カルトくん大好き娘の奮闘記 (カルトくん至上者)
しおりを挟む
転生したカルトくん大好き娘
………。
突然ですが、私は転生していました。
前世では売れない演技派女優(自称)だった私は常に無表情。
とにかく自分の感情などを覆い隠すのが得意だったのだか、それがいけなかったようだ。
人からは気持ち悪いと言われて遠ざかられ、同じ劇団員からは気味悪がられて。
劇団長からある日突然クビと言われて途方に暮れながらホームで電車を待っていると後ろから突き飛ばされた。
まばゆい光を見たかと思ったら、死んでいた。
まぁ、別にいいけどね。
女優人生が、夢が終わったから生きる気力が無くなっていたし。
でもね。
私が転生した先がハンターハンターの世界なのが問題だ。
何が問題かというと、もちろんあれだ。
大好きなマンガの世界に転生って最高じゃね?ってことだよ!
しかも、好きなキャラに会える!
私が超絶大好きなカルトくんにも会える!
出来れば、け、けけけけ結婚も……!
そう思うと、私はいつもの鉄仮面を崩してにやける。
現世の私の名前はサリア=イスマルク。
生まれた時から精孔が開いていた才能溢れる4歳ほどの女の子だ。
とはいえ、師匠が居ないので念は全く使えない。
そして、今現在居るのは流星街。
そう、私は流星街に捨てられた子に転生したのだ。
腐りかけのご飯を食べていたサリアの中に降って湧いたように……というか、憑依転生したのだと思う。
幸い、サリアの記憶は残っている……というよりはサリアの人格に私の人格が上書きされたという感じだ。
記憶を少し遡ると、死ぬ前の私と同じだということが分かった。
生みの親から捨てられ、食料も確保が下手なようで腐っている物が大半。
何も食べられない日もあるし、腐りかけの物を手に入れられれば上等という暗い日々。
生きる気力を無くし始めていたのだ。
というより、今食べて腐りかけのサンドイッチもどきが最後の晩餐で死のうとしていたのだ。
そこまで分かったところで私は記憶を探るのをやめた。
サリアには悪いが、私はサリアとしてこの世界を生きる。
だって、ハンターハンターの世界だよ?
念だって訓練すれば使えるようになるんだよ?
生きてくしかないでしょうよ!
腐りかけのサンドイッチを噛まずに呑み込み、風味や口に入っていた物の味が原因の吐き気を抑え込んで立ち上がる。
この程度、カルトくんに会うためと思えば何のそのだ。
とりあえず修業だ。
最高なのは幻影旅団に師事することだが、贅沢は言っていられない。
まずは自主練だ。
体を鍛えて、自力で試しの門を開ける程度には強くならないと!
幸い、女優として衣装やら何やら重い物を背負いながら激しく動くこともあったから、体の線に影響しないように筋肉を付けるやり方は知っている。
これでカルトくんに相応しい実力と、カルトくんに引かれない筋肉作りをする!
そして1秒も無駄には出来ないので漫画の知識を使って念能力も並行して訓練もする。
最初は全く出来なかった筋トレだが、時間が経てば経つほどにどんどん回数が出来るようになっていくが、その分お腹が空くので筋肉を作るタンパク質を取る為に腐っていようがなんだろうが肉や魚を集めて我慢して食べる。
ずっと似たようなものを食べてきたからか、体は大丈夫だったが精神的に辛かった。
だが、これもカルトくんに会うためだ。
筋肉痛だろうとこれを毎日続け、気付けば3年の月日が流れていた。
(うん、結構身体能力が上がってきたんじゃないかな)
その集大成は、前世では考えられない程に高い身体能力だ。
念も基本となる四大行は完璧、応用技の中で比較的簡単な周、隠、凝は二流程度、複合技の堅、円、硬は少し、流は見てられない。
というか、流が難しすぎる。
まぁやりますけども。
円は得意なようで、初回は3m行けた。
その分、他の応用技と複合技は駄目だけどね!
