転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか (柚子檸檬)
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〇月×日 

 

 突然だが両親からノートと筆を買ってもらったので日記をつける事にした。親父には「三日坊主になるなよ」とからかわれたが、文字を書くのに慣れるという意味合いもあるからしばらくは続けるつもりだ。

 何を書いて良いか分からないし、まずは自分自身の事を書くことから始めよう。

 俺の名前はジョシュア・ジョースター、両親やご近所さんからは愛称でジョジョなんて呼ばれている。ちなみに今年で11歳になる。

 いや、前世を含めたらもう30過ぎのおっさんになるのか。

 ピッチピチの20歳だった俺はバイト帰りに車に撥ねられて死亡。彼女もいなかった。成人式にも出られなかった。両親にも碌に孝行してやれなかった俺は失意の内に死んだはずなのだが、そんな俺を神は見捨てなかった。

 何か可哀想だからという理由で特典つけてファンタジー世界へと転生させてくれるそうだ。

 ぶっちゃけ特典いらないからそのまま元の世界に送り返してくれてと頼んでみたものの無理と言われてあえなく断念。

 このまま死んで無に帰るよりはマシかと考えた俺は妥協してファンタジー世界へと転生する事になった。

 ちなみに貰ったのは生前に好きだった漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する幽波紋(スタンド)全部。

 せめて一つに絞れと言われるかと思ったが、何も言わずにポンとくれた。

 こいつは怪しい臭いがプンプンするぜーーッ。ゼウスとかインドラみたいに軽く世界を滅ぼせるようなヤバいのが当たり前のように闊歩していても驚かんぞ。

 などと思いつつもう10年以上経過したけど別に世界が危機に見舞われるようなことは無い。精々ゴブリンが村の野菜や家畜を奪おうとやってくる程度が関の山。そのゴブリンも村の力自慢の男達によって追い払える程度の力しかない。

 別にバーン様みたいなやべーのに世界を混沌に陥れて欲しいわけじゃないけど、せっかくファンタジーな世界にいるんだし英雄譚に出てくる登場人物達がするような冒険とかしてみたい。

 スタンドを使った実戦をしてみたくてゴブリン退治を手伝いたいと頼んでみたら子どもにはまだ早いと断られる始末。

 これじゃあ自主練をひたすら繰り返すしかないじゃあないか。

 スタンドについてこの10年間色々と試してみて分かったのは

 

 1、スタンドは他の人間には見る事が出来ない。

 2、ノトーリアスBIGやチープトリックのように未確認のスタンドはあるものの、おそらくすべてのスタンドを使用する事は出来ると思われる。例外はエコーズやタスクのような成長するタイプのスタンド。あれらは自身が成長する、もしくは条件を満たさなければ使えないだろう。

 3、スタンドは一度につき一体までの制約がある模様。別のスタンドを使う場合は今使っているスタンドを引っ込める必要がある。つまりシルバーチャリオッツとアヌビス神のコラボは実現不可。現実は非情である。

 4、ホリイさんの時のように暴走はしないものの、スタンドパワーが不足しているせいか本来の持ち主程の力はまだ発揮できないし、強力なスタンド程使い続ければ精神力の消耗は激しくなる。例をあげると、ザ・ワールドであれば時間停止は0.1秒が限界で連続での使用は不可能。D4Cに至っては次元の壁を越えられない。

 

 こんな感じだ。

 実際に使ってみたらボス連中のスタンドヤバい。全くと言っていい程力を引き出せていない。ホワイトスネイクは割と使えるけど多分C-MOON以上になる事は無いと思う。

 果たしてこんなんでやっていけるのか、不安で不安で昼と夜しか眠れない。

 

 〇月△日 

 

 健全な精神は健全な肉体に宿ると言われている。鍛えた肉体を使って悪事を働く連中もいるから必ずしも的を射ている言い方とは言えないが、力がつけばそれは確かな自信となってより精神力(スタンドパワー)を強化する事が出来るかもしれない。

 前世では格闘技なんてやったことが無い俺じゃあランニングや筋トレくらいしか出来る事が無い。

 母さんにこの村に拳法の達人みたいな人がいないかどうか聞いてみたら母さんが武道やら拳法やらを齧ってるそうで、良かったら教えてあげようかと言ってきた。

 色々やっているそうだが、メインは『波紋法』という呼吸から力を生み出す変わった技術らしい。

 波紋かよ。

 ここはチベットか何かかよ。

 既に40前の母さんが20代のように若々しいのは波紋が原因だったのか。

 波紋はスタンドとも相性がいいし習っていて損はないな。

 是非習得しておきたい。

 

 〇月〇日

 

 死ぬ。

 こんな特訓続けてたら死ぬ。

気軽に頼んだ俺が間違っていた。

 母さんはリサリサ先生ばりにスパルタ師匠だった。

 拳法に関しても齧ってるってレベルじゃない。素人目からしても熟練者っていうのが分かってしまうレベルで美しい動きをしている。世紀末でもやっていけるんじゃあなかろうか。

 原作のツェペリさんみたく横隔膜をついて強制的に波紋の呼吸にしてきたり、ジョセフがつけてた強制的に波紋の呼吸をさせるマスクをつけてきたりと10歳の子どもに対してやらせるような難易度の特訓じゃないだろ。

 こういうのって普通基礎体力をつけるところから始まるだろ。後、超回復とか。

 別にジョセフみたく死のウェディングリング埋め込まれたわけじゃあないんでもうちょっと難易度を落としてはくれないでしょうか。

 

 

 〇月Э日

 

 頼んでみたが母さんの特訓の難易度は下がらなかった。

 親父は叩きのめされている俺を、ただ憐れむような眼で見てくる。

 助けて欲しいけど親父は母さんに頭が上がらないから期待しない方が良さそう。

 そういえば昔、母さんと親父の馴れ初めを聞いた事があった。何でも二人はそれなりに名の知れた冒険者だったらしい。でも引退して片田舎に引っ込んで今こうして暮らしているそうだ。

 引退して全盛期がとっくに過ぎてるのにあんなに強いのかよ。全盛期なら魔王とかワンパンで倒せそうだ。

 

 〇月Ω日

 

 イヤッホーッ!

 うちの母さんの特訓は世界一ーッ!

 

 〇月α日

 

 休み?

 そんなもの、俺には無いよ。

 

 〇月β日

 

 (妙な文字と絵が描かれていて解読不能)

 

 

                 ・

                 ・

                 ・

 

 

 〇月μ日

 

 何故だろうか、ここ2週間くらいの記憶が曖昧で何だか怖い。

 親父は「よく頑張った」と涙目になりながら褒めてくれるし、母さんは「この短期間で覚醒するとは流石私の息子!」とメッチャ喜んでくれた。

 はっきり言ってすっごく恐い。日記を見直してみても支離滅裂だったり何も書いてなかったりでよく分からない。この期間のうちに一体何があったんだ。

 まさか俺はドラゴンボールとかでよくある限界突破ってやつをしてしまったんじゃあないだろうか。俺まだ11歳だし別に壁にぶち当たってたわけでも無いのに。

 二人に聞いてみても何も教えてはもらえなかった。

 ただ親父は『世の中には知らなくていい事もあるんだぜ』と言っていた。

 11歳の息子に対して言う言葉じゃあないね。

 

 〇月▽日

 

 最近日記に書くことが減ってきた。

 母さんの特訓も段々ネタにすることが無くなってきたし(キツイ事に変わりはない)、俺もジョジョなんて言われてるんだから少しでいいから奇妙な冒険ってやつがしてみたい。

 そうはいっても11歳のガキが村の外に出るなんて危険な真似はさせてくれそうにないし、しばらくは村の外れにある洞窟や幽霊屋敷でも見に行くくらいしか出来る事が無いよ。

 この村にも杜王町みたいな奇怪な現象でも起きてくれないものか。

 早く大人になりたいな。

 でも大人になったらなったでまた子どもの頃に戻りたいなと思ってしまうジレンマ。

 そういえばいつになったらこの波紋マスクを取っていいんだろ。事情を知らないご近所さんから奇異の目で見られるし遊び仲間から「暗殺者だーッ!」とからかわれるしで散々なんだよ。

 誓って殺しはやっていない。

 

 〇月☆日

 

 毎日やっていた特訓が母さんの用事で休みになってしまった。暇になった俺は自主練もそこそこに日記に書く事へのネタ探しのために村外れにある幽霊屋敷にやってきた。

 幽霊屋敷だから誰もいないんだけどね。

 とか思ってたら誰かいた。

 思わず目が奪われてしまう程の美貌。母さんも美人だがそこにいた美女は次元が違う。人の領域を超えていてもう女神級と言ってしまっても過言ではない。

 そんな女性が幽霊屋敷のテラスから椅子に座って空を眺めている。しかし眺めているといってもぼーっと眺めているようで生気を感じられない。

 なんというか見ていて痛々しい。

 世捨て人という言葉が彼女に当て嵌まってしまう。

 とりあえず挨拶してみたら驚かれたが、ニッコリと笑って『可愛いお客さんね、こんにちは』と挨拶を返してくれた。

 美人のお姉さんに言われると何だかすっごく嬉しい気分になった。

 その後はクッキーをご馳走になったり世間話をしたりと話が盛り上がって気が付いたら空が薄暗くなっていた。

 また行こう。

 

 〇月✾日

 

 今日の特訓が終わった後にまた幽霊屋敷にやってきた。

 お姉さんは優しく笑いながら迎えてくれた。

 昨日名前を聞くのを忘れていたが、お姉さんの名前はアストレアと言うらしい。惑星にそんな名前のがあった気がするが、別にどうでもいいか。

 お姉さんの話は面白い、この村から出たことが無い俺にとっては未知の物語だった。

 冒険者、モンスター、魔法、ファミリアなどなどまるでドラクエやFFのような心躍るストーリーだった。

 前世と合わせて30年生きていても俺の中から未知への好奇心が無くなる事はなかったようだ。

 しかし、こんな話を知っている筈のお姉さんは何でこんな片田舎の幽霊屋敷に籠っているんだろうか。

 聞いてみたら『全部ダメになっちゃったから』らしい。

 その時の悲痛な表情を見て気軽に聞いた事を後悔した。

 

 〇月?日

 

 ちょっと気になったのでお姉さんについて村で聞いてみた。

 聞いた話だと食料品を買いに来ることはあるそうだが、それ以外の用事で村に来たことが無いらしい。

 村八分にされてるのかと思いきや、一年くらい前に引っ越してきてからずっと自分から村人と距離を取るスタンスを貫いて暮らしているそうだ。

 何か事情があるのかと村人もお姉さんに深入りする事は無かった。

 話してみた感じ人付き合いが苦手とか嫌いとかいうわけでもなさそうなのに。

 きっと村の大人たちが言うように何か事情があるんだろう。例えば危険人物に命を狙われていて、そいつから身を隠しているとか。

 でもなー、あのお姉さんが自身が危険人物でってパターンもあるんだよな。

 付き合いはまだ浅いけどあんまり悪人のようには見えないし、出来れば前者であって欲しい。

 

 〇月@日

 

 お姉さんの家に通っているのが母さんにバレた。

 別に隠してたわけじゃないし、幽霊屋敷のお姉さんについて村で聞いてたから、それが母さんの耳に入るのは当然の帰結だった。

 母さんには『行くなとは言わないけど、これからも関わるつもりなら一応覚悟はしておきなさい』とだけ言われた。

 意味が分からない。

 お姉さんにその事を言ってみたら「私の所にはもう来ない方がいいかもしれない」と言われてしまった。

 近いうちに遊び仲間も一緒に連れていこうかと思っていたのに、どうしようか。

 



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 □月〇日

 

 今日はちょっとした事件があった。

 お姉さんの家に遊びに行こうとしたら途中でならず者3名に捕まってそのまま連れていかれた。

 行先は俺と同じくお姉さんの家。しかし、俺と違って遊びに来たわけじゃあ無いようだ。

 ならず者3名はあろうことか、俺を人質にしてお姉さんを捕まえるらしい。『ルドラ・ファミリア』がどうの『疾風』がどうのとよく分からない単語はあったものの、要約すればこのクズ3名はお姉さんを逆恨みしていて、恨みを晴らしに来たようだ。

 そしてどうやら自分達じゃあお姉さんには敵わないってんで俺を人質に取って嬲ろうって腹づもりらしい。

 俺のせいでお姉さんに被害が行くっていうんなら俺が何とかしないと示しがつかない

 お姉さんは「私はどうなってもいい。でもその子どもは無関係だから離しなさい」と俺を庇ってくれている。でも、ゲス3名の様子を見る限り子ども一人殺すくらいわけは無さそうだ。もしかしたら俺とお姉さんを殺した後に村で略奪を始めるかもしれない。

 そんな事はさせないぞと言わんばかりに俺は『ザ・グレイトフル・デッド』を出して老化ガスを振りまいておいた。

 この距離だとお姉さんにも被害が出るかもしれないが、女性は男性より基礎体温が低いうえにカス3名よりガスから遠いからこいつらが戦闘不能(リタイア)する方が早いだろう。

 最悪こんなこともあろうかと『エニグマ』でファイルしておいた氷嚢でお姉さんの身体を冷やすって手もあるし。

 俺の予想通り、3馬鹿は年寄り姿になって碌に歩く事さえ出来なくなった。

 やっぱりプロシュート兄貴はすげえや。

 お姉さんも全く老化せずに……とはいえ老化しなさすぎないか?

 基礎体温が低いとはいえ全く効果が無いわけではない筈だ。トリッシュは女性である事に加えて冷たいドリンクを飲んでたから老化のスピードは大分遅れていたが、お姉さんは身体を冷やすような事は何もしていないのに。

 そのお姉さんは「君の後ろにモンスターがいるから早く逃げなさい! 私の事はいいから!」と必死な声で叫んでいた。

 俺の後ろにモンスターなんていないよ。

 俺の後ろにいるのは今出している『ザ・グレイトフル・デッド』だけだし(『ザ・グレイトフル・デッド』の見た目は怪物そのものだが)。

 

 まさか――――きさま! 見えているなッ!

 

 色々試してみたら、どうやらお姉さんにはスタンドが見えているようだ。お姉さんにスタンド使いとしての素養があるのだろうか、それとも別に理由でもあるのかは今後検証の余地がありそうだ。

 スタンドが見えている以上、事情を話しておいた方がいいと思った俺はスタンドについて説明した。そしたらお姉さんも自分の事を話してくれた。

 どうやらお姉さんはマジもんの女神様だったようで昔はオラリオでも力のあるファミリアを経営していたらしく、悪事を働く連中を取り締まっていたそうだ。

 だが、お姉さんのファミリアのメンバーは悪い連中の罠にかかってほぼ全滅。唯一生き残ったリュー・リオンという人も、お姉さんを都市外に避難させた後、罠に嵌めた連中に報復しに行ってそのまま音信不通になってしまったそうだ。

 思ってた以上に悲惨だった。

 どうしよう、かける言葉が見つからない。

 とりあえず気絶してるクソカス3名は『ヘヴンズ・ドアー』でルドラ・ファミリアとやらの情報が書かれているページを千切ったのちにセーフティーロックをかけてから村の警備員に引き渡した。

 俺の『ヘヴンズ・ドアー』は岸部露伴先生のとは違ってただ絵を見せるだけじゃあ本に出来ないのが難点。

 相手の意識が混濁していて、尚且つ俺が描いた絵を直に見せなきゃ発動できないっていうね。

 発動できりゃあ凄いんだけどさ。

 絵は独学で勉強してるけどまだまだですよ。

 そしてお姉さんは念のために家に連れて帰った。

 『エアロスミス』で周囲を警戒してあの3人しかいなかったのが分かっていたとはいえ、今後も刺客が送り込まれないとは限らないしね。

 事情を話したら親父と母さんはお姉さんを温かく迎えてくれた。

 二人はお姉さんが神様だと既に知っていたみたいだが、襲撃を受けたのには驚いていた。

 その割に俺が襲撃犯3名を一人で相手取った事には驚いていないのはどういう事だ。まだ11歳なんだからちっとは心配してくれよ

 お姉さんはしばらくはうちで匿う事になったのだが、母さんがチート級に強いとはいえ数の暴力で来られたら村にも被害が出る。

 お姉さんは遅かれ早かれこの村を出ていった方が良いと親父は言っていた。

 でも逃げて逃げて逃げ続けているだけじゃあお姉さんに安息が無い。

 何かいい方法は無いものか。

 

 □月×日

 

 お姉さんの拠点について頭を巡らせていたらジョジョ5部『黄金の風』の影の功労者に行きついた。

 その名はココ・ジャンボ。

 ジョジョのゲームEoH(アイズオブヘブン)でも大勢の味方を連れていく上で大活躍している。

 その辺の亀に『ミスター・プレジデント』のDISCをぶち込んだらココ・ジャンボが出来ないかなと思いながら何匹もの亀に試してみたら出来た。『ホワイトスネイク』で初めてスタンド使いを作った瞬間だった。

 ただし、本物と違って調教されてないせいかまだスタンドのオンオフは出来ないようだ。それはこれから教えていけばいいだろう。

 そして当たり前だが亀の中は家具も何もないただっ広い空間があるだけだ。

 家具はお姉さんの家にあったものや、壊れて粗大ごみとして捨てられてるのを『クレイジー・ダイヤモンド』で修復した後に『エニグマ』を使って紙にしてココ・ジャンボの中で解放してやればいい。

 原作のように高級ホテルのようなレベルとまではいかないにしろ、人が住むのに不自由しない空間があっという間に出来上がった。

 お姉さんに見せたらお姉さんは絶句していた。

 オラリオの何処を探してもこんな拠点は無いそうだ。

 ちょっと、いやかなり疲れたけどお姉さんの安全確保は何とかなりそうだ。

 まさか追手もお姉さんが亀の中の異空間にいるとは思うまい。

 

 □月△日

 

 今日は珍しくお姉さんから頼まれ事をされた。

 もしスタンドの中に人探しが出来るものがあれば探して欲しい人物がいるそうだ。

 言わなくても予想がつく、報復に行ったっきり音信不通になったリオンって人の行方が知りたいんだろう。

 お姉さん自身でも恩恵が途切れたかどうかで生死の判別は出来るそうだけど、恐くて出来ないそうだ。

 仮に生きてたとしても生きてる=無事とは限らないしね。

 こういう時に頼れるのが『隠者の紫(ハーミット・パープル)』。パワーは弱いが念写や念聴のように幅広い使い方が出来るスタンドだ。

 親父の部屋の棚にあるポラロイドカメラみたいな魔道具をパク……もとい拝借して早速お姉さんの前でやってみた。

 俺の腕力じゃまだジョセフみたいにカメラを叩き割れないので、ちょいと格好悪いけど手のひら大の石をぶつけて破壊した。

 出てきた写真に写っているのはウェイトレスのような格好をした女性エルフ。

 お姉さんの反応を見る限りこの人がそのリオンって人で間違いないようだ。見た感じ大怪我をしているわけでも捕らえられてるわけでも無さそう。

 涙を流しながら写真を抱きしめて喜んでいるお姉さんを見て、スタンドの自主練をしておいて良かったと心の底から思ったよ。

 問題は生きてると分かっただけで何処にいるか分からない事なんだよな。

 クレDでカメラを直しながら念写を何回か繰り返せば居場所くらいは分かるかな。

 

 □月☆日

 

 リオンさんの居場所が分かった。

 居場所特定のために念写をしていたら『豊穣の女主人』と看板に書かれている建物がよく写ったから多分そこで間違いない。

 それでその建物が何処にあるかを念写したらあの『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリオ)』の舞台にもなった『迷宮都市オラリオ』が写った。

 オラリオかぁ、お姉さんの話で良く聞いてるけど興味は尽きない都市だったりする。

 『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリオ)』は親父や母さんによく読んで貰ったし、登場人物に感情移入する事もしばしばあった。

 こんな英雄になってみたい。

 前世じゃあ何かを成し遂げる前に死んだんだから今世で何かを成し遂げたいと思ってもいいだろう。

 ふと思ったんだが、俺がお姉さんの眷属になれば、ファミリア再興の足掛かりになるんじゃあないだろうか。

 うーん、俺自身がきっかけっていうのはちょいと傲慢が過ぎるかな?

 どっちにしろ眷属が居なきゃファミリアは成立しないわけだし、明日にでもお姉さんに頼んでみよう。

 

 □月@日

 

 お姉さんに眷属にしてくださいって頼んだら普通に却下された。

 自分の居場所がバレた事も俺のせいじゃあ無いし、隠れ家作ってくれただけでも十分だと気をつかってくれている。

 でもね、何かしてあげないと罪悪感がやばいし、オラリオには単純に興味あるし、お姉さんをリオンさんと会わせてあげたいしとこっちにも色々あるんですよ。

 説得してみたものの、お姉さんは俺が子どもだからもう危険な目に遭わせたくないと断固として拒否してくる。

 俺を利用しようと思わないのは優しい性格故なのか、それとも一度ファミリアが潰れて燃え尽きちゃっただけなのか、俺個人では判断に困る。

 ちなみに両親にオラリオで冒険者になりたいって言ったら「そっか、頑張んなよ」と言われた。

 何かおかしくないですか?

 普通もうちょっと引き留めたり、もっと大人になってからにしろとか言わない?

 今更だけどうちの両親放任主義過ぎませんか?

 いやまあジョジョってあんまり両親揃ってまともって例は珍しいからこれが妥当なのか?

 

 □月¥日

 

 ここ数日、ひたすらお姉さんに頼んでみたけどやっぱり駄目だった。

 そしてとうとう「オラリオに行ったら他にも主神がたくさんいるからその神達に神の恩恵(ファルナ)を授かればいいじゃない」とまで言われてしまった。

 他の神々なんて言われても俺はお姉さんしか神様知らないし、お姉さんだから力になってあげたいって思ったのに、他の神様選んだら本末転倒だと言い返したら押し黙って何も言い返してこなくなった。

 もしかしてお姉さんは押しに弱い?

 

 □月*日

 

 今日もお姉さんに頼みに行ったら、昨日までと違って眷属になる上で条件を出された。

 その内容とは以下の通り。

 

 1、勝手な行動は控える事。

 2、無理、無茶、無謀な行動は出来る限りしない事。

 3、オラリオではスタンドの使用はともかくスタンドについては無暗に言い触らさない事。

 4、俺の母さんに合格点を貰うまで鍛えて貰う事。

 

 4番目の難易度がずば抜けて高い事を除けば別段おかしな内容じゃあ無かった。

 スタンドについてだって知られなければそれだけで優位に立てるんだから態々言い触らす事にメリットは無い。

 とりあえず母さんに相談したら今日からペースを上げてよりみっちり鍛えられる事になっちゃったよ。

 さて、俺は果たして合格を貰うまでに五体満足でいられるかな?

 

 

 

 ――――そして一年もの時が過ぎた。

 

 

 

 

 

「じゃあアストレア様。うちの息子をよろしくお願いします」

 

「はい、あの子は私が責任もってお預かりします」

 

 不思議な力を持つ少年、ジョシュア・ジョースター。

 私が出した課題を一年でクリアしてみせた男の子。

 結局私はあの子の真摯な言葉に押し切られてあの子を新たな眷属として迎え入れる事にした。

 

 正直な事を言うとまだ自分の中にも燃え尽きずに燻っていたものがあったのかもしれない。でも、そんな自分勝手であの子の運命を捻じ曲げるような真似はしたくなかった。

 でも、彼はそれを望んでひたすら力をつけ続けた。

 それが私にとってはどうしようもないくらい嬉しかった。

 私の中で燻っていたものがどんどん燃え上がるのを感じた。

 あんな終わり方は嫌だと私の心が悲鳴を上げているのを感じた。

  

「あの子には感謝しているんです。多分あの子と出会わなければ、ずっとあの家でリューの生存も知らないまま空虚に生き続けてた」

 

「言い過ぎですよ、もしかしたら知るのが少し早まっただけかもしれませんよ?」

 

 笑っているのはあの子の母親。

 その女性はかつて【達人(マスター)】と呼ばれた第一級冒険者。

 

「フーッ、ジョジョもとうとうオラリオに行っちまうのかぁ~。俺の若い頃を思い出すねぇ~ッ」

 

 名残惜しそうに馬車で私を待ってくれているあの子を見ているのはあの子の父親。

 その男性はかつて【隠者】と呼ばれた第二級冒険者。

 

 今思えばとんでもない子を眷属にしたわね。

 

「おねえさーん、もう馬車が行っちゃうよーーッ!!」

 

 あの子の急かす声が聞こえた。

 

「全くあの子ったら……」

 

「フフフ、じゃあ私もそろそろ行ってきますね」

 

 リュー、もしかしたらこれから私がすることはあなたへの裏切りになるのかもしれない。

 でも、私はもうあなたを独りぼっちにはしたくない。

 だから、私はもう一度歩き出します。

 (マイナス)から原点(ゼロ)へと向かって歩きます。

 



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 ☆月〇日

 

 いや~長い長い道のりだった。

 母さんや親父や村の人達からから服とか装備とか軍資金とかを餞別に貰って村を出て早30日。

 本当に、何て長い道のりだったのか。

 この世界には飛行機も新幹線も電車も自動車も無いから交通面が本当に不便なんだよね。馬車も何回か乗り換えてとても面倒。

 『ストレングス』や『ホウィール・オブ・フォーチュン』で乗り物作ってもいいけど未知の乗り物使ってたら目立ってお姉さんに迷惑掛かりそうだから止めた。

 そもそも俺、前世でも運転免許持ってなかったしね。

 お姉さんは人の目が増えてきた辺りからココ・ジャンボの中に入って貰った。

 何処に誰の目があるか分かったもんじゃないし、お姉さん美神だから変なトラブルに巻き込まれそうだったから、妥当な判断だったと思う。

 おまけに運賃が一人分浮くしね。

 

 いつまでも あると思うな 親と金 by ジョシュア

 

 そしてやってきました『迷宮都市オラリオ』。世界の中心だの今一番ホットな都市だの言われているだけあって人や建物が多くて圧倒される。

 今の俺は田舎からやってきたおのぼりさんってわけだ。

 まず始めに安い宿屋を探すためにそこら辺を調べたら素泊まりで一泊2000ヴァリスの宿屋があったからそこに決定。ベッドと机と椅子があるだけの殺風景な部屋だったけど、別に何の問題も無い。

 リオンさん捜索は明日からでもいいかなぁと思ったけどまだ明るいし軽く聞き込みだけでもと宿屋の周辺を『豊穣の女主人』の写真片手に聞き込みを開始。お姉さんから手紙を託されたのでそれだけは絶対に無くさないようにと厳重に懐にしまった。

 聞き込みをしても子どもだからか大人たちに碌に相手をして貰えず、いっそ『ペイズリー・パーク』でも使ってみようかと考えだしたところで、テンガロンハットをかぶったとっぽい兄ちゃんに絡まれた。

 最初は強請りの類かと思ったが、どうやら『豊穣の女主人』の場所を知っているようで、「これからそこで飲みに行くんだけど一緒にどうだい? 奢るよ」と言われてしまった。

 場所は知りたいけどこの兄ちゃんはどうも胡散臭い。

 変な動きを見せたら即座に逃げるための逃走プランを10通り程思いついた頃には空はオレンジ色に染まり、俺と怪しい兄ちゃんは『豊穣の女主人』と看板のある店に到着していた。

 マジで知ってたのかよ。

 まだ夕方だからか客入りはまばらだった。

 注目すべき点はそこじゃあなくて従業員が全員女性で美人が多い事だ。 

 おまけに母さんに色々教わったせいで何となくだが従業員のほとんどの戦闘力が高めっていうのが分かる。 

 もしかしてこの店は従業員が用心棒を兼任してるのか、それとも冒険者って駆け出しの声優や漫画家みたいにバイトしないとやってけないような職業なのか、オラリオにきたばかりの俺では判断に困った。

 美女が多い従業員の中でも俺が探していた人は一際目立っていた。

 写真で見るより数十倍は美人だったね、というかエルフをリアルでみるのってこれが初めてだろ。犬人や猫人なら村にもいたけど、エルフは基本他種族と関わろうとしないから普通は会う機会なんて無いし。

 後、奥にいるドワーフのおばちゃんがこっちをじっと見てたのが何か気になった。

 未成年は立ち入り禁止とか……じゃあないよな。

 そんな事考えてたら「ぶっちゃけ、誰が好みだい?」と突然兄ちゃんが俺に話を振ってきた。

 何か勘違いしてないか?

 とりあえず「みんな美人で甲乙つけ難いですねハッハッハー」と適当に返したよ。

 メニューを見たらどれも結構お高めでビックリ、しょっちゅう通うのは無理だな。

 頃合いを見て『ザ・ワールド』で時を止めて手紙と今泊ってる宿屋の場所を走り描きしたメモ用紙をリオンさんのポケットに突っ込んだ。

 精神力が鍛えられて止められる時間が0.5秒に増えたからそれくらいは出来るようになったよ。

 あの地獄の一年は無駄じゃあ無かった。

 俺が頼んだ焼き鳥の盛り合わせが無くなる頃だったか、機嫌悪そうな眼鏡のお姉さんが怪しい兄ちゃんを引き取りに来て、そのまま兄ちゃんを引きずって連れて帰っていった。

 結局何だったんだ?

 それにしても眼鏡のお姉さんは美人だった。

 ザ・美人秘書みたいな感じ。

 何はともあれリオンさんの捜索、及び手紙を渡すというミッション完了。

 なるほど、完璧な一日だったっスねーーーっ、帰りに不審者につけられてたって点に目をつぶればよぉ~!

 今日はもう疲れたから詳しい事は明日書く。

 

 ☆月×日

 

 昨日の不審者はリオンさんだったでござる。

 波紋を使った生命探知があったから気づけたけどビビったわ。

 お姉さんの件で話がしたいんだったら普通に話しかけてくれよ。

 人さらいか何かだと思って『グーグー・ドールズ』憑依させて小型化させちゃったよ。 

 話がある場合はどうぞーってかいたメモ用紙は一体何だったのか。

 初対面の俺がどうこう言っても多分信じて貰えないだろうからココ・ジャンボの中に放り投げてスタンドを解除しておいた。

 色々と積もる話もあるだろうし互いに腹を割って話してくださいな。

 ここまでが昨日までの話。

 今朝様子を見に行ったら泣き疲れて眠ってたっぽかったんで、お姉さんの希望もあってそのままにしておいた。

 膝枕羨ましい。

 俺は一人寂しく波紋の早朝稽古だよ。

 シャボンランチャーとかもっと練習してものにしないとね。

 戦える手段は多いに越したことない。

 適当に広い場所でやってたら小さい女の子の目に留まって「シャボン玉だー」とテンション高めになってたから即興だけどくっつく波紋の応用でバルーンアートならぬシャボンアートを作ってみたらこれが大ウケ。

 早朝稽古がいつの間にやら大道芸になってたでござる。

 お捻りで約3000ヴァリスも貰ってしまった。

 昼間は軽食を買った後にオラリオを見て廻っていた。

 お姉さんは「まずはオラリオを見て廻りなさい。色々なファミリアを見てきなさい。それでもし、他に入りたいファミリアがあったなら、そこに決めなさい。でも、もし他のファミリアを見てそれでも私の眷属になりたいのなら、改めてあなたに『神の恩恵(ファルナ)』を授けます」と言われてしまったのがそもそものきっかけだ。

 お姉さんは俺に他の選択肢を見た上で俺に決めて欲しいようだ。

 とりあえず探索系のファミリアがいいからそっちから見ていこう。

 露店でアクセサリーを売ってたおっさんに有名なファミリアを聞いてみたら、探索系だと『ロキ・ファミリア』、『フレイヤ・ファミリア』、『ガネーシャ・ファミリア』、商業系だと『ヘルメス・ファミリア』、『デメテル・ファミリア』、『へファイストス・ファミリア』が有名だそうだ。

 駄賃代わりに蒼い石のペンダントがついたネックレスをお姉さんの土産にと買った。

 とりあえず一番近い『ロキ・ファミリア』の拠点である『黄昏の館』に行ってみたら既に長蛇の列が出来ていた。

 そこに並んでたスキンヘッドのいかついおっさんに話を聞いてみたら「ここは天下の『ロキ・ファミリア』の入団試験の列だ。お前みたいな田舎者のモヤシ野郎が来る場所じゃあないんだよ!」と突き飛ばされた。

 痛くは無いけどイラっとしたから『トーキング・ヘッド』をくっつけてやったよ。

 俺はコケにされると結構根に持つタイプなんだ。

 しばらくしたらスキンヘッドのおっさんは外に放り出されてたよ、ざまあ。

 結局『ロキ・ファミリア』に関しては自己顕示欲の強い力自慢が入団試験を受けに来るって事しか分からなかった。

 流石に団員はあんなんばっかりじゃあ無いと思うけど、というかどのファミリアにどんな奴がいるかも分からないんだったな。

 明日はファミリアよりも冒険者について調べよう。 

 帰りにお姉さんに何か買ってこうかとしたら『じゃが丸くん』なるものを売っている屋台に遭遇。

 見た目はコロッケに近いかな。

 じゃがってつくくらいだからジャガイモが材料なんだろう。

 前にいた俺と同じくらいの少女が小豆クリーム味とかいうゲテモノ臭がするものを20個も買っていったんだけど、美味いのか? どら焼きやシュークリームじゃあないんだぞ?

 安定が好奇心を上回った俺はプレーン、カレー、挽肉、コーンを3つずつ買って帰った。

 どれも一つ30ヴァリスで実にリーズナブル、小腹がすいたときにはいいだろう。

 お姉さんにはアクセサリーは喜ばれ、小豆クリーム味を買って来なかった事を怒られた。

 リオンさんは寝過ごして仕事に遅刻した。

 

 ☆月□日

 

 早朝稽古の途中にリオンさんがやってきて頭を下げられた。

 「誤解してすいません。それとアストレア様を守ってくれてありがとう」と深く深く頭を下げられた。

 こっちもいきなり小型化させてからマフラーで拘束したのは悪かったしお互い様だと軽く流した。

 というかそもそも俺のせいでお姉さんが村を出る羽目になったんだから守るのは当然では?

 リオンさんは俺がスタンドという特殊な力を持っている事をお姉さんから少し聞いたらしい。

 お姉さんが信頼出来ると思っている人だし別に良いか。

 俺の先輩になるかもしれないし、知って貰って損はない。

 その後、リオンさんは俺の稽古を興味深そうに眺めていた。

 妖精とまで言われてるエルフ族にとっても波紋呼吸法は未知の領域なんかね。

 「基礎がしっかり出来ている。良い師に鍛えられたようですね」と褒められてすっごく照れくさい。

 いや~一年間の修行は地獄でしたね。

 ついでに現在のファミリア事情について聞いてみた。

 『ロキ・ファミリア』と『ガネーシャ・ファミリア』はともかく『フレイヤ・ファミリア』は入団試験をやる事は滅多に無いらしい。

 団員は主に女神フレイヤが気に入った奴を自身の美貌で魅了して他所のファミリアから引き抜いてるそうだ。

 何か『他球団の4番を引き抜いてドリームチーム作ろう』みたいな考えだな。

 神々にはスタンドが見える可能性があるし、気を付けるか。

 稽古の後はオラリオの冒険者について調べようと町へ繰り出したら早速丁度いいものに出くわした。

 ブロマイド屋である。

 人気のある、もしくはヒットしかけの冒険者たちのブロマイドがずらりと並んでいて値段も30ヴァリスくらいものもから10000ヴァリスもするものある。

 買うかどうかは別にしても今の俺にはうってつけの店だった。

 店主にこのオラリオ最強は誰かと聞けば、武力なら『猛者』オッタル、次点で『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ。魔法であれば『九魔姫(ナインヘル)』リヴェリア・リヨス・アールヴが他の追随を許さないらしい。

 『九魔姫(ナインヘル)』めっさ美人だな。こんな人に叱って欲しい。

 そしてやっぱりというかまあ、この人達のブロマイド高いね。

 他に有名な冒険者はいないかと聞けば『剣姫』がダントツだそうだ。

 現在13歳という若さで既にレベル4。

 おまけに7歳で冒険者になり、一年後にはレベル2になった最年少、最短の世界記録を所持している。

 リオンさんが確かレベル4らしいからそれと同格って事か。

 リオンさんはエルフなせいで見た目で実年齢が判断しづらいけど10代前半って事はあるまい。

 やはり天才か。

 ブロマイド見たらなんかどっかで見た様な……気のせいか?

