続・二人の魔女 (ADONIS+)
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■プロローグ
1.新たなる旅立ち


シドゥリ暦3504年

 

 第二次ベヅァー戦争が集結してある程度の時間がすぎた。この第二次ベヅァー戦争というのは私、エリーゼ・ペルティーニ&アイシャ・ペルティーニが破壊神ベヅァーと行った戦いです(詳しくは前作『二人の魔女』を見てください)。

 

 さて、そんな戦いを潜り抜けた私とアイシャは骨休めも兼ねて監察軍本部に滞在していた。といっても何もしていなかったわけではない。レプリケーターのリミッターを改良して第三世代レプリケーターを作り出したりと監察軍に大きく貢献していた(『短編及び中編集 レプリケーター革命』を参照)。

 

 そのおかげでブリタニア帝国では市民生活が大きく変わってしまったわけですが、レプリケーターのようなチートな代物が民間に普及すればそうなるのは当然の事である。まあ、別に悪い事ではないし、むしろブリタニア市民の生活向上という意味では大きなプラスになっています。 

 

 

 

 しかし、そろそろ次の行動を決めなくてはいけないでしょう。さて、先の第二次ベヅァー戦争では、私たちが満を持して開発したカーリーとドゥルガーでさえ、破壊神ベヅァーに歯が立たず、死神が作ったグングニルに頼ってようやく勝利を拾った形となっていた。

 

 正直、カーリーとドゥルガーがあればベヅァーに勝てると自信を持っていただけにこの事はエリーゼたちに痛い教訓を与えていた。今回は何とかベヅァーに勝てたが次はどうなるかわからないのだ。相手が相手なだけにこちらの予想以上に強くなっていて敗北する事すらありえる。

 

 この問題をクリアするにはカーリーとドゥルガーの強化と、エリーゼたちの能力向上しかないだろう。この二つはいずれも監察軍本部に引きこもっていては解決する見込みがない。その為、私たちは再び下位世界を旅して魔法技術の習得を図り、更なる自己啓発に励むしかないだろう。

 

 

 

 そんなわけで旅に出ることにしたが、その前に改善すべき点があった。というのも、これまで私とアイシャは主に二人で下位世界を旅して現地の魔法技術を習得していたわけであるが、私たちの外見年齢が15歳なので現地の人間たちに甘くみられる事があったからだ。確かに15歳ほどでは小娘にしかみえないからそうなっても仕方ないが、私たちの活動に多少とはいえ支障が出ていた。

 

 しかし、だからといってわざわざ外見年齢を上げて年増や熟女になる気はない。何気にこの姿は気に入っているのだ。そこでその問題は同行する者を用意することで解決することにした。それは簡単にいえば、私とアイシャの父親役の人造人間を用意する事だ。

 

 そもそも、私が行く世界の多くは中世欧州風ファンタジー世界が多く、それらははっきりいって男尊女卑な世界だ。まあ、これは21世紀の日本でも男女平等が主張されている社会なのに、どちらかというと男尊女卑的なところが残っているのを考えれば当然の事だろう。

 

 そうなると、傍から見るといかにも経験豊富そうな中年男性というのは何かと都合がいい。しかし、そういった男性と私たちが一緒にいるのは不自然なので、それには私たちの父親役という役割を与えることにした。これなら私たちと一緒にいても不自然ではないからだ。

 

 そんなわけで40歳のイタリア紳士をイメージして作り上げた人造人間にアントニオ・ペルティーニと名乗らせることにした。正直言うと美女美少女なら兎も角いい歳したおっさんの人造人間を作るのはモチベーションが著しく低下してしまったが、私たちの活動の為にそこは我慢した。

 

 ちなみにアントニオの外見年齢が40歳なのは、私たちの外見年齢が15歳だからだ。設定上親子となるのだからなるべく外見年齢が釣り合わなければいけない。この場合、私とアイシャはアントニオが25歳の時にできた双子の娘という設定にしているから外見年齢がそうなったのだ。

 

 さて、このアントニオは人間にとことん似せておりこれといった戦闘能力を持たないが、リーラのようにランス世界の技能LVを与えておいた。といってもそれは執事とかではなく、話術LV2という代物だった。この話術LVは他者との会話に長けた技能で、LV2ともなれば人心掌握の達人になれるほどだ。

 

 いうまでもなくアントニオは下位世界を巡る際に現地住民との交渉などをやってもらうつもりなのだ。実際、監察軍本部でその手の研修を受けてもらったが、なかなかの評判で、この技能LVは下位世界の住民たちとの交渉でも役に立つだろう。さてと、準備を終えたことだしそれでは行きますか。

 

 かくして、私とアイシャはアントニオを連れて下位世界に赴くのであった。




あとがき

 エリーゼは下位世界の現地人と交流する際に美少女二人ではやりにくいと感じたため、威厳たっぷりのイタリア紳士な父親役を用意しました。以後、アントニオは煩わしい交渉などの雑用を押し付けれることになるでしょう。


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■カンピオーネ!
2.神具(神殺しの魔王編)


※2は、『カンピオーネ!』の世界が舞台になっています。


 新たなる旅に出た私は、『カンピオーネ!』世界のイギリスはコーンウォールにアイシャとアントニオを連れて転移した。時期は原作開始の一年前の21世紀で、まずはこのコーンウォールで下準備を行うことにした。

 

 その準備はそこいらにいる適当な一般人に暗示を使って資金調達することである。といってもその一般人には私たちが用意した宝石や貴金属類を現金にしてもらっただけである。

 

 ここで何故その程度の事で無関係の一般人を使うのかと思うかもしれないが、異世界から来た私たちは当然ながら戸籍がない為、その手の換金すらできないからだ。

 

 これが戸籍がしっかりしていない時代なら問題ないが、21世紀の先進国では大問題である。

 

 さて、私たちがコーンウォールにきた理由は、ここにはカンピオーネであるアレクサンドル・ガスコイン率いる魔術結社『王立工廠』の拠点があるからだ。

 

 もはや常套手段となっているが、お金にものをいわせて現場の魔術を学ぶ為に王立工廠を選んでいた。世の中なんだかんだと言ってもやはりお金が物を言うのだ。お金を積めば大概の事は穏便にできるわけだ。

 

 勿論、魔術結社ならどこでもいいというわけではない。赤銅黒十字や青銅黒十字のような昔からある名門の魔術結社だといくらお金を積んでも身元不明な不審者が魔術を学ぶのは無理だろう。

 

 しかし、王立工廠は結成されたばかりで名門とはいいがたく、そういった意味では格式張っておらず柔軟な魔術結社なのだ。

 

 そんなわけでアントニオにはお金を武器に王立工廠と交渉させた。シナリオとしてはオカルトマニアの資産家が娘たちに魔術を学ばせたいと考えて交渉に来たという話になっている。

 

 アントニオの交渉能力もあるだろうが、やはり大金を積んだのがよかったらしく、王立工廠が所有する魔術関係の書物を読む許可があっさりと下りた。これが私たち二人ならばこうも上手くいかなかっただろう。

 

 私たちは魔術の能力こそ長けているが、その外見から交渉の場などでは侮られやすいのだ。といっても、元々その手の面倒事は好んでいないので、アントニオに押し付けたわけである。

 

 言うまでもないが、王立工廠の有する書物の閲覧はそれほど時間はかからなかった。この世界の魔術はデモンベイン世界の魔術と違って閲覧するだけで負担がかかるという代物でもなかったので、速読で一気読みすれば簡単に習得できる。後は別の場所で一通り実践してみればいいだけだ。

 

 しかし、それで得た魔術は私たちから見ると物足りないものだった。まあ、原作知識からもこのカンピオーネ世界の魔術はショボいというかなんか地味な代物だから仕方ないけどね。とはいえ、ここまでは前座のようなもので、本命は神具です。

 

 この世界では神に関係する様々な神具が存在しており、それらのいくつかは王立工廠に収蔵されている。何故、結成したばかりの魔術結社にそんな代物があるのかと思うかもしれないが、単にトップのアレクサンドル・ガスコインがあちらこちらから強奪した代物を保管しているだけなのだ。

 

 ぶっちゃけ大英博物館のような感じで被害にあった魔術関係者たちに思いっきり喧嘩を売っているが、トップがカンピオーネだから迂闊に手を出せずにいるのが現状であった。

 

 私たちはそれらの品々を是非とも解析しておきたい。何しろ神具は様々な能力があるだけでなく不朽不滅の属性を有する代物が珍しくない。この不朽不滅の属性を有する神具はまつろわぬ神やカンピオーネでも破壊不可能というとんでもない代物だ。

 

 いくら私でも物品に不朽不滅の属性を与える事はできないので、その仕組みを解析しておきたいのだ。そうすれば今度の物作りに大きな利点になるだろう。

 

 その交渉をアントニオにやらせたところ王立工廠の魔術師たちの監視下で見るだけならという条件でクリアできた。勿論、大金を積んだのは言うまでもない。まあ、これが王立工廠を交渉相手に選んだ最大の理由だったわけだし、上手く行ったのは良い事です。

 

 ここで「見るだけでそこまでするか?」と思うかもしれないが、私たちの転生特典を用いれば肉眼で直接見ればそれで解析できてしまうのだ。結果として不朽不滅の属性の解析は成功したので収穫は大きかった。

 

 その後は、一年ほどこの世界の魔術の実践をしていたが、コロッセオが破壊されたことから頃合いと判断して東京に行って草薙護堂と接触することにした。

 

 

 

「どうも草薙護堂さんですね」

「ええ、そうですが、どちら様です」

 

 私は東京の街中で見つけた草薙護堂に話しかけた。

 

「私はエリーゼ・ペルティーニと申します。こちらは妹のアイシャ・ペルティーニです」

「はあ」

 

 護堂はなんかリアクションに困っていた。いきなり見ず知らずの外国人の少女に話しかけられたら対応に困るでしょうね。

 

「失礼ですが、草薙さんがイタリアの魔術結社からメドゥサの姿が刻まれた、黒曜石でできた拳大のメダルを預けられたと聞き、あなたに会いに来ました」 

「えっ、これのことですか?」

 と、神具ゴルゴネイオンを見せる護堂。

 

 勿論、私とアイシャはそれを見逃すほど甘くはない。即座にゴルゴネイオンを解析して理解した。この時期の護堂ならば一般人としての感覚が強いのでその手の管理が甘く、あっさりとゴルゴネイオンを見ることができると踏んでいたが予想以上に容易かった。

 

「やはり神具ゴルゴネイオンですね」

 

 正直言うと護堂にもう用はないが、ここで即座に帰るのはあまりにも不審な行動なので、一応話だけはしておく。

 

「草薙さん、貴方はイタリアの魔術結社がどういう意図をもってこれを貴方に渡したのかわかっていますか?」

「いや、そんなことをいわれてもな…」

 と、護堂は言葉を濁す。

 

 やはり原作通りエリカに唆されて、ろくに裏事情も知らずに東京に持ち込んだのだろう。

 

 このゴルゴネイオンは貶められた女神アテナとメドゥサの徴で失われた地母神の叡智、闇へ至る道標である神具。そしてまつろわぬアテナを招き寄せてしまう厄介な代物だった。

 

 当然そんなものをもっていれば、イタリアがまつろわぬアテナに襲撃されて大きな被害を受けてしまう。そこでゴルゴネイオンを護堂に東京に持って帰らせることで、本来ならイタリアが受ける被害を東京に押し付けるという策略なのだ。

 

「そんな…」

 

 その辺りの裏事情を親切丁寧に教えてあげると護堂は顔色を変えていた。

 

「ですから草薙さん。今回の一件は貴方が責任を持って東京に被害がでないように頑張ってください。それが責任の取り方というものです」

 

 まあ、護堂の権能は周囲に被害を与えてしまう代物だから無理でしょうね。そもそもたかが一魔術師と戦う時でも周囲に大きな被害を与える護堂がまつろわぬ神相手に被害を抑えて勝利するなどという器用な真似はできないのはわかりきっている。故に原作通り東京は被害を受けるだろう。

 

 最もそんなことは私たちの知った事ではないので、適当に話を切って護堂と別れた。これでこの世界で得られるものは大体得たので、私たちはこの世界から引き上げることにした。

 

 

 

 ちなみに私たちがカンピオーネ世界に来たのにテンプレのように神を弑逆してカンピオーネになろうとしないのは、それが私たちに不都合だからだ。というのも、私たちの身体は転生特典で優れた才能と能力を持っているが、下手に体をいじると逆に弱体化してしまう恐れがあるからだ。

 

 カンピオーネの場合、まつろわぬ神を殺すとパンドラによって体を作り替えられてしまう為、上記の理由からそれを避けていた。護堂にように元は大した能力を持たない者ならばカンピオーネになるのは大幅な強化になるが、死神によって強化された体を持つ私たちの場合はカンピオーネになるのはデメリットが大きいのだ。

 

 ついでに言えばカンピオーネになっても大して強化されないという理由もある。確かにこの世界においてカンピオーネは強者であるが、ドラゴンボール世界の戦士たちに比べるとあまりにも見劣りしてしまう。正直権能が使えるようになったとしても、ちょっとした超能力が使える程度にしか感じられません。



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■ドラゴンボール
3.完全体セル(人造人間編)


※3~5は、『ドラゴンボール』の世界が舞台になっています。


 カンピオーネ世界から引き上げた私は、ドラゴンボールの世界に来ていた。この世界は全王を頂点に12の宇宙から成り立っており、物語の主な舞台となるのは第7宇宙の地球である。

 

 そこで、その地球にて人造人間セルを作り上げることにした。このセルは原作ではドクター・ゲロが格闘の達人たちの細胞を用いてバイオテクノロジーで作り上げた代物である。

 

 監察軍では以前ドクター・ゲロの研究所を調査して人造人間などの技術を回収している。勿論、セルに関する技術も回収済みであるが、実際に作られることなく廃棄されていた。とはいえ、技術は回収済みなので作ろうと思えば作ることは可能であった。

 

 何故わざわざセルを作るのかというと、それはある程度の力を持つ戦士を用意しておいた方がいいと判断したからである。

 

 実はトリッパー仲間でも最強を誇るミズナがまともに戦える敵やライバルがいなくなり修行の効率がかなり悪くなったことから、千年以上前に時間凍結によって眠りについていたのだ。

 

 ミズナとしても超サイヤ人ゴッド超サイヤ人4という超サイヤ人ブルーすら遥かに凌駕する強大な力を手に入れてしまった為に、修行のモチベーションを保つことができなくなったのだろう。そこで新たなライバルもしくは強敵の出現を待つべく時間凍結に入ったが、ベヅァーに対抗できうるミズナが行動不能なのは監察軍としても地味に痛手だった。

 

 幸い私とアイシャがベヅァーに対抗できるだけの力を手に入れていたから第二次ベヅァー戦争でもミズナを起こす必要はなかったが、いつまでも放置するわけにもいかない。

 

 いい加減、ミズナの相手を用意してやったほうがいいし、それ以外にもベヅァーとの戦いで足止め役になる戦士を用意する目的もあった。

 

 勿論、セルでは例え完全体でもベヅァーどころか魔人ブウにすら太刀打ちできないのは分かっているが、それはオリジナルをそのまま作らず改良すればいい。つまりもっと強力な完全体を作り上げ、それを更に強化して究極体にすればいい。

 

 しかし、完全体の次に究極体となるとまるでデジモンである。タマゴ状態で未成熟の時は幼年期、タマゴからふ化したら成長期、第一段階になったら成熟期、という感じで当てはめればデジモンみたいと言えるかもしれないが、その辺りはどうでもいいでしょう。

 

 監察軍ではセルのデータがあるので材料には事欠かない。フリーザたちフロスト一族、ナメック星人、サイヤ人などの細胞は手に入るので、コンピュータにセルを作らせればいいだけだ。

 

 とはいえ、オリジナルのセルをそのまま生産しても意味はない。セルを強化すべくセルに組み込むサイヤ人の細胞をブロリーのものに変更しておいた。

 

 ブロリーは無限に戦闘力が増大するのではないかと思えるほどの化け物じみたサイヤ人で、そのスペックは孫悟空やベジータの比ではない。試算によるとブロリーの特異な細胞であればセルが大きく強化できる。

 

 更にセルの餌となる17号と18号もより上質な糧となるように改良しておいたので、これなら完全体セルのスペックは魔人ブウすら凌駕するだろう。

 

 勿論、そのまま作らせるなら時間がかかり過ぎるからダイオラマ魔法球の中で作らせればいいでしょう。それなら時間加速で完成までの時間を大幅に短縮できる。

 

 そんなわけでコンピュータにセル、17号、18号を二体ずつ作らせた。何故二体づつ作るのかというと私の構想上完全体セルがどうしても二体必要だからだ。

 

 私は完成した二体のセルにそれぞれ17号と18号を吸収させた。この17号と18号はオリジナルではなく監察軍のデータからつくりあげたコピーであるが、改良によって大幅なバージョンアップがなされている。といっても最初から糧として用意されているからあっさりとセルに吸収された。

 

 私はこうして誕生した二体の完全体セルにそれぞれセルワンとセルツーという名前を便宜上つけることにした。そう長く使う予定ではないが、流石に全く同じ名前の者がいると紛らわしいからね。




解説

■ミズナ
『超戦士伝説』に登場するサイヤ人のトリッパー。超サイヤ人ゴッド超サイヤ人4という超サイヤ人ブルーすら遥かに凌駕するとんでもない強い存在になれる。 

■時間凍結
 天地無用の世界から回収した技術。対象の時間を止めることで半永久的にそのままの状態で保存できる。ぶっちゃけると冷凍睡眠の上位互換。


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4.究極体セル

 完全体になったセルワンとセルツーは、ひたすら修行させていた。ちなみに私とアイシャは鬼械神に搭乗していない時は例え魔導書と一体化したマギウススタイルの状態でもそれほど強くない。

 

 勿論、それはドラゴンボール世界の基準での話だが、当然ながらそんな状態ではセルワンとセルツーを力ずくで統制できる状況ではない。その為、安全策としてセルワンとセルツーの魂には私が作った人工霊魂をもちいており、その魂の設計図たる霊基構造には私に対する絶対服従を組み込んでいた。

 

 少々やり過ぎと思われるかもしれないが、原作でドクター・ゲロが自分が製造した人造人間に殺されてしまっている以上、その程度の安全対策を施すのはむしろ当然の事だった。というか、いくらベジータたちに追い詰めらえてしまいやむを得ず17号と18号を起動させたとしても自分が製造した人造人間に殺されてしまったドクター・ゲロが間抜けだったと言える。

 

 原作のセルは他者の生体エキスを吸収したり17号と18号を吸収して強くなっただけで修業とかは一切していないが、私はセルワンとセルツーをみっちりと修行させていた。

 

 まあ、修行などさせずとも改良によって十分強化されているのだが、せっかくフロスト一族やブロリーの細胞を組み込んでいるのに何もしないなど勿体ないにもほどがある。

 

 そこでドラゴンボールでお馴染みの重力を用いた修行をやらせることにした。といっても原作のように狭い重力室で鍛えさせるのではなく、腕時計型の重力制御が可能なマジックアイテムを与えて個人レベルで修業できるようにした。

 

 こうすれば重力室のような限られたスペースでしか修行できないという制限がなくなり惑星すべてを用いて修行ができるのだ。

 

 このマジックアイテムは私の特製品で更に過酷な修行にも耐えられるようにそれ自体に不朽不滅の属性を与えておいた為、見た目は華奢な腕時計みたいであるが、かめはめ波や気円斬をぶつけても絶対に破壊できないというチートな代物だったりする。

 

 そんな代物だけにセルワンとセルツーは腕時計型の重力制御装置を付けたままで組み手を行って激しく打ち合う事すら可能だったのだ。

 

 それでそんな修行の果てにゴールデンフリーザほどではないがセルワンとセルツーはかなり強くなった。

 

 高望みを言うならゴールデンフリーザ並に強くなれたらよかったが、あれはむしろあの短期間であそこまで強くなったフリーザの方が異常なのだろう。正直完全体の段階であそこまで強化するのは無理なので、私はほどほどで妥協していた。

 

 そして、最後の仕上げに私は監察軍からポタラを取り寄せていた。

 

 このポタラはミズナがむかし第7宇宙の界王神から入手した合体アイテムで、それぞれ反対側の耳につけるだけで合体できるという代物なのだ。その効果は二人の戦闘力×戦闘力となり、合体する二人の戦闘力が高ければ高いほど効果がある規格外な代物だった。

 

 この特性から少しでもセルワンとセルツーの戦闘力を高めておけばより強力な戦士が誕生するわけだから、わざわざ手間をかけてまで修行させていたわけである。

 

 ちなみに、トリッパーは上位世界人の魂を有するためにその下位世界に属するありとあらゆる力でもその魂に干渉できないという特性から、トリッパーはポタラによる合体ができないという欠点がある為、このポタラは監察軍では正直微妙な代物だった。

 

 しかし、それならトリッパー以外の戦士同士をポタラで合体させればいいわけで、私は改良した二体の完全体セルをポタラで合体させて、完全体の更に上をいく究極体セルを作り上げようと考えたのだ。

 

 早速、セルワンとセルツーにそれぞれポタラを付けさせると、二人は合体してやがて一人のセルとなった。

 

 その究極体セルは外見はまったく同じであるが、その戦闘力はセルワンの戦闘力×セルツーの戦闘力となっており、強さは桁違いどころが次元違いの代物だった。

 

 こうして、私はミズナの相手役兼強力な手駒を手に入れたのだった。




あとがき

 ポタラは原作では合体したら二度と元に戻れないとなっていますが、『ドラゴンボール超』では界王神以外は一時間しか合体できないとなっています。このトッパーシリーズでは原作を優先してポタラで合体したら元に戻れない設定です。


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5.超ドラゴンボール

 究極体セルを完成させた私は監察軍本部で時間凍結に入っていたミズナを起こしてセルを紹介した。

 

 最初はミズナもセルが自分に対抗できるか不信に思っていたが、セルが究極体としての力を知るや積極的にセルと訓練を行うようになった。やはりミズナは自分に対抗できる存在を求めていたのだろう。

 

 ミズナはトリッパーとはいえその身に流れる戦闘民族サイヤ人の血はセルという強力なライバルの出現の喜んでいるはずだ。

 

 セルにとっても強化し過ぎた関係でミズナとライバル関係になるのは大いにプラスになるでしょう。何物にも太刀打ちできない最強というのもいいかもしれませんが、戦士にとって自分とまともに戦える存在がいないというのはつまらないものです。

 

 ちなみに私やアイシャの場合は強敵やライバルを求めたりはしません。そもそも私たちは戦士ではなく魔女にして研究者ですからそういう好みはないんです。

 

 こうなるとこの世界で得る技術はこれといってありません。そもそもこのドラゴンボールの世界の技術はすでに監察軍があらかた回収済みであり今更技術回収の必要がないからです。

 

 そうなると、現地の魔法術式でも学習するすればいいと思うでしょうが、この世界は剣と魔法の世界ではなく、格闘漫画の世界なので魔法に関わる存在は非常に少なかったりする。唯一、バビディという魔導師が出ていますが、あいつは非常に性格が悪いから関わらない方がいいでしょう。

 

 勿論、ドラゴンボールの世界は多種多様な宇宙人たちが存在しており、中にもまともな宇宙人の魔導師もいるかもしれませんが、一々そんな者を探すのは面倒ですし、地球人ならともなく宇宙人とのコミュニケーションにはかなりの不安があるので、これは避けたい。

 

 

 

