ドラゴンクエスト~邪神の眠るダンジョンと夢見る戦士~ (モゾモゾ)
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序章~ゲーム?現実?揺らぐ世界観

初めての作品です。文字を打つのが遅いので時間はかかりますが、作品を考えるのが好きなので頑張りたいと思います。
とりあえずの目標は100000文字


最新作のゲームが発売されるらしい。

体の情報をスキャンで取り込み、それをゲームのキャラクターとして動かす。

久々に触れたゲームに、感動を覚えた。

 

だが、時は残酷だ。

 

ゲームが発売した時の、俺の年齢は45歳。

スキャンして、いざチュートリアルを始めた俺は、水に浮かぶ自分の体を見てため息を浮かべる。二の腕がたるんたるんで最近はまりだした酒とチーズの組み合わせがうますぎたせいなのか、腹が出てきている。

体力とスタミナはマックスになるどころかあふれ出てしまった。

顔は少し…いや、だいぶ脂ぎっている。

なんと俺は、典型的な中年太りをしているのだ。

 

 

いや、知ってたけどね。

 

 

別にいいさ、太っている奴が世界救っている世界がある。

年を取った爺さんが魔王を叩きのめしたりするんだ。

 

なら別に、太って脂ぎっていて、何なら運動不足の俺が世界を救ってもおかしくないだろ?

まぁ、普通に考えればそんな奴に世界が救えるはずがないだろう。

 

せいぜいできて、肉壁だ。勇者なんて言ったら鼻で笑われる…

 

 

だが、しかし! だが、しかし!

 

これはゲームである。誰だって主人公になれる。

つまり、俺がごちゃごちゃ何を言っているのかというと…

 

 

 

ドラクエビルダーズ2面白かった!

 

 

 

すでにクリアした後だった。

 

あまりの面白さに、有給も消化し危うく仕事にも差支える寸前だった。

実際に体を動かして物を作る行為。

最初は、AIに体を動かしてもらっていたが補助を切ることにより、世界が広がった。

 

発売当初が45歳、魔王を倒したのが50歳の時だ。

最初の5年間はひたすらトライ&エラーの繰り返し。

物を作ることにも当たり前のように失敗した。

料理なんかバフが乗るものが毒になっており、味覚センサーが異常を知らせてきた。

地味にショックだった。

武器なんか作っている最中にケガなんか当たり前だし、魔道具なんて、爆発して体が吹き飛んだ。

NPCが集まってきて泣かれた時は、心が締め付けられた。

そのことが原因で、遊びではなく実際に生きていると仮定してゲーム内を楽しむようになった。

久々だった…こんなにも感情が自然に溢れ出すゲームにであったのは。

 

だが、そんなゲームも先日納得のいかない形で終わった。

 

原因不明の症状が発生したのである。

 

50歳を超えたあたりで、体に違和感を感じたのだ。

最初は、体の疲れが原因かと思い対処しなかったのだが、日に日に症状が悪化していき

今では立つこともままならない。

既に末期だった。

家族は既に他界しており、「血筋を絶やすわけにはいかぬのだー!!」と婚活に励んだのが40代、結局いい人ができずに一人寂しく暮らしていた。

 

そんな時に運命に出会ったのが、ドラゴンクエストビルダーズ2だった。

 

今まで数々の、ドラクエを経験してきた私に激震が走ったのは。

なんだか偉い人がすごい技術でゲームの中に実際に暮らしているような感覚で遊べるやつを作ったらしいのだ。

おじさん驚嘆。

 

圧倒的な世界観。

 

CMで流れているのを口を開けながらみていたのだった。

 

楽しかった。

 

まるで、子供の時のように無邪気に遊んだ。

遊びすぎて、血は途絶えた。笑おうにも笑えない案件だった。

でも、満足していた。数々のアップデートにパッチ、世界はどんどん広くなり私も盛り盛り町や島を開拓した。

体の動きが徐々に鈍くなっても助けてくれる友がいた。 

 

そんな友に、もう、思い残すことも事もないように最後に、別れを告げた。

 

 

「今まで、本当に楽しかったよ、ルルにシドー。世代は違えど、君たちに出会えたことを神に感謝するよ」

 

「へっ!なんたって、俺自身が神なんだ。当然だろ!それに、急に畏まるなよ。俺たちの仲じゃねえか」

 

得意げな顔でいつものように、返してくれた。

 

 

「そうよ。私たちの間に堅っ苦しいのは、なしって言ったの貴方のほうよ。ダイキ」

 

本当は、彼女の方が先だったが、今更、この流れで訂正するのは空気読めなすぎなので黙っていた。

 

 

「すまんすまん。最近歳のせいか、涙もろくてね。こんな風に言わんと喋れなくなりそうなんだよ」

 

「まったく、そういうしぐさをするから、おじさんくさいって言われるのよ。女性にもてたいなら、気をつけなさい!……それより、本当にいなくなるの?いつでも遊びに来ればいいじゃない。私たちはあなたのことをずっと待ちつづけるから」

 

初めて会ったころからだいぶ、色気が増した彼女に言われ少しテンションが上がった私だが、彼女は既に既婚者。

シドーとくっついたのであった。

昔から、周りからもお似合いだと言われ続けられた。私も、もちろん祝福した。

シドーが申し訳なさそうな顔をしていたのは、今でも覚えている。

 

 

「そうしたいのは山々なのだが、恐らくこれが最後だろう。実は、指もあまり動かないんだ。最後に君たちだけ。初めて、この島で開拓した君たちだけと共にこの夜を過ごしたかった」

 

「チッ!そんな弱弱しいこと、言うんじゃねえよ。…馬鹿野郎」

 

悪態ついているが、普段涙を流すことのない友が、私のために泣いてくれている。指摘すると怒りそうだが、これが最後だ。ログアウトする時、からかってやろう。

 

 

「もう、既に日は昇りつつある。あれが、完全に出たときにこの世界から飛び立とうと思う。今まで、長い間話に付き合ってくれて、ありがとう」

 

現実世界では、看護師さんから時間をどうにかもらい、セットしてもらったのだ。

体を無理やり動かすための副作用の大きい薬も処方した。私の命を削ってどうにか、体を動かしている。

 

 

「おい、待てよ!まだまだ、話してないことがいっぱいあるだろ!」

 

「そうよ、そうよ!」

 

「さよならだ。シドー。私のために泣いてくれて嬉しかったよ。ルルも。また、来世で会おう」

 

そして、ログアウト30秒ほど前になったので話を切り上げた。

 

 

すると、辺りに声が響いてきた。

 

 

⦅ギリギリ間に合った!!待って待って、その命。あなたまだ生きたいでしょ?私のとこで働いて欲しいの。返事はきかないわ。あなたならやるって、言うと思うもの。だって黙ってるままなのは、イエスということなんでしょ?大丈夫大丈夫!ちゃんと、若返らせてあげるし、病気も治してあげる。その代わり今まで貯めたあなたの経験値全部なくなるけど大丈夫よね?…うん!大丈夫そうね!そしたら転送始めるわよー⦆

 

なんか、恐ろしいこと言っているが、体がすでに光り輝いてきている。

 

 

「おい!なにもんだてめえ!ダイキに何しやがる!」

 

⦅私ルビス!新米だけど神様っぽいのしてるの。ちょっと私の世界が大変なことになるかもしれないから、色んなとこにスカウトしてるの⦆

 

 

「なら、俺もつれてけ!相棒の俺がいねえと、どうすんだ!」

 

「馬鹿!!お前こそ、ルルをどうするんだ!赤子がいるんだろ!お前が守ってやれ父親だろうが!!」

 

 

「うっ。しかし……分かった。なら俺の力を持っていけ!それくらいはさせてくれ!」

 

 

⦅えっ!急に言われても時間ないから急いでその人に触れて!ってあなた力でか過ぎなのよ。無理無理!できてギリ半分くらいが精一杯⦆

 

 

「構わん!さっさとやれ!…俺は確かにお前のそばについてはいけないけれど、この力でいつもお前を支えてやる。頑張れよ」

 

いい子に育ってくれたなー。

時々周りが見えなくなって困らせることもあるが、気持ちはうれしい。

急にあほっぽい、神様に攫われたけど、彼の頼もしかった力を分けてもらえて正直助かった。本当に俺一人で行ったらスライムの大群に殺されるかもしれないのだ。

 

「シドー…ありが」

 

意識が反転した。彼から伝わってきた触られていた手のぬくもりや、優しさが感じなくなったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っていうのが今までの流れです。あなたたちは、今の私の話を信じますか?トルネコさん、ルイーダさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                             続く…




次から、書けることがどんどん増えるので文字数が稼げそう!

次回「胸元の色気」


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胸元の色気

作者は乳より尻派

でも、性格良ければそれが一番なんだなぁ

            モゾモゾ


今の胸中は、「あの、あほ女神、最後の挨拶くらいきれいにしめさせろ」

その一言に尽きた。

嫌がらせとしてあの女神を信仰している教会の横に公衆便所を新しく設置したくなってしまった。

 

 

 

待て、それどころじゃなかった。

 

何はともあれ、俺は生き延びた。否、生き返ったはず。

 

生き返った?なぜ?

 

ゲーム内のことだから普通に考えると現実では半死半生の状態でニコニコしながら周辺装置をつけて悶えているはずだ。

だが、看護師さんが時間になっても外してくれないし、何ならこちらからログアウトもできない。

 

先程の世界?ゲーム?で感じ取れていた感覚がこの見知らぬ場所に放り出されてから、どんどん現実味を帯びた感覚に近づいている気がする。

 

今、近くにある噴水の規模が乏しい小さな広場でベンチに座りながら自問自答の繰り返しをずっとしている。

まず、ルビスという女神が言っていた通り、体がスムーズに動く。AIの補助を受けていた昔のようだ。なんかよくわからん病気とやらは、治ったのだろうか?

あの病気は本来ゲーム内は健康状態は引き継がないはずなのに、何故か同期していた。バグが発生しているのではないかと、勘ぐって運営に連絡したが、取りあってももらえない。セーブデータが破損するくらいならと思い今まで、何もしなかったがおかしすぎる。

 

それに、この世界だ。さっき、少し目をそむけたがおそらく現実だろう。あまりにも違和感がなさすぎる。歩く度に反響する石畳の音や感触。ベンチ近くに飲食店があるのか、食欲がそそられるソースのにおい。焼きそばだろうか?腹減ってきた。

 

 

だがそれはそれ。

謎は残ったままだが、今はいい。

 

 

それよりも、切羽詰まっている問題が幾つも発生していた。

1、若返っている+おそらくシドーから譲ってもらった力のせいか服の大きさが違い過ぎて怪しさが増した。

2、ルビスは、世界を救ってとほざいたが、まずは金を持っていない俺を救ってくれ。

3、現役の時から使っていた、道具やアイテムを入れている袋をルルに預けっぱなしだ。

4、金を稼ぐ当てがない。

5、ルビスが言っていた、⦅経験値を全部使う⦆のあの言葉。もしかしたら、レシピを介したクラフトができない可能性を帯びている。レベル制限のクラフトもいくつかあったはずだ。

 

ひとまずは、こんなものだろうか。

 

どうしよう。

 

1と2と4は、まだなんとでもなる。……はず。

服自体は、きれいなもので、仕事を斡旋してもらえばすぐにでも作業にかかることができるであろう。このあふれんばかりのパワーがあれば、現役より動けるかもしれない。そこも要検証だ。

 

これからの、生活に一番支障をきたすのは、3と5だろうな。

 

3の袋さえあればどこでも生きていける自信はあるのだが、ないものは仕方がない。

5も伝説級の道具が作れないのかが、心配だが、考え直すと素材が手に入らないだろう。あれを作らなければいけない状況に陥った時に改めて考え直そう。……忘れてなければいいが。

 

「よしっと!あんまり解決してないが、ひとまず、この辺りの情報収集からはじめるべきか。最悪一日くらいは飯は我慢できる。日が出ているうちに行動しよう」

 

そうして俺は、町中を探索し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

この島の起源。

 

【ゴットサイド】

 