 店主は、散々答えてやったんだから何か買ってくれと言い出した。

 『剣姫』のブロマイド2000ヴァリス也。

 高いけどまあ買える値段なのが返って腹立つ。

 ちょっと迷ったけど、最後の一枚でしばらく入荷は無いと言われたし、今後の活躍でプレミアつくかもしれないし買った。

 もうここまで来たらちょいと散財しようと『白巫女(マイナデス)』、『戦場の聖女(デア・セイント)』、『太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)』、『超凡夫(ハイ・ノービス)』等々安いのを何枚か購入。

 あくまで情報収集だからね、女の子のブロマイドばっかり買ってたら誤解されそうだしバランスとらなきゃ。

 帰ろうとしたら黒いグラサンにマスクを付けた怪しいエルフ(耳が長いから多分エルフ)が入ってきた。

 見るからに怪しいから関わり合いにならないようとっとと帰ろうとしたら『剣姫』のブロマイド最後の一枚を譲ってくれとせがまれた。

 何が悲しくて変な格好した怪しいエルフに2000ヴァリスもしたブロマイドを譲らにゃならんのだ。

 20000ヴァリスで売るって言ったらキレられたし、本当にやかましいエルフだ。

 仕方ないから『ジェイル・ハウス・ロック』を使って混乱している内に逃げ出した。

 いや~しつこかったな。

 

 帰ったらリオンさんがレベル5になってた。

 おめでとうございます。

 新生アストレア・ファミリア団長はあなただ。

 




日記の補足
スキンのおっさんはリヴェリアに『若くて美人』とおべっか使ったら『年寄りの不細工』と口から出て怒りを買いぶっ飛ばされました。

次回、リュー視点


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リュー・リオンは笑わない その1

ハーメルンに今作を3話くらい投稿したら
何も宣伝していないのに勝手にお気に入り数が増え始め
お気に入り数が4000件を突破した。
あなたならどうする……?
正直プレッシャーで潰されそうですはい


というか投稿遅れてすいません



 私、リュー・リオンは罪人だ。

 親友も仲間も守れずに一人生き残ってしまった罪人だ。

 激情のままに疑わしき者達を殺して回り、オラリオのいたるところに被害を出した罪人だ。

 復讐鬼と化した自分を見て貰いたくないという自分勝手な都合で主神(アストレア様)を都市外へ避難させた罪人だ。

 

 そして復讐を遂げた私に残ったのは虚無感だけだった。

 何故あの日、自分も皆と共に死ねなかったのか。

 何故あの日、あの路地裏で死ななかったのか。

 私に残っているものなんて何もないというのに。

 

 ―――私達のために戦ってくれてありがとう。

 

 彼女(シル)のその言葉に救われた気がした。

 涙を流したのなんて何時振りだろうか。

 私には彼女達が命を賭して守ったものを彼女達の分まで見届ける『義務』がある。

 それが私が今を生きている『理由』になる。

 もう過去だけを見て後悔ばかりしているのをやめよう。

 

 そうして私が『豊穣の女主人』の従業員になってからもう一年以上が経った。

 

 それなりに仕事が板についてきたとは思う(主に配膳と皿洗い)。

 今日もいつものように開店準備をしていつものように滞りなく業務をこなしていき、外は夕日に染まっていった。

 そろそろ仕事を終えた労働者達やダンジョン帰りの冒険者達がどっと押し寄せてくる頃合いだろう。

 

「いや~やってるかーい?」

 

 来たのは胡散臭い男神だった。

 『ヘルメス・ファミリア』の主神ヘルメスといえばちゃらんぽらんで掴み所のない性格で有名だ。

 ファミリア運営を放って勝手に何処かへ行く主神に、団長として就任したばかりの『万能者(ペルセウス)』ことアンドロメダも気苦労が絶えないだろう。

 

 ただ飲みに来ただけならいつもの事だが、今は何故か子どもを連れている。

 年齢は12か13程度の黒髪黒目の少年。

 軽装で長いワインレッドのマフラーをしている以外はごく普通に見える。

 いや、服の内側にちらりと見えた金属の輝きはおそらく鎖帷子のもの。

 

 『ヘルメス・ファミリア』の新人だろうか。

 まさか『通りすがりの少年に絡んだ挙句この店に連れてきた』なんて事は無いだろう。

 

「いやあの……場所さえ教えて貰えればいいんですけど……」

 

「ハハハ、子どもが遠慮する事は無いさ。今日は俺の奢りだよ」

 

「えぇ……(面倒な事になってきたなァ)」

 

 少年は露骨に嫌そうな顔をしている。

 傍から見れば酔っ払いに連れまわされている哀れな少年にしか見えない。

 

「じゃあ……焼き鳥の盛り合わせとオレンジジュースで」

 

「おや、お酒は飲めないかい?」 

 

「お酒は変な味がするんで苦手なんですよ……(もう二度とマッコリなんて飲まんぞ……)」

 

「そういえばまだ名乗って無かったね。俺はヘルメス、君は何て名前だい?」

 

 まさか名前すら知らない少年を連れまわしていたとは、幾らヘルメスがちゃらんぽらんでも知らない子どもを酒場に連れて来るだなんて、頭がイカレてるんじゃあないだろうか。

 

「ジョシュアです」

 

「うん?」

  

「俺の名前はジョシュア・ジョースターです。両親や友人からはよくジョジョって呼ばれてます」

 

「!?」

 

「……へえ、じゃあ俺も君の事をジョジョって呼ばせてもらうおうかな」

 

 ミア母さんが少年の名前にやけに過敏に反応した。

 あの人がこんな風に心底驚く姿を見るのは初めてかもしれない。

 それにへらへらしていたヘルメスも名前を聞いた途端に少年を見る目が変わった。

 

「あの、俺の名前がどうかしました?」

 

「気にしないでいいよ。ほら、オレンジジュース」

 

「はあ、ありがとうございます」

 

 ミア母さんは誤魔化すように少年の前にオレンジジュースを置いて、調理に戻っていった。

 少年のソワソワした態度を見る限り、私には田舎からやってきたおのぼりさんにしか見えない。

 しかし、この二名が目をかけるとなると否が応でも気になってくる。

 

 酒と料理も届いてしばらくした頃、客の入りが増えて目を離さないようにするのが少し難しくなってきた。

 

「それでジョジョ君。ここは綺麗所が揃っているわけだが……ぶっちゃけ、誰が好みだい?」

 

「何ですか突然」

 

「だってこういう酒の場では素面じゃ喋れない事を気軽に喋るのが楽しいんじゃあないか」

 

「(俺は素面なんだけどなァ)いや~みんな美人で甲乙つけ難いですねハッハッハー」

  

 無理をしているのが丸わかりな態度だった。

 年端もいかない少年に何を言ってるんだか。

 

 結局ヘルメスは眉間に皺を寄せたアンドロメダに見つかって、そのまま引きずられて店を出ていった。

 何やら格好つけて意味深な事を言っていたような気がするが、首根っこ掴まれて引きずられていたので酷く滑稽に見えた。

 

「おーいリュー、これ運んでおくれ!」

 

「あ、はい!」

 

 駆けようとした瞬間、足の付け根に違和感が走った。

 今まで気が付かなかったがポケットに何かが入っている。

 はて、ポケットに何か入れていただろうかと隙間の時間を見つけて確認をしてみた。

 

「これは……封筒?」

 

 ポケットに入っていたのは何の装飾も無いありふれた白封筒だった。

 こんなものをポケットにしまった記憶はない。

 こんなことをやりそうな人物といえば先程までいたヘルメスだが、あの男神でも私に気づかれずに懐に封筒を忍ばせる何て真似はまず不可能だ。

 

 私は恐る恐る封を開けて中の手紙を手に取った。

 

「は……?」

 

 思わず手紙を落としそうになったくらいに動揺した。

 それだけ手紙の差出人が衝撃的だったからだ。

 

―――――――――――――――――

 

 親愛なる我が眷属 リュー・リオンへ

 

 返事が遅れてしまって申し訳ありません。

 貴女は今、息災ですか?

 『豊穣の女主人』でのお仕事は順調でしょうか?

 新しく出来たお友達とは喧嘩ばかりしていませんか?

 一度貴女と会ってまた改めて話をしたいと思っております。

 

 女神アストレアより

 

―――――――――――――――――

 

「アストレア……様……」

 

 思わず口に出ていた。

 内容は簡素だったものの、筆跡はアストレア様のもの。

 今日来た客の中で初見の人物はあの少年ただ一人。

 まさかあの少年はアストレア様の関係者だったのか。

 私は即座に封筒を処分し、手紙をポケットに仕舞って動いていた。

 

 戻った時には例の少年は食事を終えて既に店を後にしていた。

 オラリオの規模を考えれば、見失ったら探すのが難しくなる。 

 私はシルに急用が出来たと伝えて少年を探すことにした。

 

 あの少年がただのアストレア様の使者であればいいだろうが、もしあの少年が『アストレア様を捕らえた何者か』の使者であるのなら、あの手紙は私を誘き出すためのもの。

 もし筆跡を真似ていたのだとしたら、内容などいくらでも捏造できる。

 最悪の事態だけは何か何でも避けなくてはならない。

 いつものエプロンドレスから冒険者時代に着ていたような全身を覆い隠すローブに着替えて少年の後を追った。

 

「レラレラレラ♪」

 

 幸いな事にあのマフラーのお陰で少年はすぐに見つかった。

 食事をして気分が良くなったのか、少年は妙な歌を口ずさみながら薄暗い夜道を歩いている。

 私の思い違いだったらそれでいいのだが、そこまで楽観的ではいられない。

 手遅れになってからでは遅い。

 

「おっ、小銭めっけ」

 

 何というか、どこまでも年相応の少年に見える。

 人通りも少なくなってきているというのに少々不用心ではないか。

 オラリオの暗黒期は終わったとはいえガラの悪い冒険者は数多くいるのだからもう少し警戒した方が良いだろうに。

 もしかしたらただの杞憂だったかもしれないと少し気分が緩んできた。

 

 そして彼は拾った小銭を――――

 

「フンッ!」

 

 ――――こちらへと投げつけてきた。

 

 私はとっさにコインを避けて獲物に手をかける。

 気づかれていた?

 だとしたら一体いつから?

 

 こうなれば少々手荒な事になってしまうだろうが、それは『覚悟』していた事。

 素早く意識を奪ってから拘束して話を聞けばいい。

 

「『グーグー・ドールズ』ッ!」

 

 少年が何かを叫ぶ。

 まさか魔法が使えるのか。

 私は何が起こってもいいように身構えた。

 

「え……?」

 

 少年は大げさに叫んだというのに私には何の変化も――――いや待て道端にこんなに大きな岩が落ちていただろうか。

捨てられた酒瓶の大きさは自分の身の丈よりも大きかっただろうか。

 目の前にいる少年は自分より数倍大きかっただろうか。 

 

 否、少年は巨大化などしていない。

 自分の身体が小さくなっているのだ。

 

 ┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛

 

 このままではマズいと身を翻して逃げようとした。

 しかし、体格差は目測で見ても5倍以上はある。

 体の小ささを活かして身を隠しながら逃げるしかない。

 

「そんでもって『蛇首立帯(スネック・マフラー)』!」

 

「なっ!?」

 

 少年が首から外したマフラーがまるで蛇のように自在に動いて私の身体に巻き付いて拘束する。

 この瞬間、私が取った対応が失策だったと歯噛みする。

 足掻こうにもこれでは手も足も動かない。

 魔法を使おうにも今からでは遅すぎる。

 

 少年はマフラーを引っ張って私を引き寄せた。

 その衝撃で私の顔が露わになってしまった。

 

「全く、せーっかく人が良い気分で帰り道をあるいてたってのによォ~~ッ。どこの誰だって話だよ。とりあえず波紋流して気絶させてしかるべきところに突き出し……」

 

 不機嫌そうな少年は私の顔を見た途端に固まった。

 そして後悔するかのようにもう片方の手で頭を抱えている。

 私には何が起きているのかさっぱり分からない。

 

「マジかよ……ハァ~お姉さんに何て説明すりゃいいんだコレ。でもスタプラとかで攻撃しなくて良かった」

 

「あの……」

 

「あ~リュー・リオンさんですよね? すいませんけど付いてきてもらいます。それと、出来れば抵抗はしないで欲しいです。そうじゃないと『グーグー・ドールズ』があなたを襲っちまう」

 

 少年は私の言葉を遮った。

 『グーグー・ドールズ』とやらが何なのかは知らないが、少なくとも今すぐにどうこうされるわけではないらしい。

 どちらにせよ抵抗は無意味だと思い、現時点では様子見に徹する事にした。

 

 そのまま少年に連れて来られたのはごく普通の宿屋の一室。

 机と椅子とベッド、そして亀が一匹いるだけの部屋だった。

 そして少年は亀の前に立った。

 

「じゃあ行きますか」

 

「行くって何処へ……」

 

 次の瞬間、私は少年ごと亀の背中へと吸い込まれた。

 

「は……?」

 

 私は今日、一体何回絶句しただろうか。

 飾りっ気のない宿屋の一人用の一室がそれなりに調度品が揃った生活感ある空間に変わっている。

 

「あら、おかえりなさいジョジョ。遅かったですね」

 

「すいません、ちょっと予定が早まりまして」

 

「予定?」

 

「『グーグー・ドールズ』解除」

 

「はうあ!?」

 

 マフラーに巻き付けられていた私は突如元の大きさに戻り、思いっきり尻餅をついてしまった。

 元に戻すなら前もって言って欲しい。

 

「え、リュー?」

 

「アストレア……様……?」

 

 聞こえてきた声でまさかとは思っていたが、私の主神である女神アストレアがそこにいた。

 そしてアストレア様はジト目で少年を睨む。

 

「成程、予定が早まったとはこういう事ですか。ジョジョ……貴方はもう少し女性の扱いというものをですね……」

 

「そんな事言われても、メモ書いて同封したのにまさかつけられるとは思いませんでしたし、暴れられたら面倒ですし」

 

「やり方というものがあるでしょう。はあ、後でお説教ですからね」

 

「はーい。二人は積もる話もあるでしょうし俺は外に出てますね。ジョシュア・ジョースターはクールに去るぜ」

 

 私は二人のやり取りを困惑しながら眺めている。

 そして私を連れてきた少年は本人が言った通り上から出ていった。

 そして改めてアストレア様と向き直る。

 

「何故……」

 

 汗が噴き出る

 喉が渇いてきた。

 言葉が思うように出てこない。

 

「何故戻ってきてしまったのですか!!?」

  

 言ってしまった後で思わず口を覆った。

 頑張って絞り出した言葉がこれだった。

 そもそもアストレア様を都市の外へ逃がしたのは私の我儘だ。

 目を背けるのは止めようと思っていたのに、自分の罪が目の前に現れたらこれだ。

 きっと失望されただろう。

 だとしたらもうそれでいい。

 私にはそんな価値は無いのだから。

 

「リュー」

 

 何と言われるだろうか。

 慰められるだろうか、それとも憐れまれるだろうか。

 それならいっそ罵倒された方が良い。

 

「少し、痩せましたか?」

 

「へ?」

 

「ちゃんとご飯は食べてますか?」

 

「あ、はい」

 

「『豊穣の女主人』でしたっけ? ちゃんとお仕事は出来ていますか?」

 

「……はい」

 

「貴女は不器用ですからね、それが心配でした」

 

「えっと……」

 

「シルさんでしたか、友人との仲は良好ですか?」

 

「は、はい……」

 

 アストレア様は優しい眼差しでこちらを見ながら取り留めのない話を続ける。

 それが私を酷く居た堪れない気分にさせた。

 

「ごめんなさい」

 

「えっ」

 

 アストレア様は私に向けて深く頭を下げてきた。

 悪いのは私なのに、何故貴女が謝るのですか。

 

「貴女一人を残してしまって、貴女一人に全てを背負わせてしまって、ごめんなさい」

 

「違う!」

 

 私は叫んだ。

 

「私は誰も守れず、貴女を遠ざけて復讐鬼に成り果て、貴女の、『アストレア・ファミリア』の正義に泥を塗った! 悪いのは私です! 貴女が謝る必要などない!」

 

「あの日、私は貴女の言葉に甘えてしまった。私も同罪です」

 

「あれは私の我儘だ! 挙句……私はブラックリストにも載って……もう、冒険者ですらないのです……」

 

 アストレア様が今どんな顔をしているのか見たくないその一心で、私は目を伏せてしまった。

 そんな私の手を、血にまみれてしまった私の手を、アストレア様は優しく温かい手で包み込む。

 

「たとえ冒険者で無くなっても、リューが私の大事な眷属である事に変わりはありません」

 

 彼女の優しく温かい言葉に思わず崩れ落ちそうになる。

 アストレア様は崩れそうになった私をそっと抱き寄せてくれた。

 駆け出し時代に無理をしてボロボロになった私をこうやって抱き寄せてくれたことがあったのを思い出す。

 

「私を……許してくださるのですか……?」

 

「勿論ですよ」

 

「私は……まだ貴女の眷属でいていいのですか……?」

 

「当たり前です」

 

 自分勝手かもしれない

 けれど、私はずっと誰かに許して欲しかったのかもしれない。

 

 誰かに我が身を預けるのは久しぶりだった。

 誰かの前で思いっきり泣くのも久しぶりだった。

 そしてこんなに安らかに眠ったのも本当に久しぶりだ

 

 安眠し過ぎて仕事には遅れてしまい、ミア母さんにはどやされてシル達やその他同僚には昨夜から行方不明だったことを心配されて誤解を解くのに手間取ってしまった。

 

 自業自得とはいえ、何故起こしてくれなかったのですかアストレア様。

  




ヘルメス「ジョシュア・ジョースターか……果たして彼は『剣姫』のような英雄足りえるか否か……」

アスフィ「何でもいいですけど仕事してくれませんか?」


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リュー・リオンは笑わない その2

ダンまちの劇場版見に行こうと思ったらもう上映終了してた
エシディシの如く泣きたい気分



「先日は申し訳ありませんでした」

 

「いやいや、つけられたとは言えいきなり襲撃したのは俺の方ですし。すいませんね、追跡されてるって思うと過敏になっちゃうんですよ」

 

 謝罪をするために休日を貰い、改めて少年、ジョシュア・ジョースターに会いに来た。

 彼は早朝から一人稽古をして己を研磨している。

 まだ若いのに立派だと思う。

 

「それに、アストレア様をここまで守ってくれてありがとうございます」

 

「まあ、半分は俺の我儘みたいなもんですし、お礼言われると何か変な気分になりますよ」

 

 少し話をした後、少し稽古を見させて貰ったが、基本の身体運びがしっかりと出来ている。

 良く言えばしっかりと基礎が積まれていて、悪く言えばそれ以上のことは出来ない。

 おそらく彼は実戦経験がほとんどないのだろう。

 話に聞けば彼を鍛えた師匠であり母親は波紋とやら以外は丸一年基礎固めに専念させたらしい。

 確かに、その辺のゴブリンを倒して変に自信をつけてもダンジョンでは痛い目を見る。

 実際に村にやってくるゴブリンを倒して自信をつけた田舎の力自慢が冒険者になって、ダンジョンで帰らぬ身になったという話は掃いて捨てる程ある。

 彼なら最悪スタンドでどうにかなるかもしれないので死ぬことはそうそうないだろうが。

 

「それにしてもスタンドですか……」

 

「スタンドがどうかしました?」

 

「いえ、変わった力があるものだと思いまして」

 

 神々と彼自身以外には見えない力。

 事実私には見えなかったし反応も出来なかった。

 他にも種類があるそうだし、使い方によっては悪事に転用する事も容易な恐るべき力だと思う。

 

 彼はまだ幼い。

 彼が悪の道に走らないように今後しっかりと注視していった方が良いだろう。

 

「そういえば波紋っていったい何なんですか?」

 

 彼の話の中に出てきた呼吸から生み出される魔力とも異なる未知のエネルギー。

 武術にはそれに適した呼吸というものが存在するとはどこかで聞いた事があるが、これはあまりにも不明瞭。

 私を捕らえたマフラーを自在に操る術も、今やっている半分大道芸になっているシャボン玉の放出もそれによるものだという。

 というかあのシャボン玉はどういう原理で放出されているのだろうか。

 

「何でも神々が地上に降りてくる前にとある人間の一族が魔物と戦うために編み出した手法だって母さんが言ってました。神々が恩恵を刻むようになってからは廃れて、今いる波紋使いも俺の知る限りでは母さんと、その親類だけだとか。世界中探せばもしかしたら他にもいるかもしれませんけど」

 

 そもそも会得するまでが割と地獄ですからねと少年は苦笑いしている。

 私が思っていたよりも古代の技術で驚いた。

 

「そういえば、オラリオのファミリアで有名なのとかってあります? オラリオはまだきたばっかりでそんなに詳しくないんで教えて貰えると嬉しいんですけど」

 

「有名なファミリアですか」

 

 話を聞けば、どうやら彼は冒険者になりにこのオラリオに来たそうだ。

 冒険者になるにはまだ若くないだろうか。

 

 有名なファミリアといえばこのオラリオで双璧をなす『ロキ・ファミリア』と『フレイヤ・ファミリア』。

 その二つと違って探索よりもオラリオの治安維持や怪物祭りが主な仕事だが、一級冒険者を最も多く保有する『ガネーシャ・ファミリア』。

 世界クラスの知名度を持つ鍛冶系ファミリアである『へファイストス・ファミリア』。

 オラリオ一の農業系ファミリアである『デメテル・ファミリア』。

 

 中には『ソーマ・ファミリア』や『アポロン・ファミリア』のような悪い意味で有名なファミリアもあるので、そういうのとはあまり関わり合いにならないようにと伝えておく。

 

「ですが、ジョースターさんの好きにやりたいのであれば知名度が低い零細ファミリアを探して加入するのも手だと思いますよ。特にまだ眷属がいないファミリアなら即入団できる可能性も高い。ギルドに行けばそういったファミリアの紹介もして貰えると思います」

 

「零細ファミリア、そういうのもあるのか。ありがとうございます。それとこれ、俺が泊ってる部屋の鍵です。渡しておきますね」

 

「……軽々し過ぎませんか?」

 

「少なくとも部屋に盗られて困るようなものはココ・ジャンボ以外ありませんし、リオンさんがアストレア様に危害を加えるとも思えません(金とか武器は『エニグマ』で仕舞ってあるし)」

 

 確かに私がアストレア様をどうこうするつもりはないし、その資格もない。

 人を信じられるというのは美徳だが、いつか馬鹿を見る事になりそうで心配だ。

 

 彼はその後、オラリオの冒険者について調べてくると言ってそのまま何処かへ走っていった。

 

 そして私は彼から借りた鍵を使ってあっさりと彼の泊っている部屋に入り、そしてココ・ジャンボと呼ばれている亀の背中からアストレア様のいる空間へと転移した。

 

 ここに来るのは2度目だが、相変わらず摩訶不思議な空間だ。

 まさか亀の背中が別空間に繋がっているなどと誰も思うまい。

 これもスタンド能力とやらだろうか。

 とりあえずアストレア様の居場所がバレる心配はまず無いと見ていい。

 

「あらリュー、いらっしゃい」

 

「おはようございます、アストレア様」

 

 アストレア様は優雅に朝のコーヒーを飲みながら本を読んでいた。

 彼女の胸を借りて思いっきり泣いてしまっただけに、この前とは違った意味で顔を合わせ辛い。

 それでも今後の身の振り方などを話し合わなければ。

 

「何か飲みますか? といっても紅茶とコーヒーくらいしかありませんけど」

 

「いや、あの……」

 

「お腹はすいてませんか? ちょっと遅いですけどこれから朝食にするのでリューも良かったらどうです?」

 

 そういえば、いつも受け身な私を何かに誘うのはアリーゼだった。

 食事しながらの方が話しやすい事もあるかもしれない。

 

「なら、私もコーヒーでお願いします」

 

 朝食を食べながら私は今まであった事を話した。

 そして手紙にも書いた事を、死んでいった仲間たちの代わりにこのオラリオを見守っていこうと思っている事を話した。

 アストレア様は話している私を優しい目で眺めてくれている。

 こうしているとかつて皆で騒ぎながら食事をしたことを思い出す。

 こんなことになるのならもっと皆に心を開いておけば良かったと後悔してしまう。

 

 そしてアストレア様も今まであった事を話された。

 皆を失い私を一人オラリオに置いていって空虚だった日々にジョシュア・ジョースターと出会って自身の心に少しずつ光が差し込んだ事。

 

 私がシルに救われたように、アストレア様も彼と出会って救われたのだろうか。

 何か奇妙な『縁』というものを感じる。

 

「そうだ。食べ終わったら久しぶりに()()をやりませんか?」

 

「アレ?」

 

「『ステイタス』の更新です。もう2年ぶりくらいになるでしょう? 結構上がっているのではありませんか?」  

 ああ、そういうことだったか。

 私が最後に『ステイタス』を更新したのはあの『悪夢』の前夜。

 それ以降は私の『ステイタス』に変動はない。

 

 朝食を終えた後、私は服を脱いでアストレア様に背を向ける。

 アストレア様は私の背中に『神血(イコル)』を垂らして『神聖文字(ヒエログリフ)』を刻んでいく。

 久しぶりの更新で指に力が入ってるのか、少しこそばゆい。

 私の『ステイタス』が更新されるなどもう二度とないと思っていた。

 そう考えると何やら感慨深い気分だ。

 

 『ステイタス』の更新が終わったのか、アストレア様の手が止まった。

 だというのにアストレア様は『ステイタス』を眺めながら黙っている。

 何かあったのだろうか?

 

「アストレア様?」

 

「……リュー、おめでとう。ランクアップ可能になってますよ」

 

 アストレア様の祝福の言葉に思わず息を飲んだ。

 ランクアップの条件は基礎アビリティのどれかがDに到達している事、そして偉業を成し遂げる事の二つ。

 私が成し遂げた偉業とはヤツを倒した事か、それとも闇派閥(イヴィルス)にトドメを刺した事か。

 どちらにしろ嬉しいという感情は浮かんでこない。

 今の私にあるのは『遅すぎる』という嘆きだけ。

 喜びを分かち合える仲間たちはもういないのだから。

 もしあの時の私にこの力があればもっと犠牲者が減らせたかもしれない。

 もしかしたら死ぬのは私一人で済んだかもしれないというのに。

 

「リュー、あまり思い詰めてはいけませんよ。貴女は未来を見るのではなかったのですか?」

 

 アストレア様の言葉ではっと我に返った。

 そうだ、終わった事を悔やんだところで死んだ者たちが帰ってくるわけではない。

 ならせめて残ったものだけでも命を賭けて守り通す。

 

「アストレア様、ランクアップをお願いします。私はもう後悔したくない」

 

「はい」

 

―――――――――――――――――

 リュー・リオン

 Lv.5

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 狩人:G

 耐異常:E

 魔防:I

 

《魔法》

 ルミノス・ウィンド

 ノア・ヒール

 

《スキル》

 妖精星唄(フェアリー・セレナード)

 精神装填(マインド・ロード)

 疾風奮迅(エアロ・マナ)

 

―――――――――――――――――

 

 『ステイタス』が書き写された紙を手に、静かに目を閉じた。

 アリーゼ、とうとう貴女を抜いてしまいましたね。

 貴女がもしいたら何と言うでしょうか。

 きっと悔しがりながらも祝福してくれるでしょうか。

 

「発展アビリティや新しいスキルは無し。ですが『耐異常』が上がってますね」

 

 アストレア様に言われてはじめて気づいた。

 確かに『耐異常』がGからEに上がっている。

 

「変わった状態異常を付与するモンスターとでも戦いましたか?」

 

 少なくともそんなモンスターと戦った覚えはない。

 ここしばらく18階層より下には行っていないし、18階層までに『耐異常』が上がるような特殊なモンスターはいないし、強化種とも遭遇はしていない。

 

「あっ」

 

 モンスターではないがあった。

 

 先日の彼からくらった小型化なら十分変わった状態異常と説明できる。

 人の身体は骨が折れればより丈夫に生まれ変わるし、一度耐えた毒や病気に対しては抗体が出来ると言われている。

 もし私に刻まれた『神の恩恵』があの小型化に対応するために強化されたのだとしたら、それがこの結果なのかもしれない。

 

「何か思い当たる事でもありましたか?」

 

「はい……」

 

 私の早とちりによって引き起こされた黒歴史と言える産物なので、進んで話そうとは思えなかった。

 もしかしたら彼経由で既に話されてるかもしれないが、その前だったら忘れるように後で言っておかなくては。

 私は話題を切り替えるために元々気になっていた話題を切り出した。

 

「そういえば手紙には今後の事について話し合いたいと書かれてましたが」

 

「リュー」

 

 先程まで優しく朗らかだったアストレア様の顔は真剣なものへと変わる。

 

「リュー、私がもしファミリアを再興したいと言ったら、貴女はついてきてくれますか?」

 

 私は耳を疑った。

 『アストレア・ファミリア』の再興と聞いた私自身には複雑な想いがあった。

 再興できるのであればしたい、アリーゼたちが築き上げたものを取り戻したい。

 

 でも、その理想は現実によって押しつぶされる。

 

 一から始めるのと一からやり直すのでは大きく違ってくる。

 私はもう冒険者としてやっていけない以上、表立って力を貸す事が出来ない。

 それに、かつて治安維持をしていた『アストレア・ファミリア』をよく思ってないアウトローの連中がその再興を知って何を仕出かすかなど分かり切っている。

   

「本気なのですか……本気でファミリアを再興するつもりなのですか?」

 

 そう言った私にアストレア様は無言で数枚の紙束を渡してきた。

 

 それに目を通すと書かれていたのは私が壊滅させたはずの『ルドラ・ファミリア』のメンバーに関する情報だった。

 

「まさか、残党がいたのですかッ!?」

 

「はい、その残党は私を襲いに来ました。どうやらジョジョを人質にして私を捕らえようとしていたようですが……」

 

 あれだけやったというのに討ち漏らしがあった事に歯噛みする。

 しかし、アストレア様が無事にここにいるという事はだ。

 

「逆に彼に返り討ちにあったということですか」

 

 恩恵を失ったゴロツキ数人程度に遅れを取るほどアストレア様は軟ではない。

 ロキ、ガネーシャ、フレイヤと並んでオラリオの治安を守った程の女神だし、彼女自身にも武術の心得はある。

 それを警戒して人質という手段をとったが、取った人質が悪かったという事か。

 

「それはジョジョが下手人を捕らえた際に抜き取った情報を私なりにまとめたものです。下手人はジョジョがセーフティーロックとやらをかけた上で村の憲兵に突き出しました。今頃は塀の中でしょうし、仮に釈放されても悪事は出来ないでしょう」

 

「彼のスタンドはそんな事も出来るのですか」

 

「条件が厳しいからまだ使い辛いって嘆いてましたけどね。人間が本になったのを見た時には驚いてしまいました」

 

「本!?」

 

 彼の今後を考えて、スタンドについてもう少し詳しく聞いておいた方が良いかもしれない。

 

 この紙束から分かるのは、『ルドラ・ファミリア』の残党が何者かに金で雇われてアストレア様を攫いに来た事。

 問題は残党共を雇った連中の方だ。

 隠れていた闇派閥が力を蓄えて動き出したのか、それとも都市外にいる混沌を望む神々がオラリオ進出を企んでいるのか。

 

「それに対抗するためのファミリア再興という事ですか? ですが、それであれば『ロキ・ファミリア』や『ガネーシャ・ファミリア』に情報を流せば……」 

 

「他の神に押し付けて自分は安全なところで守られていろと? それではあの日貴女をオラリオに置いていったのと何も変わりません」

 

「ですが現実的ではない! 第一団員はどうするつもりですか。あの子を貴女の眷属にするにしても、彼一人では荷が重すぎる!」

 

 何となくではあったが、彼が『他のファミリアに興味が無いのでは?』という予感はあった。

 あの少年はアストレア様を『信用』しているし『信頼』している。

 間違いであって欲しいと零細ファミリアの加入を勧めてみたが、どうやら社交辞令で返されてしまったらしい。

 

「あの子一人に全てを押し付けるつもりはありません。私だって動くつもりです。ウラノスにもいくつか貸しがありますから、まずはそこから当たって……」

 

「貴女という神は……何故……」

 

 嬉しく思う反面、何故アストレア様がこうもやる気になったのかが分からない。

 あんな悲劇を迎えて私以外の全てを失って、何故また再起しようという気になれたのか。

 

「もったいないって言われたんです」

 

「え?」

 

 目の前の女神はまるで大切な宝物を眺めるかのようにはにかみながら笑った。

 

「あの子は私と色々話して『お姉さんは色んなことを知ってて凄いんだから、こんなところでボーっとしてたらもったいない』って、そう言われたんです」

 

 ―――私達のために戦ってくれてありがとう。

 

 シルのあの言葉が脳内で思い起こされる。

 

「そしたら急に私の中に熱が灯った。死んでいた心が叫ぶようになったんです。『このままでいい訳が無い』『こんな最後は嫌だ』って」

 

「だから、ファミリア再興を……」

 

「はい、無謀というのは分かっています。ですが、何もせず何もなくそのまま終わっていくくらいなら、もう一度0からでもいいから歩き始めたい」

 

 アストレア様から意地でも引く気はない鋼鉄の意思を感じる。

 困ってしまった。

 気軽な気分で何となくとかであれば諦めるように説得できただろうが、これは彼女の強い願いだ。

 それに私とて心の底から望んでいないわけでも無いのだから説得は困難だ。

 

 仮に諦めるように説得するのであればアストレア様に熱を灯したあの少年の方だろう。

 

「ただいま戻りましたー!」

 

 突如聞こえた声に思わず驚いた。

 思っていた以上に話し込んでいたようだ。

 亀の中は魔石光のランプのお陰で明るいせいか時間の流れが分かりづらい。

 

 そして帰ってきた当の少年は何やらウンザリした顔つきで戻っていた。

 気分よく出て行ったというのに一体何があったのか。

 

「あれ? もしかしてお邪魔でした?」

 

「いえ、そういうわけじゃあ……」

 

「そうそう、聞いてジョジョ。リューがレベル5になったんですよ」

 

「へーッ、おめでとうございます団長」

 

「だ、団長ッ!?」

 

 思いもよらぬ呼ばれ方をされて思わず声が引きつってしまった。

 

「へ? だってリオンさんが一番古参だしレベル5なんだからリオンさんが団長では?」

 

「言ってませんでしたが、私は冒険者の資格を剥奪されている。だから団長には……」

 

「別に団長やるのに冒険者である必要はないのでは?」

 

「それは屁理屈でしょう!?」

 

 アストレア様はそんな私達の遣り取りを微笑ましそうに眺めていた。

 

 色んな意味で前途多難だ。

 




次回からは日記形式に戻ります
書き溜め?
そんなもの、ウチにはないよ……


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四頁目

誤字報告ありがとうございます
見直してるはずなのに何故誤字が出るのか


 ☆月¥日

 

 リオンさんはどうやらファミリア再興に反対しているようだ

 まあ、それは仕方ない。

 まだ12のガキに何が出来るんだって話だ。

 誰だってそうする、俺だってその立場ならそうするかもしれない。

 けど俺だってお姉さんの力になるって決めた以上何かを始める前から言われるまますごすご引き下がるって気にもなれない。

 リオンさんには他のファミリアに入るように勧められてるけど、色々見て廻ってみた結果、やっぱり眷属になるのならお姉さん、女神アストレアがいい。

 これはファミリアの規模とか待遇とかの問題じゃあ無い、俺自身がもうスタート地点をここにしたいって決めたからもう動きたくないって感じたんだ。

 それでもリオンさんは反対している。

 それに一回決めたら改宗(コンバーション)、つまり他のファミリアへの移籍は一年間出来ないらしい。

 別にいいですけど。

 余程お姉さんに対して失望するような事があるか、お姉さんに見損なわれるかでも無ければ他のファミリアに移籍したいって気にはならないと思うし。

 そしたらリオンさんに「そもそも『アストレア・ファミリア』は元々女性のみで構成されたファミリアです」と反対された。

 そんな話聞いてないんですけど。

 そもそもお姉さんは性別云々の事は一つも言ってなかったし、反対する理由が苦しくなってきてる気がするよ。

 何さ、「リオンさんは『アストレア・ファミリア』嫌いだったん?」と遠回しに聞いてみたら「そんなわけないでしょう!」とキレられた。

 リオンさんはあくまで『現実主義』なんだろうね。

 現実を『理解』した上でそれでも再興を決意したお姉さんと、現実を『理解』したからこそ保守に回ったリオンさんで対立してしまった。

 何か後ろ盾でもあれば話は違うかもしれんけど、何にも無いしねぇ。

 流石に罵り合ったり手を出し合ったりの大喧嘩とまではいかなかったけど睨み合いの膠着状態が続いている。

 俺はどうすればいいんだろうか。

 俺が口を挟んでも進展にはつながらなかった。

 おまけに団長呼ばわりは止めろと怒られた。

 いいじゃあないのさ、先代団長と仲良かったって聞いたし、『死んだ親友の想いを受け継いで自分が』みたいな展開は割と好きよ。

 

 リオンさんは仕事があるからと何も解決しないまま出て行ってしまった。

 お姉さんは「リューもあれで優しい子なんですけどねぇ」と溜息をついていた。

 不器用な人なんだろうなぁ、色々と。

 午後は買い出しついでに外に出て今後のためにとギルドとダンジョンの場所を確認しに出かけてみた。

 ダンジョンの場所はオラリオの中央にデンッと建っているバベルの下らしい。

 当然だけどこれからダンジョンに潜る冒険者や無事帰還した冒険者でごった返していた。

 ちょっと入ってみようかなと好奇心がうずいたけど、お姉さんに勝手は禁止されてるし、武器を持ってるとはいえダンジョンアタックの準備万端って訳でも無いので断念。

 後、入り口付近をちょっと見てたらガラの悪いおっさんの冒険者に「ここはガキの遊び場じゃあねぇんだよッ!」と突き飛ばされた。

 何かオラリオに来てから割と突き飛ばされる率が高い気がする。

 この世は所詮弱肉強食、CCO様の言ってたことはこのオラリオでは大分当て嵌まりそうだ。

 でも弱者を守ってこその強者だと思うけどね。

 だってそっちの方が格好いいじゃあないか。

 第一、俺だって遊びに来たんじゃあねえんだよとムカッとしたんで『ソフト&ウェット』で軽くスっ転ばせてその場から退散した。

 次に七区って所にあるギルドに行った。

 ここでも冒険者でごった返していた。

 ある者は受付で冒険者登録をしたり、ある者は依頼を受けたり、あるものはダンジョンで手に入った魔石なりドロップアイテムを売ったりなど様々。

 そういえば、モンスターを倒した後はモンスターから魔石というモンスターの核である石を抉り出すらしい。

 モンスターとはいえ死体を切り開いたりするのはちょっと抵抗があるなぁ。

 どうせなら倒したら硬貨とドロップアイテムだけ残して消滅してくれよ。

 世の中都合のいい事だらけじゃあねえって事だな。

 気分は冒険者な感じで中を見て廻ってたらギルド職員のお姉さんに「君どうしたの? 親御さんとはぐれちゃったのかな?」と声を掛けられた。

 俺、もしかして迷子だと思われてる?

