姉は戦略級魔法師、その妹も戦略級魔法師!? (KIRAMERO)
しおりを挟む

資料とプロローグ
ちょっとした設定のまとめ


※これはこの小説を書くにあたっての設定集です

先日あげたプロローグの続きではありません



キャラ設定

☆今回の主人公

・五輪 彩海奈(いつわ あみな)

・五輪家のご令嬢で非公式の戦略級魔法師

・次期当主候補

姉と兄がいることで可愛がられて過ごしてきた。ただ姉が国家公認戦略級魔法師になってからは簡単に会うことも出来ないため最近は姉と兄とはしばらく会っていない。そして姉が国家公認戦略級魔法師となった1年後に非公式の戦略級魔法師なった。容姿は美少女というよりは大人な女性と言う方が合っている。非公式の戦略級魔法師となっていることから普段は魔法は十師族相応のレベルまで抑えている。

戦略級魔法師として活動するときは上瀬 美海夏(みうな)という名で活動する(活動することはあまり無いとは思うけれど)

将来は姉の虚弱体質に合ったCADを開発したいとおもっている。

憧れている人は姉とトーラス・シルバー

 

固有魔法

沈焉

文字通り沈めるという事象改変を起こす魔法。ただ沈めるというだけではなく物を壊すということにも優れている。何処まで沈めるという段階を決めるかは術者次第

 

戦略級魔法

 

壊淵

姉である五輪澪の戦略級魔法『深淵』は水面から陥没させる魔法だがこれは地面に対する魔法なので姉とは相対する魔法。効果範囲は広く半径数キロメートルから数十キロメートルの範囲にわたり拠点攻略、先制攻撃にはうってつけただ姉とは相対しているため海上戦、空中戦ではあまり役に立たない。

CAD→ミスティック・クァインツ グラウンドエディション

 

☆五輪家

 

五輪 勇海

 

・現五輪家当主

 

原作の紹介とほぼ同じ。ただ今回は戦略級魔法師2人いるため大人しそうに見えているが家の中ではすごい慌てている。

 

五輪 澪

 

・国家公認戦略級魔法師の1人通称『十三使徒』

 

3人姉弟妹の長女。シスコン。(深雪程ではないがそれに匹敵するであろう)とにかく妹に関することであれば放っておけない性格。妹が小さい頃から自分が国家公認戦略級魔法師になるまでは"普通"の妹想いの姉であったがなってからは重度のシスコンになった。

悩みは肩書きのせいかあまり妹と会えないこと。

原作では虚弱体質だがこの作品の中では虚弱体質ではあるもののずっと車椅子に座っているわけではなく多少は自分の足でも歩ける

 

戦略級魔法

 

深淵

 

原作通りである

 

CAD→ミスティック・クァインツカスタム オーシャンエディション

 

五輪 洋史

 

・五輪家次期当主候補

 

いつもは戦略級魔法師である姉の世話をしているため東京に在住。姉が小さい頃や妹が小さい頃はいつも3人で遊ぶ程には仲が良かった。しかし姉が国家公認戦略級魔法師となってからはあまり妹と会えなくなり姉との生活が始まりそれから姉が妹に会いたいという思いが強くなり始めどうにか抑えつけるのに毎日苦労している。

 

☆十師族関係

 

二木家

 

彩海奈のことは気にかけている。戦略級魔法師とは知らないがそれでも優秀な魔法師なのはわかっているので現当主及び結衣が娘のように可愛がっている。

 

九島家

 

彩海奈を二木家同様に娘のように可愛がっている。光宣と同世代の魔法師がいることで少しでも光宣の病気がちのなかで仲良くしてくれていることをとても嬉しくも思っている。

 

七草家

 

真由美が洋史と付き合っている(?)ことから彩海奈のことを知りそれから現当主が色々調べている。ただ七草家でも彩海奈が戦略級魔法師であるとはわかっていない。そして四葉家との仲は原作通りあまり良くない。

 

四葉家

 

原作通りに恐怖として覚えられている。穂波、深夜は健在で現当主は原作通り真夜が務めている。十師族の中でもトップクラスの実力を兼ね備えている。原作通り秘密主義を貫いており四葉として公表されているのは四葉真夜と深夜のみ。彩海奈に関しては五輪家のご令嬢として今のところ認識している。

 

☆国防軍

 

戦略級魔法師として澪がいることから緊急の有事の際は五輪家に要請することがある。

独立魔装大隊としては彩海奈が戦略級魔法師としてでは無く戦術級の魔法は扱える能力があるのでは無いかと調べている。もし東京に出てくるならば徹底的に調べようとは思っているらしい

 

☆九重八雲

 

原作通りな坊主。1度彩海奈のことについて調べようとはしたが八雲でも手を焼くほどのものだったため戦略級魔法師とは知らない。逆に十師族にしては情報が無さすぎるのも怪しいと思っている。

 

☆九島烈

 

通称『老師』。彩海奈のことは何度かパーティーで見かけ少しお話したこともある。独立魔装大隊同様戦略級魔法師とは知らないが戦術級の魔法は扱えるのではないかと思っている。孫娘のように可愛がっている。彩海奈の頼み事ならば用意してくれる。

 

☆佐伯閣下

 

通称『銀狐』。五輪家から(正確には五輪澪から)東京及び関東にいる間は気にかけるようにお願いされ了承している。その他は概ね原作通り。

 

☆司波達也

 

・戦略級魔法師

・トーラス・シルバー

 

原作通りではあるが違うのは深夜と穂波が健在のため司波家には深雪との2人暮らしでは無い

さらには『誓約』はかけられていないため常に全力を出せるが真夜からの命令により原作通りの魔法力で過ごしている。

 

☆司波深雪

 

・四葉家次期当主候補

 

こちらも原作通りではあるが前述の通り司波家に深夜と穂波がいるためブラコン度はそこまで高くはない。

さらに『誓約』もないため常に全力を出せる。(全方位無差別防御魔法も)

 

☆如月 芽愛(きさらぎ めい) 24歳 誕生日5月22日

 

・五輪家の使用人

・ルーツを辿れば『五』の関係者

・弥海砂とは双子の関係(姉)

 

中学生の時両親が旅行中に事故に逢い亡くなり澪に声をかけられそれから五輪家にお世話になっている。

五輪家では澪、彩海奈のお世話をしながら澪と同じ学歴を辿る。彩海奈には忘れられていたが芽愛にとっては可愛いお嬢様。

今は澪、洋史、彩海奈の東京滞在に合わせて東京別邸に滞在中。主に彩海奈に関することに比重を置き活動。

 

固有魔法

水織(みずおり)

 

文字通り水を自在に織り成す魔法。実際に見たことがあるものしか織ることが出来ないけれどその代わりどんなものでも精巧に織ることが出来る。

CAD→ミスティック・フィアーリングス ミレニアムエディション

 

☆如月 弥海砂(きさらぎ あまね) 24歳 誕生日5月22日

 

・五輪家の使用人兼諜報員

・ルーツを辿れば『五』の関係者

・芽愛とは双子の関係(妹)

 

姉と同様の道を辿りながらも諜報関係に才能を開花させる。能力としては黒羽から逃げれるほどの能力。

こういうこともあり姉のようにお世話をしてたわけではないがそれでも姉と一緒にいることが多かったからか澪や彩海奈の可愛いところを姉と微笑ましく見守っていた。

 

固有魔法

水精

 

水をどんな形にでも精製する魔法。姉と同じような魔法ではあるがこちらは想像でも精製出来る。これだけであれば複製とか簡単であると思えるが効果を表すのが2時間以内という難点もある。

精という字が入っているが精霊魔法とは違う。

CAD→ミスティック・フィアーリングス ディーズィーズエディション

 

☆七草真由美

 

・世界でも屈指の長距離精密射撃の名手

通称『エルフィンスナイパー』

 

言わずも知れた第一高校の生徒会長。父に似たのか色々探るのが好き(得意とは言えない)。

押しには弱い。彩海奈を見た第一印象はしっかりもので頼りになりそうな女の子。ただ何かを隠してそうでそれをどう見破るか思考中。

 

 

☆黒羽文弥

 

・四葉家次期当主候補

 

おおむね原作通りで特段変わったことは無い。ただ任務時になる「ヤミ」の姿になることには原作以上にコンプレックスを感じている。四葉家の中では津久葉夕歌と並び精神干渉系魔法に関して1.2位を争う魔法師でもある。彩海奈に対しては深雪と同じくらいの実力と容姿から照れることもある

 

☆黒羽亜夜子

 

おおむね原作通り。任務時に文弥と共に「ヨル」というコードネームで活動している。五輪 彩海奈について調べていると達也と同じ感じがするためどんな人物なのか物凄く興味を抱いている。

 

☆七草香澄

 

七草家の『七草の双子』の姉。おおむね原作通り。ただ彩海奈の魔法の使い方に関しては七草泉美のような思いを抱いている。七草泉美のように人を崇拝するようなことにはなっていない。

 

☆七草泉美

 

七草家の『七草の双子』の妹。おおむね原作通り。この作品内でも深雪に対しては崇拝するようなことになっている。彩海奈に対しては同じ十師族のご令嬢ということで深雪とは違う意味で尊敬している。

 

☆霧島 愛彩(きりしま あい)

 

五輪家の魔法研究所の研究員の1人で実力はトップクラス。彩海奈が使っているオリジナル魔法のほとんどを作っている。(「水変万華」や名前がついてない魔法、「破砕」等)彩海奈が戦略級魔法師であることを知っている数少ない1人。世の中的には画期的なものを作っても決して外には発表しないため五輪家にその全てを使わせている。

憧れはトーラス・シルバー

 

☆水無瀬家

 

約1200年前頃出来た家で当時からその時代の時の人や朝廷に対して多大なる影響を持っている家系であり、今現在においても各十師族当主、政府までもが水無瀬家の存在を無視出来ないような存在。

 

家族構成は水無瀬家先代当主である『水無瀬 結那』とその夫、水無瀬家現当主『水無瀬 唯衣花』とその夫のみである。それ以外は何も公開されていない。

 

この水無瀬家の存在は天皇陛下、各十師族当主及びその関係者の極一部、内閣総理大臣のみ知らされており居住地があるのは京都より西であることのみが知らされている

 

元々は古式魔法の分野で発展し、数々の古式魔法の大家が「水無瀬家こそ古式魔法の最高峰」とまで呼ばれるようになった。ただ水無瀬家先代当主『水無瀬 結那』は違った。小さい頃は水無瀬家らしく古式魔法に関して天才という名をそのままにしていたが彼女が17歳の時になんと現代魔法においてもその才を発揮していた。当時の水無瀬家当主は当時仲が良かった四葉家と九島家にこのことを話すと両家とも快くこのことに関して外に漏れぬように手配してくれた。その結果彼女の婚約、結婚に関しては水無瀬家が公に発表するまで一切の情報も無かったという。当然彼女の子を狙ってやってくるであろう外国のスパイや国内にいる『人間主義』の標的になりそうであるため今後水無瀬家に子供が産まれても、対外的には公表しないということで水無瀬家・九島家・四葉家で密約が交わされた。その内容とは

 

・今後水無瀬家に子供が産まれても対外的に公表する家族構成は先代当主及び現当主とその配偶者のみとする。(次期当主に関しては1年後に当主になる時までは秘匿するものとする)

・なお、四葉家と九島家はこのことに関して今後緊急時を除き水無瀬家に関与しないものとする。

・この密約に関して四葉家と九島家は今後何事があろうとも口外することを禁ずる(対象者:水無瀬家当主 、四葉家当主・次期当主候補 四葉 元造、九島家当主・次期当主候補 九島 烈)

 

以上であり、四葉家と九島家とは今現在も昔ほどでは無いが友好関係を保っている。

 

現在公表されている水無瀬家の家族構成は

 

先代当主及び配偶者

・水無瀬 結那 (みなせ ゆいな) 先代当主

・水無瀬 侑弥 (みなせ ゆうや)

 

現当主及び配偶者

・水無瀬 唯衣花 (みなせ ゆいか) 現当主

・水無瀬 柊優 (みなせ しゅうや)

 

のみで非公表の水無瀬家の人間は

 

次期当主及び配偶者(2097年1月より当主)

 

・水無月 侑那 (みなづき ゆうな) 次期当主

・水無月 詩季 (みなづき しき)

 

・五輪 真唯(旧姓:水無月 真唯)

・五輪 澪

・五輪 洋史

・五輪 彩海奈

 

の公表4人、非公表6人で成り立っている。




まさかキャラクターの詳細書くのに原作の紹介ページを何度も見返すとは…それだけどういう設定だったかって意外と覚えてないんだなって思いました。

次回からはプロローグの続きでおそらくあの言い争ってる場面まで書ければいいなとは思ってます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ちょっとした設定のまとめ 2年生

2年生以降の追加設定はこちらに回します。1年生のうちに出てきた設定はそのままになります


レナーテ・アルベルタ

 

ドイツと日本のハーフで日本国籍を選択

非公式戦略級魔法師

 

父がドイツの魔法師家系の名門アルベルタ家の三男で母が日本の魔法師の中でも国際ライセンスA級レベルの資質を持った魔法師。両親の仕事は魔法関係の医療に携わっており、その実力はヨーロッパでは知らぬ者はいないほど。姉には『14使徒』国家公認戦略級魔法師ナフィーナ・アルベルタがいる。見た目は欧州特有の金髪に日本人特有の黒目で身長は平均より少し低いくらい。

彩海奈が中学に上がる前まで日本に滞在していて母親と2人で暮らしていた。彩海奈とは小学生の時からの仲良しで五輪本邸にも何度足を運んだかわからないくらいに一緒に遊んでいた。(この頃に真唯、澪、洋史とも面識あり)小学校卒業と同時にドイツへと旅立つも彩海奈とはそれ以降も変わらずに親交があった。

 

戦略級魔法

 

ローマテリアル・マニピュレート

 

英訳で日本語に直すと「未発元物質操作」。「まだ見つかっていない物質」や「あるのかもしれない物質」ではなく「この世に存在しない物質」そのものを作り出し自由に操ることが出来る。この魔法を使えるのはレナーテのみでこの魔法はレナーテの固有魔法が元になっている。

 

ナフィーナ・アルベルタ

 

ドイツと日本のハーフでドイツ国籍を選択

国家公認戦略級魔法師

 

父がドイツの魔法師家系の名門アルベルタ家の三男で母が日本の魔法師の中でも国際ライセンスA級レベルの資質を持つ魔法師。妹に非公式戦略級魔法師であるレナーテ・アルベルタがいる家族構成で自身は世界で14人しかいない国家公認戦略級魔法師でドイツの国家公認戦略級魔法師の1人。ドイツの国家公認戦略級魔法師は2人いてもう1人のカーラ・シュミットとは友人である。ナフィーナはレナーテと違いずっとドイツ在住だが国家公認戦略級魔法師になってから非公式に何度か日本を訪れたことがある。国家公認戦略級魔法師として登録されたのはナフィーナが18歳の時でレナーテは当時12歳だった。

見た目は金髪と黒髪が混ざりあっている。目は碧眼で父親譲り。身長は平均より高い。

なお、ナフィーナ・アルベルタの情報は年齢、性別、戦略級魔法のみが公開されており普段ナフィーナ・アルベルタの名で公の場に出る時は周りの物質を歪ませ違う顔に見えるようになっている。

 

戦略級魔法

 

マテリアルディストート

 

直訳すると「歪む物質」。文字通りに物質が既存の状態・形が歪み、さらに物理変化と化学変化等あらゆる変化が起こらない。さらには既存の物理法則が通じなくなるため物理法則を無視した攻撃や防御が出来る。これを応用した魔法も数多くあるためこの魔法が戦略級魔法だと気づかれることもない。この魔法を応用した魔法もあるのだが実用的に使えるのはナフィーナとレナーテのみである。

開発者はナフィーナ・アルベルタでこのことを知ってるのはドイツ政府、アルベルタ家、五輪家のみである。

 

☆アルベルタ家

 

ドイツの魔法師の家系の中でも特に有名で日本でいうと十師族或いは師補十八家のレベル。今現在アルベルタ家は現当主の孫娘が祖国の国家公認戦略級魔法師となったため地位はドイツ国内で誰も逆らえないとさえ言われるほどのレベルに達した。

五輪家とは三男の嫁が第五硏所属の魔法師となる時から親交が始まり今ではナフィーナ、レナーテ共に五輪家にお世話になったこともありそれなりには仲は良いといえる。

 

☆『白日の夜』

 

水無瀬家直属の秘密工作集団。知っているのは結那、唯衣花、侑那、彩海奈、レナーテ、紗綺、沙耶のみ。八雲は彼の性格上情報をかき集めている時に出会いその時に集団の名前は教えてもらったが背後に水無瀬がいることまでは知らない。メンバー構成は現時点で4人で全員が花のコードネームで呼ばれている。また彼ら彼女らは『白日の夜』とは別に家庭がある。現時点のメンバーは睡蓮、伊吹、明日葉、蓮華の4人。

 

4人の魔法師としての才能は国際ライセンスA級か同等のレベルにあり、それぞれが特異魔法を持っており大抵の仕事は1人の魔法があれば解決するほど。




レナーテの魔法はとある魔術の禁書目録に出てくる学園都市第2位垣根帝督の未元物質(ダークマター)をモデルにしました。個人的にこの能力はどの魔法よりも強いと思ってます。

後日また何かあれば追加していきます。そして次からはダブルセブン編に行きますが正直彩海奈の出番はそんなに無いなってダブルセブン読んでて思ったので入学編と同じくらいの文量になると思うので年内にスティープルチェース編になると思います。

無事にフラグ回収しないようにしますのでお待ちいただければと思います。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

各種CADの今作における性能について

はい。この話?は類に入るので解説のところに入ります。横浜騒乱編のお話もこれと同時に並行して書いていたのでもうそろそろ出来ると思いたいです←


・FLT

 

日本におけるCAD市場でここ数年で一気に有名になったメーカー。業績はこれまでマクシミリアンやローゼンに独占されていた市場を抜き国内最高のCADメーカーになった。その功績はとある1人の魔法工学技師によるものであることは周知の事実。

・トーラス・シルバー

原作通り。「FLT」専属の魔法工学技師。これまでにループキャストや飛行魔法これまでの常識を幾度となく覆してきた天才。主にソフトウェア面においては数十年以上発展させたとも言われている。

 

☆これまでに作ったCAD☆

 

シルバー・ホーン

シルバー・エアフィザー(オリジナル)

 

☆五輪家の魔法研究所

 

霧島 愛彩は基本的には主にCAD作成をしている。新たな魔法、既存の魔法の改良版、第五研との共同作成等は所属研究員が担当していて施設長は五輪家現当主が担っている。

 

これまでに開発したものを対外に発表すればトーラス・シルバーには及ばないものの戦略級魔法「深淵」、「バハムート」を開発した第五研究所と同等の評価を受けている。

代表作は愛彩が開発に本格的に携わった

「ミスティック・クァインツ」シリーズ

今までに

・グラウンドエディション

・カスタム オーシャンエディション

・カスタム プライムエディション

 

芽愛と弥海砂が使用している

「ミスティック・フィアーリングス」シリーズは五輪家の使用人及び配下の魔法師のために作成されたが要求能力が高すぎるため今後作られることはほぼない

 

・ミレニアムエディション

・ディーズィーズエディション

 

「ミスティック・クァインツ」シリーズはトーラス・シルバーが開発した「シルバー・ホーン」をベースにループキャストを用いつつそこに+αで彩海奈、澪の得意分野をさらに伸ばすアシスト機能を取り付けた特化型CAD

 

「ミスティック・フィアーリングス」は元々五輪家の使用人及び配下の魔法師が使用することを主目的で開発されていたがあれよあれよと機能を取り付けた結果芽愛と弥海砂にしか使えない代物になってしまったある意味失敗作で奇跡の代物。特化型CAD

 

彩海奈が普段使いしている汎用型CADも愛彩が特別にチューンアップしたものを使っているためとてもハイスペックである。澪が使っているのは特にユーザーカスタマイズに特化しているもので1ヶ月に2回は愛彩の手によって調整が施されている。(澪が本邸に帰るのではなく東京別邸にて測ったデータを元に愛彩が研究室にてCADの調整をしている。その際は弥海砂が何処かに漏れでないように細心の注意を払いながら愛彩の元に送っている)

 

 




如何でしたでしょうか?

エディションの前にある言葉はミレニアム以外は各々の得意魔法の英語読みにした言葉になっています。もしかしたら読み方が違うものがあるかもしれないですが……(笑)

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。また誤字脱字がありましたらご報告よろしくお願いします

出来るだけ早めに横浜騒乱編あげます……もしかしたらめちゃくちゃ早い展開で2話目から論文コンペ当日になる可能性すら有り得るかもしれません←


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグという名の語り


初めましてKIRAMEROと申します。

自分の劣等生のキャラの中で好きなのが亜夜子や水波等のサブキャラなのであまり焦点としてもこのハーメルンの中にもあまりない澪さんが出てくるのも無いので自分で書こうと思ったので書いてみました(文章能力皆無←)

前書きがこんなに長くていいのかと思うのでそろそろ終わらせていただきます。次回予告とかは出来る時のみ後書きに書くので良ければご読了ください


唐突ではあるが私には2人の姉と兄がいる。

 

名前を姉が「五輪 澪」、兄を「五輪 洋史」という。

姉は全世界広しといえど13人しかいない国家公認の戦略級魔法師であり、普段は虚弱体質のため弟である洋史兄さんと東京で同居している。

そして、子供の頃から姉さんは私に対してシスコンをすごく拗ねらせていて、よく父さんや兄さんを困らせていたという節がある。これに関しては姉さんが戦略級魔法師になり東京に移ってからはあまり会えなくなったため少なくなってはいるものの、実家に帰ってきたらすごいのである(苦笑)

兄さんは前述の通り姉さんの虚弱体質もあり、姉さんと東京で暮らしている。現在は十師族の一つ『七草家』のご令嬢であり魔法大学附属第一高校の生徒会長でもある七草真由美さんとお付き合いをされている。ただそれほど乗り気ではないのか最近はあまり彼女と連絡をとっている様子は見られない。

 

そんな私の実家である十師族の『五輪家』は旧愛媛県の宇和島に本拠地を構えており、主に四国地方を監視・守護をしている。十師族には戦略級魔法師であり『十三使徒』でもある姉さん(五輪 澪)がいるからこそ選ばれたところもある。

だけれどそれはあくまで表向きに言われていることである。我が家にだけにしか知られていないこともある。

その中にはもちろん国防上に関することや配下の魔法師の詳細等、決して外部へ漏れてはいけない情報もある。これはその中でも特に最重要機密として取り扱われている。

前述にもあるが姉さんは戦略級魔法師である一方、虚弱体質でもある。『上瀬 美海夏(みうな)』こと私『五輪 彩海奈(あみな)』は実は非公認の戦略級魔法師なのである。ただ澪姉さんが父さんやお母さんに言ったのか、私のことは国家公認戦略級魔法師としては一般に公表せず五輪家内での秘密となった。この事実を知っているのは五輪家内を除けば誰もいない。

 

そんな私は十師族の表立ったパーティーなどには極力出席はせずに四国・中国・近畿地方で開催される場合のみ出席という形をとっていた。一方で二木家、九島家のパーティーは度々出席していたため、二木家当主の二木舞衣さんや次期当主と言われている二木結衣さん、九島家当主の九島真言さんや『老師』こと九島烈さんさらに病気がちではあったが年齢が近かったため老師の計らいもあり九島光宜くんにも面識はある。けれども覚えてくれているかは正直怪しい… 彼らと知り合いという程度には十師族(主に西日本地域)にも認知されていた。

まぁこんな風に"あの"四葉家のように徹底的に秘密主義っていう程でもないがそこそこ秘密にはされていたけれど…

 

そんなこんなで過ごして私がこの世に生を受けてから15年の月日が経ったある頃、私は四国の自宅から近い第七高校、もしくは姉さんと兄さんがいる東京にある第一高校のどちらかに進学するか悩んでいた。

私としては第一高校に行くのはやや消極的ではあった。あそこには兄さんの彼女(?)でもある七草真由美さんや同じ十師族の十文字克人さんがいる。東京に姉さんと兄さんはいるが国家公認戦略級魔法師であるが故に行動は制限されているので、あまり迷惑はかけられないのもある。さらに本拠からも離れており東京及び関東は七草家と十文字家のテリトリーだ。わざわざ五輪家の私が地元を離れ関東の地で生活するのも何かと不便でもある。また、七草家の当主である七草弘一さんは策略家の一面を持っていると聞く。既に感づいてるかは分からないが私が戦略級魔法師であることが分かると非常に面倒くさいことになるのは間違いないだろう。確か七草家は2男3女の子供構成であったはずで、長男は既婚者ではあるが次男はまだ未定だったはずだ。もし私が戦略級魔法師だと分かると必ずと言ってもいいほど私に対して縁談話を持ってくるであることがわかる。以上の理由のため私個人として第一高校に行くのはあまり積極的になれなかった。

だからといって本拠のある四国の第七高校にも行く気にはなれなかった。本拠は愛媛県にあるのだが学校は高知県にあるのである。わざわざ本拠から県を跨いで通学するというのは非効率的だ。私はどちらかに決めなければならないのだが、どうしたものかと偶に家族を交えながら相談し、毎夜毎夜悩み続けていたのである。そして年を越す前までにようやく決断したのである。

 

 




はい、ということで後書きでございます(こんな入り方してる人見たことない…)

次回はこの小説に出てくる主なキャラのプロフィール等を書きたいと思うのでこの続きは何時になるかは分かりませんが早めに書くつもりです。

ご読了ありがとうございました。次回も読んでいただけるとありがたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

高校入学前〜入学
高校選びと姉と新生活


はい最新話です。

これを書いてる時点では何処まで進めるものかと思っていますが言い争ってる場面まではやりたいと思ってます。

会話の場面がこの話から出てきますがこういうことを書くのはほぼほぼ初めてなので視点切替がよくわからないところもあると思いますがよろしくお願いします


私は決断した。多少自分のことが明るみに出たとしても姉さんや兄さんのいる東京に行くことを決めた。そして第一高校に行くことを決めた。この事を父に報告したら私が東京に移る条件として、何かあったら必ず父か兄さん、母さんに報告すること、もし家族の誰とも不在の場合は九島閣下、もしくは国防軍の佐伯閣下に報告することを約束した。

 

そして2095年の3月、私は高校受験のために上京した。そこでは兄さんが迎えに来てくれるはずだったが、なんと兄さんだけではなく姉さんもいたのだ。これには私も驚いた。

 

「あ、彩海奈ーこっちこっちー」

 

「あ、兄さ…ーん…ってえぇ!?なんで姉さんまで来てるの!?」

 

「てへっ来ちゃった」

 

「ちょっ何が『てへっ来ちゃった』よ!兄さん?なんでここに姉さんがいるのか説明してくれる?」

 

「えーっと…本当はこんな予定無かったんだけど今朝用意してたら姉さんが『私も行くわ!!』って聞かなくて…」

 

「ちょっ、それは言わない約束でしょ!」

 

「姉さん!!!姉さんは自重っていう言葉を知らないの!?まったくもう少し自分の立場を弁えた行動をしてください…」

 

「う…だって父さんから彩海奈がそっちに行くからよろしく頼むっていうのを洋史が聞いてるのを、耳に挟んでいても経ってもいられなくなって…それで…」

 

「まったく…これだから姉さんは…シスコンって言われるのよ…」ゴニョゴニョ

 

「うん?何って言ったの?彩海奈?」

 

「な、なんでもないわよ」

 

ふぅ、なんとか姉さんには聞こえなかったか…これを聞かれたらこれからが大変だからね…

 

「変な彩海奈。まぁいいわ早く行きましょう。人目も多いですし、長距離移動だもの疲れているに決まってるわ」

 

「うん。そうだね、彩海奈は関東に来るのは初めてだしね。それじゃ家に行こうか」

 

そうだ、私は関東に来るのは初めてだ。今まで愛媛の自宅から兵庫の二木家、三重の九島家などへ行った事はあるけれど岐阜よりは東に行ったことが無かった。それは私が戦略級魔法師という括りにあるのも関係しているが、私自身もそこまで外出に積極的では無かったからだ。

 

十数分後私たちは五輪家が東京に建てた邸宅にいた。これほどの邸宅ならば私も長期休暇等で来てみたかったと思えるほど大きかったし何故か私の部屋も用意されていた。些か不思議である。まさか私が訪問するためだけに用意したのだろうか…ちなみにこの家は姉さんが戦略級魔法師になり東京に在住しないといけなくなったため建てた邸宅だ。私も住めるかと言われたらNoだ。国家公認戦略級魔法師の家に一中学生が住めるわけが無いのだ。そう易々と学校側に戦略級魔法師の自宅を教えるわけにはいかない。そのため私がこの家に住むことはないのだが短期間の滞在なら問題はないんだそうだ。ただそれでもわからないのが何故その家に私の部屋があるかだ。前述のとおり私はここには住めない。それ故にこの家に私の部屋を作るのはわざわざ一部屋使わないというのと同義だ。

 

「ね、姉さんなんで私の部屋が用意されてるの?私はたとえ一高に合格してもここには住めないのよ?」

 

「え!?そうなの!ちょっと洋史なんでここに彩海奈が住めないのよ!!」

 

「え?姉さん?知らないわけじゃないよね?戦略級魔法師なんだから高校に姉さんの住所を知らせるわけにはいかないだろ?彩海奈が一高に合格してもこの家には住めないんだよ。」

 

「そ、そんな…せっかく彩海奈が一高に合格した時はこの家に住んでもらおうと思ってたのに…」ゴニョゴニョゴニョゴニョ…

 

なんか姉さんがとんでもないことを言ってる気がするけどスルーしよう(この時まで澪は一緒に住めないっていうことを知らなかった)

 

「それでこの後はどうするの?さすがに時間が時間だしこれから出かける訳にはいかないでしょう?」

 

「あ、私も明日試験だし今から外出するのはねぇ…それに復習とかもしておきたいし」

 

「うんそうだね、彩海奈は明日が試験だしもうこんな時間だからこれから外出はまずいから今日はもう家にいようか。今日はせっかく彩海奈がいることだし俺が腕をふるおうか」

 

「そういえば久しぶりね洋史のご飯を食べるのは。なんだかんだいつもは用意されたものになってしまうし」

 

「へぇー姉さんでも久しぶりなの?私はもう姉さんが出ていってから食べてないからもう数年は食べてないわよ」

 

そう洋史兄さんは結構料理が上手で、かつて正月に五輪家親戚一家が集まった会合で料理を出した際に全員から是非もう一度食べたいと言われるほどの腕前である。そしてこれが真由美さんとの交際(?)が上手くいかない原因なのでは?と彩海奈は思っている。

 

そんなこんなで夜は過ぎていき久しぶりに姉さんや兄さんと過ごす夜は数年の間離れていたということを忘れさせてくれるほど素敵な夜になった。

 

そして翌日私は姉さんの家を出て、受験する魔法大学附属第一高校に来ていた。試験は2日間で筆記試験と実技試験がある。初日は筆記試験で私には少しばかり自信はあった。それは私の将来の夢にも通じているのだが姉が虚弱体質だからあまり魔法を使えないため姉に合ったCADを開発し調整してあげたいと思い、姉がまだ愛媛の自宅にいる時から密かに魔法工学や関係している学問は勉強していたからである。そして初日は終わり2日目の実技試験では、自分が十師族の一員であるため名前を呼ばれた時に多少周囲がざわついたがそれ以外は何も起こらず私の試験は終了した。

 

そして翌日私はまだ学校があるため愛媛に帰らなければならないのだがここでまた一悶着起きてしまった。なんとまたしても姉さんが乗り場まで付いてきたのである。これに関しては多少来る前から予期はしていたので時間帯的に来れないであろう時間を選んだが、それにも関わらず来られてしまったのである。それでも兄さんがいてくれたおかげで私は無事愛媛にある自宅に帰れたのである。

 

数日後私の元に第一高校への入学許可と制服が届いた。もちろん一科生としての入学だ。しかし首席ではないのか入学式での挨拶という役割を果たせ的なことは書かれていなかったため誰か他の人が首席なのだろうと私は思った。首席でなかった事に関してほとんどの家族はお咎めなしとの感じになった。だが例外がいた。そう、姉さんである。最初は"なんで彩海奈が首席じゃないのかしら?"と笑顔(笑ってはいない)ではあったが最後の方には"せっかくお忍びで行こうと思ってたのに…ブツブツ"と逆に首席になれなくて良かったとさえ思えてきたのだった。

 

そしてまた日は流れ私が東京に旅立つ日、五輪家本邸の前には父さんや母さんそして使用人のみんなや近辺に住んでいる親戚の方が見送りに来てくれた。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

「あぁ、行ってらっしゃい。もし東京で何かあったら私や洋史に言いなさい。何も無いことが望ましいがなそしてお前に言ってはいなかったが東京にお前のお世話をしてくれる子を2人ほど行かせている。その子達は高校生では無いがそれでもお前の身の回りを見守ってくれる。彼女たちもあてにしなさい。誰だかは行ってみたらわかるよ」

 

「え?あ、うんわかった。ありがとうね父さん」

 

「彩海奈、身体に気を付けてね」

 

「うんありがとう。母さんこそ気を付けてね」

 

「「「行ってらっしゃいませ、彩海奈様」」」

 

「うん、みんなも気を付けてね!」

 

「それじゃ、行ってきます」

 

こうして私は一路東京を目指して旅立った。今の交通手段は21世紀前半よりは格段に優れていて未だ大阪での乗り換えは必要なもののそんなに時間はかからずに着く。そうこうしているうちに私が住む家がある最寄りの駅に着いた。

 

「うーん、やっと着いた〜。前回来た時は試験が主な目的だったから見て回れなかったけど今度こそは見て回ろう。でも今日はもう疲れたし休もう…」

 

こうして東京に来た初日は終わりを迎えたのであった。

 

あっと言う間に私の東京生活は過ぎていき入学式の日を迎えた。

 

入学式当日、私は一抹の期待と不安を持って学校に行ったのだ。学校に着いたのは式開始の20分前、少しは余裕を持って来たつもりであったが案外ぎりぎりになってしまった。校門をくぐって地図を頼りに講堂を目指していると前方から『あの』七草真由美さんが歩いてきたのであった。

 

「新入生ですか?講堂はあちらですのでお間違えのないようにお願い致します。あ、私は一高の生徒会長をしてます七草真由美と申します。さえぐさは『七草』と書いてさえぐさと読みます。」

 

「これは丁寧にありがとうございます。兄がいつもお世話になっております。私は兄五輪 洋史の妹の五輪 彩海奈と申します。もしかしたらご存知かもしれませんがよろしくお願い致します」

 

「まぁ、あなたが彩海奈さんなのね!こちらこそお世話になっております。それにしてもあなたが彩海奈さんなのね。洋史くんから聞いている通りねそして試験の成績も流石ね首席じゃないのは首席の子がこの一高の試験の歴代最高得点を出したからねそれでも歴代2位の成績よ本来なら首席なんだけどね…」

 

「あ、あの七草先輩みんな見てますから、それにもうそろそろ始まってしまいますので…」

 

「あら、いけないそれじゃあまたゆっくり話しましょうね!」

 

「は、はい!それでは」

 

こうして七草先輩との初邂逅を終えた私は講堂へ向かった。

 

数分後講堂に着くともう席の4分の3以上は埋まっていてそれぞれ2人組や3人組等一緒にいる人たちが多かった。斯く言う私は上京したてであることや十師族であることに加えてあまりそういう友人というのはこちらにはあまりいなかった。それでも私は空いている席を見つけ座ろうとした。

 

「すみません、隣座ってもよろしいでしょうか?」

 

「え?あぁどうぞ僕の名前は十三束鋼これからよろしくね」

 

「ありがとうございます。私の名前は五輪彩海奈と申します。その名前とか気にせず仲良くしていただけると嬉しいです」

 

「え?えぇー!?五輪ってあの五輪かい?うん僕も苗字のこととか気にせず仲良くしてくれると嬉しいかな」

 

とこんな風に少しおしゃべりしていると開演の合図が鳴った。学長挨拶や在校生代表挨拶(生徒会長である七草真由美さん)など進んでいき新入生代表挨拶の番になった。

 

「続いて新入生挨拶 新入生代表司波深雪」

 

「そういえば五輪さんって新入生代表にどうしてならなかったの?」

 

「うっ、そこを突かれると…まぁ七草先輩とここに来る前お会いした時に聞いたら、あの子は歴代最高得点を出したそうよ。さすがにそれは私でもすごいと思ったけどね。あ、でもこれオフレコでお願いね。多分そんな公にしていいことじゃないと思うから」

 

「あ、うんわかったよ」

 

「春うららかな日にこの学び舎に入学出来たことを嬉しく思います。私は皆等しく一丸となり総合的に等しいそれぞれの3年間を過ごしていけたらと思っています。ーーーー(中略)以上です。新入生代表 司波深雪」

 

「随分綺麗な人だったね」

 

「あら、十三束君は司波さんみたいな人が好みなの?」

 

「え?いやいやそんなこと無いわけではないけどそれでも綺麗な人だったよ」

 

そんなことを話しているうちに入学式は終わった。これからIDカードを受け取り自分のクラスを確認したらそこからは自由時間だ。クラスに行ってこれからの学友と親交を深めるも良し、自宅に帰るも良し、校内を見て回るも良しだ。そういう私は自宅に帰ることにした。まだ上京してから自宅の片付けも済んでいないためその時間にあてることにした。さすがに今日クラスルームに出なくとも明日から親交を深められるだろう。数時間後やっとの思いで全部の荷物が片付いた。今日はもう寝ようと思った瞬間、部屋の中にコール音が鳴り響いた。誰だろうと思い電話に出ると日本魔法師会の長老『老師』九島烈だった。

 

『夜更けにすまんな。今日が入学式と聞いたから電話した』

 

「『老師』自ら電話をかけてくださりありがとうございます。無事今日第一高校に入学することが出来ました。それで今宵はどういったご用件でしょうか?」

 

『いやなにあの時の娘がもう高校生とは時の流れは早いものだと思ってな。入学おめでとう』

 

「まぁ、ありがとうございます。本当にこれだけだったのですね」

 

『ふっ、ではこれで失礼するよ東京で何かあれば勇海殿や私に声をかけてくれ。ではまたな』

 

「はい。ありがとうございます。おやすみなさい」

 

こうして高校生活の初日は過ぎていった。

 

翌日、私は自分のクラスである1年B組に向かった。途中兄妹と思われる2人組とその他3人が七草先輩に声をかけられていたのを見かけた。その妹は新入生総代であったのに気づき、彼女を生徒会か何かに勧誘しているのだろうと思った。そうこうしているうちに教室に着きドアを開けると昨日隣にいた十三束君が既に来ていた。

 

「おはよう十三束君」

 

「あ、おはよう五輪さん」

 

「私のことは彩海奈でいいわよ。私も下の名前で呼ぶから」

 

「い、いや…で、でも…」

 

「あーっもう。じれったい。下の名前で呼んでよね?」

 

「う、うんよろしくね彩海奈…さん」

 

「あれー?何話してるの?あなたは誰?」

 

「私は五輪 彩海奈よ。質問で返すけどあなたの名前も教えてくださらないかしら?」

 

「い、五輪!?あの十師族の!?あ、私は英美=アメリア=ゴールディ=明智っていって日本では明智英美っていうのエイミィって呼んで!」

 

「うん、こちらこそよろしくねエイミィ!私のことも彩海奈って呼んでよ!」

 

「うん、よろしくね彩海奈!ほら十三束くんも!」

 

「え!?う、うんよろしくね明智さん」

 

「エイミィ!でもまぁこれから慣れていってね!」

 

「う、うん。は、はは…」

 

「それで彩海奈何処に行く?」

 

「私は工房かな。一応これでも自分のCADくらいは自分でも調整出来るけど、それでも魔法工学技師目指してるしね」

 

「へぇ彩海奈って魔工技師目指してるんだ。なんか少し意外かも」

 

「まぁねでも意外と勉強してみると楽しいものよ?エイミィは将来どうしたいの?」

 

「私はまだ考えてないけどでもこの生活の中で見つけられたらいいかなって思ってるの」

 

そんなこんなで1日が過ぎていった。工房で魔法工学のことを学んだり七草先輩の試技を見たが、そこで一悶着あったらしい。私は直接見ていなかったので聞いた話だが一科生と二科生の溝が原因らしい。そして放課後らエイミィや鋼君そして他のB組の子達と帰っていると校門前で一科生と二科生が言い争っていた。

 

「た……司波さん……かえ……たいだけなんだ」

 

「はん……活中に……しやがれ」

「…………」

 

とこんな感じで言い争っていた…

 

「どうしよう彩海奈…あれじゃ帰れないよ」

 

「魔法を使うのはちょっといただけないしどうしようかしら」

 

「止めなさい!自衛目的以外での魔法攻撃は校則違反はもとより犯罪行為ですよ!」

 

「風紀委員長の渡辺摩利だ。君達1-Aと1-Eの生徒だな。事情を聞くから着いてきなさい」

 

とまた七草先輩を見かけた。しかもあの口ぶりからすると何処からか見ていたのだろう。そんなこんな思っているうちに話は進んでいった。どうやら1-Aの生徒の一方的な使用と判断され、森…なんとかという生徒が風紀委員長に連れていかれた。

 

二科生の人たちも帰ったことから私も帰ろうとすると、後ろから七草先輩に声をかけられた。

 

「あーみなちゃん。さっきの騒動見てたでしょ?オフレコにしてくれないかしら?」

 

「ひゃっ七草先輩!?ええ見てましたけど了解しました」

 

「そう…あなた達もお願いね?」

 

「「わ、分かりました」」

 

「それではまた明日ごきげんよう」

 

そうして七草先輩は去っていった。

 

「なんで七草先輩は私たちがいることわかったんだろ…」

 

「おそらくだけどマルチスコープじゃないかしら。確か360°何処までも見られるというスキルを使っていたはずよ。このスキルは1種の才能だから私たちが扱えるものではないけれど」

 

「へぇ会長はそういうスキルを持っていたのか」

 

そうこう話しているうちに乗り場に着いたため、また明日ということで今日は別れた。彩海奈はそんな今日を振り返るとあの二科生の男の子が気にかかっていた。あの騒ぎの中でこちらの方に気づいていたみたいだし、それだけでなく何かじっと見られていた気がする。これはこちらとしても気がかりだ。私にはそんな情報を教えてくれる人もいないわけだし…と思っていると私は父さんからの言葉を思い出した。そうだあの2人と会ってみよう。父さんもあてにしなさいって言ってたからこの件について頼んでみよう。

 

 

 




はい。今回はここまでです

予告してたよりも進んでちょっと自分でも意外に思ってるけどなんだかんだ書いてると進んでしまう…

次回からはもう予告無しでやっていきます。ただ次からは視点を変えていきながらやっていきたいと思うので間隔が長くなると思います。

会話描写苦手すぎる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2人の素性と警戒心

はい。ということでこのお話では前回のお話で途中存在だけ明記した2人との初邂逅と彩海奈と達也(さらには深雪)との初邂逅のシーンと達也sideの話を少ししたいと思います。

今回から○○sideと視点の切り替えを入れていきます。



☆彩海奈side☆

 

高校生になって最初の休みの日に私は父さんから教えてもらった連絡先に電話をかけていた。

 

『『お初にお目にかかります。彩海奈様』』

 

「こちらこそお初にお目にかかります。 貴方方が父さんが言ってた方ですか?」

 

『はい、その通りです。貴女のお父上である当主様より彩海奈様の身辺の世話を任されております。ついでにお姉様であられる澪様にはこのことは内密になっておりますのでご安心を』

 

「(ね、姉さん…周りの人にも認識されてるよ…)わかりました。ありがとうございます。明日私の家に来てくださいませんか?これからのことでちょっと相談が…それとあなた達の名前を教えてくださいませんか?」

 

『それは構いませんが。私は『如月 芽愛(めい)』と申しましてこちらが『如月 弥海砂(あまね)』と申します。

私たちは貴女のお姉様に助けていただいてそれから五輪家にお世話になっていたのですが昨日当主様より彩海奈様のお世話及び護衛の任を承りました。

こちらも彩海奈様に一度お会いになった方が良いのかと思っていましたがこの機会を作ってくださりありがとうございます』

 

「『如月 芽愛』さんと『如月 弥海砂』さんですね。了解しました。では明日お待ちしております」

 

ふぅこれで明日は芽愛さんと弥海砂さんと会って色々お話したら終わりかな?いやでもお買い物しないとダメかな…仕方ない2人が帰られたら出かけよう…いやあの2人と行けばいいんだ。

そうだ姉さんと母さんと使用人以外の女の子とあまり喋る機会が無かったから仲良くなりたいしね!そして思った彼女たち何歳なんだろう…見た目高校生では無さそうだし…まぁ明日会えばわかるか…

 

そして明けて翌日午前11時私が住んでいる家にチャイムが鳴った。どうやら来たようだ。

 

「はーい、今行きますから少し待っててください」ドタドタ

 

「お、お待たせしました。どうぞお上がりください」

 

「「失礼します、彩海奈様」」

 

「あ、あのもっと寛いでも大丈夫ですよ?これからこの家に来る機会が増えてくるだろうし何時までもこうだと私としてもちょっとあれですし…」

 

「わかりました彩海奈様」(芽愛)

 

「あ、それと本邸と姉さんの家では様付けでもいいですけどこの家の中や外出歩いてる時はさんや下の名前で呼んでくれないかしら?私としてもそういう方が今後のためにもいいかなって…」

 

「そういうことであれば了解しました。それで今後のご相談とは何でしょうか?」(芽愛)

 

「あぁ、私は今夜は1人でこの家にいるのですが隔日でいいですからこの家に来ていただけませんか?まだこの土地にも慣れていないので芽愛さんか弥海砂さんがいてくれるとその心強いんですが…」

 

「ふふっ彩海奈様も澪様と同じで可愛らしいところがあるんですね、わかりました。一日置きに私か弥海砂がお邪魔致しますね」(芽愛)

 

「か、可愛らしいっ!?私がですか!?いえいえそんなことありませんよ。それと姉さんにもそんなところがあるんですか?」

 

「はいございましたよ。詳細は澪様が彩海奈様だけには言わないでと仰られてましたのでお教え出来ませんがそれはまぁ随分と可愛らしかったですよ」(弥海砂)

 

「姉さんにもそんなところがあったなんて…そうだ失礼ですけど芽愛さんと弥海砂さんは今何歳であられるんでしょうか?」

 

「私たちは今年24歳になりました。既に魔法大学は卒業していますので日中は主にこの関東近郊で起きていることの情報収集、夕方〜夜にかけては彩海奈様の護衛をしていました。もちろん護衛は目に見えないところで行っていますのでどうかご安心を」(弥海砂)

 

「わかりましたといっても私はあなた達が行うことに対しては指図はしないので無理をしないように行ってください。

何かわかればその都度私に教えてくれると嬉しいです。それと今日この後ご予定ってありますか?」

 

「わかりました。今日この後ですか?特に予定はありませんがどうかしましたか?」(芽愛)

 

「あの…その…私この辺のことあまり知らないので…も、もしよろしければ一緒に買い物に手伝ってくださいませんか?」

 

「ふふっ彩海奈様も澪様に負けず劣らず可愛いですね。ええ是非お供させていただきます」(弥海砂)

 

「うぅ…もう行きましょう!」

 

その後私たちは私の自宅の近くにあるショッピングモールで今後のことに必要なものを買いそれを私の自宅に送りそして私たちは遅めの夕食を食べそれから自宅に帰りその日は解散となった。

 

☆彩海奈side終わり☆

 

☆芽愛(偶に弥海砂)side☆

 

♢芽愛と弥海砂の過去回想シーン♢

 

今日は初めて尽くしと昔を懐かしむ1日となった。

私たちは決して恵まれているとは言えない状況で育ってきた。その生活に変化が生まれたのは2学年上の先輩で今では国家公認戦略級魔法師になられた五輪 澪様に出会ってからだ。

私たちと澪様が初めて会ったのは学校だった。当時澪様は今のような虚弱体質ではなくちゃんと学校に来ていて、身体も動かしていた。新年度になるとよくある新入生と在校生の交流会をきっかけに私たちは学校の中でもよくしゃべる間柄になった。

数ヶ月経つと私たちの両親が旅行中に新ソ連の侵攻を受け亡くなってしまった。それがわかると私たちは学校に行きづらくなってしまい行かなくなってしまった。行かなくなってから数週間経ったある日来客を知らせるチャイムが鳴った。出てみたらなんとそこには澪様がいた。正直わけがわからなかった。何故ここに先輩がいるのかそしたら先輩が「ウチに来ない?」と言いさらに分からなくなった。そこで泣き崩れた。その後のことは覚えていないけれど澪様からは良いものを見せてもらったと言われとてつもなく恥ずかしくなった。

それからというものあれよあれよと進んでいき私と弥海砂は五輪家にお世話になり始めた。私と弥海砂は澪様のお父上で五輪家現当主のお声も有り澪様のお世話をしたりしていた。

こうして澪様は私たちと友達のような関係になり喜怒哀楽様々なことを楽しんだ。彩海奈様はその当時まだ小さいこともあり私たちのことを今ではお忘れになっていたが今でも可愛らしい姿を見せてくれた。それでもその時はまだ使用人みたいな関係だったため彩海奈様のあんな姿は初めて見て新鮮だなと思いながら見ていた。

 

(あんな彩海奈様きっと澪様もご覧になったことは無いでしょう貴重なお姿だったと思う。これは澪様には知られたらとんでもないことになるわ…内緒にしないとね)<芽愛>

 

(あんな彩海奈様初めて見た…今まで澪様や洋史様など五輪家に関係している人達のお世話をしてきたけれど彩海奈様はお母様に似ているこんな彩海奈様は決して澪様には見せないでしょう。決して澪様には知られないように注意しないと…)<弥海砂>

 

こうして彩海奈とそのお世話をしてくれる芽愛と弥海砂の初邂逅はお互いに懐かしさや初めてが交じり合うそんな1日になった。彩海奈にとっては絶対に知られてはいけないと思うそんな日になったり、どこか懐かしいそんな日になった。

 

☆芽愛(偶に弥海砂)side終わり☆

 

☆達也(偶に深雪)side☆

 

俺は今年魔法大学付属第一高校に入学した。

この学校には日本魔法師界の最高峰である『十師族』のうち三家のご息女、御曹司が在籍している。第三学年に2人そして俺たちと同じ第一学年に1人在籍だ。生徒会長であり長距離精密射撃のスペシャリスト七草真由美、次期当主であり部活連会頭でもあり鉄壁の異名を持つ十文字克人この2人は日本魔法師界に於いても超有名人である。

もう1人同学年である五輪彩海奈とは全くと言っていいほど知られてはいない。もちろん五輪家は国家公認戦略級魔法師の五輪澪がいることで有名だが五輪家のご令嬢がこちらの高校に来るのは意外だった。

聞くところによると彼女は1年B組に在籍しているらしい。これは妹の深雪やその友達である光井ほのかと北山雫からの情報であった。これには達也も納得感はあった。首席と次席(らしい)を同じクラスにはしないと思ったためであり納得した。

達也は彼女のことを特尉として在籍している国防陸軍101旅団独立魔装大隊(響子)、体術の師匠である九重八雲にも調査を依頼した。(ただ八雲に関しては達也が依頼する前から調査済みだった)ただ何処からも特に異常性無しという解答だった。この解答は達也をさらに困惑させた。その理由は九重八雲からの解答にある。彼は

 

『五輪家の彩海奈君についてだが正直何処にも特異なところは見られない。これだけなら十師族なら普通なんだろうけどあまりに綺麗な情報だったまるで君たちみたいにね。だからこそ気を付けた方がいい』

 

とこんな風に忍びである八雲でさえも五輪家のご令嬢のことについて正確な情報が得られなかったのである。これは達也にとっても予想外であり警戒心を高める要因にもなった。

 

数日後達也は深雪と共に昼食をとるために生徒会室に向かった。入室の許可を貰い入るとそこには彼女がテーブルに七草先輩と向かい合わせに座っていた。

 

「それでね彩海奈ちゃんにも生徒会に入ってほしいのよ。もちろん無理にとは言わないけどね」

 

「よろしいのですか?私は首席ではありませんでしたし首席の方を差し置いてまで入るのはちょっと…」

 

「大丈夫よ首席のあっ今来たわねそこにいる深雪さんも入ることが決まってるの」

 

「初めまして1年A組の司波深雪といいます。貴女が五輪彩海奈さんですね?これからよろしくお願いします」

 

「こちらこそ初めまして1年B組の五輪彩海奈と申します。呼び方は彩海奈でも何でもいいですよ。そちらの貴方は生徒会の先輩ですか? 」

 

「いや、俺は深雪の兄で司波達也と言います。俺のことは達也でいい。妹共々よろしく頼む」

 

「それは失礼しました。ところで七草先輩私の生徒会入りですが今日1日考えさせてください。明日のこの時間にまた生徒会に来ます」

 

「えっえぇわかりました。では明日楽しみにお待ちしております」

 

「はい、それでは失礼します」

 

「それでは深雪さんと呼んでよろしいでしょうか?また会えることを楽しみにしていますもちろん達也さんも」

 

「ええ、もちろん。私も会えるのを楽しみにしてます」

 

こうして彩海奈は生徒会室を出ていった。

 

「会長、彼女をどの役職に置くつもり何ですか?」

 

「彩海奈ちゃんはねリンちゃんと同じ書記にするつもりよ。リンちゃん今年は論文コンペに出るらしくて抜けた時の穴埋めを出来るようにってね」

 

「市原先輩の論文テーマは何ですか?」

 

「私は重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性です」

 

「っ!?それって加重系魔法の技術的三大難問の1つじゃないですか?」

 

「奇遇ですね。自分も同じ研究テーマ何ですよ」

 

「司波君もですか?では論文コンペの際は少しでもこのテーマに関する人がいてくれるのは助かります。論文コンペに出ることが決まればまたお知らせしますね」

 

「はい、その際はよろしくお願いします」

 

「ところで会長は彼女について何かご存知なんですか?」

 

「えぇといってもそこまで詳しいことは知らないけどね」

 

これ以降は彼女のことや会長のことで盛り上がり1日が過ぎていった。

そして場所が変わり司波家では今日の昼休みに話された話題が再び上がっていた。

 

「ところでお兄様今日生徒会室にいらっしゃった五輪彩海奈さんですがどんな方何でしょうか?」

 

「あぁ、彼女だが響子さんや師匠に調査をしてもらったんだが何かを隠しているようだ。師匠曰く俺たちのように情報が綺麗すぎるようだ」

 

「情報が綺麗すぎる?それでは彼女はもしかしたらお兄様のような方かもしれないと?」

 

「確かに五輪家には軍とは少なからず関わりがあるだろうからそういう可能性はなくはない。だがそれならばもっと情報はあるはずだがそれがないということは内々に秘めたことなんだろう」

 

「それでは彼女は色々と情報が無いということですか?」

 

「あぁ、そういうことだ。深雪もし彼女が生徒会に入ったら積極的にとは言わないが出来るだけ彼女と関わりを持つんだ。それが深雪の成長にも繋がるからな」

 

「はい、お兄様」

 

一体彼女は何者だ…もしかしたら俺と同じでも軍に組み込まれていない戦略級魔法師なのか…でも彼女はそんな感じはしなかった。

それにしても何故彼女は五輪の本拠の近くの七高ではなく一高に来たんだ…達也はさらに警戒心を上げた。

 

翌日お昼休み場所は生徒会室今日は達也と深雪の方が先に来ていた。ちょうどお昼を食べ終わり談笑していたところに彩海奈がやってきた。

 

「失礼します。会長昨日の生徒会入りの件ですがありがたく末席に加わさせていただきます」

 

「そう、彩海奈ちゃんありがとう。普段は私たちの他に副会長のはんぞー君がいるからよろしくね!あなたにはリンちゃんと同じ書記を務めていただきます」

 

「わかりました。ではまた放課後お邪魔します」

 

「うん。じゃあ放課後待ってるわね」

 

彩海奈は生徒会室を後にした。

 

「良かったですね会長」

 

「えぇ本当よこれで生徒会のメンバーも揃ったし今日から本格始動よ!」

 

これで何とか彼女との接触手段が出来たなっと少なくない安堵感を持った達也であった。

 

その日の夜達也は四葉家に五輪 彩海奈について調査を依頼した。

 

☆達也(偶に深雪)side終了☆

 

 




はい、ということでここでこの話は終了となります。

時系列がめちゃくちゃになってる気は自分だけじゃないと思いたいです←

ちなみに個人的にブランシュのお話についてはあまり好きじゃないので所々カットしながら話を進めていきたいと思ってます(もう既に色んなところをカットしている)

これからの流れとしては

所々カットしながらブランシュ編→九校戦→夏休み→横浜騒乱→冬休み

という流れでやっていきます。夏休みと冬休みは完全オリジナルでやっていきたいと思ってます

このお話で出てきた『如月 芽愛』『如月 弥海砂』『司波達也』『司波深雪』『七草真由美』を設定集に追加するので次回は少々間が空くと思います

今回もご読了ありがとうございます。次回もまたよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生徒会と反魔法師団体騒動

はい、今回は入学編の多分最後までとはいかない迄もその前あたりまでやろうと前書きでは意気込んでます。

タイトル考えるの何気に難しいことに苦しんでたりしてます


☆彩海奈side☆

 

私が生徒会入りを決意した放課後早速私は生徒会室を訪ねた。

 

「失礼します。1年B組の五輪 彩海奈です」

 

『開いてるから入っていいわよー』

 

「うん?あぁ君が生徒会に入った五輪 彩海奈さんか。俺は生徒会副会長の服部刑部だ。よろしく頼む」

 

「こちらこそよろしくお願いします。服部副会長」

 

「さてはんぞー君の自己紹介も終わったところで他の役員の紹介もしちゃうわね。まずはこちらが書記の市原鈴音通称リンちゃん、そしてあちらが会計の中条あずさ通称あーちゃん、そしてこちらが今年の新入生総代であーちゃんと同じ会計の司波深雪さん」

 

「私の事をリンちゃんと呼ぶのは会長だけです」

 

「会長私にも立場というのがありますので、後輩の前であーちゃんはやめてください」

 

「先日も挨拶しましたが改めて司波深雪です。よろしくお願いしますね彩海奈さん」

 

「ええこちらこそよろしくお願いします。それで私はどの役職に就くのでしょうか?」

 

「彩海奈さんにはリンちゃんと同じ書記を務めていただきます。何かあったら私かリンちゃんに聞いてね」

 

「わかりました。市原先輩よろしくお願いします」

 

「ええこちらこそよろしくお願いしますでは最初はーーーーー(省略)をしていただけますか?」

 

「わかりました」

 

それから約1時間後閉校時刻が迫ってきたため今日はこれでお開きになった。彩海奈は自宅へ向かっている途中忍び寄る怪しい影を感じたが自宅に着いている頃にはもうその影は消えていた。おそらくは芽愛さんか弥海砂さんかその他の護衛の人達が追い払ってくれたのだろうと感じた。

そして自宅に入ると自宅宛にメーラーに一通のメールが入っていた。中身は一高の中に反魔法師団体がいるということを知らせるメールで差出人は弥海砂からだった。

 

(反魔法師団体!?何故一高にそんな組織が…もしかして今日の怪しい影はその一味だったのかな…)

 

このメールについて考えていると家の呼出音が鳴った。慌てて出てみるとそこには芽愛と弥海砂がいた。彼女は芽愛達を家に招き入れるとちょうど彩海奈が考えていたことについて語り始めた。

 

「彩海奈様自宅宛に届いたメールはご覧いただけましたか?」

 

「ええ見させて貰ったわ。どうして一高に反魔法師団体が…」

 

「今日はその事で私たちが護衛という目的でこちらに来させていただきました。

この反魔法師団体の名はブランシュといい世界的にも有名な反魔法師団体です。もちろんまだ実害がある訳では無いのでおおやけには動けないのですが念の為ということでこちらに参らせていただきました」

 

「そういうことでしたか…あ、それと1つ聞きたいんですが私今日帰宅している時に怪しい影を感じたのですが芽愛さんか弥海砂さんが排除してくれたのですか?」

 

「いえ私は何も感じなかったのですが…」

 

「はい私が怪しい者を問い詰めておりましたらあの『忍術使い』として有名な九重八雲でした。

どうやら彩海奈様に何か秘密があるんじゃないかと疑っておいででした。もちろんそのようなことは言ってはおられませんでしたがそんな感じでした」

 

「九重八雲!?あの御方は俗世とは関わりを絶ったのでは?」

 

「もしかしたら自分に分からないことがあると調べたくなるのではないかと…」

 

「なるほど。わかりました今後もよろしくお願いします私だけだとかえって怪しまれてしまいますからさらには秘密を暴かれかねないですから」

 

「「かしこまりました、彩海奈様」」

 

こうして夜が過ぎていき1日が過ぎていった。

 

明けて翌日特に変わったこともない1日が終わろうとしていた。ところが放課後

「全校生徒の皆さん!!」

 

と突然放送が流れたのだがボリュームの音量を間違えたのか一旦そこで会話が途切れた。そして間もなくそれは再開された。

 

「先程は失礼しました。全校生徒の皆さん!!僕達は学内での差別撤廃を目指す有志同盟です!僕達は生徒会と部活連に対して、対等な立場での交渉を要求します」

 

とこんな感じに前触れもなく非日常が訪れる。

 

「彩海奈どうした?」

 

「どうやら生徒会からお呼び出しみたい。それじゃ行くわねまた明日ね!」

 

「うん!また明日ね彩海奈」

 

急いで放送室に向かうとそこには十文字会頭、渡辺風紀委員長、市原先輩、中条先輩、深雪、達也がそこにはいた。

 

「遅いぞ!」

 

「すいません、それで今はどういう状況何ですか?」

 

「とりあえず電源を切ったためこれ以上の放送は不可能だ。ただ連中はマスターキーを持って閉じこもったみたいで開けようにも開けられん、ただ今しがた達也くんが壬生と交渉してこれから出てくるそうだ」

 

「そうですか。それで彼らをどうするつもりなんですか?」

 

「壬生以外は拘束するつもりだ。達也くんはどうやらイイ性格をしているようでそのようになった」

 

「案外イイ性格してるのね達也って」

 

「よしてくれ…それよりも今は態勢を整えるべきだ」

 

それもそうねと口にしようとしたところで放送室のドアが開いた。

 

☆壬生side☆

 

私達は生徒会と十文字会頭との交渉のためドアを開けようとしたら何やらゾロゾロと外から音が聞こえてきた。

そして私達がドアを開けた瞬間生徒会及び風紀委員が放送室になだれ込んできた。

これに私は

 

「これはどういうことなの!私達を騙したの!?」

 

「司波はお前を騙してなどいない」

 

「十文字会頭…」

 

「お前達との交渉には応じよう。だが、お前達の要求を受け入れるのと、お前達が行ったことについて認めるのとは別問題だ。」

 

私達はその言葉に何も返せなかった。私は交渉に行こうと立ち上がろうとしたその時そこに近づいてきた人がいた。生徒会長である七草真由美であった。

 

「彼らを解放してあげて貰えないかしら」

 

「おい、真由美…」

 

「わかっているわ摩利。でも壬生さんだけでは交渉の段取りも出来ないでしょう?当校の生徒であるのだから逃げるということも無いのだから」

 

「私達は逃げ出したりしません!」

 

思わず声を荒らげてしまった。

この後に七草先輩が

 

「学校側はこの件については生徒会に委ねるそうです」

 

「何?」

 

「それで壬生さん、これから貴方達と交渉の打ち合わせを行いたいのだけれど、着いてきてもらえるかしら」

 

「ええ、構いません」

 

叶えてみせる。私達二科生と一科生の差別の撤廃を、さらには私の事ではあるけどあんな事を言った渡辺先輩を…

 

☆彩海奈side☆

 

放課後に起きた一件があった日の夜またしても芽愛さんと弥海砂さんが私の家にやってきた。

 

「夜分遅くに失礼します、彩海奈様」

 

「いえ、全然構わないわよ。2日連続で2人揃って来るっていうことは余程重要な案件だということでしょう?」

 

「ええ、明日第一高校にて一科生と二科生の差別についての討論会が行われることはご存知かと思われますが、それに乗ってブランシュが第一高校に襲撃を起こそうと企ててます。明日は私達も第一高校周辺で警戒に当たろうと思ってます。もちろん彩海奈様を護衛するという任務は果たすつもりでありますので、もし襲撃の際は外に出ることがあれば私達に一報を」

 

「明日ですか…わかりました。芽愛さんと弥海砂さんも決して無理をなさらないようにお願いします。でも何故第一高校を襲撃するのでしょうか…」

 

「おそらくブランシュの狙いは魔法大学附属高校にしか無いもの特別閲覧室にある魔法大学の所有する機密文書であると思われてます」

 

「何故そのようなものを…反魔法師団体が魔法大学の機密文書を盗んで何になるというの…」

 

「「…………」」

 

こうして夜は更けていき翌日を迎えた。

 

私は朝からあまり気分が乗らないまま学校へ向かった。学校が近づいていくと前に七草生徒会長と司波達也・深雪兄妹が歩いていた。どうやら今日行われる討論会について話しているようだ。

 

(今日の討論会一体何が起こるんだろう…何もそんな物騒なこと起きない方が良いに決まっているけれど…)

 

「……な、……みな、ねぇ彩海奈?」

 

「うん?わぁっ…ちょっと驚かさないでよ深雪」

 

「ごめんなさいね考え事をしている時に、あまり真剣に考え事をしていたものだから気になっちゃって」

 

「うん…ちょっとね今日の討論会に乗じてあの団体が攻め込んでくるんじゃないかって少し思ってね…」

 

「そうね…そういうことも無きにしも非ずね…でも大丈夫よ七草先輩や十文字先輩だっているのだし」

 

「そうね!もし何かあったらお互いに頑張りましょう?それこそこの一高に私達有りってね」

 

「ええ、それではまた放課後にね」

 

「そうねまた放課後にね!」

 

深雪と別れた後私はいつものようにB組に入り通常通り授業を受けていた。そして昼休みいつもはエイミィや十三束君、そしてエイミィが入学式のときにお友達になったというD組の里美スバルというボーイッシュな女の子と食べているのだが今日は討論会があるということで生徒会と風紀委員合同で最終調整ということになっていたため今日は一緒には食べられないけれど初めて深雪や達也、七草先輩、渡辺先輩等と初めて昼食を共にした。生徒会にダイニングサーバーがあるのは驚いたけれど…

そうこうしてる内に昼休みも終わりに差し掛かって来たのと同時に会議も終わりを迎えた。

 

「深雪、達也何かあったら頑張りましょうね」

 

「ええ(そうだな)」

 

そうして午後の授業も終わり放課後を迎えた。授業を終えた私は講堂に向かうとそこには風紀委員や生徒会、有志同盟の人達やこの討論会を見学しにきた人達でいっぱいになっていた。彩海奈は出入口の片方の側で警戒していた。

 

(思ったより人数が多いわね。これは一波乱ありそう…)

 

こう思った彩海奈は芽愛と弥海砂に連絡を入れたもしかしたら外にいる別働隊を止めてくれるかもしれないと思った。

そうしていると討論会が始まった。

内容も質も七草先輩に勝てるものではなくもはや演説会に成り代わり果てていた。

 

「ブルームとウィード

 

学校も生徒会も風紀委員も禁止しているこの言葉ですが、残念ながら多くの生徒がまだこの言葉を使用しています。しかし、一科生だけでなく二科生の中にも自らを"ウィード"と蔑み、諦めと共に受容する。そんな悲しい風潮がまだ存在しています」

 

この言葉には声を荒らげた二科生の生徒だけでなく私や近くで警戒にあたっていた風紀委員の人達もざわついていた。

だがこれに怯える七草先輩では無かった。

 

「この意識の壁こそが問題なのです!私はこの一高の生徒会長として、この意識の壁を何とか解消したいと考えていました。ですが、それは新しい差別を生み出すことになってはいけないと思っています。一科生と二科生その1人1人が当校の生徒である期間はその1人の生徒にとって唯一無二の三年間になるのですから」

 

彼女の演説に会場のそこかしこから拍手が起こる。その中には二科生の生徒や有志同盟の生徒にも目元を抑える者がいた。

 

「ちょうどいい機会ですから皆さんに私の希望を聞いてもらいたいと思います。生徒会には一科と二科を差別する制度が残っています。現在の制度では生徒会長以外の役員は一科生から指名しなければなりません。この規則は生徒会長改選時に開催される生徒総会でのみ改定可能です。私はこの制度の撤廃を解任時の生徒総会で提案しこの仕事を生徒会長としての最後の仕事にするつもりです。人の心は力づくで変えることは出来ないし、してはならない以上、それ以外の事で出来るだけの改善策に取り組んで行くつもりです」

 

会場にいた生徒からは割れんばかりの拍手が生まれた。有志同盟の生徒たちも全員目を瞑り下を見ていた。

 

だがこの公開討論会がこのまま平和に終わるということは無いようだ。

 

 

ドゴォォォォォォン

 

 

それは何処からか聞こえてきた爆発音だった。




はい。今回はここまでになります。
多分次で入学編が終わると思います。次で終わって1つ話を挟んでから九校戦編に移ります。

九校戦編ではオリキャラがいる影響で原作の結果から少し変わっていきます。

今回もご読了ありがとうございました次回もお楽しみにしてくれると幸いです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

騒動の終焉とそれぞれの思惑

はい今回で入学編の最終回です。騒動開始から終焉までとその後のアフターストーリー的な感じのやつを出したいと思ってます。
アニメでいう入学編最終回+‪αみたいな感じにしたいです。


ドゴォォォォォン

 

そんな爆発音だった。これを機に学内は混乱に陥った。そしてその音をきっかけに動き出す者もいた。そしてそれを止めるべく舞台袖にいた渡辺先輩が出てきて

 

「取り押さえろ!!!」

 

と声をあげた瞬間警戒に当たっていた達也や風紀委員の方々そして生徒会の中で唯一警戒に当たっていた私はブランシュの下部組織エガリテの一員(といっても一高の生徒)を抑えるべく動き出した。そして各方面でエガリテの構成員と思わしき生徒を取り押さえたと同時に

 

パリイィィィィィン

 

と講堂の窓が割れて何かが講堂内に投げ込まれた。投げ込まれたものは地面に落ちると煙が吹き出し始めた。皆がその場を動けなくなっていたが1人の男が迅速にこの場を対応していた。

 

「煙を吸い込まないように!」

 

そう副会長である服部先輩だ。咄嗟に気体の収束と移動の魔法を行使し投げ込まれたものを外へと出した。これには私もすごいと思った。

誰かが服部先輩に視線を向けたのか先輩は当然だと言うような顔をしていた。

そして時を絶たず待ってましたとばかりに入り口のドアから覆面を被りライフルを手にした男組3人が乱入してきた。ただこの3人は目の前に映った状況に混乱していた。そんな男達が混乱していたのを見逃す私ではなく持っていたライフルを私の魔法で壊していく。そしてトドメと言わんばかりに渡辺先輩がおそらく覆面の中の酸素を奪ったのか男達が気絶していく。

 

「ふぅ、これで終わりか?」

 

「ええ講堂はおそ…「ドゴォォォォォン」らく…とこれは何処でしょうか?お兄様」

 

「おそらく方角的に実技棟辺りだな…渡辺先輩自分は実技棟の方に向かいます」

 

「ああ頼むぞ達也君」

 

「お兄様お供します」

 

こうして達也と深雪は一緒に講堂を出て実技棟に向かった。それにしてもあの2人いつも一緒にいるわよね。特に深雪が達也にくっつく形で。でもこれを深雪に言ったら凍らせられちゃうのかしら。そう考えていると

 

「彩海奈ちゃん怪我はない?」

 

「ええ大丈夫ですよ会長。それと私も敷地内を見てきていいですか?まだ所々で銃声が聞こえてくるので」

 

「!?危険よまだここにいなさい!おそらく先生方も対処してくれているはずだから」

 

「ご心配には及びません会長。先程私のお世話をしてくださってる方から連絡がありまして広場の方でこの襲撃に対して迎撃をしているそうで…」

 

「そう…五輪家の方々には申し訳無いことになってますね…わかりました。決して無理はしないでね」

 

「はい、会長それでは」

 

こうして私は芽愛さんと弥海砂さんと合流すべく連絡があった広場へと向かう。もちろんその道中にもエガリテと思わしき者達には出くわしたが固有魔法や幻衝を用いながら敵を倒していく。

進んでいくとそこには敵と交戦中であった芽愛さんがいた。そこに私が加わわると直ぐに敵は倒れた。

 

「芽愛さん大丈夫ですか?」

 

「ええ、ありがとうございます彩海奈様」

 

「いえ、お怪我が無くて良かったです。それと弥海砂さんは何処でしょう?」

 

「弥海砂ならもう敷地内で随分と暴れてるんじゃないでしょうか?彩海奈様は知らないかもしれませんが弥海砂はかなりの腕前ですから。もちろんお嬢様方には敵いませんと言うと思いますが」

 

「私はそこまでの腕前では無いと思うのですが…それよりこの状況をどうにかしないといけませんね…」

 

「そうですね…弥海砂を探しましょうかそこで色々情報収集をしてからですね」

 

方針が決まった私達は弥海砂さんと合流すべく敷地内を移動していると図書館の中に入っていく達也と深雪と男の子と女の子がいた。私が思うに彼らは達也のクラスメイトだろう。どうやら達也のクラスメイト(?)の男の子が外で警戒するみたいだ。それに気づいていたのか芽愛さんが

 

「彩海奈様、私は弥海砂を探してきます。あちらの男の子の援助をしてください」

 

「え!?いえわかりました。芽愛さん気をつけてくださいね」

 

話していると芽愛さんは弥海砂さんを探しに敷地内を駆けていった。それを見ていた私は急いで男の子がいる場所に急いだ。

 

「…………ツァーーー!」

 

「くっ……「グラッ」な、なに!?」

 

「!?パンツァーーー」

 

「ぐはっ…………」ドサッ

 

「やったのか?助かったぜありがとうな!」

 

「ええ、そちらこそお見事でした。それにしても音声認識ですか。今時珍しいですね。私は五輪 彩海奈と申します」

 

「おう、ありがとうな!俺は硬化魔法が得意だからなこれでも問題無いんだ。っと俺は西城レオンハルトだレオでいいぜって五輪ってあの十師族の五輪か?」

 

「ええ、その認識で合ってるわ。出来ればそういうのは関係無しに仲良くしてくれると嬉しいわレオ君。貴方って達也のクラスメイトなの?」

 

「おう、それじゃよろしくな!ああ達也と同じクラスだが知ってたのか?」

 

「ええ、彼の妹が同じ生徒会にいるのでそこから知り合いました。それに達也はあまり誰かといるということが無いけど貴方は一緒にいるということは同じクラスなのかと思いました」

 

「はあぁぁすげえな「ま、まて」っと中で色々あるかもしれないが五輪さんも来るか?」

 

「いえ、私は他の場所を助けに行きます。それと達也によろしくとお願いします」

 

「おう、わかったぜ。五輪さんも気を付けてな!」

 

レオ君と別れた後私は敷地内を芽愛さんと弥海砂さんを探しに駆け回っていた。探していると第一小体育館手前で2人を見つけた。

 

「芽愛さん、弥海砂さん!!」

 

「彩海奈様、大丈夫でしたか?」

 

「ええ、芽愛さんと弥海砂さんは?」

 

「私達は大丈夫です。ところでこれで全部ですかね?」

 

「ええ、おそらくこれで全部でしょう。芽愛さん、弥海砂さんありがとうございました」

 

「いえいえ、お嬢様にお怪我が無くて良かったです。では私達は御当主様などにも報告があるのでこれで失礼します。今日は私がお伺い致しますね」

 

「ええ、本当にありがとうございました。ではまた」

 

こうして第一高校で起こったブランシュの下部組織のエガリテによる襲撃はエガリテの敗北で決着を迎えた。私は芽愛さんと弥海砂さんの2人と別れると生徒会室に向かった。ところが生徒会室には誰もいなかった。何処にいるのだろうと思い校内を歩いていると正面から七草先輩と渡辺先輩を筆頭にゾロゾロと歩いてきた。

 

「!彩海奈ちゃん大丈夫だった?」

 

「はい、大丈夫でした。それと会長深雪と達也は何処へ行ったのですか?」

 

「司波と司波妹は十文字と共にエガリテのアジトを壊滅しにいった」

 

「アジトを!?それで私達はこれからどうするのですか?」

 

「私達は校内の残党処理をしようと思ったのだけど見た通りいなくてね。十文字君が帰ってくるまで待とうってなって生徒会室に戻る途中だったのよ」

 

「そうでしたか。では私はこれで失礼してもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、もちろんよこんな日だしね、しっかりと休んでちょうだい」

 

「それでは失礼します」

 

こうして第一高校にとって激動の1日が終わった。どうやらあの後十文字先輩から七草先輩に先に帰ってくれという連絡が届きそのまま解散したという。

私はあの後家に帰ったら既に芽愛さんが家におりそれからはいつもと変わらない日常を過ごしていた。ただその裏では様々なことが巡り巡っていた。

 

☆芽愛・弥海砂side☆

 

私達は第一高校の周辺で警戒していたところ彩海奈様から警戒するような連絡が来たため警戒心を引き上げた。すると奥からおそらく人を乗せることが出来るトラックがたくさんやってきた。そこで私達はトラックに向かって迎撃を始めた。何台かは走り去っていったが数台は足止めし倒していった。

その後私達は一高の敷地内に入りエガリテを倒していった。弥海砂に関しては敷地内に入るなりどんどん突き進んでいき倒していった。私達はその後合流するとその場所にいた残党を倒していき彩海奈様の無事を確認すると私達は御当主様に報告すべく一高を去っていった。

 

「以上が今回一高で起こった襲撃の報告です」

 

『うん、ありがとうね2人とも。これからも彩海奈や澪のことをよろしく頼むよ。それじゃまた何かあったら報告してくれ』

 

「はい、御当主様」

 

これでやっと私達のやるべき事は終わった。

 

「姉さんお疲れ様」

 

「うん、弥海砂こそお疲れ様。今日は久々じゃない?あんなに戦ったの」

 

「ううん、そんなことないよ。先日もちょっと争いごとになっちゃったからね」

 

「もう、あまり無理したらダメよ……ってもうそろそろ彩海奈様が帰る時間!じゃあ行ってくるね」

 

「うん。気をつけてね姉さんも」

 

こうして夜は更けていく。私達はこの日を忘れないだろう。あの彩海奈様がこんなにも立派に成長されているのを見ることが出来たのだから。

 

☆七草side☆

 

今日一高で起こった出来事は七草家の当主である七草弘一はわかっていた。それを何故知っていたのかは娘である真由美と七草家の魔法師の分析によってであった。

そこで弘一が目をとめたのは五輪家のご令嬢である五輪 彩海奈とおそらく一般の家系である司波達也と深雪の兄妹だった。五輪 彩海奈のことについては真由美を通じてある程度知ってはいたが司波兄妹は初めて目を付けた。

 

そこで私はまず司波兄妹について調べてみることにしたが出てくる情報は特段何かが優れているというわけでもなく何処にでもいるような普通の少年と少女だった。ただ私は映し出されているだけが真実では無いと思っていた。ただ調べても調べても出てくるのは同じような情報だった。今日のところはこれくらいでやめたがこれからは徹底的にそう四葉が出てくる前に彼らを…と思った。

次に我が七草家と同じく『十師族』の一家である五輪家のご令嬢である五輪 彩海奈のことについて調べることにした。五輪家ということもあってか情報は色々出てくるのだが特段変わったことも無ければ何かが不得手といったこともない優秀な魔法師といったことだけだった。ただ私はこの五輪家から国家公認戦略級魔法師が出ているという点からこの少女もただこれだけのはずがないと思いつつもこれ以上は何も出ないだろうと思い今日のところは終わりにした。

 

七草家にとって、弘一にとってこの結果は悔いが残る結果だろう。ただ七草家にとっても私にとってもこれからのことについて色々考えさせられることになった。これ以上四葉家との差を広げられるようなことがあってはならないと思いながら私はこのことを日記として綴った。

 

そして私は九校戦にはあまり行かないということにしていた。しかししかし五輪 彩海奈と司波深雪が出るかもしれないということで訪問することにしたということも付け加えておく。

 

☆四葉side☆

 

達也さんから五輪家のご令嬢である彩海奈さんについて調べてほしいと葉山に連絡があったそうで私が調べてみると興味深いことがわかった。

 

どうやら達也さんが所属している国防陸軍独立魔装大隊でもあの娘について調べていた。おそらく達也さんが先生の孫娘にあたり同じ独立魔装大隊の響子さんに依頼したのだろうと勝手に推測した。そこではどうやらあの娘は戦略級とまではいかなくても戦術級くらいの実力があるだろうとは調べたみたいだった。

それを踏まえて私もあの娘について調べてみて結果としては独立魔装大隊と同じではなく彼女は戦略級魔法師と見ても可笑しくはないという結論に至った。ただこの結果は思えるというだけで何の確証もない。彼女はおそらく夏の九校戦に出てくると思われる。彼女が使っていたという魔法からアイス・ピラーズ・ブレイクや五輪家ということからバトル・ボードが出ると思わしき種目だ。

 

さてここ数年は七草家に甘い汁を吸われていたが今年は苦い汁でも吸ってもらおうかしらと考えながら達也さんと深雪さんに私は連絡を取った。

 

そして彼らには伝えなかったが今年は九校戦に姉さん、葉山、穂波さん、水波ちゃんを連れて行こうと予定を立て始めた。

 

☆五輪side☆

 

芽愛と弥海砂両者から彩海奈の無事を確認すると私はホッとした。ただでさえ今年入学したばかりの娘だ。こうも入学当初からこんな大事件に巻き込まれるなんて思わなかった。今になって本当に芽愛と弥海砂を彩海奈の側に付けといて良かったと思っているが第一高校にはあの七草と十文字がいる。何時彩海奈のことが知れ渡るかと内心ひやひやとしている。

 

ただ彩海奈が戦略級魔法師ということは五輪家の家族及び第五研の上層部のみにしか知らせておらず箝口令を敷いている。さらには電子データ上には彩海奈が戦略級魔法師ということは我が家のデータベースにも載せていない情報だ。これについては紙でのやり取りだけでのみ載せている。これくらいしなければ五輪家は反魔法師団体から非難を浴びるのは必至だ。私は娘2人と息子1人を路頭に迷わす訳にはいかないと心に誓いながら娘であり戦略級魔法師である2人を案じながら今日1日の出来事を振り返っていった。

 

ただまだ問題はある。今度は2ヶ月後に控えている九校戦今年は行けないが澪がどうしても彩海奈がいる3年間は見に行きたいと伝えてきたため私はそれを了承した。もしかしたら澪がいることで他の十師族(主に七草家)に対して牽制出来るかもしれないと考えた。

 

それを澪に伝えると我が娘ながら私より威厳がある表情で了承した。どうやら澪の彩海奈に対する想いはすごいようだ。これは九校戦の間何も起こさなければと心配になるほどだ。それでも彩海奈の秘密にすれば何も無いと同義だ。私は少々心配になったため芽愛と弥海砂に連絡を取った。

 

『すまないね、こんな時間に電話をかけて』

 

「いえ、大丈夫でございます。先程彩海奈様の自宅から戻ってきたところでしたから」

 

『そうか…では早速だけど本題だ。九校戦の期間君と弥海砂さんには九校戦関係者が泊まるホテルに泊まりながら澪と彩海奈のことを頼みたいんだけど大丈夫かな?主に付いていて欲しいのは澪の方だけど』

 

この回線は秘匿回線を使っているため盗聴は無い。

 

「わかりました。澪様と彩海奈様には報告した方がよろしいでしょうか?」

 

『澪の方には僕からしておくから彩海奈の方頼めないかな?』

 

「承知致しました。ではこれで失礼します」

 

『うん。じゃあよろしく頼むね』

 

これで大丈夫だろうと思い私は眠りについた。これから起こる波乱を知らぬまま。




はい。これで入学編最終回と+‪αで入学編を終えての各家のことについて書いてみました。(七草と四葉と五輪しか書いてないけど←)

次回からは九校戦編に入っていきます。今まで出ている原作の中でこの九校戦編が2番目に好きな話なのでがんばりたいです←

まさか連日投稿出来るとは思ってませんでした←

今回もご読了ありがとうございます。次回からの九校戦編もお楽しみにしていてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九校戦は波乱と歓喜が混ざり合う
ちょっとした波乱と九校戦への想い


はい、ということで今回から九校戦編に入ります。

基本はそんなに原作と変わりはしませんが所々変わる部分はあります。




ブランシュの騒動から2ヶ月以上経った7月のある日一学期の期末試験の結果が発表された。ここで一波乱が起きた。

 

総合成績

 

1位 1年B組 五輪彩海奈

2位 1年A組 司波深雪

3位 1年A組 光井ほのか

4位 1年A組 北山雫

5位 1年B組 十三束鋼

 

実技成績

 

1位 1年A組 司波深雪

2位 1年B組 五輪彩海奈

3位 1年A組 北山雫

4位 1年A組 森崎駿

5位 1年A組 光井ほのか

 

とこの総合成績と実技成績は一科生が情報が掲載されている上位20人を占めていた。(そのうち総合成績が20人中11人がA組、実技成績が20人中13人がA組)

ところが理論試験では波乱が起きていた。なんと二科生が上位20人に4人も入っていたのだ。

 

理論成績

 

1位 1年E組 司波達也

2位 1年B組 五輪彩海奈

3位 1年A組 司波深雪

4位 1年E組 吉田幹比古

5位 1年A組 光井ほのか

6位 1年B組 十三束鋼

……

11位 1年A組 北山雫

……

17位 1年E組 柴田美月

……

20位 1年E組 千葉エリカ

 

とこんな結果になっていた。これには職員室中、1年生中にも衝撃がはしった。それもそのはずこの理論の成績だが1位と2位、2位と3位それぞれに平均点が5点差ずつ離れているのだ。

 

「それにしても達也ってすごいのね。理論でこれだけ離されるのは初めてよ」

 

「ええ、お兄様は理論は昔からすごいのよ私なんかお兄様が教えてくださるからこの成績だけれど無かったらと考えるとちょっとね……」

 

「それでも深雪はすごいわよ」

 

「そうかもね…でも今は目の前のことに集中しましょう」

 

深雪と彩海奈それぞれの目の前には

 

『九校戦各種目出場者一覧(仮)』

 

という資料が置いてあった。もちろん生徒会の一員である私や深雪、会長、服部先輩が選手として、市原先輩が作戦参謀、中条先輩はエンジニアとして九校戦に参加する。この会議には生徒会だけでなく部活連、風紀委員も参加して後日の選定会議で確定する運びになっている。

私はこの九校戦にアイス・ピラーズ・ブレイク本戦とバトルボード新人戦にエントリーする運びになっていた。

何故私がアイス・ピラーズ・ブレイクを新人戦ではなく本戦なのかは新人戦に深雪が出るからだ。深雪はどうやらアイス・ピラーズ・ブレイクに相当な適性があるようでポイントでも私も新人戦に出てポイントを分け合うよりポイントが2倍の本戦でポイントを分け合う方が良いと判断されたため私が本戦に出ることになった。

 

だが1つこの出場者一覧の中でエンジニアの欄に見慣れた名前が載ってあった。その名は「司波達也」。確かに期末試験の理論で1位であったという点を踏まえても意外すぎる選定だ。そのため私は隣に座っている深雪に聞いてみることにした。

 

「ねぇ深雪、達也ってCADの調整出来るの?」コソコソ

 

「ええ、私のCADはお兄様が調整しているわ。それももし他の人が調整しても違和感を感じるほどにすごいのよ」

 

「なるほどね。深雪のCADを弄れるならそれはすごい腕だわ」

 

そう話してるうちにこの会議は終わり明日の選定会議について話していた。明日の選定会議どうなることやら……

 

☆彩海奈side☆

 

その日の夜私は今日来てくれていた弥海砂さんと明日の選定会議について話をしていた。

 

「それで彩海奈様は何の種目に出られるのでしょうか?」

 

「私はアイス・ピラーズ・ブレイクの本戦とバトル・ボードの新人戦に…って弥海砂さんは知ってましたよね?」

 

「そうですけど本戦というのは私にとっては意外でした。新人戦にはそれほど優秀な方がいらっしゃられるのですね」

 

「ええ、今年度の首席の方が出られるので、まだ1年生というのもあり新人戦になったそうです」

 

「お嬢様も1年生ですけれど……まぁそこは十師族だからという理由でしょうか?」

 

「ええ、そういう理由もありますが新人戦でぶつけるより本戦と分けることによってポイントアップを狙っているようです」

 

「そうでしたか……その作戦参謀の方は優秀なのですね」

 

「ええ、それはとても優秀で生徒会の先輩なのですから贔屓目になってしまいますがすごいですよ」

 

「良かったですね、お嬢様。それと1つお耳に挟んでいた方がよろしい情報が……どうやら香港系犯罪シンジケートの構成員と思われる人物が富士の演習場で発見されています。時期的に九校戦で何かやるかもしれないので御注意を」

 

「わかりました。わざわざありがとうございます。それにしても弥海砂さんは軍の敷地内のことをよくお知りになっているのですね」

 

「ここからは高くつきますよ?」

 

結局ははぐらかされてしまったけれどそれ以上突っ込む気はなかった。それからは九校戦のことや他愛もない話で会話は盛り上がった。

 

☆達也side☆

 

今日は色々なことが起きた。今朝登校すると学内メールで昼休み生徒指導室に来るようにという通達が来ていた。

そこでは実技試験で手を抜いたんじゃないか?という疑惑をかけられたが説得するのともう一度同じ内容をやると分かってくれたのかこれ以上は追求はしてこなかったが代わりに四高への転校を勧められた。もちろん断ったがその事を生徒指導室の前にいたほのかや雫、美月、エリカ、レオに話すと全員が反発していた。それから九校戦の話題で話をしていた。

 

次の日には昼休み生徒会室で昼食をとっていると会長がエンジニア不足を嘆いていたところに中条先輩から司波君はどうでしょうという言葉をきっかけに深雪からのお願いによって逃げ道が塞がれてしまった。そして明日の放課後に行われる選定会議に出席することが決まってしまったのだ。

 

翌日の選定会議ではやはり俺の能力に関して疑問があるようで実際に調整をしてみせたことでエンジニアとして内定した。

その日の夜秘匿回線で電話が掛かってきた。

 

「お久しぶりです……狙っていましたか?」

 

『何の事かわからんが……久しぶりだな特尉』

 

「その呼び方ということは秘匿回線ですか……よく一般家庭用の回線に割り込めますね」

 

『貴官の家はセキュリティ一が厳重すぎるのではないか?一般回線にしては』

 

「最近のハッカーは見境がありませんからね。それに余程深いところまで侵入しなければカウンターは発動しませんよ」

 

『新米のオペレーターには良い薬になったようだよ。さて、まずは業務連絡だが、本日『サード・アイ』のオーバーホールを行い、部品を幾つか新調した。これに合わせソフトのアップデートと性能実験を行って欲しい』

 

「了解しました。明朝出頭します」

 

『いや、学校を休むほど差し迫ってはないのだが……』

 

「いえ、次の休みには研究所で新型デバイスの性能テストがありますので」

 

『これは本官が言えることではないが、高校生になってますます学生らしくない生活になってきているな』

 

「これは仕方ありません。この言葉はあまり好きじゃないですが」

 

達也はもはや高校生らしい生活を送るのをほぼ諦めかけていた。電話の相手である国防陸軍101旅団独立魔装大隊隊長・風間玄信はこの言葉に頷いたがそれ以上はツッコミはしなかった。

 

『さて、次の話だが、聞くところによると特尉、今夏の九校戦に君も出るそうじゃないか』

 

「…………はい」

 

達也はこの時どうして数時間前に決まったことを知っているのか気になったが答えてはくれないだろうと思い次の言葉を待っていた。

 

『会場は例年通り富士演習場南東エリアだが……気を付けろよ達也。このところ該当エリアにおいて不穏なことが確認されている。そして国際犯罪シンジケートの構成員らしき姿も確認されている』

 

「国際犯罪シンジケート……ですか?」

 

『ああ。詳しく言えば香港系の無頭竜だと思われる。これは内情にいる壬生からだ』

 

「壬生…というと第一高校の壬生紗耶香の御父君ですよね?」

 

『あぁそうだ。壬生は退役後内閣情報調査室の外事課長をしている。明日は会えんが富士では会えるだろう』

 

「楽しみにしています」

 

『ああ私もだ。おっと長く話しすぎたようだ。そろそろ切るぞ。師匠にもよろしく伝えておいてくれ』

 

「わかりました」

 

とここで回線は切れた。最後の言葉は八雲にも伝えてくれという理解だが何処まで話すものかと悩んでいると2階から深夜、穂波、深雪の3人が降りてきたためこのことを頭に仕舞い何時もの時を過ごしていった。

 

☆???side☆

 

俺は彼女のことを1度だけ見たことがある。それは俺がまだ10歳にも満たない時だった。

その時は親父が主催のパーティーだったためずっと親父の後を付いていったのだが、そこで俺は1人の少女に出会ったのだがハッキリとは覚えていない。それでもあの少女のことだけは覚えている。おそらくあの子も俺と同じ世代か少なくとも1.2世代しか離れていないはずだ。2世代上ならば今年の九校戦が最初で最後の会える場所だ。願わくば同世代ということを信じて3年会えればって思っている。

 

だがここで問題となるのは俺は彼女の名前を知らないということだ。それからもパーティーに出席する度に彼女の姿を探したがあのパーティー以降見たことは無い。

そして時は巡り2095年8月俺は九校戦のメンバーに選ばれた。自分の高校の威信をかけきっとこの大会で優勝してみせる。おそらく見ているであろう名前の知らない彼女にアピールするために。

 

だがこの時俺は知らなかったこの九校戦で彼女以外の女の子に目が止まるということに。

 

☆再び彩海奈side☆

 

私はこの九校戦には特別何か思いがあるという訳では無い。優勝して有名になったって何かあるわけでも無いし、私はどちらかというと目立つことは嫌いだ。

ただ今年のこの九校戦に私には特別な想いがあった。これは姉さんに対する想いだ。姉さんは高校に上がってからも虚弱体質なためあまり体を動かすことが出来ずにいた。

そんな姉さんはどうやらシスコンだそうなので私が活躍をするととても喜んでいたと芽愛さんと弥海砂さんから聞いたことがある。姉さんが私の姿を見て私が活躍すると喜んでくれるということは私は少なからず好感を覚えたのでそれを糧に今年はがんばろうと思う。

そして今年は姉さんが九校戦の会場に来るということでこれ以上無い舞台だ。例え上級生が相手だとしても負けるなんてことは有り得ないように頑張ろうと思う。

 

☆再び達也side☆

 

今年の九校戦俺は最初スタッフとしてでは無くレオやエリカ、美月と同じく関係者としてこの九校戦を観戦に来る予定だった。ただその目論見は選定段階から崩れていった。中条先輩が俺にエンジニアではどうか?ということから始まった。そこから選定会議でも一波乱あったがエンジニアとして九校戦に参加することが決まった。

それからは担当のCADの調整、練習の付き合い、作戦会議等色んなことがあったが今ではもう全力で担当の選手を勝たせるということに邁進している。

そして余談ではあるが今年は叔母上であり四葉家当主の四葉真夜が会場に来るという。その同伴者に母上の深夜や護衛の穂波、穂波とは遺伝子上姪にあたる水波も来るという。母上の深夜とその護衛の穂波が来ることは納得していたがまさか叔母上と水波が来るのは意外だった。これだけの声援がある中で深雪を負かせるわけにはいかないと思いつい先日開発したばかりの飛行魔法を九校戦のレギュレーションに合わせるための作業を続けた。

 

☆達也side終わり☆

 

そして時が経ち全国魔法科高校親善魔法競技大会(通称:九校戦)が遂に幕を開ける。

 

未だ見知らぬ彼女のため、敬愛する姉のため、唯一存在する兄妹愛のため、今年の九校戦で本当の勝利を手に入れるため、それぞれの想いが入り交じる九校戦。それは九校戦史上最も盛り上がった年の始まりでもあった。

 

 




はい。九校戦編が始まりました。

まぁ九校戦編って言ったらあの人ですよね……(笑)

優等生の方で一色さんが本戦に出てたからこっちでも出しました。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録や評価ボタンも是非お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

不可解な出来事と懇親会

はい。ということで九校戦編の2話目です。

今回の話では原作既存キャラが結構出てきます。(主に第三高校)




7月31日。今日は私たち第一高校が九校戦の会場である国防陸軍富士演習場に向かう日だ。明後日には競技が始まるのだが私たちはまだ東京にある第一高校にいた。軍の施設で行われるため会場から1番遠い高校から会場入りしているため1番近い私たちが最後になった訳だ。

 

そして今は午前11時。朝に集合した私たちは約2時間程この場に留まっていた。

 

「それにしても随分暑くなってきたわね」

 

「そうねでも私の隣にいれば涼しくなるわよ?」

 

「え?どういうこと?」

 

「彩海奈、彩海奈バスの外見てみて」

 

雫に言われてバスの外を見ると達也がドアの前でたっているのが見えた。そこからは勘のいい彩海奈だ。深雪が考えていることがわかるとなるほどね…と分かりたくないことを分かってしまった。

 

「深雪、貴女の考えていることはわかるけれどそれだって大切な仕事の1つだよ。ほら達也って変なところで真面目だからねそれでしっかりしてるし」

 

「……それもそうね。お兄様ったら変なところで真面目なんだから」

 

良かった。これでブリザードが吹くことは無くなった。

 

「ねえ彩海奈?お兄様と随分仲良いのねちょっとあとで暇あるかしら?」ニコニコ

 

どうやら私限定で吹き荒れそうだ。この状況を見ていた雫、ほのか、エイミィ、スバルはやれやれといった感じになっていた。

 

そのあと七草会長が到着し出発してまもなく九校戦の会場近くを走行している時に私の端末が震えた。

送信元は芽愛からだった。内容は

 

『彩海奈様、第一高校のバス前方から車が1台近づいてきています。その車は先日話した無頭竜の構成員と思わしき人物が乗っていると思われます。お嬢様は決して手を出さないでください。私達だけで対処致しますので』

 

と書いてあった。文面から見て自爆テロを起こそうとしているのだと気づいた。その瞬間バスの前方に車が飛んでいるのが見えた。そしてそれと同時に車から何らかの魔法が行使された。その時バスの中では

 

「消えろ!」

 

「ぶっ飛べ!」

 

「お願い!」

 

「おいやめろ!魔法をキャンセルするんだ」

 

「みんな、落ち着いて!」

 

「行けるか?十文字」

 

「止めるのは行けるが、消火は無理だ」

 

「火は私が」

 

「頼むぞ」

 

「はい!」

 

摩利はこの会話を聞いて無茶だと思った。これだけ想子波が吹き荒れている中で魔法が使えるとは思っていなかった。

ところが摩利のその思いは瞬時に違う事象に目を向かせられた。そう想子波が一瞬にして消えた。摩利には何が起きたのかが分からなかった。

さらにその刹那また違う魔法に目を向けざるをえなかった。何と車が十文字の障壁魔法が出る前に潰れてさらに消火まで行われていたのだ。

 

キキイィィィィ

 

とバスが急ブレーキで止まる。私達はその出来事に呆気をとられて動けずにいた。ただ1人を除いて。

その名は五輪 彩海奈。彼女は平然としていた。まるでそれが起きるということを知っていたかのように。

そしてもう1人この場にはいないが司波達也、彼はバスの外を見ると目の前にいた。

 

「会長。外の様子を見てきてもいいでしょうか?誰も動けなそうなので」

 

「え、ええでも誰かしら付いていってくれないかしら?」

 

「ご心配せずとも既に達也が外にいますので、それでどうでしょうか?」

 

「え?達也くん?ってほんとね……はぁ〜もう行って大丈夫よ」

 

「ありがとうございます。会長」

 

そうして私はバスを出て潰されていた車の元へ向かった。そこにはいつの間にか外に出て車にいた達也。

 

「どう?達也」

 

「ああ、彩海奈か。見た通り潰れているな。しかもその前に何重かかに魔法が重なっているのもわかった。しかしよくこれだけの魔法が重なった状態から………もしかして彩海奈か?」

 

「いいえ、私じゃこれだけ強固な障壁魔法は作れないわ。そうね…これだけの障壁魔法を作れるのは十文字先輩くらいだけれど十文字先輩が使う前にこうなるとそれは違う。一体誰かしら……」

 

「君でもわからないか……まぁとりあえずは交通整理だ。五十里先輩を呼んでくる」

 

「ええ、そうね……」

 

こうして私達はこれからの九校戦に何か不穏な空気を感じ始めていた。

 

そして軍の近くからなのか軍にこの事故のことを任せ、私達は軍のホテルに向かった。

 

そして数十分後私達はホテルに着いたがその空気は悪かった。何よりも事故が目の前で起こったのだ。むしろこれで良い空気でいろと言われてもそれは難しい。

 

私がホテルの中に入っていくとホテルのスタッフと思わしき人からある伝言を伝えられた。

 

『懇親会終了後にV.I.P.ルームに来るように 九島烈』

 

とどうやら『老師』は私をいつまでも可愛いお嬢ちゃんと思っているようだ。(作者の個人的解釈)これは一言何か言わないとと思っていると今度は違うスタッフからも伝言を伝えられた

 

『彩海奈ちゃん?この伝言を聞いて何も無ければすぐにV.I.P.ルームにきて! 澪』

 

と我が姉ながらなんという伝言だ。と思ったが私は七草先輩に許可をもらい直ぐにV.I.P.ルームに向かった。

ただこの許可を貰うのに物凄く時間を要したことに私は不安を感じていた。一高がこのホテルに着いたのが遅れることはおそらく姉さんも把握しているだろう。だが到着から時間が開いていたので姉さんのフラストレーションが溜まっていないか今から心配だ。

 

そうこうしている内にV.I.P.ルームがあるエリアに辿り着くとSPの方々が私に近づいてきたどうやら持ち物検査のようだ。私はそれをパスするとV.I.P.ルームの前に着きドアを開け、入った瞬間何かが私に抱きついてきた。もちろん姉である。

 

「彩海奈ちゃーん久しぶりーー」ダキッ

 

「ね、姉さん久しぶりね。それと兄さんも久しぶりだね」

 

「ああ、一高を受験する時以来かな。はい姉さん離れよう。こうでもしないと彩海奈とも会えなかったんだよ?懇親会までにはまだ時間はあるし、それに今は芽愛さんも弥海砂さんもいるんだ。またからかわれるよ?」

 

「それもそうね……それにしても九校戦ほんとに本戦に出るの?」

 

「ええ、そうよ。ポイントを分け合うなら本戦でってことになって私が本戦に。まぁ一応十師族でもあるしということでね」

 

「そう、なら頑張りなさい。おそらくここに来ると思う十師族関係者、軍関係者に五輪家は澪だけじゃないっていうところを。もちろんあの魔法は使わないでね」

 

「わかったわ、姉さん。あまり目立つのは好きじゃないけど姉さんの要望に答えてみせるわ」

 

「彩海奈、決して無理はしないで。何かあったら私でも洋史でもいいから連絡してちょうだい。九島のおじいちゃんに伝えるから」

 

「ええ、わかったわ姉さん。ところでここには何をしに来たの?ただ私が出てるだけじゃ姉さんが出てくる必要は無いじゃない?」

 

「それは秘密よ。これは父さんに言われたことでまだ高校生の貴女にはまだ関係ないことだから」

 

どうやら姉はここに来た理由を話そうとはしてくれないらしい。まだ私には早い大人の世界ということか。

この時姉である澪は

 

『ごめんね、彩海奈ちゃん……貴女には十師族の一少女として過ごしてほしいのよ。私みたいに虚弱体質でも国家公認戦略級魔法師でもない。唯の五輪家のご令嬢として普通の生活をして欲しいって私は願ってる。私としては彩海奈ちゃんと離れ離れになるのは嫌だ。彩海奈ちゃんは私たちだけしか知らないけど戦略級魔法師だ。もしわかってしまえば私と同じ道を辿ってしまうかもしれない。それだけは何としてでも避けたい未来だ。だからお願いわがままなのはわかってるでも私に代わるほどの戦略級魔法師がいるなら早く出てきて欲しい』

 

と思っていた。これは純粋に私が彩海奈ちゃんに対しての願いであると共に私のわがままだ。

これは父さんや洋史、芽愛、弥海砂も知らない私の思いだ。このことは私に代わる戦略級魔法師が出てきて新たな『使徒』になったら私が国家公認戦略級魔法師であることに変わりはないが私を強要したりは出来なくなるだろう。私は元々虚弱体質でありあまり身体を動かすことが出来ない。それでも私は彩海奈ちゃんに対しては強いお姉ちゃんでありたい。

 

それから約1時間私たちは他愛も無い話や九校戦の話等をしていた。私は懇親会があるため姉さんがいるV.I.P.ルームを出て私の部屋へと向かった。

私のルームメイトは同じクラスのエイミィだ。私が部屋へと向かうと部屋にはエイミィはおらずどうやら懇親会の会場へと向かったようだ。私も時間を確認すると開始までそんなに時間が無かったため会場へと向かった。

 

会場の中に入るとそこには各附属高校の制服を着た高校生やこのホテルのボーイ等でいっぱいになっていた。私は一高が固まっていた場所へと向かうと、渡辺先輩が気づいた。

 

「お、間に合ったか。あとで真由美にも挨拶をしてくれ」

 

「はい、わかりました。ところであれはどういう状況なんでしょうか?」

 

彩海奈が見つけたのは七草先輩が他校の生徒会長(?)と話し合っているところだ。

 

「ああ、あれは探り合いの一種だ。まぁでも何処の高校ともしてるし真由美ならそうそう負けたりはしないだろう」

 

「そうですね、っとどうやら話し合いが終わったようなので挨拶しにいってきます」

 

「あぁ、よろしくな」

 

私は第七高校の方々と話してた会長の元へ向かった。

 

「会長、遅くなりました」

 

「あら、彩海奈ちゃん大丈夫よ。『老師』のお言葉には間に合ったからそれだけはちゃんと出て欲しかったしね」

 

「そうですか、では私は一高の方に戻りますので」

 

「ええ、皆と仲良くね」

 

こうして私は一高の元へ戻り深雪やエイミィ、スバル、達也、中条先輩などとお話をしていた。

千代田先輩にはアイス・ピラーズ・ブレイクでの対戦を待っておくように言われ、達也にはクラスメイトでどうやらバイトで来ているというミキこと吉田幹比古君と千葉家のご令嬢の千葉エリカとも顔を合わせた。さらに私がレオ君と知り合いと言うと彼もここに来ているようだ。ただレオ君と知り合いということにエリカ、幹比古君と達也に意外そうに見ていた。

そして楽しく談笑しているとアナウンスが鳴った

 

☆???side☆

 

俺たちは懇親会2日前の7月29日に会場となる富士演習場の近くにある軍のホテルに着いていた。

懇親会は明後日なので俺たちは練習場で練習やCADの調整などを行った。

そして7月31日今日は懇親会当日だ。しかし今日到着予定だった一高が事故の影響で到着が遅れているらしい。一高は前年、前前年と優勝をしており今年優勝すると3連覇を成し遂げるのだがその風向きが逆に流れているのはうちとしてはついていた。今年はうちには一条、一色を筆頭に有力ナンバーズが多数在籍していて一高を倒せるのではないかと言われているため今年こそはと優勝を狙っている。

懇親会が始まる頃には一高も到着していたようで無事に懇親会が始まった。そして俺はこの会場であの娘を探していた。だがそれはすぐに中断せざるを得なかった。一高の集団の中に紅一点の彼女を見つけたからだ。だが俺は誰か分からなかったため俺の良き友人であり参謀でもあるジョージに聞いた。

 

「なぁジョージ、あそこにいる一高の子は何と言うんだ?」

 

「あぁあの子は一高一年のダブルエースのうちの1人の司波深雪だよ。出場種目はアイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バットだよ」

 

「司波深雪……か、でジョージダブルエースってことはもう1人エース格がいるのか?」

 

「珍しいね、将輝が女の子のことを聞くなんて。あぁもう1人は今ここからは見えないけど君と同じ十師族の五輪 彩海奈だよ。出場種目は本戦アイス・ピラーズ・ブレイクと新人戦バトル・ボード」

 

