口が悪くて仲のいいアイドルたち。 (しましか)
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佐久間と五十嵐。

 事務所。

 

 

まゆ「おはようございまぁす、まゆですよぉ」

 

響子「おはようございますまゆちゃん。今日もオトコに媚びっ媚びの衣装ですね♡」

 

まゆ「撮影衣装だからって水着エプロンを披露した響子ちゃんほどじゃ。それで、Pさんは?」

 

響子「Pさんはグラビア撮影の付き添いです、文香さんの」

 

まゆ「またぁ? グラビア撮影ぐらい1人で出来るくせに。大体家でTシャツ1枚のくせに」

 

響子「文学少女キャラですからねー。まあ1人で行かせてどっかで何か起きても堪らないんで良しとしてます」

 

まゆ「今日は事務所出勤はまゆたちだけ?」

 

響子「あのー、少しは自分で調べてください。ホワイトボードに全部書いてありますよ♡」

 

まゆ「ものぐさ……。えーっと、うわっ」

 

響子「露骨に嫌そうな声ですね(笑)ちなみに私個人的には姉の方のギャルがちょっと」

 

まゆ「露骨に相性アレですよねぇ。一方的に怖がられてるだけな気もするけど」

 

響子「かまととぶりやがって」

 

まゆ「妹は?」

 

響子「金髪の中ではまだマシです」

 

まゆ「ああ……」

 

響子「まあでも一番ヤバいのは」

 

響子・まゆ「「宮本フレデリカ」」

 

まゆ「ぷっ」

 

響子「ふふ」

 

まゆ「人の事を貶めて笑いをとるのは最低行為って誰かが言ってたような」

 

響子「嫌いでもないですしアレはああいう生き物だと思ってます。っていうかどの口が言うんですかね」

 

まゆ「あ、ねえねえ響子ちゃん」

 

響子「はいはい響子ちゃんですよ」

 

まゆ「ハンバーグ作って?」

 

響子「は?」

 

まゆ「今日お昼ご飯食べずに来ちゃって」

 

響子「……見返りは」

 

まゆ「個人的に撮影したP.C.Sの事務所居眠り写真」

 

響子「乗った。豚肉でいいですか?」

 

まゆ「わぁい、何でもいいよぉ」

 

響子「今何でもって」

 

まゆ「はいはい」

 

響子「ノってくださいよー」

 

まゆ「横で応援してあげるから。がんばれ♡ がんばれ♡」

 

響子「やめてください」

 

まゆ「ちょっとせのびしてー、のーぞきーたーいー」

 

響子「やめてください」

 

まゆ「わーたーしのーみーらいー」

 

響子「やめてください」 

 

まゆ「せーかーいーでーいちーばーん、すーてーきーなー、えがおー」

 

響子「お料理、得意なんですっ!」

 

まゆ「(笑)」

 

響子「ナイフ使わない料理で良かった」

 

まゆ「刃物はまゆの専売特許♡」

 

響子「ヤンデレキャラも大変ですね。あ、お皿出しといてください」

 

まゆ「重い愛を抱えるくらいの運命を感じたことないなんて可哀想な子。料理の腕前以外はお子様ね」

 

響子「ひとつしか変わらないじゃないですか」

 

まゆ「まゆは結婚できるもの」

 

響子「この年増♡」

 

まゆ「黙れクソガキ♡」

 

響子「録音しました」

 

まゆ「まゆも」

 

響子「消しますので消しといてください」

 

まゆ「はぁい」

 

響子「はいできましたよー。響子特製ハンバーグですっ」

 

まゆ「なるほど、これでオトコを落とすと」

 

響子「否定はしません。心を掴むにはまず胃袋からですから♡」

 

まゆ「悔しいけど説得力あるから……ちっ」

 

響子「今舌打ちしました?」

 

まゆ「いただきまぁす」

 

響子「今舌打ちしました?」

 

まゆ「うーん、美味しい。納得いかない」

 

響子「あっれ〜? 愛がどうのとか言っときながらこんな料理もできないんですか〜?」

 

まゆ「人並みには出来るから」

 

響子「でも私の方が上手いからお願いしたんですよね? 負けを認めたってことですよね? じゃあPさんは私のものってことで」

 

まゆ「は?」

 

響子「大丈夫大丈夫大丈夫です。1年後、トップアイドルになれば心身プラス生活面でもPさんを幸せにできるのは誰がどう考えても私ですから。半年に1回くらいなら会うのを許してあげますね♡」

 

まゆ「あらあらあら、やっぱりお子様は思考回路が単純ねぇ。Pさんがどんな子が好みかも知らないなんて」

 

響子「負け惜しみですか? 惨めですね〜〜」

 

まゆ「いつもPさんの事を調べてるまゆがどうしてこの髪型をしてるのか、考えてみればすぐ分かるコト。いい? 特別に教えてあげる」

 

響子「……?」

 

まゆ「Pさんはセミロングかつもみあげ、襟足……つまり、顔の横にある毛が多い子が好きなの!!」

 

響子「な、なんだってーーーー!!!???」

 

まゆ「この条件にがっちり当てはまる子は、まゆの他に永富蓮実ちゃんと高垣楓さんだけ! つまり実質のライバルはこの2人だけということ!!」

 

響子「遊佐こずえちゃんとか櫻井桃華ちゃんは?」

 

まゆ「Pさんはロリコンではないもの。多分」

 

響子「それこそ甘い考えでは? 日本人男性の半数以上はロリコンなんですよ」

 

まゆ「な、なんだってーーーー!!!???」

 

響子「だとしたら私もアウトなんですけど、でも私には別個性があるので」

 

まゆ「お料理?」

 

響子「いいえ、ママみです!」

 

まゆ「はい? ごちそうさまです」

 

響子「世間では年端もいかない幼い少女をママと称して甘える文化が栄えているらしいんですよ、エロ世界にも流行り廃りはあるらしく! おそまつさまです!」

 

まゆ「エロなんて……///」

 

響子「照れたフリやめてください気持ち悪い。そこで私の溢れ出んばかりの母性に包まれたい、抱きしめられたいという男性が急増中……!」

 

まゆ「バブみ……ママみ……」

 

響子「どうですか! まゆさんにありますか! バブみが!!!」

 

まゆ「…………。……。うふふ、響子あかちゃぁん♡ ままでちゅよ〜〜♡ 今日もい〜〜〜っぱいミルクありまちゅからぁ……♡ ぜぇんぶごっくんごっくん♡ ままといっちょにお口とのどのれんしゅう、がんばりまちょうね〜〜〜♡♡」

 

響子「う゛っ」

 

まゆ「こんな感じ?」

 

響子「ど、どこでそんな知識を」

 

まゆ「まゆが出てる○○な本にあって。というより、その話が本当なら、どちらにもやっぱり桃華ちゃんは当てはまるのでは……?」

 

響子「…………!」

 

まゆ「当面の敵が、ロリ……?」

 

響子「いやでもそんな、いくらなんでもPさんがあんな子に欲情するはずが」

 

まゆ「いいえ、まゆは見たの。疲れきったPさんに、桃華ちゃんが膝枕してあげていたのを。あの時はなんとも思わなかったけど……」

 

響子「なんとか思ってくださいよ」

 

まゆ「櫻井桃華……恐ろしい子……っ!!」

 

響子「少女漫画脳の塊め。で、話戻るんですけど、さっきホワイトボードで誰見て嫌がってたんですか?」

 

まゆ「なぜ」

 

響子「苦手な人を把握しておいたら後々有利かなと。いいじゃないですか、私も教えたんですし〜」

 

まゆ「どうせ数いる内の1人でしょう」

 

響子「何のことカナー☆」

 

まゆ「佐藤心」

 

響子「うわっ」

 

まゆ「でしょ?」

 

響子「あの金髪と同じく嫌いではないけど中々どうして鬱陶しくていらっしゃる」

 

まゆ「見てる分には悪くないんだけれど」

 

響子「見てるとじゃれついて来ますよ」

 

まゆ「動物かな?」

 

響子「ウサギさんの方が好きですね」

 

まゆ「あの笑顔ほっこりする」

 

響子「あへぁ〜♡ って感じの」

 

まゆ「それそれ」

 

響子「はー、おっぱいほしい」

 

まゆ「ぶっ殺すぞてめぇ」

 

響子「まあまあ聞いてくださいよ。Pさんロリコン説と共におっぱい星人説があってですね」

 

まゆ「あーあー聞こえない聞こえなーい」

 

響子「なんでも噂によると、Pさん秘蔵おっぱいコレクションがこの事務所のどこかにあるとかなんとか」

 

まゆ「見たことあるの?」

 

響子「現在調査中です」

 

まゆ「もっと確証のある話をちょうだい」

 

響子「あったところで教えると思いますー?」

 

まゆ「思わない。右に同じ」

 

響子(ほんとはPさんが私のお洋服の匂いをひっそり嗅いでたことがあるけど)

 

まゆ(お仕事中まゆのロッカーに忍び込んで上着の匂い嗅がれたことがあるけど)

 

響子・まゆ((コイツには絶対教えないでおこう))

 

響子「で、おっぱい星人説の続きなんですけど」

 

まゆ「まだするの……」

 

響子「違うんですよ、おっぱい星人イコール巨乳好きってわけじゃないんです。まゆさんのような控えめなおっぱいの写真集も持ってましたし」

 

まゆ「ほんと?」

 

響子「嘘です♡」

 

まゆ「…………」

 

響子「はじめにおっぱいほしいって言ったじゃないですか。現実そんなに甘くないですよ」

 

まゆ「何が言いたいの」

 

響子「よく聞いてくれました! じゃじゃーん、なんとここに、副作用が一切なく、10%の確率でおっぱいが大きくなる薬が」

 

まゆ「怪しすぎて逆に清々しい」

 

響子「噂によれば姫川友紀さんや城ヶ崎美嘉さんはアイドル登録後にこれを飲んで逆詐称と呼ばれる大きさになったとかなってないとか」

 

まゆ「それを聞くと若干真実味があるのがいやらしいけど……一ノ瀬志希さんが作った薬じゃなければ飲んでみても」

 

響子「志希さんです」

 

まゆ「はい。響子ちゃん初詣行った?」

 

響子「あー、そういえば今年は行ってないですね。P.C.Sでお泊まり会してました」

 

まゆ「いいですねー仲良しユニット(笑)」

 

響子「何で笑うんですか。二人ともめっちゃ可愛いんですよ」

 

まゆ「知ってる。あなたにおちんちん付いてたらオカズにしてるでしょうね」

 

響子「おち……///」

 

まゆ「それで、茄子さんと初詣に行ったんだけど。あ、特に選んだとかじゃなくてお仕事一緒だったから」

 

響子「理由はいいんですよ別に。それで?」

 

まゆ「ほんとあの人ずるい。生きてる時点人生有利とかずるい」

 

響子「あー」

 

まゆ「大吉はもう当然として、あの人混みの中で1回しか人にぶつからないし、その1回も親とはぐれた子どもで、ぶつかったおかげで足を止めたから探してた親と合流したり、たまたま昼食に入ったお店で10万人来場者記念って無料になったりetcetc……」

 

響子「しかもおっぱいが大きい」

 

まゆ「あああ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

響子「生きていることが何よりの幸運らしい」

 

まゆ「じゃあ10cmくらいおっぱい分けてくれてもバチは当たりませんよねぇ、うふふふふふ♡」

 

響子「まゆさん結構おっぱいおっきく描かれてること多くないですか?」

 

まゆ「うるさい」

 

響子「ぷぷ」

 

まゆ「P.C.S最小」

 

響子「誤差です」

 

まゆ「それよりあまりおっぱいの話はいけませんよ。ピンキリの黄色一部に何をやられるか」

 

響子「黄色。ああ、パッション」

 

まゆ「最大から最小まで総ナメだから」

 

響子「私より年上でみりあちゃん以下がいるわけないですよねぇ(笑)」

 

まゆ「下ばかりでなくたまには上を見ては?」

 

響子「私楓さんと蘭子ちゃんと同じサイズですから!」

 

まゆ「大きそうな人を出してイメージを誤魔化さないの」

 

響子「てへ☆」

 

まゆ「佐藤心が過ぎってイラッとする」

 

響子「オイ☆ 害悪みたいな言い方やめろよ☆」

 

まゆ「うっざ」

 

響子「あの人私のアイデンティティーに踏み込んで来てるのは許されません」

 

まゆ「アイデンティティー」

 

響子「家事全般は私の領域なんです」

 

まゆ「ああ、裁縫の話。人生経験の差でしょう」

 

響子「裁縫も私がやりますー。フリフリ衣装だってがんばれば作れますー」

 

まゆ「まゆもそれくらいは」

 

響子「は〜〜〜〜??? 普通の女の子は裁縫なんてできないんですけど〜〜〜〜???」

 

まゆ「この間新曲の時にやたらと普通連呼してたのは誰でしたっけ」

 

響子「卯月ちゃんと美穂ちゃんでしょ?」

 

まゆ「P.C.Sは教室の似合う普通の女の子のユニットですけど……。ときには魔法の力で、お城の似合う素敵なお姫様にもなっちゃいます。これからも、あなたの魔法をかけつづけてくださいね♪」

 

響子「実はまゆさん私のこと大好きですよね」

 

まゆ「大好きですけど」

 

響子「私もですよ♡」

 

まゆ「きっも」

 

響子「じゃあ私そろそろお仕事なので」

 

まゆ「佐藤心と鉢合わせしてもめんどくさいしまゆも早めにお仕事場行くとしましょうか……」

 

響子「帰ったらデレポ投稿するんでお家来てくださいね」

 

まゆ「めんどくさい」

 

響子「じゃあ待ってますから♡」

 

まゆ「はいはい……」

 

 

 

 



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小早川と姫川。

 とある飲食店。

 

 

友紀「ねーねー」

 

紗枝「んー」

 

友紀「幸子ちゃんはー?」

 

紗枝「んー……。あ、遅れるみたいどす。今ライン来はった」

 

友紀「そっかー」

 

紗枝「先つまみとビールだけ頼んどいてもええですよ? ウチに絡まんなら」

 

友紀「やだよ。紗枝ちゃん本気で嫌がるじゃん。酔いが冷めるんだよ」

 

紗枝「当然どす。臭いしウザイし」

 

友紀「ちょっとは年上を敬ってよねー。幸子ちゃんなんてどんな酔い方しても何だかんだ付き合ってくれるのに」

 

紗枝「あの子は特別ええ子やから。ついでにウザ絡みの年上はこれ以上堪忍」

 

友紀「それ周子ちゃんの話?」

 

紗枝「真っ向から付き合うてたら禿げますホンマ」

 

友紀「紗枝ちゃんが禿げたら長所が1個消えるね(笑)」

 

紗枝「あ?」

 

友紀「どうしようなー。ビールはいらないけど、時間つぶしにおつまみだけ頼んどこかな」

 

紗枝「なあ、お酒って美味しいん?」

 

友紀「お酒じゃなくてビール」

 

紗枝「飲まんウチらには一緒どす」

 

友紀「パチンコとスロットぐらい違うよ」

 

紗枝「あーはいはい。じゃあビールっておいしいんですかー」

 

友紀「単品の話なら、まあ美味しくはないよね。球場で飲むビールは最高だけど。やっぱり雰囲気で飲むものかな」

 

紗枝「はあ」

 

友紀「そういう意味でも酔った後付き合ってくれる相手がいてこそなんだよ。いないならあたしはおとなしくお米食べてる」

 

紗枝「そういうもんどすか」

 

友紀「そういうもんどす。紗枝ちゃんも飲む?」

 

紗枝「犯罪沙汰はちょっと」

 

友紀「言うと思った。でも紗枝ちゃん強そうだなー」

 

紗枝「真相は神のみぞ知るところ。それかまた5年後な」

 

友紀「ちぇ」

 

紗枝「友紀はんは5年経っても気軽に会えそうでええわ〜」

 

友紀「お? それは仲のいいお友達宣言かな?」

 

紗枝「5年後も独り身やろなあ思て」

 

友紀「おっとこんなところに熱湯入りの湯のみが」

 

紗枝「おーこわいこわい」

 

友紀「――すいませーん。湯豆腐とまぐろのお刺身くださーい」 

 

紗枝「飲む気満々やん」

 

友紀「まぐろは紗枝ちゃんも食べるでしょ」

 

紗枝「貰うけど」

 

友紀「湯豆腐は最悪火消しときゃ後で付けてもらえるし」

 

紗枝「そういやこの前な、幸子はんに聞いたんよ」

 

友紀「うん」

 

紗枝「絶対やらなあかんなら世界秘湯探検とスカイダイビングどっちがええかて。なんて言うた思います?」

 

友紀「何でそんなこと聞いたんだか。んー。スカイダイビングじゃない? 慣れてそうだし」

 

紗枝「例えやらなくて良くっても用意されたことは全部やり遂げて見せますよ! なんたってボクはカワイイですから!!」

 

紗枝「て」

 

友紀「(笑)」

 

紗枝「あの子とおると飽きんけどカワイイって言葉の意味がたまに分からんくなります」

 

友紀「それ分かる」

 

紗枝「ウチと幸子はんやったらどっちが好き?」

 

友紀「幸子ちゃん」

 

紗枝「即答」

 

友紀「そりゃそうでしょ」

 

紗枝「じゃあ2人っきりとして、一緒におって楽しいのは?」

 

友紀「幸子ちゃん」

 

紗枝「即答」

 

友紀「相手が悪いよ」

 

紗枝「じゃあ気ぃ使わんで済むのは」

 

友紀「紗枝ちゃん」

 

紗枝「やんなぁ。短所が浮き彫り」

 

友紀「うん。カワイイしいい子だし一緒にいて楽しいけど」

 

紗枝・友紀「「めんどくさい」」

 

友紀「(笑)」

 

紗枝「めっちゃ笑うなぁ」

 

友紀「や、考えてる事は一緒なんだなあって思うとなんかね」

 

紗枝「せやなぁ。で、それも踏まえて好きなのは?」

 

友紀「幸子ちゃん」

 

紗枝「正解」

 

友紀「――あ、ありがとうございます、適当に並べといてください」

 

紗枝「…………」

 

友紀「あに」

 

紗枝「や、敬語使えるんやなって」

 

友紀「まぐろあげないよ」

 

紗枝「友紀はん大好き♡」

 

友紀「現金なヤツ。幸子ちゃんまだなの?」

 

紗枝「んー。まだ連絡来てへんとこ見ると長引いてんのかなあ」

 

友紀「ふーん。あ、ちょっと、直接わさびかけないでよ」

 

紗枝「何で。どうせ醤油に付けるんやし同じとちゃうん」

 

友紀「全然違うし。もう。付けたやつ食べていいからストップ」

 

紗枝「細か、うっざ」

 

友紀「紗枝ちゃんは知らないだろうけど、おつまみは結構高いんだから美味しく食べたいし」

 

紗枝「ふーん。うわっ、そんだけで4ケタ行きそう。っていうかビール頼んだら余裕で越えるわ……」

 

友紀「ね?」

 

紗枝「は〜。ウチの財布ならぶん殴ってるトコ」

 

友紀「ケチ。にしてもビール無いと湯豆腐あってもしょうがないか。火消しとこ」

 

紗枝「幸子はんが遅れるんは予想外やったしなぁ。今まで言い出しっぺの時は意地でも遅刻せんかったのに」

 

友紀「しょーがないけどね」

 

紗枝「あ、案外美味しい。Pはんの財布やしウチも何か頼もかな」

 

友紀「太るよ?」

 

紗枝「太らない体質なんです〜」

 

友紀「は?」

 

紗枝「うそうそ。そないな女おってたまるか」

 

友紀「紗枝ちゃんて運動音痴だよね」

 

紗枝「いきなり何よ」

 

友紀「いや、いつぞやのマッスルキャッスルのDVDが見つかったから見返してたんだけどさ」

 

紗枝「ああ……」

 

友紀「風船早割り対決と滑り台クイズ見る限り、杏ちゃんと同じレベルの運動量」

 

紗枝「やから何どすか」

 

友紀「いや? ただの嫌味」

 

紗枝「…………」

 

友紀「いっだ! 今脛蹴った!」

 

紗枝「自業自得」

 

友紀「そういうとこはまだまだ子どもなんだからもー」

 

紗枝「うっさいわ。――あ、ちょい待って。電話」

 

友紀「ん」

 

紗枝「うん、うん、あ、そうなん? んーん。ウチらおつまみ食べて時間つぶしてますさかい、ゆっくりで大丈夫どすー。はーい。ほなおきばりやすー」

 

友紀「幸子ちゃん?」

 

紗枝「ん。もうちょっとで終わるて。終わったらカワイさ振り切って超特急で向かうって」

 

友紀「何それ(笑)」

 

紗枝「さあ。なんやよーわからんけど、相変わらずカワイイ生き物やなあ」

 

友紀「ちなみに、あたしと幸子ちゃんならどっちが」

 

紗枝「幸子はん」

 

友紀「早いよ」

 

紗枝「どうせウチが聞いたこと聞いてくるんやろ」

 

友紀「そりゃそうだけど」

 

紗枝「……ああ。折角やしこの質問、幸子はんに投げてみよか」

 

友紀「お、Sだね〜♡」

 

紗枝「そもそも幸子はんのことやし、ウチらが対面してたらどっち座るか一瞬悩む思うんです」

 

友紀「だろうね。一瞬悩んでそっちかな」

 

紗枝「その心は?」

 

友紀「紗枝ちゃんよくうっざい泣き真似するし」

 

紗枝「お茶目やろ?」

 

友紀「アレであたふたするのなんて幸子ちゃんくらいだよ」

 

紗枝「それが見たて見たぁて……」

 

友紀「知ってる」

 

紗枝「――すいませーん、このふっくらぽてとお願いします〜」

 

友紀「あとビールも追加でー。あ、できればポテトと同時にお願いしますー」

 

紗枝「へー。そないなこと出来るん」

 

友紀「できるよー。勉強になったね?」

 

紗枝「よう言わんわ」

 

友紀「姫川友紀のー、使ったことない言葉大全集〜」

 

紗枝「ぱちぱち」

 

友紀「さぁ今週も始まりました姫川友紀の使った事ない言葉大全集! この番組は、世間一般には広まってるけど実際には使ったことのない言葉を紹介する番組となっております」

 

紗枝「そのまんま」

 

友紀「今回の言葉は〜……? これ! お花を摘んでまいります!」

 

紗枝「しかもいきなり下ネタ」

 

友紀「こんなこと言わないよね普通。20年生きてきてほんとに使う機会なんてなかったよ。紗枝ちゃんは?」

 

紗枝「まあ、つこたことはないなあ」

 

友紀「だよねー。はい今週はここまで! ではまた来週〜!」

 

紗枝「終わんのはっや」

 

友紀「さすがに飲食店で下はまずいかなって」

 

紗枝「一番奥の席ちゃうかったらぶん殴ってます」

 

友紀「良かったね気が利く女で!」

 

紗枝「アホくさ」

 

友紀「そういやこの前美嘉ちゃんを街で見かけたんだけどさ」

 

紗枝「どこの」

 

友紀「東京」

 

紗枝「広いわ」

 

友紀「なーんかきょろきょろしてるからさ、怪しいなーって思ってあとをつけたのね」

 

紗枝「声掛けたらええのに」

 

友紀「あの子も純粋組じゃん。粗野な扱いはできないよ」

 

紗枝「はー。結果だけ教えて」

 

友紀「露骨に興味ないの隠そ? なんのことはない映画館の中入ってってさ。どうせ暇だし……入口で出待ちしてたの」

 

紗枝「は? 2時間?」

 

友紀「うん」

 

紗枝「アホやん」

 

友紀「さすがに何にもなく突っ立ってんのも怪しまれると思ってベンチに腰掛けてはいたけどね。3往復してた掃除のおばちゃんと仲良くなっちゃった」

 

紗枝「……で?」

 

友紀「うん。キーホルダーをうっとりと眺めながら出てきて……女児向けアニメの映画だったってオチなんだけど」

 

紗枝「ふーん。笑いどころは?」

 

友紀「ないよ」

 

紗枝「声掛けたりは?」

 

友紀「してないよ」

 

紗枝「何やったんこの話……」

 

友紀「ただの時間つぶし。」

 

紗枝「――ん、おおきにー」

 

友紀「わーい。ありがとうございますー」

 

紗枝「莉嘉はんならともかく美嘉はんのそういう話あってもなー。元々ネタには困らんし」

 

友紀「そうなんだけどねー。女児向けアニメ見るんだなぁくらいにしか思わないか」

 

紗枝「ハズレってことやね」

 

友紀「ちぇ。ビールは来たけど、幸子ちゃんまだかなー」

 

紗枝「んー……。あ、もう近くまで来てるて。お迎え行こか」

 

友紀「さんせー」

 

紗枝「ちゃんと貴重品諸々持たなアカンよ」

 

友紀「はいはい分かってますよ紗枝先生」

 

紗枝「こんな教え子いらんわ」

 

友紀「うっさい。だーーー! 外さっむ!!!」

 

紗枝「冬の夜は流石冷えるわ……」

 

友紀「だねぇ……――あ、おーい! さーちこちゃーん!」

 

紗枝「うふふ、おばんどすー。待ってたんよー」

 

友紀「何で外にって、幸子ちゃんが来るのに出迎えない理由がある? ほらほら、早く入ろ!」

 

紗枝「なんやこの時期にしてはえろう汗だくやなぁ。走ってきはったん?」

 

友紀「うんうん、汗だくでもカワイイカワイイ。そんな謝らなくても、幸子ちゃん頑張ってくれたの分かってるからさ」

 

紗枝「せやなぁ、むしろ迎え来れんPはんにキレても誰も文句言わんよ」

 

友紀「でさー。汗拭きながらでいいから聞いて欲しいんだけどー」

 

紗枝「幸子はんは、ウチと」

 

友紀「あたしなら」

 

紗枝・友紀「「どっちの方が好き?」」

 

 

 

 



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鷹富士と依田。

 

 食堂

 

 

茄子「一説によると、私たちは人間じゃないのではと疑われているらしいのですよ」

 

芳乃「ほー」

 

茄子「なんでも曰く私は神様。芳乃ちゃんは神の遣い」

 

芳乃「ほー?」

 

茄子「つまり私の方が立場が上!」

 

芳乃「はー?」

 

茄子「芳乃ちゃん、ここに来る時お箸を忘れたので持ってきてください♡」

 

芳乃「……にょん」

 

茄子「え?」

 

芳乃「なんでもないのでしてー。わたくしのをお使いくだされー」

 

茄子「わあ、ありがとうございます。間接キスですね……///」

 

芳乃「それは予備なのでー」

 