それは、この島の名であり、街の名でもある。

島の中央にある天を貫くような巨大な塔を中心に街は形成され、その地下には神が魔王、邪神を封じた迷宮が存在する。

神の声を聞くことが出来た者達が塔の周囲に集い、それが段々と街になっていったことからこの地は聖地とされ、街の北区には大聖堂が建設されている。この島自体はどの国の所有でもなく、教会の管轄地となっている。

 

この地に冒険者が集うのは、神託があったからだ。

 

『迷宮にてモンスターを討て。さすれば天への道が開きあらゆる願いが叶えられるだろう』

本来ならもっと難しい言い回しだったが、要約すればこれだけのことだ。

神はかつて邪神を倒したが、滅するまでは出来ず封印するに留めるしかなかった。だが邪神は封印されながらも、力を貯め続けていった。このまま放っておけばいずれ封印が破られるかもしれない。

ならばその力を削いでしまえばいい。

神は邪神の力の欠片をもぎ取ると、別のモンスターや魔王としての形を与えた。

こうして迷宮はモンスターが徘徊するようになった。

 

神託の当初は教会で討伐に当たっていたが、戦いの専門家でない神官や司祭では犠牲も多く効率も悪かった。そこで『餅は餅屋』ということでモンスターを退治する冒険者を募集し、討伐に当たらせる事にした。勿論それらの冒険者の全てを教会が雇えるような金銭はないが、そうする必要は全くなかった。

モンスターを倒せばその後にG(ゴールド)等が残り、迷宮内には鉄やルビーなどの鉱石や薬草などが採集出来る場所があったり、また神様からの宝箱(ギフト)が置いてある事があったりと、冒険者が自ら志願する理由に事欠かなかった。

 

一攫千金を狙う者、魔王を倒し勇者の名を得ようとする者、ただただ強さを追い求める者、それらを相手に商売をしようとする者など様々な者達がこの街を訪れる事になった。

それから数百年の月日が流れている。

 

『天への道』とは、すなわち街の中心にある塔の事である。

『天空の塔』と言われ、迷宮である一定以上の功績を認められた者にだけ、塔はその扉を開き受け入れる。そして試練を潜り抜け最上階まで到達できた者が、神に願いを叶えてもらえるのだ。これは言い伝えのような曖昧なものではなく真実だ。神に会いその願いを叶えた者がいるのだから。

だが現実として神に会い願いを叶えた者は、公式には一人だけだ。塔に入る事を許された者さえ今までに500人にはとどいていないだろう。

多くの者はその困難さに諦めるのだ。夢を叶える者も一部はいるだろうが、それは稀な事だ。

 

結局のところ冒険者という職業には夢があるようだが、厳しさもそれを覆すほどあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、話し方うまいな。ついつい話に聞き入ってしまったよ」

 

「へへっ。俺様は、ここで24年程育ってきているからな。自分にプラスになるような細かいことや気になることは、しっかり調べ上げるんだ」

 

いかにもな、モヒカンチンピラが嬉しそうに鼻をすすっている。だがその鼻からは、血が垂れてきておりあほっぽさを、醸し出していた。

 

 

「路地裏で急に襲い掛かってきたとき、びっくりして腹と顔面殴ったけど、そんだけしらべるのが好きならなー、もっと違うことしろよ。後、足を崩そうとするな。まだ、説教中だ」

 

「いや、すんませんっした。まさか、冒険者の方だとは思わんかったです。はい。この町で、見たことない格好であちこちをキョロキョロしながら路地裏に入っていくのを見たんで、てっきりこの島に来たばっかりの馬鹿が調子に乗って、探索していると思ったんです。あ、いった!小突かんといてください。話をもどして、小遣い稼ぎがてら教育してやろうとこっそり後をつけて襲い掛かったとこです」

 

思わぬとこで、情報が聞けて助かったが一部興味のそそる内容が出てきた。

神と言っていたが、恐らくルビスのことだろう。あいつ、新人っぽい雰囲気醸し出していたが案外やることやってんだな。トイレの件は、少し豪華にしてやろう。

それとは別に、金だ。この世界だとモンスターを倒すとGに変わるらしい。素材を落とすかは、まだ分からないが、金銭面については解消しそうだ。

 

 

「おいっ、冒険者にはどうなるんだ…って、あいつ目を離したとき隙を見て逃げ出したな。まだ聞きたいことが山ほどあったのに、惜しいことをしてしまったな…」

 

取り合えず冒険者協会?あるかは、知らんけどその場所をさがすか、そのまま迷宮に入るかの2択か。どちらにするべきか悩むな。

 

 

「ちょっと!!そこのあんた!」

 

後ろから可愛らしい声が響いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

声が響いてきた方を見るとだれもいなかった。おかしい。

 

 

「あんた!どこ見てんのよ。下よ!下!」

「ん?」

 

下を向くとそこには、女の子がいた。髪は、小麦のような黄色の三つ編み。赤い頭巾のような物を被って、整った顔に勝気な表情。まるで自分が圧倒的に優位で、年下の子に叱りつけるように腕を腰に当てて上目遣いでこちらを見ていた。この子、胸が…。将来に期待かな。

 

 

「どこ見てんのよ!この変態!この可愛らしい姿に見ほれるのは仕方がないけど、手を出したらあんたのこと、魔法で焼くからね!」

 

やだ、この子の将来恐ろしい。

 

 

「違う、違う。胸じゃなくて、君の服と可愛い顔を見てたんだよ。その服は、この町では、あまり見かけなかった代物だからな。それで、おれに、何の用だ?お嬢ちゃん。」

 

「あら?そうだったの?なんかいやらしい視線と思ったけど、服を見てたのね。確かにこの服は、一族伝統の物だから。あんた、見る目あるわね…ってそうじゃない。あなたの名前は?私の名前は、ベロニカ。天、才、魔法使いよ」

 

何たる自信。あまりにも、当たり前の様に言うから本当にそうなのではないかと、相手に思い知らせる交渉術の一つだろうか?

 

 

「俺の名か?俺はダイ…じゃないや。もう、ゲームの世界ではないんだったな。タイジュだ。俺の名は、タイジュ。よろしくなベロニカ。俺は、ビルダーだ」

 

「ビルダー?なにその職業。まあ、いいわ。あなた、なかなかの身のこなししてるじゃない。私、よくわからないけど、気づいたら、この世界に来ていたの。それで、お金どころかアイテムすらないからこまっていたのよ。そこにあなたが、丁度聞いて欲しかったこと訪ねていたから、タイジュも同じ境遇じゃないのかしら?」

 

「おっ、ベロニカもそうなのか?おれもまぁ似たようなもんだ。そしたら、一緒に行動するか?これから冒険者になろうと思ってな。探しに行くとこなんだ」

 

「あら、本当にいいタイミングだったみたいね。ええ。一時的かもしれないけどよろしくね」

 

 

 

 

 

 天 才 魔法少女ベロニカが仲間に加わった。

 

 

 

 

 

「それじゃ、向かいましょ!場所は知ってるわ。あいつら、私の姿を見ただけですぐに店からたたき出してきたのよ。だから、あなたみたいな、似た境遇の人に出会えてよかったわ。私についてきてね」

 

そりゃあ、ここまで小さいと間違って入ってきたと思うだろうな。ちなみに、俺は、彼女が小さくなっている原因を知っている。彼女の作品はⅪ。恐らく内容が少々違うだろうが、本筋自体は、そこまで変わらないのであろうと思う。

彼女と仲良くなってから色々話を聞いてみたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

先程の広場に戻ってそこから、東側の大道り側を手をつないで歩いて行った。人通りが多すぎるのだ。彼女が人の波にのまれそうになったところをつい、手を伸ばした。手を繋いだ瞬間彼女の顔が赤く染まったが、人ごみの多いところで、さすがに大声を出さないのか。下を見ながらうーうーと唸っていた。久々に女性の手を触れたが、彼女だからかは、分からないが柔らかかった。世のロリコンさん。血涙必須な案件だ。

 

 

「ここよ。もういいでしょ。ほら早く放して。あとちょっと近いわよ」

 

こちらに、視線を合わせずに言ったが、耳が真っ赤なのでそうとう恥ずかしかったのであろう。最後に、にぎにぎしながらゆっくり放してあげた。

 

 

「ルイーダの酒場か」

 

ドラクエお馴染みのこの酒場。ずいぶん昔に作られたのか、人の多さと建物の大きさが一致してないように思えた。

この施設は二階建てで、老朽化と二階にいる人の多さで建物が少し悲鳴をあげていた。テーブルもたくさんあり、まだ、感覚的には昼間なのに既にビールで乾杯している人もいる。後ろ姿しか見えないが一人酒におぼれている人を見て声が出そうになった。勘違いでなければいいが、もし機会があれば、彼とも話してみたい。

とりあえず、目的を達成するべきなのは、冒険者になることなので。恐らくカウンターのとこで店を切り盛りしている彼女がオーナーであろう。胸に視線を向けながら話しかけてみた。

 

 

「すいません。俺と彼女。2人冒険者になりに来たんですが受け付けはどこで済ませればいいんですか?」

 

この人凄くきれいで近づけば近づく程魅了されそうだ。光沢のある黒い髪に赤い口紅、胸元に宝石であろうネックレス。このまま歩きながら彼女の胸にぶつかりに行きたいほどのでかいクッション性を兼ねそろえたバストサイズ。隣にいる、目つきが鬼のようになっているベロニカに分けてあげて欲しいところだ。あと、後ろからお尻のとこをつままれて少し痛い。

 

 

「あら?ようこそ私の酒場に。私はルイーダ。これからよろしくね。冒険者になりたいの?なら、今少し時間空けるから、ささっとやってしまいましょうか。そこの椅子に腰かけて」

 

彼女は笑みを浮かべながら、書類と何やらカードを準備している。

怪しい、怪しいぞ。あのカードなんだか、高性能な香りがする。

ルイーダの酒場が冒険者の登録場所なのは、この地域の昔からの伝統らしい。

 

 

「だけど、誰でも登録できるわけじゃないの。一応の試験というか条件みたいなものがあるわ。それをクリアーできれば晴れて冒険者として登録できるの。どうする?」

 

「お願いします」

 

勝手に口から出たような気さえした。

恥ずかしながら興奮しているのだろう。

 

 

「分かったわ。お嬢ちゃんもいい?…なら、その書類を書きながら少し待ってて」

 

ルイーダは奥の個室に向かったようだ。

 

 

「これ何の書類かしら?アピールポイント?使用武器や長所と短所って書いてあるけど」

 

「このカードも気になるしな。なんだか、ワクワクしてきたぞ。取り合えず書けるとこは書いておこう。あの人怒らせると多分怖い人っぽいしな」 

 

内容を見てみると、確かにベロニカが言っていた通り

名前

職業

アピールポイント

長所

短所

使用武器

使える魔法

 

7項目に分けられており、冒険者の仕分けかなんかで使うんだろうか?

まぁ書いておくか。

 

 

名前

オオモリ タイジュ

職業

ビルダー

アピールポイント

建築関係、物作り特化、戦闘も一応できる。物をたくさん持てる。

長所

人には真似できない作業もできる。

短所

戦闘面に不安あり

使用武器

ハンマー、剣、大槌、恐らく重いタイプの武器も行ける。

使える魔法

ルーラ、リレミト

 

 

こんな感じでいいのか?

