借金から始まる前線生活 (塊ロック)
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本編 傭兵、指揮官になる

俺、指揮官になります。


 

 

やっちまった。

 

 

俺は今、独房の中で頭を抱えていた。

 

おかしいとは思っていたんだ。

だが、こっちにも相応の事情があった。

 

 

 

 

蒸発した親父が残した大量の借金を返済する目処が立てば、胡散臭い仕事を引き受けざるを得ない。

 

父親が消えた日から、俺は母を一人残し傭兵となって日々泥水を啜りながら我武者羅に銃を取り金を稼ぐ生活を続けていた。

 

 

 

 

 

それから五年が経った今、届いた依頼を見て跳び上がったのが記憶に新しい。

 

 

『報酬:全額前払い』

 

 

その文字の後に書かれた金額を見て目を見開いた。

 

借金のおおよそ3分の1。

 

迷う事なく依頼を受けてしまったのだった。

 

 

……………こんな旨い話があるか、とどうして気が付かなかったのだろうか。

 

 

仕事内容は、PMCの運送ルート襲撃。

この依頼を出しているのは別のPMCなのだが…まぁ、同業同士でなにか思うところがあるのだろう。

 

指定された時間に道を塞ぎ、トラックを強襲して防衛を引っ掻き回し後から到着する本隊の時間稼ぎ。

 

これだけ見るとかなり危険な仕事だが、推定戦力がそれほど脅威ではなかった為に判断を誤ったようだ。

 

 

…実際に現場を見た時、予想より戦力が少なく楽勝ムードが出ていたのが更に拙かった。

 

 

「…依頼を受けた傭兵だな」

 

「ああ、そうだ。足止めはした。後はあんた達の仕事だ」

 

「良い働きだ…だが、」

 

 

本隊の兵士達がこちらに銃口を向けているではないか。

 

 

「お、オイオイ…なんの冗談だ?」

 

「もうすぐグリフィンの救援が来る。お前にはそれまでここでのたうち回ってもらう」

 

「なっ…」

 

 

体のいい捨て駒。

こいつらはここで俺を主犯に仕立て上げ切り捨てる腹積もりだったのだ。

 

 

「マジかよ夢なら醒め」

 

「騙して悪いが、仕事なんでな」

 

 

足に弾丸を打ち込まれ、膝を付いた瞬間、銃床で頭を打ち据えられた。

 

まぁ当然気を失うわな…。

 

 

…で、気が付いたら檻の中って訳だ。

 

 

あのままグリフィンの増援部隊に回収されてしまっていたらしい。

 

 

しかもこの独房があるのは襲撃対象だったPMC…グリフィン&クルーガーの本部。

 

あっ、詰んだわ。

 

人生がここで終わる系の詰み。

 

すまねぇ母さん…先立つ親不孝を許してくれ…。

最後に一発親父ぶん殴りたかった。

 

 

「お疲れ様です!クルーガーさん!」

 

「すまない、少し外してくれないか」

 

「はっ!」

 

 

…おや、誰か来たようだ。

待て、クルーガー?

 

 

「初めまして、テロリスト君」

 

 

独房の檻の前に立ったのはえらくガタイのいい髭面のオッサン。

…明らかにカタギではない。

 

 

「単刀直入に言おう。うちで指揮官をやってもらう」

 

「…………はぁ!?」

 

 

ごめん母さん。

当分帰れねぇや。

 

 

 




報酬全額前払いは信用してはならない。

蒼き雷霆の最前線のネタが思い浮かばずに新しいのを始めてしまった。
とりあえず息抜き程度に触っていきます。


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借金が増えました

前回までのあらすじ!

俺、指揮官になる(強制)

…母さん、俺は今日も精一杯生きてます。


「アンタ、正気か!?自分とこにテロしてきた輩雇うか普通!?」

 

 

 

 

 

思わず声を荒げてしまうが仕方ないと思う。

 

懐が深いとかそういうのでは無く、狂っている。

 

 

 

 

 

「まぁ確かにそうだろうな。しかし、今回の襲撃、用意周到に作戦が練られていると見た」

 

 

 

「…そりゃ、雇われたの俺だけだし」

 

 

 

「実際に何から何までタイミング良い撹乱だった。そこで私は、君の手腕が欲しくなってね」

 

 

 

「どんだけ人手不足なんだグリフィン」

 

 

 

「恥ずかしながら指揮官の損耗率も高い。正規軍から引っ張る事も不可能に近く、やはり経験のある指揮官を雇えないのが現状だ」

 

 

 

 

 

正規軍もコーラップス感染者たちの対応で忙しくこんな所まで来ないだろう。

 

 

 

 

 

「今回君を捕縛できたのは実に渡り船だったわけだ」

 

 

 

「こっちとしては人生の詰みを覚悟してるんだが」

 

 

 

「所でテロリスト君。君の母上は元気かな」

 

 

 

「あ?手紙だと健在っぽいけ…ど…」

 

 

 

 

 

顔から血の気が引いた。

 

待て、このオッサンなんで母さんの事を知っている。

 

 

 

…やっべぇ。人質にされてるわこれ。

 

 

 

 

 

「マジかよ。ノーカウントだノーカウント!」

 

 

 

「良いのかな?母上の身に不幸があっても」

 

 

 

「お、お前鬼かよ!!この人でなし!」

 

 

 

「それと、これが今回の被害総額だ。すぐに払えるかね?」

 

 

 

「なっ…」

 

 

 

 

 

唐突に見せられたタブレット端末の画面には、見た事もない額が記載されていた…。

 

 

 

 

 

「ふ、ふざけんな!たかだかトラック二台横転でこんな被害出るかよ!?」

 

 

 

「そのトラックに乗っていた荷物に問題があってな…うちの主力の人形小隊が乗っていた」

 

 

 

 

 

…グリフィンの主力小隊。

 

転戦していた時に、こいつらと偶に共闘したり対立したりしていたからもしかして顔見知りだったかもしれない。

 

 

 

 

 

「まさか、そいつらの修理費もはいってるってのか」

 

 

 

「そのまさかだ」

 

 

 

「オォウ…」

 

 

 

 

 

これなら捕縛ではなくそのまま殺されていた方が保険金が母に向かったのでマシだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「さて、どうする…と聞きたいが生憎と選択肢は無い」

 

 

 

「だろうな…」

 

 

 

 

 

ここで俺を逃がすなんて事はない。

 

わざわざ人質をチラつかせ譲歩させる気満々の相手だ。

 

 

 

刺激するのは拙い。

 

おとなしく従うしか、道は無かった。

 

 

 

 

 

「…分かったよ。その話、乗るよ」

 

 

 

「そう言うと思って既に登録は済ませてある」

 

 

 

「えぇ…」

 

 

 

 

 

完全に手のひらの上で遊ばせられていたらしい。

 

もう抵抗する気力も沸かない…。

 