「う、うるさい…って五輪!?一高に五輪家のご令嬢がいるのか…これは知らなかった。それにしても本戦に出るのか……俺は本戦に十文字さんがいるから新人戦にしたけど女子は本命がいないからな……」

 

「そういうことだね……でもこれで僕達が優勝出来たら僕達の代は間違いなく3連覇出来るはずだ」

 

「あぁ、そうだな…よし負けないぞ」

 

「ところで挨拶しなくていいのかい?七草さんや十文字さん、五輪さんに」

 

「あ、あぁ後で行くさ」

 

と話していると会場のアナウンスが鳴った。

 

☆将輝side終わり☆

 

「それではこれより魔法協会の理事であり、これまでも九校戦を支援してくださっています九島烈よりお言葉を頂戴いたします」

 

パッと会場のスポットライトが照らされるとそこには金髪のお姉さんがそこには立っていた。

私は最初驚いたがどうせあの人のイタズラだろうと思うとその奥に本人が立っているのが見えた。どうやら今回は精神干渉系魔法を使ったようだ。規模が大きく会場全体を覆うほどのだ。そして一高の方を向くとニヤリと笑っていたのが見えた。前に立っていた女性に話しかけると女性は舞台袖に引いていき『老師』本人が姿を表した。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。今のは魔法と言うより手品の類だ。だが手品のタネに気付いたのは私の見たところ、七人だけだった。もし私がテロリストだったらそれを食い止めるべく動けたのは七人だけだ。魔法を学ぶ若人諸君。魔法とは手段であってそれ自体が目的ではない。私が今用いた魔法は規模こそ大きいものの、強度は極めて低い。だがその弱い魔法に惑わされ君たちは私を認識できなかった。魔法力を向上させるための努力は決して怠ってはいけない。しかしそれだけでは不十分だということを肝に銘じてほしい。使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。魔法を学ぶ若人諸君。私は諸君の工夫を楽しみにしているよ」

 

九島烈はそう言うと会場全体からスタンディングオベーションが鳴り響いた。

 

(これが『老師』、この国の魔法界において頂点に立っているのね……戦略級魔法師がこの国の頂点と思われてる見たいだけどそんなことは無いわ…これがかつて『最高』であり『最功』と言われていた御方…私じゃ辿り着けないわね…)

 

九島烈の後にも日本魔法師界において名士と呼ばれる方のお言葉が述べられ懇親会は終了した。

 

そして私は数時間前にいたV.I.P.ルームとは違うV.I.P.ルームの前に立っていた。またボディーチェックを行いパスすると部屋に入るためドアをノックすると中から女性の声が聞こえ入室の許可が出た。

 

「お久しぶりです。それでご用件とは何でしょうか?」

 

「ああ、久しぶりだな彩海奈。そう焦るな久しぶりだから少し話したいことがあるんだよ。まずこの女性は私の孫娘でなこれから世話になるかもしれんから挨拶しといて損はなかろう」

 

「初めまして、九島烈の孫娘であり防衛省技術本部兵器開発部の技術士官の藤林響子です。これから彩海奈ちゃんって呼んでもいいかしら?」

 

「こちらこそ初めまして、五輪 彩海奈と申します。はいそれで構いませんよ。私は響子さんと呼ばせていただきます」

 

「さて、2人の自己紹介が終わったところで彩海奈。お前は何の種目に出るんだ?」

 

「はい、今年は本戦アイス・ピラーズ・ブレイクと新人戦バトル・ボードに出ます」

 

「ほお本戦に出るのか、一色家の彼女とどちらが活躍するかな今から楽しみじゃ」

 

「そうですね、お爺様。私も観戦させてもらおうかしら」

 

とこんな風に九校戦の話やこれまでの話をしているとさすがに時間が遅いためお開きになった。最後に去る際に烈から

 

『今年は普段より荒れるぞ』

 

という言葉に私はさすがに違和感を覚えざるを得なかった。

部屋に戻ると色々と振り回されてしまうと疲れるのかシャワーを浴び、ベッドに横になるとすぐ眠ってしまった。

 

そして九校戦が開幕する。




はい、九校戦編第2話です。

原作の次の追跡編が読みた過ぎて孤立→エスケープ→インベーション→急転編を結構読んでます。

戦略級魔法師がいっぱい出てきたんだからそろそろ澪さん出してもいいんじゃないかな……って思ってる作者です←

次回は今回より間隔が空くと思いますので出来るだけ早く投稿するつもりです。

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価等よろしくお願いします。お気に入りをしてくれた方もありがとうございます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

懇親会の裏側と九校戦開幕

はい九校戦編3話目です。

今回は懇親会が行われている裏で行われたことと九校戦の開幕です。

追跡編が4月10日に発売されるということで今から待ちきれないです


懇親会が行われている裏側では各地から十師族の当主並びにその関係者が続々と会場となる軍の施設の近くにある各家の別荘、ホテルで明後日から行われる九校戦について話が行われていた。

 

☆七草家別荘にて☆

 

今年私たち七草家は約2年ぶりに九校戦の会場に行くことにしていた。目的は娘の真由美の最後の舞台であるのと同時に今年入学してきた生徒達の観察だ。

 

特に同じ『十師族』の一条将輝と五輪彩海奈、そして先のブランシュ騒動で活躍した司波兄妹だ。

兄妹の内の兄の達也は出ないのではと思われていたがまさかエンジニアとして出てくるとは思わなかった。1年生でエンジニアとして出てくるのはその内容がそれだけ良かったことなんだろう。妹の深雪には一高のダブルエースとして公式に紹介されている程の選手だ。魔法力が低いわけでは無いだろうと思い、やはりこの兄妹には何かあると考えられる。

続いて同じ『十師族』の一条将輝だが、彼に関しては一条家の次期当主にほぼ内定しているだろうと思っている。彼は2092年の新ソ連による佐渡侵攻による功績から「クリムゾン・プリンス」と呼ばれている。魔法力も申し分なく特に一条家の切り札『爆裂』は見たことは無いが第一研の研究テーマからして人体にあるものを媒介にして爆破させる類の魔法だろうと考えられる。現状十師族の中で一番対人戦に最も優れている人物の1人であると思われる。

最後に五輪彩海奈だが彼女も司波兄妹と同じく何かを隠しているように思える。だがそれは幾ら探りをいれても分からないという結果だ。俺は苛立ちを隠せずにいた。

だがもしかしたら明後日からの九校戦で何かわかるかもしれないと思い明後日からの準備を始めた。

 

☆四葉家所有ホテルにて☆

 

四葉家が(と言っても四葉のダミー会社が)所有しているホテルの最上階の部屋では

 

「姉さん、ついに深雪さんと達也が九校戦に出るのね。私なんだか興奮してきちゃった」

 

「真夜、落ち着きなさい。それでもそれも分かるわよ。私も深雪と達也が九校戦に出る日が来たのねってね」

 

「そうですね奥様。あの達也くんと深雪ちゃんがもうこんなに立派になったかと思うと何だか感慨深いですね」

 

「あら、穂波もなの?それは楽しみね」

 

「それで姉さん今年達也さんや深雪さんと同じ学年にいる五輪家の彩海奈さんなんだけれど私達をもってしても彼女のことが分からなかったの」

 

「それは本当なの?私たちの情報網から逃げ切れるなんて……五輪家もそれだけ彩海奈さんについて知られたくない情報があるのね」

 

「やっぱり姉さんもそう思うのね。私はまだ何の確証も無いけれど彼女は戦略級魔法師に匹敵する程の持ち主なんじゃないかって思うのよ」

 

「確かに……それだけ隠すってことはそれくらいだと思うけれどどうなのかしらね」

 

とこんな風に真夜と深夜が会話しているのを聞いている穂波と水波は戦々恐々としながらもポーカーフェイスを保ちつつ何処か楽しげな装いをしていた。

そんな4人は明後日から始まる九校戦にどこか嫌な感じがしていたが同時に深雪と達也の応援と彩海奈のことについて知りたいという観点から物凄く楽しみにしていたというのは外で待機している葉山だけが知り得ることだった。

 

☆澪は軍のホテルのVIPルームにて☆

 

澪は彩海奈が懇親会に出ている間とある客人を迎え入れていた。それは日本魔法師界の長老『老師』こと九島烈だ。

 

「久しぶりだな、澪。こうして会うのは一昨年の国防に関する会議の後以来か。それで今年は彩海奈の応援にでも来たのかな?」

 

「ええ、お久しぶりです『老師』。今年はもちろん彩海奈の応援もありますがもう1つ重要なことを当主である勇海から伝えられておりまして」

 

「ははは君にも『老師』と言われるか。重要なこと?今年の九校戦に七草の当主が来ることと関係しているのかな?」

 

「私にとっては貴方こそがこの国の最大戦力と思っていますから。はい、そこが一番のところです。七草の当主はどうも我が家にちょっかいを出してくるようでそれの牽制も含めてという感じでしょうか」

 

「私はもう老いぼれだがなかなか嬉しいことを言ってくれるな。そうか弘一のことはこれに始まった事じゃないし大目に見てやるしかなさそうじゃな」

 

「そうなんですね……やっぱりここらで釘をさしておかないと」

 

「おっと私はそろそろ会場に行かなくては。それではなまた九校戦の会場で」

 

「はい、楽しみにしております」

 

こうして烈はVIPルームを出ていった。その瞬間澪はこれまで見せていた戦略級魔法師としての威厳を消し去るかのような体勢になっていた。

 

「弥海砂ちゃーん、芽愛ちゃーん疲れたー何か飲み物とかない?」

 

「こちらにございますよ。それにしてもあれが『老師』……さすがは『最高』にして『最功』といわれていたお方でしたね」

 

「そうですね。私たちは今回初めてお目にかかりましたが、すごいです」

 

「ええ、私がこの国の最大戦力だと言われているけどそれは違うわ、あの『老師』こそがこの国の最大戦力だと思うの」

 

こうして澪・芽愛・弥海砂の3人は改めて『老師』という存在について再認識しつつ彩海奈の九校戦での活躍を楽しみにしながら長く女子会を続けるのであった。

 

☆九校戦前の各家の懇親会の裏の話end☆

 

懇親会から2日後の8月2日。ついに九校戦が開幕した。

 

「みんな、何見に行くの?」

 

「七草会長のスピード・シューティング。高校最後の年に『エルフィン・スナイパー』がどういう活躍を見せるのかが必見」

 

「雫って九校戦よく見てるの?」

 

「雫は毎年九校戦を見に来てるんですよ!」

 

「じゃあ今日は七草会長のを見てから渡辺先輩のを見に行きましょう。でも、彩海奈は明日の準備しなくて大丈夫なの?」

 

「大丈夫よ。競技に使うCADは自分で東京にいる時に調整してきてるから。こっちでも今の体調に合わせてするつもりだけれどそんなに時間を使うものでは無いから」

 

「彩海奈って自分のCAD調整出来るんだ。いいな〜やっぱり自分のCADは自分で調整した方がいいの?」

 

「うーんまぁ家の人がしてくれる時もあるけどまだまだだなって思う時もあるわよ」

 

「へぇ〜じゃあ彩海奈は将来何になりたいってあるの?」

 

「それは今のところ無いけれどお家次第ってとこかしらね」

 

「あぁそうかぁ彩海奈はもしかしたら次期当主かもしれないしね。お姉さんやお兄さんはならないの?」

 

「どうかしらね。姉さんはならないというよりなれないって言った方が正しいかもね」

 

「どういうこと?」

 

「次期当主が戦略級魔法師だと有事の際は家を空けることになるじゃない?それは好ましいことではないからね」

 

「そっか。なるほどね」

 

「ほら、会場に急ぎましょう。七草会長の出番終わってしまうかもしれないわよ?」

 

「そうだねみんな急ごう!」

 

スピード・シューティングの会場に入るとそこは混沌としていた。七草会長のことを1目見ようと前の席の方に人が詰め寄り七草会長のことを呼んでいる。

 

「やっぱりすごいわね。七草会長」

 

「ああ、十師族の直系で初日から出てくるというのもあるだろう。それにしてもすごい人気だ」

 

「ええ、そうね…と噂すれば出てきたわよ」

 

七草会長が台の上に立つと会場は嬉々とした声が一層高まった。そして競技が始まるとその歓声は静まり競技が始まる。

 

パシュン、パシュン、パシュン

 

「さすが七草会長ね。一度も外さないわ」

 

「ああ、視覚魔法の『マルチスコープ』に死角はない。さらに使っているドライアイスの亜音速弾だ。その「銃座」を作り出すから何処からでも打てる。それに視覚魔法の組み合わせだ。余程の事がない限り負けは無いだろう」

 

「それにこれが競技だからいいけど、戦場で威力MAXでこの魔法が放たれたら何処に居ようとしても七草会長にとっては赤子をひねるようなことね」

 

「ははっマジかよ……」

 

「それが十師族。この国の魔法師界の最高峰と言われる所以なんだろうな。ここにもその十師族の跡取りとなるかもしれない奴もいるがな」

 

「あはは、私はあんな七草会長のように精密にあんな射撃出来ないし、視覚魔法なんて持ち合わせてないわよ。さらにそんなに魔法力も高い訳では無いしね」

 

「おいおい、嘘だろ。あれでそんなに高くないっていうのかよ……」

 

「あれ、あんた彩海奈と面識あったの?私と美月は深雪とか達也くんから紹介してもらったけどあんたそこにいなかったじゃない」

 

「うるせぇ、あの一高襲撃された日に図書館前で敵と戦ってた時に手助けしてくれたんだよその時にな」

 

「へぇあたしが中で交錯してる時にね…」

 

「まぁまぁエリカ、何時何処で知り合ったかなんていいじゃない。それにしても七草会長すごかったわね」

 

「うん。私達の戦い方の参考にはなったし。会場の雰囲気もある程度理解出来たから満足」

 

「それは良かった。さあ次は渡辺先輩だ。ほのかと彩海奈はバトル・ボードに出るから特徴を掴むにはもってこいだ」

 

私達はスピード・シューティングの会場を後にすると続いてバトル・ボードの会場に出向いていた。

 

そこにはスバルやエイミィといった私のクラスメイトの子達が大勢いた。会場を見回してみると女の子が大勢を占めており異様な光景が広がっていた。

 

「渡辺先輩は女性人気が高いのかしら?」

 

「そうだろうな。あのボーイッシュな出で立ちや男勝りな部分は女性人気が出てもおかしくはない」

 

こんな会話をしていると競技の開始音が鳴り響いた。

 

「早い、さすがは渡辺先輩ね」

 

「ああ、硬化魔法と移動魔法の併用しているな。さらに今度は加速魔法に振動魔法…常に3〜4の魔法をマルチキャストするとは……」

「ええ、さすがは一高の三大巨頭だわ……少なくとも高校生のレベルではない」

 

この後結果がどうなったかは言わなくてもわかるかもしれないが渡辺先輩は予選突破。七草会長のスピード・シューティング、さらには男子スピード・シューティングも優勝した。

 

1日目が終わり生徒会の服部先輩を除くメンバーと渡辺先輩が集まってささやかなパーティーが開かれていた。

 

「それでは七草会長のスピード・シューティング優勝と渡辺先輩のバトル・ボード予選突破を祝してかんぱーい」

 

「「「「「かんぱーい」」」」」

 

「まずはおめでとうございます。七草会長。それに渡辺先輩のバトル・ボードも見事でした」

 

「「(ああ、)ありがとう」」

 

「予定通りだな」

 

「ええ、はんぞーくんも苦戦はしたけど予選は突破出来たし滑り出しは順調ね」

 

「服部くんはどうやらCADの調整があっていなかったようです。エンジニアの木下くんと競技が終わってからも調整していたようですし」

 

「そう、それなら大丈夫ね」

 

「明日は二人とも納得するまでしてもいいでしょう」

 

「そうなると明日の会長のクラウド・ボールのサブエンジニアが木下くんなので誰か他の人に頼むしかありませんね」

 

「えーっと明日空いてるエンジニアは……!?」

 

「深雪さん、達也くんに伝言を頼んでもいいかしら?明日の本戦クラウド・ボールにサブエンジニアとして会場入りしてほしいって」

 

「わかりました、会長」

 

「それと彩海奈ちゃんは明日アイス・ピラーズ・ブレイクでしょう?調整とかは大丈夫なの?」

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

「頼むぞ。花音の鼻っ柱を折ってくれ」

 

「さすがに千代田先輩に勝てるかはやってみないと分かりませんが全力を尽くします」

 

こうしてパーティーは終わり解散した。私は部屋に戻ると端末に連絡が入っていたのに気がついた。そこには

 

『彩海奈ちゃん、明日は頑張ってね!私はVIP席で九島のおじいちゃんと見ているから』

 

と書いてあった。姉さんはともかくあの『老師』が見に来てくれるのだ。無様な姿は見せられない。

そしてもう1件来ていた。

 

『彩海奈様、明日の初陣頑張ってください。そして弥海砂からは『備えあれば憂いなし』だそうです。私達も現地で見ていますので、気負わずに存分に力を発揮してください』

 

と書いてあった。芽愛と弥海砂も来てくれている。余計に気負いそうだったが2人の言葉でスッキリできた。私は2人に返信をするとベッドに入った。今日もゆっくり寝れそうだ。

 

☆ここからは視点がころころ変わることがあります☆

 

明けて翌日私は起きると身だしなみを揃えてから朝食を食べていると後ろから

 

「おはよう彩海奈。昨日はちゃんと寝れたかしら?」

 

「おはよう深雪。ええ、ぐっすり寝れたわこれなら今日は大丈夫だと思うわ」

 

とぞろぞろと何時ものメンバーが集まっていた。達也、深雪、エリカ、美月、レオ君、幹比古君、雫、ほのかと一大集団が私の周りにはいた。

 

「それは良かったわ。彩海奈ってこういう時意外と寝れないってことがあるかもしれないと思ったから」

 

「何それ。まあ否定はしないけど少し緊張してたけど姉さんとかが昨日のうちにメールしてくれたからもう大丈夫よ」

 

「あら、お姉さんに甘やかしてもらったのね。彩海奈の意外な一面だわ」

 

「こういう時は何時も何か声をかけてくれるのよ。頼りになる姉で間違いないわ」

 

「お姉さん優しいのね、私はお兄様だけで同じ学年だから少し憧れるわ」

 

「私は深雪の方が羨ましいわよ。姉も兄も歳が6歳以上離れているしね。同じくらいの兄妹とか欲しかったわね」

 

「ふふっ、それなら今日の試合も大丈夫そうね。今日のアイス・ピラーズ・ブレイク期待してるわよ。彩海奈なら大丈夫よ」

 

「ええ、ありがとう。深雪もアイス・ピラーズ・ブレイク頑張ってね!それとみんな頑張るわ」

 

こうして私はみんなに励ましを受け、私は食堂を出ると一高の本部テントに向かいアイス・ピラーズ・ブレイクの準備を始めた。

この競技は他の競技と違いユニフォームが無いため九校戦の「ファッションショー」とも言われている。そんな私もこの競技のために芽愛さんや弥海砂さんと共に用意した。衣装はまだ秘密だけど芽愛さんと弥海砂さんが太鼓判を押してくれたので嬉しかった。

 

そして時は経ち遂に私の九校戦デビューの時が近づいていく。





今回はここまでですが如何でしょうか?彩海奈のデビュー戦は次の話からスタートします。

前書きにも書いた追跡編の公式のところにリーナともう1人一科生の女の子描いてあるんだけど誰なんですかね……壬生先輩っぽいけどなんか違う気がするんですよね……

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価も良ければお願いします。また今回この話を更新するまでに誤字報告をしてくれた2人の方ありがとうございました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九校戦デビューそして波乱の連鎖

はい。九校戦編3話目です。

今回は彩海奈の九校戦デビュー戦及び九校戦2日目のことを書いてみました。

コミカライズ版の劣等生をやってるきたうみつなさんの絵が最高すぎます。魔法科SSのコミカライズ版も出て欲しい……

前書きが長すぎるのもあれなんで本編へどうぞ


 

九校戦2日目。今日は私が出場する本戦アイス・ピラーズ・ブレイクが行われる。アイス・ピラーズ・ブレイクは1対1形式で試合を行い上位3名が総当り戦により勝者を決める。今日は1回戦と2回戦を行い、明日3回戦、決勝リーグを行う。

ちなみに今日はこの他に男女クラウド・ボール、男子アイス・ピラーズ・ブレイクが行われる。

そんな中私はアイス・ピラーズ・ブレイクで着る衣装に着替え、選手控え室で出番が来るのを待っていた。

 

(遂に来た。まさか本戦に出るとは思わなかったが姉さんや兄さん、九島のお爺様、父さん、母さん、芽愛さん、弥海砂さんが見ている中では負けられない)

 

そう思いながら私は第一試合に向けて調整を進めていたところに選手控え室にスタッフがやってきて

 

「そろそろ試合が始まりますので舞台裏に来てください」

 

と言い、私はCADを持ち会場の舞台裏に移動した。私のCADは自分で調整して最後の最終チェックとして中条先輩に確認してもらっている。そして遂に私の出番がやってきた。

 

「続きまして1回戦第4試合第六高校〇〇 〇〇〇さんと第一高校五輪 彩海奈さんの試合です」

 

ワアアアア

 

私の名前が告げられた時会場の歓声が割れんばかりに鳴り響いていた。私はそれを見てビクッとしたが自分の気持ちを落ち着かせた。そして横を見るとそこにはV.I.P.席にいる澪姉さん・洋史兄さん・『老師』九島烈がそこにはいた。(V.I.P.席に他には四葉家現当主四葉真夜、七草家現当主七草弘一、三矢家現当主三矢元がいた。)姉さんがはしゃいでいるように見えるがそれも私の心を落ち着かせてくれた。

そして試合開始の合図が鳴り響く。

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

パリィィィィィン

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

何が起きたのか分かった者は使った使用者の彩海奈、姉の澪、兄の洋史、使用人の芽愛、弥海砂だけだった。(この会場にいる五輪家の関係者のみ)

他の観客、一高メンバー、九校戦関係者、十師族関係者、軍関係者は何一つこの起きた出来事が分からなかった。そのことから試合終了の合図が鳴り響いてから会場は静まり返っていた。そして時が経ち

 

ワアァァァァァァァ

 

歓声が鳴り響いた。その歓声は近くで行われているクラウド・ボールの会場まで鳴り響いていたという。私はその歓声に応えてお辞儀をしたらその歓声はさらに鳴り響いた。

 

その頃V.I.P.席でも会場と同じく何が起きたのか分からない人でいっぱいになっていた。

 

☆V.I.P.席にて☆

 

「な、なんだ……今の魔法は……あんな魔法見たことないぞ…」

 

「………………」

 

「澪、お前はあの魔法を知っているのか……」

 

「ええ、知っています『老師』。ですが彩海奈のあの魔法はお教えすることは出来ません。それに他人の魔法を詮索するのはマナー違反ですよ?」

 

「それもそうか……だがしかしあの魔法……一体何なんだ…」

 

(な、何なんだあの魔法は!?五輪家に澪殿に続いてあんな魔法師が……)

 

「ねえ、葉山…………」コソコソ

 

「了解致しました」

 

「では、私はこれで。ごきげんよう」

 

澪は洋史に車椅子を押してもらいながらV.I.P.席から退室した。V.I.P.席に残っている九島烈、七草弘一、三矢元は未だ呆然としていた。その中で四葉真夜はあの魔法に驚いてはいたものの執事である葉山に何かを依頼していた。

十師族に限らず軍の関係者達も何が起きたのか分からずにいた。

それほどまでにこの魔法が衝撃的なのだ。一条家の爆裂みたいに派手さは無いものの確実に標的を破壊するという面では圧倒的に高い。V.I.P.室は静まり返っていたところへ烈が真夜へ声をかけた。

 

「真夜よ。あの魔法は一体どういうことなんじゃろうか?」

 

「そうですね……私にも分かりませんがおそらく水という物質の形状が変えられたことによってあのようなことがなったかと……第五研の研究テーマは物質の形状に干渉する魔法を開発してたはずなのでおそらくそこから編み出された魔法かと」

 

「なるほどな……それなら合点がいくが彼女の私用CADはおそらく競技用よりハイスペックなはずだ。よく九校戦用のCADに合わせてきたな…」

 

「まさか……彼女はあれだけの魔法を行使できる魔法師でありながら私用のCADで使用する魔法を九校戦用のCADに合わせた調整も出来るのか……」

 

「あぁ、これからの成長が楽しみではあるが……このまま成長していったらすごい娘になるぞ……」

 

(五輪 彩海奈……ますます気になる娘ね達也さんと深雪さん2人を足して割った存在かしら…)

 

☆V.I.P.席にて終わり☆

 

私は1回戦が終わり、舞台裏に戻り衣装から制服に着替えると私はまだ行われているアイス・ピラーズ・ブレイクの会場で他の選手の試合を見ていた。見ているとそこに新人戦に出る深雪、雫、エイミィがやってきた。

 

「やっほー彩海奈!さっきはすごかったね!」

「すごかった。相手の選手去年の本戦で3回戦まで勝ち上がってる選手なのに」

「すごかったわ、さすがはって言ったとこかしら?おめでとう彩海奈!」

 

「ありがとうね3人ともでもまだ決勝リーグまで残り2試合あるのだからここでもう一度引き締めないとね」

 

「そうね。私達も彩海奈の分まで新人戦で頑張るわ」

「うん。頑張る」

「私頑張るよ彩海奈!だから彩海奈も残りの試合頑張ってね!」

 

「ありがとうね。深雪達も新人戦頑張ってね!」

 

「「ええ(うん)」」「(コクリ)」

 

私は深雪、雫、エイミィと共にお互いの健闘を称えながら本戦アイス・ピラーズ・ブレイクの試合を見ていた。

 

そして私の2回戦が始まろうとしていた。私が登場すると1回戦と同じもしくはそれ以上の歓声が鳴り響いた。相手の第九高校の選手はこの空気に完全に萎縮している。そして1回戦と同じようにV.I.P.席には姉さん、『老師』である九島烈そして芽愛さんと弥海砂さんがいた。(もちろん四葉真夜や七草弘一、三矢元もいる)なんで彼女達がV.I.P.席にいるのかと思ったが姉さんが連れてきたのだろうと思った。

そして私の2回戦が始まる。

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

パリィィィィィン

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

と1回戦に続き最速タイムで試合が終了した。今回は1回戦を見ている人達が多いのか試合終了の合図が鳴ったと同時に歓声が鳴り響いた。私は歓声に応えてお辞儀をすると更に歓声が湧いた。私は何事も無かったように舞台から降りていく。舞台から降りて選手控え室に歩いていくとそこには既に試合を終えたのか千代田先輩と彼女の許嫁である五十里先輩がいた。

 

「お疲れ様。それにしてもすごいねあの魔法。あれじゃ対策の立てようがないよ」

「お疲れ。明日の決勝リーグ楽しみにしてるわ」

 

と千代田先輩は本部の方に戻っていった。

 

「ごめんね。花音って正直じゃないから、だから許してあげて?」

 

「いえ、それに私も明日の決勝リーグ楽しみにしてます」

 

「うん。花音に伝えとくね。明日の決勝リーグ花音と全力で戦ってあげて、それじゃ僕も行くね」

 

「はい。お疲れ様でした」

 

こうして九校戦2日目男女アイス・ピラーズ・ブレイク、男女クラウド・ボールの各予選が終わった。その後の夕食時には七草会長のスピード・シューティング、クラウド・ボール優勝を祝い、その夕食を終わってから七草会長と渡辺先輩の部屋で生徒会メンバーでお祝いをしていた。

 

「「「「「七草会長(真由美、会長)、優勝おめでとうございます」」」」」

 

「ありがとう。これで心置き無く応援に回れるわ。摩利そして彩海奈ちゃんも明日頑張ってね!」

 

「ああ、あたしも2連覇が掛かってるからな、またあいつとやれるのが楽しみだ」

「ええ、私も準備に抜かりはありません。千代田先輩にも決勝リーグ楽しみにしていると言われたので」

 

「そう、2人とも頑張ってね」

 

「「ああ(はい)」」

 

「五輪、花音には全力でやってくれ。花音もそれを望んでるからな」

 

「分かりました」

 

この後も少し話をして、明日に響かないように解散となった。部屋に着くとエイミィがまだ起きていた。

 

「エイミィ、まだ起きてたの?」

 

「あ、彩海奈。私ってそんなに寝れないの。興奮するっていうのかな」

 

「そうなのね。でも夜遅くまで起きると体調良くなくなるわよ。それに達也だったら誤魔化しても暴かれるわよ」

 

「うっ……」

 

「もう寝ましょう。私は明日も試合あるしね」

 

「そうだね。明日も彩海奈試合あるし私も楽しみにしてるね!」

 

「えぇそうね。ありがとう明日も頑張るわね。おやすみなさい」

 

「おやすみ彩海奈」

 

こうして九校戦2日目は終わっていった。明日は男女アイス・ピラーズ・ブレイク予選と決勝リーグ、男女バトル・ボード準決勝と決勝が行われる。明日が終われば本戦は一時休戦して新人戦が開幕する。私達1年生の活躍こそが今年3年生の先輩達に本物の勝利が得られる。だからこそ私達は頑張らないといけない。

 

そして夜は明け九校戦3日目を迎えた。

 

 

☆アイス・ピラーズ・ブレイク2回戦終了後の一幕☆

 

2回戦が終わり私は選手控え室に入る前に千代田先輩と五十里先輩と話をした後選手控え室に入り着替えを済ませて本部には戻らず部屋に着くと端末に着信が来ていた。気付いたら返してほしいとメッセージがあったためその連絡先に連絡したらワンコールしたかしないかくらいの早さでその相手は出た。

 

『彩海奈ちゃん!アイス・ピラーズ・ブレイク3回戦進出おめでとう〜〜〜。さすが彩海奈ちゃんならやってくれると思ったわ!』

 

「ええ、ありがとう姉さん」

 

『それにしてもあの魔法使ったのね。私は決勝リーグのために温存するんじゃないかって思ってたんだけど』

 

「私も決勝リーグに温存しておこうとは思ったんだけど最初から全力でやった方がいきなりやるよりは決勝リーグが盛り上がると思ってね」

 

『ふーんなんか彩海奈ちゃんぽいね。V.I.P.席はみんな驚いてたわ。九島のおじいちゃんさらには四葉・七草・三矢の現当主が驚いてたもの』

 

「四葉家の現当主も来ていたの?四葉ってあまり表に出てこないと思ってたのだけれどどういう風の吹き回しかしらね」

 

『それは分からないけれど彩海奈ちゃんの試合を見に来たってことは何かしらあるに違いないわ。彩海奈ちゃんもし四葉側からコンタクトを求めてきてもこの期間中は私か九島のおじいちゃんに知らせなさい。このことは四葉側にも伝えていいわ』

 

「わかったわ、姉さん。私なんかにコンタクトを取るとは思えないけど警戒しておくわ」

 

『それじゃあね。明日の3回戦と決勝リーグ楽しみにしてるね!芽愛と弥海砂も一緒に見てるから』

 

「うん。じゃあね姉さん。芽愛さんと弥海砂さんにありがとうって伝えておいてくれない?」

 

「わかったわ。じゃあまた明日ね」

 

こうして姉さんとの通話を終えるとそろそろ夕食が始まる時刻だったため私は制服を着なおして夕食の会場に向かった。

 

☆アイス・ピラーズ・ブレイク2回戦終了後の一幕終わり☆

 

 




はい。九校戦編3話目でした。

彩海奈のあの魔法については次回終了後に解説(タグの通り魔法理論の知識無いので簡単な説明程度ですが)します。第五研の研究テーマ等から推測してみてください。

この九校戦編が終わった後夏休み編(オリジナル)やる前にこの九校戦で書かなかった部分について(基本的に原作寄り)少し書きたいと思ってます。何処の部分を書くとかは一応決まってますが感想のところに書いて欲しい原作の場面がありましたらお書き下さい。
時系列的に

・雫、エイミィのスピード・シューティング予選
・深雪、雫、エイミィのアイス・ピラーズ・ブレイク予選
・無頭竜殲滅作戦
・達也の独立魔装大隊との接触
・達也と深雪が一条将輝と吉祥寺真紅郎との邂逅
(彩海奈との邂逅シーンは後夜祭でする予定)

今のところはこれくらいの中で2つか3つを書く予定でいます。

彩海奈の衣装は海の青を基調とした着物になっています。イメージとしては旅館等にいる仲居さんがモデルになっています(もちろん澪が独断で彩海奈にこれを着て!と衣装を自宅へ送り付けています)

後書きが長くなりましたが今回はこれで終わりとなります。今回もご読了ありがとうございました。感想、評価お願いします。また次回のお話でお会いしましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

不可解な事故とアイス・ピラーズ・ブレイク決戦決着

はい。九校戦編4話目です。今回でやっと無頭竜の仕組んだことが出てきます。


九校戦3日目。今日は男女アイス・ピラーズ・ブレイク3回戦・決勝リーグ、男女バトル・ボード予選・決勝が行われる。今日私はアイス・ピラーズ・ブレイクに出場する。そして千代田先輩と決勝リーグで全力で戦う。

 

私は朝目が覚めると同部屋のエイミィと朝の挨拶をしてから途中でスバルと合流して朝食を取っていた。

 

「ねえ彩海奈、今日は勝てる?」

 

「3回戦は多分勝てると思うけど、決勝リーグは分からないわ。千代田先輩から全力でって言われたから対策を考えないといけないし、もう1人誰が来るか分からないもの」

 

「それは大変そうだね……でも千代田先輩には悪いけど私は彩海奈が優勝するって信じてるからね!」

「ああ、僕も千代田先輩には悪いけど彩海奈が優勝するって信じてるよ」

 

「ありがとう2人とも。そこまで言われたら頑張るしかないわね」

 

「うん!頑張ってね彩海奈!」

「頑張ってくれよ彩海奈」

 

こうして私は朝食を食べ終え3回戦が行われるアイス・ピラーズ・ブレイクの会場の選手控え室に移動した。

選手控え室では先日芽愛さんからのメールにあった弥海砂さんの『備えあれば憂いなし』という言葉を思い返しCADのチェックを行う。CADの検査は事前に済ませてある。私は3回戦の第一試合のためスタッフに呼ばれ舞台裏に準備している。そしてアナウンスが鳴り舞台へと上がっていく。

 

『それでは、九校戦3日目本戦アイス・ピラーズ・ブレイク3回戦第一試合を始めたいと思います。

まずは第二高校〇〇 〇〇さん、反対側第一高校五輪 彩海奈さん』

 

ワアアアアアアアアア

 

朝早い第一試合とは思えないほどの人数の観客がこの会場に入っている。この歓声も午後の決勝リーグは更に盛り上がるだろうと思っている。でもまずは目の前の試合だ。ここを勝たない限りは決勝リーグには進めない。

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

試合開始の合図が鳴った。今日の私は昨日の私ではない。今までは一瞬で終わらせていたけれど今日は昨日の構成とは違う構成を用意していた。

今日私が使っている魔法は昨日とは違い短期決戦より耐久性を重視した魔法だ。昨日使った魔法は姉さんが得意としている流体制御を利用した魔法だ。氷の中をガスまみれにしてその圧力を利用して割った魔法だ。この魔法はまだ実際に使ったのは先日を含めて数を数える程しか使ったことは無かったが無事成功したことに私は安堵していた。第五研で開発された新魔法のためまだ名前は無いが今後第五研の人が決めるだろう。何故この魔法の名前がまだ名前が無いのかは使用出来る者が限られているからだ。演算能力が高く魔法力が要求されるためまだ使える人が10人もいない、そのため今回この九校戦で私が利用したことにより新たな実践データが得られたことによりさらに改良が加えられるだろう。

さて今日使っている魔法だが私が使える戦略級魔法である『壊淵』を実践用にダウングレードした魔法である『破砕』だ。これは戦略級魔法が地面を起点とするためあらゆる地面に触れている物に対して効果があるが『破砕』は物に対象を限定して破壊を行っていく。ただ対象物は個数が限定されるため必然的に耐久が要求される。

会場は昨日みたいにすぐ勝負が着くと思っていたのかざわざわ騒ぎ出した。それでも氷柱を確実に崩していくと崩していく度に会場から歓声が出る。そして自陣の氷柱を傷付けることなく勝利を掴んだ。

試合が終わると会場からは歓声が鳴り響いた。

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

ワアアアアアアアアア

 

こうして私は決勝リーグに今大会男女通じて初めての出場選手になった。まずはちゃんと決勝リーグに進めたことに安心した。だが、その安心は私が選手控え室にあるモニターを見た瞬間に何処かに飛んでいった。

渡辺先輩がバトル・ボード準決勝で"事故"に遭ったからだ。すぐさま大会のスタッフ及び救護班によって渡辺先輩と七高の選手がぶつかったようで2人ともコースを外れて場外に飛び出していた。私が一高本部に戻るとそこは色んな人が慌ただしく動いていた。そこにはエイミィやスバル、深雪、ほのか、雫がいたため声をかけてみた。

 

「エイミィ、スバル、深雪、ほのか、雫!渡辺先輩は大丈夫なの?」

 

「あ、彩海奈!渡辺先輩は「渡辺先輩はこの近くにある基地の病院に運ばれたわ。それ以降は何も無いけれどとりあえず命に別条はないそうよ」

 

「そう、それは良かった。それで達也はどうしたの?」

 

「あら、お兄様が気になるの?お兄様なら大会委員に渡辺先輩のレースのビデオを取りに行ってるわ」ニコニコ

 

どうやら私は知らない間に深雪の地雷を踏んでいたようだ。その言葉を聞いた途端に私と深雪を除く他のみんなが何処吹く風のような態度になっていた。私は決勝リーグが始まる前に冷や汗をだらだら流していた。

 

時は過ぎて午前の全競技が終了して一高は男子ピラーズブレイクに十文字先輩、女子ピラーズブレイクに私と千代田先輩、男子バトル・ボードに服部先輩、女子バトル・ボードに3年生の小早川先輩が入っていた。

ピラーズブレイクの決勝リーグに出る私はCADの調整をしていた。何の魔法を使うか決めていたところ私はある魔法を使うか悩んでいた。1回戦や2回戦で使ったまだ名もない魔法を使うかそれとも午前の3回戦で使った『壊淵』のダウングレードした『破砕』を使うか。私は意を決して使う魔法を選んだ。後は中条先輩にチェックしてもらい大会委員によるレギュレーションチェックにCADを通すだけだ。それからしばらく経ちレギュレーションチェックを通ったCADを手に持ち私は選手控え室に行き衣装に着替え大会スタッフが来るのを待っていた。

 

決勝リーグはまず千代田先輩と3人の中に勝ち残った四高の3年生が戦い、その次に私と四高の3年生が戦い、最後に私と千代田先輩が戦うという順番になっていた。そして今はちょうど千代田先輩と四高の3年生が戦っていた。

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

ワアアアアアア

 

どうやら試合が終わったようで千代田先輩が勝ったようだ。私も舞台裏に呼ばれそこに行く途中で千代田先輩と会ったが無言で通り過ぎって行った。私もそれを気にすることなく進んでいく。そして私の試合が始まる。

 

ワアアアアアアアアア

 

私が舞台に上がると予選とは比べ物にはならないほどの歓声だ。次の試合はもっと大きな歓声になるだろうと私は思った。そして試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

パリィィィィィン

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

………………ワアアアアアアアアア

 

どうやらこの魔法を使うと一瞬の沈黙を生むようだ。それでもこの歓声は鳴り止むことは無かった。そして遂に千代田先輩との優勝決定戦が行われる。私の反対側には如何にも千代田先輩らしいラフな格好の千代田先輩が立っていた。そしてこの試合には観客席に深雪、雫、エイミィの新人戦に出る子達や達也やレオ君、幹比古君、エリカ、美月のいつものメンバーがいるという。さらにV.I.P.席には姉さん、兄さん、芽愛さん、弥海砂さん、『老師』や四葉真夜、七草弘一、三矢元などの十師族関係者、軍関係者がずらりと揃いに揃っていたそうだ(これは後日姉さんが教えてくれた)。そして私と千代田先輩の決勝戦の火蓋が切って落とされた。

 

ブーーーーーーー(試合開始の合図)

 

ピキピキピキピキピキ…パリィィィィィン

 

今回私は『全壊』を選んだ。まだ名もない魔法を使っても良かったのだが私は『全壊』を選んだ。理由は先輩に私の全力を出してくれと言われたのだそれなのに一撃で試合が終わるのではつまらない。なので私は『破砕』のアップグレードした魔法である『全壊』を選んだ。この魔法は正直九校戦では使う気は無かったのだが千代田先輩に言われ私も黙ってはいられないと思ったため使うことにした。この魔法を使うことによって各所がザワつくかもしれないがそれでも私は使うことを決めた。

 

ピキピキピキピキピキ…パリィィィィィン

ドゴォォォォォォン

 

私の『全壊』と千代田先輩の得意魔法である『地雷源』がお互いの氷柱を壊していく。このままではどちらが優勝するのか息を呑む展開になっていたが勝負を分けたのは発動のスピードの早さだった。

徐々にそのスピードの速さの影響が出てきたのか千代田先輩の倒される氷柱の数が多くなっていった。そして遂に最後の氷柱を倒した。

 

ブーーーーーーー(試合終了の合図)

 

ワアアアアアアアアアアア

 

九校戦本戦アイス・ピラーズ・ブレイクは私五輪 彩海奈が優勝した。私は嬉しかったと同時に心の中に何処か複雑な気持ちがあった。千代田先輩には申し訳ないと思いつつも今は優勝したということに嬉しさを感じていた。V.I.P.席を見てみるとそこには窓の最前列に姉さん、兄さん、芽愛さん、弥海砂さんがまるで自分が優勝したかのように拍手を送っていた。私はそれを見て観客の拍手に応じ終えると衣装を着替えずに千代田先輩の後を追って行った。千代田先輩を見つけると私は声をかけた。

 

「ハァ、ハァ…ち、千代田先輩!!」

 

「?五輪さん…」

 

「あ、あの私……」

 

「全力で戦ってくれてありがとう。私もまだまだだと思ったし十師族の直系にこれだけ戦えたっていうのはわかったから私は嬉しかったよ貴女が全力で戦ってくれて」

 

「千代田先輩……」

 

「ほら、もう優勝者がこんなところで突っ立ってないでみんなの所に行きなさい?また来年こそは貴女に勝てるように努力するからさ」

 

「はい、はい…それじゃあまた後で会いましょう」

 

「うん。じゃあねまた」

 

私は千代田先輩との話を終えると舞台に戻っていきまだ残っていた観客のみんなにお辞儀をしてから選手控え室に戻っていった。

 

私が一高本部に戻るとそこにいるみんなが拍手で出迎えてくれた。

 

「おめでとう〜彩海奈ちゃん」「おめでとう!」「おめでとう彩海奈!」

 

会長を筆頭にお祝いの言葉を掛けられる。少しこそばゆがったがそれでも嬉しい気持ちになった。会長はすぐに渡辺先輩がいるという基地の病院へ向かったが作戦参謀の市原先輩や私のエンジニアの中条先輩、バトル・ボードで惜しくも準優勝だった服部先輩が声をかけてくれた。私は一高本部にいる人たちに「ありがとうございます」と言ったらさらに大きい拍手がテント内に鳴り響いた。その後五十里先輩に声をかけられ

 

「ありがとうね五輪さん。花音に全力で戦ってくれて」

 

「いえ、千代田先輩はお変わりないですか?」

 

「うん。大丈夫だよ。花音はもう来年のことを考えているからね」

 

「そうですか……私も千代田先輩の全力で戦えて嬉しかったです。来年も負けてはいられませんとお伝えいただけませんか?」

 

「うん。わかったよ。それと五輪さん優勝おめでとう」

 

「はい。ありがとうございます」

 

五十里先輩は私との会話を終えると何処かへ向かった。私は一高本部に残り男子アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝リーグの第3戦を見ていた。内容は言うまでもないが十文字先輩の圧勝だった。今日は前にも書いた通り男子バトル・ボードは服部先輩が準優勝、女子は小早川先輩が3位決定戦で勝ち3位になった。計算違いはあったものの概ね予定通りのポイントを取れていることに市原先輩は安堵していた。そして今日で本戦は一時休戦になり明日からは新人戦が始まる。今年の九校戦は身の回りで色々なことが起きているがそれでも負けられない戦いは続いていく。明日からは私達1年生が頑張る番だ。それを思いつつ今日1日を振り返って行った。

 

そして夜達也に『俺の部屋に来てくれ』と呼び出された。何事かと思って行くとそこには達也の他に深雪、美月、幹比古君、五十里先輩、千代田先輩がいた。どうやら達也はバトル・ボードで起きた渡辺先輩の事故のことを調べているようだった。私以外のみんなは精霊魔法が原因じゃないかという結論に至ったのだが私の意見も聞きたいらしく呼んだらしい。私も今回の渡辺先輩のレースを見る限り外部からの魔法発動による線は考えにくいとだけ話した。私は精霊魔法については何分ほとんど知識がない為あまり期待にはそえられなかったみたいだが大いに参考になったという。

 

そして達也の部屋から戻っている時に端末に連絡があった。送り主は姉さんでV.I.P.ルームで祝賀会をやりたいと来たのだが私はそれを断った。私は優勝してもまだ九校戦は続くしそれに渡辺先輩が事故に巻き込まれたのだ、とてもでは無いが祝賀会をしたいと思える雰囲気では無い。姉さんもそれをわかったのか不開催の報せを送ってきて九校戦終了後五輪本家又は私の家でやりましょうと連絡が来た。

 

私は部屋に戻るとエイミィが中にいたが直ぐにシャワーを浴びるとそのままベッドに入り眠った。余程疲れていたのか私は直ぐに寝てしまったという。

 

九校戦は今日で本戦が一時休戦になり明日からは新人戦が始まる。今度は私たちの番だ。3年生の先輩達が本当の勝利を得るために私達が足を引っ張ってはいけないと思いつつ今日という1日を終えていったのだった。

 

P.S.彩海奈の本戦アイス・ピラーズ・ブレイク祝賀会開催予定地では…

 

「うーん彩海奈ちゃん来てくれるかなぁ」

 

「どうでしょうね。今日1日彩海奈様は色々なことがあり疲れも溜まっていそうでし何より一高の先輩が事故に遭ってしまいましたから微妙なところでしょう」

 

ピコンッ

 

「あっ彩海奈ちゃんからだ!!……彩海奈ちゃん今日はやめとくって」ショボン

 

「お断りですか……さすがに彩海奈様も疲れが溜まっていたのでしょう。祝賀会は後日改めて行うということにしましょう」

 

「そうね!そうしましょう。まだ1年生でこれから新人戦もありますしね」

 

「ええ、九校戦はこれからも続きますし今大会は色々厄介事もありますしね……」

 

「それもそうね……ところでその厄介事はこれからも起きそうかしら?」

 

「私達の調べでは新人戦モノリス・コード、新人戦ミラージ・バット、本戦ミラージ・バット、新人戦バトル・ボードがこれから何か起こるのではないかと思っております」

 

「そう……なら貴女達はその競技を見ていなさい。その間は洋史に見てもらいますから」

 

「分かりました。でも彩海奈様が出る時は見させてもらいますよ?」

 

「え、ええ…」

(まさか芽愛と弥海砂がこれ程まで彩海奈の競技を見たいと言うなんて…思わぬライバルの登場かしら)

 

この後は九校戦のこれまでや彩海奈のアイス・ピラーズ・ブレイクの試合を見て大いに盛り上がり夜は更けていった。

 

☆彩海奈の本戦アイス・ピラーズ・ブレイク祝賀会開催予定地より☆




今回はここで終わりです。九校戦編は基本的に1日1話くらいのペースでやります。(作品の中での1日)

九校戦編でヨルとヤミを出すつもりですが場面的には短くなると思います。

今回もご読了ありがとうございました。次回も出来るだけ早く投稿します。感想・評価もよろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新人戦開幕そして1年生の躍進

はい。九校戦編4話目です。今日からは新人戦に入ります、この新人戦の部分ってほんとアニメでも分量多いんで出来るだけスピーディーに進めていきたいと思いますが重要な部分もあるので丁寧に書いていきたいと思います。




昨日の私の本戦アイス・ピラーズ・ブレイク優勝から一夜明けて九校戦4日目の朝を迎えた。今日から私達1年生によって行われる新人戦が開幕する。ポイントが本戦の半分とはいえ総合優勝を目指す上ではどの競技も優勝を目指さなければならない。そんな4日間が始まる。

 

「おはよう彩海奈!」ニパッ

 

「おはようエイミィ。また寝れなかったの?」

 

「ギクッ……わかっちゃった?今日から新人戦が始まるって考えるとね……」

 

「はぁ……まぁでも分かるわよ。私も最近まではそんな感じだったしね」

 

「そうなんだね……でも昨日はお疲れ様!そして優勝おめでとう!」

 

「もう…それは昨日も言ってたじゃない。でもありがとう。エイミィもスピード・シューティングとアイス・ピラーズ・ブレイク頑張ってね!」

 

「彩海奈こそバトル・ボード頑張ってね!」

 

「うん!一緒にがんばろー!」

 

「おー!」

 

こうして私達は制服に着替えてから部屋を出てから各自今日の競技の用意を進めていた。

 

今日は新人戦のバトル・ボード予選とスピード・シューティングの予選と決勝が行われる。私が出るバトル・ボードの予選では私とほのかそしてもう1人の子が参加する予定になっている。ほのかは午後のレースのため雫、エイミィが出ているスピード・シューティングを見に行っている。私のレースは午前中にあるためスピード・シューティングの予選は見られないが決勝は見られる予定になっている。

今回も私は自作のCADを持参しており調整を行っている。エンジニアは五十里先輩になっているが実質的には最終チェックをするために就いている。

 

「うん。これで大丈夫かな」

 

「ありがとうございます、五十里先輩」

 

「ううん、どうってことないよ。それにしても1人でCADの調整が出来るってすごいね」

 

「いえいえそんなでも無いですよ。自分で調整するよりかはまだ魔工師の方にやってもらった方が感触はいいですから」

 

「それでもすごいよ。「すみません。そろそろ準備お願いします」おっと出番だね。それじゃあ期待してるよ?」

 

「はい。頑張ってきます」

 

私は選手控え室を出てバトル・ボードの試合会場に入ると前のレースがちょうど始まるところだった。それにしても九校戦に出てくる人達はみんなレベルが高いと思った。そう考えているとレースが終わり次のレースに出る私たちが準備を始めた。

 

私が本戦アイス・ピラーズ・ブレイクを優勝したためこのバトル・ボードに見に来る観客が多いと予想はしていたけれどこれほどまでとは思わなかった。なんと会場の席は全て埋まり立ち見でも見ようなんて人でごった返し入場規制までもが出たそうだ。

 

ワアアアアアアアアアアアア

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

 

「On your mark」

 

バンッ

 

(物質形状変換魔法『水変万華』発動)

 

「「「キャアアア」」」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」(観客)

 

彩海奈以外の人達は何が起きたのかが全く分からなかった。ただ分かったのは水の中で何かが起きたことだけだ。そうしている間にも彩海奈はどんどん前に進んでいく。出遅れた3人も遅れを取り返すために必死に追いかけるが突き放される一方である。そのまま彩海奈は1位でゴールした。

 

…………ワアアアアアアアアアアア

 

アイス・ピラーズ・ブレイクと同様に沈黙から一気に割れんばかりの歓声が鳴り響く。私はレースを終えて拍手と歓声が鳴り響くスタンドに向かってお辞儀をする。するとまたその歓声が鳴り響く。私は再度お辞儀をして選手控え室へと向かっていった。

 

☆V.I.P.室にて☆

 

国家公認戦略級魔法師で今行われた新人戦バトル・ボード第2レースの勝者である五輪 彩海奈の姉である五輪 澪は嬉しげに今のレースを見ていた。

 

「ねえ芽愛、弥海砂!今の見てた!?」

 

「ええ、見てましたよ、澪様」

 

「さすが私の妹ね。それにしても水に干渉する魔法を使うなんて…貴女達が教えたのかしら?」

 

「多少はお教えしましたが基本的には彩海奈様が考えたものを基に第五研が開発したみたいですよ」

 

「そう…全くあの子は……でもこれだけの結果あの方達は満足でしょうね」

 

「そうですね。あのお方達もさぞお喜びでしょうね」

 

「澪よ、あの魔法はなんだ…わしも未だ見たことないぞ…」

 

「あれは第五研の開発テーマである物質の形状に干渉する魔法を基に彩海奈が開発した魔法ですから何となくでしか分かりませんけどおそらく水中にある水の物質に干渉したんでしょう」

 

「そうか……そんな魔法をあの彩海奈が…ところで澪、もしかしたら大会側から『魔法大全』に登録しないかと言われるかもしれないがどうするんだ?」

 

「もちろんお断りさせていただきます。ただでさえ今回競技で目立ってしまったのに『魔法大全』までは『十師族』とはいえさすがにやりすぎな気がしますので」

 

「ふむ…それにはわしも納得じゃ。彩海奈には澪お前から言うか?」

 

「ええ、せっかく彩海奈ちゃんと会話出来るんですもの」

 

「そうか」

 

他のV.I.P.室では……

 

四葉真夜は更に彼女に興味が湧いていた。

七草弘一は更に彼女について分からなくなり、更に彼女について調べることにした。

 

☆V.I.P.室にて終わり☆

 

バトル・ボードの予選のレースが終わり選手控え室に戻り制服に着替えてから私はバトル・ボードの他のレースを見ようと思ったのだがあまりにも人がいたため断念して、エイミィが出場するスピード・シューティングの予選を待ち合わせをしていたスバルと共に見に行った。

エイミィは予選をパーフェクトでは無いものの92点と高得点を叩きだし見事この後行われる決勝トーナメントに駒を進めた。

 

無事予選を突破したエイミィと私とスバルは共に昼食をとり、それからスピード・シューティングの決勝トーナメントに向かった。エイミィは無事準決勝まで駒を進めた。そして今から準決勝のもう1つの試合である雫と三高の十七夜選手の試合が始まろうとしていた。

 

「雫勝てるかな?」

 

「どうかしらね?三高のあの十七夜選手どうやら連鎖が得意みたいだしもしかしたらも有り得るけどそんなこんなじゃ雫には勝てるとは思えないし雫のエンジニアは達也よ。きっと何かあるわ。これまで見せてないだけで」

 

「そうか。雫のエンジニアは司波君だったね。私もミラージ・バットのエンジニアが彼だったけど彼には毎回驚かされるよ」

 

「ええ、ほんとに達也ったら規格外なのよね。私は予選を見てないから雫の試合を見るのは初めてだけどどうだったのかしらね」

 

「さあ、どうだろう。私もバトル・ボードを見てたからね。今からが楽しみだよ」

 

「それもそうね」

 

ブーーーー

 

「On your mark」

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

パシュン、パシュン、パシュン、パシュン

 

「すごい……あの魔法はどうなってるの?」

 

「私にも分からないわ……でも達也のことだからオリジナルでも作ってそうだけど…」

 

「確かにそれはそうかもしれないけど、一高校生に新魔法が作れると思うかい?」

 

「あのカーディナル・ジョージだって誰にも見つけられなかったカーディナル・コードを見つけたんだからもしかしたらって思うのよね」

 

「そうか…そういえばそのカーディナル・ジョージって私達と同い年じゃなかった?」

 

「確かにそうね…もしかしたら第三高校の作戦参謀兼エンジニアをやっててもおかしくはないわね」

 

「そうだね…そういえば雫のCADの形見たことないな…」

 

「あれは…汎用型に照準補助!?あんなの見たことない…」

 

「あぁ私もだ。一体どうやって実現させたんだ…」

 

「どうやら達也はとんでもないわね…オリジナルと思われる魔法に汎用型に照準補助を付けるなんて…」

 

「あぁ十七夜選手のは特化型だからあれでは無謀だ…」

 

パシュン スカッ

 

「連鎖が繋がらなかった…これはもうどう足掻いても雫の勝ちね」

 

「あぁほんとに司波君は恐れ多いな」

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

試合は雫の勝利で終わった。97対92という僅差ながらも雫は決勝進出を決めた。これで準決勝第2試合はエイミィともう1人の一高生のためスピード・シューティングは一高が表彰台を独占したことになる。しかもスピード・シューティングの担当エンジニアは全員達也が行っているため1人のエンジニアが表彰台を独占したことにもなる。異次元の強さだ。

 

続いてエイミィの試合が始まった。エイミィが試合開始からずっとリードを保ち、97対84でエイミィが勝ち決勝進出を決めた。

 

「やったねエイミィ。決勝進出だよ」

 

「そうね。ただ次の雫との試合は厳しいでしょうね。あの魔法がどういう原理かは分からないけどあの魔法に対策出来る時間は無いもの」

 

「そうか…でも司波君ならもしかしたら何かあるんじゃないか?」

 

「そうかもしれないけどあの魔法以上のものを達也が用意出来るかっていうのもあるわね。達也はこれの他にアイス・ピラーズ・ブレイク、ミラージ・バットも担当してるからね正直手一杯でしょうね。それに加えてほのかのバトル・ボードの作戦も考えてあげたのでしょう。規格外よ」

 

「そうだね……エイミィには可哀想な結果にはなりそうだね…」

 

「そうね…その時は一緒にいてあげましょう。雫とはアイス・ピラーズ・ブレイクでもおそらく決勝リーグで当たるかもしれない。

「そうだね」

 

時間が経ち決勝戦が始まった。勝敗は彩海奈が予想した通り雫が94対82で優勝した。エイミィも最初は善戦していたもののやはりあの魔法の前には歯が立たなかった。会場は優勝者である雫を称えていた。

 

私とスバルは共にエイミィの元に向かった。

 

「エイミィ…惜しかったね」

 

「彩海奈、スバル…うん、でも私なりには頑張れたから悔いはないとは言えないけど頑張れたよ。雫とはもしかしたらアイス・ピラーズ・ブレイクでも当たるかもしれないからその時には絶対に負けない」

 

「「ふふっ」」

 

「うん?どうして笑うの?」

 

「いや、さっきエイミィの準決勝が終わったあと話してたんだよ。雫とアイス・ピラーズ・ブレイクでの対戦に燃えるんじゃないかな?ってね」

 

「そうなんだ!うん私は今はもうアイス・ピラーズ・ブレイクで雫に勝つために残り時間は少ないけど頑張るよ」

 

「そうね。「エイミィ準優勝おめでとう!」」

 

「ありがとう2人とも。彩海奈も予選突破おめでとう!ほのかには負けないでよね!それとスバルもクラウド・ボールとミラージ・バット頑張ってね!」

 

「「ええ(ああ)」」

 

私達はこれまでとこれからのことに花を咲かせつつ九校戦のお互いの活躍を祈りながらホテルへと戻っていった。

 

その夜も私達3人と他の1年生女の子とおしゃべりをしていると夜も遅くなってきたというところで解散になった。

 

☆達也side☆

 

今日は午前中にスピード・シューティングに出る3人の調整をしてから午後にはほのかのバトル・ボードの予選を見てから、スピード・シューティングの3人が予選突破したら決勝トーナメント用にも調整しないといけない。

 

雫には今回とっておきを用意してある。それは「能動空中機雷(アクティブ・エアーマイン)」。詳しい魔法理論に関しては割愛させてもらうが雫の特性に合わした雫の演算能力があってこその魔法だ。それは例え俺が使ったとしても雫と同じような結果を得られるのは難しいだろう。

 

そんな中3人は問題無く予選を突破して午後に行われる決勝トーナメントへと駒を進めた。そんな中雫の使っていた魔法である「能動空中機雷」だが「魔法大全」への登録を勧めらたが開発者の名前を雫にするようにお願いした。これは魔法大学の調査力への警戒と自分の名前が開発者として登録された魔法を自身で使えないという恥を晒したくないということだ。

 

午後に差し迫ろうとしている時間帯にほのかのバトル・ボードの予選が始まるため会場に移動した。ほのかは担当エンジニアでは無いがある作戦を授けた。それは水面に光学系魔法を仕掛けるということだ。ルールには違反してないしこれまで無かったというのが不思議に思える。だが周りからは「おい、あれって午前中のレースと同じような仕組みなのかな?」「ねえあれって午前中の第2レースと同じ感じなのかな?」という声が聞こえた。俺はその時第2レースには彼女が出てたのだろうかと思ったが案の定その通りだった。彼女も同じことを考えていたのかと彼女に対する心境に少し警戒心を覚えた。

結果はほのかは見事1位で予選を突破した。その後「予選を突破出来たのは達也さんのおかげです!」と言い寄られたのは少しびっくりしたがなんとかその場面を乗り切りこの後行われるスピード・シューティングの決勝トーナメントに向けて準備を始めた。

 

3人とも準決勝に進みエイミィと滝川という女子生徒の対戦と雫と三高の十七夜選手の組み合わせとなった。十七夜選手とは準々決勝の前に邂逅したがその時から随分と対策を練ってきたのだろう。雫の魔法に合わせた魔法を用意したのだろうが雫の秘密兵器は何も「能動空中機雷」だけじゃない。雫が使っているのは汎用型のCADに照準補助を付けた去年発表されたばかりの最新技術だ。特化型では汎用型の起動式の多さには対応出来ないという点を活かし最終的には雫が勝った。

 

決勝戦はエイミィと雫の対戦になったが雫の「能動空中機雷」が炸裂してスピード・シューティングは雫が優勝、エイミィが準優勝、滝川が3位と表彰台を独占した。

 

その夜、翌日の試合の調整を終えて部屋に戻るとそこには深雪がいた。そこで何故『魔法大全』への登録を断ったのか問いただされた。理由は俺が深雪の「守護者(ガーディアン)」であること、ガーディアンは表舞台に出てはならないといったことや今の俺に四葉を屈服させるだけの力が無いことだ。四葉真夜個人には相性を見て勝てても他の四葉の人間が姿を見せるだけだと言うと深雪は納得はしなかったが理解はしたようで自分の部屋に戻っていった。ようやく1人になると無頭竜のこと、彼女が使った魔法のこと等気になることが沢山あったが明日も担当エンジニアとして会場入りするため早く寝よう。おやすみなさい。

 

☆達也side終わり☆

 

こうして各々の九校戦新人戦初日は終わった。予選を突破して喜ぶ者、今日は負けてしまったけど違う競技でのリベンジを誓う者、これからの新人戦において不安を感じる者などそれぞれ思うことは違うだろう。明日もまた各校の熾烈な争いが続いていく。




はい。いかがでしょうか?後半はほぼ達也が今感じていることについて書いたって感じになったので読みにくかったかもしれません。

そろそろヘタレプリンスが登場します。というより次の話の冒頭部分少し三高のことについて書いてます。

今回もご読了ありがとうございます。次回もまた読んでいただけるとありがたいです。通算UAが書いてる時点でもうそろそろ1万…pointが100overになりました。今作品をお気に入り登録していただいてる方には感謝です!またこの作品の評価をしてくださったお方にも感謝です!

感想・評価もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たなる衝撃そして姉妹水入らず?

はい。九校戦編の新人戦2日目になります。今回の話正直前半と後半でなんか違う作品に見えてきました。(書き終わったあとの感想←)




☆将輝side☆

 

昨日行われた九校戦の新人戦初日。女子スピード・シューティング、我が校からは十七夜の他にもう1人決勝トーナメントに出ていたが準々決勝で敗退したため十七夜のみが準決勝に進んでいた。十七夜はこのスピード・シューティングにおいて「数学的連鎖(アリスマティック・チェイン)」がある限り負けないと思っていた。しかしそれは準決勝で崩された。一高の北山選手に負けたのだ。その北山選手が使っていたCADはなんと汎用型でしかも特化型にしか付けられないと思われていた照準補助機能も付いていた。これを見て俺とジョージは調べてみたらなんと昨年の夏にデュッセルドルフで開発されていたがそれはほんとにただくっ付けただけで実戦に耐えうるものでは無かった。それを見た俺とジョージはこのCADを開発者と思われるエンジニアが1年生ということも驚きを隠せずにいた。

 

そして俺とジョージは一夜明けた今日新人戦2日目に問題の怪物エンジニアである"司波達也"に会いに行くことにした。

 

☆将輝side終わり☆

 

☆達也side☆

 

昨日のスピード・シューティング、俺が担当した選手全員で表彰台を独占したこともあり周りからの視線が前日と比べ遥かに見られているという感覚がする。そして今日はアイス・ピラーズ・ブレイクの担当であったため今日も会場入りしている。雫には彼女の母親で元はA級ライセンス保持者である魔法師の北山紅音の得意魔法である振動魔法の1つである「共振破壊」と防御魔法である「情報強化」の王道の戦い方で、エイミィには砲撃魔法と「エクスプローダー」という彼女が得意としている移動系魔法の2つを、そして俺の妹の深雪には家で練習してきて深雪の得意魔法である振動・減速系魔法を用意した。彩海奈みたいに一瞬で試合が終わるような魔法を3人には用意していない。そして雫、エイミィ共に1回戦を突破し深雪と共に選手控え室に向かっている時に正面から見たことがある人達が近づいてきた。

 

☆達也side終わり☆

 

「第三高校1年一条将輝だ」

「同じく第三高校1年吉祥寺真紅郎です。この九校戦史上最高のエンジニアである君を見に来ました」

 

「第一高校1年司波達也だ。『クリムゾン・プリンス』と『カーディナル・ジョージ』が何の用だ?」

 

「ほお、俺の事だけじゃなくてジョージのことについても知っているのか」

「司波達也…聞いたことの無い名前です。ですがもう二度と忘れることはありません」

 

「……深雪、先に準備しておいで」

 

深雪は達也の言った通りに先に選手控え室に向かった。一条将輝の横を通り抜ける時に一条将輝が横目で追っていたのを達也は見逃さなかった。

 

「それで俺に何の用だ?ただ俺を見に来たわけじゃないだろう?」

 

「…!?あぁお前は「僕達はモノリス・コードに出ます。そちらは担当するんでしょうか?」おい、ジョージ…」

 

「そちらは担当しない」

 

「そうですか…いつかはあなたが担当した選手と戦ってみたいものです」

 

「……それでプリンスはなんだ?」

 

「……彼女とはどういう関係だ?」

 

「はぁ…そんなことかアイス・ピラーズ・ブレイクが始まったら嫌にでもわかるから待っておくんだな。それじゃあな」

 

「なっ!?おい、待て」

 

将輝の呼ぶ声に達也は対応せず深雪が待っている選手控え室に入っていった。一方廊下に取り残された将輝は呆然としていて真紅郎が何度か呼んだところで意識を取り戻した(?)

 

選手控え室に先に入っていった深雪は遅れて入ってきた達也にあの人たちはお兄様のことを偵察しに来たと言い張ったが達也が俺なんかに偵察しに来るはずがないと言い張った。深雪がヒートアップしそうなところで大会スタッフが呼びに来たためそこで終わりになった。

 

一方深雪のアイス・ピラーズ・ブレイク予選が行われる会場には一条将輝、吉祥寺真紅郎の他にも一高からは会長である七草真由美、一高の三巨頭の1人渡辺摩利、作戦参謀の市原鈴音。他の場所には本戦優勝者五輪 彩海奈等この大会で注目を浴びている選手や軍の関係者がこの試合を見に来ていた。

 

(深雪…貴女の魔法を見るのは授業や演習以外で見るのは初めて。達也が私と深雪を分けた本当の理由見せてもらうわよ)

 

(司波…深雪…司波深雪だと!?まさかあいつと彼女は兄妹なのか?あいつがジョージと同じかそれ以上のエンジニアだとしたら彼女はどれだけの能力を有しているんだろうか?)

 

そしてV.I.P.席には国家公認戦略級魔法師である五輪澪の姿もあった。

 

(あの子が司波深雪ちゃんね。あの彩海奈を抑えて入試の成績が1位だった子…そして彩海奈と共に一高1年のダブルエースの一角を担う存在…今日のアイス・ピラーズ・ブレイク、そしてミラージ・バットしっかり見させてもらうわ)

 

既に舞台に上がっていた深雪は登場した時からこの会場全体を魅了していた。観客は彼女の神々しさに見とれていた。深雪はこのアイス・ピラーズ・ブレイクの衣装に巫女さんが着るような服装で登場してきた。

 

そして深雪の試合が始まった。

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

深雪は試合開始と同時に1つの魔法を行使した。その名は『氷炎地獄(インフェルノ)』。それはA級ライセンス保持者である魔法師にしか起動式が公開されていない魔法式で魔法師ライセンス試験でA級受験者用の課題として出題されることのある魔法だった。その原理は対象とするエリアを二分し、一方の空間内にある全ての物質の振動エネルギー・運動エネルギーを減速し、その余剰エネルギーをもう一方のエリアへ逃がし加熱することでエネルギー収支の辻褄を合わせる熱エントロピーの逆転魔法である。

 

その『氷炎地獄(インフェルノ)』を使用したことにより観客、軍の関係者はこの魔法を使用できるということに驚きを感じ得なかった。

「氷炎地獄(インフェルノ)」を使ったことは彩海奈、澪も同じような感想を持っていた。

 

(まさか、深雪がこれほどの魔法を繰り出せるとは思わなかった…私でさえあんなに綺麗に出来るかと言われれば微妙だし…やっぱり深雪はすごいわこれは来年もし私がアイス・ピラーズ・ブレイクに出ることになったら大変ね)

 

(まさかあの子がこれほどの魔法を行使できるなんて…彼女は一般出身らしいけどこれほどの魔法を出せるなんてほぼ有り得ないわ…どうやら少し調べてみる必要がありそうね…来年彩海奈ちゃんがアイス・ピラーズ・ブレイクに出るなら苦労はしそうね)

 

「氷炎地獄(インフェルノ)」を出したあとに深雪は「圧縮解放」という加熱によって氷柱内の気泡が膨張し、氷柱がひび割れを起こした状態になったので、エリア内の空気を圧縮・解放することで衝撃波を発生させ、全ての氷柱を粉砕する魔法を使い見事に1回戦を突破した。

 

その日のうちに予選の2回戦が行われ深雪、エイミィ、雫共に明日行われる予選3回戦に進んだ。

 

同日には新人戦クラウド・ボールの予選・決勝が行われた。私は今日はクラウド・ボールの会場とアイス・ピラーズ・ブレイクの会場を行ったり来たりしていたため競技に出てもいないのに昨日や一昨日と同じくらいに疲れていた。

クラウド・ボールにはスバルが出ていたため私はエイミィの試合と重ならないようにスバルの試合を見ていた。スバルは「認識阻害」のBS魔法を使いながら順調に勝ち進んで行った。しかし決勝戦は"稲妻"の異名を持つ一色愛梨と戦い善戦していたものの最終的には敗れてしまい準優勝に終わった。私と無事に3回戦の進出を決めていたエイミィは会場ではなく一高本部てこの試合を見ていた。

 

その日の夜夕食時に私とエイミィとスバルはクラウド・ボール準優勝とアイス・ピラーズ・ブレイクの3回戦進出を祝っていた。途中からはここに深雪、ほのか、雫も加わり3人のアイス・ピラーズ・ブレイクでの活躍も祝った。また私とほのかのバトル・ボードでの準決勝進出も祝った。

 

私とエイミィとスバル、深雪、ほのか、雫と夕食を食べ終わりまた明日ということで解散しエイミィと共に部屋に戻っていると私の端末に連絡が入った。

 

『少しこれからのことで話をしたいんだけど少しいいかな?』

 

と芽愛から連絡が入った。場所は以前行ったV.I.P.ルームで姉の澪と弥海砂も同席するようだ。

 

「エイミィ、少しこれから出ていいかしら?」

 

「え?うん大丈夫だよ」

 

「ありがとうねエイミィ。もし七草先輩が来たら私の端末に連絡してもらえるかな?」

 

「わかったよ彩海奈!彩海奈も明日あるんだし早めに帰ってきなよね!」

 

「ええ、もちろんよ。もしこれで明日ほのかに負けたりしたら姉さんのせいにするわ。それじゃ行ってくるわね」

 

「いってらっしゃーい」

 

私はエイミィと来た道を戻りロビーに戻り受け付けのホテルスタッフに用件を伝えるとV.I.P.ルームに通ずるエレベーターまで案内してくれた。

 

数分後私はV.I.P.ルームがあるエリアにやってきた。私がやってくるとV.I.P.エリアの警護の方のボディーチェックを通ると姉の澪の部屋にやってきた。

 

「姉さん?入っていい?」コンコンコン

 

『ええ、入ってきていいわよ』

 

「それじゃあ失礼するわね」ガチャリ

 

「お久しぶりですね彩海奈様」「九校戦前日ぶりですね彩海奈様」

 

「芽愛さんも弥海砂さんも久しぶりですね!メールではやり取りしてましたが実際にはお久しぶりです」

 

「むー…お姉ちゃんである私には何かないのかしら?」

 

「そうね、姉さんも久しぶりね。一高受験した時以来かしら?」

 

「なんで芽愛と弥海砂の方がなんかこう優しげな感じなの…」ムスー

 

「なんでって…芽愛さんと弥海砂さんは私の護衛してもらってるし偶に一緒にいたりしてるし買い物にも付き合ってもらったりしてるし少なくとも最近は姉さんといる時間よりは長いからかな?」

 

「くっ…やっぱり一緒に暮らした方がいいわよ…そうすれば毎日彩海奈と一緒にいれるし…」ゴニョゴニョ

 

「ところで私をこの九校戦期間中に呼び出したのは余程のことがあったの?」

 

「ああそうだったわ。それに関しては芽愛と弥海砂から何か伝えてくれるようよ」

 

「え?じゃあなんで姉さんはここにいるの?」

 

「この九校戦期間中は芽愛と弥海砂が私の護衛だからよ。それに彩海奈ちゃんにも会いたかったしね」

 

「はぁ……すみません姉が…それで伝えたいこととは?」

 

「いえいえ、また私たちには良い思い出になりましたので。それで九校戦に行く前にお伝えした無頭竜のことですが新人戦モノリス・コード、新人戦ミラージ・バット、本戦ミラージ・バットでどうやら事を起こすようです。どれで起こすかまでは分かりませんが彩海奈様もこれらの競技には出ませんが十分ご注意を」

 

「うっ……分かりました。私もおそらく観戦するとは思いますが注意して"視て"います」

 

「分かりました。では私達からはこれだけですので私達としてはもう明日の競技に向けて休んで欲しいのですが…」

 

「?」

 

「彩海奈ちゃん!九校戦本戦アイス・ピラーズ・ブレイク優勝おめでとう!ここではそんなに大それたことは出来ないけど東京に戻ったら一緒にお祝いしようね!もちろん明日の新人戦バトル・ボードのお祝いも一緒に、ね」

 

「「彩海奈様本戦アイス・ピラーズ・ブレイク優勝おめでとうございます」」

 

「あ、ありがとうございます。それと姉さん私九校戦が終わって翌々日には本邸に帰ろうと思っていたのだけれど…」

 

「そ、そんな…私は本邸へ帰れるの早くても8月の下旬なのに…また予定を無理矢理にでも空けようかしら……」ゴニョゴニョ

 

「(何か言っていた気がするけどあえて突っ込まないように)」

 

「それじゃあ私はこれで帰るわね。明日も準決勝と決勝のレースあるしCADの調整もしないといけないから」

 

「え、ええまたね彩海奈ちゃん。バトル・ボード期待してるわよ?」

 

「期待に応えられるかは分からないけれど頑張ってみるわ。それじゃあ芽愛さんと弥海砂さん姉のことよろしくお願いします」

 

「「おまかせください。彩海奈様」」

 

こうして私は姉である澪が泊まっているV.I.P.ルームを出て帰ろうとすると初老の執事が私に近づいてきた。

 

「突然失礼致します。私は四葉家の執事をやっております葉山と申します」

 

「四葉!?あっ私は五輪家の次女の五輪 彩海奈と申します。それで四葉家の執事の方が私に何か御用でしょうか?」

 

「はい。実は四葉家現当主である四葉真夜から伝言を貴女様に頼まれまして。『今度是非お会いしてみたい』ともちろん今すぐにご返事は結構ですので後日出来ればこの九校戦期間中にこのV.I.P.エリアに来ていただけましたら四葉の者がおりますのでその方に私めをお呼びするように言っておりますのでよろしくお願いします」

 

「分かりました…この事は父である五輪 勇海及び私の姉である澪に確認を取り次第返事をさせていただきます。それではこの辺で失礼させていただきます」

 

「はい。承知致しました。夜分遅く時間を取らせてしまい申し訳ございません。良いお返事をいただけることを願っております」

 

私は最後までこの2人の空間だけ遮音魔法がかかっていることに最後まで気づかなかった。私は話を終えるとエレベーターに乗りエイミィがいる部屋に戻っていった。その戻る時に父さんと姉さんにこの事を伝えた。部屋に戻るとエイミィはもう寝ていた。きっと今日の2試合でも連日競技が続いたため疲れていたのだろうと思った。私も明日のバトル・ボードがあるため直ぐに床に就いた。

 

 

 

 

九校戦5日目新人戦2日目の幕は下り、また次の幕が上がる。今日だけでも深雪の「氷炎地獄(インフェルノ)」は大多数に新たなる衝撃を伝えた。明日は一体どんな衝撃が起こるだろうか。そんな思いが九校戦を中心に巡っていく。





はい。いかがでしたでしょうか?

この原作(魔法科高校の劣等生)って四葉家が中心にあるからそこと関わりを持たせたかったんです。(達也と深雪と関わりあるじゃんってそこはノーカンでお願いします彼らはまだ四葉とは名乗ってはいませんから)

あとは原作と違うところを数箇所(今作品の中で)作ってみました。気付かれたでしょうか?そういうのも見つけながらこの作品を楽しんでいただけたらと思います。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価お願いします。ここが少し気になったという点がありましたら感想で言っていただけたらありがたいですし今後の作品作りのモチベーションになる気がするのでよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ダブルエースの真価、双子は類を呼ぶ?

はい。九校戦編の新人戦3日目です。

今回タイトル通りに今作の中でのダブルエースが活躍する回を作りました。まぁもう2人ともこれまででも圧倒的に強いんですけどね…(笑)

そして今作のオリジナル設定も今回の話で追加しました。良ければ探しながら読んでみてください。


☆双子sidePart1☆

 

「姉さん今日はどうして深雪姉さんのアイス・ピラーズ・ブレイクじゃなくてバトル・ボードを見に行くの?」

 

「御当主様からの直々の命令よ。新人戦バトル・ボードに出場する五輪家の次女の五輪 彩海奈のことについて調べてもらえるかしら?と父に言われたそうよ。昨日の夜遅くに連絡が来たのだけれど貴方違う部屋だし連絡せずに連れてきたのよ」

 

「それなら夜の内にくれればいいだろう!?なんで今になってじゃあちょっと付いてきてって感じになってるのさ…」

 

「仕方ないじゃない。昨日連絡したら貴女全然出ないんですもの」

 

「それもそうだけど…って今貴女って言わなかった?僕は男なんだけど

!?」

 

「もう今更じゃない。私達の任務に関してはぴったりなのに」

 

「うぅ…絶対達也兄さんみたいになってみせる…」

 

「はいはい。それで会場に行くわよ。彼女の出番は最初だから早く行かないとね」

 

「うん…」

 

こうして双子の姉弟はバトル・ボードの準決勝と決勝が行われる会場へと向かって行った。

 

☆双子sidePart1終わり☆

 

☆双子sidePart2☆

 

東京にある某所……そこでとある双子は言い争っていた。

 

「もう早くしてよーーーのんびりしてたら出番終わっちゃうよーー」

 

「うぅどっちにしよう…名倉さんはどっちがいいと思います?」

 

「どちらもお似合いですが…強いて言うならこちらの水色の御洋服の方が良いと思われます」

 

「ありがとう名倉さん!香澄もうちょっと待っててー」

 

「もう早く着替えてよーー」

 

数分後…

 

「お待たせしました。香澄ちゃん、名倉さん」

 

「もう遅いよー。さぁ九校戦の会場へレッツゴー」

 

「それで香澄ちゃんはなんで今日になって九校戦を見に行くことにしたんです?」

 

「それはね五輪家の五輪 彩海奈さんっているじゃない?あの人の魔法を見て綺麗だなって思って実際に見てみたいって思ったからかな」

 

「はぁ…そんな理由で…」

 

こうして『七草の双子』と呼ばれる双子の姉妹は一路九校戦の会場へ向かって行ったのであった。

 

☆双子sidePart2終わり☆

 

九校戦6日目新人戦3日目の朝私は少し眠たさを感じるものの体調不良は感じられない。昨日姉さんからのことや四葉家の執事の葉山さんという方からの依頼について考えていると夜遅くになってしまったがそれでも寝不足にはならなかった。今日はバトル・ボードの準決勝と準決勝を突破したらおそらくほのかとの決勝戦がある。私は起き上がると同部屋のエイミィを起こした。彼女もアイス・ピラーズ・ブレイクの3回戦と3回戦を突破した後の決勝リーグが残っている。

 

「エイミィ、起きて朝だよ」

 

「うにゅーあと5分…」

 

「エイミィ起きて!このままだとアイス・ピラーズ・ブレイク不戦敗になっちゃうよ?」

 

「…!!それは嫌だ」

 

「はい、起きたね。おはようエイミィ」

 

「お、おはよう彩海奈…」

 

「うん、それじゃあ着替えて行こうか」

 

「うん。少し待ってて」

 

待つこと数分私達は部屋から出て軍のホテル内にある食堂に向かった。そこには先にいた達也、深雪、ほのか、雫、スバルが待っていた。そこでお互いの健闘を称えあっていた。

 

「さて、今日が本番だな。深雪、雫、エイミィそれぞれ気負いしないで1年生らしく戦ってくれ。ほのかは時間的に観戦は無理だが応援してるぞ」

 

「あら、達也は私の応援はしてくれないのね」

 

「もちろん彩海奈も応援してるが彩海奈なら決勝戦くらいは簡単に行けるだろうあの魔法を使えば」

 

「それもそうね。決勝戦おそらくほのかとになると思うけど私でもあの光波振動系魔法はどうにかなるものでは無いからね」

 

「絶対に負けないからね彩海奈!」

 

「ええ、私も負けないように頑張るわ。だから決勝で会いましょ?」

 

「彩海奈とほのかも燃えてるねー。私は3回戦に勝っても決勝リーグ多分というかほぼ確実に深雪と雫だから今から気が重いよ……」

 

「それはやってみないとわからないと思うのだけど…」

 

「まぁともかく3回戦を突破してからだな。さてそろそろ時間かみんな行くぞ?」

 

達也の言葉をきっかけに私達は各競技の各会場に向かい進んで行った。どうやらスバルはアイス・ピラーズ・ブレイクの方を見に行くそうだ。今日は姉さんもアイス・ピラーズ・ブレイクの方を見に行くそうだ。芽愛さんは姉の方に付いていくそうだが弥海砂さんはバトル・ボードを見るらしい。やっぱり深雪は姉も注目しているらしい。これまで私の事に関しては何をしてでも見に来ていたのだがそれだけ深雪は魅力的なんだろうと思った。

 

「そろそろ準備をお願いします」

 

大会スタッフが順番を告げにやってくると私は目の前のことに集中した。

 

私はこれまでと戦い方を変えずに『水変万華』を使いながらレースを進めていき見事に決勝進出を決めた。

レースが終わり午後の決勝に向けて休養をとっている所にエイミィから連絡が来た。『私も決勝リーグに進出すること出来たよ!彩海奈も決勝頑張ってね!』と連絡が来た。エイミィも無事に決勝リーグに進むことが出来たようだ。だが、エイミィは3回戦でかなりの熱戦を演じたため決勝リーグは厳しいだろうと私は見ていた。

私が休養している間に私の決勝の相手も決まった。私の相手はほのかに決まった。もう1つの準決勝はこれまでに類を見ないほどの名勝負らしく来年の本戦が楽しみになったという声が大きいみたいだ。

 

そんなこんなで時は過ぎていき午後になった。アイス・ピラーズ・ブレイク決勝リーグとバトル・ボード決勝戦はどちらも一高が独占したため同時優勝にしてはどうかという大会側から提案された。大会委員の本音はあまり面倒事をしたくないのだろう。だが雫が深雪と戦いたいらしく深雪もそれを了承して午後に深雪と雫の決勝戦を行うみたいだ。エイミィはどうやら私の予想通り体調が戻らなかったらしく決勝リーグは棄権ということになったみたいだ。エイミィは雫とのリベンジマッチを望んでいたが今回では叶わなかった。

バトル・ボードの決勝戦に出るほのかも私との対戦を望んでいる。私も断ること理由もないので承諾した。これで大会委員としてはやる事が増えてしまったが観客としては見応えがある試合になるのだろう。

 

そうして午後を迎え観客の大勢は神々しさを持ち合わせている美しさを持っていてさらにはA級魔法師にしか起動式が公開されていない「氷炎地獄」を使う深雪とスピード・シューティング優勝さらにはこれまでの予選で「共振破壊」と「情報強化」を軸に勝ち抜いてきた雫の対決のアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦と光波振動系魔法を使いルールの抜け目をついた戦い方を使いさらにはそのスタイルの良さから人気が出ているほのかと十師族の一家である五輪家のご令嬢で姉には国家公認戦略級魔法師を持ち、今年の本戦アイス・ピラーズ・ブレイク優勝、さらには新たな魔法を使いながら決勝まで進んできた私の対決であるバトル・ボード決勝戦の2つのどちらを見るかということに悩まされていた。だが大会側から競技時間の変更が伝えられた。先に深雪と雫のアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦を行い、その1時間後に私とほのかのバトル・ボード決勝戦を行うということが伝えられた。

 

一高生や他の生徒、観客は我先にとアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦の会場に押しかけて行った。十数人の生徒を除いて。この十数人の生徒とは一高に限った話であるのでほかの高校は分からないが少なくとも一高はこうなっている。本部に服部副会長、千代田次期風紀委員長等、バトル・ボード決勝戦会場に私とほのか、五十里先輩、中条先輩等だ。私も雫と深雪のアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦を控え室にあるモニターから見守っていた。

 

その頃アイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦会場では……

 

 

ワアアアアアア

 

会場は観客席、立ち見を含め人でごった返していた。それだけこのアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦が注目されているということだ。会場には俺の他にもエリカ、レオ、美月、幹比古、エイミィ、スバル、七草先輩、渡辺先輩、市原先輩がこの試合を見に来たようだ。他にも大勢いるのだがその他には見当たらないので分からないが大勢の人が来ているのだろう。どうやらV.I.P.席には軍の関係者や俺の叔母である四葉家現当主四葉真夜、三矢家現当主三矢元、七草家現当主七草弘一、『老師』九島烈を始めとしたこの国の魔法師界の重鎮が揃っていた。もちろん深雪を見に来た人もいるだろうが雫を見に来たという人も多いだろう。

少し時が経ち深雪と雫両者が舞台に上がった。そして彼女達が舞台に上がると歓声がより一層高まった。歓声は試合開始前の合図がなる前にはなりやんでいた。

そして

 

ブーーーーーー(試合開始の合図)

 

雫が使う魔法は「共振破壊」と「情報強化」、深雪は「氷炎地獄」を共に使った。お互い膠着状態が続いていく。

ここで雫は戦況を変えるためにある魔法と操作を使った。俺は雫が深雪に勝てるとはあまり思っていなかったが雫から深雪に勝ちたいと言われたためこの操作と魔法を提案した。正直取得出来るかは雫次第ではあったが俺は雫に教えた。

 

それは「パラレル・キャスト」と「フォノンメーザー」。パラレル・キャストとは複数のCADを同時に使用することだが難易度は非常に高い。同種の魔法であれば混信による干渉波は起きないが別種の魔法を使うのは特異とも言えるほど難しい。さらにこのフォノンメーザーという魔法も難易度が高い魔法で深雪が使う「氷炎地獄」同様にA級魔法師にしか起動式が公開されていない魔法だ。この雫の行動に対して深雪は少なからず驚いていた。まさか自分の兄が得意としている技術を雫が扱えるとは思っていなかったからだ。深雪はこれを見てまた新たな魔法を使った。その魔法は「ニブルヘイム」。振動減速系魔法で高難易度魔法と知られている。深雪は全力を持ってこの決勝戦に挑んでいる。時が経ち深雪は「ニブルヘイム」を解除した。雫は耐えきったと思っているのだがこれが雫の盲点だった。雫の陣地にある氷柱にはニブルヘイムによって発生した液体窒素が張り付いていた。雫はこれに気付きすぐさま「情報強化」を発動するが時は遅かった。雫が発動する前に深雪が「氷炎地獄」によって雫の陣地の氷柱を一気に加熱し液体窒素を爆発的に膨張(体積で700倍)させることで雫の氷柱を全壊した。

こうして新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦は勝敗を決した。

 

☆彩海奈side☆

この試合を見ていた彩海奈は来年が非常に楽しみなことになったと内心わくわくしていた。今回は九校戦3連覇のために本戦に出たが内心は新人戦に出たいと思っていた。何故なら彩海奈も雫同様に深雪と戦ってみたかったのだ。まさかここまでとは思っていなかったけれど彩海奈は深雪と1度でいいから戦ってみたかった。それが来年実現すると思うとわくわくしていた。だがこれから彩海奈は新人戦バトル・ボードの決勝戦がある、ほのかには悪いけれどここで負ける訳にはいかない、十師族という肩書きと共に姉である澪の前で恥を晒すわけにはいかないという思いからだ。そういう思いで彩海奈は決勝戦に向けて準備を進めていった。

 

☆V.I.P.席の方々☆

 

V.I.P.席では会場とは逆に静けさをその部屋中を覆っていた。

 

四葉家現当主四葉真夜は

 

(ふふっさすがは深雪さんね。これなら四葉家の次世代も楽しみだわ。それと達也さんもあの北山さんの担当エンジニアみたいだけれどまさかフォノンメーザーの起動式まで用意するなんて相変わらず規格外ね。とりあえず深雪さんそれに達也さん優勝おめでとう)

 

とこんな風に叔母バカ丸出しのことを思っていた。その隣のV.I.P.ルームには七草家現当主七草弘一がいた。

 

(なんだあの司波深雪は……「氷炎地獄」だけでも規格外なのにまさか「ニブルヘイム」まで使うとは…なんて末恐ろしい子だ…それにしても「氷炎地獄」、「ニブルヘイム」、「フォノンメーザー」、汎用型のCADに特化型に付ける照準補助機能を付ける最新技術…司波達也一体どういう兄妹なんだ…)

 

とこんな風に今後の彼らの行く末に戦々恐々としながらも彼らを如何に七草に取り込めるかを考えていくのであった。

国家公認戦略級魔法師である五輪 澪と『老師』九島烈が同席しているV.I.P.ルームでは

 

「す、すごい…彩海奈ちゃんでも「氷炎地獄」はそこまで簡単に出せる魔法じゃないのにいとも簡単に出してるだけでもすごいのに…まさか「ニブルヘイム」まで使えるなんて」

 

「あぁ彼女は今後の成長を考えてもお前をも超える魔法師になるだろうな…戦略級魔法師でないとしても戦略級魔法師を超える存在になりうるだろうな」

 

「えぇ…そのような存在になっても可笑しくないくらいの存在になりえますね…しかも彼女のCADを用意した司波達也君もこの国始まって以来最高の魔法工学技師になりえますね。「氷炎地獄」に「ニブルヘイム」、「フォノンメーザー」、汎用型CADに特化型の照準補助機能を付けた最新技術…どれも並の魔法工学技師には出来ないですよ」

 

「確かに…しかもCADは私用ではなく競技用におそらくダウングレードしたものだから尚更だな」

 

烈は事実を知っているが故に安易に彼らのことを話せないのでまるでその時初めて見たような雰囲気になっていた。

 

☆V.I.P.席の方々終わり☆

 

衝撃的なアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦から約1時間後今度はバトル・ボード決勝戦の会場がアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦のような雰囲気になっていた。応援席には先程アイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦を戦っていた深雪と雫、そして両者の担当エンジニアの達也、エリカ、レオ、幹比古、エイミィ、スバルの他にも各所に一高の生徒がいる。まだアイス・ピラーズ・ブレイクの会場では男子の決勝リーグが行われているのだがこの有り様である。如何にアイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦とバトル・ボード決勝戦の人気があるかがわかる。

 

「試合の準備をお願いします」

 

と大会スタッフが選手控え室に呼びに来た。

 

「それじゃあ頑張ってね。僕も担当エンジニアとして最大限出来ることはしたはずだから後は頑張ってね」

 

「はい。ありがとうございました。必ず優勝してみせます」

 

「うん。楽しみにしてるね」

 

こうして五十里先輩は観客席に戻っていった。

 

(ふー……さぁ行こう)

 

と思いながら私はバトル・ボードのスタートラインに向かった。向かっている途中にほのかと遭遇し口数は無かったがお互い思っていることは同じだった。

 

((絶対に負けない!!))

