お漢(かん)転生 (ガイル01)
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プロローグ

初投稿になります。
もし良かったら読んでください。
ペルソナ3のキャラのハイスクールD×Dへの転生ものです。
ペルソナ3のネタばれ、独自解釈がありますのでお気をつけください。



「俺」は暗く、黒い海のような場所を漂っていた。ここがどこなのかわからない、いつからここにいるのか、どうしているのか、なぜいるのか、それもわからず気付いたらすでにここにいた。

 そもそも「自分」はだれだ?ここに来る前は何をしていた?頭もうまく働かない、ただ眠い。この眠気に従い眠ってしまったらどれほど気持ちいいだろうか、そう考えているうちに自然と瞼が下がっていく。その時、声が聞こえた気がした、懐かしい声だ。

 その声に意識を集中させたとたん、体が浮き上がり目の前が明るくなったのを感じ、目を開けた。

そこに写ったのは、

 

 

地面に這い蹲る仲間たちだった。

 

 

 何が起こってやがる、目の前のありえねぇ状況に唖然とする。アキが美鶴が、他の仲間たちが皆這い蹲ってやがる。

 

「オイ、アキッ!!」

 

 声をかけるがアキは気づかず、触れもしねぇ。それどころか周りのヤツラも誰一人反応しねぇ。

 

「クソッ」

 

 声を荒げながら周りを見渡すと、「あいつ」がいねぇことに気づいた。俺が後を託したやつ、「あいつ」が周りを見捨てて逃げるわけがねぇ、じゃあどこにいきやがった。

その時、皆が空に向かって叫び出した。それに釣られて上を見ると「あいつ」がいた。たった一人で何かと戦っていやがった。何かはわからない、ただやべぇってことは感じる。観ているだけで『死』を感じずにはいられない。こんだけ離れててこれなのにあいつは臆せず立ち向かってやがる。

 

その姿に、俺は…

 

「怒り」を感じた。

 

俺はなにをしてやがる、託すだけ託して後はあいつにまかせっきりか?そんなの許せるか!!

 

 俺は「あいつ」のところに向かう。「あいつ」の周りには「あいつ」を守るように光が舞い、傷ついた「あいつ」を癒していた。そして俺は隣に立つ。他のヤツラと同じように俺の存在に「あいつ」も気づかない。触れねぇのも声が届かねぇのもわかってるが、それでも声をかけずにはいられねぇ。敵は強大で、勝てる気もしねぇ。だが、そんなん欠片も感じさせねぇように、「あいつ」に、「湊」に言った。

 

「さて、やるか…な?」

 

 その時、俺の体が急に光り、体から光の玉が抜き出た。それは湊の周りを他のと同じように舞い始めた。その瞬間、湊は驚いたように周りを見渡し、口の端をあげながら、

 

「はい、荒垣先輩!」

 

といいながら、右手を振り上げた。その瞬間、湊の体から光が放たれ、全てを包み込み、俺の意識も途切れた。

 

 

 再び目が覚めたとき、俺はまた暗い海の様な場所にいた。あの時と違い頭ははっきりしており、周りを観察するとただ真っ暗というワケではなく、遠くのほうに点のような光がいたるところにあった。

 

「どこだ、ここは?」

「お気づきになられましたかな、お客人。」

 

ッ、後ろだと!?

 俺は急に声をかけられ、振り向きながら臨戦態勢をとる。

 

「ご安心なさいませ、我々は貴方様の敵ではありません。」

「こんなとこに人なんかいるわけ…!?」

 

 振り返った俺が見たのは、青い服を着てウェーブがかった銀色の髪を青いリボンかなんかでまとめている女。そっちは別にいい、だが、もう一人は一見は小柄な老人だが、

 

「鼻がおかしいだろうがよ…」

「さてお客人、私の名前はイゴールと申します。そしてこちらが。」

「マーガレットと申します、以後お見知りおきを。」

「スルーかよ!!マーガレットとかいったか、あんたおかしいと思わねぇのかよ!!」

「…いつ見ても素晴らしいものですよね。」

「はぁ、もういい。で、ここはどこなんだ?」

 

 追求することを諦めて尋ねた。

 

「ここは、ベルベッドルームと申します、お客人はある方の願いのためにこちらにご案内させていただきました。」

「ある方だと、誰だそりゃ?」

「以前のお客人で我々はペルソナの管理などのご協力をさせていただいておりました。有里湊様でございます。」

「ッ、そうだあいつらはどうなった、無事なのか!?」

「落ち着きくださいませ、皆様ご無事です。こちらをご覧くださいませ。」

 

 マーガレットはそういうと手元にあった本を開いた。

 

 そこには、見慣れた校舎の屋上とアイギスと湊が写っていた。そこに美鶴が息を切らせながらやってきて何かを話している。そうしていると仲間たちが次々とやってくる。そんな中、湊のやつは幸せそうに昼寝を始める。

 

「ったく、あいかわらずマイペースなやつだな。」

 

 そんなことをぼやきながら見ていると、急に本が閉じられた。

 

「申し訳ありませんが、話を進めさせていただきます。」

「ああ、あいつらの無事がわかったんなら問題ねぇ。で、なんで俺はここに連れてこられたんだ?」

「それが湊様の願いだったからです。」

「さっきからあいつの「願い」とか言ってるが具体的には何なんだ?」

「湊様は貴方様の死で胸を痛めておりました。絆を深めておきながら救うことができなかったと。」

「あの野郎…」

 

 許さなくたっていいが笑えって言ったろうが、俺なんかのことを悔やまなくていいのによ。

 

「そして、最後の戦い、貴方様の声が聞こえた、最後の最後で助けられたと。」

「ちょっと、待て。あれは夢じゃなかったのか?確かにリアルだったが、そもそも俺は死んだんじゃねぇのか?」

「貴方様の肉体は既に死んでおられます。しかし、湊様と絆を育んだことにより、一時的に精神の死が遅れておりました。」

「はっ?そんなことがありえんのかよ。」

「実際に湊様と絆を育んだ方の一人であり、素晴らしい魂の輝きを持った方は一時的に精神のみとなり湊様と時を過ごしました。」

「マジかよ。」

 

 そんなことを聞き驚いていると、

 

「話を戻しますと、湊様の願いとは『貴方様の幸せ』でございます。」

「俺の『幸せ』だと?」

「ええ、ペルソナに苦しみながら誰よりも自分を犠牲にし、僕たちを支えてくれたあの人にもっと幸せになって欲しいとのことです。」

「チッ、余計な世話しやがって。誰よりも苦しんだのはてめぇの方だろうが。俺なんかを気にしてないで自分が幸せになりやがれってんだ。」

 

苦々しくつぶやいた。

 

「それでも湊様は貴方様の幸せを願い、契約をなさいました。」

「契約だと。おい、その手のものには代償が必要だろう。死んだやつを幸せにだろ?できるかどうかわからねぇがそんなことすんには相当な対価が必要だろう。あの野郎なにしやがった?」

「湊様には『世界』を見せていただきましたし、多大なご迷惑をおかけしましたので今回はこちらで対価を払わせていただきます。」

「だが、今の状況は自分の意思で決めたことだ。てめぇのケツはてめぇで拭くことにしてんだ。悪いがあいつの件はなかったことにしてくれ。」

 

俺は十分幸せすぎた、あんなことをしときながらこれ以上幸せになる資格なんかねぇよ…

 

「ホッホッホッ」

 

 急に鼻長が笑い出しやがった。

 

「急になんだよ?」

「いえ、湊様の仰っていた通りになりましたので。」

「あぁ?」

「湊様からの伝言です。「幸せになるのに資格なんて必要ありません。しかし、荒垣先輩は納得しないでしょう。なので、これは約束を守ったことの対価です。あの夜、長鳴神社で約束したことを僕は守りました。こんどは荒垣さんの番です。あのことを悔い背負っているのは知っています。でも天田は乗り越えました。罪は悔いて背負うだけではなく、罰によってあがなわれるべきです、荒垣さんへの罰は他の人を幸せにし、荒垣先輩も幸せになることです。約束ですよ。相手にとって嫌がることが罰ならこれ以上の罰は荒垣先輩にはないですからね。罪には罰を、罰の先には光りある未来を。荒垣先輩の次の人生が光に満ち溢れていることを願います。」とのことです。」

「ったく、約束ってのは両者の意思を確認してするもんだろうが。これじゃあただの押し付けだろうが。」

「いかがしますか?」

「ここで反対してもどうせ無理やり何とかするんだろう?」

 

 さっき湊のペルソナの管理と言っていたことから俺なんかより間違いなく強いだろうから逆らっても無駄だ。

 

「ご協力感謝いたします。貴方様には『転生』していただきます。」

「はぁ?そんなことできんのか?」

 

 また突拍子もねぇ話が出てきやがった。

 

「本来なら貴方様も輪廻転生の輪に入り、流れに沿って生まれ変わる予定でした。しかし私どもの力を使い、予定を少し早めるにすぎません。」

 

 そう簡単にできるとは思わねえがやれるってんならやれるんだろ。

 

「そうか。で、どうすんだ?」

「ここから私どもがお送りさせていただきます。その前にこちらをどうぞ。」

 

 そう言われあるものを渡された。

 

「これは!?おい、これをどこで手に入れやがった?」

「湊様からの預かり物でございます。壊れていたようでしたのでこちらで修理をさせていただきました。それと、「渡すのが遅くなってしまい申し訳ありません、次は落とさないように気をつけてくださいね。」とのことです。」

「あいつ…」

 

 久しぶりに手にした懐中時計を握り締める。もう戻ってこないと思っていたものが急に戻ってきて口元が緩む。

 

「そろそろ参りましょう。マーガレット、ご案内を。」

「かしこまりました。」

「おう、頼む。」

「では、お客人の旅に幸多からんことを。」

「では、こちらに。」

 

マーガレットが指を指した方向を歩き出したその瞬間、俺の足元に何もなくなった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

「マーガレット。」

「様式美でございます。」

「はぁ、私は逝きます。この後のことは任せましたよ。」

「はい、かしこまりました。この後のことは私と弟にお任せください。」

「私は最後に良いお客人たちに恵まれた。」

 

 そういうとイゴールは目を閉じる。足元から光の粒子に変わり、何もなくなった。

 

「お休みなさいませ。」

 

 そういうと、一台の車がマーガレットの前にやってくる。

 

「お待たせしました、お姉さま。」

 

 マーガレットとよく似た服装の男が車から降りてくる。

 

「テオドア、主は逝かれました。我々も行きましょう。」

「かしこまりました。」

 

 テオドアは後部座席の扉を開き、マーガレットは乗り込む。車は再び動き出し、次の客のところに向かう。

 

 

 

 




 皆さん始めまして、ガイル01と申します。この作品は初めての作品となります。ミスや表現が異なるなどのことが多々あるかと思います。その際はぜひご指摘ください。
また、この作品はネタばれ、独自解釈や原作と異なる点が多々あります。そのことだけはご注意ください、それらの点はご指摘いただいても修正できない場合があります。
この作品ですが、やってしまいました。荒垣先輩の(以降ガキさん)転生ものです。ハイスクールD×Dが好きなのでなにかしら書こうと思っていたら、ガキさんが鈍器を振り回して堕天使や悪魔を吹っ飛ばしているシーンがぱっと浮かび、気づいたら資料を集めてました(笑)
今回はプロローグと言うことで次回からD×Dの世界での新たな人生が始まります。楽しみにしていてください。

[補足]
・ラストバトル
PS2版でガキさんの声を聞いたときは号泣しましたね。実は傍にいたというのは独自解釈です。

・マーガレット
誤表記ではないよ。

・屋上で美鶴と話す
ヒロインコミュで一番好きなもんで、湊のメインヒロインとなりました。

・素晴らしい魂の輝きを持った方
太陽コミュの神木さんです。

・あのこと
ペルソナの暴走で天田の母親を殺してしまったこと。

・湊の願い
完全に賛否両論に分かれる内容です。この作品を書くにあたって何種類か候補があり、罪を引きずるパターンなどもありました。でも今回はこのパターンでいきたいと思いますので受け入れられない方はいつかまたご縁があるときにお会いできたらと思います。

・長鳴神社で約束
PSP女主人公版のコミュLV10でアキを頼むという約束です。今作は男主人公ですが月のコミュをガキさんと築いたことになっています。グルキンごめんなさい。

・イゴール
一人の運命を変えるなんて管理者でも難しいことでしょう。また、ペルソナ5が発表され、きっと新しいイゴールが出てくるでしょうが、それは別の人という区別の意味を込め、ここで区切りとし、お休みしていただきました。私にとってイゴールはあの人だけなんで、中の人のご冥福を祈って。


以上が補足でした。なにかご質問ありましたらよろしくお願いします。
次回またお会いしましょう。


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第1話

読んでくださる方がいるというのはうれしいですね。

ネタばれ、独自解釈がありますのでお気をつけください。

ではどうぞ。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ガバッ!!

 

「きゃっ」

 

 ッ、夢か。また懐かしいもんを見たな。あれから17年,今じゃあの時と同じ年齢か…

 

「あなた大丈夫?」

 

 ん、そういえば起きた時になんか聞こえたな。振り返るとそこには黒髪のショートヘア、キツメの目に眼鏡をかけ、知的で厳しそうな雰囲気の少女がいた。

 

「支取…蒼那…」

「はい、そうです。しかし、同級生とはいえ許可なく呼び捨てというのはいかがなものでしょうか。」

「すまん、支取会長。」

「結構です。それで、大丈夫ですか。」

「ああ、少し夢見が悪かっただけで問題ねぇ。しかし、なぜ会長さんが屋上なんかに?」

「はぁ、その話し方も…まぁいいでしょう。私は見廻りです。」

「昼休みだってのに大変だな。」

「それが生徒会の仕事ですし、私はこの仕事に誇りを持っていますから。」

「そうか。」

 

 そう言いながらポケットから時計を取り出し、時間を確かめる。

 

「ッッ!?」

 

「どうかしたか?」

「それは…いえ何でもありません。」

「ならいーが。げっ、もうこんな時間かよ。」

 

 時計の針は12時50分を刺しており、教室までの距離を考えると5分位しかここにはいられない。

 

「急いで食うしかないか。」

 

 俺は弁当を取り出し、飯を食う準備を始める。その時、

 

 ク~

 

 間の抜けた音が聞こえた。振り返ると顔を真っ赤にした支取が立っていた。

 

「飯…どうした。」

「食べていません。」

「まさかダイエットか?」

 

 おれが不機嫌そうにそう言った。

 

「そうではありません!!生徒会の仕事が忙しくて食べていないだけです。」

「はぁ?それもおかしいだろ。生徒会ってのはそんなに忙しいのか?」

「はい、構内清掃、花壇の整備、見廻り、部活の申請書等の書類の整理、企画の計画準備、他にもまだいくつか…」

「明らかに生徒会の仕事じゃねえのも入ってる気がするが、それを全部生徒会でやってんのか。そりゃ忙しいわな、他のヤツラは生徒会室とかで作業してんのか。」

「いえ、昼は私だけです。」

「はぁ!?無茶だろそんなの。昼飯とかどうしてんだ。」

「最近は10秒で食べられる栄養食品もあります。最悪、食べられないこともありますが、慣れていますので。」

 

 ブチッ

 

 その発言を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。

 

「このど阿呆が!!」

「なっ!?」

「あのなぁ、てめぇは一人で抱え込みすぎだ。あれもこれも自分だけで何とかしようとしやがって。それに成長期の女が飯を抜いているのに慣れているだぁ、ふざけんな!!」

「しかし、「しかしじゃねえ!!」きゃっ!」

 

 ああ、なんか気になると思ったら美鶴のやつに似てんのか、あいつも昔から一人でなんでも抱え込もうとしてやがった。仲間と出会ってからはだいぶ変わったがな。

 

「このままだとてめぇは絶対倒れる、絶対だ。その時、生徒会のヤツラはお前の仕事を回せんのかよ。」

「ッツ!?」

「てめぇは優秀なんだろう、あんだけの仕事を一人で出来てるんだからよ。でもなぁ、てめぇが倒れた時、てめぇが卒業した後、残されたもんはどうなるよ。急にいままでやったこともない仕事が大量に出てきて混乱し、学生に不満がたまる。次の生徒会長があんたみたいに優秀じゃなかったら体制は崩壊し、学生の不満は生徒会長に向かう。「前の生徒会長は…」という風に責め立てられる。てめぇはそれでもいいってのか?」

「それは…」

 

 支取はうつむいて黙り込む。

 

「てめぇが自分の仕事に誇りを持ち、この学園が好きだってのはわかった。でもな、本当に学園のことを思うってんなら一人でやるんじゃねえ。下を育てんのも上に立つものの資格であり、義務だ。いくら本人が優秀でも下を育てらんなきゃ先はねえ。」

 

 支取は不安げに瞳を揺らしながら、こちらを見つめ言った。

 

「でも、彼らにとって迷惑では…」

 

 あいつもだが、優秀だからこそ脆い。優秀で自分で出来てしまうから他者とどう接すればよいかわからない、頼れない。ならここが正念場だ、ここを乗り切れればこいつは強くなる。

 

「信じてやれ、仲間だろうがよ。」

 

 まだ、支取は不安げな顔をしている。

 

「あんたが起こしてくれなきゃ飯も食えず、授業にも遅刻だった。ここで出会ったのもなんかの縁だ、なんかあったら話ぐらいは聞いてやる。」

 

 はぁ、俺も甘くなったもんだ。

 

「まずは。」

 

 そういうと、弁当のふたを開ける。中には、卵焼き、野菜を豚肉で巻いて焼いたもの、たけのこの煮物、ポテトサラダ、プチトマト、ウィンナーといったものが綺麗に詰められていた。それを少しずつふたの裏に乗せて支取に箸とともに渡す。

 

「ほらよ、食え。」

「あなたのでは…」

「いいから食え、腹が減っちゃあ戦もできねぇ。箸なら予備があるから気にすんな。いただきます。」

「はあ、では、いただきます。まず、この卵焼きから。」

モグッ

 

「これは!!噛んだ瞬間感じたのは甘みではなく旨味、砂糖ではなく、カツヲ節を削ってとった出汁で味をつけた卵焼きですね。しかし、それだけではありません、他の海鮮の味が…牡蠣ですか?」

「ほう、よくわかったな。それはこの間取り寄せた牡蠣のオイル付けのオイルを使って焼いた。砂糖じゃなくて出汁の卵焼きなのはこのオイルにあわせるためだ。」

 

「なるほど、次はこのお肉を。これはアスパラガスやほうれん草、エノキダケといった野菜を薄い豚肉巻いてごま油で焼き、塩と胡椒で味をつけたものですね。ごま油の香りが食欲をそそり、野菜も三種類使い、それぞれ歯ごたえが異なり、飽きることなく食べられます。しかも、お弁当では冷めてごま油はくどくなりがちなのにそれを一切感じさせません。」

「ごま油は香り付けだ、油だけなら豚が持ってるもんで足りる。」

 

「このたけのこの煮物はもちろんしっかりアクを取り、エグミを一切感じさせない。しょうゆ、みりん、昆布出汁がしっかり利いている。そして、どこかさわやかな香りが…」

「昆布の落し蓋での煮ることで味が決まる。香りは香草だ。忘れがちだったり、飾りのイメージがあるが、あるかないかで大分違う。」

 

「食休めとしてプチトマトがあり、口の中をさわやかな酸味が広がり今までのものを流しリフレッシュさせてくれる。そして、ポテトサラダは芋を完全につぶしきるのではなく、少し残すことやきゅうりと玉ねぎをいれることで食感の変化を生み、やわらかさの中にコリッとした歯ざわりがアクセントとなりさらに食が進みます。」

「そしてこのウィンナー。王道のタコさんかと思いきやカニさん!!職人の一工夫が光ります。」

「そして、このおにぎり。

 

 

具は…

 

 

 

いらない。

 

 

 

 

全てが良質なものでないと作れない。

 

 

 

 

『塩むすび』

 

 

 

 

そして、混ざる『コゲ』

 

 

 

 

もう言葉は要りません。」

 

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした。」」

 

 袋から魔法瓶を取り出し、支取に渡す。

 

「飲め。」

「いただきます。」

 

 お茶を飲み一息つく。

 

「いつ振りでしょうか、こんなに落ち着いた気分になったのは。」

 

 支取が空を見上げながら呟いた。

 

「メリハリだ。」

「え?」

「上のもんがいつも気を張ってりゃ、下のもんも気を使う。上がテンパッてりゃ、下も落ちつかねえ。」

「つまりだ。」

「はい。」

「余裕を持て。その余裕ってのは…」

「いえ、ありがとうございます。これ以上は自分でやってみます。」

 

 支取の目には力と決意が戻り、しっかりとした眼差しでこちらを見て言った。

 

「そうか。」

「ただ…」

「あ?」

「今日はもう少しここで休んでから行こうと思います。」

 

 俺は時計を見る。とっくに予鈴はなっており、急がなければ授業に遅刻は間違いない時刻だ。

 

「遅刻すんぞ。」

「それもたまには良くないですか?」

 

 それを聞いた俺が驚いた顔をすると、支取はいたずらが成功した子どものような笑顔を見せた後、言った。

 

「荒垣君、ありがとう。」

 

 そのときの、支取の笑顔はとてもやさしいものだった。

 

「おう。俺は先に行くぞ。」

 

 そういって屋上の扉を出る。

 

「反則だろ、ありゃ。」

 

 俺は顔が火照るの押されきれずつぶやいた。

 

 

 

 

 その日、支取蒼那は初めて授業をサボった。

 

 

 

 




こんにちは、ガイル01です。
どうしてこうなった…二話目なのに原作主人公はおろか、リアスチームすら出てこないと言う罠。
なんてこったい…しかし後悔はしていない!
次回からはきっとイッセーを始め、皆出てくるはずです。お待ちください。

そして、一話目だというのに感想をくださった方どうもありがとうございます。あれとあれはガキさんを出す上で欠かせないものですから、しっかり考えていますので出番をお待ちください。
このように進行がすさまじく遅いものですがしっかり書いていこうと思います。どうしても書きたい話が頭に浮かび、それのネタばかりが沸いてくるのでまずはそこまで気合を入れて、そしてその後もがんばっていこうと思います。
ちなみに書きたいのは完全独自設定の「サイラオーグの初恋」です(笑)番外編なので本編にあまり関係ありませんが、そういう話に限ってネタがポンポン出てくるんですよね、なので原作10巻以降までお待ちください。

ご意見、ご指摘等ございましたらよろしくおねがいします。

[補足]
・ガキさんの口調
「てめぇ」は怒ってるとき、心の中では支取、呼ぶときは会長さんか会長です。
基本的には名前は認めたものにしか使いません。大抵苗字か代名詞になります。

・支取の性格と生徒会の現状
これは独自設定です。生徒会選挙がいつかはわからないですが、メンバーが眷属とは言え最初はこんなんだったのではという作者の妄想です。

・ガキさんの性格
原作よりお節介になっております。他者を幸せにという約束もありますが、もとから優しいので学校に来てればこんな感じだったはず…困っている人を放ってはおけず、不器用ながら助ける。時にはお説教(言葉)(物理)もします。なので少し原作より雰囲気がマイルドになりますので。

・不機嫌そうに言った
年頃の女の子が無理なダイエットはいけません!!
ガキさんマジおかんです。

・食事風景
どうしてry…
少しは雰囲気が伝わったでしょうか?

以上です。
また次回お会いしましょう。


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第2話

後書きにも書きますが、設定に変更が出ました。原作キャラと絡ませるためガキさんを2年生にしていたんですがあまりの違和感のため3年生にしました。それにより、前話の最初の年齢の部分と支取との会話に変更が出ました。
ご意見をくださった方、あがとうございます。
皆さんのご意見がありましたらよろしくお願いします、ただ設定と作者の構想の都合上変更が出来ない場合もあります。その点はご了承ください。

では、本編をお楽しみください。

この作品はネタばれと独自解釈があります、お気をつけください。


 昼休みが終わるぎりぎりに俺は教室に着いた。窓際の自分の席に座って次の授業の準備をする。

 

「午後の従業は…英語か。」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「ねみぃ。」

 

 そこそこ寝たってのにどうして午後一の授業はこんなに眠くなるんだか、やべぇ…

 

 

 

 

 

>春の陽射しが柔らかく降り注いでくる…

>遠くから聞こえる歓声、

 まだ少し冷たい風

>少し眠気が差してきた…

 

我慢だ…

 

 

>うららかな陽射し

>だんだん眠くなってきた…

 

 

 

 

>…目を閉じますか?

 

→目を閉じる

……。

 

………………

 

…………

 

……

 

 

「エクセレントッ!!」

 

ビクッ!!

 

 いきなり聞こえた、美鶴の口癖に思い切り顔を上げる。

 

「どうしたんだい、荒垣君?」

「いえ、なんでもありません。」

 

 なんだ、クラスのやつが問題を答えただけか。ふと黒板を見ると一人の学生が立っていた。

 紅い―ストロベリーブロンドよりもさらに鮮やかな紅の髪をもつ女子。

 リアス・グレモリー

 頭脳明晰・運動神経抜群・スタイルもよく・性格も悪くない。うちの学校の二大お姉さまとか呼ばれている。

 

 しかし、なんか違和感を感じる。なにが?と聞かれれば答えられねぇ、しいて言うなら何となくとしか言いようがねぇ。支取にも感じているが、害はなさそうなんで保留だ。

 

 

 なんやかんやで5・6・7限と授業が終わり、放課後となった。帰りの準備をしていると、声をかけられた。

 

「あらあら、荒垣君お帰りですか?さきほどの英語の授業では何かあったようですが大丈夫ですか?」

「問題ねぇ。」

 

 そういうと相手、姫島朱乃は安心したように微笑む。

 

 こいつ、姫島朱乃も二大お姉さまと呼ばれている。社交性が高いため男女問わず一定の対応をする、そのため勘違いして玉砕した男子は数知れねえ、意識していねぇ分余計に性質がわりぃ。

 

「じゃあな。」

「ええ、さようなら。」

 

 そして、こいつからもあの違和感を感じている。

 

「さてと、帰るか。」

 

 

 

 

次の日

 

ジリリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

バンッ!!

 

「くそ、目覚まし切り忘れた。」

 

 せっかくの休みだってのに。

 

「寝直すか…」

 

 ……………ん、なんか変な匂いが。

 

「ッツ、まさか!」

 

 俺は飛び起き、階段を駆け下りてキッチンに向かう。

 

「お袋、なにしてやがる!!」

「シンちゃん、大変!!鍋が!!」

「まず火ぃ、消せ!てか何で朝っぱらから油鍋なんか使ってんだ!っておい水かけようとしてんじゃねえ、やめろ!!」

「きゃああああああああああ!??」

 

 

 

30分後

 

「ぜーはーぜーはー、お袋。」

「はい。」

「マニュアル第31条3項 油鍋の扱い方」

「はい、高温の油鍋に水を入れると火柱が上がり大変危険なのでやめましょう。」

「そうだ。で、あんたはなにをやった。」

「水を入れました。」

「わかってるならやんな。」

「はい、以後気をつけます。」

 

 なんとか火事にはならなかったが、キッチンは油がはねてベタベタ、天井には煤…

 

「はぁ、まあいい機会だ。これを機に今日は大掃除をすんぞ。」

「そうよね!いい機会よね!!」

「調子にノンな。」

 

 俺が諌めるとお袋は部屋の隅でいじけ始める。

 

「シンちゃんったら昔はかわいかったのに…」

「ぶつくさ言ってんじゃねえ、親父起こしてこい。こうなりゃ、親父も手伝わせる。」

「はーい、あなたぁ。シンちゃんが手伝ってってぇ!!」

「チッ、どこから手をつけるか」

 

 汚れてもいいよう、頭には三角巾。そして前掛けをつけながら片付けの準備を始める。

 

「よしっ、やるか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わりだ。」

 

 夕方になってようやく終わりやがった。てかお袋を手伝わすんじゃなかった。一人でやったほうがぜってぇ早かった。

 

「シンちゃん、お腹すいたぁ。」

「そうだな、真次郎腹が減ったな。」

「朝お袋が使っちまったから冷蔵庫には何もねぇぞ。」

「「え~!!」」

「うるせぇ、てめぇらはガキか!!買いもんいってくるからちょっと待ってろ。」

「「は~い。」」

「チッ」

 

 俺が外に出ると。

 

「ワンッワンッ」

 

 犬、我が家の番犬コロがほえる。

 

「悪いなコロちゃん、今は散歩できねぇんだ。また今度な。」

 

 そういって頭をなでる。

 

「フキュ~ン」

 

 不満そうだが納得してくれたらしい。

 

「じゃあ行って来る。」

 

 

 さて、スーパーに向かうか。しかし、お袋も親父も俺が生まれるまで料理がまったく出来ないで、どうやって生きてきやがったのか。初めて食ったお袋の料理も紫色のわけのわからん物体Xだったし、なんだって幼稚園のころからキッチンに立って、スーパーで主婦とタイムセール品の取り合いをしなきゃならねぇんだか。

 

ドンッ

 

「っと、わりぃ。考え事して前を見てなかった。」

「いえ、こっちもよそ見してたんで、すみません。」

 

 そう言ってぶつかった男は頭を下げてくる。連れの女もそれに続く。

 

「なら、お互い様だ。」

「はい。じゃあ、失礼します。」

 

「夕麻ちゃん次どこ行こうか!」

「そうね…」

 

 あれは…2年の兵藤とかいったか。連れの女は見たことがないが。

 

「あの女の目…」

 

 あれはただ見るだけではなく、なにかをあの探る様な目つきだった。

 

「気にくわねぇ。」

 

 っと、そんなんより今の時間は。5時5分前。

 

「チッ、出遅れた。」

 

 今からじゃ良いポジションが取れない、ならどうする。

 誰かと手を組むしかないか。

 しかし、誰とだ?

 クソッ、時間が…

 

「あら、荒垣君。奇遇ね。」

 

 振り返った先にいたのは、支取であった。

 

「会長、急で悪いが質問がある。」

「なにかしら?」

「今暇か?」

「ええ、スーパーに買い物に来たところなんだけど…」

「!!」

 

 マジか。この時間、このスーパーに買い物。こいつもこちら側の人間か。そういやぁ、味覚が相当鋭かったし、料理をするんだろう。なら好都合だ。

 

「会長。」

「はい。」

「手を貸してくれ。」

 

 そういって頭を下げる。

 

「構わないですよ。何をすればよいですか。」

「恩に着る。」

 

 そして、俺たちはタイムセール会場《戦場》に向かった。

 

 

 

 

 

 買い物の後、俺たちは公園で一休みをしていた。

 

「手伝ってもらって悪かったな。ほらよ。」

 

 そういって買ってきたジュースを渡す。

 

「あれは、いったいなんなのですか!?」

「すまねぇ、てっきりこちら側の人間かと思ってたが初めてだったとは。」

「いえ、すみません。取り乱しました。」

「しかし、なんだってあの時間にあそこで買い物しようとしたんだ?初めてなら無謀すぎんぞ。」

 

 あそこは歴戦の猛者が集う場所だ、特にこの時間に初めてのやつが行ってもまず何も買えない。なのにしっかりと目当てのものを手に入れたこいつはある意味才能があるのかもな。

 

「とても安く、良い品がそろってると友人に聞いたもので。」

「そうか、いつもはどこで買ってるんだ。」

「あまり買い物はしないのですが、この間荒垣君に頂いたお弁当があまりに美味しかったので料理に 興味がわいて私もやってみようと思ったんです。」

「…そうか。」

「…もしかして照れてますか?」

「照れてねぇ。」

「顔が赤いですよ。」

「うるせえ。帰る。」

「では、私も、ッ!」

「どうした?」

「いえ、なんでもありません。こちらから帰りましょう。」

 

 そういうと支取は公園を出ようとする。

 

「俺は公園を抜けた方がちけぇんだが。」

「あら、荒垣君はこんな時間に女性を一人で帰すのですか?」

「まだ夕方だろうが。チッ、わかったよ。とっとといくぞ、うちには腹減らしたガキが二人待ってるんだから。」

「あら、ご兄弟かしら?」

「ならまだマシだったんだがな…」

 

 俺は知らなかった、この時同じ公園で一人の後輩が命を落としていたことを。

 




まさかの連投です!一回やってみたかったんですが今後は無理ですね。
あと感想をくださった方どうもありがとうございます。感想を受け、自分の分を見直した所、やっぱり自分でも違和感を感じたため、ガキさんは最上級生にしたいと思います。そのため前話を一部修正しました。といっても年齢のところと支取との出会いの部分ですが。
 今後も気づいた点がありましたら是非ご指摘ください。ただこちらにも考えがある場合は変更できない場合もあります。その際はご了承ください。
 
 そして、ついにメインメンバーの登場。といってもほんの少しな上にイッセー死んでるし。どうしてry。
 次回は初戦闘です、がんばって書きたいと思います!!

[補足]
・目を閉じますか?
みんなのトラウマEDですね。

・目覚まし
ガキさんは低血圧で目覚ましがすさまじいとドラマCDで言っていたのでこうしてみました。

・ガキさんの両親
荒垣の両親だからガキ…なんちゃって。
ハッ、イッタイオレハナニヲシテタンダ、リジチョウノシワザニチガイナイ。
本当はガキさんのおかんスキルを目立たせようとしたらこうなりました。
母親はお袋、父親は親父と呼んでいます。母親は家事スキル0です。父親が中の下くらいなのでガキさんが生まれるまではなんとかなりました。でも今はガキさんにまかせっきりなので父親の家事スキルは下がり、ガキさんがほとんど全部やっています。

・マニュアル
ガキさん特製家事マニュアル。とても綺麗にまとめられており、娘の嫁入り道具の一つとしてうちに是非!!と近所のおば様方に大人気の一品です。これとは別に門外不出のレシピ本もあるとか。

・コロ
虎狼丸とは別犬で、カタカナでコロとなります。具体的な年齢は知らず、ガキさんが子どもの頃に父親が拾ってきた。見た目は柴犬に近い。

・支取
ガキさんのお弁当以来料理が趣味となる。その腕前は!?
あと、雰囲気が大分柔らかくなっていますが、基本予想外のことの後で(説教・タイムセール)生徒会長の仮面が外れているからですね。ガキさんに対しては今のところは恩人であり、良い友人といった感じ。原作を見ても支取は鈍感そうで、惚れたとしても自分の気持ちになかなか気づかなそうですね。

以上です。
また次回お会いしましょう。


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第3話

初戦闘回です。
どうぞ。

この作品は、ネタばれ、独自設定、原作設定と異なる点があります。
ご注意ください。


 支取とスーパーで出会ってから数日が経ったある日、放課後に俺が廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。

 

「す、すみません。」

「あ?」

 

 振り向くとそこには兵藤が緊張した面持ちで立っていた。

 

「急で申し訳ないんですが、あの先輩。この間、町で俺と会ったのを覚えてますか?」

「ああ。」

 

 兵藤と町で会ったのはあの日一回だけだから間違いはねぇだろう。

 

「!! その時、俺と一緒にいた女の子のことも覚えてますか!?」

「ん、あの黒髪の…女だろう?」

 

 あの女の目つきは気にくわなかったが、この様子を見るに彼女かなんかなんだろう、下手な事は言わねぇでおくか。

 

「そうですか!ははっ、やっぱり夕麻ちゃんはいたんだ!!」

 

 …こいついきなり叫びだしてどうした。

 俺が若干引き気味でいると

 

「先輩どうもありがとうございました!!」

 

 そう言って兵頭は思い切り頭を下げ、廊下を飛び跳ねながら駆けていく。奥にダチがいたのかこっちまで聞こえるでけぇ声で話始める。

 

「松田、元浜!今日は無礼講だ!炭酸飲料とポテチで祝杯をあげながらエロDVDでも視聴しようじゃねぇか!」

「おおっ!それだよ、それ!それこそ、イッセーだ!」

「その意気だ。青春をエンジョイしようではないか。」

 

 何を話すかは人の自由だが、人前で大声で話す内容じゃねえだろ、女子がすげぇ目でみてんぞ。

 直前まで話してた俺まで変な目で見られかねねぇからとっとと帰るか。

 

 

 

 

「あそこは予想以上だったな。」

 俺は一度家に帰った後、夜ラーメンを食いに出かけていた。そのラーメン屋は屋台でいつも決まった時間に決まった場所にいるわけじゃねぇ。神出鬼没。連日現れたかと思えば、一週間以上現れない時もある。かくいう俺もタイミングが悪く、出会うことが出来たのは今日が初めてだった。ネットで知り合ったグル☆キンとかいうやつに教えてもらわなきゃ今回も食えずじまいになるとこだったぜ。

 

「はがくれには及ばないものの、美味かったな。塩ラーメンの中じゃダントツだな。塩ラーメンはあっさりという固定概念をぶち壊す一品だった。」

 

 ラーメンには、具はなし。あるのは麺とスープのみ。あのスープ、底がはっきり見えるくらい透き通っているのに飲んだ瞬間口に広がる豊富な食材の味。どれだけの食材を使ってんだというくらい複雑な味、スープを飲むだけで一食食べたかのような満足感に襲われた。かといってお互いを邪魔することなく、引き立てあってやがった。あのバランスを取る何かがある。だが、まだそれはわからない。それにあの麺だ、それだけ複雑な味のスープに負けることなく、小麦の味をしっかり感じさせる麺だった。スープに絡みやすい縮れ麺であり、口の中で噛むとプツンという音とともに切れ、口の中で味が広がり、スープと混ざり合い、『ラーメン』として高い次元へと昇っていく。

 

「久しぶりに通いてぇって思った店だったぜ。おっと、もうこんな時間か」

 

 時計を見ると、既に午後十時を過ぎていた。

 

「一応伝えてあるとはいえ、あんまし遅ぇとお袋がうるせぇしとっとと帰るか。」

 

 久しぶりの満足行く味に俺は上機嫌に歩いて帰る。家への近道になる公園を抜けるため、公園に入ろうとすると、

 

 

 

 

 血塗れになって倒れる後輩と光の槍を逆手で構えた黒い羽の生えた男がいた。

 

 俺は咄嗟に近くにあるものを掴み、公園へ駆け込む。

 そして、羽の生えた男に死角から容赦なく振り下ろした。

 

「おりゃあああああああ!!」

 

 ズドォン!!

 

「グッ!!貴様何者だ!」

 

 男は羽根を広げ、空へと距離をとる。

 

「チッ、腕一本か。浅かったか。」

 

 羽の生えた男を見ると、槍を構えていたほうの手がひしゃげてはいたがそれ以外に大きなダメージは見られなかった。

 

 くそっ、死角からの奇襲で一撃でしとめられねぇなんて、なさけねぇ。ここまでなまってやがったか。

 

「人間だと…ふざけるなぁ!人間ごときがこの私によくも傷をぉおおお!!」

 

 ヤツの叫びに大気が震え、瞳は怒りに染まり、俺を捕らえる。そして久しぶりに感じる殺気、遊びではない。戦場に再び戻ってきたのをいやでも実感させられる。

 さて、どうする。次の行動を考えていると先に動いたのはヤツだった。

 

「死ねぇい!!」

 

 そう言うとヤツは傷ついていないほうの手を振り上げ、光の槍を作り、投げつけてきた。

 容赦のない一撃。すさまじい速さで俺の心臓へと迫る。

 一般の人間では避けようのないもの。しかし、それを俺は。

 

「フン…オラァ!」

 掛け声とともにさっき咄嗟に手に取った武器。しかし、使い慣れた武器である『バス停』を振り回して破壊する。

 

「なにぃ!?」

「す…げぇ…」

 

 まさか、人間ごときに自慢の槍が破壊されるとは思っていなかったヤツは動きを止める。

 その隙に兵藤に駆け寄る。

 兵藤の腹には光の槍が刺さっており、それが傷口を焼いていた。あきらかにやべぇもんだというのがわかる。すぐに俺は持っていたハンカチを兵藤の口に突っ込む。

 

「歯ぁ食いしばれ。それ抜くぞ。」

「ぐぅっ!!」

 

 ずりゅ。

 

 嫌な音とともにそれが抜ける。

 

 がらぁん。

 

 音を立てながら槍が落ちる。

 兵藤の口からハンカチを抜き、上着を脱ぎ、腹に巻きつける。

 

「動けるか。」

「は、は…ゲホッ」

「チッ。」

 

 返事をしようとしたが、傷が深いせいで血を吐く。

 

「喋るな、俺があいつの気を引く。気を失ったフリをして俺が離れたら逃げろ。」

「で…も、それ…じゃ…せんぱ…いが…」

「しゃべるなって言ったろうが。」

 

 兵藤の前に手を出し、これ以上話させないようにし、立ち上がり、ヤツのほうに歩き出す。

 

「それにこういうのには慣れてんだよ。」

 

 そう言って武器を肩に乗せ、ヤツを睨む。

 

「さて、鳥野郎。掃除してやる、かかってきな。」

 

 兵藤から意識を遠ざけるためにヤツを挑発する。

 

「おのれぇ、殺す。絶対殺してやる!!」

 

 挑発と槍を壊されたことでプライドが傷ついたせいか、槍を携えヤツはこちらに向かって急降下してくる。

 

「接近戦なら好都合だ。」

 

 そう言いつつ迎撃する。

 急降下のスピードに合わせ、出された突きを正面から受け止める。

 

 ギンッ!

 ズザァ

 

 少し押されるがもんだいねぇ。受け止められて体制を崩したやつに向かってバス停を振り下ろす。

 

 ガンッ!

 

 受け止められる。さっきの槍より頑丈に作られているのか、折れはしない。

 

 ドンッ

 

 反撃される前に蹴り飛ばして距離を開ける。

 

「グッ」

 

 続けざまに横からバス停で殴りつける。

 

 ブンッ

 

 ヤツの横顔をかする。あたってねぇ。だが、ヤツがのけぞる。追撃だ。

 前に踏み込み、全力で再びバス停を振り下ろした。

 

 ズドォン!!

 

 直撃はしなかったが、避け切れなかった右足は折れ、衝撃でヤツは吹き飛ばされる。

 

「ぐはぁ。」

 

 さっきの蹴りで骨が折れて刺さったのか血を吐く。

 

「おのれおのれおのれおのれおのれおのれええええ!!人間ごときがああああ!!」

「ごとき、ごときってうるせぇ。テメェがどんだけ偉いかなんて戦いには関係ねぇだろうが。」

 

 そう言いながら、兵頭がいた場所に意識を向ける。そこには既に姿はなく、血の跡が公園の外へと続いていた。

 

「よし、逃げたか。」

 

 そう呟くと、ヤツに向かって駆ける。

 

 やつは迎撃しようと槍を突き出す。

 

「槍の扱いが中途半端なんだよぉ!!」

 

 そう言いながら、槍を弾き飛ばし、やつの胸倉を掴み引き寄せ、頭突きをかます。

 

 ドゴォ!

 グシャ

 

 ヤツの顔面に当たり、吹き飛び倒れる。

 俺は武器を構えたまま警戒をする。

 

 おかしい。

 

 戦いながら気づいたが、ヤツは槍の扱いが中途半端だ。そもそも近接戦闘そのものが中途半端だ。

最初見たときヤツは槍を使い、兵藤を殺そうとしてやがった。ヤツの武器が槍なのは間違いねぇ。なのに、なんであんな中途半端なんだ。

 

 考えろ、やべぇ予感がする。

 

 俺とヤツが対峙した時、ヤツはプライドを傷つけられ、激昂状態だった。なら通常の状態はいつだ。

 兵藤とやりあってたときだ。

 兵藤と向き合ってたときのこいつはどういう状態だった?

 

 腹に槍が刺さる兵藤

 

 右手に槍を持つヤツ。

 

 複数の槍

 

 強度の異なる槍

 

 ッ、そうだ!あの時のヤツの槍の持ち方、兵藤への槍の刺さり方。

 

 気づいた瞬間、俺は全力でヤツに向かって駆ける。

 

「うおおおおおおお!」

 

 バス停を振り上げ、振り下ろす。

 

 ズドォン!!

 

 衝撃で地面が揺れ、土埃が舞う。

 しかし、敵を打った感触はなかった。

 

「チッ。」

 

 上から急に何かが降ってきくる。

 咄嗟に飛び退り、避ける。

 

 土埃が晴れた時、ヤツは空中にいた。

 

 

 周りにいくつもの光の槍を携えながら。

 

「それが本来の戦い方ってワケかよ。」

「そうだ、人間と侮っていた私が愚かであった。ここは、狩場ではない。戦場だ。ならいるのは狩られるものではなく、敵だ。」

 

 そういうとヤツは一斉に槍を放つ。

 

 そう、ヤツは近接系ではなく、自分の能力を生かした物量で敵を制圧する遠距離系の敵だ。

 

「クソッ。」

 

 時に弾き、時に避け。自分に当たる最低限のものだけを対処する。

 しかし、自分に当たらないものも時が経つにつれ量が増え、壁となって避ける障害となる。

 

「このままだとジリ貧か。」

 

 しかし、ヤツは一切の油断なく、徹底していて一定の距離を保ち、空から降りず、槍を放ち続ける。

 

「ったく、山岸のありがたみが良くわかったぜ。」

 

 ヤツの槍は止むことなく絶えず降り続く。

 

 俺は避けながら次の手を考える。

 

 その時だった。偶然だった。気づかなければ良かった、でも気づいてしまった。

 

 一匹の猫が脇の茂みにいたことを。

 そして、そこに向かって大量の槍が降り注いでいることに。

 

「クソがああああああああ!!」

 

 駆ける。

 

 辿り着いた時、槍は既に目の前にあった。

 

 ズドドドドドドドッ!!

 

 槍が彼らの居た一帯に降り注ぐ。

 周りの木を、草を吹き飛ばす。

 

「お前は本当に人間か?人間ならとうの昔に吹き飛んでいるはずなんだがな。」

「へっ、あいにく頑丈に出来ているもんでな。そう簡単には死なねぇんだよ。」

 

 俺はそう言う。しかし、俺の脇腹と左足には槍が刺さっている。数が多かったせいか兵藤に刺さっていたものよりは細いが相当やべぇ状況であることには違いねぇ。

 俺は自分の後ろを見る。

 

「血の跡はねぇな。逃げたか。それでいい。」

 

「ガッ。」

 

 口から血を吐く。ふとあのときを思い出す。

 

「はは、そういや…あの時も似た感じだったかな。」

 

 思い出すのは、あの路地裏。

 

「だがな、あの時と違って俺は死ねねぇんだ。あいつとの…約束があるからな。」

「お前は危険だ。最後まで徹底させてもらう。」

 

 そういうとヤツは空で今までと比べ物にならないほどの大きさの槍を作り始める。

 

 俺は、それを見て…

 

 

 笑う。

 

 そして呟く。

 

 

「ペ」

 

 

「ル」

 

 

「ソ」

 

 

「ナ」

 

 

 ゴッ!!

 

 その瞬間、俺を青白い光が包み、後ろには一つの異形が現れる。

 一本足の馬のようなものに跨り、胸を巨大な刃で突きさされた男性

 

『カストール』

 

 もう一人の『俺』の姿であった。

 

「チャージ」

 

 そう言うと俺に力が戻る。いや、さっき以上の力が俺に宿る。

 

「くらいやがれ!」

 

 俺は全力で右手に持っていたバス停をヤツに向かって投げつける。

 

「なっ」

 

 メキメキッ!!

 グシャッ!!

 

 予想外の反撃にヤツは反応できず腹に当たり、そのまま落ちる。

 

「チッ、滑ったか。」

 

 投げた瞬間、手についた血で滑った。当たりはしたが死んではいねぇはず。

 

「とっとと逃げっか。」

 

 そう呟いて公園を離れようとしたとき。

 

「ドーナシーク!!」

「マジかよ…最悪なタイミングだな。」

 

 振り向くと倒れているやつのところに二人の女が立っている。

 

「あんたがやったのね。」

 

 ゴゥッ!

 

 そう言いながら一人の女が殺気を出す。

 

「ミット…ルテ、やめろ。」

「ドーナシーク!?」

「騒ぎ…過ぎた。もうやつ…らが、くる。」

「ッ、でも!人間一人くらい!!」

「そいつを…舐めるな。」

「そうよ、ドーナシークをここまで追い詰めた人間。手負いだからこそ危険だわ。」

「カラワーナまで。」

「これからのためにこれ以上戦力を削るわけには行かないし、ドーナシークも危ない。始末はあの人間にでもやらせればいいわ。」

「くっ、わかったわ。」

 

 そう言うと、女はこっちを睨みながらも飛び去っていく。

 

「やれやれ、なんとかなったか。」

 

 ズルズルッ

 

 俺は木にもたれかかり座り込む。

 

「やべぇ、眠たくなってきやがった。」

 

 ぼんやりした意識の中、最後に黒い髪が写り、俺の意識はそこで途絶えた。

 

 




あとがき
え~皆さん初めての戦闘でしたがいかがでしたでしょうか?
あれ、どうした。初めてのバトルシーンだと頑張ってみたらドーナシークさんが強キャラに…レイナーレ戦どうしようってか今後のバトル…汗
色々後ほど補足はします…

全く話は異なりますが連休だったんでペルソナ3の映画を見てきました!!
原作を知ってる分大興奮でした。てか、ペルソナってほんと強いんだなと改めて実感、そのせいもあってドーナシークさんは強くなったにチガイナイ!
すみません、調子に乗っただけです。
ただ、ペルソナが強いというのは知っていたので味方も敵も原作よりパワーアップはさせるつもりでした。そうしないとガキさんが無双すぎるんで。緊張感のある戦闘にできればなと、それに伴いかなり独自設定や原作と異なる設定が出てきます。すみませんがご了承ください。
では補足に入ります。

追記
映画館特典のシールはマジシャン・ヘルメス・エリザベスでした。サイン色紙がなぜか2枚もらえました。ガチャガチャが全部男キャラでした、次の人が美鶴さんだして泣きそうでした。

[補足]
・グル☆キン
今作で月コミュの役割を奪われ、哀れすぎたのでこうなりました。

・ラーメン
至高のラーメン『はがくれ』、裏メニューにはがくれ丼と常連中の常連しか食べられない???があるらしい。原作のガキさんいきつけのお店ですペルソナ3で一番行ってみたいお店です。

・奇襲
アトラス作品はハードモード以上で奇襲を受けるとほぼ全滅です、そのためこんな考えに。

・バス停
皆大好きバス停です!!ガキさんにはこれしかないでしょ。
原作でエリザベスの依頼を受けるともらえる武器です。ドラマCDにもでる人気の高い武器です。

・近接戦
なまっていても戦えます。体はずっと鍛えてきた設定の予定なので、実践の感、アナライズなしの違和感、ペルソナのなまりが大きな点ですね。

・ペルソナ
カストールさんきました!今回ガキさんが苦戦した大きな理由のひとつです。前世で暴走させ、人を傷つけてしまったことから。あまり使いたがっていません。しかし、力を持つものの義務として二度と暴走させてはいけないという考えから昔から人のいない場所でペルソナの訓練はしていました。LV50はあります。最初からペルソナを使っていれば、もっと楽に勝てました。ペルソナ使いではなく、一般人?のイッセーがいたので使いませんでした。
 あと弱点はありませんが、ペルソナ的に槍や矢って相性が悪いんですよね。(カストールは戦場で槍もしくは矢を受けて死んだとされている。)アナライズもなく、ピンチってのもあり、今回こうしてみました。今後、ガキさんの戦闘の際の警戒心がグンとあがります。可愛そうになる敵も出てきます。

ガキさん習得済みのスキル一覧

治癒促進・小(ターン毎に2%体力回復・自動発動スキル)
デッドエンド(中威力・斬撃属性)
カウンタ
デビルスマイル(LV39)(相手を恐怖状態にする)
ヘビーカウンタ(LV42)(一定確立で物理反射・カウンタより頻度が高い自動発動スキル)
チャージ(LV50)(一回限り物理攻撃を2倍以上)

とりあえずこんなところでしょうか。
ご意見・ご感想ありましたらよろしくお願いします。

ではまた次回お会いしましょう。



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第4話

連日投稿は途切れてしまいましたが、新しいのが出来ました。
どうぞ。

この作品は、ネタばれ、独自解釈、オリジナル設定等がございます。
ご注意ください。


ジリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

バンッ!