魔法に関しては、あまり気にしたことないけどもう少し覚えられるかもしれないから、ベロニカから、教わるのもいいかもな。

 

 

「こっちはできたぞ。ベロニカは、どうだ?」

 

「あたしも、終わりかけなんだけど、呪文をどこまで書くか迷ってるのよね。あまり書きすぎるのも、鼻につく感じがしない?適当でいいかしら」

 

「どれ?ちょっとみせて」

 

「はい。あなたのと交換ね」

 

 

 

 

名前

ベロニカ

職業

魔法使い

アピールポイント

火力メイン、補助もできないこともない

長所

呪文を多く使える

短所

近接が苦手

使用武器

鞭、両手杖

使える魔法

秘密

 

 

 

鞭が使えるのか。

性格と相まって、女王様っぽいな(笑)

魔法をたくさん覚えているとなんだか、格好がついていいな。

 

「あなたのアピールポイント変わっているわね。ビルダーって、重戦士なの?大工?」

 

「まぁ、似たようなもんかな」

 

そんなことを話ているとルイーダさんが帰ってきた。

 

 

「はいこれ」

 

俺達の前に荷物を置いた。細い針、1m程の木の棒と布製であろう服とズボン、そして何かが入っている袋だ。

 

 

「ひのきのぼうと布のふく、そして支度金の100Gよ。勿論只ではないわ。これから一週間で300Gにして返してもらうことになるの」

 

「なるほど。この針は?」

 

「そのカードに血を垂らすと自分の情報が分かるようになるの。カードは無くさないでね。次回発行するときはお金を取るから」

 

現代もびっくりのハイテクだな。カードと針を交互に見てそう思った。

 

 

「ふふっ、痛いのが怖いなら私が刺してあげましょうか?」

 

美人さんと手を触れる機会なのでもちろんやってもらおう。

 

 

「お願いします!」

「えぇ、わかったわ」

 

食い気味に言うと隣に座っている、ベロニカに思いっきり親指を刺された。痛みは、平気だが、隣を見るのが怖い。

もったいないので、血をカードに擦り付けるとカードに文字が浮かんできた。

 

 

 

 

――― ステータス ―――

 

 

タイジュ  おとこ

レベル:1

職:ビルダー

HP:65

MP:23

ちから:47

すばやさ:30

みのまもり:24

きようさ:68

みりょく:30

こうげき魔力:0

かいふく魔力:10

うん:15

こうげき力:51

しゅび力:24

 

言語スキル:1(会話、読解)【熟練度:85】

 

ビルダースキル:3(物作り、レシピ作成、四次元収納)【熟練度:45】

 

剣スキル:3(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り)【熟練度:4】

 

槌スキル:5(槌装備時攻撃力+5、ドッカンハンマー、サクレツハンマー、槌装備時攻撃力+10、物質系キラー)【熟練度14】

 

斧スキル:5(斧装備時攻撃力+5、かぶとわり、魔人斬り、斧装備時攻撃力+10、斧装備時会心確立上昇)【熟練度55】

 

攻撃力アップSP:1(攻撃力+4)【熟練度28】

 

アッパー:0(なし)【熟練度25】

 

破壊神との絆:1(自動レベルアップ)【熟練度:0】

 

経験値:0

 

所持金:0G

 

 

嘘だろ。なんか、ステータス高すぎないか?いや、高いに越したことないが、原因はシドーの件だろうな。これ、前衛でも全然いけるな。チンピラ、ボコした時も動きがよく見えたはずだ。あと、あんまり、ベロニカに、教えたくない。彼女に言うと無理やり、前に立たされそうだからだ。

 

 

 

「終わった?もし手持ちがあるなら、300G返してもらってすぐに登録できるけど、あなたたちはどうする?」

 

お金を持っていないことがばれたらちょっと恥ずかしいからここは、濁そう。

 

 

「いや、初心に帰ったつもりできちんとモンスターしばいて払いますよ」

 

「あらそう?基本的に300G返してもらえれば、どういう風に稼いだかは問わないわ。勿論犯罪行為をした場合はそれなりの報いを受けることになるからしないようにね。とはいっても普通に働いては、一週間で300Gは不可能とはいわないけど無理に近い。だから仮登録として試験期間は迷宮に入れるようになるっているの」

 

つまりは迷宮でモンスターを倒してGを稼げ、ということなのだろう。

元々迷宮は冒険者と教会関係者のみに入ることが許されている。一部の例外はあるかもしれないが、一般人は基本的に立入禁止だ。それを破れば厳しい罰則があるらしい。

しれっと入らなくてよかった。

この場合の冒険者とは、ゴットサイドで登録をしている者を指している。いくら他の国、地域で冒険者としての実績があろうともこれに例外はない。

本当に入らなくて良かった。

ベロニカもばつが悪そうにしている。

 

「実際にどうするかは本人の自由よ。ただ迷宮に行くときはこれを持って言ってね」

 

ルイーダが俺とベロニカに差し出したのは、竜の形をしたペンダントだった。

 

 

「それは仮登録の証のようなものよ。迷宮入り口の門番に見せれば、迷宮に入れてくれるわ。但し明日からよ。もし300G返せない時は、教会で一年間無料奉仕することになるわ。後、これはさっきの話の続きだけど、考え直してここで働く場合にしても、最低半年は勤めて欲しいわ。仕事を覚えたと思ったら辞められるのは、こちらとしても困るしね」

 

俺はゆっくりとルイーダからペンダントを受け取った。

こんな美人さんと一緒に働くのも悪くなさそうだけど、ルビスのあほに何かさせられると思うので強くなるに越したことはないだろう。これでもう後には引けなくなった。後は進むのみだ。

 

 

「じゃあわたしはこれから仮登録してくるから、君達は好きにしていて良いわよ。よければ街を見て回っておくのも良いと思うわ。この試験の結果がどうなるにしろ、当分この街にいる事になるんだから。後、念のために買い物をした時の注意事項なんだけど、正式に冒険者となった時とそうでない時では金額に差があるわ。冒険者には割引があるからそのあたりは注意してね。つまり今買い物すると冒険者の時より値が張るということね。冒険者でないと入れない、使用できない施設とかもあるから気をつけてね」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「街を見るなら迷わないように注意してね、結構広いから。もし迷ったら東区の『ルイーダの酒場』の場所を聞けば大抵の人は分かるはずよ。それじゃあね」

 

ありがとう、美人さん。このお金さえあればひとまず今日をしのげそうだ。

ベロニカの分の荷物を一緒に持ってあげ、タイジュはクールに去るぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****                                     

 

「行ったわね。女の子のスキルも凄かったけど、あの男の子、私の知らないスキルが幾つもあったわね。今日の定例報告会で会長に知らせなきゃ。あと、職業に関しては返金した時に色々、きいてみなくちゃね…」

 

ルイーダは、手記にメモを書きながら近くにいる新しく店に入ってきた荒くれたちにメニューを持ち注文を聞きに行った。                          

                                    続く……




小説って難しいですね。
これまで1000を遥かに超えるほどの作品を見てきたけど自分で書くのがこんなにも難しいとは、思いませんでした。
今まで、早く投稿しないかなと毎日チェックしていましたが、毎日投稿とか化け物だなーと改めて思いました。

ベロニカ出せて良かったです。
彼女が出たのも一応理由があります。

そして、飲んだくれている謎の男。
彼には彼の戦いがあった。

とか、かっこいいことほざいときます。




週一くらいで投稿できればいいなと思います。
続ける原動力の為にも高評価お願いします。



文字数多目の作品を1週間を挟んで投稿するのと、
若干少なめだけど、投稿速度が速いの方。
みなさん、どちらがお好きですか?












次回
「圧倒的筋肉」




タイトルで、キャラ判別されそうですな…   


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圧倒的筋肉

少しでも早くいろんな人に自分の作品を見て評価してもらいたい。
そんな、気持ちで仕上げました。


それでは、見ていってください。

【圧倒的筋肉】


「もう、みっともないわね。鼻の下伸ばし過ぎよ」

 

酒場を出て、すぐに怒られた。面目ないと思うがあれは、仕方がないと思う。

彼女とはぐれないように、再度手を繋ぎなおして近くにある店を回り始めた。

 

「彼女が美しかったのもあるが、彼女の装備というか、アクセサリーをしっかり見たか?」

 

「アクセサリー?見たわよ。あれ、高そうよねー。将来ああいうの、一度でいいから付けてみたいわ」

 

「やっぱり、お前も魅了されたか。彼女、紫色の派手できれいなドレス姿をしていたよな。そっちの方は、たぶんだが軽い挑発の特殊能力が付与してあると思うんだ。昔あのタイプの衣装を触ったことがあってな、俺の記憶が正しければ、あれ一着で一軒家くらい普通に買えるんじゃないのか?胸のアクセサリー自体は、高めの宝石っぽいが問題の本命は腕のバングルと指輪だな。ドレスと宝石の印象を強めに出して、対象が気をそらしている間に異性の魅了に対するデバフが腕のバングル。同性の方は指輪の能力で足止め…恐ろしいくらいガッチガチのフル装備だったな、彼女」

 

「あんた、ただただ、胸を見ていただけじゃなかったの!?」

 

「ベロニカー、お前俺をちょっと見くびり過ぎだぜ。店入って彼女の姿を捉えたときにお前は、少し後ろから歩いてきたから分からなかっただろうけど、あの手の魅了特化は下手に目をそらさず、胸を中心に全体像を見た方が襲われた時に対処しやすいんだよ。それに、彼女一言も注意もしなかったし、あまつさえ、完全に魅了がかかってないとみると俺に触ろうとしただろ。生憎、お前さんが指に針を刺したから少しは目を覚ましたが、自力が違い過ぎるな。絶対、彼女一流の冒険者だろ」

 

「ほへー。そうだったんだ。あんた凄いわね!疑ってごめんなさい」

 

「ルイーダさんの見た目は、好みだけど一緒にいたいのはベロニカの方だよ。君の方が親しみやすいしね」

 

「そ…そう。……ありがとう」

 

ルイーダさんの魅力にヤキモキしていたんだろう。店を出てから語気が荒かったが、彼女自身の魅力を伝えると嬉しそうに微笑んでくれた。

 

 

「さっ、飯でも食いに行こう。朝から何も食っていないから腹減ってきたよ」

 

「ふふっ、そうね。私もおなかがすいたわ。美味しそうなところをちゃんと案内してね」

 

機嫌が直ったのか彼女の顔に笑顔がもどった。

 

 

「素材があれば俺が料理しても良かったんだがな」

 

「えっ!あんた料理できるの!?食べてみたいわね。ビルダーって料理もできる職業なの?」

 

「まあな。元々、戦闘とはかけ離れている職業なんだよ。どちらかといえば、僧侶みたいに後ろから援護や補給がメインで普通前に出て戦うのは稀なんじゃないのか?俺も戦術家の様な戦い方を好むしな」

 

「へー。明日のダンジョン楽しみにしてるわ。二人で挑むんだから私をしっかり守ってね」

 

「へいへい、わかったよ。よしっ。明日のダンジョンや昼飯の準備とかも兼ねて、野菜や肉を買いに行くか。そのついでに空いた場所があればビルダーが何なのかを教えてやるよ」

 

「本当!?なら、善は急げよ。ほら、西側の大通りに向かうわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

西の通りは、宿泊施設や青果店、精肉店など日常に使う物が売られている場所や施設が多そうだ。

東側と違い中央の広場を境に人の種類、客層が変わっているように見える。

西側は、一般人や、仕事休みの冒険者らしき人達があふれかえっている。

東側は、酒場に行って情報収集。武器、防具店で買い物。そして一番の目玉であろう、カジノがある。

さすがに、昼間だと東側が空いているが、夜に掛けて一気にあふれかえるだろう。

逆に西側になると昼は多く夜に掛けて少なくなるのだろう。

この町はよくできている。

南には、畑や牧畜、農業が盛んっぽいし。

北が、行政や金持ちたちの豪邸らしき建物がちらほら見える。

私事だったら、一番向かいたいのは、南だが目的は西。

時間を見つけて見に行ってみよう。

 

 

 

 

 

「こんなに買って良かったの?割引効かないのに」

 

「構わないさ。今使うか、後で使うかの違いだから。それより、ベロニカの分のお金も俺が預かっているけどいいのか?」

 

「別にいいわよ。ちょっとタイジュのこと気に入っているし。それに、同じパーティになるんでしょ。あなたのこと信用しているわよ。パーティー共通のお金としてあなたが管理しといて。あたしは、少しだけで十分だし。買いたいものができたらあなたにねだりにいくわね」

 

少しは、信頼してもらったのか?態度が軟化している。

その気持ちを裏切らないようにしなくてはな。

 

 

「買い物していたときに、店のおばちゃんから野外で料理していい場所を教えて貰った。そこで、昼飯作ろうか。何が、食べたい?」

 

「うーん。あなたが得意な料理で、いいわよ。私、好き嫌いはないし」

 

「なかなかプレッシャー、かかるなー。卵を多目に買っておいたからオムライスにするか」

 

「あら、いいわね。早くごはんが食べたいわ」

 

彼女と話ながらキャンプ場向かうと、そこは、遠くから見てわかるくらい荒れていた。

 

「えー!まさか、ここ!?キャンプ地って聞いたけど荒れ地じゃない。しかも、作業場もボロボロだし。どうする?お店にしとく?」

 

「ちょっと待っとけ。せっかくだから、整備するよ」

 

「整備するって...」

 

先程、ルイーダさんにもらった、ひのきの棒を四次元収納からとりだした。

 

「うわ!あんたそれ、どこにしまってたのよ。本当、変わった職業ね」

 

まぁ、自分でも説明が難しい職だわな。

そう思いながら、草に向けて棒を振ると素材となって地面に落ちた。

それを繰り返して、周り一面きれいな整地にし、落ちていた木材で作業台を作った。

 

 

「なんで、腐っていた木材で、そんなきれいな台ができるのよ」

 

彼女があきれながら呟いているのを後ろに石窯を作り、先程買ってきた、鉄鉱石と石炭をくべて鉄のインゴットを作り始めた。

それと、平行作業で、料理の準備に取りかかる。幸いにも水源は、キレイなもので十分料理に使えるものだ。

野菜を切り分けている最中に、鉄のインゴットができ、まだ熱が抜けきらないままに急いでフライパンへと形成する。余ったインゴットは、後々使うだろうから収納しておいた。

すると、ベロニカの叫び声が聞こえてた。

 

 

「ぎゃー!!変態!」

 

「おい、嬢ちゃん!人聞きわりぃぜ!?この格好は、動きやすいように、作られているんだから立派な正装だぞ」

 

あぁ、武闘家の人にあったのかって...あの筋肉とモヒカン。後ろ姿でもわかるあの巨体。もしかして、彼か?