 何か価値のあるものはないかと考えていた私は、この世界に存在する超ドラゴンボールの存在を思い出した。普通のドラゴンボールはブリタニア帝国に保護されたナメック星人のものを解析済みですが、そのオリジナルである龍神ザラマによって作り出された超ドラゴンボールは未だに見たことがなく、当然ながら解析などしたことがありません。

 

 超ドラゴンボールならば他の神龍と異なり、叶えられる願いに際限がないという特注は、ある意味究極の願望器と言えます。私たちにとってそれは非常に興味がそそられるもので、手間をかけて第6宇宙と第7宇宙からわざわざ探し出す価値は十分にあった。

 

 とはいえ、非常に広い第6宇宙と第7宇宙全部を一々地道に探すなどやってられないから、ドラゴンボール超のブルマのように両宇宙の中心で特性のドラゴンレーダーを使って集めた。ただ超ドラゴンボールの惑星にも匹敵する大きさから普通の方法では回収できないので、わざわざ亜空間収納で格納する羽目になってしまうのだか。

 

 しかし、超ドラゴンボールは本当に集めるのが大変ですね。私は監察軍の技術を用いて力技で解決していますが、普通なら無理ですね。まあ、だからこそ破壊神シャンパでも超ドラゴンボールの回収にかなり手間どったわけなんでしょうが。

 

 こうして七つの超ドラゴンボールを一か所に集めて解析してみたが、やはりオリジナルだけあってナメック星人のドラゴンボールとはレベルが違っていた。というか大きすぎて解析だけでも一苦労だったのは言うまでもないだろう。

 

 それでも解析に成功して願いを叶える願望器を作り出すノウハウを得たのは大きな収穫でした。まあ、この超ドラゴンボールは惑星クラスの玉を七つも用意しなくてはいけない上、神の言語で願いを言わないといけないから使い勝手は非常に悪いので、超ドラゴンボールをそのまま複製するつもりはありません。

 

 どうせ作るならもっと使い勝手の良い願望器を作ればいい。というか道具というのは使う者の事も考えて使いやすさも追及しないと駄目でしょう。さて、もうこの世界にいる用もないので立ち去るとしますか。

 

 ちなみに私は超ドラゴンボールを第7宇宙のある宇宙空間に集めましたが、願いを叶えることはしていません。大した能力もない者なら叶えられない願いがあるでしょうが、私程の存在になると大抵の事は自力で何とかなるから神龍に叶えてほしい願いなどなく使う必要がありません。その為、超ドラゴンボールは集めて解析が終わったらその場に放置しておきました。

 

 もしかしたらそのうち破壊神シャンパと付き人のヴァドスがこの超ドラゴンボールを回収しに来るかもしれませんが、それはどうでもいいことです。




あとがき

 超ドラゴンボールはあの世界では特殊な存在なのでエリーゼたちであっても興味深い物だろうと思い、あの二人に解析させてみました。とはいえ、二人にとってはもっと手軽に過程を無視して結果を引き出すことができる使い勝手の良い願望器の方が有効だろうと思いますが(笑)


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■聖闘士星矢
6.聖衣(聖闘士編)


※6は、『聖闘士星矢』の世界が舞台になっています。


『ドラゴンボール』の世界から引き上げた私たちは『聖闘士星矢』の世界に来ていた。この世界は聖衣(クロス)や女神アテナなど興味深い存在が多い。

 

 聖衣は生命を有する金属な上に、小宇宙(コスモ)を増幅させるという性質だけでなく、そもそも素材そのものが神秘金属である神鍛鋼(オリハルコン)、ガマニオン、銀星砂(スターダストサンド)の合金である為、その解析は得るものが大きい。

 

 女神アテナに関しては魂、精神、肉体あらゆる面で普通の人間とどう違うのか調べてみたいのだ。

 

 その為、この世界にきてすぐに射手座(サジタリウス)の黄金聖衣(ゴールドクロス)と女神アテナを確保しておいた。といっても、城戸光政よりも先に死にかけたアイオロスに接触しただけだけどね。

 

 アイオロスから説明を受けてアテナを託されたが、原作知識からその話をとうに知っていた私はばれないようにあえて知らないふりをしておいた。

 

 アイオロスは瀕死だったが、私が回復魔法をかければ助けることは可能だったが、私の予定上彼には死んでもらって方がいいのであえて見殺しにしておいた。

 

 まず黄金聖衣の解析はすぐに終わった。古代人の作り上げたとはいえ所詮はチート能力を持たない普通の人間が作りあげた代物に過ぎないので、材料さえあれば複製品を作るのは簡単だった。

 

 その材料にしても神鍛鋼(オリハルコン)、ガマニオン、銀星砂(スターダストサンド)は解析できたことから錬金で簡単に作れるようになった。

 

 ちなみに私たちはこれらの他にも流白銀(ミスリル)、日緋色金(ヒヒイロカネ)、青鍛鋼(ブルーメタル)などの神秘金属を精製できる。

 

 何故かというと、金剛鉄(アダマンタイト)と流白銀は(ミスリル)ファイナルファンタジーⅤの世界で、日緋色金(ヒヒイロカネ)はデモンベインの世界で、青鍛鋼(ブルーメタル)はドラゴンクエストⅢの世界で、それぞれ解析済みだからだ。

 

 余談だが、これらの神秘金属を強度順に並べると、

 

 神鍛鋼(オリハルコン)>金剛鉄(アダマンタイト)>日緋色金(ヒヒイロカネ)>青鍛鋼(ブルーメタル)>流白銀(ミスリル)となる。

 

 アテナに関しては遺伝子だけでなく、魂の設計図である霊基構造もちゃんと隅々まで調べておいた。やはり見た目は人間そっくりであるが、遺伝子だけでなく霊基構造も人間とは全く違っていた。

 

 解析自体は終わったのでその気になればアテナと同じような神々を作り上げることも可能であるが、今のところそれは必要ないだろう。

 

 そんなアテナは私の娘として育てることにした。10歳になった辺りから定期的に献血をさせてアテナの血液を確保しておいた。アテナの霊血はかなり使える代物なので確保しておいて損はありません。

 

 ここで霊血を確保といっても別に手首を切ったりせずに普通に献血をやっている。というか聖闘士星矢では手首をやたら切るが、別にそこまでせずとも多少の道具を使えば献血の要領で血液を確保できるだろうと思うのは私だけだろうか?

 

 

 

 そんなこんなで原作の時期に突入したが、私は城戸光政とちがって地上の愛と正義など興味がないので基本的に無視しています。といってもアテナは私がモルモット兼養女として確保しているから原作よりも状況が悪化していますけど。

 

 せめてもの情けに解析を終えた射手座の黄金聖衣を聖域に転送しておいたから、原作とちがって射手座の黄金聖闘士がすでにいます。

 

 そのまま時間が過ぎて、何故かポセイドンが動くことなくハーデスとの聖戦に突入してしまうが、当然ながら聖域は冥王軍に勝つことはできずに敗北してしまう。

 

 その際に、ハーデスとの聖戦に突入したにも関わらず姿をみせないアテナに揉め事になり、サガが教皇に成り代わっていた事が発覚したりもしてぐたぐたの酷い有様だった。

 

 ここまでくると聖域の者たちがかわいそうになってくるが、はっきり言って、この時代の聖域はダメダメなので同情の余地はないでしょう。そもそも先代のサーシャの時代まではしっかりしていたのに、この時代では初っ端からサガに乗っ取られるわ、Ωになるとマルスに乗っ取られている。

 

 まあ、敵に乗っ取られたりする方が物語としては盛り上がるのだろうが、組織として考えるとボロボロでしょう。

 

 重要なのはこれら一連の戦いで聖衣や冥衣などの解析できたことだ。おかげで随分と研究が弾んだ。

 

 勢いあまって、黄金聖衣、白銀聖衣、青銅聖衣を計88個全部作り上げたほどです。まあ、原作と違って黄金聖衣が13個あったり、本来なら番外的な扱いの星座も白銀聖衣や青銅聖衣に組み込んだりといろいろやりました。

 

 勿論、これらの聖衣はすべて女性用にデザインされています。私がむさくるしい男用の聖衣などわざわざ作るわけがないでしょう? いずれは見目麗しい美少女たちによる聖闘士軍団を私の親衛隊として編成してみたいものです。

 

 最も、黄金聖衣だけは結構手間取った。作るだけなら簡単なのだが、その色合いは原作の黄金ではなく金色に近いものでこの世界の射手座の黄金聖衣の輝きには到底及ばなかった。

 

 その理由は作られてから間もないからだ。その黄金聖衣は神話の時代に作られて長い年月をかけて黄道十二宮にあたる太陽の力が蓄積された代物なので、つくられたばかりの黄金聖衣がオリジナルの劣るのは当たり前です。

 

 しかし、ここで諦めるつもりはない。太陽の力が蓄積されていないなら蓄積させればいいと判断して必要以上に力を籠めさせておいた。

 

 具体的には新たに用意した宇宙のタマゴを使って太陽の周りをダイソン球で覆ってしまう事だ。

 

 このダイソン球とは恒星を卵の殻のように覆ってしまう仮説上の人工構造物だ。通常太陽の発する光と熱の殆どが宇宙空間で消えてしまい、地球などの惑星にはほんの一部しか利用されていない。

 

 しかし、このダイソン球ならば桁違いの光と熱を得ることができ、それを13個の黄金聖衣が吸収するように調整すればいい。

 

 こうして、宇宙のタマゴで10億年ほど莫大な太陽の力を吸収した黄金聖衣は事前にアテナの霊血を吸収させていたこともあり、やたら強力な黄金神聖衣になれるようになった。

 

 

 

 また、他にもトリッパー仲間のレイナから聖衣を参考に小宇宙ではなく聖光気を増幅させる鎧を制作してほしいと頼まれていたので、これも黄金聖衣とおなじくアテナの霊血と太陽の力を蓄積させて強力な聖光気の増幅器を作り上げレイナに渡しておいた。

 

 そんなわけで、この『聖闘士聖矢』の世界では得るものが大きかったですが、そろそろ次の世界に行くことにしましょう。



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■十二国記
7.妖魔と神仙(十二国編)


※7は、『十二国記』の世界が舞台になっています。


『聖闘士星矢』の世界から引き上げた私は『十二国記』の世界に来ていた。

 

 この世界は古代中華風ファンタジー世界で、文明レベルなどは古代中国に似ているものの、天帝などの神々だけでなく、麒麟や仙人、妖魔や妖獣などといった存在まで実在している。

 

 更にこの世界の人間は(動物などもだが)母親の胎盤からではなく、里木と呼ばれる木に子供がなるという奇天烈極まりない世界だったりする。まあ、考えようによってはこの里木が人工子宮の代わりになっており神々がそれらを運用していると解釈できる。

 

 実際、里木を解析してみると人工子宮の役割をしていたので、この解釈は間違っていないだろう。

 

 私もやろうと思えば木に子供を宿らせることはできるが、わざわざそんなことをするよりも人工子宮の機械を使った方が効率的だし、何かと使い勝手がいいからやったりしない。

 

 神々に徹底に管理された十二国記の世界観から思うに人間が木からなるのは人口調整の為だと思わせるが、随分と面倒な方法を取るものですね。

 

 

 

 道具で言えば冬器と呼ばれる妖魔や神仙を傷つけることができる特殊な呪がかけられた剣などもある為、興味深いと言えば興味深い世界だったりする。

 

 そこでいつものように適当に会話をすることで現地の言葉を学習して金塊を換金してお金を得た。その金で冬器を購入して解析したが、ぶっちゃけると冬器はちょっとした概念武装にすぎなかった。

 

 念のため、妖魔を捕えて解析してみたが、やはりこの世界の妖魔や神仙は何の神秘が込められていない通常攻撃は受け付けないが、概念武装どころか僅かなりとも神秘が含まれている武器や攻撃ならば殺すことができる事がわかった。

 

 要は通常兵器ならば自動小銃どころか、ミサイルやビーム兵器でさえも妖魔や神仙に通用しないが、私の使う魔術なら何の問題もなく妖魔に通用するのだった。

 

 しかし、通常兵器が通用しない生物というのは何かと興味深いので、妖魔のDNAや霊基構造を調べておいた。これでその手の生物を作ろうと思えば作れる。とはいえ、そんな生物を使用する機会があるかは分からないですけど。

 

 

 

 妖獣も妖魔と似たような感じで、一応捕えて調べてみたがさして参考になる物はなかった。妖魔と妖獣に共通する空を飛べる身体構造ではないのに人間を乗せて飛ぶことするできる理由も妖力を使っているに過ぎない。

 

 正直な話、単に空を飛ぶなら不安定極まる生き物に騎乗するよりも魔術や魔法の箒などの道具を使って飛んだ方が安全だし、何より手っ取り早いから私のその手の生き物を使うことはない。

 

 後、この世界にもちょっとした術の類もあるが、他の世界の魔法とかに比べるとショボいし使い道がいまいちなのであえて研究する必要はないでしょう。

 

 

 

 後は神仙の中で特に強力な王を調べてみたいが、妖魔とは違い神仙その中でも頂点にいる王を調べるなど容易にできる事ではない。

 

 しかし、原作知識を持つ私は行き倒れの少女を拾うことでそれを可能にした。この少女は物語の主人公である中嶋陽子(なかじま ようこ)で王を調べるとなるとこの時期の彼女が最も容易である。というかそれを狙ってこの時期の巧州国に来ていた。

 

 そして気絶している陽子を巧州国から連れ出して色々と調べてみたが、やはり常人とは身体構造が違っていた。いや、そもそも木から生まれていることから、この世界の人間そのものが常人ではないのだが、それを比べても違うのだ。

 

 即位していない為、完全な王とは言えないが、ほとんど王である容姿の変質した体は興味深いものだった。

 

 ついでに陽子が持っていた宝重の剣もついでに解析しておいたが、これは強大な妖力を持つ妖魔を封印して、その力を利用している代物だったので、制作に難がある代物だった。大体、機能が中途半端なんですよ。

 

 剣であるならば、あくまで近接戦闘に能力を絞れていいのに余計な機能までついている。鞘と剣が離れると暴走してしまうなど欠陥がある。正直、見たい映像をみるというならば鏡の方が使いやすいでしょう。

 

 まあ、それはともかく目を覚ました陽子と話してみたがやはりこの時期の陽子は疑心暗鬼の塊で非常に面倒な存在となっていた。一応、会話をしてみたが、まるで話にならなかった。下手をすると私が寝首をかかれかねない為、早々に陽子と別れることにした。もう、彼女に用もないからね。

 

 そういえば何気に楽俊との出会いを潰してしまいました。こうなると陽子が景王として即位できるか怪しいものですが、そんなことはどうでもいいでしょう。

 

 そして、私たちはこの『十二国記』の世界から引き上げた。



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■Dies irae
8.永劫破壊(永劫回帰編)


※8は、『Dies irae』の世界が舞台になっています。


 15世紀となったこの時期の地球近郊に宇宙船というありえないものが存在していた。これはいうまでもなく私とアイシャが乗っている監察軍の巡洋艦である。私は巡洋艦に何の隠蔽処置を施すことなく地球に降下していき、やがて日本のある僻地に降りた。

 

 この世界には覇道神と呼ばれる人間から成った唯一神が存在しており、通常ならばその手の神々がいる世界にはあまり目立たないようにするのだが、あえてこのような事をしたのは理由がある。

 

「……君たちは何者かい?」

 

 案の定この派手に行動に釣られて目的の人物が、この当代の覇道神メルクリウスが出てきた。パッと見ではただの人間の青年にしか見えないが、その力は見る者が見れば一目瞭然だった。さすがは覇道神の端末である。

 

「私はエリーゼ・ペルティーニ、そしてこっちが私の妹のアイシャ・ペルティーニよ。私たちは異世界から来たわ」

 

「異世界だと。そんなまさか……」

 

「信じられないかもしれないけど、私からは既知感を感じられないでしょう。それが証拠よ」

 

 メルクリウスの永劫回帰の法によりこの世界のあらゆる物は既知となっており、未知の存在など存在しないが、この世界に属さない異世界人である私は既知ではなく未知の存在となる。

 

「なるほどね。確かに私の世界に属さない者ならば未知だろうね」

 

「そうよ。そして私たちがこの世界に来たのは貴方と取引をする為よ」

 

「取引ですか」

 

 そんな私に怪訝そうにメルクリウス。私たちが異世界から宇宙船に乗ってド派手に来たわけですから、それもわからなくもありません。

 

 今回の目的はメルクリウスの永劫破壊(エイヴィヒカイト)などの魔術技術を得る事だ。勿論、あのメルクリウスがただでそれを教えてくれるわけがないから、メルクリウスにとって価値のある情報を売る事にした。

 

 そもそも『Dies irae』という作品は要約すると当代の神座であるメルクリウスがマリィを次代の神座にするために舞台劇で、その為に様々な仕込みをしているのだ。

 

 しかし、そうまでしてマリィを第五天にしても波旬が登場すれば台無しになってしまう。そんな結果はメルクリウスにとって極めて不本意な筈だ。だからこそ波旬の登場やマリィ亡き後の『神咒神威神楽』の情報は極めて高く売れるのだ。

 

 その予想通りメルクリウスは私の情報に食いついてきて、かなり良い取引になった。まあ、私たちが異世界の存在で技術を渡してもこの世界に影響を与えないというのも大きかったのだろうね。

 

 そんなわけで私たちはメルクリウスに聖遺物を見せてもらったり永劫破壊(エイヴィヒカイト)をはじめとしたこの世界の魔術を教えてもらった。

 

 結果的に言うとエイヴィヒカイトは確かに強力だ。活動、形成、創造、流出の四位階が存在して、西洋神秘思想における四層概念の名前が冠されているが、最後の流出に至っては覇道型のみ対応しており、求道型がその位階に至ることを最初から考慮していない。

 

 これは創始者のメルクリウスが最初から覇道神だけを求めていて求道神を除外していたことが大きい。その為、エイヴィヒカイトの位階を活動、形成、創造、太極に改めて求道神に対応させた。元々太極は続編の『神咒神威神楽』では流出が太極に変わっていたからね。

 

 また、エイヴィヒカイトを施された者は能力を強化するために人間を殺して魂を回収していかないといけない上に、魂の回収の為に慢性的な殺人衝動に駆られるようになるという問題点があり色々と問題があった。

 

 まあ、元がメルクリウスの永劫回帰の法を破壊する為に編み出された術理なのだから他の目的に使おうとすると不具合が出てくるのは当然だろう。その辺りは目的に合わせて改良していけばいい。

 

 例えば、エイヴィヒカイトに宇宙のタマゴを組み込むとかすればどうだろうか。一々魂の取り込むのは面倒だが、これならエイヴィヒカイトの契約者がいきなり太極に至らせることも不可能ではない。勿論、様々な改良が必要であるが、ちまちまやるよりもその方が手っ取り早いだろう。人間の魂を取り込むのではなく一つの人工宇宙を取り込ませるというのは我ながら豪快なアイデアだね。

 

 流石はメルクリウスというべきか彼から魔術を学ぶ事は非常に多く、200年ほど彼から教えてもらう生活を送ることになるのであった。メルクリウスにとっても未知の存在である私たちとの交流はそれなりに楽しめたようで、上機嫌で私たちと魔術に関して話し込む日々を過ごしていました。

 

 尚、メルクリウスは私から得た情報を元に第六天が誕生しないように手を打つだろうが、その辺りはどうでもいいでしょう。正直、私たちには関係ない。

 

 後、一応、この世界の並行世界にあたる『神咒神威神楽』の世界によって聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント )を回収しておいた。といっても私たちでは直接さわることもできないので、ロボットを使って回収したわけであるが、使い手を失ってなお凄まじい力を感じるだけにこの聖遺物は規格外だね。

 

 かくして、私たちは『Dies irae』の世界から引き上げたのだった。



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■ソード・ワールドRPG
9.カストゥール王国(フォーセリア編)


※9~11は、『ソード・ワールドRPG』の世界が舞台になっています。


 フォーセリアは『ソード・ワールドRPG』『ロードス島戦記』『魔法戦士リウイ』『クリスタニア』などの舞台となっている世界だ。今回は原作の600年前のアレクラスト大陸に訪れていた。今回は古代魔法王国カストゥールで古代語魔法を習得するのが目的だ。

 

 古代魔法王国カストゥール自体は4000年とも5000年とも言われる過去にぐらい前に成立しているものの幾度となく王朝の興亡を繰り返すことになっている。そして、現在原作から1300年程前にアレクラスト大陸の中央山地に興った王国がカストゥール王国最後の王朝となる。

 

 そんな世界におりたった私は勢力拡大中のカストゥール王国にいた。というよりも、この大陸で人間の国家はカストゥール王国しかないので、それ以外選択の余地がないわけである。

 

 そのカストゥール王国でやったことはチートで言語を学習しながら貴金属類を売却して知識の収集にあたった。古代語魔法に関する書物も普通に売っていたので比較的簡単に習得できた。

 

 通常ならば古代語魔法の習得はかなりの手間であるが、そこは天才である私たちが凡人が習得に十年かかることでも一月もあれば可能である。その為、僅か一年で古代語魔法の十の系統すべてを習得できた。

 

 これらの魔法をいろいろ試しているとカストゥール王国の魔術師たちに私たちの能力が話題になるようになった。というのも種の衰退が他種族だけでなく人間にとっても深刻な問題となっていたからだ。

 

 カストゥール王国では400年前には80%の人間が魔法を使う才能があったが、200年ほど前から減少傾向になっていた。更に今から100年後のカストゥール王国末期には2%程度の人間だけが魔法を使える貴族で、残りの98%は魔法を使う才能がない市民か蛮族であった。更に魔術師としての質の高い者も年々減少しているという問題もある。

 

 これらの踏まえてみればこの時代の魔術師たちにとって私たち異常なまでに高い能力を有しているように見えたのだろう。まあ、単にこの世界の人間たちが衰退しているだけで、3000年程前のカストゥール王国であればここまで注目されなかっただろう。

 

 更に時代が下れば魔力の塔ができてカストゥール王国の魔術師たちも強大な力をふるうようになるのだが、それはまだできていないから飛びぬけた能力を持つ魔術師が目立ってしまうのは仕方ない。

 

 特に不味かったのが、カストゥール王国とサイクロプスの王国との戦争で悪目立ちした事だろう。サイクロプスの王国は巨人族の中でも最大の強敵で、過去にカストゥール王国を滅亡に追い込んだ事もある程だった。その彼らは当時カストゥール王国と激しい抗争を繰り広げていたのだ。

 

 そこに強力な魔術師の流れ者である私たちが出てきたわけで、あれよあれよとばかりに徴兵されることになった。あまりのことにムカついて竜破斬(ドラグ・スレイブ)やメドローアをぶっぱなしまくってサイクロプス相手に無双してしまった私たちは悪くないだろう。

 

 その結果、あまりに目立ちすぎてカストゥール王国から貴族にならないかと勧めらえたが、下手に貴族になると義務に縛られてしまうリスクがあるので、それは断っていた。私たちにとってこの世界は知識や技術の習得先でしかなく、この世界に殉ずるつもりなどさらさらないのだ。

 

 さて、そんなこんなで魔法の習得がある程度進むと、今度はこの世界の種族の調査に取り掛かった。この世界にはゴブリンなどの妖魔だけでなくエルフなどがいるファンタジー世界なのでそう言った種族を調べるのは知的好奇心を刺激するものです。

 

