ダンジョンに転生者が居るのは間違っているだろうか! (白廻楓)
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プロローグ:転生

俺は今まで転生なんて現象を信じて無かったんだ、転生なんてアニメや二次小説の中だけの話だと思っていた。

 

そんな俺がなんでこんな話をしているのかと言うと理由は簡単だ今俺の前に神を自称する奴が居て俺を間違えて殺してしまったから転生させてやると言っている。

 

自己紹介がまだだったな、俺の名前は桜木 恋(さくらぎれん)どこにでも居る17歳の青年だ。

 

そんな俺だがコンビニにアイスを買いに行って帰りにトラックに轢かれたと思ったら周りが真っ白な空間に居てさっきも説明した通り神を自称する男に転生させてやると言われている。

 

「いやーホントにごめんね!ちょっーと手元が狂って間違えて殺しちゃったよ!お詫びに好きな世界に特典を1つ付けて転生させてあげるからさ、許してっちょ!」

 

この自称神の野郎、全く反省してないな。

だが、特典が付いて好きな世界に転生は悪くない話だ。

 

特に死ぬ前の世界に未練が有る訳でも無いし、両親は2人とも2年前に交通事故で他界している。

それから俺を引き取ってくれた母方の叔父ともあまり良い関係を築けて居なかった。

 

「はぁーまぁ、転生させてくれるなら良いですよ。お願いします。」

 

少し悩んだ俺は自称神の提案を受けることにした。

 

「いやー良かったよ!それでさっそくだけどどこの世界にする?アニメにラノベ、ドラマ、どこの世界でも元居た世界以外なら好きな世界に転生させてあげよう!」

 

俺の行きたい世界はすでに決まっていた。

生前、俺が唯一読んでいたラノベ。

 

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」

 

この世界に俺は行きたいと何度も頭の中で妄想してはそんなことは叶わないと諦めていた。

 

だが今、その夢のキップを俺は手にしている。

 

ならば答えは1つだ。

 

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかの世界に転生させてください!」

 

「なるほど、その世界を選ぶかこれも運命かな」

 

俺が行きたい世界を自称神に告げると自称神は意味深なことを呟いた。

 

「運命ってどういう意味ですか?」

 

「特に深い意味は無いさ。ただ神々は英雄を欲している、それも創られた英雄ではなく本物の英雄を」

 

「それは、俺に本物の英雄になれと言うことですか?」

 

「違うさ。君は君の好きなように生きるといい。だが、もし君に英雄の素質があるのならあの世界は君を放ってはおかないだろう。

さて、転生先も決めたし次は特典だね!不老不死とかは流石に無理だが出来る限りで叶えてあげよう。」

 

まぁ考えても仕方がないし俺は俺の好きに生きるとするか、この自称神が言うように何かしらの素質があるのなら俺も否が応でも巻き込まれていく。

今はそれより特典だ。

 

「なら、不懐属性の刀をくれ。特典はそれでいい。」

 

俺が特典を言うと自称神は少し驚いたような表情を浮かべると俺に本当に特典はそれで良いのか聞いてきた。

 

「本当に特典はそれでいいのかい?もう少し贅沢を言っても大丈夫なんだよ?」

 

「いや、これで良い。これだけで充分だ。」

 

俺がそう言うと自称神も納得してくれたようだ。

 

「なら、次に転生先での名前を決めないとね!何がいい?」

 

「自分で決めて良いのか?てっきりあんたが決めるものだと思っていたんだが」

 

「特典が想像してたよりショボかったから僕のサービスさ!」

 

この自称神の野郎ショボいって言いやがった。

 

名前か特に思いつく名前も無いし生前の名前でいいか表記はカタカナにするが。

 

「わかった。ならありがたく決めさせて貰う。俺の名前はサクラギ・レンにしてくれ。」

 

「なるほど、表記だけを変えたかまぁ良いだろう。名前はそれにしよう。

さて!名前も決めたし、いよいよ転生だ。」

 

そう言うと自称神はズボンのポケットからドアを出した。

 

いや、ドラ⚪もんかよ!?