 

 

 

 

「…勿論?人質にするならちゃんと命の保証してくれるんだろうな」

 

 

 

「何?」

 

 

 

「人質養うための金は出すって事でいいよなぁ?」

 

 

 

「…クッ、ハハハ!気に入った、この状況でまだ反抗するか。良いだろう、保証してやる」

 

 

 

 

 

よし、言質取った。

 

 

 

…オッサン…これから俺の上司になるクルーガーが手を差し伸べる。

 

 

 

 

 

「では明日から研修を受けて基地配属になってもらうぞ…ジョージ·ベルロック指揮官」

 

 

 

 

 

そんな訳で、俺…ジョージ·ベルロックの就職が決定した。

 

 

 

母さん、しばらくは何とかなりそうです。

 

 

 

 

 

「…そうそう、言い忘れていたが君にとても会いたがっている人形が居てな」

 

 

 

「はぁ、俺に」

 

 

 

「君に損傷させられたM4A1と言う人形だ」

 

 

 

「主力ってAR小隊かよ…」

 

 

 

 

 

よくそんなのと交戦して生きてたな俺。

 

まぁブービートラップも駆使して直接見られないようにしていたんだが。

 

 

 

 

 

「そいつが電脳を損傷して君・を・最・愛・の・指・揮・官・だと誤認してしまった」

 

 

 

「…は?」

 

 

 

「なので…」

 

 

 

 

 

ガンガン!!

 

 

 

 

 

何か、金属の板を…有り体に言うなれば扉を叩く音がする。

 

 

 

 

 

『指揮官!こちらですか!指揮官!どちらにいらっしゃいますかー!』

 

 

 

「…ヒェッ」

 

 

 

『あはは、指揮官たら本当にシャイなんですから…早く姿を見せてください…ねぇ、指揮官?指揮官…?』

 

 

 

「勿論アレも配属させる」

 

 

 

「お、おま…この野郎あんなの扱い切れるか!?」

 

 

 

「…電脳の修復が進まず対症療法としての措置だ」

 

 

 

「まさか、手に余るから俺に押し付ける気か!?」

 

 

 

 

 

『あは…こっちから声が聞こえる…すみません、開けてもらえませんか?え?クルーガーさんの?』

 

 

 

 

 

「では、私はこの辺りで失礼する。精々努力してもらおう」

 

 

 

「お、鬼!悪魔!人でなし!!」

 

 

 

 

 

俺の叫びは広い背中に吸われることもなく虚しく響いた。

 

 

 

 

 

「やっと見つけました…指揮官♡」

 

 

 

「…ヒェッ」

 

 

 

 

 

前言撤回。

 

母さん、俺…生きて帰れないかも。

 

 

 

 

 

 

 

 




M4って電脳損傷したら正直ヤバいかもしれないけど、やりたかったからやったので後悔していない。

次回、ヤンデレストーカーM4現る。


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指揮官研修

名前:ジョージ・ベルロック

年齢:26

血液型:AB

身長:182cm

体重:86kg

職業:正規軍⇢傭兵⇢グリフィン


趣味:筋トレ、読書、武器整備


性格:冷静ぶる熱血漢

好物:肉類

嫌いなもの:(愛が)重い女性



父親が蒸発し、多額の借金だけが残された哀れな奴。

両親共に正規軍に所属し、母は妊娠した為軍を寿退職。
地元の田舎でひっそり喫茶店を営んでいた。


ある日突然借金を背負う羽目になった母の為に正規軍に入隊。
が、ノウハウを吸収するだけしたらスッパリ退職。

その後傭兵として活動を始めるのだった。


正面から撃ち合わず、罠や地形を活かして相手戦力を削り、残存勢力を駆逐する戦法に長ける。

単に損耗による出費を嫌っているだけとも言う。


戦術人形と共闘することもそれなりにあり、人形と言えど損傷すれば結構な額が飛んでいくためやっぱり損害を出したくないという考えが第一になる。

なので自然と人形を大事にしながら戦うのだが何故か彼女達にそれが受けてしまい割と好意的に。


特に404小隊からはそれなりに信頼されている模様。

かつて付き合っていた女性は二人居たが、どちらも何とまぁ重い愛をぶつけてきた為苦手意識が強い。


女性の好みは幅広い。
戦術人形は……………………状況による、としか。


とにもかくにも金の為に戦う毎日を送っていた。


そう、あの依頼を受けるまでは。




鉄格子越しのショッキングな出合から一週間が経った。

 

この一週間で俺の生活は一変してしまった。

 

 

朝から深夜まで本部に所属する様々な指揮官達から指導を受ける。

もしくは、戦術人形達の運用を見る為に現地に入り直接戦闘に参加することもあった。

 

そして終われば報告書祭り。

 

睡眠時間もガッツリ削られてしまっている。

 

 

「やる事が…やる事が多い…!」

 

 

現在、腕には大量の報告書が詰まったダンボールが二箱抱えられていた。

 

報告書…と言っても中身はフロッピーディスクである。

こいつを戦術人形に打ち込むと戦闘経験をそのまま反映しレベルが上がるとか。

 

…まぁ、これだけあるのは流石本部と言うべきか。

そしてこの量をたった一体の人形に使うのだからそれも凄まじい。

 

 

「指揮官」

 

「…ぎゃあぁぁぉ!?」

 

 

エレベーター待ちをする為に足を止めた瞬間、耳元で囁くように声が聞こえてきた。

思わず叫んで跳び上がった俺は悪くない。

 

周囲に人が居なくて良かった…と一瞬思ったが逆だ。

誰も居ないから来たのだ…彼女が。

 

 

「そんなに驚かないでください。傷付きます」

 

「え、M4…」

 

 

背後に立っていたのは、戦術人形M4A1…独房で初めて会ったときと同じ様に笑っている。

 

 

「どちらに行かれるのですか?」

 

「さ、さっき製造されて配属になった人形の所だ」

 

「へぇ…」

 

「…ヒェッ」

 

 

のっぺりとした笑顔に背筋が凍る。

本当に何を考えているのか分からない。

 

 

「あと…俺はまだ指揮官じゃないんだ、M4」

 

「ふふ、分かってます。でも、()()指揮官になってくれるんですよね?」

 

「」

 

 

この子元からこんな子なんじゃねぇのクルーガー。

 

 

「なので…今、他の子の所に行くのは目を瞑ります」

 

「今て」

 

「楽しみにしてますからね…?」

 

「お、おう…所でM4」

 

 

名前を呼んだら花が咲くような素敵な笑顔をしてくれた。

…何だろうこの罪悪感。

 

 

「何でしょうか指揮官♡」

 

「…部屋からYシャツが一着消えたんだけど、知らない?」

 

「それでは指揮官、また夜に」

 

「おい!やっぱりお前か!待てや!…消えた!?」

 

 