茄子「いっつもご飯の度お箸を2セット持ってるんですか? もしかしてお馬鹿ですか?」

 

芳乃「ええー。わたくし以上の馬鹿がいつこうして現れるともしれないものですからー」

 

茄子「うふふ♡」

 

芳乃「いきなり隣に座ったかと思えば頭の悪い発言。毎度ご苦労様でしてー」

 

茄子「芳乃ちゃんは基本いい子だから、お姉さん暴言も許しちゃう。いただきまーす♡」

 

芳乃「目障りなのでー、どこかへ消えてくれると嬉しいのですがー」

 

茄子「あらあら。目に入れても痛くないと噂のカコさんを捕まえておいてこれはまた酷い台詞。よよよ」

 

芳乃「勝手に隣に座っただけなのでしてー。消えてくれないならわたくしの方がおいとまをー」

 

茄子「まあまあまあまあまあ♡ あまり怒ると、幸せを運んでくれる神様が怖がってしまいますよ」

 

芳乃「幸せは自分で探すものなのでー。はー。仕方ないのでしてー」

 

茄子「うふふ、芳乃ちゃん好きです。後でおっぱいを吸わせてあげますね」

 

芳乃「……」

 

茄子「あ、もしかして目障りっておっぱいのことでしたか?」

 

芳乃「……」

 

茄子「困りましたー。これは勝手に育ったものなのでカコさんにもどうしようもなくて」

 

芳乃「……」

 

茄子「まあまあまあまあまあ♡ 一緒に食べましょ? そろそろ冷めちゃいますよ〜」

 

芳乃「こんわろだれるわ……」

 

茄子「え?」

 

芳乃「なんでもないのでしてー」

 

茄子「今日の芳乃ちゃんのご飯は〜? お、オムライス! 庶民派ですね〜」

 

芳乃「……いけないのでー?」

 

茄子「いえいえまさかー。むしろ、じゃん! なんと私もオムライス! 偶然ですね〜、運命ですね〜〜!」

 

芳乃「半額せーる対象商品でしてー」

 

茄子「半額セールは2種類あるんですよ? 2種類+‪α‬で沢山種類があるのに同じ食べ物はやっぱり運命ですよ!」

 

芳乃「なるほどー。どうしてもそういう方向性がいいとー」

 

茄子「くんくん」

 

芳乃「?」

 

茄子「何かいい香りがしませんか?」

 

芳乃「ご飯の香りではー?」

 

茄子「いえ、これは……くんくんくん」

 

芳乃「近いのですがー」

 

茄子「芳乃ちゃんの香りですね!!」

 

芳乃「はー???」

 

茄子「髪の毛からふんわりと香る優しい香り……これでご飯3杯余裕です私」

 

芳乃「絶句しておりますー」

 

茄子「私もいい匂いだなんてそんなーもー正直者なんですからー♡」

 

芳乃「正直どん引きしておりますー」

 

茄子「カコさん大好きでしてー♡ って言ってみて?」

 

芳乃「嫌ですがー」

 

茄子「お願い♡」

 

芳乃「お断りしますー」

 

茄子「オムライス半分あげますから!」

 

芳乃「断固拒否しますー」

 

茄子「じゃあ百歩譲って、カコさん愛しておりますー♡ で!」

 

芳乃「どこをどう譲ったのか教えてくれるのなら何時間でもお話に付き合いますがー」

 

茄子「えっ、何時間でもお話に付き合ってくれるんですか!」

 

芳乃「とても都合の良い耳のようで尊敬致しますー」

 

茄子「尊敬もしてくれるなんて……お姉さん感激で泣いちゃいそうです……」

 

芳乃「もいでもー?」

 

茄子「痛いことは駄目です」

 

芳乃「ちゃんと聞こえているではありませぬかー」

 

茄子「当然です。つんぼじゃないんですよ? 酷いです芳乃ちゃん」

 

芳乃「嫌いになったのであれば離れてもらってもー」

 

茄子「ええ。もっと好きになりました」

 

芳乃「……」

 

茄子「アイドルがしちゃいけない顔してますよ?」

 

芳乃「茄子さんはあいどるが使ってはいけない言葉をさんざ使っていますねー」

 

茄子「例えば?」

 

芳乃「清楚なわたくしの口からはとてもとてもー」

 

茄子「清楚(笑)」

 

芳乃「ごちそうさまでしてー。では」

 

茄子「まあまあまあまあまあ♡」

 

芳乃「わたくしが席を立つ度に言うつもりでしてー? 一緒にご飯はたべましたがー」

 

茄子「まだ私が食べ終わってませんから! 全員が食べ終わるまでが給食でしょう?」

 

芳乃「小学生の頃はー、好き嫌いの激しい学友が放課後まで残されていましたねー」

 

茄子「あー、ありましたねー、懐かしいなー」

 

芳乃「開始が遅い分の居残りにまで付き合う義理はありませぬ故わたくしはこれでー」

 

茄子「今離れたら私この場で大泣きしますよ?」

 

芳乃「ほー」

 

茄子「芳乃ちゃんが相手してくれないーって食堂中に聞こえる声で喚き散らします」

 

芳乃「それはマジで勘弁して欲しいのでして。はーーーーー」

 

茄子「うふふ、やっぱり芳乃ちゃん好きです♡」

 

芳乃「わたくしは嫌いになりそうですがー」

 

茄子「芳乃ちゃん芳乃ちゃん。お食事中と入浴中は心が開放的になるそうですよ」

 

芳乃「ほー」

 

茄子「だから私、今なら喋らなくていいことも喋っちゃうかも?」

 

芳乃「なるほどー」

 

茄子「……」

 

芳乃「……」

 

茄子「……」

 

芳乃「……」

 

茄子「何かないの?」

 

芳乃「ありませんねー」

 

茄子「そんなー。お姉さん芳乃ちゃんの力になってあげたいのに」

 

芳乃「そうは言われましてもー。……あ。ならば浮かぶまで考えますので少々お待ちいただければー」

 

茄子「はーい♡」

 

芳乃「……」

 

茄子「私でも人の心は読めませんけど、芳乃ちゃんが時間稼ぎに黙ろうとしてるだけってことはお見通しですよ♡」

 

芳乃「ちっ」

 

茄子「今舌打ちしました?」

 

芳乃「残念でしてー」

 

茄子「今舌打ちしました?」

 

芳乃「早く食べ終えてくださると嬉しいのですがー」

 

茄子「じゃあ応援してください」

 

芳乃「おうえんー?」

 

茄子「そーれ勃起♡ 勃起♡ ってあるじゃないですか。あんな感じに」

 

芳乃「そういったものがあいどるらしからぬ言動なのですがー」

 

茄子「あー、なるほど!」

 

芳乃「今気付いたという反応はやめていただけるとー」

 

茄子「芳乃ちゃんは天才ですね!」

 

芳乃「はー」

 

茄子「芳乃ちゃんは可愛いですね!」

 

芳乃「なるほどー」

 

茄子「いよっ! 日本一!」

 

芳乃「はよご飯せんかー」

 

茄子「はい」

 

芳乃「まったくー」

 

茄子「ご飯と言えば芳乃ちゃん、この前クラリスさんと食レポの番組に出たんですね」

 

芳乃「まだ話題が尽きぬのですかー」

 

茄子「言ったでしょう? ご飯とお風呂は、心を開放的にさせるんです」

 

芳乃「はいはいもうわかりましたのでー」

 

茄子「クラリスさんってああ見えて情熱的にご飯を食べられるんですね。幸せを思いっきり楽しむ人に悪い人はいませんよ〜」

 

芳乃「ちなみに何を召し上がったのでー?」

 

茄子「何というか、商店街の食べ歩きです〜」

 

芳乃「ふむー」

 

茄子「お店に入って軽く一品だったり、出店に並ぶ揚げ物やデザートの類を気の向くままに食べてみたり……あ、私は途中でギブアップしたので見てただけなんですけど」

 

芳乃「話を聞くだけで胃もたれが起こりそうですー……」

 

茄子「でもその胃もたれを吹き飛ばしてくれる笑顔でしたよー、何を食べてもずっと笑顔で」

 

芳乃「ほほー。それで? 何が言いたいのでー?」

 

茄子「芳乃ちゃんも可愛い笑顔をもっと私に見せてください♡」

 

芳乃「ならばわたくしに笑顔をくださる話題を提供してくだされー」

 

茄子「うーん。あ、なら私のかくし芸を」

 

芳乃「却下でしてー」

 

茄子「じゃあどうすればいいんですか!」

 

芳乃「それを自分で考えるのですー。ふぁいとー」

 

茄子「むむむー。あ、芳乃ちゃん芳乃ちゃん。」

 

芳乃「なんですかー」

 

茄子「そうでした。今更ですが話し掛けたのには理由があったんですよ」

 

芳乃「今更ですねー」

 

茄子「ほんとですほんとです。あの、前の衣装の時に使った扇子を無くしてしまいまして。返さないといけないのですけど……」

 

芳乃「ただの管理不足ではー? それはぷろ失格でしてー」

 

茄子「返す言葉もありません」

 

芳乃「はー」

 

茄子「ね、ね?」

 

芳乃「……おそらくですがー、事務所の2階に気配を感じますー」

 

茄子「ほうほう」

 

芳乃「……茄子さんー、事務所の隣のろっかーはどなたのものですかー?」

 

茄子「んー。ほたるちゃんですね」

 

芳乃「ではー、おそらくその中にー。入れ違えたのでしょうかー。……ですが少し気配がー……」

 

茄子「なるほどなるほど。あ、少し待ってくださいね」

 

芳乃「……?」

 

茄子「あ、もしもし? うん、ほたるちゃんのロッカーの中とかは? ……ほんと? うふふ、ええ。さすがですねー」

 

芳乃「あのー」

 

茄子「はい、はーい、またねー。ばいばーい♡」

 

芳乃「あの、茄子さんー?」

 

茄子「あ、あったみたいです。ごめんね芳乃ちゃん。ほんとは私のじゃなくて、智絵里ちゃんの四つ葉の髪飾りが無くなってたの」

 

芳乃「ほー?」

 

茄子「多分後で本人からお礼が来ると思いますけど、お礼言っといてって。ありがとうございます♡」

 

芳乃「いえー。ですがなぜまたそんなよくわからない嘘をー」

 

茄子「茄子さんのおちゃめです♡ ごちそうさまでしたー」

 

芳乃「……ようやくですかー」

 

茄子「これからどう過ごすんですか?」

 

芳乃「一休みしてから、自主れっすんでもしようかとー」

 

茄子「わ、同じですね♡ 一緒にやりませんか?」

 

芳乃「……断っても着いて来るのでしょー」

 

茄子「はい♡」

 

芳乃「勝手にしてくださいー」

 

茄子「はーい、勝手にしま〜す♡」

 

芳乃「全くもー、はー。……ふふ」

 

茄子「あっ、今笑いました???」

 

芳乃「いいえー。」

 

茄子「笑いましたよねー? ねー???」

 

芳乃「笑ってませぬがー」

 

茄子「嘘つきは泥棒の始まりですよ!」

 

芳乃「先に嘘をついたのは茄子さんでしてー」

 

茄子「もー、芳乃ちゃ〜ん! 待ってくださ〜い♡」

 

 

 

 



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妹と大槻。

 

 城ヶ崎家・莉嘉寝室

 

 

莉嘉「ねー金髪ー」

 

唯「どったの金髪」

 

莉嘉「無言でウチ乗り込んできたんだし、ちょっとしてほしいことがあるんだけど」

 

唯「暇だったからつい。いーよー」

 

莉嘉「んじゃこれ。ゲーム付けて」

 

唯「あにこれ」

 

莉嘉「ギャルゲー」

 

唯「は?」

 

莉嘉「女の子と恋愛するゲーム」

 

唯「ふーん。ばっかじゃね」

 

莉嘉「ギャルみたいなこと言わずに」

 

唯「ユイがギャルじゃなかったら誰がギャルなんよ。莉嘉ちゃんやったん?」

 

莉嘉「やった」

 

唯「マジか(笑)はー。何か最近CMで見るみたいな絵だね」

 

莉嘉「とりあえず文句言わずにやってよ」

 

唯「はいはーい。うわ、ユイみたいな娘出てきた」

 

莉嘉「この子は文香ちゃんみたいでしょ」

 

唯「この娘はまゆちゃんっぽいし」

 

莉嘉「美優さんみたいな人もいるよー」

 

唯「なんなのこのゲーム」

 

莉嘉「シンコレ☆シンデレラガールズコレクション!」

 

唯「は?」

 

莉嘉「シンコレ☆シンデレラガールズコレクション!」

 

唯「繰り返せとは言ってない」

 

莉嘉「黙ってやれ」

 

唯「何か選択肢出てきたケド?」

 

莉嘉「唯ちゃんこの女の子たちの中だったら誰が好き?」

 

唯「この文香っぽい娘」

 

莉嘉「ミーハー(笑)んじゃこっち」

 

唯「あ、オート機能あんじゃん。押すのめんどかったんだよね」

 

莉嘉「別にいいけど、まだ共通ルートだからオートにするとあと7〜8時間はかかるよ?」

 

唯「ウケる。ばっかじゃねーのこのゲーム。まあいいや、泊まりでやるよ」

 

莉嘉「そこまでしなくても」

 

唯「案外オモロイし」

 

莉嘉「パジャマとかは?」

 

唯「ない」

 

莉嘉「お姉ちゃんのでいっか」

 

唯「そういや美嘉ちゃんは?」

 

莉嘉「おしごとー」

 

唯「さすがに何時間もボーッと眺めてるのはお腹すきそう」

 

莉嘉「分かる」

 

唯「お菓子ある?」

 

莉嘉「お姉ちゃんのポテチならあるよ」

 

唯「ユイ飴ちゃんが食べたいなー」

 

莉嘉「文句言わない」

 

唯「ちぇー」

 

莉嘉「自分のこと名前で呼ぶ女とかナイよね」

 

唯「趣味が珍しい虫集めってクソガキ感出てるよねー」

 

莉嘉「趣味はシール」

 

唯「なんでカブトムシなんか好きなの?」

 

莉嘉「カッコイイじゃん」

 

唯「なんで貧乳なの?」

 

莉嘉「12歳に胸求めるとかヤバくない?」

 

唯「みりあちゃんのがあるよ」

 

莉嘉「上には上がいるし」

 

唯「逃げた」

 

莉嘉「唯ちゃんは体で弄れる部分ないもん」

 

唯「我ながらカンペキに近いプロポーションっしょ?」

 

莉嘉「その分頭にはなんも詰まってないけど」

 

唯「今生きれてるからいーの」

 

莉嘉「正直者ギャルの中で一番上手く生きてけるのアタシだと思ってるから」

 

唯「その心は?」

 

莉嘉「こーじょーしん。てきおーのーりょく」

 

唯「バカじゃん?」

 

莉嘉「少なくとも唯ちゃんよりは賢くなれるよ」

 

唯「あ、何か歌流れた」

 

莉嘉「共通ルート終わりだね。この歌が終わったら個別ルートに入るよ」

 

唯「そのルートって何」

 

莉嘉「そのままの意味。察しろバカ」

 

唯「へいへい。おー。日付け変更時の背景が変わった」

 

莉嘉「よく見てるじゃん。褒めてあげる☆ この娘のコレ綺麗だよねー」

 

唯「古本屋店主の一人娘……お客に恋しちゃ駄目でしょ」

 

莉嘉「出会いなんてどこに転がってるか分かんないってこの娘も言ってるから」

 

唯「……成程、この本の通りでした。半信半疑で読み進めていた恋愛小説も、こうして実体験を挟めば立派なハウトゥー本……」

 

唯「失礼しました……。出会いとは、一期一会。本の虫でしかなかった私に、1日の楽しみを与えてくださったのは……あなたですから……」

 

莉嘉「めっちゃ覚えてる(笑)」

 

唯「んでもさ、もう告白して相思相愛になっちゃったけど、こっからすることあんの? 目的叶っちゃった臭くない?」

 

莉嘉「それだけならアタシわざわざ勧めないし。このゲームは、泣きゲーに分類されるんだよ」

 

唯「泣きゲー」

 

莉嘉「んじゃ休憩。お風呂行こ?」

 

唯「ほーい」

 

 城ヶ崎家・浴槽

 

唯「うっひ〜〜〜……♡」

 

莉嘉「は、あ〜〜〜……♡」

 

唯「裸の付き合いってやつだねー」

 

莉嘉「……」

 

唯「おん?」

 

莉嘉「……誰かとお風呂入る度いっつも思うんだけど、この入浴シーンをSNSにアップしたらめっちゃパズる……」

 

唯「っつーか燃える」

 

莉嘉「炎上商法?」

 

唯「似たようなもんじゃね」

 

莉嘉「自撮りなんて9割○られる為に存在するんだからいーじゃん」

 

唯「(笑)」

 

莉嘉「児ポかな」

 

唯「児ポて。裏垢でも作れば?」

 

莉嘉「ネットストーカーとか怖い」

 

唯「裏垢って何って聞けよ。知ってんのかよ」

 

莉嘉「JSで処女卒業する時代だよ。ツイッターやってりゃ誰でも知ってる」

 

唯「美嘉ちゃんは知ってると思う?」

 

莉嘉「………………」

 

唯「だよね。は〜、広いお風呂きもちー♡」

 

莉嘉「だからって足伸ばすとアタシが狭いんだけど」

 

唯「いーじゃーん、ユイん家より広いんだもーん♡」

 

莉嘉「痛い痛い、足当たってる当たってる」

 

唯「えへへ、うりうりうり〜☆」

 

莉嘉「殺す」

 

唯「殺す……」

 

莉嘉「唯ちゃん身長いくつ?」

 

唯「ひゃくごじゅー…………真ん中くらい?」

 

莉嘉「プロフ登録したでしょ、覚えといてよ。……まあ大丈夫かな。彼シャツみたいになると思うけど」

 

唯「ああパジャマの話。何でもいいよー」

 

莉嘉「じゃあ裸ね」

 

唯「風邪」

 

莉嘉「バカはひかない」

 

唯「この風呂ギャルの匂いが染み付いてる」

 

莉嘉「なんかエロいねその台詞」

 

唯「?????」

 

莉嘉「ごめんギャルゲーのやりすぎで」

 

唯「こっわ」

 

莉嘉「あ、シャンプーそれ使って」

 

唯「ほーい。そういや入浴シーンあったよね。あの時はユイみたいな子が後ろから胸揉みしだかれてたケド」

 

莉嘉「揉む?」

 

唯「殺す」

 

莉嘉「殺す……」

 

唯「年下の友達とお風呂一緒に入るってのも変な感じだよー?」

 

莉嘉「ふーん」

 

唯「交代」

 

莉嘉「あ、髪の毛洗って」

 

唯「ウソやろ」

 

莉嘉「マジ」

 

唯「背中にユイのおっきなおっぱい当てててあげるねー♡」

 

莉嘉「殺す」

 

唯「殺す……」

 

莉嘉「シャンプー目入ったら痛いじゃん」

 

唯「はいはい……痒いところはございませんかー」

 

莉嘉「んー」

 

唯「ついでに背中も流してあげるねー」

 

莉嘉「んー」

 

唯「ついでに前も痛い痛い痛い!!」

 

莉嘉「殺す」

 

唯「それは抓るって言うんだよ!」

 

莉嘉「ぺっ」

 

唯「もう。はいザバー」

 

莉嘉「っぷう。よし出よ!」

 

唯「先出てていーよー。唯もうちょっと暖まるー」

 

莉嘉「おっけ。唯ちゃんの脱ぎたてパンツメルカリっとくね」

 

唯「殺す」

 

莉嘉「殺す……」

 

 城ヶ崎家・莉嘉寝室

 

唯「おまたせー。美嘉ちゃんが帰ってきてたからお話しちゃってた」

 

莉嘉「そなの。唯ちゃん風呂上がりでもふわふわなんだねー」

 

唯「髪? これ自毛だし」

 

莉嘉「乾けばボリューム出るとかずっるい」

 

唯「そう言われても」

 

莉嘉「続きやろやろ」

 

唯「ほいよー」

 

莉嘉「コンシューマーされたギャルゲーってのはね、基本的に付き合ってからが本番なんだよ」

 

唯「コン……?」

 

莉嘉「元々は基本PCゲームで、一般的な名称はエロゲーなんだけど、それから成人向け要素を排除して新システムなり新キャラなり新ストーリーなりを突っ込んだのがギャルゲーって言うんだ」

 

唯「莉嘉ちゃんオタクみたい」

 

莉嘉「全部このゲームが悪い」

 

唯「こっわ」

 

莉嘉「とにかく、こっからは更に物語が発展し続けるよ」

 

唯「おー、新キャラがまだ出てくるねー」

 

莉嘉「物語の深みを出してくれるルート専用サブキャラクター。時にはおじいちゃんから時には子ども……」

 

唯「え……文香ちゃん(仮名)この街からいなくなっちゃうの? 昨日まであんなに仲良しだったのに!」

 

莉嘉「そして明かされるヒロインの新事実……。主人公は果たして彼女を救うことができるのか!」

 

唯「そろそろ鬱陶しいから黙れ」

 

莉嘉「はい」

 

唯「そういや選択肢でなくなったね」

 

莉嘉「ゲームにもよるけど、ルートに入った後は選択しなくなったりするね。読んでけばエンディングに直行してくみたいな」

 

唯「それゲームとしてどうなの」

 

莉嘉「目つぶっといて」

 

唯「……」

 

莉嘉「……」

 

唯「…………っ」

 

莉嘉「はいティッシュ」

 

唯「………………っ、〜〜っ」

 

莉嘉「………………」

 

唯「……っ、は……! ぐす、う……ちーん!!」

 

莉嘉「……」

 

唯「う、うう……っ! 良かったね……良かったね、文香ちゃん……! 2人とも……っ!」

 

莉嘉「ね? 面白かったでしょ?」

 

唯「待って……余韻に浸らせて……」

 

莉嘉(うわぁ)

 

唯「ずずず……。は〜〜〜……。クライマックスにかかる曲良すぎだよ……」

 

莉嘉「分かる」

 

莉嘉(分かる)

 

唯「眠りながら本読んでるシーン見た時は、変な子だなぁって思っただけだったのに……そんな秘密があったなんて……」

 

莉嘉「分かる」

 

莉嘉(分かる)

 

唯「過去の幻影に囚われる文香ちゃんを救う為にさん付けから呼び捨てになる瞬間、鳥肌立ったもん……」

 

莉嘉「分かる」

 

莉嘉(分かる)

 

唯「なんかね、そうやって適当に肯定してもらうだけでも嬉しくなるの」

 

莉嘉「分かる」

 

莉嘉(分かる)

 

唯「はあ〜〜〜〜〜………………」

 

莉嘉「?」

 

唯「………………」

 

莉嘉「唯ちゃん?」

 

唯「とっても……ほんとにとっても面白くてさ、泣いちゃったんだけどさ」

 

莉嘉「うん」

 

唯「タイトル画面に戻ったら……ああ、終わったんだなぁって……虚無感が……」

 

莉嘉(うわあどっぷり)

 

唯「ふー……。んで、これ絶対終わるまで聞くまいと思ってたんだけどさ」

 

莉嘉「うん」

 

唯「何で名前の欄、『城ヶ崎美嘉』だったの」

 

莉嘉「お姉ちゃんのゲームだから」

 

唯「姉」

 

莉嘉「実はその数年後を舞台に描かれた、シンコレ☆シンデレラガールズコレクションⅡと、更にそこから数十年先の未来が描かれた、シンコレ☆シンデレラガールズコレクションⅢがあるよ」

 

唯「ちなみにそれは」

 

莉嘉「お姉ちゃんのゲーム。いつだったかお部屋入った時隅っこに隠れてたの見つけちゃった」

 

唯「ナイス美嘉ちゃん!」

 

莉嘉「ねえねえ、ギャルゲーやる前の自分と会ったらどうする?」

 

唯「人生損してるって伝える!」

 

莉嘉「だよね!!」

 

唯「とりあえず、残りの娘たちも攻略してこっか♡」

 

莉嘉「わーい♡」

 

唯「……あ。ユイが帰る時、ゲーム機と一緒に全部貸してくれると嬉しい」

 

莉嘉「あ、うん」

 

莉嘉(どっぷりだなあ)

 

 

 

 



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神谷と神崎。

 

 レッスン場

 

 

奈緒「あたしのアイデンティティーが奪われている気がする」

 

蘭子「?」

 

奈緒「何でもない。お疲れ様、蘭子」

 

蘭子「うむ、闇に飲まれよっ」

 

奈緒「そのキャラ辛くない?」

 

蘭子「まあ」

 

奈緒「だよな」

 

蘭子「でも、ゴスロリ衣装もこの髪型も好きですし」

 

奈緒「見た目はいいんだよ見た目は。凝ってるしあたしも好きだから」

 

蘭子「わ、わたしも奈緒ちゃんスキ……」

 

奈緒「何故カタコト」

 

蘭子「言い慣れてなくって」

 

奈緒「愛してるぜ、蘭子」

 

蘭子「はう……(笑)」

 

奈緒「口角が上がってる」

 

蘭子「草生えました」

 

奈緒「ネットスラング使うな馬鹿」

 

蘭子「馬鹿」

 

奈緒「にしてもジャージはともかくTシャツにその髪は恐ろしくアンバランスだよな」

 

蘭子「可愛いのに」

 

奈緒「似合わねえ」

 

蘭子「は?」

 

奈緒「あ?」

 

蘭子「できるだけ外では解きたくないので」

 

奈緒「ふーん」

 

蘭子「ポリシーです」

 

奈緒「あたしはもっと長いドリルの方が好きかな」

 

蘭子「ドリルって」

 

奈緒「ドリルだろ」

 

蘭子「まあ」

 

奈緒「顔を埋めたくなるみたいな」

 

蘭子「……」

 

奈緒「人の頭を見るな」

 

蘭子「そう言われても」

 

奈緒「女の髪は命の次に大切なんだぞ」

 

蘭子「みんながみんなそういう訳でもないですよ」

 

奈緒「例えば?」

 

蘭子「文香さんとか」

 

奈緒「あー……」

 

蘭子「あの人休日前は髪の毛乾かさず寝るんです」

 

奈緒「何で知ってんの」

 

蘭子「たまに泊まりに行くので」

 

奈緒「仲良しじゃねーか」

 

蘭子「仲良くないとは一言も」

 

奈緒「ふーん」

 

蘭子「寝癖立たないらしいんです」

 

奈緒「キレそう」

 

蘭子「(笑)」

 

奈緒「は?」

 

蘭子「あ?」

 

奈緒「夏はマジで髪の毛ばっさり行きたくなる」

 