 といっても、それらの種族を霊的遺伝子的に調べてもこれといって新しい発見はなかった。まあ、私たちにとって新しい発見というのは中々ないのは仕方ないでしょう。




解説

■竜破斬(ドラグ・スレイブ)
『スレイヤーズ』に登場する赤眼の魔王(ルビーアイ)シャブラニグドゥの力を借りて放つ呪文。「爆発を起こして巻き込む技」ではなく「対象を爆発させる技」であり、爆発は単なる二次災害に過ぎない。従って、本人が巻き添えを喰らうことは無い。

■メドローア
『ドラゴンクエスト~ダイの大冒険~』に登場した呪文。メラ系とヒャド系を極めた先に至る究極の破壊呪文。+と-のエネルギーの衝突から『無』のエネルギーを生み、それを弓矢のように飛ばす。


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10.魔力の塔

 私たちがカストゥール王国に訪れて五十年程が過ぎた。カストゥール王国は長きにわたり他種族と膠着状態になっていたが、それを一変させる二つの出来事があった。

 

 一つ目は召喚魔術師アズナディールが魔界を発見して魔神軍団を召喚した事だった。アズナディールによって支配された魔神王とその軍団は、カストゥール王国最大の敵であったサイクロプスの王国を短期間に滅ぼしてしまった。正直これほど強力な魔神たちを支配したアズナディールはかなり優秀な魔術師なのは間違いないだろう。

 

 二つ目は拡大魔術師メルドラムゼーが魔力の塔を建設した事だ。この塔はフォーセリア世界に満ちている魔力を集約蓄積する為の巨大な魔法装置だ。魔術師は魔力の塔から額に埋め込んだ黒水晶を通じて魔力を引き出すことができるようになり、従来の個人が持つ魔力に比べると無尽蔵にも思える魔力の行使に可能になった。

 

 この結果、巨大な都市を空中に浮かせたり、都市全体を幻覚で閉ざしたり、地中に巨大な都市を建設したりと、それまで理論上は可能と言われていた強大な魔法が実用化されたのだった。

 

 かくして、カストゥール王国は敵対していた巨人族だけでなく、上位精霊や竜族までも支配下に収めアレクラスト大陸全土を支配するに至った。更に西のケイオスランド、南のロードス島、果てはクリスタニア大陸まで侵攻するのであった。

 

 これによってカストゥール王国は絶頂期となり、暗黒時代から魔法の時代へと変わっていくのであった。まあ、その魔法の時代もそう長くは続かないのだけどね。

 

 ただ最近になるとカストゥール王国の魔術師たちとの仲が険悪になってきた。切っ掛けは魔術師たちが魔力の塔のバックアップを受けて私たちよりも強大な力を振るうようになって事だろう。これまで圧倒的に劣っていた劣等感が強大な力を得て逆転したことで反転してしまい調子に乗った連中が私たちに絡むようになった。

 

 勿論、魔導書や鬼械神のバックアップを受ければカストゥール王国の魔術師など相手にならないが、それは表に出せないから仕方ない。

 

 いくらばれないようにしても、魔力の塔のバックアップを受けていない私たちがカストゥール王国の魔術師を超える力を持っていたら不自然すぎる。そうなれば私たちの手札がばれる危険があるし、機密保持の関係上それは避けるべきです。

 

 ここで何故、私たちが魔力の塔のバックアップを受けないのかと思うかもしれませんが、あれは額に黒水晶を埋め込まないといけない上に、一旦埋め込むと自身の魔力が使えなくなるという致命的な欠陥があった。当然そんな代物を使うわけにはいきません。

 というか、外部からバックアップを受けて魔力を増幅させるならともかく、自身の魔力が使えなくなってしまってはそもそも魔術師と呼べるのかという根本的な問題がある。何故なら外部から魔力を受けて魔法を使うだけならなにも本人が古代語魔法を使う能力がある必要はなく、ぶっちゃけ蛮族でも可能なのだ。

 

 この魔力の塔にしても発電所のように魔力を運用する施設として使い、魔法文明を構築するインフラとして使うならば問題なかったのでしょうが、あまりにも魔力の塔に依存し過ぎたのが、後の問題に繋がったと言えます。 

 

 まあ、その辺りはどうでもいいとして、そんなこんなで魔術師たちとの揉め事を抱えつつも発展する魔法技術を収集することになるのであった。本当にカストゥール王国の魔術師は人をいらつかせる連中です。 

 

 そういえば、カストゥール王国の躍進と共に著しく増長した魔術師たちの蛮族に対する扱いが非常に悪くなっていた。元から悪かったのだが、さらに悪化してしまったようだ。それは私たちから見ても眉をひそめる程のものであったが、かといって蛮族たちに同情するつもりはない。あくまで視界に入れないようにしていただけであった。

 

 正直な話、私はカストゥール王国の魔術師と違って魔法が使えない蛮族に偏見や蔑視を持っていないが、それは優しいからではない。むしろ魔術師だろうが蛮族だろうがどうでもいい存在なのだ。

 

 そういえば、魔法王ファーラムは蛮族に対してあまり偏見がなくどちらかといえば好意的みたいですが、いくら魔法王がそうでも貴族たちがあそこまで増長していては蛮族たちの待遇改善は不可能でしょう。

 

 何気に蛮族たちによる反逆フラグを立てていると言える。というかあそこまでやっていたらいざという時に反逆されても文句は言えない。

 

 カーラ(アルナカーラ)が言っていたように蛮族を大地母神マーファの教え通りに扱っていればあのようなことにはならなかったでしょうが、そんなことをわざわざあの連中に忠告してやる義理はない。精々つかの間の繁栄を謳歌しているがいいでしょう。



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11.魔精霊アトン

 カストゥール王国は絶頂期になってからわずか50年で滅亡の時を迎えることになった。きっかけは精霊都市フリーオンで起きた。この精霊都市はその名の通り様々な精霊を使役してその力によって維持されていたが、その中にいた地の上位精霊ベヒモスが突如変異して、他の精霊たちを次々に吸収していき、魔精霊アトンへと変貌したのだった。

 

 カストゥール王国の魔術師たちはこの脅威に立ち向かうも次々に返り討ちになったために、総力をもってあたった。それは当時の魔法王の身体を素材にファーラムの剣を作り上げたのだ。

 

 文字通り王ですら身を捨ててこの危機に対応した結果、何とか魔精霊アトンを倒すことに成功したが、その為にあまりにも膨大な魔力の消費されてしまい、それに耐え切れなかった魔力の塔が崩壊してしまったのだった。

 

 これは魔力の塔に依存しきって自力で魔力を用いることができなくなっていた当時のカストゥール王国の魔術師たちにとって致命的なことだった。何しろ魔法を使えなくなってしまった魔術師など何の力もない弱者にすぎないのだから。

 

 そして、そんな魔術師たちに支配されて奴隷として酷使されていた蛮族たちは当然ながらこの機会を逃がす事はなかった。あっと言う間に各地で蛮族による反乱が起こり、貴族だけでなく市民までもが蛮族に殺されていったのだった。

 

 そして僅か数年で繁栄を極めたカストゥール王国は滅亡して貴族と市民たちは蛮族によってごく一部を除いて殺されてしまう。その蛮族たちがサーダイン王国を建国した年を新王国暦元年として魔法の時代が終わり剣の時代が幕を開けたのだった。

 

 ちなみに私たちは魔精霊アトンが出現した直後から姿を晦ませていた。はっきり言ってカストゥール王国の滅亡を救ったり滅亡に付き合ったりする義理はない。

 

 そういえば、カストゥール王国は原作の数百年前に滅びたが、空中都市を浮かべたりした現在よりもはるかに優れた魔法技術を有していた勢力だ。また魔法を使えない人間を蛮族として奴隷のように扱っていたことやその蛮族の反乱が起こった事など【ランスシリーズ】の聖魔教団とダブりますね。

 

 しかし、原作の発売時期から考えるとカストゥール王国が聖魔教団に似ているというよりも聖魔教団がカストゥール王国に似ているのでしょう。

 

 

 

 それはさておき、今私たちの前に一人の蛮族の男がいます。カストゥール王国時代のいかにも魔術師という格好だと蛮族に目を付けられて色々と不味いので、今の私たちは面倒事を避けるために魔術師だと分かるように格好ではなく、ありきたりな町娘といった格好をしていた。といっても私たちの顔を知る者がいればあまり意味がなく、そして目の前の蛮族の男は私たちの顔を知っている為、服装をごまかしてもあまり意味がなかった。

 

 しかし、目の前の蛮族の男は私たちに敵意を向けることはない。何故ならその男はただの蛮族ではなく、カストゥール王国の魔術師に操られている存在だからだ。私はその男の顔ではなく額のサークレットに目を向ける。

 

「久しいわね。アルナカーラ、そのサークレットが貴女の選んだ道だったわけね」

 

「エリーゼ、それにアイシャも、生きていたのか」

 

 アルナカーラが驚くのも無理はない。私たちは魔精霊アトンによる混乱のどさくさまぎれに姿を晦ませていたのでとっくに死んでいたと思われていた筈だ。

 

「私たちがそう簡単に死ぬわけがないでしょう」

 

 実は私たちはアルナカーラと比較的仲がよかった。といっても他の魔術師連中に比べつとという但し書きにつくけどね。私たちとアルナカーラは蛮族に偏見を持たず比較的平等に接してきたというカストゥール王国の魔術師から見れば異端という共通点があったから話が合ったのだ。だからこそ別れの挨拶の一つぐらいはしておこうという気まぐれをおこしたわけである。

 

「そうか、丁度いい。お前たちも手を貸してくれないか?」 

 

 案の定、アルナカーラはロードス島の安定の為に手を貸すように言ってきた。原作でもスレインを仲間にしようとしていたのだ。自分よりもはるかに強力な魔術師である私たちの協力を得たいと思うのは無理もない。

 

「悪いけど、私たちはもう世俗の事に興味はないわ。貴方に会いに来たのも最後の別れの挨拶だもの。貴方に協力しないけど邪魔もしないわ」

 

 そう、もうこの世界に用はないのだ。アルナカーラに付き合うつもりはない。

 

「そうか」

 

 アルナカーラは私たちが乗り気ではないと分かるとあっさりと諦めた。ここで無理に仲間にするという選択肢を選ばないのは私たちの力をよく知っているからだろう。何しろ私たちは魔力の塔ができる前から圧倒的な魔法の力で勇名をはせていたのだ。そんな相手に力尽くなどできるわけがない。それを機に話が尽きて私たちは自然と別れたのであった。

 

 さて、もうこの世界で得るものはない。いい加減この世界から引き上げるとしましょう。



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■とある魔術の禁書目録
12.複写(禁書目録編)


※12は、『とある魔術の禁書目録』の世界が舞台になっています。


 この世界に来た私は早々に学園都市からインデックスをさらった。それは監察軍の転送装置を用いた物であったために学園都市でもそう簡単に補足することはできないだろう。

 

 原作ヒロインの一人であるインデックスは完全記憶能力を有しており、それを活かして10万3000冊の魔道書を記憶しているイギリス清教の魔道書図書館という役割を担っている。

 

 つまりこの世界の魔術を習得したいのならいちいち魔道書を探して読んでいくよりもインデックスの記憶データを複写したほうが手っ取り早いのだ。

 

 勿論、イギリス清教もそのことは理解しており、外部から不正に情報を得ようとする者に対する防衛システムとしてインデックスに自動書記を組み込んでいる。その為、本来ならばインデックスから情報を引き出すのは至難の業である。

 

 しかし、原作一巻の7月28日に上条当麻がインデックスの首輪を完全に破壊したため自動書記が機能しなくなったのだ。つまり8月1日現在において私の障害になる物は存在しない。

 

 まあ、例え自動書記が起動していてもその気になれば勝てるだろうが、私の目的はインデックスの脳から10万3000冊の魔道書を得る事なのでインデックスを殺すわけにはいかない。

 

 インデックスを殺さずに無力化しつつデータを得るとなると制約が多すぎて私たちでもやりにくい。そんな面倒を掛ける必要などなく最低限の手間で最大の効果を得る方が効率的だ。

 

「何すんだよ」

 

 ベットに四肢を拘束されたインデックスが文句を言う。こういう時は「やめろ、ショッカー!! ぶっとばすぞー!!」と言って欲しい所であるが、インデックスにそんなノリを期待するだけ無駄だろう。

 

「別にそう喚かなくても情報を得られれば解放してあげるわよ」

 と、インデックスの頭部に専用の機器を付けながら言っておいた。

 

 さて、人間の記憶を操作する事自体はそう難しい技術ではない。例えば学園都市の学習装置(テスタメント)も人間に必要な知識を植え付けることができ、それ相応の機材を使えば人間の記憶を調べることはできるのだ。

 

 学園都市の技術で可能ならば監察軍の技術をもってすればインデックスの脳から10万3000冊の魔道書に関するデータを複写するなど動作もないことだ。

 

 問題なのはその魔道書の毒に常人が耐え切れないということであるが、この身は魔術に特化した魔女である。デモンベイン世界の狂気染みた魔術すら習得してのけた私たちにとって、この世界の魔術を収めることは簡単な事だ。

 

 該当する記憶データの複写が終わると私はインデックスを転送装置で元の場所に戻し、私たちは得たデータの解析に取り掛かった。

 

 なるほど確かに知識による毒はある。私たちでも一度に読もうとすると少々負担がかかるようだ。でも、それなら時間をかければいいだろう。

 

 その後、私たちは一か月ほどかけて10万3000冊の魔道書を解析した。とはいえ、実際に一通り魔術を使用しておかないといけないので、それらの作業に更に数ヶ月もかける羽目になってしまった。

 

 その間に、第三次世界大戦やグレムリンの活動などがあったが、私たちは必要以上にこの世界に関わるつもりはないので、魔術の習得が終わると、この世界からさっさと引き上げた。




解説

■転送装置
 監察軍で割と使われている代物。今回は巡洋艦に搭載されている機材を使用している。

■やめろ、ショッカー!! ぶっとばすぞー!!
『仮面ライダー』で主人公がショッカーに改造される際に言った名台詞。



あとがき

 今回は少女を拉致して記憶を複写するなど人道に反する問題行動を起こしていますが、最低限の干渉で済ませています。何気にエリーゼたちの干渉による被害を受けなかった運のいい世界でしょう(笑)。


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■IS 〈インフィニット・ストラトス〉
13.ガイノイド(女尊男卑編)


※13は、『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』の世界が舞台になっています。


 時は女尊男卑の時代。それはISという画期的なパワードスーツの登場によって社会が大きく歪んでしまった時代だった。

 

 過剰なまでに女性が優遇されるようになった為に増長した女たちは男を奴隷や犬のように扱い、男たちはそんな社会に不満を抱き鬱屈した感情を抱いていた。そんな歪な社会の問題は真っ先に結婚率の劇的な低下として現れた。

 

 実のところ男というのは女に対してある種の幻想を抱いているものだが、女尊男卑の時代はそんな幻想を幻滅させて女に嫌気がさしてしまったのだ。そうなると、女性と結婚して幸せな家庭を作ろうと考える男が激減してしまうのは当然だった。また、サイバーダイン社がガイノイド(女性に似せたアンドロイド)を発売したことがそれを更に煽ってしまう。

 

 このガイノイドは金属骨格を人間と同様の生体細胞(筋肉、皮膚、毛髪、血液など)で覆うという代物で、その完成度は人間の女と見分けが付かないほどで、妊娠出産こそできないものの性行為すら可能という画期的な代物だった。

 

 このガイノイドはサイバーダイン社の専用ホームページで自分好みの容姿を簡単に設定できる上に、値段が送料込みで10万円と、普通のパソコン並みの驚異の安さだった。

 

 勿論、彼女たちは安いからと言って質が悪いわけではない。自分好みの容姿をしているだけでなく、家事に優れ優しく気立てのよい理想的な女なのだ。

 

 そんなガイノイドがヒットしないわけがない。女尊男卑が世界的に広がる事に比例して、生身の女に失望した男たちは自分たちに都合のいい機械の女を求めるようになった。

 

 そうなると、割を食うのが女たちである。結婚率の低下は男に相手にされなくて結婚できない女の激増を意味していた。女尊男卑の風潮で得た権利を当然のごとく貪る一方でその悪影響を許容しようとしない彼女たちはその原因をガイノイドにあるとして、ガイノイドの規制を主張した。

 

 要は自分たちが男に相手にされないのは男たちがガイノイドに現を抜かしている所為で、ガイノイドがなくなれば問題が解消されるという短絡的な主張だった。勿論、表向きは結婚率の低下を是正する為と主張しているが本音は誰の目にも明らかだった。これには男たちは反発しており、各国では議論の的になっていた。

 

 

 

 さて、私とアイシャがこの『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』の世界に来てから数年が過ぎていた。この世界は魔法などはなく科学技術もそこまででなない上に、既に目ぼしい技術は監察軍によってとうの昔に解析済みになっていて、この世界の技術で得るものはない。それでもこの世界に来たのは、低コストなガイノイドの運用テストの為だった。

 

 私はリーラという理想的な人造人間のメイドを作ったが、正直リーラだけでは飽きてしまう。他にも綺麗な美少女メイドたちをたくさん侍らせてみたいというある種の欲があったのだ。

 

 しかし、戦闘用ならばともかくリーラのような人間そっくりなタイプとなると一人ひとり外見や性格などを調整しないといけないし、そもそもあのタイプの人造人間自体が生産に手間がかかり過ぎて量産には向いていない。

 

 勿論、監察軍では人間の女にそっくりなガイノイドは元々あるので別に一々開発する必要はないのだが、既製品を配備するだけでは芸がない。やはり、私たちの周りに侍らせるガイノイドなら私たちで開発しておきたい。

 

 そこで、簡単に製造できる人造人間として『ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ』のTOK715を参考にしたガイノイドを作ることにした。ここで女性型ターミネイターならT-Xもあるでしょうと思うかもしれませんが、あれは金属骨格を液体金属に覆っているから人間の女性に近くないんです。

 

 更にTOK715に使われる金属骨格のサイズを148㎝~168㎝と人間の女に近くしていた。それを生体細胞で覆う構造だからガイノイドの身長は150㎝~170㎝にされている。

 

 本来ならば身長は統一されていた方が生産性や整備性がいいが、流石にそうすると同じ身長の女がずらりと並ぶことになるから違和感がある。それでもパーツをなるべく共通させて生産性をよくするためにサイズが20㎝程度しか調整できないようにしていた。

 

 こうして生産準備は整ったので、『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』の世界で戸籍を手に入れてサイバーダイン社という企業を立ち上げた。そのサイバーダイン社を通じてガイノイドを運用テストをするつもりだった。

 

 この世界を選んだのは女尊男卑からガイノイドがニーズに合うと考えたからだ。本来ならばいくら外見と性格がよくても所詮は機械で作られた紛い物の女にすぎないガイノイドに傾倒する男は少ないだろう。だが、この世界の男は人間の女に幻滅している分、ガイノイドが受け入れやすいのだ。

 

 この戦略は的中してガイノイドは爆発的に売れたが、あまりにもヒットしすぎて女性から反発されて規制しようという運動まで発生してしまった。

 

 しかし、多くの男性がガイノイドに傾倒してしまっているのは、女性に問題があるからで、例えガイノイドが規制されても結婚率の低下はどうしようもないだろう。とはいえ、世の女権論者たちがそんなことを理解して反省できるようならばここまで問題になっていない。

 

 ぶっちゃけると、男が乗れないISに乗れるから女性が偉い、故に男は劣等で格下という歪な思想になっているのだから矯正しようがない。

 

 そんな連中であるが女尊男卑社会だけに声だけは大きく、その所為で世界的にガイノイドを規制する動きになっていた。その為、ガイノイドを製造販売する企業であるサイバーダイン社は倒産することになるが、別にそれはそれでかまわない。どうせあらかたの運用テストは終わっているからこのまま引き上げても問題ない。

 

 ちなみにガイノイドやその生産施設は『ターミネイター』世界における2027年辺りの技術をベースに多少改良している程度だった。その為、この世界では多少進んだ技術が使われているが、そこまで隔絶した技術ではないので、販売したガイノイドや生産施設を解析されても問題はない。ぶっちゃけると思いっきりローテクノロジーを改良して使っているにすぎないのだ。

 

 そもそも人工知能など最低限のハードさえあれば後はOSを工夫するだけである程度の事はできるのだ。元のTOK715でさえある程度人間らしくできるのだからOSを改良すれば理想の女性にすることなど動作もない事だ。

 

 私たちの周囲には美女美少女メイドたちが控えていて、もっと多くのメイドたちがソドムとゴモラに配備されているが、彼女たちは今回の成果といえた。今回の一件で多種多様な素晴らしい美女美少女のデータが集まったため、後はプログラムを修正して私の女として生産すればよかった。

 

 私の理想的な女はリーラであるが、他人の理想の女をたくさん侍らせるというのもいいものです。というか、私自身がいい女を一々考えて設定するのが面倒だったから、他人に大勢の女を作らせて、その中から気に入ったものを再生産したのだ。

 

 かくして、私たちはこの世界から引き上げた。その後、サイバーダイン社は倒産。放棄された生産施設は外部の人間に解析されたが、それほど得るものはなかった。確かにそれらの生産施設はガイノイドを生産するには優れていたが、世界的に規制されてしまった以上、それに意味はないからだ。



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■オーバーロード
14.ミサカシスターズ(ユグドラシル編)


※14~18は、『オーバーロード』の世界が舞台になっています。


『オーバーロード』という作品は多種多様な位階魔法が存在しており、その種類はかなりのものがある。超位魔法は色々と厳しい制限があるので今一であるが、第一位階から第十位階魔法だけでも十分使える。

 

 また、世界級アイテムを含めた強力なアイテム群などもエリーゼたちにとってもそれなりに興味深いもので、この世界はそれなりに有益な世界と言える。

 

 しかし、それらを得る為とはいえ、モモンガのように直接自分がプレイヤーになってユグドラシルをやるというのは少々問題がある。というのも、そもそも体感型RPGであるDMMO-RPGはサイバー技術とナノテクノロジーを用いている関係でプレイヤーは体の一部を機械化していないとゲームをプレイできないのだ。

 

 この時代の人間は極度の環境悪化によりアーコロジーの富裕層を除いて人工心肺を使わないと生きていけないディストピアとなっていた。それだけに体の一部を機械化することは抵抗ないのだろうが、私たちはこの体を安易に手を加えることを極度に嫌っていた。

 

 前世とは異なり現世の私たちの身体は転生特典にとって優れた物なっている為に体のバランスを崩しかねないことは避けたかったのだ。

 

 ましてや、モモンガのようにリアルでの身体を失いゲームで作り上げたアバターの肉体になるなど論外である。まあ、トリッパーの特性からそもそもそれは無理なのでそれは考慮する必要はない。

 

 つまり自分たちでユグドラシルをプレイするわけにはいかないので、人工的に人間を作り出してそいつにゲームをやらせることにした。具体的には『とある魔術の禁書目録』の妹達を元にしたクローン人間だ。原作では単価18万円で製造できるだけあって、それ自体は簡単にできた。

 

 最も原作のように二万人もいらないから100人だけ製造した。後はその100人にDMMO-RPGができるように少々体に手を加えて、ユグドラシルをやらせればいい。

 

 もちろん、戸籍や資金などは解決している。というのも、この世界はディストピアだけあって貧困層の戸籍を100人分程度なら簡単に入手できるのだ。科学技術が進んでいる癖に本当にディストピアだね。後は適当な人間を使って貴金属類を現金に換えて資金を確保した。

 