目下の悩み…そう、俺を指揮官だと誤認しているM4A1だ。

ひと目のある場所では特に何もしてこずジッと見ているだけだが…。

 

俺が一人になるタイミングで何処からともなく現れ話し掛けてくる。

 

それが何処だろうと、気配も音も無く現れるのでとても心臓に悪い。

 

 

「黙ってりゃ可愛いんだけどな…」

 

「ありがとうございます指揮官♡」

 

「!!!?!!?」

 

 

辺りを見渡すが、誰も居ない。

 

…エレベーターが到着していた。

 

 

「いや、ホント…勘弁してくれない?」

 

 

もうこれホラーだよ。

 

 

 




大天使M4との心温まる交流(ぐるぐる目

ジョージ指揮官の元に配属する人形を考えないとなぁ…。
あ、ARと404は出す予定です。


次回「私が居れば充分ですよ、指揮官…♡」


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第二の刺客

ジョージ指揮官見習いの研修は続く。

グリフィンの本部と言うことは、別動の部隊も多く出入りする…つまり、今度は再会だ。


 

 

「おはようございます、指揮官♡」

 

「う、おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?!」

 

 

自分の顔超至近距離で挨拶するM4に起こされて起床する。

おかしい、昨夜しっかり鍵を締めたのに…。

 

 

「ちょ、降りろ!やめ、腕を抑え…」

 

「今日もいい天気ですよ指揮官。()()為に指揮官の道を進んでいる事も知ってます」

 

「離せ!」

 

「でも…昨日は遅くまで喫茶店に居ましたね…あの、ライフルと楽しそうに喋って」

 

「違う!スプリングフィールドとはたまたま昔一緒に戦ったことがあった縁が」

 

「指揮官…?」

 

「ヒェッ」

 

「確か今日は非番の日ですよね…ふふふ、今日は離しませんよ…?」

 

 

いつぞや対面した時と同じ様に瞳にハートマークが乱舞していらっしゃる。

M4の格好もまずい。

まず、少しサイズの大きいYシャツ以外何も来ていない。

…意外と着痩せするのかな、結構存在感のある二つの…ゲフンゲフン。

 

それはそうとやばい、食われる。

 

 

「指揮官…」

 

「M4、やめてくれ」

 

 

この子は、本当に俺の事を好いている訳じゃない。

電脳の異常からそう認識してしまっているだけだ。

 

こんなふうにして貰う謂れは無い。

 

 

「頼む…俺はまだ君の言う指揮官じゃないんだ」

 

「…」

 

「M4?俺達はまだ会ったばかりだ。お互いに知り合う所から始めよう、な?」

 

「…わかり、ました」

 

「ありがとう。素直な子は好きだよ」

 

「へ、ひ、ひゃい…」

 

 

おずおずと俺の上からM4が退いていく。

良かった、命拾いしたらしい。

 

 

「さ、M4。朝食に行こう」

 

「はい…その、着替えてから行きますね…」

 

 

そそくさと俺に与えられた宿舎の部屋からM4は出ていった。

 

 

「…やっぱりアレ俺のYシャツじゃねーか!!」

 

 

グリフィンに入ってやっと迎えた休日の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

食堂。

朝のこの時間の食堂は割と混沌としている。

 

これから出撃する人形達が寸暇を惜しんで飯を掻き込んだり、非戦闘勤務員達が野次飛ばしてたりする。

 

そんな中、俺は隅の空席の多いところに座った。

 

向かいに当然の様にM4が座った。

 

 

「いただきます…んー、この飯が実質タダ…こんなに嬉しいことはない」

 

「…?指揮官は、今まで食事されていなかったのですか?」

 

「いや、ただ…傭兵の時はなるべく出費抑えたくて結構抜いてた」

 

 

削れる出費はとにかく削る。

正規軍でもPMCでもないから戦闘終了後に出来る限り敵拠点の物色とかもしていた。

 

 

「指揮官は、私達と違って食べないと」

 

「分かってるよ。少なくともここにいる間は食うさ」

 

 

戦術人形も生体パーツの維持のために栄養摂取が必要らしい。

人形と人間の境界線も随分と曖昧なもんだ。

 

 

「ごちそうさま。M4も今療養中なんだろ?たまには姉妹に会いに行ったらどうだ」

 

「え…そんな、指揮官…私を置いて行くんですか?」

 

 

M4の表情が絶望一色に染まっていく。

感情表現が豊かな子だな。

 

 

「違う違う。俺みたいな半端者に引っ付いてなくていいって事だよ」

 

「そんな事…」

 

「とにかく、そういう事だ。それじゃあな」

 

 

ちょっと強引だったけど、こうでも言わないとずっと引っ付いて来そうだ。

 

 

「………………………指揮官、夜を楽しみにしてますからね」

 

 

あーあー聞こえない俺はなんも聞いてないぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ジョージ」

 

「ん?誰だ?」

 

 

廊下を歩いていると、名前を呼ばれた。

この基地で俺の名前を知っている奴なんてそう多くない。

 

振り向くと、透き通る白く長い髪をした少女が立っていた。

瞳はエメラルドの様に色鮮やかで、涙の様なタトゥーがその下に描かれていた。

 

 

「HK416か!久しぶりだな!まだくたばってなかったか」

 

「貴方こそ、グリフィンの制服なんて着てどうしたのよ」

 

 

HK416…404小隊と言う指揮官不在の人形小隊のメンバーだ。

傭兵時代によく共闘した覚えがある。

 

…少し頭に血が登りやすいのが難点だが、基本的に頭の回転も早く容赦が無い。

 

 

「俺か?つい最近グリフィンに入社してね」

 

「それ、本当なの?」

 

「ああ、本当だ。なんなら指揮官になる為に今研修中」

 

「!!!!」

 

 

驚いたように目を丸くした。

え?そこそんなに驚く?

 

 

「へぇ…ふふふ、それじゃいつかあなたの事を指揮官って呼ぶ日が来るかもね」

 

「そんときゃよろしくな。お前たちなら信頼出来る」

 

「えぇ、私は完璧よ…上手くやってみせるわ」

 

「そいつは頼もしい。M4とも上手くやってくれ」

 

「………………は?」

 

 

ビッシィ!!

 

何かが割れる音がした。

あれ、俺地雷踏んだ?