そして筋トレと念の修行を行ってヘトヘトになった私は、慣れてしまった腐りかけの肉をかじりながらゴミ山の上に寝転がる。
「いい風だなぁ……」
前世も含めて、私は昔から風を身に受けるのが大好きだった。
何か嫌なことがあれば小高い丘とかに登って風を感じてから気分を切り替えたものだ。
死ぬ前も山のある場所に移動して風を受けようと思っていたのだが、その前に死んでしまったからそれが未練といえば未練ではある。
この世界の風も悪くはない……悪くはないが、場所が悪い。
ゴミ山なので当たり前だが、風に乗ってやってくる鼻につく臭いが凄まじい。
「そろそろ外に出る方法考えないとなぁ」
修行をし続けた3年間で、カルトくんへの愛が昇華されてしまい、私はもう許嫁を目指していた。
キキョウさんも流星街出身でシルバさんの奥さんになってるんだから、ワンチャンあるはずだ。
勝手に出て行ってもいいのだろうが、外で生活するための金がない。
「……スリをしながら行こうかな」
「ガキの癖にいい根性してんじゃねぇか」
そう呟いた時、真後ろで声がした。
慌てて振り返ると、そこには巨体で毛深い大男が笑みを浮かべて立っていた。
ウボォーギンですね、分かります。
って、なんでウボォーギンがここに!?
「あ、えと……おじさん、だれ?」
「俺はウボォーギン。久々にここに戻ってきたらそれなりだが念が使える奴がいるじゃねぇか」
そう言うとウボォーギンは好戦的な笑みを浮かべる。
いやいやいや、こちとらまだ年齢1桁の幼女だぞ。
どんだけ好戦的なんだこいつ。
とりあえず、見た目通りの幼女を演じてやる。
「ねんって、なに?」
「とぼけんなって言いたいが、なるほどな。生まれながらに精孔が開いてるって奴か」
「……おじさんもこれみえるの?」
指を1本立て、オーラを変化させて数字の6を作るとウボォーギンは頷く。
「6だろ。見えるぜ」
「そっかぁ。わたしだけじゃなかったんだ」
流星街に念能力者は多くないようで、少なくとも私は一度も会ったことがない。
となると、一時的だが幻影旅団に身を寄せるのもいいのかもしれない。
出る手段にもなるし、金もあるだろうし、師事するには最高の環境だ。
「他に何が出来る?」
「いっぱい。ぜんぶやろっか?」
「あぁ、見せてみろ」
ウボォーギンに言われ、今の私の全てを見せた。
それを見たウボォーギンに連れられ、私は流星街を出て幻影旅団へと身を寄せることとなった。
中々の拾いもんだな。
俺は素直にそう思っちまった。
久々の育った流星街に足を踏み入れてみたら、円を感じたので様子見で隠で見に行くとどうだ。
まだちっこいガキがゴミ山の中で念の練習をしてやがった。
しかも、師匠らしい奴もいやしねぇのに基本の四大行だけじゃなく硬に堅の応用技。
果てには流までやって見せやがった。
流石に発は出来ねぇようだが、それでもチビにしては強い。
こいつを俺らが育てたらどこまで強くなるのか。
そう思うと、俺はこのチビを連れて帰ることを決めてそのまま隠でチビの背後に立った。
気づくかと思ったが、気づいていない。
円はしてないしチビだから仕方ねぇかもしれねぇが……まぁいい。
「……スリでもしながら行こうかな」
「ガキにしてはいい根性してんじゃねぇか」
どこに行こうとしてるのかは知らねぇが、盗賊らしい言葉を吐きやがったので何が何でも連れて帰るぜ。
こいつはぜってぇ強くなる。
そして強くなったこいつと全力でやりあう。
想像しただけで楽しくなっちまうぜ。
「それで?」
「拾ってきた」
「拾ってきた、じゃないだろ」
全てを見せた後、ウボォーギンに首根っこを掴まれて(文字通り)連れて行かれた先には幻影旅団の団長クロロ・ルシルフルとパクノダとフィンクスが居て、今現在勝手に連れてきたウボォーギンが怒られていた。
いや、怒られているというよりも勝手に私を連れてきたことをフィンクスが咎め、ウボォーギンは悪びれずに説明してフィンクスに頭を抱えさせるという謎状況になっていた。
「パク、とりあえずそいつに風呂に入れて来い」
「えぇ、分かったわ。あなた、名前は?」
「さりあ」
「そう。サリア、お風呂に入りましょうか」
「おふろ?」
「えぇ。温かいお湯に入って体を洗うのよ」
すっとぼけると、パクノダは優しくそれがなんなのか教えてくれて、そのまま手を引いて案内してくれた。
そしてそのまま私の体を洗ってくれる。
本当に優しい人だ、パクノダさんは。
罪悪感が凄まじいがこれもカルトくんに会う為だ。
そう自分に言い聞かせながら、されるがままにされる私。
全身を何度も洗って頑固なものから染み込んだものまで全ての汚れを落としたパクノダから湯船に入って100数えたら出るように言われ、私はそのまま子供のふりをしたまま100を声に出して数える。
ちゃんと数えてから出ると、タオルと子供服が用意されていたのでそれを使う。
服を着て脱衣所から出ると、パクノダが居て今度も手を引いてくれてクロロたちが居る場所へと戻った。
すると、もう解決したのかクロロは本に目を落とし、フィンクスは好意的な笑みを浮かべていた。
「よぉ、ガキ。お前をどうするか決まったぜ」
ウボォーギンは楽しそうに話す内容は、彼らが幻影旅団であるなら当然なものだった。
「お前は俺らがの誰かが欠けた時の為の予備。要らなくなったら殺す。それまでは正団員に相応しい力量になるように俺ら全員で育て上げることになった。何か文句はあるか?」
「……いっこだけ」
私がそう言うと、ウボォーギンは眉をひそめるが気にせずに私は文句を言った。
「このふくきらい」
直後、本を読んでいたはずのクロロも含めた全員の笑い声が本拠地に響き渡った。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
カルト大好き娘、幻影旅団に弟子入りする
目の前に迫る刀を全力で避けると、息つく暇も無く迫ってくる蹴りを腕を交差させた上に堅を使ってダメージを軽くする。
それでも腕は軋み、そのまま数メートル吹っ飛ばされる。
(軽くしてもこれか!)