蘭子「ボサボサになるし?」

 

奈緒「も、あるけど。何より暑い」

 

蘭子「わたしも夏は苦手かなぁ」

 

奈緒「日傘射してるしな」

 

蘭子「服」

 

奈緒「アレはないわ」

 

蘭子「夏服もあるよ?」

 

奈緒「ノースリーブ」

 

蘭子「半袖」

 

奈緒「普通か」

 

蘭子「駄目なの」

 

奈緒「駄目。面白いカッコしてくれ」

 

蘭子「パワハラですよ」

 

奈緒「胸触ってセクハラにする」

 

蘭子「罪は重複しますよ」

 

奈緒「同性ならほら」

 

蘭子「ほらと言われても」

 

奈緒「しっかし厨二病かあ、懐かしいなあ」

 

蘭子「奈緒ちゃんも?」

 

奈緒「そりゃあるって。ただ、基本的に見てるアニメに影響されやすい」

 

蘭子「掘り下げたら苦しむやつですか」

 

奈緒「死ぬ」

 

蘭子「聞かせて♡」

 

奈緒「あたしを殺す気か」

 

蘭子「ふふふ、我が手ずから冥府に誘ってしんぜよう……」

 

奈緒「なるほど、いざとなったら心中してくれると」

 

蘭子「違う!!」

 

奈緒「……あたしのは、普通じゃ聞こえないものが聞こえる系のアレだった」

 

蘭子「小梅ちゃん?」

 

奈緒「アレはガチのヤツだろ。あたしに霊感なんて1ミリもねえよ。……ただ、無機物にも魂が宿ってるから丁寧に扱えだの、その辺の草も生きてるんだから踏み散らかすなだの」

 

蘭子「うわ……。でもまあ、それくらいなら?」

 

奈緒「それくらいなら実際言ってる人もいるしセーフだよな。問題はこっから。あたしはそんな無機物や動植物と話せるって設定だった」

 

蘭子「うっわ(笑)」

 

奈緒「だから友達と普通に過ごしてる時も、おもむろに虚空に向けて話しかけてみたりうぐぉぉぉおおお」

 

蘭子「奈緒ちゃんが死んだ!」

 

奈緒「この人でなし!」

 

蘭子「で?」

 

奈緒「小学生の頃だったし割と徹底してたから運良く友達が無くなるとかはなかったんだけどさ。今思うと寒い目で見られてたんだろうな……」

 

蘭子「いたたたたたたた」

 

奈緒「お前程じゃない」

 

蘭子「は?」

 

奈緒「あ?」

 

蘭子「わたしのは作ってますし」

 

奈緒「Pと最初に会った時のは?」

 

蘭子「……」

 

奈緒「人のこと言えねーじゃねーか」

 

蘭子「でもわたしはまだマシな方だと思うんですよ」

 

奈緒「というと」

 

蘭子「幸子ちゃんと飛鳥ちゃん」

 

奈緒「いてててててててて」

 

蘭子「ね?」

 

奈緒「笑えないヤツらの名前を出すな」

 

蘭子「カワイイボク(笑)」

 

奈緒「あそこまで貫いてると逆に清々するよ」

 

蘭子「お家で誰かと2人っきりとかでもあの態度崩さないらしいですよ」

 

奈緒「素だからな」

 

蘭子「たしかに可愛いから多少は良いんですけど」

 

奈緒「数年後が楽しみだ」

 

蘭子「で、問題は」

 

奈緒「存在証明」

 

蘭子「アレは、素ですよ」

 

奈緒「きっつ」

 

蘭子「厨二病のやばい方と覚えてあげてください」

 

奈緒「サラッと自分の立場を変えるな」

 

蘭子「ちっ」

 

奈緒「今舌打ちした?」

 

蘭子「最近太ってきたかも」

 

奈緒「今舌打ちした?」

 

蘭子「飛鳥ちゃんのソロ曲の語りの部分あるじゃないですか」

 

奈緒「ああ」

 

蘭子「最初でなんて言ってるか分かりました?」

 

奈緒「分からん」

 

蘭子「君もそう思うだろ?」

 

奈緒「うるせえキスさせろ」

 

蘭子「?」

 

奈緒「いや」

 

蘭子「私は古き良き厨二病。飛鳥ちゃんのは最近の病気」

 

奈緒「どっちも病気だろ」

 

蘭子「お互い様なので」

 

奈緒「うるせ」

 

蘭子「ここーだけーのはーなし、そうよ?」

 

奈緒「ゆめのよーうなきもちをー」

 

蘭子「殴られるかと」

 

奈緒「いい歌だろ?」

 

蘭子「作詞さんに罪はないので」

 

奈緒「どういう意味だ貴様」

 

蘭子「貴様だなんて汚い言葉使わない方が身のためですよ?」

 

奈緒「マジレス」

 

蘭子「どこで誰が見てるか分かりませんから」

 

奈緒「煙草吸ってるわけじゃあるまいし」

 

蘭子「そういえば学校で同級生が煙草吸ってるとこ見たことあるんですよ」

 

奈緒「やんちゃだねえ」

 

蘭子「ああいう時ってどうすればいいんでしょうか」

 

奈緒「何真面目な話?」

 

蘭子「半分くらいは」

 

奈緒「パンツでも見せてやれば」

 

蘭子「真面目な話って言ってんだろ」

 

奈緒「んなこと言われても見たことないもんよ」

 

蘭子「つっかえ」

 

奈緒「スラングを使うな」

 

蘭子「比奈さんにもよく言われます」

 

奈緒「向こうはあたし以上にその辺厳しいと思うぞ」

 

蘭子「好き嫌い分かれますもんね」

 

奈緒「あたしは嫌いだ」

 

蘭子「草」

 

奈緒「殺すぞ」

 

蘭子「ファンの人が今の奈緒ちゃん見たら卒倒しそうです」

 

奈緒「お前が言うな」

 

蘭子「奈緒ちゃんいっつもリア充と絡んでますもんね」

 

奈緒「リア充って」

 

蘭子「ほら、凛さんと加蓮さん」

 

奈緒「正直入るユニットを間違えたと思ってる」

 

蘭子「痛さ爆発ダークイルミネイトへようこそ」

 

奈緒「お前飛鳥と接してる時いっつもそんな冷たいこと考えてんの?」

 

蘭子「まさか。大好きですよ」

 

奈緒「ふーん」

 

蘭子「特に痛いセリフにそれ以上の台詞が帰ってするのが、こう、胸の奥むずむずってなる感覚してたまらなくて」

 

奈緒「仲良さそうで何より」

 

蘭子「TPは?」

 

奈緒「トライアドは……今でこそ慣れたけど、昔は時折アイツらのリア充オーラに充てられて死にたくなってた」

 

蘭子「というと」

 

奈緒「だってアイツら、当たり前みたいな顔してスタバ行くんだぜ? カラオケでアニソン歌わないんだぜ? 人混みで大声出せるんだぜ?」

 

蘭子「むぅ〜〜りぃ〜〜〜」

 

奈緒「そういや凛はたまに思い出したかのように乃々のとこに行くな」

 

蘭子「多分あの子の行動が面白いんだと思います」

 

奈緒「カースト上位が下位にやたらと話しかけに行くあの心情か」

 

蘭子「分かる自分が嫌です」

 

奈緒「悪意のない方のな」

 

蘭子「悪意あっても嫌です」

 

奈緒「ギスギスしてない仲のいい事務所が売り文句だし」

 

蘭子「は?」

 

奈緒「あ?」

 

蘭子「は?」

 

奈緒「すまん」

 

蘭子「響子さんが怖いです」

 

奈緒「あたしはまゆ」

 

蘭子「あの2人に並ばれるとえもいえぬ恐怖を感じるので……」

 

奈緒「分かる」

 

蘭子「ああいうのをカースト上位って言うんですね」

 

奈緒「それは微妙な気もするけど……間違ってはないか」

 

蘭子「他には?」

 

奈緒「怖くはないけどすごいと思うのは茄子さんとか心さんとか……」

 

蘭子「その並びなら十時愛梨さんをぜひ」

 

奈緒「強メンタル……」

 

蘭子「この前智絵里ちゃんと藍子ちゃんが一緒にいるとこ見ました」

 

奈緒「うっわ」

 

蘭子「レッスン場への渡り廊下だったので1回外出直しました……」

 

奈緒「そうなる」

 

蘭子「無理」

 

奈緒「テレビではあんななのに」

 

蘭子「並んだからですよ……」

 

奈緒「混ぜるな危険」

 

蘭子「危険物ですか」

 

奈緒「似たようなもんだろ」

 

蘭子「まあでも単体で一番やばいのは」

 

奈緒・蘭子「宮本フレデリカ」

 

奈緒「だよなあ」

 

蘭子「ですよねえ」

 

奈緒「あたしも強い精神が欲しい」

 

蘭子「同感です」

 

奈緒「この前紗南から話聞いたんだけどさ」

 

蘭子「はい」

 

奈緒「ゲーム売り場に城ヶ崎姉妹がいたって」

 

蘭子「へー」

 

奈緒「しかもギャルゲーコーナーだって」

 

蘭子「なんと」

 

奈緒「やった事ある?」

 

蘭子「わたしRPG専なので」

 

奈緒「ただの食わず嫌いだろ」

 

蘭子「てへ」

 

奈緒「あの2人がゲームかあ」

 

蘭子「イメージないですよね」

 

奈緒「まー、実は姉の方はあたしとニチアサ実況してたりするから分からなくもないんだけどさ」

 

蘭子「近づかないでください」

 

奈緒「うるせえ。1回でいいからED見やがれ」

 

蘭子「勘弁してください」

 

奈緒「問題は妹だよなー」

 

蘭子「莉嘉ちゃんはお姉ちゃん至上主義なところがあるので、お姉ちゃんがハマってるものとりあえず全部やっちゃう傾向が」

 

奈緒「全部?」

 

蘭子「はい。その昔髪の毛もピンクにしてみたことがあるそうですよ」

 

奈緒「見分けつかねえだろ」

 

蘭子「そういう事ではない」

 

奈緒「似合わなかったのかな」

 

蘭子「そうじゃないですか?」

 

奈緒「黒髪だった2人を見てみたい気もする」

 

蘭子「あー。そうだ、差し入れ届いてますよ」

 

奈緒「誰から?」

 

蘭子「ドーナツ」

 

奈緒「名前を言えよ」

 

蘭子「疲れた時には甘いものですよねえ。はいどうぞ」

 

奈緒「さんきゅ。ここで食っていいのか悩むとこだけど」

 

蘭子「あ、落としたら汗と油で床に染み込みますよ」

 

奈緒「分かってるよ汚ねえな」

 

蘭子「口悪いです」

 

奈緒「だーらお前が言うな」

 

蘭子「あ、奈緒ちゃんこのあと時間あります?」

 

奈緒「んあ、あるけど」

 

蘭子「この前イヤホン壊れちゃって。買いに行きたいと思ってたんですよね」

 

奈緒「付き添いね。はいはい」

 

蘭子「ありがとうございます」

 

奈緒「パソコン1台な」

 

蘭子「は?」

 

奈緒「あ?」

 

蘭子「――――その声は……我が友よ、闇に飲まれよ!」

 

奈緒「――――よ、お疲れPさん。見回りか?」

 

蘭子「ふっふっふ、我らに対してそのような心配は無用……此度の共演、つつがなくこなして見せようぞ」

 

奈緒「そういう事。何も初対面って訳じゃないし、仲良くやってるよ」

 

蘭子「うむ、我が友も……ひゃうっ」

 

奈緒「こ、こら! 頭撫でんなよ!」

 

蘭子「視線のある場でこのような……! は、恥ずかしいです……」

 

奈緒「だー! 分かった分かった! いい子でいいからさっさと離せ! はーなーれーろーー!!」

 

蘭子「うう……」

 

奈緒「お、女の髪は命の次に大事なんだぞ、気安く触んなよ」

 

蘭子「う、うむ……。あ、もう次のお仕事ですか?」

 

奈緒「早いな……その、もう少しいてくれても別に……。な、なんでもねーよ! さっさと行け!!」

 

蘭子「多忙も瞳を持つ故の悦ばしき苦悩か……。ふふ、次まみえる時は更なる成長をお見せするとしよう。くく、なーはっはっはっ!!」

 

奈緒「………………」

 

蘭子「………………」

 

奈緒「何も言うなよ」

 

蘭子「そっちこそ。イヤホン買いにいきましょう」

 

奈緒「ん。ごっそさん」

 

蘭子(……相変わらずこの人)

 

奈緒(……相変わらずコイツ)

 

蘭子・奈緒(変わり身早いなあ)

 

 

 

 

 

 

 



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一ノ瀬と前川。

 

 プロダクション・中庭

 

 

志希「前川さん前川さん」

 

みく「……」

 

志希「前川さん前川さん」

 

みく「……」

 

志希「前川さん前川さん」

 

みく「……」

 

志希「まえか」

 

みく「うっざいにゃいつまで続くの!」

 

志希「にゃはは。今やめようと思ってた」

 

みく「白々しい。で、何」

 

志希「ん? 特に何も無いよ」

 

みく「嘘つきは泥棒の始まりだよ。何」

 

志希「のんのん。志希ちゃんギフテッド。のっと泥棒」

 

みく「っざ」

 

志希「みくちゃんの表情から苛立ちを感じる……。何かやな事でもあった?」

 

みく「一ノ瀬志希という存在」

 

志希「名前呼ばないで濡れちゃう」

 

みく「早く要件言ってよ面倒臭い」

 

志希「嫌悪感を丸出しにされるの嫌いじゃないよ志希ちゃん」

 

みく「あっそ」

 

志希「志希ちゃん催眠術覚えたの」

 

みく「てめえ科学者だろ」

 

志希「で、被検体を探してたワケ」

 

みく「やだよ」

 

志希「被害者とも言う?」

 

みく「ちょっとは隠す努力をしてほしいにゃ」

 

志希「みくちゃんあたしとキャラ被ってるからさー」

 

みく「後発組の癖に何を」

 

志希「だからあたしの代わりになってもらう。あたしのことは大丈夫。何があっても隠蔽工作は完璧だから」

 

みく「てめえの心配なんて1ミリもしてないにゃ」

 

志希「いざとなったら高飛びするし」

 

みく「今からして」

 

志希「海外ツマンナイ」

 

みく「日本は楽しいの?」

 

志希「アイドルは中々興味深いよネ」

 

みく「ちょっとまって何その吊るされた5円玉」

 

志希「催眠術の道具」

 

みく「ばっかじゃないの?」

 

志希「頭はいいよ?」

 

みく「そういう返事するやつを馬鹿って言うんだよ」

 

志希「鹿をさして馬という」

 

みく「は?」

 

志希「馬も鹿も賢いのに馬鹿。その漢字の意味が納得いかなくて調べたことあるんだけど、諸説あって面白いからみくちゃんもまた検索してみてね」

 

みく「頭良さ気なこと言っといてぐーぐる頼りって」

 

志希「やふーでもいいよ」

 

みく「はいはい」

 

志希「キミは段々眠くなる……キミは段々眠くなぁる……」

 

みく「ウソやろ」

 

志希「ほんとだよ」

 

みく「昨日は何時に寝たの」

 

志希「志希ちゃん寝てない」

 

みく「何やってんの」

 

志希「ちょっと思い立ったから人が夢見るプロセスについて考えてたら止まんなくなっちゃった」

 

みく「ほんと何やってんの」

 

志希「だからもう眠くて眠くて。限界。おやすみ。ばたんぐー」

 

みく「おやすみにゃ」

 

 事務所

 

みく「………………」

 

志希「何読んでるのー」

 

みく「ネコチャン雑誌。は〜〜〜、もう可愛いにゃ〜〜〜♡」

 

志希「志希ちゃん分類的にはヒトだけど多分猫だよ。ほら撫でて」

 

みく「10分以上二足歩行するネコはいらない」

 

志希「ごろーん」

 

みく「媚びてくるネコもいらない」

 

志希「フッ、フッ」

 

みく「全長161cmのネコもいらない」

 

志希「どうしろと?」

 

みく「早く立て」

 

志希「まだ眠い」

 

みく「本気で寝てたもんね」

 

志希「真冬に芝生で女の子放置するとかみくちゃん酷い」

 

みく「みくも暇じゃないにゃ」

 

志希「暇そうに雑誌読んでたじゃん」

 

みく「これも仕事なのー」

 

志希「生産性の無い仕事」

 

みく「ほっといて」

 

志希「ねーねー、まだ催眠術の続きがあるんだけどー」

 

みく「一発ネタじゃなかったの……」

 

志希「志希ちゃんはいつでも大まじめ♡」

 

みく「催眠術なんてかかる訳ないでしょ」

 

志希「最近だとそれもう掛かってる人の台詞らしいよ? 平気?」

 

みく「中々訳わかんないこと言うよね志希チャン」

 

志希「フレちゃん程じゃないよ〜♡」

 

みく「比較対象が間違ってるにゃ」

 

志希「次の催眠は聴覚に訴えます。これ着けて」

 

みく「アイマスク」

 

志希「今から志希ちゃんが生声でみくちゃんの鼓膜を揺さぶるから安心して絶頂してね」

 

みく「絶対嫌にゃ」

 

志希「ちなみにそのアイマスクには猫が好きな匂いが含まれてたりするよ」

 

みく「ホントに!?」

 

志希「ホントの反対の反対の反対」

 

みく「あったま悪い発言はいい加減控えるにゃ」

 

志希「えー、何で返すのー」

 

みく「利点が見つかんないもん」

 

志希「ぶーぶー」

 

みく「志希チャンお仕事は?」

 

志希「もーちょっとー」

 

みく「ふーん」

 

志希「志希ちゃん今日のお仕事はちょっと楽しみなんだよね」

 

みく「珍しい。槍が降るにゃ」

 

志希「にゃはは」

 

みく「ちなみに何で?」

 

志希「みくちゃんと一緒だから」

 

みく「は???」

 

志希「みくちゃんと一緒だから」

 

みく「…………マジで?」

 

志希「マジだよ〜。みくちゃんが予定把握してないなんて珍しいね?」

 

みく「目眩がしてきたにゃ……」

 

志希「ちなみに分かってると思うケド、宿屋のロケだから1日一緒だよ」

 

みく「吐き気を催しそうにゃ……」

 

志希「更に寝る部屋は一部屋らしいよ♡」

 

みく「ヴォえッ!」

 

志希「みくちゃん顔やばーい」

 

みく「朝っぱらから出会っただけでも胃もたれしそうだったのに……」

 

志希「にゃはは、今日は1日一緒だよー」

 

みく「……」

 

志希「?」

 

みく「――あ、もしもし響子チャン? うん。いきなりごめんね、ちょっとお願いがあるんだけど」

 

志希「ちょ」

 

みく「今日のお泊まりロケ変わって貰うことって出来る? え! ほんと!?」

 

志希(無言で消える)

 

みく「お泊まりロケなんだけど、あー。明日は朝からお仕事かあ……」

 

志希(帰って来る)

 

みく「うん、うん。分かった。全然平気にゃ、いきなりごめんね、またー」

 

志希「あー残念、残念だなー。響子ちゃんと一緒にお仕事シタカッタナー」

 

みく「今失踪しかけた癖によく言う」

 

志希「電話相手がピンポイントすぎない?」

 

みく「それくらい嫌ってこと伝わってくれると嬉しいにゃ」

 

志希「志希ちゃん悲しい」

 

みく「何で服脱いでるの?」

 

志希「悲しくなってつい」

 

みく「何で服脱がせようとしてるの?」

 

志希「籠絡させようかなってつい」

 

みく「ついじゃねーよ手離せ」

 

志希「くんかくんか」

 

みく「顔も近づけんにゃ!」

 

志希「朝から思ってたんだけど、やっぱみくちゃんいい匂いする。撮影だから気合入れてきた?」

 

みく「へ。特に何もしてないケド。いつも通りだよ」

 

志希「知ってた。何も変わってないもん。ツマンナイ」

 

みく「殺すぞ」

 

志希「経験として死ぬのもアリかなー。でも生き返れないしなー」

 

みく「ナシだよ」

 

志希「やっぱり?」

 

みく「死ぬとか言うな。悲しくなる」

 

志希(殺すって言うのは良いんだ)

 

みく「は〜〜〜〜〜……。言ってもPチャンが取ってきてくれた仕事なんでしょ。今日1日だけ我慢するにゃ」

 

志希「にゃはは」

 

みく「ってことでお仕事行くよ。みくの長い長い1日の始まりにゃ」

 

志希「はーい」

 

志希「………………」

 

 お仕事場

 

みく「……」

 

みく「…………」

 

みく「………………」

 

みく「………………で」

 

みく「アイツはいったいどこ行ったのにゃ!!!!!」

 

みく「ちょっと油断したらこれだ! ふざけんにゃ!!」

 

みく「ったくもーーーーっ!」

 

みく「――――もしもし!!??」

 

志希『もしもーし』

 

みく「どこにいるんにゃ! もうお仕事始まる時間だよ!」

 

志希『あたし志希ちゃん。今みくちゃんの後ろにいるよ』

 

みく「はァっ!?」

 

志希「はろはろ〜♡」

 

みく「どこに行ってたの!」

 

志希「にゃはは、なぁんかいい匂いする方にふらふらしてたら美優さんを見つけちゃって。嗅いでた」

 

みく「美優さん……? ホント?」

 

志希「ホントホント。プライベートだったらしいよ」

 

みく「そっか……でもそれとこれとは別にゃ! 危うく撮影に遅れるところ!」

 

志希「も〜怒りっぽいなあ。間に合ってるでしょ? ちなみにさっきのは嘘だよ」

 

みく「コイツ……」

 

志希「お仕事のコトになると頭に地が上りやすくなっちゃうのはみくちゃんの悪いとこだよ? もっとリラックスして生きよ〜」

 

みく「それとこれとは別にゃ……」

 

志希「そしてみくちゃんに朗報! あ、悲報かな?」

 

みく「なに」

 

志希「なんと撮影機材にトラブルが発生! お昼しかやってないお店を回るってことで、撮影は明日に延期です!」

 

みく「はぁぁぁぁあ!?」

 

志希「ってわけで今日は自由行動! 探索するなり借りてるホテル使うなり自由にしていいんだって!!」

 

みく「ちょ、そんな無理矢理な設定……! え、何、マジなの!?」

 

志希「マジも大マジ。志希ちゃん嘘つかない♡ ほらほら早くホテル行こっ」

 

みく「今さっき嘘ついてたじゃ……待って! 全然脳が理解できてないんだけど〜〜〜っ!!」

 

 ホテル・客室

 

みく「本当に来てしまった」

 

志希「ここが今日寝泊まりする部屋か〜。ん〜。高級な刺激の弱い芳香剤がフレグランス」

 

みく「機材トラブルは本気だったみたいだけど……何かしたの志希ちゃん」

 

志希「まさか。志希ちゃん気まぐれ天才だけど人を困らせることはしないよ。アレは天災。天の災い」

 

みく「どうだか」

 

志希「ん……? でもこの匂い……。気をつけてみくちゃん。そのベッドの上で前のお客さんがセックスしてるよ」

 

みく「え゛っ!?」

 

志希「迂闊に寝たら孕んじゃうかもネ。まあ当然精巣から溢れて外気に触れた精子に生殖能力なんてないけど」

 

みく「……分かったからやめるにゃ。うう」

 

志希「ちなみに、多分男同士」

 

みく「えぇ……」

 

志希「志希ちゃんたちもヤっとく?」

 

みく「その手つきやめるにゃ」

 

志希「志希ちゃん的にはそのボディ味わえるなら処女ぐらいあげてもイイって思ってるんだけど♡」

 

みく「奪う手段がないにゃ」

 

志希「おや。ツッコミどころはそっちなんだ。指があるよ?」

 

みく「もうなんかもう疲れた」

 

志希「そんなキミに志希ちゃん特性催眠術!」

 

みく「まだやるのそれ」

 

志希「催眠術って要するに思考回路の制圧、または征服だからさ。上手いこと使えば疲労も無かったことに出来ちゃうかも」

 

みく「ふーん」

 

志希「疑いの眼差し」

 

みく「そりゃそうなるでしょ」

 

志希「密室、催眠術、女2人……。何も起きないはずはなく」

 

みく「何も起きないよ」

 

志希「催眠術って言うと聞こえが悪いのかな? 1種のリラクゼーションだと思えば警戒心の強い猫ちゃんもきっと分かってくれるはず!」

 

みく「それ、施行した回数は?」

 

志希「ぜろ」

 

みく「いつ思い付いたの」

 

志希「今さっき」

 

みく「吹き飛べ。ふにゃあ」

 

志希「やや。眠そうだねみくちゃん」

 

みく「んー……なんか、何だろ。疲れちゃったみたい」

 

志希「もしかして志希ちゃんのせい?」

 

みく「9割ぐらいは」

 

志希「しゅん」

 

みく「今日はもうお仕事ないんでしょ? 晩ご飯まで寝ることにするにゃ……」

 

志希「志希ちゃん抱き枕になるよ!」

 

みく「は?」

 

志希「しゅん」

 

みく「……お願いするにゃ」

 

志希「♡」

 

みく「勘違いしないでよね。みく、何か抱いてないと寝れない体質なだけだから」

 

志希「うんうん。分かってるよ〜」

 

みく「撫でるな」

 

志希「くんくん」

 

みく「嗅ぐな」

 

志希「それは無理」

 

みく「でしょうね」

 

志希「志希ちゃんもおねむ」

 

みく「……昨日寝てないんでしょ。一緒に寝よ」

 

志希「ん。寝る」

 

みく「おやすみ、志希チャン」

 

志希「おやすみ、みくちゃん♡」

 

みく「……」

 

志希「……くー」

 

みく「……ふふっ。こう見れば、志希チャンも可愛いもんにゃ」

 

 

      *

 

 

みく「…………」

 

みく「…………ん」

 

みく「……アレ、志希チャン……?」

 

みく「ふにゃあ……。まあいいや。顔だけ洗お……」

 

みく「…………ぺっ」

 

みく「…………」

 

みく「…………っ!」

 

みく「……いい話だったのに」

 

みく「アイツ顔に落書きしてきやがった!!!!」

 

みく「子どもかーーーーーっっ!!!」

 

 

 ???

 

 

志希「……にゃはは。やっぱアイドル、たーのし♡」

 

 

 

 



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森久保と他。

 

 事務所・机の下

 

 

森久保(……Pさんにアイドルを勧められて、何だかんだと早数ヶ月)

 

森久保(……森久保は、そろそろ限界が近付いています)

 

森久保(……いつもそう言ってるだろって?)