 

「もう朝か…」

 

 頭をかきながら俺は起き上がる

 

…………

 

……

 

 

 

「ちょっと待て、何で俺は自分の部屋にいんだ?」

 

 俺はドーナシークとか呼ばれてた羽の生えた男と戦って、撃退はしたが、そのまま気絶しちまったはずだ…

 

「私が運ばせていただきましたわ。」

「ッ!!」

 

 横から急に声をかけられ、振り返ると椅子に腰をかけ、こちらを見ている姫島朱乃がいた。

 

「てめぇ、どうしてここに居る。」

 

 ベッドから飛び出し警戒しながら話しかける。

 

「あらあら、先ほど申しましたように、公園で傷だらけの貴方をこちらまで運んで治療をさせていただきました。といっても傷はほとんどふさがっていましたので包帯などを替えただけですけれども。」

「てめぇはいったいなにもんだ。」

「お話の前に服を着ませんか?」

 

 確かに俺は今下着一枚の状態だ、だが。

 

「敵か味方かわからねぇやつの前で無防備に背中を向けられるか。」

 

 緊張した空気に俺の部屋が包まれる。

 

「てめぇは「シンちゃんおはよう!!お腹すいた~!!」」

 

 バァン!と扉を開けてお袋が入ってくる。

 

 

 ………

 

 

 

 俺:パンツ一丁

 姫島:頬に手を当て顔を赤らめる

 

 

 

 

 

 

 

パタン

 

 

「普通」に扉が閉められる。

 

 

パタパタパタパタ

 

 

「普通」に階段を下りる音が聞こえる。

 

 

 

「はぁ。」

 

 ため息をつきながら着替えを始める。

 

「あら、私に背中を見せてもよろしいのですか?」

 

 いつも通りのにこやかな笑顔で聞いてくる。

 

「どうでもいい。」

 

 そう言いながら、俺はこの後のことを考えつつ着替えた。

 

 

 

 

 

 

 着替えが終わり、一階に降りるとお袋と親父が正装に着替えて座っていた。そして。

 

「娘さん、お名前は?」

「荒垣くんと同じクラスの姫島朱乃と申します。」

 

 二人は立ち上がり

 

「「息子をよろしくお願いします!!」」

 

 思い切り頭を下げた。

 

「このど阿呆が!!」

 

 そう言いつつ、二人の頭をはたく。

 

「はい。」

「姫島ぁ!てめぇも「はい」じゃねぇ!」

「あら、シンちゃん彼女よりママのほうがいいの!も~いつまでも母親離れできないんだから!!」

「あぁ!?家事をほぼ息子に任せっぱなしで息子がいないと生活がままならない母親が言うんじゃねぇ!!」

「あなた!!シンちゃんが反抗期よ!!

「うんうん、真次郎もようやく色を知る年頃になったか。」

「だぁ!!てめぇら!!」

 

 俺がこの状況にキレかかっていると。

 

「ふふ、荒垣君と私は友達です。昨日、変質者に襲われそうだった私を助けてくれて、落ち着くまでうちで休めといってくれたのです。でも遅くになってしまったのでそのまま泊まらさせていただいておりました。お二人ともお休みでしたのでご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。」

 

 何を言ってやがる。流石に、うちの両親でもそれを信じろというのは無理だろうと考えていると。

 

「それは大変だったのね。」

「真次郎すごいな、流石私の息子だ。」

「はぁ?」

 

 俺は両親のほうを向くが様子がおかしい。

 目が虚ろになっている。

 

「おい、姫島。これは…」

 

 姫島は耳打ちをしてくる。

 

「申し訳ありません。少々面倒なことになりそうでしたので力を使わせていただきました。」

「大丈夫なんだろうな。」

「ええ、危険はありませんわ。」

「とりあえず出るぞ。」

 

 時計は既に出発しなければならない時間を指していた。

 

「はい。」

 

 

 家を出てすぐ俺は姫島に向かって言った。

 

「今回は助けてもらった恩もあるから何も言わねぇが、次うちの両親を操るような真似をしたらお前がなにもんだろうがぶっとばす。」

 

 事情があったとはいえ自分の家族が操られる姿など見ていて気持ちいいもんじゃねぇ。

 

「てめぇも自分の家族をあんな風にされたら嫌だろうが。」

「…ええそうですね。少し浅慮でした。申し訳ありません。」

 

 そう言って姫島は頭を下げてくる。

 

「わかりゃいい。助かったのも事実だ、次からすんな。」

「あと、」

「はい?」

「昨日は助かった。」

「!!、はい!!」

 

 姫島は微笑みながら答えた。

 

「とりあえず、学校に着くまでに話せる範囲で話を聞かせてくれ。昨日のあいつらは何だ?姫島、おめぇはなにもんだ?」

 

「まず、昨日荒垣君が相対したのは堕天使です。そして私は悪魔ですわ。」

 

 そう言って、誰も居ないことを確認して背中から羽を出す。

 

「悪魔か…」

「あまり驚かないのですね。」

「昨日のことに比べりゃな。あと、もしかしてグレモリーや支取も悪魔か?」

「ッ!!あらあら、逆に驚かされてしまいましたわ。なぜわかったのですか?」

「前からお前らから違和感みてぇなのを感じてた。それで姫島が悪魔なら同じ違和感を感じたあの二人も悪魔って事だろって思っただけだ。他にもいんだろ。」

「見事ですわ。お二人とも悪魔でリアス・グレモリーは私の主になります。」

「主だと。」

「そのあたりに関しましては放課後お話しますわ。今日の放課後のご予定は大丈夫でしょうか?」

「ああ、問題ねぇ。」

「そろそろ人も増えてきましたし、詳しくは放課後にお願いしますわ。」

「わかった。」

 

 さて、どうなることやら。とりあえず姫島は敵ではなさそうだが、上の人間、グレモリー次第でもあるな。用心しておくに越したことはねぇか。が、しかし。

 

「姫島。」

「はい。」

「食っとけ。」

 

 そう言っておにぎりをわたす。

 

「あ、ありがとうございます。でもいつ作ったのですか?」

 

 姫島は驚いた表情をして尋ねてきた。

 

「出る直前だ、いらねぇんなら食わなくていい。」

 

 姫島の手から取ろうとする。

 

「い、いえ!!いただきます。」

 

 手を引っ込めて食べ始める。まさかここで食うとは思わなかった。食べ歩きとか全くしねぇイメージだったがそうでもないらしいな。

 

「おいしいです。」

「そうか。いただきます。」

 

 向けられた笑顔に顔を背けながら俺も食い始める。

 

 そんなこんなしているうちに学校に着き、自分の教室に入る。

 姫島は部室に用があるとかいって途中で分かれた。

 

「うす。」

 

 そういうと自分の席に着く。そうするとクラスの男子が話しかけてきた。

 

「あ、あの荒垣君。姫島さんと一緒に来たみたいだけど…」

 

 男子に聞かれる。

 

「あぁ。どうでもいいだろ。それに途中で分かれた。」

「そ、そうですか。し、失礼しました!!」

「ちっ。」

 

 そうだった、あいつは二大お姉さまとかで人気なんだった。めんどくせぇ。

 

 その日は一日好奇の目にさらされることとなった。

 

 

 

 

 その頃一方、オカルト研究部部室では。

 

「皆集まったわね。朝早くからごめんなさい。今日は皆に少し調べてもらいたいことがあるの。」

「調べてもらいたいことですか?」

「ええ、そうよ。祐斗」

「何を調べるんですか。」

「小猫、食べるか話すかどちらかにしなさい。」

「じゃあ、食べます。」

「はぁ、調べるのは荒垣真次郎についてよ。」

 

ピクッ。

 

 ん?小猫の動きが止まったわね。

 

「部長、続きを。」

「ええ、わかったわ。朱乃。」

「昨日の夜、新しい眷属の子が堕天使に襲われたわ。」

「「!?」」

「それを助け、堕天使を追い払ったのが荒垣真次郎よ。」

「「!??」」

「彼は人間ですか?」

「ええ、間違いなく人間よ。でも、彼は悪魔の存在にはっきりではないにせよ気づいていたわ。」

「敵…ですか?」

「それはないです。」

「小猫何か知っているの?」

「前、た…大学芋をくれました。」

「はぁ、貴方。」

「あらあら、小猫ちゃんずるいですわ。」

「朱乃先輩は今日おにぎりを貰ってました。」

「あら~見られちゃいましたわ。」

「んんっ、ともかく調査が必要なの。使い魔にもさせているけど、皆には周りからの印象や情報を集めてもらうわ。放課後に新しい眷族の子と荒垣君とは話をするから昼休みには一度情報を整理したいの。短い時間で大変かもしれないけど皆頼むわね。」

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

学院の皆さんに聞いてみました!!~荒垣真次郎ってどんな人?~

 

 

 

塔城小猫が聞いてみました!!~1年生男子の場合~

 

「すみません。」

「はい、なんで…塔城さん!?」

「聞きたいことがあります。」

「え…聞きたいことがある、ですか。なんでしょう?」

「荒垣先輩を知ってますか?なにか知っていたら教えてください。」

「荒垣先輩について知っていることですか?荒垣先輩は恩人ですね。以前不良に絡まれている際に助けていただきました。4人いた不良の1人を頭突きでふっ飛ばして、あとは睨むだけで追い払ってしまいました。すごかったです。ちょっと怖いイメージの先輩でしたが、あの日から尊敬しています。こんな感じでしょうか?うちの学校もともとは女子高だったから僻みとかでけっこう絡まれやすいんですよね。他にも助けてもらったやついるみたいですよ。」

 

やっぱり荒垣先輩はいい人。

 

「わかりました、ありがとうございます。」

「いえいえ、どういたしまして。」

 

 

 

木場祐斗が聞いてみました!!~2年生女子の場合~

 

「ねえ、君。少しいいかな?」

「き、木場きゅん!?え、なにこれ!?木場きゅんから話しかけてくれるなんてどっきり?それともまさか私にも春が来たの!?」

「えっと、少し話が聞きたいだけなんだ。」

 

 そう言うと彼女の肩がさがり、目に見えて落ち込む。なんか少し悪いことをしてしまったかな?

 

「もし忙しいようなら「大丈夫!!木場きゅんなら私のスリーサイズでも…」」

「それは遠慮しておくよ。聞きたいのは荒垣先輩のことなんだけど彼を知ってると他の人から聞いたんだけど?」

「荒垣先輩ですか?ええ、私のお母さんが町内会の役員なんですが、その関係で夏祭りとかの手伝いをさせられるんですけどその時に荒垣先輩もいます。」

 

 へぇ、彼はそういうのを嫌がるイメージだけど…意外だな。少し聞いてみよう、彼の人となりがわかるかも。

 

「そうなんだ、でも手伝いって言うと、屋台の組み立てとか力関係の仕事かな?」

「いえ、違います。料理です。」

「え?」

「荒垣先輩は料理を手伝う…というよりもう仕切ってるって感じです。でもあれは…」

「なにかあるのかな?統括って事はまずいって事はないんだよね?」

 

 そういえば子猫ちゃんも、朱乃さんも彼の料理を食べたって言ってたしひどいってことはないだろう。

 

「おいしすぎるのよ!!中学からずっと調理部に入って結構自信があるつもりだったけどあれは例外。女としてのプライドも粉々にされたわ。」

「そ、それはお気の毒様…」

「でね、「あ~ずる~い!!」」

 

 振り向くと複数の女の子がこちらに駆け寄ってくる。

 

「ちょっと木場きゅんと話してるの、邪魔しないでよ。」

「いいじゃん、私たちも木場君と話しがした~い。」

「「うんうん。」」

 

 これはちょっと不味いかな…そろそろ切り上げよう。

 

「色々ありがとう、参考になったよ。」

「どうしたしまして。ところで今度は私が木場きゅんについて知りたいなぁ。」

「私も知りたい!」

「私もぉ。」

 

 そう言いながら、女の子たちが擦り寄ってくる。まいったな、他の人にも聞き込みをしたかったのにな。

 

 

「「「イケメン死ねっ!!!」」」

 

 そんな声が遠くから聞こえた気がした。

 

 

 

姫島朱乃が聞いてみました!!~同級生の場合~

 

「あの、今少々お時間よろしいですか?」

「姫島さん?いいけど、どうしたの?」

「貴方は荒垣君と小学校から荒垣君と一緒だったと聞いたのですが彼について教えていただけませんか?」

「荒垣君について?別にいいけど…姫島さんってもしかして新垣君のこと好きなの!?」

「あらあら、私ではなく彼のことを知りたい方がいるのでその手助けですわ。」

「な~んだ、でもその人見る目あると思うよ。態度や口調がきついから怖かったりガラが悪いイメージが先に来ちゃうけど優しいし、なんやかんやで助けてくれるからね。」

 

 そうですわね、今朝も家族のことを大切にしていましたもんね。

 

「このことって他の人にも聞いてるの?」

「はい、何人かに聞いていますわ。」

「じゃあ、最近のこととかは聞いてると思うから昔のこと話すね。」

「はい、よろしくお願いします。」

「えっと、私が小学校の高学年の頃の話なんだけど、調理実習でカレーを作るとき私がお肉を落として駄目にしちゃったんだよね。」

「まぁ。」

「そんくらいの頃って皆肉が好きだからね。そりゃ、凄い責められたよ。しかも、運が悪かったことにクラスで人気の男子もいたもんだから女子も助けてくれないどころか責めてきてね。誰一人として味方がいなかった。先生が場を収めたけど、うちの班は肉なしカレーを作ることになり、男子はそんなの嫌だと他の班に行き、女子も話し始め、私のことは完全に無視。きつかったねぇ。」

「それは…」

「でも、その時だった。」

「え?」

「荒垣君が助けてくれたの。」

「あらあら。」

 

 凄い幸せそうな顔ですわ。もしかして彼のこと…

 

「荒垣君は他の班から肉の脂身の部分を分けてもらい、落ちた肉の地面に触れていない部分を使って料理をはじめたの。最初は誰も気づかなかった。一人で黙々と作業をし始めて、私はぼうっとして見てたら『手伝え』って声をかけられてね。彼の言うとおりに動いたわ。普通のカレーではなく、材料を全てみじん切りにしてドライカレーを作ったの。作り方も彼のオリジナルで独特なものだったわ。ただ、少なくなってしまった肉をそのまま食べるのではなく、細かく刻むことと脂身を使って野菜を炒めること、ドライカレーにして味を凝縮することでカレー全体にしっかり肉の味がいきわたってたわ。そのままだと、調理実習という短時間で作ったカレーでは肉を食べた一瞬しか味は感じられないけど、あのドライカレーは全体に味が染み渡ってた…うん、今でもあの味は忘れられない。」

「ふふ。」

「それでね、出来上がるにつれどんどんいい匂いがしてきて、そうするとまわりも流石に気づき、色々言ってきたわ。先生も違うことをしているのを注意をしてくるんだけど、荒垣君は話しを聞かずに作業を進め、そのまま作り上げて、私と先生に味見をさせたの。それがおいしいから先生も違うことをしたことへの注意はするけど料理の内容についてはべた褒め。そうすると、他の子たちも気になって食べたいって言い出すんだよね。そこで荒垣君が『俺1人で作ったんじゃねぇ、そいつも一緒にやった。食いてえならそっちに聞け』って言ってきて、私吃驚しちゃった。私は言われるままに作ってただけなのにね。まぁ、最初は皆渋るんだよね。でもカレーのいい匂いに皆耐えられず、1人が食べていいかって聞いてきたら皆わっと寄ってきて口々に許可を貰おうとしてきたわ。私も許可を出し、皆と食べ始めたわ。そうすると皆美味しい美味しいって大喜び。その時、荒垣君が『肉が少なくたってうめぇもんは作れただろ』って言うとさっきまでの責める視線ではなく、尊敬の眼差しでこっちを見てきて、皆美味しかった、それとさっきはごめんっていってくれたの。」

「まあ。」

「子どもって単純だよね。結局皆食べ物で釣られて仲直り。あの時まで全く話したことがなかった荒垣君が助けてくれて驚いたけど本当に嬉しかった。彼がいなかったら私はきっといじめられてたと思うし、こんな風に周りに話もできなかったと思う。」

「彼はほんとに…」

 

 私は周りに気づかれない程度の大きさの声でつぶやく。

 

「まぁ、私が知っている彼はこんな感じ。ぶっきらぼうだけど本当は凄く優しい人だと思う。」

「ありがとうございます。とてもいい話しが聞けました。」

「ちょっと恥ずかしかったけどね。じゃあ、私行くね。」

 

 そう言いながら、彼女は頬をかきながら歩いていった。

 

 

 

リアス・グレモリーが聞いてみました!!~生徒会長の場合~

 

コンコン

 

「失礼するわね、ソーナはいるかしら?」

「あらリアス?貴方がここに来るなんて珍しいわね。どうしたのかしら?」

「ええ、貴方に聞きたいことがあって。」

「そうですか。昼休みといえど仕事があるので作業しながらでよければ聞きますが。」

「それでいいわ。」

「失礼します。こちらお茶でございます。」

「ありがとう、真羅さん」

「それで聞きたいこととは?」

 

 ソーナは書類に目を通しながら聞いてきた。

 

「最近、貴方が荒垣真次郎とちょくちょく話しているというのを聞いたのだけど本当かしら?もしそうならどういう関係か教えてもらっても良いかしら?」

 

パサッ

 

「彼のことでしたら、片手間という訳にはいきませんね。椿姫、私にもお茶をもらえる?」

「はい、直ぐに。」

 

 あら、そこまで彼をかっているとは…驚きだわ。

 

コトッ

 

「椿姫ありがとう。」

「いえ。」

 

「それで、私と荒垣君との関係でしたね。彼は私にとって恩人であり、大切な友人です。」

「恩人?」

「ええ、今の状況があるのは彼のおかげです。」

 

 そう言ってソーナは室内に目を向ける。そこには彼女の眷属たちがいた。

 

「私はこの間まで昼は1人で生徒会の仕事をしていましたが、彼に怒られてしまいました。なんでも1人で抱え込みすぎだと周りを信じろ、と。」

「へぇ。」

 

 クラスではあまり周りとは接しようとはせず、口調も態度もきついから少し浮いていたがそんな面があるとは。

 

「そのおかげで私は眷属と話し合い、結果こうなったわけです。それ以来、彼とは時々会って話しをしています。それに、彼のおかげで新しい趣味も見つけましたし。」

「なるほど、そういうことだったのね。」

「しかし、リアス。なぜ彼のことを?」

「昨日うちの新しい眷属が堕天使に襲われたわ。それを助けたのが彼よ。」

 

ガタッ!!

 

「彼は大丈夫なのですか!?」

 

 急に立ち上がり、こちら詰め寄りながらソーナが聞いてきた。常に冷静沈着なソーナがここまで反応するなんて驚きだわ。

 

「落ち着きなさい、怪我はしていたようだけど。たいしたことはないようで今日も学校に来ているわ。」

「そうですか、見苦しいところを見せました。すみません。」

「いえ、貴重な体験が出来てよかったわ。」

 

 笑いながら私はそう返す。

 

「それはそうと、堕天使相手に立ち合い無事に済むとは彼はいったい何者なんでしょう。」

 

 テレを隠すようにソーナは少し早口で話す。

 

「その様子だとソーナも彼について知らないのね。」

「ええ、ただ一点気になることがあります。」

「なにかしら?」

「初めて彼と会った時、彼は魔力を持つ時計を持っていました。」

「魔力を持った時計…神器かしら?」

「そうではないようです。彼自身もただの時計として使っていましたし。」

「なるほど、どこで手に入れたのかしら?

「昔、人に貰ったと言っていましたけど詳しくはわかりませんね。」

「一応注意はしておいたほうがよさそうね。」

「彼と会うのですか?」

「ええ、放課後に新しい眷族の子とともに『こちら側』の話をするつもりよ。ソーナも来れないかしら?」

「なぜです?」

「彼は貴方が悪魔であることに気づいているわ。朱乃から聞いたの。」

「ッ!?なぜです?」

 

 ソーナの表情が変わる。当然だろう、さっきも大切な友人といっていたし、悪魔だということを知られれば相手によっては態度がガラッと変わる者もいるだろう。

 

「朱乃言うには、元から私たちに違和感を感じてはいたそうよ。それで今朝、朱乃が自分の正体を現したら私たちのことも言い当てたそうよ。」

「そうですか。」

 

 そういうと、ソーナは椅子に深く掛けなおし、腕を組んで考え始める。

 

「わかりました、今日の放課後は私も参加します。彼には正体を隠していたことを謝罪しないといけません。」

「わかったわ。何となく彼のこともわかったし、後は直接確かめるわ。これで失礼するわね。」

「ええ、それでは後ほど。」

 

 そう言って私は生徒会室を出る。

 

「さて、部室に行って、皆の話しを聞かなくちゃね。」

 

 私は部室に向け歩き出した。

 

 

 

 

 部室に着くと、皆既にそろっていた。

 

「遅れてしまってごめんなさい。早速皆が集めてきた情報を教えてちょうだい。」

 

 皆がそれぞれ集めた情報を共有する。

 

「家族関係とかを調べさせていた使い魔が戻ってきたけれど、両親は一般人で特にこちら側との関係もない、普通の人間ね。」

「そうみたいですね、勘違いされがちだけど優しい人のようですね。しつこいナンパを追い払っていることもあるそうですし。」

 

 祐斗、なんか疲れてそうに見えるけど大丈夫かしら。

 

「だから…敵ではないと言いました。」

「うん、そうだね。彼ならここに呼ぶことについて反対ありません。でも堕天使を退ける力を持った人間、用心するにこしたことはないからね。情報収集は大切だよ。」

「ええそうね、大丈夫だとは思うけどなにかあったらよろしくね。祐斗。」

「はい、わかりました。貴方の『騎士』の名にかけて。」

「朱乃は彼の持っている時計を注意しておいて頂戴。なにかはわからないけど、だからこそ注意が必要だわ。」

「はい、わかりました。」

「小猫も注意しておくのよ?」

「…はい。」

 

 不機嫌そうに小猫がうなずく。

 なぜかしら彼のことになると小猫がいつもと態度が違くなるわね。

 

「じゃあ、放課後また集まりましょう。祐斗は新しい眷族の子の案内、朱乃は荒垣君の案内を頼むわね。」

「「「はい。」」」

 

 さて、どうなるかしら。

 でも、堕天使を撃退する人間か…欲しいわね。

 

 

 




 ガイル01です、ここまで読んでくださりありがとうございます。
 連日投稿が途切れましたが、基本的に週の中盤から後半あたりは忙しいので投稿できないかと思いますのでご了承ください。

 そして今回も、話がまったく進まないという…原作の独自解釈と一部設定や内容がブレイクに近いというかほぼブレイクをしてしまっている気がします。
そんな話でも楽しんでいただければ幸いです。

 ではまた次回お会いしましょう

(追記:基本的にワードから貼り付けて作成しているのですがコピーするとルビがつけられません。もしこのサイトでのルビのつけ方をご存知の方がいらっしゃいましたら教えていただければ幸いです。)


[補足]
・朝と昼のオカルト研究部での出来事
原作には無い作者の妄想です。

・聞いてみましたシリーズ
話が進まなかった元凶、ガキさんのキャラ付けの強化ですね。

・支取の趣味
以前感想で頂きましたが、ドラゴンマガジンが無いため、この作品では支取は料理もお菓子も苦手ということにしたいと思います。

・支取の放課後の顔合わせ参加
個人的に支取とその眷属が好きなのでなるべく色々と関わらせていきたいなと思います。



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第5話

できました。

説明会になります、ここが終わればあいつの登場だ…


この作品は、ネタばれ、独自解釈、オリジナル設定、原作ブレイクがあります。
ご注意ください。



 

 

 

「荒垣君よろしいですか?」

「ああ。」

 

 俺はそう言うと荷物を持って姫島とともに教室を出る。

 クラスの連中がぎゃあぎゃあと騒いでやがったがまた面倒なことになりそうだ。

 

「はぁ。」

「どうしましたか?」

 

 首を少し傾けながら姫島が聞いてくる。

 その様子に廊下にいる男子が悶絶している。

 

「あいつはどこにいる?とっとと向うぞ。」

 

 俺はそう言って歩き出す。

 これ以上いて面倒事になんのは勘弁だ。

 

「じゃあこちらに。」

 

 そう言って姫島は案内を始める。

 

「ここは…」

 

 着いた先は旧校舎だった。

 

「ここに私たち『オカルト研究部』の部室がありますの。」

 

 中に入ると見た目とは裏腹にきちんと掃除がされているようだった。

 

「ここですわ。」

 

 そう言ってある教室の前に立つ。

 

コンコン

 

「部長、失礼します。」

「ええ、入ってちょうだい。」

 

 その声に従い、俺と姫島は中に入る。

 内装は魔方陣や奇妙な文字やらが部屋を埋め尽くしており、お世辞にも落ち着く空間とはいえない。

 奥を見るとこの部屋の主であるリアス・グレモリーが立っていた。

 

「朱乃、ちょうど良かったわ。これからシャワーを浴びようと思っていたの。タオルの準備をお願いできるかしら?それと、彼にお茶を。」

「かしこまりました。」

 

 姫島にそう言うと、グレモリーはこちらに近づいてきた。

 

「荒垣君、急な呼び出しでごめんなさい。部員を代表して歓迎するわ、オカルト研究部へようこそ。今、他の部員がもう1人呼びに行っているからそこのソファに座って待っていてくれるかしら?」

「ああ。」

 

 その返答を聞くとグレモリーは奥の方に歩いていく。カーテンの奥へと消えたかと思えばシャワーの音が聞こえる。

 

「突っ込みどころがありすぎだろ、おい。」

 

 そんなことをぼやいていると、姫島がお茶を持ってきた。

 

「こちらへどうぞ。」

 

 俺は促されるまま、ソファの方にやってくると先客がいた。とりあえず腰を掛ける。

 

「うおっ。」

 

 座ったとたん沈み込む。それでいてこちらに負担を掛けないようある程度の反発もある。

 

「相当いいヤツだな。」

「部長が発注した特注品です。」

「うおっ!?」

 

 独り言のつもりが返答があり、驚く。反対側の女子、たしか塔城とかいったか?が話しかけてきた。

 

「あらあら、小猫ちゃんの方から話しかけるなんて珍しいですわ。」

「なんとなくです。」

 

 そう言うと自分のカバンに手を伸ばし、お菓子を取り出して食べ始める。

 

 目の前の女子は普段あまり話さねえんだろう、ぱっと見無表情に見える。が、こちらを意識している。

 なんだ?嫌な感じはしねえが…とりあえず挨拶ぐらいしとくか。

 

「3年の荒垣だ。」

「1年の塔城小猫です。」

 

 いつの間にか姫島もいなくなり、沈黙が流れる。

 

 気まじぃ、昔はこんなん全く気にしなかったんだがな。

 

 俺が変わったってことか、

 

「チッ。」

 

 自分の変化に気づき、なんとも言えない感情に舌打ちを打つ。

 

「どうしましたか?」

「いや、なんでもねえ。」

「そうですか。」

 

 また沈黙が流れる。

 その時、塔城の手に持っている菓子が目に入る。そして、昔のことを思い出す。

 

「和菓子が好きなのか?」

「え?」

「前も大学芋食べてただろう。」

「ッ!!覚えてたんですね。」

「まぁな。」

 

 こいつとは以前一度会っている。

 焼き芋の屋台のおっさんが稀に持っている裏メニューがあるという話を聞き、買いに行った時会ったのがコイツだ。

 結局、裏メニューは大学芋で、残り1人分しかねぇってことだったからコイツに譲ったんだが、引き止められ一緒に食べた。

 会ったのはそれだけだったし、ほとんど何も話さなかっただろうが、なぜか忘れていなかった。

 それに懐かしい気がした…

 

「どうぞ。」

 

 そんなことを考えてると塔城が食べている羊羹を差しだしてくる。

 

「いいのか?」

「はい。」

「じゃあ、貰うぜ。」

 

 一切れ皿から取って食べる。

 

「うめぇ。」

「良かったです。」

 

 その時、少しだけ微笑んだ気がしたが直ぐに元の無表情に戻る。

 

「驚きですわ、小猫ちゃんが自分のお菓子を他の人にあげるなんて。」

「なんとなくです。」

「ふふ、そういうことにしておきますわ。」

 

 そんなことを話してっと外から声が聞こえる。

 

「部長、連れてきました。」

「ええ、入ってちょうだい。」

 

 そうグレモリーが答えると後ろのドアが開き、2人の男子が入ってくる。

 

 片方は兵藤、もう片方は廊下で女子がキャーキャー騒いでんのは見たことあっが名前までは知らねぇ。

 兵藤がきょろきょろしながらこっちにやってくる、俺と目が合う。

 

「あっ!荒垣先輩、昨日は危ないところどうもありがとうございました!!」

 

 兵藤はそう言って頭を下げてくる。

 

「気にすんな、たまたま居合わせただけだ。」

「それでも助けていただいたのは事実ですから!!今ここにいられるのは先輩のおかげです!!」

「ああ、わかったわかった。とりあえず落ち着け。」

 

 とりあえず、兵藤を落ち着かせる。

 

 その後、兵藤は塔城と挨拶をし、シャワーの音を聞き、やべえ顔をしてるところを突っ込まれる。

 わかっちゃいたが、コイツは…

 そんなことに俺が呆れ、兵藤が姫島と話してるとグレモリーが出てくる。

 

「これで部員は全員揃ったわね。後は…」

 

コンコン

 

「失礼します。生徒会の仕事であり、遅れてしまい申し訳ありません。」

 

 振り向くと、支取が入ってきた。

 

「支取か…」

「はい、こんにちは。荒垣君。」

 

 こちらと視線を若干ずらしながら答える。

 兵藤のヤツは「なんでここに生徒会長が!?」などと混乱している。

 

「さた、これで本当に全員集まったわね。」

 

 グレモリーが空気を作り直す。

 

「兵藤一誠君。いえ、イッセー。そして、荒垣君」

「私たちはあなた方を歓迎するわ。」

 

 

 

「悪魔としてね。」

 

 

 

 

 その後、俺たちは全員ソファにつき、グレモリーが口を開く。

 

「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの。」

 

 兵藤は驚いた顔をする。

 まぁ、当たり前だ。俺だって前世であんなことが無ければありえねえと思ってただろうが、世の中見えてるモンが全てじゃねえって事を俺は知ってる。

 

 話は悪魔の存在、敵対する堕天使と天使との三すくみの現状、お互いの戦い方などの俺たちに対する基本的な内容から昨日までの話に移る。

 

 グレモリーがある女の名前を出すと隣にいた兵藤から怒気が滲み出す。

 察するに、コイツは女堕天使に騙されていたらしい。

 女がらみの罠にはまるとはまるで伊織のやつみてーだな。最後のを見る限り、あの時と比べっと相当しっかりしたみてぇだがな。

 殺された理由は神器(セイクリッド・ギア)とかいうモンのせいらしいが、あっちにはそんなモンなかったな。

 

 その時兵藤と一緒に来た男子が口を開いた。

 

神器(セイクリッド・ギア)とは、特定の人間に宿る、規格外の力。たとえば、歴史上に残る人物の多くがその神器所有者だといわれているんだ。神器(セイクリッド・ギア)の力で歴史に名を残した。」

 

 それに姫島が現在にも多くの神器(セイクリッド・ギア)所有者がいることの補足をした。

 そして、実際に兵藤の神器(セイクリッド・ギア)を発動してみることになった。

 

 もし、力が暴走したらどうするとか考えてねぇのか、コイツらは。

 あまりの無用心さに怒りを覚えつつ、周りに気づかれないように気をつけつつ、いつでも動けるよう準備する。

 

グレモリーは兵藤に言う。

 

「目を閉じて、あなたの中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してみてちょうだい。」

「い、一番強い存在…。ドラグ・ソボールの空孫悟かな…」

 

 おい…てめぇは高校生だろうが。何言ってやがる。

 しかし、グレモリーは真剣な様子で言葉を続ける。

 

「では、それを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ。」

 

 なんだ、この茶番は…

 

「そして、その姿を真似るの。強くよ?軽くじゃダメ。」

 

 グレモリー、お前は何をいってんのか理解してんのか?

 高校生の男にアニメのポーズを全力で真似しろだと?

 拷問意外なにものでもねえじゃねえか、なんで周りは誰も止めねえんだよ。

 

 誰もが真面目な顔をして二人のやり取りを見ている。

 

 俺か!?俺が悪いのか!??

 

 悪魔と人間じゃ、そこまで考えが違うってのか?常識的にこれはアウトだろうがよ。

明らかに兵藤だって困ってんじゃねえか。

 

「ほら、早くしなさい。」

 

 グレモリーお前は鬼か?実際悪魔なんだろうがひでえだろうが。

 大体こんなんで神器とやら発動するわけ…

 

「ドラゴン波!」

 

 やりやがった…俺は目を逸らしながら驚愕した。

 

 俺にはぜってぇできねえ。

 ある意味コイツを尊敬するわ。

 

 アニメの技の真似で発動なんかするわけ…

 

 ガラじゃねえが、コイツには優しくしてやろう。

 そんな決意をしながら顔上げて兵藤を見る。

 

「おいっ!!」

 

 俺は叫ぶ。

 

「な、なんじゃ、こりゃぁぁぁぁ!」

 

 兵藤も叫ぶ。

 

 しかし、俺たちの驚きの意味合いが全く違げえ。

 

 アイツは手にあるものを見て驚いてやがる。

 だが、俺は発動したこと自体に驚きをかくせねぇ。

 

「おいっ、そんなんでいいのかよ!!」

 

 ついに我慢できずに立ち上がり、叫ぶ。

 

「どうしたの?急に叫びだして。」

「いや、仮にも神器(セイクリッド・ギア)と名が付けられてるモンがアニメの真似で発動していいのかよ?」

「形は関係ないわ、神器(セイクリッド・ギア)は持ち主の強い思いに答えるわ。」

「だからといってこれはよぉ。」

 

 そう言いながら周りを見る。

 誰もが「俺」を不思議そうな顔で見る、最後の望みを賭けて支取の方を見る。

 

 目を逸らされた。

 

「はぁ、もうどうでもいい。」

 

 ソファに座りなおし、肩を下げる。

 

 その後、なんか話していたが、まともに聞く気力は残っておらず聞き流した。

 

バサッ

 

 聞きなれない音が聞こえ顔を上げると皆がコウモリのような翼を生やしていた。

 

「これが、悪魔の翼か。」

 

 立ち上がり、支取の方へ向う。

 

「さわんぞ。」

「え?」

 

 困惑する支取を無視して触り始める。

 

「え、ちょ。ちょっと待って。んっ…」

「ほう、そこそこ堅いが滑らかだな。弾力もある。やっぱコウモリの羽を大きくしたような感じだな。」

 

さわさわ

 

「だから、んっ…あらがふぁっ!!そこダメ、待っぁん…」

 

「これは…」

 

 ん、兵藤がなんか言ってるようだが、まぁいいか。

 しかし、手触りがいいな。

 

「~~~!!いい加減にしてください!!」

「うおっ。」

 

 羽から顔を上げると顔を真っ赤にして怒る支取がいた。

 

 やべえ、普段見れねえモンだからついやり過ぎた。

 

「あ~わりぃ。」

 

 頭をかきながら謝罪する。

 

「全く、貴方という人は。もういいです。」

「ホント悪かったな。」

「はぁ、しかし貴方はなんとも思わないのですか?」

「なにがだ?」

「私は悪魔です、それを言わずに貴方と接していました。それは友人として接してくれた貴方への裏切りだったのでは…」

 

「はぁ。」

 

 今度はこっちがため息をつく。

 

「支取、お前が悪魔だろうがなんだろうが関係ねえ。お前は支取だろうが。俺はお前と直接話し、お前のことを知った。なら、そこに種族なんて関係ねえ。」

「荒垣君…ありがとうございます。」

「礼なんかいらねえ、今までとなんも変わっちゃいねえんだから。」

「それでも私が言いたいんです。どうもありがとうございます。」

「チッ。」

 

 顔を背ける。

 

「てめぇらなんだその顔は…」

 

 微笑みながらこっちを見てくるほかのヤツラを睨む。

 

「いえ、なんでもないわ。良かったわね、ソーナ。」

 

 グレモリーが言う。そして、支取がこちらの不思議そうな顔に気づいてのか補足する。

 

「私の本当の名前はソーナ・シトリーといいます。この地域はグレモリー家が治める地域ですが、この学園は昼をシトリー家が、夜をグレモリー家が治めることになっているのです。」

「そうか、呼び方はそのままでいいのか?」

「はい、学園では支取なのでそちらでお願いします。」

「わかった。」

 

 そう支取にうなずく。

 

「さて、次は貴方よ。荒垣君。」

「ああ?」

 

 自分の話題となり、声を上げたグレモリーの方へ振り向く。

 

「貴方は自覚が無いのかもしれないけどとんでもないことをしたのよ。バス停で堕天使を撃退するって普通の人間では出来ないことなのよ。」

「できちまったんだからしょがねえだろう。」

 

 コイツらが敵ではないのはわかったが、あれはなるべく他の奴らには晒したくねえ。

 さてどうするか。

 

「そこで、荒垣君。ソーナから年代物の懐中時計を持っていると聞いたんだけど見せてもらえないかしら?」

「ああ。これのことか?昔から使ってるモンだ、手荒に扱うんじゃねえぞ。」

 

 そう言って俺は懐から時計を取り出し、机の上に置く。

 

「わかったわ、失礼するわね。」

 

 そう言うとグレモリーは時計を手に取る。支取も隣りに回り、時計を観察する。

 

「ッ!!ソーナ…」

「ええ。」

 

 なんだ、急に二人で話し始めやがった。あれは昔貰った時計で古いモンだが、特にいわれがあるようなモンでもねえはずだが。

 

「荒垣君、これには相当な魔力が宿っているわ。」

「あぁ?」

 

 はぁ、マジか…ッ!アイツらか。そういや壊れてたから修理したとか言ってやがったな。

 

「何か心当たりでも?」

 

 支取が聞いてくるが、前世でなんて言っても信用されないだろうから誤魔化すしかねえな。

 

「いや、昔に人から貰ったモンだから驚いただけだ。」

「ちなみに渡してくれた人は?」

「もう会えねえ。」

「!!ごめんなさい、無神経だったわ。」

 

 グレモリーは頭を下げ、申し訳なさそうにする。

 

「気にすんな、もうずいぶん前の話だ。」

「しかし、これは魔力が宿っているのはわかりますが使い方がわかりませんね。荒垣君はこの事をご存じなかったんですよね?」

「ああ、今日初めて知った。」

「あら?」

 

 グレモリーの隣にいた姫島が声を上げる。

 

「どうしたの、朱乃。」

「いえ、荒垣君なのですが、その時計が無くても魔力を持っているようでしたので。」

「ッツ!!」

 

 ばれたか?

 

「本当ね、珍しいわね。」

「あの~。」

「どうしたの、イッセー?」

「いえ、悪魔にならなくても魔力ってあるんですか?」

「ええ、数は少ないけど魔力を持つ人間や扱う人間はいるわ。魔法使いと呼ばれる者たちね。」

「魔法使い!!そんなのもいるんですか?」

「ええ、そうよ。悪魔になるとそのうち彼らとも契約することになると思うわ。」

 

 グレモリーがそんなことを言うと、兵藤は鼻の下を伸ばしながらブツブツといい始める。

 

「巨乳、エッチな衣装で…ふふっ、貴方が召喚に応じてくれた悪魔君とか…ぐふふ。」

 

 …見なかったことにしよう。

 

「荒垣君、時計を手にしてみてくれるかしら?」

「ああ。」

 

 支取に言われ、時計を手に取る。

 

「ソーナ。」

「ええ気づいています。荒垣君、今貴方がその時計を持った瞬間、時計とパスがつながりました。貴方は無意識にその魔力を使って身体や武器を強化したのでしょう。それによって堕天使と戦うことが出来たのでしょう。」

 

 そうか、そういう風に解釈したか。こっちのことを真剣に考えてくれてるヤツに悪いがまだあれについては隠させてもらうぜ。

 

「そうか。」

「とりあえず、彼が堕天使と戦えた理由がわかったのは良いけど…不味いわね。」

「ええ。」

「なんでだ?」

「貴方が堕天使を撃退したことで、ヤツラに貴方も敵としてみなされてしまったのよ。堕天使は欲により堕ちたことから理性より感情が強い傾向があるわ。また、父である神を信仰する天使が堕ちる事でなるから家族という概念もあるけど、父への裏切りから家族より仲間というコミュニティを特に重要視するのよ。」

「堕天使のうちの1人を撃退してしまった貴方は、撃退した者の仲間にまで狙われる立場となってしまったのよ。」

「マジか、でもヤツラはそこまで数が多いわけじゃあなさそうだぞ。」

「どうしてかしら?」

「倒した堕天使を助けに来てた奴らが「これ以上戦力を減らせない」と言っていた。ってことはそこまで余裕があるわけじゃねえんだろ。」

「なるほど。」

 

 グレモリーが立ち上がり、窓際に行く。そして手元から何かを放す。

 

「今、使い魔を放ったわ。これで少し調べさせてみるわ。」

「私の方でも調べてみます。」

 

 眼鏡を上げながら支取が答える。

 

「それで、荒垣君。提案なんだけど、私の眷属にならない?」

「ッ!!リアス、それは抜け駆けじゃないかしら?」

「あら、こういうものは先手必勝よ、ソーナ。」

「荒垣君、私の眷属になりませんか。私も駒が余っていますので。」

 

 二人は言い争いながら提案してくる。

 

「はぁ、ちょっと落ち着け。まず、駒ってのはなんだ?」

 

「それは…」

 

 二人は悪魔の駒について説明をする。

 

「なるほどな。」

「それで、どうかしら?」

「断る、今は誰かの下につくつもりはねえ。」

「でも貴方は狙われているのですよ?」

 

 支取が心配してくる。

 

「テメェのケツ位テメェで拭く。」

「はぁ、それでも私は眷族を救って貰った恩が、ソーナも恩があるようだから危険なのがわかってるのにそのまま放置する訳にはいかないわ。」

「だが、眷属にはならねえぞ。」

「では…契約はいかがですか?」

「契約だと?」

 

 支取が異なった提案をしてきた。

 

「そうね、妥協点としてはそんなところかしらね。これを見てちょうだい。」

 

 そう言ってチラシを見せてくる。

 

「『貴方の望みをかなえます』なんだこの胡散臭いチラシは。」

「それは悪魔を召喚するためのチラシよ、悪魔は人間と契約して力を蓄えるの。契約の内容は人それぞれで、知識や名誉、そして自分の身を守るために契約する人間もいるわ。」

「それで俺にも契約しろと。」

「ええ。」

 

 俺は考える。確かに、契約を交わした方が安全だろう。

 しかし、その際のデメリットもある。ひとつの勢力に組するってことはこれからずっと対立戦力が生まれるわけでもある。

 今回はあの堕天使たちをどうにかすればなんとかなるかもしれねえ。だが、堕天使のコミュニティ的にそれだけじゃあ、すまねえかもしれねえ…

 

 俺が考えていると、支取が声をかけてきた。

 

「私たちは貴方のことが心配なのです。1人の友人として。そして貴方を守る力もある。お願いです、私たちと契約してください。」

 

 まっすぐな視線でこちらをみつめてくる。

 

 クソッ。

 

「わかったよ、契約してやる。ただし、一方的に守られるつもりはねえ。なんかあった時は俺もヤル。いいな。」

「ええ。」

「しょうがないですね。」

 

 そういうと、地面に魔法陣を書き始める。

 

「出来上がったわ、じゃあ荒垣君中に入ってくれる?」

「おう。」

 

 俺が陣の中心に立つと、まずグレモリーが入ってくる。

 

「片手を前に伸ばして。」

 

 グレモリーの言葉に従い、手を伸ばす。

 グレモリーはその手に自分の手を重ね、何かを唱え始める。終わった瞬間、手の甲に一瞬痛みが走る。

 

「ッゥ。」

 

 手の甲を見ると紋章が刻まれていたが直ぐに消える。

 

「次は私ですね。」

 

 支取がグレモリーの掴んだ手とは反対の手を掴み、呪文を唱え始める。

 終わると、同じ痛みが掴まれている手に走る。

 見てみるとグレモリーのときとは異なる紋章が刻まれ、消える。

 

「これで契約は終了よ、紋章は消えたように見えるけどきちんと効果は現れているから大丈夫よ。」

「結局どうなんだ。」

「いくつか効果はあるけど大きいのは召喚と念話かしらね。」

「ええ、これで魔力を使うことで我たちを召喚したり、逆に貴方を召喚することが出来ます。また、同じく魔力を使って言葉を発せず、会話が出来ます。こんな風に。」

 

(聞こえますか?)

(おう。)

 

「なるほどな。」

「他のものは適宜教えていきます。」

「わかった。」

 

「荒垣君。」

 

 名前を呼ばれ、二人の顔を見る。

 

「「今後ともよろしく。」」

 

「おう。」

 

 俺は、そう言った二人の笑顔に、決意を込めてうなずいた。

 

 

 

 




ガイル01です、ここまで読んでいただきありがとうございます。
文章量は増えているのに全く先に進みません。このままだと読んでいるほうがだれてしまうのではと思うので、少しテンポアップを考えていたりもします。
後、今回独自解釈、オリジナル設定が多かったですね。いい加減タグに原作ブレイクを入れたいと思います。
こんな作品でも感想や応援をくださる方がいてくださり、感謝の極みです。これからもがんばっていきたいと思います。

では、また次回お会いしましょう。

[補足]
・ガキさんの性格
原作を見返してきましたが、うちのガキさんは相当マイルドになっています。女主人公のコミュ(キャラと仲良くなることで主人公が強くなるのでアルカナに対応したコミュニティが存在する。ガキさんのはギャル○―と有名。)でも相当優しいところやオカンなところを見せていましたが、PS2版のコミュが無かったときと比べるとかなり差があります。一応男主人公とコミュを築き、友情を深めたと言うことで少し柔らかくなったとしてください。

・堕天使の設定
実は悪魔と同等以上に欲が深く、執着が激しいと考えており、感情的になる傾向があるのでは?と原作を読んでかんがえた独自解釈です。

・翼への反応
ガキさんにムツゴロウさんがインストールされました。今まで見たことが無いものに普段抑えてる何かが溢れてしまったようです。ガキさんマジテクニシャン。

・能力の勘違い
ベルベッドルームで直した時計になにも細工がされていないわけがないじゃないですか(キリッ)
先入観として時計の存在があったので真実にはたどり着かず、勘違いしたまんまです。いつか真実を話すときがくるでしょう。

・契約
グレモリーもシトリーも両方出していくために、どちらかの眷属ではなく、人間のまま契約という形にしました。アトラス的に最後のセリフを言わせたかったりというのもあったのですが(笑)カタカナの方が良かったかな?


他にも何か質問や感想がございましたらよろしくお願いします。


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第6話

 完成しました!

 先週忙しかったので遅れてしまい、すみません。

 では、どうぞ。
 
 この作品はネタばれ、独自解釈、原作ブレイクなどがあります。
 ご注意ください。


 

 グレモリーと支取と契約をした日から数日後。

 俺はオカルト研究部の部室にいた。

 

「今日はなんのようだ。」

「一応、あなたも部員なのだから用が無くても来てもらいたいのだけど…」

「…気が向いたらな。」

 

 俺は不機嫌さを隠さずに言う。

 契約の後、安全のためとゴリ押しされ、オカルト研究部に強制的に所属させられた。

 生徒会という選択肢もあったが、性にあわねえという理由で却下した。

 そのため、放課後をオカルト研究部で過ごすこととなった。

 

「こっちは、サトミタダシのタイムセールや晩飯の準備で忙しいってのによ。」

「なにか言ったかしら?」

「はぁ、なんでもねえよ。」

 

 いまさら文句を言ったって変わらねえなら言っても面倒になるだけだしな。

 

「まず、この間言ってなかったことなんだけど。」

 

 グレモリーが真剣な瞳でこちらに話しかけてくる。

 

「二人とも教会には近づいちゃダメ。イッセーは特によ。」

 

「昨日、シスターを案内したらしいけど、教会は悪魔にとって敵地。天使たちがいつも監視しており、いつ光の槍が飛んできてもおかしくないわ、今回は厚意を汲んでくれたみたいだけど次は無いわ。」

 

 その話しを聞き、兵藤の顔が青ざめる。

 

「それと、教会の関係者にも関わってはダメよ。特に悪魔祓いは我々の仇敵。神の祝福を受けた力で我々を滅ぼそうとするわ。彼らによるもののは死ではなく消滅、輪廻転生の輪にも入れず無に帰すわ。」

 

 

 悪魔祓いの話しを聞き、兵藤が真っ青になっていることにグレモリーが気づく。

 

「ごめんなさい、熱くなりすぎたわ。今後気をつけてちょうだい。」

「はい。」

 

 兵藤が頷き、話が切れたところで姫島が声をかける。

 

「あらあら、お説教はすみました?」

「朱乃どうしたの?」

「大公から討伐の依頼が届きました。」

「そう。荒垣君、貴方もついてきてくれるかしら?」

「…わかった。」

 

 討伐…どんなものかはわからないが上から依頼が出るほどのモンだ、お遊びじゃねえだろう。

 なのに、誰一人普段とかわらねえ。何がおきているかわかってねえ兵藤は別だが。

 これが、実力と経験からくるモンならいい。しかし、そうじゃないとしたら…

 

「チッ。」

 

 俺は、舌打ちをする。それはグレモリーの合図にかき消される。

 

 

「さあ、皆行くわよ!!」

 

 

 

 着いた先は町外れの廃屋だった。

 そこまでの道中で今回の討伐の対象である「はぐれ悪魔」について聞いたが…

 

「力に溺れ、暴走した者たち、か…」

「そうよ、彼らは主を裏切り、私利私欲を満たすもの。大きな事件を起こす前に対処しなければならないわ。」

「対処。」

「そうよ。大公からも始末してほしいと言われているわ。」

 

 そう言いながらグレモリーは進む。

 

 始末…こいつらは、殺す『覚悟』が出来てんだろうか…

 

「…血の臭い。」

 

 塔城の声にはっと顔を上げる。

 

 今は考える場じゃねえ。

 気を引き締めろ。

 俺は周りを警戒し、いつ襲われてもいいよう態勢を整える。

 

 

 

 しかし

 

 

 

「おい、グレモリー。」

「これはなんだ。」

「なにってあなたの武器よ。今回は貴方には戦ってもらうつもりはないけれど万が一のための武器よ。」

「武器が必要ってのァ理解できる。しかし、なんだってその武器が『バス停』なんだよ!!」

 

 そう言って俺は、右手に持つそれをグレモリーに付きつける。

 

「え?それがあなたの武器なのでしょう?前回の堕天使との戦いの跡に堕天使の血がついたそれが落ちていたと聞いたから回収しておいたのだけれど。」

「確かに前回はこれを使ったが…」

「なら問題ないわね。あと安心して、もともとそれがあったところには新しいものをきちんと設置しておいたから。」

 

 そんな配慮ァいらねえ。

 これを返して新しい武器を用意すればいいだけじゃねえか。

 

「はぁ、もういい。さっさと行くぞ。」

 

 呆れながら俺は歩いていく。グレモリーは敵意と殺意が満ちる場が初めてで震える兵藤のフォローをしにいった。

 

 その時、その場に満ちていたものが俺たちの方に向けられた。さっきまで漂っていただけのものが、指向性を持ち、こちらに突き刺さる。

 

「来るか。」

 

 俺は戦闘態勢を取る。

 

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いかな?苦いのかな?」

 

 俺たちの前の上半身が裸の女、下半身が獣の化け物が現れた。

 

「はぐれ悪魔バイサー。あなたを消滅させにきたわ。」

 

 グレモリーは前に出て言う。

 

 ケタケタケタケタケタケタ

 

 ズンッ

 

 ヤツは笑いながら一歩前に出てきた、するとヤツの後ろに複数の人間の骨が見えた。

 

「チッ。」

 

 グレモリーもソレに気づいたようで瞳をきつくし、ヤツに言い放つ。

 

「あなたの罪は万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

「小賢しいいいいい!!バラバラに引き裂いてしゃぶりつくしてやるわあああああああ!!」

 

 そう吼えながらヤツは突進してくる、俺はヤツを討つため前に出ようとする。

 

 スッ

 

 姫島の手によって俺の動きは止められる。

 

「おい。」

 

 俺は姫島を睨みつける。

 

「大丈夫です。荒垣君は見ていてください。」

 

 そう言って姫島が前に出る。

 既にヤツはグレモリーの傍まで迫っている。

 

「見た目どおり下品ね。祐斗。」

「はい!」

 

 バッ!