 

「さて、これで準備は整った。あとはこのドアをくぐればちょうど迷宮都市オラリオの門の前に繋げてある。」

 

「そうか。まぁあんたのミスで死んだとはいえ、転生させてくれてありがとう」

 

俺が礼を言うと自称神は驚いた表情をして笑いだした。

 

「ふふっ!君は実に不思議な子だね。」

 

「転生させてくれたことには感謝してるからな。それじゃそろそろ行く」

 

俺はそう言うとドアをくぐった。

 

そういえば、あの自称神は名前なんて言うんだろうな?

 

まぁいいか

 

「君の大いなる旅路に幸があらんことを」

 

こうして俺、桜木 恋はサクラギ・レンになり新しい人生を歩み始めたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第1話:オラリオ

迷宮都市オラリオ

 

そこは広大なダンジョンの上に立つ迷宮都市

 

そこにはヒューマンや様々な亜人が富、名声、力を求め冒険者になるためにやってくる。

 

そして、サクラギ・レンこと俺もたった今、神を名乗る男に転生させられてこの地に降り立った。

実際にはオラリオの門の前だが。

 

俺は無事転生出来た事を確認すると自分の持ち物と服装を確認することにした。

 

持ち物は俺が自称神に転生特典として頼んだ不壊属性を付与された刀のみだった。

 

その刀は柄の部分から刀身まで全てが黒く染められた刀

俗に言う黒刀と言うやつだ。

 

服装は何故か学生服、学ランだ。

 

なんだよ、これあの自称神の趣味か?

 

まぁこれ以上ここに突っ立ってても目立つだけだしとりあえず、オラリオの中に入るか。

 

まずはファミリア探しだな、まぁ期待はしてなかったが案の定、金も無いし今日中に見つけられなかったら野宿だな。

幸いまだ時間も昼頃だし、ファミリア候補も幾つかはある。

 

そういえば、持ち物と服は確認したけどまだ顔を確認してなかったな。

まさかとは思うがこの学ランのように顔まで趣味で創り変えてないだろうな

 

学ランと同様、顔まであの自称神の趣味で創り変えられてはいないかと一抹の不安を覚え俺は近くにある建物の窓ガラスに自分の顔を写す。

 

そこには、黒髪に薄い紫の瞳をした桜木 恋だった頃の顔が写っていた。

 

顔は前世と同じか、あの自称神の計らいか?まぁ、下手に趣味で創り変えられるよりかは、遥かにマシだな。

 

とりあえず確認するべきことは確認したしファミリア探しをはじめますか!

 

俺のファミリア候補は2つ、そのうち1つは確実と言って良いほど入団が出来るだろう。

 

1つは迷宮都市オラリオでも最強の一角である、ロキファミリア

 

もう1つは原作のベル・クラネルが所属している零細ファミリアことヘスティアファミリア

 

まぁ、2つ候補があると言ってもヘスティアファミリアに入るつもりなんだがな。

 

理由は簡単でベル・クラネルの近くに居た方が原作の流れが分かり易いというのが理由だ。

 

ロキファミリアでも原作の流れが分からないことは無いがやはりヘスティアファミリアと比べると分かりにくい。

 

そんなことを考えながら俺はヘスティアファミリアのホームでもある教会に向かうのだった。

 

 

 

 

 

バベル最上階

 

「ふふっ・・・」

 

「どうかされましたか?フレイヤ様」

 

「ええ・・また見つけたのよ。あの子のような純白の魂を持った子とは違う。そうね、例えるなら純白の仮面を被った魂、その純白の仮面の下にどんな色の魂が隠れているのか私にも分からないわ」

 

女神フレイヤのその言葉を聞き、その眷属である都市最強と謳われる冒険者オッタルも僅かだが目を見開く。

主神であるフレイヤにも分からない魂の存在に。

 

「恐れながら、フレイヤ様が望むのならばその者をフレイヤ様の御前に連れてきますが?」

 