 

そうしてスタートラインに立つとあれだけ歓声が響いていた観客席は静まり返っていた。

 

「On your mark」

 

バンッ

 

ピカッ! ズシャァ

 

この光景に観客席も悲鳴をあげる者が多かった。その中抜け出したのは意外にもほのかだった。彼女は光のエレメントの末裔であり学校ではSSボード・バイアスロン部で鍛えたその身のこなしでこの局面を乗り越えたのだ。これには彩海奈もさすがに驚いていた。

 

(やっぱりほのかは光のエレメントの末裔なのね。あの予選のことからそうだとは思ってたけど)

 

こうしてほのかが先行してレースは進んでいきラスト1周になったところで彩海奈はこれまで移動魔法と硬化魔法と加速魔法、「水変万華」の4つを併用しながら進めてきた。だがここで「水変万華」の使用用途を変えた。これまでほのかのボードの下・前に合わせて発動してきたがここに来て自分の周りにも発動し始めたのだ。これにはほのかや観客席にいる人たちも驚きを隠せなかった。何故ならわざわざ自分の周りを激流にしたのだ。これではますます差は広がるのではと思っていたがレースが進んでいくとどんどん差が迫ってきたのだ。これには観客も大いに盛り上がり最後まで白熱したレースを私とほのかは展開した。

 

2人ともほぼ同時にゴールして結果はビデオ判定になった。協議が開始されてから数分後電光掲示板に優勝者が表示された。

 

優勝したのは私だった。それでもタイムはほのかとコンマ数秒という差でどちらが優勝しても九校戦新人戦バトル・ボードのレコードタイムを更新していた。私は横でこの結果を見守っていたほのかに声をかけられた

 

「優勝おめでとう彩海奈。来年こそは絶対彩海奈に勝ってみせる!」

 

「ええ、ありがとう。私こそほのかに負けないように頑張るわ。それに来年は本戦だから2年生の先輩方にも勝たないとね」

 

「そうだね!」

 

パチパチパチパチパチパチ

 

観客席から私達に対して大きな拍手が送られた。そこには「優勝おめでとう!」や「また来年も2人の対戦を期待してるぜ!」等私達に感謝の言葉をかけてくれた。私達はそれに応えるとそれぞれの選手控え室に戻っていった。その拍手は私達が会場から舞台袖に出て行った後続いていた。

 

こうして一高にとって史上初の快挙をもたらした1日は終わった。ちなみに私達の裏で行われていた男子アイス・ピラーズ・ブレイクは一条家の次期当主(?)でもある一条将輝が優勝したそうだ。

そしてその夜九校戦の競技者変更について情報が流れた。それは一高が負傷した渡辺摩利に変わり新人戦ミラージ・バットにエントリーしていた司波深雪が新人戦をキャンセルして本戦に参加するということだった。

 

☆双子sidePart1☆

 

バトル・ボード決勝戦を見終わって宿泊場所まで戻ってきた彼らは

 

「姉さん。彼女を見てどう思った?」

 

「凄かったわ、ただそれだけじゃ十師族としては普通って思うかもしれないけど御当主様が直々に私達に彼女のことについて調べろとは言わないはず。彼女にはまだ何か秘匿していることがあるはずよただ最近ここ1.2年私達黒羽から逃げ回っている人がいるでしょう?その人なら私達黒羽でさえ知らない情報を持っているかもしれないわね」

 

「そう…だね。確かにあいつは男か女かも分からないけど僕達から逃げられるということを考えるとそうかもしれないね」

 

「とにかくあとは彼女は競技には出ないから何もすることは無いわね。折角なら新人戦ミラージ・バットか深雪姉様と同じアイス・ピラーズ・ブレイクに出て欲しかったのだけれど」

 

「そうだね…四葉と五輪どっちの方が優れているか僕達くらいしか分からないけど楽しみだね」

 

こうして2人の九校戦での人物調査は終わり、2人はいつもの日常に戻っていくのであった。

 

☆双子sidePart1終わり☆

 

☆双子sidePart2☆

 

『七草の双子』と呼ばれる七草泉美と香澄の姉妹は新人戦バトル・ボード準決勝を見た後、アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝戦とバトル・ボードの決勝戦を見た後九校戦会場を後にし七草本邸へと帰宅していた。

 

「ねぇ泉美!やっぱり五輪 彩海奈さん凄かったよね!」

 

「………………」

 

「泉美?ねえどうしたの泉美?」

 

「……った。あぁあの方が…………かしらね」

 

「え?なんて言ってたの?」

 

「司波深雪先輩凄かった。さすがは私の未来のお義姉様♡」

 

「え?泉美ってそっちだったの?」

 

「な!?失敬な私はノーマルですよ!香澄ちゃんこそまさか」

 

「ボクはそんなんじゃないよ!泉美と違ってあんな風には思ってないしね」

 

こうして『七草の双子』は本邸に着くまでずっと言い争っていた。

 

☆双子sidePart2終わり☆

 

こうして九校戦新人戦3日目の競技は全て終了した。これから九校戦は折り返し終盤戦へと向かっていく。しかしこれからある事件が起きていくがそのことはまだ誰も気づいていない。その事を知らずして九校戦関係者は九校戦新人戦4日目を迎えるのであった。




はい。どうでしたでしょうか?まぁ2人とも異次元レベルで強いですけど対戦する人にも少しだけ原作より強くしてみました。

そして前書きにも書いたオリジナル設定見つかったでしょうか?こちらの答え合わせは投稿翌日に設定集みたいなのに追加します。

あと活動報告という名の作者の個人的欲求(?)みたいなのにコメントしていただけるとありがたいです(作品を書くモチベーションにも関係してます(多分))

そして新しくこの作品をお気に入りに追加してくれた方ありがとうございます!まさかここまで来れるとは思ってませんでした。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、気に入ったらお気に入り追加お願いします。次回の話も出来るだけ早く投稿できるように頑張りますのでこれからもよろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

思いがけない事故そして四葉との接触

はい。今回は九校戦新人戦4日目です。この4日目って原作でもアニメでも描写が少ないから書くことが少なくなるんですよね…




九校戦新人戦4日目。今日は新人戦ミラージ・バットの予選と決勝、新人戦モノリス・コードの予選が行われる。この2つの競技は九校戦の中でも花形競技でもあり新人戦とはいえ注目の競技の1つでもある。

 

私は既に本戦アイス・ピラーズ・ブレイク、新人戦バトル・ボードに出場したためこれ以降の競技には出れない。また同部屋のエイミィも新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク、スピード・シューティングに出場したため出場出来ない。そのため私達は競技がある日と比べ遅い時間に起きた。起きてから制服に着替え食堂に向かい朝食をとり今日どうするかを決めていた。

 

「ねえ彩海奈今日どうする?」

 

「そうね…スバルが出るミラージ・バットを見るのは確定としてあとは第三高校のモノリス・コードの試合見てみたいわね。もちろん時間が合えばの話だけど」

 

「そうだね!私も第三高校の試合見てみたいなぁ…そういえば懇親会の時一条君が深雪のことを目を追って見てたんだよね」

 

「あら、そうなのね。一条君も大変ね…あの深雪に目を付けるなんて…もし事を起こそうならあのお兄様が黙ってはいないでしょうね…でも深雪がその前に氷漬けにしそうだけどね」

 

「あ、彩海奈……う、後ろ」ビクビク

 

「え?」クル

 

「あら、彩海奈楽しそうなこと話してるじゃない。私も混ぜてもらえるかしら?」ニコニコ

 

「み、深雪…何処から聞いてた?」

 

「え?一条君も大変ね。の所からよ何か問題あるかしら?」

 

「ぜ、全部じゃない…」

 

「そうね。それで彩海奈は一条君の実験台になってみる気はあるかしら?今日はとても暑いもの、キンキンに冷えた氷は如何かしら?」

 

「誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁ」

 

「ふふっ冗談よ。それと昨日はバトル・ボード優勝おめでとう!来年貴女とアイス・ピラーズ・ブレイクで戦えるの楽しみにしてるわね」

 

「ありがとう深雪!私も来年貴女と戦えるの楽しみにしてるね」

 

「それじゃ私は行くわね。お兄様を待たせるわけにはいかないもの」

 

「うん、じゃあね。本戦ミラージ・バット楽しみにしてるね」

 

「ええそれじゃあまた」スタスタ

 

「はぁ……何とか助かった…」

 

「彩海奈って怖いもの知らずだよね…」

 

「そうなのかもね…これからは気をつけないと…」

 

「「はぁ……」」

 

こうして無事(?)朝食を終えて新人戦ミラージ・バットが行われる会場に来ていた。

 

「うひゃあそれにしても人が多いねぇ。日差しを遮られてるところ座れて良かったよ」

 

「そうね…私も日差しが強いというのはちょっとね」

 

『それでは本日九校戦新人戦第4日目ミラージ・バットの予選を始めます』

 

アナウンスが鳴り今日も九校戦の競技が始まっていく。この新人戦ミラージ・バットには深雪、ほのか、スバルがエントリーしていたが昨日の夜に深雪が新人戦をキャンセルし本戦に出ることが決まったためほのかとスバルのみの出場になる。

 

無事にほのかとスバルは予選を突破して今日の夜行われる決勝戦へと舞台を進めた。だが、その裏つまり新人戦モノリス・コードである事件が起きていた。なんと予選第2戦で破城槌による事故で一高新人戦モノリス・コードのチームが瓦礫の下敷きになってしまったのだ。私はこれは香港系犯罪シンジケートである「無頭竜」の仕業だと思っていた。これまであまり動きを見せなかったため頭の中から消えかけていた。その知らせを聞いて私とエイミィと競技を終えたばかりのスバルは一高本部へと戻るとそこには何やら不穏な空気が流れていた。その中心には深雪と雫がいた。私は恐る恐る深雪に声をかけてみることにした。

 

「み、深雪どうしたの?」

 

「あら、彩海奈もしかして氷漬けの実験台になってくれるのかしら?」

 

とこんな風にとても気分が悪いようだ。今すぐにでもこの一高本部全体を氷漬けにしてしまいそうな程に。

 

「七草会長が達也さんと2人で話があるって奥に行っちゃったから…」

 

それは非常にまずい事態だ。一刻も早くその話し合いが終わることを私を始め一高本部にいる人全員がその時思っていた。

 

少し時が経ち達也と七草会長が奥から出てくるとすぐに深雪はお兄様の元に歩み寄った。あの2人はまるで許嫁みたいだとこれは九校戦に来ていない一高の生徒全員も含めた意見だ。

 

「あら、彩海奈ちゃん。来てたのね、少し貴女にも今回のことについて話を聞きたいのだけれどいいかしら?」

 

どうやら私にも話があるみたいで私はそれを了承すると先程達也と話していたところに向かった。

 

奥の部屋に入るといきなり遮音魔法を行使した。

 

「いきなりごめんなさいね。九校戦初めてって言ってたから色々見てみたいのに」

 

「いえ、それで私に話とは?」

 

「今回のモノリス・コードでの事故、そして春のブランシュ騒動、ここに来るまでの事故のことについて何か知らないかなって思って、私でも調べてみたりしてるんだけどなかなか分からなくてね」

 

「それのことでしたか…1つわかるのは春のブランシュ騒動と今回の2件のことについては別口で今回は香港系の犯罪シンジケートだっていうことですかね。私にも色々と情報網はありますけど分かるのはこれくらいですね」

 

「彩海奈ちゃんも達也くんと同じ見解なのね。全く何で今年はこんなに厄介事が起きるのかしら……それに彩海奈ちゃんは十師族だからわかるけど達也くんは一体何処でこんな情報知ったのかしら」

 

「会長…人のプライベートを覗くのはあまりよろしくないかと思いますが…」

 

「失敬ね…まぁでもこのことはあまり明智さんや里美さんにも言わないでもらえるかな?」

 

「分かりました、会長。これからも兄さん共々よろしくお願いしますね義姉さん?」

 

「なっ/////」

 

「それでは失礼します」

 

私は七草会長と話を終えるとエイミィとスバルと合流すると3人でお昼ご飯を食べるとちょうど第三高校が予選の第三試合を行う時間だったようでモノリス・コードの会場に向かい観客席に座った。

 

「ふぅ…間に合ってよかったね」

 

「あぁ、ボクはゆっくりしてられないけどこれくらいなら大丈夫だろう」

 

「そうね。スバルはこの後決勝が控えてるものね」

 

「あぁほのかにはさすがにやってみないと分からないけど全力を尽くしてみるよ」

 

「大丈夫よスバルなら。一高でワンツーフィニッシュ期待してるわよ」

 

「ああ!おっと試合が始まるみたいだ」

 

新人戦モノリス・コード第3戦第1試合が始まった。競技会場はまさに一条君の独壇場だった。圧倒的とも言えるほどの実力で次々に相手の選手を戦闘不能にしていく。そして10分も経たない内に試合は終わってしまった。

 

「これはすごいわね…さすがは『クリムゾン・プリンス』ねその名に恥じない実力だわ」

 

「うん…これはさすがにも、森内君も無理だよね…達也くんなら分からないけど」

 

「そうね…達也なら互角にやれるくらいの実力はありそうなのにねでも達也はエンジニアだから競技には出ないからね…」

 

「そういえばどうするんだろうね大会規則で選手の変更は概ね認められないみたいだし」

 

「どうするのかしらね…モノリス・コードは他の競技より得点数が大きいから今後にも絶対影響してくるわ」

 

「それじゃあボクはそろそろ部屋に戻るよ。さすがに休憩しないわけにはいかないしね」

 

「そうね。また後でね!」

 

「それじゃ」スタスタ

 

「で、エイミィこれからどうする?一高はモノリス・コード今は出てないしかといって他の競技は今日はやってないわ」

 

どうしようか私達が悩んでいると私の端末に連絡が入った。送り主は父さんで先日四葉真夜からの打診のことについて話したら父さんは了承したみたいだ。あとは『老師』と姉さんだけなのだがまだ連絡はない。

 

「お待たせエイミィ。それでほんとにどうしようかしら?」

 

「私調べたんだけど屋台が出てるみたいだから行ってみない?きっと何か美味しいものとかあるし」

 

「そうね…そうしましょう」

 

私とエイミィは屋台の場所に向かい一休みしながら新人戦ミラージ・バットの決勝戦の時間まで他愛もない話に花を咲かせていた。

 

時は流れ今年の九校戦では初の夜の開催である新人戦ミラージ・バット決勝戦が行われようとしていた。この決勝戦は私とエイミィに加えてレオ君、幹比古、エリカ、美月、雫、深雪という達也が中心としている人達と共に観戦している。

 

そして時が経ち選手が入場してきた。選手が入場してきた瞬間観客の歓声が一気に最高潮にまで達した。

 

ワアアアアアア

 

「それにしてもすごい歓声ね。さすがは九校戦の花形競技ね」

 

「いやいや人の事言えないよ彩海奈…貴女の本戦アイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦と新人戦バトル・ボード決勝戦のあの歓声はこれ以上に凄かったわよ」

 

「え!?そうだったの?やっぱり競技するところと観戦席で聞く歓声は違うのね」

 

どうやらこの歓声は私にとってはすごいと思っていてもみんなにとっては私の競技の方が凄かったみたいだ。

 

結果的に新人戦ミラージ・バットはほのかが優勝した。私の予想ではほのかは光のエレメントの末裔だと思っているのでミラージ・バットは光の玉を叩いて消すことでポイントになるので光のエレメントであると思われるほのかにとってはこれ以上ない競技だ。スバルは優勝を逃したものの準優勝になりクラウド・ボールに続き2競技連続準優勝というある意味ではすごい経歴を残した。

 

そしてその夜、九校戦関係者全体を揺るがす程の驚きの情報がもたらされた。それは一高の新人戦モノリス・コードの件についてでまとめると

 

・一高のモノリス・コードの選手全員が怪我をしたことによるメンバー変更を特例として容認

・メンバーはエンジニア登録で参加している司波達也、九校戦選手外である吉田幹比古、西城レオンハルトの参加

 

以上だ。九校戦は基本的にメンバー変更を容認していないため変更されることで驚きなのだが変更した選手達にも驚きがあった。最初はエンジニアとして参加していながらもこれまで担当している選手が事実上無敗の怪物エンジニアである司波達也であるのに加えてこの九校戦に元々参加する予定が無い生徒がいきなり参戦するというのだ。驚かないはずもない。

 

この新人戦モノリス・コードのことについての知らせが発表された後『老師』、姉さんと共に四葉家現当主四葉真夜からの打診についての返答が返ってきた。姉さんからは条件付きでの了承、『老師』からはどちらの判断でも無いものの消極的なことが書かれていた。私は姉さん、『老師』からの返答を受けて父さんに相談すると『老師』には悪いが条件付きでの了承ということになった。決まると私は姉さんと『老師』にこのことについて報告した後私はエイミィに声をかけてからホテルのロビーに降りてフロントの人にV.I.P.エリアへ通ずるエレベーターへ案内してもらってからV.I.P.エリアへと足を運んだ。

 

V.I.P.エリアへ辿り着くと最早恒例である身体検査を受けてからV.I.P.エリアの中へと足を向けた。まず最初に『老師』への挨拶を行った。今回の四葉真夜からの打診についての父さん、姉さん、『老師』への意見から父さんと相談し決めたことを順を追って話した。『老師』は未だ納得はしていなかったが五輪家のことということで了承してくれた。続いて姉さんがいるところへ行った。姉さんも『老師』と未だ納得というには程遠いものの先程の条件付きで了承という形で了承してくれた。

私は父さん、姉さん、『老師』からの返答を持ちあの四葉家の執事である葉山さんという方から打診を受けた場所へ向かうとそこには1人の女性が立っていた。

 

「えっと貴女は?」

 

「初めてお目にかかります。四葉家でメイドとしてお仕えしてます、白川と申します」

 

「私は五輪家の次女で五輪 彩海奈と申します。今日は先日葉山さんからの打診を受けてそれの返答をしに来たのですがよろしいでしょうか?」

 

「はい」

 

「こちらとしては条件付きでの了承に至ったということなのですが大丈夫でしょうか?」

 

「条件付きですか…分かりました。出来る限り条件は呑みますがその条件に関しての返答もこの九校戦期間中に行いたいと思いますのでまた後日来てもらってもよろしいでしょうか?」

 

「はい、構いません。こちらからの条件はまず日時として九校戦終了後の8月15日〜8月17日の期間でお願いします、また複数日行う場合は滞在先は同じホテル以外を希望します。そして場所ですが横浜にある魔法協会支部あるいは京都にある魔法協会本部のどちらかでお願いします。さらに私の他に1人この会談に付けたいと思っています。さすがに五輪家の次女でしかない私が他の十師族の現当主と会談するには荷が重いと助言を受けたので。こちらからは以上となりますが…」

 

「分かりました。以上の事を御当主様にお伝えしこの九校戦期間中に返答致しますのでよろしくお願いします」

 

「こちらこそ貴重な時間をありがとうございました。ではこの辺で」

 

私は四葉家のメイドの白川さんという方と別れV.I.P.エリアを出て自分の部屋へと戻っていった。私が部屋に戻るとエイミィは既に眠りについていたため起こさないようにしてから私は眠りについた。

 

☆彩海奈と白川のお話し合いのその後☆

 

白川は彩海奈との話を終えると四葉家現当主四葉真夜が滞在しているホテルへと向かっていた。

白川はホテルへ着くとまずは御当主様の執事である葉山へと伝えその後は葉山が引き受けるということで白川は四葉家本邸へと帰って行った。

葉山は白川が四葉家本邸へと帰っていくのを見届け彼女から預かった伝言を四葉家現当主四葉真夜へと伝えた。

 

「あらそう。じゃあ8月15日に行うということで会場は七草にこのことを知られるわけにはいかないから京都の本部にしましょう。それと付き人の件は私達の方も付けるということにしましょう。そうね文弥さんと亜夜子さんに伝えてくださらない?もちろんヨルとヤミの格好でね」

 

「かしこまりました、奥様」

 

(ふふっ楽しみねあの深雪さんと同じくらいの容姿で達也さん並の能力を兼ね備えている。未だ彼女に関しては固有魔法すらあまり分かってないけれどこれから楽しみだわ)

 

こうして四葉家現当主四葉真夜と五輪家の次女五輪 彩海奈が超極秘に魔法協会本部で会談(?)するということが極秘に決まった。この会談によって十師族内部での対立の溝がさらに深まるということに拍車をかけたのであることをこの時まだ誰も知らない。

 

☆彩海奈と白川のお話し合いのその後終わり☆

 

こうして一高にとってはまたしても不可解な出来事が続いた1日が過ぎていった。残すは新人戦最終日のモノリス・コード、本戦ミラージ・バットとモノリス・コードだ。九校戦は終盤戦を迎えさらなる活気が出てくるはずだ。しかしこれだけで不可解な出来事は終わらなかった。それを止める術も手段が何も無いということだけが現状であり九校戦は更に歓喜に溢れながらも混乱が混ざりあっていく。




はい。九校戦新人戦4日目でした。というよりなんか四葉との対談のことが今話の中心にあったような気がしてならないです←

九校戦編はあと新人戦最終日、本戦2日間なので3話でその後に祝賀会+その後の話をやるので全部であと4話ですね

四葉真夜との会談の話は前編後編に分けるつもりです(途中変更する可能性あり)

前回の話の後書きにも書きましたが皆さんのオススメの曲とかあったら教えて欲しいです。活動報告の返信欄でもこの作品の感想欄でもいいので。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入りもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

前代未聞の出来事、波乱の新人戦の終わり

はい。九校戦新人戦最終日です。彩海奈の出番がもう終わってるから特にオリジナル要素を加えられなくなってる気がする←

なんかで出番作りますかって思ってたら祝賀会とかで出来るじゃんっていうのを思い出してまだ本戦2日間残ってるのに早く書きたくなりました←


九校戦新人戦最終日、今日は新人戦最終種目であるモノリス・コードが行われる。本来であれば昨日の内に予選は全て終了し今日は準決勝と決勝戦を行うだけだった。ただそれは昨日起きた不運な事故によって昨日一高は本来4試合行う予定が2試合しか行えなかったため、午前に一高の予選残り2試合が行われ、午後に準決勝第1戦、準決勝第2戦、3位決定戦、決勝戦を行うという試合運びになった。

 

私達はエイミィとスバルと達也が中心のグループのみんなと共に達也、幹比古、レオ君の試合を見ていた。

 

「達也さん達大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫よお兄様なら。誰が相手だろうと負けることは無いわ」

 

「あーあ、あたしもこれに出たかたっな…」

 

「エリカちゃん……」

 

「エリカの言うことも少しわかるわよ。私もこれに出てみたいもの」

 

「え!?彩海奈これに出てみたいの?なんか意外かも」

 

「そんな意外かしら……」

 

「そりゃそうよ。私は兎も角彩海奈がモノリス・コードに出たいなんて聞いたら誰でも驚くわよ」

 

「それはそれでなんか複雑ね……」

 

「でもどうして出てみたいんでしょうか?」

 

「それは姉さんの影響かしらね。姉さんは今でこそ昔よりは良くはなってきているけどまだ虚弱体質だからこうやって普通に過ごしていけるということに感謝して動ける内は動きたいって思ってるのよ。ちなみに姉さんのことはオフレコでお願いね」

 

「そうなんですか……とてもお姉さん想いなんですね」

 

「そうね……それもそうなのかもね。そろそろ試合が始まりそうよ」

 

達也達はこの予選の残り2試合どちらも勝つつもりで戦っていた。どちらかに負けや両方とも負けでは少し体裁が悪いので両方勝つということでこの予選を戦っていた。フォーメーションは達也が前衛、幹比古が遊撃、レオが後衛として動いていた。

結果的に達也達は2連勝して準決勝進出を決めた。これが一番しがらみが少ないとはいえ他校からは注目を向けられていた。それは十師族の跡取りでもある一条将輝率いる三高モノリス・コードも例外ではなかった。

 

☆一条将輝side☆

 

俺達は今担当した選手が全員表彰台の上位を独占した怪物エンジニアである司波達也が出るモノリス・コードの試合を見ていた。そこで俺と共に見ていたジョージはその戦いぶりに驚きを隠せなかった。この試合である八高は森林での演習に力を入れている高校だが彼はそれ以上にこのフィールドを理解していた。さらに彼が発動した魔法にも驚きを隠せない。その魔法とは「術式解体(グラム・デモリッション)」。この世界でも使える術者は少ない魔法でそれを俺と同い年の少年が使ったことにはジョージも驚いていた。さらには司波達也と同様にメンバーに連ねている吉田幹比古、西城レオンハルトも気を抜けない存在だと俺達は気付かされた。現に緊急出場にも関わらずこのような結果を残したのだ、注目しないわけには行かない

 

「はぁ…それにしてもあいつは選手としてもあれだけ優秀なのか…それにしてもなんであいつが選手じゃなかったんだ」

 

「あぁ…不思議だけど試合を見てると納得したよ。「幻衝」と「術式解体」には驚かされたけど他にはそこまでの魔法じゃなかったんだ。おそらく彼はあまり強い魔法を使えないんじゃないかって思うんだ。もし決勝まで勝ち上がってきたとしてもフィールドが草原ステージなら9割9分僕らの勝ちだ」

 

ジョージはそう言ったが俺は何処か分からないところで不思議とモヤモヤとした思いがあった。今はこの思いが自分の中で何かは分からなかったが何処か不安が過ぎっていた。

 

☆一条将輝side終わり☆

 

一高の予選2試合が終わり私達は達也、幹比古、レオ君と合流して共に昼食をとっていた。その時はエリカが幹比古のことを弄りそれをレオ君が止めに入ると恒例(?)の「夫婦漫才」が始まり私達も何時もと同じような安心感に浸っていた。

時は流れ私達はこのモノリス・コードの優勝候補筆頭である第三高校の試合を見ていた。私とエイミィとスバルで観戦していた予選の試合とは異なる試合運びを進めていたが圧倒的とも言える戦力差で勝利を収めた。

 

「ねえ彩海奈、今の試合と昨日の予選の時と戦い方違ったけど何かあったのかな?」

 

「そうね…大方あちらは達也を意識してるんじゃないかしら。一条家の戦い方は中長距離からの先制飽和攻撃だけど今回は接近戦で戦っていた。そして達也はこれまでの試合で接近戦で勝利を収めている。だから「俺は接近戦も出来るぞ」という意味合いもあるんじゃないかしら」

 

「はぁ…また厄介なことになったな…それにしてもあれでは勝てるかもわからないな」

 

「そうだね。それに他の2人の戦い方も分からなかったし…」

 

「吉祥寺の得意魔法はわかるぞ?あいつは未だあいつしか見つけていないカーディナル・コード(基本コード)の加重系統のプラスコードでそれを利用した魔法から「不可視の弾丸」と推測出来る」

 

「まさか彼が「カーディナル・ジョージ」なのか…これは決勝戦は大変そうだね」

 

「あぁただ一条選手だけを気を付ければいいだけじゃないからな。他のもう1人もモノリス・コードに出るほどの選手だ。気は抜けないな」

 

こうして三高の準決勝を見終えると次は自分達の一高の準決勝のために達也、幹比古、レオ君は選手控え室に向かっていった。

 

この準決勝第2戦は渓谷ステージでの戦いで幹比古の精霊魔法により霧を発生させモノリス・コードでは珍しいキーコードの解析によっての勝利となった。私は精霊魔法に関しては無知に等しいがおそらく精霊魔法には精霊と視覚情報を同調する魔法があるのだろうと推測した。

 

その後アナウンスで1時間後に3位決定戦、そのさらに1時間後に優勝決定戦を行うとあった。私達は3位決定戦の間に色々と諸用を済ませてから決勝戦を見に行くことにした。そして決勝戦の開催ステージは草原ステージに決まった。この決定に対し喜ぶ者と落胆する者がいた。

 

「やったね将輝。これで僕らのモノリス・コード優勝は確定的だ」

 

「ああ、でもまだ優勝が決まったわけじゃないし、新人戦優勝を一高に攫われたんだ。せめてモノリス・コードくらいは取らないとな」

 

「これで逃げも隠れも出来なくなったな…それで司波策はあるのか?」

 

「ええもちろん。秘密兵器を用意してもらいましたし渓谷ステージや市街地ステージでないだけまだマシです」

 

「秘密兵器?達也くんそれどうしたの?」

 

「ええこれです(バサッ)。これには魔法陣が組み込まれていて魔法に対する効力を伸ばす作用もあります。もちろん大会委員のチェックは済ませてあるので問題はありません」

 

「そう…じゃあ頑張ってね。新人戦は優勝したしもうこれに勝つ必要はないけどでも勝ってね」

 

「は、はぁ………」

 

そして達也達は各々決勝戦に向けて準備運動をしていた。

 

ストレッチをしていた達也のところに深雪が姿を表した

 

「お兄様タオルをお持ちしました」

 

「ああ、ありがとう深雪」

 

「力も技も制限された状態で……制限した側の人間である私がこのようなことを申し上げるのは、筋違いであり、ご不快かもしれませんが……深雪はお兄様なら誰にも負けないと信じております」

 

そう言うと深雪は本部に戻っていった。その後ろ姿を達也は見ながら

 

「これは負けられないな……」

 

達也は『負けても仕方が無い』程度にやるつもりでいたが深雪にああ言われては何としてでも勝たなくてはと思いながら入念に体を動かしていった。

 

時は流れ3位決定戦も終わり新人戦モノリス・コードは優勝決定戦を残すのみとなった。対戦校は『十師族』が一家、一条家の跡取りである一条将輝を筆頭にカーディナル・コードを発見した吉祥寺真紅郎ともう1人の第三高校。対するは途中メンバー全員変更になり一時は棄権かと思われたがチーム変更から負け無しの3連勝で決勝戦にまで駒を進めた第一高校の試合だ。これまで両校共に多種多様な魔法を繰り広げながらこの決勝戦で相見えるため観客席にいる人達は今か今かとこの両校の試合が始まるのを楽しみにしていた。

 

そして両校共にステージに姿を表した時に観客と第三高校のチームは困惑していた。それは達也を除いた2人がローブを被っていたからだ。これを着ていた2人はと言うと

 

「くっそーぜってーあの女笑ってやがるんだろうな……」(この時観客席で見ていたエリカは「あはははは」と大声で笑っていて美月がそれを抑えようとしていた)

 

「仕方ないよ…それで達也どうして君は着ないんだい?」

 

「前衛の俺がそんなもの着ると思うか?」

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

パッ パシュン キィィィン ドガン

 

わあぁぁぁあぁぁぁぁ

 

達也と一条将輝による魔法の攻防戦に観客席は大興奮していた。また一高幹部も本部のテントでこの攻防戦を見ながら彼は本当に二科生なのかという意見が相次いでいた。

 

「彼は本当に二科生なの…」

 

「まさか一条君とあんなに打ち合えるなんて…それに「術式解体」もあんなに使って切れないなんてどんだけの想子量なの…」

 

そして達也と将輝が近づいてくると吉祥寺はこれに乗じて一高の陣地に入り込んで行った。そこにはレオ君が構えていて吉祥寺がインビジブルブリットを放つとレオ君はローブに硬化魔法をかけそれを盾にして躱した。

 

「うぉぉぉぉー「ドガアン」グワアァァァァ」

 

「将輝!」

 

一条君が吉祥寺君の方に気を取られていると達也がそれを見逃さず一条将輝に近寄ってきた。動揺した一条将輝はレギュレーション違反にあたるほどの発動数を放ってしまった。

 

「(しまった…これはレギュレーション違反に該当する威力のある魔法だ。しかも16連発…もしかしなくても…)」

 

「(!?これだけの数は「術式解体」だけじゃ間に合わない。「術式霧散(グラムディスパージョン)」を使うか?いやこのままだ行く)」

 

達也は一気に無効化出来る「術式霧散」ではなく「術式解体」でこの魔法を乗り切ろうしていたが14発を無効化した時にはもう残りの2発をもろに受けてしまった。観客、一条将輝、吉祥寺真紅郎、吉田幹比古はこのことに困惑していた。

 

しかし達也は彼らの予想外にも立ち上がってみせた。そして一条将輝の耳の横でバチンと鳴らすと一条将輝は戦闘不能になってしまった。これには吉祥寺真紅郎が一番の反応を示していた。

 

「まさか、将輝が…「吉祥寺!!前だ!」!?」

 

前を見ているとさっきまで倒れていた幹比古の姿があった。

 

「(達也、ほんとに一条選手を倒したんだね。なら僕はせめてカーディナル・ジョージを倒してみせる!)」

 

吉祥寺真紅郎は幹比古の古式魔法と精霊魔法によって一条将輝同様に戦闘不能に追い込まれてしまった。

 

「この野郎!!」

 

第三高校のもう1人のメンバーが幹比古に向かって魔法を放った。

 

「(ははっもう僕にはあれを跳ね返せるだけの力は残ってない。あーあせっかく倒したっていうのにな…)」

 

「オオリャアーーー」

 

「な、何!?ドカン…グワアァァァァ」

 

ブーーーー(試合終了の合図)

 

「おい、大丈夫か?幹比古」

 

「え、うん大丈夫…だよ?それにしてもレオ、君一条選手の魔法直接受けてたけど大丈夫なの?」

 

「うん?あぁ全然大丈夫だ。昔大型二輪に跳ねられた時と同じくらいだったけど今回は大丈夫だ。それにしてもすごいな達也」

 

「うん…なんて言ったってあの一条選手に勝っちゃったんだからね」

 

「おーい、達也ー大丈夫か?」

 

「うん?あぁすまん鼓膜が破れていてなもう1回言ってくれないか?」

 

「いや大丈夫かって」

 

「あぁ鼓膜が破れているのと出血してくらいだな」

 

「え?それだけ?」

 

「そうだが…どうかしたか幹比古?」

 

「いや、何でもないよ…(なんでこんな平然としているんだこの2人は…)」

 

こうして一高と三高の選手が引き上げてくると観客席から拍手が鳴り響いていた。その中心には深雪が今にもフェンスを乗り越えてこちらにやってきそうな顔で泣いていた。当然兄がもしかしたら死んでいたかもしれなかったのだ。それが無事生還してきたのだ。涙は抑えきれない。そんなことがありながら達也達はみな選手控え室及び医療室に歩みを進めた。その間も一高と三高のチームそれぞれに惜しみない拍手が送られていた。

 

時は経ち優勝決定戦から早数時間が経ったある時とある会議が開かれていた。会議の参加者は十師族の現当主が一同であり緊急に開かれた。(九校戦に行っている三矢、四葉、七草はホテルのV.I.P.エリアにある一室ずつから参加していた)

議題は一条将輝が一般の魔法師に倒されたことであった。色んな見解が重ねられ議論しあい出た結論は本戦モノリス・コードに出る十文字克人に十師族としての威信を見せるということで終わりを迎えた。

九校戦新人戦最終日、今年のこの九校戦で史上最大な番狂わせが起きて、日本の魔法界に不気味な風を吹かせる結果になった。そしてこれをきっかけに今まで鳴りをひそめていた犯罪シンジケートが牙を向き始める。誰にも予想がつかない結果になるのをこの時はまだ誰も知らない。その時は一刻一刻ゆっくりと近づいていた。

 

☆一高VS三高の決勝戦の時のV.I.P.エリア☆

 

九校戦新人戦最終日、新人戦の大トリを飾るのは男子の花形競技であるモノリス・コードだ。今年のモノリス・コードは不可解な事故が起きてから色々なことが起こったため(良い意味も悪い意味でも)変更に変更を重ねていた。それも乗り切り遂に決勝戦を迎えていた。

 

このV.I.P.エリアには日本の魔法師界の長老であり『老師』九島烈と世界で13人しかいない国家公認戦略級魔法師である五輪 澪がこのモノリス・コードの決勝戦を観戦していた。

 

「ふむ澪はどうしてこの試合を見に来たんだ?」

 

「ちょっと気になる子を見つけましてそしたら彼が選手として出てくるっていうので」

 

「なるほど…さすがは戦略級魔法師と言ったところかな」

 

「あらやだ『老師』。煽てても何もありませんからね」

 

「はははは、気にするなただの老人の暇つぶしだよ」

 

「全く…それで彼はどういう風に見えてます?」

 

「そうだな……彼はこのまま成長したら一条将輝と並んで国防の最前線に立つことになりそうな人材だな」

 

「そうですか…ではその言葉も期待しながら今日の試合を見ましょうか」

 

時は流れ決勝戦が終わり一高は優勝を果たした。

 

「……さすがは『老師』が目を付けただけありますね……それにしても彼のあの異常な速さは何でしょう?そしてあの攻撃をくらったらまともに動けないはずなのに…」

 

「全くもってこの老人の血を高ぶらせてくれるよ彼は。ではな澪何時かまた会おう」

 

ガチャリ スタスタ

 

「(それにしてもあの速さは速すぎる……もしかしたら何処かの家の刺客かしら…ちょっと彼のことを探ってみましょう)」

 

こうしてこの試合を見に来ていた2人の魔法師界の異なる頂点に立っている2人はお互いに牽制し合う感じこの決勝戦を見ていた。

 

☆一高VS三高の決勝戦の時のV.I.P.エリア終わり☆





はい。いかがでしたか?正直ここら辺はもう原作のを個人的解釈含めながらになりますね少なともあと2話くらいは。

前書きにも書いたけど早く祝賀会書きたい←

さてこんな感じで後書きに何を書けばいいかもわからず今後の展開を少しだけって感じなんですけどどうなんですかね?これを読んでる皆さんは次回の話のちょっとだけ入れるっていうのはどうなんでしょうか?是非とも感想欄で意見お待ちしております。

今回もご読了ありがとうございました。これを書いてる時点でお気に入り登録者数があと数人で100人になりそうです。お気に入り登録してる人はこれからもまだしてないよって方は是非とも登録お願いします。感想、評価、お気に入り登録是非お願いします!!また次回の話でお目にかかれればと思います。

また作者の活動報告欄にもアンケートもどきという個人的欲求を満たすために行っております。是非皆さんからもコメントよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本戦再開、不穏な物陰と驚異

はい。九校戦本戦4日目です。そして今年度初の投稿になります。

さすがに年度末と年度始めは忙しいですね…

そんな中でもこうやって最低でも週1〜2程度にはあげていきたいと思ってます(フラグ)

今年度もこの作品をよろしくお願いします(まだ投稿初めてから1ヶ月しか経ってない)


昨日のモノリス・コードの余韻が覚めきれない中九校戦は本戦が再開された。一高の三連覇の夢もあと2日間で成し遂げれる成し遂げられないかが決まる。そんな中達也、深雪、彩海奈を始めとした一高の中心メンバー達はこれから起きることに何か不穏な空気を感じていた。

 

「九校戦本戦が再開されたとはいえ何かが起きそうな空模様だな…」

 

「そうね…私達の三連覇があと少しだっていうのに何処か不気味ね…」

 

「大丈夫でしょうか?お兄様」

 

「心配するな。お前に何があっても俺はお前を守ってみせるよ」

 

「達也、前々から思っていたけど貴方って違った意味で苦労してそうね…」

 

「なんだ…その言い方は…まるで見覚えがあるような言い方だが」

 

「実際そういうことがあるからなのよ」

 

「え?彩海奈ちゃんも同じようなことあるの?」

 

「はい…って真由美義姉さんはご存知なのでは?」

 

「なっ/////って私は知らないわよ」

 

「知らないなら良いことです、今後未来永劫そんなこと知らなくていいです」

 

「え?え?どういうこと!?」

 

「まさかとは思うけど彩海奈は私とお兄様のことをそんな風に見てたのかしら?」ニコニコ

 

「ま、まさかね…あはは」

 

「はぁ…とりあえず今日は何か起こるかもしれないということを思って行動しないとな…」

 

私はエイミィとスバルそしてここ数日共に行動しているみんなと共にミラージ・バット本戦の予選会場へと足を運んだ。

 

「一高の総合優勝が決まるのはこの本戦ミラージ・バットで深雪か小早川先輩が決勝戦に進めば決まるんだっけ?」

 

「ええ、そうよ。小早川先輩も3年生で渡辺先輩とも仲がいいみたいだから余計に張り切ってるんじゃないかしら」

 

「そうなんだ。ま、私はあの女が優勝を決める瞬間にいなくて嬉しいわ」

 

「エリカちゃん…」

 

「お前もえげつないな…」

 

「はいはい、そろそろ始まるわよ」

 

どうやら話している間に小早川先輩が入っているグループが台に立ったみたいだ。

 

ブーーーー(試合開始の合図)

 

ダッ パスン

 

「やったわ小早川先輩のポイントよ」

 

だがこの後誰もが驚くことになった。

 

小早川先輩が次の光球へ向かう途中私の目には何かが弾けるようなものが"視えた"。

 

キャアァァァァァァ

 

小早川先輩は「跳躍」で飛んでいた上空から台へと真っ逆さまに落ちていった。小早川先輩はそのままぶつかることは無くそばにいた大会スタッフの魔法によりゆっくりと下ろされた

 

「吉田君、達也さんに電話お願い出来ますか?」

 

「あ、あぁ」タッタッタッ

 

「あぁ、僕だけど残念ながら僕にはわからなかったけど柴田さんがなにか気づいたそうなんだ」

 

「達也さん、美月です。えっと小早川先輩がCADを操作してる時精霊がパチッて弾けるように見えました」

 

「は、はい。ありがとうございます。い、いえそんなはい、はいでは」

 

「お手柄よ、美月」

 

「そうでしょうか?」

 

「ええ、これで達也がこのことについての後処理はやってくれるでしょう。私も誰がこのことかわかったしね」

 

「え、ほんとに?誰って聞いても教えてくれないか」

 

「そうね…国防軍のメンツ丸潰れだし何しろ相手の組織が組織だしね」

 

「そっかぁ…まぁでもここから安心して見られるならそれはそれで良かったわね」

 

☆一方その頃達也は☆

 

俺は美月の証言を聞き、深雪のCADチェックへとやってきていた。おそらくここが今までの渡辺先輩の時の七高の生徒、今回の小早川先輩、おそらくモノリス・コードでの一条将輝のあのオーバーアタックもなされてきた現場だろう。

 

深雪のCADをチェック台におき検査にかけた時"視た"時に自分が組み上げたシステム領域に"何か"が紛れ込んだその瞬間

 

「ぐわっ」

 

「おい、何をいれた?」

 

「…………」

 

「そうか、何も話さいか、じゃあ……「何事かね」」

 

「九島閣下」

 

「それで何があった?順に説明したまえ」

 

「はっ。当校の選手が使うCADをこのチェック機に置きこのCADの中に何かが紛れ込んだのでその説明と真相を探ろうとしました」

 

「ふむ、どれどれ……確かにこのCADには異物が紛れ込んでおる。これは大戦中広東軍が用いた『電子金蚕』だ。さて君は何処でこの術式を手に入れたのかな?」

 

「ヒッヒイイイイ」

 

「言い訳は無用。さて大会委員長これだけの不祥事見抜けなかったのは他でもない。あなたがたのせいでもある。それでそこの君確か司波達也君と言ったかな。昨日のモノリス・コード見事だった。それで今回のことだが再検査の必要は無いから予備のCADを使いなさい。それでいいかな委員長?」

 

九島閣下にそう問われた委員長は首を縦に振っていた。

 

「このような若輩者が閣下に名を覚えられるとは光栄です」

 

「うむ。今度はゆっくり君と話がしたいな」

 

「はっ。そのような時がありましたら是非に」

 

「うむ。それではその時を楽しみにしていようか」

 

そう言うと閣下は部下と大会委員長と共にこの場を去っていった。この場は未だに静寂が場を覆っているが俺は予備のCADを準備するためこの場を立ち去り一高本部へと急いだ。

 

☆達也side終わり☆

 

先程の騒動から本部に戻ると七草先輩や渡辺先輩に弄られながらも深雪のCADを用意してから会場に向かった。

 

私達は小早川先輩が落ちたあともミラージ・バットの予選を見ていた。そして次はいよいよこのミラージ・バットの出場者の中で最も注目を集めている深雪の登場だ。新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクでの高等魔法の使用さらにはその容姿も相まって人気を集めていた。

 

試合が始まり今現在第一ピリオドを終えて深雪は予選の中で2位となっている。私達は少しばかりの不安を募らせていた。だがそんな思いは次の第二ピリオドを見終えた時にはもう既にこの本戦ミラージ・バットで優勝すると確信するまでになっていた。

 

「ねえ深雪大丈夫かな?」

 

「あれ?深雪のCAD変わってない?」

 

「深雪あれを使うのね。あれは深雪にとって決勝戦まで温存させているはずだったんだけど使うのね…ここにいる人全員が驚くわよ」

 

「え?それってまさか……」

 

ここで話していると第二ピリオドが始まった。私達は深雪の方に目を向けた。そこにはもう深雪はおらず空中に跳躍していて最初のポイントを取った。普通ここでは1回台に戻るのだが深雪はそのまま次の光球に向かって飛んで行った。そしてここで全員が気がついた。今までつい最近まで世界中の誰もが開発に成功できなかった魔法が使われていたことが。

 

「「「「「「「「飛行魔法っ!?」」」」」」」」

 

「まさかあのトーラス・シルバーの!?あれは1ヶ月前に起動式が公開されたばかりのやつだぞ」

「まさか…でもあれは飛行魔法だ…」

 

「まさか深雪が使ったのって飛行魔法…さすがは深雪ね。私は使ったことないからわからないけど九校戦のCADであれだけのことを出来るのはすごいわ」

 

「すごいね深雪はでもだからこそ私は深雪に勝ってみせたい」

 

「そうね。私も今年は深雪と被らなかったけど来年こそ出てくるであろう本戦アイス・ピラーズ・ブレイクで深雪に勝ちたい」

 

「わ、私も来年ミラージ・バットでは深雪、バトル・ボードでは彩海奈に勝ちたい」

 

「おーおー盛り上がってるな。俺達も来年は本戦モノリス・コードで優勝してみたいな」

 

「あんたなんか出れるわけないでしょ。今回だってメンバー変更で出たのに更に服部先輩とかもいるんだからね」

 

「あんだと?やってみなきゃわかんねえだろ!?」

 

「2人とも落ち着いて!」

「エリカちゃん落ち着いて!」

 

この光景も何だが見慣れてきたようになってきた。話してるうちに深雪のミラージ・バットの試合は終わり、深雪は圧倒的な内容でこの試合を制し決勝戦へと駒を進めた。この時点で第一高校の総合優勝が確定して一高の三連覇が成し遂げられた。

 

結果的に深雪はこのミラージ・バットで見事優勝を果たした。深雪の優勝はこの九校戦の中で今までで一番大々的に取り上げられた。それは昨日の新人戦モノリス・コードでのジャイアントキリングよりも注目されていた。

 

そして当日の夜一高内だけで簡単な祝賀会が行われた。本当の祝賀会は後夜祭の後に行われるがそれよりも先に行った。そこには生徒会のメンバーがいたがいつも深雪と共にいる達也の姿が見当たらなかった。

 

「そういえば深雪。いつも一緒にいるお兄様はどうしたの?」

 

「お兄様ならさすがに疲れたってお部屋でおやすみになられているわ。ところで彩海奈貴女本当に実験台になってくれるのかしら」

 

「まぁそうよね…さすがに昨日のモノリス・コードと新人戦での女子のエンジニアで今日もずっと深雪に付きっきりだもの。それと私はそんな氷像になる気は無いわよ」

 

「それもそうね。貴女なら氷像になる前に壊してしまいそうだもの」

 

「ねえ彩海奈ちゃん。今更って感じもあるんだけどバトル・ボードでのあの魔法気になるんだけど教えてくれないかな?ほらお義姉さんになるかもしれないんだし」

 

「それは私も気になるな。五輪の魔法もお前の恋愛事情も」

 

「そうですね私も真由美さんの恋愛事情と彩海奈さんの魔法が気になります」

 

「市原、お前も知らなかったのか。五輪が使っていた魔法を」

 

「ええ、大まかなことだけは聞いていましたがどういう仕組みなのかまでは」

 

「あまり他人の魔法式を探るのはマナー違反ですが少しだけならいいですか…と言っても市原先輩に説明したことに少し加えるだけですがねさすがに根幹部分までは」

 

「ええ。彩海奈ちゃんの言う通りだもの。それと摩利にリンちゃんでも私の恋愛事情については一切話さないんだからね」

 

「それでは……カクカクシカジカ……という感じになってます。これ以上はさすがに」

 

「あぁこれだけでもすごいものだがな」

 

「ええ、さすがは五輪家ってところね私達でもこんなことはちょっとやそっとじゃ出来ないもの」

 

こうして私のバトル・ボードで使った魔法と一高の総合優勝のお祝いを兼ねた祝賀会はお開きになった。終わりを迎え部屋へ戻っていくと私の端末が震えた。差出人は芽愛と弥海砂からでどうやら今回の色々な事故を起こしたと思われる無頭竜の西日本支部を壊滅したという連絡が入った。この時私はふと疑問に思った。何故東日本支部ではなく西日本支部だったのか、それは聞いても教えてはくれないと思ったため私は端末を閉じた。

 

 

 

 

これまで色々な出来事や一高同士での対決や大会レコード同士での決着や緊急事態の中での出場からの優勝や新たな魔法が新たに歴史に刻まれた九校戦も残すは明日の最終日の本戦モノリス・コードを残すのみとなった。





はい。今回はここまでで次話が本戦モノリス・コードと後夜祭+祝賀会をやりたいと思います。

あと1週間後には新巻の追跡編(上)が発売ですね!個人的にすごい楽しみです。水波がパラサイトになってしまうのかそしてリーナ・文弥、亜夜子はUSNAからの刺客に対して対抗出来るのかってこんなに長くても仕方がないのでここら辺にしておきます。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録お願いします。そして誤字脱字もありましたらご報告頂けるとありがたいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九校戦の終わりそして十師族としての誇り

は、。このお話で九校戦は終わりを迎えます。長かったような短かかったようなそんな感じがしてます。それでも九校戦の本編としての話は終わりです。

まぁ最終日と言ったらあの人が大活躍です


九校戦最終日である今日は本戦モノリス・コードの準決勝・決勝戦が行われる。本戦は新人戦と違い途中で何事も無かったため午前中に準決勝、午後に決勝戦のタイムスケジュールで予定通り行われた。

 

午前中私は私が寝た後に送られてきた姉さんからのメッセージに

 

「午前中、V.I.P.ルームで話しておきたいことがある」

 

と書いてあったため同部屋のエイミィに声をかけてからV.I.P.ルームへと向かった。毎度の如くホテルの人へ声をかけるのだが最早顔馴染みのような感じで対応してくれた。

 

V.I.P.エリアへ着くとこれも毎度の如くボディーチェックを受けてからエリアの中へと入ると前に来たときより警備の警戒度が飛躍的に高くなっていたことに疑問を抱きつつも姉さんが居る部屋へと歩みを進めた。そして部屋へ着くと今回は姉さんが私に抱きついてくることは無く芽愛さんと弥海砂さんがドアを開けてくれて中へと入っていった。

 

「久しぶりではないけど久しぶりね彩海奈」

 

「そうね…それで今日は何でここに私を呼び出したの?」

 

「それはね2つあるんだけど1つ目はまた東京に戻ったら離れ離れになっちゃうじゃない?だから最終日くらいは一緒に居たいと思ったのと2つ目は今度彩海奈ちゃん四葉家当主の四葉真夜さんと会談というかお話するじゃない?そのことに関して昨日の夜私のところに四葉真夜さん本人が知らせに来たからそれについても話しておこうと思って」

 

「四葉家の御当主が直々に姉さんのところにやってきたの?」

 

「ええ、私も何故って思ったけど真夜さんはこう仰っていたわ」

 

☆昨日の夜☆

 

私は明日の夜この軍のホテルを後にするため身の回りの整理を芽愛、弥海砂と共に行っていたが時が経つと来客を知らせるベルが鳴った。私達は誰だろうと思いつつ弥海砂がその来客を対処していると戻ってきて

 

「澪様、四葉家の御当主様からお話があるようなのですが如何致しましょうか?」

 

「四葉真夜さんが?……分かったわ。少しお時間を頂いて。今この場を見せる訳には行かないし四葉真夜さんに伝える役目もあるでしょうし」

 

「かしこまりました。ですが澪様1つだけ間違いです。確かに四葉真夜さんの伝言役はいますが四葉真夜さん本人もご一緒に来ています」

 

「え?だったら少しの間頼めるかしら。私と芽愛でこの場を片付けるからそれまで」

 

「かしこまりました。出来るだけ早くお願い致します」

 

「ごめんなさいね。じゃあやりましょうか」

 

澪と芽愛が部屋の片付け、弥海砂が四葉真夜とその伝言役の相手をし始めて数分後用意が出来たため四葉真夜とその伝言役を部屋に迎え入れた。

 

「初めまして、と言った方がよろしいでしょうか?私自身は何度かお見かけしたことはあるのですが…改めて四葉家当主の四葉真夜と言います」

 

「私は真夜様の執事の葉山と申します。以後お見知りおきを」

 

「私は五輪家の長女で五輪 澪と言います。こちらが如月 芽愛と如月 弥海砂と言います。それで四葉家の御当主様が今回どのような用件で?」

 

「先日私が貴女の妹の五輪 彩海奈さんにお話し合いを申し込んだのは知っていますよね?それを踏まえての条件の解答を持ってきたのでやって来ました」

 

「何故御当主様が直々にしかも私のところにやってきたのでしょうか?」

 

「それは一度貴女と話してみたかったっていうのもありますけど私達が明日の夜には帰るのでお伝えするのが困難になるので」

 

「そうでしたか…」

 

「それでお返事としては概ね了承で日にちは8月15日に京都にある魔法協会本部でやるということで。このことは私達と貴女達の中でのことということでお願い出来るかしら」

 

「ええ、分かりました。このことに関しては私とこの2人の他勇海、『老師』だけにはお伝えしてもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、先生には私からもお伝えしておきます。それでは私はこの辺で貴重なお時間をいただきありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそありがとうございました」

 

そうして四葉真夜とその執事の葉山は部屋を後にした。

 

☆昨日の夜終わり☆

 

「そうだったのね…芽愛さん8月15日私と一緒に居ていただけませんか?」

 

「はい。分かりました彩海奈様」

 

「弥海砂はこのことに関して外に情報が漏れないように注意してくれないかしら?ただでさえあまり情報がない四葉が五輪に接触したなんて七草の当主が近づいてくるに違いないから」

 

「かしこまりました」

 

「それじゃあ私はこれで失礼するわね姉さん」

 

「ええ、私は今日の夜にはここを出ていくからまた五輪本邸で会いましょう」

 

「そうね。じゃあまたね姉さん」

 

私は姉さんと別れV.I.P.エリアを出てからエイミィ達と合流すべくモノリス・コードの観戦会場へと向かった。

幸い十文字先輩達の出番の準決勝第2試合には間に合い観戦していたがまるで準決勝までの新人戦モノリス・コードとは正反対な試合展開になっていた。新人戦は三高の一条君が1人で攻めていっていたけれど十文字先輩達はチームとしての完成度が高いということを示した戦いを展開していた。

 

この後行われる決勝戦を前に私は七草会長に一高に与えられていたミーティングルームに来るようにと言われた。私はこのことをエイミィや深雪達に伝えると一高のミーティングルームへと急いだ。

 

ミーティングルームに着くとそこには七草先輩の他に十文字先輩がそこにはいた。

 

「ごめんなさいね、彩海奈ちゃん、呼びつけたりして」

 

「いえ、それは構わないのですがどのような用件でしょうか?」

 

「師族会議から通達が来たわ。例えお遊びであっても十師族としての力に疑いを残すような結果を放置しておく事は許されない、だそうよ」

 

「そんな通達が来ていたとは…でも師族会議としては放置出来ないんでしょうね」

 

「そんなところね、達也君が傍流でも十師族の血を引いているならこんなことにはならなかったはずなのに…」

 

「つまりそれは力の誇示を示せばいいのだな?任せておけ」

 

「ごめんなさいね、十文字君」

 

「なに、構わないさ。それと五輪お前は来年、再来年もあるのだから頑張れよ。特に司波は一番の難敵だ」

 

「はい、ありがとうございます。確かに深雪がこの学年の中では一番の難敵ですが負けるつもりはありません」

 

「ふっ、それならいい。それじゃ俺は決勝戦の準備をして来る」

 

「ええ、お願いね十文字君」

ガチャリ スタスタ

「それで義姉さんは達也のことが好きなんですか?」

 

「えっ/////ま、まさかそんなわけないじゃない。達也君はそう弟みたいな感じよ」

 

(この人はポーカーフェイスということを知らないのだろうか…)

 

「それじゃあ私も本部に戻るわね。彩海奈ちゃんはどうするの?」

 

「私はこれから深雪や達也達と合流して観客席で見ます」

 

「そう、それじゃあまた後夜祭でね。おそらく軍の関係者とかいっぱい来ると思うから気をつけてね」

 

「はい、ではまた後ほど」

 

私は一高のミーティングルームを後にするとエイミィ達と合流しモノリス・コード決勝戦を見ていた。そこには先程話したことが具現化されているようだった。十文字先輩が相手の陣地内に「ファランクス」で行進していっていた。深雪や達也、エイミィを始めたとした面々も観客席の皆もこの光景を見ていた。そして遂に3人目の相手選手が戦闘不能になり一高の優勝が決まった。そして十文字先輩はこぶしを上にあげこれこそが十師族ということを表していた。

 

時は流れ夕方に表彰式が行われた。私と深雪は新人戦と本戦で優勝した(アイス・ピラーズ・ブレイクとバトル・ボード、アイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バット)ため移動が大変だったため忙しかったが何事もなく進んだためホッとした。最後に十文字先輩に深紅の優勝旗が手渡されてた時が私は今まで一番輝いているように見えた。

 

その日の夜ホテルの宴会場では九校戦の後夜祭と一高だけで行われる優勝祝賀会が予定されていた。今の時間は来賓の方や軍の関係者、研究所の関係者の方々が会場の中にいる。七草会長や十文字先輩、一条君はもちろん私や深雪、達也の周りにもいっぱいの人が群がっていた。私のところには軍の方々が揃いも揃ってずらずらやってきた。正直所属等を言われても全く分からなかったがおそらく姉さんもしくは五輪家のコネクションを持とうと考えていたのであろう。軍の関係者の方々と思われる方々から離れると私のところに研究所の方々がやってきたFLTやローゼン、マクシミリアン等からもやってきた。話をしていると時間になったのか来賓、関係者の方々が退場して高校生だけの後夜祭となった。

 

私の周りには他校の男子や女子がいたが服部先輩が隣にいてくれたため大事にならずに済んでいた。そしてダンスパーティーが始まった。私はこういうダンスパーティーに出たことがないししたこともないため如何にこの時間を過ごそうか悩んでいた。そして中盤に差し掛かる頃に私のところに1人の男性がやってきた。

 

「えーっと…初めまして第三高校1年の一条将輝と言います。五輪 彩海奈さんですよね?」

 

「え、ええ。こちらこそ初めまして五輪 彩海奈と言います。それで何か御用でしょうか?」

 

「えっえっとあの、踊ってくれませんか?」

 

「わ、分かりました。あまりしたことないから下手かもしれませんがよろしくお願いします」

 

私と一条君は中央のエリアへ行き踊り始めた。なかなかリズムをとるのが難しく私が四苦八苦していると一条君から

 

「あの、もしかして俺と昔会ったことあります?」

 

「え?いえ、私はそんなに人前に出なかったので一条さんとは会った記憶は無いですけど私が忘れてるだけですかね」

 

「そ、それは失礼しました。その昔小さい頃に女性に憧れていたのでもしかしたらって思ったので」

 

「それほど魅力的な女性だったんですね。ちょっと羨ましく思います。それでも深雪に惚れるっていうのは分かりますよ。私も最初見た時はこんなに綺麗な女性がいるんだって思いましたから」

 

「なっ/////」

 

「それでは曲も終わりを迎えたのでありがとうございました」

 

「い、いえそのダンス上手でしたよ」

 

「お褒めいただきありがとうございます。ではまた何処かで」

 

私は一条君のダンスを終えると部屋の窓際へ移動して他の人達の踊りを見ていると私に声を掛けてきた人がいた。

 

「ちょっと横失礼するね」

 

「えっと、あの誰ですか?」

 

「ふふっ午前中ぶりだね、彩海奈ちゃん」

 

「え、もしかして姉さん?何でこんな所にいるのよ」コソコソ

 

「せいかーい。よく気づいたね」

 

「それはもう本家で何度となくこれやられてきたんだからもう覚えたわよ」

 

「そっか…でも彩海奈ちゃん楽しそうで良かったよ。私がまだあっちにいた時はずっと私と一緒にいたからね」

 

「そ、それはもう小さい時だからいいでしょう」

 

「そうだね。でもこれだけは絶対に覚えてて。私は絶対に彩海奈ちゃんのそばにいるから」

 

「うん。ありがとう姉さん。それで何時までもここに居て大丈夫なの?また弥海砂さんに無理させてるんじゃないの?」

 

「うっ…そうだった。今度こそまたね彩海奈ちゃん」

 

「うん。またね姉さん」

 

こうして姉さんが来たのは驚きだったが私は他の人にこの会話が聞かれていないかヒヤヒヤしていた。そして会場の方を見ていると十文字先輩と達也が会場を出て行くのが見えた。大方十師族の仲間入りしろっと言いそうだ。十文字先輩は十師族に対して誇りを持っているからこそ彼にその仲間内になれって言いそうだ。

 

そんな中私は誰とも踊ることは無くダンスパーティーもとい後夜祭は終わっていった。この後は一高の九校戦メンバーだけでの優勝祝賀会が行われる。祝賀会と言っても九校戦お疲れ様っていう意味合いがあるらしい。

 

「みんなー今年は色々な事があったけどみんなのお陰で優勝出来ました。私達3年生はこれで本当の優勝を勝ち取ることが出来ました。2年生も1年生のみんなもこれからも九校戦頑張ってね!」

 

「それじゃあ九校戦3連覇と総合優勝を祝して」

 

「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」

 

ワイワイガヤガヤ ワイワイガヤガヤ

 

「お疲れ様彩海奈!」

 

「うんお疲れ様エイミィ」

 

「私この今年の九校戦に選手として出られて本当に嬉しかった。雫には負けちゃったけど来年は勝てるように頑張るからさまた来年もこの場所に来よう?」

 

「うん!私も深雪と勝負してみたいしね!」

 

「そうだね!私はアイス・ピラーズ・ブレイクは難しそうだからスピード・シューティングでは頑張ってみるよ」

 

「うん!私もエイミィがスピード・シューティングで勝てるようにサポートしていくね!」

 

こうして一高だけの祝賀会は日付けが変わる前まで続いていった。私とエイミィは部屋に戻ったら必要最低限のことをした後すぐに眠りについた。私も余程疲れていたんだろうってこの時は思った。今年の九校戦では色々なことがあったけれど私は本戦アイス・ピラーズ・ブレイク・新人戦バトル・ボード優勝と結果を残したからこそまた来年の九校戦でも同じような結果で終えられたらと思う。それじゃあおやすみなさい。

 

 

 

九校戦も無事終了しこれから私達の夏休みが始まる。私は既に予定がぎっしりだ。帰って翌々日には京都に行かなければならないしさらには五輪の本邸では久しぶりに父さん、母さんと久しぶりに会える。京都ではあの四葉家の当主の四葉真夜さんと会うことになっている。何が目的かは分からないけれど私としては父さん以外では初めて十師族の当主と会うことになっている。果たしてこの2人の話し合いが今後の十師族においてどんな関係をもたらすかは神のみぞ知っている。





如何でしたでしょうか?意外と魔法科の世界の夏休みってそんなに無い感じしません?だって8月の最初から2週間くらい九校戦ですし…(作者は長ければ長いほど嬉しいです。)

次回は四葉真夜とのお話し合いになります。またこの作品の中で書けなかったところも番外編(?)みたいな感じで出せればと思ってます

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。また誤字脱字がありましたら報告お願いします。また次回この作品の前書きと後書きでお会いしましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏休みはしっかり休みたい
夏の京都、久しぶりの再会と夜の女王の休日


はい。今回は九校戦終了から翌日の出来事ですね。今までは軍の施設でしたが今回から夏休み編までは普段アニメでも出てこない場所で自分も行った所がない地域とかが出てくるのでもしかしたら現実とは違うかもしれないのでそこは時が経ってから変わりましたよって思ってもらえるとありがたいです(無理やり感)


九校戦が終わって翌日、京都にある魔法協会本部での四葉真夜さんとのお話し合いを翌日に控えている私は芽愛さんと弥海砂さんと京都への準備を始めていた。

 

その準備も終わると私は京都へ向かうため自宅の近くからコミューターに乗り込み近くの駅に行きキャビネットに乗り込み一路京都へと向かった。京都までは2時間弱かかるため私と芽愛さんと弥海砂さんは4人乗りのキャビネットの中でこれからのことや九校戦の事などたくさんのことを話していると京都に着いた。

 

「さて、京都に着きましたが、まだホテルに行くには早いですしどうしましょうか?」

 

「ならばこの京都を巡りましょうか。彩海奈様は目立ちそうですが」

 

「そうね、折角京都に来たのだからそうしてもいいけど伝統派が煩く無いといいんだけど」

 

「そうですね。確かに九島と伝統派はちょっといざこざがありますからね。どうしましょう」

 

「彩海奈。九校戦以来じゃの」

 

「お爺様…もしかして私達のこと待ってたりしました?」

 

「いや、はは君達が真夜とのために京都に来るというからやってきただけだよ。それに私自身君のことについてよく知りたいって思うのもあるがな」

 

「私は特段何かあるわけじゃありませんよお爺様。それで私達に何か御用ですか?」

 

「なに、君達は今日来ても行くところが無かろう、だったら光宣にでも会ってやってくれ。君のことを覚えてるかはわからんがそれでもあまり同世代の友達というのはあまりおらんしの」

 

「それならば是非に。私も関東に出ていくまではあまり同世代の友達というのもいなかったですから光宣君に会えるのなら是非に」

 

「そうかそうか。それは良かったよ。じゃあ行こうか」

 

私達は2人でどうしようか悩んでいた時に突如表れた九島閣下のご配慮で急遽九島本邸にお邪魔することになった。

 

「それでどうして私達が今日京都にあの時間に行くことを知っていたんですか?」

 

「それは勇海殿に聞いた。どうやら君のお手伝いさんは優秀なようだね」

 

「まさかとは思いますけど弥海砂さんですか?」

 

「ははは、彼女もとても優秀だよ私のところに来て欲しいくらいにな」

 

「さすがに閣下でも弥海砂さんはあげられませんよ」

 

「わかっとる。彼女たちと澪は切っても切れない関係じゃしな」

 

こうやって話していると奈良にある九島本邸に辿り着いた。キャビネットから降りた私達は当主である真言さんに声をかけてから光宣君のお部屋にやってきた。

 

「失礼します。光宣様。烈様とお客様がやってきたのですがよろしいでしょうか?」

 

『え、お爺様!とお客様?入って大丈夫ですよ』

 

「失礼するぞ、光宣」

 

「「失礼します」」

 

「お爺様この方達は…」

 

「お前は昔あっているんだが紹介しよう。五輪家の次女で五輪 彩海奈とそのお手伝いさんだ」

 

「初めましてというより久しぶりかな。五輪 彩海奈です。よろしくね光宣君」

 

「初めまして。五輪家で働いている如月 芽愛と申します」

 

「は、初めまして。九島光宣と言います。すみません自分は昔会ったことを覚えていないので……」

 

「いえ、お気になさらずに。今日こうして会えたのも何かの縁だからこれからよろしくね」

 

「は、はい。ありがとうございます。それでどうして今日はこちらに?」

 

「それは少しお答え出来ないのですが、十師族としての用があるとだけ言っておきます」

 

「そ、それはごめんなさい。でもどうして私に会いに来たのでしょう?」

 

「それは儂から答えよう。彩海奈が京都に来ると勇海殿にお聞きしたからな。それで折角ならということでここに来てもらった。それにお前にも会わせたいと思っていたからな」

 

「そうでしたか。では何時頃まで此方には?」

 

「そうですね…あと2.3時間程は此方に滞在出来ると思います」

 

「なら、一緒に皆さんでお話しませんか?その五輪さんは九校戦でも大活躍でしたし。何より、僕は普段そんなに話し相手もいないもので」

 

「ふふっ良いわよ。それじゃ何から話そうかしら?」

 

「本当ですか!?なら九校戦ーーーーーー」

 

光宣君はそれから私がこの家を出ていくまでずっと喋っていた。さすがにそれが応えたのか私が帰る時になると少し疲れていたようにも見えたので眠ってしまい今度またいつかということで私と芽愛さんは九島本邸を後にして今日滞在する京都のホテルに向かった。

 

☆その頃四葉真夜はというと☆

 

「久しぶりね、京都も。やっぱりあの村もいいけどこうやって外の世界に触れるというのも良いわね」

 

四葉真夜の姿は彩海奈が九島本邸に訪れている時には既に京都のホテルにあった。真夜にとっては外出は滅多に無いことだが今月だけで既に2回目の外出だ。これを聞いていた黒羽亜夜子・文弥姉弟は如何にこの四葉真夜という存在が凄いかというかがわかった。

 

「御当主様。これからどうするつもりですか?」

 

「そうね。貴女達は明日の場所の下見にでも行ってくれないかしら?なんなら観光でもしてきていいから」

 

「かしこまりました。では行きましょうヤミちゃん」

 

「ふふっ仲睦まじいこと」

 

「うっ…ほら、もう行こうヨル姉さん」

 

「え、ええでは行ってきます御当主様」

 

「ええ、行ってらっしゃい」スタスタ

 

「よろしかったのですか奥様」

 

「ええ、いいのよ。あの子達も日々黒羽としての任務に追われていても根は子供なのだから休みも与えないとね」

 

「左様ですか……それで真夜様は五輪家の彩海奈嬢についてはどう思っているのでしょうか?」

 

「そうね。あの娘は深雪さんと同じくらいもしくはそれ以上の才能があるとは思っています。ただ達也さんと比べると九校戦で見た限りは劣ってしまう。ただそれならいいのだけれど五輪家は彼女に関して最低限の情報しか公表していないという点を見ると意図的に何かを隠しているんじゃないかって思うほどにね。あの七草の当主も今頃彼女のことについて調べているのでしょう」

 

「奥様は彩海奈嬢が戦略級魔法師だとお考えになられているのでしょうか?」

 

「もちろん考えてはいますけどまだ何も確証が無いわけですし戦略級魔法師とは言えないですけど彼女の姉の澪殿だって戦略級魔法師なわけですし無いとも考えられないですのよね」

 

「奥様これは私目の私的な意見ですのでお聞き流しても構いませんが私は彼女は戦略級魔法師であるかと思われます。九校戦の本戦アイス・ピラーズ・ブレイクで見せたあの魔法は紅林によると術者によってはあれ以上の威力を出せるかもしれないと出ておます故に彼女の実力を考えれば戦略級まで出せることは可能かと」

 

「葉山さんがそこまで仰るのに流すことは出来ません。少し探りを入れてみましょうか。それとあの件については何かわかりましたか?」

 

「いえ、奥様。黒羽の手から逃れられるとなると我々でも簡単にはわかりますまい。女性ということはその特徴からわかってはいますがまだ何者かまでは」

 

「そうですか。でもさすがに明日のことは知らないでしょうからじっくり調べてください」

 

「かしこまりました」

 

こう言うと葉山は真夜が滞在している部屋で真夜の紅茶のお代わりを注いでいた。

 

「うふふ、明日が楽しみだわ」

 

この言葉を聞いてもポーカーフェイスで内心も驚くことがないのは四葉の執事とメイドを合わせても葉山ただ1人だろう。何せ彼は四葉系譜の全てを知る四葉の生き字引であり主のプライベートまでに携わる執事中の執事だ。真夜は葉山のことを「細かい魔法に関しては私でも敵わない」と認めているほどだ。こうして真夜と葉山、黒羽姉弟は今日という日を過ごしていった。

 

☆その頃四葉真夜はというと終わり☆

 

九島本邸から京都へと戻ってきた私と芽愛さんと弥海砂さんは私達が泊まるホテルへと向かい着いた後は3人1部屋でも余るような部屋が私達の部屋になっていた。(もちろんここには澪の個人的な感情が入っている)私達はこの部屋に通されたと同時に誰がこの部屋にしたのか分かってしまいため息をついてしまった。

 

「それでは明日の段取りを確認しておきましょうか」

 

「そうですね。弥海砂さんお願い出来ますか?」

 

「はい。では朝10時にはここを出てそのまま魔法協会本部に入って四葉家当主の四葉真夜さんとのお話し合いからお昼を挟み15時までの予定になります。その後は私達はその足で東京へ戻るという予定になってます」

 

「では明日の朝には京都から帰るということで用意すればいいですかね」

 

「そうですね。四葉真夜様は分かりませんが私達はそういう予定になっています。明後日の午後には五輪本邸に向かわなければならないので用意だけはお願いします」

 

「え…またあの会が行われるの?」

 

「はい。特に今年は澪様がこの会の開催を強く希望したようです」

 

「あ、あのめんどくさい会がまた開かれるのね…芽愛さん、弥海砂さん"あれ"の用意お願い出来ますか?」

 

「もちろんこの会が開催されると決まった時から準備は始めているので抜かりはありません」

 

「それは本当にごめんなさい。うちの人達があの時だけあんなになるなんて…」

 

「いえいえ。最初はさすがに戸惑いましたが今では慣れましたので…」

 

「慣れるものではないですよあれは……」

 

私はこれからの予定を聞いた時明日の四葉真夜さんとのお話合いをも遥かに超えるであろう予定があると知った絶望感はすごかった。とにかく明日のことに集中しようと考え私は眠りについた。

 

 




いかがでしたでしょうか?次話で遂に真夜と彩海奈が対面します。

ついにあと2日ですね!新刊でどんな風になっていくのかそして公式サイトでリーナに似たって出てきたってことはあの娘は九島の血縁なのかすごい気になりますがそれまで待ちたいと思います。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字がありましたら報告もお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四葉と五輪、それぞれの興味

はい。四葉真夜とのお話し合い編はこれで終わりになります。

遂に追跡編前編発売されましたね!結構待ってたので楽しみで仕方ないです。



8月15日、今日は一世紀と50年前に第二次世界大戦が終戦した日でありこの日本では祝日として健在していた。そんな中京都にある魔法協会本部では慌ただしく職員が動いていた。彼らは一体何の為にこんなに忙しくしているかの理由は知らない。ただわかっているのはこの国の魔法師界における超重要人物がやってくるということだけだ。

 

午前10時を少し過ぎた頃魔法協会本部の前に1台の黒塗りの車が横付けされた。その中から出てきたのは四葉家現当主四葉真夜。彼女から放たれる雰囲気はまるで誰もかもが圧倒されるような感じであった。彼女の後ろには執事と何とも奇妙な2人の少女が付き添いながら建物の中へと入っていった。彼女たちが建物に入ってから数分後にまた1台横付けされた。その中には先日行われた九校戦において1年生ながら本戦アイス・ピラーズ・ブレイクで優勝さらには新人戦バトル・ボードでは当時のレコードタイムを更新して優勝し一高の総合優勝3連覇に大きく貢献した五輪 彩海奈とその後ろには彼女の家の従者と思わしき人(芽愛)が建物の中へと入っていった。魔法協会本部に勤めている職員達は思わぬ来客に戸惑いながら与えられた仕事をこなしていった。

 

場所は変わり魔法協会本部内のオンライン師族会議が開かれる場所に四葉家現当主四葉真夜と五輪 彩海奈の姿はあった。

 

「初めまして、四葉真夜様。私は五輪 彩海奈と申します。そしてこちらは私の身の回りのお世話をしてくれている如月 芽愛と言います」

 

「あの時はありがとうございました、四葉真夜様。先程彩海奈様より紹介されました通り彩海奈様の身の回りのお世話をしている如月 芽愛と申します。今回は私目の参加を許可してくださりありがとうございます」

 

「そんな大したことではないのに、改めて四葉家現当主の四葉真夜と申します。今回はこのような場を設けていただきありがとうございます。まずは彩海奈さんと呼んでよろしいかしら?」

 

「は、はい。大丈夫です。私は何と呼べばよろしいでしょうか?」

 

「ふふふっそんなに緊張しなくてもいいわよ、時間はまだあるんだから。それと私のことね真夜さんでも何でも構わないわ」

 

「そ、それなら盛悦ながら真夜さんと呼ばせていただきますが今回どうしてこのような場を?」

 

「そうね、それは少し貴女が気になったからかしらね。九校戦の本戦アイス・ピラーズ・ブレイクで一条家の『爆裂』に似て非なる魔法、そしてバトル・ボードでの魔法。それぞれに似た魔法というのは無い。という点で興味が湧いてきたっていうのもあるわね」

 

「そ、そうでしたか…ただ他人の魔法を探るのはマナー違反かと思いますが…」

 

「あら、私達が今更マナー違反なんて気にするかしら」

 

「(やっぱり四葉ってそういうところは噂通りなのね…)多少のことなら話しても構いませんがそれでよろしいでしょうか?」

 

「ええ、最初から十師族とはいえ各家それぞれ隠したいことはありますからね」

 

「ただし他言無用でお願いします。私が九校戦で使った魔法の固有名称はまだありません。これは第五研が作らせたものなので第五研の研究テーマを元に作られたとしか」

 

「そう…ということは流体制御に関する魔法なのね。それでその前の試合で使った魔法はどうかしら?」

 

「あの魔法は私の固有魔法に近いものですね」

 

「なるほど……さすがは先生が目を光らせる娘ね。私ももし子供がいたらこんな風になってたのかしらね」

 

「それはどうか分かりませんがきっと真夜さんの子供なら姉をも凌駕する魔法師かもしれませんね」

 

「そうね…だから彩海奈さんや二木家の結衣さん等には期待してるわよ」

 

「ありがたきお言葉です(なんで七草先輩とその双子の妹達のことを言わなかったかは…あれね)」

 

「失礼だとは思いますが1つ気になったことがあるので質問させてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、もちろん。十師族の当主だとこうしてあまり気軽に喋れないもの。だから今日は少しは楽なのよ」

 

「そ、そうでしたか…では質問ですが私も通っている第一高校に司波深雪という今年の新入生総代の女性なのですが今日真夜さんを見た時に似ていると思ったのですが親戚ですか?」

 

「司波深雪…さんね。さぁ私の親戚には心当たりは無いのだけれどその娘が私に似ているの?」

 

「九校戦を見ていればわかると思うのですが…司波深雪さんの雰囲気と真夜さんの雰囲気がとても似ているんですよ…すみません十師族の当主でもある人に向かって」

 

「いえいえ、気にしなくていいのよ。そんなに似ているのなら疑ってもおかしくないから」

 

「いえすみません」

 

「もうそろそろお昼時だから一時休憩にしましょう」

 

「そうですね」

 

いつの間にか時刻は正午を超え12時半になっていた。私と真夜さん、芽愛さんの3人は昼食をとるために会議室を出て特別に用意した部屋に入っていく。そこには3人分のお昼ご飯が用意されていた。私達はその部屋に用意されていた椅子に腰を掛け、向かい合うような形で座った。

 

「そういえば九校戦本戦アイス・ピラーズ・ブレイクと新人戦バトル・ボード優勝おめでとうね。来年の九校戦も期待してるわよ」

 

「ありがとうございます。来年も十師族として名が恥じないように頑張ります」

 

「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。今は十師族としての肩書きは無しにね」

 

「そ、そうですか…ところで真夜さんは芽愛さんと何処でお知り合いに?」

 

「九校戦最終日前日に澪様のお部屋に真夜様が来られたのは覚えておいででしょうか?その時は私と弥海砂も部屋にいたのでその時に」

 

「そうだったのね。最初から知ってるような感じだったからびっくりしたわよ」

 

「うふふ、芽愛さんと彩海奈さんが本当の姉妹に見えるわね。澪殿にも負けないくらいのね」

 

「もしかして私のことその時に姉さんから何か聞いてます?」

 

「ええ、多少は聞きました。とても仲がよろしいことで」

 

「そ、そうでしたか…(色々なことが四葉家の当主に知られているのかしら)」

 

「うふふっ大丈夫よ。貴女と澪殿のことは誰にも言わないから」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

「大丈夫ですよ、彩海奈様。私が持っているお話も絶対にいたしませんので」

 

「あら、芽愛さんも持っているの?今聞かせてくれないかしら?」

 

「いや、もう私は大丈夫…です…」

 

「あら、残念。また次の機会に楽しみにしとくわね」

 

こうして私と真夜さんと芽愛さんとのお昼は特に私の話題について語り合い私にとっては少し辛い時間となった。お昼ご飯を食べ終わる頃には既に時刻は14時半になっており私の予定の都合によりお話し合いは終わりを迎えようとしていた。

 

「そう。ごめんなさいね、九校戦が終わってすぐにこのことを持ってきて」

 

「いえ、期間については私共のご希望に沿って頂いたので有難く思っています」

 

「なら今度はゆっくりお話しましょう?」

 

「はい。その機会があれば是非」

 

「今度は澪殿や芽愛さんと弥海砂さんも混じえて」

 

「え…姉と芽愛さんと弥海砂さんもですか…」

 

「ええ、彩海奈ちゃんのこともっと知ってそうだし可愛いから。そうだなら深夜も呼びましょうか?」

 

「そ、そんな機会がありましたら……」

 

こんな参加者の中私なんかいていいのだろうか…国家公認戦略級魔法師である姉や四葉家現当主四葉真夜、さらにその姉の四葉深夜こんな錚々たる面々の中では私は霞むほどの参加者だろう。芽愛さんと弥海砂さんがいるとはいえ私にとってはすごすぎる面々だ。しかも私の話になれば姉さんが乗るのは確実で芽愛さんと弥海砂さんも何時敵にまわるかわかったものでは無い。私は今後このような場が作られないことを願うばかりだった。

 

時刻は15時を周り私と芽愛さんは四葉真夜さんに別れを告げ魔法協会本部の職員達にも挨拶をした後滞在していたホテルへ向かい荷物を受け取るとすぐに京都駅へと向かった。そして東京へと帰って行った。そしてまたも明日五輪本邸へ向かうための準備を始めた。

 

☆話し合いが終わったあとの四葉真夜☆

 

私は最初実際に本人を見ていて思ったのは本当にこの娘が戦略級魔法師なんだろうかと思った。ただそれは彼女が九校戦アイス・ピラーズ・ブレイクで使った魔法について聞いてみたらそれが確信に変わった。おそらく最初に話してくれた流体制御についての魔法は今回のこのアイス・ピラーズ・ブレイク用に作られた魔法だろうと思った。次に話してくれた魔法だがそれは彼女の固有魔法に近いというらしい。おそらくこの固有魔法をさらに発展させたのが戦略級魔法なのだろうと思った。本当に達也さんと深雪さんを足して2で割ったような娘だと今回のことでさらによくわかった。さらに達也からの報告によると彼女は自分のCADは自分で調整しているらしい。彼女が持っているCADはどうやらFLT製ではなく達也でさえも見たことがないCADみたいだ。そんなCADを自分で調整出来る腕前が彼女にはあるということだ。本当に達也と同じように規格外の娘だと改めて思った。

 

☆話し合いが終わったあとの真夜終わり☆

 

四葉真夜との話し合いが終わったあと東京の自宅では五輪 澪と五輪 彩海奈が電話している姿があった。

 

『彩海奈ちゃん、どうだった?四葉真夜さんと話してみて』

 

『そうね、四葉というネームバリューだけで見てしまうと萎縮しそうだったけれど芽愛さんと知り合いってわかってからは話は弾んだわ』

 

『そう、それは良かったわ。ところで彩海奈ちゃんは何時から本邸に行くの?』

 

「明日の午前中には本邸へ向かうつもりよ。何処かの誰かさん達が大暴れしないようにね」

 

『うっ…午前中に出るってことは着くのは午後になりそうね。私も午前のうちにはこっちを出て午後には着くように行くと思うわ』

 

「そうなのね。じゃあまた明日ねまだやること残ってるから」

 

『うん。私もあっちで会えるの楽しみにしてるわね』

 

こうして姉さんとの電話は終わり私は明日からの用意を進めた。京都へ行く前にある程度用意はしていたためそんなに時間もかからず用意は終わりその日は終わっていた。

 

 

四葉真夜とのお話し合いが終わったのも束の間、五輪本邸へと帰省しても何かは起きる。そのことは彩海奈は決して外に漏れてはいけないと思うことだ。果たして夏の五輪本邸では一体何が行われるのか…

 




如何でしたでしょうか?短すぎたのかって少し思うんですけどこれで終わりです。もしかしたらこういう話も各所で出していきたいと思ってます←

追跡編前編まだこの後書き書いてる時点では読んでいないので投稿したら読み始めたいと思ってます。あの表紙の娘が誰なのかすごい気になってます

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字には気を付けていますがあった場合は報告していただけるとありがたいです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五輪本邸で開催される予測不可能なこと、そして戦略級魔法

はい。夏休み編の続きになります。この話では可愛らしいところや強いところを少しは見せられてるはずです(表現力があるかは分からないけれど)

追跡編前編の作者の超個人的感想は後書きに載せたいと思います。前書きで言えるのはすっごい面白かったしなるほどとも思ったってことです←


8月16日今日は愛媛県宇和島にある五輪本邸に向かう日であり私は帰りたい気持ちと帰りたくない気持ちの半々になっていた。毎年この時期になると私の家では私の誕生日会が行われるのだが年を重ねる毎に盛大さが増していく。私はもうこの会自体をやってほしいとは思わず(祝われるのならば家族内だけで祝われたい)毎年億劫になっている。

 

「はぁ……今年はやらないと思ってたのに…」

 

「仕方ないと割り切るしかありませんね。今年は第一高校に合格もしましたし九校戦では本戦アイス・ピラーズ・ブレイク、新人戦バトル・ボードで優勝しましたから澪様は是が非でもやりたいのでしょうね」

 

「今年は戦略級魔法の実験と新しいCADでも作ってみようかと思ってたのに…」

 

「そうですね…戦略級魔法の実験はそんな大々的には出来ませんし新しいCADも九校戦で何かヒントを得たようでしたので試したいのですね?」

 

「弥海砂さん…それ何時から知ってました?」

 

「新人戦スピード・シューティングで照準機能付き汎用型CADを見た時からですかね何となく思ってたのですけど、彩海奈様ならきっとこれを見たら何か掴んだだろうと思いまして」

 

「確かにあれは"偶然"見た事のある論文の結果のようなものでしたが発表されたのは実際には使えないものでしたがあれは使えた。もし達也が思いついたなら既に高校生レベルではなく世界的に有名な魔工師の1人なのかもしれませんね。理論だけ出来すぎるという点から考えて案外彼が"トーラス・シルバー"なのかもしれません」

 

「探りますか?」

 

「そうですね…それは今後のことを考えても調べる価値はありそうですね。ですが五輪本邸にいる間はしなくて結構です。折角本邸にいるのにただ同じ日常じゃ帰る意味がありませんから」

 

「そうですか…ではあちらにいる間は大人しくしてます」

 

こうして私達は4人乗りキャビネットに乗り込み愛媛県宇和島にある五輪本邸へ向かっていった。キャビネットの中では特に何か起きることは無く私と芽愛さんと弥海砂さんは五輪本邸へ辿り着いた。

 

「「「「「「お帰りなさいませ、彩海奈様」」」」」」

 

「お帰りなさい、彩海奈」

 

「みんな、ただいまーーー」

 

私達はお母さんと五輪家の使用人のみんなに挨拶をしてから元々住んでいた部屋に荷物を置いてからは部屋でゆっくりしていた。すると誰かが帰ってきたのかまた使用人が慌ただしく動いていた。おそらく姉さんが帰ってきたのだろう。九校戦最終日に今日帰ると言っていたため私も表に出ていった。

 

「「「「「「お帰りなさいませ、澪様、洋史様」」」」」」

 

「お帰りなさい、澪、洋史」

 

「お帰りなさい、姉さん、兄さん」

 

「うん、みんなただいまー」ムギュー

 

「ちょっと姉さん、離れて」

 

「久しぶりに会えたんだからいいじゃない彩海奈ちゃん…」

 

「久しぶりっていうほどじゃないだろ姉さん…九校戦の最終日が最後じゃないか…おっとただいま彩海奈」

 

「うん、お帰り兄さん。ほら、姉さん離れて。ここでずっと留まるわけにはいかないでしょ?」

 

「仕方ないわね…じゃあこの後私の部屋に来て」プクー

 

「わかったわよ…」

 

「その前に澪、ちょっとお話があるから今すぐに父さんのところに行きなさい。洋史と彩海奈、芽愛、弥海砂も一緒に」

 

「姉さんだけじゃなくて私たちも?」

 

「ええ、これは五輪家現当主の命令だそうよ」

 

「それなら向かいましょうか…」

 

「ええ…」

 

私と姉さんと兄さんならまだわかるだが芽愛さんと弥海砂さんも一緒ってことは東京で何か起こるのかはたまた戦略級魔法絡みなのか分からないがとりあえず父さんの執務室へと向かった。

 

コンコン ガチャリ

 

「「「「「失礼します」」」」」

 

「ああ、澪、洋史、彩海奈、芽愛さん、弥海砂さん来たか。では早速なんだが本題に入らせてもらう。これは不確定でまだ何も信ぴょう性が窺わしい話だが一応東京にいるというのと魔法科高校に通っている点から話させてもらう。東アジア地域を担当している三矢家からもたらされた情報なんだがどうやら大亜連合がどうやらここ半年で日本に攻め込んでくるのではという情報が十師族の連絡網にもたらされた。おそらく時期的に考えても今年は横浜で開催される論文コンペが標的になるかもしれない。充分に気をつけくれ」

 

「もしその場に遭遇したら私はどれくらいの力を解放していいの?」

 

「そうだな…九校戦レベルまではこの場で許可するがそれ以上は今のところは許可は出せない」

 

「そうですか…使ってみたかったな…」ボソッ

 

「これでこの話は終わりだ。澪、お前は何かしないといけないんじゃないか?」

 

「そうだった!!じゃあ私はこれで失礼します」ドタドタ

 

「ま、まさか姉さんが準備してるのって」

 

「すまない、彩海奈…姉さんが今年こそは絶対にやるって聞かなくて…」

 

「もういいわよ…京都でこれを聞いた時にはもう半分覚悟はしてたから…」

 

「そういえば彩海奈、四葉殿とはどうだった?」

 

「四葉真夜さんとは色々盛り上がったけどあのアイス・ピラーズ・ブレイクで使った魔法を少しだけ説明したけど大丈夫かな?」

 

「四葉殿もある程度わかった上で話しかけてきたのだろうな。固有魔法を言わなければ私的には大丈夫だ」

 

「彩海奈様は四葉真夜さんと楽しく話されてましたよね。また機会があればとまた話し合いたいとも言ってましたし」

 

「そうか…これで最悪四葉と敵対することは無いだろう」

 

私たちはその後各自部屋に戻り私にとっては何時姉さんに呼ばれるか思っていた。間もなく19時を迎えるか迎えないかの頃合いにある秘密兵器を持ちながら芽愛さんと弥海砂さんが私の部屋にやってきた。

 

「彩海奈様、澪様からのお呼び出しでございます。それとこちらが秘密兵器でございます」

 

「ありがとうございます。では行きましょうか」

 

私達は五輪本邸の廊下を歩きとある一室の前にやってきた。おそらくここの中ではおそらく私が到着するのを今か今かと待っているのだろう。私は意を決してその部屋の戸を開けた。開けた瞬間

 

パパパン パパパン パパパン パパパン

 

クラッカーが鳴らされた。私は中のものをいっせいに浴びてから姉さんとその使用人から

 

「「「「「「彩海奈ちゃん(様)、お誕生日おめでとう(ございます)」」」」」」

 

そう私の誕生日だ。7月9日が私の誕生日なのだが今年は定期試験前や九校戦の練習という予定、私が東京にいるということを加味した結果今日やるということに私に内密で決まっていたらしい。姉さんは兄さん、父さん、母さん、本邸にいる使用人には事前に連絡したらしいが私や私についていた芽愛さんと弥海砂さんには直前まで伏せられていた。最初は普通の誕生日会みたいな雰囲気だが時間が経つにつれて世間で言われる誕生日会とは全く違う様相を呈してくる。ここで秘密兵器の出番だ。それは私が芽愛さんに頼み父さんに用意してもらったあるCADだ。最も私が普段使用しているCADは予備でしかない。本当のCADは五輪本邸に保管されている。何故本邸に保管されているかはこのCADが人の数倍早く起動するのとこのCADが何処にも販売されていないからだ。何故販売されていないのかはこのCADは私と五輪家お抱えの魔法工学のスペシャリストが私のためだけに作ったのだが予想以上にすごいのが出来てしまいさすがに表には出せないものになってしまったため本邸にて保管されている。

 

話がそれてしまったが本題に戻ろう。時間が経つにつれて誕生日会とは思えない様相を呈してきたため私は用意したCADを使用し「衝動」という魔法で雰囲気を壊し始めてる約1名に向けて放った。

 

グラググラグラ

 

「キャアア」

 

「姉さん?はしゃぐのはいいけど雰囲気をぶち壊すのはやめようね?」

ニッコリ

 

「は、はひいぃ/////」

 

「まったく…まぁでも姉さんが私のためにこんな会を開いてくれてありがとうね」

 

「//////////そ、そんなことないわよ…/////」

 

「照れた姉さんも可愛いわね。でもこうしてるとまた芽愛さんと弥海砂さんにちらほら言われるわよ?」

 

「はっ/////」

 

「しっかりと記憶させてもらいましたよ澪様。彩海奈様のそのセリフも記憶させてもらいましたよ」

 

「あら、彩海奈も記憶されてるわよ?言わんこっちゃないわね彩海奈も」

 

「うっ/////私達って絶対芽愛さんと弥海砂さんの上に立てることないと思うのだけれど」

 

「そうね。あまりというより絶対に無理ね」

 

(やっぱり姉妹って何処か似てるのよね。私も弥海砂とこれからもずっと一緒に居たい)

(彩海奈様も澪様もやっぱり姉妹っていうのもあるけどそれ以上に色々関係深いよね。お姉ちゃんともこれからもずっと澪様や彩海奈様のようになっていきたいな)

芽愛と弥海砂が澪と彩海奈を見ていて微笑ましく見ているのを見ていた使用人達はこの光景が何時までも続いていければと思いながらその部屋のお片付けをしていくのであった。

 

その日は会が終わったあとは私達は各自の部屋に戻り私はすぐに寝た。明日は五輪家が所有する(五輪が筆頭株主のダミー会社が所有している)ある島に向かうためだ。この島には父さんや姉さん、兄さん、芽愛さんを始めとした五輪が誇る最大戦力全員で行くらしく弥海砂さんは五輪本邸にある機密情報を守るためにこの行動には参加しない。

 

日が明けて帰ってきてから初めての朝を迎えた私は家族全員が揃う部屋へと向かった。

 

「おはよう、母さん」

 

「あら、おはよう彩海奈」

 

「姉さんと兄さんは?」

 

「あの2人ならまだ寝てるわ、洋史はともかく澪はいつもどうやって起きてるのかしら」

 

「私は兄さんに起こされると思ってるわ。姉さん言ったら悪いけどあまり1人で起きれなさそうだもの」

 

「そうね。確かに澪はあまり1人では起きてこなかったわ。いつも私か父さんが起こしにお部屋まで行ってたもの。でもねそれは彩海奈も同じよ」

 

「おはよう。あれ?姉さんは?」

 

「おはよう兄さん、姉さんはまだ夢の中にいるよ」

 

「あ、そうか起こさないと…今日は本家に来てるんだから誰かが起こしてると思ってたよ」タッタッタッ

 

「私の予感的中ね…」

 

「あはは……まぁこれもたまにはいいじゃない。家族らしくて」

 

「そうね。普段は十師族や国家公認戦略級魔法師としての肩書きがあるしね」

 

「おはよう、お母さん…ふぁぁぁ」

 

「「おはよう、澪(姉さん)」」

 

「えっ?彩海奈ちゃん何でここに!?」

 

「何でって…昨日からここにいるし昨日の夜は一緒にいたじゃない」

 

「そうだった…わね…今日はあの島に行くの?」

 

「ええ。1年に数回しか出来ないことだからね。さすがにやっておかないとって姉さんは行くの?」

 

「ええ、私はしないけど新しいCADが出来たみたいだからそれの試し打ちにね」

 

「そうなんだ…(まさかもう出来ているなんて)」

 

「ふふーん早く試したいなーあの人の作るCADとても合ってるんだもん」

 

私達は起きてあの島へ行く用意をしてからあの島へと向かった。事前に用意しておいた船に乗り込んだ私達は賢所島(かしこどころ)へと向かった。

 

賢所島。この島は2075年に新しく作られた人工島であり五輪家が裏側から所有している数少ない会社の1つでその会社を中心としたある種の企業連合が所有している。(もちろん企業連合の大多数は五輪が関係している)この島は魔法の研究所もあり第五研の研究施設も中にはあり実験施設もあり彩海奈の戦略級魔法はここで認可された。この第五研のなかでは戦略級魔法の実験データもありここと第五研の大元にも保管してある。

 

「はぁーー2年振りにここに来たけどやっぱりここは気持ちいいね」

 

「そうね…私も久しぶりだけど相変わらず変わらないけれど東京とは違うわね」

 

「それじゃあ第五研に行こうか。洋史も楽しみたいだろ?」

 

「え?うん。じゃあ姉さん、彩海奈行こうか」

 

「「うん。洋史(兄さん)」」

 

私達は着いてから早速第五研へと向かった。途中超大型複合商業施設や色々なお店が並んでいるのを見かけそれを横目に車が進んで行き、目的地である第五研へと向かった。

 

第五研の研究施設へと着くと私達は貴賓室へと通され今後のスケジュールを言い渡されると私と父さん、姉さんと兄さんと芽愛さんで別れて進むことになった。姉さんが新しいCADでの実験をする時は私も同行するということになっている。何故私が同行するかというとこのCADの開発に携わった1人ということで私が同行することになった。最初は五輪家の魔法工学のスペシャリストの1人が同行するということになっていたのだが姉さんからの要望で私が同行するということになった。

 

私と父さんは魔法実験室に入り私の戦略級魔法の実験の準備に入った。この部屋は姉さんが戦略級魔法師となった際に実験室として使われた過去があり戦略級魔法にも対応しうる部屋としてこの研究所内で有名となっていた。

 

「こちら、準備オッケーです」

「こちらもオッケーです」

 

「よし、じゃあ始めますか」

 

「彩海奈、始めるけど大丈夫かい?」

 

「ええ、いつでも大丈夫です」

 

「それじゃあ、戦略級魔法「壊淵」発動」

 

「「壊淵」、発動」

 

ドガガガガガ ガキンガキンガキンガキンガキン

 

戦略級魔法である「壊淵」が発動した。この魔法が発動されたことは海外はもちろん日本国内でも観測されることは無い。観測されてもせいぜい大きめの地震が起きたということで世間的には認知されるだろう。この研究所内は「ファランクス」程では無いもののそれと同じくらいの強度を誇る防御魔法が展開されているため影響はほぼ無い。

 

「戦略級魔法「壊淵」、所定通りの結果を発揮したためこれにて実験は終了となります。お疲れ様でした」

 

「お疲れ様。彩海奈大丈夫かい?」

 

「え、ええ。やっぱり戦略級魔法は使ってみると思ってるのと違うくらいの疲労感があるわね」

 

「無理はしなくていい。それじゃあ少し休憩してから澪の実験に移ろうか」

 

「そうですね…zzz」

 

「おい、芽愛を連れてきてくれ。それと彩海奈を休憩室へと運んでくれとも伝えてくれ」

 

彩海奈の父である勇海は彩海奈を休憩室へ連れていくために彼女の世話を任せている芽愛をここに呼び寄せた。芽愛は実験室へ到着するやいなや彩海奈を抱え休憩室へと足を運んだ。

 

時は流れ彩海奈は目を覚ますとふと誰かに手を握られていることに気付いた。私の左手は姉さんに、右手は芽愛さんに握られていた。姉さんは寝ているようだが笑顔なのが目に写り芽愛さんは笑顔で微笑ましくしていた。

 

「起きましたか?彩海奈様」

 

「…ええ、それで何故このような状況に?」

 

「えーっとまずこの休憩室に運び寝かせてから澪様が入ってきて手を握りそのままいると私が座っていた右手の方が私の方に伸びてきたので握ったのですが……」

 

「えっとそのことは姉さんには……」

 

「御安心を澪様は既に寝ていたのでこのことは知りません」

 

「そうですか…では姉さんを起こしましょうか」

 

姉さんはこの後起きたが私の上に乗っかる形で覆いかぶさってきたため少々苦しかったけど嬉しかった。そして私達は姉さんの新しいCADの実験をするため再び実験室へと向かった。




如何でしたでしょうか?今回は長すぎですかね?それでも戦略級魔法のことを書けたので作品タイトルに載っている言葉が初めて載ったんじゃないかって思ってます。(戦略級魔法が発動したという意味)

それと最新巻ですけどあの茶色の髪の女の子の正体意外でしたけど読むとなるほどって思いましたね。少しでもいいからこれからの続編に澪とかが絡んできてくれると作者的には嬉しいんですけどね…(笑)

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字がありましたら報告よろしくお願いします。また次回もお楽しみにしていてください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たなCADと五輪家の謎の魔法工学技師

はい夏休み編なんだか長くなってるなって思ってたらもう4話目でした。最初夏休み編って3話くらいで終わらせる予定だったんですけど書いてる途中にこれも書こうと思って書いてたら長くなりすぎました←


私の戦略級魔法実験から数時間後お昼を取った私と父さんと姉さんと兄さんと芽愛さんは私が実験した部屋とはまた違う部屋で実験は行われた。観測室にいる私の傍には兄さんと芽愛さんがいて実験室の中には姉さんが立っていた。

 

「姉さん。準備はいい?」

 

「ええ、いつでも大丈夫よ」

 

「それじゃあ何か戦略級魔法以外で何か2.3種類くらい発動してもらえる?」

 

「ええ、じゃあまずは彩海奈ちゃんが使ってた「水変万華」!」

 

とこんな感じに私が主に使ってる魔法を使っていった。私はこの第五研の研究員とその結果を確認して、誤差は予想範囲内だったため実験は成功と言える。私は姉さんに

 

「姉さん、大丈夫だよ!実験は成功したよ」

 

「そう、それは良かった。私もこれ使いやすいし普段はこれを使おうかしら」

 

「それまだ試作機みたいだから完成版になったら使ってみたら?」

 

「それもそうね。じゃあ彩海奈ちゃんお願いしといてくれる?」

 

「うん……って姉さん直接言わないの?」

 

「だってあの人滅多に姿見せないんだもの。それに彩海奈ちゃんあの人の連絡先知ってるでしょ?だからよ」

 

「はぁーー……わかったわよ。じゃあ姉さんが褒めてたってことと完成版楽しみにしてますって伝えとくね」

 

「うん!お願いね」

 

「(とはいってもその人って私と五輪家の研究員なんだけどね。それにしても姉さんでさえも褒めるとはなかなかすごい代物なんだな……)」

 

「彩海奈ちゃん?どうしたの、具合でも悪い?」

 

「え?ううん、そんなんじゃないよ。あの人ってどんな人なんだろうって思ってね」

 

「確かにどういう人なんだろ……」

 

「まぁでも私達の家の専属みたいな感じになってるしもしかしたら見かけてるかもしれないしね」

 

「そうだね…でもあまり人のことを探るのもよくないからね…でも気になる…」

 

「澪、彩海奈そろそろ帰るから行くよ」

 

「じゃあ行こうか姉さん」

 

私達は五輪本邸に帰るべく来た時と同じ船に乗り本邸へと帰っていきその日はその後も特にないまま終わっていった。

 

そして翌朝私は早く起きると五輪家にある研究施設を訪れていた。私はここにいる研究員の人達からCADのことや調整について色々なことを教わった。それを活かすためにここで研究もしている。昨日姉さんが使っていたのは日本最大のCADメーカー「FLT」の象徴とも言える「シルバー」シリーズの改良版だ。「FLT」の「シルバー・ホーン」は市販されているもののプレミアム価格で取り引きされている。私達はこの「シルバーシリーズ」の「シルバー・ホーン」という「シルバーシリーズ」の中でも最もユーザーカスタマイズに特化しているもので姉さんには合っているという点から仕入れており(4.5丁くらい)姉さんに合うようにカスタマイズしながら試行錯誤を繰り返している。

 

「おはようございます。あの昨日の結果ってもう受け取ってますか?」

 

「あ、おはようございます、お嬢。今日はあの人来てますよ。結果は無事受け取りました。何処かに漏れたりした形跡はありません」

 

「え、あの人来てるんですか!?」

 

「え、ええ。何でも「面白いものが出来た」と言っていつもの研究室へ引きこもっちゃいましたけど」

 

「そうですか…ありがとうございます。ちょっと"お話し"があったのでそれでは」

 

私は五輪家の近くにある研究所に行くと例の"あの人"が今日はいるようなので彼女の研究室へと向かった。

 

コンコン

 

「あのーいますか?」

 

「うん?あぁ入ってきていいよ」

 

シュイーン「失礼します…ってまたですか?あれだけちゃんと整理整頓はしてくださいって言ったのに…」

 

「あ、あはは……「ギロッ」ごめんなさい今すぐやります」

 

「まったく…次という次はありませんからね?」

 

「そう毎回言ってくれるお嬢大好きー!」

 

「はぁーー……それで、何か「面白いもの」が出来たって一体どうしたんです?」

 

「おぉーもう聞いた?じゃあ、これ」

 

「これって普通の汎用型のじゃないですか?何処が面白いんです?」

 

「ちっちっち、これは汎用型じゃなくて特化型。あとはテストするだけなんだけど第五研には昨日行ったんだよね?じゃあここでやりますか」

 

「特化型!?テストってここで出来るんですか?」

 

「九校戦で私がやりたいこと具現化されちゃったからこっちこそはって思ってたんだけど完成して良かったよ。え?知らないの?ここの施設の地下には実験室あるから何時でも出来るよってこれ知ってるの私とお嬢のお父さんと研究所の人達だけだった(´>ω∂`)」

 

「そうなんですね…じゃあ芽愛さんと弥海砂さん、それに兄さんも呼んできますので少し待っててくれない?」

 

「うん!じゃあ私は準備してるからゆっくりでいいよ」

 

私は彼女の研究室を出ると五輪本邸に向かって兄さん、芽愛さん、弥海砂さんを呼んで再び実験室へと戻ってきた。

 

「さてと、じゃあまずは自己紹介といこうか私は霧島 愛彩という。彩海奈とは同い年だから愛彩でいい。五輪家でCADの研究、作成、調整を主にやっている」

 

「えっとじゃあ僕から五輪 洋史です。ここにいる彩海奈の兄で今は東京に住んでいるよ」

 

「私は如月 芽愛と申します。今は澪様と彩海奈様のお世話係をしています。隣にいる弥海砂とは双子の姉妹です」

 

「最後に私は如月 弥海砂と申します。芽愛姉さんと同じく澪様と彩海奈様のお世話係をしています」

 

「よろしゅうな!私は高校には行っておらんからここに来れば会えると思うから」

 

「え?愛彩さんは高校に通っておられないんですか?」

 

「そうだよ。高校の勉強なんてたかが知れてるから、でも今は少し通ってみたいとは思ってるんだよね。あれを見たら話してみたくて」

 

「えっとあれって九校戦の時のやつですか?」

 

「そうだよ。1年前じゃ実践に耐えられなかったのを一高校生が実現させちゃったからね。私も作ってはいたんだけどね。それで本題だけどみんなにこれを試してもらいたいんだ」

 

「えっと…これって汎用型ですよね?」

 

「いや、それは特化型だよ」

 

「「「え!?」」」

 

「昨日のお昼には出来たんだけど何せ3日寝てなかったから今日になっちゃったんだ」

 

「はぁーー……まったくあれほどちゃんと寝なさいって言ったのに」

 

「あはは……でもこれお姉さんとお兄さんと自分とその2人のために提案してくれたんでしょ?」

 

「そうだけど…まずはちゃんと作成者がちゃんとしないとね」

 

「うっ…以後気をつけます…」

 

「じゃあ早速やろうよ。地下には実験室あるみたいだし」

 

「そうですね。行きましょうか」

 

私達はこの研究施設の地下にあるという実験室へと足を運んだ。そこには賢所島にある第五研の研究施設にある実験室と負けず劣らないレベルの実験室があった。

 

「それにしてもすごいですね……賢所島の研究施設にも匹敵するレベルですけど」

 

「それじゃあ始めようか」

 

私達は愛彩から渡されたCADを受け取り各々魔法を放つと私も含めて全員がびっくりしていた。それを見ていた愛彩はしてやったりという顔をしていた。

 

「ちょっとこれ、すごいじゃない。これなら有事の時でも使えるわ」

 

「ああ、これはすごい」

 

「ありがとうね。これでまたトーラス・シルバーに近づけたかな」

 

「そうね…今はもう飛行魔法で持ちっきりだけどこれはこれですごいわよ」

 

「でもこれも発表する気は無いからね。私はここにいて自由に研究出来るのが好きだから」

 

「勿体ないと思うけどそれもわかるわ。私も九校戦の時ほど自由になりたいって思ったことないから」

 

「彩海奈も大変だね…早くお姉さんにあげられるCAD作れるといいね。私も手伝うからさ」

 

「うん。ありがとう「ブーー」と噂をすれば…どうしたの?姉さん」

 

『どうしたもこうしたもないわよ!一体どこにいるのかしら』

 

「え?あーえっと"あの人"のとこかな」

 

『え!?そこにいるの!?ちょっと私も連れてってよ!』

 

「姉さん寝てたじゃない…それで兄さんとか呼びに行った時もまだ寝てたから起こさないでいたのに…」

 

『うっ…私も行くからそこで待ってて…プツン』

 

「切れた…というわけで姉さんも来るからよろしく」

 

「お姉さん来るの?ラッキー国家公認戦略級魔法師と会えるなんて滅多に出来ないから嬉しいよありがとう彩海奈」

 

「私があのCADの開発に携わったことだけは言わないでね…」

 

「おっけーおっけーわかったよ彩海奈」

 

「はぁーー……大丈夫かしら」

 

シュイーン

 

「彩海奈ちゃーーん」ダキッ

 

「わっ、姉さん…いきなり抱きついてこないでって言ってるじゃん」

 

「そんなこと言ってもそんなに会えないんだからいいじゃん」

 

「えーっと…これどうするんです」コソコソ

 

「私達が何とかするのでここで待っててもらえますか?」コソコソ

 

「澪様、ここは本邸ではないのでやるのなら本邸でお願いします」

 

「うっ…わかったわよ…」

 

「では、お願いします」

 

「えっと私は霧島 愛彩と言います。ここでCADの作成、調整、研究を行ってます。昨日澪様が第五研で使われたCADは私が作成したもので、今日は新しいCADが出来たため妹様をお借りしていました」

 

「私は五輪 澪と言います。愛彩さんと呼んでもいいかな?見る限り彩海奈と同じくらいだと思うのだけど」

 

「如何にも…私は妹様と同い年です」

 

「もっと軽くていいよ、私これでも身内にはなんだかんだ甘いからさ」

 

「じゃあ、澪さんって呼んでもいいですか?」

 

「うん!私も愛彩ちゃんって呼ぶね。これからも私のCADよろしくね」

 

「は、はい。澪さんが全力を出せるようにが、がんばります」

 

「あはは愛彩ちゃん可愛いね。でも彩海奈だけはあげないよ」

 

「なんで私が姉さんのものになってるの…」

 

「姉妹っていいなぁ…」

 

「えーっと…愛彩ちゃんはご兄妹とかは?」

 

「うちは私の一人っ子なんで」

 

「そっか…じゃあ私はお姉ちゃんだね」

 

「え?」

 

「私って立場的に容易には結婚出来ないからさ家族だけが頼りなの。だから家族が何よりも大切だから家族が増えるのはすごい嬉しいことなの」

 

「家族…」

 

「だからさ愛彩ちゃんも気にせずにうちに遊びに来てよ。もちろん無理にとは言わないからさ。私達はいつでも歓迎するからさ。と言っても私も洋史も彩海奈ちゃんも東京にいるからあまりこっちには帰って来れないからあれなんだけどさ」

 

「あ、ありがと、ありがとうございます」

「あはは、後でお父さんにも話しておくね」

 

「ねえ姉さん、五輪の研究拠点って東京にも作れないかな?」

 

「え?うーんどうだろうさすがにデータまでは東京に移すには相当リスクがあるからね」

 

「そう……だよね…」

 

「うーんそうねちょっとあとでお父さんのところに行こう?このことも相談してみよ?」

 

「ありがとう姉さん」

 

「え?え?一体どうなってるの?」

 

「愛彩様…あの状態のあの姉妹は誰にも止められません。その流れに身を任せた方がよろしいかと」

 

「そ、そうですか……」

 

その後私たちは五輪本邸に帰ってから父さんの執務室に行き愛彩ちゃんの東京移住と五輪の研究拠点を東京にも置くことを言ったがそれは今後五輪の研究施設幹部とお話し合いをしないといけないということなのでひとまずは保留という形になった。私たちはその後また研究施設に戻り今まで愛彩が作ってきたCADを見せてもらいながら今日という日を過ごしていった。

 

翌日私は実家にいるということもあり学校生活の時とはかけ離れた生活を送っていた。普段東京にある自宅にいる時はCADをいじったりはしているがここは五輪本邸であるため個人の調整機やホームサーバーのデータがこちらに無いため何もすることが無いのだ。深雪やエイミィ、達也達は一体何をしてるのだろうか気になったりもしている。何ともない話し合いはするけどそこまで踏み入ったことは何も話していないために早くエイミィやスバルに会いたいという気持ちも少なからず持っていた。そうこうしていると父さんが私と芽愛さんと弥海砂さんを呼び出した。何事かと思い父さんの執務室へ入るとある手紙を渡された。それは日本最大のCADメーカーである「FLT」からだった。一体何故「FLT」からの手紙と私達が何の関係があるのか見てみるとそこには「FLT」のこれまでのCADの展示会への招待状だった。開催期間は8月24日〜8月31日の1週間の間に行われるようで何故私達のところに来たかというとこの招待状はこれまでに「シルバー・シリーズ」の購入者にランダムで展示会へ招待しているらしい。そして今回の目玉は先日発表された飛行魔法に適したデバイスの試作機だろう。

 

「澪がそこに行けば、少なからず大騒ぎになるし、洋史は澪の身の回りをしていて澪を1人にはさせられないし代わりに芽愛と弥海砂がそばにいたら今度は彩海奈が1人になってしまうからだったら彩海奈と共に芽愛、弥海砂両名ともついて行くという感じになった」

 

私達は21日に帰京して26日に『FLT』の展示会の会場に行くということに私と芽愛さんと弥海砂さんの3人で決めた。そこには思いがけない人や意外な人物がいることは私はまだ知らない。

 




如何でしたでしょうか?夏休み編あれだけ長いっているのにもう1話あります。次で最後です。

今回はオリキャラを出しました。そのオリキャラのプロフィールはこの話を投稿してから1日後に更新する予定です。プラスで五輪家側の使用CADの種類を追加していきます。これは次の話の後に追加するので横浜騒乱編の1話はもしかしたら個人的都合も含めて遅くなりそうです

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

意外な人がいるCAD展示会

はい。今回で夏休み編は最後です。

LOSTZEROやってると文弥と亜夜子を集めたくなるし水波、九亜が可愛すぎます。

作者的に魔法科は九校戦編、横浜騒乱編、来訪者、スティープルチェイス・クロスカントリー、四葉継承編、エスケープ編が好きです


私は五輪本邸に帰省してから5日後である8月21日に東京に帰るため準備をしていた。帰るといってもそんなに持ってきてはいないため用意自体はすぐに終わった。

 

「はぁーー……もうちょっとゆっくりしたかったな」ボソッ

 

「仕方ありませんね。あの「FLT」の展示会なんて滅多に行けませんしこれからのことについて学べるのでは?」

 

「うーんそうなんだけど…愛彩ちゃんとまた会えなくなるのがなーってね」

 

「それは……「ガチャン」」

 

「失礼するぞ、彩海奈」

 

「あれ?愛彩ちゃんどうしてここに?」

 

「ふむ、今度「FLT」の展示会行くんじゃろ?彩海奈のお父さんに聞いたら私も行っていいことになったから25日にそっちに行くから泊めてね?」

 

「え!!ほんとに!?絶対に来てね!たのしみにしてるから!!」

 

「う、うん……えーっと芽愛さんでしたっけ?彩海奈ってこんな感じでしたっけ?」ボソボソ

 

「私は初めて見ましたが……弥海砂はどうです?」ボソボソ

 

「私も初めてです……しかしあれほど喜ぶとは…澪様が見ていたら…」ボソボソ

 

「ポカーン…………」

 

「「「あっ……」」」

 

「うん?みんなどうしたの?……ね、姉さん?」

 

「彩海奈ちゃん……私まだ紹介されてないんだけど?」ニコニコ

 

「え?紹介?え?どういうこと?」

 

「はぁーー……大丈夫ですよ澪さん彩海奈は取らないので」

 

「それなら良いわ…まったく隙もあったもんじゃない。私はこれからも彩海奈ちゃんと一緒にいるって決めたのに」ブツブツ

 

「え?なんか言った?姉さん」

 

「何も無いわよ……この朴念仁」ブツブツ

 

「変な姉さん…」

 

「(この家では彩海奈に手を出すことは禁止されてるんですか!?)」

 

「(そんなことは無いのですが…澪様があれですので…)」

 

「(彩海奈って絶対結婚とかそういうの出来なさそう……)」

 

「(ははは……私達はちゃんと結婚してほしいんですけどね)」

 

こうして私は何故姉さんと芽愛さんと弥海砂さんと愛彩が微妙な顔や不満そうな顔をしていたのかが分からずに帰る時が近づいていった。

 

そして私が東京に戻るという時になってまた姉さんが「まだ帰らないで!」みたいな顔をしながら私を見てきたが私はその対応を兄さんに任せて私は五輪本邸を後にして東京にある自宅へと向かった。

 

4時間後私と芽愛さんと弥海砂さんは東京にある自宅へと帰ってきた。まずホームサーバーに届いているメールのチェックや着信履歴を確認すると2日前に深雪から連絡が来ていた。私はそれを見ると深雪に折り返しの電話をかけた。

 

『はい。司波ですが』

 

「あ、達也。えっと深雪はいるかしら」

 

『彩海奈か。深雪だな。呼んでくる』

 

ーーーーーーー

 

『待たせたわね、彩海奈』

 

「突然ごめんなさいね。それで何か用だったかしら」

 

『ええ、ほんとはもっと早く来れれば良かったけど』

 

「それはごめんなさい。さっきまで愛媛にいたから」

 

『帰省してたのね。なら仕方ないわ。それで本題だけど23日から25日まで私達は雫の別荘に行く予定なのだけれど来るかしら?』

 

「ごめんなさい。24日に来客があるから行けないわ」

 

『それなら仕方ないわね……また2学期に学校で会いましょう』

 

「ええ、ほんとごめんなさい。お土産話楽しみにしてるわ」

 

私は電話を切るとリビングに置いてあるソファーに寝転がるように腰掛けた。そこに芽愛さんと弥海砂さんの2人が入ってきた。

 

「彩海奈様。これから如何なさいますか?」

 

「そうね……近くまで買い物に行かなければなりませんね。あちらに行く前にほぼ全て使ってしまいましたし」

 

「でしたら出かけましょうか。そうしないと日が暮れてしまいますしね」

 

「じゃあ、用意したら行きましょうか」

 

私達は近くのお店でここ3日くらいの食べ物を調達して今日は3人で一緒に過ごした。私は疲れて寝てしまったので覚えていないのだが芽愛さんと弥海砂さんにとっては"また"大切な思い出の1つが出来たそうなのだが私にとってはまた芽愛さんと弥海砂さんに適うことが遠くなっていったのは間違いないだろう。

 

翌朝私は朝から自宅の地下にあるCADの調整室へと向かい調整を始めた。明日には愛彩が来るから見てもらうことにするようにしているので出来るだけ詰めておくことにしていた。集中していたのかやっと終わり時間を見てみると既に14時を回っていた。毎週の休みの日いつもこんな生活をしていたので久しぶりだったが数週間経ってもそんなに影響は少なかったらしい。ちなみに芽愛さんと弥海砂さんは戻ってきた翌日なのに早速トーラス・シルバーのことについてと達也のことについてを調べてくれているらしい…というのは朝起きたらリビングのテーブルに置き手紙が置いてあったからだ。

 

それからというもの私はお昼ご飯を食べてからは街へ出かけるとそこではまた新たな発見や明日愛彩が泊まりに来るから少しだけ準備をしてから家に帰っていった。家に帰ると既に芽愛さんか弥海砂さんかが帰っていたのだろうと思いドアを開けると予想通り芽愛さんがいた。

 

「お帰りなさい。彩海奈様」

 

「ただいまです。今日は芽愛さんなんですね」

 

「ええ、弥海砂はまだ調べることがあるってまだ私が来るまでは調べているようです」

 

「そうですか…芽愛さんもですけど無理はしないでくださいね…」

 

「はい。それはもちろん、何といっても可愛い彩海奈様の命令ですから」

 

「か、可愛いは余計なのでいらないですよ…芽愛さんの方が可愛いですし」ブツブツ

 

「私よりは断然彩海奈様の方が可愛いと思うのですけどそういうことにしておきます」

 

どうやら何を言っても無駄なようだ。何故こう芽愛さんと弥海砂さんに私達姉妹は何を言っても勝てないのだろうか……こうして私はいつもの日常に戻っていった。

 

明けて翌日朝やっと日が昇り始めた時刻に来客を告げるベルが家の中に鳴り響いた。私はその音に気づいて起きて最低限の身支度をしてから出るとそこには何と愛彩がいた。

 

『やっほー、彩海奈ー来たよー』

 

「うん……ってええぇぇぇぇ!?なんでこの時間に来たの……」

 

『え?いやぁどうせなら寝る時間を移動時間にしてしまおうって思って日付け変わるくらいにあっち出たから今着いたの』

 

「それにしても早すぎよ……とりあえず入っていいよ」ガチャリ

 

「おじゃましまーす」

 

「今は誰もいないからゆっくりしてていいよ。ふあーあ私はもう少し寝るね……おやすみ」

 

「え?うん。おやすみ……って私どうしたらいいの……まぁ折角だから家探しでもしようかね。彩海奈のことだから地下辺りに調整するための部屋とかあるだろうしね」

 

こうして愛彩による彩海奈の家の家探しが始まった。

結果を言うとあまりにも簡単に調整室は見つかりなんだかあまり面白くないと感じた愛彩は彩海奈の部屋に突撃していった。

 

「あーみーなーーー」ドガッ

 

「う、ううん……ってきゃぁぁぁ」ドサッ

 

「ねえーーなんか無いの?」

 

「何かって……何も無いわよ?あるって言っても調整室とかがあるくらいだし…」

 

「えーー何も無いの?」

 

「何も無いわよ?愛彩が楽しめそうなところって思いつかないもの……」

 

「むっ失敬な……ってそうなんだけどさ……」

 

「じゃあどうするの?私はまだ寝たいんだけど」

 

「じゃあ私も寝る!」

 

「そう、じゃあ用意するから」

 

「ごめんね、彩海奈…」

 

「ううん、いいよ。私もそろそろ起きようとは思ってたからね……よいしょっと」

 

「じゃあ、おやすみ。正直まだ眠かったから良かったよ」

 

「うん、さて何か起きちゃったからもう眠らなくていいや。外に散歩しに行きたいけど1人にするのはちょっとね…仕方ない起こさないように地下の実験室で運動しますか……」

 

ーー3時間後ーー

 

「ふあーあ、おはよう彩海奈」

 

「あ、おはよう愛彩。朝ごはんもう少しで出来るからもうちょっと待っててね」

 

「うん……」

 

「はい、お待たせ」

 

「ありがとう、彩海奈。今時の戦略級魔法師は料理も戦略級なんだね〜」ニヤニヤ

 

「なっ、そんなことないわよ…深雪のと比べたら大したことないわよ」

 

