SSSS.GRIDMAN The Another Episode (赤星 傑)
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SSSS.GRIDMAN オリジナル設定

アニメ「SSSS.GRIDMAN」の自分で考えたパラレルエピソードです。キャラの性格や世界観、内容も違いますのでご了承。


設定変更

・響裕太と宝田六花、新条アカネが幼馴染。

・新条アカネが、響裕太に恋している。

・グリッドマンの変身方法。

・アカネの怪獣を出させる理由。

・宝田六花の家。

・アレクシスの目的。

・グリッドマンと裕太の関係。

・ジャンクの設定。

・内容の変更。

・響裕太の記憶喪失設定。

・アシストウエポンの設定。

・オリキャラ

 

主なキャラ

響裕太

ツツジ台高校1年。宝田六花、新条アカネの幼馴染。六花に対して、好意を持つ。赤髪と童顔が特徴。どこか抜けてるが、正義感が強い。怪獣が現れた日、襲われそうになった家族を救ったが、ビルの下敷きになり、死亡する。しかし、突如現れたグリッドマンと体を一体化、グリッドマンとなり、怪獣と戦う。

 

宝田六花

ツツジ台高校1年。響裕太、宝田六花の幼馴染。クールな性格だが、友達思いの性格。友人に、なみことはっすがいる。クラスの人気者。裕太がグリッドマンだと知り、友達を守る為にと、裕太、内海将と同盟を組む。

 

新条アカネ

ツツジ台高校1年。響裕太、宝田六花の幼馴染。どこか抜けている性格。紫色のパーカーを着ている。六花と同じ、クラスの人気者。裕太に好意を持ち、アプローチをしている。

 

内海将

ツツジ台高校1年。響裕太の親友。特撮オタクであり、ウルトラマンが1番のお気に入り。新条アカネに思いを寄せている。友達思い。眼鏡を掛けていて、カバンの肩掛けの文字、「Turbo」にちなんで、みんなから「ターボ先輩」「ターボーイ」と言われている。

 

グリッドマン

ハイパーエージェント。自分の命を犠牲にして、家族を救った裕太に感動し、裕太と一体化して、怪獣と戦う。ある事がきっかけで、本来の力と記憶を一部失う。しかし、「世界を守る」という使命は忘れていない。

 

マックス

グリッドマンのアシストウエポン「バトルトラクトマックス」の人間体。アシストウエポンのリーダーであり、頼れる男。結構な繊細な性格で、食事のバランスや家具の配置バランスなどを気にしている。棘が沢山ついた鉄球を所持している。

 

サムライ・キャリバー

グリッドマンのアシストウエポン「グリッドマンキャリバー」の人間体。猫背であり、無精髭を生やしている。猫好きであり、毎日猫カフェに通っている。刀を装備しているが、グリッドマン同盟以外の人物には、刀が見えていない。

 

ボラー

グリッドマンのアシストウエポン「バスターボラー」の人間体。体は小さく、童顔をしている。少女に見えるが、オラオラ系で生意気な性格の男。ナイフを所持している。

 

ヴィット

グリッドマンのアシストウエポン「スカイヴィッター」の人間体。優男のような顔だが、面倒くさがりやな性格。家では熱帯魚を飼っている。ボウガンを所持している。

 

シンジ

グリッドマンのアシストウエポン「ダイナドラゴン」の人間体。クールな性格だが、誰よりも仲間思い。裕太と同じツツジ台高校1年の生徒。料理や家事などが得意であるため、仲間からも「オカン」「ママ」と言われている。

 

アレクシス・ケリヴ

突如現れた謎の生命体。何者かが作った怪獣を具体化し、街を破壊させる。

 

アンチ

グリッドマンを倒すために生まれた怪獣。普段は人間として化け、グリッドマンが現れた時に、怪獣になる。グリッドマン以外には興味はなく、市民には攻撃しない。

 

 




こういう設定でオリジナル版「SSSS.GRIDMAN」を出します。お楽しみを。


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終・末

 1

雨が降る6月の平日。宝田六花は雨が嫌いだった。雨が降ると何故か憂鬱な気分になってしまい、やる気が出なくなる。心の中で休みたいと思いつつも、学校に向かった。家からは近いが、このドシャ降りの中を歩けば確実に濡れると思った六花は、近くにあるバス停に行った。

次のバスが来るのは約5分と確認した六花は、スマホにイヤホンをさし、耳に付け、音楽を聴いた。1曲だけしか聞けないが、六花にとってはそんな事は関係なかった。曲がサビに入ろうとした時、六花を呼ぶ声がした。イヤホンを片方外し、声が聞こえた場所を向いた。

「あ、アカネ」

そこには、六花の親友である、新条アカネがいた。アカネは紫色のパーカを付け、透明な傘を持っていた。六花に近づき、傘を閉じた。

「六花もバスで登校なの?」

「うん、こんな雨の日に歩いたら風邪引いちゃうからね」

「そうだねー」

2人は笑い、バスが来るまで会話をした。幸いにも、バスが遅く来ても遅刻するにはまだ早い時間帯だったため、ゆっくりと会話ができた。

バスが到着したのは5分を少し過ぎた時間だった。雨の日の交通量は混んでいて、遅刻する生徒も多い。仕方ないと思いつつも、六花はアカネと一緒にバスの中に入った。中は意外にも少なく、携帯をいじるサラリーマン、子供と一緒に座る女性、六花たちと同じ男子高校生が席に座っていた。アカネと六花は相席になり、バスは出発した。さっきの話を続けた。2人は小学生の頃から一緒で、いつも遊びに行くときは、アカネの家にお邪魔し、ゲームや勉強会、恋バナなどをしていた。2人は仲が良く、周りのクラスからも、ベストフレンズと言われるぐらい、ずっと一緒にいた。だが、2人の他にも、もう1人の幼馴染がいた。しかしあまり目立っておらず、何処にでもいる普通の子で、六花はあまり気にしていなかった。

バスがもうずくツツジ台高校の前に停まると知った六花は、ボタンを押し、バスを降りることにした。当然、アカネも同じ高校なので、一緒に降りた。校門前では人混みが多く、1年から3年の生徒たちが、学校に入っていった。六花とアカネも校門を潜り、学校内に入った。六花とアカネの教室はB棟の2階にあり、階段の一番手前だった。教室内に入った六花とアカネは、ドアの前の机で話し合っていた2人の友人、なみことはっすに絡まれた。

2人は挨拶をして、六花とアカネも反射で挨拶を返した。アカネの席は教室の後ろ奥にあり、一旦荷物を置くために自分の机に向かった。アカネの机の隣には、1人の少年が座っていた。アカネは少年に挨拶をした。少年もアカネに挨拶を返し、アカネは少し、少年と一緒に話し合った。

  彼こそが、六花とアカネのもう1人の幼馴染。髪は赤く、童顔の少年。響裕太、それが彼の名前だった。

  2人の様子を見た六花たちは、ヒソヒソと話し合っていた。

「さすが、六花さんよりもずっといる男だ」

「あの2人、ベストカップルなのかな?」

「まさか、アカネはそんなことないって言ってたよ」

六花の言葉に2人は「本当ー?」と疑った。その3人に、アカネは近づき、なに話してんの?と聞いた。

「あ、アカネ!? 嫌、あのそのー……」

 なみこは困惑し、はっすは下手な口笛で誤魔化そうとした。

「何〜? 私には言えない話〜?」

アカネは3人を挑発し、さっきの話の内容を聞こうとした。アカネの挑発に負けたのか、友人だと言う理由なのかわからないが、六花はすんなりと話した。

「アカネて、あの響裕太君と付き合ってるの?」

アカネは驚き、はっすとなみこは指を口に当て、しーっ! と言った。六花はしまった! と言わんばかりに焦り、手で口を押さえた。アカネは顔を真っ赤にしていたが、すぐに答えた。

「付き合ってないよ、ただ、昔からの付き合いだから……」

指をモジモジして、視線を下に向けていた。はっすとなみこは、さっきの焦っていた姿が嘘だったかのようにニヤニヤしながら、アカネに迫ってきた。しかし何故かアカネもまたニヤニヤしていた。

六花はそんな3人から視線をずらし、裕太のほうを見た。裕太は友人の内海将と話し合っていた。話の内容は聞こえなかったが、2人の話は盛り上がっていたそうだった。すると裕太が突如、六花のほうを向いた。六花は気づき、アカネたちのほうに視線を直した。

裕太は何だったんだろうと思い、内海に視線を戻す。裕太と内海は今年の4月、入学式で初めて会った。最初はただのクラスメートだったが、最初に話をかけてきたのは内海だった。1人で弁当を食べる裕太を見た内海は、「一緒に食べないか?」と誘い、裕太は困惑しながらも、「いいよ」と返事した。それ以来、2人は友人となった。

「どうしたんだ、裕太?」

「なんか、宝田が俺を見ていたような気がして……」

内海は「まーたかー」と言い、裕太の背を叩いた。

「お前、いくら六花さんが好きだからって、それは流石に引くぞ」

「嫌々、気のせいじゃないから」

内海は冗談のつもりで言ったが、裕太には通じていなかった。

響裕太は今、宝田六花に恋をしている。初恋は今年の4月、学校行事の球技大会で初めて六花と同じチームに入った時、勝った時の六花の笑顔が心に来て、裕太は初恋を経験した。

 時間が経ち、現在は昼休み。朝の雨が嘘だったかのように、空は晴れ、太陽が丸見えだった。裕太は購買部で買った、ホットドッグの見た目をした、「スペシャルドッグ」の袋を開けていた。内海は現在自販機で飲み物を買って行っており、裕太1人で待っていた。

「内海遅いなー」

裕太は教室の出入り口を見ながら呟いた。裕太は食事をしようとした時、アカネが近づいてきた。

「響君、今日は1人?」

「わ、新条さん!?」

アカネは笑いながら、「アカネでいいよー」と言いながら、裕太の腕を軽く殴った。

 アカネにとっては、裕太は保育園の頃からの付き合い、六花よりも一緒にいる幼馴染だ。六花はそんな裕太を羨ましいと思っている。しかし裕太はあまり女性付き合いが無いため、苗字呼びにさん付けをしている。アカネはその呼び方は気に入っておらず、アカネと名前で呼ばれたいと思っている。

「で、今1人なの?」

「え、あぁ、内海は今、飲み物を買いに行ってるけど、もしかしたら今から帰ってくると思う……」

裕太は左手首に付けていた腕時計を確認した。

「そっか、じゃあ、私も入れて3人で食べる?」

裕太は間抜けな声を出して、顔を赤くした。クラスの人気者であるアカネが一緒にご飯を食べるとは、ラッキー過ぎると言われている。しかしアカネは裕太の鼻を摘み、「ウッソー♪」と高い声で言った。アカネは指を離し、裕太は鼻を抑えた。

