2話を終える形としたことを理解していただけると嬉しいです。それでは第2話「学園の隠し事」スタートです!


チュンチュン

 

 

 

経介「ん……」

 

 

 

小鳥のさえずりが聞こえる。窓から差し込んだ日の光が、彼に朝の訪れを告げていた。

 

 

 

経介「あれ、もう朝か……」

 

 

 

経介はそう言うとベッドの上で一つ、伸びをした。

 

 

 

経介「そっか、僕は昨日疲れてベッドで横になって、そのままずっと寝ちゃってたんだな……」

 

 

 

ふと、部屋にある掛け時計に目をやると、時計の針は7時50分を指していた。

 

 

 

経介「いけね、8時30分から入学式があるんだった!早く朝ごはん済まさなきゃ!」

 

 

 

経介は立て掛けてあった鏡の前で身だしなみを整え、寮棟1階にある食堂へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

食堂の扉を開けると、ほとんどの生徒がそこに集まっていたようで、とても賑やかな雰囲気が漂っていた。

 

 

 

泰斗「お、高穂じゃねぇか!おはよう!こっち来いよ、一緒に食べようぜ!」

 

 

有悟「おはよう高穂君、こっちの席が空いているぞ!」

 

 

経介「あ、飯野くん、担城くん、おはよう!」

 

 

泰斗「朝ご飯まだだろ?あっちで注文できるぞ~!」

 

 

経介「あっ、本当?ありがとう!」

 

 

 

僕は飯野くんに食堂の仕組みを教わり、注文した焼き魚定食を持って2人の待つ席に戻った。

 

 

 

経介「お待たせ!」

 

 

泰斗「お!来た来た」

 

 

有悟「高穂君は焼き魚定食にしたのか!そう言えば白米が好きと言っていたな」

 

 

経介「あ、覚えてくれてたんだ…!そういう担城くんはサンドウィッチなんだね!」

 

 

有悟「あぁ、オレは朝はパンと決めているからな!」

 

 

泰斗「オレは特にこだわりはねぇかな~…、ま、そんなことはどうでもいいんだ。さっさと食おうぜ、入学式に遅れちまう!」

 

 

経介「そうだったね!」

 

 

有悟「遅刻するのはいけないな、早めに食べ終わらなくては!それでは、いただきます!」

 

 

2人「いただきま~す」

 

 

 

僕らはそう言うと、少し急いで朝食を取り始めた。

 

 

 

経介「ん!この魚美味しい!」

 

 

有悟「このサンドウィッチも美味しいぞ!トマトやチーズ、ピーマンの彩りも美しいな!」

 

 

経介(ここのご飯美味しいなぁ…。あ、そう言えば小春たちはもう食堂にいるのかな?まだ寝てなきゃいいけど…)

 

 

 

僕は確認のため、辺りの席を軽く見回してみた。

すると、少し離れたテーブルで食事を取っている2人の姿が見えた。

 

 

 

経介(あ、2人ともちゃんと起きてるな。って、あれっ?小春が食べてるのってもしかして…)

 

 

 

小春「う"っ!!」

 

 

桜「わっ!びっくりした…、どうしたの?小春ちゃん。この世の終わりみたいな顔してるけど……」

 

 

小春「このサンドウィッチ、ピーマン入ってる……」

 

 

桜「あ~…(笑)」

 

 

小春「こんなもの栽培する人の気が知れないよ、全く!」

 

 

 

経介(…あっちも元気そうだな(笑))

 

 

泰斗「あ、やべ、もう15分じゃん」

 

 

有悟「本当か!食べ終わったならそろそろ移動を始めた方が良さそうだな!」

 

 

経介「そうだね、じゃあ移動しよっか!」

 

 

 

そんなこんなで僕ら3人は朝食を終え、入学式が行われる体育館へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~体育館~

 

 

 

経介「っと、間に合ったかな……?」

 

 

有悟「恐らく大丈夫だろう。体育館は食堂からそう遠くはないからな!」

 

 

泰斗「それに、体育館に来てる生徒もまだ少ないみたいだしな」

 

 

経介「だね!ありがとう!」

 

 

 

僕らが体育館に着くと、前の方に40人分のパイプ椅子が5×8列で並べられており、何人かの生徒が既に席に着いていた。また、体育館には10人ほどの教師の姿があったが、明先生の姿は見当たらなかった。

 

 

 

彩「飯野くん、高穂くん、担城くん、おはよう!」

 

 

経介「彩先生!おはようございます!」

 

 

2人「おはようございます!」

 

 

彩「はい、おはよう!そろそろ入学式が始まるから、あっちの席に出席番号順で座っておいてね!」

 

 

有悟「了解しました!」

 

 

 

僕らは彩先生の指示に従い、指定された席に座って入学式が始まるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、生徒全員が体育館に集まった。

時刻は8時30分。ちょうど入学式の開始予定時刻だ。

僕はそわそわしながら、入学式が始まるのを待った…。

 

 

 

すると、彩先生がマイクを持って立ち上がり、僕らに向かってこう告げた。

 

 

 

彩「これから双子島学園の入学式を行います!」

 

 

経介(始まった…!)

 

 

彩「まず、学園長の挨拶です。学園長、延山先生。お願いします!」

 

 

明「はい」

 

 

青葉「え、延山って…!」

 

 

凉太「あの人学園長だったのか~(笑)」

 

 

 

僕らが驚きを隠せずざわつく中、舞台袖からマイクと一冊の本を持った明先生が現れた。

 

 

 

明「えー、改めまして新入生の皆さんどうも、学園長の延山です」

 

 

美咲(なんか、似合わんなぁ…)

 

 

明「いきなりですが、君らに入学記念品として銀のリングをプレゼントしたいと思います。彩先生、お願いします」

 

 

彩「はい!」

 

 

真琴「銀のリング?何それ、ちょーオシャレじゃん!」

 

 

経介(変わってるなぁ…)

 

 

彩「それじゃあ今から銀のリングを配るから、もらったら首につけていってね!それがこの学園の生徒証明道具になるから!」

 

 

響香「これが証明道具になるの?変なの…」

 

 

理央「でも響香こんな感じの装飾品好きそう!」

 

 

響香「…まぁ、嫌いじゃないよ(笑)」

 

 

梢「先生、一つ余りました」

 

 

彩「あっ、ごめんね!」

 

 

 

そんなこんなで僕らは配られた銀のリングを首につけた。

 

 

 

明「よし、みんな身につけたな!それでは改めて40名の生徒のみんな、入学おめでとう!今日から君らは晴れてこの学園の生徒だ!」

 

 

彩「おめでとう!」

 

 

教師たち「おめでとう!」

 

 

明「我々教師一同は君らの入学を心から歓迎するぞ!」

 

 

 

ここまで、僕はとても気分が良かった。新しい、楽しい学校生活の幕開けを身に沁みて感じることができたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、僕らが今日、ここに集められた本当の理由は「入学式を行うから」なんて単純なものじゃなかったんだ。

 

 

 

明先生がおかしなことを言い始めたのは、この辺りからだった。

 

 

 

明「さて、君らは今、この瞬間からこの学園の生徒となったわけだが…」

 

 

航(だが…?)

 

 

明「今日から君らには、あるゲームをしてもらう!」

 

 

銘(ゲーム!)

 

 

秋子「ゲーム?何それ!楽しそう~♪」

 

 

明「…楽しそう。か。まぁ、今そう思えるのは無理もないかも知れないが、実際に楽しめる奴はいたとしてもごく少数だけだろうな…」

 

 

秋子「?」

 

 

明「…遠回しに言っても仕方がないから、単刀直入に言わせてもらうぞ」

 

 

 

経介「…?」

 

 

 

一瞬、先生の表情が曇った気がした。

 

 

 

 

 

明「…今日から君らにやってもらうゲームは、君らの生き残りをかけた、サバイバルゲームだ」

 

 

 

 

 

初「…は?」

 

 

友輝「え、今生き残りとか言ったか?」

 

 

泰斗「いや、オレもそう聞こえたけどまさか…な」

 

 

 

明「いいや、聞き間違いじゃねぇぞ。君らには今日からサバイバル、いや、殺人ゲームをしてもらうんだ」

 

 

 

太一「いや…、ハハッ、流石に冗談きついっすよ先生~(笑)」

 

 

和奏「そうですよ!冗談でも言っていいことと悪いことがありますよ!」

 

 

 

明「釧路、百瀬。…冗談なんかじゃねぇよ」

 

 

 

菜華「先生、そろそろ本当のこと言ってください。いい加減怒りますよ?」

 

 

 

明「…まぁ、君らがオレの話を冗談に捉えるのも無理はない。だがオレは嘘はついていない。」

 

 

 

先生の目は、本気だった。

 

 

 

明「…彩先生、アレの用意をお願いします」

 

 

彩「分かりました」

 

 

 

そう言うと彩先生は予め用意されていたらしいプロジェクターを舞台にセットし始めた。また、舞台の上からは巨大なスクリーンが下りてきた。

 

 

 

経介(何が、始まるんだ…?)

 

 

 

彩「用意できました!」

 

 

明「ありがとう、彩先生」

 

 

 

明先生はそう言うと小さく深呼吸をして、先ほどの続きを話し始めた。

 

 

 

明「…これから君らに見てもらうのは過去にこの場所で行われたゲームの一部始終だ。あまり気分のいい映像じゃないんで、一度しか流さないからな。しっかりと見ておけよ」

 

 

 

みんなが不安そうな表情で見つめる中、映像の投影が始まった。

 

 

 

晴(…誰だろ…?)

 

 

 

パッ、と。巨大なスクリーンに映し出されたのは、見知らぬ一人の男子生徒の姿だった。僕らと同じ制服を着て、首には同じ銀のリングをつけている。でもその表情は張り詰めていて、何かを強く警戒しているように見えた。

 

 

それからしばらくの間、同じ映像が続いた。

 

 

 

冷音「…なんだよ、何も起きねぇじゃねぇか」

 

 

明「……」

 

 

冷音「…下らねぇ。茶番はもう終わりでいいか?式が済んだならオレは一足先に教室に戻らせてもらうぜ」

 

 

 

冷音がそう言って席を立とうとした、その時だった。

 

 

 

碧「うおっ!」

 

 

暦「ひいぃっ!!」

 

 

 

「ぐ…あ……っ」

 

 

 

スクリーンに映っていた男子生徒が突然、苦しみながら吐血したのだ。

 

 

 

ドサッ

 

 

 

男子生徒はそのまま床に倒れ込み、二度と起き上がることはなかった。

 

 

 

それだけで十分、衝撃的な映像だった。

でもそこには、もっと衝撃的なものが映っていたんだ。

 

 

 

白夜「なんでしょう、あの黒いのは…?」

 

 

 

そう。倒れた男子生徒の後ろに、人の形をした黒い何かが立っていたのだ。右手に、血の付いたサバイバルナイフを持って……。

 

 

 

 

 

明「と、映像はここまでだ。どうだ?これでオレが嘘なんてついてないって信用してもらえたか?」

 

 

千優「うっ…」

 

 

桜「千優ちゃん、しっかり!」

 

 

経介(今の映像、血が苦手な西木さんには相当ショッキングなものだっただろうな……。でも、流石に作られた映像だよね……?)

 

 

初「…いや、信用するも何も、今のは作った映像だろ?あんな黒いわけ分かんない奴の存在を認めろって、流石に無理あるだろ!」

 

 

経介(やっぱり、そうだよね。みんなも同じことを思ってるよね)

 

 

明「ん?あぁ、あれの存在が信じられねぇのか?あれならすぐ出せるぞ」

 

 

初「は?」

 

 

明「ほいっ」

 

 

経介「え…」

 

 

 

明はそう言うと、自分の体から、先ほどスクリーンに映っていた黒い人の形をした何かを出現させた。

 

 

 

初「……」

 

 

 

僕が見ているのは幻覚ではないらしく、小越さんや他の生徒全員にもそれは確かに見えているみたいだった。

 

 

 

恵「…ねぇ先生、それ本物なの?」

 

 

明「ああ、もちろん本物だし、確かにここに存在しているぞ」

 

 

 

そう言うと明はその黒い人の形をした何かに、先ほど僕らに配った際に一つ余った銀のリングを取りつけた。

 

 

銀のリングはその黒い人の形をした何かを透過することはなく、首と思われる部分に留まったままであった。

どうやらそいつは、本当にそこに形を持って存在しているらしかった。

 

 

 

明「どうだ、これでいい加減信用してもらえたか?」

 

 

恵「…」

 

 

明「あ、オレは嘘なんてついてないって言ったけど、この学園が創立一年目ってのだけは嘘だからな。そうでも言わないと上の学年がいないのは不自然だもんな」

 

 

 

僕らはもう、何も言うことができなかった。

 

 

 

明「…もういいなら説明に入りたいんだが、大丈夫か?」

 

 

 

明がそう言い出した、その時だった。

 

 

 

蓮「待てよ」

 

 

 

突然、宿井くんが立ち上がってそう言った。

 

 

 

碧「どうした?蓮」

 

 

蓮「逃げようぜ、みんなで。こんなふざけたゲームなんかに付き合う必要なんてねぇよ!!」

 

 

明「…」

 

 

友輝「でも逃げるったってここは離島だぞ、逃げるには海を渡らなきゃいけねぇ」

 

 

太一「そうだぞ。それに、泳いで渡れるような距離じゃねぇよ」

 

 

蓮「そのことなら大丈夫だ。だから諦めるな!オレは船の操縦ができるんだ!」

 

 

凉太「まじか!」

 

 

蓮「あぁ、本当だ!それに港にでけぇ船が泊まってたことも確認済みだ。アレなら40人全員が乗れるはずだ!」

 

 

有悟「素晴らしいぞ!宿井君!!」

 

 

蓮「それに人数だってこっちが有利だ。全員で協力すれば大人にだって勝てるはずだ!」

 

 

菜華「いい案だな、確かにそれなら成功するかも知れない!」

 

 

美咲「うんうん!蓮くんナイスって感じやね!」

 

 

経介(これは、いける……!!)

 

 

 

僕らはこの時、このゲームから逃れられるかも知れないという希望を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもその希望は、すぐに打ち砕かれてしまうことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

ドカァァン

 

 

 

 

 

 

突然、何かのスイッチを押した音と共に、凄まじい爆発音が館内に鳴り響いた。

 

 

 

泰斗「何だ?!」

 

 

 

どうやらその爆発音は明先生のすぐ隣で鳴ったらしく、その場所からは煙が上がっていた。

 

 

 

小春「あの煙が上がってる場所って、黒いあいつがいた所だよね……?」

 

 

碧「一体、何が起きたんだ……?」

 

 

 

そんな添田くんの問いに、明先生がこう答えた。

 

 

 

明「オレが起爆したのさ。さっきあいつにつけた、銀のリングをな」

 

 

経介「銀のリングを、起爆…?」

 

 

 

僕らが黒いあいつの首もとに目をやると、確かに首につけてあったはずの銀のリングが無くなっていた。

 

 

 

太一「ホントだ、無くなってる…!ってかあの黒い奴、無傷じゃねぇか!」

 

 

明「…まぁ、こいつが無傷なのはさておき、今見てもらった通り、君らの首につけてある銀のリングには爆弾が仕込まれている」

 

 

生徒「!!!」

 

 

祥子「私たちがつけているコレも、あのリングと同じだと言うことですか……?」

 

 

梢「……多分。今爆発したリングはさっき私たちに配られてたやつの余りだと思うから、私たちがつけてるこのリングも、あのリングと同じものでほぼ間違いないと思う……」

 

 

祥子「……」

 

 

 

銀のリングの正体に戸惑いを隠せない僕らをよそに、明先生は淡々と話を続けた。

 

 

 

明「そして、その首輪が爆発する条件は、3つだ。1つは、この島から一定の距離以上離れること。1つは、オレが今持っている起爆スイッチのボタンを押すこと。そして、もう1つは……」

 

 

初「ふ…ふざけんなよ!こんなもの無理矢理……!!」

 

 

明「…そのリングを無理矢理、外そうとすることだ」

 

 

初「うっ……」

 

 

蓮「なんだよ、それ……」

 

 

 

こうして僕らの希望は、一瞬にして打ち砕かれてしまった。

 

 

 

明「…もう分かっただろう?君らはこの島から、このゲームから逃げることはできないんだ。最も、一部の人間を除けば、このゲームから逃げる理由なんてないと思うがな……」

 

 

経介(ん?どういうことだ……?)

 

 

恒也「…くそっ……、なんで!なんでこんなことするんだよ!!オレたちに普通で楽しい学園生活を過ごす権利はないのかよ!!」

 

 

碧「恒也……」

 

 

明「落ち着け、日野。今はその問いに答えることはできないが、ここだって学園だ。授業もあれば、イベントだってある。ただそこに、ゲームが介入しているだけだ」

 

 

恒也「そのゲームが必要ないって言ってるんだよ!!」

 

 

明「必要だ!!」

 

 

恒也「!!」

 

 

 

今までの先生の声とは打って変わって、その声には気迫がこもっていた。

 

 

 

恒也「…な、なんだよ。突然でけぇ声なんて出してよ……」

 

 

明「必要なんだよ。このゲームは、お前らの内のほとんどの奴にとってな。それに、オレたちが、お前らがどれほどこのゲームを拒もうと、このゲームは絶対に開催しなけりゃならねぇ。だから!だからお前らは、一人でも多く生き残って、この島を出ろ!!それがオレたち教師、全員の願いだ!!!」

 

 

 

明先生の顔は、必死だった。

 

 

 

恒也「……なんだよ。もう、わけが分かんねぇよ……」

 

 

明「…オレの口から伝えられるのはここまでだ。後はこの島を出て、自分の目で真実を確かめろ。ゲームが終わればそのリングも外してやる。だからそれまでは、自分が生き延びることだけを考えていてくれ……」

 

 

 

そう言う先生の目は、どこか悲しそうに見えた。

 

 

 

明「……それじゃ、ゲームについての説明を行うぞ」

 

 

 

そんな明の言葉に抗おうとする生徒はもう、誰一人として存在しなかった……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!次回こそゲーム開始となりますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。また、第3話の制作はルールブックの制作と平行して行っているので、次話の投稿がかなり遅れる可能性があることを理解しておいて下さるとありがたいです。


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第3話 幕開けの人形ゲーム

皆さんこんにちは、めもりです。今回はルール説明回ということで、とてつもなく難しい内容になっていますが、わかりやすいルールブックを用意しましたので、この回の説明部分はさらっと流す感じで読んでもらって大丈夫です(笑)それでは「幕開けの人形ゲーム」スタートです!


明「……それじゃ、ゲームについての説明を行うぞ」

 

 

 

まだ気持ちの整理がつかないでいる中、明先生によるルール説明が始まった。

 

 

 

明「今回、君らに挑んでもらうのは人形ゲームという名の殺し合いのゲームだ」

 

 

銘(人形ゲーム……?聞いたことないや……)

 

 

明「人形ゲームとは影人形陣営と人間陣営に分かれ、それぞれの陣営で勝利を目指す、団体戦形式のゲームのことだ。また、この島から出られる人物はこのゲームで自分の陣営が勝利し、その上で自身が最後まで生き残っているという二つの条件を満たした人物だけだ」

 

 

凉太(…なるほど、全員が敵ってわけじゃないのか……)

 

 

明「次にゲーム進行についての説明を行う。ゲームは毎月「5」の付く日に行われる「人形探し」と「0」の付く日に行われる「黒い侵攻」を繰り返して進んで行く」

 

 

経介(繰り返しってことは、基本はその二つだけなのかな……?)

 

 

明「まず、「人形探し」とは、毎月「5」付く日に一度だけ行われる、多数決で処刑する人物を決める会議のことだ。この会議では生き残っている人物全員が、同じように生き残っている人物の中から、最も怪しい・邪魔だと思う人物を一人選び、一票を投じる。この結果、最も得票数の多かった人物が処刑される。その際、最も得票数の多かった人物が複数人いた場合は、それに該当する人物を投票の対象として再投票を行い、改めて処刑する人物を決定する。また、それでも最も得票数の多かった人物が複数人いた場合、更にそれに該当する人物を投票の対象として再々投票を行い、処刑する人物を決定する。それでもまだ最多得票者が複数人いた場合は、それに該当する人物全員を処刑する。また、この「人形探し」は「行わない」を選択することも可能で、生存者の半数以上が「行わない」を選択した場合、その日の「人形探し」は実施されず、誰も処刑されることはない。しかし、「人形探し」が実施された場合は投票権の破棄が認められないため、必ず処刑される人物が現れる。また、その日一度目の投票は一斉に行うが、再投票・再々投票の際は一人ずつ好きな順で投票を行う。実施場所は多目的棟2階の会議室だ」

 

 

白夜(処刑される人物を多数決で決める会議……。それってつまり、互いが互いを殺し合う場ってことだよね……)

 

 

明「次に、「黒い侵攻」とは、毎月「0」の付く日に行われる、殺害権を持つ影人形・影ノ主による、一方的な殺害のことだ。殺害権を持った影人形・影ノ主はこの日、生き残っている人物の中から一人を選び、殺害しなければならない。この際の禁止事項として、影人形・影ノ主を殺害したり、複数の人物を同じ日に殺害してはならない。また、「人形探し」と違い、「黒い侵攻」は行わないという選択肢がないため、誰も殺さなかったり、禁止事項に触れる行動を取った場合は、その時に殺害権を持っていた影人形・影ノ主を無条件に処刑する。なお、殺害権はゲーム開始時に合計5人の影人形・影ノ主の中からランダムで1名に付与され、付与された人物が死亡するまで殺害権の譲渡は行われないし、認められない。また、殺害権を持つ人物が死亡した場合、生き残っている影人形・影ノ主の中からランダムで1名が選ばれ、選ばれた人物に殺害権が付与される」

 

 

雪紀(逃げ道はない。ってことか……)

 

 

明「続いて、各陣営についての説明を行う。まずは影人形陣営についての説明だ。影人形陣営の勝利条件は、生き残っている影人形・影ノ主以外の役職持った人物の数を、生き残っている影人形・影ノ主の人数と同じか、それ以下にすることだ。また、影人形陣営には4つの役職がある。1つ目は基本となる【影人形】で、4人がこの役職に就くことになる。【影人形】はゲーム開始時に、【影人形】【影ノ主】【工作員】が誰かを知ることができる。また、【影人形】は毎月「0」の付く日に、自分が殺害権を持っているなら、黒い人の形をした「影人形」を1体まで好きな場所に出現させることが可能になり、それを操ったりすることで生き残っている人物の中から誰か一人を殺害することができる。この黒い人の形をした「影人形」は、誰が作り出しても見た目や声、身体能力など、全てが同じであるため、そこから作り出している人物を判断することはできない。また、作り出した「影人形」が受けたダメージは本人とリンクしないが、作り出した「影人形」が火に触れた場合、「影人形」を作り出している本人に激痛が走る」

 

 

茜(それがさっきの黒い何かの正体なのね……)

 

 

明「あぁ、因みに「影人形」はもしものことがあった時のために、オレを含む教師全員がいつでも作り出すことができるから、それを使って教師を殺そうなんて下手なこと考えるんじゃねぇぞ。それと、人形ゲーム内で作り出すことのできる分身はこの島の外では形が保てなくなるから、それを使って島の外に助けを呼びに行こうとしても無駄だからな」

 

 

柚季(それも対策済み。ってことね……)

 

 

明「さて、2つ目の役職の説明に移るぞ。2つ目の役職は【影ノ主】で、1名がこの役職に就くことになる。【影ノ主】はゲーム開始時に【影人形】と【工作員】が誰かを知ることができる。基本的な【影人形】の能力を全て持つ上、【影ノ主】が殺害しようとした人物が、後述する【騎士】に護衛されていた場合、その人物を護衛していた【騎士】が一人だけであったなら、本来殺害しようとした人物ではなく、その人物を護衛していた【騎士】が作った騎士の格好をした青い人形のような何かを殺害することで、それを作り出している本人を殺害することができる」

 

 

穂乃香(影人形の完全上位互換ってことね……)

 

 

明「次に、3つ目の役職についての説明だ。3つ目の役職は【狂人】で、2名がこの役職に就くことになる。【狂人】には特殊能力はなく、扱いは影人形陣営に所属する【人間】である。なので、影人形陣営の勝利条件を満たせば勝利となるが、【影人形】でも【影ノ主】でもないため、人数カウントの際は「【影人形】・【影ノ主】以外」にカウントされる」

 

 

縁(この役職はあまり脅威にはならなそうね……)

 

 

明「最後に、4つ目の役職についての説明だ。4つ目の役職は【工作員】で、1名がこの役職に就くことになる。【工作員】はゲーム開始時に【影人形】と【影ノ主】が誰かを知ることができる。【工作員】は生きている【影人形】と【影ノ主】が残り一人となったときにその能力が発動するため、それまでは【影人形】と【影ノ主】が誰かを知っている、影人形陣営に属する【人間】だと考えてくれればいい。【工作員】は生きている【影人形】と【影ノ主】が残り一人となったとき、毎月1日~9日、11日~19日、21日~29日のそれぞれの期間で、生き残っている自分以外の人物を2人選び、選んだ人物が【占い師】による占いを受けた際の占い結果を自由に変えることができる。しかし、【工作員】の能力発動時、生き残っているのが【影ノ主】であった場合、【工作員】は選んだ人物の占い判定を変える能力を得られない代わりに5体目の【影人形】となる」

 

 

怜菜(どちらの能力を得るにせよ、終盤まで残しておくと厄介そうね……)

 

 

明「影人形陣営は以上の8名によって構成される。次に、人間陣営についての説明だ。人間陣営の勝利条件は簡単で、全ての【影人形】【影ノ主】をゲームから除外することだ」

 

 

風里(わかりやすい……)

 

 

明「また、人間陣営には7つの役職がある。1つ目は基本となる【人間】で、20名がこの役職に就くことになる。多い故に特殊能力はない。このゲームの中の役職で、最も【影人形】や【影ノ主】が潜伏しやすい役職だな。」

 

 

碧(多いな……。オレらの内の半分がこの役職に就くのか……)

 

 

明「続いて、2つ目の役職についての説明だ。2つ目の役職は【占い師】で、2名がこの役職に就くことになる。【占い師】は毎月1日~9日、11日~19日、21日~29日のそれぞれの期間に一度ずつ、好きな人物を占い、その人物が【影人形】または【影憑き】であれば「黒」、占い妨害能力が発動している【工作員】であれば「工作員」、それ以外であれば「白」であると知ることができる。しかし、【占い師】は、それぞれが5回占いを行うごとに、必ず1回だけ真実とは異なる判定が出る。真実と異なる判定は毎回、5回の内の何回目で出るかはランダムだが、「工作員」という判定は覆ることはない。また、占いを行わないを選択することも可能だが、占いを行わなかった場合は占い回数のカウントは進まない。一度忘れてしまっても、過去の占い結果は何度でも確認することができる」

 

 

航(占いに確実性はないってことか……)

 

 

明「次に、3つ目の役職についての説明だ。3つ目の役職は【騎士】で、3名がこの役職に就くことになる。【騎士】は毎月「0」のつく日に生き残っている人物の中から自分以外の誰か一人を指定し、その人物を「黒い侵攻」から守ることができる。また、本来は【影ノ主】の「黒い侵攻」を【騎士】が防ぐことはできないが、【影ノ主】の「黒い侵攻」の対象者を複数の騎士が守っていた場合、【影ノ主】の「黒い侵攻」を防ぐことができ、守っていた【騎士】も死亡しない。また、護衛の対象者が「黒い侵攻」を受けた際、騎士の格好をした青い人形のような何かが、護衛先に突如として現れ、護衛を行う。なお、護衛を行わないを選択することも可能である」

 

 

瞳(人間を守れる貴重な役職ね……)

 

 

明「続いて、4つ目の役職についての説明だ。4つ目の役職は【霊媒師】で、1名がこの役職に就くことになる。【霊媒師】はゲームの時間内であればいつでも、死亡した者が【影ノ主】であれば【影ノ主】、【狂人】であれば【狂人】、占い妨害能力が発動した状態の【工作員】であれば【工作員】、【影人形】・【悪霊憑き】であれば「黒」、それ以外であれば「白」であると確認することができる。また、何の能力も発動していない状態の【工作員】が死亡した場合の霊媒結果は「白」であるが、そのままゲームが進み、生き残っている【影人形】・【影ノ主】が、【影人形】の役職を持つ人物一人になった時点で、霊媒判定が「白」から「工作員」に変化し、生き残っている【影人形】・【影ノ主】が、【影ノ主】の役職を持つ人物一人になった時点で「白」から「黒」に変化する。なお、霊媒判定結果を見ないを選択することも可能である」

 

 

桜(占い師と違って霊媒師の判定結果に間違いはないなのね……)

 

 

明「次に、5つ目の役職についての説明だ。5つ目の役職は【共有者】で、2名がこの役職に就くことになる。【共有者】はゲーム開始時、誰がもう一人の【共有者】なのかを知ることができる。それ以外は【人間】と同じだが、人間陣営で唯一信頼できる味方を持つ、強い役職だと言えるな」

 

 

梢(私これがいいかも……)

 

 

明「続いて、6つ目の役職についての説明だ。6つ目の役職は【影憑き】で、1名がこの役職に就くことになる。【影憑き】は【人間】と同じように特殊な能力は持たないが、【占い師】に占われてしまうと「黒」と出てしまうため、味方からの信用を得るのが難しい役職だ」

 

 

初「は?何だそれ、最悪じゃねーか!」

 

 

明「最後に、7つ目の役職についての説明だ。7つ目の役職は【悪霊憑き】で、1名がこの役職に就くことになる。【悪霊憑き】も【人間】と同じように特殊な能力は持たないが、【霊媒師】による判定が「黒」と出てしまうため、死後に人間陣営を混乱に陥れてしまう役職だ。また【悪霊憑き】は自分が【悪霊憑き】であると分からず、本人には【人間】であると伝えられる」

 

 

舞人(うわ、◯◯憑き要らねぇ……)

 

 

明「人間陣営は以上の30名によって構成される」

 

 

有悟「待って下さい!影人形陣営8名、人間陣営30名では足し合わせても38名と、2名足りないようですが、その余った2名の処遇はどのようにお考えなのですか!!」

 

 

経介(確かに、担城くんの言う通り役職の数と僕らの人数が合わない。残りの2人をどうするつもりなんだ……?)

 

 

明「……いい質問だ。そう、今担城が言ったように、これまでに紹介した役職だけでは枠が2つ足りず、クラス全員が揃った状態での人形ゲームを行うことができない」

 

 

恵「……その言い方だと、まだ他に役職がありそうだね」

 

 

明「……その通りだ。実はこのゲームには影人形陣営と人間陣営の他にもう一つ、密猟者陣営というものがある」

 

 

小春(密猟者陣営……?)

 

 

明「この陣営の勝利条件は、影人形陣営か人間陣営が勝利条件を満たした際、【密猟者】が生き残っていることだ。また、密猟者陣営が勝利条件を満たした場合、密猟者陣営以外の「勝利条件を満たした陣営」は、勝利条件を満たしているにも関わらず敗北するため、注意が必要だ」

 

 

泰斗(厄介な陣営だな……)

 

 

明「そして、密猟者陣営には2つの役職がある。まずは1つ目の役職についての説明だ。1つ目の役職は【密猟者】で、1名がこの役職に就くことになる。【密猟者】にはゲーム開始時にレーザーポインター付きの狙撃銃と銃弾3つが支給される。【密猟者】はゲーム時間内であればいつでも、この支給された武器を使い、生き残っている人物を射殺することができる。【密猟者】は、銃弾1発で複数の人物を射殺することは可能だが、かなり扱いやすい銃になっているとはいえ、狙った相手に弾が命中するかは【密猟者】の腕次第である。また、支給された銃や銃弾以外を使って射殺を行ったり、狙撃銃自体を使った撲殺などは認められない。さらに、【密猟者】はゲーム時間内であればいつでも、赤い人の形をした何かを好きな場所に1体まで作り出すことができる。この赤い人の形をした何かから、これを作り出している本人を特定することは不可能だが、この赤い人の形をした何かが「黒い侵攻」を受けた場合、これを作り出している本人は死亡する」

 

 

理央(ゲーム時間内であればいつでもってことは、ずっと警戒しとかなくちゃいけないのね……)

 

 

明「続いて、2つ目の役職についての説明だ。2つ目の役職は【密猟支援者】で、1名がこの役職に就くことになる。【密猟支援者】はゲーム開始時、誰が【密猟者】なのかを知ることができる。それ以外に特殊な能力は持たないが、【密猟者】が死亡した場合、【密猟支援者】も後を追って死亡する」

 

 

太一(後追いは強制なのか……)

 

 

明「密猟者陣営は以上の2名によって構成される。あと、【影人形】【影ノ主】【密猟者】が作り出した分身は、それを作り出している本人が、左右の手のひらを合わせば消すことができるからな。こんな風によ」

 

 

 

そう言うと明は左右の手のひらを合わせ、作り出していた「影人形」を実際に消して見せた。

 

 

 

美咲(これ全部、ホンマのことなんかな……)

 

 

明「最後にルール違反についての説明を行う。このゲームでの禁止事項は、殺害権を持つ【影人形】【影ノ主】が「0」のつかない日、または「0」のつく日のゲーム時間外に殺害を行うこと。殺害権を持つ【影人形】【影ノ主】が銃殺を行ったり、【影人形】【影ノ主】を殺害したり、1日の中で複数人を殺害、または誰も殺害しようとしないこと。【密猟者】がゲーム時間外に射殺を行う、または支給された狙撃銃の中に入っている3発の銃弾以外で殺害を行うこと。殺害権を持たない人物が殺害を行うことだ。これらの禁止事項をどれか一つでも犯した人物は、その場で無条件に処刑される。また、ゲームの中で誰か一人でも自殺した人物がいた場合、その人物の自殺が判明した瞬間に生徒全員の首輪を爆破する」

 

 

冷音「は?なんでそれだけ連帯責任なんだよ!!」

 

 

明「……これは決定事項だ。君らがなんと言おうと覆ることはない」

 

 

銘(……私たち生徒全員に互いの自殺を取り締まらせる気ね。何か深いわけがありそう……)

 

 

明「また、ゲーム時間は毎日4時~8時、12時~16時、20時~24時の計12時間だ。以上でルール説明を終了する」

 

 

 

明先生による長い長いルール説明がようやく終わった。

 

 

 

友輝「あー、やべぇ。長すぎて何が何だったか思い出せねぇ」

 

 

秋子「うちも~」

 

 

彩「大丈夫だよ、二人共!ちゃんと全員分のルールブックを用意してあるから!」

 

 

友輝「あ、そうなのか」

 

 

太一(そりゃそうだろ……)

 

 

彩「はい、じゃあ今からルールブックを配るからね~!」

 

 

 

そう言うと彩先生はルールブックを一人一人に配り始めた。

 

 

 

彩「はい、高穂くん!」

 

 

経介「あ、ありがとうございます」

 

 

 

受け取ったルールブックはとても軽かったけど、僕はその本に嫌な重みがあるように感じた。

 

 

 

明「……よし、全員ルールブックを受け取ったな。彩先生ありがとう」

 

 

彩「いいえ!」

 

 

明「さて、早速だがみんな、今受け取ったルールブックの一番後ろのページを開いてみてくれ」

 

 

経介(一番後ろのページ……?)

 

 

舞人「ん?なんかカードが一枚だけ挟んであるぞ……?」

 

 

明「そこに挟んであるカードの表に書かれてあるのが、今回君ら一人一人に就いてもらう役職だ」

 

 

千優(え、まだ心の準備が……)

 

 

怜菜(…いよいよ、始まるのね……)

 

 

彩「そうそう!みんなの携帯にクラス全員分の連絡先を入れておいたから、【影人形】とか【共有者】とかの最初から仲間が誰か分かる役職のカードを引いた人は、そのカードの端に書かれてある仲間の名前を確認して、その子と連絡を取ると良いと思うよ!」

 

 

真琴「うわ、ホントじゃん。全員の連絡先なんていつの間に……」

 

 

明「以上で入学式兼ルール説明会を終了する。役職の確認が終わった奴から教室に戻るように。それじゃ、一旦解散!」

 

 

経介(ここに、僕の役職が……)

 

 

 

僕は緊張で震える手で、ルールブックに挟まれたカードを取り、ゆっくりとそれをめくった。

 

 

 

経介「!」

 

 

経介(これは……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介(占い師!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この瞬間、僕らの長きに渡る戦いの火蓋が切って落とされたのである……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!難しいところがたくさんあったと思いますが、このルールには生徒の行動を制限したりするために設け、実際にゲーム内には登場しないものもたくさんあるので、どうか読むのをやめないで欲しいです。ああ、読み続けていて良かったなと、そう思えるような話を投稿し続けられるよう、精一杯頑張るので今後ともどうかよろしくお願いします!


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(よくわかる)ルール解説

タイトルの通りよくわかるルール解説を、あの2人が細かな説明を交えつつやってくれるそうです…!!

※ここに出てくる2人の明るさはあくまでルール解説のためです


小春「小春と~!」

 

 

桜「桜の~!」

 

 

2人「よくわかる、ルール解説~!」

 

 

小春「さぁやって参りました!私たちヒロイン2人によるルールの手引きの時間です!」

 

 

桜「第3話の説明を読んだだけじゃ全然理解できないよ~って方に、私たちが丁寧にルール解説をして行きます!」

 

 

小春「それじゃ早速だけど、まずはゲーム進行についての解説をするよ~!」

 

 

 

*ゲーム進行*

 

ゲーム時間→毎日4時~8時、12時~16時、20時~24時

 

1日~9日、11日~19日、21日~29日→【占い師】による占い、【工作員】による占い妨害

 

5日、15日、25日→「人形探し」

 

10日、20日、30日→「黒い侵攻」、【騎士】による護衛

 

ゲーム時間内いつでも→【密猟者】による射殺、【霊媒師】による死者の霊媒判定の確認

 

 

 

小春「ゲーム内のイベントをまとめると、だいたいこんな感じだよ!あと、授業は5日、10日、15日、20日、25日、30日、土曜日、日曜日以外の日に行われるらしいよ!」

 

 

桜「このコーナーではゲームの基本イベントとなる「人形探し」と「黒い侵攻」について解説するよ!」

 

 

 

*人形探し*

 

小春「まずは「人形探し」についての解説だよ!「人形探し」は簡単に言えば、多数決で処刑する人物を決める投票会議のことだよ!」

 

 

桜「「人形探し」は基本となるイベントだけど、「行う」か「行わない」かの選択ができて、生き残っている生徒の半数以上が「行わない」を選択した場合、「人形探し」は行われずに、そのままゲームが進むよ!」

 

 

小春「でも「人形探し」が始まっちゃうと、必ず誰かに投票しなくちゃいけないから、疑わしい人がいない場合は「行わない」を選択するのが無難だね!あと、「人形探し」で投票できる票数は一人一票だけで、投票は全員一斉に行われるよ!」

 

 

桜「次は投票について細かく解説するよ!「人形探し」では一人一票の投票を行った結果、一番得票数が多かった生徒が処刑されちゃうんだけど、これに該当する生徒が複数人いた場合、その該当する生徒だけを投票先に絞った、再投票が行われるよ!」

 

 

 

*再投票*

 

小春「例えば、生き残っている生徒が残り8人だと仮定して、1回目の投票でのそれぞれの得票数がこうなったとするよ!」

 

 

Aさん→2票

Bさん→1票

Cさん→2票

Dさん→2票

Eさん→0票

Fさん→0票

Gさん→1票

Hさん→0票

 

 

桜「この場合、一番得票数の多い生徒が3人いるから、次にこの3人の生徒を投票先に絞った再投票を行うよ!」

 

 

小春「その再投票でのそれぞれの得票数がこうなったとするよ!」

 

 

Aさん→5票

Cさん→2票

Dさん→1票

 

 

桜「これだと、一番得票数の多いAさんが処刑されて、CさんとDさんはそのままゲームに残り続けるよ!」

 

 

小春「でも、再投票でのそれぞれの得票数がこうなったとするよ!」

 

 

Aさん→3票

Cさん→3票

Dさん→2票

 

 

桜「これだと、一番得票数の多い生徒がまだ2人いるから、この2人を投票先に絞った再々投票が行われるよ!」

 

 

 

*再々投票*

 

小春「その再々投票でのそれぞれの得票数がこうなったとするよ!」

 

 

Aさん→3票

Cさん→5票

 

 

桜「これだと、一番得票数の多いCさんが処刑されて、Aさんはゲームに残り続けるよ!」

 

 

小春「でも、再々得票でのそれぞれの得票数がこうなったとするよ!」

 

 

Aさん→4票

Cさん→4票

 

 

桜「これだと、一番得票数の多い生徒がまだ2人いるけど、次の投票は行われず、このまま2人とも処刑になるよ!再々投票の結果、一番得票数の多かった生徒は、何人いたとしても総処刑されちゃんうんだよ!」

 

 

小春「あと、再投票と再々投票では、投票は一斉に行われるんじゃなくて、好きな順番で一人ずつ投票を行うんだよ!」

 

 

桜「「人形探し」の解説は以上だよ!次に「黒い侵攻」についての解説をするよ!」

 

 

 

*黒い侵攻*

 

小春「「黒い侵攻」は簡単に言えば、「0」のつく日に一度だけ【影人形】【影ノ主】が自分たち以外から一人を選んで殺害する行為のことだよ!」

 

 

桜「でも実際に殺害することができるのは「殺害権」を持った【影人形】【影ノ主】だけなんだよ!」

 

 

小春「「殺害権」はゲーム開始時に【影人形】【影ノ主】の内の誰か一人にランダムで与えられて、その権利を持った人が死亡すると、生き残っている別の【影人形】【影ノ主】の内の一人に、またランダムで権利が与えられるんだ!」

 

 

桜「そして「殺害権」を持っている【影人形】【影ノ主】は、一体だけ「黒い人の形をした何か」を分身として出すことができるんだけど、これはまた後で解説するね!」

 

 

小春「また「黒い侵攻」は「人形探し」と違って、「行わない」の選択肢がないから、殺害権を持った【影人形】【影ノ主】はこの日、必ず誰かを殺害しなきゃいけないんだ!」

 

 

桜「この「黒い侵攻」が【騎士】によって守られて、誰も殺害できなかった場合は何も起こらないんだけど、「殺害権」を持った【影人形】【影ノ主】が自分の意志で誰も殺害しなかったり、一度に複数の人物を殺害したり、銃を使って殺害しちゃうとルール違反となって、このとき「殺害権」を持っていた【影人形】【影ノ主】は無条件に処刑されちゃうんだよ!」

 

 

小春「あと、「殺害権」を持たない【影人形】【影ノ主】が殺害を行った場合もルール違反となって、殺害を行った【影人形】【影ノ主】は無条件に処刑されちゃうから注意だよ!」

 

 

桜「基本的にどの陣営に属していても「殺害権」を持つ人物以外が殺害を行った場合は、その殺害を行った人物は無条件に処刑されちゃうから注意が必要だね!例えば【霊媒師】が誰かを殺害しちゃうと、その【霊媒師】は無条件に処刑されちゃうってこと!【霊媒師】には「殺害権」はないからね!」

 

 

小春「「黒い侵攻」の解説は以上だよ!続いてゲームに登場する、3つの陣営の勝利条件と、それぞれの陣営を構成する役職についての解説をするよ!」

 

 

 

*影人形陣営-勝利条件*

 

桜「まずは影人形陣営の勝利条件についての解説をするよ!影人形陣営の勝利条件は、生き残っている【影人形】【影ノ主】の数を、生き残っている【影人形】【影ノ主】以外の数と同じかそれ以上にすることだよ!」

 

 

(例1)影人形、影人形、人間

 

(例2)影人形、影ノ主、人間、騎士

 

 

小春「だからこの例は2つとも、影人形陣営の勝利になるよ!」

 

 

桜「次に影人形陣営を構成する役職についての解説をするよ!」

 

 

 

*影人形陣営-役職*

 

影人形×4

影ノ主×1

狂人×2

工作員×1

 

計8名

 

 

*影人形*

 

小春「まずは【影人形】についての解説だよ!【影人形】はゲーム開始時に【影人形】【影ノ主】【工作員】が誰かを知ることができるよ!」

 

 

桜「また、自身が「殺害権」を与えられていた場合、「黒い侵攻」を行うことができるよ!」

 

 

小春「そして、この「殺害権」を持った【影人形】は、自身の体から一体まで、好きな場所に「黒い人の形をした何か」を出すことができて、これを使って殺害を行うことで、誰が殺害を行っているのかを分からなくすることができるよ!」

 

 

桜「これから、この「◯◯色の人の形をした何か」が何度か出てくるけど、どれも色が違うだけで、見た目や声、身体能力は全て平均的なもので全く同じだから、これを見ただけでは誰がその分身を作り出しているのかを判断することは不可能だよ!また「黒い侵攻」では、この「黒い人の形をした何か」を作り出さずに、自らが直接殺害を行うことも可能だよ!」

 

 

小春「【影人形】の占い判定は「黒」で、霊媒判定も同じく「黒」だよ!続いて、【影ノ主】についての解説だよ!」

 

 

*影ノ主*

 

桜「【影ノ主】はゲーム開始時に【影人形】【工作員】が誰かを知ることができるよ!」

 

 

小春「また、【影人形】と同じように、自身が「殺害権」を与えられていた場合、「黒い侵攻」を行うことができるよ!」

 

 

桜「【影ノ主】も自身が「殺害権」を持っていた場合、自分の体から「黒い人の形をした何か」を好きな場所に作り出すことができるよ!」

 

 

小春「ここまでは【影人形】と全く一緒だけど、「黒い侵攻」を行う際に明確な違いがあって、【影ノ主】が「黒い侵攻」で殺害しようとした相手が、【騎士】による護衛を受けていた場合、【影人形】なら「黒い侵攻」が失敗に終わるところを、【影ノ主】はその相手を護衛していた【騎士】を殺害することができるんだ!」

 

 

(例1)Aさん影人形ver

 

Aさん→影人形

Bさん→騎士

Cさん→人間

 

Aさん→Cさんを襲撃

Bさん→Cさんを護衛

 

結果→襲撃失敗

 

 

(例2)Aさん影ノ主ver

 

Aさん→影ノ主

Bさん→騎士

Cさん→人間

 

Aさん→Cさんを襲撃

Bさん→Cさんを護衛

 

結果→Bさんが死亡(Cさんは生存)

 

 

桜「上の2つの例を見比べると、違いがよく分かるね!でも注意しなきゃいけないのが、【影ノ主】による「黒い侵攻」で狙った相手が、複数の騎士による同時護衛を受けていた場合は、その「黒い侵攻」は失敗するってところだよ!」

 

 

(例)

 

Aさん→影ノ主

Bさん→騎士

Cさん→騎士

Dさん→人間

 

Aさん→Dさんを襲撃

Bさん→Dさんを護衛

Cさん→Dさんを護衛

 

結果→襲撃失敗

 

 

小春「例に出すとこんな感じだよ!また【影ノ主】の占い判定は「白」で、霊媒判定は「影ノ主」だよ!次に【狂人】についての解説をするよ!」

 

 

 

*狂人*

 

桜「【狂人】は特殊能力は持たない役職だよ!だから【狂人】は影人形陣営の【人間】だと思ってくれたらいいよ!」

 