 ただこの世界は他に類を見ないほど汚染された世界だけに、その手の活動はバリア系の装置を使って一々酸素や二酸化炭素以外の物質を吸い込まないように手間をかけないといけない為、嫌気がさしたのは言うまでもない。

 

 それだけに資金調達が終わると地球上ではなく、宇宙船の中で生活する事にした。正直こんな汚れた星に長居したくないのだ。

 

 

 

 100人のミサカたちはユグドラシルでミサカシスターズというギルドを設立した。そしてギルド拠点でもあるファルコン号は移動可能な大型飛空艇になっている。ユグドラシルではこういった飛空艇型ギルド拠点は手軽に移動できるという利点はあるが、着地できる場所が限られている事や原作のナザリック地下大墳墓のような大規模な拡張は不可能なので大規模なギルドでは避けられていた。

 

 しかし、後の異世界転移の事を考えると拠点を移動できるという利点は非常に大きいだろう。何せプレイヤーや竜王たちが存在する大陸から遠く離れた僻地にギルド拠点を移動させることも可能なのだから、無用な抗争を未然に防ぐことができるのだ。

 

 ちなみにミサカシスターズはプレイヤーは全員が人間種で統一されている。ユグドラシルをプレイするにあたって他のプレイヤーとの敵対を避ける為と、転移後の世界で異種族になることで肉体だけでなく精神まで変質してしまうことを避ける為だ。更に傭兵NPCや拠点NPCまで人間種で統一されている為、人間種オンリーのギルドになっていた。



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15.買取

 ユグドラシルをプレイするようになって約12年。この手のオンラインゲームとしては破格の長期間続いたと言えるゲームも終わりの時が来るのは必然だった。そう、つい先日に運営から三か月後にサービスが終了するというお知らせが来たのだ。

 

 全盛期には十万人を超える程のプレイヤーがいた大ヒットゲームであったが、やはり12年もたてば寂れてしまうのは仕方がない事だった。現在ではわずかアカウントを有しているプレイヤーは数千人にまで減っていたし、アカウントを持っていてもほとんどログインしていないプレイヤーを除けばさらに数が減ってしまう有様だった。

 

 当然そんな状況ではサービス終了は当然の処置だろう。そもそもオンラインゲームの運営にはそれなりの費用が掛かるのだからこうも寂れてしまうと収益が悪くなるのだ。

 

 そして、サービス終了によってそれは更に加速することになった。残ったプレイヤーのモチベーションは一気に低下した。課金アイテムの売上の低下するだけでなく、他のゲームと掛け持ちしている者はユグドラシルの月額料金を払う事すら嫌になりゲームを引退する者が続出するのだった。

 

 そんな状況ではユグドラシルのアイテムの価値が大暴落してしまうのは当然で、それは神器級アイテムどころか世界級アイテムですら避けられない。だからこそチャンスだった。

 

 そこで、私はミサカシスターズを使って世界級アイテム買取キャンペーンを行うことにした。勿論、ユグドラシル金貨もアイテム同様価値が暴落しているが、リアルマネーを使うことにした。

 

 具体的には金で雇った私立探偵を使って世界級アイテムを所有しているプレイヤーやギルドから一個100万円で世界級アイテムをミサカシスターズに譲渡させる買取交渉をやらせた。

 

 この買取価格は終了が決まったゲームアイテムの価格としては破格のものであるが、異世界転移が現実のものになる世界級アイテムの価値からすればこの一万倍以上はあるでしょうから暴利でしかないね。

 

 世界級アイテムを所有しているプレイヤーの情報は運営から入手しているから探偵に一々調べさせる必要はなかったので面倒な買取交渉だけやらせていたのだ。

 

 実のところ、私たちはとっくにユグドラシルの運営を魔術で洗脳しており、ゲームの有益な情報を得たり、後々役に立ちそうなアイテムを用意させたりしていた。

 

 それにしてもオンラインゲームではハッキングでデータを改竄する不正行為はあるでしょうが、たかがゲームの為に運営を洗脳して情報を得たりするのは私たちぐらいなものでしょうね。

 

 結果として、すべての世界級アイテムを買い取ることができた。やはりいくら苦労した世界級アイテムでもすぐになくなってしまう代物ならば100万円で売却した方がいいと思うプレイヤーが多かったので割とスムーズに事は進んだ。

 

 中にはモモンガのように金で売るのを嫌がる頑固なプレイヤーもいたが、そうした者は私たちが直接暗示をかけて強制的に売却させた。といっても、本人は操られたという意識はなく、世界級アイテムを金で売ってしまったという認識するようにしておいた。

 

 この一件で探偵の依頼料と買取料金を合わせて二億円を超える資金を使ったが、そんなものはした金にすぎない。

 

 勿論、それ以外にもミサカシスターズは暴落して市場に流れた神器級アイテムや課金アイテムなどを買いあさり物資を蓄積していたのは言うまでもない。

 

 

 

某プレイヤーside

 

 ユグドラシルがサービス終了を受けて俺のモチベーションは一気に低下した。いつもなら日々の仕事が終わった後にゲームをやるものであるが、ここ数日はそれもしなくなった。もうゲームを引退して次のゲームに移ろうかと思っていた時、俺の元に一人の探偵が来た。

 

 その探偵はギルド『ミサカシスターズ』のプレイヤーに雇われて世界級アイテムの買取交渉に来たらしい。ここで探偵が雇い主を言っていいのかと思うかもしれないが、ユグドラシルのプレイヤーの情報が流れてもリアルでの情報は分からないので、問題ないのだろう。

 

 逆に俺のリアルでの情報流出が問題である。確かに俺のギルドが世界級アイテムを所有しているのは情報通ならば知っているだろうが、それでリアルバレを起こしているというのは困る。そこまで調べてしまうとはさすがは探偵だと俺は思った。

 

 彼は知るよりもなかったが、エリーゼは探偵の雇い主は運営から情報を得ていたわけであるが、探偵という如何にもなダミーの存在によって運営から情報を得ているという真実に気づけないかったのだ。

 

 買取価格は何と一個100万円で、俺のギルドは世界級アイテムを二個有しているので二つ売るなら200万円を出すといいながらその探偵は俺の前に200万円を出してきた。そんな風に銀行振り込みではなく現金を出して言われるとすごく魅力的なので、俺は探偵が持ちかけた売却契約を結んだ。

 

 実のところ、俺のギルドはギルメンの大半が引退して残った者もここ数ヶ月以上一度もログインしていない幽霊部員のような状態だったので、実質上俺一人でギルドを支えていたのだ。

 

 それだけに本来ならギルメンを集めて決めるべき世界級アイテムの売却という大事であっても独断で決めることができた。

 

 こうして200万円を受け取った俺はユグドラシルでミサカシスターズに二つの世界級アイテムを譲渡した。その後、月額料金を払うのも面倒になったので、ゲームを引退して次のゲームを遊ぶすることにした。幸いまとまった臨時収入もあったことだしな。

 

 それにしても終わるゲームのアイテムをあんな高値で買い取るなんてどこの金持ちの道楽なんだろうなと思わなくもないが、ミサカシスターズは世界級アイテムを手に入れることができ、俺は大金を手に入れてお互い満足できたからWin-Win(ウィン ウィン)の関係なんだろう。




解説

■幽霊部員
 在籍しているが活動に参加していない部員。

■Win-Win(ウィン ウィン)
 経営学用語の一つ。取引が行われる際に交渉をしている双方が利益を得られるようになるという形態。


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16.異世界転移

 ユグドラシルのサービス終了当日。その日は異世界転移のデータ観測に集中していた。巡洋艦には100人のクローンたちが横たわっており、ゲームの中で最後の時を待っていた。

 

 そして0:00になると、クローンたちがいきなり消失した。所謂異世界転移というものである。勿論それは巡洋艦に搭載された多数の機材の観測によって転移先の時間軸から座標まで把握しているので問題ない。

 

 クローンがそうなった以上、サービス終了時にログインしていた他のプレイヤーも同様なのだろうが、その辺りはどうでもいい。どうせ、プレイヤーは貧困層ばかりなので大した騒ぎにならないからニュースになるのかも怪しいからね。では、彼女たちの後を追って例の座標に移動しますか。

 

 

 

 私たちは巡洋艦ごと例の世界に移動して、ミサカシスターズと合流した。時間軸としては原作の500年前で、八欲王たちが転移した時期だった。

 

 ミサカシスターズはギルド拠点ファルコン号ごと原作の舞台となる大陸に転移していた。このままこの大陸にいればいずれは八欲王たちに見つかって揉め事になるのは避けられないだろう。

 

 しかし、ファルコン号は飛空艇だから別にこの大陸にとどまる必要はないので、さっさと大陸から移動することにした。移動先としては大陸からある程度離れた大きな島が望ましい。というか、そういう事態になることを見越して最初から飛空艇型のギルド拠点にしていたわけである。

 

 これが原作のナザリック地下大墳墓などの固定型のギルド拠点であれば移動できないから思いっきり行動が制限されるが、ミサカシスターズは最初から拠点を移動させて場所を自由に選べるという強みがあった。

 

 こうして北海道ほどの大きさの無人島を発見して、そこを拠点にすることにした。その島は人間やエルフなどの亜人種は存在しておらず、野生動物ぐらいしかいなかった。その中でも邪魔になりそうな獰猛な野生動物は処分して開拓することにした。

 

 幸い100人もプレイヤーがいたことから島の制圧は呆気なく完了した。まあ、八欲王がたった八人で大陸を支配できたことから島一つに対して過剰戦力なのはいうまでもないけどね。

 

 やはり島はいい。下手に大陸で勢力を持つと広大な土地と陸続きになってしまうから防衛がやたら面倒ですが、島なら限られた面積を制圧してしまえば、広大な海が天然の城塞となって外敵を遮断してくれるから楽だ。

 

 かくして、ミサカシスターズは八欲王が大陸で暴れまわっているのを他所に島の開拓を順調にやるのであった。

 

 

 

 ちなみにミサカシスターズに所属するプレイヤーとNPCの寿命対策として、アムリタを大量に保有していたので、真っ先にそれを全員に飲ませています。

 

 このアムリタは飲むと不老長寿になれるという薬で、ユグドラシル末期に導入された課金アイテムです。とはいえ、ユグドラシルでは老化や寿命など関係なかったので、不老長寿になるという効果は全く意味がないネタアイテムでしかなかった。その為、わざわざそんな課金アイテムをリアルマネーを払って購入しようとする物好きはミサカシスターズ以外全くいない超不人気課金アイテムだった。

 

 勿論、それはエリーゼが運営を使って導入させた課金アイテムだが、導入時期が過疎化が進んだ11年目であったことも相まって、保有どころかその存在を知るプレイヤーすら多くないだろう。

 

 しかし、この世界では基本的にプレイヤーは選んだ種族の影響を受けてしまう為、いくら寿命が長くても下手に異形種になってしまうと、原作のモモンガのように肉体だけでなく精神まで人間でなくなってしまう。とはいえ、人間だと老化と寿命が問題になる。

 

 故にこのアイテムは人間としての肉体と精神を保ったままで不老長寿になれるという画期的なアイテムだったりする。でも、ミサカシスターズ以外は保有してしないので、その恩恵を受けることはないでしょう。




あとがき

『オーバーロード』では異世界転移の詳細が明らかになっていないので、独自設定として、サービス終了時にログインしていたプレイヤーは、リアルにある肉体ごと異世界転移し、その魂をゲームのアバターの身体に宿したままでギルド拠点ごと異世界転移したことにしています。


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17.バランスブレイカー

 この世界で本拠地を確保した私とエリーゼは、早速ミサカシスターズのアイテムや位階魔法を解析することにした。

 

 ユグドラシルのアイテムは異世界にきたことで、ただの電子データに過ぎなかったものが現実化したので私たちの『理解』で解析可能になった。そうしたアイテムに関しては世界級アイテムを筆頭に数多くのアイテムが見るだけで解析できた。

 

 しかし、ユグドラシルの位階魔法はこの世界でやたら使いにくいという問題があった。これは本来なら八欲王が世界級アイテム『五行相克』を使用することでこの世界の魔法システムを改竄し位階魔法を適応させたのだが、私たちはそれをつぶしてしまっているからである。

 

 このままでは位階魔法の習得に支障が来すので、私たちが八欲王のかわりに五行相克を使用して、この世界の法則を変更して位階魔法を適応させた。

 

 ちなみにこれによって位階魔法を自由に使えるようになった八欲王が強化されたが、逆に竜王たちは始原の魔法が超位魔法に組み込まれしまった為に厳しい制限がかけられようになり、後の八欲王と竜王たちの戦いに大きな影響を与える事になるのであった。

 

 

 

 次にユグドラシルの魔法を十全に使いこなすべく、私たちもプレイヤーを超える力を手に入れることにした。具体的には宇宙のタマゴを使用してユグドラシルを模倣した世界を制作したのだ。

 

 便宜上その世界には『ユグドラシル・バランスブレイカー』と名付けておいたが、その名の通りユグドラシルをベースとしながらもバランス崩壊を前提にした世界である。これまで宇宙のタマゴはシミュレーションにしか使っていなかったが、この世界ならば位階魔法の習得に使用可能だ。

 

 そもそもユグドラシルは極めて自由度の高いゲームであるが、バランスを保つためにレベル100という制限があった。やりこんだプレイヤーほどもう少しのレベルアップを求めるものであるが、それでも運営はそれを頑なに拒み続けてきた経緯があった。

 

 しかし、この世界ではそんなバランスを取る必要などまったくないので、この世界ではレベル限界突破アイテムを実装させることで限界をレベル3000まで伸ばすことができるようにした。これなら合計200もの職業レベルや種族レベルを全て15にすることができる。

 

 またワールドディザスターなどの強力な職業を簡単に取れるように弄っているので、有益な職業にもなれるという、とんでもない魔改造ぶりだった

 

 正直、レベル3000はやりすぎかとも思ったが、ユグドラシルは職業だけでも2000を超えている為、それらの中から有益な職業をできるだけ取ろうとすれば決して多すぎではない。まあ、普通のプレイヤーからすれば「バランス崩壊にもほどがあるぞ」と抗議されそうであるが、それはそれである。

 

 しかし、一々レベル3000まで上げるのは面倒なので、レベル100にした後は『ドラゴンクエスト』のメタルキングのような膨大な経験値を得られるモンスターを実装させて、それを狩ることで効率的なレベリングを行うことにした。

 

 取得した職業レベルとしては、当然ながら魔法職を中心であったが、一応戦士職としてファイターとモンクを取り、その他の鍛冶師や料理人といった役に立ちそうな職業も取っておいた。

 

 かくして、私たちは多くの魔法職を取ることでユグドラシルに存在する魔法をすべて習得したわけであるが、この世界にはそれ以外にもオリジナルの位階魔法や位階魔法を元にした生活魔法もある。とはいえ、その辺りは自力で開発するなり、この世界の人間たちが開発したものを習得するなりすればいいだろう。

 

 ちなみにこのユグドラシル・バランスブレイカーは私とアイシャだけでなく、私たちのパワーレベリングに付き合ってもらった関係で、ミサカシスターズのプレイヤーたちまでレベル3000の強者になってしまったのは余談である。




あとがき

 エリーゼたちだけでなくミサカシスターズのプレイヤーも大幅に強化してしまいました。正直レベル100でも神扱いされる『オーバーロード』でレベル3000となるとどれほどの物でしょう。まあ、他のプレイヤーですらそこいらの雑兵扱いで無双できる強さなのでモモンガたちは顔面蒼白でしょう。


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18.ホモ・サピエンス・サピエンス

 この世界に転移して50年が過ぎた。この50年でミサカシスターズのプレイヤーたちはNPCとの間に多くの子供を作り、その子供たちがまた子供を作ることで島の人口が増えていき島は順調に発展した。

 

 一方、大陸では八欲王が派手に暴れて大陸を支配したが、彼らは仲間割れを起こして殺し合いを行い、生き残った最後の一人も竜王たちによって倒されていた。正直言って愚かというか馬鹿というか、コメントに困りますね。

 

 ミサカシスターズは100人のプレイヤーが団結して協力しているのに対してこの醜態は呆れてものが言えません。それはミサカたちにとってもそうらしく、彼女たちの八欲王に対する評価は非常に辛辣でした。

 

 実のところこの世界の人間と地球の人間はまったくの別の種族である。地球の人間が『ホモ・サピエンス・サピエンス』であるのに対して、この世界の原住民たちは『ホモ・サピエンス・マギテウス』とでも呼ぶべき種族で、人間とは思えないほどの身体能力を持っているのだ。

 

 元々は、この世界にもホモ・サピエンス・サピエンスはいたが、様々な種族が混在するこの世界の激しい生存競争に負けて絶滅してしまっていたのだ。またそれよりも強いホモ・サピエンス・マギテウスであってもこの世界では弱者にすぎず、600年前には絶滅寸前まで追い詰められていたのを六大神に助けられて、ある程度の生存圏を確立させていたわけである。

 

 つまりこの世界の人間は厳密には人間ではなく人間の近縁種で、リアルの人間よりも強い別の種族なのだが、六大神を含めたプレイヤーたちはなまじプレイヤーとして圧倒的に強さを有していたばかりに彼らが人間にしては強すぎる事に気づかず、寧ろ弱い存在だと誤認してしまう有様だった。

 

 ぶっちゃけると、この世界でホモ・サピエンス・サピエンスなのは人間のプレイヤーとNPCならびのその子孫だけなのだ。故にミサカシスターズはホモ・サピエンス・サピエンスの純血を重んじてエルフのみならずこの世界に人間であるホモ・サピエンス・マギテウスとの混血も禁じてホモ・サピエンス・サピエンスとしての血統を守ることにしたのである。

 

 そうした意味でも大陸から遠く離れた島という地理的条件は都合がいいものであった。なまじ大陸でこの世界の人間と交流を持つと彼らとの混血が進んでしまうからだ。ただでさえ六大神や八欲王が現地のホモ・サピエンス・マギテウスの間に作った神人という混血までいるのだからこれ以上の遺伝子汚染は避けたいのだ。

 

 幸いなことにNPCはすべて人間であり、プレイヤーもすべて同一人物のクローンだったが、見分けの為にアバターの外見をそれぞれ変えていた影響からか、転移後の遺伝子はバラバラであった為に、ホモ・サピエンス・サピエンスとしての遺伝子の多様性は保たれていた。

 

 実のところ私たちはホモ・サピエンス・サピエンスの存続や遺伝子汚染などといった問題には興味はない。この世界のホモ・サピエンス・サピエンスは滅びているが、他の下位世界ならホモ・サピエンス・サピエンスなどいくらでもいるからだ。クローンたちがなぜかそういった思想になったから、それに手を貸しているにすぎないのだ。

 

 

 

 そんな私たちであるが、この50年でユグドラシルにはないオリジナル位階魔法や位階魔法を元にした生活魔法を開発して自力で習得していた。また世界級アイテム『無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)』もあるので、たまにそれを見ることもあった。

 

 この無銘なる呪文書は原作では八欲王が所有していたすべての魔法が記された書物で、新たに開発された魔法も自動的に書き加えられていく機能がある為、私たち以外の者が新しい魔法を開発したら即座に確認できるのだ。まあ、大概はあまり役に立たない魔法ばかりだったけどね。 

 

 もう、この世界でやることはないので引き上げることにした。ミサカたちとはここでお別れです。確かに彼女たちは私たちが作ったクローンですが、もう役割は果たしています。

 

 勿論、彼女たちには色々と頑張ってもらっていますが、私もこの島の発展にはそれなりに手を貸しているので、貸し借りは無しというところですね。

 

 彼女たちがこの世界でどう生きるかは分かりません。もしかしたら450年後に現れるモモンガと関わることになるかもしれませんが、それは私たちには関係ない事です。



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■東方Project
19.扶桑樹(東方扶桑史編)


※19~22は、『東方Project』の世界が舞台になっています。


『東方Project』の世界では、かつて穢れがなく地球の生命に寿命はなかったという。それが古生代(5億~3億年前)に海の生物たちの生存競争によって発生した穢れによって海が穢れた。更に古生代~新生代に陸上に生物が進出したことで更に陸上でも壮絶な生存競争が起こり地上が穢れていった。

 

 この穢れによって地球に住まう生命は寿命を持つようになったが、それを恐れた者たちは穢れのない月に移住して月の都を作り上げた。これが月人と呼ばれる者たちである。

 

 つまり約38憶年前の生命が誕生した直後ならば地球は生存競争が起こる前の穢れなき世界なので、私たちはその時代の地球に行くことにした。勿論、そんなとてつもない古い時代だと大気成分が現代と全く違うし、地上には強い紫外線が降りそそいでいるので、私たちは生身ではなく宇宙服を着ています。

 

 そんな私たちはこの時代の地球を見て回り穢れのない地上や海という存在を〝理解″した。つまり穢れがある世界と穢れのない世界の差を認識してそれを把握したわけである。

 

 ちなみに私とアイシャが持つ転生特典の一つたる理解は私たち自身が直接見聞きしたものでないと効果を発揮しない。つまり何かを理解しようとする際にモニターごしや他人の視界ごしに間接的に行っても駄目なのだ。

 

 この制限がなければわざわざ宇宙服を着て私自身が確認しなくても、偵察機を送り込んでモニターごしに理解するというより安全な方法が取れたのですが、能力の特性上無理なものは仕方ありません。

 

 それにこの世界は海で原始生物が誕生したばかりなので、私たちに危険を及ぼす存在はいません。まあ、例えまともな生物がいても私たちに脅威となる存在などそうはいないので特に問題にならない。

 

 

 

 さて、もうここには用はないので、次に私たちはこの『東方Project』の並行世界に移動した。選んだ時代は14世紀で、地球から1万光年ほど離れた地球型惑星に来ていた。

 

 この惑星は調査の結果、環境は地球とほぼ同じであるが、知的生命体どころか類人猿すらいない完全な未開惑星である。おまけに危険をウイルスなども確認されていないという移住先にはかなり有望な惑星だった。

 

 そんな惑星であるが生物そのものは存在しており、海だけでなく地上も生存競争を行っている為、この時代の地球と同じく穢れに満ちており、寿命があることから月人からすれば地球と同じ穢れた惑星であった。

 

 そこで、ここで穢れを浄化する実験を行うことにした。手順としてはある程度の大きさの島を結界で覆い、その島に穢れを浄化する特殊な木を植えただけである。

 

 当然ながらこの木は私が遺伝子操作などを駆使して人工的に作り上げた植物で、光の代わりに穢れを葉から吸収することで成長する特性を持っている。その為、この木は周囲の穢れを吸ってあっと言う間に大木に成長してしまった。

 

 結論から言うと、この実験は成功して島の穢れを取り除くことに成功した。勿論、この島にも生物はおり生存競争があるので穢れは常に発生し続けているが、この木が常時浄化し続けているので穢れのない領域を構築できたのだ。

 

 私はこの木を扶桑樹(ふそうじゅ)と名付けた。最も扶桑樹一本だけでは惑星そのものを浄化できるわけではない。扶桑樹はあくまで周囲の極めて限られた範囲のみ浄化できるだけなのだ。

 

 この木で一定範囲だけ浄化しても外部から穢れが流れ込んでくるので上手く行かない。つまり結界で閉鎖空間を構築してその中で穢れのない領域を作ることしかできないのだ。勿論、この木を量産してこの惑星の全土に植えれば何とかなるでしょうが、そこまでやるのは面倒だからやらない。

 