「じゃあ行くね。私、六花たちとご飯食べるから。またね〜」

アカネはそう言い、裕太から離れた。裕太は鼻を抑えながら手を振り、サヨナラをした。

 アカネはウキウキしながら教室を出ようとすると、近くの机から話し声が聞こえた。アカネはその話を盗み聞きしてしまった。

 話をしていたのは問川や他のバレー部の仲間だった。

「ねぇ、ターボーイはどう思う?」

「えー、あのオタクゥ? 無理無理、絶対にないわー」

「じゃあ、一緒にいる響君は?」

「それこそないよ、あんな子わ!」

「だよねー、響君て目立たないから、なんか付き合えないよねー!」

バレー部達は笑い合っていた。

 それを聞いたアカネは手に持っていたパンを握り締め、唇を噛んだ。それを、話し合っていた問川が気づいた。

「あれ、アカネ、どうしたの?」

「ううん、なんでもなーい」

アカネは明るい声を出し、教室を出た。

 六花が待っている場所に向かう途中、アカネは誰にも聞こえないぐらいの小さな声で呟いた。

「……最悪」

 

 2

 今の時間は午後の4時だが、まだ6月という事もあり、昼のように明るい。裕太は、友人の内海と共に下校していた。内海の家は近いが、裕太の家は遠かった。行きと帰りは自転車だったが、今朝の雨のせいで、自転車は持って来ていなかった。今日はバスで帰るようだ。

  内海の家に着くと、門を開け、内海は家の中に入った。

「じゃあまた明日な」

「うん、またね」

裕太は手を振り、バス停に向かった。車が走る道路の右端に黄色のバス停が見えた。時刻表を確認すると、次の来るバスは12分後だった。幸いにも、近くにコンビニがあり、バス待ちのついでに、何か買おうと入店した。コンビニの中は涼しく、太陽に当たった体を冷やしてくれた。裕太は飲み物を買おうと思い、冷蔵庫に向かった。裕太は上の棚にあったコーラを手に取り、レジに向かった。

 会計を済ませ、バス停に戻ろうとした時、地面が揺れた。裕太はコンビニ戻り、揺れが収まるのを待った。しかし揺れは治らず、それどころか、揺れは次第に大きくなっていく。すると、今度は遠くから、謎の爆音が聞こえた。窓から外を見ると、ビルとビルの隙間から見える景色に、黒い煙があった。裕太はコンビニから出ると、そこに居たのは、首が長く、青色の体をした、怪獣だった。

 怪獣は車を蹴り飛ばし、口から火の玉を放ち、街を次々と破壊して行く。裕太は内海に連絡した。内海はすぐに電話に出て、焦った声で言った。

「裕太、お前無事か!?」

「内海! そっちは!?」

「なんとか! お前も逃げろ、死ぬぞ!」

わかった。と裕太は内海に伝え、電話を切った。怪獣が向かっている方向と逆の場所に行き、怪獣から逃げようとした。

 すると、何処からか子供の泣き声が聞こえた。裕太はその泣き声の聞こえる場所に向かった。裕太が見た景色には、倒れている母親、その近くで膝をつき、母親の体を揺さぶり泣く女の子。

「ママー、ママー!」

「い……きなさい。私の事はいいから!」

母親は少女に逃げさせようとしたが、少女は言うことを聞かず、母親の近くに座っていた。裕太は背負っていたバックを捨て、母親と少女の方に向かった。

「大丈夫ですか!?」

裕太は母親に尋ねた。母親は弱々しい声で言った。

「良かった、この子を連れて逃げてください。私の事は、気にしないで」

「何を言うんですか!? 早く貴女も!」

「私は、この子が幸せなら、私は嬉しいです」

母親はニコッと笑うが、目から涙が流れていた。しかし裕太は見過ごせず、母親をおぶり、少女に言った。

「俺に付いてきて!」

裕太と少女は走り、怪獣から離れた。

怪獣が歩く先には学校が見えていた。体育館の中では、女子バレー部が練習をしていた。彼女らはまだ今の騒ぎに気づいていないようだった。怪獣は学校の少し離れた場所で止まり、体育館に狙いを定めた。怪獣は口を大きく開け、火球を発射した。火球は体育館に命中し、跡形も無く消滅した。

裕太は怪獣から逃げ切ったと確認すると、一回少女の母親を降ろし、周りを確認した。安全だとわかった裕太は、携帯を取り出し、119と連絡した。しかし連絡が出来なかった。どうやら怪獣の出現により、電話交通も混んでいた。何回も電話をする裕太をみた母親は尋ねた。

「なんで、助けてくれたんですか?」

裕太は連絡を止め、真剣な声で返した。

「だって、命は1つしかないです。死んだら生き返れない。だから、残りの時間を楽しまなければいけないんですよ。そんな時間を少なくするのは、1番の愚行なんです」

裕太はまた何回も電話したが、電話は掛らないままだった。何十回も連絡すると、

「はいら医療センターです」

ようやく繋がった。裕太はよかっと心で思い、現状を話した。

救急車が来るのは約5分。裕太はそれまで何が出来るかと考え、近くに落ちていた木の棒と、持っていたタオルを使い、母親の折れた足を固定した。

裕太は安心して深呼吸した。しかし、裕太は気を抜いてしまった。

突如、ガンッ! と大きな音が鳴り、上を見ると、ビルの半分が崩れて来た。裕太は咄嗟に、親子を突き飛ばしたが、裕太は間に合わず、ビルの下敷きになってしまった。

母親は何が起きたか知らなかった。横には娘がいたが、あの少年がいなかった。母親は周りを見渡した。そして、ビルの残骸を見た。その瓦礫の下から血が流れてきた。母親は気付いた。この血はあの少年の血だと。

後ろからサイレンが鳴り、救急車が着いた。車から人が降り、母親の状態を確認した。

「大丈夫ですか!? 早くこちらへ!」

救急隊は親子を救急車に乗せようとしたが、母親は焦った声を出した。

「あのビルの中に、人がいるんです! 助けてください!」

母親は必死に頼んだが、救急隊はそれどころではなかった。怪獣はいつ来るのかわからない。今少年を救出すれば、怪獣が近づき、こちらも殺される。救急隊は母親を担ぎ、娘と一緒に、救急車に乗った。

母親は必死に訴えたが、救急隊は聞かず、その場を去ってしまった。裕太は、瓦礫の中に埋まり、心臓の鼓動は、遅くなっていった。

 

3

ここはどこだ? と裕太はまわりを見渡した。そこは暗闇だった。裕太は底なしの穴に落ちて行くかのように、落下していた。何も無く、裕太は「死んだのかな?」と呟きながら、落ちて行った。だが、落ちて行く中、誰かが裕太を呼んでいた。

「裕太……! 裕太……!」

裕太は幻聴と思いながらも、その声の主に聞かせるために、大きな声で叫んだ。

「誰!? 誰なの!? 俺を呼んでるのは!?」

聞いたことのない声だった。内海でも立花でも、アカネでもない。しかし声の主は、その裕太の声に反応し、言葉を変えた。

「裕太、君はこのままでいいのか?」

裕太は質問に対し、疑問に思った。このままでいいのか、その言葉の意味がわからなかった。すると声の主は、また言葉を変えた。

「さっきの出来事を思い出せ!」

思い出せ、裕太はさっきの出来事を思い出した。暴れる怪獣、破壊されていく街、次々と犠牲になっていく市民。すると裕太は、ハッ! と目を広げた。

「思い出したか? このままでいいのか!?」

裕太は即答した。

「よくない! あの怪獣のせいで、無差別に死ぬ人がいるなんて、そんなの許せない!!」

「そうだ! ならどうする!?」

裕太は手を伸ばし、叫んだ。

「怪獣を倒す! 俺に力をくれ!!!」

手を伸ばした暗闇は、眩い光になり、裕太の手を誰かが握った。そして、やがて辺りを包んで暗闇は、光に包まれた。

 

4

街の真ん中で休む怪獣。街は建物など微塵もない状態になり、人も避難して行った。内海は怪獣を見て、「こんな時、ウルトラマンが居れば……」と思ったが、そんなのは現れない。ウルトラマンは架空の存在、この世には居ない。すると怪獣は動き出し、また街の中を歩いた。内海はまずいっ! と思い、逃げたが、運悪くコケてしまった。内海は首を後ろに振り向き、怪獣を見た。怪獣は徐々に近づき、内海は「ここまでか……」と死を確信した。怪獣が火球を放とうとした瞬間、突如空に眩い光が現れた。光が消えた瞬間、怪獣は吹き飛んだ。内海は閉じた目を開いた。そこには、怪獣と同じ高さを持った巨人がいた。機械のような体、赤と白の色、そして頭には鶏冠があった。内海はその巨人を見て、初めて思ったのは、新しい敵、世界が終わるではなかった。彼が思ったのは、小さい頃憧れたヒーローだった。

「ウル……トラマン……」

巨人は構え、怪獣に立ち向かった。巨人は怪獣の顎を蹴り飛ばし、身体に向かって回し蹴りを繰り出した。怪獣はまた吹き飛び、巨人は着地した。怪獣は怯んだが、隙を与えずに火球を放ち、巨人は火球を喰らい、倒れた。巨人は立ち上がれず、怪獣を見た。

「やはりまだ力が出ない。まだ裕太と融合されてないのか……」

巨人は先程、瓦礫に潰れた裕太と融合して、共に怪獣と戦っていた。 しかしまだ融合は完璧ではなく、裕太も焦っていた。

「な、何が起こってるの!?」

裕太は自分と同じ高さの怪獣を見て驚き、また今の見ている光景にも驚いた。怪獣によって破壊された街、そこにいる怪獣。裕太は理解す るのに苦労している。

「裕太! それは後にしてくれ! 今はこっちに集中しろ!」

巨人は裕太に喝を入れ、怪獣に体当たりした。後ろに引いた怪獣に隙を与えず、顔面に右ストレートを繰り出した。しかし怪獣はパンチを繰り出す前に火球を放ち、巨人を吹き飛ばした。

飛ばされた巨人はビルに当たり、背中にダメージを受けた。怯んだ巨人は、ビルから立ち上がろうとするが、その隙をつくように、怪獣は巨人に体当たりをした

なんとか怪獣を受け止めきれたが、怪獣の力は予想よりも強く、押し返すことが出来なかった。腕に力が入らず、ビルの中にめり込んでしまう。さらには、額のランプが点滅した。額のランプはウルトラマンで言うカラータイマーの様なもので、巨人が戦える時間を伝える物だった。