 

小春「【狂人】の勝利条件は影人形陣営の勝利条件と同じだけど、人数カウントの際は「【影人形】【影ノ主】以外」に数えられるから注意が必要だね!」

 

 

(例)

影人形、狂人、人間、騎士

 

 

桜「この例だと【影人形】【影ノ主】の数が「1」で、【影人形】【影ノ主】以外の数が「3」だからゲームは終わらないってことだよ!」

 

 

小春「また【狂人】の占い判定は「白」で、霊媒判定は「狂人」だよ!最後に【工作員】についての解説をするよ!」

 

 

 

*工作員*

 

桜「【工作員】はゲーム開始時に【影人形】【影ノ主】が誰かを知ることができるよ!」

 

 

小春「【工作員】は特殊な役職で、生き残っている【影人形】【影ノ主】が一人だけになったとき、その能力が目覚めるんだよ!また【工作員】が目覚める能力には2つのパターンがあるから、それぞれ場合分けして解説するよ!」

 

 

桜「まずは1つ目のパターンの解説だよ!【工作員】の能力が発動する際、一人だけ生き残っているのが【影人形】であった場合、工作員は「占い妨害能力」に目覚めるよ!」

 

 

小春「「占い妨害能力」とは、1日~9日、11日~19日、21日~29日のそれぞれの期間で、生き残っている自分以外の生徒を2名選んで、その選んだ生徒の占い結果を「白」か「黒」に自由に設定することができるんだよ!」

 

 

(例)

Aさん→工作員(占い妨害能力あり)

Bさん→占い師

Cさん→影人形

 

Aさん→Bさんの占い結果を「黒」

Cさんの占い結果を「白」に設定

Bさん→Cさんを占う

 

結果→BさんのCさんに対する占い判定は「白」

 

 

桜「1つ目のパターンで得られる能力はこういうことだよ!次に2つ目のパターンの解説だよ!【工作員】の能力が発動する際、一人だけ生き残っているのが【影ノ主】であった場合、【工作員】は【影人形】に転職するよ!」

 

 

(例)

Aさん→工作員

Bさん→影ノ主

Cさん→影人形

Dさん→人間

Eさん→人間

Fさん→人間

Gさん→人間

 

Cさんがこの日の「人形探し」で処刑される

 

結果

Aさん→影人形

Bさん→影ノ主

Dさん→人間

Eさん→人間

Fさん→人間

Gさん→人間

 

 

小春「2つ目のパターンはこういうことだよ!【影人形】に転職した【工作員】には「占い妨害能力」はないから注意してね!」

 

 

桜「【工作員】の占い判定は、能力発動前は「白」、パターン1の能力発動後は「工作員」、パターン2の能力発動後は「黒」で、霊媒判定は能力発動前は「白」、パターン1の能力発動後は「工作員」、パターン2の能力発動後は「黒」だよ!」

 

 

小春「【占い師】【霊媒師】は過去の占い、霊媒結果を確認することができるんだよね!で、そのとき【占い師】に能力発動前に占われていた場合、能力発動後に占い判定結果を確認しても、「白」って判定は変わらないんだけど、【工作員】が能力発動を死亡した状態で迎えた場合、【霊媒師】による霊媒判定結果の確認の際に、【工作員】であった人物の霊媒判定結果が、そのパターンに応じた霊媒判定結果に変化するから注意しないといけないよ!」

 

 

(例1)占いver

Aさん→占い師

Bさん→工作員(能力発動前)

 

AさんのBさんに対する占い判定結果→「白」

 

生き残っている【影人形】【影ノ主】が【影人形】一人だけになった後の【占い師】の占い判定結果確認

 

Bさん→「白」

 

結果→占い判定結果に変化なし

 

 

(例2)霊媒ver1

Aさん→霊媒師

Bさん→工作員(死亡)(能力発動前)

 

AさんのBさんに対する霊媒判定結果→「白」

 

生き残っている【影人形】【影ノ主】が【影人形】一人だけになった後の霊媒師の霊媒判定結果確認

 

Bさん→「工作員」

 

結果→Bさんの霊媒判定結果が「白」から「工作員」に変化

 

 

(例3)霊媒ver2

Aさん→霊媒師

Bさん→工作員(死亡)(能力発動前)

 

AさんのBさんに対する霊媒判定結果→「白」

 

生き残っている【影人形】【影ノ主】が【影ノ主】一人だけになった後の霊媒師の霊媒判定結果確認

 

Bさん→「黒」

 

結果→Bさんの霊媒判定結果が「白」から「黒」に変化

 

 

桜「と、まぁこんな感じで【霊媒師】だけ【工作員】の霊媒判定結果が状況によって変化するから注意してね!また【工作員】も人数カウントの際には「【影人形】【影ノ主】以外」に数えられるから、こっちも注意が必要だよ!以上で影人形陣営に関する解説を終了するよ!次は人間陣営に関する解説をするよ!」

 

 

 

*人間陣営-勝利条件*

 

小春「人間陣営の勝利条件は全ての【影人形】【影ノ主】をゲームから除外することだよ!とっても簡単だね!続いて人間陣営を構成する役職についての解説をするよ!」

 

 

 

*人間陣営-役職*

 

人間×20

占い師×2

騎士×3

霊媒師×1

共有者×2

影憑き×1

悪霊憑き×1

 

計30名

 

 

*人間*

 

桜「まずは【人間】についての解説だよ!【人間】は特殊能力を持たない基本的な役職だよ!占い判定は「白」で、霊媒判定も「白」だよ!次に【占い師】についての解説をするよ!」

 

 

 

*占い師*

 

小春「【占い師】は毎月1日~9日、11日~19日、21日~29日のそれぞれの期間に、生き残っている生徒を一人選び、その生徒の占い判定結果を見たり、過去の占い判定の確認をすることができるよ!」

 

 

<占い判定早見表>

 

 

(影人形陣営)

 

影人形→黒

影ノ主→白

狂人→白

工作員(能力発動前)→白

工作員(パターン1発動後)→工作員

工作員(パターン2発動後)→黒

 

 

(人間陣営)

 

人間→白

占い師→白

騎士→白

霊媒師→白

共有者→白

影憑き→黒

悪霊憑き→白

 

 

(密猟者陣営)

 

密猟者→白

密猟支援者→白

 

 

桜「占い判定結果についてはこれを参考にしてね!また、占い師は5回占いをするごとに必ず1回だけ、真実とは異なる判定が出るよ!でも【工作員】の判定は何が起きても「工作員」のままだよ!」

 

 

(例)真実

Bさん→人間

Cさん→人間

Dさん→影人形

Eさん→人間

Fさん→人間

Gさん→工作員(占い妨害能力持ち)

 

Aさんの占い結果

 

1回目→Bさん「白」(真)

2回目→Cさん「白」(真)

3回目→Dさん「黒」(真)

4回目→Eさん「黒」(偽)

5回目→Fさん「白」(真)

 

6回目→Bさん「白」(真)

7回目→Cさん「白」(真)

8回目→Dさん「白」(偽)

9回目→Eさん「白」(真)

10回目→Fさん「白」(真)

 

11回目→Bさん「白」(真)

12回目→Cさん「白」(真)

13回目→Dさん「黒」(真)

14回目→Eさん「白」(真)

15回目→Gさん「工作員」(偽)

 

 

小春「こんな感じで5回占うごとに必ず1回だけ偽りの判定が出るんだよ!例では真偽が表示されているけど、実際は【占い師】にはどれが真の判定で、どれが偽の判定かは明かされないよ!上の例からは、偽りの判定が5回の中でいつ出るかが分からないことが読み取れるね!また、6回目~10回目だけの判定を見れば、全員が「白」判定であることから、この中に一人だけ「黒 」判定の出る【影人形】か【影憑き】がいることがわかるよ!」

 

 

桜「11回目~15回目の判定では、Gさんが【工作員】であるにも関わらず「工作員」の判定が(偽)であることから、工作員の占い判定の仕様がよくわかるね!」

 

 

小春「あと【占い師】の偽りの判定が出るときに【工作員】の「占い判定妨害」を受けた場合は、偽りの判定結果ではなく、工作員が設定した占い結果を【占い師】が得ることになるよ!」

 

 

(例)

Aさん→占い師

Bさん→工作員(占い妨害能力あり)

Cさん→人間

Dさん→人間

Eさん→人間

Fさん→人間

Gさん→影憑き

 

 

5回目で偽りの判定が出る場合の、AさんがGさんを占うタイミングでBさんがGさんの占い結果を「黒」に設定した場合

 

Aさんの占い結果

 

1回目→Cさん「白」(真)

2回目→Dさん「白」(真)

3回目→Eさん「白」(真)

4回目→Fさん「白」(真)

5回目→Gさん「黒」(偽)

 

 

桜「この例では5回目に偽りの判定が出るはずが【工作員】であるBさんが、Gさんを工作対象の一人に選び、この日のGさんの占い判定を「黒」に設定したため、この日のAさんのGさんに対する占い結果が偽りにも関わらず「黒」で真実の判定になっているね!この例はかなり複雑だけど、本編のゲームはこんなに難しくないから安心してね(笑)」

 

 

小春「【占い師】の占い判定は「白」で、霊媒判定も「白」だよ!次に【騎士】についての解説だよ!」

 

 

 

*騎士*

 

桜「【騎士】は毎月10日、20日、30日に生き残っている生徒の中から自分以外の生徒一人を選んで、その生徒を「黒い侵攻」から守ることができるよ!」

 

 

小春「【騎士】は自分がその場にいなくても、守り先が襲われた際、守り先に「青い騎士の格好をした何か」が現れて、自分の代わりに襲われた生徒を守ってくれるよ!」

 

 

桜「でも守り先の生徒が【影ノ主】による「黒い侵攻」を受けた際、その生徒を守っていたのが自分だけだった場合、その生徒は死亡せず、その生徒を守っていた【騎士】は死亡しちゃうんだ」

 

 

(例1)

Aさん→騎士

Bさん→影人形

Cさん→人間

 

Aさん→Cさんを護衛

Bさん→Cさんを襲撃

 

結果→襲撃失敗

 

 

(例2)

Aさん→騎士

Bさん→影ノ主

Cさん→人間

 

Aさん→Cさんを護衛

Bさん→Cさんを襲撃

 

結果→Cさんは死亡せずAさんが死亡

 

 

小春「それでも守り先の生徒が【影ノ主】の「黒い侵攻」を受けた際、その生徒を守っていた【騎士】が自分以外にもいた場合は「黒い侵攻」は失敗になるんだよ!」

 

 

(例)

Aさん→騎士

Bさん→騎士

Cさん→影ノ主

Dさん→人間

 

Aさん→Dさんを護衛

Bさん→Dさんを護衛

Cさん→Dさんを襲撃

 

結果→襲撃失敗

 

 

桜「詳しくは例を見てね!また【騎士】の占い判定は「白」で、霊媒判定も「白」だよ!続いて【霊媒師】についての解説をするよ!」

 

 

 

*霊媒師*

 

小春「【霊媒師】はゲーム時間内ならいつでも、死亡した生徒の霊媒判定が確認できるよ!」

 

 

<霊媒判定早見表>

 

 

(影人形陣営)

 

影人形→黒

影ノ主→影ノ主

狂人→狂人

工作員(能力発動前)→白

工作員(パターン1発動後)→工作員

工作員(パターン2発動後)→黒

 

 

(人間陣営)

 

人間→白

占い師→白

騎士→白

共有者→白

影憑き→白

悪霊憑き→黒

 

 

(密猟者陣営)

 

密猟者→白

密猟支援者→白

 

 

桜「霊媒判定結果についてはこれを参考にしてね!また、霊媒判定確認と【工作員】の複雑な関係については項目*工作員*を参考にしてね!」

 

 

小春「また【霊媒師】の占い判定は「白」だよ!次に【共有者】についての解説だよ!」

 

 

 

*共有者*

 

桜「【共有者】はゲーム開始時にもう一人の【共有者】が誰かを知ることができるよ!」

 

 

小春「それ以外に特殊な能力はないけど、人間陣営で唯一の「確実な味方」を知っている強い役職だね!」

 

 

桜「また【共有者】の占い判定は「白」で、霊媒判定も「白」だよ!続いて【影憑き】についての解説をするよ!」

 

 

 

*影憑き*

 

小春「【影憑き】は【占い師】による占いを受けると「黒」と出る、マイナスの能力を持った役職だよ!だから可哀想な【人間】って覚えてくれたらいいかもね!」

 

 

桜「また【影憑き】の霊媒判定は「白」だよ!最後に【悪霊憑き】についての解説をするよ!」

 

 

 

*悪霊憑き*

 

小春「【悪霊憑き】は【霊媒師】による霊媒判定が「黒」と出る、【影憑き】とはまた違ったマイナスの能力を持った役職だよ!」

 

 

桜「さらにこの【悪霊憑き】は、【悪霊憑き】という一つの立派な役職であるにも関わらず、配られたカードには【人間】と表示されてあるため、【悪霊憑き】が生き残っている間は【悪霊憑き】が誰かは絶対に分からないっていう珍しい役職なんだよ!」

 

 

小春「【悪霊憑き】の占い判定は「白」だよ!以上で人間陣営に関する解説を終了するよ!最後は密猟者陣営に関する解説だよ!」

 

 

 

*密猟者陣営-勝利条件*

 

桜「密猟者陣営の勝利条件は少し変わってて、影人形陣営か人間陣営が勝利条件を満たしたときに、【密猟者】が生き残っていることが勝利条件だよ!」

 

 

小春「また、密猟者陣営が勝利条件を満たした場合、他の陣営は強制的に敗北になっちゃうから十分に注意してね!続いて、密猟者陣営を構成する役職についての解説だよ!」

 

 

*密猟者陣営-役職*

 

密猟者×1

密猟支援者×1

 

計2名

 

 

*密猟者*

 

桜「まずは【密猟者】についての解説をするよ!【密猟者】はゲーム時間内であればいつでも、ゲーム開始時に支給されるレーザーポインター付きの狙撃銃と専用の銃弾3発を使って、生き残っている生徒を射殺することができるよ!」

 

 

小春「実際に弾が命中するかはその人の腕次第だけど、可能であれば一度の発砲で複数の生徒を殺害することも許されているよ!でも、支給された銃以外で殺害を行ったり、銃自体を使って撲殺を行ったりすることは禁止されているよ!」

 

 

桜「また【密猟者】は体から好きな場所に「赤い人の形をした何か」を作り出すことができるため、実際に射殺を行う際は自分だとバレない、この赤い分身を使うことをオススメするよ!」

 

 

小春「でもその「赤い人の形をした何か」が【騎士】に守られていない状態で「黒い侵攻」を受けた場合、その分身を作り出している本人は死亡するから注意してね!」

 

 

桜「また【密猟者】の占い判定は「白」で、霊媒判定も「白」だよ!最後に【密猟支援者】についての解説をするよ!」

 

 

 

*密猟支援者*

 

小春「【密猟支援者】はゲーム開始時に【密猟者】が誰かを知ることができるよ!」

 

 

桜「それ以外に特殊能力はないけど【密猟者】が死亡すると、その後を追って自身も死亡しなくちゃいけない悲しい役職だよ」

 

 

小春「また【密猟支援者】の占い判定は「白」で、霊媒判定も「白」だよ!以上で全ての陣営に関する解説が終了したよ!」

 

 

桜「次に「◯◯色の人の形をした何か」に関する捕捉をするよ」

 

 

 

*分身のあれこれ*

 

小春「【影人形】【影ノ主】が作り出した分身は、その分身がどうなっても基本的に本人は平気だけど、分身が火に触れちゃった場合だけ、それを作り出している本人に「激しい痛み」が走るから注意してね!」

 

 

桜「また、分身はそれを作り出している本人が、左右の手のひらを合わせば消すことができるよ!」

 

 

小春「分身についての捕捉は以上だよ!最後に禁止事項を一つだけ紹介するよ!」

 

 

桜「ゲーム内で自殺をした生徒がいた場合、その生徒の自殺が確定した瞬間に首に付けてあるリングが爆破されちゃうから、自殺だけは何としても避けようね!以上でヒロイン2人による(よくわかる)ルール解説を終了するよ!」

 

 

小春「ここまで見てくれて本当にありがとう!そしてお疲れ様!」

 

 

桜「このゲームルールを踏まえて、本編での私たちや他の生徒の活躍や葛藤の一つ一つを楽しみにしていて欲しいです!」

 

 

2人「それでは皆さん、また本編でお会いしましょう!」

 




本編は本当に難しい話にはならないんです。この言葉を信じて欲しい。今はただ、それだけ…。


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第4話 秘められた裏と初仕事

皆さんこんにちは、めもりです。今回からいよいよゲーム本編がスタートと言うことで、気合いが入ってます!(笑)たくさん伏線を張っていくつもりなので、見逃さないよう注意して下さいね!それでは「秘められた裏と初仕事」スタートです!


~教室~

 

 

 

カタッ

 

 

 

太一「……おい、ペン落ちたぞ」

 

 

友輝「んあ、わりぃ」

 

 

太一「……」

 

 

友輝「……」

 

 

経介「……」

 

 

 

入学式兼ルール説明会を終え、教室に戻った僕らはみんな、不安そうな表情を浮かべたまま、何も喋ろうとしなかった。

 

 

しかし、その沈黙は長くは続かなかった。

 

 

 

冷音「……っあ"ー、イライラする!!」

 

 

太一「うおっ!」

 

 

恵「……びっくりした……、突然どーしたのさ」

 

 

冷音「どうしたもこうしたもねぇよ!お前らはまだあんな話を信じてるのか?!」

 

 

経介(……!)

 

 

恵「……いや、それは……」

 

 

 

僕らは答えに困った。確かに、冷音君の言ってることはおかしなことではない。むしろ冷音君が言っていることの方が普通だと思う。けど、僕らは先生が嘘をついているとは思えなかった。ましてやあの黒い人形を見て、役職のカードを手にした今では。

 

 

 

冷音「……じゃあよ、全員持ってるカードを表にして、役職を公開しちまおうぜ。そうすりゃお前らが怖がってるこのゲームの開催が本当だとしても、簡単に終わらせることができんだろ」

 

 

生徒「……!」

 

 

 

経介(確かに、そうすればゲームが簡単に終わる。でも、もしそんなことをしたのが先生にバレたら……)

 

 

冷音「なんだよ、何とか言えよ。あぁ、もしかしてそのことが先生にバレて、この首のリングを爆破されるのが怖いのか?そうなんだったら先生の目が届かない夜にやろうぜ。あとはそのことがバレないように自然にだな……」

 

 

 

冷音君がそう提案していた時だった。

 

 

 

ガラッ

 

 

 

明「すまんすまん、ちょいと遅くなっちまった」

 

 

経介(あ、明先生……)

 

 

冷音(……今の、聞かれてねぇよな……)

 

 

 

明先生はそう言って教室に入ってくるなり、教卓の前に立ち、僕らに話をし始めた。

 

 

 

明「よし、とりあえずみんな、長い時間お疲れ様!突然のことでまだ気持ちの整理がついてないと思うから、今日は少しだけ連絡をして、解散にしようと思う」

 

 

理央「……ねぇ先生」

 

 

明「ん、どうした?枷田」

 

 

理央「やっぱり、あのゲームの話って本当なの……?」

 

 

明「……あぁ、本当だよ」

 

 

理央「……」

 

 

明「まぁ、今はまだ実感が湧かないかも知れないが、すぐに本当のことだって分かるよ」

 

 

生徒「……」

 

 

明「……それと」

 

 

経介「……?」

 

 

 

明はそう言うと教卓を離れ、凉太の席の前まで移動した。

 

 

 

凉太「……何ですか?先生」

 

 

明「……」

 

 

 

スッ

 

 

 

凉太「あ!ちょっと、何するんですか!」

 

 

経介(あれは、相沢君のカード……?)

 

 

 

明は突然、凉太の胸ポケットに入っていた役職カードを抜き取った。そして……

 

 

 

明「ほらよ」

 

 

凉太「えっ」

 

 

 

なんと明は、そのカードの表側をみんなに向けて、見せたのだ。

 

 

 

碧「!!」

 

 

凉太「は?いやいや、それはダメでしょ!!」

 

 

碧「……えない……!」

 

 

凉太「え?」

 

 

碧「……見えない……!」

 

 

凉太「見えないって、どういう意味だよ……?」

 

 

碧「……カードは見えるのに、何が書かれてるのかがくすんで見えねぇんだよ……」

 

 

 

添田くんと同じように、僕にもカード自体ははっきりと見えているのに、その表側はくすんでいてよく見えなかった。

 

 

 

凉太「どういうことだよ、思いっきり役職が書いてあるじゃねぇか……?」

 

 

泰斗「いや、字がくすんでてよく見えねぇな……」

 

 

航「……オレにもくすんで見える。どういうことだ……?」

 

 

凉太「お前らもかよ……、他のみんなもそう見えるのか……?」

 

 

美咲「うちにも、くすんで見えるなぁ……」

 

 

風里「私も同じだよ~」

 

 

 

他のみんなも僕と同じで、そのカードの表側はくすんでよく見えないみたいだった。

 

 

僕らが不思議がる中、明先生がこう言った。

 

 

 

明「と、このように、君らが持っているカードは少し特殊なもので、カードの表側はそのカードの所有者にしか見ることができないんだ」

 

 

冷音「……!」

 

 

有悟「……信じ難い話だが、それならこの状況も説明がつくな……!」

 

 

明「だから全員がカードの表側を公開しても、リングの爆破はしないし、公開しても見えないから夜に集まる必要もないぞ」

 

 

冷音「……チッ、聞こえてたのかよ」

 

 

明「……まぁな、みんな考えることは同じなんだよ。あ、相沢ごめん。カード返すな」

 

 

凉太「……なぁ、先生」

 

 

明「ん?」

 

 

凉太「……ずっと気になってたんだけど、先生はオレたちの敵なのか?それとも、味方なのか……?」

 

 

菜華「……そこ、私も気になります。私たちに殺人ゲームをしろと言ったり、一人でも多くこの島を出ろと言ったり、正直な話、先生がどちらの立場で、何がしたいのかが理解できません」

 

 

経介(……僕もそこは気になってたんだ。これまでの先生の発言や行動からは、敵味方どっちとも言い切ることができない。だから、今この機会にちゃんと知っておきたい……!)

 

 

明「……オレは……」

 

 

 

明はその問いに少し困った表情を浮かべた後、ゆっくりと、こう答えた。

 

 

 

明「……オレは、お前らの味方であり、敵だよ」

 

 

恵「……どっちつかずじゃなくて、どっちなのかを知りたいなぁ」

 

 

明「……すまないが、これは君ら自身の問題なんだ。オレからは敵味方どっちとも言えないし、どっちかも分からないんだよ……」

 

 

恵「……ふーん」

 

 

 

そう答える明先生の顔は、説明会の時と同じように、どこか悲しそうに見えた。

 

 

 

明「……まぁ、この話はこれくらいにして、明日の連絡をするぞ。明日は火曜日で、人形探しも黒い侵攻もないから、8:30から授業を行うぞ。時間割りは~……」

 

 

 

その後は先生による授業の連絡が続いた。(割愛)

 

 

 

明「あと、放課後とか授業ない日の服装は自由だからな。それじゃ、今日はこの辺で解散!」

 

 

 

そう言うと明先生は、そそくさと教室から出て行ってしまった。

 

 

教室の時計の針は13時30分を指していた。

 

 

 

友輝「んあー、太一!秋子!飯食いに行こ!飯!」

 

 

太一「……あぁ、そうだな」

 

 

秋子「行こ!行こ!」

 

 

 

理央「うちらもご飯食べに行こ!」

 

 

柚季「そうだね~!」

 

 

瞳「もうお昼かぁ、早いね……」

 

 

青葉「うどん食べよ!うどん!」

 

 

響香「あ、青葉それ賛成!」

 

 

瞳「私も賛成~!」

 

 

理央「じゃあうどんに決定~!」

 

 

 

恵「ばなな~、カフェ行こ~」

 

 

菜華「そうだな、行こうか。あとばななって呼ぶのやめてくれって言っただろ……」

 

 

恵「いいじゃんいいじゃん、今更変えるのも変だって~(笑)」

 

 

菜華「全く……」

 

 

 

美咲「今から祥子ちゃんとご飯食べに行くんやけど、唯ちゃんも一緒に行かん?」

 

 

祥子「行きませんか!!」

 

 

唯「あ、うん。嬉しい!」

 

 

祥子(沖鳥さん、相変わらず笑顔が眩しいです……)

 

 

美咲「……?」

 

 

 

経介「……」

 

 

 

そわそわ

 

 

 

泰斗「どうした?高穂、そわそわして」

 

 

経介「あ、いや、特に何も!」

 

 

 

そわそわ

 

 

 

小春「経介!桜ちゃんとご飯行こ!」

 

 

経介「行こ~♪」マッテマシター

 

 

泰斗(あいつ……(笑))

 

 

 

有悟「飯野君、少しいいかな?」

 

 

泰斗「ん?どうした?」

 

 

有悟「いや、確認したいことがあってな 」

 

 

泰斗「……?」

 

 

 

先生からの連絡が終わり、僕ら生徒は街へ繰り出したり、ご飯を食べに食堂へ向かったりと、それぞれが別の行動を取った。

 

 

僕は小春と桜とご飯を食べた後、長い間おしゃべりをして、寮にある自分の部屋に戻った。

 

 

 

~寮棟、経介の部屋~

 

 

 

経介「あぁ、やっぱり二人と話すのは楽しいや!もうこんな時間だ……(笑)」

 

 

 

部屋の掛け時計の針は、19時40分を指していた。

 

 

 

経介「……でも、ゲームの話は一度も出なかったな……。二人はこのゲームのこと、どう思ってるんだろ……?」

 

 

 

経介がそんなことを考えていた時だった。

 

 

 

ピーンポーン

 

 

 

部屋に取り付けてあるインターホンが鳴った。

 

 

 

経介(誰だろ……?)

 

 

経介「今出ます!」

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

そう言って部屋の扉を開けると、そこには一人の生徒が立っていた。

 

 

 

経介「……あれっ、担城くん!」

 

 

有悟「あぁ、突然すまないな」

 

 

経介「ううん、大丈夫だよ!それで、どうしたの?」

 

 

有悟「確認したいことがあってな。少しだけ、スマートフォンを貸してもらってもいいか?」

 

 

経介「……スマートフォンを?別にいいよ……?」

 

 

 

僕は、この時、担城くんがそう要求する意味がよく分からなかった。

 

 

 

有悟「すまない、恩に着るよ」

 

 

 

有悟はそう言って、経介からスマートフォンを受け取ると、経介の前で何かを黙々と調べ始めた。

 

 

それから少しして、調べものが終わったらしく、忙しく動かしていた手を止めた有悟が、こう呟いた。

 

 

 

有悟「……やっぱりか」

 

 

経介「……やっぱりって、何を調べてたの?」

 

 

有悟「あぁ、そのことを説明するのをすっかり忘れていたな。すまない。オレが今調べていたのは、この学園と島についてのことだ」

 

 

経介「この学園と、島について?」

 

 

有悟「そうだ。だがやはり、どれだけ調べてもこの学園や島のことは出て来ないんだ」

 

 

経介「え……?僕のスマートフォン、壊れてるのかな……?」

 

 

有悟「いや、恐らく正常だよ。オレも自分のスマートフォンが壊れているだけかと思い、飯野君のスマートフォンを借りて調べてみたんだ。でも、結果は同じだった。高穂君のスマートフォンでも、結果は変わらずだ。つまりこれは機械の故障が原因じゃないということなんだ」

 

 

経介「でも、そんなはずないよ!僕はネットでこの学園のことを知ったんだ!それなのに検索しても何もヒットしないって、絶対おかしいよ!」

 

 

有悟「……実は、オレもネットでこの学園のことを知った。そこにはゲームのことなんて、一つも書かれていなかった記憶がある。だからもう一度学園のことを調べたんだ。けど、何度検索しても何もヒットしなかった。それに、連絡先を見てみてくれないか」

 

 

経介「連絡先を……?」

 

 

 

僕は担城くんに言われた通り、自分のスマートフォンに入っている連絡先を確認した。

 

 

すると、本来そこにあるべきものが、無くなっているのが分かった。

 

 

 

経介「あれ、どうして……?」

 

 

有悟「……やはり、高穂くんもか」

 

 

経介「クラスのみんな以外の連絡先が、消えてる……!!」

 

 

 

そう、確かに入っていたはずの両親や旧友の連絡先が、一つ残らず消えていたのだ。

 

 

 

有悟「それに、ネットから情報を拾って来ることは可能なんだが、こちらから情報を発信することは出来ないようになっているみたいなんだ」

 

 

経介「……何か、意味がありそうだね……」

 

 

有悟「あぁ、学園の紹介文にゲームのことを記載していないのはまだ分かるが、学園や島のことを検索してもヒットしなかったり、島の外部との連絡が全て遮断されているのはどう考えてもおかしい。明先生の言動もそうだが、このゲームには間違いなく裏がある。高穂君のスマートフォンを借りて確信したよ」

 

 

経介「……ただの悪趣味なゲームってわけじゃなさそうだね……!」

 

 

有悟「どうやらそうみたいだな。突然の願いを聞き入れてくれてありがとう!オレはこのことをみんなにも伝えるよ!」

 

 

経介「あ、うん……!」

 

 

 

有悟は経介から借りていたスマートフォンを経介に返し、自分の部屋へと戻って行った。

 

 

 

経介「このゲームの「裏」か……。考えもしなかったなぁ……。担城くん、頭がキレるんだな……」

 

 

 

僕はこの時、ある不安を感じた。

 

 

 

経介(担城くんがもし敵陣営だったら、厄介なことになりそうだな……)

 

 

 

そう思った僕は、部屋にある掛け時計に目をやった。

 

 

時刻は、20時を越えていた。

 

 

 

経介「……20時って確か、ゲームの時間だったよね……。そして、このゲームの開催が本当なら、僕の能力は……」

 

 

 

このゲームの開催について半信半疑だった僕は少し、試してみる意味も込めて、こう言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介「……担城くんを、占います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、どこからか不思議な声が聞こえてきて、僕に一言、こう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「担城有悟は「白」です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介「今、確かに……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同時刻、教室~

 

 

 

生徒x「ねぇ、**」

 

 

生徒y「……どうしたの?」

 

 

生徒x「**は、何の役職だった……?」

 

 

生徒y「私は、人間だったよ!**はどうだったの?」

 

 

生徒x「私も、**と同じだったよ!」

 

 

生徒y「ホント?嬉しい!!」

 

 

生徒x「……私たちきっと、この島から出られるよね……?」

 

 

生徒y「……うん、絶対出られるよ!安心して!私がずっと、側にいるから!島を出た後も、ずっと、ずーっと一緒だよ!あの時二人で、約束したもん!そうだよね?私の大好きな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒y「お姉ちゃん!」

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!今回でも新しい謎が出て来ましたね!果たしてこれはどんなゲームで、最後の2人は誰なんでしょう?また、経介くんと有悟くんの今後の活躍にも期待です!


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第5話 動き出す人形ゲーム

皆さんこんにちは、めもりです。鬼スランプ状態が続き、一週間あけての投稿となってしまいました。ごめんなさい^^;それでもいつもの調子に戻って書けたかなぁと思うので、皆さんもいつも通りゆっくりして行って下さいね。それでは第5話「動き出す人形ゲーム」スタートです!


翌日 4月2日(火) 8時00分

 

 

 

~教室~

 

 

ガララッ

 

 

蓮「おはよ~っす」

 

 

碧「おはよう、蓮!」

 

 

有悟「おはよう宿井君!」

 

 

銘「おはよ~」

 

 

茜「みんなおはよ~!」

 

 

梢「銘、茜、二人ともおはよ!」

 

 

有悟「おはよう加古川さん!常磐さん!」

 

 

泰斗「……みんな教室に集まって来んの早くねぇか?授業って確か30分からだろ?」

 

 

 

授業開始までまだ結構時間があるにも関わらず、朝の教室には既に生徒全員が集合していた。

 

 

 

舞人「いや、無理もねぇだろ。あんな話聞いた後じゃ、ゆっくり寝てらんねぇよ」

 

 

泰斗「あー、まぁそうか。オレは昨日担城が言ってたことが気になっててな。ちょっと早く来て話を聞こうって思ったんだ」

 

 

美咲「うちも泰斗くんと同じ理由やなぁ。ネットの情報のこととか、ゲームの裏側のこととか、気になるとこがいっぱいあるよねぇ」

 

 

泰斗「あれ?等野もその話聞いたのか?」

 

 

美咲「うん。うちだけじゃないよ。祥子ちゃんとか唯ちゃんも、昨日有悟くんから連絡受けたみたいやし、他のみんなも知ってるんじゃないかなぁ……?」

 

 

経介「担城くん、昨日そのことをみんなに伝えるって言ってたし、もう情報は行き渡ってると思うよ!」

 

 

泰斗「……そうなのか?担城」

 

 

有悟「あぁ、もちろん全員に伝えたよ。情報の共有は大切だからな!!」

 

 

友輝「39人もいるのに一人一人に送ったのか~、オレだったら面倒だから全員には送らねぇかな~」

 

 

有悟「差別はいけないぞ、岡成君!!」

 

 

友輝「そうだけどよ~」

 

 

理央「ねぇねぇ、それならグループLINE作ろうよ!」

 

 

青葉「お、いいじゃん!確かにグループLINEなら情報共有もスムーズにできるもんね!」

 

 

有悟「なるほど。それは名案だな、枷田さん!」

 

 

理央「またまたぁ、褒めても何も出ないよ~?(笑)それに、この前撮ったクラス写真もみんなに送ってあげたいし!」

 

 

有悟「それはいいな!ならば全員が揃っていることだし、早速グループを作ろうじゃないか!」

 

 

理央「お~!!」

 

 

 

こうしてグループLINEが発足し、僕ら生徒全員がそのグループに加入した。

 

 

 

有悟「……よし!これで情報共有も簡単にできるな!」

 

 

理央「集合写真も送っといたから保存しといてね~!」

 

 

理央(後で先生にも送っとこ……)

 

 

経介(集合写真か……)

 

 

 

僕はグループに送られた集合写真を確認した。

 

 

 

経介「……」

 

 

小春「経介、何してるの?」

 

 

経介「わっ!小春かぁ、びっくりした……」

 

 

小春「ごめんごめん、おはよ!経介」

 

 

桜「きょーちゃんおはよ!」

 

 

経介「おはよう、二人とも!ちょっと集合写真を見ててね……」

 

 

小春「そうだったの!その写真、3人ともリボンが映えてていいよねぇ!」

 

 

桜「あ、それ私も思った!」

 

 

経介「ホントだ、何か嬉しいな……!」

 

 

 

3人の目には小春の緑のリボン、桜の青のリボン、経介がいつも左腕に巻いている赤いリボンの3つのリボンが、その写真の中で際立って見えた。

 

 

 

小春「……これからどんなことがあっても、ずっと、友達だからね」

 

 

桜「……うん!」

 

 

経介「……もちろんだよ。それに、僕らにはこのリボンがあるでしょ!」

 

 

小春「……そうだよね!いきなりごめんね……」

 

 

経介「ううん、大丈夫だよ!」

 

 

 

3人がそんな話をしていた時だった。

 

 

 

泰斗「それにしても、昨日担城から聞いた話、あれ一体どうなってんだろうな……?」

 

 

 

泰斗がこの島と学園についての話をし始めたのだ。

 

 

 

凉太「まぁ、色々訳分かんねぇことばっかだよな」

 

 

恵「僕もネットでこの学園について知った記憶があるんだけど、ゲームについての記載どころかページ自体が見つからないって、なんだか怪しいよねぇ」

 

 

菜華「連絡先の件もあるし、完全に島内の情報を外部に流させない気だね」

 

 

穂乃香「ってことは島に住んでる人も先生も、外部との連絡は取れないのかな……?」

 

 

有悟「どうだろうな。人形ゲームの開催範囲が島内な時点でオレたちと関わる可能性のある島民も先生と手を組んでる気がするし、生徒以外の人物は外部との連絡は可能なんじゃないかとオレは思うけどな」

 

 

梢「うーん……、開催者が先生方だと仮定するならその説は濃厚だと思うけど、あの先生の反応からじゃそうとは言い切れないですよね」

 

 

碧「このゲームの主催者が先生だとしても先生じゃなかったとしても、本当にこの島や学園のことを外部に知られたくないなら、ゲームで勝利条件を満たした生徒を島から出すなんてことは絶対にしないと思うけど、それはどういうことなんだろうな」

 

 

秋子「あ~、確かに!」

 

 

和奏「でもその先生の言動があんな調子でいまいち信用できない以上、昨日冷音が言ってたみたいにこのゲームが開催されてるって話自体が嘘か本当か分からないし、もし嘘なんだったら嘘なんだったでゲームで勝利条件を満たした生徒を島から出すって言葉もただの出任せになるしね」

 

 

冷音「……」

 

 

初「んー、結局そこなんだよなー。何かゲームの開催がホントだって言える証拠みたいなのはねぇのかー?」

 

 

 

僕は小越さんのこの発言を聞いて、ある決断をした。

 

 

 

経介(僕が、みんなの力にならなくちゃ……!)

 

 

経介「あの……」

 

 

泰斗「ん?どーした?高穂」

 

 

経介「僕、実は昨日ある人を占って、その占い結果がちゃんと返ってきたんだ…!」

 

 

桜「え!」

 

 

小春「経介占い師だったの?!」

 

 

泰斗「まじか!予想外だなこりゃ」

 

 

有悟「本当か、高穂君!!」

 

 

 

当たり前のことだけど、僕の突然の占い師CO(Coming Out ※自身の役職を明かすこと)に、みんなが驚きを隠せない様子だった。

 

 

 

経介「うん、本当だよ。昨日このゲームの開催が本当かどうかを確認する意味も込めて、20時過ぎに占いをしたんだ。そしたらさっき言ったみたいに占いの結果が返ってきたから、ゲームの開催は恐らく、嘘じゃなくて本当のことなんだと思うよ」

 

 

千優(そんな……)

 

 

 

経介の言葉を聞いた千優は、不安に押し潰されそうな顔をしていた。

 

 

 

桜「千優ちゃん……」

 

 

青葉「大丈夫だよ、千優ちゃん!私も人の血とか見るのは苦手だけど、まだゲームの開催が本当って決まったわけじゃないよ!」

 

 

千優「…栄さん……ありがとう…!」

 

 

青葉「いーえ!」

 

 

恵「……ま、ゲームの開催が嘘か本当かって話は置いといて、経介くんは誰を占ったの?結局大事なのはそこでしょ」

 

 

経介「…そうだね、ごめん。僕が昨日占ったのは……」

 

 

??(…やめて……!!)

 

 

??(…ん?)

 

 

経介「……君だよ、担城くん!」

 

 

有悟「…オレか……!」

 

 

恒也「…なんで有悟にしたんだ?どこか怪しかったのか?」

 

 

経介「いや、怪しかったとかじゃなくて、昨日の担城くんの洞察力と行動力を見て、もし敵だったら怖いなと思って占ったんだ」

 

 

恒也「なるほどな。確かに有悟が敵だったら怖ぇよな……」

 

 

経介「うん。でも安心して、担城くんは白だったから!」

 

 

有悟「…感謝するよ、ありがとう!高穂君!」

 

 

経介「…うん!」

 

 

 

僕は感謝されてとても気分が良かった。でも、冷静さは欠いていなかった。

 

 

 

航「…こんなこと言うのはアレかも知れないけど、まだ高穂が占い師って確定した訳でもないし、担城が100%白だと言える訳でもないからな」

 

 

真琴「……言うじゃん。普段そんなに喋らないくせに」

 

 

経介「それは分かってるよ…!でも、僕は本当に占い師だよ。自信を持って言える!」

 

 

有悟「オレも本当に白だ」

 

 

航「…ま、その可能性は高いんじゃない?」

 

 

雪紀「とりあえずは二人とも白ってことにしとこ!」

 

 

初「そうだなー、今一番信用できるのはお前らだからなー」

 

 

蓮「ならよ、他に自分こそ占い師だって奴はいねぇのか?確かもう一人占い師がいたハズだろ?」

 

 

怜菜「……それはあまり言わない方がいいんじゃない?」

 

 

蓮「え」

 

 

銘「影ノ主が今回殺害権を持っているケースを考えると、占い師が2名名乗り出ちゃった場合、騎士が3人しかいないせいで確実に守り切ることができずに早々に人間陣営が重要な役職を失っちゃう可能性が高いからじゃないかな?」

 

 

怜菜「…うん。そんなところ」

 

 

蓮「あ、なんかすいませんでした」

 

 

白夜「でも他の占い師の結果も知りたいなって私は思います……」

 

 

晴「……僕も、そっち派かなぁ……」

 

 

理央「んー、どっちも正当な意見だよねぇ」

 

 

有悟「ならば、もう授業開始まで時間もないし、こんなのはどうだ?」

 

 

祥子「もうこんな時間…!」

 

 

 

教室の時計の針は、もうすぐ8時30分を指そうとしていた。

 

 

 

舞人「…で、こんなのって?」

 

 

有悟「…もう一人の占い師が既に誰かを占っていて、その人物の占い結果が黒だったなら、今この場で2人目の占い師に出て来てもらおうと思ったんだが、どうかな?」

 

 

柚季「いいんじゃないかな……?」

 

 

太一「オレは賛成だな~」

 

 

美咲「うちも賛成!まぁでも、それだったら既に出て来てると思うけどね…(笑)」

 

 

 

その後も、教室には賛成の声が相次いだ。

 

 

 

有悟「…等野さんの言うことも最もだが、これで決まりで良さそうだな!それじゃあ、そんな占い師がいたら名乗り出てくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、授業が始まるまで、僕らはもう一人の占い師のCOを待った。

 

 

でも、結局誰も名乗り出ることは無かった。

 

 

 

ガララッ

 

 

 

明「よーし、それじゃ、授業を始めるぞ!!」

 

 

生徒「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくの時が流れ、午前の授業が終了し、教室の時計の針は12時30分を指していた。

 

 

昼休みの時間だ。僕らの入学後最初の、昼休みの時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、そんな昼休みは、ただでは終わらなかった。

 

 

みんなが授業を終え、教室から食堂へと向かおうとしていた時、一人の生徒が突然、みんなを呼び止めたのだ。

 

 

 

凉太「……なぁみんな、聞いてくれ!」

 

 

友輝「どーした?凉太」

 

 

 

相沢くんの呼び掛けに、クラスみんなが教室の外へ向かう足を止め、彼の方に注意を向けた。

 

 

そして、クラス全員の注目を浴びる中、彼はこう言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凉太「オレ、実は占い師なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮「……っまじか!!」

 

 

有悟「……なるほど、相沢君がもう一人の占い師なのか!」

 

 

秋子「なんかめっちゃ頼りになりそう!」

 

 

凉太「…おう、それである人物を占ったんだけど……」

 

 

??「……待て」

 

 

凉太「……?なんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凉太「……冷音」

 

 

冷音「……オレが、占い師だ」

 

 

経介「…えっ」

 

 

小春「……えっ、ちょっ……、どーゆーこと??」

 

 

穂乃香「お兄ちゃんも、占い師なの……?」

 

 

 

教室がざわつき始め、状況が整理できず、混乱に陥る生徒も何人かいた。

 

 

 

凉太「……お前それ、本気で言ってんのか……?」

 

 

冷音「……あ"?当たり前だろ。お前こそ、それ本気で言ってんのかよ」

 

 

経介(……マズイ……)

 

 

菜華「……占い師が3人か……、誰か一人は必ず嘘をついてるな」

 

 

経介(……僕にも、疑いがかかるぞ……)

 

 

茜「……多分、この3人の中に、影人形陣営の人がいるね」

 

 

恵「……とりあえず、2人が誰を占ったのか教えてよ」

 

 

冷音「……オレは昨日、穂乃香を占って白だった。だからさっきは名乗り出なかった」

 

 

恵「……なるほどね。それで、凉太くんの方は?」

 

 

凉太「……オレは朝の時間、高穂が占いの話をし出した時、ある人物が不安そうな表情をしていたのを見たんだ」

 

 

経介(……ある、人物……?)

 

 

凉太「オレは今朝まで特に怪しいと思う人物が見つからず、まだ誰も占ってなかったから、その人物を占おうと思ったんだけど、それに気付いた時は生憎のゲーム時間外だったから占えず、あの場で名乗り出ることができなかったんだ」

 

 

初「……確かに、あの時間に気付いても8時から12時の間はゲーム時間外だから占えねーよなー」

 

 

凉太「あぁ。そこでオレは午前の授業が終わって一段落つける昼休みに、その人物を占うことにしたんだ」

 

 

冷音「……あ"ーうぜぇ、勿体ぶってねぇでさっさと答えろよ!!」

 

 

泰斗「まぁまぁ、落ち着け、冷音。それで、結果はどうだったんだ?」

 

 

凉太「……案の定、黒だったよ」

 

 

泰斗「……まじか!」

 

 

真琴「やば。黒当てるとか凄くね?」

 

 

舞人「ってかホントに判定出んだな。なんか怖ぇ」

 

 

有悟「……それは、誰だったんだ?」

 

 

凉太「その人物とは……お前だよ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凉太「姫野!」

 

 

祥子「……!!」

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!3人の占い師が登場し、いよいよゲームが始まったぞ!って感じですね。果たして本当の占い師は誰と誰なんでしょうか?そして、経介たち生徒は島と学園の謎を解き明かすことはできるのか?それではまた、次話でお会いしましょう!


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第6話 思いと考え

皆さんこんにちは、めもりです。最近投稿ペースが落ちつつありますが許して下さい(..)ゲームが始まり、順番を間違えてはならないと、書くのも見ての通り慎重になってきましたが、楽しい小説をお届けできるよう、今回も頑張りました!それでは第6話「思いと考え」スタートです!