 嘘だろ職員さん、俺もう12歳だぜ。

 いやまあ年齢的には微妙なところか。

 仕方ないから逃げた。

 事情を説明するのが面倒だし、元々場所の確認が目的だったわけだし、ボロ出して無駄に情報が流出するのを防ぎたかったし。

 そんでそのまま食材の買い出しをして帰宅。

 キャベツと玉ねぎが安かった。

 帰ってきてお姉さんの顔を見てふと気になった事を聞いてみる。

 

 俺、いつになったら恩恵刻んで貰えるの?

 

 もしかしたら心に決めた神と出会って恩恵を刻まれるまでに一年以上かかってるのって世界広しと言えど俺だけなんじゃあないかって思う。

 催促するのも悪いかなって何も言わなかった俺も悪いんだろうけどさ。

 お姉さんは「本当に私でいいんですね?」と念押しをしてくる。

 答えは勿論Yes。

 自分で言っておいてなんだけど、ファミリア再興で言い争ってるのはいいのかのと聞いてみたら、恩恵を刻むだけなら互いの了承さえあれば細かい手続きもギルドを通す必要も無いから別に問題はないそうだ。

 そういえば能力値の事を『ステータス』じゃあ無くて『ステイタス』って言うんだよね。

 だから何なんだって話だけど。

 で、刻んで貰った結果がこれ。

 

―――――――――――――――――

 ジョシュア・ジョースター

 Lv.1

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

《魔法》

 

《スキル》

幽波紋(スタンド)

・精神力を消費しスタンド名を口にすることで発動する。

・発動中は精神力を消費し続ける。

・自身の成長とともにスタンドも成長する。

・発動できるスタンドは一度につき一つのみ。他のスタンドを使用する際は使用中のスタンドを引っ込める必要がある。

・スタンドは一部の例外を除いてスタンド使いかその素質のある者以外は不可視。

・スタンドが受けたダメージは本体も受ける(ダメージを受けないタイプのスタンドもある)。

・スタンド使用中は獲得経験値(エクセリア)減少(スタンドによって減少値は変化)。

―――――――――――――――――

 

 分かっちゃいたけどスキルはチートのスタンドだけか。

 波紋は技術だしね。

 恩恵刻んで貰っていきなりスキルや魔法が発現する事自体が稀だからこれはしょうがない。

 スタンドは結構制約があるし、説明文多いな。

 スタンドの発動や維持コストみたいなのは村に住んでた頃に色々試してたからその辺は全部じゃあ無いけど把握している。

 

 そして触れたくなかったけど最後の一文が余計だよッ!

 獲得経験値(エクセリア)減少ってどういうことだよッ! 

 『ステイタス』を書き写した紙渡した時、お姉さんが何か微妙な顔してんなと思ったらこれだよッ!

 ズルは許しまへんでという何かの意思を感じる気がするぜ。

 

 仕方ない、逆に考えるんだ『棚ぼたチートスキル何てこんなもんだ』と考えるんだ。

 とりあえずメンタルリセットのために俺は寝る。

 

 ☆月*日

 

 今日は何だか思ってたよりも早く目が覚めてしまった。

 早く起きたはいいけどお姉さんはまだ寝てるし、他にすることも無いからと体力作りと新しい発見を兼ねて軽くジョギングでもする事にした。

 『ステイタス』って筋トレするだけでも上がるのかなぁ。

 時間が時間なだけに冒険者と思しき人は少なく、逆に食品の仕入れや店の開店準備に勤しんでいる人が目立って少し新鮮な光景だ。

 途中で食材の仕入れに出てたらしいリオンさんと前に店に来た時に見かけた銀髪の店員さんに遭遇。

 銀髪さんはシル・フローヴァって名前らしい。

 優しくて人懐っこそうな性格してる。

 リオンさんや他の店員さんと違って戦闘員って感じはしない。

 しかし自分に分かる事だけが全てじゃあ無いし、この人も何かしらあるんだろうか。

 IQ152くらいあるとか、千里先をも見通す目を持ってるとか、変身を何回か残しているとかね。

 意外にもリオンさんは俺がお姉さんに恩恵を刻んで貰ったことに対しては何も言って来なかった。

 聞いてみたら反対しているのはあくまでファミリア再興の方であって俺自身が眷属になる事に口出しするつもりはないとか。

 「もっとも、最低限それに相応しくなって貰う必要はありますが」とも言われてしまった。

 もっと強くなれって事だね。

 俺が強くなればそれだけお姉さん守れるからね。

 そして隣にいるシルさん(フローヴァさんって呼んだら何か嫌がられた)が「君がお店に来てからリューは最近とっても機嫌がいいんですよー」と楽しそうに笑って、隣のリオンさんが何かを勘違いして「なっ、違いますからね!?」と慌てながらと否定する。

 これだけで上下関係が分かった。

 「良かったらまた食べに来てね」という別れのあいさつの後、ジョギング再開したら、今度は前世でたまに見る光景に遭遇した。

 紅い髪で糸目で……女性にしては胸が無いし、男性にしては小柄とはいえ少々華奢なせいか性別が分からない人物が路地裏で盛大に吐いていた。

 二日酔いか何かだろうか。

 前世で居酒屋のバイトしてたからこういう光景はよくあった。

 こういうの見てていつも思うんだけどさ、吐くまで飲むなや、誰が掃除すると思ってるんだよッ!

 さっさとその場を去ろうとしたら視界の端にでも捉えられたのか、「坊主、背中さすってくれへん?」と真っ青な顔で頼まれてしまった。

 しょうがねーなぁ~と家で二日酔いの親父や近所のおっさんにしてやったように背中をさすりながら波紋を流してアルコールで狂った血流を正常に戻していく。

 波紋は攻撃に使うだけじゃあ無くて傷を癒したり体調を整えたりするのにも使えるんだよね。

 しかし、まだまだ未熟な俺じゃあちょいと時間がかかってしまう。

 母さんならもっと早く上手く出来るんだけどね。

 完全回復とまでいかないにしろいくらか調子が戻って機嫌が良くなったのか、糸目の人は礼を言って「あんがとなー。困ったことがあったら相談に乗るでー」とRPGとかでキーパーソンから良く聞きそうな台詞を言ってきた。

 名前知らねえし何処に住んでるかもわからんしそんな事言われても。

 でも糸目キャラって基本強キャラだし(「13㎞や」と嘘ついた死神とか)もしかしたらとんでも無く強いかもしれないから何かの伝手になったらいいなとか考えながらジョギング再開。

 ジョギングしながら疑問に思ったけどあの糸目の人、関西弁喋ってたな。

 この世界に関西あんのか、別にどうでもいいけど。

 とにもかくにもいい汗かいた。

 戻ったら起きていてコーヒー飲んでたお姉さんにジョギングしてたら二日酔いの介抱をした事を話した。

 それでどんな人だったんですかーって話になって紅髪糸目で露出度の高い性別不明の人だったって答えたら、それ女神ロキかもしれませんねって言われた。

 ロキってこのオラリオ最強派閥の一つ、『ロキ・ファミリア』の主神のロキ?

 北欧神話じゃあ悪神だのトリックスターだの言われてるあのロキ?

 オーディンを喰らった神狼『フェンリル』、雷神トールが討伐するのに苦労した毒蛇『ヨルムンガンド』、死者の国二ヴルヘイムを支配する女神『ヘル』、何かすごい馬の『スレイプニル』等々、それらの親のロキ?

 二日酔いでゲロってるせいでそんな荘厳な感じはしなかったけどな。

 ロキは髭生えてる絵があるから男神の筈なのに女神な点については深く考えるのを止めた。

 昔の偉人やら神話の神々の女性化なんて前世じゃあよくある事だし、一々難癖付けても仕方ない。

 こんな事ならもっと顔売っておけば良かったな。

 お姉さん自身もファミリア再興のためにそろそろ動き出そうとしているらしい。

 しかしそれなりに顔を知られてるから自由に動くことは出来ないし、顔を隠した上で俺が四六時中護衛してれば返って目立ってしまうかもしれない。

 『シンデレラ』を使って顔つきを変えるって手があるけど、あれは辻彩のエステティシャンの腕があって初めて真価を発揮するスタンドだ。

 当然俺にはそんな知識は無い。

 下手をしてお姉さんの顔面がえらい事になる危険性を考慮すればこれは却下だ。

 そういえば『クリーム・スターター』にもスプレーした相手の人相を変える能力があったな。

 口や鼻を塞いで窒息させたり、傷口を塞いだりするのがメインの使い方だから忘れがちだ。

 でも、『クリーム・スターター』には『化ける相手に触れなければならない』という欠点がある。

 このオラリオに来てからまだ日が浅いのに顔を貸してくれるような知り合いなんているわけがない。

 変装するたびに誰か拉致って来るってのも問題ある。

 それ以前にお姉さんをスタンドで変装させた場合、他のスタンドが使えないのが痛い。

 

 仕方ねえ、お姉さんにスタンド貸すか。




リヴェリア「おい、水持ってきたぞ……って随分元気そうだな」

ロキ「おー、あんがとなリヴェリアママ。最近西区で大道芸やってるシャボン玉の坊主おるやろ? その子が背中さすってくれたら急に調子よぉなってな」

リヴェリア「誰がママだ。その子は治癒者(ヒーラー)だったのか?」

ロキ「分からんけど、おもろそうな子やったし唾つけとこ思うたらもうお手付きやった……」

リヴェリア「もうちょっと言い方を考えろ言い方を」

ロキ(あの呼吸音どっかで聞いた事あったけど……何処でやったかなぁ……)


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五頁目

平成が終わる前に投稿できて良かった。


☆月ε日

 

 今日からリオンさんが俺の事を鍛えてくれることになった。

 先日のお姉さんに相応しい眷属云々はこの意味を込めての発言だったようだ。

 自主鍛錬もそろそろ限界だったし、鍛えてくれることに関してはこちらとしては嬉しい限りだ。

 何せ上級クラスの冒険者から直々に指導して貰えるんだから願ったりかなったりだ。

 リオンさんにも都合があるからとおいそれと頼めそうになかったのだけど、向こうから言い出してくれたのは本当にありがたい。

 リオンさんとしても自分に万が一の事があった時のために俺には強くなって貰いたいんだそうだ。

 そんな万が一は起こって欲しくないけどね。

 ジョナサンにとってのツェぺリさん、ダイにとってのアバン先生、剣心にとっての比古清十郎、ナルトにとっての自来也みたいに自分の事を導いてくれる人物ってのは人生において貴重な宝だと思う。

 例え初撃でいきなり俺の意識を刈り取ってくるような人だとしてもだ。

 

 いい感じに書いといてなんだけど前言撤回。

 やっぱりいきなりノックアウトさせるのは何かおかしいわ。

 覚えてるのは気づいたらリオンさんの射程範囲に入ってて腹だったか頭だったかに強い衝撃が走った所まで。

 そして目が覚めたら俺は店の中で横になっていた。

 その様子を眺めてた茶髪な猫人曰く「ふげえ」と悲鳴を上げて水平に吹っ飛んでそのまま壁に激突したそうだ。

 ディオっ跳びしてたのかよ、ちょっと見てみたかったぞ。

 リオンさんはランクアップしたばかりでまだ力の加減が難しいのと、元々やり過ぎてしまう性分もあってかこんな結果になってしまったと謝られた。

 もしかしたら初見で『グーグー・ドールズ』くらって捕まったのを無意識に警戒してたのもあるかもしれないな。

 つまり半分は俺のせい?

 まあいいや、死ななきゃ安い。

 ちなみに手当てしてくれたのは店主のおばさんだった。

 何故か他の店員からはミア母さんと呼ばれている。

 理由は不明だし、別にどうでもいいや。

 迷惑かけちゃってすいませんねと謝ったら何だか苦笑いして「坊主を見てると隙あらばちょっかいかけてくるじゃじゃ馬娘を思い出すねぇ」と言い出した。

 どうやら母さんと知り合いらしい。

 こういうのを『世間は狭い』っていうんだろうなぁ。

 母親になってちょっとは大人しくなったかと聞いてきたが、まあそんな事は無い。

 アラフォーだってのにまだまだ現役よ。

 素手で岩を砕いたりするし、夫婦喧嘩で親父が勝ったところなんて見た事無いし。

 親父も元冒険者だって言ってたし、あの母さんと喧嘩してケロっとしてるから弱いわけじゃあ無いんだろうけど。

 店員さんたちは『現役時代のミア母さんにちょっかい出すとかこの子のお母さん何者?』といった視線をこちらへと向けてくる。

 知らんがな、こちとら二人が所属してたファミリアは教えて貰えなかったんだよ。

 ブロマイド屋探しても二人の名前は無かったし。

 十年以上も前に引退した冒険者になると知名度も下がるんだろうな。

 というかミアおばさんそんなにやばいの?

 母さんのちょっかいって文字通りの意味じゃあないだろ?

 最低でも延髄切りくらいするイメージがあるんだけど。

 

 そんで休憩も挟んだし特訓再開。

 他の店員さんたちから『まだやるのかよ』という視線を受けながらも棍棒のように長い木刀を構えるリオンさんと相対する。

 木刀でリューというとあのリーゼントシャーマンが真っ先に思い浮かんだけど別に関係ないな。

 あくまで俺の基礎戦闘力向上が目的だからスタンドは無し。

 今度は身体は跳ぶけど意識は飛ばないようにそれなりに加減されているようだ。

 お返しにシャボンランチャー撃ってみたけど笑っちゃうくらい当たらない。

 頭で分かってたけどリオンさん強いね。

 おまけに俺が自主鍛錬してるの見てたし、この結果は当然といえば当然だ。

 剣を振るえばあっさりと躱されてカウンターで吹っ飛ばされ、波紋疾走(オーバードライブ)のパンチは上手い事姿勢を崩されて投げ飛ばされて、蹴りに至っては足を掴まれて同じく投げ飛ばされる。

 投げ飛ばされても吹っ飛ばされても全身強打にはならず、そのまま立ち上がれる。

 何故なら受け身は母さんに習った時に散々やらされたから。

 母さん曰く『死ななきゃ安い』と受け身やダメージ軽減の防御方法は物理的に叩き込まれてる。

 あれが無ければ痛くてしばらく動けなかったかも。

 1時間くらいしたら仕事があるからと今日の鍛錬は終了した。

 気づいたら波紋の呼吸も乱れてたし、俺もまだまだだな。

 

 ちなみに『ステイタス』を更新して貰ったらこんな感じになった。

 

 Lv.1

 力:I0→18

 耐久:I0→35

 器用:I0→22

 敏捷:I0→30

 魔力:I0→0

 

 お姉さんに聞いてみたら、駆け出し冒険者が1~3階層辺りで丸一日経験値稼ぎするよりも熟練度が上がってるそうだ。

 つまりダンジョンに潜るより、リオンさんにぶっ飛ばされてる方が強くなれると。

 何か解せぬ。

 午後はお姉さんと共に行動した。

 お姉さんは今日、このオラリオに来てから初めて外に出た。

 勿論素の表情じゃなくて俺が貸したスタンド『クヌム神』で変装してだ。

 どうせ『クヌム神』なんて使う機会滅多に無いだろうとお姉さんに貸し出した。

 神様でもスタンドDISC適合するのかという心配はあったけど、杞憂に済んで良かった。

 『クヌム神』はハズレスタンドと良く言われているが、どんなスタンドにも効果的な使い方がある。

 実際にオインゴが店員に化けて毒を盛ろうとした作戦は悪くなかったし、五感を惑わす『ティナー・サックス』さえ破ったイギーの嗅覚を誤魔化したのは称賛に値する。

 現在のお姉さんの姿は桃色のショートヘアにパッチリしたツリ目と完全に別人状態、服装も藍色のエプロンドレスに変えてしまえば目の前にいるのが女神アストレアだと気づかれる事はどちらかがボロでも出さない限りまず無い。

 せっかく変身しているのだからとこの姿では『ティア』と呼称するようにと言われた。

 何か偽名で『ティア』と『バルゴ』で迷ってたみたいだけど、その二つなら断然『ティア』だと思います。

 何でそんなテイルズでヒロインやれる名前とモンスターみたいな名前で迷うんだ?

 最初にやってきたのはお姉さんが見ておきたかった『星屑の館』の跡地、つまりかつての『アストレア・ファミリア』の拠点。

 跡地と言っても行ってみたら建物自体は残ってたし、建物内も小奇麗だった。

 近隣住民に話を聞いてみると、「あの建物を拠点にしてた正義のファミリアにはいつも救われていました。壊滅したのは知っていますけど、ここを残しておけばもしかしたらあのファミリアの方々がひょっこり帰ってくるんじゃないか」と。

 その話を聞いてお姉さんは思わず涙して、俺は心を熱くした。

 ここまで想ってくれている人々に応えてあげたい。

 ならぬか喜びはさせたくないよなぁ。

 

 次にやってきたのはギルド。

 ギルドを統括している主神ウラノスと話をつけるとお姉さんは言っていた。

 成程、ギルドはある意味『ウラノス・ファミリア』でもあるわけだ。

 ギルドの責任者っぽい太ったオッサンとの話がついて俺はお姉さんと共にギルドの地下へ。

 そこで待っていたのは黒いローブに身を包んだ荘厳な老人、否老神ウラノス。

 元の姿に戻ったのを見て老神ウラノスは驚いていたが、深くは突っ込まずに話が進んだ。

 オラリオの現在の情勢について軽く聞いた後に本題に入った。

 小難しい話が多かったけど、お姉さんの要求は『アストレア・ファミリア』の再興、それに伴いリオンさんを冒険者として復帰させて欲しいの二つ。

 しかし老神ウラノス、ファミリア再興はともかく『疾風』の復帰までは認められないと苦言する。

 リオンさんは確かに闇派閥に止めを刺してオラリオ暗黒期を終わらせた人物であれど、彼女はやり過ぎてしまったと。

 お姉さんが色々言っても、今までの『アストレア・ファミリア』の活躍を加味しても情報の規制と黙認が精一杯だと断固として譲らない。

 何か援護射撃をしてやりたいけど、と考えてふと思いついた。

 『今までので駄目ならこれからの活躍を加味したらどうでしょう?』と。

 どうせ駄目元だ。これで情勢が動くのなら儲けもんでしょ。

 老神ウラノスは俺の言葉に対して否定はせずに腕を組んで唸り出した。

 散々唸った後に「ならやってみせろ」と、もしかつての『アストレア・ファミリア』のような功績を叩き出せるファミリアに伸し上がればリオンさんの復帰を認めるよう働きかけると約束した。

 おまけに俺の冒険者登録についてはギルドの方に話を通して『アストレア・ファミリア』に関する情報もしばらく規制をかけると言ってくれた。

 先行投資ってやつだろうか。

 そこまでやってくれると今後何らかの無茶振りとかありそうでちょっと怖い。

 これで二柱の交渉は終わった。

 最高ではないにしろまずまずの結果だったんじゃあないだろうか。

 お姉さんの方は俺がウラノスに目を付けられたんじゃあないかとちょっと心配そうだ。

 どうも、ファミリアによってはギルド側から指令が下る事があるらしい。

 勿論それには危険なものも多く、過去にそれが原因で大勢の死亡者を出した事件もあったらしい。

 いきなりそんな指令が出される事は無いにせよ、お姉さんはそれを考慮して交渉では俺を引き合いには出したくなかったみたいだ。

 ごめんなさい。

 

 ☆月♪日

 

 昨日で幾らか前進したような気はするけど、根本的な問題は結局解決していないというジレンマ。

 まず最大の問題は人員が足りない事。

 手が足りないんじゃなくて人員ね。

 手なら『ハーヴェスト』みたいな群像型のスタンドとかで何とかなるし。

 宣伝なんて出来る筈も無いし、勧誘しようにも何の実績も無いレベル1の駆け出し小僧がやっても効果があるとは思えない。

 ならダンジョンに潜ってランクアップするまで頑張ってみるかといえば俺はまだ一人だけで、ダンジョンに関してはモンスターの知識が少しあるだけの超絶初心者。

 万が一を考えればそれなりに慣れた冒険者が一人か二人いてくれた方が安全かつやり易いというのがお姉さんの言い分。

 俺だって死にたいわけじゃないし、リスクは背負わないに越した事は無いもんね。

 スタンドに頼るのはいいけど、頼り続けてたらいつになったらランクアップするのか分からん。

 というかどれだけ取得経験値が減るのかとかの検証とかもしといた方が良いのかな?

 ギルドに言えば似たような境遇の冒険者でも紹介して貰えるかとギルドに向かう途中にまさかの女神ロキに遭遇。

 今回は一人じゃなくて隣に深緑色の髪をしたエルフが付き添ってた。

 ブロマイドでも見たオラリオ最強の『九魔姫(ナインヘル)』ことリヴェリア・リヨス・アールヴ。

 本物を見れてなんか感動した。

 女神ロキは「なんや坊主、こんな美女はべらして隅におけへんな~」とニヤニヤしていて『九魔姫』に軽く頭を叩かれてた。

 何か神の扱いが雑。

 お姉さんの方は何かを思いついたのか女神ロキに何かを耳打ちすると主神ロキのニヤニヤ顔が変わって細目が開く。

 細目キャラの目が開くのは、昼行燈を気取ってるキャラが突然シリアスモードになるやつの一つだと思う。

 話をする流れになって、話し合いの場にはミアおばさんに頼んで『豊穣の女主人』を少し使わせて貰った。

 まだ昼まで客もいなかったからとお姉さんが変身を解くとその場に居合わせたリオンさんが驚きのあまりお盆をへし折ってた。

 そういやリオンさんには変身の事言ってなかった。

 二柱の女神は少し昔話をしたかと思えば、真面目にこっちの事情を話して俺に随伴してくれるいい感じの冒険者を紹介してくれないかって話になった。

 顔馴染みだって言ってたし、事情を話すって事はそれなりに『信用』してるし『信頼』もしてるって事でいいのかな。

 俺はといえば『九魔姫(ナインヘル)』が話しかけてくれたけど、緊張して碌にまともな会話をした記憶が無い。

 というか何を話したらいいか分からない。

 リオンさん相手だって向こうの質問に答えてただけでそんなに話した記憶無いぞ。

 まるでプロのスポーツ選手や有名女優でも相手にしている気分だ。

 素数を数えても落ち着かない。

 あれはプッチ神父が特殊なだけか。

 二柱の話し合いの結果、「なら人員揃うまでウチの傘下に入るってのはどうや?」って話になったみたい。

 情報規制云々はいいのかと聞けば、「別に他のファミリアを傘下に置くのに許可なんていらんやろ」と返された。

 こっちとしては二大派閥の内の一つがバックについてくれるのは有難いけど、何でそんなあっさり決まった?

 お姉さんに聞いてみたら女神ロキに俺の出生について話したら乗り気になったそうだ。

 「昨日はあんな事言ったのに、ダシに使ってしまってすいません」と謝られたけど別にいいですよ、ファミリア再興の足掛かりになりさえすれば。

 寧ろ何でダシになったのか知りたい。

 反対してたリオンさんも「『ロキ・ファミリア』がバックにいるからといって気を抜いてはいけませんからね」と遠回しに再興に関して反対するのを止めてくれたようだ。

 

 ☆月$日

 

 今日はリオンさんとの特訓を除けば、ギルドの手続きやらダンジョンの講義やらで潰れた。

 カウンターに行って名前を言ったら既に話は通っていたようで冒険者登録の手続き自体は恙無く終わったんだけど、問題は駆け出しがよく受けるダンジョンの講義だった。

 自分の知識の照らし合わせも兼ねて気軽にお願いしたけど、思っていた以上に徹底的だった。

 講義を担当してくれたのはにこやかだがどこか笑顔が恐い三つ編みのお姉さんだった。

 1~17階層までに出てくるモンスターの種類、特徴、主な対処法などなど。

 これ、一日でやる量じゃあないよなって感じ。

 でも覚えてみせる。

 最低でもメモする。

 幸いな事に前世で聞いたことあるような名前や特徴のモンスターも多かったし、思ってたより頭に入る。

 色んな人達の期待を背負ってるし、お姉さんだって骨を折ってくれたんだ。

 明日にはダンジョンアタック。

 『ロキ・ファミリア』からは誰が来てくれるんだろ。

 




リヴェリア「良かったのか? あんなにあっさりと決めて」
 
ロキ「その割にリヴェリアママ反対せんかったやん」
 
リヴェリア「誰がママだ。アストレア・ファミリアには色々恩もあるし、『疾風』の件で何もしてやれなかった負い目もある」
 
ロキ「にしてもあの色ボケがこの事知ったら腰抜かすかもしれへんな」
 
リヴェリア「言い触らすなよ? しばらくは無名のファミリアとして扱った方が良い」
 
ロキ「分かっとるわ。あ~出来る事なら直接ウチが欲しかったわ……でもアスたんの希望の芽を摘むわけにもいかんしなぁ~」
 
リヴェリア「ところで彼には誰を出す?」
 
ロキ「レベル2か3くらいの団員でええやろ。あんまりレベル高いの付けたら目立つ」
 
リヴェリア「ラウルやアキ辺りか……いや」
 
ロキ「どないしたん?」
 
リヴェリア「この際だから将来の事も考えてレフィーヤを付けるのもありかと思ってな」


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六頁目

平成最期の投稿になります


 #月@日

 

 『ロキ・ファミリア』から派遣されたのは『超凡夫(ハイ・ノービス)』の二つ名を持つラウル・ノールドさんだった。

 オッス口調見た目は平凡でもレベルは3で冒険者歴は5年とそれなりの実力者ではあると思う。

 あんまり荒々しくない男の冒険者と話すのは多分ラウルさんが初めて。

 正直あんまり好スタートを切れたとは言い難い。

 ゴブリンを10体くらい倒した辺りで精神的に限界が来てしまい、まともに歩けなくなった。

 前世だって動物であれ人であれまともに傷つけた事なんて無かった弊害かもしれない。

 肉を斬る感触、飛び散る血、魔物の断末魔、そしてその後に死体から魔石を取り出す作業が俺の正気度をガリガリと削っている気さえしてくる。

 相手がダンジョンが生み出す魔物であっても殺生をしている事に変わりない。

 日記を書いてる今でさえ嫌な感覚が残っている。

 ゴブリン5体で限界だと口に出してしまった。

 ラウルさんは「最初何て大抵こんなもんっスよ」と励ましてくれたけど、自分で自分が情けなくなった。

 期待してくれたお姉さんの所にどんな顔して帰ればいいんだろう。

 鍛えてくれたリオンさんに何て言えばいいんだろう。

 行って来いと背中を押してくれた両親に何て言えばいいんだろう

 時間を割いて付いてきてくれてるラウルさんにも申し訳なかった。

 食事が喉を通らなかった。

 

 

 #月=日

 

 今日もダンジョンに潜った。

 ランクアップもそうだけど一日でも早く、強くならなきゃ。

 いつまでもおんぶにだっこじゃあいられない。

 ゴブリンを6体とコボルドを3体で合計9体倒した。

 記録更新。

 

 

 #月~日

 

 お姉さんが心配してくれているけど、3日でへばっていられない。

 ゴブリン8体とコボルド4体で合計12匹倒した。

 記録更新。

 

 

 #月ー日

 

 ダンジョンに潜ってから一週間がたった。

 自分の波紋の呼吸が乱れている事に気が付いた。

 恐怖に飲まれてるんだ。

 『勇気とは恐さを知る事』『恐怖を我が物とする事』

 恐怖を我が物にするにはどうすればいいんだろうか。

 モンスターをもう100体は倒してるのに初日から何が変わってるのかよく分からない。

 お姉さんには少し休んだ方が良いと言われてしまった。

 リオンさんもダンジョンに慣れるまでしばらく鍛錬は休みと言われた。

 でも、ここで甘えたら強くなれない。

 俺の我儘で今こうしてるんだからせめて結果は出さないと。

 返り血を取るために出した『クレイジー・ダイヤモンド』がやけに弱々しく見えた。

 

 

 

 #月*日

 

 ダンジョンに潜ってから今日で2週間くらいだったかな。

 ダンジョンに潜ろうとしたらゴブリンを数匹倒した辺りでラウルさんに「今日はこれくらいにするっス」と言われて飯を奢られた。

 辛いんなら言ってくれと、苦しいなら相談に乗ると言われて泣きそうになりながら色々話した。

 期待に応えたいのに結果が出せていない。

 『ステイタス』を更新して貰ったけど、どのアビリティもまだHには届いていない。

 覚えていないけど他にも感情に任せて打ち明けた。

 そしたらラウルさんも苦笑いしながら色々話してくれた。

 自分が入団した時には既に5歳も下の先輩がいた事。

 自分が最初にダンジョンに潜った時はゴブリンからさえ逃げ出した事。

 後から入ってきたエルフや獣人に並ばれて、抜かれてを何度も経験した事。

 

 人間(ヒューマン)という種族は小人(パルゥム)程ではないにしろ戦闘能力に乏しい。

 人間(ヒューマン)は獣人やドワーフのように高い身体能力があるわけでもない。

 アマゾネスのような戦闘技術があるわけでもない。

 ましてやエルフの様に魔法に秀でているわけでも無い。

 だから『剣姫』や先代の団長(アリーゼ・ローヴェル)さんのように人間(ヒューマン)の冒険者で名を馳せた冒険者は滅多にいない。

 だからレベル4は『人間の壁』なんて一部じゃあ言われてる。

 そんな現実をラウルさんは『ロキ・ファミリア』で見て来たそうだ。

 

 まだたった2週間っスよ? 

 そんな風に顔を真っ青にして歯を食いしばりながら続けてたら折れちゃうっス。

 せっかくそこまで出来る原動力があるのに、もったいないっスよ。

 それにそんなの君の主神も望まないと思うっス。

 

 その言葉で俺は色々考えさせられた。

 俺の原動力って何なんだっただろうか。

 何故冒険者になりたいんだったか。

 

 悩みを打ち明けられたからか、それとも俺の中で心の整理がついたからなのか、少しだけ気分が楽になった。

 まともに飯の味を感じるのも久しぶりかもしれない。

 

 ラウルさんと別れた後2時間くらいオラリオの空をぼーっと眺めた。

 そして自分がまだ生きている事を実感して、少し泣いた。

 

 

 #月☆日

 

 一晩ぐっすり眠った後にお姉さんに思いっきり謝った。

 まあ、けじめみたいなもんだ。

 大口叩いたけど、すぐに結果が出せそうにありません。

 出来れば早くお姉さんを自由にさせてあげたいけど、それはいつになるか分かりません。

 お姉さんが頭を下げて頼み込んでくれたのに不甲斐ない眷属ですいません。

 お姉さんには怒られてしまった。

 

 何で相談してくれなかったのですか。

 何で私を頼ってくれなかったのですか。

 真っ青な顔で大丈夫だと言ってる俺の顔は見ていられなかった。

 

 俺は知らず知らずのうちに出来もしない事を一人で抱え込んでたみたいだ。

 ラウルさんに諭されなかったらもしかしたら意地張って無理してそのまま手遅れになってたかもしれないと思うと少しゾッとする。

 悲しませたくなかった相手を悲しませて何をやってたんだ俺は。

 そうだよな、一番大切なのは一日でも早くレベルを上げる事じゃあ無くて、無事にここに帰ってくる事だよな。

 母さんの言ってた『死ななきゃ安い』って意味を言葉じゃあなく心で理解出来た。

 

 リオンさんにも謝りに行った。

 お姉さんのと同じ謝罪をしたら、リオンさんも折を見て話を切り出そうとしてたみたいで、なんだか悔しそうだった。

 

 私達11人が背負ってたものを一人で背負い込もうなんて思いあがらないでください。

 話せる悩みであれば相談してください。

 後輩一人くらい気にかける余裕はありますから。

 

 ちょっと毒舌気味だったけど、後輩って言われて不覚にもちょっとジーンと来てしまった。

 リオンさんの同僚の生温かい視線が気になったけど、別に良いや。

 

 

 #月$日

 

 今日から心機一転してダンジョンに挑む。

 相変わらず魔物との戦闘は恐いし、生物を斬った感覚は生々しくて嫌悪感が拭えないけど、何だか最後にダンジョンに潜ってた時とは違う気がする。

 上手く表現できないけど、恐怖や嫌悪感と一緒に負の感情じゃあない何か別のものが湧き上がってくるような、そしてそれが精神を削ってたものを抑えてくれているような感覚があった。

 お陰で前よりも冷静でいられるし、ラウルさんのアドバイスを気にしながら戦う事も多少出来るようになった。

 

 まず、多数を一度に相手にしない事。

 複数の敵を相手に取ればその分攻撃を貰う回数も増えるし消耗もきつくなるのだから出来る限り一対一を何度も行うって戦い方が効果的だ。

 魔物が複数いるのを発見した場合は一体を小石などで小突いて誘き寄せて仕留めるのも一つの手。

 

 次にダンジョン内では気を抜かない事。

 魔物はダンジョン内360°至る所から湧いてくるから常に広い視野を持つのが吉。

 

 最後にポーションはちゃんと買っておくこと。

 一応波紋はあるし、スタンドにも『ゴールド・エクスペリエンス』や『ザ・キュアー』のように自分の怪我を治す手段はあるけど、波紋はあくまで自己治癒能力を促進させるものだ。

 それに別のスタンドを使いながら回復するって状況になることだってあるだろう。

 なら手段は多い方が良い。 

 

 そういえば、波紋の呼吸も前ほど乱れなくなってきた。

 お陰で魔物により効果的な攻撃が出来る。

 そして、改めて気づいたのは、剣の切れ味の良さだった。

 多分鬱屈した気分でダンジョンを潜ってた俺が魔物を切れたのはこの剣のお陰だ。

 実家の物置に錆びた状態で置いてあったのを失敬したものだけど、思いの外良い剣だと思う。

 これからの冒険の験担ぎに『幸運(ラック)勇気(プラック)の剣』と名付けよう。

 (オリジナル)とはそんなに似てないけど、こういうのは気分だよ気分。

 でもやっぱり死体切り開いて魔石を取り出すのには悪戦苦闘する。

 返り血を浴びるのも精神的にキツい。

 ラウルさんにも「こればっかりは慣れるしかないっス」と言われた。

 

 

 #月-日

 

 ダンジョンで魔物から魔石を取り出しながら今更ながらにふと思った。

 『スティッキー・フィンガーズ』で良くね?