 

森久保(……そういう事ではないのです)

 

森久保(……森久保が、森久保がちょっとだけ夢見たアイドルは……アイドルは……)

 

唯「あーごめんネー、そんなとこに足あると思わなくてー」

 

奈緒「い……っ! お前わざとだろ!」

 

唯「はー? ごめんって先謝ったんですけどー。わざわざ人の足踏むほど暇じゃないっつーの」

 

奈緒「じゃあ許す」

 

唯「サンキュ」

 

奈緒「ただ新品の靴だった事実は変えられねんだけど」

 

唯「そなの。靴屋さんに磨いてもらえば?」

 

奈緒「お前が磨け」

 

唯「ユイ最近睡眠不足で眠いし、そういう冗談付き合ってるよゆーありませーん」

 

奈緒「喧嘩売られてる気がする」

 

唯「勝手に気にしてな」

 

奈緒「あ?」

 

唯「あ?」

 

みく「まーまー。喧嘩両成敗にゃ。いがみ合ってもいい事なんてないよ」

 

唯「猫がああ言ってるケド」

 

奈緒「猫が言うなら仕方ない」

 

みく「せめて名前を呼べよ」

 

森久保「ひぃぃぃぃ……っ」

 

森久保(こ、こういうんじゃないんですけど〜〜〜……!!)

 

森久保(もっともっと、こう、和気あいあいとしてて、キャッキャウフフとか……!)

 

奈緒「あれ、森久保じゃん」

 

森久保「ぴぃっ!!」

 

唯「乃々ちゃん? お、マジじゃん。やほー」

 

森久保「お、お、おはようございます……」

 

唯「相変わらず無駄にびくびくしてるね〜、ウケる☆」

 

森久保(笑い事ではないんですけど……)

 

みく「ののチャンも何か言ってあげてよー。もっとこう、言動を弁えろみたいな」

 

奈緒「人前に出てなきゃ問題ないだろ」

 

みく「盗撮とか盗聴とかされてたらどうすんの」

 

奈緒「犯罪だな。儲けられそうだ」

 

みく「じゃあ唐突取材とかの名目でパパラッチに捕まったらどうすんの」

 

唯「殺す」

 

みく「殺す……」

 

奈緒「大体さー、密着取材とかの対応は幸子たちがする決まりじゃん? あたしらが日常生活で気を付けるなんてオトコ関連だけだって」

 

唯「気にするべき相手すらいないのに?」

 

奈緒「うっせーぞ金髪」

 

森久保「……と、特に、森久保が言いたいことなんて、ないです……」

 

みく「むー。貴重な純心素材なのに」

 

森久保「ごめんなさい…………」

 

森久保(純心素材ってなんですか……)

 

響子「おはようございまーす」

 

茄子「おはようございます〜。あらあら珍しい、皆さんお揃いで〜」

 

唯「おーす」

 

みく「おはようにゃー」

 

奈緒「うげっ」

 

響子「今のは聞かなかったことにしておきますね♡」

 

茄子「ほらほら奈緒ちゃんも。一日の計は挨拶にあり、ですよっ」

 

奈緒「はぁ……おはよ。二人とも」

 

森久保(な、なんかゾロゾロ現れたんですけど……隠れてよ……)

 

みく「ねーねー響子チャーン」

 

響子「はいはい、響子ちゃんですよー」

 

みく「お昼ご飯作ってー」

 

響子「猫缶でも食べててください」

 

みく「ひでえ」

 

響子「どうやら猫缶って人でも食べられるらしいですよ」

 

みく「うーん。味薄いんだよねアレ」

 

奈緒「マジかよお前」

 

茄子「響子ちゃん今日のお昼ご飯はなんですかー?」

 

響子「茄子でも食べててください」

 

茄子「えー」

 

唯「さすがの茄子さんも嫌がってるー」

 

茄子「朝食べたので」

 

唯「なるほど。ユイも食べたーい」

 

響子「もーっ、お昼まだご飯食べてない人手挙げてください」

 

響子「いちにー…………」

 

響子「全員じゃないですか!! 奈緒ちゃんも!」

 

奈緒「食ってなくないとは言ってないし」

 

みく「乃々チャンも食べるでしょー?」

 

森久保(な、なんで森久保に話振るんですかーーーっ!!!)

 

響子「あれ、乃々ちゃんもいるんですか?」

 

茄子「乃々ちゃんも、おはようございます〜」

 

森久保「お、おはよう、ございます……」

 

唯「中から言っても聞こえなくない?」

 

響子「それで、食べるんですか?」

 

森久保「い、いりませ……貰います……」

 

奈緒「どっちだよ」

 

森久保(お腹すいてはないですけど、断ったら何されるか分からないので……)

 

響子「失礼なこと考えられてる気がしますけど気にせず、五十嵐響子、がんばりますっ♡」

 

奈緒「相方の台詞だろそれ」

 

唯「相方は美穂ちゃんじゃない?」

 

みく「夕美チャンかも」

 

茄子「一ノ瀬志希さん!」

 

奈緒・唯・みく「それはない」

 

茄子「しゅん」

 

響子「あ、じゃあ乃々ちゃん!」

 

森久保「は、はいぃっ」

 

響子「乃々ちゃんは何が食べたいですか? 希望のメニューを作りますね!」

 

森久保「え、っと……その、森久保は、な」

 

響子「んでもいいって答えたらその度に奈緒さんの毛を2本ずつ抜いてくことにします」

 

奈緒「やめろ」

 

響子「しかも下」

 

奈緒「やめろ!!」

 

唯「生えてんだ」

 

奈緒「おい飛び火したぞ!」

 

茄子「なんと私よりいっぱい」

 

奈緒「見てもないのに適当言うな!」

 

森久保「ひぇぇえ……。あの、その……肉じゃが……で」

 

響子「わー。乃々ちゃんは結構少年趣味なんですね。分かりました、腕によりをかけちゃいます!」

 

茄子「肉じゃがならカコさんも作れますよー?」

 

響子「あなたも作れって言った内の1人ですよね。黙って座っててください」

 

茄子「はーい」

 

唯「せーのっ。ちょっとせのびしてー、のーぞきーたーいー」

 

響子「やめてください」

 

みく「わーたーしのーみーらいー」

 

響子「これ前やりましたよ」

 

奈緒「きっといつのひかー、あーえるっかーなー」

 

響子「やめてください」

 

茄子「せーかーいーでーいちーばーん、すーてーきーなー、えがおー」

 

響子「お料理、得意なんですっ!」

 

唯「(笑)」

 

響子「1人しか笑ってない気がします」

 

みく「久しぶりにお惣菜と寮のご飯以外を食べる気がするにゃ」

 

唯「寮のご飯って美味しいの?」

 

みく「フツー。でも割と高い頻度でお魚が出るからみく的にはマイナス点」

 

茄子「好き嫌いしてると育ちませんよ〜」

 

みく「ふふん。充分育ってるモン……って、ここにいる人はみんな結構あるからドヤ顔もできないね」

 

森久保(森久保はそうでもないですけど……)

 

茄子「だめです。みくちゃんの歳ならまだ充分成長の余地ありですし、今から頑張れば私超えの可能性もありますよ」

 

みく「そんなにはいらないかな」

 

奈緒「茄子さんが年上っぽい。珍しく」

 

唯「茄子ちゃんが先輩っぽい。珍しく」

 

みく「失礼なやつらにゃ」

 

茄子「お料理が出てくるまでどうせ暇なので、時間つぶしに私の隠し芸でも」

 

奈緒「ずっと隠してろ」

 

茄子「じゃあこの前覚えたての手品を」

 

唯「きっちり覚えてから出してね」

 

茄子「じゃあじゃあ、志希ちゃんから習った催眠術を」

 

みく「それはもう飽きた」

 

茄子「こんな雑な扱いされたらカコさん興奮しちゃうじゃないですか……///」

 

みく「嘘つき」

 

茄子「てへ☆」

 

森久保(相変わらずの強メンタル……。森久保も見習いたい……)

 

茄子「しりとりでもしましょうか」

 

唯「神谷奈緒」

 

奈緒「大槻唯」

 

みく「もう落ちてる気がするにゃ」

 

茄子「鷹富士茄子も出してください!」

 

みく「板」

 

茄子「鷹富士茄子! 嬉しい!」

 

奈緒「嬉しいって思うことはあっても中々嬉しいって素直に口には出せないもんだよな」

 

みく「妙な説得力があるにゃ」

 

奈緒「るせぇ」

 

茄子「七並べでもします?」

 

唯「七並べって性格悪いやつが勝つんだよねー」

 

奈緒「じゃあお前の圧勝だな」

 

唯「やだなー、奈緒ちゃん程じゃないよー」

 

奈緒「あー? よく聞こえなかった」

 

みく「どっちもどっちにゃ。最下位争いしようね茄子さん」

 

奈緒「うっせーぞ猫」

 

唯「猫静かに」

 

みく「せめて名前を呼べと」

 

奈緒「っていうかそもそもトランプは?」

 

茄子「私いつも持ち歩いてます!」

 

みく「(笑)」

 

奈緒「マジかよ」

 

唯「茄子さん子供みたーい☆」

 

茄子「いつまでも 子供心を忘れない 鷹富士茄子」

 

みく「季語がない」

 

茄子「名前が季語と言うことで」

 

みく「なんでやねん」

 

奈緒「おお本家本元大阪のツッコミ」

 

唯「ほんとに大阪の人って関西弁で話すんだよねー、ウケるー☆ って思ったことある」 

 

みく「当たり前にゃ」

 

奈緒「あーでも分かるなー」

 

唯「ねー」

 

みく「君らは関西人をなんだと思ってるの」

 

奈緒「異界の人」

 

唯「別の世界の人」

 

茄子「芸人さん」

 

みく「その言葉そっくり返すにゃ。特にド関東組」

 

唯・奈緒「えー」

 

森久保(森久保も多分その区切りですけど……黙っておくとします……。口は災いの元です……)

 

響子「のーのちゃん♡」

 

森久保「は、はぃぃぃいっ!!」

 

響子「相変わらずびっくりしすぎ(笑)。肉じゃができましたよー」

 

森久保「あ、ありがとうございます……」

 

唯「ちょっとー。ユイたちに報告する前に乃々ちゃんなわけー?」

 

響子「あなたたちはほっといても食べるでしょう。さっさと皿でも並べててください卑しい駄犬共」

 

奈緒「言い方」

 

響子「まゆさんに習ったんですけどどうです? 興奮します?」

 

奈緒「んなことしなくても充分怖いって」

 

響子「何か?」

 

奈緒「いや」

 

響子「ついでに言うと乃々ちゃんは引っ張りださないとここから出てくれない気がしたので」

 

森久保「あの……で、出なかったら……?」

 

響子「奈緒ちゃんの毛を毟ります♡」

 

奈緒「やめろ」

 

響子「しかも下」

 

奈緒「やめろ!!」

 

茄子「やっぱり生えてるんですね」

 

奈緒「飛び火してるぞ!!」

 

森久保「で、出ます、でます……むぅりぃ〜〜〜……」

 

みく「無理なのかいけるのかどっちにゃ」

 

響子「今回は私、乃々ちゃんのために心を込めてお料理しました!」

 

森久保「ほ、本当ですか」

 

響子「本当です! なので、きちんと 食 べ て く だ さ い ね ♡」

 

森久保「い、い、いただきますぅぅぅうう!!!」

 

茄子「あら〜、乃々ちゃんってばいい食べっぷりですね〜」

 

響子「はい♪ でもお料理はみんなで食べるのが一番ですから、乃々ちゃんももう少し待って?」

 

森久保「は、は、は、げふ、ぐふ……!」

 

みく「落ち着くにゃ。ほらとんとん」

 

響子「もー、そんなに慌てるなんて、よっぽどお腹がすいてたんですね。それとも美味しすぎたのかな?」

 

奈緒「よく言う」

 

響子「何か?」

 

奈緒「いや」

 

唯「はーいお母さん、ご飯中にスマホ弄ってもいいですかー」

 

響子「弄っては駄目です」

 

唯「ちぇー」

 

みく「はーいお母さん、ちなみに残したらどうなりますかー」

 

響子「殺す」

 

みく「殺す……」

 

奈緒「お残しは許しまへんでー」

 

響子「はい」

 

奈緒「はいじゃねーよ」

 

茄子「はいはいそれじゃあここは年長者の私が。乃々ちゃんも治まってきたみたいですし!」

 

森久保「うう……面目次第も……森久保、ご飯を食べたら穴掘って埋まってます……」

 

唯「それ別の事務所。ほらほら、はーやくーっ」

 

茄子「はーい、それではお手を拝借。それぞれ言いたいことは沢山あるかもしれませんけどそれはそれ。皆さんご一緒に、せーの」

 

「「「いただきまーす」」」

 

 

 



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赤城と櫻井と的場。

 

 櫻井家・桃華寝室

 

 

みりあ「……いいよね? 桃華ちゃん」

 

桃華「だめ、だめですわ……。そんなところ、触らないで……」

 

みりあ「だめだなんて……自室に連れてきておいて、そんないじらしい言葉は誘いにしかならないんだから」

 

桃華「わたくし、そんな、そんなつもりは……あっ♡」

 

みりあ「可愛い声……大体、桃華ちゃんが悪いんだよ……」

 

桃華「え……?」

 

みりあ「みりあね、気が気じゃないんだよ? 他のみんながみぃんな、桃華ちゃんに言いよって来て……。一番付き合いが長いのは、みりあなのに……」

 

桃華「みりあさん……ふ、あ……♡」

 

みりあ「だから……ふふ、桃華ちゃんも随分やる気みたい。嬉しい。しっかり私を、刻み付けてあげる……♡」

 

みりあ「……そうして二人は一夜を共にした。お互いがお互いの匂いをつけて学校へむかう、その危険を理解しながら……」

 

みりあ「…………」

 

みりあ「なにコレ」

 

桃華「今度わたくしたちが主演するドラマのワンシーンです」

 

みりあ「濡れ場だよね」

 

桃華「濡れ場ですわね」

 

みりあ「放送時間帯は?」

 

桃華「ゴールデンタイムだそうで」

 

みりあ「濡れ場だよね」

 

桃華「濡れ場ですわね」

 

みりあ「私たち小学生だよね」

 

桃華「小学生ですわね」

 

みりあ「PTAに放送停止させられちゃわない?」

 

桃華「その辺りはわたくしの親がこう……ちょちょっと」

 

みりあ「ちょちょっと」

 

桃華「圧を」

 

みりあ「お金持ちってすごい」

 

桃華「なんといってもわたくしの主演ドラマですもの」

 

みりあ「……スリルよりワイルドに、ワイルドよりデンジャラス。少女たちの本気の想いが交差する、限界ギリギリのチャイルド・ガールズ・ラブ・ストーリー……なにコレ」

 

桃華「ドラマ放映用の煽り文句ですわね」

 

みりあ「ゴールデンタイムだよね?」

 

桃華「ゴールデンタイムですわね」

 

みりあ「やっぱりPTAに」

 

桃華「まあまあ落ち着いてくださいまし」

 

みりあ「落ち着いてはいるけど」

 

桃華「実は別視点からの煽りもありますのよ? ほら、もう少し読んでみて」

 

みりあ「……。実話を元に創られた幼い少女たちの物語。好奇心を超えた許されざる7つの恋心は、衝撃の結末を迎える……」

 

みりあ「なにコレ」

 

桃華「宣伝その2です。簡単に説明しますと、生粋のお嬢様であるわたくしがみりあさんを含めた7人の女の子に言い寄られてしまう話ですわね!」

 

みりあ「私も主演だし知ってるけど……うーん」

 

桃華「限界ギリギリでしょう?」

 

みりあ「限界ギリギリだね、いろんな意味で」

 

桃華「わたくしの役は箱入り育ちの優柔不断な主人公ですの」

 

みりあ「ちなみにこの、実話を元に創られたって言うのは?」

 

桃華「ああ、それは……」

 

梨沙「アタシたちの名前がそのまま使われてるって点だけよ」

 

みりあ「あ、おかえりー」

 

桃華「おかえりなさい、梨沙さん。お湯加減は如何でしたか?」

 

梨沙「ま、上等」

 

みりあ「一緒に入れば良かったのにー」

 

梨沙「パパ以外に肌を見せたくないだけよ。妊娠しちゃうでしょ」

 

桃華「はいはい」

 

みりあ「ぷっ」

 

梨沙「冗談よ」

 

みりあ「全然冗談に聞こえない(笑)」

 

桃華「ちなみに梨沙さんの役はわたくしのひとつ上、最高学年で学校最大人気を誇る王子様的存在ですわ」

 

梨沙「ちょっといけ好かない性格してるわよね」

 

みりあ「絶対主人公に選ばれないやつだ」

 

桃華「選ばれないやつですわね」

 

梨沙「アタシがなりたくてなってんじゃないわよ」

 

みりあ「しても小学校で王子様的存在って、少女漫画の読みすぎだよね」

 

梨沙「それに言い寄られるってシチュエーションも中々どうして痛いわよね」

 

桃華「監督さんに言ってくださいまし」

 

梨沙「原作と脚本は絶対ロリコンだと思うわ」

 

みりあ「どっちも女の人だよ?」

 

梨沙「女にもロリコンはいんのよ」

 

みりあ「ふーん」

 

梨沙「にしても普通こういう役目は晴の仕事じゃないかしら」

 

桃華「あら、案外お似合いでしてよ」

 

梨沙「うるさい」

 

みりあ「梨沙ちゃんとの濡れ場もあるんだよね確か」

 

梨沙「節操なし」

 

みりあ「ケダモノ」

 

桃華「わたくしに言わないでくださる???」

 

梨沙「は……っ、こうして今日家に泊めてくれてるのもまさか」

 

桃華「収録が長引いたからでしょう」

 

梨沙「みりあの役は何だっけ」

 

みりあ「うーんとね、桃華ちゃんが急にモテモテになって焦る幼なじみの女の子」

 

桃華「ありがちですわね」

 

梨沙「ありがちね」

 

みりあ「私に言われても」

 

梨沙「いつから一緒にいたのよ」

 

桃華「3歳ですわね」

 

みりあ「私お嬢様じゃないんだよ」

 

梨沙「めちゃくちゃな設定だこと」

 

みりあ「桃華ちゃんのお部屋って広いよねー」

 

梨沙「それを言うなら家ね」

 

桃華「その話は複雑な気持ちになるのでやめて頂けると」

 

みりあ「金髪」

 

梨沙「金髪」

 

桃華「だからなんですの!」

 

梨沙「それって地毛?」

 

桃華「え?」

 

梨沙「ギャルのは染めてるとしか思えないけど、その年で……ねえ」

 

桃華「……誰にも言わないと誓えます?」

 

梨沙「重そう」

 

桃華「実は……わたくしも元々お二人のように真っ黒だったのです。……真っ黒だった、らしいのです」

 

みりあ「らしいって。あー」

 

桃華「はい。その、物心つくかつかないか……といった時期に、黒髪では櫻井の威厳を保てないとのことで、じいやが」

 

梨沙「あら」

 

桃華「どうも毛穴? からしっかりと矯正されてしまったようで、その時を境に生えてくる毛が黒から金髪に……」

 

梨沙「本人の許可もなく……酷い話じゃない」

 

桃華「はい……今作った話ですけど」

 

梨沙「は?」

 

みりあ「それ嘘だよ?」

 

梨沙「は?」

 

みりあ「ここまで来る時に別の部屋にちっちゃ〜い桃華ちゃんの写真あったけど、金髪だったもん!」

 

桃華「お父様の自室ですわね、全く……」

 

梨沙「嘘つかれた」

 

桃華「うふふ♡」

 

梨沙「ドロボーよドロボー」

 

桃華「それは大変。こんな可憐な盗人なら何だって差し上げたくなってしまいますわね」

 

みりあ「幸子ちゃんみたい」

 

梨沙「自意識過剰のこと幸子って言うのやめてあげなさい。間違ってはないけど」

 

桃華「逆では?」

 

梨沙「つまり……アタシたち! 快盗天使!」

 

みりあ「ツインエンジェル!」

 

梨沙「なにそれ?」

 

みりあ「わかんない」

 

桃華「早苗さん辺りが口に出してたような気がしますわね」

 

みりあ「昔のアニメかなあ」

 

梨沙「その辺じゃない?」

 

桃華「なんとなく違う気がしますが……」

 

梨沙「何よりアタシの発想がもう存在したってのが許せないわ」

 

みりあ「沸点ひくーい」

 

桃華「ですわね」

 

梨沙「うっさいわね。そういやアンタたちって一緒に泊まったことあるんだっけ」

 

桃華「少し昔に」

 

みりあ「懐かしいねー」

 

梨沙「その瞬間はカメラで撮られてたの?」

 

桃華「いいえ」

 

梨沙「かーーーもったいないわねー! 視聴率うなぎ登りなのに!!」

 

桃華「はあ」

 

梨沙「櫻井桃華と赤城みりあのパジャマ姿! 戯れる姿! ロリコン大歓喜の映像がそこに!」

 

桃華「はあ」

 

梨沙「今からでも遅くないからとりましょう! カメラは!?」

 

みりあ「枕投げしよ枕投げ!」

 

梨沙「露骨に無視する精神には感服するわ」

 

桃華「わたくしの自室なので枕はひとつしか」

 

みりあ「みりあ枕持ってきたよ!」

 

桃華「長枕なのですが」

 

みりあ「いいハンデ!」

 

桃華「ふふ、上等ですわ」

 

梨沙「しょうがないわねー。アタシも参加してあげるわよ」 

 

みりあ「嫌ならいいよ」

 

桃華「嫌ならいいですわよ」

 

梨沙「やる!!!」

 

みりあ「やめとこっか」

 

桃華「そうですわね」

 

梨沙「何でよ!!」

 

みりあ「あ。待って、莉嘉ちゃんから電話ー」

 

桃華「どうぞ」

 

みりあ「もしもしー。うんお疲れさまー。あ、今? 今私お外で――――」

 

梨沙「部屋出てっちゃったわね。長くなりそうかしら」

 

桃華「いいですわねー、年上のお友達」

 

梨沙「いっこだけでしょ?」

 

桃華「ひとつといえど中学生なら立派な先輩ですわ」

 

梨沙「そんなもんかしら」

 

桃華「そんなもんですわ」

 

梨沙「この家ゲームとかないの?」

 

桃華「VRカノジョなら」

 

梨沙「は?」

 

桃華「VRカノジョ」

 

梨沙「は?」

 

桃華「VRカノジョ」

 

梨沙「名前は分かったけど内容を分かりたくない」

 

桃華「やった事ないですか? PCVRユーザーなら誰もが持っていると聞いたのですけど……」

 

梨沙「PCの前に男性のって入ってる気がするわ。誰に教えてもらったの? 城ヶ崎美嘉?」

 

桃華「少し前に唯さんから」

 

梨沙「えっ、ドン引き……」

 

桃華「急にパソコンとVRを買えと言われて買いまして、そうしたら流れる様に届けられました」

 

梨沙「明日からどんな顔してあの人に会えばいいのよアタシ」

 

桃華「普通でいいのでは? 内容が割と……」

 

梨沙「あーあーあーいい。もういい、アタシが悪かったから」

 

桃華「性行為のシーンを除けば割と面白かったのですけど……そう言うのなら」

 

梨沙「性行為とか言うな未成年」

 

桃華「他ですと64とか」

 

梨沙「古い」

 

桃華「ですがコントローラーがひとつしかなくて」

 

梨沙「ええ……」

 

桃華「杏さんや紗南さんのようなものが欲しいと言ったらじいやが」

 

梨沙「おじいさんのセンス」

 

桃華「カセットもマリオパーティ2がひとつだけで」

 

梨沙「しかもパーティもの。新手の嫌がらせとしか思えない」

 

桃華「それくらいですわね」

 

梨沙「また今度何かもってきてあげるわよ」

 

桃華「本当ですの!?」

 

梨沙「さすがに可哀想になったから」

 

桃華「???」

 

みりあ「ただいまー」

 

梨沙「おかえりなさい」

 

みりあ「うんー、ねー桃華ちゃん。莉嘉ちゃんが泊まりたいって」

 

桃華「あら、わたくしは構いませんけれど」

 

梨沙「いんじゃない? あ、なんかゲーム持ってきてもらってよ」

 

みりあ「ん。なんかね、要約するとお姉ちゃんキモいから嫌になったって」

 

梨沙「何したのよあの姉……」

 

みりあ「キモいのはいつもの事なのに」

 

桃華「ですわね」

 

梨沙「何したのよあの姉マジで」

 

みりあ「部屋にいたらお姉ちゃんの部屋から奇声が聞こえてくる……」

 

みりあ「って」

 

梨沙「こわっ」

 

桃華「さすがにこんな時間に1人で出歩かせられませんし、迎えを寄越しますわね」

 

みりあ「わー便利ー♡」

 

梨沙「そーだそーだ、ねえ桃華」

 

桃華「はい」

 

梨沙「美波さんに聞いたんだけど、愛梨さんと文香さんに何か教えてたげてるんだって?」

 

みりあ「へー」

 

梨沙「年上も年上じゃない」

 

桃華「ええ。あのお二方、人生をかなり損していると思いません?」

 

梨沙「というと」

 

桃華「あれだけの顔と身体を持っていながら、アイドルをやっていなければただの女子大生……もっとうまく生きれるはずですわ! と」

 

みりあ「桃華ちゃん小学生だよね」

 

桃華「殿方の喜ばし方は心得ているつもりですわ。少なくとも彼女たちよりは」

 

みりあ「あ、でも愛梨ちゃんは教授におねだりしたら評価Aになるとかなんとか」

 

桃華「えっ」

 

梨沙「余計なお世話だったんじゃないの?」

 

桃華「向こうから言ってきた事ですし……」

 

梨沙「ふーん。でもいるだけで童貞殺しみたいな二人なのに変な知識与えちゃったら余計大変な事に」

 

桃華「現にただでさえ多かった仕事も更に上昇、バラエティ路線もそこそこ活躍中、ですわ」

 

みりあ「でも文香ちゃんお家でTシャツ1枚で過ごしてるんだよ」

 

桃華「知ってます。そちらもなんとかして欲しいところではありますが……」

 

みりあ「――――もしもーし。みりあだよー! 文香ちゃん今何してるー? うん、うん、あはは、だよねー! ばいばーい!」

 

みりあ「Tシャツ1枚で布団にくるまって本読んでたって」

 

梨沙「謎の行動力」

 

みりあ「文香ちゃんびっくりしてた!」

 

梨沙「そりゃそうでしょ」

 

桃華「ズボンも履かないのは女子力の欠片も無いというか」

 

梨沙「あの人と掛け離れた単語ではあるわよね」

 

桃華「っていうか女子力ってなんですの」

 

