元勇者。現代日本でJKやってます (猫ニャンニャンニャンニャンニャン…etc)
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プロローグ①
強力な魔法が飛び交い、鋭い剣戟が辺りに響き渡る。
噎せ返るほど濃密な闇の魔力が漂う魔王の根城。
「はぁはぁ……」
剣を支えに、一人の青年が息を荒げて膝を付いていた。
限界などと言う段階はとうに過ぎ去り、青年の骨は軋み、筋肉は悲鳴を上げている。
息を荒げる青年はボロボロで、鎧は一部が砕け散り、その隙間から血を滴らせている。
朦朧としていく意識。
その中で想起されるのは、辛く厳しいここまでの道のりだ。
悲しい時。嬉しい時。
そして、仲間達との絆。
だが、その冒険もそろそろ終わりが見えてきた。
青年は想いを胸に力を全身に込めて立ち上がろうとするも、しかしピクリとも身体は動かなかった。
焼けるように体中が痛い。
グラグラと暗転とする視界。
剣の柄を放してしまいそうになったその時、後ろから鈴のように柔らかく、されど芯の通った声が青年にかけられた。
「勇者様…これが最後です! 主よ……ッ! 我らに癒やしを…キュアヒーリングっ!!」
後方で聖女がボロボロに成りながらも最後の回復魔法を唱えた。
送られる温かな光が青年を包み込み、再び戦う力が湧き出してくる。
「ありがとう……ラシル……」
青年はヨロヨロと立ち上がり、再び剣を構えた。
「俺はまだ……戦える……ッ」
今こそ決着の時!!
痛みを無視し、青年は全身に魔力を
それに勇者の回復する時間を稼いでいた仲間が気が付いた。
「!…戻ったか勇者殿! 早くしろ! もう長くは持たんぞ!!」
魔王の鉤爪を打ち払いながら剣聖が叫んだ。
「勇者…! 頼んだ…!!」
魔王へ強力な魔法を打ち込む大魔導士が叫んだ。
「勇者様……どうか世界に平和を…!!」
地面に倒れ伏す聖女が力なく叫んだ。
そうだ……! 俺が…! 俺達が…!
……終わらせるッ!!!
「はぁぁ……【雷鳴纏化】!!」
決意と共に青年から
髪の毛が逆立ち、青年の身体を激しく波打つ青白いオーラが覆う。
同時に、青年の持つ聖剣も雷の魔力を帯び、周囲へバチバチッと威嚇するように青い稲妻が迸った。
「魔王ッ!! これで最後だッッ!!!」
魔王の紅い瞳がギョロリと青年を捉える。
全身を青黒い血に染める魔王は、片目が潰れ、頭部にあった二本の角が折れ、4本ある腕の内の1本を黒ずんだ煤の塊にしていた。
まさしく満身創痍と言った様相。
しかし、未だ蠢くように溢れ出す闇の魔力は激しい戦闘に衰える事を知らぬようであった。
『これで最後……だと?』
喉から底冷えのする笑いをクツクツと魔王が上げた。
魔王の全身から闇の魔力がゴオッとさらに激しく迸る!
「ぐおぉっ!」
魔王に斬りかかろうとしていた剣士が魔力の余波に吹き飛ばされ、巨大な柱へ砂煙を上げながらめり込んだ。
「まだ…これだけの…力が……」
絶望したように呻く魔法使いが杖を手放す。
その隙を見逃す魔王ではない。
すかさず呆然と立ち尽くす魔法使いへ炎の魔法を打ち込んだ。
「ああぁぁああぁぁぁ!!!」
着弾した魔王の炎の球は柱となり、魔法使いを飲み込む。
「魔王ッ!! 貴様ァァ!!!」
青年の怒りに呼応するように周囲へバチバチと雷鳴が轟く。
青年は音を置き去りにして魔王へと斬りかかって行った。
魔王が口から凍てつく吹雪を吐き出すも無視して青年は突っ切った。
「でああぁぁぁ!!!」
ガキンッッ!!
吹雪を切り抜け剣を振り下ろすも、しかし渾身の一撃は魔王の魔術防壁に阻まれる。
『その一撃……、最後の一撃と見た。我が手中で
「まだだ…! 魔王ッ!!」
青年は凍り付き霜が降りた身体を酷使し、無理やり力を込めた。
「ああああぁぁぁ!!!」
ビキリ……と魔術防壁にひび割れが入る!