 

 名前を呼ばれた木場が飛び出す。

 

「速ぇ。あれが『騎士』の特性ってやつか。」

 

 木場は屋内という狭いフィールドながら、縦横無尽に駆け、相手を翻弄する。

 

「ええ。そして。」

 

 いつの間にか隣りまで下がってきていたグレモリーが俺と兵藤に話しかける。

 

「祐斗の最大の武器は剣。」

 

 スッ

 

 木場はすれ違いざまにヤツの両腕を切りつける。

 一拍遅れてヤツの腕が地面に落ちる。

 

「ギャアアアアアアアア!!オノレエエエエエエ!」

 

 ヤツは両腕から血を吹き出しながら近くにいた塔城を踏みつぶす。

 

 ズンッ!

 

「ギャハハハ、まず一匹ッ!?」

 

 ぐぐぐっ

 

 塔城を踏み潰したであろう足が徐々に持ち上がり。

 

「えいっ。」

 

 ブンッ

 

 思い切り上へ投げられる。

 

「ナッ!?」

「…吹っ飛べ。」

 

 その隙を逃すわけが無く、塔城は飛び上がり腹にこぶしを打ち込む。

 

「グ八ツ。」

 

 ヤツは地面に叩きつけられ、血反吐を吐く。

 

「朱乃さん。」

 

 そう言いながら、塔城は飛び退る。

 

「はい、いきます!」

 

 カッ

 

 ヤツのいる一帯に雷が落ちる。

 

「ガガガガガガッガァァァァァアアァァァッ!!」

 

 あれが、『戦車』と『女王』か…姫島の雷はジオダイン位はあるか?

 

 

………

……

 

 

「…おい、ありゃ止めなくていいのか?」

 

 1度だけでなく、2度3度と姫島はヤツに向かって雷を降らせる。

 

 …笑いながら。

 

 おい、隣りの兵藤とか顔が引きつってんぞ。

 

「朱乃はドSで、一度興奮すると収まるまでああなのよ。」

 

 どっちが悪だかわかったモンじゃねえな。

 しかし、あのままじゃ…

 

「姫島、その辺にしとけ。」

 

 俺は声をかける。それに気づいたのか、攻撃をやめ振り返って少し恥ずかしそうにする。

 

「あらあら、お見苦しいところを見せましたわ。部長、後はよろしくお願いします。」

 

 そう言いながら下がる。

 

「最後に言い残すことはあるかしら?」

「殺せ。」

「なら消し飛びなさい。」

 

 ドンッ!

 

 グレモリーの手から黒い魔力が打ち出され、ヤツを消滅させた。

 

 ボトッ

 

 かろうじて残った尻尾が地面に落ちた。

 

 グレモリーは息をつき、

 

「終了ね。みんな、ご苦労様。」

 

 俺たちに向かってそう言った。

 

「おい、まだっ!!」

 

 そう言ったころには俺は駆け出していた。

 そしてグレモリーの腕を掴み、片手で引き寄せ。片手でバス停を振り下ろす。

 

 ガキッ

 

 俺たちの目の前には口が裂けるほど開き、バス停に噛み付く蛇がいた。

 やつの尻尾だ。

 

 俺はそのままヤツごとバス停を地面に叩きつける。

 

 グシャ

 

 ヤツは潰れ、息の根が止まる。

 

「最後まで気を抜くんじゃねえ。」

「え、ええ。助かったわ、ありがとう荒垣君。」

 

 自分の油断が危険を招いたことからばつが悪そうにそう言いながら俺から離れ、頭を下げる。

 

「これで仕舞いなら帰んぞ。」

「そうね、みんな、帰りましょう。」

 

 グレモリーがそう言うと皆最後は危なかっただの口々にしながら歩き始める。

 

「…」

 

 アイツらァ実力もある、連携も無かったわけじゃねえが…

 

 そう考えながらグレモリーたちを見る。

 一仕事終わったことからか皆笑ってやがる。

 しかし、俺はその笑顔に不安しか感じなかった。

 

 

 

 数日後の夜

 

 Prrrrrrrr

 

 携帯をとり、液晶を見る。

 

「グレモリーか…」

 

 俺は電話に出る。

 

「なんだ。」

「荒垣君、お願いがあるの。」

「ああ?」

「実は、これからイッセーの仕事の手伝いをしてほしいの。あの子ほとんど魔力が無いから非常時に備えて、私たちの誰かが部室で待機していたのだけど、今日は呼び出しが多くて…」

「これも契約か?」

 

 グッ

 

 携帯を持つ手に力が入る。

 

「いえ、違うわ。あの契約は私たちにとって大切なもの。今回のは、う~ん…事情を知る友人へのお願いってところかしら。」

 

「はぁ…ならいい。」

 

 オカルト研究部に入った、契約もした。

 でも、俺ァこいつらを完全に信用してるわけじゃねえ。

 

「それでどうかしら?もちろん、お礼はするわ。」

 

 だが…

 

「…場所。」

「え?」

「何処行きゃあいい。」

「ありがとう、荒垣君。場所は…」

 

 俺はグレモリーから兵藤と落ち合う場所を聞き、準備をして向う。

 

 

 

 指定された場所に行くと、既に兵藤がいた。

 

「荒垣先輩、どうもありがとうございます。」

「…グレモリーから報酬を貰うことになってる。気にすんな。」

「でも俺が魔力が無いばっかりに…」

 

 兵藤は頭を下げ、申し訳なさそうにしている。

 

「力ってのはなんだ。」

「え?」

「お前は魔力はほとんどねぇかもしれない。しかし、人間と比べると身体能力ははるかにたけぇ。それは人間にとって十分脅威となる力だ。」

「でも、悪魔はそれが当然で、それに加えて魔力もあるわけで…」

「周りに流されんな。他のヤツも持ってるからとかじゃねえ。テメェの力はテメェでしっかり自覚し、管理しろ。」

「…」

「お前はついこの間まで人間だった。それが悪魔になって急に身体能力が上がった。お前はそれを使いこなせんのか?」

「ッツ!!」

「まずは自分の持ってるモンを使いこなすことだろうがよ。ねぇモンをねだったって仕方ねぇ。それに…」

「それに?」

「力を理解せずに周りに流され使ってりゃ必ずツケを払うことになる。テメェの力を自覚しろ、責任を持て。特にお前は物騒なモンも持ってるだろうが。」

「そうですね、人間だった頃と比べると格段に力が上がってるけど悪魔だから当然だと思って理解しようとしてませんでした。そもそも俺はそんな頭良くないですから、魔力とかあっても朱乃さんみたいにうまく使えないでしょうし、神器(セイクリッド・ギア)もあります。それをまず使いこなせるようになります!!」

「わかりゃいい。とっとと行くぞ。」

「はい!えっと…こっちです。」

 

 そう言って兵藤は歩き始める。

 

 

 人間を悪魔に転生させるか…チッ。

 意図せずに手に入った大きな力…それに対する覚悟が出来てるヤツがどれ位いんだか…

 

「ここです、ちわ~ス、グレモリー様の使いの悪魔ですけど…依頼者の方いらっしゃいますか?あれ?扉が開いてる。」

 

 兵藤の声に顔を上げると兵藤が家を覗き込み、中に入る。それを俺も追う。

 

「なにやってんだ。反応ねえなら帰んぞ。」

 

 空気がなんかおかしい、やべえ気がする。

 

「いや、一応依頼者に確認を取らなきゃもしクレームがきたら…」

「悪魔の仕事ってのはサービス業かなにかか…」

「とりあえず、あそこの明かりのついてる部屋だけ…」

「おい。」

 

 俺の制止を振り切り、兵藤がある部屋に入る。

 

「ッツ!!」

「どうし…ッ!!」

 

 中にはリビングの壁に上下逆さまに人の死体が貼り付けてあった。

 その身体は切り刻まれ、臓物が飛び出て、あまりにも無残だ。

 

「ゴボッ。」

 

 兵藤がしゃがみこんで吐く。しかし、俺はそんなヤツの腕を掴み、引っ張る。

 

「こりゃ、異常だ。やべぇことが起きる前に退くぞ。」

 

 そう言って、部屋の出口に向おうとする。

 

 が…

 

「おやおやおやおや~そこにいるんはあっくま君じゃありませんかぁ!!悪魔と取引するクズ野郎のお掃除にきたら、クズの源にお会いすることができちゃうなんと俺様の日ごろの行いが良過ぎるせいかしら!!」

 

「チッ!!」

 

 遅かったか、後ろからの声に俺は振り向く。

 白髪の男が鼻歌を歌いながら寄ってくる。

 

「俺のお名前は~フリード・セルゼン!!とある悪魔祓い組織に所属してる末端でございます。」

 

 悪魔祓いか!!

 それに気付くと直ぐに俺はグレモリーに念話する。

 

(おい、グレモリー。聞こえるか。)

(荒垣君?どうしたの?)

(こっちがやべえ状況だ。来れるか?)

(どういう…)

 

 ザァッ

 

(聞こ…かし…あ……が…く)

 

 ブツッ

 

 念話が急に途切れる。

 

 クソッ、何がありやがった。

 だが、こちらに異常があったのは伝わったはずだ。

 そう考えていると

 

「さてさて~あっくま君はどういったコースがお望みかな~?刺殺・斬殺・圧殺・焼殺・溺殺等等いくらでも答えちゃうよ~やっさしい俺様!!おんや~?」

 

 さっきまで兵藤しかみていなかったヤツが俺を捉える。

 

「赤いロングコートとニットキャップで目つきが悪い…もぉしぃかぁしぃてッ!!姉さん方いってた、ドーナシークの旦那をやった人間ってあんたかい?」

「…」

 

 ヤツの質問に無言で返す。

 チッ…あいつらの関係者か。

 

「答えてくれないなんてフリード悲しい!!まぁ、どっちでも悪魔君と一緒にいるってところでし・け・い・確定なんですけどね~あひゃひゃひゃひゃひゃ。」

 

 コイツ…

 

「お前、どうしてこの人を殺したんだ。」

 

 唖然としていた兵藤が正気を取り戻したのかヤツに問う。

 

「さっきもいったじゃないですか~クズだからですよぉ。あんたらのようなのに頼った時点でしゅ~りょ~なんですよ!!なので、生きることを諦めていただきぃ、人生を終了していただきました!!」

「あ、悪魔だってここまでのことはしない!」

「いやいや、俺様だってチャンスはあげたんですよ!「諦めたら、そこで人生終了ですよ。」ってさぁ。でもこのクズはちょ~っといじっただけで「い、いっそのこと、殺してくれぇ。」なんていうから約束どおりズババババッとやってやったわけですよ。あとさぁ…」

 

 ヤツの雰囲気がかわる。

 

「悪魔君が調子にのんないでくんない。お前ら悪魔はクソですよ。人を誘惑し堕落させる。サイッテイな存在。」

 

 殺気が満ちる。

 

「常識ですよ?しらないんですか?」

 

 空気が張り詰める。

 

「な・の・で、俺が退治します☆でも、退治って退けて治すって書くよねぇ。それじゃあダメだ!やっぱりぃ、殺してぇ、バラしてぇ、並べて、揃えて、晒してやんよぉ!!」

 

 ブゥンッ

 

 ヤツがビームサーベルのようなものを作り出し、俺たちに向かって走り出す。

 

「クソッ。」

 

 ドンッ

 

 俺は兵藤を突き飛ばす。

 

「うわっ。」

 

 ブンッ

 

 直後、俺たちの間に剣が振り下ろされる。

 

「とりあえず、君邪魔。」

 

 ヤツは懐から銃を取り出す。

 

「兵藤避けろ!」

「ぐあぁぁ!」

 

 俺は叫ぶが、初撃を避けた時に体勢を崩していた兵藤は避けられず、左足のふくらはぎを打たれる。

 

「いつから俺が剣だけで戦うと勘違いしてたのかなぁ?まぁ、そうなるようわざと派手に光の剣を出したんだけでね、あひゃ。効いたでしょ~光の弾ですから。悪魔君には達してしまいそうな快感がキミを襲うだろ。逝っちゃってもいいですよ。そんなキミをみてると俺もか・い・か・ん。」

 

「フンッ!!」

 

 俺は近くにあった椅子をやつに投げつける。

 

「おっとぉ、危ない。死角から物を投げつけるなんてさすが悪魔君の仲間、汚い!」

 

 そう言いながらヤツは飛び退る。俺はその隙に兵藤とヤツの間に入る。

 

「ありゃあ、椅子が粉々じゃないですか。物は大切にってお母さんから習いませんでしたか?ってか、あんたほんとに人間?椅子が粉々っておかしいでしょ。なに、あれ?「僕と契約して魔法○○になってよ!」的なやつで不思議ぱうわーとか貰っちゃった系ですか?」

「テメェに言う義理はねぇ。」

「あっそうですか。じゃあ~、死ね悪魔!塵になって、宙に舞え!全部、俺様の悦楽のためにぃ!」

 

 ヤツはそう言いながら俺たちに突っ込んでくる、

 

「やめてください!」

 

 突如、そこに制止の声が入る。

 

 援軍か?

 

 ヤツを伺うと、動きを止め、視線だけを声のした方に向ける。

 俺も同様に視線をそちらに向ける。

 

 

 そこには金髪のシスターが立っていた。

 




 どうもガイル01です。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 先週がちょっと忙しくて少し間が空いてしまいましたがなんとか出来ました。なるべくコンスタントに投稿していきたいと思いますので温かく見守ってくださればと思います。

 バイサーさんはともかく、フリード登場です。壊れ系のキャラって難しいですね。かなり悩みました。ネタに逃げた感がありますが…

 今回はこのまま続けると長くなりそうだったのでアーシア登場で切らせていただきました。
知ってるかい?これでまだ、原作1巻の半分過ぎなんだぜ。堕天使にもフラグを立て、いつになったら1巻が終わるのやら…とりあえずがんばります。

 では、また次回お会いしましょう。


[補足]
・サトミタダシ
ペルソナシリーズで出てくる薬局。本作では以前でたスーパーの名前として使用。
原作で流れるあの歌は一度聴くと頭から離れない洗脳ソングでもある。

・バス停
 これ以外ほぼ武器にするつもりはありません(キリッ)

・力への考え方
 ガキさんは原作でペルソナを暴走させています、その結果人を殺してしまってもいます。そのことから力への考え、覚悟、責任、殺すことへの覚悟をとても意識しています。悪魔はそれらへの考えが薄いので完全に信用しきれていません。


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第7話

お待たせしました、出来ましたのでどうぞ!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。



「アーシア?」

 

 呟くように兵藤が声を出す。

 

「あいつを知ってんのか。」

「はい、この間話に出た教会に案内したシスターが彼女です。」

 

 ってことは見た目通りあっち側の人間か。

 

「あんれ~助手のア~シアちゃんじゃないですか?結界は張り終わったのかな、かな?」

 

 結界…グレモリーと連絡が取れなくなったのはそのせいか!

 ならあの女は後衛の支援タイプか。

 チッ、面倒なヤツがきやがった。

 だが、女の方は明らかに戦えるようなヤツじゃねえ、こっちなら突破できるか?

 

 どうす…

 

「!い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「かぁいぃ悲鳴ありがとうございます!アーシアちゃんはこの手の死体を見るのは初めてかな?よ~くみておきなさい、クソ悪魔と取引した成れの果てですよ。」

「…そ、そんな…」

 

 女がこっち、というより兵藤を見て目を見開く。

 

「フリード神父…その人は…」

「人ぉ?違いますよ、あんなクソッタレと人を一緒にしちゃだめでしょ~あいつはクソの悪魔君と隣にいるのはそこに貼り付けられてる彼と同じ悪魔と契約した極悪人ですよ!」

「―っ。イッセーさんが…悪魔…?」

「おんやぁ~。もしかしてお知り合い?でも残念!悪魔は教会関係者の天敵ですから、といっても神様なんかにはとっっっくの昔に見放されちゃってますけどね~。」

 

 どういうことだ、こいつは教会の関係者じゃないのか?

 

「まあまあ、それはいいとしてこっちもお仕事ですからこいつらを切り刻まないとお仕事完了できないんでちょちょいといきますかね。」

「仕事ってぇわりにはずいぶん楽しそうじゃねえか。」

「趣味と仕事が一致するって素晴らしいよね☆」

 

 そういいながらヤツは剣をこちらに向かって突きつける。

 完全にイッちまってやがるな。考えが俺たちとは全く違ぇ、ある意味覚悟が決まっちまってやがる 厄介なヤツだ…

 

 手元に武器もねえ、『アレ』を出すしかねえか?

 

 そんなことを考えていると俺たちの前にあの女が入り込んできやがった。

 そして、両手を広げ俺たちを庇う。

 

「…おいおい。マジですかアシーアたん、貴方なにやってるかわかりますか?貴方の後ろのは悪魔ですよ、あ・く・ま。殺してなんぼでしょうが。」

 

 ヤツは不機嫌そうに言う。

 

「フリード神父、この方々を見逃してください。悪魔だから、悪魔に魅入られたからと殺すのはいやです、間違っています。悪魔にだって良い人はいます!」

 

 女はそう言いながらヤツを正面から見据える。

 

「はああああああああ!?馬鹿いってんじゃねえよ、そんなんいねえええええっよ!JAPANの空気汚染にやられちゃいましたか?脳が腐っちゃいましたか?悪魔はクソ、それと契約したヤツはクズだって教会で習ったろうが!!」

「イッセーさんは良い人です、悪魔だってわかっても変わりません!なのに、そういう存在だからって殺すなんて主がお許しになるわけが…」

 

 バキッ

 

「キャッ!」

 

 野郎、味方を思い切りぶん殴りやがった。

 

「アーシア!!」

 

 兵藤が女に駆け寄る。

 

「イッセーさん、私は大丈夫ですからそんな心配しないでください。」

 

 ニコッ

 

 そう言いながら女は微笑む。

 顔には青痣が出来、唇の端は少しゆがんでいて明らかにやせ我慢だというのがわかる。

 

「…堕天使の姉さん方にキミを殺さないよう念を押されてるけどねぇ。ちょおおっとムカついちゃいましたよ。汝、左の頬を打たれたら、右の頬を差し出せって教えがありますよねぇ、ちょっと差し出していただけますか?その身にもう一度主の教えってヤツを文字通り叩き込んでやりますからよぉ。なぁにそこから何回か左と右をループするだけですから、おたふく風邪みたいになりますが、まぁしょうがないですよね、主の教えですし!てかそれぐらいしないと俺の傷心が癒えそうにないんでやんす。と、その前にあんたらを殺さないとダメダメづすよねぇ。」

 

 再度、ヤツは剣を向ける。

 

「…ぇで。」

 

 グッ

 

「ああん?」

 

 ググッ

 

「それで、遺言はいいんだな。胸糞悪ぃモン、延々と見せやがって。」

 

 グググッ

 

 俺は、部屋にあるソファを掴み、持ち上げる。

 

「ヒュウッ、ちっからもちぃ!」

 

「仲間割れなんだろうが、目障り…ってんだよ!」

 

 ブンッ

 

 俺は持ち上げたソファでヤツをなぎ払う。

 

 バキッ

 

 壁にソファが当たり、半分に折れる、室内ならこんぐらいの方が振り回しやすい。

 

「兵藤、覚悟決めろ!」

 

 女のところにいる、兵藤に声をかける。

 

 スッ

 

 兵藤は立ち上がり、構える。

 

「庇ってくれた女の子を前にして、逃げらんねぇよな。よっしゃ、こい!」

 

 兵藤の左腕が光り、籠手が現れる。

 

「え?え?マジマジ?俺とやるんですか?死んじゃうよ?それでもくるってことは遠慮は要らないよね?じゃあじゃあ殺し方もお任せってことで、バッラバラにしてやんよ!!」

 

 ヤツが飛び出し、俺も突っ込む―その時、床が青白く光りだす。

 

「何事さ?」

 

 青白い光が徐々に形を作っていく。

 

 ピキッ

 

 これは…魔法陣か?動きを止めたやつを警戒しつつ、光を確認する。

 

 ピキキッ

 

 魔方陣が出来上がっていくにつれ、空間が軋む音がする。

 

 これには見覚えがある、まさか。

 

 カッ!

 パリーンッ!!

 

 魔方陣が出来上がり光るのと同時に、ガラスが割れるような音が一帯に響く、そして光から見知った顔が現れる。

 

「遅ぇんだよ。」

 

 つい愚痴をこぼす。

 

「ごめんなさい、結界が張られていたせいで場所の特定と解除に手間がかかってしまって。」

 

 こちらに駆け寄ってきた姫島が言う。

 

「兵同君、助けに来たよ。」

「神父…」

 

 木場は兵藤の方へ、塔城は神父を見つけ構える。

 

 この人数なら流石に退くか?

 

「ひゃほう!団体様いらっしゃ~い!!」

 

 神父はかまわず斬りかかる。

 チッ、そう上手くはいかねえか。

 

 ガキン!!

 

「仲間はやらせないよ。」

 

 ギリッ

 

 木場がヤツの剣を受け止め、ヤツとつばぜり合いにはいる。

 

「荒垣君。」

 

 振り返るとグレモリーがアレを渡してきやがった…もう深く考えねえ。

 俺はそれを受け取り、つばぜり合いをするヤツに向かって振り下ろす。

 

「ッ…オラッ!!」

 

 ドォン!

 

「うっひょ~危ない危ない。そんなんくらったらか弱いか弱い僕ちんはミンチになってしまいますよ。にしてもピンチに仲間が駆けつけるとか都合よすぎっしょ~なに、戦隊モノ気取りですか。熱いねぇ、仲間はやらせないとか、ヤらないっつうの。なに、おたくらできてんの?お前があいつをかばって、お前をそいつが…もしかして3○ですかぁ?」

 

 ヤツは俺と兵藤と木場を指差してふざけたことを言う。

 

「…下品な口だ、神父とは思えない。だからこそ、『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』をやってるわけか。」

 

 はぐれ?

 

「下品ですみませんねぇ、ヴァチカンなんてクソくらえってんだ。俺は俺あの快楽に従ってクソ悪魔君を殺せればそれで大大大満足なんですよ!」

 

 なるほどな、大体想像がついた。素行か欲望かなんらかの事情で追い出されたか…

 

「木場、気をつけろ。そいつは剣だけじゃねえ、銃も使ってくるぞ。」

「ちぃぃいいい、余計なことしくさりやがってえ。せっかく、クソ悪魔君のハートをぶちついてやろうと思ったのによ。」

 

 そう言いながら、銃を抜き、連射してくる。

 木場は避け、俺はバス停で弾く。

 

「いやいや、銃がバス停に負けるってどうなんよ。物理法則?さんしっかりしてください!!」

 

 そう言いながらヤツはいったん距離をとる。

 

「させないよ。」

 

 木場がそれに追撃をかける。

 

 ギンギンッ

 

 ヤツは木場の一撃を受け止め、返す。木場も同様に、切り結ぶ。

 俺は一旦後ろに下がる、せめぇところだと武器を思いっきり振り回せねえから戦いずれぇ。

 下がると、グレモリーが兵藤に話しかけていた。

 

「…イッセー怪我をしたの?」

「あ、すみません…。そ、その、撃たれちゃって…」

「わりぃ、頼まれていたのに…」

 

 あそこで横に突き飛ばすのではなく、俺の後ろに…

 いまさら考えても仕方ねえことが頭をよぎる。

 

「いえ、荒垣君には感謝するわ。きっと貴方がいなかったらイッセーは死んでいたわ。」

「そうですよ、荒垣先輩。先輩がいなかったら最初の一撃で真っ二つでしたよ。」

 

 そう二人が言ってくる。

 悪魔の癖にそう簡単に人を信用してんじぇねえよ、クソッ…

 

「そうか…次は傷一つつけさせねえ。」

「…これからも頼りにさせてもらうわ。」

 

 グレモリーは微笑む。が、すぐに表情を一変させ、冷淡な表情をヤツに向ける。

 

「私の可愛い下僕をかわいがってくれたようね。」

「いやいや~それほどでも~。ほんとはビシッとかっこいいモニュメントにする予定だったんですが、アレみたいに。」

 

 そう、壁に貼り付けられた元住人を指差す。

 

 ボンッ

 

 ヤツの後ろの家具が吹っ飛ぶ。

 

 バイサーの時も感じたが、グレモリーの魔力は他のものと違えみてぇだな。

 吹き飛ぶというより、消し去るって感じだな…

 

「私は、私の下僕を傷つける者を許さない、特にあなたのような下品極まりない者に自分の所有物を傷つけられるのは本当に我慢できないわ。」

 

 ッ!

 

 グレモリー怒りに呼応して、魔力が高まっていく。

 馬鹿か!?そんなん撃ったら周りにまで被害が…

 

「!部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいてきますわ。このままでは、面倒なことになります。」

 

 姫島の声掛けにより、魔力は収まるが、さらに面倒なことになりやがった。

 

「…朱乃、イッセーを回収しだい、本拠地へ帰還するわ。ジャンプの用意を。」

「はい。」

 

 姫島はグレモリーの指示に従い、詠唱を開始する。

 

(荒垣君。)

(なんだ。)

(聞いた通り、堕天使が近づいているの、このまま戦うわけにはいかないから撤退するわ。)

 

 人数的にはこちらが勝っているが、確かに傷ついた兵藤、市街地と戦うには条件が悪ぃ。

 

(賛成だ、とっとと退くぞ。)

(ええ、ただ。)

 

 グレモリーの声が急に申し訳なさそうになる。

 

(朱乃に準備させているものは悪魔の、私の眷属しかジャンプできないの…人間や他のものを呼ぶ魔方陣とは異なってしまうの。詳しくは省くけど貴方との契約はお互いを呼べるようにはなっているけど、飛ばすのはまた別の手法になり、飛ばす方が難しいの。)

 

 なんとなく、理解は出来る。山岸も俺らを呼び出すのは出来てたが送るのは出来なかったな…

 

(本当は先に荒垣君を飛ばし、私たちも転移する手法をとりたかったのだけど時間がないの。だから、一旦、私たちが部室に転移し、直ぐに荒垣君を呼ぶわ。ただその間…)

(一人になるってんだろ。問題ねえ、先に行け。)

(ごめんなさい、直ぐに呼ぶわ。…耐えて。)

 

「小猫、イッセーを魔方陣の上に。」

「はい。」

 

 塔城が兵藤を連れて行く。

 

「部長!あの子も一緒に!」

「無理よ。この魔方陣は私の眷属しかジャンプできないわ。」

「そ、そんな…アーシア!それに先輩は!?」

「荒垣君は手をうってあるわ。」

 

 …兵藤覚えておけよ、俺ァあの女より優先順位が下なんだな。

 

「イッセーさん。また会いしましょう。」

 

 女が言った瞬間、姫島の詠唱が終わり、魔方陣が輝きだす。

 

「逃がすかって!」

 

 ヤツがグレモリーたちに突っ込もうとする。

 

 させるか!

 

「オラッ」

 

 ブンッ

 

 バス停を振りぬき、ヤツをけん制する。

 

「おまけです。」

 

 塔城はそういうとさっき俺が二つに折ったソファを掴み、やつに投げつける。

 

「チッ。」

 

ドンッ!

 

 ヤツはそれも避けるがその隙に魔方陣は光を放ち、グレモリーたちの転移は成功する。

 ヤツが避けている間に女に近づく。

 

 ビクッ

 

 女は近づいてくる俺を見て警戒する。

 

「隙を作る。逃げろ。」

「えっ?」

「てめぇは俺等を庇って殴られた、その貸しを返すだけだ。」

 

 そう言って、ヤツに向き直る。

 

「あれあれ~もしかして置いてかれちゃった?裏切られちゃったのかな~堕天使の姉さん方もあんたのこと探してたみたいだしちょうど良い!とりあえず、逃げられないようにその両足落としちゃいますねぇ。」

 

 ふざけたことを言いながら剣を構える。

 

「おい、女。しゃがめ。」

「え?」

「斬られたくなかったらしゃがんどけ。」

「は、はい。」

 

 女がテーブルの下へと隠れる。

 

「ああん、なに言っちゃってるんですか?一人になって怖さのあまり壊れちゃいましたか~。」

 

 色々面倒なことになりそうだからコイツには見せたくなかったが、援軍が来るまで時間がねえ。

 

 それに、貸しを返さねえのは性にあわねえ。

 

 ヤツの言葉を無視し、俺は心の底からアイツを呼び出す。

 

「こい、カストール!!」

 

 ゴッ!!

 

 その瞬間、俺を青白い光が包み、後ろには一つの異形が現れる。

 

「はあああああああああ!?なんですかそれぇえええええ!?」

「うるせぇ。」

 

 ズッ

 

 カストールは胸に刺さった、刃を抜き、振り上げる。

 

「キュピ~ン。なんか超やばそげな空気を察知!俺様緊急脱出!!ついでに置き土産!!」

 

 ダッ

 

 ヤツは窓へと駆け出しながらなにかをこちらに向かって手榴弾をばら撒く。

 

「逃がすか!カストール、利剣乱舞ッ!!」

 

 ブンッ

 

 ズババババッ!!

 

 カストールは刃を高速で振り舞わす、生まれた真空の斬撃がヤツとヤツのばら撒いたものを部屋や窓ごと切り刻む。

 

 パパパパリーンッ!!

 ガガガッ!

 

 窓は割れ、室内のあらゆるものに無数の斬撃が襲い掛かる。

 

「きゃあああああ!!」

 

 あまりの音と衝撃にテーブルの下で女が叫ぶ。

 

 ゴトトッ

 

「チッ、逃がしたか。」

 

 攻撃の後に残っていたのは、最低でも4等分、細かいものだと何等分かもわからない位に切り刻まれた手榴弾と、ぼろぼろになったヤツの着ていた上着だった。

 

「おい、もう出てきて良いぞ。」

 

 机の下からなかなか出てこない女に声をかける。

 

「は、はい。」

「怪我はねえか。」

「は、はい。大丈夫です。」

「なら行け。直ぐに他のヤツラかヤツが戻ってくる。」

「あの、貴方は。」

 

 そう女が聞くと、俺の身体を光が包み始める。

 

「俺ァは問題ねえ。どさくさにまぎれられんのは今しかねえぞ。」

「あ、あの。」

「あ?」

「私、アーシア・アルジェントと言います。ど、どうもありがとうございました。」

 

 そう言って、頭をさげる。

 なんで、この切羽詰った状況で自己紹介をする。

 てか、そもそもさっきまで敵だっただろうが。

 この女の天然っぷりに唖然とする。

 

「貸しを返しただけだ、早く行け!」

 

 行けと言ったのに女は動かない。

 

「まだ、なんかあんのか?」

「貴方のお名前を…」

 

 ハァ、敵にまで名前を聞くか…

 だが、コイツはもう堕天使やあの神父のところには帰れねえだろう。

 そうすると、この後コイツは…クソッ、光が強くなってきやがった。時間切れか。

 

「…荒垣真次郎だ。」

「アラガキさん!どうもあり…」

 

 女が離している途中に目の前が真っ白に染まり、声が聞こえなくなる。

咄嗟に目を瞑る。

 

 そして、目を開くとそこはあの家の中ではなく、怪しげな魔法陣が描かれているオカルト研究部の部室だった。

 

「荒垣君!!大丈夫?」

 

 振り向くとグレモリーたちが揃っていた。

 

「ああ、問題ねえ。」

 

「服…切れてます。ガラスが沢山ついてます。」

 

 塔城が寄ってきて、服についたガラスの破片等を取り払う。

 

「最後に少し暴れただけだ。」

「あらあら、一応怪我がないか確認しますので上着を脱いでください。」

 

 姫島が言う。

 

「あぁ、大丈夫だって…」

「いいから、脱いでください。」

 

 なぜか塔城まで…

 

「…チッ、わかったよ。」

 

 変なプレッシャーを放つ二人の相手をするのが面倒になり、上着を脱ぐ。

 

「刺さったりはしていませんが、細かいかすり傷はあります。」

 

 そう言いながら治療を始めやがる。その間に気になったことをグレモリーに訪ねる。

 

「グレモリー、あの神父の『はぐれ』ってのはなんだ?」

「そうね、それの説明もしなくてはね。悪魔祓い(エクソシスト)は2種類あって神や天使の力を借りて悪魔を滅する正規のものの他に悪魔を殺すことに楽しみをもち、教会から追放されたはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)があるの。」

 

 大体予想通りか。

 

「そんなヤツラは、天使の代わりに堕天使から加護を受け、堕天使は戦争で数が減った同胞の代わりにヤツラを戦力とするのよ。堕天使もはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』も両方とも自分のよくに忠実だから、関わるのは得策じゃないわ。」

「お話中すみません、荒垣先輩に聞きたいことが…」

 

 間違いなく、あの女についてだろうな。

 

「あの、アーシアは結局…」

 

 やっぱりか…

 

「お前らがいなくなった後、俺が暴れた。そのどさくさにまぎれて逃がした。」

「本当ですか!!よかった。」

 

 あの場はな…だがさっきの話しを聞くと…

 

「あれ、でもさっきの話からいくとアーシアも…」

「はぐれ悪魔祓いではないにせよ、堕天使の下僕であることは間違いないわね。」

「でも、アーシアは嫌がっていました!部長、なんとかしてアーシアを…」

「無理よ、どうやって救うの。彼女を救うってことは、堕天使を敵に回すことになるの。…そうなったら、私たちも戦わなければならないわ。」

 

 その話しを聞き、兵藤は悔しそうに俯く。

 

 しかし、その話しを聞きながら俺は別のことを考えていた。

 コイツが想定していんのは戦うとこまでか…やっぱりコイツらは覚悟が足りない。

 このままだと…

 

 

 

Side 堕天使

 

 バサッ

 

「カラワーナ急ぎましょう!」

「ミッテルト、落ち着いて。相手がグレモリーなら無闇に突っ込むのは危険よ。」

 

 私は先行する彼女を落ち着かせる。

 

「でもあの神父、今回はあの女を連れて行ったわ。あいつがどうなろうと知ったことじゃないけど、女の方は今回の計画の鍵なのよ!!」

 

 焦りながら彼女はさらにスピードを上げる。

 

「それでも、あなたが死んでしまったら元も子もないのよ。それに私たちは何が何でも戻らなければならない。そうでしょ?」

 

 彼女を追いかけながら言う。

 

「ッ。うん、ごめん、カラワーナ。頭に血が上ってた。」

 

 ふふ、こういう感情に素直なところは彼女の美点だと思う。

 それがいつも成功につながるわけではないし、失敗も多い。

 だが、良くも悪くも感情に正直な者というのは少ない、一緒にいて安心できる。

 

 今でも、考え事をしている彼女は不安そうにこちらを見ている、かわいいわぁ…ジュルッ。

でも、こんな可愛い子なのにあの朴念仁は…ストレートにアプローチしてるのに全く気づかないし、とっととくっついてくれないと二人まとめてという私の計画が…

 

「カラワーナ?」

 

 いけないいけない、今は周りを警戒しなきゃいけないんだから自重しなきゃ…

 

「気にしてないわ、身長かつ迅速に行きましょう。」

 

 キリッとした雰囲気で私は言う。

 

「うん!」

 

 私たちは警戒しながら飛び、目的地に着く。

 

 バサッ

 トンッ

 

 庭に降り立ち、家の中を覗く。

 

「ッ。これはひどいわね。」

 

 家具を始め、窓、壁無事なものはなにもない。

 

「あの男と女は?」

 

 ミッテルトがあの神父とシスターを探す。

 

「呼ばれて飛び出て俺様参上ッ!」

 

 ふざけた事を言いながら神父が出てくる。

 

「おい、あの女はどうした。」

「ミッテルトの姉さん、大変申し訳ないのですが…逃げられちゃいました、すみません!!」

 

 そう言いながら、ヤツはその場で天井すれすれまで飛び上がり、

 

1回

 

2回

 

3回

 

4回

 

 横に回転し、着地と同時に正座の体勢から両手を前に出し、頭を地面にこすり付ける。

 

 たしか…DOGEZAだったかしら?の姿勢をとる。

 

「そんなんで許されると思ってるわけ!謝罪するくらいならHARAKIRIしなさい!!」

「ひぃぃぃ、すみましぇ~ん。」

 

 頭を決して上げず、神父が謝罪を続ける。

 

 はぁ。

 

「漫才をやってる場合じゃないわ、ミットルテ。それに、今は戦力が大切なのはわかっているでしょ?殺してしまってはダメ。」

「カラワーナ様ありがとうごぜぇます、このお礼はかならずぅ。」

 

 神父はガバッと頭を上げ、こちらに擦り寄ってくる。

 

 ゲシッ

 

「いいから、早くシスターを探しに行きなさい。悪魔に奪われているようなら殺してでも奪い返しなさい。」

 

 擦り寄ってきた神父を蹴り飛ばしながら私は言う。

 

「アンッ、一部の人にとってのご褒美頂きましたッ!!行ってきます!!」

 

 ダッ

 

 神父は一瞬で姿を消す、力はあるのよね、あいつ。

 中身は腐ってるけど。

 

「カラワーナ、どうするの?」

「とりあえず、レイナーレ様に報告よ。儀式の日は明日なのだから私たちも探すわよ。」

「うん。でもクソ悪魔め。なにもしらないくせに邪魔ばかり…」

「ミッテルト、気持ちはわかるけどしょうがないわ。あいつらにとっては私たちの事情なんて関係ないもの。」

「でもッ!!」

 

 ぎゅっ

 

「本当に優しい子。」

 

 頭をなでながら、彼女を落ち着かせる。

 

「わかったから、子どもじゃないんだから離してっ!!」

 

 顔を真っ赤にするミッテルト…はぁはぁ…

 

 ハッ!?

 いけないわ、今は非常時なのよ。

 自重よ、自重。

 

「それじゃあ、行きましょう。」

 

 落ち着いた声音、彼女に告げ、空へ飛び立つ。

 

「うん。」

 

 その後に、彼女もついてくる。

 

 私たちはアジトへと急いだ。

 

 

 

 トンッ

 

 私たちはアジトである教会跡に付き、中へと入る。

 

「レイナーレ様、お伝えしたいことが…」

 

 中へ入り、膝を付き、レイナーレ様の反応を待つ。

 

 ………

 

 反応がない?

 

 私はそっと顔を上げる。

 そうすると、レイナーレ様はこちらに気がつかず、が祭壇に向ってなにかをつぶやいているようだ。

 

 私は聞き耳を立てる。

 

「大丈夫、私は出来る子。明日の儀式は必ず成功する。大丈夫大丈夫大丈夫…胃が痛い。でも、あのシスター、アーシアちゃんにはひどいことすることになっちゃう。あの子、洗濯、料理、家事全般やってくれてるとてもいい子なのに…でも私たちも引くわけにはいかない、皆のためにも。うう、胃が痛い。そういえば、イッセー君にもひどいことしちゃったな。この『○○を落とそう!!~男子高校生編~』に書いてある通りにやったんだけど…『どんなに楽しいデートでも最後にズタズタに言って相手をボロボロにすれば、簡単に死んでくれます。』ってすごいひどいよね、実際に出かけるのは楽しかったし、ああいうのは初めてだったし…結局彼は悪魔になっちゃたし、でも一度殺したことは背負わなきゃね。胃が痛い。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…。」

 

 ………

 

 ぶわっ

 

 レイナーレ様、おいたわしや。

 もとから内気で真面目な性格な方でしたから、追い詰められてしまって…

 

 しかも、あの本私が昔に書いたやつじゃないですか。

 

「カラワーナ、レイナーレ様はなにをやってるの?」

 

 振り向くといつの間にか顔を上げていたミッテルトが聞いてくる。

 

「…明日の儀式への精神統一よ。でも、緊急だし声をかけるしかないわよね。すみません、レイナーレ様お忙しいところ申し訳ありません。少々よろしいでしょうか!」

 

 ビクッ!!

 バサッ!!

 

「きゃう!!」

 

 レイナーレ様を驚かしてしまった…今、思いっきり羽が広がりましたね。毛も逆立ってますし…

 

「え!?二人ともいつの間に?もしかして今の見てた?どうしよう、え~と、そのあの…」

「レイナーレ様にご報告が…」

 

 スルーしてあげるのが優しさでしょう。

 

「え、あ、うん。なにかな?」

「神父とシスターが悪魔に教われ、シスターが行方不明が行方不明になりま「えええええええええええええええ!!!」…した。」

「どうしよどうしよどうしよどうしよ!!儀式はもう明日というか既に今日だよ!!胃が痛い。急いで探さなきゃ!!でもどこに?胃が痛い。土壇場で慌てないようにしっかり準備したのに、ぐすん。胃が痛い。どうしよ~~~。」

 

 完全にパニックになられてしまった。

 しかし、涙目のレイナーレ様も…

 はっ、いけないけない。ミットルテはレイナーレ様の本性を知らないから、あの仮面(自己暗示)をかぶった姿しか知らないし、私がフォローするしかないわね。

 

「レイナーレ様!!シスターとともにいた神父は無事であったため、現在捜索をさせています。レイナーレ様のご指摘のように時間もありません故全員が分散して捜索すべきかと思いますがいかがでしょうか?」

 

 私は混乱中のレイナーレ様に届くよう、大きな声で大げさに言う。

 

「ふえ?あ…コホンッ。そうね、良い采配だわカラワーナ。儀式は今夜、それまでになんとしてでもあの女を捕まえるわよ。二人も捜索に入りなさい、別行動中のドーナシークにも連絡を入れておきなさい。」

 

 なんとか落ち着いて仮面をかぶり直せたようですね。

 

「ただし、悪魔と単独で戦闘することは禁止するわ。良いわね?」

 

 ふふっ

 

 傷だらけのドーナシークを連れ帰った時のレイナーレ様の表情が頭に浮かぶ、きっとあの件が効いているのだろう。

 お優しいお方だ、本来ならこんなコト嫌いなはずなのに…なら、全力で支えるだけですね。

 そう考えていると、隣でミッテルトも微笑んでいる。

 

 目が合う。

 頷く。

 

「「はい、かしこまりました。」」

 

 私たちは声を揃えて答える。

 そして教会の外へと飛び立つ!

 

 後ろからレイナーレ様の声が聞こえる。

 

「では、私も!…胃薬を飲んでから。」

 

 …聞かなかったことにした。

 




ガイル01です。今回も読んでくださりありがとうございます。
 仕事が忙しくてなかなか投稿が…遅れてしまいすみません。
 とりあえず、後半どうしてこうry。独自設定にもほどがありますね、後ほど色々細くします。時々こういった他の人たち視点も入れていきたいなと思っているのでよろしくお願いします。

 では、また次回お会いしましょう。

[補足]
○ガキさん
 アーシアちゃん実は大ピンチでした。少しでも変なことをしていたら敵認定され、ぼこぼこにされてました。基本的には敵が女と言う理由では容赦はしません。ただし、原作の加入時よりは有里を始め、多くの人とのつながりのため大分優しくなってはいます。

○ペルソナ
 ドーナシーク戦とバイサー戦(ほとんど見てただけですが…)でレベルが上がり、レベル52となり、『利剣乱舞』(斬撃属性の中ダメージ技。敵全体を2~4回切りつける。)を覚えたため、使いました。この技の表現はこの作品の独自のものです、ゲームだとそこまでしっかり表現されないのできっとこんな感じだろうと言う風に書いて見ました。

○転移について
 山岸(原作のサポート担当、敵の弱点を調べたり、効果がランダムの魔法を使ってくれたりする。探索中は脱出させてくれたりもする。)も呼び戻すのは出来るが、送るのは出来なかったのと契約してても人間と悪魔では使う魔法陣が違うのかなと考えああしました。

○堕天使組
・カラワーナ
 今回の視点の人。見た目は25歳くらいのロングヘアのお姉さん系。モデル系のスタイル、外見のイメージは『戦国乙女の今川ヨシモト』かな。
基本的にはお姉さん系で気配りや配慮が出来、振る舞いもしっかりしている。
 だが、両刀。内面では大暴走しています。ドーナシークが好きだが、ミッテルトの方が好き。両方まとめていただくために色々暗躍中。
 レイナーレの中身に気づいており、色々フォローする。だが、困っていても助けはせず、微笑ましそうに見ている。つまりドSです。

・ミッテルト
 見た目は16歳くらいの小動物系のショートカット。外見のイメージは『魔法先生ネギまの泉亜子』、中身は『サモンナイト3のベルフラウ』に少し似ているイメージかも。
 ツンデレまでは行かないが強気な性格でちょっと天然が入っている。堕天使には珍しい癒し系、食事の仕方がリスっぽく食事のたびにカラワーナは悦に入ってる。

・ドーナシーク
 朴念仁。
 人や格下を侮る傾向があるが一度敵と認めたら全力を尽くして殺しにかかる。一切の容赦はしない。攻撃力は中級以上だが、防御力が圧倒的に低いため遠距離からの物量生かした戦法を取る。
 仲間内では面倒見が良い、天然で口説くため、本人は気づいていない。ただ、ミッテルトとカラワーナが威嚇をしているため彼の周りには彼女たちしかいない。
 レイナーレへは忠誠を誓っている。

・レイナーレ
 いつの間にか原作と大きくかけ離れたキャラ。真面目で弱気、泣き虫、いじられ、苦労人といった常識系キャラ。男性と付き合ったことはなく初心でもある。部下3人の関係に興味津々であり、ちらちらと見ている。基本的に戦闘は嫌いで今回のことも理由があるらしい…
 部下たちの前ではしっかりした姿でいるため、堕天使のマニュアル本を読み、それをもとに自己暗示をかけている。暗示がかかっているときのこともしっかり覚えているため、暗示が解けた後にいつも後悔をしているがそれを投げ出すことはしない覚悟はある。
最近ほしいものはよく効く胃薬。

・フリード
 基本的には原作と変わりはしないが、彼の発言には様々なネタを仕込むようにしている。アトラスとD×D以外はクロスさせる気はないが、彼の発言にはそんなこと関係なくネタをブッコミます。
あ、あとドSでMの両属性持ち。

以上、質問や感想等ありましたら遠慮なくよろしくお願いします。


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第8話

お待たせしました、なんとか今日中に投稿できました。

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。



「う…、もう朝か。」

 

 クソ、結局帰ってきたのは深夜なせいでまだねみぃが…

 

 俺は時計を見る。

 

「もう、11時か…。」

 

 流石に起きねえとマジィな。

 

 ギシッ

 

 俺は起き上がり、着替えを済ませ、一階に降りる。

 

「誰もいねぇのか。」

 

 ダイニングを見渡すが誰もいねえ。

 

 ん?これは、書置きか?

 

 ペラッ戦場(タイムセール)

 

『シンちゃんがぐっすりなようなんでパパと朝食デート行ってきます!そのまま遊びに行くので帰りは夜です。ママがいなくて寂しいかもしれないけど晩御飯は一人で食べてね。 

                                        ママより

追伸

女の子を連れ込んでも大丈夫よ!』

 

 グシャ

 ポイッ

 

「阿呆が…」

 

 相変わらずすぎて頭が痛くなるぜ…

 

 さて、どうすっか。

 

 あの堕天使のことも気になるが、いまんとこ俺にできる事は…

 

 よしっ。

 

 俺は棚からリードを取り出し、外に出る。

 そして、庭へと向う。

 

「ワンッ!!」

 

 そこには俺を見つけ、尻尾が千切れるんじゃねえかと思うぐらい振り回し喜ぶ犬―コロがいた。

 

「よしよし、散歩行くか。」

「ワンワンッ!」

 

 俺はコロちゃんを一撫でし、首輪にリードをつけ、門を出る。

 

 さて、いつもんトコ行くか。

 

 俺は歩き始める。

 

「あらぁ、真次郎君じゃない。元気?」

「あ?」

 

 コロちゃんをつれて歩いていると横から声を掛けられる。

 この人たちは…

 

「あらあら、少し見ない間にもうこんなに大きくなっちゃたの?男の子ってすごいわねぇ。」

「そうよね、それに凛々しくなって~女の子にもてるんじゃない?」

 

 最初に話しかけてきた方が小学校から同じトコ通ってるヤツの親でもう片方が町内会会長の嫁さんだったか。

 

「いや、そんなことないです。」

 

 この手の人たちは話がなげぇからな、適当にきらねえと…

 

「真次郎君は一見近寄りがたい雰囲気してるからねぇ。でもうちの娘なんかどうかしら?小学校から一緒でしょ?時々家で話題になるのよ!」

「あら、ずるいわ。うちの娘もどうかしら、毎年夏祭りとかで会ってるからお互いのことよく知ってるんじゃない?」

 

 おいおい、娘の意思は完全無視だな…

 

「いや、今は色々忙しいんで。」

「あら、残念。気が向いたらいつでもおばちゃんに言ってね。すぐに娘と引き合わせるから。」

「うちもいつでも良いわよ。あ、そういえば今朝ご両親を見かけたわよ。いつまでも仲がよさそうで良いわよねぇ、うちの旦那なんて…」

 

 やべぇ!