みりあ「なんですの」

 

梨沙「知らないわよ」

 

みりあ「一番それに近そうな梨沙ちゃん教えて!」

 

桃華「ですわ」

 

梨沙「同意が多いわよアンタさっきから」

 

桃華「ばんなそがな」

 

みりあ「あ、それこの前映画で見たやつ!」

 

梨沙「案外世俗に塗れてるのね」

 

桃華「わたくしだって映画くらい見ますわ!」

 

梨沙「そらあんなゲームやってるくらいだし」

 

みりあ「あんなゲーム? どんなゲーム?」

 

桃華「ぶいいった鼻叩かれましたわ早苗さん!!!!」

 

みりあ「なんで早苗さん」

 

梨沙「スマホゲームよスマホゲーム。大したものじゃないわ。あとここに早苗さんは……ん?」

 

梨沙「――――はいもしもし……え! 早苗さん!?」

 

みりあ「ええ……」

 

桃華「ほら」

 

梨沙「……。怒られたんだけど、あの人何者なの」

 

桃華「正義の元婦警アイドルですわ」

 

梨沙「理由あってアイドル」

 

桃華「最高ですわね」

 

みりあ「あっちに私たちより年下っているのかな?」

 

桃華「765さんにいるのは知ってますけれど……」

 

梨沙「間違ってもむこうにアタシのファンが取られることは無いだろうからマークしてないわ」

 

桃華「あら、315さんも侮れませんわよ? 元々男性で都合女装してアイドルやっていた人が男として改めてアイドルやってる会社ですし」

 

梨沙「謎ね」

 

みりあ「謎だね」

 

梨沙「そういや男装アイドルっていないわよね」

 

みりあ「男装する必要ないくらいかっこいい人はちらほら見るけどー」

 

梨沙「その人の為に名前は伏せてあげてちょうだい……」

 

みりあ「悪口じゃないのに」

 

桃華「あら、もうこんな時間……。お二人、紅茶は飲まれますか?」

 

梨沙「飲めるけどあんまり……」

 

みりあ「飲んだことなーい」

 

桃華「では砂糖入りでみっつ、お願いしますわ」

 

梨沙「誰に言って……うわっ!」

 

みりあ「すっごーい! 一瞬で持ってきたよ!!」

 

桃華「ふふ、うちの執事は有能ですので」

 

梨沙「有能とかそういうレベルじゃない気もする」

 

桃華「如何?」

 

みりあ「……。うん! まずい!」

 

梨沙「まずい」

 

桃華「お子様ですわねぇ……。折角二人のための高級茶葉ですのに」

 

みりあ「高級の紅茶なんて子どもがのむものじゃないよ〜。……もっと砂糖入れよ」

 

桃華「ああもう、それでは風味も何も」

 

梨沙「どうせここの砂糖も高級品でしょ。へーきへーき」

 

桃華「そうしておデブへ」

 

みりあ・梨沙「それ以上言ったら怒る」

 

桃華「全く。素直にジュースにしておけば良かったですわ……あら」

 

みりあ「ん」

 

梨沙「?」

 

桃華「莉嘉さんが到着されたみたいです。出迎えに行きましょう」

 

みりあ「はーい!」

 

梨沙「しょうがないわねぇ。付き合ってあげるわよ」

 

みりあ「嫌なら大丈夫だよ」

 

桃華「嫌なら大丈夫ですわよ」

 

梨沙「行く! 行くから!!」

 

みりあ「素直になればいーのに」

 

桃華「ああいうキャラですもの」

 

みりあ「キャラも大変だねー」

 

梨沙「キャラとか言うなこのロリ共ーー!!!」

 

 

 

 

 

 



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輿水幸子がモテモテになる小話。その1

 

 

 鷺沢家・文香寝室

 

 

文香「愛してます、幸子ちゃん」

 

幸子「んー」

 

文香「142cmという小柄な体格も、その体躯、勿論お顔も……」

 

幸子「なるほどー」

 

文香「外ハネの1本1本でさえ眩しい……どうか私と、結婚してください」

 

幸子「えー」

 

文香「お願いします」

 

幸子「もっとこう、文学少女らしい語録の深さを披露してみてくださいよ。そんな大それた言葉なら」

 

文香「………………」

 

文香「……では、毎日私の味噌汁を飲んでください。赤です」

 

幸子「ボク白味噌派なんですよねー」

 

文香「ガーン……。こちらが合わせるとしましょう」

 

幸子「ではその覚悟の証として、蓬莱の玉の枝を」

 

文香「……かぐや姫物語ですか。なるほど。そこまで嫌ですか」

 

幸子「ノンケですから」

 

文香「ノンケ……」

 

幸子「大体文香さんのソレは、ボクじゃなくて、女の子全般に向けた想いでしょう。まゆさんが嫌うわけですよ」

 

文香「愛らしい生き物を手中に収めたいと思うのは、子孫を残す本能として何もおかしな事ではないかと」

 

幸子「生まれる性別を間違えましたね」

 

文香「辛辣」

 

幸子「ご愁傷様です」

 

文香「あ。そうです幸子ちゃん」

 

幸子「んー」

 

文香「本日、茄子さんの朝番組で、開運☆茄子さんのモテモテ術なるものが」

 

幸子「胡散臭……くもないですね。茄子さんなら」

 

文香「というわけでやってみてください」

 

幸子「拒否権は?」

 

文香「拒否したら本気で抑え込んでディープキスします」

 

幸子「こわっ!!!」

 

文香「ではまずこう、手首を合わせて」

 

幸子「合わせて」

 

文香「深くお祈りを込めて」

 

幸子「込めて」

 

文香「そこに幸せの不思議な粒を少々」  

 

幸子「ちょ、なんですかそれ、どこの何ですか」

 

文香「芳乃ちゃんの集めた石についてたその辺りの砂です」

 

幸子「ええ……」

 

文香「そしてここに茄子さんの口付けをひとつ」

 

幸子「いないじゃないですか」

 

文香「いえいます」

 

幸子「どこに」

 

茄子「ここに♡」

 

幸子「ええ……」

 

文香「ではここに誓のキスを」

 

幸子「何言ってんですか」

 

茄子「誓います……///」

 

幸子「は?」

 

茄子「ちゅ」

 

幸子「ほんとにキスしたこの人……」

 

文香「おめでとうございます、これで幸子ちゃんはモテモテ確実です」

 

茄子「おめでとうございます♡ では私はこれでー」

 

文香「ありがとうございました」

 

幸子「あの人その為だけにここにいれたんですか」

 

文香「というわけで一緒に寝ましょう」

 

幸子「いつも言ってますけど、触らないでくださいね」

 

文香「ぎゅーは?」

 

幸子「可」

 

文香「もみもみは……?」

 

幸子「不可」

 

文香「残念」

 

幸子「残念って」

 

文香「揉みたかったです」

 

幸子「相変わらず衝撃の語彙力の無さ。文学少女ですよね?」

 

文香「文学少女です」

 

幸子「最近読んだ本は?」

 

文香「2019年星座占いの本」

 

幸子「は?」

 

文香「何だか妙に目に付いたので」

 

幸子「なんでもいいんですね。女の子の好みと同じですか」

 

文香「何を馬鹿な」

 

幸子「冗談です」

 

文香「おやすみなさい」

 

幸子「おやすみなさい」

 

 翌日・事務所前

 

幸子(……起きた時には文香さんがいなくて勝手に来ちゃいました)

 

幸子(なんかやりたい事ができたとか置き手紙残してましたけど……)

 

幸子(まあ、多分大丈夫でしょ)

 

蘭子「さーちこちゃんっ♡」

 

幸子「うひぁっ!?」

 

蘭子「闇に飲まれよ! 蘭子です〜♡」

 

幸子「は、はい、分かりますけど……なんで後ろからそんな」

 

蘭子「え? 幸子ちゃんがいたから」

 

幸子(い、いつもそんな抱き着いてくる人じゃないでしょーーー!?)

 

蘭子「いつにも増して今日はカワイさの塊、もうすりすりしちゃう。すりすりすりすり〜」

 

幸子「わ、ぷ、あ、へあ……っ。なに、なに……!?」

 

蘭子「もー、カワイイカワイイ〜」

 

幸子「わ、分かった、分かりましたから、離れて……」

 

蘭子「んにゃ〜!」

 

幸子「んにゃあ!? キャラはどうしたんですか! いつもならもうちょっと……」

 

蘭子「幸子ちゃんいい匂い〜……♡」

 

幸子「うう……。もういいです……このまま事務所に」

 

蘭子「やあ!」

 

幸子「やあじゃないの! 行きますよ!!」

 

蘭子「やあ〜!」

 

幸子「むぐ、ぐぐぐぐ……っ!」

 

蘭子「一緒に寮に帰る〜!」

 

幸子「仕事があるんですからー!」

 

みく「こーら」

 

蘭子「いたっ」

 

みく「朝っぱらから事務所の前でわちゃわちゃしてないの。みんなの邪魔でしょ」

 

幸子「み、みくさん……ありがとうございます……」

 

みく「ううんどうたし…………」

 

幸子「みくさん……?」

 

みく「…………」

 

みく(……むらっ)

 

幸子「あの……」

 

みく「あ、や、えっと。うん。何でもないにゃ」

 

幸子「……?」

 

蘭子「何でもなくない! 離せこの猫!!」

 

みく「お前らは頼むから名前を呼べ」

 

幸子「と、とりあえず行きましょう」

 

蘭子「む〜〜〜っ」

 

みく「唸ってないで、早く行こ」

 

蘭子「じゃあ幸子ちゃんと行く」

 

幸子「は、はい……?」

 

蘭子「手つなご?」

 

みく「は や く い く の !」

 

 事務所

 

幸子「結局手繋いで入室するハメに……」

 

蘭子「えへへへへへ〜♡」

 

幸子「はあ……おはようございまーす」

 

みく「おはようにゃー」

 

芳乃「おはようございますー、皆々様ー」

 

幸子「あれ、今日は芳乃さんだけですか?」

 

芳乃「はいー。あ、いいえー。さっき志希さんが来まして、お手洗いにー」

 

幸子「なるほど」

 

蘭子「他の女の子なんて見ちゃダメ幸子ちゃん!」

 

芳乃「はー?」

 

蘭子「今は私と一緒にいるのに余所見なんて……」

 

芳乃「……何でしてこれ」

 

幸子「いえ、ボクも何がなにやら」

 

芳乃「ほー……」

 

芳乃「……」

 

芳乃「…………?」

 

芳乃「何やら、体がー」

 

幸子「え?」

 

芳乃「……」

 

幸子「あ、あの、芳乃さん? なんで芳乃さんまでボクの側に」

 

芳乃「分かりませぬー。分かりませぬが……ここに、いたいのでして♡」

 

幸子「なんですか! なんですか!? めっちゃ怖いんですけどっ!?」

 

芳乃「怖いだなどとそのようなことはー。うふふ……♡」

 

幸子「ひえっ」

 

蘭子「ちょっと、幸子ちゃんが怖がってるでしょ。離れてください」

 

芳乃「はー? そちらこそ、この部屋に入った時点で、幸子さんはドン引きだったのでしてー」

 

蘭子「ドン引きなのはその態度ですー。急に手のひら返すみたいに幸子ちゃんに擦り寄ってきてなんなんですかー」

 

芳乃「なんでもないのですー。ただ幸子さんのお側は、とても心安らぐのでー」

 

蘭子「気持ちは分かりますけど気持ち悪い」

 

芳乃「そちらこそいつまで手を握っているのですかー。幸子さんが迷惑していますー」

 

蘭子「迷惑してるのはそっちですー。捜し物は得意でも人の心はわかんないんですかー?」

 

芳乃「はー?」

 

蘭子「あー?」

 

幸子「………………」

 

幸子(……なにこれ……)

 

みく「こら。二人ともその辺にしとくにゃ」

 

蘭子「ひゃっ」

 

芳乃「むー」

 

みく「ひゃっ、でもむー、でもないよ。どっちにも幸子チャン迷惑してるにゃ。ねえ?」

 

幸子「まあ、その……はい」

 

蘭子「う……ごめんなさい」

 

芳乃「ごめんなさいー……」

 

幸子「いいんですいいんです。そんなことより、なんで二人がそんなに引っ付いてきたのかが……」

 

志希「あ、やっぱり幸子ちゃんだ。やっほー」

 

幸子「あ、志希さん……。おはようございます」

 

志希「くんくん。うーん、嫉妬と色欲と困惑の匂い。志希ちゃん軽く困惑」

 

幸子「何言ってるんですか」

 

志希「幸子ちゃんさー。なんかした? 頭くらくらするくらいいい匂いするんだけど」

 

幸子「へ? ちょ、ちか」

 

志希「くんかくんか。うん。昨日までとは段違い。志希ちゃんとセックスしよか」

 

みく「……」

 

蘭子「深淵の闇へ誘うぞこら」

 

芳乃「その口消しますよー」

 

幸子「こっわ」

 

志希「ウソウソ。……ってハッキリ言えるほどウソでもないけど。パーセンテージで表すならきっかり50%くらい本気」

 

みく「何が言いたいの」

 

志希「みくちゃんも隠すの大変だねー。くすくす」

 

みく「…………」

 

志希「何が言いたいかって言うと、今の幸子ちゃんを見るとドーパミン物質が異常な程溢れちゃうみたい。かの人類学者、ヘレン・フィッシャーは恋心を麻薬と解析して、この物質が溢れ出る結果、愛という感情に成り代わっていくものだと――」

 

みく「つ、ま、り?」

 

志希「――まあつまり、今の幸子ちゃんを見ると、恋しちゃうってこと」

 

芳乃「ほー」

 

蘭子「へー」

 

みく「ふーん」

 

幸子「な、な、なんですかそれっ! なんでみなさんもちょっと納得した風なんですか!!」

 

芳乃「そう言われるとちょっと納得なのでしてー」

 

蘭子「右に同じ。我も納得した」

 

志希「志希ちゃんそんな効き目の早い惚れ薬制作にまだ成功してないんだけど、幸子ちゃんなんかしたの?」

 

幸子「え、何かって言われても」

 

みく「心当たりとか」

 

幸子「うーん。……あの、そんなに引っ付かれると考えにくいんですけど……」

 

芳乃「理由が分かったのなら単純でしてー♡」

 

蘭子「遠慮なく抱き着けるよね、幸子ちゃんすきすきー♡」

 

幸子「あつい……」

 

みく「こいつら」

 

志希「で、みくちゃんはなんで我慢してるの」

 

みく「みくは……その……」

 

志希「ははーん。発情期と被った? 年頃の女の子は大変だね〜」

 

みく「志希チャンだって大差ないくせに……」

 

志希「志希ちゃんは毎日性欲と恋心との戦い」

 

みく「また適当言って」

 

幸子「……あ。もしかして……」

 

みく「なにか思い当たる節が」

 

幸子「えっと、その。昨日文香さんと茄子さんが……」

 

    *

 

みく「何その胡散臭い話」

 

志希「でも茄子さんが主犯なら一眼に有り得ないとも言えないトコロ」

 

幸子「でしょう」

 

芳乃「なるほどー。そういった理由で、先日文香さんに集めていた石を拝借されたのですねー。すりすり」

 

蘭子「幸子ちゃんすきー♡」

 

幸子「二人はいい加減ちょっと離れてください……」

 

芳乃「それは無理でしてー」

 

蘭子「幸子ちゃんすきー♡」

 

幸子「……みくさんも志希さんもそんなに影響なさそうですよね……?」

 

志希「いや? 結構我慢してるよ」

 

みく「みくも。誰もいなかったら間違いなく押し倒してる」

 

幸子「そ、そうですか……」

 

志希「でも実際個人差はありそう。ねーねーお二人さん。それあたしに剥がされたらどうする?」

 

蘭子・芳乃「「殺す」」

 

幸子「殺す……」

 

志希「ね。志希ちゃんはそれほどじゃないもん。みくちゃんもかな。何となく性欲に回されてる感じ」

 

みく「そうだね。幸子ちゃん見てると濡れる」

 

志希「濡れる」

 

幸子「ひ……っ」

 

みく「本気で怖がる顔やめるにゃ」

 

志希「正直幸子ちゃんと今こうやって話してるのも危ないんだけどねー」

 

幸子「危ない……」

 

みく・志希「「犯しかねない」」

 

幸子「きょ、今日はボク帰ります!!」

 

蘭子「やーーーっ!!」

 

芳乃「帰しませぬよーー」

 

幸子「う、ううううう……っ!!」

 

志希「ま、とりあえずはその二人がいればあたしたちも手出すのは無理そうだし。今日はとりあえずココでゆっくりしてれば?」

 

幸子「でもボク、お仕事あるんですけど」

 

志希「それは志希ちゃんが何とかしとくから」

 

みく「……。なんか異様に親身じゃない?」

 

志希「幸子ちゃんには意地悪したくなって」

 

みく「親身って意味知ってる?」

 

志希「この場合は親身が意地悪になるの♡」

 

みく「あー」

 

幸子「…………。つまり、今日ボクはここでこうやってろと?」

 

志希「そゆこと」

 

みく「まあ幸子ちゃんが帰ろうとしたり動こうとしたところでどうしようもないと思うけど」

 

芳乃「幸子さんー♡」

 

蘭子「幸子ちゃんすきー♡」

 

幸子「……」

 

みく「だから今日一日、ラブコメ主人公やっててね」

 

志希「一日で済む保証は何処にもないけど」

 

幸子「怖い事言わないでください!」

 

志希「まーまー。さっきの話がほんとなら、文香ちゃんがいなかったっていうのも何か意味があるのかもしれないし。何なら電話してみたら?」

 

幸子「電話……。あの、文香さんに電話してもいいですか……?」

 

芳乃「理由は何となく分かりましたがー、生憎と、今わたくしは幸せなのですー」

 

蘭子「私も幸せ。この気持ちがある限り幸子ちゃんから離れたくない」

 

幸子「つ、つまり……?」

 

芳乃・蘭子「「駄目」」

 

幸子「らしいです」

 

志希「にゃはは。たまには仕事のない日に来てみるもんだね、こんな面白いコトに出会えるなんて」

 

幸子「〜〜〜〜〜っ」

 

志希「あー面白い。あたし今日ずっと幸子ちゃんの近くにいるね」

 

蘭子「あ?」

 

芳乃「はー?」

 

志希「勿論ちょい離れて。あんまり近いと匂いにあてられて理性トんじゃいそうだし」

 

志希(二人が怖いし)

 

みく「あーはいはい。じゃあみくはお仕事の時間だから」

 

幸子「行ってらっしゃい……」

 

志希「また一緒にお仕事しよーねー」

 

みく「二度とごめんにゃ」

 

志希「にゃはは」

 

芳乃「好きにするがいいのでしてー」

 

蘭子「そうですね。ところで芳乃さんも離れていいんですよ」

 

芳乃「はー?」

 

蘭子「幸子ちゃんは私のなので」

 

芳乃「わたくしのです」

 

蘭子「私の」

 

芳乃「わたくしの」

 

蘭子・芳乃「「………………」」

 

幸子「両脇で険悪な雰囲気出さないで! ボクは誰のものでもないんです!!」

 

蘭子・芳乃「???」

 

幸子「何言ってんだこいつみたいな顔もやめてください!!」

 

幸子「あーーもーーーー!!!」

 

 

 

 つづく。

 

 

 

 

 

 



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輿水幸子がモテモテになる小話。その2

 

 

 事務所

 

 

蘭子「幸子ちゃーん♡」

 

芳乃「幸子さんー♡」

 

幸子「幸子です」

 

幸子(あれから数十分)

 

幸子(相変わらずお二人は全然離れてくれる様子もないし、志希さんはほんとに離れて見てるし、みくさんはお仕事行っちゃうし)

 

幸子(状況は何も好転していません)

 

幸子(どうも両腕に引っ付いてる二人は上手いこと折り合いつけたみたいで、接触せず仲良くやってるんですけど……)

 

幸子(どうするんですかこれ)

 

紗枝「おはようさんどすー」

 

友紀「おっはよー」

 

幸子「あ、友紀さん紗枝さん……おはようございます」

 

蘭子「……おはよう」

 

芳乃「ございますー……」

 

蘭子・芳乃「「ぐるるるるるるる」」

 

友紀「な、なに? コレ」

 

紗枝「幸子はんのカワイイが大暴走どすか」

 

友紀「え、何それ」

 

紗枝「適当」

 

志希「おはよーおはよー。今日もいい天気だね〜」

 

志希(にゃはは。また新しい被験体が来てくれた。あの二人はどんな反応なのかなぁ。う〜ん楽しみ♡)

 

幸子(って顔してますね)

 

紗枝「志希はん。何? またあんたはんの仕業?」

 

志希「のんのん。志希ちゃん無罪。イメージで語っちゃダメだよ?」

 

友紀「日頃の行いでしょ」

 

紗枝「自業自得やな」

 

志希「手厳しい☆」

 

紗枝・友紀「うっざ」

 

志希「手厳しい」

 

紗枝「で、志希はんのしわざちゃうならどういうことなんどす? 幸子はんは渡せれへんのやけど」

 

友紀「そうだよ。あたしたちの幸子ちゃんだよ? それ」

 

幸子「それって」

 

蘭子「誰が決めました? 名前書いてあるんですか〜〜???」

 

友紀「書いてないけど」

 

芳乃「では誰のものでもないですねー。いっそ名前を刻んでしまいましょうかー」

 

蘭子「ここに油性ペンが」

 

幸子「嘘ですよね?」

 

芳乃「所有物の証ですー。愛ゆえですのでー♡」

 

紗枝「は。幸子はんのカワイイ顔を穢すとかありえへん」

 

芳乃「穢すのではなく刻むのでー」

 

友紀「言い方の問題でしょ? 傷付いたらどうしてくれんのさ」

 

芳乃「ぷっ。つく訳ないのでしてー」

 

蘭子「ばっかじゃないですか?」

 

芳乃「ユニットだかなんだか知りませぬが、そのような妄言を吐くそなたたちに幸子さんは預けられませんねー」

 

蘭子「これからは私たちが幸子ちゃんをいただきますから」

 

芳乃「目障りですので早く次のお仕事へどうぞー」

 

紗枝「貧乳」

 

芳乃「今は関係ないですねー???」

 

紗枝「キレてんの?」

 

芳乃「特にー」

 

紗枝「器ちっさ」

 

芳乃「……」

 

友紀「キャラはどうした銀髪」

 

蘭子「黙れ年増」

 

友紀「あ?」

 

蘭子「あ?」

 

幸子「いつもより口の悪さ倍まししてません?」

 

志希「愛に塗れたオンナは醜くなるもの。いつだって時代がそれを証明している……」

 

幸子「ボクも女なんですけど」

 

志希「今日の幸子ちゃんはいい匂いだから実質異性!」

 

幸子「分からない」

 

志希「っていうかあたしの目に狂いがないなら、あの二人平常運転だと思うんだよね。気持ち高まってるけど」

 

幸子「平常運転」

 

志希「常時から幸子ちゃん大好きってコト」

 

幸子「それはそうですよ」

 

志希「わお」

 

幸子「二人がボクのこと大好きなんて常識です」

 

志希「すごい自信。分かっちゃった、茄子ちゃんのおまじないの効果」

 

幸子「え?」

 

志希「にゃはは」

 

紗枝「何を当たり前のこと言うてはるん志希はん。うちらはただ幸子はんに悪い虫が付かんように思て」

 

芳乃「そういうのを、小さなお節介大きなお世話と言うのでしてー」

 

紗枝「あ?」

 

芳乃「幸子さんももう小さな子供ではないのですからー、自分の生きる道は自分で決めますよー? ねー」

 

幸子「はあ、まあ。なので離れてくれると」

 

芳乃「無理でしてー」

 

幸子(自分で決めれないじゃないですか)

 

紗枝「えろぅ調子乗ってはりますなあ。その辺にしといた方がええんちゃう?」

 

芳乃「わたくしの勝手ですゆえー」

 

紗枝「それ以上引っ付かれると幸子はんが臭なるわ」

 

芳乃「……今なんと?」

 

紗枝「く、さ、な、る、言うてん。つんぼ? 頭沸いてる?」

 

芳乃「幸子さん、しばし失礼しますねー」

 

幸子「え、ああ、うん」

 

紗枝「おーこわこわ。そないな殺意篭った目で見られたらうちチビってまいます〜」

 

芳乃「女子に向かってあろう事が臭いなどと、言っていいことと悪い事がありますねー」

 

紗枝「前からあんたはんのことは気にいらんでんな」

 

芳乃「こちらの台詞ですー。時折並べられるのはつくづく不快に思っておりましてー」

 

紗枝「こっちの台詞やわロン毛貧乳」

 

芳乃「それしか言えないのですか性悪チビ」

 

紗枝・芳乃「「………………」」

 

友紀「じゃあ蘭子ちゃんもどこっか?」

 

蘭子「嫌ですけぐえっ!」

 

友紀「意見なんて聞いてない。早くどけっての」

 

蘭子「く、首根っこを掴むな!!」

 

友紀「んな服着てるから掴みやすいんだって。ぽい」

 

蘭子「〜~~っ」

 

友紀「ほら、幸子ちゃん平気? あーもうこんなに服皺くちゃになっちゃって」

 

幸子「ボクは平気です。まあ、服も後でアイロンでもかければ」

 

友紀「聞いたよ、お仕事休まされたんだってね。よしよし。辛かったね」

 

幸子「いやそこまでては」

 

蘭子「分かりましたよ……」

 

友紀「何か言った?」

 

蘭子「分かりました! そんなに幸子ちゃんが大事っていうなら、勝負しましょう!」

 

友紀「勝負〜?」

 

蘭子「幸子ちゃんを賭けた真剣勝負です、紗枝ちゃんと芳乃ちゃんにも参加してもらいます」

 

紗枝「アホくさ」

 

芳乃「逃げるのでして?」

 

紗枝「やる意味ないだけどす。勝敗なんて目に見えてる」

 

芳乃「ならば紗枝さんは不戦敗ということでー」

 

紗枝「ああもう。っざいな、やるわ、やります」

 

蘭子「じゃあまずルールを」

 

まゆ「その勝負、まゆも参加していいですかぁ?」

 

蘭子「はぁ? 横槍は禁止――――げっ」

 

まゆ「あらぁ、まゆの参加はなしですかぁ? ショックです……」

 

紗枝「また面倒くさいのが……まゆはんいつからおったん」

 

まゆ「今来たところですよぉ、おはようございます♡」

 

幸子「おはようございますー」

 

友紀「はよー」

 

紗枝「おはよう」

 

芳乃「おはようございますー」

 

蘭子「……おはようございます」

 

志希「おはよ~」

 

志希(何だかんだちゃんと挨拶は交わすんだよね。調教されてるなあ)

 

まゆ「蘭子ちゃん、煩わしい太陽はなしですかぁ?」

 

蘭子「き、今日はおやすみです」

 

まゆ「残念。また聞かせてくださいねぇ、うふふ」

 

志希(幸子ちゃん幸子ちゃん)

 

幸子(な、なんですか急に小声で)

 

志希(志希ちゃんの考えが正しいなら、今すぐ逃げた方がいいと思うな)

 

幸子(と言うと……?)