『グヌゥ…! 馬鹿な…! これが勇者……!!』
魔王が修復しようと腕を掲げて魔力を込めるものの、ひび割れは留まること無く広がっていった!!
『我は終わらぬ……!!』
そう叫んだ魔王の胸部が膨らみ、口から熱風が漏れ出す。
灼熱の炎が来る……!
そう直感した青年は、血を吐き出しながら咆哮し、さらに力を振り絞った。
「ぐああぁぁぁ!!」
次の時、魔王の口から業火が吐き出され、それに数瞬遅れて魔術防壁が小気味の良い音を立てて割れた!
灼熱の炎が迫る。聖剣が魔王の脳天へ吸い込まれる。
その瞬間、空間が崩壊した。
文字通り崩壊していき、バラバラと虚無を押し広げるように空間が崩れ落ちていったのだ。
そこへ青年は炎に焼かれながら落下していき……
…………
…………
…………
ジジジジジジジジジジジジ………
目が覚めた。
モソモソと布団から細く白い手が這い出す。
「……またこの夢か」
少女は枕の横に置いてあるスマートフォンのアラームを
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プロローグ②
ベッドから這い出た少女は、クローゼットに仕舞ってある高校の制服を取り出す。
ワイシャツを着て、スカートを履き、リボンを付け、ベストを装着し、最後に黒いニーソを履いた。
そのまま少女は2階にある自室から出て、1階のリビングへ降りて行く。
リビングの食卓には少女の父親がスーツ姿で座っていて、コーヒーを啜りながらニュースを見ていた。
その様子をチラリと横目に見た少女は、そのままテレビの前に立ち尽くし、ボーっと父親と一緒にニュースを眺め始める。
「何やってんの
すると母親がキッチンから慌ただしく出てきて少女、もとい
朝食はクロワッサンであった。
これボロボロするから嫌なんだよなぁ……。
まぁ、もちろん前世で食べていたものよりは断然マシなのであるが……。
我ながら舌が肥えたものだ。クロワッサンも小さい頃は凄くおいしい、くらいしか感想がなかった気がする。
「そろそろ出る」
母親がひょっこりとキッチンから顔を出す。
「いってらしゃい。忘れ物は大丈夫?」
「ああ」
そのまま
「
「ん」
母親の矛先がこちらを向いたので
父親が家から出ていく音を聞きながら、最後の一欠けらを口に放り込むと野菜ジュースと一緒に胃に流し込む。
「ごっそさん」
立ち上がり、洗面所へ向かおうとすると兄がリビングに入ってきた。
「母さん、俺のメシある?」
兄の髪はいつも通りにボサボサで、眼鏡越しに見える目には隈がある。見るからに不健康そうな見た目だ。
「あんたは暇なんだから自分で作りなさい」
「えぇ……生活費とか多めに入れてるし良いじゃんか」
「黙れニート」
そのやりとりを無視して
唯一の生命線はネットのサイト運営で稼いだ生活費を家に入れていることであるが、それでも自立出来ていないことへの両親の不満は大きい。
洗面所に入った
それは俗にいうツインテールというヘアースタイルだった。
用事を終えた
そこには小柄で気怠そうな表情をした少女が居た。
日本人ばなれした碧い瞳に艶めく金髪。そして透き通るように白い肌。
形の良いくっきりとした眉からは少しの凛々しさを感じられた。
しばらく
思わず鏡に手を添えて、
「オレは世界を救えたんだよな……?」
その瞬間、ぼんやりとしていた焦点が合わさり、かつての自分はフワリと消え失せた。
鏡の中の
それを自覚した
「くだらない……」
そうだ。オレにはもう関係ないんだ。
本作の主人公である『
元勇者で元男。
【挿絵表示】
Picrewの『かわいいおんなのこメーカー』を利用。
実は小説を書く切っ掛けがこのメーカーで勇者っぽい女の子を作ってみよう、と言う考えだったりします。
他にも髪を下ろした普段着スタイルと羞恥しているメイドスタイルがありますが、こちらは物語が進んだら掲載する予定です。
自分が調べた感じ大丈夫そうでしたが、メーカーの関係者に注意されれば掲載は取りやめるつもりです。
以下は『かわいいおんなのこメーカー』のリンクになります。
LINK:https://picrew.me/image_maker/16952
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歯車と歯車
しおりの分布などによっては、そのうち分割して2話にするかも知れません…。
金色のツインテールを靡かせて一人の少女が電車からホームへ降り立った。
小柄な少女はセーラー服を着た小学生のようで……。実際、146センチしかない彼女はよく小学生に間違われる。
彼女が初対面の人間とする会話は、身長の話題かハーフなのかと言う話題になる可能性はうんと高かった。いや、初対面でこの話題にならなかった事はもしかしたら一度も無いのかも知れない。