 

 

「M4ぉ?何故そんな名前が、今出るのかしら…?」

 

「え、あぁいや、俺が基地担当するようになったらアイツが配属されるらしくてさ。そんときゃよろしくって…」

 

「ジョージ」

 

 

いつの間にか壁際に追い詰められていた。

そのまま416が両手を壁に付いた。

 

丁度416と壁に挟まれる形になる…壁ダァン…。

 

もっとも、こいつの山は壁とは無縁な豊かさだが…。

 

 

「ジョージ、私は完璧よ…!あんな奴より!」

 

「ちょっと、416さん?」

 

「私が居れば充分ですよ…ねぇ?そう思わない?」

 

 

駄目だ、完全に聞こえてない。

こいつの前でM4の話は禁止だこれから…。

 

 

「いつか奴らに…!」

 

「わかった!分かったから、な?落ち着け」

 

「…ごめんなさい。熱くなりすぎたみたい」

 

「誰しもそういう所はあるさ…気にすんな」

 

「ほんと、ジョージは優しいわね」

 

「金以外なら相談に乗るぞ」

 

「…変らないわね、守銭奴なところ」

 

 

呆れたようなジト目で見られた。

このやり取りも懐かしい。

 

 

「404はしばらく本部にいるから、45たちにも顔合わせなさいよね」

 

「お、やっぱりあいつ等もいるのか。懐かしいなぁ」

 

「最後に会った時から結構経ってたもの。皆会いたがってるわ」

 

「416は?」

 

「私も…って何言わせるのよ!」

 

「ははは、相変わらずだな」

 

「全く…それじゃあね。研修、頑張って」

 

「おう、ありがとう。またな」

 

 

いやー、久々に会えて良かったね。

再会出来るってのはお互い無事じゃないと出来無いことだ。

 

それは喜ばしい。

 

 

「さて、ライブラリでも閲覧しにい………ヒェッ」

 

 

振り向いた通路の奥、曲がり角から何かがこちらを見ている。

 

…その瞳は、光が灯っていなかった。

 

 

「お、俺は何も見なかった…ああ、そうだとも」

 

 

逃げるようにしてその場から走り去った。

 

 

 

 

 




と言うわけで404小隊が到着。

しばらくは研修編なので色んな人形出したいなーとは考えてます。

次回「ジョージ!数合わせだ!合コン行くぞ!」


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お誘い

「指揮官、今朝の人形は…誰ですか」

「な、ナニィー!?お前はM4!ここは前書きだぞ!?」

「ほら、誰?ねぇ誰ですか?」

「や、やめろぉ!HA☆NA☆SE!!俺は寝るんDA!!」


「おい、ジョージ」

 

「はい…ん、ベネットさんか」

 

「さんは要らんって言っとるだろうが」

 

「いやー、先輩ですし」

 

「アンタのが年上なんだから気持ち悪い」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 

ある日の昼下がり。

だいぶここでの仕事も板に付いてきた頃。

 

指揮官の一人であるベネットが話しかけてきた。

 

 

「なぁ、今週末…空いてるか?」

 

「今週末?予定は無いが」

 

「よっしゃぁ!合コン行こうぜ合コン!」

 

 

その台詞を聞いた瞬間急いで背後を確認する。

…見てる。

 

M4様が見ている…。

 

 

「いやー、急に欠員出ちまってさ!ジョージが来てくれるなら安心だぜ」

 

「な、なんで俺なのさ」

 

「え?だってアンタ元傭兵だろ?俺達新任指揮官と違って修羅場もくぐってるし背も高い。割とイケるんじゃね?」

 

「んな適当な」

 

 

ベネットは比較的若い指揮官で、まぁ…多感である。

こちらが年上とはいえ働き始めてから割と良くしてもらっている。

誘いは無碍にはしたくない…が。

 

 

「あー…アレだろ?M4ちゃん」

 

 

ぴくり、と廊下の角から見える頭が揺れる。

 

 

「大変だと思うけどたまには息抜きもどうだ?あ、それとももうヤってる?」

 

 

ガン!

壁に頭をぶつけた様な音がした。

 

…今ので正常になってたりしないかな。

 

 

「アイツとはそんな関係じゃない」

 

 

ガン!

 

 

「えっ、あんな仲良さそうなのに」

 

「療養の手伝いしてるだけさ。メンタルをちょっと損傷しててな」

 

 

ガン!ガン!

 

 

「そうだったのか…早く治ると良いな。グリフィンの顔だからなAR小隊は」

 

「そうだな…」

 

「で、来るか?」

 

「行くぞ」

 

「OK!」

 

 

ズドン。

あっ、これ絶対壁に穴開いた。

 

 

「で、後誰が来るんだ?」

 

「女の子三人、野郎のあと一人はキャンベルだ」

 

「へぇ、アイツが」

 

 

今まで女っ気無かったしこんな会話も新鮮だ。

合コンは勿論行く。

まぁカップルになるつもりは無いが女性との触れ合いは男の活力だからな。

 

 

「それじゃ、週末楽しみにしててくれよ」

 

「おう」

 

 

ベネットと別れる。

…無意識に、別れてしまった。

 

気付いたときには時既に遅し。

 

周囲に人影は無い。

 

 

「指揮官」

 

「急用思い出した」

 

「指揮官」

 

「いだだだだやめろ手を掴むな!!」

 

 

真顔で後ろから手を捻り上げられた。

このサブミッションは友軍狙撃のペナルティ発生しないのか!?

 

 

「合コンに、行かれるのですか…?私以外の、女性と…!」

 

「痛い、ちょ、離してくれ。落ち着いて話もできやしない」

 

 

懇願すると、やっと離してくれた。

…M4?瞳のハイライトは何処に置いてきたんだい?

 

 

「指揮官、本当に行くのですか」

 

「え、ああ。良くしてくれた奴から誘われたんだし断りたくない」

 

「…………」

 

「M4」

 

「何でしょうか」

 

「お前、もうちょい自分を大事にしなって。頭打ったろ」

 

 

完全に俺のせいだが何とか言い包めなくては。

…というか、何で浮気の言い訳みたいな事になってるんだ?

 

 

「折角綺麗な顔してるんだからさ」

 

「き、きっ、綺麗…!?」

 

 

一気に顔が真っ赤になった。

M4は結構グイグイくる癖にこちらから責めるとすぐに狼狽える。

 

…今の所寝込みを襲われてない理由はそこにある。

 

なので、ここは畳み掛ける!

 

 

「綺麗だよ、M4は」

 

「あわ、あわわわ」

 

「また埋め合わせするから、な?」

 

「わ、分かりました…」

 

 

チョロい。

ちょっとこれ心配になる。

 

 

「ありがとう、M4」

 

「ですが、指揮官」

 

「おう、どうした?」

 

「もし指揮官がその日帰ってこなかったら、私は探しに行きますからね…フル装備で」

 

 

その日見たM4の顔を、俺は絶対に忘れないだろう。

 

…………まだまだ甘く見てた。

 

 

「………は、はい」

 

 

 




本部なんだし、他にも指揮官居そうだよね。
名前は即興です…ベネット、死んだはずじゃ…。

次回「貴様ら!ここで何をしている!?」


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合コンの中の戦争

そろそろ新しい人形出さないとなぁ。


「おはようございます、ジョージさん」

 

 

グリフィン本部、朝の廊下。

久しぶりに仕事が片付いたので、射撃訓練でもしておくかと思い射場に向かう最中。

 

声の主はニコニコと手を振っていた。

鮮やかな栗色の髪を結った落ち着いた雰囲気の女性。

 

…しかし、その肩にはライフル銃が担がれていた。

 

 

「おはよう、スプリングフィールド。今日も綺麗だね」

 

「あらあら。M4さんが怒りますよ。ねぇ?」

 

「…」

 

「え"っ」

 

 

丁度、俺の死角になるスプリングフィールドの後ろからM4が出てきた。

 

 

「え、M4…」

 

「指揮官、その、これ…」

 

 

おずおずと小箱が差し出される。

ピンクのリボンで可愛らしくラッピングされている。

 

…薬とか入って…。

 

 

「ジョージさん。今日がなんの日か知ってますよね」

 

「2月14日…えっ、まさか」

 

 

今どきチョコレートなんて中々手に入らない嗜好品だ。

それを、M4が俺の為に…?

