†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA (てゐと)
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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅠ 前編

こんにちは、このepisode Ⅰの編集。そして後編に登場するゲストの方に許可をいただいてました。


この物語は

ポケモン

ポケモン擬人化

申し訳程度のサクラ大戦要素

を含みます。これがダメという闇の力の僕たちはとっととおうちに帰りなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コインには表と裏がある。陰陽の様に何事にも対となるものは存在する、例えば赤と緑、金と銀、紅と藍、炎と草木、金剛と真珠、心と魂、黒と白、破壊と再生、大地と海、太陽と月、そして…光と闇。

 

 

我々が知る極一般的なものには必ずこう言ったものは存在する、そして生物とは無意識にも光を掴もうとする、だが誰しも光を掴める訳ではない。当たり前だ、そんな綺麗事が存在しない、誤魔化されているのが光だからだ。

 

 

 

 

逆に闇は誤魔化さない、鮮明で残酷な現実を見せる。興味本位で闇の道を行く者も居るがそういった者に限って深淵を見た者は居ない。完全な闇が怖いからだ。だが実際には陰中の陽というように闇の中にも光がある、その逆も然りである。

 

 

 

 

だが…光があるといって闇から逃れる事はできない、

 

 

絵の具で黒を塗りつぶせる色は存在しない。一度でも混ざれば白でさえ黒を完全に塗りつぶす事はできない。

 

 

安易に闇に踏み込んで無傷で居られた物など居ない、キレイでは居られない。他者を傷つけ自らをも傷つき、泥にまみれても前を進む、それが真の闇。

 

 

 

 

…この物語は今まで誰も踏み入れることの無かったタブーに自ら踏み込んだ異端者達の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

???「…腕を上げましたね」

???「恐縮ですわ、あなたにそう言ってもらえると…」

???「でも…」

カツン。褒めて落とすように片方の女性がチェスの駒を動かす。その一手にもう片方の女性はくすりと笑う

???「これで、チェックメイト…かしら?」

???「……、くっ…ふふふ…あはははっ!あーっはっはっは!!」

その静かな笑いは徐々に大きな笑いへと昇華していた。まるですべてが事極まれり。自らの思い通りに行ったかのように狂気の笑い声が暗い部屋に木霊する

???「甘いですよぉ!?甘い!甘すぎる!!あなたがここで仕掛けるには早計!つまり私にとって詰んでいるこの状況!!あなたにとっては逆にピンチなのでしょうぅ??」

そう高らかに言い放ちぐるりとチェス盤をひっくり返し、彼女は自らの駒を置き放った

???「逆に言いましょうぅ…。これで形勢逆転、あなたはここで私を落とせず、この駒を落とさねば負けてしまう…!!チェックメイトと言うのはこういうこ「はい、ステールメイトで」

だが話をぶちぎる様にあっさりと駒を動かして両者動けなくなった。いわゆる「引き分け」だ

???「…」

???「仕事がありますので。でも久しぶりに会えて遊べたこと、楽しかったですよ」

???「ふっふっ…きゃっーっはっはっは!!!…いけませんねぇ…あなたといるとついテンションがあがってしまいます…」

???「そんなあなたも好きですよ、それじゃあ…。あっと、忘れるところでした」

席を立ち、去ろうとした瞬間。一枚の便せんをチェス盤に飛ばす。それは相手のキングを真っ二つにして盤に突き刺さった

???「あなたたちが担当のお仕事です。最近お仕事増えてきてますから、他の人たちも呼んできてくださいね?」

???「…わかりました。まったく、お仕事増えるのは結構ですが一気に増えるのだけは嫌なんですよねぇ」

???「お願いしますね。期待してますよ」

???「そう言われなくても仕事は完遂しますよぉ…。それじゃあ失礼しますねぇ…くすくす…」

邪悪な笑顔を見せながら彼女は去り、いつしかもう一人もいなくなり、そこにはキングの割れたチェス盤だけが残されていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【スリバチ山:奥地】

 

イッコウセン(ゲッコウガ:♂)「ぜあっ!!とぉあ!!」

次々と現れるつるされた大木。それをたやすく破壊しているのは忍組のひとり、ゲッコウガのイッコウセンだ。

 

 

彼は久しぶりの休暇として山奥で修行に励んでいた。彼は由緒正しい忍者の家系として生まれ、彼もそれを重んじているからこそ自他共に厳しくしている。それはいついかなるときも主君であるエクレールを守護せんとする強い意志によるものだ

イッコウセン「…!」

今は奇襲に対する修行。突然の事にも対処できるようにと訓練に励み。いよいよその修行も大詰めに迫っていた

イッコウセン「ふっ!!」

最後に飛んでくるひときわ大きな大木を思いっきりサマーソルトで蹴り上げ、一瞬で真上に移動。強烈無比なかかと落としをあびせる!

イッコウセン「光賀流!!綿流し!!!(こうがりゅう わたながし)」

バキベキと強烈な音共に周辺へ木片が炸裂する。そして軽く息を吐くと周囲の木片を拾い集め、処理をすると共に荷物をまとめ始めた

イッコウセン「…そろそろ夕時。早く戻らねばエクレール様に心配をおかけしてしまう。…ん?」

そう独り言をつぶやいたあたりだった。突如周囲に気配を感じて振り向く。そこには…

イッコウセン「(旅人…?)そこの御仁。どうなされた」

人がいた。だがふらふらとしており。暗いせいで顔も良く見えない…

イッコウセン「…!」

その時、気配に違和感を感じ、即座に臨戦態勢にはいる。よく観察すると…その人と思っていた者には”左腕が無く、顔には複数に目があった”のだ

イッコウセン「何奴…!?」

荷物を手早くおろすと左手に水手裏剣。右腕に水の小刀を逆手持ちにしてじりじりと離れた距離を保ちながら様子をうかがう

 

 

 

イッコウセン「(こやつ…ただものではないな…。拙者では逃げることも難しいか…ならば…!)」

 

 

敵の異質さから力量を即座に察知したイッコウセンは左手の手裏剣を相手に投げるとすばやく腰につけた信号弾のはいった筒を手にし、上空へ放とうとした。空を見て正面に向き直すと奴は目の前にいた

イッコウセン「っ!!(ばかな…目を離したのは一瞬だぞ…!?今のを避けて気配も無く…!?)」

 

パシィ!!

 

強くにぎった筒はまるで最初から持っていなかったかのように軽々しく弾かれた。だがイッコウセンは小刀で一閃!!相手がよろけた瞬間空中に放り投げられた信号弾をさらに上へと蹴り飛ばし、その衝撃で信号弾を起爆させた!

 

イッコウセン「よし…!あとは…!!」

 

着地と同時に距離を取り、両足と刀を持った右腕を地面につけ、複数枚の手裏剣を左手に、イッコウセンは相手に鋭いまなざしを刺すようにむける

イッコウセン「耐えしのぐのみ…!」

たとえかなわないとわかりきっていたとしてもそれ以外に道はなかった。いくら彼らが強くとも規格外と鉢合わせることは少なくない。非常時には助けを呼ぶ。とにかく殉職だけは避けるのがてゐ劇の決まりでもあった

 

 

 

【フスベシティ:リュウグウジ拳法総本山】

 

エクレール(レントラー:♀)「あー…ちかれたー…。明日は筋肉痛だべー…」

タマズサ(ハクリュー:♀)「おつかれはん、どう?リュウグウジの総本山での修行。結構くるやろ?」

エクレール「よくまぁこんなんやれたね。タマちゃんなら根をあげそうとか思ってたんだけど」

タマズサ「失礼やなぁ、こんなん4才からやっとんのよ?」

らんまる(ランターン:?)「14才からやらなくなったがな」

タマズサ「ただ強くなるだけが嫌やっただけや。さぼるつもりはあらへんかった!」

ちょっと不機嫌そうにらんまるの揚げ足を一蹴するとエクレールも思わず笑いだす

エクレール「わかるなぁ…私も修行嫌だった時期あったし」

タマズサ「そういえばエクレールはんってどこの出身なん?ジョウトやろ?」

エクレール「うんとね、スリバチ山のふもとにギンリョウタウンってとこだよ。もっとも今は廃村だけどね」

タマズサ「らんまる知っとる?」

らんまる「たしか名前だけなら古い歴史本で見たことがあったような…」

エクレール「そんだけ古いところなんだよ、もう地図にない村…。ん…?」

空をみるとエクレールは目つきを変え、頭巾をかぶりなおした

タマズサ「エクレールはん?」

エクレール「…ごめん、ちょっといってくる」

タンっと一飛び。あっという間にエクレールの姿はみえなくなってしまった…

 

 

 

イッコウセン「ぐぅううう…!!」

攻防に一時間近くイッコウセンは耐え続けていた。その攻撃は鮮烈にしてつかみどころがなく。こちらの反撃もまるで意味がなく、暖簾に腕押しをしているようだった

イッコウセン「キリがない…!」

???「…、……、…?」

イッコウセン「(先ほどから意味不明な雑音を…!)くっ…!」

そして相手を水平に切る様に刀を振った瞬間、目の前から奴の姿は消え去った…

イッコウセン「…」

驚きも戸惑いもせず静かに気配を探る。まだ近くにいる。感じ取れる

ーめ―――か――り―――は――い―――で――――

イッコウセン「…!?なんだこの音…いや…歌…?」

ぶきみなその音は、まるで夕刻の時を教える町内放送のようにも聞こえる。周囲には風もないのに木々が揺れる。橙色の空が常闇にゆがむ。そして…

イッコウセン「ぐぅっ!?」

???「雨代埜翔孟堕阿 ?」

なんと背後から黒い槍のようなものがイッコウセンの身体を貫く。警戒していた。ずっと注意を払っていた。なのに…

 

イッコウセン「きさまは…なに…ものだ…」

 

背後にいたはずなのに、正面に倒れたイッコウセンがみたのは、ずっとこちらを真正面からみている奴の姿だった…

 

 

 

エクレール「イッコウセン!!どこだい!?」

ハヤテ(ハッサム:♀★)「エクレール様!こちらです!ユウラたちが発見しました!」

エクレール「すぐ行く!!」

 

 

 

 

エクレール「イッコウセン…」

ドラーシェス(ドラミドロ:♂)「大丈夫です、死んではいません。応急処置も終わりました」

そこにいたのは瀕死で倒れていたイッコウセン。その傷跡や血だまりがどれほど戦い抜いたのかを教えてくれた

エクレール「…」

ハヤテ「すぐに病院につれていくぞ。ドラーシェス、おぶっていけるか?「あぁ」」

ユウラ「エクレールさま、ご命令を」

エクレール「…全員。イッコウセンを病院に、そしたらさ、ちょっと集合して…」

どこか悲しげな顔でそうつぶやくとエクレールはどこかに消えていった…

 

 

 

 

ハヤテ「というわけだ、エクレール様の命に従いツーマンセルで行動する。マキ、私と来い。ユウラとドラーシェスで組んでエクレール様をお守りする」

ユウラ(マニューラ:♂)「…。それは命令違反ではないか?エクレール様、わたしらに近づくな言うたね」

ハヤテ「…責任は私がとる。エクレール様のご命令とはいえ、私たちがやるべきことはイッコウセンの仇を取ることだ。だがそれよりも最優先としてエクレール様をお守りすることが第一。」

ドラーシェス「理にかなってはいるがそれではただの屁理屈だ、きっとエクレール様はお怒りになるだろう。俺は反対だ」

ユウラ「同じく」

ハヤテ「…」

腕を組んで悩むハヤテ、同じく頭を抱える二人。マキはどうすればいいのかおろおろしていた。顔色も良くない

ユウラ「…面倒ね。こういう場合、エクレール様が何を望むかね?敵はきっとエクレール様も狙う。イッコウセンが受けた傷からして相当な手練れ…」

ドラーシェス「もしや敵の狙いはエクレール様でエクレール様は俺たちを巻き込むまいと自らお一人になられたのではないか?ならば…我らが全うすることは、」

ハヤテ「…不本意ではあるが自らの身を護れと…?」

ドラーシェス「その通りだ。でなければイッコウセンのようになる。あれはどこか見せしめのようにも、エクレール様への挑発のようにも見えた。普通なら確実に殺せたのにそれをしなかった」

ユウラ「…もしそうなら許しては置けないね…。これでもてゐ国歌劇団序列九位、忍組相手になめたマネしてくれる…!」

ハヤテ「…、考えていても仕方がない…。ともかく、かならず二人で行動することだ、いざとなれば信号弾で救援を求めること。今のうちに道具の手入れだけでも済ませておくぞ」

 

 

 

 

 

ベノ(ニドキング:♂)「はぁ?エクレールがどっか行ったきり戻らねぇだと?カティ、醤油取ってくれ」

エクレール除いた全員での食事の最中、タマズサが心配そうに切り出した

タマズサ「そうなんよ…。ウチとらんまるはてっきりすぐ戻る思うてたんやけど…。はい、しゅヴぁるはん「すまない」」

ラグナ(ラグラージ:♂)「エクレールのことだから心配はいらないとは思うが…。ちょっと引っかかるな…」

ベノ「誰か連絡来てたりするか?通じる奴は?」

もみじ(ガーディ:♀)「だめ、電源切ってるか電波の届かないところだって」

ベノ「…飯食い終わったら探しに行くぞ、あのエクレールが連絡無しなんざぁ珍しい、なんだかんだ言って何かするとき連絡はきちんと入れる奴だからな、あれで」

しゅヴぁる(シュバルゴ:♂★)「なら手分けするか、俺やラグナは山道を探す」

らんまる「なら、らんまるたちは街の中を探そう。誰かチョウジも探してくれると助かる」

リタ(イワンコ:♀)「なら私たちだな。リカじょーちゃん、一緒に探すとするか」

カゼキリ(スピンロトム:?)「夜でも私様たちなら常に視界良好。まぁ私様たちが一番だろうな」

ベノ「カティとぷりんは留守頼む。あともみじ、迷子になんなよ」

もみじ「ならないやい!もう!」

味噌汁をすすりながらそう言い、飲み干すとお箸を置いて全員が合掌する。

「ごちそうさまでした」

 

ベノ「…。今週の食器洗い誰だ?」

ルークス「迷子の迷子の子猫ちゃん(エクレール)よ」

ベノ「お留守番組、洗い物頼むわ」

カティ「ぷりんさん」

ぷりん「仮眠で忙しいからパス」

カティ「僕もこの資料今日片づけないと…」

ベノ「…。こんなこと言いたくねぇんだがよ。総司令命令だ、とっとと黙って洗い物をやれ」

ラグナ「俺が聞いた中でロリポップ買ってこいの次に無駄な権限だな」

ベノ「るっせ、おら行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【チョウジタウン】

 

ユウラ「…ドラーシェス」

ドラーシェス「…、何かいるな」

街中にも関わらず妙な視線を感じた二人は臨戦態勢に入る。人ごみに紛れてこちらをピンポイントに見つめている視線が

ドラーシェス「…どうする?」

ユウラ「ここでやるのは得策ではないね…、やるなら…」

瞬時に裏路地に移動。建物の壁を使って屋根におりたつと一気に武器を構える。ドラーシェスは毒を仕込んだ鞭。ユウラは鋭いカギ爪だ

ドラーシェス「そこに居るのだろう、出て来い!!」

ピシャン!!鞭を地面に打ち付けて威嚇すると陰になっているところから何者かが現れる。不気味な風貌。ただ何も言わない。

ユウラ「一つ聞くね、イッコウセンをやったのはお前か?」

正体不明のその敵はパキパキと音を立ててその身にまとう腕の骨ようなものを開閉し、左肩あたりから触手を伸ばしてきた!!

ドラーシェス「はぁっ!!」

その触手を器用に鞭で束ねるように絡めるとドラーシェスは自分側に引き寄せる!そしてユウラがおもいっきり敵の腹部を蹴り押した!!ポンプのように跳ねだされた敵は受け身を取ることなく右腕だけで立ち上がる

ドラーシェス「気をつけろ、まだ様子見しているようだ」

ユウラ「だろうね」

素早い動きで敵の眼前で止まるとユウラは足を払い、常人にはかなり無茶な態勢の上段後ろ回し蹴りで敵を再び蹴り飛ばす。その瞬間を逃さず、すかさず掌に氷をあつめ、氷の苦無を作り出してそれを投げた!!

ユウラ「くたばるがいいね!!氷刃!薙氷柱(ひょうじん なぎつらら)」

ひるんだ相手にトドメと言わんばかりに氷を纏ったカギ爪で切り裂くユウラ!だが…

ユウラ「なにっ…!?」

腕の骨のようなものが固い音を立ててそれを阻んだ!まるで意思を持つように手をひっくり返し、甲の部分で攻撃を防ぐと払うように軽くユウラを吹っ飛ばした!

ドラーシェス「大丈夫か?」

ユウラ「なめ腐りやがって…!今ので分かった…!あいつ全然本気じゃないよ…!」

ドラーシェス「…どうする?ここは街中だ、信号弾など撃てば…」

ユウラ「安易に一般人を巻き込む羽目になることぐらいわかてるね!問題はわたしらが束になっても敵わないことよ…!!」

声に悔しさが現れるほど二人は相手との実力差がわかってしまった。彼らは決して弱くはない。ただ毒組とほぼ行動を共にするそのデメリットの一つが目の前に来てしまっていた。それだけのこと…なのだが、前例と違うのはなぜか毒組ではなく明らかな敵意がこちらに向いていることだった

ドラーシェス「…、きっとイッコウセンも同じことを思い、救援を求めたのだろう…。このままでは二の舞だな…!」

不気味にその敵はゆらりと巻き付けている腕の骨のようなものを自分の背後につける。だがそれさえもまだまだ本気など出しておらず、もてあそばれているということが二人には嫌でもわかってしまう。

ドラーシェス「逃げるか…?」

ユウラ「お前バカになったか?逃がしてくれそうにもないね」

???「…」

何かをつぶやくと骨の指先が紫色に燃え、火の玉が打ち出される!!それをよけようとするがとんでもない追撃力がそれを許そうとしない

ドラーシェス「こいつっ…!!まさかっ…!!?」

ユウラ「くそっ!!見境なさすぎね…!!ぐあっ!!」

その流れ弾は街にも及ぼうとしていたがそれに気が付いた二人がギリギリのところで引きつけたり撃ち落したため被害はほぼゼロ、さきほどまで余裕のあった体力は削りに削られてもはや逃げる体力すらも奪っていった

ドラーシェス「ユウラっ…、いきてるか…?」

ユウラ「この程度でくたばるわけないね…!エクレール様の修行の方がもっときついね…!!」

ぴくっ、わずかにエクレールという言葉に反応したのか敵は一瞬だけ動きを止めた。それを二人は見逃さなかった!

ドラーシェス「煙幕!!」

ユウラ「くっ!!」

ドゥン!!

 

 

 

 

 

一斉に煙球を投げて視界を潰し、逃走を図る!!二人は残った体力を出し尽くすように建物を伝った!!

 

 

ユウラ「なんとか巻いたか…?」

ドラーシェス「…っ!?」

二人が背後を確認した直後、なんと目の前に先ほどの敵がいた…

ドラーシェス「くっ…、こいつはなんなんだ…!?」

ユウラ「ひとつわかったことがあるとすれば、こいつは人間でもポケモンでもないのは明白ね…!」

???「…」

再び先ほどの火炎弾が準備される。だが二人にはもう体力は残されておらず、ただ…祈るしかなかった…、主君の無事を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エアロギロチン!!

 

 

 

???「…!」

上空からの急襲に敵は攻撃を中止、空いた距離の間に颯爽と二人組が現れた…

リタ「おやおや、ずいぶんおかしな奴が見つかったものだ」

カゼキリ「黙って見過ごすほど私様たちは甘くないぞ?」

 

それは上空からエクレールを探していたカゼキリとリタだった

 

カゼキリ「エクレールを探してみればまさかその従者がみつかるとはな。オマケになんだ?この生き物は」

リタ「おー?どっかでみたことがあるな、こいつ」

カゼキリ「知り合いか?」

リタ「いーや、たしか百年ほど前に…」

???「…!」

その言葉に反応したのか敵は骨を伸ばしてリタを串刺しにしようとする!!

リタ「おっと」

間一髪それを避けるとすばやく魔法を詠唱、石の刃を飛ばしてけん制する。怯んだ隙を見てカゼキリが風の刃を飛ばしてさらに追い打ち、リタの詠唱を助ける

リタ「ヴラフォス・ヴェロス(大地の弓兵)!!」

地面が盛り上がり石の矢が下から襲い掛かり、敵はたまらず姿を消した。それも一瞬。まるで最初からいなかったかのような出来事だった…

リタ「騙されんぞ、ザジリエ・ラズリエ・ファルクス・エヴァンジェル。クイクードエフォシスマールツァントプルべレムテュームカム(切り刻め凩、瓦礫を刃に荒れ狂え)テラーターヴィンス!!」

詠唱によって発動した砂塵をまとった竜巻が不意打ちをしようとしていた敵を直撃!またしても陰に消えるように姿を消した

リタ「…今度は消えたな」

カゼキリ「こちらカゼキリだ、隊長。忍組を発見した、負傷している」

 

 

 

 

 

ベノ「わかった、すぐに向かう(ピッ)ラグナ、カティに連絡しろ。負傷者だ」

ラグナ「カティ、聞こえるか?どうやら忍組が負傷したらしい、至急手当の準備を、場所は…」

 

 

 

 

ドラーシェス「もうしわけありません…我らが不甲斐ないばかりに…」

リタ「気にかかる程度の事か?仲間が危機なら助けるのがここ(てゐ劇)なのだろう?」

気高くその身に合わない目付きで笑うリタ、しかし二人は自分たちが情けないという顔をしていた

ユウラ「だとしても情けなさすぎるね…!私たち弱過ぎよ…」

カゼキリ「別に強さなんていらないと思うが?自分が自分らしくあり、自分で正しい価値を得られれば私はそれだけでいいと思う。強さなんてそこについてくるオマケだ」

しらっとそういうとあくびを交える。もう夜も更けているためか眠いのだろう。一方吸血鬼のリタはピンピンしている

ドラーシェス「…!しまった…」

リタ「どうした?深刻そうな顔をして、私たちがいるかぎり手は出させないさ」

ユウラ「違うね…わたしらなんかより…ハヤテと…マキが…」

 

 

 

【スリバチ山:森林地帯】

 

 

ハヤテ「マキ、だいじょうぶか…?」

エクレールを諦めきれず、捜索していたハヤテ、それに付き添ってきた健気なマキを気遣う。もう夜も深いため下山していたところだった

マキ(アギルダー:♀)「はい…ただ…イッコウセンさんの怪我…普通じゃ…ないですよね…?」

ハヤテ「…」

そう、誰もが気づいていた。正直なぜ一命をとりとめているのかが不思議なくらいの傷だった

ハヤテ「奇跡…だと思いたい」

マキ「…なんですかそれ…。あんな酷い怪我で奇跡なら…イッコウセンさんの命は…そんなに軽いものなんですか!?私納得いきません!!あんな…あんな見せしめみたいな傷…!素人目でも気づきます…!」

ハヤテ「マキ、落ち着け、イッコウセンだって必死に戦ったに違いない。その結果、なんとか一命をとりとめたんだ、だから、あの傷は見せしめなんかじゃない、そう…信じよう…。今だけでも奇跡だと信じて…」

マキ「…」

ハヤテ「…。そういえばマキ…。その…、これを受け取ってほしい…」

マキ「これは…?」

ハヤテ「…二人だけなのだ。他の奴らの前では恥ずかしくてな…。気に入ってもらえるとありがたい…」

それは少し大きめの古い感じのする平たい木の箱だった。紫色の結びで封をされており、すこしずっしりとした感じから重いものであることがほのかにわかる

マキ「開けてみても…いいですか?」

ハヤテ「あ…あぁ…いいぞ…」

いつものハヤテからは想像できないくらいの初々しい反応からマキも少しためらう

マキ「…や…やっぱり後で…ちょっと気恥ずかしくて…」

口元が嬉しさから緩み、顔を傘帽子で隠すとハヤテもぷいっと顔を隠すように横を向く

ハヤテ「そ…そうか?それでもいい…受け取ってさえくれ”ザシュ!!”ば……な…?」

マキ「へ…?」

それは 静寂を踏みにじる

???「…」

 

 

 

悪夢の始まった音だった

マキ「いやあああああっ!!!ハヤテさんっ!!」

黒い影のようなものがハヤテの腹部を貫通。血が噴き出してマキの仮面と傘帽子にかかる。そして奴は暗闇よりぬぅっと這い出てきた

ハヤテ「マキっ!逃げなさい…っ!!」

マキ「あ…あ…」

ほとんど力が出ない状況で必死に声を張り上げてマキに逃走を促す。ハヤテはエクレールの右腕として数々の戦闘を経験している。その積み重ねが痛みよりも早く戦闘能力の桁がはるかに違うことを把握してしまったのだ。ほかの三人と同様に…!

ハヤテ「ぐぅう…っ!!」

渾身の力を振り絞って突き刺さった黒い影のようなものを思いっきりつかみ、相手を木にたたき伏せる!たとえ自分を犠牲にしてでもマキを逃がすための行動だった。だが…マキは足がすくみ、完全に腰が抜けて失神寸前だった…

ハヤテ「マキっ!!逃げろおおっ!!」

その言葉に反応し、マキも力を振り絞るが…その姿はなさけなく、なんどもこけ、トレードマークの傘帽子も捨てて木の箱を抱きかかえたまま尻尾を巻くように逃げ出した…

ハヤテ「それでいい…それで…」

腹部に刺さった影を抜かれるとハヤテはよろめきながらも敵に鋭い殺意を向ける。いや、それは殺意というよりマキをなんとしても護るという鋼よりも固い決意からくるもののようにも見える

ハヤテ「ふ…ふふ…この程度の不意打ちで私がくたばると思うか…?舐めるなっ!!私がいる限りあの子には指一本触れさせるものかあっ!!!」

ギラッと黒い十字の付いた鉢がねをつけるとハヤテは何かを取り出した!

ハヤテ「私の全身全霊を持って!!あの子を守って見せる!!メガシンカ!!!」

全ての鎧がパージ、真新しい鎧装が次々と生成、装着され、腕にのこぎり刃のハサミ状のナックル。背中に羽を展開し、顔には鋭くも凛々しい仮面が装着された!!

ハヤテ(M)「来いっ!!貴様の相手は私だけだ!!」

 

 

 

 

 

マキ「っ…はぁ…はぁっ…!!」

逃げなきゃ

マキ「うっ…っはぁ…げほっ…!!」

走らなきゃ

マキ「ぐすっ…うぅっ…!!」

どうして…こんなことに…?

マキ「あっ…!」

ドシャっ!!

マキ「…どう…して…?」

どれだけ逃げたかわからない。もう足元も見えないままがむしゃらに走っていたマキは傾斜から滑り落ちた

 

 

おおきく転んだ衝撃で気の箱が手元から離れ、転がる。そして何かにぶつかったようにころりとそれは動きを止めた

マキ「ぐっ…!どうしてこんなひどいことができるの!!?あなたはいったい誰なのっ!!?」

そこには、目の前には…マキを見下すように…奴が立っていた…。周囲は明かり一つ無い暗闇、そこに奴の異形な眼だけが見えていた

マキ「あなたなんでしょ…!?イッコウセンさんをあんなひどい目にあわせて…ハヤテさんも傷つけた!!ユウラさんとドラーシェスさん…エクレール様のことも傷つけたら私はあなたを絶対に許さないから!!!」

ピシャァアン!!!

いつしか鳴り響いた雷鳴は雨雲を運び、あっという間にその場は土砂降りになった。マキは泥だらけで立ち上がり、奴をにらみつける。このとき、彼女は初めて誰かに対する怒り、憎しみ、殺意に目覚めた

マキ「許さない…!許すものかぁっ!!!」

???「やめなさい。マキ」

上空から誰かがマキと奴の前に降り立った。それは…

マキ「エクレール…様…?」

エクレール「いやぁ、ごめんね。こいつのこと探してたんだけどね。まさかあんたたちの方に行くなんざぁ…思ってなくてさ…」

決して笑っていない顔を見せることなくミシミシと右手を握り、一気に開き骨を鳴らす。そしてその手をまた握り…大木に打ち付けた。その衝撃で吹き飛ぶ森林。バリバリと電気がスパークする音、そして…

エクレール「…悪いねぇ、封印なんて私習ってなくてねぇ…。てめぇをズタズタに引き裂いて地獄に送ってやるから…!!手加減なんてしねぇからな!!」

一瞬で奴の首元を蹴ると顔面を左手で掴む。すると物の数秒で顔の形が変形していく…!

 

実はエクレールの握力はてゐ劇の中でも群を抜いており、彼女より上はラグナしかいない。

 

 

腕力や脚力など体術的なことを総合すると他のメンバーを鼻先で笑い飛ばせるほど能力が高い、それが、彼女がエリートと言われるが所以である

 

 

 

エクレール「おら、どうした、利き腕じゃねぇぞ。てめぇがおねんねするには…早すぎるんだよぉっ!!!」

メキメキミシミシと直に骨が砕ける音が聞こえる。抵抗に腕の骨がエクレールを攻撃しようとするがたやすく回避されて指をすべて蹴り飛ばされる。完全にグロッキー状態。またしても容赦なく首を締めあげるエクレール。殺意が尋常ではなかった

エクレール「なめんじゃねぇぞ…?アタシの故郷を滅ぼし!!家族やみんなまで奪い!!私の大事な忍組まで潰そうってか!!?あ゛ぁっ!!?アタイの幸せを踏みにじって楽しいかよ…!?ザラーム!!!」

明らかになった敵の名、ザラームの触手をエクレールは右腕で掴むとそれを思いっきり引きちぎる!ブチブチと生々しい音を立てて黒い何かが噴き出した

ザラーム「…!」

ぎょろりと不気味な視線をエクレールにぶつける。だがエクレールは今までにない形相でザラームを睨み返す。一切手を抜かずにちぎった触手を捨てると利き腕も加えて首をさらに締めあげ始めた

エクレール「苦しみも痛みも無く殺してやるっ!!てめぇがアタシにしたように今、てめぇの全てを奪ってやる…!!」

その姿を見ていたマキは…ザラームよりもエクレールに恐怖を覚えていた…。いつもはひょうきんでおちゃめでなのにしっかり者で…。優しい…。だが目の前のエクレールにその面影はなく、形が同じなだけの別人にも見えた

マキ「これが…エクレールさまの本気…?」

エクレール「…」

一瞬マキのことをみたエクレールの瞳は…かすかに泣いているようにも見えた…。その一瞬だけ力が緩んだ

ザラーム「!!」

その一瞬の隙をザラームは見逃さなかった!!髪の毛から黒い竜頭を突き出してエクレールを強引に突き放す!!すかさず邪悪な球体を連続発射してさらに突き放そうとする

エクレール「っ!!こんな攻撃!!」

すばやくその攻撃をよけ、ザラームに攻撃を仕掛けようとする!!だが…怒りに飲まれるあまりにエクレールは忘れていた…

エクレール「っ!しまっ…!!」

自分のすぐ真後ろに、マキがいたことを…

マキ「…っひ!」

バァン!!

それは…マキに被弾…しなかった…

マキ「ハヤテ…さん…?」

ハヤテ「無事か…?」

護ったのは…満身創痍のハヤテだった…

ハヤテ「ぐっ…う」

ドサリと崩れ落ちるとハヤテは意識を失った…。全身ズタズタ、腹部に穴が開いているにも関わらずハヤテは最後までマキを護るために…

マキ「ハヤテさん!ハヤテさんっ!!」

エクレール「っ…。なっ…!」

マキとハヤテにエクレールが気を取られた隙を見てザラームは逃げ出したようだった…。気配はなく、いつのまにか雨も上がっていた

エクレール「…くそっ!!また…護れなかったのかっ!!アタシはっ!!くっそおおおおおおっ!!!」

強く握った拳で大木を殴り飛ばすとエクレールはギリギリと歯を鳴らし、大声で慟哭し、なんども地面に自分の拳を打ち付ける。握った掌からも、打ち付けた拳からも、赤い血が泥に色を付けていく

エクレール「ちくしょおおおおっ!!!」

マキには、ハヤテを思いながらそれを見ているしかできなかった。いつもは太陽の光のように明るい笑顔が憎しみに染まったその顔に、どういう言葉をかければいいのかわからなかった

エクレール「…ごめん…ごめんよ…マキちゃん…みんな…。もう…終わらせるから…。アタシが全部…」

そういって顔を上げるとエクレールはどこかに姿を消した…

マキ「エクレール…さま…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ベノ「…なるほどな、どうやらそのザラームってのが今回の事件の中央にいるとみて間違いねぇな。だが…妙だな…ザラームって奴の情報、いまだ一つも見つかんねぇとは…」

忍組ほぼ全員が入院している病室でマキからの情報をもとにザラームについて調べていたベノ。情報が一つも見つからないことに難儀していた。エクレールも行方不明。完全に八方塞がりだった

ベノ「すまねぇな…こんなザマじゃ見舞いにもなりゃしねぇ」

マキ「いえ…」

ベノ「…見たんだろ?エクレールの力を」

核心に触れることを言われ、眉を動かすマキ、その瞳には複雑な感情が見え隠れしていた…

ベノ「…あいつな、俺の事殺しに来やがったんだ」

マキ「え…」

ベノ「…、昔の事だ、俺は人に褒められる過去をしてねぇ、だからその時の俺を憎んで暗殺しようとする奴も少なくねぇ。エクレールもそんな雇われた殺し屋の一人だった。不意を突かれたのもあってかなりヤバかった。だが…すぐにラグナたちが来てくれてよ、俺は助かったんだがエクレールの奴は悲しそうな眼をしてた。そん時だ、こいつも孤独(そういう奴)なんだって感じてよ、その場でスカウトしたってわけよ。それからすぐあいつはすぐに地位を高めていきやがった。それこそ天才ってのはああいうことを言うんだと思ったぜ」

マキ「そんなに…すごかったのですか…?」

ベノ「最下位の奴が一か月、しかもたった一人で上位の組と成績でタイ張ってたらそりゃ二度見するだろ。即隊長会議の話題になったもんだ。とまぁその時丁度どの組にも馴染めなかったはぐれもの四人がいてよ、そいつらのお守を任せたんだ。それが忍組誕生のきっかけだ、その二年か三年後だな、お前がスカウトされたのは」

マキ「…」

ベノ「お前からの話が本当ならよ、エクレールは過去に護れなかったものがあった。そして今、新しく護るべきものも護れなかった。その罪悪感に苛まれてんだろな。…俺には痛いくらいわかるぜ…」

アルタイルを見つめて…ベノはそうつぶやく…その時病室のドアが前触れもなく開いた

リタ「坊や、吉報だ!」

ベノ「ノックから出直せロリババア」

リタ「まぁ良いではないか、それよりザラームのこと、思い出したぞ」

 

 

 

リタ「確か150年前だな、その時私はエンジュシティに立ち寄ったことがあってな。丁度”カネの塔”の前後を見たことがある」

ベノ「…そりゃあのライコウ、エンテイ、スイクンの伝説の事だな?あの焼けた塔の伝説の」

リタ「ふっ、ベノ坊や、その伝説、本当のものだと思うか?」

ベノ「…なにがいいたい?」

リタ「これを見ろ、私が当時高価だったカメラを使ってこっそり撮影したものなのだがな」

そういってボロボロの写真が手渡される。色あせているがはっきりと塔が燃えているのがわかる写真。だがそこにはとんでもないものが移っていた!!

ベノ「こいつ…マキっ!!これか!?」

マキ「こ…これです…!エクレール様が呼んでいたザラームというのは…!」

そこには小さいながらはっきりと、上空からカネの塔を見下すザラームが映っていた…!

ベノ「となりゃ…まさか…!?」

リタ「そうだ、突然の落雷などと伝わっているがこれをよく見ろ。私の記憶が正しければ当時は晴天、雲一つなかったはずだ」

写真の空を見てみると確かに雲ひとつない晴天のようだが塔は燃えている

ベノ「焼けた塔は落雷の火事じゃねぇ、燃やされたってことか…?」

リタ「ご名答だ、そしてなぜだがこの事件は途中から降ってきた大雨で鎮火されている。それこそあのルギアによるものだと私は推測している。そしてここからは伝説通りだ、三犬伝説につながる。この時、すぐにルギアとホウオウが現れなかった原因はわからんが…鍵を握っているのはもう一つある。それをタマじょーちゃんとらんまるが教えてくれた。エクレールの故郷…ギンリョウタウンだ」

 

 

 

翌日

 

ベノ「本当にあるんだろうな…そのギンリョウタウンってのは…。わりぃが歴史には少し鈍くてよ」

らんまる「いや、こんなもの、古い書物を好き好んで読まなければわからない」

タマズサ「なんやウチの家も古いさかいに数百年前の本とかぎょうさんあるんよ。らんまるは昔っからよく読んどったもんなぁ」

チョウジタウン周辺の森の奥地を毒組は歩いていた。昨夜、全員でリュウグウジ家の書物を手当たり次第にあさり、ギンリョウタウンに関する情報を手に入れた、場所はチョウジタウンの周辺とだけしかわからなかったがイッコウセンやマキが襲われた場所からスリバチ山方面に手がかりがあるのではないかと推測し、足を運んでいた

ベノ「しっかし…”幻の村”…か…」

その書物には奇妙なことが書いてあった、それはギンリョウタウンが廃村となる以前に侵入者を寄せ付けない幻の村であるということだった

しゅヴぁる(シュバルゴ:♂)「この近辺には最近修行に上ってみたが…村…らしきものは見なかったな…」

ルークス(ドレディア:♀★)「すんすん…。でもちょっと変よね、チョウジタウン周辺の木とここら辺一体の木、同じようで全く違う種類よ?」

ベノ「…カティ!そっちはどうだー!?」

上空に居るカオティクスに声をかける。いざというときのため飛べるメンバーは上空で移動していた

カオティクス(ウォーグル:♂)「前方に渓流です!それ以外は特に見受けられませーん!!」

ベノ「一回休憩にするかー!降りて来い!!」

 

 

 

ぷりん(グレイシア:♀)「うへー…疲れたー…」

もみじ「しゅヴぁる…それ重くないの?」

しゅヴぁる「慣れてしまった…今はむしろ暑いな…」

ラグナ「薄めの素材の着物にしたんだが…ここら一帯が元から暑いのかすぐ汗をかくな」

ベノ「水分補給はちゃんとしとけよ、あ…?」

その時、ベノは何かに違和感を感じた

ベノ「…おい、みんな」

全員を呼び出すと川の水を指さす

ベノ「なんか違和感しねぇか?」

その場所をのぞき込むと水面が揺れている。…のだが何かがおかしい

チグサメ(カポエラー:♂)「…?」

リタ「ほーお?」

カゼキリ「…色が違うな」

ベノ「だよな…」

そこに映っていたのは唯一一本だけ銀色の葉に包まれた金色の木、だが普通に見る分にはただの木だ

ベノ「まさかな…」

水に手を入れ、映った木に触れる。するとその木の触れたところは金色に輝きだした…!

カオティクス「もしかして…」

ベノ「たぶんだが…これを手掛かりにすりゃあ…たどり着くんじゃねぇか…?」

ラグナ「それなら…ちょいと自然にゃ申し訳ねぇが手っ取り早くやるか」

両腕を上げて水を集めるとラグナは巨大な球体を作り出す。それをベノが上空に蹴り飛ばす!遥か空から破裂した水の玉は雨となって森に降り注いだ…

ベノ「カティ、見てきてくれ」

空へ飛んだカオティクスは森を見渡すと手を振りながらベノ達を誘導する。万が一色が消えてもカオティクスが場所をわかっていればたどり着ける。そして…手がかりを伝うこと歩いて数十分…

ベノ「…っと、ここか…?」

そこは…苔むした朽木の家が少しある小さな広場のような場所だった…

ラグナ「だいぶ古いな…。これは…」

カゼキリ「約だが10年以上たってるな、中は…。うん…?」

中は意外と無傷であった、古いもののつい最近まで誰かがいた痕跡があった…

ベノ「…これは」

足にこつんと当たった本を拾い上げる。ページをめくるとまったく見たことのないような文字だった

ベノ「リタ、わかるか?」

リタ「…、これは今から200年以上前にイッシュ地方のとある地域で使われていたコウア文字だな、どれ…」

目を凝らしてペラペラとページをめくる

リタ「ときのはじまりわよこしまなるこころである…ひとびとやしんじゅうにやどるそれわいつしかおおきなさいやくをうみだしていた…。じゃあくなるえいえんにつづくあくむ。われわれわそれをざらあむ(邪螺悪夢)とよぶことにした」

ベノ「!」

リタ「われわれわざらあむをふういんすることにせいこうした、だがやつはたびたびふういんをじりきでやぶっていった。そのたびにわれわれわぎせいをだし、いまでわわたしとおっと、そしてむすめだけとなった。だがもうやつをふっかつさせない。わたしたちのこにはてをださせない。こんやがそのときである。どうか、わたしのむすめ、ほのかにはもうそのおもいをさせぬように…」

ルークス「…でも封印はとけてしまったのね…」

リタ「もの好きだな、わざわざコウア文字で書くとは…」

そういいながら本を見回す。するとリタはとあることに気が付く

リタ「…この材質…。保存状態が良いとしても今から10年ほど前か…?だがなぜコウア文字で書いた…?」

???「それは…連鎖を断ち切るためです」

玄関に現れた謎の人物はまっすぐこちらに歩み寄ると本をリタから受け取る。そしてページをめくって再びリタに手渡す

リタ「…これは」

???「はい、奴の…ザラームの封印方法です」

ベノ「なんて書いてあんだ…?」

リタ「…読むぞ?」

全員がうなずく。リタはすこし悲しそうな眼をして口を開く

リタ「奴を封印するためには奴が腹を満たしている時に結界の中で拘束し、それで10~15年ほど封印できると書いてある。そのための対価は…封印する者の血肉だ」

ラグナ「なっ…!なんだよそれ…命を懸けてたったそれだけしか封印できないってのかよ…」

???「さらに奴は気まぐれで強固な封印をこじ開け、最短で一日たたずして復活したこともあります」

カオティクス「まさに悪夢ですね…」

リタ「しかもこの封印術式は東洋魔術の中でも飛び切り強い部類だな、これをあの悪魔共(七つの大罪)に使えば100年は何もさせずに封印できるやもしれぬぞ」

ベノ「七体いる時点で実用性は皆無だな」

リタ「ザラームの奴は生まれ次いで封印に極めて強い耐性を持ち合わせている可能性が高いな、いや…そもそも封印をあまり受け付けない体質なのか…?」

ルークス「それじゃあ…ザラームはどうして生まれたの?出生が関係しているかも…」

???「その本にも書いてありますが簡単に言えば奴は人やポケモンの心の穢れから生まれました」

ぷりん「穢れ?」

???「言葉通りの意味になりますが古来よりこのジョウトには二体の伝説のポケモン。ホウオウとルギアしかいませんでした。彼らは人々とポケモンの営みを見守り、時には試練を与え、空と海から大地に住まう命を支えていました。ですが時が重なるにつれて人々は傲慢になり、そのたびに心の穢れを彼らは取り除いていました。ところが…それは年々膨大になり、ついには彼らでは取り除けないほど莫大な闇として形を成していきました、その具現がザラーム。奴は生まれ出るとまずカネの塔…ルギアの止まり木を雷光で焼き尽くし、それに気が付いたホウオウとルギアが駆け付けると激闘の末に封印されました。その時の封印で奴は力のほとんどを浄化され、無力に近しい存在になりましたがその性質…人やポケモンの心に穢れが力となり、たびたび力を蓄えて封印を破り続けたことで耐性が付いていったのかもしれません」

リタ「なるほどな…。簡単に言えば人間のマイナスな部分が集まって生まれた闇というわけか…。殺す方法は?」

???「残念ながら…。奴は精神体のようなものです。物理的な攻撃はほとんど効力はないでしょう。少なくともこの地方や近辺の地方の呪術をすべて試しましたが効果はありませんでした」

カゼキリ「…ということは忍組の奮闘はまったく意味がなかったわけだな」

ベノ「ラグナやカティは相性最悪だな。殴る方が得意な奴はザラームとかち合うなよ」

リタ「逆に殴るのが苦手な奴は率先してザラームとやり合う必要があるな」

???「まさかザラームと戦われるのですか…?」

ベノ「あぁ、相手が何であれ仲間に危険が迫ってる。助け合うのが俺たちの流儀だ」

???「…微力ながら私にも手伝わせていただきたい。私はザラームによって主を失った。かたき討ちとは言わぬがもうこの悲しい連鎖を完全に断ち切りたい」

ベノ「…自分の身は自分で護れよ。えっと…」

ガラシャ(カミツルギ:?)「もうし遅れた、私の名は切江(きりえ)ガラシャ。ガラシャと呼んでくれ」

ベノ「よろしくな、ガラシャ」

互いに握手を交えるとガラシャは支度をすると言って奥の部屋に入っていった。ベノ達は家から出て空気をめいっぱい吸った

らんまる「…こんなに澄んだ空気を吸ったのは初めてだ」

しゅヴぁる「あぁ、いつかはこんなところで修行をして暮らしたいものだ」

もみじ「リタ、まだその本読んでるの?」

リタ「今は情報が惜しい。なにせ奴を封印するならの話だが奴が最大の力であることが封印条件だ。だがどこかになにかしら…殺す方法があるはずだ…。その手掛かりがほしい」

ガラシャ「待たせた、参りましょう」

ベノ「エクレールかザラームはこの近辺に居るはずだ、全員かたまって探すぞ」

ガラシャ「いや、その必要はない」

東にある山を指さすとガラシャは歩き出し、それに全員が付いていく形になった

ガラシャ「ザラームはおそらく、力を蓄え居城に戻っているはずです」

ベノ「居城?ここいらに城なんかあったか?」

カオティクスとカゼキリは互いに首を横に振る。他のみんなも見ていないようだった

ガラシャ「今向かっている山の峠には普段は霧で隠れているが今から400年前に使われなくなった初代鈴の塔がある。見た目は城だが内装は侵入者を排除する仕掛けで精神体のザラームからすれば痛くもないため不利益が無い」

リタ「…貴様。不老不死か?」

ガラシャ「長寿の種族なだけだ。実年齢は100を超えている」

ベノ「その口ぶりだと何度か入ったことがあるみたいだな」

ガラシャ「何十と入っていった。目の前で何人もの仲間を亡くした。それを刻み続け、私はここにいる…」

ベノ「犠牲の上に成り立つもの…か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【初代鈴の塔:天守閣】

 

 

ザラーム「…」

エクレール「…」

ザラーム「…っ!!」

エクレール「死ねよ…。てめぇだけは死んじまえ!!!なんで生きてんだ!!生きる権利なんざてめぇにはねぇんだよ!!てめぇは…!!死ぬべきなんだ…っ!!生きてちゃいけないんだっ!!」

声を大きく張り上げて拳を握る…。空には雷鳴。赤い瞳がまっすぐザラームを捕らえていた

 

 

 

 

 

次回予告

 

復讐にためにザラームと戦うエクレール。その恨みや憎しみを糧にするザラーム。エクレールを助けるために走るベノ達。決断を迫られる忍組。その中ですべてに決着をつけるため、マキは決意する。虹の輝きの中で今、時を超えた奇跡が重なり合う

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅠ後編

 

 

 

エクレール「さようなら。ほのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あーあ、やっぱり言う事聞かせること自体が無理でしたか。所詮は本能だけのバケモノですねぇ。”あの人たちの方がまだいう事を聞いてくれます”が…まぁいいです、まだ駒はあります…。せっかく封印解除の手助けをしてあげたのですから存分に暴れ、死んでくださいね?ザラーム…。くっふふふ…」

 

 

 

 




お疲れ様でした。これ以外の過去のSpecialの投稿はまだ決めかねています


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅠ 後編

こんにちは。色々手直ししてたらすっごい遅くなりました。ですが自分でほぼリメイクして満足する結果になりましたのでお楽しみください。


 

 

 

 

 

 

 

イッコウセン「ううっ…」

ユウラ「やっと気が付いたね」

イッコウセン「お前たち…。ここは…」

ドラーシェス「病室だ、揃いも揃って不覚を取った」

イッコウセン「…。エクレール様は…ぐっ…!」

ハヤテ「動くな、お前が一番重傷だ」

そう言ってイッコウセンを寝かせるハヤテ、だが彼女も大概だったためすぐにマキに止められる

マキ「だめです!ハヤテさんも安静に…「あ…あぁ…。すまん…」」

ユウラ「とりあえず眠気覚ましにイッコウセン、聞くね。お前が寝てからあったことを」

 

 

 

 

 

 

イッコウセン「そんなことが…」

ドラーシェス「現在毒組の方々が動いてくれている」

ハヤテ「ギンリョウタウン…以前にエクレール様から聞かされたことがあるスリバチ山周辺にあるエクレール様の故郷だと…」

マキ「向かいましょう!私たちも力に…!」

ユウラ「マキ、気持ちは同じね、だが…私らだけが行ったところで歯が立たない。仮に場所がわかっても足手まといね。全員対峙したからそれくらいは承知できているはずね」

マキ「…」

それを聞いてかマキは胸が締め付けられた気分になってしまった…他の四人が勇敢に立ち向かったのに対して自分はただ逃げまどっていただけだった…。その結果…ハヤテに大けがをさせ、エクレールの身にも危険が迫っていることに強い負い目を感じていた。それを払拭するためにもマキは向かおうと思った、だが…実力も無ければ場所もわからない。ただの妄言に近かった

ハヤテ「…。弱いことは決して悪いことではない。私もそうだった…そしてお前たちも、…違うか?」

マキの様子を見て察したのかハヤテが話題を振る。それはなにもマキだけではなく、彼女を除いた四人の共通点でもあった

 

ドラーシェス「確かにな…。俺も…昔は今よりもっと弱かった…」

イッコウセン「…否定はしない、そして今も、まだまだ自分たちは未熟だと思い知らされた…」

ユウラ「…過去の私らを変えてくれたのはエクレール様ね、今、行かずにいつ恩を返すか…!!」

沸々と燃え上がるエクレールへの恩義、彼らは今にも飛び出しそうなほどの熱気を放っていた

マキ「…(でも私たちだけでは…また返り討ちに…。いったいどうすれば…。考えろ…マキ…、こういう場合…エクレール様ならじゃない…私なら…どうするの…?)」

ハヤテ「…、マキ。どうした?焦る気持ちはわかるが…まだ我々も完全に傷が癒えたわけではない、今は…「だめです!!今を逃せばエクレール様は…!」」

初めて聞いた、マキが声を荒げて自分に意見するその姿に。他の三人も同様に驚き、ハヤテは少し思い出し笑いをしたのかぼそっとつぶやいた

ハヤテ「ふふっ…入った時とはまるで別人のように成長したな…」

マキ「!!」

バンっ!!大きな音を立てながらマキは急いで病室をでた!それを全員が一瞬唖然となり、急いで追いかける

ユウラ「いきなりどうしたね…!まさか一人で向かったなんてことは…!!」

イッコウセン「どうであれ!マキだけでも傷つけさせないためにも探すぞ!!」

ドラーシェス「…いや、どうやら…」

一階に下りてすぐにマキは見つかった、その手には…

マキ「はい…。お願いします…」

ガチャンっと戻した受話器を握り、先ほどまでの険しい表情はどこへやら。マキは強く、活気に満ち、覚悟を決めた凛々しい顔をしていた

マキ「行きましょう!エクレール様の元へ!」

 

 

 

ベノ「ってなると!アイツは俺たちや人間の負の感情がある限り不死身だってのか!?」

走りながらガラシャに問う。全員が全速力で初代鈴の塔を目指していた

ガラシャ「そうなる。だからこそ封印という選択肢しかなかった。そして以前の封印は強すぎるあまりザラームでさえ破れなかった。もう二度と破れなかったはずだった!私は一年に一度この時期に村人の供養のために訪れるのだが今年訪れれてみればあの有様だ。だが封印はつい最近破られたと確信する。でなければ今頃この地方は…」

ラグナ「どうなるんだ!?」

ガラシャ「奴によって…。奴が腹を満たすためだけに征服され、憎しみを育てる地獄と化す。その憎しみはやがて世界を巻き込み、戦争を生み、極上の悲しみを生み出す。他人への劣等感。ザラームの息のかかっていない地域や食料の奪い合い。時間さえ立てばその穢れは国境などの問題ではなく、星を穢す。今すぐ止めなければ滅亡だ…!」

リタ「…確かに、地方一つの穢れを奴が取り込めば私たちに勝機はなくなるだろうな」

ベノ「落ち着いて言ってる場合か!んなもんほっとくわけいかねぇだろ!!ただでさえステゴロ専門のエクレールが追ってんだ!相性最悪じゃねぇか!」

ガラシャ「…そのエクレールという者、もしかして赤眼黒髪か…?」

もみじ「そうだけど…どうして?」

ガラシャ「…ほのかお嬢様…」

ルークス「?」

ガラシャ「なんでもない、急ごう」

その顔は眼こそ見えないものの悲しそうな顔をしていた。そして先頭を走りながらガラシャは思い出していた…

 

 

 

 

【十年数前】

 

ガラシャ「光(こう)様。お茶が入りました」

光(こう)「お、ガラシャか、悪いな…」

ガラシャ「…コウア文字でございますか?」

この当時、まだガラシャの両目は健在であった。白く濁った色の瞳で光の書いた文字を見る

光「あぁ、お前なら読めるだろう?ほのかには教えてないからな…あの子にはただ…純粋でまっすぐ、明るく生きてほしい…」

お茶を口にするとほっと一息。少し疲れているのかウトウトしているようだった

ガラシャ「いけません、布団を敷きます故、休んでください」

光「そうはいかないだろ…?あのクソ野郎のせいで同胞が散りに散って、もう封印ができるのはアタイと秀(ほず)しかいないじゃないか」

ガラシャ「しかし…」

光「大丈夫だ、秀もわかってくれてる。いざって時は…あんたにほのかを託すよ」

ガラシャ「そんなこと冗談でも言わないでください…ほのかお嬢様はまだ8才ですよ…!?お嬢様にこんなの…!あんまりではありませんか…!」

光「…悪いとは思ってるさ、でもね。どうせ人生ってのは咲いて散るものなのさ。だったら…最後に豪華絢爛の花吹雪。咲かせてやろうじゃないか。あんたと、娘のために」

煙管を吸い、灰を捨てると光はニカッと笑う。この後に待ち受ける運命を受け入れるように…

ガラシャ「…どうかお気をつけて…。願わくば…生きて…生きてください…!」

光「こらこら泣くんじゃないよ。いくつになったんだい?」

ガラシャ「ですが…ですがっ…!!」

光「…わかってるさ、もう一時間もないだろうね、だからさ…先に死んでく奴等は最後に残されたものの配慮なんざできない。できることは…さらなる不幸を…業を背負わせないようにすることだけさね」

筆を進め、出来上がった本をガラシャに渡す。ガラシャは涙を必死に抑えながら泣いていた…

光「それじゃあ行ってくるよ。秀ももう準備できてるだろうしね。ほのかのこと…頼んだ…。願うならどんな形でもいい、幸せであっててほしい」

 

 

 

 

 

 

秀(ほず)「遅かったじゃないか」

光「女にんなこと言うんじゃないよ。ほんとデリカシーってのがないね。あんた」

秀「ははっ、すまないな。鈍感で」

光「今からヘマしたら承知しないよ。閻魔ん代わりに地獄に蹴り飛ばしてやっからな」

秀「怖いなぁ、ほのかが泣くぞ?」

光「…」

秀「…」

光「…。最後に…抱きしめてやったらよかったかなぁ…」

秀「あー、僕もそうすればよかったかなー…」

光「アタイらそのことで恨まれそうだな!あっはっはっは!」

秀「違いないな、ほのかは甘えん坊だし」

二人が笑うと同時にたどり着いた場所、そこは…ザラームの封印された場所、そして今、その封印をじわじわとやぶり、おぞましいその姿が現れんとしていた…

光「ったくよぉ!あんのクソ爺!もっとちゃんと封印しろっての!」

秀「村長は…父さんはしっかりと務めたさ…。あいつがすべて……!」

光「…いくよ。娘のためだ、気張んな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラシャ「こちらです。急いで」

ほのか「ねぇ…ガラシャぁ…おかーさんとおとーさんは…?」

ガラシャ「…後で説明いたします」

ほのか「ねぇ…おじーちゃんや村のみんなはどこにいったの…?もしかしてそこにいくの…?」

ガラシャ「…」

知っている。全ての真実を。だが…それは簡単に説明できるものでもないしましてやまだ8才の少女にその現実は重過ぎる。そう思えば思うほどにガラシャは黙っていった…

ほのか「ねぇ…」

ガラシャ「…っ!」

だが…ガラシャには耐えられなかった、全てを偽りで隠すことを。純粋なほのかの瞳に流れる涙を拭うつもりで、意を決してしゃがみ、ほのかと目線を合わせて全てを打ち明け始めた…

ガラシャ「ほのかお嬢様、私の話を、聞いてください。そして無理かもしれませんが…受け入れてください。今から真実をお話しします…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほのか「それじゃあ…みんな…しんじゃったの…?」

ガラシャ「すべては…ザラームの仕業です…」

目線を合わせ、真剣に話した。事の顛末。そして…彼女の両親の運命さえも…

ガラシャ「今のあなたには重過ぎるかもしれない…ですが…私には…黙っているだけなど…。嘘を付いてお嬢様と共にいるなど…耐えられませんでした…!」

ほのか「…」

ガラシャ「お許しください…!自身の都合のよいように逃げるだけしかできなかった…。そして幼心に真実をたたきつけてしまった中途半端な私の事を…」

ほのか「…ゆるさない」

ガラシャ「この身…いかようにも…」

ほのか「違う…。ガラシャは悪くない。悪いのは…ザラームだよね…?」

ガラシャ「…!」

その赤い瞳は…もはや8才のそれではなく。自分の死に場所を見つけ、打ち倒すべきは何なのか、それがハッキリとした顔をしていた

ほのか「ガラシャ…、いつかね、封印が解けたなら…。ザラームは…私が殺す…」

ガラシャ「ほのか…お嬢様…?」

ほのか「…ほのか?復讐に大事な名前を使いたくない…。…今から私はおかーさんとおとーさんの意思を受け継ぐ…。…秀でし光…閃光。エクレール…!」

闇夜に輝く雷は、彼女の怒りを表すように…激しく鳴り響いた…

 

 

 

 

ガラシャ「…(私がつなげてしまった憎しみの連鎖…。私の手で断ち切らねば…!)」

自らの罰として潰した両目。その戒めを胸に…

 

 

 

 

 

 

 

ガラシャ「ついたぞ…!ここが…初代カネの塔だ…」

全員息を切らせながらたどり着いたその場所は何重もの塔。天守閣は高すぎて見えない

ベノ「いくぜ…!とまってらんねぇ…!」

???「おっと、早速ですまネェがご退場願おうか!」

塔の入り口が開くと、そこには…

ベノ「誰だ!今は非常時だ!邪魔するなら誰だろうとぶっとばすぞ!!」

???「あいにく俺たちも引けなくてなぁ…。それより…話し合うより殴り合う方がわかりやすいか?」

ベノ「あ?やんのかてめぇ…?ぶっ殺されても化けて出てくんなよ!!」

ここまで走りづめだったためかベノはかなりイラついていた。しかもなぜか初対面のその相手にもいけ好かない何かを感じて…

???「上等だ、まとめて相手してやっからよぉ!!かかってきやがれ!!」

もみじ「あー!」

何かに驚いたのかもみじが声を上げた。もちろん指先は目の前の四人組に向けられてる

ベノ「あいつらがどうかしたのか?」

もみじ「もしかして…!幻のバンドチーム…名もなき旅団!?」

リツ(オーダイル:♂)「へぇ、おじょうちゃん。俺たちの事知ってんだな」

ムラサキ(クロバット:♀)「ちょっと!へんな噂ついたらどうするのよ、また客が減るじゃない!」

ノワール(ブラッキー:♀)「それには及ばないよ、ちゃんと叩きのめした後で事情説明すればいいでしょ?」

グンジョウ(ヘラクロス:♂)「さすがに引けない理由があるとはいえ…俺たちの事を知ってくれてる相手は気は引けるな…」

リツ「なにビビってやがる!俺たちの人生がかかってんだろが。どこのどいつか知らネェが、本気で行くぜ!」

もみじ「各地でライブをして旅してるバンドチームだよ!私大ファンなんだ!」

ベノ「んな奴らがこんな辺境になんでいるんだ?人違いじゃねぇか?」

もみじ「間違えるはずないよ!リーダー、ドラムのリツ!ボーカルのムラサキ!ギター&ベースのグンジョウにキーボードのノワール!特に私!ノワールの事大好きなんだよー!本物に会えて感激~!!」

ムラサキ「ノワール、客数確保のためにサインあげなさい」

ノワール「えー。めんどくさいからこっちきて、今書いてるから「やったー!」」

グンジョウ「ノリノリじゃねぇか」

リツ「おじょうちゃん。よかったな。嬉しいから俺達のサインも個別にやるよ。色紙とペンは常に持ち歩いてんだ」

もみじ「えっ!?いいのっ!!?」

リツ「記念撮影もするか?俺達のファンでも滅多に持ってネェぞ?」

全員からサインを貰えただけでなく記念撮影までさせてもらったもみじはほくほく顔でベノたちの元に戻ってきた

もみじ「ありがとー!!(*^▽^*)ノシ…と、いうわけで…私戦えないからー!みんながんばってー!」

毒組「うらぎりものー!!」

たったかたーと笑顔で後ろに下がるもみじ、完全に買収されてしまったが本気で嬉しいのか笑顔でくるくると回っている

ベノ「ちっ、しゃーねぇな…。こうなりゃ速攻で片づけんぞ」

ラグナ「もみじが餌付けされるとは思わなかったな…」

カティ「どうします?相手は…ああ見えてかなりの実力者ですよ…?」

そのバンドチームには明らかに本業とは不相応の実力を感じ取れ、全員がそれを察して戦闘態勢に入る

ベノ「こちとら数で勝ってんだ、リンチだの暴力だの言われようが知ったこっちゃねぇ!俺とチグサメ、リタであの茶色(リツ)の!ラグナ、しゅヴぁる、らんまるで青い(グンジョウ)の!紫のはカティ、カゼキリ、ガラシャ!黒いのはぷりんとルークス、タマズサで頼む」

ラグナ「やってやろうじゃねぇか、久しぶりだな、戦うのは」

ガラシャ「承知した、だが殺すわけにもいかないだろう。出来るならみねうちを狙う」

ぷりん「なんだか他人のような気がしないねー、いくよぉー!」

リツ「いくぜお前ら!!」

それぞれが戦う相手と対峙し、戦いが始まった!ベノとガラシャは打撲武器持ちであるためすぐさま背後に回り込み、相手の首筋を狙いに行った!!