そんな彼女の名前は
現在、岩津高校に通う高校2年生。
かつては人類最後の光として闇の勢力に立ち向かった異世界の勇者である。
生前に身に着けた魔法などの技術は使えるが、だからと言って漫画のような事件に巻き込まれる訳でも無く。
背が低くてハーフでもないのに金髪碧眼と言う大きな問題点はあるものの、
そして春の温かさと平和の有難さを噛み締めながら、今日と言う
……はずであった。
ガラガラガラ。
引き戸を開けた
時計はホームルームまで残り五分を指しており、いつも通りの時間。
普段よりも何故か大きい教室の喧騒を聞きながら、カバンを仕舞うと
そして
「おはよ、
「おはよう」
すると、その少女は微笑んで
眼鏡をかけたショートボブの少女。
見るからにおっとりとした雰囲気で、漂う優しいオーラからは柔らかな母性を感じる。
身長は
彼女の名前は
その見た目通り
以来、昼食などは
所属人数の少ない文芸部への入部を彼女から促されたりもして、
「今日は騒がしいけど何かあったのか?」
「うん…なんかね、転校生が今日このクラスに来るらしいよ」
「転校生?」
「こんな時期に? まだ5月の中旬だぞ?」
「うん…私も変だと思う。でも噂によれば高級車で登校していたみたいだし、家庭の事情とか凄いんじゃないかな?」
「こ、高級車で登校……。何処の世界の住民だよ。それって噂が独り歩きしてるだけじゃないだろうな?」
「あはは…かも知れないね。私も聞き耳立てててただけだし……」
他にも聞けば、凄い美少女でモデルのようなスタイルをしているらしい。
どんどん噂の信憑性が怪しくなってきている。
「まぁ、何にせよ本人が登場すれば全て明らかになるか」
するとチャイムを聞いたクラスメート達が疎らになって自分の席へ戻っていった。
少しして担任の教師が教室に入ってくる。
名前は黒沢である。
「突然だが今日はお前らに報告がある」
教室が少しだけ色めき立った。
「ああっと…すでに知っている人も居るみたいだが、転校生が今日このクラスに来ることとなった。お前らに紹介する」
そう言って先生は転校生を廊下から教室へ引き連れて来る。
背中までかかる黒髪が漆のように艶めき、サラサラと絹のように揺れていた。
おぉ…確かにこれは噂通りの……。
ここまで噂されるのも無理はないな、と。
「今日からこのクラスで勉学を共にする
自信と覇気に溢れた表情で自己紹介をした彼女は間違いなく美少女と表現することができた。
黒い瞳には力強さが宿っていて、キリッとした眉も相成り全体的に勝ち気な印象を覚える。
そして何より特色すべきはそのスタイルである。身長は165〜170センチ程で有ろうか。平均よりも高い背にスラッと伸びた美脚。そして貧相すぎず豊満すぎないヒップとバスト。
それはアジア人にとってまさしく理想的なスタイルだ。
次にオーラ。
教室の壇上に立ち、転校生特有の少しデザインの違う制服を着ている事を差し引いても、彼女からは異質な雰囲気が漂っている。
影が濃すぎるとでも言うのだろうか。
今なら高級車で登校してきたと言う話も
金持ち特有の英才教育。美少女と言うこともあるのだろうが、彼女から感じる独特なオーラにはそれしか説明が付かないからだ。
しばらくシン……と静まり返っていた教室。
その空気を変えたのは担任の黒沢先生だ。
「どうしたお前ら! 歓迎の拍手だ!」
それを聞いたクラスメート達は我に返ったように疎らに拍手が響いた。
次第に拍手は力強くなっていき、クラスのお調子者達が「よろしく転校生!」などと野次を飛ばし始める。
恐らく3つ隣の教室の方まで聞こえているだろう。
凄い熱狂である。普通の転校生ではこうはなるまい。
もちろん
協調性が無い奴は村八分。前世で勇者になる前はしがない農民だった彼女は、その辺はよく心得ている。
「静かに! 静かにしろお前ら! それじゃ、
教室の拍手と野次を止めた黒沢先生は
昨日にはなかった最後部で右端の座席だ。
ちなみに席はくじ引きで決められる。
「じゃあ、赤坂。隣の席だから
再び「赤坂〜、VIPの案内まかせたぞ〜!」などと野次が飛んだ。
それを聞いた赤坂と言う女子はオロオロと狼狽えている。
そしてスタスタと指定された席で立ち止まった転校生…もとい
「よろしく」
「あ…は、はい! よろしくお願いします!」
ガチガチに緊張する赤坂を見て
「私達は同級生だろう? 敬語なんてよそうではないか」
「は、はい……あ…いや、うん…よ、よろしく
何故か顔を赤くしている赤坂。
「ふふ……よろしく」
う〜ん、なんだアイツのねっとりとした喋り方は。
随分と様になっているな……。
そんな事を思いながらジーッと
二秒ほど目が合うと、
その笑みに気後れした
うっ…何だか迫力のある笑みだ……。
美人だからかな……?