「それには及ばないはオッタル、あの子と同様様子を見るわ」

 

「かしこまりました」

 

こうして、サクラギ・レンは自身の預り知らぬ所でロキファミリアと並ぶとされる最強派閥の一角、フレイヤファミリアの主神であるフレイヤに目を付けられるのだった。

 

 

 

 

 

ところ変わって俺はヘスティアファミリアのホームである教会の前に居た。

 

「想像以上にボロいな、というかもう廃虚だな」

 

「ボロくて悪かったね!というか廃虚言うな!一応ここに僕は住んでるんだぞ!」

 

俺が教会の感想を独り言で口にすると後ろから俺の独り言に対する抗議が飛んできた。

俺が振り向くとそこには、ヘスティアファミリアの主神でもありロリ巨乳のヘスティアがそこに居た。

 

「ヘスティア・・・様?」

 

「そうだけど、誰だい君は?人様の家の前に突っ立ってると思いきやいきなり、人の家の悪口を言うなんて!」

 

ヘスティアは俺がホームの悪口をもとい独り言を言っていたことにご立腹のようだ。

それにしてもデカイどこがとは言わないがデカイ

 

「失礼しました。神ヘスティア

俺の名前はサクラギ・レンと言います。ヘスティア様の眷属になりたくてホームであるこの教会を訪ねました。」

 

俺がそう言うとヘスティアはさっきまでの怒気を沈め今度は顔を輝かせてこちらを見てきた。

 

「本当かい!僕のファミリアに入りたいと言うのは本当に本当かい!?」

 

「は、はい、本当です」

 

あまりのヘスティアの勢いに少し気圧されながら答えるとヘスティアは満面の笑みを浮かべ喜びを表した。

 

「やったぁぁぁぁー!!君で2人目の眷属だよ!

でも、どうして僕のファミリアに入ろうと思ったんだい?他にもファミリアいっぱいあるだろ」

 

俺がファミリアに入団出来ることに安堵しているとヘスティアは疑問を俺に聞いて来たので嘘の中に本当のことも交え話をする。

勿論、神に嘘が通じないことなど百も承知だが全てを嘘で塗り固めるより幾分かはマシだろう。

 

まず、嘘の部分はヘスティアが街でファミリアの勧誘をしていた事を聞いてファミリアに来たということ。

そして、本当の部分は俺が転生者で特に行く宛も無かったと言うこと。

 

主神であるヘスティアくらいは俺の事情を知っていた方が何かと都合が良いと思い話した。

 

ヘスティアも最初は信じて無さそうだったが、俺の話が本当だと言うことが分かると真剣な顔になり話を聞いていた。

 

「なるほど、事情は大体分かった。

まぁ、まだ嘘を付いていることはありそうだが一先ず納得はした。

なにはともあれ、君をファミリアに歓迎するよ!」

 

ヘスティアはそう言うと俺をホームの中に連れていきホームの案内をした。案内と言っても1部屋だけだが。

 

俺は内心、ヘスティアに感心していた。

ロリ巨乳などとバカにされていてもやはり、神なのだと俺の全てでは無いが事情を知った上でファミリアに入団を許した懐の深さに感心を抱いていた。

 

「もう一人の団員のベル君はまだダンジョンだから帰って来て無いよ。とりあえずレン君!君に恩恵を授けよう!上の服を脱いでベッドにうつむせになってくれ」

 

俺はヘスティアの言われる通りにする。

すると、ヘスティアは俺の背中にヘスティアがまたがり自然と俺は物理的にヘスティアの尻に敷かれる形になる。

これは良いな!なにがとは言わないが良い!