凉太「黒はお前だ……姫野!」

 

 

祥子「……!!」

 

 

 

占い師を名乗る凉太が言ったのは、祥子の名前だった。

 

 

 

蓮「……っまじかよ!!」

 

 

真琴「黒ってことはこいつ影人形なの?ヤバっ、超怖いんだけど」

 

 

祥子「違います!!…私は………」

 

 

友輝「まじかぁ~、姫野良い奴だと思ってたんだけどな~」

 

 

碧「待てよ、まだ祥子ちゃんが影人形だと決まった訳じゃないだろ?それに言いたいことだってあるだろうし、ひとまずは彼女の話を聞こうよ」

 

 

恵「そうだね~。でも僕は話を聞く前に、祥子ちゃんの役職が知りたいなぁ」

 

 

祥子「私は……ただの人間です!影人形なんかじゃありません!だからこれ以上、自身の潔白を証明することはできないけど、どうかお願いします……。私を、殺さないで下さい……!!」

 

 

恵「……ふーん、人間ねぇ……」

 

 

祥子「…っ本当です!!」

 

 

凉太「……人間なんだったら、今朝高穂の占い先の話が出た時に見せた、あの不安そうな表情はなんだったんだよ」

 

 

祥子「あれは……下手に占われて、黒と出るのが怖かったんです。白だって言われたとしても、皆さん視点確定で白になる訳ではないですから、それなら変に占われて目を付けられる方が嫌だって思ってたんです!皆さんだって、その結果勘違いをされたら困るでしょう?ましてや命が懸かってるかも知れないこの状況下でですよ!?」

 

 

凉太「……どうだかね。確かにまだ姫野が確定で黒だと言い切ることはできないけど、オレには苦し紛れの言い訳をしてるようにしか見えねぇな」

 

 

祥子「そんな……」

 

 

 

そう言う祥子の表情は、より一層不安さを増しているように見えた。

 

 

 

千優「姫野さん……」

 

 

 

祥子を心配する人も、彼女にどう声をかけて良いのか分からず困っている中、一人の生徒が口を開いた。

 

 

 

美咲「……なぁ、なんで皆は祥子ちゃんを信用しようとせんの?」

 

 

祥子「……!」

 

 

真琴「あ。なになに、ひょっとして影人形のお仲間さん?」

 

 

凉太「……信用するも何も、この表情と反応に黒判定だぜ?疑わねぇ方がおかしいだろ」

 

 

美咲「……誰だって不安な気持ちになるよ。もし自分が占われて、黒だって言われたら嫌やもん。皆自分の命は大切でしょ?だったらその大切な命を必死で守ろうとする祥子ちゃんの気持ちも分かるでしょ?だからたった一回だけ、不安そうにしてたからって理由で責めるのは止めやん?黒って出た事実は変わらないし、皆が自分の命を守るために黒出しされた祥子ちゃんを攻撃してるのは分かるよ。でもそれが勘違いだったら、取り返しのつかないことになっちゃう。このことを一生後悔することになっちゃう。だから黒だって割り切るんじゃなくて、白黒両方の可能性を考えて接してあげるのが、うちは一番良いと思うんよ……」

 

 

祥子「等野さん……」

 

 

 

祥子はそんな美咲の言葉に、今にも泣き出してしまいそうであった。

 

 

 

祥子「ありがとうございます。等野さん……!」

 

 

美咲「ううん、感謝されることなんて何も無いよ。うちはただ、思ったことを言っただけやし」

 

 

有悟「まぁでも実際、オレは高穂君に白判定を出されたから今は安心していられるが、判定を聞かされる前は顔には出さずとも不安な気持ちだったし、相沢君に限らず姫野さんや等野さんの言ってることも正しいと思うな」

 

 

穂乃香「私も、有悟くんと同じ意見かな……」

 

 

凉太「……んー、オレも思ったこと言っただけだけど、影人形を見つけたい気持ちが焦ってちょっと言い過ぎたかもな、悪ぃ」

 

 

 

そんな生徒たちの言葉で、さっきまでの少し険悪だったムードが和らいだ気がした。

 

 

 

理央「でもなんかスッキリしないね。結局祥子ちゃんの白黒ははっきりしないままだし、占い師だって誰が本物か分かんないし!」

 

 

初「確かにそうだよなー。折角色んなヒントが出たんだし、何か活かす方法はねーのかー?」

 

 

縁「だったら、次の占いで高穂くんと木陰くんに姫野さんを見てもらったらどうかな……?」

 

 

雪紀「あ、それ良いと思う!それなら祥子ちゃんが白か黒かもほぼ分かるだろうし、誰が占い師なのかを判断する良い基準になりそうだもんね!」

 

 

経介「……なるほど。確かに良いかも!」

 

 

冷音「……オレは賛成だな。嘘つき野郎を炙り出せる良い機会になりそうだし」

 

 

凉太「オレもそれでいいけど、どーせお前らのどっちかが偽物なんだから、その偽物が黒の姫野に加担して白出しするせいで、姫野の白黒はお前ら視点でははっきりしないと思うけどな」

 

 

祥子「……っですから私は……!!」

 

 

凉太「……間違っていたら悪いが、オレは姫野の言い分よりも自分の占いを信じる。姫野に白出しした方が偽物の占い師だと判断するつもりだ」

 

 

祥子「……」

 

 

恵「……とりあえずはその流れで良さそうかな?」

 

 

菜華「じゃあこのまま何も起きなければ、3日後の人形探しはほぼ全員が「行わない」を選択する運びになるな」

 

 

和奏「えーっと……、そうだね!」

 

 

有悟「……よし、話も大方片付いたところだし、そろそろお昼にしないか?食事は大事だからな。昼休みが終わる前にしっかりと食べておかなければ!」

 

 

泰斗「ありゃっ、結構時間経ってんのな……」

 

 

 

教室の時計の針は昼休み終了の20分前を指していた。

 

 

 

秋子「うちもーお腹ペコペコ~」

 

 

太一「オレも結構腹減ったし、食堂行こうぜ。友輝も一緒に!」

 

 

友輝「お~」

 

 

蓮「オレらも飯行こうぜ」

 

 

凉太「そうだな。カレー食いてぇ」

 

 

美咲「祥子ちゃんも食べに行こ?唯ちゃんも!」

 

 

祥子「はい……!」

 

 

唯「……えと……うん、ありがとう!」

 

 

桜「あ、黒板消さなきゃ……」

 

 

千優「桜ちゃん手伝うよ!」

 

 

桜「ホント?いつもありがとね!」

 

 

小春「私も手伝う!」

 

 

桜「ありがと~!」

 

 

有悟「あ、あと次の授業は実験室集合だから忘れるなよ!場所は多目的棟2階の……」

 

 

碧「分かってるって(笑)有悟もさっさと食って遅刻しねぇようにしろよ!」

 

 

有悟「もちろんだ!!」

 

 

暦(眠い……)

 

 

 

そんなこんなで僕らの波乱の昼休みは、瞬く間に過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らはその後、4月5日に人形探しを行わない選択をしたこと以外、至って普通の学園生活を送った。

 

 

そしてそれ以降、人形ゲームに目立った動きが見られないまま、僕らは4月9日の火曜日を迎えていた……。

 

 

 

 

 

4月9日(火)

 

 

~教室~

 

 

 

ガララッ

 

 

 

恒也「……あれ、高穂じゃん。どーした?」

 

 

経介「あ、いや、昨日教室に水筒を忘れちゃってね。思い出して取りに来たんだ」

 

 

恒也「なるほどな~」

 

 

真琴「……」

 

 

縁「……」

 

 

 

今日は人形ゲーム開始後初の黒い侵攻の前日ということで、学校は特別に休校となり、教室には僕を含めて4人しかいないせいか、とても静かであった。

 

 

 

経介「……日野くんは、何してるの?」

 

 

恒也「ん?あぁ、オレはいつも持ち歩いてる小説を読んでんのよ。寮より教室の方が日当たりが良くて暖けぇからな」

 

 

 

静かな教室には暖かな日の光が差し込んでいた。今日は雲一つない快晴である。

 

 

 

経介「へぇ、いつも持ち歩いてるってことは、その小説がとても好きなんだね……!」

 

 

恒也「……そうだな。これはオレの一番好きだった小説だよ」

 

 

経介「好き……だった……?それはどんな小説なの?」

 

 

恒也「……これは主人公と2人のヒロインの学園生活を描いた恋愛小説だよ」

 

 

経介(2人の……!)

 

 

経介「……それって、どんな結末なの……?」

 

 

恒也「……さぁな」

 

 

経介「さぁなって……、気になるから教えて欲しいけど……ダメかな?」

 

 

恒也「……教えるも何も、分からねぇんだよな。結末が」

 

 

経介「え……?」

 

 

恒也「この小説は未完でな。作者が自殺したんだ。それ以降、この物語の時計の針は止まったままなんだよ」

 

 

 

恒也は窓の外を眺めながら、落ち着いた声でそう言った。

 

 

 

経介「そうなんだ……、よく知らないでごめんね。……でも珍しいね、出版された小説とかって普通は……」

 

 

 

経介がそう言った時だった。

 

 

 

真琴「……おい、縁」

 

 

 

真琴が突然、縁の名前を呼んだ。

 

 

 

縁「……はい……」

 

 

真琴「喉渇いたから、ジュース買ってきて」

 

 

縁「え……いや、でも……」

 

 

真琴「いーから早く!どーせ暇でしょ?縁中学校からずーっと友達いないんだし」

 

 

縁「……」

 

 

経介(……酷いな。何もそこまで言わなくても……)

 

 

恒也「おい四宮、そこまで言う必要はねぇだろ」

 

 

真琴「……人の話に勝手に首突っ込まないでくれる?それに事実だし」

 

 

恒也「いーや、首突っ込まずにはいられないね。檻鶴どう見ても嫌がってんだろ。やめてやれよ。お前がやってるのは立派ないじめだ」

 

 

縁「……」

 

 

真琴「何?あたしらにとってはこれが普通なの。人を下げてヒーロー気取ってカッコつけですか?ちょーキモいんですけど」

 

 

恒也「……お前……」

 

 

 

怒りがこみ上げ、恒也が席を立とうとしたその時だった。

 

 

 

縁「あの!」

 

 

恒也「……何だ?檻鶴」

 

 

縁「えと……、気にしてくれてありがとうございます。でも、私は大丈夫ですから……」

 

 

恒也「……それ、本当か?」

 

 

縁「……はい」

 

 

恒也「……無理だけはするなよ。オレはいじめを見るのが一番嫌いで許せない。辛かったらいつでも相談に乗るよ」

 

 

経介(日野くん……!)

 

 

縁「あ、ありがとうございます!それでは私は頼まれた物を買って来ますので……」

 

 

 

そう言うと縁は教室を出て行ってしまった。

 

 

 

真琴「……」

 

 

恒也「……」

 

 

経介「……」

 

 

経介(……気まずい!!なんだこの嫌な空気は!いやまぁ確かにこうなるのも仕方ないけどさ!でも2人にこの関係のまま過ごして欲しくないし、何とか仲直りさせたいけど今の僕にはどうすることも……)

 

 

 

僕がそんなことに頭を悩ませていた時だった。

 

 

 

ガララッ

 

 

 

明「ふんふーん♪って、うおっ!お前らこんなとこで何やってんだよ……」

 

 

 

鼻歌を歌いながら明先生が教室に入って来た。

 

 

休校にも関わらず教室に生徒がいたことに驚いたらしい。

 

 

 

経介「僕らはまぁ……色々です。先生こそどうしたんですか?」

 

 

明「色々ねぇ……?オレは枷田から送ってもらったクラス写真を貼りに来たのさ。綺麗に印刷できたぞ~♪」

 

 

経介(写真を……!)

 

 

 

明はそう言うと教室の後ろの壁にクラス写真を貼り始めた。

 

 

 

明「ふんふーん♪」

 

 

経介(先生、上機嫌だなぁ……)

 

 

真琴「……ねぇ先生」

 

 

明「……なんだ?四宮」

 

 

真琴「明日誰か死ぬかも知れないのに、よくそんな呑気に鼻歌なんか歌ってられるね。今日9日だよ、分かってる?それにこのタイミングで教室にクラス写真貼るって、先生一体どんな神経してんの?」

 

 

恒也「……もしかして……!」

 

 

明「そうだな」

 

 

恒也「!」

 

 

明「確かに明日、誰かが居なくなるかも知れない」

 

 

恒也(……なんだよ……)

 

 

真琴「うわ、分かっててやってるとか頭おかしいでしょ」

 

 

明「頭がねぇ。オレはただ、今この瞬間を楽しんでるだけだよ。明日は明日、今日は今日だ。オレはお前らにもいつ死んでも後悔のないよう、毎日を過ごして欲しいと思ってる。だからオレは、その見本にならなきゃいけない」

 

 

真琴「……は?ふざけるのも大概に……!」

 

 

明「ふざけてなんかいない。これが双子島学園教師の、あるべき姿なんだよ」

 

 

 

明は妙に落ち着きのある声でそう言った。

 

 

 

真琴「何だよ……、お前……」

 

 

経介(双子島学園教師の、あるべき姿……)

 

 

恒也「……」

 

 

明「と、まぁそんな訳で、お前らも折角休校にしたんだから、外行って色々楽しんで来いよ!オレは用事があるから職員室に戻る!じゃあな!」

 

 

経介「あ!ちょっと待って下さい、先生!」

 

 

 

ガララッ

 

 

 

明はそう言うと教室を出て行ってしまった。

 

 

 

恒也「……」

 

 

 

ガララッ

 

 

 

経介(日野くん……!)

 

 

 

真琴「……」

 

 

 

ガララッ

 

 

 

経介(四宮さんも……!)

 

 

 

こうして教室は僕一人だけとなった。

 

 

 

経介「……今を楽しむ。か……」

 

 

 

ヴーッヴーッ

 

 

 

経介「わっ!」

 

 

 

突然、一人静かな教室に振動音が鳴り響いた、経介のスマホのバイブレーション機能が作動したのだ。誰かから電話がかかってきたらしい。

 

 

 

ヴーッヴーッ

 

 

 

経介「びっくりしたなぁ、誰だろ……?」

 

 

 

経介がそう言って画面を確認すると、それは小春からの着信であることが分かった。

 

 

 

経介(小春から……!なんだろ……?)

 

 

経介「はい~?」

 

 

小春「あっ、経介!突然ごめんね!」

 

 

経介「うん。別にいいけど、どうしたの?」

 

 

小春「えっとね、今島の南西にある海岸に来てるんだけど、景色がすっごく綺麗なの!」

 

 

経介「南西の海岸?へぇ、そんなに綺麗なの?」

 

 

小春「そう!だから経介にも見て欲しいなって思って電話したの!今隣に桜ちゃんもいるんだけど、すぐ来ることって出来ないかな……?」

 

 

経介(……2人は、今を楽しんで生きてるんだな……)

 

 

 

ふと、経介の頭に先程の先生の言葉が蘇った。

 

 

 

経介(……確かに、今どれだけ悩んだって、それは意味のないことなのかも知れないな)

 

 

小春「経介?」

 

 

経介(……僕はゲームのことなんて忘れて、毎日24時間を楽しんで生きるなんてことは出来ないけど、息抜きをするのは必要なことだよね)

 

 

小春「おーい、経介ー?」

 

 

経介(何より、僕の体がそうしたいってうずうずしてる。やっぱり僕はどんな状況になったって、2人と過ごす時間が本当に好きなんだ。それだけは変わらない)

 

 

 

そう気付いた経介の顔に、自然と笑みがこぼれた。

 

 

 

小春「経介ってばー!!」

 

 

経介「ごめんごめん!ちょっと考え事しててさ」

 

 

小春「考え事~?」

 

 

経介「うん。それで、南西の海岸だったよね?すぐに行くから待ってて!」

 

 

小春「……うん!」

 

 

 

僕は小春の返事を聞く前に、2人の待つ海岸へと走り出した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガララッ

 

 

 

縁「真琴ちゃん、ジュース買って来たよ……ってあれっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同日20:00 銭湯~

 

 

 

理央「あ"~、いい湯だ!」

 

 

響香「おっさんみたいな声出さないの……」

 

 

理央「出ちゃうね!これは!」

 

 

柚季「分かるよ!あったかくて落ち着くよね~♪」

 

 

青葉「んー、あったかいけど私長いこと入ってると……」

 

 

瞳「……」

 

 

 

ブクブクブク

 

 

 

青葉「こうなるから」

 

 

理央「瞳大丈夫?!こうなるからじゃなくてね!!」

 

 

響香「もう逆上せたの?まだ10分くらいしか経ってないのに」

 

 

柚季「いや、10分は十分長いよ……」

 

 

青葉「あ、もしかして柚季ちゃんも長居できないタイプ?」

 

 

柚季「……恥ずかしながら(笑)」

 

 

響香「無理しないでいいよ。3人が倒れる前に出よっか」

 

 

柚季「響香ちゃん助かる……」

 

 

瞳「うっ……」

 

 

響香「瞳、起きて!出るよ!」

 

 

青葉「理央ちゃんも出よ?」

 

 

理央「んー、私もうちょっと居てたいかなぁ」

 

 

柚季「いいよいいよ、外で待っとくし!」

 

 

理央「ううん、大丈夫。響香が残ってくれるから!」

 

 

響香「えっ、私?!いや、別にいいけど……。青葉、瞳のこと頼める?」

 

 

青葉「うん、大丈夫だよ!ごゆっくり~」

 

 

響香「ごめんね!」

 

 

柚季「ごゆっくり~!」

 

 

瞳「うぅ~」

 

 

 

そのまま響香と理央の2人は、浴場から3人が出て行くのを見送った。

 

 

 

理央「あの子ら大丈夫かな?フラフラだったけど……」

 

 

響香「心配だったからついて行こうと思ったのに!」

 

 

理央「ごめんごめん(笑)でも私、響香と2人きりになりたくてさ」

 

 

響香「えっ、何?」

 

 

理央「大したことじゃないんだけど、ちょっとお話が……ね」

 

 

響香「……?」

 

 

 

 

 

 

 

~同日22:00 寮棟2階~

 

 

 

美咲「おやすみ!祥子ちゃん」

 

 

唯「おやすみ!」

 

 

祥子「おやすみなさい!」

 

 

 

バタン

 

 

 

美咲「さて、うちらも部屋に戻ろっか!」

 

 

唯「そう……だね!」

 

 

 

唯は今日もニコニコしている。

 

 

 

美咲「……今日は色々ありがとね!ご飯とかショッピングとか展望台までついて来てくれて」

 

 

唯「ううん、大丈夫!」

 

 

美咲「最近色んなとこ連れ回しちゃってるから、迷惑じゃないかなぁと……」

 

 

唯「全然!迷惑じゃないよ!」

 

 

美咲「ホント?なら嬉しいんやけど……」

 

 

唯「ホントだよ!今日の展望台とかも楽しかったよ!晴くんの星についての熱い語りにはびっくりしたけど……」

 

 

美咲「あの子は晴れてる日の夜はいつもあそこに居て、いつも楽しそうに星のこと語ってくれるんよ!」

 

 

唯「へぇ!意外だね!」

 

 

美咲「うちも最初はびっくりした!また行こな!」

 

 

唯「うん!」

 

 

美咲「それじゃ、おやすみ!」

 

 

唯「おやすみ!」

 

 

 

バタン

 

 

 

唯「……はぁ……」

 

 

 

部屋に入ると、唯のいつもの笑顔は嘘の様に消えた。

 

 

 

唯「……ただいま、私」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~4月10日(水) 寮棟n階とある部屋~

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

生徒x「いたのか、あまりに静かだからいねぇのかと思ったぜ」

 

 

生徒y「……」

 

 

生徒x「それで今日は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒x「誰を殺るんだ?」

 

 

 

血にまみれた黒い侵攻が今、始まる……

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!いよいよ!いよいよゲームイベントが動き出しました!真の占い師は誰なのか?最後の会話は誰と誰のものなのか?気になるその答えは……ずっと先にあるかも知れません(笑)


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第7話 不安募る朝に

皆さんどうもこんにちは!お久しぶりです、めもりです。この度はリアルの方が忙しく、2ヶ月開いての投稿となってしまったこと、申し訳なく思っています。ですが、今後もこのように投稿期間が大きく開くことが度々あると思います。それでも失踪だけはしないので、気長に気長に待っていただけたら幸いです。前書きが長くなりましたが、それでは第7話「不安募る朝に」スタートです!


経介「ん……」

 

 

 

小窓から差し込んだ光が部屋を照らす。朝だ。

 

 

 

経介「眩し……」

 

 

 

経介は光に目を細めつつ、枕元に置いてあったスマホを手に取った。時刻は朝の6時だった。

 

 

 

ピコン

 

 

 

突然、経介のスマホの通知音が鳴った。どうやら誰かがLINEグループにメッセージを送信したらしい。

 

 

 

経介「こんな朝早くに、誰だろ……?」

 

 

 

経介が確認のためグループLINEを開くと、そこには送信者である有悟の名前と、とある一つのメッセージが表示されていた。

 

 

 

有悟<念のため生存確認がしたい。全員7時までに食堂に集まってくれ>

 

 

 

経介「生存確認……?あぁ、そうか。今日は、黒い侵攻の日か……」

 

 

 

経介はそう呟くと部屋を見まわした。ここに来てから10日ばかり経ったが、やはりそこにはいつもと同じ表情をした景色があった。

 

 

 

勿論、彼は今日の日のことを忘れていた訳ではない。忘れるなんてできるはずがない。ただ信じられないだけだった。彼は先陣を切ってこのゲームの実施が本当であると証明しようとした。だが、もしそうだとすると、今日クラスメイトの誰かが消えてしまうかも知れないのだ。いつもと何も変わらない様に見える今日この日にだ。どれだけこの人形ゲームが本当だと言える強い証拠を握っていたとしても、そんな話を簡単に受け入れることなど、彼に限らずどんな人間にもそう容易くできるものではないのだ。

 

 

 

経介「ちょっと早いけど、仕度して食堂行こ……」

 

 

 

 

 

 

 

~食堂~

 

 

 

ガララッ

 

 

 

有悟「おはよう!高穂君。君も早いな」

 

 

経介「あ、おはよう!担城くん。まだ早いはずなのに結構集まってるね」

 

 

有悟「あぁ。だが早いのに越したことはないさ」

 

 

経介「まぁ、そうだよね……って、あれっ」

 

 

有悟「ん?どうしたんだ?」

 

 

 

経介は何かに気付いて少し驚いた様子を見せた。

 

 

 

経介「小春じゃん、おはよ。こんな早くに来てるなんて珍しいね」

 

 

小春「おはよー経介。昨日は怖くて中々寝れなくてね……」

 

 

経介「あー、そっか……」

 

 

太一「オレも昨日は怖くて寝れたもんじゃなかったぜ」

 

 

青葉「私も全然寝れなかったんだよね~」

 

 

響香「私も~」

 

 

経介(みんなよく眠れなかったんだな……。それもそうか、黒い侵攻が本当だとしたらゲーム時間は4時からだし、寝てる間に殺される可能性だってあるもんな……)

 

 

青葉「あ、響香ちゃんもなんだ。あんなこと言われたらやっぱり怖いもんね……」

 

 

響香「あ、まぁそうなんだけど、私は……ね」

 

 

 

響香は青葉に向けていた目を別の方角へ向けてそう答えた。

 

 

 

青葉「……?」

 

 

 

経介「あれ、そういえば桜は?」

 

 

小春「んー、それがまだ来てないみたいなんだよね……」

 

 

経介「そっか、桜にしては珍しいね」

 

 

小春「んー、まだ7時までは時間あるし、来てなくても別におかしくはないんだけどね」

 

 

経介「そっか、そうだったね」

 

 

 

食堂の時計の針は6時45分を指していた。

 

 

 

有悟「おはよう!百園さん、沖鳥さん」

 

 

和奏「あ、おはよう担城くん」

 

 

唯「おはよう!」

 

 

 

ニコッ

 

 

 

有悟「おはよう!冷音君」

 

 

冷音「……はよ」

 

 

有悟「おはよう!~さん」

 

 

有悟「おはよう!~君」

 

 

 

その後も何人かの生徒がメッセージを読んで食堂に現れ、ほとんどの生徒が食堂に集結した形となった。

 

 

 

有悟「……さて、あと来てないのは二人だけか……?」

 

 

銘「祥子ちゃんと桜ちゃんだね」

 

 

有悟「あぁ、他の生徒は全員ここにいるみたいだな」

 

 

小春「桜ちゃん、遅いね……」

 

 

経介「うん……」

 

 

 

食堂の時計の針は、もうすぐ7時を指そうとしている。

 

 

 

美咲「祥子ちゃん遅いなぁ……、まだ寝てるんやろか……?」

 

 

千優(桜ちゃん、どうしたんだろ……)

 

 

 

生徒らがそんなことを思い始めた、その時だった。

 

 

 

ガチャ

 

 

 

突然、食堂の扉が開く音がした。誰かが食堂に入ってきたらしい。

 

 

 

美咲「あ……、祥子ちゃん!!」

 

 

有悟「おはよう!姫野さん。何かあったのかい?」

 

 

祥子「おはようございます。等野さん、担城さん。ギリギリですいません、疲れからか長い時間眠ってしまっていて……」

 

 

 

祥子は申し訳なさそうにそう説明した。

 

 

有悟「いやいや、何も謝ることはないさ。昨日は色々大変で疲れも溜まっていただろうし、オレも連絡が随分急になってしまったからな。まぁ、座ってゆっくりしてくれ」

 

 

祥子「ありがとうございます……」

 

 

 

祥子はそう言うと、美咲の隣の席に腰掛けた。

 

 

 

有悟「さて、姫野さんが来て7時になったが、まだ淀屋さんが来てないな……」

 

 

菜華「……確かにもう7時だけど、まだ見に行かなくても大丈夫じゃないか?姫野さんみたいに連絡に気付かずに寝てるのかも知れないし」

 

 

恵「僕もそう思うな~」

 

 

有悟「なるほど、硯さんや西木さんたちはそれでいいか?君らが一番不安に感じてるだろうから、この考えに対して意見をもらいたいのだが」

 

 

小春「え、あ、私は……うん。あと10分くらいなら待ってられる……かな」

 

 

千優「私も、そのくらいなら待ってられます……」

 

 

有悟「……分かった。なら7時10分まで淀屋さんを待とう。それでも来なかったら、彼女の部屋まで様子を見に行こうか」

 

 

友輝「了解~」

 

 

小春(大丈夫……だよ、ね……?)

 

 

 

そのまま彼らは様々な思いを胸に、桜が食堂に現れるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時刻は朝の7時10分を迎えた。

 

 

 

有悟「……時間だな」

 

 

雪紀「結局、来なかったね……」

 

 

蓮「普段からしっかりしてる人なだけに心配だよな」

 

 

暦「もっ、もももしかしてもう既に……」

 

 

初「は?なんだよお前!突然怖えーこと言うなよな!」

 

 

暦「ひぃぃ!!ごめんなさいぃぃ!!」

 

 

茜「や、暦ちゃんがそう考えるのも無理はないと思うよ。元々はそれを確認するための有悟くんの提案だもん」

 

 

初「でもよ~」

 

 

茜「うん、分かってる。私だって不安だよ。でもきっと大丈夫、だから一緒に様子見に行こ?」

 

 

初「んー怖えけど、そうだな。行くか~」

 

 

有悟「淀屋さんの部屋は確か、今オレらがいる場所のちょうど真上の辺りだったよな」

 

 

 

有悟がそう言って食堂を出ようとした時だった。

 

 

 

小春「あ、いいよいいよ」

 

 

有悟「うん?」

 

 

小春「女子の何人かで様子見に行くから、有悟くんはここで待ってて。ほら、私たちもう高校生だし、それに様子見程度なら何人も要らないし……ね」

 

 

有悟「うむ、それもそうだな。じゃあ様子見は頼んだぞ」

 

 

小春「うん。分かった!」

 

 

 

小春たちがいよいよ桜の様子を見に行こうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタンッ

 

 

 

食堂の扉が勢いよく開いた。

 

 

 

「ハァハァ……」

 

 

太一「あっ」

 

 

友輝「おっ」

 

 

秋子「あー!」

 

 

 

 

小春「桜ちゃん!!」

 

 

経介「桜!!」

 

 

桜「ハァハァ……、ごめんなさい。遅れちゃって……」

 

 

 

そう謝ると桜は、扉に俯いてもたれ掛かった。肩で息をして、とても疲れている様子だ。

 

 

 

有悟「いや、寧ろ謝らければならないのはこちらの方だ。突然の連絡ですまなかったな」

 

 

桜「いやいや、私の注意が足りなかっただけだよ、ごめんね……」

 

 

有悟「うーむ……」

 

 

菜華「何にせよ、無事で良かったな」

 

 

恵「だね~♪」

 

 

初「ほら見ろ!ちゃんと生きてるじゃねーか!」

 

 

暦「ゴッ、ごごごっ、ごめんなさい……」

 

 

 

そう言う初も緊張が解けた様子で、彼女だけに留まらず、桜の到着によって食堂全体が安心感に包まれた。

 

 

 

有悟「よし、これで生徒全員の無事は確認できた。まだゲームの時間だし、油断はできないが一息ついて腹も減ってきたことだろうし、今日一日の平穏を願ってみんなで朝食と行こうか!」

 

 

生徒「お~!」

 

 

 

 

小春「桜ちゃんこっち来て座りなよ!そこでもたれ掛かってるのも疲れるでしょ?」

 

 

千優「ここの席空いてるよ!」

 

 

桜「う、うん。ありがと……!」

 

 

 

フラッ

 

 

経介「っと、危ないよ」

 

 

 

こちらに来ようとしてフラついた桜を咄嗟に経介が支える。

 

 

 

桜「あはは、ごめんね。全然体力無いからさ……」

 

 

経介「大丈夫大丈夫。体力無いのは知ってるから……って、あれ?」

 

 

桜「……?どうかしたの?もしかして私、顔に何か付いてる?」

 

 

 

経介は桜の顔を見て、あることに気が付いた。そんな経介の反応に桜は恥ずかしそうに両手で顔を隠した。

 

 

 

経介「桜、眼、赤いよ。大丈夫?」

 

 

桜「え、あ、ホント?」

 

 

経介「うん。充血してるみたい」

 

 

桜「えぇ……、ありがとう」

 

 

 

桜は経介の指摘に礼を述べつつも、やはり恥ずかしそうに顔を隠したままさっさと自分の席へと向かって行った。

 

 

 

経介(泣いてた。のかな……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜が食堂に現れてから、15分くらいが経っただろうか。朝食を取り終え、席を立つ者もちらほらと出てきた。

 

 

 

 

 

小春「じゃあ、ちょっと桜ちゃんと買い物行ってくるね!」

 

 

経介「え、ちょっと待ってよ!もうすぐ食べ終わるからさ!」

 

 

桜「いいよいいよ、ゆっくり食べてて!私の目薬買いに行くのについてきてもらうだけだから!すぐ戻ってくるよ」

 

 

経介「んー、そっか。分かった!充血、早く治ると良いね。いってらっしゃい!」

 

 

桜「うん、ありがと!」

 

 

小春「行ってくる!」

 

 

千優「私もちょっと出掛けてきます……」

 

 

経介「あ、分かりました~」

 

 

 

碧「オレらもどっか行こうぜー」

 

 

凉太「通り行こうぜ、買いたいもんがあるんだよ」

 

 

蓮「行くかー」

 

 

 

秋子「うちらも買い物行こうよ~、スポーツ用の靴が欲しい!」

 

 

太一「おー、いいぞ。行こうぜ」

 

 

友輝「荷物は自分で持てな~」

 

 

秋子「何も聞こえなーい!!」

 

 

 

祥子「今日はちょっとお先に失礼しますね……!」

 

 

美咲「分かった!何かの用事?」

 

 

祥子「いえ、そうと言う訳ではないのですが……」

 

 

美咲「そかそか!うちは唯ちゃんとお出かけするから、暇になったら一緒にブラブラしよな!じゃあいってらっしゃい!」

 

 

祥子「はい!行ってきます!」

 

 

唯「いってらっしゃい~!」

 

 

 

恵「ばなな~、食べ終わったらカフェ行こ。カフェ」

 

 

菜華「そうだな。そこでまたゆっくりと話でもしようか」

 

 

恵「やった~♪」

 

 

 

ガタッ

 

 

 

柚季「どーしたの?トイレ?」

 

 

理央「ううん、違う違う、ちょっと外で調べたいことがあってね……」

 

 

柚季「調べたいこと?」

 

 

理央「そ!」

 

 

瞳「どこ行くか知らないけど気を付けてね!」

 

 

青葉「迷子にならないでね~(笑)」

 

 

理央「大丈夫!ありがと!」

 

 

 

そう言うと理央は出て行ってしまった。

 

 

 

青葉「ねぇ、今日は島探索にでも行かない?」

 

 

柚季「いいね~!島探索!2人も行こ!」

 

 

瞳「私は大丈夫だよ~!」

 

 

響香「私は……今日はいいや」

 

 

青葉「え、珍しいじゃん。どうかしたの?」

 

 

響香「んー、ちょっと気乗りしなくてね……」

 

 

瞳「……珍しいね」

 

 

青葉「今日は何だかいつもと違うね。体調悪いなら言ってよ?無理は禁物!」

 

 

響香「うん、分かってる。大丈夫だから気にしないで」

 

 

青葉「だと良いけど……」

 

 

柚季「響香ちゃんはここに残るの?」

 

 

響香「そう……だね」

 

 

柚季「そっか……、了解。また今度どっか行こうね!」

 

 

響香「……分かった!いってらっしゃい」

 

 

瞳「悩みとかあったらいつでも言ってね。それじゃ、行ってきます!」

 

 

響香「うん……、ありがと!」

 

 

 

穂乃香「ねぇねぇ、和奏!」

 

 

和奏「どーしたの?」

 

 

穂乃香「今からお兄ちゃんと大通りで服を買いに行くんだけど、和奏もついてきてくれないかな!」

 

 

和奏「勿論いいけど……、どうして?」

 

 

穂乃香「いやぁ、お兄ちゃんどれも似合う似合うって言うから参考にならなくて……」

 

 

冷音「なっ……」

 

 

和奏「あはは、そう言うことね!分かったよ」

 

 

穂乃香「ホント?ありがと!」

 

 

和奏「おうよ!」

 

 

舞人「……なぁ、前から思ってたんだけどお前の妹と百園って結構似てね?」

 

 

冷音「…………フンッ」

 

 

舞人「フンッって何だよ……」

 

 

 

 

 

その後も何人かの生徒が退出し、食堂に残った生徒は13人となった。

 

 

 

 

泰斗「結構減ったな」

 

 

有悟「皆行きたいところがあるのだろう!」

 

 

 

経介(早く帰って来ないかな……)

 

 

 

恒也(今日はここで本読むか……)

 

 

 

銘「私らはどうしよっか?」

 

 

茜「私は本見に行きたいけど……、ここでみんなと居た方が安心するかな……」

 

 

梢「だよね~、こういう日の外って何か起きそうで怖いし」

 

 

怜菜「……屋内の方が逃げるところが無くて返って狙われるかもね」

 

 

梢「えっ、やめてよ怖い……」

 

 

怜菜「……冗談よ」

 

 

 

響香「……」

 

 

 

初「雪紀はそのベレーいつも被ってるけど何でだ?」

 

 

雪紀「これ?これは私の宝物なんだ♪だから肌身離さず被ってるの!」

 

 

初「そうなのか~!」

 

 

白夜「ホント、似合ってるよ」

 

 

雪紀「えへへ……、ありがと!」

 

 

 

泰斗「……あとちょっとで朝のゲーム時間は終わりだな。このまま何も起きなきゃいいけど……」

 

 

 

食堂の時計の針は7時45分を指していた。

 

 

 

有悟「そうだな。皆に伝えるのを忘れていたが、また昼も呼び掛けをするつもりだ。そこで出て行った生徒の安否も確認できるだろう」

 

 

初「えー、また全員ここに集めんのか?私は別にいいけど……遠くに行った奴らはここに戻るのめんどくねーかー?」

 

 

銘「うーん……まだ色々と半信半疑な状態だし、初ちゃんの言ってることも一理あるけど私はみんなの安否はしっかりと確認したいかなぁ……」

 

 

有悟「確かに多少面倒ではあるが、オレもその手間を惜しんでも安否の確認をするのが大切だと思っている」

 

 

初「そうか~」

 

 

梢「何にせよ、みんな無事なのが一番だよ~」

 

 

泰斗「だな。間違いねぇ」

 

 

暦(寝よ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同時刻 島内 南部~

 

 

 

青葉「いや~、落ち着いたところだったねぇ」

 

 

柚季「うんうん!たまたま出会ったおじさんも優しい人だったし!田園風景ものどかで素敵だった!」

 

 

瞳「ね!次はどこを探索する?」

 

 

青葉「そうだねぇ~、じゃあ……」

 

 

 

青葉が次の提案をしようとした、まさにその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあああああああ!!!」

 

 

3人「?!」

 

 

 

突然、誰かの叫び声がした。

 

 

 

青葉「何?!今のって……悲鳴……?!」

 

 

瞳「も、も、もしかして……!!」

 

 

柚季「……今の声、南西の方から聞こえたよね。確かあっちには海岸があったはず……、行ってみよ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~食堂~

 

 

 

梢「……あと数分で8時だね……」

 

 

恒也「……何か緊張してきたな……」

 

 

経介「分かる。1分1秒が凄く長く感じる……」

 

 

怜菜「高穂くんは自称占い師みたいだし、尚更緊張してるんじゃないの」

 

 

経介「ま、まぁ自称って言うか本当なんだけど、そうかも知れないね……」

 

 

雪紀「んー、そんなに身構えなくても大丈夫じゃない?私たちも他のみんなもきっと無事だよ!」

 

 

白夜「だと良いけど……」

 

 

有悟「根拠は無いがポジティブなのは良いことだ!オレらも双葉さんを見習って全員無事だと信じようじゃないか!」

 

 

一同「おー!」

 

 

響香(全員、無事…………)

 

 

 

そんな明るい雰囲気が食堂に漂う一方で、響香だけは不安を拭いきれない表情をしていた。

 

 

 

スッ

 

 

 

彼女は不安の表情を浮かべたまま、スカートのポケットからスマホを取り出した。そして……

 

 

 

プルルルル

 

 

 

暦(……ん?電話の音……?)

 

 

響香「……」

 

 

 

プルルルル

 

 

 

暦には響香のスマホから電話の発信音が、小さく鳴っているのが聞こえた。他のみんなは気付いていないみたいだが、どうやら誰かに電話をかけているらしい。

 

 

 

プルルルル

 

 

響香「出て。お願い……!!」

 

 

 

続いて、響香が小さな声でそう言ったのが暦の耳に届いた。

 

 

 

プルルルル

 

 

 

暦(まだ鳴ってる……、出ないのかな……?)

 

 

 

依然として、スマホの発信音が小さく鳴り響いているのが暦には聞こえた。そしてついに……

 

 

 

響香「……あっ!もしもし!」

 

 

 

暦(あ、繋がったみたい。良かった良かった。……そう言えばどんなことを話すんだろ?プライベートなことだし小声で聞き取り辛いけど、気になるからちょっとだけ……)

 

 

 

 

 

 

 

梢「あとちょっと!あとちょっとだよ!」

 

 

泰斗「5、4、3、2、1……」

 

 

初「0!!よっしゃー!8時になったぞー!」

 

 

有悟「うむ、これで一先ずは安心だな」

 

 

茜「やー、ポジティブにとは言ったものの緊張したねぇ!」

 

 

雪紀「うん。当の私も最後の1分くらいは緊張したよ~(笑)」

 

 

白夜「無理もないよ!」

 

 

恒也「とりあえず、ここに居る生徒は全員無事みたいだな。良かった」

 

 

経介「そうだね。後は……」

 

 

 

経介が何かを言いかけた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

「?!」

 

 

 

突然、食堂の椅子が勢いよく倒れた音がした。

 

 

音がした方を振り返って見ると、倒れた椅子の前に響香が右手にスマホを握り締めて立っていた。

 

 

 

初「何だよ、お前かよ~、びっくりさせやがってよ~、物は大切に扱えよな~!」

 

 

響香「……」

 

 

怜菜「……?どうかしたの?表情が優れない様だけど」

 

 

響香「……そだ」

 

 

怜菜「え?」

 

 

泰斗「うおっ!?」

 

 

有悟「……っおい!!食堂で走ると危ないだろ!!」

 

 

 

バタンッッ

 

 

 

響香が何かを呟いたかと思うと、次の瞬間、彼女は血相を変えて食堂を飛び出し、どこかへ走って行ってしまった。

 

 

 

有悟「……全く、椅子も直さずに突然飛び出して行って何だと言うんだ」

 

 

泰斗「……なぁ、今の泡瀬の顔見たか?」

 

 

銘「うん。凄く青ざめてた」

 

 

恒也「いつもの泡瀬の感じとは全然違ってたよな……。」

 

 

 

先程までの明るい雰囲気とは一転して、食堂には不安の念が広がって行った。

 

 

 

経介「……ねぇ!桶川さん!」

 

 

暦「っはいぃっ!!」

 

 

経介「桶川さん、泡瀬さんの近くに座ってたよね。泡瀬さん、誰かと電話をしていたみたいだけど、ひょっとして誰と何を話してたか聞いてたりした?」

 

 

 

そんな雰囲気の中、経介は戸惑った様子を見せていた暦にそう問いかけた。すると暦から、こんな返答が返って来た。

 

 

 

暦「えっ、えっと……、誰と話をしてたかとか、詳しい会話の内容は分からないですけど、南西の海岸って言葉は聞こえました……」

 

 

経介「南西の海岸……?それって……!!」

 

 

初「な、なぁ、何かやべぇ雰囲気じゃねぇか?」

 

 

茜「何か、嫌な予感がする……」

 

 

有悟「桶川さんは南西の海岸と聞こえたと言ったな。だとすると泡瀬さんはそこに向かった可能性が高い」

 

 

経介「うん。それに泡瀬さんのあの表情……、ありがとう桶川さん。みんなで急ごう、南西の海岸に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後僕らは、急いで南西にある海岸へと向かった。そしてたどり着いたその場所には、目を疑う様な衝撃の光景が広がっていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祥子「……」

 

 

瞳「うぅっ……」

 

 

青葉「何でよぉ……」

 

 

柚季「どうして……?」

 

 

響香「しっかり!!しっかりして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響香「理央!!!」

 

 

 

 

そこには、彼女の体を抱きかかえて何度も何度も必死に呼び掛ける響香の姿と、響香の膝の上で額から血を流して倒れている理央の姿があった。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!いよいよ事件が起きてしまいましたね……。そんな事件を目の当たりにした彼らは何を思い、何を感じるのでしょうか?それぞれの思いが交錯して、物語はゆっくりと進んで行きます……。それではまた次回、お会いしましょう!


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第8話 最後の夜に

皆さんこんにちは、めもりです。前回、いよいよ犠牲者が出たということで、早く続きが読みたいと思っていて欲しいという期待を胸に、(自分なりの)急ぎ足で8話を完成させて来ました!果たしてどのような展開が待ち受けているんでしょうか……。それでは第8話「最後の夜に」スタートです!


僕らがこの現場に到着して、5分くらいが経過しただろうか。僕は未だにこの状況を上手く飲み込めないでいる。

 

 

 

経介(まさか、本当に人が……)

 

 

 

ここは双子島南西の海岸。今回の事件が起きたのは、その海岸に隣接してある少しゴツゴツした崖の上である。

 

 

 

響香「理央……」

 

 

 

響香はここに来てからずっと、膝元の理央に何度も何度も呼び掛け続けた。しかし返事は一向に返ってこない。それでも響香は呼び掛け続けた。静かな波の音と3人のすすり泣く声が、その光景の虚しさを際立たせる。

 

 

僕らは今日、かけがえのないクラスメイトの命を1つ、失ったのである。

 

 

 

泰斗「……なぁ泡瀬、もう……」

 

 

恒也「いいんだ。今はそっとしといてやれ」

 

 

泰斗「でもよ……」

 

 

恒也「お前の言いたいことも分かる。でも残念ながら、オレらがあの子らに掛けられる言葉はねぇよ」

 

 

泰斗「……」

 

 

茜「響香ちゃん……」

 

 

 

泰斗だけでなく、他のみんなも同じ気持ちだった。ただ見ていることしかできない自分たちに、彼らは無力感を覚えた。

 

 

 

有悟「一体誰が……」

 

 

 

それから少し経ってのことだった。

 

 

 

碧「こっちだ!こっち!」

 

 

菜華「生徒が倒れてると言うのは本当か?!」

 

 

蓮「大丈夫なんだろうな!?」

 

 

 

事件現場を見た有悟からの一斉連絡で、島に散らばっていた生徒全員が海岸に駆け付けた。

 

 

 

有悟「む、皆来たか」

 

 

凉太「ハァハァ……お前の連絡見て走って来たけど、倒れてる奴はどこに……って、うおっ!!」

 

 

真琴「うわっ!マジで倒れてんじゃん!これ結構ヤバくね?」

 

 

秋子「理央……」

 

 

雪紀「え……まさか、死ん……でるの……?」

 

 

初「は?いやいや。流石にそれは……なぁ?」

 

 

有悟「いや。残念ながら……だ」

 

 

初「え……」

 

 

 

有悟はそのことをLINEでは伝えていなかった。しかし、そうであると確信していなかったからではない。そんなこと、先に着いていた彼女らの表情を見ればすぐに分かった。有悟と一緒にここに来た、他のメンバーだってそれは同じだ。だから彼らには、そんな事実など疾うに知っている響香の呼び掛けが、とても淋しく聞こえたのである。

 

 

凉太「一体、いつから倒れてるんだ?」

 

 

瞳「……分からないけど、悲鳴を聞いて駆けつけた頃にはもう……」

 

 

和奏「じゃあもう、あの声は聞けないのね……」

 

 

恵「信じたくはないけど、そうみたいだね」

 

 

銘「さっきまで、確かに生きてそこにいたのにね……」

 

 

怜菜「……儚いものね。命って」

 

 

 

後から来たメンバーも、広がっていた光景を目にしてその場に立ち尽くした。やがて響香の呼び掛ける声も止み、海岸には打ち寄せる波の音だけが静かにこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し経ってのことだった。

 

 

 

明「……やっぱり、そういうことだったか」

 

 

彩「そうみたいですね」

 

 

 

有悟「!先生方……!」

 

 

 

騒ぎを聞きつけた明と彩が海岸にやって来た。

 

 

 

青葉「ねぇ!先生、どうしよう……、理央が……!!」

 

 

彩「……落ち着いて、栄さん。悲しいことだけど、取り乱しちゃだめよ」

 

 

青葉「でも……!!」

 

 

彩「……」

 

 

恵「……ねぇ、明先生。これをやった犯人ってもしかして?」

 

 

明「……そうだ。これが黒い侵攻。犯人はお前らの中にいる、殺害権を持つ誰かだよ」

 

 

恵「……だよね」

 

 

穂乃香「待ってよ!!じゃあ人形ゲームって実際に……」

 

 

航「……そう、みたいだね……」

 

 

千優「……」

 

 

経介(やっぱり、そう……だったのか……)

 

 

 

彼らの中で、ずっと半信半疑だったものが確かなものへと変わった瞬間だった。まだ目の前で起こっていることすら処理できていない彼らの中には、この事実をどう受け止めていいのかが分からない者もいた。

 

 

 

明「……と、まぁ、そういうことだ。念のため生死の確認がしたい。泡瀬、ちょっと代わってくれるか?」

 

 

響香「……」

 

 

 

響香はうつむいて何も言わないまま、しばらく理央の顔を見つめていた。そしてその場を明に譲るため立ち上がろうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響香「!!!」

 

 

 

咄嗟に、響香は立ち上がろうとした足を元に戻した。

 

 

 

太一「……なぁ泡瀬、離れたくない気持ちは分かるけどよ、ここは一旦先生にそこを譲ろうぜ……」

 

 

響香「……」

 

 

柚季「……響香ちゃん、どうかしたの?」

 

 

 

柚季は響香のその表情から、先ほどまでとは明らかに違う何かを感じ取った。

 

 

 

美咲「……?どうしたん、響香ちゃん?何か様子が……」

 

 

有悟「泡瀬さん、すぐに立ちたまえ」

 

 

舞人「おいおい、なにもそう急かさなくても……」

 

 

響香「……」

 

 

有悟「立つのが嫌ならば座ったままでも構わない。ただ、即刻両手を上げ、その足をどけたまえ」

 

 

響香「……!!」

 

 

初「……?お前さっきから何わけわかんねーこと言ってんだ?」

 

 

有悟「……その足の下に何もないのであれば、できるよな?」

 

 

経介「足の……下……?」

 

 

響香「……」

 

 

 

有悟からの突然の指示で、響香はゆっくりとその足をどけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮「……うおっ!!」

 

 

暦「ひっ!!!」

 

 

茜「これは……」

 

 

 

響香が足をどけると、先ほどまで彼女のスカートで隠れていた、あるものが姿を現した。そう。そこに落ちていたのは、血がべっとりと付着した、先の尖った鋭利な石であった。

 

 

 

千優「うっ……」

 

 

桜「千優ちゃん!しっかり!!」

 

 

晴「気持ち悪い……」

 

 

有悟「……まさかこの事件、君が……」

 

 

響香「違う!!私じゃない!!!」

 

 

柚季「え……」

 

 

有悟「だったらなぜ、それを隠す必要があったんだ?反応は見ていた。気付いていなかったとは言わせないぞ」

 

 

響香「知らなかった!!先生に場所を譲ろうとしたらいきなりこれが出てきて……、慌てて隠しちゃっただけ!!どうしてそうしたのかは自分でも分からないけど、ホントなの!!私はこんなことやってない!!!だから、信じて……」

 

 

 

有悟からの問いに答える響香は必死だった。そんな彼女に、今度は真琴がこう問い掛けた。

 

 

 

真琴「じゃーさ、何で隠した石をこっそり拾おうとしたの?」

 

 

響香「えっ……」

 

 

真琴「びっくりした?あたしもちゃんと見てたんだよねー。担城が両手上げろって言ったのはそーゆーことでしょ?」

 

 

有悟「……そうだ」

 

 

真琴「あ、ほら!やっぱそーみたいだし、ちゃんと説明してもらおっか?」

 

 

青葉「やめてよ!!」

 

 

 

突然、青葉が2人のやり取りを遮った。

 

 

 

青葉「お願いだからやめて!!何で響香ちゃんを疑ってるの?!響香ちゃんが理央ちゃんを殺すわけないじゃん!!それに証拠はあるの?2人のこと何も知らないくせに、適当なこと言わないでよ!!!」

 

 

真琴「……」

 

 

響香「……疑われるのが、嫌だったから」

 

 

青葉「……響香……ちゃん?」

 

 

響香「……ごめんね、青葉。石を拾おうとしたのは本当だよ。でもそれは下手に疑われることを避けるため。決して隠蔽しようとした訳じゃない。青葉の言う通り、私は殺人なんて犯してないよ」

 

 

青葉「うん……!分かってる……!」

 

 

初「んー、でもなんかそれ余計に疑われねぇか~?素直に立ち上がった方が良かったと思うんだけどな~。あー、でも一回隠しちまった以上はそうせざるを得ねぇのか……?んー、分かんねぇ~」

 

 

真琴「ま、一番怪しいのは親友が殺されたのに涙一つ流した痕が無いってとこなんだけどね」

 

 

有悟「……そう言えば、確かにそうだな。他の親友である神薙さんたちは泣いていたのにな。やはりそう言うことなのか……」

 

 

響香「だから違うって!!これには訳が……!!」

 

 

碧「そう言えば泡瀬、朝から様子が変だったよな。もしかして昨日の夜とかに何かあったのか?」

 

 

秋子「あ!そうだ!うち昨日の夜、柚季たちが3人で歩いてるの見て、いつも5人なのに珍しいなと思って声掛けたんだった!確かその時、理央が響香と2人でしたい話があるらしいから……って言ってた!」

 

 

有悟「何?!それは本当か?」

 

 

 

有悟は柚季らの方を向いてそう問い掛けた。

 

 

柚季「……それは、本当……だけど、それとこれとは関係……」

 

 

有悟「なるほど。本当なんだな。だとするとその時、泡瀬さんは枷田さんに影人形であると暴かれ、指摘されたんじゃないか?!長年の付き合いなら、それくらい分かってもおかしくはないし、そのことを本人に直接伝えるのも頷けるしな」

 

 

響香「ちょっと待ってよ!!さっきから何なの?!私のことばっかり疑って!!そりゃ私が今怪しく見えてるのは分かってるよ。でも私の話くらい聞いてくれてもいいじゃない!!どうして理央の気持ちも知らないあんたなんかに一方的に言われ続けなきゃいけないのよ!!」

 

 

美咲「……そうだよ、今の有悟くんちょっと酷いと思う。ちゃんと聞こ?響香ちゃんの話」

 

 

有悟「……確かに、少し言動が行き過ぎてしまったな。すまない。昨日の夜のこと、話してくれるか?」

 

 

響香「……あれは、理央がまだ生きていた夜の話……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月9日、夜、~銭湯~ *この物語では過去の会話は『』で表します!