再び視線を向けると
「
こうしてホームルームはいつも通りの諸連絡へ移っていった。
ホームルームが終わり1限目の授業が始まる前の時間。
ワイワイと
よく見ると、取り囲んでいる人間の中には他クラスの者まで混ざっている。
「凄い人気だな……あの転校生」
「うん…人間って新しい何かは意識せずにいられない生き物だから」
クラスメート達のことを子供っぽいとでも思っていそうな態度に見える。
「それにしたって異常だよ。普通の奴だったらもう少し落ち着いた感じになるだろ」
「あはは…確かに…。彼女、凄いキラキラしてるもんね」
こうして二人の会話通り、それからの学校生活は
それを見た
しかし、その非日常も続けば日常になる。
そう言う意味で、
★
そして1週間程が経ち、
学校の授業を終え、文芸部の部室へ向かった
すると、靴の上に一通の手紙がポンと置かれていた。
その手紙を手に取った
「う〜ん、これまたベタな…。これってそう言う事だよな?」
これがラブレターだと決まった訳ではないが、
中学に上がってからは、殆どが通話かラインである。
実は
もっとも、本人は元男なのでこの事実には複雑な気分にさせられているのだが……。
「まぁ、そうと決まった訳じゃない。取り敢えず開けて見るか」
するとそこには『今日の放課後に屋上で待ちます』、と印刷と見紛う程の達筆な文字で、そう簡素に書かれていた。
「なんだこの綺麗な文字……どんだけ気合入れて書いたんだよ」
それにしても屋上かぁ……。普通に閉まってるだろ。
イタズラかな?
そして、どうするべきか迷った末に
「ここに来た」
「どうしてそうなるの……」
文芸部の部室で
本棚に囲まれた部室には
部員はこの二人だけだった。
「まぁ…オレも一応、文芸部の一員だし別に良いだろ?」
「普段は顧問が居るときしか参加しない癖に……。早く屋上に行ってあげたら?」
「チッチッチ……そこが肝なんだ」
「しばらく時間を空けて行ってもまだ居たら、そいつの本気度はそれだけ高いって事だろ? 幸いにも放課後ってだけで時間の指定はなかった。それに場所からしてイタズラかも知れないからな。その場合、早く行くと惨めだ」
「
「あのな…告白を振るのは意外としんどい。ましてや面と向かってなんて、さらにしんどい。その儀式を避けられるのなら放課後のゲームを我慢するくらい余裕だ」
「本気度を確かめる割には振ること確定なんだね」
「まぁな…オレは恋愛とかに興味ないんだ」
「そう言ってる癖にモテモテで羨ましいよ」
「モテモテって言っても告白されたのは……たぶん30回くらいだぞ? 人生のトータルで」
「十分多すぎるよ」
間髪入れない
「さすが
「全く……居ても良いけど邪魔はしないでね」
そう言って
「やはり…持つものべきは友達…」
「はいはい友達友達」
それを見て
★
「ホントに鍵が開いてるのか……?」
時刻は夕焼け色の空が沈み始めた頃。
ガシャリと取っ手を捻り、扉を押すとあっさりと開いていく。
外は東側がすでに暗くなっていた。
屋上に来るのは初めてだな。
いったい呼び出した奴はどうやって開けたんだ…。
ヤバイ奴じゃなきゃ良いんだが。
そう思いながら
夕日を浴びて煌めく黒髪。
それが少しだけ風に揺られて棚引く。
「あぁ…待ちくたびれた……」
そこに居たのは果たして、今注目の的である転校生。
「随分とこの私を待たせるではないか…
バタン!と
二秒ほどフリーズしていた
「オレを呼び出したのはオマエか…? 転校生」
それを聞いた
「私以外に誰が存在すると言うのだ?