 

 

「ありがとう、嬉しいよM4」

 

「は、はひ…」

 

 

箱を受け取ると、M4が顔を真っ赤にして俯いた。

 

 

「それにしても、よく手に入ったな…」

 

「私が余らしてた所に丁度来て、作り方も合わせて一緒に用意したんです」

 

「あ、あのスプリングフィールドさん!?」

 

「あらあら、これは言わないほうが良かったかしら」

 

「う、うううううう!!!」

 

 

感情がオーバーフローしてしまい何処かへ走り去ってしまった。

 

 

「ちょっとからかい過ぎちゃいました」

 

「お手柔らかにしてやってくれよ…」

 

「人払いの手間が省けました。はい、どうぞ」

 

 

スプリングフィールドから紙包を手渡された。

…甘い匂いがする。

 

 

「スプリングフィールド?」

 

「M4には悪いですけど。受け取って下さいね」

 

「ありがとう。…なんで俺に?」

 

「私、昔ほしい物があったんですよ」

 

 

唐突に語り出した。

あー、これはお返しにおねだりされる奴かな。

 

全くこの子も素直じゃな…。

 

 

「でも、その人は指揮官じゃないので私を見てくれないんです」

 

「…ん?人?」

 

「けれど、また再会して、そうしたら指揮官になるって言ってたんですよ」

 

 

へ、へえー。

それはまた俺と似た境遇の人が。

 

 

「…いつまでも待ってますからね、ジョージ」

 

「……………ヒェッ」

 

「あと、それ本命ですから。それではごきげんよう」

 

 

スプリングフィールドは眩しい笑顔で歩き去って行った。

 

 

「…………キミ、キャラ違クナイ?」

 

 

ようやく絞り出した言葉はそれだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー夜。

 

 

「なーんでバレンタインの夜に合コンなんだよ」

 

「来たなジョージィ…」

 

「キャンベル」

 

 

場所はグリフィンの支配都市の一角にあるバー。

ここが会場らしい。

 

 

「さってぇ、どんな子が来るか楽しみだぜ」

 

「気が早いぞベネット。もう少し情報を集めてから…」

 

 

「きっ、キサマら!?ここで何をしている!!」

 

 

おや、この声どこ家で書いた気が。

 

 

「げっ」

 

「ひっ」

 

 

ベネットとキャンベルは絶句してしまっている。

どれどれどんな人だろう。

 

…長い白髪を束ねた、険のある女性だ。

うーむ、ちょっとキツいイメージがあるが好みだ。

 

 

「お、おい…」

 

「お初にお目にかかります、麗しきレディ」

 

「「えっ」」

 

「なっ、き、貴様…」

 

「貴女も今夜の合コンに参加されるのですか?」

 

「む、そ、そうだが…」

 

「それは良かった。丁度お近づきになりたいと…」

 

「ジョージ、待て!早まるな!!」

 

「ジョージ…む、そうか貴様が…クルーガーさんがヘッドハントしたという」

 

「…クルーガー?」

 

 

はて、なぜ今あのヒゲおやじの名前が。

 

 

「ジョージ!その人は…グリフィンのヘリアントス上級代行官だ…」

 

 

ウッソだろ。

 

 

 




バレンタインだったので時事ネタを仕込むことに成功した。
さて、波乱の合コンスタートですね(

次回「乾杯!」「出来るかァ!!」


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心の平穏は借金のカタに

前回までのあらすじ。

借金指揮官、上司を口説く。


状況終了。

 

 

「ふぅ…」

 

 

眼鏡から目を離す。

戦場から少し離れた…所謂狙撃スポットに今潜伏していた。

 

今回は狙撃手の観測手としての研修であった。

 

即席タッグを組む事になった人形に話しかける。

 

 

「全弾命中…流石だな、WA2000」

 

「当たり前よ。私は殺しの為に生きてきた女よ…この程度、当然だわ」

 

 

勝ち気に笑う戦術人形、WA2000。

義体性能堂々の最高ランクであるライフル人形だ。

 

いろんな指揮官から『扱いにくい性格』と話は聞いていたが、まぁ要するに自信家なだけみたいだ。

 

 

「さて、帰ろうか」

 

「ねぇ」

 

「どした。お互い雑談に花を咲かせる仲でもないだろ」

 

「…へリアントス口説いたって本当?」

 

 

近くの木の幹に足を引っ掛けて、盛大に転んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む…」

 

「げっ」

 

 

今回の作戦の報告書をまとめ、提出しようとした先にヘリアンと遭遇した。

 

 

「あ、あはは…どうも」

 

「貴様か。どうだ調子は」

 

「ボチボチ…ですかね」

 

「煮えきらんな。あの夜私に迫った姿は何処に行ったんだ?」

 

 

めっちゃ弄ってくるやん。

これはさっさと切り上げて逃げた方が懸め…。

 

ガシャン。

 

 

「指揮官…」

 

「え"っ、M4…」

 

「今の…本当ですか…」

 

「えっ、あはは、どうなんですヘリアンさん?」

 

「いやだなM4…冗談で」

 

 

ガッ。

ぐぇ、首が。

 

 

「指揮官…説明してください…私は今、冷静さを欠こうとしています」

 

「元々冷静じゃなぐえええ締まる!締まってる!!」

 

「じゃあ私はこれで」

 

 

あの女!!!