 

 

 

響香『……話って……何?』

 

 

理央『……この、人形ゲームについての話だよ』

 

 

響香『人形ゲーム……!』

 

 

理央『あぁ、安心して、私は人間だよ!実は影人形なんだ~とか、そんな告白をしたいんじゃないから!』

 

 

響香『あっ、そっか!良かった……!じゃあ、何の話なの?』

 

 

理央『……うん。単刀直入に言うとね、私、怪しいと思ってる子が一人いるの』

 

 

響香『……怪しいってことはつまり……』

 

 

理央『あっち側なんじゃないかなって』

 

 

響香『えー、凄いじゃん!私なんか全然分かんないのに……。でも、それがどうしたの……?』

 

 

理央『……私、明日その人に直接話を聞きに行こうと思うんだ』

 

 

響香『……え?』

 

 

 

響香は理央が発したその一言に、驚きを隠せなかった。

 

 

 

響香『話を聞きに行くって、直接本人に役職を確認しに行くってこと?!』

 

 

理央『……うん。驚かせちゃってごめんね。でも私、確認せずにはいられなくって……』

 

 

響香『止めときなよ!もし理央の予想が当たってたら危ないよ!きっと狙われる!!』

 

 

理央『分かってるよ。でも一度怪しいって思っちゃったらもう、その子のことを普通の目で見ることはできない。直接反応を見て、これが誤解だって分かったら、その子とも今まで通り接することができる。それにもし予感が的中してるって分かったら、それは人間陣営にとって大きな収穫になる。だったらもう、やるっきゃないでしょ……!』

 

 

 

理央は笑顔でそう語った。

 

 

響香『……じゃあ、私も一緒に行く!その怪しい人って誰なの?2人で行けばきっと……』

 

 

理央『響香、これはね、皆のためである以前に私のためなの。だから、響香を巻き込むことはできないの』

 

 

響香『巻き込むだなんてそんな……』

 

 

理央『それに、怪しいと思ってる子の名前も、今はまだ教えることはできないよ……。私の偏見で、その子のことを平等な目で見られなくなったら、悪いもん。だからお願い、私1人で頑張らせて。響香ちゃんには、このことを伝えておきたかったんだ……』

 

 

響香『……ずるいよ』

 

 

理央『えっ……?』

 

 

響香『ずるいよ、理央。そんなこと言われたら私、理央のこと放っておけなくなるの、分かってたでしょ?……それなのに、私1人で頑張らせてって、そんなの分かったなんて言えないよ!!』

 

 

理央『響香ちゃん……』

 

 

 

響香はそう言うと、うつむいて黙り込んでしまった。

そんな響香を見て、理央はこんな言葉を彼女に投げ掛けた。

 

 

 

理央『……響香ちゃん、響香ちゃんにはね、3人のことを頼みたいんだ。もし響香ちゃんが付いて来て、私たちに何かあったら、あの子たちを取り残すことになっちゃう』

 

 

響香『……』

 

 

理央『……それにほら、私もあの子たちもみんな、響香ちゃんが大好きでしょ。そんな響香ちゃんに何かあったら、みんな悲しむじゃない?だから響香ちゃんには、ここに残っておいて欲しいんだよ……』

 

 

 

それは理央の、心からの一言だった。

 

 

 

響香『……バカ』

 

 

理央『!』

 

 

響香『そうならそうって、最初から言ってくれれば良かったのに』

 

 

理央『……ごめんね……』

 

 

響香『……絶対、無事に帰って来てね。私もあの子たちも、理央のことが大好きだから』

 

 

理央『……うん!ありがと!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柚季「そう、だったの……」

 

 

響香「結局、理央は私の決断のせいで、二度と帰って来ることのない人になったんだ。それなのに今ここで涙なんて流したら、死んだ理央に顔向けできないよ……」

 

 

真琴「なるほど……ね」

 

 

柚季「……ごめんね、響香ちゃん。何も知らずに泣いちゃって。でももう、私泣かない!」

 

 

青葉「私も!」

 

 

瞳「私も!」

 

 

響香「ううん、謝るのはこっちだよ。何も伝えてあげられなくて、本当にごめんね……」

 

 

 

4人は理央を中心にしてその身を寄せ合った。

 

 

 

有悟「今の話が本当だとすると、泡瀬さんには本当に申し訳ないことをしてしまったな……」

 

 

銘「……これから、償っていけばいいんじゃないかな?どうやら響香ちゃんは本当に、理央ちゃんを殺してはいないみたいだからさ」

 

 

経介「えっ……?」

 

 

響香「……?」

 

 

有悟「どう言うことだ?なぜそうと言い切れる?」

 

 

 

生徒は皆、銘のその後の発言に注意を向けた。

 

 

 

銘「……まず、今回起きた事件、凶器と思われる血の付いた尖った石が、現場に残っていた。凶器を隠すのに最適とも言える海が、目の前に広がっているにも関わらずね。つまりこれらのことが意味するのは、この侵攻は計画的ではなく、衝動的に行われたものだということ。だからもし響香ちゃんの言っていることが嘘で、有悟くんの言う通りだとすれば、昨日の時点で理央ちゃんを殺害する動機を持っていたはずの響香ちゃんが、こんな計画性のない犯行をすることは考えにくいものね」

 

 

白夜「確かに……!」

 

 

航「……なるほど」

 

 

友輝「んー、でもよ、昨日の夜、有悟が言ってたみたいなことが銭湯で起きてたけど、翌日の時間ギリギリになってもまだ自分が生きるか友達を殺すかの選択ができなくって、考えの整理も付かないしでどうしようもなくなって、つい殺しちまったってのは考えられねぇのか?」

 

 

秋子「……友輝、今の響香の話聞いた後でよくそんなこと……」

 

 

友輝「いや、分かってるよ!でもあり得ない話じゃないから、その部分はどう説明すんのかなって思ったんだよ……」

 

 

縁「……でも実際、岡成くんの言ってることって正しいですよね。私もその説明が気になります……!」

 

 

銘「……うん。確かにさっきまで説明じゃ、響香ちゃんが犯人である可能性は少ないとは言えど、完全にそうではないとは言い切れないね。……でも大丈夫!ちゃんと響香ちゃんの身の潔白を証明できるから!」

 

 

 

銘はそんな疑問に対してそう断言すると、再び響香が白であるという証明をし始めた。

 

 

 

銘「まず、事件が起きた時刻、私を含め食堂にいたメンバーは響香ちゃんが食堂にいたのを知ってるよね!」

 

 

恒也「あぁ、いたな」

 

 

初「ずっと食堂にいてたよな~」

 

 

銘「それと、さっき瞳ちゃんが悲鳴を聞いてここに来たって言ってたでしょ?」

 

 

瞳「はい……」

 

 

凉太「確かに、言ってたな」

 

 

銘「悲鳴が聞こえたってことはつまり、理央ちゃんは殺されるその直前に犯人を見てたってことだよね。それと、理央ちゃんの額を見てもらったら分かるんだけど、そこには死因と見られる外傷があるよね。これがどう言うことかっていうと、理央ちゃんは前からその尖った石によって額を殴られたってこと。警戒してなかったんだよ、殺される直前まで犯人のことを。だから、犯人はその時現場に居たんだよ。つまりその時食堂にいた私たち含め響香ちゃんは、犯人じゃないってこと。どう?分かってもらえた?」

 

 

経介(加古川さん、凄い……!!)

 

 

有悟「確かに、犯行が遠隔操作の影人形によるものなら、わざわざ目の前に姿を現すことなどしなくても良いからな。納得した」

 

 

真琴「んー、こりゃ何にも言えないねぇ……」

 

 

響香「……ありがとう、銘!」

 

 

銘「いーえ!!」

 

 

 

銘の鋭い推理により、彼らの響香に対する疑いが晴れた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この後のある人物の発言が、全てを振り出しに戻すことになるなど、この時一体誰が予想できただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「あの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銘「……?どうしたの?姫野さん」

 

 

祥子「その、大変申し上げにくいのですが、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祥子「悲鳴を上げたの、私なんですよね」

 

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!推理ものは書くのが難しいですね……(笑)ですが精一杯の力で書いておりますので、ぜひ推理をしつつ、楽しんで読んでいただきたい所存です。祥子の突然の発言により、事態はどのように変化して行くのでしょうか?それでは皆さん、またの機会に!


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第9話 疑念と対立

皆さんこんにちは、めもりです。本日も相変わらずの深夜投稿となりました(..)前回第8話は、祥子の突然の告白で幕を閉じましたね。本来はこの第9話の最後までが8話だったため、違和感を覚えるかも知れませんが、自分なりに一生懸命工夫したので甘めに見てやってください(笑)それでは第9話「疑念と対立」スタートです!


祥子「悲鳴を上げたの、私なんですよね」

 

 

銘「え……」

 

 

 

祥子が発したその一言に、銘はもちろん生徒たちは驚きを隠せない様子であった。

 

 

 

恵「……それ、ホント?」

 

 

祥子「はい、本当です……」

 

 

蓮「姫野が悲鳴を上げたってこと、証明できる奴はいるか?」

 

 

凉太「等野とか沖鳥はどうなんだ?いつも3人一緒にいるイメージなんだが」

 

 

美咲「えっとね、今日はうちと唯ちゃんは一緒やったけど、祥子ちゃんだけ別行動やったよ。だから証明はできやんかな……。凉太くんは先に食堂から出てったから知らんかったよね」

 

 

凉太「そうだったのか。じゃあ悲鳴を上げた時、姫野は一人だったのか?」

 

 

祥子「そうです。今日はもっとこの島のことを知ろうと思って、朝から一人で島内を探索してたんです。その探索の一環で海岸に行ったら、ここで血を流して倒れてる枷田さんを見つけて……」

 

 

銘「……どうして、さっき悲鳴の話が出たときにそれを言わなかったの?」

 

 

祥子「……ごめんなさい。その時は目の前の出来事を整理するのに必死で……。でも、これは本当です。確かに私が悲鳴を上げました」

 

 

舞人「まぁ、わざわざ嘘ついてまでこんなこと言わねぇだろうし、姫野が悲鳴上げたってのは本当なんじゃねぇか?」

 

 

銘「……そう……」

 

 

 

少しでも真相に近付こうと推理した銘の努力は水泡に帰し、謎解きはまた、振り出しに戻った。

 

 

青葉「じゃあ、私たちが聞いた悲鳴は理央ちゃんのじゃなくて祥子ちゃんのだったのね……」

 

 

柚季「そうみたいだね……」

 

 

茜「……待って!今の祥子ちゃんの話からすると、祥子ちゃんが海岸で理央ちゃんを見つけた時には、理央ちゃん以外誰もいなかったんだよね?」

 

 

祥子「そう、ですね……」

 

 

茜「……やっぱり!」

 

 

梢「……何か分かったの?」

 

 

茜「うん。青葉ちゃんたち3人は祥子ちゃんの悲鳴を聞いて海岸へ行った。そして私たちが食堂にいたとき、悲鳴みたいな声は聞こえなかった。さらに残りのみんなは全員、有悟くんのメッセージを見て海岸に集まった。つまりだよ、誰も聞いてないんだよ。理央ちゃんの悲鳴を」

 

 

友輝「おぉ、なるほど……!で、それがどうしたんだ?」

 

 

怜菜「……変ね」

 

 

友輝「へ?」

 

 

怜菜「枷田さんは石で額を殴られて死亡した。だから犯人の姿を見たはずなのよ。ここから校舎まではそう遠くないし、朝はかなり静かだった。枷田さんが食堂を出て行ってから姫野さんに見つかるまで、校舎には生徒が結構出入りしてたはずなのに誰も悲鳴を聞いていないのは変よねって話よ」

 

 

風里(なるほど……)

 

 

菜華「そもそも、怪しい人物に会いに海岸に行ったなら、その人物を警戒しないなんて有り得なくないか?まあ、海岸に行ったのには他の理由があるのかも知れないが」

 

 

恵「ん~、もしかしたらこれ、数人がかりでの犯行かもね。口さえ塞いじゃえば声は出せないし。それとも僕らが考えすぎてるだけで、ただただ恐怖で声が出なかったってことなのかもね~」

 

 

経介(数人がかりか……なるほど……)

 

 

恵「ま、そんな手を使えば食堂にいた人たちにも犯行は可能だよね」

 

 

銘「……そうみたいね」

 

 

 

彼らの推理が再スタートし、全ての生徒に犯行の疑いがかけられる中、一人の生徒が再び、こう主張をし始めた。

 

 

 

有悟「……誰にでも犯行可能と言うのであれば、やはりオレは泡瀬さんが怪しいと思うな」

 

 

響香「だから私はやってないって!!」

 

 

真琴「あたしもさんせー。自分が理央から影人形だって疑われてるって仲間に教えたら、絶対手伝ってくれるもんね。それでみんなで束になってあの子を殺したんじゃないの?(笑)」

 

 

響香「なっ……!誰がそんなこと!!!」

 

 

有悟「あと、凶器を隠そうとしたのが引っ掛かるからな」

 

 

響香「……何度言ったら分かるの?私じゃないって言ってるじゃない!!これは衝動的な殺人なんでしょ?だったら私を疑うのは無理あるんじゃないの?それに怪しいのは祥子ちゃんの方じゃない!!」

 

 

祥子「えっ、私ですか?!」

 

 

柚季「響香ちゃん……」

 

 

響香「そうよ!私が心配になって理央のスマホに電話をかけたとき、あなたが出たよね?普通死んでる人に触れてまで着信に応じようとする?もしかして遺体に偽装工作でもしてたんじゃないの?第一発見者ならそれが可能だもんね!!」

 

 

祥子「私はそんなことしてないです!!」

 

 

響香「それにあなたは黒出しされてるじゃない。普段あんなにビクビクしてるくせに朝は呑気に寝てるし、一人でいるのが一番危険な今日に島探索なんて怪しすぎるし!!それに現場に行けたあなたなら、人形を作り出して悲鳴を上げさせずに理央を殺すこともできたはずだし!!」

 

 

祥子「そんなこと言われても……」

 

 

響香「それに……!!」

 

 

 

響香が続けて口撃しようとした時だった。

 

 

 

柚季「響香ちゃんもうやめて!!怖いよ!そんなの私の知ってる響香ちゃんじゃない!!響香ちゃんが犯人じゃないのは分かってるから……」

 

 

 

その姿を見兼ねた柚季がそう叫んだ。

 

 

 

響香「……」

 

 

茜「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。それと、さっき響香ちゃんが言ってた電話の内容について詳しく教えてくれない?」

 

 

響香「……さっきも話した通り、昨日理央からあんなことを言われたから、いざ一人で帰りを待ってみたら心配で仕方なくて、それで理央に電話をかけたの。そしたらいきなり祥子ちゃんが出て、理央が海岸横の崖の上で血を流して倒れてるって教えてくれたの。これが私が焦って食堂を飛び出した理由。同じ食堂にいたのに気付いてなかったのね」

 

 

茜「そんなことがあったの、全然気付かなかった……」

 

 

経介「僕も……」

 

 

恒也「オレもだ」

 

 

雪紀「私も……」

 

 

冷音「なんだよ、誰も知らねぇじゃねぇか。本当に電話したのか?」

 

 

祥子「あっ、それは本当です。私が保証します……」

 

 

暦「わっ、私も見てはないけど聞いてました……」

 

 

瞳「私たちも祥子ちゃんが電話してるのを見てました。」

 

 

冷音「あ“-もう分かったってのうるせぇな。つまりは事実なんだろ!!」

 

 

青葉「あと、祥子ちゃんが響香ちゃんからの着信に応答したのは、響香ちゃんに事実を伝えなきゃっていう責任感があったからだと思うよ……」

 

 

響香「そう……」

 

 

祥子「一応、そのつもりでした……」

 

 

縁「じゃあやっぱり、怪しいのは泡瀬さんなんですかね……?」

 

 

初「んー、そのことなんだけどよ~、私には響香が食堂を飛び出してったときに見せたあの青ざめた表情が、どうも演技には見えねぇんだよな~」

 

 

泰斗「あー、それオレも同感だ。あれは事件のことを事前に知ってた顔じゃない」

 

 

経介「僕もそう思うよ。泡瀬さんは信じていいと思う」

 

 

響香「……!」

 

 

有悟「それに関してはオレも見ていたが、やはりオレはまだ泡瀬さんを信じられないな」

 

 

穂乃香「私も響香ちゃんはちょっと信用できないかな……、食堂での響香ちゃんがどんな感じだったのかは分からないけど、凶器をこっそり拾おうとしたのはやっぱり怪しいと思うんだよね……」

 

 

冷音「……オレも同意見だ」

 

 

響香「……」

 

 

 

1つ問題が解決したかと思うと、今度は2つの意見が対立を始め、事態は膠着状態に陥った。

 

 

 

菜華「……このままでは埒が明かないな。どうだ。今日の話はこれくらいにして、続きはまた明日にしないか?」

 

 

恵「そうだね、明日になればまた占いができるようになるから、その結果を受けて続きを話し合えばいいと思うよ~♪」

 

 

有悟「あぁ、そうだな」

 

 

 

こうして、僕らの長い海岸での話し合いは幕を閉じた。

 

 

 

明「……やっと話が済んだか。もう解散するなら枷田の遺体は引き取るぞ。一度引き取ったらもう二度と、顔を見ることはできなくなるがそれでも大丈夫か?」

 

 

響香「……もうちょっとだけ、一緒に居させてください」

 

 

明「……分かった」

 

 

 

その後、僕らは泡瀬さん、神薙さん、栄さん、知石さんを残して海岸を離れ、それぞれが別々の思いを持って、別々の場所へと向かって行った。

 

 

そして双子島にまた、夜が訪れた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~22時 双子島学園 寮棟2階 美咲の部屋~

 

 

 

美咲「今日は色々と大変やったね……」

 

 

祥子「そうですね……。本当に泡瀬さんは影人形なんですかね……?」

 

 

美咲「うーん……、うちもまだはっきりとは分からんのやけど、凶器を隠そうとしたのは怪しいなぁって思ったよ。祥子ちゃんはどう思ってるの?」

 

 

祥子「確かに怪しいと言えば怪しいですけど、私は確信に至らない状態で疑いたくはないんですよね。疑われるって、つらいことですから……」

 

 

 

祥子は俯いてそう答えた。

 

 

 

美咲「まぁでも、今回で祥子ちゃんへの疑いは薄れたんじゃないかなぁ?ほら!今回の電話の件で誠意を汲み取ってくれた人も多いやろうし!」

 

 

 

祥子「電話……?あっ!!」

 

 

 

祥子は突然、何かを思い出したように声を上げた。

 

 

 

美咲「どうしたん?」

 

 

祥子「話し合いに必死で理央ちゃんのスマホを返すのを忘れてました……。ちょっと先生のところに届けて来ます」

 

 

美咲「なんだ、そう言うことか……。何事かと思ったよ。行ってらっしゃい!」

 

 

祥子「はい!」

 

 

 

祥子はそう返事をしつつ、理央のスマホが仕舞ってあるポケットの中に手を入れた。

 

 

 

祥子「あれ……?」

 

 

 

しかし、そこに理央のスマホは入っていなかった。

 

 

 

美咲「……もしかして、どこかに落としてきちゃった?」

 

 

祥子「いえ、そんなはずは……」

 

 

 

祥子はそう言いつつ、別のポケットを調べた。

 

しかし、そこにも理央のスマホの姿はなかった。

 

 

 

そして焦った祥子がスマホを探しに自部屋に戻ろうとした、その時だった。

 

 

 

ピロリン

 

 

 

美咲のスマホの通知音が鳴った。どうやらグループLINEに1件のメッセージが送られてきたらしい。

 

 

 

美咲「ん……?」

 

 

 

気になった美咲はすぐにスマホを手に取り、送られてきたメッセージを確認した。

 

 

 

美咲「え!!」

 

 

祥子「わっ!突然どうしたんですか……?」

 

 

美咲「これ見て!これ!!」

 

 

 

祥子は言われるがままに美咲のスマホに送られてきたメッセージを確認した。

 

 

 

祥子「え、これって……!!」

 

 

 

そこには、こんなメッセージが表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理央<どうもみなさんこんばんは。突然ですが、私はこのゲームの霊媒師をやっている者です>

 

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!ひとまず話し合いが完結しましたがいかがだったでしょうか?散りばめられたヒントを頼りに自分なりの考えは持てましたか?皆さんの意見も気になるところです。教えてくれてもいいんですよ(笑)そんな淡い期待を胸に、これからもコツコツ頑張ります^^*それでは皆さん、またの機会に!


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第10話 暗い近道と明るい回り道

皆さんこんにちは、めもりです。ついに投稿話数が2桁に乗りました!着実に進んでいるという実感が湧いて嬉しい所存でございます!忙しいなりにこれからも頑張っていくので何卒よろしくお願いします^^それでは第10話「暗い近道と明るい回り道」スタートです!


4月11日、朝。

 

 

 

僕らは今日も有悟くんの指示で食堂に集まっていた。

 

 

 

有悟「おはようみんな。今日は全員揃っているな、素晴らしいことだ」

 

 

響香「……」

 

 

 

朝の食堂には生徒39人全員の姿があった。そう、「39人全員」である。

 

 

 

有悟「さて、今日みんなに集まってもらったのは他でもない、昨日グループLINEに届いた枷田さんのスマートフォンからのメッセージ、あれについてのみんなの意見を聞かせて欲しいんだ」

 

 

穂乃香「えーっと、確かグループLINEで言ってた話では、祥子ちゃんが理央ちゃんのスマホで電話に出てからずっと理央ちゃんのスマホを持ち歩いてて、それを先生に渡しに行こうとしたらいつの間にか無くなってたんだったよね?」

 

 

祥子「はい、そうです……。ですのであのメッセージは私が打ったんじゃないんです」

 

 

美咲「ホントだよ!あのメッセージがグループに送られて来た時、うちと祥子ちゃんは一緒にいたの!」

 

 

 

祥子の発言を受け、即座に美咲がフォローに入った。

 

 

 

舞人「なるほどな。でもあのメッセージを打ち込んだ奴が姫野じゃないなら、今は別の奴が枷田のスマホを持ってるってことだろ?そいつはどうやってそれを手に入れたんだ?」

 

 

風里「祥子ちゃんが誤ってどこかに理央ちゃんのスマホを落として、それを拾った……とか……?」

 

 

祥子「あっ、恐らくですがその線は薄いと思います。もしスマホが落ちたらそれなりの音が鳴りますから、気付かないことはないと思うんですよね」

 

 

風里「あっ、確かに……」

 

 

祥子「だから多分、その人は意図して盗ったんだと思います。枷田さんのスマホは目に付きやすいズボンの後ろ側のポケットに仕舞っていましたから、それで気付かない内にあのメッセージの発信者さんに抜き取られてしまったのではないかと……」

 

 

 

祥子は申し訳なさそうに自分の考えを伝えた。

 

 

 

和奏「まぁまぁ、そう落ち込まなくても大丈夫だよ。メッセージを送ってきたあの人がホントに霊媒師なら、何も問題はないからね!」

 

 

祥子「そうだといいのですが……」

 

 

初「でもあれが本物の霊媒師じゃなかったらやばくねぇか?そもそもあんな怪しい奴、ホントに信じていいのかよ~!」

 

 

恵「ま、そう焦らなくても大丈夫だと思うよ~。だって今日は、それを明らかにするためにみんなを集めたんだもんね♪……違う?」

 

 

有悟「……いいや、それも目的の一つだ」

 

 

恵「だよね~♪」

 

 

太一「明らかにするって簡単に言うけど、そんなことすぐにできるのか……?」

 

 

秋子「それっ!それうちも思った!」

 

 

有悟「……あるさ。1つだけはっきりさせる方法が」

 

 

友輝「あんのか!すげぇー」

 

 

菜華「待て!……今頭に思い浮かべている方法が同じなら、その手段を使えばほぼ100%、あのメッセージの送り主が霊媒師かどうかを明らかにできる。だが……」

 

 

秋子「だが……?」

 

 

菜華「……本当に大丈夫なのか?下手したら本物の霊媒師が人形たちに狙われてしまうかもしれないんだぞ」

 

 

太一「は……?」

 

 

有悟「……大丈夫なはずだ」

 

 

太一「いや、待てよ!じゃあやっちゃダメだろ!!それでそいつが死んじまったら、どう責任を取るつもりなんだよ!!」

 

 

恵「まぁまぁ、落ち着きなよ太一くん。これはあくまで可能性の話だよ」

 

 

友輝「そうだぞ太一~、まずはその方法ってのを聞いてみようぜ」

 

 

太一「……全然乗り気じゃねぇけど……分かった」

 

 

有悟「うむ、ならば説明しよう。といっても簡単なことだ。この方法では霊媒師の退路を断つのさ」

 

 

太一「……退路を断つ……?」

 

 

有悟「あぁ、我こそは霊媒師だという者にこの場で出て来てもらうのさ」

 

 

蓮「……要するにCOさせるってことだよな……?」

 

 

有悟「そうだ。だが、もし本物の霊媒師がこの場でCOせず、後にCOをしたとしてもそれは認めず、そいつは人間の敵と見なす」

 

 

初「えぇ、なんでだよ!」

 

 

太一「……意味が分かんねぇ」

 

 

茜「待って!多分今回、メッセージの送り主が理央ちゃんのスマホを使って霊媒結果を報告したのは、自分の名前を隠して人形たちに狙われないようにするためだと思うんだけど、その方法だとメッセージの送り主が本物の霊媒師だった場合、折角の作戦が無駄になっちゃうよ!」

 

 

有悟「大丈夫、その辺はオレも理解している。今回、我こそは霊媒師だと名乗り出てもらうのは、あのメッセージを送った人物以外だ。つまり誰も名乗り出る者がいなかった場合、あのメッセージの送り主は本当に霊媒師であると信じていいということだ」

 

 

太一「……そういうことかよ」

 

 

有悟「あぁ。だが、COした者がいた場合はメッセージの送り主にも名乗り出てもらうぞ。それでないと意味がないからな」

 

 

太一「まぁ、その場合はそうだな」

 

 

恵「うんうん♪もし誰かが霊媒師だって名乗り出た後に、メッセージの送り主が名乗り出なかったら、昨日のメッセージは全部嘘!名乗り出た人が本物の霊媒師ってことになるね~」

 

 

怜菜「あ、待って。もしかするとこれ、本物の霊媒師をあぶり出すために仕掛けた人形側の罠だったりしないかな」

 

 

初「……?どーゆーことだ?」

 

 

怜菜「もしメッセージの送り主が本物の霊媒師じゃないなら、今説明された通りに物事が進んだ場合、本物の霊媒師がCOするでしょ?本来ならそこでメッセージの送り主にも出てきてもらって、占い師を頼りにどっちが本物の霊媒師かを判断しようって話だけど、メッセージの送り主が人形側で霊媒師が誰かを暴くために成り済ましをしているなら、自分がメッセージを送った真の霊媒師ですとは名乗り出ない。それであとは枷田さんのスマホを持ってるって証拠さえ消してしまえば、自分が誰かバレることなく邪魔な霊媒師をあぶり出せて、人間側は損しかしないってことよ」

 

 

初「はぁ~、なるほどな~!お前頭いいな~!!」

 

 

経介(確かに、凄い推理だ……)

 

 

怜菜「いえ、そこまででは」

 

 

恵「いやいや、怜菜ちゃんは実際頭いいと思うよ~♪でも、それ先に言っちゃうんだね。これでもう嘘つきは釣れなくなっちゃったよ。今のみんなの反応からしてそこにまで考えが至らなかった人も多かったみたいだから、本気で霊媒師と対抗しようとしてるバカな人なら、釣れる可能性は十分あったのにさ。怜菜ちゃんならそこまで考えてると思ったのに残念だなぁ……?」

 

 

 

恵はそう言い終えると、横目で怜菜の様子を窺った。

 

 

 

怜菜「……確かにそうね。私の考えが浅かったわ、ごめんなさい。以後、気を付けるわ」

 

 

恵「……」

 

 

有悟「まぁ、その通りになるのが一番最悪なパターンだが、今は影人形に関する情報なら何でも欲しい。それにこのまま放置しておいて、でたらめな情報に惑わされることになる方が嫌だからな。オレは予定通りCOをしてもらうつもりだ」

 

 

菜華「……私もそれでいいと思うぞ。まぁ最も、私はメッセージを送ってきたのは本物の霊媒師だと思うけどな。怜菜や恵みたいに頭がキレて、霊媒師をあぶり出してやろうと考えて行動していたならともかく、さっき恵が言ってたように、本気で霊媒師に成り済まそうだなんてハイリスクなことそうしないと思うからな」

 

 

恵「……僕もばななと同じ意見だね。あのメッセージは恐らく、信用していいとものだと思うよ」

 

 

有悟「……それは今から明らかにすることだが……どうだ?みんなは賛成してくれるか?」

 

 

縁「私はそれで大丈夫です!」

 

 

秋子「うちも!」

 

 

太一「まぁ、それならオレも賛成かな」

 

 

美咲「うちも賛成するけど……、これもし理央ちゃんが霊媒師やったらどうするん?」

 

 

銘「その場合は……最初は霊媒師が偽物だって判断はつかないけど、後に占い師と霊媒師の意見の食い違いが何回も起こるはずだから、それを見て判断すればいいと思うよ!」

 

 

美咲「そっかそっか!そもそも成り済ませるような役職と違うかったね……」

 

 

銘「うん!」

 

 

有悟「……よし。反対意見はないな。それでは早速、メッセージを送ってはいないが自分こそが真の霊媒師だという生徒がいれば、手を挙げてくれ」

 

 

 

有悟がそう合図を出すと、緊張からか食堂は静まり返り、物音一つ聞こえなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凉太「……挙手なし……か?」

 

 

有悟「……あと少しでCOタイムを終了する。もう一度言っておくが、この機を逃せばCOのチャンスはもうないぞ」

 

 

経介「……」

 

 

 

有悟はそうみんなに告げ、少しだけ時間を設けたが、挙手する者は一向に現れなかった。

 

 

 

恵「……これはもう決まりかな?」

 

 

菜華「そうみたいだな」

 

 

有悟「……うむ。ではメッセージの送り主が霊媒師である。ということだな」

 

 

和奏「まだ美咲ちゃんが言ってたみたいに理央ちゃんが霊媒師って可能性も残ってるけどね」

 

 

有悟「……その通りだがまぁ、今はあまり考えなくてもいいだろう」

 

 

銘「うんうん!」

 

 

経介(一先ず、霊媒師の件に関しては安心しても良さそうかな……?)

 

 

有悟「……と、いうわけだ。今日も朝から収集をかけてすまなかったな。だがみんなのお蔭で、ゲーム全体から見ればごくごく僅かなものだが、確実に進歩することができた。感謝する」

 

 

恒也「確かに、確実に進歩できた感はあるよな」

 

 

初「収穫あり!って感じだよな~!」

 

 

菜華「……さて、全員食事も済ませていることだし、そろそろ教室に移動しないか?ここに留まっておく理由もないだろう?」

 

 

恵「それもそうだねぇ、じゃあそろそろ移動しますかぁ」

 

 

 

霊媒師の騒動も一段落し、一時解散の流れになったかのように思えた、その時だった。

 

 

 

碧「なぁ、一ついいか?」

 

 

 

今まで黙って話を聞いていた碧が口を開いた。

 

 

 

恵「……どうしたの?まさか自分が霊媒師だとか言い出さないよね?」

 

 

碧「違う、そうじゃない。さっき有悟が言ったろ?ゲーム全体から見ればごく僅かだが、確実に進歩できたって」

 

 

有悟「……確かに言ったが、それがどうかしたか?」

 

 

碧「……なんで最後まで、このゲームをやり切ろうとしてるんだって思ってな」

 

 

経介(……え?)

 

 

有悟「どういうことだ?」

 

 

碧「どう考えてもおかしいだろ、こんなゲーム。昨日理央ちゃんが亡くなって、明先生が言ってたゲームが嘘じゃないってことが分かった。本当に殺されるんだよ、オレたちはオレたちに!こんなもの最後まで続けてみろ!一体何人が犠牲になる?残された奴はどんな気持ちになる?今のオレたちならそんなこと考えなくても分かるだろ!!」

 

 

響香「……」

 

 

千優「……叶うなら、こんなゲーム今すぐやめて逃げてしまいたいです。でも、そんなことすればリングが爆発して……!!」

 

 

 

余程つらかったのだろう。そう訴える千優の目には涙が浮かんでいた。

 

 

 

有悟「……残念だが西木さんの言う通り、オレたちの首にはこのリングが取り付けられている。これがある以上はもう、提示された条件に従うのができるだけ多くの生徒が生き残れる道だと思っていたのだが、違ったか?」

 

 

柚季「……私もそう思うよ。私は昔、兄を失って今回の件で親友も失った。大切な人を失うのは、とても苦しいことだよ。でもそれは私たちが死んじゃった時も同じ。私たちの誰かがいなくなれば、その誰かを大切に思ってる誰かが苦しむんだよ。人形ゲームの開催が嘘じゃなかった様に、先生の言葉が嘘じゃないなら、このゲームさえクリアすれば尊い命を失うことはない。それで少しでも悲しむ人が減るのなら、私は最後までやり切るしかないと思う」

 

 

小春「……!」

 

 

碧「……確かに、2人がそう言うのは分かる。でもよ、よく考えてみてくれ、オレたちは今外部と連絡を取ることができない。そんな状態が長いこと続いたら、オレたちの親やここにいない友人が何かが変だと気付いて、いずれは警察に届け出を出してくれるはずだ。そしてそんな届け出が何件も寄せられれば、警察だって無視することはできない。きっと警察が動き出して、オレらを見つけて保護してくれる」

 

 

真琴「あー、言われてみればそうか。あたしここに来るまで毎日連絡し合ってた友達いたから、その子が気付いてくれるかも」

 

 

暦「わっ、私も毎日おばあちゃんと連絡取ってたから、気付いてくれるかもです……」

 

 

真琴「……あっそ」

 

 

暦「はい。どうでもいいですよねすいません」

 

 

有悟「うむ、オレも父とはよく連絡を取り合っていたから、異変には気付いてくれるかも知れないな。だが、もしそれで捜索願が出され、警察がここまでたどり着いたとしよう。普通なら保護されてお終いだが、さっきも言った通りオレたちの首にはこのリングが取り付けられている。島から離れれば爆発するし、取り外そうにも鍵は先生方が保管していて、明確な保管場所の情報もない。おまけにあちらはスイッチ一つでリングの爆破が可能だ。無理に奪おうとしても結果は見えているぞ」

 

 

 

有悟は冷静にそう答えた。しかし、碧はそう言われるのを見越していたかのように続けた。

 

 

 

碧「そんなこと、本当にできるのか?」

 

 

蓮「……添田、少しでも多くの生徒が助かる方法を見出したいのは分かるけどよ、お前も見ただろ?体育館でこの銀のリングを付けた影人形が爆破されたのをよ」

 

 

碧「見たさ、先生が持ってるスイッチが本物なことぐらい分かってる。オレが言ってるのはそういう意味じゃない。本当に先生は、オレらに向かって起爆スイッチのボタンを押せるのかって言ってるんだ」

 

 

恵「……どういうこと?」

 

 

碧「説明会の時、先生言ってただろ?一人でも多く生き残って、この島を出ろって。それがオレたち教師全員の願いだって」

 

 

恒也「……確かに言ってたな。未だにあの言葉の意味は理解できないが」

 

 

碧「やってることと言ってることは矛盾してるけど、オレはあの言葉が嘘のようには見えなかった。先生はオレたちに生きて欲しいと思ってるんだよ。そんな先生が生徒に殺らせるならまだしも、自分の手で生徒を殺めることなんて本当にできると思うか?オレはそうは思わねぇ。人形ゲームには恐らく黒幕がいる。先生たちはきっと、そいつらに無理矢理ゲームの手伝いをさせられてるんだと思う。そう考えればこの矛盾に満ちた行動にも説明がつくだろ?だから先生はもし警察がこの島にたどり着いて、オレたちをゲームから解放しようとした場合、本当にリングを起爆しようとはしないと思うんだ。だってそれが、先生の望んだ生徒の平穏のはずだから」

 

 

恵「なるほど……ね……」

 

 

美咲「真実はどうなんか分からんけど、碧くんの言ってる通りやと確かに今までの行動の説明はつきそうやね……」

 

 

菜華「そう簡単な話ではないと思うが、本当に先生方が私たちのことを直接殺せるのかと言われてみれば、YESではない気はするな」

 

 

碧「だろ?だから何も最後までこんな腐りきったゲームに付き合う必要はないんだよ。少しでも長く耐え忍べば、きっと助けが来てくれるはずだ……!」

 

 

縁「あ、じゃあこんなのはどうでしょうか?今殺害権を持っている人と騎士が、こちらが指定した同じ生徒を襲撃・護衛するんです!それで人形探しも全員が行わないを選択すれば、助けが来るまでもう誰も死なずに済みます!」

 

 

秋子「なるほど!それ名案じゃない?!」

 

 

千優「私も賛成します……!」

 

 

友輝「まぁちょっと遅かった感はあるけどオレもさんせー!」

 

 

 

碧の考えを受け、縁が出した案には賛成の声が相次ぎ、今後の流れが決まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かのように思えた。しかし中には、反対の意志を示す生徒もいた。

 

 

 

有悟「……オレは反対だな。添田君の考えは頷けるが、その通りに事を進めた場合、最終的に生きるか死ぬかは先生の判断次第だからな。オレはそんな不確定要素のある方法よりも、確実性のある方法を取りたいんだ」

 

 

響香「私もそれは反対。たまたま警察が動いてくれて、たまたまこの島までたどり着いて、たまたま先生が見逃してくれて生還できましたなんて、そんな都合のいい話あるわけないし、そんなので生き残っても私、死んだ理央に一生顔向けできないもん」

 

 

航「オレも反対かな。期待して助けを待って、いつまで経っても助けが来なくて絶望するなら、最初からそんな淡い期待を抱く必要なんてないからね」

 

 

経介(割れたな……)

 

 

雪紀「んー、確かに期待はどこまで行っても期待だもんね」

 

 

碧「まぁ、有悟や航の言うように、オレの考えは不確定要素が多い分、その通りだと期待するしかないのが微妙だよな。でも賭けてみる価値はあると思うぞ」

 

 

縁「でも反対意見がある以上、私の案は成立しませんね……」

 

 

秋子「んー、いい案だと思ったんだけどなぁ……」

 

 

恵「まぁでも案は成立しないとは言え、助けが来る期待くらいはしてもいいんじゃない?結局できるだけたくさんの生徒が助かるって目的は一緒なんだしさ」

 

 

有悟「そうだな。基本的には今まで通り、影人形を探してゲームから除外する。それが生還への一番確実な道のりだからな。助けは来たらラッキー程度がいいだろう」

 

 

怜菜「……助けが来たせいで全員爆破される可能性もあるから、ラッキーじゃなくてアンラッキーかも知れないけどね」

 

 

初「そっかー、それもあるのかぁ~」

 

 

茜「何にせよ、まずは占いだね。今はゲーム時間外だし、もうすぐ授業も始まっちゃうから、その結果を受けてじっくり話し合いができるのは放課後とかになるけど、ゲームクリアには必須級のイベントだからね」

 

 

凉太「そうだな」

 

 

有悟「うむ、それでは話し合いはここまでとして、教室に急ごうか。どんな理由があれ、授業に遅刻することだけは許されないからな!」

 

 

初「あー、そっか、授業あるのか、めんどくせーな~」

 

 

有悟「む、面倒くさいとは失礼だぞ!教えてくれる先生方に感謝したまえ!!」

 

 

初「仕方ねぇだろ~!めんどくせーもんはめんどくせーんだよ~!」

 

 

祥子「……」

 

 

 

4月11日、食堂での朝の話し合いであった……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!第10話はいつもと少し違った終わり方になりましたね?この先もこんなに風に終わり方を工夫して、話に彩りを添えられたらなぁと思いました。さて、朝時間が終わって再び占いの時間がやって来ます。その結果は?疑われるのは?次話に期待ですね^^それでは皆さん、またの機会に!


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第11話 告げられた想い

皆さんこんにちは!めもりです。またのんびりと期間を開けての投稿となりました!今回はなんと!主人公たち3人にスポットライトが当たります(笑)周りのキャラが濃いですが、これからどんどん主人公味を帯びて行くので、楽しみにしていて下さいね!それでは第11話「告げられた想い」スタートです!