謎の張り詰めた緊張感が
この緊張感は
な、なんなんだよコイツ……。
ツー、と
「……。……いったい何が目的なんだ? いや…オマエ…何者だ?」
「何者か……だと? クク…貴様は私を知っている」
「し…知らない…。オレはお前とこの学校で初めて会ったはずだ…。そ、それ以上近付くと人を呼ぶ…!」
ピタリ…と
「人を呼ぶ…か…。さては乙女だな」
そう呟いた
「私…いや、我……と言えば分かるか……?」
その瞳は紅く染まり、口元は好戦的な笑みに歪んでいた。
「選ばれし人間…勇者よ……」
「な……」
「クク…ふふ…ふはははは…!」
それを見た
「あぁ…! 随分と面白い顔をするのだな勇者よ! さては貴様! 完全にこの世界に馴染んだな!?」
「ま…魔王……! ば、馬鹿な…! 有り得ん!!」
「ククク…何が有り得んのだ? 勇者よ」
コイツがなんでこの世界に…!!
「何もおかしな話では無い。貴様があの場で死に絶え、この世界へ転生した。ならばそれは貴様に限った話ではない。道理であろう?」
魔王の言葉を無視し、
すると
「何が目的だ…! 魔王…!!」
「なに…我の目的は単純明快の一言に尽きる…」
グワンッ…と
ビキリ…と校舎のコンクリートにヒビが入り、屋上のフェンスがグニャリと反り返る!
そして学校中の窓ガラスが割れる音が辺りに響き渡った!
両者の間には隔絶された実力差が横たわっている。
今の
「我の目的…それは勇者。貴様との再戦だ」
「くっ…さ、再戦だと…?」
すでに夕日は完全に沈んでいる。
「……前世で我は、脳天を聖剣に叩き斬られて死亡した。勇者よ。他ならぬ貴様自身の手によってな」
「貴様がここに居ると言うことは、最後の悪あがきである炎の吐息で相討ちとなったようだが…それでも屈辱である事には変わりない」
それを聞いた
まずは神経系。その次に筋肉だ。
「完璧であるはずの我唯一の汚点。貴様への敗北を今こそ払拭する…!!」
それに対して
しかし
「はずであった……」
すると紅かった瞳は黒色に戻っていた。
「どうやら私は思い違いをしていたらしい」
スタスタと歩いてくる
しかし
「勇者…いや、
そう言った
そして屋上に1人残った
「魔王も…こっちに来ていた…」
しばらくボーッと座り込んでいた
「そうか…オレは世界を救えたんだな……」
夜空に浮かぶ欠けた月が、地上を明るく照らしていた。
↓漆羽京子
【挿絵表示】
↓漆羽京子(赤目ver)
【挿絵表示】
前世ではオスでしたが人間ではないので、今世で人間として振る舞う以上は自分が女である事には違和感を覚えていません。
勇者を作ったんなら魔王を…と言うことで彼女を作りました。
驚いてくれた人が居たら、集客数が減ること承知であらすじにネタバレ書かなかった甲斐がありました…。
この画像も例によってPicrewです。
メーカーは『黒髪の女の子メーカー』を利用。
ギリギリアウトな気もしますが、執筆は個人的なことの範囲内だし…と言うことで載せました。
間違いなく書籍化はしませんので安心ですね。ハイ。
以下は『黒髪の女の子メーカー』リンクになります。
LINK:https://picrew.me/image_maker/26700
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そして歯車は回りだす
その後、屋上が荒れ果て学校中の窓ガラスが割れていた件には警察が出動し、しまいには不可解な事件としてニュースに取り上げられるまでの騒ぎとなったが、1ヶ月も経つと事件の事について噂する人間は見なくなった。
そんな今の時期は6月の下旬に差し掛かろうとしている頃。
あれ以来、魔王こと
彼女はすっかりクラスの中心的なポジションに居座り、人気者として日常へ溶け込んでいた。
「この前の体育の授業、
「特に習っていた訳ではないな。単純に運動神経が良いだけさ」
「凄い!
「ふふ…ありがとう。でも私にだって欠点はいくつかある。たとえば、辛いものが苦手だったりね」
「あははは!
ああして楽しそうに談笑しているが、
前世で
流石に
「
と、ここで
「ふぇ…? な、なんだ
「なにって…前から気になってたけど
「そ…そうか? そんなことないと思うが……」
「嘘だよ。もしかして
「えっ…それは……」
確かに
主に前世での話にはなるのだが……。
「ほら、やっぱり。いったい何されたの?」
「だ、大丈夫だ!