「深雪って九校戦の時にお主とダブルエースになっていた司波深雪嬢か?彼女はすごいな、まるで世界が彼女に魅了されているかのようだったし、飛行魔法を使える点から相当な腕前の持ち主だろうね。潜在能力とあの容姿からして十師族の何処かの家と言われてもおかしくはない」

 

「ええ、深雪はすごいわ…何せ新入生総代でもあるし「ニブルヘイム」や「氷炎地獄」とか高等魔法を繰り出しちゃうしね。問題点はブラコン度がすごすぎるってことね。私も十師族の何処かかとは思ってるけど1番疑ってるのは四葉ね。先日当主である四葉真夜さんと会ったのだけれど似ているのよ目や髪そして表情がね」

 

「何?四葉の当主に似ている?もし仮にそれが本当なら一大事だぞ。本当に四葉で彼女が次期当主なら十師族という枠組みを超える存在になり得る。対抗出来るとしたら七草か五輪くらいだぞ」

 

「ええ、本当に深雪も達也もすごいわ」

 

「達也…ははあ彩海奈も隅に置けないなぁ」

 

「え?どういうこと?」

 

「そう隠さんでいい、彩海奈お前その達也とやらが好きなんだろう」

 

「あぁ…達也を好きなのは深雪とほのかね。私は違うから」

 

「なんだ違うのか……それでほのかというのはお前とバトル・ボードで争った娘か?」

 

「ええ、周りにはバレてないって思ってるみたいだけどバレバレよ」

 

「その娘も面白そうだな。今度会ってみたいものだ」

 

「やめなよ、ほら朝ごはん冷めちゃうわよ?」

 

「う、うんじゃあ」

 

「「いただきます!」」

 

私達は朝ごはんを食べると食器を洗い今日は2人で一緒に私のCADの調整と姉さんがこの前の実験で使ったCADの問題点の改善など色々なことをしながら今日という1日を過ごした。

 

翌日は私と愛彩と芽愛さんで東京の郊外にある公園へやってきた。そこではたくさんのお花や目の前に広がった広大な海を見ながら過ごした。

 

そして8月26日今日はFLT主催で行われる「シルバー・シリーズ」の購入者限定でさらにそこからランダムで招待される展示会に私と愛彩、芽愛さん、弥海砂さんの4人で会場である東京海浜地域にある約1世紀前からある施設へと来ていた。

 

「わあぁぁ、本当にあの「FLT」の展示会だ。夢のようだよ」

 

「そうね。私もCADの展示会は初めてだから楽しみだわ」

 

「あら?貴女…彩海奈じゃない?」

 

「え?深雪!?なんでここに?」

 

「それはこっちのセリフよ…貴女こそどうしてここに?」

 

「私は抽選に当たったからだけど深雪は?」

 

「私はお兄様が当ててその付き添いで…」

 

「あら、達也って「シルバー・シリーズ」を使ってるのね。あれだけの調整スキルが出来るわけだわ」

 

「ええ、それで彩海奈、後ろの方達は?」

 

「え?あぁ、こちらが霧島 愛彩さん、如月 芽愛さんと弥海砂さんよ」

 

「そうなのね、初めまして司波深雪と申します。これからよろしくお願いしますね?」

 

「こちらこそ初めまして、霧島 愛彩と言います。あの、その九校戦アイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バット優勝おめでとうございます!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「それじゃあ一緒にまわらないかしら?達也は何処にいるの?」

 

「呼んだか?」

 

「え?ああ、達也久しぶりね」

 

「あぁ、久しぶりだな。深雪の側にいてくれて悪かったな」

 

「まったく…お兄様私はもう子供じゃありません」

 

「いや……まだ年齢的には子供でしょ」ブツブツ

 

「何かいったかしら?」ゴゴゴゴ

 

「いえ、何も……」

 

「それじゃ行くか」

 

私達は思いがけず達也と深雪と会ったので一緒に周ることになった。途中から達也がこれまでにトーラス・シルバーが作ってきた「シルバー・シリーズ」の解説をしてくれたのだが正直私には何が何だかという感じだったのだが愛彩にとってはとても興味深いものだったらしくここに付いてきてほんとに良かったと思った。そして今回の目玉である「FLT」の最新作で最新技術の結晶である飛行魔法専用のデバイスの目の前に来た。

 

「これが飛行魔法専用のデバイス……」

 

「ああ、こう見るとなかなかすごい代物だ。販売されたら一体どれくらいの価格で出すんだか…」

 

「ええ、世界に同じものが無いというだけで莫大な金額になりそうね…それも国や軍でしか買えなそうな金額になりそうね」

 

「国や軍……」

 

「ああ、それくらいでもおかしくないな」

 

私達はこの飛行魔法専用のデバイスを見てその仕組みと性能を見てそんな会話をしていた。それを見ていたのであろう他のお客さん達が「なるほど……」や「そんな仕組みなのか」と私達の言葉を聞きそれぞれコメントしていた。

 

「さて、俺達はもうこれで帰るが、彩海奈達はどうする?」

 

「私達も帰りましょう。それじゃ達也、深雪また学校でね」

 

「ええ、また学校でね彩海奈」

「ああ」

 

「それじゃ、またね」

 

「あ、あの司波達也さんわ、私と連絡先交換してくれませんか!!」

 

「それは構わないが……」

 

「今日、CADのお話聞いてて私もCADの調整してるんですけどその……その事について良いお話が出来るんじゃないかって思って……」

 

「貴女……本当に愛彩?」

 

「し、失敬な正真正銘本物だよ!」

 

「こうして見てると貴女達姉妹に見えてくるわね。彩海奈が妹だけど」

 

「それはどういう意味かしら深雪」

 

「彩海奈って人をあやすのが上手でしょう?だからよ」

 

「むっ……」

 

「何時でも出れるわけじゃないがそれでも大丈夫か?」

 

「え、ええ!」

 

「それじゃあこれでまたね」

 

「ええ、じゃあ私達も帰りましょうか」

 

こうして私達はある施設を後にして自宅へと帰った。私達にとってはまたとない機会であり、愛彩にとってもとても有意義な時間になったようだ。

 

 

あと数日で始まる新学期。新学期の目玉は何といっても10月に行われる全国高校生魔法学論文コンペティションだ。横浜と京都で交互に開催されるが今年は横浜で開催されるみたいだ。そこでは後世にも語り継がれる大きな事件が起きるがそれはまだ誰も知らない、魔法師に対する関心が集まったと言えるそんな大事件が起こるとは思ってもいなかった。




如何でしたでしょうか?夏休み編は最後になり次回の話から横浜騒乱編に入ります。

個人的にリーナを早く出したい……

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

横浜における騒乱と十師族としての威信
新たな船出は波乱の船出?そして不穏な空気


はい。横浜騒乱編がスタートです。今回は前半が彩海奈視点、後半が達也視点の構成になっています。


夏休みも終わり魔法科高校も新学期が始まり1ヶ月が経とうとしていた9月の終わり、一高では生徒会長選挙及び生徒総会が行われていた。4月の一件での七草生徒会長が公表していた通り生徒会における一科生のみ入ることが出来る校則を廃止し二科生でも生徒会に入れることになった。この議論では現一科生から反発はあったものの最終的には賛成多数ということで成立した。次に生徒会長選挙だがここで問題が起きた立候補したのは中条先輩ただ1人、なのに有権者数527に対して有効投票数167、無効投票数360という本当に信任投票なのかと思える内容であった。なお、この内容により一時講堂が凍るんじゃないかという勢いだったがそれは何とか未遂に終わり、来年は絶対に彼女を生徒会長にするという暗黙の了解が1.2年生の間にひっそり芽生えた。

(無効投票内訳:深雪275、達也55、彩海奈30)

 

こんな生徒会長選挙を経て生徒会のメンバーも入れ替わり市原先輩が抜けた書記にほのか、会計の中条先輩が上がったことにより五十里先輩が入り、副会長であった服部先輩が部活連の会頭になりそこには深雪が入ることになった。新風紀委員長には渡辺先輩の推薦で千代田先輩が就くことになった。そんな中私はというと特に何か変わることは無く過ごしていた。生徒会室ではほのかに書記としての仕事を教えたりしていた。肝心の達也はというと論文コンペの代表に選ばれていた市原先輩からのオファーもあり論文コンペの代表のアシスタントとして動いていた。なおメンバーには代表の市原先輩、五十里先輩、平河先輩が入っていた。

 

そんな何気無い日常を過ごしていた私だがそんな日常はすぐに非日常に巻き込まれようとしていた。今日私の自宅にやってきた弥海砂さんからある情報がもたらされた。それは横須賀にある港に国籍不明の船が停泊していてそこを襲撃したもののもぬけの殻であり土地柄的に大亜連合軍の関係者がやってきたのではないかということだ。そしてこれは推測の域を出ないがどうやら今度横浜で行われる論文コンペの日に大規模な侵攻作戦を行うのではということだ。

 

翌日私が学校へ登校していると何か不気味な視線を感じた。いくら振り撒いたところでその視線は離れることは無かったが学校へ近づいてからはその視線は無くなった。そして昼休み生徒会室へ向かうと達也の家のホームサーバーが何者かにクラッキングを受けていたことから論文コンペメンバー及び生徒会メンバーには注意するよう呼びかけられた。そして夕方またも帰宅中に朝感じた視線に悩まされていた。

 

「……誰?」

 

「おや?僕の隠形に気づくとは…さすがは十師族五輪家の娘といったところかな?」

 

「貴方は……「今果心」九重八雲さんですか?」

 

「おや、僕のことを知っていたのか。それは失敬、改めて九重八雲だ」

 

「それで私になにか御用でしょうか?」

 

「用かと言われたら微妙なところだけど少し君のことが気になってね。今まで五輪家に次女がいるということは世間には知られていなかった。僕もかなりの情報通ではあるけど知らなかった。だからこそ気になるんだ」

 

「その事でしたか……それでどうですか私という人は?」

「いやはや、興味深いね。君が五輪家の御息女ということもあって見たことない魔法にCAD何もかも興味深い」

 

「そうですか……「今果心」と言われる御方にそこまで評価して下さっているとは」

 

「そこまてじゃないよ。ところで最近弥海砂君からある情報を嗅ぎつけたようだね」

 

「弥海砂さんを知っているんですか?」

 

「あぁ、一時的に彼女は僕の寺で修行していたからね。だからこそ今の技術があるということだよ」

 

「そうでしたか……」

 

「気にすることは無い。ただ方位にだけは気を付けなさいとだけ言っておくよ」

 

「消えた……」

 

こうして「果心居士」の再来と言われる「今果心」九重八雲は街並みの暗闇へと消えていった。この話を家に帰り弥海砂さんに聞いてみると弥海砂さんの方でも調べてくれるそうだ。方位ということは認識阻害系の魔法なのだろうか今度愛彩に調べてもらおうと思いながら私は寝た。

 

翌日から論文コンペに向けて各メンバー、護衛等一高全体で論文コンペに向けて準備を進めている。私はというと生徒会室でお留守番だ。中条先輩は護衛や警備隊を務める方達への軽食の用意、五十里先輩はメンバーとしての準備、深雪、ほのかは風紀委員の一部メンバーと共に校庭での作業の警戒というふうになったため私は生徒会室でお留守番になった。ただこうして1人になれるのは案外ラッキーかもしれない。先日出会った九重八雲さんの言葉を思い出す。「方位に気を付けなさい」、正直最初言われた時は分からなかったが弥海砂さんが言っていたもしかしたら大亜連合が攻めて来たとしたら古式の魔法で方角を狂わす魔法があるのかもしれないと思い私は愛彩と九島閣下にこれらに関して分かる範囲で教えて欲しいと聞いたところ思い当たるものがあるということだ。

愛彩は古式に関しては分からないという回答であったが九島閣下からはおそらく「奇門遁甲」という魔法じゃないかということでとにかく「方角に気を付けなさい」ということなのでこれで確定した。私は早速弥海砂さんにこのことを伝えると分かったと返ってきた。

 

同日夕方にある事件が起こる。私はこのことは聞かされただけでそれ以上は何もわからないが「ジロー・マーシャル」という非合法工作員との接触で東側に知識が渡らないようにという言葉を聞いた時に思った……またかと、そしてその非合法工作員は後に焼死体となって発見されたらしい。おそらく大亜連合軍の作戦部隊が動いたのだろうと思い達也と深雪から大亜連合という言葉は無かったもののそちらも注意してくれと言われその日は過ぎていった。

 

次の日も次々と事件は起きていく。ロボ研のガレージからの警報音による産学スパイの未遂事件、一高生徒によるある意味での反逆未遂事件。論文コンペへ向けた準備だけでも手一杯なのにこうも事件が起こってはそれどころでは無くなる。私も生徒会室から風紀委員会本部への連絡や職員室への報告などお留守番としての仕事を十分以上に働いていた。

 

そして遂に大亜連合軍の作戦が本格化してくる。昨日の産学スパイ容疑の一件で八王子にある収監所に収監されていた第一高校3年で元風紀委員でも関本 勲の事情聴取に七草先輩、渡辺先輩そして達也の3人が訪れその聴取中に侵入者を知らせるサイレンが鳴り響いた。何事かと廊下に出てみるとそこには巨体の男が立っていたそうだ。その名前は「呂剛虎」。大亜連合軍特殊作戦部隊の1人で「人喰い虎」の異名を持つ近接戦闘に関しては世界で十指の1人に数えられる文字通りの化け物級の魔法師である。そんな魔法師に対して渡辺先輩が前に立つもその差は埋められず七草先輩に近づいていくがその前に達也が立ち塞がり「術式解体」で彼が身に纏っていた「鋼気功」を無効化し七草先輩の「ドライ・ブリザード」で呂剛虎の動きを封じ彼を捕えこの日はその後の事情聴取で解散したという。ここまで来たら隠す気は無いのか論文コンペ当日は確実に何かを起こす気であるということがバレバレである。

 

そして迎えた論文コンペ前日の夜私と芽愛さんと弥海砂さんは私の自宅で明日起こるかもしれないということを前提にそれぞれが準備をしていた。

 

「さてと、明日ですが…お2人はどうなさるのですか?」

 

「私達は昨日愛彩様よりあのCADを受け取ってまいりましたのでそれを魔法協会支部に運び、終わった後は会場にて発表を見る予定になっています」

 

「あのCADをこちらに持ってくるほどですか……わかりました何かあれば合流出来るように会場の中にあるV.I.P.会議室に移動しましょう。そこならある程度軍の動きや侵攻軍の動きが分かりますから」

 

「わかりました。五輪家であそこの会議室を使えるように取り計らってもらえるように掛け合ってみます」

 

「お願いします。それでは明日はこのようにしましょう。軍の動きが読めませんが芽愛さんと弥海砂さんの他にいる皆さんにもこのことは知らせておいてください」

 

「わかりました。他の皆さん方には論文コンペ会場付近での警戒にあたらせます。何かあったら魔法協会へということでよろしいでしょうか?」

 

「ええ、ではお願いします」

 

こうして私達の論文コンペ当日の動きは決まった。軍の動きが一番分からないが何とかなるだろうと思い寝ようとした時電話の音が鳴り響いた。

 

「もしもし」

 

『あぁ、まだ起きててよかった。この前言われたことだが方角に気を付けろということを聞いたって弥海砂さんから聞いたから調べてみたらおそらくこれだろうという魔法を見つけた』

 

「それで?」

 

『魔法の名前は「鬼門遁甲」。この魔法は精神干渉系魔法の1つで人々を術者の望む方向へ導くことが出来るそうだ。この魔法の本質は、分岐点において特定の方角に意識を向けさせる、あるいは向けさせないことにあるからこそそう言われてるんだろうな。これで大亜連合だということがわかったな』

 

「なるほど……ありがとう愛彩。また今度正月に会えることを楽しみにしてるわ」

 

『大したことじゃない。だが彩海奈死ぬなよ?まだお前にはしてもらうことがたくさんあるんだからな』

 

「はいはい、分かったわよ。論文コンペが終わったらまた頑張るから」

 

『うん!じゃあ芽愛さんと弥海砂さんによろしくね!』

 

「じゃあ、またね」

 

こうして九重八雲が言っていたことのおおよそが分かった。後は実際にそうならないようにするだけなのだが生憎私には精神干渉系魔法の適正はない。だからどうしようかと思いながら明日に備えてゆっくりねむりについた。

 

 

ーーーーー

 

☆達也視点☆

 

明日は遂に論文コンペだ。これまでの事や「人喰い虎」呂剛虎、FLTに来た謎のハッカーの全てを持っても俺が持っている勾玉型の聖遺物狙いであろうことがわかる。そしてそれを欲している国が大亜連合ということも。おそらく明日は何時くらいか分からないが横浜に攻めてくるのは間違いないだろう。おそらくちょうどこっちに来ている独立魔装大隊もこれを見越しての招集なのだろう。以前土浦にある独立魔装大隊本部を訪れた時に渡した戦闘服でも出来たのだろうか。何はともあれ何かが起きるはずだ。

 

そして最も分からない動きをするのが深雪と共に一高一年女子のダブルエースの一角の五輪 彩海奈の実家である五輪家だ。彼女は夏に行われた九校戦で本戦で優勝を飾っている、そして何よりも彼女が使っている魔法、CAD共に今まで見たことが無いものだった。魔法はともかくCADに関してはこれでも色んなものに触れていて大凡は知っていると思っていたが今まで見たことも無いものだ、ただあのCAD俺のCADの「シルバー・ホーン・トライデント"カスタム"」と性能面で同じように見えた。この俺のCADは俺専用に作っていて他には無いはずなのだが似た物を作れるというのは五輪家もしくは第五研にこの俺と同等の技術持った技術者がいるのだろう。一体どんな奴か見てみたいものだ。

 

そしてそれ以上に気になるのが彼女の魔法技術だ。深雪は四葉の直系のため魔法力は普通とは言えないほどに高い。深雪は「誓約」の枷を嵌めている状態で入試における能力は全力では無かったにも関わらず深雪は実技で1位で彼女は2位だった。そして九校戦彼女は本戦アイス・ピラーズ・ブレイク、新人戦女子バトル・ボードに出場しどちらも優勝そしてどちらも優勝しアイス・ピラーズ・ブレイクでは圧倒的、バトル・ボードでは九校戦の新人戦レコードを更新するほどでさらに見たことも無い魔法を使っていたという点から考えても魔法力は深雪に匹敵或いはそれ以上という可能性もある、それこそ俺の同じような扱いかもしれない。さて話が脱線していたが五輪家の動きに関しては本当に読めない。レオの話によると2人の女性が此方にいるというのは分かっているがそれ以上のことは分かっていない。それゆえに一体どれくらいの規模でこちらにやってきてるのかが分からない以上下手に動けない。娘が本家から遠く離れて東京で生活しているのだ、東京に五輪家と懇意にしている名だたる魔法師の1人や2人がこちらに来ていてもおかしくはないと思っている。そして彼女も相当実戦慣れしているようでこれもレオから聞いた話ではあるが彼女のブランシュの構成員に対する戦闘は相当手練していると言えるそうだ。

 

コンコン「お兄様、まだ寝られないのですか?」

 

「あぁ、もう少ししたら寝るよ」

 

「明日なのですが…お兄様は…その…」

 

「あぁ、おそらく…行かなければならないだろうな」

 

「……そう…ですか…」

 

「深雪、お前は心配することは無い。それにお前の周りには雫やほのか、エリカ、幹比古そしてなんと言っても彩海奈がいるんだ。この前みたいなことにはならないだろう。それはお前が分かっているはずだ」

 

「それはそうなのですが…深雪はお兄様が心配なのです…」

 

「……俺はお前を残してお前の前からいなくなったりはしないよ…だから明日はお前も気をつけてくれ」

 

「はい……では私はこれでおやすみなさい」

 

「あぁ、おやすみ。それで何時までそこにいるつもりですか?」

 

「あら、気付いてたの」

 

「深雪が入ってきた時には既に中にいたのは気付いてたよ」

 

「そう……それでまた何か考え事をしていたわね」

 

「あぁ、明日だけどやっぱり来るみたいですから。それのことと」

 

「彩海奈ちゃんのこと?」

 

「……なんで分かるんですか」

 

「貴方が考えることくらい母親ならわかるわよ。彩海奈ちゃんのことは本家に任せておきなさい。まだ貴方が考えることでは無いわ、これは十師族としてのことで貴方達は世間的には違うのだから。……それにしても真夜ったら……」

 

「…………」

 

こうして達也と深夜の親子の会話は日付けを跨ぎ午前3時まで続けられ深夜が眠ってしまったところで穂波を呼び今日は寝ることにした。

 

 

 

遂に訪れる論文コンペ当日。この論文コンペ本番にたどりつくまでに色んなことが起こり、一高としてはまた九校戦みたいなことが……ということで不安になっているものの論文コンペということで一高のプレゼンさらには他校のプレゼンが気になっていた。そしてまだ大亜連合軍だけしか知らないが当日こんなことになるとは知らないまま論文コンペ前日は過ぎていった。それが魔法師にとっての歴史的な日になることは誰にもわからぬままその歴史的な日を迎えるのであった。




如何でしたでしょうか?CADの設定集の後書きに書いた通りになってしまいました←

書いてて思ったのは横浜騒乱編って開始から当日までに書いてることと当日から集結までに書かれていることの内容多すぎて自分執筆スピードが遅いですから書いてるとあっという間に春をすぎて梅雨になってそうな気がしたので過程部分をごっそり削ぎ落としました←
(作者は梅雨の時期とかジメジメしていると体調優れないとかよくあるので……)

次回は多分論文コンペ開幕から最初の爆発までだと思います。そして次話からは何処から何処という風に区切りながら投稿していくので文字数は今回の話とかと比べて少なくなることをご報告させていただきます(予定変更有り)

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告してください


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

論文コンペ当日、各校の発表と最初の陽動

はい。今日でもう平成も終わりですね。そんな中この作品では戦争(?)に入っていきます。

前書きって案外思いつかないんですよね書くことが←


論文コンペ当日、私は朝から家の中でいそがしくしていた。前日に五輪本邸から持ってきたという私の戦略級魔法を発動するのに必要なCADの準備をしていた。これが終わり次第このCADは芽愛さんと弥海砂さんにより魔法協会支部に運ばれ必要となった時には弥海砂さんにより論文コンペ会場にあるV.I.P.会議室に運ばれる流れになっている。

 

「ふぅ……さすがは愛彩ね。調整は完璧だわ」

 

「良かったですね、彩海奈様。ではこちらのケースに」

 

「ええ。「ガチャン」さて、これで何か起きたら昨日の通りよろしくお願いしますね」

 

「はい。私達もこれを魔法協会支部に置きましたら論文コンペ会場にて向かいますので何かありましたら何時でもご連絡ください」

 

「わかりました。では芽愛さん、弥海砂さんよろしくお願いします」

 

「はい。私達も何かありましたらご連絡しますので。そしてあの御方達がこちらに来ているそうなので何分ご安心かと」

 

「あの御方達も来ているのですか…それは安心ですね」

 

「ええ。ですからあまりご無理はなされないようにお願いします」

 

「わかりました。それと大変有意義な情報ありがとうございます」

 

芽愛さんと弥海砂さんはしばらくして私の家を出て魔法協会支部へとCADを置くために向かい、私も論文コンペの発表を見るために家を出る。会場となる横浜国際会議場まではコミューターで移動した。横浜国際会議場に着くとそこには一高から九髙まで各高校の制服を着た少年少女達がいた。さらに少し目立つ程度ではあったが外国人の姿も見られた。

 

「それにしてもすごい数の人ね…何処かに誰かいないかしら」

 

「あら?お久しぶりね、彩海奈ちゃん」

 

「えっと、藤林響子さん?でしたっけ?」

 

「ええ、合ってますよ。それで少しお話しませんか?」

 

「えっと大丈夫ですよ。でも何処でしましょう?」

 

「V.I.P.会議室を使いましょう。抑えてるんでしょう?」

 

「何処でそれを…」

 

「「電子の魔女」の異名は伊達じゃないわよ」

 

「それはお見逸れを…」

 

私はこれからV.I.P.会議室を予期せず使うことになり芽愛さんと弥海砂さんに連絡を入れておいた。「V.I.P.会議室を一時的に部外者の方と使うためCADと共に魔法協会で待機してください」と。

 

「それにしても久しぶりね。それでこの会議室を使用出来るようにしておいたのは何のためかしら?」

 

「それは五輪家の秘密ということになっているため私からは何とも、藤林少尉」

 

「私が軍属っていうこと知っているのね…五輪家の情報収集技術も流石というところかしらね」

 

「それで私になにか御用でしょうか?二高の卒業生で九島の近縁の貴女が五輪の私に近づくと何かと噂立ちません?」

 

「今日」はここには防衛省の技術士官としてやってきたから大丈夫よ。私がここにいても何ら不思議ではないしこうしてあっているのも私が九島の代理人としてではないからね。それで本題だけどこれまでのこと彩海奈ちゃんはどれくらい知っているかしら?」

 

「大亜連合軍の特殊作戦部隊の「呂剛虎」がこちらにしていることから加味しても今日、ここを狙った大規模な軍事作戦を行おうとしてることなら。後はこちらにも来ているんでしょう?あの御方達が」

 

「概ねその通りね。でその「呂剛虎」だけど一高の七草さん達が捕まえてくれたお陰で何とか平穏に済みそうよ。あ、このこと他言はしちゃダメよ。一緒にいるあのお嬢さん達には構わないけれど」

 

「わかりました。それで私からも1つ質問させてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「何でしょうか?私が答えられる範囲なら構わないけれど」

 

「もし今回のことで姉さん…五輪 澪が出征する可能性はあるでしょうか?」

 

「無いとは言いきれないわね。もしかしたら出征してもらうかもしれないし……これは参謀本部が決めることだから」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

「…………やっぱり彩海奈ちゃんはお姉さん思いなのね」

 

「別に…そういう訳では無いのですが…」

 

「照れなくてもいいわよ。私一人っ子だったからそういうの羨ましくて」

 

「……失礼します」

 

「うん。じゃあ、また会えることを楽しみにしてるわね」

 

私は藤林響子さんと別れ、会議場の踊り場へやってくるとそこには達也、深雪そして一条君がいた。

 

「あ、彩海奈。もう会場に着いていたのね」

 

「うん。それでここで何してたの?」

 

「会場に着いたら、場内の警備をしていた一条君にたまたま出会ったのよ」

 

「そうなのね。九校戦のダンスパーティー以来ですね、一条君」

 

「は、はい。それで五輪さんは今日は発表を見に来られたのですか?」

 

「ええ、自分の高校の発表と第三高校の発表を見に。一高はともかく三高のカーディナル・ジョージの発表などそう簡単に見られるものじゃないですから」

 

「そうでしたか。ここの警備はお任せ下さい」

 

「ええ、やっぱり実戦経験のある魔法師がいると安心しますね。ね、深雪」

 

「え、ええ。一条君よろしくお願いしますね」

 

「は、はい。必ずや」

 

「はぁ…それじゃ行こうか。またな一条」

 

「あ、あぁ」

 

「十三束君も頑張ってね」

 

「う、うん。五輪さんも何があるかわからないから気をつけてね」

 

「ありがとうね。それでは私も、少し用事がありますので」

 

こうして私達はそれぞれの場所へと散らばった。一条君と十三束君は会場内の警備に、達也と深雪は共に一高控え室に、私は会場の外で待機している五輪家の配下の魔法師で東京に在住している人達の元へと向かっていった。

 

私は配下の魔法師の元へと向かうとそこにはCADを預かっているはずの弥海砂さんの姿があった。私はどうして?と思ったがなにかあったに違いないと思ったため気にせずに話し始めた。

 

「さてと、じゃあ昨日の内に言った各配置場所に付いて大亜連合の襲撃に備えてください。決して無理はせずに自分の命が危ないと思ったら直ぐに立ち去ってください。ただ魔法科高校の生徒が近くにいたら助けてあげてください」

 

「「「「「「はっ!」」」」」」

 

「それで弥海砂さんはどうしてこちらに?」

 

「1つ報告があります。横須賀にある特別収監所に移送中だった「呂剛虎」を乗せた移送車が襲撃され生存者無し、「呂剛虎」は逃亡した模様です」

 

「何故今日に…」

 

「軍は何を考えているかわかりませんがとりあえずお気をつけください」

 

「わかりました。皆さんも気を付けてください。では各配置に付いてください。今日が終わったらまた五輪本邸でまた会いましょう」

 

私と弥海砂さんそして五輪家の配下の魔法師の人達がそれぞれ持ち場につき警戒にあたることにした。私は直接会場に向かい、弥海砂さんは芽愛さんと合流するため離れていった。会場に着くと達也と深雪が藤林さんと一高控え室から出てきたのを見て何故?と思ったが藤林さんが防衛省の技術士官であることを思い出し達也が九校戦において離れ業を成し遂げたのでそれを見てということと思いその場から会場内に入っていった。

 

会場内は既に魔法科高校の生徒達でごった返しており私は何処に座ろうかと思ったが偶然近くにエリカ達がいたため私はその隣に座った。

 

「それにしても来たのね。今日はどうもきな臭い匂いしかしないのだけど」

 

「だからこそよ。そのために私達は準備してきたんだから」

 

「あまり無茶はして欲しくないのだけれど、それは無理そうね」

 

「そういうことよ」

 

その後私達は各高校のプレゼンを見ていてお昼も一緒にいながら一高の発表の順番を待っていた。そして数分後準備が整いプレゼンが始まった。一高の研究テーマは

 

「重力制御魔法式熱核融合炉の技術的可能性」

 

これは市原先輩が研究テーマとして扱っていたものであり加重系魔法の技術的三大難問の一つでもある。代表メンバーには2年生の五十里先輩と1年生の達也になっている。

 

それから市原先輩によるプレゼンテーションが始まった。私はこの分野においてはあまり知識がないものの大まかには理解出来た。詳しい話は今度愛彩にでも聞いてみようと思った。プレゼンテーションが終わり一高の機材の片付けをしながら次に行う三高(カーディナル・ジョージ)がプレゼンの準備を始めようとしていたその瞬間

 

ドゴォォォォォォン

 

爆発音が会場内に鳴り響いた。ホールの中は遮音性が高いがそれでもこれ程までに鳴り響くとなると近い場所で起きたと想定すべきだ。

 

ドガッ「全員デバイスを外して床におけ!」

 

大亜連合軍(?)の兵士が会場内に入り込み強い口調で言い放った。私達は一応彼らに従いデバイスを床においた、だがステージ上では吉祥寺君が何か魔法を放とうとしたところを大亜連合軍(?)の兵士が銃を打った。使っていたのは魔法師用のハイパワーライフルでそれは並の犯罪組織では手に入れられないため敵は大亜連合ということが確定した。(以下大亜連合)

 

そしてステージの前では達也といつの間にか前の方に行っていた深雪が合流した何やら話しているようだがここからでは聞こえない。そして大亜連合の兵士が達也に向かって何か言っているが達也は気にせずに深雪と話していた。そしてそれに激高した大亜連合の兵士は達也に向かって銃弾を放った。会場の各地から悲鳴が聞こえる。しかし達也と深雪の方からは何も聞こえない。会場からは「弾を掴み取った……」、「一体何が起こったんだ……」という声があちこちから聞こえた。私自身も何が起こったのかは分からなかった。銃弾は確かに達也に向かって放たれた。だがその銃弾は達也を突き抜けることも無ければ弾いたわけでもない正真正銘何処かに"消えた"。大亜連合の兵士も何が起きたか分からなくなっていたが狂気の沙汰のように達也に向けてナイフを向け突進していったがすぐに無力化された。そしてこれを機に会場内の大亜連合の兵士は取り押さえられた。私達は達也に着いた血を深雪が落とすと達也の元へ駆け寄った。

 

「お怪我はありませんか!?」

 

「ああ、この通り何ともない」

 

「それでこの後はどうするの?」

 

「とりあえず爆発したのはグレネードだろう、今はここに留まるのが一番だが」

 

「待ってろなんて言わないわよね?」

 

「突っ込まれるよりはマシか……」

 

「それもそうね。エリカならそうするわね」

 

「ちょっと、なんでよ」

 

「ごちゃごちゃしてるのなら行くぞ?」

 

「わかったわよ。じゃあ行きましょう?」

 

「ま、待て、司波達也!」

 

「何の用だ吉祥寺真紅郎」

 

「さっきの魔法は……USNA軍スターズ先代総隊長ウィリアム・シリウス少佐が開発した「分子間結合分割魔法(分子ディバイダー)」じゃないか!?」

 

私はこの吉祥寺君の答えに疑問を持っていた。分子ディバイダーは薄板状の仮想領域を物体に挿入し、クーロン引力のみを中和し、クーロン斥力により分割する魔法。電子の電荷の符号を見かけ上逆転させることで、電子が正の電荷を持つように振る舞い、電磁気的引力が斥力に逆転する。その結果領域内では分子同士の結合が解かれ気体化するという魔法だったはずだ。ただそれはUSNAの機密術式のはず達也のような一般市民、私のような十師族でも持ち合わせていない。文字通りUSNAでもほんのひと握りの人しか知らないはずだ。だが達也はそんな吉祥寺君の意見をまともに取り合わなかった。

 

「だからどうだと言うんだ?今すべきは早くここから出ることだろう?七草先輩、中条先輩今すべきことはわかっていますよね?さぁ行こうか」

 

「はい、お兄様」

 

「吉祥寺君私が言うのもなんだけどこういう有事の際は1つ1つのことに精査しないで今できることをやろう?七草先輩この場をよろしくお願いしますね?」

 

「え、ええ」

 

こうして私達はホールを出ておそらく戦闘が始まっている戦場へとくりでた。今頃配下の魔法師のみんなや芽愛さんと弥海砂さんも同じような状況だろう。そして私は祈った、どうかみんなが何事も無くこの事態を収束できるように、と。

 

 

遂に始まった大亜連合の日本への侵攻。次々に起きていく予期せぬ事態や出来事はこれからも起きていくだろう。果たして終結にはどんな結末が待っているのだろう?これはまだ誰も知らない。だが時は終結へと動き出していく。それは魔法がこれまでの兵器と一線を画すそんな結末はまだ誰も知らないし予期出来ぬことになることを。

 




如何でしたでしょうか?次回からは作者の苦手(?)とする戦闘描写がいっぱい出てくると思います(泣)

読者の皆さんにとって平成とはどのような時代だったのでしょうか?まだ平成でしか生きてないという人もいると思います。それでもこの平成という時代が皆さんにとって良い時代でありこれから始まる令和の時代も良い時になることを祈ってます。

そして少し喜ばしいムードの中これを書くのはちょっとあれなんですけど次回は会場入口でのシーン、そしてそこからの達也の秘密情報が明らかになるシーンとオリジナルシーンを入れたいと思います。(V.I.P.会議室のところからまさにそうなります)

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします。

令和になってもこの作品をよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

会場付近の攻防と達也の秘密

はい。横浜騒乱編第3話です今回はタイトル通りに達也の秘密が明かされるところまでで局所的にオリジナルを加えてます

LOSTZEROで亜夜子と文弥、水波のレジェンドレアが当たらないのが辛い……

そして今回の話は令和最初の投稿になります。今後ともよろしくお願いします


会場を出た私達は達也曰くグレネードが爆発したと思われる会場入口付近を目指し会場内を走っていた。達也とレオ君、エリカを先頭に深雪、雫、ほのか、幹比古君、美月、エイミィそして一番後ろに私の順で走っていた。

 

「待て」

 

「グエッ」

 

達也がレオ君の首を掴み後ろに引っ張った。

 

「おそらく対魔法師用のハイパワーライフルだろう。深雪、頼めるか?」

 

「はい、お兄様」

 

深雪が「凍火(フリーズフレイム)」を発動し敵のハイパワーライフルを無効化した。それを確認すると達也とエリカが持ち前の身体技術と簡単な魔法を使いながら大亜連合の兵士を次々と倒していった。ほのかと美月とエイミィ、雫にとっては少し酷なものだったに違いない。

 

「すまない。少し見るに堪えないものだった」

 

「い、いえ私は大丈夫です……」

「わ、私も……」

 

「いつつつ、達也この後はどうするんだ?」

 

「情報が欲しい。この深刻な事態のまま突っ込むには少し分が悪い。もしそうするて泥沼にハマリかけないからな」

 

「それならV.I.P.会議室を使ったら?あそこなら色々な情報にアクセス出来たはず」

 

「なら、そのV.I.P.会議室を使おう。さすがにこの状況下で使用中ということは無いだろう」

 

「そう…ね…でも確か会議室に入るには暗証番号が必要だったはずよ」

 

「大丈夫。私がパスコードも暗証番号も知ってる」

 

「そうなのね。なら、行きましょう」

 

こうして私達はこの論文コンペ会場内にあるV.I.P.会議室へと向かった。この会議室には3つのV.I.P.会議室がありそのうちの1つを五輪家が使用出来るように取り計らっているため必然的に空いている残り2つの会議室のいずれかを使うことになる。そして私達はその残り2つの内の1つの会議室に入っていった。そして会議室にあるモニターには一般回線には現在の戦況が映し出されていた。

 

「ひでぇな……」

 

「ええ、国防軍も何とか頑張ってるみたいだけどどちらかというと押され気味ね」

 

「これからどうなさいますか?お兄様」

 

「まずここを抜け出す前に時間が欲しい、そして例えここから抜け出すとしても地下のシェルターじゃなくて上を通りたい」

 

「どうして上……っとそうか」

「どうして時間を?」

 

「(さすがは、千葉家の娘だな)この論文コンペで使われた機材を処理しておきたい」

 

「そっか、ここを占拠されて技術が流出しても困るしね」

 

「それじゃあ行こうか。みんな決して無理はしないでくれ」

 

「おうよ(ええ)(もちろんよ)(うん)(はい)」

 

こうして私達は達也が言った通り機材が置かれているはずのステージ裏に向かった。そこに辿り着くとそこには七草先輩や五十里先輩達がまだそこには残っていた。

 

シュイーン「!七草先輩、ここを離れたのではなかったのですか?」

 

「ええ、ここにいるメンバー以外は全員あーちゃんや他の高校の生徒会長の指示のもとに各校の集合場所へと散らばったわ」

 

シュイーン「七草、司波、五輪お前達はまだ残っていたのか」

 

「会頭…自分達は実験用デモ機の処理をと思いまして」

 

「それで中条達はどうした?」

 

「中条達なら地下シェルターに向かいましたが…」

 

「!?」

 

「司波、何か問題があるのか?」

 

「いえ…あくまで可能性の話ですが地下のシェルターへの通路は一本道ですからもしかしたら」

 

「遭遇戦……」

 

「服部、沢木すぐに中条達の後を追え!「「はっ!わかりました」」桐原、付いてきてくれ。俺達はもう少し会場内をあたってくるお前達も早く脱出しろ」

 

「あぁ、気を付けろよ十文字」

 

「司波君達は控え室にあるデモ機の処理をお願いできるかな?」

 

「それが終わったら一高の控え室に集合しよう。そこで今後のことについて議論しよう」

 

私達は渡辺先輩の意見に賛同し私達はステージ裏にある控え室に向かいデモ機の処理を終え一高の控え室に向かった。するとそこには既に終えていたのか渡辺先輩達の姿があった。

 

「先程中条さん達から連絡がありましたが残念ながら司波君の予想は当たってしまいましたが既に撃退出来ると中条さんから連絡がありました」

 

「ということだ。これからどうする?」

 

「どうするも何もここからは出ないと何も出来なくないですか?」

 

「それもそうね……それじゃあ…!?達也君!?」

 

「おい、司波何をしている」

 

「お兄様!」

 

「わかっている」

 

☆達也side☆

 

この状況は非常に好ましくない。不特定多数の第三者がこの場で俺の秘密を明かしてはならない。ただでさえ七草先輩は「マルチスコープ」で見ている、そして彩海奈も知覚系魔法は持ち合わせてないと言っていたがもしかしたら知覚系魔法で見ているかもしれないただそれをごまかすためにはあまりにも時間が足りなすぎる。深雪が思っていることもあるけど……

 

『雲散霧消(ミストディスパージョン)』。これは俺の魔法演算領域を占有している魔法の1つの『分解』のバリエーションの1つである魔法でその効果は物質の構造情報に干渉し、物質が元素レベルの分子またはイオンに分解された状態に構造情報を書き換えるものであり、人体を対象とした場合、可燃性ガスが発生し小さい炎が発生するが、分解のレベルを引き上げることで可燃性ガスが生じないようにもできる。そしてこの魔法は軍事機密に指定されている。

 

こちらに迫ってきていたトラックは入口付近に近づいてきた途端何処かに消え去った。

 

「達也君、今のは一体……」

 

「まだです」

 

「!?……揚陸艦からミサイルが!?」

 

一難去ってまた一難そんな出来事が起こっていった。

 

☆達也side終わり☆

 

七草先輩が「マルチスコープ」を使って達也の魔法を見てからその後大亜連合の偽装揚陸艦からのミサイル発射を知った私はそれに対処すべく動いていたが直前になってその準備を取り止めた。そう十文字先輩と国防軍101旅団独立魔装大隊の真田さんがこのミサイル対処に向け動いていたため私は意識を外から今いる一高の控え室へと向けた。

 

「ねえ、達也君さっきの魔法は何?」

 

「他人の魔法を詮索するのはマナー違反ですよ、会長」

 

「ちょっと、遅かったようですね」

 

「え?」

 

ガチャン「お久しぶりね、真由美さんそして彩海奈ちゃん」

 

「え?え?響子さん?」

 

「お久しぶりといわれても今朝方ぶりですね。藤林さん」

 

「彩海奈ちゃんはそうだったわね」

 

次の瞬間私達の目の前に藤林さんと同じ軍服を着た男の軍人さんがやってきた。あの方は確か「大天狗」風間玄信少佐…あくまで噂であった国防軍101旅団独立魔装大隊隊長であり階級は少佐なのだが噂ではある出来事により昇級が遅れているというだけで実際は大佐クラスでは無いのかとも言われている。そんな方がなんでここに…

 

「特尉、情報統制は一時的に解除されています」

 

藤林さんが言ったその言葉に私は疑問を持った。誰にその言葉を投げかけているのか周りの反応を見る限り七草先輩や十文字先輩でもなさそうだ。そして次の瞬間その言葉が誰に向けられたのかがわかった。

そう達也だ。達也は陸軍式の敬礼を執りその場に立っていた。

 

「国防陸軍少佐の風間玄信と言います訳あって所属は控えさせていただきます」

 

風間少佐が自分の挨拶が済むと同時に十文字先輩と真田さんがこの部屋に入ってきた。

 

「貴官が風間玄信少佐でありましたか。申し遅れました師族会議十文字家代表代理十文字克人です」

「同じく師族会議七草家七草真由美です」

「同じく師族会議五輪家五輪彩海奈です」

 

「藤林今現在の情勢を説明してあげろ」

 

「はい。我が軍は現在、保土ヶ谷駐留部隊が侵攻軍と交戦中。また、鶴見と藤沢より各一個大隊が当地に急行中。魔法協会関東支部も独自に義勇軍を編成し、自衛行動に入っています」

 

「ご苦労。さて特尉、この状況に鑑みて保土ヶ谷に別任務で出動していた我々の隊にも先程防衛命令が下された。国防軍特務規則に基づき貴官にも出動を命ずる」

 

「なお国防軍は皆さんに対し、特尉の地位について守秘義務を要求する。本件は国家機密保護法に基づく措置である事を理解してもらいたい」

 

この風間少佐からの一連の言葉が終わり私達はみな黙ってしまった。そんな中この空気を破ったのは達也だ。

 

「すまない、こういうことだから聞いての通りだ。みんなは先輩たちと一緒に避難してくれ」

 

「特尉、皆さんの護衛には私と私たちの部隊が付きます」

 

「特尉、君の考案したムーバル・スーツをトレーラーに準備してあります。急ぎましょう」

 

「少尉、ありがとうございます。では急ぎましょうか」

 

「いえ、特尉も頑張ってくださいね」

 

「お待ちください、お兄様」

 

深雪が達也のことを呼び止めると達也は深雪の前に膝を付きまるで戦場に向かう兵士がお嬢様に呼び止められ別れのシーンの一部分のようだった。深雪は達也の額にキスをするとした途端にこの控え室を覆うほどの想子が飛び交っていた。そこにはまるでこれからこの日本を守る光のような存在だった。

 

「行ってくる」

 

「ご存分に」

 

こうして達也は控え室を出ていきこの部屋には達也を除く一高の主要メンバーが取り残された。

 

「それでは行きましょうか」

 

「すみません、少しよろしいでしょうか?」

 

「どうかしたの?」

 

「すみませんが私はここから皆さんとは別行動を取らせてもらいます。なおこの後の行動に関しては五輪家当主の許可を得ています。さらに国防陸軍少将佐伯広海からも許可を得ていると申しておきます」

 

「佐伯少将から!?それは本当なのですか、風間少佐」

 

「あぁ、先程連絡があり彼女の行動に関して単独行動を容認すると」

 

「単独行動では無いのですが…それでは事態は刻一刻と動いていますので私はこれで失礼させてもらいます」

 

「待って、彩海奈ちゃん」

 

「何でしょうか?七草先輩」

 

「私個人としては今回の別行動には許可は出せないけど五輪家として認めるなら私は止めないけど一高の先輩として言うわ。『必ず、帰ってきなさい』…私からはそれだけよ」

 

「あぁ、師族会議の出席者として俺からも七草と同じことを言わせてもらう。五輪殿の考えに対して俺はとやかく言うつもりは無い。ただ一高の先輩さらには十師族の年長者として言う。『必ず帰ってこい』」

 

「わかりました。それじゃあまた学校で会おうね」

 

「ええ、彩海奈貴女とはまだやりたいこと沢山あるんだから絶対に帰ってきなさい」

「そうだよ。まだ彩海奈とはアイス・ピラーズ・ブレイクで戦えてないんだから来年楽しみにしてるんだよ?」

「わ、私も来年バトル・ボードで対戦出来るの楽しみにしてるんだからね」

「僕とレオも君には色々助けられたことをわすれたりはしないしまだまだ教えて欲しいこともあるからそれにエリカとあれだけしゃべれるのは君とレオくらいだからね」

「なんか幹比古の言ってることに釈然としねぇがあの日のことまだ返せてねぇからそれを果たすためにも必ず帰ってこいよ」

「あんたと同感だけど私も彩海奈と一緒にいられる時は楽しいからこれからもその日常過ごしていきましょ?」

「わ、私もこれからも一緒にいたいと思うので絶対帰ってきてくださいね?」

 

「ほら、彩海奈ちゃんにはこれだけ待ってくれる人がいるんだから絶対に帰ってきてよね?」

 

「はい、はい…深雪、雫、ほのか、幹比古君、レオ君、エリカ、美月私絶対に帰ってくるからみんなも絶対に帰ってきてよね。そして私と共に途中退席した奴にも絶対に帰ってこいって伝えてくれないかしら?」

 

「ええ、わかったわよ彩海奈」

 

「じゃあまた学校で会おうね。それじゃあ失礼します」

 

私はこうして一高の控え室を出ていき五輪家が使っているV.I.P.会議室へ向かった。会議室に着いて中に入った私はまず制服を脱ぎ動きやすい服装に着替えると弥海砂さんが部屋にやってきた。

 

「彩海奈様。こちらが今回愛彩様から届けられたCADになります。「ミスティック・クァインツ プライムエディション」になります。データは前回帰省した際に取られたデータを元に調整してありますので」

 

「ええ、ありがとうございます。これが「プライムエディション」……愛彩が今現在の最高傑作と言うCAD……ありがとうございます弥海砂さん」

 

「いえ、それでは参りましょうか。芽愛姉さんも既に出ていますから」

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 

こうして遂に大亜連合が本格的に横浜に侵攻を始めた。その中で明かされた達也の秘密。それは私が戦略級魔法師であることと同じくらいの機密情報として扱われていた。そして達也と私は違う場所にいながらも同じ目的をもちながら戦っていた。そして次々に広がる戦闘地域。そこでは私と同じ十師族或いは十八家の人達が戦っていた、そして大亜連合からも不穏な影が……?




如何でしたでしょうか?相変わらずほぼ原作通りでところどころオリジナル加えました。

次回は最初に深雪達の達也達が去った後のところからの話と後半部分にオリジナルの話を加えますなので場面的にはあまり進みません

そして評価pointが200に乗りました。改めてお気に入り登録してくれている方々、評価をしてくださった方々ありがとうございます

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字も報告よろしくお願いします。

令和は皆さんはどういった年にしたいでしょうか?私的には何事もなく平穏に終わりたいです(100%無理)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

みんなの決意そして放たれる力

はい。横浜騒乱編ももう4話目?ですね←

横浜の地図とにらめっこしながら書いてましたけど論文コンペの国際会議場のモデルってパシフィコ横浜でいいんですかね…


達也と彩海奈が部屋を出ていってから風間少佐は隊へと戻っていき控え室には藤林少尉を始めとした国防軍の兵士、七草真由美、十文字克人を筆頭に一高の主要メンバーが残っていた。とりあえずこの会場から出て桜木町にある地下シェルターへと移動していた。だが桜木町駅前のシェルター入口付近は既に入口が閉ざされるように地盤が崩されていた。その上には直立戦車が立ち塞がっていた。

 

「直立戦車…一体何処から…」

 

「このっ」

 

「花音、『地雷原』はまずいよ!」

 

「分かってるわよ。だから……」

 

ドガガガ キンキンキンキン

 

「さすがは真由美さんと深雪さんねそれで真由美さん達はこの後どうしますか?」

 

「こうなってしまっては…私は父にヘリを寄越すようにかけあってみます」

 

「私も父に会社のヘリを寄越すように言ってみます」

 

「わかりました。ではここに部下を置いておきますのであとは」

 

「いいえ、ご懸念には及びませんよ藤林さ……少尉」

 

「警部さん!(和兄貴!?)」

 

「市民の保護は警察の仕事です。藤林少尉殿はどうか国防のためにご尽力してください」

 

「わかりました。では警部さんこの場はお任せします」

 

「藤林少尉殿。車を1台お貸しいただけないだろうか?」

 

「何処に行かれるのですか?」

 

「魔法協会支部へ。十師族に名を連ねる者としてこの事態を無視する訳にはいきません」

 

「わかりました。音羽伍長、楯岡軍曹、十文字克人殿を魔法協会支部まで護衛なさい」

 

「「わかりました」」

 

「じゃあ私もこれで。千葉警部後のことはよろしくお願いしますね?」

 

「は、はい……それにしてもいい女だねえ」

 

「あ、和兄貴には無理無理」

 

「はぁ……それとエリカ俺はお前にある物を届けてやってきたんだぞ?」

 

「はあ?…ってそれは『大蛇丸』!?どうしてここに?」

 

「これを使えるのはお前だけだからだ。俺や親父、修次じゃ型をなぞらえることは出来ても使えるとは言えない。だからこれはお前の剣だ。それにこういう時は素直に受け取れ」

 

「ふっ、ふん…そういうことならしょうがないから使わせてもらうわ」

 

「全く…素直になれないのかねあいつは」

 

「えーっとそれじゃあ何処からまた来るか分からないから迎撃チームを組みましょう。基本的には1年生と2年生に別れてその警部さんには2年生の方に付いて欲しいのですが…」

 

「おう!わかったぜ七草のお嬢さん」

 

「それじゃあ摩利を除く他の3年生や少しでも自信がある人達はここに残ってこの場所を死守しましょう」

 

「「「「「「はい(おう)(わかりました)(ああ)」」」」」」

 

ーーー場面は変わりーー

 

「それで芽愛さんと弥海砂さんを除く他の人達は?」

 

「はい。未だ死傷者は出ておらず皆さん懸命に戦っているみたいです」

 

「そうですか…では私も行きましょう。『プライムエディション』は戦略級魔法以外にも使えるように設計してありますよね?」

 

「はい。愛彩様からは特化型と同じくらいのスピードで異なる系統の魔法でも動くということは実証済みとの報告です」

 

「わかりました。では行きましょうか弥海砂さん」

 

こうして私は愛彩が作った最高傑作の『ミスティック・クァインツ プライムエディション』を手に横浜の地へと走っていった。そしてしばらくするとある公園の前に通りかかるとそこには国防軍でも無ければ魔法科高校の生徒でもなく大亜連合の兵士でもない1人の少年がいた。

 

「僕、どうしたの?」

 

「えっぐ、えっぐ、えっとね逃げてる時に護衛の人とはぐれちゃってその…」

 

「わかったわ……じゃあお姉ちゃん達と一緒に行きましょう。大丈夫よ私は僕を見限ったりはしないから。護衛の皆さんが見つかるまで私かこのお姉さんともう1人のお姉さんが見てくれるから」

 

「うっ、うっ、うわぁーん。ありがとう」

 

「あらあらこの時はどうしたらいいんでしょう?」

 

「そっとこの子に寄り添っていけば大丈夫ですよ」

 

「そう…ですか…すみませんが芽愛さんに連絡していただけませんか?」

 

「はい…ですがその必要は無いみたいですよ」

 

「え?」

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「ええ、それとこの子をお願い出来るかしら?」

 

「わかりました…とりあえず安全地帯まで送りますので一時的にこの戦闘領域を抜け出します」

 

「ええ、お願いします。それと誰か女性の方をこの子の傍に付けてやってください」

 

「わかりました。1人この子の護衛のために人員を呼び戻します」

 

「それじゃあ僕、お姉さん達はちょっとこの場所でやる事があるからまた会いましょうね」

 

「え?お姉さん何処か行っちゃうの?僕嫌だよそんなの」

 

「ごめんなさいね、お姉さん少しここでやらなければいけないことがあるから…この事態が終わったら…そうね一緒に何処かに行きましょうか…もちろん護衛の方々の許可を得てからですけど」

 

「絶対だよ!お姉さん。だから必ず帰ってきてね?」

 

「わかったわ……では芽愛さんよろしくお願いしますね」

 

「わかりました…では行きましょうか」

 

「うん!」

 

芽愛さんとここにいた少年は一緒にこの戦闘領域から出るために歩き出した。そして私と弥海砂さんは侵攻してきた大亜連合を追い返すために横浜の街中を駆け巡っていくのであった。

 

私と弥海砂さんは横浜の地で色々な場所で大亜連合の兵士、直立戦車、戦車を相手に次々になぎ倒していった。私が使用している魔法は戦略級魔法の「壊淵」ではなく「全壊」。さすがに地下にシェルターがあるのに地面を陥没させる魔法は使えない。これは千代田先輩と同じで地面を変動させる魔法なので地下にシェルターがあるとはいえ迂闊には使えないので使用していない。弥海砂さんの情報によると十文字先輩と三高の一条君、そしてあの場にいた一高生の精鋭のメンバー達がこの場に留まり義勇軍を編成して交戦しているらしい。私も負けじと次々に表れる大亜連合の侵攻部隊を倒していった。

 

私達が次々と倒していく中私達の上を何かが通り過ぎていった。私は思わず見上げるとそこには黒の戦闘服を来た人達が空を飛んでいた。

 

「あれは…誰」

 

「おそらく国防軍の秘密作戦部隊か独立魔装大隊の方達かと…それにしても飛行魔法を扱っているという時点でほぼほぼ独立魔装大隊でしょうね」

 

「それならいいわ。大亜連合の兵士なら全力で潰していたけれど」

 

「それは大丈夫かと…それと美海夏様。当主様からのご連絡なのですが局所的に戦略級魔法の使用を許可するという通達がまいりました。ですが使用条件はあまり人目に付かないところで行うこと、必ず私か芽愛がいるところで使うことだそうです」

 

「……その呼び方から分かっていましたが了解しました。では少し時間をくれませんか?魔法の構成を少し変えます」

 

「わかりました」

 

ーー数分後ーー

 

「ありがとうございました。では参りましょうか」

 

「はい。ではどうしましょう?」

 

「2年生チームの方へ向かいましょう。1年生の方は深雪にエリカがいるのでいても意味は無いので」

 

「わかりました」

 

ーー数分後ーー

 

私達は2年生を中心に構成されている場所に辿り着くとそこは既に交戦していた。そこには千葉家の人だろうか誰かが武装一体型CADを使い直立戦車を倒していた。そしてもう一体の直立戦車も倒すとそこには安堵感が多少生まれていた。だがその安堵感は次の瞬間には無くなっていた。その直立戦車の後ろには大亜連合の兵士が構えており、先輩達を狙っていた。私はそれに気づくと思わず戦略級魔法を選び発動した。そしてその能力は遺憾無く発揮された。もちろんそんな魔法が使われれば誰もが気付きその場にいた2年生の迎撃チームと渡辺先輩は私の方を見たが今の私の姿を見て誰もが私だと理解出来る者はいないだろう。なんせ今の私は普段黒髪ロングでおろしているのだが今は髪を縛っていて、ハーフアップのような髪型をしている。

 

「お嬢様。彼らはどうなさいますか?」

 

「そうですね…!?あれは…達也?」

 

そう今2年生の迎撃チームには五十里先輩が背後から銃弾に、桐原先輩が足に銃弾を受け引きちぎられている。そこに達也(?)みたいな背格好の先程見た黒い戦闘服を身にまとった人がそこにはいた。そして見たことの無い魔法で五十里先輩と桐原先輩を治していった。そして深雪に駆け寄り抱き締めた。この時点で既に達也であることは間違いないだろう。そしてその達也と思わしき人物がこちらに駆け寄ってきた。

 

「お前達は誰だ」

 

「私は如月 弥海砂と言います。こちらは如月 亜沙音と言います」

 

「何故ここに?」

 

「それはある情報筋から今日こちらで論文コンペがあるということとそれとこの横浜に大陸からお客様がやってくるという情報からここにいた迄です」

 

「そうでしたか…では引き続きお願いします」

 

「ええ、そちらこそお願いします。国防陸軍独立魔装大隊の皆さん」

 

「っ、それは一体何処で?」

 

「あら、当たってましたか。そちらの見たことの無い戦闘服そして飛行魔法、さらには見たことの無い魔法。国防陸軍にはクセの強い魔法師部隊があるとは言われてきましたがまさか実在したとは」

 

「このことは出来れば内密にお願いします」

 

「わかりました。お嬢様もよろしいでしょうか?」

 

コクリ

 

「それではくれぐれもお願いします」

 

「はい」

 

こうして達也は再び上空へと飛んで行った。

 

「それでお嬢様どうなさいますか?」

 

「そうね……一高の方は大丈夫そうだから魔法協会支部へ向かいますかそれにしてもさっきのあの魔法……一体何なの……」

 

「私も気になります。今まで色々なところへ行きましたが先程のような魔法は見たことありません……」

 

「ここで話し合っていても埒が明かなそうですので行きますか」

 

「はい」

 

こうして私達は一高の2年生を主体とした迎撃チームの戦闘領域から離脱し再び魔法協会支部へと向かった。その途中大亜連合の兵士とは幾度となく遭遇したが全て返り討ちにして突き進んでいった。途中に芽愛さんから先程の男の子を無事に送り届け再びこちらへ向かうという連絡を受け私は一安心した。そして既にこちらの方に戻ってきているということも併せて報告してきた。

 

私達が魔法協会支部に着くとそこでは激しい戦闘が続いていた。おそらく魔法協会の職員の方達が応戦してはいるものの押され気味であったが私達が到着してすぐに戦略級魔法で対応した。だがしかしパワーを全開にしていなかったからか1人まだこの状況でその場になんとか生き延びている人物がいた。私はその人物を見て驚いた。そこにいたのは大亜連合軍の特殊作戦部隊の1人で近接戦闘において世界の十指の1人と言われている『人食い虎』呂剛虎だった。私は彼が捕まったという情報を得ていたからこそそこにいるのに驚いた。そして彼はこちらを視界で捉えると真っ直ぐに私達の方へと向かってきた。だがここで新たな影が私達と呂剛虎の前に立ち塞がった。

 

「やあぁぁぁぁ」

 

ガキン ズザザザザ

 

「あんた達は下がってなさい。こいつは私達の獲物よ」

 

「わかりました。後はよろしくお願いします」

 

私達は突如やってきたエリカ、レオ君、渡辺先輩、七草先輩にこの場におけることを任せて再び横浜の地を駆け巡った。そこでは化成体を用いた古式魔法による襲撃や直立戦車、戦車隊など色々な形態で横浜へ侵攻していた。そして私と弥海砂さん、先程合流した芽愛さんは論文コンペ会場となっていた横浜国際会議場の対岸にある場所へと来ていた。

 

 

この横浜への侵攻も終焉を迎えようとしていた。それは論文コンペに参加していた高校生にとっては衝撃的な出来事だった。そしてこの大亜連合の横浜侵攻を機に魔法師及び戦争の形が段々と変わっていきあのようなことになるとはまだ誰もが知らないそんな出来事だ




如何でしたでしょうか?戦略級魔法使ったにも関わらずあまり被害がないというのもちょっとあれかなと思ったんですけどさすがに全力全開すると多分横浜が壊滅するくらいになりそうだなって思ったんであまり範囲を広げずに局所的な戦略級魔法として今回は扱いました。

次回で横浜騒乱編もほぼ終わりです。達也が無双する時がやって来ました。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

灼熱の地獄と戦略級魔法師としての覚悟

はい、今回で横浜騒乱編は終結しますが編の終わりではありません。

次の原作である襲撃編(下)が6月8日に発売されるみたいですね!個人的にあらすじ(?)に書いてあったあの魔法がどういうものなのかすごい気になってます←




私達は論文コンペ会場である横浜国際会議場から離れての21世紀前半では山下公園と呼ばれていた場所へとやってきた。

 

「ふぅ…これで一段落ですかね?」

 

「そうですね…後は国防軍が後処理をしてくれると思いますので私達が出来ることはこれで終わりかと」

 

「ではかえ…!?」

 

「どうかしましたか?」

 

「ベイヒルズタワーの屋上であれは先程の方がどうやら何かするみたいですね…周りに藤林少尉、風間少佐、先程の方、それと誰かはわかりませんが国防軍の方がいるようです」

 

「それではここにとどまりますか?」

 

「もちろん…それと彼らはもうこれ以上はすることが無いのでお帰りになって結構ですとお伝えしてくださいませんか?」

 

「わかりました。では弥海砂彩海奈様をよろしくお願いしますね?」

 

「もちろん。じゃないと澪様になんと言われるか…」

 

「え?お姉ちゃんが何と関係あるの?」

 

「彩海奈様もじきにわかると思うのですが……」

 

「まぁいいや。それにしてもベイヒルズタワーの屋上で一体何をするつもりなのかしら……」

 

「私には見えていませんが、彩海奈様が言っていたことから推測するに偽装揚陸艦を撃墜するのではないでしょうか?」

 

「確かに……でもそれだったら私みたいなものが無いと見えない気がするのですが……」

 

「そこは国防軍ですから衛星照準でも使っているのではないでしょうか?」

 

「そうですか……あれは…CAD?あの大きさ…まさか達也は戦略級魔法師!?」

 

そして、その次の瞬間目の前に広がっている水平線に1つの爆発が起こった。私達は何が起こったのかが分からなかった。それが分かったのは十数分後で確かに海洋上に存在していた大亜連合の偽装揚陸艦は姿を消していた。私はその光景に驚きを隠せなかった。私は非公式ではあるが戦略級魔法師、姉さんは国家公認の戦略級魔法師で「十三使徒」の1人である。私達の魔法はその魔法の性質上使われる場面は限られる。だが先程の魔法は私が見る限り超長距離精密射撃を可能とした魔法で国防軍が衛星照準システムを活用して行う魔法でもあり、そして先程の爆発が海上のみでないと仮定するならばその破壊力や貴重さは私や姉の戦略級魔法、他の戦略級魔法師の戦略級魔法(例えばUSNA軍スターズ所属のアンジー・シリウスの「ヘヴィ・メタル・バースト」、ブラジル軍のミゲル・ディアスの「シンクロライナー・フュージョン」など)など比べ物にならないくらい高い。もし仮に達也が先程の魔法を行使できるとして国家公認戦略級魔法師になるものならそれこそこれからの日本の将来は明るいものになるだろう。あの魔法がどのような仕組みや発動規模かは分からないが戦略級魔法にならなければおかしいレベルの魔法だ。他にもまだどんな効果ががあるかは分からないけれどとにかく味方にとってはこれ以上にない魔法であり、敵にとっては最悪の魔法だ。

 

時は流れ10月31日の夜私達は侵攻を受けた横浜から一高がある八王子近辺にある自宅へと帰ってきた。今日のことはどの番組でもニュースサイトでも大々的に取り上げられていた。魔法師を批判する番組、魔法師を擁護する番組等様々であった。今日は家には芽愛さんと弥海砂さんがいてくれるそれだけでも私は心が楽になった。私にとって、そして(非公式ではあるが)戦略級魔法師として初めて実戦というのを経験した。それはそうそう経験できるものではない。私にも最初は何処か心の奥底で何か思うところがあったのだがそれも今では何処かにいってしまった。するとそこに電話が鳴り響いた。

 

「もしもし」

 

『あぁ、彩海奈か。とりあえず無事で良かった。お前の顔が無事に見れてよかったよ』

 

「今回はお力添えありがとうございます」

 

『何、気にするな。彩海奈が戦略級魔法を使うことは絶対に秘密だからな。例え一部の人に今回のことが露見したとしてもあの威力では戦略級魔法師だとは疑われんだろう。いったとしても戦術級レベルかな』

 

「弥海砂さんですか…」

 

『さすがにわかるか……彼女の情報力は申し分ないからな』

 

「あまり酷使させない方がよろしいですよ?弥海砂さんがそれだけ諜報の能力に優れているとはいえ人ですから……だから」

 

『わかっているよ。彼女達は澪が信頼している人だからな、さらにはお前も洋文も信頼している、これらの理由があるのに彼女達を酷使させる訳にはいかない』

 

「それがわかっているならいいです。私からは何も言うことはありません」

 

『そうか…明日からはどうするんだ?』

 

「この様子だとおそらく学校はしばらくは臨時休校になりそうなので家で愛彩と一緒に色々しようかと……」

 

『そうか…』

 

「まだ何かあるんですか?」

 

『澪が今回の件で出征することになった……』

 

「何故それを初めに言ってくれないのですか……」

 

『すまない。本当は止めさせたかったんだが…』

 

「過ぎてしまったことはもういいですが……次は私が行きますよ?」

 

『本当にすまない。だがお前には行かせはしない。今回の件で国防軍にも優秀な魔法師がいることが分かったからな』

 

「そう……ですね……では私はこの辺で…おやすみなさい」

 

『あぁ、おやすみ。今日はお疲れ様』

 

私は電話を切った。相手は五輪家現当主であり私の父。未だにこの五輪家当主とそのご令嬢として話すのは緊張する。そんなことはどうでもいい。今重要なのは姉さんが出征をするということだ。

 

「(私が……私が国家公認戦略級魔法師だったら…姉さんにはこんなことをさせずに済んだのに…私が代わりとなっていたのに……)」

 

私はこんな風に思っていた。例えこの通りになっていたとしても姉さんは絶対にこのことには賛成してくれないだろう。おそらく姉さんが思い描いている世界は自分は国家公認戦略級魔法師でいいから私と一緒に暮らしたい。そして願わくばこの世界に50人はいると言われている非公式の戦略級魔法師でその中にいるであろう誰かが戦略級魔法師として名乗りを上げてくれということを、そうすれば今回のような時には姉さんではなくその人が行くことになるのだから。これは私が勝手に姉さんが思っていることを自分なりに解釈したことだから違うかもしれないけどおおよそその通りであると確信している。

 

「彩海奈様……」

 

「……なんでしょうか?芽愛さん」

 

「辛い時は無理もしなくていいですよ。私も弥海砂も最初は吐きそうなくらいでしたから……」

 

「芽愛さん……が…ですか?」

 

「はい。彩海奈様は今日が初めてとはいえ上出来とも言えることでしょう。澪様のことは私も弥海砂も国防軍に憤ってはいますがそれは澪様の役目でもあります。私達が出来ることは澪様の無事を祈って帰ってきた時に笑顔で迎えることではないでしょうか?」

 

「それも…そうですね…では姉さんが帰ってくる日は私達で一緒に迎えてあげましょうか」

 

「はい!ではご夕食にしましょう。今日は私も弥海砂も一緒にいますから」

 

そして翌朝私は起きてから部屋を出てリビングに行くと昨日はいつものところに帰らなかったのか芽愛さんと弥海砂さんが朝食の準備をしていた。そして同時に点けられていたテレビから私にとっては衝撃的なことが語られていた。

 

『おそらく昨夜の未明でしょうか、大亜連合の南東部…以前は朝鮮があった鎮海軍港に突如として謎のクレーターが出来ました。誰が放ったかは詳しいことはわかりませんが世界の軍事関係者がこのことに注目していると思われます』

 

私は驚きのあまり何も言葉が出なかった。まさかあの大亜連合の横浜侵攻後にあんなことが起きるなんて思わなかったからだ。それに私が知っている魔法ではあのようなことが出来る魔法はないはずだ。それに姉さんの戦略級魔法でもあんなことは出来ない。そして私は気付いた。

 

「(まさか、あの時あそこにいた人が放ったというの?偽装揚陸艦が何処かに消えたように…)」

 

「……彩海奈様、おはようございます」

 

「おはようございます、芽愛さん、弥海砂さん」

 

「はい。おはようございます」

 

「先程ホームサーバーのメーラーに学校側から今日から最大4日間休校にするという通達が来ました」

 

「そうでしたか……では今日からは芽愛さんも弥海砂さんも休んでください。私は地下にいますので」

 

「わかりました…ですが彩海奈様もちゃんと休んでくださいね?私達よりも負担は大きいはずですしひいては澪様も御心配なされてると思いますので」

 

「わかりました…ほどほどにしておきます」

 

こうして私は地下にある研究室へと向かった。そしてそこでは愛彩と電話越しではあるが無事だということと「ミスティック・クァインツ プライムエディション」の使用感等の話をしていた。そしてその後は色々他愛の無い話や例の魔法の話、鎮海軍港付近にできたクレーターの話をしていった。

 

こうして世界中にとって歴史的な日は過ぎていった。この日のことは後に「灼熱のハロウィン」と言われ、機械兵器とABC兵器に対する魔法の優越を決定づけた事件になった。それは世界の軍事バランスが崩れかけていく1つの要因にもなっていった。




如何でしたでしょうか?次回は原作及びアニメ最終回の最後にあった深雪と達也の四葉本家訪問をやってその次の話で独立魔装大隊のお話を書きたいと思っています。

そして次の編では冬休み編を完全オリジナルみたいな感じでやっていきます。原作では初詣に行っているシーンがありますが彩海奈は本家に帰っているのでカットシーンになってしまいます。

あくまで予定であってこれから変更するかもしれないので今後も読んでいただければと思います。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四葉本邸と特殊なお客様

はい。横浜騒乱編後のストーリーになります。前回のお話の(多分)後書きにアフターストーリーを四葉と独立魔装大隊をやるって書いたと思うんですがこの四葉を書いた直後に独立魔装大隊のも書こうと思ったのですがあまりにも短くなりすぎたので独立魔装大隊を中止してこの次の話から冬休み編に入ります。


旧長野県と旧山梨県の県境にあった名もない村に十師族が一家、魔法力だけでこの国の魔法師界の頂点に君臨する四葉家の本邸がある。周りには認識阻害の魔法が張り巡らされていてこの家には普通の郵便物等はやってこない。この魔法を破るには特殊な波動を打つ必要があるため四葉家に連なる者がいない限り内部には侵入出来ないようになっている。そんな四葉家本邸に住んでいる四葉家現当主四葉真夜は2組のお客様を呼んでいた。

 

1組目は四葉家次期当主候補・司波深雪、深雪の兄の司波達也兄妹。彼らは先日起こった大亜連合による横浜侵攻についての説明を求めたためやってくる。本来であるならば電話越しでもいいのだが兄である司波達也が特殊な立ち位置のため実際に呼んだのである。何より彼らは四葉真夜の姉であり世界で唯一『精神構造干渉魔法』に長けた魔法師でもある司波深夜(旧姓:四葉深夜)の子供であるため四葉を名乗ることも出来るのだがそこは秘密主義の手前四葉とは公表出来ないので現時点では深夜の相手でもある苗字の司波を使っているにすぎない。もちろん真夜が判断すれば深雪と達也の苗字は四葉に書き換えられる。

 

2組目は国防陸軍101旅団少将佐伯広海と国防陸軍101旅団独立魔装大隊隊長風間玄信少佐だ。何故この2人が四葉家本邸に呼ばれたのは達也の地位が関係している。達也の所有権は四葉家が握っている、だが達也は過去に沖縄に深夜、穂波、深雪と共に滞在していた時に大亜連合の侵攻の際に戦略級魔法「マテリアル・バースト」を使用した際後に行われた真夜と佐伯少将の会談の結果達也の処遇は特例で軍に籍を置いているが四葉家に保有権はある。深雪の有事の際以外は国防軍の任務を優先させなければならないという密約が交わされたためその密約に課されたことと今回の件についての説明を真夜が求めたためこの2人がやってきた。なおこの2人は知らないのだが真夜はとある情報筋から五輪家のご令嬢である彩海奈が単独行動を行っていたという情報があったためそれを佐伯少将が許可したということもありこの際に聞いてみようとしている。

 

あの大亜連合による横浜侵攻から初めての日曜日、司波達也、深雪兄妹は彼らの実家でもある四葉家本邸にやって来ていた。四葉本邸に到着すると真夜の執事であり四葉家執事序列第1位である葉山忠教が出迎えに来ていた。

 

「ようこそおいでくださいました。深雪様、達也様」

 

「ありがとうございます。葉山さん」

 

「いえ、深雪様、達也様は本邸内にある待合室にて待機と伺っておりますのでそちらでお待ちいただけますかな?」

 

「わかりました」

 

こうして深雪と達也は葉山の指示に従い本邸の中にある待合室へと向かった。達也はこの時おそらく誰かと話しているためここに通されるのだろうと感じていた。達也のこの予想は正しかった。実際真夜はこの時は四葉家の分家の1つの黒羽家の亜夜子と文弥姉弟と横浜で起こったことについての黒羽家なりの評価を聞いていた。

さらには真夜が黒羽に命じていた五輪家のご令嬢である彩海奈の素性についても聞いていた。深雪と達也が待合室に到着したという連絡を葉山から聞いた彼女は亜夜子と文弥にさらなる追跡を求めて彼らこの四葉本邸がある村のある場所にある黒羽家の家へと帰るように命じ、深雪と達也を真夜のいる会談室へと呼ぶように葉山に伝えた。数分後深雪と達也は真夜がいる会議室へと足を運び入れた。

 

「ごきげんよう、深雪さん、達也さん」

 

「ご無沙汰しております、叔母様」

 

「それにしても、随分派手にやってくださいましたね」

 

「申し訳ありません、叔母上」

 

「もう過ぎてしまったことを私も掘り返す気はありません。なので達也さん、あなたには学校を辞めて本家で謹慎してもらいます」

 

「叔母上、それは暗に俺が術者だということを肯定することになるのでは?」

 

その瞬間この部屋は『夜』に包まれた。そしてその夜空には一筋の光が無数に光り輝いていた。だがその光は次の瞬間には消えていった。

 

「1つ警告しておくわ。どうやらUSNAが動いてるみたいなのよ」

 

「USNA…スターズですか?」

 

「そこまでは分からないわ。でも近々動きがあるわ」

 

「一体何処からそんな情報が…」

 

「それは秘密よ。時が来たら教えてあげる」

 

「わかりました…」

 

「後は五輪家のお嬢さんね。彼女なかなか鋭いわよ。私を見た時深雪さんに似ているから血縁関係なんじゃないか?って聞いてきたのよ」

 

「!?叔母様は彩海奈と会われたんですか?」

 

「ええ、九校戦後にそれに彼女側からその日付を指定してきたのだから。このことを持ちかけたのは私だけど」

 

「それで彼女は何と?」

 

「そこは彼女がこの話は他言無用と言ったから話すことは出来ないわ」

 

「そうですか」

 

「それと貴方方に合わせておきたい人がいるのよ」

 

「会わせたい人…ですか?」

 

ここは四葉家本邸。簡単に入れる場所ではない、その点から考えても何故ここで俺達に合わせるのかが分からない。ここで合わせるということは四葉家関係者か俺達のことを四葉の血縁関係と知っている人のみだ。そしてその人物は案の定予想通りの人物がいたがもう1人は予想外の人物がそこにはいた。

1人は達也が所属している国防陸軍101旅団独立魔装大隊隊長風間玄信少佐、もう1人は国防陸軍101旅団長佐伯広海少将だった。

 

「ごきげんよう、佐伯少将、風間少佐」

 

「こちらこそ、四葉殿」

 

「それで私からの要望は既にわかっているかしら?」

 

「特尉に関してでしょうか?それとも四葉家の魔法師司波達也としてでしょうか?」

 

「今日は特尉としてです。先日の出来事において四葉家は遺憾の意を表明します。当家としては達也が矢面に立つことを望んではいません。それでしばらくの間達也との接触を避けてもらえないでしょうか」

 

「わかりました。こちらとしても特尉を公にする気はありませんので」

 

「では風間少佐と深雪さんと達也さんは下がってくれるかしら?」

 

「「「わかりました」」」

 

スタスタ ガチャン バタン

 

「それで私は何故ここに残らされたのでしょう?」

 

「五輪 彩海奈という少女をご存知でしょうか?」

 

「それはもちろん。彼女の兄である洋史殿を通して澪殿から聞き及んでおりますが」

 

「そうですか…それでは何故あの時彼女の単独行動を許可なされたのでしょうか?」

 

「それは澪殿から聞き及んでいたからにすぎません。それに彼女の魔法技術はこの年代でも一条家の息子より数段上といっても過言ではありません。それに五輪殿から申し出があったのですよ。それはその場限りということでお伝えは出来ないのですが」

 

「五輪殿が?」

 

「ええ、彼女の単独行動許可は五輪殿も許可していましたので」

 

「そうでしたか…それでは何故貴女も五輪殿の申し出に賛同したのでしょう?十師族の1人とはいえまだ10代の少女を」

 

「彼女の護衛に付いている女性をご存知でしょうか?」

 

「ええ、如月 芽愛さんと如月 弥海砂さんですね」

 

「彼女達も彩海奈嬢とは言わなくても同程度の能力を有しているみたいなので私としても出さずにはいられないのですよ。澪殿が言うにはですが」

 

「彼女達もですか…わざわざありがとうございます」

 

「いえ、この事はくれぐれもご内密に」

 

「ええ、お引き留めして申し訳ありませんでした」

 

「いえ、それでは私はこれで」

 

こうして佐伯少将は真夜のいる部屋を出て風間少佐、達也、深雪がいる部屋へと戻っていった。

 

ーー真夜と佐伯少将が話している頃ーー

 

「達也、お前は五輪 彩海奈のことについて何か知っているのか?」

 

「いえ、彼女のことについては特には。ただ分からない方が多いということですね」

 

「達也でも知らないことがあるんだな」

 

「自分が何でも知っている風に思わないでください。彼女も十師族の御息女の1人ですし、ただ情報が無さすぎるというのも考えものです。それに俺より深雪の方が彼女と関わる機会は多いのですが…」

 

「私もあまり彩海奈のことは知らないのですが…でも少なくとも私と同等もしくはそれ以上の魔法力と演算力を持ち合わせていると思います」

 

「深雪嬢と同じくらい……それはすごいな…」

 

「実際に彼女は一学期の期末試験の実技試験では2位でしたが私とはほぼ差がありませんでしたからね」

 

「それに彼女が使用しているCADは何処のメーカーのカタログにも載っていない品物です。あのCADがどのような性能なのかも自分としては気になるのですが」

 

「四葉直系と同等の魔法力と演算力、それに見たことないCADか…ますます彼女のことが分からなくなってきたな」

 

ガチャン「待たせたかな?それでは私達はこの辺で」

 

「では、またな」バタン

 

こうして佐伯少将と風間少佐は四葉本家を後にして、この部屋には深雪と達也だけが残っていた。

 

「叔母様は彩海奈のことをどう思っていられるのでしょうか」

 

「俺にはわからない。母上なら何か知っているかもしれないが話してはくれないだろうな。だから深雪、彩海奈にはこれからも変わらずに接していろ。彩海奈と争っていけばお前はおそらくもっと成長出来る」

 

「わかりました」

 

「(それにしてもあの時彩海奈の側にいた少女…多分俺達と同じくらいのはずだが九校戦では他の高校のスタッフの中にも見かけなかった。ということは彼女は何者なんだ)」

 

達也は愛彩のことも同様に分からないのだが実際には厳密に言えば合っている。彼女は達也や深雪、彩海奈と同じように歳でいえば高校1年生の年代に当てはまる。だが、彼女は高校には進学せずに五輪家の魔法研究所の1人として働くことにした。確かに、彼女は最初は彩海奈と同じく一高に進学するという選択肢もあったがそれは彼女自身が断った。彼女はそもそも高校というところには魔法大学が所有する論文へのアクセス権があるというところにしか興味が無い。それならまだ五輪家の研究所で研究してた方がいいということで彼女は旧愛媛県に残ったのだ。

 

それから亜夜子と文弥姉弟と少し話した彼らは東京にある司波家へと帰って行った。




如何でしたでしょうか?前書きにも書いた通り次の話から冬休み編に入ります。

次の話は二学期の終わり頃の話になると思います。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。また誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二学期の終わり、1年を振り返る

はい。これで横浜騒乱編は終わりです。

最近LOSTZEROで最高レアリティの出ても対象じゃないことが多いです←
先週のSACRA MUSIC FESのあのエイルとLiSAの「Rising hope」すごい聴きたかった。LiSAのシクレは何となく予想してたけどまさかエイルとコラボは聞いてない←
そしてEGOISTの「咲かせや咲かせ」もすごい聴きたいしほんと行きたかった…


早いもので今日はもう12月22日、第一高校は今日で二学期が終わり、明日からは冬休みに入っていく。今日は期末試験の結果が学内ネットワークに貼り出される日でもある。

 

そして貼りだされた結果は以下の通りになっている。

(総合成績のみ上位20名、実技、筆記は上位5名のみ)

総合成績

 

1位 1-B 五輪 彩海奈

2位 1-A 司波 深雪

3位 1-A 北山雫

4位 1-A 光井ほのか

ーーー

8位 1-B 明智 英美

1-B 十三束 鋼

10位1-E 吉田 幹比古

ーーー

16位1-E 柴田 美月

17位1-E 千葉 エリカ

 

実技成績

 

1位 1-A 司波 深雪

2位 1-B 五輪 彩海奈

3位 1-A 光井 ほのか

4位 1-B 明智 英美

5位 1-A 北山 雫

 

筆記成績

 

1位 1-E 司波 達也

1-B 五輪 彩海奈

3位 1-A 司波 深雪

4位 1-E 吉田 幹比古

5位 1-B 十三束 鋼

 

結果は上記のようになったが今回ばかりかは極一部の生徒が生徒指導室に呼ばれる(九校戦にエンジニアとして出場、論文コンペにメンバーの一人として出場)ということも無く淡々と過ぎていった。私は成績を自分の端末にダウンロードして帰ろうとしていたそんな時にエイミィ私に声をかけてきた。

 

「ねぇ、彩海奈って24日か25日予定空いてる?」

 

「えっと…ちょっと待っててね…………そうね…25日なら良いわよ。それで何をするの?」

 

「みんなでさ、クリスマスパーティーしようってなってそれで彩海奈は大丈夫かなって思ってさ」

 

「大丈夫よ。ただ帰省する日が1日ずれるくらいだから」

 

「あ、そっか。彩海奈は実家が愛媛とかそっちの方だもんね、ごめんねわざわざ」

 

「そんなことないわよ。お母さんからも『実家のことより今目の前にあることを楽しみなさい』って言われてるから」

 

「そっかー良いお母さんだね。じゃあ新宿に18時に集合ね!あ、彩海奈のお世話係のえーっと…」

 

「芽愛さんと弥海砂さんも呼んで大丈夫なの?」

 

「うん!じゃあよろしくできるかな?」

 

「ええ。わかったわ。じゃあまたね!」

 

「うん。楽しみにしてるね」

 

私とエイミィはそこで別れ家路を急いだ。家に帰ると事前に予定していた予定を変更した。本来は25日に旧愛媛県にある五輪本邸に帰る予定であったが先程も言った通り「実家のことより今目の前にあることを楽しみなさい」と言われているため帰る日を27日にずらすことにした。なお、姉さんは私と同じ25日に帰省予定である。この予定変更のことは姉さんには黙っているようにと本邸にいる使用人達に伝言をしておいた。

 

時は経ち日付けは12月25日。私と芽愛さんと弥海砂さんは新宿にある某超有名レストランの前にいた。するとそこにエイミィがやってきた。

 

「おーい、彩海奈ーー」

 

「あ、エイミィ。今日はありがとうね」

 

「ううん、こちらこそありがとうね。えっと、初めまして」

 

「はい。初めまして、私は如月 芽愛と言います。こちらは私の双子の妹で如月 弥海砂と言います。今夜はお誘いありがとうございます」

 

「えっと、こちらこそ来ていただいてありがとうございます」

 

「それでエイミィ、他に誰が来るの?」

 

「それはお楽しみだよ!じゃあ、入ろっか」

 

こうして私と芽愛さんと弥海砂さんとエイミィはお店の中に入っていった。どうやら今日はこの超有名レストランを貸切にしているみたいでおそらく雫はいるのだろうと推測はできた。雫の父親はこの日本で有名なホクザングループの総帥北方 潮であり日本の財界等に与える影響は膨大であるためこのような事が出来るのだろう。

 

「おーい、みんなー」

 

「あ、やっときたね。エイミィ、彩海奈」

 

「待たせてごめんなさいね」

 

私達が中に入るとそこには予想していた通り雫とほのか、深雪、スバル、エリカ、美月がそこにはいた。

 

「そんなことないわよ。それでそちらの方は」

 

「初めまして、皆様。私達は彩海奈様の身の回りのことをしている如月 芽愛と言います」

 

「同じく如月 弥海砂と言います」

 

「こちらこそ、初めまして私は司波 深雪と申します」

「光井 ほのかです」

「北山 雫です」

「千葉 エリカです」

「柴田 美月です」

 

「ご丁寧にありがとうございます。それで私達まで加わってよろしかったのでしょうか?」

 

「はい!みんな彩海奈のこともっと知りたいと思ったしね」

 

「そうですね…私ももっと知りたいです」

 

「そうですか…私達で答えられる範囲ならばお答えしましょうか」

 

「余計なことは言わないでくださいね……」

 

「それは私達次第です」

 

「お待たせ致しました。料理の方をご用意させていただきます」

 

こうして私達のささやかではあるものの私達にしてはゴージャスな料理を楽しみながらクリスマスパーティーを楽しんでいた。

 

「今年ももう終わりかー、今年は色々あったよね」

 

「そうね…校内テロとか九校戦でのこととか横浜事変なんてあったわね…」

 

「九校戦の時はみんな凄かったよね!」

 

「なんといっても彩海奈と深雪は新人戦じゃなくて本戦で優勝しちゃうしね」

 

「そんなことないわよ」

 

「それでも1年生が本戦で優勝するのはすごい」

 

「来年も九校戦が楽しみになったわよね」

 

「そうだね。特に女子の本戦に関しては今年だけを見たらすごいカードが目白押しだね」

 

「まずはアイス・ピラーズ・ブレイクでの彩海奈と深雪と雫、エイミィ、千代田先輩の誰が出場出来るのかというとこからね」

 

「そうね…これだけの選手がいたら他の高校はたまったもんじゃないわよね。今年の女子新人戦の決勝リーグ独占に加えて、本戦での彩海奈と千代田先輩がいるんだから」

 

「誰が出ても決勝リーグ独占はほぼ確実としか言い様がないメンバーよね」

 

「そうですよね…彩海奈さんも深雪さんも雫さんも明智さんも千代田先輩も実力は凄いですからね」

 

「確かにピラーズ・ブレイクに関しては来年の本戦は誰が出ても一高は優勝出来そうよね」

 

「そうね…後楽しみはミラージ・バットね。今年はチーム事情で深雪が本戦に出たけど新人戦は一高がほのかとスバルで上位独占したしね」

 

「そうだね。でもボクでもさすがに来年は厳しいかな。深雪に加えてほのかそれに三高の一色さんも出てくるだろうしね」

 

「そうね…深雪に関しては安心のお兄様がいるのだしほのかも順当に行けば表彰台は固いからね」

 

「その点ではバトル・ボードも楽しみよね!今年の本戦はほとんどの高校が3年生が出てたから来年は誰が出てきても優勝するチャンスはあるからね」

 

「ウチはその辺は有利ね。九校戦新人戦での大会レコードを更新したのですもの」

 

「そうだね!彩海奈もほのかも優勝候補だろう」

 

「でも三高の四十九院さんも強敵だから負けることはあまり思われてないから私的にはすごい楽しみ」

 

「そうだね、四十九院さんも強敵だよね…」

 

「今から気負いすぎるのもどうかと思うわよほのか。現に今年勝っているのだから自信を持ちなさい」

 

「そうだね!うん。彩海奈も楽しみに待っててね!」

 

「ええ、私も四十九院さんと対戦してみたいわ」

 

「こればっかりは運だからねぇ…」

 

「それに引き換え男子は苦戦しそうよね。モノリス・コードは服部先輩が残っているとはいえね…」

 

「そうよね。今年を見る限りは服部先輩、沢木先輩、桐原先輩は確定だろうけどそれ以外は微妙なところよね」

 

「なんなら吉田君とかもしかしたらモノリス・コードに選ばれるかもよ」

 

「そうね…その可能性は無くはないわね。あの古式魔法は何処のフィールドにおいても有効的な手段があるからね」

 

「そっかー…じゃあ司波君は?どうなの深雪」

 

「そうね…お兄様はそもそも九校戦自体に興味を持ってらっしゃらないから…でも来年もエンジニアとしては出てくれるのではないかしら」

 

「そっか、それなら良かった。達也さんが調整したCADって何か知らないけど自分の魔法が上手くなったような気がするんだよね」

 

「へぇ、達也が調整したCADってそんなに使いやすいの?」

 

「うん!ってそっか、彩海奈は自分で調整してるもんね」

 

「ええ、自分でするよりも他人にしてもらった方がいいと思う時もあるけどね」

 

「へぇー、ってことはえーっと芽愛さんか弥海砂さんに調整してもらってるの?」

 

「いえ、私達は彩海奈様にしてもらっているので」

 

「え?じゃあ誰なの?」

 

「今はお家の方にいる方ね。私に色々と魔法工学を教えてくれたのよ」

 

「そうなんだね」

 

「それってもしかして愛彩ちゃんのこと?」

 

「え?誰それ誰それ」

 

「よく覚えてたわね、深雪。」

「お兄様と連絡先を交換するくらいだもの。それは覚えてるわよ」

 

「それもそっか……深雪も言った通りその愛彩が色々教えてくれたのよ」

 

「へぇー、それでその愛彩さんは今何歳くらいなの?」

 

「確か私達と同じ世代じゃなかったかしら。ごめんなさい正確には覚えてないの。あまりプライベートなことについては話さないから」

 

「私達と同世代ってことは何処の高校にいるの?」

 

「彼女は高校には通ってないわよ?愛彩曰く「高校なんて魔法大学が所有する論文が読めるだけの場所」っていう認識らしいから」

 

「へ、へぇ、じゃあもしかしたら一高に来るかもしれないの?」

 

「それは無いんじゃないかしら。さっきも言った通りあまり高校に興味無さそうだったしね。それにあまり編入自体制限が厳しいからね」

 

「そっかー、何時か会ってみたいな」

 

「さすがに来年にはなってしまうけどあまりこっちに来たりもしないからね。でもこのことは伝えてみるよ」

 

「ありがとう。彩海奈」

 

九校戦の話題もそこそこに次の話題となったのは彩海奈に関することだった。ただこの話題は彼女のプライバシー及び十師族の1人としてのメンツを保つためにも割愛させてもらう。ただ1つ言えるのはこの話題の中心となった人物が、彩海奈本人ではなく彩海奈と共にやってきた芽愛と弥海砂だったのは言うまでもない。そして他にも春先におきたブランシュ事件や先日の横浜事変、論文コンペの話、日常の話など色々なことを話していたら時間も経ちそろそろ帰る時が近づいてきていた。

 

「そういえば彩海奈はお家関連でのパーティーとかに出なくて大丈夫だったの?」

 

「大丈夫よ。そういうのは昨日だけしか無かったから。エリカと雫こそ大丈夫なの?千葉家関連と大企業のご令嬢のパーティーは多いような気がするのだけれど」

 

「大丈夫よあんなの。兄貴達がせいぜい苦労するだけだわ」

「私はお父さんにこのことを話したら喜んでこの店を貸切にしちゃったから」

 

「雫のお父様はすごいのね」

 

「そうね。実際に会ったことあるけど楽しそうな方だったわ」

 

「そうなのね」

 

「そういえば今度は司波君とか吉田君、西城君も連れて初詣に行かない?」

 

「良いわね。さすがに元旦の日はみんな忙しいだろうし、学校が始まる前々日くらいかしら?」

 

「そうだね。その方がいいかも」

 

「彩海奈は大丈夫?」

 

「新年のスケジュールってどうなってましたっけ?」

 

「さすがに三が日は厳しいですが、三学期初日の前々日なら急いで戻ってくれば大丈夫かと」

 

「じゃあその日にしよう?」

 

「ええ、じゃあそういうことでお願い出来るかしら?」

 

「ええ」

「うん」

「いいわよ」

「はい、分かりました」

 

「……雫?」

 

「実は1つみんなに言うことがあるんだけど…」

 

「どうしたの?」

 

「来学期実は留学することになった」

 

「え!?それ本当なの!?」

 

「うん」

 

「場所は何処なの?」

 

「バークレー。最近東海岸は危ないからって」

 

「そうね…あそこら辺は最近『人間主義者』がうるさいらしいし」

 

「そっか…でもよく許可がおりたね」

 

「交換留学みたいだから」

 

「交換留学?ということは誰か来るのね、どういう子かは分かってるの?」

 

「同い年の女の子らしいけどそれ以上は……」

 

「どんな子か楽しみね」

 

「そうね…」

 

「あぁーもうこの話はやめよ。雫が3ヶ月いないならこんな暗くじゃなくて明るく送り出してあげようよ」

 

「そうですね」

 

こうして私達はこの後も喋りながらも時間も遅くなったということで今日は解散することにした。雫とほのかは一緒に北山家にお泊まりをするらしくお迎えの車に乗って行った。エリカと美月は千葉家のお迎えで帰っていった。エイミィとスバルも同じように実家お迎えで帰っていった。そんな中残った深雪はいt(ヒュー…お兄様が迎えに来てくれるみたいで私と芽愛さんと弥海砂さんは来るまで待っていた。

 

「ごめんなさいね、彩海奈それに如月さんも」

 

「いいのよ。さすがに女の子を1人にさせるのはちょっとね」

 

「深雪!…っと彩海奈、すまないな」

 

「いいのよ。それじゃあ私達もこの辺で。いい年を迎えてね」

 

「ええ、彩海奈こそね」

「また、来年もよろしく頼む」

 

「ええ、じゃあまた来年に」

 

こうして私達と深雪と達也は別れてそれぞれの帰り道へと向かっていった。

 

「ところで弥海砂さん…さっきの雰囲気見覚えありますか?」

 

「ええ、先日の横浜の時と全く同じというわけではありませんが似ていましたね。ということは彼があの正体不明の未知の治癒魔法の術者ということでしょうか?」

 

「おそらく、そういうことでしょう」

 

「彼のこともう少し探ってみることにします。前に1度だけ九重寺の敷地内で見たことがありますので」

 

「九重寺…というとあの「今果心」九重八雲のところですか?」

 

「ええ、あそこで少し修行したことがありますので。それと、独立魔装大隊も探ってみることにします」

 

「わかりました。ですが無茶な真似はしないでください」

 

「わかりました。では帰りましょうか」

 

こうして私と芽愛さんと弥海砂さんは自宅へと戻り帰省の準備をすることにしたのだが家の電話の着信履歴とメールサーバーに入っているメール件数に私達は溜め息しか出なかった。

 

着信 42件

未読メール 37件(うち同一人物からは30件)

 

どうやらあの人は(おそらく)今日私が来ないということを何処かで知ったのかかけてきたのだろう。最終履歴は約1時間前なので今日はもう来ないだろうとふんで私達は準備を進め日付けが変わってから寝ることにした。なお芽愛さんと弥海砂さんはいつもは私が住んでいる家から数百メートル離れている家屋に2人で住んでいるが今日は私の家で泊まることにしたみたいだ。

 

そして翌々日私と芽愛さんと弥海砂さんは私の実家がある旧愛媛県へ向かって進みだした。夏休み同様の順路で行くと午後の2時には私の実家である五輪本邸にたどり着いた。ただ私達は着くまで分からなかった、そこで待っていたのは全く想像していなかった地獄ということに。




如何でしたでしょうか?

前書きにも書いた通り横浜騒乱編はこの話でおしまいです。次回から数話は冬休み編になります。四葉の「慶春会」みたいなのも挟みながらやって原作の来訪者編のプロローグみたいなのを冬休み編最後の話として予定しています(予定してるだけ)

最近はAimerの「Black Bird」、ReoNaの「カナリア」、ASCAの「RESISTER」、halcaの「センチメンタルクライシス」が結構最近自分の中でバズってます←どうでもいい

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします 。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冬休み、新たなる衝撃
姉の心配事と母親の実家


はい。今回の話から冬休み編になります。最近リアルが忙しすぎるので投稿頻度が落ちてますが6月1週が終われば少しは楽になると信じてるので←

次巻が6月8日ということであと1週間ですね!


西暦2095年12月27日の午後3時場所は五輪本邸内にある五輪家の長女にして国家公認戦略級魔法師である五輪 澪のプライベートルーム、ここでは今部屋の中をただならぬ雰囲気が漂っていた。このプライベートルームには今現在彼女の妹にして非公式の戦略級魔法師五輪 彩海奈、五輪家の主に澪、彩海奈の世話を担当している如月 芽愛、如月 弥海砂両名を含めた合計4人がいる。

 

「それで、どうして25日に来なかったのかしら?」

 

「……学校の友達にクリスマスパーティーやるって誘われて…」

 

「そう…私は25日に来るものだと思っていたから」

 

「そ、それはごめんなさい…25日はパーティーも招待とか無かったしね。24日はあったけど二木家の結衣さんに誘われただけだから」

 

「へぇー…それで何でそのまま来ようとは思わなかったのかしら?」

 

「えっと…その…」

 

「澪様、そこは私達から……彩海奈様が現在お住まいになられてる住宅には、九校戦前及び終了後に七草家からホームサーバーにクラッキングが試みられた形跡がございました。この件についてはご当主様には伝えその後長期的に離れる際は愛彩様が構築されたカウンタープログラムをご用意してもらったのですが23日の時点でまだ用意出来ていなかったので26日になってようやく全ての用意が終わり今日になってしまったということです」

 

「そう……またあの七草と来たら……」

 

どうやら姉さんは七草家に怒り心頭のようだ。何故姉さんが怒っているのかは謎だがそこまで怒らせることがあったんだろうと内心は思っていた。

 

「まぁ、もういいわ。こうしてちゃんと来てくれたわけだし」

 

「そう…じゃあまた後でね。父さんに呼ばれてるから。本当だったらここに来る前に行こうとしてたから」

 

「そう……じゃあまた後でね」

 

私達は姉さんの部屋を出て父さんーー五輪家当主の執務室へと向かった。

 

コンコン「入ってもよろしいでしょうか?」

 

『あぁ、入ってくれ』

 

「失礼します。五輪 彩海奈、如月「芽愛」、「弥海砂」両名含め3名無事です。それで何かありましたか?」

 

「うん、とりあえず3人とも無事で良かったよ。昨日弥海砂から聞いたが北山家のお嬢さんが交換留学すると聞いてこれはと思って3人を呼んだんだ。実はこの交換留学には裏があるかもしれない。おそらくはハロウィンの時の戦略級魔法絡みだとは思うが、その留学生の中にUSNA軍所属の魔法師がやってくるという情報を掴んだんだ。だからもし何かあったら芽愛か弥海砂、それに九島閣下に伝えてくれ」

 

「わかりました。ですが何故九島閣下に?」

 

「留学生の中にアンジェリーナ・クドウ・シールズという少女がいるのだが、どうやら第一高校にやってくるみたいで九島閣下の血縁にあたるみたいなんだ」

 

「わかりました」

 

「何度もいってはいるが…絶対に戦略級魔法師としてバレないようにお願い出来るかな」

 

「大丈夫だよ。でもいざとなったら私はやらなければいけないけど」

 

「それは仕方の無いことだ。ただし人目があるところでは極力ダウングレードしたものを使ってくれ」

 

「ええ、父さんが命じない限り私から打つことは無いわ」

 

「それが分かってるならいい。話は以上だ。何かあるかい?」

 

「1つ聞いていいですか?」

 

「あぁ、私に答えられることなら」

 

「1度母さんの実家に行きたいと思ってます。出来れば年度内に」

 

「母さんの実家か…わかった…母さんには実家の方へ行けるように言ってみる。ただ期待はしないでくれ。あそこに行けるのはその家の関係者のみなのだからな。例え十師族でもあそこに行けるのはほんのひと握りでもある」

 

「わかりました、それでは失礼します」

 

私は執務室を出ると、今年の3月まで暮らしていた部屋に、芽愛さんと弥海砂さんは本邸内にある使用人が使っている部屋へと戻っていった。

 

「(アンジェリーナ・クドウ・シールズ……ただの少女で九島の血縁なら多少は気を使わなければいけないけど何故そんな警告を与えるようなことを……)」

 

私は三学期やってくる少女に多少な警戒心と厄介事が起きなればそれでいいと思っていた。

 

ーーーーー

 

コンコン「母さん入っていいかな?」

 

『あら、入っても大丈夫ですよ』

 

「失礼するよ。さっき彩海奈がお前の実家に行きたいと言ってきた。出来れば俺としては彩海奈もそろそろ知らなければいけない日が来たということで行かせてやりたいんだがどうかな?」

 

「一応聞いてはみるわ。ただあそこはそんなおいそれと行ける場所ではないから。私でも今となっては滅多に行ける場所ではないから」

 

「あぁ、その辺は彩海奈には話してある。彩海奈は出来れば年度内に行きたいそうだ」

 

「そう…じゃあその時は私と澪、洋史、彩海奈、芽愛、弥海砂で行くから軍への連絡と留守はよろしくね」

 

「あぁ、その時は気をつけてな。それじゃあ私はこれで」

 

五輪家当主夫人・五輪 真唯(いつわ まゆい)。旧姓 水無瀬 真唯、彼女の実家水無瀬家こそこの物語においてイレギュラーな存在になりうるそんな家である。

 

彼女の実家である水無瀬家はかつてこの国において時の人や朝廷にまで影響を与えるような家であり、水無瀬家が出来たとされた年から約1200年の時が経つ今現在においても十師族と同等あるいはそれ以上の権力を有しているとも言われている。何故それほどまでこの水無瀬家が重要視されているかは謎に包まれている。そしてこの水無瀬家の存在を知っているのは天皇陛下、十師族当主及びその関係者の極一部、時の内閣総理大臣のみであり居住地においては京都より西にあるということだけが伝えられている。

 

さらにはこの水無瀬家は秘密主義を余儀なくされており前述の居住地、家族構成など現当主とその妻又は夫以外は何一つ情報がない。そんな水無瀬家の現当主は真唯の母親(「水無瀬 唯衣花(みなせ ゆいか)」)が務めていて、再来年には次期当主として真唯の姉(「水無瀬 侑那(みなせ ゆうな)」)が即位することが決まっている。何故秘密主義を余儀なくされているかは水無瀬家が使っている魔法に関係している。元々は古式魔法を得意分野として発展し、名だたる古式魔法の大家から「水無瀬家こそが古式魔法の最高峰」と呼ばれるまでになった。

 

しかしある年に生まれた1人の少女をきっかけに水無瀬家の秘密主義が始まった。その少女の名は「水無瀬 結那(みなせ ゆいな)」、真唯の祖母であり水無瀬家の先代当主だ。全盛期の彼女はあの「老師」九島 烈、四葉の名を世界に知らしめた四葉家先々代当主 四葉 元造の2人に並ぶほどの魔法師であり魔法師界においても多大なる影響を与える人物の1人だ。その彼女なのだが全盛期は古式魔法はもちろんのこと、当時あまり適性がないと言われていた現代魔法においてもその才を存分に発揮しあの「老師」から「彼女以上の魔法師は現世において存在しない」と言われるほどだった。そういうこともあり、彼女の婚約・結婚に関しては外部に漏れないように四葉家と九島家が協力し厳密に執り行っていた。そんな彼女は現在水無瀬家の当主の座を降りて、旧長野県にある水無瀬家の別荘と京都より西にあるという水無瀬家本邸を行き来する生活を送っている。

 

話を戻すが澪、洋史、彩海奈の母親である五輪 真唯(旧姓 水無瀬 真唯)も五輪家当主夫人になる前までは水無瀬家の人間として過ごしてきた。2人の馴れ初めは大学生まで遡る。彼女が当時大学生の時に同級生だった五輪 勇海に好意を寄せており告白して交際する流れになり見事ゴールインしたのである。実はこの時勇海自身も真唯のことを好いてはいたものの十師族として大丈夫なのかという葛藤があった時に彼女自身から告白され、念の為本家へ確認したところ約2週間後に許可がおりて2人は交際を始め、勇海が23歳、真唯が24歳の時にに結婚しその翌年には澪が産まれたのである。

 

そんな水無瀬家であるがこの家の本邸に行けるのは水無瀬家の関係者、当主の招待客のみである。例え十師族の当主が行きたいと言ってきても決して来ることは出来ない。水無瀬家本邸に行くには京都にある魔法協会本部にいる水無瀬家の使用人に自分の名前と来訪の目的を言わなければ水無瀬家には行けないという徹底ぶりだ。

 

そんな水無瀬家の家の中に電話の鳴る音が当主の部屋に鳴り響いた。水無瀬家の当主がいる部屋に電話がかかってくることは滅多にない。それこそ家族や魔法協会上層部、政府等関係者のみにしかナンバーが公開されていない。今回鳴り響いた音は家族関係の鳴り出し音であり当主は通話ボタンを押した。

 

「久しぶりね、真唯。それで今日はどういうようかしら?新年の挨拶にはまだ早い気がするのだけど」

 

『お久しぶりです、お母様。新年の挨拶はまた今度ということで。今回伝えたい内容は娘のことです』

 

「それは澪さんのことかしら?」

 

『いえ、今回は次女の彩海奈の方です』

 

「彩海奈さん、ね。わかったわ。彼女はもう水無瀬家自体は知っているのよね?」

 

『ええ、勇海さんと話した限り知っているみたいです』

 

「そう。なら、新年……そうね1月4日〜1月6日までで来れる日のあるか聞いてくれないかしら?彩海奈も高校があるでしょう?」

 

『わかりました。それで行く時は私と澪、洋史、彩海奈、芽愛、弥海砂の合計6人で行きたいと思ってるのですが』

 

「構わないわよ。この屋敷には幾らでも部屋はあるから。母さん、貴女の子が見れて嬉しいわ」

 

『そういえばそうね。澪とは京都で会ってたわね母さん。洋史と彩海奈は初めてよね?』

 

「そうね。あとは侑那がずっと貴女に会いたいってうるさいから今度からはある程度は会ってあげなさい」

 

『姉さんのそれは何とかならないのかしら?』

 

「無理ね」

 

『全く……澪のあれも遺伝なのかしらね』

 

「そうなのかもね。それじゃあそろそろ切るわよ?日程が分かったらメールでもいいから連絡入れて頂戴」

 

『わかりました。それではまた後日』

 

「ええ、またね」

 

電話を切ると水無瀬家現当主 水無瀬 唯衣花はハンドベルを鳴らした。

 

「御用でございますか、奥様」

 

当主の部屋に現れたのは水無瀬家の執事「神無月 正義(かんなづき まさよし)」だ。神無月家は代々水無瀬家の執事として仕えこの水無瀬家の表の世界の役割を統括している。

 

「この家にある真唯の部屋と客間、客人の部屋を綺麗にしてちょうだい。真唯が子供達とその護衛を連れて来るから」

 

「かしこまりました、奥様」

 

神無月 正義が部屋を去るとまたしてもハンドベルを鳴らした。今度は先程使ったハンドベルとは違うハンドベルで鳴らした。

 

「御用でございますか、御当主様」

 

現れたのは水無瀬家の裏の役割を統括、担っている水無月家の次期当主「水無月 沙耶(みなづき さや)」だ。水無月家も同様に代々水無瀬家に仕えてきている。唯衣花、侑那、真唯は水無瀬家の人間だが表の世界では水無月として過ごしていた。(水無瀬家は聞く人が聞けば強大なインパクトを残すため唯衣花以降の水無瀬家の人間は水無月性を名乗っていた)

 

「今度…そうね…今年度内に真唯が子供達とその護衛を引き連れてやってきますから、京都の魔法協会本部に迎えに行ってもらってもいいかしら?」

 

「かしこまりました、御当主様。真唯様が来るということは澪殿のことでしょうか?」

 

「いえ、今回は次女の方みたいですから、彼女を紹介しておきたいということでしょう。再来年には侑那が当主になるからその前に、ということでしょうね」

 

「かしこまりました」

 

「ええ、よろしくお願いね」

 

沙耶が部屋を去ると唯衣花は当主の部屋に置かれている椅子の深くまで腰掛け、彼女以外誰もいない部屋の中に語りかけた。

 

「3人の子供ね…いつしか真唯も子供を連れて帰ってくるとは思っていたけどまさかね……それに1人は国家公認戦略級魔法師で他の2人も能力としては申し分ない。特に妹の彩海奈さん。彼女も九校戦で使った魔法からして戦略級魔法師なのかしらね」

 

と呟いた。水無瀬家の現当主も四葉家と同様の答えを示していた。だが水無瀬 唯衣花と四葉 真夜はまだ知らない。彩海奈が有している特殊なスキルに。それを知っているのはまだ五輪 勇海、五輪 澪、五輪 彩海奈だけということを、それにこの特殊なスキルの使い方が公に広まれば日本という国が世界の各国から危険視されることを。

 

ところ変わって五輪家内にある魔法研究所では……

 

霧島 愛彩は年末にも関わらず五輪家にある研究所でせっせと研究に謹んでいた。

 

「うーん…………よしこれでいいかな?」ピコン

 

「なんだ……って帰ってきたのか」

 

『おーい、帰ってきたよーー』

 

「えっと……『お帰り!』っと」

 

「よし、今日のところはこれでいいだろ。さて、彩海奈も来たことだし、行ってみるか」

 

こうして霧島 愛彩は夏休みに澪に言われてから1度も行けてなかった五輪本邸に足を踏み入れるべく研究室のセキュリティを最大限に引き上げてから研究所を出てむかっていった。

 

ところ変わって五輪本邸内にある次女五輪 彩海奈のプライベートルームには3人の人影があった。1人はこの部屋の主五輪 彩海奈、もう1人は彼女の母親である五輪 真唯、3人目は五輪家の魔法研究所において研究員として所属している霧島 愛彩。何故この3人が相いれたのかは最初彩海奈と愛彩が先日の横浜の時に使用したCADや謎の魔法師(達也)が使っていた未知の治癒魔法、戦略級魔法と思われる魔法について話していた時に母親である真唯が入ってきたという状況だ。

 

「えっと……」

 

「ごめんなさいね、2人でのお楽しみを邪魔しちゃって」

 

「い、いえ…は、初めましてえっとその……霧島 愛彩って言います」

 

「霧島 愛彩さんね。初めまして彩海奈の母の真唯です。今度からは気にせずここに来てね、私ならほぼ1年中この本邸内にいるから」

 

「えっと…善処します……」

 

「はぁ……それでどうしたの?」

 

「さっきお父さんからあのこと聞いたでしょ?だからあのことについて話しておきたいと思ってね」

 

「あ、それじゃあ私は出ていった方がいいですか?」

 

「ええ、少しだけ席を外してもらえるかしら?」

 

「それじゃあまた後でね、彩海奈」

 

「う、うん……それでお話って何?」

 

「私の実家が水無瀬家だってことはもう知ってるのよね?」

 

「え、あ、うん」

 

「なら、それを前提に話をさせてもらうわ。彩海奈、貴女は澪や洋史と同じ血が流れてるけど貴女は違う。もしかしたら貴女は五輪家の次期当主じゃなくて水無瀬家の次期当主候補になるかもしれないわ」

 

「わ、私が水無瀬家の?」

 

「ええ、といっても今の水無瀬家当主は私の母がやってるんだけど再来年には姉さんが当主になるからその姉さんの次の候補ね」

 

母さんから発せられたその言葉、それはわたしにとっては衝撃的な言葉だった。そしてこの水無瀬家こそが私の……いや私の周りの出来事を全て一変させていく。

 




如何でしたでしょうか?リアルでの出来事と新しく登場した家の事を考えながら書いていたら思ったより時間がかかりました。

次回はもう……というより年越しのところになります。

今回もご読了いただきありがとうございました!感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。

そしてこの家のことについては投稿日から数えて翌々日のうちに設定集のところに加えますのでよろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次期当主と新年への年越し

はい。冬休み編もあと数話で終わりで来訪者編になります。この冬休み編の最大の目玉はこれからの水無瀬家への訪問なのでお楽しみに。


追跡編(下)発売されましたね!この話の投稿が終わってから読もうと思っているのでまだ読んでないのでこれから読みます(多分投稿した時には読み終わってるかも?)