~同日、4月11日 昼~

 

 

 

彩「はい、そこまで~!」

 

 

友輝「ちょっ、まっ……」

 

 

秋子「あとちょっと!ちょっとだけだから!!」

 

 

彩「ダメです~(笑)また次回も確認テストをする予定なので準備しておいてくださいね~!それじゃ、今日の授業はここまでです!お疲れさま!」

 

 

有悟「お疲れ様です!ありがとうございました!!」

 

 

秋子「うっ、生きた心地が……」

 

 

穂乃香「秋子ちゃん、大丈夫?」

 

 

秋子「う~、全然ダメだよぉ……、穂乃香は大丈夫なの……?」

 

 

穂乃香「私は……まぁまぁかな……(笑)」

 

 

秋子「うちはもう無理すぎて鬱だよ……」

 

 

穂乃香「あ!そんなときはねぇ、気分が晴れるおまじないをするといいんだよ!」

 

 

秋子「おまじない?教えて教えて!」

 

 

穂乃香「えっとね、私が考えたやつなんだけど……!」

 

 

秋子「うんうん!」

 

 

 

冷音「……」

 

 

 

穂乃香「右手を広げて空に虹を描くようにして「グッバイレイニー!」って言うの!ジメジメした気分にさよなら!ってね」

 

 

秋子「えーっと、こう……かな……?」

 

 

 

秋子は穂乃香に言われた通り、右手を広げ、空に虹を描くようにして言った

 

 

 

秋子「グッバイレイニー!」

 

 

穂乃香「……どう?」

 

 

秋子「……うん、うん!「グッバイレイニー!」、なんかこれ好きだな、うち。ありがと!元気出た!」

 

 

穂乃香「ホントに?ちょっと恥ずかしかったけど、元気になってくれたなら良かった!!」

 

 

秋子「うん、ありがと!」

 

 

穂乃香「いーえ!」

 

 

太一「秋子―、飯行こうぜー」

 

 

秋子「あ、はーい!じゃ、またね!」

 

 

穂乃香「うん!いってらっしゃい!」

 

 

 

冷音「……」

 

 

初「……何ニヤけてんだ?気持ち悪ぃぞ」

 

 

冷音「あ?ニヤけてねーよチビ」

 

 

初「は?今私に向かってチビって言ったかシスコンやろ~!!」

 

 

冷音「あ“?誰がシスコン野郎だお子様ランチが!!」

 

 

初「はぁ?なんだその悪口は~!!」

 

 

暦(和む……)ズズズ……(茶

 

 

怜菜(あなたも相当よ桶川さん……)

 

 

 

 

 

~昼休み 南西の海岸~

 

 

 

小春「はぁ……、テスト疲れた~」

 

 

経介「とりあえずお疲れ様だね」

 

 

桜「お疲れ様~」

 

 

 

僕ら3人は小春の提案で南西の海岸に来ていた。

 

 

 

小春「まぁ、とりあえず午前はお疲れ様ということで、ご飯にしよっか!」

 

 

経介「うん。それはもちろん良いんだけど……、突然どうしたの?3人で海岸に行かないかなんて言い出して」

 

 

桜「それ、私も気になる」

 

 

小春「あ、うん。まずはそのことからだよね、ごめんね」

 

 

 

小春はそう言うと、静かに波立つ海の方を見ながらゆっくりと話をし始めた

 

 

 

小春「……今日の朝、食堂で柚季ちゃんが言ったこと、覚えてるかな……?」

 

 

経介「神薙さん?あ、それ、もしかして……」

 

 

桜「昔お兄ちゃんを亡くして~……って話かな……?」

 

 

小春「……うん。そうだよ」

 

 

経介「あー……やっぱりか……」

 

 

 

経介がこんな曖昧な反応をするのには、ある一つの理由があった。

 

 

 

小春「二人が知ってる通り、私も昔、お兄ちゃんを失ったから、今朝の柚季ちゃんの気持ちが痛いほど分かった……」

 

 

そう、小春も昔、柚季のように兄を失ったことを知っていたからである。

 

 

 

小春「それでね、私、当たり前のことだけど、ちゃんと2人に伝えなきゃって思ったの」

 

 

桜「うん。聞かせて」

 

 

経介「どうぞ!」

 

 

小春「あのね、私にとって2人はお兄ちゃんと同じくらい大切な人なの。だから、この先どんなことがあっても2人にだけは生きていて欲しいの」

 

 

桜「……!!」

 

 

経介「小春……」

 

 

小春「ほら。この海岸だって、最初に来た時はただただ綺麗で居心地の良い場所だったけど、昨日あそこの崖の上でクラスメイトを一人失ったことで、とても居心地が良いとは言えない場所に変わったよね。それと同じように、今2人が居て幸せだって感じる時間も、どっちか片方でもいなくなっちゃったら、間違いなく失われる。今日2人をここに連れてきたのはこのことを伝えるため。そして、わがままかも知れないけど、これが私の想いなの。でも、勘違いはしないで!他のみんながどうなっても良いって意味じゃない。私はみんなにも生きて欲しいもん。でも、それ以上に2人には、生きていて欲しいっていう気持ちが強くあるってことなの!!」

 

 

 

小春の心からの言葉であった。

 

 

 

経介「……うん、ありがとう!約束するよ!僕だってこんな訳の分からないゲームで訳も分からないまま死にたくない。そしてそれが小春の幸せになるんだったら、僕だって本望だよ」

 

 

小春「……嬉しい!ありがとう!」

 

 

経介「うん!でも、いなくなって困るのは小春だって同じだよ。もちろん桜だって。2人とも僕の大切な友達!絶対最後まで生き残って、みんなで一緒にこの島を出ようね!!」

 

 

小春「うん……、そうだよね、ありがとう!一緒にがんばろ!」

 

 

桜「……私も2人がいなくなるのはとても悲しい。私が死ぬことで2人が悲しむなら、私だって頑張らなくちゃって思える。それに私には学校の先生になるっていう夢がある。だからみんなで頑張って生き延びて、この島を出ようって……」

 

 

経介「……?」

 

 

 

経介が少し違和感を覚えると桜は少しうなだれ、話の続きを喋り始めた。

 

 

 

桜「……思えなきゃいけないのはわかってるんだよね」

 

 

小春「……桜ちゃん?」

 

 

経介「……どうしたの?」

 

 

桜「……どうしたんだろうね。いや、どうしたのかは分かるよ。でもどうすればいいのかが分かんないの。私は、ゲームなんてやりたくない。私はただ、みんなと……」

 

 

 

桜は酷く落ち込んでいるようだった。

 

 

 

小春「……確かに、おかしいよね、こんなゲーム。私たちには普通で楽しい学校生活を送る権利があるはずなのに」

 

 

桜「……」

 

 

小春「……私、密かに碧くんの言った通りになること、期待してるんだ。それで警察の人が来てゲームが終わって、また別の場所でこのメンバーと一緒に過ごせたらいいなって」

 

 

経介「……でも、それだと反対派の有悟くんが言ってたみたいに、みんな先生に殺されるかも知れないんだよ……?」

 

 

小春「それは……、その通りかも知れないけど、もし上手く行ったらこれ以上誰も死なずに済むんだよ?みんなそれぞれ大切な人は違って、脱出に求める最低条件だって違う。そんなみんなが同じゲームを進めて行けば、きっと最後には不幸が待ってる。……違うの。私はみんなで笑っていたい。……ダメかなぁ、夢を見ちゃ……」

 

 

 

そう言う小春の目は、涙で滲んでいた。

 

 

 

経介「小春……」

 

 

桜「……私も、小春ちゃんと一緒だよ。みんなで笑ってこの島を出たい」

 

 

経介「桜も……」

 

 

小春「だからさ、経介。もしかしたら、もしかしたら訪れてくれるかもしれないその時まで、占い師としてみんなを守ってあげてね……」

 

 

経介「……!」

 

 

 

僕は正直、この小春の言葉に戸惑った。朱谷くんが言っていた通り、不確かなものを信じ抜いて希望としてしまっては、それが閉ざされたその瞬間、絶望してしまう。正直、僕だって碧くんの言う通りになれるのなら、幸せだ。でも、もしそれが叶わない希望だということが分かったら、今の状態の小春は、桜はどうなってしまうのだろう。考えるだけで恐ろしい。でも、僕がこう考えるのはすべて、小春と桜を大切に思っているからだ。今、僕がこの小春の言葉に小春たちの希望を振り払うような言葉をぶつけたらどうなるのか、答えは簡単だ。それこそ危険な行為で、何より彼女らのためにならない。大切な人に向ける言葉ではないと言えるだろう。なら僕はどうするべきなのか。僕はそんな考えを巡らせに巡らせた結果、言った。

 

 

 

経介「……僕は、みんなのために頑張るよ」

 

 

 

想いをぶつけてきてくれた小春には、あまりに無難で曖昧な返答であるのは分かっていた。でもこれが僕の出した答えだ。何も間違っていない。それに僕は小春のこの言葉を聞いて、自分の背負っている役の重さに改めて気付かされたんだ。そして、占い師としてみんなのために、小春や桜のために頑張らなきゃって思ったんだ。

 

 

 

 

小春「……頼りにしてるよ、経介」

 

 

 

小春はそう言って、僕に笑顔を向けた。はにかんだ時に閉じた目から、留まっていた涙がスーッと頬を伝って流れて行くのが見えた。

 

 

 

 

 

その後、僕らは食事を済ませ、次の授業のある教室へと戻った。

 

 

授業が始まる直前、僕は占い師の力を使い、ある人物を占った。そして時は過ぎ、僕らは話し合いが予定されている放課後を迎えた……。

 

 

 

 

 

~放課後 16時30分 教室~

 

 

 

有悟「まずはみんな、授業お疲れ様」

 

 

泰斗「お疲れ~っす」

 

 

有悟「そして予定していた話し合いの時間だ。相沢君、木陰君、高穂君、占いは済んだかい?」

 

 

凉太「おう、バッチリだぜ!」

 

 

冷音「……あぁ」

 

 

経介「うん、大丈夫だよ……!」

 

 

有悟「よし、それでは占いの開示を行うぞ!前に決めた通りだと、木陰君と高穂君は姫野さんを占うのだったな」

 

 

祥子「……」

 

 

冷音「……そうだな、ちゃんと占ってきてやったぞ」

 

 

経介「……僕も姫野さんを占ったよ」

 

 

有悟「うむ、2人ともありがとう。それでは、結果の開示を一斉に行おう!今からオレが合図を出す、それに合わせて2人は一斉に姫野さんが白であったか黒であったかを教えてくれ。それではいくぞ、せーのっ!!」

 

 

 

有悟によって占い結果開示の合図が出された。

 

 

同時に、2人はそれぞれの占い結果を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷音「白だ」

経介「黒です」

 

 

 

 

 

祥子「……!!!」

 

 

有悟「……なるほど、木陰君が白で高穂君が黒か」

 

 

経介「……うん、合ってるかは分からないけど、僕は黒だったよ」

 

 

 

そう、僕は昼、姫野さんを占って、黒という結果が帰って来たのだ。

 

 

 

小春「……」

 

 

菜華「なるほど……な」

 

 

冷音「おい待て、オレは間違いなく占い師だぞ。お前らもしかして……グルか?」

 

 

凉太「これでオレは冷音が怪しくなったな。偽占い師はお前か?」

 

 

穂乃香「待って!お兄ちゃんを疑わないで!!」

 

 

恵「まぁまぁ、それは置いといて。これで2人から黒って判定を受けた訳だけど、祥子ちゃんは影人形なのかな~?(笑)」

 

 

祥子「……私は……!!!」

 

 

銘「それよりまずは凉太くんの占い結果から聞かない?何か他にヒントがつかめるかも知れないし!」

 

 

冷音「そうだぞ。そう言うお前は誰を占ったんだよ」

 

 

凉太「ん?オレか?オレは等野を占った」

 

 

美咲「……え、うち!?」

 

 

凉太「あぁ、まぁ白だったけどな」

 

 

冷音「等野だと……?何で泡瀬じゃねぇんだ、普通は泡瀬に行くだろ。お前こそ怪しいんじゃねぇか?」

 

 

響香「……まぁ、普通は私だよね」

 

 

 

凉太の意外な占い先に、一同は驚きを隠せない様子だった。

 

 

 

凉太「なんだよ、そんなに意外か?泡瀬を占わなかった理由なら簡単だぜ。今回の事件、どうせやったのは泡瀬か姫野のどっちかなんだ。その片方を全員が占ってるんだから、別に泡瀬を見る必要はねぇだろって話だよ。それにオレは最初から姫野が怪しいって思ってるんだ。尚更見る必要がねぇだろ?」

 

 

有悟「うーむ、できれば泡瀬さんを占って欲しかったが、言っていることは間違いではないな」

 

 

菜華「そうだな。等野さんを占ったのは、疑わしいと思っている姫野さんと仲が良いのと、何度か疑われた姫野さんのフォローに入ったからといったところか?」

 

 

凉太「……おう、その通り過ぎてビックリだ」

 

 

美咲「うちはただ祥子ちゃんが可哀想で……」

 

 

凉太「ま、占い結果的にはそうみたいだな」

 

 

冷音「……フン、オレは泡瀬の方が怪しいと思うがな」

 

 

凉太「偽物の占い師にそんなこと言われても困っちまうなぁ……」

 

 

冷音「だからオレは……!!」

 

 

友輝「まぁ落ち着けって2人とも~」

 

 

経介(偽物の占い師か……)

 

 

航「……で、話を戻すと結局姫野が2人に黒出しされてる訳だけど、どうするんだ?」

 

 

 

凉太と冷音の様子を見て、これ以上の進展はないと踏んだ航が話を戻した。

 

 

 

恵「いや~、もうぶっちゃけ祥子ちゃん黒で良いんじゃない?」

 

 

祥子「え、いや……!」

 

 

凉太「オレもそう思うぞ」

 

 

真琴「やったー、これで人形1体消せんじゃん」

 

 

祥子「……っ待って下さい!!!」

 

 

 

祥子は自分に掛けられる疑いの声を遮って、こう言った。

 

 

 

祥子「……COします!!」

 

 

経介「……!!」

 

 

恵「え!なんだろ?気になるなぁ~♪」

 

 

祥子「私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祥子「騎士です!!!」

 

 

 

 

 

(1日目)

 

相沢凉太→姫野祥子(黒)

木陰冷音→木陰穂乃香(白)

高穂経介→担城有悟(白)

 

 

(2日目)

 

相沢凉太→等野美咲(白)

木陰冷音→姫野祥子(白)

高穂経介→姫野祥子(黒)

 

 




はい、まずはここまでのご精読ありがとうございました!ついに騎士のCOが出ましたね!果たして彼女の言っていることは本当なのでしょうか?真の占い師はどちらなのでしょうか?彼らの色々な考えや意見を元に、ぜひ推理をお楽しみ下さい!それではまだ、第12話でお会いしましょう!


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第12話 メビウスの輪とチュイの花

皆さんこんにちは!めもりです!自分の中では割と早めの投稿となりました!というのも7月中はやることが多く、7月の投稿頻度が減ると思うので今のうちに投稿しておこうと思ったのがその理由です。そんな中でもしっかり12話を書き上げることができたので、ゆっくり見ていって下さいな!それでは第12話「メビウスの輪とチュイの花」スタートです!


祥子「私は……騎士です!!!」

 

 

経介(んー、なるほど……)

 

 

有悟「……ほう」

 

 

美咲「えぇ!祥子ちゃん騎士やったん!?」

 

 

凉太「……どうだかね、オレには苦し紛れの逃げをしてるようにしか見えないけどな」

 

 

祥子「いえ、本当です!!疑われるのは仕方ないですが、信じて欲しいです!!」

 

 

 

祥子は力強い声でそう言った。

 

 

友輝「まぁでも、姫野黒出し2人だし、そりゃ疑うよな」

 

 

怜菜「占いの的中率で白黒決めるのなら、当然だけど後者ね」

 

 

祥子「……はい、それはもちろん分かっています」

 

 

恵「ん~、正直これは困ったねぇ……」

 

 

真琴「え、もう黒ってことで良くね?」

 

 

初「ちょっ、お前それは失礼だぞ~!!」

 

 

恵「いや、真琴ちゃんの言ってることも分かるんだけど、問題は騎士COってとこなんだよね~」

 

 

菜華「確かに。そうでないなら人形探しの標的で良かったが、騎士となると失った時のダメージが大きいからな」

 

 

雪紀「いや、でも……」

 

 

 

皆の意見が飛び交う中、雪紀も意見を述べようとした、その時だった。

 

 

 

風里「っあの……!!」

 

 

 

風里が突然、雪紀の言葉を遮って声をあげた。

 

 

 

恵「どうしたの風里ちゃん、君が話に入って来るなんて珍しいね」

 

 

経介(確かに珍しいな…)

 

 

風里「あっ、ごめんなさい。私バカだから何も分からなくて、いつも話に着いて行けなくて……」

 

 

恵「いやいや、大丈夫だよ~♪それで、突然どうしたの?」

 

 

風里「あっ、あの、えと……」

 

 

菜華「……?」

 

 

 

恵が尋ねると、風里は何故か困った様子を見せた。そして……

 

 

 

風里「……やっぱり、何でもないです……」

 

 

恵「え~!教えてよ、気になるじゃん」

 

 

風里「……いや、それほど大事なことでもないので……」

 

 

経介(話を遮ってまで発言したのに、大事なことじゃないのか……?)

 

 

恵「それでもいいからさ!」

 

 

泰斗「まぁまぁ、落ち着けよ玉川。気になるのは分かるが、話したくねぇこと無理矢理話させちゃダメだろ?」

 

 

有悟「そうだぞ、落ち着きたまえ」

 

 

恵「えぇ~、残念……」

 

 

風里「……」

 

 

菜華(……彼女、さっき私の方をチラチラと見てた気が……、考えすぎか?)

 

 

 

 

 

有悟「……さて、気を取り直して本題の方に戻ろうか」

 

 

経介「うん、そうだね!」

 

 

雪紀「えーっと、じゃあ私の意見言ってもいいかな。さっき菜華ちゃんが言ってた話なんだけど、騎士ってそもそもCOして良い役職なのかなぁって」

 

 

銘「んー、基本的には影人形にバレると自分を守れないからやられちゃうし、他の騎士がその子を守ろうにも今度は占い師の方の守りが手薄になっちゃうから良くはないけど、COしても誰かを守る力はなくなるわけじゃないから、この場合だと仕方ないと思うよ」

 

 

雪紀「そっかそっか、でもそんな考えを逆手に取って影人形でしたーてオチも考えられるよね」

 

 

恵「そ。それが怖いんだよね~」

 

 

凉太「オレはもう決定でいいと思うけどな」

 

 

恵「まぁ、凉太くんは祥子ちゃんを占って黒って出てるから、自分の立場を守るためにもそう言うのは分かるんだけど……」

 

 

冷音「いや、オレも実際アリだと思うぞ。まぁ判定的なところを加味すれば微妙ではあるが、怪しいといえば怪しい気もするしな」

 

 

穂乃香「え!お兄ちゃんもそっち派なんだ!」

 

 

凉太「なんだ?ついに自分が占い師じゃないって認めたのか?」

 

 

冷音「ハッ、オレはオレの意見を述べただけだ。偽物はお前らのどっちかだろ」

 

 

茜「占い師と言えば経介くんの意見も気になるところだけど、祥子ちゃんのことはどう考えてるの?」

 

 

経介「あ、僕は……まだ何とも言えないかな。占い師がどっちか本物か分からない分には、確率の話も出来ないしさ」

 

 

茜「なるほどね~」

 

 

凉太「へぇ、高穂は自分のこと保護しないんだ。それって何かの作戦だったりする?」

 

 

経介「いやいや、そんなんじゃないよ」

 

 

凉太「まぁ、その話はさておき、オレは姫野が怪しいと思ってるから、騎士だって発言を受けて裁くのをずっと躊躇して、それでいよいよ黒だって分かったときにあの被害は抑えられたのになってなるくらいならいっそ、ここでやっちまったほうが良いんじゃねぇかと思うんだよ」

 

 

有悟「うーむ、姫野さんが本当に黒ならばそれで間違いはないが、今の状態ではそうとも言い切れないから微妙だな」

 

 

初「ん~、何かパッとしねぇ話し合いだなぁ」

 

 

蓮「なぁ、これ結論出んのか?」

 

 

怜菜「多分、誰かが新しい情報を吐かない限り同じ話を延々とし続けるだけだと思うわ」

 

 

友輝「……メデューサの輪の上ってことだな」ドヤッ

 

 

太一「メビウスな。」

 

 

銘「うーん、でもこれ以上は何も得られなさそうだし、人形探しの開催はまた多数決になりそうね」

 

 

縁「あの……、何も発言していない私が言うのも何ですが、進展が無いなら私、そろそろ部屋に戻って授業の復習をしたいのですが……」

 

 

桜「私も、この後少し用事があるので早めに切り上げたいです」

 

 

恒也「まぁ、もういいんじゃないか?これ以上する意味も感じないしな」

 

 

唯「そうだね!そろそろみんなも疲れてきたと思うし、明日の授業のためにもしっかり休まなくちゃ!」

 

 

真琴「授業に復習ねぇ、それ今のあたしたちには必要なことじゃないでしょ」

 

 

唯「いやいや、日頃の勉強は今後の私たちの生活に必ず活きてくる!碧くんも言ってたみたいに、生きる希望を捨てちゃダメだよ!」

 

 

真琴「……ま、好きにすれば?それに心配しなくてもあたしは絶対生き残って、この島を出るから」

 

 

唯「うん、お互い頑張ろうね!」

 

 

有悟「……ふむ。では今日の話し合いはここまでとするか。時間も時間だしな」

 

 

梢「ホントだ、すっかり夕方だね」

 

 

 

教室には、真っ赤に燃える斜陽が差し込んでいた。

 

 

 

菜華「それでは、このまま何も起こらなければ4日後の人形探しの開催は前回と同じように、匿名での多数決で決めるということでいいな」

 

 

恵「うん、それでいいと思うよ♪」

 

 

太一(まぁ、こんな色々と不確かなままじゃ、前回みたくどうせ開催されないんだろな……)

 

 

有悟「それでは今日の話し合いはここまでだ。また何か分かったことがあったら教えてくれたまえ!あと、明日も授業がある。親切に教えて下さっている先生方のためにも、絶対に遅れるんじゃないぞ!!」

 

 

晴(やっと終わった……)

 

 

 

こうして、結論が出ないまま放課後の集いは解散となった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同日、4月11日(木) とある街~

 

 

 

「ねぇ、昨日のニュース見た?」

 

 

「ニュースって……なんの?」

 

 

「あ、アレじゃないの?少女が遊泳中に波に攫われて~ってやつ」

 

 

「そうそう!」

 

 

「え、何それ、怖い」

 

 

「なんでも親が目を離してた間に起こったらしいの」

 

 

「うんうん、ちゃんと見てたら防げてた事故かも知れないし、私たちも海に行くときはお母さんとかを連れて行かなきゃね」

 

 

「えー、でもなんか恥ずかしいよ……」

 

 

「まぁ、気持ちは分かるけど、死ぬよりはマシでしょ?」

 

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、特に何も起こらないまま時は流れ、僕らは人形探しが行われる前日の朝を迎えていた。

 

 

 

~4月14日(日) 8時00分 食堂~

 

 

 

経介「おはよ~」

 

 

小春「あ、おはよ、経介」

 

 

桜「きょーちゃんおはよ~」

 

 

経介「ご飯、一緒していい?」

 

 

小春「うん、良いけど……泰斗くんの方は大丈夫なの?」

 

 

経介「あー、大丈夫だと思う。ほら、担城くんがいるし」

 

 

桜「あ、でも今日は飯野くん一人みたいだよ」

 

 

経介「え……?」

 

 

 

桜にそう言われて見てみると、泰斗は一人で食事を取っており、そこに有悟の姿はなかった。

 

 

経介「ホントだ。担城くんいつも朝食の時間は決めてあるって言ってたのに、珍しいな……」

 

 

 

 

 

~同刻 校外 図書館~

 

 

 

有悟「調べたところによると、この本は2階にあるようだな……」

 

 

 

有悟は何かを探しているようで、そう呟きながら図書館の階段を登って行った。

 

 

 

有悟(……一体、この本を開こうとするのはいつぶりだろうか。もう7、8年くらい前になるか……?)

 

 

 

そうこうしている内に、有悟は目的の本が置かれてある本棚の前に到着したようで、その本棚を探り始めた。

 

 

 

有悟「……あれ、おかしいな。確かにこの本棚に置いてあるハズだが……」

 

 

館長「……どうされましたか?」

 

 

有悟「あ、実は植物図鑑を探していまして。こんな図鑑なのですが……」

 

 

館長「あぁ、それでしたらあちらのお嬢さんが先ほど持って行かれましたよ」

 

 

 

有悟はそう言われ、館長さんが指した方向を見ると、そこには見覚えのある姿があった。

 

 

 

有悟(あれは……神薙さん!)

 

 

有悟「情報提供ありがとうございます!!」

 

 

 

有悟はそうお礼を言って、柚季が座っている机の方へと足を運んだ。

 

 

 

有悟「……おはよう、神薙さん」

 

 

柚季「えっ!?あぁ、有悟くんか、びっくりした……。おはよう!」

 

 

有悟「突然声を掛けて済まないな。実は、神薙さんが読んでいる本を探していてな」

 

 

柚季「あ、そうなんだ……!」

 

 

有悟「あぁ。それで神薙さんを見つけて声を掛けただけだから、見せてくれと言っている訳ではない。勘違いしないでくれたまえよ」

 

 

柚季「そっかそっか!別に私は構わないけど……、有悟くんは植物好きなの?」

 

 

有悟「……そうだな。昔は好きでよく花を摘んでは鑑賞して楽しんでいたよ。神薙さんは確かお兄さんの影響で花が好きなんだったよね」

 

 

柚季「そうなんだ!お兄ちゃんは私に花を教えてくれた素敵な人だよ。今でこそそれは叶わないけど、そんなお兄ちゃんと花の話をするのが大好きだったんだ……」

 

 

 

柚季は懐かしそうにそう語った。

 

 

 

有悟(この話はマズかったか……?)

 

 

柚季「……それにしても、よく覚えてたね」

 

 

有悟「まぁな。オレが尊敬していた人も花が好きで、その人と同じ花好きということで覚えていたんだよ」

 

 

柚季「へぇ!花は良いよねぇ!響香と青葉と瞳と、亡くなった理央も花が好きなんだよ」

 

 

有悟「……そうなのか!間違いなく、素晴らしいものだよ。知識さえあれば……な」

 

 

柚季「これ!私とお兄ちゃんが一番好きな花!」

 

 

 

柚季は広げていた図鑑のページを指して、有悟に見せた。

それは純白の、とても美しい花だった。

 

 

 

有悟「……その花は……!!」

 

 

柚季「知ってるの?この花は……」

 

 

有悟「花の名前はチュイ。花言葉は「癒し」。その姿を見る者には癒しを与え、その蜜を吸う者には死の癒しを与える。美しい見た目とは裏腹に、蜜に強力な毒を持つ花だ」

 

 

柚季「わぁ!よく知ってるね!」

 

 

有悟「知っているも何も、その花は……オレが一番嫌いな花だ」

 

 

 

有悟は気迫の籠った声でそう言い放った。

 

 

 

館長「お客様、ここは公共の場です。他のお客様の迷惑になりますのでもう少しだけトーンを落として下さいませ……」

 

 

有悟「っすいません!!つい……」

 

 

柚季「……有悟くんが不注意するなんて珍しいね。それにチュイの花、嫌いなんだね……」

 

 

有悟「……いや、オレは不注意ばかりだよ。昔だって、その花のことをオレが何も知らないばかりに、あの人は……。だからオレはその花が嫌いなんだ。その花のせいじゃないのは分かってる。でもその花を見ると思い出してしまうから……!!」

 

 

柚季「……そっか。……実はね、私のお兄ちゃんもチュイの花の毒で亡くなったんだ」

 

 

有悟「え……」

 

 

柚季「……いろいろあってね。元々長くはないって言われてたんだけど、あの時私がそこにいて、お兄ちゃんを、チュイの花を摘んできた少年を止められていたら、もっと長く生きられたんじゃないかって今でも思うの」

 

 

有悟「……じゃあ、君のお兄さんはその少年が摘んできたチュイの花の毒で……?」

 

 

柚季「……うん。そうだよ。それでも私はチュイの花が好きなの。お兄ちゃんが好きな花で、一番最初私に教えてくれた思い出の花だから。……変かな?自分の兄を殺した花が好きだなんて……」

 

 

 

柚季はページに咲いた白の眩しい花を見ながら、そう語った。

 

 

 

有悟「……」

 

 

柚季「……有悟くん?」

 

 

有悟「あぁ、済まない。考え事をしていた」

 

 

柚季「いいよいいよ!突然こんな話するのが悪いんだし」

 

 

有悟「恨みはないのか?」

 

 

柚季「……え?」

 

 

有悟「その少年に恨みはないのか?」

 

 

柚季「あぁ、……ないよ。恨みはない。ホントなら今も恨みを抱いてたかも知れないけど、お兄ちゃんが残してくれた言葉が、私を救ってくれてるの。だから、恨んでなんかいないよ」

 

 

有悟「……そうか、神薙さんは恨んではいないのか……」

 

 

柚季「うん……」

 

 

有悟「……」

 

 

 

突然、2人の間に静寂が訪れた。

先ほどまで聞こえて来なかった、誰かがページをめくる音すら、今の2人には鮮明に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

それから、少し経ってのことだった。

 

 

 

青葉「柚季ちゃん!」

 

 

柚季「わっ!青葉ちゃんかぁ、ビックリした……」

 

 

 

いつの間にか図書館に入って来た青葉が柚季に声を掛けた。

 

 

 

有悟「栄さん、おはよう!」

 

 

青葉「あ、有悟くんじゃん。おはよう!」

 

 

柚季「もうみんな食べ終わったの?」

 

 

青葉「うん!だから柚季ちゃんを迎えに来たんだけど……、ひょっとしてデート中だったりした?」

 

 

柚季「ちっ、違うよ!!これはたまたま有悟くんが!!」

 

 

有悟「あぁ、オレが神薙さんを見つけて声を掛けただけなんだ、勘違いしないでやってくれ」

 

 

青葉「分かってるって、冗談だよ!柚季ちゃん面白い反応しちゃって~(笑)」

 

 

柚季「もう!からかってないで行くよ!」

 

 

青葉「ごめんって~(笑)」

 

 

 

そのまま、柚季たちは図書館から出て行ってしまった。

 

 

 

有悟「……全く、本が置いたままになっているぞ……」

 

 

有悟(……神薙さん、君は……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同刻 寮棟2階 祥子の部屋~

 

 

 

美咲「人形探し、明日やね」

 

 

唯「そうだね」

 

 

祥子「私一体、どうなるんでしょうか……」

 

 

 

祥子の顔は不安で一杯だった。

 

 

 

美咲「んー、今回の人形探しは響香ちゃんと祥子ちゃんが対象になってくるんよなぁ」

 

 

祥子「はい、そうだと思います……」

 

 

美咲「どうなるかなぁ……、でも響香ちゃんも正直怪しいよなぁ」

 

 

唯「私もそう思うけど、他のみんながどう思ってるか分からないからね……」

 

 

美咲「うん……」

 

 

祥子「でも私、相沢さんと高穂さんに黒だと言われてるので、どちらかというと皆さん私の方が……」

 

 

美咲「でも祥子ちゃん騎士なんやろ?そんなに手出してくる人は居らんと思うけど……」

 

 

唯「そうだよ!だから元気出して!祥子ちゃんには私と美咲ちゃんがついてるから!!」

 

 

祥子「沖鳥さん……、ありがとうございます!沖鳥さんは凄いですね!その素敵な笑顔一つで人を安心させることができるのですから!!」

 

 

唯「あ……、うん。ありがと!」

 

 

美咲「……」

 

 

祥子「あ、それでは私、少し元気が出たので飲み物を買ってきますね!」

 

 

唯「分かった!いってらっしゃい!」

 

 

美咲「あ、いってらっしゃい!」

 

 

 

2人に見送られて祥子は一時部屋を抜け、部屋には美咲と唯2人だけとなった。

 

 

 

唯「はぁ……、祥子ちゃんも大変だねぇ」

 

 

美咲「……」

 

 

唯「……美咲ちゃん?」

 

 

 

唯が美咲の方を見ると、彼女は不思議そうな顔で唯の方を見ていた。

そして、美咲はその表情を変えぬまま、唯に向かってこう言った。

 

 

 

美咲「なぁ、唯ちゃん」

 

 

唯「なぁに、美咲ちゃん。どうしたの?」

 

 

美咲「唯ちゃんはどうしていつも……」

 

 

唯「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「苦しそうに笑うの?」

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!結論の出ない会議を終え、図書館の話を書きましたが、何か思ったことはあったでしょうか?美咲の質問を受けて唯はどう返すのでしょうか?完全に投稿頻度のせいなのは承知の上で言いますが、たまには過去の話も見返してみて下さいね^^それではまた、次話で会いましょう!


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第13話 木漏れ日の心

皆さんこんにちは!めもりです!大学が忙しく制作にあてる時間がほとんど取れませんでしたが、ようやっと夏休みに入り、投稿することができました!長らくお待たせいたしましたということで、早速ですが第13話「木漏れ日の心」スタートです!


美咲「唯ちゃんはどうしていつも苦しそうに笑うの?」

 

 

唯「え……」

 

 

 

突然、美咲から放たれた言葉に唯は驚きを隠せなかった。

 

 

 

唯「……」

 

 

美咲「あ……ごめんな、もしかしたらうちの勘違いやったかな?さっきの祥子ちゃんもそうやけど、みんなは違和感とか感じてないみたいやし……」

 

 

唯「……うん。多分そうなんじゃないかな」

 

 

美咲「唯ちゃん……?」

 

 

 

唯はそっぽを向いてそう答えた。

 

 

 

唯「あ、そうだ!私やらなくちゃいけないことがあるんだった!」

 

 

美咲「え?」

 

 

唯「ごめん、今日はこの辺で失礼するね!祥子ちゃんによろしく!」

 

 

美咲「ちょっ、待って……!」

 

 

 

バタン

 

 

 

唯はそう言い残すと、急いで祥子の部屋を後にした。

 

 

 

美咲「行っちゃった……」

 

 

美咲(ホンマにただの勘違い……やったんかな……?)

 

 

 

 

唯「……まさか、ね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同日 昼 島内 南の公園~

 

 

 

島内南、住宅地の中に田園風景などが広がっているのどかで落ち着いた場所だ。その一角にある公園のベンチに、学園の生徒たちが何人か座っているのが見える。

 

 

 

青葉「やっぱりこの辺りはのどかで落ち着くね~」

 

 

柚季「だね!凄くリラックスできるよね」

 

 

瞳「響香ちゃんはどう?リラックスできてる?」

 

 

響香「まぁ、うん……。お蔭様で」

 

 

瞳「ホントに?なら良かった!」

 

 

青葉「ね!連れてきた甲斐があったよ!」

 

 

響香「ありがとね……!」

 

 

柚季「お礼なんていいよ!響香ちゃんがそれでリラックスできてるなら、それだけで私たちは嬉しいから!」

 

 

青葉「そうだよ~!」

 

 

瞳「うんうん!」

 

 

響香「みんな……!」

 

 

 

聞こえて来る会話はとても暖かく、公園に差す陽光の影響もあり、それは私たちに彼女らが今、幸せの最中に居るかのように感じさせた。

 

 

 

響香「ホントにありがとね。私、みんなと一緒に居れて幸せだよ……」

 

 

柚季「響香ちゃん……!」

 

 

青葉「ありがと、嬉しい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、所詮それは錯覚に過ぎなかった。

 

 

 

響香「……でもね、でもね私、怖いんだ」

 

 

瞳「……響香ちゃん?」

 

 

響香「今が幸せであればあるほど、もう二度とこの時間が訪れない気がして……」

 

 

 

そう打ち明ける響香の目には涙が浮かんでいた。

 

 

 

響香「ホントはこの幸せを理央とも共有したかったよ!ずっと一緒に笑っていたかったよ!でも理央は殺されて、その容疑が私に掛かってる!おかしいよ……、どうして?どうしてなの?私は、私はただ……」

 

 

柚季「……」

 

 

 

まだ高校1年生の彼女には、重すぎる現実だった。響香はそのままベンチにうずくまってしまった。その体は震えていた。3人はそんな親友の姿を見て、どう声を掛けていいかも分からず、ただその小さな背中にそっと手を当て、慰めてやることしかできなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し経ってのことだった。

 

 

 

??「おぉ!誰かと思えばこの前のお嬢さんたちじゃないか!」

 

 

 

突然、誰かが柚季たちにそう声を掛けた。

 

 

 

柚季「あっ!おじさん、こんにちは!」

 

 

青葉「こんにちは~!」

 

 

おじさん「こんにちは!4日ぶりかな?」

 

 

柚季「そう……ですね!」

 

 

 

声を掛けてきたのは4日前の島探索中に3人が打ち解けた、この辺りに住んでいる島のおじさんだった。※7話参照

 

 

 

おじさん「相変わらず元気なようでなによりじゃが……、そこのお嬢さんはどうしたんじゃ?見たところ君たちのお友達のようじゃが……」

 

 

 

おじさんはベンチにうずくまった響香を見て、そう問い掛けた。

 

 

 

瞳「あ……はい。この子は響香ちゃん、泡瀬響香って言います!私たちの友達です!いつもはもっと元気なんですけど、今は訳あって……」

 

 

おじさん「訳……?」

 

 

柚季「はい。学園のことで……」

 

 

 

柚季はおじさんの足元に視線を落としてそう言った。

 

 

 

おじさん「……学園?……もしかして、人形ゲームで友達でも失ったのかい?」

 

 

柚季「え……」

 

 

響香「……!!」

 

 

 

柚季らはおじさんが発した言葉に耳を疑った。

 

 

 

瞳「……今、人形ゲームって言いましたか……?」

 

 

おじさん「あぁ、言ったとも。何じゃ?ワシの言い方がおかしかったのかい?」

 

 

瞳「あ、いえ、そういう訳では!!」

 

 

 

人形ゲーム。確かにおじさんはそう言ったのだ。彼女らはふと、前にクラスのみんなでこのゲームについて話し合った時、島の住人とゲームの関係性の話が出てきていたのを思い出した。目の前のことに必死で、今までそんな話をしていたことなど忘れていた彼女らであったが、今まさにこの瞬間、ゲームの謎が一つ明らかになったのである。この島の住人は、少なくともこのおじさんは、人形ゲームの存在を知っていたのだ。

 

 

 

青葉「……知ってたんですね。人形ゲームのこと」

 

 

おじさん「知ってたって……あぁ、何じゃ、そういうことじゃったか。しかし人形ゲームのことならワシを含め、この島の住人みんなが知っておるぞ。なんせワシらは……」

 

 

 

おじさんが続きを話そうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「花宮さん、それ以上は遠慮していただいても?」

 

 

おじさん「むっ……」

 

 

柚季「あ、彩先生……?」

 

 

 

そうおじさんに声を掛けてきたのは彼女らの副担任である彩であった。しかし、その表情はいつもの彩のにこやかなものとは違い、どこか冷たささえ感じさせるものであった。

 

 

 

彩「島の住人たる約束事、忘れたんですか?」

 

 

おじさん「ああ、いや、忘れた訳ではないよ。ワシも歳じゃが、記憶力だけは若いもんにも負けん自信がある。ただ今回は、少しだけなら……とな」

 

 

 

おじさんが話を誤魔化そうと、少し冗談めかしても彩のその表情が変わることはなかった。

 

 

 

柚季(先生の顔、とても怖い……)

 

 

彩「……約束は約束です。守れないようでしたら例え貴方であっても容赦はしませんよ」

 

 

 

彩はそう言うと、右手を影人形へと変え、おじさんを威圧した。

 

 

 

おじさん「ま、まぁ落ち着いてくれ!分かったよ、約束は守る。ワシはただこの子が心配で、少しでも元気にさせてやりたいだけなんじゃ!」

 

 

彩「……」

 

 

柚季「……?」

 

 

彩「……そうですか!それは良いことです!花宮さんにしかできないことだってあります!ぜひ元気づけてあげてくださいね!」

 

 

 

少しの沈黙の後、彩の表情は一変し、口調もいつもの明るい調子のものへと変化した。先ほどまで見ていた彩の姿が嘘のようだった。

 

 

 

おじさん「あぁ、任せておいてくれ!」

 

 

彩「はい!……ただ、約束は絶対ですよ。私だって、尊い命をこの手で摘み取りたくはないですから……」

 

 

 

彩はそう言い残して、木漏れ日の眩しい公園を後にした。

僅か数分の出来事だった。残された柚季たちは、まだ状況が呑み込めずにいた。

ずっとベンチでうずくまっていた響香も、今では顔を上げてこの状況を整理しつつも、心配そうにどこか遠くを見つめていた。

 

 

 

おじさん「……驚かせてしまったかな」

 

 

 

そんな彼女らの様子を見て、おじさんは一言、そうこぼした。

 

 

 

瞳「あ、いえ。……でも、そうじゃないって言ったら嘘になりますね……」

 

 

 

彼女らの中に、驚きの気持ちは確かにあった。ただ、それ以上に再度突き付けられた人形ゲームという現実が重たく彼女らにのしかかったのである。

 

 

 

おじさん「……そうかい。……何だか、悪いことを思い出させてしまったみたいじゃな。すまなかった」

 

 

響香「……」

 

 

おじさん「……君は人形ゲームで、大切な人を失ったのじゃろ。事情を知った今なら分かる。君はそういった悲しい目をしているよ……」

 

 

 

そう言って響香に向けられたおじさんの目も、どこか悲しそうであった。

 

 

 

響香「……私、響香って言います。泡瀬響香です」

 

 

柚季「……響香ちゃん!」

 

 

 

その目に感化されたのか、突然、今まで黙っていた響香が口を開いた。

 

 

そして、こう問い掛けた。

 

 

 

響香「あなたは、その……、柚季たちと、人形ゲームとどういった関わりがあるんですか……?」

 

 

おじさん「ふむ、なるほどな。まぁそれに答える前に、折角君が名乗ってくれたんじゃ。ワシにも名乗らせておくれ。……と言っても先ほど彩ちゃんが言っていたがね。ワシは秀之(ヒデユキ)。花宮秀之じゃ。今はもう店は閉じたが、昔ここらでちっぽけな花屋をやっておった者じゃ。君は響香ちゃんと言うんじゃな」

 

 

響香「花宮さん……ですか。はい、私はそうです」

 

 

おじさん「うむ、そしてワシの関わりについてじゃが、先ほどみたいなことになるのはもう勘弁なのでな、人形ゲームとの方は伏せさせてもらうよ。じゃが、お嬢さんたちとの方なら言えるぞ。ワシらが初めて会ったのはな──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おじさん「──と、まぁ、こんな感じじゃ」

 

 

響香「へぇ、そうだったんですね……!」

 

 

柚季「うん!だから安心していいよ!おじさんは人形ゲームのことを知ってるけど、私たちの敵じゃない!私が保証する!」

 

 

おじさん「……うむ、色々言いたくても言えないところがあるが、それで間違ってはいないよ」

 

 

響香「……」

 

 

おじさん「はははっ、まぁ疑うのも無理はない。信じるも信じないも君の自由じゃ。じゃがの、これだけは知っておいてくれ。ワシは君のことが心配なんじゃ」

 

 

響香「……それは、どうしてですか?見ず知らずのあなたがどうして私を心配するんですか……?」

 

 

瞳「……ちょっと響香ちゃん!それは流石に……!」

 

 

 

瞳は響香の言葉を指摘しつつ、おじさんの方に恐る恐る目をやった。

 

 

存外、瞳に映ったおじさんは、穏やかな目をしていた。

 

 

 

おじさん「……ワシはな、今まで幾度となく、君のような子を見てきたんじゃよ」

 

 

響香「……私のような子を……?」

 

 

おじさん「そうじゃよ。君のように、不安や悲しみに押し潰されそうになった子をじゃ」

 

 

響香「……」

 

 

おじさん「じゃが、ワシが見てきたのは何も、そうなっているという状況だけじゃない。その先のその子たちの行動、変化、結末までの全てをこの島で何年も見続けてきた」

 

 

青葉「……!」

 

 

おじさん「それで、気付いたんじゃよ。みんな不安や悲しみを背負うのは同じで、挫けそうになるのも同じじゃ。じゃがな、そこからそれをどう乗り越えて、どう糧にして生きて行こうと決めるかで、ひらける道は変わってくるんじゃ。今の君はまだそのスタート地点に立っているだけ。このままではきっと、背負ったものに押し潰されて終わってしまう。ワシはそうなってしまった子を何人も知っている。その子らの顔を思い出すとな、胸が苦しくなるんじゃ。あの時ワシが何かを変えてやることができたんじゃないかと思うと、締め付けられるように痛むんじゃ。じゃからワシは君が心配で声を掛けたんじゃ。君に道がひらけるように、己がもう後悔しないで済むように」

 

 

響香「……でも、私は……」

 

 

おじさん「辛いのはよく分かる。ワシだってそうじゃ。いくつも大切なものを失って、辛くて、苦しくて、泣き出しそうで、それでも希望に縋ろうと泥臭く生きてきた。そのもがき苦しんだ先で、ワシは今ちっぽけな幸せの中にいる。じゃから、どうか前を向いて、希望を捨てず生きてくれ……。君が今どんな状況に立っていて、どんな心情をしているのかなど、全てを理解はしてやれないワシじゃが、これが似た境遇に立たされた身として、君に伝えてやれる精一杯の言葉じゃ……」

 

 

響香(……それでも私は、私には……)

 

 

おじさん「それに、何も一人で思い悩む必要はない。困ったり、辛くなったときには友達に頼ればいい。現に、君にはこうして寄り添ってくれる、あたたかい友達がいるじゃないか。……君の反応を見るに、きっと他にもそんな子がいたのじゃろうな。……辛いじゃろう、辛かったじゃろう。色々と後悔したじゃろう。じゃが、残酷なことにその子はもう二度と帰って来ることはない」

 

 

響香「……!!そんなこと、わざわざ言われなくても分かって……!!」

 

 

おじさん「じゃからこそ!!後悔したからこそ、今いる友達と共に、後悔ないように生きるんじゃ……。もし、もしお別れの時が来てしまっても、これでもう後悔はないって思えるよう、沢山笑いあって、沢山悲しみを分かち合うんじゃ。亡くなった友の分まで。いや、それ以上に。そのためには、生きる希望を持つことが大切なんじゃよ……」

 

 

 

おじさんは静かに、だが力強く、そう語った。

 

 

 

響香「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と、暫く続いていた沈黙に、突然一つの声が飛び込んできた。

 

 

 

島の住人「あ!いたいた!花宮さんのとこの旦那さん……!」

 

 

おじさん「……ん?」

 

 

 

その声の主は、おじさん家の近所に住む50代くらいのおばさんだった。

 

 

 

島の住人「ご飯の準備ができたって、奥さんがお呼びだよ!」

 

 

おじさん「おっと!それはいかんの!ご飯は出来立てが最高じゃ。ありがとう!すぐに戻るよ!」

 

 

島の住人「奥さん淋しがってると思うから、すぐに行ってあげてねー!」

 

 

おじさん「はいよー!と、いう訳じゃ。ワシは戻らねばならん用事が出来たので、ここらで失礼させてもらうよ」

 

 

柚季「おじさん……またね!」

 

 

青葉「また!」

 

 

おじさん「そうじゃな!……次に会える時も、君ら全員がこうして無事であることを願っているよ……」

 

 

 

おじさんはそう言うと、急ぎ足で愛する人の待つ自宅へと帰って行った。

 

 

 

青葉「……おじさん、奥さんがいたんだね」

 

 

瞳「うん。それがきっと、おじさんの言うちっぽけな幸せなんだろうね……」

 

 

柚季「ね。……私たちにもいつか、本当の幸せってものが訪れるのかな……?」

 

 

瞳「それは……どうだろね」

 

 

青葉「おじさんが言うみたいに、希望を持って生きた先では、訪れるのかも知れないね……」

 

 

響香(生きる、希望……)

 

 

 

 

 

私は、理央を失って辛かった。でも、生きる希望を捨てた訳じゃない。

じゃあ、どうして。どうしてこんなにもその言葉は、私の心に引っ掛かるのだろう……。

 

 




まずはここまでのご精読ありがとうごさいました!久しぶりの執筆で手詰まりするところが多々ある中、なんとか書き上げることができました!次回はスラスラと書き上げたいですね……。そんな次回ですが、また話が進む予感がします!お楽しみに!それでは皆さん、また次回、お会いしましょう!(雑)


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第14話 開廷の人形探し

皆さんこんにちは、めもりです!今回、早めの投稿となりましたが、本来13話の最後に書くはずだった部分をこの14話として投稿しているので、内容がいつもの半分程度となっていること、先に伝えさせていただきます。文字数はいつもよりも少ないとはいえ、楽しめる内容になるように精一杯執筆しましたので、ぜひ楽しんで行ってください!それでは第14話「開廷の人形探し」スタートです!