流石に「実はオレには前世があってさ…」などとは切り出せない。
完璧に痛い奴である。
「……。……」
ジッと目を見つめて来る
「ごめん
「……。……」
無言で見つめ続けてくる
「はぁ……今みたいな
そう言われた
「ああ! 分かった! ありがとう
「全くもう……約束だからね?」
つられて
★
放課後。
いつも通り部室へ向かう
するとそこには靴の上に置かれている白い封筒。
「凄いデジャヴだ…まさか奴じゃないだろうな?」
するとそこには、やはりと言って良いか印刷と見紛う達筆な文字で、『放課後、体育館裏で待ちます』と簡素に書かれていた。
「あの野郎…。今度はいったい何を企んでやがる…」
また学校中の窓ガラスを割られては堪らないので、今度ばかりは話し合いの意思を見せようと
それに学校中の窓ガラスが割れてしまった件については、自分にも責任の一端があると
何の用があるかは知らないが、なるべく
★
体育館裏とは校舎と体育館の間に出来た閉鎖的な空間の事である。
彼女は胸の下で腕を組み体育館の壁へ背を預け目を閉じている。
厨二臭い格好ではあるが、彼女のプロポーションでそれをやられると絵になっていた。
「オマエ…今度はいったい何の用なんだよ…」
それに対して
「
よく分からない事を呟く
それに
人を下の名前でサラッと呼ぶな気色悪い…!!
「あ? オマエ何いってんだ。呼び出したのはオマエだろ?」
「ん…? あぁ…私も呼び出された側だ」
そう言って
するとそこには
構図なども同じで、まるでコピーしたようである。
「な、何いってんだよ。この字ってオマエのだろ?」
その様子をチラッと見た
「よく見ろ。それは印刷された文字だ」
言われた通り
「ホントだ…。印刷されてる…」
だとすれば一体誰がオレとコイツを…。
「ふん…完璧すぎる文字と言うものも罪か…」
彼女の整った顔はドヤ顔でさえも絵になっていた。
それを見た
「オマエは存在自体が罪だから安心しろよ魔王」
「そう目くじらを立てるな
な…コイツは大陸で何百万人の命が犠牲になったのかを知っているのか!?
耀の胸の内からフツフツと怒りが湧いてくる。
「な…おま…こ、この…」
プルプルと震える
「少しからかっただけだろう? 面白い奴め。しかし…戯れもそろそろ中断しなくてはな…」
そう言って
「どうやら私達を招待したホストがお出ましのようだ」
「クソ…胸糞悪い奴だオマエは」
人影は中等部の白いセーラー服を着用した少女だった。
癖っ毛のあるショートボブに隈のある目元。
眉根は神経質そうに歪んでいる。
見るからに面倒臭そうなタイプであると
やがて、
「1ヶ月前にこの学校を荒らした犯人は貴方達ですね!!」
そう言われた
な、なんでそのことを…いや、実行犯は隣に居るコイツだけなのだが問題はそこじゃない。
まさか目撃されていたのか…!?
少女が言う1ヶ月前の出来事とは、屋上で
あれのせいで学校中の窓ガラスが割れて、警察が来る騒ぎにまでなったのだ。
問題はどうしてこの少女はその事件の中心人物が
「さぁ…なんのことやら…」
どうしてオマエは何かを知ってそうな悪役風に
B級映画か!!
「ああ…
しかし少女は予想通りとばかりに強気の姿勢で糾弾を続けた。
「
魔力…そのことを知っているなんて何者だ?
前世の関係者か…あるいは別の存在か…。
それに魔力に証拠なんて物が残るのか?
魔力とは物理的な存在ではない。
クツクツと伏せた顔に左手を添えて笑う
厨二くさい。
「な、何がおかしいんですか!? どうやら事の重大さが分かっていないようですね…!!」
「いや…愉快でな。なかなかどうして…現世も捨てたものではない」
「い、一体なにを…」
少女は不気味なものを見る目で半歩だけ後ずさっだが、瞳に力を戻して踏みとどまる。
「なにを言いたいんですか…!!」
「ククク…いや、私達が犯人だが?」
顔を上げた
そう…
「……今日は両名共に私の家へ来てもらいます!! 拒否権はありません!!」
少女は
オマエ…絶対に後で覚えておけよ。
大変なことになったら呪ってやる。
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