水無瀬家の次期当主。聞く人が聞けば一大事であることだ。確かに私か兄さんかどちらかが五輪家の次期当主になることは間違いなく私はそれが兄さんだ思っている。となれば私は何処かに嫁入りするというのが定石だろう、というかそう思っていた。一条家、七草家辺りがその候補になるのだが、それは私の個人的事情により成立はしないだろう。確かに水無瀬家であれば母さんの実家、さらには存在があまり知られていないという点も含めて有り得なくはない。だがそれならおかしいと思う。母さんによると今の水無瀬家の当主は母さんの母親の水無瀬 唯衣花さんが務めていて、再来年には母さんのお姉さんである水無月 侑那さんが即位することが決まっているみたいで侑那さんはまだすぐに退位する年齢じゃないことから私の継承は決定したとしても少なくとも数十年後になるだろう。そんな年齢になるまで私が五輪家の人間として入れるかが不透明だ。今の世の中では魔法師は姉さんや四葉 真夜さん等特殊な事情を持っていない限り早婚が推奨されている。

 

そんな中特に体調に問題はなく、何か特別な力を公には持っていないとされている私には高校卒業あるいはもう在学中の今からでも縁談の話はひっきりなしに来るであることは簡単に予測できる。ただ私の婚約に関しては公表されてない部分において容易には出来ない立場にあるためその道はなかなかな困難だ。ただその点水無瀬家の次期当主として地位を確立出来ればその問題は一気に解決される。ただ水無瀬家ということもあり、なかなか相手は見つからないそうでお母さんも、お母さんのお姉さんも自分で見つけてきたという。はたしてそれが私に出来るだろうかと思うところも無いことは無いはずだ。

 

「そう、貴女が水無瀬家の次期当主になる可能性というのは否定出来ないわ。もしかしたら姉さんの子供がそのまま次期当主になる可能性だってある。でも貴女も少なからず水無瀬の血を継いでる1人よ。澪は『13使徒』、それに洋史はあまり古式魔法に適正が無いからさすがにそんな人を当主にはさせない。それで残るのは貴女なのよ。国家公認戦略級魔法師でも何でもないただの十師族の1人のご令嬢なの、なんのしがらみも無いけど水無瀬家からしたら十師族というのはちょっと目立ちすぎるかもしれないけどそれでも貴女が水無瀬の血を継いでるということだけでそういう存在になりえるのよ」

 

「………………」

 

「これは私が思ってること。お祖母様やお母様が何を考えているのかは分からないけど、少なくともこうなるとは考えておいて。このことはこの場だけに留めておいて。これはお父さんには話してあるけど澪、洋史には話してないから」

 

「わ、分かりました」

 

「大丈夫よ。もし彩海奈が水無瀬家のことに関わることになったら私も勇海さんもバックアップしてあげるから。それになんて言ったって私達の娘なんだから」

 

「は、はい。あ、ありがとう」

 

「何時まで経っても、甘えん坊なのは変わらないのね彩海奈は」

 

「そ、それはお母さんだけだよ」

 

「はいはい。それじゃあ、愛彩ちゃん呼んでくるから。それにしても愛彩ちゃんの調整は上手よね。違和感というものを何一つ感じさせないもの」

 

「え?お母さんのCADって愛彩が調整してるの?さっきが初対面じゃなかったの?」

 

「ええ、そうよ。でも私の使ってるCADを愛彩さんが調整してるってことは勇海さんから聞いてたわ。しいていえばこの五輪家のCADの全てを彼女1人で調整してるわ」

 

「し、知らなかった……」

 

「それもそうよ。彩海奈ったら1人で調整してるんだもの。それに澪、洋史、芽愛、弥海砂もみんな彩海奈が調整してるんだもの」

 

「そっか…」

 

「それじゃあ、呼んでくるわね」

 

「うん」

 

お母さんが私の部屋から出ていき私1人だけになったこの部屋は広く感じた。私は思い出したかのように端末を手に取り、エイミイの連絡先にメッセージを送った。三学期が始まるのが1月7日、初詣に行こうと約束していたのが1月5日。その日に水無瀬家に行かなければならなくなったためその断りと謝罪がその主な内容だ。メッセージを送り終わったと同時に愛彩が入ってきた。それからはこれからどういう風なコンセプトで新たなCADを作っていくかや魔法式の改良等色々なことを話し合った。

 

その後エイミイからのメッセージが届き、また三学期にということでメッセージをやり取りしていた。

 

時は経ち今日は12月31日、あと数時間で新年を迎えるそんな時に父さんが五輪家の当主として母さんや姉さん、兄さん、私や芽愛さん、弥海砂さんをはじめとした使用人全員を五輪家本邸内にある1番大きい部屋に集めた。

 

「それじゃあ、みんな揃ったことだから話始めるかな。まだ公には公表しないけど五輪家の次期当主は洋史、お前に任せるよ。今後数年間は基本的には僕の補佐として少しずつ当主としての仕事を覚えていってくれ」

 

「はい、わかりました。次期当主としてその名に恥じぬようにこれからも努力してまいります」

 

「あぁ、固い言葉は次期当主として正式に発表する時でいい。今は非公式に次期当主として決まったというだけだからな」

 

「「おめでとう、兄さん(洋史)」」

 

「ありがとう、姉さん、彩海奈」

 

「「「「「おめでとうございます、洋史様!!」」」」」

 

「皆さん、ありがとうございます」

 

「それで、澪のことだがこれまでは洋史が常に傍にいたけど来年度からはあまり入れなくなる可能性もあるから、その時は彩海奈、芽愛、弥海砂の3人で傍にいてあげてくれ。彩海奈に関しては高校もあるから、基本的には芽愛と弥海砂が付いていてくれるかな?芽愛と弥海砂が澪の方にいる時彩海奈にはある人が行けるようにお願いしてるから」

 

「ある人?それは信用出来る人なの?」

 

「あぁ、それはもちろんだ。むしろ相手側からお願いしてきたからな」

 

「そう……それでその人のお名前は?」

 

「それはこの場では教えられない。この後母さん、澪、洋史、彩海奈は残ってくれ」

 

「わかったわ……」

 

「じゃあ、とりあえず解散ということで。また23時30分にここにまた集まってくれないかな?」

 

「「「「「わかりました!」」」」」

 

「芽愛さん、弥海砂さん……23時20分までに私の部屋に「あれ」を用意できますか?」

 

「わかりました……程々にお願いしますね?」

 

「それは芽愛さん達次第というのもありますよ?」

 

「それは……善処します」

 

芽愛さんと弥海砂さんは部屋を出ていき、「あれ」の準備をするために動いてくれるのは何とも心強い。そして部屋には先程残るように言われた人だけが残っていた。

 

「それで彩海奈ちゃんの傍には誰が付くのかしら?」

 

「あぁ、水無月家現当主の水無月 沙綺(みなづき さき)さんだ」

 

「あの御方が……彩海奈ちゃんの傍に……」

 

「すみませんが…どちら様でしょうか?」

 

「あぁ、水無月家は水無瀬家に代々仕えている家の1つで主に裏の役割を担っているらしい。来年度からは次期当主に決まっている水無月 沙耶さんが当主になられるのが先程水無瀬家からもたらされた」

 

「ちょっと、水無瀬家のことを彩海奈ちゃんに話してもよかったの?」

 

「あぁ、大丈夫だ。もう水無瀬家のことは知っているみたいだ。それで1月5日に水無瀬家へと行くことになっている」

 

「そう……ならいいわ」

 

「1月5日には水無瀬家当主、水無月家当主、次期当主とも会うことなるかもしれないがその時はくれぐれも失礼のないようにな」

 

「「はい(わかりました)」」

 

「じゃあ23時30分になったらまた来てくれ」

 

私達は部屋を出ると私は姉さんに声をかけた。

 

「姉さん、水無月 沙綺さんってどんな人なの?」

 

「え?水無月 沙綺さん水無月家当主としてその名はこの魔法界の上層部の一部しか知らない存在ね。私も知ったのは国家公認戦略級魔法師になってからだもの。知ってるのはそうね……十師族・師補十八家の当主、魔法協会会長、私、国防軍のトップくらいかしらね。とにかく水無瀬家並の秘密があるとされてるみたい。水無瀬家と水無月家はいつもどっちが実力として上なのかって言われてるくらいにね。でも本当は水無月家は水無瀬家に代々仕えている家の1つ。どっちが上かはハッキリしているわ。それでも魔法に関する技術はどれもが世界基準ね」

 

「そんな方がなんで私の傍にいることを希望したのかな……」

 

「分からない……ただ水無瀬本家当主の娘の子供ということに興味があるのかしらね。一応私達も水無瀬家の血縁だからそれに恥じないような実力かを見たいのかしら……私は戦略級魔法師で洋史も十師族並の魔法力はあるけど彩海奈ちゃんはまだ表面上では分からないからということかしらね」

 

「最悪……私が戦略級魔法師だということが露見したとしても問題があると思う?」

 

「どうかしらね……水無瀬家も水無月家も四葉家と同等かそれ以上の秘密主義だからわかったとしても公表はしないかと思うけど……この件はまた父さんと話してからにしましょう。私達だけでどうにかなる問題じゃないから」

 

「そう……だよね……じゃあまた後で」

 

「ええ……また後でね」

 

私は姉さんと別れ、新年が明ける前に行われる五輪家年越し恒例の会が今年も催されるみたいなので一旦自室に戻っていった。この会は姉が国家公認戦略級魔法師になった時に年越しだけはみんなでいようということが決まったらしく私も知らない間に恒例になっていった。

 

そして時は経ち、23時30分私は数時間前までいた部屋に戻っていった。そこには既に集まっていたのか五輪家の使用人ほぼ全員と父さん、母さん、兄さんが揃っていた。意外なことにあの姉さんがまだ来ていないことに驚きを隠しつつ、私は部屋の中に紛れていった。その数分後には姉さんと芽愛さん、弥海砂さんがやって来て全員が揃った。そこからは何も起きることは無く私達と使用人そんなことは関係なくみんなが楽しんでいた。

 

そんな中私は部屋の外にある庭園で夜空を見上げていた。

 

「今年はずっと何かが起こってた年だったかな」

 

「そうですね……特に入学後は「ブランシュ」、九校戦は「無頭竜」、論文コンペでは大亜連合、色んなことがありましたね」

 

「弥海砂さん…来年もよろしくお願いしますね?」

 

「もちろん。彩海奈様に何かあっては何が起こるか分かりませんから」

 

「その時は……よろしくお願いします」

 

「もうそろそろ年越しですよ?中に入って祝いましょう」

 

「そうですね…では入りましょうか」

 

「あ!彩海奈ちゃん、ほらこっちこっち」

 

「ちょっ、姉さんそんなに引っ張らないで!?って姉さんなんか酔っ払ってない?」

 

「そんなことなぁいよぉー」

 

「やっぱり……はぁ……」

 

「「「「「3.2.1.0」」」」」

 

「「「「「あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」」」」」

 

「あぁ、あけましておめでとう!今年もよろしく」

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね?」

「…zzz……ハッ、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」

「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 

こうして何事も無く終えた会は夏休みと違い無事に終わり、姉さんが芽愛さんと弥海砂さんに付き添われ部屋に戻っていったのを除き全員が部屋に戻っていた。

 

そして明けた2096年1月1日、十師族各家当主、内閣総理大臣、天皇陛下宛に1枚の書状が届いた。送り主は水無瀬家当主 水無瀬 唯衣花。用件は「水無瀬家当主の退位と次期当主の決定」であり、その中には

 

・2097年3月31日をもって水無瀬家現当主水無瀬 唯衣花は当主の座を退くこと

・2096年1月1日、水無瀬家次期当主として水無瀬 侑那が決定したこと

・2097年4月1日をもって水無瀬家次期当主として水無瀬 侑那が水無瀬家当主に就くこと

・2096年1月1日、水無瀬家次期当主水無瀬 侑那が滋野井家次男 滋野井 詩季と結婚したこと

 

以上の3点が記されていた。同日中には十師族各家当主、内閣総理大臣、天皇陛下は独自の情報端末において水無瀬家現当主へのこれまでの労いと次期当主への祝辞、これからの健闘を述べたお祝いのお言葉を水無瀬家に対して送った。(結婚自体は侑那が27歳の時にはしていたが水無瀬性を名乗っていなかったため発表はされていない)

 

 

謎に満ちた水無瀬家の当主の退位と次期当主の即位、それはこの国、ひいては十師族各家に何かをもたらす存在なのか。そのことはまだ誰も分からない。そして時と同時にやってくるUSNAからの留学生アンジェリーナ・クドウ・シールズ。彼女は彼女らを何処へ導くのか

 




如何でしたでしょうか?次の話は水無瀬家への訪問前編になります。水無瀬家への訪問は2話もしくは3話くらいを予定してます。

この冬休み編、原作では書かれていないので少し四葉継承編に似た形にはなっていますが四葉継承編の時も似た感じにはなりそうな感じはしてるのですがオリジナルに書いていきたいと思います。(何ヶ月……いやもっとあとの話ですけどね)

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。また誤字脱字もご報告よろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「五」の関係者と第五研と出発準備

はい。冬休み編も後今回含めてあと3話で終わります(多分)……

追跡編(下)なかなか面白かったですし物語も終結に向かってくなと感じられる話になってますね。

そんな原作がもう3年生の秋くらいに差し掛かってるんでしょうか?それでもこの作品ではまだ1年生の冬休み……なるべく早く更新していきたいと思います


年が明けて1月1日、私達五輪家では比較的日常に近い朝を迎えていた。昨夜の出来事などまるで無かったように使用人の人達がせっせと新年の準備を始めていた。私はいつも思うのが使用人の人達は何時になったら休むということを覚えるのだろうか。芽愛さんにしろ弥海砂さんも私が休むように言わない限り休もうとすることがないといっても過言ではない。

 

「おはようございます、彩海奈様。そしてあけましておめでとうございます」

 

「あけましておめでとうございます、芽愛さん」

 

「皆様ご用意が出来てございます。彩海奈様もご用意を」

 

「わかりました。では、準備するので手伝ってくれませんか?」

 

「かしこまりました。では、盛悦ながら失礼致します」

 

「(うーん、芽愛さんも弥海砂さんもなんだけどなんかいつも私のを手伝ってもらう時嬉々としてるんだよね)」

 

「終わりましたよ、彩海奈様。今日もまた一段とお美しいですよ」

 

「ありがとうございます、芽愛さん。それでは参りましょうか」

 

「はい」

 

私は芽愛さんを従えるような形で部屋を出ると、昨日と年越しの際に使用した部屋とは違うがそれでもこの屋敷の中で大きい部屋の控え室に入っていった。既に中には今日は新年ということもあり、良くなったとはいえまだ虚弱体質で車椅子に座っている姉さんとその姉さんの車椅子を押す役目の兄さん、さらにはその補助についている弥海砂さんがいた。

 

今日は五輪本邸で行われる『五』の関係者を集めた会が行われる予定になっている。既に部屋の中には父さんと母さんを始め、第五研出身の当主を始めとした関係者が集まっている。あとは私達の登場を待つばかりになっている。私は去年この会を欠席している。ただ単に受験だからという理由ではなく体調不良のため欠席しているため会自体は2年ぶりの出席だ。

 

「続きまして、五輪家次女にして魔法大学附属第一高等学校にご在学の五輪 彩海奈様になります」

 

私はこの声を聞いて使用人の方が開けてくれた襖の中に入っていくとそこには中は今までに見知った人達がそこには大勢いた。父さん、母さんはもちろん五月雨家当主や五代儀家当主など錚々たるメンバーが集まっていた。

 

「お久しぶりになります。五輪家次女の五輪 彩海奈になります。昨年は体調不良のため欠席しましたが今年は万全でございます。今年もよろしくお願いします」

 

「続いて、五輪家長女にして国家公認戦略級魔法師であられる五輪 澪様とその弟君であられる五輪 洋史様になります」

 

私が所定の位置につくと続いて姉さんと兄さんが入ってきた。なお、兄さんが姉さんの座っている車椅子を押しながら入ってきた。傍には先程まで控え室にいた弥海砂さんはついてきていない。

 

「このような姿で失礼します。五輪家長女の五輪 澪と「五輪家長男の五輪 洋史になります」昨年に引き続き、今年も忙しい合間を縫ってご出席してくださりありがとうございます」

 

姉さんと兄さんも一通り挨拶を終えると所定の位置についた。ちなみに私の右隣には姉さん、左隣には第五研において副施設長を務めているという姉さんや芽愛さん、弥海砂さんくらいの年齢の女性の方が座っていた。何故彼女がここに招かれたかというと元々は第五研の所長が招かれていたのだが急な発熱のため来れなくなってしまい、彼女がやってきたのだ。そんなことは五輪家の次女でしかない彩海奈は知らないため気にせずにいた。

 

「新年あけましておめでとう。1つここで私から報告があります、私の息子である洋史を五輪家の次期当主とすることにしました。ただしまだ公にはせず今後数年は当主の補佐として動かす予定でいるので何卒よろしくお願いします」

 

パチパチパチ パチパチパチ

 

父さんから発せられたその言葉に会場全体から拍手やおめでとうといった言葉が聞かれた。私も姉さんもお母さんもお父さんも拍手していた。兄さんは何だが照れくさそうに顔を赤くしていた。

 

「新年あけましておめでとう。我が五月雨家は特に変わったことは無いが五輪の次期殿が決まったのは同じ数字付きとして嬉しく思う。今年もよろしくお願いする」

 

「うむ、あけましておめでとう。私達五代儀家も特に変わったことは無い。五輪の次期殿が決まったことは同じ『五』の関係者として嬉しく思う。今年もよろしくお願いするよ」

 

五月雨家当主、五代儀家当主の新年の挨拶が終わるとその後も私の隣に座っていた第五研の副施設長の女性等関係者の挨拶が続いていき、やっと昼食を兼ねた立食パーティーが始まった。姉さんの周りには何時ものように人垣が出来ていた。ただそれも同じ数字の関係者からかただお話をしているようだった。私はそれを見ながら昼食をとっているところに私に話しかけてきた人がいた。

 

「突然すみません、五輪 彩海奈様でいらっしゃいますか?」

 

「え?あ、はい。そうですけど貴女は……」

 

「これは失礼しました。私は魔法技能師開発第五研究所で副施設長をしている緋翠 水望(ひすい みなも)と言います。以後お見知りおきを」

 

「それで私に何か御用でしょうか?」

 

「九校戦本戦アイス・ピラーズ・ブレイクで使われたあの魔法の名前の件なのですが…」

 

「あ、あれは私が作ったっていえる訳では無いので作ってくれた研究者さんに付けて頂いて結構なのですが…」

 

「わかりました。開発設計者にはそのように伝えておきます。もう1つよろしいでしょうか?」

 

「私に出来ることであれば……」

 

「それではこちらを」

 

私に手渡されたのはある魔法の起動式だった。私はそれを見てどういう魔法かを判別出来るようなスキルはないので1度この起動式を預かることにした。

 

「すみませんが、1度こちらでお預かりしてもよろしいでしょうか?どういう魔法か分かりませんので」

 

「わかりました。私も聞いただけですので参考になるかは分かりませんが、その起動式は彩海奈様がお使いの魔法とは異なる魔法で何でも物質そのものに干渉する魔法みたいです」

 

「物質そのものに干渉……まさか物質変換魔法とか、ですか?」

 

「そこまでは何とも……ですがこれを作った彼女は言っていました。「彩海奈様ならあの「灼熱のハロウィンの時の魔法」をも対象を物質に限定すれば出来るんじゃないか」と。この件に関しては勇海様、真唯様、澪様にも既に許可はいただいておりますので」

 

「わかりました。では1度こちらで預からせていただきます。それとこの起動式を作ってくれた方にお礼を言っていただけるとありがたいのですが」

 

「わかりました。私から彼女の方には伝えておきます。突然失礼しました」

 

そう言うと彼女は部屋を出ていった。その後私は五月雨家当主や五代儀家当主を初めとしたこの会の出席者と話をしていた。

 

この日も夜を迎え、大人達は晩餐会を終えるとそのまま言い伝えでしか聞いたことがない二次会というのに向かっていった。未成年である私はその場を離れ多少の料理と飲み物、先程預かった起動式のコピーを持ち、五輪家の魔法研究所へと向かっていった。これから会う人が既にそこにいるのは事前に把握済みだ。

 

「おーい、いるー?」

 

シーン

 

返事がない。明かりは点いてるのだが何処にも彼女の気配はない。私はおそるおそる彼女に与えられている研究室などを訪ねては部屋を出てを繰り返し残すはこの研究所内で1番広い会議室のみになった。確かにこの会議室にも明かりは点いてるのだがさすがにここではないだろうということで後回しにしていたのだがここにいるとは意外だった。

 

ガラガラ「おーい、愛彩ーいるの?」パンバンパン「!?」

 

「新年あけましておめでとう、彩海奈!」

 

「「「「「あけましておめでとうございます、お嬢!」」」」」

 

「あ、あけましておめでとう、ございます……」

 

「どうかしたの?彩海奈」

 

「い、いやびっくりして……その皆さんは帰らなくてもいいんですか?」

 

「お嬢と姫のためなら俺たちは何時でも駆けつけますよ?だよな?お前ら」

 

「そうだぜ、お嬢。俺らだって伊達に十師族五輪家で働いてるからな」

「そうだな、してきたことが全部とは言わないけど還元されてるからな」

「そうよ、だから気にしないでね。愛彩ちゃんも彩海奈ちゃんも」

 

「はぁ…これじゃ何言っても通じなさそうね、愛彩」

 

「…………」

 

「えっと、愛彩?」

 

「い…か…ん……って……な」

 

「え?なんて言ったの?」

 

「いい加減、私のことを姫って呼ぶなーーー」

 

「へ?」

 

「何を言うんですか、姫。魔法工学やCAD、それに起動式の作成だって俺らより姫の方が上だし、なんと言ってもまだお嬢と同じだからな」

 

そう言われ、愛彩はぷるぷるしていたが私は我関せずの態度をとっていた。ただ内心はやっぱり愛彩の魔法工学の知識はすごいと思っていた。

 

「ところで、お嬢はどうしてここへ?まだ関係者の会も途中でしょう?」

 

「あぁ、1つ愛彩に相談事があったのですがこの際皆さんにも見てもらおうって思いまして」

 

「何をみせてくれるの?」

 

「えっと、これです」

 

私は第五研の副施設長の緋翠 水望さんから受け取った私のためだけに作られたという起動式を見せた。

 

「これは一体……何処から出てきたものです?」

 

「魔法技能師開発第五研究所の研究者が私のためだけにこの魔法を作ったようです」

 

「何故第五研がこのようなものを……」

 

「分かりません。副施設長さんが言うには先日の謎の戦略級魔法師が放ったあの魔法を対象を物質だけに置き換えれば私でも使えるんじゃないかと」

 

「馬鹿げてる……あの戦略級魔法と思わしき魔法はおそらく質量エネルギー変換魔法の可能性が高いというのに……」

 

「質量エネルギー変換魔法?愛彩どういう効果なの?」

 

「え?質量エネルギー変換魔法は確か質量を消し去って、そこに「質量相当の高エネルギーが存在する」空間を出現させてこの膨張する空間に触れた物質は激しく振動し、加速され、燃焼、融解、蒸発、崩壊、爆発などの変化をもたらす魔法だったはずだけど……」

 

「だけど?」

 

「あれだけの魔法を使うことが出来れば貴女のお姉さんと同じで戦略級魔法師としてもおかしくないっていうことよ。さらにはあの魔法はおそらく「分解」っていう今の難易度だと最高難易度に数えられる魔法を元に作られているはずなの。だからこそ今になっても日本政府はあの存在を認めてないのよ。このことを政府が知っているとも思えないけど」

 

「そんな魔法が存在しているなんて……」

 

「しかもこの魔法は彩海奈の固有魔法である『沈焉』と同じような感じね。「分解」は情報体であればそれをも解体していって魔法式もサイオン情報体だから解体出来るわけね。さらにはこれが戦略級魔法として使われてるならおそらくダウングレードしたのもおそらく同じような感じでしょうね」

 

「そんな魔法師……存在するだけでもしナンバーズの1人だったら「数字落ち」どころの騒ぎじゃない…」

 

「ええ、だからこそ日本政府はこの事実を伏せたいのよ。今のこの世の中はUSNAと新ソ連の2大大国が軸になってるけどそこに日本が割って入るくらいのことが起きかねない。表面上とはいえ日本とUSNAは同盟関係にある。だから今度の交換留学は何かありそうね」

 

「気をつけるわ……」

 

「この起動式も私が後で改良したりはするかもしれないけど、使えるかどうかは試技してからね…でも彩海奈のために作られたということは相当な演算力が必要よね…」

 

「わかった。1月6日までに間に合いそうになかったら、私のメールに送っといて。届くまでは愛彩が作ったあのプログラムを維持しておくから」

 

「ええ、わかったわ」

 

「こんな、正月に頼んでごめんなさいね」

 

「ううん、全然大丈夫だよ。暇して持ち余すよりかは何かやってた方が落ち着くからさ」

 

「あぁ、去年のうちに大きいことは終わらせたから俺らも何かやろうとは思ってたんだ。それとお嬢のことに関するなら最優先だ」

 

その言葉に同調するかのように他の人達も「やるぞ」とか「やってやろうじゃない」という声が聞こえるほどだった。そして私は最後にこう言った。

 

「研究するのもいいですけど、正月なんですから休んだりしてくださいね?」

 

「彩海奈…それ今仕事を持ち込んだ人が言うべき言葉じゃないよ……ともかくこれに関してはこっちに任せてちょうだい。彩海奈は私たちと違ってやることが沢山あるからね」

 

「返す言葉が無いわね…よろしくお願いしますね皆さん」

 

「おうよ、お嬢」

「確かに。お嬢」

「任せてよ!」

 

「それじゃあ、余り物で申し訳ないのですが少し食べれるものと飲み物を持ってきましたので乾杯といきましょうか」

 

「ありがとう、彩海奈」

「ありがとうございます、お嬢」

 

「それじゃあ、今年もよろしくお願いしますということで」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

私と愛彩と研究員の人達はその後小一時間色々なことについて話し合っていた。夜も更けてきた時に研究員の1人から「もうそろそろ帰った方がいいよ」と言われ私と愛彩は各自与えられている部屋へと戻っていった。

 

翌日1月2日、翌々日1月3日は周辺に住んでいる方々への挨拶周りや本邸に来られたお客様への挨拶等忙しいを通り越した程の忙しさに陥っていた。(特に本邸に来られたお客様への挨拶)

明けて翌日1月4日、今日の午前中はまだこっちで挨拶が来るかもしれないので待機だが午後には京都にある魔法協会本部へ向かわなければならない。何でも水無瀬家本邸に行くには魔法協会本部を経由しないと行けないということになっているらしく出かけることになっている。

 

ただここで予期せぬ来客がやってきた。やってきたのは九島家前当主九島烈。何故やってきたのかは不明だが一気にこの五輪本邸の空気が変わったことは間違いなかった。

 

「「あけましておめでとうございます。九島閣下」」

 

「あぁ、あけましておめでとう、彩海奈、澪」

 

「本日はどういうご用件でしょうか?」

 

「何、簡単な挨拶周りだよ。みのるとはいつもよくしてくれてるからな、そのお礼も兼ねてだが」

 

「そうでしたか…「失礼します」」

 

「あぁ、五輪殿それに真唯殿すまないなこんな老人のために」

 

「いえ、こちらこそいつも澪と彩海奈のことを気にかけて下さりありがとうございます。申し遅れましたが、あけましておめでとうございます」

 

「あぁ、あけましておめでとう。真唯殿、母親が当主の座を降りるということは知っていたか?」

 

「ええ、2年前くらいから姉さんに次期当主として色々していたみたいですよ?それと私に水無瀬家のことを頼るのは無意味だと思いますが…」

 

「はは、そうだな。ここ数代の水無瀬家としては珍しい境遇だからな」

 

「ええ、ほんとお祖母様とお母様には頭が上がりません」

 

「では私はこれで失礼するよ。五輪殿これからも澪と洋史、彩海奈の事よろしく頼んだぞ。真唯殿、今度結那か唯衣花に会うことがあればよろしく伝えてくれ。澪、彩海奈お前達もこれからも頑張れよ」

 

「もちろんです、老師」

「その言葉確かに受け取りました」

「わかりました、老師」

「わ、わかりました。老師」

 

「はは、それではな。また何処かで会おう」

 

こうして『老師』は私達のことそれに母さんの実家でもある水無瀬家ことについて話してから五輪本邸を後にした。最後まで何が目的かは分からなかったがおそらく水無瀬家のことを名前を出してきたということは何処からか私が水無瀬家のことを知ったということを知っていたのだ。相変わらずすごい情報力だということに驚いた。

 

そして午後2時、母さんと姉さん、兄さん、私、芽愛さん、弥海砂さんの6人は水無瀬家へ向かうための中継地点である京都の魔法協会本部へと向かった。夏休みに四葉真夜さんとここで会ってから既に4ヶ月以上経っていたことに私は時の流れの速さというのを感じていた。

 

2時間後私達は魔法協会本部に到着した。そこでは突然私達が訪れたことに魔法協会の職員が慌てて対応してくれていて母さんが用件を伝えると本部内にあるV.I.P.控え室へと通された。何でも水無瀬家からお迎えが来るということで控え室へと通された。私と四葉真夜さんがお話した場所とは違うところにある控え室だった。

 

「それにしても…何で姉さんと兄さんも連れてきたの母さん」

 

「あら、彩海奈は私と2人きりの方が良かったの?」

 

「そ、そうじゃないけど…」

 

「澪を連れてきたのは私の姉さんに会わせるつもりだったのよ」

 

「どういうこと?」

 

「それを話す前に遮音フィールド張ってもらっていいかしら?」

 

「え?あ、うん…これで大丈夫だよ」

 

「澪は国家公認戦略級魔法師でしょう?もしかしたらまたあの時みたいに出征する可能性がある。それを未然に防ぐことが出来る可能性があるのよ」

 

「未然に?」

 

「水無瀬家は時の政府や私達十師族に多大なる影響をもたらすの。国防軍の最高指揮官は内閣総理大臣。そこまで言えば分かるわよね?」

 

姉さんの出征を未然に防ぐ。それは一見したら無理なのかもしれない。ただそこに政府内に多大な影響を及ぼすことが出来る水無瀬家が姉さんの出征に対して難色を示せば取り止めになるかもしれない。さらに今は昨年のあの「灼熱のハロウィン」で戦略級魔法師の存在が詳細にでは無いが存在するということは世界が非公式でも知ることになった。そこで水無瀬家が姉さんの虚弱体質について知ってもらえれば嫁入りしていったとはいえ水無瀬の血を継いでいるという点を考慮してくれるかもしれない、と母さんは踏んでいるようだった。

 

「彩海奈、これだけは覚えておきなさい。水無瀬家は血を受け継いでいる人には絶対に裏切らない、それは配偶者とその子孫に対してもということを」

 

「わ、わかりました」

 

「そんなに気負わなくてもいいわよ。貴女が水無瀬の次期当主になる可能性はそんなに高くないはずだから。それにしても今から楽しみだわ。澪、洋史、彩海奈がどんな人を連れてくるのか、ね」

 

「そもそも、私と姉さんは結婚出来るのかな…どちらも戦略級魔法師だし…姉さんはともかく私の方が出来ない気がするんだけど」

 

「それもそうね……この中だったら洋史が1番最初かもしれないわね」

 

「ねぇ、兄さん七草先輩とは最近どうなの?」

 

「うん?最近は「失礼します」」

 

「お待たせして申し訳ありません。水無瀬家現当主水無瀬 唯衣花の使者として参りました、水無月 沙耶と言います。五輪 真唯様、五輪 澪様、五輪 洋史様、五輪 彩海奈様、如月 芽愛様、如月 弥海砂様でいらっしゃいますね?」

 

「ええ、それで貴女が連れていってくれるのかしら?」

 

「はい、それでは移動をお願い出来ますか?裏口に迎えを用意していますので」

 

「わかりました。じゃあいきましょうか」

 




如何でしたでしょうか?次で水無瀬家全般のことをやるつもりです

書きたいことは前書きに書いたので今回はこれにて

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。また誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水無瀬家本邸、母親達の苦悩

ここ最近1週間に1度日曜日の朝に投稿してますが来週以降はもっと感覚が空く可能性があるとここでは言っておきます

動乱の序章編を最近読んでいたのですが追跡編の十山つかさとえらい違うなって思ったんですけど根本はすごいいい人なんだなって思いました。もうそろそろこの作品では来訪者編に入るので来訪者読んでいきたいと思います





 

水無瀬家本邸。その場所を知っているのは極限られた人であり、あの四葉でさえ場所は把握出来ていない。知っているのは水無瀬家関係者のみであり、今現在では水無瀬家現当主夫妻、次期当主夫妻、先代当主夫妻、五輪家当主夫人および水無瀬家使用人のみである。

 

私達は今現在その水無瀬家本邸に向かっている水無瀬家所有の自走車の中にいた。この水無瀬家所有の自走車には窓がなく運転席も見れない仕様になっているため私達が今どこにいるかは分からないが少なくとももう1時間は乗っている。ここで先程水無瀬家の使者として迎えに来た水無月 沙耶さんに母さんが話しかけた。

 

「あの、間違ってたら失礼なのだけど私と沙耶さんって昔本邸で遊んだことなかったかしら?」

 

「はい。私は母から聞いた話なのですが私が小さい頃よく遊んでもらっていたみたいで」

 

「やっぱり、あの時の沙耶ちゃんよね!あの子が今にはこんなになってうちの澪も彩海奈も見習って欲しいものね」

 

「「お母さん!!!」」

 

「ふふ、澪も彩海奈もこれから頑張りなさいよ?それで沙耶ちゃんは水無月の次期当主といったところかしら?」

 

「はい。先日1月1日に十師族・師補十八家、魔法協会会長、国家公認戦略級魔法師、国防軍のトップに水無月家の次期当主に決定したことを母の方からご報告させていただきました」

 

「それじゃあ水無瀬家と同じに来年の4月1日になるの?」

 

「いえ、私は今年の4月1日から当主としてなることになっています。今回私がこのように皆様方をお迎えに上がるということは異例なのですが次期当主として本家関係者の護衛という役目をまかせられたのでしょう」

 

「そう…じゃあ私達のことお願いね?ここにいる芽愛と弥海砂も私達のこと守ってくれてるけど」

 

「お任せ下さいませ、真唯様、澪様、洋史様、彩海奈様、芽愛様、弥海砂様。もうそろそろでしょうか、水無瀬家本邸に着きますので」

 

京都にある魔法協会本部を出てから約2時間が経過したのだろうかようやく水無瀬家本邸に着いたようだ。降りるとそこには私達が住んでいる五輪家本邸よりも大きい武家屋敷みたいな家が3軒立っていた。

 

「水無瀬家本邸は中央、水無月家別邸が右、神無月家が左となっています」

 

「神無月家?もしかして…私が住んでいる東京の家のCADの機器の調達、搬送、設置を行ってくれているムーン・ザ・ノベンバー社って…」

 

「はい。神無月家が運営されているCAD関連メーカーになります」

 

「えっと…彩海奈ちゃん…そのムーン・ザ・ノベンバー社ってどういった会社なのかしら?」

 

「ムーン・ザ・ノベンバー社。知る人ぞ知るCAD関連会社の1つで、国内最高クラスの品質とその技術なの。なんと言ってもムーン・ザ・ノベンバー社の最大の特徴は使いやすさと価格が求めやすいのにハイスペックなところで、この分野においてムーン・ザ・ノベンバー社が圧倒しているの。ただユーザーカスタマイズの点だけはフォア・リーブス・テクノロジーに分がありますけどね」

 

「じゃあ私のCADもそのムーン・ザ・ノベンバー社のものを改良してあるの?」

 

「姉さんのはFLTのシルバー・ホーンを改良したものだよ。姉さんのはユーザーカスタマイズに特化してないとその時に合わせて調整とかしないといけないからね」

 

「じゃあ、そのムーン・ザ・ノベンバー社の製品はうちにはないの?」

 

「私が普段日常的に使ってるCADはムーン・ザ・ノベンバー社のものを改良したものだけど…」

 

「じゃあ私も…」

 

「姉さんはダメと言いたいけど今度愛彩に話してみるわ…」

 

「ありがとう!彩海奈ちゃん」

 

「それではそろそろまいりましょうか。真唯様はかつてお住まいになっていたお部屋、それ以外の方々には各個人のお部屋を用意していますので」

 

「わかりました。後はこちらでやりますので、母さんに到着したということを報告してくださるかしら?」

 

「かしこまりました。では私はこれで」

 

水無月 沙耶さんは屋敷の奥へと進んでいき、私達も各個人の部屋へと母さんの案内で進んでいった。

 

「それにしても…この部屋何でもあるわね…」

 

そう澪、洋史、彩海奈、芽愛、弥海砂が通された部屋には日常生活をするには何の不便もないような作りと備品が整えられていた。すると彩海奈がいる部屋にノック音が鳴った

 

「失礼します。私目は水無瀬家に代々仕える神無月家の神無月 奏也(かんなづき そうや)と申します。五輪 彩海奈様でいらっしゃいますね?」

 

「は、はい」

 

「奥様…水無瀬家当主 水無瀬 唯衣花が皆様方をお呼びでございます。奥の食堂の方へ来ていただけますか?」

 

「は、はい。それでは少し準備するので…その…外で待っててもらえますか?」

 

「かしこまりました。何かありましたらお呼びください」

 

数分後……

 

「お待たせしました。それではよろしくお願いします」

 

「かしこまりました。それでは」

 

私が奥の食堂に着くとそこには母さん、姉さん、兄さん、芽愛さん、弥海砂さんが既にそこにはいて、後私を含め3人が座れるように設置されていた。私が席に座り(左に弥海砂さん、右に姉さん)待っていると奥の扉が開き2人の女性が入ってきた。

 

「ようこそ、水無瀬家本邸へ。私はこの屋敷の主で水無瀬家現当主の水無瀬 唯衣花といいます。よろしくね」

 

「ようこそ、おいでくださいました。私は水無瀬家次期当主の水無瀬 侑那です。よろしくね」

 

「それじゃあもう遅いことだし夕食にしましょう。今日は懐石料理にしたからどうぞ召し上がってね」

 

水無瀬 唯衣花さんと水無瀬 侑那さんが席に座ると母さんが唯衣花さんに向かって話し始めた。

 

「久しぶりね、何年ぶりかしら実際に会うのは」

 

「そうね……5年くらいかしらね。澪を紹介してくれた時に確か」

 

「あぁ、そうね。じゃあこっちの男の子が長男の洋史で澪の隣が次女の彩海奈よ」

 

「よろしくね、洋史君に彩海奈ちゃん」

 

「は、はい。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

 

「そんなに固くならなくてもいいのに……」

 

「洋史も彩海奈もまだそんなに十師族としての務めをやってもらってないから当然よ……でも彩海奈は四葉 真夜さんと会ったことあるみたいだけど」

 

「真夜に?それなら大丈夫よ、真夜に比べたら私なんて微々たるものよ」

 

「母さんが微々たるものだったら私達は存在出来てるかしら」

 

「それはそれよ、侑那。私を基準にする必要は無いわ、だからね澪ちゃんも洋史君も彩海奈ちゃんも私のことは気にしないでね」

 

「母さん……それだと余計意識しちゃうわよ……」

 

「あら、そうかしらごめんなさいね」

 

「えっと…1つお聞きしたいことがあるのですが」

 

「何かしら?私達で答えられるものだといいのだけれど」

 

「私がこの水無瀬家の次期当主候補に上がっているというのは本当なのでしょうか?」

 

「な!?それは本当なの?」

 

「これは私の推測の域を出ません。少なくとも私が水無瀬の血を継いでいるのは事実。それに五輪の方も戦略級魔法師である姉は無いとしてそうなると兄か私のどちらかになる。そうすると基本は兄になります。すると私は五輪家のご令嬢ということになり何処かに嫁ぐのが一般的だと思いますが、私は水無瀬の血を継いでいるということを考えると安易には決まらない。ただ水無瀬家であるならば子孫を残せるということを考え、さらに水無瀬直系の娘の子供と次期当主にはうってつけだと思ったのですが」

 

「なるほど…よく考えられてるけど、それは違うわ。それにまだ私の次が決まったばかりでその次の当主を考えるのは少なくとも10年後あるいは20年後くらいね。その間に侑那の子が次の当主として順調にいけばその子が次期当主候補になるわ」

 

「そうでしたか…ご無礼を申し上げました」

 

「いえ、いいのよ。確かにそういう考えに及ぶのも仕方ないわ。私達は存在そのものがあまり知られてないから。私から1ついいかしら?彩海奈ちゃん貴女はそんな五輪だとか水無瀬がとか考えずに過ごしなさい。ただ五輪に関しては今後ずっと付き添う事柄だけど私達のことに関しては気にする必要は無いわ」

 

「わかりました」

 

「それではお食事にしましょう。せっかくこうやってたくさんの方々と食べれる滅多にない機会ですから」

 

唯衣花さんが言うとすぐに使用人の方々が私達の前に色々な料理を運んできてくれた。運ばれてきた料理はどれもがこれまでに食べたことの無いくらい美味しかった。それはただ単に料理が美味しいだけじゃなく大勢の方と食べることそういう色々なことがかさなったからかもしれない。

 

夕食を食べ終え、お風呂の用意が出来たらまた呼びに行くということで私達はまた各自の部屋へと戻っていった。その後20分程してから先程呼びに来てくれた神無月 奏也さんからお風呂の用意が出来たことを伝えられると私は入って1日の疲れを洗い流した。

 

ーー彩海奈がお風呂に入っている頃ーー

 

水無瀬家本邸内にある客間には5人の姿があった。1人は水無瀬家当主水無瀬 唯衣花、左隣に次期当主水無瀬 侑那、唯衣花の向かい側に五輪家当主夫人五輪 真唯。そして唯衣花の後ろに彼女の執事である神無月家の神無月 正義、真唯の後ろに水無月家の次期当主水無月 沙耶がそこにはいた。最初に声を上げたのは真唯だった。

 

「それで、私をここに呼び寄せた理由を教えてもらおうかしら?」

 

「貴女の娘の次女の彩海奈ちゃんのことなんだけど…彼女には恐れ入ったわ…まるで私達が考えていたことがそのまま見抜かれてるのだもの」

 

「まさか…本当に彩海奈をこの水無瀬の次期当主にするつもりだったの?」

 

「ええ、侑那とも話していたのよ。少なくとも魔法の技術、威力に関しては申し分ない。さらに彼女には戦略級魔法師並の力があると私は思っているわ、扱えるかは別としてね」

 

「仮に彩海奈が五輪の次期当主に指名されたらどうするのよ」

 

「その時はその時よ。でも私は彩海奈ちゃんにはこの水無瀬の次期当主として跡を継いでもらいたいって今は思ってるわ。それが仮に戦略級魔法師だとしてもね。水無瀬家は表には出てないから当主が多少の期間家を空けていても問題にはならないわけだし」

 

「それでも……私は澪だけじゃなくて彩海奈まで戦場には出したくない」

 

「…………」

 

「私はもう……自分の子供達を戦場には送り出したくはない。それが例え母さんや姉さん、国防軍の命令だとしても」

 

「真唯(まゆ)……」

 

「もし…彩海奈を水無瀬の次期当主とするならさっき母さんが言った「家を空けても構わない」ということを撤回して…私は彩海奈をもうあんなところに送り込みたくない!!」

 

五輪 真唯は自分に対して自分で怒っていた。確かに真唯が言っていることは人の親それに娘なら当然のことだ。自分の娘を進んで戦場に送り込むことなんて到底許容出来ることじゃない。今回の横浜事変は偶然の出来事とはいえ彩海奈は戦場に立った。彩海奈は真唯の3人の子供の中では五輪家の魔法師としても水無瀬家の魔法師としても最優秀と言ってもいいくらいの実力をもっている。まさに五輪と水無瀬の最高傑作と言っても過言ではない。そんな娘をみすみす戦場なんかで命を落として欲しくなかった。せめて人としての、女としての幸せだけは感じて欲しいのだ。だから……

 

「だから……もし水無瀬の次期当主に決まっても戦場なんかには出ないようにして欲しい。確かに私はもう水無瀬家の人間じゃないのはわかってる、でも水無瀬家の血は受け継いでる。こんなことで母さん達が許可はしないかもしれないけどそれでも私のこの想いだけは分かってほしい」

 

「…………わかったわ。もし彩海奈ちゃんを水無瀬の次期当主に指名したとしても水無瀬家の今の現当主と次期当主に誓ってそんなことさせないわ。でも1つだけ、今後まだどうなるかは私達でも分からないわ。不測の事態になったら……」

 

「ええ、その時はわかってる」

 

「そう……ならいいわ」

 

「大丈夫だよ、母さんの時も私が当主になったとしてもそんなことはさせない。もちろん澪ちゃんにも…ただ彼女の場合は立場的に難しいかもしれないけど」

 

「それで1つ姉さんに相談があるわ。この間の横浜事変の時に朝鮮半島を襲った魔法があるでしょう?あれを行使したのが国防陸軍101旅団独立魔装大隊の1人ということは既に弥海砂によって判明しているのだけれど……」

 

「わかったわ……少しこちらから最高指揮官に伝えてみるわ。まだそんなに安定はしていないんでしょう?」

 

「ええ、ありがとう。母さん、姉さん」

 

「それにしても貴女も変わったわね。まだ小さかった頃はいつも私の後を追っかけまわってたのに」

 

「そんな昔のこと忘れたわ」

 

「私は覚えてるよ!2人で水無瀬の庭とか本邸内を探し歩いたよね」

 

「さぁ、そんなことあったかしら」

 

「またまたー私は覚えてるよ!なんと言ってもまゆちゃんと一緒にいたからね!」

 

「そのまゆちゃんは何時になったら私の名前で呼んでくれるのかしら?」

 

「そのうちね!それにしても彩海奈ちゃんは凄かったね、九校戦」

 

「ほんとよ、私1年生から本戦に出て優勝するなんて思わなかったわよ。それにバトル・ボードじゃレコードタイムなんて叩きだしちゃうし」

 

「いーなー、私も富士演習場に行って見てみたい」

 

「あら、それなら来年の九校戦は見に行こうと思ってたのよ。十師族の当主も来るのでしょうから。おそらく七草、三矢、四葉、一条辺りがね。侑那の紹介も兼ねて行こうと思ってたの」

 

「ほんとに!?やったーー初めてだよ富士の演習場行くの」

 

「もし行くのなら1人だけ彩海奈以上に注目の人がいるみたいよ。澪が言うには完全無欠の少女で彩海奈の最大の敵になるみたい」

 

「そんな子がいるの?七草の双子ちゃんだって今年からの新入生だし…」

 

「えっと…確か名前は司波深雪。去年は新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク、本戦ミラージ・バットで優勝、さらに入学試験では新入生総代、実技試験が1位ね。そして何より彼女の兄の司波達也、彼も目を見張るものがあるわ。彼は1年生ながらエンジニアとして担当した選手は表彰台を独占、さらには「氷炎地獄」、「ニブルヘイム」、「フォノンメーザー」等の高等魔法の起動式を用意、さらには「飛行魔法」までをも九校戦のCADのスペックで合わせてきたという点から考えても恐ろしい兄妹よ。特に兄の方はエンジニアだけじゃなくて新人戦モノリス・コードに急遽出場したにも関わらず一条の息子とカーディナル・ジョージまでをも倒しちゃうおまけ付きね。さらにはあの「今果心」九重八雲の教えを受けてるかもしれないって」

 

「何かありそうな兄妹ね…兄の方は規格外もいいところよその技術力に戦闘力。急遽出場ということは本来はメンバーに含まれていないのに優勝してしまうなんて…」

 

「ええ、私達は立場上あまり目立って動けないからお願い出来るかしら?」

 

「わかったわ。こちらでも調べてはみるわ」

 

私達の話もこの後は侑那、真唯の子供の頃の話や真唯の子供達の昔話で盛り上がっていった。日付けが変わってからも大いにその話に花が咲いていた。

 

翌日1月5日、本来であれば今日はエイミイや深雪達と一緒に初詣をしていたのだろう、だけど私がここに来たのは自分から頼みこんだものだったのでその点は良かったと思っている。私は目が覚めて周りを見ると見慣れない光景が広がっていた。一瞬ここは何処だろうと思ったが昨日から水無瀬家本邸に来ていたことを思い出した。私は一通りの身支度を終え、部屋の外に出るとそこには芽愛さんと弥海砂さんがいた。

 

「おはようございます、彩海奈様」

 

「おはようございます、芽愛さん弥海砂さん」

 

「おはようございます、彩海奈様。本日はどのようになさるのでしょうか?」

 

「私は特に聞いてはいないのですが…どうやら来たみたいですよ?」

 

「おはようございます、五輪 彩海奈様、如月 芽愛様、如月 弥海砂様。お食事のご用意が出来ましたので昨日のお部屋へご移動願いますかな」

 

「わかりました。そういうことなので行きましょうか」

 

「「はい」」

 

昨晩の部屋へと移動するとそこにはまだ誰の姿も無く朝食のみが置かれていた。私は既に母さんと兄さんは来ているものだと思っていたので少し驚いた。母さんは私がまだ五輪家で過ごしている間は使用人を除き誰よりも早く起きていたからだ。私が如何に早く起きていようが母さんだけは絶対に起きていた。次に兄さんだが兄さんはこの時間に起きると決めていればその時間には絶対姿を表していた。少なくとも私が五輪家本邸にいる間は兄さんを起こしに行った記憶が無い。そのため今日も既に起きてここに来ているものだと思っていた。私達が昨日と同じ席に座ると母さんと兄さんが入ってきた。後は姉さんだけなのだが一向にここに来る気配はないため遂に母さんが

 

「全く…あの子ったら……申し訳ないけど彩海奈、起こしに行ってきなさい。彩海奈なら何があろうとも起きるはずだから」

 

「……わかった…すいませんが芽愛さん付いてきてくれませんか?私一人だと抑えられる気がしませんので」

 

「……わかりました」

 

こうして私と芽愛さんはなかなか起きてこない姉さんを起こしに姉さんが泊まっていた部屋へと向かうとそこには昨日私を呼びに来た神無月 奏也さんが部屋の目の前に立っていた。私達が来たことに気付くと

 

「おはようございます、五輪様、如月様」

 

「おはようございます、神無月さん。姉のことなら私達にお任せ下さい」

 

「わかりました…それでは何かありましたらお呼びください」

 

私と芽愛さんは姉さんがいる部屋に入っていくとそこには布団にくるまっている姉さんがいて、芽愛さんが優しく起こすと目が覚め起き上がるとそこには生まれた姿のままの姉さんがそこにはいた。私と芽愛さんは驚きを通り越して呆れつつ姉さんの着替えを進めていった。姉さんは私達の反応にムスッとしていたが自分の落ち度がこの状況を物語っているため何もせずにされるがままになっていた。

 




如何でしたでしょうか?前書きにも話した通りこれからの1ヶ月は間隔が空く可能性があります。

前書きで動乱の序章編読んでると言いましたが他に違う小説を読んでからまた魔法科に入ると気が付かなかったところまで気付いてあぁこれはこうなんだというのが余計にわかるようになるのが最近の日常になりつつあります←

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字も気をつけてはいますがありましたらご報告よろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水無月と水無瀬

最近の湿度は何なんですかね……ムワッとした空気がほんとなんか人をダメにしそうな気がするのですが…といったどうでもいいことは置いといて今回で冬休みは終わりです。現実が真夏に向かっていくのに対してこの作品では真冬に向かっていきます。


姉さんを生まれたての姿から着替えさせてから食事の場所まで行くと既に水無瀬 唯衣花さんと侑那さんそして唯衣花さんの夫の柊優さん、侑那さんの夫の詩季さんが座っていた。最初は一瞬一緒にいる男の人は誰だろうと思ったが隣に座っていたためそう結論づけた。

 

「おはようございます、私のために待っていただき申し訳ありません」

 

「おはよう、いいのよ私達は姓は違えど家族なのですから」

 

「そうですね、さぁ、食べよう」

 

「その前に私達のことを紹介した方がよろしい方が」

 

「そうだな、私は水無瀬 柊優。唯衣花の夫で今は主に水無瀬の対外的な会談の代表をやっている。まぁ今後は徐々に詩季の方に移行していくがな。まぁそのなんだ何かあったらわしに言ってくれ。少しくらいはお主らの役にたつであろうよ」

 

「次は私ですね。初めまして、水無月いやもう水無瀬か。水無瀬 詩季と言います。私はムーン・ザ・ノベンバー社で主に研究施設の調整やモニター、そして少しだけだけど調整もやっているよ。この中だとえーっと彩海奈ちゃんだっけ?なら良いお話が出来そうだから今度また機会があったら是非に」

 

「ぜ、是非!ムーン・ザ・ノベンバー社の人との方とお話出来るなんて光栄です」

 

「あら?詩季さんは私の妹に何かする気かしら?」

 

「そ、そんなことないよ!ただ彩海奈ちゃんが魔法工学系のこと詳しいって侑那から聞いて…その…」

 

「姉さん、私お母さんのお姉さんの夫を娶るようなことは絶対にしないわよ。それに私まだそういうことに関して関心がないから」

 

「はいはい、これ以上詩季さんを困らせないの。ごめんなさいね、私の娘達が」

 

「いえ、大丈夫ですよ。私の実家でもこういう光景がありましたから。やっぱり姉とか兄は心配するものですよ。実際私も同じでしたから」

 

「まぁあの水無瀬だからね…古式の人達にとっては畏れ多いもの」

 

「それって四葉と同じくらいに?」

 

「そこまでじゃないわよ。私達だけじゃ一国を滅ぼしたりなんて出来ない」

 

「でも、私が聞いた話だと四葉より死傷数は増えると思うけど今でも4人だけで大漢は行けるんじゃないかって戦々恐々としてたわよ?」

 

「はぁ…全く厄介な連中だ…」

 

「朝からこんな物騒なことを話さないでくれますか?お母様、お父様、姉さん?」

 

「「「は、はい」」」

 

お母さんの言葉に水無瀬の現当主夫妻、次期当主が沈黙した今後一切見られないであろうことを目撃してしまった。これを見ていた姉さん、兄さん、私、芽愛さん、弥海砂さんは見て見ぬふりを決め込んでこれは私に限ったことだがあの口調からして出来ないと言っていたが本気を出せば出来なくもないと解釈してそれを考えたら戦々恐々と唯衣花さん、柊優さん、侑那さん、詩季さん、お母さんのことを見ていた。

 

波乱(?)の朝食も終わり私と芽愛さん、弥海砂さんは唯衣花さんの許可をもらって水無瀬の敷地内を散策していた。

 

「随分と気持ちいいところですね」

 

「そうですね、とても東京とは比べられない空気の綺麗さです」

 

「ほんとですね、東京と比べると全然違います。ですが寒いですねやはり」

 

「あら?ここが気に入った?」

 

「え?貴女は?」

 

「私は水無月家当主の水無月 紗綺。これからよろしくね?」

 

「あ、貴女が水無月 紗綺さんでしたか…私は五輪 彩海奈と言います。こちらが」

 

「如月 芽愛と言います」

「如月 弥海砂と言います」

 

「それで、ここ気に入ったかしら?」

 

「ええ、とても」

 

「今度は夏にいらっしゃい。今日とはまた違った気になることがあるから、それにしてもやっぱり唯衣が言っていた通り良い子ね」

 

「ゆい?お母さんのことですか?」

 

「いいえ、唯衣花のことよ。この正月何かある度に貴女の名前を聞いたもの」

 

「私のことを?」

 

「ええ、やれ九校戦やら第一高校のことやらありとあらゆることを調べてたみたいだからね。それで来年度から私がたまに傍にいても大丈夫かい?」

 

「そ、それはもちろん。私如きに付いてくださること何故したいと?」

 

「1つはさっきも言ったけどあの唯衣花が貴女を侑那の次にしようとしてるということ、2つ目は結那叔母様も貴女のことを気にかけていること、3つ目は貴女のその技術力を私と神無月さんがかっているというところね」

 

「結那叔母様?私のお母さんのお祖母様ということですか?」

 

「ええ、水無瀬家が秘密主義なのは知ってるわよね?その始まりは結那叔母様からなのよ。水無瀬は昔は古式の大家として名を馳せてたんだけど結那叔母様は古式はもちろんの如く現代魔法においても今の十師族と比較しても遜色ない才能の持ち主だったの。今は分からないけれどそれでも世界を見ても優秀な魔法師の1人よ」

 

「今の十師族と比較しても引けを取らない……」

 

「ええ、私が今話せるのはこれくらいかしらね。これ以上は正式に水無瀬家の人間になった時にでも話してあげる。その間に私が逝っちゃうかもしれないけどね」

 

「貴重なお話ありがとうございました」

 

「ええ、また会いましょう次は東京で」

 

「東京で、ですか?」

 

「ええ、それじゃまたね。芽愛さんも弥海砂さんも」

 

そう言い残して水無月 紗綺さんは水無月家別邸の中に入っていた。そこに水無瀬本邸から出てきた兄さんにな

 

「おーい、彩海奈ー、芽愛さん、弥海砂さんそろそろ帰る用意してくれない?」

 

「それじゃあ行きましょうか、芽愛さん、弥海砂さん」

 

私と芽愛さん、弥海砂さんは水無瀬本邸の中にある私達に割り当てられた部屋に戻り、今回持ってきた荷物をまとめて乗ってきた車に載せると迎えに唯衣花さん、柊優さん、侑那さん、詩季さんが来てくれた。

 

「それじゃあ母さん、父さん、姉さん、詩季さん私達は帰るわね」

 

「ええ、また何時でもいらっしゃい。真唯に限らず澪ちゃんも洋史君も彩海奈ちゃん、芽愛ちゃん、弥海砂ちゃんも来てくれていいから」

 

「え?あ、はい。予定が合えば」

 

「私、楽しみにしてるから今度はまゆとじゃなくても個人的に遊びに来てもいいからね!」

「うむ、わしもまた会えることを楽しみにしている」

「はい。僕も楽しみにしているよ。今度はCADのことについて色々話せると嬉しいかな」

 

「え、えっと……その……」

 

「はいはい、みんな一気に喋らないの。それともまたやられたいの?」

 

「「「………………」」」

 

「えっと……それじゃあ私の連絡先教えるので何かあればここにでも」

 

「ちょっと、いいの?十師族のお嬢様の連絡先なんて

そう簡単には教えられないんじゃないの?」

 

「い、いえその私は高校の同級生とかには教えていますし……」

 

「そっか……じゃあ私達のこともし聞かれても五輪の関係者っていうことにしておいてね。色々聞かれると面倒だから」

 

「は、はい。わかりました」

 

「そろそろいいかしら?」

 

「え、あ、うん。またねまゆちゃん」

 

「ええ、またね侑姉さん」

 

「それじゃあ、また機会があればまた来てね」

 

こうして私達は来た時同様に水無月 沙耶さんと一緒に車に乗り、京都の魔法協会本部へと向かっていった。その道中唯衣花さん、柊優さん、侑那さん、詩季さんから色々なメッセージが来ていた。

 

水無瀬 唯衣花

 

「私は貴女を次の次期当主にするということは決まっていないからまだ気楽でいなさい。また会える機会を楽しみにしてるわ。今度は1人でもお姉さんと一緒でも何時でもいらっしゃい」

 

水無瀬 柊優

 

「今回は来てくれてありがとう。孫の顔を見れたことはわしにとってはこれ以上ない幸せだ。これからも真唯のことよろしく頼む」

 

水無瀬 侑那

 

「まゆちゃんの子供見れて私は幸せだったよー、次会う時もよろしくね!」

 

水無瀬 詩季

 

「今回は来てくれてありがとうね。今度来た時はCADのことについて色々と話してみたいな。あの九校戦の時の魔法も気になるしね」

 

日も暮れて17時頃私達は魔法協会本部に着いていた。私と芽愛さん、弥海砂さんは明後日から私が学校があるため、東京に帰ることになっている。母さんと姉さん、兄さんは宇和島にある五輪本邸へと帰ることになっている。ここでまた姉さんがぐずりだしたのだがそれは母さんと兄さんの努力によってそれは穏便に済んだ。私達はその後22時を過ぎた頃に東京にある自宅へと戻ってきた。




今回はいつもより短いですがここでおしまいです。やっとというかいや早すぎと思うのかは読者の皆さん毎に違うかもしれませんが約1年が約4ヶ月でまとまりました。次からあのポンコツリーナが出てきます。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

USNAからのお客様、新たな勢力
アンジー・シリウスと「九」の関わり


遂に来訪者編になります。長かったというより夏休み、冬休み長すぎましたね(自業自得)

来訪者編って1番時系列がめちゃくちゃ難しい話だと思うんですよね…だから今回書くにあたって上・中・下巻を何度も読み直してるけどそれでも分かりにくいって思いました←





大亜連合による横浜侵攻が起こった翌月USNAはこれまで渋っていた実験を行った。実験の名前は「余剰次元理論に基づくマイクロブラックホール生成・蒸発実験」。この実験は先日起こった横浜侵攻の際に質量をエネルギーに分解している現象が発生したため、質量・エネルギー変換システムの手がかりを掴むために行われたのだが結果は異次元から漏れだした情報体がパラサイトとなって実験に関わっていた者に憑依してしまった。

 

時はまだ年が開ける前2095年12月23日、クリスマスまで後2日と迫った時に事件は起こった。USNA軍スターズ総隊長アンジー・シリウスは先日軍から脱走したアルフレッド・フォーマルハウト中尉を処断した。その翌々日スターズの基地に帰投したアンジー・シリウスは参謀本部への報告を済ませると自室へと入った。そこに来客を告げるベルが鳴った。来客は同じスターズの第一部隊の隊長であるベンジャミン・カノープス少佐だった。

 

「総隊長殿、失礼します」

 

「ベン、どうしたのですか?」

 

「いえ、総隊長殿が日本に行くというので何か1つお言葉をと思いまして…それにしても整っていますね」

 

「整っている?あぁ、この部屋ですか。これでも女の子ですし、日本人の生真面目なのが出てるのかもしれませんね」

 

「そうですか…総隊長殿日本で羽根を伸ば…いえ、休暇を楽しんできてください」

 

「休暇じゃなくて特別任務なんですけどね…」

 

「例の件ですか…」

 

「ええ、何故何の訓練も受けていない私が行かないといけないのかは謎ですが」

 

「しかし、戦略級魔法師に戦略級魔法師を当てるのは間違いないかと……スターズのことは私にお任せ下さい。総隊長殿」

 

この言葉を最後にアンジー・シリウスーアンジェリーナ・クドウ・シールズーは交換留学を名目にした日本の非公式戦略級魔法師の調査のため日本へと渡った。それが新たなる波乱を巻き起こす糸口になるとは知らずに。

 

ところ代わって1月5日に彩海奈を除くいつものメンバーは東京にある日枝神社へと集まっていた。

 

「みんな、あけましておめでとうーーー!」

 

「あぁ、あけましておめでとう」

「あけおめー」

「あけましておめでとうございます」

 

「ところで達也、そちらの方は?」

 

「あぁ、俺の体術の師匠で九重寺の和尚の八雲和尚。分かるように言えば「忍術使い」の九重八雲って言った方がわかりやすいか?」

 

「あ、あの九重八雲!?」

 

「よろしくー」

 

それぞれ新年の挨拶や初めましての挨拶を終えるとお祈りをするために本殿を向かっていった。道中には明らかに深雪に見惚れている人や他とは違いお坊さんがいるこの集団を見ているという人が沢山いた。その中に異様なファッションな1人の外国人が立っていた。達也がその存在に気付いた時に

 

「達也くん、心当たりはあるかい?」

 

「いえ」

 

「達也くんの服装が珍しかったのかね」

 

「……綺麗な子ですね……」

 

「お前ほどじゃないよ」

 

「……いつもいつも、その手で誤魔化せるとは思わないでください…」

 

聞いた言葉だけで考えれば説得力はあるが、赤く頬を染めてはさすがの達也も苦笑いするしか無かった。近くにいたエイミイ、エリカ、美月、レオらも「あはは…」といったかわいた言葉しか出なかった。達也を見ていたその少女は達也達の傍を通って日枝神社から帰っていた。この中で達也と八雲だけは気付いていた、明らかに意味ありげに達也のことを見て彼女がこの場から立ち去っていったところを。

 

翌々日の1月7日。この日は全国にある魔法科高校の3学期の始業式の日である。今1年B組にいる十師族・五輪家のご令嬢である彩海奈も例外はなかった。彼女は珍しく考え事をしていた、その考えていたこととは現在東京で起こっている変死事件のことだった。このことはまだマスコミ各社は何処も報じていない、昨日だけで弥海砂さんが調べてきた情報だ。殺害されているのは何れもが魔法師であり、その中には魔法大学の職員も含まれていた。そんな考え事をしている時にエイミイと十三束君がやってきた。

 

「彩海奈ーーおはようーー、そしてあけましておめでとう!」

「おはよう。それとあけましておめでとう」

 

「2人ともおはよう。そしてあけましておめでとう。ごめんなさいね、一昨日行けなくなって」

 

「ううん、そんなことないよ。お家のことだったんでしょ?そこを無理して来てもらっても悪いしね」

 

「それじゃあ春休みになったら何処かに行きましょう?もちろん、達也や深雪達に加えて十三束君も来る?」

 

「いいのかい?僕が行っても」

 

「もちろん、場所は私の方で用意してみるから」

 

「それじゃあ、その時を楽しみにしてるよ」

 

「そういえばさ、2人ともA組には行った?例の留学生来たみたいだよ」

 

「そういえば、そうだったわね…まだ見てないけどどういう子なの?」

 

「えっと、確か金髪蒼眼でツインテールみたいな子だったよ。深雪とは正反対の容姿の持ち主だよ」

 

「いかにもUSNAの人らしいね。偏見でしかないけど」

 

「ねぇねぇ後で見に行ってみようよ!」

 

「人混みに行くのはねぇ…それに深雪経由もしくは深雪から達也に行ってそこから私に来るだろうし」

 

「それもそうだね…それじゃあ私は彩海奈に付いていよーそうすれば会えそうだし、十三束君はどうする?」

 

「え、えっと僕は…」

 

「無理にとは言わないよ、だから十三束君も色々と気をつけてね?」

 

「気を付ける?」

 

「ええ、これは色々なことだけどね」

 

こうして、私とエイミイ、十三束君の1年B組の中心的メンバーの集まりは三学期も平穏な日々が始まって行った。

 

この日は何処の魔法科高校も一律で午前中に終わるため彩海奈は生徒会の業務を早々とこなして自宅へと帰っていた。さすがにまだ午後3時ということもあり、芽愛も弥海砂もいなかったがこれ幸いにと彩海奈は東京の街へと繰り出していた。向かう場所は先日弥海砂さんから伝えてもらった例の事件が起きた場所近辺だった。既に警察による鑑識活動も終わったあとなので特に何も残ってはいなかった。私はしばらくその場所の近辺をぶらぶらしていると思わぬ人に出会った。

 

「俗世とは関わらないことにしたと言ってましたよね?九重八雲さん」

 

「いやはや、君はどうして僕のことがわかったのかな?それを聞かせて欲しいんだけど」

 

「それは秘密です。それにしても何故?」

 

「それはね、君のところにUSNAから例の留学生が来ただろう?その子に関してね。それとこれもUSNAからだけど、どうやら変なものが紛れ込んだらしいから少しね」

 

「USNAから?それは確かなことなんですか?」

 

「あぁ、それに留学生の子もなかなか興味深くてね。それで彼女が学校にいる時に何かわかったら弥海砂くんに伝えるか九重寺に来てくれないかい?」

 

「それは構わないのですが…1つ聞いても構いませんか?」

 

「あぁ、いいよ。僕に答えられることなら」

 

「何故彼女アンジェリーナ・クドウ・シールズのことを気にかけるのでしょうか?名前に同じ「九」があるとはいえ俗世とは関わらないことにしている貴方が気にかけるとは思えませんが」

 

「まぁ、確かにそれは知ってる人からすれば疑問だろうね。いいだろう少し答えてあげよう。彼女はどうやら「仮装行列」の使い手であるみたいなんだ。本来「仮装行列」は九島の秘術であってその基幹となる術式は僕の先代が九島に教えたもので、その術式は本来門外不出の秘伝だ。海外に流出したなんて以ての外だ、とこれくらいでいいかな?これ以上は僕でもぺらぺらと喋るわけには行かないのでね」

 

「そうでしたか…貴重なお話ありがとうございました」

 

「いやいや、それとこれからもよろしくね。今度会う時は君のことも教えてくれると嬉しいかな」

 

「そこに関しては善処しときますね」

 

私は九重八雲さんと別れるともう少し街を歩いてから自宅へと戻っていった。既に自宅には明かりが点いていて中には芽愛さんがいて私はまたいつも通りが始まったなと思いながらこの夜を過ごしていった。




如何でしたでしょうか?来訪者編何度も読んでるわりにはなかなか
時系列を気にするあまりかなかなか進まない…

それでも今のこの毎週日曜の朝に投稿するということを出来るだけ維持していきたいと思います。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

留学生と不穏な空気


はい。来訪者編第2話になります。

来訪者編原作読んでてあぁ、本当にリーナはポンコツなんだなって思ってしまいました。リーナ結構キャラ的には好きなんですがね……


2096年1月5日、USNA軍スターズ総隊長アンジー・シリウスもといアンジェリーナ・クドウ・シールズは今回の日本での任務である「日本の非公式戦略級魔法師の術者の捕縛・術者の無効化」のため容疑者の内の2人である司波達也、司波深雪の動向を伺っていた。それにしても視線を物凄く感じていた。それはそうである、今リーナの恰好は日本では半世紀前のファッションであってさらに外国人というのがさらに視線を浴びるポイントになっていた。ちなみにリーナはこの恰好になるのに並大抵の努力をしていたと付け加えておく。

 

彼女が現在いるのは東京にある日枝神社というところにいた。どうやらスターズ及びUSNA軍は今日司波達也、司波深雪両名がここを友人と共に訪れることを掴んでおり、リーナはこの報告を受けて日枝神社へと赴いていた。しばらくしてどうやら彼らが来たみたいでリーナは彼らのことを見ていたがどうやらあちらも気付いたみたいで今ここで変に意識するのも得策では無いため退散して日本に居る時のマンションへと帰っていった。

 

マンションへ着くと中には同じスターズの中で惑星級の称号を与えられているシルヴィア・マーキュリー・ファースト准尉がいた。彼女は今回の任務の後方支援のために若干29歳という年齢でシリウスの補佐役に抜擢されたのだ。彼女は元々軍人志望では無く大学でもジャーナリズムを専攻していたのだがその能力を高く買われて今回の抜擢に繋がった。

 

「お疲れ様です、リー……ナ……」

 

「来ていたんですね!シルヴィ」

 

「一体…何でそのような恰好をしているのですか…」

 

「あぁ、これは過去一世紀の日本のファッションを見てそれで決めました。どうですか?シルヴィ」

 

「総隊長…いえリーナそのファッションは今の日本ではアウトオブナッシング…流行遅れです!」

 

「そうなのですね!どうやら私が視線を浴びていたのは外国人ということじゃなくてこのファッションだったのですね!」

 

こうしてリーナに対するシルヴィによるファッション講義がこの後の行動の予定を全てキャンセルされ数時間に渡って行われた。内容についてはUSNAが誇る最強の魔法師スターズ総隊長当代シリウスの名の元に割愛させてもらう。

 

そして1月7日、彼女は魔法大学附属第一高校に留学生としてやってきた。彼女の実力はそれまで深雪と彩海奈によって築かれていた「双璧」を打ち崩し、深雪、彩海奈、リーナの「三つ巴」になった。これには学年…いや学校全体で大きな話題となっていた。留学生であるリーナが来てから1週間が経ち、今はA組が実習室で行っているのだがその3人のうちの2人が直径三十センチの金属球が載っているポールを挟んで向かい合っていた。

 

「ミユキ、行くわよ」

 

「いつでもどうぞ、カウントは任せるわ」

 

この2人の他のA組の面々は自分達のことを止めてまでこの戦いを見ていた。いやA組だけではない、既に自由登校になっている3年生もこのA組の実習の様子を見学していた。その中には前生徒会長である七草 真由美、前風紀委員長である渡辺 摩利も混ざっていた。

 

「司波に匹敵する魔法力……本当だと思うか?」

 

「彼女はある意味USNAを代表してやってきているから、ありえないことは無いけど信じ難いわ。同じ世代で深雪さんに匹敵しうるなんてね」

 

「同感だな……全く司波といい達也くんといいええっと「アンジェリーナ・クドウ・シールズ」そう、その名前だ。今の1年は私達の世代よりも凄いんじゃないか?」

 

「そうね……でもそれを確かめられるからいいじゃない」

 

実習の内容は魔法実習の中ではゲーム性が高く且つシンプルなので単純な魔法力が求められる。この実習は先月から始まったのだが深雪が誰も寄せ付けなかったため、教官は実習の意味が無いと嘆いていたところだったのでまさに棚からぼたもちみたいだと周りの教官に言っていたのは教官達だけの秘密だ。その話を聞きつけた新旧生徒会役員(プラス風紀委員長)(発端は前生徒会長)が交互にやっても誰一人として適わなかったため生徒会の面目が丸潰れになっていた。

 

「スリー、ツー、ワン……ゴー」

 

リーナが「ゴー」と言った瞬間に金属球の周りに眩い想子の光が重なり合い爆ぜた。その光は一瞬のうちに消え金属球はリーナの方へと転がっていった。

 

「あーっ、また負けた!」

 

「ふふっ、これで2つ勝ち越しよ、リーナ」

 

上級生が誰一人として適わなかった深雪に対して2つ負け越しているとはいえ深雪とリーナの実力は拮抗していた。

 

「……まったくの互角ね…」

 

「ああ、術式の発動はむしろ留学生の方が早かったんじゃないか?」

 

「ええ、でも干渉力は深雪さんが上回って、制御を奪い取ったのね。スピードじゃなくてパワー……深雪さんの作戦勝ちね」

 

「五輪とやったらどっちが勝つんだろうな……」

 

「彩海奈ちゃんね……分からないわ。彼女も彼女でまだ底を見せていないから分からないけれど、今まで見てきた部分だけで判断するとすれば彩海奈ちゃんのスピードとパワーはどちらとも深雪さんよりは格段に上を行くからね……」

 

「つまり……やってみないと分からないってことか。クラスさえ同じだったら見れたかもしれなかったな」

 

真由美、摩利の両者から見ても2人の魔法力は、少なくとも基礎単一系の単純な魔法力は互角だったと同時にこの場にはいないが五輪 彩海奈だったらどういう戦法を見せるのか気になって仕方がなかった。その後は共にイーブンの戦いを見せて今日のところは深雪が2つの勝ち越しをもって実習は終わった。

 

深雪、リーナ、ほのかは実習が終わるとお昼ご飯を食べるために食堂へと向かった。そこには既に昼食を食べていた達也、レオ、幹比古、エリカ、美月がそこにはいた。5人共昨日の時点でお互い顔合わせを済ませていたため、直ぐに空いている席に座った。その後は今日のA組の実習の様子等が話して、1つの話が区切りを迎えると達也が

 

「そんなに大したことではないんだが……リーナはミドルネームにクドウが入ってるということは九島閣下のご血縁なのか?」

 

「え?えぇ、九島将軍の弟が私の母方の祖父なの。今回の留学の話も私がその事に関係みたいね」

 

「なるほどな……それと俺の覚え間違えじゃなければアンジェリーナの愛称は「アンジー」だったはずだが」

 

「っ……私のハイスクールのクラスメイトにアンジェラっていう子がいてその子が「アンジー」って呼ばれてるから私は「リーナ」なったの」

 

この返答に達也は納得のいく素振りを見せた。この瞬間何故深雪と同レベルの魔法師が留学を許可されたのかとリーナの正体が同時に分かった。

 

「ところでワタシからも1ついいかしら?」

 

「ええ、構わないけれど何かしら?」

 

「アミナ・イツワ…彼女ってどんな人なのかしら?」

 

「彩海奈?何故気になるのかしら?」

 

「A組の皆が言ってたのよ。深雪も凄いけど五輪さんの精密制御とか深雪にはない強さがあるって」

 

「そうね……彩海奈は規格外といえば規格外ね。彩海奈が使ってるCADだって私達が誰一人として見たことない代物だもの。リーナが言ってたように精密制御も素晴らしいものね」

 

「へぇー、やっぱり十師族というのは凄いのね」

 

「そうね……なんならここに呼んでみる?」

 

「え?でも彼女に迷惑じゃない?」

 

「大丈夫よ。彩海奈はいつも中庭で4人で仲良く食べてるはずだから」

 

「へぇ…そうなのね」

 

「…………あ、彩海奈、今から食堂に来られるかしら?…………そう、わかったわ。彼女には私から伝えておくわ。いえ、ごめんなさいね、忙しい時に……という事だから彩海奈は今は来れないから明日ね」

 

「いえ、とんでもないわ。分かったわ、明日ね」

 

「明日ということは今日は生徒会にも顔を出さないということか?」

 

「はい、お兄様。何でも急用が出来たということで今日は早退したそうです」

 

「彩海奈が早退か…何事も無ければいいのだがな」

 

「どうしてだい?」

 

「早退なんてこのご時世滅多にないことだ。それを彩海奈がするということは五輪家の中で何かがあったのかもしれないからな」

 

「それがどう私達に影響するの?」

 

「十師族のご令嬢、しかも跡継ぎかもしれない子どもが通ってる一高で何か起これば大問題だ。もちろん対外的には何も言わないだろうが、安全保障上何かは俺達にその影響が出るかもしれないという事だ。それでも十師族のことだからそれぐらいだったら簡単に片付けてしまうかもしれないがな」

 

達也はこのことは有り得ない話であるとは思って話しているのだが深雪やエリカ、ほのか、美月、レオ、幹比古は達也が言っているのならば有り得ない話ではないと思っていた。ただ深雪だけは達也にしか気が付かなかったのだが少しだけ震えていた。

 

時は流れその日の夜各地ではいろんなことが起きていた。

 

リーナが留学期間中滞在しているマンションにはリーナ達とともに日本のマクシミリアン・デバイスに潜入中のミカエラ・ホンゴウ愛称「ミア」が訪ねていた。そこでは今日のお昼に達也がアンジェリーナの愛称が「アンジー」なのに何故「リーナ」なのかを聞かれ、正体がUSNAが誇る国家公認戦略級魔法師「アンジー・シリウス」ということがバレたのではないかということや容疑者の特定があまり進んでいないことに項垂れているリーナをミアとシルヴィがなぐさめていた。

 

時を同じくして司波家では2096年に入ってから初めて深雪の能力測定を行っていた。検査をし終えると深雪が達也にこう言った。

 

「お兄様、今日のお昼リーナにあぁ言ったのはやはり……」

 

「まったく…深雪には適わないな。俺はリーナがUSNA軍スターズ所属のアンジー・シリウスだと思っている。深雪、お前と実力が拮抗している人は俺が知る限りほぼいない」

 

「リーナが国家公認戦略級魔法師…」

 

「だからといって俺達がその容疑者であることは変わりない。だからリーナとは普段通りに接しよう。そうすることでお前はきっともっと成長出来るはずだからな」

 

「お兄様……」

 

「俺がもう1つ気になってるのは叔母上が言っていたことだ」

 

「叔母様が…ですか?」

 

「あぁ、俺達がUSNAからマークされているのは叔母上なら容易に知ったはずだ。だが叔母上は容疑者は俺達だけとは言わなかった。他にもマークされてると考えておかしくない」

 

「そんな……誰が」

 

「俺が考えうる人は3人いる。1人は彩海奈、2人目は如月 弥海砂、3人目は如月 亜沙音だ」

 

「如月 亜沙音?如月さんにはもう1人ご姉妹がおられたのでしょうか?」

 

「それは分からない。公的な機関に確認したわけでもないからな。ただその如月 亜沙音という人物は架空の人物で誰かの身元を隠すために咄嗟に考えたものだと思っている」

 

「身元を隠さなければならない程の人物……」

 

「あぁ、ただこのことはあまり気にしないでくれ。俺一人のただの考察だからな」

 

こうして司波家のこの1日は過ぎていった。

 

そして場所が変わり彩海奈の自宅なのだが現在夜の20時を少し回ったところなのだが自宅の電気は点いてなく誰もいないようなそんな気配がしていた。

 

 




如何でしたでしょうか?来訪者編本当に長い……まだこれでやっと上のプロローグみたいなところですからね……


他作品にはなるのですがGGOの挿入歌を歌ってる神崎エルザ starring ReoNaの1周年を記念したprologueほんとに良すぎて最近結構リピートしてます←どうでもいい

次回と次次回は日曜のこの時間に更新できるか怪しいということは報告させていただきます。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

正体不明の魔物とゆらり揺らめく情勢

はい。来訪者編の3話目になります。正直来訪者編ほんと長すぎて何処をどうオリジナリティを出そうか悩みますね……

もうそろそろ通算UA40000になりそうなのがココ最近の驚きです。この作品を読んでくださりありがとうございます


達也と深雪がアンジェリーナ・クドウ・シールズの正体がUSNAの国家公認戦略級魔法師「アンジー・シリウス」と疑っていることと自分達も含まれている先日の謎の戦略級魔法の術者と思わしき人達に話していた頃、達也がその思わしき人の1人と思っている彩海奈は現在東京の新宿にあるとある公園に来ていた。今彩海奈の傍には姿は見えないものの芽愛、弥海砂両人が絶えずいる。

 

「(それにしても、この変死事件話を聞いた時から嫌な感じはしたけどこれはこれで不気味ね……)」

 

今彩海奈の目の前には公園のベンチに寝かされている20代か30代くらいの女性と黒いコートに白い仮面を付けた怪しげな人が立っていた。怪しげな人は何処かに連絡を入れるとこの場を立ち去った。彩海奈は立ち去るのを確認すると隠れてみていた場所から姿を表し、女性の元へと向かった。その瞬間こちらも影に隠れていたのだろう数人の人が私と寝かされている女性を取り囲むように立った。

 

「何の用でしょうか?」

 

「そこに寝かされている人に用がある。無論、今すぐに引いてくれれば何もしないと約束しよう」

 

「貴方方とここにいる女性の関係は?」

 

「我が主の家の魔法師とだけ言っておこう。それ以上は話せない」

 

「分かりました。では、貴方の主に伝えといてください。この事件を追っているのは貴家だけではないということを」

 

「っ……分かった。伝えておこう」

 

そう言い残すと彼とその周りにいた人達は寝かされている女性を抱えて闇に消えていった。彼らが立ち去ってから芽愛さんと弥海砂さんが出てきた。

 

「彩海奈様、お怪我等は?」

 

「大丈夫です。それより先程の人たち何処の家なのかは分かってはいましたがあれほどとは……」

 

「はい。幾らあれでもあの家には適わないと思いますが……」

 

「お昼からマークしてたとはいえ、こうも簡単に連れ去られるともやもやしますね」

 

「そうですね……それではもう帰りましょう。彩海奈様は明日も学校がありますしね」

 

「そういえば、例の留学生とは何かありましたか?」

 

「いえ、特には……私とはクラスが違いますから…でも深雪とは同じクラスなので何か知ってるとは思いますが……」

 

「そうでしたか…では私から1つだけ先日のあの「灼熱のハロウィン」に関することでどうやらスターズが潜入しているみたいです。用件はおそらく例の戦略級魔法の術者に関してなのですがその術者の1人に私と彩海奈様が含まれているみたいです」

 

「そうでしたか…分かりましたって一体何処から…」

 

「八雲師匠からです…あの人もあの人で一体何処から私が彩海奈様のそばにいるということを知ったのか…」

 

「あの方ですか……」

 

「彩海奈様、今度八雲師匠のことで何かありましたら私にお申し付けください。今度こそ1発入れて来ますので」

 

「わ、分かりました」

 

こうして私と芽愛さんと弥海砂さんは私の自宅へと引き返していった。

 

翌日、私は前日のうちに届いていた深雪からのメッセージ通りに昼休みエイミィ、スバル、十三束君と一緒に何時もの中庭ではなく食堂へと向かっていた。

 

「ほら、言ったじゃん。彩海奈に付いてれば自ずと例の留学生と話せる機会が出来るって」

 

「はは、そうだね。これに関してはエイミィの言った通りだ」

 

「それにしても、相変わらず食堂は混んでるわね」

 

「そうだね……何時にも増して多い気がするよ。みんな留学生の子を見に来てるのかもね」

 

「それで、その肝心の深雪は何処かしら」

 

「彩海奈、こっちよ」

 

私達は深雪から聞こえた方へと行くとそこには達也、吉田君、レオ君、エリカ、美月、ほのかと金髪の少女が座っていた。おそらくというより確実に彼女がアンジェリーナ・クドウ・シールズだろう。

 

「久しぶりね、みんな。達也と深雪はそこまでではないけれど」

 

「そうね、早速だけどこちらが」

 

「アンジェリーナ・クドウ・シールズと言います。えっと、貴女がアミナ…イツワ アミナさんかしら」

 

「ええ、如何にも私が五輪 彩海奈です。こちらが私の隣から明智 英美、里美 スバル、十三束 鋼君よ」

 

「よろしくねー」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

 

「えぇ、よろしく。4人とも仲良いのね!タツヤやミユキ達のように」

 

「まぁ…そうね。スバルとはクラスは違うけど、私とエイミィ、十三束君とはクラスが同じだし4人でお昼を食べてるから達也達とは別の意味で仲がいいわね」

 

「えっと、私達何て呼んだらいいかな?」

 

「気軽に「リーナ」って呼んで。私はアミナ、エイミィ、スバル、ハガネって呼ぶから」

 

「(「リーナ」?確か、アンジェリーナの愛称は「アンジー」のはず……)アンジェリーナの愛称は「リーナ」じゃなくて「アンジー」だったと覚えてるのだけれど」

 

「っ……ワタシが通ってるハイスクールにアンジェラっていう子がいてその子が「アンジー」って呼ばれてるから私は「リーナ」って呼ばれるようになったの」

 

「そうなんだ……じゃあ私達お昼取ってくるわね、みんなもう取ってきてるみたいだから」

 

「ええ、それじゃあ」

 

私とエイミィ、スバル、十三束君は昼食を取りに列に並んだ。普段は皆中庭で食べているためお弁当を持ってきているのだが深雪に言われたために今日は持ってこなかったのだ。私達は一学期の最初の方は利用していた懐かしの列に並んで食事を取って、深雪達がいる席へと行く。

 

「お待たせしたかしら?」

 

「いいえ、大丈夫よ」

 

「じゃあ」

 

「「「「「「「いただきます!」」」」」」」

 

私達はお昼を食べながら色々な話をしていた。例えば九校戦やこの前のクリスマスのこと等それとリーナのUSNAでのこと等色々なことを話していた。やがて時間にもなり、私達はそれぞれのクラスに別れていった。一科生と二科生は別の校舎にあるためE組の皆とはこので別れた。この時深雪は少し不機嫌そうに見えたがすぐに普通の表情になり、それぞれのクラスへと戻っていった。

 

「そういえば、昨日彩海奈は私が連絡した時何処にいたのかしら?」

 

「昨日?あぁ、少し家の用事ね。大したことは無かったから良かったけどね」

 

「そう、なら良かったわ」

 

「家の用事?イツワって確かエヒメにあるんじゃなかったっけ?」

 

「そうだけど、そこは十師族の秘密ってところね」

 

「そうね…リーナもミドルネームにクドウが入ってるんだから少しは分かるはずよ。それぞれ隠したいことはあるっていうことをね」

 

「そうね……」

 

そんなこともありながらも時は流れていった。あれから何日間か過ぎて、1月16日の夜今日も私と芽愛さんと弥海砂さんそして在京の五輪家の魔法師の皆がこの東京の各地を調べていた。私は配下の魔法師の複数の人と共に池袋周辺を回っていた。特に何も無いように見えていたがやはり何かを感じることはあった。私達が歩いていると渋谷周辺を警戒していた弥海砂さんから連絡が入った。私は配下の魔法師の複数の人と共に渋谷のある公園へと向かった。そこには既に弥海砂さんがそこにはいた。目の前にいたのは昨日あの女性の前に立っていた白い仮面の異様な出で立ちをしている人となんとレオ君がそこにはいた。私はそれを見ると木陰に身を潜めその戦いを見守っていた。徐々にレオ君の武が悪くなってきた。私は動こうとしたけど動けなかった。まるで身体が「動くな、動いたら危険だ」と訴えていた。その間にもレオ君と異様な出で立ちの人の戦闘は続いていく。そしてついにレオ君が倒れた。私と弥海砂さんそして五輪家の魔法師と共に傍まで駆け寄った。するとすぐにその異様な出で立ちの人は闇へと消えていった。私はレオ君の方に駆け寄ると既に意識が無かったため私達はレオ君を最寄りの病院へと連れていった。事前に魔法師の治療に対して融和的な病院を見繕っていたためすぐにその病院へと送っていった。私は検診結果を聞いてからその病院を去り、一応念の為エリカにメッセージ送っておいた。時刻は既に日付けを過ぎていたためこのメッセージはおそらくエリカが起きてから見ることになると思うので私は芽愛さんと弥海砂さんそして五輪家の魔法師に今日は解散ということを伝え、私は自宅へと帰っていった。

 

そして翌日私は起きてダイニングルームに行くとそこには芽愛さんがいた。

 

「彩海奈様、千葉エリカ様よりメッセージの返信が来ております」

 

「エリカから?」

 

『教えてくれてありがとう。後で詳しく聞かせてもらえるかしら?』

 

「エリカらしいわね。今日はこの後病院に行きます。学校はその時次第ということで」

 

「分かりました。私達は引き続きあの異様な出で立ちの人を追います」

 

私はこういうとレオ君がいる病院へと向かっていった。私が病院の中に入っていくとエリカがいて声をかけた。

 

「おはよう、エリカ。貴女朝早いのね」

 

「おはよう、彩海奈。まぁ慣れでね。早速だけど昨日のこと聞かせてもらうわよ」

 

「ええ、でもここでは色々聞かれたら不味いこともあるから何処かに無いかしら」

 

「あぁ、それなら警備室の一室を借りるわ。そこなら私の兄貴と部下の人もいるけど遮音フィールド貼れば聞こえないし、他の人に聞かれるよりはマシでしょ?」

 

「出来れば、警察関係者にもあまり教えてあげたくはないんだけど仕方ないわ、案内してくれるかしら?」

 

「ほい、きた。それじゃぁこっちよ」

 

私はエリカの案内でこの病院の警備室へと案内された。正直警察がこの病院へ被害者であるレオ君が搬送されているのを掴んでいるあたり情報網を侮れないなと思いながらエリカの後ろを歩いていた。警備室に入ると色んな人が一斉にこちらに目を向けたがそれを気にせずに入っていき、エリカのお兄さんに一言挨拶をしてから準備室の中へと入っていった。遮音フィールドを貼ってから私は昨晩の顛末を話した。

 

私は話を終えるとエリカのお兄さんに挨拶をしてからレオ君の病室へ訪ねていいかと聞くと今ちょうど七草先輩と十文字先輩がレオ君の病室へ訪ねているらしいのでどうするか問われたが私は七草先輩と十文字先輩が出てくるのを待って訪ねることにした。待っている時にエリカのお兄さんから今この東京で何が起こってるのか問われたけど分からないと答えた。関東地方の守護・監視は七草家と十文字家の担当であるためわざわざ五輪の私が知るわけもないのだが本当は知っている。そして、七草先輩と十文字先輩が病室を出るのを確認すると私はエリカのお兄さんと部下の人、エリカに挨拶した後レオ君の病室へと向かった。

 

「お邪魔していいでしょうか?」

 

『はい、今行きますので』

 

「失礼ですが、貴女は」

 

「西城君と同じ高校の同学年の五輪 彩海奈と言います」

 

「あぁ、五輪さんか。姉さん通して大丈夫だ」

 

「それではどうぞ。私は少し席を外すので」

 

「すみません、ありがとうございます……体調はどうかしら?」

 

「あぁ、良いって言ったら嘘になるがそこまで悪いとも言えないな」

 

「そう、ごめんなさいね。昨日あの時助けられなくて」

 

「どういうことだ?」

 

「昨日渋谷の公園にいたでしょう?その時に私の家の魔法師の人も近くにいたのよ。私も池袋周辺で警戒していたの。それで私達はせめて病院へだけは連れていくことにしてここに連れてきたの」

 

「そうか…そいつは悪かったな。でもこうして今五輪さんと話せるだけ有難いと思ってるから感謝してるぜ」

 

「それで、どうして昨日渋谷にいたのかしら?」

 

「あぁ、夜寝れない時は何時も散歩してるんだが、数日前エリカのお兄さんに会って今回のことを教えてくれたんだ」

 

「なるほど、分かったわありがとう。さっき七草先輩と十文字先輩が来てたけど何か言ってたかしら?」

 

「エリカのお兄さんが言ってたことと同じだったな」

 

「なるほど、わざわざ時間取らせてごめんなさいってお姉さんに伝えといてくれるかしら、そして貴方もゆっくりしてなさい」

 

「ああ、五輪さんも気を付けろよ」

 

「ありがとう、それじゃあまたね」

 

私はレオ君の病室を出ると再びエリカがいる警備室へと戻っていった。そこには芽愛さんと弥海砂さんがそこにはいて、何でも2人とも容態が気になったみたいであり私が大丈夫ということを伝えると2人は安堵な表情を浮かべると病院を後にした。私も後にしようとした時にエリカから達也達が放課後にお見舞いに来るそうなのでそれまでにはまた来て欲しいということだったので私は来たら知らせて欲しいということを伝え、東京の街へと消えていった。

 

同日の凡そ同じ時間帯一高に留学生として来ているアンジェリーナ・クドウ・シールズはUSNA大使館に来ていた。今日の彼女は一高の留学生アンジェリーナ・クドウ・シールズとしてではなくUSNAの国家公認戦略級魔法師アンジー・シリウスとして来ていた。何故彼女がここに来たかのは年が明ける前にUSNAで起こったスターズ隊員の突如とした脱走が原因だった。このことが次は東京で起きているとUSNAに残っていたベンジャミン・カノープス少佐から告げられ呼び出されたわけだ。結果的にこれまで最優先任務としていた"日本の非公式戦略級魔法師の確保或いは術式の無効化"は第2任務として動くことになり、最優先任務として"パラサイトの捜索及び始末"になった。

 

舞台を一高に移して一高の会議室には先程学校に戻って来ていた七草真由美、十文字克人両名の姿があった。

 

「七草、先程の西城の話やはりあれは本当なのか?」

 

「ええ、七草家が把握しているだけでも報道されている2倍の数は把握出来ているけどもっと被害者がいるそうなのよ」

 

「何?七草を出し抜ける組織がここにいるのか?」

 

「それが分からないのよ悔しいことにね」

 

「四葉に協力を持ちかけることは出来ないのか?」

 

「それは無理ね、先日四葉の息がかかってる国防軍のセクションに割り込みをかけたのがバレておかげで先月から冷戦状態ね」

 

「何とかならないのか?」

 

「無理ね、あの狸親父が頭を下げない限りは」

 

「七草でもそんな言葉を使うんだな……」

 

「あら、はしたなかったかしら?」

 

「今更な気がするけどな」

 

「それで本題なんだけど七草家当主・七草弘一は十文字家に対して"共闘"を望みます」

 

「穏やかではないな。"協調"ではなく"共闘"か」

 

「ええ、家を出し抜ける組織がこの案件に関わっている以上はこうするしか無いでしょうね」

 

「そうだな、それでその組織に目星は付いてるのか?」

 

「幾つかあるみたいだけど今のところ最有力なのは五輪家ね」

 

「五輪家?あぁ、なるほど…だが五輪家なら七草殿なら見抜けるのではないのか?」

 

「それについては何も言ってなかったけど、そうなのよね」

 

「兎も角十文字家として了承したと七草殿に伝えといてくれ」

 

「分かったわ。それで彩海奈ちゃんにこのこと聞いてみる?」

 

「いや、まだいいだろう。まだ疑っている段階でこちらの手の内を見せるのもどうかと思うからな」

 

「そうね、じゃあ時期が来たらということで」

 

真由美と克人はお互いのことを少し話すと会議室を後にした。今の時期3年生は自由登校のため図書館に用がある者以外はあまり登校してはいない。真由美も克人もお互い受験勉強があるため学校を後にしてお互いの家へと帰っていった。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?原作で七草の情報網から出し抜ける組織って四葉以外に何処かあるんですかね……

次回もまた今回みたいに遅れることは十分に有り得ますので、長くお待ちいただけたらと思います。

また通算40000UAのご読了ありがとうございます。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十師族と水無瀬、それぞれの思惑

2週間ぶりくらいでしょうか?お久しぶりです

来訪者編ってほんとに書くことが多くてなかなか進まないのとアニメでやってないから書くのが難しいですね…

そんなわけですがちゃんと進めていきます


 

同日の午後5時を少し過ぎた時、私はエリカから達也達が来たという連絡が来たためレオ君が入院している病院へと向かった。残りをその日一緒に捜索していた人に後を任せ、私は一路病院へと向かった。レオ君が入院している病院は新宿にあるため私が今日捜索していた渋谷周辺からは少し時間がかかったが15分程で着いた。

 

「失礼します」

 

「あ、来た来た」

 

「こんばんは、皆さん」

 

「こんばんは、それで今日はどうしたの?エリカからは詳しいことは彩海奈が知っていると聞いたのだけど」

 

「……ここ最近人が不審死しているっていう事件知ってるかな?確か今日辺りからニュースとして出てたはずだけど」

 

「あぁ、それなら確かにそのニュースは見たな。それに合わせてこのレオのことだ、何か裏があるのか」

 

「えぇ、そこまでは多く語れないのだけど概要部分だけなら……………………ということが今起きてるのよ」

 

「そんなことが起こっていたのか……」

 

「もしかして、それはパラサイトのせいだったりしないかい?」

 

「よく分かったわね……ま、古式の大家といわれる吉田家の次男じゃ知ってて当たり前か」

 

「パラサイト?幹比古それはどういう生物何だ?」

 

「Paranormal Parasite略してパラサイト。このパラサイトは…………だよ 」

 

幹比古の古式魔法師としての見解説明を聞いて分かったのはおそらく私と達也だけだと見た感じ思っていた。さらには幹比古の説明には妖魔や精霊といった文言が含まれていたことからほのかと美月は少し震えていたが達也、エリカが共に肩に手を乗せて

 

「魔法だって実在するとは思われていなかった。でも、俺たちは魔法を使っている。未知の存在だからといって無闇に怯える必要は無い」

 

エリカは普通のクラスメイトとして友達としての行動なのだが達也は天然でこの行動をしているので何とも思っていないのだがほのかは達也のことが気になっているため気になっていたが見た目的に不安が抜けたと見た達也はほのかから手を離した。

 

「それにしてもパラサイトが今回の首謀者ということか」

 

達也のその言葉に病室内に沈黙が生まれたが、幹比古がレオ君に幽体という精神と肉体をつなぐ霊質で作られた、深躯体と同じ形状の情報体の事らしくパラサイト=吸血鬼は血を吸い、食人鬼は肉を喰らう。そもそも物質的な生物でないパラサイトは、本来精気さえ取り込めればいいらしく今回の出来事は精気だけを取り込む吸血鬼がいてもおかしくないということを言っていた。私には全くとは言わないが分からないことが多かったためそのまま聞き流していた。

 

結果的にレオ君の体は幹比古が思っていた以上に凄いらしくレオ君曰く「俺の体は特別製」らしい。その後面会時間が終了ということで部屋を出て達也が色々幹比古にパラサイトのことについて聞いていて、幹比古曰く出会えるのは一つの流派で十世代に一人、世界的に見ても百年に一回くらいのレベルらしい。私はこの後人と会う予定があったためここで皆と別れまた明日学校でということになった。

 

私は新宿にある病院を出るとキャビネットに乗り込み同じ新宿にある超高級ホテルへと足を運んだ。この超高級ホテルにはある1人のこの国における超重要人物がいた。私を呼び出したのは水無月家現当主水無月 紗綺さん。何でも水無月家では今回被害が出ている数名を回収しており、独自に情報を集めているみたいで私達が動いているのが七草家に掴まれていないのも水無月家が裏で動いているのもあるそうなのだ。

 

「こんばんは、紗綺さん」

 

「こんばんは、彩海奈さん。急に呼び出したりしてごめんなさいね」

 

「いえ、ご懸念には及びません。五輪としても姉と兄と私が住んでいるこの街に異様なものが混じっているのは悩みの種になりますから」

 

「そうですか、私達としても首都に妖魔が流れついたなんて許容できる事柄ではありませんから」

 

「それで私はどうして?」

 

「彩海奈さん、これはお家の方と相談して欲しいのだけど五輪家の捜索隊に私達の家の者も加えて欲しいのだけど」

 

「水無月家の方々が捜索隊に加わっていただけるのは有難いのですが、どうして私のところに?」

 

「最初は勇海さんのところに向かったら「東京でのことは基本彩海奈に任せてるようにしているので其方にお伺いください」って言われたものだから」

 

「そうですか……分かりました。ありがたく思います。その提案」

 

「そう、良かった。じゃあこれを渡しておくわね。これまで水無月として調べた範囲での考察みたいなものよ」

 

「ありがとうございます。ところで私達のところの者にはどう伝えればよろしいでしょうか?」

 

「そうね……五輪家としての見解でいいんじゃないかしら?一応古式魔法師の家のを参考を元にした見解ということで。真唯ちゃんの実家は古式魔法の使い手ということになってるのでしょう?」

 

「そうですね……分かりました、何か聞かれたらそう伝えるようにします」

 

「それとこの会話は聞こえていないけれど、貴女が私と会ったということは見られていると思いなさい。七草、四葉両家はもう気づいているから」

 

「七草は分かりますが四葉もですか…」

 

「そうよ。四葉が何をするか分からないけれどそれでも私達の間に関係があると知られた以上何かしら貴女に近づいてくるから。この前真夜に会ったって唯衣花から聞いてるから」

 

「四葉 真夜さんが何か仕掛けてくると?」

 

「ええ、覚えておきなさい。真夜は興味を持ったらその人はマークし続けるから」

 

「分かりました。ありがとうございます、色々と」

 

「私もしばらくは東京・神奈川の周辺にいるから何かあれば呼んで。皆さんみたいにそんなすぐ何か出来るとは言えないけどパラサイトのことについては何かしら出来ると思うから」

 

私は紗綺さんのその言葉を聞くと会釈してから新宿にある超高級ホテルを出て、自宅へ帰っていった。

 

☆水無月 紗綺side☆

 

水無月家現当主水無月 紗綺は普段京都より西にあると言われている水無月家別邸か瀬戸内海に接する広島県にある水無月家本邸のどちらかにいる。あと2ヶ月程で当主の座を退き娘である沙耶に受け継ぐことが決まっている今比較的自由に行動が出来るようになった。

 

今回はそれを利用して東京へとやってきた。普段日本で起こっていることは唯衣花を通じたりして知っているが最近はあと数ヶ月で当主になる沙耶を通じて伝えられている。今回の不可解な事件についても同じ手筈で知った。私は古式魔法の大家の水無月家として今回の事件について個人的な繋がりと水無月の力を活かして集めたのがさっき彩海奈ちゃんに渡したものだ。今回のこのパラサイトに関する事件、これは何処からやってきたのかは分からないが日本で起こったものでは無いのは確かだ。私や唯衣花、結那叔母様が気づかない時点でそれは大丈夫だ。

 

この事件とはおそらく無関係だと思いたいが最近USNAから留学生が来ていて、その中にUSNA軍の魔法師部隊で自称世界最強の魔法師部隊と言われているスターズが来ているという噂だ。USNAは最近「余剰次元理論に基づくマイクロブラックホール生成・蒸発実験」を行った。その実験において何かしらの理由で出てきた何かが人に憑依して日本にやってきてその始末をスターズが担当することになっていることだ。日本の地で外国の軍が好き勝手するとは思えないがその危機感は持っている。

 

☆水無月 紗綺side end☆

 

水無月家の捜索隊が加わってから私達の捜索は加わる前から遥かに早く進んでいった。事前に何処で起きるとかまでは分からないにしても人数か増えたことで何処ということかはすぐに共有出来るようになった。数日経ったある日、私は七草先輩と十文字先輩に呼び出された。おそらく吸血鬼絡みのことは間違いないだろうがそれでも授業中にその通達を送るだろうかとは思った。

 

「失礼します」

 

「いらっしゃい。ごめんなさいね、授業中に…」

 

「いえ、課題は終わっていて、先生の話を聞いていただけですので」

 

「そう。一昨日の夜外出してなかったかしら?」

 

「外出してはいましたが…それが何か?」

 

「彩海奈ちゃんも今報道されてるニュース知っているでしょう?」

 

「知ってはいますが何故私に聞くのでしょう?」

 

「西城が襲われたという場所でお前を見たという人がいる。それで最終的に西城を病院に運んだのも見ていると言っていた」

 

「……確かに私は今回の件に関して色々と首を突っ込んではいますが、五輪家としてではなく私が個人的に行っていることですので情報はありませんよ?」

 

「五輪家としてではない?ということは五輪としてはこの件に関しては静観するつもりなのか?」

 

「それは五輪家に聞いてみてください。私としては積極的に関わっていきますが」

 

「分かった。では何故五輪はこの件に関して首を突っ込んでくる?」

 

「私は姉と兄がいるこの日本から邪魔者を排除したいだけですよ。それ以外はありません。それにこのことに関しては姉や兄も知っていませんし」

 

「そうか…」

 

「お話は以上でしょうか?私は先輩方と違って授業があるのですが…」

 

「ああ、突然すまなかったな。授業に関しては俺から先生に伝えておく。五輪殿にお聞きしてからまた呼び出すかもしれないが構わないか?」

 

「ええ、私はいつでも大丈夫ですが、出来れば学校がある日は放課後でお願いします。日曜日は何時でも大丈夫ですので」

 

「それじゃあまたね、彩海奈ちゃん」

 

私は話を終えると考えながら教室まで戻っていった。今私が行っていることは確かに姉や兄のためでもあるが古式魔法師にとってこの吸血鬼…パラサイトいわゆる妖魔というものは排除するという宿命を背負っているらしく私も「古式魔法の最高峰」と言われている水無瀬の血を継いでることから個人的に手を出していた。現代魔法において最高峰の地位である十師族の一家、古式魔法において最高峰と言われる一家どちらの立場においてもこの案件を無視するわけにはいかなかった。

 




如何でしたでしょうか?