 

「ビックリさせないように、声をかけたのに。これじゃ、意味なかったな」

 

苦笑いしながら、こちらをみてきた。

 

 

野性的なイイオトコに遭遇した。

 

 

「おまえさん、面白いことしてんな。昔は、ここがまだ使われていたときは整備されていたから、人気だったんがな。トレーニングがてら、走っていると音がしてて、気になって見に来たんだ。飯作るにしては、本格的すぎるからな」

 

「こういう作業が得意な職業についているんです。俺の名はタイジュです。あなたが、驚かしたのがベロニカです」

 

「ベロニカよ。さっきは、驚いてごめんなさい。あなた、すごい筋肉ね。魔物と間違えて魔法打ちそうになったわ」

 

「俺の名は、ハッサン。魔物と間違えられたのは、初めてだ。これからは、もう少し厚着しながらトレーニングするよ」

 

ばつが悪そうな顔をしながら頭をかいている。

 

 

「俺達は、今から飯なんですけど、ハッサンは、どうする?一緒に食うか?」

 

「お?本当か?実は、少し期待してたんだ。こんだけ、本格的に作ってっからうまそうにみえたんだよ」

 

「た、だ、し。賭けをしないか?」

 

「賭け?」

 

「はい、今から作る料理ガチで作るので、もしその料理に不満をもったら、今回作る料理の材料代を全額負担してください。店で作られそうなレベルと思ったら、それもこちらの負けでいいです」

 

「いいねぇ!面白そうだな。俺は、結構味にうるさいぞ。冒険帰りに色んな店を歩き回るからな。男の約束な。俺が感動するような料理楽しみに待っているぜ。先に、何を作るのか聞いていいか?」

 

「今回の料理は、戦激のオムライスって言う特殊料理ですね」

 

「特殊料理ってなに?」

 

ベロニカが興味をもってこちらに聞いてきた。

 

 

「特殊料理とは、飯を食べたらバイキルトや、スカラ見たいにバフのつく料理だよ。本当は明日の昼ように材料買っていたんだが、材料代が浮くなら今作って、料理の効果を見せるのもいいかと思ったんだ。今回のは、素早さと体力を上げる料理だ。食べた後、確かめてみてくれ」

 

「おいおい、早く作ってみてくれ!食べてみたくて腹がうずうずするよ」

 

「わかった。ちょっと待っててくれ、作業事態は魔法料理に入るから時間はかからないから」

 

様子が気になるのか、ハッサンとベロニカが近くに寄ってきて作業を見るようだ。

丁寧に初心者に教えようにゆっくりと作業を始めた。

さっき、形成したフライパンに魔力でコーティング。

魔力の質を上げることで、下の石窯からの熱で焦げることのない特殊な道具となり、野菜や兎の肉を炒め始める。

肉に火が通るなか溶けた野菜と魔力が混ざり合い味に深みが増す。

そこに、別の場所で炊いていた米を混ぜ、植物油と卵に全力で魔力を流した。

 

 

「この時、あまり長時間、魔力を流し続けると味に変化を生んでしまうので気を付けるんだ」

 

興味津々な二人の目の前で魔力を流す。卵と油が魔力により黄金色に変わる瞬間に一気にフライパンで炒めていた物と絡め見た目を整えると準備していた皿に盛り最後に薄く伸ばした甘めの卵の生地で包んで完成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

「俺の敗けだ」

 

「いや、食べる前に言われても困るぞ」

 

「わかるさ、そのくらい。明らかに、その辺の料理人との技量の格の違いを見せつけられたぜ。材料代程度ぜひとも、払わさしてくれ」

 

達観した顔で、こちらに言いながら食べ始めた。

すると、彼の周囲に風がふわりと舞い上がりバフがついたような仕草が出た。肌の艶も良くなり、乾燥していた唇にも潤いがましちょっと、オカマっぽい。

 

 

「うまい。うますぎる。力が溢れてくるのが食べる度に実感できるよ。もしよかったら、また作ってくれないか。今度は、仲間にも食べさせてやりたいんだ」

 

「まぁ、構いませんけど。貰うものは物は、しっかりもらいますからね。今作って見て、わかりましたけど、レベルが低いのも合間って一気にMPがもってかれました。今度作るときは、冒険者としてもうすこしせいちょうしてからですね」

 

「おう!楽しみにしているぜ。なんか困ったことや助けがいるときは、いつでも言ってくれよ」

 

そう言いながら、完食していた。

早すぎる。

まだ、一口も手をつけてないので食べながら、聞いてみた。

 

 

「足りませんでした?材料は、多目に作ったんですけど」

 

「いや、こんなものだろう。今は、体を動かしたくてうずうずしてんだ。材料代は、どれくらいかは、わからんが多目に渡しとくな。そしたら、また会おうな。あそこで、泣いているベロニカにもよろしくいっといてくれ。しっかり、話聞いてやれよ。そんじゃ!」

 

そうやって、500Gと今の俺達にとって大金を渡され素早さが上がっているのか、風のように去っていった。

やつめ、逃げたな…

材料代の50倍ほどの利益が出るとは。まさか、今日中に目標金額に達するとは思わなかった。

おもわぬ、大金が貰えて嬉しかったが、地面にうずくまりながら泣いている彼女に、おそるおそる近寄り話しかけた。

 

 

「ベロニカ、美味しくなかったのか?」

 

そんなことはないとか細い声でいいながら、首を振る。

さっき食べる前までは、笑顔で作業様子を見ていたのにオムライスを食べてから、急に頭を押さえてうずくまったのだ。

涙を流す彼女に、どのように対応すればいいか今までの記憶を掘り返したが、余り思い付かない。

こんな行動ばっかりとっていた所を、前の世界の友人に叱られたのだ。

生まれ変わった今の俺なら、前の俺より一歩だけ踏み込めるかもしれない。

意を決して、彼女と向き合った。

嫌われたら、宿屋で枕を濡らそう。

 

 

「ベロニカ、もしよければ少し話をしないか?俺は、君のことをあまり知らない。君のことを、もっと知りたいと思うし。君がなぜ、泣いているのかを煩わしいと思われようが聞きたいんだ。まだ、あったばっかりの俺に話すことじゃないかもしれない。でも、泣いている君を慰めることや、共感したり悩みを解決できるかもしれないんだ。俺に話すのが嫌ならすこし時間を空けてもいい。どうする?」

 

「...私ね。実は記憶喪失なの」

 

「記憶喪失?いつから?」

 

「記憶喪失て言ってもおぼろげながら何をしたのか、してきたかは、わかってるの。でもそれ以外のことがおもいだせないの!!仲間がいたらしいのも覚えている。でも顔が思い出せない。妹らしい女性。便りになる味方。しまいには、親の顔すら分からない。この世界に来た時、なぜここにいるのかが分からなくて、不思議だった。私という存在はここに、いるはずではない。だいじな使命があったはず」

 

そう言いながら、胸に飛び込んできた。

彼女の体は、細かく震え感情が安定しないのか泣きながら笑っている。

頭と背中をゆっくり撫でながら話を聞いているとこう呟いた。

 

 

「本当にここにいるのが本来の私じゃない気がして、たまらないの。記憶と身体能力が一致しない。さっき冒険者のカードを貰ったでしょ。あそこに、書いてあった数値が正しいなら、私のレベル、1になってた。今までの記憶も全部偽物かもしれない。もう、何が本当かが分からないの」

 

そう呟く彼女の顔を見ると、悲壮な顔をしていた。

このままなにもしないと、明日には死んでしまいそうなほど思い悩んでいる。

 

 

「ベロニカ、今この瞬間の君は、本物のベロニカだ。何かを悩むこともできるし、誰かを思いやれる優しい心を持っている。可愛くて心のキレイな少女がいまのきみじゃないのか?それに昔の記憶がないのなら今から一緒に色んなことをして、思い出をたくさん作ろう。それに今は、思い出せないけど、完全に忘れてしまったわけじゃないんだろう?ふとした瞬間に思い出すさ。困っている仲間をを支えてあげるのも、パーティの仲間の役割さ」

 

「でも、わたし弱いわよ」

 

「強さなんて、最初から気にしていない。酒場出た後でもいっただろ?他の誰でもない君だから誘っているんだ」

 

「...ばか。後悔しても知らないんだから」

 

泣きつかれて、寝てしまったのか意識を落とした。

最後は、少し元気が戻ってきているように見えたから大丈夫とは思うが。

思わぬところで、彼女の隠していた秘密を知ってしまったが、そもそもなぜこんなにも、感情が荒ぶったのだろう。

彼女を抱き抱えながら周りを見てみると元凶がわかった。

彼女の食べた料理だ。俺の作った料理から、少し変わった魔力を感じた。

もしかして、彼女完成した料理に魔力を流してみて色々実験していたんだろうか。

それならば、今回の状況も納得がいく。

なんだか、マッチポンプみたいなことした気がしたが、深く考えないようにした。

ベロニカが、起きたら注意しとかなくてはいけないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

あの後、料理の後片づけをした。

彼女を抱きかかえ、ひとまず宿を探しに向かった。

歩く最中、微笑ましい視線を感じたが、全部無視してさまよう。

まるで、初代勇者が、ローラ姫を救った時の様だ。

そうして、今後の拠点になるだろう宿屋を見つけた。

名前は【ダンカン停】だいぶ年月の経ってそうな宿屋だが一泊当たりの宿泊代が安いのと料理を作るときに厨房を貸してくれる。この点に引かれ、ここに決めた。

後、娘さんが可愛い。

彼女が可愛いから決めたわけじゃないが、起こしに来てくれる子が、可愛い子だとその日一日頑張れそうだ。

チップ払ったら身の回りの世話してくれないかなぁ。

というか、彼女見覚えしかないんだけど…

俺のお嫁さん候補になってもらえないかな。

 

 

 

 

 

 

ステータス変動なし

 

所持G  620G

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                            続く……




正解は、ハッサンでした。
彼とのレベル差は、だいぶ離れているので
次出てくれる時は、何か月後だろう…
でも、ほかの仲間も出したい。

どこで切ろうかと考えて2000を大幅に越しての終了。
3000くらいの細かいやつをたくさん作って投稿してますよ、アピールしたいのに。

会話が長続きするのって、もどかしい感じがして難しいです。
あと、自分でくっさ、と思いながら主人公に言わせる鬼畜さ。
もっと、うまく書けるようにしたいなー。

早くダンジョンに行ってくれないかなー。
ダンジョン物なのになかなか、書けないハリネズミのジレンマ状態が続く
今日この頃でしたとさ。



感想、お気に入り登録、待ってます。
あなたの応援メッセージが私の書く力になるので、評価もお願いします。

誤字があったら、ささっと直しときますね。



次回

「ダンジョン探索」







果たして、そこまで書けるのだろうか。



ちなみに、次回予告を考えてから書き始めるの、文字数がなかなか、減らせないと最近気付いた。


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ダンジョン探索

まさかこんなことになろうとは。

あえて言うなら、バレンタインが悪かった。


宿の玄関近くのソファーで休んでいると、ここの看板娘が帰ってきたようだ。

この宿屋の主はダンカンといって一人娘のビアンカを看板娘として経営していた。

このビアンカ、どう見てもあのDQ5のビアンカのように見える。見事な金髪を後ろで三つ編みにしている。

ベロニカと髪の色の違いはあまりないが、しいて言うなら匂いの違いだろうか。

ビアンカからは、柑橘系の爽やかなにおい。ベロニカの匂いは、甘めの花の匂い。

このことは、口に出すと怒られそうなので心の中にとどめておく。

ビアンカの外見はスポーティで魅力的なお尻。健康的で活発そうに見え綺麗よりもかわいい、もしくはかっこいいという雰囲気があった。

お姉さん体質だろうか?