 

 

「今朝も、他の人形とバディを組んで戦場に出られて…………………私とは、組んでくれたことないのに」

 

「いやお前メンタルの療養中だから戦場出ちゃ駄目だろ」

 

「スプリングフィールドさんには感謝してますけど、あの人はちょっと危ない気がしますし…」

 

「それは同感だ…」

 

 

あの時のスプリングフィールドは完全に捕食者の目をしていた。

 

 

「私は、指揮官がこのまま離れていきそうで…」

 

「…大丈夫だ。少なくともお前が治るまでは付き合うよ」

 

 

俺が傷付けてしまった責任は取らなきゃいけない。

 

 

「…それで、ヘリアンさんとは何を?」

 

「あっちくしょう蒸し返しやがった」

 

 

いい話で終われる雰囲気に出来たのに。

制服の襟を掴まれて前後に揺すられる。

 

 

「まさか、あの合コン時代の敗北者に懸想してるんじゃ…!」

 

「結構ボロクソに言うな!?」

 

「指揮官!私というものがありながらー!!」

 

「いででで俺とお前そんな関係じゃないから!」

 

「毎日一緒に同じ布団で寝てます!」

 

「どんだけセキュリティ強化しても夜中勝手に入ってくるだけだろ!!」

 

「バレンタインに贈り物しました!」

 

「あー…うん、ありがとう。美味しかったよ」

 

「え…あ、はい…それは良かったです」

 

「お返しはまた考えとくから」

 

「はい…待ってます…」

 

 

なんだこれ。

余談だがこの基地にいる人形達から、俺達は完全にデキてると思われてるらしい。

 

この前ベネットから聞いた…おのれベネット。

 

 

「あ、指揮官」

 

「うん?」

 

「埋め合わせ、お願いします」

 

「……………………………あ"っ」

 

 

 




次回、借金指揮官。

??「立ったまま○ね!!」



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優しさの重み

前回までのあらすじ。

この元傭兵、女運なさ過ぎじゃない…?


 

「ハァイ、ジョージィ?」

 

 

ある日。

資材整理の為に倉庫の中に入った時だった。

…頭の上から自分を呼ぶ声がした。

 

「…こんな所で遊んでるのはどこの子猫だ」

「あら、久しぶりに会った戦友にご挨拶ね」

 

積み上げられた木箱の上から、それこそ猫のように飛び降りて着地した。

…灰色がかった髪と、左眼に縦一線の傷跡。

 

「久しぶりだな、UMP45」

「久しぶりね。元気してた?」

 

独立人形部隊、404小隊の小隊長…UMP45が朗らかに笑っていた。

416と同じ様に傭兵時代何度か背中を預けた戦友だ。

冷静で冷徹、小隊長として求められる理性的な思考回路を備えた彼女は、人間や他の人形に対して友好的に接する。

 

…まぁ、そんなんじゃないけどなこいつ。

 

「416から聞いてびっくりしたわ。貴方指揮官になるのね」

「成り行きでな」

「ふふっ、貴方らしいわ」

 

段々と、此方に近付いてくる。

何となく後ずさってしまう。

 

「ねぇ、M4A1に困ってるんでしょ?」

「な、」

 

何でそれを。

と言う言葉は出なかった。

あれだけべたべたされているのだ、404の面々が知らない筈がない。

 

「…いや、大丈夫だ」

「責任感じてるのかしら」

「っ…」

 

責任。

そう、責任…M4をあんな風にしてしまった責任。

 

「…楽にしてあげようか」

「どういう意味だ」

 

笑顔のまま、UMP45は続ける。

 

「貴方の重荷を私が壊してあげ」

「ふざけるな」

 

最後まで聞くつもりは無かった。

 

「何故?」

「誰かじゃない、俺がやるべき事だ」

「プランはあるのかしら」

「…無い」

「代案の無い反論は、とてもネガティブだとは思わない?」

 

そのとおりだ。

俺には策も何もない。

後ろ立ての無い元傭兵なのだから、正式に指揮官にならない限り何も出来ない。

 

「だが、俺にできることなんて…アイツが思い出すまで傍に居て、受けるべき罰を受けるしか無い」

「…優しくて、残酷ね」

「ただの自己満足だよ」

「貴方がそう決めたならそれで良いわ。でも忘れないで…私は、私だけは…いつまでも貴方の味方よ」

 

UMP45の表情を見る。

いつもの様に、貼り付けた様な笑顔。

 

「…俺なんかに肩入れしたら駄目だろうが。お前は小隊長だろ」

「ふふっ、だって貴方は人形に優しいから。つい」

「苦労してるみたいだな…それもそうか」

 

裏の仕事を引き受ける小隊の小隊長。

本人は笑って流すが、やっぱりストレスはかなり溜まるのだろう。

 

「…愚痴なら聞いてやるよ。その分酒貰うけど」

「んー、飲みのお誘い?良いわよ…勿論、二人きりよね?」

「?まぁ、他に誰か居たら言い辛いだろうし、構わない」

「約束よ?楽しみにしてるわ…それじゃ」

 

やけに上機嫌になったUMP45は、軽い足取りで倉庫から出ていった。

 

「…あいつ、そんなアルコール好きだっけ」

 

時計を見ると、指示されていた時間をとっくに過ぎていた。

 

「…やっべぇ」

 

 

 




404とは結構一緒に死線をくぐってたりするので、割りかし懐かれている借金指揮官だった。

次回、「до свидания(また会いましょう)。ジョージさん、ご安心を…♡」


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これがスタンダードとは信じたくない

前回までのあらすじ。
ジョージ、404の重いやつと飲む約束をする。


最近、視線を感じる。

いつもM4の視線を気にしているから気が付かなかったが、M4が居ない短い時間だけ新たな気配がするのだ。

 

「指揮官、ちょっと害虫駆除に行ってきますね」

「おい馬鹿やめろ、ステイ、ステイ!」

 

あ、くっそコイツ力つえーな!

 

「恐らくグリフィンの人形だろうから手は出すな頼むから!」

「…わかりました」

 

最近ちょっと不機嫌だ。

いろんな人形と話すような事が多かったからかもしれない。

 

「あー、なぁM4。お前今は外出出来るの?」

「はい、申請さえ通れば」

「申請か…」

 

恐らく俺と一緒なら大丈夫だろう。

 

「今度の休みに、出掛けよう」

「…!(ガタッ」

 

おかしい、今二人共並んで歩いているのにたった音がした。

M4ちゃんの瞳がかつて無いほどに輝いていた。

キラッキラ…普段からそんだけ輝いていたら可愛いのに。

 

「それは、でっ、でてででで、デートのお誘いですか!?」

「え?あー、この間の埋め合わせだよ。そんな大したものじゃない」

「指揮官とデート…ふふふ、デートかぁ…」

「聞けよ」

 

相変わらずの激甘思考回路。

まぁ、でもこのぐらいで機嫌が治るなら安いものである。

 

「楽しみにしてますからね」

「大したことはしてやれないから、あんま期待すんなよ?」

 

見習い指揮官って割と薄給だからなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気配を感じて振り返った。

…曲がり角へ!綺麗な銀の髪が引っ込むのが見えた。

 

「待て!」

「!」

 

古来より、待てと言われて待つ馬鹿はいない。

しかし、犯人はアッサリと判明した。

 

「うおっと」

 

曲がり角でお淑やかにニコニコしていた人形が立っていたのだから。

 

「えっと、君は?」

「初めまして、トカレフTT-33自動拳銃と申します」

 

銀の長い髪をアタマの後ろのリボンで結っている少女だ。

立ち姿が育ちの良い女性、と言った印象を受ける。

 

「…つかぬ事を聞くけど」

「はい、何なりと」

「君、ずっと見てた?」

「…はい」

 

視線の犯人はこの子だった様だ。

 

「何でこんな事を」

「えっと…その、以前戦場で貴方を見かけて以来わたしの記憶なら貴方の横顔がずっと離れなくて」

 

うん?

