深夜のコンビニバイトは忙しい時もある。 (秋涼)
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深夜のコンビニバイトの仕事

ぼちぼちの更新速度でやっていきたいと思います。
物語にお付き合いしてくださる方がいらっしゃいましたらよろしくお願いします。


人の気配が全くない夜の町をバットを片手に歩いていく。

家の中では人の気配があるが、窓にはカーテンや雨戸がかけてあり、中の様子は伺えない。

この町では幽霊やお化けといった物が出る。夜に外に出ればすぐに見つけるぐらい頻繁にいる。

ただ徘徊する物、猛スピードで走りまわるもの、音に反応して襲い掛かってくるものなどバラエティに富んでいる。

ユイ曰く、昔ほど多くはないと言っていたが、これで少なくなっているとか昔はどんな魔境だったのか想像したくない。

普通の人が外に出ると命の危険がある為、緊急時や突然物がほしい時に俺がバイトしているコンビニが対応するという形になっている。

救急車などを呼ぶ必要がある場合は、スムーズに搬送できるように救急車のルートに奴らが出てこないように掃除する必要がある為、急いでやらないといけないが、今回は緊急は緊急でもトイレットペーパーが切れたので持ってきてほしいという依頼なので、依頼した本人にしてみれば緊急だが、ゆっくり安全にいけるので比較的楽だ。

こちらに寄ってくる白いお化けの頭をバットを振りぬいて消し飛ばし、頭に包帯を巻いたお化けをゆっくり歩いてスルーする。時々、音もなく走り寄ってくる危ないやつが出るので後ろにも警戒を忘れないようにしなくてはならない。最近やっと見ていなくてもお化けの位置とかが分かるようになってきたが、そいつは動きも早いし気配も読みにくいので探知するのが遅れてビビるので勘弁してほしい。

まぁそいつにビックリさせられた店長が一時的に執拗に狩りまわってたから最近あまり見ないけど、絶滅してくれないかなあいつ。

 

目的の家につき、インターフォンを鳴らす。すると玄関が明るくなり。

扉から少し体格のいいおじさんが出てくる。自分を見たあと少しあたりを見回していた。

 

「こんばんは、お届け物です。」

 

「今日は岸沼くんか、いつもすまないね」

 

「いえ、仕事ですから、ちょっと前まで人がいなくて少しつらかったですが、今は夜に歩ける人員が増えたので楽ですよ」

 

「店長やユイちゃんとかのおかげで随分と暮らしやすくなったよ。昔ほどじゃないけど夜出歩くのは危ないしね、助かるよ。これお金、お釣りはいいから帰りに飲み物でも買いなさい。」

 

「ありがとうございます。この前、配達の帰りに自販機によったら買った瞬間に自販機の下から出てきた腕に缶ジュースが持っていかれたので、バイト先に戻ったら売り上げに貢献しますよ。」

 

「幽霊とか信じてなかったけど、この町に住んでるとそれが当たり前に思えてくるよ。それじゃありがとう、気を付けて帰るんだよ。」

 

「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」

 

挨拶をして、扉が閉まって鍵がかかるのを確認したのち、アルバイト先へ引き返す。

多少の危険があれど、人に感謝されてる、貢献できるこのバイトは割と気に入ってる。給料もいいし

 

音に反応するお化けの横を通りすぎる時に、マナーモードにしているスマホに音鳴らして電話してくるのやめてくれませんかね、メリーさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニに戻り、代金の処理とお釣りで自分の飲み物を買い、飲み物にレシートを張り付け、事務所に入る

 

「おー、ごくろー」

 

事務所の机にもたれながらスマフォを弄ってるユイがこちらを見ずに言ってきた。こいつはここの店長の義妹で俺にこのバイトを紹介してくれた人でもある。自分が一人暮らししてるアパートの隣に学校が近いからと住んでいた住人である。学校では幼馴染のハルの真似をしてるのかおしとやかに振舞っているが、時々素が出ているので隠しきれているかどうかは謎である。見た目はポニーテールにしているが、顔は整っている為、清楚なお嬢様に見えないことはない。俺?引っ越しの挨拶の時に頭ぼさぼさでジャージ着て腹掻きながら出てきた時に幻想は捨てたよ。

 

バイトを始めた当初は恨みもしたが、今は紹介してくれたことを感謝してる。店長が補助してくれてるとはいえ、週2夜勤で働くだけで学費こみで生活できる分の金を稼げるのはここだけだ。

 

「おう、で雑誌の返品処理とかもう終わってんの?」

 

「終わってるから遊んでるー、そこにダンボールあるでしょ」

 

ユイが指差したほうを見ると積まれたダンボールが見えた。

 

「じゃあ、今日は連絡とかがなければ朝までゆっくりできそうだな。」

 

「そうそう、明日の夜勤は私じゃなくて店長が出るからよろしくね」

 

ユイがシフトの変更とは珍しい、ユイが管理者で今は町の老人たちが協力して手入れしてくれている理様の神社で何かあったのだろうか。

 

「なんかあるのか?神社関係とかで」

 

「神社関係とはいえば関係だけど、良樹は自衛隊の三沢さんって知ってるでしょ?」

 

「あぁ、俺と晴海ちゃんと先生をヘリで回収してくれた自衛隊の人だよな。その人がどうかしたのか?」

 

寡黙だけどこちらを気遣ってくれる真面目な人だったのは覚えてる。

 

「なんか、良樹達を回収するときになんか見えちゃったらしくて、それから夢で毎晩うなされてるらしくてなんとかできないかってこっちに話が来たのさ」

 

「精神病的なやつじゃなくて見た時に縁みたいなのが結ばれちゃって、三沢さんを引きずり込もうとしてる感じか」

 

「そそ、だから縁を切り離すなら私の出番かなって」

 

ユイはいつも開封式のシザーケースに紅い裁ち鋏を持ち歩いてる。

これは理様の祭具であり、神具で色々なものの縁など色々なものを断ち切ることができる。ありがたい鋏である。

そんな神具を普段から持ち歩いたり、普通に紐を切る等道具として使っているのはどうかと思うと前に言ったことがある。

するとユイ曰く、持ち歩かないと鋏が泣くし、違う鋏などを使うと理様の機嫌が悪くなるらしい。使う時に用途に合わせて形や大きさを変えてくれるらしく便利であるとも。

 

「ああいう異界みたいなのは慣れててもつらいし、繋がりは断ったほうがいいな。」

 

「理様と私がいるなら大丈夫でしょ」

 

ユイはスマホを弄りながらなんでもないようにいった。

 

「あ、虹演出きた」

 

「ガチャ引いてたのかよ」

 

 




普通のサイレンなのにNew Translationばりの動きをする。訓練をうけたコンビニバイト芳樹
途中から出てきてあう屍人を張り付けにしていく前作のコンビニバイト、今作店長のせいでサイレン編は割とひどいことになってます。

生き残った生存者はユイが堕辰子の呪いと異界との縁を断ち切って現世帰還してます。


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深夜のコンビニバイトのお仕事2

誤字報告ありがとうございます。あと感想ありがとうございます。
モチベーションがあがります。


「では文化祭の準備は来週からお願いします。班に分かれて作業をお願いします。」

 

委員長こと篠崎がそう言い、黒板の前から自分の机に戻るのを確認した後。

担任ではなく副担任の結衣先生が教卓の前に立った。

今日は結衣先生が音頭を取るらしい。

 

「週末だけど羽目を外しすぎないようにね。来週からは文化祭の準備だからみんなよろしくね。じゃあ解散」

 

結衣先生の言葉でにわかに教室が騒がしくなる。

 

すぐにカバンを持って教室を出るもの。友達と談笑するものと放課後の過ごし方はひとそれぞれだ。先生じゃないほうのユイは仲がいい篠原と話している。

 

「良樹、土日どっちか暇か?」

 

ユイを眺めていると哲志がこちらの週末の予定を聞いてきた。

 

「日曜の午後なら平気だな。午前中は多分寝てると思うから家についたら起こしてくれればいい。」

 

「分かった。この前買ったゲームの続きやろうぜ」

 

「おう、また日曜にな」

 

哲志とくだらない話をしていると教室の扉から須田先輩が顔を出す。

俺と目が合うと口パクで早く行くぞといって扉からまた消えた。

 

「わるい哲志、そろそろバイトだし、先輩来たから俺行くわ」

 

「おう、また日曜な」

 

哲志の返事に軽く腕を上げて答えた後。ロッカーに入れてあったバイト用の道具やら着替えやらがはいったリュックを出して背負って、須田先輩が出て行った扉へ向かう。

 

「ユイ、俺の学校のカバン頼むわ」

 

扉に出る際に篠原と隣のクラスから来たこともと話しているユイに声をかけていく。

学校の近くに自分とユイが住んでいるマンションがあるのでユイに持って帰ってもらおうということだ。隣の部屋に住んでいるので受け取りにいくのはいつでもいいだろう。

返事はなかったが手で返事をしてくれたのでそのまま出ていく。

篠原がユイをからかう声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう

扉の外で待っている須田先輩に声をかける。

 

「お待たせしました。」

 

「お疲れ、じゃあ行くか」

 

須田先輩と呼んでいるし実際学校では先輩だが、コンビニバイト歴は一年俺のほうが長い。

オカルト好きの先輩でよく色々連れまわされていたが、去年の夏に連れていかれたのはまじでやばかった。

色々あってお互い無事だったが、コンビニバイトをやっていなかったら本当に死んでたかもしれない。

 

一緒に校舎を出て、駅から電車に乗る。

ここから1時間ほど急行に乗る。

 

線路が随分と前に廃線になっているので、コンビニがある町までは普通に移動しようとすると最寄り駅から山を迂回してからバスでさらに40分ぐらいかかる。その為自分たちアルバイトは山を訓練を兼ねて町まで駆け抜ける。

普通の人が山から町へ行こうとすると1時間ぐらいかかるが、比較的移動しやすい道を覚えた上でパルクール技術を駆使すれば、大体10分~20分ぐらいで移動できる。

一番早いのは店長だが、動きを見てるともう人間かどうか怪しいので時間計算には入れてない。

 

降車駅へもうすぐ着く頃になると電車に乗っているのはほぼ自分と須田先輩だけになり。目立たないように足首を回したりして軽くストレッチをする。

カバンの中に手を入れ、軽くお札を張った特殊警棒を目立たないように持つ。

山道は一応清められているが、夕方あたりになると時々迷い込んでくるのがいる為、念のために武器が必要になる。

 

駅から出ると日が傾き始めていた。

俺たちは山道の入り口で再度ストレッチして一気に駆け出す。

山道といっても木がないだけで道が整備されているわけじゃないので割と道が凸凹していたり、道の真ん中に大岩があったりと結構荒れている。それを一気にかけあがったり、石から石へと飛び移ったりをしながらバイト先へと急ぐ。ここを走るのも慣れてくるとパルクールみたいなことも出来てきて楽しくなってくる。

ここを駆け抜けられる体力と技術がなければ、去年の夏で死んでいたと思うし、もうああいうことに巻き込まれるのは一生にあるかないかだろうけど、妥協せずに訓練を続けたいと思う。

 

バイト先のコンビニがある町に着いて息を整えていると、須田先輩が遅れてきた。

バイト歴が長い分俺のほうが早いが、そのうち追いつかれそうだ。

 

「やっぱまだ勝てないな、申し訳ないけど焔薙(ほむらなぎ)取りに家に寄ってもらっていいか?」

 

「いいっすよ。ちょうど通り道ですしね。」

 

須田先輩は去年の夏の事件がきっかけで知り合った女の子と付き合いはじめ、高校を卒業と同時に結婚する予定らしい。新居にはまだ須田先輩は住んでいないが、先に彼女さんが暮らしている。住んでいないといってもほぼ住んでいるようなものらしく、須田先輩の両親も呆れているらしい、就職先はこのままコンビニなのか分からないけど、あれほど苦労したのだから幸せになってもらいたい。

彼女のほうは目が見えないけどものすごく美人である。もげろ

先輩は怪異を祓うのに夏の事件で拾った焔薙(ほむらなぎ)という刀を使っている。さすがに学校等には持っていけない為、家で大事に保管しているので、バイトするたびに毎回刀を取りに行っている。

ちなみに彼女さんのほうは夜勤ではなく、昼間のコンビニでレジ打ちをしている。

犬のケルブと他人の目があれば仕事ができるらしい。視界ジャックはすごいな。

 

 

「恭也!」

 

先輩の家につき、先輩がドアに手を掛けようかという瞬間に家から出てきた彼女さんが先輩に抱きつき、いちゃいちゃしながら家の中に入っていった。彼女さんは今日は休みらしい。色々あったから幸せになってほしいといったが、見てるほうはなかなかイライラしてくる。もげろ

 

しばらく待っていると。竹刀ケースを背負った先輩と彼女さんが出てきた。

彼女さんは須田さんが見えなくなるまで手を振っていた。

 

 

コンビニへ着くと店長の奥さんである、ことねさんがレジの精算をしていた。

今日のシフトは店長のはずだが何かあったかというと友人のカメラマンがなんか心霊現場やらを取材に行くって言って行方不明になったので念の為調べに行くらしく、朝お願いされてそのまま仕事をしているらしい。

 

なにか嫌な予感がしつつ、須田先輩とバイトの準備をする為、バックヤードの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 




時々夜廻さんが山道コースに出てきて、競争を挑んでくるらしい。


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はじまり

そろそろ本編に入れそう


「…ハァーッ……ハァーッ……」

 

「篠崎、大丈夫だ。ゆっくり息を吸うんだ。そう、そうだ。えらいぞ」

 

過呼吸を繰り返している。篠崎の手を握りながら、ゆっくり呼吸をするように指示する。

 

 

篠崎が始めた幸せのサチコさんのおまじないが終わり、結衣先生の号令で皆が帰る支度をしようとした際に地震とものすごい寒気に襲われた。咄嗟に自分の机からバイト用のカバンを背負い、皆を教室の外に出そうとした瞬間、教室の床が割れ、3階なのに割れたそこは底がないかのように暗く何も見えなかった。割れた穴は徐々に広がり、皆を飲み込もうとしていた。広がる速度からとっさに結衣先生を廊下に蹴りだし。穴に落ちそうな篠崎の手を取り引き上げようとした際、眩い光があたりを覆ったと思ったらこの場所にいた。

 