 

志希(多分ね、まゆちゃんは幸子ちゃんにガチ恋する方だと思う。蘭子ちゃんと芳乃ちゃん以上に)

 

幸子「え゙っ」

 

まゆ「ん? どうしたんですか、幸子ちゃ――――」

 

まゆ「 き ゅ ん ♡ 」

 

幸子「えっ」

 

紗枝「今なんか」

 

友紀「やな予感が」

 

志希「みんな争い中止! 早くまゆちゃんか幸子ちゃんを捕獲!!」

 

志希「――――――」

 

志希「もう遅かった」

 

蘭子「……幸子ちゃんとまゆちゃんが消えた……」

 

志希「具体的には、超速でまゆちゃんが連れ出しちゃったね」

 

芳乃「幸子さん、幸子さん……」

 

紗枝「芳乃はんがふらふらしよる……。なあ志希はん、何があったん。なんかおかしいって皆」

 

友紀「そーだそーだ、説明しろー」

 

志希「ああまあ、二人にもちゃんと話しておかないとか……めんどくさ」

 

       *

 

紗枝「なるほど……茄子はんの朝番組かあ」

 

友紀「胡散臭……くもないか。あの人なら」

 

志希(みんなこの反応だにゃあ。おもしろ)

 

芳乃「幸子さん……幸子さん……」

 

蘭子「幸子ちゃん……うう……」

 

紗枝「禁断症状みたいなっとる。えげつな」

 

友紀「でもなんであたしたちには効果ないんだろ」

 

志希「んにゃ、あると思うよ。ただ元々幸子ちゃん大好き〜♡ だから効果薄いだけ」

 

紗枝「ほなら志希はんとみくはんはなんで平気なん?」

 

志希「正確には平気じゃないし予想だけど、多分ここ最近で文香ちゃんと茄子ちゃんと幸子ちゃんに深く関わった人ほど、症状が深くなってるんだと思う。それで大した関わりがなかったあたしたちみたいなのは幸子ちゃんを性の対象として見ちゃう程度で収まってるんだろうね。そこの二人はたしか最近文香ちゃんの家に泊まりに行ってるらしいし、今までとのギャップで今廃人みたいになっちゃってるだけで、好きの容量は上限があるのなら二人と大差ないと思うし、だけどもし上限がないのなら問題はまゆちゃん。まゆちゃんも文香ちゃんの家に泊まりに行ったり年始は茄子ちゃんと過ごしてたり普段から幸子ちゃんと割と一緒にいることが多いし何よりあの性格だから早くしないと何しだすか本気でわかんないし大変な」

 

紗枝・友紀「「10文字以内でまとめろ」」

 

志希「幸子ちゃんがヤバイ」

 

蘭子「幸子ちゃんの貞操を守らないと」

 

芳乃「まゆさんの魔の手から……」

 

紗枝「早いとこ手分けして探しまひょ」

 

友紀「何されるかわかったもんじゃないしね」

 

志希「ねえ、あたしが見つけたら犯していい?」

 

「「「殺すぞ」」」

 

志希「殺す……」

 

 

 ???

 

 

幸子「んーーー! んーーー!!」

 

まゆ「うふふ……♡ 手鎖されて口を塞がれた幸子ちゃんも可愛い……♡」

 

幸子「……! っ!!」

 

幸子(怖い怖い怖い怖いやられるやられるやられるやられる)

 

まゆ「何を言ってるのか全く分かりませんけど何を思ってるかは分かりますよぉ、式は国内がいいですよねぇ♡」

 

幸子(びっくりするぐらい何もわかってない!)

 

まゆ「え? ハネムーンも国内? 幸子ちゃんは日本好きなんですねぇ、可愛い♡」

 

幸子(ちょっと何言ってるか)

 

まゆ「大丈夫です、既成事実は女の子同士でも頑張れば作れますから♡♡♡」

 

幸子(何も大丈夫じゃない!)

 

まゆ「ということで……うふふふふ♡♡」

 

幸子「〜〜っっ!!!!!!!」

 

幸子(誰か! 助けてくださいーー!!)

 

文香「そこまでです!」

 

まゆ「その声は! ……うっ、眩しい」

 

幸子(眩しい……! 真っ暗でここがどこかも分からなかったけど、これで……!)

 

文香「とうっ!」

 

幸子(文香さんがなんかよく分からないけど高い所から飛んだ!)

 

文香「いだっ!!!」

 

まゆ・幸子「「………………」」

 

文香「だ、大丈夫です、平気です」

 

まゆ「な、何ですかあなたは」

 

文香「ふふふ、なんだかんだと聞かれたら!」

 

茄子「答えてあげるが世の情け!」

 

幸子(何か増えた!)

 

文香「幸子ちゃんがピンチの時、颯爽と使っていない空き部屋に現れる一筋の花……」

 

茄子「扉の鍵を閉めても、先に部屋に居れば問題ありませんからね〜。あ、一輪の花!」

 

幸子(使ってない空き部屋だったんですね。ロッカーから降りてきたんですか)

 

文香「茄子さん、幸子ちゃんのお口を」

 

茄子「はい〜、はっ!」

 

幸子「ん゙っ。……あ、口のロープが解けた……」

 

まゆ「ばんなそがな」

 

幸子「ばんなそがな」

 

茄子「ふふふ、茄子さんにかかればあら不思議、幸運な事に幸子ちゃんの口のロープは結び目が緩んじゃうんです♡」

 

まゆ「相変わらずぶっ飛んだ人生チートぶり。まゆも思わず感服します……ですが」

 

幸子「えっ? ……ぎゃーーーーっ!!!!」

 

まゆ「コレならどうですか? 幸子ちゃんを人質にとりました、この可愛いお顔を傷付けられたくなければ、今すぐ部屋から出ていってくださいねぇ♡」

 

幸子「刃物ーーーー!!!!!」

 

まゆ「ごめんなさいねぇ、ほんとはこんなことしたくないんですけど、二人の将来のため……!」

 

文香「く、なんと卑怯な……!」

 

茄子「こんなことも! 茄子さんにおまかせです♡」

 

まゆ「いくら茄子さんと言えど、拘束された幸子ちゃんの目の前に突き付けたナイフ……どうしようもありません!」

 

茄子「それはどうでしょう。……あら? まゆちゃん。そのナイフ、どこかおかしくありません?」

 

まゆ「何を馬鹿な、そんな見え見えな嘘に」

 

幸子「……あ、これ、おもちゃのナイフですね。先端がぐにゃぐにゃです」

 

まゆ「ばんなそがな!」

 

幸子「ばんなそがな」

 

まゆ「っく……! でも幸子ちゃんは渡せません! この部屋から出て行けば……!」

 

文香「こんなこともあろうかと! 扉を閉めると外のほうきが扉をロックする仕組みにしてあります!!」

 

まゆ「な、なんだってーー!!!」

 

茄子「文香ちゃん!」

 

文香「はい! トドメですまゆちゃん! 必殺……!」

 

文香「アンリバー……ブレイク!!!」

 

まゆ「あご……っ」

 

茄子「命中!!!」

 

文香「やりました……」

 

幸子「本をぶつけただけですよね。まゆさん? まゆさーん?」

 

文香「はあ、はあ、激しい、戦いでした……」

 

茄子「そうですね……。文香ちゃんも、そんなに傷付いて……」

 

幸子「さっきロッカーから降りて足首挫いただけですよね」

 

文香「巨悪は退治しました……。幸子ちゃん、大丈夫ですか?」

 

幸子「ボクよりまゆさんがやばそうです。コブとか出来たら一大事ですよ?」

 

茄子「かくして、幸子ちゃんの危機は去った」

 

幸子「モノローグ入れない」

 

茄子「鷺沢文香と鷹富士茄子が原因で始まったこの戦いは、彼女たち自身の手で幕を下ろしたのだ」

 

幸子「はあ」

 

文香「幸子ちゃん……驚かず聞いてください。今日幸子ちゃんがモテモテになったのは、何を隠そう私たちのせいだったんです」

 

幸子「知ってます」

 

文香「なんと」

 

幸子「で、こんな事になったからには、治してくれるんですよね?」

 

文香「無理です」

 

幸子「は?」

 

茄子「なななんとぉ! そのおまじないの効果は、今日1日持続するんです!」

 

幸子「は?」

 

文香「ちなみに私たちにも作用します。ああ、幸子ちゃん……」

 

幸子「ちょ」

 

茄子「ここで待っていたのも、まゆさんに捕えられた幸子ちゃんを助けるついでに可愛がるためだったので……うふふふ♡♡♡」

 

幸子「ひ……っ」

 

文香「それでは」

 

文香・茄子「いただきます♡♡♡」

 

幸子「だ……っ!」

 

幸子(誰か助けてーーー!!!)

 

「「「ちょっとまったーー!!!」」」

 

文香「!?」

 

幸子「た、助か……」

 

芳乃「ほぉら、ここでしてー」

 

紗枝「うちの幸子はん二人占めとかええ度胸やないの」

 

友紀「ケツバットでそのでかいお尻もっとでかくするよ!」

 

蘭子「幸子ちゃんーーーーっ♡♡♡」

 

幸子「てないーーっっ!!!!」

 

芳乃「わたくしたちを出し抜けるとでも思っていたのでしてー?」

 

文香「ち……っ。仕方ないですね、全員で愉しむということで妥協しましょう」

 

茄子「今舌打ちしました?」

 

文香「幸子ちゃんもいいですよね?」

 

茄子「今舌打ちしました?」

 

幸子「良いわけないですけど!」

 

文香「答えは聞いてません」

 

紗枝「どの道もう幸子はんに逃げ場あらしまへんし……♡」

 

蘭子「幸子ちゃんーーーー♡♡♡」

 

まゆ「うう……何が……? あ! 幸子ちゃんが!」

 

茄子「あらあら、まゆちゃんも起きてしまいましたねぇ」

 

幸子「な、な、な……!」

 

友紀「さあ、観念して……」

 

「「「幸子ちゃ〜〜〜ん♡♡♡」」」

 

幸子「なんなんですかこれはーーーっ!!??」

 

 

      *

 

 

志希「かくして」

 

志希「昭和みたいなノリで、幸子ちゃんの騒がしい1日は幕を閉じたのであった」

 

志希「ちゃんちゃん」

 

 

 

幸子「納得いかなぁぁああーーいっ!!!!」

 

 

 

 

 

 



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Pの財布が無くなる小話。その1

 事務所

 

奈緒「プロデューサーさんの財布が無くなったあ!?」

 

響子「はい……今朝プロデューサーさんとお話してて、昨日の夜くらいから見当たらなくなったって……」

 

奈緒「マジかよ……警察とかには?」

 

響子「伝えてないそうです。運良くカードはポケットにあったから入ってないって」

 

奈緒「不幸中の幸いってやつか」

 

響子「ちなみにプロデューサーさんの財布には、お家の合鍵が毎日入っているんです」

 

奈緒「やばいやつじゃねーか」

 

響子「この事実は私とまゆちゃんで触れ回ってた時期があるので事務所公認なんです」

 

奈緒「ええ……」

 

響子「はい」

 

奈緒「それで、プロデューサーさんは?」

 

響子「今は昨日の夜の行動を振り返るって駆け回ってますね」

 

奈緒「駆け回る」

 

響子「夕方くらいから同じ行動を取ってみるって」

 

奈緒「仕事は?」

 

響子「さあ?」

 

奈緒「そういうとこ抜けてんだよなあの人……」

 

響子「悪口ですか♡」

 

奈緒「まさか」

 

響子「命拾いしましたね」

 

奈緒(だから言わねーんだよ)

 

響子「それでですね。まだこの話は奈緒ちゃんにしかしてないんですよ」

 

奈緒「何でまた」

 

響子「1番ヘタレですから」

 

奈緒「は?」

 

響子「あ?」

 

奈緒「ごめん」

 

響子「そういうとこですよ」

 

奈緒「お前は本気でなんかやりそうな目してるから……」

 

奈緒(とは言えない)

 

響子「そういうとこですよ♡」

 

奈緒「読心術やめろ」

 

響子「プロデューサーさんには言ってませんけど、財布は誰かが盗ったと思ってるんですよね私」

 

奈緒「その心は?」

 

響子「鍵目的ですよ」

 

奈緒「ああ……」

 

響子「プロデューサーさんのお家も皆さん知ってます。基本的に接触云々の類は私かまゆちゃんが守っているのでありえませんが……」

 

奈緒「鍵さえ持ってりゃ仮に深夜帯だろうが忍び込めるってハナシか」

 

響子「可能なら毎日24時間体制で見張っておきたい所ですが……。物理的なものには逆らえませんから」

 

奈緒「っていうか、プロデューサーさんの家はタブーって決めただろ?」

 

響子「それはあくまで個人的な要件に限った話です。仮に深夜忍び込むところを捕まえたとしても、財布を渡しに来たという大義名分があればギリギリセーフです」

 

奈緒「深夜帯の時点で充分アウトだろ……」

 

響子「セーフです」

 

奈緒「お前が言うならそうなんだろうよ」

 

響子「ということでへたれ奈緒ちゃん」

 

奈緒「うるせえ」

 

響子「私と一緒に犯人探ししましょう」

 

奈緒「盗まれたの確定してくのかよ」

 

響子「当然です」

 

奈緒「っていうか夜に見当たらなかったっていうなら、プロデューサーさんの家じゃないのか?」

 

響子「いえ、無くしたことに気が付いたのは事務所らしいです。その日はそのまま事務所で泊ったとか……ああ、可哀想なプロデューサーさん」

 

奈緒「可哀想なのは確かだけど。犯人捕まえたらどうすんの」

 

響子「しばらく藍子ちゃんと智絵里ちゃんとのお仕事に同行させます」

 

奈緒「うわ」

 

響子「プロデューサーさんに苦痛を味合わせた分胃をキリキリさせてあげますね」

 

奈緒「……あたしじゃないぞ」

 

響子「知ってますよ。奈緒ちゃんが人の物盗めるわけないじゃないですか(笑)」

 

奈緒「なんか腑に落ちない」

 

響子「一応ある程度の目星も付けてあるんです」

 

奈緒「というと?」

 

響子「当然、昨日事務所に来てた子たちですよ」

 

奈緒「まあそうなるか」

 

響子「奈緒ちゃんは助手です。ワトソンくんですね」

 

奈緒「はあ」

 

響子「お手」

 

奈緒「はあ?」

 

響子「ワトソンくんってなんか犬みたいな響きじゃないです?」

 

奈緒「わからん」

 

響子「音楽性の違いですね……」

 

奈緒「解散してもいいぞ」

 

響子「しません」

 

奈緒「っていうかさ、思ったんだけど」

 

響子「はい」

 

奈緒「落とし物の可能性もあるなら、芳乃か茄子さんにも手伝ってもらえばいいじゃん」

 

響子「駄目です」

 

奈緒「何で」

 

響子「そんなのオチ担当だからに決まってるじゃないですか」

 

奈緒「オチってお前」

 

響子「今回は私が主人公なのでチートの使用は許可しません」

 

奈緒「お前もしかして最近唯と遊んだりしたか?」

 

響子「お泊りしましたね」

 

奈緒「なるほど」

 

響子「?」

 

奈緒「いや」

 

響子「というわけで行動開始です。まず1人目ですね」

 

奈緒「事務所には文香とみくがいるな」

 

響子「あ、二人とも昨日事務所に顔出してますね!」

 

奈緒「そうなのか」

 

響子「丁度いいです、みくちゃんにお話を伺うことにしましょう」

 

奈緒「乱暴はすんなよ」

 

響子「当たり前じゃないですかあもー。おーい、みくちゃーん!」

 

みく「んー? どうしたの響子ちゃに゙ゃ゙ーーーーー!?」

 

響子「 は や く だ せ 」

 

みく「なんにゃーーーーーっっ!!??」

 

奈緒「乱暴はすんなって!!??」

 

みく「乱暴とかいうレベルじゃないにゃ! ソファで転がってたら真横に包丁が飛んできたんだけど!?」

 

響子「みね打ちです♡」

 

みく「先端にみねはないにゃ!!」

 

響子「うるさいですねえ。黙って隠してるものを差し出せばいいんですよ」

 

みく「何!? 何なの!? 何の話!?」

 

響子「次はその喧しい舌にぶっ刺しますよ」

 

みく「ひぃぃぃぃいいい!?!?」

 

奈緒「ああ……。押し倒したーーー!! うわーーー! 包丁構えたーーー!!!」

 

響子「カウントダウンします。隠すと身になりませんよ。3、2、1……さよならみくちゃん」

 

奈緒「振り下ろしたーーー!!!」

 

みく「ぎゃーーーーーー!!!!!」

 

みく「ーーーーっっ!!!!」

 

みく「………………」

 

みく「…………う」

 

みく「あれ……?」

 

響子「残念です、ハズレみたいですね」

 

奈緒「みたいだな」

 

みく「なに……? なになに??? みく、生きてるの……?」

 

響子「さすがにあれだけされて何にも出してこないなんて考えにくいですからねー」

 

奈緒「次は文香か?」

 

響子「文香ちゃんは外面内気文学少女その癖クソレズなのでありえないでしょう」

 

奈緒「それもそうだな」

 

響子「押し倒しても包丁構えても恍惚としてそうで怖いですし」

 

奈緒「(笑)」

 

文香(全部聞こえてるんですけどね)

 

響子「というわけで次の容疑者が来るのを待ちましょう」

 

みく「おいこら説明しろや!!!!」

 

響子「あれ、まだいたんですか」

 

みく「まだいたんですか。じゃないにゃ!!! こちとらいきなり死に掛けて訳わかんないんだけど!?」

 

響子「うるっさいですねえ。当てないに決まってるじゃないですか」

 

みく「そういう問題に見える!!??」

 

響子「見えます」

 

みく「節穴が!!!」

 

奈緒「まあまあ一旦落ち着けって。あたしが説明してやるから」

 

みく「はー、はー……! 納得いかなかったら1発ぶん殴るにゃ……」

 

響子「殴られたくはないので、お願いしますね、ワトソンくん♡」

 

奈緒「それやめろっつうのに」

 

 

      *

 

 

奈緒「というわけだ」

 

みく「犯人探しぃ……? たしかに昨日はみくも事務所入りしたけど……」

 

響子「疑われる理由としては充分ですよね???」

 

みく「まあ理由としては……」

 

奈緒「最初は何やってるんだと思ったけど途中で分かったから止めなかった」

 

響子「奈緒ちゃん偉い」

 

奈緒「へへ」

 

みく「へへて」

 

響子「ちなみに早く出せって言うのは財布の話ですよ」

 

みく「知ってる」

 

響子「なんと」

 

みく「ところでみくのこのやり場のない感情はどこへ向けりゃいいの」

 

響子「文香ちゃんでも叩いて発散させればいいのでは?」

 

文香「えっ」

 

みく「なるほど」

 

文香「えっ」

 

スパーン!

 

文香「あ゙っ♡♡♡♡♡」

 

奈緒「いい音したなあ」

 

みく「とりあえずはこれで良しとするにゃ。ありがとね文香チャン」

 

文香「ありがとうございます……♡♡ ぐふ」

 

奈緒「お礼にお礼で返すっておかしくね」

 

響子「でもさすがにあの方法は乱暴すぎるかなと思いました」

 

みく「あと数分早く思って欲しかったにゃ」

 

奈緒「普通に犯罪沙汰だしな」

 

響子「でも暴力はいけませんし」

 

みく「あれは暴力じゃない……?」

 

響子「それで、みくちゃんは何か心当たりとかありますか?」

 

みく「え? うーん」

 

奈緒「昨日誰かと一緒にいるところを見たとか」

 

みく「誰かと……ああ、直接見た訳じゃないけど、昨日の夜の最後のお仕事は子どもたちと一緒だったらしいよ」

 

響子「子どもたち……。ああ、桃華ちゃんたちですか?」

 

みく「うん。夜は危ないから送ってくためにって」

 

響子「ロリコンという噂は本当だった……?」

 

奈緒「普通のことだろ」

 

響子「あーなるほど。つまりあの子たちがプロデューサーさんの財布を盗んだと」

 

奈緒「それはないな」

 

みく「ないにゃ」

 

響子「さすがにないですね」

 

奈緒「その仕事、他に誰かいなかったのか?」

 

みく「えーっと……たしか幸子チャンと唯チャンだったかな」

 

響子「ふむふむ。段々真相に近付いて来ましたね。いいですねいいですねえ」

 

奈緒「ホントかよ」

 

響子「ふふ、まあ見ていてください。このあと事務所入りするのは幸子ちゃんなんですよ」

 

奈緒「みたいだな」

 

響子「その時にこう、ちょちょっと」

 

奈緒「ちょちょっと」

 

みく「言っとくけど、刃物は駄目だよ。普通にショック死するレベルにゃ」

 

響子「えー」

 

みく「えーじゃないの」

 

奈緒「いくら幸子に対してもやっていいことと悪いことがあるんだぞ」

 

響子「?」

 

奈緒「いやその、何言ってんのこいつ。みたいな顔はやめろ」

 

響子「へタレというだけでなく観察眼も甘いですねえワトソンくんは」

 

奈緒「うるせえ」

 

響子「やっていいことと悪いことの区別くらいは付いてるつもりですよ」

 

みく「どの口が言うのにゃ」

 

響子「みくちゃんにもやっていい範囲しかしてませんもん。ほら、現時点で私怒られてないでしょ?」

 

奈緒「その代わりそこで文香が伸びてるけどな」

 

文香「(ちーん)」

 

響子「幸せそうじゃないですか」

 

みく「幸せそうならいいっていう発想が怖いにゃ」

 

響子「私のことも殴ります?」

 

みく「遠慮しとく……」

 

響子「ほーら怒られない」

 

奈緒「果たしてこの横暴ぶりを許していいものか」

 

響子「横暴とは聞き捨てなりませんね」

 

奈緒「横暴じゃないと???」

 

響子「違いますよ」

 

みく「どの辺りが」

 

響子「プロデューサーさんに刃物を向けたことはないです」

 

みく「そりゃそうにゃ」

 

奈緒「そりゃそうだ」

 

響子「なんていい子……」

 

奈緒「刃物キャラは色々とヘイトを集めやすいから気を付けろよ」

 

響子「はーい」

 

みく「キャラって」

 

奈緒「どうも今事務所ではゲームが軽いブームを起こしてるらしい」

 

みく「ふむ」

 

奈緒「ギャルゲーだぞ」

 

みく「ええ……」

 

響子「どうも姉の方が隠し持ってたのを妹に見つかって、それを唯さんがやったら一気にぶわーと」

 

奈緒「せめて名前を呼んでやれ」

 

響子「姉ヶ崎」

 

奈緒「間違ってはないがな……」

 

響子「ぺっ」

 

奈緒「なあみく」

 

みく「なんにゃ」

 

奈緒「何で美嘉はいたる所でこんな扱いを受けてんだ」

 

みく「知ったこっちゃないにゃ」

 

響子「相性が悪いだけですよーだ。おやおや? この音は」

 

みく「さあ来たね。下がってるにゃ」

 

奈緒「あたしもそうする……」

 

 

 

幸子「おはようござぁぁあああーーーーーーっっっ!!!!????」

 

響子「 は や く だ せ 」

 

幸子「なななななんですか!!?? 何なんですかぁぁ!?!?」

 

響子「今ならまだお説教くらいで許してあげますよ? さあ、さあさあさあ!!」

 

幸子「包丁ーーー!!!?? お母さーーーーん!!!!!!」

 

響子「私がお母さんですよ~~♡♡♡」

 

幸子「うわああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

みく・奈緒「「………………」」

 

みく「こういう感覚、なんて言うんだっけ」

 

奈緒「既視感、デジャヴ」

 

みく「それそれ、デジャブ」

 

奈緒「デジャヴな」

 

みく「デジャブ」

 

奈緒「デジャヴ」

 

みく「デジャヴ」

 

奈緒「よく出来ました」

 

みく「やっぱり響子チャンは怖いね」

 

奈緒「激しく同意しとく」

 

みく「そうして事務所には、幸子チャンの悲しい悲鳴が轟いたのであった」

 

奈緒「ちなみに言っとくけどまだ終わんねーぞこれ」

 

みく「えっ」

 

奈緒「響子様が満足してねーからな」 

 

みく「えっ」

 

 

 

みく「えっ」

 

 

 

 

 

 

 



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Pの財布が無くなる小話。その2

 

 

響子「逃げられちゃいました」

 

奈緒「必死の形相ってのはああいうのを言うんだろうなって」

 

響子「でも逃げたってことはやましいことがあるってことですよね。怪しい」

 

みく「ごく当たり前の反応だと思うにゃ」

 

奈緒「紗枝辺りに見つかるのも厄介極まりないし結果的に良かったんじゃないか?」

 

響子「でもまだ犯人じゃないって確証もないので」

 

奈緒「犯人だって確証もないだろ」

 

響子「ワトソンくん、捜査は決めつけで掛かって、間違っていたらごめんなさいでいいんです」

 

奈緒「どっかで聞いたいけすかねえ台詞だなおい」

 

響子「戻ってきたらまたやりますか」

 

みく「仕事場直行してるだろうし戻ってこないと思うけど」

 

響子「なら明日で」

 

みく「来るかなあ」

 

響子「来るまで待ちます」

 

みく「意外としつこいよね響子チャン」

 

響子「冗談はさておき、これからの作戦を考えないと」

 

みく「とりあえず刃物は禁止にゃ」

 

響子「はーい」

 

みく「す、素直」

 

響子「幸子ちゃんとみくちゃん以上に面白い反応してくれそうな人はいないので♡」

 

みく「…………」

 

響子「あ、乃々ちゃんは例外ですよ」

 

みく「はいはい」

 

響子「乃々ちゃんに刃物なんて向けられません。カワイソウで」

 

みく「可哀想」

 

響子「あーでも、本気で恐怖に塗れる顔って興奮する時ありますよね」

 

みく「ドン引きにゃ」

 

奈緒「ごめんちょっと分かる」

 

みく「え゙っ」

 

奈緒「漫画とかでは恐怖顔ふぇち、みたいな感じで意外に認知された性癖なんだよ」

 

みく「ええ……」

 