リツ「おっと!悪りぃが…!」

ムラサキ「甘くないわよ」

ガキィン!!

彼らはどこから出したのか瞬時に武器を出し、首を守った!そして間髪入れずにベノとガラシャは蹴り飛ばされ、城壁に激突する。この時点で凄まじい実力であることが判明した

ラグナ「ベノ!ガラシャ!なろぉ!!」

グンジョウ「負けられない!俺たちのためにも…!」

腕を取っ組み合って力と力がぶつかり合う。ややラグナが優勢だがグンジョウも負けじとさらに力を込める!

ラグナ「聞いてやりたいが…話せない事情持ちみたいだな…!」

互いに取っ組み合いをやめ、殴り合いに移行、拳を拳で相殺する!そこに卑怯を承知で横からしゅヴぁるが切りかかろうとするとグンジョウも武器を取り出してそれを防ぐ!

グンジョウ「くっそっ…!こんなもん使いたくないが…!」

そういって取り出された武器はギターかベースを模していたが禍々しい。とても彼らとは似つかわしくない外見をしている

グンジョウ「生きててくれよ…!殺しはしたくないからな!ヘラクス・ピッキング!!」

しゅヴぁるの剣槍を受け止めながらグンジョウは思いっきり弦を鳴らす。その衝撃で近くに居たラグナとしゅヴぁるは大きく吹き飛ばされた!

らんまる「大丈夫か?」

ラグナ「なんとかな…。だが…あの楽器…あいつらのものじゃないらしいな」

しゅヴぁる「手慣れた楽器であるのは間違いないが楽器に使い慣れた後が無い、間違いなく嫌々使ってるものだ」

 

 

 

 

 

ノワール「あらよっと、リツー!この人たちすっごく強いんだけどー!」

リツ「うるせぇ!てめぇでなんとかしろ!こっちも手一杯だ!」

ノワール「ちぇー、つまんないの」

助けを求めるその声とは裏腹にノワールはぷりん、ルークス、タマズサを相手に互角に戦っていた、何気にこの三人、遠近中がそろった毒組屈指の相性の良い組み合わせである

ぷりん「強いねおねーさん。ここまで強いの私の兄妹にもそうそう居ないよ」

ノワール「へぇ、お嬢ちゃんの兄妹興味あるね。私さ、強い弱いとか気になんないけど…同族にだけは負けたくないんだよね」

ルークス「おしゃべりの暇!あるのかしら!?」

手持ち鉄扇を武器に格闘術で攻めるルークスをノワールは危なげにかわしていく、そして綺麗に入れ替わるタマズサの体術にもすぐに対応していく。総じて適応力がかなり高いのだろう。すぐに距離を離して彼女も楽器を取り出した!

ノワール「今すぐにでも叩き割りたいよ!こんなの…!」

取り出したのはショルダーキーボード、通称キーターと呼ばれるギターと似た持ち方ができるキーボードだ、それを華麗に弾き鳴らしてぷりんたちを脱力させる!

タマズサ「か…からだが…!うごかへん…!?」

ノワール「ごめんね、ぜんぶ終わったらちゃんと説明するから…!」

 

 

 

 

 

リツ「げはっ!」

ベノ「ごはっ!」

互いに拳が顔面に入り怯む二人、ベノの隙を潰すように小柄で素早いチグサメがリツを強襲する!

チグサメ「っ…!」

リツは何発か喰らいつつも急所や致命傷を受けないように慎重に立ち回っていた、そしてチグサメの蹴りを見切って掴むと思いっきりベノへ投げ飛ばした!

リツ「あのガキやるな…」

なんと蹴りを受け止めた手が痙攣をおこしている。リツはそれを拳を握りしめることで緩和してすぐにその場を離れる。リタの魔法が飛んできたからだ

リタ「ただの一般人に手を挙げることはしたくないのだが…やむをえまい…!」

とはいうものの先ほどから致命傷を与える攻撃をしていないところを見ると命までは奪う気はないとリツも感じ取っており、リタもまた、彼らがやむを得ない理由で戦っているだけであってこちらと命のやり取りをするつもりがないことを感じ取っていた

リツ「…、できれば使いたくネェんだがな…!」

だが負けるわけにもいかないのか邪悪な楽器を彼も取り出してしまう。

リツ「死ぬんじゃネェぞ…!」

 

 

 

 

 

 

ムラサキ「スラッキーノイズ!!」

激しい空中戦の最中、優勢だったカオティクス、カゼキリ、ガラシャの三人はムラサキが取り出したサックスの音波で怯み、地上に叩き落されて身動きが取れなくなっていた。

カティ「ぐ…あぁっ…!」

カゼキリ「おのれぇっ…!サンダータービン!!」

ガラシャ「風裂斬!!」

遠距離攻撃を素早くかわしながら演奏するムラサキ。これで名もなき旅団全員が楽器を鳴らし、その場は聞いている全員が耳を塞ぐ光景が出来上がってしまった。その威力と範囲は他と戦ってるメンバーまで耳を塞ぐ五月蝿さ。特に大ダメージを受けていたのは聴力の高いベノともみじ。ベノに至っては耳を髪の中に収納しているほどだ。その妨害のためではないが三人がかりでもリツたちはあまりにも強く、誰も太刀打ちできない最悪の不協和音だ。演奏している本人たちもかなり嫌々やっているようで苦しそうにしていた

カゼキリ「やかましいっ…!!あの武器さえ取り上げれれば…!」

カティ「あれより大きな音で対抗するのは…無理ですか…」

ルークス「…!ぷりん!耳かして…!」

ぷりん「…!。わかった、やってみよー!」

ルークス「ベノー!ラグナー!どいてえええー!!」

耳をつんざく爆音を我慢するようにルークスとぷりんは耳から手を離す。そしてベノ達に退避を促すと巨大扇を出現させて思いっきり回りだした!

ルークス「ぷりん!いくわよぉぉおお!!」

ぷりん「いっくよぉおお!!」

足元から氷のグラインドレールを作り出して飛び出すぷりん!そしてルークスは急ブレーキをかけるように踏ん張り、扇を思いっきり振った!

ルークス「でぇえええりゃあ!!」

放たれた突風をすさまじく、なんと軽く地面をえぐり飛ばして離れた場所に居たメンバーを軽く吹き飛ばした!その風の向かう先には…ぷりん…!

ぷりん「受け取ったよ!風の力!!絶対零度も生ぬるい!!森羅万象よ凍てつけ!フェンリル・カラミティ!!」

ルークスの風を纏った氷槍が一閃!突風を凍てつかせてその風を受けている楽器を内部から凍結させた…!

ぷりん「ルークス!!」

ルークス「そおれっ!!」

今度は斜め上への突風。凍った楽器はリツ達の手を離れて宙を舞う。全員がそれに唖然としている

ぷりん「真…ドラゴンフリーズ!!」

フィンガースナップで楽器周辺の酸素もろとも凍らせる!それに向かってルークスが叫ぶ!

ルークス「今よ!みんな!あれを狙って!!」

ベノ「上手いこと考えやがって…。任せろ…よっ!!」

錐揉み状態の氷塊に天月嘩檄斬を放つベノ、それに続いて放たれる遠距離技の数々。その攻撃で氷塊は中の楽器もろともバラバラに砕け散った!!

 

 

 

リツ「っつ…!お前ら!!」

ムラサキ「戻れ!天のサックス!!」

ノワール「帰ってきて!月夜のキーボード!!」

グンジョウ「来い!大地のギター!!」

リツ「来やがれ!激流のドラム!!」

四人が手を天に掲げて何かを呼ぶと四つの光が彼らの元に集い、形となった…!それは先ほどの楽器とは正反対の印象を受ける神聖な雰囲気の楽器だった

リツ「ふぃー…、やっと戻って来やがった。感謝するぜ」

敵意を収め、それぞれの楽器をブレスレットに光としてしまうと四人はベノたちの前に集まった

ベノ「状況が見えねぇんだがよ…」

リツ「俺たちはワケあって大自然の七楽器って奴のうち、四つを持ってライブしてんだ、残り三つの楽器を探す旅をな、それでエンジュシティで変な緑のふりふり着た奴にケンカ吹っ掛けられてボロ負けしてよ、楽器を取られただけじゃなく俺たちの楽器と正反対の邪楽器ってのを持たせてここに誰も入れるな、入れたら楽器を破壊するって脅して来やがってよ。仕方なく従ってたんだが…」

ぷりん「今ので邪楽器っての壊れちゃったんだねー」

グンジョウ「多分レプリカだろうな、本当の邪楽器は俺たちの楽器でしか壊せない。逆もまたしかりってことは…」

リツ「あぁ、どうやら本物の邪楽器を持ってやがるな。残り三つがそいつらに渡ってないことだけが気がかりだぜ…」

ムラサキ「でもまた会ったら二の舞よ?何か対策を立てなきゃ…」

ノワール「それはそれとして、とりあえずお礼言おうよ。ありがと」

リツ「だな、すまネェ。助かった。この楽器が無きゃ旅も出来ネェところだったぜ、ありがとな」

ベノ「…おう。それじゃあな」

握手をしながらすれ違うと全員が門に向かって走り出す

リツ「おい!お前ら…なんでんな所に登んだ?」

ベノ「仲間の命がかかってんだ。わるいな、行くぞ!」

リツ「行っちまいやがった…。ったく、気のはえぇ奴らだ…」

その背中を見送ると名もなき旅団は去っていった。また彼らが相まみえることになるのかはまた別のお話…

 

 

 

 

ベノ「お前ら!気をつけろ!何が待ってるかわかんねぇぞ!!」

ガラシャ「ベノ殿。しゅヴぁる殿。私と罠を壊しながら皆を先導してくれ!」

次々と押し寄せる罠を全員で壊しながら進む!元々はザラーム等の輩を撃退するための物なためかガラシャは罠の種類。どの順番で襲ってくるのかを把握しているようだった。その中でベノは強く思った

ベノ「待ってろよ…!エクレール!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

エクレール「…はぁ…っ!はぁ…!」

満身創痍。そんな言葉が似合ってしまうほどに傷つき、全身から血を流して瓦が敷き詰められた屋根にエクレールは倒れていた…

エクレール「なんでだよっ…!お前は死ぬべきなんだ…!私が殺すべきなんだっ…!」

ザラーム「…」

エクレール「なのにっ!なんでっ!あたしがっ…!こんなところに這いつくばってんだよ!!」

ガシィン!!

立ち上がる過程で足元の瓦に拳をたたきつけると血が滴る瞳でザラームを睨みつける。だがザラームは一切動じない

エクレール「死ねねぇんだ…!みんなの仇を討つまでは…!もう…!」

ぼろぼろでたちあがるも…ザラームの竜髪がエクレールを大きく突き飛ばす…。なんども転がり…血に濡れた手で踏ん張るもずるずると屋根から…

エクレール「くそっ…!ちくしょおおおおおおっ!!!」

落ちていった…

 

 

 

 

ザラーム「…」

落ちていったエクレールを見て振り向くザラーム、その時…!

???「おっと、次のお前の相手は俺だぜ!」

ザラーム「!」

屋根の下から影が飛び出し、それを目で追ったザラームの目の前には…炎と電撃…!間一髪避け、爆煙の奥の相手を見据える。それは雄々しき羽ばたきによってその姿を現した…!

タケル(ニコニコ動画にて活動されているタカヒロさん作。ポケモンストーリーからゲスト出演)「お前がザラームか…、行くぞ!ピカチュウ!リザードン!」

ピカチュウ「ピッカァ!!」

ザラーム「…?」

タケル「10万ボルト!」

ザラーム「…!」

チュドン!!小爆発が起こるとザラームは痺れたように少し仰け反った。もちろんタケルは見逃すはずなく間髪入れずに指示を出す

タケル「ピカチュウ!アイアンテールで足元を狙え!リザードン!はじけるほのお!!」

すばやくザラームに近づき、少し電撃を纏ったアイアンテールが瓦を裂く!その衝撃でザラームは仰け反る。そしてリザードンのはじけるほのおが直撃!さらにピカチュウはザラームから弾けた炎をアイアンテールでザラームにクリーンヒットさせた!これにはたまらずザラームは空へ逃げ出そうとする

タケル「逃がすか!いくぞ!」

屋根のピカチュウを拾い、リザードンと共に上空に逃げ出したザラームと激しい空中戦を繰り広げる!伸ばす髪や指骨からの炎を放つがそれよりも苛烈な電撃と炎の追撃がザラームを追い詰めていた。

タケル「いまだ!ピカチュウ!見せるぞ!俺たちのゼンリョク!そしてっ!いくぞリザードン!メガシンカ!!」

Zリングとキーストーンの莫大なエネルギーにザラームが完全に怯んだ!その姿はおぞましくもどこか哀れにも見える…

タケル「リザードン!ブラストバーン!!ピカチュウ!!スパーキングギガボルト!!!」

ザラーム「…!!」

文字にならない大爆音と共に大爆発が起こる。完全に直撃したのかザラームは体に黒煙をまとって隕石のように地面に落ちていった

 

 

 

 

 

タケル「戻れ、リザードン」

モンスターボールにリザードンを戻すと地面に落ちたザラームの元に行く。そこでは立ち上がる素振りを見せながら全身を痙攣させている異形の怪物がそこにはいた…

タケル「…。これ以上は無駄かもしれないけど…。どうしてもお前を許せない。だけどこいつは…一人ではお前に勝てないと感じた。だから…。俺と一緒に…!」

サッとピカチュウを下がらせるとモンスターボールを取り出す。青と白に赤い二つのグリップ。スーパーボールを見つめてぎゅっと握る

タケル「あの時みたいだな…!」

クスリと笑うとタケルはボールを投げる姿勢に入り高らかに中にいるポケモンの名を呼んだ!

タケル「いけっ!マキ!!」

上空を舞うボール。その中から現れたのは…マキだった…!

マキ「行きましょう…!タケルさん…!」

その姿は…いままでとは全く違う忍び装束を纏っていた。深紅の腕甲。紺碧の袴。黒銀色の羽織りに鎖帷子。特徴的な赤黒い口隠し。そう…それは…ハヤテが送った忍組全員の特に優れた装備品を集めて強化した絆の忍び装束であった…!

マキ「お願いします…!」

タケル「影分身!!」

素早く手を動かして忍術を発動!三人のマキが不規則の動きでザラームに襲い掛かる!ザラームは迎撃するためか腕の骨を地面に突き刺し、炎を爆発させてマキを退けようとする!だがマキはひるまずにザラームへ攻撃を加えていく!マキが付けている口隠しはユウラのもの。実はこれ、ただの口隠しではなく、顔全体を保護する特殊な氷の粒子が発生している。そのため煙幕程度では目つぶしにならず、ガスも無効にできる優れものである。深紅の腕甲はハヤテのつけているものをマキのサイズに、頑丈で力を入れやすく。紺碧の袴はイッコウセンが見繕ったもの、動きやすく羽毛のように軽く、鋼のように丈夫。そして黒銀色の羽織りと鎖帷子はドラーシェスの手製。その強度はザラームの火炎からマキを完全に護っていた。マキは今…、仲間たちと一緒に強大な存在に立ち向かっている…!!

マキ「捕まえた!」

タケル「アシッドボム!!」

長い猛攻を仲間の力と共にくぐり抜け、ようやく一人のマキが捕まえたザラームへ二人のマキがアシッドボムを放つ!ザラームは不快感からかすぐにはねのけ、背後のマキを手骨で串刺しにした…!だがそれは分身。消える間際に爆弾でザラームを攻撃、これにはたまらずザラームは怒り狂うように骨や髪を振り回して周囲を攻撃する。言葉無き錯乱が見て取れる

タケル「いいぞ!いまだ!マキ!」

マキ「多重!影分身!!」

次々と周囲を分身したマキが埋め尽くす。ザラームは周囲を見渡しながら完全に混乱しているようだった。むしろ混乱というより錯乱に近い。何かトラウマを踏み荒らされている。そんな反応をしている

ザラーム「…!!!???!!!!??!!!???」

 

 

かーごーめーかーごーめー…

 

 

 

 

 

 

 

 

かーごのなーかのとーりーわー…

 

 

 

 

 

 

 

いーつーいーつーでーやーるー…

 

 

 

 

よーあーけーのーばーんにー…

 

 

 

 

つーるとかーめがすーべったー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザラーム「うしろのしょうめん…だあれ…?」

マキ「タケルさん!」

タケル「行くぞ!!」

マキ・タケル「これがわたし:おれたちのZ技だあああああっ!!!」

左手に小さな水手裏剣。それを空に掲げ、巨大な水手裏剣にして一斉にザラームに投げつける!弧を描いて渦巻き、ザラームは抵抗することなくその技に呑まれた

マキ・タケル「渦流手裏剣(かりゅうしゅりけん)!!!」

ザラームの体内のエネルギーと反応して爆発を起こすとマキは凛々しく幼い顔でザラームをキッと見つめる。そして、それを見ていた人物がいた…

 

 

 

 

 

 

 

 

エクレール「…成長したね、マキちゃん…」

ハヤテ「はい、立派に。ようやく我らと肩を並べるほどに」

その姿をエクレールを間一髪救助した忍組が屋根からその様子を見ていた。厳しくも優しいその瞳はどこか悲しさと嬉しさを兼ね備えていた

エクレール「あたしゃマキちゃんのことを見くびっていたのかもね…」

ハヤテ「僭越ながら、マキに聞けば皆さんのおかげですと謙遜するでしょう」

エクレール「違いないね。ん…?…!!お前たち!」

胸をなでおろしたのも束の間、なにかを感じたのか、エクレールは屋根から飛び降りた!続いて忍組も飛び降りる

 

 

 

 

 

 

タケル「気をつけろマキ!まだあいつやる気だぞ!」

マキ「はい!」

エクレール「ちぃ!まずいね!」

タケル「エクレール!?」

エクレール「よぉ、しゅヴぁるつは元気してる?」

マキ「エクレール様!お体の加減は…」

エクレール「大丈夫さね、あんたらのおかげだ。それよりも…」

ベノ「おい!エクレール!」

エクレールたちが振り向くとベノ達が塔の窓から出ようとしていた所だった。中から見つけたのか破壊しながら出ようとしている

ガラシャ「ほのかお嬢様!!」

エクレール「ガラシャ…!?どうして!?」

ガラシャ「話は後程!今参ります!!」

ザラーム「!!!」

ベノとガラシャ、リタが窓から飛び出た瞬間!血塗れのザラームの腕が上がり、塔が紫色の邪悪な光に包まれる。すると次に飛び出そうとしたもみじたちが弾き飛ばされた!

もみじ「いったぁー!なにこれ!?」

ラグナ「嘘だろおい!!」

カオティクス「閉じ込められた…!?」

攻撃するもねじれるだけでバリアのような結界はびくともしない。外側からベノも攻撃するが全く手ごたえがせず、暖簾に腕押し状態だ

しゅヴぁる「ベノ!俺たちの事はいい!エクレールたちの所に…!」

ベノ「すまねぇ!」

もうしわけない気持ちを抑えて飛びおりた先にいたのは…もはや…ザラームの原型を留めてなどいなかった

ガラシャ「これは…!」

リタ「厄介なことになったな…こいつこの塔の周辺にさまよう怨念を手当たり次第に吸収したか…!」

タケル「なんだよこれ…!こんなのありなのかよ!?これポケモンですらないだろ…!!」

顔は眼玉そのもの、髪の毛は四つの竜の頭がうごめき、胴体は触手に包まれ、腕の骨は両手。おどろおどろしい黒い影を引きずった黒い脚。その姿は悪魔とも亡霊とも違う。まさしく読んで字のごとく、怪獣と呼ぶに相応しい見た目になった…!

 

 

 

???「ふむふむ…。まさかあんなことができるとは…。思った以上に期待していい打ち上げ花火かもしれませんねぇ…。さて…もう見どころも無いでしょう…。(ピッ)もしもし。えぇ、私です。そろそろそちらに向かいますね。はい。ではアサギのカフェで待ちあいましょう。あぁそれと、邪楽器ですけれどもう用済みなので売っといてください。それじゃあ…」

電話をしながらその人物は深い霧の中へ消えていった…

 

 

 

ベノ「くそっ!大丈夫か!お前ら!!」

エクレール「なんとか…。って言ってもこの数で大苦戦だよね…」

タケル「がんばってくれ!皆!!」

マキ「タケルさんも…!この中で一番体力を消費してるのはタケルさんなんですから!」

メガシンカを一回にZ技を二回。それを連続で放ったタケルは息を上げていた。当然と言えば当然だった。メガシンカもZ技もトレーナーの体力を大きく使う物だからだ

リタ「お前たち!無理なら下がっていろ!」

もっとも善戦しているのはリタだった。それもそのはず。この中でザラームとまともに戦えるのはリタの魔法のみ。時点でタケルのポケモンたちだ。再度繰り出されたリザードンや手持ちのゲッコウガ、スピアーも総動員して戦ってはいるが皆タケルを庇いながらというのもあり防戦一方。ザラームに力及ばず苦戦している

リタ「赤いぼーや!絶対に前に出るなよ!」

注意勧告をしながらタケルを護る体制に入る。自分たちはポケモンであり、ベノとリタは不死者だ。タケルは普通の人間。いざとなれば護る他は無い

リタ「…くっ、ベノぼーや!アイツをどうにか弱らせることできないか!?」

ベノ「やれなくはないがここにいる全員が消し炭になるぜ?んなことやれっかよ」

そう。このザラームという存在はベノともすこぶる相性が悪い。ベノが得意とする物理全面が効かない他。ベノの非接触技はどれも癖が強く。周辺を余裕で巻き込むため集団戦では使えないのだ。特に破滅の十字架は威力を抑えてあたりが消し飛ぶため本当に相性が悪い

ベノ「やりずれぇぜ…!くそっ!」

マキ「タケルさん!なにか光って…」

虹色の光がタケルの胸元で光る。不思議そうにタケルはそれを取り出した

タケル「虹色の羽根…!?でもどうして今…」

取り出された光にザラームが嫌悪感を感じるようにタケルへ攻撃をしかける!ベノとリタはタケルの楯となる形で攻撃をその身に受け止める

ベノ「くそっ…!この野郎…!」

リタ「まずいな…今ので私たちのこと狙わなくなるかもしれない…。ベノぼーや、最悪あの赤いぼーやだけでも逃がすぞ」

絶体絶命。戦ってる大半は重症人。苦戦しない方がおかしい話でもあった、塔の中では毒組全員が必死に結界を破ろうと奮闘している。彼らにとっては歯がゆすぎる。生殺しのようなものだ。

ベノ「どうすりゃいい…。あ…?なんの音だ…?」

その時、ピクリとベノの耳が動いた。他は気づいていないがベノにははっきり聞こえた。空を割くそして闇に包まれた空を見ると身体が咄嗟に動く!

ベノ「さがれ!!何か来るぞ!!」

警告した直後。とんでもない勢いで何かがベノ達とザラームの間に激突し、クレーターを作り出していた

タケル「な…なんだ…!?」

ドラーシェス「新しい敵か…!?」

???「未知のエネルギーによって正確な座標を確認、目標発見。探しましたよ…」

リタ「…!?まさか…!」

その声を聞いた瞬間。姿が見えないにも関わらずリタはにやりと笑う。まるで勝ち誇ったように

 

 

 

 

 

 

 

せいさい(テッカグヤ★)「お久しぶりです。マスター」

リタ「おぉ!やはりお前だったか!久しいな星彩!」

ご機嫌なステップで近づくとびしっ!とザラームに指をさすリタ。その顔はかなり余裕そうにしている

リタ「聞け!ザラーム!貴様言葉の意味は理解できるだろうな!?貴様にチャンスをくれてやる!!」

先ほどまでの劣勢はどこへやら、さすがにベノ達も首をかしげながら引き気味だ

リタ「こいつを倒してみろ!そうすれば世界も!私たちの命もくれてやる!!」

全「はああああああっ!!!???」

奇抜すぎる提案に全員が絶叫する。世界の命運が今、突然空から降ってきたどこの馬の骨ともわからない奴に託されてしまったからだ

リタ「星彩」

せいさい「はい。なんでしょうか。マスター」

リタ「少し時間を稼げ、私が遅ければ倒してしまっても構わん」

せいさい「かしこまりました」

ザラーム「…!!」

しびれを切らしたのかいきなり襲い掛かったザラームの突進をせいさいは指一つで止めた…!

リタ「五分ほど稼げ、そうすればケリがつく」

せいさい「了解です」

スパァン!!弾いた中指によるデコピンでザラームの巨体が弾き飛ばされると怒ったのか竜頭から無数の火炎弾を吐き散らす!

せいさい「…出力、周辺。及びマスターの配慮を計算…」

なんとその火炎弾をせいさいはすべて腕の動きだけで弾き散らす!先ほどからせいさいは一歩も動いていない

ベノ「あいつ…強いだけじゃねぇな…」

エクレール「何かがおかしいね…。ザラームって物理効かないのに…」

リタ「ふはははは…!ザラームがお前たちの天敵なら…ザラームにとっての天敵は…あの星彩だ」

ガラシャ「どういうことだ…?」

リタ「ザラームには非接触技は通用する。というのは間違いなのだよ。正しくは”魔力に弱い”のさ」

マキ「魔力…?」

リタ「そう。たとえ物理手段でも何かしら魔力を宿していれば奴に有効だ。その証拠にエクレアじょーちゃんよ。お前の攻撃はザラームに通用していたらしいな。だが奴はお前との接触で魔力を吸い取り、自分への有効打を無くそうと考えたのだろう。だからジリ貧で負けたのだ」

エクレール「あたしが…魔力なんて…」

リタ「お前の親が親なのだ。遺伝してるのは何らおかしい話でもあるまい。そして閑話休題だ。星彩の身体は特殊な金属でできていてな、今から240年ほど前に朽ちていたところを私が魔力をたっぷり練り込んで再生させたのだよ。そのためあいつは魔力の固まり。いくら物理が効かない奴でも…あれはたまらんだろうな。言ってしまえば固体化した水や火で思いっきりぶん殴られているのと同様だ。効かないわけがない」

せいさい「マスター、間もなく…」

リタ「おぉ、早いものだな。ではサポートを頼む」

せいさい「はい。それでは…」

足元に魔法陣。何かを唱えるとせいさいの三倍はあるであろう巨大な竹筒が二つ出現した

せいさい「失礼します」

二つの竹筒と共に飛び出すと華麗なサマーソルトでザラームを蹴り上げる。怯んだ瞬間巨大な竹筒も自らの意思を持つようにザラームへ追撃を放ち、せいさいはさらに追い打ちをかける。なんと彼女の腕が変形。右手は鋭利なブレード、左手はガトリングになり、ザラームを攻めてたて、ほとんど動けない状態にまで追い込んだ!

リタ「上出来だ。お前たち、もっと下がれ。星彩!行くぞ!!」

せいさい「どうぞ」

リタ「変わらないな!頼れるところは!!」

一瞬でザラームの目の前に移動するとリタはにやりと笑みを浮かべてザラームの腹部へ自分の腕をねじ込んだ!!

リタ「特別だ。地獄行きのエクスプレスに乗せてやる。自由席でな…!!ザジリエ・ラズリエ。ファルクス・エヴァンジェル!アイギスに封じられた魔性の禁忌よ。今一度その力を現世に具現し新たなる贄を地獄へ誘え。願わくばその命、永遠に蘇ることなく血の一滴さえも石に変えて(Est magica contraindication Aigis arca clausus est. Semel iterum invitare nova militi praemia, involverent illa potestas in hoc mundo, et inferni. In votis est ut vita etiam est lapis sine gutta sanguinis in in convertam eum aliquando revixisse)完全石化(インテグラル・ペトリフィケーション)!!」

長い呪文を唱えて腕をねじ込まれた所からザラームの身体がねずみ色に…石化していく…!おぞましいその姿でもがこうとするもピキピキと石化は残酷にも進んでいく

リタ「詠唱の早い私でも魔力を練るのに四分かかる長さの魔法だ!スペルも長いが生憎実態の有無関係なく石化させる私のオリジナルでな…!先は唱える余裕もなかったが…これで終わりだ!!」

石化しながらもエクレールへ手骨を伸ばすザラーム。それを見たエクレールは覚悟を決めた

エクレール「悪い、タケル君や。ちょっと借りる!」

タケルの手から虹色の羽を取って全身に力を込めるエクレール。虹色の羽が輝いて体を光らせるとそれを左手に一点集中させた!

エクレール「大人しく…。地獄に落ちろやぁぁぁぁっっ!!!」

音速でザラームの眼の前に跳ぶエクレール。光の鉄拳が、今…!

エクレール「閃光封雷拳!!数珠丸恒次っ!!(せんこうふうらいけん じゅずまるつねつぐ)」

光の速さを越えて放たれた!!衝撃で後ろに吹き飛ぶエクレール。リタはさらに魔力を込めて一気に終わらせる!!そしてザラームはエクレールの放った一撃で石化に抵抗する力を失い…

ザラーム「…だ…」

リタ「…?」

ザラーム「い…………た……て…」

リタ「…」

パキパキと音をたて、完全に石化した…

リタ「…」

腕を引き抜くとリタはどこか悲しそうで明らかにイライラしている顔になっていた

ガラシャ「…やったのか…?」

リタ「…やったとも…そして奴の正体がわかったよ…。さて、エクレアおじょーちゃん。こいつは壊しても大丈夫だ、奴はもう復活しない。ただ…」

エクレール「ただ…?なにさ」

リタ「…。ザラームの正体を言っておく。深くはあえて言わないがな…」

エクレールの耳元に近づくと、リタはそっと口を開いた…

リタ「かごめかごめ…。はるか大昔から売り飛ばされた性奴隷の童(ガキ)共の怨念だ…」

エクレール「!!」

リタ「奴は結界に強いのではない…おそらく…生前に閉じ込められたことの恐怖から本能的に結界を壊すように生まれたんだろう」

エクレール「死に物狂いだったんだろうね…。食べるものにも…居場所にも…」

それだけをつぶやき返すとエクレールはタケルに虹色の羽を返してザラームの石像の目の前に立つ

ガラシャ「ほのかさま…」

エクレール「…。私さ。もうほのかじゃないんだ…。私の名はエクレール…でも…今だけは…」

頭巾、口隠し、そして…髪留めを外すとエクレールは…ガラシャと向き合う…

ほのか「エクレールじゃなくて…ほのかとして…。みんなの仇を取る。今までさ、名前を捨ててエクレールとして戦ってきたけど…。この瞬間までエクレールとしてふるまっちゃうとさ…やっぱりなんか違うよね…」

右手で石化したザラームの巨大な眼を掴むと…ためらうことなく力を入れていく…

ほのか「エクレールとしてこれしちゃったらさ、多分、きっと、絶対。私は後悔する。だって…エクレールはもう…大切な名前だからさ。あれからずっと考えてた、ほのかとしてやれることは…ガラシャに…復讐させちゃいけない、残されたものにさらなる不幸を…業を背負わせないことだけはしちゃいけない」

ガラシャ「…ぁ」

光(最後に残されたものの配慮なんざできない。できることは…さらなる不幸を…業を背負わせないことだけさね)

ほのか「さようなら。ほのか」

バキィ!!

握りつぶした衝撃で…ザラームの石像は粉々に砕け散り…ほのかの手の平から…目の前から、風が砕けた石灰をさらっていった…

ほのか「…」

???「なぁにしょげた顔してんだい?」

ガラシャ「な…!?その声…」

ザラームが砕けたところから少し離れたところ、二人の男女がたたずんでいた。先ほどまでは影も形も無かったのに…

光「よっ、何年ぶりだい?ほのか、ガラシャ」

秀「大きくなったなぁ。光に似て美人だ」

ほのか「おかー…さん…おとーさ…ん…?」

ガラシャ「光様!秀様っ!!」

駆け寄るガラシャ、しかし…

ガラシャ「っぁ…!」

その身体には触れること敵わず、すり抜けて転がる

光「おいおい。アタイらもう死んでんだぜ?触れるわけねぇだろ?」

ガラシャ「そんな…」

ほのか「…本当に…?おかーさんとおとーさんなの…?」

秀「あぁ、本当に大きくなったね。そして…本当にすまなかった。キミの人生を狂わせたのは私たちの責任だ」

ほのか「違う…違うよ…ザラームが…!!」

光「死んでわかったよ。あいつの真の正体。あんたがさっき知った通りだ。あいつに悪気はなかった。でもああでもしないともっと多くの命が奪われてしまう。あんたらが肉や野菜食うのと変わんないのさ」

秀「奴に感情があれば…、言葉を交わせたなら。もっと結果は違っていたのかもしれないね。封印に携わった僕らの事を奴は奴なりに恨んでいたんだろう。ジレンマという奴だね」

ほのか「でも…もう終わりなんだよね…?こんな悲しみの連鎖…」

光「終わったよ…。あーあ!命かけたアタイらがバッカみたいだ!」

秀「まぁまぁ。最後にこうしてほのかとガラシャに会えたんだ。感謝しなきゃ」

ポゥと白い玉が浮かび、二人の姿は次第に薄れ始めた…

ほのか「待って!!いかないでよ!!私っ!!まだいっぱい話したいのに!!私をまた一人にしないでよ!!」

ガラシャ「光様!秀様!」

光「まーた泣くかこの従者め。あんたらは一人じゃない!いい!?よーく聞きなさい!ガラシャはほのかのこと守ってくれたんでしょ?そしてほのか!あんたの後ろに誰がいるのさ!」

涙を流すほのかが後ろを向く。そこには…忍組がうなずき、ベノ達毒組がやれやれという顔でこちらを見ていた

秀「いい人たちじゃないか。こんなところまで、君のためだけに駆け付けてくれたんだよ?」

その秀の言葉にほのかは大粒の涙をぽろぽろと流す。そして泣き崩れる娘に秀は触れられないのを承知でそっと抱きしめた…

光「ガラシャ、最後の命令だ。ほのかのそばに居てやってくれ、ずっとじゃなくていい。ほのかの力になってやりな」

ガラシャ「っ…はい!切江ガラシャ!主の命に命尽きるまで従います!!」

隠れた目から涙を流し、声を彼振るわせながらガラシャは叫ぶ。これが…最後の使命だから…

光「さて…。ほのか、ごめんね。ちゃんと抱きしめてやれなくてさ」

ほのか「おかーさん…」

光「恨むんじゃないよ、これでも抱きしめてやってんだ」

掴めない。触れない。目の前にいるに。でも…ほのかは両親の温かさを確かに感じていた…

光「それじゃあね、身体には気を付けていい人見つけるんだよ!」

秀「ほのか、ガラシャ。忘れないでくれ、僕たちはずっと君たちの…そばに…」

二人は無事に天に昇って… 

……  …消えていきました

エクレール「さよなら…おかーさん、おとーさん…」

 

 

彼女の掌を撫でるように…

 

 

金と銀の羽根が空高く

 

 

 

舞い上がって消えていった…。

 

 

時を超えた遭遇(であい)に幕をおろすように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後…

 

 

リタ「お前の実力、改めて見せてもらおうか、星彩」

せいさい「かしこまりました」

リタ「いいか?相手が相手だ、絶対に手加減するなよ。教えたとおりにな」

作戦会議をする傍ら、対戦相手は準備運動をすでに終えてスタンバイしていた

ベノ「おい、さっさとやるぞ。それと…加減なんかしたら許さねぇからな」

せいさいの対戦相手は…なんとベノだ。せいさいはリタに一礼するとバトルフィールドの中に入り、ベノにも一礼する

せいさい「ご無礼を働きます故…何卒宜しくお願い致します。」

ベノ「ずいぶんと礼儀正しいな。まぁ評価はするが…それとこれは別だ、御託はいらねぇ、全力でかかってこい」

ラグナ「これより毒組入隊試験を開始する!各自!前に出て名乗れ!」

ベノ「月輪罪角、てゐ国歌劇団総司令兼毒組隊長、ベノホーン」

せいさい「…、飛鏖月華(ひおうげっか)、月輝夜 星彩(つきよ せいさい)」

ラグナ「両者。見合って…試験開始!!」

せいさい「失礼します」

まずは手始めにとせいさいが先手を取る。腕を模した竹筒から火炎弾を連射!ベノはそれを動くことなくすべて弾いた

ベノ「…(小手調べから入るか…。実力は先日のザラーム戦で見てたから知ってるが…。俺たちの中にこういう遠距離から弾撃ってくるタイプすくねぇんだよな…。やりずれぇぜ…)」

せいさい「それでは次は…」

こんどは竹筒を二つ合体させて棍棒を作りだす。手持ち武器であるものの自らの身の丈ほどの獲物をまるで重さを感じないように持っている

ベノ「ほぉ…」

めずらしい形状のためか少しベノは警戒する。これを見ている人にわかりやすく星彩の持つ棍棒の形状を説明するなら「ギガバトルナイザー」といえばわかりやすいだろう。

ベノ「武器使うってんならこっちもそうさせてもらうぜ」

いつも通りの打突剣を出現させると一気に詰め寄り剣で殴り掛かる!だがせいさいはそれをあろうことか素手で掴んできた!

ベノ「なっ…!」

せいさい「ご容赦ください」

棍棒の先端をベノの顔面に向けると間髪入れずに火炎弾を放つ!竹筒が合体しているのだ、当然大砲としての機能もあるにきまっている。その一撃をもろに受けたベノは転がり落ちるようにせいさいから距離を離す。左目をやられたらしく、回復は始まっているようだが面を喰らって完全に怯んでしまっていた

せいさい「…」

もちろんせいさいもそれは承知しているようで棍棒をベノに振りまわして攻撃する。一方のベノは片目を抑えたまま右腕に持つ剣だけで対応している

ベノ「(やっぱり俺がやって正解だぜ…、いってぇぇ…)」

どうにか距離を離すと剣による衝撃波を放ってせいさいを揺さぶる。そしてどさくさに紛れてジーパンの技であるドラストスィングも織り交ぜた弾幕でせいさいをさらに追い詰める

ベノ「(リタのやろぉ…!俺の戦闘スタイル教えやがったな…!どう考えても対応力が高くて速い…!なにより的確で正確だ…!普通あの状況で顔面に大砲なんざシャーヴァルでもやってこねぇよ…!♯)」

完全に察したベノは苦手な遠距離戦から攻めるために準備を始める。一方の星彩は衝撃波をいなしつつベノを追い詰める。着実にベノの逃げ場を奪いながら接近戦に持ち込もうとしている

ベノ「なろぉ…リタの野郎ぉ…!せいさいに俺を接近戦で圧倒させてプライドへし折ろうって魂胆だろうがそうはいかねぇぞ…!」

ベノの足元に火炎弾が直撃!爆発を起こし、黒い煙が漂う…

せいさい「…生命反応…なし…」

バッキィ!!!

なんとベノが地面から襲来!せいさいに拳を叩き込み、続けて蹴りで思いっきり棍棒を弾き飛ばす!これにはせいさいも計算外だったのか格闘戦で対抗しようとする…が

ベノ「わりぃな!素手なら負けねぇぞ!!」

いつものベノからは想像もできないほどすばやいローリングソバット!続いて距離を詰めた二連蹴り!蹴ったせいさいを踏み台に流星キック!!直撃したせいさいの右肩は動かなくなりベノが左手でそれを掴んで引き寄せ…!

ベノ「おらぁっ!!!」

思いっきり殴り飛ばした!!その一撃で壁に激突したせいさいは動きこそしたがすぐに倒れてしまった

ラグナ「そこまで!勝者!ベノホーン!!」

リタ「星彩!」

すぐにリタがかけよる。この様子を見るに本当に信頼しているのだろう

せいさい「マスター…もうしわけありません…このような醜態を…」

リタ「気にするな、相手が相手だ。むしろよくやった…」

ベノ「あぁ、あぶねぇところだった。油断してたら普通に負けてたな痛てっ…!」

右手を真っ赤にしながらベノが称賛する。普段殴り慣れてるベノが拳を痛めるほどせいさいは頑丈で、戦闘力もあり、素早い対応力もある。まさにオールマイティーと呼ぶにふさわしい強さだった

ベノ「さて、せいさいよぉ。結果発表だが…。合格だ、お前は今から…毒組の一員だ」

リタ「負けたのだぞ、いいのか?」

ベノ「ばーか、俺と実践試験で当たって勝てた奴なんざ毒組にもいねぇよ」

ラグナ「毎年毒組に入りたいって奴らを何人も門前払いしてるものな」

ベノ「入隊するのは勝手だがせめて三分はもってほしいぜ…。いっつも三十秒以内に終わんじゃねぇか」

ため息を付きながらベノが愚痴を漏らす。意外と激務の中でもそういった声を一つ一つ聞いては相手にしてはいるのだ

せいさい「ありがとうございます…」

ベノ「これからよろしくな」

せいさい「はい…こちらこそ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エクレール「…はい。これで正式に家に配属だね。ガラシャ」

そういって書類にサインするエクレール。その左腕はギプスで固められていた

ガラシャ「ありがとうございます。光様の命を胸に、ほの…エクレール様に忠誠を誓います」

エクレール「…ごめんね、心配とかいっぱいかけちゃったと思うんだ…。ガラシャにも寂しい思いたくさんさせた。これからはずっと一緒だよ」

全治二か月の大怪我を負いながらも生還したエクレールはガラシャと話し合った末に、彼女を忍組に迎え入れることにし、ガラシャもそれを承諾した。そして今、その瞬間が訪れた…

ガラシャ「はい。改めて…」

エクレール「よろしくね」

目いっぱいの笑顔で握手をする。互いに顔の一部は隠しているものの本当に喜んでいるのが感じ取れた…

 

 

 

 

 

ユウラ「あんなに笑顔のエクレール様、久しく見たね」

ハヤテ「だな、これも全て、マキのおかげだな」

木の上からエクレールの事を見る忍組。だがその状態は決してよいとは言えず、ハヤテとイッコウセンは全治三か月の大怪我、ドラーシェスとユウラもいまだダメージが残っている。このため現在忍組は全員が復帰するまで活動停止、彼らも命令として怪我の完治を命じられている

イッコウセン「当の本人はあそこか…」

エクレールとは反対方向を見てマキをみる。誰かと話しているようだ

ドラーシェス「今のエクレール様とマキの所に行くには俺たちは無粋だ、おとなしく病室に戻るとしよう」

そう言って四人は一瞬で姿をくらませた。そして…

 

 

 

 

 

マキ「本当にありがとうございました」

深々とお辞儀をするその相手は…元トレーナーであったタケルだった。マキは過去にタケルの元でチョボマキとして旅をしていた。だがエクレールと出会い、タケルの元から離れ、忍組に迎え入れられた。そして今回。自分達ではザラームに敵わないことから危険を承知で彼に助けを呼んだのだ

タケル「大丈夫だ、マキも、エクレールも、てゐ国歌劇団のみんなも、俺の仲間だしな。仲間を助けるのは当然だろ?」

マキ「ぁ…。はいっ!もし…何かタケルさんが危機に瀕した時…。今度は私たちが助けに行きます!」

自身に満ち溢れた笑顔、そこにはもう、控えめでおろおろしたマキはいなかった。それを見てタケルも思わず笑顔をこぼす

タケル「やっぱり…エクレールに預けてよかったんだな」

マキ「え…」

タケル「俺さ、ずっと心のどこかでお前の事思ってたんだ、元気にしてるかとか辛いこととかないかって。そう思えば思うほどにさ。ポケモンを交換する意味とその責任。何より別れの辛さって奴をその身で感じた。俺たちトレーナーは…昔はきらきらして輝いていた交換や対戦。”そういうことに慣れ過ぎた”だから…そういう事が希薄に感じて今ではさも当然のようにそれをしている。無責任にな。そう思えば思うほど…俺は無責任な思いだけは自分のポケモンにさせたくないってさ…」

マキ「タケルさん…」

タケル「俺の考え過ぎだとよかったんだけどな…。現実にそう言う奴もいるってことに旅して知った。だから…「そんなことないです」」

その言葉にマキが言葉を重ねる

マキ「タケルさんは…とっても優しい人です。だからこそ、考えて苦悩することもこの先あると思います。そういう時は…。振り返ってください。そこに私たちは居ます」

そっと手を差し伸べる。その手をタケルは迷わずに握った

マキ「一緒に探せばいいんです。それが…仲間です」

タケル「…あぁ!」

二人は握手をする。タケルの肩に乗ったピカチュウもマキと握手と笑顔をかわす

マキ「ピカチュウさん。皆さんでタケルさんのこと、支えてあげてくださいね」

ピカチュウ「ピッカ!」

タケル「それじゃあ、元気でな」

マキ「タケルさんも…。…そういえばタケルさんどうやってこんなに早く来られたのですか?たしか今アローラだって…」

タケル「あぁ、それは…」

振り返るタケルの背後には…金色のリングが浮かび上がった…!

マキ「!」

タケル「俺にもたくさんの仲間がいて、その中の一人が今回協力してくれたのさ。それじゃあまたな!マキ!ピンチの時はいつでも呼んでくれ!」

タケルたちが完全にリングの中に入っていくとそのリングはまるで最初から存在しなかったかのように消滅した…

マキ「…えぇ、また…」

その眼は空を仰ぎ、一粒の涙を流す

マキ「また…会いましょう…!」

次は自分が、タケルを助けられるぐらいに強くなる。新たな目標を胸にマキは歩き出した…!

 

 

 

 

 

        episodeⅠ the end

 

 

 

episodeⅡへ続く…

 

 

 

 

 

 




お疲れさまでした。ちょっと長い後書きになります。



まず途中に登場した

リツ
ムラサキ
ノワール
グンジョウ

の四人は名も無き旅団。別の世界ではベノともみじもこの旅団のメンバーだったりします。彼らが後集めなければいけないのは

灼炎のマイク
紫毒のギター
とうめいなすず

の3つです。そしてこれと正反対の邪楽器もあるのですがここまで




続いてニコニコ動画で活動されていますタカヒロさん製作の「ポケモンストーリー」シリーズからタケルとピカチュウ。リザードン、ゲッコウガ、スピアーがゲスト出演してくれました。

ポケモンストーリーはポケットモンスターシリーズの王道を行く動画でキミにきめたや無印のアニメを見ていた人からすれば取っつきやすいと思います。パートナーもピカチュウやリザードン等有名どころがチョイスされていますのであまりポケモンを知らない。けど対戦動画を見たいという人には是非ともオススメです。

ご縁としては私がTwitterを始めた初期からのフォロワーさんで後に動画を投稿なさった形になります。当初は主人公の名前は違っていたのですがその頃からのお付き合いという事で設定はそのまま、名前だけ変えてのゲスト出演になりました



知っている方は少ないのですが忍組に所属している今回のサブ主人公、マキは元々はタカヒロさんのチョボマキで色々あって譲り受け、お迎えし、今ではサブメンバーの一員です。その時交換したのがエクレールが言ってたしゅヴぁるつ(カブルモ)という訳なんです



今回のお話はこのスペシャルの二話に当たるのですが随分と間が空いてしまいましたね?実はなんと二万文字を越えているんです。これはハーメルンに投稿した過去最大の文字数だったりします。まぁそれだけ情報量も多いとのことでご了承ください


これで肩の荷が一つ降りたような感じです。改めてタカヒロさん。ゲスト出演ありがとうございました。デオちゃんファイトでもお会いしましょう。ではお疲れさまでした、また見てください(*・ω・)ノ


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅡ 前編

こんにちは、エピソード2の前半です。これを通してエピソード2がどのような流れだったのかを知ってもらえたら幸いです


この物語は

ポケモン

ポケモン擬人化

申し訳程度のサクラ大戦要素

を含みます。これがダメという闇の力の僕たちはとっととおうちに帰りなさい

 

※これはepisode Ⅱの前編です。他のepisodeとお間違えないようにご注意ください

 

 

 

 

 

 

 

???「あーらら、やっぱり駄目でした?」

パフェをほおばりながら緑のフリルをつけたドレスを身に着けた女性が問う。どうやら彼女の思うものは元々望み薄ではあったようだ。まったくなにも感じていない淡白さが感じられる

???「えぇ、それに一般人に顔を見せたんでしょう?」

???「いえ?もちろん仮面付けてましたよ?だって仕事ですもの」

???「それで?目標は達せました?」

???「全然です、はっきり言ってザラームには失望です。てっきり期待したとおりの動きをしてくれると思ってましたがあれにあったのはただの生きたいという欲望だけ…みみっちいです」

さくらんぼを口の中に放り込むと種を器用に取り出す。そして…

???「幸せ?くうだらない…」

さくらんぼの種を指で潰した

???「さて、はなっから期待してなかったザラームと違って、次は期待できます。なんといっても…お話ができますから。向こうもこちらの都合を理解してくれてますし、気兼ねなく援軍を送れます」

???「誰を送ったんです?」

???「くっふふふ…、もちろん…腕利きの暗殺者ですよ…。捨てるつもりのね…」

にやりと笑いながら窓の外は暗闇が支配していた。まるでこれから起きる事を暗示しているかのように…

 

 

 

 

 

 

 

まお「ふむ、ようやくついたな」

しらみつ「今までライモン支部が代理でしたがようやく活動拠点ができあがって…これで本格的に活動を再開できますね」

まお「マリアナメトロポリス、イッシュ地方に古くから存在する遺跡などがあり、近年その遺跡の価値によって大発展を遂げた巨大都市。だがその一方でいまだ解明されない謎も存在するため未来と過去が同時に進む…」

モノレールの中、突然立ち上がって街について語りだすまおを他のメンバーはすごく恥ずかしそうに見ていた

ドラゴ「まーた始まった…。おい、誰か止めろよ」

ニーナ「いやだよ…関係者とおもわれたくないじゃん…」

その横でジーパンはいびきをかいて爆睡している。その手には一升瓶が握られていた

ドラゴ「あれ(まお)はダメでこれ(酔いどれ)はいいのかよ…」

いっこんぞめ(表)「まぁいつものじゃないか。そのうちMEXさんが止めるでしょ」

ぼたん「…その当人が見当たらないが…?」

その言葉にニーナたちが席を確認する。確かにMEXさんだけがいない

ドラゴ「あ?さっきまでまおの隣に居なかったか?」

ニーナ「あっれぇ…?どこ行ったんだろ」

いっこんぞめ(表)「仕方ないねぇ、見てくるよ」

その時、後部のドアが開いてMEXさんが入ってきた

ニーナ「あ、MEXさん、ちょうど探しに行こうとしてたんだ。ちょっとまおのこと…」

MEXさん「…」

まるで聞く耳を持たないようにスタスタとまおへ歩み寄るMEXさん。他のメンバーが「いつものことだな」とヘラヘラと笑いだす

まお「おぉ、MEXさんよ、戻ったか。ところでいつ席を立った?”我の演説の途中に居なくなるとは冷たいではないか”」

MEXさん「いえ…すこし気分がすぐれず…。乗り物酔いでしょうか…」

まお「む…、そうか。日頃の疲れが出ているのやもしれぬ、ゆっくり休むといい」

MEXさんを気遣って席に座るまお、「いつものこと」ではないがまおがおとなしくなったことに変わりはない

ニーナ「…なーんかいつもと違うね」

ドラゴ「あ…あぁ…ちょっと調子狂うな…」

 

 

 

 

 

まお「さて、着いたな。各々部屋の片づけを済ませよ。夕飯までには終わらせろ」

マリアナ本部に着くと届いた荷物を各自荷ほどきする。これは全組で行われていることで、新しい支部に着くと大体これから始まる。とはいってもすべて持ってくるわけではなく場所や季節によって不必要とあればいくつかはてゐ劇の配達倉庫に送られ、必要に応じて送ってもらえる。つまり彼らは各地方に自分たち専用の部屋があり、毎度移動の旅に引っ越ししているのである。

レジーナ「さーて、やりマスヨー!!」

あやはる「ほへー…(←地味にカルチャーショック)」

メアリー「あやはるー!はやくー!」

アシュリー「一緒に荷ほどきしよー!」

意気揚々と歩みを進めるメンバー、そんな中…

まお「…しらみつ。頼みがあるのだが」

しらみつ「はい?なんでしょうか」

 

 

 

 

 

数日後…

 

 

MEXさん「……」

しらみつ「あ…、MEXさん、ちょっと来ていただいてもいいですか?」

MEXさん「…なんでしょう?」

その眼はどこか悲しく、冷たい目をしていた…。用があるとはいえ声をかけてしまったことにしらみつは若干の後悔をしてしまった

しらみつ「あぁー…えっと…実はまおさんが探していまして…」

眼をそらしながら苦笑い。微妙な雰囲気が空間を支配する

MEXさん「そうでしたか…」

しらみつ「…」

すれ違いざま、しらみつの眼は一瞬だが真面目な視線をMEXさんへ向けた

 

 

 

 

まお「おぉ、MEXさんよ。待っていたぞ」

おおきくマントを翻しまおがMEXさんを歓迎する。その顔は笑顔であった

MEXさん「…用があると伺ってますが」

まお「まぁ座れ、立って話すのは魔王らしくなかろう」

そう言って椅子に腰かけると前もって用意していたのかワインを注ぐまお、MEXさんは本意ではないようだが黙って椅子に掛ける

まお「良いワインが手に入ったのだ、ぜひ貴様にも飲んでほしくてな」

ウキウキと自分の分を注ぐとMEXさんに乾杯を持ちかける。それも不本意ながら承諾される

まお「どうした?いつものようにともに喜んではくれないのか?」

MEXさん「…今はそういう気分ではないだけです…すいません…」

机にグラスを置くとMEXさんは何も言わずに部屋を去ってしまった。その後ろ姿をまおはじっと見つめる

まお「…」

ため息をつくとまおはグラスに入ったワインに口をつけることなく外の月を見る

まお「覚えていないのか…。まったく…時の女神は意地悪なのだな…」

 

 

 

 

 

 

まお「首尾はどうだ?」

しらみつの部屋に入るとまおはモニターの映像を見る。そこにはMEXさんが映っていた

いっこんぞめ(表)「今のところ変化はないね、後ろにはシュトラとくぃーんが張り込んでるよ」

しらみつの部屋には現在まお、しらみつ、いっこんぞめ、ぼたん、ドラゴが居る。全員深刻な顔をしている

まお「ここ数日の様子から見て決まってこの時間にどこかに行っている。…心配とはいえ気が引けるな」

しらみつ「仕方ありませんよ、…もっとも私も仲間を付け回したくはありませんが…」

そう、ここ数日MEXさんの様子がおかしい。どうもこの街に来た直後あたりからたびたびMEXさんは時折忽然と姿を消し、ふらっと現れるを繰り返していた。心配になったまお達はこうしてMEXさんをなくなく尾行することにしたのだ

まお「用事による引き留めも失敗…うーむ…」

ぼたん「まさか未だに荷ほどきを終えていない…いや、荷物に触ってすらいないのは心配だ…」

まお「すまぬな…我のわがままだ」

ドラゴ「気にすんなよ。まおらしくないぜ」

まお「そうだな…ドラゴの言う通りだ…、我が弱気になってはならぬな…」

しらみつ「えぇっ!?」

まお「どうした!?」

突然しらみつが驚く。その答えはモニターにあった

しらみつ「反応…ロストしました…」

いっこんぞめ(表)「くぃーん、シュトラ。MEXさんは?」

くぃーん『こっちが聞きたい。どこにいるか座標を早く送れ』

シュトラ『こっちも見失った、ずっとマークしてたのに…』

まお「…失敗か」

くぃーん『ふん、重要な時に役に…《ザザギッ!!!》なっ!?』

しらみつ「くぃーんさん!今の音は…!?」

くぃーん『貴様っ!突然なんだ!!』

それを聞いてすぐにいっこんぞめとぼたんが窓(※しらみつの部屋は二階です)から飛び降りる。「うわっ!」とすぐ近くに居たニーナと酒を飲みかけたジーパンが驚くがその様子から状況を察し、すぐに走る二人に付いていく

まお「我らも行くぞ!ドラゴはレジーナをたたき起こせ!しらみつはアシュリーたちを連れて来い!」

 

 

 

 

 

 

くぃーん「くっ!このっ…!!サイコバレット!!」

放たれるは念力の弾丸。それを相手は軽くかわし、剣による斬撃でくぃーんの髪を散らす。一方シュトラの相手は飛ぶ砲台に電撃と得意な遠距離戦で圧倒されてしまっている

???「この程度か…どんな奴が付け回しているかと期待したが…期待外れか…」

そしてその二人の後ろには三人の人影、その内の真ん中の人物が口を開く

くぃーん「なにぃ…!?♯」

その一言にプツンと来たのか左手にエネルギーを収縮。無言で小さなサイコノヴァをぶん投げる!その対象は挑発したリーダー格に向けてだ

???「むん!!」

しかしそれは一刀両断されてしまった…。だがくぃーんは不敵な笑みを浮かべた

くぃーん「バカが…」

その直後!両断されたエネルギーが大爆発!相手全員を巻き込み、二人は距離を大きく離す

シュトラ「油断しちゃいけない…まだ相手は…」

くぃーん「わかっている!健在だな…しつこいことだ」

爆煙が晴れ、そこに映っていたのは傷つきながらもまるで無傷のようにふるまう五人の姿だった

???「いってぇな…噛み砕くぞ…?クソアマ…」

???「落ち着け、この程度の攻撃。我らには効かないだろう」

先ほどとは入れ替わりに別の二人が飛び出してくる。一方は牙をむき出しに、もう一方はエネルギーの球をつけたモーニングスターで殴り掛かってきた!!

ガキィン!!

あやはる「やらせない!!」

危機一髪、蜘蛛糸に掴まって駆け付けたあやはるがパルチザンで二人の攻撃を受け止め、そのまま二人を相手に立ち回り、なんと簡単に退けた!

あやはる「大丈夫ですか?お二人とも」

敵を睨みつけたままあやはるが声をかける。くぃーんとシュトラは心配無用と立ち上がって三人が並び立つ

???「増援か」

クイッと首で指図すると司令塔以外の四人が一斉に襲い掛かる。三人は身構えるが…

ドラゴ「鋼の魂、地を砕け!!堅き拳よ敵を穿て!!覇鋼臥(ばっこうが)!!!」

はるか上空からドラゴが舞い降り、その必殺技の衝撃で相手をまたも退けて続々と地組の面々が集合していく。最後に月をバックに魔王が舞い降りた…!

まお「ほう…貴様等か、くぃーんとシュトラの二人をずいぶん可愛がってくれたようだな?」

???「お前がこやつらの頭領か、借りてきた猫のように大人しければよかったのだがな」

まお「ふっ、生憎我々は猫というより獅子でな、敵とあればその牙で排除するまでよ」

余裕たっぷりに腕を組み、敵対するまお。相手もただものではないと察しているのかうかつに動こうとしない

まお「時に貴様、髪を二つにくくった者を見なかったか?ちょうど貴様らの方へ行ったと思うのだが」

???「貴様と喋る事などなにもない。なぜなら…今日が貴様等全員の命日となるからだ」

その言葉にまおが徐々に爆笑する。一方で後ろにいる地組のメンバーは一気に殺意を高めたのか目つきが変わった

まお「面白い冗談だな。聞いたか?我らに引導を渡す気らしい。全力でクーリングオフしてやれ」

???「相手をしてやりたいところだが時も場所も悪い…。こちらにも準備がある。滅びゆくその時が来るまでこの者たちと遊んでいてもらおう」

突如出現した渦巻く闇から現れたのは虚ろな目をした二人の少女。そしてけらけらと笑うピエロとふわふわと浮いている不気味な少女の四人だ。いずれも目付きが違う。同程度の相手だと全員が身構える

???「最後を楽しめ、ゆっくりとな…」

そう言うと五人は闇に消え、残された四人が襲い掛かってきた!

ジーパン「…あのピエロはあわてがやるよ」

レジーナ「それじゃああのクラゲさんはワタシが!」

アシュリー「メアリー!行くよ!」

メアリー「うん!あやはる達は先に行って!」

あやはる「お願い!無茶だけはしないで!」

こちらは残った四人を食い止めるべくジーパン、レジーナ、アシュリー&メアリーが残る。いつも通り数にものを言わせた強引な突破方だ。こう言った時に地組のチームワークの良さが現れる。普通ならあやはるのように気遣うのだが地組は誰かが残る場合、相手にしない敵を完全に無視してただ通り抜ける。敵からの追い討ちも余程の事がない限り絶対に気にしない

 

 

 

 

 

 

 

ガギィン!

 

ガン!