 周囲を警戒するためとラウルさんがスタンドを見る事が出来るのか確認するために『エアロスミス』を飛ばしてみたら、やっぱりというかラウルさんには見えていなかった。

 見えないとはいえ不審な動きをすれば怪しまれるからバレないようにするのが難しい。

 それは一先ず置いといて、実際にジッパーで開いて魔石を取り出すと死体を切り開く触感に顔をしかめる事は無いし、血が飛び散る事も無かった。

 

 精神的な消耗が増えた点に目を除けばの話だけどよ~ッ。

 

 『スティッキー・フィンガーズ』は強スタンド。

 何度も出したり引っ込めたりを繰り返せばそれだけでもいつも以上に消耗する。

 バレないようにコッソリやるから余計に疲れる。

 精密動作の精度を上げる為の訓練とでも思えばいいのか。

 スタンドの腕部分だけ展開とか出来たら負担減りそうだけど、何故か全身出てきちゃうし。

 

 今日初めてダンジョン・リザードに遭遇した。

 間近で見ると思ってたよりデカくて結構ビビる。

 コボルドよりも断然大きい。

 でもラウルさんに応援されながら危なげなく倒せた。

 ダンジョン・リザードは爪での攻撃は動作が大きくのもあって案外たいしたことない。

 それよりも壁や天井に張り付いてチョロチョロ動き回るのが非常にウザい。

 ラウルさん曰く『飛び道具があると楽』だそうだ。

 弓矢なんて持ってないし、持ってたとしても使った事なんて無い。

 だから次に出てきたのに対してシャボンランチャーを使ってみた。

 いつも剣で切ったり蹴り飛ばすくらいだったから、ダンジョン内で使うのは何気に初めてだ。

 波紋を飛び道具にするためにシャボン玉を使うと思いついたシーザーの発想力は見習いたいもんがある。

 作中では相手を閉じ込めたり回転を加えて速度を上げたりレンズにして太陽光を集めたりと色々な手段に用いてたけど、まだまだ応用が利きそうだ。

 波紋が籠ったシャボン玉を喰らったダンジョン・リザードは天井から真っ逆さまに落ちて気絶。

 そのままトドメを刺して終了。

 ラウルさんは驚いてはいたけど何も聞いてこなかったな。

 気になって逆に聞いてみたけど、スキルや魔法に関して不用意に聞くのはマナー違反だからだそうだ。

 スキルでも魔法でもないんだけどね。

 お姉さんも『ステイタス』に関しては他人に話さないのが普通だって言ってたし、冒険者って思ってたよりも守秘義務が多いんだな。

 

  

 €月+日

 

 今日も今日とてダンジョン探索。

 リオンさんとの特訓が再開したから疲労も倍になった。

 ラウルさんは明日から遠征でしばらく来れないらしい。

 何だかんだでもうじき一月経つだけに、何か寂しいな。

 しばらくは一人でダンジョンアタックか、ラウルさんにはお世話になったな。

 ラウルさんを見てて指導者に大切なのは人格じゃあないかって思えてきた。

 『ロキ・ファミリア』のような大規模の探索系ファミリアはギルドの要請や到達階層記録更新のために数か月に一度大人数でダンジョンに潜るらしい。

 ちなみに『アストレア・ファミリア』の到達階層は41階層。

 リオンさん含めて11人しかいなかったのにこの記録は脅威だと思う。

 少数精鋭って本当にあるんだな、出来れば一度会って話がしてみたかった。

 今は慌てず騒がずじっくりでいいから力を付ける事に専念しよう。

 それでダンジョンから出た後に一緒に飯を食いながら、いつか必要になるかと思ってダンジョンの遠征について色々聞いてみた。

 中々ためになる。

 上位勢の個々の実力もそうだが、なにより指揮を出してる団長のフィン・ディムナの統率力が凄いそうだ。

 俺も戦術や指揮について勉強しようかな。

 でも団員いないし、というか俺が脱駆け出しする方が先か。

 ラウルさんには遠征頑張ってくださいとエールを送った。

 飯は割り勘だったけど。

 帰り際に「しばらくは4階層までっスからね」と念を押された。

 当分はソロだしそんな無茶が出来る程経験積んでないもんな。

 せめて魔力以外のアビリティの熟練度がオールGを超えるくらいはしないと。

 アビリティといえば何気に今日の『ステイタス』更新で器用と俊敏の熟練度がHに到達した。

 力と耐久はもう少しか。

 

 

 €月+日

 

 早速トラブル発生。

 でもトラブルの方からやってきたんだから俺は悪くねぇッ。

 ダンジョン4階層でちょっと色々試しながらゴブリンとかコボルドとかダンジョン・リザードを狩ってたら後ろからサーベルやら斧やら鎖鎌やらを持った無精髭のおっさん達に襲われた。

 「痛い目見たくなけりゃあその剣と稼いだ魔石を置いていきな」とか言ってきたよ。

 リアル追い剥ぎなんて初めて見た。

 生前じゃあこんな典型的な追い剥ぎや恐喝は漫画やドラマでしか見た事無かったから変な意味で驚いた。

 子ども相手に追い剥ぎするなんて程度が知れる。

 ラウルさんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいね。

 非情にムカつくしオラオラしてやりたい気持ちで一杯だけど、騒ぎを起こせばお姉さんやリオンさんに迷惑がかかるかもしれないから、『アクトン・ベイビー』か『メタリカ』でも使って姿を消してさっさと逃走しようかと思ったらおっさん達は鈍器で殴打されて倒れた。

 俺を助けてくれたのは全身が返り血で血まみれになったエルフだった。

 返り血だけじゃあ無くて普通に負傷もしているようだけど、普通に歩いてるみたいだし大したことは無いんだろう。

 起き上がったおっさん達はエルフさんを見るなり慌てて立ち去って行った。

 「子ども相手に恐喝など恥を知れッ」と吐き捨てるエルフさん。

 うーん、俺は運が良かったのか?

 エルフさんはあっけに取られてた俺にさっさと引き上げるように進言してそのままスタスタと地上に帰ってしまった。

 お礼を言うために追いかけたけど見失って結局お礼が言えなかった。

 




FGOにアストライア実装とか予想外


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七頁目

 €月μ日

 

 シャボンランチャー用の石鹸水が切れたので波紋を通しやすくするための油や小道具等のその他諸々と一緒に雑貨店で買い漁った帰りにこの前助けてくれた血みどろエルフさんを発見。

 というかあの血みどろエルフさん、血みどろ姿がショッキングでド忘れしてたけど、『白巫女(マイナデス)』ことフィルヴィス・シャリアじゃん。

 あの時は血で赤黒かったけど今は全身白の戦闘衣でカッチリと身を包んでいて首から上以外には肌色が見えない。

 

 すかさず彼女に声を掛けてたら、シャリアさんはさわやかイケメンの兄ちゃんと一緒にいた。

 へえ、デートかよ。

 あんなに美人なら彼氏なり婚約者なりいてもおかしくないけどね。

 何か、美男美女のカップルって傍から見てるとなんか自分が惨めな気分になる。

 もう一回人生やり直してもあんな美女とお付き合いするのは無理だろうなぁ。

 俺が礼を言ったら困惑しているイケメン兄ちゃんにシャリアさんが事情を話した。

 イケメン兄ちゃんはディオニュソスっていう神でシャリアさんのファミリアの主神だったようだ。

 ディオニュソスって確かオリュンポスの神様だっけ?

 確か酒の神様だったと思うけど、それしか覚えてない。

 俺の神話知識が少なすぎる、北欧神話とか日本神話とかクトゥルフ神話とかなら割と知ってるのに。

 そんな事考えてた罰が当たったのか、ディオニュソスさんに「どこのファミリアに所属しているのかな?」と聞かれてさあ大変。

 神様相手に嘘は通じないし、不信感を煽る形になるけど事情があって言えないとはっきり言った。

 納得はしてないようだったけど、これ以上言っても話す気はないと分かってくれたのか追及は無くて助かった。

 そんで次に4階層とはいえ何故一人でダンジョンに潜ってたのかって話になった。

 

 俺子ども扱いされてんな。

 実際子どもだけど。

 

 事情を話したら少し考える素振りを見せた後、なんと「うちのフィルヴィスをつけよう」とか宣い出した。

 何でそんな話になった。

 当の本人も寝耳に水って顔してるし。

 「団長としての仕事が―」とか「ディオニュソス様の護衛がー」とか言って全力で断ろうとしている。

 当たり前だよね、他所のファミリアの駆け出しの教育なんてしたくはないよね。

 でも、目の前でめっちゃ嫌がられてるとちょっと傷ついた。

 心の傷が浅い内に断って帰ろうとしたらディオニュソスさんに引き留められた。

 何があんたをそんなに駆り立ててるんだ。

 結局、ラウルさんが戻ってくるまでの期間限定でシャリアさんが付いてくるのを押し切られるような形で決められてしまった。

 口約束だし本人嫌がってたからどうせバックレるだろう。

 お姉さんにその事を言ったら「『白巫女(マイナデス)』がそんな不真面目な人物ならあんな風にはならなかったでしょうね」と意味深な事言い出した。

 詳しく知りたければ当人に聞いてくれの一点張り。 

 何か不安になってきたぞ。

 

 

 €月γ日

 

 死ぬかと思った。

 

 ダンジョンに行ったらシャリアさんは律儀に待ってくれていた。

 お姉さんの言う通り不真面目な人物では無さそうだ。

 どっちかというと超がつくレベルで真面目かもしれない。

 問題は会話が続かない事。

 ダンジョンについての質問とかには普通に答えてくれるけど、雑談とかに関しては「ああ」とか「そうだな」みたいに最低限の一言を返して終了する。

 この人と比べるとリオンさんがフレンドリーに思えてきた。

 いつものように4階層で魔物を倒している最中にエライ事が起こった。

 

 一言で言えば魔物の大群が出てきたんだよね。

 

 下層では『怪物の宴(モンスター・パーティ)』なる魔物の大量発生があるそうだけど、初心者御用達の4階層でも起こるもんなんか。

 魔物を倒した数は10から先は数えていない。

 ゴブリン数匹にしがみつかれた時は冷や汗かいた。

 咄嗟に『皇帝(エンペラー)』をメギャンと出してゴブリン共を撃ち抜いて脱出。

 銃の訓練はほぼ自己流だったけど、流石に至近距離では外さない。

 でも、本当に嫌な汗が出た。

 最終的には二人一緒に魔物の群れから抜け出した後にシャリアさんがフルパワーの雷魔法を発射。

 そして俺は後で火炎瓶でも作ろうかと思って買ったスピリトゥスとかいうスピリタスのパチモンみたいな度数の高い酒を放り投げて『皇帝(エンペラー)』でそのまま酒瓶を破壊。

 酒って電気を通しやすいって何処かで聞いた事あったから雷魔法の威力が増加するかと思ってやったら火花に引火でもしたのか魔物の群れは大炎上。

 燃えなかった連中はそれにビビったのか蜘蛛の子散らすかの如く逃走した。

 

 そして魔石やドロップアイテムも一緒に炎上した。

 経費を差っ引くと少ない稼ぎになった。

 悲しい。

 

 魔法初めて見たけど格好良かったな。

 あんな状況じゃあ無けりゃもっと感動できてた。

 今まで一番稼げたけど、今までで一番危険なダンジョンアタックになってしまった。

 『ステイタス』を更新して貰ったら熟練度がガッツリ上がって、新しいスキルも発現してた。

 

 『幻影の血(ファントム・ブラッド)

 ・逆境時に全アビリティ及び精神力に超高補正。

 ・戦闘時の相手の強さが自分より強い程効果上昇。

 ・自身の精神力が尽きるまで効果持続。

 

 何でジョジョ一部のタイトルがスキル名になってるのかは置いといて、これってジョースター特有の『爆発力』がスキルになってるって考えればいいのか。

 もしかしたらゴブリンに絡まれた時、咄嗟の判断が出来たのもこのスキルのお陰かもしれない。

 でも、あんなのは二度と御免だね。

 

 

 €月Δ日

 

 どうしてイレギュラーは発生するんだろう?

 

 今日は魔物の大群こそ無かったけど全身青っぽくて二回りくらい大きいダンジョンリザードが5体も現れた。

 今まで倒したダンジョンリザードって茶色っぽかったからもしかして前にラウルさんが言ってた強化種って奴だろうか。

 魔物は時々魔石を喰らってパワーアップして強化種という特別な個体になるらしい。

 魔石の味を覚えた魔物はそのまま他の魔物の魔石も食べてさらにパワーアップし、より凶悪な個体になる事もあるそうだ。

 共食いしてパワーアップだなんてまるで『蟲毒』だな、もしかしたらこのダンジョンってより強い魔物を生み出すための実験場の跡地だったりして、とか妄想してみたり。

 そんでもって何でそれが4階層で、しかも一度に5体も出てくるんですかねぇ?

 苦戦はしたけどシャリアさんの援護もあってか何とか勝利。

 パワーもスピードもノーマルとは段違いだ。

 実際半分以上シャリアさんが倒したようなもんだけど。

 シャリアさん強えぇな。

 魔法もそうだけど剣裁きも達人レベル。

 こんだけ強いならレベル3に昇格出来る日も近いだろう。

 でも鬱屈してるというか暗いというか思い悩んでいるというか。

 帰り際に付き合ってくれてるお礼にと『ザ・キュアー』で吸い取ってみたらあっという間に許容量の8割を超えてしまったので慌てて解除。

 おせっかいが原因で暴走でもされたらたまったもんじゃないよ。

 多少機嫌が良くなったようには見えたけど根本的な解決にはならなかったみたいだ。

 ただ単に俺の『ザ・キュアー』の容量が少ないだけか、それともシャリアさんの闇が俺の想像以上に深いからなのか。

 

 

 €月ζ日

 

 流石にそう何度もイレギュラーは起こらない。

 『二度ある事は三度ある』なんて諺はあれど、今回は『三度目の正直』の方が採用されたようだ。

 あれ、4階層ってこんなに楽チンだったっけ? とおもわず思ってしまったくらいだ。 

 そんな事を道中で喋ってたら、シャリアさんは何か言いたげなように見えて何も言わない。

 何か言ってくれよともどかしくはあるけど、本人が言いたくないんだったら無理に聞こうとするのもね。

 換金が終わってシャリアさんと別れた直後に変な奴らに遭遇。

 変な奴らというか、いつぞやにシャリアさんに瞬殺された三人組だった。

 タイミングが良過ぎて待ち伏せしてたとしか思えない。

 こいつら暇なのか。

 そんな事してる暇あるんなら素振りでもしてればいいのに。

 前みたいに追い剥ぎ紛いの事でもするつもりなのかと身構えたら、俺がシャリアさんとパーティを組んでることに対して口を挟んできた。

 

 連中が言ってることをマイルドに纏めるとこんな感じ。

 

「やめとけ! やめとけ!

 あいつは不幸を呼ぶバンシーなんだ。

 

 せっかく『あの惨劇』から生き残ったのに嬉しいんだか嬉しくないんだか。

 

 『フィルヴィス・シャリア』レベル2 ディオニュソス・ファミリア団長。 

 任務は真面目でそつなくこなすがニコリとも笑わない今一つ面白みのない女。

 なんかエリートっぽい気品ただよう顔と物腰をしているため、男女ともにもてるが、ファミリア内じゃあ孤立していてパーティすら組めないって話だぜ。

 エルフらしく気取っちゃあいるが、若い身空で死神に魅入られちまった悲しい女さ」

 

 はて、バンシーって何だろうか? 

 ユニコーンガンダム? 

 連中の口ぶりから察するに決して良い意味で使われてる名詞では無いというのは容易に想像出来る。

 ぶっちゃけシャリアさんの過去に何があろうと今現在12歳の子どもに対してイキってる連中何ぞと比べるのさえ失礼な気がする。

 本人目の前にして言えないから子どもの俺に言ってるっていうのも卑劣というか狡いというか。

 俺は態々相手にする必要も義理も無いと無視して歩き去った。

 

 だが、それが逆に連中の逆鱗に触れた。

 

 俺に無視された事にキレたのか、連中の内の一人が掴み掛ってきた。

 俺は、それを叩いて弾いてやった。

 リオンさん見てるせいかこいつらの挙動が眠っちまいそうにノロく見える。

 躱すのも弾くのも大して苦じゃない。

 

 連中を見ていて魔物程恐怖を感じない事に妙な違和感があったけど、気が付いた。

 それよりも凄い人達を見て来たんだ。

 リオンさんのように速くも無ければ鋭くも無い。

 ラウルさんのような優しさも無ければ積み重ねで生まれた熟練度も感じられない。

 こいつらが貶しているシャリアさん程実力があるわけでも無い。

 

 連中は俺に反抗されると思っていなかったのか怒りを露わにしていた。

 そういえば俺は穏便に済まそうと思ってこいつらに対して一度も反撃したことが無かったな。

 無抵抗で殴られてやるなんて発想が出る程マゾじゃあないし、逃げたら逃げたでまた似たような目に合う可能性が高い。

 こういう時に『ヘブンズ・ドアー』が自在に使えれば楽なのに、生憎本来の持ち主(岸辺露伴)のように相手をあっという間に本に出来るわけじゃあないからな。

 『スター・プラチナ』や『ザ・ワールド』のような近距離パワー型のスタンドお得意のラッシュで叩きのめすのは簡単だが、暴力で全てを解決しようとするのはこいつらのやっている事と同じような気がして後味の悪いものを残す。

 

 でもすっごくムカつくし、一発ずつくらいはいいよね?

 

 骨をへし折るより精神をへし折る方が効果的だと判断した結果、『ヴードゥー・チャイルド』を使って骨が折れない程度に一発ずつ殴ってやった。

 このスタンドの恐ろしいところは『唇』を憑けられる事。

 そして『唇』を憑けた対象の深層心理を読み取って罵倒を行う事だ。

 いくつも憑けてやれば耐えきれずショック死するだろうが、一つだけだったから戦意喪失(リタイア)程度で済んだ。

 

 精神的なショックで人が気絶するのは初めて見た。

 別に見たかったわけじゃあ無いけどね。

 ここまでの恐怖を植え付ければ記憶が消えない限り、同じような事は起こらないだろう。

 

 俺は絶対にああはならない。

 

 なってたまるか。

 

 

 €月Θ日

 

 シャリアさんが来なかった。

 

 調子が悪いのか、それとも都合がつかなかったのか。

 確認しようにも『ディオニュソス・ファミリア』の拠点の場所なんて知らないし、知ってたとしてもそこにいるとは限らない。

 とはいえパーティ解散するならするでなんか言って貰わないと困るので担当のティフィさんに『ディオニュソス・ファミリア』の場所を聞いて行ってみた。

 行ってみたはいいけど本人は留守中でデュオニュソスさんも忙しいからと突っ返されてしまった。

 伝言くらい聞いてくれてもいいじゃあないか。

 結構長い間誰かがついてくれてただけに一人でダンジョンに潜っているとなんだか調子が出ない。

 仲間って大事なんだな、早く団員増えないかな。

 

 

 €月’日

 

 シャリアさんもう来ないんかなァ。

 元々乗り気じゃあなかったから無理もないか。

 稽古がてらリオンさんに相談してみたら、

 リオンさん曰くシャリアさんと自分は似た境遇にあるそうだ。

 具体的な事こそ言わなかったけど、そこまで言われればある程度予想はつく。

 

 シャリアさんはリオンさんと同じ闇派閥の被害者なんだろう。

 

 何とかしてあげたいとは思う。

 けど何も出来る事が無いのが現実。

 俺はカウンセラーでも無ければジャンプ主人公でもない。

 おまけに『ザ・キュアー』は発散しきるのにしばらく時間がかかるからそれまでは使えない。

 そもそも『何で団長なのにファミリア内で孤立してるの?』とか『主神のディオニュソスさんは解決に動いたりとかしてないの?』とか色々疑問がある。

 ちょっと前の俺みたいに自分で溜め込んじゃうタイプなのかな。

 エルフも精神面は人間と変わらないんだろうか。

 まあ、リンゴォみたいな精神構造してたらそれはそれで恐いけどね。

 

 仮に出来る事があるとすれば、次会った時も今までと変わらない態度で接するようにするくらいだろう。

  

 




簡単な補足
デュオニュソス「新人教育はフィルヴィスの気分転換になるだろう。フィルヴィスを忌避してる様子は無いし、なにより4階層なら大事にはならないだろうしね」


次回、別視点


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ひとりのエルフは目の前の壁を見ていた もうひとりのエルフは窓からのぞく星を見ていた その1

今回はリューさん視点


 こうやってマンツーマンで物事を教えるのは初めての経験かもしれない。

 少年、ジョシュア・ジョースターが『アストレア・ファミリア』の団員として相応しい、『正しさを見極められる人間』となれるように、そして冒険者としてやっていけるように稽古をつける事にした。

 

 私のようにならないように。

 

 半端な気持ちであれば根を上げるだろうと多少厳し目で叩いてみたものの、前に鍛えていた人物が良かったせいか中々どうして粘り強い。

 やり過ぎてしまう性分のせいかヒートアップしてしまう事もある。

 同僚達からも『うへえ、これもう虐めの領域ニャ』だの『あんたねえ、まだ駆け出しなんだから手加減してやりなさいよ』だの『ウへへ……はみはみしたい耳たぶ……グへへ』だの言われている。

 とりあえずクロエは後でしばいておいた方が良さそうだ。

 

「リュー、何だか最近明るくなったね」

 

「え、そうでしょうか?」

 

 シルに言われて色々思い返してみればアストレア様には胸の内を曝け出し、年甲斐も無く泣いた事もあってか少し晴れやかな気分になれた。

 とはいえ全てが解決したわけではない。

 私の罪が消え去ったわけではないのだから。

 

「そういえば、リューの後輩の子がダンジョンに潜るのって今日だっけ?」

 

「ええ、私はそう聞いてます」

 

 まさか『ロキ・ファミリア』が協力をしてくれるとは思わなかった。

 一体何処でそんなコネクションを取り付けたのか。

 

 本当であれば私が付いていくべきなのかもしれない。

 ミア母さんも元は冒険者なのだから、頼めば都合を付けてくれるだろう。

 しかし、私が目立った動きをすればそこからアストレア様に迷惑がかかる危険がある。

 不安の種を私が撒くわけにはいかない。

 シルもそれを理解した上で敢えてそれには触れないのだろう。

 

「まあ、彼なら大丈夫でしょう。ゴブリンやコボルドに遅れを取るような事は無い」

 

 後になって、私の認識が甘かった事に気づかされた。

 

 次の日、彼の動きが目に見えて悪くなっていた。

 何があったのか聞いてもただ大丈夫だとしか言わない。

 

 そしてそれは日に日に悪化していった。

 

「ふう、しばらく朝の鍛錬は休みにしましょう」

 

「えっ、何でですか!?」

 

 あなたは一度鏡か何かで自分の顔を見た方が良い。

 そんな真っ青な顔で、精細を欠いた動きで、一体何が身に付くというのか。

 それ以前に、何故そんな痩せ我慢をしているのか。

 

 冒険者がドロップアウトする理由はいくつかある。

 

 一つは身体の欠損や毒などで身体が動かなくなる事。

 ポーションには限界があるし、エリクサーは高価過ぎて普通の冒険者は手を出せない。

 手足がモンスターに喰われでもすればそれは永遠に失われるし、解毒が遅れたせいで後遺症が残って日常生活にすら支障をきたす例もある。

 

 一つは心因によるストレス障害。

 モンスターによる恐怖、親しい仲間を失った事実への絶望、モンスターとはいえ生き物を殺す事への抵抗感、それらによって精神がまいってしまい再起不能になる事。

 五体満足であればサポーターに転向するという手もあるが、多くの冒険者はそれを知っているからこそサポーターを蔑視の対象にする。

 

 おそらく彼のは心因的なものだ。

 力はあるのに心がそれについていってない。

 

 私はそれを情けないとは思わない。

 私自身シルに拾われなければあのまま虚無感に押し潰されてそのまま死んでいたのだから、まだ12歳の人間の子どもに求めるのは酷だ。

 

 そして鍛錬を休みにしてからは、彼は私の元へ来なくなった。

 タイミングを逃したかもしれない。

 

「あの、彼は大丈夫なのですか?」

 

 私の問いに対してアストレア様は首を横に振った。

 

「あの子は真っ青な顔で自分に言い聞かせるように『大丈夫』としか言わなくなってしまいました」

 

 彼はアストレア様の事をとても慕っているように見えた。

 だから情けない姿を見せたくないのだろうか。

 

「まだ……早かったのでしょうか……」

 

 現状はあまりよろしくない。

 このままでは他でもない『アストレア・ファミリア』があの子を押し潰してしまう。

 

 アリーゼやシルであればもっと早く対処出来たのだろうか。

 ここに来て自分が他者とのコミュニケーションを疎かにしていた事が悔やまれる。

 皆にもっと心を開けば良かったと悔いたばかりなのに、やはりそう直ぐには変われないのだろうか。

 

「ジョジョは、あなたを冒険者に戻して欲しいとウラノスに進言していたんです」

 

「は?」 

 

「あ、私がリューにばらしたって内緒にしてくださいね」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。何の話ですか!」

 

 ファミリア再興の話でギルドに行った事は聞いていたが、そんな話は聞いていない。

 そもそも現状、私がこうしていられるのはギルドからの恩情とミア母さんに匿われているからというのが大きい。

 これ以上は無理だろう。 

 

「あの子は……」

 

「ジョジョは私達に情けない姿を見せたくないんでしょうね」

 

 男とはそういう生き物なのだろうか?

 女所帯だっただけに男性とあまり関わらなかったからよく分からない。

 

「ですが、人は自分の許容を超える事を続けていれば遅かれ早かれ壊れる」

 

「手遅れになる前にやめさせます」

 

 アストレア様もあの子を壊してでもファミリアを再興したいわけでは無いようで安心した。

 同時に少し残念でもある。

 

「頼って貰えないというのは主神として辛いですね」

 

 同感だ。 

 

 

 

 次に彼が私に会いに来たのは二日後だった。

 落ち込んでいるようだったが、前のように真っ青な顔で無理をしているのに比べればまだマシだろう。

 

「リオンさん、すいませんでした」

 

 彼の口から真っ先に出たのは謝罪の言葉だった。

 

「お姉さんやリオンさんを自由にしてあげたいのに、だからもっと強くならなきゃいけないのに……。大口叩いたんだから結果を出さなきゃいけないのに……いつになるのか分からなくて」

 

「少し落ち着きなさい」

 

 まだ心の整理がついていないからか若干早口になって聴き取り辛い。

 しかし、何が言いたいのかは何となく分かった。

 

「アストレア様にはもう言いましたか?」

 

「はい。怒られました」

 

「当たり前でしょう。悩んでいるのを隠せてないのに、その癖一人で抱え込んで、挙句アストレア様を心配させたのだから」

 

「うっ……」

 

 自分で言っておいて何だが、どの口が言ってるんだろうと思ってしまった。

  

「そもそも、何故もっと早く話そうとしなかったのですか? 自分一人だけの問題だとでも思っていたのですか? ファミリアの団員になったのならその自覚を持ちなさい。特に今の団員はあなただけなんですから」

 

「だから頑張らなきゃいけないと……」

 

「かつて私達11人が背負っていたものをあなた一人でどうこう出来るとでも? それはただの思い上がりです」

 

「ううっ……」

 

 彼は思いっきり凹んでしまった。

 少し言い過ぎたかもしれない。

 

「まあ、もっと早く聞き出そうとしなかった私にも非が無いわけではありませんが」

 

「え、いや……そんな事は……」

 

「同伴者には何か言われましたか?」 

  

「ラウルさんにはそんなに焦らなくて良いとか、無理してこんなところで潰れたら勿体ないとか言われて……」

 

 ラウル……確か『ロキ・ファミリア』の『超凡夫』のラウル・ノールドだったか。

 ファミリアの主神であるロキが『豊穣の女主人』を気に入っているのもあってか遠征の打ち上げで何度か目にしている。

 彼の口ぶりから察するに『超凡夫』に諭されたからこそ私の元に謝りにきたのだろう。

 

 不覚にも少し嫉妬してしまった。

 

「思い悩んだのでしたら少しくらい相談してください。後輩の一人くらい気に掛ける余裕はありますから」

 

 とても照れくさい気分だ。

 

「うっ、ううっ……」

 

 彼は何故か涙目になっていた。

 

「な、何で泣いてるんですか!?」

 

「す、すいません。後輩って言われて何だか感動しちゃって……」

 

「ああもう、そんな事で泣かないでください!」 

 

 こういうのは私のイメージじゃあない、こうやって子どもを慰めたりするのはシルやアストレア様の役だ。

 

「なーかしたーなーかしたー」

 

「とうとうやったわねあいつ……」

 

「じゅるり……涙目もなかなかそそるニャ~」

 

 後方からくる三馬鹿の視線が痛い。

 そして最後の一匹はいい加減痛い目見た方が良い。

 

 次の日から、彼は無理をしなくなった。

 というより自分の中で折り合いを付けられるようになったという方が正しいか。

 冒険者として、本当の意味でスタートラインに立つ事が出来たと祝おう。

 

 

 

 

 彼が冒険者を始めて一月が経つ頃、『ロキ・ファミリア』が遠征に行くことが決まったらしい。

 当然それにはレベル3の『超凡夫』もついていくだろう。

 遠征が終わるまで彼はしばらく一人でダンジョンへ行く事になる。

 

 彼も冒険者を始めて一か月、それにギルドや『超凡夫』には4階層より下には行かないように言われているそうだ。

 彼の実力であれば4階層程度なら一人でも問題はないし、この期に及んで勝手に無茶はしないだろう。

 

「なんかラウルさんが戻ってくるまで限定で別の人とパーティ組むことになりました」

 

「また突然ですね」

 

 ある日、私の元を訪ねてきた彼が鍛錬の最中にそんな事を言い出した。

 『ロキ・ファミリア』から代理で誰か派遣されたのだろうか。

 

「誰ですか?」

 

「『白巫女』のフィルヴィス・シャリアさんです」

 

 また意外な人物が出てきた。

 どうも、ダンジョンに潜ってた最中に他の冒険者達に絡まれていたのを助けて貰ったのが始まりらしい。

 彼女とは現役時代に仕事で何度か顔を合わせた事はあれど、親しくはなく必要以上に会話をした記憶はない。

 

「とりあえずファミリアに関してはぼかしましたけど、何かマズかったですか?」

 

「……いえ、よっぽどの事でもない限りパーティメンバーに口出しはしません。ただ、エルフは――」

 

「はい、気難しいんですよね」

 

 知っていますと言わんばかりに私を見て苦笑いしている。

 この子も言うようになった。

 

 反応から察するに『27階層の悪夢』も『白巫女』の悪評も知らないようだ。

 悪評と言っても別に『白巫女』が悪事を働いている訳ではない。

 

 『白巫女』と組んだパーティメンバーは死亡している。

 それも一度や二度ではない、『27階層の悪夢』以降に彼女が組んだパーティ全てだ。

 そうしてついたもう一つの異名が『死妖精(バンシー)』。

   

 パーティメンバーが死んだ事に何かしら理由があるわけではない。

 ただ運が悪かっただけ、そしてそれが何度も続いてしまっただけなのだろう。

 しかし、ダンジョンでは常に死と隣り合わせ。

 生きて帰るために験を担ぐ事もままある。

 だから彼女は不幸の象徴として同じファミリア内のメンバーからさえ忌避されるようになってしまった。

 

 それでもなお冒険者を続けているのは……いや止そう。

 ただの予想で何一つ確信はない。

 

 何事もなければいい、それだけを願いながら時間は過ぎた。

 経過を聞いている限り、『怪物の宴(モンスター・パーティ)』だの上層で滅多に出現しない強化種だの問題は多々あれど、一応上手くはやれているようだ。

 そして思った通り、『白巫女』は彼に対して必要以上に干渉してこない。

 

 変に情が湧けば何かあった時に余計な禍根が出来る。

 

 数日後、彼から『白巫女』が来なくなった事を相談された。

 彼女の拠点に行っても留守にしていて会う事が出来ないらしい。

 ファミリア内に自分の居場所が無いからと拠点に戻っていない可能性はある。

 

「どうしましょう。諦めた方が良いんでしょうか?」

 

「質問に質問を返すようですいませんが、あなたはどうしたいのですか?」

 

「え……? まあ、またパーティ組んでくれるんなら嬉しいですし、駄目なら……縁が無かったって諦めるしかないんじゃあないでしょうか」

 

「何ですかそのどっちつかずな返答は」

 

「だって、俺一人でどうにか出来るような浅い問題じゃあ無いと思うんですよ」  

 

 彼は渋い顔をしながら空を仰いでいた。

 何処かで『白巫女』の悪評を知ってしまったのだろうか。

 

「『白巫女』について誰かから聞きましたか?」

 

「ええ、チンピラ連中が絡んできた時にちょっと。で、昔に『何か』があってその『何か』のせいでシャリアさんがファミリアで孤立したって」

 

 ざっくりとしてるが、別に詳しく知らなくてもいいのだから問題ない。

 その上で先程の返答だったのだろうか。

 何の根拠もなく「何とかして見せる」と大口叩くよりはいいだろう。

 

「俺に出来るのって『態度と認識を変えない』くらいなんですよね」 

 

 自分に出来るのはそれくらいしかないと歯痒い気持ちもあるのだろう。

 彼は溜息を一つついて一人でダンジョンへと向かった。

 

「いつまで隠れているつもりですか?」

 

 彼が見えなくなったのを確認して声を上げた。

 途中から感じた妙な気配。

 敵意が無いからと放っておいたが、念のための確認は必要だ。

 

「気づいていたのか『疾風』」

 

 観念したように出てきたのは、『白巫女』フィルヴィス・シャリアだった。

  

「私に何か用ですか?」 

 

「ああ……いや……」

 

 歯切れの悪そうな態度で何となく理解した。

 用があったのは私ではなく『彼』なのだろう。

 

「彼はあなたが来ないと言って困っていましたよ」

 

「……」

 

 彼女は無言で目線を逸らした。

 何も言わず、勝手にすっぽかした事への罪悪感はあるのだろう。

 だからこそここに来た。

 

「『闇派閥』が私達に残した爪痕は大きい……」

 

「ッ!?」

 

 私の言葉で『白巫女』はビクリと振るえた。

 私も彼女も『闇派閥』のせいで大切な仲間達を失った。

 その傷は未だに癒えていない。

 もう、その怒りをぶつけるための相手も存在しない。

 

「『白巫女』、あなたはダンジョンに死に場所を求めているのですか?」

 

「そう……なのかもしれないな」

 

 かつての私だ。

 シルに出会う前の私が目の前にいた。

 

「私の自殺に未来のあるあの子を巻き込むわけにはいかない。私といれば呪いがあの子を殺す」

 

「他でもないあなた自身が偶然(それ)を呪いと言ってしまえばおしまいだ」

 

「なら私はどうすればいい! 今までの仲間達のようにあの子が死ぬのを見届ければいいとでもいうのか!?」

 

「死なせなければいい。ただ、それだけの事です」

 

 そう、ただ死なせなければいいだけだ。

 何十人も守るわけじゃあない、いるのは彼一人だ。

 深層に行くわけじゃあ無い、彼が行くのは4階層までだ。

 あの子はただのレベル1じゃあない、これから『アストレア・ファミリア』を背負って立つ私の後輩だ。

 

「あなたは過去から逃げ続けますか? それとも向き合ってみますか?」

 

 それを決めるのは彼女自身だ。

 過去に向き合うのが恐ろしい事だというのは私自身よく知っている。

 だから強要は出来ない。

 

「お前は、向き合えたのか……?」 

 

「私がどうだったかを知っても意味はありません。私の問題は私の問題で、あなたの問題はあなたの問題だ」

 

 それに私の場合は過去の方から突然やって来たのだから参考になるわけがない。 

 

「逃げるか、向き合ってみるか……か」

 

 彼女は自分に言い聞かせるかのように私の言葉を反芻する。

 最終的には彼女次第だ。

 

「すまなかった……醜態を見せた」

 

「気にしないで下さい。それに、大した事はしていない」

 

「その、つかぬ事を聞くが、彼の所属しているファミリアはまさかア――――」

 

 その言葉は言わせない。

 その意を込めて『白巫女』を威圧した。

 

「――――ッ!?」

 

「それは、あなたが知らなくていい事です。あなたの心にだけ留めておいてください」

 

「そ、そうか。失礼した」

 

 そのまま『白巫女』は私から逃げるように走り去った。

 威圧はやり過ぎだっただろうか。

 

 そして彼女が去った先にあるのはダンジョン。

 

 少しは先輩らしい事が出来たのだと思いたい。

 

 




次回、もう一人のエルフ視点


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ひとりのエルフは目の前の壁を見ていた もうひとりのエルフは窓からのぞく星を見ていた その2

ジョジョ5部も終盤に差し掛かって少し寂しい気分。


 私は何故冒険者になりたかったのだったか。

 

 エルフという種族は排他的で多種との交流を避けて永久にも等しい時を森の中で暮らす。

 私はそれを窮屈に思って里を出た。

 外の世界を見てみたい、もっと色々なものに触れてみたい。

 迷宮都市オラリオはそんな私の好奇心を満たす場としてこれ以上ないものだった。

 『ディオニュソス・ファミリア』へと入団した後、四苦八苦しながらも先人達と共にダンジョンへと潜った。

 苦労があったとはいえ、日々自分の技量が磨かれていくのは楽しかったし、ダンジョンでの冒険はこの先には何があるんだろうと、心躍った。

 

 待っていたのは地獄だった。

 

 後に『27階層の悪夢』と呼ばれる事件。

 『白髪鬼(ヴェンデッタ)』オリヴァス・アクトを中心とした闇派閥による最悪の囮作戦。

 

 何故私が生き残れたのか、私自身よく覚えていない。

 敵や仲間達が魔物に殺され、食われていく様を見て、私の想いは一つだった。

 

 死にたくない。

 死にたくない。

 死にたくない。

 

 ただ死にたくない一心で私は魔法を唱えて剣を振るった。

 一体何処まで仲間達の事を気にかけられただろうか。

 

 次に気が付いたときには私は病室で寝かされていた。

 話によれば私は一人27階層で立ち尽くしていたらしい。

 あの地獄が終わった事への安堵が私を包み込む。

 そしてしばらくした後に仲間達の死に涙を流した。

 

 フィン・ディムナがそれに気づいて裏をかいた事で闇派閥は一気に弱体化し、『疾風』の破壊活動がトドメとなってオラリオの暗黒期は終わりを告げた。

 

 悪夢は終わった――――そう思っていた。

 再び立ち上がった私はまだ私が悪夢の中にいる事に気づいていなかった。

 

 始まりは、リハビリが終わって新しく組んだパーティでダンジョンを潜った時。

 

 私を残して全滅した。

 

 一度や二度であればダンジョンではよくある不慮の事故だと片づけられただろう。

 ただ、私の場合は一度や二度ではない、立ち直ってから組んだパーティ全てが遅かれ早かれ私を残して壊滅している。

 

 気が付いたときには他の冒険者達からは敬遠されて、同じファミリアの団員ですら私から距離を置くようになった。

 

 いつからか私は『白巫女(マイナデス)』ではなく呪われた存在、『死妖精(バンシー)』と呼ばれる事が増えた。

 

 モンスターに憤りをぶつけても、私の身体が血に染まるだけで、それが晴れる事は決して無かった。

 

 何故私は生きているんだ。

 そう思いながらダンジョンを一人で彷徨うばかりだった。

 

 彼と出会ったのはそんな時だった。

 

 ダンジョンの帰り、彼は他の冒険者3名に武器を向けられていた。

 

 ダンジョンに法律なんてものは存在しない、何があろうと自己責任だ。

 だからこそ冒険者が冒険者を襲う事もある。

 それでも、自分より一回りは下の子どもを狙うとは卑劣極まりない。

 

 丁度いい、少々物足りなかったところだ。

 こいつらで憂さ晴らしをさせて貰おう。

 

 私は杖を構えて男一人を殴りつけた。

 男はそのまま昏倒。

 

「て、てめ――」

 

 反撃の隙など与えない。

 鳩尾に杖を叩き込む。

 二人目は腹を抑えて蹲った。

 

「お、お前、バン――」

 

「黙れ」

 

 最後の一人は隙だらけの顎を殴打。

 男はそのままグラついて気を失った。

 

 私が思っていた程達成感は湧いてこなかった。

 

「クズ共が、子ども相手に恐喝など恥を知れッ」

 

 子どもは終始目を丸くして自分に絡んでいた男3名が倒れていく様を見ていた。

 怖がらせてしまっただろうか。

 当たり前か。

 私が行ったのは彼を助けるという大義名分を掲げた憂さ晴らしだ。

 我ながら何をやっているのだろうかと心の中で溜息をついた。

 

  

「こいつらが起き上がる前に引き上げなさい」

 

 罪悪感で彼を碌に直視出来ず、そのまま逃げるようにその場を立ち去った。

 見たところレベル1の駆け出しといったところだ。

 狩場が違うのだから、ダンジョンでまた会う事もそうそうないだろうし、オラリオの規模を考えれば都市内で遭遇する事もあるまい。

 

 その発想が甘かった。

 

「あの、先日は助けていただいてありがとうございました」

 

 私がデュオニュソス様の警護をしている最中にあの少年はやってきた。

 首に巻いたワインレッドのマフラーは見間違いようもない、私がダンジョンで助けた少年だ。

 何故こう都合悪く出くわすのだ。

 

「助けた?」

 

「ええ、ダンジョンの帰りにガラの悪い冒険者達に絡まれていたので……」

 

 誤魔化しても仕方ないのでありのままをディオニュソス様に伝えた。

 勿論、都合の悪い事は隠してだ。

 

「あの子は一人だけだったのかい?」

 

「はい」

 

 そういえば何故彼は一人でダンジョンに潜っていた?