 

「すいません、この後があるんで失礼します。」

「そうね、引き止めちゃってごめんなさい。貴方も散歩中だもんね。」

「ワン!」

 

 おばさんはコロちゃん撫でながら言う。

 

「それじゃあまたね。あ、最後に。サトミタダシの今日のタイムセール時に卵が一パック無料と海老の袋詰め放題やるらしいからがんばりましょうね。」

 

 ッ、マジか。

 

「わかりました、ありがとうございます。」

 

 その情報に感謝をし、頭を下げた後、その場を去る。

 

 

 

 

「さて、着いたか。」

 

 俺がやってきたのは今は使われていない神社。

 誰かが手入れをしているのか綺麗なままではあるが、町のはずれにあり、道から階段も長く人はめったにやってこない。

 

 それが逆に俺には好都合だ。

 

「ワンッ!」

「ちょっと待て、今はずしてやっから。よっ。」

 

 俺はコロちゃんの首輪からリードをはずす。

 

「よし、とってこい!」

 

 ブンッ

 

 ボールを投げる。

 そうすると勢い良く駆け出す。

 

「そこそこな年なはずだが、相変わらず元気なヤツだ。」

 

 考えをついつい口に出しながら、ボールを咥えて戻ってきた、コロちゃんを撫でる。

 

「よしよし、良くやった。」

「ハッハッ。」

 

 ジーッ

 

 コロちゃんがお座りしながら、期待した瞳でこちらを見てくる。

 

「もう一回やるか?」

「ワンッ!」

「よし、じゃやとってこい!」

 

 俺は結局あの瞳には勝てず、延々とボールを投げ続けることとなった。

 

 

 

 そこそこな時間が経った後

 

 「よし、コロちゃん。ここでちょっとまってろ。」

 

 俺は神社の脇の日陰でコロちゃんにおやつと水を与え、待ってるように指示する。

 

「ワンッ!」

 

 元気良く返事をし、おやつの骨に齧りつき始める。

 

「よし。」

 

 俺はその様子を確認すると神社の脇から林の中へと入っていく。

 

 ザッザッ

 

「ここら辺で良いな。」

 

 少しひらけた場所に着く。

 正面は岩壁となり、周りには大きめの岩が転がっている。

 

 すぅ

 

 はぁ

 

 俺は心を落ち着かせ、意識を集中させる。

 

「ペルソナ。」

 

 ゴッ

 

 一瞬、俺が青白い光に包まれ、背後にカストールが現れる。

 

「砕け。」

 

 俺が指示すると、カストールは駆け目の前の岩へ拳を振り下ろす。

 

 ドンッ

 

 一発で岩が吹き飛ぶ。

 

「威力を抑えて連打の後、デッドエンドだ。」

 

 俺は次の指示を飛ばす。

 カストールは近くの岩に拳でラッシュをかける。

 最後に乗っている馬のようなもので岩を打ち上げる。

 

 ズルッ

 

 胸から刃を引き出す。

 

 ブンッ

 

 落ちてきた岩目掛けて、上段に構えた刃を振り下ろす。

 

 一閃

 

 

 ズズンッ

 

 

 岩は真っ二つに切れ、落ちる。

 落ちた瞬間、ラッシュの衝撃で脆くなっていたせいか岩が砕ける。

 

「ふぅ。」

 

 一息つく。

 

 まだ、足りねえ。

 この世界でペルソナに目覚めたのはずいぶん前だが、負担がでけぇせいでガキの頃は使えねえし、中学ん時からやってるが『あの頃』と比べっと相当なまっちまってんな…

 

 だが、理由はわからねえが、適正は今の方がたけぇ気がする。カストールとの連携がやりやすい。 強弱、虚と実の使い分け、細かい指示にも対応できるようになってやがる。

 

 けど、気はぬかねぇ。二度とあんなことにならねぇように、テメェの力に振り回され、無様なことになんねぇために…

 

「次行くか。」

 

 俺は再び集中する。

 

「カストール。」

 

 俺は訓練に戻っていった。

 

 

 

「今日はこんなモンか。」

 

 1時間ほど訓練をし、神社へと戻る。

 

 ザッザッ

 

 ん?誰かいやがる!?

 

 気配を殺し、足音を消し、近づく。

 

 林からでて、神社の裏に回る。

 ゆっくり、近づく。

 

「…っ…は、…。」

 

 少しずつ声が聞こえるようになる。

 

 一歩、また一歩。

 近づくたびに声が鮮明となっていく。

 

「よし…。ふふ、あな…主…はどこ…。」

 

 この声は…

 俺は聞き覚えのある声に気づき、隠れるのをやめる。

 

「ワンッ!」

「あ…。」

 

 先にコロちゃんが俺に気づき、駆け寄ってくる。

 その動きにつられ、そこにいた人物が俺の存在に気づき、立ち上がり、こちらに向かってくる。

 

「こんにちは、荒垣君」

 

 声をかけてきたのは、

 

 支取だった。

 

「支取、どうしてこんなとこにいんだ?それにいつきやがった?」

 

 ここは神社、俺がちいせえころから誰も居らず、使ってっがなんか起きたことはねえから他の勢力とかはいねえんだろうが悪魔にとって心地いい場所ではねえだろう。

 

「貴方を探しに来たんです。最初はお家の方に伺ったんですが誰もいなく、困っていたところを近所の方がこっちの方に向ったと教えてくれて、神社の前まで来たら微かにですが荒垣君の魔力を感じ、この神社はどの勢力も使ってなさそうなので入らせてもらいました。階段を登った所にこの子が寄ってきたので遊んであげていたら荒垣君が現れたといった感じです。」

 

 なるほどな、周りには大分気ぃつかってたんだがな…次からはもっと気をつけねぇとな。

 

「コロが手間かけさせた、礼を言う。」

「いえ、かまいません。しかし、一つお聞きしたいのですが、荒垣君はなにをしていたのですか?」

 

 まぁ、見逃すわけねぇわな。

 

「最近ぶっそうだからな、鍛えといて損はねぇだろ。」

 

 嘘はついてねぇ。

 

「そうですか、私が感じたのはあの魔道具の魔力だったのですね。努力家なのですね。」

「そんなんじゃねえ、降りかかる火の粉を振り払うのに力が必要だってのと、テメエの力には責任を持って振り回されねえようにするためにやってるだけだ。」

「ふふ、十分真面目で努力家ですよ。」

「チッ。」

 

 支取は微笑みながら告げる。

 

 が、

 

「さて、本題に入る前に一つ。」

 

 やべえ、支取の雰囲気が変わりやがった。

 

「お聞きしたいことがあります。」

 

 さっきと同じく、微笑んでやがるが目が全く笑ってねえ。

 

「荒垣君。」

「お、おう。」

 

 一歩詰め寄りながら支取は俺の名前を呼ぶ。

 

「昨日なぜ私には助けを求めてくれなかったのですか?」

 

 俺を睨み付けながらそう告げた。

 

「荒垣君は契約の際に言いましたよね。一方的には守られないと。それは構いません、私が危ないときは頼ります。なのに、貴方は私に守らせてくれないのですか!!なんのために契約したのか、今回は貴方に大きな怪我がなかったから良かったものの契約をし、貴方を守れる立ち位置になったのに結局前と変わらず結果だけ知らされる。凄く悲しかったです。」

 

 …

 

「前に私に言ってくれましたよね。周りに頼れと。貴方も頼ってください。私は貴方の契約相手であるけど、その前に友達なのですから。私にも貴方を守らせてください。」

 

 …

 

「あっ、え~とすみません。感情的になりすぎました。つまりですね「わりぃ。」え?」

「お前の言うとおりだ、俺ァ基本的に自分でなんとかしてきた。お前みたいに色々背負ってたわけじゃねえから自分だけでなんとかなった。」

 

 前も基本的に向こうのほうから色々と突っかかってきたり、やらかしたりで俺からはあんま関わろうとしなかったからな。

 

「あ~つまりだな、慣れてねぇんだ。他のヤツに頼るってのに。」

 

 顔を背けながら言う。

 

「これからは気が向いたら頼る。」

「気が向いたらですか?」

 

 顔を背けた方に支取は回り込み、見詰めてくる。

 

「わぁったよ、なんかあったら知らせる。契約だからな。」

 

 再び顔を背けながら告げる。

 

「はい、契約ですからね。」

 

 嬉しそうに支取が微笑む。

 

 チッ、見透かした感じが気にくわねぇ。

 

「それで、今日は何の用なんだ。」

 

 このままだと、色々面倒くせぇから話題を変える。

 

「ええ、今日は堕天使についてわかったことを伝えにきたの。」

 

 支取は表情を引き締め、話し始める。

 

「どうやら、あの堕天使たちは独断で動いてるみたいなの。」

「上の命令じゃねえってことか。」

「ええ、理由まではわからないけど。逆に危ないわ。」

「そうだな。」

 

 命令されているだけならお互いに譲歩の点があるが、悪魔の公爵が治める地にわざわざやってくるくらいだからそれ相応の目的と覚悟があると思って良いだろう。

 

「彼らをどうしようが、堕天使との戦争になることはありません。ただ、我々にどのようなことがおきるかはわかりませんので注意してください。

「わかった。これはグレモリーには…」

「はい、こちらから伝えておきます。」

「頼んだ。」

「はい、調査を続けますのでわかり次第お伝えします。」

「おう。」

 

 やれやれ、どちらにせよ単純な問題じゃあねえとは思ってたが、目的がはっきりしない分厄介だな。

 とはいっても出来る事はぶん殴って捕まえて吐かせるだけか…

 

なら。

 

「飯でも食って帰るか…。」

「いいですね。」

 

 あん?独り言のつもりだったんだが…

 負い目もあるし、今日ぐらい奢ってやるか。

強敵(とも)

「食いてえモンあるか?面倒かけたから奢ってやる。」

「あら、ありがとう。じゃあ…」

 

 そう言いながら、俺と支取は間にコロを挟み、神社の階段を降り始めた。

 

 

 




 ガイル01です、今回も読んでいただきありがとうございます。
 原作ではイッセーとアーシアが遊んでいるタイミングですね。
 あと2話位で原作1巻が終えられるかな~
 現在の時点で大分原作と異なってきていますが、ストーリー自体は原作沿いでいくつもりです。
 そして明らかにヒロイン度が高い気がする支取さん…他のキャラよりなぜか書きやすく、こんなことに…他の支取眷属も早く書きたいなと考えています。
 では、また次回お会いしましょう。

[補足]
・おばさん駆ける
 前の方の話でガキさんについてのインタビューをした時の学生の母親。支取がガキさんの家を訪ねたことに興味津々らしい。
スーパーの戦場(タイムセール)における歴戦の猛者、ガキさんとは戦場(タイムセール)で時に争い、時に協力する強敵(とも)である。

・ペルソナ
 今回使った技は『デッドエンド』で威力は中の斬撃属性です。敵単体を振り下ろしで叩き切る幹事のイメージな技です。他のは技ではなく、通常攻撃です。(原作ではペルソナによる通常攻撃はないので独自設定ですが、P4のアニメや映画では普通に戦っていたので…)
 ペルソナは物理技がHPを、魔法がSPを使います。基本的にガキさんの技は物理メインなんで小学生のころは負担が大きくペルソナをあまり使っておらず、自分の身体を鍛える方向で鍛錬をしていました。中学に入り、ペルソナの暴走をさせないために、ペルソナも訓練をはじめ、前世より安定してペルソナを使えます。ただ、今でも暴走させたトラウマは残っており、相当気を使っております。

質問ご感想等ありましたらよろしくお願いします。



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第9話

お待たせしました、今回ははやめにできました!
しかし、色々やりすぎた感が…
原作の裏場面となるつなぎの回なイメージです、今後も原作の裏という感じで色々書くと思います。

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。



 俺は昼飯を食うために、支取の薦める店に向かう。

 

「ここです。」

「意外だな、うどんか。」

「意外ですか?」

「ああ、あまりそういうイメージがなかったからな。値段とか気にしてんなら遠慮はいらねえぞ。」

「いえ、純粋に私が好きなだけですから気にしないでください。」

「そうか。」

 

 そういって『小西屋』にはいる。

 

「「「いらっしゃいませ。」」」

 

 店員に案内され、テーブルに着く。

 

「私は…明太豆乳うどんをお願いします。」

「俺は、天もりだな。」

「かしこまりました、少々お待ちくださいませ。」

 

 店員がそういって下がる。

 

「ここにはよくくんのか?」

「ええ、それなりに。時間もかかりませんし。」

「お前な…」

「ふふ、もう大丈夫ですよ。無理はしてませんから。」

「そうかよ。」

 

 そう言うと、周りを見渡す。

 へぇ、製麺所が見えんのか、ここ。

 

「気づきましたか、ここは店できちんと麺を打ってるので美味しいんですよ。それにリアスも結構来ているんですよ。」

「グレモリーもか。」

 

 爵位持ちの悪魔が通う店か、そう考えるととんでもねえな。

 

「リアスとはここの今学期に行われる球技大会で負けたほうが勝った方にここのトッピング全部つけたうどんを奢る約束をしているんです。」

「そ、そうか…」

 

 すごく楽しそうにしてっが、トッピング全種って相当な量だぞってか、味のバランスが…

 まぁ、本人たちが楽しんでんなら俺がなんか言う必要もねえか。

 

「おまたせしました!」

 

 目の前にうどんが置かれる、麺は冷水できゅっと締められ、白い表面が艶やかに輝き、揚げ物も衣がでかいような出来損ないではなく、衣は薄めで素材をしっかり引き立てるような揚げ方をしているように見え、とても美味そうだ。

 

「「いただきます。」」

 

 俺たちは食べ始める。

 

 想像通り、うめぇ。

 

 汁もうどんに負けずしっかりとしたもので、天ぷらにも合う。

 

 その中、どうしても気になるモンがある。

 

「支取、そりゃうめえのか?」

「はい、美味しいですよ。」

 

 支取の頼んだうどんは、豆乳のベースの冷製スープに明太子、とろろ、オクラが入ったうどんだった。

 

「一口食べますか?」

「良いのか?」

「荒垣君なら構いませんよ。」

「じゃあ、貰うぜ。」

 

 支取が前に出してきた器を受け取り、一口食べる。

 

 あ~なるほどな。

 

「いかがですか?」

「俺ァ好きな味だが、相当人を選ぶな。スープも具も全て独特だから一つでもダメなヤツは食えねえだろう。」

 

 豆乳も明太子もとろろもオクラも全て独特の食感と風味だからな。

 

「だが、それらをすげぇうまくまとめてあって美味ぇと思うぞ。」

「そうですか、ならよかったです。」

 

 俺は支取に器を返す。

 

「ほらよ。」

 

 天ぷらを一つ小皿に乗せて支取に渡す。

 

「え、よいのですか?」

「一口貰ったお返しだ。」

「つりあっていない気がするのですが…」

「気にすんな。」

 

 そう言って、自分のうどんを食べ始める。

 

「ありがとうございます。」

「おう。」

 

 

 

 

 

「それでは、私はこれで失礼します。」

「おう。」

 

 支取とうどんを食った後、場所を変え、茶を飲みながら情報交換をして別れる。

 

「あそこのうどんは美味かったな。こんどラーメンだけじゃなく、うどん関係も色々探してみっか。」

 

 そんなことを考えつつ、一旦家に帰り、コロちゃんを戻す。

 その頃には既に夕方になっていた。

 

「さて、じゃあ行くか。」

 

 俺はある場所へと向う。

 

『瀕死大変 仲間を助ける 地返しの玉と反魂香~』

 

 店の前に立つと聞きなれた歌が聞こえてくる。

 

『いつも 戦うみんなの味方 僕等の町の お薬屋 さ ん』

 

 いつも思うが薬局じゃねえだろ…

 まぁ、前が薬局で規模拡張でスーパーになったらしいが、この歌は昔っから変わんねえらしいな。

 

 それはいいとして、俺は店の中に入る。

 

 やっぱりか…

 

 店の中は空気が張り詰めている。

 店にいるのは大半が主婦、それも歴戦の猛者たちだ。

 俺は店の中を歩き回り、詰め放題会場と卵の販売の場所を確認する。

 

「チッ、大分離れてやがる。」

 

 卵の販売スペースと詰め放題会場は明らかに意図的にブースが離されており、客を分散させようとしてやがる。

 下手に両方なんてやろうモンなら両方トリ損ねる。

 

「どうすっか…」

 

 この配置…一人じゃ厳しい。

 

 ん?

 

 そういやぁ、前にも似たようなことがあった気が…

 

「あらあら、もしかして荒垣君ですか?」

 

 振り向くとそこには黒髪の女がいた。

 

「あ~…」

 

 誰だ?

 

「いつも娘がお世話になっています。って、もう時間!」

 

 その人はあたりを見渡す、緊張感が大分増してやがる。

 そろそろスタートってことか。

 この感じだとこの人は相当慣れてやがるな。

 

「急で申し訳ないのですが、提案があるのですが。」

「なんですか?」

 

 笑顔のように見えるが一瞬目の奥が光ったな、ここでは外ので関係とかは役に立たねえ、自分と相手に利益があるか、そのバランス次第で敵にも味方にもなる。

 

「共同戦線をはりませんか?お気づきでしょう?」

「ブースの位置関係…。」

「はい、そうです。私が海老で、貴方が卵でいかがでしょうか?」

「…」

 

 俺は考え始める。

 

 見たとここの人も一人だ、両方はいけねえはず。

 ここはモノをとるのは何個でも良かったはずだ、レジで会計すっときはじめて一つ無料になる。

 なら、各自が片方に専念し、お互いのブツをレジ前で共有すんのが一番効率的だ。

 

「しかし、あんたの方が大変なんじゃ…」

 

 あの群れを掻き分けながら、二つ詰め放題をやんのは容易じゃねえ。

 並みのシャドウなんか吹き飛ばす勢いだからな。

 

 だが…

 

「問題ありませんわ、これでも長年主婦をやってる身ですから。」

 

 俺はその人を見る。

 

 疑うのは当たり前だろう。

 

 今日のメインは明らかに詰め放題の方だ。

 これでこの人が失敗したらと考えると…

 

「時間がありませんわ。」

 

 俺は…

 

「わかった。」

 

 この人を信用することにした

 

「ふふ、じゃあ卵はよろしくお願いします。レジの前で会いましょう。」

 

 そういってその人は詰め放題のブースへと向う。

 

「…俺も行くか。」

 

 

 俺も自分のブースへと向う。

 

 

 

 

5分後

 

 

 

 うわああああああああ!!!!!

 

「ちょっと、どきなさい!」

「足踏まないでよ!!」

「それは私のよ!」

「私のよ!」

 

 相変わらずやべえな。

 

 既にそこは地獄と化していた。

 女としての姿などかなぐり捨て、手を伸ばす。

 我先にと言う姿は、地獄に垂らされた救いの糸に群がる亡者のようだ。

 

「私が抑え…きゃぁあああああ。」

「リサぁああああああ、きゃああああああ…」

 

 また、誰か飲み込まれたか!

 

「クソッ、あと少し。」

 

 俺は手を伸ばす。

 取らせまいと何度も打ち落とされる、それでも伸ばすッ!

 

 カッ

 

 指の先がパックの縁に引っかかる、一気に引き寄せる。

 

「まず一つ!」

 

 

 寄る波、引く波を見極める。

 

 そこだっ!

 

 波に合わせて、一気に突っ込む。

 

 残りはわずかだ、これがラストだ!!

 

「オラァッ!!」

 

 手を伸ばす、肩をいれ、間接をフルに使う。

 下に人がいようが関係ねえ。

 

「よしっ!」

 

 つい掴んだ!!

 

 俺は一気にその場から離れる。

 あの場で気を抜こうモンなら一瞬で奪われるかんな。

 

「ふ~、なんとかなったか。」

 

 手元には二つの卵パック。

 一時期から値上げされているからありがてえ。

 

「あっちはどうなってるか。」

 

 もう片方のブースを覗く。

 

 

 

 戦場だった。

 

 

 

 俺の方が生ぬるいと感じるほどに。

 

 傷を負っていないヤツはいない。

 しかし、誰も退かない。

 ブースの外には倒れ伏せる敗者とボロボロになりながらも戦利品を勝ち取った勝者の二つに分かれ、この世の縮図のようであった。

 

「こりゃ、無理か。」

 

 あの中で二つは無理だろう、そんなことを考えながらレジに向う。

 レジの前であの人を見つける。

 向こうも気づき声をかけてくる。

 

「あらあら、お待たせしてしまいましたか。」

「なっ!!」

 

 俺は驚愕した。

 

 その人は会った時と全く変わらず、怪我も服の乱れも全くない。

 

 しかし、その手に持つかごには確かに戦利品が入っていた。

 

 しかもこりゃあ…

 

 美しいとまで感じさせる詰め方。

 

 ある意味極致であった。

 

 これ以上決して入らず、無駄も一切ない。

 

 実用的な美しさ。

 

 家事に携わるヤツなら見とれずにはいられないほどの完成度だった。

 

「すげぇ。」

 

 思わず声がこぼれる。

 

「ふふ、ありがとうございます。それではどうぞ。」

 

 その人はそう言って俺に渡してくる。

 

「あ、俺もですね。」

 

 俺も卵を取り出し、その人のかごに入れる。

 

 ッ!

 

 その人のかごには既に他の食材が入っていた。

 

 いつの間に…この人ほんとになにモンだ?

 

「あらいけない。もうこんな時間、荒垣君。今日は助かりましたわ、それじゃあ失礼させてもらいますね。」

「あ、俺も助かりました…」

 

 そう言いながらその人は笑顔で手を振り、レジをへと消えていった。

 

「俺も行くか。っとその前に他のモン買いに行くか。」

 

 呆けてた俺は気を取り直し、他のモンを買いにレジから離れる。

 

 娘ってたが誰だ…?

 

 そんなことを考えながら、買い物を済ませた。

 

 

 

 外を出て、帰る途中。もう大分日は暮れ、街灯には明かりが付き始める頃。

 

(荒垣君今良いかしら。)

 

 グレモリーから連絡が入った。

 

(なんだ。)

(堕天使が接触してきたわ。)

(なに?)

 

 昨日の今日でか?

 早急すぎる…

 

(イッセーが今日あのシスターと再会したらしく。一日町で遊んでたらしいわ。)

 

 馬鹿かあいつわ!

 いや、馬鹿だったな。

 

(それで、イッセーに怪我はなかったけどシスターが連れて行かれたわ。)

(ッツ!)

 

 そうか…結局つかまったか。

 

(その際に、儀式とか言ってたらしいわ。おそらくそれがヤツラの狙い。それで私たちは奴等を叩くことにしたわ。儀式がどんなものか分からないけど、ソーナが行ってた通り、わざわざ私の治める地にまで来てやる事だもの、危険な予感がするわ。)

(わかった。それで俺はどうする。)

(それはね…(私から説明します。))

(支取か。)

(ええ、荒垣君。先ほど振りです。)

 

 急に支取が割り込んできた。

 てか、複数の交信とかできんのかよ…

 

(ソーナ…)

(ごめんなさい、リアス。新しい情報だから。)

(なにかしら。)

 

 グレモリーの声に緊張感が戻る。

 

(どうやら敵は二手に分かれているそうです。外で敵を排除する堕天使組と中で儀式をする組とその護衛。儀式がどれほど時間のかかるものかわからないためこちらも二手に分かれて、迅速に行動すべきです。)

(ええ、そうね。此方は祐斗、小猫、イッセーを突撃組、外の敵の排除を私と朱乃が行うわ。荒垣君は突入組かしら。)

(いや、外に堕天使が居んなら、俺も外に行く。それにお前らは基本後衛だろう。前衛が一人も無しでどうする。)

(リアス、貴方と姫島さんの実力を疑うわけではありませんが、下級と中級レベルとは言え相手は堕天使です。はぐれ悪魔のように単純にはいかないのですよ。)

(…分かったわ。荒垣君はこちらの手伝いをお願いするわ。)

 

 …なんで悪魔も堕天使も格下を侮る真似をすんだ?

 そんなことしてたら死ぬぞ。

 

(あと、ソーナは堕天使たちが逃げないように結界をお願い。)

(ここは貴方の領地ですからね、わかりました。ただし、危険を感じたら直ぐに介入します。)

(大丈夫よ、直ぐに消滅させてやるわ。私の領地で好き勝手やったことを後悔させてあげる。)

 

 おい、それは…

 

(おい、グレモ(じゃあ、作戦開始と行きましょう!荒垣君はそうね、今使い魔を送るわ。その子についてきて頂戴、召喚してもいいんだけど魔力で相手にばれたくないから。じゃあ、後で会いましょう。))

 

 ブツッ

 

 電話が切れたような音と共にグレモリーの声が聞こえなくなる。

 

(荒垣君フォローをお願いします。あの子頭は良いのに時々突っ走る癖があるので…)

 

 どこか呆れた口調で支取が言う。

 

(おい、支取。お前は今回のことどう思う。)

(お昼に言ったように色々面倒ではあると思います。)

(言い方を変える。堕天使を殺すことに関してはどうだ?)

(今回は彼女らの独断らしいですから、悪魔と堕天使間の関係にそれほど影響はないでしょう。ただ、個人的感情による復讐を考えるものがいると厄介ですね。)

(そうか…)

 

 そういった考えか…

 

(荒垣君?)

(いや、なんでもねえ。グレモリーに関しては出来る限りはする。後は俺の好きにさせてもらうぜ。)

(分かりました。あと)

(あん?)

(気をつけてください、いくら力を持っていても貴方は人間なのですから。)

(おう。)

 

 そう言うと支取の声も聞こえなくなる。

 

 人間と悪魔か…ここまで違ぇとはな。

 

「キキッ!」

 

 その音に上を見るとコウモリが一匹俺の周りを飛んでいる。

 

「グレモリーの使い魔か。」

 

 そう呟くと、道の先へと飛んでいく。

 

「ついてけってたな。」

 

 俺は使い魔の後を追った。

 

 

 




 ガイル01です。今回も読んでいただきありがとうございます。
 ガキさん視点と言うことで原作で言うとイッセーとアーシアのデート?中の出来事ですね。レイナーレとイッセー、アーシアが再会し、アーシアが攫われている時、ガキさんはタイムセールで魑魅魍魎たちと戦っていました。
 あと、原作と大きく異なるのは支取の存在です。
 彼女が調査に参加したおかげで堕天使が独断で動いていることが早めに分かりました。
 そのため原作ではリアスとイッセーが喧嘩し、イッセーたちが教会に乗り込み、実は裏でリアスが堕天使が独断であることを知り、堕天使と戦うと言うことでしたが、本作では堕天使が独断であることの裏が早めに取れたので儀式の中止と堕天使の排除を目的でグレモリー眷属全員で動きます。ただ、グレモリーはアーシアを助けるとは一言も言っていません。
 支取は今回結界と言う裏方に回っていただきましたが、そのうち戦闘にもだしていきたいと考えています…また原作改変になりそうです。

 最後にUAなるものが1万を突破し、お気に入りも150を突破しました。
 多くの方々に見ていただいているのだと感激し、皆様にこれからも楽しんでいただける作品になるよう楽しみながらがんばります!
 これからもよろしくお願いします。

 ご意見、ご質問、感想等ございましたら、遠慮なくどんどんどうぞ。

 ではまた次回お会いしましょう。
 
[補足]
・スーパーのテーマソング
 ペルソナ初代や2の薬局サトミタダシで流れる洗脳ソング。一度聞くと頭から離れない。youtubeなどにもあるので是非一度聞いてみてください。

・なぜの女性
 正体不明ですが、娘とガキさんが関係があるらしい。主婦レベルはガキさんも驚くほどの高さ。

・殺すことへの覚悟
グレモリー
 戦争にならないことが分かり後顧の憂いがなくなり、自分の領地で好き勝手やっていることに怒りを覚え、罰として殺す。その後のことはあまり考えていない。

支取
 殺した後の被害や状況への影響など第3者的視点の理解はあるが、殺すことで背負うものがあるというイメージはない。

 昔から仇敵がいる、戦いが日常の悪魔とそうでない人間の差が現れています。
 悪魔は堕天子や天使との戦いが当たり前と教育を受け、倒すべき敵と教え込まれているため、殺した後の影響などには意識をするが、改めて、戦いや殺すことへの覚悟、殺した後の覚悟という考えが薄い彼女らにガキさんは不安と苛立ちを覚えています。
 グレモリーへはさらに色々考えています。
 本作では、もしかしたら原作より、グレモリーが愚かっぽく見えているかもしれませんがすみません。イッセーも最初は相当頼りなく見えるかもしれません。
 原作キャラは皆大好きです、最初っから完璧なのもつまらないと考える作者のせいです、すみません。
 本作ではキャラクターたちはしっかり成長していく予定なので長い目で見ていただければと思います。




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第10話


お待たせしました、出来ましたのでどうぞ!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。



 

 俺は使い魔のコウモリについていくとある公園に着く。

 そこに着くと、グレモリーと姫島がおり、コウモリは役目を終えたといわんばかりにこちらの前で羽ばたき、姿を消した。

 

「無事に着いたようね。じゃあ、私たちも行動を開始しましょう。」

 

「ちょっと待て、他のヤツラはどうした。」

 

 その場には姫島とグレモリーしかいなかった。

 

「あら、念話で話した通り、他の子たちは既に行動を開始しているわ。今回は時間との勝負ですもの。祐斗も小猫いるし問題ないわ。」

 

 はぁ、決断力があるのも考えモンだな。

 

「…こっちをさっさと片付けて合流すんぞ。どうすんだ。」

 

 そう問いかけると、姫島が答える。

 

「どうやら堕天使たちは裏を特に警戒しているようなので私たちは裏から攻め込みます。そして、戦闘になったタイミングで、別行動しているイッセー君達が突入する手はずになってますわ。」

 

 主力はこっちの堕天使と考えられるが、中に何がいるかわからねえ。

 速攻で仕留めるしかないが…

 

「行きましょう。」

 

 俺が考えている途中にグレモリーは歩き始める。

 しょうがないが俺もついていき、教会の裏側へと移動する。

 

「荒垣君、これ。」

 

 …

 

 

 

 

 教会の裏側、森のような中、そこだけ切り開かれたような道を教会へと歩く。

 

 あの時もそうだったが、複数敵がいんなら出来れば不意打ちを仕掛けてぇところだが…

 

 ヒュヒュン

 

 無理か。

 

 ガキンッ

 

 俺は背後から飛んできた槍を打ち落とす。

 グレモリーは魔力で消滅させ、姫島も避ける。

 

 バサッ

 

 自分の上を一瞬影が通り過ぎると、正面には三人の堕天使がいた。

 

「あっ、あんたは!ようやく会えたわね。あたしのたい…仲間をよくもやってくれたわね。絶対に許さない!!」

 

 堕天使のうちの小さいやつが突っ込んでこようとする。

 俺は武器を構え迎え撃とうとするが。

 

「やめろ、ミッテルト。一人で突っ込むな。死ぬぞ。」

「ドーナシーク…」

 

 やっぱりコイツも戦線に復帰したか。

 あのシスターの能力を考えればこうなることは予想出来たが、俺との相性は悪いからな。

 コイツは飛べるヤツラに任せるしかないか。

 

「ドーナシークの言うとおりよ、落ち着きなさい。」

 

 二人に続いてもう一人長髪の女が降りてくる。

 

(俺が会ったのはこの三人だ。他に気配はあるか?)

 

 俺は念話でグレモリーに尋ねる。

 

(特に堕天使の気配は感じないからこれで全員のようね。)

 

 そう言うと、グレモリーは前に出る。

 

「下級堕天使が私の治める地でよくも好き放題やってくれたわね。一応聞いておくわ。貴方たちの目的はなに?」

「答える義理はない。」

 

 わかっちゃあいたが、話すつもりはないってワケか。

 

「そう、じゃあ…覚悟は出来ているんでしょうね。」

 

 ゴッ

 

 全身から魔力を噴出し、ながら相手を威嚇する。

 

 スッ

 

 ヤツラも臨戦態勢に入る。

 

「ミッテルト、ドーナシーク分かっているわね。」

「ええ。」

「ああ。」

 

 なにか策があるのか?

 俺は警戒を高める。

 

「死になさい!」

 

 ゴォッ

 

 グレモリーが魔力弾を打ち出すが散開して避けられる。

 

 ヤツラは空で避けたまま、次の行動に入る。

 

 ドーナシークは空へと移動。

 長髪の女―確かカラワーナだったか。が、グレモリーに向って槍を投げる。

 

 そして

 

「はああああああ!!」

 

 ミッテルトとか呼ばれたやつが俺に向かって突っ込んでくる。

 

 唯の突撃ではないだろうが、飛べねえこっちとしては助かるぜ。

 

「うおおおお!」

 

 俺は自分の獲物を振り下ろす。

 

 ズゥン!!

 

 しかし、当たらない。

 

「フッ!」

 

 俺の一撃を避けたヤツが顔面目掛けて、槍を振るう。

 俺は顔を背けて避け、反撃に移ろうとする。

 

「まだまだぁ!!」

「ッツ!」

 

 俺はとっさに飛び退く。

 

「荒垣君!?」

 

 近くにいた、姫島が叫ぶ。

 

「問題ねぇ、それより他のヤツラから目を離すな。」

「荒垣君、そいつは頼むわ。朱乃、貴方は空にいる男を相手しなさい。私は目の前のやつを始末するわ。」

「あらぁ、グレモリー公爵直々のお相手とは光栄ですわッ!」

 

 カラワーナはそう言いながら、再び、グレモリーに槍を投げた後、グレモリーから距離を取る。

 

「逃がさない!」

 

 それを追うグレモリー。

 

「おい、まッ!」

「話しをしている暇はないよ!!」

 

 ミッテルトは両手に槍を構えを再び突っ込んでくる。

 

「チッ。」

 

 クソ、完全に敵の策にはまってやがる。

 実力じゃあ勝ってるからって力押しすりゃあいいってモンじゃねぇんだぞ。

 

 それに

 

 ヒュンヒュン

 

 「フッ、ハッ、はあああッ!」

 

 こいつ、ドーナシークと違って接近戦に慣れてやがる。

 二本の槍も柄を短くした短槍で、攻撃の回転が速え。

 

 片方の手が正面から突くなら、もう片方は下から払い上げ、その間にもう片方の手を引き寄せ、薙ぐ。

 

 突く

 薙ぐ

 払う

 

 舞を踊るかのように好きのない連続攻撃でこっちを攻め立てる。

 

「あはは、ドーナシークをやった人間ってこんなものなの!」

 

 調子に乗ってきたのか、さらに攻撃が激しくなる。

 

 ミッテルトの怒涛の攻撃を下がりつつ、バス停で凌ぐ。

 

 こちらが防戦一方なのをいいことにやってくれるぜ。

 だが、油断してくれるんならありがてぇ。

 

 確かに連続した攻撃で隙が見あたらねえ。

 だが、隙がねえなら作るまでだ。

 

「ヤァッ!」

「クッ。」

 

 ミットルテの突きを受け止めた際、俺はわざと弾き飛ばされ振りをする。

 

「くらいなさい!!」

 

 そこに槍を構えて、ミッテルトが突っ込む。

 

 三回も同じ攻撃が通じるか。

 

 ギュ

 

 俺は武器を握りこみ、振り上げようとする。

 

 その瞬間

 

「ミッテルト!!」

「ツッ!!」

「ちぃッ!」

 

 間に合え!!

 

 ブゥン!

 バキッ

 

「くそ。」

 

 武器しか壊せなかったか…

 武器を壊され、ミッテルトは距離をとる。

 

「ミッテルト、深追いしない。」

「ごめん、カラワーナ。ありがとう!」

 

 アイツが厄介だな。

 俺は武器を構えなおしながらカラワーナを見る。

 

 地上にこそいるが、周りの木々をうまく使ってグレモリーの攻撃を捌いてやがる。

 

「そろそろいいわね。二人とも、行くわよ!」

「「おう・うん!」」

 

 何かやる気か!?

 

 バサッ

 

 一斉に三人が動く。

 

「それがお前らの戦い方か…」

 

 俺は目の前にいるカラワーナに言う。

 

「ええそうよ。」

 

 くそ、やられた。

 

 目の前のやつを警戒しながら回りに目を向ける。

 

 グレモリーはドーナシークに空から大量の弾幕を張られ、反撃をしてもヤツに届く前にいくつもの弾幕に当たり、グレモリーの攻撃は届く前に消えちまってる。

 姫島はもともと接近戦タイプじゃねえから、ミッテルトの攻撃に防戦一方だ。

 

 そして、俺の前には

 

 スッ

 

 右手に槍を、左手に盾を構えたカラワーナがいる。

 

 適材適所

 

 こいつらは、敵に合わせて戦法を変えるんだろう。

 

「よく気づいたわね。」

 

 武器を構え、隙を探しているところに話しかけてくる。

 

「まぁな。」

 

 相手が話てくんのは、あっちが有利だからだ。

 時間が経てばやばくなるのはこっちだ。

 

 こっちが距離をつめれば、向こうは開ける。

 しかし、背には木を背負わず、周りが見える位置をキープする。

 

 

 めんどくせぇやつだな…

 

「あのままでは、そのうちやられていましたわ。ミッテルトと相対し、あんなことをしたのだからお気づきでしょう?」

「…」

 

 あいつは確かに怒涛ともいえる連続攻撃をしてきた。

 

 だが…

 

「攻撃が軽かった…違うかしら?」

 

 その通りだ。

 速さはともかく威力が足りねえ。

 

 本人は調子に乗って気づいていなかったが、攻撃が軽かったからこそ弾かれた振りができた。

 普通なら、本当に弾かれたり、振りにしても武器や身体が流されて間に合わねえ。

 特に俺の武器みてえのならなおさらだ。

 攻撃が軽かったからできた。

 

 それにあのままだったら、一発わざと受けて一撃で仕留める予定だった。

 

「だからこそ、貴方が弾き飛ばされたのがおかしいと思えて、ミッテルトに声をかけることが出来たのだけれどね。」

 

 笑いながらそう言う。

 グレモリーと相対しながら、その余裕があるってことは全員相当研究されてんな。

 

 この瞬間にも向こうではすさまじい音が聞こえる。

 

「向こうが気になるかしら?でも行かせないわ、貴方の相手はわたし。ドーナシークから聞いているわ、一見唯の人間だけど圧倒的な力と人間離れした耐久力。」

 

 やはりこっちの情報は筒抜けか…てことは。

 

「それにおかしな力のともね。」

 

 そう言いながら盾を顔の前まで持ってくる。

 

 俺対策ってことか…

 

 なら、こいつは俺と似たような耐久型か技術を持って相手をいなしながら耐える耐久型か、だな。

 恐らく後者だろうな。

 

「さて、どうするのかしら?それと、いい加減一人ではなしているのも寂しいのだけれど反応してくれないかしら。」

 

 なら…よし。

 

「ああ、待たせたな。」

「ふふ、構わないわ。待つことが出来るのもいい女の証拠ですから。」

「そうかよ、じゃあ。」

 

 俺は構えをとき

 

「次はついて来い。」

 

 森へと駆け出した。

 

「鬼ごっこかしら、付き合ってあげるわ。(全体の把握が出来なくなるのは痛いがドーナシークを倒した力で不意打ちされるよりはマシね。こういうときに指揮が出来、決定力になるレイナーレ様が欠けているとキツイわね。)」

 

 

 

 

 よし、ついて来てるな。

 あのまま、他のヤツの援護に回られたらやばかったが、あいつは俺をかなり警戒している。

 放置することはねえと踏んだが当たったみてえだな。

 

 俺は森を駆けながら、目当てのものを探す。

 

 ドンッ

 

 顔の直ぐ脇を槍が通り抜け、木に刺さる。

 

「ふふ、もっと早く逃げないと当たっちゃうわよ?」

 

 遊びか?

 いや、誘導されてんな。

 あいつらから引き離されている。

 つくづく面倒なヤツだぜ。

 

 だが、今はこっちにとっても好都合だ。

 

 俺はさらに奥へと駆ける、普段人が来ないからか太くしっかりした木が増え始める。

 

 アレならいけるか。

 

 俺は目当てのものを通り過ぎたところで足を止め、振り返る。

 

「もうおしまいかしら?(…周囲に罠はなさそうね、何を狙っているのかしら。)」

「ああ、もう十分だ。」

「十分?貴方の…武器?から考えると広いところの方がやりやすいんじゃないかしら?」

「なら試してみろや!」

 

 俺は思い切りカラワーナに向ってバス停を叩きつける。

 

「クッ。」

 

 周りの木の枝が折れるのを無視してだ。

 

「なるほど、確かに凄い力だわ。周りなんて関係ないってことね。でもわたしの盾はそう簡単には壊れないわよ。(それどころか木の枝なんかも飛んできて目くらましになるし、わたしは飛んで避けられないか…当てずらい武器を当てやすくする。狙いはそれ?)」

 

 あの盾は結構頑丈みたいだな。

 もう少し、試すか。

 

「なら壊れるまで殴るまでだ。オラッ!」

 

 横から殴りつける。

 

 下がって避けられる。

 

 構わない、振りぬく。

 木に当たり、木がメキッと嫌な音を立てる。

 

 反撃がくる。

 避けようとするが、振りぬいたせいで一歩遅れる。

 腕にカスる、だが動く。

 なら、問題ねぇ。

 再び、バス停を振りぬく。

 盾で流されるがそのまま木に叩きつける。

 

 メキッ!!

 

 ギィィィ!!

 

 木が俺たちの間に倒れてくる。

 

「なっ!?」

 

 視界が一瞬緑に染まる。

 

 そしてカラワーナの動きが一瞬止まる。

 

「くらいやがれ!!」

 

 

 目の前に倒れている木ごと正面を叩きつける。

 

「クゥッ!!」

 

 当たったか?

 

 木を跨ぎ、カラワーナを見据える。

 

「全く、貴方は本当に人間なのかしら。たった二回の攻撃で木を折り、わたしの盾を破壊した。でもね。」

 

 確かにカラワーナの盾は壊れてやがる。

 

 だが

 

「はい、これで元通り。いえ、さっきより強化させてもらったわ、力を結構使うのだけれどしょうがないわね。」

 

 さっきより強化…か。

 ならいけるか。

 

「あら、せっかく壊したのに直されちゃってショックを受けちゃったのかしら?(さっきの力はやつの元々の力なはず。ドーナシークはやつが何かを呼び出したと言っていた。ならまだ奥の手があるはず。あまり脆い木の近くはさっきみたいになるから危険ね。)」

 

 カラワーナが盾を構えながら少しずつ移動する。

 戦って分かったがコイツは盾を出しながら、投擲用の槍は作れねえ。

 自分の手に持つモンと盾で限界なんだろう。

 

 アイツラのことも気がかりだ、決める。

 

 「来い、カストール!!」

 

 俺が叫ぶと俺の背後にカストールが現れる。

 

「!?(なにあれ!?すごい力…来る!!)」

 

 カラワーナが盾を構えなおす。

 アンタならそうするだろうな。

 だが、それが命取りだ。

 

「カストール!ヒートウェイブ!!」

 

 カストールの腕に魔力が集まり圧縮される。

 そしてカストールが腕を振りぬく。

 

 ゴウッ!!

 

 魔力の奔流が周りのものをなぎ倒し、吹き飛ばす。

 

「な!?きゃあああああああああ!!」

 

 それはもちろん、カラワーナもだ。

 

 俺は駆け出す。

 

 ドンッ

 

「カハッ!!」

 

 思い切り後ろにあった大木に叩きつけられる。

 盾は手放してねえか。

 が、関係ねぇ。

 

 俺は走りながらバス停を振り上げる。

 

「クソッ!!」

 

 とっさに、カラワーナは盾を構える。

 

「潰れろや。」

 

 俺は盾ごとやつを叩き潰す。

 

 ブンッ!

 

 グシャ

 

「ああああああ!!」

 

 武器を構えたままやつを見る。

 

 盾を持っていた腕は何箇所も折れているようで捻じ曲がっている。

 

「ゴホッ、ゲホッ!」

 

 カラワーナは血を吐く。

 

 腕だけでなく、盾ごと身体をつぶされたせいで腹、胸、肩の骨が複数折れていはずだから、内臓を傷つけたんだろう。

 

 羽も折れている、この状況なら反撃や逃走はできねぇな。

 

「おい、テメエラはわざわざ悪魔の領地でなんでこんなコトをしてやがる。教会での儀式の件も割れてる。答えろ。」

 

 俺はカラワーナの頭を掴んで言う。

 

「下手な真似をしやがったらツブス。」

「貴方に…いう義理は、あり…ませ、ん。皆、ごめん…なさい。」

 

 ッ!!

 

 咄嗟にカラワーナの口に手を突っ込む。

 

「ッツー。」

 

 ポケットからハンカチを取り出し、丸めて口に突っ込む。

 

「てめえ、何してんだ。なに勝手に死のうとしてんだ。」

 

 カラワーナの顔が引きつるが知ったこっちゃねえ。

 

「死ぬなんざ、結局逃げでしかねえ。」

 

 あの時、結局俺は守ったつもりで、責任から逃げたんじゃねえのか?

 

「残されたモンの気持ちも考えず、残ったモン全部押し付けるだけだ。」

 

 俺は仲間に押し付けたじゃねえか。

 

「お前はそれで良いのか。」

 

 湊の野郎はああ言ってたが、俺は…

 

 こんな俺が…

 

 幸せなんかになって良いのか?

 

 わからねえ。

 

 

 それでも

 

 不安はあるが、疑問もあるが

 今度は逃げねえ。

 

 お前との日々が俺に気づかせた。

 

 命をもって罪過を償う覚悟しかなかった俺に絆の暖かさと迷いと未練を。

 

 結局俺は死んじまった。

 

 だが、お前に与えてもらった「今」をアンときのまんまで何にも成長してねえなんて恥ずかしくて顔向けできねえ。

 

 俺なんかがってのはいつも俺に付きまとい、悩むだろうが俺は前に進む。

 テメエの責任からも逃げねえ。

 アキのためとかじゃねえ、テメエがテメエで決めた初めての『覚悟』だ。

 

 そこまで考え、俺は黙り込んだカラワーナを担ぐ。

 

「グッ」

「我慢しろ。」

 

 カラワーナは口からハンカチを吐き出す。

 

「どこに…」

「仲間と合流スンに決まってんだろ。あいつらが殺しちまう前にな。」

 

 アイツラだって馬鹿じゃない。

 勝つ手はある。

 

「助け…るのか?」

「…わからねえ。だが理由も何も聞かずに殺す気もねえ。」

 

 あの時なら容赦なく敵は殺していただろう。

 

 甘くなったな。

 

 この変化が成長かどうかはわからねえ。

 

 俺が決めたんだ、責任は取るさ。

 

 俺は走る。

 

 

 …出来るだけ揺らさないように。

 

 

 

 走っていると森の切れ目が見えてくる。

 

「着いたか。」

 

 すぐさま状況の確認をする。

 

「なんとかなったか。」

 

 戦況は一変し、グレモリーたちが有利だな。

 グレモリーたちは教会を背にして戦っている。

 

 気づいたのはグレモリーか?

 ドイツもコイツも下手にプライドが高けえから戦い方の幅が狭まるんだよ。

 それを捨てさえすりゃ、こんなモンだろ。

 

 念のために、いつでも介入できるようにはしとくか。

 

 とりあえず

 

(グレモリー)

(荒垣君無事!?)

(問題ねえ、あと情報が欲しいからそいつら殺すな。)

(でもこの堕天使たちは私の領地で好き勝手やって…)

(阿呆。)

(な、ちょっと。阿呆って!)

(いいから捕まえてこい。あと前向け、あたんぞ。)

(え、きゃあああ。ちょっとかすったじゃない。覚えておきなさいよ。)

 

 一瞬グレモリーがこちらを睨む。

 

 数分後、前線をグレモリーが押さえている間に姫島の広範囲の雷で二人まとめて撃墜し、必要以上ににこやかな笑顔で二人を掴みながらグレモリーが戻ってきた。

 

 頭いてえ。

 

 

 





 ガイル01です。皆様今回も読んでくださりありがとうございます。
 原作ではイッセーたちが教会に突入し、神父やレイナーレと戦闘中です。今回の話は原作でもアニメでもほとんど書かれていなかった戦闘になります。
 とりあえず、皆さん思っていることがあるかと…強すぎじゃね?
 ドーナシークを出したときに数々のご意見を頂いたのにどうした?とお思いかもしれません。

 逆に考えるんです。

 ドーナシークだけが強いんじゃなくって、これからの敵を皆強くしちゃえば良いんだって。

 そんなことを考えていたらこうなりました。ハードモードの突入です。
 この後、敵キャラ皆強くなります、原作2巻とかwww
 でもなんとか書いていきたいと思います、こんな作品でもよろしければ今後もよろしくお願いします。
 次回またお会いしましょう。

追記
クリスマスは本来家族と共にイエス・キリストのご降誕をお祝いするものです。

[補足]
○荒垣について
・今回使った技
 ヒートウェイブ…中ダメージの打撃技。本作では魔力を腕に集めて圧縮し、腕を振り回しながら解放することで周りを吹き飛ばし、薙ぎ倒します。点ではなく面での範囲技です。近くにいるほど威力は増します、腕をどれくらい振るうかである程度範囲を調節可能。ただし仲間が近くにいると巻き込むので使えない。

・葛藤について
 感想で既にお気づきの方もいましたが、ペルソナは精神の力です。本作のガキさん決意を新たにすることで能力や制御力が増しています。本人は気づいていませんが。
 前世のことで今でも迷い、未練もあります。それでもそれらを全部受け止め、逃げずに前に進むと決意を新たにしています。誰かに理由を預けるのではなく、自分で決めて進もうとしています。その考えに至ったのは有里(P3主人公)を筆頭に仲間たちとの絆のおかげです。有里との最後の約束も前に進むための背中を押してくれる要因となりました。
 今後も迷い、時には間違った方向にいくかもしれませんがその時は今の仲間たちが助けてくれるはずです。
 これは完全な独自解釈で、各人色々な考えがあるかとは思いますが本作のガキさんはこんな感じでいきます。

・堕天使
ミッテルト
スピード特化型。
 短槍の二槍流、スピードは高く、それを生かした戦闘を行う。ただ、攻撃力も防御力も低く、本当にスピード特化型。

ドーナシーク
遠距離殲滅型。
 遠距離から物量に物を言わせた弾幕で戦う。攻撃力は高いが、スピードは高くなく、防御力は低い。近接先頭は得意ではなく、基本遠距離からの戦い方をする。

カラワーナ
技術系耐久型。
 近・中距離での戦闘を得意とし、現場の指揮も行う。ガキさんのようなタフネスさはないが盾をうまく用いて相手を捌きながら戦う。手に持つ槍と投げる槍は構造が異なるため、両者を同時には展開できない。
 防御力は高いが攻撃力はそこまで高くなく、スピードは遅い。

レイナーレ
指揮兼バランス型
 先頭の際に指揮をしつつ、他の三人と共に戦い、決め手として動く。原作でも光力が濃いとされている。他の三人が対応している間にレイナーレが仕留めるといった感じ。戦闘前と後は緊張と罪悪感で胃を痛めている。

 堕天子に関しては完全に本作の独自設定です。4人1組で常に戦うことにしています。上記を読んでいただければ分かりますように、レイナーレ以外は完全に特化型なので、相性の良い敵しか倒せません。必然としてレイナーレの戦果が上がり、唯一の中級になる。

 他に疑問や感想ありましたら遠慮なくどうぞ。


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第11話



お待たせしました、出来ましたのでどうぞ!
今年中に出来てよかった!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。




 

「荒垣君、大丈夫ですか?」

「荒垣君、言いたいことがあるけど後にするわ。お望み通り連れてきたわよ。」

 

 姫島はともかく、グレモリーは明らかに機嫌が悪そうだな。

 まぁ…そっとしておくか。

 

「俺は問題ねえ。ほらよ。」

 

 俺はカラワーナを他の堕天使のところに持っていく。

 

「「カラワーナ!!」」

「死んじゃあいねぇよ。」

 

 ミッテルトはカラワーナの様子を確かめに行く。

 

「…なぜ助けた。普通ならあの場で消滅させられているはずだが。」

 

 ドーナシークがいぶかしげに尋ねてくる。

 

「助けたわけじゃねぇ。目的を聞かせろ。」

「誰があんたたちなんかに!!」

 

 カラワーナを抱きしめながら、ミッテルトが叫ぶ。

 

「やめろ、ミッテルト。」

「でも!!」

「やめるんだ。」

「う…。」

 

 ドーナシークに言われ、ミッテルトは黙り込む。

 

「我らの目的を知ってどうする。」

「それ次第だ。」

「ちょっと荒垣君何を言っているの。私の領地で好き勝手やった彼らを許すわけにはいかないわ。」

「時間がねぇんだ、ちょっと黙ってろ。」

「なっ!!貴方…」

 

 ガッシャアアアアアン!!