 

「またジョージさんにお会いしたいと思っておりました…♡」

「えっ、戦術人形にそんなことあんのか…!?」

 

一目惚れってあーたまた古典的な。

 

「こんなオジサンの何処が良いんだよ…」

「そんな事はありません!以前前線でご一緒した時に損傷した私を引き摺ってまで連れ帰って下さった事には感謝しきれません…!」

「え、君あの時の?…そっか、あのときはボロボロだったから気が付かなかった。君の本当の姿はとても綺麗なんだな」

「えっ、きっ、きれ…!あ、あの時は本当にありがとうございませんでした…ずっと、ずっとお会いしたかったです」

「もう俺がここに来てから割と経ったけど、ずっと見てるだけだったのは?」

「お話したかったのですが…怖い方がずっと近くにいて」

 

M4、言われてるぞお前ェ。

 

「あ、あの!ジョージさんはあの人形と…誓約されてるのですか!?」

「誓約って…話が飛躍しすぎてるな。俺はまだ指揮官じゃないよ。M4の事はあの子のリハビリを付き合ってるだけだ」

「そうなのですか?…良かった」

 

うーん、なんか割と人形達からの好意が最近多過ぎないか?

そろそろ作為的な物を感じてきてしまう。

 

「ジョージさんは指揮官見習いなんですよね」

「ああ、まだな。研修が終わればここを離れて別の基地に配属される」

 

小耳に挟んだところ割と激戦区に投入されるらしい。

俺の配下の戦術人形の希望を取られた時にそんな事を言っていた。

 

「その時は是非ご指名お願いします。一応かの時代にはスタンダードとして実力を認められていたんですよ?」

「へぇ、そりゃ心強い。考えとくよ」

「約束、ですからね?」

「約束か…あんまり期待しないで欲しい。基本的に新造された人形と1、2体のフリーな奴を引き抜いて貸してくれるだけらしいから」

 

新人指揮官のサポートの為に前線を経験しかつ、それなりに腕の立つ人形を付ける…要するに最初の副官だ。

 

「…そう、ですか」

「すまない、俺には何も力は無いんだ」

「…でも、諦めません。いつか必ず、貴方の下に行きます」

「その時は、頼む。」

「はい!」

 

なんと言うか、俺が傭兵時代にやって来た事がここに来て縁を繋いでくれたって事なのだろうか。

…スプリングフィールドはなんか別ベクトルな気がするけど。

 

「до свидания(また会いましょう)、ジョージさん」

「ああ、またな」

 

なんか、久しぶりに普通な会話をした気がする。

…ん?

 

「…………何であの子ずっと銃を握ってたんだ」

 

握られていたハンドガン。

刻印によって義体と結ばれている戦術人形達の得物だから常に携行しているのは基本なのだろうと勝手に思っていたけど。

 

…いつでもこちらを撃ち抜ける様になっていたと言うのは、考え過ぎだろうか。

 

自分はまだ指揮官ではない。

ヘッドハントで抜かれているため正式な契約をいくつかすっ飛ばしている。

 

…そして、その中に友軍…もっと言うと人間に対するセーフティの登録から漏れているとしたら…?

 

「…ひえっ」

 

あの子ももしかしたら要注意なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside Anotherー

 

 

いけないいけない。

見てるだけだったのに、あの人が追いかけて来るから嬉しくなってしまった。

 

「ふふ…えへへ」

 

ああ駄目だ。

自分の感情がコントロール出来ない。

あの日、あの人は半壊した私を半日背負い撤退ポイントまで歩いていた。

 

意識は半分飛んでいたけれど、あの背中とずっとわたしを励ましていた声だけはいつまでも中枢に残っていた。

 

完全に修復された自分の姿を見せたかったけど、あの人はまたどこか経行ってしまった。

それからずっと、わたしの演算装置はあの人に逢うために働き続けた。

 

グリフィンの本部で見かけたときは思わず電脳がショートするかと思った程だ。

それから、ずっとあの邪魔な人形が消え、必ずこちらを追いかけるタイミングを伺っていた。

 

「ジョージさん…わたしが、一生お世話しますから…足がなくなっても大丈夫ですよ…♡」

 

欠損したわたしの面倒を見てくれたあの人。

だから、もしあの人が万が一に一人で生きていけなくなったなら。

 

わたしが、ずっと…。

 

 

 

 




トカレフちゃん好きなんで出しました(勢い

あれ、なんか俺の書く人形ってバグってる気がする…。


次回、ジョージ、デートするってよ。




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平穏の行方

前回までのあらすじ。
おそロシア。


 

状況終了。

 

「お疲れ様ですわ、指揮官代理」

 

本日、臨時で戦闘指揮を執ることになり副官のPPKのサポートを受けてなんとか無事に戦役を終わらせることができた。

 

「ありがとう、PPK。君のおかげだ」

「うふふ、研修中とは聞いていましたが全然そんな事はありませんでした。以前何かやっていらして?」

「そんな大層なもんじゃない。正規軍から流れたはみ出し者さ」

「あら」

 

PPKもそうは言うがあまり驚いていなさそうである。

 

「その割には被害をあまり出さない戦い方ですわね」

「そうか?」

「正規軍の戦い方とは違うような感じがします」

 

正規軍は鉄血ではなく、もっと別の…質の悪い悪夢みたいな存在を相手にしている。

その悪夢には相応しい武器、人形を使う。

 

「…使い捨てにするには高いんだよ。武器も人形も」

 

グリフィンは人形製造メーカーであるI.O.P社と提携という形をとっている。

そのため格安で「貸与」という形で戦術人形を提供されている。

…格安、といえど損失、消耗…等々やっぱり財政を圧迫してしまう。

 

「随分と現金ですのね…」

「そんなもんさ。傭兵上がりだからガメツイくらいがちょうどいいのさ」

「変わってますわ」

「変で結構。こちとら少しでも切り詰めなきゃいけない身の上だからな」

「でも、どんな理由であれ…人形(わたしたち)を大切に扱って下さるのは好感が持てますわ」

「皆そういうな。…まぁ、人形はそういうもんだろうけど」

 

人間に対してよっぽどのことがない限り好意的に接する設定がなされている。

そういう、思考回路なのだ。

 

「何はともあれ、俺はこれで帰るよ…待たせてる奴がいる」

「…M4A1さんですか?お熱いですわね」

「そんなんじゃねーよ…じゃあな」

 

 

 

 

―グリフィン本部・廊下―

 