 上層とはいえ12か13くらいの子どもが一人で挑むのには少々危険だ。

 誰かしら経験者がついてしかるべきだろうに。

 

「君は、どこのファミリアに所属しているのかな?」

 

「ええっと……その……」

 

 彼は目を泳がせた。

 所属しているファミリア名を明かせない理由でもあるのか。

 まさか恩恵無しでダンジョンに潜っているんじゃあないだろうな。

 

「すいません、諸事情でちょっと話せないんです」

 

 神は下界の者達の嘘を見抜く。

 しかし、嘘を見抜けるだけで心を読む事が出来るわけではない。

 今の彼のようにだんまりを決め込まれれば秘めたものがバレる事は無い。

 まあ、不信感を募らせることに変わりはないのだが。

 

「じゃあ質問を変えようか。何故君は一人でダンジョンに? パーティは組まなかったのかな?」

 

「ついてきてくれた人が遠征に参加してしばらく来れなくなったんです」

 

「何処のファミリアの冒険者かな?」

 

「『ロキ・ファミリア』です」

 

 驚いた。

 そういえば先日『ロキ・ファミリア』が到達階層記録更新のための遠征に出たという話を小耳に挟んだ。

 話の筋は通っている。

 

「あの、ディオニュソス様……?」

 

「彼は嘘は言っていないね」

 

 身元がある程度保証されたが、ますます彼の事が分からなくなってきた。

 『ロキ・ファミリア』と繋がりのある名前を明かせないファミリア……さっぱり思いつかない。

 

「ふ~む……そうだ! 『ロキ・ファミリア』の遠征が終わるまでうちのフィルヴィスをつけよう」

 

「えっ……?」

 

「……は?」

 

 突然何を言い出すんだ我が主神は!?

 

「フィルヴィスの実力は私が保証しよう」

 

「いや、そういう事じゃあ無くて」

 

「一体何故そんな話になるんですかディオニュソス様!? それに私にはディオニュソス様の警護や団長としての仕事が……」

 

「別に丸一日警護をする必要はないだろう。それにここ最近は滅多に拠点に顔を出さないじゃあないか。それで団長としての責務を果たしていると言えるのかい?」

 

 ディオニュソス様の言葉に対して私は何も言い返せなかった。

 今、実際にファミリアをまとめているのは副団長のアウラだ。

 私が彼につけばファミリアの運営に支障が出るとはっきり言えないのが辛い。

 

「何か嫌がってるみたいですし、俺はこれで……」

 

「あーッ、ちょっと待ってくれ!」

 

 どうやらディオニュソス様は彼をそのまま帰す気は無いらしい。

 反論する気も失せた。

 もうどうにでもしてくれ。

 

「そういえば名前を聞いていなかったね。私はディオニュソス。こっちがフィルヴィス・シャリアだ。うちのファミリアで団長をしている」

 

「ジョシュア・ジョースターです。長かったら気軽にジョジョって呼んでください」

 

 

 

 

 今更だが、何故私は新人教育の真似事をすることになったのだろうか。

 おまけに他所のファミリアの新人を、だ。

 ディオニュソス様はいい気分転換になるだろうと笑っていたが、私にそんなものは必要ない。

 

「い、いい天気ですね」

 

「ダンジョンに天気は無い」

 

「そ、そうですね。はは……」

 

 さっきからジョースターはこの調子で私に頻りに話しかけてくる。

 下心の有無はどうでもいい。

 どちらにしろ私はこの少年に入れ込むつもりはない。

 どうせ短期間限定でパーティを組んでいるだけなのだから、変に情が湧いても困る。

 

 彼については、腕前に関しては目を見張るものがあった。

 私からすればまだまだだが、身体裁きや剣裁きはそれなりに出来ている。

 一か月でこれなら上々の部類だろう。

 独学でここまで来たのか、それとも師が優秀なのか。

 

 懐かしい気分だ。

 私も駆け出しの頃はああやって色々と試行錯誤しながら何が最適なのか模索したものだ。

 

 あの頃に戻る事が出来たらどれだけ幸せだろう。

 

 そう思っていた私は、ふと肌がざわめくのを感じ取った。

 

「気をつけろ、何か来るぞ!」

 

「は、はいッ!」

 

 現れたのはモンスターであった。

 だが、定石の様な1体や2体ではない。

 モンスターはどんどん生まれ続けて、目測でも10体を軽く超えた。

 それでもなお私達を囲むように増え続けている。

 

 バカな、上層の、しかも4階層で『怪物の宴(モンスター・パーティ)』だと!?

 

「おい、私から離れるなよ!」

 

「はい!」

 

 4階層のモンスターであれば強くてもダンジョン・リザードかフロッグ・シューター程度。

 それくらいであれば大した問題ではないのだが、この数で、しかも駆け出しを連れているとなると話は違ってくる。

 いっその事、彼だけここから逃がしてしまった方が良いかもしれない。

 

 そう思っていたが、彼は思いの外頑張っていた。

 群がってくるモンスターの群れを切り捨て、殴り飛ばし、蹴り飛ばす。

 攻撃の際に一瞬光って見えたのは何かのスキルだろうか。

 

「だっ!?」

 

 他のモンスターに気を取られて反応が遅れたのか、彼は数匹のゴブリンに群がられていた。

 

 それに気が付いた私は周囲のモンスターを剣で払い、即座に道を作る。

 

「くっ、待っていろ! すぐカバーに――――」

 

「『皇帝(エンペラー)』ッ!」

 

 彼は険しい顔でとても短い呪文のようなものを唱えた。

 すると、彼に群がっていたゴブリン共が額から血を流してそのまま落ちていく。

 他のモンスター達は彼が起こした謎の現象に戸惑っている。

 

 今のは一体――――否、今はそんな事を考えている時間は無い。

 何だか知らんが隙が出来た。

 あそこからならモンスターの群れから抜け出す事が出来る。

 

「ついてこい!」

 

「はい!」

 

 ここまで来たら私の魔法で殲滅してしまった方が早い。

 この数だと全ては無理でも逃げるだけの時間を確保するくらいは出来るだろう。

 

「【一掃せよ、破邪の聖杖(いかづち)】」

 

(雷……? 電気って確か……あった、これこれ!)

 

「【ディオ・テュルソス】!」

 

「ふんッ!」

 

 おい待て、今何を投げた!?

 

 彼が投げたのは何かが入った瓶。

 それは空中で割れると中身がモンスターの群れにかかり、それとほぼ同時に私の電撃が炸裂した。

 

 モンスターの群れは炎上した。

 

 こうも見事に炎上したとなるとさっきの瓶の中身は酒やオイルのような可燃性の液体だろうか。

 生き残ったモンスターもいたが、この惨事を見てそのまま蜘蛛の子散らすかの如く逃げていた。

  

「魔石が……泥が……勿体ないなぁ」

 

 いや、炎上させた原因はお前だからな?

 

 礼儀正しい良い子かと思いきや突拍子も無い事をしでかす。

 訳の分からない子だ。

 

 

 

 

 一難去ってまた一難という言葉がある。

 

 それはきっと今の私に当て嵌まる言葉なのだろう。

 

「おおっ、ダンジョン・リザードの色違いだ!」

 

 目の前にいるのは彼の言う通り青い色をした通常とは違うダンジョン・リザード。

 所謂強化種というやつだ

 

 何でこんな駆け出しが来るような階層に強化種が、しかも5体もいるんだ!?

 ある意味インファント・ドラゴンよりもレアだぞ。

 

 昨日の『怪物の宴(モンスター・パーティ)』といい強化種の出現といいこれを偶然の一言ですませていいものなのか。

 

 これではまるで――――。

 

 その思考をすぐさま振り払った。

 もし、それを認めてしまったら私は……。

 

「どうかしました?」

 

「いや、別に……」

 

 強化種とはいえダンジョン・リザード、『怪物の宴(モンスター・パーティ)』程苦戦はしなかった。

 それにしても昨日の今日で中々の成果を出している。

 今の所4階層までと言われているそうだが、1体とはいえダンジョン・リザードの強化種を倒した技量を考慮すれば7階層くらいまでならやっていけそうだ。

 まあ、判断を下すのは私ではないから別に言葉にする必要は無いのだが。

 そもそもこの二日間で彼に何かを教えた記憶が無いな。

 

「そういえば取り分って……」

 

「全部持っていけ。子どもから取り上げる程金銭に困ってはいない」

 

 そういえば昨日は全部燃えてしまって取り分云々の話は無かったな。

 金銭に困っていないのも事実だが、4階層の稼ぎ何て貰っても仕方ないというのが本音だ。

 それに以前彼から魔石や装備を巻き上げようとしていた連中と同類になりそうで気分が悪い。

 

 

 

 

 次の日は特にこれといったことは無かった。

 というよりこれが普通だ。

 この辺であればモンスターが群れで出現する場合は多くても3体程度。

 あの二日間が異常だっただけだ。

 

 しかし、このままでいいのだろうか。

 もし、あの異常なモンスターの出現の原因が私にあるとしたら、彼はまた死の危険に晒される。

 私という死を運んでくる妖精に殺される。

 

 何も変わらないままなのか。

 今までのようにパーティメンバーを死なせて終わるだけなのか。

 

 彼は駆け出しだ。

 おそらく私の悪評については知らないのだろう。

 知っていたらこうやって一緒にパーティを組むことは無かった。

 

「今日もありがとうございました」

 

「ああ」

 

 なんというか、律儀な子だ。

 半ば強引に決められたようなものだというのに。

 

 私はもう少しダンジョンに潜ってから宿に戻ろう。

 そう思ってふと、視界の端に見覚えのある顔を捉えた。

 

 何処かで見たことがあると思ったら、私が()()()3人組の一人だ。

 妙にコソコソと彼の後をつけているのが気になる。

 嫌な予感がして私は後を追った。

 

 私は後を追った事を後悔した。

 

 そこにあったのはあの3人組が彼に絡んでいる場面だった。

 しつこい連中だと身を乗り出そうとして、連中の言葉で足が止まった。

 

「まだ駆け出しだっていうのに『死妖精(バンシー)』に魅入られちまうなんて運がねえなァ~? そうは思わねえか、え?」

 

「近いうちに記録更新か? 一体何人殺しちまったんだろうな」

 

「ファミリアでも孤立してるって話だぜ。団長が孤立って笑えて来るぜ。そうだよな?」

 

 足が動かなかった。

 頭がどうにかなりそうだった。

 普段ならいつもの罵声だと聞き流していた筈なのに。

 

 何故私はショックを受けているんだ!

 何故私は逃げているんだ!

 

「はは……」

 

 乾いた笑いが口から零れる。

 

 やはり、最初からこんな事をすべきではなかったのだ。

 

 組んだのはほんの少しの間であった。

 だが、まるで駆け出しだった頃の私を見ていたようで、楽しかったあの頃を思い出す事が出来た。

 もし、『(かつての私)』に拒絶された時、私は耐える事が出来るのだろうか。

 

 また拒絶されるくらいなら、また失うくらいならいっその事、私から離れた方が良い。

 

 そして私は彼の許へ行くのを止めた。




次回で二人のエルフ編は終了です。


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ひとりのエルフは目の前の壁を見ていた もうひとりのエルフは窓からのぞく星を見ていた その3

いつも感想や誤字報告をありがとうございます。
励みになります。


 あの後戻ってみたが、そこに彼の姿は無く、例のチンピラ冒険者達が気を失って倒れているのみだった。

 誰かが通りかかって助けたのだろうか。

 それとも彼が自分自身で切り抜けたのだろうか。

 

 ボロ雑巾のようになった彼がいなかった事に安堵し、そして私は一体何をしているんだという後ろめたさに苛まれた。

 助けもせずに逃げ出した分際で何を安心しているんだかと自己嫌悪が止まらない。

 大体、彼がいないというだけで彼が無事に切り抜けられる事が出来たという保証は何処にもない。

 

 彼の許には行けなかった。

 真実を知った彼にどんな顔をして会いに行けばいいのか分からない。

 

 ただ、このまますっぽかし続けるわけにもいかない。

 私だけの問題ならまだしも、今回のパーティはディオニュソス様自身が言い出したものだ。

 これ以上の勝手なボイコットは私だけでなくディオニュソス様にまで泥を塗る事になる。

 せめてパーティの解消だけでもちゃんとするべきだ。

 

 しかし、ここで問題が発生した。

 そもそもの話、私は彼の名前以外何も知らないのだ。

 ファミリアの主神の名前もファミリアの居場所も分からない。

 

 仕方ないとギルドで聞いてみたら、彼の担当らしき三つ編みの女性ヒューマンがやって来て、「諸事情で彼についての内部情報は話す事が出来ません」と言われてしまった。

 おまけに、彼に私が来なかった事を相談されたから『ディオニュソス・ファミリア』の場所を伝えたと言われ、今回の件を注意される始末。

 文句を言おうにも正論ではあるし、妙な威圧感のせいで何も言えなかった。

 一体何がどうなっている。

 何で向こうの情報は漏らさない癖にこっちの情報はあっさり漏らすんだ。

 

 しかもよりによって拠点の方に行ってしまったか。

  

 そういえば、いつから拠点に顔を出さなくなっただろうか。

 少なくとも『死妖精(バンシー)』だなどと呼ばれるようになってからはまともに行った記憶はない。

 少々勇気はいるが、もしかしたらという可能性を考えて私は拠点へと向かった。

 

 別に拠点を他所に移したわけではないし、場所を忘れたわけでも無いというのにどこか道が遠くに思えてくる。

 自分の足取りはこんなに重かっただろうか。

 かつては拠点に戻って皆と戦果を喜ぶのが楽しみで仕方なかったというのに。

 

 そして着いた。

 着いてしまった。

 

 前に来た時と何も変わっていない『ディオニュソス・ファミリア』の拠点だ。

 もしかしたら彼と入れ違いになってしまっただろうか。

 だとしても、せっかく来たのだから顔くらいは出しておくべきだろうか。

 

 思い悩み、後一歩が踏み出せない。

 立ち止まっていた私の目の前でドアが開いた。

 

「フィルヴィス……?」

 

「アウラ……」

 

 こうしてアウラとまともに顔を合わせるのも久しぶりだ。

 アウラは『27階層の悪夢』の時は別件で外れていて運良く無事だった。

 

 本当に運が良い(羨ましい)

 

「何か用ですか?」

 

 自分が所属しているファミリアの拠点に行くのに用がいるのだろうか?

 

 ああそうか、そういう事か。

 既にここに私の居場所は無いのだな。

 ファミリア内に居場所が無い団長とはさぞ滑稽だろう。

 そろそろ正式に団長の座をアウラに譲る事も考えておくか。

 

「そういえば、少し前にマフラーをつけた少年が貴女を訪ねて来ましたよ。拠点にはしばらく戻ってないと言ったら帰りましたが」

 

「そうか、邪魔をしたな……」

 

 結局入違いになってしまった。

 無駄足だったな。

 

「フィルヴィス。またパーティを組んだのですね」

 

 アウラの眼は暗に『今度はあの子を殺すのか』と言っているような気がした。

 そう思われても仕方がない。

 私は呪われているのだから。

 

 ここにもう用はないと、私は逃げるようにこの場を立ち去った。

 

 また逃げた。

 私は逃げてばかりだ。

 私はいつまで逃げ続ければいいんだ。

 

 誰か教えてくれ。 

 

 

 

 

 昨日はよく眠れなかった。

 時折こんな日がある。

 特にあの悪夢を夢で見た時は一睡も出来ない。

 

 何も分からない。

 何も変わらない。

 ただ、時間だけが過ぎていく。

 

 この際、恥を承知でディオニュソス様に頭を下げに行くか。

 失望はされるだろうが、もうそれでいいかもしれない。

 この有様で今更恥も外聞も無いだろう。

 

 空を仰いだ。

 日が昇り切ってないせいかまだ少し暗い。

 まるで今の自分の心の中でも見ている気分だ。

 散歩でもして気を晴らそう。

 

 しばらく歩いていたら何かがぶつかり合うような音が聞こえてきた。

 こんな朝早くから喧嘩だろうか。

 

 しかし、それは喧嘩ではなかった。

 かといって決闘でもない。

 片方がもう片方に稽古をつけているように見えた。

 

 一人は彼だった。

 

 何故こんな所に、という疑問はもう片方の人物を見て吹き飛んだ。

 

「『疾風』……!?」

 

 その姿を確認して私は思わず近くに身を潜めた。

 『アストレア・ファミリア』最後の生き残りにしてオラリオの暗黒期を終わらせた立役者。

 ギルドに要請された任務で何度か顔を合わせた事はあるものの、基本的に馴れあう事は無く、必要以上に会話をした事も無い。

 『ルドラ・ファミリア』を壊滅させた後、力尽きて死亡したという噂を聞いた事もある。

 ただ、以前にディオニュソス様に付き合ってとある酒場に寄った時、給仕をやっている彼女を見て心臓が止まりそうになった。

 お前は一体何をやってるんだと叫びたい気分だった。

 これも風の噂だが、その時の酒場『豊穣の女主人』の店員は所謂『ワケあり』というものらしい。

 ぱっと見ただけで少なくとも『疾風』以外にも私と同等か、それ以上の強さの店員が何名かいるのが分かる。

 で、あれば態々藪を突いて蛇を出しても仕方ない。

  

 その『疾風』が彼に稽古をつけている。

 内容も中々にハードだ。

 彼の隙や至らぬ所を徹底的に洗い出してそこを指摘するかの如く攻め立てている。

 彼もまた何度吹き飛ばされても立ち上がって構えを取った。

 成程、こんな事を続けていれば強くもなるか。

 

 最後は『疾風』が彼の喉元に木刀の先を突き付けて終わった。

 彼は汗だくでへたり込んだ後に取り出したタオルで豪快に顔を拭いている。

 

 稽古の後は二人で何か話をしている。

 私は気になって二人の会話に集中した。

 

「え……? まあ、またパーティ組んでくれるんなら嬉しいですし、駄目なら……縁が無かったって諦めるしかないんじゃあないでしょうか」

 

 これはまさか、私の話をしているのだろうか?

 いや、だとしたら何でまたパーティを組んでくれるなら嬉しいだなどと言える?

 

「俺に出来るのって『態度と認識を変えない』くらいなんですよね」 

  

 元気無さそうに溜息をつく彼を見て、私は何をしているのだろうと嫌な気分になる。

 一回りは年下の子どもを困らせて、気を遣わせて、逃げ回っている。

 

「いつまで隠れているつもりですか?」

 

 そんな私を咎めるような声が私を現実へと引き戻す。

 声の主は『疾風』だ。

 

 幸い敵意は感じられない。

 ただ、下手に逃げようものなら向こうもどう出てくるか分からない。

 同じ魔法剣士タイプでレベルは向こうが上だ。

 戦いになればおそらく向こうに軍配が上がる。

 

 私は観念して彼女の前に出た。

 

「気づいていたのか『疾風』」

 

「私に何か用ですか?」 

 

「ああ……いや……」

 

 用があったのは彼の方だったが、もうここにはいない。

 いっそパーティ解消の旨を『疾風』を通じて伝えて貰うのも一つの手だと思ったが、誠意ある対応とは言い難い。

 

「彼はあなたが来ないと言って困っていましたよ」

 

 私は思わず『疾風』から目を逸らした。

 

 パーティ解消の件を言わなければと頭の中で考えていながら実際には彼を避けている。

 入れ違いになった時も物事を先送りに出来て安心していたのかもしれない。

 何も解決していないというのにな。

 

「『闇派閥』が私達に残した爪痕は大きい……」

 

「ッ!?」

 

 『疾風』の言葉で思わずビクリと震えた。

 そうだ、私も『疾風』も『闇派閥』に仲間を殺されて、人生も狂わされた。

 奴らが私達の心に残した爪痕は大き過ぎる。

 

「『白巫女』、あなたはダンジョンに死に場所を求めているのですか?」

 

 『疾風』は私の最も深いトコロへと踏み込んだ。

 

「そう……なのかもしれないな」

 

 かもしれない、ではない。

 きっとそうなのだろう。

 

 私が生き残った事をディオニュソス様は喜んでくださった。

 でも、今の私の胸中にあるのは、何故私一人だけ死ねなかったのかという恥と後悔だけ。

 きっとまた立ち直る事が出来るなんて希望は今となってはもはや幻想。

 

 一人で深層へ潜るのは行き場がなくなった恨みをぶつけるためであり、死にたいと思う癖に自ら命を絶つ度胸も無い私が死ぬための手段だった。

 

 ああ、本当に救いようがない。

 

 だから――――。

 

「私の自殺に未来のあるあの子を巻き込むわけにはいかない。私といれば呪いがあの子を殺す」

 

 しかし、私を見る『疾風』の瞳は冷ややかに私を映している。

 

「他でもないあなた自身が偶然(それ)を呪いと言ってしまえばおしまいだ」

 

 『疾風』の言葉に腹が立った。

 そんな事は私自身が一番良く知っている。

 だが、どうにもならない。

 

 お前は私なんだ。

 私の筈だ。

 ならばそれくらい分る筈だ。

 

「なら私はどうすればいい! 今までの仲間達のようにあの子が死ぬのを見届ければいいとでもいうのか!?」

 

「死なせなければいい。ただ、それだけの事です」

 

 簡単に言ってくれる。

 

 だが、上層での『怪物の宴(モンスター・パーティ)』に強化種の群れという普通であれば例を見ない事態ばかりが起きている。

 ダンジョンが、いや過去が私を逃がすまいとしているかのようではないか。

 あんな強大すぎる過去(悪夢)に一体どうやって立ち向かえばいい。

 

「あなたは過去から逃げ続けますか? それとも向き合ってみますか?」

 

 何故だ。

 何故お前はそんな事が言えるのだ。

 

 まさか、お前は過去と向き合う事が出来たのか?

 仲間の死の悲しみを、『闇派閥』への憎しみを乗り越えて前に進む事が出来たというのか?

 

 知りたい。

 

「お前は、向き合えたのか……?」

 

 思わず口から出ていた。

 

「私がどうだったかを知っても意味はありません。私の問題は私の問題で、あなたの問題はあなたの問題だ」

 

 私の勝手な期待は勝手に裏切られた。

 回答だけを教えてくれる程『疾風』も優しくは無かった。

 彼女の言葉が真理なのだろう。

 

「逃げるか、向き合ってみるか……か」 

 

 そういえば、いつからか私は困難へと挑戦する事をしなくなっていた。

 出来っこないからと決めつけて、失敗が恐いからとそういうものとは無縁でありたいと思って。

 

 どうせ死ぬのであればやるだけやってから死ぬのも悪くないかもしれない。

 それに、似た境遇(・・・・)であった『疾風』が乗り越える事が出来たのだ。

 絶対に出来ないなんてことはあり得ない。

 

「すまなかった……醜態を見せた」

 

「気にしないで下さい。それに、大した事はしていない」

 

 縁というものは面白いな。

 あの日の八つ当たりが私と『疾風』を引き寄せた。

 

 それにあの少年だ。

 他人と馴れあわない『疾風』が彼にあれだけ肩入れしている。

 となると、確証はないにしろ一つの答えに行きついた。

 

「その、つかぬ事を聞くが、彼の所属しているファミリアはまさかア――――」

 

 その瞬間、私は『疾風』に威圧された。

 もし、これ以上核心に近づこうものなら始末されるかもしれない。

 『闇派閥』を潰すために形振り構わなかった『疾風』であればやりかねない。

 

 ちょっと考えれば当然の帰結だ。

 女神アストレアがオラリオに帰ってきているなんて情報はあっという間に都市内に知れ渡るだろう。

 そしてそれを良く思わない連中もいるだろう。

 密かに『闇派閥』に通じていたファミリアや商会といった集団や『アストレア・ファミリア』に恨みを持つ連中が力を蓄えている今の内にと女神アストレアの天界送還に動き出すかもしれない。

 先日のギルドでのあの対応はそうならないための措置か。

 ならギルドに話は通っているとみていい。

 それに彼の話通りなら『ロキ・ファミリア』も一枚噛んでいる可能性がある。

 

「それは、あなたが知らなくていい事です。あなたの心にだけ留めておいてください」

 

「そ、そうか。失礼した」

 

 これはディオニュソス様にもしばらく言えないな。

 

 そして『疾風』の眼が『さっさと後を追え』と急かしているような気がするので私は走った。

 

 レベル差が二つもあるだけに、追いつくのに時間は大してかからなかった。

 

 追いついたが、何と声をかけようかで戸惑った。

 

 とりあえず勝手にすっぽかした事への謝罪だろう。

 

「何か用……あれ、シャリアさん?」

 

「あ……ああ、おはよう」

 

 私が先に声を掛ける筈だったのに、これは完全な不意打ちだ。

 

「えっと……その、だな……」

 

「じゃあ行きましょうか」

 

 彼はそれだけ言ってまたスタスタと歩いていく。

 

 ――――俺に出来るのって『態度と認識を変えない』くらいなんですよね。

 

 さっきの彼の言葉を思い出す。

 

 全く、駆け出しに気を遣わせてしまったとは。

 

「先日はすまなかった。こちらで言い出した事なのに勝手にすっぽかした事を謝罪させて欲しい」

 

 これはケジメだ。

 なあなあで済ませるつもりはない。

 

「あ、頭上げてください。気にしてませんから」

 

「しかしだな……」

 

「ン~、なら俺の事を呼ぶときは、『おい』とか『お前』じゃあなくて『ジョジョ』って呼んでくれると嬉しいです。嫌ならジョシュアでもジョースターでもいいですけど」

 

 そういえば彼の事を名前で呼んだ記憶が無かった。

 ジョシュア・ジョースターを縮めて『ジョジョ』か。

 確かに、こっちの方が呼びやすいがいきなり愛称で呼ぶのはハードルが高い。

 彼も私の事は『シャリアさん』呼びだ。

 

「なら、ジョシュア……でいいだろうか。残り僅かだろうが、改めて私とパーティを組んでくれないか?」

 

「こちらこそ、改めてよろしくお願いします」

 

 握手ゥゥーーーーーッ。

 

 優しく笑った彼に釣られて私も思わず微笑んだ。

 

 『ロキ・ファミリア』は後二日もすれば遠征を終えて戻ってくるだろうから残りの期間は本当に短い。

 

 だからこそ、私はこの短い期間に私が今までしようとしなかった事を全力でやればいい。

 

「横着して腕だけで剣を振ろうとするな!」

 

「は、はい!」

 

 時には剣の技術の至らぬ点を指摘した。

 

「上層だから、慣れてきたから、と気を抜くな。一瞬の油断が死を招くと思え」

 

「はい」

 

 時にはダンジョンでの心構えを説いた。

 

「前から気になってたんだが、身体が光ったりシャボン玉が出たりするあれは何なんだ?」

 

「じゃあ教える代わりに俺に魔法を教えてください」

 

「……技術なら教えてやれるが、魔法そのものは自力で会得しないと無理だからな」

 

 時には雑談に花を咲かせる事もあった。

 

 向き合ってみるだけでこうも変わるものなのか。

 歩み寄ってみるだけでこうも変わるものなのか。

 

 この時間が終わってしまうのが少し惜しくなってしまうくらいには楽しむ事が出来た。

 

 

 

 

「お疲れ様でした」

 

「ああ……」

 

 最終日、付き合ってくれた礼にと夕食に誘われた。

 おそらく本当に礼がしたいだけで他意は無いだろう。

 まだ色を知るような年頃では無いし、そういう()()があれば態度で気づく。

 

 連れて来られたのは『豊穣の女主人』。

 他の客から奇異の目で見られたが以前ほど気にはならなかった。

 

 以前来た時も思ったが、酒も料理もいいものが揃っている。

 また今度誰かを誘って来るのもいいかもしれない。 

 

 隣では彼がオレンジジュースをちびちびやっている。

 その姿があまりにも年相応過ぎて笑ってしまった。

   

「ご機嫌ですね」

 

「うおっ!?」

 

 突然、『疾風』に声を掛けられた。

 音も無く背後から声を掛けるのはやめて欲しい。

 

「この子がお世話になりました」

 

「いや、世話になったのは私の方だ。それにお前にも、きっかけを貰った」

 

「本当に大した事はしていません。殻を破ったのはあなた自身だ」

 

 彼女はそれだけ言っていそいそと仕事へ戻った。

 

 そうか、私は殻を破る事が出来たのか。

 だが、破るだけが終わりじゃあない、まだその先がある。

 

「少し、団員たちと話し合ってみる事にするよ」

 

 彼に言ったのは自分自身への決意表明のようなものだ。

 

 私が出した私なりの答えを何となく知って欲しかった。

 

「そうですか。ダメだったらウチに来ます?」

 

「フフ、ダメだったら考えておくよ」

 

 彼の申し出は嬉しいが、これ以上迷惑はかけられない。

 それに、ダメだった後の事はダメだった後にでも考えればいい。

 

 自分のマイナスな思考を振り切る勢いで、私はグラスの中身を飲み干した。 

 

 

 

 

 

 

 

「んむぅ?」

 

 はて、ここは何処だろうか?

 ジョシュアと『豊穣の女主人』で飲んで……そこから先の記憶が無い。

 

 頭が痛いし身体の節々も痛い。

 

 何があったかと思い出そうとして、ナニカと目が合った。

 

「……」

 

「!?」

 

 アウラだった。

 何故かアウラが私をかつてない形相で睨んでいる。

 無言なせいでより不気味に見えた。

 いっそ前会った時のように皮肉でも言ってくれた方がマシに思えるレベルだ。

 

 視界がクリアになってきたので周囲を見渡す。

 

 散乱している酒瓶。

 床に突っ伏す団員達。

 そして顔を腫らして気を失っているディオニュソス様。

 

 ここはファミリアの拠点(ホーム)だった。

 

「な、なんだこれは!? 一体何が……」

 

「やっぱり覚えてないんですねフィルヴィス」

 

「覚えていないって何が……」

 

「ベロンベロンに酔った貴女をマフラーの彼がここまで運んできたんですよ」

 

 え? 私、そんなになるまで飲んでたのか? 

 

「その後は『飲み足りない』と言い出してディオニュソス様のワインセラーを荒らして、止めようとしたディオニュソス様を殴り飛ばして、暴れる貴女を眠るまで団員総出で取り押さえたんですよ」

 

 じゃあ床に転がっている団員達は私を取り押さえた結果の産物だと?

 

「……嘘だと言ってくれ」

 

「私がそんなくだらない嘘をつくとでも?」

 

 あ、終わったなこれ。

 話し合う以前の問題になりそうだ。

 

 これじゃあ『白巫女(マイナデス)』じゃあなくて『暴虐と狂乱の巫女(マイナデス)』だな。

 

 真面目に今後の身の振り方を考えた方がいいかもしれない。

 

「す、すまな――――」 

 

「すいませんでした」

 

 私の謝罪に被さる形でのアウラからの謝罪に思わず戸惑った。

 意味が分からない、何で私が謝られてるんだ。

 というかさっきまでと態度が一変してないか?

 

「一番辛かったのは貴女だと分かっていた筈なのに」

 

「ちょっと待ってくれ、一体何のことだ」

 

「貴女が暴れてる最中に色々と吐露していましたよ。酔っぱらっていると本音が出るものですからね」

 

 ここまで言われれば何となく想像出来た。

 話し合おうとは思っていたがよりによってこんな形で知られる事になるとは誰が思うだろうか。

 

 それよりも意外だったのがアウラの態度だった。 

 

「正直、お前には嫌われているのだとばかり思っていた」

 

「別に嫌ってはいません。ただ、何も言ってくれないので、私達が頼りにならないと思われているようでいい気分ではありませんでしたが」

 

「そうか、私は勝手に一人になってたんだな……ハハッ」

 

 思わず笑ってしまった。

 こんなに簡単な事だったのだ。

 辛いのであれば助けを求めればいい。

 ファミリアというものは本来そういうものだというのに。

 

「私は……ここに居てもいいんだな……」

 

 団長としては情けないかもしれない。

 

 でも、今だけだ。

 

 ほんの少しだけみんなの前で涙を流すことを許して欲しい。 

 

 

 




勝ったッ! 二人のエルフ編完!