幸せのサチコさんの際、篠崎がヒトガタを取り出し、みんなで千切るといって嫌な予感がした時に皆に嫌われてもいい覚悟で止めればよかったと今更ながらに思う。人を模したヒトガタを千切るとか縁結びの儀式としては物騒すぎて、違和感を感じたが知識のない誰かが創作したおまじないだと思えば腑に落ちたし、怪異等が儀式でよってきたとしても、こっくりさんとかを行った際に時々よってくる低級の動物霊かなんかなら他のクラスメイトに気付かれず処理出来る為、皆が鈴本を送り出したい気持ちは分かる為様子見したのが間違いだった。

 

教室にあいた穴の広がりが思ったより早く、とっさに一番扉の近くに立っていた結衣先生を廊下に蹴りだしてしまったが無事に逃げられただろうか、廊下からユイが走ってくる気配がしたのでうまくやってくれてると願うしかない。もうちょい咄嗟に動くことができたらあともう一人か二人ほど事前に救出できたかもしれないのが悔やまれる。せめて由香ちゃんだけでも先に出すべきだったと思う。

とりあえず後悔や反省するのはあとだ。早い所篠崎を落ち着かせて、他の皆の安全を確保しなければならない。

 

 

少しずつだが、篠崎の呼吸が落ち着いてきているので、そのままゆっくり呼吸するよう指示し、周囲を見回す。ボロボロの教室で机と椅子が妙に小さく、教室の床は脆い所を踏むとそのまま踏み抜いてしまいそうなほどボロボロだ。

窓からの風景は延々と続く森が見え、激しい雨が降っている。

こんな森は高校周辺にはない為、異界と判断。

もう羽生蛇村みたいなことは一生で一回と思っていたが、また異界とかついていない。

ここに来る前、ユイが近づいてきているのが分かったので、もう連絡は行っていると思うが念のため、店長へ電話をかける。このような場所では絶対繋がらないが、こともが改造したスマホなら改造したスマホ同士なら仕組みはわからないけど連絡はできる。店長へ何度か電話をするが繋がらない、コール音はするので単純に電話に気付いていないみたいだ。この状況で電話すると電池の消耗が激しいので店長へメールをした。

 

落ち着いてきた篠崎が不安にならないように目の前でカバンに入っている装備を確認する。水と携帯食料2日分、ムカデ神社で清めた塩、結界札、札が取れないように加工してある特殊警棒、ロープ、スマホの替えのバッテリーとポータブル充電器が入ってる。それらをカバンから出して、数に差はないか確認する。水と食料がちゃんとあるのは助かる。羽生蛇村は始まりから解決までいっさい飲まず食わずだったので大分つらかった。今回もどれだけ時間がかかるか分からないが、鍛えている自分はともかく、篠崎やほかの皆はそうもいかないだろう、現地調達?この状況じゃあまりおすすめできない。

まともな物が手に入るか分からないし、羽生蛇村のときは現地の赤い水が少し入っただけで異界との強い繋がりができ、現世に帰れなくなる仕様だった。自分やユイ、店長と晴海ちゃんは大丈夫だったが、須田先輩や他の人達はユイがいなかったら一生異界にいることになっていた。

 

 

とりあえず、他の皆を探しつつ、休める場所を探して拠点を作ろうと思う。

特殊警棒を服にしまい、カバンから出していたものを全て戻して背負う。

 

「落ち着いたか?」

 

「うん……」

 

頷いた篠崎に手を差し出す。少し迷ったあと手を握ってきたのでそのまま手を引っ張り起こしてやる。

 

「このままじっとしているわけにもいかないからな、他の皆を探そう」

 

教室から篠崎と一緒に出ようとした瞬間、悲鳴が聞こえた。

 

「この声は篠原か……探しに行こう、大丈夫か?篠崎」

 

「う、うん」

 

俺は篠崎の手をとり、悲鳴が聞こえた方向へ足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




飛ばされて不安な時に看病してくれ、準備を整え、方針も示してくれる。
普段とチャランポランな雰囲気はまったくない、岸沼さんに困惑している委員長



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はじまり2

大分ご無沙汰してますが生きてます。
エタりはないので気長にお待ちください。


文化祭が終わり、少しクラスメイトと話して帰路についていた。

今日はバイトがなかったが、今日の夜勤のひのえさんが依頼で急に出なくてはいけなくなり、私が代わりにバイトに出ることになったのだ。

私がバイトにつくまで恭也さんが代わりに入ってくれるらしい。

ちなみにひのえさんは委員長のお姉さんだったらしい。良樹から聞いた。

 

委員長には私がまじないや怪談話をやめるよう注意する為うっとおしがられている。害がない怪談話やおまじない等をやっているときはいいが、こういう事が入り口になって聞いたら呪われる怪談話、行ってはいけないおまじない等を行ってしまい大変な事になることがあるから注意してるのだ、良樹は仲のいいひのえさんの妹だからか甘く、ただの怪談話とかただのおまじないだから大丈夫だろ、と言っていたが、こういう事に関しては良樹とは意見が合わない。なまじ対処が出来てしまうからすこし警戒心が足りない。明日当たり再度良樹に注意しようと心に決めて家路を急ぐ。

 

雨が降る中、部屋に帰り、バイトへいく準備をしていると隣の良樹の部屋からこちらへ向けて壁ドンでもしているかのようにドン、ドンと音が聞こえる。

 

騒がしいなと思いつつ無視してるとさらに大きい音が立ててきた。

このままだとまた住人から苦情を貰ってしまうため、溜息をしながらいざという時用に預かっている良樹の部屋の鍵を持って部屋を出る。

 

今、良樹が部屋にいないのは知っているので、良樹の部屋に居着いているメリーさんが私を呼んでいるのだろうと判断して部屋に向かう。

 

義兄が結婚する前は義兄の部屋にいたのを見たことがあるが、結婚する少し前、ことねさんと義兄が付き合うようになって姿を消したと思ったら、気付いたら良樹の部屋にいたメリーさん、あいつはイケメンの近くに寄りつくのだろうか。良樹相手には愛想を振りまくっているようでなんだかんだ面倒見がいい良樹が服を買ったり、部品などを買って色々いじっているため、いまは怖い人形というよりはすごい金が掛かったドールという見た目になっている。最近は良樹が持田から借りたゲームのキャラのコスプレをしているらしく、世以子が私の部屋に遊びに来た時に暇になってほかに遊べるゲームがないか良樹の部屋に突撃したとき、タンスの上に黒い布のような目隠しをして黒いドレスを着てポーズを決めているメリーさんがいた。

良樹は貰い物だと皆に説明しているが、良樹の部屋に来たことある人間は良樹が人形の趣味を誤魔化す為に言っていることだと思っているが、本人が否定しているから納得している振りをされている。

メリーさんが動くことを知らない人間はメリーさんがちょくちょく恰好を変えてタンスの上でポーズも変えていることから、良樹が服を着せてポーズをとらせているようにしか見えない為、良樹が人形趣味を持っているようにしか見えないから仕方ないね。

良樹しかいないときは割と自由に動き回っているらしく、ゲームをしているときは膝の上に乗って良樹がやっているゲームを見ているらしい。わりと付き合いながいけど私は彼女に襲われた記憶しかないのだが、良樹と義兄はどうやってメリーさんを手懐けたのだろうと今度聞いてみるのもいいかもしれない。

 

良樹の部屋に鍵を開けて入ると玄関に良樹が普段バイトに行く時に使っているカバンと色違いのカバンが玄関先においてあり、中を開くと文字が書かれた紙とカバンの中に食料や水、霊石灯などグッズがギチットつまっていた。紙を見ると ヨシキ ニ モッテイケと書いてある。メリーさんが私にこういう事をするのは羽生蛇村の時以来だったのですこし嫌な感じがするのでカバンを背中に背負って部屋に戻って急いで準備することにする。

恭也さんには悪いけど少し残業してもらおう。

 

 

雷が鳴る大雨の中、カッパを着て学校目指して駆ける。背負ったバッグは結構な重さだが、走る分には問題ない重さだ。すれ違う人は少ないが猛スピードで走っている私に何事かと振りむいていたりするが一刻も早く学校へ行かないといけない為、人目を気にする余裕はない。

 

学校につき、昇降口につくと丁度こともが学校から出てくるところだった。完全武装な私を見て固まっている。

普段なら声をかけるところだが、急いでいるためスルーして良樹達がいるだろう教室へ駆ける。

 

階段を駆けあがり、もう少しというところで教室の方から異様な雰囲気が広がっている。

教室が見えてきたところで教室から結衣先生が吹き飛ばされてくる。

先生の傍に駆け付けた後、教室を見ると廊下側は全然揺れてないのに教室は大地震が起こったような揺れがつづいており、教室の真ん中に大きな穴があいてるのが見えた。教室にいる生徒達は穴に吸い込まれるように落ちていく。落ちた先は下の階の教室ではなく、違うどこかに繋がっているようだ。

良樹は委員長を抱えながら、テレビ台を掴んでぶらさがっていたが、穴から生徒達全員に伸びる黒い線みたいな縁に引っ張られて穴に落ちていった。落ちていく際私を見て、先生を頼んだと叫んでいた。

 

咳き込んでいる先生をみると良樹達と同じく穴から先生にも黒い縁が伸びていているのが見えた。

教室に空いてる穴が先生に向かって広がっていくのが見えた為、慌てて先生につながっている縁を切る。

縁を切ると教室から先生へ向かって広がってきた穴がどんどん小さくなっていくのが見えた。

どんなことをすればこんな事態になるのかまったく見当がつかないがいま穴に入らないと良樹達を見失うことになる。

慌てて後を追ってきて、肩で息している こともに先生の介護と義兄に連絡をお願いして、私も小さくなりつつある穴に飛び込んだ。

 

 




ハル「メリーさんから電話が来て後ろを振り向くと付箋がついたドールファッション誌が置いてある。これが着たいってことかな。」

メリーさんを綺麗にしたり、服を作っているのはハル。
良樹の部屋にいないときはハルの部屋にいることも多い。
材料費などの請求は良樹にいっている模様


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天神小学校にて

感想をもらってやる気マンゴスチンです。
誤字報告ありがとうございます。いつも助かります。


はやくおウチにかえろういつまでも残っている子はお腹がすいて死んじゃうぞ

 

教室らしき扉に貼ってあった紙に書いてあった内容を鼻で笑い。壁から剥ぎ取り、折りたたんでカバンにしまう。

 

「なにか書いてあったの?」

 

「ただの落書きだったよ」

 

「そう……ならいいけど、でもなんで紙をしまったの?」

 

「意外と使い道あるからな。燃えやすいし、火を使うときや何か燃やす時やメモするのに便利だろ? 今カバンの中にメモ帳とかはいってないし、ちょうどいいからもらっとこうかと」

 

「そんなことより、はやく篠原さんを探さないと!」

 

「おぉ、わりぃ早くいくか。篠崎、俺が歩いたところを通れよ、床を踏み抜いて怪我とかしたらあとあと不味い。」

 

足場が少し脆くなっているところがあるので篠崎に注意しつつ教室にはいる。

教室は最初自分たちがいた教室と同じくボロボロだった。

よく見ると黒板があるほうの扉になにか貼ってあるのがみえた。

近づいてみると古い新聞が張られていて、内容は天神小学校で起きた誘拐事件の内容が書かれていた。読めるところから判断すると児童4人がなにかで舌を切り取られて亡くなったという内容だった。ひどい事件だと思うが、この記事がこの場所に関係あるのかどうかが気になる。まぁ恐らくあるんだろう、自分ではよく分からないが、一応頭に入れとこうと思う。

 

近くにある扉から廊下に出ようとすると、扉はがっちり閉まっており、鍵がしまっているというよりは空間が固定されているような感じだった。

 

「開かないというより壁みたいだな。廊下に扉はあったのは分かってるから繋がってないわけじゃないだろうし、何かが押さえてるのか?」

 

こういう扉ばかりで何かあった時に閉じ込められると一番面倒なので強引に突破できるか試すか。

 

「寒い……」

 

扉に蹴りを入れようとした時に後ろにいた委員長が震えながら俺に訴えてきた。

 

「こうも暗いと余計に寒々しいよな。いやじゃなければ俺の上着着てな、あと委員長ロウソクあっただろ、俺はちょっと試したいことあるからロウソクで温まりながらそこで見ててくれ」

 

「えっ……うん」

 

委員長は素直に俺の制服の上着を受け取り、ロウソクに火をつけて温まりはじめた。

薄暗い教室の中でも火の明かりと温かさは安心感を齎すようで委員長もすこし表情が和らいでいる。

そんな委員長を尻目に軽く柔軟したあと思いっきり扉を蹴り飛ばす。ものすごい衝撃と音が出る。普通の教室の扉ならこれで廊下まではじけ飛ぶのだが思いのほか頑丈だった。

しかし、空間に固定されてそうなのにただ蹴っただけで扉が揺れたのを確認できたので同じ風に間髪いれずに10発ほどいれると何かが割れる音とともに扉が吹き飛んでいった。

 

「意外と突破できるみたいだな。次は窓に試してみるか。」

 

教室に置いてある、机をもって廊下側についてる窓ガラスにおもいっきり投げる。

廊下側についてる窓ガラスを突き破って机は廊下に物凄い音をたてながら消えていく。

それを確認したあと、もう一個机を外に繋がっている窓ガラスに投げつける。

窓ガラスにヒビひとつはいらず。机がばらばらに砕けた。

蹴りを入れてもヒビ一つはいらなかったので、ムカデ神社のお札をコーティングした特殊警棒で叩くとヒビが入ったが、ヒビがはいると同時に窓ガラスが直っていく。

連続で叩いてもヒビが広がる前に直ってしまう為、窓ガラスを割るには特殊警棒じゃ威力不足だと判断する。いつも使っているバットがあればなぁ……

突発に起こった事態だし、特殊警棒やある程度装備がある時点でかなりいい条件なので贅沢いってもしょうがないか。

 

「委員長、中の扉や窓なら干渉ができそうだ。外に繋がっている扉や窓はちゃんとした装備がないと無理そうだけど。」

 

そう委員長に伝えると委員長は自分を冷めた目で見つめていた。

 

「な……なんだよ」

 

「……乱暴者、気でも狂ったのかと思った。それより早く篠原さん探さないと」

 

「そ……そうだな。じゃあ前歩くからしっかりついて来てくれ。」

 

自分がぶっ壊した扉から委員長を先導しながら篠原の捜索を再開することにした。

 




直美、世似子「なにこの何かを叩きつける音……怖い」


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天神小学校にて2

誤字報告ありがとうございます。
感想ありがとうございます。返信は時間があるときにやらせていただきます。


教室をでて廊下に出ると廊下が崩落しており、先に進めなくなっていた。

教室の窓があるし、一人なら壁を蹴りながら先に進めそうだが、さすがに委員長抱えて進むのは行けると思うが確実に行けるという確信が持てない為、諦めることにした。

 