 

 

金属がぶつかり合う音があたりに響く、ジーパンの足による攻撃と相手の鎌だ。ジーパンは一度、必殺技のドラストスィング(三日月状の衝撃波を蹴り飛ばす技)で相手を下がらせると自分も後退、そして足を見ると深いため息をつく

ジーパン「…その面思い出したぜ、首切り道化師(ギロチンクラウン)。タナトスか」

タナトス(ズガドーン)「へぇ…君。物知りなんだね、もしかして私のファンかな?」

ジーパン「はっ!誰がてめぇみたいな悪趣味ヤローのファンなもんかよ、反吐が出るぜ。…八年前、ウチの部下何人か殺ったろ。首だけ紛失して切り口が焼き爛れてるなんざぁ裏世界でもてめぇしかやらねぇ殺り方だろうが」

ジーパンのいうとおり、彼女のズボンにつけられた切り口はただ切れているだけでなく火であぶられたように焦げ目がついていた

タナトス「…なるほどね、君アレかぁ。元針組だろう?正直言って当時は迷惑だったよ。ま、稼ぎにはちょうどいいヘイトになってはくれたかな。おかげさまで当時は動きやすかった、殺しをすればだいたい君達のせいだと勘違いする連中も多かったから誰からも恨みを買わなかったからね」

ジーパン「そりゃどーも…、正直言って昔の部下の首なんざどうでもいいが…てめぇはいけ好かねぇ。だから…ぶっ殺す…!」

ズオッとジーパンの眼が漆黒に染まる。それと同時に脚が禍々しいオーラが纏われ、義足からチェーンソーが展開された

タナトス「君の首、取れたら部下の隣に飾ってあげるよ。ホルマリン漬けしてるからまだ当時のままなんだ。嬉しいだろう?」

笑顔でにやり笑うとタナトスはフレアカッテング(手持ち鎌)を器用に振り回してジーパンの首元を狙う。だがすべてかわされ、カウンターの後ろ蹴り上げがタナトスの顔面に直撃する!

タナトス「っと…。いけないなぁ、顔面アウトだよ?」

ジーパン「そうかい。あわての感覚じゃ狙って当然なんだがな」

さすがに顔に三つも傷をつけられているジーパンが言うと説得力があり、タナトスは余裕を見せつつも押されている

タナトス「暴力的なのはあまり好きじゃないなぁ…」

ジーパン「あ゛?暴力だと?何か勘違いしてねぇか?あわてはてめぇの事を今から殺すんだよ。それ以上もそれ以下もねぇ。楽に死にたきゃ首出しな、一発で極楽浄土を渡らせてやるよ」

タナトス「…それじゃあそうするかな、いい加減殺しも飽きてきたし…こんな使い走りの仕事しか来ない不景気つまんないもんね…」

武器を捨てて深くお辞儀をするとジーパンがその首を足のチェーンソーで切り裂いた!

タナトス「なんて殺し屋が言うとでも?」

ドンっ!!

なんと頭部が爆発し、火花を散らしてジーパンを襲った!その怯んだ瞬間をタナトスは見逃さず頭を再生させながら足元に捨てた武器を蹴り上げ、ジーパンの肩を素早く裂いた!

ジーパン「っ…!」

タナトス「油断しましたねぇ?裏世界を渡ってきたなら殺しは止めない、止められない!これは呪いなんですよ…一生殺しを続ける呪い!アヒャヒャ!!痛くて声も出ませんかぁ!?その苦痛にあえぐ顔をもっと見せてくださいよぉ!!」

グイっと乱暴にジーパンの髪を掴んで顔を向かせるタナトス。その顔は邪悪な笑顔に満ちていた…だが。その時何かがタナトスの顔にかかった

タナトス「ぐべっ!?ぎゃ、ぎゃあああああ!!??痛いっ!?溶けてるっ!?」

顔を抑えてもだえ苦しむタナトス。口元をぬぐったジーパンは目の見えないタナトスを蹴り飛ばすと即座に大きく跳躍し、飛び蹴りを放った!

ジーパン「槍龍襲脚(そうりゅう しゅうきゃく)!!!」

その一撃はタナトスの胴体を貫き、取れた頭が身体を巻き込んで大爆発を起こした!

ジーパン「バカが、油断してやがるのはどっちだ。最初に言っただろうが、反吐が出るってな」

酸性の唾を吐き捨ててめんどくさそうにジーパンは歩き出した。タナトスだったものを見ることなく、内に何かを秘めて…

 

 

 

 

 

レジーナ「くっ!離すデス!」

触手によって腕を絡められ、思いっきり地面に叩きつけられるレジーナ。相手はすかさず岩の弾丸を飛ばして追い打ちにかかる。それを間一髪かわすと今度は凝縮された毒の爆弾が飛んできた

レジーナ「こんなものっ!」

翼の羽ばたきでそれを跳ね返すと今度は翼で触手を切断!相手は奇妙な言葉とも言いづらい奇怪音を鳴らす

レジーナ「アナタ!名前はナンですか!?ワタシたちは急いでるんです!短期決戦でケリをつけさせてもらいマスよ!♯」

だが相手は答えず遠距離攻撃に触手を絡め、こちらのペースを奪おうとしてくる。レジーナは通常時は仕舞っている翼を大きく広げて急加速。黒い流星となって周囲の闇に紛れる

レジーナ「(ウザったい…!まるで雑音みたいな声デスからこの人の名前ノイズさんって呼びマスか…)」

勝手に名前を付けたが相手が話をしないならどう呼んでもいい。そう思ってレジーナは相手にノイズという名前で呼ぶことにした。ノイズはレジーナのスピードについていけてないようでジッとしているがレジーナから見れば全く逆だ、まるで動きを普通に見られているようで気味が悪い

レジーナ「これは…苦戦しそうデスネ…!サンライト・ア・ミーガ!!」

急停止し、灼熱の巨大な火の玉を作り出し、その高熱を翼の羽ばたきで竜巻のような突風にして飛ばす!だがノイズはすぐさまレジーナの方向にぐるりと向くとなんとサンライト・ア・ミーガを跳ね返してきた!!

レジーナ「っ!?」

 

 

 

 

 

 

アシュリー「ぐっ…!メアリー!大丈夫!?」

メアリー「なんとか…、この人たち滅茶苦茶強いんだけど…」

相手とるは黒い電線を全身に巻いた少女と衣服にブロックのようなものを装備している女性の二人。一方は強力な電撃。もう一方は鈍重ながら頑丈で強力な打撃攻撃。本音を言えば彼らにては最悪レベルに相性が悪い相手だ。全体的に言えることだが自身の攻撃が通用しなかったり相手の攻撃が自分たちの上位互換へとなりえる場合ほどつらい状態は無い。今の二人がそれに値する

メアリー「電気も糸も効かないんじゃ負け濃厚だね」

アシュリー「諦める?」

メアリー&アシュリー「「冗談!あやはるに怒られるよ!!」」

口上を合わせると街に向かって糸を伸ばして挟み撃ちの状態から離脱、その場から逃げるように屋根を伝ってとある場所に向かう

アシュリー「あそこらへんだったよね、ついてきてる?」

メアリー「バッチリ、動きトロいけどちゃんとついてきてる」

アシュリー「やっぱりあの二人さ…」

メアリー「洗脳されてるね、たぶんあのクラゲかな」

たどり着いた場所は…レジーナとノイズが戦っている場所だった。だがそこで見たのは…

アシュリー「レジーナ!」

丸焦げになったレジーナだった。先ほど彼女は自身の技を返されて大ダメージを負ってしまったのだ

メアリー「しっかり!」

レジーナ「ぐ…ぐぅう…!もう怒りマシタヨ…!ノイズさん!そう!アナタのことデス!アナタは!ワタシが!倒しマス!!」

アシュリー「あっちゃぁ~…久しぶりにキレちゃったね…」

メアリー「レジーナ!ちょっと話聞いてくれる?実はね…」

レジーナ「……。わかりマシタ!デモあのクラゲさんは確実にワタシにやらせてもらいマスヨ!?いいデスカ!?」

アシュリー「だめって言っても無駄でしょーが!」

三人同時に飛び出すとメアリーが糸でノイズを拘束、アシュリーが電撃で飛び道具を一掃するとレジーナが一瞬着地。足から紅蓮の炎が全身を包み、彼女の両手に人工太陽が出現!思いっきり回転しながらノイズへ向かっていく!!

レジーナ「プロミネンス!!トルネード!!!」

炎が刃のようにノイズの腹を焼く。その一撃に大きく吹き飛ばされて多くの建造物を巻き込み、何度も壁に打撲し、大ダメージを受けたノイズはいよいよ動かなくなった!

アシュリー&メアリー「「やったね!」」

レジーナ「ザマミロデス!」

笑顔でハイタッチする三人。だがすぐさま顔を切り替えて空を見る

メアリー「急ごう!早く合流しないと…」

全員が背を向けて飛び立とうとした瞬間!何かが彼女たちに巻き付いて壁に叩きつけた!

レジーナ「なっ…!まだ意識が…!」

瓦礫の中からノイズがレジーナめがけて突撃してきた!レジーナは咄嗟に目をつぶる!

レジーナ「…!…?」

痛くない…?そう思って目を開けるとそこには…

???「また寄生して自分の駒を作るつもりだったのでしょうが…やらせはしませんっ!」

誰かがそれを片手で受け止めて軽く放り投げる!再び突撃するノイズを今度は別の人物が電線の束のような髪の毛で地面に叩きつけた!

???「動かないで!」

その少女は指先から放った電撃でノイズの触手だけを器用に焼き切った!自由になった三人は二人の元に駆け寄る

アシュリー「ありがと!助かったよ!」

???「いいえ、お礼を言うのは私たちの方です。おかげであの子の洗脳から抜けられました」

???「見たり記憶はそのままで勝手に体が動くの気持ち悪かったぁ…私は普通で居たいのに!よくもこんな屈辱を…!」

アレルタ(ツンデツンデ)「自己紹介が遅れました、私はアレルタです」

サイカ(デンジュモク)「私はサイカ。よろしくね」

レジーナ「ワタシはレジーナデス。この二人はアシュリーとメアリーデス」

サイカ「よろしくね。さて…あなた達。急いでるならここは引き受けてあげるわ」

アレルタ「私たちとしてもこの子に借りがありますから…しっかりと返さないと…!」

メアリー「どうする?」

レジーナ「…ここで意地張っても無駄デスネ。わかりマシタ、サイカさん、アレルタさん。お願いシマスネ」

そう言って飛び立つ三人。ノイズは雄たけびのように不協和音を叫ぶ

アレルタ「さて…本気で行きます…!」

全身のブロックが反転。赤く発行する目と共に空を殴って周囲の時空を歪める

サイカ「それじゃあ時間稼ぎ、お願い」

一方のサイカはその場で後ろにくくった髪の毛を地面に刺して動かなくなった。それと同時になんとアレルタがバラバラになってノイズの頭上に集合。足のみが形をなして強烈なかかと落としを放つ!その一撃は巨大なクレーターを生み出した

アレルタ「サイカちゃん!もうすぐ!」

サイカ「あー…ぃ…」

アレルタ「そおれっ!!」

勢いよく片手でノイズを放り投げるとアレルタは高速回転。バラバラになりながらノイズを切り裂き、運ぶように地面に叩きつける!そしてそのまま赤い流星群となってアレルタがノイズに襲い掛かる!!

アレルタ「ルブレスメテオ!!」

またしても吹き飛ばされたノイズが立ち上がろうとすると何かに頭部を掴まれた。サイカだ。だがその目は真っ黒で大小にうごめき照準が定まっていないようだった

サイカ「ずかまヴぇだ…」

ギロリと左目がノイズを捕らえると肩のプロテクターが仮面のように彼女の頭を包み、バリバリと電流が走り始めた…!

サイカ「トリオン・サンダー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビガシャアアン!!!

 

ニーナ「にえっ!?」

くぃーん「な…なんだ!?」

とんでもない光の大爆発が後方で光る。その光景に地組は足を止めて驚いていた…そのとき…

まお「ん…?なにかがこっちに…なぬっ!?」

メアリー「まおぉぉぉっーーー!!?」

ガチン!!見事に顔面をぶつけ合う二人、一方のアシュリーはあやはるに蜘蛛の糸でキャッチされ、レジーナもどうにか受け身を取る

まお「っつ~!!貴様ァ!!我の顔面に突撃するとは何事だ!!?」

メアリー「知らないよ!見たでしょあの大爆発!!あれにぶっ飛ばされてきたんだよ!!悪い!?」

 

 

 

 

 

 

サイカ「……っ、はぁ~あ、…まーたやっちゃった…」

アレルタ「まぁまぁ、今回はスッキリしたでしょう?」

サイカ「そうだけどー…複雑ー…」

立ち上がったサイカの足元には…何かの消し炭。そしてその周囲は…もはや焼け野原と呼んでも生優しいほど黒く、雷で焼き焦がされていた…。

アレルタ「これはまぁ因果応報ってことで、幸い近くに誰もいなかったから被害無し!私もほら!無傷だから!」

サイカ「アレルタはいいじゃんか…。ルブレスメテオはピンポイントだから周り気にしなくてさ、だいたい私の技はさ…」

二人はそのまま他愛のない会話をしながらどこかへ去っていった…。まるで日常のように…

 

 

 

 

 

まお「おのれ…!♯どこに行った…!?えぇいっ!!小癪な…!!」

先ほどから数十分。街のあちこちを探し回ったが奴らは発見できず、まおは次第にイラつきをみせていた。ピリピリしているためかそこらじゅうのものに八つ当たりのように蹴りを入れていた

ドラゴ「落ち着けよまお!これ以上の捜索は俺たちが不利になる!奴らは夜目に慣れているように見えた。なおかつこの街はおそらく奴らのホームラウンド、がむしゃらに追いかけ「憶測だけで決めつけるな!馬鹿者が!!」」

ドラゴの胸ぐらをつかんでイラつきを爆発させるまお、それをいっこんぞめが引き留める

いっこんぞめ(表)「やめなよまお!ドラゴの言い分はMEXさんを捨てるように聞こえたかもしれない。それでもこれ以上は居場所がわからない相手に不利すぎる!第一私たちがここに来たのはほんの数日前!土地勘だってありゃしないのに無茶だ!」

まお「…それでもだ、それでも今日だけは…我はMEXさんと過ごしたいのだ…。なにせ…今日が初めて、MEXさんと出会った日だからだ…」

 

 

 

 

 

 

まお「…雨か」

それは…まおがベノと出会い、仲間となった日。夕暮れに曇り空、冷たい雨が降り注いでいた

まお「ふむ…困ったな、道に迷ってしまった…。ベノを追いかけていたつもりだったのだが…」

すっかり雨に濡れたまおは仕方なく近くの公園で雨宿りをすることにした。その時…茂みに彼は何かを見た…

まお「…?人の子か…?」

草むらの奥、そこにはぐったりと倒れ込んでいる人がいた

まお「…おい、貴様。起きろ、泥は味がせぬぞ」

見下しながら声をかける。だが倒れてる人物は微動だにしない

まお「…死人か。邪魔したな、ゆっくりと静寂を楽しむとよい」

立ち去る直前、「うぅ…」とうめき声が聞こえた。振り向くと右腕だけがただ立ち上がろうと天に延ばされていた

まお「…」

だがその力は弱まり…再び地に屈する瞬間…まおの手がその腕をつかんだ…!

???「…だれ…ですか…?」

まお「通りすがりの魔王様だ、貴様が這いつくばってでも生きる意志を見せてくれたのでな…。閻魔にも神にも渡すには惜しいと感じ、見捨てるつもりが気が変わった。貴様、名はなんだ?」

???「それが…おぼえてないんです…どれほどたったかわからない…ずっと…ずっと永遠を彷徨っていたようで…。過去の事が思い出せないんです…」

まお「そうか…。まぁ名前や過去などどうでもよい。我も真名を覚えておらぬ、だから今の我が名はまおうK。KはもちろんキングのKだ。そうだな…貴様さえよければ我が名を作り、くれてやろう」

???「…あ」

腕を引き上げ、立ち上がらせるとまおは彼の眼を見て言い放った

まお「思いついたぞ、貴様は今よりメモワール・クリスタロット・サンクトゥス( mémoire cristallot sanctus)。神聖なる透き通った記憶だ。略してカッコよくMEXさんで良いだろう」

MEXさん「…プっ!あははは!」

まお「む…?何がおかしい?確かにXは入ってないが最後をさんにすることで尊敬と親しみをだな…」

MEXさん「そこが…!そこがおかしいんです…!あははは…!」

まお「ふむ…気に入らんか…では別の名を…」

MEXさん「いえ…今日から…その名をいただきます」

まお「…。そうか。ところでMEXさんよ、行き場所がないのであれば我の元に来ぬか?ちょうど…右腕を探していたところだ」

MEXさん「良いのですか…?どこの馬の骨とも知れぬ私で…」

まお「ふん、名付けた相手に向かって馬の骨と思うバカは人間どもしかおらぬ」

MEXさん「…では、右も左もわからぬ者ですが…どうぞよろしくお願いします」

まお「あぁ、我がこの世を去るまで死ぬことは許さぬ。貴様が冥府魔界、地獄の深淵に行こうとも我が死ぬまで振り回す所存だ」

 

 

 

 

 

まお「…約束したのだ。我は…約束だけは破ることだけはせぬ。それをしてしまったら…我の妄言は仲間を裏切る刃となり、お互いの心を傷つける。永遠にだ」

その言葉に全員が黙りこく。振り返ればまおは約束を破ったことは無い。確かにプライドの高さから他者とぶつかることもあるが仲間のためならそのプライドを躊躇無くかなぐり捨てる。そして約束は必ず果たす。それがまおという男、故に地組は彼に絶対の信頼を置き。チームメンバー全員がバラバラの個性や性格でも纏まっているのだ

 

 

ぼたん「…?…血の臭い…?」

レジーナ「…デスネ」

まおの話が終わった直後、ぼたんの一言を皮切りに嗅覚の鋭いメンバーが鼻を動かす。すると突然地面が激しく揺れ始めた!

ニーナ「な…なに!?」

シュトラ「…!みつけた…!MEXさんの意識!北西の方向!」

全員がその方向に向くと地面から何かが盛り上がり、空にそびえる。それは…

しらみつ「あれは…!?城…!?」

あやはる「あそこにMEXさんが…!?いるんですか…?」

まお「っ…!」

ドラゴ「待てよ!まお!」

今にも飛び出しそうなまおの肩をドラゴが捕まえる。振り向いたまおは血相を抱えていたが落ち着いてドラゴの言葉に耳を傾ける

ドラゴ「さっきはすまなかった…。まおの気持ちを俺は踏みにじるようなこと、しちまった…。だがな、今日がどれだけMEXさんとの大切な日であろうと…。独りで行こうなんてすんなよ、俺たちは仲間だろ。それにな、今だからこそ言うぜ、俺は毒組や兎組に居たとして、同じ状況だとしても同じこと言うと思う。同じことすると思う。だけどな、俺が、俺たちが今のお前についていくのは地組だからとか同情なんかじゃねぇ」

まお「ドラゴ…」

ドラゴ「お前だから、まおだから、ついていくんだ。他の組だったら同情だぜ」

まお「貴様等…。そうであったな、我は幸せ者だ、だからこそ…幸せというガラスの欠片を集めるのを…手伝ってくれるか?」

その言葉に全員が答える。そしてまおは一瞬笑うと号令をかけた!

まお「行くぞ!かけがえないものを救うために!!」

 

 

 

 

次回予告

 

たった一人の仲間のために敵の居城に乗り込むまお達。そこで待っていたのは四人の番人。道を開くためにそれぞれのベストパートナーと共に彼らは戦う。そして判明する敵の名、目的。MEXさんとの関係…

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episode Ⅱ 中編

 

 

 

 

 

 

???「あっ、もっしもーし。はい、紅袖さんでーす。どうです?時間稼ぎ程度なら役に立ちました?」

???「充分だ…。今配置も完了した、感謝する」

???「いえいえ、こちらとしても特があるので現代風に言えばWin Winですね」

???「ところで今どこにいる?」

???「あー、もうこの街から去るところです。巻き添えは喰らいたくないので」

???「そうか、懸命だな。生きていればまた会おう。我々はお互いに利用し合える関係だ」

???「その通りです、私たちはお互いの事を道具だと思うぐらいが最良の信頼関係ですから、どちらかが傲慢ちきであれば途端に立場は揺れ動きますもの」

???「その通りだ、常に限りなく遠い近くであるほうが公平な関係だ」

???「やはり我々に吸収合併されません?今までいろんな人や組織を見てきましたけどあなたの所は本当にお気に入りなんですよ」

???「…すまない、それだけはおそらくできぬ」

???「…残念ですね、仕方ありません。互いの都合に深く干渉しすぎないのもより良いビジネスパートナーです。それではがんばってください」

???「あぁ、そちらもな」

(ピッ)

???「…さて、ではせいぜい見せてください。骨董品のガラクタが見せるはかないあがきと言う奴を…」

 

 

 




お疲れ様でした。次はエピソード1の前半からです。次もよろしくお願いします。


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅡ 中編

こんにちは、ブロマガから一部の記事をこちらへ引っ越し。文章も少し書き加えたりセリフを改変したり追加したり。まだハーメルンに慣れない中、色々まだまだ試していきたいと思います。とりあえずTHE HAPPINESS DIZAIAのエピソードⅠとⅡの補完をします


この物語は

ポケモン

ポケモン擬人化

申し訳程度のサクラ大戦要素

を含みます。これがダメという闇の力の僕たちはとっととおうちに帰りなさい

※これはepisode Ⅱの前編です。他のepisodeとお間違えないようにご注意ください

 

 

 

 

 

まお「さて…、一度落ち着いて作戦会議と行こう。まず全員であの城に突入。内部構造は不明だが我らを五人に分けようと思う」

走りながらそう言うとメンバー全員の気が引き締まる。空は暗雲。地上には逃げまどう人々、その中を突っ切り敵地に向かう。その姿はとても勇ましい。

まお「突入後に編成だ。決して手を抜くな、本気で当たれ。そして…」

一度立ち止まるとまおが振り向く

まお「加えていつも通りだが…死ぬな。必ず我ら全員で帰還する。無論…MEXさん含めてだ」

黙って全員がうなずき、改めて城を見る。禍々しいその外見はこの世の終焉を思わせるようだ

まお「てゐ国歌劇団、地組!出撃!!」

その一言と共に弾丸のように全員が飛びだした!飛べるところまで飛ぶとくぃーんとシュトラが念力で運ぶ。その間しらみつとレジーナが前に出て迎撃に備えた。だが…迎撃は無くすんなり城に入ることができた

ドラゴ「…おいおい、不気味だな」

くぃーん「まるで招き入れられたとでも言うのか。あっけないな」

???『今更貴様らに止められるとでも?』

城の広間に響く声。それはあのリーダー格の男のものだ

まお「姿も見せぬとは余裕がないのか?止めに来たわけではない。ただMEXさんを返してもらうだけの事」

???『生憎それはできないな。力づくでも断ろう』

まお「ほぉーお?やはりここにいるのか、我はてっきり別の場所に隠しているとばかり…」

???『白々しいな、確信があるからこそここに来たのだろう』

まお「もちろんだ、仲間であるからな。ところでここの城はせっかくの来訪者に飲み物もでないのか、サービスが悪いぞ」

???『なにがいいたい…?』

まお「我らがおとなしい内にとっととMEXさんを返せと言っている。土産はそれで十分だ、この城ごと破壊されたくなければ素直に言う事聞いたほうが良いぞ。我は魔王なのだからな。この程度の居城など即座に荒廃させられる」

???『ほう…魔王か、大きく出たな。ならば…取りに来るがいい、魔王と豪語するならば余裕だろう』

まお「その前に、貴様の名を聞いておこう。モブAでもいいならそう呼んでやるぞ」

リン(ダイケンキ♂)『我が名はリン。この城の主の刃、クティス・オス・サングィスを統率する騎士だ』

そういい終わるとガシャンと四つの扉が開門される。だがまおたちは目もくれず目の前にある大きな扉に向かう

まお「…。これは…」

しらみつ「…強力な魔法による結界ですね。まずこれを突破するには…結界を弱めなければいけません」

手元の機械でしらみつが扉を調べると全員が目を合わせる。つまりまおが言ったようにここからが五つにチーム分けをする場面だ

まお「おそらく四つの扉の先の何かをどうにかせねばこれは我らの技を打ち込んでも無駄だろう。我はこの扉が開くのを待つ。全員自分がタッグを組みやすい奴を選べ、コンディションでもじゃんけんでも構わん」

くぃーん「…ぼたん。力を貸せ」

ぼたん「…あぁ、大丈夫だ」

ニーナ「ドラゴ。後ろお願い」

ドラゴ「おうよ」

シュトラ「…あやはる」

あやはる「はい。お願いします」

しらみつ「いっこんぞめさん」

いっこんぞめ(表)「この組み合わせ、入隊試験の時以来だね」

しらみつ「…今度は真横で噴煙はやめてくださいね…?」

いっこんぞめ(表)「大丈夫だって、任せな」

まお「決まりだな、残りはここで待機。できる限り早めに片づけて来い」

あやはる「まおさんたちもお気をつけて」

バッと飛び出してそれぞれの扉に入る八人。まお達はただ無事を祈るだけだ

まお「…?なんだ?あのモニターのようなものは…」

リン『それは城のとある場所を映し出すもの。城が襲撃されたり見せしめの時に使われるものだ』

まお「丁寧に説明ご苦労。ところで座るところもないのか?なんとも寂しい城だな」

皮肉を言うが帰ってこない。みみっちいがすこしまおは勝ち誇った

 

 

 

 

ニーナ「っと…ここは…」

通路を出た先は広間、いや…まるでスタジアムのように観客席のような段差がある

ドラゴ「それにしても臭うな…血なまぐさい嫌な臭いだ…」

???「それはここが過去に処刑場だったからだ」

青白い炎が集まり、一つの形となる。紅蓮のパーカーを着たアウトローのような見た目をした男だった

ルフ(ウィンディ:♂)「俺の名前はルフ。この場所…月の闘技場を守りしもの…」

けだるそうにそういうとくいくいと指でニーナたちをさそう

ルフ「来な…二人まとめてだ」

 

 

 

???「遥か過去より、この闘技場は我ら四人が守りし場所…。この場所をすべて制した時、敵は我が王に会える…。そしてこの騎士の闘技場は…」

くぃーん「御託は良い。さっさとかかってこい」

デューラ(ドラピオン:♀)「…加減はしない。この城の騎士たる我が名はデューラ!この名を墓標に刻め!」

 

 

 

ルーク(ルカリオ:♂)「私はルーク。不死の闘技場を任される者。敵である以上容赦はしない」

しらみつ「あなたは話がわかりそうですね。ですが…こちらも同じです。敵である以上、全力で排除します」

 

 

 

マリー(ジバコイル)「そこのあなた、緊張しているの?でも何も心配ないわ…あなたたちはこの悟りの闘技場でわたし、マリーに倒される運命だから」

あやはる「っ…!怖くなんか!」

シュトラ「…あいつ、心を読めるようだね。油断しないで」

 

 

 

 

 

ルフ「さぁ…!おっぱじめようぜ!もう何百年も過ぎた!てめぇらが今日の食事だ!!」

ニーナ「なにそれ、失笑レベルの冗談?」

ドラゴ「油断はしちゃいけねぇな。あぁいうやつが意外と面倒だったりするしな」

ルフ「いくぜおらぁ!!」

ニーナ「早い!」

素早く構えると二人はルフを迎え撃つ!ニーナの回し蹴りを低位でかわすとドラゴの正拳突きもかわして背中を取るとなんとルフはドラゴの右肩に噛みついた!

ドラゴ「ぐああああっつつ……!!なっ…!?てめぇ!!」

ニーナ「ドラゴ!」

ドラゴ「離れろっ!!こいつっ!!」

どくどくと血が流れながらドラゴは必死にルフを引っぺがそうとする。だがルフは巧みにドラゴの行動を受け流し、ついでにニーナにも攻撃を加えて距離を離す

ルフ「っ!」

地面に足をつけて踏ん張ると顎の力だけでドラゴを地面に叩き伏せ、壁に向かって噛み捨てるとルフは真っ赤な口元のまま今度はニーナに襲い掛かる!

ニーナ「くっ…!」

接近戦を挑もうにもドラゴの前科を見たためニーナは慎重に立ち回る。それをわかっているのかルフはわざと歯をカチカチ鳴らして挑発的にけん制する

ニーナ「(あそばれてる…!こいつそれだけ人やポケモンを…)「殺してきたよ」っ…!?」

タックルで吹っ飛ばされると素早く立ち上がるニーナにルフは余裕の表情で口を開く

ルフ「お前が思っている通りだ、俺はここで何度も、いくつもの命を食い散らかしてきた、噛み千切った肉で腹を、滴る血で喉の渇きを潤してきた…!」

天窓に映る月がルフの邪悪な笑顔を照らし出す。狂気を感じるその顔は食物連鎖の頂点にいるようにも見える

ルフ「だが空腹が満たされようとも手ごたえが無くてな…戦いという意味ではずっと満たされないままだった…。簡単に終わってくれるなよ…?たあんと楽しませてくれよぉ…!!エサ共!!」

ニーナ「…聞いた?ドラゴ」

背後で立ち上がるドラゴを振り向き見るルフ、右肩を抑えながらドラゴはニーナの言葉にこたえる

ドラゴ「あぁ、どうやらこいつはちょっと優位に立っただけで自分が世界の支配者様と思うくらいかわいそうな奴だってことだろ」

ニーナ「ルフ…だっけ?心配しなくてもいいよ。ふぅーーっ…おいで、今度は私たちが遊んであげるから」

ルフ「あぁ…?おかしくなったか?どいつもこいつもそう言って俺に食いつぶされてきたんだぜ…?」

ドラゴ「俺たちもそうやって大口叩いたバカを何度も倒してきたんだ、悪いが痛みにも慣れた」

右腕を振るとドラゴは腰につけた帽子を深くかぶった。一方ニーナは飴玉を三つ取り出す

ニーナ「ドラゴ、九分で行ける?」

ドラゴ「五分だ、元々俺たちに残された時間はすくねぇ、短期決戦上等だぜ!」

ニーナ「オーケー!!」

帽子が光り輝くとニーナも飴玉を口に放り込んで光に包まれ、同じタイミングで違う姿へと変貌した!

ドラゴ(M(メガシンカ))「いくぜ…?しつけのなってねぇ犬ッコロ!」

ニーナ(EC)「格の違いって奴を明確に教えてあげるよ。忠告…。今から発言に気を付けたほうが良い」

ニーナは一見見ると前の空いたドレスだが手足が動きやすく、よく見ると攻守を兼ね備えたプロテクターが装着されている。一方のドラゴは頑強な青銅色の鎧が装着!そして身の丈はあろう巨大な剣が背中に出現した

ルフ「御託は良い、さっ」

言葉を出した瞬間、ニーナの飛び回し蹴りが顔の眼のあたりに直撃する!そのまま蹴りきってふらつかせると素早くニーナは離脱、ドラゴが左腕で遠慮なく後頭部へラリアットを当ててそのまま倒れ込みながら全体重をかけてルフを巻き込む!

ドラゴ「だから気をつけろって忠告したろ!ヘビーボンバー!!」

再び顔面を強く打ったルフはすばやく立ち上がる!だがそれよりもはやくニーナの蹴り上げが口内に炸裂!歯を砕きながらルフを蹴り飛ばす!

ルフ「こいつらっ…!」

ドラゴ「どこ見てやがる!」

自身の身の丈以上の大剣を片手で振り回し、ルフを追い詰めるドラゴ。だがただではルフも下がらない!

ルフ「なかなかやるじゃねぇか…!だがな…!一対一に持ち込んだらてめぇらは大したことねぇ!」

あえて突っ込んでくるルフ。ドラゴの左肩に狙いを定めたのか再び隙を伺う

ドラゴ「…!」

ルフ「まずはてめぇからだ!噛み砕いてやるぜ!てめぇの家族が見分け着かねぇほどにな!ガルガンチュアブレイク!!」

ドラゴ「やれるもんならやってみろ!リベレイトゥーラ!!」

ルフの獄炎を纏った噛みつきが直撃する直前!ドラゴはメガシンカで得た鎧をすべて弾き飛ばしてルフを迎撃!さしものルフもこれには予想外を超えて大きすぎる隙を相手に与える結果となった…!

ドラゴ「おんなじ手が通用する相手だとでも思ったのか!ニーナ!今だ!!」

ニーナ「最大…!」

吹き飛ぶルフの目の前にニーナが一瞬で現れ、右腕に毒々しいオーラを纏って一撃を放つ!

ニーナ「ベノムファング!!!」

闘技場の地表を砕き、亀裂に猛毒が血液のようにはじけ飛ぶ!その衝撃が止んだ時…ルフは…

ニーナ「…、ここはもう大丈夫だね。入口のほうで音がしたよ」

ドラゴ「ふぅ…やっぱりニーナとが一番アドリブ効くぜ」

ニーナ「こっちもだよ、多少毒飛ばしながら戦ってもドラゴ効かないし私もやりやすいよ」

ルフ「ふ…はは…」

ドラゴ「なっ…。あれ喰らって生きてんのか…こいつ…!?」

ルフ「はっ…!俺たちは元々死なねぇ…!だが…負けは負けだ、闘技場での負けは死と同然…。それが俺たちのルールでもある…扉の封印が解けたってことは…俺は負け犬だって城が…そしてあの方が言ってるのさ…」

ニーナ「あの方…?」

ルフ「答える義理はねぇなぁ…リンの言う通り…てめぇらはもうじき死ぬんだよぉ…!はは…ぐぁっ…」

血を口から噴き出すと…ルフの姿は青白い炎に燃えて無くなった…

ドラゴ「…戻ろうぜ」

ニーナ「う…うん…」

 

 

 

 

 

くぃーん「くっ…!」

デューラ「口ほどにもないな、貴様」

ぼたん「くぃーん…!」

ところ変わってこちらではくぃーんとぼたんがデューラと戦っていた、現状は劣勢。挟み撃ちの状態にもかかわらずデューラは悠々としている。そして苦戦するくぃーんを助けるべくぼたんが背後から攻撃をしようとしていた!

デューラ「貴様の相手は…!」

ぐるりと身体が180度回転すると楯で殴り飛ばされるぼたん。だがデューラの頭は…変わらずくぃーんの方向を向いていた…!

デューラ「私の身体だ!!」

なんとこのデューラ、頭と体を切り離してそれぞれ別の意思として行動ができるのだ。そのせいもあってか二人は苦戦、頭と体のコンビネーションが良すぎるあまり隙が無い。閲覧者にわかりやすく言えばつい先ほどのニーナ&ドラゴのように相性が極端に良いのだ。互いの長所を生かし、短所を補える。デューラはそれを一人で行うことができる

ぼたん「…(くぃーんと相談しようにもこの状況下…。目の前にいるのに分断されているのがつらいな…)」

ちらりとくぃーんに目を向ける。案の定頭に血が上っているようだった

ぼたん「……、!(この手なら…くぃーんも気づくだろう…!頼むぞ…!)」

気づかれないように右手を後ろに隠すぼたん。おそらくチャンスは一度、そしてそのチャンスは自身が作り、くぃーんにすべてを託す…。そんな思いのようだ

デューラ「どうした!口ほどにもない!!引き裂け多牙(たが)よ!そのまま呑まれろ!!ファングウェーブ!!」

頭の方が武器にしているのはなんと魔術。そして自身の髪の毛だ。その呪文を詠唱する間、身体が頭を守るコンビネーションに二人は翻弄される。そんな中、容赦なく放たれた必殺技をくぃーんは間一髪で避け続ける。しつこいことにテレポートしても追尾してくるため防戦一方だ

ぼたん「だぁっ…!!」

勢いよく蹴りに行くが楯に弾かれてよろめくぼたん、くぃーんは魔法を避けるが攻撃しようとしない。デューラの真後ろにぼたんがいるからだ。もし避けられた場合、くぃーんの並大抵ではない威力の攻撃がぼたんに誤爆してしまう。意地っ張りでプライドが高いことから勘違いされがちだが、くぃーんは地組でもかなりの仲間思いだ。冷たい態度の裏には常に心配が過っているほどに…

くぃーん「…くそっ!」

 

 

 

戦闘前、廊下にて

 

ぼたん「くぃーん、俺で良かったのか…?いっこんぞめやシュトラのほうが合わせやすいだろう…?」

くぃーん「ふん、お前を選んだのはもしも近接主体の奴が出てきた場合と気が利くからだ。…もし、私が窮地に立たされたなら…遠慮はするな。お前のやるべきことをやり通せ」

ぼたん「…援護というには近接すぎる。かえって邪魔になっても逆切れするなよ…」

くぃーん「わかっている!当然の事を言うな!」

 

 

 

パートナーと未知の相手との相性。結果はくぃーんの読み通りではあったがまさか相手がこんな奇抜な戦術をとるとは思わず苦虫を噛むような表情になる。仲間であるぼたんが傷つき、自分はそれを指を咥えてみることしかできない。その歯がゆさは彼女のプライドに傷をつける

くぃーん「…(どうする…この状況下…。ん…?)」

飛び回る中、何かに気が付いたくぃーんは目つきを変える。そしてぼたんの方を見ると案の定こちらを見てうなづいていた

くぃーん「よくやるな…!」

空を旋回し、後ろに下がるとぼたんが相手の身体を食い止める。そしてあろうことかくぃーんは背後にある出入口まで下がった!

デューラ「敵前逃亡か?軟弱ものが!」

くぃーん「後ろを見てからものを言うんだな!」

デューラ「後ろ…?わっぷ…!?」

なんとどこから来たのか怒涛の砂がデューラの顔面を襲う!勢い強く目や口に入ったのか頭部がもだえる。実はこの砂、ぼたんが出したもので、彼がデューラの身体と戦いながらも地面を足で擦り、手のひらからも放出し、自分の血を変化させた透明な砂。しかも実はデューラの身体は敵を視認できても色素の判別ができないという隠れた弱点があり、肝心の頭の方は空中を飛び回るくぃーんを相手取っていたため地面に撒かれた砂に気が付けなかったのだ!

ぼたん「今か…!」

頭が砂に包まれたからか身体の力が抜けた瞬間、ぼたんが身体を頭の近くへ渾身を込めて蹴り飛ばす!鎧がひび割れ、欠片を散らして頭の近くへ転がり込む。ちなみにぼたんの蹴りはてゐ劇メンバーの中でも最強の破壊力があり、本調子の時は回し蹴りの一撃で高層ビルをも真っ二つにできる。

くぃーん「今だな…!」

両手を振り下げて莫大なエネルギーを集中。普段は見えない念力の粒が両手に集約されていくのがわかる。デューラの身体は頭を気遣いながらも目の前の危険を感じ、くぃーんに切りかかる!

ぼたん「させるかっ…!剣脚乱舞(けんきゃくらんぶ)!!!」

剣を蹴り折り、楯を蹴り壊すとまた頭に向けて身体を蹴り飛ばし、頭は体に髪の毛を巻き込まれて身動きが取れなくなった

ぼたん「くぃーん…!」

くぃーん「部屋から出ろ!!ネオ・サイコノヴァ!!!」

溜めたとは思えないくらい小さな二つの粒がデューラに向かって放たれ、くぃーんとぼたんはすぐさま闘技場を離脱した!

デューラ「逃げるのか!こんな卑怯なことをしてただで済むと…!」

 

 

 

まお「っ!アシュリー!メアリー!」

モニターで様子を見ていたまおは即座にアシュリーたちに蜘蛛の糸を出させ、自分達を固定した一秒後。なんと城が何度か激しく高速回転して地面に墜落したのか大きな揺れが城に居る全員を襲った!

まお「くぃーんのバカめ!手加減したとはいえ味方が居る城内でネオ・サイコノヴァをぶっ飛ばす奴があるか!!」

くぃーんの必殺技、サイコノヴァはミクロ粒状の念力を集中させて放つ彼女のフェイバリット。「リミッターありで」巨大な都市が一瞬で消し飛ばされる威力を持つ。もちろん現状サイコノヴァを超える威力を持つ技を持つメンバーは限られており。ほとんど制約や他者との合体技であるが単体ではまだ誰も「リミッターありで普通威力の」サイコノヴァを超えられるものは居ない。今回放ったのは強化派生型のネオ・サイコノヴァ。その威力はなんと手加減しなければ「宇宙から爆発が見える規模で隣接した地方も消し飛ばされかねない」破壊力を持つ。もちろんだが今回の場合は威力を一点集中。当然の如く手加減ありである。だが…外から見た城の一角は…完全に跡形もなく消し飛ばされていた…。原形が残ってはいるが城はほとんど損壊。無論…直撃を受けたデューラは……

 

 

 

 

ルーク「ようやく収まったか…一体何事だ…?」

しらみつ「私たちの仲間ですよ…。よかったですね、MEXさんが居なかったらあなた達この地方ごと消し炭一つ残らず消滅していましたよ…」

どうにか無事だったしらみつといっこんぞめ、そしてルークは態勢を立て直し、戦闘を再開する。

ルーク「イレギュラーだな…。私たちにとって、その破壊力は…!」

颯爽と仕掛けるルークに対してしらみつは下がり、かわりにいっこんぞめが前に出る。そして腕を凍らせるとエネルギーの鉄球をはじき返し、柄の部分と殴り合う。そして押し返すといっこんぞめがすぐさましゃがみ込む!

ルーク「!」

棍を回転させていっこんぞめの後ろにいるしらみつの光線を無効化する!彼らのコンビネーションはただ良いだけではなく、お互いの立ち位置、役割をお互いに分かり合っている動きだ。互いが互いの邪魔にならず、互いの隙に攻撃を打ち込むことで相手からの反撃の糸目を完全に潰しにかかっている。ルークも万能戦士ではあるがこれには難色を示していた

しらみつ「(やはり一筋縄では行きませんね…。相手がルカリオでなければ私の動きがわかりにくく楽だったのですが…)」

そう、ルークにも有利な面がある。それがルカリオという種族の能力、相手の波動を感じることでいっこんぞめの後ろにいるしらみつの動きがわかり、後方射撃がよけやすいということだった。そして持久戦に持ち込み、消耗したところを叩く。だが…ただ待つだけでは非効率だとルークは後ろに下がって後ろを向いて腕を払うと右に向かって跳躍!二人がルークを目で追った瞬間、何かが二人めがけて飛んできた!

いっこんぞめ(裏)「しらみつっ…!」

間一髪氷のフィルターでしらみつを守るいっこんぞめ、しかし飛んできたもの…波動弾の直撃が彼女に襲い掛かった…!

しらみつ「いっこんぞめさん!」

倒れたいっこんぞめに駆け寄るってから背後のルークに向かってしらみつは男らしく立ちはだかる。ルークはその目を見て武器を構えなおす

しらみつ「…あなたはなぜ戦っているのですか…?」

ルーク「…?。言葉の意図が見えないが」

しらみつ「言い方を変えましょう。あなたはルカリオなのにどうして私たちの心を読まないのですか?あなたほど熟練された方なら何人相手であろうと波動を読み取って完封することも可能なのにどうしてそれをしないのか、教えてください」

ルーク「簡単なことだ、私は他人の行動は読むが心は読みたくなくてな、過去に精神攻撃を受けて以来心に関する波動は読まないように鍵をかけている」

しらみつ「嘘はいけませんね、あなたはまだ本気ではない。そもそもおかしいですよね?なぜわざわざ侵入者である私たちを先に進めるようなことをしたのか。私なら閉じこもりますね。あれほどの魔法結界はそうそうやぶれるものではない…。ならばあなた達はただ私たちが指を咥えるしかない状況下を笑って見下すこともできたはずです。なのにそれをしなかった、それはこの闘技場で、あなた達が戦わなければいけない理由があるということ…ですね?」

ルーク「…どういう言葉であれ、答える義理は無い。」

しらみつ「そうですか、どうも罠ですね…。戦わなければ先に行けないのはお互い様のようで」

そうつぶやきながらごそごそと白衣の内ポケットを漁る。そして取り出したものは…

しらみつ「今から、あなたを倒します。本気で来なければあなたが死ぬということだけは保証しておきます」

赤色のカートリッジ。それをしらみつは暗闇の箱姫(ヤミホタル)に装填した!

しらみつ「変身!!」

暗闇の箱姫(ヤミホタル)『change Luciole』

銃口を相手に向けて撃つと放たれた光が踵を返すようにしらみつを包み込み、その姿を変えていった

ルーク「ぬ…!その姿は…」

強い光が消え去った場所に居たのは…まったく違う姿をしたしらみつだった…

しらみつ「まだ試作段階ですが…充分です」

赤いアーマー、内部フレームは黒い色をし、全体的にバルビートというポケモンをスタイリッシュにしたような姿をしている。そう…しらみつの新しい発明品。強化外骨格、その名もブラストアーマー ファイアフライ

しらみつ「(私自身の身体能力の貧弱さと格闘戦の弱さから開発してみましたが…まだ慣れませんね…)出力…50%。行きます!!」

背中のブースターが点火!一気にルークと距離を詰めると格闘戦へ移行する!ルークはすぐさま武器を捨てると素早く格闘戦に対抗する!その力は互角。低空からの回し蹴りを受け止めるとルークはしらみつの腹部へはっけい!そして神速による高速打撃を織り交ぜてすぐに状況を覆す。どうやら性能ではしらみつが勝っているものの格闘の心得等はルークが圧倒的に上。とは言えインドアでも動ける方であり、アーマーに戦闘用AIを搭載しているしらみつもかなり強い部類に入る。ただルークの戦闘経験がそれらを大きく上回っているだけだ

しらみつ「くっ!さすがにそうそう圧倒できませんか…」

先ほどのニーナ達やくぃーん達は相手と相応の戦闘経験と戦闘能力があり、コンビであるため本気を出せばパッと終わった。一方しらみつは一対一。苦戦必須なのは目に見えていた

しらみつ「…(うかつに出力を上げれば相手の罠にハマってしまうような気がしますね…。ここは苦しいところですが…)」

ルーク「(来るか…)」

しらみつ「短期決戦をかけます!」

腰のホルスターに収納していたヤミホタルを手に、もう一つの空いている装填場所にカートリッジを差し込む!そしてハイエネルギーブラスターの構えに入る。

ルーク「(あれを撃ってしまえば切り札は無くなるだろう…ここは無力化してとどめを刺すか…)」

なんとルークもエネルギーの球を複数浮かべて気力を集中。真正面からハイエネルギーブラスターを消し去るつもりだ

しらみつ「ハイエネルギーブラスターああああああっ!!!」

発射された破壊光線がルークへ向かって放たれた!そして遅れてルークも必殺技を放つ!

ルーク「集え霊魂、眼前の敵を貫け!ガイストコーラス!」

今度はルーク側から複数の青白いエネルギーの球体から光線が放たれる!その光線はなんとハイエネルギーブラスターを貫き、しらみつの身体の各部位に直撃!アーマーが破壊されながら転がり、しらみつの変身は解除されてしまった…

ルーク「この程度か…大きく出た割にはあっけない」

しらみつ「えぇ…。正直完敗です…」

ルーク「すまないな、私は他の奴らと違ってあまり殺しは好まない。だが…今回だけは…!」

悔やむ顔をしながら不本意に武器を振りかざすルーク。かなり嫌そうだが引けない理由があるのか目をつぶりながら武器を振り下ろす!

しらみつ「言いませんでしたか?。”私は完敗ですよ”」

ルーク「っ!?しまっ…!」

振り下ろした瞬間!地面から氷のシェルターがしらみつを守り、ルークの足元を一瞬で凍り付かせた!

ルーク「くっ…!まさか…!?」

しらみつ「えぇ、あなたはいっこんぞめさんが気絶したと思ったのでしょう。だから私があなたをそこまで誘導して」

いっこんぞめ(裏)「私が動きを止める…そして…とどめを刺す!」

動けないルークの背後から一突き!その場所から燃え盛る氷と凍てつく炎がルークの身体を包み込む。そして徐々に全身を燃やし、凍らせていく。いっこんぞめの必殺技であるブレイズ・ゼロだ

ルーク「なるほど…勝つために手段を択ばないのは…お互い様のようだな…」

しらみつ「…強かったですよ。本心から思います…あなたは本当に強かった…私一人ではきっと負けていたでしょう…」

ルーク「ふ…ふはは…!褒められたのは何百年ぶりだろうか…いつしか褒められることは常識となり…誰からも賞賛を受けることはなかった…。私も甘いな…」

まだ動く顔でくいッと出口をさす。その顔は戦い抜いた男の笑顔

ルーク「進め、生き人よ。自爆でもして道連れにしてやろうかと思ったが…気が変わった…。生きてくれ。”死んだ私たちの分まで…”」

しらみつ「それは…どういう…」

ルーク「これ以上話すと裏切りとなる…はやく行ってくれ…」

しらみつ「…わかりました。本当に残念です…あなたとは…良き関係になれそうだったのに…」

振り向いてそういうとしらみつといっこんぞめは出口に向かう。その後ろ姿をルークは微笑みながら見ていた…

ルーク「私もだ…。いつか君が死した時…。冥府にて友として話そう…、待っている…」

しらみつたちが出て行って数十秒後。完全に氷と炎に包まれたルークは体内の波動を高め、自ら自爆し、命を絶った…。最後まで…笑顔のままで…

 

 

 

まお「これで三つめ…残るは…あやはるとシュトラか…」

アシュリー「あっ、あやはる!」

 

 

あやはる「くっ!スラッシュスイング!!」

強烈な鉄糸によるたたきつけをかわすとマリーはあやはるから距離を取りながら電撃による追撃を挟む。まるで隙がわかっているようだ

あやはる「どうしてっ…!」

糸で捕まえようとしたりトラップをしかけたりするが全てかわされ、マリーは背後から迫るシュトラの攻撃を誘導してあやはるに当てたりと徹底的に戦闘慣れしていないあやはるを執拗に追い詰める

マリー「ルフとルーク相手には有利に立ち回ったみたいだけど…あなたこういうの苦手なんでしょう?ふふふ…」

そう。実はこのマリーは先ほどシュトラが言ったように相手の心が読める。しかもルークと違って心に容赦なくズケズケと入り込んだように煽ってくるため戦闘経験の少ないあやはるは焦りと不安がよぎって冷静さを欠いていた

マリー「怖いでしょう?悔しいでしょう?たとえ強さを手に入れようとも…心の弱さは護れないのよ…!!」

飛び回る砲台からの光線があやはるを襲う!それを避け損ね、躓くとすかさずシュトラが楯となってあやはるを守る。

あやはる「シュトラさ…」

マリー「楽になりたいでしょ?とどめを刺してあげる!」

再び飛び回る砲台からの射撃。不規則に飛び回り、どこからくるかもわからない攻撃にシュトラは冷静に対応していく

シュトラ「あやはる…!後ろっ!」

すぐさま後ろに対応するあやはる。だが相手はまたしてもそれを読んで少しタイミングをずらしてから射撃。そして動揺したあやはるに電撃を放つ!

マリー「外さない。そこなら! シューティングレールガン!!」

あやはる「ああああっ!!!」

必殺技の超電磁砲が直撃してぐったりと倒れ込むあやはる。マリーの狙い通りまずはあやはるが倒れた

マリー「次はっ…!」

シュトラ「…ごめん、あやはる…!」

一言添えるとマリーががくんと一気に脱力する。周囲を飛び回っていた砲台も一気に地に落ちた

マリー「は…へ…?」

シュトラ「理解できない。そういう顔だね。じゃあ説明してあげようか。僕も君と同じように他人の心が読めて、尚且つ他人の意識に自分の意識を入れ込む事ができる」

眼だけを動かしてシュトラをみるマリー。シュトラは静かにこっちを見ている

シュトラ「君の能力がわかった瞬間。僕はあやはるの意識に介入したんだ、君がきっと卑劣な方法であやはるに攻め立ててくるだろうって。だから…。…言い方は悪いけどあやはると君の能力を利用させてもらった。あやはるの意思がなくなった瞬間に君へ直接ジャミングをして体の自由を奪えば無駄に戦闘する手間が省ける…」

転がったあやはるのパルチザンを念力で浮かせるとマリーに向かって投げ飛ばす!あまりに突然だったためか理解が追い付かないマリーは目に涙を浮かべた

マリー「あ…だれ…か…」

あやはる「(助けて…!)っ!ダメっ!!」

謎の声が聞こえて即座に目を覚ましたあやはるは咄嗟に右手から糸を出すとパルチザンを引き留めてマリーからずらす。その瞬間、何かがあやはるの脳裏を走った

 

 

 

マリー「……」

リン「よくやったぞ、マリー」

マリー「リン…」

リン「今回の賊は無事お前が駆逐した。主もお喜びだ」

マリー「…」

 

 

 

       本当は…。こんなこと嫌なのに…

 

 

 

 

あやはる「…っ!?今のは…」

シュトラ「あやはる。どいて」

殺意むき出しの眼でこちらを見るシュトラ、あやはるはマリーを見ると立ち上がってシュトラの前に立ちはだかる

あやはる「…ごめんなさい!」

シュトラ「…どうしたの…?何かやられたの…?」

あやはる「いいえ、ただ…この子は殺しちゃいけない…!この子は…戦う事なんか望んでないっ!」

シュトラ「…。甘いんだね、あやはるって…」

あやはる「シュトラさ…」

ピュン!一瞬一筋の光があやはるのパルチザンに当たる。なにかと目を向けると槍は徐々に凍り付いていき、手を離した先の地面で割れ果てた。

あやはる「冷凍ビーム…!?」

シュトラ「…あやはる。目的を忘れた?早くしないとMEXさんがどうなるかわかったものじゃない。だから…邪魔なら僕は殺すよ?たとえ相手がだれであれ…」

その眼は…白と黒のオッドアイという対照的な色にも関わらず…冷酷無比な冷たい瞳をしていた…その威圧感は凄まじく、あやはるは恐怖を感じたがパルチザンをぎゅうっと握りしめて勇気を振り絞る

あやはる「っ!シュトラさんだって!戦うのは嫌なんでしょう!?」

シュトラ「それを言い訳にして仲間が死んだら、あやはるは責任とれるのかい?」

あやはる「っ…!それは…」

シュトラ「君の事は気に入ってる。清らかで優しい心を持ってる。それは知ってるけど…。はき違えちゃいけないよ、あやはる…これは殺し合いなんだよ、互いに命が尽きるまで、もしくはその命を摘み取るかのね…」

あやはる「そんな…!極端すぎます!あんまりです!!」

シュトラ「…君がこれを聞けば傷つくかもしれないけどね、君がまだ人間だったころ。君を助けるために僕らは戦った。その時だって命のやり取りがあったんだよ。物事に犠牲はつきものだ、それが付かないようにするにはどうすればいいと思う?」

あやはる「それは…「根源を排除するのさ」」

一瞬で距離を詰めるとシュトラは動けないマリーを狙う!あやはるは糸を繰り出してシュトラの動きを必死に止めようとする!だが…

シュトラ「(糸に)頼りすぎだよ」

糸を念力で跳ね返してあやはるの腕を拘束する!これには予想外過ぎたのかあやはるも戸惑い、隙を晒す。そしてシュトラは軽く念力であやはるを弾き飛ばす!

シュトラ「…さて、それじゃあ…死んでもらうね」

サイコキネシスで首を絞めるとマリーは言葉にならない悲鳴で苦しむ。そしてまたしてもあやはるの脳裏に…

あやはる「うぅ…!」

 

 

マリー「…あとどれだけ戦うんだろうね…」

ルフ「あ?いきなりなんだ…?」

マリー「考えたこと…ない?どうして自分たちがこんなに戦っているのに主は一度もお目にかかれず労いの言葉も無いって…」

ルーク「…マリー。考えるな。きっと主も満足している」

マリー「だって…!」

デューラ「マリー!口を慎め…!貴様…。忠誠を忘れたのか…!?」

マリー「違うよ!私たちのやってることは本当に必要なのか!無駄じゃないのかって…!だって…!」

 

 

 

     あれからもう600年だよ!?

    

   なのに誰も主を見たことないじゃない!!

 

 

 

 

あやはる「やめてぇえええええ!!!」

手足の自由が効かない中、あやはるは最後の手段と口からの糸でシュトラの腕を引き寄せる!さすがに不意を突かれたのかシュトラは力が緩んだが冷静にあやはるをサイコキネシスで吹き飛ばす!

あやはる「ぐっ…!シュトラさん!」

シュトラ「…はぁ」

おおきくため息をつくとマリーの元へ歩み寄る。そして念力で再び首を掴む

シュトラ「気が変わったよ、今から10秒以内に負けを認めて扉の封印を解けれるなら生かしておいてあげるよ。どうする?」

ギリリと力を込めるとマリーは涙を流す…

 

 

 

 

これ以上生きたくない…でも…死にたくないよぉ…!

 

 

 

ガシャン!ギギギと重い音を立ててまおたちの眼前にある大扉が開く。まおは一瞬モニターに映るあやはるを見ると思うところがあったのか少しのためらいと共に大扉の先に消えていった…

 

 

 

あやはる「シュトラ…さん」

シュトラ「…」

音を聞いたシュトラはやや乱暴にマリーを投げ飛ばす。彼女の意識は朦朧ながらわずかにあり、多少身体もいう事をきくようになっていた

マリー「どう…して…」

シュトラ「…言ったはずだよ、扉が開いたから君を開放した。それだけだ」

それを聞くとマリーはわなわなと青ざめる。そしてぶつぶつと何かをつぶやいている…

マリー「負けた…?負けだと判断された…?」

シュトラ「…行くよ、あやはる」

あやはる「あ…」

パチンと指を鳴らして糸を解くと自由になったあやはるはマリーに駆け寄る

あやはる「ねぇ…聞かせて。あなたは…あなた達はいったい何者なの…?そしてあれはあなたの声なの…?」

マリー「……。そうよ」

絶望感漂う顔でマリーは答える。立ち上がるのをあやはるが手伝う

マリー「あの声は…私の本心…。この長い時の中で苦しんだ…思い…」

 

 

私たちクティス・オス・サングィスは代々この城…プルートパレスに仕えていた…。この周辺…マリアナの地に居城を構えてイッシュ地方に存在していた…だけど…今からたぶん千年ぐらい前…ちょうど私たちの代からおかしなことが起き始めた…それは城の従者たちが忽然と消え、私たちが年を取らなくなり、いくら刺されても撃たれても死ななくなった…そして私たちが仕えるはずの王は…いつまでたっても私たちに姿を見せることなく…

 

マリー「あれ…?」

あるとき、いつものように城に魔女狩りと称して攻め入った賊を退けた夜…。私は城の内装が変わっていることに気が付いた…、最初は少し…でもそれは確かに変化をして石畳だった床は禍々しい生物の内部のように…。気に入っていた階段の手すりは骨となり…シャンデリアの蝋燭はドクロに包まれ、神聖なる闘技場は死臭とこびりついた血肉にまみれ、窓から見える世界は朝日なぞ差し込むことなく暗雲が支配する暗闇…。気がつけばもう私の精神は限界だった…。そしてそのころから仲間たちの態度も一変した…あれだけ優しい好青年だったルフは口元を血まみれにして敵を噛み切ることに愉悦を覚え、姉のように慕っていたデューラは禁術に手を出してまで自身を異常にすることで環境に順応していくようになり…。紳士的で綺麗なこころを持つルークは心を閉ざし、みんなを率いていく頼れる存在だったリンはいつしか主である王の事を冥王と呼ぶようになって温かったその眼は冷たくなっていた…

 

 

マリー「私は…元々生まれついて相手の心を読むことができた…。心を閉ざしたルークと違って私はそうしないと敵を倒せないくらい弱い…だから地獄を見たわ…。数々の欲望、願い、憎しみと憎悪…見たくもないものを見続けて数えきれないほどの行年…もう…。もう…戦いたくない…普通になりたい…普通に生きて…生涯を終えたかった…」

ぼろぼろと泣き出すマリーを…あやはるは信じられないという感情で見ていた…。自分自身と重ねると価値観が全く違う。そしてこれが…ベノやジーパン、リタたち不老不死者の末路だと思えば思うほど言葉を失う

シュトラ「…生きるって辛いことなんだよ、あやはる。楽しいことばかりじゃない、生きてる人はみんな何かを背負う。そこに最後に残るのは…辛さだよ」

あやはる「……」

彼女は…あやはるは元々人間だ、今のポケモンの姿になれたのも命のやり取りがあったから、そして人間のままでは生きれなかったからだ。だからこそ…マリーに生きていることが幸せだと大きな声では言えない…傷つけてしまうからだ

マリー「どうすれば…いいの…」

あやはる「…マリー」

勇気を振り絞ってぎゅっとマリーの手を掴む。一瞬びくっとマリーは驚くがあやはるの顔は泣きそうになりながらもまっすぐこちらを見ていた

あやはる「私と友達になろう。マリー!そして一緒に…リンと冥王を止めよう!」

マリー「えっ…」

あやはる「止めて見せる。そうすれば…あなたは開放されると思うから…!だから…」

マリー「無理よ…リンにはかなわない…なのに主になんて…」

あやはる「やってみなきゃわからないじゃない!私たちは…!ここにいる仲間のために戦ってるの!だから必ず冥王とも会う!倒さなくても話が通じるかもしれないでしょ!?」

マリー「それができるなら…!」

あやはる「本当に話したの?ちゃんと向き合った?」

マリー「っ…!」

あやはる「ちゃんと向き合わないと…一生後悔する…!絶対っ!」

過去の自分の失敗を糧にあやはるはマリーに勇気を与える。その心を見たのかマリーも下唇を噛みながら勇気を振り絞る…!

あやはる「仲間なら…!ぜったいわかってくれるはずだから…!!」

マリー「…」

あやはる「マリー!大丈夫!私が一緒に居てあげるから!」

マリー「……わかった。話してみる…私の本心を…」

 

 

 

リン「…揃いも揃って負けたか。ここまで来るものは過去に一人も居なかったものを…侵攻を許すとは「ほう。なかなか見通しが良いではないか。バスケットでも持ってこればよかったか?」」

そう言いながらカツカツと階段から見えるティアラとその姿

まお「さて…墓の準備はできただろうな?埋葬は任せるがいい。丁重に弔ってやろう」

リン「…戯言は無用だ…」

まお「まぁ待て。とりあえずMEXさんを出してもらおうか。言われた通り取りに来たぞ」

リン「まだ私がいるが…?」

まお「…はあぁーーーっ……♯。おい、貴様何か勘違いしていないか?我はMEXさんさえ返してもらえれば貴様らが天空の城ごっこしようと何も手出しはせぬ。まぁラ〇ュタの雷などをやるなら即刻排除するがまずは遠渡遥々魔王が取りに来たのだ。出せと言ったらさっさと出せ」

ガチギレ寸前。ひとさし指とつま先をトントンしながらまおは言う。だがリンは臆さず剣を抜く。それはかなり大振りで自身にまで刃が触れそうなほど危険な刃。いわゆる諸刃の剣だ

まお「…チッ、もういい…」

交渉に応じる気無しとみなすとまおは目が追い付かない速さでリンの剣をメイスハンマーの柄で地面に杭のように封じると兜の角を掴んで顔面に拳を打ち付けて殴り飛ばす!その一撃でリンの仮面はゆがみ、ふらつくがまおは一向に手を休めず腕を組んだまま近づいてなんと今度は金的(股間)を容赦なく蹴り上げる!少し浮かんだリンの身体をまた掴んで引き寄せると次はリンの眼に自分の角を突き刺した!