父親の名もダンカンだから間違いないように思える。もっともゲームのように義理の親子かどうかは分からないし、聞けるような事柄でもない。

親父さんと調理場のことについて話してた時、話題になったがビアンカの歳は17歳とゲームの時より若干幼く見える。冒険者として二人(一人の外見は子供)で生活している俺のことを気にかけてくれているようだった。

最初は戸惑ったが親切にされて悪い気はしない。居心地も良かったためこの宿屋にいることにしたのだ。

 

 

「あら、お客さん。そんなとこでどうした」

 

「いや、明日のことについて…な。ダンジョン探索は、初めてだからイメトレしてたんだ。君は、学生さんなの?どこの制服?」

 

服を見せるために、くるっと一回転ターンしてくれた。

柑橘系の花の匂いが漂う。

お金をついつい払いそうになる。彼女がキャバ嬢なら、NO.1も夢ではないだろう。

 

 

「この制服はね、エルシオン学園の制服なの」

 

 

エルシオン学園は街の北区にある。

やはり、北区は勉学するとこも多そうだ。

北区は住民区画で多くの一般人が仕事している場所だ。

ゴッドサイドは元は聖地とされており、教会関係者が建設した街であった。

それが迷宮探索のために様々な冒険者が集まり、その彼らを相手する商人たちが集まってくるに従って街の様相も変わっていった。

その名残が中央の噴水広場なのだろう。

今の時代にあわせるかのように大聖堂のある北区以外は他にある大きな街と何ら変わりはなく、街は様々な人間が生活する場になっていた。

エルシオン学園も時代と共に変わっていた。

聖職者や役人を育成する養成校であったがいつの間にか、様々な人材の育成をする総合学園となった。

武術やサバイバルなどの冒険要素だけでなく、礼儀作法や歴史、算術などの学問なども教えるようになっていった。

その結果、この学園を卒業する事が一種のステータスシンボルとして、王侯貴族などがこぞって入学するようになっていた。

これをエルシオン卿の意志である冒険者の育成を忘れたとするか、それとも遺志を継ぎより多くの人々に様々な教育に施すようになったと拡大解釈するのかは、違いがでるところだった。

 

 

「ああ、その制服がエルシオン学園だったのか。名前と施設の情報は知っていたんだがな」

 

ホントに昼間であったチンピラは情報通だった。案外、逃したのは痛かったな。

 

 

「もう、そうじゃないでしょ。何か私に言うことない?」

 

頬を膨らませこちらを軽くにらむ。甘いな。

こっちの見た目は先程鏡で見たとき20台前半に見えたが、精神は完全におっさんだ。

その行為は、ただのご褒美だ。

 

 

「学園帰りに買い物してきたのか?って冗談だよ。そう睨むな。キレイだ。似合っているよ」

 

言葉を聞いてから、にこりと笑い胸を指でつついてきた。

 

 

「もう、お客さん。意地悪ばかり言うと、娘さんに怒られるわよ。でも、ありがとう。嬉しかったわ」

 

「娘って、もしかしてベロニカの事か?あいつの前でそんなこと言うと怒られるぞ。あの子君より年長者なんだから」

 

「うっそ!?あの子そんなに年上なの?案外見た目と年齢釣り合わないのね。てことは、お客さん子持ちじゃないんだ。行動に落ち着きがあるから、てっきり親子なんだと思ったわ。それなら、お客さんの事狙っちゃおうかしら」

 

「嘘つけ。そんなこと言って俺たちをここに留めたいだけなんだろ。心配しなくても暫くは、ここを拠点に活動するよ」

 

「あら、本当に?そしたら、晩御飯、美味しいの作ってあげないといけないわね。楽しみにしててね」

 

ビアンカは、そう言いながらウインクして腕まくりしながら厨房に入っていった。

彼女の夫はしりに敷かれるタイプだろうな。

そう思いながら、彼女の後姿を見送ると部屋にいるベロニカの元に戻ろうと立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

ノックしてドアを開ける。

まだ、寝ていたら荷物だけとって、先に食事に向かおうと思ったが布団がもぞもぞしている。

 

 

「ベロニカ、気が付いたのか。気分はどうだ?飯は食えそうか?」

 

「…気分は最悪。おなかは、ご飯数口分しか食べてないから食べに行く」

 

彼女は、こちらに顔を見せないように動き出した。

 

 

「どうした?平気か?」

 

「へ、平気だから。先に降りてて。さっきのことで恥ずかしいんだから、察しなさい!」

 

「あぁ、わかったよ。階段降りて、すぐのとこだから待ってるよ」

 

「……えぇ。やっぱり、ちょっと待って。そこで、しゃがんで」

 

「しゃがむ?これでいいのか?」

 

すると、背中に重みがかかり、耳元にベロニカが小さな声で囁いた。

 

 

「さっきはありがとう。あんだけ、虚勢張ったんだから責任取りなさいよ」

 

「責任?」

 

そう言いながら、後ろを振り返るとベロニカの顔が近づいてきて、唇が触れた。

びっくりして、顔を離そうとすると首に手が回っておりこの部屋の時間が少しの間、止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

あの後、二人とも何も言わず手を繋ぎながら下に降りて、ご飯を食べた。

食べる触感はあるのに味覚は感じない。

今までの人生、初めてのキスだった。

そのことを思い出して、にやけそうになっている所をを机の下で蹴られた。

向かい席のベロニカの足だ。

顔が真っ赤になりながら、こちらをにらんでいる。

彼女の眼が(早く忘れなさい)と語りかけていた。

急いで、顔を元に戻すとビアンカに話しかけられた。

 

 

「あら、目が覚めたのね。体調はどう?まだ、顔が赤いようだけど、熱でもあるんじゃない?おかゆでもつくりましょうか?」

 

彼女の優しさが、ベロニカの心を深く傷つけた。

体調は自分の興味本位での実験で悪くなり、顔が赤いのもさっきのことを思い出しているだけ。

彼女の表情がころころかわる。

 

 

「わ、私もう元気だから。先に部屋に帰っておくわね、タイジュ」

 

俺が、苦笑いしているとビアンカが困惑しながら、聞いてきた。

 

 

「私嫌われているのかしら?」

 

「いや、タイミングが悪かっただけで、君に嫌悪は抱いていないよ」

 

「そう?ならいいけど。彼女とも仲良くなりたいのよね」

 

「なれるさ。この町には、知り合いがいないんだ。一緒に買い物とか行ってあげてくれ」

 

「あら、いいわね。私の友達を連れて、町中を紹介してあげなくちゃね」

 

「そうしてくれ。彼女も喜ぶよ」

 

「あなたは、いいの?両手に華よ」

 

笑いながら誘ってくるがなかなかきついことを言ってくる。

 

 

「また今度お願いするよ。ベロニカの下着とかを先に買っといてもらうと助かる。俺と一緒の時に買うのは、気まずいからな」

 

「ふふふ。そういうことにしとくわね。それじゃ、機会があったら誘うわ。あなたも一緒でいいのに」

 

そう言って笑いながら、食べた後の汚れた食器を片付けていく。

女性には、口で勝てないのは前世で学んでいるので、そそくさと部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

部屋に戻ると、ベロニカはベッドの淵に座りステータスカードを見ていた。

びくっと隠そうとするが、思い返したのかゆっくり差し出してきた。

 

 

「これが、私のカードよ。明日ダンジョンに挑むんだから知っておきなさい」

 

ベロニカが震えた手で、カードを差し出してきた。

俺は、そんな震えた手を両手で覆いながら

 

 

「ありがとう。それじゃあ、見させてもらうよ。ただ、俺だけ見るのもなんだから、交換しよう」

 

袋の中から、カードを出しお互いに見せ合った。

 

 

 

 

――― ステータス ―――

 

 

ベロニカ  おんな

レベル:1

職:魔法使い

HP:25

MP:106(+60)

ちから:17

すばやさ:21

みのまもり:15

きようさ:40

みりょく:35

こうげき魔力:93(10+25)

かいふく魔力:30

うん:20

こうげき力:17

しゅび力:15

 

言語スキル:3(会話、読解,呪文詠唱) 【熟練度:67】

 

魔導書:2(魔結界、常時攻撃魔力+10)  【熟練度:31】

 

鞭スキル:2(鞭装備時攻撃力+10、螺旋打ち)【熟練度:4】

 

両手杖スキル:4(両手杖装備時MP吸収率2%、悪魔ばらい、戦闘勝利後MP回復小、暴走魔法陣)【熟練度14】

 

魔法使いスキル:5(MP+10、攻撃魔力+10、MP+20、攻撃魔力+15、MP+30)【熟練度55】

 

 

最強メラ&イオ:1(メラ&イオ)【熟練度25】

 

最強バギ&ヒャド:1(バギ&ヒャド)【熟練度18】

 

補助スキル:2(ルカニ、ボミエ)【熟練度25】

 

ラムダの英知:2(自動レベルアップ、呪文詠唱速度UP)【熟練度:0】

 

 

 

経験値:0

 

 

 

 

――― ステータス ―――

 

 

タイジュ  おとこ

レベル:1

職:ビルダー

HP:65

MP:23

ちから:47

すばやさ:30

みのまもり:24

きようさ:68

みりょく:30

こうげき魔力:0

かいふく魔力:10

うん:15

こうげき力:51

しゅび力:24

 

言語スキル:1(会話、読解)【熟練度:85】

 

ビルダースキル:3(物作り、レシピ作成、四次元収納)【熟練度:45】

 

剣スキル:3(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り)【熟練度:4】

 

槌スキル:5(槌装備時攻撃力+5、ドッカンハンマー、サクレツハンマー、槌装備時攻撃力+10、物質系キラー)【熟練度14】

 

斧スキル:5(斧装備時攻撃力+5、かぶとわり、魔人斬り、斧装備時攻撃力+10、斧装備時会心確立上昇)【熟練度55】

 

攻撃力アップSP:1(攻撃力+4)【熟練度28】

 

アッパー:0(なし)【熟練度25】

 

破壊神との絆:1(自動レベルアップ)【熟練度:0】

 

経験値:0

 

 

 

 

 

 

ん?ふつうに強いんじゃないのか?