「これじゃ、先に進めないから引き返して別の道探そう。」

 

篠崎に促すと、篠崎はそのまま頷いて着いてくる。

普段なら嫌味の一つでも言ってくるのだが、大人しくついてくるあたり、やっぱり弱ってるらしい。まぁ曲がりなりにも自分のおまじないのせいでこうなってるからしょうがないところもあるが……

 

来た道を戻り、最初にきた教室に一旦入る。

篠崎がなんで最初にいた場所に戻って来たのかという非難の目をしているが、最初の時はぱっとしか周りの確認をしていなかった為、なにか教室にないか調べにきたのだ。

すこし調べてみると黒板の横にある棚の奥に釘打ちされている扉を見つけた。

 

少し押してみると釘さえどうにかできれば開きそうだったのでそのまま蹴り破ることにする。

 

「篠崎、ぶっ壊すからちょっと離れてろ」

 

空間に固定されてるものではなかったらしく、思いっきり蹴り飛ばしたら一撃で扉が壊れたので中にはいって確認すると。小さな小部屋のようなっていて奥になにか仕掛けみたいのが見えた。あまり条件が良いとはいえず、居心地もあまりよろしくなさそうだが、結界を張れる大きさな小部屋なので拠点候補の部屋として記憶しておく。

奥にある装置を動かしてみるとカタカタとなにかが動き、装置のよこにある穴から下にある装置への道ができるのが見えた。

 

まったく羽生蛇村といい、ここといい、普通こんな仕掛けないだろという物ばかりある。

異界とはこういうものなのだろうと思っているが、深く考えたら負けと考えているので考えないようにする。しかし仕掛けを動かせば何かしら良くも悪くも進展することは経験で分かるのでとりあえず下の装置を見に行こうと思う。

自分一人ならそのまま穴に飛び込むのだが、篠崎を一人で置いていけないので1階への続く道を探しに行く。

 

教室を出て今まで行ったことのない道を行くと階段があり、そのまま下っていくと委員長が階段の踊り場にロウソクを設置しようとしていた。

 

「どうしたんだよ。」

 

「色んなところにロウソクを置いておけば、私や岸沼くんがここにいるって目印になるかも、私のロウソク結構クラスで有名だし」

 

「怪談委員長って有名だしな」

 

篠崎がいるって証明なだけで俺がいることは証明されないけど、委員長の気が紛れるならいいことだと思う。

 

「いこうぜ」

 

篠崎と少しの間ロウソクを眺めてたが、このままというわけにはいかないので篠崎を促して一階に降りる。

 

小部屋でみた装置のある部屋に向かってあるくと人ひとり歩けるぐらいの道を抜けると廊下の隅にあきらかに人の白骨化している死体があるのが見える。

 

「っ!……ケフッ……ケフっ……」

 

人の白骨化死体にショックを受けた篠崎が過呼吸を起こして咳き込む。

篠崎を安心させるように頭を抱き寄せて大丈夫だ。と声をかける。

しばらくそうしていると大分落ち着いてきたのか、自分を跳ねのけてきたのでそのまま離れる。

 

「大丈夫か?」

 

「うん……」

 

あまり大丈夫そうではないが、多分多かれ少なかれ死体をみることになるのだから少し耐性をつけたほうがいいかもしれない。

 

白骨化死体に近づき、なにで亡くなったのか確認しようとしたが、とくに外傷がない為、張り紙のように餓死か衰弱死だろうか、よく見ると死体の制服に名札がある。

名札を取り、名前を覚え名札をカバンの中のファイル内にしまう。

死体は持って帰れないが、名札は持って帰ってやるからな。

 

「なにやってるの!はやく行こう!」

 

「おぉわりぃ、篠崎はもういいのか」

 

「うん……なにしてたの?」

 

「名札があってな、死体は持って歩くわけにはいかないから名札だけは回収して遺族に渡そうと思ってな。まぁ心配するなよ、俺がいればある程度大丈夫だから」

 

「ある程度ってなによ」

 

「ははは、よし、先に行くか」

 

篠崎の手を取り道を行く。雰囲気からして分かっていたが、この異界もやっぱりやばいところだった。名札からして中学生の女の子だった。この場所を作ったやつは碌なやつではないだろう。必ず報いを受けさせるともう一度覚悟を決め、先を急いだ。

 

 



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天神小学校にて3

気付いたら日間22位とかになっててびっくりしました。
前話にて良樹の委員長に対しての呼び方が篠崎なのに委員長呼びになっていたのを修正しました。

皆様前作に続いて読んでくださる方、今作から読み始めた方もありがとうございます。


篠崎を連れて装置がある部屋に入ると教室の黒板あたりから前の席があるあたりまでを切り取ったかのような細長い部屋だった。

この部屋にはいった瞬間、少し空気が変わった。いままでとは違う空気を感じる為、あたりを警戒するが特に危険な相手は目視では見当たらない。

 

「大丈夫か?」

 

視界の端で篠崎が座り込んだのが見えたので声をかける。

 

「頭が……痛い、ここにいては駄目だと思う……」

 

「そうだな、あまり長居したい場所じゃないな、奥の装置に行くから辛いと思うが付いてきてほしい、俺も怖いしな。一緒にいてくれると助かる」

 

「うん……」

 

篠崎は余裕がないのかそのまま頷くと大人しく付いて来てくれる。

しかし、篠崎がさすがひのえさんの妹というか、ここまで霊感が強いとなるとなにか対策が必要だなと考えるが、ひとまずこの部屋の用事を片付けてから対応することにする。

こういう場所でこそ、別々の行動を取ると碌な事にならないのは羽生蛇村で学んだ。

急に壁とかからすり抜けて出てくる可能性があるので念の為、スマホのアプリから射影機アプリを立ち上げてレーダーを確認する。レーダーに近くに赤い反応がない為、とりあえず警戒しながら奥へ進む。

 

射影機アプリはこともが作ったアプリでこともが持っているデジタルカメラ型や一眼レフ型射影機には性能が劣るが、スマホのカメラで射影機の機能が使える優れ物である。

俺はあまりカメラ部分は使わないが、レーダーは念の為の確認や討ち漏らしがないかどうかの確認等で割と使う。割と訓練とか受けているので討ち漏らしたことはないが、人間ミスはあるので2重で確認したほうがいいと店長の婆様からそう言われている。

 

何事もなく奥の装置へたどり着き、装置を起動すると部屋の外から2階で押したときと同じ音が聞こえた。廊下のどこかが開いたのか?

 

「篠崎、廊下でなんかの音が聞こえたし、もうここに用はないから出るぞ」

 

教室を出ようと引き返そうとした時、黒板の下に膝を抱えている男の子が座っているのが見えた。男の子の体は半透明であり、人間ではないことは一目で分かった。

男の子はじっと膝を抱えて座っており、こちらへの害意は今のところは感じない。

 

近くを通らないと外に出れない為、警戒しつつ通るかと方針を決めてた時

 

「駄目ッ!!」

 

「おぉ、びっくりするから大きな声出さないでくれ」

 

「駄目……絶対目を合わしちゃ駄目……」

 

篠崎がそう俺に警戒してきた。

目を合わすと憑り殺されるというところだろうか、直接、切りかかってきたりしてくれたほうが俺としては対応しやすいんだけどな、確かにあそこまではっきりと姿が見える奴はそうそういないので警戒して進む。

通り過ぎる時に排除も考えたが、下手に突いて余計にややこしいことになる可能性もあるので何もなければそれでいい。

 

篠崎の手を引きながら幽霊の横を通る。

俺が通りすぎたときには何も反応を示さない。

篠崎が通り過ぎようとした時。

 

「オネェチャン!……アソ」

 

急に篠崎に手を伸ばしてきたので思いっきり幽霊を蹴飛ばしてしまった。

幽霊はそのまま吹き飛び窓ガラスにぶつかりそのまま倒れこんで頭だけこっちを向いた。

その顔は憎悪ではなくびっくりした顔でじっと俺の顔を見たあとそのまま消えた。

なんだその表情……見た目に加えてなんかおれがいじめたみたいになってるじゃない?

しかし思いっきり蹴飛ばしても消滅しないとか意外と強い霊なのかもしれない。

警戒はしといたほうがいいだろう。

 

篠崎を見るとなにか言いたそうな目をしているが何も言ってこなかった。

 

「とりあえず、出るぞ」

 

篠崎に声をかけてそのまま廊下に出る。

そろそろ説明しといたほうがいい事と篠崎の霊感が強いので影響を少なくする対策を考えながら廊下を歩いていると急に後ろから思いっきり押されて少し体勢が崩れる。

崩れた先が崩落した廊下の先だった為慌てて飛び壁を蹴って足場に戻る。

 

「おい、篠崎危ないだろうが、気を付け……」

 

篠崎に文句を言いながら振り向くと篠崎が呻き声をあげながら女の子がしちゃいけない顔をして廊下に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天神小学校にて4

日間ランキング入りありがとうございます。
読んでいただきありがとうございます。これもこつこつやっていけたらとおもいます。
誤字報告本当にありがとうございます。助かります。


「良樹くん、すこしお姉さんと座学しましょうか」

 

コンビニの夜勤中の空いた時間にバックヤードで返品する前の漫画を読んでいた俺にひのえさんは声をかけてきた。

 

「えっ……呪文とか儀式の手順とかなかなか覚えるの苦手だし、店長の婆様からも道具も霊石灯の使い方以外ゴミだね!と言われたばかりなんですが」

 

「霊石灯もほぼ振り回す武器みたいなものですね、たとえ使えなくても知識があれば割と助かることも多いですよ。確かに良樹くんの身体能力は素晴らしいですが、殴るだけとか通用しない時が来るかもしれません」

 

「例えばどういう時ですか?」

 

「そうですね、たとえば幽霊の影響を受けて、精神に異常を受けた人が暴れたり錯乱したりした時、良樹くんはどうしますか?」

 

「とりあえず、ぶん殴って動けなくしたあとにお札か清めた塩を投げる」

 

「……」

 

ひのえさんが苦笑いしながら無言で俺を見ている。

 

「店長ならこうやるでしょう」

 

「店長も良樹くんみたいな感じですけど、私と同じぐらい儀式などに詳しいですよ」

 

「本当ですか?使ってるとこみたことないですけど」

 

「殴ったほうが早いっていってますものね、店長のことはいいんですよ。それより良樹くんのことです」

 

「殴って動けなくするか痛みで正気に戻させる以外の方法ってあるんですか?」

 

「実際やりながら説明しますね」

 

そう聞くとひのえさんはうれしそうに説明をしはじめた。

 

 

 

 

「篠崎大丈夫だ。なにも心配ないぞ、大丈夫だ。」

 

昇降口の隅で周囲を警戒しながら、いまだにぶつぶつ言っている篠崎を抱きかかえながら、少しずつ霊力を篠崎に浸透させていく、体に霊力を満たすことで霊の影響を除外する方法で道具がなくてもできる方法である。ひのえさんとかならすぐに篠崎は元に戻るのだろうが、俺はあまりこういう事が得意ではない。ひのえさんが店長に言って作成してくれた、補助用の特製のお守りのおかげで苦手でもこういうことが出来るようになっていた。

本当に助かったぜ、ひのえさん。

篠崎をぶん殴ったりはさすがにできないからな、ひのえさんに教えてもらう時はいい匂いがするやら柔らかな感触とかにドギマギしたが、抱きかかえるのは急に暴れだしてどこかにぶつけたり怪我をする可能性がある為、拘束しとく役目もある。

 

篠崎のぶつぶつ言っていることは普段篠崎が絶対に言わないようなことを喋っているので今まで一緒にいた限り、さっきの子供の霊を見たショックで精神が弱ったところを霊媒体質でここで亡くなった人などの思念とかを受信してしまったのだろう。

 

こんな体質なのにオカルト好きでよく今まで大丈夫だったなと思ったが、普段の学校生活ではただの占いとかだったし、少し影響のあるやつはひのえさんがなんとかしてたんだろうなと想像がついた。

 

しばらく篠崎に声をかけながら続けていると大人しくなっていき、少し経つと悲鳴と共に篠崎が立ち上がった。

 

「なんで岸沼に抱きかかえられてるの!変態」

 

「おぉ、わりぃ。急に委員長が倒れたんで抱えてただけだ。それで気分はどうだ?」

 

「えっうん、なんか嫌な感じがしなくなった……」

 

霊力はしばらく持つし、それが続くうちはとりあえず自失することはないだろう。

 

「さっきの装置でいける道が広がったからいってみようぜ」

 

あまり釈然としない篠崎を尻目に歩き出すと慌てて後ろから追いかけてくる音が聞こえた。篠崎のことであとにしてたが、少し前にいた子供の霊は殴れたので自分のお得意の戦法が通じる相手で助かったが、あの霊はいくら殴っても撃退はできても消滅させることは無理だなと直感で感じられた。なにかの方法はあるんだろうが、自分ではそれが分からない。ほかのバイト仲間なら気付いたのだろうか、しかし今は自分しかいない。

長居すると俺はいいが、篠崎が持たない。

少しでも情報を収集する為、ほかのクラスメイトを探す為に先を急ぐことにした。

 

 

 

 




突発的な対処じゃなければ、依頼時等は店長以外バイトは二人一組で行動します。割と術やオカルト知識などが深いタイプとフィジカルが強い人が二人組になることが多いです。

コンビニ業務は店長が一人でも大丈夫と判断したなら配達等は一人で行動しますが、夜勤時は二人シフトです。


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天神小学校にて5

少し間があきました。
誤字報告ありがとうございます。


通れるようになった通路を通って歩くと行き止まりがありその傍らに階段を見つけた。

校舎の構造的に行き止まりな感じはしないのだが、試しに殴ってみるかと思ったが篠崎の視線が痛かったので、階段を登った先を探索して何もなかったら試してみるか。

 

「2階へいく階段があるからそっち探してみるぞ」

 

階段を登り通路を歩いているとなにやら楽しく談笑しているような笑い声が聞こえてきた。

後ろを歩いている篠崎に手をだして止まるようにして耳を澄ませる。

 

「この声は……」

 

「篠崎、誰か分かったのか?」

 

「鈴本さん!!」

 

「ちょ、おい!」

 

急に駆け出した篠崎を追って声がする扉をくぐる。

中に入るとベッドや棚の様子で保健室らしき部屋もようだった。

俺が蹴り飛ばした子供霊とは違う2人の子供霊と鈴本がいた。

鈴本が楽しそうに話し、子供の霊2人が笑い声で答えている。

 