心の中で悪態つくが、バク転してすぐに態勢を立て直すが相手は手練中の手練。
一瞬で距離を詰めてきており、刀が無慈悲に振り下ろされる。
私が腕で防ぐ前に刀は頭に激突し、私はカナヅチで殴られたような衝撃を受けて一瞬動きを止める。
そこへ容赦ないみぞおちへのトゥーキック。
「がっ……」
息が出来なくなり、思わず前かがみになった所で蹴り上げ。
「そこまで」
それがヒットする前に模擬試合が終了した。
「確かに、この年のガキにしてはよく出来てるな」
「だろ?」
刀を持った相手……ノブナガが刀を納めながら感想を言うとウボォーギンがにぃっと笑みを浮かべる。
「それで、この子があたしたちの予備ってのは本当なの?」
「あぁ。あのウボォーが目をかけた奴だ。中々だろ」
「本当に強くなるかわからないね」
「私たちが育てればそこそこいけるんじゃないかな」
「ボクもそう思うよ♠」
「俺もだ」
「要らなくなったら殺すんでしょ、なら別にいいんじゃない?」
「まぁね」
危険度Aクラスの賞金首集団の幻影旅団。
最強最悪の盗賊たちで、熟練のハンターですらうかつに手が出せない実力者たち。
そのメンバー全員がここに集まっていた。
その前で、サリアはノブナガと実力を知るための模擬試合をしていたのだ。
「反対の奴は居ないな?」
クロロが全員を見回すと、とりあえずはという顔の団員も居るが全員が頷く。
こうして、私は幻影旅団の予備要員として彼らに育てられる事となった。
要らなくなったら殺されるが、その時になったら逃げ……られないだろうけど頑張って逃げる。
本拠地を知ったメンバーじゃない奴を生かしとくほど優しくないだろうけど。
「サリアの特訓方法だが、お前らの意見は?」
クロロの問いに全員が一斉に考え出す。
「流が得意じゃないみたいだけど、まずはオーラ量と出せる量を上げないとね」
「となると堅がいいか。サリア、俺がいいと言うまで堅をしろ」
「……けん?」
「おい、誰かこいつに念について教えてやれ」
面倒くさく思ったクロロが匙を投げ、匙を受け取ったパクノダが念について懇切丁寧に教えてくれた。
オーラが拡散しないようにするのが纏、オーラを絶つのが絶、体内で練って通常以上にオーラを生み出すのが練、オーラを自在に操るのが発。
纏の応用で物にオーラを纏わせるのが周で、絶の応用で自分のオーラを見えにくくするのが隠。
練の応用でオーラを体の一部に集めて増幅させるのが凝。
纏と練の応用で、練で増幅したオーラを維持するのが堅。
次も纏と練の応用で、オーラを自分を中心に半径2メートル以上広げて1分以上維持するのが円。
纏、絶、練、発、凝の複合で凝と同じように特定部位に集めるが、絶を使う事で集中量を増大させたのが硬。
凝をさらに応用し、オーラを移動させて集中する行為を素早く行い、かつ集中する量を意識的にコントロールするのが流。
これが念の全てだという。
「分かったら、とっとと堅をしろ」
「はぁい」
返事をすると、クロロが近づいてきて拳骨を振り下ろした。
「はい、だ」
「はい゛」
流石に硬はしていなかったが、堅を解いていた私にはそれでも十分に痛い。
もう一度ぶたれ、はいとちゃんと言ってから堅をする。
3年間の修行で、持続時間は33分。
ビスケのそれなりの実力者を相手にするのには十分だが、クモが求めているのは最低でも一流。
「同じ女でパクとマチとシズク……後は連れてきた責任でウボォー。堅以外にも色々と面倒を見てやれ。堅が1時間ほど持続出来るようになったら水見式をしてみよう」
その内容に私は当然だなとは思うが、こちとらまだ1桁(恐らく)だ。
絶対に幼児虐待に当てはまるだろう。
なので、知ってはいるが私のパクノダさんに尋ねる。
「……ぱくおねーちゃん、あーいうひとってなんていうの?」
「そうね……鬼、かしら」
「おにー、はげー」
「いい度胸だガキ。覚悟しろ」
ちょっと追加で言っただけなのにこの有様だよ。
いつも冷静沈着のクロロさんはどうした。
逃げたがすぐに捕まり、堅をしなければ顔が潰れるぞと言われて硬をした拳で顔を何度も殴られた。
仕返しに硬をやった足で金的をお見舞いしてやった。防がれたけど。
とにかく幼児虐待反対!