~同日 4月14日(日) 夜 寮棟1階 食堂~

 

 

 

経介(……明日は、人形探しか……)

 

 

 

夜なのに加え、人が少ないためか、静かな食堂の中で経介は一人、そんなことを考えていた。

食堂内は涼しく、考え事をするには最適の場所なのである。

 

 

 

経介(まぁ、でも実際どうなんだろ、今の時点では不確定要素が多すぎるし、まだ人形探しに踏み込むのは時期尚早な気もするけどな……)

 

 

 

経介はウォータークーラーで汲んできた水を飲みつつ、少し響香と祥子のことを考えた。

 

 

 

経介(……やっぱり、今後のゲームの展開は、みんなの命は、僕らの占いにかかってるんだよね……。僕は、自分には到底背負いきれないほどの大役を与えられたんだ。でも、必ず職務を全うして見せる。小春のため、桜のため、みんなのために。……そして、同じ大役を与えられた人が、僕の他にもう一人いる。それに加えて、偽物も一人いる。彼らのどちらが本物でどちらが偽物なのか、今は分からないけど、事態を誤った方向に持って行かれる前に、この偽物がどちらなのか、必ず暴かなくちゃいけない。じゃあ、僕が次に占うべき相手って……?)

 

 

 

経介がちょうど、そのことに頭を悩ませていた時だった。

 

 

 

桜「あ、きょーちゃん」

 

 

経介「……桜!」

 

 

 

幼馴染の桜が食堂に入って来て、経介に声を掛けた。どうやら2階の自部屋から降りてきたらしい。

 

 

 

経介「どうしたの?何か眠そうだけど……?」

 

 

桜「んー、ちょっと勉強しててね。眠たくなってきたからコーヒー買いに来たの……」

 

 

経介「あっ、そうなんだ!ごゆっくり……」

 

 

 

桜は経介にそう言われるよりも早く、食堂の隅にある自販機の方へと向かって行った。

 

 

 

経介(勉強か……、桜は偉いな。四宮さんが言ってたことも最もだけど、僕も勉強とゲームを両立させなきゃな……)

 

 

 

そんなことを思っていた時、彼の頭にふと、ある疑問が浮かんできた。

そして経介は自販機から戻って来た桜にこう尋ねた。

 

 

 

経介「……ねぇ、桜」

 

 

桜「ん?どしたの……?」

 

 

経介「桜はさ、誰が怪しいと思う……?」

 

 

桜「ん……」

 

 

経介「あっ、人形ゲームの話ね!」

 

 

桜「……」

 

 

 

桜はその質問にすぐに答えることはしなかった。それは考えていたからなのか、単に眠たくて頭がはたらかなかったからなのか、それとも別の理由があったからなのかは定かではないが、桜は少し経ってからこう答えたのだ。

 

 

 

桜「……特には、いないかな」

 

 

経介「……そっか!」

 

 

 

ある程度予想はできていた答えだった。彼はそれでも、何かのヒントになればと思い、桜にそう問い掛けたのであった。

 

 

 

桜「……きょーちゃんは、本物の占い師なんだよね」

 

 

経介「えっ?」

 

 

 

唐突の質問に、経介は間の抜けた声をこぼした。

 

 

 

経介「あぁ……うん、そうだよ」

 

 

経介(そっか、まだ僕が占い師だって確信は持てないもんね。幼馴染だからなんだか安心してたけど、僕のことを信用しきれないのは桜だって同じなんだ……)

 

 

桜「……そっか」

 

 

経介「あ、もしかして……、疑ってる?」

 

 

桜「ううん。別に」

 

 

経介「……そう、なら良いんだけど……」

 

 

経介(今日の桜、どこか素っ気ない感じがするな……)

 

 

桜「……」

 

 

経介(まぁ、気のせいかもしれないし、気にしない方が良さそうかな……)

 

 

経介「そう言えば、小春はどうなんだろね。怪しいと思ってる人とかいるのかな?」

 

 

桜「……さぁ。気になるんだったら聞いてみたら?」

 

 

経介「あ、うん。そうだね」

 

 

 

経介がそう言われ、何となく辺りを見回した時だった。

 

 

 

経介「……あれ、今の小春じゃない?」

 

 

桜「ん?小春ちゃんいたの?」

 

 

経介「うん。今そこの前を通ったと思う!」

 

 

 

経介はそう言って食堂の正面入り口を指さした。

 

 

 

桜「そっか……」

 

 

経介「僕、ちょっと行ってくるね!」

 

 

桜「あ、うん。……私もう戻るね。勉強の続きしなきゃだし」

 

 

経介「分かった!時間割かせてごめんね!」

 

 

 

経介はそう言って桜と別れると、急ぎ足で食堂を出た。

 

 

 

経介「小春は……」

 

 

 

経介は食堂から差し込む光を頼りに、暗闇の中目を凝らして小春を探した。

 

 

 

経介「……いなさそうだな……ん?」

 

 

 

小春を探す経介の目に、ふと建物の角に立つ誰かの姿が映った。

 

 

 

経介(あれは……、誰だろ……?)

 

 

 

その姿は暗くてよく見えなかったが、幼馴染の経介にはそれが小春ではないことは分かった。

 

 

 

経介(あの人、あんなところで何してるんだろ……?まぁいいや、小春を見なかったか聞いてみよう)

 

 

経介「あの!ちょっといいですか!」

 

 

 

経介がその人物にそう呼び掛け、駆け寄って行こうとした、その時だった。

 

 

 

経介「あ……」

 

 

 

その人物は経介の声に反応し、建物の影へ消えてしまったのである。

 

 

 

経介「どっか行っちゃった……。でも今、消えたタイミング的に完全にこっちに気付いてたよね。……一体、何をしてたんだろ……?」

 

 

 

その後、経介は小春を探したが、既に部屋に戻ったのか一向に彼女は見つからなかった。

探し疲れた彼は小春にゲームのことを尋ねるのを一旦諦め、自部屋に戻ってお風呂を済ませた後、眠りについた。彼の部屋の時計は23:40を指していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同刻 ??? ???~

 

 

 

生徒X「人形探し、明日だよ。**ちゃん」

 

 

生徒Y「うん。そうだね」

 

 

生徒X「そうだねって、分かってるの?明日また、誰かが死ぬかもしれないんだよ?」

 

 

生徒Y「うん。分かってる」

 

 

生徒X「はぁ……。頼むから、ヘマだけはしないでね。あなたの命、あなただけのものじゃないこと、しっかり頭に刻んでおくように」

 

 

生徒Y「うん」

 

 

生徒X「……全く、先が思いやられるわ。それじゃあね。私もう寝るから」

 

 

生徒Y「……」

 

 

 

バタン

 

 

 

生徒Y(この命は、私たちの命……)

 

 

 

私がここに来てからもう15日が経つけど、未だに彼女の言うその言葉がしっくり来ない。

私が彼女のことを信頼していないから?……分からない。……誰も信頼できない。

いや、忘れている気がする。人形ゲームが始まった、あの時からずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は信頼できる何かを、忘れてしまっている気がするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日 4月15日(月) 10:00 教室~

 

 

 

碧「は、マジ……?」

 

 

怜菜「……意外ね」

 

 

経介(……マズイ。まだ、僕は……)

 

 

 

~数秒前 教室~

 

 

 

明『えー、完全匿名での多数決の結果……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明『只今から多目的棟2階会議室にて、第1回人形探しを開催することが決まった』

 

 

響香『……!!』

 

 

祥子『……!!』

 




まずはここまでのご精読ありがとうごさいました!次回、初めての人形探し回となります!果たして、対象に選ばれてしまうのは誰なんでしょうか?理央殺害の真相には迫ることができるのでしょうか?それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!


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第15話【第1審判】二方分岐

皆さんこんにちは、めもりです!色々と落ち着いた(?)ので早めに投稿できました!他に特に語ることはないです笑 それでは早いですが、第15話「【第1審判】二方分岐」スタートです!


明『只今から多目的棟2階会議室にて第1回人形探しを開催することが決まった』

 

 

響香『……』

 

 

祥子『……』

 

 

経介(……マズイな。僕はまだ……)

 

 

碧「っ先生!それ、本当なんですか?」

 

 

明「あぁ、もちろん本当だよ。言ったろ、嘘はつかねぇって」

 

 

碧「……でも、じゃあ!!」

 

 

恵「うん。ここにいる半分以上の人が、人形探しの開催に賛成したってことになるねぇ」

 

 

経介(そう、恵くんの言う通りだ。これには正直驚いた。ここにいる半分以上の人は、一体どうして人形探しの開催に踏み切れたんだろう……?いや、それよりも今考えなきゃいけないことは……)

 

 

柚季「大丈夫だよ、響香ちゃん!」

 

 

瞳「そうだよ!私たちがなんとかするから!」

 

 

響香「……」

 

 

美咲「祥子ちゃんは絶対大丈夫!この機会に誤解解いとこ?」

 

 

唯「そうだよ、美咲ちゃんが言うみたいに大丈夫だから!安心して!」

 

 

祥子「……」

 

 

経介(……)

 

 

明「そういう訳だ。さぁ、会議室に移るぞ」

 

 

彩「あ、私鍵開けて来ますね!」

 

 

明「ん、お願いします」

 

 

彩「すぐ開けられるから、みんなは先に行っててね!」

 

 

有悟「……っ承知しました!みんな、会議室に移動しよう!」

 

 

凉太「はいよ~」

 

 

真琴「移動ダルすぎっしょ。次ここでやんない?」

 

 

青葉「……有悟くん!」

 

 

有悟「ん?どうした、栄さん」

 

 

青葉「私たち、ちょっと遅れて行ってもいいかな……?」

 

 

有悟「ム……」

 

 

柚季「私からもお願いできる……?」

 

 

美咲「あ、それやったらうちらもお願いしたい……!」

 

 

有悟「……うむ、君らそれぞれ思うところがあるのは承知しているつもりだからな、オレはそれでも構わないのだが……」

 

 

 

有悟はそう言うとチラッと明の方を見た。

 

 

 

明「……ん?あぁ、それは別に構わないよ。そこまで焦る必要も無いしな。ただ、決まったことは決まったことだ。他の生徒を待たせることにもなる。15分までには会議室に来るようにな」

 

 

青葉「……はい!ありがとうございます!」

 

 

美咲「ありがとうございます!」

 

 

有悟「では、残る者らはまた後でな」

 

 

柚季「うん」

 

 

有悟「それ以外の者は、一足先に行くとしようか」

 

 

菜華「……そうだな」

 

 

 

こうして、それぞれがそれぞれのペース、それぞれの足取りで人形探しが行われる会議室へと向かって行った。

 

 

 

経介(僕も、時間までここに残ろう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同日 午前10:15分 多目的棟2階 会議室~

 

 

 

ガララッ

 

 

 

有悟「ム、来たか」

 

 

経介「わ!広い」

 

 

 

僕らが教室に残った数名と会議室に行くと、既に他のみんなは席に着いていた。

また、会議室は他の部屋に比べて広く、生徒たちはみな、部屋の真ん中を中心とする円を描くように、ずっしりとした鉄でできた椅子に座らされていた。

 

 

 

明「さぁ、お前らも自分の席に着いてくれ。席は男女混合の名前の順だ。全員が席に着き次第、人形探しを始めるぞ」

 

 

 

僕らは先生に促されるがまま、各々の席に腰掛けた。

鉄でできた椅子は、僕らの中にある不安の心を煽る冷たさをしていた。

 

 

 

明「よし、全員席に着いたな。彩先生、説明の方を頼みます」

 

 

彩「はい!えー、人形探しは30分間の話し合いと処刑者決定投票の2つに分かれています!話し合いは時間一杯使わなくても、こちらが話し合いの結論がひっくり返らなそうだと判断した場合、途中で終了させることが可能です!その場合は私か明先生に誰でもいいので申告してください!話し合い開始から30分経過で大きな音が鳴る仕組みになっているので、時間超過の心配は要りません!また、最後に行われる投票は全員一斉の指さし形式です。自分が処刑したいと思う人を指さしてください!もし不正が見られたり、投票をしなかったりした場合には、その生徒は強制処刑となるので注意してくださいね!あと、原則として人形探しが始まってから終わるまで、この会議室から出ることは禁止です!説明は以上です!何か質問はありますか?」

 

 

「……」

 

 

明「……よし、質問は無いな。それでは、只今から第1回人形探しを開催する!!」

 

 

 

彩による人形探しの説明が終わり、たった今、明の口から人形探しの開催の合図が出された。ついに始まってしまったのだ、犠牲が約束された、生徒39名による命懸けの投票会議が……。

 

 

 

有悟「……さて、黙ったままでは時間が勿体ない。人の命を奪う会議となるとやはり、気が引けるところがあるが、これは自分たちのための会議でもある。話を進めよう」

 

 

恵「ま、そうだねぇ。それが良いと思うよ~」

 

 

風里「……」

 

 

菜華「まずは、ここまでの振り返りでもするか?」

 

 

怜菜「そうね。これまでのことを纏めておくのは会議をスムーズに進める上で大切なことだと思うわ」

 

 

有悟「同意だ」

 

 

菜華「……分かった。では、ここまでを軽く振り返ろうか」

 

 

 

数名の同意の下、菜華による振り返りが始まった。

 

 

 

菜華「まず、事件が起きたのが4月10日。額から血を流して亡くなっている枷田さんの遺体が南西の海岸にある崖の上で発見された。この事件の容疑者は2名。一人は崖の上で凶器と思われる血の付着した尖った石を隠そうとした、枷田さんの親友である泡瀬さん」

 

 

響香「……」

 

 

菜華「もう一人は遺体の第一発見者であり、占い師候補の相沢くんと高穂くんから黒判定を受けている自称騎士の姫野さん」

 

 

祥子「……」

 

 

菜華「明確な手掛かりは今のところ見つかってはいないけど、目の前が海であるにも関わらず凶器が崖の上に放置されていたことから、この犯行は計画的なものでなく衝動的なものであったことが推測できる……。今分かっていることはこれくらいか?」

 

 

恵「うんうん、大まかな流れとしてはそんな感じかな~」

 

 

和奏「んー、二択かぁ……」

 

 

雪紀「もうちょっとヒントが欲しいところだよね」

 

 

蓮「あぁ。でもあれ以降ヒントらしいヒントは見つかってねぇし、何かいい方法はねぇかな……?」

 

 

 

手掛かりの少なさにみんなが頭を悩ませていた時だった。

 

 

 

航「……今、占い結果どうなってるっけ」

 

 

 

航が一言、そう問い掛けた。

 

 

 

経介「占いは……僕が担城くんを白、姫野さんを黒。相沢くんが姫野さんを黒、等野さんを白。冷音くんが穂乃香さんを白、姫野さんを白判定だね」

 

 

航「あぁ、そうだったね。ありがと」

 

 

凉太「それがどうかしたのか?」

 

 

航「いや、ヒントが少ないなら少しでも信頼できる人の意見を聞いた方がいいんじゃないかなって思って」

 

 

縁「確かに、そうですね!」

 

 

茜「んー、まぁまだ占い師がこの人だって確証はないけど、この場合だとそれが最適かもね」

 

 

白夜「私も賛成です……!」

 

 

有悟「うむ。ではまずはオレから意見を言わせてもらうぞ。オレは前から言っている通り、泡瀬さんが怪しいと思っている」

 

 

響香「……!」

 

 

有悟「理由は前にも言ったが、咄嗟に凶器を隠そうとしたからだ。本人はあの行動を下手に疑われることを避けるためと説明したが、あれでは返って疑われてしまうからな。オレはその説明は凶器を隠し忘れたことに対する苦し紛れの言い訳だと考えている」

 

 

響香「違う!あれは本当に疑われたくなかったから咄嗟に隠しちゃっただけ!信じられないかもしれないけど、本当のこと!!」

 

 

柚季「響香ちゃんがあんなに仲の良い理央ちゃんを殺害するなんてこと、有り得ないです!!」

 

 

瞳「私もそう思います!!」

 

 

青葉「私もです!!」

 

 

有悟「……」

 

 

舞人「……まぁ、実際はどうだったのか知らねぇけど、誰の目から見ても怪しかったのは事実だよな……」

 

 

秋子「そうだねぇ……」

 

 

有悟「……等野さんはどうなんだ?」

 

 

美咲「!うちは……、どっちかって言われると響香ちゃんが怪しいかなぁ」

 

 

響香「……」

 

 

美咲「有悟くんが言ってたみたいに、凶器隠そうとしたのもそうやけど、うちは祥子ちゃんがあんなことする人やと思えやんからさ。これは柚季ちゃんとかが響香ちゃんのこと怪しくないって言ってるのと同じ理由やけど、祥子ちゃんは他に騎士とも言ってるし。黒判定がいくつか出てるとは言え、疑われても役職を言わない響香ちゃんよりは祥子ちゃんの方が信用できるって思ってます……!」

 

 

桜「そう言われると確かに、響香ちゃんは祥子ちゃんに比べて余裕が無いようにも見えるね」

 

 

恵「んー、その響香ちゃんは実際、何の役職なのかなぁ?」

 

 

響香「私は人間だよ。言ってもそんなに影響ないと思ってたから伝えるの忘れてた、ごめんね」

 

 

恵「人間かぁ……。確かに、言ってもそんなに影響なさそうだねぇ」

 

 

菜華「そうだな。それで疑いが晴れることはなさそうだ」

 

 

美咲「……」

 

 

有悟「最後、穂乃香さんはどうなんだ?」

 

 

穂乃香「んー、私は……」

 

 

 

穂乃香は少し悩んだ後、こう答えた。

 

 

 

穂乃香「私は正直、どっちとも言えないかな……」

 

 

有悟「……なるほどな」

 

 

穂乃香「うん。響香ちゃんの言ってることは本当かも知れないし、自称占い師の3人だって全員が正しいこと言ってる訳じゃないから、祥子ちゃんの黒判定だって正しいかも分かんない。正直、人形探しが開催されたこと自体意外で、どっちが怪しいかなんて見当もついてないのが現状です……」

 

 

経介(……そうだよね、僕だって同じだ。穂乃香さんの気持ちはよく分かる。きっと他にもそういう人がいるはず……)

 

 

銘「んー、今3人に聞いた感じだと、響香ちゃんが怪しいって思ってる人の方が多いみたいだね」

 

 

響香「……」

 

 

有悟「あぁ、そう言えば泡瀬さんと姫野さん以外に、怪しいと思っている人物は居たりするか?みんなの様子を見るに特にそういった人物は居なさそうではあるが、念のため確認しておきたい」

 

 

真琴「いないんじゃね?どう考えても犯人はこの2人のどっちかでしょ」

 

 

蓮「どうだろな。オレは居ねぇけど」

 

 

梢「私も……」

 

 

 

誰からも意見が挙がらず、話し合いが次に進もうとしていたその時だった。

 

 

 

雪紀「あの……」

 

 

有悟「ム、どうした?双葉さん」

 

 

雪紀「えと、怪しいって言うか、気になってる人が一人居るんだけど、いいかな?」

 

 

有悟「もちろんだ。して、その人物は誰なんだ?」

 

 

雪紀「風里ちゃん、なんだけど……」

 

 

風里「……私?!」

 

 

有悟「ほう」

 

 

雪紀「うん。みんなも見てたと思うんだけど、祥子ちゃんが騎士ってカミングアウトした日に、風里ちゃんが何か言おうとしてたの覚えてる?」

 

 

千優「あ、玉川くんに問い詰められてたやつですかね……?」

 

 

雪紀「そうそう!」

 

 

友輝「おー、それならオレも覚えてるぞ」

 

 

菜華(あの時のアレか……)

 

 

雪紀「その時なんて言おうとしてたのかがずっと気になってて──って話です!」

 

 

有悟「なるほど。その話に関してはちょうどオレも気になっていたところだ。答えてくれるか?鰆居さん」

 

 

風里「あ……、うん。別に大した話じゃないから、大丈夫……」

 

 

 

風里はそう答えると、ゆっくりと説明をし始めた。

 

 

 

風里「少し説明し辛いけど、あの時凜堂さんが言った騎士を失うとダメージが大きいってセリフが気になって。みんな同じ重さの命なのに、人形ゲームに毒されてきてるのが悲しいなって思っただけです。でも、真剣な話し合いの場だったから、ただでさえ役に立てない自分が真剣な話を邪魔をする訳にはいかないなって思って、話すのをやめました……」

 

 

雪紀「そう言うことだったんだね……」

 

 

菜華(……なるほど。あの時感じた視線はそれだったのか……)

 

 

菜華「……その節は済まなかったな。ただ、人形ゲームに参加している以上、そうした言葉が出ることは必然だ。これからもきっとそうした言葉を使う場面が何度も訪れるだろうから、表現には気を付けるようにするよ。改めて謝罪する、済まなかった」

 

 

風里「あ、いや、こちらこそ細かいこと気にしてごめんなさい……」

 

 

 

こうして、風里が抱えていた問題は双方が謝るかたちで終わりを迎えた……。

 

 

 

有悟「うむ、謝罪とはやはり素晴らしいものだな。……さて、もう他にそうした意見はなさそうだ。今回の人形探しはこの2人が対象ということで間違いはないだろう。とりあえずオレを含む白判定をもらった3人の意見が出たが、他のみんなはどう考えているんだ?」

 

 

太一「オレはまぁ、泡瀬が怪しいかな……。やっぱ凶器隠したのは怪しいし」

 

 

航「オレもどっちかと言うと泡瀬かな……」

 

 

秋子「私も……」

 

 

響香「私は本当にやってない!!信じて!!」

 

 

恵「んー、僕は祥子ちゃんの方が怪しいと思うんだけどなぁ」

 

 

怜菜「私も同じね。食堂でのあの泡瀬さんの反応が嘘だったとは思えないわ」

 

 

暦「……わっ、分かります……」

 

 

菜華「私は単純に2人から黒判定を受けていることを考えると、泡瀬さんよりも姫野さんの方が怪しいと思う」

 

 

祥子「私は違いますよ!本当に騎士なんです!!」

 

 

凉太「そもそもよ、枷田が殺された日、何でお前は一人で島探索に出掛けたんだ?」

 

 

祥子「え……?」

 

 

凉太「お前はいつも等野や沖鳥と一緒にいるだろ?それなのに、なんでお前はわざわざ殺されるかも知れない危険な日に一人で出掛けたんだって言ってるんだよ」

 

 

祥子「それは……」

 

 

経介(……確かに、姫野さんはいつも人形ゲームに怯えてるイメージが強いだけに、あの日一人で行動したのは不思議だな……)

 

 

 

祥子は少し困った様子を見せてこう答えた。

 

 

 

祥子「それは……、特に理由はありません」

 

 

凉太「……は?」

 

 

祥子「あの日は結構な人数の生徒が外に出ていましたし、朝という状況も相俟って、本能的に外で一人でいることが危険だとあまり思っていなかったのかもしれません。まぁ、強いて言うのでしたら一人の方が自由に島を探索できるという理由がありますが、これと言った明確な理由はありません……」

 

 

凉太「はぁ、よく分かんねぇことを言うんだな」

 

 

祥子「……すいません……」

 

 

初「ん~、むっずかしーな~……」

 

 

晴「どうしよ……」

 

 

 

これまでのことを受け、自分の1票を誰に投じるべきか、みんながそのことに頭を悩ませていた時だった。

 

 

 

ビーーーッ

 

 

 

経介「!!」

 

 

 

会議室に大きな警告音のような音が鳴り響いた。

 

 

 

経介(これは……!!)

 

 

彩「時間です!30分が経過しました!話し合いはそこまでにしてください!」

 

 

 

鳴り響いたのは話し合いの終わりを告げる音だった。

 

 

 

初「えぇ!?私まだ決まってねーぞ~!!」

 

 

明「以降、話し合いは禁止だ。それでは、処刑者決定投票に移るぞ」

 

 

恵「んー、意外と票が割れそうだねぇ」

 

 

茜「……そうみたいだね」

 

 

響香(これ、もしかしたら……!!)

 

 

祥子(神様、どうか……!!)

 

 

 

次回、判決の刻……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!次回で人形探しを書き終えれたらなって感じです。果たして処刑されてしまうのは誰なんでしょうか!そして理央を殺害した犯人は?それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!


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第16話 束の間の離別

皆さんこんにちは、めもりです!中2日の投稿となりました……(笑)それほど早く見せたかった話なので、ゆっくり楽しんで行ってください!それでは第16話「束の間の離別」スタートです!


明「それでは、処刑者決定投票に移るぞ」

 

 

 

話し合い開始から30分が経過し、明の口から投票開始が告げられた。

 

 

 

明「と言っても、すぐに投票に移る訳ではない。今から1、2分ほど時間を取る。その間に今の話し合いを踏まえて考えを整理してくれ。投票はそれから行う」

 

 

初「あ、そーなのか。つっても、そんなちょっとの時間で決めきれっかな~」

 

 

経介(1、2分か……)

 

 

彩「あ、投票本番もそうですけど、この時間も他人との会話は禁止なので注意してくださいね!不正は許される行為ではありませんから!なので投票の際に後悔の無いよう、今の内にしっかりと投票先を考えておくことをお勧めします!」

 

 

明「……と、言うことだ。また時間になったら知らせる。各自考えの整理に移ってくれ」

 

 

 

こうして、僕らに自分の考えを纏める数分間の猶予が与えられた。

 

 

 

経介(時間は1、2分、ほんの僅かな時間だけど、設けてくれるだけ有難い)

 

 

 

僕は一度、少しうつ向いていた顔を上げ、他の生徒を様子を確認した。

 

 

 

経介(やっぱり、僕以外にも悩んでいる人は何人もいるみたいだな……。でも、それとは対照的に、既に投票先が決まっている人の方が多いみたいだ。……さっきの話し合いを聞くに、票数に偏りが生まれる確率は低いはず。一体何を根拠として、投票先を決めているんだろう……?)

 

 

 

この疑問が浮かんできたのは何回目だろうか。

 

 

 

経介(……いや、今考えるべきことはそれじゃない。僕が今考えるべきなのは、自分の投票先のことだ)

 

 

 

僕は答えの出ないこの疑問を頭から振り払い、意識を自分に集中することにした。

 

 

 

経介(まず、投票先としての候補は2人。泡瀬さんと姫野さん。僕は悪目立ちしないためにも、ほぼ投票されることが確定しているこの2人のどちらかに票を入れなきゃいけないんだけど……正直な話、僕視点どちらが怪しいというのは無い。だからこそ悩むんだ。票が僅差になりそうなこの状況であるからこそ、尚更。……でも、怪しくないと言える人ならいる。もう片方の人もそうなんだけど、この人に対しては確信を持って言えるんだ。また、僕がもう片方の人に投票するメリットだってある。今後のことも考えるのであれば、僕はその人に投票するべきなのであろう。ただ、だからといって特に怪しいとも思わない人に投票するのは……。)

 

 

 

僕はちらっと、その人の方を見た。

 

 

 

経介(……いいのか?本当に……)

 

 

 

僕が罪悪感と葛藤していた、その時だった。

 

 

 

明「そろそろ時間だ。どうだ?考えは纏まったか?」

 

 

 

明によって1、2分の時間がもうすぐ経過することが伝えられた。

 

 

 

経介(……もう、時間が無い。僕は、僕は……)

 

 

 

僕は時間に追われ、罪悪感と向き合うことをやめざるを得なかった。しかし、目を背けただけでそれが取り除かれるはずもなく、僕は罪悪感を引きずったまま投票に臨むこととなった。

 

 

僕は、この重い重い一票を彼女に投じることに決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「さて、時間だ。考えが纏まった者、そうでない者、どちらもこの場所には居るだろう。だが、そのどちらであれ、お前らは絶対にその一票を誰かに投じなければならない。これは義務であり、投資でもある。お前らの未来のためのな。そうしなければ、道がひらかれることはない」

 

 

碧「……ハッ、どうだかね」

 

 

明「絶対に、後悔のないようにな……」

 

 

経介(始まる……!!)

 

 

明「……それでは、今から処刑者決定投票を行う。全員、オレが合図を出したら一斉に投票したい人物に指さしをしてくれ。次に、指をさしたらそのまま動かずに暫く待っていてくれ。票数のカウントを行うからな。それが終われば為すべきことを為して、人形探しは終わりだ」

 

 

響香「……」

 

 

祥子「……」

 

 

 

2人は手と手をギュッと合わせ、強く祈っていた。

助かりますようにと、強く。

 

 

 

彩「それじゃ、始めましょうか!」

 

 

明「……あぁ、そうだな」

 

 

 

緊張で硬くなる者、恐怖で震える者、悪を裁くことを誇りに思う者、彼らの中には様々な人間が居た。ただ、想いは違えど為すことは同じ。彼らは拳を握り締め、明の合図を待った。

 

 

 

そして、その時は訪れた。

 

 

 

明から合図が出された。彼らは一斉に指さしという形で票を投じた。

 

 

 

経介(……これは……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介(……どっちだ……?)

 

 

 

一斉に指された指は、2箇所に満遍なく分散されていた。

彼らはそのことに驚いた様子を見せるでもなく、明による集計が終わるのをただただ待った。

投票が終わっても、響香と祥子は祈ることをやめなかった。

 

 

会議室は驚くほど静かだった。

 

 

 

 

 

突然、明の声により、その沈黙は破られた。

その声はこうだ。

 

 

 

明「……集計が完了した。得票数、21対18で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「泡瀬の処刑が決まった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響香「……え?」

 

 

祥子「……!!」

 

 

響香「今、何て……」

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

響香「……?」

 

 

 

その音が聞こえたと同時に、私は自分の手足が動かせなくなっていることに気が付いた。

 

 

 

響香「何これ、手錠……?」

 

 

 

見ると、私が座っていた椅子から手錠のようなものが伸びて、私の手足を捕らえていた。

 

 

 

明「……そうさ。そしてこれが、その椅子に大電流を流すスイッチだ」

 

 

 

先生はそう言うと教卓からスイッチを取り出し、私に向けた。

 

 

 

響香「あ……」

 

 

 

私は、何も言うことができなかった。

 

 

 

 

 

柚季「先生!!やめて!!!」

 

 

瞳「待って下さい!!!」

 

 

 

 

 

完全に固まってしまった私の耳に、先生を止めようとする柚季たちの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

彩「……!先生方!抑えて下さい!」

 

 

 

 

 

柚季「やめて下さい!!離して!!!」

 

 

青葉「先生!!お願いだから!!やめて!!!」

 

 

 

 

 

明「……最後に何か、言い残すことはあるか?」

 

 

 

 

 

次に私の耳に飛び込んできたのは、そんな言葉だった。

 

 

 

響香「……」

 

 

 

私は今、死の淵に立たされて、分かったことが一つある。

あの時、おじさんの言葉が心に引っ掛かった理由。

それは簡単で、私自身が生きる希望を捨てずとも、心のどこかでは分かっていたからなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がもう、助からないってことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、それを理解した瞬間、体が軽くなったような気がした。

 

 

さっきまで固まって動かせなかった場所が、動かせるようになっていた。

 

 

そして、私は軽くなった首を捻り、先生の体で隠れて見えなくなっていた柚季たちに一言、こう伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんな、ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那、先生の指がスイッチに触れたのが見えた。

会議室中に誰かの声がこだました。

 

 

 

果たして、その声は私の断末魔の叫びだったのか。それとも、友が私の名を呼ぶ声だったのか。

 

私の身体はもう、それを知ることすらできなくなってしまった。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!ついに2人目の犠牲者ということで、またゲームが進みましたね!人がいなくなるごとに罪悪感を覚えるのですが、それに負けず頑張って行こうと思います。それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!


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第17話 打ち付けの怒号

皆さんお久しぶりです、めもりです。かなりの期間が空いてしまいましたが無事に17話を書き上げることができました。これ書くのもすっごい久しぶりな気がします。我儘ですが今までの内容を思い出しつつ見て下さると嬉しいです(;;)それでは第17話「打ち付けの怒号」スタートです!


~翌日 4月16日(火) 7時00分 教室~

 

 

 

静かな朝だ。あの時の崖の上とはまた違った静けさと、朝の冷たい空気が教室の僕らを包んでいた。

 

 

 

有悟「……おはよう、釧路君」

 

 

太一「ん、あぁ、おはよ……」

 

 

 

また一つ元気のない挨拶が交わされ、教室に生徒が入って来た。僕たちは担城くんの提案で昨日の人形探しを振り返るため、教室に生徒全員が集合するのを待っているのだ。戸が開いては挨拶が交わされ、そして静けさに包まれる。際限なく繰り返される単調なそれが、僕らにはいやに煩く鮮明に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何度繰り返しただろうか。

 

 

 

ガララッ

 

 

 

耳に染み着いたその音と共に、38人目の生徒が僕らの待つ教室に足を踏み入れた。嬉しくも悲しくも、これで生徒全員が教室に集合したことになったのだ。

例の通り担城くんが入って来た生徒と挨拶を交わすと、彼はいつもとは少し違った調子で指揮を執り始めた。

 

 

 

有悟「……おはようみんな。いつも朝早くから済まないな」

 

 

泰斗「いや、指揮執ってくれてるだけでありがてぇし、大丈夫」

 

 

雪紀「うんうん、なんだかんだ助かってるし」

 

 

有悟「そうか……」

 

 

 

有悟は少し視線を落としてそう言った。

 

 

 

菜華「……色々思うことはあるんだろうけど、それでいいのか?」

 

 

 

その様子を見た菜華がそう尋ねた。

 

 

 

恵「そうだよ~、するんでしょ?昨日の振り返り」

 

 

経介(担城くん……)

 

 

有悟「……あぁ、そうだな。せっかく授業が始まる前に時間をつくってもらったんだ、このまま何もしないのも申し訳ないしな……」

 

 

 

有悟は落としていた視線を上げ、みんなの顔を見ながらゆっくりと話を始めた。

彼の調子がいつも通りでないのにはある理由があった。

 

 

 

有悟「……では、今からみんなの投票先やその理由を中心とした人形探しの振り返りをしていくが……その前に。みんなは今朝、枷田さんのアカウントから送られてきた泡瀬さんの霊媒結果を確認したか?」

 

 

蓮「……あぁ、したぜ」

 

 

秋子「うちも……」

 

 

美咲「……なんか、取り返しのつかないことしちゃったなって感じだよ……」

 

 

祥子「そうですね……、私も自分のことで頭が一杯でした。とても後悔しています」

 

 

有悟「……そうだな。オレも彼女に向けた執拗な疑いの言葉、反省しているよ」

 

 

真琴「ま、でも実際白だとは思ってなかったけどねー」

 

 

太一「まぁ、そうじゃないって言ったら嘘になるよな……」

 

 

 

そう、彼らは今朝、響香の霊媒判定が白であったことを霊媒師から伝えられていたのだ。

 

 

 

柚季「……」

 

 

恵「……どれだけ後悔したってもう後戻りはできない。無責任なこと言うかもしれないけど、死んでった子たちのためにも今は前に進むことが大切だと思うよ」

 

 

茜「うん。この先同じ間違いさえしなければ、失敗に終わった人形探しにだって意味があったって言えると思う」

 

 

 

彼らは真っ直ぐな目でそう言った。

 

 

 

有悟「……うむ。では、人形探しの振り返りを始めよう。まずはそれぞれが誰に投票したのか教えてくれ」

 

 

経介「あ、それじゃあ僕は忘れないように誰が誰に票を入れたかノートに記録するよ!」

 

 

有悟「あぁ、助かるよ」

 

 

 

経介が鞄の中からまだ使っていない新しいノートを取り出すと、有悟の指示のもと投票先の確認が始められた。

 

 

 

 

 

 

 

≪1日目投票先リスト≫

 

凉太→祥子   怜菜→祥子   真琴→響香

泰斗→祥子   響香→祥子   瞳→祥子

友輝→響香   唯→響香    小春→響香

太一→響香   暦→祥子    秋子→響香

冷音→響香   縁→響香    茜→祥子

舞人→響香   銘→祥子    美咲→響香

航→響香    柚季→祥子   千優→響香

晴→響香    穂乃香→響香  祥子→響香

碧→響香    白夜→祥子   雪紀→祥子

経介→祥子   初→祥子    和奏→響香

恵→祥子    青葉→祥子   桜→響香

有悟→響香   風里→響香   菜華→祥子

恒也→祥子           梢→祥子

蓮→響香

 

 

泡瀬響香……21票(処刑)

姫野祥子……18票

 

 

 

 

 

 

 

有悟「……うむ。今の結果に泡瀬さんの票を加えて21対18と、先生の言っていた通りになったな。これで間違いはなさそうだ」

 

 

舞人「んー、それにしても綺麗に分かれたよな」

 

 

友輝「な。まぁどっちも怪しかったもんなー」

 

 

有悟「うむ。そう言う岡成君はどうして泡瀬さんに票を?」

 

 

友輝「え、オレ?んー、やっぱ目の前で怪しい行動取られたからかなぁ。あ、崖の時の話な」

 

 

有悟「……小牧君は?」

 

 

舞人「オレも同じ感じかなー。誰が嘘ついてるか分かんねぇ占い信じるより、明らかに怪しい行動した奴に投票した方がいいかなって」

 

 

有悟「……そうか。実はオレが泡瀬さんに投票した理由も2人のものとほとんど同じだ。挙げられなかった別の理由も彼女の崖の上での行動という点では一致している。他に泡瀬さんに投票した者で彼女の崖の上での行動以外が投票する理由になったという生徒はいるか?」

 

 

祥子「あ、えと……」

 

 

 

有悟の問いに祥子が申し訳なさそうに手を挙げた。

 

 

 

有悟「あぁ、姫野さんは大丈夫だ。説明不足だったな、済まない」

 

 

祥子「あ、いえ。大丈夫です……」

 

 

有悟「……改めて、彼女以外にそう言う生徒はいるか?」

 

 

航「……僕は3人と一緒」

 

 

和奏「私も大体一緒かな」

 

 

小春「私も―――」

 

 

 

その後も同じ意見だという生徒が相次ぎ、生徒の口から別の意見が出ることはなかった。

 

 

 

千優「……」

 

 

桜「……!私たちも同じです!」

 

 

有悟(……私たち……?)

 

 

千優(……?)

 

 

有悟「……まぁいい。どうやら泡瀬さんに投票した大元の理由は皆同じみたいだな」

 

 

恵「まぁ、この中には嘘でそう言ってる人もいるんだろうけど、捉え方としてはそれで良さそうだね」

 

 

有悟「あぁ、そうだな」

 

 

経介(嘘か……、僕もそろそろ次の占い先になるような怪しい人見つけないとな……)

 

 

有悟「……さて、次は……」

 

 

 

有悟が振り返りを進めようとした時だった。

 

 

 

銘「あ、ちょっと待ってもらっていいかな……?」

 

 

 

突然、銘が進行にストップをかけた。

 

 

 

有悟「ム、どうかしたのか?」

 

 

銘「うん。ちょっと気になることがあってね」

 

 

有悟「フム、気になること……?」

 

 

銘「そう。……ねぇ高穂くん」

 

 

経介「えっ、はっ、はいっ!」

 

 

 

別のことに意識が向いていたため突然のことに驚く経介とは対照的に、銘は落ち着いた調子で経介の机の上を指さしてこう言った。

 

 

 

銘「そのノート、見せてもらってもいいかな?」

 

 

経介「あっ、ノート……もちろん!」

 

 

銘「いいよいいよ、そっち行くから」

 

 

 

ノートを手渡そうと席を立ちかけた経介を制して、銘は彼の机へとハンドリムを回した。

 

 

 

銘「じゃあちょっと失礼するね」

 

 

 

そう言うと銘は経介のノートを手に取って投票先が記されたページを見始めた。

 

 

 

経介(何かあったかな、僕は特に何も気にならなかったけど……?)

 

 

 

 

 

 

 

それから少ししてのことだった。

 

 

 

銘「……うん。やっぱりだ」

 

 

 

ページを見終えた銘が何かに気付いた様子でそう言った。

 

 

 

梢「……どうしたの?」

 

 

銘「昨日の人形探し、祥子ちゃんに投票した人たちにもある傾向があるみたい」

 

 

祥子「……!」

 

 

有悟「ほう、ある傾向が……?」

 

 

 

経介(この様子だと指揮ってた担城くんも気付かなかったみたいだけど……なんだろ。気になるな……)

 

 

 

そんな経介の期待に応えるかのように銘はその傾向についての話をし始めた。

 

 

 

銘「……まず、昨日祥子ちゃんに投票した人は18人。内、響香ちゃん、柚季ちゃん、青葉ちゃん、瞳ちゃんは祥子ちゃんの対抗、響香ちゃんの親友って観点から。凉太くんは占い師で祥子ちゃんに黒判定を出してるって観点から、この5人の祥子ちゃんへの投票は必然だったとするね」

 

 

冷音「……待てよ。そういうことなら高穂の投票だって必然だろ。それとも何か?高穂が占い師じゃねぇって言える根拠でもあんのか?」

 

 

経介「えっ……」

 

 

銘「いや、高穂くんは……いいんだよ」

 

 

冷音「……は?」

 

 

銘「占い師に関してはまだ誰が本物で誰が偽物なのか見当はついてないけど、高穂くんをこの括りから外したのにはちゃんと理由がある。それはまた後で話すね」

 

 

穂乃香「ほらほらお兄ちゃん!銘ちゃんもそう言ってることだし、一旦落ち着いて話聞こ?」

 

 

冷音「……続けてくれ」

 

 

銘「あはは、じゃあお言葉に甘えて」

 

 

経介(加古川さんの言う理由が気になるけど、今は僕も集中して話を聞こう……)

 

 

銘「それじゃ、さっきの続きなんだけど、昨日祥子ちゃんに投票した18人からその投票が必然だった5人を抜くと残りは13人になるよね!」

 

 

友輝「そう…………だな。うん」

 

 

銘「で、その残った13人なんだけど……私を含め内11人が理央ちゃんが殺された日に響香ちゃんと一緒に食堂に残ってた人たちなんだよね」

 

 

経介「……!!」

 

 

梢「……!」

 

 

銘「私の記憶が正しければ。だけどね」

 

 

有悟「……そのノート、見せてもらってもいいか?」

 

 

銘「……いい?」

 

 

 

銘の問いに経介が頷くと、有悟は銘からノートを受け取り、昨日の投票結果が記されたページを見始めた。

 

 

 

有悟「フム、加古川さんの言う通りで間違いはなさそうだ」

 

 

 

一通りページを見終えると有悟は一言そう言った。

 

 

 

有悟「オレもその時食堂に居たからな。当時のメンバーはしっかり記憶している」

 

 

銘「そっか、間違ってないならよかった!」

 

 

冷音「で、傾向ってのはそれのことか?」

 

 

銘「そうだね。それと、もしかしたらだけど私もそうだったように、当時食堂にいて祥子ちゃんに投票した生徒は、あの日祥子ちゃんからの知らせを電話で受けた時に見せた響香ちゃんの表情が投票の理由になってるんじゃないかな」

 

 

泰斗「あー、オレはそうだな。あの時の泡瀬の表情が決め手だった」

 

 

初「私もそうだぞ~、あの表情見たら影人形だなんて言えねぇよ~」

 

 

白夜「私も、演技と疑うにしては妙に本当っぽかったので……」

 

 

暦「わわっ、私もです!」

 

 

 

その後も同様の意見が寄せられ、銘の推理の正しさが証明された。

 

 

 

銘「やっぱり、そうだったみたいだね。それと恐らく、高穂くんも祥子ちゃんへの投票の決定打となったのはこの時の響香ちゃんの表情だったんじゃないかな?自身の占い結果だけを理由に投票したなら、あんなに最後まで悩んだりしないもんね」

 

 

経介「……うん。その通りだよ」

 

 

 

経介は銘に投票理由を当てられた驚きのあまり、それ以上何も言うことができなかった。

 

 

 

銘「ね。これが高穂くんを投票必然の括りから外した理由だよ」

 

 

冷音「……フン」

 

 

有悟「フム、言われるまで全く気付かなかったよ。まさかそんな共通点があったとはな。感謝する」

 

 

銘「いいえ!まぁでもこれはあくまで傾向で例外も3人居るわけだから、参考程度に頭の片隅にでも置いておいてくれると嬉しいかな」

 

 

有悟「あぁ、そうさせてもらうよ。して、その例外の意見が気になるところだな。3人と言うことはオレと……」

 

 

恵「僕とばななかな~」

 

 

菜華「そうだな(あとばななはやめろ)」

 

 

有悟「フム、オレは何度も言っているように泡瀬さんの崖の上での行動が怪しく見えたのが彼女に投票した理由だ。確かに食堂でのあの様子は真に迫ったものだったが、それよりも崖の上で見せた彼女の行動が怪しいと思った気持ちを優先すべきだと感じたんだ」

 

 

恵「んー、僕は食堂での響香ちゃんの様子は知らないけど、崖の上での響香ちゃんが別段怪しいとも思わなかったんだよね~」

 

 

菜華「あぁ、その点は私も同意見だ。あの時は泡瀬さんが畳みかけるように詰問されていたから生徒らに怪しい人物であることが通常よりも色濃くインプットされていただけだと思う」

 

 

恵「うんうん」

 

 

菜華「後は占い結果かな。私は同じ怪しい人間ならば、少しでもゲームという観点から黒に近い方に投票した方がいいと判断した」

 

 

 

流れに沿って菜華は簡潔に、分かりやすく意見を述べた。

これで例外3人の意見も述べられたこととなった。

 

 

 

有悟「なるほどな……」

 

 

恒也「まぁ、担城が思ってた結果がどうだったかは知らねぇけど、こんだけ色々分かったんだし収穫あったんじゃねぇか?」

 

 

有悟「あぁ、お蔭で昨日の人形探しのみんなの投票先や根拠、傾向を知ることができた。感謝するよ、ありがとう」

 

 

 

有悟の口から感謝の言葉が述べられ、話し合いも終わりを迎えようとしていた、その時だった。

 

 

 

唯「次は、間違わないようにしなきゃね」

 

 

美咲「うん。でも、本当にもっとちゃんと考えてたら、今頃響香ちゃんは……」

 

 

唯「……美咲ちゃん、それは……」

 

 

凉太「全く、その通りだぞ等野」

 

 

唯「……え?」

 

 

美咲「……!」

 

 

凉太「言っただろ、姫野が怪しいって。折角怪しい奴を占って間違わないようにしてるってのにそんなんじゃみんな死ぬぞ?よく考えずとも最初からオレの言う通りにしてたらこんなことにはならなかったってのによ」

 

 

唯「……いくらなんでも、それは流石に……」

 

 

凉太「ん?何か間違ったことでも言ってるか?」

 

 

唯「それは……」

 

 

美咲「いいよ唯ちゃん。うちが悪いんだし……」

 

 

唯「……」

 

 

凉太「ハァ……、根拠もないのにダメ出ししないでくれよ。そういうのが間違いに繋がるって言ってんのに、学習しろよな。お前らもう間違わないようにするんだろ?だったらオレを信用してオレの占いに従うことだな。そうすれば学習できずとも二度と間違うことはねぇからよ。それに……」

 

 

「おい」

 

 

凉太「……ん?」

 

 

 

長々と続く凉太の話に他の生徒も嫌気が差してきた頃だった。一人の生徒が饒舌な凉太の話を遮った。

 

 

 

凉太「……何だよ。四宮」

 

 

真琴「さっきから黙って聞いてたら、お前随分気持ち悪いことばっか吐かすじゃん」

 

 

 

真琴はそう言うと凉太の前まで足を進めた。

 

 

 

真琴「あのさ、今回の件、あんたが逆の立場だったらって考えたことあんの?」

 

 

凉太「は?」

 

 

真琴「今回の人形探しの犠牲者が逆で、祥子が白だったらって考えた上でもう一度同じセリフが吐けんのかって言ってんだよ」

 

 

凉太「……突然出てきて何を言うかと思えば、犠牲者が逆だったらだと?そんなもしもの場合考えたって何も」

 

 

真琴「いいから答えろよ!!」

 

 

凉太「言えたさ!姫野は黒だ。もしもの結果なんて存在しない。オレの占い結果がそう言ってる」

 

 

真琴「その占い結果が正しいって証拠は?」

 

 

凉太「オレは占い師だ。証拠なんてそれで十分だ」

 

 

真琴「それは証拠になってねぇんだよ。占い師として見てもらいたいならあたしらにも分かる証拠を出しな」

 

 

凉太「……そもそもの話、言動が怪しいだろ。あんなにビビってた癖に侵攻の日に一人で探索してるし、自分が悲鳴を上げたこともすぐに言わなかったし。どうせ騎士ってのもハッタリだろ」

 

 

祥子「……」

 

 

凉太「それに姫野が多数から怪しまれてることなんて、今回の投票結果を見れば分かんだろ。直接口に出して言わなくても、姫野が黒だって昨日お前らが出した結果が語ってんだよ」

 

 

真琴「それで響香は白だっただろ。不確定な証拠ばっか並べて偉そうなこと言うな!学習できないのはお前の方だろ!!」

 

 

 

勢いよく放たれたその言葉に、教室は一瞬にして静まり返った。

凉太も言い返す言葉がすぐに見つからなかったのか、返答に窮している様子だった。

 

 

 

唯(四宮さん……)

 

 

初(こいつ、こんな正論言えたのか……)

 

 

凉太「……うだろ」

 

 

真琴「は?」

 

 

 

少しして、凉太が小さく何かを言った。

 

 

 

凉太「お前、影人形だろ」

 

 

真琴「……」

 

 

凉太「分かったぞ。お前、オレを貶めて占い師としての信頼を無くさせようとしてるだろ」

 

 

真琴「……」

 

 

凉太「そうして邪魔な占い師のオレを処刑させて、自分は信頼を得て優位に立とうとしてるんだ!」

 

 

有悟「相沢君、君の推理なのかも知れないがそれは流石に度が……」

 

 

凉太「度が過ぎるって?何言ってるんだよ、これで姫野に続いて2人目の影人形が見つかったんじゃないか!もっと褒めてくれたっていいだろ?怯えて待ってろよ四宮、次の占い対象はお前だ。こいつらを庇ってボロを出したこと、後悔させてやる……!!」

 

 

 

凉太は震えながら真琴を指さし、そう言った。

 

 

 

真琴「……もういい。こんな奴の話聞く会議に意味なんてないから、席外すわ。縁、喉乾いたからジュース買って」

 

 

縁「あ、え……と……」

 

 

碧「おい!待てよ、まだ話合いは終わって……」

 

 

 

凉太の発言に呆れたのか、真琴はそう言い残して教室を出て行ってしまった。

 

 

 

碧「……行っちまったけど、いいのか?」

 

 

有悟「あぁ、大丈夫だ。今日確認したかったことは全て確認し終えたからな。……こんな形の終わりとなってしまったが、朝から協力ありがとう。改めて感謝する。これで会議は解散だから、檻鶴さんももう行ってくれて構わないぞ」

 

 

縁「……はい……!」

 

 

凉太「……」

 

 

 

教室が複雑な空気に包まれる中、有悟から会議解散の指示が飛んだ。

解散の指示を受け、授業の用意を進める生徒もいれば、教室から出て行く生徒もちらほらと見られた。教室の時計の針は8時15分を指していた。

 

 

 

経介(……まだ授業まで時間がある。僕も外に出て、あそこを調べに行こう……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぁ……、なんかごめんね。うちが呟いちゃったばかりに……」

 

 

有悟「いや、後悔することはないよ。君は悪くないさ」

 

 

唯「うんうん。それに私の方こそごめんね、何も言い返せなくて……」

 

 

美咲「ううん、心強かったよ、ありがと。それに巻き込んじゃったのうちだし、気にせんといて……」

 

 

有悟「まぁ、起こってしまったことはもう無かったことにはできないんだ。今回の人形探しだって同じさ。実はと言うとな、今回の泡瀬さんの件、反省はしていても後悔はしていないんだ。印象は悪く感じられてしまうかも知れないが、玉川君や常盤さんが言っていたように後悔をしても仕方がないからな。つらくても前を向いて、次こそは間違わないようにと心に決めて進むんだ。例えまた間違ってしまったとしても、何度もだ。それでないと間接的にでも殺してしまった彼らの命の意味までを奪い、二度と彼らに顔向けできないようになってしまうからな……」

 

 

美咲「……うん、そうやね……。うち、もう間違わないように頑張るよ……!」

 

 

唯「私も、前を向いて頑張ります……!」

 

 

有悟「うむ。その心意気だぞ、2人共!」

 

 

穂乃香「なんか心配して聞いてたけど、グッバイレイニーって感じでよかった!」

 

 

美咲「へ?ぐっばい……なにって?」

 

 

穂乃香「グッバイレイニー!ちょっと恥ずかしいけど、私が考えた気分を晴らすおまじないなの!(笑)」

 

 

有悟「ほう、オリジナルのおまじないか!興味深いな。詳しく教えてくれ!」

 

 

唯「うちにも教えて!」

 

 

穂乃香「えぇ!?えーっとねぇ……」

 

 

 

16日、朝の出来事であった……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!本話では生徒の意外な一面が見れたのではないでしょうか!次話では何かと活躍中のあの生徒について少しだけ深く知れる気がします……!それでは皆さん、また次話でお会いしましょう!お疲れ様でした!