まお「素直に言う事を聞けと何度も忠告してやったはずだ…!身の程を知れ愚物が!!」

そのまま使っていない右手からの衝撃波でまたしてもリンを弾き飛ばす。その姿はまさに魔王と呼ぶにふさわしい

まお「最後のチャンスだ、”手加減”してやっている間にとっととMEXさんを出して消え失せろクズ共。これ以上はもうないと思え」

本気でイラついているようで立ち上がるリンに有無を言わさず攻撃を加えて返事をさせない。

まお「どうした?武器も使っていない腕組みしている相手に手加減されてまだ実力の差が理解できんのか?」

リン「…ふん。なかなかやる…」

まお「強がる余裕があるのか。ずいぶんと余裕なのだな」

リン「…もう何をしようと貴様らは死から逃れなれない…。そう思えば思うほどに愚かしくてな…」

まお「ほう、なら教えてやる。魔王は死なぬ、肉体は朽ちようとも魂は輪廻。なんどでも蘇る」

右腕をかざすと魔方陣が出現!そこに手を入れるとまおは声を大きく張り上げる

まお「来い!サタナーズレグラ!!」

いつも使っているものとは違うハンマーがその魔方陣から取り出される。その形はニドキング頭部をそのまま切り出したかのような見た目をしている

まお「おしゃべりはここまでだ。だが今ならひき肉かミンチか好きな方を選ばせてやろう。どちらになりたい?」

リン「…貴様風に返すならば…。その前に貴様を主への供物にしてやろう」

まお「ほーお?ようやくやる気になったか。安心するがいい。口だけは聞けるようにしておいてやろう」

かなり大きなハンマーを片手で扱うまお。一方先ほどの剣を二刀流に持つリン。互いに戦闘態勢に入る。だが…

マリー「リンっ!!」

そこにマリーとあやはるが駆け付けた!

リン「…何をしている?マリー」

あやはる「まおさん!ちょっとだけ時間を…!」

マリー「リン…!もうやめようよ…。こんなの…私が…私たちが望んでいたものじゃない!もうルフも!デューラも!ルークもみんな死んだの!私は…ずっとここでみんなと暮らしたかった!幸せに!だからっ!」

リン「洗脳でも受けたのか。主の幸せこそ我らが幸せ。そのために…」

マリー「違う…、違う!こんなの幸せじゃない!!地獄だよ!!リンは…昔言ってたでしょ!?このマリアナの地こそが宝だって…!見てみなよ!!今!私たちの私利私欲のためにその地が地獄になろうとしているんだよ!?どうしてそれがわからないの!?」

リン「主がそれを望んでいるからだ」

マリー「主、主、主…!いつもそれ!!だったら言ってみなよ!!主の名を!!」

リン「その必要はない。どけ。裏切るというならお前でも容赦はしない」

マリー「どかない!絶対!!リンがわかるまで言い続ける!!」

リン「主が目覚めようというときに…!恥を知れ!!」

マリー「エゴだよそれは!」

リン「……」

その一言を受けて…リンは剣を鞘に納めた…

リン「…」

マリー「リン…?」

リン「根負けだ。主には私から伝えるとしよう…」

マリー「本当…?」

リン「あぁ…やはり甘いな…私も」

あやはる「マリー…!」

マリー「あやはる…!」

リン「この世の未練を断ち切らせてもらう。我が主の前にひれ伏せ、驢鳳仙斬(りょほうせんざん)!!」

あやはる「え…」

マリー「っ…?え…?」

一閃。マリーの身体は、上半身と下げていた左腕は…リンの斬撃によって二つに分かれた…

 

 

 

 

ボドボドッ!

あやはる「ま…りー…?」

まお「貴様ああああああああぁぁぁっ!!!!!」

あやはる「マリー!」

その行いに激怒し、リンをあやはるたちから急いで突き放すまお。あやはるは枯れた声でマリーに駆け寄る

あやはる「マリー!マリー!?」

マリー「あや…はる…私…死ぬのかな…?」

あやはる「死なせない!絶対に!!」

キッと強気の目に流れる涙、ガタガタと震える手でマリーの切断された腕と身体を糸で直そうとするあやはる。だが…現実は非情だ…

あやはる「どうしてっ…!?どうしてくっつかないの…!?アリアドスの糸って頑丈なはずなのにっ!!」

確かに…アリアドスの糸は医療にも建築にも使われるほど頑丈だ。だが…治癒能力は無い…。切断された断面などもってのほかである…

あやはる「あぁっ…!あ゛ああっ!!だめ!とまって!!」

ドクドクと流れる血。あやはるの足と手が血の水溜まりに触れ、赤黒い色に変色していく…

あやはる「いや…いやああああっ!!!私の力はっ!誰かを救うためのものなのにっ!!どうして目の前の友達を救えないの!?」

マリー「あや…はる…」

べっとりと血が付いたマリーの力ない右腕があやはるのほほに触れる。それをぎゅっと掴むとマリーは微笑む…

マリー「大丈夫…あやはるは…悪くないから…ありがとう…ともだち…に…なって…くれて…」

あやはる「やだ!やだああああっ!!死なないでマリー!!」

マリー「…」

あやはる「お願いっ…!生きて…!」

マリー「そうしたいけどね…だめみたい…。あはは…」

あやはる「あなたはっ!初めての友達なの!!私の初めての!!なのに…なのに…!」

マリー「あやはる…あやはる…!だめ…」

あやはる「なにがだめなの…!」

マリー「死ぬの怖い…すごく怖い…!いや…!死にたくない…!死にたくないぃぃ…!いやだぁぁっ…!!助けてっ…私は…わだじはぁ゛ぁあ゛っっ!!!」

あやはる「マリー…!」

マリー「私は…ただ…幸せになりたかっただけなのに……うああぁぁぁぁ………ぁ…」

あやはる「っーーー…!マリ…ー…」

べっとりと赤い血が付いた掌が、あやはるの頬から首、服を汚しながら…力なく地面に…墜ちていった……

あやはる「マリイイイイイイィィィィィっ!!!!!!」

 

 

 

次回 IPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episode Ⅱ 後編

 

 




お疲れ様でした。こちらに移す予定は今のところ無いのですがあやはるが仲間になるきっかけとなったspecialⅡおよびIF THE REQUIEM CALLという作品であやはるは病弱で余命一週間の「人間」の少女でした。ですが今はアリアドスとして生きています。もし何方か一人でも見たいという声を頂けるのならば頑張ってこちらに投稿することも考えています。応援よろしくお願いいたします


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅡ 後編

はじめまして、書いてる人です。一応これが初めてということもあってまだまだハーメルンのすべてを生かし切れてない記事となります。ブロマガから引っ越してきたばかりですのでアドバイスなどいただけると嬉しく思います。それではお楽しみください


この物語は

ポケモン

ポケモン擬人化

申し訳程度のサクラ大戦要素

を含みます。これがダメという闇の力の僕たちはとっととおうちに帰りなさい

※これはepisode Ⅱの後編です。他のepisodeとお間違えないようにご注意ください

 

 

 

ここまでのあらすじ(こちらでは初投稿のため)。まお達は突如姿を消した仲間、MEXさんを追う中で『クティス・オス・サングィス』という一派と敵対する。相手はMEXさんの行方を知っているようで闇夜に消えながら不気味な台詞を残す。そして不気味な城が地の底から浮上。まお達はそこで四つの道の先に行る敵と対峙、全て各個撃破し、道を切り開く。そこで待っていた『クティス・オス・サングィス』の頭領。リンとまおは戦いを始める。そこにリンを止めるべく、敵だったマリーが説得。成功したかに見えた説得は失敗に終わり、不意打ちにマリーは身体を一刀両断され、息絶えてしまった。初めての友達を目の前で失ったあやはる。そして募る怒りに燃えるまおは再びリンに襲いかかる!

 

 

 

 

 

ドラゴ「っはぁ…!まお!あやはる!」

長い階段をのぼってきた他のメンバーが息を切らしてようやく合流した、だが闘技場には見えない壁のようなものがあり、目の前に居るのに入ることが出来ない

レジーナ「ぐぬぬ…!入れないデスウゥー…!!」

頭をぐりぐりと見えない壁に擦りながらレジーナは下唇を噛む。他のメンバーもどうにかならないかと攻撃を試すがびくともしない

シュトラ「…もしかしてこの闘技場って規定の人数しか戦えず…定員オーバーとか…?」

ぼたん「…面倒だな」

ニーナ「数で攻める私たちには手痛いよね、こういうの…!」

アシュリー「あやはる!聞こえる!?」

この壁の向こう側にいるあやはるに呼びかけるアシュリー。だが…あやはるは…目の前で起こった出来事が嘘だというような失意と絶望に満ち溢れた顔でマリーの亡骸に涙を落とす

あやはる「マリー…。ねぇ…、目を覚ましてよ…。うぅ…」

そのとき、深い悲しみがあやはるの中に何かを芽生えさせた…

「憎いよね…?あなたの友達をそんな目に遭わせた奴が…」

あやはる「っ!誰っ…!?」

一瞬周囲が輝くとどす黒い影が突然目の前に現れた。周囲は時が止まったかのようにピタリと動かずあやはるとその黒い影だけが動いている。

「あぁ、心配しないで、私はあなたにチャンスを上げようって思ってね、私はとある理由であのリンって奴がここで倒されると都合がいい、だけど今はこんな体でねぇ。そこで提案なんだ、あいつを殺してくれないかなぁ…?あなたならそれができる!」

あやはる「そんな…!惨たらしいことっ…!」

「できるよぉ…!私はあなたを見た!あなたは本当は強い!でも…ただ強いだけじゃあダメだよ、正義無き力はただあのリンのように誰かを深い悲しみに落とす。でもその反対は違う。力無き正義は…

だ れ も す く え な い…!」

あやはる「!!」

「わかるね…?今こそあなたの力を、正義を!解き放つ時だよぉ…!あぁ、そういえば利害の一致とはいえお礼が何かまだ言ってなかったねぇぇ…?これはすごいよぉ!?あなたが喉から手が出るほど!ほしいものさぁ…」

ドクンドクンとあやはるの鼓動が高鳴る。強く握るマリーの冷たい血に塗れた手を見てぐるぐると頭がボーッとしながらまさかと望みが現実であるならと思ってしまう

「あれ?わかってるじゃないぃ…!そうさぁ!あなたが望むもの…。その子、マリーを蘇らせてあげる…!私ならそれができるんだよ!でもぉーっ…あいつが邪魔…!ならばあなたが初めての友達のためにやること…わかるよねええええっ!?」

 

 

 

 

あやはる「うああああっ!!!」

ぺたんと座り込んでいたあやはるは大きな声で叫ぶと今まで見せたことのない殺意に満ちた瞳でリンを睨み、立ち上がって糸で三節棍を作り出してリンへ襲いかかる!

まお「あやはるっ!無理はするな!」

制止など聞く耳も持たずにあやはるはリンの両刃の剣を三節棍の性質をうまく利用し、完封している。そして恐るべき事に誰も予期せぬ事が起こる!

あやはる「あああっ!!」

なんと三節棍ごと両刃の剣をリンから取り上げ、手ぶらになった一瞬でリンの四肢に糸を

取り付けて動きを封じた!その早さはまおも驚き、ただ臨戦態勢で唖然としていた…それもつかの間、なんとあやはるは靴のつま先を糸で尖らせてリンの鎧で守られていない関節部分を刺し始めた!

 

 

メアリー「あやはる…何かおかしい!あんなこと!あやはるは絶対しない!」

くぃーん「だが…目の前で行われていることは現実だ…!」

しらみつ「あやはるさんのバトルスタイルではないですね…!いつも彼女は敵を無力化させることを第一にしてるはず…それをあんな…あれでは殺しとかわりませんよ…!」

 

 

あやはる「苦しめ!マリーの分までぇ!!」

突き刺した箇所に猛毒を流し込むと先ほどとは別の三節棍を作り出し、それをリンの首に巻き付けて絞殺しようとする!

リン「うぐぅっ…!」

あやはる「死ねえええぇっ!」

まお「よせ!あやはる!」

激昂するあやはるを止めようとするがなんとあやはるはリンを盾にし、まおの妨害を無理やり止める。そしてさらに力を込めるとリンはぐったりと気を失うように倒れ込む。だがそれで止まるあやはるではなかった…

あやはる「その身を切り刻む!!マリーと同じ目に!いや!それ以上の目に会わせてやる!!スラッシュスイング!!」

しなる鋼糸で突き放したリンを叩きつける!直撃した個所から切断され、容赦なく何度も糸は叩きつけられる…そのたびにリンの体はバラバラになり…まおが羽交い締めで止めた時には…すでにミンチより酷い事になっていた…。たった数分の出来事であったがまおは長い悪夢を見ているようだった…

まお「あやはる…貴様…」

あやはる「っはぁ…!っはぁ…!!あぁぁっ!!」

まお「いい加減にしろ!」

バシィッ!!

あやはる「あ…」

バラバラになったリンに死体蹴りをしようとするあやはるをさすがに見かねたまおがやや強くあやはるの頬を手の甲で打つ

まお「あやはるよ、友を思う気持ちは大事である。だが、今貴様がしたことはなんだ?敵討ちか?」

あやはる「違います…こうすれば…マリーが…」

まお「…大切な者のために戦うならば志を持て、今の貴様は狩りをする蛮族と変わらん。何かを守れなかったとしても、自身の志を強く持てば大切な者はきっと応える」

あやはる「そんな事言って…まおさんに何がわかるんです…私は…目の前で初めての友達を!!」

まお「貴様の気持ちは知らん。だが共感はする。“一度仲間もろとも皆殺し“にされておるからな。皮肉にも我の目の前にいる元人間が関与した事件でだ」

あやはる「!!」

まお「こういう言い方は我としてはしたくはない。だがこの際だ、ハッキリとベノや他の者があえて言わなかった事を言おう。こういう事が我らは終始つきまとう。明日生きる資格ある者の未来が終わる。今死ねば良い者の未来が存在する。そんな世界に我らはいるのだ、貴様も、我らも一度は命を失った。だがベノによるタイムパラドックスによって全員生き延びることができた、この意味がわかるか?」

あやはる「ど…どういう…」

一度深く息を静かに吐くとまおは一瞬下唇を噛んで強く言い放った!

まお「まったく…そんなこともわからんのか!この死に損ないが!甘ったれた妄言を吐き散らすのもいい加減にしろ!!友達が死んだだと?そうか、ならば貴様は友達が死ぬたびに暴走してもあぁ仕方ないと許してもらえると!なるほどな!自分の大切な存在を言い逃れの道具にして貴様は平気なのだな!?」

あやはる「そ…そんな…」

まお「貴様がそう思っていないだと?そうだろうな、言い訳はそれだけか?思うことなく本能がままに任せるからこそ暴走というのだ!!その行動が何度も続けばどうなるか…、その身勝手な行いがいずれ我が身と仲間を傷つけるだけだとなぜわからん」

あやはる「わ…わたしは…わたしは…」

わなわなとマリーの血がついた自分の手のひらを見るあやはるは泣きじゃくりそうになる。自分のやったことがどれほど愚かで凄惨な事かをあらためて理解する。理解するたび頭の中がぐちゃぐちゃになる

まお「あやはる。二度とするな、そして臓物に刻み込むがよい。「倒す」と「殺す」は…その先に待ち受けてるものが戦いなのが一緒なだけで同じものでは無い、「殺す」のは対話に対する全否定。「倒す」のは分かり合える可能性だ。その事を忘れるな。貴様には…「倒す」事だけをしてほしい…頼む…」

あやはるにそれを言うとまおは踵を返し、リンだったものに歩みをすすめ、その前で止まる

まお「狸寝入りは止せ、さっさと起きろ」

腕組みをしながらそれに話しかけるとバラバラになった肉片が動き始め、今再びリンの姿に戻った

リン「…気づいていたのか」

まお「知れたこと、貴様がくたばったのなら我の仲間がすぐにでもあやはるを叱りに来る」

リン「ほう…頭も回るようだ、それではそろそろ…本気で行かせてもらおう」

まお「手加減していたのはとうにわかりきっていた、だからこそ…遊びを終わらせようか。あやはるよ、下がれ」

その言葉を聞いてあやはるはマリーの亡骸を抱きしめたまま闘技場から離脱…。仲間達がすぐに寄り添い、心配する

ジーパン「頑張ったじゃねぇか。大切なもんのためにがむしゃらに戦うの、あわては好きだぜ」

わしわしと頭を撫でるジーパン。それを皮きりにあやはるが年相応の涙と慟哭を見せる

あやはる「っっっ…!くぅぅぅ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あぁぁっつっ!!」

いっこんぞめ(表)「大丈夫さ、神様はちゃんとあやはるの後悔してること、許してくれるって」

アシュリー「あやはる…覚えてて…その悲しみや痛み、憎しみ」

メアリー「あやはるが死んだとき、ぼくたちもそんな痛みを経験したんだ。でもずっと引きずっちゃいけない」

ぼたん「…俺達は一度死んだ、だが生きている。命ある限り生物は未来へ歩み続ける…」

ニーナ「だからさ、悪いことしちゃった自分とはここでお別れ、あやはるの物語は、ここから始まるんだよ」

あやはる「うーっ…!うんっっ…!!」

ドラゴ「大丈夫だ。後は…」

 

 

まお「…。ふっ」

リン「何がおかしい?」

まお「いや?やはり我にアフターケアは無理だと思ってな。というわけでカウンセラーを返してもらうその前に…。この闘技場はどんな衝撃でも無効にするようだな?」

リン「あぁ、部外者からの妨害を防ぐために魔術による結界がはってある。生半可な威力では破れない」

まお「なるほどな、だが城の一部は大破したようだな?」

リン「この「王の闘技場」は他の闘技場とは訳が違う。どのような衝撃にも微動にしない」

まお「それを聞いて安心した。すまんな、時間を取らせた。始めよう」

リン「では参る…良き闘争を…!」

まお「?」

ガキィン!!

リン「っ…!?」

まお「今なんと言った?闘争?何を勘違いしている」

なんとまおは…靴底でリンの不意打ち紛いの一太刀を軽々と止めた…

まお「すでに手加減は終わりだと告げたはずだが?」

ボゥッと言う音がリンの刀から響く。なんと刀が燃え始めた!

まお「おっと、可燃物は持たんほうがいいぞ?温度などという生温さは存在しないのだからな!」

すぐさま刀を捨てると距離を取って次の刀を構える!

まお「つまらんな…」

人差し指でリンを指差すとリンのアーマーが燃え出す!

リン「くっ!」

痛みに耐えつつ勇猛果敢にリンはまおに切りかかる!

まお「もう一つ忠告だ、それ以上近づかないほうが身のためだぞ?」

その瞬間。まおに切りかかるリンは一気に火だるまになった!

まお「つくづく忠告を守らぬ奴だな」

火だるまになりながらも切りかかるリンをまおは軽くあしらって背中を蹴り飛ばす!蹴られた箇所には焼き印のように黒く色が付き、白い煙がたっている

まお「貴様が強者であることは認めよう。だが所詮は井の中の蛙だ、貴様では今の我に勝てぬ」

リン「…それがどうした。我等はもう…戻れぬのだっ…!」

まお「ならばいつか来る終わりをここでくれてやろう」

手をリンに向けて軽く力を込めるとリンの各所が燃え始める。それでもリンはこちらへ向かってくる

まお「…。っはーっ…!しつこいのは嫌いだ…。死に失せろ、ディアボロス・イグニッション!!」

深いため息と共に手を握りしめる。すると何度も大爆発がリンを中心に発生し、さしものリンもついに膝をついて倒れた…

リン「ぬぅっ…!」

まお「…どこまで燃やせば死ぬのだ…?なぁ…?」

リン「死なぬよ…ま「はい邪魔」だ…。な…?」

突然黒い影が倒れているリンの腹部を貫通して立ち上がる。まるでおもちゃのようにリンの体を持ち上げるとゴミのように捨てる

???「まったくもー…。ムダにタフだから復活に時間かかったじゃんか」

まお「…貴様、何者だ?」

???「んー…?あー…そっかぁ…こっちじゃ私アレだったっけぇ…うわー…言うの恥ずかしー…」

まお「名乗れ、何者だ」

???「貴様達に名乗る名前はないってのも味気ないし…ま、一応自己紹介しておきますか…。私の名前は「冥王」フランチェスカ」

まお「冥王…そうか…貴様か…」

フラン「ごめんね、なんかタフにしすぎちゃったみたいでしつこかったでしょ?」

まお「どういうことだ…?」

フラン「あ、その前にちょっとごめん「タブーリミッター」対価は我が知識、かの結界を取り除け。ヴァリエブレク」

フランチェスカが呪文を詠唱すると闘技場を包み込んでいた結界がひび割れてガラスのように砕ける。地組が傷一つ付けられなかった結界をフランチェスカは単独で意図もたやすく消し飛ばした

フラン「ほい、あとは…「ハートビート」死を防げし包容となりて与えられた痛みを消し去れ。ハーツネオスト」

続けて詠唱した呪文によって今度は全員の傷が塞がり、ダメージが全て回復した…

フラン「ん。それで?」

まお「冥王よ、我が仲間を返してもらいにきた」

フラン「仲間?あー…。いいよ、好きなだけ持って行ってよ」

まお「…?」

フラン「何人欲しい?頭だけなら優秀でしょ?」

まお「…まて、貴様…先ほどから何を言っている?」

フラン「だからさ、失敗作。どれでも持って行ってよ。この真下にごまんといるから」

まお「失敗作…?」

フラン「うん。私がこの世界の生き物をベースに作った戦闘生物。学習知能はなかなかハイスペックにつくれたんだけど性別が混ざってねー。失敗作として殺処分するつもりだったし好きなだけ引き取ってもらっていいよ」

まお「…貴様…命を何だと思っている…?」

フラン「私の所有物」

まお「なっ…」

フラン「全ては私が管理する。命も、力も。だけどちょっと色々あってねー、もうこっちで何千年も力ためてて…いやー苦労したね、ボロボロの状態で国まるごと支配して眠るのは容易じゃなかったよ」

まお「まて、理解が追いつかん…」

ドラゴ「まおっ!」

そこに仲間達がようやく合流した。だがまおの態度からほぼ全員が警戒態勢に入る

ジーパン「なにもんだ…?こいつ…」

まお「理解不能の冥王だ、あまりにも話がぶっ飛びすぎてる…」

フラン「お、あやはるちゃんだね?」

あやはる「えっ…!はい…!」

突然話しかけられて動揺するあやはるにフランは笑顔で腕をつかむ。同い年くらいなのだろうか背丈もほぼ同じくらいだ

フラン「いやー、助かったよ!君がいなかったら私はここまで完璧に復活できなかった!これ、約束の奴ね」

そう言って一方的に渡された物を見てあやはるは青ざめる。それは…

あやはる「こ…これ…なんですか…?」

フラン「?。マリーだけど」

あやはる「違う…だってこれ…これ…」

フラン「大丈夫だって!ちゃんと君の事おほえてるようにしておいたからさ!」

その手に握らされたのは…「一つの試験管」だった…

フラン「あれー?反応薄いね?それ一本で数千人は軽く作れるよ?」

まお「説明してもらおうか…冥王よ…。1から10まで順番に…」

フラン「いいよ、説明してあげよう。私はこことは別の世界から来た。この世界に「フランケンシュタイン」なんて種族いないでしょ?私はそのフランケンシュタインって種族でね、元居た世界で全ての支配者になるために戦ったんだけど次元の狭間に叩き込まれてこの世界に流れ着いた。そしてそれが約1000年ぐらい前、私はここらへんにあった国を丸ごと滅ぼして新しい国を作った。戦い疲れたこの身体を癒すためだけにね」

まお「…なるほど、今わかった。なぜこのマリアナメトロポリスに古い遺跡があったのか…。全て虚偽だったのか…この街の歴史や奴等は…!」

フラン「ピンポーン!よくわかったね!この街はまさに私のためだけに作り替えた国そのもの。古い遺跡は私が滅ぼした名残だねー。そして!クティス・オス・サングィスはみんな私が作った一組のクローンでね、同じ受精卵に手を加えて生まれもっての様々な境遇や能力から性格まで全部生まれる前にDNAに刻み込んでたの!いわば決められた運命。紆余曲折はもちろんあったけどちゃんと復活するまで活動してたしね、苦労したかいがあったよ。それとこの城に闘技場あったでしょ?ここもそうなんだけどね、闘技場での戦いによって発生する衝撃をエネルギーとして吸収して私が復活するためだけに利用してたんだ。そう…この王の闘技場で誰かが戦いあうことで私の復活は完全なものになる…。アッハハハハ!!!ちゃんと実験どおりに事が運んで幸せ~…!」

ジーパン「っ…こいつ…最低だな…」

ニーナ「命を弄んで笑うなんて…狂ってるよ…」

フラン「さて、失敗作だけど…」

まお「黙れ…もう充分だ…。貴様の手のひらでのおままごとには虫唾がはしる…」

フラン「え?いいの?この個体を返してほしいんでしょ?」

そう言って突如宙にクリスタルが浮かぶ。その中には…

レジーナ「MEXサン!?」

シュトラ「…ダメだ。呼びかけても反応が無いよ…」

フラン「普通にこんなものあげるけど…ちょっと寝起きのウォーミングアップに付き合ってよ、満足したら返してあげる」

パチンと指を鳴らしてクリスタルが消える。それを皮切りにまおがフランチェスカに襲いかかる!

フラン「おー、血気盛んー。でもさ、本気でもいいよ?たぶん君でも私には勝てないだろうし」

まお「ほざけ!!」

マーシャルアーツとメイスハンマーによる攻撃をフランチェスカは意図もたやすく受け流す。まるで子供と遊ぶ大人のようだ

フラン「ほらほら、身体に力がみなぎるのわかる?ずっと君たちにオート回復と攻守増強魔法かけ続けてるんだよ?」

舐めきった態度と言葉にまおは先ほどリン相手に使った能力を使おうと一瞬躊躇う。まおに限らずベノやアデア、シャーヴァルといった面々が本気を出すと周囲を味方諸共巻き込んでしまうため迂闊には使えない。…実はフランチェスカはまおが味方と一緒だと本気が出せないのを理解した上でワザとまお達にバフをかけ続けている。

フラン「つまんないなぁ…」

チラリとあやはるたちを見るとフランは天使のような笑顔で微笑む

フラン「ねぇ、一緒に遊ぼうよ。「シャドウディメンション」いってらっしゃい」

なんとフランチェスカの足元から真っ黒いフランが地組の人数分出現!不気味にも歩きながら各自に襲いかかる

フラン「私とまったく同じ強さだからね、分身だからって弱いとかそんな生温さは無いよ」

冷酷にもそれを告げるとフランチェスカの指先が光り出す。まおを簡単に吹き飛ばすと戦っている自分の分身と地組を指差す

フラン「「インパクトバースト」原初にして至高の魔法よ、その輝きにて我が敵を凪払え。グラン・ビッグバン」

フラン(影)「「インパクトバースト」」

凄まじい爆音をたてて大爆発が幾度も繰り返される。さながら足元がいきなり爆心地へと変貌したようで地組の面々は一瞬で大ダメージを受けて壊滅状態になってしまった…

まお「っ…!」

さらに追い討ちのようにフランチェスカの影達は…その爆発によるダメージも衝撃も受けておらず、歩きながら回復が間に合っていない満身創痍の地組に淡々と襲いかかる。もはやそこで行われているのは暇つぶしと名をうった蹂躙と呼ぶべきだろう…

まお「おのれぇっ…!おのれえええええっ!!!」

フランチェスカ「おーっと、来たかな?本気」

まお「うおおおおおっっ!!!」

仲間を遊びながら傷つけられ、プライドを傷だらけにされたまおは怒りに燃える。そして一瞬でフランチェスカの影を退けると仲間全員を闘技場の外まで連れ出す

まお「貴様達に頼みがある…出来うる限り…遠くへ逃げてほしい…。我は…あやつを許すわけにはいかぬ」

ボロボロになりながら立ち上がるドラゴとジーパンはまおの眼を見ると他のメンバーに頷く

ジーパン「っへ…こういう場合仕方ねぇな…。いくぜ、お前ら」

ジーパンの言葉を皮きりに全員が闘技場から離れ、階段の闇の中に全員の姿が消えたのを確認するとまおは門を閉め…

まお「さて…後悔してくれるなよ…!?」

門の取っ手を…握り溶かして開閉不可にすると振り返ってフランチェスカに歩み出す。その一歩一歩に地面は焼き焦げ、また少し溶けているようだった

フラン「嬉しいねー。ようやくウォーミングアップっぽくなってきたじゃん?」

まお「何がウォーミングアップだ…何が嬉しいだ…」

だらりと腕を垂らしてあからさまいつもと違う体制になるまおの身体からは紺碧の色をした炎が吹き荒れる…

まお「最初で最後の忠告だ…我は…いや…「俺」は…貴様の未来を燃やし潰す…!!」

 

 

 

ドラゴ「やべぇっ…!!」

ジーパン「まおの奴…今回はかなりイラついてやがったからかはえぇな…」

あやはる「いったい…何が…」

ニーナ「あやはるっ!絶対足止めたらだめだかんね!とにかく全速力でこの城から抜け出すことだけ…!」

くぃーん「シュトラ!」

なんとか城の入り口に着いた全員はシュトラとくぃーんのテレポートで一気に城から離れる!その瞬間、城を蒼い炎が包み込んだ!

あやはる「ぷはっ!熱い…!?」

ドラゴ「あんま直視すんなよ、眼が焼ける」

ぼたん「…あれがまおの本気だ…あれをやるときは極最小の時間か俺達がこれぐらい離れないと使わない…」

ジーパン「何年ぶりだ…?前使った時は地方のほとんど焼き尽くしてたか…?」

ニーナ「今回はかなり加減してるね…」

 

 

まお「さあ…冥途の土産だ…。ありがたく思え…!」

フラン「あっつー…。こりゃたまらないね」

まお「その余裕も焼き尽くしてやろう…!」

ギロッとまおがフランチェスカを睨むと一瞬でフランチェスカが火だるまになった!さらに右手を挙げると炎が巨大な腕の形を取り、火だるまになってるフランチェスカをなぎはらう!

まお「まだ終わらん…!」

今度は握るように手をかざすと炎が螺旋を描いてフランチェスカを包み、そのまま地面にたたき伏せた!これにはさすがにこたえたのかフランチェスカは炎を振り払い、立ち上がるのに時間をかける

フラン「へーえっ…!これはこれは…なかなかいい手品だね…それじゃあ私からも君に手品を見せてあげよう…」

先ほどと態度が違う。どうやらまおの実力を甘く見ていたのか買い被りすぎた自分にも腹が立っているのか首をグキグキと鳴らす

フラン「すぅーっ…「オメガマジェスティ」虹の雷よ!我にあだなす悪を浄化せよ!サンダープリズム!!「ウェイドウォーク」切り刻め激流!その渦を血に染めろ!ブラッディホール!!「ビーストソウル」森羅万象八卦深緑!世界樹の怒りを受けろ!プランティストエターナル!!」

連続した強大な攻撃!!煌びやかに虹色の雷が降り注ぐと赤い水流が渦を巻いてまおを包み込み、最後に地面から巨大な根っこが浮上し、まおに襲いかかる!!

フラン「避けきれるならよけてご覧よ!「チェイスターゲット」そこだ!デスストレート!!「フリーダムイズマイン」絶対必中!光の帯よ!捕縛し罰を与えなさい!アナザーコネクト!!」

さらに追い討ち!!先ほどの攻撃による爆煙の中に潜むまおに一直線の光の矢と複数の光の帯が追加で襲いかかる!!

フラン「ばーか…!手加減してやってるのがわからないなんて…はーあっ…!つかれ…嘘でしょ…?」

一息してその場を去ろうとしたフランチェスカ…だが…まおはまったくの無傷だった…!

フラン「うっ…嘘…。まさか…相殺なんてしないはずなのに…全部直撃したのに…!?」

まお「面白い手品だな…」

その言葉にフランチェスカはビクッと驚く…よほど今の大技ラッシュに自信があったのか絶望感もひとしおと言ったところか…

まお「どうした…?それでお終いか…?」

フラン「っ…(まさかコイツっ…「当ててやろう」)」

一瞬怯んだフランチェスカに有無を言わせずまおが口を開く

まお「貴様がお察しの通り、俺は他次元の存在から影響を受けず、それによる干渉を拒絶することのできる能力を持っている…。確か貴様最初に言ったよな?自分は別の世界から来たと…。その時だ、俺は勝ちを確信した。そして思ったとおり、貴様が先ほど放ったものは何一つ俺に傷を付けられず、ただただ俺の前で消え去った…。さて…こうなると…話はちがってくるなぁ…?」

フラン「…。…うーん…。…。あ゙ー!わかった!降参!これ以上戦ってもお互いにメリット無い!」

そう言うとフランチェスカは指を鳴らしてMEXさんの入ったクリスタルをまおの元に飛ばし、その中のMEXさんを解放した。まおは警戒したが意外にもフランチェスカは正々堂々と何もしなかった

まお「…潔いのだな」

フラン「だって損しかしない勝負、したっておもしろくないじゃん」

再び小さく何かを言うとフランチェスカはどんどん影へと身体を入れて消えようとする

まお「忠告しておく。貴様が何をしようと俺たちは知らん。だがそれが敵対行動となるのなら…次は容赦しない…」

フラン「ご忠告どーも。それじゃあその懐の深さに感激した私は君たちに得のあることをしておいてあげよう。ただで見逃してもらうのは私としてもおもしろくないし」

まお「…一応何をするか聞いておこう。場合によってはこの場でラウンド2開始だぞ」

フラン「仕方ないなぁー…ごにょごにょ…」

一度影に入るとまおの隣に影から出現するフランチェスカ。そして何かを告げる…

まお「…。なるほど。それならばこちらも今回は貴様の事を見逃すとしよう」

フラン「交渉成立だね。それじゃあ城の入り口まで送るよ、そこの扉使えなくなっちゃったし…「シャドウディメンション」」

まお「…一つ聞きたい。貴様が先ほどから幾たび口にしてる呪文のようなものはなんだ?」

フラン「あぁ、これはね。今の君達がお話にならないくらい強い別次元の力だよ。最後にとっておきの手品を見せてあげよう。薄気味悪いこの空だって…「ヴァルキューレフラッシャ」」

手のひらサイズの光がまるで水面に水滴を落としたように闇を簡単に祓う

フラン「マッチポンプだと言われようと、いつかは君をも倒して私はすべての支配者になる。だからそれまではくたばらないでよ?」

まお「ふん。簡単にくたばりはせぬよ。また会おう。冥王よ」

フラン「じゃあね、魔王さま」

 

 

 

 

 

アシュリー「炎が…消えた…」

シュトラ「…みんな!」

笑顔でシュトラが城の入り口に指を指す。そこには…MEXさんを担ぎ上げたまおがこちらに歩き進んでいた…!

ニーナ「やったぁ!」

ジーパン「ったくよ…。心配してねぇけどよ」

全員が別々の形で心配を形にしてまおとMEXさんのもとに駆け寄る。まおはそれに気付くと黙って眼を閉じ、頷いた

まお「すまん。心配と迷惑をかけた」

ドラゴ「いつものことだろ?」

しらみつ「気にするなんてまおさんらしくありませんよ」

まお「…そうか…そうだな…では…。帰るとしよう。“全員“で…」

ようやく揃った14人。その幸せを改めて胸に思うとまおは歩き出し、全員がそれに続いていく…

 

 

フラン「…さて。あー…あぶなっ…。なんで私に対してカウンターとなる存在が…?…まさかアイツが…?」

ぶつぶつと何かを考えるフランチェスカはある程度振り向いて歩くとすばやく手を振り下ろした!その瞬間、目の前に七つのクレーターが出来上がった…!!

フラン「「ユーガコントロール」。油断禁物でしょ?(ねぇ?こっちの言葉の方が話しやすいかな?)」

そこに這いつくばっていたのは…七つの大罪…!しかも全員が揃い踏みだ

フラン「(やぁやぁ、久しいねぇ。まさか同じ世界から別の奴がこっちに来てるなんて思ってなかったよ)」

サタン「(てめぇえぇっ!!ぶっ殺してやるっ!!)」

ルシファー「(それはこちらの台詞だ…!貴様がなぜこの世界にいるっ…!?)」

ビキビキと重力でたたきふせられているのか立ち上がるのでさえ精一杯な七つの大罪達。どうやら因縁があるのか敵対しているのは目に見えるが翻訳しないと何を言っているのかわからない

フラン「(ごめんねー?たぶん君達と同じ理由だよ。そっかぁ…私がこっち飛ばされるずっと前の時代にとばされて封印されたってところかねぇ?)」

ベルフェ「(っ…!ならば目的は同じのはず…!なぜこんなこと…)」

フラン「(はぁ?封印されて頭にウジ虫でも沸いたの?君達はアイツ等に復讐したいのかもしれないけどさ、私にとっては通過点が今は別のものになっただけ、同盟とか仲間とか勝手に思われても殺意湧くだけだよ?)」

ベルゼブブ「(貴様もあの魔王とかいう奴やその仲間を滅ぼすのだろう…?ならば目的は同じのはずだ…!)」

フラン「(はーっ…。バカだねぇ…君達あんな下しか見てないの?私さ、冥王になりたいだけなんだけど?そんなに復讐とか目の敵殺したいなら次元とか越えたら?手伝うよ?私の能力をまさか忘れたとかじゃないよね?)」

その言葉に七つの大罪はぞっとする…そのうち水色のサイドテールを持つレヴィアは涙目になっていた

マモン「(私達がいるのがわかったのもそういうことか…!)」

フラン「(あったま悪いねぇ?復活した瞬間に違和感しか無かったよ。さて…挨拶は済んだしいつもなら見逃してあげるところだけど…君達をしばらく再起不能にするのが見逃してもらう条件でね?悪いけど9割くらい半殺しで済ませてあげるよ。おとなしくしてたら多少痛くないんじゃない?)」

アスモデウス「(なめくさりやがりましたわね…!ここまでコケにされたらわたくしでも許せませんわよ…!)」

フラン「(おー?いいよ?全員まとめてかかってきなー、ウォーミングアップの続きだ)」

重力による拘束を解くと七つの大罪が一斉にフランチェスカに襲いかかる!!しかしフランはそれを丁寧にまるで糸を通すように避けるとまずはと言わんばかりに最後にかわしたアスモデウスの長いロングヘアをすれ違いざまに掴んで背中にエルボーを入れて怯ませる!

フラン「(くっせぇんだよ…特にてめぇは小便と同じ臭みがする…。一番ガキだってことだよ!!)」

アスモデウス「(このっ…!放しやがれですわ!!)」

フラン「(てめぇには特上のこれをくれてやる…!)「ヴァルキューレフラッシャ」光の剣よ邪を裂け!そして光を与えたまえ!セイクリッドキャリバー!!」

容赦なく背中を光の剣で切り、喉元にハイキック!そして四方八方から光の剣がアスモデウスを切り刻む!ほとんど一瞬の出来事に他の七つの大罪も助けることができず、アスモデウスはその場で言葉なく倒れてしまう

フラン「(よわっちぃなぁ…。たかが悪魔が。“あの状態“になれば互角なのに今なれないんだろ?)」

グリグリとアスモデウスの頭を足で蹴るフランチェスカ…。その姿に誰も迂闊には動けない…動いたら…殺されるかもしれない。そんな恐怖心が彼女たちに襲い来る

フラン「(どうしたの?来ないならこっちから行くね?)」

邪悪な笑顔と口調でそう言い捨てるとアスモデウスの首を蹴ってとばす。そして目をつむったまま片手に炎を宿す

フラン「(よけてごらん。あのガキと違って私のはついてくるから)「マジックマスター」失われし原初の炎。ここに再臨し、立ちはだかるすべてを焼滅させろ。ボルカニックエンド!!」

身の丈とおなじくらい巨大な火の玉が高速で発射!次は自分かとベルゼブブがすばやく飛んで振り切ろうと逃げ惑う!だがものの数秒で追いつかれて直撃を受け、地上に炎とともに墜落!クレーターを作って丸焦げのベルゼブブがそこに倒れた…

フラン「ほれほれ、まだこれっぽっちも本気出してないよ?」

ニヤァと歯を見せて無垢な瞳に残りの5人を捉える…。七つの大罪が決して弱いわけではない。むしろたった一人でてゐ劇をほぼ全滅にまで追い込めるほど強い。ただ…フランチェスカの強さが別次元すぎるだけである…。もしまおに他次元拒絶能力が無ければ…もし地組以外がこのフランチェスカと対峙していたら…。考えるまでもないだろう…

 

 

 

 

 

 

フラン「んーっ…!はぁーっ…。さて、終わったしどこにいこうかな…」

その後ろには…ズタズタにされた七つの大罪が横たわっていた…

フラン「覚えておいてあげるからさ、完全に復活したらまたおいでよ、その時は私も本気出してあげる。だからさ、邪魔しないでよ?じゃあね」

ぐぐぐっと腕を伸ばすルシファー。だがフランチェスカはふわっと背中に羽根を生やすとはるか空中に舞い上がり、城と七つの大罪を見下す

フラン「失敗作の掃除も兼ねるなんて一石二鳥だね、バイバイ。楽しめたからサービスとして…“私達が居た世界で最強“のこの力で終わらせてあげるよ「タイタニスオーダー」すべてのものよ、私の命に従え。実体無きものに潰されるがいい!フォトングラビティ!!」

どこからともなく輝く光が城の真上に集められると叩きつけるように城を包み込む!そしてその光が消え去った後には…何も残っていなかった…

フラン「ふーん…逃げれたんだ。まぁいいかな、今回はこれで見逃してあげよう」

そう言うと自らもまた黒い影の中へ消えていく…不気味にもフランチェスカは大きく笑いながら空を見上げて…消えていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MEXさん「ぅっ…ここは…?」

まお「気が付いたか」

MEXさん「まお…」

赤いゴシックソファから起き上がるとまおがワイングラスを差し出す。反射的にMEXさんが受け取るとまおは笑顔を見せた

まお「よもや今日を忘れたわけではあるまいな?」

MEXさん「まさか…」

お互いにワイングラスを重ねると注がれたワインを飲む。2人にとって毎年恒例の事であった

まお「MEXさんよ」

MEXさん「なんですか?まお」

まお「貴様が例えどんな存在であろうと、我は貴様を見捨てぬ。今でも我が死ぬまで死ぬことは許さぬ」

MEXさん「えぇ、冥府魔界、地獄の深淵までお付きあいいたします」

まおはその言葉を聞くと…少し歩んで顔が見えない位置でクスっと優しく笑った…

 

 

 

 

 

~episodeⅡ END~

 

 

次回 兎組編、episodeⅢ

 

 

あなたは…信じた仲間全員を疑えますか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ご苦労様です。どうでした?」

???「えぇ、回収できましたよ。データもあらかたとれましたし…」

???「そうですか、では…次はこちらに行ってもらいましょうか」

???「おや?それはあの人のお仕事では?」

???「クライアントが早くしろとの事です。いくらなんでも遅すぎると怒られたのであなた達に行ってもらいたいのです」

???「…わかりました。それでは行ってきます。ふふふ…」

 

 

 

 

 

 

 

 



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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅡ エピローグ

こんにちは、あえて分けました。だいたい一ヶ月に一つ。モチベーションが檄上がりしたら多分一ヶ月に何回でも書くと思います。応援よろしくお願いいたします。加えて私はうちのこ大好きです。ただシリアスや酷い目に合うのは物語だからです。落ち着いたら日常も書いてみたい


いっこんぞめ(表)「…再三確認するけど…本当にいいんだね?」

あやはる「はい…。このほうがきっと幸せだと思いますから…」

大雨が降る中。マリアナメトロポリスを一望できる高い丘の上で…あやはるの初めての友達…マリーの埋葬が静かに行われていた…。参加しているのもあやはるとシスターであるいっこんぞめの二人だけだ

あやはる「マリー…窮屈じゃない?頑張って探したんだ…マリーに合うサイズと…デザイン…私が初めて買ったもの…大切にしてね…?」

ボロボロと涙を流し…声が震える。そっとマリーの亡骸の入った棺を撫でるとあやはるはまた泣き出してしまう…

あやはる「ごめんね…!私が…もっと…そばにいてあげたら…力があれば…!マリーを…初めての友達である貴女を護れたかもしれないのに…!ごめんね…ごめんね…!」

いっこんぞめ(表)「神よ…どうかこの者に…永久の休息をお与えください…」

胸の前で十字をきるといっこんぞめは祈る。いつもの革ジャンではなくシスター服を着用したその姿はいつもの印象を大きく見違えらせる

あやはる「マリー…さようなら…次に命をもらえたら…もっと早く出会って…もっと早く友達になって…普通に暮らして…年を取って…そんな人生を歩みたいね…」

あやはるはそう言ってスコップを手にするとマリーの棺に土を掛けていく。ザクッ…ザクッ…と雨に濡れた重たい土をあやはるは汗だくになりながら無心で掛け続ける…だが…やはり感情を圧し殺せないのか泣いてしまう。友達を土にかける辛さが…自分自身のひ弱さが…後悔が…まだポケモンとしても人間としても未成熟な彼女の心身に襲い、重くのしかかる…

あやはる「ごめんなさい…ごめんなさい…!弱くてごめんなさい…!護れなくてごめんなさい…!」

いっこんぞめ(表)「…」

 

 

 

 

 

 

 

まお「…どうしたシスター殿。埋葬はまだ終えていないようだが」

いっこんぞめ(表)「終わってるさ、後はあやはるの問題だよ。あの子が今回の経験をどれだけ受けとめて成長するか。…それはあたしらが示す道じゃないし示した所でおせっかいって奴だよ。所で魔王様こそこんな小さなお葬式に何用だい?」

まお「…油断した我にも責任はあるのだ。それに言い過ぎたとも後悔している」

いっこんぞめ(表)「なるほどね、アフターケアは苦手なのに無理するじゃん」

まお「…自らの非を悔いているだけだ。それ以上でもそれ以下でもない」

いっこんぞめ(表)「まーたまた。素直じゃないねぇ」

まお「言っていろ、では我は下山させてもらう。あやはるが迷子にならぬようにしっかり一緒にいてやってくれ」

いっこんぞめ(表)「はいはい。それじゃあお気をつけて」

 

 

 

 

いっこんぞめ(表)「落ち着いたかい?」

あやはる「はい…ありがとうございます…」

いっこんぞめ(表)「よしよし。マリーも喜んでるよ」

真っ赤に泣き張らした目元にまだ涙が残る。いっこんぞめはあやはるに手を引きながら共に下山していく

いっこんぞめ(表)「(かわいそうに…まだ人間年齢13才の子供なのにね…)」

あやはる「…いっこんぞめさん…。私…強くなります…」

いっこんぞめ(表)「あやはる…」

あやはる「いままでずっと考えてたんです…地組に入隊して…私がやるべきことは…できることは何かって…。アシュリーとメアリーは私に力を貸してくれます…けれどそれに頼ってばかりじゃだめだって…。そう思えば思うほど私は心のどこかで焦ってて…。」

いっこんぞめ(表)「…」

あやはる「入った当初は自分が何をするべきなのかわかりませんでした…でも…今ならわかります。私は…私の大切な人を護りたい…!もう…大切な人を失う思いはしたくないから…!」

いっこんぞめ(表)「…あーあ、心配して損した」

あやはる「えっ…」

いっこんぞめ(表)「偉いよ、あんた。とても最近まで13才の人間だったとは思えないくらい立派さね。あたしらなんか生きることで精一杯だった…けどさ、あやはるみたいに誰かのためにって…そう思ってた頃にはシスターやってたし」

あやはる「いっこんぞめさん…」

いっこんぞめ(表)「あやはる。よく聞きな、まおもあんたに言ったようにあたしらには終始自分たちや他人の生と死が飛び交う。…正直な話…あたしはさ…あんたに地組…辞めてほしい。だって残酷すぎるでしょ…言うなれば裏世界に一人の少女を引きずり込む…そして戦いによって誰かが死んで…殺されて…。あんまりじゃないか…。あんたは!まだ未来への選択肢が有り余る年頃なんだよ!…時代に棄てられて生きる道を失ったあたしらじゃない…だからこそ…」

あやはる「…ありがとうございます。でも…私は辞めません。だって…大切な人はすぐそばにいますから。護りたいんです。次こそは…!」

いっこんぞめ(表)「…後悔はダメだよ…。あのルヴィロームが言ってた…」

 

 

ルヴィローム(銃を撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけなんて言葉があるらしいがそんなもんはただの綺麗事だぜ。銃を撃っていいのはもう一発撃つ覚悟のある奴だけだ。キッシシシ…)

 

いっこんぞめ(表)「あんたが大切な人を護りたいなら護り通しなさい。何があってもね」

あやはる「はい…!」

 

 

 

 

いっこんぞめ(表)「さて、帰ってきた早々悪いけどさ、しばらく私。留守にするから」

あやはる「先日言ってらした教会のお手伝いですよね?」

いっこんぞめ(表)「やっぱり恩はあるからさ。私も一生を神に捧げてるんだよ。そう決めたからには付き合っていかないとね。あやはる、自分で決めた人生に嘘をついたらそこでおしまいだよ」

あやはる「はいっ…!」

背中をぽんと叩いていっこんぞめが先に歩きだし、それに続こうとするあやはるは振り返る。親友…マリーの眠る丘を見つめて…

 

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 

オマケコーナー。episode Ⅱでのラスボス。フランチェスカの能力について

 

 

 

フラン「はい!皆さんお久しぶりでーす!このMULTIPLE AIGISのキャラの強さランク殿堂入りした冥王フランチェスカだよ。今回は私が使った能力についての説明だよ。劇中でも言ったけどこれはこの物語のキャラたちがお話にならないくらい強い力…実を言うとPrimal Apocalypse側の力なんだ。そしてこれは機密情報だから深くは言えないし今回はこれを書いてる人に"特別に劇中使った奴ならいいよ。それ以外は死線と死線をシャトルランしても教えられない"とのお墨付き!お願い(フォトングラビティ)したら素直に承諾してくれたよ。それじゃあ順番にね」

 

 

 

タブーミリッター

フラン「この能力は私が元居た世界で四番目に強い能力かな。この能力の特徴は"禁術によるデメリットが全て無くなる"というものだよ。もちろん魔力も無くならない。最強クラスの能力さ、ドラ○エのマダ○テだってデメリット無しだよ。さて次は」

 

 

ハートビート

フラン「この能力は使い手さえよければかなり強かった能力だよ。この能力は"相手の鼓動からその先の行動が予知できる"というもので、この能力使用時のフェイバリットがハーツネオスト。一瞬で対象の体力や身体を正常にする最強治療魔法。死んでさえなければどんな状態でも瞬く間に完全復活するよ」

 

 

シャドウディメンション

フラン「最高の使い勝手。これもハートビートと同じように使い手に恵まれなかった強い能力だよ。影さえあればそれを武器にもできるし姿も消せる。一瞬で影から影へ移動もできる。分身もできる。まさに攻守優れた万能能力…のくせ…姉妹揃って能力生かしきれないグズ共が…。え?あぁ、こっちの話。気にしないで」

 

 

 

インパクトバースト

フラン「爆発無効。炎無効。核さえ無効。熱に関するダメージは全てシャットアウトする恐ろしい能力だよ。さらにこの能力使用時のフェイバリットが原初の爆発魔法。グランビッグバン、魔法による結界さえ消し飛ばせる破壊力。直撃させれば大都市でさえ廃墟にできるよ。しかもインパクトバーストと相性抜群。わざと自分の体の周りを爆発させるだけで防御にも使えるよ」

 

 

オメガマジェスティ

フラン「相手に自分の事を畏怖させ、とてつもない威圧感で心を押し潰す。とある理由でこの能力も最強候補だよ。フェイバリットはサンダープリズム、虹色の雷を屈折させて四方八方から相手を浄化する技だね。これがまた厄介でね、威圧感で動けない所にこのサンダープリズムで逃げ場を奪う。恐ろしいよ」

 

 

ウェイドウォーク

フラン「どこにでも脚をつけて立つことができる。この能力もすごく強いよ、なんせ空中走れるし壁や天井にも立てる。決して戦闘向きではないにしてもかなり強い能力だよ。要は使用者がすごく強かったってこと…。フェイバリットはブラッディホール、赤い激流が渦を巻いて相手を切り刻む技で簡単に言えばシュレッダーにかけちゃうものだよ」

 

 

ビーストソウル

フラン「身体能力超強化。視力、聴力、嗅覚等の五感も強化されるよ。ちょっと細かいけれど体の頑丈さもあがって5tトラック程度に衝突してもかすり傷一つ付かなくなる。それと爪も頑丈になるよ。フェイバリットはブランティストエターナル。魔力で呼び出した世界樹の蔦や根っこが相手を絞殺する技だよ。」

 

 

チェイスターゲット

フラン「周囲のものの位置が正確にわかるようになる能力。奇襲や警戒には持ってこいの能力でこれも使用者に恵まれて強かったよ。フェイバリットはデスストレート。光の矢で相手を貫く。この時に光の矢は亜光速でぶれずに一直線に相手を貫くから避けられないね。私も実は食らったことあるんだけど避けられなかったしね」

 

 

フリーダムイズマイン

フラン「ぶっ壊れ能力。拘束無効。ただそれだけ、ただそれだけがめちゃくちゃ強い。例えば武器が刺さった瞬間に傷が塞がって相手を吹き飛ばすよ。オメガマジェスティとかチェイスターゲットの効果で指定したり範囲に入れても拘束と見なされて効かなくなる。後で紹介するフォトングラビティも無効にされる。本当になんなのこのぶっ壊れ能力。フェイバリットはアナザーコネクト。複数の光の帯が相手を追尾、一つでもかすった瞬間に残りの帯全部が直撃する命中率100%の技だよ」

 

 

ヴァルキューレフラッシャ

フラン「光を発生させる。それだけかと思うけどいきなり目潰しされたり体がやけつくほどの光を発生させられたり使い勝手はともかく使い方次第で強いね。フェイバリットはセイクリッドキャリバー、光の剣で相手を切り裂き、そこを中心に発生させた光の剣で相手をなんども切りつけるよ」

 

 

ユーガコントロール

フラン「相手を強制的に従わせる能力だよ。操れるものはなんでも操れる。私が劇中でも重力操ってあの悪魔共をはたき落としてたよね」

 

 

マジックマスター

フラン「すべての魔法が扱える能力だよ、魔法にはそれぞれ生まれついて定められたものしか本来は扱えない。でもこの能力があれば自分が使用できない魔法を難なく使えるというものだよ、フェイバリットはボルカニックエンド、私が居た世界で最強の炎属性魔法だよ。その熱で当たってなくても周辺が熔けるくらい熱い。オリジナルは発射したらそのままだけど私はコントロールできる。どーだい(どや顔)」

 

 

タイタニスオーダー

フラン「私が元いた世界で一番強い能力だよ。全てを自在に支配し、操り、従えることのできる最強の能力。全てってのは生物だけじゃないよ、無機物も原子の一つまでも従える。相手の結界を操って自分が使えたりもできる。上記のフェイバリットも操れるからまさに最強だね。私も真っ先にこの能力警戒して対策立ててから行動したもの。まったくインチキはダメだよね。フェイバリットはフォトングラビティ。光と重力を混ぜ合わせて相手に真上から叩きつけて消滅させるなんていう恐ろしいものだよ。」

 

 

フラン「お疲れ様、以上が私の使った能力だよ。え?これで全部だと思ってるの?私が劇中使った能力なんて1%未満の数なんだけど。あぁそれとさ、これだけは確定してるから書いてる人に無許可で言うんだけど私、冥王フランチェスカはMULTIPLE AIGISの真の最終章まで出番が決まってるよ。さて…後何回対立するかなー…?」

 

 

 

 

 




お疲れ様です。フランチェスカの奴が余計な事を言ったようですが事実その通りだと言っておきます。ただ戦闘能力がインフレ限界突破してるのでぶつける相手もそれ相応のものです。仮面ライダー龍騎で言う王蛇ポジションだと思って貰えたら分かりやすい位置のキャラだと思います。それでは


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第一章

こんにちは、今回からはとりあえず書いて投稿するを目標にしていきます。短いですが良い新鮮なネタを提供していきたいと思います


 

 

カチャ…カチャ…

 

 

 

 

シャッー…シャッー…

 

 

???「…」

暗闇の部屋の中、冷たい金属が擦りあう音が静かに響く。月の光がカーテンの間から射し込み磨き終わった鋭いアーミーナイフを輝かせる

???「…。切れ味は落ちていない…。次は…」

机にある何かを触ろうとした瞬間。その隣にあった電話がバイブレーションとともに着信を知らせる。ビクッと手が反射的に震えたがすぐに冷静に電話に応答する

完殺「…。もしもし」

紅袖「はぁい。完殺さぁん?紅袖さんですよ~★」

完殺「お疲れ様です…」

内心。心臓が体から飛び出そうだ。私はそれほどまでにこの「紅袖」を恐れている。このひょうきんな言葉遣いとは裏腹にこの人は残虐無比。誰も逆らえない。誰も勝てない。目の前で何人もの同業者を見せしめと称して遊び半分、冗談四割で殺害している。そして…彼女からは「基本的に電話など掛かってこないのが当たり前」だということがもっとも今の私を恐れさせる…

紅袖「ねぇ完殺さん?あなたの同僚の名前…全部覚えて言えますか?」

完殺「…。青刀(せいとう)。闇曇(やみくもり)。爆彩(ばくさい)。幻自(げんじ)。魔空海(まくうみ)。天白呪(あましらず)。鬼灯(ほおづき)。黒林檎(くろりんご)。翠桜華(すいおうか)…」

紅袖「そこまででいいです。やはりあなたはできる子ですね。紅袖さんは嬉しいです」

完殺「ありがとうございま「ですが」」

不意に言葉を重ねられる。それにまた驚いて今度は全身がビクッとなり、悪寒が走る…

紅袖「完殺さん。今お名前を言ってくれた方々はみんな死にましたよ」

完殺「…そうですか…」

紅袖「おやおやおやおや、淡白ですねぇー。明日は我が身ですよ?」

完殺「っ…!?」

紅袖「まぁ先程のお名前を言ってくれた方。闇曇さんと爆彩さんは名誉の戦死です。お仕事先で亡くなりました、ですが…それ以外の方は使えなかったので私が直々に処分しました。そして次はあなたが失敗。もしくはこれ以上時間がかかるのなら処分せよと「あの人」からの後伝達です。そもそもターゲットの誕生日っていつか覚えてますぅ?」

完殺「…わかりました。3日以内にはケリをつけます」

紅袖「では今一度、あなたの使命を復唱していただけますか?」

完殺「コードネーム完殺。我が使命は…ハルサキ・ゆきの・テレジアの暗殺です」

紅袖「はい。よく言えました。それでは頑張ってくださいね。期待していますよ」

ブツッ…ツー…ツー…

 

 

 

 

 

 

紅袖「くっふふふっ…あはは…!アーッハッハッハッハ!!」

ビルの屋上で紅袖は笑う。ネオン煌めく街…シンオウ地方、マリーズシティを見下ろして…

紅袖「さぁて…。精々足掻いてもらいましょう。期待はずれではないことだけを祈ってますよ…くっふふふっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完殺「…。もう逃げられない…か…。死神が来る前に終わらせていれば…」

後悔の念が強く私を苛む。…私はてゐ国歌劇団。兎組に潜入し、ハルサキ・ゆきの・テレジアを暗殺するために虎視眈々と彼女を狙っていた。だが…いつしか「仲間」という感情が障壁となって本来の使命を阻んでいたのだ…

完殺「おかしな話だ…いつでもできた…いつだって殺せたのに…。私は…、アサシン失格だ…」

薄暗い部屋の中。私は兎組の集合写真を手に取る。そして思い出してしまう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アデア「んっ…。緊張する…」

リスティス「肩の力抜きなよ、アタシと違って集合写真撮るのは初めてじゃないんだろ?」

アデア「そうだけど…。なんだか慣れなくて…」

ゆきの「もう!何回そんなへたれたこと言えば気が済むの?」

このか「まぁまぁ、ゆきのかてこまい時は写真とか慣れへんかったやろ?」

ゆきの「いっ…!昔の事はいいの!今よ、今!」

アンペルト「おう、ライラ。またふざけおったら許さんけんの、しゃっとせぇよ」

ライラ「わーってるって!だから髪をわしわしすんなよ、親父!」

ライフ「こういう時に分離みたいなのできたらいいんだけど…」

エフィル(私のことは気にするな。ちゃんと考えがあるんだぞ!ふふーん(どや顔))

あるま「さっさと済ませるとしよう。参考書を読みかけてる。時間の無駄はしたくない」

わかな「同感です。いくら必須行事といえど個人の時間も尊重してもらえると助かります」

ラピス「…私はアデアと同じ空気を吸えるなら永遠にこのままでもいい…」

デビローズ「ただいなさん、顔が怖いですよ。深呼吸して笑顔をつくってみてください」

ただいな「すうぅっー…はぁぁあーっ…。こうですか…?」

リスティス「まったく…イマイチ纏まりに欠けるねぇ…こんなんでもいいのかい…?」

アデア「これでも昔に比べるとマシだよ…」

ベノ「おいこらー、撮るぞ、こっち見て黙れ」

カメラマン担当のベノが合図を送ると全員がカメラの方へ見向く。統率が取れたその姿にアデアは可愛らしい笑顔で思わずニッコリ…

ベノ「いくぞ、さーん、にー…」

エフィル(ふんっ!)