 

 チッ、教会の壁が吹き飛びやがった。

 

 どっちだ?

 

「グレモリー。話は後だ。そいつら連れて向こうと合流すんぞ。姫島、そいつら運ぶぞ。」

「はい。」

 

 俺は近くにいたドーナシークを持ち上げる。

 姫島はカラワーナとミッテルトを水のロープで縛る。

 

「いくぞ。」

 

 俺と姫島は走り始める。

 

「う~、後で色々話しをさせてもらうからね!」

 

 グレモリーのやつもついてくるが、なんか、ガキっぽくなってねえかグレモリーのやつ。

 

 あと

 

「痛い、痛い。ちょっと引きずらないでよ!!」

「あらあら。」

 

 姫島のやつ、ミッテルトとカラワーナのことを引きずってやがる。

 実際はカラワーナを庇ってるミッテルトだけが地面と擦れてるわけだがハメられたのが悔しかったのか、純粋に姫島の趣味か…涙目になってやがるな。

 

 

 

 俺たちは教会の裏手に着く。

 

「こいつは…」

 

 教会の内側から吹き飛ばされてやがるな。

 ってことはやっぱり戦闘の余波か。

 

 中を覗くと、兵藤たちがいた。

 

 無事そうだな。

 

「無事に勝ったようね。」

 

 まず、グレモリーが声をかける。

 兵藤がそれに気づく。

 

「ぶ、部長…。なんとか勝ちました。」

 

 兵藤のヤツがやったのか。

 この間まで人間だったヤツがこの何日かでこれだけの力を得るか…

 

 ん、瓦礫で何かが動いたか?

 

 武器を構え、瓦礫に近づく。

 

「う…。」

 

 瓦礫の中には堕天使が埋まっていた。

 

「フッ!」

 

 ガラガラッ

 

 俺は瓦礫の中からそいつを引きずり出す。

 

「「「レイナーレ様!!」」」

 

 こいつが親玉で間違いなさそうだな。

 グレモリーたちのところまで持っていく。

 

「あら、荒垣君ありがとう。じゃあ起きてもらおうかしら、朱乃。」

「はい。」

 

 バシャッ!

 

 姫島が返事をすると宙に水が集まり、そのまま堕天使―レイナーレの上に落とす。

 

「ゲホッゲホッ!!」

「目が覚めたかしら、堕天使レイナーレ」

「グレモリー…」

「はじめまして、リアス・グレモリー。グレモリー家の時期当主よ。短い間でしょうけどお見知りおきを。」

 

 笑顔のグレモリーとそれを睨み付けるレイナーレ。

 

「他の者達はどうした。(彼女がここにいるてことは皆は…)」

「そこにいるわ。」

「…殺していない?(えっ、皆生きてる!?)」

「私はその場で殺すつもりだったけど、私と契約した者が用があるからと言うから仕方なくね。」

 

 俺は前に出る。

 

「お前らの目的はなんだ。」

「なぜそれを聞く?(この人は…兵藤君とのデ、デートの時に会った人、魔力があるとは思ったけどやっぱりグレモリー関係者なんだ。)」

「質問してんのは俺だ。カラワーナのヤツとは戦闘の際に少し話したが、わざわざ悪魔の治める地で理由なしに暴れるほど馬鹿じゃねぇ。」

「…(どうしよう。悪魔に私たちの理由を言ったところで理解されないと思うし、かといってこのままじゃあ…うう、胃が痛い。)」

「答えねぇってんなら容赦はしねえ。」

 

 俺は武器を構える。

 

「力のためよ。(私は皆のリーダー。今回の事だって私に責任がある。)」

「なに?」

「彼女の力が欲しかったのよ。(でも責任を取るのは私だけでいい。他の同胞のためにも皆は絶対に助ける。その為に私が出来るのは…)」

 

 レイナーレは教会の椅子に横たわるアルジェントを指す。

 

「彼女の持つ癒しの力は貴重だわ。その神器があれば、アザゼル様とシェムハザ様の寵愛を得ることが出来るわ!!(カラワーナと目が合ったけどこっちの意図は理解してくれたかな?皆ボロボロだ、ごめんね。)」

「愛のためって言うのは嫌いじゃないけど、今の貴方は美しくないわ。」

 

 今まで静観していたグレモリーが隣りに並ぶ。

 

「荒垣君、もう良いでしょう。所詮この程度のものなのよ。堕天使というのは。消えてもらうわ。」

「くっ。(まだ足りない。二人の目はこちらに引き付けられたけど、他の眷属の注意を退き付けきれていない。このままじゃ!!)」

 

 グレモリーは手をかざし、魔力を集める。

 これでいいのか?

 アイツラの目的はそんなんなのか?

 でもどうやって聞きだしゃあいい。

 どうする?

 

「俺様華麗に参上ッ!!」

 

 この状況で伏兵か!?

 

「フリード!!私を助けなさい!!(いまさらなぜここにフリードが?いや、この男の性格なら…)」

 

 俺だけでなく、木場や小猫、姫島もヤツに対して警戒する。

 

「おっと~大・大・大・大ピンチってヤツですね。上司のピンチに颯爽と駆けつける俺様かっくい~あ、大が4つで4大(よんだ)かい?なんて意図せず発した言葉が洒落になるなんてすごくない?」

「ふざけたことを言ってないで私を助けなさい!!褒美は何でもあげるわ!!(やはり、戦意が全くない。この場で戦う気はなさそうね。だとするならば利用させてもらうわ。)」

「じゃあじゃあ、ハイヒールを履いて踏んずけてもらうとかピ~なこともありですか!?てか、助けるのは貴方だけでいいんですかい?」

「その手の交渉は後よ、いいから私を助けなさい。他のものはもう手遅れだわ。(かかった。と言うより何よ、ハイヒールって~この格好だってマニュアルにあるからやってるのに~思い出したら恥ずかしくなってきた!う~恥ずかしいし胃が痛いよ。)」

「お~う、流石堕天使様。俺様に出来ない事をあっさりやってのけるッ!!そこに痺れる踏んでほしいッ!!でも~却下です。」

「何を言っているの貴方!貴方は神父、私に仕えるべき存在でしょう!?(やはりか、でもこれでいい。他の人たちの目は引き付けられた。)」

「う~ん、クソ悪魔君に負ける上司はお断りですぅ。というわけで、俺は貴方より強い堕天使に会いに行く!!ってね。バイチャ!」

 

 ヤツはそれだけ言うとレイナーレから視線をはずし、こちらを見る。

 

「おっとっと、忘れるトコでしたぁ。イッセーくん、キミってばとっても面白い力を持ってるんだね、ぜひとも俺様が殺したいのでそれまで死なないでねッ☆あと、ニット帽の彼も同じく~二人とも俺様特製『くさったミカン帳』に名前を載せとくからさ!!」

 

 ブンッ

 

 俺は近くに合った岩を投げつける。

 

「おぉ、怖い怖い。でもそんな問答無用ってとこは好きよ!じゃっあね~。」

 

 ヒュン

 

 ヤツは姿を消す。

 ちっ、面倒なのに目ぇ付けられた。

ヤツとはどっかでケリをつけねぇといけねぇな。

 

「さて、下僕にも捨てられた哀れなレイナーレ。さようならの時間ね。」

「クッ。(フリードが消えたことで、彼と私に向いていた注意が私だけに向き、皆からはほぼ外れている。後一押し。先に謝っておくね。ごめんなさい、兵藤くん。でも許してとは言わない、思いっきり恨んでくれていい。今度は良い恋してね、女の子を嫌いにならないでね。)」

 

 フリードに捨てられたレイナーレは兵藤の方を向く。

 

「イッセーくん!私を助けて!(あぁ、この胃の痛みもこれで最後か。)」

 

 いまさら、兵藤に命乞いだと?

 逆効果に決まってんじゃねえか、なに考えてやがる。

 

「悪魔が私を殺そうとしてるの!貴方のことが大好きよ、愛してるわ!だから、一緒に悪魔を倒しましょう!(天使から堕ちちゃったけど楽しい生涯だったかな。あ、アーシアさんもごめんなさい。あんなに私たちに尽くしてくれたのに。来世では幸せになって。皆も逃げられるといいなぁ。真剣に恋っていうのもしてみたかったかな。ああ、もう時間だ。)」

 

 レイナーレは兵藤の方へ擦り寄る。

 

 地雷どころじゃねぇぞ、このままだと兵藤に殺られんぞ。

 あんなんで助かると思ってんのか。

 いや、本当に助かりてえのか?

 なら俺との交渉に乗った方がまだ助かる目はあったはずだ、それにあんな真似しなくても他に方法だってあるはずだ。

 

 なのになぜ?

 フリードのような伏兵もいねえ、なのに自分に意識や殺意を集めてどうする?

 

 自分?

 

 ッ、そうか!

 

「じゃあな。」

 

 木場や塔城、姫島は!?

 

 だめか!!

 

「部長、もう限界っス……。頼みます……。」

 

 アンッ!?

 ちょっと待て、あいつ今なに言いやがった!!

 

「…私のかわいい下僕に言い寄るな。消し飛べ。」

 

 クソッ!!

 一か八かだ!!

 

 ドンッ!

 

「死んでねぇぞッ!!」

「「「なっ!?」」」

「木場ァ!!」

 

 俺はグレモリーの手を掴みながら叫ぶ。

 

「はいっ!!」

「きゃあああああ!」

 

 木場が飛び立とうとした堕天使を叩き落す。

 あぶねえ、こいつの行動は仲間を逃がすためか。

 グレモリーの行動を止めて一瞬迷わせることで木場にやらせる隙を作れたからなんとかなったが…それより。

 

「荒垣君なにをするのかしらって…なるほど、敵が逃げようとしていたのね。浅ましいわね、でもこれでおしまい。」

「!!(あれだけやっても、ダメだったの!?皆ごめんなさいッ!!)」

 

 ドンッ

 

「ッ!(あれ?私生きてる?)」

「荒垣君!?ッ…痛いじゃない!!」

 

 俺は再びグレモリーの手を掴むが振りほどかれる。

 

「今度はなに!?」

 

 手を押さえながらグレモリーはこちらを睨んでくる。

 力加減を間違えたか…そんなんは今はどうでもいい。

 

 俺は兵藤の元へと行く。

 

「おい。」

「は、はい。なんでしょう、荒垣先輩?」

「歯ァ食いしばれ。」

「え?」

 

 ドンッ!!

 

「ガハァッ!!」

「「「「イッセー・イッセー君・兵藤先輩!?」」」」

 

 俺は兵藤に頭突きをかました。

 

「な、なにをするの!?」

「黙ってろ!!」

「ッ!」

 

 詰め寄ってくるグレモリーを黙らせる。

 

「立て。」

 

 倒れている兵藤に言う。

 

「グッ。」

 

 兵藤が何とか立ち上がる。

 

「テメェは今何しやがった。」

「え?」

「今何をしたかと聞いてんだ。」

「れ、レイナーレを倒そうかと…」

「倒すじゃねえだろ、殺すだろ。」

「ッ…はい。」

「テメェには殺るだけの理由はあるだろう。嵌められて、一度は殺され、ダチも奪われて…殺された。」

 

 一瞬さっきから全く動かないアルジェントを見る。

 

「それだけで復讐したくなるのはわかるしそれを止める気はねぇ。」

「なら…」

「覚悟があんならな。」

「覚悟…」

「この間お前と契約に行ったとき話したこと覚えてっか?」

「はい、力を管理することと責任を持つことですよね。」

「あともう一つはなんだ。」

「えっと、周りに流されないことです。」

「そうだ。お前は今何をした。お前は悪魔になった。悪魔の敵だから、憎いから殺すのか?人間だったとき、コイツがお前を殺そうとしたり、ダチを殺してたらお前はコイツを殺てたか?」

「ッ!」

「周りが皆悪魔で敵を殺すのが当然って考えてようが、お前はお前だ。周りに流されてんじゃねえ!!」

 

 兵藤が俯く。

 

「荒垣君。あれは私がやろうとしたことで…」

「それだ。」

「「え?」」

「兵藤、テメェが周りに流されてどうにか何ならそれはテメェの責任だ。テメェでどうにかしろ。でもな、俺が頭にキテんのはそれだけじゃねえ。テメェの尻拭いをグレモリーにさせたことだ。」

「あ…」

「もし、ここでコイツを殺したらコイツの仲間が復讐にくるかも知れねぇ。その危険性もお前はグレモリーに押し付けようとした。お前の代わりに殺したせいでグレモリーが死んだらその責任がお前に取れんのか。あの行動にそこまでの覚悟があったのか。」

「あ、あ…」

 

 兵藤の顔が青ざめる。

 

「で、でも、そもそもいるかもわからないし、いたとしてもそれぐらいどうにかしてみせるわ!」

 

 グレモリーが兵藤を庇う。

 

「お前ならどうにかなるだろうな。」

 

 グレモリーの力は認める。

 

「なら!!」

 

 でもな

 

「直接お前が狙われなかったらどうする?」

「え?」

「グレモリー、お前を苦しめるだけだったらお前を狙う必要はない。眷属を傷つければいい。」

「守って見せるわ、私の眷属だもの。」

「ほう、じゃあ俺らの家族が傷つけられたらどうする。お前の近くにいる眷属ならともかくそうじゃないヤツはどうする。」

「ッ!」

「お前に直接勝てるヤツや後ろ盾に歯向かうヤツはそんないねぇだろう。なら搦め手で来るしかねぇだろ。なら、精神的にクンのは親族や大切なモンを殺ることだ。兵藤なら直接殺りにくるだろうがな。」

「でも、悪魔に手を出せば戦争になるわ。」

「堕天使が仲間やコミュニティを重視するって言ったのはお前だ。戦争なんか関係なく、暴走するヤツだっているかもしんねえ。」

「でも全部可能性の話しだわ!!」

 

 阿呆が。

 

「この際だから言っておく。俺はお前を信用していない。」

「なっ!?」

「勘違いすんな、個人としては嫌いじゃねえ。だがな、上に立つモンとしては全く信用していねぇ。」

「どういうことかしら。」

 

(支取も聞いとけ。)

(…はい。)

 

俺は念話で話しかける。

 

「上に立つモンならテメェの行動に責任がある。お前はこの堕天使どもを殺した後のことを考えたか?その対応はどうした?お前は自分の領地で暴れる堕天使を討伐としか考えてなかった。」

「…」

「支取でさえ殺した後の被害や状況への影響などは考えてたが肝心なモン抜けてやがる。」

「肝心なものって?」

(肝心なものとは?)

 

 俺は一呼吸置く。

 

「背負う事だ。」

「背負う?」

「殺すことで決して逃れらんねぇモンを背負う事になる。お前らはそれを理解せずに殺してやがる。種族や考えが違うとはいえ異常だ。お前らには覚悟がない。」

「覚悟くらいあるわ。」

「その覚悟は何の覚悟だ?殺すことか、殺されることか、恨まれることか、家族が狙われることか?」

「うっ…」

「覚悟はひとつじゃねえし、なんの覚悟も無しに戦ってりゃ、いつか痛ぇ目に会うんだよ。気づいたときにはもう遅ぇ。」

 

 あの時だってそうだ。

 

「戦いで傷つける可能性がアンのは敵だけじゃねぇ。味方や全く関係ねぇモンを傷つけることだってある。そういった覚悟もお前らにあったか?」

 

「…」

(…)

 

「上に立つんなら責任やあらゆる事への想定と覚悟をしとけ。お前らは俺を守るとかいっときながら俺の家族は完全にシカトだ。傷つけることが出来んのは身体だけじゃねぇことも覚えとけ。」

 

 俺は他のヤツラも見る。

 

「他のヤツラも覚悟ってのは同じだ。どいつも殺す前や殺した後に簡単に笑ってんじゃねえ。」

 

 俺ははぐれ悪魔のことを思い出す。

 

「殺すってのはそんな軽いモンじゃねぇだろ。実力云々じゃねぇ、そういったヤツラに背中を預けんのは不安だ。そもそも、共に戦うことも苛立ちを覚える。」

 

 周りのヤツが俯く。

 

「俺を仲間だと思ってんなら考えとけ。」

 

 俺はレイナーレの方を向く。

 

「最後だ、お前たちの目的はなんだ。」

「…安寧な日々のためよ。」

「「「「レイナーレ様!?」」」

 

 他の堕天使が叫ぶ。

 

「続けろ。」

「貴方達が堕天使をどう思っているかは知らない。でも三勢力の中では一番ひどいわ。アザゼル様の下に治められているといえば格好がつくが、実際はほぼ放任。そして、堕天使はそれぞれが独自の欲を持っている。その欲次第では堕天使同士で戦うこともよくあるわ。私たちを無理やりものにしようとしたりね。」

 

 レイナーレは苦笑いをする。

 

「私たちのコミュニティはそこまで力があるわけではない。まともに戦えるのは私たちだけ、残りは戦う力などほとんどない。だからこそ、私たちは力が欲しかった。仲間を守れる力、仲間を保護してもらえる力を。あのシスターから抜き取った力はそれを叶え得る力だったのよ。」

「なぜ私の領地で儀式を行ったの?」

「堕天使の領地でやってみなさい。上が神器を集めている分、他の堕天使がこぞって襲い掛かってくるわよ。」

「兵藤をやったのも神器(セイクリッド・ギア)持ちだからか。」

「ええ、あの力は危険だと思った。何回も儀式をやっている余裕はなかったし、排除の方法を取らせてもらったわ。やり方は申し訳ないと思ったけど後悔はしていないわ。」

「ッ!!」

 

 兵藤の顔が引きつる。

 

「他に何かあるかしら?」

 

 俺は兵藤に向き直る。

 

「兵藤、後はお前次第だ。さっきの話だって俺のエゴみたいなモンだ。どうするかはテメェで決めろ。ただ、あの話がお前に影響を与えてんのは間違いねぇだろう。だから何を選択しようと手は貸してやる。」

 

 兵藤はレイナーレの前に立ち、を展開する。

 俺は他の堕天使を睨む。

 

「お前ら動くな。」

「ウッ…」

 

 これでコイツラはいいだろう。

 

『BOOST!!』

 

 兵藤の籠手から声が響く。

 

『BOOST!!』

 

 2回目

 兵藤が震え、汗をかき始める。

 

『BOOST!!』

 

 3回目

 手を振り上げる。

 

『Explosion!!』

 

 宝玉が光を放つ。

 

「はぁ、はぁ。」

 

 それでも兵藤は手を振り下ろせない。

 震えが大きくなる。

汗も大量にかき、地面に零れ落ちる。

 表情は苦しく、今にも泣きそうになってやがる。

 

 それでも誰も声をかけねぇ。

 決めるのはヤツだ。

 

 兵藤は一度拳を開く。

 

 すぅっ。

 

 一度深呼吸する。

 

 ギュッ

 

 拳を握りなおす。

 

「うわあああああああああああ!!!!」

 

ドンッ!!

 

 拳を振り下ろした。

 

「グッバイ、俺の初恋。」

 

 そう言うと兵藤は体勢を崩す。

 

 トンッ

 

「荒垣…先輩。」

「よく決めた。少し休んでろ。」

「はい、お願いします。」

 

 兵藤が倒れこむ。

 

「グレモリー。」

「ええ。」

 

 俺はグレモリーに兵藤を渡す。

 

「イッセー、よくがんばったわね。」

 

 俺はその様子を見た後、振り返る。

 

「これがコイツの決断だ。俺はそれに従うし、他のヤツに邪魔はさせねぇ。」

 

 そう、『レイナーレ』に言う。

 

「…わかったわ。」

「ただし、アルジェントの力は返してもらう。」

「ええ、その前に彼女たちの回復をしてもいいかしら?」

「…カラワーナはこのままだと死ぬ。あいつの応急処置だけだ。」

「それで十分よ。」

 

 レイナーレは他の堕天使に近寄る。

 

「レイナーレ様。」

「黙って、今治すわ。」

 

 手から緑色の光が現れ、カラワーナの傷が癒える。

 レイナーレはそれを見届けるとこちらに戻ってくる。

 

「これがシスターから取り上げたものよ。」

 

 俺はそれを受け取り、兵藤のところに持っていく。

 

「あいつと一緒に送ってやれ。」

「うう…アーシア。」

 

 兵藤は緑色の光を抱きしめながら泣く。

 

「まだ可能性はあるわよ、イッセー。」

「本当ですか!!」

 

 兵藤は思い切り顔を上げ、グレモリーに問う。

 

「ええ、これよ。」

 

 そういって悪魔の駒を取り出す。

 

「俺と同じように転生させるんですか?」

「ええ、でもシスターを転生させるのなんて前代未聞。よみがえった瞬間絶望して命を絶つ可能性だってあるわ。」

「…身勝手なのは分かってます。それでも…それでも!!あのまま終わってしまうなんてアーシアが可哀想すぎる。」

「わかったわ。」

 

 グレモリーの身体を紅い魔力が覆う。

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。何時、アーシア・アルジェントよ。いま再び我の下僕となるため、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。何時、我が『僧侶』として、新たな生を歓喜せよ!」

 

 アルジェントの身体に駒と緑の光が入っていく。

 

 数秒後

 

「あれ?」

 

 アルジェントが身体を起こす。

 

「アーシア!!」

「ふぇ!?イッセーさん、どうしたんですか?」

「イッセー、あとは貴方が説明し、貴方が守ってあげなさい。」

「はい!!」

 

 兵藤がアルジェントに説明を始める、こっちはもういいだろう。

 あとは。

 

「貴方たちの処罰に関してね。」

 

 グレモリーと他のヤツラも堕天使の周りに集まる。

 

「イッセーの決断もあるから殺しはしないわ。でも、このまま返すわけにも行かない。さてどうしましょうか…」

「今回のことは私が決めたこと、全ての責任は私が取る。」

「「「レイナーレ様!?」」」

「いい心構えね。」

「レイナーレ様、それは!」

「カラワーナ、異論は認めないわ。」

「そうね…」

 

 グレモリーは腕を組み、悩む。

 一同が息を呑み、グレモリーの言葉を待つ。

 グレモリーはどうするか…

 

「決めたわ。」

 

 顔を上げる。

 堕天使らはグレモリーの前に座り、見据える。

 

「レイナーレ、貴方鳥に変化出来るかしら?」

「ええ、古来から天使は姿を変え、人々に託宣を与えに行くことがあるから。」

「なら、荒垣君の使い魔になりなさい。」

「え?」

 

 ほう、使い魔か…

 堕天使ってのは使い魔って名称であってんのか?

 

 

 あん?

 

 

 今だれのって…

 

 

「聞こえなかったかしら?荒垣君の使い魔になりなさい。」

 

「おいいいいいいいいいい!!!!!!」

「えええええええええええ!!!!!!」

 

 俺とレイナーレは同時に叫ぶ。

 

「おい、グレモリー!!なに考えてやがる!!」

「なにって彼女らの処分よ。この場で丸く収まっても復讐があるかもしれないものをこのまま返すわけには行かない。殺すわけにも行かない。なら、人質として一人残ってもらうわ。合意の上でね。取り返しにこられても困るから。いいわね。」

「私に拒否権はないわ。(悪魔と契約した人間の使い魔なんて胃が痛いわ。)」

「俺抜きに話を進めんな。だいたいなんで俺の使い魔なんだよ!!」

「私たちでは悪魔だからばれると色々と面倒なのよ。荒垣君は人間だし、鳥に化けさせるからばれないとは思うけど、ばれても私たちが監視するという名目で何とかなると思うし。」

 

 地味に間違ってねぇところがめんどくせぇ!!

 

「大丈夫、私たちがフォローするわ。それにさっきイッセーに手をかすっていってたじゃない。」

 

クッ、こいつスゲーいい顔しやがって。

今夜色々やったことの仕返しってか、おい。

 

「ああっ!!わーったよ。クソッ。好きにしろ。」

「ありがとう、荒垣君。さてそれじゃあ朱乃。」

「はい。」

 

 姫島歯はレイナーレの前に立ち、魔法陣を展開する。

 その後、何かメモを書き、俺に渡す。

 

「何だこりゃあ?」

 

「使い魔の儀式の詠唱ですわ。荒垣君にはこの魔法陣の中でこれを読んでもらいます」

「はぁ!?」

 

おいおい、マジかよ。

これを読むのか?

この年になってこれはキツイだろ。

 

「さっ、荒垣君はやく。」

 

 クソッ、覚えてやがれ。

 

「…あ、荒垣真次郎の名において命ず。な、汝、我が使い魔として、契約に応じよ。」

 

 死にてぇ。

 

 そんなことを考えていると魔法陣の光が消え、レイナーレは鳥の姿になる。

 

「契約完了ね。さてじゃあどうしましょうか。」

「部長。」

「あら小猫?どうしたのかし…」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴッ

 

 グレモリーが塔城のほうを向いて固まる。

 気持ちは分かる、なんかやべぇ。

 近づきたくねぇ、兵藤とアルジェントなんか端で震えてんぞ。

 

「部長。」

「な、なにかしら。」

 

 おい、引きつってんぞ。

 

「その堕天使は使い魔としての役割を知らないはずです。まずそのしつ…教育が必要かと。」

 

 しつけって言わなかったか、今。

 

「そうね。」

「私に伝手があります。」

「あらそうなの、じゃあお願いするわ。」

「はい。」

 

 そう言うと、塔城は携帯を取り出す。

 

「もしもし。依頼です。はい、コースは『モト劇場めぐりDEAD or DEADコース』でお願いします。」

 

 なんかやべえのが聞こえた気がするが…

 

 パァッ

 

目の前に魔法陣が現れる。

 

「なんだ?」

「大丈夫です、今私が呼んだ『育て屋』です。」

「育て屋だと?」

「はい、使い魔の育成を仕事にしている人たちのことです。」

 

 へぇ、そんなのもいんのか。

 

「あら、小猫意外ね。貴方にそう言った知り合いがいるなんて。」

「本当なら私が…」

「あ?」

「いえなんでもありません。」

「私は無視なのね…」

 

 いじけるグレモリーを兵藤たちが慰める。

 そんなことをしていると魔法陣が津よう光を放つ。

 

 パァッ

 

「呼んで頂きまことにありがとうございます!!『育て屋』のタケジィです!!」

 

 そう言いながら、つんつんとした髪型に長身で糸目、色黒の男が出てくる。

 

「依頼人はどなた…ウッヒョ~綺麗なお姉さまが沢山これはご挨拶せねば!!」

 

 男はグレモリーや姫島たちのところを回り始める。

 

 塔城はスルーされた。

 

 ゴンッ

 

「ガッ。」

「依頼人はこっちです。」

「すみません。」

 

 自業自得だな。

 

「改めてご挨拶させてもらう。『育て屋』にしてトップ使い魔ブリーダーを目指すタケジィだ。よろしくな。」

「あ、ああ。ブリーダーってのはなんだ?」

「ああ、近年使い魔は主人の手伝いをするだけじゃなく、美しさ・技なんかを競い合うコンテストもあるんだよ。そういったものの優勝を目指したり、純粋に使い魔の生態を調べ、その使い魔に合った育成なんかもしている。」

「そうか。」

「ああ、奥が深いんだぜ。今度色々見せてやるよ。」

「おう、頼む。」

 

 魔界の生きモンか…気になるな。

 

「さて、今回俺に預ける使い魔はどの子だい?」

「これです。」

 

 塔城が掴んで持ってくる。

 

「痛いわ!もう少し優しく。」

「おおおお!!人語を理解し、話すタイプか!また、レアなヤツだな!」

「ひいいいいいいい!!!」

 

 急に鼻息を荒くし、観察を始めるタケジィ。

 

「小猫も容赦ないわね。」

「なんか知ってんのか?」

「あのタケジィって育て屋は腕が良いんだけど、両極端なのよ。」

「は?」

「コンテストや実践でとても役に立ち、有名になった使い魔も沢山いるんだど、精神的に病んだ使い魔もそこそこいてね、特に雌に。」

「大丈夫なのかそれ。」

「まぁ、元々は堕天使だし大丈夫でしょう。」

「助けてぇえええええ!!!」

「…」

「…」

「おっとこうしてはいられない、すぐさまトレーニングに入らないとな。」

「契約はいつまでにする?」

「そこらへんは任せるが、途中こっちが呼び出したときには来れるようにはしといてくれ。」

「分かった!じゃあ、さっそく行こうか!!」

「いやああああああああああああああ!!!」

 

 タケジィとレイナーレは光の中へと消えていった。

 今度弁当でも作ってってやるか。

 

「あれは大丈夫なのか?」

 

 ドーナシークが俺に問いかけてくる。

 

「しらねぇが命の危険はねぇだろう。」

「そ、そうか。」

「テメェラはどうするんだ。」

「先ほどグレモリーとの契約でこの土地への進入禁止と堕天使の持つ道具の一部を差し出すことで話がついた。もう行くつもりだ。」

「そうか。」

「世話になった。」

「俺がやりてぇことをやっただけだ。」

「そうか。」

「ドーナシーク。」

 

 そこへカラワーナとミッテルトがやってくる。

 

「もう行きましょう、いつまでもホームを空けておくわけには行かないわ。」

「早く行くわよ!」

 

 ドーナシークを呼びに来たのか。

 

「あと、そこの人間。」

「あ?」

「正直、助かったわ。ありがとう。」

「一応礼は言うわ、ありがと。」

「おう。」

「じゃあ、さようなら。縁があったら会いましょう。今度は敵ではない形で。」

 

 バサッ

 

 やっとこれで終わりか。

 なげぇ一日だったな。

 

「終わりましたわね。」

 

姫島とグレモリーが話しかけてくる。

 

「とりあえずはな。」

「…色々考えさせられる一日でしたわ。」

「そうか。」

「荒垣君には謝罪させてもらうわ。ごめんなさい、貴方を守っているつもりだったけど全てが中途半端で配慮と思慮に欠けていたわ。」

(私からも謝罪させていただきます。ごめんなさい。)

「わかったんならもういい。」

「もう一度考え直してみますわ。今後のためにも。」

「私もよ。」

(ええ、そうですね。)

 

 そこまで話すと支取との念話は切れ、グレモリーは眷族を見渡して言う。

 

「さぁ、皆帰りましょう!」

 

 グレモリーの声で皆が帰路に着く。

 

 今後どうなるか…

 少なくともはぐれ悪魔ん時よりはまともになりそうだな。

 

 はぁ、とりあえず、もうねみぃ。

 

 明日ってか今日はもう学校じゃねえか、クソ…

 

 

 あ、海老と卵忘れてた…

 

 

 

 prrrrrrrrrrr

 

 バンッ

 

「あ~寝た気がしねぇ。」

 

 prrrrrrrr

 

「なんだこの朝っぱらから。」

 

 液晶にはグレモリーの文字

 

 シカトだな。

 

 prrrrrr

 

 …

 

 prrrrrr

 

 …

 

 prrr

 

 あ~、ったく!!

 

「なんだ。」

「おはよう、荒垣君。今朝アーシアの歓迎会をするから部室まで来てね!今ケーキを焼いてて忙しいの、それじゃあね。」

 

 ブツッ

 

 ツーツー

 

「はぁ、こっちの予定はまるで無視か…」

 

 ため息をつきながら着替え始める。

 

 飯を食って家を出る。

 

 部室に着き、扉を開けると既に全員揃ってた。

 

「おはようございますわ、荒垣君。」

「おはようございます、先輩。」

「おう。」

 

 姫島、塔城と続き、他のやつも挨拶をしてくる。

 その一番奥にアルジェントがいた。

 

「あの!あ、荒垣さん昨日はどうもありがとうございました!!」

「あ~気にすんな。」

「でも…」

「礼を言いてぇんなら他のやつにしとけ、俺はもう十分だ。」

 

 そう言いながらアルジェントの服装を見る。

 

「その服は…」

「はい、この学校に転入させていただきました。これからよろしくお願いします。」

 

 再び大きく頭を下げる。

 

「とりあえず、よろしくたのむ。」

「さて、これで全員揃ったわね。ささやかながらパーティをはじめるとしましょう!」

 

 グレモリーが指を鳴らすとケーキをが現れる。

 

「た、たまにはこういうのもいいでしょう。せっかくの歓迎会だしね。」

 

 少し、テレながら言うグレモリー

 

 茶の準備をする姫島

 

 ケーキを切り分ける木場

 

 皿とフォークを持つ塔城

 

 ケーキの前で騒ぐ兵藤とアルジェント

 

 

 まぁ、確かにたまにはこういうのもありか。

 

 そう思いながら俺も一歩前にでた。

 

 




 ガイル01です。
 とりあえずできました!!
 長くてすみません。年内に1巻を仕上げようとしたらこんなコトに、でもなんとかできました。
 そういえば、前話から今日までに急にお気に入りなどが増えて驚きました!なにかあったんですかね?
 しかも日間ランキングに11位とか吃驚して思わず声を上げてしまいました。慢心せずこれからもがんばっていきたいと思います。
 内容に関しましては、前半と後半のノリの差がえらいことに…でも書きたかったんです。そして、原作ブレイクと独自解釈の嵐で大変なことになってますがコンゴトモヨロシクお願いします。

 では皆さん良いお年を。
また来年お会いしましょう。

[補足]
・覚悟について
 覚悟云々は前話までにたまったことが爆発した感じです。グレモリーたちも覚悟について考えてくれるでしょう。

・イッセーお説教について
 殺すことを他者に任せるとか絶対にガキさんは許さないと思い、あのようなことになりました。しっかしと学び取るイッセーのことを手がかかると思いつつも好感度は高めです。

・レイナーレ
 実は相当殺すか悩んでました。あそこまでキャラが立った時点で生存は確定しましたが、書き始める前は悩み、殺すパターンと殺さないパターンの両方を考えてました。今では殺さない方がしっくりきたかなと思います。

・タケジィ
 どうしてもやりたかったんです。ザットゥージがいるならだしたっていいじゃないか!と思い、出しました。アニメ版です。

 今回は賛否両論あるかと思いますがご意見・ご感想ありましたら遠慮なくどうぞ。




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第12話


あけましておめでとうございます!
お待たせしました、新年1作目出来ましたのでどうぞ!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。




 

 

「ふおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 この声、兵藤か。

 …うるせぇ。

 何時だと思ってやがる、あの馬鹿野郎。

 

 俺は時計を見る。

 

「まだ、五時前じゃねえか。」

 

 今度アイツラに会ったときにただじゃおかねぇぞ。

 

 しかし、あれからもう3週間は経つか…

兵藤に特訓を頼まれたが俺が出来んのは実際に戦うことぐらいだ、それ以前にあいつにはやるべきことも他にあっから断ったんだったな。

 

 毎朝よくやるもんだぜ。

 とりあえず、今は…

 

 ね…

 

 

 る…

 

 

 

 

 ZZZ

 

 

 ジリリリリリリリリリリリリリ!!!!

 

 バンッ!!

 

 クソ、やっぱ寝た気がしねぇ。

 

「ふぁあ。」

 

 欠伸をしながら、準備を整える。

 1階に降りて冷蔵庫を開ける。

 

「昼飯どうすっか…」

 

 豚肉はあるな、メインはしょうが焼きであとは…

 

 よし、さっさと作っか。

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 うし、出来た。

 

 弁当の荒熱をとってる間に自分の飯を食ってと、その前に新聞取ってくっか。

 

 俺は新聞を取りに外に出る。

 

「ワンッ」

 

 それに気づいたコロちゃんが小屋から出てくる。

 

「よしよし、夜に散歩連れてってやるから待ってろな。」

「ワンワンッ!」

 

 コロちゃんを一撫で…何回か撫で家に戻り、飯を食う。

 

「鶏肉が底値か…」

 

 飯を食い終わり、コーヒーを飲みながらスーパーのチラシを見る。

 

「シンちゃんおはよ~。」

「おう、飯はそこに作ってあっから。」

「いつもありがと~シンちゃん大好きぃ。」

「馬鹿なこと言ってんじゃねえ。親父にも伝えとけ、俺はもう行く。」

 

 自分の食ったモンを片付け、荷物を持って外に出る。

 

「いってらっしゃ~い。」

「おう。」

 

 

 

「ん、ありゃあ…」

 

 学校に向う途中に見慣れたやつを見つける。

 

「あ、荒垣先輩。おはようございます!!」

「おはようございます。」

 

 兵藤とアルジェントが挨拶をしてくる。

 

「おう。」

 

 そういや、身元のねぇアルジェントは兵藤ん家で暮らしてんだったな。

 

「アルジェント。」

「はいっ!」

 

 若干緊張した面持ちでこちらを見てくる。

 そういや、あれからあんまししゃべっちゃいねぇし、こいつの前じゃあキレてる事の方が多かったからしかたねぇか。

 

「こっちの暮らしには慣れたか。」

「はいっ、イッセーさんも部長さんも皆よくしてくれます!!とても幸せです。これも主のみちび、ハゥッ!」

「アーシア!?」

 

 悪魔が祈りゃあ、ダメージくらうのも当たり前だろうが、こいつは。

 俺が苦笑いをする。

 

「荒垣さん笑ってますぅ。ひどいです。」

「はっ、気のせいだな。」

「ううう、絶対笑ってます。」

 

 アルジェントがこちらを涙目で見上げてくる。

 俺は目を逸らし、兵藤のほうを向く

 

「そういやぁ、兵藤。」

「はうぅ、話しを逸らされてしまいました。」

 

 アルジェントは…若干ふくれてっが、まぁ、いいだろう。

 兵藤に朝の件も言っとくか。

 

「お前、まだ朝の訓練やってんだな。」

「はい、あの日から毎日やってます!」

「そうですよ、イッセーさん毎朝頑張ってるんです!」

 

 兵藤の言葉にアルジェントが飛びつく。

 

「アーシアや部長が手伝ってくれるからな。アーシアいつもありがとな!」

「えへへ、イッセーさんの手伝いが出来てうれしいです。」

 

 顔を赤らめながらアルジェントが答える。

 

 兵藤の野郎、ハーレムハーレムとか言いながらなんで気づかねぇんだ?

 明らかに、アルジェントのヤツ、兵藤に好意を持ってんだろうが。

 

 それは、まぁいい。

 

「そうか、そりゃいいが、お前ランニングの際に叫ぶんじゃねぇ。近所迷惑だ、お前のランニングのルートに俺ん家の前が入ってんだ。今朝も叫んでたろうが。」

「つい…すみません。今後気をつけます。」

「夜もだぞ、前叫んでたろ。」

「あははは。」

「ったく。」

 

 乾いた笑いでごまかす兵藤を睨む。

 

「あ、夜といえばアーシアも仕事をやり始めたんですよ。」

 

 ほぅ、って大丈夫なのかそれは。

 

 アルジェントの方を見る。

 

 なぜ見られているのか分からず首をかしげる。

 

 いや、ダメだろこいつじゃあ。

 

「…なんとかなってんのか?」

「はい!まだ未熟なのでお仕事の際にはイッセーさんについてきてもらってますけど大丈夫です。」

 

 俺は兵藤を見る。

 

「ええ、俺もアーシアが騙されたりしないか不安でしたけど、相手の願いに合わせてこちらも対応するんで大丈夫です!ただ、最近皆忙しくてアーシアに付き添うのが大変になってきてるんですよね。」

「イッセーさん、迷惑をかけてしまってごめんなさい。」

「いいんだ、アーシア。俺はアーシアを守るって決めたんだ、これくらいなんとでもないさ。」

「イッセーさん…でもそれでイッセーさんが身体を壊してしまったら…」

 

 なんだ、この空気は…

 グレモリー辺りならわざとってのも考えられっが、コイツラの場合そうじゃねぇから気まじぃ。

 

 あぁ、くそっ!

 

「どうしようもねぇ時だけだ。」

「「えっ?」」

「どうしようもねぇ時だけ手伝ってやる。後は自分たちで何とかしろ。」

「本当ですか!?でも、以前荒垣先輩には迷惑かけちゃったし、部長もそれを気にしてるみたいで…」

 

 あれは、例外中の例外だったらしいが、この様子を見っと気にしてるみてぇだな。

 あいつらに非がねぇわけじゃねぇが…

 

 はぁ。

 

「こっちだって都合があんだ、しょっちゅう呼ぶんじゃねぇぞ。あと、この間みてぇにただ働きをするつもりはねぇ、グレモリーになんか用意しとくよう伝えとけ。」

「あの。」

「この間の最終的に引き受けたのは俺だ。それに、今後対価も貰うんだ、気にしなくていい。」

「ありがとうございます!!」

 

 思いっきり頭を下げる兵藤。

 

「ありがとうございます!」

 

 アルジェントも頭を下げてくる。

 

「お前ら、道のど真ん中でやんじゃねぇ。周りに変な目で見られんだろうが。」

「あ、すみません。」

「はぁ。」

 

 俺は先に歩き出す。

 

「待って下さい。」

 

 二人がその後をついてくる。

 

 そのまま、校門の前に着く。

 

「イッセェェェェェェェェ!!!」

「死ねェェェェェェェェェ!!!」

 

 あぁ?

 突っ込んできた男子が兵藤を吹っ飛ばす。

 

「イッセーさん!?」

 

 そのまま兵藤に詰め寄ってやがるし、女がどうとか漢女がなんだとかワケわかんねぇ事いってやがるな。

 

 俺には関係ねぇな。

 

「アルジェント、俺ァ先行く。」

「え?あの、え~と、はい。わかりました。」

 

 おろおろしているアルジェントに一声かけて俺は先に行く。

 

 

 

 教室に着くと姫島が声をかけてくる。

 

「おはようございます、荒垣君。」

「おう。」

「ふふ、今朝はとてもにぎやかだったみたいですね。」

 

 こいつ見てやがったな。

 

「あいつらが勝手に騒いでただけだ。」

「あらあら、そうですか。」

 

 ったく。

 グレモリーも外を見てやがるって事はあいつも見てたってことか…

 

 ん?

 なんか様子が違ぇか?

 

「部長は家のことで少し悩んでいるんです。そっとしておいてあげてください。」

「そうか。」

 

 その様子に気づいたのか姫島がいう。

 

 コイツがそう言ってんならそうするか。

 

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 

 授業も終わり、買い物をして家に帰る。

 飯を食い終わると、俺は散歩の準備をする。

 

「よし、行くか。」

「ワンッ!!」

 

 コロちゃんがしっぽを振りながら答える。

 

 いつも通りのルートで神社に行き、ひとしきり遊んだ後、ペルソナの訓練に入る。

 

「ペルソナッ!」

 

 カストールを呼び出し、木を殴らせる。

 

 ザァッ

 

 落ちた葉が風に乗って舞う。

 

 すぅ

 

 はぁ

 

「カストール!」

 

 俺が叫ぶとカストールは胸から刃を引きずり出し、舞う葉を切り刻む。

 

 集中しろ。

 

 威力は要らない。

 

 正確に切り落とす。

 

 外すな。

 

 葉が全部地に落ちたのを確認すると俺はまたカストールに木を殴らせ、同じ事を繰り返す。

 

 

 もう同じ事は繰りかえさねぇ。

 

 

 1時間ひたすらに切り続けた。

 

 

「ふぅ、ここまでにしとくか。」

 

 置いておいた水を飲み、汗を拭く。

 

「さて、コロちゃんを迎えにいって帰っか。」

 

 俺は境内へと足を向ける。

 

 prrrrrrrrrr

 

 これは兵藤か。

 

「なんだ?」

「荒垣先輩…助けてください。」

 

 なに?

 どういうことだ?

 すげぇ切羽詰った声してやがる…

 まさか、敵襲か!?

 

「どこにいる。」

「旧校舎の部室です。」

「そこは安全なのか?」

「え?ええ。」

「今行く。」

 

 コロちゃんを戻しに行ってる暇はねぇ。

 部室が安全ならそこに置いとくしかねぇか。

 

 俺は神社の階段を駆け下りる。

 コロちゃんもそれに続く。

 

「間に合えよ。」

 

 

 

 

 旧校舎に着く。

 部室まで全力で駆け、扉を開ける。

 

 バンッ

 

「おい、無事…か?」

 

 俺は固まる。

 

 全力で駆けてきた俺を向かえたのは

 

 

「すいませんっしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 土下座の兵藤だった。

 

 

 頭を地面にこすりつけ、決してあげようとしない兵藤。

 その隣りでオロオロしているアルジェント。

 

 パァッ

 

 部屋にある魔法陣が光り、姫島が現れる。

 

「あらあら、荒垣君がなぜここに?あと、これはいったいどういう状況かしら?」

「俺が聞きてぇ位だ。」

 

 とりあえず。

 

「兵藤、ツラあげろ。そのままじゃ話しになんねぇ。」

 

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 

「ようするに、今日言われたばっかなのに呼び出すのが申し訳なくてあんな声になり、仕事の依頼が大量に来てテンパッて説明を忘れたと。」

「はい…」

 

 再び土下座に戻った兵藤が答える。

 

 コロちゃん、踏みつけるのは止めなさい。

 

「とりあえず、もういい。要件を聞かなかった俺もわりぃ。俺ァなにをすればいい。」

「手伝ってくれるんですか!?」

「そういう話だったろうが。」

「ありがとうございます!!」

 

 兵藤は何回も頭を地面に打ち付ける。

 それを止めるアルジェント。

 

 そういえば、グレモリーもいねぇな。

 

「グレモリーはどうした?」

 

 俺は兵藤に問いかける。

 

「今お家の方が忙しく、部長最近夜は一時的に実家に帰ってるみたいです。ただ、そのせいで仕事が大変になってるんです。」

「どういうことだ?」

「ええと、上級悪魔である部長を呼ぶ相手というのはそれ相応の地位にある人が多いんです。部長の代わりに対応できるのは『女王』の朱乃さんだけなんです。なので、朱乃さんの分の仕事も俺たちが担当していて…特に今日は部長宛と朱乃さん宛の仕事が多い中、俺たちの仕事もありで…」

「なるほどな。」

 

 ソロモン72柱のグレモリーという名の悪魔を呼び出すんだ、呼び出される側もそれ相応の対応をしなければならないってわけか…

 

「…大丈夫そうですね。」

 

 ん?

 

 姫島の方を見ると、なにか魔法陣をいじっていたらしい。

 

「この魔法陣は本来、グレモリー眷属の悪魔しか使えないものなのですが、この間のことからグレモリーと契約した人間。つまり荒垣君でも魔力と認証をすれば使えるようにしましたわ。」

 

 確かに、あの神父とやりあった時、こいつが使えてたらもう少し楽だったが、しっかり対応をしてたか。

 

「昨日の今日でもなく、今日の今日に、本当にすみません。あ、呼び出しが…」

「呼ばれてんならさっさと行け。」

「はい、アーシアをよろしくお願いします。」

 

 兵藤は一度頭を下げた後、外へと駆けていった。

 

「あら、私も次の仕事が入ったようです。基本はアーシアちゃんが相手の望みをかなえ、荒垣君はアーシアちゃんの護衛と補助をお願いします。」

「わかった。」

「では行ってきますわ。」

 

 そう言って、姫島は魔法陣から移動する。

 

「よろしくお願いします!!」

 

 アルジェントが深々と頭を下げてくる。

 

「おう。ただ、メインはお前だ。わかってるな。」

「はい、がんばります!!あ、私もお仕事が来ました!!この人は以前イッセーさんが担当した方みたいですね。」

「なら問題ねぇな、さっさと行くぞ。」

「はい!!」

 

 俺とアルジェントは魔法陣の中央に立つ。

 そうすると、俺の手が光り、契約の際に現れた紋章が現れる。

 

 その瞬間、景色が歪み、目の前が真っ白になる。

 

 ッツ。

 

「着いたか。って、んだこりゃ?」

 

 目の前は確かに部室じゃねェが、ワケのわからねぇポスターやが部屋一面に張られ、棚にはフィギュアやDVDか?が並んでやがる。

 

 アルジェントのヤツは見たことねぇモンに目を輝かせてるが…

 

「いらっしゃいにょ。」

 

 後ろだと?

 警戒はしてたはずだ。

 気配すら感じねぇだと!?

 

 俺とアルジェントは同時に振り返る。

 

「なっ!?」

「ひっ!!」

 

 なんだこいつは!?

 人間か!?

 

 圧倒的な巨体

 

 その身体は鍛え上げられ、一部の隙もねぇ。

 

 そして、あの目。

 怒り?

 自己嫌悪?

 殺意?

 それらが入り混じりながら、目的のためなら手段を選ばないという覚悟が読み取れる。

 

 コイツは立っているだけなのに圧倒される。

 

 なんてプレッシャーだ、冷や汗が止まらねぇ。

 目が離せねぇ。

 目線をずらしただけで殺られる。

 

「はぁ、はぁ。」

 

 アルジェントのヤツが緊張のあまり過呼吸になってやがる。

 

「アルジェント!しっかりしろ。」

「はっ!?はい!」

 

 俺は目を目の前のヤツから目を逸らさずに叫ぶ。

 

 なんとかこっちの声に反応したがそう長くはもたねぇ。

 

 どうする。

 

「違う、悪魔さんにょ。」

「なに?」

 

 カッ!!

 

 やつの目が光る。

 

 とっさにアルジェントの前に立つ。

 

「クッ!」

「きゃああああああ!」

 

 目の前が一瞬歪みやがった。

 それに風が吹いたわけじゃあねぇのに後ろに吹き飛ばされそうになる錯覚がしやがった。

 

 気当たりってやつか!!

 

 ズンッ

 

 ヤツが一歩前に出る。

 こちらは自然と一歩下がる。

 

 ズンッ

 

 さらにヤツは歩を進める。

 

 チィッ!!

 出し惜しみなんかしてる場合じゃねぇ。

 

「ぺルッ!?」

 

 俺がカストールを呼び出そうとした瞬間、目を離していねぇはずなのにヤツは俺の目の前にいた。

 

「なぁっ!?」

 

 俺はとっさに右手で殴りかかる。

 

 片手で止められる。

 

 マジかよ、手加減はしてねぇぞ。

 

 グッ

 

 掴まれた俺の手に力が入るのを感じる。

 やべぇ、手がつぶされる!!

 

 だが、引いてもビクともしねぇ。

 

 ヤツはもう片方の手も使い、俺の右手を挟む。

 

 アルジェントがいるなら右手は壊れてもなんとかなるだろう。

 ヤツが俺の手を破壊した瞬間、反撃に移る。

 

 俺の右手にさらなる力が入る。

 

 ミシッ

 

 骨がきしむ音がする。

 

 グッ、まだだ。

 

 俺の手が限界を迎えようとする。

 

 今だっ!!