このレベル帯なら上位に確実にいるだろう。

MPは、3桁超えているし。攻撃魔力も装備なしで3桁近く。

彼女は、いったい何と比較して弱いと言っていたのだろう。

俺と比較しても全然引けを取らない魔法使いだ。

 

 

「あれ?タイジュもレベル1なの?なんで?」

 

「ベロニカ、もしかして君もルビスにスカウトされてこの世界に来たんじゃないのか?なにか、おもいだせないか?」

 

「私の、最後…。さい、さ、ささい、ご」

 

彼女の震えが止まらない。

危険だと思い急いで、抱きしめる。

 

 

「すまない。そんなつもりはなかったんだ。ゆっくり思い出そう」

 

涙がなかなか止まらない。

彼女の体を抱きしめて背中をゆっくり撫でる。

 

 

「大丈夫。少しだけ思い出せた。私の最後」

 

「別に、言わなくてもいいんだぞ」

 

「ううん。あなたには、教えておきたいの。私は…仲間と共によくわからない奴と戦っていたんだけど、攻撃が全く通らなかったの。敵の攻撃で全滅する前に私は…逃がした。そう。最後の魔力を振り絞り私以外の仲間を、妹を逃がせたの。だけど、私自身避けることもできない状況で、死ぬんだなって思って…そこから、意識がなくなったのよ」

 

「そうか、頑張ったな。ちゃんと妹を、仲間を守れたんだな」

 

「うん。うん!わたし、がんばった。ちゃんと、おねえちゃんとして守れたよ」

 

ベロニカが胸に抱き着いて、声を殺しながら泣いている。

残念ながら、ルビスのことは、完全に覚えてないそうだ。それは、さすがにきつすぎるな。

死んだと思ったら、何故か、生きているし。記憶は、あやふやで、能力は弱くなっている。

自分に何が起きているか、まったくわからない状況で、一人この世界に訪れたんだ。

つらかっただろうに。

 

 

「あなたに出会えたことは、本当に運命だと思っているの。出会えなければ、一人、何もせずに暮らしていったんだと思う。常に恐怖と戦いながら、私はいつ死ぬんだろうって」

 

「大丈夫。今は、一人じゃないんだ。ちゃんと隣にいるよ。今度は、俺の話をしよう」

 

 

電気を消して、ベロニカが寝付けるまで、俺の過去の話をした。

今まで何をしてきたのか。実は、結構歳が離れているとか、ルビスのことも教えてあげた。

だが、彼女も寝ぼけながらも返してくれた。

あなたの、作ったものを見てみたい。

歳が離れていても気にしない。

ルビスには、出会ったときに感謝するが一言文句を言うなどそんな話をしていると、空が徐々に白む。

早く寝ないと、ダンジョンに響くと笑いあいながら一緒の布団で寝た。

たった、一日すら経っていない仲なのにここまで、親しくなるなんて、人生分からないものだ。

そんなことを思いつつ気付けば

 

 

寝てしまった。

 

 

朝、起こしに来るビアンカに現場を見られひと騒動起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

「ゆうべは、おたのしみでしたね」

 

ビアンカの眼は、笑ってない。

こちらを見下している。

ゴミを見るかのような視線をぶつけてきている。

 

 

「そ、そんなことは、ないわよ。ただ、一緒に話しながら、つい、眠りについてしまっただけよ。本当よ?」

 

ベロニカは、そう言うが彼女の首には、赤いマークが見え隠れしている。

昨日の夜、「また忘れないように証をつけて」といわれ、くっきり付いてしまった。

もちろん、ビアンカも気付いており、顔を赤くしている。

 

 

「あなた、こんな子供に…」

 

「子供って、私こうみえて18歳よ。魔物のせいで小さくなったのよ。ってあれ、また、思い出せている!!」

 

「本当に年上だったんだ。それに思い出せているって、いったい何が…」

 

なんだか、カオスになってきた。

ビアンカに軽く説明をし何とか、この場を切り抜けた。

 

 

「へー、そうだったんだ。大変だったのね…って、いけない。早く下に行かないとご飯が冷めちゃうわ」

 

これ、幸いと思い話に乗っかる。

 

 

「そりゃ、いかん。さっさと飯食って、ダンジョンに向かおうぜ。ダンジョンが俺たちを待っている」

 

「っぷ。なにそれ。慌てず、ゆっくり向かいましょ。先走ると、怪我するかもしれないしね」

 

明らかに態度が軟化しているベロニカに笑われ、部屋を出る。

やった!この場を乗り切った。

そう思ったつかの間。ビアンカの横を通り過ぎる際俺にしか聞こえない声量で、つぶやいた。

 

 

「逃げられたと思わないことね。後でお話し、しましょ?」

 

魔王からは、逃げられない。

凍てつく波動を食らったかのような感覚に陥りながら階段を下りた。

ダンジョンにずっと暮らそうかしら。

下で待っててくれた、ベロニカと相談しながらご飯を食べまずは、東区にあるルイーダの酒場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

「まずは教会へ行きなさい」

 

朝、軽く挨拶した後ルイーダさんから言われたことだ。

教会は冒険者にとって必須施設だ。

怪我や体力の回復、毒や麻痺の治療、呪いの解呪、ホイミすらきかない瀕死からの復活と色々ある。

緊急時すぐに向かえるように場所を再度確認しときなさいとのことだ。

それ以外にもルイーダさんから特に重点を置いて言われた事は次の二つだ。

 

 

一つ目は『お祈り』。

これは冒険中の死からの生還の可能性があるということだ。

これは実例もあり、神が起こす奇跡の一つとされている。ただ死んでしまった者の内で誰が生き返ることが出来るかは分かっていない。

敬虔な信徒、英雄といわれた者でも生き返らなかったかと思えば、ただの町人が生き返ったりと何が基準となっているか分からない。

ただお祈りをする事が条件である事だけは分かっていた。

 

 

二つ目は『祝福』。

冒険者は迷宮でモンスターを倒すことより、その魂の一部を取り込む。その魂のエネルギーを使って成長する事が出来るのだが、自然に出来るのは一部の特別な素質を持つものだけだ。

多くの者は魂を取り込む事は出来るが、そのエネルギーを使うことが出来ず時間が経つと共にそのまま拡散してしまう事になる。

『祝福』とは取り込んだ魂のエネルギーを使い冒険者を成長させる奇跡の事だ。

つまり魂の一部とは経験値の事で、成長するとはレベルアップするということだ。

ゲームの中の勇者やその仲間達が自動的にレベルアップするのは、正しく特別な素質を持つ一部の者なのだからだろう。

ちなみに、『祝福』の奇跡は、普通にレベルアップとこの世界でも言うらしく、強さの基準としてレベルが認知されているとのことだ。

この辺りゲームっぽいが、神の奇跡で皆は納得している。神の存在が感じられるこの世界と元の世界の差なのかもしれない。

レベルアップ自体は冒険者だけのものではなく、一般人でも達成できる。

その際に成長も出来るのだが、冒険者は何がどのように成長したのかは分かるし、更に様々な特典もあるとの事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

俺たちはルイーダさんの言う通りまずは教会に向かった。とはいっても、一番近くの教会は迷宮の入り口近くにあるため都合が良い。いや、迷宮の入り口に併せて教会も造られたのだろう。

教会と言ってもそれほど大きくない。簡易的な出張所と言った感じだ。司祭が一人とシスターが一人いるだけだが、それでも教会独特の厳かな雰囲気がここにはあった。

 

 

「新たに冒険に来られた方ですね」

 

「はい」

 

「では神にお祈りください。あなたに神の加護がありますように」

 

司祭の言葉に俺達は教会奥に鎮座する神像に頭を下げた。

 

(ある程度暇ができたら覚えとけよ。トイレの女神さまにしてやる。)

 

神がいる世界だからこそ真剣に祈った。

その後司祭に一礼して迷宮入り口に向かう。

迷宮の規模は街の広さとほぼ同じだ。地下への入り口は一つではなく5つ存在する。

今回来たのはルイーダの酒場から最も近くにある入り口だ。

大きな扉があり警備兵が二人その前に立っている。

徹は二人に対しペンダントを見せた。警備員の一人が顔とペンダントを確認するように見る。

 

 

「新しく来た子だね。まあ頑張ってくれ」

 

それだけ言うと、両開きの扉を二人で開いた。そこには通路があり奥に扉が見える。

 

 

「あの扉の奥にある階段を降りれば、そこからが迷宮の本番だよ」

 

「分かりました。どうもすいません」

 

一度礼を言ってから、俺達はゆっくりと通路に入っていく。

 

身体が微かに震えているのが分かった。未知なる事に対する恐怖は確かにある。不安もある。なんといっても装備はひのきのぼうと布の服という最弱の装備品なのだから。

でもほんの少しだけの好奇心もあった。

隣に、便りになる仲間がいる。

 

 

 

 

 

 

 

俺達の冒険はこれからだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く...




はい、ダンジョン探索しませんでした。

そこまで書くと、10000越してしまうので
急遽ここで終わらせました。

まるで、打ち切り漫画みたいな最後ですが、
普通に次回も続きます。

ベロニカ本当は、もう少し後の方でくっつけようとしたんですが、バレンタイン前のラジオ聞いていたら
いつの間にかこうなっていました。

それでも、ハーレムは、諦めません!

でも、ハーレムにすると
書きづらいんですよね。難しいとこです。

現在、他の作品も書いてみようと努力していますので
もしかしたら、ちょっと投稿速度が遅くなりそうです。

というより、本当は、週一投稿なので
多目に見てください。

ハンターハンターと、はじめの一歩を考えていて
設定なんかは、既に出来上がっていますが
作者の指が追い付けません。
色んな作品を投稿して、宣伝しまくれば
お気に入りも増えるはずと予想して
ぼちぼち頑張りたいと思います。

次回も見てください。

感想、お気に入り、評価待っています。
作者のやる気に繋がるので
楽しみにしています。
誤字、脱字があったらささっと直します。


次回 「ダンジョン【素材】」




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ダンジョン(素材)

ハンターハンターを新しく書いて。
模様替えをして。
患畜の病気の治療する。
確定申告めんどくさい…
この数日間、忙しくて風呂場でついつい寝てしまった。
誤字とかもあるかもしれないので、気付いたら、直しときますね。



階段を下りれば、そこには、見渡す限り敵はいなかった。

落ち着いて、周囲の壁を見る。

今まで色んなゲームをしてきて、様々なダンジョンを攻略してきた。

そんな、俺から言わせてもらうと今回のタイプは、オーソドックス。

ありきたりなダンジョンだった。

壁の素材は、石っぽいが思いっきり殴りつけて様子を見る。

辺りに音が響き隣にいたベロニカに「びっくりしたでしょ!」と怒られた。

謝りながら、一緒に壁を見ていると少しずつだが亀裂は直ってきている。

 

 

「あら、壁が直ってきている。不思議ね」

 

「ここの壁は、まるで生きているように修復していくな。これは勘なんだが邪神の魔力で、戻っているんじゃないんだろうか。それにほら、向こうの壁を見てみろ。一部分だけ魔力が集まっている。あそこ、魔物が出てくるんじゃないのか?」

 

「どこどこ?あぁ、あの隅っこのとこね」

 

二人で見ていると、魔力が徐々に固まってきてスライムが現れた。

スライム。

玉葱型の青いゼリーみたいなモンスター。大きさは中型犬程でドラクエでの定番の雑魚モンスターだ。

スライムは、キョロキョロと周りを見て俺たちの姿を発見したのか、

体ごとぶつかってこようとしている。

つぶれたように身を縮みこませ、バネのように跳ねて体当たりをしてきた。

 

 

これが、現実としての初戦闘。

ゲームではない生身での戦い。

スライムになんて楽に勝てる。正直そう思っていた。

ドラクエで楽に倒せていたため、はっきり言えば舐めていたのだ。スライム程度なら何とかなると。

だがそれが間違いである事に気が付いた。考えが甘かった。

姿形がどうあれスライムがモンスターである事に変わりはない。そして、自分は、勇者ではない。

覚悟を決めなくてはならない。他の生き物を殺す覚悟を。

思えばある程度の大きさになれば昆虫でさえ殺すのには躊躇してしまう。料理で生きた魚や海老を捌いたりするのでさえ、ギューなどと変なうめき声が聞こえて以前は嫌な感じを受けた。

それなのに中型犬ほどの大きさのスライムを殺すのだ。

出来るのか?