「ここまでか……」

と裕太は諦めそうに言うが、声が聞こえてきた

「負けんじゃねーよ!」

声の主は内海だった。巨人は内海を見ると、内海は腕を押さえながらも、大声で言った。

「負けんじゃねーよ! あんた、ウルトラマンみたいなもんだろ? だったら負けんなよ! 俺たちの町を守ってくれよ!」

内海は頼んだ。涙を堪えながらも、彼は自分の住む町を守って欲しかった。しかし、彼自身には出来ない。彼にはそんな力はなかった。だからこそ、現れた巨人に祈った。裕太は内海の声を聞いて、声を張った。

「だよな……。こんな奴のせいで、俺たちの町を壊されるなんて、そんなのお断りだよな!!」

裕太の感情は巨人とリンクして、今まで入らなかった力が上がり、怪獣を押し出した。怪獣の首を掴み、天高く持ち上げ、怪獣を投げ飛ばした。怪獣は吹き飛び、背中を強打した。怪獣が立ち上がろうとした瞬間、巨人は怪獣の首に向かい、飛び蹴りした。怪獣は怯み、巨人はその隙をついた。腕を十字に組み、力を溜め、左の二の腕を怪獣に向けて、溜めた力を解き放った。

「グリッドビーム!!」

光線は怪獣に直撃、怪獣は断末魔をあげ爆発した。

その様子を見た内海は喜び、痛めた腕を忘れるかの様に飛び跳ねた。内海はもう一度巨人を見ると、巨人は膝をつき、体を光らせ、消滅した。内海は、巨人が消滅した場所に向かった。

内海が見た光景は、崩落したビルの瓦礫の上に友人の響裕太が倒れていた。内海は裕太に近づき、体を揺さぶった。幸いにも意識があり、ホッとした内海はすぐに病院に電話した。

裕太は内海が気づかない小さな声で呟いた。

「……グリッドマン」

その2人の光景を、ひとりの男が見ていた。

 

5

暗い部屋の中、1人の人間がモニターを見ていた。映っていたのは、先程の戦いだった。巨人は怪獣に光線を放ち、怪獣に勝ったのを見ていた。それが悔しかったのだろうか、下唇を噛み、持っていたカッターナイフを突き立てた。

モニターは切り替わり、今度はマスクを被った様な顔を持つ男が映った。

「いやー、まさか君のショーに邪魔者が入るなんて、ビックリしたねー」

男は笑っているかの様に話し、部屋にいる者は、カッターを放し、男と話した。

「でもいいさ。どんな物語にも、人の楽しみを邪魔する者はいるからね」

「でも、この巨人は君の恋を邪魔するかも知れないよ?」

「大丈夫さアレクシス、そんなことをする奴はどんな手を使ってでも排除するから♪」

「素晴らしいね!やはり君を選んでおいて正解だったよ」

「ウンウン、じゃ、もう寝る時間だから、おやすみー」

モニターの男は、彼女に「おやすみ」と返し、モニターは消え、女は寝室に向かった。

部屋の光景は響裕太の写真がタンスの上に飾ってあった。女はその写真に興奮して、「響君に見られている」と感じ、ベッドに寝転がった。

「響君、もう少しで私の物になるからね、楽しみにしててね♪」

女は興奮しながらも、眠った。明日また裕太に会うことを楽しみに。

 

To Be Continued



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隠・蔽

1

眼が覚めると、そこは病室だった。裕太は体を起こし、周りを確認した。右には太陽の光を突き通す窓があり、左には内海が勉強していた。勉強の邪魔をしてはいけないと思った裕太は、窓の外を眺めていた。しかし、光景は何故か違った。昨日のことは夢だったのかと思うように、町は何故か直っていた。

内海は背伸びして、天井を見上げた。内海は裕太が眠っていたベッドを見た。裕太はすでに起きていた。内海は慌てて裕太に近寄った。

「大丈夫か!?」

内海は裕太に聞いた。裕太は素っ気ない声で返した。

「う、うん、大丈夫だけど……」

内海はホッとしていた。内海は椅子に座り、裕太に昨日のことを話した。

「お前、いきなり家の前で倒れやがって、心配したんだぞ!」

「家の前……?」

裕太は内海の言葉に引っ掛かった。「家の前で倒れた」、裕太は昨日の出来事を鮮明に憶えていた。町に怪獣が現れ、次々と建物を破壊し、町を歩いていった。そして、その怪獣を倒した巨人のことも。しかし、内海はそれを憶えていなかった。いや、無かったと言えるぐらい、内海は昨日の出来事を知らなかった。

内海は医者を呼びに行ってくると、病室を出た。裕太はまた窓の外を眺めた。やはり町は直っていた。裕太は、昨日の出来事は、全て夢だったのかと思った。

(裕太……、裕太……!)

あの声が聞こえた。裕太は病室の中を見たが、誰もいなかった。

すると、扉が開き、内海と医者が入って来た。医者は立っていた裕太に注意し、質問をした。名前、年齢、学校名などを聞かれ、裕太は全て答えた。

「異常は無いですね、もう帰っても大丈夫ですよ」

医者はペンをしまい、病室を出た。内海は「よかった」と呟き、裕太の着替えを出し、病室を出た。

しかし、裕太はまだ疑問に思っていた。まだ鮮明に憶えているあの昨日の出来事、だけど、何故か全てが直っている。内海も、医者も、そして町も。

私服に着替えた裕太は、病室を出て、内海が待つ待合室に向かった。他の患者を見たが、ほとんどがお年寄りや、怪我人などだった。待合室に着いた時、内海は携帯をいじっていた。裕太は内海に聞くと、内海は携帯を見せた。そこにはチャットが映ってあり、クラスメートと話し合ってたみたいだ。

「みんな、お前を心配してたぞ。特に新条は」

「え、新条さんも心配してたの?」

「当たり前だろ、お前、あの美少女の幼馴染なんて、羨ましいぜ」

内海は裕太に嫉妬してた。

新条アカネはツツジ台高校の人気者と言われ、「女神が生んだ少女」と言われていた。また宝田六花もツツジ台高校の人気者でもあり、「ツツジ高の華」と言われている。その人気者2人の幼馴染である裕太は、みんなから恨まれている。

裕太は困りながらも、内海と一緒に病院を出た。裕太は昨日のことを聞いた。怪獣のことを聞くと、内海は「お前、ほんとに大丈夫なんだよな?」と心配された。

どうやら本当に内海は昨日の出来事を憶えて無かった。「やっぱり夢だったのかな?」と裕太は思った。

内海は裕太を自宅まで送り、玄関で別れた。家の中は変わらず、怪獣によって壊された後もなかった。ようやく裕太は怪獣を夢だと確信しようとした。その時だった。

(夢じゃ無い)

またあの声がした。裕太は部屋を見渡したが、やはり居なかった。裕太は声の主に聞く。

「ねぇ、どこにいるの!?君は誰!?」

(私は、君の中にいる。さっきはたくさんの人が居た為、話が出来なかった、すまない。今ならゆっくり話せる)

「え、俺の中……? てか、どういう事!? 夢じゃ無い!? というか、君は誰なの!?」

困惑した裕太は謎の声に尋ね、声は裕太に頼みをした。

(なら、その部屋にあるあの巨大な箱みたいな物に手をかざしてくれる)

部屋とは自分の部屋であり、大きな箱は机に置いてある大きなパソコンだった。

裕太はアンティークが趣味の父が居て、裕太も似たようにアンティークの趣味を持った。そこで初めて買ったのは、この巨大パソコン、「ジャンク」だった。値段は高かったが、高校入学記念であったため、父親はご褒美として買った。今ではパソコンを使っている。古いパソコンではあるが、最近の機能を使えるよう、父親が改造した。

裕太はジャンクに近づき、画面に手をかざした。すると画面が眩しく光った。

裕太は目を瞑り、光が収まり目を開けた。そこに映ったのは、昨日現れた巨人だった。

「私はハイパー・エージェント、グリッドマン! この星を救いに来た!」

グリッドマンと名乗る巨人は自己紹介した。

裕太は困惑していた。昨日の出来事、グリッドマンと情報量が多く、頭の中がパンク寸前だった。グリッドマンはそんな事を関係なく、話を続けた。

「今、この星は昨日のような怪獣に崩されている! 君と私で、この星を守ろうではないか!」

グイグイ来るグリッドマンに対し、なんとか裕太は反論した。

「ちょっとまって! あのさ、どういう事なの!? 危機が迫ってるとか、星を守ろうとか、意味がわからないよ!」

それに対し、グリッドマンはゆっくりと話した。

「実は一昨日、この星に何者かが侵入した。私はそいつを逮捕するために昨日、この星に来た。その時に君を見つけ、勇敢な行動に感度した。そして、君を助けるために、私は君と融合した」

裕太はようやく理解出来たが、頭が痛くなってきた。話を流してしまい、本題に入った。

「とりあえず、なんで昨日のあの出来事があったのに、なんで元通りになっているの?」

「その事は、私にも分からない!」

堂々と言い放ったグリッドマンの言葉に、裕太はガクッとなった。グリッドマンはそれを誤魔化すように、話を変えた。

「とにかく、君に伝えられることはこれだけだ。次は明日話そう」

そう言うとジャンクの画面は消えた。

「ちょっと!? まだ話し終わってないんだけど!?」

と何回も電源を入れるが、ジャンクはつかなかった。

諦めた裕太は夕食をとるために、近くのコンビニに向かった。道中、グリッドマンの言葉と内海の言葉を思い出した。どちらも嘘を言ってない。なら、どれが本当で、今見ているのは現実なのか? と、裕太は考えながらも、弁当を買い、家に戻った。

 

2

オーブンの中なのかと疑う暑い朝、裕太は自転車に乗り、学校に向かっていた。1人でブツブツ喋りながら。

「なぁグリッドマン、本当にどうなっているの?」

(私にも分からない。もう少し、調べなければならない)

中にいるグリッドマンと喋っていた。周りから見れば独り言だが、裕太にはグリッドマンの声が聞こえる。2人は、学校の通学中に話し合っていた。

(裕太、君の学校の生徒にも聞いたらどうだろう。昨日について)

「そうだけどさ……」

グリッドマンは裕太に提案したが、裕太は自転車を止め、気づいたことを言った。

「てか、何で学校に着いて来てんの?」

グリッドマンは返事した。

(それは、君と私は一心同体なんだ。どんなことがあっても、離れる事は出来ない。何か不安か?)

「不安だらけだよ。グリッドマンの声が聞こえるのは俺だけだし、それに、話せるのも俺だけだよ。周りから見れば、独り言のヤバイ野郎だよ……」

裕太は不安がっていたが、グリッドマンは「安心しろ」と言った。

(今は裕太と話しているが、人前の時は、心の中で話してくれ)

「心の中?」

グリッドマンと裕太は一心同体、つまりはグリッドマンと裕太の心も一致しているため、テレパシーのような会話方法で話し合える。裕太は早速試してみた。

(どう、聞こえる?)