ライフ「えっ!?エフィル!?何してるの!?」

突然輝くライフ。それに驚き全員がライフを見た瞬間!ライラの長いポニーテールがアンペルトの顔面に直撃!

アンペルト「ふぼぁっ!?」

ライラ「あ゛っ(‘д‘ )」

アンペルト「ライラーっ!!」

頭に怒りマークを現しながらアンペルトは電気を纏う!他のメンバーはそれをみてすぐさまカメラ側へ逃げ出した!

パシャっ!

ベノ「…。帰るか…」

写真を撮った瞬間。ベノはアルタイルで時間を止めてその場を立ち去る。これは確実に巻き添えを食らう、それだけはめんどくさかったというのが理由だ

ベノ「…まぁ、昔の質素で重苦しい写真に比べりゃ…楽しくみえるな」

止まったその場を振り向き見て口元を笑わせる。ベノにとってもこの兎組という存在は大きく。また手に余るものでもあった。早い話が「異常戦力の溜まり場のようなところ」だったのだ。性格に難あり、制御不能な戦闘能力。縄張り意識や自己防衛本能の高さから一般的な留置所がかわいく見えるほどギスギスしていたのがこの兎組だ、止めようとした戦力もことごとく返り討ち。だが…様々なメンバーの入隊や出来事が彼らを変えた。そしてその団結を確固たるものにしてきた…

ベノ「あばよっと」

再び時は動きだし、コミカルな大惨事をカメラは抑えた。それが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完殺「…」

この写真だ。この雰囲気や空気を偽装のためとはいえ一緒につくっていったのも事実。楽しかった、嬉しかった、悲しかった、悔しかった。色んな感情が走馬灯のように記憶とともに通り抜ける。だが…

完殺「さよなら…」

その写真をパタンと伏せると…。月の光がその顔を照らす。涙はない。だけれど使命が口惜しい…。ならば離反するか?いいや…。紅袖がそれを許すはずもないだろう。下手をしなくても皆殺しにされる

完殺「…。どのみち、私は死ぬかもしれないから…」

まだ仲間と言えるのか、それとも…。…居場所なんて最初からどこにも無かったのかもしれない。心が揺れ動く。どちらに転ぼうと私は裏切り者だ

完殺「…ゆきのを殺す…!何があっても…!」

???「そうかい。それがあんたの選んだ道かい」

完殺「っ!…死神っ…!!」

リスティス「よぉ」

ギラリと大鎌を杖代わりにして部屋の入り口に陣取るリスティス。目付きは鋭く、声色はドスが効いていて完全に本職である殺し屋のものになっていた。

リスティス「前に言ったよなぁ?成功させたら殺すってよ。本当にいいのかい?」

完殺「…、ゆきのの次は…お前を殺す…!」

リスティス「上等。手ぇ出さずに見ておいてやるよ…!」

マスクの中で口元を笑わせて部屋を去ろうとするリスティス。…殺るか?今なら…殺せるっ…!

リスティス「おっと、変な気は起こさない方が良いよ、忘れてるだろうけど私にはナイフも鉛弾も通用しない。傷を付けられる前にそっちが先に溶けるからね。別にあんたさえ良いってならこの場でベッドインするかい?とろけさせてあげるよ」

腰に着けたランタンに炎を灯して警告する。リスティスにはあらゆる物を溶解させる劇毒、ベネトレイカースドという「特異体質」を持っている。そのため彼女を殺す手段は物理的にはほぼ不可能で彼女自身も周囲を迂闊に巻き込まないために特殊なライダースーツやストール、口元を隠すマスクで極力素肌を隠しているのだ

完殺「…」

リスティス「じゃあ"またね"同じ兎組だもんねぇ…?」

バタンッ!!

静かに閉められたはずの扉は…まるで二度と開かない錆び付いた扉を閉められたように重い音を立てて閉められた…

完殺「…完全決別…か…」

振り向いて机の上にある金属に触れる。それは…

完殺「必ず…果たしてみせる…!」

ガチャッ!

ベレッタ Vertecカスタム。それをコッキングさせて初弾を装填させる。それが覚悟の表れであることは言うまでもない…

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ  第二章

 

 

 

 




お疲れ様でした。この完殺というキャラは「兎組に所属しています」。早い話、リスティスとゆきの以外の全員が容疑者、メンバーの誰かが裏切り、ゆきのを殺そうとしています。「これはそのキャラが入隊した時点から存在している初期設定です」
お楽しみに


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第二章

こんにちは、モチベーションが戻ってきました


 

 

 

 

 

 

 

完殺「…。これでいい。ここまで来たんだ。何を躊躇することがある…」

そう。準備は終わった。もうふりかえることも後戻りすることも必要ない。これで…

完殺「これでいいんだ…」

何度も何度も自らに言い聞かせている。なのに…なぜだ?この胸の苦しみは…。今頃罪悪感でも抱いているとでもいうのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このか(ユキメノコ:♀)「それじゃあいくえー!」

ゆきの(ミロカロス:♀☆)「いつでも良いわよ!手加減はしないでよ?」

このか「そんなん出来んって~(笑)ほな…。てゐ国歌劇団兎組、吹雪殺娘(ふゆきのあやめ)。ユキカゼ このか」

 

 

ゆきの「てゐ国歌劇団兎組、不屈彩雲(ふくつのさいうん)。ハルサキ・ゆきの・テレジア」

 

 

アベリア(ビークイン:♀)「二人とも準備はいいわね?それでは両者…。模擬戦開始!」

 

 

このか「久しぶりやなぁ…。ゆきのと戦うん…」

 

今、このかとゆきのの二人は模擬戦を開始した。てゐ国歌劇団のメンバーの多くは好戦的な者が多い。だが兎組はかなりの穏健派で、滅多に模擬戦をすることがない。…というよりベノやアデアからは基本的に「模擬戦禁止」と釘を刺されている

 

 

ゆきの「いくわよ?避けないと病院送りなんだから!"アクアブラスト"!!」

 

このか「直情やなぁ…?」

 

 

自身の周囲に氷柱を展開して攻撃をやり過ごそうするこのか。だが気が変わったのかすぐに素早い動きでその場から移動。ゆきのの両サイドからも氷柱を出現させて自身の居場所を悟らせなくさせる!

 

このか「とりあえずあれには当たったらあかんな…!」

 

 

ふと先ほど自分のいた場所に目を向ける。するとちょうどアクアブラストがいくつもの氷柱を破壊した。…その壊された氷柱の大きさは軽く大人が一人か二人は入るほどの大きさ。透明感はわざと無くしているが間違いなく透明にしていたなら直撃するまで追いかけられただろう。

 

このか「いくで…うちの本気!」

 

再び素早い動きでゆきのを中心に四方八方から氷柱を連なるように展開!その後ろを滑って足音も無くゆきのに近づく!

 

ゆきの「…。賢いわね。だけど!」

両手を合わせ、その間に丸いエネルギーを凝縮。それを片手で握り潰すと大爆発!ゆきのの周りに白い水蒸気が発生してこのかの視界を潰す

このか「"吹雪"!」

 

 

だがそれを吹雪で吹き飛ばすとゆきのより早く反応して針手裏剣の先端を凍らせて投げつける!

ゆきの「小賢しい!」

それを水のマントで払いのけるゆきの。このかは余裕な表情をしつつ冷静にゆきのの動きを読む

 

このか「ここや!」

 

蛇行な動きで地面滑って一度ゆきのの死角に入ると両袖の中からカギ爪を両手に装着。爪を凍らせて氷の爪に変える

 

ゆきの「来るっ…!」

身構えるゆきの。それに対してこのかは袖から先に小さな鉄球のついた鎖を出してゆきのの腕を捕まえた!

このか「取った!」

ゆきの「しまっ…!」

してやったりという顔で一気に鎖を凍らせるこのか。それに伴ってゆきのの腕も凍り始める

このか「もろたで!ゆきの!」

 

 

ゆきの「こんなものっ…!」

肘近くまで侵食する凍りに負けること無くゆきのは鎖で繋がっているこのかを片腕の力だけで一本背負いのように投げ飛ばす!これにはこのかもたまらず手を離してしまった!

 

 

このか「それならっ!」

またも素早く両袖に手を入れてゆきのになにかを投げつける!

 

 

ゆきの「ちょっ!危ないじゃない!」

このか「おまけっ!」

手に電気を纏わせるこのか、ゆきのは必死に身構える!

このか「拡散雷(かくさんらい)!!」

バリバリと喧しい音をたてて地面に電気を拡散!その爆発にゆきのが巻き込まれる

 

 

 

このか「…簡単には倒させてくれへんねんなぁ…」

ゆきの「当然でしょ?まきびしなんて投げられたらこんな濡れてる場所で何をしてくるかなんて容易に想像がつくわ」

爆煙の中のゆきのはマジックコートをアレンジした半透明なクリスタルの中にいた。そしてそれを弾き飛ばすとバサッと水のマントをはらって腕の氷と足元のまきびしも払いのける

 

 

このか「…。相変わらずデタラメな強さしてるなぁ…。さすがてゐ劇最強やね」

ゆきの「最強はしゅヴぁるの称号でしょ?私のはまたベクトルが違うわよ」

ハッと短いため息をしてゆきのは両手を光らせる

このか「またアベリアの真似事やろ?わかっとるよ」

ゆきの「真似事?違うわね。派生よ」

 

またしてもそれを両手の間で輝かせて光を拡散!レーザーのように周囲を光線の雨あられが襲う!

 

このか「っ!負けたなぁ…。やられたわ…」

ゆきの「"プリズムブラスター"!!」

その光を掲げると周囲の氷柱に光線が当たって反射!それが様々な角度からこのかを襲う!

 

このか「やけれど…これはゆきのにとって自滅行為やよ!」

だがそれを隙と見て自身を凍らせながらこのかはゆきのへと滑り迫る!

 

 

ゆきの「っ!」

このか「命取りやよ!ゆきの!」

氷の爪を突き立ててこのかはゆきのに襲いかかる!これが決着となるだろう。

 

ゆきの「来るなら来な…きゃっ!?」

このかを迎撃しようと構えようとしたゆきのは足を滑らせてそこにこのかもこれは想定外と急ブレーキをかけて体制を崩した!

このか「ごめーん!」

 

 

ドーン!!と痛そうな音をたてて二人は一緒にゴロゴロと転がっていった。さすがに完全観戦を決め込もうとしていたアベリアも心配になって二人に駆け寄る

アベリア「二人とも、大丈夫ー?」

 

 

ゆきの「ん…んむっ?」

このか「んっ…いたた…。ゆきのの唇柔らかいんやなぁ」

ゆきの「ちょっ!ど、どいてよ!このか!アベリアが見てるし恥ずかしいじゃない!」

このか「え?アベリアが見てへんかったらええの~?」

ゆきの「そういうことじゃなーい!いいからどいて!」

このか「やーん!かわええわぁ~♥️見てぇなアベリア~♥️こんなかわええゆきの久しぶりやろ?」

アベリア「そうねぇ…。ところでこのかの勝ちでいいのかしら?」

ゆきの「えっ…」

 

それを言われて自分の胸元に顔を向けるとこのかが然り気無く氷の爪を突き立てていた…

このか「今回は、ウチの勝ちやよ」

ゆきの「…。…負けたわ。足掻かない」

若干ふて腐れたような言い方をしながら負けを認めるゆきの。彼女はかなりの負けず嫌いで自分の強さに自信があってプライドも高いため、負けると決まって不機嫌になることが多い。

 

 

 

このか「んっー~。疲れたなぁ。なんか作るわ、リクエストあるー?」

ゆきの「…はちみつマシュマロ…」

アベリア「賄賂と受け取ってあげるわ」

ゆきの「別に…。好きに喋ればいいじゃない…」

アベリア「喋らないわよ。友達でしょ?」

ゆきの「…ありがと…。疲れちゃった、部屋で休んでから行くわ」

このか「ほな待っとるさかい、いつでもおいでや」

アベリア「それじゃあ私はとっておきのはちみつ取ってくるわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

アデア(ニドキング:♂)「それでね、ここをこうすると…」

ラピス(ドラピオン:♀)「うん…」

アデア「そうそう。これがコツなんだ」

ラピス「メモメモ…」

 

このか「ちょっとごめんなぁ、物取るえ」

アデア「あ、このか。なにか作るの?」

このか「マシュマロ作るんよ、そっちは…カレー作っとるん?」

アデア「うん。ラピスが教えてほしいって」

ラピス「…唯一再現できない…。アデアの味…」

このか「確かにアデアのカレーって味付けとか独特で真似するん難しいしなぁ…。どうやったらあんな美味しゅうできるんか後でウチにも教えてぇな」

アデア「もちろん良いよ。さて、ここでニンジンに甘味を出すために火で煮るんだ」

アデアがコンロのスイッチを入れたのと同時に爆発音と共に部屋が揺れる。それと同時にゆきのの悲鳴が聞こえ、アデアたち三人は火を消して急いで飛び出した!

 

 

 

 

 

アデア「ゆきのっ!」

このか「ぇっ……」

いち早く着いた三人はその光景に絶句した…

ゆきの「…」

 

そこでは床にぺたんとへたり座る顔面蒼白のゆきの。その視線の先には…ゆきのの部屋…。だが黒煙を吹き出して部屋の中はもはや何が家具だったのかがわからないくらい原形をとどめていなかった…

 

ラピス「…ひどい…」

アデア「誰が…こんなこと…」

このか「ゆきの!しっかり!気ぃちゃんと持ちぃよ!」

 

 

 

この時

 

 

ゆきの「っー…」

 

 

彼女は知らなかった

 

 

ゆきの「どうして…」

 

 

いや、知っていた真実を否定したかったのかもしれない

 

 

ゆきの「…」

 

 

誰だってそうだろう。気が動転したからと思うだろう。

 

 

このか「ゆきの!しっかりしぃ!」

ゆきの「誰か…」

このか「ゆきの…?」

 

 

だけども思い出される。

 

 

ゆきの「いた…」

アデア「…いたって…何が?」

ゆきの「誰かが…この部屋の中にいたの…見えた…」

ラピス「…血の臭いは無いね…」

 

アンペルト(ライボルト:♂)「なんじゃ!?なにがあった!?」

ライラ(ゾロアーク:♂)「暴発ってわけじゃねぇよな…?」

わかな(ジャローダ:♀)「どうしました?」

アベリア「…酷い…」

 

 

次々と兎組のメンバーが集まる。そして全員が集まると同時にアデアの携帯が鳴った

アデア「ごめん。誰だろう…、えっ…」

そこには番号無し。流石に状況が状況なだけに身構えて電話に出る

アデア「…もしもし」

???「てゐ国歌劇団兎組の全員に告ぐ。これから三日以内にゆきのを殺す」

アデア「っ!?誰だ!!」

???「なお、この音声は録音されたものだ、返答はできない」

 

アデアの対応がいつもと全く違うことからメンバーも驚きを隠せない。いつものアデアは声をいきなりあらげたり舌打ちなんか絶対にしない

???「私はゆきのを殺すために雇われた存在。そのためだけに兎組へと入隊を偽装した」

アデア「…な…」

完殺「我が名は完殺。これよりゆきのを殺すために動く。止めたくば止めるがいい。もっとも…誰が私が誰かわかればの話だがな」

ブツッ!と強引に音声が切れる。そしてアデアは振り返る…。

 

 

このか「アデア…どないしたん…?」

アデア「…このか、ゆきのから離れて。皆もそこから動かないで!」

デビローズ(ハピナス:♀)「どうしたのですか?」

アデア「動かないで!!もし勝手に動くなら…」

 

全員を苦虫を噛み潰したような目で睨み、鏡月(きょうげつ)を出すアデア。それに対して何人かが身構える

 

アンペルト「落ち着かんか!それを使ったらどうなるか、いっちゃん知っとるんはおどれじゃろ!子供のオモチャ感覚で振るってええもん違うじゃろ!」

アデア「わかってるよ!でも…!」

 

このか「…。ゆきの、たてるやんな?」

無理矢理ゆきのを立ち上がらせるとこのかはアデアに向かってゆきのを突き飛ばす

ゆきの「いつっ…。なにするの!このか!」

このか「みんな、アデアの言う通りにするで。次は?なにしたらええ?」

 

アデア「…。ごめん。全員、自室で待機。一歩たりとも部屋からでないこと。もし破るなら…」

あるま(アーマルド:♂)「わかっている。小生らにアデアの意思は完全には読めない。だが…今は信じて従う」

アデア「ごめん…なさい…!」

 

ゆきのを護るように前に出るアデアは鞘に納めた鏡月の抜刀準備をして仲間であるはずのメンバー達を威嚇する。

 

 

…ここでアデアが威嚇するために出している刀。鏡月について改めて説明しよう。「物干し竿 鏡月」。

 

 

その長さは軽く3尺余り(1mくらい)の逆刃刀で、最大の特徴は「刃で切られたすべての物が修復されない」という穏健で争いが嫌いな彼とは正反対の凶悪な性質を持っている。例えば普通に傷をつけられれば一生傷になるし出血も止まらない。紙や鉄などが切られればいかなる手段を用いても修復されない。

 

 

 

すべての斬撃が致命傷と化す。それが鏡月なのだ

 

 

アデア「僕だって…信じたくないから…。今は…お願い…」

 

その震える声を聞いてメンバーが背を向けてそれぞれ自室に戻っていく。アデアは全員が視界からいなくなると握っていた鏡月を思いっきり地面に叩き捨て、その場に泣き崩れる

アデア「うっ…ああぁ…!」

ゆきの「アデア…」

アデア「…信じれないよ…、そんなこと…。嘘だ…嘘だぁぁぁっ!!」

 

???「だーから覚悟しとけって忠告したろ?死神の忠告はちゃんと聞くものだよ」

すぅっと幽霊のように後ろから歩いてきたのは…リスティスだった

ゆきの「リスティス…。どういうこと…?なにがどうなってるの…?」

リスティス(エンニュート:♀)「単刀直入にそのままだよ。ゆきの。あんたさ、殺し屋を一回返り討ちにしたことあったらしいね?」

ゆきの「えぇ…。とは言っても兎組に入って間もなくだったしそれから一回も来てないけど…」

リスティス「じゃあさ、なんでそれを皮切りに殺し屋が来なくなったと思う?」

ゆきの「…え?そ、それは…」

リスティス「次の殺し屋はその時点であんたに狙いを定めて、兎組に溶け込んだからさ」

 

ゆきの「なっ…なにを言ってるの…!?どういうことよ…」

リスティス「信じたくないだろうけど…。いるんだよ。裏切りものが一人、あんたを殺すためだけに兎組に入った奴が」

 

その瞬間。ゆきのの瞳から凛々しさは消え、恐怖とも怯えとも違う感情が体を支配する。そうだ、これは夢だ、悪夢だ、そんな風に自分に言い聞かせるが…。混乱している自分の頭では到底理解が追い付かなかった…

 

ゆきの「え…。リスティス…何言ってるの…?私たち…仲間でしょ…?これまでだって…私たちは力を合わせて…」

リスティス「色んな危機を乗り越えてきたってぇ?それも演技だったのさ。それじゃあ現実が飲み込めないゆきのちゃんよ、あんたが殺される理由を教えようか?なんでアデアがなんの脈絡もない電話ひとつでこんなに取り乱しているのか。ゆきの、あんたもうすぐ誕生日だろ?」

 

ゆきの「えぇ…、そうだけど…」

リスティス「そしてその日はあんたがハルサキ家の財産を担い、親の志を受け継ぐ日…。違うかい?」

ゆきの「…どうしてそれを…」

リスティス「ま、あんたが死ねば、その財産はどこへ行くでしょう?って話。わかるかい?」

 

ゆきの「…そう。まぁ…元から親族からは良い目で見られてなかったから納得したわ…」

リスティス「そして相手はこのギリギリに賭けてきた。ってわけだよ、納得できてよかったよかった」

ゆきの「…リスティス。どうして私の遺産相続まで知ってるの…?あなたは何者なの…?」

リスティス「死神だよ。安心しな、もしあんたが死んだら、殺した奴もすぐそっちに送ってやるからよ。あの世で答え合わせしな」

ゆきの「っ…!冗談じゃないわ!私は…!」

 

リスティス「強いから負けない。だろ?そんなもんわかりきってるよ。だから相手は信頼感とか脅迫とか精神的な攻撃をしなきゃあんたを殺せないってわかったから、こんな回りくどい方法使ってんだろ?」

ゆきの「あ…相手が誰だろうと…私は…」

リスティス「よく言うよ、事故でチューして動揺して負けたくせに」

ゆきの「ちょっ…どこで…」

リスティス「ちょっと見させてもらってた。あぁ見学料が必要だったかい?悪いね。今持ち合わせなくてねぇ」

 

ゆきの「……」

完全に言葉を失ったゆきの。リスティスは溜め息をついて語り始める

リスティス「ちょっと前、アデアにも伝えたんだよ。ゆきのを殺そうとしてる裏切りものがいるってね。その時はアデアも信じちゃいなかったよ。だけど…。さっきの電話でたぶん、あたしが言った情報と一致したところがあったんだろうねそうだろ?」

アデア「…」

 

無言で頷くアデア。その感情は複雑では言い表せないほどに混沌としていた

リスティス「実はさ、あたし。あんたを殺そうとしてるのが誰か知ってるんだ」

ゆきの「ちょっ…。それは!?誰なの?!なんでそんな大事なこと…」

リスティス「アデアにも言ったけど教えなーい。自分で探してくださーい。まぁ一つ言えるならさ、ゆきのちゃんよ、アデアと私はあんたを殺さない。味方だってことだけ信じててよ」

ゆきの「本当…なのよね…?」

リスティス「もちろん。死神は嘘付かないし、そもそもあんたの暗殺依頼とか来たことないし。見たこともない。さーて…いったい誰が犯人かな…?面白くなってきた」

 

ゆきの「リスティス…!これは遊びじゃないのよ!?答えて!誰が裏切りものなの!?」

リスティス「それさ、言ったらどうなると思う?」

ゆきの「私が倒す!それで終わらせる!暗殺とか遺産相続!仲間や信頼に被害が及ぶ前に…」

 

リスティス「ばーか、暗殺者ってのは身元が割れたら見境無くなるんだよ、自分がいた痕跡も消す。あたしだって暗殺失敗したら皆殺しにする。わかるかい?この場所もろとも消し炭になるっつってんだ。あんたがそいつの顔面に一発入れるより爆破スイッチ起動させるほうがはえーんだよ。自分が強くて他人を守れるとか簡単にほざくな」

ゆきの「なんですって!?」

リスティス「冷静になれよ、大丈夫だって。敵は甘すぎからさ。なぁ?アデア」

 

アデア「…3日くれたよ。3日あれば…いや、1日あれば…充分…」

ゆきの「アデア…?」

アデア「大丈夫…ゆきのの事は…僕が護るから」

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ  第三章

 

 

 

 




お疲れ様でした、ご感想ブクマ、お待ちしてまーす


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ  第三章

モチベーション死んでます


ゆきの暗殺まで、後…3日…

 

 

 

 

 

アデア「…。頃合いだね」

ゆきの「えっ…」

アデアの自室でゆきのは落ち着きを取り戻しかけていた。もっとも根本的にはまだ辛さがあるものの受け入れないかとで、否定することで、あふれでる不安を拭っていた

 

 

 

アデア「一人だけ、絶対にゆきのを狙う暗殺者じゃない、そう確信してるメンバーが一人いるんだ」

ゆきの「ほんとなの…?」

アデア「うん。連れてくるから待っててね」

 

ガチャリとドアが閉まる。普通のドアのように見えるそのドアは戦車による砲撃でも破壊できない。

 

隊長室の壁や窓はとてつもなく頑強で、いざというときのシェルターにもなる。さらに外からは生体認証によるロックまでかかっており、まずハッキングは不可能だ。物理的にも壊せる手段は限られている。例えば…

 

 

ゆきの「鏡月…」

 

 

そう。てゐ劇トップの隊長四人。ベノホーンの破滅の十字架。まおうKのサタナーズレグラによる打撃や魔蒼炎(まそうえん)。シャーヴァルの怪獣形態。もしくは無幻 影角による攻撃。そして…。アデアットの鏡月による斬撃だ。

 

 

以前説明したように鏡月は傷つけたものを修復できなくなる禁忌の刀。凶悪性ならば他のメンバーや武器など比較にならないだろう。それを仲間に向けたアデアをゆきのは…信じられないという気持ちでいっぱいだった。普段のアデアならあんなことしない…。考えれば考えるほど辛さが心にささる。

 

 

 

ゆきの「…」

 

 

覚悟してなかったと言えば嘘になる。最初から殺される覚悟はしていた。だが…一度の襲撃の後に音沙汰がなかったことや仲間との日々が知らない間に慢心を生み出していた。もう来るはず無い。終わったんだと勝手に思い込んでいた油断が…牙を剥いてきた。それだけなのだ

 

今のゆきのには…わからない。仲間だと思っていたものが偶像で、本当は演じられたものだったなど…。

 

 

 

しばらくしてドアが開かれる。アデアはゆきのの不安を拭うように笑顔で微笑むと背後にいる人物をあらわにする

 

ゆきの「ライフ…!」

ライフ「ゆきのっ!」

 

涙を滲ませゆきのを強く抱き締めるライフ。ゆきのはその瞬間にライフは敵ではないことを実感した

ライフ「話はアデアから聞いたわ。大丈夫、私はゆきのの味方だから…」

アデア「ライフには僕がここを離れる間にゆきのを守ってもらう」

ライフ「えぇ、任せて!エフィルと一緒に護るわ!」

 

ゆきの「でもどうして?本人の前で言うのもなんだけど…どうして敵じゃないって…?」

 

アデア「これだよ」

 

そう言って見せてもらったのは…

 

ゆきの「ブローチ…?」

 

アデア「うん。以前、ライフが死ぬ寸前にもらったものなんだ」

ライフ「あの時はゴタゴタしてたけど…。ちゃんと受け取って貰ったの。しらみつさんに作ってもらった特注で色んな機能があるのよ」

 

アデア「それとエフィルだね、ライフと記憶を共にしたエフィルはゆきのの事を知らなかった。ということはライフとエフィル。この二人はゆきのを狙う敵から外れるんだ」

 

ライフ「状況が状況だものね、信じてもらった以上、期待には答えるわ」

 

 

アデア「それじゃあ…。今度は違う心当たりを当たってくるよ。二人とも、ここから出ないようにね」

 

 

アデアはとてもさっきまで慟哭していたとは思えないくらいまっすぐな眼をしている。その先程とは比べ物にならないくらいの冷静さが返って不気味にも思える。そう、例えるならゲームの起動からオープニング。タイトルまでの流れだ。今からやろうとしてることがさも当然かのように…

 

アデア「待っててね。もうわかってる。誰かなんて…」

ゆきのはぞわぞわっと悪寒を感じた。その護るという行動から凶行とも取れる殺気をも感じる。そんな気配が頑丈なドアの先に出ていく…

 

 

 

 

 

アデア「ミッション開始…!」

何かのボタンを押すと同時に監視カメラが項垂れる。そして元々巨大な拠点を囲む塀が二倍の高さになり、バリアフィールドを生成した

 

 

 

完殺「なっ…?!監視カメラが…!」

突如砂嵐になる液晶。その時、完殺は素早く隠しカメラをオンにする。が…これも砂嵐だ

完殺「バカな…!ジャミング…!?どこから…」

原因を探すが探知できない。あまりの突然に焦り始める完殺は次第に冷静さと詰みに近い悟りを開く

完殺「ま…まだだっ!私にはこれが…!」

取り出すは薬瓶。それを隠し持つとこっそり部屋から離脱。慎重にアデアの部屋を目指す

完殺「(逃げられる前に殺す…!殺しさえすれば…!!)」

アデア「随分と忍び足なんだね、まるでここのメンバーじゃないみたい」

ゾオッという重く気持ち悪い気分と共に曲がり角にいたアデアと目があった。嫌な汗が噴き出して体が鉛でもくくりつけたかのように自然と動かなくなる。軽率だったか。しかし言い訳をすれば…!

 

完殺「アデアさん…!驚かさないでください」

アデア「驚かせてないよ?僕は命令したよ?部屋から出るなって。ねぇ?」

 

 

 

 

アデア「わかな」

 

わかな「た…たしかにそうですが…の…喉が渇いてしまって…!」

アデア「それじゃあ食堂までエスコートしよっか、ところでわかな。聞きたいんだけど」

わかな「は…はい!なんでしょうか…」

アデア「君が常に肌身離さず持ってるパソコン。どうしたの?」

わかな「っあ…」

言葉がでなくなるわかな。そう。彼女は焦るあまりに常に持ち歩いていたノートパソコンを部屋に置いてきたのだ。今までいついかなる時も持ち歩いていたそれを…

わかな「へ…部屋に置いてきてしまったようです。ありがとうございます…」

アデア「それじゃあついでに聞きたいんだけどさ、今…。パソコンの画面…どうなってるのかな…?」

その問いを聞いたわかなは心臓を握られたように動きが止まった。もちろんそんなこと、気がついているはずだ、使い物にならないから置いてきた。邪魔になるから置いてきた。それに…

アデア「それと…どうしてわかなの部屋から探知電波が出たのかも教えてほしいかな」

そう。ジャミングと知って、それを逆探知したときに。それを探知されてバレるという可能性を考え付かなかった。

アデア「もう抵抗はやめろ。完殺、お前の負けだ」

チャッっと構えられるソーコム。それを見たわかなは咄嗟に身構えてしまった

アデア「アタリだね、銃を見たときの反応速度が速すぎるよ」

わかな「…。ゆきのさんさえ…ゆきのさんさえ殺せば私は…!!」

アデア「させないよ。どんな理由があっても。ゆきのだけは殺させない」

わかな「同じなんですよ…!私と!あなたは!」

アデア「他人の命を代価に得る安息は偽善だよ」

わかな「アデアさん…。引いてください…!私にも…引けない理由があるんです…!」

アデア「僕もだよ、悪いけどゆきのは殺らせない」

わかな「…」

パァン!!

アデア「っく…!」

わかな「それなら…。私も本気で行きます…!」

第一撃は完殺…わかなからだった。いつ抜いたかわからない速度でカスタムしたベレッタを抜き撃ち!そして距離を離してアデアの撃つ弾を避けていく。

アデア「早い…!」

わかな「アデアさんが銃を使うなんて…」

意外だと思いながら素早くマガジンを変えていく

 

アデア「リロードも早い…。間違いない…!」

様子を見ながら打ち返すアデア。廊下には銃弾の跳ねる音が鳴り響く

わかな「どこか…足でも撃ち抜ければ…!」

慎重に狙い済ますわかなはメガネを外す。その目付きはかなりつり目だ

 

アデア「ここだと場所が悪い…。どうする…?」

考えたのは一瞬!素早く弾の雨をすり抜けると階段をかけ上がる!

わかな「逃げた…?違う!」

リロードを挟んでの様子見だったためか判断が遅れる。真上を見て転がったその場を離れる!すると上から弾が数発放たれた!

わかな「場所がわからない…!追いかけるしか…!」

階段をかけ上がるわかな、だがただでは上にいかない。ポケットから何かを取り出すとピンを抜いて上に放り投げる!そして眼を隠すとそれは光輝く!

アデア「フラッシュグレネード…!」

発動前に気がついたためなんとか防げたがわかなが上に上がるには充分な隙ではあった

わかな「アデアさんは…!?」

トリガーを引きっぱなしにすることで連射を可能にしたカスタムで前方や左右に乱れ撃つ!このときはマガジンもそれ相応の拡張タイプで威嚇を強める!

アデア「そこっ!」

一瞬の隙を狙って鏡月を振るうアデア。斜めにベレッタを切り裂いて使い物にならなくさせるとそのまま鏡月を捨ててわかなを押さえ込む!

アデア「あなたの負けよ!わかな!」

シュルリ…

わかな「え…アデア…さん…?」

アデア「えっ…あっ!」

パサッ。激しい動きでアデアの頭から何かが落ちた。それは…

わかな「嘘…」

藤色の美しく長い髪が、二人の顔を隔離した空間を作り出す。

アデア「…」

わかな「アデアさん…?その…」

下唇を噛んで放心するわかなを立たせて突き放すアデア。そそくさとウィッグを拾うとかぐや姫のような長い髪をはらりとさせて悲しい眼でわかなを見つめる

 

アデア「忘れて…ください」

振り向くアデア。わかなは手を差し伸べるが…掴めなかった。

アデア「もうゆきのは狙わないで、お願い…」

たしかに男性にしては声も低くなく。小柄で言葉遣いもちょっと可愛らしかった。それでも信じられない。アデアが…女であったことなんて…

 

わかな「聞かせてください…」

アデア「なりません。お引き取りを」

そう言って出現させた鏡月が向けられる。わかなはそれを見て動きを止めた

 

アデア「バレないようしていたのはあなただけじゃないのですよ…」

なんと…鏡月の刃は…。両方に付いていた…。両刃刀と呼べば良いのだろうか、形は日本刀のそれなのに西洋の剣のようだった

 

アデア「一つだけ、今の私はアデアットではありません。アーティファクト、全絶の月刀(デッドマーカー)。強い光を受けると髪が伸びて…。こんなに長くなるの。…まるで漫画でしょ?」

 

言葉を失うわかな。思い人が同姓である真実を簡単に受け入れられないでいた

 

アデア「これも…鏡月を持つものの定め…」

 

鏡月を輝かせて、それを乱反射するとわかなは眼をつぶる。そして光が消えて眼を開いたとき…。アデアの姿は…消えていた…

 

 

わかな「アデア…さん…」

 

 

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ  第四章

 

 

 

 




お疲れ様でした


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ  第四章

こんにちは。ゆっくり読んで行ってね!


ドタッ!!バンっ!!

 

粗暴な音をたてて自室に戻ってきた完殺…わかなは放心していた。そして思い返す度に胸の奥で何かが割れる感触が彼女を襲っていた

 

 

わかな「どうして…?訳わかんない…!!」

眼鏡を投げ捨てて怒りと悲しみを露にして部屋の私物へ八つ当たりする。それで気持ちが晴れるわけないのに、それで真実が虚実になるわけじゃないのに、頭では解っていてもあふれでる慟哭を止めてくれたのは時間だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…。わかなは自分の部屋を見る影も無くズタズタにするとシャワーを浴びながら三角座りですすり泣いていた…。

 

わかな「初恋だったのに…敵だった…、初恋だったのに…女だった…、初恋だったのに…」

 

何度も呪文のように同じ頭文句から言葉を放つ。しかしある程度落ち着いたのかシャワーを止めて部屋に戻っていった…。ちょうどその時、電話が鳴ってビクリと驚いた。

 

わかな「…べ…紅袖…」

ガタガタと震えながら机から電話を落とすわかな。もはや拒絶反応だった

 

わかな「い…いや…どうして…!?まだ…まだ時間は…!!」

???「どうしました?そんな面白い顔をして」

わかな「あああああっっ!!!!!」

 

真後ろからの声に机のナイフを投げて拳銃を乱射するわかな。しかしそこには誰もいなかった

 

紅袖「いやですねぇ、敵じゃありませんよ、私ですよ~」

わかな「紅袖さん…!ま…まだ時間は残ってます!次の手もあるんです!!」

紅袖「わかってます、わかってますよ。あなたは時間がかかるだけが欠点のいい子…ですよね?そぉんな怯えた目で見ないでくださいよぉ、私が悪辣非道な畜生みたいじゃないですか!ぷんぷん」

わかな「いえ…そんなことは…すいません…その…取り乱して…」

紅袖「まぁとりあえず服を着ながらでいいですから聞いてください。今回は頑張ってるあなたに餞別をとどけに来たんですよ」

わかな「餞別…?」

紅袖「えぇ、これです」

わかな「そ…それは…?」

紅袖「最初は痛いですけど徐々に慣れます。これを使ってでも完遂させてくださいね」

渡されたのは…赤い薬液の入った注射器…。明らかに普通ではないのは火を見るより明らかだった

わかな「え…そ…の…」

紅袖「いいですか?一番薬が効きやすいのは血管です。血管にアルコールを流せばどんな酒豪でもすぐ酔っちゃいます」

わかな「話が見えないです…。こんなもの無くても私はっ!!」

紅袖「わかってますよ。ですから強要はしてません、お守りとして持っててくださいな」

優しい言い回しで渡される謎の液体…。わかなはおそるおそるそれを手に取る

紅袖「いい子です。いやぁ良かった良かった、もし出来なさそうなら私が皆殺しにして」

わかな「それだけはっ!や…やめておいたほうが…」

紅袖「まぁ確かに…。巻き込みすぎると後処理が面倒ですし…」

わかな「(…やっぱりダメだ…。やっぱりゆきのを殺すしか皆さんを…アデアさんを救う方法は…)」

紅袖「では、期待してますからね?」

わかな「必ずゆきのを…!」

 

 

 

わかな「(…。アデアさんを護るためにアデアさんが邪魔をする…。どうすれば…)」

 

 

 

 

 

 

 

ゆきの暗殺まで、後…二日…

 

 

 

 

 

 

アンペルト「ライラ、ちぃとは落ち着けや」

ライラ「けどよぉ…」

アンペルト「わしらが今行くじゃろ?そうしたら厄介じゃ、アデアの邪魔にしかならんわ」

ライラ「感かよ」

アンペルト「感じゃ」

ライラ「かっこつけかよ…いい年してよ」

アンペルト「うっさいわい。しばらくは非常食でも食って我慢じゃ、アデアがあんなタンカ切っとんじゃ。わしらは信じて待つだけじゃ」

ライラ「…。わーったよ!俺もアデアを信じて待つ!これでいいだろ!」

アンペルト「とはいえ、電話も外出もできんのは中々堪えるのう。どうじゃ?部屋を荒らさず戦闘訓練でもやるか?」

ライラ「嫌だ。だりぃし親父には俺の幻実が効かねぇじゃんか」

アンペルト「ステゴロじゃ不満かい」

ライラ「親父の拳骨がどれだけ痛いか一番良く知ってる俺が言うんだぜ?ったりめーだろ」

アンペルト「…、能力に頼ってばかりじゃといつか痛い目に会うぞ、わしもそうじゃったけん」

ライラ「親父が?まっさかぁ!それに俺の幻実は親父以外にゃ見破られたことないだろ」

彼が、ライラが絶対の自信を持つ特異能力「幻実(げんじつ)」とは、ゾロアークが持つイリュージョンの突然変異した特異な能力だ。なんとただの幻影物を当てたり当たっただけで痛みを伴う。さらにこの痛みは倍増する、そしてあまりにもリアルなため現実と幻想の区別がつかなくなり、次第に錯乱へ陥る。それが「幻実」であり、義父であるアンペルト以外にはまず見破られない。実際にベノもシャーヴァルも気付かず騙されていたことがあるほど精密である

 

 

アンペルト「わしは付き合いが長いからじゃ。じゃからこそわかる。最近のおどれは能力に頼っとる。現にわしと小細工無しでやれんのがなによりの証拠じゃ」

ライラ「それは関係ねぇだろ!」

アンペルト「(すぐに挑発に乗る…まだまだガキじゃな…)なんじゃ?それとも臆病なだけか?わしが怖いか?」

ライラ「あったま来たぜ!!親父がぶん殴られてぇならお望み通りにしてやるぜ!シップは自前で用意しろよ!!」

アンペルト「上等じゃ!その根性叩き直したるわ!」

笑いながらキレる息子を軽くあしらうアンペルト。内心では微笑ましく思いながら殴りかかる拳にカウンターを決めたりとかなり本気で相手していた

ライラ「っなろ!こんのぉ…!クソ親父!!」

アンペルト「誰がクソ親父じゃ!!」「いってぇ!!」

 

ライラ「っつ~!本気で拳骨しやがったな!?もう勘弁しねぇぞ!!」

アンペルト「最初から本気だせやボケ!」

お互いに一歩も引かずに殴り会う二人。意外にも部屋はまったく荒らしてない辺り小細工無しのガチのケンカだ

 

アンペルト「はっ!やればできるやんけ」

ライラ「うっせぇ…!後ろにさがってるだけだろボケ…!」

アンペルト「ようやく気付いたんか」

ライラ「俺にマーシャルアーツ教えたの誰だよ…!親父だろうが!」

アンペルト「教えたらそのまま進歩しなかったおどれの責任じゃけぇの!」

ライラ「っー…!」

言葉がでない。本心を突かれてライラは下唇を噛み、拳を握りしめる

ライラ「っ…たしかにそうだがよ…!俺には幻実がある…!親父じゃなきゃ誰にだって俺は無敵なんだよ!」

悔しさと怒りに身を任せてドアを蹴り開けて外に飛び出すライラは一心不乱に一人になるために走り続けた

ライラ「誰も!誰も俺の事わかっちゃくれねぇ!」

 

 

 

 

 

 

アンペルト「っ~!はぁ…。やってもうたのう…」

自分への怒りを抑えてその場で座り込むアンペルト。こんな時に限って息子との大喧嘩をしてしまったのが悔しい。

 

アンペルトは生まれてから物心付いた時には一人だった、そして彼が人間年齢でいう11の時に当時6才ほどのライラと出会い、親と子の関係になった。兄ではないのは単純にアンペルトが教育するために兄では説得力がないため親になったため

 

 

それからというもの、彼らは苦楽を共にし。生きてきた。だがライラが病気になり、アンペルトがそれを治すために窃盗を繰り返したが、ベノたちの手によって捕縛。アンペルトの願いによってライラは救われ、アンペルトは牢獄へ、ライラもそれを追おうとしたがベノによって二人は兎組へ配属することを条件に貧しさから解放された

 

 

歳で言えばもう思春期であり、反抗期。親を知らず、兄弟もいないアンペルトには重い課題だった…

 

 

 

 

 

 

ライラ「…とは言ったけどよ…。この壁があるから出れねぇよなぁ…」

深いため息をしてしぶしぶ庭を散歩するライラ。命令上では外出禁止と他のメンバーとの合流禁止が命じられているため部屋に戻る以外に手はない

 

ライラ「どーすっかなぁ…この壁出てるってことは地下もダメだろうなぁ…」

ライラは確かにまだまだ他の組と一緒に見ても若く、青二才な面が目立つ。だが種族柄こういうときには頭の回転が早い。この状況でも湯水のようにアイディアが思い浮かぶ

 

ライラ「…!アデアだ!アデアならわかってくれるよな!」

早速部屋に向かうライラ。いざ命令違反の上で入るとなると相手がアデアでも緊張してしまう

ライラ「やっべぇな…こんなプレッシャーかかるもんなのかよ…」

おそるおそるインターホンを押して中へ連絡する。数秒もたたないうちに返事が帰ってきた

 

アデア「誰だ」

一瞬ビクッとなる。インターホンからはドスの効いたアデアとは思えない冷酷な声。その一言が先ほどから感じていたプレッシャーを放っていたのがアデアであると第六感が警告した

ライラ「あ…アデア…?俺だ、ライラだけどよ…。すまねぇ…、こんな時に限って親父とケンカしちまった…」

アデア「…」

帰ってこない返事。緊張感が煽られていくのがわかる

ライラ「入れてくれなんて言わねぇ…。ただ…俺はどこへ行けばいい…?命令違反なのはわかってる!だけ「黙って」」

恐ろしいほど冷たい一言でライラは死んだように黙ってしまう。まさかアデアからこんな態度をとられるとは思っても見なかった

 

ライラ「ぁ…っ…」

言葉がでない。今俺がインターホン越しに話してるのは本当にアデアなのか…?これは夢…?それとも幻…?わかんねぇよ…。アデアじゃねぇだろ…

アデア「…。ライラ。いつまでそこにいるの?」

消えてくれとも言わない冷たさが身を切る。いつものアデアなら誰かがこういうことを言うと怒る。なのに、それをアデアが言うのがすごく怖かった…

ライラ「…すまねぇ…」

それだけしか言葉は出なかった…

 

 

 

 

 

ゆきの「…アデア…」

アデア「ゆきの…心配しないで…。今からライラの真意を確かめるから…!これは一か八かだけど…」

ライフ「気をつけてね、確証は無いけれど…私までのメンバーは味方だと思ってるわ」

アデア「僕も同じだよ、でもそれは確実ではない。このかはいつでもゆきのを殺せただろうし…アンペルトもライラも出身が出身だからね。それに人数が増えることは分かっていたはずだしそれなら早々にゆきのを始末してるよね」

ライフ「すると…やっぱり私から後に入ったメンバーが怪しい?」

アデア「そうとも限らない。全員に疑いはある。だけどライラが味方なら…アンペルトも味方になる」

 

 

 

ライラ「どうすりゃいいんだ…どうすりゃ…」

その時、足音が一つ多く聞こえた、振り返るとそこには…

ライラ「なっ…」

アデアが鏡月を片手にゆっくりと歩いてきた。その眼は冷たく据わっている

ライラ「アデア…?!」

頭の中が真っ白になる。これは現実なのか?それとも幻影?普段は自分が他者へしていることが鏡に映すように帰ってきた気分だった

ライラ「なんだってんだよ!おい!!お前本当にアデアなのかよっ!?」

アデア「そうだとしたら?」

ゆっくりと抜刀される鏡月。ライラはじりじりと後退りながら一定の距離感を保つことが精一杯だ

ライラ「(…本気じゃねぇのか…?)なぁ、アデア」

アデア「…」

ライラ「なんで峰打ちしようとしてんだ?手加減か?それとも最初からやる気ねぇのかよ…?」

アデア「…」

ライラ「答えねぇのか…。それじゃあやることは一つだぜ?」

後ろを向くとなく、アデアを見ながら跳び、ライラは逃げ出した!

ライラ「俺が意味ねぇこと好き好んでやると思ってんのか?」

アデア「…逃がさないよ」

脱兎のごとく走り出したアデアはあっという間にライラの目の前まで迫っていた!しかし予想していたのか焦ることなくアデアをあしらうライラ。先程までの焦りや慟哭が感じられないほど冷静だ

ライラ「(アデアのスピードに合わせてわざと間合いを近くしてやれば鏡月はそうそう振れねぇだろ…!)」

付かず離れず、鏡月が大太刀であることとアデアの早さを逆手に取った戦法だった。ここで手を抜くはずもなく、ライラはスピードを落としたアデアに合わせるように距離を取り、鏡月の間合いを潰す。そして隙を見つけてアデアの手から鏡月を弾くと足先に力を溜めて蹴り抜いた!

ライラ「狂気乱武!!(きょうきらんぶ)」

赤黒い衝撃とともに壁に叩きつけられるアデア。ライラは改めてファイティングポーズを取る

ライラ「まだやるか!?こんな無駄なこと!」

アデア「…。いや、ライラの真意はわかったから」

立ち上がったアデアの眼はいつもの優しい瞳に戻っていた。そこでライラも自分が何らかを試されていたことに気付いた

ライラ「聞かせてくれよ。何があったのかをよ」

アデア「わかった。その前に部屋に来てほしい」

 

 

 

 

 

 

 

ライフ「…?」

ゆきの「どうしたの?」

ライフ「何か聞こえない?時計かしら?」

ゆきの「どこから?この部屋には確かに時計があるけど時刻によって音が鳴るタイプよ?」

ライフ「…。それなら用心したほうが良さそうね…!」

 

身構えた瞬間に爆発する扉!そこに立っていたのは…

 

 

わかな「…」

 

仮面をつけ、いつもと違う服装と髪を隠した完殺…わかなだった。もちろん見た目も相まってゆきのたちはアデアがあえて言ってなかったためその正体に気がついていない

 

ライフ「下がってて!ゆきの!はあっ!!」

 

素早く格闘で完殺と対峙するライフ。互角に見えて完殺の動きがすこし甘い

 

わかな「(本当は…こんなことしたくない…。でも…ゆきのを殺さなければ皆さんが…アデアさんが…)」

 

 

ライフ「あなたは誰!?どうしてこんなことを!」

わかな「…(あなた達を救うためなんて…簡単に言えたらどれだけ楽になれるか…)」

仮面に隠れた顔は悔しさのあまり歯を強く食い縛っていた。

 

 

 

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第五章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいっ!どうなっているんだ!!」

紅袖「…なんのことでしょうか?」

「ゆきのの暗殺だ!まだ終わってないそうじゃないか!!あれだけの金を払ったのによくもこんなギリギリに!間に合わなかったらどう責任をとってくれるんだ!!」

紅袖「行けませんわぁ…そんな物騒なことを口に出されては…」

「私たちは焦ってるんだ!ゆきのが死ねば!どれだけの金が入ることか…!!」

紅袖「重々承知ですもの。ですのでご安心なさってくださる?我々の暗殺成功率が裏世界から一つの権利を奪ったというプロパガンダをお忘れですか?」

「わかっている!あのデストロメア以上だと言うのもな!」

紅袖「困りますわね。撤回してくださる?あんな皆殺しだけが取り柄のライオンシュレッダーと一緒にしないでくださいな」

「撤回など必要ない。お前たちは同じだ。仕事をして金をもらう。そこに職の番別などあるものか」

紅袖「…それもそうですね。お仕事は大事ですもの。ところで…契約の際の注意事項って覚えていらっしゃいますか?」

「突然何を…」

紅袖「仕事のやり方に文句をつけるな、ですよ」

スパッ

紅袖「ではごきげんよう。死人のあなたに言っても仕方ありませんが…ハルサキの皆さんはルールを破ったため連帯責任で全員死んでいただきますね」

「死人?いったい何さっきから…」

ポロッ…ドサッ

紅袖「おやおや、体が死を受け入れるのに随分時間をかけましたのね。首を切断しましたのに。まぁいいでしょう。あの子もどうせ失敗するでしょうし。仕方ありません。奥の手ですかねぇ…?」

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。剣盾編もがんばります!


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第五章

こんにちは、あけましておめでとうございます。ということで新年初の物語です


ライフ「やあああっ!!」

メキッ!!っと壁がへこむ一撃をかわした完殺はライフから距離をとる。わかってはいたが近接が得意なライフ相手にそれをせざるおえないのは仲間と戦うことに加えて辛さがある。

わかな「(おそらく私の正体がバレてない…。アデアさんの温情か…それとも…。どちらにせよ、ライフさんのデータなら対策ができる…!)」

 

 

 

 

 

 

ライフ「ゆきの…聞こえる…?」

小声でゆきのとコンタクトを図る。相手から一切目を離さずに少しずつ、ちょっとだけ後ろに下がっていく

ゆきの「えぇ、どうしたの?」

ライフ「アデアの言うとおりならあなたを殺せば相手は死んでもいいぐらいの心構えだと思う。だからこそ、逃げましょう」

ゆきの「…。わかったわ」

逃げる。それはゆきのにとってもっとも不本意で取りたくない選択肢。それは過去の自分がずっとやらずに護ってきたこと。だがこの時にそれをするのはワガママだとゆきのは逃げることを承諾した

ライフ「ごめんなさいね…。大丈夫、絶対に逃げれるわ。お願いね」

瞬時にライフの色が変わる。それはもう一人の人格であるエフィルへのバトンタッチだった

ライフ(エフィル、お願いね)

エフィル「うん。がんばるわ…。」

真剣な眼差しで相手を見るエフィル。そして見切りをつけると必殺技の体勢に入った!

エフィル「スピリットハウリング!!」

黒い風が辺りを包み込んで視界を奪う。だがエフィルのフライゴンという種族は砂嵐の中でも視界が効くほど視力の良い種族。そもそも自身の技で自爆するようでは技と言えない。

エフィル「いくよっ」

ゆきのを連れて一瞬で部屋を出る。その速度はスピリットハウリングの黒い風のこともあってとても目測できるものではなかった

わかな「…。そっちですか」

だがわかなはこの事態が想定済みかのように落ち着いて部屋を出て迷うことなくエフィルたちが逃げたほうへ走り出した。

わかな「…(エフィルさんのデータは最低限しかありませんが基本はライフさんと正反対…。利き腕や癖…戦いかたまで…。そうなると似てるのは本能的なところ…。そう…、逃げる場所とかは二人で決めた場所だったりしますよね)」

 

 

 

 

 

エフィル「着いた!私たちの部屋!」

ゆきの「今だけはくぃーんたちに感謝ね、私たちの一般室まで頑丈に…」

その瞬間。脳裏に浮かんだのは

 

 

 

自分の部屋だった

 

 

 

ゆきの「ダメっ!!」

エフィル「なん…」

部屋のドアノブに手をかけた瞬間。部屋の中からけたたましい音とともに爆発が熱風を吹かせた。その衝撃で吹き飛ぶ二人。ゆきのはよかったのだがエフィルは当たり所が悪く、気を失ってしまった

ゆきの「エフィル!ライフ!あっ…」

コツコツとこちらに歩む完殺。その手の銃はゆきのに迷いなく向けられている

わかな「…長かった」

ゆきの「あなたは…誰なの…!」

わかな「…答える義務はない。ただ…。お前が死ねば、すべては丸く収まる」

ゆきの「…冥土の土産かしら…?」

わかな「そうしてもいい。だが旅立つのに手荷物はいらない。…せめてだが、お前が死ぬことで仲間さえ得をするのだよ」

ゆきの「は…?え…?そ…そんなことあるわけないじゃない!みんなは私を…私を両親以外で初めて受け入れてくれた大切な存在なの!!もう私は惨めなんかじゃないしバケモノなんて言われない!私は…私は…」

もっとも触れられたくなかった仲間への信頼。まさに逆鱗に触れたその一言でゆきのはトラウマを思いだし、気絶に陥った…

わかな「…苦しいだろう。そんな苦しみも痛みも…。もう…充分だろう…。解放してやる。最後に…仲間として…」

カチャリとハンマーを倒す完殺の手は震えていた

わかな「さよなら…ゆきのさん…」

???「その前に地獄で待っていてくださる?」

わかな「っ!?」

背後から聞こえる声、それに反応した頭だけが後ろをとっさに向いた

ザシュっ!!

わかな「あ゛あ゛っ!!」

何かに貫かれる寸前、後ろに下がったことで肩だけで負傷が済んだ。

その衝撃で転がる完殺。すぐさま立ち上がろうとするが眼前にいたのは…

わかな「あなたは…」

悪魔のようなその羽、みたことないシルエット。だが声で判別がついた。

 

 

 

 

 

アベリア?「こんばんは、部屋の外があまりにうるさくて聞き耳を立てれば仲間とは思えない言葉が聞こえたから…。今からあなたを…殺すわね」

わかな「な…なにを…」

アベリア?「聞こえなかったかしら?それとも冥土の土産が欲しいのかしら?」

 

今なら、わかる

 

 

このアベリアさんは、アベリアさんじゃない

 

 

話が通じない、根本的に…

 

 

 

アベリア?「これから殺されるのに?」

わかな「っっつ!!」

逃げろ!本能的に勝てない。いや、戦ってはいけないと考えるより先に足が動く、しかし無慈悲にもそれより早くアベリアがハイライトの無い目と無表情のまま早足で、足首を踏みにじる

わかな「いっつ…!!痛い…!」

アベリア「知らない。殺すから」

ミシミシと骨が軋む音。泣き出しそうになるのを完殺は耐える。だがそれを見てアベリアはなおのこと容赦なく攻撃を行う

わかな「げふっ…!がっ…」

アベリア「あなたも私のお母様とおなじなのね、他人の命を奪おうとしてるのに痛がる。自分が殺されることを前提に相手を殺そうとしない」

ギリギリと傷ついた肩を刺々しいヒールで抉るアベリア。完殺は本気で死を直感して仮面を外した

 

わかな「アベリアさんっ!!私です!わかなです!!理由はお話しします!!ゆきのさんも殺しません!!だからやめてくださいぃっ!!」

アベリア「許す許さないじゃないわ、殺すから」

わかな「アベリア…さん…?」

もはや痛みさえ遠ざくほど冷たい一言にわかなは絶望した。

 

いままで散々集めたデータの中に、こんな情報は無かった、顔や声は紛れもなくアベリアだ、だけど…性根が違いすぎる…。戦うことが嫌いで、相手を優しく労り、どんな時も笑顔で、時に厳しくみんなをまとめられる。そんなアベリアとこのアベリアは…あまりにも別人すぎたのだ…

 

わかな「し…死にたくない…死にたくない…わたし…ただ…みんなを護りたかっただけなのに…こんな…こんな…」

アベリア「泣き言が五月蝿いわね…」

わかな「げえっ!がほっ…!!」

強く腹を蹴り上げられて軽く宙に浮くわかなは血が混じった嘔吐を吐き出し、必死に逃げようと体を少しでも遠くへとねじって動かそうとする。後ろから鳴るヒールの音から逃れるように

わかな「いや…いやぁっ!!誰か…誰か…助け…あ…がぁぁぁっ…?!!?」

急に襲う強い痺れ、振り向くとアベリアの羽がキラキラと紫色のりんぷんを飛ばしていた。

アベリア「抹殺実行(デストロイオーダー)…、キラーエクスキューション…」

ふわっと羽ばたくことなく宙に浮き、両足とスカートが一つの巨大な毒針となり、高速で回転しながらわかな目掛けてむき出しの殺意を形にした技が放たれた

わかな「あ…あ…」

 

 

 

???「鏡月!!力を貸しなさい!!!」

ガリガリと歯医者で聞くような音が鳴り響く!!それは間一髪アデアがアベリアのキラーエクスキューションを鏡月で受け止めた音だった!

アベリア「…!ふっ!!」

即座に技を取り止めて距離を取るアベリア、アデアは抜刀した鏡月を構える

アベリア「あら…アデア…。ごめんなさいね、約束を破って」

アデア「悪いと思っているならいつものアベリアに戻って!!」

アベリア「それはできないわ。まだ殺してないもの」

アデア「(完全にスイッチが切り替えられてる…。このうえゆきのとエフィルとわかながこんな状態じゃ…逃げられない…)」

アベリア「逃げてもいいのよ?残ってるのを殺すから」

アデア「そんなこと、僕がすると思ってる?悪いけど…本気で鎮圧させるよ」

アベリア「楽しみだわ…アデアが本気だなんて…。赤い泡(あぶく)を私に見せて?」

アデア「…。行くよ!」

透き通るような音が火花を散らす。まずアデアは縦に一文字!アベリアが片手でガードした時に鏡月を光らせて目眩ましをした。だが一瞬怯んだもののすぐにアベリアは鏡月は弾いてアデアを追い詰める。

アデア「(強すぎる…!シャーヴァルさんと同等…いや…!殺意なら圧倒的にこちらが上だ…!)」

なまじ攻撃速度も速いため直前でギリギリかわせている。そしてアデアは壁に攻撃を誘発させ、手を攻撃の反動でめり込ませることに成功した

アデア「(後ろから拘束…!)」

アベリア「甘いわよ」

ギラリと向けられた眼、その直後拘束を試みるアデアの斜め真下から毒液が発射された!これを走りながらかわしたが体勢をくずしてつまづいてしまう

アベリア「あら、いいところね」

バキャァッ!!と物騒な音を立ててアベリアが足元にこけたアデアの頭を踏み潰そうとする。もちろんかわすことには成功したがその間にアベリアはめり込んだ手を引き抜いてアデアが起き上がるより先に攻撃を加えて逃がさない

アベリア「ねぇ、アデア。あなたって脚が速いわよねぇ?さぞかしあなたの足は美味しいんでしょうね?速く殺させて、そして味あわせて?」

そう。このスイッチを切り替えたアベリアは「殺した相手をそのままズタズタに引き裂いて食べる」というとんでもない趣味がある。

 

普段は肉を嫌い、争いを嫌悪し、平和にハチミツとティータイムを楽しむアベリア。それが全て逆転し、平和を壊し、同種族さえも皆殺しにし、その肉を調理もせず骨ごと噛み砕く。それが…アベリア・サンプレイズ・バイバルの隠された本性なのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第六章

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。あえて次回予告はサブタイも無く、情報も一切出してません。


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第六章

こんにちは、こんな時こそ平常に、小説でも見ましょう


アベリア「うっふふふ…。怖い顔…。女の子みたい…」

アデア「くっ!」

なんとか体勢を立て直したアデアは一瞬後ろをみる。気絶したゆきのとエフィル。全身麻痺で眼を見開いて痙攣してるわかなの三人。特にわかなは早いところ安静にさせないと危険だと嫌でもわかる

アデア「アベリア…!どうしても下がってくれないの…?」

アベリア「下がってあげてもいいわよ…?すぐに殺すから関係ないもの」

アデア「(ダメだ…。やっぱり根本的に話が通じない…!どうすれば…)」

アベリア「さようなら。私の……な人…」

アデア「え…。いま…なんて…」

ピタッと動きを止めるアベリア。よくみると腕が抵抗するかのように後ろに引っ張られてる

アベリア「…。誰かしら…?」

ギロリとバイザー越しに背後を睨むと足の刺から後ろに向けて毒の弾を何発も打ち込む!すると何かが動いてアベリアの腕が自由になった

アベリア「みぃつけた…。デビローズね…?」

すぐに狙いを定めるとアデアそっちのけでデビローズを殺しにかかるアベリア。しかしその目の前にラピスが現れ、アベリアを蹴り飛ばした!