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第18話 強さはここに

皆さん明けましておめでとうございます!めもりです。前回投稿から暫くの期間が開きましたが、新しい年の始まりと言うことで急ピッチで仕上げて参りました!今年も変わらず楽しく投稿して行こうと思っているので、皆さまも楽しく読んでいただければ幸いです!それでは長くなりましたが、新たな年の始まりと共に、第18話「強さはここに」スタートです!


経介「確か、この辺りだったよな……」

 

 

 

16日朝の会議終了後、彼は構内のとある場所に来ていた。

 

 

 

経介「何か手掛かりみたいなのがあればいいんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

 

 

経介「んー、やっぱり何も見つからないか……」

 

 

 

そう呟くと彼は探す手と足を止めた。

 

 

 

経介「まぁ、もう2日前のことだし無理もないかな」

 

 

 

そう、彼が来ていたのは2日前の夜、小春を探していた時に見かけた怪しい人物がいた建物の近辺だった。

 

 

 

経介「でも困ったな、占い先の決め手が見つかればいいなと思ったんだけど、これじゃ誰を占えばいいのか決められない。このままじゃマズイし、また小春とかに怪しい生徒がいないか聞き回るか……?」

 

 

 

そんなことを考えていた時だった。

 

 

 

舞人「ん、そんなとこで何してんだ?」

 

 

経介「え?」

 

 

 

たまたま通り掛かった舞人が経介に声を掛けた。

 

 

 

経介「あ、小牧くん、えーっとね……」

 

 

 

経介は事の経緯を舞人に説明した。

 

 

 

舞人「なるほど、怪しい人影ねぇ……」

 

 

経介「うん。まぁ、怪しいと言っても気のせいかも知れないんだけどね」

 

 

舞人「……オレ、もしかしたらそいつの正体知ってるかも」

 

 

経介「うんうん。……へ?」

 

 

 

舞人の口から飛び出した思いがけない一言に、経介は間の抜けた言葉を零した。

 

 

 

経介「それ、ホント?!」

 

 

舞人「ん、まぁ心当たりがあるってだけで間違ってるかも知んねぇけどな」

 

 

経介「それでもいいよ!詳しく教えて欲しい!!」

 

 

舞人「ああ、いいぜ───」

 

 

 

 

 

 

 

~同刻 寮棟1階 食堂前~

 

 

 

縁「……はい。いつもの」

 

 

真琴「ん。さんきゅ」

 

 

 

彼女らは食堂前に設置された自販機の前にいた。

 

 

 

真琴「あー、やっぱ喉乾いた時はこれに限るわ。まじ回復」

 

 

縁「……」

 

 

真琴「……何?こっちじっと見て何か用?言っとくけどあげないからね」

 

 

縁「あ、うん。別にそういう訳じゃないから大丈夫だよ……」

 

 

真琴「……じゃあ何よ。何かあるんでしょ」

 

 

縁「え、まぁ、その……」

 

 

 

縁は少し躊躇った後に、こう口にした。

 

 

 

縁「……あんなに臆することなく、人のことを守れるのって凄いなって思って。何と言うか……色々と意外だったから……!」

 

 

真琴「ん、あー……さっきのか。あんま思い出したくないわ。腹立つし」

 

 

縁「あ、それはごめんね……」

 

 

真琴「まぁアレよ。あたしは別に誰が影人形だとか、誰が占い師だとかなんてきょーみ無いけど、あーゆーのは何か許せないんだよね、って話」

 

 

縁「……!」

 

 

真琴「……何でちょっと嬉しそうな顔してんのよ」

 

 

縁「え!」

 

 

真琴「それに意外とか失礼じゃね?ってか縁そんなこと言って来るタイプだっけ?」

 

 

縁「や、えと……そっ、そろそろ授業だから戻るね!!」

 

 

真琴「は?ちょっ、おいって!!」

 

 

 

そうとだけ言い残すと縁はさっさと教室に戻って行ってしまった。

 

 

 

真琴(何か変じゃね?今日のあいつ……)

 

 

 

 

 

 

 

~同日 教室棟1階 教室~

 

 

 

彩「はい!今日の授業はここまでです!皆さんよい昼休みを~!」

 

 

友輝「あ“~、やっと終わった~」

 

 

雪紀「白夜ちゃん、ご飯いこ!」

 

 

白夜「うん!おっけ!」

 

 

梢「茜、ここ教えて~(泣)」

 

 

茜「ん、どこどこ」

 

 

 

授業終わりの教室にはそんな声が飛び交っていた。

 

 

 

小春「経介!私たちも食堂いこ!」

 

 

経介「……」

 

 

小春「……?おーい、経介ってば!」

 

 

経介「えっ、何なに!?あっ、もしかしてお昼のこと?!」

 

 

小春「そうだけど……、もしかして考え事でもしてた?だったらごめん!」

 

 

経介「まぁ、ちょっとね。別に謝んなくていいよ!……でも確認したいことがあるから先に行っといてくれる?すぐ行くから!」

 

 

小春「確認……?まぁいいや。分かった、先行って席取っとくね!」

 

 

経介「うん!ありがと!」

 

 

 

経介が一言お礼を言うと、小春は約束通り食堂へと向かって行った。

 

 

 

経介(さて、僕も人探しをしないと……)

 

 

銘「……」

 

 

怜菜「……?銘、どうかしたの?」

 

 

銘「ん!ううん、何でもないよ!」

 

 

怜菜「そう……?」

 

 

 

 

 

 

 

経介(多分、ここかな……?)

 

 

 

経介は構内を探して回った結果、目当ての人物の部屋の前に来ていた。

 

 

 

経介(用事で構外に出たならここにはいないだろうけど、彼を探してる途中寮の方へ向かったって情報を貰ったから、いるはずだよね。朱谷くん……)

 

 

 

そう、経介が立っているのは航の部屋の前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数時間前~

 

 

 

経介『そのことについて、詳しく……!』

 

 

舞人『そうだな、あれは2日前だったな。ちょっと喉が渇いて下の自販機に飲物を買いに行った帰り、航が部屋を出てそこに向かってくのを見たんだ。結構遅い時間だったし外に出てる奴もほとんど見かけなかったから、それで間違いないと思うぜ。責任は取らねぇけどな!』

 

 

経介『ホント!?ありがと……!』

 

 

舞人『おう、役に立てたなら幸いだぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介(間違っていてもいい。今は動こう。前に進むために……!)

 

 

 

経介は壁に取り付けてあるインターホンに手を伸ばし、ボタンを押した。

 

 

 

経介「……」

 

 

経介(……いないのかな……?)

 

 

航「……誰?」

 

 

経介「!」

 

 

 

突然、インターホン越しに航の声がした。

 

 

 

経介「……僕です!同じクラスの高穂です!突然ごめん……」

 

 

航「あぁ……。で、何の用?」

 

 

 

突然の来客にも変わった反応を示すことなく、航はいつものトーンでそう尋ねた。

 

 

 

経介「えーっと、2日前の夜のことなんだけど……」

 

 

航「2日前の夜?」

 

 

経介「うん!」

 

 

経介(入れてはくれないのか……(汗))

 

 

 

経介は少し戸惑いつつもインターホン越しに要件を伝えた。

 

 

 

航「……なるほどね」

 

 

経介「うん。その付近に朱谷くんがいたって情報はあるんだけど、どうかな」

 

 

航「……多分、オレで間違いないよ」

 

 

経介「……!」

 

 

 

航の口から発せられたのは期待通りの言葉だった。

経介は着実に前に進むことができているという喜びを感じた。

 

 

 

経介「……じゃあ!」

 

 

航「でも」

 

 

経介「……?」

 

 

 

しかし、前進とはそう簡単にできるものではなかった。

 

 

 

航「でも、オレは声なんて聞こえなかったし、ましてや逃げてなんかいないよ」

 

 

経介「え、でも……」

 

 

航「オレがその時その場所に居たことは認めるよ。高穂が見た人影ってのもオレで間違いないと思う。でもオレは考え事をするために空気の綺麗な外に出ただけ。疚しいことなんて何一つしてない」

 

 

経介「……待って、じゃあ何で……」

 

 

航「要件はそれだけ?じゃあもう切るよ。オレ、ちょっと忙しいから」

 

 

経介「あっ、ちょっと……!!」

 

 

 

航はそうとだけ言い残すと、さっさとインターホンを切ってしまった。

 

 

 

経介(……おかしい。あの時の人影は明らかに足早に建物の影に消えて行った。考え事をしていただけならそう急ぐ必要もないはず。……これ以上朱谷くんに聞き込みをしても、恐らく考え事をしていただけの一点張りだろうし、一先ずは食堂に行くか。お腹も減ったし、小春も待たせてるしな。今日は考えることが多くなりそうだけど、取り敢えずは朱谷くんが次の占い先で決まりだ……!)

 

 

 

経介は確かな収穫を得たことを確信し、小走りで食堂へと向かって行った。

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

この時既にその身が静かに迫る悪意から守られている状況下にあることなど、今の彼にはもちろん知る由もない……。

 

 

 

航「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同日 夜 寮棟1階~

 

 

 

経介(今日も色々あったな……)

 

 

 

僕は寮棟1階の廊下を歩きつつ、そんなことを考えていた。

 

 

 

経介(投票結果から新しいことも分かったし、怪しい人も見つかった。まだまだ真実にたどり着くには遠いけど、焦らずに一歩ずつ進んで行こう……!)

 

 

 

構内の部屋の明かりも徐々に消えて来た、時刻は21:00頃であった。

 

 

 

経介(後はどうやって信用してもらうかだよな。どれだけ的確に占いをしても、本物だって信用してもらわなきゃ意味ないからなぁ……)

 

 

 

 

 

??「おーい」

 

 

経介「……?」

 

 

 

僕がちょうど自分の部屋の前に着いた時だった。後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

泰斗「これ、落としたぞ」

 

 

 

その声に反応して振り向くと、そこには飯野くんが立っていて、手には僕の役職が書かれたカードが握られていた。

 

 

 

経介「あ、ホントだ。全然気が付かなかった、ありがとう!」

 

 

 

僕はポケットからカードが無くなっていることを確認してからそれを受け取った。

 

 

 

泰斗「しかしまぁ、本当に何も見えねぇんだから困ったもんだよなー」

 

 

経介「え?あぁ、これのことか……」

 

 

 

僕は一瞬理解に困ったものの、すぐにカードのことだと理解した。

 

 

 

泰斗「そうそう。オレにもそれが見えたらなぁ。心強い味方ができてたかも知れないのに」

 

 

経介「心強いってことは、飯野くんは人間側の役職ってことかな……?」

 

 

泰斗「そうだぞー。って言ってもまぁ、オレが高穂の占い師を信用し切れないのと同じで、そっちも信用し切れないんだろうけどな……」

 

 

 

飯野くんは少しうなだれてそう話した。

 

 

 

泰斗「まぁでも、本当に占い師なんだったら応援してるし、頼りにしてるぜ。頑張れよ!オレも頑張る!」

 

 

経介「うん、頑張るよ。今朝の担城くんや加古川さんみたいに、前に出て頑張ってくれてる人がいるから、尚更頑張ろうって思える……!」

 

 

 

僕らがそんな会話をしていた時だった。

 

 

 

「あ、いたいた!経介くん!」

 

 

 

今度は別の方角から僕を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

泰斗「あ、加古川じゃん」

 

 

 

僕が振り向くと、そこには車椅子に座った加古川さんが一人で居た。手には見覚えのあるものが握られていた。

 

 

 

銘「ごめんね、遅くなって。今朝はありがと!これ、返しに来た!」

 

 

経介「あ、そう言えば……」

 

 

 

銘の手に握られていた見覚えのあるもの、それは経介がみんなの投票先をまとめたノートであった。

 

 

 

経介「ありがと!でも、どうして加古川さんが?確か担城くんが持ってたはずじゃ……」

 

 

銘「私が借りたノートだからね。有悟くんも自分が返しに行くって言ってたけど、ちゃんと感謝も伝えられてなかったからさ!まぁ、経介くん昼間は考え事で忙しそうだったから、返すのがこんな時間になっちゃったんだけどね……」

 

 

 

銘は少し苦笑いをしながらそう話した。

 

 

 

銘「……ところで、さっきちらっと私の名前が聞こえたようだけど、お二人は何の話をしてたのかな?」

 

 

経介「え……」

 

 

 

突然の質問に、僕は少し驚いた。先ほどの会話がどうやら加古川さんの耳にも少し届いていたらしかった。

 

 

 

泰斗「今朝の話だよ。加古川、凄かったじゃん」

 

 

経介「うん。凄い観察力だよ!あぁして担城くんや加古川さんみたいに皆の前に立って頑張れるのって凄いよねって話をしてたんだ」

 

 

銘「なるほど、そう言う……!まぁ、情報の共有は大切だからね。今朝みたいに私にしか見えないことがあるってことは、私以外にしか見えないこともあるってことだから」

 

 

経介「うん。でも、加古川さんは本当に凄いよ!身体が弱いのに、あぁもしっかりと発言して話を進めて行けるんだもん。特に不自由のない僕でさえ、占い結果の発表の時は上手く喋れないこともあるって言うのにさ……。……!」

 

 

 

僕が話し終わって加古川さんの顔を見ると、彼女の顔が少し曇っていることに気が付いた。

 

 

 

経介(そんなつもりじゃなかったけど、ちょっとマズイ言い回しだったかな……)

 

 

銘「……まぁ、そうなっちゃうか……。ある種、そう言われたくないから頑張ってるっていうのもあるんだけどね……」

 

 

経介「……っごめん!そう言うつもりじゃ……」

 

 

 

銘「いや、気にしなくていいよ!経介くんがそう言うつもりじゃないのも、私を褒めようとしてくれてるのも分かってるから。……それに私、周りの人にそう思わせたくないから、ここに来るちょっと前から毎日、ある努力をしてるんだ……!」

 

 

 

そう言うと銘は徐に手すりに手を掛けた。そして、そのまま……

 

 

 

泰斗「え……!」

 

 

経介「あれ、加古川さんって……」

 

 

 

僕らが驚くのも無理はなかった。そこには危なっかしさこそあるものの、手すりを持たずに自立している加古川さんの姿があったのだから。

 

 

 

銘「うん。2人も知っての通り、この足は歩くことができない。とても残念なことだけどね。でも、ちょっとずつ身体を支えることはできるようになってきたの!……って言っても、今はまだ数分で筋力の限界なんだけどね……」

 

 

 

驚く僕らに加古川さんはそう話した。

 

 

 

泰斗「すげぇや……!成果もそうだけど、自分の病に正面から立ち向かう姿勢、本当に尊敬するよ!」

 

 

銘「ありがと!そうも褒められると少し照れちゃうけどね……」

 

 

泰斗「いやいや、本当に!」

 

 

銘「……」

 

 

経介(……?)

 

 

 

少し、加古川さんの雰囲気が変わったような気がした。

 

 

 

銘「これも全部、梢のお蔭なんだよね」

 

 

泰斗「厘伶の?」

 

 

銘「そう。あの子のお父さんがリハビリトレーナーをやっててね、あの子が小さい頃からよくお父さんの仕事姿を見てた影響で、リハビリの基礎が頭に染み着いちゃったみたいでね。ここに来てからそれを続けられるのはその手伝いをしてくれるあの子のお蔭なんだ」

 

 

経介「へぇ、そうなんだ!」

 

 

経介(気のせいだったかな……?)

 

 

銘「私は梢のことをとても尊敬してるし、感謝してる。こんな私でさえも見捨てずに、嫌な顔一つせず手伝ってくれる。医者も。親でさえも。誰もが匙を投げた身体をした私なのにさ。本当に、感謝してもし切れないよ……」

 

 

経介「……!」

 

 

泰斗「……!」

 

 

 

暫時、静かな時が流れた。

僕らの立つその廊下には、誰もいないような気さえした。

 

 

 

銘「……ちょっと、余計なことを言っちゃったかな。ごめんね。私も少し疲れてるみたい」

 

 

 

そう言うと加古川さんは先ほどまで座っていた車椅子に腰掛けた。ほぅ、とついた彼女の一息が掠れて消え、それがどこか淋しさを醸し出していた。

 

 

 

銘「……でも、こんな身体だからこそ、頑張れるのかも知れないね。こんな身体に産まれたから、梢だけじゃなく、怜菜や茜にも本当に手間をかけさせてる。だから私は会議で見せたみたいに私の得意な面で貢献して、少しでも3人の脱出の役に立ちたいって思える!これはこんな立場に立った私だからこそ思えることだし、これが今の状況下で私にできる精一杯の恩返しだって思うんだ」

 

 

 

僕はこの話を聞いて、だからこの人はあんなにも堂々と胸を張って頑張れるんだと理解した。そこには人間一人一人が持つ、強さというものが確かに存在していた。

 

 

 

泰斗「なるほどな。友達想いで、良い理由だと思うぜ」

 

 

銘「うん。まぁそれに、ただでさえ身体の弱い私は狙われやすいだろうから。強い人間だって印象付けておかないとだからね。ま、それが返って脅威として捉えられて、より狙われやすくなるかも知れないんだけどね……」

 

 

 

そう語る銘の横顔が二人にはとても悲しそうに見えた。定められた運命の輪からは逃れることのできない人の無力さと儚さが、その横顔からひしひしと伝わってくるようだった。

 

 

 

泰斗「……そんな悲しそうな顔すんなよ。まだオレたちは生きてる!一緒にここを出ようぜ。高穂も、厘怜たちも勿論、少しでも多くの生徒と一緒にここを出よう!」

 

 

銘「……そんなの、当たり前だよ。私だって死ねない理由がある。少しでも早く、ここを出ないと」

 

 

経介(……理由か。……いや、そうだよね。死にたくない以外にも皆それぞれここを出たい理由があるんだよね。当たり前すぎて忘れてたけど。……そっか……)

 

 

経介「それって?」

 

 

 

検討するより先に、口が動いていた。しかし、興味の気持ちが勝ったのか、その発言をしたことに後悔はあまり無かった。

 

 

 

銘「ん、あぁ。昔、お姉ちゃんと約束をしたんだ。私なんかとは比べ物にならないくらいよくできた、お節介なお姉ちゃんでね。私はお姉ちゃんに会いに行かなくちゃいけないの」

 

 

経介「お姉さんに……」

 

 

銘「そう。事の経緯を話すと長くなっちゃうし、あまり話したくはない過去だから、そこは伏せさせてもらうね」

 

 

経介「あぁ、いや、大丈夫だよ!無理はしないで欲しいし!」

 

 

銘「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」

 

 

経介「うん」

 

 

経介(……本当はちょっと、聞きたかったんだけどな……)

 

 

 

話が一段落ついたと全員が思っていた時、腕時計に目を落とした銘が言った。

 

 

 

銘「……うん。今日はもう遅いし明日も授業があるから、私はこの辺で失礼させてもらうね」

 

 

経介「そうだね。これ、わざわざ届けてくれてありがとね!」

 

 

銘「こちらこそありがとう。じゃあ、明日からまた、一緒に頑張ろう」

 

 

経介「うん!」

 

 

泰斗「おう!」

 

 

経介「僕らも、部屋に戻ろっか」

 

 

泰斗「そうだな。もうカード落とすなよ!」

 

 

経介「うん。気を付ける!」

 

 

 

こうして、偶然生まれた集いは解散となり、二人はそれぞれの自室へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

経介「……さて、僕もさっさと寝る準備をしなくちゃな……」

 

 

 

経介がそう呟きながら玄関を上がった、その時だった。

 

 

 

経介「うわっ!」

 

 

 

経介は足元に置いてあった鞄に躓き、そのまま小物の置いてあるテーブルに向かって倒れ込んだ。

 

 

 

経介「いてて……」

 

 

「……には注意が必要ですね」

 

 

経介「……ん?」

 

 

 

部屋から何かの声がしたと思い、そちらを見るとテレビからニュース番組が放映されていた。どうやら転んだ拍子に誤ってテレビリモコンの電源をつけてしまったらしかった。

 

 

 

「……次のニュースです。昨日午後6時頃、行方不明になっていた女子中学生が山小屋で遺体となって見つかった事件で、近くに住む31歳の女性が逮捕されました」

 

 

「……また若い子ですか。この間も同じくらいの女の子が波に攫われ、遺体となって見つかった事件がありましたよね」

 

 

「はい。どちらも救えた可能性のある命であっただけに、とても残念に思います……」

 

 

 

経介「……救えた、命……」

 

 

 

偶然目の当たりにしたニュース番組を見て、僕は思ったことがある。僕の前には今、たくさんの危険に晒された命がある。それもまだ生きている、救うことのできる命だ。そして僕は今、その命を救える場所にいて、それに適した役職も持っている。果たして、このゲームが最後まで続けられるのか、はたまた添田くんの言うように途中で助けが来て終わりを迎えるのかは分からないけれど、僕は皆が解放されて笑顔になれるその時まで、自覚と責任を持って頑張らなくてはならない。頼りにしていると言ってくれた人たちのためにも、加古川さんに負けないくらい、強く。

 

 

 

経介「僕は、僕にできる最大限のことを───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~同刻 ??? ???~

 

 

 

生徒Ⅹ「あんな感じで心配だったけど、人形探し、何とか乗り切ったわね」

 

 

生徒Y「うん。そうだね……」

 

 

生徒X「はぁ……」

 

 

 

彼女は一つため息をつくと、いつもの調子でこう言った。

 

 

 

生徒X「……あなたは相変わらずの様子ね。いい?あなたがそんな様子のままで乗り切れるほどこのゲームは甘くないの。この前も言ったでしょ?あなたの命はあなただけのものじゃないって。そりゃ私とあなたの役職を取り換えてしまえるのなら、今すぐにでも取り換えたいわ。でもそれはできない。そんなこと、あなただって分かってるでしょ?」

 

 

生徒Y「うん……」

 

 

 

私に対して彼女がしつこく言って来るのには、とある理由があった。

 

 

 

生徒Ⅹ「この島にいる限り、どこまで行こうとこの事実は変わらないの。あなたが死ねば私も死ぬ。それがこのゲームの決まり。それが私たち……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒Ⅹ「密猟者と密猟支援者の運命なんだから……」

 

 

 

生徒Y「……」

 

 

 

冷たい言葉、冷たい使命、冷たい狙撃銃。そこに暖かさなんてものは無かった。身体を優しく包み込む春の暖気でさえも、彼女の皮膚を劈いた。それは夜の帳が下りたせいなのか。はたまた虐げられた未来のせいなのか。彼女の昏く淀んだ瞳は、その答えの全てを物語っていた……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!今話では名前の伏せられ続けて来た謎の生徒たちの役職が明らかになりましたね!私自身、謎が紐解かれて行く過程を見るのが好きなので、今話はいつもよりも書いていて楽しかったです!さて、気になる次話では二度親友を失った彼女らの元に、再びあの人が訪れる様ですよ。一体何をするんでしょうか?楽しみにしていて下さい!それでは改めてここまでのご精読ありがとうございました。また次話でお会いしましょう!


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第19話 はじまりの種ベスパ

皆さんお久しぶりです、めもりです。そろそろ定期的投稿にシフトしたいので書き溜め作業を決意しました()まだノーストックではございますが、とりあえず19話が仕上がったので楽しんで行ってください!それでは第19話「はじまりの種ベスパ」スタートです!


 

~翌日 4月17日 朝 教室~

 

 

 

有悟「おはようみんな!」

 

 

経介「おはよう、担城くん!」

 

 

恒也「おはよっすー、今日も元気だな」

 

 

有悟「一日は朝の挨拶から!元気があって当然だろう!!」

 

 

初「あー、お前ちょっとうるせーぞー!眠いのに寝れねーだろー!」

 

 

有悟「ム、それはすまない。しかしそろそろ授業が始まるぞ!おはよう、小越さん!」

 

 

初「ん。おやすみ~」

 

 

有悟「おやすみ?オレはおやすみではなく、おはようと言っているん……」

 

 

初「だー!もー、うるせーって!!」

 

 

有悟「なっ!?オレはただ挨拶を……」

 

 

暦(2人共、かわいい……)

 

 

 

 

 

そんな普通の学園生活を思わせる朝のやりとりが行われている一方で、教室の隅ではこんな話をしている生徒たちもいた。

 

 

 

蓮「なぁ凉太、お前あのままでいいのかよ」

 

 

凉太「……」

 

 

蓮「もっと他にやり方があったんじゃねぇか?」

 

 

凉太「……仕方ねぇだろ、あぁでもしないと誰も信じてくれねぇんだからよ……」

 

 

蓮「仕方ないって言ったって、流石にちょっと度が過ぎてたと思うぞ。考えなんて人それぞれなんだしよ」

 

 

凉太「……」

 

 

碧「蓮の言う通りだ。必死だったのは分かるけど、あんなやり方じゃ信用を勝ち取るどころか敵をつくるだけだぞ」

 

 

 

凉太は窓の外に顔を向けたまま、返事をしなかった。

 

 

 

碧「……本当は後悔してるんだろ。一時の誤った判断で行動してしまったことをよ」

 

 

凉太「……」

 

 

蓮「何だよ。そう言うことなら四宮や等野のとこに謝りに行こうぜ。オレらも付いてって一緒に謝ってやるからよ。あれからそんなに時間は経ってないし、今ならまだ間に合うだろ」

 

 

凉太「……うるせ。余計なお世話だっての。……ほら、授業始まるぞ」

 

 

 

凉太はそう言って肩を叩く蓮の右手を軽く払った。

 

 

 

蓮「んだよ……」

 

 

 

ガララッ

 

 

 

明「おはよ~。今日は寒いな~」

 

 

有悟「先生!おはようございます!!」

 

 

明「はいおはよ。そこー、そろそろ席着けよ~」

 

 

蓮「はーい」

 

 

 

明は教室に入って来るなりいつもの調子で挨拶をし、生徒の出欠確認を始めた。

 

 

 

明「……さて、今から授業を始めるが……神薙たちは今日も休みか」

 

 

太一「……ホントだ。でも、無理ないよな……」

 

 

穂乃香「昨日の朝の会議には来てたけど、大丈夫かな……」

 

 

 

教室には青葉、柚季、瞳の3人の姿が無かった。彼女らが学校を休むのは昨日に引き続きこれで二度目だった。

 

 

 

明「……言いづらいかも知れないが、機会があればお前たちの方から授業に出るよう声を掛けてやってくれないか?オレも鬼ではないから無理に出席しろとは言わないが、学びの方も大切にしてもらいたいからな」

 

 

有悟「分かりました!」

 

 

経介(神薙さんたち、どこで何してるんだろ。心配だな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少し時は流れ、同日、昼前

 

 

 

~ 寮棟2階 ~

 

 

 

柚季「ん……」

 

 

 

気付くと、外には陽の光が照っていて、小鳥がさえずりをしていた。

 

 

 

柚季「あ、もうこんな時間……」

 

 

 

部屋にある掛け時計はとうに授業が始まっている時刻を示していた。

 

 

 

柚季(昨日はどうしてたんだっけ……)

 

 

 

眠る前の記憶も思い出せないまま、柚季は布団から出て疲れの見える顔に冷たい水を浴びせた。

 

 

 

柚季「授業、そろそろちゃんと受けないとな……」

 

 

 

そう溢した後、柚季はしばらくの間洗面台に立ち尽くし、鏡に映る世界をぼーっと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ 昼過ぎ 島内 とある路地 ~

 

 

 

水路を流れる水の音や、喧嘩をする猫の鳴き声が聞こえてくる狭い路地を青葉は一人、どこかに向かって歩いていた。

 

 

 

青葉「……」

 

 

 

黙々と歩き続けて少し経つと、路地を抜けてひらけた場所に出た。

そこには田園風景が広がっており、目的の場所は目視できるまでに近づいてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

囁くような木々のざわめきは、その場所に着いた青葉を迎え入れているようだった。

 

 

その場所には今日も暖かな木漏れ日が差し込んでいた。青葉が向かっていたのは前に響香たちと4人で訪れた公園だった。

 

 

 

青葉「……あれ?」

 

 

 

公園に足を踏み入れるや否や、青葉は木の下に置かれているベンチに見覚えのある人物が座っていることに気が付いた。

 

 

 

青葉「……瞳ちゃん?」

 

 

瞳「え……?」

 

 

 

そう、そこにいたのは青葉の親友の瞳だった。

 

 

 

瞳「あれ、青葉ちゃん?どうしたの……?」

 

 

青葉「え、いや、別に……。瞳ちゃんこそ、ここで何してるの……?」

 

 

瞳「何って、特には何も……」

 

 

 

青葉がこの公園に向かっていたのには、理由なんてものは無かった。ただただ、彼女の足が彼女をここまで運んだのである。しかし、それは青葉だけに限ったことではなく、先にこの場所に来ていた瞳にも言えることであった。

 

 

 

青葉「……隣、いい?」

 

 

瞳「うん。いいよ」

 

 

 

青葉が瞳の隣に腰掛けると、2人はそれ以上の言葉は交わさず、ただただ流れて行く時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ってのことだった。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

また聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

 

瞳「……あ」

 

 

柚季「2人とも、こんなとこで何してるの……?」

 

 

 

その声の正体はまたも、彼女らの親友の柚季であった。

 

 

 

瞳「特には、何も……」

 

 

青葉「私も別に……。柚季ちゃんこそどうしたの?」

 

 

柚季「え、いや、どうしたって言われても、別に……」

 

 

 

柚季もその質問には特に思い当たる答えが見つからなかったようで、偶然にも3人は公園に集合する形となった。

 

 

 

瞳「柚季ちゃんも座りなよ」

 

 

柚季「あ、うん。ありがと」

 

 

 

その一言と共に再び静かな時間が流れ出した。3人は何をするでもなく、公園のベンチに座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、君たちは……」

 

 

 

次に気が付いたのはそんな声が聞こえた時だった。

 

 

 

柚季「あ……」

 

 

 

声のした方を見ると、そこには見覚えのある人物が立っていた。

 

 

 

おじさん「やっぱりこの間のお嬢さんたちじゃったか!こんにちは」

 

 

柚季「花宮さん……、こんにちは」

 

 

青葉「こんにちは」

 

 

 

彼女らに話しかけてきたのは、前に公園に訪れた時にお世話になった花宮というおじさんだった。

 

 

 

おじさん「今日は学校は無いのかい?」

 

 

瞳「……いえ」

 

 

おじさん「そうかい……?」

 

 

柚季「……」

 

 

おじさん「今日はここで何をしてたんじゃ?」

 

 

青葉「特には、何も……」

 

 

おじさん「そうかい……?」

 

 

おじさん(……?)

 

 

 

本来の彼女らを知るおじさんは、彼女らの口から繰り返されるどこか捉えどころのない返事に違和感を覚えていた。

 

 

 

おじさん(どうしたんじゃろうか……?)

 

 

 

そう思い、おじさんが3人の様子をもう一度窺ってみると、また別の違和感があることに気が付いた。

 

 

 

おじさん(……あれ?そう言えば……)

 

 

おじさん「今日は響香ちゃんはいないのかい?」

 

 

 

 

 

おじさん「……」

 

 

おじさん(これもダメかの……)

 

 

 

ついに返って来ることすら無くなった返事に諦めがつき、たまたま立ち寄った公園をそっと去ろうとした時、おじさんはポケットにあるものが入っていることを思い出し、去ろうとする足を止めて振り返った。

 

 

 

おじさん「そう言えば、お嬢さんたちに渡したいものがあるんじゃっ……た……」

 

 

 

突然、目の前に飛び込んできた光景に動揺し、一瞬全身が固まってしまった。

 

 

 

3人の目からは絶えず、静かに涙が流れ出していた。

 

 

 

おじさん「どっ、どうしたんじゃ?!一体何が……」

 

 

柚季「……響香ちゃん……?」

 

 

おじさん「……ん?」

 

 

瞳「響香ちゃんは……」

 

 

 

3人は何かのフィルターが剥がれたように、今度は声を上げて大粒の涙を流し出した。

 

 

 

おじさん「……そうかい……」

 

 

 

おじさんはそれ以上何も言わず、泣きじゃくる3人の背中を優しくたたいた。

この場所に3人が集まったのは決して偶然なんかじゃなかった。脳がどれほど記憶を遮断しようとしたって、忘れられるはずなんてなかったんだ。3人の泣く声は公園周囲に広がる田園にまでは到達することはなく、騒がしくなった木々のざわめきがそれを遮った。行き場を失ったその声は、響香だけがいない公園に淋しく響き渡っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の上から照っていた陽も傾き始め、島内南に吹いていた風も落ち着いてきた頃、公園内から聞こえる音はぽつぽつと途切れるすすり泣く声だけになっていた。

 

 

 

おじさん「……だいぶん落ち着いたかい?」

 

 

 

おじさんの優しい声に3人はびしょ濡れになった袖で涙を拭いながらこくりと頷いた。

 

 

 

おじさん「……災難じゃったな。その一言で片づけていいものではないし、その時のお嬢さんたちの気持ちはワシなんかが推し量れるようなものではないが、ワシからの彼女に対する思いも含めてそう言わせてくれ」

 

 

 

3人が理央を失った時のつらさは完璧には分からずとも、響香を失った時のつらさは4人が一緒に居た時の様子を知るおじさんにも自分のことのようによく分かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

おじさん「……あぁ、そうじゃった。お嬢さんたち、これを受け取ってくれんかの?慰めにはならんじゃろうが、ワシからの気持ちじゃ」

 

 

 

突然、おじさんはそう言うとポケットから小さな袋を取り出し、柚季に渡した。

 

 

 

柚季「……何ですか?これ……」

 

 

 

柚季が受け取った小さな袋の口を開けると、中から小さな植物の種が6つばかり出てきた。

 

 

 

おじさん「それは「ベスパ」と言うこの島特有の少し成長の早い花の種じゃよ。花屋を閉める時に婆さんと育てようと取っておいたんじゃが、気が変わって次にお嬢さんたちに会った時に渡そうと考えておったんじゃ」

 

 

柚季「ベスパの花……。青葉ちゃん知ってる?」

 

 

青葉「ううん、初めて聞いた」

 

 

瞳「私も……」

 

 

おじさん「まぁ、知らないのは無理もないことじゃ。じゃが、ベスパはいい花じゃぞ。その香りには心を安らがせる効果があると言われておる」

 

 

柚季「心を……」

 

 

おじさん「うむ。それにその花はお嬢さんたちにとてもよく似ておる」

 

 

瞳「……?どういうことですか?」

 

 

おじさん「ん?あぁ、その花はお嬢さんたちに似て───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仲睦まじ気にあたたかく咲くんじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人「……!!」

 

 

 

それは彼女らにとって正直、何よりも嬉しい言葉だった。

 

 

 

おじさん「植える場所に困っておるなら、ここから東に行った高台付近にワシの所有する花壇があるからそこを使ってくれればよい。世話をする道具も高台にある小屋に全部揃っておる。……どうじゃ?お嬢さんたち5人を例えるには1つばかり多いが、受け取ってくれるかの?」

 

 

 

質問の答えは簡単だった。

 

 

 

柚季「……多く、ないです」

 

 

おじさん「……ん?」

 

 

柚季「ありがとうございます!大切にします!!」

 

 

青葉「ありがとうございます!!」

 

 

瞳「ありがとうございます!!」

 

 

 

3人はそう言い残すと脇目も振らずに東の方へと駆けて行った。

 

 

 

おじさん「もうそろそろ日も暮れる!先生方やクラスメイトも心配しておるじゃろうから早く戻るんじゃぞー!!」

 

 

 

後ろから微かにおじさんの声が聞こえる。でも私たちは振り返ることも返事をすることもしなかった。駆け出した勢いでまつ毛に絡まっていた涙が飛び出して頬を伝う。私たちはそれを振り払いながら固く誓った。もう泣くのはやめにしよう。響香ちゃんだってそんなこと望んでなんていないはずだ。それにきっとこの花がお兄ちゃんと皆で過ごした楽しい毎日を生き続けてくれるから。だから、だから私たちは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この花が明るくあたたかく咲くように、とびっきりの笑顔で世話してやろう

 

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!おじさんの口調で書くのはやはり難しいでございます。他にも私の技術だと字では表現しにくいシーンがあって日々頭を悩ませております。やれば慣れるの精神なのでこれからの成長にご期待ください(?)それでは改めてここまでのご精読ありがとうございました!お疲れ様でした!


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第20話 鳥籠リサーチ

皆さんこんにちは、めもりです。色々と大変な時期ですが自分が楽しいと思うことを皆さんと共有できればいいなという気持ちはいつまでも一緒です。今回も楽しい暇潰しになれるように続きを書いてきたので変わらずゆっくりとして行ってくださいね。それでは第20話「鳥籠リサーチ」スタートです!