「鈴本さん!駄目!」

 

篠崎の呼びかけにも反応せずそのまま談笑を続ける鈴本。

 

「鈴本さん!私の事わかる!?」

 

篠崎が必死で呼びかけていると鈴本と子供の霊がこちらを向く。

 

「篠崎さん……岸沼君……」

 

「鈴本さん、早くこっちへ来て」

 

「……大丈夫だよ、本当はこの子達は悪くないよ。可哀想な子達なの見てこれ……」

 

鈴本が差し出してきた新聞は風がないのに少し離れている俺たちのほうへ飛んできた。

新聞にはこの学校で起きた殺人事件の児童の死因と殺された児童の写真が載っていた。

その中には今目の前にいる二人とさっき蹴り飛ばした児童の写真もあった。

 

 

「鈴本さん、憐れんでもいいけど同情してはだめよ」

 

篠崎が必死で説得しているが、子供達は鈴本を離す気はないだろう。

少し距離を詰めようと歩くと、子供が威嚇しはじめ体を押す衝撃がくる。

無視できる威力だがとりあえず吹っ飛んで篠崎の横に着地する。

 

「岸沼くん何してるの!へんに子供達を刺激するのはやめて!」

 

篠崎を怒らしてしまった、少し様子を見るか。

篠崎も多少なりとも知識があるから助かるが、こう幽霊と対話とかはひのえさんやハルとかが得意なんだよな。

特にハルはやばい。なんというか菩薩みたいなオーラが出てる。羨ましがって真似してるユイが哀れになってくるぐらい格が違う。

その分、色々な事に巻き込まれるらしいが、本人は射影機アプリしか使えないし、あまり使わないが、なぜか近くには偶然やらなんやらで対処できる人間が近くにいるから不思議だ。

 

「私、ここにいる……」

 

 

「鈴本さん、駄目よ!それ以上情をかけちゃ」

 

篠崎が説得も空しく、宙に浮く。

 

「きゃああ」

 

同時に衝撃が着て篠崎が少し吹っ飛ばされるのが視界の片隅に見えたが、それを無視し首がない子供の霊を蹴り飛ばして反対側の子供の霊に当て二人とも吹き飛ばす。

宙に浮いてる鈴本が落下してきたので回収し、呆けた顔で座り込んでいる篠崎に渡す。

吹き飛ばされた2人の子供霊はこちらを睨んで霊障や物を飛ばしてきたが物は受け止めて投げ返して霊障は無視できるレベルだったので無理やり近づいていく。

近づいていくと睨んでいた子供はだんだんと涙目になってきたが、いくら可哀想な最期だったとはいえ生きてる人に手を出すのは駄目だ。ここは消えてもらうとする。

 

「篠崎ぼさっとしてんな!!はやく鈴本を連れて行け!」

 

鈴本を抱えてこっちを見ている篠崎に声をかけて、警棒を取り出し、とどめを刺そうと振り上げた瞬間、泣き声をあげながら子供達は消えた。

 

取り逃がしたことに舌打ちをしながら保健室を出るとガタガタと震えている鈴本と篠崎がいた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「うん……岸沼くんはなんで幽霊を追い払えるの?」

 

「あれ、篠崎に言ってなかったっけ、俺はひのえさんの……篠崎、鈴本連れて奥に逃げろ」

 

「えっ?」

 

「早く行け!早く!」

 

強い口調にビックリしながら移動を始めた篠崎を尻目にさきほど上がってた階段のほうをみると

ハンマーをもった顔色が悪いというかゾンビみたいな大男が大きな足音を鳴らしながらこちらへ走ってくる。

子供の霊よりよほど戦いやすい、上着を脱ぎながら身構えた。

 




感想はなるべく返すつもりですが、改めて見直すと返してないやつとかがあって感想返し漏れ申し訳ありません。


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天神小学校にて6

お久しぶりです。誤字報告ありがとうございます。


私にとって岸沼くんの印象はなんちゃって不良だった。

 

金髪に髪を染めて制服を着崩し、見た目はちゃらいのに毎日学校にきて、真面目に授業を受け成績は優秀、生活態度も悪くはない。

体育の授業だけ露骨に手を抜いてへらへら笑っているのが妙に目に付いていらっとしたのが印象的だった。

なぜ見た目だけああしているのか理由は分からないので、持田君に聞いてみても曖昧に笑って教えてくれなかった。

篠原さんがいうには1年生の時の春あたりは荒れていたらしいが、ある時急に大人しくなったらしい。

 

ユイさんやこともさん、篠原さん等、持田君、岸沼くんを時々教室まで迎えにいく3年の先輩以外仲がよさそうに見えるのは女の子ばかりの為、見た目と相俟ってあんまりいい印象を持っていなかった。

 

 

 

近くの教室に逃げ込み、意識が朦朧としている鈴本さんに抱きついて震えながら、外から響いてくる、争っている音を聞いている今だから分かる。

 

おまじないのせいで皆をこんなところに連れてきてしまった私を励まし、少し奇行はありつつもおちゃらけた感じに私の手を引っ張ってくれて、子供の霊に襲われてそうになっても彼が霊を倒して助けてくれる。まるでヒーローのような彼が居たからこそ私は恐怖を感じつつも鈴本さんを助けられたのだといまさらながら思った。

 

ここに逃げ込む前に逃げろと叫ぶ彼の姿を初めて見た。

学校にいる時の彼は見た目に反して、不機嫌になることは私が知る限りではなかったと思う。ちょっとあれな体育教師に嫌味を言われてもへらへら笑っててムキになった教師がきつい課題もそつなくこなしていた。

 

本当なら鈴本さんに抱きついて震えている場合ではないだろう

彼のためになにか出来ることもあるはずなのに、私の体は震えていることしか出来ない。震えていれば、待たせたなと彼が迎えに来てくれることを期待してしまっている。

 

「きゃ......もういやぁ」

 

かなり大きな地震が私たちのいる教室を大きく揺らす。

取り敢えず鈴本さんを引きずりながら棚とか倒れる恐れのあるところから遠ざかり揺れが収まるのを待った。

 

揺れが収まって、鈴本さんに怪我がないのを確認したあと、気づけば外から聞こえてくる音が聞こえなくなっていることに気付いた。

 

音がしなくなったとしたらしばらくしたから彼が来てくれる!

私は少し身嗜みを整えて彼が迎えにくるのを待つことにした。

 

 

 

 

 

 

「篠崎さん、篠崎さん!」

 

篠崎さんを揺らすが、彼が来ないの、迎えに来てくれるって言ったのにと膝を抱えたままぶつぶつ呟いたまま動こうとしない。

彼女と岸沼くんに感情的になった子供達の霊から助けられたのは覚えている。

助けてくれた岸沼くんは確かに凄かったけどもうちょっと穏便に出来なかったのかなとは少し思う。子供達も被害者なのだ。なんとかして解放してあげたいとも思う。

 

「篠崎さん、岸沼くんはどこに行ったの?」

 

問いかけるが彼女から返事はない。

助けられたあとの記憶が定かではないけど、岸沼くんが怒鳴ってる声は聞こえた気がする。何かがあって彼とはぐれてしまったのかもしれない。

篠崎さんはこんな状態だし、私が探しに行ったほうがいいのかな

篠崎さんに岸沼くんを探しにいくと伝えて、彼女から5メートルほど離れたとき私の周りの空気が変わる。体に纏わり付くような不快な感じを感じるようになった。少し不快だが気にするようなことでもないが、彼女に近づくとその感じは薄れる。なんでこんなに空気が変わるのか疑問に思ったが、今の彼女に聞いても答えは返ってこないと思う。

 

何にせよ、早く岸沼くんを探して篠崎さんを安心させてあげなきゃ!

こんなところに来て1人だと泣きべそかきながら皆を探し回っていたけど、誰かと一緒だとこんなにも強くなれるのだと自分でも驚いてる。

 

教室を出ると廊下の間取りからして保健室とはそう離れていないと判断し、取り敢えず保健室から探そうと足を進める。

 

それにしても篠崎さんの態度からして私がはぐれている間に岸沼くんと篠崎さんは随分と仲が良くなったらしい。誰かと付き合ってる話は聞かないけど、岸沼くんはユイちゃんと隠れて付き合ってるのかと思ってたけど、違ったのかな?まぁ当人の問題だし私には関係ないか。

 

「ひぃ......」

 

保健室へもう少しで着くというところで壁一面に血が飛び散っているのを見てしまった。篠崎さんと合流して浮かれていたけどここはこういうところだったと改めて認識する。

どうしよう、怖いし篠崎さんのところに戻ろうかなと思ったとき、血塗れの壁の近くに見覚えのある学ランが落ちているのが見えた。

遠目にみるだけでもその制服は血に染まっていて、黒い制服がさらにドス黒くなっている。

誰のだろう、私の通っている高校の男子制服の上着には誰のものか分かるような内側に刺繍で名前が入れてあるので誰のものか分かるが触るのも、確かめるのも勇気がでない

 

これで繁にぃや他のみんなの名前があった時どうしたらいいのか分からない。

私は呆然とその学ランを眺めることしか出来なかった。

 

 

 

 

「おっと、これは......君、大丈夫かい?」

 

気付くと目の前に体格の良い同い年ぐらいの男子高校生が私の顔を覗き込んでいた。

 

「う、うん、そこにある学ラン、私の学校の物なの......内側を見れば誰のものか分かるけど見る勇気がなくて」

 

私がそう答えると、彼はそうかとだけいい、学ランを足でひっくり返して広げる

 

「岸沼と書いてあるが、知り合いかい?」

 

岸沼くんが、そんな......篠崎さんにどう伝えたらいいか分からないので呆然としていると

 

「ここに居てもよくないから、安全なところに行こう、誰か他に一緒にいるかい?」

 

「う、うん、その先の教室に篠崎さんが」

 

「そうか、取り敢えず合流しよう、俺の名前は刻命、よろしく、他の皆とはぐれてしまってね心細かったんだよ」

 

「鈴本です。宜しくお願いします。」

 

今の状態の篠崎さんに教えるか黙っているか考えつつ、私は刻命くんと教室へ向かった。



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まぁそういう反応が普通だよ。

 

「どうですか?ひのえさん」

 

「んー、もうちょっと待ってくださいね」

 

外は大雨で嵐といっていいほど天気が悪い、普段ならバイトでもなければ家で美耶子とゆっくり過ごしていていたいところだった。

 

こともちゃんからの連絡を受けて、急遽ひのえさんと一緒に現場に直行して調査を開始したところである。

普段自分は美耶子と組んでるが、生徒達と共に良樹が行方不明、追ってユイちゃんも電話は繋がるが応答が無いため、情報がない。

間違いなく、異界案件な為機敏な動きや羽生蛇村のような、戦闘も想定されるため、美耶子ではなくひのえさんに同行を依頼した。

 

今回消えた生徒の中にはひのえさんの妹も含まれているらしく、安否が心配だ。俺が着くまでに良樹とユイちゃんが上手くやってくれることを祈るだけだ。

 

ひのえさんの様子を伺うとまだかかりそうなので、念の為持ってきた、猟銃に異常がないか最終確認をする。通常弾、清めた塩を詰め込んだ物と美耶子に宇理炎の炎を注入してもらった弾の二種類。

宇理炎の弾の方は一発作るたびに大分、美耶子が衰弱してしまう為あまり多くはない。出発前に心配性な美耶子が用意してくれた。

 

「痕跡はあるけど、繋がりが薄くなってますね。向こうからの干渉がないとこちらから開くのは少し骨が折れそうですよ。」

 

整備の確認、弾倉の確認、弾薬の配置確認をしていると調査を終えた、ひのえさんが声をかけてきた。

 

「困ったな……生徒達と同じように儀式をして中に入りますか?」

 

「入れると思いますが、儀式をしてはいるということは異界のルールに従わなければならない可能性もあるのであまりやりたくないですね。

良樹くんとユイさんがそのルールのせいで身動き取れなくなっている場合、増援の私達も動けないっていう事態は回避したいです。」

 

「そうですね。店長がいればとりあえず様子見てこいで店長を儀式で突っ込めばいけそうな気がするけど肝心な時にいないからなぁ、あの人、電話も出ないし」

 

「ふふ、まぁ今いない人の事を言っても仕方がありませんよ。頑張ってこじ開けるのでしばらく待っててください。向こう側に行ったら恭也くんが頼りですので期待してますよ」

 

「任せてください」

 

無事でいてください。良樹くん、あゆみちゃんというひのえさんの呟きを聞いてない振りをしつつ。精神を集中させその時を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前のゾンビみたいな大男改め、めんどくさいから似てるし屍人でいいかな。

ハンマーの振り下ろしを半身を逸らして避ける。

避けると同時に脱いだ制服の上着を屍人の頭にかぶせ後ろに回り込む。

制服を突然かぶせられて膠着している屍人の膝裏をほぼ同時に蹴り抜き、膝カックンの要領で体勢を崩し、崩した身体を店長直伝の地面スレスレからの垂直蹴り上げで浮かし、回し蹴りで壁まで蹴り飛ばす

壁に張り付いてる屍人が落としたハンマーを拾い上げ、壁に向かって勢いと回転を加えて屍人の頭にフルスイングをすると西瓜がはじけるような感じで壁一面に真っ赤な血が飛び散った。

普通の人間ならこれで終わりだが、こういう空間の化物は頭を潰しても再生するようなやつが多いので体も蹴り上げてハンマーで壁に叩き潰しておく。

 

再生しないならそれでよし、再生してもこの状態ならしばらく時間がかかるだろうってほどに念入りに潰す。幸いここの屍人は倒してもすごく固くなることもなく思ったより簡単に処理することができた。

羽生蛇村の時は倒したと思ったら身体を丸めてものすごく固くなり再生するまで追い打ちができなかったので今回はマシだなと思う

店長が通った道の屍人は電柱や壁にパイプなどで串刺しにされ、先端も丁寧に抜けないように曲げられてて、ジタバタ動く屍人とその呻き声で安全だけど精神的に危険な空間になってた。

 

粗方、屍人を壁の染みに変えたなと思った時、後ろに強力な気配が湧いた。

 

「イヒヒ、オニイチャン、ツヨイネー、どう?ワタシの」

 

話を聞くまでもなくハンマーでフルスイングをする。

吹き飛んでいく赤い服をきた少女の霊、あの一撃でも消えないのを確認したあと追撃をする為追いかけてハンマーを振り下ろした瞬間、赤い少女の霊の姿が消えた。

 

 

「オマエ、ナンナンダヨ!!私の邪魔ばかりシテ!!」

 

声だけが聞こえて、地面が揺れる。

 

「イヒヒ、コレで、お兄ちゃんの守りたいもの守れなくなっちゃったね!」

 

揺れがおさまったあと、声が聞こえて気配が消える。

 

 

 

 

「篠崎ー!鈴本ー!どこだー!」

 

閉まってる開かない扉などをハンマーで殴り飛ばし、中を確認してまわる。

これはあの赤い少女になにかされたか?篠崎の状態は自分から見ても不安定の為、早く合流しなければならない。

 

壊して中を見たあと次の場所に移動しようとしたところ。

廊下の先にポニーテールの他校制服を着た、女の子がいた

 

「そこの!ちょっと聞きたいことが!」

 

「ひいぃ!」

 

声をかけたが女の子は逃げてしまう。

 

「ちょっと待てよ!何もしないから」

 

もしかしたら彼女は篠崎やら哲史やらの居場所を知ってるかもしれない。

俺は彼女を全力疾走で追いかけることにした。




ラーン!ラビット!ラーン!