 

俺がそんな事を考えているとヘスティアが声をかけてくる。

 

「それじゃあ、恩恵を授けよう」

 

そう言うとヘスティアは自分の神血を俺の背中に落とす。

 

恩恵

 

それは人が神に至る為の切っ掛けでもあり、神々が下界を楽しむ為に許された数少ない神の力

 

その恩恵が今、サクラギ・レンに授けられた。

 

 

「終わったよ!」

 

「特に変わった感じはしないな」

 

「恩恵を授けられると力がみなぎる!とでも思ってたのかい。レベル1の恩恵なんて大したことはないさ」

 

恩恵を授けて貰った俺の感想にヘスティアはそう返す。

 

「よし!これで後はギルドに冒険者登録を済ませれば君もダンジョンに潜れるよ!」

 

「冒険者登録はもう明日にします。」

 

「その方が良いね。今から言っても録にダンジョンに潜れないしね。だが、レン君、君に1つ言っておくことがある。」

 

「なんですか?」

 

「ダンジョンに潜って強くなろうとするのは僕も出来る限り協力しよう。

ただ、ムチャだけはしないでおくれよ。

昨日もベル君、もう一人の眷属の子がダンジョンでミノタウロスに追いかけられて死にかけたんだ。僕はベル君もレン君、君も失いたくないだからムチャだけはしないでおくれ。」

 

「分かりました!出来る限りムチャはしません!」

 

今の会話でベルがミノタウロスに襲われたのは昨日と言うことが分かったということは今日の夜は豊穣の女主人でロキファミリアの件があるな。

 

ちなみにだが、俺のステイタスは一般のレベル1の冒険者と同じ0からのスタートだ。

 

俺がヘスティアと話を終えるとちょうどそこにベルが帰って来た。

 

「神様!ただいま戻りました!」

 

「おっかえりー!ベル君!」

 

帰って来たベルを見るなりヘスティアはベルに抱きつく、そこで俺に気付いたベルがこちらを見る。

 

「神様、お客さんですか?」

 

「ああ!そうだ!聞いてくれよベル君!二人目の眷属だよ!」

 

「えっえぇぇぇー!本当ですか!神様!」

 

ヘスティアの報告に驚くベルそこで俺もベルに挨拶をする。

 

「あぁ本当だベル君。俺の名前はサクラギ・レン

レンって呼んでくれ」

 

「分かったよレン!僕のこともベルって呼んでくれていいよ!」

 

「わかった。ベル、これからよろしくな!」

 

一通り、自己紹介を終えたあとベルはヘスティアにステイタスの更新をしてもらっていた。

 

ベルのステイタス更新を終えたヘスティアはどこか不機嫌になりホームを飛び出してしまった。

大方、自分以外が原因で発生したスキルでベルが成長するのが気に入らないのだろう。

 

「君達は二人で寂しく外食してくるといいさ!!」

 

「僕、なにか怒らせることしたのかな?」

 

「気にしても仕方がないさ、それより夕食食べに行くんだろ?」

 

「あっうん!今日の朝、酒場の店員さんと知り合ってその人に誘われてるんだ。レンも一緒にどう?」

 

「あぁ、お言葉に甘えさせて貰う!」

 

こうして、俺とベルは夜の街に繰り出した。

 

 

 

 

ギルド

 

そこには、オラリオに最初に降り立った一柱でもある神ウラノスとフードで全身を隠した男が居た。

 

「ウラノス、今日オラリオに何者かが転生の扉を開きこの世界にやってきたぞ。なにかしら対処しなくていいのか?」

 

「このオラリオに害を及ぼすならば対処をしよう、それまでは様子を見る。フェルズ、異端児達の存在は誰にも悟られては居ないか?」

 

「あぁ、今の所は問題無い。仮に悟られたとしてもすぐには手を出してはこないさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ここより物語の歯車が少しずつ動き出して行くことになる。

 

 

 

 

 

 

 



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第2話:ロキファミリアとの邂逅とお礼

ダンまちの最初の方の会話がうろ覚えなので、結構台詞が違うかもしれませんがご容赦ください。


ヘスティアに恩恵を貰い、俺はベルの誘い受けて豊穣の女主人と言う酒場に夕食を食べに来ていた。

 

「ここか?」

 

「うん、そうみたいだね!こういう酒場に仲間と来るの憧れだったんだよ!」

 

ベルはまるで幼い子供の様な表情をするので思わず、こちらも微笑まし顔を向けてしまう。

 

「店の前で喋るのも邪魔になるし、とりあえず入ろう」

 

「うん!」

 

俺とベルが店に入るとそこには、ダンジョン帰りの冒険者以外にもヒューマンにエルフ、その他にも猫人にドワーフなどの従業員が居る。

 

「「「「「ようこそ!豊穣の女主人へ!」」」」」

 

挨拶をする従業員の中には原作で見た顔も居るのが分かる。

実際に見てみると皆可愛いな!