 

~同日 4月17日(水) 放課後~

 

 

 

僕ら4人は放課後、教室で先生に声を掛けられ校内東門まで来ていた。

 

 

 

経介「ここだよね……?」

 

 

桜「東門だからここで合ってると思うよ」

 

 

有悟「うむ、しかし先生の姿が見当たらないな」

 

 

明「おーい!こっちだぞー!」

 

 

千優「あ!あれ先生じゃない?」

 

 

 

千優が指さした方向では明が手を振っていた。隣にはかなり大きめの段ボールが3つほど積まれていた。

 

 

 

有悟「お待たせしました先生!ご用件は何でしょうか!?」

 

 

明「いやー、急に声掛けて悪かったな。実はこいつらを実験室に運ぶのを手伝って欲しくてな」

 

 

 

明はそう言って段ボール箱をポンポンと叩いた。

 

 

 

桜「実験室にですか?」

 

 

明「そうだな。近くにいたからお前ら4人に声を掛けたが西木と淀屋は大丈夫か?2人で1個持ってもらうつもりだが結構重いぞ、これ」

 

 

桜「えっ、そんなにですか……?」

 

 

明「まぁ……なっ!」

 

 

 

明はそう答えると段ボール箱を1つ抱え上げた。明のような大人でもそれを運ぶのは相当大変な様子であった。

 

 

 

有悟「……確かに、これは女性陣2人でも厳しそうだ。高穂君も1人で運ぶのは大変そうだな」

 

 

 

明に続いて段ボール箱を持ち上げた有悟もそう感じたらしかった。

 

 

 

経介「えぇ、心配だな……」

 

 

桜「ならきょーちゃんのは私が手伝うよ」

 

 

経介「ホント?助かるよ」

 

 

千優「なら私は担城くんのを……」

 

 

有悟「ム、気持ちは嬉しいがしかし……」

 

 

 

 

 

 

 

桜「……千優ちゃん大丈夫?段ボール箱に呑まれてるみたいになってるけど……」

 

 

有悟「オレは大丈夫だから無理は控えてくれ」←174㎝

 

 

千優「ごめんなさい……」←153㎝

 

 

明「はははっ、じゃあ西木は実験室の解錠を頼めるか?」

 

 

千優「はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~多目的棟 2階 実験室~

 

 

 

経介&桜「せーのっ……」

 

 

経介「よしっ!……これで大丈夫ですか?」

 

 

 

既に運び込まれた2つの段ボール箱の傍に最後の1つを置いて経介はそう確認した。

 

 

 

明「おう。ありがとな!助かった」

 

 

千優「私は特に何もしてないですか……」

 

 

明「いやいや。正直思った以上に重くて片手で解錠するのも大変だったっぽいし助かったよ」

 

 

千優「ならいいんですけど……」

 

 

桜「そう言えばこれ、何が入ってるんですか?」

 

 

明「ん?あぁ、これの中身か?それはな……」

 

 

 

桜からの質問に明は照れくさそうに笑いながらこう答えた。

 

 

 

明「ちょっとした実験用の薬品だよ。近々化学の授業で実験をしようと思っててな。お前らが少しでも楽しいと思ってくれたらいいなと思ってよ」

 

 

経介「……!」

 

 

有悟「なるほど!先生なりの計らいと言う訳ですね!感謝します!!」

 

 

明「ま、オレがこーゆーの好きなだけなんだけどな(笑)一応他の生徒には内緒で頼むわ」

 

 

有悟「承知しました!!」

 

 

 

手伝いの終わった4人はそんな明の願いを聞き届けると実験室を後にした。向かう先が同じであった4人はそのまま話をしながら寮棟までの道をゆっくりと歩いて行った。

 

そしていよいよ彼らの足が寮棟に差し掛かろうとしていた、その時であった。

 

 

 

有悟「ム、あれは……」

 

 

 

東門の方からこちら側に向かって見覚えのある生徒が3人歩いて来るのが見えた。

 

 

 

経介「あ!あれ神薙さんたちじゃないかな?!おーい!!」

 

 

 

経介がそう声をあげて手を振ると、あちらも気付いた素振りを見せた。

 

 

 

 

 

 

 

経介「えーっと、どこかからの帰りかな?」

 

 

柚季「うん。みんなで花の種を植えてきたの」

 

 

経介「花の種を……?そっか、神薙さんは花が好きって言ってたよね」

 

 

柚季「うん」

 

 

瞳「柚季ちゃんだけじゃないよ、私たちは昔からよく一緒に花を育てたり摘みに行ったりしてるんだ」

 

 

経介「へぇ!凄く良い趣味だと思うよ!」

 

 

瞳「ホントに?ありがと!」

 

 

青葉「……ところで高穂くんたちは何をしてたの?学校帰りにしては少し遅いみたいだけど」

 

 

経介「あー、明先生に呼ばれてちょっとね。お手伝いをしてたんだ」

 

 

青葉「ふーん……?」

 

 

有悟「……」

 

 

経介「っそれよりさ!栄さんたちは、その……大丈夫?っほら、ここ最近……!」

 

 

 

経介はそう発した瞬間、場に緊張が走ったのを感じた。

 

 

 

経介(……そうか。僕以外の3人が投票したのは確か……)

 

 

 

経介がそれに気付き、しまったといった表情を浮かべたその時だった。

 

 

 

柚季「大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

経介「えっ……?」

 

 

柚季「私たちなら、大丈夫」

 

 

青葉「ただでさえゲームのことで大変なのに、余計な心配かけてごめんね」

 

 

瞳「うん。だから有悟くんたちもそんな顔しないで?」

 

 

 

そう返す3人の声はとても優しい調子であった。

 

 

 

有悟「……そうか。これは先生からの伝言だが、無理をしない程度でいいから授業に戻って来て欲しいそうだ」

 

 

柚季「うん。これ以上皆に心配かける訳にはいかないから、明日からは普通に登校するつもりだったんだけど……そっか。先生にも心配かけてたんだね。明日会ったらしっかり謝らないとな」

 

 

経介(……神薙さんたちは、強いんだな。もし、もし僕が神薙さんたちの立場に立っていたなら、果たして僕は……)

 

 

柚季「それじゃ、私たちはそろそろ行くね!」

 

 

有悟「ム、もう戻るのか?」

 

 

瞳「うん。やらなきゃいけないこともあるし」

 

 

有悟「……分かった」

 

 

青葉「色々とありがと!じゃあね!」

 

 

 

3人はそう言い残すと駆け足で寮へと走り去って行った。

 

 

 

経介「……」

 

 

千優「……」

 

 

桜「……あっ!!」

 

 

 

突然、桜が何かを思い出したように声をあげた。

 

 

 

千優「びっくりした……。どうしたの桜ちゃん?」

 

 

桜「どうしたのじゃないよ千優ちゃん!あれ渡そうって話だったじゃん!」

 

 

千優「あれって……?あっ!」

 

 

経介「……?どうしたの?」

 

 

桜「千優ちゃんの提案でね、柚季ちゃんたちが授業に戻った時に遅れないようにって3人用のノートを2人で作ってたんだけど、それを次に会った時に渡そうって話をしてたんだよ」

 

 

経介「そうなんだ!西木さんは優しいんだね」

 

 

千優「あはは、そんなことないよ。でも、色々といっぱいいっぱいで忘れてたな……」

 

 

桜「……まぁ、無理もないよ。ほら、追い掛けよ?今渡さなきゃ意味ないよ?」

 

 

千優「うん。そうだね」

 

 

桜「よし、じゃあお二人共また明日!」

 

 

経介「あ、うん。また明日!」

 

 

有悟「寮の廊下は走らないようにな」

 

 

 

こうして桜たちも3人を追い掛けて行き、場には経介と有悟だけが取り残されるかたちとなった。

 

 

 

経介「……神薙さんたち、一先ずは大丈夫そうで良かったね」

 

 

有悟「……あぁ、そうだな」

 

 

有悟(辛くないわけが、憎いわけがないだろう。それでも、君たちはあんな風に……)

 

 

有悟「……反省はしていても、後悔はしていない。そのつもりだったんだがな……」

 

 

 

有悟はため息交じりにそう言った。

 

 

 

有悟「西木さんたちのようにとは言わないが、オレもオレなりのやり方で必ず彼女たちに報いなくてはならないな」

 

 

経介「……僕も手伝うよ」

 

 

有悟「ム、それは心強いな。……助かるよ」

 

 

 

それから神薙さんたちはいつものように授業に出席するようになった。心配事が一つ減った影響か、クラスはまた以前の活気を少し取り戻したような感じがした。そしてそのまま時は流れ、4月19日……

 

 

 

 

 

 

 

~4月19日(金) 放課後 教室~

 

 

 

有悟「まずは皆、今週の授業もお疲れ様」

 

 

友輝「あー、もう受けたくねぇー」

 

 

初「ホント色々と疲れるよな~。今週も色々あったし」

 

 

有悟「それぞれ大変だとは思うが今日集まってもらったのは他でもない。明日の侵攻前に全員で情報共有と現状把握をしておきたいと思ってな。協力してくれるか?」

 

 

泰斗「まぁ、大切なことだからな」

 

 

晴「……」コクリ

 

 

有悟「うむ、ありがとう」

 

 

恵「んー……じゃあ、取り敢えず占い状況の確認からかなー?」

 

 

経介「そうだね。確か今はこんな感じだったよね……」

 

 

 

1回目

・凉太→祥子(黒)

・冷音→穂乃香(白)

・経介→有悟(白)

 

 

2回目

・凉太→美咲(白)

・冷音→祥子(白)

・経介→祥子(黒)

 

 

 

菜華「そうだな。それで霊媒結果は枷田さん泡瀬さん共に白だったか」

 

 

恒也「今出てる情報だけで行くと怪しいのは姫野だけどまだ何とも言えないよな」

 

 

雪紀「本人は騎士って言ってるし、響香ちゃんの例もあるしね」

 

 

祥子「……」

 

 

太一「そもそも占い師が誰と誰なのかにもよるしな」

 

 

冷音「……フンッ、疑うなら好きにしろ」

 

 

太一「あ、いや、そういう意味じゃねぇって……」

 

 

怜菜「でも、ゆくゆくはそこの真偽も明らかにしないとね」

 

 

有悟「あぁ、そこの解明もゲームの進行と共にして行く必要があるな」

 

 

航「……何にせよ今のところ一番怪しいのは姫野だし、明日姫野に監視でもつけたら?」

 

 

祥子「えっ!?」

 

 

 

突然の提案に驚く祥子を他所に、航は淡々と話を続けた。

 

 

 

航「何?本当に騎士なら問題ないし、それで特に怪しいところもなかったってなれば多少の信頼くらいは得られるようになると思うんだけど」

 

 

祥子「そうですけど……」

 

 

恵「まぁまぁ。そんなことしたら一日中緊張しちゃって落ち着けないよー。一応折角の土曜日なんだしさ」

 

 

有悟「うむ。だが一人で居ずに誰かと一緒に行動してもらうというのは良い案かも知れないな。朱谷君の言うようなメリットも確かにある」

 

 

祥子「それならいいんですけど、明日影人形だと疑われている私と行動してくれる方なんているのでしょうか……」

 

 

美咲「それなら私が一緒におるよ!祥子ちゃんのこと信頼してるし!」

 

 

唯「私も一緒にいます!」

 

 

恵「おー!美咲ちゃんと唯ちゃんならプレッシャーにもならなそうだし安心だねー」

 

 

祥子「お二人とも、ありがとうございます……」

 

 

美咲「当然だよ!」

 

 

有悟「では当人たちの都合も良さそうなことだし、明日の姫野さんは等野さんと沖鳥さんに任せるとしようか。朱谷君もそれでいいかい?」

 

 

航「ん。何でもいいよ」

 

 

有悟「よし。他の皆もできるだけ一人で行動することは避けるように。その方が安全だし、万が一の時に対応の幅が広がるからな」

 

 

縁「うん!」

 

 

友輝「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友輝「……んで、他に何の話すんだ?」

 

 

 

暫く間をあけた後、友輝が不思議そうな顔でそう発した。

 

 

 

秋子「ね。他に何かあるかな?」

 

 

真琴「他にも何も、特になくね?もー帰っていい?」

 

 

有悟「いや、それはまだ……うーむ、しかしな……」

 

 

 

一定数の生徒と同じく、こうなることをある程度予測できていた有悟ではあったが、このストレートな質問には少々困ったといった様子を見せた。

 

 

 

梢「まぁ、まだヒントが少ない状況だからね……」

 

 

茜「そうだね。ここから話が進展するかしないかは明日の様子を見ながら~って感じになるんじゃないかな」

 

 

真琴「……だってさ。もーいいんじゃない?」

 

 

有悟「うーむ……、まだ始めてからそれほど時間も経っていないし、あっけない感じもするのだが無理に引き延ばしても仕方がないしな……」

 

 

 

有悟が気は進まないながらも話し合いを終わらせようかと考えていた、その時だった。

 

 

 

柚季「あの、一つだけいいかな?」

 

 

 

この時間中ずっと黙っていた柚季がそう切り込んできた。

 

 

 

有悟「もちろん。ゲームについての提案かい?」

 

 

柚季「いや、今までの話の流れとは少しズレるんだけど、人形ゲームと島民についての情報共有です」

 

 

経介(人形ゲームと島民……?)

 

 

有悟「ほう。是非聞かせてくれ」

 

 

柚季「はい。私たち、実はこの島に住んでいるある人との接触する機会が何度かあって、そこで人形ゲームのことについての話をすることがあったんです」

 

 

舞人「……へぇ、初耳だな」

 

 

柚季「まぁ、私たちの中で色々とあって話す機会と気力を失ってたので……」

 

 

碧「それで、どうだったんだ?」

 

 

柚季「はい。その方を含め島民全員が人形ゲームの存在を知っているとのことでした」

 

 

「……!!」

 

 

 

柚季の話にほとんどの生徒が驚いた様子を見せた。

しかし、中には予想していたのか冷静に分析を始める者もいた。

 

 

 

有悟「……うむ。となると島民の方々は一種の監視員といったところか?いや、しかし……」

 

 

怜菜「知っているとはどこまでを知っているの?存在?内容も?或いは真相まで……?」

 

 

柚季「あ、えーっと……」

 

 

経介「みんな、一先ず落ち着いて!」

 

 

有悟「ム、そうだな、済まない」

 

 

 

慌ただしくなった教室は経介の声で落ち着きを取り戻した。

これには柚季も助かったといった表情を浮かべた。

 

 

 

初「うーん、それだとやっぱり先生と島民は協力してるのかぁ……?」

 

 

青葉「あ、そのことなんだけど先生と島の人たちは協力してるって感じじゃなかったよ」

 

 

初「……どーゆーことだ?」

 

 

瞳「うん。その人、人形ゲームを知ってるって教えてくれてからその先も話そうとしてくれたんだけど、その先を話されたくないみたいで一部が影人形化した彩先生に半ば無理矢理止められちゃったんです」

 

 

初「え!」

 

 

経介(彩先生に……!?)

 

 

青葉「そう。びっくりしたけどそんな風に先生方から島民さんたちに向けて圧力がかかってるみたいで、二者間で協力してると言うよりは先生方の方から無理矢理協力させてるって言い方の方が合ってるような印象だったかな……」

 

 

菜華「……やはりか」

 

 

有悟「……やはりとは?凜堂さんは何か知っているのかい?」

 

 

菜華「いや、知っているという訳ではなく、実は私も気になることがあって恵と一緒に島民に関連して調べものをしていたのだが、その結果どうやら私たちと島民では開示されている情報に何ら大差はないみたいだ」

 

 

碧「どういうことだ?」

 

 

菜華「私たちが持っている端末や部屋に常備されているPCやテレビ番組の内容まで、ネット情報に関わりそうなもの全てを調査したところ島民が所持しているものと機能から構成までがほとんど同じだったんだよ。操作記録の違いなどで個人個人で多少の差は見られたものの、どの機器も閲覧及び取得できる情報の範囲に私たちのものと変わりはないみたいで、島民の持つ機器からもシークレットエリアにある情報にはアクセスできない様子だった。彼らの力関係が対等ならば先生方がアクセスできる情報に島民がアクセスできないのは適当でないからな。まぁこの推理はいくつか穴があって話すのを躊躇っていたのだが、栄さんの話と合わせると彼らの力関係についてはそういう解釈で間違ってはいなさそうだ」

 

 

恵「あ、因みに聞き込みとかはばなながやったけど、機器の操作は僕がしたから安心してよ。ばななが操作するとエラーから爆発までと大変なことになっちゃうけど、僕はこういうのは得意なんだ♪」

 

 

菜華「……む、爆発と言うかあれは機器が弾けただけだろう」

 

 

暦(ギャップ萌え……)

 

 

千優「でも、そんなところまで詮索して大丈夫なのかな……?」

 

 

菜華「恐らくは大丈夫なのだろうな。栄さんたちの話からするに本当に触れられたくない情報には先生方自らが出向いて止めに来るようだが、私の時はそのようなことはなかったからな。それに生徒にこんなものを付けさせるくらいだ。こうした会話も常に先生方には聞かれているのだろうし、こんな話をしても妨害が来ないということは少なくとも彼らの力関係や情報開示範囲については知られたところで何ら問題はないのだろうな」

 

 

 

菜華は首の銀のリングを手で揺らしてそう言った。

 

 

 

真琴「うわマジ?爆破機能付き盗聴器とか笑えなすぎ。きも」

 

 

有悟「……なるほど。一度に大量の情報が入って来て気になることは山のようにあるが、神薙さんや凜堂さんの話から察するに、どうやら島民の方々からこれ以上情報を入手するのは厳しそうだな」

 

 

恵「そうだねー。僕たちはまた別の方法を模索してみるつもりだよ」

 

 

菜華「そうだな。今の情報量ではまだ気になっていることが本当のことかも分からないからな。それについてはまた進展があった時に全員に話をさせてもらうよ」

 

 

有悟「あぁ、そうしてくれるとこちらとしても有難いよ。神薙さんたちも貴重な情報提供感謝する」

 

 

柚季「ううん」

 

 

有悟「……さて、今日の目的は十分と言えるほど達成できた。様々なことが積み重なって皆疲労も溜まっていることだろうし、今日の話し合いはこれで解散としよう。最後に、明日も生存確認を行いたいから全員朝の7時に食堂へ集まってくれ。連絡は以上だ。協力ありがとう。皆無事で!」

 

 

 

こうして思わぬ量の情報が共有されることとなった19日放課後の会議は終わりを迎えた。

 

 

 

怜菜「お疲れ様。銘、今回の話どう思った?」

 

 

銘「そうだね。考えられることがいくつかあってそれについての意見を聞かせて欲しいんだけど、この後の予定は空いてる?」

 

 

怜菜「大丈夫よ」

 

 

茜「私も同席いい?」

 

 

銘「それはもちろん。梢はどうする?」

 

 

梢「私は遠慮しとこうかな。今日はもう帰って早めに寝るつもり!」

 

 

銘「分かった。気を付けてね」

 

 

梢「うん!」

 

 

 

 

碧「……」

 

 

蓮「お疲れさんー!そう難しい顔すんなよ。進展あってよかったじゃねぇか」

 

 

碧「……まぁ、そうだな」

 

 

蓮「疲れた頭じゃ考え事も捗らねぇぞ?こんな時は銭湯行こう!銭湯!」

 

 

碧「それもそうか……おい凉太。お前も行くか?」

 

 

凉太「……ん。いや、大丈夫だ」

 

 

碧「……?」

 

 

蓮「あいつもあれから色々と思い悩んでんだろう。今はそっとしといてやろうぜ」

 

 

碧「……そうか」

 

 

 

ガララッ

 

 

 

凉太「……」

 

 

 

2人が出て行った頃には教室に残っている生徒は凉太を含めて僅か数名であった。

静かになった教室には話し声がよく響いた。

 

 

 

経介(……はぁ、流石にちょっと疲れたな。……でも、やることは山積みだ。しっかりしないと!)

 

 

小春「お疲れ、きょーすけ」

 

 

経介「あ、小春!……そっちこそ、やけに疲れてるみたいだね……?」

 

 

小春「……うん。さっきの話を聞いて何だか不安が増しちゃってね。私難しいことはよく分かんないけどさ、みんな頑張ってくれてるから一生懸命考えないとって思ってるんだけど、考えれば考えるほどどうしてこんなことを考えて毎日怯えながら過ごさなきゃいけないんだろうって思っちゃって……」

 

 

経介「小春……」

 

 

小春「前にもこんな話聞いてもらったのに、ごめんね」

 

 

経介「小春が謝る必要は無いよ。海岸で3人で話した時に言ったでしょ、みんなでこの島を出ようって。そう言ったことも、小春が話してくれたことも僕はちゃんと覚えてるよ。だから安心して。小春の気持ちを無下にはしない。それでも不安だったら、いつでも話を聞くよ」

 

 

小春「そっか……うん。ありがと。元気出た!」

 

 

 

 

 

穂乃香「……」

 

 

和奏「うーん、大丈夫?グッバイレイニーしよ?」

 

 

冷音「あまり塞ぎ込むな穂乃香。気疲れもあって脳が情報を処理し切れずに混乱してるだけだ。少し経てば落ち着くはずだ」

 

 

和奏「うんうん。深く考え込まなくても、自分にできないことは誰かに任せて、誰かにはできないことを自分がやればいいんじゃない?それにほら、そーやって穂乃香みたいな子が苦しまないようにって、私たちみたいな人がいるんだし」

 

 

穂乃香「……うん」

 

 

冷音「それに安心しろ。お前は絶対にここから出してやる。オレの占いの能力はそのための力だ」

 

 

穂乃香「うん……」

 

 

和奏「わ、何?カッコいいお兄ちゃんじゃん。その調子で私もここから出してよー」

 

 

冷音「……フン、お前は穂乃香のついでだ」

 

 

和奏「お。それはどーも(笑)」

 

 

凉太「……」

 

 

 

学園の生徒たちが今日もそれぞれの思いに揺れる中、その時間は刻一刻と迫って来ていた。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??<……時間だ。今日も手筈通りに頼んだぞ>

 

 

 

4月20日(土)、朝0時。

 

その先に待ち構えているのは彼らにとって二度目の悪夢か、それとも……

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!と言う決まり文句ですが暇潰しなら精読でもなくなくないかとふと思ってしまいました。思っただけなので特に気にはしていません。さて、21話からまた侵攻が始まりますが、彼らに牙を剥いているのは誰なのでしょうか?彼らはそれを乗り越え真相に辿り着くことができるのでしょうか?次に狙われるのはあなたかも知れません……()


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第21話 不足者アライアンス

皆さんこんにちは、めもりです。筆者の脳内辞典がスカスカすぎて熟語検索アプリが欲しいなって思ってます。何かいいのがあれば紹介してください(泣)それではボキャ貧民発の第21話「不足者アライアンス」スタートです!!


 

有悟「おはよう、高穂君」

 

 

経介「おはよう!」

 

 

 

朝7時前、呼び掛け通りに食堂に入ると担城くんがいつものように挨拶をくれた。

僕は挨拶を返した後すぐ、既にたくさんの生徒が集まっていた食堂の中を小春たちを探して見回した。

 

 

 

桜「あ、きょーちゃんおはよ!こっちこっち!」

 

 

経介「!」

 

 

 

いつもの声がして、そちらの方を向くと桜が手招きをしていた。その隣には小春に加え、西木さんが座っていた。僕は胸を撫で下ろす思いで招かれるまま3人の座っている席へと向かった。

 

 

 

経介「おはよう、みんな大丈夫みたいだね」

 

 

小春「おはよ!きょーすけもその様子だと大丈夫そうだね」

 

 

経介「うん。侵攻が始まる時間には一応起きてたけど、僕の方は問題なかったよ。……ところで、他のみんなは?」

 

 

桜「んー、どうなんだろ。さっき有悟くんがあと少しで全員集まりそうだって言ってたけど……?」

 

 

 

ちょうどそんな話をしていた時だった。

 

 

 

有悟「改めておはよう、皆!」

 

 

 

有悟が食堂全体に聞こえるくらいの声でそう言った。

 

 

 

有悟「まだ7時前だが、皆の協力のお蔭で生徒38人全員の安全が確認できた!」

 

 

 

蓮「お、今日はスムーズだな。取り敢えずは良かったって感じだな」

 

 

碧「……そうだな」

 

 

凉太「……」

 

 

 

 

小春「だってさ。他のみんなも大丈夫みたいだね!」

 

 

経介「うん。でも今日が終わるまで油断はできない」

 

 

小春「そうだね……」

 

 

 

 

有悟「……念のため確認しておくが、今日ここに集まるまでに影人形を目撃したという生徒はいるか?もしいるのなら挙手を頼む」

 

 

 

 

雪紀「私は見てないけど……2人はどうだった?」

 

 

白夜「ううん。私は見てないよ」

 

 

初「私も見てねーなー」

 

 

 

 

美咲「うちらも昨日帰ってからずっと一緒にいたけど、それっぽいのは見なかったよね?」

 

 

唯「うん。見てないはずだよ」

 

 

祥子「はい……」

 

 

 

 

有悟「……うむ。この様子だと誰も目撃していないようだな。協力感謝する」

 

 

 

 

菜華「……」

 

 

恵「どしたの?考え事?」

 

 

菜華「いや、考え事と言うよりちょっと不思議に思うことがあるだけだ」

 

 

恵「何?」

 

 

菜華「影人形はどうして朝の時間に動かないんだと思ってな。コンディションや一人でいる可能性を考えると朝の時間が一番の狙い目な気がするんだが……」

 

 

恵「んー、向こうにも向こう側に立ってみなきゃ分からない事情があるんじゃない?」

 

 

菜華「……そんなものか?」

 

 

恵「さぁ?まぁ、だとしたら僕たちには考えても分かんないね」

 

 

菜華「うーん……。いまいちスッキリしないが、そういうことにしておくか」

 

 

恵「うんうん♪……たまにはそんな感じで流しちゃってもいいと思うよ」

 

 

菜華「ん?何か言ったか?」

 

 

恵「……ううん、何も言ってないよ♪」

 

 

菜華「そうか……?」

 

 

 

 

有悟「では、確認の方も無事に済んだことだ。もうそれぞれ自由に行動してもらって構わないが、一応今は侵攻可能な時刻だ。なので侵攻が不可能になる8時までは皆食堂内にいるように頼む。それと何度も言うようだが、今日が終わるまではなるべく複数人で行動して一人でいる時間を最小限に抑えるようにな。君たちも、姫野さんを頼んだぞ」

 

 

美咲「うん」

 

 

唯「もちろん」

 

 

有悟「……うむ。皆今日を終えても無事であってくれ」

 

 

 

こうして予定されていた確認が終了し、各生徒は食事や会話などをしながらその時を待った。

そしてもうすぐ朝の8時を迎えようとしていた、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、ちょっといいか」

 

 

 

皆時計を気にするあまり静かになっていた食堂の端から、そんな声が聞こえてきた。

 

 

 

祥子「……!」

 

 

美咲「……どうかしたん?凉太くん」

 

 

凉太「その、4日前のことなんだけどよ」

 

 

唯「4日前って……」

 

 

真琴「……」

 

 

 

そのことをよく覚えていた彼女らは、すぐに凉太が何の話をしようとしているのか分かった。

 

 

 

美咲「あぁ、あのことかな。その節はごめんね。ホントにうちがもっと……」

 

 

凉太「やめてくれ」

 

 

美咲「……?」

 

 

凉太「謝らなきゃいけねぇのはオレの方だ」

 

 

美咲「え……?」

 

 

唯「……!」

 

 

 

その言葉に驚いて凉太の顔を見てみると、彼の表情はあの時見せたものとは全くと言っていいほど違っていた。

その会話を聞いていた他の生徒の意識も徐々に時計から凉太の方へと集まって行っていた。

 

 

 

凉太「……あの時よ、オレ焦ってたんだよ。占い師が他に2人もいて、誤って消される前に何としてもオレが占い師だってことを信じてもらわねぇといけないって。だから多少強引でもいいから、いち早く信用を掴むにはどうすればいいかってそればかり考えてたんだ。……だから、みんなが見ていて印象にも残りやすいあの場こそアピールするのに最適だと、よく考えもしないで行動に移ったんだ」

 

 

経介(相沢くん……)

 

 

凉太「……終わってみた結果は最悪だった。不確定な証拠ばっか並べて後悔してる等野らに追い打ちをかけて、四宮との口論になった時も自分のアピールに必死でそれを聞いてる他の奴らの気持ちなんて気にも留めないでよ。挙句には自分が正しいって証明すらも四宮の言葉の前に何も言い返せなくなって……。あの時、オレはあぁまでして必死に得ようとしていた信頼すらも失ったんだと思う」

 

 

真琴「……」

 

 

凉太「それに気付いてからよ、オレはずっとどうすればいいか分からなかったんだ。これからのみんなとの接し方とか、占い師としての自分の正しい在り方とか。謝らなきゃいけねぇことは分かってても、自分が見当たらない以上はどんな謝罪も口先だけの謝罪に他ならなくて、そんな奴には謝る資格すらなくて、ろくに謝りに行くこともできなかった」

 

 

蓮「……」

 

 

凉太「でもよ、オレ昨日の放課後、高穂や木陰が話してるの聞いて分かったんだ。一番大切なのは信頼とか証拠とかがあるって事実じゃなくて、誰かを守りたいって気持ちなんだって。占いはその気持ちがあって初めて意味を成す力なんだってよ。……オレはお前らを守りたい。一人でも多くこの島から出してやりたい。あの時は信用されるってかたちだけを求めるのに必死でそのことを忘れてたけど、あの行動ももといそういった気持ちが極めて歪に変形した結果が生んだものなんだ。でもオレはもう二度とその気持ちを忘れはしねぇし、漸く見つかった歩むべき道を踏み外したりはしねぇと誓う!だから信頼の欠片も満足の行く証拠もないオレだけど、今ここであの時のことをしっかりと謝らせて欲しい。等野も、沖鳥も、四宮も、他のみんなも、本当に済まなかった!!!」

 

 

 

いつしか生徒全員の注目が凉太に集まっていた中、彼はそう伝えるとともに頭を下げたまま動かなくなった。

 

 

 

美咲「……顔上げて凉太くん」

 

 

凉太「……」

 

 

美咲「凉太くんはあのことを追い打ちって言ってるけど、うちあの時凉太くんに言われたこと実はちょっと有難かったなって思ってるんよ」

 

 

凉太「……」

 

 

美咲「ほら、あんな状況やったら中々落ち込んでる人にダメ出しなんてしてくれる人おらんやろ?上手く言えんけど、たとえそれが凉太くん自身のためにやったことやったとしても、うちはあぁやって刺激してもらったお蔭でもっともっと頑張らなきゃって気になれたんよ。まぁ、ちょっと凹んだのも事実やけど……」

 

 

凉太「……それは本当に済まな……」

 

 

美咲「いやいやいや、だから謝らんでいいんやって!あれがなかったらうちは自分への甘さにも気付けやんかったんやし!だからほら、お互いに考え不足やったってことやな。だからこっからまた一緒に頑張ろ!話してくれてありがとう!」

 

 

凉太「……こちらこそ、ありがとう」

 

 

唯「なら考え不足なのは私も一緒だね。励ますことばかりが正解だと思ってたけど、今の話を聞いてそうじゃないってことがよく分かった。それが偶然でもきっかけをくれたのは凉太くんであることに違いないんだから、私もあの時のこと感謝してるよ。ありがとう」

 

 

凉太「……」

 

 

恵「まぁ僕たちは、当事者が大丈夫って言うなら大丈夫なんだけど……真琴ちゃんはどうなのかな♪」

 

 

真琴「……」

 

 

凉太「……済まなかった。この通りだ」

 

 

真琴「……美咲と唯がいいならいいんじゃない。あたしはあんたのこと嫌いだけど」

 

 

恵「……だってさ♪」

 

 

凉太「……みんなありがとう。そして本当に済まなかった。占い先ももう一度考え直してまた一から頑張って行くつもりだ。今日は本当にこんな大変な日にも関わらず話を聞いてくれてありがとう」

 

 

 

凉太は更に深々と頭を下げてそう言った。いつしかその姿を冷ややかな目で見る者はこの場所に誰一人として存在しなくなっていた。

 

 

 

蓮「凉太ぁ―!!」

 

 

凉太「う“っ」

 

 

碧「蓮、ナイス飛び蹴り」

 

 

凉太「……痛ってぇな、いきなり何すんだよ」

 

 

蓮「……よく言ったな」

 

 

凉太「……は?」

 

 

碧「あぁ、よく言ったよ」

 

 

凉太「……心配掛けたな」

 

 

 

 

 

ズコココココココ

 

 

 

真琴「……」

 

 

縁「……真琴ちゃん、それもうないんじゃ……」

 

 

真琴「……」

 

 

縁(うっ、凄い目付き……)

 

 

縁「……もう一本、買いに行こっか?」

 

 

真琴「……もっと美味しいやつ。縁の奢りね」

 

 

縁「うん!そのつもり」

 

 

 

 

有悟「……ム、もうこんな時間か……よし。皆!今日はまだ始まったばかりだ!今一度気を引き締めて全員で侵攻を乗り切ろう!!」

 

 

 

僕たちが気付いた頃には、食堂の時計の針は既に8時過ぎを指していた。

けれど、僕たちが安心できるのも束の間。ゲームは昼の侵攻、夜の侵攻へと加速して行く。

そして、僕は知ることになる。命を脅かさんとする魔の手は確かなかたちを持って、僕らのすぐ近くでひっそりとその時を窺っているのだということを……。

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!話の都合で本来21話に纏めようと思っていた話の前編だけを投稿した形となってしまったのでボリュームとしては結構少なめなのですが、それの方が後編(22話)も楽しめるかなと思ったので分けさせていただく運びとなりました。感情が飛び交うシーンとか思いを打ち明けるシーンは結構体力を食うので筆者としてもここまで書くのがやっと的なソレはあります()次回は特に気合い入れて書かなくてはなのでそーゆーことにしといて下さい。ではまた次話でお会いしましょう。改めてここまでの閲覧ありがとうございました!次話もお楽しみに!


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第22話 銀色の凶刃

皆さんこんにちは、めもりです。ひきこもり生活の代償曜日感覚の狂いにより今日(昨日)が土曜日という実感が湧かず、若干投稿が遅れてしまいました……。そちらの感覚に効くお薬も募集中です。それでは第22話「銀色の凶刃」スタートです!


 

~4月20日(土) 昼前 島内中心部 カフェ~

 

 

 

桜「ゆっくり落ち着ける場所があればと思って来てみたけど、いいね。ここ」

 

 

千優「うん。アンティークな感じで結構好きかも」

 

 

 

店内はテーブル席や時計などの大きなものからカップやテーブルの上にちょこんと飾られてあるミニチュアなどの小さなものまで古風な印象を与えるもので統一されており、それが店独特の落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

経介「前々からカフェがあるのは知ってたけど、中はこんな風になってたんだね」

 

 

小春「私は今まで知らなかったんだけど、きょーすけは知ってたんだ」

 

 

経介「まぁ、存在だけはね。よく玉川くんと凜堂さんがカフェの話をしてたのを聞いてたからさ」

 

 

 

そんな話をしていた時だった。

 

 

 

恵「盗み聞きなんて趣味が悪いなぁ経介くん♪」

 

 

経介「え……?」

 

 

菜華「恵、お前のしてることもそれと一緒だ」

 

 

恵「うっ、冗談だよ~」

 

 

 

入り口のベルが鳴ると共に恵と菜華が店に入って来た。

 

 

 

小春「あ!恵くんに菜華ちゃん!」

 

 

経介「びっくりした……。本当にジャストタイミングだったね……」

 

 

恵「噂をすれば出るって言うからね♪隣いいかな?」

 

 

経介「あ、うん。いいよ。折角だし」

 

 

恵「やったぁ!それじゃ、お言葉に甘えて」

 

 

菜華「……失礼する」

 

 

 

 

 

小春「恵くんたちはここにはよく来てるの?」

 

 

恵「そうだねぇ、よくって言うかほぼ毎日来てるかな♪」

 

 

経介「そんなに?!凄いね……」

 

 

菜華「ここは落ち着くからな。作業をするにも休憩するにも最適の場所なんだ」

 

 

桜「確かに、それは納得ね」

 

 

千優「うん。ここならいつまでも居られそう……!」

 

 

菜華「北の方と違ってこの辺りは人通りが少なくて高い建物もないから、夜は静かで綺麗な星がよく見えるんだ。それに浸りながら嗜むコーヒーがまた美味しくてな……」

 

 

恵「うんうん!まぁ、僕は苦いのダメだからいつも蜂蜜とお砂糖多めの甘いカフェオレなんだけどね」

 

 

経介「へぇ……!」

 

 

菜華「興味があれば君たちも一度経験してみるといいよ。損はしないはずだ」

 

 

経介(……この島のこと、よく考えたら全然知らないな。……僕も、そんな発見があったらいいな)

 

 

経介「うん!教えてくれてありがとう!」

 

 

 

経介はそれを聞いて少し、嬉しさのような感情を覚えていた。その話をする彼女らの表情からゲームに囚われない、普通の高校生としての一面を垣間見ることができた気がして。

 

 

 

恵「……ところで、桜ちゃんたちはここで何してたの?いつもは見かけないからこの機会にと思ってお邪魔しちゃったけど、もしかして大事な話の途中だったりしたかな……?」

 

 

桜「ううん。大丈夫だよ!私たちはただ昼の侵攻が始まる前に落ち着いて居られる場所を探してて、それでここに辿り着いただけだから特に何か用事がある訳でもないんだ」

 

 

恵「そうなんだ!それならちょうど良かった!実は僕たちも……」

 

 

 

恵がそう言いかけた時だった。

再び入り口のベルの鳴る音が聞こえると共に、見覚えのある生徒が入店して来た。

 

 

 

穂乃香「わぁ~、すごい!聞いてた通りの素敵な内装だ~!」

 

 

和奏「おー!オシャレじゃん」

 

 

冷音「……ったく、何でよりにもよって今日なんだよ……」

 

 

 

小春「あ、今度は冷音くんたちだ!」

 

 

恵「んん、今日は何だか賑やかだねぇ♪」

 

 

 

穂乃香「偶然土曜日と被っちゃったんだから仕方ないでしょ!それにこの前今度気分転換に付き合ってくれるって言ったのはお兄ちゃんの方じゃん!」

 

 

冷音「……とは言ってもだな……」

 

 

和奏「まぁまぁ、いいじゃんか別に。今は侵攻時間外なんだしさ。それに可愛い可愛い妹ちゃんの頼みだよ?」

 

 

冷音「……」

 

 

穂乃香「もう、お兄ちゃんは心配しすぎだよ。侵攻時間には十分注意して行動してるんだから!それにここなら大丈夫……って、あれっ?」

 

 

 

こちらが向こうに気付いてから少しして、向こうもこちら側に気付いた様子を見せた。

 

 

 

恵「やぁ、こんなところで奇遇だね」

 

 

穂乃香「恵くんに菜華ちゃん!それに小春ちゃんたちも!」

 

 

和奏「見た顔がいっぱいいるねー」

 

 

冷音「チッ、面倒な奴が……」

 

 

菜華「穂乃香、この前話したばかりなのにもう来たのか」

 

 

穂乃香「うん!菜華ちゃんの話を聞いてからずっとここのことが気になっててね。侵攻が控えてるのは分かってるけど、2人に無理言ってついて来てもらっちゃった!」

 

 

恵「……?」

 

 

菜華「つい最近、穂乃香にここのことを聞かれて話をしたことがあってな。随分と興味がある様子だったから一度来てみてはと提案したんだ。本当につい最近のことなんだがな」

 

 

恵「なるほどー!じゃあ穂乃香ちゃんたちも一緒にお茶するのはどうかな?話を聞いてる限り僕らと同じで特にやらなきゃいけないこともないみたいだし、ここに興味があるなら僕らからも色々教えてあげられるかも知れないしね~」

 

 

冷音「誰がお前らと群れてお茶など……」

 

 

穂乃香「ホント?嬉しい!カフェの話もそうだけど、私まだみんなのことよく知らないから色々お話してみたいなって思ってたの!」

 

 

和奏「お、私も昔の話とかは興味ある」

 

 

冷音「……オレはあっちで……」

 

 

菜華「木陰くんも一緒にどうだ?見たところ穂乃香が心配なんだろう?一人でも多かった方が影人形に狙われるリスクは減るぞ。それに、君がいた方が穂乃香も喜ぶだろうしな」

 

 

経介(凜堂さん、何て言うかよく分かってるな……(笑))

 

 

穂乃香「ほら!そう言うことだからお兄ちゃんもこっち来て座って!」

 

 

冷音「……」

 

 

 

こうしてもう間もなく始まる昼の侵攻に向けて十分な警戒をする中、半ば強引に僕ら9人の生徒によるお茶会が始まった……。

 

 

 

※ここからはダイジェストでお送りします。

 

 

 

恵「冷音くんと穂乃香ちゃんが一緒に居るのは兄妹だからだとして、和奏ちゃんとはどういう関係なの~?」

 

 

穂乃香「中学の時からの友達だよ!私が中学に入ってすぐにお兄ちゃんとクラスが別々になって、話す人がいなくて淋しかった時によく話しかけてきてくれて仲良くなったの!」

 

 

冷音「……休憩時間とかにはよく会って話してただろ」

 

 

穂乃香「授業内のグループワークの時とかの話!」

 

 

和奏「そう。で、その時穂乃香と仲良くなってから冷音にもよく話しかけてるつもりなんだけどずっとこんな感じなんだよねー」

 

 

冷音「……フン、オレは普通だ」

 

 

 

 

穂乃香「2人も中学からの付き合いなんだよね?昔の2人ってどんな感じだったの?」

 

 

菜華「中学の頃の恵か?うーん……2年の中頃からならはっきりと覚えてるんだが、それ以前のことは曖昧だな……。まぁ、物静かな男の子と言った感じか?」

 

 

和奏「え!意外~」

 

 

恵「あはは、恥ずかしいなぁこれ。でもあまり覚えてないのは無理ないよねぇ。何せばななは1年の時からバリバリの生徒会長だったからねぇ。それで言うとばななの方はあまり変わってないかもね~。あ、でも昔に比べたら最近はちょっと人っぽくなったかも」

 

 

菜華「何だそれは……、私はずっと人間だぞ」

 

 

経介「昔はTHE・仕事人って感じだったってことかな……?」

 

 

 

 

和奏「経介くんは千優ちゃんとはどんな関係なの?そこの2人でいるところはあまり見たことがないように感じるんだけど」

 

 

経介「えーっと……」

 

 

千優「……」

 

 

和奏「?」

 

 

桜「千優ちゃんとは私が仲良くて、小学校が一緒だったんです。その時既に小春ちゃんたち2人とも仲は良かったんですけど2人はまた別の小学校で……」

 

 

経介「僕と小春は小学校から一緒なんだけど、桜は中学から一緒なんだ。お互いに知り合って遊び始めたのは確か小学校に入る少し前くらいだった気がするけど……」

 

 

千優「私は3人とは中学が違ったので桜ちゃんとはここに来て小学校ぶりに会ったんですけど、高穂くんと硯さんとはここで初めて会ったんです。桜ちゃんから何度も話は聞いてたので知ってはいたのですが……」

 

 

菜華「要するに友達の友達ということだな」

 

 

千優「そう、ですね……」

 

 

恵(僕が言ってるのはこーゆーとこなんだよなぁ……)

 

 

 

 

その後も……

 

 

 

穂乃香「えぇ?!じゃあ2人は付き合ってなかったの?!」

 

 

恵「違うよ~、友達友達!」

 

 

菜華「驚いたな。私と恵はそんな風に見られていたのか」

 

 

恵「そんなこと言ったら君たちもそんな風に見えるけど誰が本命なのかなぁ?♪」

 

 

経介「えぇ?!ぼっ、僕はそんな風には……ごにょごにょ」

 

 

穂乃香「私はお兄ちゃんとは兄妹なんだから違うよー!あ、でも!」

 

 

和奏「お。私たち付き合うか?」

 

 

冷音「……うるせぇ御免だ。穂乃香も余計なことを言うな」

 

 

穂乃香「あはは、冗談だよ~」

 

 

冷音「全く……」

 

 

恵(……あら?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃香「あー、話した話した!」

 

 

恵「楽しかったねぇ♪」

 

 

穂乃香「うんうん……ってあれ?外が真っ暗?!」

 

 

小春「わ!もう20時前だよ!いつの間に?!」

 

 

 

店の時計を見た小春が驚いてそう言った。話をするのに夢中で途中から時刻を確認するのを忘れていたみたいだった。

 

 

 

穂乃香「時間を忘れて楽しむって、こういうことを言うんだね……」

 

 

恵「だね♪それができたっていうのは良い経験だけど……どうしよっか?もう夜の侵攻が始まっちゃうね」

 

 

菜華「……今グループに連絡がないか確認してみたがそれらしいものは届いてないな。どうやらまだ侵攻は行われていないみたいだな」

 

 

恵「そうだねぇ、僕はこのままみんなと明日まで話の続きをしてもいいんだけど……」

 

 

冷音「冗談じゃねぇ、これ以上はもううんざりだ。オレは寮に戻るぞ」

 

 

恵「うーん、うんざりって割には楽しそうに見えたけどなぁ♪」

 

 

菜華「恵も、ここに残る訳にはいかないだろう?帰りに食材を買いにスーパーに寄るんじゃなかったのか?」

 

 

恵「そう言えばそうだったねぇ」

 

 

菜華「まだ侵攻まで時間があるとは言え、一人では心配だ。私も一緒に行こう」

 

 

和奏「あ、そーゆーことなら私もついて行っていいかな?ちょうど野菜切らしてるんだ」

 

 

小春「実は私もで……」

 

 

恵「分かった。固まって動く人数は多かった方がいい。とは言え街灯の少ない暗闇で襲撃されるのはマズイ。僕たちは足早に店に向かうけど、君たちはどうするの?」

 

 

 

恵はまだ意見の出ていない4人に端的に質問を述べた。

 

 

 

桜「私は……下手に動くのも怖いし明日までここで待機しようかな」

 

 

千優「私も桜ちゃんとここに残ります……」

 

 

穂乃香「私は……」

 

 

冷音「お前はここに残れ。店のある北側と違ってここから寮までは暗い道がずっと続く。時間までに寮に着けるとは思うが万が一のことを考えるとここでそいつらと待機してた方が安全だ」

 

 

穂乃香「でも……」

 

 

経介「それなら、僕が木陰くんと一緒に寮に戻るよ。だから木陰さんは桜たちとここで待機していて。それに、一人だけ危険を冒させる訳にはいかないから」

 

 

穂乃香「……分かった。気を付けて!」

 

 

恵「……うん。みんな塊になって別れたみたいだね。それじゃ、早いとこ移動しよう」

 

 

和奏「りょーかいー」

 

 

菜華「どちらも気を付けてな」

 

 

経介「うん。そっちもね!」

 

 

冷音「……おい、寮まで走るぞ」

 

 

経介「分かった!」

 

 

 

こうして、僕らは慌ただしく3グループに別れ、それぞれの目指す場所へと向かって行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、僕らがちょうど学園の東門を潜った時だった。

 

 

 

冷音「……時間だ」

 

 

 

時刻は20時。たった今、この島は夜の侵攻の時間を迎えた。

 

 

 

経介「……何とか、間に合った……かな……」

 

 

冷音「気を抜くな。一先ずは明かりのついているロビーに……!!」

 

 

 

冷音がそう言って寮のロビーの方に目をやった時だった。

 

 

 

冷音「……おい。できるだけしゃがんでロビーの近くまで向かうぞ」

 

 

経介「え……?」

 

 

冷音「いいから、早くしゃがめ!」

 

 

 

僕は木陰くんに疲れて膝の上に宛がっていた手を引かれて体制を崩した。

 

 

 

経介「……どうしたの?」

 

 

冷音「静かに!……あれを見ろ」

 

 

 

木陰くんの指がさす方に目を向けると、そこにはある人物が一人で立っているのが見えた。

 

 

 

経介「あれは……!!」

 

 

 

その人物の顔はロビーの光で照らされ、少し離れた場所にいる僕たちでもしっかりと捉えることができた。そう、その人物とはまさに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介「……姫野さん……!?」

 

 

 

そう、そこに立っていたのは紛れもなく姫野祥子であった。

彼女はどこか落ち着かない様子で辺りを何度も見回していた。

 

 

 

経介「でもどうして?姫野さんは確か等野さんたちと……?」

 

 

冷音「考えるのは後だ。一人でいることに加えて明らかに動きが不審だ。このまま徐々に距離を詰めてもっと近くで動向を窺うぞ」

 

 

経介「……うん!」

 

 

 

僕はしゃがんだまま冷音くんの後ろを寮のロビー目がけてついて行った。

その距離が縮まるにつれ、動悸が激しくなっていくのが分かった。

 

 

一歩、一歩とロビーが。目的の場所が近づいて来る。そしてまた、次の一歩で……と、その時だった。

 

 

 

冷音「!!」

 

 

経介「逃げた!!」

 

 

 

祥子は突然、その場を逃げるように走り出したのだ。

 

 

 

経介(何で?!気付かれたのか?!)

 

 

冷音「教室棟だ!追うぞ!!」

 

 

 

木陰くんの声だ。僕らは教室棟に消えて行った姫野さんの背中を追った。

 

 

 

経介(君が。本当に君が……?)

 

 

 

冷音「上だ!!」

 

 

 

経介(嘘だったのか。あの言葉は全て……?)

 

 

 

真実をこの目で───。一心不乱にそれを目がけて突き進む。足が階段を蹴り、2階の踊り場を蹴る。

 

 

 

経介(君が。君が枷田さんを殺したのか……?!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

前方にあった硬い何かにぶつかって、強い疑念に盲目になっていた僕は我に返った。

見ると、目の前には冷音の背中があった。

 

 

 

経介「……木陰く」

 

 

冷音「喋るな」

 

 

経介(!!)

 

 

 

木陰くんはただ一言、人差し指を立ててそう言った。

決して大きな声ではなかった。寧ろ小さすぎるくらいの声量であった。それでも僕はその一言に得体の知れない緊張感を覚えた。

 

 

 

「この先に何があると言うのだろう」

 

 

 

最高潮に達した動悸も止まぬまま、僕は恐る恐る木陰くんが見ている先を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

経介「……!!??」

 

 

 

そこには目を疑う光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

月光が照らすは恐怖からか廊下にぺたりと座り込み、必死に後ずさりをしようとするが脚が動かない祥子。そしてその正面には手に銀色に光る刃物を携えた真っ黒なナニか。

そう、そこに映し出されていたのは紛れもない「祥子」を襲う「影人形」の姿だった。

 

 

 

 

 

はやく、はやく逃げなければ。気持ちだけが先走る。脚はぴくりとも動かない。

 

 

 

冷音「……おい、落ち着けよ。今オレたちが出て行ってもこの距離、この状況じゃもう助けようがない」

 

 

 

祥子のはやる気持ちを宥めるかのように銀色の凶刃はゆっくりとその高度を上げ、影人形の頭の上辺りでぴたりと止まった。

 

 

 

冷音「下手に姿を見られることは次の侵攻で命を狙われることに繋がる」

 

 

 

影人形は怯える祥子の顔から慄く祥子の心に視線を落とし、そして……

 

 

 

冷音「心苦しいが、ここはこのまま……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷音「……ッバカ!!!」

 

 

 

僕は壁の陰から勢いよく飛び出した。

 

 

 

経介(君じゃなかった。嘘じゃなかった)

 

 

 

一瞬、影人形の注意がこちらに逸れる。

 

 

 

経介(やっと、やっと分かったのに……)

 

 

 

が、それも束の間。すぐに影人形の注意は祥子に戻る。

 

 

 

経介(やめろ。やめろよ!)

 

 

 

その距離、僅か数メートル。届かない。目と鼻の先。必死に手を伸ばす。それでも届かない。

そう、彼の手ではない。今そこにある命に唯一、触れることができるのは───

 

 

 

経介「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずはここまでのご精読ありがとうございました!久しぶりの行間明け明けパーティーは楽しんでいただけたでしょうか。また、本話ではカフェの話が出て来ておりますが私はそんなオシャンティーな場所とは全くの無縁でございますので皆様の思うような素敵なカフェを想像していただけたら幸いです(丸投げ)。カフェってマスターいるっけ?とか言ってるレベルなので。はい。この話の後書きでそんだけ文字数書いてて話すことそれかよって感じなのでこの辺で終わります。改めてここまでの閲覧ありがとうございました。次話もお楽しみに!!!


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