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多重閉鎖空間

「つまりここは天神小学校をモチーフにして作られた多重閉鎖空間で、校舎は狭いけど空間が違うから同じ空間にいる人しか会える可能性はないってことでいい?」

 

「その認識で構わない」

 

「道理で近くに人が通る気配を感じて、周辺を探してみても見つからないわけだ。」

 

「気配を感じるって...... 空間と一緒に時間の流れも一緒ではないから、聞こえた悲鳴が未来のものなのかもう起こってしまった事なのかも分からないよ。」

 

校舎の探索を始めて、見かけた青い人魂に話しかけたらこの異界について詳しかったので詳しい話を聞いた。

 

「ありがとう、助かったわ。この異界はなんとかするからお礼に先に逝きなさい」

 

「疑うようで悪いけど、本当にできるのかい?この場所で死んだ人は死ぬときの苦しみを永遠に味わう事になって、成仏する事はないのに」

 

「魂を逃さないように結界が貼られてるけど、私なら出来るよ!肉体があるなら別だけど」

 

「ダメで元々だ、お願いしようかな」

 

「はい、じゃあ教えた通りにお願いするわね」

 

「あぁ、この異界にずっといるなんて も う い や だ!」

 

手に顕現した断ち切り鋏でこの異界との縁を断ち切る、目の前の人魂が粒子になって上に上がっていく、ありがとうと声が最後に聞こえた気がした。

 

「ゆっくり休みなさい」

 

 

苦しみや恨みを糧にして呪いを形成してる糞みたいな異界だ、亡くなった人の呪詛が無くなれば異界も維持できなくなるはず。

異界は呪詛や無念などが雁字搦めに絡まった毛糸のようなもので出来ており、それをひとつずつ、解いていけば私でも細切れにできる呪いに変わるだろう。

 

異界の核を処理するのが一番だけど解決の目処が立っていない以上、生存者を救出しつつ、魂を救済していけばそのうち親玉は出てくるだろう。

 

「理様、ありがとうございます。今日は忙しくなるかもしれません」

 

文道具サイズになった鋏にお礼をいうと一回鋏の開閉音が聞こえ鋏が消える

 

「さてと、まずはすべての空間に繋がるように拠点になるような部屋探して一部屋残して他の空間から削除しよっと」

 

私は部屋の選定の為、校舎内をくまなく見回ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう......」

 

「あぁ、これで......」

 

校舎を散策している途中でであった人魂になった犠牲者を話が聞ける魂は情報を貰ってから、言葉が通じない奴はそのまま解放していく。

 

もちよった情報を見ているか分からないが岸沼(バカ)にメールを送る。

こういった方が初めてではないのに、ここまでバカから連絡はない。

電話は時間軸が狂ってるという話からあまり通じないと考え、いつ届くか分からないがメールならいつか届くだろう。

 

スマホをいじりながら、校舎を歩いているとお札が貼ってある赤い扉を見つけ、注意すると扉の奥に人の気配がする。お札はそこまで強くないがこの空間を漂っている瘴気を排除するには十分な代物だった。

 

「すいませーん、だれかいらっしゃいますか!?」

 

少し明るめに呼びかけると扉の奥の気配が焦る感じがして

 

「君が生きてる人間ならそのまま開けてこれるはずだ。そのまま入ってくるといい」

 

男性の声が聞こえたのでそのまま扉を開けて入る。

中を見ると昔の漫画でみた用務員室のようで机の前には着流しを着た成人男性が座ってこちらを見ていた。

 

「久しぶりに人を見た気がする。私の名前は鬼碑忌 コウ、しがない心霊ルポライターだよ。」

 

「そうなんですね。ちょうどいいのでこの部屋借りますね。」

 

「えっ?」

 

布団もあるみたいだし、救出した人を保護するための拠点作りを私は呆けている着流しを着たおじさんを尻目に始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃ!」

 

突然大きな着信音が連続で鳴り、送信者の名前を見て私は岸沼くんのスマホを落としてしまった。

落としてもなお連続で鳴り響く音はメールの着信音のようだった。

 

「篠崎さん、どうしたんだい?」

 

刻命くんと鈴本さんがこちらを心配するような目で見てきたので床に落ちた岸沼君のスマホを指をさした。

 

 

送信者の名前は【シザーウーマン】この異界には岸沼君を殺した化け物のほかに鋏を持った化け物でもいるのだろうと私は恐怖に身を竦めた。




登録名をふざけた名前にするのは良くないと思います!!


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後悔

お久しぶりです。
記憶が薄れてきたのでコープスパーティ全種類やり直してます。


どうしてこうなってしまったんだろう

 

息を切らしながら、必死で階段を駆け下りる。

大分距離があるにも関わらず、こっちに向かってくる足音は物凄く早く、どんどんこっちに近づいてくる。

 

 

ほんのちょっと前まで皆で生徒会室の掃除を笑いながらやっていたのに。

原因は分かっている、私が面白半分に提案したおまじないのせいだ。

 

裕也がいつも守るように近くにいるあの子が珍しくいなくて舞い上がり

ネットで見たおまじないをしてすこしでも裕也との距離を縮めたかった。

 

黒崎に裕也とあの子は付き合っているのかと聞いたら付き合っていないという。

裕也はあの子と一緒にいるとまったく表情が違う為、あの子のことが好きなのは明らかだ

あの子自体は儚げな美少女でとてもいい子だけど、裕也の笑顔を彼女でもないのに独占しているせいか嫉妬でトゲトゲしい態度をとってしまう。だから今回はチャンスだと思った。

 

そして、おまじないが終わった後、地震が起こり、気付いたらこんなところに居た。

 

 

裕也、恵美、片山、大川、島田と一緒に行動していたけど、

校舎の仕掛けで片山が足を怪我してしまい、誰かの介助がないと歩けなくなってしまった。

仕掛けに一番はやく気が付いた裕也が片山を引かなければ彼の足はなくなっていたかもしれない、そんな仕掛けだった。

 

もう少しで外に出られるかもというところで大きなハンマーをもった大男のような化け物に出会ってしまった。

 

 

「俺にまかせろ、はやく行け!」

 

裕也が化け物に向かって転がってるバケツを化け物に投げると化け物は裕也に向かっていく。私はみんなと一緒に逃げていたが、逃げるのに必死で気がついたら私一人になっていた。

 

皆を探してさ迷っていたら、あの化け物と同じハンマーを持った、金髪の不良がいた。

ハンマーには血がこびりついていて、あぁ彼もあの化け物の仲間だと思った。

見つからないように様子を伺っていたが、すぐこちらの方を向いて、目が合った。

 

 

階段を駆け降りたあと、廊下を走る。

後ろを向くとハンマーを持った金髪の男が階段の踊り場と階段を使わず飛び降りてくるのが見えた。上に登る階段と降りる階段の間にある手すりに手を置いて手を軸にして遠心力を利用してそのまま一階に降りてくるとか明らかに人間の身体能力ではない。

そして1階へ着地し、こちらへ駆けてくる。着地したときも音があまりならないのも恐怖を煽る。

 

早く、早く逃げないと

あのハンマーで殴られて死ぬ自分が脳裏をよぎる。

 

「あ……」

 

突然くる浮遊感、見てみると足のある所に床がなかった。

後ろを気にしすぎて、前をよく見ていなかった。

ハンマーに殴られて死ぬよりはましかな、とどこか他人事でそんなことを思い、私は意識を閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぶねぇ……」

 

 

間一髪で落ちそうになってる他校の女子生徒を掴むことができた。

とっさに服を掴んでしまった襟の部分が首に食い込んで気絶してしまったらしい。今、暴れられても困るのでそのほうが都合がいいかもしれない。

引き上げて軽く怪我等がないか確認するが、多少擦り傷があるだけなので身体的には問題はなさそうだ。

 

逃げるから追ってしまったが、冷静になってみると血濡れのハンマー持ってたらそりゃ怖いか。

それでも話を聞いてもらうならそれしかないから仕方ないか。

問題は精神のほうだな、この空間は場所も相まって、恐怖や絶望など精神的に追い込んでその負の感情を糧にするような空間だと感覚的に感じる。

すこしでもこの空間の干渉を受けないようにしなくてはならない。

普通に行動できるなら俺も守れるし、ケアも出来るが、気絶してる人間を担いで行動するのは避けたい。

古そうな学校だから宿直室とかあれば布団とかあればいいなと気絶している女子生徒を俵担ぎで担ぐ

スカートが短いのでパンツが丸出しになっているがまぁ、我慢してもらおう。

 

2階の扉をほぼぶっ壊して中を確認したが、拠点に使えそうな部屋はなかったので1階を探すことにする。

しばらく歩いていると、リン、と鈴の音が聞こえた。

 

鈴の音は店長が管理する神社にいくと聞こえる音と一緒だった。

境内に鈴は賽銭箱にある大きな鈴しかないはずなのに聞こえてくる音だった。

この空間には相応しくない、清浄を感じさせる音は廊下の奥から聞こえてきたようだ。

 

音は一回だけ聞こえただけで、2回目は聞こえてこなかったが鈴のしたほうへ歩いていく。

歩いていくと赤い扉が見えたと同時に扉の前に何かがいるのが見えた。

 

 

良く見ると扉の前に人形が座っており、その人形は少し前に自分がやっていたゲームの恰好した人形だった。

 

「メリーさんじゃないか」

 

声を掛けると人形がこちらを向き、物凄い勢いでこちらに飛んできた。

 

「ブッ!……」

 

顔面に突っ込んできたメリーさんをもろに食らう

女子生徒を担いでいる方とは別方向の肩に乗り自分の頬に頬ずりしている。

 

「なんでここにいる?」

 

メリーさん相手に俺はスマホかメール越ししかメリーさんの言葉は聞けないので、スマフォを取り出そうとすると

自分がスマフォを紛失していることに気付く。上着にはいってたっけ?

ハンマー使って粉砕しているときにそのまま一緒に粉砕してしまったのかもしれない。

ヤバイ、こともに製作費という項目でバイト代を接収されると思うと憂鬱になる。

 

「悪いメリーさん、スマフォなくしたみたい」

 

メリーさんは仕方ないなぁというポーズをしたあと、メリーさんは赤い扉を指さしたあと

チョキ出して髪をポニーテールにした。

 

「ユイがいるのか?」

 

そう聞くと首を振り、しばし考え込んでいる仕草をしたあと説明するのが面倒くさくなったのかさっさと行けと背中に飛んで自分を押してくる

促されるまま紅い扉を開けると畳とテレビが置いてある部屋が見えた。

中に入ったあとメリーさんはそのまま扉の外へいき、俺に向かって手を振ったあと扉を閉めた。

ビックリした表情でこちらを見ている着物姿の人を尻目に部屋を観察するとところどころに百足が印されたお札が要所、要所に貼ってあるのが見えた。まだ緩そうなところがあるので自分が持っているお札で強化してやるか、一から結界を張るのは苦手だが、強化するなら俺もできる。

 

「君は……」

 

「ちょっと待ってください。この人を寝かせてやってくれませんか」

 

押し入れの奥から着物姿の男性は布団を取り出して引いてくれた。

俺は気絶している彼女を降ろし、男性から話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




送信者 メリーさん
タイトル ミツケタ

でビビる委員長


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遺志(なお死んでいない

彼がそんな簡単に更生するかな?って思ったけど
童守町の教師なら見捨てないだろうと思う。


自分は普通の人より、共感性というものが無いらしい。

他の人の共感性がどんな感じなのかというのが分からないが、周りと見比べてみるとおそらくあっていると思う。

 

それゆえに、普通の人ではできないことも普通に出来てしまう。

小さいころに虫などを潰している感覚で、小動物などを殺していた自分はついにつけを払うことになった。

 

 

「裕也、これで分かっただろう、自分でやったことはいつか自分に返ってくる。

感情で理解はできなくても、頭で理解すればいい、大丈夫さ、お前は頭がいいからな」

 

今まで殺していた小動物霊等に取り殺されそうになったところを助けられ、クラス担任が手袋をしているのと別の手で頭を撫でてくる。

 

 

「刻命くんはそれがいけないことだって頭では理解しているんでしょう?お墓を作ってあげよ?私達も一緒に謝るから、それに刻命くんと遊べないのはさみしいよ」

 

 

後日、小動物を殺していて取り殺されかけ、担任に救われる自分のことを打ち明けても態度が変わらないハルとクラスメイトに救われたような気がした。

 

 

 

 

「裕也、助かった。お前のおかげで間に合うことができた。」

 

彼女が怪異が操っている虫に集られそうになり、他の皆が恐怖で動けない時も自分は動くことができた。

 

 

「ハルはそういうのを引き寄せやすい体質らしいから、気をつけないとダメだ」

 

「うん、刻命くん、いつもありがとう」

 

小学校の頃は、担任の事もあって退屈しない日々だった。

わりと思い返して見れば、命の危険もいくつもあったが最終的には担任が解決する為、自分は先生が来るまでの間の時間稼ぎをすればいい。先生からは危ないことはするなと事あるごとに言われていたが、

 

先生やクラスメイトから褒められるためにやっていたが、いつしかクラスメイトや彼女を守ることが使命みたいに感じるようになった。

 

それから担任から少しずつ対処法を教えてもらえるように頼み込んだ。

最初は渋られたが、徐々に教えてもらえるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「刻命くん、そろそろ行かない?」

 

「…………あぁ、そうだね行こうか」

 