 

「カス「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ!!」」

「はっ?」

「へ?」

 

 ヤツは俺の手を持ったまま跪き、言った。

 

「今まで会ったり、呼んだりした悪魔さんたちには無理だったにょ。でも今回は二人も来てくれたにょ。お願いしますにょ。」

 

 俺の聞き間違いか、コイツの語尾がおかしくないか。

 それによく見たら服装もおかしいじゃねえか。

 なんだ、その服!!

 明らかにサイズあってねぇだろ、はちきれんぞ!!

 てか、猫耳とかおかしいだろ。

 

 スッ

 

 アルジェントが俺の前に出る。

 

「おい、アルジェント!!」

「大丈夫です。この人の目、一見怖そうですけれどとても優しい純粋な瞳をしています。」

「おい…。」

 

 アルジェントはポケットから機械を取り出し、打ちはじめる。

 あれは以前兵藤から聞いたが願いの対価だかを調べる道具だったはずだ。

 

 打ち終えると、ヤツの近くにより声をかける。

 

「ごめんなさい、私では貴方の願いをかなえてあげることが出来ません。」

「…やっぱり、無理だったかにょ。」

 

 目に見えてヤツがへこむのが分かる、やつの周りを覆っていた気配も弱まる。

 

「本当に…ごめんなさい。貴方のような純粋な方の願いすら叶えられない私を許してください。」

 

 アルジェントは泣きながら答える。

 

「私のために泣いてくれるのかにょ?なんて優しい子なんだにょ。うおおおおおおおおんん!!」

 

 ビリビリッ!!

 

 ヤツの泣き声に大気が振るえ、いや部屋全体が震える。

 

「泣かないでください、私の力不足がいけないんです。」

 

 おい、アルジェント。

 さっきまで、過呼吸で死にそうになってたのになんだその順応の速さは。

 警戒心を持ちやがれ、あの手が少しでも当たったら死ぬぞ、お前!

 

「うおおおおおおおおおん!!なんて、なんていい子なんだにょおおおおお!!!」

 

 パパパパンッ!!

 

 うお、窓ガラスまで割れやがった!

 

「アルジェント!!どうでもいいからとりあえずソイツを止めろ!!」

「は、はいッ!!」

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

「ごめんなさいにょ。つい感極まってしまったにょ。」

「いいえ、構いませんよ。時には泣くことも必要だと思います。」

「アーシアたん…」

 

 あの後、アルジェントがコイツを宥め、落ち着かせることに成功し、ようやく自己紹介をして落ち着いたわけだが…

 

「それでどうすんだ。」

「え?」

「お前は契約を取りに来たんだろうが、最初の望みが無理なら他のにするとかあんじゃねぇのか。」

 

 正直さっさと帰りてぇんだ、目の前の存在から一刻も早く離れてぇ。

 

「そうですね。ではミルたんさん他になにか願いはありますか?」

「う~んとにょ、そうだにょ!」

「なにかありましたか?」

「え~とにょ…」

 

 コイツいきなり落ち着きがなくなりやがったが…

 

「あの、そのにょ。」

「遠慮しないで言ってくださいね。」

 

 メキッ!

 

 うおっ、机を握りつぶしやがった。

 なにがしてぇんだ、コイツ!?

 

「ミルたんさん、深呼吸しましょう!」

 

 すぅ~

 スゥー

 

 はぁ~

 コォー

 

 アルジェントのは深呼吸だが、コイツのは違くねぇか…武術の呼吸法みてぇなやつだろうそれ。

 コイツの中でなにかが高まってんのを感じんぞ。

 

「アーシアたん!!」

 

 ゴウッ

 

 アルジェントに向って声を上げる。

 その瞬間、風が生まれ、アルジェントの髪が扇風機の正面に立ってるみたいに後ろになびく…それどころか後ろに倒れそうになってんじゃねえか。

 

「はい。」

 

 それでも、一瞬たりとも目を離さない。

 

「私の…友達になって欲しいにょ!!」

「はい、喜んで!」

「ッ、ほんとにょ?」

「はいっ!!」

「う…」

 

 やべぇ!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおんんんん!!!!!!!」

 

 うぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 パンッ

 

 無事だった窓ガラスが!!

 

 ドサドサドサッ!!

 

 棚からモノが!!

 

 ギィィイイッ!!

 

 てか、棚自体まで!!

 

 さっき以上の泣き声に部屋が崩壊を始める。

 

「アルジェントォォォオオ!!」

「は、はいぃいい!!ミルたんさん落ち着いてください!!」

「うおおおおおおおおんんん!!」

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 

「それでは、私たちは行きますね。」

「また会えるのを楽しみにしてるにょ。」

 

 …

 

「ミルたんさん。」

「アーシアたん。」

 

 ガシッ

 

 抱き合う二人

 

 …好きにしてくれ。

 

「そうだ、お友達のアーシアたんのお見送りにミルたんの得意技を見せてあげるにょ。」

「本当ですか!!」

 

 おい、ちょっと待て。

 

「アパートの裏に空き地があるからそこに行くにょ。」

「はい!」

 

 嫌な予感しかしねぇ。

 

 

「それじゃあ、いくにょ!」

 

 ビシッ!

 

 ヤツが杖を振り、ポーズをとる

 

 ゴウッ!

 

 衝撃で周りがなぎ払われる。

 それをお構い無しにヤツのポージングは続く。

 

「エターナルゥウウウウ!!」

 

 ビシッ!

 ゴウッ!

 

「ミルキーィィイイイイ!!!」

 

 ギュルルッ!

 ザァァァッ!!

 

「スパイラルゥウウウウウウウウ!!!!」

 

 ズンッ!!

 ミシッ!!

 

 ヤツが杖を振るうたびに、衝撃波が走り、回転すると竜巻が生まれ、踏み込むと地面が割れる。

 

 そして

 

「バスタァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 バッ!!

 カッ!!

 

 ヤツが杖を持っている手を振り上げた瞬間

 

 

 ヤツは光に包まれ…

 

 

 天をも貫く光の柱となった…

 

 

 

 杖関係ねぇよ、身体からでてるじゃねぇか。

 

「……………帰るぞ。」

「アーシアたん、荒垣さん、またにょおおおおお!」

「はい、素敵なお見送りありがとうございました!!」

 

 俺たちも魔法陣の光に包まれ、その場を離れる。

 

 

 パァッ

 

 俺たちは部室に戻る。

 

「アーシア!!お疲れ!!」

 

 兵藤が駆け寄ってくる。

 

「おい、兵藤。」

「荒垣先輩どうもありがとうございました!!」

「お前…すげぇよ。」

 

 肩に手をおく。

 

「え?」

「俺には無理だ。」

「え~と、アーシア?今回の依頼人は…」

「はい、イッセーさんのお知り合いのミルたんさんでした!!お友達になりました!」

「あ~ミルたんは…お疲れ様でした。ってアーシア!?お友達ってどういうこと!?」

 

 アルジェントと兵藤が話し始めると俺はその場を離れ、ソファに座り込む。

 

「あ~疲れた。」

 

 スッ

 

「あ?」

「荒垣君、お疲れ様です。紅茶を入れましたのでどうぞ。」

「ありがてぇ。」

 

 ズッ

 

「うめぇ。」

「ふふ、ありがとうございます。」

「荒垣先輩。これもどうぞ。」

 

 そう言いながら、塔城がクッキーを差しだしてくる。

 

「おう、サンキュ。」

 

 あ~疲れた身体に甘いモンがうめぇ。

 

「え~と、荒垣先輩とても疲れているようですがなにかあったんですか?」

 

 正面に座ってランスを弄っている木場が尋ねてくる。

 

「アルジェントに聞いてくれ…てか、なんだその槍は。」

「アハハ、そこまでひどかったんですか。これは、以前イッセー君が依頼の報酬として貰ってきた物です。普段はそこの壁に立てかけてありますので興味があったら見てみてください。」

 

 もういい、突っ込む気力もねぇ。

 あと、俺はあれをただの人間とは認めねぇ。

 

「ク~ン。」

 

 俺の足元にコロちゃんが擦り寄ってくる。

 

「大丈夫だ。」

 

 そう言いながら頭に手を置く。

 

「ワンッ!!」

 

 お~お~うれしそうだな。

 

「あらあら、ご主人様の気持ちが分かるなんて賢い子ですね。」

「…。」

「あら、小猫ちゃんどうかしましたか?」

「なんでもありません。」

「そ、そうですか。そういえば、荒垣君は他にも動物を飼っているんですか?」

「いや、今はコロだけだ。昔、猫やら鳥やらを飼ってたがな。どいつも拾いモンだけどな。コロも俺がガキの頃に親父が拾ってきた。」

「そうなんですか…じゃあ、本当に子どもの頃からの付き合いなのですね。」

「まぁな。ん、どうしたコロ?」

 

 コロは俺のところを離れて、塔城のところに向う。

 

「なんですか。」

 

 塔城とコロが見つめ合う。

 

 スリスリ

 

 コロが塔城の足に擦り寄る。

 

「あらあら、小猫ちゃん懐かれましたね。」

「…まぁ、犬は嫌いではありません。」

 

 そう言いながらコロを撫でる。

 

「いいな、小猫ちゃん。僕なんか触ろうとしたら吼えられちゃったんだよね。」

 

 珍しいな、コロが人に向って威嚇するような真似は普段しねぇんだがな…。

 

「さて、そろそろお開きにしましょうか。荒垣君今日は助かりました、本当にありがとうございます。報酬は部長に連絡して明日までに用意しておきますね。」

「おう。」

「ただ、教室で渡すと騒がれそうだから、帰りにでも部室に立ち寄ってくれますか?」

「わかった。」

 

 確かに、教室でやり取りすっと周りがうるせぇしな。

 

 外に出て、家へと歩き始める。

 

 とりあえず、今日はもう疲れた。

 帰って寝る。

 

「あの。」

「あん?アルジェントかどうした。」

「荒垣さん、本当に今日はどうもありがとうございました。」

「結局、俺はなんもしてねぇ。お前がやっただけだ。」

「そんなことないです、それに凄く心強かったです!」

「ああ、わかったわかった。落ち着け。」

「ただ、これが普通だと思うんじゃねぇぞ。これからは自分たちでどうにかしろ。」

「はい、がんばります!」

 

 両手でこぶしを握るアルジェント。

 

「アーシア!帰ろうぜ!」

「呼ばれてんぞ。」

「はい、それでは失礼します。」

 

 頭を下げて兵藤の下へと向う。

 

「俺も行くか。」

 

 俺も家へと歩いていった。

 

 





 新年明けましておめでとうございます、ガイル01です。今回も読んでいただきありがとうございます。
 原作2巻スタートとなりますが、地味に書き辛かったですね、今回。1巻を綺麗に終わらせすぎて、どうスタートするかかなり悩みました。次回はライザーの登場ですね、2次ではかっこいいか焼き鳥かの2択になる傾向が強いライザーですがうちではどうなることやら。
 あと、一点謝罪があります。ガキさんとグレモリー・シトリーとの契約内容について補則を入れてあるつもりでしたがすっかり忘れていました。すみません。今回の補足に入れますのでご指摘してくださった方、どうもありがとうございます。
 それではまた次回お会いしましょう。


[補足]
○契約について
 契約内容は、

1.相互召喚
2.念話
3.知識
  +
・証明書代行

の三つになります。
 1と2は作品中にも触れましたが、非常時や危険なときに互いを召喚することと特殊なパスを通じての念話ですね。ただし、結界などを張られてしまうと両方とも使用が不可能になります。
 そして、補足をし忘れていたのが3です。アーシアが人間の状態だと日本語が分からないはずなのに、ガキさんと話しているのはなぜ?というご意見を頂いたのですがその答えがこれです。
悪魔との契約は力・知識・富と権力が一般的なものらしいですが、その中の知識の部分を得る形で語学を理解し使える力を手に入れました。
 エピソードを入れると長くなるので端折ってしまったんですが、まとめると人間相手に必ずしも敵が日本語を話してくれるわけではない、語学が出来なければ駆け引きや目的を聞きだしたりも出来ない、という理由で語学関係の力もグレモリーとシトリーは契約に入れました。
 この力ないと今後ガキさんが仲間はずれ状態になるんで…重要なところを細くし忘れていてすみませんでした。
その他、魔力の底上げや譲渡、富や権力等も考えましたが、ガキさんはいらないと言うでしょう。特に力関係なんかは。
 この契約は、今のところ人間であることを選び、眷属にならないということの証明と今後出てくる海外関係の原作キャラと会話をさせるためという意味合いもあります。
 あと、ガキさんの両手にある紋章はグレモリー・シトリー両家の関係者であることを示し、今後証明書代わりになります。


○悪魔の仕事関係
 ガキさんに手伝わせるのは悩んだんですが、ミルたんと絡ませたかったんです!!すみません。原作なら「めんどくせぇ」や「気が向いたらな」で流してしまう気がしますが、うちのガキさん甘めですね。ただ、ある程度しっかり決めて、なあなあにはならないようにします。
 あと、通常特訓に関しては手伝わせる気は現状ないですかね、今の状態のグレモリー眷属が一緒に訓練したら大変なことになりますので、どう大変になるかは後数話でわかります。


○ミルたん
 原作においても明らかにチートなミルたんです。歴戦の強者ですらその気配を察知することが出来ませんでした。原作における人類最強だと思う。魔王様でさえ認める実力の持ち主。そんなミルたんとガキさんを是非絡ませたくて書いていたら案の定ストーリーが進みませんでした。
 原作ではそんなに戦闘シーンはありませんので独自解釈が多々含まれます。ミルたんに関しては遠慮をするつもりはありません、完全チートな存在になるでしょう。
 最後の光の柱はなんというか気というか生命エネルギー的なあれです、きっとドラゴン波とか普通に出せちゃいます笑
 あと、ミルたんの服装を見て、似合うに似合わないではなく、服の心配をするガキさんマジオカンです。
 最後に、アーシアがミルたんと友達になるのも原作にはありません、最初は宿敵の悪魔(設定)に力を借りるのが悔しいのと警戒をしてあのような目をしていましたが、1回目のイッセーやアーシアの優しさに触れ、一部の悪魔には心を許しています。が、アーシアがミルたん召喚できるようになったら最強な気が…

 以上、補足でした。
 なにか質問やご意見、感想がありましたら遠慮なくよろしくお願いします。



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第13話


お待たせしました!

今回は試しに今までと大分書き方を変更したので雰囲気が変わって見えるかと思いますが、内容はいつもと同じ感じです。
 
この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。



 

 

「おふくろ行って来る。」

「行ってらっしゃ~い。」

 

 母親からのいつもと変わらぬ返事を受けながら荒垣は家を出て学校に向う。

 

「おはようございます、荒垣君。」

「荒垣君おはよう、昨日の件は朱乃から聞いたわ、手伝ってくれてありがとう。」

 

 荒垣がクラスに着くとグレモリーと姫島が話しかけてくる。

 

「礼はいらねぇ、無償ってワケじゃねぇんだ。」

「その件も聞いているわ。報酬もこちらで用意してあるから放課後部室に寄ってくれるかしら。」

 

 グレモリーは声を落としながら言う。

 

「おう。」

「それじゃあ、また後でね。」

「失礼しますわ。」

 

 二人はそう言うと荒垣の元を離れ、自分の席に着く。

 

 それと同時にチャイムがなり、一日の始まりを告げる。

 

 

 

 昼

 

 荒垣はいつものように屋上に来ていた。

 

 

 屋上の端の建物の影

 屋上で最も目立たないそこが荒垣の特等席であり、今日もまたそこに座る。

 

 その時、屋上の扉が開く音が聞こえる。

 

 昼休みということもあり、他にも人はおり、友達と食事や読書など皆思い思いに好きな時間を過ごしている。

 だから、人が屋上に来ること自体は変なことではない。

 

 足音がこちらに近寄ってくる。

 

 荒垣がいるところは屋上の端でそれほど良い場所ではない。

 それ故に人があまり来ず、そこを荒垣は気に入っている。

 

 そんなところにわざわざ来る者を荒垣は『数人』しか知らない。

 

(面倒ごとじゃあねぇといいがな。)

 

 彼の横で足音が止まる。

 

「隣いいでしょうか?」

「好きにしろ。」

「では。」

 

 声の主が隣りに座る。

 

「で、今日はなんだ。」

 

 そこで初めて荒垣は彼女の方を振り向く。

 

「用事がなければ会いにきてはいけませんか?」

 

 荒垣の問いに微笑みながら支取は答える。

 

「質問に質問で返してんじゃねぇよ、まぁいい。とりあえず飯だ。」

「はい、そうしましょう。」

 

 二人は持ってきた弁当の包みを開く。

 

 特に荒垣の方はとてもよく考えられており、肉や野菜が主菜、副菜バランスよく入っており、栄養バランスも考えてあることが一目でわかる。

 

「あいかわらず、おいしそうなお弁当ですね。」

「普通だろ。」

「それが普通でしたら、日本中の主婦が泣く羽目になりますよ。」

「そういやぁ、お前も料理を始めたんだろ。その弁当はお前が作ったのか?」

 

 (スーパーで会ってから約一月は経ってんだ、そんだけありゃそこそこ作れるようになってんだろ。)

 

 荒垣は支取の弁当を覗く。

 その弁当も見た目と栄養バランスがしっかり考えられているものであった。

 

(へぇ、一月でここまで出来るようになったか。普段料理をしねぇって言ってた割にはいい出来じゃねぇか。)

 

「ん?」

 

 話しかけても返事がないことを疑問に思い、顔を上げる。

 そこには顔を若干赤らめ、なんとも言いにくそうに口をもごつかせる支取がいた。

 

「おいどうした。」

「え~とですね。これは私が作ったものではないんです。」

「あ?」

「練習をしてはいるんですが、なかなかうまくいかず…今日のもメイドに作ってもらったものなんです。」

 

 支取が俯きながら言う。

 

(美鶴のトコもそうだったが、この手の連中にはメイドってのは普通なのか…)

 

「あ~最初はんなモンだろ。何回かやってりゃ身体が覚える。」

「そういうものでしょうか。」

「そういうモンだ。」

「ふふ、じゃあがんばってみますね。」

 

 そういいながら支取は再び荒垣の弁当に目を向ける。

 

「ところで…」

「あん?」

「そのからあげって普通のものと違いますよね?」

 

 指摘されたからあげは確かに普通のものと異なっており、ソースのようなものがかかっている。

 

「もしよろしければ作り方を教えてくれませんか?」

 

 支取はどこから出したのかメモ帳を取り出す。

 

「まぁいいが…基本的にからあげ自体は作り方は同じだ。肉につける下味を少し薄くするくらいか。使う肉は胸でもももでもかまわねぇ。胸の方が揚げると若干パサつくがソースが水分が多いモンだから問題ねぇ。ももはもとから脂肪分が多くてから揚げにはあってる。」

「下味と胸肉ともも肉のちがいですね…」

「で、今かかってるソースだが、チャモロソースってヤツだ。」

「チャモロソースですか?」

「ああ、グアムとかサイパンに住んでるチャモロ人が作ったモンらしく正式名称もあるらしいが…忘れた。まぁそこはいい。作り方は難しくねぇ。用意スンのはレモン汁と醤油とたまねぎと唐辛子だ。作る量にもよるだろうが、醤油50CCならレモン汁20~30CCってトコだ、まずそれを混ぜ合わせる。その後、唐辛子はすりつぶして入れるのがいいが面倒だったら粉のヤツでもいい。自分にあった量入れろ。たまねぎは荒くていいからみじん切りにして作ったタレに漬け込め。それで一晩寝かせりゃ完成だ。あと、好みでレモン汁以外に酢を入れてもいい。」

「なるほど、そこまで難しいものではないんですね。」

「まぁな、ほれ。」

 

 荒垣は弁当の蓋にから揚げを一つ乗せる。

 

「良いのですか?」

「食ってみなきゃ味がわかんねぇだろうが。」

「では頂きます。」

 

 支取はから揚げを蓋から取、食べる。

 

「うん、おいしいです!酸味がから揚げの脂っこさを消してくれて、辛味が食欲を増進させますね。醤油ベースなのも日本人にあってると思います。私は悪魔ですが。あとなによりこのたまねぎがとても良いアクセントになっていて歯ごたえも味もとても良いです!」

「BBQや魚料理でも使える。シンプルだから他の味の邪魔をしねぇかんな。」

「ご馳走様です、とても美味しかったです。私も試してみます。」

「おう。」

 

 二人は料理の話をしながら食事を進める。

 

 

 

「で、なんか話があんだろ。」

 

 二人が食事を終えたタイミングで荒垣が口を開く。

 

「本当は純粋に昼食だけ取れれば良かったんですが…」

 

 一瞬苦笑いした後、支取は真面目な顔をする。

 

「最近リアスの様子がおかしいのには気づいてますか?」

「ああ。」

「なら話が早いです。今彼女は縁談を迫られています。」

「縁談だと。」

「ええ、本来なら大学卒業後、という話だったのですが家のほうで色々あったようです。」

 

 支取は淡々と言っているようだがその表情には陰りが見える。

 

(貴族だって話だからな、色々あるってワケか。)

 

「それで、どうしてそれを俺に話した。グレモリーの縁談なら決めるのはアイツ自身だ。俺にできる事なんてねぇぞ。」

「ええ、分かっています。交渉は彼女自身が行うものです。しかし、それにあたって相手である上級悪魔が近々ここを訪れる可能性があります。そのことに関する忠告です。」

「…」

「まだリアスからそういう話は聞いていませんし、ここは私とリアスの治める地ですから事前にアポイントメントは取ってくるとは思います。しかし、リアスの性格からして自宅には絶対上げないでしょうから交渉の場は必然とオカルト研究部の部室になるでしょう。」

「どんなヤツが来るんだ?」

 

(グレモリーはソロモン72柱に数えられる悪魔だ、それと縁談って事は相当なヤツなはずだ。)

 

「相手はフェニックス家三男のライザー・フェニックスです。」

「マジか、同じソロモンの72柱の不死鳥か…どうした?」

 

 支取は少し驚いた様子で荒垣を見る。

 

「いえ、荒垣君は悪魔について詳しいのですね。私やリアスについても知っていましたよね。」

「ああ、昔調べる機会があってな。」

 

 前は学校なんざ行かず、時間があったからな。

 自分のペルソナ、アイツラのペルソナ、そしてなにより湊のペルソナを調べてりゃあ詳しくもなる。

 なんだ、ペルソナ12体に変更可能って…

 

「しかし、フェニックスは鳥だろう?大丈夫なのか?」

「…本人には絶対言わないようにしてください。火と風を操る悪魔ですが人の身体をしています。もちろんフェニックスなので不死性を持っていますが。」

「ほぅ。」

「彼がフェニックスというより、彼本人に問題があるのです。常に浮いた噂が絶えず、ブラブラと…なのにプライドの高い人物です。取り扱いには注意してください。」

「お前…」

 

(取り扱いってどんだけ嫌いなんだよ。)

 

「悪魔なら特に問題ないのですが、彼は大の人間嫌いなのです。炎と風が汚れているとかいう理由でめったにこちらに来ません。そちらの方がこちらも嬉しいですが。」

 

(おい、若干愚痴になってんぞ。)

 

「そのため、荒垣君が彼と出会うと彼は貴方に害をもたらすかもしれません。」

「なんだと。」

「ええ、彼は人間を特に下に見ています。転生悪魔もです。以前契約の際に態度が気に食わないという理由で相手を殺しかけています。」

「ッ、そこまでなのか。」

「ええ、なので彼が来ることになったら、知らせますので彼が来ている間はオカルト研究部の部室に近寄らないでください。危険です。」

「ああ、わかった。」

「そうしてください、どちらにせよ会う必要もない者ですから。」

「お前、ソイツとなにかあったのか。」

「…私もシトリー家のものですからパーティなどにも参加します。その際に我々はだいたい『女王』を連れて行くのですが彼と初めに出会い、自己紹介で私の『女王』の真羅椿姫が人間の転生悪魔だと分かった瞬間、一瞬ですが確かに彼女を見下すような視線を感じました。それ以来、彼は嫌いです。」

 

(仲間を見下されたか、ならそうなるか…)

 

「それに、彼はリアスのグレモリーという面もしくは外見しか見ていない。家のこととかを考えるのはもちろん必要ですがあれはひどすぎます。リアスの内面などまったく見ていません。」

 

 支鳥は拳を握り、唇をかみ締める。

 

「あっ、すみません。見苦しかったですね。」

「アイツのこと思ってのことなんだ、気にすんな。」

「あ、ありがとうございます。」

 

 支取は少し照れながら荒垣に返事をする。

 

 支取はコホンと咳払いをして、空気を戻す。

 

「とりあえず、気をつけてください。不本意ですが実力はありますし、あと彼は非常識な面がありますから、何をするかわからりません。」

「わかった。」

 

(とりあえず、触らぬ神に祟りなし、だな。)

 

「さて、そろそろ時間ですし、戻りましょう。」

「そうだな。」

 

 荒垣と支取は立ち上がる。

 

「先に行け。」

「え?」

「俺と行くと面倒なことになんだろうが。」

「?」

 

 支取は荒垣の言っている事の意味が分からず、首をかしげる。

 

(コイツは自分の容姿と他のヤツからの視線を理解してねぇのかよ…)

 

「はぁ、いいから先行け。授業までには俺も戻る。」

「腑に落ちませんがわかりました。生徒会室も覗いておきたいですし、先に行きます。」

 

 支取は校舎へと戻っていく。

 

「ふぅ、面倒なことにならなきゃいいが…」

 

 

 

 そんな彼のささやかな願いは…

 

 

 




 こんにちは、ガイル01です。今回もお読みいただき、どうもありがとうございます。

 前書きにもお書きしましたが、今回は今までと大分書き方を変えてみました。いかがでしたか?
 感想で一人称の文を三人称にしたり、説明は本文内でなるべくし、擬音を具体的に地の文ですると分かりやすくなると聞き、やってみました。お試しということで少し短めになりましたが今までとどっちの方が皆さん的には良かったですか?
 ギャグパートや特定の誰かの視点といった場合は一人称の文も書くとは思いますが、三人称の方が見やすいなら今後このスタイルで行こうかと思います。
 読者の皆さんが楽しめる形が良いので皆さんのご意見はなるべく参考にさせていただきます。

 年は明けれど年度は終わりで大変なことになっており、投稿が不定期になりますがコンゴトモヨロシクお願いします。

 では、また次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・ライザー関連
 もともと人間嫌いだったのがグレードアップしてます、具体的には次回以降分かるかと思います。
 独自設定では支取とライザーとの出会いです。原作ではないですが、本作ではライザーは転生悪魔の必要性は認めてますが下に見るので転生悪魔の真羅を一瞬見下しました。シトリー家との付き合いもあるので直ぐにその視線は隠しましたが見事にバレて支取に嫌われてしまっています。

・支取関連
 料理の腕は…最初の犠牲者はだれになることやら。
 以前も言ったかもしれませんが個人的にガキさんと支取の会話が一番書きやすいです、理由も無しにガキさんに絡めるのって今のところ支取だけだったり。
 まぁ、まだ2巻ですから、今後他のキャラもどんどん絡ませたいです。
 支取関連では出来るか分からないですが、相当無謀なことを一個計画しています。まだまだ先の話ですが出来たらやってみたいです。


 以上です。
 ご質問や感想、意見等ございましたら遠慮なくよろしくお願いします。


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第14話


お待たせしました!

 
この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。





 

 放課後

 

「荒垣君」

「あ?」

 

 荒垣は呼ばれたほうに振り返るとグレモリーが立っていた。

 

「先日の件なんだけどこれからすぐ部室に来れるのかしら?」

「いや、今日は掃除がある。終わったらソッチに向う」

「わかったわ、こちらもあの子達に先に話しておきたいことがあったから丁度いいわね」

 

(縁談のことか…兵藤の様子から知らなかったみてぇだしな。眷属でもねぇ俺には関係ねぇがな)

 

「で、掃除の後向えばいいか?」

「ええ、それで大丈夫よ」

「そうか」

「あと、明日なんだけど部室でやらなければならないことがあるから部活は中止だから覚えておいて」

「…わかった」

「ええ、それじゃあ後で」

 

 そう言うとグレモリーは教室を出て行った。

 

(支取が言っていた事がマジになったか、明日は部室に近寄らねぇほうがよさそうだな)

 

「さて、俺も行くか」

 

 荒垣は自分の席を立ち掃除へと向った。

 

 

………

……

 

「よっ、これで終いだな」

 

 荒垣はゴミ捨て場に最後のゴミを置く。

 

「ありがとう、荒垣君。結局重たいもの全部持ってもらっちゃって」

「俺がやった方が早いからやっただけだ。後は任せていいか?」

「うん、本当にありがとう!」

 

 お礼を言うクラスメイトに手を振って返し、教室へ荷物をとりに行き、部室へ向う。

 

 旧校舎前に着くと、おかしな気配を察知する。

 

「なんだ、これは?」

 

 旧校舎を見上げる。

 

 ほとんどが使われておらず、唯一校舎内で使われているオカルト研究部の部室一部屋だけ明かりがついている。

 

 一見至っていつも通りの景色が一変する。

 

 オカルト研究部の部室が2色の光に塗りつぶされる。

 その色は二つとも『赤』

 しかし、片方は濃く深い『紅』、もう片方は明るく鮮やかな『橙赤』

 

 その直後、部室の窓ガラスが割れ、熱風が吹き出す。

 

「クッ、なにしてやがる」

 

 荒垣は部室へと駆け出す。

 

『荒垣君、荒垣君!!聞こえますか!?』

 

 突如、荒垣の頭に声が響く。

 

『支取か。どうなってやがる』

『ッ、無事でよかった。先ほど、リアスから明日旧校舎でフェニックス家の者と会うと聞きました。しかし、理由は知りませんがどうやら今日来たようです』

『チッ、迷惑極まりねぇな』

『本当です、とりあえず荒垣君は危険なので、近寄らないでください。こちらでもあの炎を確認しました。恐らく彼は今相当機嫌が悪いでしょう。下手をすると会った瞬間燃やされてしまうかもしれません』

 

(昼の話からすればそうだろうな、だが…)

 

『わりぃな』

『え?』

 

 荒垣は足を止める。

 彼の前には脇にオカルト研究部と書かれた扉。

 

『もう、部室の前だ。それに中のヤツも気付いている』

 

(扉越しにかなりの威圧感を感じやがる)

 

『荒垣君、待ちなさい!!クッ、今生徒会役員に旧校舎から噴出した炎に関しての対応を任せました。私も向っています、すぐ駆けつけますから無理はしないでください。』

『相手次第だ』

『荒垣君!?』

 

 荒垣は念話を切り、扉に手をかける。

 普段ではありえないほど重たく感じる扉を両手で開く。

 

 荒垣の目に映ったのは

 グレモリー眷属

 赤いスーツを着た男

 彼を囲むようにいる10を越す女性

 メイド服の女性

 

 そして

 

 床に倒れる後輩とそれを棍で押さえつけ顔踏みつける少女だった。

 

「おい、そこの女をどかせろ。じゃねぇと無理矢理どかす。」

「魔力を感じるから何者かと思えば人間だと…人間如きがなぜここにいる。」

「空気が汚れる、目障りだ。おい」

 

 男は荒垣を無視し、周りの女性に命令を出す。

 

「「は~い、ライザー様」」

 

 ライザーと呼ばれた男の周りにいた双子の少女が飛び出す。

 無邪気な笑顔と少女のような見かけとは裏腹に人とは思えない速さで荒垣に迫る。

 目の前まで迫った双子は速さをそのままに左右に分かれる。

 

「ごめんなさい、ライザー様の命令だから死んでくれる?」

「あはは~じゃあね~!」

 

 そして、左右から荒垣に向かって飛び掛る。

 

「荒垣君!?」

 

 奥でグレモリーが叫ぶ。

 その隣にいるライザーはグレモリーの肩を押さえ、基地の端を上げて笑う。

 

「忠告はした。」

 

 荒垣は両手を上げて片方ずつの手で少女たちの攻撃を受け止める。

 

「「「なっ!?」」」

 

 これに、攻撃を仕掛けた少女たちはもちろん、目の前の男が死ぬことをまったく疑っていなかったライザーまで驚愕の声を上げる。

 驚きで彼女たちの動きが一瞬止まる。

 

「オラッ!!」

「「キャァアア!!」」

 

 荒垣は掴んだ手を思い切り振り下ろし、少女たちを床へと叩きつける。

 叩きつけると同時に手を離し、荒垣は壁に立てかけてあるランスをとり、兵藤を踏みつけている少女に向って投げつける。

 

「えっ!?アアアアァァァッ!!」

 

 荒垣が投げたランスは彼女の肩に当たり、彼女を吹き飛ばし、壁へと縫い付ける。

 

「ミラ!!貴様ぁあああああああああ!!」

 

 ライザーの怒りに呼応して彼の周りに炎が吹き荒れる。

 

「チッ!!」

 

 荒垣は仲間を巻き込まないよう、再び入り口の方に戻る。

 

「逃がすか、死ねぇええええ!!!!」

 

 ライザーは炎を荒垣向かって投げつける。

 荒垣の身体を覆う位の大きさの炎が迫る。

 荒垣は自分の身体の前で両腕を交差し、防御の姿勢を取る。

 

 奥で木場が水の魔剣を出すが炎の勢いは一向に収まらない。

 

当たっていなくともその熱だけで肌を焼く。

 それを感じ取り、荒垣はさらに身体全体に力を入れる。

 

 ついに、炎が荒垣の目の前、決して避けられない距離まで迫る。

 普通の人間ならば当たればひとたまりもない熱が荒垣に襲い掛かる。

 

「荒垣先輩ッ!!」

 

 兵藤が、仲間たちが叫ぶ。

 こんどこそ、とライザーは笑みを浮かべる。

 

 その瞬間、荒垣の脇を複数の水の槍が通り抜け、炎を相殺する。

 

「はぁ…はぁ。間に…合いました」

 

 開け放された扉の奥、廊下から片手を伸ばし、もう片手で胸を押さえ、苦しそうにしている支取が立っていた。

 全力で駆けて来たのか汗をかき、それを拭う事もなく、呼吸を整えることもせず、荒垣の下へと歩み寄る。

 

「荒垣君、大丈夫ですか?」

「あぁ」

 

 そうは言うものの身体の前に出していた腕の制服部分は焼け、腕にも火傷が出来ていた。

 

「荒垣君!!」

「荒垣先輩!!」

 

 そこに、姫島とアルジェントがやってくる。

 

「荒垣先輩火傷が!」

「今は問題ねぇ、離れてろ」

 

 荒垣は傍に寄ってきた二人を遠ざけようとする。

 

(あいつがいつまた仕掛けてくるかわからねぇ。あいつらを俺に近づけるわけにはいかねぇ。それと)

 

「おい、支取。お前も離れ…「大丈夫ですので治療をしてください」ッツゥ!」

 

 ライザーから目を離さず、隣にいる支取に声をかけようとする。

 その途中に支取は空中に水の玉をつくり、荒垣の腕の上で破裂させる。

 熱くなった腕が冷える心地よさと、傷への痛みの両方が荒垣に走る。

 その隙にアルジェントと姫島が近寄り、治療を始める。

 その様子を見て支取は立ち上がり、前に出る。

 

「さて、事情を聞かせていただけますか?」

 

 感情の全くない声にその場の熱が冷める。

 

「なに、そこの人間が我々が大切な話しをしている中、急に入ってきて訳のわからないことを言い、俺の眷属を傷つけたから退出してもらおうとしただけだよ」

 

 ライザーは悪びれた様子も見せず言ってのける。

 

「なっ!荒垣君は私の眷属を助けようとしたんじゃない、なにをいけしゃあしゃあと」

「おやぁ、それを言ったらリアスゥ。最初はキミの眷属が俺に殴りかかってこようとしたんじゃなかったかな?」

「それは貴方が場にそぐわない事や挑発するような事したからでしょう」

「おや、俺が何をしたかなぁ」

「この…「リアス」」

 

 再び一触即発の空気になるところを支取が止める。

 

「この件は両成敗ということにして、ライザー氏はなぜ今日ここにいらっしゃるのですか。私の聞いた話しでは明日いらっしゃる予定とのことでしたが?」

「いやぁ、すまない。愛しのリアスの一日でも早く会いたくなってしまってね」

「この土地はグレモリー家の治める土地ではありますが、この学園はシトリー家の治める地でもあります。勝手な行動は控えてください」

「そうだったのか、なにぶん地上にはめったに来ない分事情をきちんと理解していなかったようだ…謝罪しよう」

 

 ライザーはまるで初めて知ったかのように驚いて謝罪の言葉を述べる。

 

「このことのせめての償いとして今度『フェニックスの涙』を実家に届けておこう」

「結構です」

「いやいや、それではこちらも申し訳ない。これは送らさせていただくよ」

 

(相変わらずですね。貴方は実家と魔王レヴィアタンとのつながりが欲しいだけでしょう)

 

「そうですか、ではご自由に」

「ああそうさせてもらうよ」

 

 笑顔でライザーは言ってのける。

 

「で、そこの人間は一体なんなんだ?」

 

 ライザーは荒垣を指差す。

 

「彼は私とソーナが対等な契約した人間よ」

「なに、リアスとソーナ嬢が対等な契約だと!?人間一体どんな手を使った!」

 

 ライザーは荒垣を睨みつける。

 

「テメェには関係ねぇだろうが」

「貴様ッ!!」

「彼への無礼は許しません」

 

 ライザーと荒垣の間にグレモリーと支取が立つ。

 

「二人は人間と対等な契約を結ぶ事の意味を分かっていない!!魔力はあるようだが、それ以外何もない人間と対等な契約だと?自らの家の価値を下げていることに気付かないのか!それが周りに知られようものなら「所詮この程度か」と嘲られることがわからないのか!」

 

 ライザーは声を荒げる。

 

「彼への無礼は許さないといったはずです」

「ライザーいい加減にしなさい。私もソーナも彼との契約は間違っていないと考えているわ。それ以上言うようだったら容赦はしないわ」

「近い将来俺はグレモリー家の者にもなるんだからこの件は見逃すわけにはいかないな」

 

 両者が睨み合う。

 

 そこにパンッという乾いた音が響く。

 

 全員がその音の方へ目を向ける。

 そこには胸の前で手を合わせた銀髪のメイドが立っていた。

 

「そこまでです。これ以上の争うようでしたらサーゼクス様の名の下に介入させて頂きます」

 

 一睨み

 

 たったそれだけで全員が身動きできなくなる。

 圧倒的な威圧感が全員を襲う。

 

(冷や汗がとまんねぇ、何モンだコイツ)

 

「最強の女王と称される貴方にそのようなことを言われては引かないわけにはいかないな」

 

 ライザーは一歩下がる。

 

「ご理解いただきありがとうございます。しかし、問題が解決したわけではありません。今回の会談で決着がつかない場合、最終手段として案をお預かりしています」

「グレイフィア、それはなに?」

「『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」

「―ッ!?」

 

 グレモリーは驚き、言葉を失い、支取も目を見開く。

 

「レーティングゲーム?」

「爵位持ちの悪魔が下僕同士を戦わせて競い合うゲームです」

 

 レーティングゲームについて知らない荒垣に姫島が簡単な説明をする。

 

「お父様はそこまでして私に結婚をさせたいわけね…いいわ、やってあげるわ」

 

 グレモリーは怒りをかみ殺しながら告げる。

 

「ライザー様もよろしいですか?」

「ああ」

「承知いたしました。お二人のご意思はグレイフィアが確認させていただきました。ご両家の立会人として、私がこのゲームの指揮をとらせてもらいます。よろしいですね?」

「ええ」

「ああ」

 

 グレモリーとライザーは睨み合いながら告げる。

 

「わかりました。ご両家の皆さんには私からお伝えします」

 

 グレイフィアは頭を下げる。

 

「さて、ゲームをやることになったわけだがリアス、キミの眷属はこれだけかい?」

「それがなにか?」

「これじゃあ、話にならないんじゃないか?俺のかわいい僕に対抗できるのは女王位じゃないか。それに」

 

 ライザーは兵藤を見る。

 

「赤龍帝の籠手の持ち主がどれほどのものかと思えば、俺の兵士になにも出来ずに負ける雑魚。ゲームになると考える方がおかしい」

 

 兵藤は下を向き、血が出るのにも構わず唇を噛む。

 

「では…」

「ん?」

 

 ライザーは声のするほうへ振り向く。

 

「では、ゲームの開催日を10日後にするのはいかがでしょうか?」

「ソーナ!?」

 

『ソーナどういうつもり!?』

『今の貴方では勝てません』

『クッ』

『悔しいだろうけど現実です、私が猶予を得てみせます』

『貴方にそこまで頼るわけには…』

『いえ、私はここまでしか手伝えませんから友人のためにさせてください』

『ソーナ…ありがとう』

 

「ほぅ」

「貴方はレーティングゲームの経験も豊富、そんな貴方相手に直ぐに試合ではリアスに不利ではないでしょうか?」

「そうだなぁ」

「それに」

「うん?」

「それだけの時間があれば、レヴィアタン様の都合もつくかもしれません」

 

 支取の言葉にライザーが一瞬反応する。

 

「ふむ、確かにこのまま試合ではあまりに大人気ない。リアス、10日間やる。下僕を鍛え上げて見せろ。それと」

 

 ライザーは荒垣を睨み、言う。

 

「そこの人間、貴様も出ろ。俺の僕に手を出したことを後悔させてやる」

「な、ライザー!?」

「何を言っているのですか、彼は人間ですよ!?」

 

 グレモリーと支取は驚愕し、抗議するが

 

「上等だ、喧嘩売ってきたのはソッチだからな。後悔すんじゃねぇぞ」

「ふん、レーティングゲームには事故もありうる。身辺整理してから臨むんだな。じゃあ、当日また会おう」

 

 そう言うとライザーは魔法陣に乗り消える。

 

「ちょっと、荒垣君!?これは私とライザーの問題よ、貴方に迷惑をかけるわけにはいかないわ!」

「グレモリーにどんな事情があるかなんて関係ねぇ。ヤツに喧嘩を売られて俺が買っただけだ。お前のためなんかじゃねぇ」

「貴方という人は…もう退くに退けない状況でしょう。でしたら私にも考えがあります。」

「あ?」

「私にも用事が出来ました、お先に失礼させていただきます。あと、リアスは説教がありますから後日生徒会室に出頭してください」

「ソーナ!?」

「結界も張らずに、暴れて…今生徒会役員がどれだけ走り回っていると思っているんですか」

「う…」

「言い訳も含め、全てそこで聞かせていただきます」

 

 支取は右手の人差し指で眼鏡を上げながら、グレモリーを睨みで言う

 

「はい…」

「結構です。最後に荒垣君」

「なんだ」

 

 支取が一歩荒垣に詰め寄る。

 

「無理はするなといいましたよね」

「…」

 

 さらに一歩詰め寄る。

 

「いつも怪我をして、そういった性癖をもっているのですか?」

「なっ!」

「そう思われたくなかったらもう少し自愛してください」

「クッ」

「あと」

「まだなんかあんのか」

 

 詰め寄ってくる支取から目を背けようとするが

 

「ごめんなさい」

「あん?」

 

 支取は頭を下げた。

 

「貴方が傷ついたのに、私は両家の関係を考え、ライザーを咎めることが出来ませんでした」

「お前は部屋に入る前に忠告していた。なのにそれを俺が無視したからこうなっただけのことだ、自業自得なんだから気にすんな」

「怪我をしたこととは別に、友人のために動くことが出来ませんでした…」

「貴族やらお家騒動ってのはよくわかんねぇがなにかしら背負ってるモンがあるんだろう。気にしちゃいねぇ。」

 

 荒垣はそう言うが、グレモリーと支取は、自分たちがしたことへの罪悪感に俯いてしまう。

 

「あ~めんどくせぇ、支取もグレモリーも今回の件は俺が自分から首を突っ込んだ。ゴチャゴチャ気にすんじゃねぇ、いいな」

「「え…」」

「いいな」

「「はい」」

 

 荒垣の迫力に負けて、二人は頷く。

 

「それで10日間の猶予を得たがどうすんだ」

「そうね…」

 

 グレモリーは目を閉じ、少し考えた後言った。

 

「合宿を行うわ!」

 

 

 





こんにちは、ガイル01です今回も読んで頂き、ありがとうございます。
そして、遅くなってしまってすみません…師走より忙しいってなによ。
 さて、とりあえずライザー(焼き鳥)初登場です。それなりにうざく書けていればよいかなと、原作と比べて本作では色々ひどいですね…ライザーファンの方がいましたらすみません。
 あと、原作とは異なり、支取が話し合いに乱入です。今後もイベントには積極的に参加してくると思います。
 ガキさんのゲーム参戦も確定し、いよいよ合宿行って試合です、がんばって生きていと思います。

ではまた次回お会いしましょう。

 ご意見やご質問、感想等ありましたら遠慮なくどうぞ。

[設定や裏話やら]
 今回は本編とは全く関係ありません、この先は読みたい方だけどうぞ。

 この忙しい中、作者が心の支えの一つにしていたのがラノベの『魔弾の王と戦姫』の発売です!
 おそらくマイナーな作品で知ってる方はあまりいないかな?
 12月から延期で当時かなりへこみましたが、発売して速攻で買いました。通勤中、電車に揺られながら読んでいましたが面白いですね~紹介を書き出したら止まらなくなるんで興味がある方は是非調べてみてください!おすすめです。
アニメ化も決定して嬉しい反面怖い面もありで成功を祈ります。
 まだ古本屋でも売ってるんでちょっと読んでみるのもありです。もし、作者がオリ主ものを書くとしたらこの作品の主人公をモデルの一つにしていたかもしれませんね。

 本作とは全く関係ありませんでしたが、時々こんなのも入れてこうかなと思います。




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第15話


大変お待たせしました!
おそくなってすみません。

そして、UA30000、感想50、お気に入り500超え、どうもありがとうございます!!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。




 

 

「ひーひー…」

「ほら、イッセー。早くなさい、昨日のやる気はどこにいったの」

「は、は~い」

 

 グレモリーの叱咤激励を受けながら、大量の荷物を背にふらつきつつ兵藤は歩く。

 

 ライザーとの会談の翌日、グレモリー一行はとある山に来ていた。

 

 

 

 前日

 

「合宿だと?」

「ええ、大変不本意ではあるけどライザーの実力は本物。このままでは私たちに勝ち目は薄いわ」

 

 グレモリーは悔しそうにしながら言う。

 そして、それを否定できない眷属たちもそれぞれ表情を暗くする。

 

「でも」

 

 続いた言葉にグレモリー眷属は顔を上げる。

 

「私は私の僕たちの素質がライザーの眷属の素質に劣っているとは思わないわ。それに能力だけで勝てるほど戦いが甘いものではない事を私は知っているわ」

 

 グレモリーは苦笑いしながら彼らのことを思い出す。

 実力だけなら私たちの方が圧倒的に上なのに私たちを追い詰めかけた堕天使のことを。

 

「10日間。ソーナが作り出してくれたこの時間を一瞬たりとも無駄にするわけにはいかないわ。だから合宿を行います、勝つための合宿を」

 

 グレモリーは改めて自分の眷属に宣言する。

 それに一番初めに反応したのは

 

「よっしゃあ!やってやる、部長!俺、強くなります!」

「ふふ、その意気よ。イッセー」

 

 兵藤が立ち上がって叫ぶ。

 それにつられて、他の眷属たちもやる気を口にしだす。

 

「で、いつから行くんだ?」

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

 荒垣がグレモリーに問いかけると全員が驚きの表情を見せる。

 

「なんだ、俺が行っちゃあワリィのかよ」

「い、いえ。荒垣君にも参加をお願いしようとは思っていたけど「何で俺が…」って断られると思ってたし、まさか貴方の方から提案してくるとは思っていなかったから…」

 

 グレモリーの言葉に周りも頷く。

 

「今回はテメェから首を突っ込んだようなモンだ。ソイツが戦いで迷惑かけるわけにはいかねぇ。連携やらなんやらを確認する必要がアンだろ」

 

(グレモリーも言ってたが前の戦いもこいつらと連携が取れてりゃあもっと楽だったはずだ。なら、行くしかねぇだろう)

 

「そうね、ありがとう。荒垣君。歓迎するわ。」

「俺のために行くんだ、礼はいらねぇ」

「おおおおおお!!荒垣先輩も来てくれるんですね!!よろしくお願いします!!それにさっきはありがとうございました!!」

 

 兵藤は荒垣のところに駆け寄る。

 

「うるせぇ、ちょっと落ち着け。俺が行った所で別段モノを教えられるわけじゃねぇぞ」

「僕も楽しみです、堕天使を倒してみせた先輩と是非手合わせをしてみたかったんです」

 

 兵藤の後ろから木場も楽しそうに言う。

 

「はぁ、もういい。そういやぁなんで兵藤はやられたんだ」

「え~とですね」

 

 兵藤は急に焦りだし、目を逸らす。

 

 その後、グレモリーのためだけでなく、理由の一部にライザーのハーレムに嫉妬してとういう事実が明らかになり、荒垣から頭突きを喰らい、兵藤は気絶することとなった。

 結局合宿は即日となり、翌日の集合を決め、その日は解散となった。

 

 

 

 そして、現在

 

 

「し、死ぬ~」

 

 グレモリー家の別荘に到着すると、荷物をリビングに置き、兵藤は床へと倒れこむ。

 修行の一環として他のオカルト研究部の部員の荷物も持たされていたため既に疲れきっていた。

 

「あはは、お疲れ様。イッセー君、はい水」

「くあ~サンキュ」

 

 兵藤は木場から水を受け取り飲み始める。

 そこへリビングの扉が開く。

 

「あ、荒垣先輩。お疲れ様です。遅かったですがどうしたんですか?」

「ああ、たまたま見つけたからこれを採ってただけだ」

「うお~すげぇ」

「すごいですね」

 

 二人は荒垣の持っていた袋を見ると山菜やキノコが大量に入っていた。

 

「ここがグレモリーのモンだって聞いたから少し採らせてもらった」

「僕も採ってたんでまとめておきましょうか」

「ああ、どこにある」

「こっちです」

 

 そう言って木場と荒垣はキッチンに向う。

 

「晩飯が楽しみだ、でも誰が飯を作ってくれるんだ?まさか、部長や朱乃さんの手作りご飯が食べられる!?ぐふふ、よっしゃ!やる気でてきたぁ!!」

 

 兵藤はジャージへと着替えだす。

 

 その直後、再びリビングのドアが開く。

 

「へ?」

「あらあら~」

「きゃあっ!」

「最低です…」

 

 そこにはジャージに着替えた女性陣がいた。

 

「イッセー、ここはリビングなんだから浴室とかで着替えなさい」

 

 頭に手を置いたグレモリーが兵藤に言う。

 

「す、すいませんでした~!!」

 

 着替えを持って半裸のまま浴室へと駆けて行った。

 

「なんかあったのか?」

 

 キッチンから戻ってきた荒垣が尋ねる。

 

「ちょっとした事故よ、さぁ二人も着替えて修行開始よ!」

 

 

 

 まず始めに行われたのは兵藤への特訓を中心としたメンバーの能力の確認だった。

 

「イッセー、今日一日でまずは貴方の適正を確かめさせてもらうわ、そのために私の『騎士』である祐斗・『戦車』である小猫・『僧侶』…は今はいないから代わりに『女王』である朱乃のそれぞれと戦闘もしくは講義を受けてもらうわ」

「はい!!」

「貴方の駒は『兵士』、でも全ての駒に成り得る可能性も持っているわ。他の者達の動きを学びなさい、わかった?」

「はい、部長!!」

「じゃあ、まず祐斗が相手ね」

「わかりました、部長」

「アーシアは先に朱乃に魔力の扱い方の基礎を学びなさい、貴方がどれくらい神器を操れるようになるかで私たちの勝率も大分変わるはずよ」

「はい、わかりました!朱乃さんよろしくお願いします!」

 

 グレモリーの言葉を聴くと、アルジェントは姫島の方を向き大きく頭を下げる。

 

「うふふ、よろしくね。アーシアちゃん」

「そして、荒垣君だけど…」

「おう」

「小猫と模擬戦かしら?」

「どうして俺だけ疑問形なんだ」

「いや、正直貴方のカテゴライズが難しいのよ」

「おい!」

「だって、普通の人間は巨木を叩き折ったり、堕天使の武器を破壊したりなんてできないのよ」

「出来ちまうもんは出来ちまうんだ、しょうがねぇだろ」

「なので、貴方がパワータイプなのはわかっているから、小猫と模擬戦をしてどの程度の力があり、どの程度の耐久力があるのかを確認してほしいの」

「はぁ、わかった」

「じゃあ、小猫よろしくね」

「はい、わかりました。では荒垣先輩行きましょう」

「あと、祐斗」

「はい、荒垣先輩どうぞ」

 

 木場はそう言いながら一本の木刀を渡してくる。

 

「荒垣君の武器は鈍器みたいだけど、さすがに危険すぎるから木刀を渡しておくわ」

「ああ」

 

 荒垣が木刀を受け取ると塔城は歩き始める。

 

「どこに行くんだ?」

「あの後、教会の裏を見ました。アレを考えると別荘の近くで戦うのはあまり得策じゃない気がします」

「あ~」

 

(あの時は場所が場所だけに周りの木を圧し折りまくったからな)

 

「わかった、場所変えるか」

「はい、そうしましょう……………………二人きりです」

(ん、塔城のヤツ、もう拳を握ってやがる。やる気があるのはかまわねぇがアキみたいに戦闘狂じみたことにはなってねぇだろうな…)

 

 塔城が先に歩き、それに荒垣が続く。

 二人は10分程歩くと視界が開け、川に突き当たる。

 

「ここならいいでしょう」

「そうだな」

「はい、はじめましょう」

「ああ」

 

 そう言うと塔城は構える。

 荒垣は肩に背負っていた木刀を降ろし、半身に構える。

 

「いきます」

 

 掛け声とともに塔城が先手を取る。

 塔城の突撃に合わせて荒垣は木刀を振り上げ、踏み込みとともに振り下ろす。普段の獲物とは異なり軽いため、その速度はかなりのものであった。

 だが、塔城は小柄な身体を生かし、荒垣の懐に潜り込み、左右のコンビネーションを叩き込む。

 

「ぐぅッ」

 

 荒垣はその小柄な身体から繰り出されたとは思えない重い攻撃に後ろに後ずさる。

 だが、攻撃を受けながらも木刀の柄の部分で塔城を殴りつける。

 そのまま塔城は地面に叩きつけられるかと思いきや、両手を地面に着き、その反動を使って荒垣を蹴り飛ばす。

 荒垣は咄嗟に胸の前で両手を交差し、防御の構えを取るが勢いの乗った蹴りを抑えきれず後ろに吹き飛ばされる。

 

(足を引きずった状態でもこれだけ吹き飛ばされるか…まともにくらったらやべぇな)

 

 塔城のほうは荒垣を蹴り飛ばした反動を使って空中で一回転し、地上に降り立つ。

 

「お前の戦っているところはバイサーの時しか見てねぇが、『戦車』ってのはどいつもこいつもこんな馬鹿力してんのか?」

「私も他の『戦車』のことはあまり知りませんがそれ相応の力はあると思います」

「マジか…」

 

(ちっ、あの野郎は駒が全て揃ってた…相当厄介な戦いになりそうだな)

 

「それより」

「あ?」

「荒垣先輩の方が…すごいと思う」

「んだよ、急に」

「最初のコンビネーションは少し力を抜きましたけど、直後に反撃が来たから驚いて私も思いっきり反撃しました。なのに骨が折れるどころか傷一つありません。ショックです、人間業ではありません」

 

 そう言って落ち込む塔城。

 

「そりゃ、喜んでいいのか、人外扱いされて怒りゃいいのかどっちだ」

「とりあえず」

 

 塔城が顔を上げる、その表情は落ち込んだそれではなく、口の端は軽く上がり、目には闘志が宿っているのが分かる。

 

「遠慮が要らないことがわかりましたッ!」

 

 塔城は自分の言葉を言い切ると同時に再び突撃する。

 

「ッ!」

 

 再び荒垣は塔城の突撃に合わせて木刀を振り下ろす。

 先ほどと同じように塔城が避け、懐に入ろうとする。

 

 先ほどと全く同じやり取り、同じ展開になると思いきや、

 

「オラァ!」

 

 懐へと入り込んできた塔城へと膝を叩き込む。

 

「アウッ!!」

 

 腹を思い切り蹴られ、思わず悶絶する塔城。

 そこへ容赦なく木刀が叩き付けられる。

 塔城は咄嗟に転がって避けるが、木刀が地面に叩きつけられた時に生まれた衝撃と弾き飛ばされた石が塔城を襲う。

 

「ウウッ!!」

 

 石の弾幕と衝撃によって塔城は吹き飛ばされる。

 『戦車』の防御力故か小柄な体格故か石が身体に突き刺さることはなかったが、この一瞬で既にジャージはボロボロとなり、擦り傷だらけとなる。

 少しよろめきながら塔城は立ち上がる。

 

「堕天使を倒したとは聞いていましたが一撃があそこまで重いとは思いませんでした」

「同じ手を続けて使うから痛い目を見るんだ」

「はい、身を持って体験しました」

 

 塔城は腹の辺りを押さえ、顔を歪める。

 

「私もはぐれ悪魔相手にある程度の経験を積んでいますが荒垣先輩はどうやってこんなに強くなったんですか?」

「昔な…」

 

 少し懐かしそうに、それ以上に複雑そうな表情をしながら荒垣は答える。

 

「…昔何があったのか知りませんが、私以上に実践慣れしているように思います。なので」

 

 塔城は腹を押さえていた手を離し、三度構えなおす。

 

「部長からは荒垣先輩を頼まれましたが、私が教わる気で行きたいと思います。」

 

 荒垣を見据える。

 

「…俺は他人様にモノを教えるなんてガラじゃねぇ」

「でも」

「だから」

「?」

 

 荒垣は木刀を肩に担ぐ。

 

「お前の身体に叩き込む、それでいいな」

「はい!!」

 

 塔城は三度突撃を仕掛ける。

 その顔に笑顔を浮かべながら。

 

 

 

 その後、塔城が気絶するまで戦闘は続けられた。

 

 





 こんにちは、ガイル01です。遅れてしまい大変申し訳ありません。前話から2週間空きとか…これからはもうちょっと頻繁に更新していきたいと思います。
 本当ならこの後のも書いてから挙げようかと思ったんですが、そうするとまた時間が…今回は短い上にほとんど話が進んでいませんがお許しください。
 今回は合宿でキャッキャウフフな感じかと思っていた方…すみません、まさかのバトル回です。しかも、次回ある人がえらいことになるのが確定しているという…
 模擬戦だの女性だのガキさんの前では無意味でした…実践で強くなっていったガキさんたちなら普通ですよね(汗)
 小猫ちゃんファンの方もうしわけありませんでしたァ!!