(あぁ、聞こえるとも)

通じ合ったことを理解した裕太は、感心した。

(便利だなこれ)

裕太は自転車を動かし、学校に向かった。

向かう最中に、内海と会った。内海はやはり一昨日の出来事を思い出しておらず、裕太の事をまだ心配していた。

「よお裕太、あれから異常は無かったか?」

「おはよう、内海。一応、大丈夫だった」

裕太は挨拶を返し、報告した。自転車から降り、内海と共に学校まで歩いた。道中、学校の時間割、愚痴などを話し合っていた。愚痴に関しては、グリッドマンが注意していた。

学校の教室に着くと、初めに裕太に話しかけたのはアカネだった。

「響くん! 大丈夫!? どこか悪くない!?」

アカネは焦りながらも裕太の事を心配していた。裕太はアカネに、「大丈夫」と返事し、アカネを落ち着かせた。

アカネはホッとしながらも、裕太に注意した。

「でも響くん、気持ち悪いと感じたら、すぐに保健室に行くんだよ!」

アカネはそう言い、六花の席に向かった。裕太はテレていて、内海と男子生徒は、そんな裕太に対し、嫉妬心を持っていた。

その様子を見たグリッドマンは、

(モテモテだな)と言い、裕太は否定した。

そんな時、違和感を感じた。教室が広く感じていた。辺りを見渡すと、バレー部の机が無かった。

「なぁ内海、なんか机、少なくなってない?」

裕太は内海に尋ねると、内海は疑問に思いながらも返答した。

「え、いや、いつも通りだけど?」

裕太はその言葉に驚いた。確かにバレー部は居たはずだ。なのに、内海はバレー部を憶えていない。裕太は質問を変え、「バレー部は居なかった?」と聞いた。内海は返答した。

「バレー部? 俺たちの高校にバレー部は無かったぞ」

「バレー部は無い」、裕太はその言葉に驚いた。内海はそんな裕太を心配した。授業が始まるチャイムが鳴り、教室に教師が入室した。裕太と内海は席に着き、裕太は、「何が起きているんだ?」と思いながらも、午前中の授業を受けた。

外で昼食を取ろうと、裕太は外に出た。購買部で買ったスペシャルドックとカレーを持ち、外に出た。先に内海に「今日は1人で食べる」と告げた。外にあった机に座り、食事をとった。

(ねぇ、グリッドマン)

(なんだ、裕太?)

裕太は食事しながら、グリッドマンと話し合った。

(なんで、こんなことが起きているの?)

(わからない、私も今考えているが、こんな事例は初めてだ)

(そうか……)

裕太は黙々とカレーを食べ、食事を終えようとした。その時、誰かに呼ばれた。アカネだった。

「新条さん?」

「響くん、大丈夫?」

心配したアカネは裕太に尋ねた。裕太は、「大丈夫」と言いたかったが、素直に答えた。

「ねぇ、新条さん、もし俺が死んでも、誰も悲しまないと思う?」

裕太は不可解な出来事を、「自分に来る」と推定して、アカネに話した。

「どう言うこと?」

アカネは聞き返し、裕太は続けて話した。

「いや、俺、病院にいたじゃん? それで、思ったことがあったんだ。俺が死んでもみんなは心配しないかな? と思っちゃって……」

聞いたアカネは黙っていたが、拳を握りしめていた。目からは涙が溢れそうになり、それでも声を出した。

「そんなわけないじゃん!」

アカネは裕太の肩を掴み、真剣な眼差しだったが、涙で潤っている目が、裕太を見ていた。

「響くんを忘れるなんて、私には出来ないよ! 大切な人でもあるから、死ぬとか、忘れるとか言わないでよ!」

裕太はアカネの声に驚きながらも、自分が質問したことを後悔した。「アカネをまた心配させた」、裕太はまたアカネに心配させないよう、謝った。

アカネは涙を拭き、また顔をニコッとして、裕太に言った。

「ねぇ、授業始まるから、早く戻らう?」

裕太は頷き、アカネと共に、校内に入った。入った途端に、偶然に教師とぶつかった。裕太は咄嗟に謝るが、教師はぶっきらぼうに、「あ、そう」と呟き、裕太から離れた。アカネは、教師にちゃんと謝らせろうと声を掛けようとするが、裕太に止められた。裕太は「大丈夫」と伝え、そのままアカネと一緒に教室に戻った。

その最中、アカネは裕太に聞こえない小さな声で呟いた。

「……殺す」

 

3

(結局、何も分からなかったねグリッドマン)

(うむ……)

自転車を漕ぎ、家に向かう裕太は、心の中でグリッドマンと話していた。一昨日は雨が降っていた為、自転車は無かったが、今日は自転車で帰ることができた。しかし、一昨日の出来事の証拠は何一つも掴めず、バレー部の存在が消えた事に困惑していた。

喉が渇いた裕太は、駄菓子屋の近くにあった自動販売機で飲み物を買った。すぐに蓋を開け、乾いていた喉を冷たい水が潤した。

「あ、裕太ー!」

と、誰かが呼んでいた。振り向くと、内海がいた。駄菓子屋の近くには内海の家があり、彼も帰っている途中だった。

裕太はペットボトルの蓋を閉じ、内海と話した。

「お前、今日はおかしかったぞ。本当に、頭大丈夫なのか?」

言い方には棘があったが、内海は裕太を心配していた。裕太は苦笑いしながらも、「異常はないよ」と誤魔化した。グリッドマンが裕太の中にいるのは内緒にしている。

内海は近づき、目を細めて裕太を睨んだ。裕太は内海の顔を両手で隠そうとしたが、内海は顔を見ようと、視点を変えようとしたが、裕太は防御していた。

「……何やってんの?」

2人が振り向くと、そこには耳にイヤホンをつけた六花がいた。六花は細い目で2人を睨み、さっきの様子を見て、引いたようなような感情をだしていた。

裕太は内海を突き飛ばし、違う違うと両腕を振った。内海は六花に聞いた。

「お前こそ、なんでここに居るんだ?」

六花は片方のイヤホンを外し、内海の質問に答えた。

「いや、私の家あっちだから、たまたまアンタ達がいたの」

内海は自分から聞いたが、ぶっきら棒に「あ、そう」と答えた。六花は内海を睨んだ。裕太はこの空気を変えようと、六花に言った

「ご、ごめんね宝田さん! 内海、謝って!」

裕太は内海に謝ることを頼んだ。しかし内海は、「なんで?」と聞いた。裕太は流石にまずいと思い、内海の頭を無理やり下げようとした。

六花は、「別にいいよ」と返した。すると六花は、思い出したかのように話した。

「あ、それと、アカネが響くんがちゃんと家に帰るのを見てきて、て頼まれたから、響くん、一緒に家に帰ろ」

裕太は顔を赤くして、声が高くなりながら、内海と六花と一緒に、自分の家に帰ろうとした。

すると、さっきまで黙っていたグリッドマンが話した。

(そうだ裕太、彼らにもこの事を話そう)

「え!?」

裕太は心の中で話す事を忘れてしまい、咄嗟に声を出してしまった。それに驚いた内海と六花は、体を構えていた。裕太は謝り、心の中でグリッドマンと話を続けた。

(どう言う事グリッドマン!? てか、君は俺にしか聞こえないはずだよ!?)

(裕太、忘れたのか? 私は誰とでも話せるぞ。君の家には、あれがある)

(あれ? ……あ!)

裕太は思い出した。昨日、グリッドマンと話す時、家にあったジャンクを使って話をした。その時、ジャンクの画面にはグリッドマンの姿が具現化されていた。

「じゃあ、一緒に家に行こう!それに話したいことがあるから!」

裕太は2人を家に誘い、2人は怪しみながらも、裕太について行った。

 

4

「ただいま」

「おじゃまします」

響家に着いた2人はかしこまりながら家に入った。バックをリビングの机に置き、六花が裕太に聞いた。

「で、話があるってなに?」

裕太は自室に入り、六花の質問に答えた。

「話があるのは俺じゃない」

答えに疑問を持った2人は、裕太を本気で心配した。手術した方がいいとも考えていた。裕太は2人を部屋の中に入らせた。2人用の席を用意して、六花と内海は座った。

裕太はジャンクの画面に手をかざした。するとジャンクの画面が光り、3人は目を瞑った。目を開けると、ジャンクの画面に、グリッドマンがいた。

「初めまして、内海と六花。私は、ハイパー・エージェント、グリッドマン」

自己紹介するグリッドマンだが、2人はそれどころじゃなかった。六花は口を押さえ、内海は目を大きく見開いていた。グリッドマンは困惑して、裕太は「だよねー」と言いたそうな顔をしていた。

先に動いたの内海で、裕太に焦った声で聞いた。

「え、裕太、これ本当か?」

裕太とグリッドマンは頷き、内海は再び、ジャンクを見つめた。すると、ジャンクに顔を近づけ、グリッドマンに聞いた。

「なぁ、アンタまさか宇宙人か!? それともウルトラマンの親戚なのか!? 」

熱く聞く内海に対し、グリッドマンは恐怖していた。質問攻めする内海をジャンクから離そうと、裕太は内海を引っ張り、ジャンクから離した。

ようやく六花も動き、「すごいAIだな……」と思っていたが、裕太は気づいたのか、顔を横に振った。

グリッドマンはすぐに話を戻した。

「と、とにかく、君たちに話がある。裕太と内海、座りなさい」

グリッドマンの指令により、裕太と内海は座った。

「私が君たちに話たいことは沢山あるが、その中でも3つの事を話そう」

そう言うと、グリッドマンは人差し指をあげた。

「一つ目は、裕太と私しかわからない事だが、一昨日、この星に怪獣が現れた」

グリッドマンは真っ先に怪獣の話をした。内海と六花は頭にハテナが出ていそうな顔をしていた。裕太は「やっぱり」といきなり話したグリッドマンに呆れたが、グリッドマンはまだ話を続けた。

「信じてないようだが、この街は一回、怪獣によって荒地になっていた。しかし、ここから二つ目だが、この街も人の記憶も、なぜか修復していた」

「修復?」

グリッドマンは「ウム」と頷いた。内海は興味を持ち、前のめりになるが、六花はまだ興味を持っていなかった。裕太は腕を組み、一昨日と昨日、今日の街を比べた。一昨日は修復するのが絶望的になっていたはずなのに、何故か昨日で街は修復されていた。