 そもそも私たちは月人のように穢れの有無に拘っているわけではない。寿命など監察軍の技術でいくらでも解決できるからそんなものに頓着する必要はない。穢れを浄化するという月人が喉から手が出るような技術にしても、あくまで興味本位でやっただけなのだ。

 

 そんなわけで実験そのものは終了したが、この惑星には別の使い道がある。その為にも私たちは地球に向かうことにした。



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20.西洋魔法

 私たちに取って中世ヨーロッパといえば魔女狩りという嫌なイメージがある。実際、この世界では中世末期の15世紀に〝悪魔と結託してキリスト教社会の破壊を企む背教者″という新種の魔女の概念が出てくるが、大規模な魔女裁判は初期近代の16世紀後半から17世紀にかけて魔女に対する大迫害時代が来る。

 

 つまり、14世紀という時代は魔女に対する迫害が起こる前というギリギリの時期という私たちが活動がするのに都合のいい時期なので、この時代でこの世界の魔導書を収集しておくことにした。

 

 手順としてはいつものように金塊でお金を入手して魔導書を購入しただけである。この時代はまともな印刷技術がないから現代の基準からすれば本がやたら高いが、まだ魔女狩りが起きていないだけに普通に店で魔導書が買えるので、金さえ積めば魔導書を集めるのに苦労はしなかった。

 

 また、この時代のヨーロッパは人間の魔法使いだけでなく、妖怪の一種である魔法使いも普通に巷にいたので、彼らに金を積んで魔導書を見せてもらうという方法も可能であった。

 

 彼らとの付き合いはそれなりに有益であったが、やはり才能の差から妬まれて揉め事になることもあったので、今一損得勘定が難しいかった。この世界の魔法使いたちでも私たちの異常な天才ぶりは規格外なものだったのでしょう。とはいえ、その甲斐もあって30年もすればこの世界の西洋魔法を粗方習得できて、得たものはそれなりの多かった。

 

 しかし、それだけでは物足りないので、更に100年程時間をかけて新たな魔法の開発などをしていたが、キリスト教と民衆による魔女迫害が起こってきて何かとやりにくくなったことからヨーロッパを離れることにした。

 

 別に教会や民衆が仕掛けてきても蹴散らしてしまえばいいのだが、流石に揉め事を抱えてしまうと落ち着いて研究できないからね。

 

 

 

 余談であるがこの『東方Project』の世界には神や妖怪が実在しているが、キリスト教の神は実在しない。というのも、この世界の神の仕組みと関係している。

 

 この世界では妖怪は人間の畏れから発生し畏れを力の源としているが、神は人間の信仰心から発生して信仰心を力の源としている為、その力は信者たちから得られる信仰心の量に比例している。

 

 そうなると、例え10億人以上もの信者がいても全知全能の神など存在しえないし、ましてや信仰心よりも科学技術と情報が重んじられるようになった現代では、いくら信者が多くても信仰の質が低すぎて大した力を発揮できないのだ。

 

 いうまでもないが、自然と共に生きて本気で神を信じている古代人と、科学に頼った現代人では信仰心に差があるのは当然である。

 

 また『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』の世界と同じく全能の逆説(オムニポテント・パラドックス)により神々はこのパラドックスの一部によって一元論・一神教を基軸とした宇宙観を構築することが許されない、つまりはキリスト教やイスラム教、ユダヤ教などの全知全能の唯一神は幻想にすらなれず夢想と化してしまっている。

 

 そもそも宗教というのは本来は多神教だったわけで、この世界の神はその名と役割を核に信仰心を得て誕生して、神々は信仰心を糧に奇跡を起こして人間から信仰を得る関係で神話の主神のように多くの権能(役割)を有する神が居ても全知全能はいない。

 

 つまり、この世界では神道や仏教などの多神教なら神が実在するので信仰する意味があるが、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教は神がいないという一神教の信徒たちには涙目な世界なのであった。




解説

■ユダヤ教
 ユダヤの神はもともと唯一神であったという考えが広まったのは、ずっと後世のバビロン捕囚以後につくられた常識です。つまりそれ以前はユダヤ教は多神教であったわけですが、人間の都合でヤハウェを全知全能の唯一神にしています。

■全能の逆説(オムニポテント・パラドックス)
 いくつかあるパラドックスの中で一番わかりやすいのは「全能者は<重すぎて何者にも持ち上げられない石>を作ることができるか」である。そのような石を作れないなら全能ではない、作れるならその石を持ち上げられないのでやはり全能ではないことになる。



あとがき

『東方Project』では多神教の神々は登場していますが唯一神は登場していないので、この作品では全能の逆説を採用して唯一神はいないと設定しています。


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21.戦国の世

 16世紀の日本は室町幕府の秩序が崩壊しており、各地の武士たちが群雄割拠する戦国時代に突入していた。私たちが向かったのはそんな戦国の真っただ中であった。

 

 今回の目的は扶桑樹を植えた未開惑星に移住させる人を集めることである。何故そんなことをするのかというと、私たちはこの世界の魔法だけでなく妖怪、神霊、霊術といった幻想に興味があるので、原作の幻想郷以外で幻想を維持する場所を用意したかったからだ。

 

 そもそも『東方Project』の世界では原始時代から江戸時代辺りまでは人間たちは神々に信仰心を持ち、妖怪を恐れていたが、明治になると文明の発達により信仰心よりも科学技術と情報が重んじられ神々は信仰を失い、妖怪が迷信と否定されたことで存在そのものが危うくなった。

 

 それに対応する為、八雲紫を初めとする者達が幻想郷を博麗大結界で覆い、幻想郷という狭い世界の中で幻想を維持することに成功したわけであるが、これには少々問題点があった。

 

 幻想郷は博麗大結界によって位相の異なる異空間に存在しており通常の方法では行き来はできないとはいえ日本国内にあるので、人間が地球そのものを巻き込んで自滅してしまうと巻き添えになってしまうのだ。

 

 実際21世紀には地球上の人類を何十回と滅ぼせるだけの核兵器を保有するわけであるから自滅する可能性は低くはないし、それだけでなく、産業革命後の文明の急激な発達や世界人口の急増によって食料と資源の枯渇、地球環境の破壊が起こる。

 

 これらは生態系と生存圏を破壊することを意味しており、人類が自滅するわけである。しかもその場合、人類だけでなくその他の生物や自然さらには地球そのものも無事ではないだろう。最悪の場合は地球が生物がすめない惑星になることも覚悟しなくてはいけない。

 

 それらの点から幻想を保存するならば最悪のシナリオである地球崩壊にすら対応できるように太陽系とは別の星系にある地球型惑星に一部の人間と妖怪を移住させるというプランが確実性がある。まあ、私がそれを実行できるのは監察軍の技術力があればこそだから妖怪たちがそれができないのは仕方がないことだ。

 

 さて、上記の理由から妖怪や神霊には信仰心と恐れが強い人間が必要なので明治よりも前の人間でなくてはいけない。また、統治が安定した江戸時代にそれなりの人間を移住させるとなると悪目立ちしすぎてしまうし、太平の世では故郷を捨てて新天地に移住する人間を探すのは面倒だ。  

 

 つまり、秩序が崩壊した混乱期が望ましい。戦乱に明け暮れた末法の世ともなれば民衆にとってこの上なく暮らしにくい国の筈だ。つまり、戦国の日本全土が混乱しているこの時期こそ移住者を集める絶好の好機なのである。

 

 そうして人を集めを始めたわけであるが、思ったよりも簡単に人が集まった。手順としてはこの時代の日本は貧しいから適当に食料事情が悪い村に行ってレプリケーターを使って食料を大量に提供して奇跡を演出してやっただけである。

 

 食うに困っていた彼らにとって何もない所から大量の食糧を食料を出した私は神仏のように見えたようで、ついでに魔術を用いて怪我人や病気人を治療してやると跪いて拝みだした。

 

 やはりこの時代の人間は信心深いだけにちょっとした奇跡を見せてやると容易に上手く行くのだ。

 

 その上で、戦乱や武士という支配階級が存在しない新天地への移住を進めると、あっさりと信じて移住してくれることになった。

 

 ここで移住と言っても何も宇宙船で村人を移動させるわけではない。この世界の地球は高度な技術を持つ月人の監視下にある筈なので、いくらステルス機能に優れた監察軍の巡洋艦でも宇宙船で頻繁に行き来していたら発見させる可能性がある。

 

 そこでアイテムボックスに収納しておいた転移門を出して、彼らを件の惑星に転移させた。この転移門は『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のような異世界間を繋ぐ代物ではなく、あくまで同一世界の場所に人や物を移動させる転移装置にすぎない。

 

 勿論、転移先では私たちの配下であるリーラとエーファ並びにガイノイド(TOK715)たちが彼らのサポートを行い、現地で生活基盤を築くという体制をとっていた。

 

 またその一方で、この世界の陰陽師や巫女たちが使う術にも興味があったので、多額の金銭を使って陰陽寮からは陰陽術を、各地の神社からは祭祀や霊術の資料を閲覧した。

 

 そのおかげで、この国の陰陽術や霊術に関しては大体入手できた。勿論、金で買収しただけなので本当の意味での門外不出の秘術は閲覧できなかったが、それに関してはそこまで必要でないので問題ない。

 

 更に戦国時代だけに経済的に困窮して立ち行かなくなった神社に関しては神職(神主や巫女)だけでなくその神社でまつられている神ごと新天地にスカウトしておいた。具体的には監察軍の技術で神社ごと移動させただけである。

 

 多少派手にやっているが、巫女たちにしても経済的に苦しいのはどうしようもないし、神にしてもこのままでは神社が潰れてしまうので新天地への移動を認めざるを得なかったのだ。勿論、移住後の彼らには十分に厚く対応していますよ。

 

 ついでに各地を放浪する過程で出会った妖怪や妖精とかにも接触しており、それらを移住させたりもしています。

 

 こうした、私の行動は豊臣秀吉が天下を握り戦国の世が終わるときまで続きましたが、それ以降は地球での活動を止めて引き上げました。

 

 ちなみに戦国時代とはいえ日本で派手に動いたせいで、南蛮の妖術使いとして私たちの名が資料として後世に残ることになったのは余談です。



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22.扶桑国

 扶桑樹が存在する未開惑星ですが、流石に何時までも未開惑星では困るので惑星天樹(あまぎ)と名づけ、その惑星すべてを領土として扶桑国(ふそうこく)を建国した。と言ってもあくまで宣言しただけで天樹全土を実効支配したわけではなく、あくまでごく一部に移民しただけです。

 

 しかし、領有宣言なんてものは先に言ったもの勝ちという面もあるし、私たち以外に天樹に知的生命体がいない以上誰も文句は言いませんからね。

 

 そんな扶桑国は一応国家と称しているが、実態は神や妖怪の自治区のあつまりにすぎない。自治区は、強力な妖怪が主として君臨している領域と、神が治めている人間が住む地域に分けられており、妖怪に人間の住みわけがされていた。というか、妖怪と人間がそう簡単に同じ地域に住めるわけがありません。

 

 それでも妖怪が人里を襲撃したりするし、森や山に入った人間が妖怪に襲われて食い殺されてしまうというのも日常茶飯事なので割と物騒な国だったりする。

 

 しかし、妖怪が人間の脅威となっているのは戦国時代の日本も同じなので、別に扶桑国だけが危ないというわけでもないですけどね。寧ろ武士や公家などの支配階層がいないから過酷な税を取られたり兵役に駆り出されたりしない分だけ庶民には暮らしやすい国です。

 

 人々の暮らしぶりは文明コントロールの一環でわざと文明レベルを江戸時代辺りに抑えている。つまり電気・ガス・水道・電話などのインフラは一切ないし、ガソリンエンジンなどの内燃機関どころか蒸気機関すら存在しません。

 

 といっても、火打石で火をおこしたり、井戸から水を組むのは面倒だし、人工光源がたいまつとろうそくしかないのは流石に不味いので改善はしている。

 

 具体的にはライター(使い捨てではなく油を補充することで長期間使用できるようにしている)で片手で火をつけたり、くみ上げ井戸用の手押しポンプを使って楽に水汲みができ、人工光源もランプを使うことでろうそくよりも安全で明るい光源を得られるようにしておいた。

 

 

 

 扶桑国では移民と共に神道から仏教を分離させて再構成する宗教改革を行っていた。そもそも日本の神道は豊聡耳神子たちが仏教を取り入れてからというもの神仏習合が行われており、神道と仏教、神と仏、神社と寺院がごっちゃまぜになってしまっていた。

 

 そこで、扶桑国では明治時代の神仏分離を参考に仏教を切り離して国家神道による統治を目指していた。尚、移民の際に意図的に僧侶を省いている。戦国時代の寺院は腐敗しているところが多いから面倒事を避けるためにそうしていたわけです。

 

 仏教を切り離した結果、葬式は神道の葬儀「神葬祭(しんそうさい)」で済ませることにしたが、問題は仏教の地獄や閻魔大王がないので、死者の魂の扱いが問題になった。

 

 これは伊邪那美を黄泉の主宰神として死者の魂と管理して転生させる管理人になってもらうことで解決した。この辺りの調整で日本神話の神々と話し合いに手間取りました。

 

 こうして、仏教を切り捨てた扶桑国となったのだったが、その実態は人間の国ではなく神道の神々と妖怪たちの談合によって運営させる国家だったりする。まあ、そもそも国造りの目的自体が神や妖怪の研究の為なのですから、人間は信仰心と恐れを得るために養殖されているわけです。

 

 人間は妖怪に襲われることで妖怪を恐れ、妖怪はその恐れを食らう。神は信仰を得る為に人間をある程度守るが過度に守ることはない。信仰を得るには妖怪という悪役がいた方が何かと都合がいい為、自分が担当する自治区で目に余る妖怪は退治するが、妖怪そのものを駆逐したりはしない。

 

 つまり神と妖怪は表向き敵対しているが、裏では談合を行っているので、あからさまに人間を家畜扱いはしないけど実態は牧場と変わらないというブラックぶりです。

 

 

 

 それと、この国独自の神もいたりする。元々この国を作る際に見どころのある人間たちを部下にして国を作る手伝いをやらせていたが、その人間たちの功績から死後に神として神社で祭られるようになった神です。

 

 また、この国には元々妖怪はいなかったが、私が移民させたそこそこ強力な妖怪だけでなく、人間の恐れから扶桑国で新たに妖怪が誕生するようになった。それらの妖怪は移民した妖怪たちがまとめ上げており各地で妖怪勢力を構築している。

 

 そんなこんなで国を作り上げるのに手間取ったが、江戸時代になると国も軌道に乗った。手間をかけた甲斐もあり神や妖怪に関する研究も終わりました。原作開始まで時間がかなりあることから時間が空いてしまったので、神々に国を託して私たちはこの世界から一旦引き上げることにした。




あとがき

 エリーゼたちは原作の幻想郷に興味があるのですが、この時代の幻想郷はまだ博麗大結界が存在しない為、原作まで時間を潰してからこの世界に干渉するつもりです。


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■ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
23.ロンデル(ゲート編)


※23~25は『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の世界が舞台になっています。


 この世界はヒト種やエルフ、その他多種多様な種族が暮らすファルマート大陸が舞台になっている。この惑星の1年は389.3日で、地球の1年より少し長く、逆に1日は少し短い。地盤が安定しており、火山性のものを除いて地震は滅多に起こらない。

 

 そんなファルマート大陸の覇権国家【帝国】の歴史ある古い街が学都ロンデルだ。ロンデルはその名の通り学問の神エルランとラーによって作られた学問が盛んな都である。

 

 その街では多くの学徒(魔導師)が集まっているが、その理由は学問を収める環境に恵まれているのと、高名な老師が収集した所蔵本目当てだったりする。

 

 そんな学術都市なのに図書館が存在しないという問題がある。というか、この世界では図書館のような広く一般に知識を広める施設がないので、知識の収集に少々面倒な面がある。

 

 そんなわけでいつものように一々金を使って本を収集しなければいけない。最もこのロンデルは学問の街だけあってまだ恵まれた方だ。金さえ積めばあっと言う間に本の収集は可能で、私たちは金くらいいくらでも用意できるので本の収集は容易い。

 

 しかし、学徒でもない私がいきなりロンデルでそんな真似をすると悪目立ちしてしまうという問題があったので本を集めるとさっさとロンデルを去ることにした。

 

 

 

 その後、拠点を設けずに各地をプラプラしながら魔法の研究を行った。この世界の魔法はあまり戦闘向きではない為、ファルマート大陸において戦争で魔法を兵科として使用することはとうの昔に廃れてしまった。

 

 それはファルマート大陸では他の兵科の武器兵器類や用兵術が進歩したからで、大掛かりな攻撃魔法を使用するにはかなりの行動時間が必要で機動的な即応戦術にむかないので戦闘魔法は一般兵科の攻撃補佐的な用途にしか使用されていない。

 

 勿論、その程度の欠点など私たちならばいくらでも改善できるが、この世界の戦闘魔法の改革など興味がないのでそんなことはしない。正直この世界の魔法は確かに多少の参考資料にはなったが、いまいち研究しがいのないつまらない代物でしかなかった。

 

 また、この世界はゲートを通じて様々な世界から多くの種族が移民してきた為、人間だけでなく多種多様な亜人種族や怪異などがいるのでそれらは研究対象になった。

 

 その手の調査は金で奴隷を購入することで賄うことができた。この世界では労働に奴隷を使用するのが一般的なので金さえ積めば比較的簡単にできる為、人体実験をやって亜人や怪異たちを使いつぶしても大した問題にならなかった。

 

 

 

 そうこうしているうちに、ファルマート大陸に異世界の敵が攻め込んできたという情報が入ってきた。となると連合諸王国軍を編成する時期なのだろう。

 

 しかし、こういったらなんだけど帝国が一方的に侵略したくせに負けて逆侵攻されると、「連合諸王国軍を編成してファルマート大陸侵攻を狙う異世界の賊徒を倒そう」と各国に主張するなんて帝国の厚かましさは相当なものです。

 

 その点で言えば日本に大義があるのですが、ゲートの欠点がすべてを台無しにしてしまう。日本はあんな欠陥品のゲートに依存するぐらいなら帝国を撃退してすぐにあのゲートを破壊するべきだったのですが、なまじ帝国との戦いが楽勝だったことから帝国から賠償を取ることを考えてしまい、深みにはまってしまった。

 

 ぶっちゃけると自衛隊を特地に派遣したり帝国と交渉したりした経費を考えると日本は大損しています。後にレレイがある程度改善したゲートを用意したみたいですが、使い勝手の悪さは変わっていない筈です。

 

 といっても私たちに取ってこの世界や地球がどうなろうが知った事ではない。放置しておいても原作のような流れになるでしょうし、もしも原作以上の被害がでて二つの世界に致命的な被害が出ても関係ありません。

 

 しかし、原作の流れで言うとそろそろ炎龍が派手に活動を開始する時期だ。特地では炎龍は人間に手に負えない災害という扱いであるが、私たちからすれば少々強いだけの野生動物にすぎないから邪魔なら駆除するという選択地もある。というか、あれを放置すると最悪の場合こっちにまで飛び火する可能性があるから不確定要素はさっさと始末しておいた方がいいでしょう。



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24.トールギス

 炎龍を始末することにした私は現在監察軍の巡洋艦で炎龍の元に向かっていた。ここで何故巡洋艦で行くのかというと、この巡洋艦に私が乗る機体が搭載されているからであった。

 

 私は今回は監察軍からMS(モビルスーツ)トールギスをとりよせて炎龍退治に使用する事にした。このトールギスは『新機動戦記ガンダムW』で登場するMSである。勿論、そのままコピーではなく多少の改良はしている。

 

 エリーゼはそんなトールギスのコクピットに乗り込む。その操縦席は原作と違って全天周囲モニターとリニアシートになっている。原作のガンダムW系のMSはモニターが前方に集中しており視界が少々悪いから変更していたのだ。更にチタニュウム合金では強度に難があるから、装甲をガンダニュウム合金に変更している。

 

 しかし、ビームエネルギーはカートリッジ方式のままだしスーパーバーニアですら推進剤仕様なので継戦能力に難がある為、このトールギスを監察軍の巡洋艦に搭載したまま移動して現場で出撃するという手順をとることにした。

 

 こうした改良でトールギスの操縦性と防御力は向上しているが、それは原作のトールギスに比べてという但し書きが付く程度のものでその性能は大したことはない。逆を言うと最悪どこかの勢力に鹵獲されても技術流失という点では大した損失にはならないローテクしか使われていない。そういえばわかるでしょうが、このトールギスは私にとって使い捨ての玩具にすぎないわけです。

 

 さて、アイシャが炎龍を見つけたとのことなので出撃するとしましょう。私は素早くトールギスに乗り込み出撃したのであった。

 

 出撃してすぐに炎龍を補足した。炎龍は生物なだけにレーダーとは相性が悪いが、カラスのように小さいのならともかくあれほどの巨体ともなると普通にレーダーで捕捉可能なので見つけるのは容易だった。

 

 モニターには炎龍が多くの馬車を使っている人間たちを襲撃していた。この場面は原作の炎龍襲撃シーンのようだ。別にゴダ村の避難民たちを助ける義理はないが、見捨てる理由もないから介入するとしましょう。

 

 私は炎龍の後ろからトールギスの頭部20mmバルカン砲を連射する。このバルカン砲は原作のトールギスにはないが、ミサイルの迎撃や対人用など使い道はいろいろあるので頭部を作り直して搭載しておいたのだ。とはいえ21世紀の20mmバルカン砲を凌駕する火力があるが、炎龍の鱗に弾かれてまったく効いていない。

 

「まあ、当然よね」

 

 この結果は想定内である。この世界の竜の鱗はそれなりに強固で下級のワイバーンですら12.7mm機銃では柔らかい腹部でなければ効きづらく、古代龍ともなると戦車の正面装甲並みの防御力を持っているから、20mmバルカン砲が通用しないのは当然である。

 

 しかし、そんな攻撃でもいくつか受けていれば炎龍もこちらに気づいて予想通り攻撃をしかけてきた。あえて炎龍の注意をトールギスに集中させたのは避難民を助ける為でもあるが、この状況で下手に炎龍を攻撃する避難民に被害を与えかねないからだ。

 

 私はトールギスのスーパーバーニアを使って炎龍のブレスを回避する。トールギスは機動性に優れており、ブレスなどという見え見えな攻撃など当たるわけがない。予想通り炎龍はそんなトールギスを追って空中に飛び上がってきた。

 

「当たれ!」

 

 私は避難民に流れ弾が行かないように角度を調整しながらトールギスのドーバーガンを発射する。炎龍は自らの力を過信してそれを避けようともしないが、ドーバーガンから放たれたビームは炎龍の腹部に大穴を開ける。

 

 言うまでもないが、いくら戦車の正面装甲並みの防御力を持っていてもビーム兵器が命中したらどうにもならない。更に言えばガンダニュウム合金によって更に性能が上がったドーバーガンの高出力ビームは炎龍が防げるものではない。

 

 これは炎龍でも致命傷だったようで力なく地面に落下した。私はそんな炎龍の傍にトールギスを着地させる。

 

「止めよ」

 

 ほっといても死ぬと思うが、油断して思わぬ痛手を受けるのはいやなので念を押しておく。シールドからビームサーベルを取り出して炎龍の首を切り落とした。

 

 炎龍の止めを刺した私はコクピットから出て、コックピットハッチからワイヤーで地面に降りた。そしてすぐにトールギスをアイテムボックスに収納しておいた。いくら盗られても大した技術流出にならないローテクMSであっても奪われないにこしたことはないのだ。