次回からまたジョジョの日記に戻ります。

ちなみに現在のジョジョの『ステイタス』はこんなカンジです。
需要が無かったら後で消します。

 Lv.1
 力:F337
 耐久:F358
 器用:F396
 敏捷:F373
 魔力:I0

《魔法》

《スキル》
幽波紋(スタンド)
・精神力を消費しスタンド名を口にすることで発動する。
・発動中は精神力を消費し続ける。
・自身の成長とともにスタンドも成長する。
・発動できるスタンドは一度につき一つのみ。他のスタンドを使用する際は使用中のスタンドを引っ込める必要がある。
・スタンドは一部の例外を除いてスタンド使いかその素質のある者以外は不可視。
・スタンドが受けたダメージは本体も受ける(ダメージを受けないタイプのスタンドもある)。
・スタンド使用中は獲得経験値(エクセリア)減少(スタンドによって減少値は変化)。

幻影の血(ファントム・ブラッド)
・逆境時に全アビリティ及び精神力に超高補正。
・戦闘時の相手の強さが自分より強い程効果上昇。
・自身の精神力が尽きるまで効果持続。



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八頁目

いつも感想や誤字報告をありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。


 &月〇日

 

 苦節一か月と少しくらい。

 とうとう担当のティフィさんとラウルさんから6階層挑戦への許可が下りた。

 上層はここから難易度がぐっと上がるらしいし、同時に駆け出しの死亡率も跳ね上がるそうだ。

 実際行ってみた感想だが、何というかウォーシャドウがキモい。

 強いとか恐いとかじゃなくてキモい。

 人型をしているくせに全身真っ黒で、(シャドウ)なんて名前がついてるくせに斬れば血が出る。

 爪(正確には指が刃のようになってる)による攻撃を警戒すればいいと思ってたら思いの外腕が長くてそこそこリーチがある。

 腕を切り落とせばやり易くなるけど、人型をしているせいで人間の腕を切り落としてる気分になって凄く嫌だ。

 しかし、こいつのドロップアイテムである『ウォーシャドウの指刃』は鋭いだけに良い武器の素材になるからという理由で割と高い値がつく。

 せっかく新しい階層に行ったんだから稼げるだけ稼いでおきたい。

 ラウルさんには遠征に行く前と比べて動きが良くなったと褒められた。

 ラウルさんは褒めて伸ばすタイプとみた。

 短い期間とはいえシャリアさんにも面倒見て貰ったし、良くなってるんなら嬉しい。

 

 &月×日

 

 今日も今日とてウォーシャドウを斬る。

 やっぱりキモい。

 ドラクエみたいにモンスターに系統をつけるとしたらこいつは悪魔系かゾンビ系だろ。

 ラウルさんにさっさと7階層行きませんかと尋ねてみたら怒られた。

 7階層はもっとハードだろうし、ウォーシャドウは6階層にしかいないってわけじゃあないからよくよく考えたら7階層に急ぐ意味はないや。

 強さだってこの前のダンジョン・リザードの強化種ほどじゃあないし気をつければ問題ない。

 そういえば7階層にはウォーシャドウと同じく『新米殺し』と呼ばれてるキラーアントがいるそうだ。

 硬い甲殻に仲間を呼ぶ能力と非常に厄介そうな性質をしてる。

 下から迷い込んでくるかもしれんし、注意しておくか。

 

 

 &月+日

 

 今日からとうとう7階層へ。

 一週間もかからなかったし、今までと比べるとスパンが短いようにも思える。

 しかし、駆け出しの多くは7~9階層辺りでしばらく足を取られるそうだ。

 硬い甲殻を持って仲間を呼ぶキラーアントに、毒の鱗粉を撒き散らすパープル・モス、それに今まで戦ってたウォーシャドウが加われば間違いなく今までにない難易度だ。

 ここから先に進めない冒険者も多いとか多くないとか。

 ちなみにキラーアントについてだが、ラウルさんから為になる話を聞いた。

 キラーアントの、半死半生状態になると特殊なフェロモンを出して仲間を呼ぶという習性を利用して、態とキラーアントを半殺しにして寄ってきた仲間を倒す、という狩り方があるそうだ。

 しかし、キラーアントが仲間を呼ぶ量まではコントロール出来ないので、それが原因で死んだケースも多い。

 つまり地道にコツコツが一番だそうだ。

 

 

 &月*日

 

 パープル・モスに混じってなんか青いのがいた。

 綺麗だなと思いながら眺めてたら、ラウルさんが慌てて「あれ、レアモンスターっスよ」と教えてくれて死ぬ気で倒しに行った。

 あの青いのはブルー・パピリオというレアモンスターでパープル・モスと同じく状態異常を引き起こす鱗粉を撒き散らす。

 ただ、『ブルー・パピリオの翅』は非常に美しくて高価なドレスの装飾にも使われる事から高値で取引されるのだ。

 まあ、ドロップしなかったんだけどね。

 『パープル・モスの翅』はドロップしたのに不思議だね。

 レアモンスターなんだからそれくらい確定ドロップにしておくれよ。

 次こそは、次こそは必ず。

 

 

 &月¥日

 

 今日は何とも後味の悪い一日だった。

 名も知らぬ冒険者がキラーアント半殺し狩りを行った結果キラーアントの群れに群がられて死亡。

 それだけならまだそいつの自業自得で済んだけど、そのしわ寄せがこっちに来た。

 仕方なく、ラウルさんと一緒に必死でキラーアントの群れを片付けた。

 死体を食い荒らされた名も知らない冒険者の無事だった所持品はギルドに預けた。

 身元が分かるものがあるかどうかは不明だが、そこは俺が決める事じゃあ無いだろう。

 ポーションの類は割れてダメになってたし、遺留品をネコババするのは縁起が悪い気がするし、顛末を見ちまっただけにそのままにしておくのも気が引けたからだ。

 ティフィさんは複雑そうな顔で遺留品を見ていた。

 ダンジョンで死ねば魔物に喰われるか、ダンジョンそのものにそのまま融けてしまうかのどちらかで、全滅した場合、遺体が残る事はまず無いらしい。

 良い稼ぎにはなったが、なんとも後味の悪いものが残った気分だった。

 明日は我が身と思うとゾッとする。

 

 

 

 /月@日

 

 時折、俺は強くなっているんだろうかと疑問に思う時がある。

 少なくともオラリオに来る前よりスタンドは強力になったし、身体能力も格段に上がったと思う。

 けど、それで強くなったと本当の意味で胸が張れるだろうか。

 ラウルさんに「強くなるってなんなんでしょうか?」と聞いたら困った顔をされた。

 悩んだ末に「強さの『基準』や『在り方』は人それぞれだから『これだ』って答えはだせないっス」と苦笑いしていた。

 そして「ただ、自分が『これだ』ってものを見つけても、それだけに固執しないで欲しいっス」と付け加えた。

 物事には自分が知らない答えがいくつもある。

 視野を広く持つ事を忘れないでいて欲しいということだろうか。

 

 俺が今出せる答えは、『答えを出すにはまだ色々なものが足りない』だった。

 

 

 

 :月%日

 

 最近、クロエ・ロロさん(リオンさんの同僚の猫人)からの視線が恐い。

 なんと形容すればいいのか。

 鼠を狙う猫? 鳥の卵を狙う蛇? 金髪美女を狙うサメ? 

 どっちにしろ捕食者と被食者の関係だった。

 俺、あの人になんかしたっけ?

 少なくともあんまり話した記憶はないんだけどなぁ。

 そもそも俺の肉体年齢はまだ12歳だぞ。

 普通に非合法だぞ。

 まさかそういう趣味の人ですか?

 なんかの間違いで『セト神』のスタンドとか手に入れたらどうなってしまう事やら。

 絶対にそんな事ならないけどな。

 時折スッと背後を取ろうとしたりするのが恐い。

 黒猫(ブラックキャット)なだけに不吉を届けに来たのかな?

 年上は好きだけどあんまりアグレッシブ過ぎるのもちょっとなぁ。

 

 

 :月?日

 

 ロロさんが半ズボン持って「これ履いてみて!」と若干興奮気味の顔で迫ってきた。

 どうやら俺の膝小僧が見えないのが不満らしい。

 あの人ガチのショタコンだったよ

 ほんの少し、ほんの少しだけだけど『キラークイーン』で爆殺するか本気で迷った。

 

 

 :月〇日

 

 とうとう恐れていた事が起きた。

 ロロさんにケツを触られた。

 訴えたら勝てそう。 

 思わず某相手を眼鏡好きにさせるヒロインの如く『変態だーー!!』と叫んでしまった。

 そういえばオラリオに裁判所ってあったかな?

 ロリコンで捕まる男はよく聞くのにショタコンで捕まる女はあんまり聞かない不思議。

 男女平等とは何だったのか。

 そしてロロさんは俺の悲鳴を聞いて駆け付けたリオンさんに木刀(アルヴス・ルミナって名前らしい。帰刃(レスレクシオン)出来そう)でブッ叩かれて無事粛清。

 「お尻がちょっと硬かった」と言い残して気絶――――『再起可能』。

 

 黙っていればクールビューティなだけに色々と残念な人だった。

 

 

 =月◆日

 

 そういえばラウルさんっていつまでついててくれるんだろうか?

 ふと気になって聞いてみたら、特に具体的な期間とかは言われていないと返された。

 遠征の時のような用事があるときはそっちを優先しているとはいえ、冒険者になってからもう半年以上経ってるけど、こういう時ってどうすればいいんだ?

 バイトだと新人教育とかは基本的な作業工程とか習ったら大抵終わりだけど、俺がやっているのはバイトじゃあ無くて冒険者。

 仮に駆け出しを抜け出すまでと期間を定めたとしても、何をもって駆け出しを抜け出したと認定されるのかが分からない。

 レベル2になれば駆け出しでは無くなるのか、それとも一定年数冒険者を続ければ駆け出しでは無くなるのか。

 とりあえずティフィさんに聞いてみたら、解釈は人によるけど、大抵はレベル1は駆け出し扱いされるそうだ。

 つまりまだ9階層でレベル上げしてる俺は駆け出しか。

 ううむ、まだまだ先は長そうだ。

 しばらくは好意に甘えさせて貰おう。

 最速は『剣姫』の一年だそうだが、俺は一体いつになったらレベルが上がるんだろう。

 

 

 =月□日

 

 まさかシルバーバックと戦う事になるとは思わなかった。

 本当なら11階層から出てくる筈の魔物なのに。

 下から上がってきたんだろうか。

 圧倒的な体格差に恐怖はあったけど、今の自分が何処まで出来るのか試したくもあった。

 ラウルさんはそんな俺の心を見透かしたように「やってみるっスか?」と言った。

 俺は迷わずシルバーバックの前に出た。

 

 結果は辛勝。

 的は大きくてもその分タフで苦戦させられた。

 『山吹色の(サンライトイエロー)波紋疾走(オーバードライブ)』を何発も打ち込んだが中々倒れない。

 最後の最後で回避が間に合わなくて『キングクリムゾン』で時を飛ばした。

 現時点で飛ばせる時間はせいぜい4秒(因みにボスは十数秒)が限度だけど、シルバーバックの攻撃を避けて態勢を立て直すには十分な時間だった。

 最終的には胸を魔石ごとブッ貫いて倒すことは出来たものの、下層の魔物のヤバさを思い知った。

 そしてやっぱりというかなんというか、シルバーバックでは偉業認定はされなかったようでアビリティは上がってもランクアップにはならなかった。

 お姉さん曰く「試練は自ずと訪れるべき者のところへ訪れる」だそうだ。

 つまり自分で探すようなものじゃあないと、そういう事なんだろうか。

 偉業って割とフワッフワしてる。

 

 

 ―月―日

 

 各アビリティの伸びがだんだん緩やかになっているきがする。

 9階層じゃあこれくらいが限界か?

 前のシルバーバックのように下層からモンスターが迷い込むなんて偶然を狙う訳にもいかない。

 

 力:D563

 耐久:D542

 器用:C678

 敏捷:C633

 魔力:I0

 

 今の俺の『ステイタス』を考慮すると微妙だ。

 ティフィさんやラウルさんもちょっと微妙な所だと言った。

 10階層以降は魔力を除く各アビリティがC以上、出来ればBくらいは欲しい所なんだけどな。

 この数値だとギリギリ行けるとも取れるし、ギリギリ行けないとも取れる。

 お姉さんは神妙な顔でしばらく様子を見るようにと俺に釘を刺してきた。

 ギルド職員が皆、合言葉のように口にする『冒険者は冒険してはいけない』という言葉に則るならまだ行くべきじゃあ無いのかもしれないけど、どうしたものか。

 

 

 ―月[日

 

 ラウルさんに遠征に来ないかと誘われた。

 遠征と言っても階層記録更新のための大規模なものじゃあなくてレベル1や2のような低レベルの冒険者達を中心に強化するための小規模のものになるそうだ。

 シルバーバックをソロ討伐したのをロキさんが聞いて「じゃあどうや?」って話になったらしい。

 別に強要はしないそうだ。

 正直行ってみたいとは思う。

 ただ、お姉さんは迷っているようだ。

 小規模の遠征とはいえレベル2も参加するため、場合によっては中層にも行く可能性も高いからだ。

 そうなると装備も色々と見直す必要が出てくる。

 俺の装備は『火精霊の護布(サラマンダーウール)』を使ったものではないのでヘルハウンドなんかとかち合ったらスタンドでガードしない限り普通に燃やされる。

 波紋を通しやすい素材となると必然的に火に弱い、スト様の服やマフラーも手榴弾で吹っ飛んだしね。

 

 

 ―月*日

 

 お姉さんにプレゼントを貰うまで今日が俺の誕生日だった事を忘れてた。

 精神年齢で換算したらもうプレゼントをねだるような年齢でも無いし。

 でも『誕生日おめでとう』の言葉が有るか無いかでも違うと思う。

 プレゼントは『火精霊の護布(サラマンダーウール)』で縫われた服だった。

 おまけに俺のマフラーにも『火精霊の護布(サラマンダーウール)』を編み込んでくれた。

 『アストレア・ファミリア』が健在だったころはよく編み物をやってたそうで、本気出したと言っていた。

 

 やばい、泣きそう。

 というかもう泣く。

 

 




ダンメモのエピソード0がすっごく気になる。
PVめっちゃ良かった。


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九頁目

恥パが映像化してくれると嬉しい
映画でもOVAでもいいから



 -月~日

 

 遠征に参加させて貰うために直接挨拶しにいった。

 よそ者なだけに奇異の目で見られたが、これは仕方ないだろう。

 団長の『勇者(ブレイバー)』ことディムナさんは背丈こそ俺と同じくらいだけど、このオラリオでNo.2の実力者だし、大手のファミリアをまとめ上げる傑物だ。

 無論敬意を持って接した。

 とりあえずその場にいた団員達一人一人に挨拶回りをした。

 友好的に接する人、興味無さそうに生返事をする人、よそ者だからと警戒する人、無関心で無視する人と反応は様々だった。

 

 何故か同い年くらいのエルフの少女に因縁をつけられた。

 意味が分からない。

 エルフが気難しい一族とはいえ、初対面でいきなり因縁をつけられるほど俺は敵意を持たれる体質だっただろうか。

 何かブロマイド屋で会ったとかなんとか。

 日記の前の方見返したらやかましいエルフに絡まれたって書いてあってちょっと思い出した。

 サングラスとマスクしてて人相は分からなかったし、俺が買ったやつを譲ってくれとかだったと思うし、俺は別に悪くないと思うんだ。

 とはいえ『ジェイル・ハウス・ロック』で混乱させたのはちょっとやり過ぎだったかなって思ったり。

 和解の印としてもう使わないからと言って『剣姫』のブロマイドを渡そうとしたら「何に使ったっていうんですか!?」と再度激怒。

 顔を覚える以外に何に使うんですかねって返したら顔真っ赤にしてた。

 これに関しては俺は何も悪くないと思うんだ。

 第一DTで死んだからといって、13歳の子どもをそんな目で見る程節操無しじゃあ無いんだよ。

 

 そういえば結局ブロマイド渡してなかったな。

 

 遠征に関しては2~3日を予定していて、自分用の食料だけ用意してくれればいいそうだ。

 こういう時『エニグマ』って便利。

 

 リオンさんに報告しに行ったら17階層までに出現するモンスターの種類や行動パターン、注意点、弱点などが細かく書かれた紙束を渡された。

 遠征の日までに覚えとけって事だよな。

 頭がパンクしないか心配。

 

 

 -月;日

 

 遠征当日、リオンさんにココ・ジャンボを預けてから向かった。

 別れ際にリオンさんからバスケットを貰った。

 中には謎の物体Xが入っていた。

 これは何かの罰ゲームでしょうか?

 後で謎の物体Xは食材だった頃の姿に戻しておいた。

 

 遠征は参加者が一塊になって行動するかと思ったが、いくつかの班に分かれるようだった。

 それぞれの班は4~5名で、それをレベル3以上の冒険者が引率するという形になっている。

 良かった点は引率がラウルさんだった事。

 悪かった点は耳年魔エルフが同じ班だった事。

 あいつの顔を見た時、思わず『マジか』と思った。

 

 俺以外の班員は 

 

 レフィーヤ・ウィリディス(耳年魔エルフ) レベル2

 リーネ・アルシェ(三つ編みツインテの眼鏡少女)  レベル1

 リチャード・ファランス(鎧を着こんだ茶髪の男性で槍と盾持ち) レベル1

 

 内二人は同じレベル1とはいえ二人とも一年以上冒険者をやっていて俺よりキャリアは上だ。

 あのエルフがレベル2なのはちょっとアレだが、それはまぁいいか。

 妬んでも俺のレベルが上がるわけじゃあ無い。

 

 アルシェさんは「頑張りましょうね」と友好的に接してくれてリチャードさんは「足を引っ張るなよ」と俺をあまり戦力と思っていないようだった。

 ウィリディスに関しては俺とチームを組むのがいかにも不服だと言わんばかりの態度で言葉を交わす以前の問題だった。

 

 ラウルさんフォロープリーズ。

 

 ダンジョンは9階層までは特に問題なく踏破。

 問題は無かったが10階層からはまた出現モンスターが一新するし、ダンジョンギミックも追加されるので10階層の入れ口付近でしばらく休息を取る。

 勿論『エアロスミス』による周囲の警戒は忘れない。

 一級冒険者なら30階層くらいは日帰りで行けるとか行けないとか。

 とんでもねえな。

 

 ダンジョン内は太陽の光が届かないせいで時間の経過がよく分からないな。

 休憩中に日記書いてるけど、現在が一日の終わりなのか、まだ余裕があるのか。

 ラウルさんは「体内時計でなんとかするっス」と言っていた。

 んな無茶な。

 

 9階層までの道のりである程度3名の戦闘スタイルは幾らか分かった。

 

 リチャードさんは見たまんま盾で攻撃を防いで槍で敵を突き刺す重装歩兵タイプ。

 盾や鎧が重いせいなのか少し動きが鈍い、それを補うためか長めの槍を使っている。将来は前衛(タンク)志望だと言っていた。

 勇敢な人だ。

 初対面での当りは強かったけど、悪い人じゃあなくて安心。

 

 アルシェさんはメイスで敵を撲殺する打撃タイプ。

 かと思いきやそれくらいしか攻撃手段が無いからそうしているだけのように見られる。本人も後方支援の方が自分に合ってるんじゃあないかと言っていた。

 ソロアタックならともかくパーティアタックなら道具とかを使った後方支援も大事よ。 

 

 ウィリディスは魔法を使うガッチガチの後方支援タイプ。

 殲滅力ならシャリアさんの方が上だが単純な威力ならウィリディスの方が上のように思える、でも後ろからいきなり光の矢が飛んでくるから心臓に悪い。

 それと大きなお世話かもしれないけど、ターン制じゃあ無いんだから詠唱が長いのに詠唱の際に足を止めるのは危ないと思う。

 

 そういえば10階層から天然武器(ネイチャー・ウェポン)を使うモンスターが出るそうだ。

 オークやシルバーバックのようなパワーのあるモンスターが持ってたらさぞメンドクセーだろうな。

 

 

 

 -月#日

 

 遠征  終了

 

 到達階層  12階層

 

 

 

 

 

 -月¥日

 

 昨日は疲労と手と腕の痛みで全然書けなかったから昨日の分まで書く事にする。

 10階層と11階層は何も問題なく踏破は出来た。

 霧で視界が悪くなると波紋の探知が必須になるし、シルバーバックのパワーは相変わらず侮れないし、新モンスターのハードアーマードとかいうアルマジロモンスターは丸まられるとキラーアントよりも頑丈で厄介極まりない。

 『まるくなる』からの『ころがる』はやめろ。

 

 それで先行してた前髪ぱっつんの人のチームが負傷者連れて帰ってきたと思ったら、やってきたのは12階層のレアモンスターにしてボスモンスターのインファント・ドラゴンだった。

 レベル1の冒険者じゃあ束になっても勝てず、レベル2の冒険者数人がパーティを組んでやっと討伐出来るレベル。

 しかもインファント・ドラゴンは赤い筈なのに、こいつは青い。

 まさか強化種か?

 であればレベル3でもキツいかもしれない。

 突然過ぎて逃げるという選択肢は無かった。

 

 ウィリディスが魔法を撃つから時間を稼いでくれというからラウルさんをウィリディスの護衛に付けて俺達レベル1が3人、時間稼ぎをする事となった。

 レベル2の魔法でどうにかなるもんなんかと思ったが、出来るっていうんならやって貰おう。

 無理ならパワータイプのスタンドでどうにかすればいい。

 

 竜種だから当然だろうけど、思った以上にデカいし、思った以上に硬い。

 圧倒的破壊力を前にリチャードさんもアルシェさんも歯が立たずにやられていく。

 

 俺はここが踏ん張りどころだと全身に気合を入れた。

 勿論恐怖はあった、けれど、俺がここでやられれば前線が完全に瓦解する。

 最悪スタンドを使ってでも押しとどめるとインファント・ドラゴンに立ち向かった。

 『幻影の血(ファントム・ブラッド)』が発動しているからだろうか、インファント・ドラゴンに俺の一撃が重く入る。

 連続で最強の波紋『山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)』を叩き込んだ。

 割と無我夢中だったから同じ事やって見せてと言われたら断ると思う。

 

 途中でリチャードさんがインファント・ドラゴンの攻撃を受けてくれたのもあってか攻撃のみに集中する事が出来た。

 それにしても、まさか目を覚ましたアルシェさんがインファント・ドラゴンの目に落ちてた剣を突き刺すとは思わなかったな。

 

 そしてトドメはウィリディスの魔法。

 強力な吹雪でインファント・ドラゴンはあっという間に氷像と化した。

 成程、発動までに時間がかかるわけだ。

 俺が全力で『ホワイト・アルバム』を使ってもあのレベルはまだ無理だろう。

 

 リチャードさんはインファント・ドラゴンの攻撃を無理に受けた事で腕の骨が折れた。

 アルシェさんはインファント・ドラゴンの目を突き刺した際に反撃を喰らって気絶。

 ウィリディスは限界ギリギリまで魔法を使った事によるマインドゼロで気絶。

 俺はアドレナリンが出てたせいで気が付かなかったが、手の甲が裂けて血が流れてたし、両腕にも罅が入ってるっぽかった。

 

 それで俺達ラウルチームは遠征が続行不可能となって12階層から引き返した。

 インファント・ドラゴンの氷像は破壊する余力が無いからと少々勿体ない気もするが置いてった。

 今思えば『エニグマ』で回収しても良かったかもしれない、けれどあの大きさの氷像を回収できるんだろうか(自動車一台くらいなら紙に出来るみたいだけど)。

 

 10階層で休息を取った後は全力で外へ出た。

 因みに休息の最中に『ザ・キュアー』で疲労を軽く吸い取ったからか回復は早く終わった。

 

 宿に帰って俺も『ザ・キュアー』で簡単に治療した後、そういえばココ・ジャンボをリオンさんに預けたままだったと思い出してそのままダウン。

 

 ここまでが昨日までの出来事。

 

 ここからが今日の出来事。

 

 リオンさんからココ・ジャンボを引き取った後、お姉さんに今回の遠征であった事を拠点で話した。

 世にも珍しいインファント・ドラゴンの強化種とカチ合ったのには勿論驚いていたし心配された。

 まあ、あのまま殴り続けて倒せるとは限らなかったしね。

 あの絶対氷結魔法(エターナル・フォース・ブリザード)が無かったらスタンド使っても一苦労の強さだったであろうし。 

 

 こりゃ『ステイタス』も結構上がったんじゃね? と期待して更新をして貰ったらランクアップ可能になってた。

 

 マジか。

 

 因みにその時の数値がこれ。

 

  力:A803

 耐久:B749

 器用:A893

 敏捷:A877

 魔力:I0

 

 めっちゃんこ上がった。

 おまけにランクアップ。

 そういえば最短記録が『剣姫』の一年だけど、これって記録更新か?

 

 でもここまで来たら魔力以外はオールカンストさせてからランクアップさせたいから保留にして貰った。

 なんでもランクアップしたら基本アビリティは全部0に戻るが、前のレベル時の基本アビリティは隠しステイタスとしてちゃんと残ってるらしい。

 ならカンストさせた方がお得。

 お姉さんは出来れば神会(デナトゥス)とやらに合わせてランクアップして欲しいと言っていた。

 善処はします。

 

 遠征の件の挨拶でハムの詰め合わせを持って『ロキ・ファミリア』に行ったらリチャードさんとアルシェさん、そしてウィリディスがランクアップしたと聞いて祝った。

 ロキさんに「ジョジョはランクアップしてへんの?」と聞かれたから「カンストしたいからまだしてない」と答えた。

 

 ウィリディスとも少し話した。

 向こうも冷静になってちょっと言い過ぎたと反省していた。

 そして『剣姫』の凄さをこれでもかというくらい聞かされた。 

 聞かされて、そういえば俺はリオンさんの戦闘面での凄さがイマイチ分かっていないと気が付いた。

 魔法を使っているのを見た事無いし、これだっていう必殺技も見た事無い。

 動きが速いのならその気になれば影分身やそれを応用した必殺技を取得してるかもしれない。

 今度それとなく聞いてみるか。

 

 和解の印にと今度こそ『剣姫』のブロマイドを渡した。

 レズなだけで悪いやつでは無かったようだ。

 同性愛については主義主張は当人の勝手なのでとやかく言うつもりは無いけど、理解も共感も出来ない。

 将来的にスカーレット夫人みたいにならないかちょっと心配である。

 

 -月=日

 

 俺がカンストするまでランクアップしない旨をリオンさんに言ったら「変わっている」と言われた。

 レベル1の冒険者達は割と焦ってランクアップしたがる人が多くて、俺みたいにのんびりカンストまで上げようとするのはマイノリティだと言っていた。

 別にリオンさんは一般論を言っただけで俺を責めてるわけでも急かしてるわけでも無いんだろうけど。

 ただ、記録更新で他の神々や冒険者から色んな意味で目を付けられるのを覚悟しておくようにと真剣な目で言われた。

 

 神に目をつけられてとんでもない事になった例といえば女神ヘラに狂わされて自分の子どもを殺したヘラクレス、女神イシュタルをフったら神獣グガランナを差し向けられた挙句、退治したら唯一の友人(エルキドゥ)を喪ったギルガメッシュ王、後人間じゃあ無いけど女神アテナに憎まれて化け物にされた上、女神アテナが協力したペルセウスに討伐されたメドゥーサが思い浮かんだ。

 

 全員碌な目にあってねェな。

 それに確かオラリオに『イシュタル・ファミリア』はあった気がする。

 

 そうだ、ランクアップするのを5ヶ月くらいズラせばその他大勢に紛れるんじゃないかな。

  

 お姉さんは今後の動き方を色々と考えている様子。

 気にしなくていいと言われたけど気になるに決まってるでしょうが。

 そりゃ経営とか運営に関する詳しい知識があんまり無いからそっち方面で役に立てる事は基本無さそうだろうけどさ。

 

 一人でダンジョンに潜って9階層で戦ってみたけど、ランクアップ可能になったからといって特に何かが変わったように思えなかった。

 実際にランクアップしてみたら何かが変わるんだろうか。

 

 とりあえず、さっさとカンストさせるか。

 

 

 




ランクアップ保留にした場合って記録とかどうなるんだろ


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十頁目

リアルで色々あって投稿遅れました
本当にすいません


 ρ月〇日

 

 も~無理、俺のステータスはピクチリも動かない。

 手伝ってくれたラウルさんには悪いがこれ以上俺のステは上がらない。

 唯一器用だけがSに届いたけどカンストには至らず残念だ。

 もう少し下の方まで潜れば上がるかもしれないけど、レベル1のままでこの先に行くのは不安極まりない。

 

 お姉さんにもSが一つあるだけで十分凄いからもう諦めろと怒られた。

 悲しい。

 

 まだレベル1なのにこんなにアビリティの成長が停滞するもんだったのか。

 もしかしてさっさとランクアップする原因ってランクアップが可能になったらもうアビリティに変動がないからなのか?

 それが分かっただけでも収穫だと思えば少しは慰めに……ならないな。

 間接的に『お前は英雄の器じゃあない』とか言われてる気分。

 別に英雄志望じゃあないけどさ、憧れるくらいいいじゃん。

 

 とはいえランクアップするにしてもどうしたものか。

 

 『剣姫』の記録を塗り替えてしまったわけだが、このままランクアップしてロキさんに臍を曲げられたら敵わない。

 ラウルさんは「流石にそれは……無いとも言い切れないっスね。アイズさんはお気に入りっスし」と苦笑いしていた。

 

 しかしお姉さんは「ロキは臍は曲げても約束は守る方ですから問題ありません」と暗に気にするなという意味を込めて言っていた。

 お姉さんの方が付き合いは長そうだし、仮にそうなったらなったでその時に対処法を考えればいいか。

 

 そうしてランクアップしようとしたわけだが、お姉さんに発展アビリティを選べと言われた。

 発展アビリティはランクアップ時に会得できるボーナスアビリティみたいなもんで本人が何をどれだけ頑張ったかがによって発現するアビリティが変わるらしい。

 とはいえランクアップ時に必ず発現するわけでも無いから本当にボーナスだ。

 昔、ボーナスが支払われないとか問題になってたな。

 

 特に『耐異常』は発現してたらとりあえず取っとけくらい冒険では必須アビリティだそうだが、今回は発現しなかった。

 

 俺に発現した発展アビリティは『狩人』、『拳打』、『治癒』の3つ。

 この中のどれか一つしか選べないのだ。

 

 このケチンボがァ――――ッ!!

 

 この中だと『狩人』が一番レアでこれから強くなるのに手っ取り早く、お姉さんとリオンさんもこっちを勧めていた。

 一度でも勝利したモンスターと戦闘する際にステイタスが上昇する効果があるそうだ。

 

 ぶっちゃけ、『狩人』一択じゃねえの?

 でも、拳での攻撃で補正がかかる『拳打』も捨てがたいような気がしてきた。

 『治癒』は波紋での治療効果が上がりそうだな。

 もう全部取らせてくれよ。

 

 そういえばスタンドとの相性はどうなんだろう。

 『拳打』はスタンドの攻撃でも補正が乗るかどうかが微妙だ。

 『治癒』は『ゴールド・エクスペリエンス』みたいな回復が出来るスタンドと相性が良さそうかもしれない。

 

 丸一日考えた末に『狩人』に決定した。

 これが一番広義的に補正がかかるだろうし、安牌だと思う。

 

 『逃走』とか発現したら『耐異常』の次に取ろう。

 

 明日にでもギルドに報告しに行こうか。

 

 

 ρ月×日

 

 ランクアップの事をティフィさんに報告したらめっちゃ驚いていた。

 正直、俺も驚いてるよ。

 

 ランクアップして装い新たになったザ・ニュージョジョがどんなもんなのか試すべく、軽くダンジョンに潜った。

 ラウルさんは用事があって来れなかったのは残念だ。どんなもんなのか見て欲しかったのに。

 違和感というか認識のズレというか、一致していないのが気味悪い。

 『自分の身体はこんなに動けたっけ?』と思わず口に出してしまう程に俺の身体能力は上がっていた。

 レベルが一つ違うだけでこうも違うものなのか。

 ネイルと同化したピッコロさんの気持ちが分かった気がする。

 明日にでもリオンさんにこのズレの解消方法を聞いてみよう。

 

 ダンジョンでモンスターを倒してたらシャリアさんが3人くらい連れてるのを見かけたので声を掛けてみた。

 団長業務に復帰したとは聞いていたけど、今は新人の教育をしているらしい。

 雑談もそこそこに邪魔になるといけないからと俺はその場を離れた。

 調子を見るだけだったし、戦果はいつもより少ない。

 

 ダンジョンの帰りの途中でにリチャードさん、アルシェさん、ウィリディスの元ラウルチームにバッタリ遭ってリチャードさんがレベルアップ記念に盾を新調して素寒貧になったとかウィリディスが『剣姫』の活躍を語ったりとか、アルシェさんは「どんな二つ名がつくのか楽しみですね」とか言ってた。

 

 何でもレベル2になった冒険者は定期的に行われる神々の集会『神会(デナトゥス)』で二つ名が与えられるらしい。

 一体どんななんだろうか。きっと神聖な儀式で決まるのかもしれないな。

 でもたまに変な二つ名あるよな。

 ラウルさんの『超凡夫(ハイ・ノービス)』とか褒めてんのか馬鹿にしてんのか分からないし。

 変な二つ名ついたら嫌だな。

 グリニデみたいに自分でつけたらダメ?

 

 とりあえずまともな二つ名がつく事を祈りながら眠りにつこう。

 

 

 ρ月☆日

 

 神会(デナトゥス)の当日、お姉さんはまるで戦地に赴く女騎士のような顔つきで出て行った。

 神々が一堂に集まるんだし駆け引きとか情報収集とか色々あるんだろうな。

 今日はリオンさんの仕事が休みだったから、午前中はひたすら特訓だった。

 ズレや違和感が無くなりランクアップした肉体が馴染むまで特訓あるのみというのがリオンさんの言葉だ。

 おかげでズレは無くなった。

 相変わらず容赦が無い人だった。

 

 午後は連れて行きたいところがあるからダンジョンの5階層辺りで待ってて欲しいと言われたから適当にブラつきながら待ってたらリオンさんが深緑色のローブで顔を隠してやってきた。

 いつもと服装が違うせいで一瞬誰か分からなかった。

 これがこの人の戦闘服なのか。

 ローブで隠してるけどシャリアさんと比べると露出度が結構高い。 

 

 連れて行きたいところがあるのに何故ダンジョンなのかと聞いたら俺を18階層に連れて行きたいらしい。

 18階層はダンジョン内で唯一モンスターがいない安全地帯だと聞いた事はあるし、それを利用して冒険者達が町を造ったって話も聞いた事がある(ただし物価がすごく高い)。

 何故18階層なのかと聞けば行けば分かるの一点張りでそれ以上答えてくれなかった。

 

 道中のモンスターはほぼリオンさんが倒してくれた。

 相変わらず強い。中層のモンスターがまるで相手になってない。

 途中でリオンさんが喉を潰したミノタウロスを『倒してみなさい』と言って戦ったりしたのはなんか一部の切り裂きジャック戦みたいでテンション上がった。

 ミノタウロスは強かった。

 喉が潰れたから咆哮は無かったけど、圧倒的なまでの力はやっかいだ。

 隙をついて脳天かち割ってようやく勝てたよ。

 

 ゴライアスはいなくて助かった。

 適正レベルは4か5だった気がするし、実際に戦う事になったら面倒だ。

 いつか戦う事になるもしれないが、それは今じゃあない。

 

 リオンさんが俺を連れて行きたかったのは森の奥にある先代達の墓だった。

 墓といっても墓石碑は無く、その代わりに持ち主のいなくなった武器が寂しそうに突き刺さっていた。

 なんでも先代達の好きだった場所らしい。リオンさんが近くに咲いてた花を墓に添えながら教えてくれた。

 リオンさんは一人で何度もここに墓参りに来ていたのだと思うと、何とも言えない気分になった。

 『アンダー・ワールド』で掘り起こせばもしかしたら先代達が楽しく語らっている光景を見る事が出来たかもしれないな。

 

 リオンさんは過去にあった色んな出来事をまるで独り言でも言っているかのように聞かせてくれた。

 その上でやはり自分は『アストレア・ファミリア』が好きなんだとも。

 

 人は生きていれば誰だって間違う事がある。

 それにどう向き合って生きていくのが大事なんだと思う。

 開き直って間違いを正当化し出したらそれは『吐き気を催す邪悪』だ。

 

 俺も『ゴールド・エクスペリエンス』で花を添えさせて貰った。

 墓参りにはそんなに詳しくないからバランスのいい配色で咲かせたけど、大丈夫だっただろうか。

 

 そしてリオンさんは先代が壊滅した原因である『厄災(ジャガーノート)』について教えてくれた。

 

 動きは素早く、紙装甲だが魔法が効かず、一撃一撃が必殺に値する。そしてそれにはモンスターの弱点である魔石が存在せず、どうやって出現するかどうかすら詳しく分かっていない。

 

 当時の『厄災(ジャガーノート)』との戦いはアリーゼさんが命と引き換えに魔法障壁を剥がしてリオンさんが倒したというのが結末だ。

 

 果たしてそいつにスタンドは効くのか?

 効けば楽だけど楽観視はしない方が良い。

 前例がないものを楽観視してはいけない。

 

 動きが速いなら初動が遅い『ザ・ハンド』はやめた方が良い。

 『クリーム』も狙いがつけられないからパス。

 『クラフト・ワーク』は当てられれば効果的かもしれんがどっちにしろローリスクでは済まない。

 

 ならば、絶対防御すらもぶち破るあのスタンドが必要になるかもしれないな。

 

 となれば早く黄金長方形を見つけられるようにならないと。

 

 その後は当時の先代達の事をよく教えてくれた。

 アリーゼさんが自分を勧誘してくれたことだったり、輝夜さんは頭が固くてよく意見がぶつかったり、ライラさんにはトランプとイカサマを教わったりと本当に色々だ。

 先代達との武勇伝を語っている時のリオンさんは本当に楽しそうだった。

 俺が止めなければ永遠に話し続けていられる程に。

 

 今日一日のおかげでリュー・リオンさんの事をまた一つ知る事が出来て、先代達の事を教えて貰えて、より『アストレア・ファミリア』をかつての――――否、それ以上のファミリアにしたいという気が強まった。

 

 帰り際に赤い髪の美女が手を振ってた。

 リオンさんはノーリアクションだし、幽霊かな?