30発ほどの拳を顔に叩き込まれた辺りでパクノダさんに他の修行もしないとと言われてようやく抜け出すことが出来た。
パクノダさんありがとう。
でも、もうちょっと早く助け舟出してくれたらもっと嬉しかったよ。
「そいつの世話は任せたぞ」
「えぇ」
クロロはそう言うとシャルナークとフランクリンを連れてどこかへ行ってしまう。
それに続いてヒソカも出ていき、ボノレノフとコルトピも出て行く。
残ったのはマチ、パクノダさん、フェイタン、ウボォーギンにシズクとフィンクスとノブナガ。
およそ半分だ。
マチとパクノダさんとシズクにウボォーギンはクロロから言われたから、フィンクスはお風呂入ってから歓迎ムードだったから分かる。
でも、ノブナガはともかくフェイタンが残ったのは驚きだった。
てっきり、さっさと出ていくと思っていたのに。
「殺す時は言うね。ワタシが拷問して殺すよ。いつでも準備出来てるね」
「まだ始めたばかりでしょ……」
それで残ったのかぁ!
パクノダも同じことを思ったのか頭を抱えている。
マチは応急処置と言って傷口を縫ってくれた。
シズクは何かの本を読んでいてこちらに関心すら寄せてくれない。
ウボォーギンはノブナガと一緒に酒盛りをし始めた。
おいこらウボォーギン。
「それじゃ流の修行に入りましょうか。全身にオーラを残しつつ出来るだけ早くオーラを一箇所に移動させるのよ」
「はーい」
パクノダの指示で流の修行を始める。
堅から拳を伸ばしながら少しずつ手へとオーラを集めていく。
これをゴンは初めてやって13秒だったが、私は1分かそこらだ。
つくづく凄まじい才能だと思い知らされる。
「上出来じゃない。次は蹴りを放ちながらよ」
これらを何度も繰り返す反復練習。
そこからは本当に地獄のような毎日だった。
基本は優しいパクノダだが、ちょっと厳しいけど優しいマチの時もある。
この2人ならまだ大丈夫だが、シズクは天然で加減知らず。
諸悪の根源ウボォーギンに至ってはここでこうとか抽象的。
ノブナガは念ではなく実戦形式で稽古を付けてくれる。
フェイタンは嬉々として嬲り痛めつけてきて、その度にマチにお世話になっている。
クロロは帰ってきても本ばかりを読んでいるし、フランクリンはシャルナークとコルトピの3人でトランプやチェスをして時間を潰していた。
たまにこっちを手伝ってくれるけど、あくまで暇潰しなようで軽くである。
毎日ぐったりで眠りにつき、そして途中で団員の誰かに急襲されて危機感知能力を高められたり。
とても大変だったが、メキメキと上達していくのが分かるので感謝しかない。
ただしフェイタン、テメーは駄目だ。
乙女の柔肌を傷つけやがって……カルトくんに会う前にキズモノにする気か!
マチが居なければ跡が残ってたぞ!