 

 当然ながら自衛隊はそんな私を警戒していた。明確な敵というわけではないでしょうが、怪獣みたいな炎龍を倒した巨大ロボットに乗っていて更にそれがいきなり消えたとなると警戒しない方が可笑しいから彼らの行動は当然でしょう。

 

 しかし、自衛隊はその特性から明確に敵対しているわけでもない者を発砲するわけにはいかないでしょうし、仮に彼らが私に発砲しても魔法障壁を展開しているから問題ない。

 

 私はそんな自衛隊を無視して炎龍の死体に近づき炎龍をアイテムボックスに収納した。正直炎龍などの古代龍はこの世界の基準では生態系のトップに立つような生物でしょうが、怪獣映画で自衛隊と真っ向から戦えるような怪獣たちに比べたらかなり見劣りするのでサンプルとしてもいまいちなんですが、それでも貴重なドラゴンなわけだから一応調べておく価値はあるでしょう。

 

 余談であるが、ゴダ村の住民の四分の一が炎龍の犠牲になったものの炎龍そのものは倒れたことから大半の村人はゴダ村に帰ることになったが、身寄りのなくなった老人や子供&自衛隊に興味を持ったレレイ、カトー、ロゥリィはアルヌスに向かうのであった。

 

 私は当然ながら伊丹たちとその場で別れた。さすがにアルヌスまでついて行って自衛隊から余計な追及をされたくないからね。




解説

■全天周囲モニターとリニアシート
『機動戦士Zガンダム』以降の宇宙世紀のMSに使用された技術。

■20mmバルカン砲
 トールギスを作る際に追加した武装。ガンダムシリーズの大口径バルカン砲よりも口径を小さくすることで弾薬数を多くしているが、その分火力が低下している為、対人やミサイル迎撃程度しか使用できない。



あとがき

 今回はエリーゼはMSを使っていますが、実をいうとトールギスを使うよりも生身で戦う方が強かったりします。最も相手が巨体なためそれにあわせた玩具(エリーゼからみれば多少改良された程度のトールギスなら玩具に過ぎない)を使用しています。


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25.ダークエルフ

 炎龍を倒して暫くがすぎた。私たちは一応炎龍を解析してみたが、やはり大してえるものはなかった。まあ、これがゴジラとかだったら興味深いデータがとれたかもしれませんが、この世界の炎龍程度ではそれも仕方ないでしょう。

 

 さて、魔法で思い出したが、この世界にはエルフやダークエルフなどが使う精霊魔法があった。ちょうど原作のシュワルツの森に住むダークエルフ部族は私が炎龍を始末したから健在の筈なので彼らと交渉して精霊魔法のデータを取っておきましょう。

 

 そうおもいシュワルツの森にいった私たちですが、遠方でダークエルフたちが二匹の新生龍に襲われている場面に出くわしてしまいました。

 

「……新生龍を忘れていたわ」

 

 私は思わず溜息をはいた。いきなり想定外のことで予定を変更しなければいけないのは面倒であるが、この状況で襲われているダークエルフたちを見殺しにもできない。

 

 そこで、アイテムボックスからトールギスを出して乗ることにした。まさかトールギスをまた使うことになるとは思わなかった。私的にはただの一発ネタに過ぎない代物なんですよね。

 

 トールギスを機動させるとスーパーバーニアの機動力を用いてあっという間に二体の新生龍に接近してドーバーガンでその胴体を撃ち抜いた。

 

 そう言うとあっけないかもしれませんが、本当に相手が弱いので瞬殺になってしまうんですよ。炎龍でもあの有様ですから新生龍ならこんなものでしょう。

 

 そんな私にはとるに足らない雑魚でしかありませんが、ダークエルフたちにとってはそうではなかった。古代龍に劣るとはいえ人間や亜人では到底勝てない強さを誇る新生龍をあっと言う間に仕留めたことでダークエルフたちはトールギスに驚愕していた。

 

 予定とは違うのでこの場でダークエルフたちに接触するか判断に迷ったが、一応助けてやった形になるのでむしろ予定よりもいいかもしれないと思い、コクピットから降りることにした。

 

 ダークエルフたちはいきなり現れて二体の新生龍を仕留めた鉄の巨人から人間の少女が出てきたことに驚愕していたが、トールギスを私が作り上げた人形でダークエルフが新生龍に襲われていたから助けたという具合に簡単に事情を説明してあげると納得して、私に感謝してくれた。

 

 まあ、命の恩人だから感謝するのは当然だよね。そんな感じだったので報酬(金銭)を代価に精霊魔法を研究の手伝いを頼むと快く了解してくれた。最初は報酬はいらないといわれてしまったが、さすがに部下でもない他人をタダ働きさせてしまうのはよくないので、ちゃんと報酬は払いましたよ。

 

 そもそも金に困っていないから、私はどこの世界でも金払いはいいんです。まあ、その資金調達方法は反則的な代物ですが。

 

 こうして、ダークエルフたちの協力で精霊魔法を研究して習得することができた。これにはダークエルフたちも驚いていた。どうやら人間は精霊魔法が不得手らしく習得できないと思われていたらしい。

 

 これで、この世界でやるべきことは大体終わったから引き上げるとしましょう。未だこの大陸では帝国と日本がやりあっているが、そんな事はどうでもいい。

 

 そういえば、この世界では炎龍襲撃の際に私が倒してしまったから国会では正体不明のモビルスーツ(トールギス)が現れて炎龍を倒したという話になっているかもしれませんね。

 

 いや、ファンタジー世界にMSなんて世界観ぶち壊しだし技術レベルが違い過ぎるから伊丹達が報告しても信じられないでしょう。となると、もみ消されて自衛隊が自力で炎龍を追い払ったという話になっているかもしれない。勿論、私はどっちにしても利益にならないから日本と関わるつもりはないのでどうでもいいです。




あとがき

 エリーゼが日本にトールギスを持ち込んで、あちらでひと騒動起こすという構想もありましたが、彼女の性格上そんな何も利点がないのに面倒事になることをするわけがないので、廃案になりました。監察軍の特性上余計な技術流出を避けるという点から不自然な行動ですし。


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■魔法少女リリカルなのは
26.制約(ミッドチルダ編)


※26は『魔法少女リリカルなのは』の世界が舞台になっています。


 ミッドチルダを中心とした管理世界は主にミッドチルダ式魔法と近代ベルカ式魔法という二つの魔法が広く使用されている魔法世界である。というよりも基本的なインフラだけでなく質量兵器を禁止して治安維持にまで魔法だけを使用している魔法社会である。

 

 これだけなら、この世界で魔法を習得すると思われるかもしれないが、私たちはこの世界の魔法を習得できない。魔法や魔術ならトリッパーでもトップレベルという自信がありますが、この世界の魔法とは相性が悪いんです。

 

 それというのも私たちの転生特典の一つが【オカルトの鬼才】だからです。これは文字通り、ありとあらゆる下位世界でオカルトと呼ばれている分野に対して千年に一人という伝説的な偉人になれる才能です。

 

 しかし、この特典は神秘、概念、幻想といったオカルトが絡まない非オカルト的な物はカバーできておらず、この世界の魔法は魔法と呼ばれていても科学技術の一形態にすぎない非オカルトの魔法が対象外です。当然、この世界の魔法を使うのに必要なリンカーコアはなく、魔導師になれません。

 

 まあそんなことは監察軍では以前から分かりきっています。そもそも監察軍が設立した場所は『魔法少女リリカルなのは』の世界なのだから、ミッドチルダ式魔法、古代ベルカ式魔法、近代ベルカ式魔法が調べつくされているのは言うまでもないでしょう。

 

 そんな私たちに取って相性の悪い魔法形式ですが、この世界の魔法は非殺傷設定という独自の機能があります。これは魔法を用いて治安維持を行う関係上発達した技術みたいですが、これが魔法がクリーンで安全という管理局のうたい文句の根拠の一つになっています。

 

 魔法を用いて治安維持など監察軍はおろかブリタニア帝国ですらやっていないのでどうでもいいですが、魔法の競い合いをスポーツ感覚でやるには便利な技術な為、以前監察軍本部でその手の研究をしたことがあります。

 

 勿論、ベヅァーとの戦いに使えないので息抜き程度の研究に過ぎませんが、正直私たちにはこの世界の魔法技術など息抜きか参考程度にしかなりません。

 

 ここまで書いたら今更この世界に来る理由はないと思うかもしれませんが、この世界には無限書庫という膨大な量の書物が所蔵されている図書館があります。この世界のありとあらゆる知識があるともいわれる知識の宝庫ですが、ブリタニア帝国がある世界では昔の戦争で失われている為、この世界に行くことにしました。

 

 闇の書事件の解決以前は無限書庫の重要度は低く一般人でも簡単に利用できるため、原作の10年ほど前から無限書庫にこもるようになりました。

 

 勿論、無限書庫というだけあって私でも10年では読破することができなくて原作開始した為、また原作開始の10年前の並行世界にいって原作開始まで無限書庫で読書をするという作業を何回も繰り返すことにした。

 

 一々並行世界に行くのは面倒ですが、何十年も外見が変わることがない少女たちが無限書庫を利用し続けていれば怪しまれてしまいます。場所が場所なだけに管理局に目を付けられて揉め事になったら嫌なので、ごまかすためにも10年ごとに切り換えなくてはいけません。

 

 確かに私たちに取って管理局は脅威ではない。その気になればあっさりと潰せる程度の存在ですが、私たちは別に管理局アンチというわけではありません。ぶっちゃけるとどうでもいい無関心な存在なんです。

 

 それに原作から見ても管理局の体制はかなり無理があるので100年とたたずに崩壊するのは目に見えているが、それをどうこうするつもりはありません。対立して潰すことはしないが、助けることもしない。面倒だから避けているだけです。

 

 そして、約100年ほど(ゲームで言う10週目)で無限書庫の知識を粗方吸収できた。残念ながらこの世界はオカルト関係の技術が入手できず、ロストロギアと呼ばれているものでさえ科学の産物に過ぎなかった。

 

 正直、監察軍にない未知の知識がとぼしく大して実りのない作業だったので失望しつつも、この世界から引き上げることにした。



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■ハイスクールD×D
27.悪魔との契約(世界神話編)


※27~28は『ハイスクールD×D』の世界が舞台になっています。


 前回の『魔法少女リリカルなのは』の世界がいまいちだったので私たちは今回は成果が見込める『ハイスクールD×D』世界に転移していた。

 

 この世界で最初に試みたのは悪魔との取引で、原作でも主人公たちが人間と契約を交わしていたことから悪魔が人間と契約するのがこの世界の常識だった。

 

 そこで、アントニオに大量の金塊に物を言わせて悪魔からこの世界の悪魔や魔法使いたちの知識や技術などの書物をかき集める活動を定期的に各地を転々としながらも250年程させていた。

 

 アントニオには各地を移動させていたのは、流石に一か所に居続けていれば表向きただのオカルトマニアの人間にすぎないアントニオが不老長寿であることが悪魔たちにばれてしまうからだ。

 

 場所を変えれば契約する悪魔が変わることから悪魔にばれることがないという判断で、実際アントニオは最後まで金払いのいい上客としか悪魔たちに認識されなかった。

 

 しかし、悪魔と契約させるとなると原作のようにはぐれ悪魔祓いや教会勢力や堕天使勢力に攻撃される恐れがあったため、アントニオには人造人間19号を護衛につけておいた。

 

 19号は『ドラゴンボール』の代物と全く同じで強さのインフレが激しすぎるあの世界ではザコになってしまっているが、この世界の三大勢力の下っ端辺りを相手にするならば過剰すぎる位であった。

 

 実際、この250年間はアントニオははぐれ悪魔祓いたちに襲撃されることが何回もあったらしいが、19号に例外なく排除されていた。

 

 

 

某貴族悪魔side

 

 とある貴族悪魔の青年にとってアントニオは変わった顧客だった。通常、悪魔の人間の契約は悪魔が人間の願いを叶える代価として金銭、物品、寿命などを悪魔に支払うが、アントニオは湯水のように金塊を投入してひたすら悪魔の知識をかき集めていた。その様は思わず「お前はどこの石油王だよ」と突っ込みたくなるほどだ。

 

 勿論、その貴族悪魔は過去にも人間の富豪と金銭を代価にした契約をしたことはあるが、ここまで金塊を大量に使用した契約はしたことがない。

 

 アントニオはオカルトマニアで魔法技術や冥界の知識が欲しいといっているが、節操なしに知識をかき集めていた。

 

 そのことに不信をまったく抱かなかったといえば嘘になるが代価として提供される金塊は偽物ではなくすべて本物であり、相場の倍以上の代価を要求してもあっさりと渡してくるアントニオは正に金蔓であった。

 

 その為、知らず知らずの内に契約はエスカレートしてしまい、いつのまにか人間に教えるのは好ましくない知識まで売ってしまっていたのだった。

 

 貴族悪魔は知る由もないがこれはアントニオの話術によるもので、彼はアントニオに乗せられる形でそんな契約を結んでしまっていたのだった。

 

 その後、正気に戻った貴族悪魔であったが、取引自体は正当なものなため今更どうこうすることもできなかった。また、そうこうしている内にアントニオはすでの彼の領地から離れてしまいアントニオとの関りがなくなった貴族悪魔はアントニオのことを忘れることにしたのだった。

 

 しかし、彼は予想だにしなかったことであったが、同じような事例が世界各地の悪魔の領地で起こり、すべての悪魔が自分の評価が下がることを恐れて問題をもみ消していたため、その事実は悪魔政府は把握することはできなかった。




あとがき

 悪魔との契約の代価で金銭を支払うのは普通の人間には大変な事ですが、金塊や貴金属類などをいくらでも精製して用意できるエリーゼたちならそこら辺の土砂と大してかわらない価値しかないという罠だったりします。正に悪魔もびっくりな取引です(笑)


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28.禍の団

 この世界の魔法は悪魔の魔力や神の奇跡を解析して、独自の理論の方程式で人間に扱えるように構成された技術。北欧式、ギリシャ式、悪魔式、黒魔術に白魔術、精霊魔術など様々あるが北欧の魔法が一番優れているので、北欧の魔法を中心に学習することにした。

 

 そこで北欧にいってその手の者たちに教えてもらうことにした。実のところ北欧神話は聖書の神に信仰を奪われてかなり衰退しており、近代以降は英雄が少なくなったことから経費削減の影響を受けてヴァルキリーが閑職となり冷遇される有様だった。

 

 そんな北欧だけに金にものをいわせてば大抵の事はなんとかなる。実際、大金で北欧術式の家庭教師を雇い知識を吸収することができたのだ。

 

 まあ、この世界の魔法はマーリン・アンブロジウスが編み出した悪魔の魔力を元にした悪魔式が一般的であるが、それに関してはアントニオに悪魔と契約させて知識を入手させることにしたので、私たちが直接そちらの魔法組織から学ぶ必要はなかった。 

 

 

 

 そして、粗方の魔法技術を習得したので今度は神器研究に乗り出すことにした。といっても神器研究は堕天使が進んでいるのが神器使いですらない魔法使いである私たちが堕天使陣営の研究に参加できるわけがない。

 

 そうなると、禍の団(カオス・ブリゲード)に参加して神器研究を行うという選択肢を選ばざるを得ないから渦の団に参加した。勿論、渦の団の神器研究は原作のように神器所有者の安全など考慮しない非人道的なものであるが、そんなことはどうでもいい。

 

 正直、大勢の神器所有者たちを使いつぶしても神器に関する知識と技術が得られるなら安いもの。だからこそ原作のように神器所有者たちを誘拐洗脳して強敵にぶつけるなどの非道な行動もやっていた。

 

 しかし、それも曹操たちが敗北するまでだ。流石にその後のリゼヴィム・リヴァン・ルシファーがトップになると危なすぎて関われない。というのもリゼヴィムは異世界に侵攻することを企んでいるため万が一にも私たちが異世界人だと発覚したら極めて不味いことになるからだ。

 

 渦の団による監察軍本部襲撃などと言った事態を招いたら困るのだ。まあ、所詮は悪魔にすぎないから監察軍の超技術があればどうとでもなる相手であるが、襲撃されないにこしたことはない。

 

 言うまでもないが、私たちもわざわざ異世界人だとばれるようなことをするつもりはないが、念には念を入れて、曹操が敗北した時のどさくさまぎれに禍の団から抜けた。

 

 勿論、いくら渦の団からぬけてもテロリストだったことはかわりなく、この世界の各陣営から狙われる危険性はあったためアントニオを回収してこの世界から撤退したのだった。

 

 250年ほどの活動であったがこの世界で得られるものは粗方得ていた為、特に問題はない。

 

 

 

 余談だが、この魔法や神器研究の他にミルたんと接触して魔法少女にも手を付けていた。ミルたんは異様な外見の人間だが、ある意味原作最強級のキャラクターでありながら各神話勢力からノーマークなのだ。

 

 当然、あまりこの世界の勢力に目を付けられずに利益を得たい私たちに取って研究する価値のある相手であった。まあ、原作では少ししか登場していないサブキャラにすぎないのにとんでもないインパクトのキャラだったけどね。

 

 ミルたんは魔法少女に憧れているから私たちがそのまま魔女として接触して協力関係を結んだわけですが、反応が凄かったです。言うまでもないですが私たちの外見年齢は15歳の美少女なので魔女というよりも魔女っ子に近いですから、ミルたんの琴線に触れたんです。

 

 その過程でミルたんから魔法少女にしてほしいと頼まれましたが、これが思ったよりも難題です。というのも、普通の成人男性を魔法を使える魔法使いにすることは不可能ではありませんが、魔法少女にすることは問題がありすぎました。

 

 成人男性を少女にするなら肉体改造や体の入れ替えという手段を用いるべきなんですが、そんなことをすれば戸籍がない身元不明の人間ができあがるだけなので現代社会では生活できない。

 

 そこで、VRゲームの応用で魔法少女型の人形を遠隔操作させることにした。これなら普段は成人男性として生活して、魔法少女として活動したいときは人形に五感を移して操作させればいい。

 

 こうして駒王町で魔法少女ミルたんが爆誕したわけであるが、普通にかわいらしい美少女だったので、さほどインパクトはなかった。といっても正統派の魔法使いたちからは非常に不評だったらしいが、そんなことはどうでもいいでしょう。



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■東方Project
29.帰還(東方地球史編)


※29~34は、『東方Project』の世界が舞台になっています。


 私たちは『東方Project』の原作開始に近づいてきたため、370年ぶりに扶桑国に帰還することにした。

 

 現在の扶桑国の人間は戦国時代に移民してきた日本人の子孫であるが、370年もたっていることからかなり人口が増えて発展していた。昔は東京都(約2000㎡)程度の範囲しか開拓できていなかったが、現在では移転した大陸の各地に入植して開拓していたのだ。

 

 まあ、大陸と言ってもオーストラリア大陸の半分程度の面積しかない小さな大陸で、他のもっと大きな大陸は未開拓のまま放置されている。流石に地球と同じ位の惑星だけに開拓できていない土地が多いのは仕方がない。

 

 文明レベルも依然と全く変わっていない為、信仰の低下も起きていなかった。これはその手の発展を神々が妨げていたという理由もあるが、日本と違って他国という刺激がないので、外から知識や技術が流入することがなかったからだ。

 

 最初は現地の人間と接触したが、370年も離れていただけに人間たちは私が誰かまったくわからないどころか妖怪に間違われてしまい揉め事になった。これは白人の容姿である私たちが日本人の子孫ばかりの現地人にとってあまりに異質であったことが原因だろう。仕方がないので、神社に行って神霊にあうことにした。

 

 この扶桑国の神は、すべて神道の神々で私たちとの交渉で分霊をこの世界に送り込んでいる存在だった。それだけに私たちを忘れておらずあっさりと身元の証明ができた。

 

 そこまではよかったが、私たちが国造りの偉人であることから扶桑国の人々から敬われ過ぎて動きずらくなったのは計算外だった。

 

 ちなみにこの国の巫女さんは幻想郷の巫女とちがって普通の巫女装束である。というか博麗神社の巫女(博麗霊夢)は服装が魔改造されすぎていてコスプレの巫女服に比べても突き抜けていて普通の日本人でも博麗の巫女を見ても巫女さんだと分からないよ。

 

 

 

 そんな扶桑国であるが、神に対する信仰と妖怪に対する恐れが充実した。神と妖怪にとって非常に恵まれた国となっていたが、ここ100年ほどは神々の間で地球との信仰心の差が問題になっていた。

 

 そもそも、神道の神は自らと全く同じ能力を持つ分霊を無制限に作ることができるために各地の分社で同じ神が同時に存在しているという事が可能となるのだ。

 

 例えば有名な八幡神を祭神としている神社は7817社にもなり、そのすべてに八幡神がいる。といっても文明の発達により人々の信仰心は目に見えて低下しているから、そんな八幡神ですら力を大きく落としており、信者の少ない他の神に至っては消滅の危機に陥っていた。

 

 つまり扶桑国に分社を建てて質の良い信仰心を得ている神が勝ち組で、扶桑国に分社を持たない神が負け組となってしまうのだ。こうなると負け組の神々が扶桑国に進出して分社を建てようとしたり、日本に見切りをつけて総本社ごと扶桑国に移転させようとするのは当然の事であった。

 

 そんな状況なだけに神々が集まる神無月の出雲大社では毎年のように揉め事になっているのだ。まあ、信仰を失い落ちぶれていく神がいる一方で、充実した信仰を得てうはうはな神がいれば揉めないはずがないだろう。

 

 しかし、そういわれても扶桑国は地球から一万光年の離れているのだ。そんなところに私たちの協力もなしに分社をたてるなどいくら神でもできない。結局「いずれ扶桑国に帰ってくる私たちに要請する」といって勝ち組の神がお茶を濁すのがいつものパターンとなっていた。

 

 それだけに私たちは神々から他の神の分社を作る手助けを頼まれてしまった。冗談抜きで神々にとって消滅の危機であるため、同じ神道の神々を見捨てるわけにもいかなかったのだろう。面倒な話ではあるが、彼らが他の神々を見殺しにして信仰を寡占しようとするよりはマシなので手を貸すことにした。

 

 しかし、扶桑国に分社を持たない神々は多くそのすべてに分社を建設するとなると、扶桑国だけでなく日本国にもかなり干渉しなくてはいけない。戦国時代ならともかく現代でそれをやるなら日本国と交渉しなくてはいけないね。

 

 私は降ってわいた厄介事に溜息をついた。




解説

■神道の神
 ここでは神道の神は分霊と同期しており、信仰心だけでなく意識記憶とかも共有している為、扶桑国に分霊を祭られている神は例え日本での信仰が0になってもやっていけることになります。

■負け組の神々
 エリーゼたちの扶桑国の計画は戦国時代ではかなり非常識であったことから、神道の神々の多くは協力を断っていたが、その所為で負け組になった神々は後々その判断の誤りを大いに悔やむことになった。


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30.接触①

 21世紀の地球に行くことになった私は監察軍の一個特務基幹艦隊を動かすことにした。この特務基幹艦隊というのは巨大な機動要塞一基と約500万隻にもおよぶ大規模なバイドで構成されている。

 

 本来ならこの特務基幹艦隊はベヅァー対策に用意されたものであるが、ベヅァーが出現していない時は1000個もの特務基幹艦隊は待機状態でまったく有効に使われていないため、平時であれば比較的簡単に動かすことができた。

 

