遊佐こずえ生誕記念 2019 (加賀翔太)
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遊佐こずえ生誕記念

こずえちゃんのあのひらがなだけの喋り方は親が虐待してるからでは?という説を見たのと誕生日が近かったから書きました。


「ママ・・・ごめんなさい・・・」

 

「うるさい!あんたが悪いのよ!」

 

涙ながらに少女は懇願するが、母親は殴打をやめる気はないようだ。

 

背中や肩などのあまり目立たないところを執拗に嬲る。

 

「本当に・・・なんでこんなに出来が悪いのかしら・・・」

 

母親は煙草に火をつけながら頭を抱える。少女は震えながら母親のほうをちらりと見た。

 

運悪く母親と目が合い咄嗟に視線を下にやるが、それが彼女の神経を逆なでした。

 

「何よその目は!!出来損ないのくせに!」

 

「ゲホッ・・・おえッ・・・」

 

思い切り腹を蹴り上げられた少女は嘔吐する。

 

水っぽいそれからは、まともに食事をとれていないことが想像できる。

 

「誰が片付けると思ってるのよ!」

 

髪をつかみ、耳元で怒鳴る母親。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

何かに憑りつかれたかのように謝罪の言葉を繰り返す少女。

 

「お仕置きが必要ね」

 

そう言うと母親は少女の服をめくりあげ、胸に一生消えない痕を作った。

 

 

 

俺がその少女と出会ったのは、桜の舞う4月だった。

 

よく晴れたその日に、俺は公園のベンチでうなだれていた。

 

以前から憧れだった芸能事務所に脱サラして入って2年。

 

新規プロジェクトの責任者に抜擢されてしまった。

 

責任者といえば聞こえはいいが、仕事内容はアイドルの原石である女の子のスカウトである。

 

「童貞の俺には女の子に声をかけることすら厳しいのに・・・」

 

俺―大石健一は30歳童貞のいわゆる賢者である。

 

ここ数日、もっぱらこの公園でサボっていた。

 

住宅街から少し離れたここはあまり人も来ず、サボりにはぴったりの場所だった。

 

「お、このおにぎりおいしい」

 

コンビニで購入した新商品のおにぎりを食べていたところ、視線を感じたため後ろを向く。

 

そこには小学生くらいの、ところどころ跳ねた髪の毛に、ふわふわした雰囲気の女の子が立っていた。

 

彼女はこちらにニコッと微笑むと、俺の隣に座った。

 

「こんにちは。学校は休み?」

 

「うん、たいちょうわるくてー・・・」

 

外見のわりに幼い言動の彼女が答える。

 

「体調悪いのに外に出て、大丈夫なの?」

 

「うん、へいきー・・・」

 

「お母さんは何も言わないの?」

 

「ママが・・・おそとにいろってー・・・」

 

変わった親御さんだと、その時はそう思っていた。

 

「ママはねー・・・よるのおしごとだからねてるー・・・」

 

「そっか、夜はお父さんと一緒なの?」

 

「ううんー・・・こずえひとりだよ・・・?」

 

その少女―こずえは少しうつむきそう答えた。

 

やってしまった。どう撤回しよう。うんうん唸りながら考えていると、おなかの鳴る音がした。

 

「こずえちゃん、お腹すいてるの?」

 

「ぺこぺこー・・・」

 

「このおにぎり食べる?」

 

「ありがとうー・・・」

 

言うが早いがあっという間におにぎり2つを食べてしまった。

 

「おじさんいいひとー・・・」

 

「ははは、おじさん・・・」

 

「?」

 

「何でもないよ・・・」

 

おにぎりを食べる彼女に見とれていた。

 

この子なら、新規プロジェクトにぴったりかもしれない。俺は名刺を取り出し渡した。

 

「こずえちゃん、アイドルに興味ない?」

 

「あいどるー・・・?」

 

「そう、胡散臭いかもしれないけど。どうかな?」

 

「いいよー・・・こずえあいどるするよー・・・」

 

「なら、お母さんに聞きに行こうか」

 

そう言って、彼女の家まで案内してもらう。

 

「ママ―・・・おきて―・・・」

 

「私起こすなって言わなかった?」

 

そういうが早いが彼女はこずえを叩こうとしたが、こちらに気が付き不機嫌そうに要件を尋ねた。

 

 

「はぁ?この子がアイドル?詐欺とかじゃなくて?」

 

「はい、最初は練習生として・・・」

 

「で、いくらかかるの?」

 

言葉を遮り、母親がキレ気味に聞いてきた。

 

「給料が事務所から出るので、入寮費の5万円だけ先に用意していただければ」

 

こちらも少しむっとして言い放つ。

 

「あっそ、5万でこの子を見ないで済むなら安いもんよ」

 

先ほどとは打って変わって上機嫌で、財布からぼろぼろの1万円を取り出す母親。

 

「売れなくてもそっちで面倒見て」

 

「親なのに・・・愛情とかないんですか?」

 

「は?そんな出来損ないに愛とかあるわけないじゃない」

 

震えながら、喉元まで出てきた言葉を飲み込む。

 

「行こう、こずえちゃん」

 

「うん・・・」

 

この子を必ずトップアイドルにしてやる!俺は決意を固めた。

 

 

 

半年後―こずえは天使すぎるアイドルとして、テレビで見ない日はないぐらい人気になっていた。

 

cmも5本持っている。最初の頃こそ浮いていたが、今では皆とも馴染んでいる。

 

「パパー・・・」

 

「こずえ、それシャレにならんからやめてくれ」

 

「?はーい・・・」

 

 

 

「会えないってどういう事!?私は母親よ!?」

 

警備員の制止を振り切り、彼女―こずえの母親が事務所に乱入してきた。

 

「会いたかったわ。さ、ママと一緒に帰りましょ?」

 

「ちょっと、どういうことですか?」

 

「あなたには関係ないでしょ!!こずえ、おいで!!」

 

「私にとっての親は、プロデューサーだけです。貴女が私にしてきた数々のこと、1つずつ言っていきましょうか?」

 

「こ、ずえ?」

 

「この前のドラマの・・・」

 

「く・・・覚えてなさいよ!!」

 

追いかけてきた警備員を振り切るため、窓ガラスをぶち破り母親が事務所を後にする。

 

「こずえ・・・さっきのって」

 

「ほんとのきもちだよー・・・」

 

「そうか・・・お前は俺が守るよ。父親として」

 

こずえを強く抱きしめ、自分にもこずえにも言い聞かせるようにそう言った。

 

 

 

 

2月19日

「こずえ、誕生日おめでとう!」

 

「ありがとー・・・」

 

「何か欲しいものとかあるか?」

 

「パパのお嫁さんになりたい」

 

「ガチトーンで何を・・・」

 

「ほんき、だよ?」

 

そう言いながら迫ってくるこずえ。

 

「そもそもまだ結婚できないからね」

 

不満げな顔をするこずえ。

 

しかし、ケーキを食べる頃には笑顔が戻っていた。

 

テレビを見ながらうとうとしていると、こずえが頭をなでてきた。

 

それが心地よくて、静かに目を閉じた。

 

願わくば、こんな日がいつまでも続きますように・・・




デレマスではこずえちゃんが好きです。あと最近出てきたりあむちゃん。
そんなこずえちゃんの生誕記念ということで勢いで書いてしまいました。
気が向いたら続くかも・・・
ブルウォの更新もそこそこにすみません。
山風ちゃん生誕祭が終わったら続きかきます。


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