いや、やらなければいけないのだ。今日を生きぬくためにも。

後、覚悟を決めたからと言って勝てるわけでもない。これでやっとスタートラインに立ったに過ぎない。

 

 

「お、あぶね」

 

体が自然と動く。

タイミングを合わせ拳を振りかぶって、飛んできたスライムを殴り飛ばす。

ピギィィイ!っと叫びながら散っていった。

スライムは地面に潰れ、溶けきったと思うとそのまま消え去り、その後には2枚の金貨と素材が残された。そして自分の中に何かが入り込むような感覚が一瞬だけした。

多分魂の一部、これが、【経験】なのだろう。

初めてモンスターを殺した。それなのに俺の心は割りと落ち着いていた。

手にはその余韻もあるのだが、死体が魔素となって消えたため何だかおかしな気がした。

いや、死体がないから冷静でいられるのだろう。

それに、俺は、一人ではない。

隣にいるベロニカ。力を貸してくれたシドー。

改めて一人で戦っているんではないと思う。

まだ実感が沸いていないだけかもしれないが、それを確かめる時間はない。

 

 

素材の油が一瞬だけ地面に浮いていたが、あっという間に地面に溶けていった。無念…

 

 

…まじめに考えていたとこでなんだが、雑念、欲望が駄々洩れでスライムに申し訳ない気持ちになってしまった。

 

 

「お金だわ!ってどうしたの?」

「いや、油が欲しかったんだがな」

「お金まで油塗れになるわよ?それに、容器がないから持って帰れないし別にいいじゃない」

「うーん。もったいないなぁ。ちょっと待てよ。地面ぶっ壊せば油も手に入んじゃないのか?」

「体力の無駄でしょ。帰りにしなさい。ほら、いつまでも見てないで、さっさと行くわよ」

「へーい」

 

残念ながら素材は消えていったが、Gだけで我慢しよう。

そのあとも、スライムに会うたびに自分の非力さにうちひしがれた。

拳と棒で叩きのめすたびに消えていくスライムの顔がよぎる。

彼らの死を当たり前の様にしたくない。

せめて、素材として扱うのがビルダーとしての弔い方ではないんだろうか?

なかなか、集中できない環境の中新しいモンスターに出会った。

 

曲がり角でバッタリ魔物と遭遇。

魔物も、急に出てきた俺たちに驚いてホバリングしている。

野生のドラキーが現れた。

 

ドラキーとは、蝙蝠をモチーフにしたモンスターであり夜間に沸くモンスターだ。

ダンジョン内では、昼夜関係ないのだろうか?

まぁ、薄暗いダンジョン内で湧くのはそこまで、不思議ではないがな。

 

 

「今度は、私がやるわね。【メラ】」

 

彼女の過剰なまでの攻撃でドラキーを燃やし尽くしそして、力尽きる。

ドラキーが魔素となって素材とGに変わる。

だが、ドラキーの素材は木材。

彼女の、メラによる残り火が何の罪もない木材に火を灯す。

すぐに回収しようとしたが、ベロニカの近くにスライムが湧いたため、急いで殴りつぶす。

だが時既に遅し、素材として使い物にならないほど燃えてしまった。

俺が悔しさで下を向いていると、魔素となって消えるスライムの顔がこちらをあざけわらっているように見えた。

 

 

「あの、くそスライム!!」

「気にしすぎよ。それにしても不思議ね。私あまり覚えていないけどこんなに、素材って落ちてたかしら。しかもスライムから油はまだ分かるけど、ドラキーから木材が出るのは、謎すぎるわよ」

「それは、恐らく俺の職業による補正じゃないのか?」

「ビルダーって職業が恐ろしく見えそう…あまり燃えそうな魔法は使わない方がいいのかしら。今後も素材が出るとなると、色々気を利かさないといけなさそうね。」

「そうだな、余裕のある時だけでいい。今は、敵の強さが俺らより低いが今後はなりふり構わなくなるかもしれない。そんな時に自分達からハンデを出してまで、やる必要はない。あくまで、命を大事にで挑もう」

「わかったわ。回復担当もいないし出来るだけ安全に進めていきたいわね」

 

ベロニカの言った通り、僧侶や賢者みたいな回復担当のいないダンジョン探索は常に慎重に挑まないと、怪我が積み重なって動けなくなりましたでは遅いのだ。

ベロニカは、専門でもないのか好んで使えないし。

俺に至っては、呪文自体がさほど得意ではない。出来ることは、薬草栽培に俺自身で調合、製薬できるくらいだ。

早いとこ、回復担当が欲しいとこだ。

現在俺が万能職として、索敵。前衛での戦闘。治療薬での治療。

盗賊や戦士、俺達に足りない物を実感するダンジョン探索だ。

 

 

それから五時間ほど昼食や休憩を挟みながら魔物を倒す事が出来た。得た金額は135G。8Gが宿代として100Gが返済分とする。

素材も油は結局諦めたが、木材は少し集まった。

四次元収納の中の在庫を増やして、未来のクラフトへの投資とする。

 

できるだけ待ち伏せをして不意打ちで倒せたため、傷といえばベロニカを庇った時にできた左腕の擦り傷だけですんだ。

防御力の差があるためできるだけ後ろに行かないように対処していたが、戦っている最中に後ろから魔物が湧いて来たときの傷だ。

ゲームのように先制攻撃が一度だけで後は交互に攻撃を繰り返していたらこうはいかない。ゲームと現実の差というやつだろう。

ただしそれは反対にもいえる。一度こちらが体勢を崩せば、そのままボコボコにされるだろう。やはりまずはこちらの有利な状況で戦うようにしなければならない。

 

とりあえず今日無事に終えることが出来た事を俺は密かに感謝した。

初めてのダンジョン探索ということで、集中のし過ぎか頭が痛い。全身の疲労感も酷い。明日は筋肉痛になってもおかしくない。それを考えると憂鬱になるがしょうがないことだろう。

緊張も少しは解れた。明日はもう少し安定した冒険ができるだろうか。

 

ベロニカと二人で話し合いながら周りを警戒する。

階段近くになるにつれ、安心感が増し。無事階段を登り切った。

今日の冒険は、色んな経験ができた。

警戒や索敵の難しさ、回復担当のありがたさ、今後奥に進んでいくなら地図も大事になる。

借金の返済のことはもう大丈夫だろう。

今は、より強く。より高みに。ただ進んでいくだけだ。

 

帰り際に、今日は俺が晩飯を作ろうと思い酒場を抜けて材料を買いに、西側を目指していると人が倒れていた。

 

 

 

 

 

あの人、俺が気になっている酒場で飲んでいた人じゃないか?




今回は、結構少なめでした。

でも、これくらいの方が書きやすいんですよね。

文字数がなかなか安定しないんですが、そこは許してヒヤシンス。
次回は、あの人が参戦します。

皆さんは、誰だと思います?
正解は、次回見て確かめてください。

次回 「伝説の酔っぱらい」






名前を知っている人は、相当レアですね。


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伝説の酔っぱらい

いやー、遅くなりました。
仕事の疲れもあるし、なかなか作業が進みません。
書き方も、もっとうまくなりたいし
臨場感あふれる内容にしたいですが今後に期待ですかね?
書いていくうちにどんどんうまくなればいいんですが…

三人称の書き方をもっと勉強したいんですが、普段の生活で使わないので成長しないですね。

普段から使っている人っているんだろうか…


道の端で人が倒れてる。

近寄ってみると、徐々に酒の匂いが強くなっている。

酔っぱらって倒れたんだろうか。

 

「ちょっとあなた。こんなとこで倒れてたら危ないわよ。タイジュ、どうする?」

 

「うーん。先に買い物済ませて、それでもここで倒れていたら宿で介抱しようか?」

 

「えー。詰め所に放り込んどけばいいじゃない。宿屋の子に怒られるわよ」

 

ビアンカ…怒るだろうか。

詰め所でもいいが、彼の姿があまりにも俺の知っている作品の彼に似ているのでここで借りを作るのもいいのではなかろうか。

それに、俺達はあまりここでの知り合いがいない。

こういうとこで、知り合いを増やしていくのもいいんじゃないかな?

 

 

「俺の作る特殊料理の中に酒の成分を完全分解するお茶があるから彼に飲ませよう。さほど手間じゃないし、彼に借りを作っておけば、後に手助けしてくれるかもしれないしな」

 

「ま、それならいいか。あとで、そのお茶飲ませてね。ちょっと気になるわ」

 

「あいよ」

 

一旦彼をここに置いといて、買い物しておこう。

お金は十分にある。ハッサンから貰った分に、今日のダンジョンでの収穫分。

合わせて739G。

二人分の仮登録分の金額は既に貯まっており後は、ボーナスタイムだ。

1Gがだいたい、日本円にして1000円。

139000円の金があれば日本では一か月も余裕だ。

まぁ、ドラクエの世界だから実際の単価は少し変わっているがこんなものだろう。

G以下になると小銭が出るが、そこは冒険者は受け取れないようになっている。

稼ぐ単価が違い過ぎるので邪魔と思う冒険者が圧倒的に多いからだ。

小銭を取り扱っているのは、商人や一般人が主だろう。

 

青果店や精肉店。道中小麦粉やクラフト素材に使える綿、雑貨等を買っていき残すは600Gぎりぎりまで買う。

おなかが減っているせいもあってか、かなり多めに買ってしまった。

でもいいだろう。

ベロニカとこの世界初めての冒険記念ということもあり盛大に料理を作りたかった。

ビアンカやダンカンも呼んで、盛大に立食パーティーにしてもいい。

機嫌よく宿屋へと向かった。

 

 

 

道中、まだ倒れたままの彼を抱えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

「まったく。急に厨房貸してくれって言ったり、酔っぱらいの介抱しててと言ったり、宿屋って本当はそんなとこじゃないのよ」

 

結局怒られた。彼女に厨房の件は伝わっていなかったのか晩御飯の材料を買ってきて準備するところだった。

危ない危ない。

 

 

「まぁ、いいわ。今晩の材料はまた別の時に使うし。それで、何を作るの?」

 

「盛大に肉料理なんかどうだ?海鮮系も良いのが卸されていたから船盛にしてもいいし。女性が食べやすいようなポトフ作ってもいいな」

 

「あなた、見かけによらず色々作れるのね」

 

「ビアンカもベロニカと似たようなこと言うな。まるで、姉妹みたいだ」

 

「「姉妹?なら私が姉ね」」

 

彼女達が姦しく話し合っている中、俺は俺で作業を続ける。

作る内容は悩んだ末に

高級ポトフ、高級肉野菜炒め、極上海鮮サラダ。

特殊料理で作るのは、軽くつまめるフライドポテトと解毒茶だ。

材料費は、かなり高くなったがせっかくのパーティーだ。

ベロニカのいい思い出になればいいし、明日のダンジョンにも精が出るようにつくる。

特殊料理以外は、ビルダーの能力でさっさと作り。

本格的に作るのは、フライドポテトと解毒茶だ。

どちらとも、簡単に作れはするが逆に言えば本気で作ると味以外にも様々な能力が付く料理だ。

女性陣も話し合いが終わったのか、こちらの料理見学に移る。

 

 

「話し合いは終わったのか?」

 

「えぇ。結局、年功序列で決まったわ。私が姉で、ビアンカが妹よ」

 

「なんだか、変な気持ちになるわね。でも、ちょっと嬉しいわ。私、一人っ子だし」

 

「良かったじゃないか。ビアンカもベロニカも。お互いがお互いを支えあうことは中々できないことだ。俺もいたんだけど、もう会えんしな」

 

シドーのことを考えると、今何しているのかちょっと気になるが、空っぽ島の仲間もいるんだ。今日も元気にいきているさ。

ビアンカとベロニカがこちらを見て悲壮気な顔で見てくる。

ってあれ、妙な空気になってしまったな。

 

 

「別に気にしなくてもいいさ。あいつも元気で俺も生きている。いつか縁があれば会えるさ」

 

「そう…っていつの間に他の料理済ませたの!?結局、特殊料理しか見れないわね」

 

「特殊料理?」

 

「ビアンカは初めて見るんだったな。フライドポテトは普通の奴と特殊料理二つ作るから食べ比べてみてくれ。まずは、あの酔っぱらい用に解毒茶からかな。」

 

解毒草と満月草の品質の悪いものが大安売りされていたので買ってきたものを取り出す。

 

 

「それ、本当に使えるの?あまり品質良くなくて、かなり劣化しているわよ」

 

「あら、本当。姉さんの言ったとおりね。それ、雑草とあまり変わらないんじゃない?」

 

姉さんと言われ嬉しそうにしているベロニカ達の目の前で四次元収納に入れていたダンジョン産の土を出す。

 

 

「それ、ダンジョンの奴よね?どうするの?」

 

「こうするのさ!」

 