 そして特務基幹艦隊はステルス機能を一切用いることなく地球近郊に展開していた。当然そんなことをすれば月人どころか地球人でも丸わかりな為に大騒ぎになっているだろう。

 

 ここまで派手な事をしたのは日本に対する砲艦外交のみならず、その他の地球各国や月人を牽制するためである。

 

 特に月人はなまじ高度な文明があるので地球外文明が中途半端な戦力で地球に干渉するとこちらにちょっかいを出してくる恐れがある。その為、圧倒的な物量を見せつけで牽制させる必要があった。

 

 

 

 その特務基幹艦隊が出現して二日後。地球と月に特務基幹艦隊の情報が十分に伝わるだけの時間がすぎた為に、私とアイシャが乗っている巡洋艦を大気圏に降下させた。その降下地点は日本の北海道だ。

 

 最初は東京にしようかと思ったが、よくよく考えると世界有数の大都市東京に全長380mの巡洋艦を着地させるスペースがある場所など空港しかないが、さすがに勝手に空港に着地させるわけにはいかない。そんなことをすれば当然ながらその空港は使えなくなるから非常に迷惑をかけてしまうことは想像に難くないからだ。

 

 その点、北海道ならば広い空き地もそれなりにあるから適当な場所に着地させることができるのだ。勿論、その空き地も国有地か私有地なのだから国か地主に迷惑を掛けてしまうのは避けられないが、空港に着地させて国際線及び国内線の運航状況に悪影響を与えるよりはマシです。

 

 さて、ステルスを用いず、地球に降下した挙句ゆるりと北海道まで乗り込んで堂々と降下している為、当然ながら私たちの乗る巡洋艦は日本政府に捕捉されている。当然、しばらくすれば自衛隊なり役人なりがこちらに来るだろう、と判断してしばし時間をつぶすことにした。

 

 案の定一時間もせずに自衛隊らしき姿が現れた。外部モニターの映像からも日本人ぽい顔の迷彩服を着た集団だった為、間違いないでしょう。ここで米兵が来ていたらちょっと面倒だったけど、さすがに日本国内で自衛隊よりも早く動くことはなかったようだ。

 

 これが北海道ではなく米軍基地が密集している沖縄とかだったら話は別だっただろうが、米兵がほどんといない北海道なら自衛隊の方が動きが速いのだろう。それはともかく、せっかく来てくれたのだから接触することにしましょう。私たちは巡洋艦から降りて自衛隊と会うことにした。

 

 そんなわけで外に出た私とアイシャであるが、白人の美少女にしか見えない私たちの外見が想定外だったのか自衛隊の隊員たちは私たちにすごく驚いていたようだ。

 

 どうせグレイみたいな宇宙人がでてくると思っていたのだろう。そんな顔をされるのなら彼らの期待に応えてグレイみたいな仲間を使者に送るのもありだったかもしれないと、つまらない事を考えてしまうのだった。

 

 

 

 こうして、私たちは21世紀の地球人と接触したのだった。その後、日本の役人が来たり、役人に適当な旅館に案内されたりした。流石になにもない空き地で交渉する気はなかったのだろう。

 

 その旅館にはいつの間にか国際色豊かな人々が集まったりしていた。多分、私たちがここの旅館に案内したことを日本政府が各国に伝えたのだろう。正直言うと今回の要件が神社の分社を扶桑国に建てるというものからすれば日本以外と話す事がないから、他の国の役人が来ても意味がない。

 

 いえ、確か21世紀初頭なら日本の神社を統括しているのは日本政府ではなく宗教法人の神社本庁だったはずです。そうなると日本政府と交渉する必要もないかもしれないけど、日本政府まで無視するのはさすがにそれは拙いかな。

 

「どうやら日本だけでなくいろんな国の方々が来たようですが、別に私たちは地球の国家と話し合いに来たわけではありませんよ。ですから、私たちと交渉してうまい汁を吸うのは不可能です」

 

「では、何の為に地球に来たのですか?」

 

 言外に侵略しに来たのかと警戒しているようだ。あれだけの大艦隊で来ればそれを警戒するのも当然か。

 

「その事ですが……」

 

 私はブリタニア帝国や監察軍の概要、そして過去の地球で行った扶桑国建国に関する活動の事を粗方伝えておいた。

 

 しかし、戦国時代に一万光年先の地球型惑星に日本人を移住させた事は信じてくれても、神や妖怪、魔法や霊術の事を半信半疑だった。やはり科学技術や情報が重んじられるこの世界では妖怪や魔法などは迷信扱いなのだろう。

 

 ちなみにこの世界で起こるであろう地球人の自滅においても説明しておいた。というのもどうせ100年と経たずに気づく事だからだ。

 

 本来、知的生命体が文明を発生される場合はその文明の発達と共に自滅のリスクが発生する。そもそも一つの惑星に存在する資源の量や食料生産能力は限られているのだから欲望を抑えることなく好き勝手すれば自滅するのは当然だ。

 

 では、物質文明のあり方はどうすればいいかというならば、まず文明レベルを最低限度に抑えて資源の消費を抑えて細く永く文明を存続させる方法と、母星の資源枯渇が起こる前に宇宙開発を成功させて他の惑星や宇宙空間などに生活の場を広げる方法がある。

 

 前者はともかく、後者は資源枯渇と生態系の破壊のリスクをともなっており、欲望を優先してバランスを誤れば自滅する方法でもあるが、成功すれば大いに飛躍できるもの手段だった。

 

 しかし、この世界の場合はそれは成功する見込みのない致命的な悪手であった。何故ならこの世界の月人は地球人の宇宙開発を許容しないからだ。

 

 穢れを嫌う彼らは地球人が宇宙に進出することで聖地たる月が穢れると判断したのだ。神々の情報でも地球人の宇宙開発の妨害を行い地球人を地球に封じ込めることにしたらしい。

 

 更に面倒なことにすでにアメリカのNASAが月人と武力衝突してしまっている事だ。これで月人の敵意をかってしまい彼らの妨害を止めさせることは無理だろう。

 

 つまり、地球人の選択肢は大きく分けると、【月人の妨害を潜り抜けて宇宙開発を成功させる】【月人を説得して宇宙開発の妨害を止めさせる】【文明を捨てて資源の枯渇を抑える】の三つとなる。

 

 いうまでもないが、この三つはすべて不可能だ。地球人が高度な文明を有する月人に勝てるわけがないし、あの閉鎖的かつ価値観があまりに異なる月人を説得しようがない。ついでにいえば、ここまで物質文明に染まった人類が今更文明を捨てるなどできない。結果として、地球人にできることは将来的に訪れるだろう破滅から目をそらして生きていくしかないのだ。

 

 

 

 その後、交渉そのものは日本以外の国は蚊帳の外となってしまったが、日本政府は案外すんなりとこちらの要求を受け入れた。正直、別に拒絶しても問題ないと伝えていたから断られるかと思ったけど、よくよく考えると神社の分社を建てる程度なら日本政府ではなく宗教法人の神社本庁が頑張らなくてはいけないだけで、日本政府には何のデメリットはないから受け入れやすかったのだろう。

 

 ちなみにその際に私が予備知識として説明した様々な裏事情は地球各国で多少の混乱をもたらすことになるが、それは余談である。



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31.接触②

2001年8月10日

 

日本side

 

 エリーゼたちとの交渉の翌日、日本政府はエリーゼたちブリタニア帝国に対する方策を考えていたが、これといってできることはなかった。

 

 一部には神社のことでエリーゼたちに何らかの譲歩を引き出せないかと考える者もいたが、あそこまで非常識な砲艦外交をしかけてきた未知の存在に対する警戒とエリーゼが今回の事に非常に消極的であったことから、それを交渉のカードをして使わなかったのだ。

 

 最もエリーゼからすれば扶桑国建国に協力した神々に対してはある程度の便宜をはかるのはやぶさかではないが、自分たちが戦国時代に協力を求めても協力していないくせに後々になって扶桑国の価値が分かったからといって圧力を掛けてくる神々を積極的に助ける気にはならない。

 

 そんな考えをエリーゼは交渉の場で言っていた為、もしも日本政府が駆け引きの一種として一旦断っていたらあっさりと引き上げていたのは想像に難くなく、この件で技術提供などの見返りを得ることは無理だろう。

 

 また、ことが神道であることも問題だった。本来無関係なブリタニア帝国が神道の神々の要請に応じて行動しているというのに、それを台無しにするのは問題があった。正直な話、神々といっても半信半疑ではあるものの拒否できないのだ。

 

「しかし、戦国時代の有名人が実は異世界人でしたというのはアレだな」

 

 と、日本の某大臣はそうぼやいた。

 

 実のところ戦国時代の日本で白人女性のエリーゼたちはかなり目立っていたため文献の類はそれなりにあり、当然ながら相手の事を知らねばならない日本政府は未知の異世界人と接触という事態に対して大昔の文献を調べる羽目になっていた。

 

 エリーゼは中世のヨーロッパでも活動していたから、同じくヨーロッパ諸国も文献を調べているものの、エリーゼたちはあちらではあまり目立っていなかった事からあまり成果はでないだろう。

 

 ブリタニア帝国は地球には興味がないということであるが、楽観的にいられるわけがなく、やはり彼は政治家にも関わらず、歴史家のように文献を調べなければいけないのであった。

 

 

 

アメリカside

 

 エリーゼたちが訪れた日本だけでなくアメリカでも今回の接触で大きな影響を受けていた。というのもエリーゼがアメリカが国家機密としていたアポロ計画以降の月人とアメリカの武力衝突を公表したからであった。

 

 当然ながらアメリカは世界各国から問い合わせが続出して外務省だけでなくホワイトハウスも対応に追われるはめになっていた。この事態を鎮める為に急遽政府会見を開く羽目になった大統領はたまったものではなかっただろう。

 

 また、エリーゼがユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの一神教を完全否定したことから欧米や中東では大騒ぎになっていた。

 

 実のところ、この世界では唯一神は存在せず、世界各地の多神教の神々も一神教に信仰を奪われたり文明の発達で信仰を失ったりして滅びており、現存する多神教は日本の神道やアイヌの信仰、中国の道教、インドのヒンドゥー教の神々ぐらいなものだった。まあ、それらもかろうじて残っているだけにすぎない。

 

 エリーゼとしては事実を言っただけであるが、自らが信仰する神を全面否定されては宗教界が騒ぐのは当然で、アメリカだけでなく世界中の国々はそれの対処もしなければならなかった。

 

 

 

月の都side

 

 月の都は月の結界の裏側に存在する、一切の穢れを排除した浄土である。その為、表の月に行くだけでは月の都を確認することはできない。

 

 そんな月の都では綿月豊姫と綿月依姫はブリタニア帝国という降ってわいた異世界の超大国の存在に頭を痛めていた。

 

 先日、月の王である月夜見から知らされるまでブリタニア帝国の暗躍や扶桑国の建国といった情報を察知できなかったのだ。勿論、それはエリーゼが月の都を警戒して秘密裏に事を進めた結果なのだが、それでも失態であったことは間違いない。

 

 月の都としては地球人があんな高度な文明を持つ大勢力と接触することは好ましくないが、あんな大規模な軍事力を持つ国家相手に揉め事を起こすわけにはいかないので、月人たちはエリーゼに手を出せずにいた。この辺りは派手な砲艦外交を行ったエリーゼの目論見通りだった。

 

「幸いなことはブリタニア帝国が基本的には地球に不干渉でいてくれることね」

「ええ、おかげで地球人の隔離政策も問題ないわけだし」

 

 元々、月人にとって産業革命以降の急激に文明を発達させている地球人の存在は大きな懸念材料だったのだ。このまま地球人が文明を発達させて宇宙に進出してくると月に乗り込んで月に穢れを持ち込んでくるのは分かりきっていたのだ。

 

 案の定、地球人が月の乗り込んできたため月面での武力衝突が発生したのだった。これを受けて月の都では地球人による宇宙開発を妨害して、地球人を地球に閉じ込めることを決定。秘密裏に妨害工作を行っているところであった。

 

 しかし、エリーゼたちが月の都のことを公表してしまった為にもはや秘密裏に行う必要はなくなったので、これからは表立って大規模な妨害ができるようになった。

 

 ここで懸念となるのがブリタニア帝国の動きであるが、ブリタニアは神や妖怪の保護の為に一部の人間を一万光年も離れた惑星に移住させた一方で、文明に頼って妖怪に対する畏れや神に対する信仰を持たない現代の地球人がどうなろうが興味がないので、扶桑国に手を出さない限り問題にはならないだろう。

 

 勿論、扶桑国の存在は懸念材料であるが、一万光年も離れている事と神と妖怪による文明コントロールがされているため将来的な脅威にはならないだろう。 

 

 そもそも、彼女たちも月に穢れを持ち込まなければいいのであって、むやみに知的生命体を排除したいわけではないのだ。

 

 かくして、月の都は地球人を地球に隔離すべく大規模な宇宙開発の妨害を開始するのであった。



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32.楽園

 幻想郷、それは妖怪たちの楽園である。東方Projectの主人公である博麗霊夢の二つ名が『楽園の素敵な巫女』というのも霊夢が妖怪たちの楽園である幻想郷を維持する要の一つであるからだ。

 

 その幻想郷は妖怪などの外の世界(地球)で忘れられた存在が生きていける場所である。また幻想郷では地球と違って信仰に恵まれている為、原作でも神霊が神社ごと幻想郷に移動している。

 

 さて、日本政府との交渉を終わらせて扶桑国に分社を建てる作業が終わった為、手が空いたエリーゼたちは早速幻想郷に来ていた。

 

 幻想郷は日本にあるものの結界により位相の異なる場所に存在しているが、結界の起点である博麗神社で結界を解析してしまえば入り込むことなど簡単にできる。とはいえ分社建立の時間を考えて余裕をもってきたもののやはり一年近く時間がかかり、原作(東方紅魔郷)開始の直前になってしまった。

 

 

 

 さて、幻想郷といえば原作の事件となる異変と霊夢たちによる異変解決であるが、その手段は弾幕ごっこである。

 

 この弾幕ごっこは「人間でも神様と同等の強さを発揮できる」決闘。妖怪の争いが幻想郷の平和を壊さないよう作られた。スペルカードという契約書に則って行われる。

 

 実のところ、主人公の博麗霊夢は人間の巫女としてはかなり強力な霊力を持っているがそれでも強力な神と戦って勝てるような規格外な力はない。それでは何故彼女が異変を解決できるのかというと弾幕ごっこは異変を解決する側が有利になっているからだ。

 

 ぶっちゃけると異変というのは、妖怪が恐れを得るための自己PRという一面もあるので異変を起こすのはいいが、いつまでたっても異変が終わらないのはそれはそれで困る。その為、適度に異変を起こして博麗の巫女に異変を解決させて終わらせるという仕組みになっているのだ。

 

 とはいえ、この弾幕ごっこは殺傷力を抑えているとはいえ、『魔法少女リリカルなのは』の非殺傷設定などという便利なものはないので当たり所が悪かったら死にます。そういった意味ではえらく中途半端な方法だ。

 

 勿論、エリーゼであれば、弾幕に非殺傷設定を追加して改良することもできるが、弾幕ごっこそのものを改良するとなると自分一人ではなく弾幕ごっこに参加するだろう人間と妖怪すべてに普及させる必要がある為、そんな面倒な事を一々やるつもりはない。

 

 この弾幕ごっこでは原作がシューティングゲームだけに、まるで花火のように威力ではなく弾幕を美しくばら撒く試行錯誤などがあり、その辺りは興味深かった。これまでは実用性ばかり重視して、そんな試行錯誤などしたことはなかったからある意味新鮮だ(というか非効率的なことを避けていた)。

 

 

 

 そんなわけで幻想郷の弾幕ごっこを鑑賞したり、自分で参加するなどして幻想郷ライフを楽しむことにした。

 

 最もこの世界の知識は粗方収集していただけに紅魔館の図書館を含めても幻想郷でめぼしい知識を得ることができなかったのは残念な事であった。まあ、私たちほどになると新たに有益な知識を得るのは難しいからそれも当然でしょう。

 

 幻想郷は明治初期に結界で隔離されているから文明レベルもそれから進歩していない為、生活レベルは扶桑国と大して変わらない。といってもポンプすらないから水汲みとかは面倒ですけど。

 

 しかし、生活向上の為に文明レベルを向上させるようなことをしたら幻想郷の意義そのものが失いかねないため本末転倒だ。まあ、他の仲間ならともかく私たちはこれまでの活動から文明レベルが低い地域で生活することになれているから問題にはなりません。

 

 ちなみに博麗の巫女は原作通り巫女装束を魔改造しすぎていてサブカルチャーでよく登場する巫女服の領域すら突破していました。あれじゃとても巫女に見えないよね。扶桑国の巫女さんはきちんとして巫女装束なのに霊夢はひどすぎです。



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33.ディストピア

 西暦2157年、地球は見る影もなく荒廃していた。

 

 空気は重度の汚染物質によって生身で呼吸することもできず、人々は外出するたびに防毒マスクをしなければ生きることはできない。海も汚れ魚介類は軒並み絶滅しており、大地も深刻な土壌汚染によって農業すらままならない状態で当然動植物も絶滅していた。

 

 文明に頼り星を汚染しつくしてしまった末期状態としかいいようのない地球であったが、それでも人はしぶとく生き延びていた。だが、この時代の人間社会は21世紀初頭にあった国民主権、人権、憲法などは過去の遺物となっていた。

 

 民主主義や国家が形骸化したこの時代の支配者は政治家でも国民でもない巨大複合企業の上層部こそが支配者だった。

 

 巨大複合企業の支配下に置かれた下層市民たちが汚染させた場所で健康を損ねながら生活しているのに対して、巨大複合企業の上層部や幹部の家族たちはアーコロジーと呼ばれる地球上でも数少ない地球本来の環境が維持されている場所に住まい防毒マスクなしでも生活できていた。

 

 そういえば、彼らアーコロジーの富裕層が我が世の春を謳歌しているように見えるかもしれないが、彼らは彼らで破滅の時が近いことを知っているため焦っていた。

 

 月人の所為で宇宙開発が頓挫している現状では、地球にある資源を使いつぶしてやりくりしているにすぎず、このままではいずれ破綻するのは分かりきっているからだ。

 

 勿論、彼らも座視していたわけではない。月人に通信を送りなんとか交渉しようとしたり、ブリタニア帝国に助けを求めて電波でメッセージを送ったりもしたが、いずれも無視されていた。

 

 また、月人の所為で宇宙にロケットなどを飛ばすことができないならと、ワープ、異世界、異次元、時間移動などこの時代でもSFやオカルト扱いされるような技術開発にも積極的に挑戦したが、当然ながらいずれも頓挫していた。

 

 せめてもの慰めが、一部の日本人が一万光年も離れた地球型惑星に移住していて例え地球上の人間が死に絶えても地球人類が存続できることである。だが、それはすなわちかつてエリーゼたちに導かれて新天地に移住した者達が勝ち組で、地球上に残された彼らはノアの箱舟に乗り損ねてしまった負け組である現実を痛感されることでもあった。

 

 下層市民どころか富裕層ですら扶桑国の人間を羨み移住を求めたが、ワープどころかまともな宇宙船すらない状況で一万光年も離れた惑星に移住できるわけがない。

 

 つまり、何もできず八方塞がりな状況だったのだ。彼らにできることは150年前からこうなることがわかっていたにも関わらずなんら有効な手を打たず、なあなあで問題を先送りにしてこんな現状を作り出した愚かな先人を恨むことだけだった。




解説

<ディストピアに至る時系列>

◎西暦2001年

■ブリタニア帝国艦隊の来訪
 エリーゼとアイシャが大艦隊を率いて地球に訪問。地球各国では騒ぎになったものの比較的穏便に交渉が終わり彼女たちは引き上げていった。

■月人が本格的に宇宙開発の妨害を開始
 エリーゼによって月の情報が伝えられた後に、月人が地球周辺の宇宙ステーションをすべて破壊。当然、これに地球各国が月に対して抗議のメッセージを送ったが月の都から無視される。

◎西暦2003年

■アメリカによる月の核攻撃失敗
 アメリカ合衆国が月を地球に立ちして敵対的な宇宙人として非難し、自国の正義を宣言するとともに月に対して核ミサイルを撃ち込んだが、月側にあっけなく迎撃される。

■月人の報復攻撃
 地球側の核攻撃に対して月人は軍用民用を問わずすべての人工衛星、ロケット発射場、宇宙港を破壊。これによって気象衛星のみならずGPSや衛星放送も使用不能となる。また、この一件で月人の圧倒的な技術力に地球各国に衝撃が走った。

■民間が宇宙産業から完全撤退
 月人による宇宙開発の妨害から収益を得ることが不可能だと判断した民間企業はロケット事業を始めとする宇宙開発関係事業から撤退。

◎西暦2005年

■国家による宇宙開発の停止
 アメリカなどの大国が宇宙ステーションの再建や人工衛星の発射のためにロケット発射場や宇宙港を再建しようとしたが、再度月人から攻撃を受けて破壊される。これによって宇宙開発は不可能と判断した各国は宇宙開発を停止。

■世界経済の停滞
 月人の影響で世界経済に大きな打撃をうけるとともに技術的にも停滞してしまう。

◎西暦2010年

■有識者たちの間で環境問題が議論される
 宇宙開発の頓挫により地球環境と地球の資源が重要視され、大大規模な環境対策と資源の計画的な使用が必要だという意見となるが、利権の侵害や有権者の反発などから各国に拒絶される。

◎西暦2017年

■二酸化炭素排出規制が有名無実化
 環境対策の一環として国際的に取り決められていた二酸化炭素の排出規制に経済的な理由から発展途上国のみならずアメリカと中国が脱退。

◎西暦2054年

■石油の枯渇
 かねてから懸念されていた石油が枯渇してしまうものの、メタンハイドレートの実用化に成功して以前からエネルギー資源の切り替えを進めていたこともあり、大きく混乱することはなかった。

◎西暦2070年

■アーコロジー計画始動
 一向に環境対策が進まないことから、将来的に地球環境が破壊されてしまうのは明らかであったために、各国の富裕層や大企業などが共同で世界各地に完全環境都市(アーコロジー)を建設する計画を立てる。

◎西暦2095年

■先進国の各地でアーコロジーが完成
 この時期になると大気汚染から外出時にはマスク着用が推奨されていた為、富裕層はこぞって各地のアーコロジーに移住する。

◎西暦2102年

■地球環境が急激に悪化
 これまでのツケから地球環境が急激に悪化してしまう。特に大気は防毒マスクをしなければ生存できないほどになる。この結果、食料生産が壊滅して世界各地で食料不足から暴動が起こる。

■国家崩壊
 暴動の激化により法秩序が崩壊した隙をつく形でいくつもの巨大複合企業が各地を実効支配してしまう。これによって国家ではなく巨大複合企業が民衆を支配する体制になる。

◎西暦2103年

■巨大複合企業による統治体制の確立
 各地の支配権を得た巨大複合企業によって民主主義、国民主権、憲法などが廃止される。また、支配体制強化の為に義務教育を廃止する愚民政策を行う。これにともない富裕層以外から教育を受けられない無学歴の子供たちが続出することになる。

■労働環境の悪化
 庶民の労働者は21世紀初頭のブラック企業すら生易しくなるほどの酷使を受けて過労死する者が続出するが、労働組合どころか労働基準法すら廃止されたため泣き寝入りするしかなくなる。

◎西暦2104年

■VRゲームが大人気になる
 リアルの地球が汚染の所為で外で遊ぶ事すらできなくなったため、ゲームという仮想現実が人気になる。実のところこれは庶民にVRゲームというサーカスを与える事で現実の不満から目をそらさせる巨大複合企業の思惑もある。