「それに、内海」

「はい?」

「君は昨日、裕太が「いきなり倒れた」と言っていたな。だが、本当は……」

「グリッドマン!!」

グリッドマンが裕太の真実を伝えようとしたが、裕太はその事を遮った。本当は、裕太は一昨日、ケガをした家族を救うために、ビルの下敷きになってしまった。しかしそれも改善され、裕太は内海の家の前に倒れたことにされている。それを裕太はグリッドマンとの秘密とした。内海は裕太を怪しんだが、グリッドマンの話に戻った。

「で、三つ目は何?」

「あぁ、そうだったな。三つ目は、怪獣に襲われた人は、この世から消えている」

「……え?」

内海と六花は困惑していたが、グリッドマンは三つ目の話を簡単に話した。

「つまり、修復されていなかった(死んだままになった)。そして、私たちの記憶は、修復させられた(彼らの存在を消した)。裕太が話したあのバレー部も、一昨日まで存在していた」

内海と六花は衝撃を受け、裕太は話を続けた。

「一昨日、確かにバレー部の子達の机もあった。でも、何故か無くなっていたんだ」

内海は「そんな……」と唖然したが、六花はグリッドマンに質問した。

「じゃあ、もし怪獣が現れて、私の友達や家族が死んだら、その人たちの存在も、忘れるの?」

「あぁ、間違いなく……」

六花は裕太に聞いた。

「ねぇ、響くん、そのバレー部の中で、私の友達いた?」

裕太は暗い顔を下に向け、低い声で話した。

「いたよ。「問川」ていう子。いつも六花と一緒に話していたよ」

六花は「そんな……」と呟き、スマホに着いていたキーホルダーを見た。ヤンバルクイナに似ている動物で、お腹にはハートのマークがあり、翼はガッツポーズをしていた。そのキーホルダーに付いていた紙には、「ガンバルクイナ」と書かれており、その裏には、ゆるゆるの線で文が書かれていた。

「ガンバレリッカ! トンカワ」

六花はキーホルダーを握り、歯を強く噛み締めていた。裕太はその様子を見ていた。

 

5

ある部屋で、1人の女が人形を完成させた。

「アレクシス、怪獣できたよ!」

パソコンの画面に映っている男に、作った怪獣を見せた。アレクシスは「素晴らしい!」と褒め、女は頼んだ。

「ねぇアレクシス、この怪獣を具現化してくれない?」

「いいけど、どうしてなんだい?」

アレクシスは疑問に思い、女はクスクスと笑った。

「ウチの学校にいた牧野ていう人、殺そうかなと思って♪」

アレクシスは興味を持ち、理由を聞いた。

「その牧野て人さ、響くんにぶつかったの。普通なら謝るはずなのに、あの人、全然謝ってくれなかったの。だから、殺そうかなと思って。じゃあ、よろしく〜♪」

女はアレクシスに頼み、アレクシスは目を光らせた。

「インスタンス、アブリアクション!」

人形は光だし、離れた場所で怪獣が現れた。

 

6

グリッドマンが突如窓の方に振り向いた。裕太は手に持っていたソーダを机に置いた。

「グリッドマン、どうしたの?」

「まずい、大変なことになったぞ!」

グリッドマンは焦っていた。内海はコーヒーカップを置き、裕太に聞いた。

「グリッドマン、どうしたんだ?」

「わからない」

裕太も分からなかったが、グリッドマンはすぐに話した。

「急ぐぞ裕太、また怪獣が現れたぞ!」

すると、突如部屋が揺れ、コーヒーカップとペットボトルが揺れた。地震かと思った裕太だが、明らかにリズムがおかしい。六花も立ち上がり、「何が起きたの!?」と聞いた。

裕太はカーテンを開き、外を見渡すと、頭にツノが生えて、体が赤く、肩が尖り、背びれがついた生物がいた。怪獣だった。怪獣は街を蹂躙し、次々とビルを破壊した。

「まずい、グリッドマン! 早く怪獣を止めないと!」

裕太はグリッドマンに頼んだが、グリッドマンは裕太に話した。

「ダメだ、私は体が無い生命体の状態で、一昨日の姿を出せない!」

今のグリッドマンは身体が無く、具現化するための力を持っていなかった。裕太も内海も諦めていたが、六花は違った。

「じゃあ、どうすればいいの!? アンタは一昨日、怪獣を倒せたんでしょ!? だったらその方法を使って怪獣を倒してよ!」

六花は声を大きく、口調も荒くなっていた。だがら彼女は友達を守りたいと、グリッドマンに頼んでいた。彼女自身にも、守りたいのがあった。

すると、グリッドマンは一昨日の出来事を思い出した。身体を具現化出来たのは、裕太と融合していたことだ。あの時、裕太は「人を救う」と信念を強く持ち、それが鍵となって、身体を具現化出来た。そしてグリッドマンは、裕太に頼んだ。

「裕太、ジャンクに手を入れてくれ!」

裕太は疑問に思ったが、グリッドマンは急かした。裕太はジャンクの画面に手を付けようとしたが、何故か左腕がジャンクの中に入った。

焦った裕太だが、すぐに左腕を取り出せた。腕を見ると、手首には手甲の様な物が装着されていた。腕に引っ付いていて、取ろうとするが取れなかった。

「それは、私が具現化するために使う「プライマルアクセプター」だ! それを使えば、怪獣と戦える! 裕太、君はどうしたい!?」

グリッドマンは裕太に聞くと、裕太はすぐに答えた。

「そんなの決まっている、あの怪獣を倒して、みんなを救う! それが、俺の使命だ!」

左腕を構え、右手でアクセプターを押した。

「アクセス、フラッシュ!!」

裕太は叫び、ジャンクの中に吸い込まれた。

 

6

怪獣がら暴れる街の中、足下には1人の男が虫の息になっていた。

「いやだ、死にたく無い! 死にたく無い!!」

足は動けず、体から血が流れていた。怪獣は男に向かって、光線を放とうとした。男は、「もうダメだ」と諦めた。

すると、怪獣の顔に蹴りが入り、怪獣は吹き飛んだ。蹴りを入れた正体は、鎧の様な装甲を着た巨人がいた。グリッドマンだった。

グリッドマンは構え、怪獣は立ち上がった。拳を顔面に直撃させ、膝を腹に強打させた。怪獣は仰け反ったが、すぐさまグリッドマンに光線を放った。しかし、グリッドマンは上に向かって飛び、怪獣の光線を避け、顔面に飛び蹴りを食らわした。怪獣は勢いよく身体を地面に打ち、ダメージを負った。グリッドマンは構え、怪獣が立ち上がるのを待った。

怪獣は立ち上がり、光線を放とうとした。グリッドマンは避ける準備をしたが、光線はグリッドマンとは別の方向に撃った。グリッドマンは「何故だ?」と、光線が撃たれた方向を見ると、そこには人がいた。

「あの怪獣、俺たちじゃなくて、あの人を狙っているんだ!」

裕太は気づき、怪獣を見た。すると怪獣は次の光線を放とうとしていた。グリッドマンは咄嗟に、光線が放つ場所に向かい、倒れていた人を庇った。光線はグリッドマンに直撃し、グリッドマンは吹き飛ばされた。ビルに身体を打たせ、ビルは崩壊した。

グリッドマンはすぐに立ち上がり、怪獣に向かっい、体当たりをした。しかし怪獣はグリッドマンの背を殴っていた。グリッドマンは膝を付け、怪獣はグリッドマンの顔を殴り、吹き飛ばされた。

その様子を、内海と六花はジャンクで見ていた。ジャンクには、グリッドマンと怪獣の戦いが映っていて、グリッドマンが吹き飛ばされる様子も見れた。

「グリッドマン! 裕太、どうしたんだ!?」

内海はグリッドマンの様子がおかしいことに気づき、裕太に聞くが、戦いに集中していて、聞こえなかった。しかし、六花は気づいていた。

「もしかして、さっき怪獣が放った光線の先に、人がいたんじゃ……」

「え!?」

「だって、そうじゃなきゃ、あの光線をワザと受けないし、だから……」

「マジかよ……」

内海は画面を見て、グリッドマンの戦いを見た。そこには、額のランプが点滅しているグリッドマンがいた。六花は困惑していたが、内海はすぐに気づけた。

「もしかして、あれ活動時間の限界なんじゃ……。だとしたら、早く怪獣を倒さないと!」

内海の説明に理解ができなかった六花は「詳しく説明して!」と頼むと、内海は説明した。

「ウルトラシリーズでよくあるんだ、ウルトラマンは地球では3分しか活動できなくて、3分過ぎると……」

「過ぎると……?」

「……死んでしまう」

六花は焦り、裕太に「響くん、早く戻って!」と頼むが、裕太には聞えていなかったら。

グリッドマンは立ち上がろうとするが、エネルギーが足りなくなり、立ち上がれなかった。怪獣は徐々に倒れている人に近づいていた。

「マズイ……!」

グリッドマンは焦るが、身体が動けなかった。裕太はその言葉を聞いて、ショックを受けた。

「そんな、じゃああの人は……」

グリッドマンは下を向き、守れなかったと諦めてしまった。しかし、裕太は違った。怒りで地面を握り閉めていた。

「そんなのダメだ……! 俺は決めたんだ、絶対に皆んなを守るって! だから、俺は!」

すると、さっきまで動けなかった身体が動けるようになり、身体能力も高まった。

怪獣が足下にいる人に光線を放とうとする。しかし、それをグリッドマンは尻尾を掴み、光線発射を阻止した。怪獣はグリッドマンを振り離そうとしたが、グリッドマンはしっかり捕まえていた。

「この野郎!!」

裕太は怪獣の尻尾を振り回して、人がいる逆の方向へと投げ飛ばした。怪獣はビルに直撃し、怪獣には大ダメージを受けた。怪獣は立ち上がると、グリッドマンが飛び蹴りした。顔面に受け、特徴の曲がった角も折れた。

グリッドマンは腕を交差し、力を溜め、左腕を構え、溜めた力を解き放った。

「グリッドビーム!!」

光線は怪獣に直撃して、怪獣は木っ端微塵に消し飛ばした。

グリッドマンの勝利だ。

それを見た内海は、「ヨッシャ!!」とガッツポーズを取った。六花は「良かった……!」と小さく呟いた。

すると、ジャンクの画面から、裕太が弾き出された。戻ってきた裕太は、辺りを見渡した。そこは間違いなく自分の部屋だった。内海は「大丈夫か!?」と聞くと、裕太は「大丈夫」と返した。

体を起こし、ジャンクの画面に映るグリッドマンと話をした。

「裕太、ありがとう。君のおかげで、私はまた戦うことが出来た」

「でも、またあの怪獣のせいで、守れなかった人は……」

グリッドマンが出現したのは、怪獣が出現して数分後、その間に怪獣は街を破壊して、多くの人間を殺した。裕太は守れなかった人たちに謝ることもできず、ただ拳を握っていた。