最近暑さと湿度と天気には参ったものです。

次回は出来るだけ早く上げたいと思います

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな勢力と困惑する騒動

はい。来訪者編第5話目です。特にな何かあるわけではこの前書き段階では言えないので後書きで色々語ることにします(笑)


一方彩海奈がいなくなった会議室に残っている真由美と克人は

 

「それで、どうだ?五輪家がこの事件に関わっている可能性は無いということは概ね分かったが、五輪自身としては関わっていく上で五輪家のバックアップはないと見ているのだが」

 

「そうね…今の彩海奈ちゃんの話によれば五輪家がこのことに関しては関与していることは無さそうに見えたわね…なら、一体何処がこの件に関与しているというの……」

 

「…………」

 

「どうしたの、十文字君?」

 

「いや……何でもない。後は五輪殿と話してみる、結果は後でまた連絡する」

 

「え、えぇお願い」

 

真由美と克人は彩海奈との話し合いを終えるとお互い帰っていった。

 

 

時は流れ時刻は20時を過ぎた頃五輪家当主五輪 勇海は十文字家当主十文字 和樹並びに当主代行の十文字 克人からの電話を受けていた。

 

『お久しぶりですな、五輪殿』

 

「ええ、そうですね。十文字殿ご加減はいかがですか?」

 

『今は大丈夫であります。それで今日の用件は克人からですので、私はこれで』

 

「克人殿、私に何か御用なのですか?」

 

『はい。今東京などの首都圏で起こっていることについてはご存知かとは思いますが、その件について五輪殿の御息女の彩海奈殿が関わっているのはご存知でしょうか?』

 

「ええ、一応護衛を通じて話は伺っていますが五輪家としては静観するつもりです。何より関東は七草と十文字のテリトリー。我が五輪家は中国・四国がテリトリーです、関東で起こっていることについて手を出そうとは考えておりません。ただ彩海奈が動く分には我々としては止めるつもりはありません」

 

『そうですか、では五輪殿は五輪家としてこの件に関してはノータッチだが彩海奈殿の行動に関しては容認すると?』

 

「ええ、そういう認識で大丈夫です。ただ、1つだけ私からお願い事があります。彩海奈に関しては今回十師族としてのバックアップは致して無いので好きにさせてあげてください。もちろん、非常事態の際は我々が持てる限りのバックアップはするつもりですが」

 

『分かりました。私からも1つよろしいでしょうか?』

 

「ええ、私が分かる範囲であれば」

 

『今回の件に関して水無瀬家と水無月家は動かれるのでしょうか』

 

「克人殿……私が水無瀬と水無月について何かご存知とお思いでしょうか?私達より七草殿か四葉殿、「老師」の方が知っていると思いますが」

 

『それもそうでしたな…』

 

「克人殿、彩海奈のことについてそして我々五輪のことについてはこれ以上何も言うことはありません」

 

『貴重なお時間ありがとうございました。それでは』

 

克人はこの話し合いを真由美に伝えるために電話を切った後電話をしていた当主の執務室から自室へと帰っていった。一方勇海はというと通話を終えると真唯の部屋へと向かっていった。

 

「母さん、今大丈夫かな?」

 

『ええ、大丈夫だけれどどうかしたの?』

 

「少し、話したいことがあってね」

 

「一体、何かしら。彩海奈がパラサイトの追跡をやってるってことはもう教えて貰ったわよ?」

 

「あぁ…少し耳に…っと愛彩さんもいたのか」

 

「あ…私もう帰りますんで…その真唯さんありがとうございました」

 

「ええ、またいらっしゃい」

 

「彼女とはいい関係を築けているみたいだな」

 

「ええ、彩海奈のおかげでね。愛彩ちゃんのことは知っていたけど実際に話したのは今年の正月だから」

 

「そうか、本当に彼女がいてくれるおかげで彩海奈のことや魔法のことも飛躍的に伸びたからな」

 

「ええ、かの有名なトーラス・シルバーのような少女よね」

 

「話が逸れてしまったな。水無瀬と水無月はこの件に関してどう動くか分かるかな?」

 

「…水無瀬も水無月もどちらも古式魔法の家系よ。パラサイトに関しては黙っていないとは思う。水無月に関しては既に動いているかもね」

 

「そうか、だから克人殿はあんなことを言っていたのか……」

 

「克人殿というと十文字家の?」

 

「あぁ、水無瀬と水無月が今回動くかどうか聞かれたからな」

 

「なるほど…でもそれは私だって分からないわ「ピコン」あら、ごめんなさい…噂をすればその張本人からよ」

 

「何?」

 

『先日、水無月 紗綺さんとお会いすることがありその時に私が個人的に行っていることに手を貸してくれることを遅ればせながらご報告します。このことは父さんにもお伝えください』

 

「もう動いていたか……それにしても紗綺さんが東京に来ているのか。水無瀬は余程このことを重く捉えているのだな」

 

「そうね………………これは私と母さんと姉さん、神無月さん、沙耶さんしか知らないことだけど水無瀬は侑那の次に彩海奈を据えたいと思っているそうよ」

 

「何?水無瀬が彩海奈を?」

 

「ええ、母さんは彩海奈を姉さんの次期と見ているみたい。水無瀬なら戦略級魔法師だからといって澪もだけどそうやすやすと出征させられることも無いし私はいいと思うんだけど……」

 

「それはそうかもしれないが今は別問題だ。確かに彩海奈は十師族という枠組みでは捉えきれないくらいになっているのも事実。年末に第五硏からもたらされたあの魔法を実戦に投入出来るようになればそれこそ十師族を超えた存在になってしまう。これは私達が何とかしなければならない案件だ」

 

「そうね……あの魔法ってやっぱり……」

 

「あぁ、戦略級魔法の類だろう…それもあの「灼熱のハロウィン」の時の魔法に似ている」

 

「やっぱり……」

 

「ただあの魔法はおそらく現代魔法の最高難易度と言われている『分解』を基にしている魔法と愛彩さんが言ってたからな…彩海奈が使うには次元が違いすぎる……ただ彩海奈が絶対に出来ないかと言われたらそういうことではないからな」

 

「それはどういう…」

 

「これ以上は彩海奈にも澪にも止められているから話せないが出来ないということは無い」

 

ついつい喋りすぎてしまったが母さんにも知っておいて貰いたいことではあったので話したが確かに今現在彩海奈の処遇については悩んでいた。無闇に何処かに嫁がせることが出来ない上に五輪については洋史がいる。今回母さんが話してくれた水無瀬の次期当主というのはもってこいのアイデアだ。他家に戦略級魔法師というカードを与えずに水無瀬という十師族以上の存在であるところへ行くというのはいい考えだ。ただ、今彩海奈の今後について決めるつもりは全くもって考えていない。

 

翌日、真由美と克人は再び顔を合わせていた。今日は昨日のように学校の会議室を貸し切っていた。連絡事項は昨日五輪 勇海と話した内容の大まかな部分だけを伝えた。全部でない理由は真由美が水無瀬家と水無月家のことを知らないと踏んだためだ。十文字家の次期当主である彼も水無瀬家と水無月家のことを知ったのは十文字家の当主代理を遂行することになってからだ。ただの十師族のご令嬢でしかない真由美が水無瀬と水無月のことを知っているとは思えなかったからだ。

 

「話を総括すると彩海奈ちゃんは個人として動き、五輪家としては動かないということよね…そして私達の捜索隊にも加わらないってことよね?大丈夫なの?」

 

「あぁ、彼女の護衛にはそれなりの手練の人を配置しているらしいからな」

 

「へぇ、そうなの」

 

「ああ、昨日五輪殿がそう仰っていた」

 

その後真由美と克人はそれぞれの実家からの伝言を伝えてから別れた。

 

そこから数日間東京を騒がせていた吸血鬼騒動はなりを潜めていた。レオ君が吸血鬼と対峙してから約1週間が経とうとしていた。今日も彩海奈は夜の東京の街を出歩いていた。彩海奈とて毎日こうして出歩いているわけでもなく水無月家の捜索隊が加わってからは私は水無月家からの要望で3日に1回と制限を付けられたため(この制限を作ったのは水無月 紗綺)私は休みながらも捜索を続けていた。

 

今日も警戒していたところに緊急通信が私の端末に入った。私はその通信を受け取るとすぐさまそこに駆けつけた。その公園にたどり着くとそこには今まで何処にでも現場にいたあの白い仮面に黒のコートを着た人とこちらは初めて見る姿だったが異様な出で立ちだった。深紅の髪を束ね、黒のマスクから見える目は金色の輝きを放ちながら白仮面の人の前に立っていた。その時に緊急通信としてグループ通話を繋いでいた水無月、五輪の捜索隊の指揮官から

 

『五輪様、どうなさいますか?』

 

「私と貴方それに他2名くらいは共に待機、他の方は私達がここから離れる際の退路の確保をお願い出来ますか?」

 

『分かりました、おい』

 

『『『『『はっ』』』』』

 

『お嬢、俺らは』

 

「そうね…貴方ともう1人誰か残してそれ以外は姉さんと兄さんにバレないように父さんに連絡」

 

『分かりました、おい』

 

『『『『『はっ』』』』』

 

私は水無月と五輪両家の配下の魔法師に指示を出すと白仮面と黒仮面の対決はどうやら、黒仮面が勝ったようでここから立ち去ろうとした時に私は隠れていたところから飛び出た。その瞬間違う場所からなんとエリカが飛び出してきた。

 

「ちょっと、邪魔しないでくれる?」

 

「そう熱くならないで、千葉エリカ嬢」

 

「何でアタシの名前を……それよりこいつどうにかするわよ」

 

「ええ、ところでこの人に心当たりは?」

 

「ある…わけ……ない…でしょ!」

 

エリカ・私と謎の黒仮面の戦いは最初こそ奇襲を仕掛けたためかある程度優勢になってきたが次第にエリカが遅れ始めてきた。今は私がいるのである程度マシに戦えているがそれでも遅れを取る事はしばしばあった。するとそこへ1台のバイクが横付けされた。黒のライダージャケットに黒のヘルメットそして私には見覚えがあるCADをこちらに向けていた。

 

「達也くん?」

 

そう達也だ。私の身近にいる人でFLTに所属している天才魔法工学技師「トーラス・シルバー」が開発した「シルバー・ホーン」を使っているのは姉さんと達也だけだ。姉さんがこの場にいるということは有り得ないので私もすぐに達也だということが分かった。

 

「くっ」

 

黒仮面は形勢不利と察したのか一瞬の隙に退避して行った。

 

「ちょっと、あんたのせいであいつを取り逃したじゃない。どうしてくれるの?」

 

「落ち着け、エリカ。すまないな、それでお前の名前はなんという」

 

「お久しぶりと言うべきでしょうか?私は如月 亜沙音と言います」

 

「如月 亜沙音?もしかして如月 芽愛さん、弥海砂さんと関係があるの?」

 

「え、ええ。一応私の姉達になりますが…」

 

「そうか、それで何故ここにいる?」

 

「それは私の個人的事情によりお話することは出来ません。これは姉からも言われているので」

 

「そうか、ならいい。なら彩海奈のことはしっているな?」

 

「彩海奈様ですか…私は知っているだけですので直接関わりは無いので何かあれば姉達に伝えておきますが」

 

「なら、私から1ついいかな」

 

「はい。千葉エリカ嬢」

 

「……その嬢と言うのはやめて。それで本題だけど私達の邪魔はしないでくれるかしら」

 

「私達、ですか?」

 

「私達千葉家とミキ……って言ってもわかんないか吉田家の合同捜索隊が今回のことについて動いてるからそれの邪魔はしないでって」

 

「分かりました。姉達にはそう伝えておきます。ただそれを彩海奈様が履行するかは分からないのでそれだけはお伝えしておきます」

 

「えぇ、分かったわ」

 

「それでは、私はこの辺で」

 

私はそう言うと公園を離れ、自宅へと戻っていった。自宅に帰ったあと父さんや紗綺さんからの連絡を受けていたがほとんどは両家の配下の魔法師の人達から聞いたとのことなので後はゆっくり休みなさいということだった。

 

「それにしても、今回は色んな勢力があるわね……警察省の広域捜査チームに十文字・七草のチーム、さらには千葉家と吉田家もか……それと父さんの言ったことを加味すればUSNA軍のスターズと私達を含めて5勢力か」

 

ここで私はふと疑問に思った。パラサイトは人に憑依出来るかもしれないということだ。私はそこから精神体に何らかの適性を持ったものだと思った。私は四葉が出てくるとばかり思っていたのだが未だにその動きを見せていない。四葉が動けば多少なりとも分かるらしいのだが今回は紗綺さんや弥海砂さんでさえ分からないらしい。それだけ四葉にとっても重要な案件なのかそれとも全くもって関心がないのか分からない。でもそんなことはどうでもいい。私の後ろには水無瀬と水無月という知る人ぞ知る最強の家が控えているんだと思いながら今日の出来事を振り返っていった。

 

その頃達也は亜沙音が去った後近くにいた幹比古と合流し、エリカを送ったあとに自宅へと帰宅していた。

 

「おかえりなさいませ、お兄様」

 

「あぁ、深雪……叔母上に繋いでもらえないか?俺だと繋いでもらえないかもしれないからな」

 

「叔母様にですか?分かりました」

 

「すまないな」

 

ーーーーーーーーーーー

 

「夜分遅くに失礼します、叔母様」

 

『あら、いいのよ深雪さん。それに貴女から電話を寄越してくることは珍しいもの』

 

「恐れ入ります。本日の用件はお兄様からですので」

 

『あら、まぁ達也さんから?それまたさらに珍しいはね』

 

「叔母上、今回の吸血鬼騒動はどうやら我々の手に余るようなので援軍を頼みたいのですが」

 

『あら、五輪のお嬢さんに七草のお嬢さん、さらには十文字の次期殿もおられるのではなくて?』

 

「それでも、です。どうやら七草を出し抜ける組織が関わっているようです。それに先程パラサイト一体と遭遇した際千葉家のエリカ嬢、そして如月 亜沙音という人物と共にパラサイト・スターズ総隊長アンジー・シリウスと思われる人物と交戦した際雲散霧消の照準を外されました」

 

『アンジー・シリウス?あの方はUSNAの国家公認戦略級魔法師ですよ?それが日本にいると?』

 

「私がそう思っているだけですので確証はありませんが……叔母上は九島の秘術「仮装行列」についてご存知ではありませんか?」

 

『私が九島の秘術をご存知と?』

 

「叔母上は老師に魔法を習ったと聞き及んでいたので何かご存知では無いかと」

 

『確かに私は老師に師事していましたが秘術までは教われないですよ?……もしかして今回達也さんの照準を外されたのが「仮装行列」によって外されたと?』

 

「一概には言えませんが自分はそう思っています。ただ問題はそこではありません。アンジー・シリウスだけではなく如月 亜沙音にも照準を外されということです。おそらく彼女の姉達は五輪家に仕えている人達です。そんな人達が九島の秘術である「仮装行列」を使っていることは有り得ないに等しいことです。だからこそ援軍を頼みたいのですが」

 

『…………分かりました。風間少佐達との接触を許可します』

 

「ありがとうございます、叔母上」

 

『それと気を付けなさい、達也。貴方が思っている以上に事態は深刻な状況になってるわ』

 

「それはどういう意味でしょうか」

 

『それ以上は私でも言えないのよ。申し訳ないのだけど事態はそれほどに深刻になっているわ』

 

「分かりました、ありがとうございます」

 

「叔母様、それは彩海奈が関わっているのでしょうか?」

 

『……ざっくり言えばそうね。彼女はおそらく十師族としてのバックアップを受けずにやっているみたいだから』

 

「五輪家のバックアップがない?確かに彼女には1人で出来そうな感じはしますが…」

 

『それ以上は私でも分からないわ。何せ彼女は五輪家の人だもの』

 

「ご忠告ありがとうございます、叔母上。五輪 彩海奈、スターズ等には気を付けます」

 

『ええ、また何かあればかけてきてちょうだい。特に彩海奈さんのことに関して何かわかったら』

 

「分かりました、叔母上」

 

「お兄様……」

 

「深雪、お前は何も気負わなくていい。彩海奈のこともそうだ」

 

「しかし……」

 

「彩海奈に関することは叔母上自ら会ってまで情報を掻き集めているくらいだ。今の俺達には出来ることと言えばこの吸血鬼騒動をいち早く沈静化させることだ」

 

「……分かりました」

 

達也と深雪が真夜と電話をしていた頃彩海奈は芽愛、弥海砂と共に五輪家現当主五輪 勇海と電話を繋いでいた。

 

「以上が今夜の顛末になります」

 

『そうか、ご苦労さま。それで怪我とかは大丈夫かい?』

 

「はい、大丈夫ですが……1つ気がかりが」

 

『何だい?』

 

「あのことをアンジー・シリウスと思われる人物、司波達也、千葉 エリカに知られてしまったかもしれません」

 

『……そうか……』

 

「特に司波 達也に関しては迂闊でした。彼は見ただけで何かが見えるようですのでこのことも既に把握されてるかと」

 

『それでもあのことは特別だとしてもせいぜい知覚することが精一杯なはずだ。例え見えていたとしても分からないはずだ』

 

「それもそうですが、一応お伝えしときます。私の秘密が一部露見した事を報告しない訳にはいかないので」

 

『そうか、分かった。芽愛、弥海砂この事は誰にも言わないようにしてくれ。この事は私と澪と彩海奈しか知らないことだからな』

 

「「かしこまりました、御当主様」」

 

『それじゃあ、今日はゆっくり休みなさい。先程紗綺さんからも今日はゆっくり休みなさいということを聞いているからな』

 

「分かりました、それではおやすみなさいお父さん「「御当主様」」」

 

話し終えると私は芽愛さんと弥海砂さんに今日はもう寝るということを伝えると私は寝室に行き直ぐに寝たと翌日家にいた弥海砂さんから聞いた。

 

時は遡り彩海奈が寝た後

 

「ねぇ、お姉ちゃんさっき言ってたことって……」

 

「えぇ、そういうことでしょうね。だからこそ私達が身の回りのお世話係の名目で彩海奈様の護衛をやらせていたんでしょうね」

 

「やっぱりね。お姉ちゃんはともかく私まで付けるということはそれほど彩海奈様のことを気にかけているということだよね」

 

「そうね、それに身内とはいえ国家公認戦略級魔法師が一目おいてる時点でそれなりの護衛を付けるということは分かっていたけどまさか、ね」

 

「じゃあ、今日は私が残るからお姉ちゃんは帰っていいよ。明日はお姉ちゃんの日でしょ?」

 

「そうね、それじゃあ私はこれで何かあったらすぐに呼んで」

 

「うん。じゃあまた明日ね」

 

知ってしまった彩海奈様の秘密。まさか彩海奈様が戦略級魔法師だということには少なからず姉さんも驚いたけど今回のはそれを上回る衝撃だ。詳細なことは分からないままだけれどこの事は五輪内部でも御当主様、澪様、彩海奈様の3人でしか共有されていない事だ。彩海奈様が戦略級魔法師だということは五輪家及び第五硏全体で認識されているが今回のことは訳が違うみたいだ。




如何でしたでしょうか?彩海奈の秘密はまだまだ設定を作った段階でこいつチート級にしすぎたかなって思っています(笑)(全部を採用した訳ではありませんが)

そして30巻の奪還編のイラスト発表されましたね!リーナと深雪のツーショットって今ちょうどこの作品でやってる来訪者編(上)以来2度目になるんですよね。(追跡編(上)は変装ってことで見逃して←)そしてリーナが出てくる時は必ず達也か深雪とツーショットになっているんですよね。(来訪者編(上)(下)、インベーション編、追跡編(上))

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。お気に入り登録が200件突破しました。これからも精進して参ります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彩海奈とスターズ、九重寺での密談

お待たせしました。続きになります。天候が晴れたり暑かったり時には雨降ったり、寒くなったりと不安定すぎる……


達也とエリカ、そしてアンジー・シリウスと思われる人とぶつかり合った日の翌日、彩海奈はいつも通りの日常を過ごしていた。何もないそんな日は彩海奈にとって久しぶりだった。しかし、それはわずか数日で壊された。問題になったのは2日後、この日は弥海砂が担当の日だがそこで再びアンジー・シリウスと思われる人、司波達也が対峙しその場面を弥海砂が目撃していたその後達也と弥海砂の師匠でもある「九重八雲」、そして達也の妹である深雪が出てきたという。その後弥海砂さんは九重八雲さんに引っ張り出されその後アンジー・シリウスの正体が今我が校に留学してきているアンジェリーナ・クドウ・シールズだということを知らされた。その後深雪とリーナによる対決が行われたが達也によって中断されたという。私はそこで達也に関してある1つのことが分かった。達也の魔法に関する干渉力が私や姉さんよりも上だということだ。他国の戦略級魔法師にこの国でもトップクラスの魔法力がある深雪の魔法に対する干渉力を上回っているということだ。その後弥海砂さんは九重八雲さんによって帰されたらしい。そしてその翌日私はその張本人に会議室に呼び出された。

 

「それで、私を呼び出した理由は何かしら?」

 

「彩海奈、これをやる」

 

「これは?」

 

「吸血鬼にトレーサーを埋め込んだ。それを追うためのものだがお前達には不要か?」

 

「いえ、私達といえどそこまでは出来てないから。それに私は個人で動いてるから五輪からのバックアップはないのだけれど」

 

「そうなのか?五輪も動いていると思ったのだが違うのか」

 

「ええ、七草家に十文字家が動いてるみたいだもの。五輪が出る幕では無いわ」

 

「なるほどな。それと1つ聞いておきたいことがあるんだが」

 

「何かしら?私で答えられる範囲ならいいのだけれど」

 

「如月 亜沙音という少女を知っているか?」

 

「亜沙音さんがどうかしたのかしら?彼女なら確か愛媛にある自宅にいるはずなのだけれど」

 

「先日、エリカとその亜沙音という少女と共にパラサイトに遭遇したんだが」

 

「エリカと?彼女もこちらに来ていたのね」

 

「知らなかったのか?来ていることを」

 

「ええ、私は何も知らないのだけれど」

 

「そうか、分かった。用件はこれだけだ。それと、それは十文字家と七草家のチームと幹比古とエリカのチームにも配っているからそれだけ伝えておく」

 

「ほんとに何でも出来るのね……流石はっていったところかしら?」

 

「そうでもないさ。君だって色々なことしてきたんだろう?」

 

「まぁ、それはお互い様ね。とりあえず有難く受け取っておくわ」

 

「ああ、何か進捗があったらでいいから教えてくれないか?」

 

「ええ、分かったわ。伝えるのは学校ででも構わないかしら?直ぐにでも欲しいのなら送るけど」

 

「出来れば頼む。俺達だけじゃ対応しきれないこともあるかもしれないからな」

 

「分かったわ。芽愛さんと弥海砂さんにも貴方のプライベートナンバーを共有しても構わないかしら?」

 

「構わないが、彼女達のプライベートナンバーも教えて貰えると助かる」

 

「ええ、もちろん。ただし、無闇に広げないでもらえると助かるわ」

 

「それはもっともだ」

 

「それじゃあね。可愛い妹さんがこちらを睨んでいるんだもの」

 

「あぁ、それじゃあ」

 

その後私はいつも通りに日課を終えると帰宅して、今日は私の担当だったため動きやすい服装に着替え、都心へと出ていった。先日の横浜事変から復興しつつある横浜のとある公園付近へ近づいた時違和感を感じた。それは敵意を感じると共に何か良からぬ視線を感じていた。私は付けていたヘッドセットから五輪家と水無月家のチームに応答をかけたが何も連絡は来なかった。その瞬間に四方から何処かの軍隊を思わせるかのような出で立ちをした人達が目の前に立ち塞がっていた。

 

「貴方達は一体……」

 

「Is it the AMINA ITSUWA?」(五輪 彩海奈だな?)

 

「(英語……ということはスターズ?)貴方達に答える筋合いはありませんがどうやら答えるしか無さそうですね。如何にも私は五輪 彩海奈ですがあなた方は?」

 

「We are USNA Army.Unplug your device and hold your hand behind」(私達はUSNA軍。デバイスを外して手を後ろにくめ)

 

「(USNA軍?……まぁどうせスターズでしょうけど)流石にその要求は飲めませんね貴方方は私を先日の戦略級魔法の術者の候補の1人として疑っている。そんな中私が貴方方に従うと思いますか?」

 

「Then it can't be helped. I do not want to use hard means, but there is no help for it.」(それなら仕方がない。強硬手段は使いたくないが仕方がない。)

 

「実力行使ですか……分かりました。私も出来るだけ穏便に済ませたいので」

 

────────────────

 

彩海奈とスターズの隊員達は先日達也、深雪、リーナ、九重八雲が対峙していた河川敷へとやってきていた。

 

「Are you a strategic magician? If it is clear, it will be easy for us to move.(お前は戦略級魔法師か?そこがハッキリすれば我々としても動きやすいのでな)」

 

「先程も同じようなことを聞かれましたが分かりませんでしたか。私は戦略級魔法師ではありません、何よりそれは貴方達の方がよくお分かりなのでは?」

 

「I can't help it. I'll go(仕方ないわ。それじゃあ行くわよ)」

 

そう言う声がスターズの隊員の奥から聞こえてきた。奥から出てきたのは深紅の髪に黒い仮面、黄金の瞳を宿していたあの時の彼女だった。

 

「貴女…アンジー・シリウスね。まさか一国の国家公認戦略級魔法師に会えるなんて思わなかったわ。でもここは日本よ、スターズ総隊長がいて良い場所ではないわ」

 

「That's not what you should say(貴女に言うべきことではないわ)」

 

「そう……ならばやりましょうか」

 

──────────────

 

スターズと彩海奈が対峙していた頃、達也は九重八雲に九重寺へと呼び出されていた。

 

「パラサイトをおっているのは風間君からも聞いているけど、それでもこの件は君には伝えておいた方が良いと思ってね。ただこの話は深雪君や四葉の御当主にも出来れば教えない方が僕としては良いんだけどね」

 

「何でしょうか?パラサイトに関することならある程度は分かるようになっているのですが」

 

「いや、今から話すのはパラサイトとは無関係だ。そして付け加えるとこの件は確証も何も無いそんな話だよ」

 

「確証が無い?それでどんな話でしょう?」

 

「五輪 彩海奈、彼女は君と同じような眼を持っているかもしれない。それも君の眼よりずっと高性能のね」

 

「彼女が視覚魔法を?彼女は九校戦の時には視覚魔法は持ち合わせていないと仰っていましたが……」

 

「そうなのかい?いやそれでも君には話しておきたいことだ。1月7日だったかな、ちょうど彼女を見かけたものだから後を付けてみたんだ。僕だって忍びだ、気づかれないように後をつけたらものの数分で彼女に気づかれたんだよ」

 

「まさか……師匠の隠形すらも見破られたということですか?」

 

「そこはわからないけど、結果として見つかったんだ。だからこそ僕は思ったんだ、彼女五輪 彩海奈は君の「精霊の眼」を超える視覚又は知覚魔法を備えているということを」

 

「有り得ない話ではありません。例えば七草 真由美嬢、彼女は先天的な視覚魔法を有しています。ただ他の七草家の人間は有してはいません。なので彼女が有していても不思議ではありませんがそれでも俺のを超えるというのは些か気になります。俺のは俺の得意魔法が基になっている面もありますが彼女の得意魔法が分からない以上どういう効果を持っているのかが気になります」

 

「そうだね…僕も彼女の得意魔法は何一つとして分かってはいない故にわからないことの方が多いんだ。ただ今この場でハッキリ言えるのは彼女は達也君を超える人の気配を知覚することが出来る能力を有していることだ。もちろんそれが知覚するだけだとは僕は思えない、それだけ情報が彼女の元にはあると見ている。今回のことについても彼女は他家を凌駕するほどの情報を持っているはずだ。彼女を当てにしてみるのも僕はいいと思うよ」

 

「分かりました。それとありがとうございます。彼女のことについてはこちらとしても色々分からないことが多かったのでそれが分かっただけでも」

 

「そうかい。それじゃあもうお帰り、深雪君も君の帰りを待っているんだろう?」

 

「それでは師匠、これで失礼します」

 

九重八雲は達也を送り出すと、何処か遠くを見ながら先代から聞かされた話を思い出していた。この話は先代から聞いた話だ。その先代もその前の先代から聞いた話だという。その話とは「水無瀬に関するある噂」。これはこの九重という性を先代から継承する際に言われたことであり、この話は門外不出でそれが例え弟子であろうとも話すことは許されていない。

 

「もしかしたら、あの家も今回のことで動いてるかもしれないけど動いてても分からないからねぇ」

 

──────────

 

「さて、こんなところに大勢でやってきたら目立つんじゃないんですか?」

 

「Don't worry, that person will do it for you. We don't get out of hand.(心配するな、貴様の相手はあの方がやってくれる。我々は手を出さない。)」

 

「そうですか…では早速」

 

私はそう言うと最初から飛ばしていった。それもあの横浜の時のように。アンジー・シリウスと思われる人は確かに私よりも魔法力は高かった。戦い続けてから30分が経った頃お互いに実力は拮抗していた。アンジー・シリウスと思われる人の後ろにいるスターズの隊員も息を呑んで見守っていた。

 

 

「If this is the case, you won't be clear.(このままじゃ埒が明かないから、お互い次の一手にしましょうか。)」

 

「分かったわ…それじゃ、行くわよ」

 

ここで私が選んだのは夏の九校戦以来練習していた「ニブルヘイム」。正直あの九校戦の時のようなニブルヘイムでは無いが一応実戦では使えるようにしていた。対照的にアンジー・シリウスと思われる人から放たれたのは「ムスペルヘイム」。お互いに力を振り絞っていたため膠着状態が続き、最後の方にはお互いに立っているのが精一杯という状況になっていた。

 

「Let's pull each other here. After this, even if we seize you, our name will only get dirty. Next time I will give you a lead.(ここはお互いに引きましょう。この後私達が貴女を取り押さえても私達の名が汚れるだけ。次こそは私が引導を渡してあげるわ。)」

そう言い残すとスターズは帰っていった。

 

「わかった……わ。私も次こそは倒してみせるから」

 

強気にそんな言葉を言ったが今の彩海奈からは全く想像出来ない。ただ単に十師族それに彼女は非公認であるものの戦略級魔法師という肩書きがその言葉を発していた。彩海奈はスターズが帰っていくのを見送ると芽愛さんと弥海砂さんに自分のGPSの位置情報を添付して連絡した。しばらく私はその場に座り込んでしまったけれど、連絡したのは数分前なのにすぐに弥海砂さんが来てくれたのが見えたその直後彩海奈は意識を失った。




如何でしたでしょうか?スターズのところは完全にオリジナルです。自分はスターズがこの作品のようにあんな優しいとは思ってません←

またもうそろそろ奪還編の発売ですね!あらすじみたいなので確かパールアンドハーミーズ基地からみたいなのがあった気がしたので魔法科で初めての海外になりますね。

こんなことを語っても仕方ないと思うので9月10日を待ちましょう。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間の物語


はい。ということで来訪者編の最新話になります。遂に今日発売ですね!これを公開している頃には手にされている方もいると思いますが自分は諸事情により明日になってしまうのがもどかしいです


☆弥海砂side☆

 

私と姉さんは彩海奈様を見失ってから色んなところを探していた。これまでの吸血鬼騒動の際に行方を見失う事など決して無かった。見失った後すぐに水無月の捜索隊の人達にもお願いして彩海奈様の捜索をしていたかれこれ30分は経とうとしていた時に私の端末に連絡が入った。どうやらメッセージのようで宛先は私と姉さんで送り主は彩海奈様だった。文章は何も無くただ位置情報だけが記載されていた。私は後のことなど何も考えずにただその場所に向かった。数分後私は位置情報を元にその場所へ行くと彩海奈様は今にも倒れそうな様子だった。私が近くに行くと崩れ落ちるかのように私に寄りかかってきた。とりあえず息はしているので大事に至っていなくて何より安心した。そこに姉さんがやってきた。

 

「弥海砂!彩海奈様は?」

 

「大丈夫、気を失って今は寝ているわ。それにしてもここまで疲弊しているなんて……」

 

「とにかく一旦彩海奈様の自宅に行きましょう。後はそこで考えましょう」

 

私と姉さんは彩海奈様を抱えて自宅へと戻っていった。途中水無月の捜索隊の人達にも無事に発見したことを伝え戻った。

 

「それにしても一体何処の組織が彩海奈様を……」

 

「確かに……四葉以外の十師族が彩海奈様を狙おうとしても後れを取ることは有り得ないだろうし、パラサイトだとしてもあんなに疲弊することは今までも無かった。ということから考えられるのはスターズ……」

 

「でもスターズといっても彩海奈様が後れを取るってことはないと思うけど……そういえば1人いたわね、今この日本に」

 

「USNAの国家公認戦略級魔法師でスターズの総隊長アンジー・シリウス……まさかアンジー・シリウスと遭遇したと?」

 

「有り得なくない話ね……彩海奈様が後れを取るとしたら私が知る限り、司波 深雪、司波 達也、七草 真由美、十文字 克人、一条 将輝、アンジェリーナ・クドウ・シールズそして今この日本にいるかもしれないアンジー・シリウスくらいだもの」

 

「そうね……兎に角彩海奈様は1.2日は強制的に休みにさせましょう。水無月家の捜索隊の方々には申し訳ないけれど付きっきりでいないと何をするか分からないからね」

 

「そうね……後で御当主様に連絡する時に伝えるわ」

 

弥海砂はそう言うと彩海奈の寝室からリビングに移動し、彩海奈の父で五輪家当主五輪 勇海に電話をかけた。

 

「夜分遅くに失礼します。御当主様」

 

『弥海砂がこの時間にかけてくるとはね…それも彩海奈の自宅から…何かあったのかい?』

 

「今夜、彩海奈様がアンジー・シリウスと思われる人と対峙しました。私達はその現場を見てはいないので絶対とは言えませんがおそらくそう見て問題無いと思います」

 

『……アンジー・シリウスが?わかった、此方でも少し調べてみることにしよう。あと紗綺さんにはこちらから連絡しておこう』

 

「ありがとうございます」

 

『彩海奈のこと頼んだよ?五輪として動けない中で彩海奈を助けられるのは東京にいる君達だけだからね』

 

「もちろんです。彩海奈様なのですが私達が見る限り明日は休ませたいのですが……」

 

『そうか、わかった。彩海奈に明日はゆっくり休みなさいって伝えといてくれないかな?じゃあよろしく頼むよ』

 

「お任せ下さい、御当主様」

 

電話を切ると私は再び彩海奈様の部屋に戻った。まだ彩海奈様は起きていなかったが私は芽愛姉さんに先程のことを伝えると彩海奈様が意識を戻すのを2人で待っていた。

 

☆弥海砂side終了☆

 

☆五輪 勇海side☆

 

弥海砂から電話を貰った時は私は少しの後悔と驚愕を覚えた。

まず後悔なのは彩海奈に五輪としてのバックアップを行えなかったことだ。何故五輪家が今回バックアップを行わなかったのかそれは水無瀬家が彩海奈のバックアップをするという連絡が1月6日の時点で来ていたためだ。水無瀬が何処まで介入してくるかは不透明だったが、吸血鬼は古式魔法においての妖魔の退治という宿命を背負っているとまだ次期当主と決まった時に老師から聞いた覚えがあったため五輪としてはバックアップを行わなかったのが理由だ。

次に驚愕なのは芽愛と弥海砂が彩海奈を見失うということもそうだが、彩海奈が誰かに後れを取ったかもしれないという事だった。今まで彩海奈が後れを取るということはほぼなく今回もUSNAから留学生やスターズが来ていると知っていても彩海奈が後れを取ることは無いと思っていた。ただ私も予想外の人物がやってきていた。スターズ総隊長にして国家公認戦略級魔法師、詳細は愛称とコードネーム・未成年ということだけがUSNAから公表されているだけで戦略級魔法「ヘビィ・メタル・バースト」の術者であるアンジー・シリウス。彼?彼女?が来ているということはおそらくUSNA軍内における極秘任務か何かはしらないがUSNAの切り札とも言える国家公認戦略級魔法師を他国に送り出す程の脅威がこの日本で起こっているかもしれない。そんなことを思いながら私は翌朝、ある家に電話をかけた。

 

「もしもし、三矢殿。今大丈夫ですか?」

 

☆五輪 勇海side終了☆

 

 

☆アンジー・シリウス(アンジェリーナ・クドウ・シールズ)side☆

 

昨年の10月31日通称「灼熱のハロウィン」、朝鮮半島における戦略級魔法(仮)「グレートボム(仮)」の術者と思わしき人物の1人である十師族・五輪家の次女である五輪 彩海奈を追って私を含めたスターズの潜入部隊は彼女が1人になる日を探っていた。そしてそれは日本に来てから1ヶ月が経つか経たないかした日にようやく決行する日が訪れた。彼女が1人になるのは極稀であり、周りには彼女の護衛らしき人や第一高校の友人等が常にいて、容易に手が出せない状況が続いていた。

しかし、夜は偶に1人で出歩くことがありその日に限っては彼女の護衛もそばにいる訳では無いが見守っているという状況が続いたため、決行に至った。結果的には彼女自身があの時の戦略級魔法師では無いと言っていたが、私的にもそう思った。彼女が使う魔法はUSNA軍の研究者が仮定した魔法とはあまり似ていない、そう思った。それでも彼女は私やベン、達也、深雪と同レベル…いやもしくは数段上の実力を持っているかのように思えた。

 

☆アンジー・シリウス(アンジェリーナ・クドウ・シールズ)side終了☆

 

彩海奈は夢を見ていた。それは初めて姉と兄と会った時。彩海奈はまだ目の前にいる2人が誰だか分からないし、言葉も十分に話せないのでうーうーと叫んでいると彼女の母親である真唯が近くに駆け寄ってきた。まだ産まれてから2ヶ月ということもあり、まだベビーベッドでぐずついていた彩海奈を真唯は抱き抱えるとあやしていった。その後澪と洋史お互いに自己紹介すると真唯から澪に彩海奈を渡されると澪は彩海奈を抱き抱え、可愛い妹の顔をまじまじと見ていた。その後洋史と共にまなでていると彩海奈はいつの間にか寝てしまい、再び真唯のもとにかえり、ベビーベッドに寝かされた。澪はまだ彩海奈の元にいたいと思っていたが真唯によって自分の部屋へと帰されていったのは洋史しか当事者以外は知らない墓場まで持っていくしかない秘密だ。その後彩海奈も大きくなり、姉の澪も大きくなるのだがそれと比例するかのように体調も段々と弱くなっていきそんな姉を見ていると彩海奈は何処か悲しげな顔をしていた。姉のそんな姿を見ているのを妹としては心苦しく思っていた。そこで彩海奈は目を覚ました。

 

彩海奈が起きると周りは明るく、自宅の自室にあるベッドに横にされていたのが現状でわかった。確か弥海砂さんが私のところに来てからそれからの記憶が無いことを思い出した時にずっと傍にいてくれたのか芽愛さんの姿が私には写った。

 

「起きられましたか。とにかく無事で何よりです、彩海奈様」

 

「芽愛さん……あの…昨夜のことは」

 

「昨夜のことは御当主様からはゆっくり休みなさいということでした。それと今日はもう学校にはお休みの連絡をしました」

 

「……わかりました。芽愛さんがそう言うなら今日はそういうことにしといてあげます」

 

「はい。それではもう少しお休みくださいませ」

 

そう言うと私は再び眠りの底へと落ちていった。

 

☆五輪 勇海side☆

彩海奈が目を覚ます数時間前五輪家の当主五輪 勇海は三矢家の当主三矢 元に連絡していた。

 

「もしもし、三矢殿。今大丈夫ですか?」

 

『五輪殿、如何なされましたかな?』

 

「今現在東京で起こっている件について少し相談がありまして」

 

『……それは七草家と十文字家にお聞きになればよろしいかと思いますが何故当家に?』

 

「この件にどうやらUSNAのスターズが絡んでいるみたいですので三矢殿に是非力を貸してくれないかと思いまして」

 

『五輪殿が仰ることは分かりますが何故五輪殿がUSNAそれもスターズの情報を必要とされるのでしょう?』

 

「実は昨夜、今東京に住んでいる娘の彩海奈がスターズと対峙しまして私個人としては彩海奈をバックアップしていまして出来る限りのことはしてあげたいと思いましてな」

 

『彩海奈嬢が……わかりました、USNAのことについて我々も少し調べていましてな。あと数日でその情報が出来るのでそれからでも大丈夫ですかな?』

 

「ええ、もちろんです。それではお願いします、三矢殿」

 

『承りました、五輪殿』

 

五輪 勇海が電話を切ると同時に部屋に真唯が入ってきた。

 

「ねぇ、彩海奈がスターズに巻き込まれたって聞こえたんだけど大丈夫なの?」

 

「あぁ、芽愛曰く1日付きっきりで看病してれば良くなるらしいからな」

 

「そう……なら大丈夫そうね」

 

「あぁ、芽愛と弥海砂には感謝しないとな」

 

「……さっき愛彩さんから連絡があったわ。あの『例の魔法』が完成したそうよ」

 

「何?それでその術式はどうした?」

 

「まだ彩海奈のところには送ってないそうよ。要求演算力が足りなすぎて試技が出来てないところが不安な点ね。そこは彩海奈がやるしか無いんだけど」

 

「そうか……だが、それは彩海奈の体調を考えてからだ。芽愛と弥海砂のことだ。まだ彩海奈を動かしはしないだろうから」

 

「そうね……」

 

そう言うと真唯は部屋を出ていきおそらく自室へと戻っていた。勇海はこれから生じるであろうリスクとリターンについて考えていた。これから生じるリスクとして考えられるのはUSNAもといスターズの疑惑の増加だ。彩海奈がもしまたスターズの目の前であの魔法を使ったらおそらく今回の対峙で疑惑が晴れたのにまた再燃するのは必至だ。それに彩海奈、弥海砂によればあの九校戦で我々十師族の間でも話題に上り、彩海奈でさえ魔法力では負けうる可能性があると思われている司波 達也という少年は何か視覚魔法を有している可能性があると報告してくれている。確かに視覚魔法は珍しいが何も無いわけではない。しかし、弥海砂によるともしかしたらイデアを視ることが出来るかもしれないとも報告してくれている。これだけでもハイリスクを通り越す程のリスクが生じる可能性がある。リターンとしてあるとしたら司波 達也があの戦略級魔法師で『分解』の使い手であることが分かるかもしれないということ、スターズ総隊長アンジー・シリウスの先代スターズ前総隊長ウィリアム・シリウス少佐が発明した「分子間結合分割術式」その基幹となるものが分かるかもしれないということだけだ。あまりにもリスクとリターンの均衡がとれていない。それだけに今はまだ「例の魔法」を彩海奈に提供するわけにはいかない。よほどのことがない限りこれだけのハイリスクがある中で彩海奈を疑惑の目に晒すわけにはいかない。そう結論付けた勇海は五輪家の魔法研究所の副施設長宛に

 

「霧島 愛彩を中心に完成させた「例の魔法」を施設長の許可なく外部に流出させることを禁ずる。例えそれが真唯、澪、彩海奈であろうとデータを渡すことを禁ずる」

 

という命令を出した。





如何でしたでしょうか?遂にあの新年会の時の魔法が完成しました。詳細に関しては次の話で凡そのことを書く予定ですのでしばらくお待ちください。今回の話は彩海奈が出てくるシーンがほんの数行くらいだったので次回は多くしたいです←

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

彩海奈の休日、動き出すざわめき


はい。来訪者編の最新話になります。いや、奪還編すごかったですね。内容を理解するのに結構見直してようやくな感じだったんですけど(圧倒的理解度不足)めちゃくちゃ面白かった。



 

 

彩海奈がスターズと遭遇し対峙した日の翌日、何も知らない一高生はいつも通りの日常を過ごしていた。ただある程度彩海奈と関係がある生徒、同じような立ち位置にある生徒には他の生徒とは何かが彼女の身辺にあったと思わざるを得なかった。彩海奈のクラスメイトのエイミィと鋼、そしてD組でエイミィ、鋼共に仲がいいスバルは彩海奈が休みということで今日は深雪やほのか、雫達と食べようということにしていた。そしてお昼休みエイミィ達は深雪やほのか達の元へ向かい、一緒に食べていた。

 

「彩海奈、大丈夫かな?」

 

「そうだね……ただ家の都合だから僕達には分からないこともあるからね……」

 

「彩海奈は今日休みなのか?」

 

「え?あ、うん。家の用事ってことになってるけど、最近物騒だからね」

 

「そうか…それでも彩海奈程の実力があれば後れを取ることは無いだろう」

 

「そうだね、五輪さんが後れを取ることは無いと思うよ。それこそ達也や深雪さんくらいのレベルかそれ以上のレベルにあるよ」

 

達也は彩海奈のことをかなり高く評価していた。自分の師匠であり、古式魔法の使い手で「果心居士の再来」と謳われている「今果心」九重 八雲、大越紛争において大亜連合から悪魔か死神のように恐れられ、佐伯少将が国防陸軍第101旅団独立魔装大隊創設をきっかけに少佐になり独立魔装大隊の隊長になった「大天狗」風間 玄信両名が彩海奈のことを手放しに称賛していることもあるが達也にとって彼女は自分がこれから四葉から離反する、しないに関わらず何か役に立てて尚且つ情報に強いという一面を持っているという点で評価していた。懸念があるとしたら以下の3つになる。

 

・八雲曰く自分の「精霊の眼」以上の知覚魔法もしくは視覚魔法を有していること

・解析不可能な魔法(魔法が発動したことは知覚できるが、どういった原理か分からない)を有していること

・彼女には最低限の情報しか公表されておらずまるで自分と深雪のようなこと

 

彼女は五輪家のご令嬢であると同時にあまりよく知られていないー昨年度まで情報として公開されていてもそこまでのことが書かれていないー。五輪家は子息に国家公認戦略級魔法師の五輪 澪、そして五輪次期当主と目されている五輪 洋史の2人が表立っていたため彩海奈のことはあまり知り得ていなかった。それが今年度同じ学年になり、九校戦や日常において彼女は周りの生徒さらには四葉の魔法師の中でも最も四葉らしい魔法師である深雪でさえも彩海奈のレベルに辿り着けるかは微妙なところだ。それに国防軍ひいては所属する独立魔装大隊の旅団長でもある「銀狐」佐伯 広海少将からも信頼があるという点はその実力を証明している。

 

そんな彩海奈が個人としてこのパラサイト事件に関わっているはずが家の都合で休みなのは何かあったに違いない。さすがにパラサイト相手に後れを取ることは今まで無かったことから違う相手に対してだろう。それで俺が予想したのはスターズだ。スターズならば彩海奈が後れを取る可能性がある現時点での唯一の組織だ。それもリーナ(アンジー・シリウス)が相手ならば尚更だ。確かにリーナの相手をしていると後れを取ることは大いにある。でも達也はそれをあまり信じていなかった。彩海奈の実力は日本国内だと最強クラス、世界でも最高水準の魔法師の1人と言っていいほどの魔法師であり、リーナ(アンジー・シリウス)と真正面に向かい合っても後れを取ることは無いと思っていた。それに護衛だというあの如月姉妹がいるそんな彩海奈が学校を休んでまでパラサイトの捜索に動いていることに疑問を感じていた。(この時点で達也はパラサイトのことに関して目新しい情報は無かった)

 

場所を変えて東京都内某所。ここは七草と十文字のパラサイト捜索隊の拠点の1つで今は七草家のご令嬢・七草 真由美と十文字家次期当主・当主代理 十文字 克人が滞在していた。

 

「それで今日、一高を使わなかった理由は何だ?」

 

「今日、彩海奈ちゃんが学校を休んだらしいのよ。理由は家の都合ということになってるんだけどそれに関してちょっと伝えないといけないと思ったから」

 

「五輪に関することか?まさかとは思うが生徒会長権限を悪用しているんじゃないだろうな?」

 

「それは違うわ。今日彩海奈ちゃんが休んでるって知ったのは深雪さんからよ。彩海奈ちゃんが休んでるみたいですけど何か知りませんか?ってね」

 

「司波妹か……それで七草は今日休んだ理由を知っているのか?」

 

「えぇ、といっても確証は無いけどね。昨夜1人出歩いていたのを見つけたのよ。そしたら渋谷のある公園に近づいた時に急に立ち止まって誰かと喋っているのを捉えたと同時に突然姿が消えたのよ。そしてそれから東京主に渋谷、新宿周辺を徹底的に探したわ。そしたら大体1時間後くらいかしらね、彩海奈ちゃんが誰かに抱えられて三鷹方面へ走っていったのがわかったのよ。おそらくその1時間の間に何かがあったかは間違いないの」

 

「なるほど。それで五輪は無事なのか?」

 

「ええ、今日の朝には連絡が来てたわ。プライベートナンバーからだから間違いないと思う」

 

「そうか、それでその空白の1時間に何があったかは知っているのか?」

 

「ここからは推測なのだけれどどうやらUSNAがちょっかいを出しているみたいなのよ」

 

「何?USNAが?……ということはアンジェリーナ・クドウ・シールズはもしかして」

 

「そういうことかもしれないわ。詳しくはこれくらいね今のところ」

 

「わかった。家の捜索隊には伝えておく。後でもし五輪から連絡が来たらよろしく伝えておいてくれ」

 

「ええ、分かったわ。それじゃあね十文字君」

 

一方知らないところで高い評価を付けられていた彩海奈と如月 芽愛、弥海砂3名は彩海奈の自宅にて休養を取っていた。正確に言えば彩海奈が何処かに行こうとしても芽愛か弥海砂がそれを制止するという茶番劇が繰り返されていた。その日の夕方には水無月 紗綺さんが護衛を連れて私の家にやってきて私の事を案じてくれたみたいで申し訳なかった。幾ら私でもUSNAが誇る最強の魔法師アンジー・シリウスを真正面から相手にするには荷が重すぎたと言わざるを得ない。その後紗綺さんと色々なお話をしてから紗綺さんは滞在先の別荘へと帰っていった。

 

夜には芽愛さん、弥海砂さんから自由に行動出来るまでには体調も回復していると言われた。そして迫るようにして芽愛と弥海砂に明日学校へ行っていいか聞くと明日の朝次第ではあるものの現時点では許可してくれた。ただ先日のことに関しては他言無用ということでもし聞かれた時には芽愛か弥海砂を介してからじゃないとダメということになった。

そして翌日芽愛さんと弥海砂さんの許可が下りたため学校に行き、教室でクラスメイトと挨拶をしていると昨日の課題が溜まっているのを確認しているとある通知が来た。送り主は七草先輩。それを見た私は起動していたものを切ってから七草先輩が指定してきた生徒会室へと向かっていった。席を立った時に既に来ていたエイミィから「どこ行くの?」と訊ねられたが「ちょっとね」といい誤魔化したが後で質問攻めにあうのは必至だろう。

 

私が生徒会室に着くとそこには呼び出した七草先輩の他に七草家と同盟(?)を組んでいるらしい十文字先輩がいた。十中八九昨日のことだろうと思いながら私は部屋へと入っていった。

 

「最近どうかしら?」

 

「あまり、進展はありませんが……」

 

「そう……それで一昨日何だけど何処か行ってなかったかしら?」

 

「一昨日は出かけてましたが……それが何か?」

 

「その日、彩海奈ちゃんのことを渋谷周辺で見かけたあと大体1時間後くらいに八王子方面に誰かに抱えられているのを見たのだけど、昨日休んでいたことと何か関係あるのかしら?」

 

「……詳しくは申せませんが、昨日私の父から今回のことに関しては芽愛さんと弥海砂さん私の護衛というか身の回りのことをしてくれる人を介してからと言われてまして……」

 

「そう……じゃあ今夜でも明日でもいいからその彩海奈ちゃんの身の回りのことをしてくれている方と一緒に…そうね……私達が指定したところに来てくれるかしら?場所は後で知らせるから」

 

「分かりました。それだけなら私はこれで教室へ戻りたいのですが」

 

「待て、これは直接関係あるか分からないが1つ五輪の意見を聞きたいんだが」

 

「何でしょうか?」

 

「今1年A組に留学しているアンジェリーナ・クドウ・シールズという生徒がいるが彼女についてどう思う?」

 

「リーナのことですか……確かにUSNAを代表してきていますからそれなりの能力はあるようですけど如何せん高すぎると思います。今や魔法師は各国にとって国家にとっての財産になっているのを考えると不自然ではあります。それにUSNAとの交換留学が決まったのはあの日以降のことです。私としてはUSNAが何かしらの探りを入れてきてるのだと思ってます。もしかしたら私達を含め、国防軍の中にあの魔法を使った術者がいるかもしれないと」

 

「そうか……このことに関しては以上だ。教室に戻っていいぞ」

 

「それでは失礼します」

 

私は生徒会室を出ると教室に戻る間に父さんと芽愛さん、弥海砂さん宛にこの生徒会室でのことを伝えておいた。その後父さんから私があの時対峙したのがアンジー・シリウスだということがわかったためアンジー・シリウスと対峙したこと、私の魔法のことを秘匿すること、芽愛さんと弥海砂さん同席の元で許可してくれた。

 

その夜七草先輩が指定してきた場所には既に七草先輩と十文字先輩が来ていた。私は待たせてしまったかと思ったが私が到着する寸前に車が去ったのを見たためそこまで待たせていないことに安堵感を覚えた。

 

「すみません、お待たせしてしまいましたか?」

 

「そんなことは無いから大丈夫よ。えっと貴女方が」

 

「初めまして、私は五輪家に仕えていて今は彩海奈様の身の回りのことをしている如月 芽愛で、こちらが妹の弥海砂です。以後お見知り置きを」

 

「初めまして七草 真由美です」

「十文字 克人です」

 

「それでは、こちらへどうぞ」

 

七草先輩と十文字先輩、私と芽愛さんと弥海砂さんは東京の立川にある喫茶店へと入っていった。私達は気付いていた、この喫茶店に入る時に誰かに見られているという感覚を。

 





如何でしたでしょうか?まぁ全く進んでませんね←

ただ次回はバレンタインのところまで一気にやる予定です。原作の時系列的には真夜が黒羽 貢にパラサイトの処分を指示する日までやって来ました(1月31日)

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。

それにしても魔法科のSS書いてる人のスピードが早い……私はその分楽しめているので良いのですがそれを見て遅れるのも自業自得なんですよね……
要はそんなに早く書けて羨ましい←


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バレンタイン、お菓子、騒動の混乱


はい。少し期間が空きましたが最新話です。やっぱり秋になったかと思えばまた夏の気温になるのはほんとにやめて欲しいと本当に思ってます。


☆国防軍情報部side☆

 

「おい、ちゃんと確認したか?」

 

「はい。確かに七草 真由美、十文字 克人、五輪 彩海奈が同じ場所に入っていくのを」

 

「やはりか……一体この時期に十師族の三家の子息が何故集うんだ……」

 

☆国防軍情報部side終わり☆

 

☆スターズside☆

 

「総隊長、アミナ・イツワはカツト・ジュウモンジとマユミ・サエグサと共に同じ場所に入っていきました」

 

「わかりました。それでアミナ・イツワの後ろにいた人たちのことはわかりましたか?」

 

「いえ、何処を探っても正確な情報は手に入りませんでした」

 

「それで日本軍は我々のことに気づいていますか?」

 

「いえ、それはありません」

 

「そうですか、それではC班は引き続きアミナ・イツワの後ろにいた2人に関する調査、B班は現状維持、A班はアミナ・イツワがカツト・ジュウモンジ、マユミ・サエグサ両名と別れた後の追跡、私のバックアップをよろしくお願いします」

 

「「「「イエッサー」」」」

 

☆スターズside終わり☆

 

☆黒羽side☆

 

「それにしてもなんで僕達までこのことに首を突っ込むんだろう?」

 

「仕方ないでしょ、お父様は御当主様の命令でパラサイトのことを追ってるんだから」

 

「それにしても何でこの格好なの!?そこまでしなくてもいいじゃないか!」

 

「あら、可愛いのに。それで五輪 彩海奈さんはどうした?」

 

「それならさっき、七草 真由美、十文字 克人と共に3人同時にお店に入っていったよ。それに国防軍の多分情報部と思う人達とスターズがいるから慎重にいかないとね」

 

「そう、それじゃあ私達は私達の任務を始めましょうか」

 

☆黒羽side終わり☆

 

お店の中に入ると私達の他に客はいなく私達の貸切状態になっていた。

 

「それじゃあ、そっちに座ってくれる?」

 

「それで私に聞きたいこととは何でしょうか?」

 

「一昨日の晩お前が渋谷のある公園に着いた時しばらく立ち止まってからふっと消えた。そしてその約1時間後三鷹方面に抱えられているのを見つけた。その約1時間の間に何があったかを教えてくれ。無論五輪家が有している情報及び五輪の魔法のことについては伏せてくれて構わない」

 

「彩海奈様は昨夜、とある組織と対峙しました。私達は護衛故に学校にいる時以外は見えないところから見ています。その日の夜も見ていましたが確かに1時間くらいの間私達は探していました」

 

「とある組織?それは一体何処か分かっているのですか?」

 

「そこは私達は分かっているのですが御当主様から言われておりまして」

 

「そうですか…」

 

「1時間後彩海奈様を無事に保護し、その日は終わりました。これ以上のことは特に何も無かったのですが……」

 

「そうですか……では私達から1つだけ確証はありませんが情報を。今回のこの件にUSNAが絡んでいる可能性があります」

 

「USNAが絡んでいることは私達は既に知っています。どうやら今回のパラサイトはUSNAからやってきたみたいなので」

 

「そうなの?」

 

「ええ、といってもその情報源は明かせませんが」

 

「それはそうね……」

 

「以上でよろしいでしょうか?私達も暇というわけではないので」

 

「ああ、協力に感謝する」

 

私達は滞在していた喫茶店を出ると来る時に来た道を引き返していった。そしてキャビネットを待っている途中に来訪者はやってきた。

 

「彩海奈様……複数人がこちらに接近中にあります。如何なさいますか?」

 

「敵意がないようなので無視して構いません」

 

「わかりました」

 

私は芽愛さんと弥海砂さんにそう伝えるとキャビネットが来るのを待っていた。今の時代、約80年前に比べ乗り物を待つということが大幅に少なくなったとはいえそれでも待つことはあるがそれでも長かった。そしてやっときたキャビネットに3人で乗り、自宅へと戻っていった。キャビネットの中では今日の出来事と先程お店を出てからのことについて話していた。

 

その後USNA及びスターズ、パラサイト方面のことが沈静化したかのようになり、何も動きというものが無かった。そして、寒さも本格的になりつつある2月の中頃になっていった。今日は2月12日、1日特に何も無く終わり生徒会室で今日の業務を行っていた。幾ら十師族で今回のパラサイトの件に関わっていても生徒会の業務を怠るわけにはいかない。それこそ五輪家の看板に泥を塗るようなことをするわけにはいかない。

 

「あっ、す、すいません」

 

「ほのか、どうしたの?今日は色々とミスするようだけど」

 

「彩海奈、仕方ないわ。女の子にとってはこの時期はピリピリするものよ」

 

「え?どういうこと?」

 

「光井さん、今日はもう上がって。あとは私たちでやっておくから」

 

「す、すいません。それではお先に失礼します」

 

「ねぇ、この時期に何があるのよ?」

 

「はぁ…バレンタインよ、バレンタイン。彩海奈は誰かにあげたりしないの?」

 

「バレンタイン?あぁ、なるほどね。私はあげたと言っても家族と使用人の人達くらいにしかあげたことないからねぇ……」

 

彩海奈自身バレンタインという行事を知ってはいたが特にそこまで意識していなかったためにこのような薄い反応なのだが世間的には約80年前と同じような雰囲気は残っている。

 

その日の夜彩海奈は世間のバレンタインのことについて調べていると後ろから今日家に来ていた芽愛さんが近づき、それに気づかなかった彩海奈はドキッとしたわけだが今年は芽愛と弥海砂にも作る予定だったので芽愛にバレンタインのことを聞くとすごい剣幕で迫ってきたので思わずたじろぐ姿が五輪家の東京別邸では見られた。

 

そして迎えたバレンタイン当日である2月14日。彩海奈は家に出る前に弥海砂に澪と洋史に渡す用に作ったチョコレート、芽愛に愛媛にいる勇海と真唯、愛彩、研究所の人達向けに作ったクッキーを手渡してから学校へと向かった。何故実家向けのがクッキーなのかは彩海奈が初めてお菓子作りをするにあたって作ったのがクッキーであり、その時に真唯の作ったクッキーより美味しく作りたいという一心で毎年作り続けている。

ちなみに昨年まで彩海奈は愛媛にいたため澪にとってこれが実に初めての最愛の妹からのバレンタインデーである。受け取った時の様子は想像が出来るくらいに喜んでいて、澪の弟である洋史、直接手渡した弥海砂は喜んでいる澪の姿に「よかったね(ですね)、澪姉さん(様)」と暖かく見守っていた。

 

学校でもバレンタインデーの雰囲気はあり、学校中の男子はみなそわそわしてたりしていた。彩海奈のクラスも例外なかった。確かに彩海奈自身バレンタインデーという日がどんな日を意味するかは知っているつもりであったがこれまであまり意識したことがなく彩海奈が真唯を超えるものを作れるか作れないかというそんな日であると認識していた。

 

「やっほー、彩海奈。おはよう」

 

「おはよう、エイミィ。……今日は荷物多いわね」

 

「あぁ、これ。ほら、今日バレンタインデーだしね周りを見てると何か作りたくなっちゃうんだよね。はいこれ彩海奈の分」

 

「あ、ありがとう。私も作ってきた方が良かったかしら?」

 

「いやいや、いいよ。これまで彩海奈には色々なこと教わってきたからね」

 

「そう?なんか申し訳ないけど頂くわね」

 

こうしてバレンタインデーという日が過ぎていくそんな気がしていた。ただそんな彩海奈は学校では誰もが知る1人であり、生徒会役員さらには九校戦において1年生ながら本戦優勝という偉業を成しえ尚且つ十師族のご令嬢ということもあり常に注目の的になっていた。そんな彼女が一体誰にバレンタインをあげるのかも気になる人は今日彩海奈がバレンタイン用のものを持っていないと知っている1年B組の男女を除いても沢山いた。

 

バレンタインデーの学校が終わり、帰り道今日は何時にも無いほどに視線を感じていた。1つは芽愛さんと弥海砂さんのものなのはハッキリとわかった。その他にも3つの視線があった。予想出来るのはUSNA軍、国防軍のおそらく情報部か101旅団独立魔装大隊の下士官、七草家の諜報担当のチーム、四葉家の諜報担当のチームのいずれかだ。USNA軍はおそらく私をまだあの時の戦略級魔法師の術者の1人として見ていると思っているので分かるが、国防軍の情報部に関してはおそらく私がUSNAとトラブルを抱えているのを何処からか見つけたのかと思った。他の候補に関しても幾らかの私を探る理由を持っていることは分かっている。しかし相手側が全てが全て敵意を持っているわけでは無いので私は芽愛さんと弥海砂さん以外の視線を避けるように通り道を歩き、やがて芽愛さんと弥海砂さん以外の視線を振り切ってから自宅へと戻っていった。

 

☆黒羽side☆

 

先日、真夜さんからパラサイトを処分する任務を承った際に他にもう1つある任務を命令では無いがある事を言い渡された。それは「如月 芽愛及び如月 弥海砂の調査」。最初言い渡された時に名前を聞いても誰かということが分からなかった。真夜さんから彼女達に関する情報を渡されなければ一体どういう人達か分からなかっただろう。彼女達は五輪家のご令嬢である五輪 彩海奈嬢の護衛らしく何故興味を持ったのかは全くもって不思議だった。ここ数日彼女達に私が直々に調査しているにも関わらず特に変わった様子は見られなかった。せいぜいわかったことと言えば彩海奈嬢の登下校時の護衛、1日交代で彩海奈嬢の自宅に通っていることくらいだ。ただ1日数時間だけは私でさえも彼女達を見失う時もあるがそれはまるで数年前から四葉の諜報担当の我々から逃げ続けられているあの人に似ていた。

 

☆スターズside☆

 

約2週間前シリウス少佐が司波 達也と対峙し彼女がスターズ総隊長になってから初めて同世代の人物との対決は芳しく無かった。次の日には五輪 彩海奈と対峙しそれでも芳しくなかった。その日中にUSNA大使館において査問委員会で激しく追求されたところに私が出ていったからこそあれ以上は無かったが行かなかったらどうなっていたかは分からない。五輪 彩海奈、司波 達也、司波 深雪他数名の中この3人に接触を試みたものの全員が全員今回日本に極秘任務として来た我々よりレベルが高いということがわかった。だが、今何とかしないといけないのは目の前にいる男性のことを何とかしなければならない。

 

「初めましてだな、ヴァージニア・バランス大佐」

 

「……初めまして……それで貴方は?」

 

「俺は水無瀬 柊優。まぁお前さんが知らんのは無理もないが最初に言っておくこの建物内にいる奴は俺ら以外魔法が使えないということを覚えておいてくれ」

 

「……それで貴方の要求は……」

 

「俺らの要求はお前達が行っている戦略級魔法師疑惑の任務の完全撤退だ。これらの要求は既にお前らスターズの上のポール・ウォーカー大佐には伝えてある」

 

(この水無瀬 柊優という男。我々スターズでさえもその詳細な情報は一切なく分かっていることとすればUSNAの中では「アンタッチャブル」の四葉と並ぶ日本の名家水無瀬家の重鎮中の重鎮であり、USNAや日本、新ソ連をはじめとした各国の首脳級ですら彼には逆らえないとすら言われている程だ。(実際は全然違う))

 

「まあそのなんだ、対価として我々水無瀬はお前達USNA軍スターズが行っていることに関しては完全にでは無いがある程度は目を瞑ってやる。お前達が行っていたこれまでのことに関しては全て把握している。無論貴国の戦略級魔法師アンジー・シリウスが極秘に入国していることも。そして容姿、素性も全て調べがついている」

 

「(なんという事だ……USNA軍あらにはスターズ内でもアンジー・シリウスの正体を知る者は少ないというのに……それが全世界に公開されれば……)」

 

「言っておくがお前達に拒否することは出来ないはずだ。ただ承諾すればアンジー・シリウスのこと、USNAの高官が日本に極秘来日していることについてはお前達が責められることは無いはずだ」

 

「……わかり……ました」

 

「そうか……それじゃあこれにサインをしてくれ。なお、効力については俺と水無瀬当主、次期当主夫妻及びその子孫に対してだ。まぁ簡単にいえばアンジー・シリウスが戦略級魔法師として貴国にいる間はこちらとしてもそのことに関しては干渉しないということだ」

 

その後私は承諾書にサインをし、水無瀬 柊優とその護衛の人々が退室していくのを見送った。その後日本に来ているスターズの隊員を集め全ての戦略級魔法師疑惑のある人の捜索の完全撤退を命令した。その際困惑している隊員もいたが、ウォーカー大佐にも今回のことについては承諾を得ていると話すと隊員はその声に従った。その後シリウス少佐に通話で話すと最初は反論していたがそれ以上に彼女の友人であるミカエラ・ホンゴウがパラサイト化していたこともあり、ウォーカー大佐のことも話すとそれに従った。その時水無瀬ということは言わなかった、もしかしたら彼女はUSNA軍さらにその中でもスターズがたかが日本の一家(リーナは水無瀬がUSNAでも恐れられているのを知らない)に屈したということを知れば彼女のUSNAへの忠誠を失いかけないということを考慮しての事だった。

 

しかし彼女達はまだ知らないこの戦略級魔法師の疑惑の件に関して終わったと思ってもまだパラサイトの件でまだ波乱が起きるということを。

 

☆水無瀬side☆

 

今この日本にUSNAのスターズ、USNAからやってきたパラノーマル・パラサイト略してパラサイトが日本にやってきたということは1月の早い段階で知っていたが娘で五輪家に嫁いだ真唯やその子供つまり孫にあたり国家公認戦略級魔法師である澪、次期当主と思わしき洋史、戦略級魔法師であると思われる彩海奈には伝えていなかった。もちろんパラサイトが日本で何も起こさなければ静観しているつもりだったがそこにスターズが介入し、何やら東京で色々なことをしているとわかったその瞬間に水無瀬家の情報網をフルに活用してまずは先遣隊として水無月家の紗綺殿を派遣することを決めた。幾ら水無瀬家でも水無月家の当主を東京に派遣する権限など無いのだが紗綺殿が自ら立候補したというのもあるが同時に五輪家に対するポーズでもあった。十師族といえど担当する地域があるのは水無瀬家内でも知られていた。五輪の担当地域は中国及び四国であり、関東は七草と十文字の担当地域であるため表立って動くことは出来ないため水無瀬が「身内は例え嫁ぎ先であっても水無瀬の血を受け継いでる者には裏切らない」という名目の上で五輪家に提案し承諾された。そして事態はより深刻化しUSNAのVIPクラスの人間(軍人のためVIPとは言えないが)であるヴァージニア・バランス大佐が極秘来日していることを知った水無瀬 唯衣花は自分の夫である水無瀬 柊優に依頼しこれ以上USNAが日本での活動に釘を刺してこいと言われた結果がこれだった。その後柊優は今日は東京で1晩を過ごすことになっており、唯衣花がそのためのホテルを取ろうとした矢先に柊優から今日は彩海奈の自宅に泊まるといい唯衣花を激怒されたということは唯衣花と柊優しか知らないし、水無瀬家の中でも最重要機密案件として取り扱われることになったのは娘である侑那、真唯に知られないようにということであったが数年後このことを真唯に問い詰められることを後悔する日でもあった。





如何でしたでしょうか?久しぶりに水無瀬家の人を作中に出しました。古式魔法師にとっては妖魔は退治する宿命にあるので出さないわけにはいきませんでした。なお、原作の来訪者編で行っていることはここではあまり書きません。彩海奈が原作に関わる時は書きますが基本的には売らのことを書いていきます。


今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

不可思議騒動と全ての終焉


はい。来訪者編はこの話と次の話で終わりになります。いや長かったほんと……(笑)

アニメ2期も楽しみですね。ちょうど来訪者編をやるというのはなんというタイムリーな出来事。やるとしてももしかしたらダブルセブンやるんじゃないかって思ってました←

それと何となくですけど深雪が1期と違うような気がしてるのは気のせいじゃない……よね?


 

バレンタインデーの翌日2月15日、前日の事などなんのその昨日のような雰囲気はなくいつもの日常が流れていた。だがそんな日常もすぐに波乱へと導かれていく。学校中の噂になっていたのはロボ研のガレージにあるピクシーが動いていたということだったりピクシーが笑ったといった普段は動くことすらないといわれているピクシーが表情を作ったりするということだった。私も最初は驚いたが、美月によるとこのピクシーの中にパラサイトが宿っているという。しかもそのパラサイトの思念がほのかのオーラと同じように見えるという。さすがに私ではその事については全く分からなかったが幹比古が言うにはパラサイトの本体がほのかの近くを通った時にそのほのかの思いがパラサイトに憑依してそのパラサイトがピクシーに取り憑いたのではないかと思われるらしい。その後ピクシーは一時的に生徒会で預かることになった。

 

その頃今日は学校を休んでいたアンジェリーナ・クドウ・シールズはUSNAが誇る国家公認戦略級魔法師・アンジー・シリウスとして東京のUSNA大使館に呼び出されていた。呼び出したのはUSNA軍統合参謀本部情報部内部観察局第一副局長のヴァージニア・バランス大佐だ。何故バランスがリーナをわざわざUSNA大使館まで呼び出したのかは仮にもここはUSNA大使館だ。幾ら日本の名家の1つである水無瀬でも盗聴や彼等の目に届かないところでやる必要があるとバランスが考えた結果だ。

 

「よく来てくれた、少佐」

 

「いえ、それで小官に何か御用でしょうか?昨日戦略級魔法師のことについては聞かされましたが」

 

「少佐、その事だが1つ聞いておきたいことがある。今はもう関係ないかもしれないがターゲットであった司波 達也に今回の任務とは関係ないシンパシィを感じてると私は東京に来てから思ったのだが。確かに少佐はまだ10代で感情をコントロールするのは難しいかもしれないがそれでもスターズの総隊長であることだけは忘れないでくれ」

 

「……確かに私は司波 達也に今回の任務に関しては違うシンパシィを持っているかもしれません。ですがこれは大佐殿が感じているものとは別のシンパシィであります。自分でもまだ越すべき人がいるそんなライバル心であります」

 

「そうか、少佐が同世代に負けるのは初めてだったな……よし、それなら大丈夫だ。ウォーカー大佐には既に了承を得たが戦略級魔法師の件は容疑者候補の5人には接触はせず遠くから観測するという形で継続することにした。もちろんターゲットである司波 達也、司波 深雪、五輪 彩海奈の3名については少佐が担当してくれ。無論脱走兵及びパラサイトの件も引き続き頼む」

 

「それは大丈夫なのですか、大佐殿。大佐殿これは私個人が思っていることであり確証はありませんが1つお耳に入れたいことがあるのですが」

 

「万が一のことを考え、直接の責任はウォーカー大佐に一任されている。それで少佐話とはなんだ?」

 

「私が思うに五輪 彩海奈についてはあのグレート・ボムの術者では無いと思うのです。2月前に彼女と対峙した際彼女が使う魔法が研究者が言っていた性質とは違うと思ったのです。もちろん彼女が秘匿している可能性も否定は出来ませんがそれでも私は彼女が件の戦略級魔法師とは考えにくいと見ています」

 

「……経験者は語る…か。わかった、このことは私と少佐の中に留めておこう」

 

「ありがとうございます、大佐殿」

 

その後リーナとバランスは今後の通信において情報を交換したあとバランスは日本滞在中に身を寄せている座間にある日米共同基地に、リーナは日本滞在中のマンションへと帰り、今日の捜索の準備をしていた。

 

日も暮れて今日という1日が終わり彩海奈は自宅へと帰っている時から違和感を感じていた。つい先日まで各所から色んな視線があったのに今日は何一つ感じなかったのだ。それには芽愛や弥海砂の視線も無かった。彩海奈はその違和感を感じたまま自宅に着くとそこには見慣れない靴があった。彩海奈の家に入るには彩海奈が事前に登録した人物の生体認証及びその同伴者に限っていて国防軍はおろかあの四葉でさえ入れないかもしれないとこの別邸を建造した業者が語っていた。(建造に関わった会社は全て「五」が付く家の息がかかった会社)彩海奈は中に入り、ダイニングルームに入るとそこには予想外の人物がそこにはいた。その人物の名は水無瀬 柊優。水無瀬家の現当主の夫であり水無瀬の対外的な交渉の代表を務めている水無瀬家の重鎮中の重鎮。そんな柊優が何故この家にいるのかが分からなかった。

 

「ご無沙汰しておりますお爺様。本日は何かあったのでしょうか?」

 

「こちらこそ久しぶりだな。少しくらいは世間話をしたいところだが場所が場所だから要点だけ説明しておく。お前が戦略級魔法師との疑惑をUSNAから掛けられていた件だが気にする必要はない。俺がその件に関してはUSNAと合意を得た。次にパラサイトの件だがこちらは増援として水無月家だけではカバーしきれなくなってきた。そのため一時的にこちらに詩季を派遣することにした。何か必要になった場合は連絡してくれ。こちらとしても最重要案件としてこのことについては動いているからな」

 

「わ、分かりました」

 

「それじゃあ、俺はこれで失礼する。何時までもいて五輪と水無瀬の関係を四葉や七草に勘ぐられるのだけは避けたいところだからな。後のことはそこに2人に聞いてくれ」

 

「何のお構いも出来ずにすいません」

 

「気にするな。今はまだ高校生として高校生活を楽しんでくれ」

 

「ありがとうございます」

 

柊優は何処にいたのか全然分からなかった護衛と共にこの家から去っていった。

 

「彩海奈様、水無瀬 柊優様よりこちらをお預かりしております。先程仰られていたことの全てがこちらの端末に入っています」

 

「分かりました」

 

「私達も今日はこちらに泊めさせて貰います」

 

「分かりました、それでは夕ご飯の準備をしましょうか」

 

その日はそのまま特に何事もなく終わったが五輪家の外においては今日も色々なことが起こっていた。

四葉の分家である黒羽家では水無瀬の現当主の夫が何故五輪家のご令嬢の家に訪ねたのかが疑問に思い、七草家も同様の理由で困惑していた。ヴァージニア・バランス大佐は座間にある日米共同基地に移動後スターズの指揮を執るためにスターズが臨時で使っていたビルの一室へと向かっていた。ビルに到着ししばらくした頃に四葉により侵入され拉致されて海上に漂流していた所を日本海軍に保護されたりしていた。

アンジェリーナ・クドウ・シールズは司波 達也と司波 深雪の追跡、水無瀬 柊優は彩海奈の自宅から移動し神奈川に滞在中の水無月 紗綺がいる水無月家の別荘にその姿はあった。

 

翌日2月16日の夜彩海奈の姿は横浜ベイヒルズタワー内にある魔法協会関東支部にあった。何故彩海奈がこの場にいるのかは彩海奈自身も分かっていない。発端は今日昼休みに彩海奈に届いた1つのメッセージだった。いつもの4人で食べていると彩海奈の通信端末にあるメッセージが届いた。送信元は五輪家現当主五輪 勇海、内容は今日の夜7時に魔法協会関東支部に来てくれということだった。ここで疑問に思うかもしれないが何故彩海奈の父親でもある勇海がわざわざ通話ではなく魔法協会関東支部に来いというのだ。内容までは書かれていないためこの通信でさえ内容についてははばかられるものということは間違いないだろう。話を戻すが今彩海奈がいるのは魔法協会関東支部の十師族のために設けられている部屋にいた。着いてから数分後そこに魔法協会の職員がやって来てオンライン会議室へと通された。そこにはモニター上に彩海奈の父親で五輪家現当主五輪 勇海の他に三矢家現当主三矢 元の姿が映されていた。

 

『久しぶりだね、彩海奈』

 

「お久しぶりです、お父様。初めまして私は五輪家次女の五輪 彩海奈と申します」

 

『こちらこそ初めまして、三矢家現当主の三矢 元という。五輪殿、今回何故私と彩海奈嬢をこの場にお呼びしたのですかな?』

 

『それは今この東京にUSNA軍のスターズ、さらにはUSNAの国家公認戦略級魔法師アンジー・シリウス、USNA軍統合参謀本部情報部部内観察局第一副局長のヴァージニア・バランス大佐が滞在しています。そこで私が依頼していたUSNAのことについて色々と聞かせて欲しいと思いこの場を設けさせていただきました。無論私達五輪家も彩海奈をこの場に呼び寄せたのもUSNA軍と対峙したから知っておくべきだと判断したまでです』

 

『……なるほど、それで私には五輪殿が握っているUSNAの情報の正誤を付けて欲しいのですかな?』

 

『如何にも。私としても今回のUSNA軍の介入は予期せぬものでした。今魔法科高校の各校にUSNAから留学生に来ていたとしても』

 

『確かに、それはそうですな。だがUSNAは何故国家公認戦略級魔法師を国外同盟国とはいえ日本に派遣してきたのでしょうな』

 

『それを今から彩海奈は追うためにこの場を設けた理由でもあります。USNA軍は11月あの「灼熱のハロウィン」があった後に「余剰次元理論に基づくマイクロブラックホール生成・蒸発実験」を行いそこからパラサイトが表れ、パラサイトがUSNA軍の隊員に憑依し、軍から脱走兵が表れそれが日本にいることが分かっています』

 

『つまり五輪殿は彩海奈嬢にこの件を解決させるつもりか…』

 

「三矢殿、今回の件私は五輪家としての支援は一切受けておりません。何より関東は七草と十文字のテリトリー。さらには七草 真由美嬢、十文字 克人殿が動いています。私は国家公認戦略級魔法師である姉と兄がいるこの東京で好き勝手に外国軍とパラサイトが無闇に暴れ回り姉と兄に危害が出ないことだけを重点において動いています」

 

『つまり、彩海奈嬢は五輪家としてでは無く五輪 彩海奈個人として動くということか?』

 

『ええ、三矢殿。もちろん彩海奈には当家の使用人の中でも特に稀有な才能の持ち主の2人を東京に派遣しています。これは彩海奈が個人として動く条件として私が決定したことです』

 

「三矢殿、同じ家の私が言うには信用出来ないかもしれませんがどうか信じてあげてください、そしてどうか信じてください。私の実力は九校戦でも証明されているはずです」

 

『確かに……いいでしょう。この場では信じましょう、五輪殿が話されていたことも私が三矢家として調べたこととそこまで違くないということですし。それでは五輪殿、本題に入りましょうか』

 

三矢家現当主三矢 元のその言葉から約1時間USNAのことについて三者三様に話していった。彩海奈が話した割合は2割くらいにしか及ばず正直この場にいていいのか戸惑ったが三矢 元に当事者としての意見を求められたため話し合いに参加していた。そして最後には五輪家としてこの会談に参加していただいたお礼に今回の事件の顛末について私がレポートすることで今日の会談は無事に終了した。三矢 元がモニターから消え、私と父さんの2人だけになったところに部屋のドアから芽愛さんと弥海砂さんが入ってきた。すると早速弥海砂さんから一体何処から入手してきたのかわからない情報がもたらされた。

 

「御当主様、今夜四葉家がUSNA軍内の内部観察局第一副局長ヴァージニア・バランス大佐と接触を持ちました」

 

『そうか…それでその接触した人物というのは……』

 

「いえ、私でも分かりませんでした…」

 

『そうかい、それじゃ仕方ない。芽愛、弥海砂これからも澪、洋史、彩海奈のことを頼んだよ?』

 

「おまかせください、御当主様」

 

そうして父さんとの通信も切れてこの部屋には私達3人だけになった。その後は特に何もなく、自宅へとたどり着いた。その後数日は彩海奈の周りでは何もなく過ぎていき日付は2月18日の土曜日。その日の夜達也から私のところに明日第一高校野外演習場へ来てくれというメッセージが来た具体的な潜入手段は不明だったがおそらくパラサイトがやってくるのだろう。私はそれを承諾し今日家に来ていた芽愛さんにそれを伝えると当該時刻までに準備をすると言っていた。

 

そして当日2月19日の夜一高近くには5つのグループがいた。1つは司波 達也を中心にしたグループ、続いてパラサイトの集団、アンジー・シリウスとそのバックアップチーム、九島家の影響下にある国防陸軍第1師団所属の遊撃歩兵小隊、千葉修次がそこにはいた。彩海奈と芽愛と弥海砂は達也達のグループに合流し一高の野外演習場内部へと足を踏み入れた。夜に訪れる野外演習場は昼間や夕方と違いどこか不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

ここからパラサイトが表れてからは正に達也の独擅場だった。瞬く間にパラサイトを封印すると一体何処から情報を嗅ぎつけてやってきたのかと思ったアンジー・シリウス、「千葉の麒麟児」と呼ばれ、近接格闘において世界十指に入ると言われている千葉家次男千葉 修次が介入してきても達也は全てを上回る勢いだった。そして私はというと封印されたパラサイトを誰かに奪われることを防ぐためにパラサイトの近くで見守っていた。するとそこにぞろぞろと役者が揃ってきた。

 

「おや、彩海奈。こんなところで何をしているのかな?」

 

「九島のおじい様、ご無沙汰しております」

 

「いやはや、九校戦以来だな。それで何をしている?」

 

「私はここに封印されているパラサイトの門番をしておりますが……もしかして達也に用がありますか?」

 

「彼もいるのか…儂が今用があるのはそこにいるパラサイトだけだ」

 

「そうですか、ではここにいるパラサイトを使って何をなさるおつもりでしょうか?回答次第では私は抵抗しますが」

 

「ふむ、それを説明する前にあちらにいるお嬢さんにも出てきてもらわないとな」

 

「さすがは老師、お気づきでしたか。初めまして御二方。私の名前は黒羽 亜夜子、四葉の末席に名を連ねる1人です」

 

「……間違えだったら申し訳ないのだけど貴女今年の九校戦確かピラーズ・ブレイクの決勝戦見に来てなかったかしら」

 

「ええ、確かに見させていただきました。それで本題なのですがそこにいるパラサイトに私は用があるのですが」

 

「貴女も?」

 

「五輪さんもですか?」

 

「私はこの東京が今のような状況から脱却することだけが今の私の望みよ」

 

「それでは私達と老師で持ち帰ってもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、私はそれで構わいませんが……おじい様は如何でしょうか?」

 

「わしもそれで構わん」

 

「わかりました。それでは申し訳ありませんが誓約書にサインいただけないでしょうか?」

 

「わしは構わんが黒羽嬢はどうする?真夜のサインは今すぐに手に入れるのは難しいじゃろ」

 

「では、私とおじい様のサインを書き亜夜子嬢が四葉 真夜様のサインを取れ次第私に原本を送ってくれれば大丈夫です。原本は当家で厳重に管理させてもらいますがよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、異論はない」

「私達もそれで構いません」

 

その後私と老師は書かれた誓約書にサインをし、それを亜夜子嬢に渡すとそれぞれ解散していった。私はその場に残り、達也や芽愛さん、弥海砂さんが戻ってくるのを待っていた。やがてやってくると達也からここにいたはずのパラサイトのことを聞かれたが達也には九島閣下に依頼して引き取ってもらったと誤魔化した。ここであの四葉家がこのパラサイトの件に関して動いていることを私が漏らせばあるかは知らないが四葉の粛清リストに私の名前が載るのは確実だ。その後色々なことを聞かれたがその時ここで起こっていたことを四葉抜きで話したところ納得したのかそれ以上は聞かずに帰ることになった。





次の話は3年生の卒業式+リーナ帰国と春休み編のプロローグみたいなのを織り交ぜます。春休みは原作は劇場版星を呼ぶ少女をやっていますがあれをやってれば何処をどう混ぜていこうか悩むのでカットします。

希望があれば書きますがオリジナルにしていきます。

ここからは完全に余談ですが全然世に出す予定もない話を自分なりに書いていくとなんかこれより進むのは自分の中で何何だろうって最近思いました。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

卒業式、去る来訪者と来る来訪者


はい。これで来訪者編は終了になります。長かった…いや自分が書いている時間が長かったからそう思うだけなのかもしれません←

リスアニ来年の豪華すぎません?初日にチコハニ、エイル、fripside2日目にスフィア、LiSA、ReoNa、May'nって……どっちも行きたい……


吸血鬼騒動も程なく沈静化し、一時的に東京に来ていた詩季さんも間もなく水無瀬家本邸へと戻っていった。何時もの日常が戻ってからはや1ヶ月が経とうとしていた。今日3月20日、一高では卒業式が執り行われていた。この時間は卒業生向けの余興パーティーが開かれていて生徒会役員である私は一足先に生徒会室へ戻り今日の卒業式で使ったものの整理整頓をしていた。そこにこの部屋の前の主である前生徒会長七草先輩そして前風紀委員長渡辺先輩がやってきた。

 

「やっと見つけた。もう何処に行っちゃったのかと思ったわよ」

「全くだ。達也君といい君達は案外似たもの同士なのかもしれないな」

 

「私を達也と同じトラブルメイカーと同等の判断を下すのはやめてください。ところで何故先輩方はこちらに?パーティーはまだ続いているはずですが」

 

「いや君にも一言言っておきたいと思ってな。卒業したら今までのようには会えないからな今年1年本当に世話になったな」

 

「こちらこそお世話になりました。渡辺先輩は魔法大学に進学なさるのですか?」

 

「いや私は防衛大の特殊戦技研究科に進む予定だ」

 

「そうでしたか…あそこは演習も多いと聞いてるのでこれからも頑張ってくださいね」

 

「ああ、世話になったな五輪」

 

「それじゃ、私の番ね。彩海奈ちゃん本当にこの1年ありがとう。高校3年間の中でも1番思い出に残ることがいっぱいだったわ」

 

「こちらこそありがとうございました。七草先輩は今後も会う機会はありそうですが本当にお世話になりました」

 

「そうね、来年度には私の妹達も入学する予定だから妹達のことよろしくね。何かあったら私に報告してもらってもいいから」

 

「わかりました。七草先輩も渡辺先輩も講堂にもどってはどうですか?確かそろそろリーナが何か催し物をやるみたいですので」

 

「そうか、それじゃあまたな」

「またね、彩海奈ちゃん」

 

「はい。先輩達お元気で」

 

渡辺先輩と七草先輩が生徒会室から出ていくと私もそれに倣って生徒会室にロックをかけてから卒業生向けのパーティーに生徒会役員の責務として出るため講堂へと向かった。そこには世界最強の魔法師部隊スターズを率いる総隊長であり国家公認戦略級魔法師「アンジー・シリウス」ではなくUSNAからやってきた交換留学生「アンジェリーナ・クドウ・シールズ」として立っていた彼女はまるで何処にでもいる普通の高校生でもしかしたらこれが彼女の素なのかもしれない。もしそうなら彼女にスターズそれも総隊長で国家公認戦略級魔法師なんて肩書きは必要以上に重荷になっているかもしれない。姉さんと同じように戦略級魔法を使えるただそれだけで軍から強要されているのかもしれないし、それが国家にとってはいいかもしれないけれど個人としては重荷になることがある。今の私の立場的にはリーナを受け入れることが出来る立場にはない。もちろん受け入れるにはリーナがUSNA軍を退役し、日本に帰化しないといけないがリーナは九島の血を継いでいるためそれほど難しいことでは無いかもしれない。それでも私はきっと忘れない、リーナは私にとって同世代において深雪、達也と並び私のライバルという存在で例えそれが国家公認戦略級魔法師だったとしても負けるつもりは毛頭ない。

 

この卒業式後の卒業生向けのパーティーの余興以降リーナは一切顔を見せなくなった。おそらくは撤収命令が出ていたけれど彼女なりの高校生としての職務というのを遂行したのだろう。2096年3月24日終業式が終わり数日後、私はある来訪者が今日来るということを数日前に知ったため東京湾上国際空港に来ていた。国際線到着ロビーに向かおうとしていたら見知った顔を見かけたため私は国際線出発ロビーへと向かっていった。

 

「リーナ!」

 

「?彩海奈?」

 

「貴女、今日帰るのね。卒業式から一体どれだけ準備してたのよ……」

 

「し、仕方ないじゃない。色々やることもあったし」

 

「はぁ……でもまた会えるわよね?私達」

 

「どうかしらね…でもワタシもまた会えることを楽しみにしてるわ。彩海奈」

 

「ええ」

 

「それじゃあね!今度は普通の友人として会いましょう」

 

「ええ、またね。リーナ」

 

私はリーナを見送ると国際線到着ロビーへと向かった。今からこの東京湾上国際空港に到着するのは私にとっていや日本にとっても一大事が起きるかもしれないお客様だろう。何故なら今から来る来客は今のところ私達五輪家だけしか知らない非公認戦略級魔法師であり、私よりいや国家公認である姉よりもその秘匿性は高い。そんな人が今海外留学をしていた地から3年振りに日本へ帰国するのだ。国際線到着ロビーへ向かうとそこにはまたもや予想外の人達がいた。

 

「あれ?深雪達こんなところで何をしているの?」

 

「あら、彩海奈じゃない。貴女こそ何をしているの?」

 

「私はちょっとね。今から国際線で知り合いが帰ってくるからそれのお迎えにね」

 

「あら、五輪家のご令嬢が迎えに来てくれるなんてその子は幸せね」

 

「あー、まぁそうかも……しれないね。私はあまり来たくなかったんだけど……」

 

「そうなの?」

 

「ええ……それで深雪達はどうして?」

 

「私達は今日雫が帰国するからそのお迎えに来たのだけど知らなかったの?」

 

「いや、知らなかった……」

 

「……そうなのね…それにしても偶然ね。彩海奈のお友達は何処から帰ってくるの?」

 

「えっと確かあの便よ。ロンドン発東京湾上国際空港行きの。グラスゴーからロンドン経由で帰ってくるって言ってたわ」

 

「そうなのね。じゃあまた4月に会いましょう私達が貴女の待ち人を待たすわけにはいかないもの」

 

「なんかごめんねバタバタしてて。雫にもよろしく伝えておいて」

 

「ええ」

 

私はロンドン発東京湾上国際空港行きの便の搭乗客が下りてくるゲートの近くへと向かった。ロンドン発日本行きといっても私が待っている人が行っていたのはイギリスという国を成り立たせている国の1つスコットランドに行っていたためだ。何故今の時代魔法師が海外渡航を許可されたのかは私とて謎だがおそらくは水無瀬の力が働いた証拠だろうと思った。

 

「へーい、あーみなー」

 

「あ、おーい」

 

「久しぶりだなー彩海奈。5年ぶりくらいか?」

 

「そんなにかしらね。とにかくおかえりなさい、クリスティーナ」

 

「あぁただいま。彩海奈」

 

「それにしても何でロンドンから直接来たの?フランクフルトからここまで直行便あるんだし」

 

「それはね、彩海奈。ロンドンに行ってみたかったからだよ。それとクリスティーナとは呼ばないでくれるかな?」

 

「そうね……善処するわ、レナーテ」

 

「よし、それで君が来てくれたってことはやっぱり私は」

 

「ええ、そういうことよ。じゃあとりあえず私の家に来てくれるかしら?」

 

「もちろんさ。それにしても愛媛まで帰るのかい?」

 

「いいえ、東京にある私の家よ?姉さんのお陰であまり他人が入れるようにはなってないけれどね」

 

「はは、彩海奈のお姉さん本当に妹思いだねー」

 

「もうそこに関しては諦めてるわ……それじゃあ行きましょうか」

 

私はレナーテを連れて東京湾上国際空港から東京の立川にある自宅へと向かった。家に入る前にレナーテの生体認証を行い私の家に入った。今日は家には誰もいないと思っていたのだがリビングに行くとなんと母さんがそこにはいた。

 

「あら、おかえりなさい彩海奈。それとお久しぶりね、レナーテさん」

 

「た、ただいま……なんでここにいるの?」

「お久しぶりです、真唯さん」

 

「なんでって、お父さんにこれを渡してくれって言われたからよ。ほら、この前別荘行きたいって言ってたじゃない?それとレナーテさんのことについてね」

 

「レナーテはやっぱりそういうことなの?」

 

「ええ、レナーテさん貴女は戦略級魔法師それも間違いなく史上最強クラスの1人よ。それで1つ聞きたいんだけど貴女はどちらの国籍を選ぶのかしら?日本かドイツ」

 

「私は日本を選びます。確かに私は日本とドイツのハーフだけど父も母もこのことに関しては賛成してくれました」

 

「そう……ならレナーテさん貴女を私達五輪家で雇いますが貴女どうしたいですか?」

 

「私はそれでいいのですが1つ条件があります」

 

「何かしら?私達に出来ることならいいのだけれど」

 

「難しいかもしれませんが彩海奈の傍にいさせてはもらえませんでしょうか?」

 

「……そうね私としては芽愛や弥海砂もそうだけど彩海奈のことを知っている貴女が近くにいてくれるってことはありがたいんだけどそれはやっぱり聞いてみないとね……」

 

「そう…ですよね…」

 

「大丈夫よ…澪は少し嫉妬するかもしれないけどね……」

 

「それでどうするの?確かレナーテって16だよね?一高に入るにしても難しいと思うんだけど」

 

「それは大丈夫よ。2年生に転校という形で入ることに既に百山先生とは合意してるわ。一応始業式前までに一度訪ねた方がいいわ」

 

「分かった。それで別荘のことはどうなったの?」

 

「それがね…お母さんと姉さんが一体何処から聞いたのか水無瀬の別荘を貸すってことになっちゃったのよ」

 

「え……」

 

「まぁ…もう返却することは出来なさそうだから水無瀬の別荘に行ってきて」

 

「わ、分かった…あ、レナーテも連れてっていい?」

 

「え?あ、いいけど芽愛と弥海砂も連れてってよ?何があるか分からないし」

 

「分かってるわよ」

 

「それじゃ、またね彩海奈。別荘から帰ってきたら1回実家に帰ってきなさい。愛彩さんが会いたがってたから」

 

「愛彩が?分かった」

 

「レナーテさんもゆっくりしていってね。ここから数年はここの家にいていいから」

 

「え?あ、はい」

 

その言葉を言い残し母さんは数人の護衛を連れて愛媛にある五輪本邸へと帰っていった。私とレナーテはその後とりあえず空いている部屋にレナーテを連れていき、今日来る弥海砂さんとの邂逅を済ませてから今日は3人で夜を過ごしていった。翌日私とレナーテはレナーテの部屋に必要なものを買い翌日から別荘に行くための準備をしていった。





如何でしたでしょうか?今回新しく出てきたレナーテですが恐ろしい程のチート級魔法師という設定になってます。キャラ集にはまだ能力の片鱗を見せていないので書きませんがいや、こいつすごすぎるをメインテーマにしてます←

空港の情報は羽田空港の国際線就航便を基に作りました。ロンドンからドバイorドーハ経由で作るっていうのをしたかったのですが時間が合わなすぎたのでやめました←

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

春休みの間に物語は加速する


お待たせしました。最近おてんとさまの機嫌が悪いのか日本各地(主に関東)で色んなことがありましたが大丈夫でしたかね?