ラピス「アデア…守る…!」

アベリア「ラピスもいるのね…?面白いわ…!」

マチェットを爪のように複数持ったラピスとデビローズを相手にアベリアは心踊るように狂気に満ちた笑顔で襲いかかる!2対1にも関わらず圧倒し、ものの数秒でラピスとデビローズ。その両方を同時に倒してしまった。

アベリア「この程度なのね…?さて…。どっちから殺そうかしら…。くすくす…」

ラピス「うぐっ…!」

デビローズ「つ…強いですね…!」

アベリア「片方からと思ったけど…。二人一緒に殺す感覚を味わいたいから…死んでね…!」

翼の先端で二人を同時に貫くアベリア。高らかに狂気した笑いが響く。しかし…

アベリア「…?」

ブワッと霧が晴れるように二人の姿が消える。そして振り向くとアデアたちの姿も消えていた

アベリア「つまらないわね…。ライラの幻影かしら?」

 

 

 

 

 

アデア「ありがとう…。助かったよ…」

ライラ「今回は…ぜぇ…。ヤバかった…。幻影つっても本物と同じ強さなのに2対1で瞬殺とかマジで洒落にならねぇって…!なんなんだよあのバケモンみたいな強さ…」

アンペルト「話には聞いたことあったが…あれがアベリアのスイッチを切り替えた状態じゃな?」

アデア「…うん。いつかは話さなきゃだし話しておくね。あれがアベリアの特異体質。本来はビークインなのにスイッチを完全に切り替えると姿が変わる。いままでは該当するポケモンがいなかったんだけど最近になってそれは発見された。それが…アーゴヨン…」

アンペルト「アーゴヨン…?聞いたことが無いのぅ…」

アデア「最近になって発見されたUBと呼ばれるポケモンたちの一種なんだ。アベリアがスイッチを切り替えた時の特徴がアーゴヨンと酷似している。恐らくアベリアはこれまで例を見ない「変身」するのではなく根本的に別の種族に変化する特異体質なんだと思う…」

アンペルト「なるほどの…。それで性格までも変わり果ててしまっとるのか」

アデア「そこはわからない…。どちらが本当のアベリアなのかもわからないしどうすれば元のアベリアに戻ってくれるのかすら…」

ライラ「そうなりゃやべぇな…。たぶん俺がやったってバレてんだろうから易々とこの手は使えねぇ…」

アンペルト「…」

ライラ「なんだよ、能力に頼んなっつったの親父だろーが」

アンペルト「なんも言っとらんじゃろ。それより…。わかなじゃが…」

アデア「…。うん。次、アベリアの毒を受けたら確実に死に至るかもしれない」

わかな「…!?(う…そ…!?)」

麻痺しながらも心中で驚愕する。体が口さえも動かないのが絶望感にひとしおかける

アデア「アナフィラキシーショックが起きる可能性が極めて高いと思う…。あくまでも可能性だけど…」

ライラ「親父と仲直り早々こんなことになるたぁ…。やべぇな…」

アンペルト「アデア。アベリアがあの状態から元に戻るにはどうすりゃいいんじゃ?」

アデア「わからない…。わかってるのはアベリアの気分しだいであの状態はいままで出したとしてもほんの一瞬だった。今はそれが永遠になっている…」

ライラ「…。これはカケなんだがよ、アデア。このかに聞いてみるってのはどうだ?」

アデア「このか…。そうか、このかならアベリアについてわかることがあるかもしれない…でも…」

アンペルト「敵かもしれん。そう思っとるじゃろ。安心せぇ。このかは味方じゃ。わしが保証する」

アデア「アンペルト…。……わかった。行ってくる。二人はここで待ってて、ライラなら隠れきれるよ」

ライラ「おうよ。気をつけてな」

 

 

 

 

 

 

 

アデア「…。お願い…、鏡月、力を貸して…」

鏡月を手にアデアが祈ると彼の、いや…。彼女の髪が伸び、その姿を透明にしていく…

アデア「月の羽衣…。纏うのはいつぶりかな…」

そう囁くと目の前からアベリアが歩いてきた。しかしアデアは構えること無く静かに立つ

アベリア「…?気のせいかしら…」

すれ違い様にアベリアはこちらを向いた。だがそこには誰もいない。この月の羽衣は纏った者を他人から不可視させることができる。攻撃するとバレる…ということはなく本当に気がつかない。せいぜい今のアベリアのように気のせいで終わらせる

アデア「(よし…。大丈夫みたいね…)」

 

 

 

アデアは男だ、だが彼の持つ鏡月は持ち主の性別を逆転させるという能力がある。そしてその度合いは鏡月に依存すればするほど進行し、近い未来。アデアは二度と男には戻れなくなる

 

 

 

 

 

だが手放せない。例え性別を失おうとも護りたいものがあるからだ。アデアはただ、それだけを思い、あるいみではベノやまおをも凌ぐ自己犠牲をしているとも言える

 

 

 

現に髪が伸びているのが予兆で、いままではウィッグで隠せる長さだったが今は難しくなっている。また鏡月は強い光によって力を増す特徴もあり、以前わかなとの戦いで髪が伸びたのも依存、つまり鏡月を使ったときに鏡月がフラッシュグレネードの光により力を増していただけなのだ

 

 

 

 

アデア「…。誰もいないね…」

辺りを見回すと月の羽衣を脱ぎ捨てると髪の長さは元に戻り、いつものアデアに戻るとこのかの部屋のドアをノックする。数秒して返事が帰ってきた

 

このか「誰やろか…?」

アデア「僕だよ。このか」

このか「アデア…!?どないしたん…?」

アデアの返事とともに開けられるドア。アベリアのことも考えて「とにかく中で話す」とドアを静かに閉める

 

このか「ゆきのはどないしたん…?」

アデア「大丈夫。それも含めて事情を説明するね」

 

 

 

 

このか「アベリアが…。そら危ないなぁ…」

アデア「何かわからないかな?元に戻す方法とか」

このか「あるにはあるで。アベリアから聞いたことあるし」

アデア「ほんと?方法って?」

このか「ただごつう危ないで?危険すぎや…」

アデア「そんなに…危険なの?」

このか「危ないところやない。そもそもあの状態のアベリアと対峙すること事態、無謀すぎや。アデアも少しでも戦いおったんやったらわかるやろ?」

アデア「…。うん。だけど、止められるなら止めたい。止めなきゃいけないんだ、僕が」

このか「しゃあないなぁ…。ほな教えたるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アデア「アベリア!」

アベリア「あら、アデアのほうから来てくれるなんて。嬉しいわ」

アデア「(このかが教えてくれた通りにすれば…!)」

構えを取ると飛んでくるアベリアをアデアは冷静に対処する。最小限の動きで攻撃をかわし、腕を取るとその勢いを利用して投げ飛ばす!これにはアベリアも驚いたのか一瞬だけ怯んでしまった。その瞬間をアデアは逃さない!

アデア「ごめんっ!」

口の中に何かをこじ入れるとすばやく手を抜いて口を塞ぐ。アベリアは瞳孔をカッと開き、吐き出そうとしているのか暴れまわる。だが殺意無く暴れるだけのアベリアを押さえ込むことはアデアにとっては容易だった。ほどなくして羽が消え、アベリアはいつもの姿に戻った

 

アデア「…。アベリア?」

アベリア「どうして…」

アデア「このかが教えてくれたんだ。君が蜂蜜を愛用してる理由を。あの姿は蜂蜜に含まれてる成分で抑制できるって、だから…」

アベリア「違うわよぉ…。どうしてわかなを…、裏切ってゆきのを殺そうとした奴を助けたの…?」

アデア「…。仲間だから。例え裏切ったとしても理由があるはずなんだ。だから…。僕に仲間は切れない…」

アベリア「…。やっぱりアデアは優しいのねぇ…。だからこそ、仲間にさえ非情になれる私たちが配属されたのかしら…」

アデア「うん。ベノさんから聞いてはいるよ。アベリアやあるまの配属された理由は。でもそれがやりすぎだと判断したときに止めるのが僕の責任だよ」

アベリア「…。釣り合いよね…」

以前エフィルに言ったことがそのまま帰ってきたアベリアは複雑な顔で立ち上がった。それにアデアはそっと手を貸す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

震えて着信を告げる電話。それを取るとその人物は窓から外にある月を見上げる

???「はい」

紅袖「あっ、お久しぶりです。紅袖さんですよ」

???「なんの用でしょうか…」

紅袖「またまたぁ~。わかっているでしょう?完殺さんがあんまりに使えなかったんですよ。ご存知の通り明日しか有余はありません。あなたにはハルサキ・ゆきの・テレジアの殺害と完殺さんの始末をお願いします。あんなに役に立たないのではもう戻ってきても掃除係にすらなりませんから」

???「承知しました…」

紅袖「いやぁ、助かります。ちょっとそっちに行けなくてですね、本当なら私のお仕事なんですけれど」

???「いえ、その時のための私です」

紅袖「さすが、私直々に育てた子です。お願いしますね滅砕刃(めっさいじん)さん」

???「はい。お任せください」

 

 

 

 

 

 

紅袖「これで第十期生も最後ですか…。少し物悲しいですねぇ…。やはり人間味があると任務に支障が出ちゃいますよねぇー…。まぁ、使えないなら…殺せばいい話ですね…くっふふふ…」

 

 

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第七章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リスティス「…さて、ここまできたら奴等も動くでしょ。後は…、リヴェータやルヴィロームの代わりにやるだけかな…。アタシらから仕事奪ったらどうなるか…、教えてやるよ…、地獄でな…!」




お疲れ様でした、皆さん頑張って


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 第七章

こんにちは、物語もいよいよ大詰めです


ゆきの暗殺まで、後…一日…

 

 

 

 

 

わかな「ん…。!」

まるで機械のように一瞬で起床するわかな。チャームポイントの赤ぶち眼鏡を探すが見当たらず右往左往している

 

わかな「メガネメガネ…」

アデア「動くな」

背中に突き付けられる刀の鞘。わかなは背筋をゆっくりと伸ばしながら両手を上げる。そしてそこで昨日何があったのかを思い出した

アデア「わかな、いや…完殺。どこの所属だ」

わかな「…。一つ、約束していただけるならお教えします」

アデア「答えろ、時間がない」

わかな「交渉決裂ですか…」

アデア「交渉なんかしない。君も知っての通り、鏡月の刃は一生傷だ」

わかな「その刀で…。私の首を切り裂きますか…?」

アデア「必要ならばそうする。例え君であっても」

わかな「…。アデアさん。私は「無駄口はいい。はやく答えろ」…。」

力を込めて突き付けられる鞘。わかなは悲しい顔を見せずに答える

 

 

 

わかな「所属…ジンティア。ブラッドクラス、完殺…」

 

アデア「ジンティア…」

 

わかな「アデアさん。私の知る情報をすべて提供してもいい。約束してほしいことがあります…」

アデア「敵対行動とみなした場合。君を殺す」

わかな「兎組が危険です。私は死ぬでしょうがほかの皆さんのことを何としても守ってほしいのです」

お互いに顔を見せぬまま進む会話。その言葉を聞いてアデアは鏡月をわかなの背中から引いた

アデア「ジンティアというのはどういう組織だ」

わかな「難しい質問ですね…。形無き殺意の塊…とでも言えば表しやすいです。クライアントに忠実な暗殺組織、ですが…。ルールを破れば味方もクライアントも切り捨てて関係のない命…、女子供年寄りだろうが巻き添えにする」

アデア「ブラッドクラスというのはなんだ」

わかな「ここでの組と同じようなものです、私を含め、多いと十数人、少ないと二人や単独で活動しています。依頼はほとんど単独で行いますので行動は別々です」

アデア「これで最後だ、わかなという名前は偽名なのか?」

わかな「偽名です。私に名前などありません。物心ついた時には銃を握っていました」

アデア「…」

 

ミニテーブルに赤ぶち眼鏡を置くとアデアは少しためらい口を開く。それとともにわかなはアデアのほうへ向き直す

アデア「残酷な運命だと呪うよ…、最後の仕事がこんな…」

わかな「さ…最後って…?兎組を離れるんですか!?」

アデア「…。僕が兎組に配属された理由は…。ゆきのが財産を受け継ぐまでの護衛目的だ。それが終われば僕は…。僕はみんなの前から消える」

わかな「なぜ!?なんで…!」

アデア「…。他言無用でお願いできる?」

突然訪れた別れ話に押しつぶされそうな気持ちになるわかな。だが意を決して頷いた

 

アデア「原因はこれだ」

そう言って出される鏡月。いつもながら念じれば具現するというのは不思議だった

アデア「私の…。僕の真名はアーティファクト、全絶の月刀(デッドマーカー)。前にも話したね。アデアットという名前は今の名前だ。そして単刀直入に言うと…。鏡月は呪われた刀にして僕の半身みたいなものでね…、僕はそう…、付喪神のような存在なんだ」

わかな「ポケモンじゃないんですか…?」

アデア「ポケモンだよ、今回は」

わかな「今回…?」

アデア「鏡月にはいくつか特殊な能力がある。刃は切ったものを再生不可能にし、相手を惑わし、狂わせ、簡単に命を弄んで殺してしまえる。そして…。鏡月は光を浴びるほどに力を増す。物理的な光、月の光…。心の光さえも糧にする。光が最大まで蓄えられたとき、僕という半身が転生する」

わかな「ちょっと…待ってください…?理解が追い付けませんよ…」

アデア「だろうね、もっとかみ砕いて言うならば、ゆきのが財産を相続した時。その希望の光によってほぼ確実に鏡月は光を最大まで蓄え、それを開放するんだ。その時に世界は一瞬で消え去り、またその瞬間に消えた世界と同じ世界が生まれる。ただ一つ違うのはその時に僕は消滅し、すべての記憶から消え去り、新しい鏡月の半身が誕生する。まるで最初からいたみたいにね」

わかな「そんなおとぎ話みたいなこと…」

アデア「信じられないよね?でもね、朝になって太陽が出てきて、沈み、月が出る。太陽はいつでもその眩しさを変わらず放てる。でも月は違う。光の加減によって毎日違う顔を見せる。僕という満ち欠けた月が次の満ち欠けになるのと同じことだよ」

わかな「嘘ですよね…?だって…アデアさんがどうしてそんなことわかるんですか!?確証がないんですよ!消滅したのにそれを知っているなんて…!」

アデア「ほぼって言ったよね?確かに僕は消滅する。だけど記憶だけは引き継がれる。まるでゲームを最初から遊ぶようにね、だから…僕が消えて次の僕が生まれたとき、君たちの記憶にはアデアなんて最初からいなかったとなる。でも違う。僕の記憶は次の私が覚えている」

わかな「アデアさん…」

アデア「もう行かなきゃ、ゆきのを護ってあげないと…」

ぎゅっと握られる袖、そしてか細く震える声でわかなは言った

わかな「行かないで…。ください…」

アデア「止めないでほしい。お願い」

わかな「嫌です…。アデアさんがいなくなるなんて…。知って止めなかったら皆さんに怒られてしまいます…。それに…」

涙を堪えきれず、アデアの背中に額を合わせて泣きながらわかなは…。

 

 

わかな「アデアさん…。あなたのことが好きです…。愛しています…。だから…行かないでください…」

アデア「わかな…」

わかな「私が…。護ります…、あなたのぶんまで…!だから…消えないで…。殺すことしか取り柄の無かった私に、光をくれた…!家族を、その暖かさを教えてくれた…、こんな…裏切ったのにあなたはまた…。わかなと呼んでくれました…!あなたから貰ったものが…私の冷酷な心を溶かしてしてくれたんです…」

アデア「気持ちは嬉しいよ、でも…」

わかな「でも…なんですか…?」

アデア「君も死なせるわけにはいかない」

わかな「!!」

アデア「アベリアの麻痺毒が残ってる状態で無理もさせられない。ゆきののためにも、君のためにも、僕がいく」

わかな「アデア…さん…」

アデア「待っててね」

 

 

 

 

 

 

 

アデア「…妙な気配を感じる。おかしい、バリケードはやぶられていないのに…」

今、この兎組支部は緊急バリケードによって隔離されている。だが破損された形跡もないのに今まで感じたこともない気配を感じていた

アデア「鏡月…力を貸して…月光の瞳!!(ドビュッシーアイズ)」

紅い光がアデアを中心にドームを作り出す。アデアの意識の中が遠くの景色を映し出す

 

 

アデア「この邪悪な気配…いったい…。!!くっ!!」

感知している所へいきなり空を裂く一撃!それをアデアは避けた

アデア「…!どうして君が…!?」

???「…」

ガキィン!!ガキィン!!と鉛のぶつかり合う音、相手はフードを被ってはいるがアデアにはその動きと武器で誰だか即座にわかってしまった

アデア「なぜだ…!なんで!!君と再会した時…、本当にうれしかった!!お互いに生きているかわからない世界で!!また出会えたのに!!」

火花を散らしながら問い詰めるアデア、しかし答えは返ってこない

アデア「しらばっくれるなよ!!その猟奇的な動きに強靭な腕力…!なにより…。マチェットナイフなんて君しか使わないだろ!!」

認めたくない。だが信じざる負えない現実を受け入れるようにアデアは鏡月を逆手持ちし、フードとその先にある仮面を切り裂いた。ふわふわと落ちるフード、そして軽い音で落ちる仮面。長く太腿まで伸びた黒紫の髪があらわになった

アデア「君は…誰よりも僕のことを知っていたのに…!どうして…ラピス…!」

ラピス「アデア…」

悲しい目を向けながら、ラピスはつぶやいた

ラピス「私は…保険…。完殺が失敗した時のために育てられた…アサシンキラー…。私はもうラピスなんかじゃない…。今の私の名は…、滅砕刃(めっさいじん)」

その一言を皮切りに襲い掛かるラピス。アデアは両手のマチェットナイフをいなしながら床に刃を埋め込ませる。それとともに手首をつかんでラピスを窓から放り出す!だがラピスは窓枠をゆがませるほどの力でつかんで腕の力だけで自分の体を建物の中に戻した。それを見てアデアは払い切ろうとするが見事に低空で体を翻すとラピスはマチェットナイフを取り戻した

ラピス「無駄…、アデアの動きは予想可能…」

アデア「くっ!!」

動揺せざるを得ない一言に焦るアデア、これがまだ昼だというのだから質が悪い。日にちを跨ぐまで半日もある。それまで自分のことを自分以上に知る相手と戦うのは得策とは言えない

アデア「ラピス!目を覚まして!君は利用されているだけなんだ!!」

ラピス「知ってる…。そんなことは何回も見てきた…、みんな利用されている…。だから…!」

 

ラピス「あなたを殺して私も死ねば誰も傷付かない…」

その一言に別の戦慄を感じるアデア、ラピスは…囮…!?

ラピス「私と一つになりましょ…?アデア…」

???「その前に私と遊びましょうか?」

ラピス「!」

首を固められるラピス。音を立ててマチェットナイフが落ち、ラピスはもがく

アデア「アベリア!」

アベリア「行って!!」

その言葉に迷うことなく走るアデア、姿が見えなくなったあたりでラピスが拘束から抜け出す

ラピス「邪魔…しないで…!!」

アベリア「アデアのためを思うなら、これは邪魔ではないわ。アデアはね、今を一生懸命生きてるの。それを邪魔するのならば…例え仲間であっても私たちが許さない」

どの流派にも該当しない暗殺拳の構えをとるアベリア、ラピスは袖からマチェットナイフを取り出すとアベリアに襲い掛かった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「この部屋であってるんですね?翠(スイ)さん」

 

翠と呼ばれた人物は頷く、合計六人の仮面を着けた人物たち。驚くべきことにフードなどをかぶっておらず、それぞれが個別の格好をしている

 

 

???「滅砕刃さんが邪魔ものとやりあってる間に終わらせますよ。こちらの時間もありませんし」

 

するどいナイフを振り下ろしてドアのロックを壊すとそのまま蹴り開ける。他のメンバーは手慣れたように周囲を警戒していた

 

???「では、始めましょう「みぃつけた」、!」

床に突き刺さる大鎌、六人がそれを避けると続いて意思をもつ蛇のように炎が襲いかってきた!だが極めて冷静に六人とも狭い廊下から少し広めのサロンまで下がった

 

???「…。これはこれは、所属したというのは本当のようなのですね、死神リスティス」

リスティス「知っててくれて光栄だね、イカれた殺し屋ご一行様よ」

炎の中から大鎌を持って現れるリスティス。その目は殺意で満ちていた

リスティス「こちとら商売上がったりなんだよね、あんたらみたいな無差別な殺し屋が好き勝手暴れまわるとクライアントだって減るし」

???「心外ですわぁ、私たちはただルールに従っているだけなのに」

リスティス「そのルールって奴でクライアントとか殺害対象を皆殺しにされちゃぁ困るっつってんだよ。私ら世間のはぐれもの達の間でもルールって奴はある。それを守ってもらおうじゃないかってだけよ」

???「お断りいたします。」

リスティス「話し合うだけ無駄ってか、六人まとめて来いよ」

ドスの効いた声で挑発するリスティス、それを聞いてか正面を除いた五人が徐々に距離を変えてくる

 

リスティス「(無法モンなだけじゃなさそうだねぇ…。強がってみたけれど意地張りすぎたかな…?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

数ヶ月前…

 

 

 

 

 

 

ソフィア「本当にこの内分けでいいのかしら?頭数からして兎組にはルヴィロームが適任じゃなくて?」

リスティス「私と群れて死んでもしらないよ?黙ってるだけのリヴィリーナと違って乱戦になる可能性がないほうが動きやすい。ましてやシリアルキラーとトリガーハッピーを混ぜて生まれたサイコパスなんか邪魔だ、あんたらに押し付けるよ。だから私は兎組に行く」

リヴェータ「あたしも死神がいないほうがやりやすいかもね」

リヴィリーナ「(ホワイトボード)リヴェータと同じく」

ルヴィローム「キッシシ…。まぁわたしもシャーヴァルの野郎から同じ組に居ろって釘を刺されてる以上、仕方ねぇとは思うがなぁ」

ソフィア「全員文句無しってことでいいのよね?鞍替えは簡単に効かないけど」

リタ「ここまで言い合ったのだ、構わんだろ」

リスティス「まぁ安心しなよ、仮にこっちで出くわしても私を殺せる奴なんざいない、逆に殺してやるよ、何人でもね…!」

 

 

 

 

リスティス「(泣き言なんざ死神らしくないね…!)悪いけど天国へは行けないよ、私は地獄への道案内しかできない死神なんだ。首かっ切られたい奴から来な!」

???「ではお言葉に甘えて…、牙重(げじゅう)さん、死崩(しだれ)さん。やっちゃってください」

その号令とともに襲い来る二人、リスティスはランタンからの炎で片方を迎撃すると格闘戦でもう片方を蹴り飛ばす

牙重「…。紅袖さん。特殊装甲服が解けてやがるんですが」

紅袖「あら…。やはり死神のうわさは本当でしたのね、となれば…道下(どうか)さん、陽炎(かげろう)さん。バトンタッチお願いします。他の方は任務続行で」

リスティス「(くそっ!やっぱりそうなるよな…!)」

陽炎「足元がお留守ですよ」

急に凍りだす足元、リスティスは毒と炎で氷を解かすと即座にその場から回避!その場所へ身の丈ほどの火の玉が落とされた

陽炎「真上はお留守ではなかったようですね」

道下「フロストマーズが避けられたね…」

陽炎「甘くはないということで、流石死神」

リスティス「褒めてるのか貶してるのかわかんないよ。もっと的確に言ってよ」

陽炎「失礼、この程度で殺せると思ったのです。他意はありませんよ」

リスティス「死ね」

 

紅袖「口が悪いのですね、まぁ六人相手にしようとしたその心意気は認めますが…。生憎と暇でもないので」

???「ならリスティスさんだけでは無ければどうでしょう?」

いきなり動きを止められた紅袖たち、無理に動こうとするが体が動かない

???「マグネキネシス!アンチアサシン!!」

吹き飛ばされてサロンへ転がる四人の暗殺者たち、リスティスは驚きながらも相手二人を後退させた

リスティス「へぇ、兎組も命令違反ってやるもんなんだね」

デビローズ「えぇ、今回が初めてではありません」

ただいな「例え敵わなくとも仲間のために戦う。それが兎組です」

あるま「こんな時に振るわねば何のために修行をしているのかわからぬ」

このか「ゆきのはウチらが絶対に守りきったる…!一歩も行かせへんで!」

並び立つ四人、そしてリスティスは六人の暗殺者達を気迫で後退させる。だが余裕があるというのが見て取れた

紅袖「おや?ずいぶんお早い到着ですね」

振り返りながら振り下ろされた刀へ対応する紅袖、目にも止まらぬ早さで相手を…。アデアを退ける

 

アデア「みんなっ!力を貸して!!」

 

五人はその声に答えるように暗殺者達へ戦いを挑んだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 †MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 最終章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかな「行かなきゃ…!私も…!完殺じゃなく…わかなとして…!」

 

 

 




お疲れ様でした、次回が終わればΞ最後の物語、シャーヴァルたち新生鍼組の物語が始まります


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅢ 最終章

episodeⅢ最終章です。長かった…


 

 

 

 

組み合ったままガラスを破って二階から外に落ちたアベリアとラピス。二人はすぐに体勢を立て直して凄まじく勢いのある近接戦闘を繰り広げていた

 

アベリア「いい加減になさいな!利用されるだけの人生なんて何が生き甲斐なの!?」

ラピス「アデアと一緒になれるならそんなことどうでもいい…」

アベリア「分からず屋!なぜアデアを行かせたかわかる!?あなたはっ!アデアを引き付ける囮だったのよ!あなたを利用した奴はもうゆきのに迫ってる!」

ラピス「それがどうしたの…?」

アベリア「なにもわかってないわね!あなたとわかなは連中にとってもう必要ないのよ!顔が知られてる以上に兎組を敵に回すことはてゐ国歌劇団を敵に回すことと同じ!だからあなたたちごと皆殺しにして痕跡を消すつもりなのよ!」

アベリアの考えはあくまでも予想ではあったが的を得た考えであった。実際にここで兎組を全滅させて紅袖達がラピスを連れて帰った場合、探知系統の能力者に簡単に居場所が知られてしまう。死体がない場合など尚更疑いに拍車がかかる。その結果ラピスのことを知っている他の組のシュトラや裏世界に精通しているシャーヴァルに直ぐ見つけられてしまうことだろう。例え優秀であれどもそうなればラピスを生かしておく理由が無く、完全に使い捨ての駒として使うのが全うだ

 

ラピス「…私は…」

アベリア「それでも立ちはだかるなら…。私が自ら引導を渡して上げる…!」

組み合った状態から徐々に変わる姿、バサッと悪魔のような羽根を生やして鋭利なアーマー。アベリアがラピスを睨むと目元をサングラスのような透明な仮面が装着、組み合った手を突き放して羽根の羽ばたきでラピスを吹き飛ばす

 

ラピス「その姿は…」

アベリア「お初にお目にかかるわね、みんなに見せたことが無いから当たり前だけど…!」

襲い来るアベリア、所変わってアデア達は六人の暗殺者たちと激戦を繰り広げていた

 

 

デビローズ「捕まえましたよ!」

牙重「さっきは油断したがこの程度で捕まえたとは笑わせてくるな」

デビローズ「なら逃げられる前に倒します!」

抵抗する牙重をマグネキネシスで上に飛ばすデビローズ、自身もマグネキネシスで飛んで牙重をフェイバリットホールドに持っていく

デビローズ「デビローズバスターっ!!」

牙重の顎と首を肩で引っかけ、体を反らせて両足を両手で持ってそのまま地面へ落下!着地の衝撃で窓が割れ、近くで戦闘していた暗殺者たちは怯んだ

リスティス「オラオラっ!威勢はどこ行ったんだよ!」

怯んでいた道下に容赦なく大鎌を振り回して攻撃を繰り出すリスティス、しかし透明な何かがそれを阻んだ

道下「甘いよ死神…」

リスティス「甘いのはてめぇだよ」

腰のランタンが扇状の炎を吹き出して道下を焼き払う。一方デビローズバスターを決められた牙重は海老反りで拘束されていた体を足の力で解放すると容赦なくデビローズの画面に裏拳を叩き入れた!

 

 

 

ただいな「はあっ!!」

翠「単調…。話にならない…」

軽くあしらわれるただいな、翠は両手に持ったショーテルでカウンターにも似た戦法を取っていた

ただいな「予測されてる…!?」

翠「そんな動きは何千と見てきた…!」

ショーテルによって刀を弾き飛ばされるただいな、振りかざされる刃に霊札を使った呪術障壁で対応し、続けて札を取り出す!

ただいな「剣術が予想されるならこれは予想できますか!?」

爆裂する札、電撃を放つ札、ホーミングしてくる札と様々な札を使用して逆に翠を追い詰めるただいな、その近くではこのかと死崩が戦っていた。しかしこのかが氷柱を設置したり飛ばす暗器の数々を死崩は蹴りだけで粉砕してくる。相性はかなり悪いと言わざるおえない

このか「(なんちゅう足の強さや…。アカンな…)」

近寄らせないようにするのに精一杯、動きにくそうなメイド服にしては俊敏に動いてこのかを徐々に追い詰めていた

死崩「申し訳ありませんがもっと本気で来ないとわたくし達は倒せません。出し惜しみ、なさらないよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるま「貴様ら!ここがどこで小生ら等が誰か知っているのだろうな!」

紅袖「もちろん。しかし残念です…、ハルサキ・ゆきの・テレジアの暗殺さえ済めば皆さんのことぐらい見逃してあげようと思っていたのですがね」

あるま「ふざけるな!はいそうですかと仲間を殺らせるものか!」

紅袖「腕はいいのですねぇ…。あなた、殺し屋ですね?くっふふふ…」

あるま「だとしたらなんだ?小生の生き方が貴様にどう影響する!?」

紅袖「いえ…。今から散らすには惜しい実力だと思いましてね…」

マチェットナイフとの鍔迫り合い、しかし両手持ちのあるまと比較して力の入れにくい逆手持ち、しかも片手で刀の押し切る力に余裕で耐えている

紅袖「あ、そうそう…。言い忘れてました、私…右利きなんですよね」

左手のマチェットナイフが刀と火花を散らす。あるまは一度距離を取ると手に持った速虫刀を納刀、もう一つの刀、岩斬剣を抜刀する

紅袖「いい刀ですねぇ…。手入れが良く行き届いてますし」

あるま「目利きは良いようならわかるな!?並みの金属など簡単に叩き切れるぞ!!」

勢い良く振り下ろされる岩斬剣、紅袖は不敵に笑うと左手で持ったマチェットナイフを持ち直して横に軽く振りかぶった

紅袖「どうぞ?」

ガキャバキィン!!耳をつんざくような金属の破壊音響く、それは…

あるま「な…なにっ…!?」

紅袖「くっふふふ…あーっはっはっ!!」

岩斬剣の刀身が砕け散った音だった

あるま「バカな…!芯に鋼玉を使っているんだぞ…!?」

紅袖「ごめんなさいね、ただの金属で」

普通ならば、あるまの一撃で紅袖のマチェットナイフは負けていただろう。しかし、あるまがその原因を理解するのにそう時間はかからなかった

あるま「腕力…!」

紅袖「そんなに力入れてませんよぉ?」

そう言いながら平手打ちで防御するあるまを壁に飛ばした。あるまは壁に打ち付けられた痛みより防御した腕が赤く腫れ上がり麻痺していた。そんなあるまを見ると紅袖は「ふぁ…」と欠伸をしながら静かに素早く他の戦闘に手を出して軽々と他の兎組メンバーを退けていった

紅袖「この程度でしたか、こんなことなら私達の誰かなら1日で済んでいましたね」

アデア「くっ…!」

紅袖「最後のチャンスをあげましょう。皆さんは今からハルサキ・ゆきの・テレジアが殺されるのを黙って見ていてください。そうすれば見逃してあげます」

アデア「答えは変わらない…!そんなことさせない!!」

風を切る音と飛んできたマチェットナイフ、それは壁にヒビと穴を作り突き刺さった

紅袖「おとなしく下手に出てあげたら付け上がる…。どいつもこいつも愚かしいですねぇ…」

流石にイラついたのかコツコツと歩いてくる紅袖、六人はそれでもなお迎え撃つべく構える

リスティス「はあっ!!」

一瞬チラッとアデア達を見ると単身大鎌で急襲するリスティス、しかし紅袖は至って平然に持ち手の部分を掴んでリスティスを大鎌ごと投げ飛ばした

 

紅袖「死神が相手なら道を開けるとでも?触るのがダメなら本人に触れなきゃいいだけでしょうに。さて…死にたい方からどうぞ?来ないなら私が選んじゃいますけれど」

 

 

デビローズ「皆さん、ここは私が」

アデア「ダメだ。ここは…ぼくがやる。だから…皆にお願いがある。少しだけ…目をつぶっていて」

ただいな「アデアさん何を…」

アデア「閉じてて!」

強く言い放つと鏡月を手にアデアが煌めく、強い光の中でその姿はすぐに変わった

紅袖「手品ですか?数といい賑やかですねぇ」

???「手品…?違うよ…」

 

その姿はいつもの姿からかけはなれた姿、長い髪に白い羽衣、足は地についておらずその目は深紅に染まっていた

 

紅袖「姿が変わって強くなるのですか?そんなものはアニメやゲームの中だけですよ」

投げられるマチェットナイフ。アデアがそれを睨み付けるとマチェットは倍速で戻り、そのまま紅袖の腕を切断した!

紅袖「おや…?」

陽炎「紅袖さん」

紅袖「平気ですよ、ところで今…何をしました?」

???「君が受け取り損ねただけだよ。次は私の番だ」

紅袖「(投げたマチェットが鏡に写したようにこちらに来た…。反射系統の何かですかね)」

腕を切り飛ばされて大量出血しながらも冷静に状況を判断する紅袖、しかしそんな余裕を持った思考は一瞬で消し飛んだ

???「これだけは使いたくなかった…。けれど…、それをさせたのは君達だよ」

わなわなと揺れる長髪、手に持つ鏡月は光り、ほんの一瞬だけ光を失ったように暗い色になった

 

 

 

紅袖「…!っ翠さん!!」

真昼の空はたった一秒で深夜ような暗闇へ、それとともに紅袖達の全身に深い切り傷、そしてスプリンクラーのように吹き出す血の雨

 

翠「テレポート…!」

 

暗殺者六人は消えた、おびただしい血の水溜まりを残して

 

???「…。はぁ…」

鏡月を放り投げて元の姿に戻るアデア。後ろでは目を閉じていろと言われたメンバーがずっと目を閉じていた

アデア「もう開けていいよ、ありが…とう…」

血溜まりに前のめりで気絶するアデア、それを目を開けたこのか達が青ざめた顔で駆け寄る

あるま「アデア!起きろ!!」

デビローズ「私の部屋へ!ただいなさん!手伝ってください!「はいっ!」」

このか「アデアっ!アデアっ!」

リスティス「おいおい…!息してないぞ…」

 

 

 

 

アベリア「それが全力?悪いけれど終わらせるわね」

周囲が暗闇に支配されて尚動揺を見せないアベリア、一方のラピスは突然の昼夜逆転に驚きと焦りからアベリアによって一方的に攻撃され続けていた

アベリア「静かなる死を手向けに…」

正確無比にして淡々と振るわれる暴力、ヒールによって体に穴を空けられながらラピスが蹴り飛ばされるとアベリアは羽をゆらりと震わせる。紫色とは違う黄色の鱗粉を撒き散らしてラピスを全身麻痺に陥れる

アベリア「抹殺実行(デストロイオーダー)…、キラーエクスキューション…」

ラピス「あ…アデア……」

浮き上がる寸前、アベリアが止まる。ラピスはギリギリ頭だけは動かせたようでアベリアから攻撃が来ないことを不思議に思って顔を上げた

アベリア「死にたい?生きたい?あなたってどっちなの?」

ラピス「…死に場所を求めているのは事実…だけれども…」

アベリア「あなたに見せてあげる。あなたのことを使ったやつらが何をしようとしたか」

胸ぐらを掴むとアベリアは飛翔。そしてサロンの窓へラピスを投げ飛ばした!!破壊音とともにラピスが見たものは…血塗れのアデア、そして自身の足元には夥しい血…

ラピス「アデア…!」

アベリア「今のあなたに、アデアの名を叫んで彼に駆け寄る資格があるのかしら?」

動かない体、近くて遠く届かない。そしてその一言はその時が進むにつれて錘のようにラピスの自我に圧し掛かる

ラピス「私は…私はぁっ…!!」

アベリア「見なさい。あなたを利用した奴らが残した爪痕を」

いつも皆で談笑していたサロンはもはや見る影もなく、壁には血や削れた痕跡。アデアを必死に呼びかける五人も傷だらけだった

アベリア「ここにあなたの居場所はもう存在しない。後悔しながら…。かつての仲間として、死を」

ラピスが見上げたアベリアの顔は、笑っていない悪魔そのもの。殺意の具現がそこにあった

「…めて…、ア…リア…」

サロンに木霊する小さな声、それは意識を失い尚右腕を差し出しアベリアを制止するアデアの声だった

アデア「許して…あげて…」

アベリア「…。次は無いわよ」

瞬時に戻る姿、ラピスはアデアへと手を伸ばす…

ラピス「アデア…!」

届くはずもなく、意識とともに落ちる腕。アデアは担架で運ばれて行った

 

 

 

 

 

 

 

紅袖「想像以上…でしたね…。これは…」

全身の切り傷から吹き出る血、押さえてもそれは止まることなく流れ続ける

紅袖「さすがにこの傷は助かりませんかね…。くっふふ…」

自分が死ぬかもしれない瀬戸際に笑う紅袖、後ろの五人も疲弊していた

陽炎「任務失敗ですか?」

紅袖「悔しいですが私達でさえギリギリ到着できたところでしたし他の方々に来てもらうには時間がオーバーしてしまいます。まぁハルサキの方々は皆殺しにしましたし過失金も頂戴しました、今回はそれで利益でしょう」

道下「いつか…殺す…」

紅袖「もちろん、依頼が来るなら次こそ必ず始末しましょう。裏切り者も含めて、ね…」

 

残った片腕で投げるマチェット。それは近くの木に刺さった

紅袖「同士じゃないですか、かくれんぼなんかやめて出てきてくださいよ。完殺さん」

わかな「…」

牙重「完殺…」

わかな「皆さん。お久し振りです」

紅袖「今回は私達も失敗してしまいました。どうでしょう?今戻ってくるのなら今回の失敗を不問にし、上部にこの事を揉み消してもらいますが」

わかな「まるで裏切った前提でお話しなさるのですね」

紅袖「違うのですか?でなければこそこそしないと経験上思ったまでですが」

わかな「…。紅袖さん。私はもう…。完殺ではありません。私の名前はわかな、これからいつまでも」

死崩「裏切り者がよくもまぁ…。殺しますか…?」

紅袖「いや…。気まぐれです。わかなさん」

わかな「はい」

紅袖「今日は見逃してあげましょう。生憎とこの状態で援軍など来られても困りますからね。しかし…次はありませんからね、その時は…。皆殺しにしますから覚悟していてください」

そう言ってテレポートで消える六人。わかなは一息つくと腰を抜かした

わかな「やっぱり…私には殺せない…。あの怪物は…」

凄まじい威圧感から解放された彼女の手にはハンドガンが握られていた。刺し違えてでも紅袖を殺す絶好の機会を伺っていたのだがあれだけのハンデがありながら戦慄するほど紅袖の放つ殺気は大きなものだったのだ

わかな「もっと強くならなければ…。誰かを護れるくらいに…、アデアさんと同じくらいに…」

 

 

 

 

 

 

デビローズ「呼吸器繋いでください!アンペルトさん電気を!」

アンペルト「アデアが助かるんなら全部持ってってくれや!」

デビローズ「意識を失ってるだけで死んではいません!絶対に死なせません!!死なせるものですか!!」

決死の覚悟でデビローズが動く、心電図は力なく一定の感覚を保っていた

このか「原因は何やの…!?」

デビローズ「不明ですよ…!こんなの初めてです…」

わかな「光を吸収しすぎた…ではないでしょうか…」

そこにわかなが扉を開いて入ってきた、一同はその言葉の意味がまるで理解できなかった

わかな「アデアさんの鏡月…。それは光を糧に強大な力を発揮することができます。時間はそのままでこの暗闇、おそらく…」

あるま「この周辺の太陽光を全て吸収したと…?こんな暗闇になるほどにか!?」

外は徐々に明るくなってはいたが未だに暗い。時間は昼だ、暗雲も立ち込めず晴れていた空の面影は何処にもない

わかな「(アデアさんから聞いたとおりなら…。これほどの光を吸収してしまったなら間もなくアデアさんは消滅、全ての記憶から消えてなくなってしまう…。それだけは…、それだけは阻止しなければ…!)」

 

ただいな「もしそれが本当ならば…。どうするのですか?」

わかな「…。これにかけます」

手に持つのは赤い薬液の入った注射器、わかなの手は汗と震えが見てわかるほどに緊張していた

デビローズ「なんですかそれは…」

わかな「…」

一刻の猶予もないが言葉を躊躇うわかな、反応からして"なんの薬なのか"それを知っているのは明らかだ。他のメンバーもそれには気付き、あるまとデビローズはその正体に現実であってほしくないと願っているようだった。だが…わかなは意を決して口を開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかな「DRK-0002EXD…ダークネスポケモンを人工的に作り出せる悪魔の薬です…」

 

 

 

 

その言葉にデビローズは目付きを変えてわかなの胸ぐらを掴んで壁に背を叩きつけた!誰よりも早く反射的に体が動いたのだ

デビローズ「ふざけんじゃねぇよ!そんなもん使わせるか!!てめぇいつからここに居やがる!?アタシらと出会った時!あの事件でダークネスポケモンがどんなもんか!知ってんだろうが!!」

デビローズが言っているのは彼女たち、所謂新メンバー二期組が配属前に救援に来た"シャーヴァルが脱獄したお話し"である。その時にダークネスポケモンの性質を知ることになった彼女達はその危険性を誰よりも知っている。この先に待ち受ける運命も

デビローズ「そんなもんでアデアをダークネスポケモンにしてみろ…!この場でぶっ殺して「だったら…」」

つかみ返される手、わかなの目は涙に溢れ、口元は悔しさに歪んでいた

わかな「だったらどうするんですか…!他に救う方法があるならこんなもの持ってきませんよ…。それにこのままアデアさんが居なくなったら…!皆さんの記憶から居なくなったら!!それを知ってる私は!どうすればいいんですか!?光をくれたアデアさんを救うにはどうすれば…!!」

あるま「二人とも落ち着け。わかな嬢、それをアデアに使ってダークネスポケモンの不死能力で救うのか?」

わかな「それともう一つ、中和剤として」

リスティス「吸収しすぎた光をそれでかい?」

わかな「絵の具のように一度混ざった黒を消せないかもしれません。しかしこれほど強い光ならば…ダークネスポケモンになること無く光を中和できるかもしれません」

デビローズ「くっ…!」

現状残った方法がこれかとデビローズは悔しさを露にする。他のメンバーも複雑な心境だ

わかな「責任は私が取ります。だから…!やらせてください…。アデアさんを救いたいんです…!」

 

黙認される意思。わかなは手を嫌な汗を吹き出し、微弱な震えを片手で押さえながら恐る恐るアデアの腕へその針を近づけていく

わかな「(お願い…!これが渡されたことが奇跡だと…。私にできる罪滅ぼしなのだと言うことを証明させてください…!!)」

 

 

アデア「ぐっ…!ぎっがぁぁぁっ!!!」

わかな「ひっ…!」

薬液を注射されて苦しみ出すアデアに怯えるわかな、だが怯むわけにはいかない。半分ほど注射すると針を抜く。アデアは苦しみながらも目を覚まさない

わかな「アデアさん…!負けないでください…!」

その瞬間に目を開けるアデア、その目はダークネスポケモンが力を発揮した時の黒い目だった…。だが…

リスティス「!。黒が…抜けてきてる…!」

黒くなった瞳が本来の色に戻っていた。完全に色が戻るとアデアは目を覚ました!

わかな「アデアさん…!」

アデア「み…みんな…。ここは…」

デビローズ「私の部屋です。あの暗殺者たちを退けた後に気絶したんです」

アデア「そう…だった」

自分がしたことを思い出したアデアは片目と頭を押さえて戦慄していた。それほど危険なことをしたのだろう

アデア「痛つっ…」

あるま「!アデア、傷が治って無いのか…?」

アデア「どういうこと…?」

その会話から状況を把握した一同。アデアだけが何を言ってるのかわからない顔をしている

わかな「(もしかして…アデアさんは付喪神のような存在…、つまり本質的には生物じゃないからダークネスポケモンにならなかった…?)」

一瞬の考察、それは的を得た答えだった

アデア「ゆきのは…」

アンペルト「無事じゃ、ライラやライフ、わしと交代にアベリアが守ってくれちょる」

アデア「そっか…」

 

 

 

 

 

 

アベリア「…ということよ、でも大事を取って今日は安静にしてたほうがいいわ」

一方のゆきのも目が覚めて事情を聞いていた、彼女もホッとする

ゆきの「私ね、夢の中でだけど久しぶりにお父様とお母様に会えたの、二人とも私を送り出してくれた時と同じ笑顔で抱き締めてくれた…」

 

光指す空を窓から見上げてゆきのは笑いながら言う。しかし…。もう彼女の両親は…いない…

 

ゆきの「長く会って無いけれど…。元気にしてるのかな…」

 

それをゆきのは知らない。そしてアデア達の部屋でも事情説明とわかなによるハルサキ家皆殺しについて説明があった

わかな「あの人たちはそんな人達なんです…。命を簡単に奪って、蹂躙して、幸せを踏みにじる…!」

あるま「ゆきの殺しを依頼し、ルールに反目したのがゆきのの血族、故に親族皆殺しか…」

リスティス「私も殺し屋だけれどさ、裏世界にもルールはある。奴らのルールは裏世界というただでさえ生きにくい世界をさらに生きにくくしている。必要数の殺しじゃないってのはそれだけで意味嫌われるのさ。だからシリアルキラーのルヴィロームにあれだけの懸賞金が付いたってわけ」

アデア「…。この事はゆきのには内緒でお願い。来るべき時に、話そう」

 

 

約束しあう決断。そしてその日は驚くほど静かに過ぎ去って行った

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

 

 

 

 

ベノ「なるほどな、ジンティアたぁめんどくせぇ所に目ぇ付けられてたんだな」

報告と二人の裏切りを弁護するためにアデアとわかな、ラピスにリスティスはベノとシャーヴァルの所へ来ていた。流石に裏世界に精通している二人はジンティアの名を聞いて顔に出すほど嫌悪感を出していた

シャーヴァル「ジンティア、実を言えば噂しか聞いたことのなかった組織だ。なにせ目撃者が全くいない。それでいてその存在は一部に知られている」

ベノ「例えばよ、一般的にニュースに報道していいラインがあるとする。殺人事件で~とかあるだろ?ところが連中のやってることはマジの皆殺しだ、一般人に易々と報道するラインを軽く超えてやがる。だから警察も公にゃできねぇ」

アデア「ベノさんたちが知ってる範囲でもっと教えていただけませんか?どんなことでも…!」

ベノ「条件付きならいいぜ、条件はゆきのの親の仇討なんてバカはやめろ」

アデア「…」

ベノ「黙るな、そういうところがお前の悪い癖だ、お前はやると言ったら絶対にやる。歯止めが効かねぇし七つの大罪を忘れたわけじゃねぇだろうよ」

蘇る記憶…。ゆきのとジラーチの繭を護るために兎組総出でたった一人の悪魔に全滅した。次々と倒れ、散りゆく仲間たち、全員が本気だったにも関わらずあっという間に自分だけが残ってしまったあの時をアデアは忘れてなどいなかった

ベノ「今回だって相手の中にすばやく適切な判断ができるリーダーが居たから逃げた。お前ひとりで追い返したと思うならそれはお門違いもいいところだ。次は通用しねぇし奇襲さえも簡単に対処した相手の本拠地なんざお前が行っても殺されるのが関の山だ」

悔しいがその通りであるだけに否定できない。アデアは一つため息を軽く吐いて落ち着くと「わかりました」と真剣な眼差しでベノのことを見た

ベノ「その目なら信用できるな。まずはそうだな…」

シャーヴァル「ジンティアという組織は俺たちが現役で裏世界を謳歌していた時はおとなしい組織だった。普通の暗殺を受け持つ組織なだけで今のような苛烈さは無かった」

ベノ「今回の報告で聞くまではその印象がそのまま定着していたんだがまぁ他には護衛も兼ねていたらしい。密輸の手助けをしたり取引の時に圧をかけるためだったりな」

シャーヴァル「そんな下請けをしていたほど小さな組織がまさか、な…?」

リスティス「私らから裏世界でお仕事奪って文無しにしてるなんてね、信じられなかったよ」

わかな「すいませんでした…」

リスティス「大丈夫だよ、あんた等こっち(てゐ劇)選んだんだろう?なら落とし前は元上司につけさせるさ」

ベノ「裏切りの件だがよ、ただじゃ見逃せねぇ、もうちょっと知ってることがありゃ教えてほしいんだがな」

わかな「僭越ながら…」

テーブルに置かれるUSBメモリ。それをベノは手に取った

わかな「私とラピスさんが知る限りのことを詰め込みました。ですがラピスさんと相談した結果これだけは口頭でお教えしなければと思いましたので述べます」

 

 

 

 

 

 

わかな「先日兎組に襲来した六名についてです。彼女たちはブラッドクラスというてゐ劇でいう天組に値するチームです。ブラッドクラスは別名ジンティアの猟犬と呼ばれています。暗殺に特化したクラスで特にリーダー的存在である紅袖…さんは特に危険です。遊び半分、冗談四割で味方さえ躊躇なく殺します」

アデア「それについて追記ですが…あるまの岩斬剣がただのマチェットナイフの一振りで折られました」

シャーヴァル「あの刀を折るか…となると腕力が凄まじいのか?」

ラピス「正解…。私にマチェットナイフの使い方を教えてはくれたけど…」

わかな「紅袖さんの本来の武器は素手なんです。マチェットナイフは手加減で持ってるだけと聞いたことがあります」

シャーヴァル「お前みたいだな」

ベノ「うっせ」

わかな「他には…炎と氷を操る陽炎、テレポーテーションを巧みに操る翠、見えない触腕で自分を守り、相手のペースを崩す道下、脚力が凄まじく蹴りの一撃でボーリングのような風穴を開けてしまえる死崩、全身を軽量強化武装で身を包み近接戦で相手をしとめる牙重。以上がブラッドクラスです」

ベノ「いっこんぞめみたいな奴がいるんだな。デルタ種か?」

わかな「私も驚いたのですが生まれつきのいっこんぞめさんと違って陽炎は改造と遺伝子操作らしいです」

ベノ「改造か…。ダークネスポケモンじゃねぇのか?」

ラピス「違う…。これは最近できたものと紅袖が喋っていた…。おそらくわかなが失敗した場合の最終手段と実験を兼ねていたと思う…」

シャーヴァル「…いまだ信じられないな。あの時かぎりだとは思っていたがもう一度生きて現物と対面することになるとは」

その手にはあの薬…DRK-0002EXDが握られていた…

 

ベノ「しばらくは兎組は毒組と行動を共にしろ、ほとぼりが冷めるまでな」

アデア「ありがとうございます」

わかな「さすがに毒組と一緒ならジンティアも手を出せないはずです。それに先日のダメージもあります」

ベノ「そのことなんだが鏡月で切られたんだろ?」

わかな「不可解なのです…あの傷じゃ助かるはずがないのに…」

ベノ「なんにせよ、これ以上は手出しさせねぇよ、てゐ劇に喧嘩売るだけならともかくこんな俺たちの過去を蒸し返すようなら許すわけにゃ行かねぇ」

シャーヴァル「ベノ、この一件は俺たち新生鍼組に任せてはもらえないだろうか。導かれたように奴らによって裏世界で居場所を失ったやつらが居るこの組が適任だとは思う」

ベノ「戦力的にもてめぇらしか行けねぇよ。こちとら偶然かどうか知らんがドンパチかまして怪我してる真っ最中だ、地組もほぼ同じタイミングで厄介ごとに巻き込まれて半分以上が大怪我だ、兎組もこの通りだしよ、鍼組にしか任せらんねぇ」

シャーヴァル「ありがたい。では早速作戦やプランを考察するとしよう。来るか?リスティス」

リスティス「ばーか、私も立派な怪我人だ、それに…こっちに来た時の保険にリタと待機させてもらうよ」

シャーヴァル「そうか。任せたぞ」

 

 

 

 

部屋を出たシャーヴァル。そこには裏世界から流れてきたメンバーが聞き耳を立てていたようで各々シャーヴァルへ歩み寄る

ルヴィローム「よぉシャーヴァル。遠足のしおりできたら教えてくれよ、バスケットに銃とナイフと鉛玉詰め込んで讃美歌でも歌いながらハイキングと行こうぜ」

ソフィア「同感ね、ついでに殺していい人数とか制限あるかしら?」

リヴィリーナ【(ホワイトボード)無いなら私が拡声器で叫んでもいいんだけど?】

リヴェータ「私も生計を崩された礼はしたいんだけど?」

シャーヴァル「急くな、おそらく敵の本拠地だ、なにが起こるかわからない以上むやみに突っ込むわけにも行かない。まずは情報を集める。ルヴィローム、一緒に来い。ソフィアはリヴィリーナとリヴェータと共に情報屋へ、俺達も独自のルートで集めてくる」

ソフィア「了解、合流時間はどうする?」

シャーヴァル「深夜0時までに戻ればいい。それまでステイル達に留守を任せている。早ければ明日にでも本拠地を叩く。もう…こんな物は作らせない。世界に不要なものだ」

 

 

ぎゅっと握られる注射器の中では赤い液体が…嘲笑うように揺らめいていた…

 

 

 

 

 

→NEXT STORY…

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。次がこのSpecialのホントの最後の物語です。このepisodeでザラームの封印を解き、冥王フランチェスカを間接的に復活させ、ゆきのの親族を皆殺しにし、ゆきの自身も殺害しようとした全ての元凶、ジンティアの本拠地にシャーヴァル達、新生鍼組が乗り込みます。

元々シャーヴァルはこの†MULTIPLE AIGIS†という物語の最初の敵でした、ですが人気になったことで仲間になり、主人公の一人にまで成り上がりました。そんな実力も折り紙付きの彼とその仲間達が激闘を繰り広げるepisodeⅣ、お楽しみに


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第一話

こんにちは、私も楽しみにしてました。いつも見に来てくれている言葉無き方々にありがとう。そして初めて見に来てくれた方々にようこその言葉を送りたいです


シャーヴァル「ここに来るのも何年ぶりか…」

 

感傷に浸りながらルヴィロームを引き連れて荒くれたちの集うバーに入るシャーヴァル。店の中の喧騒を無視し、二人はカウンターの椅子に腰掛けた

「いらっしゃい、何にします?」

後ろを向きながらそう言うマスターにシャーヴァルは真顔ながら口を開く

シャーヴァル「いつものを頼む、ルドルフ」

ルドルフ「その声…!シャーヴァルさん!?生きてらしたのですか!?」

シャーヴァル「幽霊にでも見えるか?どうやら反応からして針組が壊滅したというぐらいしか俺の情報は無かったようだな」

顔馴染みのマスター、ルドルフに気さくに話すシャーヴァル。普段から警戒心が強く高圧的な雰囲気を出しがちなのだが今はそこにはない

ルドルフ「いやはや…夢でも見ているのでしょうかね…?私はその一報を聞いてからもシャーヴァルさんの安否を気にしていたのですが」

シャーヴァル「訳アリだ、ボスは変わらずベノというのもな」

ルドルフ「ベノさんといえば現在はてゐ国歌劇団という組織を結成しているのでしたね、まさかそこに?」

シャーヴァル「あぁ、機密にしてくれるか?」

ルドルフ「もちろんです」

差し出されるドリンクに折り畳んだ紙が差し出される。シャーヴァルはそれをポケットに入れると一息つく

ルドルフ「お疲れのようですが何かございましたか?」

シャーヴァル「ルドルフ。情報が欲しい。ジンティアについてだ」

ルドルフ「!!」

シャーヴァル「知ってると思った。報酬はなんでもいい」

ルドルフ「シャーヴァルさん。ここではお話しできません。店が閉まるまで待っていただけますか」

シャーヴァル「構わない。そういう情報だからこそお前のところに来た」

円滑に進む話し、そしてルドルフは付き人にようやく気がついた

ルドルフ「シャーヴァルさん…!?」

シャーヴァル「安心しろ、俺が抑止力だ、暴れはさせない」

ルヴィローム「おいおい、そんな人を暴れ馬みたいに言うの止めろよな」

シャーヴァル「暴れ馬なんて優しすぎるな、銃口に手足が着いたような奴だお前は」

ルヴィローム「言い返しがいちいちおもしれぇなぁ。ルドルフ…だっけか、ジムビームあるかい?」

シャーヴァル「酒は飲むな、連れて帰る手間が増える上に酔ったお前はうるさい」

ルヴィローム「酒場だろ?他に何があるんだよ」

シャーヴァル「ジュースは何がある」

ルドルフ「今ですとジンジャーエールやアップルジュースがオススメです」

シャーヴァル「なら俺はアップルジュース、コイツにジンジャーエールを頼む」

ルドルフ「かしこまりました」

シャーヴァル「炭酸でも飲んで黙ってろ」

ルヴィローム「あいよ」

また余計な事を言うと禁止令を出されると感じたルヴィロームは椅子を2つ使って寝そべる。行儀は悪いがこんなチンピラだらけのバーでそれができるのも彼女くらいだ

 

シャーヴァル「本当に久しいな…。ここにいるとあの頃のことが思い出される」

ルドルフ「恐縮です」

差し出されたアップルジュースを少し飲むとまた口を開く。シャーヴァルにしては本当に良く喋る。それほどルドルフを信頼しているのだろう

シャーヴァル「治安は最悪だがマスターは腕利きだ、それが逆に助かる」

ここまでうるさいと逆に静かすぎる気配が分かりやすい。加えて情報の漏れが少ない。ここで日頃から騒ぎ飲んでる連中の耳には右から左へ素通りだ

ルドルフ「久しく会えば誉め殺しとは…。お恥ずかしい限り」

実はこのルドルフ、過去に何度もシャーヴァルに恩義と借りがあり、命を救われた事もある。裏世界ではいつ死んでもおかしくない。情報収集だって命懸けなのだ。そんな中で危ない橋を渡らざるおえない時、シャーヴァルに幾度も救われた、だからこそルドルフはシャーヴァルの生存を願って情報を集めていたほど慕っている

 

ルドルフ「それにしても…。まさか本物のデストロメアとお会いできるとも思っていませんでしたよ。確かに何処かへ雇われたからと賞金首のリストから除名されていましたが…」

シャーヴァル「昔話したとおりコイツとも長い付き合いだ。今は俺に手綱を握られてるが」

デストロメアとはルヴィロームの二つ名で、裏世界でこの名前を聞いたものは大きく二つの反応に別れる。一つはそんなもんおとぎ話だと笑うもの、もう一つは名前を聞いただけで逃げ出すものだ

ルヴィローム「あ゛ー、つまんねぇな」

シャーヴァル「タダで飲み物飲めるだけ文句言うな。これ以上無駄口叩くようならお前の給料から払うぞ」

ルヴィローム「別に構わねーよ、その程度の金でごちゃついて険悪になるほど腐れ縁でもないだろうよ」

シャーヴァルに隠れているがルヴィロームもいつもの人を小馬鹿にしたような口調が鳴りを潜めていた。人間もポケモンも自然体で居られることが最も素の自分を出せる。そこに…

「おうおう、偉く態度のでけぇ姉ちゃんじゃねぇか」

「このあたりじゃ見ない顔だな」

ルヴィロームの姿勢もあってか酔った勢いでチンピラどもが寄ってきてしまった、シャーヴァルはやれやれと警告する

シャーヴァル「悪いことは言わん。そいつに手を出すな」

「こりゃ傑作だぜ、彼氏か?」

シャーヴァル「カップルに見えるなら眼科行け、悪寒が走る」

ルヴィローム「ひっでぇの」

「こんな奴ほっといて俺達と遊ばねぇか?悪いようにゃしねぇ…」

ルヴィローム「私の懸賞金越えてるなら抱かせてやるよ」

「五十万ポケドル、イカすだろ?」

ルヴィローム「なんだ、お粗末な金額だなせめて100万だろ」

「てめぇ…懸賞金「よほど自信があるらしいな」

ルヴィローム「なんならてめぇらの合わせても足元に及ばねぇよ」

シャーヴァル「挑発するな、お前達も死にたくなければ…」

「黙りやがれ!ここまでコケにされて黙れるか!」

ルヴィローム「10京」

「は…?」

ルヴィローム「10京58億9000ポケドル、越えてみろよ」

その声は一瞬静まり返った店内に響き、全員の耳に入ってしまった。ざわつく者もいれば腰を抜かしている者も居る

ルヴィローム「ちょっと留守にしただけで裏世界ってのは忘れちまうのか?デストロメアってのをよぉ…!」

その瞬間にバーはパニック状態。全員が悲鳴を上げて我先にと逃げ出す阿鼻叫喚の地獄絵と化した

ルヴィローム「おーっと、てめぇは待ちな。人をナンパしておいて逃げんのかよ?ちょっと付き合えよっ…!」

シャーヴァル「泡吹いて気絶してるぞ」

ルヴィローム「それが?」

バァンッ!!