「あぁ。だからその為にも、私たちが守らなければいけないんだ。この街も、この星も」

「……そうだね。わかった、グリッドマン、一緒に戦ってくれ!」

「あぁ!」

2人は画面上でわあるが、お互い拳をくっつけ、街を守ることを共に誓った。

7

暗い部屋の中、女はカッターを突き立て、歯を食いしばっていた。アレクシスは嘲笑しながら、彼女と話していた。

「いやー、また負けてしまっね。でも、対策をとればいいじゃないか」

「わかってるけど、あの巨人のせいで牧野死ななかったし、もーマジ最悪!」

女は教師の牧野を殺せなかったことにイライラしていた。本来の彼女の目的は、裕太にぶつかった教師の殺人だったが、グリッドマンに邪魔され、牧野は死ななかったし。アレクシスは笑い、女は嫌気をさしていた。

「おっと、もうこんな時間じゃないか。明日も学校だし、今日は早く寝なければ」

「そうだね、わかった。おやすみ、アレクシス」

と、女は作業室の扉を開き、アレクシスに挨拶をして、部屋を出た。

アレクシスも彼女に挨拶して、画面を消した。

「おやすみ、アカネ君」

 

To Be Continued



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捜・査

学校の昼休み、裕太と内海は向かい合いながら昼食を食していた。2人は食事をしながら、昨日の出来事を話す。

「裕太、グリッドマンの言う通り、何もかもが元通りになってるな」

「うん。やっぱり、みんな憶えてないみたい」

教室では机はいつも通りだが、街や記憶はまた修復されていた。今朝では2人共、クラスメイトに昨日の出来事について聞いたが、誰も憶えていなかった。

しかし、昨日まで憶えていなかった六花と内海は何故か憶えていた。

グリッドマンと関わりのある人物には修復が効かないのか? と、裕太は考えた。

「ちょっと、グリッドマンに聞いてくれないか? なんで俺たち以外誰も憶えていないことを」

「あぁ、それについてはグリッドマンも分からないみたい」

「マジかよ……」

内海はグリッドマンに聞こうとしたが、裕太が昨日聞いていた。しかし、グリッドマン自身も分からず、この謎は解からないままだった。

そんな裕太は窓を眺め、校門前を見た。そこには、猫背で無精髭を生やし、腰には何かを背負っていた。

そんな話し合っている2人とは別の場所、学校の屋外では、六花は友人達と食事していた。六花もはっすとなみこに聞いたが、やはり彼女たちも憶えていなかった。

2人が話しているのは高校生でよくある愚痴話だった。しかし六花は、その話に興味は無い。彼女は悩んでいた。今まで友達だった子が消えて、大勢の人から忘れ去られれてしまったことを。自分もその1人だった。それに気付いた六花は、精神が傷んでしまった。

いつも元気な性格だったが、今日は暗くなっていた。聞かれても誤魔化し、友達といつも通り愚痴話をするが、それでも彼女は悲しさを紛らわせなかった。友達と別れ、人気のない場所に行き、そこで泣いていた。問川を忘れた自分に怒り、問川にも謝っていた。誰もいない場所で、彼女は気が済むまで泣いた。そんな場所に、1人来た。

「あれ、六花、なんで泣いているの?」

「あ、アカネ……」

アカネだった。六花の近くに寄り添い、アカネは何故泣いていたかの理由を聞いたが、六花は黙っていた。しかしアカネはどうしても聞きたかった。

「誰にも言わないよ、それに、幼馴染じゃない」

アカネは誰にも言わないと約束して、六花の話を聞こうとした。六花も心を許し、アカネに話した。

「昨日、私の友達が来てたんだ。その友達は、私に久しぶりて言ってた。でも、私その子を憶えてなくて、誰? て聞いちゃった。その子は私を思い出させようと何回も話していたのに、私はウザいと感じちゃって、悪口言っちゃたんだ。その後、ようやく思い出して、またその子に会おうとしたら、もうその子はいなくなっていたんだ。謝れなかったて、後悔していて、今泣いていた」

嘘を混ざりつつ、悲しかったことを話した。その子こそが問川で、彼女は昨日まで忘れた友達を、居なくなってしまった友達に、謝っていた。

するとアカネは、そんな六花の目に流れていた涙を、ハンカチで拭き取った。アカネは優しく微笑み、六花を励ました。

「それは誰も悪くないよ。誰だって忘れちゃうことはあるんだから。それが、たとえ親友でも……。だから、忘れないように、 写真とか撮ったり、手紙を送ったり、別れる時は、最後に楽しく遊ばないといけない。人は、楽しいことを記憶する生き物だから、最後に楽しんだら、それは記憶に残るよ」

六花はアカネの話を聞き、彼女は決めた。今でようやく怪獣の存在を知った六花は、怪獣から皆んなを守る為に、避難させることを決めた。六花はアカネに感謝して、また2人で話をした。

すると六花は、とあることを思い出した。彼女が怪獣の存在を知った昨日、裕太はグリッドマンとなり、怪獣と戦っていた。最初の印象は、ただの普通の男の子だった裕太だった。幼馴染ではあるが、裕太のことをあまり知らなかった。

六花はアカネに、裕太の性格を聞いた。

「ねぇ、響君と一緒に居たんだよね。響君てさ、どういう性格なの? これから、友達になりたいし……」

するとアカネはさっきと同じように微笑み、裕太の話をした。

「響君は、誰よりも勇敢で、とっても優しいの」

最初の一言はそれだった。六花は興味を持ち、アカネの話を聞いた。

 

アカネが幼稚園の頃だった。幼稚園児だったアカネには、父親と母親がいなかった。ずっとではないが、親はいつも仕事で、出張するのが多かった。その為、いつもアカネを迎えに来るのは祖母で、その様子を、他の子は見ていた。

祖母をアカネの母親と決めつけた3人の男の子は、アカネの母親について、いつもアカネをいじめていた。

「やーい、お前のカーチャン、ババァ!」

何回もその言葉を聞いた。アカネは辛く、涙を流していた。誰も自分を救おうとせず、ただ悪口を言われ続けられていた。すると、1人の子がアカネの頭に飾っていた、髪飾りを奪った。アカネは髪飾りを取ろうとするが、身長が低く、髪飾りは取れなかった。そしていじめっ子は、その髪飾りをどこかに投げ捨てた。アカネは泣き、その様子を、いじめっ子は笑って見ていた。

そんなアカネを救ったのは、1人の男の子だった。

「ヤメろ! その子をいじめるな!」

その子は赤髪で、背もアカネと同じの小柄な子供だった。その少年は、3人のいじめっ子を押し、1人を泣かせた。残りの2人は怖がり、3人とも逃げた。アカネは少年を見てた。その少年が、アカネに近づき、手を挙げていた。アカネは怖がり目を瞑ると、その少年は殴ろうとしなかった。

「はい、これ」

アカネは少年の手を見ると、そこにはいじめっ子たちに捨てられた髪飾りがあった。アカネはそれを受け取り、少年に助けた理由を聞いた。

「ママが言ってたんだ。泣いてる子がいたら、優しくするのが一番だって」

アカネは困惑していて、髪飾りをギュッと握っていた。その少年は、アカネの頭をゆっくりと撫でた。アカネは驚き、その少年の顔を見た。少年は笑っており、アカネに「大丈夫だよ」と安心させた。

すると少年を呼ぶ声が聞こえ、彼は声の方向を見た。軽自動車に乗る女性が、窓を開き少年を呼んでいた。彼の母親だった。

少年は返事をして、母親の方に向かった。すると、少年は急に止まり、アカネの名を聞いた。

「……新条アカネ」

「新条アカネ、いい名前だね。僕は響裕太、よろしくね!」

と少年は言い、すぐに母親の下に向かった。少年は出発する時、アカネに向かって手を振った。アカネも少年に手を振った。やがて車は見えなくなり、先程少年に撫でられた頭を撫でた。何故か心は暖かくなり、顔もようやく笑顔になれた。

「……響君」

それから翌日、裕太が幼稚園の門に入る時、アカネが待っていた。裕太は思い出し、アカネに挨拶した。アカネは恥ずかしそうに右手を少し上げ、顔を伏せた。裕太はアカネに近づき、アカネの手を握った。

「早くしないと怒られちゃうよ」

裕太はアカネと一緒に幼稚園の中に入った。

しばらく時間が経ち、裕太が砂場で1人で山を作っていたが、そこに昨日のいじめっ子の3人が近づいた。裕太は3人を見ると、3人のうちの1人が、砂の山を裕太に向かって蹴飛ばした。裕太は反射で目を閉じたが、口に砂が入った。

「何1人で山つくってんだ〜?」

体の大きな1人が裕太を睨み、残りの2人はニヤニヤしていた。裕太は無視して別の場所に行こうとするが、ズルがしい顔をした1人が裕太の後ろ襟を掴んだ。

「どこに行くんだい? 遊ぼうよ僕らと」

いじめっ子達は裕太を別の場所に連れ込んだ。その様子を、アカネは1人不審に見ていた。

裕太は壁に何回も叩きつけられていた。いじめっ子の1人が裕太を掴み、体の大きな1人が、裕太の顔を殴った。もう1人は裕太の腹を殴り、餅つきのように、交互に裕太の体全体を殴った。その様子をまたいじめっ子は笑い、裕太は殴られ続けた。

ようやく体を離され、裕太はよつんばりになり咳を何回もした。いじめっ子らは高笑いをする。裕太はその場から離れようとするが、また襟を掴まれ、また壁に叩きつけられた。すると1人がポケットからダンゴムシを取り出した。

「これを、お前の口の中に入れてやる!」

と、裕太の口を無理矢理開けようとする。裕太は目を瞑り、覚悟を決めた時、ダンゴムシを持ったいじめっ子の足に、 1人の子がへばりついた。裕太は目を少し開き、状況を確認した。頭のてっぺんしか見えなかったが、髪は銀髪だった。

「裕太君をいじめないで!」.