なにか物音ひとつでも聞こえたらすぐ起きれるようにしていたが、少し昔の夢を見ていたようだ。

 

返事が遅れたせいか、こちらを少し心配そうに見ている鈴本を尻目に立ち上がる。

この学校に徘徊している児童の幽霊の体の一部を探して返してあげるという目標を立て、校舎を彷徨っていたが二人の顔に疲れが見えてきた為、周囲を見渡しやすい廊下で休憩をとっていた。

 

鈴本は俺が立ち上がったのを見て、立ち上がるが、もう一人の篠崎が自分の物ではないスマホを真剣な表情で操作していた。

 

「篠崎さん、どうしたの?」

 

「岸沼君のスマホ、さっきまで暗証番号と指紋、顔認証のロックが掛かってたのにさっきエマージェンシーモードって赤い文字が出てからロックが外れて、勝手にアプリが立ち上がったの」

 

彼女が見てるスマホの画面を見ると見覚えがある画面が映っている。

 

「射影機アプリか?」

 

「これが何か知ってるの?刻命くん」

 

壁の染みになったと思われる彼のスマホになんで射影機アプリが入っているのか、射影機アプリはハルの2人いる親友(俺は会ったことがない)が作ったアプリで親しい間柄や身内しか配られないアプリだ。ちなみに俺は持っていない。

だとするとスマホの持ち主はハルかハルの親友の関係者ということになる。

 

「…………」

 

「刻命くん?」

 

「いや、なんでもない、そのスマホの持ち主の名前を聞いてもいいかい?」

 

「岸沼くん、岸沼良樹だよ」

 

「そうか、ありがとう」

 

戻れたら、ハルに報告しよう、彼女に辛い思いをさせるのはつらいが、伝えなきゃいけないことは伝えなければならない。

 

「そのアプリの画面はフィラメントといって幽霊や心霊的な物質を表示されるレーダーみたいな感じだ。赤なら霊や怪異、青や緑なら霊的な物質や札等に反応するらしい、これなら児童たちの体の一部も見つかるかもしれない」

ちょうど真下に反応があるので床の隙間から手を入れて探ってみると血濡れの巾着袋が中から出てきた。

中を一応確認してみると切り取られた舌が入っているのが見える。

 

「ウッ……」

 

「鈴本さん、見ないほうがいい」

 

「でもこれで、あの子たちが無くしたものを見つけられそうだね」

 

「篠崎さんスマホを返すよ。使い方はさっき俺がやってみせた通りだ」

 

「うん……やってみる。このスマホが使えるようになったのも岸沼くんが助けてくれてると思うから」

 

 

 

スマホと廊下に目を配りながら歩く、篠崎に鈴本とついていく。

児童達を除霊できるか分からないが、除霊できなかった場合は射影機アプリでの強制除霊も試してみるのもありだなと思った。

 

 

 




アプリが立ち上がったあと、フリーになった岸沼のスマホをいじる篠崎
シザーウーマン、メリーさんやらが並ぶメールにひのえって姉の名前を見つける。

件名
〇〇駅に8時集合

本文
明日はよろしくね

寝坊しないように!寝坊したら私が起こしにいっちゃうからね
あと、お昼は私が作ってくるから楽しみにしてね(かわいい女の子のスタンプ


あゆみ「……きっと同じ名前の別人よね」

普段家族相手にも敬語を崩さない姉の違う側面をみたような篠崎は現実逃避することにした。





メールはコンビニ案件でペアで行動する際の待ち合わせのメール






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間一髪

15話になってはじめて登場するオリ主がいるらしい。

誤字報告、感想ありがとうございます。大分間が空いてますが読んでいただけてうれしいです。


「お前さえいなければ!先生を助けに行けたのに!!!」

 

女の子がしちゃいけない形相でこちらに突っ込んでくる女子生徒。近くには霊障で気絶していると思われる女子生徒。同じ制服を着ているので友達だろうか?

 

いや、取材に行くと言ってた田久地から連絡が途絶えたので田久地がお世話になっている

ルポライターの家に行ってみれば、なんかおかしい反応があったので無礼も承知で駆けこんでみれば、2人があまりいいとは言えない結界に引きずり込まれそうになってれば誰でも助けるでしょう。

 

結界は中心を思いっきり蹴りつけたら壊れたらしく、今のところは問題がなさそうだ。

しかし、いやにこちらに掴みかかってこようとする子と気絶している子に執着があるようだ。今は自分がいるから大丈夫だが、離れたらこれはまた取り込まれるな。

 

こんなときにユイがいればすぐなんだが、どうしてこんなことになったのかを彼女から聞き出さなきゃいけない。

 

おっと

 

「逃げるな!」

 

どっから取り出したのかカッターまで持ち出してきた。

よく見るとこの子は大分精神が侵食されるな……対処するのもあれだし、寝てもらうか

 

「うっ!……」

 

飛びかかってくるあいだに内臓などを傷付つけないように衝撃だけ体に浴びせ気絶させる。とりあえず2人の安全確保からしなきゃいけないのだが、様子見するだけだったのでカチコミ用の装備しか持ってない。

 

しょうがない……多分この辺りに住んでたと思う彼に電話することにした。

 

もしもし、御簾徒くん?オレオレ、元気?

ちょっと持ってきてほしいものがあるんだ!

 

 

 

 

 

 

「なるほど、多重閉鎖空間っていうんですね。どうりで探し回っても見つからないわけだ」

 

気絶しているポニーテールの女子高生を寝かした後。着物姿の男性、鬼碑忌さんに色々情報を教えてもらった。

 

「あぁ、ユイ君や君がこの部屋に貼ってくれた結界のおかげでここだけ空間が固定されているようだが、一歩外に出たらどの空間に繋がっているか分からない。

実際、ユイ君が出たすぐに扉をあけたら目の前にいるはずのユイ君がいなかったからね。

 

「ランダムで違う空間にでるってことですかね。これは扉リセマラして生存者回収してくるしかなさそうか……彼女が起きたら水をあげて、話をしてもらってもいいですか?俺は他の生存者を探してきます。」

 

「すまない、本当は私もいくべきなのだろうが……」

 

「いやいいですよ、適材適所です。その子を一人にするのもあれですしね」

 

「じゃあ行ってきます。」

 

部屋の収納の襖の奥に通路があるのを彼女を寝かせる為に布団を出したときに発見したのでそこから出ることにする。

 

「……何してるんだい?」

 

「布団を出したときに奥に通路があるのが見えたんですよね。安全確認ついでに生存者を探してきます。」

 

「そうか、気を付けて」

 

ハンマー片手に奥に進むと鉄製の梯子が一つだけ掛かっている部屋に出た。

ここから上に上がれそうだが、なんか色々臭い所だな。

梯子を上っていると上のほうからぎぃ、ぎぃとなにかが軋む音が聞こえる。

さらに上がっていくと人の呻き声が聞こえてくる。

 

急いで上がってみると篠原が首を吊っていた。

 

「なにやってんだ!篠原!」

 

「ぐ……が…」

 

目が充血し始めてる。このままではまずい。

 

彼女の下に潜り込んで肩車の体制をとる。篠原はなんとか呼吸ができるようになったのか呼吸をしながら咳き込んでる。

 

「篠原、呼吸が落ち着いたらゆっくり自分にまきついてる縄を外せ、ゆっくりでいいから」

 

返事はなかったが、落ち着いたのかシュルシュル縄を解く音が聞こえたのでしばらく大人しくしておく。

 

緊急だった為、意識してなかったけど。篠原の太ももに顔が挟まっている状態。やわらかいやら良い匂いがするやらで落ち着かなくなってきた。でももうちょっとだけこうしているのもいいかもしれない。

 

「その……岸沼、もう降ろして……」

 

「おう、大丈夫か?どうしてこういう状況になった。」

 

篠原を降ろして尋ねると、言いにくそうにしている。

 

「歩美と喧嘩して別れたあと、仲直りしようと直美にあったら様子がおかしくて……力が物凄く強くて首に縄をつけられてそのまま……」

 

「そうか……中嶋の事はまかせろ、とりあえず安全なところに行こう。近くに避難場所があるんだ。」

 

「ひぃ、いや!一人にしないで」

 

「ついてくるだけで一人じゃないだろ?しょうがないな背中にしがみついてろ」

 

まぁ死にかけてたんだ、恐怖もあるだろう。

首吊りの後遺症やらもあるかもしれないので、医療知識があるかわからないが鬼碑忌さんに篠原のケアと様子を見てもらおう。篠原の状況はわりと間一髪のタイミングだった。

他の奴らも心配だ。俺は篠原を落とさずようにしっかりと梯子を下りることにした。

 

 




女子高生を襲う、謎の人物何者なんだ。

それにしてもコープスパーティの人たち、変換がめんどうな苗字の人おおすぎない?w


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特殊な環境で普段通りなのが異常

お久しぶりです。ぼちぼち進めます


「……」

 

薄暗い廊下、据えた匂い、時折聞こえる泣き声か叫び声

幸い、聞いたことある声は聞こえてこないのが救いだ。

 

一緒にここに来たと思われるクラスメイト達も心配だが、一番心配なのは繭のことだった。

 

誰かと合流できてればいい、自分のように一人で彷徨っているならば、彼女はそこまで強くない。早く僕が見つけてあげなければならない。

 

心配で気が狂いそうになる。すでに狂っているのかもしれない。

 

体が震えていて、叫び声をあげそうになるが、それを抑え込み廊下を歩く

繭を探す為に体力を温存しなければならない、繭を見つけるまで僕は死ぬわけには行かない。

 

廊下を進んでいくと腐りかけた死体を見つけた。

 

スマホからカメラ機能を起動し、死体を写真に収める。

 

繭を探していく途中で見つけた死体を写真に収めて定期的に眺めて精神の安定を図る。

 

まだ自分は動ける。こいつらのように死んでたまるか

 

写真が増えたついでに今までとった写真も眺める。

 

目を見開いて絶命している死体、壁に叩きつけられたように粉砕された死体など様々だ。

見ていて可哀想だなって思うと同時に現実感がなく、かすかに笑みがこぼれる。

 

「良い趣味してんね、森繁」

 

後ろから急に声を掛けられて振り向くとこちらの肩越しに僕のスマホを覗き見ていたユイがいた。

 

 

「な……なんでここに」

 

「おっす!探しに来たに決まってるじゃん!森繁は一人?ほかに誰かあった?」

 

「い、いや僕だけだ」

 

異常な空間でまるで学校であったのかように挨拶するユイに何とか返事をする。

巻き込まれたと思われるメンバーにユイはいなかったはずだ。

自分は幻覚を見ているのか?

 

「そっか、ありがとう安全なところがあるから行く?」

 

「僕は繭を探してるんだ、繭を見つけるまではいくわけにはいかない」

 

それとなく、ユイと距離を取る。

 

「?」

 

「来るな!」

 

距離を取る僕に不審に思ったのか近寄ってくるユイに怒鳴る。

 

「巻き込まれたメンバーにお前はいなかったはずだ!なぜユイに化けてるか分からないが僕は騙されないぞ。ユイならばどうやってここに来たんだ!普通はここにこれないはずだぞ!」

 

「君たちが教室から引き込まれる時に一緒に飛び込んだのよ。それ以降、森繁が繭ちゃんを探しているように皆も探してるだけ、ここはいまの森繁みたいに人の不安やら猜疑心を増幅させる空間だから落ち着きなさい。」

 

 

「なんでそんなことがお前に分かるんだ!」

 

「なにって神社の巫女だからね!」

 

「そんな単純な理由で!」

 

「そんな理由よ、ほらその証拠にいままであった嫌な気配を感じる?」

 

言われてみれば、体に覆うような嫌な感じがしなくなっていることに気付く。

 

「少しは落ち着いたみたいね、それなら少しここで待っててね」

 

ユイは僕が写真を撮っていた死体に近づいていく

すると、死体から青い人魂が出てきて、苦しい、お腹減った、お母さん……といった声が聞こえてくる。普段なら人魂などの超常現象などみたらびっくりしていたが、この空間に来てから色々なものを見すぎたせいであぁ人魂だなとしか思えなくなっていた。

 

「苦しかったね。ゆっくり休んでね」

 

ユイが呟く

するとどこからかシャキンという鋏が物を断つかのような音が聞こえた後人魂が消えていく

消える前にありがとうという声が聞こえた気がした。

 

「待った?」

 

「いいや……」

 

「そっか、それでもり…」

 

「繭は無事なのか?」

 

ユイの話声を遮って繭の無事を確認する。

 

「縁は繋がってるから大丈夫!ここにいるのも危険だし、さっきもいったけどとりあえず安全な場所用意してるからそこで待っててくれたら、私が繭ちゃん連れてくるけど」

 

「僕もついて行っていいか?繭は僕が見つけたい」

 

「んー、断っても一人で探しに行きそうだししょうがないなぁ、私の指示に従うっていうならついて来ていいよ」

 

「ありがとう」

 

「男の子だねぇ、繭ちゃんもこんだけ思ってくる人がいて幸せ者だね!」

 

普段と同じ態度で廊下を歩きはじめるユイを慌てて追いかける。

気付いたら体の震えも止まっていた。

 

「あと、君なりの精神の安定の仕方だったんだろうけど、繭ちゃんに会う前に写真は消しといたほうがいいよ」

 

「あぁ……分かった」

 

「そんな顔しない、誰にも言わないし、よく頑張った!今は私がいるし、大丈夫!君がおかしくなりそうになってもぶん殴って直してあげるから!」

 

「ははは、お手やわらかにお願いするよ」

 

ここにきて初めて純粋に笑った気がした。

 

 



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彼は疲れている。寝かせてやってくれ

 

 

2人の呼吸が安定したのを確認した後、持っている制服の上着を並んで寝ている二人にかぶせ、少し離れた場所でしゃがみ込む。

服を着たまま飛び込んだため、全身が濡れて制服と下着が張り付いて気持ちが悪い。

 

篠崎と鈴本と一緒に学校を彷徨っている子供の霊を成仏させる為、子供たちの欠けた部位を探して校内を回っていたが、プールの周りで自分が少し目を離した隙に大分、霊的耐性がない篠崎がなにかに憑りつかれたらしく、鈴本をホールドしたままプールにダイブしたらしい。

 

鈴本の叫び声と水が跳ねる音で振り向いた時には彼女たちの姿がなく、慌ててプールに飛び込んで何とか二人を更衣室に運び今に至る。

 

鈴本はまだいい、一緒に行動している内に気付いたが、篠崎は知識は豊富だが霊媒体質なのもあるが、心がそこまで強くない。いつ糸が切れるか冷や冷やする。

 