◎西暦2105年

■各地でアーコロジーに対するテロが発生
 アーコロジーの支配層に対する不平不満から庶民の中にはテロを起こすものが続出したが、国家ではなく巨大複合企業の犬となっている警察組織や軍事組織によって鎮圧されていく。しかし、それでもテロはなくなることはなくテロリストとの抗争は後々まで続いていくことになる。

◎西暦2134年

■一般庶民の少子化と低学歴化が進行
 巨大複合企業の政策によって労働者の学歴が低下して小卒でも普通となる。また子育ての手間から結婚しなかったり子供を作らない大人が多くなったが、この時代では環境の悪化から庶民が高齢者となる前に死ぬため、高齢化にはならない。また、少子化も残された資源の節約という理由からむしろ好都合となっていた。

◎西暦2154年

■地球に残された資源を巡ってアーコロジー間で対立が発生
 各地のアーコロジーでは地球の資源を可能な限りリサイクルすることでやりくりしていたが、やはり資源不足から他のアーコロジーと資源の取り合いになってしまう。


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34.滅亡

 西暦2202年現在、地球上に人類は存在していない。あまりにも唐突であるが、事実であるからそうとしかいいようがない。

 

 西暦2170年に資源枯渇までのタイムリミットが出たため、アーコロジー間の資源争奪戦争が勃発した。多数のアーコロジー間の争いにアーコロジーの富裕層だけでなく庶民まで巻き込まれてしまい大勢の死傷者が出てしまう。

 

 核兵器まで使用されたこの戦争ですべてのアーコロジーは崩壊しただけでなく、放射能により余計に地球が汚染されてしまったのだった。当然ながらそんな末期的な状況で人類が生存できるわけもなく、地球上の人類は23世紀を迎える前に滅亡してしまう。

 

 かくして地球は人類の壮絶な自滅によって見る影もなく荒廃してしまった。とはいえ、地球そのものが消滅しなかっただけまだマシだろう。最悪の場合地球を崩壊させる規模の大量破壊兵器の使用による自滅すら想定されていたのだから。

 

 

 

 外の世界である地球がこうなると幻想郷はどうなるかというと、当然ながら存在を維持できなくなって崩壊してしまっている。というのも、幻想郷を維持する【博麗大結界】と【幻と実体の境界】は、外の世界(幻想郷以外の地球)が無事であることが前提なので、地球が壊滅してしまうと維持できなくなるからだ。

 

 私たちは22世紀になって地球情勢の悪化から幻想郷の解体に乗り出していた。具体的には幻想郷の人間、妖精、妖怪、神などを扶桑国に移住させることだ。移住に乗り気ではなかった者たちも現状を理解すれば渋々ながら移住に同意したのだった。

 

 こうして扶桑国に移住した者たちであるが、彼らはそこまで困っているわけではなかった。一万光年も離れた惑星であるが、言葉は日本語であるし、文化や文明レベルも多少便利になった程度で大して変わりはない。むしろ妖怪はぶっちゃけると博麗大結界が展開される前の妖怪全盛期に戻ったわけで昔の黄金時代の再来とばかりに喜んでいる者が多かった。

 

 しかし、扶桑国は幻想郷のように厳しいルールを敷いて人間と妖怪の共存を図っていないためガチの殺し合いになってしまう。まあ、それも昔ながらの人間と妖怪の関係と言えるので、本来の姿に戻っただけなのだ。幻想郷の元住民たちも現在では扶桑国に馴染んでいた。

 

 ただ、蓬莱山輝夜はあくまで月に帰るのを嫌がって仲間と共に扶桑国に移住していたのは意外だったが、彼女からすれば今更月の都に帰りたくないのだろう。現在では八意永琳の医者としての仕事の利便性から人間の町に屋敷を設けて暮らしている。流石に幻想郷のときの利便性の悪さを反省していたのだろう。

 

 そして、妖怪といえば、八雲紫は移住作業が終えて自身も扶桑国の人里離れた山奥に移り住んで暮らしているという。情報によると幻想郷を解体する羽目になった事が相当答えているらしく落ち込んでいるらしい。まあ、これで元気いっぱいだと可笑しいから当然と言えば当然だが。

 

 八雲紫と私たちはいずれも妖怪、妖精、神などの保護を目的にしていたが、現在では私たちの計画の方が優れていたと誰の目にも明らかとなっているのも皮肉と言えるだろう。最も私たちの場合監察軍のバックアップがあるからこれだけの事ができたわけで、破綻したとはいえ自分たちの世界だけで幻想郷を作り上げた八雲紫たちの功績自体は評価されるべきだ。

 

 

 

 さて、そんな扶桑国は建国からすでに600年ほど立っているが、文明レベルは全く変化していない。それは妖怪や神の文明コントロールが上手く行っているからだ。

 

 彼らとしても地球では明治維新による文明開化以来の神に対する信仰の低下や妖怪に対する恐れがなくなってしまったから元々文明コントロールには力を入れていたが、地球が文明に頼り自然を壊して星を死に至らしめた所業を受けて余計に強化していた。

 

 つまり、文明を発達させかねない技術開発の禁止で、その手の技術を開発しようとする人間を弾圧していたのだ。勿論、弾圧される技術者にとっては理不尽なことだろうが、扶桑国の根本的な理念を守る為には必要な事なので情けを掛けることはできない。

 

 そういう意味では扶桑国もディストピアであるが、それでも22世紀の地球よりはマシでしょう。

 

 さてと、もうこの世界でやるべきことはない。扶桑国もいい加減私たちがいなくてもうやっていけるから、いつまでも大きな顔して関わるのは良くないでしょう。そろそろ次の世界にいくとしましょう。




あとがき

 今回は妖怪たちの楽園たる幻想郷がディストピアとなった外の世界(地球)の自滅に巻きまれて地球ごと滅亡してしまったという話です。ちなみに22世紀の地球は『オーバーロード』のリアルのごときディストピアとなっています(笑)


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■転生したらスライムだった件
35.フルポーション(魔物の国編)


※35は『転生したらスライムだった件』の世界が舞台になっています。


『東方Project』から引き上げた私たちは『転生したらスライムだった件』の世界に来ていた。

 

 この世界に来た目的はフルポーションを得ることである。この世界のフルポーションは肉体の欠損すら回復するトンデモな魔法薬だ。勿論、私たちなら肉体の欠損など治療用ナノマシンを用いたり、メディカルマシーンを用いれば可能であるが、科学技術を用いずに使用するだけで即座に回復可能なアイテムは仙豆ぐらいなものなのだ。

 

 この世界では原作初期ではリムルだけが精製できて、後にリムル以外にもそこそこ量産できるようになるが、やたら高い高級品であった。ついでに言うとフルポーションを解析するためにも直接肉眼で見る必要がある。

 

 そこで原作初期のリムルがゴブリンに接触するのに合わせてリムルに会うことにした。人間である私たちがリムルと友好的に接する為にも魔物の国が建国される前に接触して建国を手伝えばいいのだ。幸い長い年月をかけて知識を収集しているだけあって建築や農業など各種技術に関しても精通しているし、教えることもできる。

 

 その甲斐あってフルポーションは解析に成功して再現も可能になったが、いくらなんでも私とアイシャ二人だけでは手が回らないから原作通りドワーフ王国「武装国家ドワルゴン」にいって技術者をスカウトすることにした。

 

 最も原作のように往復に何日もかけたくないのでアイテムボックスから航空機(垂直離着陸機)を取り出して使うことにした。この航空機はオスプレイの系譜から進歩している機体だが、常温核融合を搭載している為、燃料不要で使用可能だ。

 

 当然ながらこんなものを取り出して使用したことからリムルたちにこの世界の人間ではないことがバレてしまったが、そこは地球とは異なる異世界から来た人間というシナリオで押し通した。

 

 そうして到着したドアルゴンでは原作よりも早く着いたが、概ね原作通りにドワーフたちを勧誘できた為、一同航空機で帰還したのだった。

 

 その後は、原作通りリムルがなろう作品らしく内政チートに励んで魔物の国を作り上げる一方で、どんどん強くなって原作が終わることになった。

 

 ただ私たちが強くなり過ぎたせいで普段魔力を抑えているにもかかわらずミリムに強大な力があることを見破られて戦いを挑まれる羽目になったのは計算外だった。

 

 その結果はどうなったかというと引き分けに終わった言っておきましょう。正直勝つことはできたが、そんなことをすればあまりにも悪目立ちしてしまうから引き分けにもつれ込むしかなかったのだ。

 

 ちなみに原作では魔物のスキルなどが重視されていたが、さすがに人間である私たちがスキルを得るのは容易ではない上、わざわざ手間をかけてまで得る価値はないのでスキルに関しては放置している。

 

 

 

 そんな魔物の国であるが、最近ではヴェルドラたちが地球とも違う異世界に転移するうことに成功したらしい。といっても別の原作の世界に行ったわけではない。

 

 この『転生したらスライムだった件』の世界は『魔法少女リリカルなのは』や『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のように一つの世界が数多の世界を内包している世界だ。その手の世界はその範囲内の世界には比較的容易に行き来できるのだ。

 

 その手の技術が発達すると異世界間の交流が盛んにおこなわれるようになるのだが、その反面『魔法少女リリカルなのは』のように複数の世界をまたにかけた犯罪者などが現れて治安維持に問題が発生するようになる。

 

 更に世界間の対立や紛争も当然起こるようになるから外交がややこしくなるなどいい事ばかりではないが、そんなことは私たちの知った事ではない。

 

 なにはともあれこの世界で得るものはなくなったので、私たちはこの世界から引き上げることにした。




解説

■治療用ナノマシン
『BLACK CAT』のゴッド・ブレスを初めとして監察軍では医療用ナノマシンが存在している。

■メディカルマシーン
『ドラゴンボール』でフリーザ軍が使用していた医療機械。特に監察軍で使用されているのは『ドラゴンボール超』の肉体の欠損すらも再生可能にしたメディカルマシーンを更に改良発展させたものである。

■仙豆
『ドラゴンボール』で登場する回復アイテム。食べるだけでどんな怪我でも即座に直し体力も全回復する。


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■異世界はスマートフォンとともに。
36.個人魔法(表世界編)


※36は『異世界はスマートフォンとともに。』の世界が舞台になっています。


『転生したらスライムだった件』の世界から引き上げた私たちは『異世界はスマートフォンとともに。』の世界に来ていた。

 

 私たちの魔法の才能は望月冬夜と同じく無尽蔵の魔力量、7属性魔法の全属性持ち、無属性魔法を使い放題という強力なものであるが、転生特典とこれまでの積み重ねを考えればそれも当然であった。

 

 さて、この世界の魔法は個人の魔力、属性を引き出し、魔法名と効果をイメージして放出する技術である。習得には魔法書かスクロール(巻物)、他の魔法使いによる教授が必要であった。

 

 物語の序盤に主人公はヒロインに魔法の教授をしてもらっていたが、私たちは今更他人に教授されるのは好まなかったので、いつもどおりに資金を調達して魔法書を購入して習得することにした。

 

 魔法書はそれなりに高価な値段はするが、無属性魔法が書かれた魔法書だけはかなり安かった。やはり無属性魔法は個人魔法とも呼ばれるだけあって、同じ魔法を使える者はめったにいたいから実用品ではなくネタ扱いだから人気がないのだろう。

 

 私ならこの世界の主人公のようにどんな無属性魔法だろうと魔法名と詳しい効果を知るだけで使えるようになったが、魔法書に書かれている魔法は【髪の毛が縦ロールになる魔法】【やたらと犬になつかれる魔法】【茶柱を立てる魔法】などといった使い道に困るものばかりで数ばかりは多い。

 

 これでは主人公が使えそうな魔法を探すのが逆の意味で大変だったのが頷けるが、私たちなら魔法書の内容はすぐに把握して使える無属性魔法を選別することは簡単にできるので、大した手間にはならなかった。

 

 今回習得した無属性魔法の中にはリカバリー、スリップ、アポーツ、プログラムなどそれなりに使える魔法もあるので便利といえば便利である。

 

 この『異世界はスマートフォンとともに。』の世界は序盤は剣と魔法の異世界であるが、中盤からは異世界から襲来するフレイズという水晶の魔物が人間の脅威となりそれに対抗するためにフレームギアという人型ロボット兵器が登場したりして、混沌とした展開になってしまう。

 

 ぶっちゃけると、『天空のエスカフローネ』や『ナイツ&マジック』みたいにファンタジー世界でも最初から人型ロボットが登場していて世界観に溶け込んでいたのならともかく、序盤は剣と魔法のファンタジー世界だと思っていたのに途中からSFみたく人型ロボット兵器が登場してくると違和感がかなりありますね。

 

 言うまでもないが、原作の面倒事に首を突っ込むつもりなどないので、私たちは原作開始の百年前に来ていたので、主人公と鉢合わせることもないので好きなことができる。といっても主人公のように派手にやるつもりはなく、あくまで目立たないように知識と技術の収集と研究を行った。

 

 その研究の一環としてスマートフォンの魔改造も行った。科学技術が遅れているこの世界では当然ながらスマートフォンの通信システムどころか携帯電話すらなかったが、後にスマートフォンが量産されて魔法アプリが配信されることになった。

 

 この魔法アプリを使えば適性のなく使えないはずの魔法でされも使用できることになり従来の個人に才能任せの魔法が変革していたわけである。といってもその程度なら『魔法少女リリカルなのは』デバイスでもできることである。

 

 また電波などの科学的な通信手段を用いない通信システムも『魔法少女リリカルなのは』で確立しており惑星どろこか別の次元世界間でも通信できていることを考えると別におかしなことではないが、それでも珍しいことであり、研究しておくに越したことはないだろう。

 

 最も大規模星間国家であるブリタニア帝国では、超光速通信どころか別の世界とも通信できるのは当たり前なので同じ原作の世界でしか通信できない通信システムが必要でもない。だが、研究のネタにはなるのでやっておくことにした。

 

 そんな微妙な研究を多少やった後、私たちはこの世界から引き上げることにした。



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■ドラえもん
37.MS(ひみつ道具編)


※37は『ドラえもん』の世界が舞台になっています。


『異世界はスマートフォンとともに。』の世界から引き上げた私たちは『ドラえもん』の世界に来ていた。

 

 この世界は未来から来たネコ型ロボットのドラえもんとのび太たちの物語であるが、注目するべきはドラえもんが保有している2000以上の大量のひみつ道具だろう。このひみつ道具は子供の玩具のような代物から宇宙を作り上げたり世界を改竄してしまうトンデモな道具まである。

 

 それだけに監察軍ではひみつ道具の解析を私たちが転生する前からやっていたので、そのデータそのものは監察軍から調達できるようになっていたし、ひみつ道具そのものも全種類最低一つずつはアイテムボックスに収納していた(費用頻度が高そうな道具は複数ある)。

 

 しかし、『ハツメイカー』『材料箱』などのひみつ道具を使えばオリジナルのひみつ道具が作ることができるから更に幅が広がる為、試しにいろいろ作ることにした。といっても、作る道具は他のアニメやゲームなどで出てくる代物にしておいたので、監察軍ならば既に確保できる代物ばかりだ。

 

 

 

 また、このひみつ道具は子供向けアニメに登場する子供の玩具という設定だけに軍事転用に向いていなかったり使い勝手が悪かったりして、使う方としては不便な点があったが、映画のドラえもんではひみつ道具を使用して兵器を制作することは可能だったから試しにひみつ道具を使用して兵器を制作することにした。

 

 現在私があったらいいと思っているのは、やはり人間サイズの無人機だろう。既に『ターミネイター』のTOK715は大量生産しているから、その繋がりでT-800のエンドスケルトンを量産して歩兵として使うという案もあったが、そもそもTOK715やT-800は人間に偽装して潜入するためにロボットであり、純粋な戦闘能力はそれほど高くない。小銃とかは防げてもアンチマテリアルライフルで一発で撃破されてしまうからいまいちだ。

 

 幸い『天才ヘルメット』と『技術手袋』があればラジコン戦車でも実戦用に改造できる。そこで選んだのが『新機動戦記ガンダムW』のMSリーオーとエアリーズだ。ぶっちゃけ何でもよかったが、以前トールギスを製造していたのでその繋がりで選んでみたのだ。

 

 しかし、私が求めているのは人間サイズの無人機なので、リーオーとエアリーズは原作のような有人機のMSではないし、16m級のサイズだと大きすぎるので小型化も行うことにした。当然ながら、そこまで小型化するならMS(モビルスーツ)とはいえないので、MS(モビルソルジャー)とでも分類しておく。

 

 こうして量産された人間サイズのリーオーとエアリーズであるが、現時点では使い道がないから、どこか適当な世界で使ってみた方がいいかもしれない。

 

 

 

 ちなみにタイムパトロールを避けるために私たちは原作の十億年後の遠い未来に来ていた。タイムパトロールは現在の歴史を守る為に時間犯罪者が過去を変えることを阻止するらしいが、その割にはドラえもんやセワシが個人的な利益の為に過去に介入していてもOKな辺り、個人的な利益にとどまるなら過去の改竄も許されているなど、時間犯罪の定義がガバガバである。

 

 メタ発言をするならドラえもんを依怙贔屓させるために設定がそうなってしまったのでしょうが、主人公ではない私たちはそうはいかないので、タイムパトロールに目を付けられないように地球人類がとっくに滅びているであろう遥か未来を選んだ。

 

 流石にこんな時代であれば何をしてもドラえもんたちの時代に何も影響はない為、22世紀の未来地球やそれより過去の地球とかに行ったりしなければタイムパトロールに目を付けられることもないだろう。




解説

■ハツメイカー
 これにほしい道具をリクエストすると、その作り方を記した設計図が出てきて、それをもとに組み立てると、ドラえもんのものと同様の道具ができあがる。ドラミ曰く大抵の道具は作れる(どんなリクエストの道具でも完成させられる)とのことで、のび太のように不器用な人間でも道具を作り上げることができる。材料箱と対にして使う。

■材料箱(ざいりょうばこ)
 機械工作に使う材料が何でも入っている箱。作中では「ハツメイカー」で発明した道具の製作に用いられた。箱自体の性能は作中では語られていないものの、小さな箱の中の材料で人が乗れるほどの大型ロボットをも作り上げたことから、箱内部が「四次元ポケット」のように特殊空間に繋がっている可能性がある。

■天才ヘルメット(てんさいヘルメット)
 機械の改造のためにかぶるヘルメット。かぶると、どんな改造をすればいいかをヘルメットが自動的に考えるため、どんな改造でも可能。作中では、スネ夫のラジコン戦車を実戦用に改造するために「技術手袋」と併せて使用した。

■技術手袋(ぎじゅつてぶくろ)
 この手袋を手にはめると、指先がさまざまな工具に変化し、どんな工作でもできる。作中ではスネ夫のラジコン戦車を実戦用に改造するために使用された。


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■ゴブリンスレイヤー
38.冒険者(四方世界編)


※38は『ゴブリンスレイヤー』の世界が舞台になっています。


 ゴブリンというのはファンタジーにおいてザコ扱いで、それはこの四方世界でも変わらないが、『ゴブリンスレイヤー』ほどゴブリンの厄介さを描いた作品はそうはないだろう。

 

 しかし、そんなゴブリンたちは現在異形の三体の人型たちによって駆り立てられていた。それは全身を緑に塗装されて鉄でできた人形なようなもので、それが持っている筒状の何かが音を出すたびにゴブリンがバタバタと倒れていく。更にその奥に隠れていたゴブリンの子供も仕留めてしまう。

 

 実のところゴブリンを掃討したのは、私たちがこの間制作した人間サイズのリーオーで、実戦テストとしてこの世界のゴブリンを狩らせたのだ。

 

 私たちはこの『ゴブリンスレイヤー』の世界に来てこの世界の呪文や奇跡は、力のある文言によって世界の法則を改変したり、精霊に呼びかけて超常現象を引き起こしたり、神々や祖先に嘆願して奇跡を起こしてもらうなど様々な形式が存在する。

 

 最も精神力や体力、触媒などを消耗するため、多くても一日に数回しか行使できないやたら使い勝手の悪い代物である。その為、基礎研究に留めており、魔法技術の習得は早々に打ち切ることにした。そういった意味ではハズレの世界であるが、前回制作したMSの実戦テストとしてはそれなりに使い勝手は良い世界だった。

 

 この世界には冒険者という制度があり、それに登録すれば魔物の討伐依頼を受けることができるのだ。そこで私たちはゴブリンスレイヤーと同じように冒険者になるとゴブリン討伐を率先して受けることにした。

 

 このゴブリン討伐依頼は依頼料が安く労力とリスクに合わないことからベテラン冒険者ほど避けるためにかなり残っていたので、依頼を受けることは簡単にできた。

 

 ゴブリンは雑魚扱いだけにまともに戦うなら大した武装はいらない。レーザーライフルどころか自動小銃ですら過剰火力なので、MSにはサブマシンガンを装備させてゴブリン掃討をさせた。というか、洞窟内に潜むゴブリンの集団を掃討するなら小回りが利いて弾丸を大量にばら撒けるサブマシンガンの方が使い勝手がいい。

 

 洞窟や迷宮を住みかとしているゴブリンにはリーオーを使い、放棄された砦などを住みかとしているならリーオーだけでなくエアリーズも使って空と陸からゴブリンを掃討した。 

 

 ゴブリンたちも無抵抗ではないが、如何せんMS相手では無力に過ぎた。そもそもゴブリンは人間の子供程度の身体能力しかなく、毒を塗り込んだ短剣や弓矢、もしくは投石ぐらいだ。ゴブリンシャーマンのような魔法が使える個体にしてもショボい魔法しか使えない。それでは生身の人間ならともかくチタニュウム合金の装甲で守られたMSに通用しない。毒に至っては機械なので論外である。

 

 更にMSは各種センサーにより洞窟内でもゴブリンの位置を正確に把握できて、機械ゆえの正確無比さでサブマシンガンを打ち込んでいくのだ。また人間と違って命令されたことを忠実に実行するために命乞いなど通用しない。つまり、いろんな意味でゴブリンにとってはMSは最悪の相手だった。

 

 そんな機械でできた人形のようなものを大量投入する戦いぶりから、私たちは他の冒険者から人形使いとして恐れられるようになった。また、神々もサイコロを振らせないどころか機械を使って一方的な蹂躙をする異邦人の冒険者を苦々しく感じたのであった。

 

 当然ながら私たちは今更ゴブリンのような雑魚の相手をしたくないので戦いはMSにやらせている。というか、ゴブリンに凌辱された娘たちの救出まで自分でやるのはあまり気分がいいものではないからだ。

 

 勿論、長年生きてきただけに今更そんなことでうろたえる程やわではないが、好ましくないことは確かだしね。まあ、そんな悪質なゴブリンたちだからこそ容赦なくMSで駆逐できるわけだが。

 

 そんなこんなでMSの実戦テストを終えて、私たちはこの世界から引き上げることにしたが、次はどこにするか悩みどころだった。今のところ新たに行きたい世界がないから、以前行ったことのある世界にまた行くのもいいと考えて二つの世界を思いうかべた。

 

Aルート Fateシリーズの世界

 

Bルート ランスシリーズの世界

 

 どちらも悪くないので後で決めるとしよう。




あとがき

 次はAルートのFateシリーズの世界に行く予定です。またBルートのランスシリーズの世界はお蔵入り作品集で掲載します。


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