シャーヴァル「いい加減にしろ」

言葉が挟まらないくらいの早さでマグナムをチンピラの脳天に突きつけて引き金を引くルヴィローム。だがそれを察したシャーヴァルが銃身を掴んで上に向けたことでチンピラは命拾いした

ルヴィローム「止めんなよな、見せしめにしねぇとまたバカが来るだろ」

シャーヴァル「バカはお前だ、俺の行き付けで改造マグナムを黙って撃たせるとでも思っているのか?」

天井には拳銃の開けたものとは思えない穴が空いており、確かなことはすべての床と天井をぶち抜きその弾丸が屋根さえ突き破っていることだった

 

シャーヴァル「すまない。ルドルフ」

ルドルフ「いえ、私の店は前払いオーダーなので。それに人払いにもなったのではないでしょうか?」

ダンディーな対応にシャーヴァルは珍しく笑った。強がりなのか仲間の前では笑顔など滅多に見せないシャーヴァルにルヴィロームは(コイツにもこんな笑顔ができるんだな)と心の中で呟いた

 

 

 

ルドルフ「さて、盗聴機の類いも無いようですしこちらへ」

カウンターの中へ案内させられる二人、ルドルフが棚の奥を触ると床が開き地下への道が出来上がった

シャーヴァル「懐かしいな」

ルドルフ「恐縮です。ささ…」

座り心地のいいソファーに座るシャーヴァルとルヴィローム。ルドルフはいくつかのファイルを開いて口を開く

ルドルフ「ジンティアは最近フリダラシティ近辺にて頻繁に目撃されています。街中にアジトがあると見て良いでしょう」

シャーヴァル「スオリア地方のか、よくもあんなところに…」

ルヴィローム「懐かしいなぁ、私が皆殺しにした街だろ?」

ルドルフ「その通りです。それから二年たった時に街は再建されました、ですが今度はデスハーメルンの襲撃を受けて再び住民は皆殺し、三度目の正直という訳にも行かず国から破棄された街です。ジンティアにとって立ち入り禁止区域なのが幸いしたのでしょう」

ルヴィローム「そんなことまで知ってるたぁただの情報屋じゃねぇな?」

シャーヴァル「ルドルフ・ガンディーニ。元は裏世界で処刑人をして生計を立てていたが仲間から処刑の時に手を抜いていたと難癖をつけられて裏切られた。追手に終われている中で偶然針組に捕縛された」

ルヴィローム「ほぉ…?良く生きてたなぁ」

ルドルフ「恐縮です。その時捕縛してくださったのがシャーヴァルさんとその直属の部下の方々でした。シャーヴァルさんは見ず知らずの死に損ないであった私にとても親身になって介抱してくださりました。そして私の属していた組織を潰しに行っていた針組に私の知る情報をすべて、余すこと無く告白しました」

ルヴィローム「で、ベノにルドルフのことを言わず逃がしたってわけか?」

シャーヴァル「当時のベノのことを考えるとな…」

ルドルフ「えぇ、シャーヴァルさんに拾われたのは本当に奇跡でした」

ルヴィローム「そういやよ、当時のベノってどんなんだったんだ?」

シャーヴァル「そうか、お前はその頃デビューしたてだったな。当時のベノはそうだな…」

 

ルドルフ「ヴァイオレットフレスベルグ…。紫の鏖魔でしたかな…?」

ルヴィローム「聞いたことねぇな。針組のことは知ってたがよ」

シャーヴァル「お前が本格的に活動し始めた頃には針組は壊滅していたからな、知らなくて当然だ。命があるからこそ罪がある。だから皆殺しにする。それが当時のベノだ」

ルドルフ「重ね重ねその節は…」

シャーヴァル「何度も言ってるだろう。何度も礼は要らん。ところで…」

ルドルフ「おやっさんの情報。ですか?」

シャーヴァル「あれから音沙汰は」

ルドルフ「やはりもう裏世界から引退なさっていますと足取りは…」

シャーヴァル「そうか…」

ルドルフ「また何かあれば連絡いたしましょう。お代は結構ですので」

シャーヴァル「俺としてはいくらでも払いたいのだがな」

ルドルフ「私が素直に受けとると思いますか?」

シャーヴァル「買える間際にポケットにでも返されるのが関の山だ」

ルドルフ「仰る通りです。それではこれを…。私が知るかぎりジンティアの情報です。今話した以外の事も書いてあります」

メモリを渡すルドルフ。シャーヴァルは一言「すまないな、いつも」と返して受け取ると立ち上がって踵を返した

 

ルドルフ「ご武運を」

シャーヴァル「次はちゃんと飲みに来る。良い酒を置いててくれ」

 

 

行きとは違う扉を開いてシャーヴァルとルヴィロームはルドルフの店を後にした

 

 

 

 

 

 

 

第二話へ続く…

 

 




お疲れ様でした。次も頑張ります


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第二話

こんにちは。5ヶ月も空いたの信じられませんな。そのぶん他が更新されてるはず。どうぞそちらもご覧あれ


シャーヴァル「買い出しご苦労。さて、お前達。本題だ」

朝っぱらからエレッサが食べた分+買い出しに出掛けた新生鍼組一同。買い出した物を片付けながら広い台所でシャーヴァルが話を切り出す

シャーヴァル「緊急にして極秘の任務。それも俺たちにしか出来ない」

その一言で全員の目付きが厳しいものに変わる。裏世界組は元より元一般人出身のれんがやキサラギ達も入隊後シャーヴァルに鍛え上げられたため戦闘関連になるとそのモードに切り替える

シャーヴァル「先日、毒組、地組、兎組が立て続けてトラブルに巻き込まれた。無関係に思われたこれらが繋がっているのではないかというのが俺の推測だ」

れんが「根拠とかあるの?」

シャーヴァル「毒組が対峙したザラームという闇の化身の封印が外的要因で解かれていたらしいのだが。それを守れと一般人を脅した人物が兎組を襲撃した者と特徴が同じだという」

ステイル「それは偶然とは言いにくいですな…」

シャーヴァル「時をほぼ同じくして地組と大立ち回りをしたクティス・オス・サンクティスという集団。それらに味方したのがわかな、ラピスの同僚だったとも聞いた。やはり俺の推測というのは嫌でも当たりやすいようでな。二人に確認した所…、ジンティアと呼ばれる暗殺組織が関与していることがわかった」

エルッタブ「それを潰すのが任務なのか?」

シャーヴァル「即決に言えばそうなる。だがただでは潰さない。今回主に狙うのは…、奴等の研究施設だ」

ルヴィローム「あ?なんでんな所潰すんだよ。皆殺しにすりゃいいだろ」

シャーヴァル「…。無論出来るならやるつもりだ。だが最優先はそこだ、奴等は人工的にダークネスポケモンを産み出そうとしている。それも俺達の過去を蒸し返すようにな…」

複雑な心境か表情に出るシャーヴァル。しかしすぐに切り替えて話を進める

シャーヴァル「もし奴等に簡単に見つかればどうなると思う?」

ソフィア「雑魚やそれなりの奴を送り込んでくるわね。そうすれば研究資料や資金を持ってトンズラぐらいは出来るんじゃない?」

シャーヴァル「まさにその通りだ。奴等の戦力の全体も把握出来てない以上、やれることは火消しぐらいしかない」

リヴェータ「正しい判断ね、兎組を襲ったのが尖兵に過ぎないなら本拠地には恐らく…」

シャーヴァル「…。これも嫌な予感だが…、ルヴィロームがデストロメアと呼ばれる前、ソフィアなら知ってると思うが不自然なタイミングで裏世界の賞金首から数名名前が消えた事があった。簡単に殺されるような連中ではなかったはずだが…」

たらこ「それを殺せるような奴が居たってこと?」

リヴィリーナ【私達みたいに契約したかもしれないよ?】

シャーヴァル「どちらも考えられる。何にせよ気をつけて行くぞ」

キサラギ「何処に…?」

シャーヴァル「スオリア地方、フリダラシティ」

キサラギ「何処だよ…(超小声)」

エルッタブ「聞かない地名だな」

シャーヴァル「当然だ。オーレ地方の北北西に位置する地方であのニケルダーク島が地図にギリギリ入ってるくらい遠い」

リヴィリーナ【懐かしいなぁ。思いっきり歌ったよ】

シャーヴァル「治安は正直かなり悪い。一見平和そうに見えて人通りが少なかったり夜になると本性を現す地方だ」

ソフィア「そのせいで他の地方から全然旅行客とか来ないのよ。賄賂を貰えば警察だって犯罪を黙視して協力してくる。裏世界の住人でも滅多に行きたがらないわ」

シャーヴァル「宿も簡単には取れない。盗難や襲われる可能性がある。なので目的地のフリダラシティまでは他所の街にはいかない」

れんが「じゃあどうすんの?」

シャーヴァル「改造キャンピングカーを二台。男女で分けて使う」

ソフィア「それなら危険は低いわね昼夜交代で見張ればさらに危険は減るし」

シャーヴァル「負担は掛かるがキサラギに氷でドームを作って貰えればさらに危険は減る」

キサラギ「頻度にもよるけど…。そのくらいなら…やってあげますよ…」

れんが「ありがと!キサちゃん!」

キサラギ「(うっぜぇ、熱い、キモい)れんが先輩は外でいいですか?」

シャーヴァル「れんが。感謝は充分伝わったから離れてやれ」

 

 

 

 

 

 

 

エルッタブ「ガレージにキャンピングカーなんてあったか?」

シャーヴァル「改造含め手配はしてある。RPGぐらいなら耐えれるように頼んだ」

れんが「へー、ゲーム出来るの?」

ステイル「れんが。RPGとは対戦車用のロケットランチャーのことだ」

れんが「何それ!?そんなの飛んでくるの!?」

シャーヴァル「これが実物だ」

ヒョイと投げられる弾丸無しの銃火器。シャーヴァルはいままでガレージにあったが厳重に施錠されていたドアの中から次々と武器を持ってくる

ルヴィローム「どれも手入れが行き届いてるな」

シャーヴァル「いざと言うとき使えないのでは宝の持ち腐れだ。それとお前は自前があるだろう。触るな」

よほどルヴィロームに触られたくないのか釘を刺す。実際の所ルヴィロームの銃火器は改造されており、引き金からして強靭に作られてある。何故なら彼女の握力や腕力が強すぎて普通の武器が耐えられないからだ。引き金を引けば折れ、グリップを強く握れば痕が付く。剣を握らせれば振りかぶった時に刃が割れ、最悪刀身がすっぽぬける時もある

シャーヴァル「各自適当に装備を取れ。全員の防弾チョッキも用意する」

ソフィア「よほど癪に触られたのね」

シャーヴァル「私情は挟みたくないがそれを抜きにしても大事態だ。速急に対処しなければいけないだろう」

かなり手慣れた手つきで装備を整えたシャーヴァル。いつもと違う胸当ての右側には織田木瓜が刻まれており左には「刀」の文字。普段と似ているが違う姿に着替えていた

ソフィア「あら、懐かしいわね」

トットッパ「シャーヴァル様。そのお召し物は?」

シャーヴァル「昔使っていたものだ。時代遅れの装備だったが時間を見つけては補強していてな、つい最近使い物になるまでこぎ着けた」

右肩を大胆に出したデザインだがシャーヴァルにとってはこの方が刀を振りやすいようで一方左肩はちゃんと袖を通しているが懐に小型の武器をしまうためでありアシンメトリーなことにほとんど意味はなかった

ソフィア「昔はその赤い片袖と鎧を見ただけで逃げ出す兵も居たわね」

たらこ「いつものも良いけどカッコいいね。リーダー」

シャーヴァル「あれは囚人服をアレンジしただけだ。そのぶんこれはちゃんとした戦闘服。強度や利便性は段違いだ」

クラッパ「素材は何だす?」

シャーヴァル「月の石から稀に変化するルナエレメントと希少な軟質金属。ホワイトメタルを加工した。刃を通さず銃弾を弾く優れものだ」

コンコンと固くも軽い音。いつも素手のシャーヴァルには珍しく籠手も付けている。完全な戦闘態勢だ

 

 

 

 

 

シャーヴァル「各自射撃訓練。リヴェータとリヴィリーナ。お前達は免除だ」

ルヴィローム「あたしは?」

シャーヴァル「武器の点検でもしていろ」

冷たくあしらわれてどこかへ行くルヴィローム。れんがは挙手をする

シャーヴァル「なんだ」

れんが「なんで二人は免除なの?」

シャーヴァの「バトルスタイルに銃が不必要だからだ」

確かにリヴィリーナは声、リヴェータは体術で過去の生計を立てていた。それを言われると二人は言われるまでもなく突如体術による組み手を始めた

シャーヴァル「他に質問はあるか?明日の朝に車は届き、すぐ出発する。一秒も無駄に出来ないぞ」

れんが「何もないよ」

シャーヴァル「解散」

作られていた射撃訓練所で射撃を始める八人。ソフィアはグキグキと体を解すとシャーヴァルと組み手を始める

 

 

 

エルッタブ「思いの外当たらん…。反動か?」

クラッパ「エルッタブ、その撃ち方してると肩をやられるだすよ」

トットッパ「サブマシンガンやライフルは肩を完全に密着させて反動を流さないと危ないぞ」

エルッタブ「ん、そうなのか。というか何でそんなこと」

トットッパ「俺達こう見えて大学出てるしクラッパのせいで色んな知識増えてるからな。そんでもって重火器の扱い方を勉強した」

クラッパ「原理さえわかれば意外と扱いやすいだす。それで撃ち方も各それぞれ把握してればもっと使えるだすよ」

 

 

 

 

 

数時間後…

 

 

 

 

 

シャーヴァル「訓練終了!夕飯を食べて明日に備えて寝ろ!」

 

 

 

 

 

 

就寝命令を出した後、シャーヴァルはガレージにいた。ようやく届いたキャンピングカー(機能はほぼ戦車)のメンテナンスと積み荷作業をしていた

ソフィア「がんばり屋さんね。手伝うわ」

シャーヴァル「お前が命令違反か。珍しい」

ソフィア「善意よ」

特に咎めることもなく淡々と作業する二人。なにせ世界一物騒な遠足へ向かうのだ。今回ばかりは死傷者が身内に出るかもしれない。歴戦を経験したことによる不安が二人を襲っていた

ソフィア「怖い?」

シャーヴァル「いつだって仲間を失う可能性がある戦は怖いに決まっている」

ソフィア「そうよねぇ…」

シャーヴァル「そういえば聞いてなかったな。かつての部下はどうした」

ソフィア「みんな元気よ。数人は病や後遺症で死んだけど」

シャーヴァル「戦闘で死んでいなかった辺り女神の加護は健在なようだな」

ソフィア「よしなさいな。昔のジンクスよ?」

昔、ソフィアが軍に、シャーヴァルが針組にいた頃。とある小隊の顔触れが全く変化していなかった事からソフィアは軍神と呼ばれていた頃があった。だがその通り名を気に入らなかったのが当時のジーパン。ソフィアが率いる小隊の数名を強襲して殺害。ソフィア本人の顔にある大きな火傷はその時投げられた火炎手榴弾による物だ。それ以来彼女は火傷顔の戦女神(フライフェイスブリュンヒルデ)と呼ばれるようになり、それから二度とメンバーが死亡することがなくなったという

シャーヴァル「昔は刀も軒並み折られて疎ましかったが今ではそのジンクスが欲しい所だ」

ソフィア「弱気?」

シャーヴァル「かもしれない。正直兎組のあの怪我を見れば嫌でもわかる。あの怪我を負わせた奴等は本物の殺し屋、それも容赦しないタイプだ」

思い返すとアデア達が受けた怪我は少なかった。だがそのぶん急所周辺に傷が多く、どれだけ執拗に狙われたかを物語っていた

シャーヴァル「無駄傷を増やさず、殺しだけを遂行する…。か」

ソフィア「殺し屋としてはパーフェクトすぎるわね」

シャーヴァル「ゆきのの親族を皆殺しにしておいて痕跡もほとんど残してない。同じ大量殺人をさせてもルヴィロームとは大違いだな」

ソフィア「ふふっ。違いないわね」

思わず吹き出したソフィア。ある意味ブラックジョークなのだが身内に本人がいるということもあって笑ってしまう

シャーヴァル「すまない。笑ってくれて少し気が楽になった」

ソフィア「それは何より。そういえばついさっき元部下から情報が来たわ」

シャーヴァル「内容は」

ソフィア「裏世界で賞金首リストに動きあり。また不自然に数人消えたらしいわ」

シャーヴァルはそのリストを見せられて少し驚く。消えたのがどれも指折りの名だたる賞金首ばかりだったからだ

シャーヴァル「…殺されたか」

ソフィア「でしょうね。そのリストに載ってるのはいずれもかなりプライドが高く、群れたりするのが嫌いな連中だもの」

シャーヴァル「お前達が消えて新たに裏世界を牛耳った実力者、および俺達のスカウトに応じなかった連中。どれも行方不明の一貫性に欠けるか…」

ソフィア「殺しに一貫性って必要?」

シャーヴァル「いや、計画的でないなと思ったまでだ。もし一つの組織によるものだとしたら動きが派手すぎる」

今一度そのリストを見る。この中で一人目に留まった人物名があった

シャーヴァル「剛速のライゼン…。世界最悪のオンバーンか、スカウトを試みただけに残念だ」

 

 

 

 

ライゼン「ぐあっ!てめぇら!俺が剛速のライゼンだと知ってこんな真似をしてんのか!?」

???「もちろん。初めまして、剛速のライゼンさん」

強制連行されて薄暗い闘技場のような場所に連れてこられたのは剛速のライゼン。そして話しかけてきたのは仮面をつけ、全身をローブで隠している紅袖だった

ライゼン「誰かは知らんが何の用だ!契約か!?」

紅袖「いえいえ、そんなとんでもない。あなたにはただ戦ってもらいたいだけです。勝てればお帰し致します」

ライゼン「戦う…?どいつとだ」

紅袖「まあそう焦らないでくださいな。今お出ししますから」

金属質な床がオープンしてせりあがって来たのは随所にアーマーを着けた少女。目元も隠れており表情が読み取れない

紅袖「さあ、いつでもどうぞ」

その言葉を鵜呑みするわけにもいかず様子を見るライゼン。隣では紅袖が仮面の下で笑っている

ライゼン「女に手を出すのは好きじゃねぇが…!許せよ!!」

覚悟を決めたライゼンは風の刃を複数作り出し、ブーメランのように飛ばす!そしてその風の刃と共に自身も飛び出す!

紅袖「遅いですねぇ…」

刹那、聞こえた一言。ライゼン自慢のスピードが遅いと比喩された。ライゼンは聞き間違いかと一瞬戸惑うがその言葉はそのままの意味だった

???「BELIAL SYSTEM STANDBY」

迫る直前聞こえる機械音。圧倒的に出遅れた少女は…

ライゼン「なにっ…!?」

風の刃を飛び出した風圧だけで消し去ってライゼンをも裕に越えるスピードで圧倒する

ライゼン「どこだ!?後ろかっ!?」

追えてはいる。だが反応が追い付かないほどの速さに翻弄される。煽るように紅袖はクスクス笑う

紅袖「これが今の裏世界最速ですかぁ?他愛ない…」

ライゼン「くそおおっ!!」

増える切り傷。しかし刃物で切られた感じではなくすれ違った時のかまいたちによるものだった。

ライゼン「この俺が…!捉えらきれないだと…!?ふざけるなぁっ!!」

生き物には不可能レベルの機動力。方向転換の速さ。反射速度、全てにおいてライゼンは手も足も出ない。加速し続けた結果ライゼンは足元から凍っていく

ライゼン「(空気が凍る…!?)」

全く動かせてもらえず凍り付くライゼン。凍りきった瞬間、その少女はただの高速体当たりでライゼンの凍った身体をバラバラにする

紅袖「はいはい。良くできました。今の裏世界は情けないですねぇ。上から数えてこの弱さとは笑いすぎて泣けてきますよ。あなたもそう思いません?」

砕けた氷塊を踏み割って言い放つ紅袖。一方で少女はじっと止まっている

紅袖「人形に何を言っても無駄ですか、ではおやすみなさい」

金属の床に収納されていく少女。紅袖はコツコツと歩き去った

 

紅袖「ダークネスポケモン。それを自在に操れれば…我々ジンティアは永遠となる…くっふふ…。作り出すも、壊すも、我々の思うがままに…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話へ続く…

 

 

 

 




お疲れ様でした。ちょっと理由があってこっち優先にします


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第三話

こんにちは。シャーヴァルは以前お話した通りこことは違う場所で連載していた時に初めてこの物語のヴィランとして登場しました。ではなぜヴィランになってしまったのか。本当にヴィランなのか。ご覧ください


ステイル「準備完了しました」

シャーヴァル「よし、お前たち。心して聞け。今から向かう敵地は極めて危険だ。仲間から死傷者が出る可能性が高い。必ず指示を聞き、勝手な行動は慎むように」

 

全員が真剣な目でシャーヴァルを見つめる。いつも以上に緊張感が走る

シャーヴァル「ポケモンバトルのように行儀よくはできない。殺すか、殺されるかだ」

今回は不殺の信念をキッパリ捨てているのがわかる。目に一切の迷いが無い

シャーヴァル「基本的に俺やルヴィロームの後ろから物陰で銃撃していてくれればいい。後ろさえカバーしてもらえているなら充分だ」

れんが「当たらない?大丈夫かな…」

シャーヴァル「当たらないから大丈夫だ」

キサラギ「具体的には…?」

シャーヴァル「音でわかる」

ソフィア「同じく」

リヴィリーナ「(私もよけれるから平気)」

リヴェータ「当たっても痛くない」

ルヴィローム「撃たれてから反応できる」

キサラギ「(コイツらポケモンじゃねぇ…)」

激戦を潜り抜けて来ただけあって自信満々に答える裏世界出身者達。ステイルを初め全員がちょっと引き気味に苦笑う。そんな中、たらこが手を挙げる

シャーヴァル「どうした」

たらこ「エレッサも連れてくの?」

シャーヴァル「当然だ。いつもは胃袋ブラックホールなだけだが覚醒した時は俺達以上の力を出す。なんと言ってもエレッサはダークネスポケモンの暴走状態を自在にコントロールできる」

実はエレッサはその代謝が凄まじいのかダークネスポケモンの力をほぼ自在にコントロール出来ることが判明したのだ。だがやはり空腹になると元に戻ってしまうようであまり長続きはしない。しかしそうなればどんなものでも溶かして食い尽くす怪物となるのだ

シャーヴァル「それと解錠要因だ」

トットッパ「あれ?エレッサさんってピッキングできるのですか?」

シャーヴァル「いや、胃液で溶かす」

クラッパ「完全に扱いがアイテムだす…」

シャーヴァル「まぁ今回はそういうことからモンスターボールの中で大人しくしていてもらうがな」

てゐ劇仕様のモンスターボールで強制的にボールの中に入れられるエレッサ。ガタガタしているが開きそうにない

シャーヴァル「わめくな、そのときになったら出してやる」

懐にしまうとキャンピングカーへ向かう一同。男女に分かれて(エレッサはシャーヴァルの監視下)いるその二台に全員がそれぞ乗り込む

シャーヴァル「ソフィア、頼むぞ」

ソフィア「任せなさいな」

見た目はそれだが中身は戦車そのもの。武器庫がありショックにも強い。エンジンも改造されているが音はおとなしい。エンジン音でこれが改造車だと気付かれる可能性があるからだ

シャーヴァル「まずはオーレ地方まで行くぞ」

ソフィア「そこからアイオポート、それでニケルダーク島の近くを通っていく感じかしら?」

シャーヴァル「あぁ。非合法でいく、いくぞ!」

 

 

 

 

 

 

ベノ「シャーヴァル…」

まお「心配か?」

ベノ「ちょいとだけな、関わってるもんがものだけにどうもな…」

アデア「僕たちも向かったほうが良かったのでしょうか…」

ベノ「足手まといも良いところだろ。大半が怪我してるこの状態、もし攻めてこられたら迎撃できるかどうかだ」

まお「気持ちはわかるが今はシャーヴァルたちを信じる他あるまい。帰りは迎えでも出せば良かろう」

アデア「そう…ですね、できれば僕も行きたかったです…。でも、僕の使命は皆さんの事を守ることですから我慢します」

ベノ「そうしろ。復讐なんかしてもゆきのは喜ばねぇ。今は休んでいつかあいつ自身が向かい合ってケリをつける。それまで皆で守ってやれ」

アデア「はい…」

ベノ「世界そのものをどうにかしちまう程の本物の規格外ならともかくアイツならやれるはずだ。信じてるぜ、シャーヴァル」

 

 

シャーヴァル「ベノ…」

心に思うのは不殺を捨てて戦うべき時が来た。そしてそれに対してあまりにも自分の覚悟が足りていなかったかだった。今頃ながららしくなく内心弱気になっている。だが…ふと後ろをバックミラーで見る。今の自分は一人じゃない。だからこそ、失う辛さを知っているシャーヴァルは車を止めた

ステイル「リーダー?どうされましたか」

シャーヴァル「いや…」

踏み出す覚悟は足りていたはずだった。しかし目をつぶった最中、ある光景がフラッシュバックした

シャーヴァル「(今のは…)」

忘れるはずもない。過去の記憶、ハッキリと覚えている。あの日、あの時、何が起こってしまったのか。そして、自分が何をしたのかを

ソフィア「シャーヴァル?どうしたのかしら」

シャーヴァル「…ステイル。頼んだ…」

若干のふらつき。それに反応したステイルが肩をがっしり掴んだ

ステイル「リーダー!やはりご無理を…」

シャーヴァル「かもしれない…。休ませてもらうぞ…」

備え付けたベッドスペースに入ってカーテンを閉めきったシャーヴァル。それを全員が心配する

ステイル「ソフィア、俺がリーダーに替わって運転する」

ソフィア「了解。お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーヴァル「…」

???「起きてください。隊長」

シャーヴァル「…どうした、バボーチカ」

バボーチカ(モルフォン♀️)「到着しました。それとボスがお呼びです」

シャーヴァル「すぐ行く。他の奴らは」

バボーチカ「待機してます」

シャーヴァル「巻き込むことになってすまない…」

バボーチカ「いえ、隊長がそうお決めになったのなら私達はそれについていくだけです」

シャーヴァル「前々から思っていたがこの際だ、なぜ俺にそこまでついてきてくれる?」

バボーチカ「隊長の事が好きだからです。どんな時でも自分じゃなくて誰かのために動ける。そんな隊長だから私達は…」

シャーヴァル「そうか。どうなるかわからん以上、俺からはありがとうと返そう」

バボーチカの真横を通って装甲車の後ろから外に出るシャーヴァル。砂塵を巻き上げて見える施設。それは過去に悪の組織、シャドーがオーレ地方の中心部で使用していた研究所だった

シャーヴァル「ベノ」

ベノ「シャーヴァル。おせぇぞ」

シャーヴァル「いよいよか?」

ベノ「あぁ、これで世界は変わる。人間が散々酷使してきたポケモンたちがこの力で反旗を翻し、二度と虐げられるポケモンがいなくなる世界になる。長かった…これで今まで犠牲になった奴らへの弔いになるってもんだ」

シャーヴァル「その理想への第一歩を勤めさせて貰えるとは光栄だな。俺も楽しみでならない」

内心に渦巻くはベノとの決別。同じものを見ていたと思っていたがその残虐なやり方に違うと感じたのだ。この暴走を止めてやれるのは自分しかおらず、そのための力もそこにあった

シャーヴァル「(ダークネスポケモン…。ダークポケモンをはるかに越えた存在…。今まで伝承で伝えられてきた数少ない情報からダークポケモンをベースに再現した全知を越える力、今それが俺に…)」

カプセルの中に入り、口に大きなマスクを装着して内部に液体が注入される。それが満たされる頃にはシャーヴァルは覚悟を決めきって目を閉じていた

ベノ「やれ」

その命令でシャーヴァルの腕に突き刺さる注射器からは赤い薬液が体内へ侵食を始めていた

ベノ「シャーヴァル。頼むぜ、お前になら、任せられる。この世界を…」

 

 

 

 

バボーチカ「(全勢力が集まる今日、針組を殲滅するならこれ程絶好の機会はない…。隊長、どんな結果であれ私達はあなたを…)」

 

 

 

シャーヴァル「(…!!)」

カプセルにヒビが入り、液体を吐き出しながらシャーヴァルは飛び出してきた。その瞳は完全な黒色に染まる

ベノ「シャーヴァル…。おい、大丈…」

心配した瞬間をついてベノを壁に突き飛ばして周囲の研究員を皆殺しにするシャーヴァル。たった一振りで首を切り飛ばした刀は血に染まって赤黒く銀色の刃を彩る

シャーヴァル「ベノ…。感謝する。これでこの世界を変えれる。針組を潰してな…!」

刀を投げ捨て懐から刀の柄を取り出す。これこそ持ち主の命を吸って刃とする妖刀 夢幻影角だ

ベノ「それは…!」

シャーヴァル「この日のために手にいれた!お前はやりすぎた。俺がお前を、今まで犠牲になった奴らの元へ送り届けてやる…!」

決意を瞳に影角刃を生成して斬りかかるシャーヴァルにベノは打突剣で応戦する。しかし力を増したシャーヴァルに力及ばず機材に何度も激突しながら防戦一方だ

ベノ「お前っ…!」

シャーヴァル「罪もない滅ぼされたスラムで生き残った少女の涙を知ってるか…!?山積みにされた死体に突き刺さった十字架を見て…!誰が親かの区別もつかないくらいにズタズタにされて…!!あんな事を後何度やるつもりだったんだ!!生きていること事態が罪ならば俺がお前の生き恥を終わらせ!罪を償わせてやる!!」

つばぜり合いからの会話はシャーヴァルが蹴り飛ばした事で終わった。立ち上がるベノへ何度も刃を。今までの犠牲者からの怨念を返すように攻め立てる

ベノ「シャーヴァル!やめろ!!」

シャーヴァル「命乞いか!らしくないな!あれほどの命を奪っておきながら!!」

ベノ「そう取ってくれて構わねぇ…!だがな!今の自分が正常と思ってんのか!!お前は力に呑まれ、怨念返しをしているだけだ!冷静になれ!」

シャーヴァル「何を世迷い言を!この力はお前が生み出した!こんな力で世界平和でも夢見てたのか!!」

ベノ「俺はただ…。ポケモンの世界を守りたかっただけだ!俺達の力を見せつけ、世界に呼び掛ければ人とポケモンを切り離せる!少なくとも俺達の側につけばな!!」

シャーヴァル「つかなければ裏切りとして見境なく殺すのか!たいした偽善だな!!」

ベノ「犠牲無くどうやって世界にマウント取るつもりだ!ゴミ拾い程度じゃ靡かねぇよ!根本から変えていく!それが俺の導きだした答えだ!!それとも!てめぇは殺しもせずに平和なんか勝ち取れるのか!?それこそ画餅だぜ!!」

意思の強さでは負けていない。どちらも曲がりなりに目指しているものは同じだ。だが、あまりにも道は交わらなかった

シャーヴァル「なら…。お前を最後に不殺の道を歩もう。お前さえ殺せば…うぐっ!?」

突然全身を襲う激痛。まるで体が、その体内にある臓物までもがわしづかみにされているようだった

シャーヴァル「ベノっ…!!何をしたっ…!!?」

ベノ「何言ってやがる!お前が勝手に…!」

シャーヴァル「なんだ…!?力を…!抑えられない…!!」

ベノ「シャーヴァル!!」

シャーヴァル「来るなぁぁぁっっ!!!」

ブツンッ!!テレビを消したかのように意識が真っ黒に染まる。だがわかる。自分の体が動いている感触を。まるでラジコンのように勝手に体が動いているのだ。

 

 

 

何も見えない。何も聞こえない。なのに肌先の感覚は敏感にわかる。想像したくもないそれはダイレクトに伝わってくる

 

 

 

目を覚ませ、そして止めろ。自分を操る何かを

 

そう思った時、誰かにそれを止められた感じがした

 

 

???「止めろ。今眼を開ければお前は絶対に後悔することになる。いいから黙って止まるときまで待て」

シャーヴァル「(その声…!いや、例えそうだとしても俺は止める!自分自身を!!)」

???「言っても聞かねぇか。へっ…。坊主、強く生きろよ。その先にきっとお前の望む世界がある。何があっても諦めるな、じゃあな」

シャーヴァル「(待ってくれ!おやっさ…)」

ザザッと砂嵐のように徐々に視界が見えてくる。聞こえてくる。だが制御するにはまだまだだった。その時…

???「目を覚ましてください…!隊長…!」

シャーヴァル「(!。バボーチカ…!)」

バボーチカ「今のあなたは…。あなたの望んだ姿じゃない…。それでもあなたがそうであると決めたのなら…」

シャーヴァル「(バボーチカ…!逃げろ!!)」

バボーチカ「私は…。あなたの礎となりましょう…皆が死に際にそう思ったはずです。だから私も…」

シャーヴァル「(皆…?なにを…。っっ!?)」

見えた光景。そこには白い金属質な廊下を真っ赤な血が色をつけ、原型を留めていない何かがそこらじゅうにあった…

シャーヴァル「(俺が…。俺がやってしまったのか…!?俺が…)」

同士として、家族同然に接してきた姿は何処にもなかった、全て自分が殺してしまったのだ。あの少女の親のように

バボーチカ「あぁ…。隊長…。いや…、シャーヴァル…。愛して…」

シャーヴァル「(やめろっ!!)」

ドスッっ!!

 

 

 

 

シャーヴァル「…。何も…出来なかった…」

必死に取り戻した正気、その右腕で貫いていたのは…。バボーチカの体だった…

シャーヴァル「バボーチカ…、許してくれ…。俺は…何も、誰も救えない…」

そして意識は再び闇の中へ消えていった

 

 

 

ベノ「おい!シャーヴァル!!返事しやがれ!いつまでも自分を失ってんじゃねぇよ!てめぇそんなタマじゃねぇだろ!ぐあっ!!」

ジーパン「ベノ!!お前な!みんな殺しやがって…!バボーチカまで…!アイツはお前の事が好きだったんだ!なのにお前はそんなもんに呑まれて恥ずかしくねぇのか!!」

ベノ「離れろ!逃げろ!!」

ジーパン「何言って…。っ…!?」

ベノ「…うぅ…がぁぁっっっ!!はぁぁっっ!!」

シャーヴァル「うがっ!!何が…あっ…。ベノ!!」

ベノ「がぁぁぁぁっっ!!」

シャーヴァル「これは…。まさか俺と同じ…!」

暴走したシャーヴァルがジーパンの下半身を消し飛ばした瞬間。ダークネスポケモンに覚醒したベノの一撃でシャーヴァルは正気に戻った。頭を振り、意識をはっきりさせて状況を把握する

シャーヴァル「ベノ…!お前の声は届いていた。そしてアイツとバボーチカの声も…」

ぎゅっと握り締める右手、血がベットリとついているのも気にせずベノの方へ向き直す

シャーヴァル「今度は俺の番だ、お前を殺さず。止めてみせる!!」

散らせてしまった仲間達から武器を借りてベノへ立ち向かう!ハッキリ言って全く効いてないが何もしないよりかはマシだった

シャーヴァル「ベノ!目を覚ませ!お前が望むものと俺が望むものは違うかもしれない!だが!俺は目の前の友と呼べるお前さえ止められず不殺の道など選ばない!お前を生かして俺は俺の道を行く!だから目を覚ませ!!お前がお前であるために!!」

先ほどまで溢れていた殺意はもうそこにはなかった。望まぬ皆殺しを行ってしまった罪滅ぼし、その気持ちがこれ以上の犠牲を出させないようにとシャーヴァルを駆り立てる

シャーヴァル「その角と耳…!」

焼けただれるように欠けた耳、真正面からヒビが入っている角。暴走していた間に破壊してしまっていたようだ

シャーヴァル「そうか…。そうなってもお前も…、俺の事を止めようとしてくれたんだな…」

一瞬こぼれる涙、膨大な闇の力を腕に纏ってベノへ殴りかかる!

シャーヴァル「止めてやる!ベノっ!!」

クロスカウンターの形で互いの顔面に入る一撃。シャーヴァルの角に、ベノの頬に。それぞれの一撃が入った

 

 

ヒビが入り、根本を残して砕け散ったシャーヴァルの角。そして…。倒れるベノ。シャーヴァルは一度膝をつくがベノの体をジーパンの近くへ持っていく

ジーパン「クソッタレ…。今際の際に何しに来やがった…」

シャーヴァル「お前達を…。救うためだ」

ジーパン「都合のいい心変わりだな…。地獄に落ちるのが怖くなったのか…」

シャーヴァル「どう言ってくれても構わない。だが、俺はお前達を殺さない、俺も死ぬわけにはいかない。俺達三人は生きて永遠に罪を償う。生きることが罪ならば不老不死をくれてやる」

ベノの方からジーパンの体へと紫色のエネルギーが流れる。シャーヴァルはじっと目を瞑りそのコントロールをしているようだった

シャーヴァル「伝えてくれ、ベノに。俺達は、ダークネスポケモンになったと…」

エネルギーが流れ終わるとシャーヴァルはぐったりと倒れ、ジーパンもそっと目を閉じて眠りに入った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーヴァル「…。夢か…」

思い出したくはないが忘れてはいけないもの。それが針から鍼へと変わった理由でもあった

シャーヴァル「どれくらい寝ていた…?」

そう思った矢先、ステイルからカーテン越しに声をかけられた

ステイル「リーダー、お目覚めですか?」

シャーヴァル「今目覚めた、状況は」

ステイル「今アイオポートに到着しました。各自物資やガソリンの補給などをしています」

シャーヴァル「すまない。だいぶ眠っていたようだな」

ステイル「いえ、夜分遅くまで整備や荷物の詰め込みをなさっていたのです。無理もありません」

シャーヴァル「ソフィアめ…。話したな」

ステイル「リーダーさえよろしければ皆を呼び戻して即時出発も可能ですがいかがしますか」

シャーヴァル「…。翌日に出発だ、ただし、明日の夜明けから出る。そう伝えておいてくれ」

ステイル「リーダー、何処かへ行かれるのですか」

シャーヴァル「古い知り合いに会いに行く。すまないが一人で行かせてくれ。夜には戻る」

 

ベッドスペースから出て荷台に積んであったバイクに乗るとシャーヴァルは何処かへ行ってしまった…

 

 

 

 

 

 

 

第四話へ続く…




お疲れ様でした。名称ではジーパンですがベノもシャーヴァルも名前で呼んでませんでしたね。実はこの時、ジーパンは本名で活動していました。その本名を今現在知ってるのは数人のみ。ちなみに本名を隠してジーパンという名前にしている理由ですがご本人が「本名だと殺し屋差し向けられるのが面倒くさい」「義足着けてる身としてはジーパンでもズボンでもはけるだけ嬉しい。が、スカートだけは許せねぇ」という理由からです。今ではシャーヴァルたちも本名で呼ぶと怒られるので呼んでません



そしてダークネスポケモンについて。まず力に呑まれたり制御できないとどんどん性格や感情が攻撃的になります。シャーヴァルがダークネスポケモンになった瞬間からベノを殺すつもりで襲いかかったのに正気に戻った後冷静になっていたのはそう言うことです。元のシャーヴァルは比較的温厚で冷静、それに慎重です。それがあそこまで凶暴化する。それほどダークネスポケモンというのは危険なのです


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第四話

こんにちは!一気に行きたいです


シャーヴァル「八年たっても変わらない…。いや…」

目をつぶるとそこには昔の記憶が呼び戻される

シャーヴァル「懐かしい。懐かしいだけに…。やはり後ろ髪を引かれそうになってしまうな…」

夕暮れ時、ほんの少し寂しい顔をしてたどり着いたのは…。かつて惨劇が起こってしまったシャドーのダークポケモン研究所だ。オーレ地方に来たという事から少し寄り道してみたいと思ったのだ

シャーヴァル「もう完全な廃墟になっているか…。あれから八年近く。当然だな…」

セキュリティはもはや機能しておらず、外の建物の半分くらいは吹き荒れた砂に埋もれている。中は所々錆びてはいるが比較的綺麗だった。しかし真っ暗な事もあってかシャーヴァルは懐から拳銃のアタッチメントにもあるライトを取り出して視界を照らす

シャーヴァル「見かけだけだな…。目をつぶれば昨日のように思い出せてしまう…」

綺麗な過去に混じり一瞬フラッシュバックする凄惨な過去。そっと目を開けると再び歩み出す

シャーヴァル「お前たち…。俺はこの過ちと同じことを誰にもさせないために、同じことをしようとする奴等を潰しに行く。見ていてくれ、それだけが…。永遠に生きて罪を償う俺にできる弔いだ」

やがて歩きながらとある部屋にたどり着いた。偶然にも崩れた天井や床が天然のスロープになっていたため本来エレベーターを使わなければ行けない階層に行けたのだ

シャーヴァル「…。空き巣にしては丁寧な荒らしかただな」

入った時から違和感を感じていたが場所が場所だっただけにその違和感は確信になった。この部屋にはつい数日前に誰かが何かを探していた痕跡があった。その部屋とは…。シャーヴァルがダークネスポケモンになったダークネスポケモン研究室だ

シャーヴァル「なるほど、あの薬に関する資料だけが綺麗に無くなっている。予想通り奴等はここからダークネスポケモンを作り出したのか」

ダークネスポケモンになったあの日。それ以前から施設を出入りしていたシャーヴァルぐらいしか何を持ち出されたのかがわからないくらい普通に見えた資料棚。他のメンバーでは違和感すら無かっただろう。ここに来てよかったと心底思わされる

シャーヴァル「…。他に手掛かりになるものは無さそうだな…」

軽く漁るがやはり相手はそう手掛かりを残すほど間抜けではなく何もなかった。シャーヴァルはしばらく黙祷すると研究所を後にした

 

 

 

 

 

 

シャーヴァル「戻った」

ステイル「お帰りなさいませ。リーダー」

シャーヴァル「お前も早く寝ろ。もう数時間で夜明けだ」

ステイル「はっ。では失礼します」

シャーヴァルが帰ってくるまで番をしていたステイルを中に入れて車のメンテナンスを軽く終わらせる。発信器や盗聴機を付けられていないか探すのはもはや癖のようなものであった

シャーヴァル「異常無し…。だいぶ長居をしていたようだな。いや、オーレ地方を走ることを前提としたバイクではなかったからか…」

オーレ地方。かつてシャドーと呼ばれる悪の組織が人工的に心を閉ざしたダークポケモンを使って二度暗躍した地方。他の地方に比べると町が少なく、治安の悪いところはとことん悪い。さらに野生ポケモンが全くと言っていいほど生息しておらずこのアイオポートですら周辺の海にコイキングすら生息していないのだ。そしてそんなオーレ地方は大半が砂漠。さらに一部地域では地形が悪く、それを走破できる乗り物が必須。とりわけ通常のバイクなどではまともに走れないのだ

シャーヴァル「懐かしさに浸っている場合ではないな、急がなければ…」

 

かつての忌み地に別れを告げてシャーヴァルたちはオーレ地方を後にした

 

 

 

 

 

シャーヴァル「起きろ。お前たち」

朝になり全員を起こすシャーヴァル。目的地に到着したのだ

エルッタブ「ここがスオリア地方…」

一見のどかな景色が目に写るがそれと同時にエルッタブは察した

エルッタブ「野生のポケモンがいないんだな」

シャーヴァル「ここも密猟され尽くしたのかもしれないな」

海から密航してきたため砂浜の痕跡を消してから再出発。フリダラシティへ向かっていた

シャーヴァル「再三注意しておくがもうこの地方は奴等の庭だ。今も見られていると思っておけ」

クラッパ「不気味だすねぇ…。こんなキレイな土地なのに」

トットッパ「本当にな、シャーヴァル様が嫌な顔してる理由がわかるぜ…。ん…?」

ふとその時。トットッパは茂みに何かを見つけた

トットッパ「シャーヴァル様!誰か倒れてます!」

シャーヴァル「…。罠の可能性がある。悪いが止まらない」

瀕死の人やポケモンを使って誘きだす罠がある事を思い出す。大抵近づいたら皆殺しか拉致のどちらかだ

クラッパ「あれ!向こうからなんか出ただす!」

倒れた人物へ奥から迫る数人の男たち。手には武器を持っている

シャーヴァル「…」

 

 

 

 

 

「ようやく捕まえたぜ。手こずらせやがる」

金色の髪を掴んで乱暴に立たせようとする男。痛みに耐えながら女性が振りほどこうと必死だ

???「止めてください…。神はこのようなことをお許しになりません…!」

「神様だとよ!じゃああの世で神様に言ってくれよ。信じてほしけりゃ金を降らせろってな」

シャーヴァル「目障りだ、その手を離せ」

車を降りて歩いてきたシャーヴァルに注目が集まり、前触れもなく数人が襲い掛かってきた!だがそんな勢いに目もくれずシャーヴァルはなにも言わずただの格闘で一方的に迎撃する

「つ…つえぇ…」

シャーヴァル「黙れ」

首を掴んで木が密集している所に投げ飛ばすと何本かをなぎ倒しながら飛んでいく男。そして他の仲間が逃げるのをシャーヴァルは逃がさない

 

ステイル「リーダー…!?何をなさって…」

車の中からその光景を目の当たりにする鍼組。なんとシャーヴァルが男たちを皆殺しにしているのだ

ソフィア「ステイル。止めちゃダメよ」

リヴェータ「この地方では首を突っ込んだら敵は皆殺しにしなきゃ後が面倒なのよ。仲間を呼ばれたり顔が知れたら今回の任務も失敗に終わる可能性があるわ」

ルヴィローム「アタシに任せりゃいいのによ。キッシシ…」

リヴェータ「あんたは雑なのよ。じゃあ行ってくるわ」

そう言って車を降りてつまれた死体に歩み寄るリヴェータ。シャーヴァルが一言「頼む」と言うと左腕の包帯の下から異形な腕が露になり死体をまるでミンチにでもしているかのように喰らい始めた

 

 

シャーヴァル「お前。この地方の人間か?」

???「は、はい…。危ないところを助けていただいてありがとうございます」

シャーヴァル「次はないぞ」

???「あっ、あのっ!もしよろしければ私の教会に送ってもらえないでしょうか…。とある理由でここまで来たのですが引き返す途中で襲われてしまいまして…」

リヴェータ「終わったわよ」

シャーヴァル「…。リヴェータ」

リヴェータ「…。はいはい。わかったわよ」

シャーヴァル「条件がある。俺たちの事は他言無用にしてほしい」

???「そのくらいでよろしいのですか?」

シャーヴァル「そのくらいで充分だ。乗れ」

 

 

 

カテドラ「申し遅れました。私はカテドラと申します」

シャーヴァル「お前たちは名乗るな。この地方の治安は知っているだろう。いくらシスターと言えども簡単には名乗れない」

カテドラ「それでも構いません。命の恩人であるあなたがそう言われるのならそれに従います」

シャーヴァル「その教会とやらはどこにある。昔来たことがあったがこの地方に教会と言えば逆側にあるバフォットシティにある悪徳教会だけのはずだが?」

カテドラ「この地方には五年前に来ました…。場所はフリダラシティ近辺です」

シャーヴァル「なぜそこに?フリダラシティは現在破棄されていると聞いているが」

カテドラ「お詳しいんですね。まだ街が破棄される前に復興を援助するために別の地方から来たのですがもう残っているのは私だけで…」

左目につけた眼帯に触れるカテドラの表情はとても悲しそうなものだった

カテドラ「街はもう元には戻りませんし私も別の地方に行く資金もありません…。それなのに…」

シャーヴァル「何か訳があるのか?」

カテドラ「孤児となった子供たちを引き取って暮らしていたのですが先日子供たちが全員連れ去られてしまったんです…」

シャーヴァル「気の毒だな」

先ほどから淡白な返しを続けるシャーヴァル。身の上話は他人を欺くのにうってつけだからだ。同情を誘えばそれだけ心を許す。その隙間を浸け入れられる経験を何度もしている。メンバーに名乗るなという指示もそのためだ。ファーストコンタクトを絶ってしまえばセカンドコンタクトには進まない

 

 

 

 

シャーヴァル「…。シスターカテドラ。なぜ引き返す?」

カテドラ「先ほど襲われていたには理由がありまして…。あの方々が子供たちをさらった人達だったのです。ですがフリダラシティに子供たちを輸送したと盗み聞きをして逃げる途中で見つかってしまって…」

シャーヴァル「おかしい話だな。フリダラシティとは真逆の方向だろう」

カテドラ「私にもわかりません…。いつ、どうやって真逆にあるフリダラシティへ子供たちを連れていったのか…。子供たちは無事なのか…。あぁっ…!」

泣き崩れるカテドラ。さすがにここまで来ると演技としてはやりすぎだ

シャーヴァル「…仕方ないか、シスターカテドラ。これも何かの縁だ。送る場所に近いなら探してやる」

カテドラ「私も行きます…!」

シャーヴァル「足手纏いだ。シスターは教会で子供たちを待ってやればいい」

冷たくも危険に晒すまいと突き放した言い方をする。やがて教会に到着した一行は一度休憩を挟むことにした

 

 

 

 

カテドラ「改めましてありがとうございました」

シャーヴァル「まだだ。子供たちを連れ帰ってからその言葉を言ってくれ」

目を会わせず窓の外を見ているとすばやい何かが窓を割って侵入してきた!飛びかかられるその前に銃撃音が鳴り響く!

ルヴィローム「ホント相変わらず物騒な地方だ。良くこんな所で何年も生きてこれたなぁ?」

マグナムで木っ端微塵になる襲撃者の頭。反射神経がおかしいくらい冴えているルヴィロームからすればまと当てゲームのようなものだ

カテドラ「今までこんなこと無かったのですが…」

シャーヴァル「どうだ?」

後からドアを開けたリヴェータたちは返り血を拭いながら歩み寄る

リヴェータ「片付いたわよ。もう居ない」

隠れていた賊を皆殺しにしたことを確認するとシャーヴァルたちは教会を後にする

カテドラ「あっ…!あのっ!ご無事をお祈りしております…!」

シャーヴァル「戸締まりはしておけ」

その言葉が交わされると教会のドアは静かに閉じられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五話へ続く…

 




お疲れ様でした。ここからめっちゃ死傷描写増えます!ご注意ください!


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第五話

こんにちは。心の準備はできてますか?


シャーヴァル「盗聴や探知機の類いはない。行くぞ」

 

車の中で全員にそう言うとフリダラシティへ走らせるシャーヴァル。少し進むと口を開いた

シャーヴァル「ルヴィローム。気付いたか?」

ルヴィローム「わからないわけないだろ?あの教会とシスターは黒だ」

れんが「えっ!?なんで!?」

その会話にれんがが驚く。同期組も少し驚いていたがエルッタブのみやっぱりかという顔をしていた

シャーヴァル「まずあのシスターを襲っていた連中。俺になにも言わず襲いかかってきた。その時点でグルだとはわかったが極めつけは教会だ」

クラッパ「教会に何かあっただす?」

ルヴィローム「火薬の臭いがしてたんだよ。おそらく地下にその空間がある」

リヴェータ「襲撃してきた奴等はみんな手持ち武器ばかり。重火器の類いは何も持ってなかったわね」

ルヴィローム「あれで隠してるなんてお笑いだ。弾の種類全部言えるぜ?」

キサラギ「じゃあなんであの時点で倒さなかったの…?」

ソフィア「わざと倒さなかったのよ。向こうもこちらの正体には気づいてるでしょうし今回は相手の本拠地を急襲するのが任務よ」

シャーヴァル「今更ながら仮面か何かを付けておくべきだったか」

ソフィア「もっと怪しまれるわよ。素面でもいいじゃない。早いところ済ませるわよ」

そう言って車を止める。木々に隠れた丘へ上り、茂みの中から見えたものは…

シャーヴァル「あれがフリダラシティだ」

ビルが崩れ、瓦礫にまみれ、街壁さえ今にも崩れそうなボロボロの街だった

ルヴィローム「懐かしいなぁ。どうすんだ?」

シャーヴァル「正面から行く。奴等の中ではこっちは子供を探しに来ている定だ。地下からでもいいが正面からの方が向こうの手出しもわかりやすい」

リヴェータ「なら、監視カメラ等がないか探ってくるわ」

シャーヴァル「頼む。お前たちは武器のメンテナンスだ。夜に攻める」

 

 

 

 

リヴェータ「監視は無いみたい。ただ気配はしてたわ」

シャーヴァル「そうか。…行くか」

意を決して街へ向かう一同。丘からではなく道をたどって行く。常に周囲へ警戒を向けながら

シャーヴァル「ルヴィローム。銃弾が跳んできたら打ち落とすなり掴むなり任せる。味方に当てるな」

ルヴィローム「逆に当たるなよ。私の弾丸に」

ゴテゴテしたマグナム銃を取り出すとルヴィロームはスナイパーライフルに取り付けるスコープを覗きながら歩く。お得意のスナイパーキラーだ

ルヴィローム「そこらのマグナムは20ヤードから50ヤードが最大射程距離だが…。私のこいつは違う。改造してあるから200ヤードは軽く届く」

ソフィア「スナイパーライフルはその倍の射程があるのだけど迎撃なんてできるのかしら?」

シャーヴァル「こいつはなぜか飛んでくる弾を音と匂いで察知して余裕でそれに対応できてしまう。反射神経の異常差は知っての通りだ」

ルヴィローム「いるなぁ。うまく偽装してやがるが詰めが甘いぜ」

シャーヴァル「挑発するな。街に入ってから始めろ」

ルヴィローム「撃ってきたらやらせてもらうぜ」

狙われたまま内心にらみ合いの末に街へ入ったシャーヴァル一同。一番前を歩いていたルヴィロームが「バレットM82」と言って立ち止まるとシャーヴァルは小声で全員に命令した

シャーヴァル「物陰に隠れろ…!」

その命令に全員が目付きを変えて物陰に素早く隠れる。するといきなり銃撃の嵐が襲い来る!

ルヴィローム「おっせぇよ!!」

だがルヴィロームのみそれを隠れもせずにナイフとマグナムだけで迎撃。合間にどこかへマグナムを撃つと銃撃が収まってきた

ルヴィローム「終わりだ」

撃たれたマグナムは次々に跳ね返り最後のスナイパーの脳天を撃ち抜いた。だがすぐに警戒を解かずナイフを構えながら器用にマグナムを持ったままマガジンを落として足先でリロードする。普通ではあり得ない技術だ

ルヴィローム「クリア」

シャーヴァル「物陰をキープしながら進軍!リヴェータ!後ろを頼む!」

リヴェータ「任せなさい!」

 

 

進んでいると違和感を感じたシャーヴァルは立ち止まった。とある建物を見ながら考え込む

シャーヴァル「リヴィリーナ。俺の記憶違いか確かめたい。あの建物はあったか?」

首を横にふるリヴィリーナ。その建物だけ他と比べて明らかに綺麗だった。それだけにかつてこの街を訪れた事のある三人は揃って違和感を確信に変えた。あんな建物は昔なかったと

ルヴィローム「新築祝いに行こうぜ」

シャーヴァル「警戒だけは怠るなよ」

ルヴィローム「誰に言ってやがる」

向けられる銃口。その対象はシャーヴァル。その場が一気に凍り付く

ステイル「ルヴィローム!貴様誰にマグナムを向けている!!」

ルヴィローム「見てわかるだろ?」

ステイル「引き金を引いてみろ…!リーダーに仇なすなら味方とはいえ許さん!!」

ルヴィローム「うっせぇ」

放たれた弾丸を見てから避けたシャーヴァル。その避けられた弾丸は跳弾となり物陰から苦痛の声が聞こえた

ルヴィローム「射線に入んな」

シャーヴァル「お前なら俺を避けて撃てるだろう」

舌打ちで返しながら横を通って物陰へ歩くルヴィローム。全員に待機命令をすると自身も物陰へ向かった

 

 

 

「クソッタレ!殺すなら殺せ!!」

ルヴィローム「まぁそう言うなって。いい医者知ってんだよ。そいつなら今のお前を五体満足にしてくれるぜ?」

「そう言って何人殺してきやがった!デストロメア!!」

ルヴィローム「ほぉ…。私を知ってたのか。ということはリベンジャー(復讐者)か?」

「忘れるものか…!俺の故郷を全て奪った悪魔め!」

ルヴィローム「どの話をしてやがる。心当たりしか無くて困っちまうな」

シャーヴァル「遊ぶなルヴィローム」

「仲間か…!」

シャーヴァル「こいつの手綱を握ってる者だ。質問がある。あの建物はなんだ」

「教えたら殺すんだろ…!」

シャーヴァル「態度次第だ。俺としては無益な殺生は抑えたい」

「口先だけならいくらでも言えるな」

シャーヴァル「ステイル、警戒していろ。もう少し遠くでな」

味方を遠ざからせるとシャーヴァルは刀を抜刀して撃たれた足に刺しこむ。男の絶叫が辺りに響き渡る

シャーヴァル「どうやらお前は自分の立場というものを理解できていないようだな?それにこの赤い片袖に鎧の木瓜を知らず俺にそんな態度を取るとはよほどの死にたがりと見える」

「赤い片袖に鎧の木瓜…。ま…まさか…!針組のシャーヴァル…!?…針組は全滅したんじゃ…」

シャーヴァル「悪いが現実だ。さぁどうする?俺がこいつの手綱を手放すか、俺の刀にその血潮で色をつけるか。選ばせてやる」

「わ、わかった!話す!」

相手がシャーヴァルと知るや否や口を割る男。自分の身分や脅し等は極力見せたくないシャーヴァルは納刀する

「俺はジンティアの戦闘員、したっぱだ。あの施設はジンティアの研究所で俺達は警備を任されてた。だがお前達が来てこの街にいる奴等はほとんどやられちまった」

シャーヴァル(倒したのは狙撃者のみ…。ということは他に同業者がいるか捨て駒だったというところか…)

ルヴィローム「あの施設の中には何があるんだ?」

「ダークネスポケモンに関する事らしいが詳しくはしたっぱの俺達には伝えられていない…。所詮使い捨てなのかもしれないな…」

シャーヴァル「入る方法はあるのか?」

「…。こうなりゃ仕方ねぇ。これを持って行け」

シャーヴァル「カードキーか。裏切りになるぞ」

「どのみち敵にこんなことされてる時点で殺される。ジンティアはそんなところだ。あんたらだってそうだとわかって来たんだろ?」

シャーヴァル「どうだかな。ともかくこれはありがたくもらおう。…礼と言うわけではないがお前は殺さない。闇医者にでも行ってまた復讐にくるのもいいだろう」

ルヴィローム「…。なんだ…?」

シャーヴァル「どうした」

ルヴィローム「風が動いている」

シャーヴァル「どういう…」

自分の言葉を言いかけながらルヴィロームからワンテンポ遅れてシャーヴァルは抜刀する。見えない何かが近くにいると感じ取ったからだ。気配を頼りに二人は警戒する

ルヴィローム「そこか!」

何かが残像をギリギリ残すほどの速さで移動している!それにマグナムを放つルヴィロームだったが当たらないと判断すると即座に組立式ミニガンを乱射する!

シャーヴァル「こっちに向けるな!」

ルヴィローム「うっせぇ!どけ!」

的確に追ってるがわずかに届かない。弾速が遅い訳でもない。相手が速すぎるのだ

ルヴィローム「なろぉ…!」

弾を無駄使いされた事に腹をたててサブマシンガンを二丁持ちして併殺しようと切り替える。これだけ撃っても一発も当たらずかすりもしない。本当にそこに敵がいるのかが疑心になる。だが二人には敵が見えていた。見えているのに触れない

シャーヴァル「速すぎる…!」

ルヴィローム「わかりきった事ほざく暇があるなら切り殺せ!」

イラつきがピークに達したルヴィロームの口調に余裕が無くなっていく。こうなると見境がついてるだけ奇跡的だとシャーヴァルも下手に動けない

ルヴィローム(総額2000ポケドル越えたか…!)