 最初にも書きましたが、UA30000、感想50、お気に入り500超えと本当に吃驚しました!!皆様どうもありがとうございます。これからもがんばっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

では、また次回お会いしましょう。



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第16話


お待たせしました!

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。





 

「ん…」

 

(まぶしい…ここは…)

 

 塔城は目覚めたばかりで上手く頭が働かないのか周りを何度か見渡す。

 自分がいるのは大きな木の陰、時折吹く風が気持ちよく、目に映るのは穏やかに流れる川、と開けた空間。ただ所々に穴が開き、美しい自然の景観とは言えない。

 

(確か…ツゥ!)

 

 そこで、自分の様子を見る。身体のいたる所が痣や擦り傷だらけであった。特に腕はひどかったが腕の痣の部分には濡れたタオルが巻かれており、熱を持った傷に心地よい。

 

(そうだ、私は荒垣先輩と戦って…負けた)

 

 塔城は起き上がった身体をまた横に倒す。

 

(荒垣先輩は人間なのに負けた、私は実は弱いのかな…)

 

 人間や悪魔なんて戦いに関係ない、強い者は強い。

 荒垣の実力も認めているが、それでも負けてしまった悔しさからそんなことを考えてしまう。

 

(あの時だって私は何も出来ず…)

 

「強くならなきゃいけません、強くならなきゃ…」

 

 つい、頭で考えていたことが口からこぼれる。

 

「お、起きたか…」

「!?荒垣先輩!?」

 

(聞かれてしまいましたか!?)

 

「わりぃ、驚かせたか」

 

 塔城は急に脇から声を掛けられ、驚きながらも起き上がろうとする。

 

「い、いえ、私こそ驚いてしまいすみませッ」

「悪魔がいくら頑丈だっていったってあんだけ打たれりゃきついだろ。無理はすんな、逆に迷惑だ」

「すみません」

 

 若干気まずい空気が場に流れる。

 

「あの…」

「あっ?」

「荒垣先輩はなぜ今も強いんですか?」

「俺がそこそこ出来んのは昔…」

 

 それをさえぎるように塔城が言葉を紡ぐ。

 

「はい、強くなったのは昔何かがあったからと聞きました。でもさっきの動きは今でも鍛え上げている人の動きです。なぜ今も?」

 

 真剣な眼差しで塔城は荒垣を見つめる。

 

「はぁ…」

 

 荒垣は頭をかきながら塔城の隣に座る。

 

「始めはダチとの約束があったからだ。」

「友達ですか?」

「ああ。ほっときゃあいいのにわざわざ寄ってくる訳のわかんねぇヤツだ。」

 

(そうは言いつつ荒垣先輩楽しそう…まさか女の人)

 

 塔城の中で複雑な感情が生まれつつも、荒垣の話しを聞く。

 

「そんなヤツの頼みに必要だろうと考えて最初は鍛えた」

 

(まぁ、他にも色々あるが)

 

「最初は…ですか?」

「ああ、今は違う。強くなるのは俺の意思だ」

「荒垣先輩の…意思」

「ああ、俺自身が覚悟を決めた。他の誰でもない俺自身でだ」

 

 そう言って荒垣は立ち上がり、塔城はその背中を追う。

 塔城には荒垣のその背中は広く大きく見えた。

 

「俺から言えんのは一つだ。強くなろうとする意思を他のヤツに預けんな。そうしちまったら終いだ」

「…はい」

 

(荒垣先輩が強い理由が少しわかった気がします)

(でも、じゃあ私はなぜ戦う?強くなる?あの人のため…)

 

「おい…」

 

(でもそれは…)

 

「おいッ!」

「はい!?すみません、考え事をしていました」

 

 そう言って塔城は立ち上がる。

 

「ならいいがって大丈夫なのか?」

「少し痛みますが動けないほどではありませんし大丈夫です」

「なら昼飯食いにいっぺん戻んぞ」

 

 荒垣は歩き出そうとする。

 

「ちょっと待って下さい。せっかく川に来たので魚を獲っていきます」

「あぁ?そんなことしている時間は…おい」

 

 塔城は川まで近づきおもむろに近くに在った岩を掴む。

 

「ん…まさか!?」

 

 そして

 

「やめッ」

 

 川の中にあった大きな岩にぶつけた。

 

「あ~」

 

 大きな音とかなりの衝撃が当たりに響く、その衝撃はもちろん川に伝わり…

 

「獲れました」

 

 川に逆さまになってプカプカと浮かぶ魚を手に塔城は自慢げに言う。

 

「おま…はぁ。グレモリーの敷地だからまだ良いものを他のところではやんな」

「わかりました」

 

 期待していた言葉が返ってこず、少し不満そうに塔城は答える。

 

「浮かんでるやつ拾ってとっとと戻んぞ」

「はい」

 

 二人は十数匹の魚を捕まえ、一旦合宿所へと戻った。

 

 

………

……

 

 

「おう、戻ったぞ」

「戻りました」

「お二人ともお帰りなさ!?小猫ちゃんどうしたんですか、その格好!?」

 

 二人を出迎えた姫島はボロボロになった塔城の格好を見て驚く。

 

「アーシアちゃん!!こっちに来て下さい!」

 

 姫島が呼ぶとエプロンをつけたアルジェントがやってくる。

 

「は~い、朱乃さんどうしましたか?小猫ちゃんその傷は!?」

「訓練でつきました」

「小猫ちゃんの治療をお願いします!」

「は、はい。とりあえずこちらへ」

「はい」

 

 そう言ってアルジェントと塔城は奥へと消えていった。

 

 

「あれは荒垣君が?」

 

 姫島は荒垣に非難の視線を投げつける。

 

「ああ、あいつがそれを望んだからな」

 

 だが、荒垣はその視線に一切動じずに言ってのける。

 

「…ふぅ、両者の同意の上でしたら文句は言いませんが気をつけてくださいね。アーシアちゃんがいるからと無理はしてはいけませんよ」

「…ああ」

「その間が不安ですが、とりあえず午前中お疲れ様でした。今ご飯の準備をしていますのでちょっと待っててくださいね」

「わかった、外にいるから出来たら声かけてくれ」

「わかりました」

 

 そう言って一旦部屋に戻った後、荒垣は外に出る。

 火を起こし、外にある蛇口で下準備をして魚を焼き始める。

 

 しばらく経つと、魚が焼ける良い匂いがしてくる。

 火から少し離して焼くため時間はかかるが、表面が焼けコゲるのでなく、中までしっかり熱が通り、外側はパリッと仕上がる。

 時々、パチッといいながら川が弾け、魚の油が地面に落ちジュッと音を立てる。

 視覚、聴覚、嗅覚を刺激し、触角と味覚は口内で涎という形でまだかとまだかと抗議を始め、五感をフルに刺激してくる。

 

「荒垣さ~ん」

 

 魚を焼くのに集中していると建物の方からアルジェントが走ってくる。

 

(手に大皿を持ってるって事はこの魚を乗せるためのモンか、取りに行く手間が省けたな)

 

「あっ!?」

「なっ!?」

 

 こちらに向かって走っていたアルジェントが皿で足元が見えなくなっていたために躓く。

 

「チッ」

 

 荒垣は咄嗟に手を伸ばし、アルジェントの服の襟首を掴む。

 

「みゅッ!?」

 

 倒れるのは防いだが首が絞まり、アルジェントがおかしな声を出す。

 そして、首が絞まった衝撃で手から皿が零れ落ちる。

 

「ぬぉ!」

 

 荒垣はそれを地面すれすれでなんとか左手でキャッチする。

 

「ふぅ」

「ケホンケホン、荒垣さんありがとうございました」

 

 体勢を整えながらもむせ返りつつ涙目になりながらアルジェントは礼をいう。

 

「あ~咄嗟だったからあんなやり方になって悪かった」

「いえいえ、元は私が悪いので気にしないでください」

「そうか。ただ、お前は何もない時でさえコケるんだ。なんか持ってる時は気を付けろ」

 

 いつの日かの登校時を思い出しながら荒垣は言う。

 

「う~あれはたまたまです。荒垣さんは意地悪です」

「俺なんかに優しさを求める時点で間違ってんだ」

「いえ、荒垣さんは優しい人です!私をあの時助けてくれました!!」

「意地悪なのと優しいのどっちなんだよ」

「え~と、はぅ~」

 

 さっきとは異なり羞恥で顔を赤くし、困り果てるアルジェント。

 

「それで何の用だ。まぁ、大体予想がつくが」

「はい、朱乃さんが荒垣さんがお魚焼いてるみたいだから取りに行って欲しいってお願いされました」

「そうか」

「あと…」

「ん?」

 

 アルジェントは荒垣の腕に自分の手を乗せる。

 そうすると、淡い緑の光が荒垣の腕を包み込む。

 

「小猫ちゃんから午前中どんな特訓をしてるか聞いたところ、朱乃さんが多分荒垣さんも怪我をしてるから見てきてって」

 

(お見通しってことか…)

 

 確かに、塔城ほどボロボロという訳ではないが、『戦車』の攻撃を両腕で何度も防いだため痣が出来ていた。そして今、料理の際に捲くったジャージの袖からは青痣が見えていた。

 その青痣は緑の光に包まれて消えていく。

 光が消えた時、荒垣の傷は完治していた。

 

「俺が受けるのは初めてだがスゲェな」

「えへへ、そう言って貰えると嬉しいです」

「助かった」

「はい、どういたしまして!」

 

(午後からは恐らく木場とヤルことになるはずだ、なら予め言っとくか)

 

「アルジェント」

「はい」

「お前はなんでここにいる」

「合宿所ですか?」

「違う!はぁ…」

 

 首をかしげるアルジェントに荒垣は話を進める

 

「お前は悪魔になりたくてなったわけじゃねぇ。その力も得たくて得たわけじゃねぇんだろ。お前は周りに流されてここにいて、本当はその力も使いたくねぇんじゃねぇのか?」

 

 アルジェントは目を瞑り、何かを考え始める。

 1分程経ち、目を開けてアルジェントは言う。

 

「はい、私はこの力を得たくて得たわけではありませんし、色々な事もありました。悪魔になったのもイッセーさんや部長さんがなさってくれたことでした」

「ああ」

「でも、この力も悪魔になったことも後悔していません。私は今幸せです。全てが今の私を作っているものです、私のうちのどれか一つでも欠けていたら今の私はありません。この力も悪魔であることもこの先何があろうと否定することも後悔することもありません。」

「…」

「そして、私は今の幸せな時を与えてくれた皆さんを助けたい。恩…とかではなく、私が私の意思で皆さんの役に立ちたい。困ってたら助けてあげたい。」

 

 荒垣をまっすぐ見つめアルジェントははっきりと言う。

 

「…と言ってもまだまだダメダメですが」

 

 真面目な顔から一転照れくさそうに言う。

 

(こいつは…グレモリーのヤツラの中で誰よりも…)

 

「グレモリーも言ってたが、回復の力を持つお前はチームの柱だ」

「でも私はまだ未熟で…」

「お前がどう思おうが回復の力を持っている時点で戦闘の要になる、お前が倒れればチームのヤツラも倒れる。だが、お前がいれば前衛は前に出れる。」

 

(コイツは信頼に足る)

 

「お前は常に生き延びることを考え、常に落ち着いて力を出すことが出来るようになれ」

「はい」

「お前が俺を治すなら、俺がお前も……………守ってやる」

「はい!!」

 

 最後の言葉にアルジェントは嬉しそうに返事をする。

 荒垣はアルジェントに背を向け、魚の様子を見る。

 

「魚が焼けた。持って行くぞ」

「は、はい」

 

 荒垣はまとめて魚をアルジェントの持つ皿に乗せ、家へと歩き出す。

 いつもより足早に…アルジェントはそれをうれしそうについていった。

 

 

………

……

 

 

「うめぇ~!」

 

 頬をパンパンにしながら兵藤が叫ぶ。

 

 あの後、兵藤と木場、その様子を見に行っていたグレモリーが帰ってきて昼食となった。

 

「いや~まじうめぇっす!朱乃さんが作った料理を食えるなんて、生きてて良かった!!」

 

(泣いてまでして喜ぶことか…?)

 

 荒垣は兵藤の様子に呆れつつ食事を進める。

 

「イッセーさん、私もお手伝いしたんですよ。食べてみていただけますか」

 

 そう言って自分の作ったものを差し出す。

 

「美味い、アーシア美味いぞ!」

「良かったです!もし良かったらもっとどうぞ」

「ああ、貰うよ!」

 

 兵藤が食べる様子を不安そうに眺めていたアルジェントだが兵藤の言葉に笑顔で答える。

 

「どれもうめ~この焼き魚も皮はパリッパリで中がジューシーで美味いっす。焼いたのは朱乃さんですか?流石ですね!」

「うふふ、魚を焼いたのは私ではありませんわ」

 

 姫島は嬉しそうに、そしていたずらを考え付いた子どものような笑顔を浮かべながら答える。

 

「え、じゃあアーシア!?」

「私でもありませんよ」

 

 アルジェントも同様の笑顔で答える。

 

「もしかして小猫ちゃん?」

「もしかしてと言う言葉が気になりますが私でもありません」

 

 兵藤に料理が出来ない扱いをされ、少し不機嫌そう塔城が答える。

 

「え…じゃあ…」

 

 兵藤は荒垣のほうを見る。

 

「俺が作っちゃワリィか」

「いえいえいえいえいえ、予想外だっただけで!?」

 

 荒垣が睨むと兵藤は両手を自分の前で振り、焦りながら答える。

 

「魚焼く位なら誰でも出来んだろ」

「あら、そんなことないわ、焼き物も案外難しいのよ。焼き加減とかも絶妙だしとても美味しいわ。それに荒垣君は料理が上手でしょ?」

 

 誤魔化そうとする荒垣にグレモリーがすかさず指摘を入れる

 

「そうなんですか!?」

「初耳です」

 

 荒垣が料理を出来る事を知らない兵藤とアルジェントが驚く。

 

「…なんでグレモリーが知ってる」

「あら、不思議なことではないでしょ。朱乃やクラスメイトから聞いたわ。小学校の頃、料理で女の子を助けたって」

「すげぇ!」

「そうなんですか、すごいです」

 

 後輩二人が尊敬の眼差しで荒垣を見つめる。

 

「んな昔のこと美化されてるだけだろ。たいしたことしてねぇ」

「あら、忘れたって言わないのね」

「…」

「荒垣先輩!先輩の作る飯を食べてみたいです!」

「私もです!」

「「お願いします!!」」

 

 二人は大きく頭を下げる。

 

 荒垣が目を背けると他の者達が見えるが、木場と姫島が笑顔を浮かべ止める気はなさそうに見える。

 塔城は一見無表情のように見えるが、明らかにソワソワし言外に「食べたい」といっているように見える。

 グレモリーはとても楽しそうに荒垣を見つめる。

 

(グレモリー、覚えてやがれ)

 

「気が向いたらな」

「「ありがとうございます!!」」

「気が向いたらっていってんだろ…」

 

 最後の言葉は彼らには届かず、何が出来るのか楽しみだと二人が話す様子を見て、荒垣は諦めた。

 その代わり、グレモリーにからかわれたことに対する仕返しを心に決めた荒垣であった。

 

 

 

 食後、お茶を飲みながら午後の修行のミーティングに入る。

 

「さて、午後だけど組み合わせを変えていくわ。午後はまずアーシアとイッセーと荒垣君は朱乃と共に魔力の修行を。祐斗と小猫は二人で模擬戦。その後、荒垣君と祐斗。小猫とイッセー。アーシアは私と基礎訓練ね。夕食までに出来るのはこれぐらいかしら」

「ええ、いいと思います」

 

 姫島がグレモリーの言葉に答え、他の皆も頷く。

 

「では、午後も頑張りましょう!」

 

 

………

……

 

 

「さて、じゃあまずは魔力の扱い方からいきますね。体内に流れる魔力を血の流れに合わせる様に集めます。意識を集中し、魔力の波動を感じるのですよ」

「ふぉおおおおおお」

 

 姫島の説明に兵藤が挑戦するが一向に成功しない。

 

「じゃあ、アーシアちゃん。見本をお願いできるかしら。午前中にやった感じでやれば丈夫だから」

「は、はい」

 

 アルジェントは緊張した様子ながらも魔力を上手く操り、テニスボール位の大きさの魔力の塊を手のひらに作り出す。

 

「はい、アーシアちゃんお見事です。やっぱりアーシアちゃんには魔力を操る才能があるのかもしれませんね」

「ありがとうございます」

 

 姫島に褒められ、頬を染めるアルジェント。

 

「では、アーシアちゃんはイッセー君の様子を見ててもらえますか。私は荒垣君をみますから」

「はい、わかりました!イッセーさんよろしくお願いします」

「ああ、アーシアよろしく」

 

 そうして二人で魔力の基礎訓練を始める。

 

「では荒垣君ですが…」

「ああ」

「難しいですか?」

「…」

 

 荒垣も兵藤と同じように集中をしてみたが魔力が具現化することはなかった。

 

「う~ん、なぜでしょう…」

「さぁな」

 

(俺のペルソナは元々ほぼ物理技しか覚えなかったからな。他のヤツラみてぇに火や雷なんざ使えなかった、ペルソナがもう一人の自分なら俺もアルジェントがやったようなのは出来ねぇだろうな)

 

「ん?では荒垣君。貴方はどうやって堕天使と戦っていたんですか?」

「普通に殴り飛ばしただけだが」

 

(前回はな)

 

「ん~もしかして…荒垣君武器を構えてくれますか?」

「わかった」

 

 荒垣が木刀を構える。

 その様子を姫島がジッと眺める。

 

「実際に戦闘を意識して構えてみてください」

「ああ」

 

 荒垣は一呼吸置いて、臨戦態勢になる。

 雰囲気の変化に兵藤とアルジェントも修行を止め、荒垣を眺める。

 

「…はい、ありがとうございます」

「おう」

 

 フッと張り詰めた空気が和らぐ。

 

「今、荒垣君が戦闘態勢に入ったとたん、魔力が活性化し身体と武器の強化が確認できました。やはり、以前部室で話したように無意識では魔力が使えているようですね。もしかしたら、荒垣君は強化の特化型なのかもしれませんね」

「そうか…」

 

(やっぱりか、もう一人の俺である俺のペルソナは魔法がつかえねぇんだから俺も使えねぇわな)

 

「でも…」

「ん?」

「あの時計がなくても、魔力は使えるみたいですね」

「ッ!」

 

(そういや、ペルソナの事を隠すためにあの時計の魔力を使って強化してることになってやがったはずだ。マズッた)

 

「おそらく、自身の魔力と時計の魔力の両方を合わせての強化。それが荒垣君の強さの一つなのかもしれませんね」

「あ、ああ…そうだな」

 

(あぶねぇ、バレなかったか。あの時計とはパスがつながっているらしいが、得体のしれねぇ力なんざ使う気はねぇ。今までもペルソナによる強化だけだ。だがバレねぇようにもあの時計は常に持ち歩くようにしねぇとな。…まだ、コイツラに伝える気にはなれねぇ)

 

「では、荒垣君は自身と武器への魔力強化を鍛えましょう」

「ああ」

 

(強化に関しては今まで確かに無意識だったからな。意識するだけでも大分変わるだろう)

 

「朱乃さん、すみませ~ん」

「はい、イッセー君どうしましたか?」

 

 俺と姫島の話しが一段楽したところで兵藤が姫島に話しかける。

 

「実は相談が…」

 

 兵藤が姫島に近寄り、何かを言う。

 姫島が一瞬あっけに取られた顔をすると、笑いながら外に出て行く。

 

「兵藤、なにした」

「ちょっと考えたことが実現可能か相談したんですが…」

 

 荒垣と兵頭が話していると姫島が大量のたまねぎやにんじん、ジャガイモを持ってきた。

 

「野菜なんか持ってきてどうすんだ」

「ではイッセー君。これを全部魔力でお願いしますね」

「と、いうことは!?」

「ええ、恐らく実現可能だと思います」

「おっしゃああああ!!やってやるぜえええええ!!!」

 

 そう言って兵藤は姫島から野菜を受け取り、手に持ちながら野菜を睨みつけ始める。

 

「おい、姫島。あいつはなにやってんだ」

 

 野菜を睨みつけながら時折グフフと笑う兵藤にドン引きしながら荒垣が尋ねる。

 

「うふふ、秘密ですわ。ただ、とてもイッセー君らしいことですわ」

「おいおい、嫌な予感しかしねぇぞ」

「うふふふ」

「はぁ」

「じゃあ、アーシアちゃんもこっちへ。一緒に午前の続きをしましょう」

「はい!」

 

 そうして、不気味な兵藤を除き、三人で魔力の訓練を行った。

 

 

 

 ある程度するとグレモリーが荒垣たちの元を尋ね、交代の時間だと告げる。

 家から出ると木場と塔城が待っていた。

 

「じゃあ、お昼に言ったように祐斗と荒垣君、イッセーと小猫のペアで修行を行いましょう」

 

 グレモリーがそういうと木場が荒垣の下へと近寄る。

 

「荒垣先輩。よろしくお願いします」

「おう」

「先輩と手合わせできるのを楽しみにしていました」

「…そうか」

 

(やっぱり「手合わせ」に「楽しみ」か…)

 

「そういえば何人かは荒垣君が戦っているのをしっかり見たことがないわよね。なら、最初は祐斗と荒垣君の模擬戦を皆で見学しましょう、では二人ともお願い」

 

 グレモリーがそういうと木場が木刀を構える。

 

「はぁ」

 

 ため息をつきつつ、荒垣も木刀を構える。

 

「では、はじめ!!」

 

 グレモリーの宣言と共に木場が動く。

 正面から駆けてきたかと思うと、急に姿が消える。

 荒垣の背後から木刀を振り下ろす。

 荒垣はそれを片手で受け止め、木場を弾き飛ばす。

 

「参りましたね、これを簡単に受け止めますか」

「…」

 

(あの頃、不意打ちなんかくらったら即効で戦闘不能になったからな。下手すりゃ死んでた。あんな分かりやすい不意打ちを喰らうか。それより…)

 

「なら、行きます!」

 

 木場は次々と荒垣を攻め立てる。

 荒垣はそれを防ぐ。時に木刀で、時に避け、そして時に当たり…致命傷に成り得るものを取捨選択し、耐え続ける。

 

「これ以上は…」

 

 この様子を見て、一方的にやられていると判断したグレモリーは試合を中断しようとする。

 

「部長、待ってください。」

 

 木場が攻撃を止める。

 

「祐斗?」

 

グレモリーが不思議そうに名を呼ぶが木場は荒垣を見据える。

 

「荒垣先輩。なぜ仕掛けてこないんですか」

「満足したか…」

 

 構えを解き、荒垣は言う。

 

「え?」

「満足したかって言ってんだ」

「なにを」

「この模擬戦に何の意味がある。お前は手加減し、武器も実践とはかけ離れたモン。俺のは鈍器だからそこまで問題ねぇがお前は違うだろうが。嘗めてんのか?」

「ッ!」

「それに今俺たちは何のためにここにいる。俺は今のお前に負ける気はしねぇ。あんまり調子コイてんじゃねぇぞ」

 

(コイツは…10日後には自分の仲間が主の人生がどうにかなっちまうかもしれねぇのに、なんだ。手合わせだぁ、手加減だぁ。お遊びのつもりか?ふざけるなよ)

 

「グレモリー」

「な、なにかしら」

 

 荒垣の怒気に、一瞬怯みながらグレモリーが答える。

 

「武器を出せ」

「え?」

「俺の武器だ」

「何を言ってるの?そんな危険なこと「部長、僕からもお願いします」祐斗!?」

「あそこまで言われては僕も全力を出さないわけには行きません」

「はぁ、危険すぎることはしないこと!」

「…ああ」

「感謝します」

 

 グレモリー簡易魔法陣からバス停を取り出し、荒垣に渡す。

 木場は剣を創り出す。

 

「それが、お前の…」

「ええ、僕の神器(セイクリッド・ギア)の『魔剣創造(ソード・バース)』です」

「そうか、なら全力でかかってこい」

「言われなくても」

 

 木場は先ほどを越えるスピードで荒垣に打ち込む。

 それをバス停で防ぎ、反撃するが既にその場には木場はおらず、背後から斬撃が襲い掛かる。

 身をよじり、何とかそれをかわすがジャージが斬られ、その奥の肌から薄く血がにじむ。

 

「ハァッ」

 

 木場が距離をとったかと思うと、赤い剣を創り出し、その剣から炎を産み出す。

 

「フッ」

 

 荒垣は自分に迫り来る炎にバス停を振るうことで掻き消す。

 しかし、炎のせいで木場の姿を見失う。

 

(どこだ?)

 

「ハアアアッ!」

 

(上か!)

 

 荒垣は咄嗟にバス停を上に上げ、木場の体重を乗せた振り下ろしを受け止める。

 

「不意打ちに…掛け声なんて入れてんじゃねぇ!」

 

 木場を武器ごと吹き飛ばす。

 

「クッ」

 

(力ではやはり荒垣先輩の方が上。なら!)

 

 木場は距離をとりつつ、魔剣の特殊効果の炎や風、氷などで距離をとりつつ攻撃し、隙を見つけては近接を仕掛けるヒット&アウェーの戦法を取る。

 荒垣は炎を武器で掻き消し、風を地面に武器を叩きつけた衝撃で吹き飛ばし、氷を砕き、斬撃を致命的なもののみを確実に防ぎ、耐える。

 

 荒垣に傷は増えるが決め手にはならず、戦いは決め手に欠けて長期戦へと様相を変えていく。

 

 常に動き、様々な魔剣を創り出すことで木場は疲労が溜まり、少しずつ焦りが見え始める。

 荒垣はひたすら耐え、木場を観察し続ける。

 剣筋、魔剣、動き、癖、ありとあらゆる動きを一つたりとも見逃さぬよう。ジッと観察する。

 

 そして、ついに決着の時が訪れる。

 

「ハァアア!!」

 

 木場が右手に緑色のレイピア、左手に赤い西洋の片手剣を作り出し、風と炎を同時に創り出す。

 炎の竜巻が荒垣を襲う。

 

「オッラァアアア!」

 

 荒垣も意識して魔力を活性化させ、腕に送り思い切り地面に叩きつける。

 その衝撃と炎の竜巻がぶつかり、離れて見ているグレモリーたちまで衝撃が届く。

 

「あっちぃ!!」

「イッセー君、こっちへ」

 

 姫島が水で壁を作り、皆がその後ろに隠れる。

 

先ほどの衝撃の影響で土煙が舞う。

 両者が互いに姿を見失う。

 

(このタイミングで必ず来る!)

 

 荒垣は確信していた。

 その瞬間、下から伸び上がるように木場が剣を荒垣の胸へと突き出す。

 

「ナッ!」

「ようやく捕まえたぜ」

 

 レイピアは荒垣の胸には刺さらず、胸の前にあった左腕に刺さる。

 

「クッ」

 

 引いても抜けないそれを手放し、木場は咄嗟に飛び退ろうとする。

 

「逃がすかよ」

 

 だが、一瞬の遅れが命取りとなり、荒垣は木場の足を踏み抜く。

 

「ガッ!」

 

 骨の折れる音が周囲に響き、地面を蹴れなかったため木場が体勢を崩す。

 

「吹き飛べ!!」

「グァアアアッ!!」

 

 最後に右手に持ったバス停を振りぬき、腹部からメキッという嫌な音を立てて吹き飛ばす。

 地面に落ちても勢いが止まらず、2転3転してようやく止まる。

 

 全員が誰も動けない。

 

 ただその中、荒垣のみが叫ぶ。

 

「アルジェント!」

 

 その声にアルジェントが正気を取り戻し、木場の下に駆け寄る。

 

「うぁ」

 

 木場の様子は足の骨が折れ、曲がるはずのない方向に曲がり、最後に打たれた腹部は陥没していた。

 急いで治そうとするが仲間の大怪我、死への恐怖などで心が乱れて上手くいかない。

 

「う…ゲホッ」

 

 そんな中、木場は血反吐を吐く。

 

「どうして」

 

 それが焦りを産み、ますます上手く力が使えなくなる。

 

「アルジェント」

「あ」

 

 いつこちらに来たのか荒垣が隣に立つ。

 

「これが戦いだ」

「え」

「レーティングゲームだが、死ぬ場合もあると聞いた。ならそれはただのゲームじゃねぇ。特に今度のヤツは遠慮なんかしねぇだろう。なら俺や他のヤツがこうなる可能性だってある」

 

 荒垣は木場を眺める。

 肺がやられているのか呼吸のたびに苦しそうにうめき、血を吐く。

 

「アルジェント、言ったはずだ。常に冷静であれ、と。でないと木場が死ぬぞ」

「ッツ!!」

「お前は何のためにここにいる!さっき俺に言ったのは嘘か」

「違います、私は皆を助けたい。いや、助けます!」

 

 アルジェントは目を閉じ、深く一呼吸する。

 そして、自分の手に魔力を集める。

 

(お願いします!)

 

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)!」

 

 アルジェントの手から緑色の光が現れる。

 荒垣の傷を癒した時より、強く、明るく輝く光は木場を包み込む。

 

(神器は使用者の思いを力に変える、か…)

 

 光はすさまじい勢いで木場の傷を癒す。

 折れた足は元の形に、陥没した腹部も元通りになる。

 吹き飛ばされた時についた傷も癒え、戦いの前と同じ状態になる。

 

「終わり…ました」

 

 そう言うとアルジェントは倒れる。

 その様子を見て他のヤツラも駆け寄る。

 

「アーシア!」

 

 真っ先に兵藤が駆けつける。

 

「気を失っただけだ」

 

 そう言って荒垣は兵藤にアルジェントを渡す。

 

「荒垣君!!貴方!!」

 

 姫島が詰め寄よろうとすると

 

「わりぃ、俺も…後は頼んだ」

「え!?」

 

 姫島の胸へと倒れこむ。

 荒垣をよく見ると、身体中に切り傷があり、そして左腕からは多くの血が流れ出ている。

 

「ッ!!小猫ちゃん!」

「はい!!」

 

 塔城と姫島は傷口を縛り、直ぐに荒垣を抱え、部屋へと向う。

 兵藤はアルジェントを、グレモリーは木場を抱え、後に続く。

 

 

………

……

 

 

「こ…こは?」

 

 荒垣が目を覚ますと知らない天井が視界に写る。

 

「目が覚めましたか、ここは荒垣君の部屋です」

 

 荒垣は隣りからの声に横を振り向くが再び元に戻す。

 

「あら、なんでこちらを見てくれないのかしら?荒垣君」

 

(やべぇ、この威圧感。美鶴の処刑と同等だ…やったことに後悔はねぇが割りにあわねぇだろ)

 

「あ・ら・が・き・クン?」

「お、おう」

 

 覚悟を決めて、振り向く。

 

 視界に写ったのは『黒』

 一瞬何が起こったのか把握できない、しかし感じる温もりから抱きつかれているのだと気付く。

 

「お、おいッ!なにしてやがる、離れろ!」

「心配しました」

「ハァッ!?」

「荒垣君が倒れた時、沢山の血が出て…死んでしまうかと思いました」

 

(倒れて、力が抜けたせいで出血が増えたか…)

 

「…そうか」

「「そうか」じゃなくて、心配したんですからね!」

「お、おう。ワリィ」

 

 姫島のすさまじい剣幕に咄嗟に謝る荒垣。

 

「本当に分かっているんです?」

 

 姫島はジト目で睨みつける。

 

「あ、ああ」

「はぁ、ならいいです。祐斗君も「自分が不甲斐ないためこんなことになったので荒垣先輩を責めないでほしい」って言ってましたから」

「あいつは目が覚めたのか?」

「ええ少し前に」

「傷は」

「アーシアちゃんのおかげで問題ありません」

「そうか」

 

 木場の様子を聞き、一息つく。

 

「あと、荒垣君もアーシアちゃんにお礼を言っておいてくださいね。」

 

 荒垣が自分の身体を見ると自分の身体も全く傷がないことに気付く。

 

「あの後、三人の中で一番最初に目を覚まして、疲れているのにもかかわらず治療をしてくれたんですから」

「わかった、礼を言っておく」

「じゃあ、念のためにもう少し休んでいてください」

「ああ」

 

 姫島が出て行き、外を見ると既に日は赤く染まっていた。

 

「少し寝るか」

 

 そう言って再びベッドへと倒れこんだ。

 

 

………

……

 

 

「う…」

 

 荒垣が目を覚ますと既に日は完全に落ちていた。

 

「のどが渇いたな」

 

 そう言って、リビングに向うとそこには木場がいた。

 

「怪我はどうだ?」

「ええ、アーシアさんのおかげで問題ないです」

「荒垣先輩は?」

「ああ、俺も問題ねぇ」

 

 …

 

 二人の間に沈黙が流れる。

 

「他のヤツラはどうした」

「アーシアさん以外は夜の訓練に向いました」

「こんな時間にか?」

 

 時計は既に夜10時を指していた。

 

「ええ、悪魔は夜の方が相性がいいですから」

「アルジェントはどうしている」

「アーシアさんは…」

 

 木場が言い切る前に扉が開く。

 

「あ、荒垣さん大丈夫ですか!?」

 

 アルジェントが駆け寄り、身体に触れる。

 

「問題ねぇ、助かった」

「いえ、治ったなら良かったです。でもあまり無理はしないでくださいね」

「…考えとく」

「もう、そうやって誤魔化すんですから。あ、そういえば荒垣さんのご飯も残ってますが食べますか?」

 

 アルジェントの話を聞くと、思い出したかのように腹がなる。

 

「ふふ、じゃあ温め直してきますね。座って待っていてください」

 

 そう言ってアルジェントはキッチンへと向う。

 そして木場とまた二人っきりとなる。

 

「荒垣先輩」

「あ?」

「今日はご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした」

「…」

「「今俺たちは何のためにここにいる」、あの時は頭に血が上っていましたが終わってから考えてみるとその通りです。今回のゲームの結果次第で部長の人生が決まってしまう。それなのに僕は…」

 

 今までの自分に後悔しているのか拳を握り締め、俯く木場。

 

「…気付いたんならいいんじゃねぇか」

「え?」

「俺はただお前をぶっ飛ばしただけだが、その中でお前が気付いたことがあるなら、下向いてる暇があったらやれることをとっととやれ。まだ時間はある」

「そう…そうですね、落ち込んでる暇があったら自分を鍛え上げ少しでも部長の勝率を上げるべきですね。荒垣先輩お願いがあります」

「なんだ」

「合宿中、今日と同じ様に戦ってください」

 

 木場は荒垣の方を向いて頭を下げる。

 

「俺は指導なんか出来ねぇ。俺が出来んのは戦うことだけだぞ」

「それで充分です。いや、実戦経験。時間がない今はそれが必要なんです」

「今日みてぇに大怪我するかもしれねぇぞ」

「覚悟の上です」

 

 頭を決して上げようとしない木場に荒垣はため息をつく。

 

「はぁ、わかった。この合宿にわざわざついてきたんだ、出来る事はやってやる」

「ありがとうございます!!」

 

 荒垣の言葉を受け、初めて顔を上げる木場。

 その笑顔は向けられるのが女性だったらと悔やまれるほどに良い笑顔であった。

 

「お待たせしました~」

 

 木場との会話が一段落着くとアルジェントがカレーを持ってくる。

 

「はい、どうぞ」

「おう」

 

 アルジェントからそれを受け取り、食事を始める荒垣。

 

「そうだ、アルジェント」

「はい?」

「今日は無理をさせて悪かった」

 

 そう言って荒垣は頭を下げる。

 

「いえいえ、先ほども謝って頂きましたけど私は気にしていません!」

 

 アルジェントはその様子に焦りながら両手を振り、答える。

 

「なんかあったら言え。大抵のことは聞いてやる」

「それって…」

「貸しを作ったまんまなのは性にあわねぇんだ」

「でも」

「いいから」

「う~強引ですぅ」

「ハハ、荒垣先輩のためにも何か考えておいてあげればいいんじゃないかな」

「祐斗さんまで~。う~わかりました。考えておきます」

 

 予想外のところからの攻撃に折れるアルジェント。

 

「おう」

 

「あ、荒垣さん。私からもお話しが」

「なんだ」

「今日はありがとうございました」

「はぁ?」

 

(コイツに礼を言われるようなことをしたか?)

 

「荒垣さんの言葉があったから今日木場さんを癒すことが出来ました」

「おい、その元凶は俺だぞ」

「でも、今日のお昼や木場さんの事で私の考えを見つめ直し、やるべきことが見えた気がします。だからありがとうございます」

「だがな」

「荒垣さんがなんと言おうと私はそう感じましたから」

 

 笑顔で答えるアルジェント。

 

「昼のお返しってか…」

「ふふ、はい!」

「はぁ、わかった。案外強情だな、お前も」

「荒垣先輩も人のこといえないかと」

「フンッ」

 

 木場の突っ込みに荒垣はそっぽを向く。

 

「それでお前たちはこの後どうするんだ」

「部長から僕とアルジェントさん、荒垣先輩は今日の所は念のため休んでおくよう指示が出ています」

「そうか」

「ただ、荒垣先輩」

「ん?」

「僕と戦って気付いたことで良いんで教えてもらえますか。最後とか完全に読んでいましたよね?」

 

(あれか…)

 

「言ってもいいが、俺にはどうすればいいなんか言えねぇから丸投げになるだけだぞ」

「それでも是非」

 

 木場はつい身を乗り出す。

 

「落ち着け。お前には色々欠点があんだよ」

「欠点ですか?」

「攻撃が軽い、攻撃が的確すぎる」

「力が足りないのは自覚しています。ただ攻撃が的確過ぎるって言うのは?」

「威力がない分、急所を狙いすぎなんだよ。特に体力がなくなってきた終盤。あんなんじゃ守ってくれって言ってるようなモンだ」

「…」

「あと、速さに頼りすぎだ。速さがあるから基本に忠実でも攻撃が当たるが通用しないヤツだっている。緩急、虚実を入り交えろ」

「はい」

「最後、魔剣関係だ。これが一番ひどかった」

「え!?」

 

 まさか自分の能力にダメ出しをされるとは思っておらず、驚きの声を上げる。

 

「気付いてねぇのか、お前の魔剣だがどうしてどれもバラバラなんだ?」

「え?」

「形、色だ」

「それは…」

「お前は観賞用の剣を作っているわけじゃねぇだろ。戦うための武器を作ってるんだろうが、なのに赤い剣作って炎をだし、青い剣を作って氷を出す。んなもん、テレフォンパンチと同じだ、この後何をしますって言ってるようなモンだ」

「うッ…」

「あと形。剣だって形に合った攻撃の仕方がある。最後に利き手にレイピアとか突き以外攻撃方法がありえねぇだろうが」

「グッ…」

「結論だ、お前は能力を趣味に使いすぎだ」

 

(前にランスを弄繰り回してたとこ見ると武器をいじんのがコイツの趣味なんだろう)

 

「うう…」

 

 胸に手を当て崩れ落ちる木場。

 

「あとは…やりながら自分で気付け」

「はい…」

 

 剣技、能力、全てにダメ出しと予想以上の指摘に木場は流石に落ち込む。

 

(はぁ)

 

「力はある、後は使い方を考えろ」

 

 最後の最後に認められ、気を取り直す。

 

「とりあえず、今日は終いだ」

 

 そう言って、食器を持って立ち上がる。

 

「はい、ありがとうございました」

「おやすみなさい」

「おう」

 

 荒垣は食器を片付け、自分お部屋に戻る。

 

「今日はもう寝るか」

 

(隙を見てペルソナの訓練とも考えていたが、今日は無理そうだな。外に出ようとしたらアイツ等に気付かれる)

 

 そして、部屋の電気を消す。

 合宿初日の幕が閉じた。

 

 

 




 ガイル01です。今回も読んでいただきどうもありがとうございます。
 あれ?まさかの最長記録更新です。どうしてry
 なんとか合宿初日が終わりましたが、この後はスピードを速めていく予定です。合宿全日やってたらえらい事になりますし…
 ただ、いくつかイベントは考えており、あと各キャラと絡ませようとも考えています。
 小猫、アーシア、木場はやったので姫島、兵藤、グレモリーと絡ませようかなと考えています。
 そして今回は前回あとがきで書きましたように木場がボロボロにされました。グチャグロの木場をアーシアは治させられました。それだけ見るとひどいですね(笑)
 焼きと…ライザーが強化されてるんで木場にも強化フラグを立てなきゃと考えたこんな事に…原作でぜんぜん活躍できなかったアーシアに日の目をと考えたらこんな事に…でもこれで大活躍間違いなし!!なはず?きっと…多分…おそらく…
 さて、次回も合宿回です。まさかの展開が…

 また次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・小猫や姫島
あれ?フラグ建ってたっけ?と言う方。分かりにくいが何本か建ってます。支取が予想外の大人気でヒロイン街道爆進中ですが、今後彼女らの猛追が始まる!…予定です。

・アーシア
 グレモリー眷属で現時点で一番心が強いのは彼女かと…だからこそガキさんの信用を得るのも早かったですね。眷属内での信用度は一番です。(好感度ではない)
 なぜかついつい弄って遊んでしまうんですよね、今回もガキさんに色々弄られてましたね。

・木場
 まだまだ常識の範囲内の強さですね。でも能力的にチートですよね、全属性対応可能とか…
 原作3巻でガキさんと色々絡む予定です、活躍をお待ちください。

 質問やご意見、感想等ございましたら遠慮なくどうぞ。



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第17話


お待たせしました!
遅くなって本当に申し訳ないです。

この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。





 

「ウオオオオオッ!」

 

 裂帛の気合と共に振り下ろされるのは鈍器、当たれば確実に身を砕くものをギリギリまで引き付けて避ける。

 顔の横を鈍器がすさまじい速さで通り過ぎる。常人ならその様子だけで身が縮こまり動けなくなるであろうが、相対する少年は違った。

 

「フッ、ハァッ!」

 

 武器を振り回し、出来た隙を狙って剣を作り出し、相手の胴を狙って突き出す。その手にはオーソドックスな片手剣。「一瞬遅れて」もう片方の手にも同様のものが創られる。

 

「あめぇ」

 

 少年の突き出した剣は身を捻ることで避けられる。さらに腕と胴の間に剣を挟まれる。

 

「チッ」

 

 相手より力の弱い少年はそれを抜くことが出来ない。

 少年の判断は早かった。咄嗟にその剣を手放しその場を離れる。

 数瞬の遅れに少年のいた場所に鈍器が振り下ろされる。すさまじい音と共に地面が穿たれる。

 

「剣よ!」

 

 彼は飛び退りながら剣に指令を出す。彼の言葉に反応するように剣が燃え出す。

 

(炎の剣の対処をしなければならないはず、なら)

 

 少年は着地と共に相手に向かって駆け出す。

 

「ふん」

 

 相手は脇に挟まる剣を掴む、手がこげる嫌な音が周りに響くが関係ない。

 そして向ってくる少年に投げつける。

 

「なっ!?」

 

 流石に予想外だったのか身体を思い切りひねり、避ける。

 しかし、その一瞬相手から注意を外してしまった。

 そして、気づいた時には既に彼の目の前には鈍器を振りかぶる相手がいた。

 

「オラッ」

 

 振り下ろされる鈍器に咄嗟に左手の剣で防御をしようとする。

 相手の鈍器、少年の剣がぶつかる。

 

「阿呆が」

 

 鍔迫り合いになることもなく、剣ごと押しつぶされる。

 

「ガハッ」

 

 少年が血を吐き、倒れる。

 

「そこまでです」

 

 試合終了の声がかかる。

 

 荒垣対木場の模擬戦が終了する。

 合宿開始から数日が経ち、今日も実践同様の模擬戦が行われていた。

 

「祐斗さん!」

 

 その直後、木場の下にアルジェントが駆けつけ、治療を開始する。

 緑色の光が木場を包み、ほんの数十秒で傷は癒えてなくなる。

 

「ありがとう、アーシアさん」

 

 アルジェントに礼を言い、木場は荒垣の下に向う。

 

「荒垣先輩ありがとうございました」

「おう」

「今回の模擬戦ですが」

 