「お待たせ。すまない、遅くなった」

 

作戦指令室から全力疾走10分。

M4と待ち合わせしていた場所まで地味に遠かった。

 

「…お疲れ様です、指揮官…全然待ってません」

 

廊下に体育すわりで座り込んでいたM4が顔を上げた。

 

「良いんだよ、少しくらい文句言ったって。約束すっぽかした俺が悪い」

「そんなことは…指揮官は仕事でしたし」

「女との約束より仕事を優先するのは男として許されない…まぁ、なんだ。不甲斐ない俺を許してくれ」

「そ、そんな…頭を上げてください!」

 

素直に頭を下げる。

別に指揮代行は俺でなくても良かったのに、臨時収入に目がくらんでしまった…。

責められるべきである。

 

「その、指揮官と一緒に居られる時間を…こんな風にはしたくありません…」

「ありがとう、M4。じゃあ。行こうか」

 

今日は、M4と出かける日だ。

 

 

 

 

 

 

―グリフィン管理街―

 

昨今の人間の生活圏は人類が繁栄を極めていた時代の3割までに減少している。

国という単位は既に形骸化し、PMCや有力な組織が各地域を自治している形になる。

そして、ここグリフィン本部の管轄である市街地は比較的治安が良い地域としてうわさには聞いていた。

 

「ここに来てから初めて立ち入ったけど…活気あるな」

「ここは天下のグリフィン本部がある場所ですから…迂闊な事をしようならすぐつまみ出されます。それに…」

 

M4の視線の先。

何人かの少女のグループだ、と認識して…抱えている銃に気が付く。

あれは、戦術人形だ。

 

「なるほどね…あの子たちが警備してると」

「はい」

 

グループのうちの一体がこちらに気が付き、手を振っていた。

あれは…スコーピオンか。

前に面倒見たことあったっけな…。

 

「…指揮官?」

「ごめんって。他の子を見ないようにするよ…だからこの手をはないだだだだだだだだ!!」

 

めっちゃ右腕をつねられている。

 

「さて、M4はどこへ行きたい?」

「私は…」

 

 

 




次回、デート編その2。

…あれ、平和だ…?


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家族

人形すべてに好意を持たれている訳ではない。
もちろん、人間にだって好意を持たれる訳でもない。

疑うのは誰だ。


 

「…えらい見晴らしの良い公園だな」

 

M4が来たい場所というのは、小高い丘の上に作られた小さな公園だ。

ここから、街を一望することができる。

 

「はい。指揮官はあまり外出されないみたいなので…ここ、私が好きな眺めなんです」

「そんな場所を教えてもらえるなんてな」

 

確かに、ここからなら街の喧騒も眺めることが出来る。

…M4は、この眺めをどう捉えているのだろう。

 

「指揮官、貴方は何故戦うのですか?」

「…また唐突だな」

 

戦う理由、か…。

 

「金の為だ」

「お金、ですか」

「ああ…俺にはちょっとした借金があってな。クソ親父が蒸発したときにそれだけ残していきやがった」

 

残された多額の借金。

母親の喫茶店業だけでは明らかに返せる額ではない。

だから俺は銃を取ったんだ。

 

「指揮官…その、御父上を恨んでいたり…しますか?」

「次観たらボコボコにしてふんじばってお袋の目の前にたたき出してやる…と、言いたいところだが…」

「…?」

「とりあえず話す。話して…そっから殴る」

「結局ですか…」

 

苦労してるのはあいつのせいだからな…それは外せない。

 

「指揮官は家族を大切にしているんですね…」

「そう…だな。なんだかんだ大事には思ってる」

「私も、家族は大事に思います」

 

人形の家族。

それはおそらく、AR小隊の事だろう。

今もどこかで、M4不在の中戦っているはずだ。

 

「家族…か」

 

会いたいか、と聞こうとしたとき。

 

…左目のやや下に、硬いものがぶち当たった。

 

「あ、がっ…!?」

「指揮官!?」

 

幸い目に当たらなかったため、下瞼から血が出るだけで済んだ。

足元には飛んできたであろう石が転がっている。

 

「痛ぅ…」

「だ、大丈夫ですか指揮官…!」

「見つけた…ジョージ・ベルロック!!」

 

止血をしながら、声のする方を向く。

 

…左目に縦一線の傷が入った、栗色の髪をした人形。

UMP45と似た雰囲気を持っていた。

 

「UMP9…!何のつもり!?」

「M4…どいて、私はそいつに用があるの」

 

隠す気を一切感じない殺気。

こいつは俺を完全に敵視している。

 

「何の用だ」

「45姉の前から消えて」

「…向こうからやってくる場合は?」

「うるさい」

 

依然感じた疑問の答えが、ここで出てしまった。

今、このUMP9は俺に何をした?

 

そう、()()()()()のだ。

 

人間である俺に。

…つまり、本当に…()()()()()()()()()()()()()()()()()()事になる。

 

「よくも、よくも私の家族をめちゃくちゃにしたな!」

「何のことだ…」

「45姉はお前の事を気に入ってる。お前の話をする度に…45姉の顔が見れなくなる…!」

「UMP9…!」

 

M4が俺とUMP9の間に立ちはだかる。

…俺は、この場をどう納めればいい…?

 

「そこまでよ、ナイン」

「45姉!」

「UMP45…?」

 

いつの間にか、UMP45がこの場に来ていた。

その表情は険しい。

 

「ごめんなさい、ジョージ。ナインは連れて帰るわ」

「45姉!どいて、そいつ…」

「ナイン。それ以上は許さないわよ」

「…っ、わ、わかったよ…」

 

あれほど殺気を放っていたナインが怯む。

それ程の影響力が、UMP45には、ある。

 

「…この埋め合わせは必ずするわ。ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―グリフィン本部・ジョージ私室―

 

…こうして、俺とM4の最初の外出は、散々な終わり方をした。

 

「指揮官、目は…大丈夫ですか?」

「ああ…眼球の下に当たったみたいだから、失明はしていない」

「…よかった」

 

あれから本部に戻り、M4が手当をしてくれたお陰で大事には至らなかった。

 

「…指揮官」

「だめだ」

「まだ何も言ってません」

「UMP9への攻撃は許可しない」

「そんな…!あれは指揮官を攻撃したんですよ!」

 

普段なら、人形すべてに搭載してある筈の対人間セーフティ。

それの効果が俺に対して見られなかったこと。

 

「…わかってる。明日、クルーガーの所へ行く」

 

真意を問いたださなくてはならない。

 

「大丈夫です…私は、指揮官の味方です…」

「…」

 

 

…俺の味方なんて、もしかしたら誰も居ないのかもしれない。

 

 

 




平穏に終わるなんてなかった。

UMP9が主人公に対して好意的でない、というシチュエーションが書いてみたかった。
なんかナインが悪者みたいになってしまって本当に申し訳ない。


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