自分はというとこうゆう季節の変わり目体調崩しやすいんで後2.3週間は大変です。何を着たら過ごしやすいのか選ぶのにも一苦労です。




2096年3月26日場所は東京湾上国際空港、ここには国際線を初め国内線の飛行機が沢山飛び交っている日本の空港の要となっている空港だ。今日も多くの客が日本各地や海外の旅へと出ている。そんな中あるチャーター機が一際目立っていた。そのチャーター機は国産であることを示す模様が入っているのだがそれ以上に他の飛行機は異彩を放ちながら駐機していた。このチャーター機は合計で10人が限界であり、それ以上は絶対に乗れない仕様になっている。今回このチャーター機を利用するのは彩海奈にとっては初めてであり搭乗する人は五輪 真唯、五輪 彩海奈の2人の他に明智 英美、里美 スバル、十三束 鋼、レナーテ・ジルヴィア、如月 芽愛、如月 弥海砂の計8人である。彼女達は東京湾上国際空港に着くとVIP会員限定のラウンジで一休みしてからチャーター機に搭乗した。

 

「それにしても皆、ほんとありがとうね。予定合わせてくれて」

 

「いいって、いいって。それでこんなチャーター機に私達乗っても大丈夫なの?」

 

「あ、うん大丈夫だよ。今回は家で用意したからね。それと私達の他にもう1人だけ保護者として」

 

「じゃああともう1人誰が来るの?」

 

「え?ああ、それならもう乗ってるよ1番前に」

 

「初めまして、皆さん。いつも彩海奈がお世話になってます。彩海奈の母親の五輪 真唯です。これから数日間よろしくね」

 

「よ、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 

「それで彩海奈、そのレナーテさんって……」

 

「レナーテは私の小学校の時からの友人で一昨日帰国したばかりなの。そして来年度から一高の2年生に転校してくるのよ」

 

「皆さん、初めましてレナーテ・ジルヴィアと言います。見た目ドイツ人に見えますがドイツと日本のハーフです。日本語はまだ難しいですがこれからよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそ!私は英美=ゴールディ=アメリア=明智。気軽にエイミィって呼んで!私は日英のクォーターだよ」

 

「僕は里美 スバルという。来年度からもよろしく頼むが今回のこの旅行もよろしく頼むよ」

 

「僕は十三束 鋼。僕だけ男子だけどよろしく」

 

「エイミィ、スバル、鋼ねこちらこそよろしくお願いするわ。まだ高校のこととかよく分からないから色々教えてね」

 

「もちろんさ。レナーテが一高に慣れるように一緒に楽しもう」

 

「ありがとう、スバル」

 

「それじゃあ、そろそろ離陸するから座ってね」

 

こうして私達8人は水無瀬家が所有する別荘へと向かっていった。(真唯、彩海奈、芽愛、弥海砂以外は全員五輪家が所有する別荘へ行くと思っている)

 

ところ変わって時は3日前そして場所は四葉本邸。達也は自身の叔母である真夜からの命令を受けやってきていた。何時もなら深雪も一緒に来るのだが今回は命令で達也1人だけと書いてあったのでやってきたのだがそれにしてもタイミングがおかしかった。今月上旬に深雪のガーディアンとして水波がやってきてまだ1ヶ月も経っていないのに呼び出しというのは達也にとっても自分を本邸に来させる真夜の意図が分からなかった。

 

本邸に着き真夜直属の執事である葉山の後を歩き、ハロウィンの1件で呼び出された時と同じ部屋に通されるとそこには真夜だけではなく彼にとって親戚の再従兄弟にあたる黒羽 亜夜子・文弥姉弟もいた。黒羽にも関することなのだろうかと思ったが真夜が既に目の前に待機していたため彼は文弥の隣に並び真夜からの言葉を待っていた。

 

「今日はよく来てくれました、達也さん、亜夜子さん、文弥さん。貴方達に来てもらったのはある人を探して欲しいからです。見つけるだけで結構です、それ以上のことをする必要はありません」

 

「見つけるだけでいいのですか?」

 

「ええ、見つけることが出来ればそれ以上何もせずに私に報告してください。探して欲しいのはこちらの方です」

 

「綺麗……」

 

「彼女の名前はレナーテ・アルベルタ。彼女はドイツの国家公認戦略級魔法師ナフィーナ・アルベルタの妹でナフィーナ・アルベルタが国家公認戦略級魔法師になる前までこの日本に滞在していました。ナフィーナが登録された後にドイツに戻りました。ですがレナーテは最近パリ経由でカーディフに入ったところまでは追えていますがそれ以降の足取りが追えていません。その後最近日本に入国したという情報が入りました。そこで貴方達にはこのレナーテ・アルベルタさんを探してもらいます」

 

「ドイツの国家公認戦略級魔法師……」

 

「分かりました。叔母上」

 

「この捜索に関しては期限は設けません。既に捜索は始めていますが貴方達にもしてもらいます。達也さんこのことは深雪さんには伝えてもらって構いませんが国家公認戦略級魔法師という点だけは省いてください」

 

「しかし、叔母上ドイツの国家公認戦略級魔法師ナフィーナ・アルベルタは14使徒の中でもアンジー・シリウス以上に存在が秘匿されている上にアルベルタという名は深雪にとってもインパクトがあると思うのですが」

 

「……分かりました。深雪さんにも全部伝えてもらって構いません。ただ深雪さん自身が達也さんと共に探すといっても断りなさい。これは命令です」

 

「……分かりました。では自分はこれで」

 

「ええ、水波ちゃんにもよろしくね」

 

達也がお話をしていた部屋から出ると葉山に水波のことを尋ねられ答えた後に四葉本邸を後にし一高近辺にある自宅へと帰っていった。

 

話は戻り彩海奈、真唯、エイミィ、スバル、鋼、芽愛、弥海砂、レナーテの8人は東京湾上国際空港から八丈島空港に降り立ちそこから海路で小笠原諸島に名を連ねる1つの島の詩夢島にある水無瀬家の別荘へとやってきていた。詩夢島は2060年初頭に国防軍の捕虜収容施設として人工的に作られた人工島であり2070年に同じ小笠原諸島にある巳焼島に新しい防犯システムが組み込まれた捕虜収容施設が完成したためそちらに移送が全て完了してから水無瀬家が神無月家のムーン・ザ・ノベンバー社を通して国から島の売却手続きを進め今は水無瀬家が私有地として使っていた。詩夢島には水無瀬の別荘の他にムーン・ザ・ノベンバー社の特殊CAD実験センター等のムーン・ザ・ノベンバー社の主要実験施設が揃っていたり観光客向けの施設が立っている。

ちなみにムーン・ザ・ノベンバー社の本社は京都にある魔法協会本部の近くに構えている。

 

「すごいねぇ、この島。ここにあのムーン・ザ・ノベンバー社の実験施設とかあるんでしょ?」

 

「エイミィ、そのムーン・ザ・ノベンバー社って何の会社なの?」

 

「スバル知らないの!?ムーン・ザ・ノベンバー社はあまり知られてないけどFLTと同じくらいのシェア率を誇る日本有数の超有名企業の1つで国内最高クラスの品質と技術はほんとにすごいの。それでいてハイスペック、求めやすい価格帯なんだよ!?私の家はムーン・ザ・ノベンバー社のものは無いんだけど噂ではオーダーメイドの客がひっきりなしに来るにも関わらずカタログに載ってる商品もすごいっていわれているんだよ」

 

「へ、へぇそれはすごいね」

 

「ムーン・ザ・ノベンバー社ってそんなに有名なの?」

 

「多分知ってる人は知ってるって会社じゃないかな?FLTにトーラス・シルバーがいるようにムーン・ザ・ノベンバー社にこの人がいるっていうことは無いからね。それでさ彩海奈1つ気になってることがあるんだけど」

 

「私が使ってるCADでしょ?確かに私が普段から使ってる汎用型はムーン・ザ・ノベンバー社のオーダーメイド品よ」

 

「やっぱりそうだったんだ。この前雫がそのムーン・ザ・ノベンバー社のカタログ見てた時に彩海奈が使ってるのに似てるなって思ったんだよね」

 

「なるほど……それにしても雫もムーン・ザ・ノベンバー社の使ってるの?」

 

「いや、雫は確かFLT製だったはずだ。でもほのかが言うには雫は九校戦のピラーズ・ブレイクのときに使ったフォノン・メーザー用のCADが必要だということで買ったみたいだよ」

 

「なるほどね。ほら、着いたわよ別荘に」

 

東京湾上国際空港から八丈島空港まで約50分、八丈島港から詩夢島まで約2時間、港から水無瀬の別荘まで車で約20分合計3時間超の移動も終わりやっと水無瀬の別荘に着いた。水無瀬家の別荘といっても私はあの本家のような感じを想定していたが実際には何処にでもあるような別荘な感じで私は逆に驚いた。

 

でも中には尋常ではない広さのリビングダイニング、何部屋あるんだっていいたいくらいある寝室など常識では考えられないくらいの広さを誇っていた。これには私だけでなくエイミィをはじめお母さん以外全員が驚いていた。

 

「あ、彩海奈…ほんとにここに私達来てもよかったの?」

 

「私もここに来るのは初めてなの……でも大丈夫よ」

 

「ごめんなさいね。ここ以外は失礼にあたるって言われてここになったのだけどやっぱり8人にしては大きすぎたわよね…」

 

「い、いえほんとにお構いなく…」

 

「そ、それじゃあ荷物置いて一段落したら買い物にでも行こっか」

 

「う、うん」

 

初日はこの後はお母さんとレナーテ、十三束君以外の全員で街まで買い物にいきお母さんと芽愛さんと弥海砂さんの3人が料理を振る舞うなかなかに珍しい機会が生まれた。

 

そして2日目の3月27日今日は詩夢島の近くにある南楯島に行く予定だった。しかしそれは予定を変更せざるを得なかった事態が発生したため仕方なく予定を変更した。その日は近くにあるビーチで全員で海水浴を楽しんだ。水着はさすがに用意していなかったから服を着てしていたがそれはそれで楽しかったし私達の中で唯一の男の子の十三束君が顔を赤くしていたということは分かった。

 

最終日である3月28日は詩夢島にある観光施設を回ってそれで夕方になる頃にチャーター便とチャーター機を使い東京湾上国際空港へ帰る予定だった。観光施設にはこの島にあるムーン・ザ・ノベンバー社の実験施設の説明やこの島ができた経緯等が書かれた資料館や展望台、ビーチが併設されている。ここにあるビーチと昨日のビーチは違い、昨日のビーチは水無瀬家が所有するプライベートビーチである。そして夕方になり詩夢島から八丈島へとチャーター便でいき、八丈島空港から東京湾上国際空港へと乗り継いでいった。今日は全員で私の家に泊まる予定になっている。一応地下へ続く階段や見られてはいけないものの類は25日までに全て隠しておいた。その日の夜は皆で大宴会だった。そして翌日起きると私達が帰った後に南楯島において色々なことがあったと報道されているのを見て、私達は被害に巻き込まれずに良かったと思う反面被害にあった人のことを思うと私達が近くまでいたことで助かることもあったんじゃないかと思うところがあった。

 

そして次の日エイミィ、スバル、十三束君が帰った後に私とお母さんとレナーテの3人は魔法大学附属第一高校へと足を運んでいた。レナーテが来ると決まった時点で既にこの日に行くということを決めていたらしい。校門で警備員の人に証明書を見せ学校内部へと入っていく。校内を歩くと誰もいない校舎というのは初めてで校舎はこんなにも広いんだということを感じた。校長室に着き、入出許可を得て中に入ると中には百山校長とドイツの国家公認戦略級魔法師で14使徒のナフィーナ・アルベルタつまりレナーテのお姉さんが護衛と共にそこにはいた。

 

「Warum ist deine Schwester hier?(どうして姉さんがここに?)」

 

「Warum ... Weil ich dich gebeten habe, hierher zu gehen(どうしてって……貴女がここに通うって真唯さんに聞いたからよ)」

 

「こほん……そろそろいいかね…」

 

「し、失礼しました」

 

「レナーテ・アルベルタいや今はレナーテ・ジルヴィアか君の転入手続きはこの書面の通り適切に処理された。よって本日をもってレナーテ・ジルヴィアを本校の1年生来年度から2学年に転入することを承認する。なお、君の保護者だが本来なら父母方に頼むところだが今はドイツにいるという点を考慮し五輪 真唯殿貴女に帰属するがよろしいかな?」

 

「もちろんです、百山先生。今回はありがとうございました」

 

「いやはや、私とて最初は疑問を抱いたがその後の出来事で承認せざるを得ないと思いましてな」

 

「Herzlichen glückwunsch Du kannst ein großartiger Magier sein(おめでとう、貴女ならきっと素晴らしい魔法師になれるわ)」

 

「ありがとう、ございます。校長先生。そして姉さんにはNatürlich war ich die Schwester meiner Schwester. Ich bin sicher, Sie werden genauso ein Zauberer wie Ihre Schwester(もちろんよ、なんてったって私は姉さんの妹だもの。きっと姉さんと同じくらいいやそれ以上の魔法師になってみせるわ)」

 

「五輪さん、貴女には彼女の高校生活をサポートしてあげなさい」

 

「もちろん、そのつもりです」

 

「用件は以上だが皆様方は如何なされますかな」

 

「Ja, ich bin hier in Japan, also lass mich stören, wenn ich in Renate lebe.(そうね、折角日本に来られたのだしレナーテの居住先でもお邪魔しましょうか)」

 

「彩海奈、今から自宅に行ってもいい?だって姉さんが」

 

「ええ、是非おもてなししますよ」

 

「それでは、百山先生今日は時間を割いていただきありがとうございました」

 

私、お母さん、レナーテ、ナフィーナさんとその護衛の人達は私の家にやってきた。

 

「初めまして、私は五輪 真唯。これからよろしくね。ナフィーナさん」

 

「私は五輪 彩海奈。これからよろしくお願いします」

 

「初めまして、お二人とも。真唯さんと彩海奈さんね。私はナフィーナ・アルベルタって言わなくても分かるかな?」

 

「ええ、最初レナーテさんが貴女の妹だったことを知った時は卒倒するかと思ったわよ」

 

「それはごめんなさい。私だけはドイツ政府から厳重に秘匿されてましたから。妹のことの大部分はもう聞いています。真唯さん、彩海奈さんどうかレナーテのことをよろしくお願いします」

 

「ええ、もちろん。貴女のお母様には大変お世話になりましたしまた会う時でいいのでよろしくお伝えください」

 

「分かりました」

 

この後4人でのお茶会が始まり、日が暮れるまで話に花を咲かせていた。ナフィーナはこの後ドイツの政府専用機の1つであるベンソレパーでバイエルン州にあるノイブルク・アン・デア・ドナウ航空基地へと帰国していった。

 

そして彩海奈は2年生になる。それについづいするかのように彼女の周辺の物語は加速していく。





如何でしたでしょうか?お姉さんのナフィーナ・アルベルタ、妹のレナーテ・アルベルタの詳細なプロフィールは設定集2を出す時(近日公開予定)にでも書きます。(予定は未定ということを覚えておいてください)

ドイツ語の部分はGoogle翻訳、ドイツ政府専用機の名前は架空、航空基地はリアルのものになってます。ややこしいですけどそんなポンポン名前思いつかないのでこれで

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七の繋がり
新しい始まり、四葉の疑問


ダブルセブン編2話目です。芽愛さんと弥海砂さんを登場しなくなってから学校外での出来事が無くなりそうだなって思いました。

評価が303、お気に入り登録者数が230人突破しました。ありがとうございます


2096年4月8日今日は魔法大学附属高校九校で入学式が行われる。一高ではその最終準備が行われていて、生徒会所属である私もその準備に参加している。そういえば今年度から達也が生徒会に入って私が風紀委員会兼任になった。元々昨年の引き継ぎの時に達也を生徒会と風紀委員会どちらに所属するかで一悶着があったのだがそのことに関しては私が生徒会と風紀委員会を来年度から兼任することや達也が魔法工学について中条生徒会長に教えるということで決着が着いた。ちなみに今日レナーテは1人でお家でお留守番させるわけにも行かないため動いてもらっている。

 

入学式も終わり、来賓の方が出ていくと私は生徒会と風紀委員としての役割を終えると教室で待っていたレナーテの元へと向かった。

 

「お待たせ、ようやく終わったから帰ろ」

 

「やっと終わったのね……日本の入学式というのは何時間やれば気が済むのかしら」

 

「それはそうね……もう私も諦めというものがついてるわ」

 

そして校門を出るとそこには迎えの車を待っているのであろう七草先輩とあの「七草の双子」と思われる2人の女の子が立っていた。

 

「あら、彩海奈ちゃんじゃない」

 

「七草先輩、お久しぶりです」

 

「久しぶりといってもまだ数週間しか経ってないじゃない。それでお隣の方は?」

 

「初めまして、レナーテ・ジルヴィアと言います。彩海奈とは小学校の時によく遊んでいてその後父の母国へ行ってから今年度からこの学校に転校してきました」

 

「レナーテさんね。私は七草 真由美、それでこの2人は私の妹の」

 

「七草 香澄です」

「七草 泉美です」

 

「2人とも今年から入学だからよろしくね」

 

「分かりました。よろしくね、香澄ちゃん、泉美ちゃん」

 

「こちらこそよろしくお願いします、五輪先輩」

「よろしくお願いします、五輪先輩」

 

「それじゃあ、またね彩海奈ちゃん」

 

「ええ」

 

七草先輩は「七草の双子」と呼ばれている双子と共にタイミングよくやってきた車に乗りこの場を去っていった。私達も達也や深雪、ほのかをはじめとした生徒会の人達に挨拶をしてから一高から帰っていった。

 

☆達也side☆

 

先月の終わりの頃に叔母上から聞かされたドイツの国家公認戦略級魔法師ナフィーナ・アルベルタの妹であるレナーテ・アルベルタの捜索。黒羽家の捜索からも逃げ切りさらには「精霊の眼」を持つ俺からも逃げ切っている。一体どんな組織が裏にいるのかが気になった。

 

そしてそれは意外な所で見かけることになった。4月8日入学式の日、今日は深雪のガーディアンとしてやってきた水波と深雪と共に入学式へとやってきた。今年から俺は風紀委員から生徒会へ所属が変わった。これには前年の生徒総会での生徒会規約の改正が大きく関わっていたのだがこの決定に不服を持っている人がいたがそれは色々なことを条件に無事に合意が成されたので本当に良かった。話を戻すと捜索対象であるレナーテ・アルベルタが五輪 彩海奈と一緒にいるのを見かけた。そこから推測出来たのはレナーテ・アルベルタを五輪家が保護しているかもしくはドイツ有数の魔法師の家系であるアルベルタ家が五輪家にレナーテのことを預けたのかどちらかだ。どちらにせよレナーテ・アルベルタの所在を見つけられたのは叔母上からの任務を遂行する上では重要だったので見つかってホッとした。

 

「叔母上、レナーテ・アルベルタの件ですが見つけました。どうやら彼女は五輪家と何かあるようです」

 

『彩海奈さんと一緒にいたのかしら?』

 

「はい。しかし彼女は今レナーテ・ジルヴィアという名前で通っています。ここで不用意に近づくのは些か危険な気もしますが」

 

『そうね…それはこちらで考えるわ。達也さんご苦労さまでした。あ、そうそう「ヨル」と「ヤミ」には貴方から伝えてください。もうそろそろ貴方方の家に行くはずですから』

 

「分かりました」

 

『それでは深雪さんそれに水波ちゃんもごきげんよう』

 

叔母上である四葉 真夜との通信を切ると俺は近くにあるソファへと腰を下ろした。その隣に深雪が座り、水波はいつの間に用意していたのかコーヒーを机の上におき深雪の後ろへと向かった。

 

「お兄様、やはりレナーテさんは…」

 

「あぁ、彩海奈と同じくらい何か余程のことがあるのだろうな。じゃないと今のこの時期に帰化や転校が認められるほど世界情勢は厳しいものになっている」

 

「ですがレナーテさんのデータベースは日本になっていましたし……帰化が認められたというのは私も気になります」

 

「今のこの情勢で帰化が認められたのは俺も少し疑問を持っている。確かに彼女の両親がドイツ人と日本人ということを考えても姉が国家公認戦略級魔法師なのにドイツ政府が日本への帰化を認めるのは異例だ」

 

「それは何処か裏の組織が動いていると?」

 

「いや、それは無いだろう。それならば叔母上は既に動向を掴んでいて今回のこの任務はもっと過激なものになっていたはずだ」

 

「(今年は「七」の関係者が顔を揃えるだけじゃなくて、海外からの来訪者もいるとはな…)」

 

☆真夜side☆

 

達也から報告を聞いて真夜はすぐにこれまで捜索を続けていた黒羽家と本家直属の魔法師に捜索終了を知らせると書斎にある椅子へと腰を下ろした。そこに葉山が注いだ紅茶が差し出された。

 

「奥様、貢様及び本家直属の魔法師からも承知したという報告が届きました」

 

「そう。それでナフィーナ・アルベルタさんの素性はこれまでのものより正確に分かったかしら?」

 

「いいえ、奥様。今のところ掴んでいる名前、年齢、性別、国籍、戦略級魔法の名前以外に新たに判明したことはありませぬ」

 

「そう」

 

「奥様、私目が愚行致しますに今回のこの転校の件水無瀬家が関わっている可能性があると思いませぬか?」

 

「水無瀬家が?」

 

「水無瀬という名は日本でも天皇、十師族、内閣総理大臣しか知りえぬ存在であります。例えドイツ政府といえどもそう簡単には応じませぬ。しかしレナーテ・アルベルタ、ナフィーナ・アルベルタはドイツと日本のハーフ、それに関わっているのが五輪家であります。五輪家の当主夫人真唯殿は水無瀬と血縁関係があるとされる水無月家の人間であります」

 

「要はレナーテさんはドイツ政府が水無瀬との交渉の上で日本への帰化を認め、一高への転校を認めたと?」

 

「左様でございます。その証拠に南楯島での騒動の前に水無瀬の次期当主である侑那殿、その夫である詩季殿がドイツへと出国なされています」

 

「葉山さんの考えは分かりました。今後の参考にします」

 

真夜はそう言い残すと書斎を出て、私室へと戻っていった。

 

同日夜、私の家ではある客人を迎えていた。名前は水無月 紗綺。つい先日まで水無月家の当主を務めていた人でもあり私にとっては大叔母にあたる人物らしい。らしいというのは直接紗綺さんから聞いた話ではなく母さんから聞いたことだからだ。

 

「久しぶりね、2月の末に私が帰ったきりかしら」

 

「ご無沙汰してます、紗綺さん。こちらは私の小学校の時の同級生でドイツの国家公認戦略級魔法師ナフィーナ・アルベルタの実妹のレナーテ・アルベルタです」

 

「初めまして、レナーテ・アルベルタと言います。今年度から第一高校に転校してきました。今回は私事で色々お世話になったみたいでありがとうございます」

 

「はい、初めまして。そんなことはないわよ。貴女と彩海奈ちゃんのことを考えてしたまでよ。それにもしかしたらヨーロッパはちょっと危険になるかもしれないからね」

 

「それって……」

 

「これ以上は今は教えられないわ。」

 

それ以降この話はせず私とレナーテが小学校の時の話等をしていた。紗綺さんは今後芽愛さんや弥海砂さんのように毎日とはいかないが来てくれるらしい。

 

日付けが変わり4月9日、今日は昨日のような入学式も終わったため全学年で授業が始まる。2年生の教室は既に6日から始まっていたためそれでも教室の中は浮き足立っていた。やがてお昼になり彩海奈は今日は生徒会室にいた。何時ものメンバーにレナーテを加えた4人はいつものところでお昼を食べている。今日だけ生徒会室に来たのは生徒会役員の選定・勧誘のためだ。七宝君からはあらかじめ断りを伝えてきたため七草先輩の双子の妹に生徒会として勧誘することに決めた。ここでも少し一悶着あったが結果的に妹の泉美さんが生徒会、姉の香澄さんが風紀委員会に入ることで決着した。その日の放課後私は風紀委員の集まりのため生徒会室から風紀委員会本部への通り道を利用して風紀委員会本部へと入っていった。

 

「おはようございます」

 

「あ、おはよう五輪さん」

「おはようございます、五輪先輩」

「おはよう五輪さん」

「おはよう、彩海奈」

 

風紀委員会本部には既に委員長である千代田先輩、沢木先輩をはじめとした先輩方、そして今年から風紀委員会に入った雫そして生徒会推薦で入ってきた七草 香澄ちゃん、教職員推薦、部活連推薦で入ってきた子達が全員揃っていた。去年は風紀委員を選ぶ過程において色々なことが起こったが今年は各推薦等にも辞退者やトラブルが存在しなかったのだろうと私は思った。

 

「それじゃ全員揃ったことだし始めるわよ」

 

「「「「はい」」」」

 

「まず初めに私が今年の8月…九校戦が終わる時くらいまで委員長を務める千代田 花音です」

 

「次は僕だね。僕は沢木 碧だ、一昨年の夏からずっと風紀委員として務めてきて今年は一応副委員長を務めさせてもらう。もし千代田に言い難いことが僕に相談してきてくれ」

 

「次は私。2年の北山 雫、今年度から風紀委員になったから実質的に1年生と同じだけどよろしく」

 

「じゃあ次は私ね。雫と同じ2年生で五輪 彩海奈です。私も風紀委員は今年度からだけど昨年度は生徒会に入っています。私は生徒会と風紀委員を兼任してるからあまり当番の日とかにはいないけどよろしくね」

 

「五輪さんは生徒会と風紀委員を兼任してるから有事を除いては生徒会所属になるからそこはよろしく」

 

その後も風紀委員の自己紹介が行われていった。私は去年のことを知らないのでどういう手順で行われていたかは知らないが今の風紀委員の中で一番のキャリアである沢木先輩が何も言わないことから何も問題無いのだろう。しかし今思ったことだが委員長を始め今年度の風紀委員は過半数以上が風紀委員未経験だが実力は文句無しという実力で選ばれたという人が多いのである。本来ならばこのメンツに達也も加わっていたはずなのだ。恐らく千代田先輩が私を風紀委員兼任としたのはこの達也の役割を私に求めたのだろう。去年達也が風紀委員会にもたらした貢献はおそらく私でもカバーしきれないがそれでもその穴埋め程度のことは私でも出来るはずだと中条先輩に申し出たからだろう。

 

「よし、それじゃあ1年生は今日から部活勧誘期間が終わるまでは必ず2.3年生どちらかと一緒に行動すること。2.3年生も沢木君から新任の人は説明を受けてから当番に行ってちょうだい」

 

「「「「「はい」」」」」

 

「それじゃあ五輪さんは生徒会に帰ってもらっていいわよ。基本的に事務仕事と生徒会に頼みたい時にまた来てくれる?」

 

「分かりました、千代田先輩」

 

私はそれを聞くと生徒会室へと戻っていったがその生徒会室ではまさにカオスと言う言葉が最も似合う現場になっていた。その様子は第一高校生徒会のメンバー及び十師族二家のメンツにかけて対外秘案件として私や生徒会メンバーの脳裏に刻まれた。

 

それから3日後の4月12日、ついに新入生部活勧誘期間が始まった。風紀委員・生徒会・部活連の3団体が今年は分担して警戒にあたっている。私はというと生徒会と風紀委員どちらにも所属していることから部活連本部にて服部新部活連会頭、司波 達也・司波 深雪副会長、部活連の桐原先輩と共に起こった事案の取りまとめ作業を行っていた。その日の昼休み中条先輩が「今年は何事も無く終わりますように」と言っていたのは私達はしっかり聞いていたが去年のことがある限り絶対何かしらあるだろうと思い聞いていないふりをした。そんな中条先輩の思いも次の日には跡形も消えてなくなった。トラブルが起きた現場には既に達也と深雪が直行し私は服部先輩と桐原先輩とお留守番だ。

 

「それにしても五輪さんは生徒会と風紀委員会どっちも大変だな」

 

「いえ、そんなことないですよ。基本的には生徒会所属ですしただ千代田先輩に頼まれる書類の量が生徒会で扱う量と差があるのが問題点ですね」

 

「ああ…あいつほんとに……」

 

「それにしても五輪さんは今年はネームバリューだけじゃなくてお客様もいらっしゃるようで」

 

「やっぱり3年生にも届いてます?」

 

「ああ、五輪さんと一緒に今年は外国人がいるってね」

 

「はぁ…そんなことで目立ちたくはないんですけどね……」

 

「いや……無理だろ。十師族にそれに今や滅多に見ない転校生それに外国人目立たないわけが無いだろ」

 

やはりレナーテは相変わらずまだ学校内でも目立つのだろうか?こうして私と桐原先輩、服部先輩の珍しい組み合わせによる新入生部活勧誘期間対策本部の時は過ぎていった。そして1週間が過ぎ物語は加速していく。




如何でしたでしょうか?四葉がレナーテの顔情報を持っているのはナフィーナが国家公認戦略級魔法師になった時にアルベルタ家のデータベースからフリズ・スキャルヴで抜き取ったためです。ただナフィーナの顔情報は既に削除及び電子情報でも追えない技術が施されているのでUSNA軍でも知りません。知っているのはアルベルタ家、ドイツ政府高官、五輪家、水無瀬家のみです。この4団体は共に互いに不可侵条約を締結してます

ハーメルンの作者でもTwitterやってる(ハーメルン用の)人多いんだなあって最近よく見かけるようになりましたね。

ダブルセブンやることなくね?って思い始め、微妙に風邪を引き始めたような気がしてます。

今回もご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七草の疑問、実験準備

ダブルセブン編3話です。

実を言うとこの話を投稿した時点でこの次の話も書き終えているのですがほんとはもっと早く投稿する予定でした。





まだ一高が部活勧誘期間の最中に七草家当主七草 弘一は「老師」こと九島 烈に電話をかけていた。弘一は電話をかける前に女優の小和村 真紀と会っていた。話していたことは反魔法師騒動のことだが何故それが十師族の当主と有名女優だったのかは彼女の父親が有名なテレビ会社の社長だからである。

 

「お久しぶりです、老師」

 

『どうした弘一、儂に何か話しでもあるのか?』

 

「極めて、重要な相談です。実は先ほどマスコミ関係者の客を迎えていたのですが、話を聞いた感じマスコミ工作はかなり進んでいるようです」

 

『君のことだ。今日知ったわけでは無いだろう?マスコミのことは調べ上げているのでは無いか?』

 

「お見通しでしたか」

 

『一応聞いておくが何を企んでいる?』

 

「老師は四葉と五輪の力は強すぎるとは思いませんか?特に四葉、彼女達は遠からず十師族という枠組みを超え国家のバランスを崩すかもしれませんか?五輪にしても水無瀬と血縁関係があるとされる水無月家のご令嬢水無月 真唯が五輪家に嫁入りし3人の子どもがいて1人は戦略級魔法師、そしてもう1人は私達の調べでは姉にも匹敵しうる魔法を発動出来るそうです」

 

「五輪は後にしてまずは四葉だが反魔法師主義者を利用して四葉の力を削ごうというのか?」

 

「一高には国防軍101旅団と縁の深い生徒がいます。高校と軍の癒着。これは政治家やマスコミが好みそうな題材ではありませんか?」

 

『一高には君の娘達もいるだろう?』

 

「この場合生徒達は被害者で済みます。私が一番重要視しているのは第101旅団と四葉の関係ですよ」

 

『儂は君の行うことの権限を持ったことは無いと思ったのだが』

 

「権限は無くとも影響力はお持ちです」

 

『…君の計画に反対はしない』

 

「ありがとうございます。次に五輪ですが……」

 

『五輪の事だが弘一、君の手で探せるほど五輪の秘密保持は徹底してあるぞそれも四葉と同じように。特に彩海奈の方はおそらく四葉や水無瀬でもその全容を把握しきれていない程に五輪は彩海奈に関してのことを隠している』

 

「水無瀬でも、ですか?」

 

『ああ、直接唯衣花殿や柊優殿に確認した訳では無いがな』

 

「老師は水無瀬家先代当主水無瀬 結那殿とご親交があるとのことですがまさかそこから」

 

『結那が今どこで何をしてるかということを知っているのは水無瀬家だけだ。このことに関しては以前唯衣花殿から教えてもらった。じゃから弘一、五輪の少なくとも彩海奈の力を削ごうなんて事は考えない方がいい』

 

「……老師がそこまで仰られるのなら五輪に関しては諦めます」

 

『それが賢明じゃ。少なくとも現状では五輪に関してはノータッチが最善の手じゃ』

 

そこまで烈は言うと通信を切った。弘一は通信が切れると座っていた椅子に腰深く落とし烈が言っていたことを考えていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

部活勧誘期間が終わり一高に再び平穏が取り戻されつつあるそんな日に達也から爆弾情報がもたらされた。政治家の中でも人権派の1人として知られている人権主義者で反魔法主義者としても知られている神田議員が一高への視察に訪れるということだ。このことは魔法科高校にとっても私達生徒にとっても由々しき事態だ。神田議員は魔法師の権利を擁護しているようにも見えるが国防軍が魔法師を取り込むことを悪としている。要は魔法師が軍のシステムに入ることを妨げようとしているのだ。もし神田議員のような思想を持った人が軍の権力を握れば私達が高校卒業から国防軍に入ること、防衛大を進学先として選ぶこと、就職先として国防軍を選ぶこと最も最悪の事態とすれば魔法師が国防に関することの興味すら妨げる思想統制のようなことすらおかしかねないのだ。

 

「それでこの視察に合わせて1つこれをやりたいのですが……」

 

「……これを?」

 

「……本当に?」

 

「ええ、準備期間は少ないですが魔法科高校が軍事教育の場と化していて学校が生徒に軍属になることを強制している、と非難しているわけではありますがそれならば軍事目的ではなくそれ以外の分野において成果が出ていると示せば良いのではないかと思いまして」

 

「市原先輩が去年の論文コンペでやっていたことを実証しようとしてるの?」

 

「いえ、常駐型重力魔法制御魔法式熱核融合炉自体は作れませんし、実験炉とすら言えません。ですが去年の論文コンペよりは分かりやすいものとして演出することは出来ます」

 

「『恒星炉』ということですか?」

 

「ええ、ただ動かすにはまだ要求される魔法スキルが高すぎて実用化というには遠いですが我が校の生徒の力をもってすれば短時間ならば実験炉を動かすことなら可能です」

 

中条先輩は達也から渡された電子黒板を読み終えると中条先輩は五十里先輩の方へと視線を向けた。

 

「そうですか…私はこの計画に協力したいと思いますが五十里君はどうでしょうか?」

 

「僕も協力するよ。魔法技術者を目指す者としては是非とも関わってみたいからね。神田議員対策よりも」

 

「私も協力します。十師族として国防に関わる機会は幾度となくあります。実質的に沖縄と北海道は国防軍によって守られているのも事実でありますしそれに魔法の軍事目的以外の活用方法も個人的に気になりますから」

 

とりあえず緊急事案として中条先輩と五十里先輩と私を始業前に呼び出したため達也は協力の同意を得るともうそろそろ1時限目の開始時刻が迫っていたため教室へと急いだ。

 

昼休み、私とレナーテ、エイミィ、スバル、十三束君は中庭でお昼を食べていた。

 

「それで何だったの、司波君の話は」

 

「そうね…オフレコで頼むわよ?近く民権党の神田議員が一高に視察に来るらしいの。その時にやることについてね」

 

「神田議員ってあの国防のことについて否定的なこと言ってる人?」

 

「ええ、おそらくその神田議員よ」

 

「やっぱり日本にもいるのね魔法に否定的なことを言う政治家は」

 

「そうね…今のところドイツ程では無いにしろそういう人は世界中にはいるわよ」

 

放課後、生徒会室には生徒会メンバー(約1名除く)全員が集まっていた。あずさは達也に朝の実験の許可が下りたかを確認した。達也は校長の電子署名と申し送りが書き込まれた申請書をあずさに手渡した。

 

「条件付きでしたが承認されました」

 

「条件?」

 

五十里の問い掛けに申請書を見ていたあずさが顔を上げた。

 

「当たり前のことですが、先生の監督が付きます。それが条件として付きました」

 

「それはそうだろうね。それで誰が付いてくれるの?」

 

五十里の問い掛けに答えたのは生徒会室に来訪者を告げるチャイムをならした張本人だった。1番モニターの近くにいた深雪が答えた。

 

「どうやら、廿楽先生のようです。わざわざ足を運んできてくれたようですね」

 

素早く立ち上がった泉美が上級生が対応する前にドアに向かい廿楽教師を迎え入れた。

 

「廿楽先生、わざわざご足労かけてしまい、申し訳ありません」

 

「いやいや、実験の手順は拝見しました。面白いアプローチだと思います。それで司波君はどのような役割分担を考えていますか?」

 

「まずガンマ線フィルターは光井さん、クーロン力制御を五十里先輩、中性子バリアに今1年生にいる子にお願いしようと思っています。ですが第四態相転移は誰に頼むかは決まっていません。そして要となる重力制御は妹に任せようと思っています」

 

「中性子バリア担当の1年生は大丈夫なのですか?」

 

「ええ、対物理障壁魔法に関しては天性の才能を持っています」

 

「誰なのでしょう?」

 

「名前は桜井 水波。自分の従妹です」

 

「そうですか。全体的に妥当な人選だと思います。そうなるとやはり最初に第四態相転移について決めなければなりませんが五輪さんか中条さんでは不都合でしょうか?」

 

「中条先輩と彩海奈には全体のバランスとこの実験の準備段階での確認をやってもらいたいと思っています。それと彩海奈には1人秘密兵器を用意してもらっています。私見ですがおそらく既に魔法工学技師ライセンスを取っていると言っても差し支えないくらいに魔法工学に関しての知識は圧倒的です」

 

「なるほど、それならば確かにその方が良いでしょう。それでその五輪さんが連れてくる?その人はどういった方なのでしょう?」

 

「おそらく年齢は自分達とそう変わらないでしょう。しかしその人は魔法科高校には入っていないので本格的に協力出来るかは怪しいところですが」

 

「それは私の方で何とか校長に掛け合ってみます」

 

「あ、あの」

 

「どうしたの、泉美ちゃん」

 

「第四態相転移について私達に任せてもらえませんか?」

 

「私達…ということは泉美と香澄の2人でやるということか?」

 

「はい。私一人では司波先輩が求める魔法力に少々足りないと思います。ですが私と香澄ちゃんならできると思います」

 

「「七草の双子は2人でこそ真価を発揮する」か……自分としては2人を起用したいと思いますが廿楽先生はどうでしょうか?」

 

「異論はありません。ではガンマ線フィルターは光井さん、クーロン力制御は五十里君、中性子バリアは桜井さん、第四態相転移を七草さん、重力制御を司波さんでお願いします。それではもう少し話を詰めていきましょうか」

 

こうして廿楽先生と今回の「恒星炉」実験に関わる人達は閉校時間ギリギリまで今回のことについて話していた。

 

一方、この会議を欠席し、達也から受けたオーダーを完遂させるために彩海奈は学校が終わるとすぐに同居人でもあるレナーテを引き連れて一路京都へと向かっていた。本来であるならばメッセージだけのやり取りで明日来てもらうという選択肢もあったのだが指定された日付けまで時間が無いため弾丸直帰で連れ出すということをしている。

 

「ねえ、彩海奈その愛彩さんってあの時の愛彩さんで合ってる?」

 

「ええ、そうよ。あの時の愛彩であってるわ」

 

「何でその愛彩さんをあの男の子は必要としていたの?」

 

「愛彩は1度だけ達也と会っていてその時に魔法工学について色々話してたし愛彩の実力を知っていてもおかしくないわ」

 

そうこうしている内に京都駅周辺に近づいてきた。彩海奈とレナーテは愛彩との待ち合わせ場所へと急いだ。

 

「確か、ここら辺だと思うんだけど」

 

「おーい、彩海奈ー」

 

「あ、いた」

 

「久しぶりだね、彩海奈。それに貴女は……もしかしてレナーテさん?」

 

「ええ、そうよ。久しぶりね愛彩さん」

 

「ほんと久しぶり。それで私を東京に来させるにはそれなりの理由があるよね?」

 

「ええ、おそらく私達が知る中で貴女がこのことに関しては1番知識があるはずよ」

 

「そっか、じゃああの達也のお願いでもあるしやりますか」

 

「じゃあ行こっか。多分私の家に着くのは日付けが変わる直前くらいになるけどね」

 

そう言うと愛彩は寝るという一言を残し乗ってきたキャビネットに乗った。私とレナーテもキャビネットに乗り京都から私の自宅近くの駅まで乗って行った。

 

翌日私はレナーテ、愛彩を連れて学校に来ていた。当然入り口に何時もいる警備員さんに止められるが経緯を話すと愛彩に入校許可証を手渡された。愛彩は一高の生徒では無いため周りからこの子は誰だろうという視線を受けている。それは隣にいるレナーテと私にも刺さっていた。やがて校舎に入るといの一番に生徒会室へと向かった。昨日の内に生徒会メンバーには朝、生徒会室に来てというメッセージを送っていたため既に生徒会室には中条先輩、五十里先輩、達也、深雪、ほのか、泉美ちゃん、香澄ちゃん、桜井さんが揃っていた。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、五輪さん。それでその子が」

 

「はい、達也が言っていたという秘密兵器ちゃんと連れてきました」

 

「はじめまして、霧島 愛彩と言います。年齢は16でこれまで彩海奈やここにいるレナーテさんのCADをいじってたりしてました」

 

「16というと魔法科高校に通ってるのかな?」

 

「いえ、私は何処の高校にも通ってません。魔法科高校に通っている皆さんに言うのも失礼ですけど自分の中で高校に通うことに意義を見いだせなかったので」

 

「そっか」

 

「それで今回呼んだのは常駐型重力制御魔法式熱核融合炉の公開実験に使用する魔法式の構築を頼みたい。ある程度の構成ならこのデータファイルにインストールされているからここから自由にアレンジしてくれて構わない」

 

「期限は?」

 

「そうだな…今日中に出来れば幸いだが来週の月曜がタイムリミットだ。それ以上待つとリハーサルが出来ないからな」

 

「分かった。この学校にムーン・ザ・ノベンバー社の調整機器ってありますか?」

 

「大丈夫よ。ちゃんと用意してるわ」

 

「それじゃあその部屋に案内してもらえます?」

 

「はい、はいそれじゃあ行きましょうね」

 

彩海奈とレナーテ、愛彩は生徒会室を後にしてこの学校にある調整ルームへと足を運んだ。そこには普段五輪家の魔法研究所で使っているムーン・ザ・ノベンバー社の調整機器をわざわざ用意してもらった。

 

「これで大丈夫かしら?」

 

「大丈夫。これだけの設備があればあっちとさほど変わらないように出来ると思うから」

 

「それじゃあ私とレナーテは授業があるからこれで失礼するわね。この部屋には今日中は私達以外に誰も入れないようにしてるから」

 

「うん、ありがとう」

 

そう言い残すと私とレナーテはもうそろそろ始まるであろう授業を受けるために教室へと向かった。教室に着くと私とレナーテは私達に何か聞きたそうで仕方がないような雰囲気だったがもう授業が始まりそうだったので私とレナーテが席に着くと全員が席に着いた。その後は皆んなが平然と授業を受け、時間はあっという間に過ぎお昼休みになったが私とレナーテ、エイミィはスバルと十三束君と合流していつもの中庭ではなく愛彩が作業している調整室へと向かった。

 

「おーい、もうお昼だよ。ちゃんとご飯はあるからたべよ?」

 

「ん?ああ、彩海奈ありがとう。それで後ろの人達は?」

 

「初めまして、私は明智 英美。皆からはエイミィって呼ばれてるよ、よろしくね」

 

「僕は里美スバル。よろしくね」

 

「僕は十三束 鋼。僕は皆と違って魔工科だけど去年はB組だったよ。よろしく」

 

「こちらこそ初めまして。私の名前は霧島 愛彩。年齢は16で今は高校に通わずに彩海奈のお家で魔法の研究をやらせてもらってるんだ。こちらこそよろしくお願いします」

 

「愛彩は私の小さい時の幼馴染みで私に魔法工学の色んなことを教えてくれたの。私が普段使ってるのはほぼ全て愛彩がオリジナルにチューンアップしてくれたやつなの」

 

「え?じゃああの時オーダーメイドってどういうこと?」

 

「それはムーン・ザ・ノベンバー社に依頼して作ったものをさらに愛彩が私用に改造してくれたの」

 

「あれすごい大変だったのよ。少し弄ればガラクタに成り下がるような精巧品だったから彩海奈用に改造するのすごい大掛かりの人でやったんだから」

 

「どおりで届いたと思ったら1ヶ月も改造中ってどんなことしてるんだろうって思ってたわよ」

 

「ま、まぁそれくらいにしてお昼食べようよ」

 

「……そうね」

 

「私の分ってあるの?」

 

「そりゃああるわよ。私そんなに薄情な人だと思われてたのかしら」

 

「そ、そんなこと思ってないよ」

 

「そう、それならいいわ。もし思ってたりしたら愛彩の嫌いな食べ物が勢揃いした夕食にしようかとおもってたの」

 

「…………」

 

「さ、食べよう。いただきます」

 

「「「「い、いただきます」」」」

 

「……いただきます」




如何でしたでしょうか?ダブルセブン編は次の話で終わりになります。早すぎると思いますがあの某女優のことは達也達が秘密裏に行ったことなので彩海奈が介入できる余地がありませんので終わりになります。

何故レナーテが愛彩のことを知っているかは小学生の時に彩海奈を通じて知り合い3人で五輪本邸で遊ぶことがあったからです。

次の話は達也のあの襲撃が無い分他のことで穴を埋めています。本当はスティープルチェイス編の導入部分にしても良かったのですがそれでも今後のためにこの話は入れるべきだと思ったので入れました。

もうそろそろこの小説もお気に入り数が250を突破しそうです。見てくださりありがとうございます。

ご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

実験、世界のリーダー、四葉と七草


ダブルセブン編最終話です。前話でも話したように達也が小石和村 真紀の家を襲撃するところは丸々カットするのでその分の補填としてるのがこの話の題名にもある世界のリーダーのところになります。


 

その日の放課後、「出来た」という報告を愛彩から受け取っていた私は授業が終わるとレナーテと共に調整ルームへと向かい、愛彩と合流すると「恒星炉」実験を行う実験棟にある部屋へと向かった。そこには今回の提案者である達也を筆頭に深雪、ほのかをはじめとした参加者と共に今回の実験に協力してくれている廿楽先生と魔工科のジェニファー・スミス教諭に実験協力生徒の十三束君や美月をはじめとした魔工科の生徒がそこにはいた。

 

愛彩は達也に完成した術式が入ったデータファイルを渡すと達也が深雪、ほのか、五十里先輩、七草の双子に渡した。そこから私と愛彩、レナーテの3人は今回の『恒星炉』実験のお手伝いをしながら過ごしていった。前日には全体の通しのリハーサルが行われ無事に終わったことに私と愛彩はとてもホッとした。レナーテもレナーテで実験の準備にお手伝いとして来ていたクラスメイトの人達と楽しそうに話していた。

 

その日の夜自宅でゆっくりしていた彩海奈に不意に電話がかかってきた。相手は父親である五輪 勇海だった。

 

「どうしたの?こんな夜更けに」

 

『ああ、先程ドイツ大使館から連絡がありレナーテさんと1度面会したいという申し出があった。相手はドイツ連邦大統領ユリアン・へーネス氏で母さんにも同行願いたいとのことだったが母さんはお前も知っての通り少しばかり体調を崩してるから代わりに行ってくれないか?我々としてもこれには応じざるを得ないと判断した。この事は既に水無瀬家にも承認済みで彩海奈には明日ドイツ大使館にレナーテさんと共に行ってくれないか?』

 

「それはもう確定事項なの?」

 

『ああ、ドイツ大使館にも同様の回答を送っている。突然で済まないが行ってくれないか?』

 

「分かった。ただ明日は民権党の神田議員が一高に来る日でこれには私だけに関わらず愛彩も絡んでるの。そこどうするの?」

 

『面会時間は18時だ。くれぐれも粗相のないようにな。それと今回大統領は非公式に日本を訪れる予定だ。そこら辺も合わせて頼む』

 

「分かった」

 

『本当に済まない。本来ならば母さんをそちらに派遣するべきなのだが……』

 

「仕方ないよ。お母さんにゆっくり休んでって伝えて」

 

『分かった。それじゃあよろしく頼んだぞ』

 

彩海奈は通信を切るとそのまま近くにあったソファへ寝転ぶように横になった。彩海奈は明日会うことになったドイツ連邦の大統領のことについて考えていた。ドイツ連邦大統領ユリアン・へーネス氏74歳。彼は政治家に多い反魔法主義ではなく魔法師擁護派でそれを世界に向けて発信している世界で唯一の国のリーダーである。当然彩海奈もその存在は知っていたが人となりまでは知らない。ただ知っていることは彼は決して魔法師では無いが魔法技能を有する者有さない者の差別をせずにここまでドイツ連邦大統領の座を約30年以上維持してきた世界的に有名な首脳の1人だ。そんな人が自分の国の国家公認戦略級魔法師の妹さらには極東の国家公認戦略級魔法師の妹に同行を願い会うとは一体なんの用件だろうか。

 

翌日、レナーテ、愛彩と共に学校に行くと皆が浮き足立っていた。やはり今日の『恒星炉』実験というのは魔法科高校生にとってはやはり重大な出来事なのだろうか?以前この事を愛彩に言ってみたらものすごい剣幕で言い寄られたためこの話題について私はもう話をするのは辞めようと心に誓った。結果的にこの神田議員のためだけでは無いが行った『恒星炉』実験は成功に終わった。魔法の軍事目的以外での使用というのは神田議員にとっても予想外であったのか苦し紛れのような顔をして一高から帰っていった。私とレナーテそして愛彩は片付け等が終わると急いで自宅へと帰った。今日だけは生徒会も家の用事ということで休んだ。自宅に着いた私達3人は急いで要人と会ってもおかしくない格好に着替え港区にある駐日ドイツ大使館へと向かった。

 

17時50分に大使館前に着くと大使館前にいた警備員に今朝速達で送られてきた大使館入構許可証を提示すると慌てた様子で何処かに連絡をするとここで待っていてくれということなので私達は待っていると大使館の中から1人の女性がやってきた。

 

「Treffen Sie sich heute Abend mit dem Präsidenten?(貴女方が今夜大統領と面会される方ですか?)」

 

「Ja, das stimmt(ええ、そうです)」

 

「Bitte geh hierher(では、こちらへどうぞ)」

 

レナーテが応答すると私達はそれについていきドイツ大使館の中に入っていく。中は北欧風の家具が並べてある部屋だったり駐日している人達のための場所だったり色んな部屋があった。目的の部屋へと着いたのか私達はある一室へと通された。

 

「Dann rufen wir Sie an, wenn der Präsident bereit ist.(それでは、大統領のご用意が出来ましたらお呼び致しますので今しばらくお待ちください)」

 

「彩海奈ってば緊張しっぱなし……」

 

「仕方ないでしょ…外国の大使館なんて入れることなんて無いし周りにいる人私と愛彩以外は全員ドイツ連邦の外交官ばかりなんだよ?」

 

「それは…そうね……」

 

「はぁ……」

 

「Danke fürs Warten. Bitte geh hierher(お待たせしました、こちらへどうぞ)」

 

先程の女性に案内され私とレナーテ、愛彩は駐日ドイツ大使の執務室へ通された。そこにはドイツ連邦共和国大統領ユリアン・へーネスが護衛と共にそこにはいた。

 

「Schön, Sie kennenzulernen, ich bin Renate Alberta, die Schwester von Nafina Alberta, der staatlich anerkannten Strategiemagierin der Bundesrepublik Deutschland. Das ist Amina Itsuwa, die mein Leben in Japan unterstützt. Und das Mädchen neben ihr ist Ai Kirishima, Ai Umi(初めまして、私はドイツ連邦共和国の国家公認戦略級魔法師ナフィーナ・アルベルタの妹のレナーテ・アルベルタと言います。こちらは私の日本での生活をサポートしてくださる五輪 彩海奈さんです。そして隣にいる彼女は彩海奈さんの付き人の霧島 愛彩さんです)」

 

「Schön, Sie kennenzulernen, Julian Henes, Präsident der Bundesrepublik Deutschland. Willkommen heute Abend. Zunächst einmal vielen Dank, dass Sie Herrn Renate, die Schwester des staatlich anerkannten Magiers der strategischen Klasse in Bundesrepublik Deutschland, angenommen haben.(こちらこそ、初めましてドイツ連邦共和国大統領のユリアン・へーネスです。今宵はようこそおいでくださいました。最初に彩海奈さん我が国の国家公認戦略級魔法師の妹であるレナーテさんのことを引き受けてくれてありがとう。)」

 

「私の事引き受けてくれてありがとうだって」

 

「こ、こちらこそ」

 

「どうぞ、おかけになってください。彩海奈さん、先程も言いましたがまずは我が国の国民であった人を受け入れてくださったことに感謝の意を評したいと思います。まだ高校生である彩海奈さんにこの質問をするのはどうかと思いますが今現在魔法師は世間からどう思われていますか?」

 

「……今現在のことですか?そうですね最近は少し落ち着いてきたとはいえ反魔法師運動は活発化していく一方です。魔法師の存在は今や国防に関しては欠かせないものになりつつあります。ですが日常生活においては世間から見ても一般市民であることに変わりはありません。それを認識出来ていないということですか?それとこれは私の願望というかこれからこうなればいいと思うのですが今現在魔法師には軍事目的にしか活用されないということが続いてます。そこで私は魔法師を生活システムに組み込んで軍事目的以外での活用法を生み出したいと思っています」

 

「ふむ…なるほど。それでは愛彩さんはどう思いますか?」

 

「私ですか?そうですね彩海奈と意見は同じです。ですが私は彩海奈みたいなことまでは考えられません。私は魔法師ではありますが彩海奈やレナーテさんみたいに強力なものを持っている訳ではありません。もし仮に私が2人を知らなかったとしたら強い力を持つ魔法師に対しては畏怖を覚えていたかもしれません」

 

「なるほど……2人の言いたいことは分かりました。私も今現在の魔法師の境遇は世間から見ても政府から見ても不十分なところはあります。それに今の軍事システムに魔法師は必要不可欠になっています。私は魔法師ではありませんが彩海奈さんが言ったように魔法師が軍事目的以外での活路を見出すという考えには同調します。もし、達成すれば魔法師が生活に不可欠のものになり魔法師に対する考えそのものが変わるかもしれませんから。愛彩さんが仰ったように強い力を持つ魔法師に畏怖を覚えるのもわからない話ではありません。ですが今の世界では抑止力という名目でも戦略級魔法師というのは必要不可欠な存在です。我が国でも2人の国家公認戦略級魔法師を有していますが東には新ソ連、西にはイギリス、南にはフランスと大国に挟まれています。そういう点においては日本も新ソ連、大亜連合、USNAに板挟みにされていますから」

 

「……大統領は何故このタイミングで私達に会ってくれたのですか?」

 

「1つは先程言った通りレナーテさんを引き受けてくれたことへの感謝ともう1つは日本に対する国際世論の関心です。昨年の「灼熱のハロウィン」はドイツでも大々的に報道されましたし私が直接来た方が日本政府ひいては先月お越しになられた水無瀬家に対する何らかのアクションになると思ったからです」

 

「……それを私達に話してもいいんですか?」

 

「貴女達ととても実のある話が出来たお礼です」

 

「分かりました」

 

「Präsident, ich bin eine Zeit(大統領、そろそろお時間です)」

 

「おお、もうそんなに経ってしまったか。今日は本当にありがとう。会えて嬉しかったよ」

 

「私達も大統領に会えて嬉しかったです。また何時か会えればお会いしましょう」

 

そう言うと私達は大統領の秘書なのだろう人と共に駐日大使の執務室を出て今は大使館の外へ出て、帰りのキャビネットに乗ろうとしていたところで私はある視線を感じた。

 

「ねえ、彩海奈何か視線感じない?」

 

「そうね、多分国防軍の情報部といったところかしらね」

 

「情報部ってどんなところなの?」

 

「私は知らないわよ。そもそも国防軍の組織図なんて知らないし」

 

「彩海奈のお姉さんって一応とはいえ国防軍の軍事システムの中に組み込まれてるんでしょ?」

 

「さぁ、どうかしらね。姉さんのことについては何も知らないもの」

 

話しているとキャビネットが来てそれに乗り込み私達は私の自宅へと戻っていった。愛彩は今週末までは此方に滞在し私とレナーテが京都へ送りその後は芽愛さんと弥海砂さんに引き継ぐらしい。

 

その日の夜遅く四葉家当主四葉 真夜は彼女の執事である葉山から達也が行ったことについての報告と四葉家の分家である黒羽家に命じていた五輪 彩海奈に関する調査の報告を受けていた。

 

「奥様、1つお耳に入れておきたい情報が」

 

「何かしら」

 

「先程、貢様から緊急を知らせる程の連絡があり時間にして日本時間午前10時にドイツ連邦共和国のユリアン・へーネス大統領が非公式に日本に来日されたそうです」

 

「ユリアン・へーネスが?」

 

「左様でございます。その後在ドイツ大使館に移動された後約12時間後に東京湾上国際空港から出国なされています」

 

「それで?一国の大統領が非公式に来たくらいで何故私のところに緊急を知らせることはないでしょう?」

 

「実は18時頃ドイツ大使館に3人のお客様がやってきましてその人物が五輪 彩海奈、レナーテ・アルベルタそして達也様からご報告があった霧島 愛彩が大使館職員と思われる方に率いられ中に入っていきました」

 

「彩海奈さんが?やはり水無瀬が動いているのかしら?」

 

「そう考えるのが普通でしょう。しかしここまで水無瀬の関係者が動いているのが不思議でございます。これまで水無瀬から事後報告ということで報告は受けていましたがここまであからさまに動いているのが分かるというのは今代水無瀬家当主唯衣花殿が先代当主結那殿から受け継ぐ時以来と記憶しております」

 

「確かにここまで水無瀬の動きがあからさまというのは私も記憶にありませんでしたね。これはどうすれば良いと思いますか?」

 

「今までと変わらずにいれば良いと思います。こちらの動きは常に水無瀬にだけは気付かれておりますゆえ特に何もせぬのが正解であると英作様は仰っておりました」

 

「それもそうね。ではそうしましょうか」

 

同じ頃七草家では当主の弘一が娘の真由美、香澄、泉美を自身の執務室へと呼び出した。

 

「呼び出したのは他でもない、五輪家のご令嬢である彩海奈嬢のことだ。3人に聞くがどういう人だ?」

 

「彩海奈ちゃんですか…才能は非の打ち所がありません。九校戦では1年生に関わらず本戦で優勝しましたし、新人戦でも記録を出しましたから。勉学も優秀で九校戦では自分が使うCADは自分で調整したりしていましたし、確か彼女が使っているCADはオリジナルのカスタムハンドメイドで調整も自ら行っているみたいです」

 

「ふむ…なるほど。香澄と泉美はどうだ?」

 

「確かに姉の言う通り才能や知識に関しては私達や姉でも到達しうることが出来ないような位置にいると思います。風紀委員としてしか私は共にする機会はありませんから普段の様子については生徒会にいる泉美の方が知っていることは多いと思いますが五輪先輩を一言で申し上げるのならば『想定外』です」

 

「私も姉達と同じように現時点において私達では到達出来ないような位置にいると思います。生徒会でもその能力というのは遺憾無く発揮されています。そしてまだ何処か底知れないような感じもしてます。昨年九校戦を見に行った時にも五輪先輩は優勝されましたが何処かまだ力を出していない、決して力を抜いているわけでは無いと思うのですが底が分からないくらいの能力は秘めていると思います」

 

「なるほど…(1年間同じところにいた真由美だけじゃなくまだ出会って1ヶ月も満たない香澄と泉美でさえそう思うのか)」

 

弘一は娘達の彩海奈に対する評価がこれまでに寄せられた情報よりも高かったことに驚いた。1年間同じ学舎にいた真由美はともかくまだ1月も経たない香澄と泉美でさえも彩海奈に対する評価がたかかったのは驚いた。それだけ五輪 彩海奈という少女が老師が言っていたように何かを隠していることがあるということは泉美が言っていたようにおそらく間違いないだろう。

 

その後幾つかの質問があってから真由美、香澄、泉美は3人揃って真由美の部屋へと入っていった。

 

「ねえ、お姉ちゃんそんなに五輪先輩って凄かったの?」

 

「え?そうね。確か入試成績は深雪さんに負けたとはいえ歴代最高得点の2位、実技だけの成績なら1位だったわね。そして一学期末は実技2位、筆記2位での総合1位。それからはずっと彩海奈ちゃんが総合1位で終わったわね。でも筆記だけはずっと順位は変わらなかったけど」

 

「すごい…」

 

「それでいて九校戦ではアイス・ピラーズ・ブレイク本戦優勝。バトル・ボード新人戦優勝。彩海奈ちゃんが使ってるCADは何処のメーカーのか分からないし、調整も自分で出来るしほんと何処かさっき香澄ちゃんが言ってたように『予想外』ね」

 

物語は今一度加速していく。それは1人の少女と秘密主義の一族を中心に、そして彼女と秘密主義の一族が一堂に会する場その2組がこれから巻き起こる始まりの場所になるのであった。





如何でしたでしょうか?ユリアン・ヘーネスに関しては今後も少しだけ出番を作る予定です。ただ出番は遠いです。

次のスティープルチェイス編は競技以外のところがだらだら長くなると思います。

ご読了ありがとうございました。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九校戦は波乱の予感
九校戦へ向けて、スティープルチェイス・クロスカントリー



はい。今回からスティープルチェイス編になります。スティープルチェイス編もおそらくダブルセブン編と同じような話の長さになると思います。(ただ少し長くなるかもしれません)




 

2096年6月の終わり、定期試験を数週間後に控える中今年はこれまでより1月早く九校戦のメンバー決めを行い各部活動に対して協力を仰いでいた。去年までは十師族七草家の七草 真由美、十文字家の十文字 克人、この2人に匹敵しうる才能の持ち主である渡辺 摩利がいたが今年はもういない。そのため早くから準備に取り掛かりこの3人がいなくても優勝出来るという意気込みで生徒会、風紀委員会、部活連は取り組んでいたのだがつい先日九校戦運営委員会から各魔法科高校宛にある連絡があった。それは競技内容の変更だ。スピード・シューティング、バトル・ボード、クラウド・ボールが外れてロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウン、スティープルチェイス・クロスカントリーが追加された。さらに前回大会は競技の掛け持ちは原則自由だったが今回大会はスティープルチェイス・クロスカントリーのみ掛け持ち可能であり、さらにアイス・ピラーズ・ブレイク、ロアー・アンド・ガンナー、シールド・ダウンはソロとペアに別れるというおまけ付きだ。これには生徒会・風紀委員会・部活連は衝撃を受けた。これまで準備したことが全てでは無いが無になりまた一からやり直すことになったからだ。彩海奈の家でも2人だけだが今回の競技変更のことは話題になった。

 

「彩海奈、大変そう。大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫よ。ちょっと予想外のことが起きただけでそこまで変わりはないから」

 

「九校戦の種目変更になったんでしょ?どんな種目なの?」

 

「確かロアー・アンド・ガンナーは無動力のボートを操船しながら、水路脇や水路上の標的を狙撃する射撃競技でゴールタイムから破壊した的の個数分のタイムを差し引き、合計タイムが最も短いチームが優勝する競技で確か元々USNAの海兵隊が訓練として使っていたやつよ。シールド・ダウンは盾装備した選手が土俵の上で組み合って勝ち負けを競う格闘競技で原則、盾に対してのみ攻撃出来て盾を破壊されたり、奪われたり、5秒以上手放すと負けになるの。また場外に落ちても負けになる競技ね。そして最後のスティープルチェイス・クロスカントリー何だけど……簡単に言えば障害物競走ね。長さ4km、幅4kmの人工林の敷地を駆け抜ける競技で障害物には自然物、人工物、自動銃座や魔法による妨害もあるのよね」

 

「何というか…軍事色が強い競技ばかりね…」

 

「確かにここまで露骨に軍事色を強くするのは珍しいわ。確かに去年横浜事変があったとはいえね。ロアー・アンド・ガンナーやシールド・ダウンはともかく何故スティープルチェイス・クロスカントリーを九校戦の競技として採用したかね。余程の対策をして尚且つテレビ中継として問題無いくらいにしないといけないのは至難の業のはずよ。そうでもしないとドロップアウトする人が出てくるわ」

 

「何でそんなもの…」

 

「分からないわ…そしてレナーテ貴女の出る予定だった種目も変更ね」

 

「そうなの?」

 

「ええ、そうよ。貴女の魔法を使えば本戦とはいえ優勝確実だったのよ」

 

「そっか…それは残念…」

 

「でも貴女の魔法を使えばスティープルチェイス・クロスカントリーの優勝は貴女で決まりよ。さすがに少し疑われるかもしれないけどね」

 

「そうね……でもあの魔法は緊急時以外使用禁止ってことになってるし…」

 

「そっか…なら少し愛彩と考えてみるわ。さすがにあの魔法が使えないとなるとそこそこ厳しいもの」

 

「ありがとう、彩海奈」

 

「そんなことないわよ」

 

「それで何処に誰を出すのか決まったの?」

 

「とりあえず変わらなかったモノリス・コード、ミラージ・バットはそのままね。アイス・ピラーズ・ブレイクのソロは深雪に決まったわ。ペアは多分雫と千代田先輩で決まりね。後はもう一から決め直しよ」

 

「あれ?彩海奈って去年ピラーズ・ブレイク本戦で優勝してなかったっけ?」

 

「そうよ。でもアイス・ピラーズ・ブレイクに関しては深雪の方が圧倒的よ。今年は一高の中でも私と深雪どっちが勝つんだろうって期待してた声はあったみたいだけどそれは無理そうね」

 

「そっか……」

 

「私はおそらくロアー・アンド・ガンナーのソロかシールド・ダウンのソロのどちらかになりそうね。レナーテも多分どちらかかロアー・アンド・ガンナーのペアに私かエイミィどちらかと出ることになりそうね今のところは」

 

この運営からの通知は一高だけに留まらず二高や三高等他の高校にも衝撃を与えた。前年から3競技の変更と既存競技のソロとペア化というのはこれまでの九校戦からは逸脱したことだった。

 

5日後一高では代表選手の選考のやり直しを経てから決まった選手で競技の練習を行っていた。翌週の火曜日から試験を控えているが1度でも練習をしておこうということになり現在に至っている。私は結局ロアー・アンド・ガンナーにレナーテとのペアで挑むことになった。新競技でありさらにはレナーテが2年生に編入したこともありソロで出すにもまだ九校戦の雰囲気が未経験でいきなり本戦というのは荷が重いがそれでも出さないという選択は有り得ないというのが生徒会の判断だ。そこで私に白羽の矢がたったわけだ。そういう経緯で私はロアー・アンド・ガンナーのペアとスティープルチェイス・クロスカントリーにエントリーすることが決まった。

 

2週間が過ぎ無事テストも終わり学校は九校戦に向けての空気満載だった。ちなみに言うと一学期末テストの順位は1位が彩海奈、2位が深雪、3位がほのかでありレナーテは掲示板に載る順位では無かった。彼女の場合は日本語は読めても理解が乏しいという観点から彩海奈と共に勉強する時はまだしも1人でする時はからっきしである。それも相まって合計順位は100位以内ではあるものの下から数えた方が早いと記録しておく。この試験の結果を経て九校戦のエンジニアも決まった。昨年に引き続き中条先輩や五十里先輩、達也を初めとしたメンバーに今年も1年生から男女1名ずつスタッフ入りしている。男の子の名前は隅守 賢人、今年から新設された魔工科の先生の息子で深雪曰く去年の九校戦での達也の活躍を見て一高に入るのを決めたという子だ。もう1人の女の子は達也と深雪の従兄弟である桜井 水波、記憶にもまだ新しい「恒星炉」実験の中性子バリアを担当した子で私も幾らかは話したが何処か達也や深雪とは違う風に感じたりもした。

 

そして迎えた出発日。今年は去年と比べて特に何も起こらず(出発前に少しひんやりした程度)に宿舎がある国防陸軍富士演習場に着いた。今年は去年と違い姉さんが来ているわけでもないため(姉が来ている来ていない等は彩海奈は知らない)着いて早々に呼び出されることも無く今年の部屋の同居人であるレナーテと共に過ごしていた。そして時間は夕方になり今年もホテルのホールにて懇親会が行われようとしていた。

 

この懇親会で1番の注目を集めたのは言わずもがな彩海奈とレナーテだった。彩海奈は昨年も九校戦に出場し1年生ながら本戦で優勝するという偉業を成し遂げたのだ、各校からの注目の的でありメディアが選ぶ今年の注目選手の1番手に挙げられていた。彩海奈がこれ以上に注目をされたのは隣にいるレナーテがいることも影響しているだろう。もちろん各校も事前に出場予定選手の情報は入っている手前あまり影響しないだろうとレナーテは勝手に思っていたがそれは思い過ごしだったことに気付かされた。

 

「ねえ、さっきからずっと視線を感じるのだけど……」

 

「ええ、私もよ……やっぱり初見でレナーテを見るとやはり目立つのかしら」

 

「そりゃあそうだよ、彩海奈。皆普段から見ている訳じゃ無いからね」

 

「そうかもしれないわね……」

 

「はぁ……どうせならお母さんに似た格好が良かったな……身長だけは似てるけど」

 

「へぇーレナーテってお父さん似なんだ。まぁでもいいじゃん私は好きだよこのブロンドヘア」

 

「あ、ありがとう」

 

「それにしても今年は少しばかり不安ね。去年のままだったらそこまで気を使わずに済んだのだけど今年は色々なことに気を付けなきゃいけないから」

 

「そうだよね。最終日のスティープルチェイス・クロスカントリーなんて彩海奈が思ってるような競技なら本当にドロップアウトが出るかもしれないし私達も気を付けないとね」

 

「失礼します、お飲み物は如何でしょう?」

 

「え?あ、じゃあいただきます……もしかして芽愛さんですか…」

 

「はい、正解です。お久しぶりですね明智様もレナーテ様も」

 

「お久しぶりです、芽愛さん。それにしても何でここに?」

 

「少しばかり彩海奈様に報告したいことが……懇親会が終わった後に宿舎の裏に来ていただけますか?」

 

「……わかりました。飲み物ありがとうございます」

 

その後、来賓の挨拶やらが続いていったがこの九校戦の懇親会の場で何時も挨拶している九島 烈が今年は姿を表さなかったのだ。その報せにここにいた九校の魔法科高校生は驚いていた。その後恙無く会は終わり私は一旦自室へと帰り着替えてから宿舎の裏へと向かった。

 

宿舎を出てから裏側に回りそこで出迎えてくれたのは芽愛さんの他に弥海砂さんそして九重 八雲さんがそこにはいた。

 

「お待たせしました……それで何故ここにいるのですか?」

 

「ふむ、それを思うのは当然か。それで弥海砂くん、僕から話していいかな」

 

「ダメと言っても私達が調べたことより圧倒的に情報は多いので師匠にお任せします」

 

「そうかい、じゃあ話すけど弥海砂くん遮音・電磁波フィールドお願いしてもいいかな。よし、端的に言うと今回の九校戦、特に軍事色が強いのは気づいてると思うけどスティープルチェイス・クロスカントリーこの競技だけは別次元で危険だ。そしてこれがただのスティープルチェイス・クロスカントリーだったらわざわざ僕がここまでやってくることは無かったんだけどどうやら九島がこの競技で新兵器の性能実験を行うつもりなんだ」

 

「新兵器……」

 

「残念ながら詳細は分からないけど総称してP兵器と呼ばれてるみたいだ」

 

「P兵器……まさかパラサイトを兵器として活用する気なのですか?」

 

「さすがは弥海砂くんが賞賛しているだけはあるみたいだね。今回のP兵器…いやパラサイドールというべきかそれが今回の黒幕さ」

 

「何故今回も俗世のことについて関与してくださるのですか?」

 

「今回のことは伝統派が絡んでいるかもしれないからね。でも本当の首謀者はもっと別の所にいる。国防陸軍対大亜連合強硬派もその1つだろう。そして僕が俗世に関与するかは僕自身の判断だ。気になることが出来たらそれは調べるそうでもしないと落ち着かないからね」

 

「そうでしたか…色々ありがとうございます」

 

「いやいや、礼には及ばないよ。君とレナーテくんのロアー・アンド・ガンナー楽しみにしているよ。さすがにこれ以上僕と君達が一緒にいるのを見られていると本山や古式の闇が黙っていないからね」

 

「古式の闇?」

 

「それは君もよく知っているはずだよ。じゃあ僕はこれで失礼するよ。弥海砂くんもありがとうね」

 

そう言い残すと九重 八雲さんは闇の中へと消えていった。するとそこに何処から表れたのか全く分からなかったが1人のご高齢の方が此方に向かってやってきた。

 

「…貴女が……五輪 彩海奈さんか?」

 

「そうですが……おばあ様は……」

 

「私…は……貴女のお母さんの祖母の水無瀬 結那というんじゃが」

 

「?!貴女が水無瀬 結那様でしたか。初めまして」

 

「はい、初めまして」

 

「それで本日は一体どの様な用件で」

 

「さっき、八雲の話は聞いた。今回貴女は何もしなくてええ。これは古式魔法師の問題じゃ、"まだ"十師族でしかない貴女に世話になる訳には行かない。だから思いっきり九校戦を楽しみになさいな。今回のことは水無瀬が責任を持って行わせてもらうから」

 

「わ、わかりました」

 

「後ろのお嬢さん方も曾孫達のことよろしゅうな。貴女達のことも唯衣花、侑那、真唯から聞いてるから頼りにしてるよ」

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

「それじゃあ、またね。九校戦頑張るんだよ」

 

「は、はい。曾お祖母様」

 

そう言い残し結那は何処から出てきたのか分からない護衛を引き連れて宿舎の中へと向かっていった。私達はというと少し3人で話してから芽愛さんと弥海砂さんは今年も来ているという姉さんの側に、私は自室へと戻っていった。





如何でしたでしょうか?2年生の九校戦、彩海奈にはロアー・アンド・ガンナーでレナーテとのペアで出てもらいます。そして今話で初めて水無瀬家先代当主 水無瀬 結那を初めて登場させました。今回からこの水無瀬 結那を登場させたのはこの後の古都内乱編にて重要な役割を果たすためにここで登場させて彩海奈との面識を持たせました。後は唯衣花と侑那が九校戦に来るのでその様子を見に来たというのもあります。

途中で出てきた「古式の闇」も古都内乱編にて詳細が出てきます。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想もよろしくお願いします。また誤字や脱字もありましたらよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

騒乱の前の静けさ、水無瀬と四葉と五輪


はい。スティープルチェイス編の2話目です。今回はまだ競技に入りません。タイトルを見ればわかるかもしれませんが今回は前半部分が物語、後半部分が回想シーンになっています。

もう少しで2019年も終わりますね。自分としては今年の2月から小説を書き始めたので色々なことがあった1年ですがそれでも充実した1年だったと思っています。


 

懇親会翌日、今日は休息日になっているため各校が各競技の練習に励んでいた。それは一高も例外なく

同じであり特に今年からの新競技シールド・ダウン、ロアー・アンド・ガンナーの練習場には各校の代表選手が犇めきあっていた。ロアー・アンド・ガンナーに一高からは新人戦ペアに出る七草 香澄、本戦ペアに出る五輪 彩海奈、レナーテ・ジルヴィア、本戦ソロに出るエイミィを含む計10人は試合の日に向け練習していた。時は過ぎてお昼時、彩海奈はレナーテ、本戦ミラージ・バットに出場するスバル、本戦シールド・ダウンのペアに桐原先輩と出場する十三束君、本戦ロアー・アンド・ガンナーのソロに出るエイミィは共に宿舎内にある食堂でお昼を食べているとそこに思わぬ来客がいた。

 

「彩海奈ー」

 

「あら?愛彩じゃない。どうしたの?」

 

「ほんとだ、久しぶりだね」

 

「うん、レナーテさん、エイミィ、スバル、十三束君も久しぶり」

 

「それでどうしたの?」

 

「ああ、この前言ってた術式とデバイスが出来たから持ってきたんだ。本当なら真唯さんが来るはずだったんだけど、どうしても都合がつかないって私になったの」

 

「そう、それでそのデバイスと術式は何処にあるのかしら?」

 

「今はVIP控え室に置かせてもらってるよ。ここに来る前に芽愛さんと弥海砂さんにお願いして置かせてもらったんだ」

 

「分かったわ、後で……そうね2時半くらいになったら取りに行くって芽愛さんに伝えてくれないかしら」

 

「いやいや、彩海奈が伝えなよ」

 

「冗談よ」

 

それからは愛彩も加わり彩海奈達が座っていた席は十師族の彩海奈、外国人のレナーテ、昨年の実績があるエイミィ、スバル、十三束君、そして五輪と対等に話せる女の子という異様な雰囲気を纏っていた。

 

その後、芽愛さんにデバイスと術式を取りに行くと伝えVIPエリアにいくとそこには4人ほどの小さな集団がいた。彼ら(?)は私の方を見るとそそくさにVIPエリアにある一室に入っていってしまった。私はどうしたのだろう?と思いながらも芽愛さんから指定された部屋に向かっていった。

 

「失礼します」

 

「ようこそ、彩海奈様」

 

「お邪魔します、芽愛さん」

 

「霧島 愛彩様から頼まれたデバイスと術式はこちらにございます。それと先日九重 八雲様が仰っていたP兵器ですがどうやら九島家が絡んでいるようで弥海砂からは昨夜水無瀬様から仰っていた言葉の通りにした方が良いとのことです」

 

「そうですか…弥海砂さんがそう判断したのならばここは静観しましょう。これは水無瀬 結那さんも仰っていたように古式魔法師にとっての問題です。我々十師族が動くことは余計な火種を作りかねません」

 

「そうですね、では待機させている皆様には撤収してもらいます」

 

「よろしくお願いします。それと愛彩の見張り役もありがとうございます。それでは」

 

私はVIP室の一室を出るとまた先程の4人の男性なのか女性なのかわからない集団が私を見ていた。生憎私は話しかけられない限り話しかけようとは思わないのでそのままエレベーターに乗り私達が泊まっているエリアへと戻っていった。

 

☆十師族・水無瀬side☆

 

・水無瀬家の場合

 

今年の九校戦は水無瀬の代替わりが年始に控えることから私水無瀬 唯衣花と娘の水無瀬 侑那の2人で今年は行くことになっていた。ただその直前7月の終わりになって私の元にある一本の電話が掛かってきた。相手は私の母であり水無瀬家先代当主水無瀬 結那だった。

 

「お久しぶりです、お母様。本日はどういったご用件でしょうか」

 

『今度の九校戦、唯衣花どうせ行くんだろう?それならば私も行くことにする。どうやら少し老人共が騒ぎを起こすみたいだからな』

 

「そうですか……わかりました。生徒の皆さんがホテルに入る2日前に現地入りする予定でしたのでその日に神無月さんを其方に向かわせます」

 

『分かった。くれぐれも他の十師族の者共が何もせぬように相手をしておいてくれ』

 

「かしこまりました、お母様」

 

そう言うと唯衣花は結那との通信を切って傍にいた神無月 正義に結那のお供を命令したあと当主の椅子に腰を預けた。

 

「(九島がこの前のパラサイトを使って何かしているとは思っていたけどまさかお母様までもが動くとはね……)」

 

この時唯衣花は結那が九校戦に来ることによって起こることについて考えていた。今年の九校戦におそらくは一条、三矢、四葉、七草辺りが来るだろうと思っている。この中で特に気をつけなければならないのは四葉と七草だ。四葉は言わずもがな魔法師の中ではある意味一番目立たざるをえない存在となっている。それは私達水無瀬とは比べ物にならない程に。それに比べ七草は四葉と並び立ち日本魔法師界の双璧と言われる程であり政財界にも顔が効く。それでいて七草の魔法師の特徴は「万能」であり得意魔法というものが無い。七草 真由美嬢みたいにハッキリしている方が珍しいのだ。この二家の当主が同時に表れる九校戦というのは珍しく、去年真唯からこのことを聞いた時は私でさえ驚いたのだから。

 

他にも思っていることは沢山ある。孫である五輪 彩海奈と彼女の幼馴染でドイツの国家公認戦略級魔法師の妹であるレナーテ・アルベルタいや今はレナーテ・ジルヴィアさんの2人は前評判から注目を浴びているがその後にまた株をあげることになるだろう。その事だけでも唯衣花にとっては気苦労が絶えない九校戦になると自身が思った時には今年だけの辛抱だと思い九校戦に行くための準備を進めた。

 

・四葉家の場合

 

今年の九校戦、国防陸軍の対大亜連合強硬派が首謀者と思われるグループがスティープルチェイス・クロスカントリーにおいて新兵器の実験を企てていることを国防陸軍少将第101旅団長佐伯 広海に伝えてから四葉家当主 四葉 真夜は彼女の執務室に黒羽家当主黒羽 貢を迎えていた。

 

「以上が今回のスティープルチェイス・クロスカントリーで行われると思われる出来事です。続いてですが五輪 彩海奈嬢とレナーテ・アルベルタ嬢のことですが」

 

「何かわかりましたか?」

 

「いえ、彼女達のことは分かりませんでしたが彩海奈嬢の母親である五輪 真唯…旧姓水無月 真唯殿のご実家である水無月家のことです」

 

「水無月家の?」

 

「はい。今まで水無月家は古式魔法師の名家とは言われていましたが伝統派や「九」に関係する魔法師としてはどちらにも属せずとは言われていました。しかし最近そのことであるかのとがわかりました。どうやら水無月の背後には謎の集団がいるようです」

 

「謎の集団?その集団のことについては何かわかりましたか?」

 

「いえ、仮にも相手は古式魔法師の名家でありますゆえそこまでは」

 

「わかりました。後のことはこちらで調べます。貢さん貴方達は五輪 彩海奈さん達のことを調べてください」

 

「仰せのままに」

 

・五輪家の場合

 

今年の九校戦に水無瀬家の重鎮中の重鎮である水無瀬 結那殿がやってくる。そんな情報が私の元にやってきた。このことは国家公認戦略級魔法師である私と母親で実家が水無瀬の母親の元にしかやってきていない情報でこのことは今のところ私達2人しか知らない。私の曾お祖母様である結那様は私からしたらもはや生ける伝説の存在だ。私は今年も九校戦に行く予定になっている。もしかしたらV.I.P.エリアで会う可能性もなくもない。そして極一部の古式魔法師から「古式の闇」と言われている集団についてはまだ彩海奈ちゃんには知らせてはいけないそんな事だ。このことを彩海奈ちゃんに知らせるのは時期尚早だとお母さんにも伝えたが水無瀬のしきたりの1つだということで順調に行けば今年の九校戦の最終日スティープルチェイス・クロスカントリー終了後に伝えることになっているという。私も国家公認戦略級魔法師になる数年前にこのことは水無瀬から言い伝えられていたが今ではその任から解き放たれている。彩海奈ちゃんがその任を任されたとしても今後の生活を考慮しても少なくとも今後数年は憂慮はされると思っている。

 

それでも今は目の前のことに気をつけなければならない。今私の目の前にいるのは水無月家当主水無月 沙耶。彼女は今回水無瀬からのエージェントとしてやってきたという。

 

「今回、私が五輪 澪様に直接お伝えしたかったのは例の件においてです。五輪様の妹君であられる五輪 彩海奈様には高校卒業後より私達の下に加わっていただく、これが水無瀬 唯衣花様、水無瀬 侑那様からの要望でした。しかしここ最近の事情を鑑みて来年より私達の下に加わっていただくこととなりました」

 

「それは決定事項ですか?」

 

「いえ、このことはまだ五輪家及び澪様にお話しをしただけです。それ故にまだ確定事項ではありません。それにこのことは彩海奈様の今後にも関わることです。勇海様、真唯様、澪様の了承が取れればこのことは彩海奈様にもお話をする運びになっています」

 

「それだと私と父と母全員が了承しない限りあのことに彩海奈が関わらなくなりますがよろしいのですか?」

 

「いえ、今回はあくまで来年からのご参加に関することですので」

 

「そうですか……」

 

「ただ1つ言えるのは少なくとも2年後からは彩海奈様には参加してもらうことになると思います」

 

「わかりました。1度父や母と相談してからご報告したいと思いますがどうでしょう?」

 

「わかりました。良い報告が聞けますようにお待ちしております」

 

そう言うと沙耶は護衛を引き連れて澪の自宅から引き揚げていった。澪は沙耶を見送るとすぐ側に立っていた芽愛と弥海砂に目を向けた。

 

「どう思った?さっき沙耶さんが言っていたこと」

 

「仕方ないのではないかと思います。彩海奈様もいずれは水無瀬か五輪どちらかを選ばねばなりません」

 

「洋史様は御一家の長男だから五輪家を選ばれましたが彩海奈様は違います。私は彩海奈様のお気持ちはわかりませんがこのことは彩海奈様が下すべきことです。私達に出来ることはありません」

 

「そう。やっぱりこのことは彩海奈ちゃんに一任するしかないわね。私としては寂しいけど彩海奈ちゃんがどっちの道を選ぼうとも私はそれを尊重するわ」

 

この日国家公認戦略級魔法師 五輪 澪は決意した。例え最愛の妹が澪とは違う道を進むのならば決してその思いに異議を唱えず最愛の妹が進む道を応援すると。





如何でしたでしょうか?スティープルチェイス編読む度になるほどって思うところが多いので良かったです←

少し前ですがMay'nXmasに行ってきました。May'n部長のライブは初めてだったのですがそれでも凄い良かったです。(語彙力)

約1年で入学編からスティープルチェイス編までこれたので来年の同じ時期くらいまでにはインベーション編辺りまでやりたいと思っています。

どうか読者の皆様も2020年を今年も良かった1年だったと思える年にしてください。それではまたこの小説の最新話でお会いしましょう。

ご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九校戦本番、MTNからの依頼、古式の闇

あけましておめでとうございます(遅い)。年始に間に合うように書いてたらあっという間に過ぎて色々あってこの時になってしまいました。

新年最初の投稿は2年生の九校戦からスタートします。本年もよろしくお願いします。

メットライフありがたやありがたや


翌日、ついに2096年度九校戦が開幕した。今日は本戦ロアー・アンド・ガンナーの男女ペア、アイス・ピラーズ・ブレイクの男女ペアの予選が行われる。彩海奈は今日のロアー・アンド・ガンナーのペアに出れば最終日のスティープルチェイス・クロスカントリーまで出番は無く彩海奈としては大会初日と大会最終日に競技があるのは何となく嫌な気はしたがそれはもう割り切るしかないと思い今年の九校戦に臨んでいた。時刻は午前7時、競技開始までまだ時間があるとはいえある程度はウォーミングアップはしなければならないためまだ隣のベッドで夢の世界にいる同居人を起こす。

 

「ほら、レナーテ起きて。もう大会初日の朝よ」

 

「うぅん……あと5分」

 

「だーめ、ウォーミングアップとかもしないといけないし。それに朝ごはんも食べないといけないから。人間って起きてから3時間後が一番脳が活性化するらしいからね」

 

「ほんと、彩海奈ってスケジュール管理にはうるさいよね…ま、それも当たるから何か反論しずらいけど」

 

「はいはい、そんなこと言えるなら起きようね」

 

「やっぱり彩海奈っていじわる」

 

そう言いながらもレナーテは起き上がり着替えてから彩海奈と共に朝食を取るためにホテル内に設置してある食堂へと向かっていた。食堂に着くとそこにはアイス・ピラーズ・ブレイクペアに出る雫、その雫と同部屋のほのか、さらに深雪と一高二年のオールスターが勢揃いしていた。

 

「おはよう、雫、ほのか、深雪」

「おはようございます、皆さん」

 

「あ、おはよう彩海奈、レナーテさん」

「おはよう」

「おはよう、彩海奈もレナーテさんも」

 

「彩海奈どう調子は」

 

「万全よ。あとは去年みたいに予想外の出来事に見舞われなければ1位は硬いんじゃないかしら。七高のことを見てても私達よりかはまだまだだったしね昨日見てる限りでは」

 

「そう、それなら良かったわ。レナーテさんも大丈夫ですか?」

 

「バッチリです。練習も順調に出来てるし何より彩海奈と愛彩が作ってくれた術式もちゃんと使いこなせるようにはなったから」

 

「それなら良かったわ。初めての九校戦だけど気負わずに精一杯頑張ってくださいね」

 

「はい!深雪も雫もほのかも頑張りましょう」

 

今年九校戦に出場している2年生女子は7人だ。昨年の新人戦において驚異的な記録を叩き出したとはいえ3年生を上回る数を出していることは異例だった。魔法技能を専門的に学べるのは高校になってからでありそこからまだ1年と半年しか学んでいない2年生が過半数出るというのは異例だった。

 

時刻は9時過ぎ、ロアー・アンド・ガンナーの競技場にある控え室には既に着替えを終えた彩海奈とレナーテの姿があり2人はCADの調整を行っていた。普通なら選手に対してエンジニアが付くのだが彩海奈は一高のエンジニアの中で見てもトップクラスであり彩海奈は自分で調整し確認程度で中条先輩が付いている。

 

「よし、これで準備万端」

 

「ありがとう、彩海奈、中条先輩」

 

「いえいえ、彩海奈さんもレナーテさんも競技頑張ってくださいね」

 

「はい。ありがとうございます、中条先輩」

 

「それじゃあ私は上で見ているので」パタン

 

「それで本当に私はただ射撃をしていればいいの?」

 

「それで大丈夫よ。貴女のCADに入ってるあの術式を使えば例えどんなに揺れようとも撃ち抜くことは可能だわ」

 

「そっか……」

 

「大丈夫よ、万に一つ揺れることは無いわ。去年私がバトル・ボードで使った術式見たでしょう?あれと同じのを使うから」

 

「分かった、漕ぎ手は任せるよ彩海奈」

 

「ええ」

 

私達はその言葉を背に競技に臨み結果は1位だった。2位に入ったのは僅差で七高だった。さすがは海の七高で私達の前に競技を行っていたので少なからずプレッシャーになったがそれでも私達はそれを上回ることが出来て少し安心していた。

 

その後達也や深雪、中条先輩、服部先輩等の一高幹部達は今日の結果に満足していた。

 

「ロアガンは男子が2位、女子が1位か。ロアガンで三高を抑えられたのは大きいんじゃないか?」

 

「そうだね、七高にこの競技で離されるのはある程度想定はしていたけど三高に離されなかったのはいい結果かもね」

 

「明日はロアガンソロか。当校のロアガンソロは大丈夫なのか?」

 

「その心配はいりません。男子は分かりませんが明智さんには私達が今日使った術式をそのまま組み込みましたし練習でも私達と遜色は無いとは言いきれませんが九校戦で優勝出来るくらいには調整しました。後は七高がどれくらいかですね」

 

「そうか」

 

「彩海奈、エイミィにはお前の方から今日実際にコースを走った結果をアドバイスしてくれ。今日見た感じだと1周目の走行が成績を左右しそうだからな。すみませんが服部先輩からも今日ロアガンペアの選手にもこのことを伝えてくださいませんか?」

 

「了解した」

「わかったわ」

 

その後も少し話をした後初日の反省会は終わり選手、幹部を初めとした生徒達は各々別れていった。

 

初日終了後のその夜レナーテは自室に彩海奈と共にいたが何処か彩海奈の意識は他のところにあると思っていた。今日はロアガンペアで優勝したというのにまるでそんなものが無かったように静かだった。

 

「ねえ、彩海奈。何かあった?」

 

「何か無いわけではないけど……どうしたの?」

 

「彩海奈、何か思い詰めてるように見える。私に話せることだったら話して欲しいかな。彩海奈がそんな顔してるの私はあまり好きじゃない」

 

「私って今そんなに酷く見える?」

 

「うん。とても十師族だったり今日のロアガンで優勝した人のようには見えない」

 

「そっか……やっぱりこのこと話しておこうかしら…」

 

「どうかした?彩海奈」

 

「少し貴女にも話しておきたいことがあるわ。だから少し遮音フィールド貼るわね」

 

「う、うん」

 

「絶対他言無用よ…実は……………………こんなことところかしらね」

 

「それで彩海奈はその実験がスティープルチェイス・クロスカントリーをやっている時に起きるとは思ってるの?」

 

「そうね…少なくとも今のところはって感じだけど」

 

「だけど水無瀬家からその事に関しては関わるなだから彩海奈は少しもどかしさを感じてるのね」

 

「そんなところね」

 

「水無瀬家が彩海奈にまだ九校戦を楽しんでほしいって思っているなら彩海奈はそれに応えないと。もちろん今回のことも彩海奈にとっては見過ごせないことなんだろうけどそれでも誰かに頼ることも大切だよ?」

 

「それもそうね。レナーテの言う通りだわ、ナフィーナさんにも同じことを言われたもの」

 

「お姉ちゃんに?」

 

「そうよ。3月にナフィーナさんが来たことがあったでしょう?その時に私はナフィーナさんに言われたの。『貴女、何処かまだ他人を信じること出来てなさそうね。でも誰かに頼るというのも忘れないで。人間誰しもが1人で生きていくことは出来ないから…レナーテもそんな感じだから困った時は貴女達お互いに助け合ってね』ってね」

 

「お姉ちゃんが……」

 

「だからかしらね。誰かに頼るそんなこと最初は考えもしなかったけど貴女に言われて思い出したわ。だからありがとうレナーテ」

 

「そんな大したことないよ、私は彩海奈にいつも通りの彩海奈でいて欲しいから」

 

「私のいつも通りって何かしらね」

 

「そうだねー……例えばいつも皆でお昼ご飯食べてる時とか私と家にいる時とかかな」

 

「そっか……それじゃあ私はそのいつも通りを目指して行こうかな。この期間は」

 

「そうだね。私はそのいつも通りの彩海奈が好きだよ、だから今はその実験のことを忘れて九校戦を頑張ろうよ。ほら、明日もエイミィのロアガンソロもあるんだし」

 

「それもそうね。明日も朝は早いからもう寝ましょう」

 

「えぇーまだ23時だよ?」

 

「誰のおかげで毎朝遅刻せずに済んでるんだっけ?」

 

「おやすみなさいっ!!!」

 

そう言うとレナーテは掛け布団を被り寝る体勢になった。私はそれを見届けると同じように眠りに落ちていった。

 

彩海奈とレナーテが眠りに落ちている頃ホテルのVIPエリアにある一室では水無瀬 結那、水無瀬 唯衣花、水無瀬 侑那と水無瀬親子3世代と4人の男女がそこにはいた。

 

「さて、貴方達に来てもらったのは他でもないわ。今日女子のロアガンペアに一高の代表としていた子達どう思った?」

 

「は、我々が従うには十分な御方だと思います」

「頭領に同じであります」

「私も同じであります」

「俺も同じだ」

 

「そうかい。貴方達も同じ意見か。じゃあそろそろ老人共が企ててることの対処に動こうかね」

 

「今回だけ特別に1人だけ貴方達に加わるがいいかな?才能は折り紙付きだから。彼女はあの四葉から逃げ切っていますから少しは役立つと思います」

 

「へぇ、そりゃあ心強いな。あの四葉から逃げ切るなんて並大抵の人間じゃ出来ないからな」

 

「ただ1つ問題があるとしたら「果心居士の再来」と謳われる九重 八雲がこの敷地内にいることね。彼なら私達が今この場にいることさえ知り得てそうだし」

 

「そうですね、しかしここには人払い・遮音フィールド・対電磁波フィールドも貼っていますゆえいくら「果心居士の再来」と謳われる九重 八雲でも分からないのでは?」

 

「いや、それは無い。この前真唯の娘と話していた時に古式の闇と言っていたからな、恐らくここにお前達がいるのも九重 八雲は知っているだろう」

 

「そうですか…わかりました、我々も今後九重 八雲には注意して動きます」

 

その後結那、唯衣花、侑那と男女4人組は少し今回のことについて話し合っていた。

 

「それじゃあよろしく頼んだよ、『ーーー』」

 

「「「「御意」」」」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

翌朝、彩海奈は毎朝の如くレナーテを起こすと朝ごはんを食べに食堂へと向かっている時に合流したエイミィと今日のロアガンソロのことについて話していた。昨日も話はしていたが今朝は最終確認をしていた。ご飯を食べ終わると彩海奈、レナーテ、エイミィ、あずさの4人は一高がCADの調整をするための部屋に来ていた。エイミィのメインエンジニアはあずさでサブエンジニアとして彩海奈が付いていたが実際に術式の調整等は全て彩海奈が行い、あずさは本当に確認程度のことしかやっていない。

 

「これでCADは大丈夫よ。あとはエイミィ次第、だから頑張ってねエイミィ」

 

「ありがとう、彩海奈、中条先輩」

 

「いえ、五輪さんもありがとうございます」

 

「中条先輩もありがとうございます」

 

「それでは私は上で見てますので」パタン

 

「さて、エイミィ術式はどうかしら?」

 

「うん。レナーテさんと彩海奈との練習のおかげでまぁ彩海奈達よりかは上手くは使えないけど普通には使えるから大丈夫だよ。七高には負けちゃうかもしれないけどね」

 

「そうね、最悪七高は仕方ないわ。それでも出来るだけ三高に離されないようにしてくれればそれでいいわ」

 

「わかったよ、彩海奈。それじゃあ行ってくるね」

 

「ええ、行ってらっしゃいエイミィ」

 

エイミィはその言葉通りに1位は七高に譲ったものの2位に滑り込んだ。男子は4位に終わったが一高首脳陣は当初予想していたよりも遥かに良い方向に向かっていっていると感じていた。特にこのロアガンに関しては上場の滑り出しだった。新競技でバトル・ボードのように水を使う競技である以上七高が優位なのは仕方ないことで一高首脳陣は三高だけには負けないように取り組んでいた。結果としてはペアでは男子が2位、彩海奈とレナーテが出た女子が1位、ソロは男子は4位におわったものの女子が2位に入ったことで七高に離されているものの一高は総合2位に立っていた。最もこの2日目までは一高誰もが1位を取れるとは思っておらず如何に三高に勝てるかが焦点だった。

 

その日の夕方、私の元に来客があったと部屋のドアの間にホテル側からの手紙が挟まっていた。その来客とはムーン・ザ・ノベンバー社の代表取締役の神無月 正義さんだった。その手紙には見たらフロントに電話を掛けて欲しいと書いてあったため私は折り返しをしてからこのホテル内にあるVIPエリアへと足を運んだ。VIPエリアに入ると以前水無瀬家で見た事のある執事が立っていた。

 

「お待ちしておりました、五輪 彩海奈様。それではこちらにどうぞ」

 

わざわざ私のために出迎えてくれたのは神無月 奏也さんだ。以前水無瀬本家で私や姉、兄達のお世話をしてくれた人で今回私を呼び出した神無月 正義さんの息子さんでもある。私は神無月さんの先導のもとでVIPエリアの一室へと入っていった。部屋に入ると神無月 正義さんの他に水無月 沙耶さん、神無月 奏也さん他護衛と思わしき4名がそこにはいた。

 

「五輪様、九校戦期間中にお呼びだてしまい申し訳ありません」

 

「いえ、それで私に何の御用でしょうか?水無瀬家からの単なるメッセンジャーとしてでは無いでしょう?」

 

「本日は水無瀬家からのメッセンジャーではありません。ムーン・ザ・ノベンバー社の代表取締役としてこの場を設けさせて頂きました。五輪様にこちらのCADを見ていただきたくお呼びしました」

 

「CADを?」

 

「こちらはムーン・ザ・ノベンバー社と霧島 愛彩様と共同で作り上げた完全思考操作型CADになります。無系統魔法の起動式をアウトプットする機能を有し、自身が登録したCADにサイオンを送り込むことでそのCADを動かすことが出来る仕組みになっております。もちろん起動式がある魔法でございましたら無系統魔法と同じようにお使い出来る代物であります」

 

「それで何故このような物を私に?」

 

「霧島 愛彩様からの御要望であります。7月末にこのCADは最終性能テストを行いその際立ち会っていただいのですがまず最初は彩海奈様に使っていただきたいそうで」

 

「そういうことですか……そして何故この九校戦期間中にわざわざ呼び出してまで私に?」

 

「それは7月8日にドイツのローゼン・マギクラフトが世界初の完全思考操作型CADを発売したというのはご存知かと思いますが我々はそれよりも2ヶ月前に発売を予定していました。しかしある点でどうしても成果が出ずに発売自体がずれ込んでしまいました。そこで唯衣花様にご相談した上で五輪家の霧島 愛彩様にご尽力願いたい旨を伝えたところ快く承諾して下さり現在に至っています」

 

「…………わかりました。有難く使わせていただきます、それとこの完全思考操作型CADはもう1つありますか?」

 

「ええ、ありますがどうしてとお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「レナーテにもこのCADを使ってもらいます。レナーテは私以上に無系統魔法を使いこなせるのでいざ使おうとした時は私よりもレナーテの方がテスターとしては役に立つ方が多いかもしれないので」

 

「わかりました。それではこちらになります」

 

「ありがとうございます。それにしてもローゼンの物と比べると随分と小規模ですね」

 

「ローゼンの物は携帯性という点に関してはあまりにも不便です。そこで私達は腕輪型にすることで普段身に付けていても違和感が無いような形にしました」

 

「なるほど……では私はこれで失礼します」

 

私は神無月 正義さんからの言葉を聞き部屋から出ようとした時それは起こった。私に向かって護衛と思わしき人が何かしらの魔法を放った。私は咄嗟にそれを相殺し、4人の護衛と思わしき人の方を見た。

 

「何でしょうか?私に向かって魔法を放つというのはどういうことでしょう」

 

「いやいやさすがは十師族・五輪家のご令嬢ね。恐れいったわ。まさか間に合わせるなんてね」

 

「…………私に何か御用でしょうか?」

 

「用…ね?まあ貴女の実力が知りたかった、それじゃいけないかしら?」

 

「いえ…いけなくはありませんが……」

 

「そう、それじゃあまた近いうちにね。今度その時にでもゆっくりお話しましょう」

 

「近いうちにですか?」

 

「ええ、近いうちに。そうね……この九校戦が終わった後くらいかしらね」

 

「そうですか…では私はその機会が訪れることを願っています」

 

そう言うと私は本当に部屋を出てレナーテが待つ部屋へと戻っていった。その間に私は神無月さんの部屋にいた私に魔法を放ったあの女の人を含めた計4人の人がどうしても気になっていた。

 

彩海奈が去った部屋では神無月 正義、神無月 奏也、水無月 沙耶、4人組の男女により話し合いが行われていた。

 

「さすがは水無瀬の直系であり十師族の直系の御方だ。実力は恐らく沙耶さんより上なんじゃないか?」

 

「それもそうでしょう。彩海奈様は対外的に公表はされていませんが昨年の横浜事変において多大なる戦果を上げた。と五輪家より報告がありましたから」

 

「神無月さんはどう思ってるんだ彼女のことは」

 

「私目が奥様方のお孫について語るのはまだ水無瀬家の御方では無いという点においてはばかられますがあえて言うなら五輪様は私や沙耶殿、貴方方それに同じ十師族の四葉殿よりも実力は上でしょう。四葉殿の甥や姪に関しては分かりませんが少なくとも世代においては世界最強クラスの御方だとは思います。それに今回の完全思考操作型CADの作成においてご尽力いただいた霧島様が仰っていましたが五輪様は魔法工学技師においてもその才能は世界トップクラスだと」

 

「へぇ、魔法師だけじゃなく魔法工学技師としても世界トップクラスか。良かったじゃねえかやっと話しが合う奴が現れて」

 

「そうね、少なくとも貴方達よりかは話が出来そうね」

 

「ーー様、まだ五輪様は十師族の人です。まだ水無瀬家の人では無い御方のことを色々と言うのはお控えください」

 

「ちぇっ、神無月さんはそういうところ堅いよな」

 

「仕方ないじゃない。まだこちら側の人間ではないのだから」

 

「それもそうか。それでこれから俺らはどうするんだ?昨日当主から言われたあの四葉から逃げ切っているっていう人は来てるのか?」

 

「はい。私がそうです」

 

「「「「!?」」」」

 

「あんた何時からそこに……」

 

「彩海奈様が入られてきた時には既に。それで我が主に向け魔法を放った貴女、どういうおつもりで?と問いたいところですが彩海奈様が何も仰らなかったので私からは何も言いません。初めまして「ーーー」の皆様五輪家に仕える1人の如月 弥海砂と申します。以後お見知りおきを」

 

「ご丁寧にどうも。俺はーーと言う。こっちは左からーー 、ーーー、ーーだ。まぁ呼び方はあんたが呼びやすいふうに呼んでくれ」

 

「かしこまりました」

 

「では私と奏也はこれにて失礼します。如月様くれぐれもよろしくお願い致します」

 

神無月 正義、神無月 奏也が部屋を去ってから弥海砂と沙耶、男女4人組は今回スティープルチェイス・クロスカントリーにおいて新兵器テストに投入される予定のパラサイドールのことについて話し合っていった。

 

同じ頃ホテルの屋上では達也、八雲、風間、響子が今回のことについて話していた。話が終わり達也は自分の部屋へと戻っていったところで八雲が2人に対して話し始めた。

 

「響子さん、貴女は古式の闇といったら何処の家のことかわかるかな?」

 

「古式の闇……噂でしか聞いたことはありませんが構成メンバーはおろか人数、性別さえ分からないとだけは」

 

「ふむ、なるほど。『電子の魔女』と呼ばれる君でも噂程度しか聞いたことないか……」

 

「師匠、その古式の闇とは……」

 

「これ以上は話せないな僕でも。ただ1つ言えるのは今回のパラサイドールのことについては恐らく古式の闇が出てくるだろうから達也くんに今回のことを頼むというのは余計なお世話かもしれないとだけ話しておくよ」

 

九重 八雲はそう言うと屋上からホテル内に入っていった。風間と響子はその言葉を聞き少し話してから彼らもホテル内へと戻っていった。

 

そして翌日九校戦3日目。今日はアイス・ピラーズ・ブレイク男女ペア、シールド・ダウン男女ペアが行われた。一高はアイス・ピラーズ・ブレイク男子3位・女子1位、シールド・ダウン男子1位・女子は予選敗退に終わった。この日は彩海奈は特に誰のエンジニアしているとかそういう訳では無かったので彩海奈はレナーテやスバル、エイミィと共にアイス・ピラーズ・ブレイクの試合を見てたりしていた。

 

そして時は過ぎ2096年度九校戦は第4日目本戦アイス・ピラーズ・ブレイク男女ソロ、シールド・ダウン男女ソロの日を迎えようとしていた。




如何でしたでしょうか?タイトルにもあるMTNはムーン・ザ・ノベンバー(Moon the November)社の略語みたいなのですフォア・リーブス・テクノロジーがFLTのように。

完全思考操作型CADはこの段階でいれようと思ってたので無事に自分の中で納得出来たような流れになったのでホッとしました。(多少強引ではあるものの)

彩海奈達の競技終了後に手渡した意味もこのスティープルチェイス編内で回収していきたいと思ってます。

最近主人公を四葉家の人とした小説を暇つぶしに書いていたんですがなかなか長く続いてて読むの大変だなあと思って少し削ったらそれはそれで話がなぁって思い始めました←

これにて新年最初の投稿終わりたいと思います。再度になりますが今年もよろしくお願いします。

今回もご読了ありがとうございます。感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。誤字脱字もありましたらご報告よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒羽と四葉、九校戦終了間際

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

書いたはいいけどあげるのを忘れていたので今の時期になりました。




 

2096年度九校戦も4日目、今日は本戦アイス・ピラーズ・ブレイク男女ソロ・シールド・ダウン男女ソロが行われる。今日で本戦は一時中止し明日から新人戦が始まるためいい結果で終わりたいのが各校の陣営としての本音だ。しかしアイス・ピラーズ・ブレイクについてはその可能性はほとんどない。男子には第三高校に在籍している十師族・一条家長男 一条 将輝、女子には第一高校に在籍していて女性でさえ惚れてしまう美貌の持ち主で一高のダブルエースの1人の司波 深雪がいるのだ。本来のルールならばこの2人に加え女子には十師族・五輪 彩海奈が加わっていたのだ。それだけで女子ソロの決勝リーグ2枠はほぼ決まっていただけに他の高校はこの今年のルールに安堵したと言えよう。

 

2096年8月8日この日彩海奈とレナーテは競技場ではなく一高本部にいた。今日はアイス・ピラーズ・ブレイクに深雪とエンジニアの達也、シールド・ダウンに五十里先輩、中条先輩がそれぞれエンジニアで行っている。他にも生徒会役員にほのかや泉美もいるのだが2人とも深雪の試合を見に行っているため一高本部内に生徒会役員がいないという非常事態になっているため彩海奈が本部にいるということになった。ちなみに風紀委員長である花音は許嫁である五十里啓にくっついていき部活連会頭の服部範蔵も同級生の沢木 碧の試合を見に行っているためいない。

 

「ほんと、深雪ってすごいね」

 

「深雪は振動減速系が得意だからこのアイス・ピラーズ・ブレイクほど適した競技はないからね。私でも深雪に勝てるかって言われたら分からないわ」

 

「じゃあ私だったらどうかな?」

 

「貴女には誰も勝てないわよ……それこそ一条君みたいに一瞬で試合を終わらせるようなことが出来ないと無理ね」

 

「そんなにレナーテってすごいの?」

 

「まだ小学生の時どっちの魔法が早く正確に的に当てられるかっていうことをやったことあるんだけどその時は私はレナーテに1度も勝てなかったわね」

 

「ほえーすごいねレナーテさん」

 

「えへへ、そんなんでもないよ」

 

そんな他愛のないことや今回の九校戦のことに喋っていると試合が終わり、その後深雪と達也が一高本部へと帰ってきた。

 

「優勝おめでとう、深雪」

「おめでとう」

「Herzlichen Glückwunschあ、おめでとう」

 

「ありがとう彩海奈、エイミィ、レナーテさん」

 

「見てた感じ何処も問題無さそうだったね」

 

「そうね、去年の今頃は来年本戦で貴女とやるのかと思うと気が遠かったけどね」

 

「私も来年はもしかしたら深雪とやるかもしれないと思ったら気が遠かったわよ」

 

「ほんと見てみたいよね。彩海奈と深雪のどっちがすごいのか」

 

「私も見てみたい」

 

「やりたいのはやまやまだけど今年は難しそうね……それに何処でやるのよ…この九校戦期間中は無理だとして練習場所も本番の会場使ってたし」

 

「それもそっか……でも見てみたいよね彩海奈と深雪がやってるところ」

 

「来年にまたルールが元通りになったらその時は出来るかもしれないんだからそれまでお預けね」

 

「そうね、まだこの後も新人戦と本戦モノリス・コード、ミラージ・バット、スティープルチェイス・クロスカントリーが残ってるから競技日程的にも少し無理があるわ」

 

こうして4日目までの競技が終了しアイス・ピラーズ・ブレイクソロは男子が一条君で女子が深雪、シールド・ダウンソロは男子が沢木先輩で女子は千倉先輩が優勝した。第一高校の成績は4日目が始まる前まで70ポイント差があったのが30ポイント差まで差が縮まっていた。

 

一高の快進撃は本戦から新人戦に変わっても続いていき5日目(新人戦1日目)のロアー・アンド・ガンナーでは女子を彩海奈がエンジニアを務めた七草 香澄ともう1人のペアが男子は達也と1年生エンジニアの1人隅守 賢人通称ケントくんがエンジニアを務めたペアがそれぞれ優勝を飾った。新人戦2日目はシールド・ダウンとアイス・ピラーズ・ブレイクが行われ、シールド・ダウンでは男子は3位に終わったが女子は優勝。この競技には達也の従姉妹だという桜井 水波が出場していたが達也の従姉妹だということを十分に見せる程の実力を有していることが分かった。アイス・ピラーズ・ブレイクもシールド・ダウンと同じように男子が3位、女子は優勝。女子アイス・ピラーズ・ブレイクは七草姉妹の妹、七草 泉美の独壇場でありこれまたエンジニアを務めていたのは彩海奈だった。泉美が天幕に戻ってくると何処と無く煩悩を臭わせる笑顔で深雪に抱きついたが、この時ばかりは深雪も泉美の気が済むまで抱き枕に甘んじていた。

 

新人戦3日目今日はミラージ・バットが行われていた。私は競技場ではなく一高内の天幕にいた。

 

「すごいね、四高の子」

 

「そうね。確か彼女の名前は黒羽 亜夜子。ここ最近の魔法師界隈じゃ聞かなかった覚えはない名前よ」

 

「そうなの、彩海奈」

 

「ええ。最近ある噂が流れてたから、四葉家の分家には「黒羽」という分家が存在するってね」

 

「四葉家?」

 

「そういえば貴女は十師族とかそういうこと知らなかったわね。夜に教えてあげるからとりあえず話を続けていいかしら?」

 

「うん」

 

「最近その噂が流れ始めた頃私も最初はそれをあまり信じてはいなかったの。ただ今はこれだけの結果を見せられたらちょっとでも思っちゃうよね」

 

「まあそれはそうかもね」

 

「それに達也がどうして香澄ちゃんと泉美ちゃんのどちらかをミラージ・バットに出すのかを必死に止めていたかも分かったわ。でもならどうして達也はこうなることがわかっていたのかしら」

 

彩海奈はどうして達也が香澄と泉美をミラージ・バットではなくロアー・アンド・ガンナー、アイス・ピラーズ・ブレイクに出場させミラージ・バットには他の選手を推していたのかがようやく分かった。だが彩海奈には同時に疑問が生まれた。何故達也は四高の一年生のことを知っていたのかだ。彼女は私は1度だけ会ったことがある。今年の2月あの"吸血鬼事件"においてあの四葉家の末席に名を連ねると名乗っていた彼女であり、今回の噂によって私は彼女が四葉の血縁であることを確信し同時に達也と深雪が四葉の血縁それに四葉家当主四葉 真夜と同じ直系クラスの四葉の血縁だという可能性が高まったと私は思った。

 

次の日も四高の"黒羽"は圧倒的な強さを九校戦において発揮していた。新人戦モノリス・コードこの競技は性質上一高と三高が毎年の優勝決定戦と言われていた。しかし今年は多少"イレギュラー"な選手がいることでその構図は崩れた。今年のモノリス・コードは全校の総当たり戦によって行われており何処の高校も1度は対戦する形式になっている。なんとその四高と三高の試合で四高が勝ったのだ。この試合で特に活躍していたのが黒羽 文弥。正確な情報では無いがおそらく黒羽 文弥と黒羽 亜夜子は双子でありどちらも四葉の末席に名を連ねているのだろう、と彩海奈は思っている。四葉家を輩出した旧第四硏は精神とは何かということを研究していたという。その点から考えてみても黒羽 亜夜子が使っていた魔法は精神干渉系とは違うがもう1人の黒羽 文弥が使っていた魔法は無系統魔法の1種ではあるもののどちらかというと精神干渉系の魔法を織り交ぜることによって無系統魔法をさらに強力な魔法に出来ると考えていた。

 

ブーーーーー

 

そんなことを考えていたら少し前から始まっていた一高と四高の優勝決定戦の試合が終わった。結果は四高が勝利し、観客の間では「番狂わせ」という声が多数聞かれていた。

 

「やっぱり凄いわね、あの姉弟」

 

「そうね。私はミラージ・バットで彼女に、お兄様ならあの子には勝てそうだけどね」

 

「あら、そうなの?じゃあ来年の大会が今年と同じ仕様なら私はアイス・ピラーズ・ブレイクに出ようかしら」

 

「そう簡単に言うな……来年は来年でまだ何かが決まったわけじゃないし」

 

「そ、そうだよ彩海奈」

 

一高の天幕内で起こったプチ事件が起こるほど今の一高には去年には無かった余裕という空気が生じていた。ところ変わって九校戦が行われている富士演習場の生徒達が泊まっているホテルとは別のホテルの高級士官用の部屋に日本魔法師界の最高峰と裏の最高峰が顔を合わせていた。

 

「久しぶりだな、皆の衆」

「お久しぶりです、皆様」

「お初にお目にかかります、十師族当主の皆様。水無瀬家次期当主水無瀬 侑那と言います」

 

「「「「お久しぶりでございます、水無瀬様」」」」

 

「今こうして私がいるのは何年ぶりになる?5年か6年くらいか?」

 

「7年前になります。奥様」

 

「そうか、もうそんなに経ったか。今回皆を呼んだのは他でもない。この九校戦における種目変更とスティープルチェイス・クロスカントリーの実施に関してだ」

 

「種目変更に関しては国防軍が昨年の横浜事変における魔法の有意性を考えてのことでしょうがそこに何故スティープルチェイス・クロスカントリーを織り交ぜたかが問題だと私達は思っております」

 

「私達はこのスティープルチェイス・クロスカントリーが組み込まれたことにこれからの未来を担う魔法師の卵の生徒達にこのような競技を行わせるのは非常に危険だとは思っています。皆様方はどう思いますか」