 まあ、精霊がいるんだし幽霊くらいいるよね?

 精霊なんて見たことは無いけど。

 

 

 

 

 なんか今日は目が冴えて寝れない。

 

 

 ρ月□日

 

 俺の二つ名が『期待の新星(シューティング☆スター)』に決まった。

 なんで・じゃなくて☆なんだ。

 ☆の部分はどうやって発音するつもりだ。

 ちなみにリチャードさんは『装甲兵(ガードナー)』でアルシェさんが『眼鏡姫(シークレット・プリンセス)』と名付けられた。

 ウィリディスだけ新しい二つ名じゃあ無くて『千の妖精(サウザンド・エルフ)』のまま。

 お姉さんはまだマシな方だったと言ってた。

 神々のネーミングセンスって中学二年生(世界一バカな生き物)と同レベルだったりするのか?

 

 道行く冒険者達から『期待の新星(シューティング☆スター)』って呼ばれるのが恥ずかしい。

 いつか慣れるのを願う。

 

 後、レベル2に上がってラウルさんが俺の教育係から外れる事になった。

 駆け出し卒業の意味を込めての事だろう。

 ラウルさんには本当に世話になった。

 いつかこういう日が来るだろうとは思っていたけど、実際に来たら寂しいものだ。

 別に今生の別れになるわけじゃあ無いと言われたけど寂しいものは寂しい。

 だが、甘え続けるわけにはいかないのもまた事実。

 いつか一人立ちせんとなぁ。

 そしてそのいつかは今さ。

 

 新しい仲間欲しいな、一人で潜ってると寂しいというか孤独というか、誰かと一緒に潜って今日得た成果を分かち合いたいんだよな。

 即戦力だったりしたら嬉しいけど、別に即戦力じゃあ無くてもいいから。

 伸びしろがあれば文句ないから誰か入団して。

 

 

 ρ月□日

 

 拠点を移すことになった。

 元々あった『アストレア・ファミリア』の拠点である『星屑の庭』に引っ越すのだ。

 引っ越すと言っても安い宿屋を転々としていて荷物らしい荷物はほとんどココ・ジャンボの中にあるから楽なもんだ。

 嬉しかったのが、ギルドや近隣住民が管理していてくれたお陰で『星屑の庭』にそのまま入れる事だ。

 それでも大掃除はしたけど。

 『クレイジー・ダイヤモンド』でちょっと老朽化していた部分を直したり、『スター・プラチナ』の精密な動作で塵一つ残さず掃き掃除したりとスタンドを使う特訓にもなった。

 ランクアップのお陰で動作性能も大分上がっていて成長を実感できる。

 

 『星屑の庭』は十数人が住んでただけあってそれなりに広い。

 二人と一匹じゃあ広すぎるくらいだ。

 

 お姉さんは『ゼロに戻ってきた』と感慨深そうに壁や床を撫でていた。

 ここへの思い入れは一入だろう。

 

 お姉さんと出会ってからここまで来ただなんて昔の俺じゃあ想像も出来てなかっただろうな。

 だが、ここから先は俺一人だけが頑張ってもダメだっていうのは身に沁みて分かっている。

 

 とりあえずティフィさんにでも新人がいないかとか聞きに行くとしようか。




ジョジョのランクアップ前のステイタス

 Lv.1
  力:A803→A807
 耐久:B749→B753
 器用:A893→S904
 敏捷:A877→A880
 魔力:I0

《魔法》

《スキル》
幽波紋(スタンド)
・精神力を消費しスタンド名を口にすることで発動する。
・発動中は精神力を消費し続ける。
・自身の成長とともにスタンドも成長する。
・発動できるスタンドは一度につき一つのみ。他のスタンドを使用する際は使用中のスタンドを引っ込める必要がある。
・スタンドは一部の例外を除いてスタンド使いかその素質のある者以外は不可視。
・スタンドが受けたダメージは本体も受ける(ダメージを受けないタイプのスタンドもある)。
・スタンド使用中は獲得経験値エクセリア減少(スタンドによって減少値は変化)。

幻影の血(ファントム・ブラッド)
・逆境時に全アビリティ及び精神力に超高補正。
・戦闘時の相手の強さが自分より強い程効果上昇。
・自身の精神力が尽きるまで効果持続。

『   』






次回から別人視点に入ります。



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『疾風』は止まれない

お馴染みのリューさん視点です。
半分に分けるには短いのでそのまま投稿します。



 昼のピークタイムが終わって客の入りが疎らになった頃、その悲劇は起きた。

 

『へ、変態だーー!!』

 

 店の裏から聞こえた彼の叫び声に思わず皿を落っことしそうになる。

 今日は混雑していたからと簡単な雑務を手伝っていて、ついさっき裏にゴミを捨てに行った筈。

 そしてさっきからクロエ(変態猫)の姿が見えない。

 

「ルノア、クロエは何処へ?」

 

「へ? ……そういえばもう休憩終わってる筈だけど」

 

 確定だあのバカ猫。

 私は武器を持って急いだ。

 

「ちょ、何やってんですか! 洒落にならないですよ!?」

 

「グへへ、良いではないか良いではないか」

 

 私が来た時にはクロエがズボンを引き下げようとしているのを必死になって抵抗しているジョジョがいた。

 一瞬、女性側からのセクハラというのもあるのだと感心しかけたが、今はそれどころではない。

 

「何やってるのですかクロエ!」

 

「ゲッ、リュー!? おまけに武器まで持ち出してミャアに何の用ニャ!?」

 

「あなたの凶行を止めるために決まっているでしょうが!」

 

「何を言ってるニャ、このポンコツショタコンエルフ!」

 

「なっ!?」

 

 クロエの口からとんでもない暴言が飛び出して一瞬私の思考が停止した。

 言いがかりも甚だしいし、お前にだけは言われたくない。

 

「わ、私はポンコツじゃあないしましてやショタコンでもありません!」

 

「逆ヒカルゲンジ計画しておいて何言ってるニャ! ミャアもやりたかったニャ!」

 

 何を言ってるんだこのバカ猫は。

 

 ヒカルゲンジ……確か古くからある極東の物語だと輝夜から聞いた事がある。

 作品の主人公が話の途中で幼年期の少女を攫って自分好みに育てるというとんでもない凶行に及んでいる。

 物語だから許されてるのかもしれないが、普通に犯罪だ。

 

 つまりクロエは私がジョジョを自分好みに育て上げようとしていると思っている?

 確かに『アストレア・ファミリア』に相応しい清廉潔白な誇り高い男性に育って欲しいと思って鍛えてはいるが、それは言いがかりだ。

 

「どうやら口で言っても聞かないようですね……」

 

「上等ニャ!あの日流れた決着、今ここでつけてやるニャ―――ッ!」

 

 クロエはそう言うと袖の内側に仕込んでいた暗剣を手に取り構えを取った。

 

 クロエはこの勝負をあの日の続きだと思っているのだろうが、あの日の私と今の私では決定的な違いがある。

 

「え、速――――」

 

 勝負は一瞬。

 

 一刀の下、クロエは地面と熱い口づけ(ベーゼ)を交わす事となった。

 

「クロエ、貴方の敗因はたった一つです……」

 

 そう、たった一つの単純(シンプル)な答え。

 

 それは――――。

 

「『私の方がレベルが上だった』」

 

 私がレベル5でクロエがレベル4。

 つまり私が上でクロエが下なのだ。

 

「お尻が……ちょっと、硬かった……」

 

 最悪だ。

 私が今まで聞いた辞世の句の中で最悪なものだ。

 これで少しは反省……しないでしょうね。

 

「……何やってんだいアンタら?」

 

 ふと、声がする方に目を向けると呆れた顔のミア母さんがいた。

 ミア母さんは放心しているジョジョ、地に沈んでいるクロエ、そして私を見た。

 

「全く、仕事中に遊んでるんじゃないよ! そんなにじゃれ合いたいなら私が相手してしてやろうか?」

 

 首をゴキゴキと鳴らし肩を回すミア母さんの目は殺る気マンマンだった。

 私でさえ身体がすくんでしまう程に。

 

「え、遠慮しておきます……」

 

「ならさっさとそこのバカ猫起こして仕事に戻んな! ……ああ、それとジョジョ。また割れた食器頼めるかい?」  

「あっ、はい。ワカリマシタ」

 

 それだけ言ってミア母さんは戻っていった。

 私が勢い余って壁やら何やらを壊したのをジョジョがスタンドで直している姿を見てからはこうして割れた食器や老朽化した家具なんかをジョジョに直してもらっている。

 『詳しく聞かない代わりに私の頼みを聞け』という事だろう。 

 

「あー、ジョジョ。無事でしたか?」

 

「ええ、まあ。とりあえず清い身体のままです」

 

 何処でそういう言葉を学んでくるんだろうか?

 

「なんと言いますか……女性はああいう変態ばかりではありませんからね。難しいかもしれませんが、あまり偏見は持たないようにしてくれると……」

 

 これが原因で女性恐怖症にならなければいいのだが。

 

「そ、そうですね。蚊に刺されたとでも思って忘れます」

 

「ブッ!」

 

 思わず吹いてしまった。

 そうですか、クロエは蚊ですか。

 

「クロエはしぶといので、また何かあったら呼んでくださいね」

 

「はい、じゃあちょっと行ってきますね」

 

 ジョジョは私に笑いかけるとそのまま走り去っていった。

 

 こうして誰かに慕われるというのは新鮮で悪い気分ではない。

 私自身自然と頬が緩んでいくのに気が付いた。

 

「ニャフフフ……」

 

 気が付けば目を覚ましていたクロエがこちらをみてニヤニヤと笑っている。

 裏社会で生き延びていただけあってタフな身体をしている。

 

「なんですかその気味の悪い笑い方は……」

 

「ようこそ、こちら(ショタコン)の世界へ……」

 

 この時のローキックは人生史上で最も綺麗に決まったと記憶している。

 

 

 

 

「じゃあ、おね……アストレア様とココ・ジャンボの事をお願いします。あ、これココ・ジャンボの餌です」

 

 ジョジョが『ロキ・ファミリア』の遠征に付いていくらしい。

 遠征と言っても階層記録の更新を目指すようなものではなく下級冒険者の強化を狙ったものだ。

 『ロキ・ファミリア』だけでなく大所帯のファミリアはこうした下部の強化を行っている事も多いと聞く。

 ジョジョの能力値の伸びもそろそろ頭打ちらしいと聞いているのでこの話は渡りに船だろう。

 

「これを」

 

 私はあらかじめ用意しておいたバケットを手渡した。

 まさか昨日がジョジョの誕生日だとは思わなかった。

 プレゼントに何を渡そうか思いつかなかったのでとりあえず実用的なものにと弁当を作ってみた。

 

 ……ちょっと失敗してしまったが。

 

「……」

 

 ジョジョはバケットの中身を見て固まった。

 

(え、ナニコレ新手のイジメ?)

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、何でもないです。行ってきます」

 

 来る前よりも気落ちしているような声色でジョジョは行ってしまった。

 やはり出来合いのものでも詰め込むべきだったか。

 

 でも、いいじゃあないですか。

 私だってカッコつけてみたかったんです。

 

 そして、何故こうなったのか。

 

「ア……じゃなかった。ティア! 料理できたから運んでおくれ!」

 

「はーい、ミア母さん!」

 

「……何か調子狂うね」

 

 同感ですミア母さん。

 

 アストレア様は何故かこの『豊穣の女主人』で新人ウェイトレスのティアとして働いている。

 ジョジョからスタンドを借りて姿を変えて別人状態だ。

 

「おまたせしました。お料理をお持ちいたしました」

 

 アストレア様はあれよあれよという間に仕事を覚えて、一日目で既に私と同程度まで出来るようになってしまった。

 アストレア様が凄いのか、それとも私が不器用なだけなのか。

 

「どうしましたリュー先輩?」

 

「やめてくださいアストレア様。反応に困ります」

 

「リュー、今の私はティアです」

 

 今のアストレア様はやけに生き生きとしている。

 そんなに仕事が楽しいのだろうか。

 

「あの子が今ダンジョンで戦っていると思うとじっとしていられないんですよ」

 

「『ロキ・ファミリア』が同行しているのにですか?」

 

 ピンキリとはいえ『ロキ・ファミリア』は下級冒険者さえ才能ある者が多い。

 伊達に狭き門を潜ってはいないという事だ。

 

「……リュー、あの子の事で少し相談したい事があります。仕事が終わった後でいいですか?」

 

「ジョジョの事でですか?」

 

 そして仕事の後、私はアストレア様からジョジョについて聞かされた。

 ジョジョには少し前、上層に上がってきたシルバーバックを倒した際に新しいスキルが発現していたそうだ。

 レベル1で3つもスキルを持っている事自体が既に異例だというのにその3つ目のスキルがとんでもないレアスキルだった。

 

 字に表すとこうだ。

 

 『戦闘潮流(ブラッディ・ストリーム)

・試練を引き寄せる。

・アビリティのどれかがCに到達した時に一定確率で発動。

・その試練から逃れることは出来ない。

・試練を成し遂げるまで獲得経験値(エクセリア)減少。

・試練達成後、今までの減少分に割り増しして加算。

 

「そんな……試練を引き寄せるスキルだなんて、そんなものがあり得るのですか!?」

 

「正直、私も何かの間違いだと思いたいです。それにこんな事が知られれば……」

 

 間違いなく目を付けられるだろう。

 しかも今回に関しては神々だけでは済まない。

 何せ試練を引き寄せてしまうのだ。

 冒険者達からすれば良いレベルアップアイテムにされてしまうかもしれないし、『白巫女(マイナデス)』のように疫病神扱いされる可能性だってある。

 

 今回の遠征ももしかしたらこのスキルが原因で何か良くないものを引き寄せてしまうかもしれない。

 

「ジョジョには、まだ伝えていません。知らない方があの子にとって幸せでしょう」

 

「私に言ってしまって良かったのですか?」

 

 情報が何処から漏れるか分からないのであれば知っている人物は少ない方が良い筈だ

 

「あの子の先達として、あなたには知っておいて欲しかった……というのは我儘でしょうか?」

 

 その言葉に胸が熱くなるのを感じた。

 だからこそやりきれない。

 私が目の届く範囲は思っている以上に狭いのだ。

 

 アストレア様も待つことしか出来ないからこそ居ても立っても居られないのか。

 『ロキ・ファミリア』を信用していないわけではないが、不安が募る。

 

「あの子が無事に帰ってくるのを待ちましょう」

 

 そのジョジョは二日後、両腕に包帯を巻いて帰ってきた。

 

 なんでもインファント・ドラゴンの強化種と遭遇して戦ったらしい。

 インファント・ドラゴンとは現役時代に良く戦ったが、少なくとも亜種や強化種には遭った事が無い。

 おそらくスキルの影響だろう。

 それをスタンド無しで殴りつけたそうだ。

 とんでもない事をする子だ。

 

 波紋によって血は止まって、骨にも異常はないそうだが、念のためにとアストレア様はしばらくの休養を彼に言い渡した。

 

 撃破自体は『千の妖精(サウザンド・エルフ)』だが、インファント・ドラゴンの強化種の足止めをレベル1が務めたというのはレベル1の偉業としては申し分ないだろう。

 事実、彼は9ヶ月という異例の早さでレベル2への切符を手に入れた。

 

 ただ、彼は全アビリティをカンストさせたいと言って1ヶ月様子を見ていたそうだが、結果は微妙なものに終わった。

 そういう事をやろうとする気概は認めるが、全アビリティ999のオールカンストなんてまず不可能だ。

 

 レベルアップの際の発展アビリティは『狩人』を選択したらしい。

 私も持っているが、あれは倒したモンスターとまた戦う際にステイタスに補正がかかる便利なアビリティだ。

 それを選んで正解だと思う。

 

 ジョジョのレベルアップの話は瞬く間に知れ渡った。

 何せ『剣姫』の記録を2ヶ月縮めた10ヶ月でのランクアップだ。

 おまけに何処のファミリアの冒険者か分からないときていて話題性としては申し分ない。

 

「そういえば明日休みだね」

 

「ッ!? どうかしましたか?」

 

「いや、だから明日はリューお休みだねって」

 

 考え事をしていたせいでシルの言葉を聞き逃してしまった。

 

「ジョジョ君の事考えてた?」

 

「ええ、これから大変だと思いまして」

 

 ジョジョはランクアップの最速記録保持者(レコードホルダー)になったのだ。

 否応なしに注目を集めてしまうだろう。

 本当のスタートは寧ろこれからかもしれない。

 

「明日はジョジョ君に訓練つけてあげるの?」

 

「そうですね、まだレベル2の身体に慣れていないようですし、午前中にでもしっかり馴染ませて午後は……」

 

 そう言いかけて思い出した。

 そろそろ墓参りの時期である事に気が付いたのだ。

 

 レベルアップのご褒美というわけではないが、ジョジョを連れて行ってあげてもいいかもしれない。

 

 

 

 

「お、終わったぁ……」

 

 午前中の訓練でランクアップした肉体を馴染ませるために只管模擬戦で実践的な動きをさせた。

 レベルが上の相手との戦いであれば精神の肉体も極限になり、今の自分が何処までやれるかが分かるようになる。

 別にこれしか知らないわけではなく、これが一番効果的というだけだ。

 

 これだけやって呼吸を乱していないのは大したものだ。

 波紋とやらは呼吸を乱さないための訓練をしているそうだが、私も教えて貰おうかと悩む。

 

「ジョジョ、午後に何か予定はありますか?」

 

「無いですね。適当にブラつくか。ダンジョンに潜ってちょっと稼いでくるくらいですね」

 

「なら午後は私に付き合いなさい。あなたを連れて行きたい場所があります」

 

「飯でも奢ってくれるんですか?」

 

「違います。ダンジョンの5階層辺りで待っていなさい」

 

 ダンジョンの準備をしていて、ふと思う。

 そういえば誰かとダンジョンに潜るのは久しぶりだ。

 

 懐かしい気持ちになった私は装備を整えていつものように目立たないようにダンジョンに潜った。

 

 ジョジョは言いつけ通り、5階層でウロウロしている。

 

「お待たせしました……」

 

「はい? どちらさ……もしかしてリオンさん?」

 

 一瞬気づいていなかったのか。

 ローブを深くかぶって顔を隠しているから仕方ないか。

 

「行きますよ」

 

「何処へ?」

 

「18階層です」

 

「俺まだ12階層までしか行ってないんですけど……」

 

「問題ありません、私が一緒なので」

 

 何気に初めてジョジョに同行したダンジョン探索になる。

 具体的にどうとは言えないが、同じダンジョンの道のりがいつもと違うように見えた。

 

「18階層に何かあるんですか? 確か町があるんですよね」

 

「行けば分かります」

 

 レベル5になっただけに道中のモンスターは完全に相手にならなくなっている。

 注意するとしたら強化種か18階層前にある『嘆きの大壁』から産まれるゴライアスくらいだろうか。

 ゴライアスを単独で撃破した経験はないので怯ませて隙を作ってから通るか、それともジョジョに支援を頼んで倒すか。

 

「ヴォォ……」

 

 16階層に入った私達を迎えたのは3体のミノタウロスだった。

 3体出たからといって何か問題があるわけでも無い。

 素早く喉を潰して咆哮(ハウル)を封じ、そして1体、2体と片付けた。

 

 そして3体目に手を掛けようとして思いついた。

 ここらへんでジョジョに経験を積ませるのもいいかもしれない。

 この辺のモンスター相手に何処まで通用するのかも確かめておきたいし、いい案だ。

 

「ジョジョ! スタンド無しでこのミノタウロスを倒してみなさい!」

 

「スタンド無しでですか!?」

 

「はい、負傷したミノタウロスくらい倒してみなさい」

 

「まさか、倒せなかったら見捨てられるとか……?」

 

「別に見捨てはしませんけど……」

 

 ただ、出来なかったら鍛え方が甘かったと判断して、次回からもっと厳しく鍛えようと考えてはいる。

 

 ジョジョは剣を構えて私と入れ替わる形でミノタウロスと対峙した。

 ミノタウロスは喉を潰されて呼吸を荒げている。

 しかし、手負いの獣ほど恐ろしいものはない。

 油断はいつだって死に直結しているのだ。

 

 先に動いたのはミノタウロスだった。

 天然武器(ネイチャーウェポン)を叩きつけてジョジョを潰そうとする。

 ジョジョはそれを跳んで躱し、ミノタウロスの後ろに回り込んだ。

 

 そうだ、手負いの獣が恐ろしいとはいえ、必死になればそれだけ動きは精彩を欠き、単調になり易い。

 

 次にジョジョは左膝の裏側にある靭帯を斬りつけてミノタウロスのバランスを崩させる。

 ミノタウロスは苦しそうに呻きながら左側に倒れていく。

 

「剣を伝わる波紋ッ! ぶった切るための『銀色の波紋疾走(メタルシルバー・オーバードライブ)』ッ!」

 

 そしてジョジョはその隙を見逃さなかった。

 波紋を流した彼の剣は吸い込まれるようにミノタウロスの脳天に当たり、そのまま真っ二つに切り裂いた。

 魔石を核とするモンスターであっても脳天を切り裂かれれば死亡する。

 

「フゥーーッ、どうですか?」

 

「及第点といったところでしょう」

 

「満点でも合格点でも無く?」

 

「あっさりと合格点を出す優しい採点をお望みですか?」

 

 私がそう言うとジョジョは苦笑していた。

 

「『試練は強敵であればあるほどいい』って言いますからね。限度はありますけど……」

 

 せっかくいい事言ったのに、何故そこでヘタレてしまうのか。

 

 

 

 

 幸いな事に『嘆きの大壁』にゴライアスはおらず、私とジョジョは何の問題も無く18階層の『迷宮の楽園(アンダー・リゾート)』に着く事が出来た。

 

「あれ? 町には行かないんですか?」

 

 リヴィラの町に目もくれず森の方に行こうとしていた私にジョジョは疑問を持ったようだ。

 日帰りのつもりだし、仮に一泊していくとしてもリヴィラの宿泊料はぼったくり価格だ。

 それならまだ野宿でいい。

 

「目的地はこっちの方です」

 

 あそこまでの道のりも、もう慣れたものだ。

  

「着きました」

 

 かつては楽しかったあの場所には散っていった仲間達の武器が墓標代わりに突き刺さっていた。

 

「これは墓……ですか?」

 

「はい、死んでいった仲間達の墓です。この場所は皆が好きな場所だったのでせめてここにと」

 

 私はそういいながらも皆に添えるための花を摘んでいく。

 

「回収できたのは武器だけで、遺体は回収できなかった……」

 

 あの時の事を思い出すだけで頭の中が絶望と後悔で一杯になっていく。

 

「ジョジョ、私はあなたが思っているほど出来た大人ではありません」

 

 そうだ。私は間違いばかりを犯してきた。

 

「皆が死んで、私にあったのは敵に対する怒りと憎しみだけでした。そんな私を見て欲しくなかったからアストレア様にはオラリオを離れて欲しいと懇願しました。その時にアストレア様は『ファミリアの正義を捨てなさい』と言われました。事実上の破門宣告だと、その時の私は思いました」

 

「おね……アストレア様は破門したなんて一言も……」

 

 その時の私はアストレア様の真意に気づけなかった。

 でも今なら分かるかもしれない。

 

「疑わしき者には全てに襲い掛かりました。その中にはもしかしたら無関係の人物もいたかもしれません」

 

 『当時はそんな事を考えてる余裕がなかった』なんて今更言い訳するつもりなどない。

 罪は罪だ。

 

「復讐を終えた先には何もなかった。僅かな達成感こそあったもののそれが感じられなくなるほどの虚しさが心を占めていた。疲れ果てて力尽きて……血と罪に塗れて穢れた私はそのまま死に絶えるのが似合いの末路だと、そう思っていました」

 

 そんな時にシルに出会った。

 

「そしてシルに手を差し伸べられてミア母さんの所で働いて、そしてあなたがアストレア様を連れてやってきた……」

 

 あの時の衝撃はきっと一生忘れる事は無いだろう。

 

「私は間違った。死んでも償え切れないような罪を犯した。でも……アストレア様と再会して、眷属でいていいと言って貰えて……やはり……生きていて良かったとッ」

 

 今まで塞き止めていた感情が溢れ出すかのように想いが溢れていく。

 

「私は死ぬべきだったと思っていた。でも、今は違う。私の死で『アストレア・ファミリア』は完全に無くなってしまう……それだけは、それだけは絶対に嫌だ。大好きだったファミリアが無くなってしまうのは死ぬ事よりも辛くて恐ろしい」

 

 ジョジョは何も言わずにただただ私を直視していた。

 

「リオンさん、俺もこの人達に花を添えていいですか?」

 

「え、ええ。皆もきっと喜ぶと思います」

 

 急な物言いに少しどもってしまった。

 

 しかし花を添えると言ったのに彼はその場から動こうとしない。

 

「『ゴールド・エクスペリエンス』、生まれろ……新たなる生命よ……」

 

 ジョジョがそう呟くと目の前でありえない出来事が起こった。

 

「こ、これは……!」

 

 赤、青、黄、白と様々な色の花が殺風景だった墓を彩っている。

 その光景に思わず絶句してしまった。

 

「これも……スタンド能力なんですか?」

 

「はい、『ゴールド・エクスペリエンス』は生命エネルギーを与えて新たな生命を生み出す能力を持っている。こうやって花を咲かせることも出来ます」

 

 驚くべき能力だ。

 彼はこんな非常識な能力をいくつ持っているというのだろうか。

 

「確かに、リオンさんは間違いを犯しました。もしかしたらもっといい方法があったのかもしれません」  

 

 そう、それこそ他のファミリアに応援を要請したり、情報を流して敵を炙り出させるという手もあったかもしれない。

 

「でも、誰だって間違いはします」

 

「え……?」

 

「間違わずに生きている奴なんて滅多にいません。人間(ヒューマン)小人(パルゥム)、獣人、妖精(エルフ)、きっと神様だって間違う事はあります。間違わない事も大切ですが、間違いとどう向き合うかも同じくらい大切だと思います」

 

 彼の言葉が私の心にスッと入ったような気分だ。

 あの時の私は色々なものに耐え切れず、ただ逃げていただけだった。

 私も『白巫女(マイナデス)』の事は言えない。

 

「間違えたっていいじゃあないですか。自分の非を認めず勝手な理由で自分を正当化しようとする連中よりはずっといい。エルフは人間よりずっと長生きなんだから一歩一歩じっくりと進んでいけばいい」

 

「じっくりですか……フフ、簡単に言ってくれますね」

 

「リオンさんならきっと出来ますよ」

 

 そうだ、ジョジョの言う通り今すぐ結果を出さなくたっていいんだ。

 そう言ってくれて嬉しかった。

 励みになった。

 

 それにもう一つ、私がしなければならない事も見つかった。

 オラリオを見守っていくだけではなく、オラリオの未来を守るために新しい『アストレア・ファミリア』を遺す。

 その第一歩がジョジョだ。

 私が死ぬ前に、彼を一人前にしてみせる。

 

「ところで気になったのですが、何故私の事はファミリーネームで呼んでるんでしょうか?」

 

「え? 女性は基本的にファミリーネームで呼んでますよ。だって勝手にファーストネームで呼んだら馴れ馴れしいじゃあないですか」

 

「リヴェリア様は普通にファーストネームで呼んでませんでしたか?」

 

「ああ、リヴェリアさんは『アールヴ様』って呼んだらすっごく微妙な顔されたんで……」

 

 その光景が目に浮かぶようだ。

 あの方はハイエルフではあるが、王族としての身分が窮屈で出奔した身だ。

 身分にも拘っていないようだし、王族扱いされるのはあまりいい気分ではないだろう。

 

「リューで構いませんよ。懸賞金がかかっていた頃は『疾風のリオン』で通ってましたし、個人的にはそちらの方が好ましい」

 

「あー、そうだったんですね(なんか悪い事しちゃったな……)」

 

  ジョジョは罰の悪そうな顔をしている。

 大方リオン呼びが私の立場を悪くしているとでも思ったのだろうか。

 

 私の当時の通り名で思い出したが、もう一つジョジョに伝えなければならない事があった。

 

「ジョジョ、あなたにもう一つ伝えなければいけない事があります」

 

「は、はい。なんでしょう?」

 

 私が真剣な顔をしたせいか、ジョジョは佇まいを直して顔を強張らせた。

 

「あなたは『アストレア・ファミリア』が壊滅した事について何処まで聞いていますか?」

 

「ええっと……確か敵対してた『ルドラ・ファミリア』が『怪物進呈(パス・パーティ)』でモンスターを押し付けたのが原因って聞いてます」

 

 それはある意味では間違いではない。

 ただ、正確でもない。

 

「『ルドラ・ファミリア』に私達は火炎石を使った罠を仕掛けられた。それ自体は大した被害を受けなかったのですが……」

 

 それだけで終わっていれば何事も無く終わっていたというのに。

 

「しかし火炎石の爆破はダンジョンに大きな被害をもたらした。それこそ階層が大きく破壊されるほどに……そして……」

 

「そして?」

 

 思い出しただけで汗が噴き出して吐きそうな気分になる。

 

「あの……言い辛いなら無理して言わなくても……」

 

 気を使ってくれるのは嬉しい。

 しかしこれだけは言わなければいけない。

 

「奴が現れた……『厄災』と呼ばれるモンスター、ジャガーノートが」

 

 私は、知っている限りの情報をジョジョへ伝えた。

 ジョジョは真剣な顔をしてそれを聞き取り、聞き終わると神妙な顔をして考え込んだ。

 

「スタンドは効くんでしょうか?」

 

「試してみない事には分かりません」

 

 具体的な出現条件が分かっているわけでも無い。

 それにジャガーノートが出現しない事に越した事は無い。

 だが、ジョジョはそうは思っていないようだ。

 

「黄金長方形の回転……」

 

「はい?」

 

(そういやエルフって森に棲んでるよな……黄金長方形について何か知らないかな……でも黄金長方形を見つけたのって確か人間だよな……)

 

 さっきからジョジョが私を見ながら何か考えている。

 何だか居心地が悪い。

 

「あの、私がどうかしました?」

  

「リューさん、『1:1.618』という比率について何か知っている事はありますか?」

 

「えっ?」

 

 何かの暗号でしょうか。

 比率といってもやけに中途半端な数字だ。

 一体何を意味するものなのか。

 ジャガーノート攻略の糸口になるのか。

 だとしても何一つ見当がつかない。

 

「すいません、何の事だかさっぱり……それもスタンドに関係する事なんでしょうか?」

 

「いえ、いいんです。俺も変な事言ってすいませんでした」

 

 そう言うと今度は人差し指を眺めていた。

 ジョジョの意図がさっぱりつかめない。

 今度暇なときにでもその比率について調べてみようか。

 

「あの、リューさん。先代達の事をもっと教えてください。アストレア様からも聞きましたけど、どんな冒険をしたかとかはリューさんに聞いた方が詳しく聞けると思うんです」

 

「そうですか、じゃあ私がファミリアに入った日の事から話しましょうか」

 

 楽しかった。

 まるで死んだ筈の皆がそこにいるような気さえした。

 いくらでも皆の事を話せる気分だった。

 

 皆、私がそちらに行くのはもう少し先になりそうです。

 




帰り道

ジョジョ「リューさん、幽霊っているんですね」

リュー「は?」


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『千の妖精』は気に入らない

8月中に投稿したかったけど無理でした。
ちょっと遅いけどUA30万突破ありがとう。
これからもよろしくお願いします。


 (レフィーヤ・ウィリディス)(ジョシュア・ジョースター)の出会いは最悪のそれと言っても差し支えない。

 

 あの日、私は憧れのアイズさんに直接話しかける練習をするための写真を手に入れるために一部のマニアに有名なブロマイド屋に行っていた。

 恥ずかしいからサングラスとマスクとローブで正体を隠してだ。

 

 しかし――――。

 

「えっ、売り切れ!?」

 

「ああ、『剣姫』は人気だからねぇ。ついさっき売り切れちまったよ」

 

「次の入荷は!?」

 

「ここの入荷は不定期だよ」

 

 そういえばここの店は店主が趣味でやっているから定期的な入荷は無いと聞いた事があった。

 

 せっかくいい天気だというのに私の気分は曇天だ。

 

「失礼。あの、これもください」

 

 私がぐぬぬとしていると横から紅いマフラーをつけた同年代の少年が割って入ってきた。

 仕方ないと思って私はしぶしぶとレジを譲る。

 

「毎度どうも。……ああ、この子が最後の一枚を買ってったんだよ」

 

 店主の思いがけない一言に天はまだ私を見捨てていないのだと歓喜した。

 どうにかして彼からアイズさんのブロマイドを譲ってもらいたい。

 

「あ、あの! さっき買った『剣姫』のブロマイドを譲ってもらえないでしょうか?」

 

「嫌です」

 

 即答だった。

 もうちょっと考えてくれても良くないだろうか。

 

「倍! 購入価格の倍出しますから!」

 

「断る」

 

 彼は心底鬱陶しそうに私の提案を断った。

 こうなったらこちらもなりふり構ってはいられない。

 

「分かりました。5倍出します!」

 

「10倍」

 

「は?」

 

 こいつは何て言いましたか?

 10倍、つまり2万ヴァリス。

 ちょっといい武器が買える価格になっちゃうんですけど?

 これだと確実に予算オーバー。 

 それは吹っ掛け過ぎじゃあないでしょうかね?

 

「じゅ、10倍はちょっと……」

 

「じゃあさっさと諦めて帰ってくれ、変質者と一緒にいていらん誤解をされたくない」

 

「はぁ!?」

 

 私はこの時、頭に血が上って自分が変装していたこともすっかり忘れていた。

 

「あ、やべッ! 逃げるんだよォォォーーーーーッ!」

 

 少年Aは逃げ出した。

 

「ま、待ちなさい!」

 

 しかし私にまわりこまれた。

 術師とはいえレベル2の身体能力を舐めないで欲しいですね。

 でも思った以上にすばしっこい。

 何処かのファミリアの冒険者なのか、それとも何か格闘技でもやっているのか。

 

 でもこの際どうだっていい。

 とりあえずとっ捕まえて変質者の汚名を返上させてみせます。

 

「ちっ、仕方ねえ」

 

 逃げるのを諦めたのか、少年は足を止めた。

 

「『ジェイル・ハウス・ロック』ッ!」

 

 彼はまるで呪文でも唱えるかのように叫んだ。

 しかし、私には分かる。

 彼からは魔力の流れを感じない。

 つまりこれはただのブラフ。

 

 ――――私の頭の中が真っ白になった。

 

「……あれ? 私、何してたんだっけ?」

 

 そうだ、そういえば……。

 

「ブロマイド屋に行って……」①

「そうだ、マフラーの子に先を越されてて!」②

「その子の事を追いかけて……」③

 

 

「……あれ? そういえば私、何でここにいるの?」①

「そうだ、アイズさんのブロマイドを買いに行って……」②

「マフラーの子に先を越されてて……!」③

 

 

「……あれ? 私、何してたんだっけ……? う~ん……」①

 

 私はその後、夕食まで帰ってこなかった事に心配して探しに来たリヴェリア様に回収されるまでそこで彷徨っていたらしい。

 

 

 

 

 あれから半年以上経過しているけど、あの少年の正体はさっぱり分かっていない。

 ふと思い返してみたけれど、あれは魔法というより呪詛(カース)の類なんでしょうか。

 

「本当、結局あれは何だったんだろうなぁ……」

 

「どうしたのレフィーヤちゃん? またアイズさんの事?」

 

 談話室でダレてた私に話しかけたのは友人のリーネちゃんだった。

 種族やレベルが違えどこういった同世代で同性の友人というのは貴重だ。

 

「そうなんですよリーネちゃん! アイズさんがモンスターをあっという間に切り裂いて……」

 

「ふふ、羨ましいなぁ。私はまだレベル1のままだから……」

 

 その言葉に重い気持ちになった。

 レベル1では遠征の荷物持ち(サポーター)にすらなれない。

 私はレベル2である事と、自分の魔法である召喚魔法(サモンバースト)が評価されて遠征への同行を許されているけど、リーネちゃんはレベル1な上にスキルが発現しているわけでもない。

 当然、遠征では居残り組だ。

 

「レフィーヤちゃん。私ね、次の遠征で結果を残せなかったら冒険者辞めようと思うんだ」

 

「そんな!」

 

 リーネちゃんの言う遠征はレベル1やレベル2のランクアップを目的としたもの。

 勿論私やリーネちゃんも参加したことがある。

 しかし、リーネちゃんは付いていけず、よく途中でリタイヤしていた。

 

「私って才能無いのかなって。最近は『ステイタス』の伸びも……」

 

「辞めてぇんなら辞めちまえばいいじゃあねえか」

 

 突然の物言いに顔を上げると、そこにいたのは『凶狼(ヴァナルガンド)』の二つ名を持つ狼人(ワーウルフ)、ベート・ローガさんがこちらを見下していた。

 私はこの人の乱暴な物言いが嫌いです。

 

「強くなるのを止めた雑魚に居場所はねえ。とっとと故郷にでも帰れ」

 

「そ、そこまで言う事無いでしょう!? もっと言葉に気をつかったって……」

 

「そうすれば事実が変わるのか? 優しい言葉でも掛けてやればこいつは強くなれんのか?」

 

 言い返せなかった。

 結果を出している私が慰めてもただの上から目線によるもの。

 本当の意味で彼女の気持ちを分かってあげられるわけじゃあない。

 

 黙っていた私にベートさんはつまらなそうに鼻を鳴らしてその場を去った。

 私は何て言うべきだったのか分からなかった。

 それが悔しくて仕方なかった。

 

「こんにちは、此度は……」

「うるせえ邪魔だ」

「ああ、やっぱりダメだったよ……」

 

 ベートさんは話しかけてきた相手を無視して何処かへ行ってしまった。

 今度はこちらに歩いてくる足音がする。

 ベートさんに無視された相手でしょうか。

 

「あの、今回の遠征に加わらせて貰う『ジョシュア・ジョースター』っていいます」

 

「あっ、これはどうもご丁寧に……」

 

 なんだか何処かで聞いた事ある声だなと思って顔を上げたら、そこに居たのは例のブロマイドを買っていった少年だった。

 

「あ……あな……」

 

「穴?」

 

「あ、あなた! あの時の!」

 

「あの時ってどの時ですか?」

 

 今更しらばっくれるとは白々しい。

 今ここで成敗してくれる。

 

「あの、どうしたんですかこの人」

 

「いや、普段はこんな娘じゃあないんですよ……。レフィーヤちゃん、どうしたの? なんだか数年来の敵を見るような眼をしてるけど」 

 

「この人だよ! 私を錯乱させたのはこの人!」

 

「はぁ? 何の事だよ……?」

 

「ちょっと二人とも落ち着いて!」

 

 リーネちゃんが仲裁に入るも、私の熱は収まらない。

 というか何処までとぼける気なのか。

 それとも本気で覚えていないのか。

 それはそれでムカつく。

 

「ブロマイド屋で! アイズさんのブロマイドを! 買っていったでしょ!」

 

「ブロマイド? …………あー(そんな事もあったような、なかったような)」

 

「思い出しましたか!? なら言う事があるでしょ!」

 

「え、ああ分かったよ。和解の印にほら」

 

 少年はそう言って鞄から何かを取り出した。

 それは私が欲しがっていたアイズさんのブロマイドだった。

 しかもご丁寧に傷がつかないよう透明な袋に入っていた。

 

「これ、くれるんですか?」

 

「うん、もう使わないし」

 

 もう使わない?