響子「奈緒さんきもーい♡」

 

奈緒「言い出したのはお前だろ」

 

響子「本気ではないので」

 

奈緒「あたしが無駄に性癖暴露したみたいになったじゃねえか」

 

響子「奈緒ちゃんが無駄に性癖暴露したんですよ」

 

奈緒「…………」

 

みく「作戦も何も、唯チャンが来るんじゃないの?」

 

響子「そういえばそうでした。とりあえずあの人にも聞いてみますか」

 

 

 

 

唯「おいっすー☆」

 

奈緒「おはー」

 

みく「おはよー」

 

響子「おはようございます、唯さん。早速なんですけど、ひとついいですか?」

 

唯「んあ? なぁに」

 

響子「Pさんの財布知りません?」

 

唯「Pちゃんの? 知らないよ」

 

響子「そうですか……ありがとうございます」

 

奈緒「…………」

 

みく「…………」

 

奈緒「え、終わり?」

 

響子「はい」

 

みく「うそやろ」

 

唯「?」

 

響子「だって知らないって言ってますし」

 

奈緒「いやいやいや、もっと脅したりとか」

 

響子「もー、私がそんな酷いことするわけないじゃないですか~♡」

 

みく「うそやろ」

 

唯「お。文香ちゃんまーたおっちんでるじゃん、ウケる~☆」

 

文香「(ちーん)」

 

唯「うりうり、今日はどうしたの? 誰かのパンツでも見た? 言い寄って反撃でもされた?」

 

文香「(ちーん)」

 

唯「なんかたんこぶ出来てない? 反撃されちゃったかぁ。よしよし」

 

文香「(ちーん)」

 

唯「可哀想だからユイのパンツ見せたげるね。ほれほれー(笑)」

 

文香「(ちーん)」

 

響子「……とまあ、ギャルゲーをこの事務所に広めた要因の1人ではありますが、あんな感じですし物盗んだりはしないでしょ」

 

みく「寝てる文香チャンの上で自分のスカート捲って遊んでる……」

 

奈緒「寝かせたのはお前だけどな」

 

みく「不可抗力にゃ」

 

奈緒「意味検索してこい」

 

響子「というわけで、調査は振り出しです。残念」

 

みく「そもそも1ミリでも進んでたかな……?」

 

響子「幸子ちゃんか唯ちゃんってとこまでは行ったんですけどね~」

 

奈緒「ぶっちゃけさ」

 

響子「はい」

 

奈緒「お前、誰かがPさんの財布盗ったとか考えてないだろ」

 

響子「ぎく」

 

みく「は?」

 

響子「待ってくたさい、まだオチには早いです!」

 

奈緒「駄目だ。もう芳乃呼ぶぞ」

 

響子「やーだー! やだやだ!!」

 

奈緒「みく」

 

みく「了解にゃ。……たしかこの辺に……あった、はいどうぞ」

 

響子「法螺貝しまって!!」

 

奈緒「はい耳閉じてー。ぶおおおおおおおおおお」

 

唯「耳ーーー!!!!」

 

奈緒「あっごめん」

 

芳乃「――――呼びましてー?」

 

響子「あ~……。来ちゃった……」

 

奈緒「相変わらず早いこと、ちなみにどこにいたんだ?」

 

芳乃「秘密でしてー」

 

みく「マジもはや魔法にゃ」

 

奈緒「まあいいや。Pさんの財布が無くなったみたいなんだけどさ、探してくれない?」

 

芳乃「はいはい。お安い御用でしてー」

 

響子「もー……」

 

みく「……っていうか、こんな方法があるのにみくたちはあんな目にあったの……?」

 

奈緒「響子の気まぐれ」

 

みく「納得いかねー!」

 

唯「ユイの耳ーーーー!!!!」

 

芳乃「むむむー」

 

奈緒「ありそうか?」

 

芳乃「むむー……」

 

響子「……おや?」

 

芳乃「……残念ながら、近場に財布らしき気は一切感じられませぬー」

 

奈緒「えっ」

 

みく「えっ」

 

唯「みみ……」

 

芳乃「言葉通りの意味ですよー。おそらく、誰かの手の中か、あるいはもっと別の場所にあるかー」

 

奈緒「マジかよ」

 

響子「これはやはり調査の必要アリですね!!」

 

みく「急に元気になった」

 

響子「だから言ったじゃないですか、誰かに盗られたんだって!」

 

奈緒「響子自身信じてなかった癖によく言うよ」

 

響子「それはそれ! これはこれ!」

 

奈緒「よく言うよ」

 

響子「ちょうど今Pさんから連絡も来ました。見つからなかったそうです。これは本格的に探さないと!」

 

みく「めっちゃ嬉しそう」

 

奈緒「どうしても探偵ごっこがやりたいんだな」

 

唯「あ、治った」

 

響子「それじゃあ、まずは改めて情報をまとめて――――」

 

茄子「――――おはようございます~」

 

響子「NO!!!!!」

 

茄子「きゃっ」

 

唯「海老反り響子ちゃん」

 

響子「どうしてこのタイミングで茄子さんが来るんですか!! 今から大冒険が始まるところなのに!!」

 

奈緒「キャラ崩れてんなー」

 

茄子「えっと……ごめんなさい?」

 

響子「謝るくらいなら何もせず座っててください!!!」

 

奈緒「朝の挨拶もしてないじゃん」

 

みく「響子チャンがこんなに取り乱してるところは中々見れないレア映像にゃ。動画撮っとこ」

 

奈緒「あ、後であたしもちょうだい」

 

みく「グループLINE載せとくにゃ」

 

奈緒「(笑)」

 

茄子「どうしたんですかー、響子ちゃんらしくもない」

 

響子「言いません! おすわり!」

 

茄子「えー、けちー」

 

響子「お! す! わ! り!」

 

茄子「わんわん♡」

 

響子「芳乃ちゃん!」

 

芳乃「はいー」

 

響子「今すぐ茄子さんを連れてお仕事に向かってください!」

 

芳乃「えー」

 

響子「また愛梨さんと一緒にお菓子作ってあげますから!」

 

芳乃「しゃーなしでしてー。ほら茄子さん、行きますよー」

 

茄子「わんっ♡」

 

芳乃「しかし大きい犬ですねー。いえに居たらとても邪魔そうですー」

 

茄子「ひどい」

 

みく「縁起は良さそうだけどね」

 

奈緒「一家に1人茄子さん」

 

茄子「みくちゃん……奈緒ちゃん……♡」

 

芳乃「置き場の分邪魔なだけでしてー」

 

茄子「ひどい」

 

響子「ほらほら、喋ってないで行ってください! 何か起こる前に!」

 

奈緒「ごめんな、呼び出しといて」

 

芳乃「構いませぬよー。ほら犬、こちらでしてー」

 

茄子「あーれー♡」

 

みく「………………」

 

奈緒「………………」

 

唯「仲良しだよね」

 

みく・奈緒「「確かに」」

 

響子「さてさてさてさて、オチ担当は二人ともいなくなりました。頑張って調査しましょう!」

 

奈緒「調査ねえ」

 

唯「ユイもやるー☆」

 

みく「昨日Pチャンと一緒に居て、まだ会ってないのって……」

 

奈緒「順当に言ったら、もう子供組の誰かなんじゃないか?」

 

みく「だね」

 

唯「子供組」

 

奈緒「梨沙かみりあか桃華」

 

響子「ファザコンかマセママガキかプロデューサーさんの好み」

 

みく「色々言いたいことはあるけど、Pチャンの好みって?」

 

響子「まゆちゃん曰く、ああいう髪型が好みらしいですよ」

 

みく「へー……」

 

響子「毛量足りませんね(笑)」

 

みく「さすがにキレそう」

 

唯「ユイはどうかな? Pちゃん的に」

 

奈緒「………………」

 

みく「………………」

 

響子「………………」

 

唯「な、なんで黙んの」

 

響子「絶対好きじゃないですか舐めてます? 殺しますよ」

 

唯「ええ……」

 

奈緒「そういう響子だって、やろうと思えばできる髪型じゃん?」

 

響子「そうですけど、一応好きでやってますし、何より」

 

唯「何より」

 

響子「まゆちゃんと被るのでノーサンキュー」

 

奈緒「個人的な理由すぎる」

 

みく「まゆチャンのこと嫌いなの?」

 

響子「大好きですけど? 私の認める恋のライバルですから!」

 

奈緒「(笑)」

 

響子「あ?」

 

奈緒「許して」

 

梨沙「――――おはよ。あれ、何だかお揃いみたいね」

 

奈緒「おーすヴァリサ」

 

みく「おはようにゃヴァリサチャン」

 

響子「おはようございますヴァリサちゃん」

 

唯「はよーヴァリサちゃん☆」

 

梨沙「ん」

 

みく「ヴァリサチャン、いきなりだけど、Pチャンの財布のこと、何か知らない?」

 

梨沙「財布?」

 

響子「ただいま調査中であります!」

 

梨沙「何そのテンション」

 

奈緒「妙に楽しんでてさあ、知ってる事あったら教えてよ」

 

梨沙「ふーん。知ってるわよ」

 

響子「え! どこで見ましたか!」

 

梨沙「見たっていうか、コレでしょ」

 

唯「あー! Pちゃんの財布ー!!!」

 

みく「どこで見つけたの!?」

 

梨沙「あのバカアタシの家に忘れてったのよ」

 

響子「バカ……?」

 

梨沙「……プロデューサー、アタシの家に忘れてったのよ」

 

響子「よろしい」

 

梨沙「送ってってくれたんだけど、パパがお礼にってお家に上げたのね。その時ポケットからずり落ちちゃったみたいで」

 

奈緒「なるほど……。あれ? 事件解決じゃね?」

 

みく「解決だね」

 

唯「えー? もう?」

 

響子「………………」

 

みく「響子チャン?」

 

響子「……納得いきません……」

 

梨沙「そう言われても」

 

響子「納得いきません!!!」

 

梨沙「そう言われても……」

 

響子「何で出てきちゃうんですか! そんな弱いオチでヴァリサちゃんはいいんですか!」

 

梨沙「っていうかアタシ今日オフで態々これ届けに来たんだけど」

 

響子「知りません! もう怒りました!! ヴァリサちゃんを智絵里ちゃんと藍子ちゃんのお仕事に同行させます!!!」

 

みく「うわ」

 

梨沙「はぁ!!???!?」

 

響子「私はもっと探偵ごっこしたかったのに! いきなり現れて水さすからいけないの!! プロデューサーさんに言いますから!」

 

梨沙「ば、ばか! 考え直して!」

 

奈緒「こうなったらもう駄目だろ」

 

梨沙「やだ!!!!!!」

 

響子「もしもしプロデューサーさんですか!? 例の枠はヴァリサちゃんでお願いします! 的場梨沙ちゃん!! はい! 怒ってません!! では!!」

 

唯「怒ってるよね」

 

梨沙「あぁ……」

 

響子「これ胃薬です!! ふんだ!」

 

梨沙「………………」

 

唯「なむ」

 

梨沙「ウソでしょ……?」

 

みく「頑張って」

 

梨沙「ウソでしょ…………」

 

奈緒「犯人って訳でもないのにやり過ぎだとは思うけどなあ」

 

響子「もう知りません! はい解散!!」

 

梨沙「………………」

 

文香「……梨沙さん……」

 

梨沙「文香……?」

 

唯「起きてたんだ」

 

みく「急に来るね」

 

文香「苦しい時は、私のおっぱいに飛び込んで来てもいいんですよ」

 

梨沙「………………」

 

文香「……ふふ。これで梨沙さんも私にドキムネ間違いな」

 

梨沙「死ね」

 

響子「次回! 的場梨沙の憂鬱!!」

 

梨沙「……ホントマジで勘弁して頂戴……」

 

 

 

 

 



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的場梨沙の憂鬱。

 事務所

 

 

まゆ「おはようございまぁす♡」

 

響子「おはです」

 

まゆ「あら、また響子ちゃんだけ?」

 

響子「また響子ちゃんだけですよー」

 

まゆ「ふうん。よっこいしょ」

 

響子「朝ごはんは食べましたかー?」

 

まゆ「食べましたー」

 

響子「お昼は?」

 

まゆ「今日はお弁当」

 

響子「よろしい」

 

まゆ「何様」

 

響子「まゆちゃんまゆちゃん」

 

まゆ「んー」

 

響子「事務所に来る途中、こんなものを拾ったんですけど」

 

まゆ「こんなもの」

 

響子「エロ本」

 

まゆ「は?」

 

響子「これを見て私は思ったんです」

 

まゆ「はあ」

 

響子「ギャップ萌えに挑戦してみようと」

 

まゆ「何故」

 

響子「私と言えばどういうイメージですか?」

 

まゆ「料理好きとか」

 

響子「他には?」

 

まゆ「家庭的とか」

 

響子「もう1個」

 

まゆ「しつこい」

 

響子「ちっ」

 

まゆ「そういうとこ」

 

響子「そんな私ですけど、全く新しい路線で攻めてPさんをメロメロにしてみようかと」

 

まゆ「メロメロ(笑)」

 

響子「は?」

 

まゆ「は?」

 

響子「どういう属性がいいですかね」

 

まゆ「うーん」

 

響子「わくわく」

 

まゆ「実はドSとか」

 

響子「時子さんみたいな?」

 

まゆ「アレはドSっていうか、ご主人様気質みたいな」

 

響子「それって差異あります?」

 

まゆ「ドMのご主人様でドSの執事メイドに責められるのは王道路線のひとつなのよ?」

 

響子「へー」

 

まゆ「時子さんがドSじゃないって言ってるわけではないけど」

 

響子「ドSって何すればいいんですか」

 

まゆ「さあ」

 

響子「ドS 女の子 検索」

 

まゆ「どんなのが出てくるの?」

 

響子「『男性にモテるドS女の特徴! 相性がいい男性のタイプとは』」

 

まゆ「ふうん?」

 

響子「PさんってS?」

 

まゆ「マゾ」

 

響子「ならこれは必須授業ですね!」

 

まゆ「そゆこと」

 

響子「えーっと、まとめると、Sな女は身勝手な女。時折弱みを見せる……」

 

まゆ「弱み?」

 

響子「実は責められるのに弱いとか」

 

まゆ「ない」

 

響子「ないですね」

 

まゆ「時代錯誤もいいとこ」

 

響子「ね」

 

まゆ「とりあえず私にSぶってみて?」

 

響子「このマゾ犬!」

 

まゆ「まじめに」

 

響子「Sぶるって言ったって、ああいうのは言葉の節々から漂うオーラみたいのがあるでしょ?」

 

まゆ「まあ」

 

響子「私には無理ですよ。人いじめるの苦手ですもん」

 

まゆ「ふーん」

 

響子「はい」

 

まゆ「そもそも実際内の事務所だけで200人弱いるわけだし、属性被らないのは難しくなぁい?」

 

響子「ですねぇ。この際被っても良いのでなんかないですか」

 

まゆ「ギャルとか」

 

響子「ギャル堕ち?」

 

まゆ「ただのギャル」

 

響子「なるほど」

 

まゆ「一部の童貞やマゾ男子にギャルは効果てきめんらしい」

 

響子「え~マジウケる~(笑)」

 

まゆ「殺したくなりました」

 

響子「はい」

 

まゆ「やめて」

 

響子「はい」

 

まゆ「男性恐怖症とか」

 

響子「男性恐怖症」

 

まゆ「男の人に触るとじんましんとかでちゃうの」

 

響子「いや出ませんし」

 

まゆ「フリでいいから」

 

響子「乃々ちゃんの下位互換になったりしません?」

 

まゆ「たしかに」

 

響子「うーん」

 

まゆ「そういえば」

 

響子「うん?」

 

まゆ「梨沙ちゃんどうなったの?」

 

響子「ああ、藍子ちゃんと智絵里ちゃんのお仕事に同行してもらってますよ」

 

まゆ「へぇ……」

 

響子「気になります?」

 

まゆ「あのお仕事、愛梨ちゃんと茄子さん以外に務まる子がいるとはとても思えないの」

 

響子「同意。っていうか私でも嫌です」

 

まゆ「まゆも」

 

響子「先週なんかスタッフのミスで泊まり先が一緒になっちゃったみたいで(自主規制)が(自主規制)するから(自主規制)(自主規制)で(自主規制)したらしいじゃないですか」

 

まゆ「(笑)」

 

響子「でもまあ仲間には何も危害を加えないのは保証済みですし、体は大丈夫よ。体は」

 

まゆ「体は」

 

響子「精神は別」

 

まゆ「梨沙ちゃん大丈夫?」

 

響子「ああ見えてメンタル強い方ですし大丈夫でしょ。多分」

 

まゆ「ふーん」

 

響子「まゆちゃん」

 

まゆ「なぁに響子ちゃん」

 

響子「おっぱい揉ませてください」

 

まゆ「どうぞ」

 

響子「遠慮なく」

 

まゆ「あん♡」

 

響子「うーん微乳」

 

まゆ「殺すぞ」

 

響子「まあまあ聞いてくださいよ」

 

まゆ「?」

 

響子「最近の子って発育いいじゃないですか」

 

まゆ「それ響子ちゃんが言うの?」

 

響子「私生まれたの8年前ですし。8年前の15歳ですし」

 

まゆ「闇」

 

響子「つまりまゆちゃんはにじゅう」

 

まゆ「あーあー聞こえない聞こえなーい」

 

響子「おっぱい欲しいって話です」

 

まゆ「直球な欲望」

 

響子「まゆちゃんにはないんですか? そういうの」

 

まゆ「ロリになりたい」

 

響子「は?」

 

まゆ「プロデューサーさんのロリコン疑惑があるでしょ? 1歳でも年はとりたくなくて」

 

響子「はあ」

 

まゆ「何なら桃華ちゃん辺りと入れ替わって誘惑したい」

 

響子「まぐわったら豚小屋行きですよプロデューサーさん」

 

まゆ「うぐう」

 

響子「それに、プロデューサーさんがもし生粋のロリコンなら三船さん辺りを勧誘するでしょうか」

 

まゆ「世間的なほら」

 

響子「うーん」

 

まゆ「桃華ちゃんがプロデューサーさんへ言った最初の言葉はあまりにも有名」

 

響子「わたくしを見る目がどうのこうの」

 

まゆ「完全に犯罪者のそれじゃないですか……」

 

響子「ああ、そういえば」

 

まゆ「?」

 

響子「こないだプロデューサーさんの好きな髪型云々の話してたじゃないですか」

 

まゆ「まゆがマウントとったやつ」

 

響子「はい。それで思ったんですけど、最近入った夢見りあむって子も大分プロデューサーさん好みじゃないですか?」

 

まゆ「!!!!!!!!」

 

響子「あれ、気付いてませんでした?」

 

まゆ「そんな……また恋敵が増えるだなんて……」

 

響子「しかもおっぱいが大きい」

 

まゆ「!!!!!!!!」

 

響子「まあ性格の方は公私共に15点ってとこですけど」

 

まゆ「響子ちゃん」

 

響子「はい」

 

まゆ「女は顔よ」

 

響子「身も蓋もない」

 

まゆ「ついでに体」

 

響子「それはまあ」

 

まゆ「その次に愛嬌」

 

響子「たしかに」

 

まゆ「つまり夢見りあむは?」

 

響子「なるほど?」

 

まゆ「そこでひとつ考えたの」

 

響子「闇討ち?」

 

まゆ「バカ。彼女のブラジャーを1週間ごとに小さくしていくことを」

 

響子「地味……」

 

まゆ「だけど効果はテキメン。最終的にまゆと同じカップに」

 

響子「パッツンパッツンになりません?」

 

まゆ「ふふふ」

 

響子「ふふふて」

 

まゆ「何? 響子ちゃんは夢見りあむの存在を脅威に思わないの?」

 

響子「特に」

 

まゆ「何故!」

 

響子「あの子に純粋な恋愛で負ける気がしないので」

 

まゆ「ほう」

 

響子「この先は知りませんよ? でも少なくとも今はあの子プロデューサーさんより事務所の仲間に視線が行ってるみたいですし」

 

まゆ「ふむ」

 

響子「おっぱいが大きいのは脅威ですけどそれだけですしね。顔なら負けてないと思います」

 

まゆ「まあ」

 

響子「そんな感じです。っていうかりあむちゃんの話題は私が挙げましたけど、実は他の新入りさんの方が興味あってですね」

 

まゆ「他のって言うと、えっと」

 

響子「りんごちゃんにイマドキサメ娘。吸血鬼と付き添いの毒舌メイドと銀髪の双子」

 

まゆ「名前言ってくれないと分かんないから」

 

響子「全くもう。まゆちゃんはもっと周りにセンサー張るべきですよ? プロデューサーさんへの毒牙はいつどこからやってくるか分かんないんですから」

 

まゆ「はぁい」

 

響子「じゃあそんな能無しまゆちゃんの為に、1人ずつ教えてあげますね」

 

まゆ「能無し」

 

響子「多少は知ってると思いますけど。はいではりんごちゃんもとい辻野りんごちゃんから」

 

まゆ「あかりちゃんでは」

 

響子「ごめんなさい素で間違えました。さて、山形からわざわざ山形りんごの良さを伝えるために上京してきた彼女。良くも悪くも素朴と言った風ですね」

 

まゆ「世間では新田美波ちゃんと道明寺歌鈴ちゃんを足して割ったみたいな顔だとか何とか」

 

響子「語尾の、んご。についてですけど、都会で流行ってると思ってたみたいです。どういうネットの使い方をすればそう思えるのか」

 

まゆ「聞く度に奈緒ちゃん辺りが微妙な顔をするのが面白い」

 

響子「プロデューサーさんへの恋愛感情……おそらく無いですね。彼女に関しては、それどころじゃない感が強いです」

 

まゆ「ふつう~」

 

響子「努力するのが苦手っていうなんかよくわかんない個性持ってますけど、うちは優しい人が多いですし、きっと上手くやっていけるでしょ」

 

まゆ「おっぱいは?」

 

響子「まあまあ」

 

まゆ「よし。次」

 

響子「サメ娘ちゃんもとい砂塚あきらちゃん。どうでもいいですけど私あきらって名前好きです」

 

まゆ「どうでもいい~」

 

響子「イマドキの娘ですよね。りんごちゃんと違ってネットも使いこなしますし。口調も……そこそこ丁寧。綺麗ではないけど」

 

まゆ「~っスとか言いそう。後輩キャラっぽい」

 

響子「概ね同意です。身体的な特徴としてはやっぱりギザ歯ですか。私たちの事務所では文字通り新ジャンルですね」

 

まゆ「180人以上いる中に入ってきて全くの新ジャンルってすごい」

 

響子「はい、すごいです。そして未知数。プロデューサーさんが無類のギザ歯ふぇちだったら私たちに勝ち目はありません」

 

まゆ「!!!」

 

響子「今のところ恋愛感情は持ち合わせていなさそうですが要警戒です。プロデューサーさんを悪く思ってなさそうなのもまた事実」

 

まゆ「おっぱいは?」

 

響子「そこそこです」

 

まゆ「よし次」

 

響子「夢見りあむは割愛。次は……白黒コンビですね」

 

まゆ「白黒」

 

響子「黒埼ちとせさんと白雪千夜さん。白黒コンビって言ってるのは多分私だけ」

 

まゆ「吸血鬼の方はどっち?」

 

響子「黒埼ちとせさんの方ですね。金髪長身の自由人。そういう意味では宮本フレデリカにも通じるとこがあるかもしれません」

 

まゆ「自由度は比じゃないけど」

 

響子「さっきも言いましたけど吸血鬼。……正確には吸血鬼の末裔を自称しています」

 

まゆ「痛い」

 

響子「ただなんと言うか……こう、ガチっぽいので誰も何も言えない状況みたいですね。色んな意味で」

 

まゆ「おっぱいは?」

 

響子「おっぱいは結構あります。っていうか巨乳」

 

まゆ「は?」

 

響子「比較対象は……それこそ愛梨ちゃんとか文香さんとか」

 

まゆ「ぐぬぬ」

 

響子「白雪千夜さん」

 

まゆ「うん」

 

響子「よく知りません」

 

まゆ「ええ……」

 

響子「だってちとせさんにべったりなんですもん。隠れPラブ勢やらなんやら言う噂もありますけどどうなんでしょうね」

 

まゆ「隠れ」

 

響子「なんにしてもプロデューサーさんに「お前」はないでしょ。本人が許しても私が許しません」

 

まゆ「でもプロデューサーさんに「お前」って呼ばれたくない?」

 

響子「呼ばれたい……。絶対きゅんってしますよね♡♡♡」

 

まゆ「おっぱいは?」

 

響子「72」

 

まゆ「はい次(笑)」

 

響子「えー、双子ちゃんですね。久川凪ちゃんと久川颯ちゃん」

 

まゆ「どっちがお姉さんなの?」

 

響子「久川凪ちゃん」

 

まゆ「ああ、訳わかんない方」

 

響子「言い方。新人さんの中で夢見りあむに次いで総選挙圏内なんですよ」

 

まゆ「ほう」

 

響子「そういう意味で世間的な注目度は中々なのかもしれませんね」

 

まゆ「響子ちゃん的には」

 

響子「う~ん。あの子恋愛感情あるのかな?」

 

まゆ「流石にあるでしょ」

 

響子「双子の恋愛事情って基本ドロドロになりがちなんですよ」

 

まゆ「少女漫画でもよく見る~」

 

響子「だからいっそない方が二人の為です。ついでに、14歳なんですよね」

 

まゆ「魔境と噂の」

 

響子「はい。輿水幸子ちゃんや神崎蘭子ちゃんたちの出身です」

 

まゆ「それは個性ないと生き残れないかなぁ」

 

響子「何と戦ってるのやら」

 

まゆ「おっぱいは?」

 

響子「控えめ」

 

まゆ「よし次」

 

響子「はい、最後ですね。久川颯ちゃん」

 

まゆ「どういう子なの?」

 

響子「ミーハー。イマドキ。……元気っ子。都会に憧れるJC」

 

まゆ「一言でまとめて」

 

響子「割と普通」

 

まゆ「個性とは」

 

響子「あかりちゃんも割と普通ですけど、りんごろうとかいう魔物が背に控えてたりしますし……何より、姉の個性が結構光るので余計に」

 

まゆ「なるほど」

 

響子「ただし言っておきます。おっぱいは大きいです」

 

まゆ「は?」

 

響子「私 よ り 大 き い で す」

 

まゆ「???」

 

響子「ついでにストレートに好意をぶつける方ですし、今でこそプロデューサーさんより先輩アイドルって風ですけど、この先分かりません」

 

まゆ「つまり?」

 

響子「個人的に一番の危険要素」

 

まゆ「まさかの」

 

響子「実はこの話題出した時点で思ってました」

 

まゆ「ちとせちゃんは?」

 

響子「ちとせさんはですね……多分プロデューサーの方が好きになるかもしれません」

 

まゆ「えっ」

 

響子「私知ってます。プロデューサーさん、振り回されるの好きです」

 

まゆ「振り回されるのがいいんですね……」

 

響子「ゾクゾクしちゃうんです」

 

まゆ「プロデューサーさん……」

 

響子「でも黒いのが目を光らせてるのでちょっとやそっとじゃ大丈夫っていう安心感もありますね」

 

まゆ「黒いの(笑)」

 

響子「ってわけで最終的な評価がこちらになります。画板をどん」

 

まゆ「どこに持ってたのそんなの」

 

響子「久川颯>黒崎ちとせ>>>砂塚あきら≧久川凪>辻野あかり>白雪千夜」

 

まゆ「久川颯………………………………」

 

響子「はい、久川颯ちゃんです。要警戒です」

 

まゆ「あれ、夢見りあむは?」

 

響子「あっ」

 

まゆ「まゆ的に脅威度はかなり上位」

 

響子「私的には微妙なんですよね。ちとせさんの下辺りでいいんじゃないですか」

 

まゆ「妥当かな?」

 

響子「妥当ってことで。久川颯ちゃんの今後にご注目ください」

 

まゆ「久川颯………………………………」

 

 

 

      *

 

 

颯「へっくち!!」

 

凪「んこ」

 

颯「殴るよ」

 

凪「できれば殴る前に言って欲しかったぞ」

 

颯「ゔ~。なんか寒気する。風邪かな」

 

凪「元気印のはーちゃんが風邪とは、まさに天変地異の前触れ。凪のおっぱいで休んでください」

 

颯「もー、文香さんみたいなこと言わないでよ~」

 

凪「んほほ」

 

颯「笑い方キモッ」

 

 

      *

 

 

響子「まゆちゃん、一番いい匂いするアイドルって誰だと思います?」

 

まゆ「まゆ」

 

響子「ドン引きです」

 

まゆ「嗅いで」

 

響子「くんかくんか」

 

まゆ「どう?」

 

響子「くっそいい匂いします。悔しい」

 

まゆ「ふふん」

 

響子「輿水幸子」

 

まゆ「それはふふーん」

 

響子「とはいえ私は卯月ちゃんか美穂ちゃんだと思います」

 

まゆ「ほんとP.C.S好きね」

 

響子「まあまあ聞いてくださいよ。顔も性格もいい私の完璧なユニットメンバーの話を」

 

まゆ「嫌」

 

響子「ユニットのお仕事を貰うじゃないですか、その度に卯月ちゃん家でお泊まり会を実施するんですよ」

 

まゆ「ふーん」

 

響子「で、卯月ちゃんの部屋ヤバいんですよ。めっちゃいい匂いするの」

 

まゆ「ふーん」

 

響子「大体ちょっと散らかってるので毎回お掃除から始まるんですけど、その時にお部屋を合法的に物色出来るんですよ」

 

まゆ「ふーん」

 

響子「女の子! って物が転がってるんです。もういちいちいい匂いするんですよ。私の鼻腔が有頂天です」

 

まゆ「ふーん」

 

響子「でも一番はやっぱりお布団なんですよね。来客用のお布団じゃなくて毎度毎度卯月ちゃんのベッドで寝かせてもらうのは私の下心ありき」

 

まゆ「まだ続く?」

 

響子「そんな事言うなら次はまゆちゃんの番!」

 

まゆ「そう言われても」

 

響子「何か無いんですか!? みんな大好きガールズトークですよ!」

 

まゆ「ガールズトーク舐めんな。匂いエピソードなんかないもん」

 

響子「匂い云々振ったのは今の話したかっただけなのでこの際話題はなんでもいいです」

 

まゆ「んー。あ、じゃあこないだ文香ちゃんの家に泊まった話でも」

 

響子「もう不穏」

 

 

 

ドアバーン!!!!!