アカネだった。アカネは裕太を逃がそうと、いじめっ子の気を逸らそうとした。

「ちょ、離せ!」

いじめっ子はアカネを振り離そうとしたが、アカネはしぶとく足を掴んでいた。裕太はその間に離れようとするが、2人はまだ掴んだままだった。

「どけよ!」

ついにいじめっ子は、アカネの顔目掛けて蹴りを入れた。見事に当たり、アカネは手を離し、吹き飛ばされた。

すると、裕太の様子が変わった。さっきまで何もしようとしなかった裕太だったが、アカネが蹴飛ばされた瞬間、裕太の顔は紅潮していた。

裕太は重心を傾け、いじめっ子と一緒に地面に叩きつけられた。ようやく手を離し、裕太は離された手をもう1人のいじめっ子の顔に向かって殴った。鼻を中心に命中し、いじめっ子は鼻を抑え悶えた。それに気づいた体の大きないじめっ子は、裕太の様子を見た。裕太の目は、まるで子供とは思えない目つきだった。その目はまるで、子供を襲われ、激怒する親オオカミのようだった。

いじめっ子は怖がり、体が動けなかった。裕太は近づき、ついにいじめっ子に向かって襲いかかった。いじめっ子は裕太の顔を殴るが、怯みもせず、顔面を殴られた。

裕太は荒れる息を整かせ、アカネに近づいた。

「大丈夫、アカネちゃん?」

アカネは裕太の顔を見た。顔には靴の跡が残っており、鼻から血を流し、目も腫れていた。アカネは持っていたハンカチで鼻血と靴の跡を拭き取った。

アカネは涙を流していた。それに気づいた裕太は、笑顔でアカネを落ち着かせようとした。しかしアカネは、裕太に対し謝り続けていた。

「昨日のせいでこんな事になってごめんね……。 私のせいで……」

アカネの顔はくしゃくしゃになり、目の下も真っ赤になっていた。すると裕太は、アカネの頬を触り、アカネと目線を合わせた。

「ううん、君のせいじゃない。大体、あいつらが君をいじめたのに、止めた僕をいじめるとか、アホだよあいつら」

アカネは裕太の話を聞いて少し落ち着いた。すると裕太はアカネを見て、泣いてないとわかると、裕太はホッとした。

 

「でね、私はそれから響君と友達になって、一緒にご飯だべたり……」

「わかったわかった」

六花は話を遮った。アカネは「なんで〜?」と聞くと、六花は答えた。

「これ以上2人のノロケ話を聞いたら、口から砂糖が出ちゃいそう」

と六花は舌を出し、アカネはすぐに「なにそれ?」と笑った。六花もつられて笑い、2人は教室の戻ろうとした。

戻る途中、偶然にも裕太に会った。しかし裕太は元気が無く、どこか落ち込んでいた。アカネはすぐに裕太に聞いた。

「実は提出するレポートでミスをしちゃって、字がズレていることに怒られたんだ」

レポートとは、物理の授業で提出する物で、裕太はそのレポートで字の列が歪み、それを先生に叱られた。

「まぁ、しょうがないわね。あの先生、細かすぎてうるさいし」

裕太と六花とアカネはそのまま教室に戻った。

だがアカネは、1人だけ、職員室を眺めていた。

 

 

内海と裕太、六花は帰り道、昨日の出来事について聞いた。怪獣が現れた昨日、内海と六花は、今までの日常が偽りだったことを知り、困惑をしていた。

そんな帰り道の途中、一つの中華屋を見つけた。「問川」と書かれた看板を見た3人はまた、問川を思い出した。すると裕太は、入学した時の問川の話を思い出した。

「うっす、私は問川さきるっす。実家は中華屋「問川」をやってます。暇がある人を来てくださーい」

問川の実家は中華屋だった。彼女いわく、客は来るが、ほとんど昼食する人しか来ないと言っていた。裕太たちは緊張し、入り口である襖型のドアを開けた。

「いらっしゃい!」

低い声が店に響いた。中にいるお客は7人と、そこまで多くはないが、意外にも繁盛している店だった。裕太は緊張しながら、店員に話を聞いた。

「あのすみません、問川さちるさんいますか? ツツジ台高の同級生の響と言う者です」

すると男は「はっ?」と思い、裕太に質問を返した。

「問川さちる? ウチにそんな子はいませんよ?」

「え?」

返しが意外だった。父親だったはずの男は、自分の娘を憶えていなかった。それどころか、娘の存在すら彼は知らなかった。裕太は問川のことを何度も聞くが、男は鬱陶しくなり、ついに痺れを切らした。

「何ですか? 嫌味ですか!? 私は結婚はしてません! これ以上、煽りをすれば、警察に通報しますよ!」

裕太は質問をまた続けようとしたが、内海と六花は裕太を止め、そのまま中華屋を出た。裕太は内海に何故止めたのかを聞くと、内海は怒りながら質問に答えた。

「あれ以上何回も質問すればお前逮捕されるんだぞ! 無茶に突撃すんじゃねぇ!」

内海の顔は怒りで真っ赤になり、なんでも首に突っ込む裕太に説教をした。裕太は内海の威圧に言葉が出ず、そのまま問川と書かれてある赤い看板を見ていた。守れなかった人たちは、友人や知人、さらには家族からも、存在を忘れ去られていく。常人には耐えきれない現象だ。

裕太は自分だけしか憶えていた為、その記憶を利用し、家族や友人に犠牲になった人達を思い出させようとした。しかし内海の言う通り、しつこく説明をしても、彼らは裕太を変人と認識して、彼は1人になるかもしれない。また、裕太だけが街を守れる唯一の存在であることを、彼に教えた。

裕太は内海の言葉に何も言えなかった。忘れていたのだ。自分だけが怪獣を倒せるグリッドマンに変身できるのは。それを忘れ、ただ突っ走っている自分は、猪突猛進すぎていた。

少し時間が経ち、裕太は六花と共に、草原に座っていた。内海は飲み物を買いに、自動販売機に向かった。裕太は先程やった行動を反省し、空を見上げていた。すると裕太は、視線を六花の方に向けた。六花はスマホに着けていたガンバルクイナを眺めていた。六花は悲しい表情をしていた。

「宝田さん、何でそのストラップを見ているの?」

裕太は六花に聞いた。六花は裕太に一回視線を変え、またストラップに視線を戻した。すると六花は裕太にストラップを眺める理由を話した。

「私とこの子は仲が良かったみたい。ストラップの帯の裏に、私に対してのメッセージが書いてあったの」

ガンバルクイナに付いていた帯の裏を裕太に見せた。裕太はすぐに察したが、聞いたのは自分ということもあり、話の続きを聞いた。

「なのに、私はその子の事を忘れていたの。私だけじゃない、他の友達も、先生も、それに、あの人も……」

六花は涙を流し、ガンバルクイナを握っていた。

 そんな六花を見た裕太は彼女に話した。

「宝田さんのせいじゃないよ」

六花は裕太を見た。裕太もまた悲しい目をしていた。

「ほら、俺グリッドマンになれるじゃん、それで人助けもできるんだし。でも、俺は人を救えなかった。多分、問川さん達だけじゃない。昨日のように、他の人も救えなかった」

六花はアカネの話を思い出した。「誰よりも勇敢、それにとっても優しい」、今自分が泣いていた理由は、問川達のことを忘れていたことであったが、裕太は「救えなかった」という悔しさと後悔を持っていた。あの怪獣に対抗できるのは裕太だけで、自分達は何もできないと思った。

「でも、そんなにクヨクヨしていたらまた人が救えなくなる。だから後悔しないために、人を救うんだ。死んだ人たちの為にも」

そう言うと、裕太の目は厳つくなった。六花はそんな裕太を見た。正直、六花は裕太に対し「救ってほしい」と頼みたいが、昨日の内海の言葉を思い出した。内海は超がつくほどの特撮オタクであり、特にウルトラシリーズが大好きだ。内海いわく、ウルトラマンは地球の活動時間があり、その時間内に怪獣を倒さなければ、ウルトラマンは消えてしまうと言う。しかしそれは、ウルトラマン自身が消えるだけであり、変身者は消えるわけではない。しかしグリッドマンはウルトラマンではない。つまり、ウルトラマンのように制限時間があり、それを過ぎれば、最悪の場合、死ぬかもしれないからだ。

「優しいんだね、響君」

と言うと裕太は六花を見て頷いた。

 遠くから声が聞こえた、内海の声だ。腕にはジュース1本と、炭酸飲料2本を持ってきていた。六花はジュースを手に取り、内海と裕太は炭酸飲料を飲んだ。すると内海が一つ提案を言った。

「実はグリッドマンに聞きたいことがあるんだ。この状況について、怪獣についても聞きたいし、それになんで俺らも記憶があるのかを」

内海も自分達が憶えていることにも疑問を持っていた。裕太はわかった、と言い、自宅に向かった。

 それを見た六花は、何もできない自分を恨んだ。

 

 3人は裕太が住んでいるマンションにたどり着いた。裕太と内海は今起きている出来事についてを考察している。「怪獣が現れた理由」「修復される町と記憶」そして、「何故内海と六花が憶えているのか」。しかしまだ解らないこともある。その事をグリッドマンに聞く為に、マンションに来たのだ。

 裕太は自身の家の鍵を取り、差し込み穴に入れドアを開けようとした。しかし、開くときのガチャという音が聞こえなかった。裕太は、「鍵かけなかったのか」と失敗したと思い、ドアを開けた。

 3人とも家の中に入り、すぐに裕太の部屋に向かったが、リビングにあるテーブルでコーヒーを飲む一人の男がいた。

 裕太はギョッとし、内海は「知り合いか?」と聞くと、「いや知らない」と答えた。すると、男は裕太を見て、椅子から立ち上がった。

 男の目の下にはクマがあり、無精髭を生やし、立ち方も猫背だった。

3人は逃げるための構えをした。すると、裕太はグリッドマンから呼ばれた。男は近づき、内海と六花は構える。しかし裕太は構えず、男を見た。ついに裕太の近くにつき、やばいと2人は思った。