結果、ウボォーギンに拉致られて3年経ったくらいで全員から「相性の問題もあるが、1対1ならメンバーの誰が全力で戦っても1分くらいは持つ」というお墨付きをもらえる程にはなった。
あ、ちなみに水見式で調べた系統は変化系だった。
水が何も変化せずに驚いたが、舐めようと指を突っ込んだら焼けた。
指が真っ赤になり、悶えているとフェイタンが私にそれをぶっかけてきた。
目だけは防いだが、顔全体はもちろん鼻や口に入って燃えるような痛さで悶絶し、マチが指にとって舐めて辛いと言ったので変化系だと確定した。
系統が分かってからは、同じ変化系のフェイタンと帰ってきたヒソカも師匠に加わった。
私としてはノーサンキューだったけど。
フェイタンとヒソカには変化系の特殊技について教えてもらった。
とはいってもこれは全系統に通ずるもので、フィーリングが大事で「自分に合ってる」という認識があるのなら最高なのだという。
「わたしにあってる……」
「そう♣ オーラゆえの流動性を生かした能力が多いよね♦」
「お前と同じ意見なのはしゃくよ。でもそういうことね」
「りゅーどーせー……かぜもりゅーどーせー?」
「そうだね♠」
変化系は自分のオーラの性質や形状を変える能力。
変化系と分かった時、私は何故か頭に風がイメージされていた。
「かぜがいい」
「風か。なるほどな……そいつはいいな。内容を詳しく詰めろ。実戦レベルで使えるようにするには制約と誓約が必要だろうからな」
クロロに言われ、修行をしながら数日間私は精一杯考え、色々と制約と誓約を付けて能力は完成した。
オーラを風に変えて、自由自在に操るだけの能力だ。
だが、風を全身に纏わせれば銃弾を弾くくらいの防御力を得る事が出来るし、オーラが続くまでだが飛行することも出来るし、背中から噴射させれば高速移動も出来る。
相手を動けないようにすることも出来るし、窒息させることも出来る。
汎用性が高い能力だ。
それを発表すると、クロロがいきなりほざいた。
「ウボォー、少し本気でサリアを殴ってみろ」
「殺す気でか?」
「あぁ。だが
「え」
「りょーかい」
驚く私を他所にウボォーギンは拳に力を貯めていく。
「何をしている。お前は能力と堅で防御だ。両立させないと恐らく死ぬぞ」
「こ、このおにー!」
「行くぜオラァ!」
「ウギャー!」
出来てすぐの能力を使ってオーラを風にして全身に纏わせ、さらに堅も使う。
そしてウボォーギンの巨大な拳が飛んできた。
気付けば、私は宙を待っていた。
そのまま床に落ち、何度かバウンドしてから壁に叩きつけられる。
全員が私を見る中、私は何事もなかったように立ち上がる。
衝撃らしい衝撃はほとんど感じなかった。
せいぜいが肩ポン程度だ。
「殴った感触はどうだ?」
「サンドバックを殴った感じだな」
「殴られた方はどうだ」
「ぜんぜんいたくない」
「なるほどな。衝撃も全く感じていないようだ……となると、今のサリアは堅の上にエアベッドがあるようなものなのかもな」
汎用性が高い能力だと呟き、同時に欲しいとも言う。
あげないよ、私の能力。誰がやるもんか。
「まぁ合格でいいんじゃないの?」
「ワタシも賛成よ。予備でなら使えるようにはなたよ」
「俺も賛成だ」
「私も」
次々と賛成の声が上がり、クロロも賛成のようで頷いた。
「良いだろう。サリア、お前を予備要員として認めてやろう」
「ありがとーございます」
こうして、私は幻影旅団団員(予備)となった。
最後に身元証明の為にハンター試験を受けて来いと言われ、私は保護者をパクノダにしてハンター試験を受験しに行くことになった。
その前にクモのルールを叩き込まれる。
そして出発日には連絡用として携帯を持たされ、マチからは前から強請っていた白いミニスカドレスとコルセットにブローチ……はい、とある魔術結社のボスであるドS美少女の服です。
こういう服に憧れてたんだよねー。
前世ではコスプレにしか見られない服装だが、この世界では普通に服として見られるので気兼ねせずに着れる。
しかも、今は幼女なのでちょっと背伸びした幼女だと思われるだけだ。
「ありがと、まちおねーちゃん!」
マチにお礼を言い、隣の部屋に行ってから着替える。
見た目は幼女でも、心は女性!
マチが作ってくれた服はサイズピッタリで、スカートも絶対領域がちゃんと成されている。
グッジョブ、マチさん。
全員にお披露目をし、似合ってるじゃんと言われて少し照れてしまった。
だが、フェイタンとクロロ。
お前ら「馬子にも衣装」って言ったな。覚えてろよ。
怒りを飲み込み、子供らしい笑顔を浮かべて出発の言葉を告げた。
「いってきまーす!」
目次 感想へのリンク しおりを挟む