雑草と言われた、解毒草と満月草を土の中に混ぜる。

魔力で土ごと覆い30秒ほどして土を払いのけると若干品質が悪いが十分使えるほどの新鮮さを取り戻した。

 

 

「すごい!?なにそれ!」

 

「やっぱりな。ダンジョン産の土はかなり魔力を持っていたから、その魔力で品質を補ったんだ」

 

「すごい特技ね。タイジュさん」

 

「タイジュさん?」

 

「姉さんのいい人なんでしょ。なら、そっちの方が親近感があっていいじゃない」

 

「あら、いい人って言っても正式に付き合っているわけじゃないんだから、あなたも狙っていいわよ」

 

恐ろしいことをさらりと言うベロニカ。

ビアンカの顔を窺うと頬に手を付け考えている。

さっさと否定してくれた方が、心にそこまでダメージが来ないのだが…

 

 

「うーん。悪くはないけど、まだ保留かな。もっとカッコいいとこ見せてくれたら考えてあげる」

 

いたずら気な顔を見せ、こちらに笑いかける。

完全に否定的ではないんだろうか。

そもそもベロニカに悪い気がして堪らない。

女性と付き合うどころか、親しくなるということがあまりなかったのでどうするべきなんだろうか。

恋愛ゲームに精通してなかったのがここでくるとは。

ゲームくらいしかあまり女性と接せない自分が少し恥ずかしくなって彼女の顔を見れずもどかしくなった。

あと、部屋から離れたとこでダンカンさんがほっとしていた。

 

 

 

さっさと次の手法にとりかかる。

さっきの毒消しと満月草それに、スライムから出てきた薬草をすりこぎで粉々に混ぜお湯に魔力を通して混ぜる。

後は、このままだと味が苦みしかしないただの薬草茶なので、蜂蜜を少しだけ足して完成だ。

ベロニカには、パーティ後で飲ませればいいのであの戦士に飲ませる分だけ注いでおく。

 

フライドポテトは、ジャガイモ単体に魔力を限界まで注ぎ油であげる。

それだけ。

案外これだけで、味に深みを増し体力を少しだけ回復する。

女性陣の視線が気になってあまり本格的には作らなかったが、十分美味しくできただろう。

少しだけ残ったジャガイモも比較用で揚げる。

これで完成だ。

さっさと、飯にしよう。

腹が減ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

パーティーは、賑やかにはじまった。

それぞれ、好きなやつを取っていく立食スタイルでテーブルに皿を置き料理を盛る。

おなかも空いていたこともあり、全員群がるように各々好きなように食べ始めた。

ポテトの味比べも、驚かれた。

労力に対しての味のコストパフォーマンスが高いからだろう。

普通に作った料理にも少しながら、バフが付く。

味に申し分がなかったのか、ダンカンさんからもお褒めの言葉をいただき、また呼んでくれと言われた。

彼は、さっさと食べて仕事の方にかかるようだ。

残ったのは、俺とベロニカとビアンカあと酔っぱらい。

 

 

「ホント、すごくおいしかったわ」

 

「あんたの料理を食べ過ぎると前の生活に戻れなくなりそうよ」

 

「そりゃ、ありがとさん。あんまり食い過ぎると魔力過多になって、魔力酔いするから気を付けろよ」

 

俺自身、料理を作りまくって味見しまっくた結果何回もなったこともある。

魔力酔いは、酒をたらふく飲んだ時とは違い高揚感だけ高まる不思議な感覚に陥る。

気分の良くなった後は、自分の制御もなかなかできずにただただ周りに迷惑をかける邪魔者となる。

例えるなら、恐ろしく下位互換のメダパニっぽい感じだろうか。

 

 

「私達は、大丈夫よ。どっちも、魔法メインだし少なくともあなたより酔いづらいわ。ね、ビアンカ」

 

「そうね、少しクラっと来たけどこれぐらいならまだ全然いけるかな。そろそろ彼起こしてあげる?これだけの料理私達だけじゃ食べきれないわ。いつまでも寝かしていると邪魔だし」

 

お酒も少し飲んだせいかちょっと怖い。

被害がこちらに向く前にさっさと起こしてしまおう。

 

 

「おい、そろそろ起きてくれ。早く起きないと今度は、宿屋からたたき出されるぞ」

 

戦士の体を揺さぶっても全然起きない。

相当多く酒を飲んだのか泥酔状態だな。

 

 

「任せなさい。」

 

ベロニカが、自信のある表情で戦士を見ている。

いったい何をする気だろうか。

 

 

「えい!」

 

彼女は支給された、ひのきの棒で泥酔している戦士の腹部を叩く。

恐ろしいことをしでかしてるな。

彼女も酔っぱらっているのか?

グホッ!と声をあげ、眠りから覚めるどころか眠らせそうな一撃を起きるまで何度も繰り返す。

 

 

「待て!待て!起きた、起きたからもうやめてくれ!?いったいなにごとだ!?」

 

確かに起きたが、ベロニカの前で眠るようなことは危険だと学んだ。

取り合えず、彼様に用意した飲み物を持ってきて話しかける。

 

 

「あんた、大丈夫か?道の端で、倒れていたとこを保護?したんだよ。ここは、ダンカン停で宿屋だ。一先ずこれでも飲んで酔いを完全に治せ」

 

完全に困惑している彼の為に用意していた解毒茶だ。

既に熱が冷めて、飲みやすくなっているだろう。

 

 

「えっ、あ、あぁ。ありがとう。って、苦い。なんだこれ?」

 

解毒茶に困惑しているが、だいぶ酔いがさめてきたのか落ち着きが戻ってきたっぽい。

一息ついて話してくれた。

 

 

「僕の名前は…クッキー。申し訳ないが前の名前は使いたくないんだ。この世界に来てから初めて酒を飲んでね。酒を飲んでいる時だけ、前の世界の事を忘れることができたんだ。まぁ、その結果が酒に溺れて気持ち悪くなって確か横になったんだ」

 

「もう、体の調子は大丈夫?さっきは、なかなか起きなかったから何発も叩いたけど」

 

「ああ。痛みは残っているけど、さっきはすまなかった。醜態を見せてしまって。教会に奉仕に行くと思って、最後に全額酒に費やしたんだ」

 

「何でだ?あんた、そんな装備してんだから戦士なんだろ。ひのきの棒でも十分戦っていけるじゃないか。俺達も、ダンジョンに様子を見に行ったが、最初辺りなんかは全然余裕があったぞ」

 

実際あのレベル帯なら一人でも余裕ができている。

戦士の彼なら、下手したら、俺達より今は安定しているかもしれない。

恐らく彼も、俺達みたいに世界を超えてきたのではなかろうか。

奥に進めば分からないが、300G程度なら楽に稼げるだろう。

 

 

「心が…」

 

「ん?」

 

「心が折れたんだ。そりゃ、僕だって今まで数多くのモンスターと戦ってきたさ。仲間と一緒に。でもな、お前らにわかるか?好きになった女が、戦友の事が好きで。僕が呪いにかかっていたときなんかは僕を宿屋においてたった二人で世界を救ったんだぜ。おまけに変な体質があるのか知らんが僕はな、鉄のやりぐらいしかまともに持ったことがない。僕も、もっと強い剣や防具で身を守って戦果をあげたかった。でも、装備すらできないんだ。国にいる奴らは、みんな僕を馬鹿にしてくる。『中途半端な勇者だ』ってな」

 

あぁー。彼の事が完全にわかってしまったな。

心が折れたのもすでに分かった。

だが、話はまだ続く。

 

 

「ここに来たのも、世界が勝手に救われていてどこにも僕の居場所がないてわかってな。自殺しようとしたんだ。そんなときになんか勝手に体が光ってこの世界に1週間前だったか?来たんだよ。信じられるか?」 

 

「信じますよ。俺達もそんな感じだったんで」

 

「なんだと?まぁいい、話を続けるぞ。で、酒場に行って冒険者登録をしたのはいいが、レベルも1に戻っていてな。とりあえずは、300G稼ごうとしたんだが、途中でひのきの棒も折れるし意味わからん状況だしでもう面倒になったんだよ。残った軍資金は全部酒と宿泊代にきえてしまったさ。教会で一年間奉仕してそこで生計でもたてようかなってな。そっちは?なんで、僕を救ったんだ?」

 

 

俺とベロニカの現状を彼に大雑把に話す。

色々諸事情が違うだけで、概ねどちらともかわらないだろう。

 

 

「はぁー、なるほどなぁ。神様には、悪いけど僕はここまでだな。金は無くなったし。装備もできない。あるのは、勇者っていう肩書だけだ。中途半端がつくけどな」

 

彼が、自暴自棄みたいに言っているが、俺は彼が欲しい。

彼は、現在でいう補助寄りの魔法戦士であろう。

昔の作品では、彼を不遇に扱ってゲームのバランスをとっていたんだろうが彼自身の潜在能力はピカ一だ。

彼の残念なところは超が付くほどの大器晩成型なとこだ。

そのせいで、序盤では使えずよく倒れているのを目にした。

だが、彼がいることで作戦にも幅を利かせパーティ内の持久力も高くなり戦闘の要にもなりうる人物だ。

そんな彼がぜひとも欲しい。

 

 

「借金の返済は明日までですか?」

 

「あん?そうだよ」

 

「俺達のパーティに入ってくれれば、借金を代わりに払います。あなたの助けが必要なんです。お願いします」

 

彼に誠意をもってお願いする。

 

 

「おい、やめてくれよ!?こんな中途半端な男のどこがいいんだよ。もっといい戦士を選びな。」

 

「あなただからいいんですよ。()()()()()()()()()。私達が今一番欲しい人材なんです。恐らくあんたの武器防具事情も俺ならなんとかできるし、あんたは、自分が悲観するほどの人材ではない。俺達とパーティを組んでもらえませんか。あと少しだけ冒険をしてみましょうよ」

 

「そうよ!事情はあんまり分かんないけど一緒に頑張ってみましょ?まだ、あきらめるには早すぎるわ」

 

俺とベロニカが一緒なら安定感が増すしどこまでも高みに行けそうだ。

 

王子…クッキーが悩みながらもこちらを見ている。

恐らく自分の出自を知っている俺の事も気になるんだろうが、彼自身も、もっと冒険してみたいはずだ。

彼は、結局達成感を味わったことがないから。

劣等感のまま過ごしてきた今がつらいんだ。

仲間になってもらえないものだろうか…

 

 

「…少しだけな。ちょっとだけやってみる。それでだめそうなら僕は、教会の方で匿ってもらうぞ」

 

 

魔法剣士クッキーが仲間に入った。

 

 

「あんたに冒険の面白さを教えてあげますよ」

 

「やったわね。これで、パーティメンバーが増えたわ。あとは、もう一人程欲しいけどひとまず良さそうね。」

 

「ふふふ、よくわからないけど良かったわね。あなたたちの話を聞いていると何か思い出しそうなんだけど、なんだったかしらね?エルシオン学院の大図書館で読んだ内容に確か書いてあったはずなんだけど…」

 

図書館もあるのか。

相当でかい施設なんだな。

見る機会があればいくんだが、それもまたいずれだな。

今は新しい仲間もできた。

金も入用になってくる。

金策も考えないといけないかもな。

 

 

「とりあえず、クッキーの分の宿泊代を払ってくるよ。その間に腹が減っていたら、飯作ってたから食っといてくれ」

 

「あ、すまなかったな。金の管理なんて僕には無理だと思うからそこは負担をかける。あと、腹減っているから貰うな。ありがとう」

 

少しだけ、表情に余裕を見せたクッキーを後ろに金を払いに行く。

まるで、アイドルをプロデュースする職に就いているようだ。

そう思いつつダンカンのもとに向かう俺だった。

 

 




はい、ってことで出ました。
サマルトリアの王子様。
彼の設定ってかなり不憫なものがいっぱいあるんですよね。
彼の言動が安定しないのも彼自身の精神が安定しないからです。

この世界では、時間軸、世界線がずれているので下手をすると
同じキャラクターが出てくるという設定なので
キャラクターによっては、本来のプレイしていた内容とずれています。
ご容赦を…



誤字、評価、感想待っています。
暇を見つけましたら、ところどころを修正入れときます。


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