何のために生まれて、何をして生きるのか

何のために生まれたの？

何のために生まれて、何をして生きるのか。

それが答えられる人間に私はなりたい。

〜〜〜5年前〜〜〜

「これで終わりだオールフォーワン！！！」

誰もが認めるNo. 1ヒーローオールマイト。

彼はその身がボロボロになろうとも、決死の一撃で巨悪を打ち破った。

「ククク……例え私が滅んでも、次世代の悪はまた現れる。ほら、そこの施設にカプセルに入っている少女がいる。年齢は10歳といった所かね。あまりの強個性で、素晴らしい性格の持ち主だったんで“後継者”として洗脳する事にしたんだ。

もし、君が望むのなら、救ってみればどうかね？」

彼は倒れる寸前に嫌な笑顔を見せ、そう語った。

「なに？」

オールマイトは彼が不気味に言い残した言葉につられ、施設の中に入った。

たしかに、そこにはカプセルに入った少女がいた。洗脳率50%という表示と共に。

(ーー！！)

不意に破壊したくなる衝動に襲われたが、ひとまず踏みとどまった。

このカプセルを破壊し、少女を救ったとしても洗脳は50%進んでいる。

あの巨悪が完全なる悪とするために施した洗脳……50%でも充分過ぎるほどだ。

どうすればいいか……長年ヒーローを務めてきた直感か、落ち着いた理性に基づく計算か、彼は頭皮に生えていた髪の毛を数本むしり取り、カプセルの蓋を一旦開けて中の培養液目掛けて放り投げた。

その後も洗脳が進み……全てが終わった。

正義と悪が混在する……二つの役割をもつ心優しい少女が現れた。

私には二つの心がある。

普段は穏やかで、自分で言うのも何だけど心優しい性格の心。

一方で、不意にでる、破壊衝動に襲われる悪の心。

2つの心がある私は、警察やヒーローから常に監視を受けている。

ただし、オールフォーワンという巨悪が携わる案件なので、知っている層は極一部のトップシークレットなんだけどね。

前に大暴走した時は、目につくものをとにかく壊した。壊して壊して壊して……オールマイトのおじさんに物理的に止められるまで……

監視していたヒーローが上手く誘導して、有名なヴィランたちを結構な数壊すことに成功。結果的には司法取引的な感じの超法規的措置によって罪は相殺された。もちろん、この事実は世間一般には知られていない。私が暴走して巻き起こした被害もヴィランが引き起こしたものであるとして公開されている。

ご都合主義の出来レースのような感じもする。

実際、そうなんだけどね。

けど、私の心に罪の意識は残る。

私の心はワタシの業に耐えられるほど強くないんだ。

また、嫌な事を思い出した……

でも、そんな時に救ってくれる存在もいる。私の、心の支え

「ロール少女よ。心が泣いているぞ。もう大丈夫私がきた。ほら、何でもおじさんに打ち明けなさい。」

「おじさん……あのね……」

「私は君がどんなに素晴らしい人間か知っている。パン作りが好きで、花や動物を愛してる。人のためなら自分を犠牲にする事さえ厭わない、お節介な性格。君の心はヒーローの心だ！！」

何度同じ事を相談して、何度同じ答えを貰ったんだろう。

それでも、突然変わる二つの心……

おじさんも聞いているとは思う。

私が直接言うのは嫌だったから職員さんを通じて言って貰ったんだから。

最近、悪の敵の心に呼ばれる頻度が多くなっている。

自分で抑えられる程度にしか強くはないけど、はっきりと誘惑はされる。

正義の遺伝子を定期的に摂取して、相対値として心はかなり善に傾きつつあったのに。

私の中の悪の心が、世の何処かにある悪と共鳴し合っていると感じ取れるの。

「おじさん……私ってヒーローになれるのかな？」