「久しぶりだな、グリッドマン」

え? と内海と六花は男を見て、裕太はグリッドマンの言葉を二人に言った。

「二人とも大丈夫、この人は味方だ」

唖然とする二人だが、男は裕太に尋ねた。

「君が、グリッドマンの宿り身か?」

「は、はい、響裕太と言います」

「そうか、俺はサムライキャリバー、アシストウェポンの一人だ」

そのまま会話が続く二人に六花はさじを投げた。

「ちょっと、私たちにもわかるように説明して!」

六花の言葉に気づいた六花は置いてけぼりだった二人に謝り、キャリバーと一緒に、自身の部屋に行った。

 部屋に着くと、祐太はすぐにジャンクの画面を触り、グリッドマンを自身の体からジャンク内に転移させた。

 画面に映ったグリッドマンは裕太の隣にいるキャリバーを見た。

「よく来てくれた、キャリバー」

「あぁ、まさかこんな風に話すとはな……」

キャリバーは少し困惑しながらも、グリッドマンと再会した。

「え、知り合い何ですか?」

内海は急に横槍をいれ、グリッドマンは思い出したかのように話した。

「あぁ、すまない。まだ説明がまだだったな。紹介する。彼はサムライキャリバー、私のサポートをしてくれる、アシストウエポンだ」

「アシスト……」

「……ウエポン?」

三人は困惑してしまい、キャリバーは補足をしようと話そうとした。しかし、その補足は内海によりできなかった。

「あぁ、それは後でお願いします。 裕太、グリッドマンに聞きたいことが……」

「ああ! そうだった!」

思い出した裕太はグリッドマンに聞いた。

「ねぇグリッドマン! 何で死んだ人は家族から忘れさられたの!? 」

「……すまない裕太、それは私にもわからない。今までの任務で、こんな奇妙な出来事は見たことない。 気味が悪いくらいに……」

やっぱりか、と裕太は残念がってたが、キャリバーが口を動かした。

「誰かが改竄してるとかじゃないのか、もしかしたらこの前に侵入した何者かの仕業か……」

それを聞いた内海は納得した。

「そうか、ウルトラシリーズでも不可思議な現象は宇宙人の仕業になっている! つまり、この現象も宇宙人の仕業かもしれない!」

熱がかかり早口で説明する内海を見て、裕太は押され、グリッドマンは唖然、キャリバーは困惑、六花は引いた。

 ようやく話が終わると内海ははぁはぁ、と息を切らしていた。

「ま、まぁそう言うことだな」

とキャリバーの一言で、内海の話は終わった。

 

「見て! 新しい怪獣出来たよ!!」

無邪気に新しく作った怪獣を画面に映っているアレクシスに見せた。

「ほぉ! これはまた素晴らしい怪獣だね!」

アレクシスは褒め、怪獣をじっくりと眺めた。

 新しく作られた怪獣の見た目は、よく一般人が怪獣と認められる体型と立ち方をしているが、腹にはビー玉の半分がはみ出ており、顔もヒラメのようなギョロ目をしていた。

「で、今度は誰を殺すんだい?」

「うちの学校の理科室の山中! あいつ、いつも細かいし、変なこだわりを持っているから嫌なんだよね〜。 それに、響君も理不尽に怒られたし……」

「やっぱりね。 でもこのままで大丈夫なのかい? 昨日みたいに、あの巨人が君の邪魔をするかも知れないよ?」

アレクシスは怪獣がグリッドマンに倒されることを心配していた。するとアカネは口を手で押さえ、クスクスと笑っていた。

「大丈夫、その為にちゃんと工夫したんだ〜。 じゃ、アレクシス、お願いね!」

「わかったよ、インスタンス・アブリアクション!!」

アレクシスの目は光り、照らされた怪獣は机の上から消えた。

 

 何かを感じたのか、裕太はすぐにカーテンをどけ、外を見た。外には怪獣が現れ、街を壊していた。

 裕太はまずい! とすぐにジャンクに視線を移した。

「グリッドマン、早く変身しよう! あの腕輪みたいなのをだして!」

焦る裕太だが、グリッドマンは冷静に話した。

「心配しなくていい、今私と君は一つになっている。 それにアクセプターも、君の腕にすでにある」

聞いた裕太は、アクセプターがついていた左腕を見た。すると腕にアクセプターがついており、裕太は驚いた。

「怪獣が現れた時に、君が腕を構えればそのアクセプターは現れる、さぁ行こう、裕太!」

裕太は腕を構え、叫んだ。

「アクセス、フラッシュ!!」

裕太はジャンクに吸い込まれた。

「頼むぞ、裕太、グリッドマン!!」

内海は二人に頼み、キャリバーはその様子を見た後、窓の外に視線を移した。

 

 怪獣が暴れ、街が次々と破壊されていく。中心で怪獣は叫び、また行進を始めた。すると、怪獣の目の前に眩い光が現れ、中かには巨人がいた。グリッドマンがいた。

 グリッドマンはすぐに怪獣の顔に回し蹴りを決め、怪獣は地面に叩きつけられた。グリッドマンは構え、怪獣に近づいた。

 口から熱光線を発射したが、グリッドマンはバク宙で回避して、光弾を怪獣に目掛けて発射した。見事怪獣に当たり、怯んだ。

 今だ! とグリッドマンは腕を回し、両腕を下でクロスさせ、エネルギーを貯め、左腕から貯めたエネルギーを放出させるグリッドビームを怪獣に発射した。

 すると怪獣は、腹の中から透明な球体を出し、光線を吸収した。驚いたグリッドマンは思わず、無防備になってしまい、それを見た怪獣は、球体からプラズマ光線を発射した。

 光線は、グリッドマンの右肩に当たり、吹っ飛んでしまった。その様子を見た内海は、ジャンクに顔を近づけ驚いていた。

 一方アカネは笑い、仕組みをアレクシスに言った。

「光線を吸収する怪獣は多いんだ、だからあの怪獣にも光線吸収能力を持たせたんだ〜」

「さすがアカネ君!」

怪獣に組み込まれたビー玉はグリッドマンの光線を吸収させるための部品であり、その吸収された光線は、反射で威力は下がるがプラズマ光線を発射できるようになっていたのだ。

「なんで攻撃が弾かれたの!?」

「わからない、あの怪獣にそんな能力が……」

驚く内海と六花。しかし内海は怪獣の体を見続け、弾く原因を見つけた。

「腹に球体……、これだ! これのせいで攻撃が弾かれたんだ!」

「響君、怪獣のお腹にある球体を狙って!」

六花はジャンクに向かって叫んだ。通じたのか、グリッドマンは立ち上がり、怪獣に向かって走った。途中で火球やプラズマ光線を発射されるも見事にかわし、ついに怪獣の腹にある球体に向けて、右ストレートを放った。

 見事命中した、と思われたが、手を退けると球体の跡がない。驚いたグリッドマンはまた無防備になってしまう。すると、また腹から球体が現れ、至近距離からでのプラズマ光線が発射され、グリッドマンの身体に当たり、吹き飛ばされた。

 その様子を見たアカネは高笑いをしていた。

「ちょっとー、私が無防備にあの球体を出したままにするぅ? 狙われたらすぐに閉まって、近づいたら発射する仕組みになってるの〜」

「さすがだよ! やっぱり素晴らしい!」

絶賛するアレクシス。

 グリッドマンの身体は大ダメージを受けてしまい、ついに額のランプが点滅した。

「まずい、点滅し始めた!」

焦る内海、六花は危ない! と裕太に言う。

「まずいぞ、一気に決めなければ!」

「でも、どうやって!? 球体はすぐに閉まるし、近づいたらまた受けるよ!」

焦る裕太とグリッドマン、そして内海。 これまでかと思ったが、六花はキャリバーを思い出し、キャリバーに聞いた。

「キャリバーさん、あなたならあの怪獣を倒せますか!?」

「無理だ」

「そんな……。グリッドマンの仲間なら、彼を助ける力は無いのですか!?」

六花は声を荒げ、キャリバーに聞く。するとキャリバーはジャンクに近づき、深呼吸した。

「それなら出来る。 アクセスコード、グリッドマンカリバー!!」

そう叫ぶど、キャリバーはジャンクの中に吸い込まれていった。

 ついに怪獣がグリッドマンに向かって火球を発射した。防御しようと構える。すると、真上から穴が開き、そこから剣が現れ、グリッドマンの近くに刺さり、火球を防いだ。

「俺を使え、グリッドマン!」

剣からはキャリバーの声が聞こえ、グリッドマンは剣を抜いた。

「電撃大斬剣、グリッドマンカリバー!!」

 その様子を見たアカネは画面に顔を近づけ驚愕した。

「なにあれ!? 武器とかありなの!?」

「これは、一枚上手だね〜」

焦るアカネに対し、アレクシスはどこか余裕を持っていた。

 怪獣がまたプラズマ光線を発射したが、グリッドマンはカリバーで光線を弾き、背中にあるブースターで怪獣に一気に近づいた。

裕太、グリッドマン、キャリバーの声が一つになり、必殺技を叫んだ。

「グリッド、カリバー、エンド!!!」

グリッドマンは怪獣の腹を切り裂いた。怪獣は上下半分に斬られ、腹にあった球体も綺麗に斬れた。そして、怪獣は爆発、グリッドマンの勝利だ。

 

 

 その様子を見たアカネは怒り、アレクシスが映っていた画面を蹴り落とした。画面にひびが入り、アレクシスも痛がっていた。

「あぁ萎えた。 もう最悪!」

椅子から立ち上がり、ドアに向かおうとした。

「残念だったね、またあの巨人に負けるなんて〜」

アレクシスはアカネを励まそうとした。しかしアカネは立ち止まり、アレクシスにいつ言った。

「違うよアレクシス、あの山中が殺されなくて残念なの!!」

アカネは裕太を叱った山中が死ななかったことに腹が立っていた。意外だったとアレクシスは思い、聴くとアカネは言った。

「だって、あいつが生きてたら、また誰かが理不尽に怒られるんだ。 これ以上、響君のような子を増やしたく無いんだ」

アカネは部屋を出た。聞いたアレクシスは笑っていた。

「そうだね、君の言う通り、悪い人間は排除しないとね〜」

そう言い残し、画面から消えた。

 

 

 グリッドマンが怪獣を倒した様子を見た六花と内海は喜んでいた。ジャンクから裕太たちが帰り、二人はおかえりと、出迎えた。裕太はただいまと言い返し、すぐに外を見た。

 崩壊した街をみた裕太は、守れなかった人たちのことを思い、辛い感情を出した。その様子を見たグリッドマンは裕太に言った。

「裕太、君が行動しなければ、また多くの人が犠牲になっていた。君のおかげだ」

「でも、やっぱり、あの怪獣で他の人は……」

グリッドマンはなにも言えなかった。すると、キャリバーが口を開いた。

「だからこそ、犠牲になった人を忘れるな。 守れなかった人たちの為にも、また他の人を守るために、行動するんだ、それが一番のやり方だ」

それを聞くと、裕太ははい!、と決意し、キャリバーは握り拳を突き出した。

「これからよろしくな」

裕太は返事して、同じく握り拳を出し、グータッチをした。

 すると、急に内海が横槍を入れてきた。

「キャリバーさん、あなた、さっき剣になりましたよね!」

「あ、あぁ」

「すごい! どうやって剣になれたんですか! それとも元は剣で、人間に化けているんですか!?」

「ま、待ってくれ」

ヒートアップした内海は次々とキャリバーに質問攻めし、キャリバーは押し潰されていった。

 その様子を見た裕太は思った。

(賑やかになったな……)

 

 

To Be Continue

 

 

 

 

 

後書き

 お久しぶりです、約1年も投稿してませんでした。理由としては高校生活が忙しくて、気づけば大学生になり、気づけば1年経ってました。これからは少しづつ、新作を投稿していきます。

 誠に、申し訳ありませんでした。



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