 

俺とベルが従業員達の可愛さに見惚れていると、一人のヒューマンの女の子がベルに声を掛けてきた。

 

「ベルさん!来てくれたんですね!!」

 

「シルさん!はい!今日新しく同じファミリアになった仲間と来ました!」

 

「はじめまして!シル・フローウァです。」

 

「サクラギ・レンだ。今日からベルと同じファミリアで冒険者を始めた。よろしく頼む」

 

俺とシルが簡単な挨拶をすると、ベルと共にカウンター席に案内される。

 

そして、席に案内されてすぐに俺とベルの前に山盛りのパスタが置かれる。

どれぐらい、多いかと言うとペヤングの超大盛が3つ分くらいの量だ。

ちなみに一人でそれぐらいの量なので恐れいる。

 

ベルも急に置かれたパスタを見て顔をひきつらせながら何やら言っている。

 

「・・・ファミリアに蓄えもしておきたいからそれも考えないと」

 

俺も少し遠慮して食べるか、ベルに悪いしな

すると今度は、バカでかい魚が俺たちの前に置かれた。

 

「「・・・・・・」」

 

遠慮以前の問題だった。

この店は頼まなくても料理が出てくる。

 

「たりないだろ!今日のオススメだよ!シルから聞いてるよ二人共とんでもない大食いなんだってね!」

 

ドワーフの店主のその言葉に俺とベルは二人揃ってシルの方に顔を向ける。

ベルはともかく俺はついさっき会ったばっかだぞ!

 

「・・・テヘッ!」

 

すっごい可愛いけどこの時ばかりはシルの顔がどこぞの魔女の顔に見えた。

 

俺は溜め息つきベルの顔を見るとやはり顔をひきつらせている。

 

「・・・今日のオススメ・・800ヴァリス・・・」

 

「出された物は仕方がない。冷めない内に頂こう」

 

俺とベルが料理を食べ始めしばらくすると、シルがこちらにやって来た。

 

「どうですか?ベルさん、レンさん、楽しんで頂けていますか?」

 

「圧倒されてます」

 

「右に同じく」

 

「フフッ!今日の私のお給金は期待出来そうです!」

 

やっぱ魔女だ。

 

俺がシルのことを魔女だと再認識していると店の入り口から新たな客が入ってきた。

 

 

 

 

「ご予約のお客さまご来店ニャー!」

 

猫人の店員がそう言うと後ろに大勢の冒険者が続く

 

「おい、えれぇ上玉じゃねぇか」

 

「バカ!エンブレムを見ろロキファミリアだ」

 

 

 

 

 

 

 

ロキファミリア

 

迷宮都市オラリオで最強の一角を担うファミリア

 

【勇者】フィン・ディムナ

 

【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ

 

【重傑】ガレス・ランドロック

 

【凶狼】ベート・ローガ

 

【大切断】ティオナ・ヒリュテ

 

【怒蛇】ティオネ・ヒリュテ

 

そして、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン

 

数多くの上級冒険者が集う巨人殺しのファミリアだ。

 

 

 

ベルは予期せぬロキファミリアもとい剣姫の来店に顔を青くしたり赤くしたりと器用な事をしている。

信号機みたいだ。

 

 

すると、ロキファミリアの【凶狼】ベート・ローガが面白い話があると話始めた。

 

「よっしゃ!アイズ、そろそろ例のあの話してやれよ!」

 

「あの話?」

 

「あれだよ!17階層で俺達が逃がしたミノタウロスの5階層で助けたトマト野郎の話だよ!」

 