自分が二人を守り切りここから出ないといけない。そうでなければ彼女に合わす顔がない。

 

ここで二人を見殺ししてもバレないと思うこともあるが、彼女にはなぜか隠し事などが通用しないし、なにより彼女に嘘はつきたくない。

 

篠崎はなにかあるたびにポケットからお守りを握りしめて精神を保っているようだ。

お守りは亡くなった彼が彼女に持たせていたようだ。傍からみるだけでも効果の分かる神社で売ってるちゃちな加護じゃない、ちゃんとしっかり作ってあるお守りで亡くなった彼がそれなりの知識がある人間か、お守りを作れる人物と関係のある人間だということが分かる。

 

今回も何かの拍子でお守りが篠崎から離れた時にこれだ。2人を更衣室に運んで応急処置が終わったあと地面に落ちてるのを見つけた。

 

この場に彼が居れば、二人を任せて自分は部位探しに集中できるというのに。

 

溜息を吐きながら、肌に張り付くYシャツを脱ぎ、絞ったあとそこらへんに吊るす。

 

 

 

しかし、この学校は直接危害を加えてくる系の霊などがあまりいないのが救いだ。

 

小学校時代にあった。はたもんばみたいなのがいたら自分には2人は守り切れなかった。

あれに対処できるのはあの教師ぐらいだ。

まだ対策できるだけ、この場所はましだった。一人ハンマーを持ったデカい奴がいるが2人を逃がす時間稼ぎぐらいなら自分でもできる。

 

それにしても、ここにきてからデカい奴からクラスメイトを逃がし、はぐれたクラスメイトを探していたら鈴本と篠崎に出会うといい、まともに休んでいなかった。

 

防水のウエストポーチからペットボトルと携帯食料を取り出して少し栄養補給をする。

いつ大変な事になるか分からないからと防水のウエストポーチを彼女が自分の誕生日に買ってくれたことを思い出して笑みが零れる。

 

「……んんっ……ゲホゲホ」

 

「起きたか、これで口を少しゆすげ、水は貴重だから使いすぎるな」

 

「ありがとう……刻命くん」

 

ウエストポーチにあるもう一本のペットボトルを彼女にわたす

 

「濯いだら一口飲んで水分を補給して体を休ませておくといい、篠崎も起きたら同じことをしてあげてほしい」

 

「う……うん」

 

恐る恐る篠崎を見ていた鈴本に声を掛ける。

 

「もう大丈夫だろう、今度からお守りは落としたりするなと言っといてくれ。

 それとなにかあったら大声で叫んで起こしてほしい、少し自分は休む」

 

鈴本が膝を抱えて座りながら篠崎を見ているのを確認したあと、ロッカーを背もたれにして目を閉じた。

 

熟睡するわけにはいかないが、夢の中では彼女に会えるといいな

 




もしはたもんばを店長が見たら


「ゲ〇ラフかよ」

横に回避し、横に通り過ぎる瞬間に本体ぶち抜いて終了。
刀に戻し、再奉納する。


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大分傍から見るとすごいことしてる。

復帰したら日間22位!ありがとうございます。


 

世以子を鬼碑忌さんに預けて廊下を出る。

大分取り乱していたが、落ち着かしたあと飛び出していかないように鬼碑忌さんがこの場所の説明とフォローをしていくれるらしい。万が一飛び出していこうとしたらなんとしても止めるよう、念のためにメリーさんにもお願いしといた。

 

メリーさんは了解と態度で示すように自分の頭に抱きついた後、ナイフを素振りし始めた。

まぁいつものことだから大丈夫だと思うが、お手柔らかに頼むぞと頭を撫で廊下を歩く。

 

自分が助けたポニーテールの少女はまだ目が覚めていない。大分精神的に追い詰められていたようだし、結界内なら小学校を満たしている瘴気というか呪いというべきものも干渉できない為、目を覚ました時には多少精神状態が良くなっていることだろう、

目を覚ました時のフォローも鬼碑忌さんにお願いするしかないが、拠点の維持をどうしようかと思っていたので鬼碑忌さんがいてくれてよかった。

 

 

廊下を歩いていると嫌な気配がして床に伏せると自分の腰があったあたりに鋼糸のようなものが通り過ぎる。直撃したらテケテケの出来上がりになっていただろう。

 

「露骨になってきたな。そんだけビビってるってことか?」

 

柱からこちらを睨んでいる赤い服の少女に声を掛ける。

 

「睨んでないで何とか言ったらどうだ?」

 

「オマエ……ナッ!!」

 

声を開く前に駆けよって接近し思いっきりハンマーをフルスイングで叩きつける

轟音とともに壁に穴が開くが少女は間一髪で消えて回避したらしく、手ごたえは感じなかった。

 

話しかけて反応が遅れるとか人間味あふれている霊だな。挑発やフェイントも効きそうだと周囲を警戒しながら心に留めておく。

 

しばらく警戒したが、再度襲撃はなさそうだったので移動を再開する。

廊下を見ると渡り廊下のような場所を見つけて移動することにした

 

渡り廊下を出ると渡り廊下の先に別の校舎があるのが見えた。外は森のようで雨が降っていて視界が悪い。異界などでここから出ても元の場所に帰れないだろう。他のクラスメイトがあそこに出たら探すのは大変だなと思いつつ廊下を渡る。

 

「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

叫び声と共に何かが地面に叩きつけられる音が聞こえた。

人の気配ではないので落ちてくるのは人ではないと分かっていたので助けにはいかなかったが、目を向けるとおっさんの霊が上から落ちてきていた。

 

「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

鈍い音がしたあと地面に激突して首がひん曲がっていた。

 

「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

消えたと思ったら数秒後にまた絶叫と共に落ちてくるおっさん。

 

「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアア「うるせぇ!」

 

落ちてくるおっさんを店長仕込みの掬いあげるかのような垂直蹴りで上に少し浮かしたあとハンマーをフルスイングで叩きつけて校舎の壁に飛ばし、壁の染みに変える。

 

まぁ無限に痛みを経験するより一瞬で終わらしてやったほうがまだましだろう。

ゆっくり休め

 

 

別校舎に入ると拠点がある校舎と違い。

瘴気が濃いなと感じだ。この校舎で新しく拠点をつくるのは無理そうだ。

ユイや俺なら拠点を作っても平気だろうが、救助した人を保護するには無理だ。

 

要救助者を探すついでに赤い服の少女を引っ張り出す方法の手がかりがここにあればいいなと思い。まずは入った時から響いているピアノの音のする方へ行くことにした。

 

 

 

 

 



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露骨

朝に日間4位になってました。ありがとうございます。


ピアノの音を頼りに廊下を歩くと予想通り音楽室にたどり着いた。

誰かいないか中に入って確認する。

 

見まわしたが辛気臭い音楽がピアノから流れているだけで人の気配もしない

ピアノに近づくと鍵盤を強くたたいた音と一緒に音楽が聞こえなくなった。

 

「恥ずかしがり屋かよ」

 

ピアノ弾いてるだけなら別に害はないかと判断して外に出る。

 

「辛気臭いからもっと明るい曲にしてくれ!」

 

音楽室から出ると先ほどとは違い明るいピアノの曲が流れ始める。

いいねぇって聞いててしばらく思ったがこの学校の雰囲気で明るい曲は逆に怖いのではないか?と疑問に思いつつ廊下を歩く。

 

異界とはいえ、変な構造してる学校だな

 

 

「助けて!!」

 

廊下の先から急にロングヘアに黒いセーラー服の少女が飛び出してきた。

こちらに抱きついてこようとしたのでそれを避けて腕を取り背中に回して身動きできないようにする。

 

「露骨すぎるんだよ」

 

「ガァッ…」

 

腕に持っているナイフの柄を殴り飛ばして床に落とそうとしたが殴る力が強すぎたのか壁に突き刺さったのが見えた。

ご丁寧にナイフに糞尿がこびりついているのが見え、殺意が籠もりすぎていて笑えてくる。

 

「トラップがダメなら憑依して襲ってくるとか、多芸だな」

 

「ハナセ!」

 

まぁ霊力が強くても動きは素人だし、女子生徒が怪我しないように気を使うことができるぐらい余裕だった。

 

そのまま壁に追いやり女子生徒の背中に片手を添えて霊力を込めて強めに押す

すると女子生徒が苦し気に呻いたあと少し距離があるところに赤い服の少女が出てくる。

すかさず追い打ちするがやはり間一髪のところで回避されて姿が見えなくなった。

 

周りになにもない所で倒れこんでいる女子生徒を観察する。

瞬きせず虚空をみてぶつぶつとなにか喋っているだけで特にこちらの呼びかけには答えない。大分侵食が進んでいるようでかなり危ない状態だ。

 

「安心しろ、俺がついている。すぐ安全なところに連れてってやるからな」

 

見開いている目を閉じてやり、背中に背負いロープで固定する。

大分目の敵にされているので咄嗟の動きでも彼女を落とさないように行く。

 

周囲を警戒しつつ来た道を戻る。

霊力を体ごしに女子生徒に巡らせ保護する。背中に背負ってるときに襲われたらたまったもんじゃないしな。

 

「良樹お兄ちゃん!」

 

廊下を戻っていると由香ちゃんともう一人見知らぬ男子生徒が一緒に立っているのが見えた。

 

「由香ちゃんじゃないか!よく無事だったね」

 

「おい、止まれ!その手に持っているハンマーはなんだ。後ろの女の子はどうした!」

 

 

近づこうとすると由香ちゃんの近くにいた男子生徒は俺の視線から由香ちゃんを遮るように前に出る。

 

「ハンマーはデカい化け物から取ったんだよ。後ろの女の子はかなり危険な状態だから早く安全なところに連れて行くんだよ」

 

「安全な場所だって!そんなところがあるのか!」

 

「ある、今のところ3人はそこで保護してる。来るならついてこい、急ぐからはぐれないように、由香ちゃんは走れるかい?無理そうなら自分が担いで行こうか?」

 

「ううん、大丈夫!頑張る」

 

「いい子だね。俺の名前は岸沼だ、よろしく」

 

「俺は黒崎だ」

 

「よし、ついてこい」

 

俺たちは拠点へ向かって駆け出した。

 

 

 

 

 



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兆し

「ふぅ、見廻っていないのはこの扉だけかな」

 

「この先は地下か?他の扉と違って嫌な感じがするな。」

 

森繁と一緒に校舎の行ってないところを虱潰しに廻っていくが、見つかったのは私たちがここに来るまでに犠牲となった子達の霊魂と死体だけだった。

 

霊魂達を解放していく傍ら、言葉が話せる霊魂達に聞いたところ、ここに一緒に来たクラスメイト達は無事らしく、一向に見つからない繭ちゃんが心配で顔を曇らせていた森繁も少しは顔が晴れているみたいだった。

 

「フッ!……っとダメだなビクともしない。他の見廻った扉は壊れてたり、穴が空いてたりで通りやすかったのにな」

 

「そうね、きっと何処かの脳筋の弟子がやったんでしょう。そういうことならあいつもここはまだ見てないってことかしら、まぁ私に任せなさい!」

 

扉と格闘している森繁と変わると思いっきり助走をつけて扉を蹴りつける

ものすごい衝撃音が鳴り響くが扉は微動だにしなかった。

 

あいつでも出来ることが私に出来ないのは認められない!

ムキになって扉を蹴りつける

全力で蹴りつけているがやはり扉は微動だにしなかった。

 

「あぁ?なんだこの扉、さっさと開けよ!この!この!……いいもんね!理様に開けてもらうから!」

 

「……」

 

あ、森繁が見てるんだった。

 

「んんっ!別の方法で試すから森繁はちょっと待っててね。」

 

「わりと学校生活でも隠せてないから今更だけど待ってるよ」

 

「まじ?」

 

「岸沼とこともさんと話してる時とか素がでてたし、僕も演劇やってるから分かったのかもしれないけどね」

 

そんな、頼れる女を演出しているはずが!隠せてないなら周りも教えてくれればいいのに!

 

「そんな落ち込まなくても……ってスマホが鳴っているよ?ここって電波通じるのか?」

 

恥ずかしさで見悶えていると、スマホが震えだした。

 

表示を見ると盛に盛ったメリーさんが映っており、文字にはメリーさん☆と書いてあった。

 

こいつの現代かぶれが著しいのは良樹のせいだなと嘆息して受話器のマークを押して電話に出る。

 

「もしもし、私メリーさん」

 

「知ってるから要件を言え」

 

「チッ……鋏女、ワタシの良樹が困ってる。すぐモドレ」

 

電話が切れる。

 

あいつ舌打ちしたよな?それとなんだワタシの良樹って怪異のくせに色づきやがって。

前まで義兄に執着してたのに結婚して、良樹がバイトに入り、ある程度メリーさんに対処できるようになったらすぐこれだ。

私は知ってるぞ!ハルに服をタダで作らせていることを!あとから良樹がハルに電話をかけてお金を振り込んでいることも知ってるぞ!

しかし、なぜいつまでたっても私は鋏女なんだ!他の奴は皆名前で呼んでいるので私だけ鋏女だのシザーウーマンだといいやがって!私も乙女だぞ!鏡見ても美少女ぞ!そんなに捕まえて説教したのを根に持っているのか!