リロードの瞬間を敵は見逃さず一気に距離を詰めてきた!ここぞとばかりにシャーヴァルも切りかかるがこれも当たらない

「あがっ!!」

建物の壁に男の頭をめり込ませて殺すとその敵はあっという間に消えていった。どうやら男を殺す事だけが任務だったようだ

シャーヴァル「逃がしたか…」

ルヴィローム「あんな奴は初めてだぜ。イラつかせる」

使った銃器のリロードを済ませて仕舞うとさっさと歩き去るルヴィローム。それに続くシャーヴァルは振り向いて男の死体を見る

シャーヴァル「…」

ルヴィローム「おい。まさかこの期に及んで俺がしっかりしてれば助けられたなんて考えてねぇよな?」

見透かされたかとため息混じりの「そうだとしたら?」とやけくそ気味に言葉を返す。それに返ってきたのは一発の弾丸だった。それは死体となった男の頭部に命中し、完全に木っ端微塵にした

ルヴィローム「私が見逃すと思ってんのか?殺されなくてもてめぇが止めても。私に楯突くなら誰であれ殺す」

シャーヴァル「それをむやみにさせないのが俺の役目だ」

ルヴィローム「飼い主気取りかよ。悪いがてめぇがどうあれ今の私の殺しは仕事であり正当防衛になる。殺し屋を雇うってことはそれ相応のリスクを背負う事ぐらいわかってんだろ?」

シャーヴァル「だからこそ度が過ぎればストッパーか必要になる。違うか?」

ルヴィローム「…あーうっぜぇ。止めようぜこんなの今やることじゃねぇだろ。とっとと仕事終わらせてから好きなだけ気がすむまでやろうじゃねぇか。ったく…」

シャーヴァル「そうだな…。すまん」

ルヴィローム「さっきの速い奴も気になる…今のうちに対策を考えねぇとな」

 

 

 

???「裏切り者の始末はつけましたわ。でも侵入者を仕留められませんでした」

紅袖「あら、あなたほどの速さがあって仕留められなかったのですか?シュナーレさん」

シュナーレ(フェローチェ★)「申し訳ありませんわ。何せ肉眼で捉えられてしまっていたので」

紅袖の指がピクリと動く。表情は変わらず「あらら」と言うと考えこむように人差し指を唇にあてる

紅袖「シュナーレさんの速さについてこれるとは…なるほど」

不敵に口元が笑うと電話を鳴らす。しばらくして相手が応答する

紅袖「こんにちは。紅袖さんですよ。そちらはいかがでしょう?」

???『これから急襲する。相手が何人居ようと問題ではない』

紅袖「頼もしいですねぇ。ではお願いします。てゐ国歌劇団を、殲滅しちゃってください。片腕のお礼にね…」

???『本来ならば貴様の組に頼むことだということを努々忘れるなよ。いくら同格であれボランティアではないのだからな』

紅袖「わかっていますよぉ。感謝しています。アルロザリオの皆さん…。くっふふふ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六話に続く…

 

 




お疲れ様でした。ルヴィロームのチートっぷりを改めて認識していただければ幸いです。ルヴィロームがやったスナイパーキラーや襲撃者迎撃はいずれも灯り一つない夜に行ってます。頭おかしいですね


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第六話

こんにちは。いよいよラストスパートです。本当に長かった。このスペシャルが他のお話しの塞き止めになっていたので気が楽になりそうです


 

 

シャーヴァル「開けるぞ」

カードキーを通して扉が開くと同時に中へ手榴弾を投げ込むシャーヴァル。そしてすぐさまリヴェータとソフィアが素早く中で暴れまわり、何人かの断末魔が聞こえてソフィアが「クリア」と言うと全員が入って行った。起動させずに投げた手榴弾を拾い上げてシャーヴァルは周囲を警戒するように命令する

シャーヴァル「れんが。右か左。選べ」

れんが「え?えっと…左!」

右の通路へグレネードランチャーを数発放つと左の通路へ走る。やがて道なりに行くとドアを見つけた

シャーヴァル「エレッサ。溶かしてくれ」

胃液を吐き出してドアを溶かすとその中へと入る。ある程度物色してから部屋中を切り刻むとまた別の部屋へ同じことを繰り返していた

クラッパ「なにやってるだす?」

トットッパ「おそらくれんがの運に任せて道選び。その後敵の研究資料を撲滅じゃないか?」

クラッパ「まるで夜叉とか無双って感じだすね…」

トットッパ「何はともあれ俺達に出来ることはシャーヴァル様の邪魔をする輩を撃退することだけだ。そら来たぞ!」

後ろの通路から武装した集団が次々と集まり銃撃戦が始まる。お互いに隠れながら撃ち合うターンバトルが行われる

 

リヴェータ「あんたたち。撃たなくていいわよ」

立てこもった部屋の中。四隅にリヴェータは立つと刺突剣を手甲から出すと壁に勢いよく突き刺し走り出した

リヴェータ「手応えあり。終わりよ」

壁から剣を引き抜くと真っ赤になった刀身が露になり壁の向こうからはボトボトと丸い何かが落ちた音がいくつか聞こえる

リヴェータ「壁の向こうにいるなら壁越しに首を掻っ切るまでよ」

リヴィリーナ(ホワイトボード)【まだいるかも。音がする】

リヴェータ「あんたがそういうならいるわね。どうする?」

リヴィリーナ【任せて、その代わり耳塞いでてね】

通路へ走るリヴィリーナ。全員が耳を塞ぐと一瞬心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われる。そしてとててとリヴィリーナが戻ってきた

リヴィリーナ【死んでない?】

リヴェータ「ほんのちょっと聞こえたかもしれない。もっと小声でやりなさいよ」

リヴィリーナ【死んでないなら大丈夫だね。いくよ】

 

ステイル「リーダー!ご無事ですか!」

シャーヴァル「それはこっちのセリフだ。だいぶ先行してしまっていたな。すまない」

通路の奥にあった一つの扉の先には大きな研究室に繋がっていた。ここに何かを感じたシャーヴァルは刀を納めて物色を始める

シャーヴァル「!。お前たち、下がれ」

部屋の奥で何かを見たシャーヴァルは刀に手を掛ける。その視線の先には人が入れるくらい大きな試験管。その中に…

シャーヴァル「ベルゼブブ…!?」

七つの大罪の一体。ベルゼブブが眠っていた

シャーヴァル「なぜこんなところに…」

ベルゼブブ、および七つの大罪の戦闘力は一人でてゐ劇を殲滅できるほどの強さを持つ。それが今、この状態になっている。サンプルのように扱われている異形な存在が不気味さを感じさせる

シャーヴァル「(どうする…。奴はオリジン…、ランクの関係上殺せない…。しかしこのまま放っておけばジンティアに利用され続ける。…危険過ぎるが…)」

意を決して端末を操作。試験管の中からベルゼブブが解き放たれる。意識が徐々に戻っているのか立ち上がろうとする

ステイル「リーダー…!なにを…」

シャーヴァル「離れていろ」

刀を突き付けて朦朧と立ち上がるベルゼブブを睨み付ける。肩で息をしながら睨み返すベルゼブブ。一触即発の状況だ

ベルゼブブ「…」

そっと手を伸ばす。その先にあったのは機械のコードやUSB。それを握るとベルゼブブは口の中へ突っ込んだ。ガリゴリと普通は聞くはずのない咀嚼音。喉の形歪にを変えるほど飲み込むとベルゼブブは口を開いた

ベルゼブブ「今、この世界の言葉を食べた。これでこの世界の言葉を理解できる」

すこしふらつきながら立ち上がるベルゼブブ。その言葉は流暢だ

ベルゼブブ「改めて名乗ろう。私の名はベルゼブブ。七つの大罪が六女、暴食を司る悪魔。私を解放してくれたのだな、礼を言おう」

シャーヴァル「お前を解放したのはお前を助けるためじゃない。この世界のためだ」

ベルゼブブ「お前たちの事情など知らん。だが…。私は自分で言うのもおかしな話だが姉妹の中では比較的温情だ。恩義を返さないのは悪魔として利に反する。故に、今しばらくお前と共に道を進むことにする」

シャーヴァル「お前一人で何処とでも行けるはずだろう。それに悪魔の言葉など信用できない」

ベルゼブブ「ならばそう思え。私は好きにお前に力添えさせてもらう」

シャーヴァル「…。一つだけ知りたい。お前のような奴がなぜ捕まっていた?」

ベルゼブブ「どれほど前かは知らない。我々は冥王に倒され、姉妹が散り散りになった所をこの施設の者達に突かれてしまった」

シャーヴァル「ジンティアが…?」

ベルゼブブ「なるほど、ジンティアというのか」

シャーヴァル「もう一つ。過去になぜ俺達の仲間を襲った?」

ベルゼブブ「襲ったつもりはない。全ては迎撃だ、それに私とベルフェ姉様以外、特にサタン姉様は邪魔者を徹底的に排除しようとする。今この場で捕まっていたのが私でなければこの施設ごと消されていただろう。運が良かったとでも言えばいいか」

シャーヴァル「信用できないな。お前たちは悪魔だ」

ベルゼブブ「無理もないか。私も無理にとは言わないが信じてほしい思いはある。少なくとも常に飢餓が付きまとう運命に生まれた悪魔である私だ。100億の悪意があれど1の感謝を無下にはできない生き方をしてきた」

シャーヴァル「飢餓の概念があるのだな、不死の体で」

ベルゼブブ「不死にとっての一番の苦痛は欲望でも嫉妬でも怒りでも、ましてや恋煩いでもない。それは他の姉妹も同じだが私は特別空腹に敏感だ。話が逸れてきたがそうだな…。ではこうしよう。今からこの世界で1ヶ月。お前の命令を聞き、お前たちの前に他の姉妹が敵として立ちはだかろうと私がお前たちを必ず護ると誓おう。五人の姉と一人の妹を場合によっては殺そうと言うのだ。どうだ?」

シャーヴァル「ただし。少しでも敵対行動をすれば俺は貴様をどんなことをしてでも殺す」

ベルゼブブ「契約成立だな」

シャーヴァル「なんだこの手は」

ベルゼブブ「この世界では握手をしないのか?」

シャーヴァル「約束は覚えておけ」

ベルゼブブ「もちろん」

 

 

シャーヴァル「と言うことでしばらくベルゼブブが同行する」

ベルゼブブ「よろしく」

シャーヴァル「こいつが少しでも敵対行動を起こした場合。殺せ、例え殺せなくても許すな」

ベルゼブブ「姉様達がやったことは知っている。信頼など無理強いしない。だがこの時だけでも共に歩ませてもらう」

ルヴィローム「へぇ…。裏切りの時にゃバラバラにして桂剥きの練習でもさせてくれるのか?そりゃ楽しみだな」

ベルゼブブ「好きにしてくれて構わない。それとだが…」

れんが「?」

ベルゼブブ「この世界の言葉を食べはしたがもしおかしい言葉使いをしていた時は教えてほしい」

少し照れるながらそっぽを向き、そう言うと部屋から出ようとするベルゼブブ。シャーヴァルはその背中に続く

シャーヴァル「先行はするな。危険だ」

ベルゼブブ「心配してくれるのか?優しいな」

開いた自動ドアの向こうでは敵の影、気が付いた時には銃弾が一斉に放たれた!

ベルゼブブ「ふん」

ぐるりと腕を回すと闇の渦が銃弾を吸い込む。そのままそれを放つと通路の壁や天井をえぐり、敵の断末魔ごと闇の渦を掌に飲み込んだ

ベルゼブブ「ごちそうさまでした」

エル「すげぇ…」

れんが「一瞬で跡形もなく…」

ベルゼブブ「さぁ行こう」

 

 

 

 

 

 

 

ベノ「お前ら。覚悟はできたか?」

まお「今更か」

アデア「本当に作戦通りに行けますか?」

リスティス「余裕だよ。私達と連中は同じだ。周囲に味方がいない方がやりやすい」

リタ「やれやれ。偶然にも六人で攻めてくるとはな。五人であればパスさせてもらったんだが」

せいさい「いけません。マスター。その場合、実力序列の関係上私が外れることになってしまいます」

ベノ「そういうことだ。キリキリ働けロリババア」

リタが軽く舌打ちすると同時に六人の人物が現れた。ただならぬ雰囲気と明確な殺意を感じる

???「先に死にたい奴らか」

ベノ「ちげぇな。てめぇらを殺すために同じ頭数で待っててやったんだよ。感謝しやがれ」

???「大きく出たものですね。流石は紫の鏖魔《ヴァイオレットフレスベルグ》」

ベノ「(かつての通り名を知ってやがる…。知った上で来るってことはやっぱりただもんじゃねぇな)」

???「どうするの?」

???「もちろん相手が誰であれ殺します。各自、仮面を外してください」

その一言でローブとともに取り払われる仮面。その素顔を全員があらわにした

ベノ「!!。お前…、俺の里出身だな…?」

???「やはりベノの一族か。同胞といえど加減はしない」

ベノ「上等だ。ぶっ殺して死んだ奴らの墓標に刻んでやる。名前は」

ネルケー(ニドキング)「ネルケー。もっともお前がそうなるだろうが」

???「ダメじゃないですか本名で名乗っては。まぁあなたはコードネームもそうなので仕方ありませんか」

ネルケー「あいつは俺がやろう。他は勝手にやってくれ」

???「ではそうしましょう」

各々が自分の相手を視認すると違う方向へ散っていく。その場には誰もいなくなった

 

ベノ「どうだ、広いから好きにやれるぜ?本気で来いよ」

ネルケー「それはこちらのセリフだ。族長の血族であろうがもはや関係ない」

 

 

まお「ほう。魔王の贄となるのは貴様か」

ミーリャ(キュウコン♀️)「あぁ、私はミーリャ。おそらく他も名乗っているだろうね。どうせお前たちは死ぬ」

まお「そういうセリフを言ってきた奴は貴様が初めてではない。貴様らにも合わせてやろう」

 

 

タンポポ(デンリュウ♀️)「へぇ、それじゃあちょっと本気でいかないとね。黒焦げになるくらい…」

リタ「ほざけ、雷の力などが月と太陽に歯向かおうなど思いあがるな」

 

 

アデア「今なら引いてくだされば見逃せます」

クロユリ(ブラッキー♀️)「驚いた。この期に及んでまだそんな甘い言葉を使う奴がいるとは。夢を見るのは勝手だがちっぽけな正義感をこの世界に押し付けるのはやめてもらおうか」

 

 

リスティス「だったら、あんたたちの思想ってのも押し付けるのはやめてもらおうか。こっちはそれで食えなくなってここにいるんだ。裏世界に生きるものどうし、潰しあえばどうなるか…。わからないわけじゃないだろよ」

ユキツバキ(メガニウム♀️)「潰しあう?ふふっ…。弾丸がぶつかり合ったらどうなるかご存知ではないようですね」

 

 

ペロッラ(パルシェン♀️)「弱いものが淘汰される。私達は今や世界のハイエンド、もうあなた方の世界はどこにもない…」

せいさい「否定します。この場で戦った場合、あなた方の生存確率は0に近い数字です」

ペロッラ「壊れた人形ごときが戯れ言を」

 

 

ネルケー「お前たちが何を言おうと、どうしようと。我等ジンティアにたてついた時点でその命運は終わっている。せいぜい見苦しく足掻いて殺されろ」

ベノ「陰険な奴はいけねぇな。この世界に生きてるなら正々堂々ぶっ殺してやるぐらい言えよ」

ネルケー「おしゃべりは終わりだ」

 

 

 

シャーヴァル「ベルゼブブ。他の姉妹は捕まっていないのか?」

ベルゼブブ「捕まっていない。私だけがへまをした」

シャーヴァル「そうか」

ベルゼブブ「質問がとにかく多いな。この際聞きたいことはなんでも言ってみると良い」

シャーヴァル「山ほどあるがまずは冥王とは一体なんだ?聞くところお前たち七人を倒したなどにわかには信じられないのだが」

ベルゼブブ「…。教える前に教えておこう。アイツには関わるな」

目付きが少しつり上がり真剣な表情と声でベルゼブブは冥王について話し始めた

ベルゼブブ「冥王フランチェスカ。元はフランケンシュタインと呼ばれる怪物の一人だった。本来ならば人間によって作り出される改造人間がフランケンシュタインと呼ばれるが…。フランチェスカは違う。自らの手で自らを改造して怪物となった元人間だ」

シャーヴァル「自分で自分を改造…なぜだ?」

ベルゼブブ「奴は人間の体には様々な限界があるとし、ならば自らを不死身にしてどんなことでも記憶できる最強の生物にと考えた。誰の力も借りること無くたった一人でそれをした、所謂天才だ。だが奴は更に上を望んだ。そう、神の領域を。奴には恐ろしい能力がある。それは他人の細胞や血液自分の遺伝子に組み入れるというものだ。これにより他者の特技や魔法、特性までも自在に扱えてしまう。私達も血液を取られ、奴はたった一人で私達姉妹の全てを併せ持つ存在となった。だがそれだけではない。私達をこの世界に飛ばし、封じ込めた者達の力までも自分の物にしている。私達が元居た世界の死者の力までも。だから奴は自らを冥王と呼んでいる。お前たちも細胞や血を奴に取られないようにしておけ。全てにおいて不利になる」

シャーヴァル「肝に免じておこう」

ベルゼブブ「まだあるだろう?」

シャーヴァル「なぜ復活した時に虐殺を犯した。それだけじゃない。なぜホウエンで大地と海の巫女を殺した」

復活した時。それはシャーヴァルがてゐ劇と敵対したお話だ。一方の大地と海の巫女というのはラグナが過去にホウエンを巡った物語での出来事を指していた

ベルゼブブ「私達悪魔の主食は人間の恐怖心だからだ。人は死ぬとわかった瞬間、とてつもない恐怖心を生み出す…。どんなに潔白な人間も死の間際に時間を置いてやれば死にたくない死にたくないと無駄に足掻こうとする。それが我等の力になる。ホウエンの大地と海の巫女というのは知らん」

シャーヴァル「姉妹の誰かか?」

ベルゼブブ「私達は基本的に姉妹のやることには無関心だ。利害が一致しなければ集まることも少ないほどにな」

シャーヴァル「ずいぶんとドライなんだな」

ベルゼブブ「心は繋がってる。それに会おうと思えばすぐに会えるからな。私達は七人で一つなのだよ」

シャーヴァル「七人で一つ…」

ベルゼブブ「大方私達を倒す方法等を考えているのだろうが諦めろ。私達は今でこそ力が完全では無いが完全だった場合。この世界を今すぐにでも消せる。それに奴がこのままこの世界に居座るというのなら私達との決戦の余波でどれほどの犠牲で済むかと言うところだ」

シャーヴァル「ならば俺達のやることは決まった。お前たちにそんなことをさせない。冥王にも、お前たち七つの大罪にもこの世界は渡さない」

ベルゼブブ「その時は敵として容赦はしない。ん…?」

シャーヴァル「どうした」

ベルゼブブ「悪魔の勘だ」

そう言って開かない自動ドアを片手で掴み、強引に引きちぎる。力が本調子ではないにしろとても生物として必要な力ではない。どう見てもオーバーパワーだ

ベルゼブブ「感じる。命の鼓動だ」

この施設はかなり広いようで今いる位置はシャーヴァル達が通らなかった通路だった。今回の目的が目的なためどのみち全部の部屋を回るつもりではあったが他の部屋が未施錠だったのに不自然にそこだけロックがかけてあった

ベルゼブブ「死への恐怖心を感じる…。それもとびきり極上な…」

口元をにやけさせ、悪魔としての本性を露にした笑顔。壁に手を叩きつけて大きな音を出すと爪を立てて壁を引っ掻きながら歩き始める

ベルゼブブ「さぁ…。どれほど腹を満たしてくれるのか楽しみだな…」

シャーヴァル「待て。数はわかるか?」

ベルゼブブ「一人だ」

シャーヴァル「喰う前に時間をもらう」

制止すると通路の奥へと歩みを進めるシャーヴァル。そこには初老の男が血まみれで壁を背に座っていた

シャーヴァル「息はある。返事はできるか?」

「うぅ…。誰だ…」

シャーヴァル「ここの者ではないが危害は加えない」

「それならちょうどいい…。私の名はワシド…、このジンティアで研究者をしていた…」

シャーヴァル「研究者か、それならメインシステムにアクセスするためのパスワードを教えてもらえないか?」

ワシド「パスワードは諦めろ…。奴等はもう書き換えおった…、そういう組織なのだ…」

シャーヴァル「そうか」

ワシド「その代わりと言うわけではないが頼みがある…。あそこにあるボールを取ってくれ…」

シャーヴァルがくいっと目配せをしてステイルとたらこに取らせたボール。それはウルトラボールとスピードボールだった

ワシド「奴等はダークネスポケモンというものを自在にコントロールすべく七匹のポケモンをそれぞれ改造した…。それは私が奴等に気づかれないように改造したボール…。それに納めれば奴等の支配から逃れられる…」

シャーヴァル「普通に戻すようにすればいいのか?」

ワシド「あぁ…。ウルトラボールには深紅の戦士、ゼアラ…、もう一つは…ごほっ!」

シャーヴァル「それ以上喋ると傷が開くぞ」

ワシド「どのみちもう助からん…。お前も気付いているのだろう…?それよりもだ…。そのスピードボールには全てを超越する風、エルミス・アンジュが納められる…。この二人だけしか洗脳を解けなかった…。他はもう完全にジンティアの操り人形となっている…。お前に…お前たちに私は賭ける…。頼んだ…」

それを最後にワシドは息絶えた。ベルゼブブがそれを見て腹を鳴らす

ベルゼブブ「未練が残っていたが故の恐怖心だったのか…。喰いそびれた」

するとシャーヴァルの懐にあるボールからエレッサが飛び出した。じーっとベルゼブブを見つめるとりんごを差し出す

ベルゼブブ「くれるのか?」

エレッサ「あー」

ベルゼブブ「ありがとう。お前は言葉が苦手なようだな。おそらくこいつ達にはあーとしか聞こえないのだろう」

りんごを受け取り、エレッサへ黒い光を纏わせたベルゼブブ、シャーヴァルが抜刀体制に入るもベルゼブブが「見ていろ」とそれを止める

ベルゼブブ「ガリャエネ…ハヅナジラ…ゴヨイアナユゼヌ…」

何かの呪文を唱え終わるベルゼブブ。エレッサに喋ってみろと言い放つ

エレッサ「リーダー…?」

シャーヴァル「!!エレッサが喋っている…!?」

ベルゼブブ「知力増強魔法で喋れるようにした。このりんごの礼だ」

エレッサ「え…あ…ありが…とう…」

れんが「すごい違和感…。でもかわいい…!」

戸惑うエレッサを撫でて愛でるれんが。それを見てシャーヴァルはベルゼブブにまたしても問う

シャーヴァル「なぜだ…?」

ベルゼブブ「?」

シャーヴァル「なぜこんな力を持ちながらお前たちは…」

ベルゼブブ「元の世界でもさんざんっぱら聞かれたことだな。答えはただひとつ。私達は人の罪が具現して生を持った存在。七つの大罪だからだ」

シャーヴァル「そういう運命に生まれたとでも言いたいのか」

ベルゼブブ「そうじゃなければなんだというのだ?アイドルにでもなってユニットを組めとでも言うのか?」

シャーヴァル「違う。なぜ運命だけで決めつける。お前たちは何がしたい」

ベルゼブブ「人の恐怖心を糧にし、罪を重ねてそれを行う。人がいなければ生きていけないのに人を皆殺しにしてあの世とこの世をひっくり返したい。自壊願望にも近い」

シャーヴァル「ロジックが違いすぎるな」

ベルゼブブ「だから私達はこの世界に封印された。人間達の力によって」

シャーヴァル「願わくば…、お前とは殺しあいをしたくない。人を幸せにできる力を持ちながら破滅の道を選ぶのは止めない。だが…」

ベルゼブブ「こればかりは私一人ではどうにもならない。どうしても止めたいなら姉様達を説得してみるんだな」

ソフィア「シャーヴァル。お喋りはその辺にしておきなさいな。それよりもこの部屋の資料をいただいたらそろそろ出た方がいいかもしれないわ」

リヴェータ「私達がここに奇襲してから追手が全くいない。こんな場所なのにね。おそらく…」

シャーヴァル「時間を浪費しすぎたか。すまない」

ステイル「リーダー。この部屋にあるすべての書類やデータを押収完了しました」

シャーヴァル「時間は…もう明け方か」

思っていた以上に時間がたっていたことに少し驚くが昔はこんなものだったなと思い返す。入り口までの道のりにはただ死体だけが転がってる

シャーヴァル「お前たち。ここが正念場だ」

その一言で改めて全員の気が引き締まる。少し考えればそれはわかることではあった。そうなるだろうとも予想していた。そしてその予想は見事に的中した

紅袖「あらあら、お帰りですか?」

施設から出ると…。数名が待ち伏せていた

紅袖「どうせならもっとゆっくりしていってください。歓迎しますよ?サンプルとして…」

仮面の奥、紅袖は不敵に笑う

 

 

 

 

 

七話に続く…

 

 

 

 




お疲れ様でした。次回かその次が最終回の予定です


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ 第七話

こんにちは。エピローグと同時に投稿します


 

 

 

 

 

シャーヴァル「お前が紅袖か」

紅袖「あら、すっかり有名人になっちゃいました?」

シャーヴァル「ブラックリスト入りするぐらいにはな」

紅袖「光栄ですね。ん…?」

じろじろと見られている事に気がついた紅袖はため息を吐くとマチェットナイフを投げつける。その宛先はルヴィロームだった

ルヴィローム「なるほどなぁ…」

それをマグナムで撃ち落とすとそれに跳ね返った弾丸が紅袖の仮面を弾き飛ばした。それを見てルヴィロームはニヤリ笑う

ルヴィローム「聞き覚えがあるとは思ったがまさかくたばって無かったとは驚きだ。キッシシシ…。お父様は元気かよ?シモの世話大変だろ?キッシシシ!!」

紅袖「はぁ…。お父様はお前が殺したでしょう?白々しい…。本当にどこまでも目障りなのですね」

シャーヴァル「ルヴィローム。知り合いか?」

ルヴィローム「知り合いもなにも、わたしの姉貴だ。わたしが殺しの道を選んだのに対して親父殿のシモの世話をすることを選んだ腰抜けだ」

紅袖「人の嫌な思い出をぺちゃくちゃとうるさいですね。お前のような愚妹になるとわかっていたなら幼少の頃にその首捻切っていましたのに」

ルヴィローム「おいおい。両手でわたしに何一つ勝てなかったくせに片手で強がるなよ。あ、シモの世話だけはわたしより上手いか?キッシシシ!!笑えるぜぇ!しかも紅袖だったか?このシャーヴァルにあやかりすぎだろ。二番煎じがやべぇよ、なぁ?ルーデェ…?」

紅袖「本名などとうに棄てましたが…。お前はどうやらここで殺しておかなければいけないようですね…。さすがに喋りすぎです。弁えろゴミムシ」

ルヴィローム「はぁ~?姉貴が?わたしを殺す?たった一人の肉親だぜ?かわいいかわいい妹だよぉ?お姉ちゃん~」

紅袖「気色悪い。反吐が出る。尻で喋って口で糞してるのか?血生臭いんだよ血便野郎。便器に流されろ」

ルヴィローム「やだぁ~お姉ちゃん怖い~。シャーヴァル、アイツはわたしに任せな」

ボソッとシャーヴァルへ言伝てをしてルヴィロームはぶりっこの演技をしながら紅袖に言い放つ

ルヴィローム「ねぇねぇお姉さま!連れションしようぜ…、積もる話もあるだろ?姉妹水入らずで殺し合おうじゃねぇか」

紅袖「我が愚妹ながら妙案ですね、いいでしょう。では皆さん。フードと仮面を取ってください。初陣の方もいるでしょうが頑張ってください。それでは」 

その場から遠退く二人。残されたシャーヴァル達は戦闘態勢に入る

???「ちょっと見ねぇあいだにずいぶん知らねぇ奴等引き連れてんじゃねぇか。しっかしまぁフライフェイスまでいるとはな」

シャーヴァル「その声…!」

ベノ?「よぉ、久しぶりだな、シャーヴァル」

フードと仮面を最初に取っ払ったその姿は…この物語を知るものなら誰しもが知っている顔。ベノだった

ベノ?「んだよ、その顔。あり得ないもん見てるって顔だな?」

シャーヴァル「当たり前だ。同一人物がこの世に二人と居たら驚くに決まっている」

ベノ?「同一人物?あぁ、オリジナルか。補足が抜けてたな。俺はオリジナルのコピー品、アナザーベノってらしいぜ?つっても俺自身その感覚はねぇが」

シャーヴァル「過去のベノの血からクローンを生み出したのか…」

よく見ると今のベノと違い角はひび割れておらず耳も完全な状態だ。シャーヴァルは暴走した時のことを思い出す

シャーヴァル「あの時は角と耳で済んだようだが…。お前に対してはそこで済ませる自信はない」

アナザーベノ「殺すつもりか?」

シャーヴァル「全員まとめてだ」

アナザーベノ「だとよ。お前らいい加減取れよ」

その一言を皮切りに一人除いて全員がフードを脱ぎ捨てる。それぞれを見てシャーヴァルは全員に目配せをする

シャーヴァル「数で圧すぞ」

シュナーレ「音速を捕らえられない時点で相手になりませんわね」

ゼラア「…。来い」

エルミス・アンジュ「…」

???「お前たちがあの魔王の仲間か」

シャーヴァル「お前は?」

リン(改)「我が名はリン。我が主冥王に使えし騎士なり」

体の大部分が機械となりサイボーグとして現れたのはエピソード2で登場したリンだった

リン(改)「我が主に今一度お仕えするためにも、今は同盟たるジンティアの傘下にいる。我が剣の錆びになりたい者からかかってくるがいい」

リヴェータ「声帯まで機械だと聞きにくいわね」

リヴィリーナ【醜い声だよね】

ソフィア「見た目も酷いのがいるのかしら?フードを取らないなんてやる気がないの?」

葉巻を踏み潰して挑発するソフィア。アナザーベノがそれを聞いて無理やりフードを取っ払った

アナザーベノ「いつまでそうしてやがる。覚悟決めろ」

???「っ!」

シャーヴァル「っ!…。どうしてだ…」

???「どうしてでしょうね…。シャーヴァル」

エル「リーダー、知り合いか…?」

シャーヴァル「あり得ない…なぜだ…、ベノのみならずなぜお前が…」

アナザーベノ「こいつは俺と違ってホンモノだぜ?一度殺したんだ、やれねぇなんて言うなよ?」

シャーヴァル「何故だ…」

バボーチカ「なぜでしょうね…?」

最後の仮面とフードの中には…、過去に暴走したシャーヴァルが殺めてしまったはずのバボーチカの姿があった…

バボーチカ「ごめんなさい…。ごめんなさい…!」

涙を流しながらエナジーボールを乱射。それに紛れてアナザーベノとゼラアが切り込む!同様しているシャーヴァルを守るべくステイルとたらこが前に出る!

ステイル「リーダー!」

たらこ「れんが!キサラギ!リーダーを!」

アナザーベノ「おいおい。余所見かよ?」

たらこのガードを力ずくで崩すと胸ぐらを掴んで隣のステイルに投げつける!同じく態勢を崩したステイルにゼラアが力を貯めた一撃を放つ

ゼラア「ギガンティック・フィスト!!」

ステイル「ぐああっ!!」

なんと腕が肥大化し、まるで大木で殴り付けられたかのように軽々と吹き飛ぶステイル。身長2mに巨体が吹き飛ぶ様をれんがたちは現実なのかと目を疑う

リヴェータ「律儀に対戦相手を決めてる場合じゃないわね」

リヴィリーナ【いくよ!】

飛び出すリヴェータ、リヴィリーナ。少し後ろからソフィアがアナザーベノとゼラアに攻撃を仕掛ける!そこへ相手側からリンも参入する!

アナザーベノ「よぉババア!元気してたかよ!」

ソフィア「二枚目にそんなことを言われて光栄だわ」

アナザーベノ「なんでてめぇがここにいるかなんざ知らねぇ。アイツの顔の借りを返してやらぁ」

ソフィア「その彼女の敵になってる自覚、あるのかしら?」

アナザーベノ「知るか。記憶があるだけで敵味方なんざ関係ねぇよ!」

ソフィア「愚かね、とても悲しくもあるわ」

 

リン(改)「ふんっ!小娘ごときの力で我が力を止められるものか!」

リヴィリーナ「…!」

すばやい身のこなしでナイフを投げつけるリヴィリーナ。だが軽く払い落とされ巨大な剣による一撃が遅い来る!

リヴィリーナ「っ…!」

素早くシャボンを作り出して一撃を受け止める!とてもシャボンとは思えないほどの耐久で完全に威力を殺す。そのままシャボンを打ち出して強引に距離を取らせる

リヴィリーナ(くっ…!私の能力がリヴェータたちに効かなければいいのに…!)

リヴィリーナの能力。サリエールヴォイスは自分の声を聞いた者を即死させるというもの。正直集団戦にはまったく向いてない

リヴィリーナ(仕方ない…。聞こえないことだけ祈ってこうするしかないか…!)

上空へシャボンを投げると大きなドームの形になって二人はシャボンの中へ、密室が出来上がった

リヴィリーナ「死ね…!」

リン(改)「…?何を言っている?」

リヴィリーナ「は…?なんで?私の声を聞いて生きてるなんて…!」

リン(改)「ほう…そういうことか。我の体は半分は機械!そのような呪いが通用すると思うな!」

リヴィリーナ「くっ…!ヤバい…!」

前代未聞。自分の能力が効かない相手にリヴィリーナは顔をしかめる。大声で聴覚を潰すことも迂闊に出来ないため考え込む

リヴィリーナ(リヴェータに相手変えてもらおうかな…?相性悪すぎ!)

 

リヴェータ(リヴィ…!殺せないの…!?)

ゼラア「とあっ!!」

一瞬の余所見で大きく殴り飛ばされるリヴェータ。だが腕を異形にすることでガード。すぐさま襲いかかる!

リヴェータ「はぁぁぁっ!!」

ゼラアは腕を肥大化させてガードする。しかしそれを見越してリヴェータはその腕を掴み、そのままシャボンへ向かう

リヴェータ「リヴィリーナ!!」

リヴィリーナ(リヴェータ…!)

お互いの考えは通じあっていた。リヴィリーナがシャボンを乱反射させてリンを強引にシャボン内から追い出すと交代するようにゼラアが投げ込まれ、リンに向かってリヴェータがバイオレンスハザードの衝撃波を放ちお互いの相手を交換させた!

リヴィリーナ(本音を言えばベノの偽物がよかったけど…!だってたぶん色的にこいつがゼラアってのでしょ…?殺せないじゃん…!っていうか早く立ち直ってよ!)

ゼラア「来ないのか?ならばこちらから行かせてもらう」

妙に正々堂々としたゼラア。首のマフラーを靡かせて攻撃に移る

 

 

 

れんが「リーダー!どうしちゃったの!?ねぇ!」

エル「ここまでリーダーがショックを受けるとはな…。どうする…?手の出しようがないぞ」

トットッパ「それでもやるしかないだろ。俺達はもう一般人じゃない。リーダーの忠実な仲間だ!」

エレッサ「そうだね…。わたあしたちでどうにかしないと…」

キサラギ「…やりますか?」

クラッパ「やるだす!」

れんが「よぉし!私とキサちゃんはあの誰も相手してない奴!他はそれぞれに!」

れんがの号令で同期組が走り出す!だがエルだけが違和感に気づく

エル「一人どこに行った…?」

 

 

 

 

ルヴィローム「楽しいな!ずいぶん殺しが上手くなったみたいだな?えぇ?」

紅袖「当然ですよ…。全てはお前を殺すために磨き上げて来たんですからね!私はお前を守ろうとした!なのにお前は私から全てを奪った!それだけじゃない!嫌々で生きてきた裏世界でさえ!お前はハイエンドとして名を馳せた!!どこまでも私の目の前に来て邪魔をする!!」

軽く「よっと」と笑いながら攻撃を避けるルヴィローム。余計な蔑み笑いが紅袖の復讐心に火を灯す

紅袖「お前さえ!お前さえいなければ私は!」

ルヴィローム「私をダシに自分が一番だったなんて夢でもみてんのか?寝言は起きてる時に言わないもんだぜ?」

紅袖「一番だと…?私は…!幸せを掴みたかった!だがもう私に幸せはどこにも…どこにもない…!お前に踏みにじられたんだ!!だから私は決めた…!ジンティアで他者へ不幸を撒き散らす…。そうすれば私は誰よりも幸福になる…!!」

ルヴィローム「他人を踏み台にして幸福?なぁ…お姉ちゃんよ。それってただ自分より下を作って喜んでるだけだろ?ガキの積み木遊びと変わんねぇなぁ」

紅袖「いちいち癪に触る…!」

ルヴィローム「逆恨みも大概にしとけよ。実姉ながら見てて痛々しいし醜いし惨めで見てらんねぇ」

紅袖「ルヴィロームゥゥ!!」

兎組を悠々と相手したりザラームやリンたちの様子を見ていた冷静な紅袖はそこにはいなかった。そこにいるのはただ己を悲劇のヒロインとして妹に全ての恨み辛みを八つ当たりしようとする哀れな姉だ

ルヴィローム「おいおい。姉妹水入らずっつったろ?」

ポロっと何かをコートの中から落とすとそれはいきなり光輝き第三者の目を潰した

シュナーレ「くっ!目が…!」

バンバンバン!!

三回の銃撃音と共に両足と頭を撃ち抜かれてシュナーレは即死した

ルヴィローム「どれだけ速かろうが撃ち殺すにゃ一瞬あれば充分だ。無駄弾撃たせやがって…。さてお姉さまよ。お邪魔虫は殺した。続きと行こうぜ」

紅袖「シュナーレさんさえ瞬殺とは…。お前はどれだけバケモノになりたいのですか…?」

ルヴィローム「邪魔さえしなきゃ殺しゃしねぇよ。もっともてめぇらジンティアにゃ食いぶち潰された恨みがあるんでな。朗らかな老後を過ごせると思うなよ?」

紅袖「お墓の下で眠らせてやるとでも?」

ルヴィローム「それで済んだら良かったんだがな。ご想像におまかせするぜ」

 

 

 

ベルゼブブ「なかなか速い…!だが…!」

エルミス・アンジュと戦うベルゼブブ。いくらパワーダウンしていても苦戦するほどではなかった

ベルゼブブ「お前より速い奴なんて元の世界にいくらでもいた!それらに比べれば遅い!!」

スピード勝負で圧倒するベルゼブブ。羽で地上に叩き落とす続いてそっと舞い降りた

ベルゼブブ(こいつがエルミス・アンジュというのなら殺せば約束に背く事になる…。今は押さえ込むしかないか…)

魔法を詠唱すると重力を強めてエルミス・アンジュの自由を奪う

ベルゼブブ「おとなしく伏せていろ」

その時、エルミス・アンジュの仮面の中にある目が赤く光を灯した

エルミス・アンジュ「BELIAL SYSTEM STANDBY」

風を切る音さえ置き去りにして先程と比べ物にならない速度でタックルで大きく怯むベルゼブブ。一切油断していなかったがあまりの速さに反応が遅れてしまったのだ

ベルゼブブ「重力魔法を受けてこの速度だと…!?」

一瞬一瞬の判断で攻撃をいなして行く。だがこうなってはラチが開かないとベルゼブブはその姿を変える。腹部に大きな口。その中から龍の頭が二つ出現。羽は短くよくある悪魔の羽のようになり両腕には三つの爪を模した部位が生成された

ベルゼブブ(アクジキング)「そこだ!」

龍の頭がブレスで併殺を狙う。それを回避して近づいて来たところをベルゼブブが捕まえた

ベルゼブブ「少しおとなしくしていてもらおうか!」

捕まるや否やエルミス・アンジュはそのままベルゼブブごと超音速で飛び立つ。意地でも離さないベルゼブブを高速飛行しながら廃墟に押し付ける。これにはベルゼブブも難色を示すがしっぽで絡めてさらに固定させる

ベルゼブブ「これだけ密着しているなら避けられまい!」

腹部の口から光線を放つ!がっしりと固定されているだけあって直撃したエルミス・アンジュはベルゼブブごと墜落した

 

 

 

れんが「キサちゃん!」

バボーチカ「ふっ!」

サイコキネシスで先に飛ばされたキサラギにれんがをぶつけてエナジーボールを再び乱射。二人は倒れてしまう

れんが「リ…リーダー…!」

シャーヴァルへ歩み寄るバボーチカ。その目は涙で溢れていた

バボーチカ「隊長…。逃げてください…」

シャーヴァル「バボーチカ…。訳を聞かせてくれ…」

バボーチカ「私はあなたに殺された後、よみがえってしまいました。ジンティアによって…ナンバーズと呼ばれる七人に選ばれました。ダークネスポケモンを管理し、生かすも殺すも自由にできる絶対制御の役割として…。記憶をそのままに、ジンティアの命令に逆らえぬよう…」

シャーヴァル「お前を救う方法か何かあるはずだ…!」

バボーチカ「ありません。私は実験被験者として長く、ジンティアの改造に晒され続けてきました。おかしいですよね…。記憶はあの頃のままなのに…望みもしない殺戮を体が勝手にしちゃうんですよ…。もう私が私で無くなっている…だから、私を殺してください…」

シャーヴァル「…」

出来ない。シャーヴァルの口からはとても言い出せない。なぜならシャーヴァルはバボーチカを自ら殺めた事で今の不殺を貫く事を心に決めた。全ては彼女の死から始まったことだった

バボーチカ「お願いします…。隊長。私をみんなの所へ帰してください…」

シャーヴァル「俺は…俺は…」

お前をもう一度殺すなんて出来ない。その言葉が口からは出なかった

れんが「くっ!うあああっ!!」

不屈と根性で立ち上がりバボーチカへ掴みかかるれんが。振り向くこと無くいい放つ!

れんが「リーダー!私達の任務はリーダーについていくこと!だけど!リーダーはなんのためにここへ来たの!?もう二度とリーダーがおかした過ちを!同じ悪夢を起こさせない為じゃなかったの!?」

シャーヴァル「れんが…」

れんが「今回だけで終わらせることは出来なくても私達はずっとリーダーについていくよ!だからリーダーは!リーダーの心のままに走って!!」

その一言がシャーヴァルの中で徐々に大きな炎となって使命を燃え上がらせる。顔を上げるとバボーチカの顔が見えた

バボーチカ「シャーヴァル…!行って…!」

それが背中を後押しした。覚悟を再びに走り出しれんがとバボーチカの横を走り去る。二人が見たその横顔は、その目は、強い意思を放っていた

バボーチカ(シャーヴァル…。信じています…)

 

アナザーベノ「来やがったか!」

その気配をいち早く察したアナザーベノが斬りかかる!それとシャーヴァルの影角がぶつかり合う

アナザーベノ「遅かったじゃねえか!久しぶりの会談にずいぶん花開いたみてぇだな!」

シャーヴァル「あぁ、もう充分なほどにな…!」

迷いを振り切ってアナザーベノとリンの二人を一人で圧倒するシャーヴァル。二人を蹴り飛ばして距離を取ると影角を地面に突き刺し、脇差ししたもう一本の刀を抜刀する

シャーヴァル「ベノの記憶があるならわかるな…!?」

その目を漆黒に染め、シャーヴァルは二刀流で戦い始めた!

アナザーベノ「チッ!封印したんじゃなかったのか!?」

リン(改)「ぬぅっ!なんだこの動きは!」

普通なら、二刀流というものは左右の刀の長さが異なり長い刀の隙を短い刀で補うというのが一般的だ。だがシャーヴァルは違った。影角という自在に長さや形、強度を変えられる刀であることを生かして翻弄。攻撃は全て普通の刀で賄っている

ソフィア「久し振りに見たわね」

リヴェータ「アイツ二刀流なんてできたの?」

ソフィア「赤夜叉。それがシャーヴァルが過去に裏世界で通っていた二つ名よ。今でこそバトルスタイルは影角頼りに見えるけれど昔は違ったの。全身に刀を装備して折れるまで酷使、折れたらそれを戦場に挿し捨ててすぐに次の刀を使い始める。彼が暴れまわった戦場には常に折れた刀が散乱して右袖のみに血がベットリとついていた。87億ポケドルの賞金首だったのよ」

リヴェータ「アタシたちより全然上じゃない」

 

シャーヴァル「ベノは一人でいい。過去の亡霊は地獄へ送り返してやる」

アナザーベノ「(やべぇ!直撃だけは…!!)」

シャーヴァル「遅い!龍魔双裂斬!!(りゅうまそうれつざん)」

刀二本に闇を纏わせ力任せに振り下ろす!防御に使った二人の武器を粉々に粉砕し、もろとも大打撃を与えた!しかし直撃だけは避けられたようで二人は立ち上がろうとする

アナザーベノ「いつ見ても勝てる気がしねぇな…」

シャーヴァル「動くな。お前たちに立ち上がる力はない」

リン(改)「最後まで戦い抜くことこそ、戦いに生きる者の定めだ…!」

シャーヴァル「その志だけは評価しよう」

揃って倒れるアナザーベノとリン。そしてシャーヴァルの真横から二つの影が現れる

シャーヴァル「お前たちがゼラアとエルミス・アンジュか」

ゼラア「とおっ!ゼラアキック!!」

エルミス・アンジュ「…!」

迫る最中、コマ撮りのように流れる時間。ほぼ同時に攻撃が迫り、シャーヴァルはそれを見て刀を手放す。落ち着いてそれをかわし、懐にあるものを突き付けた

シャーヴァル「戻れ」

赤い光に吸い込まれてボールに納められる二人。すぐに懐にしまうと近場に紅袖が転がってきた

紅袖「ふっ…。ふっふふふ…ナンバーズが半壊とは…やってくれますね…!」

シャーヴァル「諦めろ。もうお前たちの負けだ」

紅袖「それはどうでしょう?」

ルヴィローム「おい…。ハッタリじゃねぇぞ」

周囲のビルからいつの間にかいくつもの銃口がこちらを向いている。気づかない間に囲まれていたようだ

紅袖「動くと蜂の巣にしますよ。最悪血の一滴でもあればあなた方のクローンを作り出し配下に出来るのですからね」

シャーヴァル「ルヴィローム」

ルヴィローム「無理だな。わたし一人なら余裕だがてめぇらが邪魔だ」

紅袖「ふっ、ふふっ!私は幸せですよ!愚妹を八つ裂きに出来るだけでなくこれほどまでに裏世界を震撼させた存在を戦力にできるのですからね!」

シャーヴァル「お前たちの命令に従うつもりはない」

紅袖「その時はバボーチカさんのようになっていただくだけです。記憶そのままに我々の命令に絶対服従する駒に…」

シャーヴァル「(どうする…。この状況で全員が生きて帰る方法を考えるんだ…!)」

紅袖「研究所に逃げ込みますか?私がスイッチを入れれば即ドカンですが」

ルヴィローム「性根が腐ってるな。こんな事しなきゃ勝てないなんざお笑いだ」

紅袖「黙りなさい。裏世界で何を今更…、卑怯だろうが何だろうが勝てばいいんですよ」

シャーヴァル「そうか…それもそうだな」

エル「リーダー!」

シャーヴァル「紅袖、感謝する。裏世界の掟を俺は忘れていたのかもしれない。礼をしよう」

紅袖「あらあら。ならお礼にあなた方を「因果応報という言葉を教えてやろう」」

紅袖の言葉を遮りシャーヴァルが口を開いた

シャーヴァル「おかげでここでお前たちを皆殺しにしたうえで全員生きて帰る方法を思い出した。後悔するなよ…?」

闇を纏い、周囲にいる味方を取り込み始めるシャーヴァル。紅袖が気付き、一斉射撃を命令したがあまりにも遅すぎた

シャーヴァル(怪獣形態)「はぁぁぁぁっっ!!!」

姿を変えた直後の咆哮で周辺のビルは吹き飛び、紅袖たちも怯む他なかった

シャーヴァル(怪獣形態)「消し飛べぇぇっ!!」

口内にエネルギーを溜め込みドゥーディケルアールハイトを打ち出す構えに入る。紅袖は流石に敵わないと判断し逃げようとする

紅袖「えぇ!大至急私の周りを転移させてください!!バボーチカさん!早くこちらへ!」

シャーヴァル(怪獣形態)「!」

打ち出そうとした瞬間。目に写ったのは…バボーチカの姿。彼女は紅袖達から背を向けたままじっとシャーヴァルの変わり果てた姿を見つめ、微笑みながら両手を広げる

紅袖「バボーチカさん!くっ!こんな時に命令を受け付けない!?どうして!?」

シャーヴァル(怪獣形態)「バボー…チカ…」

バボーチカ「撃って…。そして終わらせてください。私が今、私である内に」

シャーヴァル(怪獣形態)「お前…!」

バボーチカ「早く…!も…うもたな…い…!頭が…割れそ…う…」

目から血が混じった涙を流すバボーチカ。望みもせず甦り、自由を奪われた彼女が終わりを求めている。シャーヴァルはその涙を目に焼き付け、バボーチカを自由にするために全身全霊で放った!

シャーヴァル(怪獣形態)「ドゥーディケルアールハイトォォォォッ!!!」

飛翔しながら放つ破壊光線がバボーチカに迫る

バボーチカ「私も…、歩みたか…」

直撃したバボーチカを中心に街が破壊されていく。紅袖達は危機一髪離脱した

シャーヴァル(怪獣形態)「ぐっ!あああぁぁぁぁっ!!」

覚悟を決めたとはいえ、シャーヴァルの心に大きな傷痕を残し、フリダラシティは全壊した…

れんが「これが…リーダーの本気…」

ステイル「リーダー!その…」

シャーヴァル(怪獣形態)「大丈夫だ。帰るぞ」

大きな羽を羽ばたかせ、シャーヴァルは振り返ること無く飛び去った

 

 

 

ベノ「ぐあっっ!!」

ネルケー「うぐっ…!!」

その頃。今なお暗殺者達との戦闘は続いていた。全員が満身創痍だ

ベノ「やるじゃねぇか…!ジンティアにいるのがもったいないくらいだぜ…!」

ネルケー「ほざくな。我々は…。…?」

突如飛んでくる攻撃。巨大なプラズマ光弾が隕石のように無差別に降り注ぐ

ベノ「これもてめぇらの差し金か!」

ネルケー「冗談ではない…!いったいなんだ…!」

 

天から舞い降りるは六つの影。それぞれが一つずつ戦闘しているところに降り立った

ベノ「こいつは…!ルシファー…!?」

ネルケー「(同族を捕らえられた事で来たのか…!これは退くしかないな)」

六人が一斉にテレポート。残されたてゐ劇六人へ六人の七つの大罪が襲いかかろうとしていた

ベノ「あんにゃろ逃げやがったな…!にしてもいきなり来るたぁな…!アポ無しはお断りしてんだがな…!」

その時、空から黒い光が地上に降り立った。それはシャーヴァル達だった

シャーヴァル「戻った」

ベノ「お前…!その格好…!それにベルゼブブだと!?」

シャーヴァル「ベルゼブブ。約束は覚えているだろうな?」

ベルゼブブ「もちろん。絶対に手出しさせないさ」

この世界とは違う言葉で姉達を説得するベルゼブブ。サタンやマモンが言い返しをしていたがルシファーがそれを止める

ベルゼブブ「(私は本気だよ。二度と戻れなくても後悔しないし刺し違えてでも一人は殺す。そうなると私達、都合が悪いんじゃないか?)」

ルシファー「(いつの間にか屁理屈が得意になったようだな。だが良いだろう。私達はお前が捕らえられていた場所がわからなかった。だがそこの奴が助け出し。姉妹一義理堅いお前がそう言うのだ。可愛い妹のために折れてやろうではないか。サタンもそれでいいな?)」

サタン「(次はお前もろともぶっ殺してやる…)」

レヴィア「(いいなぁ…助け出してもらえるなんて…)」

ベルゼブブ「(はいはい、じゃあ散って。姉様達も冥王にやられた傷が癒えてないだろ?)」

ベルゼブブ以外が上空に飛び去る。そしてそれぞれ別の方向へ向かって消えていった…

シャーヴァル「話しは通じたようだな」

ベルゼブブ「殺し文句で強引にな。しばらくは大丈夫だろう」

シャーヴァル「お前はこれからどうする?」

ベルゼブブ「決まっている。しばらくは約束通り姉様たちの監視だ」

シャーヴァル「そうか。…世話になった」

ベルゼブブ「こちらのセリフだ。そういえばリンゴをくれた者の名はなんという?」

エレッサ「エレッサ…」

ベルゼブブ「エレッサか、覚えておこう。それではな」

他の姉妹同様にベルゼブブもまたどこか空の彼方へ飛び去る。それが見えなくなった頃。ようやく彼らに安寧が訪れた

 

 

 

 

 

 

エピローグへ続く…

 




お疲れ様でした。そしてエピローグへどうぞ


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†MULTIPLE AIGIS†SPECIAL Ξ THE HAPPINESS DIZAIA episodeⅣ エピローグ

こんにちは。長かったΞも終わります


 

 

 

???「珍しいですね。皆さんが立て続けに失敗するとは」

紅袖「…」

ネルケー「今回ばかりは相手が悪すぎた。我々が死ねばジンティアは危うくなる。それを回避しただけだ」

???「確かに。皆さんは大切な戦力であり替えが効きませんからね」

紅袖「言い訳はしたくありません。片腕を奪われ、愚妹に愚弄されてナンバーズまで半壊させられたのです。正直私としては殺されても文句はありませんよ」

???「殺す?そんなことしませんよ。紅袖さんは常に前で活動してくれていますからね。そこら辺の傭兵ならともかく信頼を置いてる者を殺すなんてジンティアとしては失うリスクが大きすぎますから」

紅袖「ありがとうございます」

???「ここ最近大きく動きすぎましたね。しばらくは静かに活動しましょう。また嗅ぎ付けれても厄介ですから」

 

 

カテドラ「次に彼らと相対するその時は私も出向きましょう。必ず仕留めるためにも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベノ「なるほど。コピーとはいえ証拠を掴めたのは大きいな。それにしても奴等のバイオ兵器にゃ驚きだな。過去の俺やらバボーチカやら…」

シャーヴァル「バボーチカや紅袖はナンバーズと呼んでいた。そしてこいつらもそうらしい」

ゼラア(マッシブーン)「ワシド博士は洗脳手術の寸前で俺とエルミス。二人の洗脳をリセットするボールを作り出した。他は洗脳が解けないとも聞いていた」

シャーヴァル「お前の意識はハッキリとしているようだが…」

一方のエルミス・アンジュの姿は面影が無く、全身が鎧に包まれていたその姿は白いワンピースになっていた。胸元に緑色の三角形がプリントされ明るいオレンジ色と黄色の中間色のようなリボンが彩りを付けていた

エルミス「えっと…」

ゼラア「おそらくエルミスは産み出されてすぐに洗脳手術を受けたためその洗脳が解けた今、初めて自我が芽生えたのではないかと思う…」

シャーヴァル「お前たちナンバーズはダークネスポケモンの管理が目的で開発されたのだな?お前はリヴェータから聞いたとしてこのエルミスは何ができる?」

ゼラア「戦闘しなかったのか。エルミス・アンジュは超高起動方殲滅兵器として生み出された。その脳にはBELIAL SYSTEMと呼ばれる戦闘OSが組み込まれている」

ベノ「ベリアルシステム…?」

ゼラア「battle killing darkness fall systemの略称でダークネスポケモンを抹殺することに特化した戦闘OSだ。だが敵味方の区別は付くようにされている」

シャーヴァル「洗脳されていたと思えないほど詳しいな」

ゼラア「ワシド博士がインプットしたデータを引き出しているだけだ」

エルミス「…」

シャーヴァル「どうした?」

エルミス「その…。名前…」

シャーヴァル「エルミス・アンジュじゃないのか?」

ゼラア「…なるほど。エルミス・アンジュは戦闘時の名前。普段の名前が欲しいと言うことではないか?」

シャーヴァル「名前か…」

不意にエルミスの肩にある07という文字が目に入った。そして自然と口が開く

シャーヴァル「楓(かえで)…レナ…」

ベノ「?」

シャーヴァル「楓レナと言った」

レナ「私の…名前…?」

シャーヴァル「その通りだ。もしお前がエルミス・アンジュになる時はそっちを名乗ればいい。普段のお前は今から楓レナだ。そしてベノ。レナを新生鍼組に入隊させたいと考えている」

ベノ「監視も兼ねてか」

シャーヴァル「あぁ。何より任されたものを他の誰かに押し付けたくはない」

ベノ「まぁいいだろ。他でもないお前がそう言うなら間違いねぇ」

シャーヴァル「変わらず俺の推薦だけで組ができあがってしまっているな…」

ベノ「全員それだもんなお前の組。まぁ許可出してるの俺だが」

シャーヴァル「そういえば診断結果は…」

しらみつ「お待たせしました」

ちょうど狙ったようにしらみつとデビローズ。それにまおとアデアが入室してきた

デビローズ「診断結果出ました。ゼラアさんはマッシブーン。エルミスさんが…」

レナ「エルミスじゃないよ…。私の新しい名前は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レナ(ラティアス★)「楓レナ。それが私の名前」

デビローズ「シャーヴァルさん?」

シャーヴァル「…新しい仲間だ」

レナ「よろしくね!」

デビローズ「えぇ。よろしくお願いしますね。それで結果なのですが…」

しらみつ「お二人ともすでにご存じでしょうがあなたたちお二人は人造ポケモンです。ゼラアさんは身体能力や脳を改造されていました。一方のレナさんですが…遺伝子情報がグチャグチャでした」

ベノ「どういうことだ?」

しらみつ「確信があるわけではありませんがおそらく様々なラティアスの遺伝子を組み込んで作られたと思われます。これだけのDNAが共存できているのがおかしいですが…」

ゼラア「それもBELIAL SYSTEMで強引に統率させている…。らしい」

しらみつ「一度そのワシド博士という方とお会いしたかったですよ。どうやったら心臓だけが機械で動けるのか。脳に刻まれたBELIAL SYSTEMも場所が場所ですから解析もへったくれもありません」

デビローズ「さらに不思議なのは鎧を纏った姿です。恐らくメガシンカの原理を利用したこの鎧はラティアスの見えない羽毛で構成されているのですがその羽毛に金属反応が出ているんです。恐ろしいことにせいさいさんと同じ【オリハルコンブレイズ】です。弊害や差別に聞こえるかもしれませんが彼女には命があります。心もあります。ですが生き物として作られていないのです。これではまるで戦闘機です」

レナ「…」

シャーヴァル「安心しろ。あぁは言ってるのはお前を作り出したものへの怒りだ。俺たちはお前をそう作った奴らとは違う。お前のことをポケモンとして、生きるものとして歓迎する」

レナ「えっと…」

シャーヴァル「好きに呼べ、他はリーダーなどと呼んでいる」

レナ「リーダー…」

デビローズ「いずれにせよ私としらみつさんの所へ定期的に通ってもらえますか?BELIAL SYSTEMのブラックボックスを解明すればジンティアのバイオ兵器にされてしまった人たちを救い出せるかもしれません。協力…してもらえませんか…?」

レナ「私にできることなら手伝います」

シャーヴァル「あまり無理はさせないでほしい。まだ自分を見つけたばかりだ、性格の生成もこれからだろう」

デビローズ「それもそうですね。それじゃあ…」

しらみつ「レナさん。ちょっと来てください。ベノさんたちも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

れんが「えっ!?名前変わっちゃったの!?どうすんのさ!!」

エル「急いで変えるぞ!みんな手伝ってくれ!」

わちゃわちゃしている部屋へのドアが開く。主に鍼組がドキッとなり、急いでクラッカーを引いた

パァン!!パパァン!!

レナ「うひゃっ!?」

れんが「えっと、レナ!!」

全「「「入隊!おめでとう!!」」」

キサラギ「あ…」

クラッカーの中身はレナを護るために前に出たシャーヴァルに直撃していた。それを見てキサラギが「一抜け」と言うとトットッパとクラッパが急いで紙吹雪等をシャーヴァルから取った

シャーヴァル「…お前たち。いつの間にこんなことを…?」

そこには全員が見事勢ぞろいしていた。いくつものテーブルには手作り上手なメンバーが作った手料理の数々が並べられていた

れんが「えっとぉ…サプライズのつもり…」

恐らく協力したのだろうエクレール、MEXさん、わかなの三人がそっぽを向いた。それを見て隊長四人がやれやれ顔になる

ベノ「こいつら…。ご丁寧なことだな?」

まお「シャーヴァルと愉快な仲間たちに改名したらどうだ?」

アデア「まおさん。それは僕ら四人誰が言ってもブーメランですよ」

シャーヴァル「…」

ステイル「リーダー!お許しください!私はせめてリーダーに確認をと…!」

シャーヴァル「高所の飾りつけのためにエレッサを肩車していると説得力が違うな」

ステイル「こっ!これは!」

シャーヴァル「一つ言っておくぞ。騒ぎすぎて乱痴気騒ぎにはするな。余興のバトル禁止だ。特にルヴィローム、お前は武器全部部屋に置いてから戻ってこい」

ルヴィローム「ざぁ~んねん。もう置いてきてるんだよなぁこれが!」

シャーヴァル「ふぅ…。それなら後は節度を護って楽しくやれ」

大騒ぎを始める部屋を他所にベノとシャーヴァルとゼラアだけが外へ出る。夕暮れ時、少し肌寒い風がゼラアのマフラーをたなびかせる

ゼラア「シャーヴァル。あんたには感謝している。殺戮マシンとして罪を犯す前にワシド博士の意思をくみ取り、俺とエルミ…レナを助けてくれた」

シャーヴァル「行ってしまうのか?」

ゼラア「あぁ。俺はこの力でこの世界の自由にために旅をする。侵略や破壊の力も正しく使えればワシド博士も喜ぶだろう」

ベノ「おい。カッコつけるのはいいがよ。ジンティアには気を付けろよ」

ゼラア「そのつもりだ。ではな」

ベノ「話終わってねぇよ。こいつ使え」

そこにあったのは真っ赤なバイク。ゼラアは「おぉ…」と声を漏らす

ゼラア「いいのか?」

ベノ「一応お前はてゐ劇所属だ。群れるのが嫌でも一人で背負い込むなよ。こいつみたいになっちまうぞ」

シャーヴァル「余計だ」

ゼラア「あぁ。定期的に連絡する」

ベノ「連絡端末はバイクの中だ。無くすなよ」

ゼラア「感謝する。ところでこのバイクの名前はあるのか?」

ベノ「バルクジェッターって名前だ」

ゼラア「いい名前だ」

バルクジェッターを走らせてゼラアは去っていった。長く遠くつらい道へと…

 

 

 

 

 

 

 

シャーヴァル「にぎやかな奴らだ」

パーティー会場に戻り。一人隅で座っているとソフィアが隣に座った

ソフィア「思い出したわ。あの子のこと」

シャーヴァル「そうか」

ソフィア「一度、戦ったことがあったの。凄まじい気迫だったわ、あなたが来ると安心した顔で気を失ったのを思い出したのよ」

シャーヴァル「あいつも今頃飲み明かしている。昔の仲間たちと」

ソフィア「そうだと良いわね」

シャーヴァル「あいつを縛るものは無くなった。自由に…」

ソフィア「湿っぽい顔してると気が付かないうちに目から水出ちゃうわよ」

ハンカチを受け取って見えないように流れた涙をふくシャーヴァル。黙ってハンカチを返すとステイルとたらこがやってきた

ステイル「リーダー。幾度ものご無礼お許しください!」

たらこ「ごめんね!じゃんけん負けちゃった!」

シャーヴァル「何を言って…」

二人に手を引かれてパーティー会場の一番やかましいところへ連れ去られるシャーヴァル。それをソフィア、リヴェータ、リヴィリーナ、ルヴィロームが笑顔で見ていた

ソフィア「まんざらでもないのね。いつも肩っ苦しいからこうなるのよ」

リヴィリーナ【もっと素直になればいいのにね】

リヴェータ「私たち人の事言えるのかしら?」

ルヴィローム「言えねぇなぁ。だが見ろよ。微笑みでも笑ってるあいつなんざ指で数えるほどだぜ?」

ソフィア「あら。私たちも笑顔ね」

リヴェータ「いつか…また全員で笑える日が来ると良いわね」

リヴィリーナ【うん!約束だよ!】

ルヴィローム「その時はわたしらが居なくなる時だぜ?」

 

れんが「四人ともー!早くしないとエレッサがケーキ食べちゃうよー!」

 

リヴェータ「過去は変えられなくても未来なんていくらでも変えられる。私たちが居なくならない未来に行けばいいだけよ。食べそびれちゃうから行くわよ」

そのパーティーは結果として夜通し行われたのであった…

 

 

 

 

 

 

数時間後…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベノ「ふがっ…!いつつ…飲みすぎたか…今何時だ…?…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベノ「…」

指示された時間は昼の三時。ベノはなにも見なかったと開き直って二度寝を始める。全員が爆睡している

その様子は上から見ると【おわり】の文字になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。本当に終わってしまいましたが塞き止めていた他の作品の更新も頑張って行きます


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