 木場は荒垣に意見を求める。

 

「ああ、初日に言った剣の無個性化は出来てるんじゃねぇか。燃えるまで気付かなかったしな。それに武器を奪われた時の対処もだ」

「そうですか」

 

 荒垣の言葉に笑みを浮かべる木場。

 

「だが、まだ慣れてねぇのか若干動きがぎこちねぇのと最後の対処。あれは落第点だ」

「うっ」

「俺の胴を刺そうとした時、両手に獲物がありゃ、出来る事も変わったろう。あと、防御なんてしてんじゃねぇ、流すか避けろ。動揺するな、自分にとって予想外を生み出すな、常に最悪を考えろ。お前みてぇなのは当たれば落ちる、勘だけで動かず考え続けろ」

「はい!では、もう「次は私です」…小猫ちゃん」

 

 木場が返事と共にもう一戦申し込もうとすると、いつのまにか審判をしていた塔城が来ており、二人の会話に割り込む。

 

「そうだね、じゃあ小猫ちゃんが先にどうぞ。僕が審判をするよ」

「ありがとうございます、祐斗先輩」

「では」

 

 そう言って構える塔城。

 荒垣も同様に構えを取る。

 

「ちょっとまちなさい」

 

 いざ、というタイミングで再び横から声がかけられる。

 3人は声がした方を向く。(一人は明らかに不機嫌そうに)

 

 そこにはグレモリー。

 そして、もう一人。

 

「貴方はいつもこのような修行をしているのですか」

 

 先ほどのあまりにも危険で無謀なやり取りに呆れ半分、恐れ半分、感心は0の声でため息をつきながら言う。

 

「口で教えられるほど器用じゃねぇんだよ、それよりなんでここにいる…支取」

 

 少し驚いたような荒垣の顔に笑みを浮かべる。

 

「ふふ、詳しくは中でお話しします」

「そう言う事だから一旦修行は中止。リビングに集合よ」

 

 

………

……

 

 

「今回の私は使いです」

「使い…ですか?」

 

 あの後、リビングに全員集まった。

 それを確認すると支取が話を始める。

 

「はい、今回魔王レヴィアタン様の使いとして参上しました。そして、貴女方のレーティングゲームにレヴィアタン様がいらっしゃることが正式に決定しましたことをご報告させていただきます。」

 

 そして、支取は鞄から書類を取り出し、グレモリーに渡す。

 

「全領域の悪魔に公開されるものではないにしても魔王様がいらっしゃることになりましたので、正式のものと同じ様にこちらの書類にサインをして頂きます」

「ええ、わかったわ」

 

 グレモリーは支取から書類を受け取り、一通り目を通すとサインをする。そうすると、書類が一瞬淡く光る。

 

「結構です。これでゲームの契約が正式になされました」

 

 そう言いながらグレモリーから書類を受け取り、鞄にしまう。

 

「ソーナ、貴女が私のところに来たということはライザーの所にも行ったのかしら」

「ええ、先日行きました。そしてこれを預かりました」

 

 そう言って鞄からあるものを取り出す。

 

「こりゃ…DVDか?」

「ええ、そうです。」

「ビデオレターの類だったら消滅させるわ」

 

 グレモリーは手に魔力を集中させる。

 

「落ち着きなさい、違うわ。まぁ、気持ちの良いものではないのは確かだけど…」

「はぁ、それでなんなのかしら」

「ライザーの今までのゲームを撮影したものです」

「なんですって?」

 

 支取の言葉に全員がそれを見る。

 

(おい、それは)

 

 荒垣は周りを見渡す。

 支取の言葉にグレモリーは殺気立ち、これの意味を理解しているものはDVDを睨みつける。

 

「えっと…すいません。なんでライザーの野郎はこれを送ってきたんですか」

 

 これの意味を理解していない兵藤が質問し、隣でアルジェントも頷く。

 

「あのね、イッセー。レーティングゲームのみに在らず、戦いにおいて情報と言うものはとても貴重なのは分かるわね」

「はい…」

「それにもかかわらずライザーは自分たちの情報を私に渡してきた。これが意味するのは」

 

 グレモリーは自分を押さえ込むかのように一呼吸置く。

 

「絶対負けることのないと言う自信と私たちへの嘲りよ」

「なっ!?」

「ライザーはお前たちが何をしようが俺は負けないし、お前たちが俺に勝てるはずがないって言っているのよ」

 

 グレモリーは怒りに震えながら机を叩く。

 

「絶対に後悔させてやるわ」

 

 底冷えすうような声音で言う。

 

「さて、よろしいですか」

「…ええ、ごめんなさい。なにかしら」

「先ほども言いましたように私は魔王様の使いでここに来ました。先日ですが、彼の下を訪れた時、彼は歓待してくれました。翌日学校もありましたので早めに失礼させていただきましたが、パーティとまではいかないもののちょっとした会を開いてくれましたね。翌日になにもなければもう少し長くいても良かったかもしれません。ただ、それ相応にこちらもお礼をしなければなりませんでしたが…」

 

 眼鏡を人差し指で上げながら支取は言う。

 

(…あ~、そういうことか…今日は土曜日か。)

 

「なるほど。ならこちらもわざわざいらしてくださったんですもの歓待させていただきます。もし遅くなるようでしたら部屋は沢山ありますから泊まって行ってもらえるかしら」

 

 にっこりと一見他のものを魅了するような笑顔で、ある程度知っているものから見れば悪そうな笑顔でグレモリーが答える。

 

「そうですね、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 同様に支取も笑顔で答える。

 

「そう、朱乃」

「はい、では一度お部屋にご案内しますわ」

「ええ、ありがとう」

 

 そう言って、姫島と支取はその場を離れる。

 

「ふぅ、ソーナには本当に感謝の言葉しかでないわね。」

「そうですね」

 

 椅子に深く腰掛けなおしながらグレモリーは呟き、木場が苦笑いしながら答える。

 

「ええと、部長さん。会長さんが泊まることになっただけではないのですか?」

 

 アルジェントは不思議そうに首をかしげる。

 

(コイツは多くの悪意に触れてきたはずなのになんでこんなにまっすぐなんだか…)

 

「え、さっきのやりとりになんか意味があったんですか!?」

 

(コイツはもうすこし頭を使え)

 

「ふふ、イッセー君さっきの話はね、『魔王の使い』としてここに来るということで、『歓待すること』の礼として、僕たちの修行に付き合ってくれること、しかも夜遅くなるという理由で今日と明日の二日間付き合ってくれることを会長は言ってくださっていたんだよ」

「そうなのか!?」

 

 塔城も木場の言葉に頷く、驚愕しながら兵藤は荒垣の方を見る。

 

「…支取はアイツのこと嫌ってんのにもっと長くいるとかいわねぇだろ。それに今日は土曜日で明日は休みだ。そこらへんのことからもわかんだろう」

「マジっすか…」

 

 感心した様子の兵藤とアルジェント。

 

「おい、グレモリー。この貸しはでけぇぞ」

「ええ、この恩はいつか返さないと」

「さてと」

 

 グレモリーが恩の返し方を考え始めた様子を見て荒垣は立ち上がる。

 

「ん?どうしたの、荒垣君?」

「『歓待』したって事実は必要だろうが。飯まで時間と場所貰うぞ」

 

 そう言ってキッチンへと歩いていく。

 

「ありがとう。楽しみにしてるわ」

「おおお!!噂の荒垣先輩の料理が食べられるんですね!」

「うるせぇ」

 

 立ち上がって叫び始める兵藤を荒垣は睨む。

 

「あ、じゃあ私お手伝いします!」

 

そう言ってアルジェントは手を挙げる。

 

「いらねぇ」

「はぅっ!」

 

 荒垣に一刀両断され、アルジェントは沈み込む。

 

「飯までまだ時間はある。お前らは修行でもしてろ、アイツが来たからといって戦いまでの時間が延びるわけじぇねぇんだぞ」

「お言葉に甘えさせていただくわ。冷蔵庫に在るものは自由に使ってくれて構わないわ。それに使い魔を置いていくから何か必要なものがあったら行って頂戴」

 

 グレモリーが手を出すと小さな魔法陣から蝙蝠が現れ、天井に留まる。

 

「わかった」

「さて、それじゃ皆行くわよ。美味しい食事は確約されたわ。がんばりましょう!!」

「「「「おおおおおお!!!」」」」

 

 グレモリーの声に兵藤を筆頭に皆声を上げる。

 

「いいからさっさと行け」

 

 そう言ってメンバーを追い出す。

 

「うし、はじめっか」

 

 手を洗い、冷蔵庫へと食材の確認を開始した。

 

 

 




 ガイル01です。皆さん今回も読んでくださり、ありがとうございます。
 まず…遅れてすみませんでした!!!
 年度末にインフルとかマジダメですね。強制的に休まされ、その間に仕事ががががが…
 皆さん、インフルにはお気をつけください。休み明けの仕事量に絶望しました。
 そんなこんなしていたら3週間もたっていました…しかも短め…進んでないし…いや、本当にすみません。合宿はあと2話くらいで終わらせられるかなと考えてます。
 まさかの支取登場です、衝動的ではないですよ。ここを逃したら出せない!と思い、出したとかではないですよ…半分くらいそうです、すみません。
 そして、これにより次回以降も木場のフルボッコ(受身形)タイムが続きます、木場ェ。強くなれるので頑張って欲しいです。

 あと皆さん。D×Dの新刊でましたね~ロスヴァイゼ回でしたが個人的に好きなんで早く出したいとは思ってますがまだまだ先は長いです(泣)
 そしてイッセーは爆発すればいい!!詳しくは読めば分かります。

 ではまた次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・木場
 初日にボッコボコにされた経験から既に成長の兆しが見えます。どこかの人間を手裏剣にする達人も「人間、負の思い出は忘れない」的な事を言ってましたからおそらく文字通り、経験が身体に刻み込まれているのでしょう。
 まぁ、次回もなんですが…あれ?イッセーより修行厳しくない?

・ライザー
 慢心せずして何が王か!!
 着実に死亡フラグが立っています。問題は妹をどうするか…プロット通りに行くとえらいことに…

・支取
 本作品で明らかに人気№1の支取さん。今回もイケメン?でした。はやく他のキャラもヒロイン力を魅せつけなければ…でも明らかに次回も登場のフラグが建っているという。

・荒垣
 ガキさんが合宿で飯を作らないはずがない!!(キリッ


 質問やご意見、感想等ございましたら遠慮なくどうぞ。



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第18話

お待たせしました!


この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。





「こんなもんか」

 

 そう言って荒垣は調理に必要なものをキッチンにあるテーブルに乗せる。

 

 今朝山で取れた山菜

 各種野菜

 川で釣れ…獲った魚

 

 そして

 

「なんの肉だ、これは?」

 

 机に置かれた色鮮やかな肉の塊。

 

「鳥はありえねぇ、この赤身の色から豚や牛でもなさそうだが…」

「ふふふ、それは鹿ですわ」

「ん?」

 

 振り返るといつの間にかエプロンをつけた姫島が立っていた。

 

「似合いますか?」

 

 そう言って姫島はエプロンの端をつまんで広げてみせる。

 

「エプロンに似合うも似合わねぇもねぇだろうが、そんなんより実用性だ。それよりこれは鹿なのか?」

「ええ、そうですわ。部長の使い魔の子たちが山菜を摘んでいるときに猟師の方から頂いたそうです」

 

(少しは自分の容姿に自信があったのですが、ここまですっぱり切られると落ち込みますね)

 

 落ち込む姫島をよそに荒垣はレシピを考え始める。

 

「ん、てかお前は修行しなくて良いのか?他のヤツラは行ったぞ」

 

 先ほどの場に姫島がいなかったことを思い出し、姫島に問う。

 

「ええ、会長を案内した後、部長から連絡を頂きましたわ。会長は早速修行のお手伝いをしてくださるとの事でそちらに。先ほどの試合を見て、会長は祐斗君の欠点が分かったそうなのでその訓練を中心に前衛組の訓練をするそうなので私はこちらのお手伝いですわ」

「そうか」

 

(たった一試合見ただけで木場の欠点を見抜くか…支取も大概じゃなさそうだな)

 

 そんなことを考えながら再び食材を見る。

 鹿肉といってもかなりの量と部位がある。

 

「これはロースともも。骨付きのあばら肉。これはハツか?」

 

 一つ一つ手に取りながら自分の中のレシピとすり合わせていく。

 

「姫島は鹿を料理したことはあるか」

「いえさすがに…」

「そうか…よし、始めんぞ」

「はい!」

 

 荒垣の合図に調理が開始された。

 

………

……

 

 

「ふふ」

「なに急に笑い出してんだ」

「そういえば、荒垣君とこうやってゆっくりお話しする機会はひさしぶりだなと思いまして」

「あん?そういやぁそうか。てかそれがなんで笑うことにつながるんだ」

「ふふ、秘密ですわ」

「んだそりゃ」

 

 荒垣はアバラ肉を切り分けながら答える。

 

「最近色々ありましたもんね」

「そうだな」

 

(また堕天使と出くわすなんざ思ってもいなかったからな。もう何年前だありゃ…)

 

「荒垣君、どうしましたか?体調が悪いんですか?」

「なっ!?」

 

 荒垣が考え事から覚めると目の前に姫島の顔があった。

 

「うおっ!」

 

 咄嗟に思い切り頭を下げると頭上の棚に思い切り頭をぶつけてうずくまる。

 

「ぐぁっ!!」

「荒垣君!?え~と救急箱は!?」

「いや、大丈夫だ…」

 

 慌てる姫島を手で制止ながら立ち上がる。

 

「本当ですか?」

「ああ、これもあったしな」

 

 荒垣は自分の被っている帽子を指差す。

 

「なら良かったです」

「お前もほいほいあんなことすんじゃねぇよ」

「あんなことですか?」

「不用意に男に顔を近づけたりすんじゃねぇよ、容姿は悪くねぇんだ。男相手にそんなことしてっと危ねぇぞ」

「よ、容姿は悪くない…ですか」

 

 荒垣の言葉に姫島は顔を赤らめる。

 だが、直ぐに顔を上げる。

 

「あっ、でもあんなことはそうそう他の男性にはしませんよ!!」

「そうかよ」

 

 既に調理に戻りながら荒垣は答える。

 

「はぁ、そういえばコロちゃんは元気ですか?」

「ああ、そう言えば会った事があったな。まぁ、相変わらずだ。かなりの年なはずなのになんであんなに元気なんだか」

「ふふ、そうは言っても嬉しそうですね」

「…うるせぇ」

「コロちゃんは昔からあんな感じなんですか」

「ああ、俺のガキの頃からいるが感じも見た目も変わってんぇな」

「へ、へぇ。そうなんですか…」

 

(やはりコロちゃんはあの時の男の子が連れていた犬?)

 

 姫島は荒垣にばれないように深呼吸し、決意をしてある質問をする。

 

「荒垣君はコロちゃんといつもどこの辺りを散歩しているんですか?」

「急になんだ」

「いえ、ただ興味がわいただけです」

 

(支取には場所が知られているし、下手に隠して詮索されるよりはマシか…)

 

「町の外れにある今は使われていない神社だ」

「……えっ?」

「あんだろ、町の外れに」

「は、はい」

「公園と違ってあそこはガキもこねぇからコロを好きに離せる。だから大体いつもあそこだ」

「昔からですか?」

「ガキの頃は人が住んでたから周りの林には行った。あとは他のところも行ったな」

「!!」

 

(やっぱり、荒垣君があの時の男の子!?でも堕天使との戦いであの時使った力を使っていないし、隠していたとしても死に掛けているのに使わないのは…)

 

「どうした」

「いえいえいえいえ。な、なんでもありませんよ」

「目、泳いでんぞ」

「あらあら、うふふふふふふふふ」

 

(と、とりあえず保留で!でもあの男の子だったらどう対応すれば?いや、今までそうかもしれないと思ってたからアプローチもしてたわけで。そうじゃなくても荒垣君はいいなとは思ってたけど…)

 

「お、おい。本当に大丈夫か」

 

 荒垣は何かを考えながら百面相をしている姫島に若干退きつつ問いかける。

 

「はっ!?え、え~と。ちょっと失礼します!!」

 

 そう言って姫島はすさまじい速さでキッチンから飛び出していった。

 

「…まぁ、いいか」

 

 再び荒垣は調理を開始する。

 

 

 

 5分後

 

「すみませんでした」

 

 そう言いながら姫島が戻ってきた。

 

「なにがあったかは聞かねぇがこのまま出来んのか」

「はい、大丈夫です」

 

(こういった気遣いが!いけないわ、落ち着かなきゃ)

 

「そうか、なら山菜の天ぷらは任せる」

「はい!」

 

(うふふ、荒垣君と二人で料理。私だけドキドキさせられるのもあれだし、一体どうしたら荒垣君をドキッとさせられるのかしら。今後もっとアプローチをしつつ証拠をつかまなきゃ)

 

 そんなことを考えつつ、調理が進んでいった。

 

 

………

……

 

 

「つ~か~れ~た~」

 

 そう言いながら兵藤が帰ってきた。

 

「あらあら、イッセー君お疲れのようですね。ならお食事はいりませんか?」

「いやいやいや、絶対食べます!!外までいい匂いがしてましたから!!」

「うふふ、冗談ですわ。皆さんもお帰りなさい。準備は出来てますから、手を洗ったらリビングまで来てくださいね」

「はい!!」

 

 姫島が言い終わるや否や、兵藤は靴を脱ぎ、手洗い場に駆け出す。

 

「ふふ、イッセーさんたら子供みたいですね」

 

 アルジェントがそれに続く。

 

「兵藤君は変わりませんね」

「全くあの子は…」

「まぁ、イッセー先輩ですから」

 

 支取は苦笑い、グレモリーと塔城は半分呆れながら歩いていく。

 そして、

 

「祐斗君!?」

「ああ、朱乃さんただいま戻りました」

 

 ボロボロのびしょ濡れになった木場が最後に入ってきた。

 

「どうした」

 

 姫島の声にリビングから荒垣が顔を出す。

 

「お前…どうした」

 

 木場の様子を見て荒垣が問いかける。

 

「いや、会長に僕の魔剣は応用性に優れているが威力が弱いと言われ、それをどうにかするための訓練をね」

「ああ」

 

(そういやぁ、ライザーの野郎が俺に炎を放った時、木場は魔剣の効果で打ち消そうとしたが逆に蒸発させられてたな)

 

「荒垣先輩も気付いていたんですか?」

「いや、言われて俺も気付いた。ライザーが炎を俺に放った時にお前は打ち負けただろう」

「ああ、それもそうですね。会長には荒垣先輩と戦った時に炎の魔剣の威力が高ければ、掴まれる事もなかったのではと指摘されました」

「そうかもしれねぇな」

「ええ、だから魔剣の威力を高めるために試行錯誤しながら延々と魔剣を作り続け、会長の水の魔力弾を蒸発させると言う訓練を…最初はただの弾丸が鳥になり、犬になり、蛇になり、最後には獅子になり…あはは、何度溺れそうになったか」

 

 遠くを見つめながら木場は話す。

 

「まぁ、着替えて来い」

「はい」

 

 ふらつきながら木場は自分の部屋へと戻っていった。

 

「あらあら、かなり大変だったようですね」

「まぁ、支取は訓練で手加減するようなヤツじゃないしな」

「そうですね」

 

(そこまで会長のことを理解している!?くっ、このままではいけないわ)

 

 姫島が表情には出さないが焦っていると、

 

「うぉおおおおお、すげぇえええええええ!!!」

「すごいです!どれも美味しそうです!!」

 

 リビングから兵藤とアルジェントの声が聞こえる。

 

「戻るぞ」

「はい」

 

(会長が荒垣君をどう思っているか分かりませんが負けません!!)

 

 リビングに戻ると今にも飛び掛らんとギラギラした目つきで料理を眺めていた。

 

「落ち着け」

「あたっ」

 

 荒垣はそんな兵藤の頭を小突く。

 

「すみません、うまそうだったんでつい…」

「はぁ、わかったから座れ。アルジェントもだ」

「「は~い!」」

 

 二人は声を揃えて返事をし、席に着く。

 

「ふふ、まるでお父さんのようでしたね」

「そんな年でも柄でもねぇだろ」

「あら、そうでしょうか」

「ふん」

「これは…」

「すごいわね」

「すごいです」

「ここまでとは」

 

 姫島と話していると他のメンバーもやってくる。

 

「飯が冷める。さっさと席に着け」

「「「「はい!」」」」

 

 全員が席に着き終わると、グレモリーが音頭をとり始める。

 

「では」

「頂きます!」

「「「「「「「頂きます!」」」」」」」

 

 その言葉に一斉に食べ始める。

 

「うめぇうめぇ!!!」

「はい、美味しいです!!あ、イッセーさん口元にソースがついてますよ」

「うめぇ、うめぇ!!!」

「イッセーさ~ん、話しを聞いてくださ~い」

「はぁ…ったく、頂きます」

 

 皆より少し遅れて荒垣も食事を開始する。

 

「美味しい。食べ物が食べられる、味が分かる。僕は本当に今、生きているんだね」

 

 料理の味とは全く関係ない涙を浮かべながら木場が食事を進める。

 

「荒垣先輩、ありがとうございます。先輩の料理で生きていることを実感できました」

 

 そう言って木場は儚げな微笑を浮かべる。

 

「お、おう…まぁ、量はある。しっかり食え」

「はい。ああ、美味しい」

 

 木場は再び何かを悟るように食事を開始する。

 

(コイツはそっとしておいてやろう)

 

「他のヤツラは…」

 

 周りを見る。

 

「アイツらはいいな」

 

 未だにがつがつと食べ続ける兵藤とそれの面倒を見つつ自分も幸せそうに食べるアルジェント。

 しかし、視線を逸らす前に兵藤と目が合う。

 

「荒垣先輩!!マジ美味いっす!!」

「だぁああ、口にモノを入れたまんましゃべんな!」

「むぐむぐ」

 

 兵藤の頭を押さえつけ、口を強制的に閉めさせる。

 

「荒垣さん。とても美味しいです!!」

「そうか」

「はい!このお肉も普通のと違いますけど美味しいです」

「それは鹿だ」

「鹿さんですか!?初めて食べました…」

「高タンパク、低脂肪だから女にもいいだろう、食っとけ」

「ゴクンッ、いや~ここまでとは思わなかったです!どれも半端なく美味いです!!」

 

 そう言いながら兵藤は再び、骨付き肉のBBQ風のものに噛り付く。

 

「量はあんだから少しは落ち着いて食べろ。喉につまるぞ」

「あはは、そんな…んッ!?」

「イッセーさん!?」

「み、水…」

「水ですね!?」

 

 アルジェントは慌てて水のはいったコップを渡すと兵藤は一気に飲み干す。

 

「ゴホッゲホッ。気管に…ゲホッ」

「イッセーさん!!?」

「アホか…」

 

 そんな二人から荒垣は視線を外し、横を見ると。

 

 ハムハム、むしゃむしゃ。ごっくん、ハムハム、むしゃむしゃ…

 

 一切喋らず淡々と食事をする塔城がいた。

 塔城が荒垣の視線に気付くと一旦食事をやめ、親指を立てる。

 そして、また食事を再開し、淡々と食べ続ける。

 

「…まぁいいか」

 

 そして左を向くと、グレモリーと支取、姫島の三人が話していた。

 

「あら、荒垣君。とても美味しいわ。それにしてもよくこれだけ作ったわね」

 

 そう言いながらテーブルの上を見る。

 そこには

 

 山菜の天ぷら

 鹿の骨付き肉のBBQ風

 レタスと水菜のサラダ

 川魚のホイル焼き

 野菜スティックとアボガドディップ、生姜ディップ、ホタテマヨディップ三種

 鹿ロースの刺身

 そして、メインの鹿肉のすき焼き

 

 それらが、ずらりと並んでいた。

 

「まぁ、歓待ってんだからそこそこのモン作る必要があっただろうが」

「確かにそうだけど、まさかここまでとは…鹿のすき焼きなんかも初めて食べたし」

「なんだ口にあわねぇってか」

「そんなことないわ!!とても美味しいわ…すき焼きのお肉もハツとももで歯ごたえの違いがあってとても良い感じ」

「なら、いいだろ。」

「女としてのプライドが…」

「んなもん、犬にでも食わせとけ。嫌なら精進するんだな」

「くっ、みてなさい」

「ふっ」

「う~」

 

(少しは意趣返しできたか)

 

 そう思っているとグレモリーの隣の支取が目に入る。

 

「どうした、食わねぇのか?」

「え?いや、こういうのにあまり慣れていなくて」

 

 そう言いながら支取は料理と食卓を眺める。どれもが大皿に乗っており、個人個人が好きに取って食べていた。

 あれが美味しいだ、取りすぎじゃないかなど会話と笑いが食卓の上に満ちている。

 

「あ~お前はあまりこういう経験なかったか。やりづれぇか?」

「いえ、今まで経験はなかったですけど…温かいですね」

 

 支取はどこか嬉しそうに箸を進める。

 

(まぁ、貴族ってんだからこんな風に大皿から自分で取って食事なんかしねぇだろうし、前までのコイツなら他人とわいわい食事なんかしねぇだろうからな。それに姉が魔王なら家族での食事も…)

 

「荒垣君、ありがとう。最高のおもてなしよ」

「…そうか」

 

 支取には珍しい、とても柔らかな笑みを浮かべる。

 

「ところで」

「あん?」

 

 先ほどまでと雰囲気が一変する。

 

「荒垣君、今日の食事のレシピを教えてくれるかしら」

 

 眼鏡を指で押し上げ、胸ポケットからノートとペンを取り出す。

 

「はぁ、分かった…」

 

 

 

「ふぅ」

 

 食事を終え、荒垣以外の者が片づけをしてくれるという言葉に甘え、休んでいると

 

「ふふ、良かったですね」

 

 同じく、休みを貰った姫島が荒垣に話しかける。

 

「なにがだ」

「皆美味しそうに食べてましたよ」

「そうだな」

「イッセー君なんかまたお願いしますって土下座でもしかねない勢いでしたね」

 

 その光景を思い出したのかつい笑みがこぼれる。

 

「あいつはあれが食べたい、それが食べたいってうるせぇんだよ」

「それでも作ってあげるのでしょう?」

「祝勝会で作らされることになっただけで、自分からじゃねぇよ」

「ふふふ」

「んだよ」

「なんでもありませんわ、そのためにも頑張らなければいけませんね」

「…そうだな」

 

(ったく、めんどくせぇ)

 

 荒垣はそんなことを考えつつも、口の端には笑みが浮かんでいた。

 

 

 




 ガイル01です。皆さん今回も読んでくださり、ありがとうございます。
 そして、はじめましての方ははじめまして。前回から今回までになぜかお気に入りが80近く増えていて一体何事かと思いました…日間6位にも入り非常に驚いています。
 これからも頑張っていきたいと思います。

 さて、今回ですが!
 話しが全く進んでいません。半日しか経っていません。すみません。姫島とのやりとりを書いていたらそこそこ文量がいってしまい…これ以上書くと切のいいところまでいくとえらいことになりそうなんでここで一旦切ります。
 今回姫島のフラグに大きな進歩がありましたね、これから追いつけ追い越せの猛追撃が!!あるかもしれません。

 前にも話したとおり、残りイッセーとグレモリーとのイベントがあり、合宿編終了となります。多分、次回で終わりかな?
 そうしたらいざレーティングゲーム!!
 お楽しみに。

 ではまた次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・木場
木場「もう…ゴールしてもいいよね?」
 原作でも会長のしごきはキツイと書いてあった気がするので…でもこれでまた一つレベルアップ。そのうち小猫も鍛えなければ。

・支取
 今回出番は少ないものの、なんなんでしょうあのヒロイン力は…
 姉は原作と同じ様な感じにするつもりですが、情愛の深いグレモリー家とは違い、きっと実家ではいわゆる貴族の食事で、春の最初までは眷族とも距離があり、食事も適当だったのでこういった温かい食卓は初めてだったかと思います。

・荒垣
 本当ならもっと食事の情景を詳しく書き、大規模飯テロを引き起こすつもりでしたが今回は自重しました。いつか全力で書いてみたいものです。

・姫島
 本作のヒロイン候補。前まででそこそこフラグは経っていましたが、今回、ほぼ確定しましたね、姫島の子供のころにいったいなにが?そしてガキさんとの関係は?それはまた次回以降のお楽しみで。
 ちなみに口調は内面ではお姉さまではなく少し年相応?っぽく書いています。

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第19話

1ヶ月もお待たせしてしまってすみません。
お待たせしました!


この作品は、独自解釈、ネタばれ、原作改変、ブレイクなどがあります。
注意してください。






「さて、美味しい夕食もとったし、夜の鍛錬に入るわよ!」

 

 そう言ってグレモリーは立ち上がり、他の者達もそれに続く。

 

「荒垣君、今日はどうするのかしら?」

「あ~お前らと違って夜に身体能力が上がるわけでもねぇし、夜目がきくわけでもねぇからパスだ。あとやる事があるしな」

「やる事?なにか手伝えるようなことなら手伝うけど」

「たいした用事じゃねぇ。支取がいられる時間も限られてんだ。そっちはそっちで有効に使え」

「そう、わかったわ。なにかあったら連絡頂戴。じゃあ、行きましょう」

 

 グレモリーは一瞬悩んだがそのまま皆を連れて外へと出て行った。

 

「さてと、俺もやる事やるか」

 

 荒垣は残った食材で軽く夜食を作るとそれを持って外に出て、グレモリーたちとは離れた場所へと向う。

 寮から10分程歩いたところで立ち止まる。

 

「ここらへんでいいな、始めるか」

 

(まずは、スキルの切り替えだな)

 

 荒垣は目を閉じ、集中する。

 自分の中に在るカストールを感じ取る。カストールを感じ取れたら、さらに深く感じ取るために神経を集中させる。

 

(よし)

 

 荒垣は自分とカストールがシンクロしている事を確認する。

 

「ヘビーカウンタ解除」

 

 荒垣が言葉を発する。一見、荒垣に何も変化はない。

 だが、荒垣の中でなにかが確かに変わった、制限されていたなにかが開放された。

 それを確認すると荒垣は力を抜く。

 

「ふぅ、もっと速く出来るようにならねぇとな」

 

 荒垣が集中し、力を抜くまで約5秒、戦闘では致命的な時間である。

 

「戦闘でもそうだが、これが出来ねぇとあいつらとも戦えねぇからな」

 

 荒垣が行っていたのは「スキルの制限と解除」である。

 カストールは一定の確率で相手の物理攻撃を反射するカウンタ系の技を持っている。

 ただそれだけなら良かったのだが、このスキルは常時発動型のため、荒垣の意思に関係なく発動してしまう。カウンタの発動でペルソナの事がばれるのを危惧し、合宿の前日に徹夜で制御方法を練習することとなった。

 

「あの頃は、スキルの切り替えなんていう細かい制御なんか出来なかったが今んなって出来るようになるとはな…」

 

 一瞬、荒垣の表情が歪むがすぐいつもの表情に戻る。

 

「いつまでも下ぁ向いてらんねぇ。今できる事をするか。なら」

 

 荒垣はポケットから携帯を取り出し、電話をかける。

 少しの呼び出しの後に目的の人物が出る。

 

「お電話ありがとうございます!!『育て屋』のタケジィです」

「俺だ、荒垣だ」

「荒垣さんか、おひさしぶりです。この間は手作りの弁当の差し入れありがとうございま「マスタァァァアアアアアアアアア!!助けてくださああああいいぃぃ!!いやぁぁぁ!!棺桶がぁぁあ、引きずり込まれるぅぅぅ!!!あっ……」」

「おい、大丈夫なのか…」

 

 電話の奥から聞こえた悲痛な叫びに引きながら確認する。

 

「なに、問題ないさ。限界はキチンと見極めてるからさ」

「そ、そうか」

「ところで今日の用事はなんだい?」

「あぁ、一旦レイナーレをこっちに送ってくれ」

「了解了解、ちょうど今モトから吐き出されたところだから送るよ」

「お、おう」

(吐き出された?)

 

 電話が切れると直ぐに荒垣の足元に魔法陣が現れる。一瞬それが輝くとそこにレイナーレが現れる。

 現れたレイナーレは鳥から女性の姿に変わるが横になったままピクリとも動かない。

 

「急に呼んで悪かったなってお前大丈夫か?」

 

 荒垣が声をかけるとブツブツと独り言を始める。

 

「うふふふ、真っ黒真っ暗ニュルニュルグチャグチャ…アハハハハハハハ…イヤァアアアアアア!!!」

「おい、落ち着け!」

「ヤツが追って来るぅぅぅ!!!」

 

(ちっ、あまりやりたかないが)

 

 荒垣は頭を振り上げる。

 

「いいから落ち着けっ!!」

 

 そしてレイナーレに向って振り下ろす。

 鈍い音があたりに響き、レイナーレは激痛に頭を抑えしゃがみ込む。

 

「あうっ…ここは?ますたー?」

「正気に戻ったか」

「マ、マスタァァァアアアアア!!!信じてました、助けてくれるって信じてましたぁああああ!!」

 

 叫びながらレイナーレは荒垣に抱きつく。

 

「お、おい!!」

 

 なんとか振りほどこうとするが必死にしがみついているためなかなか引き剥がせない。

 

「居るのは使い魔、来るのは悪魔。正体を隠す日々。毎日毎日胃が痛かったんですからッ!!」

「い・い・か・ら・離れろ!!」

 

 この後、レイナーレを引き剥がし、落ち着かせるまでに半刻かかることとなった。

 

 

………

……

 

 

「で、落ち着いたか」

「はい、すみませんでした(あそこから離れられた事が嬉しかったからとは言え、私はなんてことを~!!)」

「ったく、嫁入り前の女があんまり男に抱きついたりすんじゃねぇぞ」

「はい」

 

 荒垣は少々頬を赤くしながら言い、レイナーレは顔を真っ赤にして答える。

 

「まぁいい。飯はもう食ったのか」

「いえ、まだですが…」

「なら、食え」

 

 そう言って持ってきていた食事をレイナーレに渡す。

 

「良いんですか?」

「今日の晩飯の残りだ。気にすんな」

「では、頂きます」

 

 そう言って、レイナーレは一口食べる。

 

「美味しいです!!(それにまだ温かい。電子レンジとかの温かさではない。残りと言いつつわざわざ作ってくれたんだ…)」

「そうか」

 

 自分のために作ってくれた事に気付いたレイナーレの瞳から涙がこぼれる。

 

「はっ?急にどうした」

「いえ、温かくって(心がとても満たされます)」

「…そりゃ、一応温め直しはしたからな」

「そうですか…ありがとうございます」

「さっきも言ったが残りモンだ。温めるのも手間はかかってねぇから気にすんな。冷めるからとっとと食え」

「はい(この人がマスターでよかった)」

 

 その会話を最後にレイナーレは箸を進める速度をあげる。

 しかし、しっかり味わい、幸せそうに食べ続けた。

 

 

………

……

 

 

「マスター、それで今日はどのような御用ですか」

 

 レイナーレの食事が終わり、呼び出された理由を尋ねる。

 

「ああ、聞きたいことがあってな」

「聞きたいことですか、なんでしょう?」

「お前か、お前の仲間は聖水や聖書を準備できるか?」

「出来るとは思います。ですが、そのようなもの何に使うのですか?」

「実は…」

 

 荒垣はレイナーレに現状の説明をする。

 

「確かに悪魔には効果的でしょうが…というより、そもそもマスターまで巻き込むとはグレモリーは何を考えているんでしょう!」

 

 フェニックスと戦うという事を知ったレイナーレは荒垣を巻き込んだグレモリーに対して憤る。

 

「今回は俺から首を突っ込んだんだ。グレモリーは関係ねぇ」

「でもですね…」

 

 荒垣の言葉を聴いてもレイナーレは不満そうな雰囲気を隠さない。

 

「もう決まったんだ。今更どうにもなんねぇし、なにより俺の意思でここにいんだからどうこうする気もねぇよ」

「その言葉に嘘偽りはないですね」

「ああ」

 

 真っ直ぐこちらを見てくるレイナーレに、荒垣も正面から返す。

 

「わかりました、頼まれたものは全力を持って最高級のものを用意させていただきます」

「すまねぇな」

「ふぅ、謝る位なら事前に一言言ってください。私は貴方の使い魔なのですから。心配だってします」

 

レイナーレは呆れたような溜め息をつくが、その表情には荒垣への心配が見て取れる。

 

(そうか、コイツはグレモリー側でも支取側でもねぇ。唯一の俺側のヤツか…)

 

「いくらマスターが堕天使を倒せるような不思議な力があっても今回は不死鳥が相手です。人間なんて一瞬で消し炭なんですからね」

 

(ん?今コイツなんて言った?)

 

「おい」

「はい、なんですか」

「不思議な力ってのは誰に聞いた」

「え…ドーナシークたちとあの後の処理をしていた時に聞いたのですが」

 

(チッ、あいつらか。口止めすんの忘れてたッ!)

 

「マ、マスター?どうかしましたか」

 

 荒垣の苦々しげな表情にレイナーレが反応する。

 

「その事、誰かに言ったか?」

「いえ、私は誰にも…」

「なら、俺が許可するまで誰にも言うな。アイツラにも連絡を取って、口止めしてくれ」

「は、はぁ。構いませんがその力は秘密なのですか?」

「まだ他のヤツには言う気になれねぇ」

「…そうですか(マスターは高校生なのに魔王の血族であり、純血悪魔である二柱の悪魔と契約するほどの人物。今回の事のように様々な事に巻き込まれることもあるかもしれない。それなら力の事も簡単にばらす訳にはいかないわね。ん?マスターが巻き込まれるって事は私も巻き込まれるのでは…うう、胃が痛くなってきた)」

 

 レイナーレはこれから予想される胃痛な日々につい片手で腹を押さえる。

 

「まぁ、俺からは以上だ」

「かしこまりました、頼まれたものはいつまでにご準備すればよろしいですか」

「そうだな、焼き鳥野郎との戦いが4日後だ。前日には欲しいところだな」

「かしこまりました、それまでにご準備させていただきます」

「頼んだ」

 

 その時、荒垣の携帯が鳴る。

 

「もしもし」

「荒垣さんかい、タケジィだ。用事は終わったかい?」

「ああ、今終わった」

「じゃあ、こちらに呼び戻すぜ」

「え?」

 

 隣りにいて会話が聞こえていたレイナーレが一瞬呆ける。

 その瞬間レイナーレの足元に魔法陣が展開される。

 咄嗟に鳥へ変化し、逃げようとするレイナーレだが間に合わず転移させられる。

 

「お、帰ってきたな。じゃあ、モト頼んだぜ」

「いやぁああああああ!!」

 

 電話の奥でズシンズシンという音とレイナーレの叫び声が聞こえる。

 

「あ~タケジィ。アイツに頼み事をしたんだが」

「おお、そうか!じゃあ、後で聞いてその時間は取るようにするよ」

「ああ」

「あと、彼女は仕上げに入ったからあと一週間もかからず修了すると思うぜ」

「そうか」

 

(アイツがあと一週間もつかどうか…)

 

「じゃあまたな!」

 

 タケジィはそう言うと電話を切る。

 

「………戻るか」

 

 荒垣は寮へと戻っていった。

 

 

………

……

 

 

「他のヤツラはまだ戻ってないか」

 

 寮に戻って来たが、他のメンバーの靴が玄関になく、まだ戻ってきていないことを確認する。

 

「さて、どうするか」

 

 ふとリビングの机の上を見ると支取が持ってきたDVDが置いてあるのを発見する。

 

「確認しておくか」

 

 荒垣はそれを手にし、会議室に移動し再生する。

 

「これは…」

 

 その表情は厳しい。

 画面に映されるのは何度撃たれようと瞬時に回復し、敵を追い詰める不死鳥。

 死をも臆さず突き進むその眷属。

 その狂気ともいえる姿をさらなる狂気が襲う。

 

「なっ!?」

 

 画面が爆音と共に一瞬赤に染まる。

 爆発が残した煙が晴れたところには先ほどまで戦っていた全てのものが倒れていた。

 そう、全て…敵も味方もなく。

 

「テイク」

 

 その声と共に画面が地面から上空を映し出す。

 そこには王である不死鳥とその女王が悠然と構えていた。

 

 その直後、アナウンスと共に試合が終了された。

 

 荒垣は直ぐに他のものを再生する。

 一つ見終わると、また次のを再生する。

 

 彼は自分が前のめりになり、握った拳が赤を通り越し、青になっていることにも気付かず、ただただ画面を眺め続ける。

 

「荒垣君?ここにいたの?」

 

 不意に背後から声がかけられる。

 

「グレモリーかっ!?」

「どうかしたかしら?」

 

 振り返るといつの間にか帰ってきていたグレモリーが立っていた。

 問題はその服装である。

 荒垣はDVDに集中し、気付いていなかったが既にかなり遅い時間である。

 グレモリーもジャージではなく、寝巻きであった。

 ただの寝巻きならば問題ないが、キャミソールに似た形で相当薄い生地を使っている。

 そのため、下着が透けてしまっている。

 肩にストールをかけてはいるが、本人に身体を隠す意図がないため、その魅惑的なボディラインを惜しみなくさらしてしまっている。

 

「お前ッ!?なんて格好で男の前に出てきてやがる!!」

「え?もうこの後は寝るだけなのだから問題ないじゃない」

 

 不思議そうに首をかしげるグレモリー。

 

「それに私は眠る時は全て脱ぐからこちらの方が脱ぐのも楽なのよ」

「なっ!??」

 

 荒垣はグレモリーの台詞に絶句する。

 グレモリーはその様子にいたずらを思いついたかのようにニヤリと笑う。

 

「荒垣君は今日ソーナが持ってきたDVDを見ていたのね」

 

 そう言いながら、テレビに近づく振りをしつつ、荒垣との距離をつめる。

 

「そうだが、その前にその格好をなんとかしろ!!」

「あら、これはれっきとした寝巻きなのだから問題ないでしょ?」

 

 グレモリーはそう言って寝巻きの端を持って広げる。

 広げることで裾の位置が高くなり、ふとももがはっきりと露わになる。

 

「ッ!嫁入り前の女がんな事してんじゃねぇ!!」

「あらぁ、こんな事ってなにかしら」

 

 グレモリーはニヤニヤしながら顔を真っ赤にして背けている荒垣に詰め寄る。

 後一歩でグレモリーの胸と荒垣の胸が当たると言う瞬間、

 

「そこまでです、リアス」

 

 首の辺りから発せられた鈍い音と共にグレモリーの首が後ろに向って跳ね上がる。そしてそのまま尻餅をつく。

 

「きゃあ!!なにっ!?って、なにするのソーナ痛いじゃない!!」

 

 尻餅をついたグレモリーの後ろには腕を組みつつ、呆れた様子で彼女を見下ろす支取の姿があった。

 

「自業自得です。荒垣君の怒鳴り声が聞こえたかと思えば…」

 

 頭に手をあて首を振る呆れる支取。

 

「ちょっとした冗談よ、なにも髪の毛を引っ張らなくてもいいじゃない」

 

 グレモリーは頭を押さえながら頬を膨らませ、呟く。

 

「何か言いましたか?」

「い~え、なんでもないわ」

「…はぁ。それで、こんな時間に何をしていたのですか」

 

 いじけているグレモリーを放っておき、支取は荒垣に話しかける。

 

「ああ、お前が持ってきたDVDを見てた」

 

 荒垣がそう言うと二人のさっきまでの雰囲気から一変し、真面目な表情になる。

 

「感想を聞いてもいいかしら」

 

 グレモリーが荒垣に尋ねる。

 

「…異常だな」

「異常?」

「ああ、フェニックスの再生力もそうだが、戦い方がだ」

 

 荒垣はテレビに視線を移す。

 止める間も無く話していたため、画面は再生されたままである。

 画面の中ではまた仲間ごと敵をなぎ払う、不死鳥とその女王の姿があった。

 

「『犠牲(サクリファイス)』ですか」

 

 部屋の入り口から荒垣の隣まで来て画面を眺めていた支取が呟く。

 

犠牲(サクリファイス)だと?」

「はい、レーティングゲームの戦術の一つです。味方を犠牲にし、相手を倒す。手段はいくつかありますがライザーの得意とする戦術です。見てください」

 

 そう言って支取は画面を指差す。

 画面には先ほど敵と共になぎ払われたはずのライザーの眷属が無傷で立っていた。

 

「無傷だと…」

「違います。治したんです」

「…回復薬か」

 

 荒垣は画面に映る人物の足元にフラスコのようなものが転がっているのを見つけ、そう判断する。

 

「そうです。あれは『フェニックスの涙』、あらゆる傷を一瞬で治す薬です。フェニックス一族でしか作れない秘薬です」

「チッ」

 

(ただでさえ、フェニックスなんてふざけた野郎が相手なのにそんな薬までもってやがんのか)

 

「試合に持ち込める数が2つと限りがありますが、あの薬があるからこそライザーは何の躊躇もなく犠牲(サクリファイス)の戦術を取ります。その場に薬がなくても、リタイア後に直ぐ薬を飲ませれば良いからと味方が薬を持っていなくともライザーは犠牲(サクリファイス)を行ってきます」

 

(戦闘中、戦闘直後に広範囲攻撃や不意打ち。確かに有効な手だ、間違っちゃいねぇ。だが、)

 

「気にくわねぇ」

「「え?」」

「あの戦い方は確かに有効だろう。だが、必ずしもあれである必要はねぇだろ」

 

(戦闘において、常に仲間を助け回復できるわけじゃねぇ。そのため、戦闘中倒れた仲間の回復を後回しにせざるをえない場合だってある。他にも仲間を盾に進む必要がある時だってある。そう言った面では犠牲ってのは仕方がねぇ。だがよ、あれにはそこまでリスクを負ってまでああしなきゃいけねぇ必要がねぇだろ)

 

「荒垣君の気付いた通りです。ライザーの眷属はフルメンバーで、正直理解が出来ませんが彼に忠誠を誓い、日々鍛錬を行っているのか力はあります。きちんと策を練れば彼女らだけで勝てた試合もあったはずです。しかし」

 

 支取は再びテレビの画面を見る。

 空にいるライザーのもとに向おうとする者とそれを押さえるライザーの眷属、そして味方が巻き込まれるかもしれないのにそれを全く気にせず自慢げに自らの炎を振りかざすライザーの姿があった。

 

「自らの力と女王の力を自慢したいって訳ね」

 

 画面を見ているグレモリーから怒りのあまり赤い魔力が滲み出す。

 

「リアス、落ち着きなさい。このため、ライザーはゲームの勝ち星の割に評価は高くありません」

「知恵も技術もない。ライザー個人の力ではなく、血統と一族の秘薬に頼った戦い方ということね」

「ええ、そうです。でも」

「ああ」

 

(それでも十分つえぇ。ヤツラの炎や爆撃は簡単に俺を吹き飛ばすだろう。ここまで地力がちげぇとはな)

 

 グレモリーもヤツの強さは理解しているため、表情は厳しい。

 

「しかし、これは弱点でもあります」

 

 支取の発言に荒垣とグレモリーは画面から目を離し、支取の方を向く。

 その瞬間、二人は固まる。

 そこには、全く無表情の支取がいた。

 

「彼は魔王様がいらっしゃる事から自分の力を誇示するため、この常勝の術を間違いなく使ってくるでしょう。それに貴方たちを未熟と侮ってもいます。そこを突きましょう」

 

 無表情のまま支取は告げる。

 支取はチラリと画面を見て下を向く。

 

「あんなものがゲームなどとは認めません。戦術も戦略も、知恵も技術も、仲間との連携、信頼、何もなく力にのみ頼る。私は絶対認めません、私の『夢』を愚弄しています」

 

 周りには聞こえないくらいの声でぼそぼそと呟く。

 直後、支取は顔を上げ、頬を上げ、笑う。

 本来魅力的で美しい微笑みなはずのそれは見るものに恐怖を感じさせた。

 

「さぁ、二人とも協力してください。策を練りますよ」

「わ、わかったわ」

「お、おう」

 

 支取から発せられる威圧感にどもる二人。

 

(おい、これはどうなってやがる。お前の闘いじゃねぇのか!?なんでいつの間にか支取が仕切ってんだ。てか、なんでアイツは切れてんだよ!!)

(そんなの分からないわよ!!ただ、ソーナは昔からレーティングゲームに拘りがあったし、最近眷属とも親しくなったからあの戦い方が気に入らないんじゃないの!?)

 

 混乱しながら念話でやりとりをする二人。

 

「なにをしているんですか?」

 

((ばれた・ばれやがった!?))

 

「いや、なんでもねぇ」

 

 咄嗟に荒垣が返事をする。

 

「そうですか、なら早く話し合いを開始しますよ。私は今日までしかいられないのですから」

「お、おう」

 

(ナイスよ、荒垣君)

(とりあえず、今の支取に逆らうのはやべぇ)

(ええ、今はソーナの指示に従いましょう)

 

 グレモリーと荒垣は視線を合わせ、頷く。

 

 このやり取りの時、二人は支取から目を離してしまっていた。

 二人が目を離さなければ、もう少し冷静であったならば気付けていたはずだった。

 しかし、もう遅い。

 

「あれ、ソーナは?」

 

 ほんの数秒目を離しただけなのにそこに支取の姿はなかった。

 しかし、すぐに扉の外から支取が現れる。

 

「ソーナどこに行ってた…」

 

 再び、二人は固まることとなる。

 今度は頬を引きつらせながら…

 

「では」

 

 ドンッという重たい音を響かせながら支取はそれを置く。

 それとは『本』

 ただし、一冊ではない。

 大量に積み重ねられた本は荒垣の身長を越す高さとなっていた。

 

「はじめましょう」

 

 

………

……

 

 

 その日、荒垣とグレモリーの絆が深まった。

 

 

 

 




 ガイル01です。今回も読んでいただきありがとうございます。
 そして、本当にごめんなさい。前回から一ヶ月も空いてしまいました。それでも失踪はしませんのでご安心ください。仕事の関係で不定期になりがちですが今後ともお付き合いいただければ幸いです。
 そして、書いていたらなぜかレイナーレとのエピソードが…あれ?本来ならさらっと終わる筈だったのに…すみません、次回こそ本当に合宿終了です。
 レイナーレと荒垣が異常に仲が良く見えますが、作中にありますように「手作り」弁当を持って一回見舞いに行っているからです。皆さんの要望があれば、その時のことを番外編で書こうかと思いますがいかがでしょう?
 では、また次回お会いしましょう。

[設定や裏話やら]
・ライザー
 今回で小物臭が…それでも十分強いんですが。
 それにしても原作でもなんでライザーの眷属があそこまでライザーに惚れているのかがなぞ。

・レイナーレ
 物語が進まなかった原因。ちょっと出すつもりがしっかり書いてしまった。でもやっぱり可哀想な子。涙目なレイナーレを書いていると楽しいので今後も可哀想な事がほぼ確定している不憫な子。
 そういえば、モトの中身ってどうなっているんでしょうね?

・支取
 ライザーの戦い方にご立腹です。巻き込まれたグレモリーと荒垣に敬礼!!
 ちなみに、翌日家族以外の男性に初めて寝巻きを見られたことに気付き、顔を真っ赤にして悶絶する羽目となりました。

・グレモリー
 荒垣とはからかい、からかわれるというなんやかんやで親しい友人関係…なはずだが!?

 質問やご意見、感想等ございましたら遠慮なくどうぞ。


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