 モウツカワナイ?

 まさかッ! アイズさんのブロマイドを使って夜な夜な自分の劣情を……!?

 アイズさんのブロマイドであれやこれやしてうらやまけしからん。

 

 僅か2秒でその結論に至った私は下がろうとしていた溜飲が脳天を突き破るかの如く上がってきた。

 

「な、何に使ったって言うんですか!?」

 

「え、そりゃ顔を覚えるためにブロマイド買ってたんだけど……」

 

 ただの考え過ぎだった。

 私の勘違いだったと思い知って今度は怒りではなく羞恥で顔が真っ赤になる。

 

「レフィーヤちゃん、流石にそれは無いよ……」

 

 リーネちゃんにも呆れられてる。

 もう死にたい。

 

 

 

 

 よりにもよって遠征のチーム分けでこの子と組む事になるだなんて。

 リーダーがラウルさんで他にはリーネちゃんと前衛志望のリチャードさんと、ジョシュアって子を考慮しなければ結構手堅い編成なのに。

 

 第一なんで所属ファミリアも明かさない他所者を遠征のメンバーに組み込むのか、その理由が分からない。

 

「じゃあ行くっすよー!」

 

「が、頑張りましょうね?」

 

「足だけは引っ張るなよ」

 

(ああ、前途多難ッスね……)

 

 気に入らない事に、実際は足を引っ張るどころか活躍していた。

 身体能力はレベル1では上位に位置する程度には高く、身の丈には少し大きな剣も上手く使いこなしている。

 

 問題なのは時折全体が光ったり謎のシャボン玉でモンスターを攻撃している事だ。

 

 あれ何?

 魔力は感じないし詠唱もしていないから魔法じゃあないよね?

 そういえば極東の島国には仙術という魔法とは違ったものがあるとリヴェリア様に聞いた事があるからその系統なんでしょうか。

 なんでそれをよりにもよってあの子が使えるんだろう。

 

「ひっ」

 

 気が付いたらリーネちゃんがニードルラビットの群れに絡まれていた。

 あの鋭い角はウォーシャドウの爪よりも鋭くて岩くらいなら簡単に貫いてしまう。

 囲まれて串刺し肉になった冒険者も少なくないと聞く。

 とりあえず突破口を開いてあげないと。

 

「【解き放つ一条の光 聖木の弓幹(ゆがら) 汝 弓の名手なり 狙撃せよ 妖精の射手 穿(うが)て 必中の矢】」

 

 私が使える魔法の中でもっとも速い【アルクス・レイ】でニードルラビットの群れを穿つ。

 詠唱が終わって魔法を唱えようとしたその時だった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 目の前の対処が終わった彼がニードルラビットの群れに突っ込んでいった。

 マズい、もう間に合わない。

 

「避けてくださいッ! 【アルクス・レイ】ッ!」

 

「え? な――――うわっ! 危なッ!?」

 

 【アルクス・レイ】は追尾する魔法だけど私自身が自由に操作できるわけではないので目標の手前にいれば当然巻き込まれる。

 しかし、上手く躱してくれたみたいだった。

 

「オイコラ! 戦闘中に私怨晴らそうとすんな!」

 

「違いますよ! 大体避けろって言ったじゃないですか!?」

 

「直前に言うなよ! 当たるところだっただろうが!」

 

「当たってないじゃあないですか!」

 

「そこ! 喧嘩してたら置いてくッスよ!」

 

 リーダーのラウルさんに怒られてしまった。

 何もそこまで言わなくたっていいじゃあないですか。

 私は戦闘中にフレンドリーファイアかます程器の小さいエルフじゃあありません。

 

 私は何やってるんだろうか。

 よくよく考えたら向こうから和解しようと持ち掛けていたのにそれを不意にしたり、それを踏まえて私が言いたい事をぐっと飲みこめばギスギスした空気にはならなかったかもしれないのに。

 

 10階層入り口で私達が休憩を取っていた時にはわりとやらかしが多かったことに気が付いて自己嫌悪に陥った。

 よくいる高慢なだけのエルフとは違うと思いたかったけど、種族の性質って中々変わらないのかな。

 

 彼は食パンを齧りながらラウルさんやリチャードさんと話をしていた。

 男同士って意外とすぐに仲良くなるイメージがある。

 さっきはリーネちゃんとも少し話をしていた。

 

 やっぱり避けられてるんだろうなぁ。

 

 それとさっきから食パンだったりチーズだったりハムだったりを塊のまま齧っているけど、それならスライスしてサンドイッチにでもした方が食べやすいんじゃあないかと思うんだけど。

 

「ねえリーネちゃん。さっき何喋ってたの?」

 

「んぐっ。……ちょっと相談に乗って貰ってたの」

 

 リーネちゃんは食べていたパンを飲み込んでから少し恥ずかしそうにして話し出した。

 

「強くて羨ましいなって言ったら『こんなのまだまだだ』とか『今だってモンスターと戦うのは恐い』とか」

 

 冒険者は慣れた辺りが一番危険だと色んな人からよく教えられた。

 慣れは慢心となり、慢心は油断によく繋がるからだ。

 

「『恐がるのは恥ずかしい事じゃあない』とか『恐れを知って、それでも一歩を踏み出すのが大事』とか、か。私と同じレベル1なのになんでこんなにも違うんだろうって思っちゃった」

 

 確かにその辺のレベル1とは違う『凄み』がジョシュア・ジョースターという少年にはある。

 

「ちょっと恥ずかしいけど、私にもあんな風に勇気があったらベートさんに『辞めたきゃ辞めろ』って言われなかったんだろうなって思ったら途端に情けなくなって」

 

「リーネちゃん、それは違うと思うよ」

 

 彼女が吐露する中、自然とそんな言葉が口から出てきた。

 

「リーネちゃんはリーネちゃんだよ。羨ましくても妬ましくてもその人みたいになりたいと憧憬を持っても何が正解かなんて誰にも分からない。だからリーネちゃんがなりたいように、やりたいようにするのが一番なんだと思う」

 

 かくいう私だってアイズさんに憧れて魔法剣士になりたいと思っている。

 魔法もまだまだだけど、これだけは譲らないし譲れない。

 

 話を聞く限り、ジョシュア・ジョースターは私が思っているほど悪辣な人物ではないかもしれない。

 ならちょっとくらいは話し合ってみてもいいかもしれない。

 

「あの……」

 

「じゃあそろそろ行くッスよ!」

 

 タイミングが悪すぎた。  

 次の休憩となると辿り着ければ『リヴィラの町』になる。

 もう道中にモンスターがいない時でもちょっと話しかけてみるに作戦をシフトしなければ。

 

 ただ、そう思うように事が運ばないのがダンジョンだった事をすぐに思い知る事になる。

 

「ナルヴィ!?」

 

 ラウルさんが驚くのも無理はない。

 引き返してきたのは先行していたナルヴィさんのチームだったからだ。

 ナルヴィさんのチームの内2名が重傷で他の仲間に背負われている。

 他のメンバーも動けはするけど怪我は負っている。

 

「ごめんラウル、私らはココでリタイアするわ! というかあんた達も逃げた方がいいかも!」

 

 奥の方から聞こえる唸り声、というかこれは最早咆哮の領域だ。

 その姿を見て何故ナルヴィさん達が引き返してきたか理解した。

 

 インファント・ドラゴンだ。

 

 階層主がいない上層では最強を誇るレアモンスターでレベル1やレベル2が集団になってかからないと倒せないほど強い。

 それにその蒼い姿に絶句した。

 インファント・ドラゴンは本来赤っぽい色合いをしている、つまり目の前にいるのは世にも珍しいインファント・ドラゴンの強化種ということになる。

 

「レフィーヤ、魔法の準備を! 他は時間稼ぎ頼むッス!」

 

「はい! 【ウィーシェの名のもとに願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へ(きた)れ】」

 

 逃げるのには遅すぎたと判断したラウルさんは素早く簡潔に指示を出して私の護衛に入った。

 この階層での敵はインファント・ドラゴンだけじゃあない、他にもハードアーマードやシルバーバックのような難敵も多く出てくる。

 私が確実に魔法を使うためにはラウルさんが私を守るしかなく、それ以外の3人でインファント・ドラゴンをどうにかするしかない。

 

 ただのインファント・ドラゴンであったなら、時間稼ぎくらいならあの3人だけでも出来たかもしれない。

 しかし、目の前にいるのはそれの強化種、もしかしたらレベル3が出張らなければいけない案件になる可能性もある。

 

「ガッ―――」

 

 リチャードさんの構えた槍はあっさりと折られて、彼と共に壁に叩きつけられた。

 

「――――かはっ」

 

 リーネちゃんがメイスで叩くも、全く効果は無く、羽虫を払うかのように吹き飛ばされた。

 

「【繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ。至れ、妖精の輪。どうか───力を貸し与えてほしい】」

 

 これが私を『千の妖精』たらしめる魔法。

 

「【エルフ・リング】」

 

 ジョシュア・ジョースターは作り出したシャボン玉ごと尻尾で薙ぎ払われて、リチャードさんと同様に壁に叩きつけられた。彼の剣もその衝撃で壁に突き刺さる。

 

 そうしている間にも新しく出現したオークをラウルさんが切り倒した。

 

 私が今、出来る事はあのインファント・ドラゴンを確実に仕留める事。

 そのために詠唱を続ける事だけ。

 それしか出来ないのが辛かった。

 

「気持ちは分かるッスよ」

 

 ラウルさんは私の心を見透かしたように言った。

 しかしその眼は私ではなく戦況を見ている。

 

「俺も仲間を見捨ててるみたいでいい気分じゃあない。でも、戦いにおいては仲間を信じるしかない事も多いッス。なら、自分がやるべき事をきっちりやって前線で戦っている仲間に報いるのが筋ってもんじゃあないッスか?」

 

 その通りだ。

 私は杖を再度力を込めて強く握る。

 

「【――――終末の前触れよ、白き雪よ】」

 

 私の詠唱に呼応するかのようにジョシュア・ジョースターが立ち上がった。

 まだ薄っすらだが目に見えるほどに光り輝いている。

 まるでまだ生まれたばかりの太陽が必死になって光を届かせようとしているように。

 

「震えるぞハートッ!」

 

 射られた矢の如く彼はインファント・ドラゴンに迫る。

 

「燃え尽きる程ヒートッ!」

 

 宙に跳んでシャボン玉を出して視界を封じる。

 

「刻むぞッ、血液のビートッ!」

 

 僅かに残った視界の外から顔に回し蹴りを放って怯ませる。

 

山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライヴ)ッ!!」

 

 そして渾身の拳による一撃をインファント・ドラゴンの顔面に叩き込んだ。

 不用意に近づけばミンチにされるドラゴン相手に殴りかかる冒険者もそうはいない。

 ただ、彼はがむしゃらになっているように見えて、重い一撃は最初だけで、次からはちゃんと隙を作ってからのヒットアウェイに切り替えている。

 

 インファント・ドラゴンは先程殴られて気が立っているのか彼に釘付けになっていた。

 

「グォォォォォォォ!」

 

「ッ! 危ねぇ!」

 

【黄昏を前に風を巻け】  

 

 ラウルさんの言ったように、今は彼を信じるしかない。

 

「なっ────」

「ぐうぅっ!」

  

 インファント・ドラゴンによる攻撃をリチャードさんが盾で受けて彼を庇った。

 

「ほら! さっきみたいな攻撃をもっとバンバンしろ!」

 

「でも、リチャードさん。腕が折れて……」

 

「仲間を守って攻撃を受けるのが前衛の役目だからよ。それに俺が攻撃するよりもずっといい」

 

「二人とも、来るッスよ!」

 

 ラウルさんの一喝で二人はインファント・ドラゴンに向き直った。

 

「全部受けてたら持たないッスから、避けられる攻撃はなるべく避けて! ジョジョは攪乱でリチャードは避けきれない攻撃を受けるッス!」

 

 攻撃してくるモンスターをあしらいながらも指示を出す口は休まない。 

 

【閉ざされる光、凍てつく大地】 

 

 詠唱ももう少しで終わり、私の周囲に魔力が渦巻く。

 魔方円もその輝きをましてきた。

 

 そして――――インファント・ドラゴンが私を見た。

 

 ここにきて奴はこの場で私が最も危険な敵だと理解してしまったのかもしれない。

 

「マズい! 二人とも、レフィーヤを守るッス!」

 

 ラウルさんもそれに気づいて指示を出す。

 

 だからこそ誰も彼女の踏み出した一歩には気が付かなかった。

 

「ギ――――ガァァァァ!?」

 

 インファント・ドラゴンの眼に剣が突き立てられた。

 今目が覚めたばかりなのか、それとも機を窺ってたのかは分からない。

 でも、リーネちゃんがファインプレーを決めてくれた。

 

「【吹雪け、三度の厳冬――我が名はアールヴ】」

 

「詠唱終わったッスよ! 逃げるッス!」

 

 ラウルさんが声を張り上げた。

 既に限界だったリーネちゃんをジョシュアが担いでリチャードさんとともにラウルさんと合流。

 

 私が今から召喚するのはオラリオ最強の魔導士であるリヴェリア様の魔法。

 実戦でやるのはこれが初めてだけど、弱音を吐いてなんていられない。

 皆が稼いでくれた時間を無駄にしたくないからこそ限界(マインドゼロ)ギリギリまで込めてそれを解き放つ。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】」

 

 展開された三つの氷結晶から放たれるのは時さえも凍らせる絶対零度の吹雪。

 インファント・ドラゴンは逃げる事すら叶わずその周囲ごと凍結し、生命活動を停止した。

 

 私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 目が覚めたのは『黄昏の館』にある自室だった。

 リヴェリアさまの魔法は思っていた以上に消費が重たくてマインドダウン程度で済ませるつもりがマインドゼロを引き起こしてしまった。

 

 リチャードさんは利き腕を骨折、リーネちゃんは全身を強打して、二人ともしばらくは私と同じで安静にするように言われてしまった。

 ジョシュア・ジョースターは骨にこそ異常はなかったらしいけど、皮膚が裂けていて出血が酷かったと聞いている。

 

 でも悪い事ばかりではなかった。

 私を含めてラウルチーム3名全員が偉業を達成してランクアップ可能になっていた。

 なら彼ももしかしたら、というか一番動き回ってたのは彼だしランクアップしてなかったらおかしい。

 

「おーいレフィーヤ、見舞客が来たでー!」

 

「ロ、ロキ様!? 突然何ですか、せめてノックくらいしてください!」

 

 この神様は悪い(ヒト)ではないんだけど、正直結構苦手だったりする。

 特に隙あればセクハラをしてくるから中々気が抜けないところとか。

 

「それで何の用ですか?」

 

「そんなに身構えなくてええやん……ってさっき見舞客来た言うたやないかーい!」

 

「見舞客……まさかアイズさ――――」

 

「普通にちゃうで。おーいジョジョ、レフィーヤ起きとるでー!」

 

 ちょっと待って、意外過ぎる人物の来訪に心の準備が出来てないんですけど。

 

「し、失礼します……」

 

 彼はおそるおそる私の部屋に入ってきた。

 その姿はさながらダンジョンの罠に警戒する冒険者の様。

 

「ほな、後はお若い二人でごゆっくり。あ、分かっとると思うけどレフィーヤに手ぇ出したら全力で消すから覚悟しときや」

 

 口は笑ってるけど目は笑ってないのが恐い。

 それに私と彼は別にそういう間柄じゃあない。

 それに初めては出来ればアイズさんが……と、今はそういうのは置いといて。

 

「とりあえず座ったらどうです?」

 

「は、はぁ」

 

 私に言われるがまま、彼は近くにあった椅子に腰かけた。

 なんというか、そわそわしていていかにも落ち着かないように見える。

 

「今回の事はちょっと、言い過ぎたと思います、ごめんなさい」

 

「え?」

 

「譲って欲しいとしつこく頼んだ私が悪かったって謝ってるんですよ……」

 

「ああ、そういう事ね」

 

 そう言った彼は鞄から何かを取り出した  

 というかアイズさんのブロマイドた。

 

「ほら、これ。前は渡せなかったから改めて渡すよ」

 

 そういって私が欲しかったブロマイドを差し出した。

 

「本当に貰っちゃっていいんですか?」

 

「いいから渡したんだけどな。にしても本当に『剣姫』が好きなんだな」

 

「ええ、それはもう。だってアイズさんは小さい頃から、確か7歳の頃から冒険者を始めて、知ってますか? ワイヴァーンを倒してランクアップしたんですよ。あ、そういえば私も種類は違うとはいえ竜種を倒してランクアップしたからこれは何かの運命染みてますよね? 私とアイズさんは出会うべくして出会ったってカンジですよね。それとアイズさんの凄いところといえばなんといっても剣捌き。中層くらいのモンスターなら一瞬のコマ切れになっちゃうんですよね。私も魔法剣士になったらあんな風になりたいなぁ。それとアイズさんと代名詞とも言える風魔法も凄いんですよね。ゴライアスくらいならもうソロで倒せちゃいますよ。あとあと、クール過ぎてちょっと恐いかもっていう人もいるんですけどね、アイズさんはああ見えて結構可愛いところも多いんですよね。これがまたギャップになってアイズさんの凄さを引き立てているというか、まさにバニラの甘味を塩で引き立てているみたいで本当にアイズさんはカッコ可愛くて。もうアイズさんサイコーで。サイコーといえばアイズさんってファンクラブもあるんですよね。残念な事に私はまだシルバークラスなんですけどいずれ私もプラチナクラスの会員になって、ああ、これがそのカードなんですけどね。なんか凄いハイテクな技術が使われてるカードらしくて。ってアイズさんの事でしたよね……」

 

 これでもかというくらいアイズさんの事を聞かせたら途中で『なんかもうお腹いっぱい』とウンザリした顔で帰っていった。

 

 ちなみにブロマイドはいい感じの額縁が手に入ったので、それに入れて飾っている。

 




アンタレス……ジッパー……う~ん、何かひらめきそう。
ひらめいたからなんだって話ですけどね。

次回からまた日記に戻ります。

怪文書は気づいたら増えてるかもしれないゾ。


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十一頁目

祝☆お気に入り6000件突破ッ!
勝ったッ!ジョジョのオラリオ生活2年目開始!


 +月〇日

 

 新団員探しは現在、難航を極めている。

 

 ファミリアに入れてくれという連中はいるにはいるのだが、正直言うとあんまりいい印象はない。

 皆一様に『アストレア・ファミリアの正義』がどうたらと言っているのだが、『アトゥム神』使ってちょっと質問をして探ってみればあっという間にボロが出た。

 

 例:「君、別にアストレア様の正義に感銘とか受けてないよね?」

   「そ、そんな事無いですよー(Yes!Yes!Yes!)」

 

 蓋を開けてみれば『先代が遺した金で豪遊』だの『遺産を持ち逃げする』だの『上手い事やってファミリアを乗っ取って私物化する』だの碌な事考えてない連中ばかりで頭が痛くなりそうだ。

 有名になるっていい事ばかりじゃあないんだな

 おまけにそういう事考えている連中は直接お姉さんに入団を頼めばバレるからと基本的に俺を通そうとする。

 姑息な手を……。

 どっちにしろ面接はやるから最終的にはバレるんだよ。

 それに先代の遺産なんてお姉さんがオラリオを出る前にほとんど孤児院に寄付したから連中が豪遊できるような金額は残って無いのにね。

 真実を伝えたり、入団を拒否したら悪態ついて去っていくか逆上して殴りかかってくるかの二つで、それでもウチが良いって連中は皆無だった。

 どっちにしろそんな理不尽な理由で殴りかかってくるような連中はウチには要らねえや。

 

 かのナポレオンは『真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である』と言葉を残しているし、出来ればちゃんとした倫理観や強い向上心を持っている人物が良い。

 でも、そういうまともでいい志を持つ人材って『ロキ・ファミリア』みたいな大手に行っちゃうよな。

 おまけに『アストレア・ファミリア』は自警団のような事もやっててあくどい連中から恨みを買い易かったし、その結果一度瓦解してしまっているから元々冒険者になったばかりの新人が入り辛いんだろうか。

 

 この際、即戦力じゃなくていいからまともな人材来てくれ。

 

 

 +月△日

 

 こいつにだけはあんまり頼りたくなかったけど、『トト神』を使う時が来てしまったようだ。

 『トト神』は近い未来を予知する預言の書だ。

 それにボインゴが使っているのを見る限り、ある程度使用者の目的や意思を汲み取ってくれる節がある。

 もしかしたら新しい団員が入団してくるのを予知出来るかもしれない。

 問題があるとすれば予言は行為と結果が簡潔にしか描かれないために突拍子もないものだったり、結果を後出しで出してきたりで、『キング・クリムゾン』と併用して使う『エピタフ』と比べると使い辛いイメージがある。

 

 だが、使う。

 使わざるを得ない。

 『トト神』は悪行に関しては悉く失敗してるけど善行には成功してるから試してみる価値は大いにある。

 

 使ったら味のある(ヘッタクソ)な絵でこんな予言が出てきた。

 

『ジョジョは散歩の途中に足の不自由なお婆さんをおぶって送って行ってあげました』

 

『良い事ってするもんだよね。お婆さんはお礼にお小遣いをくれました』

 

『そんなジョジョも空腹には勝てません。揚げ物の香ばしい匂いに負けて、ジョジョは貰ったお小遣いでたくさんのじゃが丸君を買いました』

 

『おおっと、目の前に飢えた女性が倒れているじゃあありませんか』

 

『優しいジョジョはそのじゃが丸君を分けてあげましたとさ』

 

『ジョジョは新しい団員獲得だーーーッ!』 

 

 ちょっと困惑したけど、原作の『トト神』もこんな感じだったかなと思いながら予言の通りに散歩をする事にした。

 

 そしたらまさに杖をついたお婆ちゃんが重そうな買い物袋を提げて歩いてきた。

 予言の通りだったと俺はすっとんでお婆ちゃんをおぶって、ついでに買い物袋も持って家まで送ってあげた。

 でも、これくらいなら予言無しでもやったかもしれない。

 

 家の前まで送ったら、これまた予言の通りにお婆ちゃんはお礼にとお小遣い1000ヴァリスをくれた。

 ここまで予言の通りだと何だか恐くなってくる。

 

 普段ならそんなに散財しない方なんだけど、予言もあるし、お婆さんをおぶったせいか腹も減っている。

 それに丁度じゃが丸君が揚がる良い匂いもしてきた。

 これなら予言が無くても俺はじゃが丸君に敗北するだろう。

 どれくらいの量が必要かが分からなかったから貰ったお小遣いで買えるだけじゃが丸君を買った。

 買っておいてなんだけど、いくら腹が減っててもこんなには食えないな。

 

 目の前に黒髪を束ねた派手な和装の女性が行き倒れてるのを見て『トト神』の予言は絶対で100%覆らないと思い知った。 

 

 『トト神』やべえ。

 なんか恐いからあんまり頻繁に使うのはやめておこう。

 あんまり予言に縛られても行動が制限されるだけかもしれないからね。

 

 刀を2本提げてるし極東の侍か何かだろうと思って、俺はじゃが丸君を差し出した。

 女侍は迷わずじゃが丸君に喰いついて俺に礼を言うや否やガツガツと食べ始めた。

 せっかく見た目美人なのにガサツだ。

 

 そういえば極東って前世でいうところの何時代なんだろうか?

 侍……というか武士が目立ち始めたのは平安時代の終わり頃のイメージだし。

 う~ん、分からん。

 

 俺が持ってたじゃが丸君を食いつくすと『ご馳走様。いや~危うく上半身と下半身がくっつくところだったわよ』とケラケラ笑って改めて礼を言った。

 それを言うなら『お腹と背中』な。

 なんでも彼女が所属していた『クスミ・ファミリア』が主神の結婚からの寿引退によって解散して困っていたところ、そういえば姉がオラリオのファミリアで副団長をしているからそこに転がり込もうと一念発起してオラリオまでやってきた。

 しかし、姉が所属しているファミリアの名前を忘れるわ路銀は尽きるわで二進も三進もいかない膠着状態に陥って、とうとう空腹で倒れたそうな。

 

 彼女の名前はゴジョウノ・伊織。

 彼女が探していた姉の名前をゴジョウノ・輝夜。

 

 俺は思わず彼女の手を引いて『星屑の庭』へと連れ帰った。

 これを天啓と言わずに何と言う。

 

 お姉さんは俺が連れてきた伊織さんを見て『輝夜!?』と驚いていた。

 姉妹なだけに似ているようだ。

 性格は姉の方と比べると若干緩いそうだけど、比較対象を知らないからよく分からん。

 

 伊織さんはお姉さんから姉の死を知って、顔にこそ出さなかったけどショックを受けているようだった。

 出奔してたとはいえ身内の死を知れば普通はそういう反応をするだろう。

 

 伊織さんは特に行く当ても無いし、姉が命を張って守ったファミリアに興味があると入団を希望。

 今までは正義がどうのと言ってる連中ばかりだったしこういう志望動機は新鮮だ。

 

 軽く面接して人柄にも問題なし。

 おまけにレベル2で即戦力と入団拒否する理由も無い。

 お姉さんは彼女をウチに入れる事に決めた。

 

 新しい団員入って嬉しい。

 俺より3つ4つ年上だけど俺の方が先輩でいいんだよね。

 

 ギルドへの登録は明日にしてリューさんにも顔見せに行った。

 リューさんもお姉さんと同じく驚いていた。

 彼女からすればまるで幽霊にでも出会ったような奇妙な遭遇だ。

 

 事情を話すとリューさんもどんな言葉を返せばいいか困っていた。

 何せ自分を庇って死んだ盟友の遺族だからな。

 一頻り考えた彼女は前に腰に提げていた二振りの小太刀を持ってきて伊織さんへ渡した。

 あの小太刀は輝夜さんが死に際にリューさんへ託したものだったそうだ。

 

 しかし、伊織さんはそれを拒否。

 託されたのはリューさんだからリューさんが持ってるべきだと主張。

 

 そしたらなんか遺品の押し付け合いが始まった。

 前にリューさんが輝夜さんとは意見の違いでよく衝突したって言ってたけど、妹の方とまでこうなるとは。

 草葉の陰にいる輝夜さんはこの光景を見て何を思うだろうか。

 俺は正直どうでもいいんで軽くつまめるものとお姉さんへのお土産をオーダーした。

 

 最終的にはミアおばさんの一喝で言い合いは強制終了。

 遺品の所有権の話はお流れになった。

 

 

 +月―日

 

 今日は伊織さんをギルドに登録しに行った。

 ティフィさんはまるで自分の事のように喜んでいたし、ダンジョンの講義にも力が入っているようだった。

 というかレベル1の駆け出しじゃなくてもこの講義って受けさせられるんだな。

 

 今日は様子を見ながら6階層くらいまで行ければいいかなって感じで進めた。

 俺は何かあった時に手を出す程度でそれ以外はサポーターに回るくらいでいいだろう。

 

 伊織さんは思っていた以上に強い。

 極東にいた頃にも人やモンスター(極東では妖怪と呼ぶらしい)との交戦は多かったようで手慣れている。

 二刀流で敵をバッタバッタと切り伏せる様はまるでかの剣豪宮本武蔵のようだった。

 スタンドを加味しなきゃ俺よりも強いかも。

 ダンジョンに潜らずランクアップした経験値は伊達じゃあないってわけね。

 

 流石にウォーシャドウは初めて見る敵だったようで驚いていたけど、少しずつ勝ち筋を探し出して切り裂いた。

 6階層までで俺の手出しが必要な場面はまるでない。

 この腕なら中層でも通用しそうだ。

 明日にでも伊織さん用に『火精霊の護布』を使った装備を買って中層に挑むのもいいかもしれない。

 

 だが、念には念をだ。

 明日、12階層までで様子を見てどんなものか判断しよう。

 最初の死線(ファーストライン)を跨ぐのはそれでも遅くないし、出来ればもう一人くらい新しい味方も欲しい。

 

 

 +月@日

 

 今日はちょっと予想外の事態が起きた。

 12階層付近で伊織さんがどの程度通用するかを見ていたら下からヘルハウンドが3匹も上がってきた。

 こいつと戦うのは俺も初めてだ。

 それにまだ伊織さんは『火精霊の護布』の装備を持っていないから俺が盾になろうとした。

 

 伊織さんの刀がヘルハウンドの炎を切り裂いていた。

 

 炎を使った妖術を使う敵との交戦経験もあったそうだ。

 それがモンスターなのか、それともヒトなのかは言わなかったが。

 ヘルハウンド3匹を片付けたらすぐに上に上がった。

 

 俺が初めて相対するモンスターをああもあっさり片付ける姿を見て俺は潜った修羅場の違いってやつを思い知った。

 冒険者歴一年もいってない俺とは年季が違うのだ。

 

 悔しかった。

 もっと強くなりたいと思った。

 

 伊織さんにそう言ったら笑われた。

 そりゃ3つも下の子に抜かされるほど軟な訓練はしてませんと言われた。

 悔しいと思える限りもっと強くなれると頭を撫でられた。

 ヘルハウンドを片付けた後、すぐ上に戻るって指示は悪くなかったと褒められた。

 

 なんだかあやされているようで恥ずかしい気分だった。

 

 結論、この人を引き入れたのはきっと間違いじゃあなかったと思う。

 

 

 +月?日

 

 今日も今日とてリューさんと特訓。

 「伊織さんもどうですか?」と問えば「け、見学だけ……」と返ってきた。

 レベル5相手の特訓だから戸惑うのも無理はない。

 後、俺がタカさんみたいに吹っ飛ぶのも助長しているかもしれない。

 なんかリューさん、今日に限って気合入ってる気がする。

 俺がレベル2に上がったばかりの頃もこんな風に気合入れて俺をぶっ飛ばしてた。

 痛いけど死ぬわけじゃあ無いし、耐久があがるから別にいいんだけど。

 

 自分でも疑問に思うけど、Mに目覚めたわけじゃあないよな……?

 

 そしてダンジョン探索は伊織さん用の装備を整えて13階層に突入した。

 無理せずちょっとずつ進む方針へとシフトする事に決めた。

 チキン戦法と罵られようが死ぬよりはいい。

 2回目があったからって3回目があるとは限らんのだよ。

 それにウチのメンバー俺も伊織さんも前衛職で被ってるし、本格的な後衛職が仲間になるまで大幅な前進は控えたい。

 

 贅沢言わないからウィリディスみたいな後衛職が欲しい。

 

 

 +月/日

 

 今日は儲かった。

 

 6階層に入ったところでポーションを分けてくれと和風の着物を着た少年(もしかしたら少女かも)に頼まれた。

 伊織さんと同じ極東の人間だろうか。

 向こうも同じ極東人ならと俺達に声を掛けて来たみたいだ。

 

 どうやらリーダーが仲間を庇って負傷したらしい。

 持ってきたポーションも無くなって、だから出来ればポーションを分けて欲しいとの事だ。

 

 残念な事にウチの資金が潤沢という訳じゃあないから見ず知らずの連中にポーションをポンと渡せるような余裕はない。

 だが、ここで見捨てれば後味の良くないものを残す。

 だから俺が直接治しに行った。

 伊織さんも同郷のよしみで反対はしなかった。

 

 極東の人達は『タケミカヅチ・ファミリア』の団員達で最近になってオラリオに拠点を構えたそうだ。

 

 タケミカヅチってもしかして武御雷の事?

 あの相撲で有名な?

 

 ダンジョンに来ているのは、以下3名

 負傷したリーダーの少年、カシマ・桜花。

 それを見てる少女、ヤマト・命。

 そして俺達を連れてきたヒタチ・千草。

 

 まだ拠点に何人かいるそうだ。

 こんなに仲間がいて羨ましい。

 

 腹の傷は深いが、臓器にまでは達していない。

 6階層で大きな切り傷とくればウォーシャドウに思いっきり切られたようだな。

 

 これくらいならと俺は傷口を軽く水で洗ってやってから波紋で痛みを和らげながら彼自身の自己治癒能力を促進してやって傷を塞いでやった。

 痛みを波紋で和らげるで思いついたけど、『ゴールド・エクスペリエンス』での治療や再生に伴う痛みを和らげることが出来るんじゃあないか?

 機会があったら試してみよう。

 

 『タケミカヅチ・ファミリア』は主神がアルバイトをするほど金が無いらしく稼ぐためにとメンバーたちが無理をした結果、このような事態になったのが事の顛末だそうだ。

 アルバイトをする神様ってウチだけじゃあなかったんだな。

 ウチは完全に趣味の範囲だけど。

 

 何か礼をしたいと言われ、疲れてるんだったらさっさと帰って休めと返したんだが、どうしてもというから、だったらとサポーターでもして貰う事にした。

 

 取り分は7:3。

 

 雑談してたら伊織さんがやんごとない身分の家の出だと判明して極東組3名が青ざめてたりと色々あったが、稼ぎの効率はサポーターが3人もいただけに今までとは段違いだった。

 

 稼ぎはなんと総額約50000ヴァリス。

 こっちの取り分だけでも35000ヴァリスだ。

 カシマからも『自分達だけではこんなに稼げなかった』と深く礼を言われた。

  

 後、カシマからひっそりと団長やる上でのコツ等のアドバイスを求められた。

 

 ゴメン、俺が知りたい。

 




 新しく入ったメンバーの簡単な人物紹介を載せておきます。

 名前:ゴジョウノ・伊織
 
 種族:人間
 
『クスミ・ファミリア』⇒『アストレア・ファミリア』
 
 Lv.2
 
 二つ名:なし
 
 《魔法》
 
 《スキル》
 『天眼』
 ・目的を達成するための最適解を探し出すスキル。
 ・戦闘時のみ効果発動。
 ・特定した手段以外の手法を取った場合、効果消失。
 
 備考:今は亡き副団長ゴジョウノ・輝夜の妹で姉と同じく現実主義だが、姉と比べると若干緩く感情的な部分がある。
 しかし極東にいた頃は襲ってきた妖怪や野盗を容赦無く切り捨てたりと命の遣り取りには非常にシビア。
 腰に提げてる二本の刀には特に銘はない。
 目的は『剣の道を究める事』で、『アストレア・ファミリア』を選んだのも小規模でしがらみが少ないからと理由が大きい。
 ジョジョについては子どもながらによくやってると好感を抱いていて団長代行の座を奪うつもりはない、というか役職とか面倒。


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