それを聞くと、アイズが少し顔を顰めたがベートは話を辞める気配はない。

 

「ミノの奴が奇跡みたいに5階層まで昇って行きやがってよ!そこに居たんだよ、いかにも駆け出しのヒョロクくさいガキが!そいつ、アイズが細切れにしたミノのクッセー血を浴びてトマトみたいになってやがったんだよ!そんでよ!家のお姫様、助けたトマト野郎に逃げられてやんの!」

 

ベートがそこまで話すと今まで苦笑いだった冒険者達も耐えきれないとばかりに笑いだす。

 

「フフッ・・ごめん、アイズ、さすがにもう限界フフッ」

 

「ブァッハッハ!助けた冒険者にも逃げられるアイズたんまじ萌えー!!」

 

「辞めろベート、17階層でミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。その少年に謝罪することはあっても酒の席で笑い者にしていい道理などない」

 

「あぁっ!ババア!弱いザコをザコと言って何が悪い!」

 

「やめんか、二人共酒が不味くなるわい!」

 

「あの子はまだ駆け出しの冒険者でしたミノタウロスから逃げるのは仕方がないと思います」

 

「あぁっ!ならアイズ!あのトマト野郎に言い寄られたらお前は答えるのか!答える訳ねぇよな!何よりもアイズ・ヴァレンシュタインがそれを許さねぇ!ザコじゃお前には釣りあわねぇよ!」

 

「ベート、君酔ってるね」

 

「少なくとも、そんなことを言うベートさんとはごめんです」

 

そこで、また多くの冒険者が笑いだす。

 

その瞬間、俺の横を白い影が通り過ぎて行く。

 

ベルだ。

 

「ミア母ちゃんの店で食い逃げなんて大層なやっちゃっなー!」

 

ベルの奴俺を置いて行きやがった。

金も全部あいつが持って行きやがったぞ、どうすんだよ

 

まぁ、これがベルにとって強くなる切っ掛けになったことは間違いない

とりあえず、あの狼にお礼を言いに行こう。

 

「ミアさん、お金は後日ベルと持って来るので見逃してくれませんか?」

 

「ダメだよ、家の店にツケ効かないよ。どうしても払えないなら体で返しな」

 

「それなら、お金の代わりに一時この刀を預けます。一応、不壊属性が付与されているのでそれなりの値段になるはずです。もし後日支払いに来なければこの刀を売ってお金に替えてください。」

 

ミアはその刀を手に取り見る

 

「はぁー、今回だけの特別だ。ただし、以後こういうのは無しだよ。」

 

「ありがとうございます。迷惑ついでにトマトを1つ頂けませんか?」

 

「・・・行くのかい?あんたレベル1だろう。勝てっこ無いよ」

 

「関係ありません。家族が世話になったんです。少しお礼をしてくるだけです。」

 

「店をあんまし荒らすんじゃないよ。このトマトと店のもん壊したらそれも料金に付けるからね。」

 

「重ね重ねありがとうございます」

 

俺はミアにトマトを貰い、ベートのもとに歩いて行く。

ベートは未だに笑っている。

 

そしてベートの真後ろに立った俺は、手に持っているトマトをベートの頭の上でおもいきり潰した。

 

その瞬間、酒場から全ての音が消えた。

 

 

 

「てめぇ、なんの真似だ」

 

「家族がお世話になったのでお礼です。極東にはお世話になった人にお礼参りをする習慣があると聞くので」

 

「てめぇ、あのトマト野郎の仲間か?」

 

「はい、そうです。俺が知る限りトマト野郎は目の前にも居ますがそれで間違いありません。」

 

「てめぇ、殺されてぇみてぇだな!何か言い残すことはねぇか!」

 

「そのトマトスッゴくお似合いですよ!!」

 

すると静寂が支配していた空間に先程と同じ笑いが起きる。

 

「ぶっ殺す!!」

 

「やめぇ!ベート」

 

そこで、俺に攻撃しようとしていたベートに制止の声がかかる。

 