 

「確かにあの競技だけは危険度ははるかに上がる。だがしかし昨年の横浜のことを考えればと私は思うが」

 

「私もこの新競技については色々と思うところはあるが水無瀬殿の言うことについては私もそう思う」

 

「私は七草殿が言っていることに賛同する」

 

「真夜、貴女はどうだい?」

 

「私もスティープルチェイス・クロスカントリーについては七草殿や水無瀬殿の言う通りに非常に危険であると思います」

 

「ふむ、真夜も同じか……皆に1つ言っておくが今回の九校戦スティープルチェイス・クロスカントリーにおいて「九」の老人共がひと騒ぎを起こすがこのことに関しては水無瀬家が責任を持って行わせていただく。お前達の息がかかってる魔法師あるいは国防軍を使っての排除等は控えるんだ」

 

「何故、と聞いてもよろしいですかな」

 

「三矢……まぁいいだろう。今回「九」の老人共が使おうとしているのは昨年度末やってきたパラサイトをヒューマガイドに組み込んだパラサイドールだ。パラサイトに関してはお前達より我々の方が因縁深いのでな」

 

「なるほど…わかりました」

 

「お前達もこのことに関しては水無瀬の名前に免じて手出しは控えてくれ」

 

「「「わかりました」」」

 

「それじゃあ私達はこれで失礼します。くれぐれもよろしくお願いします」

 

こうして水無瀬 結那、水無瀬 唯衣花、水無瀬 侑那の3人は十師族・一条家、三矢家、四葉家、七草家当主達がいた部屋を出て富士演習場の近くにある水無瀬家の別荘へと戻っていった。

 

九校戦は新人戦も終わりまた本戦へと戻っていった。今日はミラージ・バットの予選・決勝が行われ明日モノリス・コードの決勝が行われ、明後日に2.3年生全員によるスティープルチェイス・クロスカントリーが行われる予定になっている。彩海奈はスティープルチェイス・クロスカントリーまで特段エンジニアだったり選手として出場するということが無いため一高の天幕にずっといた。正直スバルのミラージ・バットの試合も見に行きたかったがほのかが選手として、達也がエンジニア、中条先輩がスバルのエンジニア、モノリス・コードには部活連会頭の服部先輩が選手として、五十里先輩がエンジニアとして出向いているため深雪と共に一高の天幕内に一高幹部がいなくなるという非常事態を避けるためにいることになった。レナーテとエイミィ、十三束くんはエリカやレオ君、美月達と共にミラージ・バットを見に行っている。結果はほのかが優勝でスバルは準優勝で一高はワンツーフィニッシュを果たした。この結果を持って一高は三高をかわし総合首位に躍り出た。最終日も服部先輩、三七上先輩、幹比古のチームが三高のチームを倒し優勝した。そして様々な思いが入り混じる最終日、2.3年生によるスティープルチェイス・クロスカントリーが行われようとしていた。

 




如何でしたでしょうか?予定としては次話でスティープルチェイス編は終わりで夏休みを挟んで原作古都内乱編になります。

原作ではスティープルチェイス編から古都内乱編までの話というのが無いので完全オリジナルになります。
多分というより絶対この魔法科の世界では無いことをお届けする予定です。
今回もご読了ありがとうございます。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スティープルチェイス・クロスカントリー、レナーテの両親

はい。スティープルチェイス編最終話です。今日でちょうどこの小説を書き始めてから1周年になりました。これからも不定期ではありますが更新していきます。


2097年8月15日、九校戦最終日彩海奈や深雪、エイミィ、レナーテ達は今日行われるスティープルチェイス・クロスカントリーのために入念にストレッチや準備体操を行っていた。スティープルチェイス・クロスカントリーは午前中に女子、午後に男子が行われその後閉会式と表彰式、夜に懇親会と優勝校が行う祝勝会が催される予定になっている。最終日までの順位で一高と三高が他校を寄せ付けない圧倒的な強さで勝ち進んでおり今日のスティープルチェイス・クロスカントリーの順位によっては総合順位が引っ繰り返る可能性もあるため2.3年生達は気が気ではなかった。

 

「五輪さん」

 

「何でしょうか、千代田先輩」

 

「悔しいけど今の私達じゃ貴女達のスピードにはついていけない。だから、私達のことは放っておいてどんどん先に進みなさい。そして一高にスティープルチェイス・クロスカントリー優勝の栄冠をもたらしてちょうだい」

 

「わかりました」

「Ich seheわかりました」

 

「それじゃあレナーテ、最初から飛ばしていくわよ」

 

「もちろんだよ、彩海奈。久しぶりに使えるから私今すごいドキドキしてるよ」

 

「そう、それは良かったわ。今回のためにわざわざ作ってくれたもの。それと新しいCADの絶好のテストの機会になるしね」

 

「そうだね、神無月さんも多分喜んでくれるよ」

 

「ええ、それじゃあ頑張ろうねレナーテ」

 

「うん、彩海奈」

 

「それじゃ調整しちゃいましょう。競技まで時間は無いしね」

 

そう言うと彩海奈は一高がCADの調整を行っている場所へと向かい調整していた。隣には達也が私とレナーテ以外の2年生女子のCADの調整を行っていた。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫よ。とりあえず私のは起きてから直ぐに済ませてあるし後はレナーテのだけだから」

 

「そうか、それで今回のスティープルチェイス・クロスカントリーで何か起こると思うか?」

 

「え?…どうかしらね、起きるかもしれないし起きないかもしれない。こればっかりは私でもどんな仕掛けが施されてるかは知らないもの」

 

「それもそうか」

 

「それじゃあ他のみんなの調整よろしくね。また閉会式で会いましょう」

 

私はレナーテのCADの調整を終えると天幕を出てレナーテの元へと向かいCADを渡すと私達はスティープルチェイス・クロスカントリーが行われる演習林の中にあるスタート地点へと向かった。

 

その頃水無瀬家お抱えの魔法師集団は朝一番から演習林の中に忍び込んでおりその存在は今回の首謀者である酒井大佐達のグループでも確認は出来ておらず各自がそれぞれの持ち場に着きパラサイドールが出てくるのを待っていた。スティープルチェイス・クロスカントリー女子の部がスタートする直前彼らはこの演習林に何かがいるのを感じ取ることが出来た。弥海砂にはそのようなスキルは持っていないが通信によりその存在は知らされていた。

 

『弥海砂さん、パラサイドールがやってきたけど分かるかい?それとそれに対抗しようとしている魔法師も1人いるんだけどそれも分かるかな?』

 

「ええ、分かります。それと後者の魔法師はおそらく彩海奈様のご学友であられる司波 達也殿だと思われます。彼はおそらく今回のパラサイドールを排除する側としてやってきてると思います」

 

『そうか、ありがとう』

 

「いえ、彩海奈様をお守りするにはこれくらいのことと考えれば必要なことですので」

 

『それじゃ、苦しくなったら何時でも呼んでくれ。あんたよりかは俺達の方がパラサイドールについては幾らかは対応出来ると思うからな』

 

「わかりました、その際はよろしくお願いします」

 

ところ変わりスティープルチェイス・クロスカントリーのスタート地点には魔法科高校九校の2.3年生の女子が勢揃いしていた。そして時が経ちスタートの合図が鳴りスティープルチェイス・クロスカントリー女子の部がスタートした。花音に言われた通り彩海奈とレナーテはスタートから飛び出し他の生徒とは圧倒的な速さで掛け進んでいった。

 

「いい調子ね。神無月さんのCADも順調だし」

 

「そうだね。私の魔法でも問題なく使えるから複雑な魔法でも使える事が分かったのもいいんじゃない?」

 

「そうね。それじゃあもっと飛ばしていきましょう」

 

彩海奈とレナーテはスタートから5分経った今4kmコースの半分行くか行かないかのところまで進んでおり彩海奈とレナーテを除いた各校はまだ横一線の状況であり1kmを過ぎたあたりであった。彩海奈とレナーテが使っている魔法は加速魔法や干渉装甲等の一般的な魔法に加え愛彩がこの競技のためだけに作ってくれた魔法を使っていた。その魔法は『縮小解放』。この魔法により彩海奈とレナーテが使っている魔法はこの魔法を使っている間は一時的に効果を増大させる。そして彩海奈とレナーテは見ての通り複数の魔法を同時に展開するパラレル・キャストを展開している。九校戦はほぼ全ての生徒が汎用型ではなく特化型を使っているが彩海奈とレナーテは汎用型と完全思考操作型を使っている。汎用型は特化型に比べると発動スピードは遅くなってしまうが彩海奈とレナーテが使っているCADはこの九校戦用に特別に作られたCADであり特化型と変わらぬ速さを持ち合わせている代物でありこの世に3つとない代物だ。

 

スタートから10分経った今各校は既に1つのグループではなく超速、第1、第2、第3集団に別れゴールを目指す集団になっていた。超速集団というのは集団とは言わないとは思うが彩海奈とレナーテの2人であり一高を含む九校全校が1位と2位を諦めている現状であり実質第1集団が彩海奈、レナーテを除いた首位争いをしていた。この競技の中心にいた彩海奈とレナーテは既にゴールまで後1kmというところまで来ていたがここで思わぬ人に遭遇した。彩海奈は思わず立ち止まると立っていた人に話しかけた。幸いにも(?)後ろの集団はまだまだ後ろにいるため話すことにした。

 

「また、お会いしましたね。貴女が言っていた九校戦が終わった後ではなく前までに」

 

「そうね。でも今は話している余裕は無いわ。先を行きなさい」

 

「そうですか。それでは」

 

彩海奈はそう言うとレナーテと共にゴールへ向かい走っていった。ちなみにこの時彼女の他にもう1人いたのだが彩海奈はその1人が誰だか分からなかったためそのままスルーしてゴールへと向かっていった。

 

彩海奈とレナーテを除く一高の生徒は第1集団に花音、深雪、スバルがいた。花音は陸上3000m障碍の選手で障碍物を超えながら走るということに関しては問題なく、深雪は地面すれすれを飛行魔法を使いながら、スバルは「跳躍」を使いながら進んでいた。

 

「それにしても早いわね、あの2人。もうそろそろ3kmだと思ったんだけど」

 

「そうですね、彩海奈もレナーテさんもどれだけ飛ばしたんでしょう」

 

「全く彩海奈もレナーテさんも加減というのを知っているのかなって思ってしまうよ」

 

その直後スティープルチェイス・クロスカントリーに参加している全員のゴーグルの上に表示してあったナビゲーションマップの上にあるゴール人数の数字が0から2へと変わった。その10分後に深雪、花音さらには雫やほのかも続々とゴールしていった。

 

その後行われた男子スティープルチェイス・クロスカントリーでは一条 将輝の優勝で終わった。総合優勝は今年も一高で今年は途中まで苦戦していたことも相まって去年以上に喜んでいた。今年も準優勝に終わった三高だが最後のスティープルチェイス・クロスカントリーで将輝が優勝したこともあってか何処か満足気に後夜祭パーティーに出ていた。他校で言えば四高が今年の目玉だろう。新人戦のモノリス・コード、ミラージ・バットで優勝しその立役者である黒羽姉弟の双子は容姿に似合わぬ堂々とした態度でこの頃魔法師界に流れた噂が現実味を帯びていった。さてその後夜祭パーティーには当然一高も参加している。彩海奈の周りには昨年以上に軍の関係者や魔法工学機器メーカー等沢山の人に囲まれ、レナーテの周りにも人が溢れていた。やがて時間が経ち来賓や軍の関係者らが出ていくと生徒達は他校同士、自校同士等話していく構図が出来てきた。彩海奈とレナーテはエイミィやスバル、十三束くんと共に談笑していた。そこへある生徒がやってきた。それは今年の新人戦において四高躍進の立役者となった2人であった。

 

「初めまして、五輪先輩」

 

「ん?あぁこちらこそ初めまして。それでどうかしたの?」

 

「私は第四高校の黒羽 亜夜子、こちらが弟の「黒羽 文弥」です」

 

「黒羽 亜夜子ちゃんに文弥くんね。それでどうかしたの?」

 

「大したことではないのですが五輪先輩が使っていたCADが気になって本当はいけないものだとは思っているのですが」

 

「ああ、私が使ってるCADが気になったの?それくらい全然いいわよ。私が使ってるCADはムーン・ザ・ノベンバー社といったら分かるかしら?」

 

「ムーン・ザ・ノベンバー社?聞いたことありませんわ……」

 

「それは仕方ないわ。私はそこのオリジナルカスタムメイド品を使ってるわ。今回の九校戦も九校戦の規格に合わせたものを用意してもらったのよ」

 

「そうでしたか…ではそろそろ失礼させてもらいます。また何処かでお会いすることがあればよろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

黒羽姉弟が彩海奈の元から去っていくとそれに合わせたように1人の女性とレナーテがすぐそばにやってきた。

 

「大変だね、彩海奈」

「大変そうね、彩海奈ちゃん」

 

「レナーテと……まさか姉さん?」

 

「そうよ。レナーテさんからメールをもらったから来たの。といってもすぐに出ないといけないんだけどね」

 

「そう……」

 

「彩海奈ちゃんが今思っているのは水無瀬家のことでしょう?私も同じことで悩んだことあるから……確かに今回は九島のお爺様のこともあったし悩むかもしれないけど決めるのは彩海奈ちゃん自身だからね。自分がしたいと思ったことをしなさい、私も応援するから」

 

「姉さん……」

 

「私も澪さんと同じ意見だよ。前私にも言ってくれたでしょ?今までの彩海奈自身が好きだって、今の彩海奈は私はあまり好きじゃないかな」

 

「レナーテ……」

 

「だからといってね、彩海奈ちゃん私達は決して彩海奈ちゃんの傍を離れたりはしないから。ね、レナーテさん」

 

「うん。もちろんだよ彩海奈。私が今こうして皆と一緒に仲良くいられるのは彩海奈のお陰でもあるしロアー・アンド・ガンナー、スティープルチェイス・クロスカントリーで優勝出来たのも彩海奈がいてこそだから私はこれからも彩海奈と一緒にいれたらなって思うよ」

 

「そう……ありがとう姉さんそれにレナーテも。私がこれからどんな道を歩もうとしても私の傍にいてくれる?」

 

「もちろんよ、彩海奈ちゃん。私の妹で家族なんだから」

「もちろんだよ、彩海奈。なんてたって小学生の時からの友人だからね。例え彩海奈が水無瀬家の人になってもそのままだったとしても私はずっと傍にいるよ」

 

「ありがとう、姉さんにレナーテ。私はこれから私の歩む道をこれから歩いていくわ」

 

彩海奈がこう言うと、レナーテと共に一高のグループの中へと戻っていった。澪はこっそり会場を出て近くに待っていた芽愛、弥海砂と共にホテルのV.I.P.エリアへと戻っていき身支度を終えてから芽愛と共に東京にある自宅へと戻っていった。

 

その頃水無瀬家御一行もスティープルチェイス・クロスカントリーが終わると同時にホテルを出て既に京都より西にあると言われている水無瀬家本邸へと戻り唯衣花や侑那と共に九校戦へ行っていた先代当主結那、本邸にて柊優、詩季と共に九校戦を見ていた侑弥は軽井沢にある水無瀬家別邸へ戻る予定をキャンセルし本邸に泊まることにしていた。

 

九校戦が終わり次の日一高は現地解散としてバスで学校に行くも良し、各自が自由に帰ることが出来るようになっている。彩海奈とレナーテは元々バスで一高へ戻りそこから自宅へと戻ろうとしていたがその予定は今朝になり予定変更となった。朝早くまだ日が昇り始めてからすぐに彩海奈の端末の元に父親・五輪 勇海かられ連絡があった。『今日すぐに本邸に戻るように』と、この知らせを受け取った彩海奈はすぐに中条先輩に予定の変更を伝えると既に用意していたレナーテとこのホテルにいた弥海砂と共に愛媛にある五輪家本邸へと戻っていった。普段なら私が帰ってくれば使用人全員が出てくるが今日はそんなことは無かった。おそらくそれだけ今この家に来ているお客様が重要なのだろうと私は思った。家の中に入り途中で出会った使用人の1人から帰ったら執務室に来るように言われていたので彩海奈、レナーテは共に執務室に入っていくと彩海奈が知らない夫婦がレナーテにとってはよく知っている夫婦がそこにはいた。

 

「Mama! Papa!(お母さん!お父さん!)」

 

「Komm nach Hause, Renate. Und Ayana auch(お帰りなさい、レナーテ。そして彩海奈さんも)」

「Zurück, Renate(お帰り、レナーテ)」

 

「Warum bist du hier(どうして此処にいるの?)」

 

「Warum bist du gekommen, um dich zu sehen? Nafina scheint mit Carla irgendwo hingegangen zu sein, und ihre Arbeit hat ein Ende.(どうしてって……貴女に会いに来たのよ。ナフィーナはカーラちゃんと一緒に何処かに行ってるみたいだしお仕事もひと段落ついたからね。)」

 

「えっと……初めまして?ですよね五輪 彩海奈と言います」

 

「あら、ごめんなさい。私は白羽・アルベルタ・紗那。ナフィーナとレナーテの母親です。何時も娘がお世話になっております」

「ワタシはレオン・アルベルタとイイマス。娘達が何時もお世話になってます」

 

「紗那さんは真唯の同級生でレオンさんと共にヨーロッパ各地で魔法医学界のスペシャリストと呼ばれているんだ」

 

「そんな事無いわよ、勇海さん。それで真唯はどうしたの?」

 

「真唯なら自室で寝ているよ。最近まで少し発熱していてね安全のためにね」

 

「そう、それで貴女が彩海奈ちゃんね」

 

「は、はい」

 

「これからも真唯のことよろしくね。私普段はヨーロッパにいるから真唯の近くにはいれないけど彩海奈ちゃんならいれるって分かってるから。例え水無瀬家に入ったとしてもね」

 

「……水無瀬家のことをご存知なのですか?」

 

「ええ、レナーテの身元引受人になってもらいましたからね。それにちょっとしたことで私も一時期水無瀬家にはお世話になってもらってましたから」

 

「そうでしたか……」

 

「それでだ今日から世間が夏休みの間はレオン・アルベルタさんと紗那さんは日本に滞在することになっている。そこで彩海奈とレナーテさんには2人と水無瀬家へ行ってくれないか。出発日は明明後日を予定しているから」

 

「分かりました。レナーテもそれで大丈夫?」

 

「大丈夫だよ」

 

「それじゃあ今日はもう東京に帰りなさい。色々と用意があるだろう?」

 

その後私とレナーテ、弥海砂さんは東京へ帰っていった。愛彩が構築したカウンタープログラムをセットしてからレナーテがこれから愛媛で生活するのに必要なものを買い揃えてから翌々日に再び弥海砂さんと共に愛媛へと戻りレナーテのお父さんとお母さんと共にすぐさま京都にある魔法協会本部に行きそこに神無月 正義さんを筆頭にした執事の格好をした人々と水無瀬家本邸へと移動していた。

 

「長旅お疲れ様でございました。こちらが水無瀬家本邸でございます」

 

「ありがとうございます、神無月さん」

「アリガトウゴザイマス」

 

言葉を交わしながら水無瀬家本邸へと近づくと玄関の目の前には8人の姿があった。水無瀬家前当主夫妻、水無瀬家現当主夫妻、水無瀬家次期当主夫妻そして水無月家前当主と現当主が出迎えに来ていた。私とレナーテはこれだけの人が出てきていることに驚いていた。その後は水無瀬家のことということで私とレナーテの2人はもう夜遅いこともあり水無月家別邸にお泊まりすることになった。その夜私はレナーテにレナーテのお母さんとお父さんがヨーロッパで何をしているのかを聞いてみることにした。

 

「お父さんとお母さんが何をしているのか?ってこと?」

 

「うん」

 

「お父さんとお母さんは魔法医療に関することでドイツを始めとしてフランス、イギリスとかで魔法師の医療に携わる仕事をしてるみたいだよ。私も13歳からドイツにいるけどそんなところかな」

 

「そう、素敵な人ね」

 

「そうだね。ドイツにはお姉ちゃんもいるし、おばあちゃんもおじいちゃんもいるからお母さんもお父さんも良いんだと思うよ私的にはね」

 

「レナーテ的には、ね」

 

「確かに私的には良いかもしれないけど決めるのはお母さんとお父さんだからね。私とかお姉ちゃんが決めることじゃないから」

 

私とレナーテ。お互いに国家公認戦略級魔法師の妹であり両親が共に地域における名家でその家の次女として生まれてきたからこそ同じような境遇に私達はいるのかもしれない。だから私は九校戦のダンスパーティーの時に姉さんから言われた「自分がしたいことをしなさい、私も応援するから」という言葉をこれからの自分の将来についてのことは自分で決めなきゃと思った。




如何でしたでしょうか?レナーテとナフィーナの両親を初登場させました。今後登場するかは分かりませんが名前だけは付けて登場させようと思いさせました。

次話ですが夏休みは基本的に去年と変わらないため数行で纏めてすぐに古都内乱編に入りたいと思います。古都内乱編はオリジナル要素は強くなります。

またこの話の投稿と同時に息抜きで書いてた話の1話の1部を公開しようと思っています。投稿してから約1日でお気に入り登録が20後半の数字(26〜30)無かったら削除しますので良ければご覧ください。
※作者の不規則生活により2月24日10時に公開します

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

京の都にはご注意を
夏休み、論文コンペへの過程




はい。古都内乱編に入りました。そこで今回主人公は原作で起きること全てを達也と共にということはあまりありません。


 

 

水無月家別邸で一夜を過ごした私とレナーテは朝食を水無瀬 結那さん、侑弥さん、唯衣花さん、柊優さん、侑那さん、詩季さん、水無月 紗綺さん、沙耶さん、白羽・アルベルタ・紗那さん、レオン・アルベルタさんと共に頂きそれから少しした後には沙耶

さんと共に京都へ戻りそこからは弥海砂さんと共に五輪家へと戻っていった。それからというもの特に何かある訳ではなく彩海奈とレナーテ、愛彩は普通の夏休みを過ごしていた。ある日は第五研で彩海奈とレナーテの戦略級魔法の測定及び実験、愛彩と彩海奈の2人は新しいCAD(主に澪やレナーテの専用の特化型)の作成、3人で近くにある五輪家が所有するプライベートビーチに行ったりと何処か普通の魔法科高校の生徒のように過ごしていった。

 

そして9月になり魔法科高校も二学期が始まりまた校舎の中が騒めきだし始めたこの頃一高に新しい先生がやってきた。私達の学年には関係無いが魔法幾何学と魔法医学を1年生と3年生に教えるみたいで何故2年生を外したのかは謎だった。新任の先生は研修期間として在籍という形をとるため直接授業する訳ではなく間接的に教えるということになるという。それだけなら私達は驚かなかったかもしれないがそのやってくる先生の名前に驚かされた。先生の名前は白羽 紗那さん、つまりレナーテの母親だ。白羽 紗那さんはヨーロッパで活躍する魔法医学のスペシャリストだがその名声は世界中に届いており一高でも知らないという人はほぼいなかった。今現時点でレナーテと白羽 紗那さんが親子関係だと知っている人は私達を除いて誰も知らないはずだ。それから数週間後に行われた今年の生徒会長選挙は言うまでもなく一強独占状態だったため順調に決まり生徒会役員も昨年から引き続きということになったため生徒会は特に何も今年の発表者は中条先輩、五十里先輩、三七上先輩で、去年の発表者の達也は今年はメンバーから外れている。それは横浜と京都がそれぞれの開催地で横浜は技術、京都は純理論が上位に入りやすく達也はどちらかというと純理論よりかは技術的なテーマが得意分野であるため今回は不参加となっていた。筆記が学年2位の私にも今年から新設された魔工科のジェニファー・スミス教諭から書かないのかと聞かれたが断った。そして毎年の事だが今年も警備の割り当てで問題が起こった。今年は京都で行われるため現地の下見が必要であり去年以上に人員は必要だった。今年も風紀委員だけではなく色んな生徒に護衛の要請が出されていた。私はメンバーの護衛では無く会場内での警備や現地での警備の一高内での責任者を任された。責任者といっても服部先輩が不在の間の代理という事だ。

 

ある日の夜、私はレナーテと共に出された課題について取り組んでいた時来客を告げるベルが鳴らされた。私はモニターを見てみるとそこには紗那さんと侑那さんがそこにはいた。

 

「突然、お邪魔してごめんなさいね」

 

「いえ、それでこんな夜更けに何の御用でしょうか?」

 

「ここ最近、一高周辺に古式魔法師の人が多いって紗那ちゃんから教えてもらって私しか今水無瀬の中で動けなかったからね。それに今は論文コンペの準備をしてるでしょう?だからあまり人員は割けないからね」

 

「そうでしたか……実は私には直接被害は無かったのですが一高の生徒で既に古式魔法師から直接的な被害を受けた生徒がいまして」

 

「それって司波 達也君のこと?」

 

「ご存知なのですか……」

 

「その時私直接見てたからね」

 

「そういえばお母さんって何処に住んでるの?」

 

「私?えっとここからすぐの所に住んでるのよ。だから何時でも遊びに来ていいわよ」

 

「侑那さん、貴女程の人が東京にいるということは今度の論文コンペ去年みたいなことが起こるということですか?」

 

「いいえ、去年以上のことは起きないと踏んでいるわ。ただ今年は古式魔法師に関することで何か起きるって見てるの」

 

「私にできることはありますか?」

 

「そうねぇ……今の貴女の立場上出来ることは限られてくるからね。もし貴女の力が必要になったらまた来るわ」

 

「……分かりました」

 

「さて、紗那さん帰りましょうか。あまり長居して私達とレナーテさん達のことを勘ぐられても困りますから」

 

「そうですね、じゃあレナーテ、彩海奈ちゃんまた学校でね。おやすみ」

 

「おやすみ、お母さん、侑那さん」

「おやすみなさい、紗那さん、侑那さん」

 

紗那さんと侑那さんは護衛の人と共に私の家を出ていった。その後はレナーテと共に再び課題に取り組んでレナーテの分が終わったところで私達は眠りについた。

 

それから日々は過ぎていき論文コンペまで後半月となった時に私と新風紀委員長に就任した幹比古君と一緒に生徒会室やってきた。目的は論文コンペにおける現地の警備に関する下調べだ。

 

「当日の警備に関しては服部前部活連会頭が他校との打ち合わせも含めてやってくださっています」

 

「そこで問題なのが今年の会場です。場所はこの少し外れたところにある国際新会議場ね」

 

「随分中心から外れているのね……」

 

「街の真ん中で会議なんてやって欲しくない、って地元の意見が強かったらしいんだ。それで、去年と違って周囲の交通量もそれほど多くない。犯罪者や破壊工作員が潜伏出来る場所も多くないように見える。でも周りに自然が多いということは、それ用の準備をすれば隠れるところはいくらでもある。そして近くに隠れるところが無ければ、少し離れたところに拠点を作る可能性があるという事だと、僕と五輪さんは思ってるんだけど」

 

彩海奈はそれに頷いた。すると深雪は打ち合わせ通りに合いの手をいれた。

 

「つまり、会場の周辺だけじゃなくてもっと広い範囲を調べておくべきだと?」

 

「去年の二の舞は二度と御免だからね」

 

「それで下見には誰が行く?」

 

間もなく閉門時間ということもあり、達也は会議を終わらせるために動いた。

 

「それは僕が行くよ。学校の方は警備メンバーの北山さん、五輪さんそれにレナーテさんも手伝ってもらえるから。それと達也にも来て欲しい」

 

「構わないぞ。だが彩海奈はそれでいいのか?」

 

「構わないわ。風紀委員長の言うことだもの。一風紀委員はそれに従うまでよ」

 

「それならいいんだが……」

 

「あ、あはは……」

 

「お兄様、よろしければ私も同行したいのですが」

 

「そ、それだったら私が!」

 

深雪が同行を申し出るとそれに呼応するようにほのかが手を上げた。

 

「ほのかには移動の事とか予算の事とか、個別にお願いしてる件があるでしょう? 私には特定の仕事が無いから、応援の皆さんが泊るホテルの方にご挨拶と、万が一の事が起こった場合に避難出来るシェルターの確認をしてきますので。泉美ちゃんには、私が京都に言っている間、副会長として代わりをお願いしたいのだけど」

 

「任せてください!精一杯務めさせていただきます」

 

「それで日程はどうするんだ?」

 

「ギリギリだけど、コンペ前の土日にしようと思ってるんだけど、大丈夫かな?」

 

「妥当なところだろう、それで宿は抑えてあるのか?」

 

「いや、それは決まってからって思ってたから」

 

幹比古は苦笑い気味に達也に答えると、達也は水波に声をかけた。

 

「水波、すまないがホテルに予約を入れてくれないか。できればコンペの前日に泊るホテルが良い。メンバーは俺、深雪、幹比古、そして水波の四人だ」

 

「私も、ですか?」

 

「ああ、向こうで深雪を助けてやってくれ」

 

達也のその言葉に泉美は悔しそうに水波のことを見ていた。だが先程深雪からのお願いを受け入れたばかりであり今更やらないとは言えないため悔しそうにしていたのだろうと彩海奈は見ていた感じに思っていた。

 

やがて打ち合わせも終わり、達也とほのかは先に生徒会室を後にして雫がいる場所へと向かった。雫は今回中条先輩の護衛を務めている。私と幹比古君も途中で2人に合流した

 

「雫!」

 

ほのかが声をかけると雫が駆け足で側に近寄ってきた。

 

「何?」

 

「雫にお願いしたいことがあってね」

 

「私に?」

 

「実は、論文コンペの前に現地に下見に行こうってなってね」

 

「……去年の出来事に備えて?」

 

「そう。二十日と二十一日の1泊2日で色々と確かめる予定なんだ。それでその2日間、委員長の仕事を代行してくれないか?」

 

「もちろんその2日間は私とレナーテも手伝うわ。一応私だって風紀委員だし」

 

「彩海奈は行かないの?」

 

「行かないよ。私が行ったらレナーテも付いてくるでしょう?京都に連れていったらどういう目で見られるか分からないし。論文コンペの時は一緒に行くけど」

 

「なるほど。達也さんは?」

 

「俺は行くぞ」

 

「ほのかは?」

 

「私はお留守番」

 

「……分かった。良いよ」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「どういたしまして」

 

雫が了承すると私はまだ服部先輩は学校にいるだろうと思い、部活連の部屋へと向かった。途中でレナーテと合流し、部活連の部屋へと行くと服部先輩の他に風紀委員の沢木先輩がそこにはいた。

 

「どうした?もうそろそろ閉門時刻だが……」

 

「まだ訓練をやっているなら混ざりたいと思っていたのですが……」

 

「ああ、それなら先程終わったと連絡があったから。それにしてもレナーテさんもさすがスティープルチェイス・クロスカントリー優勝者だな。現地の警備メンバーとして期待してるよ」

 

「ありがとう、ございます。」

 

「本当に貴女身体能力高いわよね……」

 

「ふふん、それだけは彩海奈には負けないよ」

 

「はぁ……それじゃあ、服部先輩失礼します」

 

「ああ、五輪さんもレナーテさんも気をつけて帰れよ」

 

「はい、また明日です。服部先輩」

 

そう言うと私達は部活連の部屋を出ると自宅へ戻るために学校を出ようとしたところに丁度今日の勤務を終えた紗那さんと偶然出会った。それからは3人で彩海奈の自宅まで一緒に帰り、また明日と挨拶してから家の中へ入っていった。

 

私は一緒に帰っている中で気になる事件を見つけた。それは京都で名倉 三郎さんという方が他殺体として発見されたという事件だ。記事によると名倉さんの死体は通常では考えられない状態らしい。私はこの時期に京都で起きた事件というのはあらかた気にかけてはいたがこれだけは明らかに異質であった。私はこの事件のことを頭の片隅に置いておくことにした。

 

次の日曜日、彩海奈とレナーテの姿は京都にあった。元々彩海奈達はこの日に京都に来る予定等無かったが昨日の夜、突然やってきた侑那さんから京都に付いてきてくれない?と言われ侑那さんに付いてきていた。

当初、私達は京都に来たとしてもあまりすることが無いと思っていた。しかし今現在のこの状況下ではそんなことは微塵も考えていなかった。今私とレナーテの目の前にいるのは4人の男女でその脇には水無瀬 詩季さんと侑那さんがそこにはいた。

 

「さて、2人とも東京からわざわざごめんなさいね」

 

「い、いえ」

 

「彼らのこと貴女達には紹介しておかないとね。多分これから京都で色々あるでしょうから彼らのこと教えてあげなさいってお母さんに言われたから」

 

「それは論文コンペ関連で何か起こるということでしょうか?」

 

「もうって言った方がいいかしらね。この前のこと何だけど……」

 

「侑那、そろそろ……」

 

「ああ、ごめんなさい。彼らは私達水無瀬家の裏の事を主にしてくれている人達よ」

 

「初めまして、五輪のお姫様にアルベルタのお姫様。俺達は『白日の夜』っていう組織名として動いている。そんでそこのリーダーが俺で名前は睡蓮、そんで左から順に伊吹、明日葉、蓮華だ。呼び方はまぁ好きなふうに呼んでくれ」

 

「……初めまして、五輪 彩海奈です」

「…レナーテ・アルベルタです」

 

「彩海奈ちゃんとレナーテさん、貴女達の安全は水無瀬家が保障するわ。だから貴女達は何もしないでただ学校の役目に従っていて欲しいの」

 

「……分かりました。私は今回の現地での警備では一高内での責任者ですし何かと他の出来事には構っていられないのも事実ですし」

「私は彩海奈と違って何もしてないです。だから私は内容によってはお手伝いくらいは出来ると思いますが……」

 

「なるほど。それじゃ五輪のお姫様はそのまま一高のことに注力してくれ。問題はアルベルタのお姫様だが…一体どうしたもんかね」

 

「レナーテが問題になるのでしたら一高の現地の警備に加えますが」

 

「そうした方が俺達的には集中出来ていいがどうだ?」

 

「俺らは別に1人くらい増えたところでそんなに影響は無いけどな」

「そうね。1人増えたところで私達が出来なくなることなんて無いもの」

「でも、アルベルタのお姫様は何かと目立ちそうだけどそれは大丈夫か?」

 

「お前らの意見は分かった。五輪のお姫様、アルベルタのお姫様のことはお前に任せる。だから俺達のことは頭の片隅にでも置いて論文コンペ楽しんでくれ」

 

それから少しした後彩海奈とレナーテは侑那と共に東京にある自宅へと帰ってきた。時刻は既に日付けが変わっており侑那が作ったという夕食を食べてから眠りについた。

 

翌日、レナーテが体調を崩したため私は学校に休みの連絡と芽愛さんと弥海砂さんに救援の要請を頼んだ。

学校の方は私から一報いれればどんな職員であろうが納得はしてくれるがレナーテの体調不良に関しては私がやるよりかは私が小さい頃からお世話をしてくれてたらしい芽愛さんと弥海砂さんを頼るのが最善だろうと私は思っていた。

 

それから数時間後芽愛さんと弥海砂さんが家に到着し、テキパキと色々なことをしてくれた。芽愛さんも弥海砂さんもどうやら暇ではないらしく私に色々なことを教えてくれて来てから数時間後には何処かにいってしまった。

 

夕方、レナーテの体調も少しずつではあるが回復してきて明日の体調次第では学校に行けるだろうと思っていた。そこに学校から私の家に寄ってくれたのはレナーテのお母さんの紗那さんだった。

 

「ごめんね、レナーテのこと任せちゃって」

 

「いえ、レナーテと紗那さんの関係は明かせませんしそれにこの家に1人で居させるには無理がありますから」

 

「はい、これ。今日レナーテを見てくれたお礼」

 

「わざわざ、すいません」

 

「それとは別に1つ話しておいた方がいいかと思って」

 

「学校で何かあったのですか?」

 

「七草 真由美さんが司波 達也君に十師族・七草家の長女として面会に来たの。それでこれがその時に使った会議室での記録よ」

 

「……一体、何故こんなものを私に?」

 

「私には必要ないし活用も出来ないからね。だから彩海奈ちゃんに預けておくわ」

 

「私には活用できると?」

 

「だって彩海奈ちゃんのバックには五輪家、水無瀬家、アルベルタ家がいるんですもの。何処の家もこれを活用しないということはありえないからね」

 

「そうですか、それでしたらこちらは五輪家で預からせていただきます」

 

「あら、意外。水無瀬家に渡さなくてよかったの?」

 

「あちらはあちらで動いているそうなので。その邪魔はしたくありませんしね」

 

「なるほどね。それじゃあ私は帰るわ」

 

「レナーテには会わなくていいんですか?」

 

「いいの。寝ているのに起こすのは悪いし彩海奈ちゃんが大丈夫だって思ったならそれだけで安心だから。それにレナーテのことは私が1番よく分かってるから」

 

「…そうですか。それではまた明日学校で会えたら会いましょう」

 

紗那さんは手を振ると私の家から出ていき紗那さんの自宅へと帰っていった。私は玄関まで見送ると自宅の中に入っていった。

 

「だってさ、よかったねお母さん貴女のこと1番分かってるって」

 

そこには顔を真っ赤にして俯いて座っていたレナーテがそこにはいた。

 

 






如何でしたでしょうか?スティープルチェイス編で出した水無瀬家お抱えの魔法師集団を出しました。今話ではあまり出しませんでしたが次回からは出番は増えてくると思います。

今この作品と同時進行で「四葉 真夜の娘のおしごと」という作品も投稿しております。この作品とは違い主人公は真夜の娘で原作的には四葉継承編辺りから話が進んでいます。よろしければ是非お読みください。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ある1日の出来事


古都内乱編の実質2話目です。今回は次回に繋ぐための導入回のような立ち位置ですので短めです。
期間は空きましたがこの作品ともう1つの作品で保存してある場所が違うので空いてしまいました。


 

 

レナーテの体調がある程度治り、次の日は紗綺さんが来てくれてレナーテのことを見ていてくれた。私は学校に行き、昨日の遅れを取り戻すべく勉強や課題に取り組んでいた。

 

放課後、私は元々レナーテが出る予定だった警備隊の合同訓練に参加させてもらった。元々私は一高の警備責任者であるため参加は出来たがそれでも最初からは参加していなかったため、服部先輩と沢木先輩に許可を得て参加していた。

 

「今日はありがとうございました、服部先輩、沢木先輩」

 

「いや、こちらこそありがとう。昨日レナーテさんがいないだけでこれ程変わるのかと思っていたからね」

 

「折角だ、皆と休憩していけ。」

 

「はい。お言葉に甘えて失礼します」

 

私が休憩するために講堂の中に入っていくとそこにはエイミィやスバルを含めた大勢の生徒が軽食等を用意してくれていて私はそれを受け取ると十三束君や沢木先輩がいた所に足を運んだ。しばらく談笑しているとそこにエイミィとスバルもやってきた。

 

「レナーテ、体調大丈夫?」

 

「大丈夫だよ。多分明日の朝次第だけど学校にも来れるはずだから」

 

「そっかー、良かった。やっぱりいつも彩海奈とかレナーテと一緒にいるから昨日とか何か物足りないって感じがしたからさ」

 

「物足りない?」

 

「うーん、どう表現したらいいかは分からないんだけど何時もの賑やかさが無いって言ったらいいのかな」

 

「エイミィはこう言いたいんだよ。彩海奈とレナーテがいないと寂しいって」

 

「あ、それそれ!さすがだねスバル」

 

「そうだったのね、明日からは私もレナーテも来るから大丈夫よ」

 

「そうだね。明日からまた"いつも通り"の日常だね」

 

「そうね。その"いつも通り"がこれからも続くようにしましょ」

 

この日は軽食を取った後は解散となりこのまま帰ってもよし、まだ体を動かしても良しということになっていた。私は一高の警備について話があると服部先輩に言われたため、服部先輩と共に生徒会室へとやってきていた。

 

「すまない、中条、司波。どうしても現地での警備に余念を残したくなくてな」

 

「全然大丈夫だよ、服部君。それで何処かな」

 

「ああ、この部分だがーー」

 

「ああ、これはーー、ーーになってるよ」

 

「そうか、じゃあここはどうなっている?」

 

「えっと、そこは……司波君、どうなってたかな?」

 

「ここは、ーーーなっています」

 

それから数十分、私と服部先輩、達也、中条先輩は生徒会室にある長机で一高の警備体制、京都内での警備体制、会場内での警備体制について話し合った。それから私は帰ろうとしたところで達也、深雪に呼び止められ私は達也達の従姉妹だという桜井 水波ちゃんと共に学校の帰り道を歩いていた。

 

「何個か聞きたいことがあるがいいか?もちろん隠したいことは濁してもらっても構わない」

 

「私に答えられる範囲であるならばね」

 

「彩海奈は何故下見に参加しない?」

 

「……正直言いにくいけど、上から学校のことにだけ集中しろと言われてるのよ」

 

「上……それは五輪家とは違うのか?」

 

「いいえ、五輪家内のことよ。仮にも私は姉が戦略級魔法師で十師族の1人だからってことでしょうね。余計な面倒は掛けてほしくないし私もそんなことは嫌だもの」

 

「なるほどな。それで次だがレナーテのことだが」

 

「……私もレナーテのことは知ってる事の方が少ないわ。だから本当に答えられる範囲が少ないけれど大丈夫かしら?」

 

「あぁ、大丈夫だ。レナーテと二学期から一高にやってきた白羽 紗那さん何か関係があるのか?」

 

「……無いわ。まだ小さい時にレナーテの母親と何回か会ったことはあるけれど少なくとも白羽先生では無かったわ」

 

「そうか」

 

「ねえ、彩海奈。私からも1ついい?」

 

「うん、大丈夫だけど何かしら?」

 

「芽愛さんと弥海砂さん元気かしら?」

 

「…ふふっ」

 

「な、何よ……」

 

「いやぁ深雪でも芽愛さんと弥海砂さんのこと気になるんだなぁって」

 

「私でもってことは貴女も?」

 

「ええ、九校戦の時とか気になってたからね」

 

「それでどうなのかしら」

 

「至って元気だよ。昨日も来てくれたから特に体調を崩してるってことも無さそうに見えたし」

 

「そう、それなら良かったわ」

 

「それでどうして気になったのかしら?」

 

「私達にも同じような人が身近にいたから、かしらね。」

 

「へぇ……」

 

「それじゃあ、またな」

 

「ええ、また明日」

 

達也達と別れると彩海奈は1人だからと一高近くにある自宅へ歩いて帰っていった。自宅に着くと郵便受けに手紙があったのを彩海奈は注意深く見ていた。このご時世、郵便というものは廃れつつあったがそれでも重要な案件に関しては電子データよりも紙媒体で処理されることはまだ残っているためそれほど不自然では無いがそれでも時期が時期なため注意深く見ていた。

 

家の中に入ると紗綺さんが出迎えに来てくれた。去年までは芽愛さんか弥海砂さんが出迎えてくれたがこれはこれで新鮮味があった。

 

「おかえりなさい、彩海奈ちゃん」

 

「ただいまです、紗綺さん」

 

「その手紙どうしたの?」

 

「郵便受けに入っていました。紗綺さんにも少し見てもらおうと思ったのですが……大丈夫ですか?」

 

「……ちょっとまってて」

 

そう言うと紗綺さんはパタパタと2階に上がりレナーテの様子を見に行った。私はその間に手紙をリビングにあるテーブルに置き、紗綺さんが来るのを待っていた。やがて紗綺さんがやって来ると念の為にということで地下の演習場にやって来ていた。

 

「それじゃあ、開けますね」

 

「ええ」

 

「……これは……」

 

「…やっぱり……」

 

手紙に記されていたのは私が十師族の関係者そして水無瀬の縁者と思われることについて今年の論文コンペに来るなということだった。宛先のところには私の名前が入っていて、差出人のところには何も書かれていなかった。

 

「彩海奈ちゃん……今から私がする事について黙っててもらえる?」

 

「は、はい」

 

「我、汝らに問いかける者なり。この空間にいる物に全てを取り払わん」

 

その瞬間この家にある振動が起きた。それは地震とは違い縦揺れや横揺れは起こらず、この家の敷地内の空気が振動したという結果だけを残した。

 

「ごめんなさいね」

 

「い、いえ」

 

「それでこの手紙の事だけどおそらく伝統派の魔法師でしょうね。こんな時期に十師族の子に手紙何かで送ってくるなんてそれ以外考えられないもの」

 

「私はこのまま行っても大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫よ。あの人たちに会ったんでしょう?それなら外野のことは任せておきなさい」

 

「分かりました」

 

「それじゃ、夜ご飯にしましょう。レナーテさんもそろそろ起こさないと明日からが辛いもの」

 

それから私と紗綺さんはリビングに戻り、レナーテを起こしてから夜ご飯を食べ、身支度をしてから明日に備えて休むことにした。





如何でしたでしょうか?次回は論文コンペまであと少しのところから前日まで持っていきたいと思っています。なので達也達が京都に下見に行く場面はまるまるカットです。

今回もごご読了ありがとうございました。お気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

論文コンペ本番への下準備、『白日の夜』


はい。古都内乱編の最終話前の話です。次で古都内乱編は終わり次は原作では四葉継承編になりますが、彩海奈は四葉家の人では無いので四葉継承編にはなりません。




 

 

論文コンペまであと3日に迫り、一高内では準備が本格的になってきた。今日は京都で使う物を事前に送る日になっており彩海奈とレナーテもその準備に駆り出されていた。それが一段落した時には既に夕刻になっており、彩海奈はレナーテが教室に帰ってくるのを待っていた。

 

「ごめん、待った?」

 

「ううん、帰ろ」

 

「うん」

 

彩海奈はレナーテと合流すると校舎を出て、帰ろうとしたところに達也と深雪から声をかけられ、帰り道にある「アイネブリーゼ」に連れていかれた。

 

「それで聞きたいことは何かしら?」

 

「以前言っていたことだが上の意見は変えられたりはしないか?」

 

「……どういうこと?」

 

「少々、厄介なことになってきた。先週の土日に京都に行った時一条からも協力してもらえることが出来たがそれでもやはり不安は拭いえないからな。それに古式に関しては幹比古以上の手練は彩海奈以外にいないからな」

 

「……家の人以外には言ってないけど、私今微妙な立場にいるのよ。先週私宛に手紙が届いてその内容を要約すると「論文コンペに来るな」ってね。そしていつも誰かに見られているような気がしてならないから。だから私は大っぴらに協力する事は出来ないけれど少なからず力にはなれるわ」

 

「それだけで十分だ」

 

「それなら帰ってもいいかしら?上のお達しで基本は学校にいる時以外はあまり外にいないで欲しいって言われてるのよ」

 

「それはすまないな。論文コンペの時は頼りにしているからな」

 

「ええ、それじゃあね」

 

私達は『アイネブリーゼ』を出て、家に向かって歩いていると九重 八雲さんに出会った。

 

「いやあ、久しぶりだねえ」

 

「お久しぶりですね。リーナの時以来ですか」

 

「そうだねえ。それで隣の子は初めましてだね、レナーテ・アルベルタさん」

 

「っ…どうして私の名前を知っているんですか?」

 

「君の名前を調べるのは容易だったよ。今年から一高に海外からの転校生が来ていて、夏休みにあのアルベルタ家の人が来ていることを考えてみればね」

 

「それで今日はどのようなご用件でしょうか?」

 

「なに、さっき達也君に誰からか見られてるって話をしていただろう?それは僕だ。気にしていたならすまなかったね。それにしても僕のことに気付けるのは中々だね。何かあるのかい」

 

「何かあったとしても、私のバックに誰がいるのかは貴方ならご存知ですよね?」

 

「それは理解しているよ。もちろんあの家だけじゃなくてそれを支えているのもね」

 

「理解していただけているのならそれで構いません」

 

「本題だ。今回の論文コンペ、君はどうするつもりだい?」

 

「私は一高の現地警備責任者ですよ?行かないわけないじゃありませんか」

 

「そうか、それなら1つだけ忠告しておくよ。決して達也君達の邪魔をしないことだ。そして彼ら「白日の夜」を信じることだ」

 

「前者は分かりました。しかし後者はどういう意味でしょう」

 

「彼らは与えられた仕事は必ずこなす。僕達の中ではそれくらい彼らは評価されている。だからこそそれを信じることを忘れないで欲しい」

 

「……分かりました」

 

それを言い伝えると九重 八雲さんは私の解答を待たずに闇の中に消えていった。私とレナーテは自宅へと戻り今日は家にいた紗綺さんに一応八雲さんとの事を話しておいた。

 

翌々日、今日は論文コンペを明日に控えて一高代表チームと警備を含めたサポートチームは午後から京都へ向かう予定になっている。いつも一高が論文コンペで京都に来る時に定宿にしているCRホテルは高校生にとっては高級すぎるくらいだが、一度定着すれば変えるのも難しいしあえてグレードを下げたいと言う生徒もいないため昔からそのままになっている。彩海奈とレナーテはバスを降り、部屋へ向かうと部屋の机の上に手紙が置いてあった。彩海奈はそれを読むとレナーテに渡し、レナーテが読み終わったところで動きやすい服装に着替えてレナーテは自身に幻想魔法を施し、2人揃って京都の夜の街へと出かけていった。

 

彩海奈は横浜事変の時と同じ格好、レナーテは幻想魔法を施しているため普通の格好だが人目には姉のナフィーナの容姿を弄った格好に見えている。もちろん2人は誰にも止められずに目的の場所へと辿り着いた。

 

「お待たせしました」

 

「……誰だ」

 

「ああ、すみません。レナーテもう解いて大丈夫よ」

 

「ふぅ」

 

「あぁ、もう来てくれたか。すまないな、一高のこともあるのに」

 

「いえ、まだ本番では無いので少し外を見てくるって先輩にいえばどうにでもなります」

 

「……見た目と違ってえげつねえな、お姫様」

 

「お姫様なんて柄じゃありませんよ、私達は」

 

「いや、俺らにとってってことさ。主の孫娘にそのご友人で姉が国家公認戦略級魔法師ってなりゃそりゃお姫様以外ないっしょ」

 

「こいつ、こう言ってるけど本当はお嬢様とか色々考えてたんだぜ」

 

「おい!」

 

「あんた達、いい加減にしな。彩海奈ちゃんもレナーテちゃんも困っているでしょう?それとそろそろ時間よ。一条の坊やと九島の坊やまで動いてるんだから手短に終わらせるわよ」

 

「あいよ」

 

「…うん」

 

「そんじゃ、行くか。お姫様達には俺達の後方支援を頼む。といってもそんなにすることは無いと思うが念の為な。今日の案件は俺らでも滅多に無い案件だからな」

 

その言葉と共に私とレナーテそして「白日の夜」の人達がいた場所は無人の場所となった。私は伊吹さんに、レナーテは明日葉さんに手を引かれて辿り着いたのは……

 

その頃、周公瑾は九島 光宣との戦闘から抜け出し宇治川沿いに時速四十から五十キロの速さで逃げていた。道術の1つである「神行法」だ。しかしここで突如、周公瑾の行く道に空から少女が現れたのだ。

 

「擬似瞬間移動!?」

 

ボブカットの少女がジャンパースカートの裾をなびかせながら、拳にはめていたナックルダスターを突き出してきた。少女と周公瑾の間合いは十分離れていたが、周は右足に強烈な痛みを覚えた。それは立っていられなくなるほどに。そこで周は咄嗟に白いハンカチの陰で右足の感覚を遮断するツボに針を立て、予備に持ってきた最後の令牌を懐から取り出した。ハンカチが落ちた時、周の目の前にはボブカットの少女ではなく赤い拳銃形態のCADを構えた凛々しい顔立ちの少年が立っていた。

 

「一条将輝……」

 

「久しぶりだな、周公瑾。あの時は随分と虚仮にしてくれたものだな」

 

周は宇治川に飛び込もうとしたが、それを制するように爆発が起こった。

 

「一条家の『爆裂』を前にして水に入るのは、爆弾の山に飛び込むのと同じだ」

 

背後からの声に、周公瑾が振り向く。

 

「司波 達也……」

 

周は咄嗟に鬼門遁甲を行使し、達也の横をすり抜けようとしたが達也の手刀が迫った。それは鋼をも断ち切る妖刀の切れ味を持っていることを知っていたため、バックステップせざるを得なかった。

 

「何故、私の鬼門遁甲が通用しないのです?」

 

「鬼門遁甲、見事なものだ。至近距離では効力を失うと聞いていたんだが……お前の術は確かに通じていた。俺にはお前が横をすり抜けようとするのは分からなかった。だがお前の姿は見えなくても、お前の中にある名倉三郎の血の動きは分かった」

 

「名倉三郎の血……あの時の」

 

「血で作った針を打ち込まれでもしたか? 名倉三郎の血が残っている限り、お前は俺から逃げられない」

 

「ここまでですか……」

 

そう言うと周公瑾は大きくため息を吐き、次の瞬間、将輝に向かって跳躍した。その瞬間、将輝はCADの引き金を引いた。タイムラグなく発動するのは『爆裂』。その瞬間、周公瑾の両足、ふくらはぎが内側から弾けた。ふくらはぎが弾け飛び、神行法は敗れ、周公瑾は道路に転がった。

 

「これまでだな」

 

「確かに、ここまでのようですね。ですが、貴方達に私を捕まえることは出来ない。私は滅びない。たとえ死すとも私は、在り続ける!」

 

「一条、下がれ!」

 

達也が叫ぶのと同時に後方へ跳躍する。将輝も同じように周公謹から距離を取った。次の瞬間、周の全身から血が噴き出し、赤い血が、赤い炎に変わる。

 

「ハハハハハハハハハ……」

 

燃え盛る炎の中、延々と続く哄笑。それは火が消えるまで続き、火が消えた後には、骨も残っていなかった。

 

「周公瑾は本当に死んだのか?」

 

「逃げられてはいない。間違いなく、周公謹はあの炎の中で燃え尽きた」

 

「そうか……これで、横浜事変の後始末は完全に終わったのか?」

 

「そうだ」

 

「そうか……危うかったな」

 

「何がだ?」

 

脈略の無い将輝のセリフは、達也にも理解できなかった。

 

「国防軍が操られて、戦車まで出てくるとは。危うく内戦になるところだった」

 

「市街地であれだけ派手に魔法を撃ち合ったんだ。内戦状態には既に足を突っ込んでいた」

 

「ならば、事態の早期収束、拡大前に内乱の鎮圧で『めでたしめでたし』ということか」

 

「そうも言えるかもしれんな」

 

達也の真面目腐った答えに将輝が笑いだし、達也もつられて笑い出した。二人の笑い声は、寂寞たる秋の風に溶けて消えた。そして暗闇の中から2人を呼ぶ声が聞こえた。

 

「いやぁ、お見事だ。司波 達也、一条 将輝」

 

今、彩海奈の目の前では非現実的な出来事が幾らも起こっていた。擬似瞬間移動、鬼門遁甲、爆裂等普通には見れない魔法が立て続けに乱発されていた。それはレナーテも同じようで幾ら幻想魔法を付与していてもその表情だけは読み取れた。

 

「さてと、ちょっくら挨拶してくるか」

 

「ああ、お嬢さん達はどうする?」

 

「少し待ってくれませんか?髪型を変えます」

 

「お?あん中に意中の奴でもいんのか?」

 

「違います。私の容姿一度見られたことあるんで変えるんです」

 

「なるほどな。確かにお姫様方にとっちゃ知られてるから仕方ないか」

 

「お待たせしました。それでは行きましょうか」

 

こうして、私とレナーテ、『白日の夜』の皆さんは達也と一条 将輝が立っている場所へと向かっていった。

 

「いやぁ、お見事だ。司波 達也、一条 将輝」

 

「!?何者だ。姿を表せ」

 

「嫌だ。と言ったらどうする?」

 

「無論、誘き出すまで」

 

そう言うと一条 将輝は周りに向かって『偏倚解放』を放った。しかし何かに当たった音や無効化された音は一切鳴らなかった。

 

「腕前は見事なようだが、もうちょっとだったな」

 

「1つ、聞いてもいいか?」

 

「もちろんだ、司波 達也」

 

「お前は俺達の味方か、それとも敵か」

 

「私はどっちにも付かぬ平等よ。我が主に歯向かわぬ限りは其方等の敵になるつもりは無い」

 

「そうか、それは同じ5人も同じということか?」

 

「……見えるのか、その眼は」

 

その瞬間、風が吹き達也と一条 将輝の周りには6人の男女の姿があった。全員が顔が見えないように仮面を付けており2人を取り囲むように立っていた。

 

「恐れ入ったよ、司波 達也。少々実力を侮っていたようだ」

 

「それは何よりだ。それで俺達をどうするつもりだ」

 

「何、今日は偶々巡り合わされただけで何もするつもりは無い。俺達が追っかけていたのも周公瑾だからな」

 

「そうか、それでは俺達は帰らせてもらおう」

 

「ああ、達者でな。司波 達也、一条 将輝」

 

達也と一条 将輝は彼らを背にして京都市内の自分達の高校が宿泊しているホテルへと戻っていった。そして、彼ら『白日の夜』と彩海奈、レナーテも京都市内へと戻っていった。

 

京都市内に戻ると、彩海奈とレナーテは『白日の夜』と別れた後京都市内を散策してからCRホテルへと戻った。戻るとまだ達也は戻っておらず私達は何食わぬ顔でホテルの中に入った。やがて自分達の部屋に着くと思わずベッドに倒れ込んだ。

 

「大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫よ。全く、横浜事変の時に散々見てきた光景なのにね……」

 

「大丈夫だよ、彩海奈。彩海奈が辛くたって私はずっとそばにいるから。澪さんだって真唯さんだってそう思ってるから」

 

「……全く、私はどれだけの人に支えられているのかしらね…さ、明日は警備よ。レナーテも十三束君と一緒に気をつけてね」

 

「うん、彩海奈も気をつけてね」

 

彩海奈とレナーテは明日の用意をし、夜に行うことを一通りすませてから明日のために眠りについた。

 

彩海奈達が眠りにつき、時間は深夜帯と呼ばれる時間に「白日の闇」は京都新国際会議場のV.I.P.会議室にいた。本来であるならば魔法協会本部にある特別オンライン会議室にいるべきなのだろうが魔法協会本部は今日の営業は終了していたため京都新国際会議場のV.I.P.会議室にいることになった。

 

「以上が本日の顛末になります」

 

『分かった。後はこちらで処理しておく。既に四葉が色々手を回してるみたいだからすることも無さそうだけどとりあえずお疲れ様』

 

「はっ!」

 

『それでどうだった実際に一条の坊やと四葉の坊や、五輪とアルベルタのお姫様は』

 

「一条の坊やはやや実戦慣れはありましたがまだまだと言わざるを得ないです。四葉の坊やはありゃヤバいです。俺達以上のものを持っている。五輪とアルベルタは俺達と共にいてもらいましたがそれでも実戦感覚は恐ろしいものを備えていると言わざるを得ない」

 

『やっぱりあの『灼熱のハロウィン』はあの子かしらね』

 

「俺達の中じゃ、今日確信に変わりましたよ。国防軍の基地襲撃のとこから見ていたが四葉の坊やはこの世界ではごく稀な分解魔法を操る魔法師で、あの質量エネルギー変換魔法は分解魔法の究極形態だ。少なくとも最有力候補でしょうな」

 

『明日葉さんはどう思う?』

 

「私も同じ。伊吹、蓮華もそやろ?」

 

「ああ」

「…コクリ」

 

『全く、貴方達は……それじゃあ会場の警備お願いね』

 

「あいあいさー」

 

通信はそこで途切れた。

 

「それで警備って何するの?」

 

「うん?あぁ、事前に機材とかを持ち込んでる学校の機材の警備だ。他はここの人がやるけど機材だけはうちがやるらしい」

 

「なんでそんな雑用みたいなのやるのよ…」

 

「仕方ないだろ。上からの命令だ」

 

「……でも最近皆でいること無かったから」

 

「確かにな。明日葉と会うのなんて1週間ぶりくらいだな」

 

「そうね……でも皆、それぞれの家があるからね」

 

「だが俺達がいないとこの国の裏側は守れない。四葉なんてクソ喰らえだ」

 

「まぁ、私達は表に知られることは無いから、そこは安心よね」

 

「そうだな……」

 

 





如何でしたでしょうか?古都内乱編は色々な場面をカットしてやりましたが次の話で最終話です。最終話といっても当日の話と次の章へのプロローグ的なものになると思います。

今回の話で本格的に『白日の夜』が出てきたのでまた設定集に載せますので見ていただけたらと思います。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

論文コンペ本番、年末の静けさ

はい。古都内乱編の最終話+原作でいう四葉継承編の編のプロローグです。先日、投稿したように彩海奈は四葉家ではなく五輪家の跡継ぎでも無いためオリジナルの名前の編になります。話自体はこのプロローグを含めてもう1話で終わります。

未来編タイトルにすごい意味のある事だなって思いながら読んで本当に良いストーリーでした。後数巻で終わってしまうのが残念です。


論文コンペ当日、彩海奈は京都新国際会議場の中を巡回したり、来客の誘導、本部への連絡等一高の警備責任者として動き回っていた。今年の総責任者は服部先輩で警備隊の中には十三束くんやレナーテ、一条くんに桐原先輩等今年の九校戦において好成績を残した人が中心に選ばれていた。午前の仕事を終えると彩海奈は警備隊に支給されたお昼ご飯を受け取るとレナーテ、十三束くんと共に食べた。

 

「はぁーー、論文コンペもあと少しで終わりね」

 

「そうだね。一高の発表とかは見れるんだよね?」

 

「確かそうなってるはずだよ」

 

「今年は特に問題も無いし普通には終われそうだよ」

 

「そうなの?去年は何かあったの……って去年はあの年か」

 

「まぁ、去年は大変だったね……」

 

「そうだね……」

 

「とゆうよりそろそろ時間だ。1回本部に戻ってから見に行く?」

 

「そうね、そうしましょうか」

 

彩海奈とレナーテ、十三束くんの3人は会場に戻り一度警備隊の本部により、許可を貰ってから一高の発表の時には席で見られるようにしてもらった。席は事前にこの論文コンペに来ているエイミィとスバルが抑えてくれているらしい。やがて時が流れ一高の出番になると彩海奈とレナーテ、十三束くんは席に着いた。今年の論文コンペのメンバーは代表に五十里先輩、サポートメンバーに中条先輩と三七上先輩が就いている。彩海奈にとって純理論のことについては少しは知っているつもりであったが五十里先輩の発表は彩海奈にとっては未知なるものであった。

 

続いて二高の発表は直前になってメンバー変更があり、九島 光宣が代表メンバーとして登壇することになった。テーマは『精神干渉魔法の原理と起動式に記述すべき事項に関する仮説』。それはこれまで研究が進んでこなかった精神干渉魔法の解明に向けた一歩になりうる発表だった。

 

論文コンペが終わり、学期末試験も終わり12月24日に彩海奈、レナーテ、エイミィ、スバル、十三束くん、芽愛さん、弥海砂さん、達也、深雪、ほのか、雫、エリカ、美月、レオくん、幹比古くんが集まっての2年生組+芽愛さん、弥海砂さんでのちょっとしたクリスマスパーティーが開かれ、12月26日には24日のメンバーから達也達を除いたメンバーで開いた。25日は彩海奈とレナーテを除く全員が親に引っ張りだされたり、知人のパーティーに参加したりと予定が合わなかったためやらなかった。そして12月29日、彩海奈とレナーテは22日から東京に来ている芽愛、弥海砂と共に愛媛の五輪家本邸へと向かった。

 

本邸に着くとメイドとして働いている皆に挨拶をした。その中には昔レナーテが五輪家に遊びに来ていた時に一緒にいてくれたメイドさんもいてレナーテとの久しぶりの再会を喜んでいた。レナーテの母親である白羽 紗那さんは12月23日のうちに既に日本を出国し、今頃はレナーテの姉であるナフィーナさんや夫のレオンさん達と共に年末年始を楽しんでいるかもしれない。そんなこんなで私とレナーテは五輪本邸にある私の部屋に移動した。久しぶりに帰ってきて部屋は整理整頓されていた。

 

「彩海奈の部屋ってこんなに広かったっけ?」

 

「うーん、東京に持っていけるものは持っていって最悪こっちで生活しても困らないようにはしていたからね。多少は減ったけど」

 

「ふーん、それで私と2人で生活するには必要なものは揃ってるの?」

 

「それは大丈夫よ。ベッドはダブルサイズだし、着替えも最悪私のを使えばいいし」

 

「それなら良かった。私、ここに来たことはあったけど彩海奈の部屋に泊まったことは無かったから楽しみだよ」

 

「あれ?夏休みはどうしてたんだっけ?」

 

「夏休みは庭に彩海奈のお父さんがなんか寝るところみたいなの出してくれたじゃん。そこにいたり、真唯さんと愛彩と寝たりしたけど彩海奈の部屋では無かったね」

 

コンコン「彩海奈、いる?」

 

「いるよ」

 

「久しぶり。あ、レナーテもいたんだね」

 

「久しぶり。愛彩」

 

「それでどうしたの?何か用かしら」

 

「研究所、来てくれない?ちょっと話したいことがあるの」

 

「ここじゃ、ダメなの?」

 

「色々説明したいことがあるから私の部屋の方がいい」

 

「わかった。レナーテもついていって大丈夫?」

 

「大丈夫。別にレナーテに見られたところでもう五輪家の人だから秘密にすることないしね」

 

愛彩は彩海奈とレナーテにそう言うと、いそいそと五輪家の研究所に向かって歩き始めた。私とレナーテも愛彩の後を追って五輪家の魔法研究所の中へと入っていった。いつもなら

研究員の人達が右往左往してる時なのだが誰1人もいなくこの広い研究所に私達3人だけの雰囲気が漂っていた。やがて奥にある愛彩個人に充てられている研究室に私、レナーテ、愛彩は入っていった。

 

「それで話したいことって何?」

 

「最近この五輪家の様子が変なの……」

 

「……どういうこと?」

 

「例年、ここは年末年始でもお盆の時期でも稼働を停めることは無かったの。でもこの年末年始だけは停めるってことになったの。」

 

「……それで…」

 

「研究員の人達は帰る家があるから帰省しているけど私には無いからここにいさせてもらってるんだけど……そこである人を見たの」

 

「誰だか分かるの?」

 

「多分ムーン・ザ・ノベンバー社の代表の神無月 正義さんだと思う。何でここにいるのかは分からないけど彩海奈のお父さんとお母さんと一緒にいた。何をしてたかは分からないけど…何かこの五輪家の中で大変なことが起こると思う。私の勘でしか無いけど」

 

「神無月さんが?何でここに……あの人は…」

 

「水無……あそこにいた人だよね……」

 

「それに、ここ最近メイドの人達も彩海奈のお父さんもお母さんも何処か何時もと違うようなそんな感じがする。神無月さんが来てから」

 

「……」

 

「彩海奈は何か聞いてないの?」

 

「何も聞いてないわ。ただ今年は少しだけ何時もと本邸の様子が違うのは分かるわ。それに今年は1日に間に合うように来ればいい。って言われてたから」

 

「……確かに、去年とは違う…ね」

 

「さ、この話はお終い。愛彩はこの話には関係しているとはいえないんだから気にしなくていいわ。それで他に何か無いの?」

 

「それならはい、これ」

 

「これってムーン・ザ・ノベンバー社の完全思考操作型のCADじゃない。これがどうしたの?私とレナーテは神無月さんからテスト作品だけど九校戦でも十分使えたから持ってるけど……」

 

「ちっちっちっ、これはムーン・ザ・ノベンバー社が正式商品として発売する完全思考操作型CADでこれはその中でも私がフルカスタマイズした世界に3つしかない物だよ。もちろんムーン・ザ・ノベンバー社の商品用をベースとして彩海奈とレナーテの魔法特性に合わせたカスタマイズも可能になってるの」

 

「完成したんだ。それで愛彩は何処までこのCADのこと知ってるの?」

 

「発売日は年始で価格はFLTが出してる値段よりかは割安なところってところ。それで明日から予約がオンラインで始まるの。それで予約の抽選で10名にはシリアルナンバー入りで発売する予定みたい」

 

「へぇ…それでそれにもシリアルナンバーみたいなのが付いてるような気がするんだけど……」

 

「あ、彩海奈とレナーテのは私がフルカスタマイズしたから2人の名前が入ってるの。それと彩海奈とレナーテのだけは例えなくしたりしても他の人が使えないようになってるよ。彩海奈とレナーテだけはお互いのでも大丈夫だけどね」

 

「それで3つあるって言ってたけど、私とレナーテ以外の誰に渡すの?」

 

「澪さんに渡すつもり。ほら、まだ体調良くないんでしょ?だから作ってあげた。少しでも楽させてあげたいし」

 

「……そっか、ありがとうね愛彩」

 

「いいよ。それであの術式何だけど…」

 

「あの術式?」

 

「ほら、物質変換魔法のあの術式何だけど……上からストップがかかってる」

 

「ああ、あの魔法……上からってことはお父様……ね…」

 

「副施設長からこんなのが渡されたの」

 

「……なるほど…」

 

「それでどうする?私、オリジナルの術式なら自分のメモリーに残してあるけど……」

 

「いや……いい。私が持ってるのバレたら愛彩も疑われかねないから」

 

「そう、それならいい。あ、ごめんねレナーテ置いてけぼりで」

 

「ううん、大丈夫だよ。彩海奈の驚いた顔久しぶりに見れたから」

 

「ちょっと!?私そんなに驚いてた?」

 

「うん」

 

「はぁ……」

 

「それじゃ、部屋に戻ろう?私も今日からはこっちじゃなくて本邸の方に泊まらせてもらおうって思ってたから」

 

「待って……貴女の部屋あったっけ?」

 

「え?彩海奈の部屋使わせてもらってたけど……真唯さんが好きに使っていいって」

 

「だからあんなに整ってたのね……」

 

それから彩海奈とレナーテ、愛彩は本邸の方へ移動して彩海奈の部屋で色んなことについて話していた。主には魔法のことについて話していた。それでも彩海奈が使うことが出来る『壊淵』、レナーテが使うことが出来る『ローマテリアル・マニュピュレート』については話すことは無かった。次の日には澪と洋史が帰省してきて久しぶりに姉妹姉弟兄妹にレナーテを加えた4人は水いらずに過ごしていった。そして迎えた12月31日の夕方、彩海奈と澪、洋史、レナーテは五輪家全体が集まる前に当主の勇海と真唯に呼び寄せられた。

 

「今日は他でもない。先日、水無瀬家の名代として神無月 正義さんがやってきた。内容としては彩海奈に関してだ」

 

「私、ですか?」

 

「そうよ。貴女に関すること。これからの彩海奈の人生に関わってくる大切なことよ」

 

「水無瀬家から彩海奈を「白日の夜」の正式メンバーとしてそして次期後継者として加えいれることを五輪家に要請してきた。これについてどう思う、澪」

 

「仕方ないことだと思います。水無瀬家は侑那さんが次期当主として確立したことに伴って水面下では侑那さんの次を探さないといけなくなる。そこに彩海奈ちゃんが候補として上がってもおかしくはないと思います。それに私達3人は水無瀬家の直系ですから」

 

「洋史はどう思う?」

 

「僕は水無瀬家のことはあまり知らされていないから判断することは出来ないけど、もし彩海奈が加わるのであれば家族として兄として精一杯サポートしたいと思っています」

 

「だそうだ。それでどうする、彩海奈」

 

「……私…は……

 

今は水無瀬家の要請を断る

 

だって私は五輪 彩海奈だもん。決して水無瀬 彩海奈じゃない。十師族の五輪家の彩海奈っていう人だもの。だから私は今は水無瀬家からの要請は断る」

 

「彩海奈……」

 

「そう言うと思ってたよ、彩海奈。私の方から既に神無月さんには断りの連絡をしてある。その後水無瀬家からも今回は要請を取り下げるって通達が来ている」

 

「なんだ、分かってたの」

 

「それくらい、親だから分かるよ。そして彩海奈のことは芽愛と弥海砂を通じたり、レナーテさんと真唯を介して色々知ってはいたからね。途中までは水無瀬家の要請を断らないと思っていたけど」

 

「そうね……1ヶ月半前だったら私はきっと「白日の夜」に入っていたと思うけどね」

 

 

「論文コンペか……」

 

「そこで「白日の夜」のことを見させてもらってまだ一高校生でしかない私にとって中途半端に関わるのはよそうと思った。やるのなら私が高校か大学を卒業した後、もしくは正式に水無瀬家の次期当主になった時には分からないけど……」

 

「そうだな。彩海奈、高校、大学を卒業したら進路は一任するから。何処かに就職するも良し、五輪家の魔法研究所に来るも良し、とにかく彩海奈が何処に行こうとも僕と真唯、澪、洋史は支持する。だから気楽にしていてくれ。ただ戦略級魔法師というのが世間にバレなければただそれだけでいい」

 

「分かっているよ。ただ私の魔法はおいそれと使えるものじゃないんだけど?」

 

「それについてだが昨年、第五研からある魔法を受け取ったな?」

 

「え、それがどうしたの?」

 

「それだが、今日彩海奈に五輪家の魔法研究所で改良させ完成させた魔法を提供する。私達も知っている通り物質変換魔法はこれまで確認された成功例は無い。故に『灼熱のハロウィン』の時よりも確認されれば世間の目は彩海奈に向くだろう。だがそこに関しては心配はしなくていい」

 

「本当に使っていいの?そして私が使うにはあのことを話さないとお母さんと兄さんは納得しないと思うんだけど」

 

「それについてはもう話していい。これ以上母さんには隠し通すことは出来ないからな」

 

「そう。なら話させてもらうわ」

 

「ああ。この後にでも話せ、母さんも色々心配していたからな」

 

「ほんとよ。彩海奈、これについては澪と洋史も含めて"じっくり"聞かせてもらうわ」

 

「う、うん……」

 

「それじゃ、芽愛さんと弥海砂さんを呼んできなさいな。そしたらメイドの人達もついてくるでしょうから」

 

「うん、わかった」

 

彩海奈に芽愛、弥海砂を迎えに行かせると真唯は夫である勇海の方を向き、こう言った。

 

「"また"ですか」

 

と。その言葉に勇海は何も言えずただただ固まっていた。近くにいた澪と洋史もその声に震え上がっていた。




何処の家庭においても女の人の権力は絶大だと思っています。SAOのアスナしかり、魔法科では深雪とほんとにアニメや原作を見ていてもそう思います。それは五輪家においても同じです。

さて、作品の中では久しぶりに物質変換魔法のお話が次話に出てきます。物質変換魔法は達也が原作で現代魔法学では不可避と言われた魔法ですがそこは次話にて明らかになります。少々お待ちください

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。

評価値が350を超えました。お気に入り登録者の皆様、評価を押してくださいました皆様に感謝です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年には衝撃的すぎる出来事を

はい。原作で言う四葉継承編の2話目です。次からは師族会議編になります。
1ヶ月は経ちませんでしたがすごい期間空きました……やっぱりオンラインで家から出なくなると曜日感覚と時間感覚がわからなくなります……




芽愛さんと弥海砂さんを呼びに行ったら案の定お母さんの言う通りメイドの人達も付いてきた。そして今年は何処かメイド達も緊張して集まっていたが去年とはうってかわり特に五輪家の内部において変わることが無かったために拍子抜けしたような表情で集まっていた部屋を出ていった。そして真唯は終わると彩海奈、澪、洋史、芽愛、弥海砂を自室に通した。

 

「それで彩海奈、澪貴女達は何を知っているのかしら」

 

「……私は「待って」」

 

「私から話すわ。お母さん、洋史、芽愛、弥海砂今から話すことは他言無用よ。絶対に。水無瀬家にも出来れば知られたくはないそんなことよ」

 

「水無瀬家までなの?」

 

「元々は私と彩海奈ちゃんと父さんだけ知ってればいいって思ってたから。だって彩海奈ちゃんが戦略級魔法師になるなんて想定外だったしね。彩海奈の体には今ある魔法が常にかかっているんだけど分かる?」

 

「……え?」

 

「いや、僕には分からない」

 

「私達も分からないです」

 

「じゃあ、彩海奈ちゃん解除していいよ」

 

「ふぅ……」

 

「今まで彩海奈ちゃんが自身に掛けてた魔法は固有名称「平等体系(イクアリティ・システム)」。彩海奈ちゃんが使う魔法がどれだけの大規模魔法だとしてもこの魔法を使っていれば平然と打てるそんなことが出来る魔法なの。ただ何処までが上限かは分からないけど「壊淵」以上の魔法でも彩海奈ちゃんが使えれば使うことが出来るわ」

 

「そして何よりこの魔法は相手に感知されないというところが何より解明されていない点ね。私でも彩海奈ちゃんから言われなかったら分からなかったもの」

 

「どういうこと?色々処理が追いつかないけど……」

 

「つまり彩海奈ちゃんは自由自在に「平等体系(イクアリティ・システム)」を発動出来るってわけ。だから如何なる魔法でも彩海奈ちゃんは常時扱うことが出来るの。こんなこと世間に公表すれば彩海奈ちゃんや私達は数字落ちの烙印を押されるかもしれない。だから私と彩海奈ちゃん、父さんの3人だけの秘密として扱ってきたの」

 

「彩海奈、「平等体系(イクアリティ・システム)」は何時どれくらいの時間使ってるの?」

 

「さすがに学校では使ってないけど、九校戦・横浜事変・吸血鬼捜索の時は使ってたよ。高校に入ってからはそれくらいだから30時間くらいかな」

 

「それで何の代償も無く使えるとは思えない魔法だけど……」

 

「体調は崩しやすい……かな…」

 

「それだけじゃないでしょう?彩海奈、貴女何を隠してるの?」

 

「……最近、使ってなくても体調を崩しやすくなった。今はレナーテの幻惑魔法で何とも無いように装ってるけどちょっとキツイかなって」

 

「やっぱり……彩海奈、今日から私と一緒にいなさい。私も一応は紗那と同じくらいの魔法医療のスペシャリストよ……だから今年は九校戦や横浜事変、京都内乱の時のような時は言わないけどあまり平等体系<イクアリティ・システム>を伴う魔法を使うのは禁止して、普段使う魔法も基本的に使うのはやめなさい」

 

「そんなことしなくても……」

 

「ダメ。彩海奈が使う魔法は余計に体を酷使するかもしれないし少なくとも来月中は最低限のこと以外は使用も禁止するわ。そして私も東京に常駐する」

 

「お母さんが?」

 

「ええ。少し、気になることもあるから」

 

「真唯様、東京では何方に滞在致しますか?」

 

「彩海奈の家に居るわ。そうした方が貴女達も守りやすいでしょう?」

 

「かしこまりました」

 

「それじゃ、この話はお終い。彩海奈以外は戻っていいわよ」

 

彩海奈以外が部屋から出ると真唯はきりだした。

 

「彩海奈、こっちに来なさい」

 

「う、うん……」

 

「貴女も他人がいないところで苦労してたのね……ごめんなさい気づいてあげられなくて」

 

「おかあ……さん…?」

 

「彩海奈、貴女は特に何も無い普通の十師族の子よ。だから貴女には普通でいて欲しかった。でもそれは私がこの五輪家に来て戦略級魔法師となった。だからごめんなさい」

 

「……そんな事ない!私はお母さんの子に生まれて幸せだった。レナーテと一緒に過ごした幼少期や児童期だって、私が1人になって初めて孤立というものを覚えた時にお母さんが一緒にいてくれた時だってお母さんは私のそばにいてくれた。戦略級魔法師になったのも私が望んでなったものだしお母さんは謝らないでむしろありがとうって言ってほしい!」

 

「彩海奈……」

 

「お母さん……笑っていて。私はずっと笑っているから。たまには涙を流すかもしれない。それでも私には水無瀬…いや五輪 真唯っていう私にとって史上最強の味方がいてくれるんだから」

 

「彩海奈……ありがとう。やっぱり私、貴女の母親で良かった。いいえ、貴女が娘で良かった」

 

「私もだよ。お母さん」

 

「……さて何時までそこにいるつもりなの?澪、芽愛、弥海砂」

 

「え?」

 

「バレてたか……」

 

「もう、バレバレよ。でも彩海奈は全く気づいてなかったけど」

 

「あう……」

 

「彩海奈様、今後は私達が命にかえても全力でお守り致します。絶対に」

 

「芽愛、弥海砂頼んだわよ。今彩海奈以上の実力を持ってるのは貴女達だけよ」

 

「かしこまりました、真唯様」

 

「さ、そろそろ移動しましょう。勇海さんもレナーテさんも待ってるでしょうから」

 

「そうね。今年ももうおわりだものね……」

 

それからは五輪家全体で集まり、年越しを迎えた。私にとってこの1年は色々な出来事が重なった1年だった。新年は吸血鬼が現れ、USNA最強の戦略級魔法師アンジー・シリウスと交戦、春休みには旧友であるレナーテと再会し、春にはドイツ連邦共和国のユリアン・へーネスとの邂逅。夏の九校戦では水無瀬家の闇の存在を知り、秋にそれを間近に体験した。九校戦では他にも"あの"四葉家の末席に連なる黒羽家の実力を直に思い知った。これだけでも今年も色々あったのは間違いなかった。

 

「彩海奈、今年はありがとう」

 

「レナーテ……そうね、私こそ今年はありがとう。貴女がいてくれたからこの1年も無事に過ごせたのかしらね」

 

「ううん、そんな事ないよ。彩海奈がいたからこそ私は今、日本にいることが出来ているからね。他にも真唯さん、澪さん、お姉ちゃんにも紗綺さんにも色々お世話になったから」

 

「それもそうね。新年早々貴女がこっちに帰ってくるって聞いた時はびっくりしたもの」

 

「そもそも私、留学っていう扱いだったからね。帰ろうと思えば帰れたんだけどあのタイミングにしたのはお母さんに言われたのとお姉ちゃんとカーラさんの勧めもあったからかな」

 

「ナフィーナさんとカーラ・シュミットが?」

 

「うん。1度ドイツだけじゃなくて世界を見てもいいんじゃない?って言ってくれたから」

 

「そう。なら今の日本は貴女にとってドイツと比べてどう映るのかしら?」

 

「日本人は気楽すぎるわ……達也と深雪は別だけど、それ以外は皆気楽すぎる。あの横浜みたいなことがいつ起こってもおかしくは無いのにね」

 

「ドイツは色々あるの?」

 

「あるなんてものじゃない。反魔法主義の声は日々高まっていってるから……」

 

「日本でも高くなってきてるけどね……まぁいいわ。ありがとう」

 

「ううん」

 

「明日は貴女も会に出席しないといけないから早めに寝ましょう。朝起こすの大変なんだから」

 

「そうだね。それじゃあ寝よう」

 

私とレナーテはお父さんとお母さんに声をかけてから会場を抜けて私の部屋に戻り共に寝た。

 

翌日も特に何かがあるということは無く、変わったことといえばレナーテが正式に五輪家の人として紹介されたことだろう。ただレナーテのことは『五』の関係者のみ知ることとして箝口令を敷いた。会も無事に進行し、今は会に出席している人達が各々、話している。私もレナーテも色々な人に囲まれてお喋りをしていた。

 

「お久しぶりです、五輪様」

 

「翡翠 水望さん……でしたよね?お久しぶりです。所長も夏休み以来ですね」

 

「ああ、久しぶり。今年もよろしく」

 

「こちらこそよろしくお願いします。それで翡翠さんの後ろにいるのは?」

 

「初めまして、五輪のお姫様。ボクの名前は二葉葵 奏。第五研の研究員の1人だ。ああ、二は付いてるけどボクの家は第二研とは何の関係も無いことは二木家から五輪家に鑑定書を送付済みだから大丈夫だよ。それであの物質変換魔法どうだった?」

 

「まだ使ってはいません。ですが今の私ではあの魔法は扱えません」

 

「そうか。今の君ではまだ使えないか……ま、でも何れ必要な時は来るはずだ。ボクが作った魔法だ。君はボクと彼女の作る魔法に対して異常な程に適性があるのは知っているだろう?君が九校戦で使った魔法、戦略級魔法に至るまでそうだったはずだ」

 

「それが、どうかしましたか?」

 

「だからだ。あの物質変換魔法を使ってみて欲しい。そうしたら君がこれまで感じてた世界とは違う世界を知ることになると思うよ」

 

「それじゃあ、私達はこの辺で。勇海様に伝えることもあるから」

 

「物質変換魔法使ったら教えてよ?何処か違和感を感じたら直ぐに改良するから」

 

「分かりました。何かあったら言いますね」

 

そう言うと所長と翡翠 水望さん、二葉葵 奏さんは私の元を離れ会場の中へ歩みを進めた。誰もいなくなった私の周りには五代儀家当主や五月雨家当主がその後にやってきたりといつもの正月と変わらぬ光景を私に見せていた。ただ心の中は何処かモヤモヤしていた。二葉葵 奏さんは「ボクと彼女が作った魔法に異常な程に適性がある」「君が九校戦で使った魔法、戦略級魔法に至るまでそうだったはずだ」と言った。何故戦略級魔法を作ったのが愛彩だということを知っていたのか、何故九校戦で使った魔法を知っていたのかが気になっていた。

 

日付けが変わり、1月2日四葉家から魔法協会を通じて十師族、師補十八家、百家、有力ナンバーズに対してある発表があった。

 

・四葉家は次期当主として魔法大学附属第一高等学校2年の司波 深雪を指名したこと

・司波 達也を四葉 真夜の息子として認知すること

・司波 深雪と司波 達也が婚約したこと

 

新年早々に流れてきた四葉家からの新年の挨拶代わりの発表。これは四葉家が次世代に向け、歩みを進めたこと。本格的に日本魔法師界全体が次世代に向けて歩みを進めるきっかけにもなった。

そしてそれは五輪家も例外では無かった。五輪家は同日午後、魔法協会を通じ、各家に対して次期当主の通知を行った。

 

・2098年3月31日をもって現当主 五輪 勇海が当主の座を降りること

・2098年4月1日に次期当主として五輪 洋史が当主となること

 

が発表された。発表してからは五輪家に対して祝福の電報やこれまでの健闘を称えるメールが沢山流れてきた。その一方で彩海奈に対する婚約の申し込み等も沢山あったことを記しておく。

 

 




如何でしたでしょうか?タイトル通りにはなったと思います。彩海奈が使用している「平等体系(イクアリティ・システム)」の説明は後ほど設定集に加える予定です。

やっぱり何日も家にずっといると疲れるものです。今までの日常に戻るまではまだ相当かかると思いますが皆さんで自粛をしていつか同じような日常を取り戻せるように頑張っていきましょう!

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。

お気に入り登録者数が300人を突破しました!毎回話を出す度に登録者数は減りますが次の話を出すまでには同じか上回っているのでそれをバネにまた新しいお話を出しますね


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

年明けの衝撃と師族会議


1ヶ月ぶりくらいでしようか?お久しぶりです。これまでこの小説は電車に乗っている時間に書いていてそれが減少したので遅くなりました……

やっぱりオンラインって慣れない……


 

 

年が明けて1月2日、四葉家が発表した出来事は彩海奈達もすぐ知ることになった。真唯、澪、洋史は驚いていたが、彩海奈は驚きはしたものの特段普通に装っていた。何故なら彩海奈は元々深雪と達也は四葉の血縁でそれも当主に近い人なんじゃないかと思っていたくらいだから。ただ彩海奈が気になったのは四葉家からの発表の二文目にあった「司波 達也を四葉 真夜の息子として認知すること」という一文だ。確かに達也と深雪は実の兄妹として彩海奈達には認知されている。それなら法的に達也と深雪は結婚は出来ずに達也か深雪、どちらかが四葉家を離れなければならず深雪が次期当主として擁立されたならば達也に四葉家としての居場所は無い。しかしここで四葉 真夜が取った手が達也を真夜の息子として認知することで従兄妹として世間に示し、婚約させ2人とも四葉家に留まらせるという手法を取ったのだ。

 

「達也と深雪が従兄妹ねぇ……ま、驚いたけどそんな大したことじゃないか。達也と深雪が四葉家の一員ってことは何となくは分かってたし、そしたらあの双子姉弟もあの時見せてくれたのも実力のひと握りよね……そう考えたらほんとに四葉家って恐ろしいわね」

 

「どうしたの?」

 

「うん?あ、四葉家が発表したことについて少しね」

 

「ああ、深雪と達也が四葉家の人だったってこと?」

 

「案外驚かないのね」

 

「だって、私四葉家について何も知らないもの。表向き私は五輪家に居候しているただの転校生だと思われてるもの」

 

「そうね……でもおそらく四葉家は既に貴女の身元と水無瀬家のことくらいは割れてるでしょうけどね」

 

「四葉家ってそんなに情報網すごいの?」

 

「まぁ……アルベルタ家には遠く及ばないでしょうけど。国内では水無瀬と並んでるでしょうね」

 

「そっか……」

 

「別に貴女にどうこうあるわけじゃあるまいし、気楽に過ごしましょう」

 

「それで?深雪と達也にはどう接するの?」

 

「何も変えないわよ。深雪と達也が四葉家の人であろうとも私とあの2人は友達だもの。その関係が変わらない限り私はあの2人に対しては同じ反応をするだけ。レナーテもあまりよそよそしくしないでいつも通り接してあげて」

 

「……分かった」

 

それから彩海奈は五輪家に来た来客のお出迎え等をするために着替えてから準備室へと足を運んだ。レナーテは1人になり、することも特に無いため魔法研究所に行き、愛彩と邪魔にならない程度の音量でお喋りをしていた。

 

1月7日、この日は3学期の始まりの日で彩海奈とレナーテも3日前から既に東京にいた。今年はエイミィ、スバル、十三束とレナーテ、芽愛、弥海砂を加えた7人で近くにある神社へ初詣に行った。

 

「おはよう、彩海奈、レナーテ」

 

「おはよう、エイミィ。朝から元気ね」

「おはよう、エイミィ」

 

「いやー、それ程でもないよ。まぁでも今年は新年からいきなりなビックニュースがあったからね」

 

「私も少し驚いたわ。達也と深雪はせめてナンバーズの師補十八家の中の傍流とかなのかと思ってはいたけどまさかよね」

 

「だよね!それと彩海奈のお家も色々あったじゃん」

 

「ああ、兄さんのこと?まぁこれで良かったんじゃないかしら。父さんも後継者問題ということは無くなったんだし私も当主っていう柄じゃないから兄さんがなるっていうのは良かったんじゃないかしら」

 

「そんなものなの?」

 

「え?まぁそうだけど……何か聞きたい事でもあるの?」

 

「彩海奈は高校卒業したらどうするのかなって」

 

「私?そうだなぁ……兄さんが次期当主になって、父さんからは好きなことしていいって言われてるから特に何か無ければ大学に行こうかなとは思ってるよ。将来は愛彩のお手伝いでもいいからそのための知識でも身に付けておこうかなっていうのもありだしね」

 

「レナーテさんは?」

 

「私はお母さんみたいな人になりたい。今はドイツにいるけど私は日本で出来ることをしたいかな」

 

「レナーテのお母さんって何してるの?」

 

「お医者さん。本当にドイツの郊外にある小さな病院なんだけどいつも楽しそうにしてたから」

 

「そっか、じゃ目標に到達出来るように頑張ろうね」

 

「うん!彩海奈も頑張ろう」

 

「もちろんよ」

 

その日は特に何かがあった訳じゃないが何処か空気が重かった。その原因はおそらくというかほぼ達也と深雪が"あの" 四葉家の人でしかも当主クラスだったということだろうと彩海奈は思っていた。彩海奈は予想としてエリカやレオくんは平気だろうけどその他、特にほのかにとっては夢にも思ってなかった出来事だと思っていただろう。私だってほのかと同じ立場だったら現実逃避したくなるような出来事だったに違いない。そのような事を考えながら彩海奈はレナーテ、エイミィとスバルといつもの通学路を歩いていた。

 

「(家に灯り?ああ、そういえばお母さんがこっちに来る日だったっけ芽愛さん達と一緒に)」

 

「ただいま」

「ただいま、です」

 

「お帰りなさいませ、彩海奈様、レナーテ様」

 

「ただいま芽愛さん。お母さんもいるの?」

 

「はい。現在はリビングにてお寛ぎになられております。お呼びしますか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

彩海奈とレナーテが自宅に戻るとそこには母親である真唯の他に姉である澪、兄の洋史もそこにはいた。

 

「お帰りなさい、彩海奈ちゃん、レナーテさん」

「お帰り、彩海奈、レナーテさん」

 

「ただいま、何でここにいるの?」

 

「今日、東京に帰ってきたから。お母さんと一緒に来たから」

 

「そう、それで今日はどうするのかしら?泊まっていくのなら準備しないといけないのだけれど」

 

「すぐ帰るわよ。ついでに寄っただけだから」

 

「またね。彩海奈、体調には気をつけてね」

 

「うん、兄さんこそ気をつけて」

 

澪と洋史、弥海砂が家から出ていくと部屋の中には彩海奈とレナーテ、真唯、芽愛の4人が残っていてそれぞれが席に座った。

 

「さて、澪もいなくなった事だし貴女に伝えておくけど今度、師族会議があるのは知ってるわよね?」

 

「もちろん。今年は今後の十師族を決める選定会議も含まれていることも」

 

「そこでとある外国勢力によっての無差別テロが起きるわ。これは水無瀬家からの情報よ。だからほぼ100%起きる」

 

「で?それがどうしたの?」

 

「あら、冷静ね。そこにはお父さんが出席するけどもし襲撃されたら貴女のところに緊急通信が行くけどそれは無視なさい。「白日の夜」の方達がお父さんのところに向かう算段になってるから」

 

「分かりました」

 

「物わかりもいいのね」

 

「私は五輪家の一員だから。五輪家の上層部がそう判断したのなら私が出る幕じゃないと思うし。それに十師族の当主が集まる師族会議の場所にその子息が集まったら格好の餌食にもなる。そして達也や深雪、七草さん達が学校から居なくなったら誰が纏めるのよ……」

 

「さすがは水無瀬の血を受け継いでるわね……」

 

「私がもし、水無瀬の血を受け継いでなくてもそうしてたよ。それに私の隣にはレナーテもいるから」

 

「それもそうね……話はそれだけ私も疲れたから少し休むわ」

 

「かしこまりました、真唯様。こちらになります」

 

「ありがとう、芽愛。それじゃおやすみ、彩海奈そしてレナーテさん」

 

「おやすみなさい、お母さん「真唯さん」」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

月日は経ち、今日は2月4日師族会議当日、十師族の当主は箱根の郊外にあるホテルに集結していた。会議の出席者は一条 剛毅・一条家当主、二木 舞衣・二木家当主、三矢 元・三矢家当主、四葉 真夜・四葉家当主、五輪 勇海・五輪家当主、六塚 温子・六塚家当主、七草 弘一・七草家当主、八代 雷蔵・八代家当主、九島 真言・九島家当主、十文字 和樹・十文字家当主、十文字 克人・十文字家当主代行。この会議が開かれている場所を知っているのはこの11人のみであり、それ以外は知らない。会議開始冒頭、十文字 和樹から十文字 克人への世代交代が行われ同時に次の師族会議ではお目にかかれない五輪 勇海・五輪家当主へのこれまでの労いを称えた。

 

その後、一条家と四葉家、七草家を巻き込んだ四葉家次期当主の決定及び婚約に対しての騒動、四葉 真夜からの色々な報告や九島家が十師族を降りることや七宝家が明日の選定会議において臨時の十師族として入ることが決められた。そこで1日目の会議は終了した。勇海は会議が終わり宿泊する部屋に帰ると今日起きた出来事を振り返っていた。

 

「(先日、四葉殿から言われたこととほぼ同じような結果になるとは……まるで未来予知をしているかのようだ……。そして一条殿が四葉家の婚約について異議を唱えていたのは知っていたがまさか将輝殿を四葉家に差し出す勇気さえ持っていたとはな)」

 

師族会議が始まる1週間前、五輪 勇海の元には四葉家当主四葉 真夜から電話が来ていた。内容は次の週にある師族会議において。当該会議において一条家が四葉家次期当主の深雪に対し婚約を申し込み、もしかしたら将輝殿を四葉家に婿入りさせるかもしれないとまで話していた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

同日、何時もと同じように登校した彩海奈とレナーテは不思議そうな眼で周りから見られていた。その視線を感じ取ったのか彼ら彼女らの意を汲み取ったエイミィが話しかけた。

 

 

「おはよう、彩海奈、レナーテさん」

 

「おはよう、エイミィ」

「おはようございます!エイミィ」

 

「それでどうしたの?私が今ここにいる理由が気になってるんでしょ?」

 

「う、うん……」

 

「今日は師族会議だから十師族の私がどうしてここにいるのかってことでしょう?残念だけど私は師族会議に呼ばれたことなんて無いわよ?そもそも師族会議は当主だけしか出れないし開催場所に至っては当主だけしか知り得てないの。だから今日何処にいるかさえ知らないもの。達也や深雪、それに七草先輩も出たことは無いはずよ。十文字先輩は当主代行だからあるでしょうけど」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「そういうものよ。ま、私にはもう縁もない出来事だけどね」

 

「あ、そっか……」

 

「ま、あんな当主の人達と面と面向かって話し合うなんてそれだけでも気が滅入るからそれは良かったんだけど」

 

「そうなの?」

 

「だって、2日間も一緒に居てお話するなんて精神削られまくりよ……私には無理」

 

「あはは……」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

翌日、今年の師族会議の開催場所である箱根のホテルには九島家を除く師補十八家当主が顔を揃えていた。会議は順調に進み、次の十師族を決める選定会議も特に問題なく進んだ。そして次の議題に移ろうとしたその時、出来事は起こった。何処かで爆破したような衝動、それに追随するように建物が縦横に揺れ動くそのような衝動が起こった。

 

同時刻、彩海奈を始めたとした師族会議に出席している人達の子息に緊急通信を告げるアラームが鳴り響いた。





如何でしたでしょうか?師族会議編は少しオリジナルも含ませます。

最近はこのハーメルンだけじゃなくて色々な小説サイトでも色々な小説を見る機会が多くなり色々な小説の書き方があるんだと勉強になってます。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

師族会議襲撃、見えない敵

お久しぶりです。といっても覚えてる人はいるでしょうか?もしいたらいたで心の中で言ってください。

魔法科も完結しちゃいましたね。と思ったらのまさかの続編!キグナスのはWebサイトにあったから知ってましたがメイジアン・カンパニー編が出てくるのは予想外でした。

その間にこの話のセーブデータが吹き飛んだのは懐かしい思い出です。


師族会議が行われている場所で襲撃があった。私はその事を緊急通信を知らせるアラームで知った。授業中に鳴り響いたその警告音、だが私はそれを切ると先生に続きを促した。しかし先生はそれでも私の事をずっと見つめていた。仕方なく私は立ち上がり、先生に事情を説明するとすぐさま授業の続きに入っていった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

その一方で達也や深雪、水波を始めとした十師族関係者は授業を早退し、一路箱根郊外にあるホテルへと向かっていた。そこで香澄はある違和感に気付いた。

 

「そういえば…五輪先輩は来てない…ですね」

 

「確かに。あの人の性格上来てもおかしくはないように見えるから……」

 

「彩海奈か……確かにそうだな。彩海奈は何処か1人で何でもやってしまうということが見受けられるがそれなりに家族思いの所もあるからな……それに彩海奈のことは香澄や泉美の方が詳しいと思うんだが……」

 

「私達姉妹が初めて五輪先輩に会ったのは確かに10年以上前のパーティーでお見かけした程度でそれ以降は高校に入るまではお話すら聞かなかったですよね、香澄ちゃん」

 

「はい。確かに五輪先輩とは10年以上前のパーティーでお見かけしたのが最後です。だから去年五輪家の令嬢が一高に来ることを聞いてびっくりしました」

 

「つまり、七草達はあまり五輪先輩について知らないのか」

 

「あんたねぇ……ま、その通りなんだけど」

 

「司波先輩、私は1度だけお父様が話をしているのを聞いただけなので正確な情報とは言えないのですが五輪家には五輪家とは別にある組織が当主や当主夫人を始めとした上層部の護衛がいるみたいなのです」

 

「どういうことだ?」

 

「あくまで噂です。ですから何処まで信ぴょう性があるかは分かりません。そしてその護衛は当代において最高と言われる魔法師が関わっているそうです」

 

「当代において最高……か。少なくとも十師族では無いことを前提とすると古式魔法師或いは俺達十師族でさえ把握出来ていない隠れた名家があるということか」

 

「達也様……」

 

「心配するな、それよりも今は母上や香澄、泉美、七宝の親御さんの方が心配だ。」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

達也達が箱根郊外のホテルに向かっている時、十師族の当主達は現場に駆けつけた警察官によって囲まれていた。達也はその姿に何も不思議には思わなかったが泉美と七宝琢磨は親の元に駆け寄っていった。達也はそれを見て泉美立ちを引き止めた。その様子を真夜、勇海以外の十師族当主達は興味深そうに見ていた。特に七草 弘一、一条 剛毅の眼差しは特に強い関心を達也に宿していた。

 

その後、すぐに駆けつけたのであろう一条 将輝と言葉を交わし入れ替わりに十文字 克人が達也達のところへやってきた。

 

「司波」

 

「警察の事情聴取は一段落ですか、十文字先輩」

 

「いや、お前達にもこの状況を説明する必要があると思ってな……君はもしや、七宝殿の?」

 

「はい。七宝 琢磨です。はじめまして」

 

「十文字 克人だ。よろしく頼む」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「この子は桜井 水波といって、家で預かっている1年生です」

 

タイミングを見つけ、達也は克人に水波を紹介した。水波は克人に丁寧にお辞儀をするとそれだけで克人は水波が四葉家の使用人の1人であるところまで察したようだった。水波に対して目礼で返すと克人は話を戻した。

 

「お前達は緊急通信を受け取ってここに来たのだろう?見ての通り、四葉殿、七草殿、七宝殿はご無事だ。小さな怪我もされていない。……そういえば五輪はどうした?」

 

「彩海奈ならまだ学校にいると思います。自分達が通信を受け取った時には一緒に来ていませんから」

 

「なるほどな……その件に関しては後で俺から五輪殿に聞いておくとしよう」

 

「ところで、何が起こったか教えていただいても構いませんか?」

 

「うむ、他の方々への説明もあるので簡単になるのだが……実は我々にも詳しいことは分かっていないのだ」

 

その後、克人は達也、深雪、香澄、泉美、琢磨、水波に起こったことを説明した。その説明が終わると香澄が七草家の長男の智一を見つけ、そこで達也と深雪と水波、香澄と泉美と琢磨に分かれ行動することになった。達也は真夜の無事を確認したので深雪、水波を伴って帰ろうとしたところ一条 将輝の姿を見つけ、少しだけ話をした後東京へ舞い戻った。

 

その後、十師族当主達は一条 将輝が箱根に来るまでに使ったヘリに搭乗し横浜ベイヒルズタワー内にある魔法協会関東支部へ向かいそこで緊急の師族会議を行った。そこでは十師族としてテロを非難する声明を出し、捜査に全面的に協力することにした。それ以外に十文字家を責任者とし、七草家を主力とする臨時的な義勇軍を編成した。そこで遣わす人選に議論が起こった。四葉家は達也、一条家は将輝、五輪家は従者2名を遣わすことになったのだがここで問題が行った。

 

「五輪殿、なぜ従者2名をこの捜査に遣わすのでしょう?」

 

「今、東京には彩海奈がいるのは皆様ご存知かと思いますが以前から関東のことについて色々な独自の視点から調べていたので。その観点から見ても自由に動けることや四葉家の達也殿、七草家の真由美殿や十文字殿にも面識はあると報告を受けておりますので」

 

「確かに、如月 芽愛、如月 弥海砂両名に関して面識はあります」

 

「そしてもう1つ、私から報告したいことがあります。先日、五輪家は代替わりすると報告しましたが本日の事を受け、無期限で延期することにしました。このような情勢の中、代替わりすることは望ましくないと考えました」

 

「確かに、この状態が何時まで続くか分からないままなのは好ましくはありませんな」

 

「三矢殿の仰る通りです。この不安定な情勢が続く以上十文字家のような理由が無い以上当主を交代するというのは確かに望ましくないですね」

 

「ありがとうございます」

 

そこで臨時師族会議は終わり、各当主達は本邸へと足を急いだ。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

その日の夜、彩海奈とレナーテは途中で早退した達也、深雪、泉美の分の生徒会業務を行い帰宅した。当然3人がいない分分量は多かったがそこはレナーテもさすがに手伝った。家に帰ると家には光がついておらず中に入っても何処の部屋も電気はついていなかった。

 

「真唯さんはともかく、芽愛さんも弥海砂さんもこの時間になってもいないって」

 

「確かに、母さんはともかく芽愛さんも弥海砂さんも紗綺さんもいないのはおかしいわね」

 

「どうする?箱根のこと調べる?」

 

「いいわ。母さんが「白日の夜」が動くって言っている以上私達が出る幕ではないわ。私は五輪家から魔法の使用を禁止されているから、それに貴女は仮にも戦略級魔法師よ。貴女が動けば四葉はそれに勘づくわ。八雲さんもある程度は気にかけてくれるでしょうけど信用たる相手では無い。国防軍にバレた日には五輪家の信用は地に落ちるでしょうね」

 

「そっか……じゃあこの件はノータッチだね」

 

「そうよ。例え、今後は達也達が協力を求めてきても幾ばくかの後方支援に留めましょう。これまで達也達は一般の家系ということで個人的に協力をしてきたけど今は四葉家の一員よ。達也がこの件に関わるならば私達が協力するには師族会議の了承が必要になる。でも貴女ならこの件に関われるから間接的に私への協力依頼は出来るけどどうするのかしらね」

 

「もし、私に協力依頼してきて私が彩海奈に協力依頼したらしてくれる?」

 

「もちろんよ。実戦に立つことは不可能だけれど貴女のためなら幾らでもしてあげる」

 

「そっか、その時はよろしくね」

 

「もちろんよ。それじゃ、着替えて夜ご飯にでもしましょうか。さっき芽愛さんから冷蔵庫に作ってあるのが置いてあるって連絡来たから」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

『それじゃ、今日からしばらく3人でということになるからよろしくね』

 

「分かったわ」

 

『この件に関して私達は何もしなくていいわ。伊吹、明日葉からも連絡があったから。それで問題なのはレナーテさんを介してのことだけど……』

 

「それに関しては協力することで私達の中で話がついてるわ」

 

『あら、そう。それじゃそこに関して問題が無いなら何も言うことはないわ』

 

「協力してもいいの?」

 

『私からは特に何も無いわ。あくまでレナーテさんを介してだから間接的には五輪と四葉が協力しているでしょうけど間にレナーテさんという一般人が入っている以上師族会議の了承は必要ないわ。これはお父さんも同じ意見よ』

 

「そうですか」

 

『彩海奈、もしレナーテさんや一高が襲われることがあったら貴女が対処しなさい』

 

「魔法、使っていいの?」

 

『そこに関してはとやかく言うつもりは無いわ。レナーテさんや一高のことを考えたら貴女が使っても何かを言うつもりは無い』

 

「分かった」

 

『ただ、1つだけ約束して。辛くなったら決して無理しないこと。もし辛くなったらレナーテさんや紗綺さんに連絡すること。これだけは守って』

 

「わかった。絶対に連絡する」

「私も彩海奈が無理してるように見えたら止めさせます」

 

『お願いね。それじゃあ今日はもうこれでね。私と芽愛と弥海砂は本邸にいるから帰るのは明日以降になるわ』

 

「分かったわ」

 

『それじゃあ、おやすみなさい。寒いのだから暖かくして寝るのよ』

 

「おやすみ」

 

彩海奈は真唯との通話を終えると近くにあったソファにもたれかかった。そこにレナーテが話しかけた。

 

「師族会議?ってそんなに大きな集まりなの?」

 

「ええ、十師族の当主が一同に会する会議だからね。それに今年はこれから8年の十師族を決める選定会議だから、そこでテロを起こさせられたら日本の魔法師界にとっては大打撃でしょうね」

 

「へぇー、そんな大きなことなんだ」

 

「まぁ、余程のことが無い限り師族会議と縁が出来ることは無いでしょうから……」




如何でしたでしょうか?前から変わった部分はないでしょうか?

既に始まってますがTVアニメで来訪者編やってますね!自分はまだ見る時間が取れなくて溜まってますがボリューム的にワンクールで終わらせるのか続けてやるのか気になってます。あれだけ話も長いですしね。

ご読了ありがとうございました。もし少しでも良かったって思ってくれたら感想、評価登録よろしくお願いします。この話の次の話もできるだけ早く更新したいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。