 

 

 

梨沙「………………………………」

 

響子「あ、ヴァリサちゃん」

 

まゆ「ヴァリサちゃんこんにちは~♡」

 

梨沙「ん」

 

響子「ん、何? 腕なんて握っちゃって」

 

梨沙「ん」

 

響子「え? 藍子ちゃんと智絵里ちゃんと借り物競争対決? 私?」

 

梨沙「ん」

 

響子「なぁに? なんで私なんですか? え~、可愛いお声聞かせてくださいよ~~~♡」

 

梨沙「ん」

 

響子「駄目ですね、言語機能がヤられちゃってます。やっぱり耐えられませんでしたか」

 

梨沙「ん」

 

響子「というわけで行ってきまーす。またお泊まりのお話聞かせてくださいね~♡」

 

まゆ「行ってらっしゃーい」

 

梨沙「ん」

 

響子「あ~~~れ~~~♡」

 

バタン。

 

まゆ「……」

 

まゆ「…………」

 

まゆ「………………」

 

まゆ「プロデューサーさん的に、ヴァリサちゃんはアリなのかしら」

 

 

 

 

 

 

 



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パッションな女たち。

 大槻家・唯の部屋

 

 

唯「第十四回! 乙女トークいずパッション編~~」

 

唯「はい拍手~」

 

莉嘉「いえーい!」

 

みりあ「わーい!!」

 

唯「拍手は二人。実況と司会進行、その他諸々はパッション代表としてユイが務めるからねー」

 

友紀「誰がパッション代表って?」

 

梨沙「ギャルゲオタク」

 

芳乃「金髪能天気」

 

唯「ウケる~」

 

莉嘉(ギャルゲオタクに関しては何も言えない)

 

唯「今日は特別ゲストとして高森藍子ちゃんが来てくれてるよん」

 

藍子「こんにちは~」

 

梨沙「ぴっ」

 

みりあ「ぴっ」

 

莉嘉「ぴっ」

 

藍子「うふふ」

 

友紀「ちっちゃい子にトラウマ植え付けてるじゃん」

 

藍子「今日は智絵里ちゃんもいませんし、ただの高森藍子ですよ~」

 

梨沙「ほんと……?」

 

藍子「はい」

 

莉嘉「アタシ生きてる!」

 

みりあ「ぴぃ……」

 

唯「まあまあ、挨拶はそれくらいにして早速始めよーよ。誰かなんか無い?」

 

藍子「何かって?」

 

友紀「ああ!」

 

藍子「は?」

 

唯「何でもいいよー。雑談恋話猥談下の話でも」

 

藍子「なるほど、テーマですね」

 

唯「そそ」

 

藍子「では緒方智絵里」

 

唯「却下」

 

友紀「人を貶すのはよくないぞー」

 

梨沙「アンタが言う?」

 

莉嘉(そういう問題ですらない気がするけど)

 

唯「よっちゃんなんかない?」

 

芳乃「よっちゃん」

 

唯「よっちゃん」

 

芳乃「よっちゃん特にありませぬー」

 

唯「使えねー」

 

芳乃「なんとでもー」

 

みりあ「元々よっちゃんお菓子食べるために集まってるだけだもんね」

 

芳乃「いかにもー」

 

みりあ「ぶたさん♡」

 

芳乃「………………」

 

友紀「はいはい、じゃーあたし」

 

唯「どーぞユッキー」

 

友紀「幸子ちゃんとえっちする方法」

 

唯「www」

 

莉嘉「草生やすな」

 

みりあ「ろりこん?」

 

友紀「ロリコンじゃないよ、サチコンだよ」

 

唯「wwwwww」

 

莉嘉「二倍生やすな」

 

梨沙「どこからツッコんだものかしら」

 

友紀「突っ込むモノないよ」

 

梨沙「うるさい」

 

みりあ「んー、恐喝とか?」

 

唯「あー」

 

友紀「あーじゃないよ」

 

莉嘉「じゃあ土下座?」

 

唯「ほー」

 

友紀「ほーじゃないよ」

 

梨沙「褒め殺しとか」

 

唯「なあなあで持ち込む感じだね」

 

友紀「なるほど」

 

藍子「薬漬け」

 

友紀「子どもいるから黙れ」

 

藍子「てへ♡」

 

梨沙「そもそも14歳とする時点で犯罪……」

 

友紀「???」

 

梨沙「疑問符浮かべないで」

 

唯「よっちゃんなんかない?」

 

芳乃「ありませんー」

 

みりあ「ぶたさ~ん♡」

 

芳乃「………………媚薬」

 

友紀「媚薬、媚薬かあ」

 

莉嘉「感度3000倍?」

 

梨沙「空気に触れるだけで死にそうな数字ね」

 

莉嘉「(笑)」

 

友紀「まあそんな都合良いのそうそうないよね」

 

唯「志希ちゃんに頼めば?」

 

友紀「その手があったか」

 

唯「便利~☆」

 

芳乃「採用されてしまいましたー」

 

みりあ「ぶたさんすごーい♡ いい子いい子♡」

 

芳乃「………………………………」

 

唯「と、こんな感じだよ」

 

藍子「なるほどー」

 

梨沙「下ネタは避けましょうよ」

 

莉嘉「下ネタは誰も傷つかないんだよ!」

 

梨沙「アタシたち一応アイドル」

 

莉嘉「一応」

 

唯「えーだって恋バナとかないじゃん! 刺激足りない!」

 

藍子「刺激……やっぱり緒方智絵里」

 

唯「却下」

 

藍子「しょもも」

 

友紀「不自然にトラウマを抉る必要はないんだよなあ」

 

唯「じゃあ事務所で一番可愛い女の子は誰だって話とか」

 

友紀「幸子ちゃん」

 

みりあ「桃華ちゃん」

 

莉嘉「お姉ちゃん」

 

藍子「茜ちゃん」

 

芳乃「肇さん」

 

梨沙「パパ」

 

唯「事務所だっつってんだろ!」

 

莉嘉「女の子ですらないし」

 

梨沙「唯は誰だと思うのよ」

 

唯「んー。文香?」

 

梨沙「ちょっと意外」

 

唯「だって面白いし」

 

梨沙「なんか可愛いの意味合いが違う気がするわ」

 

唯「じゃあこの場にいる面子に限ったら?」

 

全員「「「………………」」」

 

唯「せーので言おうか、考える時間欲しい人ー」

 

芳乃「100時間ほど……」

 

唯「3秒ね。はいさーん、にー、いーち。せーの」

 

莉嘉以外「「「莉嘉ちゃんさんでしてー」」」

 

莉嘉「みりあちゃえっ、何泣きそう」

 

みりあ「えへへ、ありがと」

 

梨沙「まあこの中ならそうなるでしょ」

 

芳乃「消去法でしてー」

 

唯「ユイのが可愛いけどね!」

 

友紀「性格悪いじゃん」

 

唯「はっ」

 

友紀「むかつく」

 

藍子「じゃあそろそろ緒方智」

 

唯「却下」

 

莉嘉「次アタシいい?」

 

唯「お、なになに?」

 

莉嘉「今ね、SSってのを書いてるんだけど」

 

芳乃「えすえすとはー?」

 

梨沙「ショートストーリーとか、サイドストーリーとかの略」

 

みりあ「にじそうさく……? ってやつだよね。まとめサイトで見るもん」

 

友紀「みりあちゃんの口からまとめサイトとか聞きたくないファン多いと思うよー」

 

みりあ「なんで」

 

友紀「なんでも」

 

莉嘉「で、みんなの意見が聞きたいの」

 

梨沙「具体的には?」

 

莉嘉「恋愛もの」

 

唯「恋愛!!」

 

梨沙「誰と誰の?」

 

莉嘉「Pくんとアイドル」

 

唯「核地雷!!!!」

 

友紀「Pドルかあ」

 

莉嘉「え、何。ダメ?」

 

友紀「人によるとしか」

 

唯「人によるねえ」

 

梨沙「ちなみにアイドルってのは」

 

莉嘉「よっちゃん」

 

芳乃「は?」

 

梨沙「ええ……」

 

みりあ「ぶたさん!」

 

芳乃「は???」

 

みりあ「ぶたさんプロデューサーのこと好きなの?」

 

芳乃「わたくしは特に……」

 

友紀「皆そう言うんだよ」

 

芳乃「そういう友紀さんはー?」

 

友紀「事務所内で言えば50番目ぐらい?」

 

みりあ「みりあもー!」

 

莉嘉「数字だけ聞くと全然っぽいけど大体上位25%だからね」

 

唯「プロデューサーちゃんのこと嫌いだったらやってけないっしょ~」

 

梨沙「そらそうね」

 

芳乃「むむむ」

 

莉嘉「だから恋愛物語の主人公に!」

 

芳乃「それとこれとは話が別でして」

 

藍子「どんな内容なのかな?」

 

莉嘉「普通の学園ものだよ」

 

藍子「学園」

 

芳乃「無視満塁ですかー、そうですかー」

 

莉嘉「いっけねー! 遅刻遅刻~! って言って物語が始まるの」

 

梨沙「テンプレ~」

 

藍子「プロデューサーさんが?」

 

莉嘉「芳乃ちゃんが」

 

藍子「は???」

 

梨沙「は???」

 

芳乃「は???」

 

唯「よっちゃん(笑)」

 

友紀「俄然興味でた。ちょっと音読してみてよ」

 

莉嘉「いーよー。こほん」

 

莉嘉『いっけねー! 遅刻遅刻~!』

 

莉嘉『わたくし依田は芳乃でして! 今日はウッキウキの新学期! なのに早々寝坊して大ピーンチ! 食パン咥えて全力疾走でしてー!』

 

芳乃「あの」

 

莉嘉『急いで走って曲がり角で人と正面衝突ごっつんこ! 邪魔度マジ盛々の盛でしたので30mぐらい吹き飛ばしてやったのでして!』

 

莉嘉『一昨日来やがれ!!!』

 

莉嘉『学校には滑り込みセーフ!! 今日も仲良し紗枝ちゃんに遅刻ギリギリをからかわれちゃったのでして☆』

 

芳乃「あの」

 

莉嘉『そして聞かされる衝撃の事実! えっ! この学校に転校生!? しかも男の人!?』

 

莉嘉『どんなイケメンハートキャッチボーイが現れるのかと思ったら両手両足骨折のなっさけないヒョロガキでして。けっ。餓鬼には興味ないのでー』

 

莉嘉『ん?』

 

莉嘉『ん???』

 

莉嘉『あ! お前は! そなたは! あの時の――――!!!』

 

莉嘉「そして運命の歯車は回り出す……」

 

唯「草」

 

梨沙「狙いすぎ」

 

莉嘉「何が?」

 

梨沙「えっ」

 

莉嘉「えっ」

 

みりあ「両手両足骨折してたら学校には来ないと思うよ?」

 

友紀「そこじゃねえよ」

 

藍子「仮想とはいえプロデューサーさんを両手両足骨折させたら響子ちゃんとまゆちゃんが黙ってないよ」

 

友紀「そこじゃ……それはある」

 

莉嘉「あそっか! じゃあそこは変えなきゃだね><」

 

梨沙「ムカつく顔してる」

 

莉嘉「よっちゃんどうだった?」

 

芳乃「もう何でもいいのでして」

 

莉嘉「やった! 本人からお許し貰えた!」

 

みりあ「良かったね~♡」

 

莉嘉「こんな3秒で考えたゴミみたいな導入で!」

 

芳乃「殺すぞ」

 

莉嘉「てへぺろ☆」

 

唯「じゃあ投稿したら教えてね」

 

莉嘉「はーい☆」

 

芳乃「はあ……」

 

唯「ほい次なんかある人~」

 

藍子「緒方智絵里」

 

唯「好きだねー」

 

梨沙「じゃあアタシ」

 

唯「お、なになに?」

 

梨沙「胸を大きくしたいわ!」

 

梨沙(その時)

 

梨沙(不思議なことが起こったの)

 

梨沙(人の頭の上に、謎の数値が見えるようになってしまったわ)

 

唯(84)「ふーん?」

 

友紀(80)「なんでまた」

 

梨沙「そりゃパパのベッドの下に胸の大きい女の人が乗ってる本があったからに決まってるでしょ」

 

友紀(80)「パパ……」

 

唯(84)「でもその年でなんて難しくない? ねえ」

 

莉嘉(72)「アタシに振らないでよ」

 

梨沙「大沼くるみ!」

 

唯(84)「あ~」

 

友紀(80)「ありゃ規格外でしょ」

 

唯(84)「梨沙ちゃんあんな風になりたいわけ?」

 

梨沙「正直クッソ邪魔だと思うけどパパに好かれるっていうなら欲しいわ! なんでも欲しい!」

 

莉嘉(72)「ふぁざこん」

 

梨沙「今更でしょ」

 

みりあ(75)「揉めば大きくなるとかどこかで聞いたよ!」

 

莉嘉(72)「揉む」

 

唯(84)「ユイもあるけど、好きな人に揉まれたらホルモンがどうのこうの~って話じゃないの?」

 

梨沙「つまりパパに!!!」

 

友紀(80)「犯罪だから」

 

莉嘉(72)「牛乳飲むとか」

 

梨沙「あれ信憑性あんの~?」

 

莉嘉(72)「ないけど、ほら、及川雫ちゃん」

 

梨沙「ああ……」

 

友紀(80)「あの子は縦も大きいよね」

 

唯(84)「規則正しい生活してれば良いかもって本人言ってた!」

 

梨沙「規則正しい生活はしてるつもりなんだけどね」

 

友紀(80)「そうだ、でかい人を並べて研究してみれば? なんか共通点とかあるかも」

 

梨沙「及川雫でしょ? 大沼くるみ、向井拓海に海老原菜帆……大和亜季……夢見りあむ……」

 

唯(84)「共通点ねぇ~~~(笑)」

 

友紀(80)「比較的アウトドア……が多い、かな?」

 

莉嘉(72)「いっぱい食べてそうな感じはするね」

 

みりあ(75)「よく食べて運動しろってことだよ!」

 

梨沙「要領得ないわねぇ」

 

友紀(80)「そもそも胸大きくしろってのがねえ」

 

唯(84)「ここだと一番おっきいのユイだけど、特に何にもしてないよ」

 

みりあ(75)「揉まれてないの?」

 

唯(84)「揉まれてないよ」

 

みりあ(75)「ほんとに?」

 

唯(84)「ほんとだよ」

 

みりあ(75)「ちっ」

 

唯(84)「ちって」

 

みりあ(75)「ねえねえ、なんかぶたさん静かじゃない?」

 

唯(84)「ね。藍子ちゃんも」

 

藍子(74)「…………」

 

芳乃(73)「…………」

 

 ズモモモモモ……。

 

梨沙「あの数字……あっ」

 

梨沙「この話終わり! はい次!」

 

唯「え?」

 

梨沙「早く!」

 

唯「う、うん。なんかある人~?」

 

梨沙「はあ……」

 

藍子「はい!」

 

唯「智絵里ちゃんはナシだよ」

 

藍子「異性のドキッとする仕草なんてどうでしょうっ」

 

唯「おおー、それっぽい!」

 

友紀「まともなことも言えるんだね」

 

藍子「うふふ」

 

唯「んじゃあそれにしよう。まずよっちゃんから」

 

芳乃「なじぇ」

 

唯「ほっといたら何も喋らないもん」

 

芳乃「ですからー、わたくしはお菓子を食べに来ているだけでー」

 

唯「次から有料にしよっかなあ」

 

芳乃「……。とは言われても、意識したことがありませぬゆえー」

 

唯「まあどう見ても処女だしねー(笑)」

 

芳乃「なのでぱすを希望しますー」

 

藍子「この際同性でもいいよ?」

 

梨沙「ええ……」

 

藍子「同性同士で膜を破るなんでここじゃ結構ありがちで」

 

みりあ「膜?」

 

藍子「カマトトぶってんじゃねーぞ」

 

みりあ「ぴっ」

 

友紀「本性見えてる見えてる」

 

芳乃「ふむー、同性……」

 

唯「お? さては心当たりある感じだね!?」

 

芳乃「肇さんに限った話でしたらー」

 

唯「もう色恋っぽかったら何でもいいよ!」

 

芳乃「では、イタズラなどされた時、ぷっくりと膨らむ頬が……とんでもないほど、愛おしく……」

 

梨沙「ああ、“アレ”ね」

 

莉嘉「“アレ”だね」

 

芳乃「アレ呼ばわりとは」

 

唯「まあまあ。よっちゃんは肇ちゃんのその仕草にきゅんきゅん来ちゃうってことだよね」

 

芳乃「はいー」

 

友紀「え、肇ちゃんそんな顔すんの」

 

莉嘉「知らないの? 有名だよ」

 

友紀「接点あんまないからなあ」

 

芳乃「ぷぷ。肇さんのあの表情を知らないのは人生損してますね~(笑)」

 

友紀「は? 幸子ちゃんの寝顔見たことあんの?」

 

芳乃「ありませぬが」

 

友紀「こないだ“幸子さんすきすきー♡”とか言ってた癖にしょっぼ」

 

芳乃「人智を超えた力に侵されただけですので」

 

友紀「はっ」

 

芳乃「ちっ」

 

莉嘉「芳乃ちゃんの舌打ちが聞ける事務所はここだけ! ぽちぽち」

 

梨沙「あにしてんの」

 

莉嘉「今の一部始終ネット公開しとこかなって」

 

梨沙「やめときなさい」

 

唯「そういう友紀ちゃんのドキッとする仕草は寝顔でいい感じかな」

 

友紀「幸子ちゃんのでしょ? 寝顔も勿論だけどなあ、なんでも全部カワイイからな~~~!」

 

芳乃「ぷぷ。全部が可愛いなど愛する者なら当然のことでしてー」

 

莉嘉「愛」

 

芳乃「むしろどれが一番か決められないことこそ、想いの足りない証ですよー」

 

友紀「あ?」

 

芳乃「は?」

 

藍子「なるほど一理ありますね」

 

友紀「藍子ちゃんまで」

 

藍子「昔、まゆさんと響子さんがプロデューサーさんのどの顔が一番いいかで揉めていたことを思い出します」

 

唯「それ、候補は何だったの?」

 

藍子「机で事務作業に勤しんでるプロデューサーさんの顔と現場で指示を出すプロデューサーさんの顔」

 

唯「ええ……」

 

梨沙「どうせプロデューサーならどんな顔でもいいみたいな結論でしょ」

 

藍子「それがなんと喧嘩に発展。鉄に刃物に大騒ぎ」

 

梨沙「は? あの二人が?」

 

芳乃「マジでして?」

 

藍子「マジでして。ちなみに現場見たのは私と智絵里ちゃんだけ」

 

唯「ってことはまゆちゃんに響子ちゃん。智絵里ちゃんと藍子ちゃんか」

 

友紀「何そのメンツ」

 

莉嘉「魔境」

 

梨沙「地獄絵図」

 

みりあ「……もしかして二人との仕事中の出来事だったりするの?」

 

藍子「うん」

 

みりあ「あっ……」

 

友紀「察し顔じゃん」

 

梨沙「ストレス溜まってたんでしょうね……」

 

莉嘉「生まれて初めてあの二人に同情したよ……」

 

友紀「ロリ組が素直だ」

 

唯「ユッキー二人の仕事着いてったことある?」

 

友紀「ないよ」

 

唯「ユイも」

 

友紀「さすがにちょっと気になるよね」

 

みりあ「知らない方がいい事も世の中にはあるんだよ」

 

友紀「はあ」

 

唯「まいっか。なんだっけ、きゅんきゅんする仕草ってハナシだよね。言い出しっぺの藍子ちゃんはなんかある?」

 

藍子「私ノンケですよ」

 

唯「わざわざそれ言う必要ある???」

 

藍子「さっき茜ちゃん可愛いって言ったから誤解されてると嫌だなって」

 

友紀「ガチレズなんて文香ちゃんぐらいだよ」

 

芳乃「?」

 

友紀「何???」

 

芳乃「いえ」

 

藍子「仕草という訳でもないですけど、こう、腕を組んだ時に見える筋肉のすじとか」

 

唯「あ~影になるとこだよね。分かる~☆」

 

藍子「タオルとかで汗拭いてる時に見えたら下腹部疼きます」

 

莉嘉「下腹部は草」

 

唯「草生やしてるじゃん」

 

梨沙「言い方はともかく割と普通ね。まるで乙女みたい」

 

藍子「乙女だよ♡」

 

梨沙「語尾にはーと付けるやつは信用ならないのよね」

 

唯「カメラ構えてるとこ後ろから抱き竦め手添えられて、『一緒に撮るよ』みたいな」

 

藍子「あ、それは撮る時ブレるので普通に殺したくなります」

 

唯「ええ……」

 

梨沙「乙女(笑)」

 

藍子「ボディータッチは程々に。アイドルなんですから」

 

みりあ「プロデューサー結構頭撫でてくるよね」

 

藍子「時と場合による」

 

梨沙「あれで嫌がらないのはまゆと響子とCoの面々くらいよ」

 

唯「ユイは別にいいけど」

 

梨沙「アンタプロデューサーのこと結構好きでしょ」

 

唯「うん」

 

梨沙「Cuはピンキリだし。アイツも撫でる相手くらいは選んでると思うけど」

 

藍子「セット後、ライブ前だと人間関係なく殺したくなります」

 

友紀「分かる」

 

莉嘉「まゆちゃんと響子ちゃんが今の聞いたらどんな反応するかな」

 

梨沙「録音しないの」

 

莉嘉「いつかやり返してやろうとは思ってる」

 

芳乃「あの二人の前でその様な事を言えるとすればー……。茄子さんに愛梨さんくらいなものですねー」

 

莉嘉「鋼メンタルじゃん」

 

梨沙「なんも考えてないだけでしょ」

 

唯「と、まあ今日はこんなとこかな」

 

友紀「また急だね」

 

唯「キリよくない?」

 

友紀「どうだろ」

 

みりあ「えー! みりあまだ何も出してなーい!」

 

唯「またの機会にね、じゃあ藍子ちゃん、今日のまとめに一言お願い☆」

 

藍子「急に言われても」

 

みりあ「何でもいいんだよ~。思ったこと感じたこと何でも!」

 

梨沙「緒方智絵里以外でね」

 

藍子「ちっ」

 

莉嘉「ほんと好きだね……」

 

友紀「どうせこの後も一緒に寝るんだし適当でいいよ。お風呂入りたいとかそんなんで」

 

唯「一本締めみたいなノリで。はいどうぞ!」

 

藍子「では、こほん」

 

藍子「私より胸の大きいロリはあとで滅ぼす」

 

みりあ「えっ」

 

芳乃「同意でしてー」

 

みりあ「えっ」

 

梨沙・莉嘉((助かった))

 

唯「イヨーーーッ!!」

 

 パンッ!

 

 

 

 



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