声をかけたのはロキファミリアの主神ロキだ

 

 

「あぁ!ロキ、口出しすんじゃねぇよ!!」

 

「やめろ言うてるのが聞こえへんのか?何回も言わすな」

 

ロキが少し神意を出しベートを止めたことから流石のベートも拳を引いた。

 

「ちっ」

 

ベートが止まり、次は俺の方にロキが歩んで来て、俺の前で止まる。

 

「自分何してるか分かってるか?」

 

「はい、そこの狼にお礼をしました」

 

「はぁー、自分今のはうちが止めんかったら殺されても文句言えん立場やってんぞ」

 

そこで、ロキは俺にも少し神意を放つ。

 

「家族をバカにされて黙ってる糞野郎になるくらいなら殺されたほうがましだ!!」

 

周囲もまさか神の神意を向けられ大声で言い返すことなど想像にもしていなかったのだろう。

 

酒場の店員、ロキファミリアの冒険者、その他の客

 

先程まで俺に殺気を放っていたベートでさえ今は目を見開いている。

 

 

俺とロキが見つめ合う形になる、するとロキが溜め息をつき神意を引っ込めた。

 

「はぁー、もうええわ、うちの負けや。自分バカなやってよう言われるやろ」

 

「失礼な!そんなことないですよ!

それに、貴女が止めることは分かっていました。」

 

「なんやと?」

 

「いくら、こちらからケンカを吹っ掛けたと言っても、先にこちらの家族をバカにしたのはそちらだ、証人が居る以上、そこのベートさんがレベル1の俺に手を出せば如何にロキファミリアとは言え面倒ごとは避けられない。なので、様子を見てベートさんが手をだす前に貴方かそこの【勇者】さんが止めると考えてました。」

 

「なるほどな、それでもレベル1でレベル5のベートにケンカ吹っ掛けるんはバカやで」

 

「そこはまぁ、冒険者なんで度胸ですよ」

 

そこで、ロキは表情を変える、面白いものを見つけた時の表情に

 

「なぁ、話変わるねんけど自分、うちのファミリアに入らへん?」

 

そこで、周りに居たロキファミリアの面々は様々な顔になる。

 

面白そうにこちらを見る者

 

気に入らなさそうにこちらを見る者

 

この展開を予想しており溜め息をつく者

 

そんな中、俺はロキの誘いを断る

 

「申し出は有り難いのですがその誘いを受けることは出来ません。」

 

「やっぱりなー、そんな気はしとったけどまぁ、気が向いたらいつでも家においでや!レベル1でレベル5の冒険者にケンカを売るような面白い奴やったら大歓迎や!」

 

「はい、また機会があれば」

 

「そういえば、まだファミリアに誘ったんはええけど名前も聞いて無かったな!」

 

確かにまだ名乗っていないことを思いだし俺は名乗る

 

「俺の名前はサクラギ・レンです。所属ファミリアはヘスティアファミリアです」

 

「なぬっ!ドチビんとこかい!やっぱり今すぐうちのところに来い!」

 

「無理ですよ!そもそも今日恩恵貰ったばっかなんで改宗出来ません!」

 

「くっそー!ドチビの奴にこんなおもろい子は勿体ないわ!」

 

俺が溜め息をつきロキを見ていると今度はパルゥムの男性に話しかけられた。

【勇者】フィン・ディムナだ。

 

「サクラギ・レン君、こちらの団員の非礼をロキファミリア団長として謝罪する。」

 

「いえ、ケンカを吹っ掛けた時点でこちらにも多少なりとも責任はあるので別に構いませんよ」

 

「そう言って貰えて助かるよ、だが君がうちに来ないのは残念だ」

 

「すいません、今の家族を大切にしたいので」

 

「あぁ、分かってる、だがもしいずれこちらに来る気になったら歓迎しよう。」

 

「はい、ありがとうございます」

 

俺はフィン・ディムナとの会話を終えたあとミアやシルに謝り、後日支払いに来るといいホームに帰るのだった。



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