 

「そ、その誰からなんだ?すごい顔してるけど大丈夫か?」

 

「いや、なんでもない、なんか良樹が呼んでるっぽいから一旦戻るよ」

 

まぁ、メリーさんとはまたお話する必要があるが、いまは置いて置こう

 

「廊下の突き当りだからすぐ戻れるけど、一応気は抜かないようにね」

 

森繁に声をかけ、私は拠点へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

「ちょうどいいところに、この子を頼めるか?」

 

部屋に戻ると畳に黒い制服の女の子が寝ており、その近くに良樹がいた。

まわりには世似子や中学生の女の子やら見たことない男子生徒などが心配そうに部屋の隅で様子を伺っている。

大分良樹がかき集めてきたみたいだった。

 

女の子に近づき様子を見ると、大分この空間に侵食されているようで、早く対処したほうがいいことが分かる。

良樹が応急処置してなかったら私が来る前に完全に取り込まれてたな……

 

「これから対処するけど、他の子達は目を瞑っていてね」

 

置いてあった鞄から藁人形を取り出し、女の子に乗せる。

しばらくすると藁人形がどす黒く変色してたのを確認し

 

「呪いなんて、もういやだ」

 

と藁人形を上に放り投げると鋏が物を断ち切る音が聞こえ人形がバラバラになる。

女の子の様子をみると心なしか顔色が良くなっている気がする。

 

「ユイ、助かったよ。」

 

「まぁ呪いの影響は取れたけど大分侵食されたから目覚めたあととかにケアが必要かな」

 

「そうか……まぁケアとかはひのえさんにお願いすれば大丈夫だろうしな、それと森繁、無事でなによりだ」

 

「あぁ……岸沼も無事でよかったよ。他の皆も……岸沼は繭を見なかったか?」

 

「委員長と鈴本と一緒に行動してたんだが、化け物の足止めするために逃がしたらはぐれてな、探している途中だ。すまん」

 

「……そうか」

 

「じゃあ探しに行かないとね。良樹、その化け物っていうのはもう倒したの?」

 

「あぁ、再生しそうだったから仮に復活しても時間がかかるようにミ…いや、念入りに倒しといた。」

 

「そう……」

 

良樹の傍らを見ると、褐色に変色してるハンマーが目に入った。

こいつ、武器剥ぎ取ったうえにハンマーを見る限り念入りに磨り潰しやがったな。

 

周りに配慮したところは褒めてやろう、口には出さないが

 

 

「良樹、探しに行く前に開けてもらいたい扉があるんだけど、お願いできる?」

 

「ん?あぁ、いいぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん!」

 

ハンマーを思いっきり扉に叩きつけるとガラスの割れたような音とともに扉が粉砕されて奥に破片が飛んでいくのが見えた。

 

 

やっぱ脳筋ってすごいんだなってドヤ顔する良樹を見てそう思った。

 

 

 



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終わりの始まり

「お姉ちゃんありがとう……」

 

子供たちに事件で失われた部位を探して返してあげていくと子供たちは正気を取り戻し、成仏したように消えていく。

 

最後の子が消えたのを確認してほっと息をつく。

 

 

「これでなにか変わればいいけど……」

 

「それでも子供達が安らかになればいいよ!やったね篠崎さん!」

 

刻命君のほうに目を向けると周囲を見回して警戒しているのが見えた。

 

「どうしたの?刻命君」

 

「空気が変わった気がする……」

 

「え?それってどういう……」

 

突然、私達は激しい地震と一緒に眩しい光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動くな」

 

 

光に包まれてなにも分からなくなった次の瞬間、ヘッドフォンをしている同い年ぐらいの男の子が猟銃を私に向けていた。

 

「ひぃ……」

 

思わず尻もちをつく。彼は厳しい表情で私に銃口を向けていて、銃を降ろす気配がない。

 

「須田君、大丈夫ですよ。あゆみちゃん大丈夫でしたか?」

 

声に振り向くと心配そうな顔をしたお姉ちゃんがいた。

 

「お姉ちゃん!」

 

「おっとっと、頑張ったね……そちらの子も大丈夫ですか?」

 

「は…はい」

 

お姉ちゃんに抱きつきながら頭を撫でられる。

お姉ちゃんの体温が私に安心感を齎してくれていた。

奥にいる男の子も銃を降ろし、なぜか慌ただしく体を伸ばしたり、準備運動みたいなことをし始めていた。

 

「それで…あゆみちゃん、疲れているだろうけど教えてほしいことがあります。」

 

私はこれまでの事をお姉ちゃんに話し始めた。

 

 

 

 

 

私はお姉ちゃんに、小学校でやったこと、分かった事、岸沼君が死んだこと等をお姉ちゃんに話した。

岸沼君が死んだことを話すと、表情が青ざめて悲しそうだったけど

 

「岸沼君が亡くなった瞬間は見ましたか?」

 

と聞かれてみてないと言ったらそう……といった後、普段のお姉ちゃんに戻っていた。

 

「そう、あゆみちゃん……ありがとうございます。まだ他の方たちは戻ってこれないみたいですね。」

 

「ひのえさん、あとはお願いします。」

 

私と一緒にいた男の子が教室の奥にある暗い闇に飛び込んでいく。

 

「彼が他の子達を探しに行ってくれたんですよ」

 

私が驚いて見ているとお姉ちゃんが説明してくれる。

 

「私も!私のせいだから皆を探しに行かないと!」

 

「あゆみちゃん、私は反対します。お友達も様子を見る限り限界でしょう。あとはお姉ちゃんに任せてください。

保険室に先生とこともがいるので先生に顔を見せてあげてください。とても憔悴されておられるので」

 

「でも!」

 

「あゆみちゃん、お願いですから」

 

「う……うん」

 

 

お姉ちゃんの少し怒った顔を初めてみた衝撃から素直に頷き、鈴本さんと教室を出る。

出る間際に振り向くと、少し深刻な顔をしたお姉ちゃんがスマホを握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構デカかったな」

 

「そうね」

 

大きな揺れを感じて森繁を地面に伏せさせてやり過ごす。

 

途中蛍光灯が上から降ってきたが蹴り飛ばしたので森繁にケガはなかった。

 

「じゃあ行くか!」

 

「良樹、ちょっとストップ!」

 

ハンマーを担いで地下へ続く道を進もうとしたらユイからストップがかかる。

 

「周りの雰囲気が変わった。多重空間が一つになったかのような感じがする。誰かがなにかやったのかもしれない」

 

「まじか、じゃあ他に見つからなかった奴が見つかるかもな……ユイ、どうする?」

 

「う~ん……私が地下にいくから良樹は保護をお願いしようかな」

 

「了解!森繁はどうする?」

 

「僕は一緒に地下に行くことにするよ。」

 

「そうか、気を付けてな。行ってくる」

 

「ちょっと!私には気を付けて言わんのかい!」

 

ユイの文句をスルーしてそのまま廊下を駆ける。

ユイの言う通り、さっきまでいた廊下と構造が違っていた。瘴気は変わっていないがざわざわしているというか人がいるような気配をおぼろげながら感じる。

 

2Fにあがり教室を一つづつ見回る。ちらっと窓から外を見ると雷鳴の光と共に巨大なムカデが学校を中心に塒を巻きながら小学校を挟むような感じで迫ってきているのが見えた。

 

「おぉ!これは……勝ったな」

 

後顧の憂いがなくなった俺は生存者を探しに集中することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




島田 快(しまだ かい)
外の森で彷徨っていたところ。気配を感じて上を見上げると巨大なムカデが自分を覗き込んでいた。あまりの恐怖で失禁、気絶。保護される


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カウントダウン

2人を取り込もうとしてくる結界の気配が変わった。

これは……取り込まれている誰かがやったのかどうなのかは分かりませんが。これはいけますねぇ!

 

御簾徒くん、2人を見つつ結界の維持って出来ます?

 

「できますけど、そこまで長時間できませんよ?」

 

何時間ぐらいできますか?

 

「3~4時間は確実といえますが、それ以上となると保障できません」

 

上々ですね!じゃあちょっと行ってくるので任せます!

 

悪い子にはお仕置きしなきゃいけませんからね。

 

一瞬、結界を解除して飛び込むので張り直しお願いします。

 

「分かりましたよ。気を付けてくださいね」

 

 

 

 

 

 

結界を解除すると、少し開いた異界への扉から無理矢理足でこじ開けて飛び込む先輩の姿が見える。

 

なぜ物理で事象に干渉できるのかよくわからないが、深く考えたら負けな気がするのでスルーする。

結界を張り直し、異界の扉を亀裂のみ残して様子を見る。

先輩がいったあと、特に亀裂からなにかが出てくる気配もない、

 

2人の女子生徒はいまだ目覚める気配がないが、目覚めたら間違いなく大騒ぎになるな……

説明が必要だと思うが自分一人で説明するのもなぁ……

1人はまったく知らない素人ではなさそうだし、大丈夫だと思うが先輩がやってくれればいいなと気絶している二人を見ながら思う。

 

彼女らが起きる前に先輩が帰ってくるのを祈るしかない。

異界に飛び込んだのに全く心配にならないのは笑うが、油断して3人とも取り込まれましたとか笑い話にならないので先輩の退路を確保する意味でも真面目に取り掛かることにしよう。

 

 

 

 

 

 

ひのえさんに妹さんのあゆみちゃんとお友達を任せ、教室の異界へ飛び込む

一瞬視界が暗転した後、周りの風景が見慣れた高校の教室から、小さい机や椅子、痛んで穴だらけの床の古ぼけた教室が目の前に広がっていた。

 

辺りを警戒しながら、自分の装備を感触で確かめる。

幸い、焔薙と魔改造された二十二年式村田銃もきちんとある。

転移した影響での道具や武器の紛失などはなさそうだ。

 

なにかハンマーのようなもので破壊された、扉以外とくに変わったようすもなく、空間からいやな感じがすること以外特に今のところは危険はなさそうだ。

 

目を閉じて精神を集中させる。

 

視点が切り替わり、ものすごいスピードで廊下を走り回り、穴を飛び越え、階段から上の階に行かずに壁をけり上の階の床の穴から移動してる視点だった。

FPS視点で見ていると一緒なため、急に目まぐるしく動く映像を見せられた為、多少気持ちが悪くなった。

扉を破壊しているのと、ゲームの世界から出てきたのかという身体能力の持ち主はあまり多くない為、どうやらこれは岸沼の視点らしい。

なんか、死んだとかひのえさんの妹さんが言ってた気がするが、見る限り、屍人とかになって動き回ってる感じもしないし

教室を巡って生存者を探し回ってるらしいので、別の手がかりを探すことにする。

 

切り替わるとヨタヨタと廊下を彷徨っている視点に切り替わる。

視点の主人は呻き声をあげながら移動をしているようだ。

視点の方向には白い光があり、そこへ視点の主人は向かっているようだ。

 

視点を戻して二十二年式村田銃を構える。

ある村の騒動に巻き込まれた結果、視界ジャックという特殊能力を得ることができた。

この能力のおかげであの村から生き残れたのだが、近くにいる人や怪異の視点を見ることができたが

戻ってきた時から、自分と縁がある人間と敵意ある怪異の視点しか見えなくなった。

視界ジャックを行なっている最中は自分の姿を確認できないが、視界ジャック対象が俺がいる方向に向いたときは

なぜか俺の位置が白く光っている。美耶子は私の時は青く光ってるといっていた。

なお先ほどの視界ジャックは視界が赤くなっていたため、こちらに害意があるものである。

 

銃を構えたまま、害意があるものがくるだろう場所を見据える。

だんだんと足音が聞こえてきて、教室の扉から姿を現した。

 

姿はもう粉砕死体を間に合わせで修復しましたといわんばかりの醜悪な姿をしており

どう考えても友好的な相手ではない為、躊躇わず引き金を引いた。

美耶子特製の宇理炎弾は怪物に直撃し、そのまま蒼炎に包まれて断末魔のように燃え尽きた。

燃え尽きたら輪廻転生できるがどうか分からないが、緊急事態なので勘弁してもらうしかない。

 

再度、安全を確認したのち、再度視界ジャックで状況を確認する。

 

「えっ……今の銃声?」

 

「さっきの揺れといい、なにか起こってるのかもしれないな」

 

女の子の視点から着物姿の男性の姿が写っている。

女の子の視点に写った白い光から大体の方角と距離を割り出し、お気に入りのヘッドホンからBGMを流して駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




SDKのヘッドホン

視点ジャック以外での霊的探知能力に不安が残る為
霊的存在が近くにいると電子機器に異常がおき、ノイズなどが発生するために探知の代わりになります。
基本探知に優れた人が一緒に行動しますが、今回は緊急事態為、単騎
彼の本領は屍人やら実体をちゃんともった化け物である。


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迫る来る恐怖

「お兄ちゃん……」

 

「大丈夫だ、由香……お兄ちゃんがついてるからな」

 

現在、俺こと持田哲志は焦っていた。

妹と当てもなく、校舎を彷徨っていた。

ときおり、聞こえるクラスメイトの声や悲鳴などを頼りに彼らを探すが一向にみつからない、不幸中の幸いか妹とはぐれ

ところ大きな地震が起きた。

いままであるいてた校舎の様子もがらりと変わり困惑していたところ。

遠くのほうで鳴る、ガラスの破砕音とドン、ドンと壁や扉の木材が壊されていく音が聞こえてくる。

突然の破砕音が場の空気が緊張させる。

すこし耳を澄ませて聞いていたが、だんだんと近づいてきているような気がする。

この音を出している人物と友好に接触できるとは思えないので由香を引っ張り近くの教室へ行き、掃除用具のロッカーに一緒に隠れる。

 

「由香……静かにな、お兄ちゃんがいるからな」

 

由香に声を掛けると返事はなかったがかすかに頷き、力強くこちらに抱きついてくる。

妹の体の温かみで少し安心感が生まれるが、いまだに心の中は安心できない。

じっとしている成果、外から聞こえてくる音が鮮明に聞こえてくる。

物凄い音で廊下を駆けそのままの勢いで教室の扉や窓を蹴り破り、中を確認してそのまた次の教室へ移動しているようだ。

 

幸い、音の感覚を見る限り、教室をくまなく見ているわけではなさそうなので

ロッカーの中に入っていれば、見つかる可能性も低いと思う。

 

万が一の場合は、ロッカーに入っているモップで由香を逃がす時間を稼ぐしかない。

 

 

音が隣の教室にまで届いたようで棚などがなぎ倒される音が聞こえてくる。

隣に音の主がいる。そう思うと由香を強く抱きしめて音を出さないように堪えるしかない。

心臓がドキドキする、この鼓動の音が相手に聞こえてしまうのではないというほど自分には大きく聞こえる。

 

音の主はなぜか、俺達兄妹がいる教室だけ扉を破壊せずそのまま扉を開けて入ってきた。

ロッカーの隙間からは相手の姿は確認できない。

 

急に静かになった正体不明の相手に困惑する。頼む早く行ってくれ……

由香が震えながらも必死で自分に抱きついてくる。

 

 

「人の気配がする……」

 

声がして、足音がこちらに近づいてくる。

 

 

 

 

 

もうだめか……

 

「由香!走って逃げろ!」

 

相手がロッカーに近づいてくる瞬間。叫びながらモップをもって外に飛び出し。モップの柄の部分でハンマーを持った相手に飛びかかる。

 

「お兄ちゃん!?」

 

モップをもって叩きつけたが相手にうまくモップを蹴り上げられてその衝撃でモップを手放してしまった。すこししたあと床にモップが落下した音がこだました。

だめだ、早く由香だけでも逃がさないと

 

「危ないじゃねぇか、哲志、由香ちゃんも無事でなにより」

 

「え……良樹??」

 

音の主は一見、金髪の不良に見える親友の良樹だった。

 

 



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